衆議院

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第20号 平成16年3月5日(金曜日)

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平成十六年三月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君

   理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    植竹 繁雄君

      尾身 幸次君    大島 理森君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    鈴木 俊一君

      滝   実君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 雄二君

      中山 成彬君    丹羽 雄哉君

      西川 京子君    萩野 浩基君

      蓮実  進君    二田 孝治君

      町村 信孝君    吉野 正芳君

      井上 和雄君    池田 元久君

      石田 勝之君    生方 幸夫君

      海江田万里君    河村たかし君

      吉良 州司君    小泉 俊明君

      小宮山泰子君    鮫島 宗明君

      首藤 信彦君    達増 拓也君

      中津川博郷君    永田 寿康君

      長妻  昭君    鉢呂 吉雄君

      肥田美代子君    平岡 秀夫君

      藤井 裕久君    石田 祝稔君

      遠藤 乙彦君    高木 陽介君

      佐々木憲昭君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (青少年育成及び少子化対策担当)

   (食品安全担当)     小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (個人情報保護担当)

   (科学技術政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   金子 一義君

   国務大臣

   (防災担当)

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        山本 有二君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   環境副大臣        加藤 修一君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   法務大臣政務官      中野  清君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (司法制度改革推進本部事務局長)         山崎  潮君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    大泉 隆史君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    大武健一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        坂田  稔君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  西川 京子君     吉野 正芳君

  吉良 州司君     長妻  昭君

  平岡 秀夫君     肥田美代子君

同日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     西川 京子君

  長妻  昭君     吉良 州司君

  肥田美代子君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     平岡 秀夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として、司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、財務省主税局長大武健一郎君及び厚生労働省大臣官房統計情報部長坂田稔君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより締めくくり質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木陽介君。

高木(陽)委員 おはようございます。公明党の高木陽介でございます。

 平成十六年度の予算審議も、衆議院を舞台にしたこの予算委員会、いよいよ最終盤に入ってまいりました。この一カ月間、総理を初め全閣僚の皆様方、本当に御苦労さまでございました。

 本日は、締めくくり総括質疑ということもございますので、貴重な国民の税金をいかに使っていくかというこの予算の審議、国民の方々にさまざまな負担をお願い申し上げなければいけない部分もございますので、その分しっかりと行政の方が効率化を図っていく、むだを省いていく、こういった観点からまず質問をさせていただきたいと思います。

 まず、一月二十二日の衆議院の本会議におきまして、我が党の神崎代表が代表質問におきまして、むだ遣い一掃対策本部の設置を提案させていただきました。そのときに、小泉総理は答弁でそのチームの設置を約束されまして、すぐさま、二月の五日、内閣に、官房副長官補を議長といたしました、各省庁の局長、官房長級で構成する行政効率化関係省庁連絡会議、これを設置していただきました。

 公共事業のコスト削減についても、この会議のもとでワーキングチームがつくられているというふうに伺っておりますけれども、まずは官房長官から、この連絡会議、どのような状況で検討されているのか、これをお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 小泉内閣といたしましては、発足以来、行政のむだを省く、これは最優先課題であるということでございまして、このことについては常時気を配ってまいったということでありますけれども、しかし、なお一層の取り組みを必要とするという観点、これは、実は、ただいま御発言の中にございましたように、神崎代表からも御指摘があったということがございました。そういうようなことも踏まえまして、行政効率化関係省庁連絡会議、これを設置いたしました。

 そしてまた、その会合、先般、二月の五日に第一回を開催いたしております。その後で、その翌週、第一回の幹事会、これは課長級でございますけれども、早速開きまして具体的な議論をする、こういうふうなことになっております。そして、各省庁におきまして、それぞれの所管行政の全般について点検を行っている、こういう状況にございます。

 今般の進め方につきましては、現在のところ、第一回でございますので、まだ明確になっておりません。どういうような問題点があるかということについて各省庁において精査をする、こういうふうなことで、これを来週また持ち寄って議論しよう、こういうふうなことになっております。なるべく早く問題点をえぐり出し、そして手をつけなければいけない、こういうふうなことでございます。そういうことで、この会議を通じましてしっかりと議論、検討してまいりたいと思っております。

 そういうような検討状況を踏まえまして、予算の執行、また定員・機構等につきまして、何かやるべきことがあるのかどうか、そういうふうなことを考えながら適切な対応をしていく、そういうことが重要である、こういうふうに思います。

 また、数値目標の設定をするかどうか、そういうふうなことも、これも大事な点だろうというふうに思いますので、そういうふうな数値目標水準を定めるということができるものについては、すべきであろうというふうに思います。

 ただ、数値でもって決められないことはあるということでございます。ただ削減すればいいということだけでなくて、行政の質が、サービスが向上するということは、これは実質的には削減につながるものではなかろうかというような観点、そういうこともあわせ考えまして、総合的に対応していく。しかし、これはスピードが必要でございますので、十分な対応をしていくよう努力いたしてまいる所存でございます。

高木(陽)委員 今、数値目標のお話も出ました。数値目標を出せるものはしっかり出していくというお話でございましたけれども、まさに、民間企業で例えば効率化を図る、本当に厳しいこの不況の中で、各企業というものはそういうものを目標を立ててしっかりと実行していく。特に、有名な日産のゴーンさんだとか、そういった形で効率化をどんどん図りながら再生をしていく。まさに政府の方も、こういう民間の感覚をしっかりと生かしながら、数値目標をしっかり出していただきたいと思います。

 特に、国民の側は納税をしていただいている。それは義務として当然なんですけれども、やはりそれがしっかりと使われているかどうかということ、ここが一番重要であると思うんです。このむだを省くという形の中で、本当に、行政効率化関係省庁連絡会議、これを生かしていただきたいと思います。

 ただ、一言申し上げたいのは、ここで、役所の中で、役所同士で話し合っていますと、どうしてもまたなあなあになってしまう部分がございますので、まさにこれは総理また官房長官、リーダーシップを発揮しながら、この点をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 その上で、スピードという話、官房長官、お話が出ました。スピードを上げて、数値目標等も出せるものは出していくということがございましたけれども、今回は平成十六年度の予算審議でございますけれども、さらに来年、平成十七年度の予算、これは夏の段階で概算要求をするわけでございますので、できればこの概算要求の前にしっかりとこれを出して、その予算編成の段階でやっていかないと、これがまた一年おくれますと、そのむだが続いてしまうということにもなりますので、ここら辺のところ、来年の予算の概算要求にぜひとも反映していただきたい。

 この点に関しまして、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この行政の効率化、そして税金のむだ遣いをいかに省いていくかというための会議の場を通じましても、出てきた結果なり検討を次の予算の編成に生かしていかなきゃならない。また、具体的なことについて、与党として提言なり提案があれば、これからも申していただきたいし、予算のむだ遣いにつきましては、会計検査院からも指摘されているところもございます。

 そして、各役所におきましても、予算をいただいたならば全部使いたいというのが今までの習慣といいますか、習い性といいますか、もらった予算はむだと知りつつ全部使っちゃおう、そういう意識も変えていただいて、予算はとったけれども、余すことができるんだったらほかの有効なところに使おうじゃないか、そういうようなことも認めるような、大事に有効に使おうという予算に生かしていきたいと思っておりますので、今後とも、具体的な、こういうところを直せということがあったら、遠慮なく申しつけていただきたいと思います。

高木(陽)委員 具体的なことを遠慮なく申しつけていただきたいというふうに今お話がありましたので、一つ具体的なことを提案させていただきたいと思います。

 まず、各省庁が保有している公用車、黒塗りの車、これは、現在全省庁が保有している公用車の台数というのは全国で三千三百八十六台、その保有にかかる経費というのは年間二百七十六億七千七百万円。結構、車だけでこんなにかかるのかと思ってしまうんですが、もちろん国家公務員の数、多いですから、それはそれで仕方がない部分があるのかもしれませんけれども、果たして三千三百台もの公用車というものが必要なのか。

 例えば、私たち公明党は、議員の使う国会での公用車ですけれども、特に委員長の専用車等々はなくした方がいいんじゃないかなとか、いろいろ提案をさせていただいております。

 特に各省庁の保有台数、トップは財務省なんですけれども、七百二十台、次に国交省の方が五百八十三台、次に厚生労働省が四百十三台。これを、もちろん大臣ですとかそういった方々は必要ですけれども、それ以外の方々、例えばタクシーだとかハイヤーを使った方がもっと効率的であろうなと。

 民間にできることは民間にというのが小泉総理の方針ですけれども、そういった中で、例えば半減だとか、これも数値目標じゃないですけれども目指して、半減するまでは新規の車の購入をしないだとか、そういうことを考えたらどうかなと思うんです。

 やはり、一番多い七百二十台の財務省、むだを省いていかなければいけない財務大臣ですから、この辺はどのようにお考えか。

谷垣国務大臣 こういう財政でございますから、効率化を徹底して図っていかなきゃいけない。先ほどおっしゃいました行政効率化関係省庁会議の結論も、ぜひ十七年度予算編成には生かしていかなきゃいけないと思っております。

 それで、お尋ねの公用車の件ですが、これは、従来とも民間委託というのを進めてきたところでございまして、これは今後とも進めなきゃいけないことだと思っております。

 ただ、どんどん進めていきますと、やはり幾つか悩みもございまして、一つは、やはり車の中でいろいろ議論したり連絡したりすることもございます、そういう守秘義務の問題とか、あとまた雇用問題というのもございますが、こういうあたりももちろん全く無視をするわけにいきませんので、そういうことを考えながら合理化、今後とも努めたいと思っております。

高木(陽)委員 今、財務大臣の方から、守秘義務、いろいろとお伺いしたところ、例えば機密の保持等々がある。もちろんあると思います。ただ、どうなんでしょう。移動するその中でのいろいろな連絡等々もしなければいけないんですが、すべての方々がそれをやっているわけではないんで。そういうための公用車は必要だと思います。

 ただ、いろいろと、民間に切りかえると逆に経費が多くなるという試算も出ているようでございますけれども、逆にそこら辺も、まあ待機をしている場合がある、その待機している、先ほど雇用の問題、人件費の問題等もありましたけれども、逆にこれ、徐々に減らしていく、一遍になくせということじゃないですけれども、なくしていく中で、例えばちょっと移動する場合に本当に黒塗りの公用車が必要なのか、タクシーなんというのは今ずっと、この不景気の中で、いつも空車、客待ちですから、すぐに呼んだら来るという、こういうことも可能です。

 ここら辺のところは、民間をうまく利用しながら、やはり二百七十六億円、国というでかい規模なんですけれども、ここのところをいかに削れるかということ、ここら辺のところを、先ほどの行政効率化の関係省庁連絡会議等々、これでも一つの議題にしながら、やはり、どこまでむだが切り込めるか、ここら辺のところをしっかりとやっていただきたいし、そこのところを、総理の御見解を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 具体的な提言をいただきましたので、この場合、役所の公用車、みずから持つ点と、民間ハイヤーなりタクシーなりを利用した場合に費用の点でどうなるか、実際の仕事の業務でどうなるかということについても、できないできないということじゃなくて、できた場合はどうなるかと、よく協議して、費用の点においても削減できる、仕事の点においても支障がないという点に合ったらば公用車を削減していこうという点検が私は必要だと思っておりますので、提言の趣旨を踏まえまして、早速この会議で議題にするようにいたします。

高木(陽)委員 議題にしていただけるということで、ありがとうございます。

 必要なものは必要なんですけれども、先ほどから何度か申し上げています、細かいことかもしれませんけれども、やはり、その細かい部分を丁寧にやっていくことが、貴重な税金を本当に国民のために使っていくという、国会議員の、また、私たち議員だけではなくて、政府としての仕事ではないかなということを申し上げておきたいと思います。

 時間が限られております。

 この一カ月間の予算委員会の審議でやはりテーマとなったのは、年金とイラクの問題が毎日毎日議論として出てまいりました。厚生労働大臣、そしてまた、イラクの問題では、外務大臣そして防衛庁長官等々、官房長官も本当に連日答弁をされる中で、この二つの大きなテーマについて審議が進められました。

 その中で、特にきょうは年金の問題をお伺いしたいんですが、どうもこの年金の論議を聞いていますと、年金の本質の部分、いわゆる七千万人の方々が年金制度に加入して、三千万人の年金受給者の生活を支えている、これは本当に大きな問題。しかも、これから進む少子高齢社会の中でこれをいかに維持していくかという、本当に悩ましい限りの話でありますけれども、そのような中で、政府として、今回、年金改革法案、与党としても論議を尽くしながら、閣議決定され、提案をされてまいりました。

 ただ、ここで、例えばグリーンピアの問題等を初め、そのむだ遣い、これはこれでもちろんやっていかなければいけませんし、こういったところが解消されなければ、その負担がふえていく、一方で給付が徐々に少なくなっていく、こういった問題に御理解を得ることはできないと思います。

 もちろん、それはそれでしっかりやっていただきたいということなんですが、もう一つ、やはり国民が不安に思っているというのは、この今回の改革案でこれがしっかりと維持できるんだろうか、持続可能なのか、こういった不安がございます。

 特に指摘がされているのが、年金の試算の前提ですね。人口の推計または出生率の予測。これが今まで、過去年金の改革をしてきたときに、どうも数字がずれてきていた。もちろん、それほど急激な少子高齢化なんですけれども、その一方で、今回も、この推計、前提となる数字というものに甘さはないのか、こういった指摘もあると思います。ここのところをどのようにお考えか。逆に、ここをはっきりと、明快に言っていただくことが、その不信を一つ一つぬぐっていくものでもあると思います。そういった点を厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 年金の問題で、今回提出をさせていただきました、負担の上限一八・三〇、そして給付の方の下限五〇・二%、このモデルケースでございますけれども、こうしたモデルケースをお示ししてきたところでございますが、それに対してはやはりそれなりの前提条件があるわけでありまして、そこがクリアされなければならないことはもう御指摘のとおりでございます。

 具体的、細かなものはたくさんありますけれども、大きいものは、やはり今御指摘をいただきましたいわゆる出生率、合計特殊出生率と、そして今後の実質賃金上昇率のこの二つだろうというふうに思っております。

 合計特殊出生率の方は、二〇五〇年段階で少なくとも一・三九を維持している。それ以上になっている。そして、実質賃金上昇率の方は、一・一%ぐらい、一%以上を維持する。一・一五でしたか、一・一五%を維持していくということでございます。

 これは、経済の方の、実質賃金上昇率の方は、今回は、今後の労働生産性をどう見るか、そして、その労働生産性とあわせて労働力人口の今後の推移等から、今後の成長率などを見て、そして決定をしたものでございます。

 一方の合計特殊出生率の方でございますが、これは今まで確かに、五年ごとの見直しを行ってきましたところで、それが違ってきた。いつも低位のところに来たということが言われて、今までの計算方法と今回も同じことをやっているのかということを言われますが、今回のところは少し変更いたしております。今までのところは、過去は、晩婚が多い、そして未婚の人が多いといったところを計算してきたわけでございますが、現在調査してみますと、一九六〇年以降におきましては、それだけではなくて、結婚をした皆さん方のところの出生率が下がってきた。ここが年々追って調査をしてみますとやはり明らかになってきているということで、そこも計算に入れまして見たものでございます。

 しかし、この前提条件というのは、現在を一つの基準にして今後の目安を見たものでございますが、やはりそれは政策目標でございまして、その目標といたしますものを超えるようにこれから政策努力をしていかなければならないということだろうと思います。

 それから、年金制度を描きますときに、その年金制度を包みます社会全体がどういうふうな社会なのか、どういう国づくりをしていくかということとセットの話ではないかというふうに思っております。そのセットのところをこれから政策目標としてやっていかなければならない。一つの目標でありますけれども、それを克服するための施策をこれからどう実現していくかということになるんだろうというふうに思っております。

高木(陽)委員 どういうような社会、どういうような国をつくっていくかということはセットで考えなければいけないというふうに、今大臣の方からお話がございました。

 まさに少子化をとめるためにも、公明党、ずっと主張しまして、子育て支援をしっかりやるべきだ、例えば保育園の待機児童、これをゼロにすべきだと。これは、総理がすぐさまこれも受け入れていただきまして、小泉内閣として待機児童ゼロ作戦を展開しようと。こういった流れをさらに加速させる、もちろん年金の問題を解決するためにも、周辺をしっかりと同時に施策として実行していかなければ、これは成り立っていかないというふうにも思います。

 その中で、この一カ月間の審議の中で、特に野党の皆さんからもいろいろとこの年金問題、御質問がございました。その中でちょっと気になったことがございます。例えば、年金制度の最大の問題というのが百五十兆円もの過去債務の問題である、あたかもこれが、保険料の引き上げというものが、これまでの年金制度の失政の結果、若い世代が納める保険料を高齢者の給付に充てるのはおかしい、こんな議論がなされていたようにも思われます。

 厚生年金の保険料というものは、戦後、御存じのように三%からスタートいたしまして、社会が発展して、制度を支える力がついていく中で引き上げをしてまいりました。確かに今の経済状況は厳しいですけれども、昭和三十年代、また四十年代、さらに五十年代と比べて、私たちの生活自体は間違いなく豊かになっていると思うんです。

 今後、私たちの社会が全く発展しない、こういうことはないと思いますし、これから引き上げられる保険料がさきの世代のツケ回しの負担であるかのような議論というのは、このような時間の流れを考慮しない議論。いわゆる、全く同じ状況だ、こういうようなところだったらあり得るわけですけれども、いわゆる社会は変わっていっているわけです。いつの世でも、将来の社会というものがどのように変わっていくか、これはなかなか予測しづらいものでございます。

 現実の社会の変化の中で世代と世代が支え合う、これは年金制度の根幹でもあると思います。こういう考え方は壊してはいけないと思いますけれども、厚生労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 いわゆる積立方式の考え方と賦課方式の考え方とは違うというふうに思いますし、いわゆる過去債務という形で計算をすれば残っていることも事実でございます。

 しかし、それは賦課方式でございますから、だんだんと転がしていく、転がしていくというと言葉は悪いですけれども、お若い皆さん方が高齢者のために出す、そしてそのお若い皆さん方が高齢者になれば、次のお若い人たちが出していくという中で順送りにしていくわけでございますから、常に過去債務というものはついて回る。これはなかなかゼロにならない話でありまして、ついて回る話でございます。だから、そこをこれから先順番に、これは何十年、何百年というふうにかけていくということではないかというふうに思っております。

 したがいまして、ここが新しい債務というものを、一方では生まれておりますけれども、一方ではそれを片づけながら次々と転がしていくということではないかというふうに思っております。

高木(陽)委員 まさに私たちの世代、私も今四十四歳なんですけれども、高齢者になったとき、では、それは自分自身で全部やっていけるかというと、多分、私たちの世代は私たちの世代として今の子供の世代が支えていく。では、その子供の世代がそれだけの高齢者になったときにどうするか、またその次の世代が支えていく。まさに年金の根幹をなす考え方でもあると思います。

 そういった部分では、何か過去債務というような言い方で、いかにも今まで負担をしてきたのがいけなかったような、こういう考え方というものは、いわゆる保険料を納めていただく国民の皆様方に誤解を植えつける、このようなものでもあると思いますし、また、その点を政府としてもしっかりと、年金というものはこういうものなんだ、根源的な話でありますけれども、しっかりとアピールをしていく、こういうことが必要なのではないかなと思います。

 それで、最後の質問にもなりますけれども、もう一つ年金問題で指摘をされているのが、空洞化の問題であると思います。なかなか保険料を納めない、まさに若い世代が、納める人がだんだんと今少なくなっているというふうにも言われる。その若い人たちに支えてもらわなければならないこの年金、どうやってこの空洞化を防ぐのか。

 例えば、だからこそ基礎年金部分すべてを税でやっていけ、こういうような考え方もあると思います。これも一つの考え方でもございますけれども、現実の問題として、この昭和三十六年からスタートした国民年金の制度、その前からあった厚生年金の制度、この基礎年金部分、今回国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる、そういう流れをつくりましたけれども、その一方で、これをすべて税で賄うとなると、では、今まで数十年間本当にまじめに保険料を納めてきた人、この保険料はどうなってしまうんだ。では、三年後に税方式に全部変えますよ、こういうふうにもしなった場合、もう来月から保険料を納めません、納めているのがばからしくなる、納めていない人が得をしてしまう、こういうような、ある意味でいうと、一つの案として税方式は、これはこれで考え方としてはあると思います。

 ただ、現実の問題として、いつ、どこで、どうやって転換していくのか。野党の皆さんもこの部分を言うんですけれども、逆に、ここの現実の部分というのを提案しないで、ただ単にバラ色のような、こういう話をしている。ここのところを明確にしなければ対案にもなり切らない、このようにも思います。

 この空洞化、これを防ぐということがまず大切でございますけれども、この点について、厚生労働大臣、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 未納者がふえていることだけは事実でございまして、ここをどう減らしていくかということは、我々にとりましても最大の課題でございます。

 いろいろの理由がございます。お聞きをいたしましても、その皆さん方の中には、将来のことは余り考えていないというふうにお答えになる方が多いといったような傾向もございます。そういう皆さん方に、年金というのは、御自身だけのものではなくて、現在の高齢者のために皆さん方はお支払いをいただく、皆さんの分はその次の世代が払っていくものだということをやはりよく理解をしていただく必要があります。

 それで、ここを少し丁寧に皆さん方に人を多くしてお話を申し上げていくという一方において、余り悪質なところにつきましては強制徴収というものも毅然として行っていく。そうした両面を行いながら、制度面におきましても、受け入れてもらいやすいように、ただ半額だけではなくて、四分の三とか、さらに四分の一とかいったものを払っていただけるようなこともその中に加味をしていくといったようなことで、私たちも細かい対策を立ててやっていきたいと考えております。

高木(陽)委員 時間も参りました。多段階の保険料方式等々さまざまな対応の仕方があると思います。これもやはり、いかに保険料を納めていただく国民の方々お一人お一人が理解をしていただくかというのが大事だと思うんですね。絵にかいたもちになってしまいます。そういった部分では、これまでも努力をされてきたと思いますけれども、さらにより一層そういったアピールをしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

笹川委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。私、民主党の長妻昭と申します。

 今、公用車の話がたまたま出ましたけれども、これは、私、社会保険庁の公用車、写真を撮ってまいりましたけれども、総理、この公用車の購入費というのはどこから出ているか御存じでしょうか。――いや、総理の認識をちょっと聞いているんです。いや、ちょっと待ってください。総理の認識を聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 これは、政府で出ている場合もあるし、社会保険庁で出ている場合も、その役所によって違うのもあるんじゃないでしょうか。

長妻委員 やはり総理、ぜひ御認識いただきたいのは、これは年金の掛金なんですよ、購入費は。これは年金の掛金で購入しているんです。これは厚生保険特別会計ですから、厚生年金の掛金と政管健保の掛金でこの購入費が賄われています。

 それで、これは共用車といいまして、霞が関のお役人が我々議員会館に説明に来るとき、こういうのに乗ってくるんですよ。別にそれは自転車でもいいし電車でもいいし、まあタクシーでもいいんじゃないか、さっきの議論ですけれども。それで、課長さん、社会保険庁の課長に専用車がついているというのもございます。これはもう何台もあるんですよ、こういうの。こっちは国民年金の掛金で購入しているんです。こっちが……(発言する者あり)ああ、そうですね。この車体の横に書いておいてもらった方がわかりやすいんですよ。こっちが厚生年金、健保の掛金なんです。こういうことをやっているんですよ。

 もう一つ総理にまたお伺いしますけれども、これは、横浜にあります新築の社会保険庁職員用のマンションなんです。三DKで家賃が二万円という格安新築マンションですけれども、これは、もうおわかりだと思いますが、厚生年金の掛金と健保の掛金で建設費が賄われているんです。

 総理、こういうような使われ方が掛金でされているということに対してどう思われますか。

小泉内閣総理大臣 こういう問題につきまして、全役所の税としてこれを負担するか、今のやり方について問題点があるか、よく今後検討する必要があると私は思っております。

長妻委員 そして、私は、年金の掛金は年金の支払い以外には使わない、こういうことをしないと不信感が高まると。負担と給付という考え方がありますが、負担と給付というのは、生命保険会社ならいいですよ、民間なら税金入っていないですから。もう既にこの負担のところに日本は税金が入っていますから、ですから、そういう意味では政策的判断なんですよ、どこを掛金使って、どこを税金使うかというのは。

 そういう意味では、年金の掛金は年金支払い以外にはもう一切使わない、こういうことを今後やらなきゃいけないと思うんですが、総理、ぜひ御決断いただきたいんです。

小泉内閣総理大臣 その考え方もよくわかります。ただし、年金の資金を運用する場合に、年金掛金を運用する人に対してこの掛金を使わないということが現実的に可能かどうか、そういう点もありますので、よく検討する必要があると思っております。

長妻委員 総理、これ、ちょっと問題だというようなお話がありましたけれども、実は、これ、多分、きょうになるかどうかわかりませんけれども、法律がきょう衆議院を通るかもしれないんですよ。

 これは何の法律かといいますと、公債特例等法律案がきょう本会議で通らなければ、平成十六年度からはこういうものに年金の掛金を使っちゃいけないことになるんですが、法律がきょう通れば、平成十六年度一年間もこういうものに年金の掛金を使っていいよと、そういう法律がきょう通っちゃうんですよ。通るんですよ。

 それで、これは自民党の年金の責任者の方も、年金の掛金は年金支払い以外に絶対使わない、こういうふうに御決断されているわけですが、その法律がきょう通ると、平成十六年度に年金の掛金から二千八百六十七億円、この金が支給以外に使われてしまう。そのうち、きょうの法律分だけでいうと千七十九億円の年金の掛金が、本日法律が通れば、平成十六年度、こういうものに使われてしまうということであります。

 総理にもう一回お聞きしますけれども、昭和五十年から平成十四年までで年金の給付以外に使われた、グリーンピアとかいろいろなところ、こういうのも含まれて、使われた金の総計は幾らか。これ、五兆六千億円も、すごい金額なんです。これが使われて、さらに、きょう法律が通れば、こういうものにまた十六年度一年間使われるということなんですが、総理、もうこの法律というのは取り下げませんか。

小泉内閣総理大臣 そういう今までの経過も踏まえて、自民党の方も協議を重ねて、この厚生年金なり国民年金なりの使い道というものを正すべきだという意見が来ております。そういう点を踏まえまして、今後よく検討していかなきゃならない問題だと思っております。

長妻委員 先ほど、年金の掛金は年金支払い以外には使わない、こういうことをお願いしましたら、運用云々の話がありましたけれども、その掛金は、支払い以外の、例えば積立金とかそういうのには当然使っていいと思うんですが、積立金とか支払い、それ以外は使わない、これは総理、御同意できるんじゃないですか、今後。

小泉内閣総理大臣 趣旨としてはいいんです。ただ、人件費とか、運用する人もいますから。それから、あるいは事務所とか、これはもう掛金は使われないわけですね。だから、よく分けなきゃいけないと私は思っています。

長妻委員 総理の御認識もちょっと違うんですけれども、今、人件費は税金で出ています。社会保険庁の人件費は税金で出て、人件費以外が保険料で賄われる、こんなような仕切りになっているわけで、だから、これは人件費じゃないですよね。

 それで、きのうの懸案となっていました、年金の掛金が地方にばらまかれているんじゃないか、積算根拠もなしに。きのう、資料を夕方いただきましたけれども、やはりその積算根拠が非常にあいまいだということがさらにわかったわけでございます。

 これは一年間に、この資料二ページでございますけれども、三百七十九億円が地方に国民年金の事務ということで渡されている、交付金として。そのうちの百五十八億円が年金の掛金から渡されているということなんです。国庫負担が二百二十一億円。

 この二百二十一億円は人件費だ、こう言っているんですけれども、その積算根拠は、平成元年に調査をして、そしてそれを積み上げていって二百二十一に今までなったんだ、人勧の給料の値上がりとかを見込んだと言うんですが、結局、そういう機械的な数字以外の、ちょっと激変緩和とか、ちょっと色をつけるとか、そういうような非常に主観的な形で地方にお金が出ているということで、やはり必要な金だけを渡さないと、これは保険料もあるわけですから、何かつかみ金みたいに、もうちょっと色をつけようとか渡そうとか、そういういいかげんなどんぶり勘定。

 効率的な予算運営をしていただきたいと思うんですが、これ、今後どうですか、厚生大臣。

坂口国務大臣 確かに、御指摘をいただきまして、そして資料を出させていただきました。前回は少し私たち思い違いをいたしておりまして、交付金として地方に渡した中で、その中の人件費がどれだけかというふうにお聞きいただいているというふうに少し勘違いをいたしておりましたので、訂正をしてお出しをしたところでございます。

 今後の考え方といたしましては、平成十七年度以降につきましてはもう一度財務大臣と御相談をさせていただくことになっているわけでございますが、その中で、国庫負担としてきちっと行うべきもの、そして保険財源の中で何を行うかということを明確にしなければいけないというふうに思いますし、そして、地方に出しますものにつきましても、それは、人件費にプラスして何かをするのであれば、その範囲を明確にするということにしなければいけないというふうに思っております。

長妻委員 あと一点だけ。こういう意味では、地方に人件費見合い分として出すときには、毎年の調査ができなければ、何か激変緩和とか色をつけるとかそういうんじゃなくて、本当に人件費ときちっと見込んだ金額だけを出すということ。あるいは、保険料財源も、地方に出すときはきちっと、本当にかかった金だけを出す、色をつけるとかじゃなくて。そういうふうにするということを再度御確認いただきたい。

谷垣国務大臣 ここらの積算根拠をどうしていくかというのは、来年度またどういう仕組みでやっていくかということと関連してまいりますが、きちっと積算をお示しできるような努力をしなければいけないと思います。

長妻委員 ぜひ努力をしていただきたいというか、やっていただきたいと思います。

 そして、三ページでございますが、これと同じ資料をきのう予算委員の皆様に私がお配りしたんですが、これは社会保険庁に作成してもらった資料でございますけれども、ここに誤りがございまして、こういう、国会に提出するということで社会保険庁に頼んでつくってもらった資料に誤りがあって、その意味では、この資料を前提に私もしゃべっておりまして、この議事録も訂正しなければいけないと思うんですが、この資料の中で間違い、何でこんな間違ったのを出してくるんですか。今訂正してください。

森副大臣 大変、記載ミスがありましたことにつきましては、おわびを申し上げます。

 交際費の欄で、平成十年度、十一年度が、いずれも金額のところを五八九、それから二九四というふうに訂正してください。それから、平成十一年度も同様でございます。

 もう一つありました。それと、累計のところが、交際費はしたがいまして四一二三、それから括弧内が二〇五八でございます。

長妻委員 これ、一度や二度じゃないんですよ、実はこういう間違いは。幸い国会に出さなかったですが。私、昔の認識では、日本の官僚は優秀だ、政治家はどうかわからない、こういうことを言われておりましたが、これ本当に、社会保険庁、大丈夫かなと。どんぶり勘定だし、裏づけがないし、こういうずさんな数字の間違いがあるし。あの複雑な何%という計算も、本当に我々検算したい、でもそのバックデータが全部出てこない。こういうこともございますので、これ、厳重注意をしておきたいと思います。

 そして、天下りの問題でございますが、年金の福祉施設を見直すというのは政府も取り組み始めたようでありますけれども、天下りはもう禁止する、これは全然聞こえてこないわけでございますけれども。

 この十九ページをごらんいただきますと、こういうふうに、年金の掛金が公益法人に、社会保険協会を初めどっと、日本国民年金協会とか、十九ページの表のようにわあっと流れておりまして、そして、二十ページでございますけれども、それらの法人には天下りの方が、委託先法人における厚生労働省出身者でございますけれども、例えば役員だけで百五十四人も天下りの方がおられる。全役員の一割以上おられて、二十一ページでございますが、これはすごい年収ももらっておられる。理事長が二千二百八十万と、国会議員より年収をもらっている。こういう天下りの、年金の掛金がそこでどんどんどんどん使われちゃっている。

 こういうことで、天下りはもう禁止すると、ぜひ総理、そういう御決意を言ってください、ぜひ天下り禁止するというのを。

小泉内閣総理大臣 全部禁止ということは現実面から無理だと思いますが、今までのトップの方たち、そういう点については、厳に天下りを戒めるように、今後も検討していきたいと思います。

長妻委員 検討じゃなくて、ぜひそれをやっていただきたいんですよね。

 それで、私、総理の発言を非常に疑うのは、今の発言も、過去同じようなことがあったんですよ。天下りをやめると言って、実は全然天下りをやめていなかったという例があるんですよ。

 これは二十五ページを見ていただきたいと思うんですが、これは二十四ページに表紙がありますけれども、平成十四年第二十一回経済財政諮問会議議事録ということで、二十五ページに、これは政府系金融機関の話のところの議事録でございますが、これは内閣府の議事録です。総理の発言で「これからは総裁、理事長、トップは役所から持ってこない、」そして、「今後、事務次官は、総裁、理事長にならないという中で考えてくれ、とやらないとなかなか統合廃止民営化にならない。」と。ですから、「これからは総裁、理事長、トップは役所から持ってこない、」こういうことをここで言われておられるんですが、これが閣議決定にもなっているんです。

 二十二ページを見ていただきますと、これは私の質問主意書で、閣議決定の文章が引用されていますが、二十二ページには、同閣議決定においては、政府系金融機関に対して、「民間人も含め改革に意欲のある人材の登用など適材適所の経営責任者任用等の措置を講じる」ということで、総理の発言を受けて、天下りだめだと明確に言っているわけでありますが、二十三ページを見ていただきますと、九つあるんです、政府系金融機関。ところが、ここに今八つのリストがありますけれども、九つのうち八つが全部天下り。そして、さっき事務次官を持ってこないと言いましたけれども、旧大蔵省の事務次官が三人もおられる。これが判明しているんですよ、総理。

 総理、毎日チェックしないと、知らないうちにさあっとやられちゃいますよ、これ。総理、どうします、これ。

小泉内閣総理大臣 これは既に決定しているんです。その方針でやります。ただ、今までの時間の経過があるんです。よく考えております。ですから、今後、政府系金融機関、私の言ったとおりになります。今回の、今任命しているのはこれは最後になります、事務次官のトップは。

 だから、これは任命の、やめる時期があるんです。だから、これは時期が、やめるときには、今度は事務次官経験者はなることはありません。それは段階に応じて考えていることであります。

長妻委員 いや、でも、それは総理、おかしいですよ。この二十三ページのリストで、十五年の一月に就任されている国民生活金融公庫の総裁、これは事務次官ですよ、十五年一月。あるいは、十五年十月にも農林水産省の事務次官が就任されて、総理が発言した後もさあっとこういうことをやっているんですよ。これはどうですか。

小泉内閣総理大臣 それも私は承知しております。しかし、これは、今後、郵政民営化と絡んできますから、郵政民営化の議論の中で、政府関係金融機関、これも合理化していかなきゃならないということを前提としております。

 ですから、今の時点では確かになっておりませんが、今後、既に、発表はしておりませんが、内々、こういう方針でやるということは、各役所は承知しております。発表の時期の問題であります。

長妻委員 これは私、実はこの問題というのは大変大きい問題だと思うんです。

 というのはどういうことかというと、一国のトップリーダーの総理大臣が公の場で発言した、その発言をきちっと守らない。一々、確かに総理、毎日チェックするわけにいかないですよ、忙しいから。総理が公の場で、トップリーダーが、一国の総理が発言した内容を守られない、これは非常に、日本の統治機構にとっても大変大きい問題だと思うんで、これはちょっと、きちっと変えないとどうしようもないですよ。国会でやったって、官僚の皆さん、この議論なんて何のそので、さあっといろいろなことやっちゃうんですから。

 どうですか総理、ちょっと統治機構を変えましょうよ。

小泉内閣総理大臣 これは大事な指摘で、私は最大の改革の本丸は郵政民営化だと思っていますから、これをいかに実現するかという役所の動きをよく見ています。だから、既にこういうことも私承知しているから……(発言する者あり)全然うそついていません。もう今の政府系金融機関の、財務省初め事務次官が総裁なり理事長になっているのは最後だぞと、これは郵政民営化の具体案がまとまるときにはもうはっきりさせるから、覚悟しておけよということを既に言っているんです。ただ、今、役所のいろいろな士気にもかかわるとかなんとか言ってきますけれども、そうじゃない、はっきりやるから、覚悟しろということは既に言っていますから。見ていればわかります。

長妻委員 まあ見ていてくださいという大見えを切ったからには、ぜひやっていただきたい。

 そしてもう一つ。日本の今まで手つかずだった大変重要な問題、もう一点ございますが、談合問題です、談合問題。

 八ページを見ていただきますと、これは驚く数字ですよ、八ページ。二〇〇二年度、平成十四年度一年間、たった一年間だけで、予定価格、絶対業者に漏れないはずの予定価格と落札価格が全く同じで、それで落札して契約した入札が五千五百八十二件もあった。これは省庁別です。これは防衛庁とか文部科学省が多い。

 九ページを見ていただきますと、文部科学省に至っては、これはたった一年、平成十四年度一年だけで、一万二百六十三件の入札案件のうち、予定価格と落札価格が全く一致したのが二千三百二十七件ということで、五件に一件が、なぜか偶然、落札価格が予定価格、上限価格と全く同じだった、こういうことがある。

 そして、資料を出していただいたら、十ページ以降に、これは五千五百件のうち金額の大きい順に百件だけピックアップしていただいた。これを見てください。全部、こんな金額だって、一億円とかそういう、端数がいっぱいあるんですよ、これ、例えば何とか何とか五十万とか。そういうのが偶然、落札価格が合っちゃっているんですよ。

 これは、私が認識しているのは、欧米先進国の中には、もう談合問題と毅然と闘って、談合撲滅にほぼ成功した国もあると聞いていますが、日本は、地方自治体は血みどろの努力で闘っているのに、国は、談合問題、何か聞こえてこない。

 ぜひ総理、談合撲滅、これから、あしたからやる、徹底的にやるんだという御決意、教えてください。

小泉内閣総理大臣 入札談合というのはあってはならないことでありますので、今後ともこれは、今の御指摘も踏まえまして、厳正に対処していかなきゃならない問題だと考えております。

長妻委員 ちょっと、郵政民営化と、トーンが低くなるわけですが、これはぜひ、ある弁護士グループの試算によると、年間に数兆円の税金が毎年毎年談合で失われているということも言われておりますので、ぜひよろしくお願いします。

 そしてもう一点、年金の問題に戻りますけれども、システム経費というのもございますが、この五ページを見ていただきますと、実は毎年、例えば平成十六年度の予算で、年金関係のコンピューターシステムの経費が一千億円を超えている。すさまじい、コンピューター、電算システムに係る経費、専用回線とかそういうのもありますけれども、システム経費です。超えている。

 ところが、これは福祉の予算から出ちゃっているんですね、システムの経費が。根拠はどこだと聞きましたら、四ページにございますけれども、先日、我が党の池田元久議員も質問いたしましたが、厚生年金保険法とか国民年金法に、これらの者「及び受給権者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。」「福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。」この条文だけでグリーンピアをばんばんつくり、福祉施設を三百カ所もどんどんつくっちゃって、あげくの果てに、福祉とよくわからないのですが、コンピューターのシステムもここから金がばんばん出ている。

 平成十六年度の予算で七百五十一億円ですよ。平成十六年度、今ここでまさに予算審議しているところで、コンピューターが七百五十一億円が福祉で出ているのですよ。何で福祉なんですか。

坂口国務大臣 社会保険オンラインシステムに係ります経費でございますが、これは特別会計の予算上に書いてございまして、適用、それから徴収、給付に係ります基本的なシステム、この経費は業務取扱費ということになっておりまして、計上されている。年金相談、それから年金の迅速な裁定に係るシステム経費につきましては、福祉施設事業費に計上をされている。この二つに分けられている。

 そして……(長妻委員「何で福祉なんですか。福祉。何でコンピューターが福祉なんですか」と呼ぶ)いや、これらの問題は、先ほど、先日も池田議員の質問に出ました……(長妻委員「コンピューター。聞いてない。コンピューター」と呼ぶ)コンピューターでございますけれども、こうしたものもその中に含まれるという、これは割り切りをしているわけでありまして、だから……(長妻委員「福祉。何で福祉なんですか」と呼ぶ)だから、そこを今後進めていく。

 その財源につきましては、経費の性格に応じまして、業務取扱費は国庫により、それからまた、福祉施設事業費は保険料によりまして負担をしてきた。現時点では、財政上の特例措置が講じられていることによりまして、社会保険事業の事務費の執行に要する費用を含めて、十年以降につきましては、いずれも社会保険オンラインシステムに係る経費は保険料財源より賄われているということでございます。

長妻委員 コンピューターシステムがどうして福祉なんですかという質問をしたんです。この条文によって、四ページのですね、何で福祉なのかということです。

森副大臣 お答えいたします。

 施設とは、法令上の用語としては、かねてから、一定の目的のために設けられた土地や建物を意味するにとどまらず、広く事業活動の全体を総合的に指し示す意味で用いられることもあると解釈されております。厚生年金保険法等に規定する「施設をする」とは、このように被保険者等の福祉を増進するために必要な施策を行う意味と解されます。

 したがいまして、年金相談業務や迅速な年金裁定のためのオンラインサービス等は、いわゆる事務費ではなく、被保険者に対するサービス向上に資するものでありますから、「施設をする」に該当し、福祉施設費に整理してきたところであります。

長妻委員 答えていない。質問できませんよ。何で福祉なのかと聞いているんです。施設のことじゃないですよ。

笹川委員長 長妻君、今、答えたと思いますよ。

長妻委員 そうしたら、五ページ、表を見ていただきますと、下の表ですね。この「業取」というのは業務取り扱い。これは福祉じゃないと。下は「保健・福祉」ということで、これは福祉の予算から出ている。今回の、きょう成立するかもしれないこの法律によって、この「業取」の方も、二百七十四億円の方も、これも保険の掛金で賄えることになっちゃうわけですね、十六年度も、今までは税金だったものが。

 では、この二百七十四億円、そして七百五十一億円、一台のシステムですよ、一台のコンピューターのシステムでこう分かれているわけですよ。七百五十一億円分が福祉で、二百七十四億円分が福祉じゃない。これはどういう考えで、お金を切り分けているんですか、根拠で。

森副大臣 システム経費の積算は、当該年度新たに付加するシステム機能並びに設備等についての費用を積算し、その業務目的に応じてその費用負担を予算で定めて前年度経費に加算しております。

 例えば、制度改正による新しい年金額の計算システムの変更など、年金給付に直接かかわることは行政経費として業務取扱費に計上し、記録、検索の即時化などのレベルアップや年金相談のための窓口端末機の増設は、サービス業務の向上であるので福祉事業費に計上しております。

長妻委員 いずれにしましても、私は理解できません。

 どんぶり勘定で、その裏づけがない、そして保険料を使うものと税金を使うものがわけのわからない分け方をしている、そして出てくる数字は違う、国会に出すという前提でいただいた数字も違って、議事録もこれは訂正しなきゃいけない。こういうずさんな社会保険庁、あるいは年金の議論というのは、まずそういう、どんどんどんどん掛金がどこかに行ってしまう、バケツに穴があいてその水がとまらない、これをとめてからきちっと議論すべきだというふうに考えますので、ぜひよろしくお願いします。

 以上です。

笹川委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。

 締めくくりということで、六つのテーマをこちらでも用意させていただきました。できるだけ端的に聞いていきたいというふうに思います。

 まず最初に、今、長妻委員からも話が出ました年金資金のむだ遣い。

 これは、総理がいらっしゃらない間も、この一カ月間の衆議院の予算委員会の審議で、本当に数多く出されました。池田委員や海江田委員や生方委員中心に、何度も何度も繰り返し出されました。繰り返す必要はないと思いますけれども、給付以外で五・六兆円支出をしている。グリーンピア、サンピア、あるいは金融市場でも大変な損失が出た。

 こういったことに対しての再発防止策というのは、一番大きいのはやはり責任の所在を明確にすることだと思うんですね。総理、この責任の所在をどのように明らかにしていきますか。

小泉内閣総理大臣 今までの議論で、改めなきゃならない点が多々あったと思います。これは率直に反省しなきゃいけないと思っております。

 責任、やはり政治だと思いますね。これをみんな要求にこたえて認めてきたんです。こういう点を改めて、より適切な、貴重なお金の使い方、これはやはり政治がやっていかなきゃいかぬと思っております。

玄葉委員 おっしゃるように、官僚だけではない、むしろ一番責任があるのは政治だと思います。

 ただ、先ほども天下りの話も出ましたけれども、確かに驚くばかりのところもあって、たしか、二十八法人で関連法人があって、二百三十一人が天下り役員なんですね。報酬のことは今まで出ましたからもう繰り返しませんけれども、これらも含めて責任の所在を明らかにすることが大事だ。いつの、だれに、何の、どんな責任があったのかということについて明らかにしなければならないというのが我々の立場であります。

 それで、厚生労働大臣は、第三者委員会をつくって責任の所在を明らかにしたいということでございますけれども、それでよろしいですね。

坂口国務大臣 これは、前回からもお話が出ておりますように、スタートのところは、国会の衆参における本会議決議。そしてまた、昭和四十七年におきまして、衆議院、参議院の委員会におきます附帯決議。この附帯決議では、もっと拡大をすべきであるというふうに書かれているわけでございますから、そうしたことでスタートをした。

 しかし、時代が変わってきた。ここでこれをどう展開するかというのが今後の大きな課題でございますし、そして、その変化の時期が少しおくれたのかどうかといったようなことについては、よく検証をしていかなければならないというふうに思っております。

玄葉委員 いいんですよ。そういう国会決議なんかも含めて、そしてまた変化の時期をとらまえることができなかったということも含めて、すべてきちっと検証したらいいと思うんです。それは、本来、第三者による委員会、できれば独立した委員会で検証するのが望ましいわけですけれども、厚生労働大臣、質問に答えていただきたいんですが、第三者委員会をつくって、そこで検討するということをおっしゃっているわけですけれども、それでいいんですね。

坂口国務大臣 検証する限りは、身内でやっておってはいけませんから、一般の皆さん方にも御参加をいただいてやるということだと思います。

玄葉委員 では、第三者委員会をつくるということでおっしゃっていただいたと思いますが、いつまでにこれをやっていただけますか。

坂口国務大臣 スタートは早くしなきゃいけませんけれども、そこでどういう問題が出てきて、どういうふうな議論になっていくか、これはわからないわけでありますから、いつまでこれはかかるとか、そういうことは私の口からは申せませんけれども、スタートは早くさせる、スタートはこの国会が始まっております間に行うということであります。

玄葉委員 今国会中に始めるということでありますけれども、これは……(発言する者あり)外野席からは、今国会中から始めるということは、今の答弁いいということですけれども、ただ、年金のいわば負担増をお願いする法案を出しているわけですよね。これは率直に言って、国民の皆さんは、こういったことに対してけじめがつかないと、残念ながら、聞く耳を持ってもらえないというのが私は今の国民の受けとめ方ではないかと思うんですね。やる気なら一カ月、二カ月で私は回答を出せると思います、やる気ならね。厚生労働大臣、いつまでにやりますか、もう一回答えてください。

坂口国務大臣 出口のところまでは簡単に私が申し上げるわけにはいきません。お願いをしましたその皆さん方によってそこは議論が続けられていくわけでありますから、しっかりそこは議論をしていただきたい。

 国民の皆さん方に対しては、これから一体どうするかということをお示しを申し上げる。これは過去の問題ですから、過去の問題を検証をやっていただく。そして、今後の問題としてはどうする、今まで引きずってまいりました問題をどうするということを明確にして、法律とともに御理解をいただくということだと私は思っております。

玄葉委員 ですから、今厚生労働大臣がおっしゃったように、明確にして御議論いただくということなんですけれども、明確にしないまま議論が続く可能性が非常に強いんだと思うんですね。ですから、年金の議論の前提としてこの問題にはっきりけじめをつける、つけた後議論を本来だったら開始する、これが本当だと思います。

 余りこればかりやっていると締めくくり総括になりませんから、今のことを指摘させていただいて、次のテーマに移りますけれども、三位一体の問題も、これは与野党を問わず厳しい指摘があったのではないかというふうに思います。

 この問題、もう一度、お配りをしたレジュメといいますか、グラフを見ていただきたいんですが、そもそも、我々の考え方は一度説明いたしましたからもう繰り返しませんけれども、同じ政府案の土俵に乗って議論したとしても明らかにおかしいなと思われるのは、平成十六年度予算において、補助金が一兆円、正確には一兆三百億円削減されたんですけれども、税源移譲は四千五百億円にとどまっている、極めて単純な話であります。

 かつて竹中大臣が、経済財政諮問会議で、この三位一体の問題について基本方針をおつくりになられた、そのときにはこういうふうにおっしゃっていた。義務的経費については十割移譲します、その他は八割ですと。大体、この言葉を信じて、多くの自治体の関係者の皆様もそのようにされるんだろうというふうに思ったわけでありますけれども、これを見るとそうなっていない。そういうはずじゃなかったんですか、十割、八割。

竹中国務大臣 補助金等の削減、改革と、それに伴う税源移譲のルールについては委員御指摘のとおりでございます。これは基本方針にも書き込んでいることでございます。

 ただし、その際に、当然のことながら、必要な所要額をしっかりと見直す、見直した上で、必要なものについて、義務的なものは十割、それと、その他のものについては八割、そのような認識でこれは一致しているというふうに思います。

 これはよく財務大臣が、その中に、財政のスリム化というのも、地方、国を通して巨額の赤字を抱える中で、そのスリム化そのものも重要な要素なんだと。したがって、必要なものを精査した上で、その上で、今、玄葉委員御指摘のように、一〇〇%、八〇%というその原則を決めているわけでございます。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

玄葉委員 スリム化だということを、たしか財務大臣も予算委員会の初日のときにおっしゃっているわけでありますけれども、要は、スリム化だというのは、引き続き地方が主体となって実施する必要がないものだからこれはカットしたんです、こういう話でよろしいですか。

谷垣国務大臣 はい。もう地方でやっていただく必要がないものについては、税源もお渡しする必要はないわけでありますから、それは省いてございます。

 それで、その必要なものについて、先ほど委員がおっしゃったように、義務的経費には十割、そうでないものは八割というようなことで整理をさせていただいたということであります。

玄葉委員 まさに今おっしゃったように、必要がないから税源移譲の対象としていない、こういう事業は必要ないから税源移譲の対象にしないんだということなんですけれども、でも、実際はどうなんでしょうかね。

 さっきお示しをした五千五百億円、税源移譲の対象となっていない部分ですね。これのほとんどは、事業そのものがなくなったわけじゃないんですね。ここにありますけれども、それぞれの科目は全然なくなっていない。まあ全然とは言いません、ほとんどなくなっていないんです。要は、事業そのものは全部残っていて、その額が減っただけなんですよ。要は、量が減っただけなんですよ、あるいは件数が減っただけなんですよ。今の話と矛盾しませんか。

谷垣国務大臣 十五年度の補助金改革で、地方に事業が残るとされたものに係る財源補てん措置のうち、国負担とされたものは二千五十一億、それから、十六年度の補助金改革でそのように判断されたものは二千百九十八億、そこで合計額を四千二百四十九億としたところでありまして、今おっしゃったような矛盾は、私はないと思います。

玄葉委員 これは、量が必要ない、こういう議論がありますけれども、本来だったらこういうことなんだと思うんですよ。結局、これらの五千五百億円については、基本的には、事業が必要ないという判断を基本的にされているわけだから、これそのものを、事業そのものをなくしちゃうんですよ。なくしちゃって、その八割を税源移譲の対象にするというのが私は本来のあり方だと思うし、多くの関係者の皆さんは、最初、基本方針が出たときに、そう思ったのではないかと思いますよ。違いますか。ほとんどの人はそう思ったと思いますよ。事業そのものはなくなっていないんですからね。これは総理も見ていただいていますけれども、全部額が減っただけなんです。

 これは、今何が起きているかといいますと、額が減っただけだから、結局、逆にその補助金が希少価値になっちゃって、希少価値ですよ。額が減って、その額を求めて、ますます政治家を頼り、東京に通ってくるんです。ますますそういう状況が起きているんです。国から地方へと思ったら、地方から国へになっちゃっている。これが今の実態なんですよ。総理、いかがですか。

谷垣国務大臣 今お挙げになった中で、公共事業関係の国庫補助負担金、これについては、国ももちろんですけれども、厳しい財政事情のもとですから、地方でもスリム化が求められているわけですね。それで、事務事業の廃止とか縮減によるスリム化を図って、それが基本であって、税源移譲の対象とすることは私は適当ではないと思っているんです。

 仮に、地方がみずからの判断で、国が廃止した事業を実施する場合があるとしますね。それでも、公共事業は建設公債発行対象でございますから、この厳しい財政事情のもとでは、補助金廃止によって地方にお譲りするものというのはないんです。からっからなんです。

 さらに、最近の地方の投資単独事業の実際の執行額というのは、地財計画で既に財源の手当てがなされている計画額の規模を大きく下回っているのが実情ですから、地方が自主的な判断で単独事業として執行する余地が残されているわけでありまして、こういう観点からも、税源移譲によって地方に新たにここの財源をお渡しする必要はないというふうに考えております。

玄葉委員 いや、それなら、本当にこの科目はおかしな話になっちゃうんですよね。全部とは言いません、これは言い過ぎですが、ほとんど科目は残っているんですから、額を減らしただけなんですから。やはり本来のあり方をもう一度、この政府案の土俵に乗った上でもお考えをいただきたいなというふうに私は思うんですよ。

 先般、年金の支給の話で、モデル世帯というのがほとんどなくて、でも給付は五〇%だ五〇%だという話を、どうも誇大広告じゃないかという話がこの委員会の中でも議論がありましたけれども、義務的経費は十割移譲します、その他は八割ですというのも、このままいくと誇大広告ですよね。

 普通考えたら、一兆円補助金を削減したら、義務的経費は十割、その他は、ここでいえば五千五百億円の八割は移譲する、それで自治体の首長さんたちは腕を振るえる、それが本来なんじゃないですか。今回、腕を振るえる余地は全くと言っていいほどありませんからね。ありますか、財務大臣。

谷垣国務大臣 それはやや玄葉さんとも思えない誇張なおっしゃり方であって、これは私が御答弁するか、あるいは文部科学大臣に答弁していただいた方がいいのかもしれませんが、例えば教育だって、地方の自由度、保育もあると思うんですね。そういう意味で……(玄葉委員「少しはそう」と呼ぶ)少しは、少しはとおっしゃるけれども、いや、やはり全体のその自由度も高めて、責任も負っていただくという姿になっていると思いますよ。

玄葉委員 もう余り繰り返しませんけれども、義務教育については若干そうなったかもしれません。だけれども、公立保育所の問題なんというのは、ほとんど縛ったままというか、最低基準は変わらないということは、この間、坂口厚生労働大臣が答弁したとおり。今回、そこの部分、その範囲内だけで自由度が増しただけなんですよ。それ以外では何もないんですよ。

 これでは、地方の裁量権が拡大します、その結果潜在力が発揮されますと、もともと小泉総理大臣がおっしゃっていたような目的に合致しない、到達しないまましぼんじゃう、こういうことになりますよということを警告として申し上げて、同時に、もっと申し上げれば、提案として、同じ土俵で議論したとしても、さっき申し上げたような公共事業の縮減あるいは廃止の部分は、それはそっくり事業そのものをなくして、そして八割を移譲する、そういうことだったら裁量権の拡大はできますね、こういう話です。麻生大臣、そう思うでしょう。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 なかなか安易にさようでございますと言えるような感じではないんですが、基本的に、玄葉先生の言っておられるところで、今のその図面で五千五百億のところですけれども、御存じのように、図をもう少し正確にかいていただくと、まちづくり交付金の分の一千三百億とか、それから奨励的補助金のところの約一千億等々がありますので、そういったところも計算して引いていただくと、純粋な削減額は三千二百億ということになるんだと思うんですね。

 そこのところは、現場の町長さん等々は、調べていられるところはよくおわかりいただけているところなんで、ただ、今言われましたように、財務大臣からも答弁があったように、基本的には、これは玄葉さん、ある程度地方のはスリム化していただく、二年でやるところは三年でやってもらうとか、いろいろな手口は必要と思っております。

 そういった意味で、私どもは、いろいろやっていただきますけれども、それでも、なおかつ、どうしても仕掛かり品等があってできないというところにつきましては、いわゆる再建債等々いろいろなものでそこのところは詰めていかないかぬところだと思っていますので、八千億やら何やらのものを拡充するなり弾力利用するなり、いろいろな形で個別のものについては対応させていただきたいと思っています。

 ただ、これは地方によってすごく違いますので、なかなか一概にはこれがというのが言えないところが難しいところだというのが正直な実感です。

玄葉委員 余り深追いしませんけれども、このままでいくと、総理、国から地方へというのが地方から国へということになっていますと。この実態をよく理解をしていただいた上で、次の質問に移りたいと思います。

 ただ、今回、三年間で四兆円補助金を削減する、一定の税源移譲をする、こういう方針を立てたわけですけれども、当然、それによって事務は減るわけですから、その分の国家公務員は減る、こういうふうに考えていいですね。

麻生国務大臣 通告を受けておりませんのであれですけれども、基本的には国家公務員というものは、これだから減るということではなくて、その他を含めて全部減っていく傾向にありますので、今回、警察官一万人増員した上で純減というのが実態でありますので、基本的には、ICT化される、いろいろな面から考えましても、国家公務員の絶対総数は純減します。

玄葉委員 いやいや、これも深追いしませんけれども、独立行政法人になって国家公務員が減るとか、いろいろあると思います、IT化によって。でも、今回の、規制だとか、許認可だとか、補助金の額だとか減るわけですから、基本的には、その分は国家公務員の減少に拍車をかけるものとしてやはりカウントして、これから計画をつくっていかないといけないんじゃないんですかということを改めて申し上げておきたいと思います。

 次に移りますけれども、今回の予算審議の中では一度も出なかったんですが、いわゆる有事関連法案について一言だけ触れておきたいというふうに思います。

 我が党としては、この有事関連法案、特に国民保護法制、これについてはその制定を急ぐべきだということを申し上げてきているわけですから、基本的にそういう立場で議論をしたいというふうに思いますけれども、その他の関連法案、特に、我々、基本法を制定すべきだということを申し上げて、先般の武力攻撃事態対処法を成立させるときに自民党と民主党で合意をしているわけでありますので、その基本法を前提に関連法案についてしっかりと議論をしたいというふうに思っております。

 そこで、一つ二つだけ確認をしておきたいんですけれども、国民保護法制というのが間もなく閣議決定される予定だということでございますが、この中に新たな概念が出てまいります。緊急対処事態、大規模テロが対象だということだろうというふうに思いますけれども、この緊急対処事態というのは具体的にどのような事態を言うのか、例示を挙げてほしいと思いますし、あるいは、この認定の要件、基準、こういったものを挙げてください。

井上国務大臣 国民保護法案要綱の中の緊急対処事態についての定義をお尋ねになったと思うんでありますが、国民保護法案の要綱上、緊急対処事態は、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態または当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で、国家として緊急に対処することによりまして国民の生命、身体、財産を保護することが必要なものといたしまして、内閣総理大臣が認定をし、閣議決定されたものでございます。

 こうした認定を行うことによりまして、今お話しの大規模テロなんかが発生した場合におきましても、武力攻撃事態におきまして、国民保護のためのいろいろな措置をとります。避難でありますとか救援という、こういった措置がこの緊急対処事態におきましてもとられる、こういうことであります。

 具体的な事例は何かということでありますけれども、この定義にありますように、かなり広範な事態を想定して規定をしないといけませんので、なかなか難しいのでありますけれども、一、二の例を挙げてみますと、原子力発電施設の破壊でありますとか、炭疽菌等の生物剤を用いた生物テロ、あるいは航空機によります多数の死傷者を伴う自爆テロなどの事態を想定いたしております。

玄葉委員 だれがどのように認定するのかということと、オウム真理教の事件なんかは入るんですか。

井上国務大臣 事態の認定は内閣総理大臣が行いますので、具体的には内閣官房が中心になりまして総合的に検討いたしまして認定をする、こういうことですね。

 要件といたしましては、今申し上げましたように、武力攻撃事態に準じた手段で多数の人が殺傷される、そういう事態が発生した、あるいは発生されるということと、もう一つは、国民の生命とか身体、財産を保護することが必要である、こういう認定をされる、そういう状況ですね。

 それから、オウム真理教なんかの場合、これは、いつの時点で認定するかというのは非常に難しい問題があると思うのでありますけれども、仮にああいうようなのが一時にばっと出てまいりますと、一時に、あるときにああいう事態が起こりますと、それはそういうようなことになろうかと思うのでありますけれども、順次ああいう事態がはっきりしてくるものですから、これはなかなか、認定の時点というのをあらかじめこうだという特定をすることは非常に難しいと思うんですよね。

 割かし具体的な事例といたしましては、地下鉄サリン事件なんかがありましたけれども、ああいう事態が起こりますと、やはり多数の人が殺傷される危険性というのは多分にありますし、いろいろな措置をしないといけないということでありますので、ああいう事態はまさに緊急対処事態になるんだろう、こんなふうに思います。

玄葉委員 この概念、まだ漠然としていますから、いずれ法案審議の中ではっきりさせなきゃいけないというふうに思っています。

 それと、概要をずっと拝見して、よくわからないなと思ったのは、米軍との関係が一つありまして、余り細目に入るつもりはありませんけれども、武力攻撃事態になったときに、自衛隊は、武力攻撃事態の適用除外の法律は、今というか、まさにつくったし、これからもつくるんですけれども、国内法の規制を受けるわけですよね。だけれども、米軍は受けないわけですよね。ただし、日米地位協定があって、尊重義務があるからそれでオーケーだ、こういうことで済まされるのか、それとも、ここの調整をするために何らかの法整備を検討するのか。今回、関連法案でてっきり検討するんだろうと私は思っていたんですけれども、全然入っていないようにお見受けするんですが、いかがですか。

井上国務大臣 米軍の行動につきましては、まだ詳細発表しておりませんので、全体の御理解がいっていないと思うのでありますけれども、委員御承知のとおり、日米安保条約で米軍の駐留を認めておりまして、米軍に関することがこの日米のいわゆる地位協定の中に規定されているわけですね。

 この地位協定の十六条におきましては、御承知のことだと思いますが、日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにこれらの家族の義務である、こういうぐあいに規定しているわけですね。この規定自身は、一般国際法上の考え方に合致するものでございます。

 一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には、特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されないが、接受国の法令を尊重しなくてはならないことは、当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務でありまして、このことを受けているわけでございます。

 この尊重義務は、武力攻撃事態の中でも当然のこととして適用されるのでありますが、その中で、米軍が応急の道路工事を行う場合の関係機関への通知でありますとか、米軍の行為に係る損失補償を政府が実施するようにしておりまして、しかるべき必要な点につきましては適切な措置を講ずることにいたしているわけであります。特別の規定をこの法律の中に規定をしたい、そんなふうに考えております。

玄葉委員 もう一つだけ、簡単に、端的に答えていただければいいんですが、ACSAの改正がありますね。武力攻撃事態のときに物品役務を日米で融通し合う、これは武器弾薬も含めてだ、これはこれで私はいいと思います。問題は、今回、有事ACSAを整備するんだろうというふうに思っていたら、それだけではなくて、平時のACSAも入っているんですね、改正には。

 つまり、例えばアフガンとかイラクとかああいったところで平時の、政府は平時という理解だと思いますけれども、そういうときに日米で物品を融通し合えるというのも入っていて、私はてっきり有事ACSAの法案なんだろうと思っていたんですけれども、どうもそういうものが入っていることに違和感を感じますね。

 平時のACSAの中身自体は、私は、それはそれでなるほどと思う中身なんですよ。ただし、そういったイラクとかアフガンのああいう話というのは、これは特措法じゃなくて恒久法ができたときにあわせて整備するというのがどう考えても本来の姿なんですよね。これはもう指摘だけにしておきたいなというふうに思います。

 それでは、今回の補正予算あるいは本予算の審議でもたびたび議論のあったイラクの問題に移らせていただきたいと思いますけれども、一つは自衛隊の安全確保策についてでありますが、自衛隊の安全確保策を考える上で最重要なのは、私は情報の収集だというふうに思っています。

 政府としては、この情報の収集あるいは伝達、活用、もちろんその前に分析がありますけれども、そういったものをサマワにおいてあるいはイラクにおいてどのようにされているのか、御説明いただきたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のとおり、情報の収集、分析、評価が肝要であります。

 これは、現地で治安の維持に当たっておりますオランダ軍、あるいは今整備されつつありますイラクの警察、あるいは民間のそういうような防衛組織、あるいは部族長等々、そういう方々と緊密な意見の交換を行っております。あるいは、関係各国からいろいろな情報を入手いたしております。

 あるいは委員もごらんいただいたかもしれませんが、昨日、サマワの番匠幸一郎一佐と私との間で、テレビ電話でお話をいたしました。現地から入ってくるいろいろな情報をリアルタイムで画像そして音声で私どもの方に伝えることができ、それを分析、評価ができるというような体制も今回整備充実を図っておるところであります。

 委員御指摘のとおり、情報の収集、分析、評価、これが最も肝要であると思いますので、今後ともさらに努力をしてまいりたいと存じます。

玄葉委員 サマワで治安を担当しているオランダ軍、このオランダ軍とイギリス軍との間で、二、三カ月前でしょうか、イギリスからオランダ軍が治安にかかわる情報をいただけなかった、機密情報だといって隠されてしまった。これが大分オランダでも話題になって、議論になったということでありますけれども、日本の場合は、そういったオランダ軍との関係、あるいは米軍、イギリス軍との関係、大丈夫ですか。

石破国務大臣 オランダとイギリスとの関係について私言及する立場にはございませんが、先般、イギリスあるいはオランダを訪問いたしまして、情報の交換については本当に万全を期す、現地の治安の状況についての情報は適時適切に日本側に提供するということを大臣同士で確約いたしておるところでございます。

 現在に至りますまで、情報の提供等々で私どもが不都合、ふぐあいを感じたということはございません。今後もそのようなことがないように努力をしてまいります。

玄葉委員 もう繰り返し申し上げる必要はないと思いますけれども、情報収集が一番大事だ。

 ただ、今回、委員会審議の冒頭で大分議論になりましたけれども、サマワ市に評議会があるかないかということについて政府の中で混乱をする、こういう事態が現実にあるわけですね。これは自衛隊の生死に直結しますからね。体制は手直しされたんでしょうか。

石破国務大臣 実際に、今、現地に部隊が入りまして一カ月以上が経過をいたしました。態勢も整いつつございます。

 この委員会の審議の最初の部分でいろいろと御迷惑をおかけいたしました。その反省、教訓も踏まえまして、きちんと自分の目で見て確かめる、そして、一方からの情報だけではなくて複数からの情報を総合して、まさしく評価、分析するという体制をさらに充実させておるところでございます。

玄葉委員 二度とこういうことが繰り返されないようにしていただきたいというふうに思います。

 それで、さんざんイラク特措法の議論のときに恐らく論点になったと思いますけれども、改めて、イラク特措法のいわば落とし穴を幾つか指摘しておきたいと思います。

 つまり、今の自衛隊の安全とかというのは、万国共通で、それぞれ軍隊を送っているところはそれぞれの軍の安全確保策に一生懸命になるし、それは当然、それぞれの国にとってのリスクなわけですよね。だけれども、我々はイラク特措法で自衛隊を派遣したがために日本独特のリスクというのを有してしまった、これは私はあると思っています。

 一つは、よく議論されるところだと思いますけれども、サマワで、オランダ軍と共同行動といいますか、行動を自衛隊とオランダ軍がしている。それで、自衛隊に危害が加わったときにオランダ軍は自衛隊を守ってあげられる。だけれども、オランダ軍に危害が加わったときに自衛隊は守ってあげられない。これは、こういう事態が起きたときは、私は大きく国益を損なうことになろうかというふうに思います。まず、そのリスク認識を持っておられるかどうかということが一つ。

 もう一つは、公明党の神崎代表が、サマワでオランダ軍がやられたときにそれを守ってあげるというのは、国際法上、正確には何と言いましたか、大丈夫だということをどこかでおっしゃっていますよね。オランダ軍を助けることは可能だというふうにおっしゃっていますが、ここはいかがなんですか。

石破国務大臣 リスク認識をどう考えているかということでございますが、この点も、オランダに参りましてカンプ大臣とかなり議論をいたしました。その場でカンプ大臣がおっしゃったことが日本経済新聞に同じような内容でインタビューに応じておられますが、そこでオランダの大臣が言っておるのは、こういうことであります。我々は日本の助けを必要としていない、ムサンナ州の治安維持は我々オランダの任務である、日本は政府が決めたことを実施することが大切であって、認められていないことまでやることは期待していない、オランダの議会も世論もこの点を問題にしていない、同じことを議論し、その確認をいたしました。

 すなわち、私どもは治安維持の任務を負っておりません。主に人道支援をやるわけであります。オランダは治安維持の任務を負っております。そのオランダが日本の助けを必要とするような状況が本当に現出をするかといえば、まず、そのような状況は現出するとは考えられない。

 そしてまた、私どもは、この法律十七条に定められておりますような武器使用の権限を有しております。これは、何度か答弁を申し上げたことでありますが、自分の身の安全を守る、いわば、自己保存のための自然的権利というふうに申し上げておりますが、このことにおいて、私は、権限も装備も訓練の状況も全く遜色があると思っておりません。他国に比べて全く遜色があるとは考えておりません。そのように、いいかげんなことで出しておるのではありません。

 委員御指摘のように、オランダがやられた場合に助けられるか助けられないかということは、まさしくこの十七条が予定しておるような武器使用の状況がその場合において出現するかどうか、現出するかどうか、そういう問題でありますが、委員御指摘のように、オランダはそのようなことを期待しておりませんし、そのような状況にもならないということでございます。

 それから、神崎代表がどのようにおっしゃったか、私、直接承っておりませんのであれこれ申し上げる立場にはおりませんが、それは、恐らくこの十七条が予定をしておるような状況になればということだろうと思います。委員も既に御案内のことかと思いますが、これはオランダが自衛権を行使するという形ではございませんので、直接、集団的自衛権の問題と直結する話ではございません。

玄葉委員 でも、私は、そのリスク認識は、石破長官、甘いと思うんですね。今、そういう現象だということ、あるいは状況だということでありますけれども、もしそうなってしまったときには、オランダの世論も大丈夫です、軍も大丈夫ですといったって、仮にそういう状況が起きたら、国際社会から見れば、どうしたことかということになるのは目に見えているわけです。仮にそういうことが起きたら、これは国益の損失であることは間違いありませんよ。基本的に、やはりそういうことを頭に入れておかないといけないということをまず一つ指摘しておきたいと思います。

 もう一つは、これもさんざん議論したんでしょう。非戦闘地域が戦闘地域に変わってしまった、そういった場合、自衛隊は法律によって一時中断して、あるいは休止をして、場合によっては避難をする、こういうことであるのでしょう。だけれども、他国の軍隊は、休まないかもしれない、中止をしないかもしれない、あるいは、外務省の職員だってその場に残るかもしれない、NGOの職員だって残るかもしれない。だけれども、自衛隊だけは帰る。帰ると言うと大げさかもしれないけれども、一時休止をして、中断をして避難する、こういうことが起こり得るんですね。

 これも、国際社会から、こういうことが起きたら、これはやはり一体日本の自衛隊って何なんだろう、日本という国は何なんだろう、こういうことになるんじゃないですか。

石破国務大臣 このイラク特措法というもの、あるいは憲法との関係、もう一度英語に訳し直してみまして、これを英語に訳すとどうなるんだという作業をやってみました。それを説明いたしました。

 私どもは、法治国家でございますので、法に反した行動はできません。それが国益に反するのかどうかといえば、それは議論の余地があるかもしれません。しかし、私どもはなぜ非戦闘地域という概念を設けたかということをここでもう一度説明するつもりはございませんが、そういうような場合になれば、委員御指摘のように、一時中断、休止し、実施区域変更の指示を受ける等を待つ、こういうふうになっております。これは、日本国憲法九条の規定をきちんと遵守する、それを二重に担保する意味で設けた規定でございまして、これは、私どもとして変えるわけにはまいりません。

 そういうような状況になったとして他国がどうなるか、それはわかりません。しかし、そういうような状況になっても、委員まさしく御指摘のとおり、すぐ引くというようなわけではございません。状況がどうなるか、法に定めたような要件を満たすようなことがあるとすれば、それは、実施区域を変更して活動を続けるということもあり得るでありましょう。いずれにしても、日本の国益は何であり、それを損なわないようにどうするかということは、またよく議論をさせていただきたいと思っております。

 外務省の職員が撤収するかどうか、そのことは私がお答えすることではございませんが、普通、自衛隊が撤収するような状況ということが仮にも起こるとするならば、それは、外務省も同じような対応をおとりになることがあるのではないかというふうに推測はいたします。

玄葉委員 もちろん、隊員の安全ということもといいますか、一番大事でありますけれども、今申し上げた二つのリスクは、間違いなく、我々はといいますか、日本政府は抱え続けるわけです。これは、重い重い現実だと思いますね。

 今回、イラクに自衛隊を派遣することを小泉総理は決断されたわけです。今申し上げたリスクも含めて、効果といわば総合勘案をしてお決めになられたということだと思います。

 このイラク派遣の記者会見等々を聞いていますと、小泉総理は、常に繰り返し繰り返しおっしゃっている言葉がある。それは、日本は信頼に足る同盟国でありたい、アメリカにとって信頼に足る同盟国でありたい、このことを繰り返し繰り返しおっしゃっているんですけれども、この信頼に足る同盟国、小泉総理が考える信頼に足る同盟国というのはどういう同盟国のことをいうのか、御説明いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは、信頼ということは、人間の、個人間の間にあっても、企業にあっても、あるいは国家間におきましても、私は最も大事なことだと思っております。

 アメリカと日本の間におきましての関係におきましても、日本にとって、アメリカは信頼に足る同盟国だと思っております。同時に、日本もアメリカにとって信頼に足る同盟国でなければなりませんし、国際社会にあっても、責任ある一員として、信頼に足る国でなくてはならないと思っております。

玄葉委員 幾つか別の角度からもお伺いをしたいと思うんですけれども、例えば、総理としては、これを繰り返し繰り返し、自衛隊派遣を決めたときに、あるいは決めた後に、信頼に足る同盟国でありたいんだ、こういうことをおっしゃったわけですけれども、仮に、今回、自衛隊を即イラクに派遣しなかったならば信頼に足る同盟国たり得なかった、このようにお考えになられますか。

小泉内閣総理大臣 私は、今回、イラクに自衛隊を派遣して、イラクの国づくりのために復興支援活動あるいは人道支援活動、これは国連の要請にこたえて行ったわけであります。

 国連におきましては、すべての加盟国にイラクの復興支援に協力を要請してきております。日本は、国連の一員として、信頼に足る一員でありたい、そして、将来、このことはイラク国民から評価されるであろう、そういう点から派遣したわけでありまして、アナン事務総長が、国会の演説におきましても、イラクが苦しんでいる、イラクが復興に努力している、それに対して日本は率先してこの挑戦に立ち向かってくれたという評価をしております。

 そういう意味において、私は、自衛隊を派遣しないで、復興活動にも参加しない、人道支援にも参加しないということにおいてよりも、はるかに日本の国際社会の中での活動というのは評価されていると思っております。

玄葉委員 国連か日米安保かという議論もこの予算委員会を通じてあったんですが、私は、国連か日米安保かという議論をする以前に、日米安保同盟のあり方論を少し議論させていただきたいなと実は思って質問をさせていただいているんです。

 改めて、今回、繰り返し繰り返し総理は日米安保同盟をお出しになられて、信頼に足る同盟国たらんとして自衛隊を派遣するということも含めておっしゃっているわけですけれども、私がお聞きしたのは、もし自衛隊を即今回のように派遣しなかったならば、日本はアメリカにとって信頼に足る同盟国たり得なかったと思われますかということをお聞きしたんですけれども、もう一度御答弁いただけますか。

小泉内閣総理大臣 私は、何が信頼に足る行動かということで考えているわけであります。何をしなかったら信頼に足りない、そういうことではないと思うんですね。

玄葉委員 我々は、今回、イラクの自衛隊派遣に対して慎重な考え方をとったわけですね。あのときに、査察を強化、継続するべきだというようなことを申し上げた。私自身は、実はイラクの特措法の委員会にも入っていませんし、なかなか立場をといいますか、自分の意見を申し上げる機会がなかったんですけれども、もし我々だったら恐らく慎重な立場をとった。しかし、アメリカがそれでも先制攻撃を行ってしまったとしたら、積極的に支持をするというのが基本的には総理の立場だったと思いますけれども、我々だったら、理解するとかその程度になったんだろう。復興支援活動に、じゃ、参加しなかったのかといったら、必ずしもそうではないと思います。本格的な治安の回復を待って、例えば自衛隊を出すということもあったかもしれないし、あるいは空自だけを何らかの形で出していくということだってあり得ただろう。

 何が言いたいかというと、さっき申し上げた二つのリスクを、イラク特措法をつくって即出されたから、ずっと有し続ける。我々だったら、その二つのリスクは有することはなかっただろうということもあります。あるいは、今、川口さんが外交活動をされておられて、フランスだドイツだ、さまざまな国に働きかけをしていると言うけれども、もし慎重な態度をとっていたら、恐らくより説得力を持って、フランスとかあるいはドイツとか、そういった国々にイラクの復興支援活動への関与を働きかけることができたんじゃないか。こういう考え方も十分成り立つわけだし、我々は、そういうことだったんじゃないだろうか、そういう思いも実はあるから、改めて自分の意見も含めて申し上げたわけでございます。

 総理は、集団的自衛権の議論も、この予算委員会を通じて、たしか大野委員の質問にお答えになられているんですけれども、たしか本予算案の一日目の答弁のときは、改正するのもいいし、解釈を変えるのもいい、こういうことをおっしゃっていたんですが、報道とあと議事録によると、参議院の本会議、二十七日ですか、やっぱり解釈改憲はだめだ、正面から憲法改正するのが筋だ、こういうふうにおっしゃっているんですが、一体どちらなんでしょう。

小泉内閣総理大臣 私の考え方、答弁は一貫しております。

 今までの積み重ねてきた政府の憲法解釈を尊重したい、しかし、憲法の条文をめぐって国民の間にはいろいろ解釈があり、解釈も変わってきた経緯があるということは承知している。ある時期においては自衛隊も憲法違反であると言う方々も、時代の変遷によって、いや、やはり自衛隊は憲法違反ではないなと変わってきている。自衛隊を海外に派遣する、PKO活動に派遣するということに対しても、これは自衛隊に海外派遣するということは許されないんだから、これは憲法違反であるという考えをとってきた方もいる。しかし、当時はそういう考え方の人たちも、今では、PKO活動なら海外に自衛隊を派遣してもこれは憲法違反ではないなと変わってきている。だから、憲法解釈というのは人によって変わってくる。

 しかし、集団的自衛権に関しましては、今まで政府は、これは解釈はいろいろな国会の議論で積み重ねております。憲法を改正しないで、解釈によって集団自衛権の行使を認めろという議論は多々あります。しかし、私は、それはやるんだったら憲法を改正した方が望ましいということを言っているのは、望ましいと言っているのは一貫しております。そういう点を言っているんです。政府の解釈は一貫しているんです、積み重ねてきた議論は尊重したいと。しかし、今まで憲法違反と言っていた人の中には、違反じゃないと変わってきている事実も厳然として存在しているわけであります。そういったことを言っているわけであります。

玄葉委員 もう一つだけ、これに関連して指摘をしなきゃいけないなというふうに思っているのは、日米安保というのは私も極めて大事だというふうに思っています、アジア太平洋の公共財だと思っています。

 この日米安保の維持の仕方というのは、総理、もしかしたら、自衛隊を派遣しなかったら信頼に足る同盟国ではないというふうに答えるのかなというふうに思ったから、大分厳し目にやろうかなと思っていたんですが、今回、私、日米安保の議論で少しどうかなと思うのは、若干国民の中に、日本はアメリカに、実際は違ったとしても、黙ってついていっているんじゃないか……(発言する者あり)いや、こういうふうに思われている節があるんですよ、実際。思われている節があるんですよ。

 これは、今回の決定もさることながら、外務省の情報発信力の問題でもあるかもしれません、実際の行動のせいかもしれません。これは、やはり日米安保をいい形でマネジメントするためには改めなきゃいけないというか、直していかなきゃいけないというか、このことは改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一つ、若干関連しますけれども、普天間の議論もこの委員会で何回も出たんですね。新聞報道が数多くあって、それは誤報だ誤報だということで答弁があるわけでありますけれども、改めて確認したいんですけれども、一つは、在外米軍の再編というのがまず現実行われようとしている、その中には、まず、在日米軍というのも含まれるのか否か。イエスかノーかで結構です。

 そしてもう一つは、そもそも普天間基地が持つ抑止の機能、これは、川口大臣は、沖縄の在日米軍の問題については、抑止力と沖縄の負担の軽減、この二つで考えていきますということをおっしゃっているわけですけれども、普天間の基地の抑止の機能というものを日本政府そのものがどういうふうに評価しているか。簡潔で結構ですから、お答えください。

川口国務大臣 まず、最初の方の質問の、イエスかノーかということですけれども、これは、再三再四申し上げているように、なかったということでございます。(玄葉委員「違う違う違う、米軍の再編。在日米軍が入るかどうか」と呼ぶ)ごめんなさい。失礼しました。米軍の再編ということには、当然、在日米軍も含まれるということであると考えます。

 それから、普天間の持つ抑止力の機能ということでございますけれども、簡単に申し上げますと、これは、在日米軍がそもそも全体として抑止力を持っている、これは問題なくお考えでいらっしゃるというふうに思いますので、その説明はスキップをいたしますけれども、その在日米軍の中で海兵隊というのが、これは御案内のように、高い機動力とそれから即応力を持っているということでありまして、在日米軍の中では非常に重要な一翼であるわけでございます。

 普天間飛行場につきましては、第一海兵航空団第三十六海兵航空群所属の航空機、これを中心とします海兵隊の航空機の運用を支援する、そういう重要な役割を果たしているということでございます。

 日本において有している抑止力、これは、在日米軍の持っている抑止力というのは重要であって、その中で、沖縄にある海兵隊、これは機動力、即応力という意味で重要であって、そして、その中で普天間の役割というのが、この航空機の運用、これを支援するという重要な役割を持っているということを申し上げているわけです。

玄葉委員 極めて重要な役割を担っている、抑止力に普天間基地そのものがなっているんだ、こういう認識でよろしいですか。

 とすれば、例えば仮に代替なしの返還みたいな話があったときには、それは抑止力を減ずることになるので、とても私たちとしては応じられません、こういう話になるんですか。

川口国務大臣 前提としていらっしゃる、代替なしの返還ということをおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、これは、現にそういうことではなくて、平成十一年の閣議決定に従って辺野古の沖に代替の施設をつくるということで、これは地元の公共団体とも御相談をしながら、そのように今動いているということでございます。

玄葉委員 結局、正面から私は説明すべきだと思うんですけれども、今申し上げたのは、私は、代替なしの返還というのが仮にあったらば抑止力が減ずることになるというふうに基本的に考えるということだと思うんですよね。つまり、普天間の抑止機能を高く評価しているという認識だと思いますから、仮に代替なしの返還ということは抑止力を減ずることになるから、低下させることになるから、日本としては応じられない、こういう立場だというふうに当然理解されるわけですけれども、イエスかノーかだけで答えてください。

川口国務大臣 現在、この地域における問題を考えましたときに、抑止力が維持をされているということは重要であるということを我々は考えているということでございます。

玄葉委員 これは水かけ論に終わりますけれども、私、こういう議論というのは正面から、戦略論と戦術論と戦力論と国会でもやるべきだというふうに思っている一人でございまして、ぜひ今後、そういうことも含めて、正面から議論をさせていただきたいなというふうに思っています。

 筒井委員にお譲りをいたします。ありがとうございました。

笹川委員長 これにて玄葉君の質疑は終了いたしました。

 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 締めくくり総括質疑に入る前に、参考人の招致問題で強く抗議と要請をしておきたいと思います。

 民主党は、参考人として、たくさんの参考人をぜひここに、予算委員会に呼んで事実関係を国民の前に明らかにすべきだ、こういう要請をやってまいりました。

 その中身は、新生銀行問題あるいはグリーンピア津南の問題を初めとした年金資金の運用問題に限りません。日本歯科医師政治連盟の問題や道路公団の問題あるいは政官業癒着の問題、さらにはUFJ銀行の問題、北海道警の裏金疑惑の問題、これら合計しますと、人数だけで二十人を超える参考人招致を要求してまいりました。

 しかし、その結果、認められたのは、委員長の努力もありましたが、東証の理事長を含めても、民主党の要求は二人だけでございました。理事会の全体で呼んだものを含めても二人半、二・五人でございまして、これはやはり余りにも事実関係を明らかにする姿勢に欠けている、こう言わざるを得ないというふうに強く抗議すると同時に、必ずぜひそれらの参考人を呼んで事実関係を明らかにしていただきたい。この点をまず冒頭申し上げさせていただきます。

 委員長、その要請、よろしくお願いをいたします。

笹川委員長 理事会で懸命に御相談を申し上げたいと思います。

筒井委員 今までいろいろな議論をしてまいりましたが、その中で最も重要な問題として集中審議もやったのが北朝鮮拉致問題でございました。

 ただ、その中で、北朝鮮の拉致問題の中で、過去において拉致事件が起こった最初からの政府の責任、具体的なものの中身についての議論がまだされておりませんので、きょうは、まずその点からお聞きをしていきたいと思います。

 資料として、外務省が作成した文書を配っております。

 これら全体の経過を見てみますと、政府は、拉致が起こった一番最初の時点から、北朝鮮による拉致である、このことはもう知っていた。知っていたけれども、それにふたをして公表しなかったどころか、全部隠してしまった。それに、追及もしなかった。こういう経過であることが明らかでございまして、だから私は、不作為による拉致加担である、こう判断せざるを得ないというふうに思っております。

 警察、検察、法務省それから外務省。警察の、特に現場の警察官は必死で捜査をした。これはある程度認めていいかと思います。しかし、それらの捜査の結果に全部ふたをしたのが上の人なんですよ。特に一番ひどいのが外務省ですね。北朝鮮に対する、北朝鮮を刺激したくない、そういう配慮から全部それを隠してしまった。

 それで、拉致問題が終わってからようやく日本の政府は動き始めた。というよりも、日本の政府が動き始めたら拉致問題はとまったんですよ。だから、一番最初から、事実関係をつかんだ時点から日本政府が実際に動いていれば拉致問題はほとんど起こらないで済んだ、こう言っても過言ではありません。

 だから、小泉首相は何か日本政府が拉致問題のふたをあけたんだと誇らしげに強調していますが、そのふたを閉めることについて、日本政府は不作為によって加担していた、この責任をはっきり自覚してほしいと思うんです。

 だから、今、拉致の被害者それから被害者の家族の人たちは、心の中では日本政府に対して煮えくり返っていますよ。(発言する者あり)もちろん、北朝鮮に対して煮えくり返っていますよ。だけれども、同時に、日本政府に対しても煮えくり返っていますよ。しかし、日本政府にやはり解決してほしいからそのことは言わないけれども、法的に言えば、これは国家賠償ものですよ。不作為による違法行為ですよ。それらの点について聞いていきたいと思います。

 最初に、政府認定の十件十五人の拉致事件、このうち一番最初に起こったのが、一九七七年、今から二十七年前、九月十九日の久米裕さんの拉致事件でございました。

 このときに、石川県の宇出津海岸で拉致をされた。この拉致に関与したのが在日朝鮮人の男性。この在日朝鮮人の男性は、北朝鮮の幹部工作員、金世鎬という幹部工作員からの指示を受けた。この金世鎬という幹部工作員は、貿易代表団として何回も日本に来日していた北朝鮮の幹部でございまして、その工作員から、日本人独身男性を拉致せよという指示を受けて、拉致をした。これが一九七七年の九月十九日でございますが、この在日朝鮮人男性を、翌日、九月二十日に石川県警が逮捕いたしました。

 国家公安委員長にお聞きしたいんですが、そのまさに拉致の加害者、犯人を逮捕したんですから、そのときに、拉致の経緯、動機、状況について、詳しく具体的な、詳しいかつ具体的な供述調書を作成しましたね。そして同時に、乱数表や暗号表、スパイ活動を裏づける資料も押収しましたね。この点、まず確認したいと思います。

小野国務大臣 先生御指摘のとおり、北朝鮮の工作員に取り込まれました在日朝鮮人の方、四十五歳から五十歳までの日本人独身男性を北朝鮮に送り込め、こういうことで指示を受けまして、昭和五十二年の九月に、かねてから知り合いであった東京都在住の日本人男性を石川県の宇出津海岸に連れ出しまして、北朝鮮工作船で迎えに来ておりました別の北朝鮮工作員に同人を引き渡した事件でございます。これを、先生今おっしゃいましたように、五十二年の九月に石川県警察が検挙したものと承知をいたしております。

 警察におきましては、当該朝鮮人を検挙いたしまして、同人から、拉致の経緯、動機あるいは状況等に関する供述を得まして、所要の裏づけ捜査を行いました。それで、国外移送目的拐取の立件に必要な証拠資料、先生今おっしゃいました証拠資料でございますが、そろったために、平成十五年一月八日に、本件の主犯格であります北朝鮮工作員の金世鎬の逮捕状の発付を得て、国際手配の手続を行いますとともに、外務省を通じまして、北朝鮮に対し同人の身柄の引き渡しを要求することとしていると承知をいたしております。

筒井委員 質問通告では次の質問の分まで今答えられましたが、私が今聞いたのは、その九月二十日、つまり拉致の翌日に逮捕した、同時に、直ちに、拉致の経緯、動機、状況に関する詳しくかつ具体的な供述を得た、今言った供述を得た事実と、それと、乱数表、暗号表等のスパイ活動を裏づける資料を押収しましたねということに限定して聞いているんです。ただ、今、同時に答えられたので。そして、金という指示した男、工作員、これも国外移送目的略取誘拐罪でもって逮捕状をとって国際手配をしているということでございますが、今まず確認したいのは、その当時において、九月二十日に逮捕して、さっき言った供述をとって、資料も押収しましたねということを確認したいんです。

小野国務大臣 押収したものと承知いたしております。(筒井委員「供述も」と呼ぶ)当然でございます。

筒井委員 この供述の中身は、国外移送目的略取誘拐罪、これを自白する中身になりますね、拉致を自白しているんですから。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 五十二年の九月に、被害者の男性を北朝鮮工作員に引き渡した在日朝鮮人を検挙いたしまして、拉致の経緯、動機、状況等に関する供述を得た上で所要の裏づけ捜査を行っているものと……(筒井委員「それはさっき答えた」と呼ぶ)それに関しましては、その後からさまざまな証拠書類が出てきたものということでございます。

筒井委員 逮捕して、拉致に関する経緯、動機、状況、詳しくかつ具体的な供述を得た、先ほどそう認められたでしょう。拉致というのは何罪ですか。国外移送目的略取誘拐罪でしょう。それで、金世鎬に関しては、まさにその罪でもって逮捕状をとって国際手配しているということを認めているんでしょう。在日朝鮮人に関しても、まさにその罪以外考えられないじゃないですか。

小野国務大臣 お答え申し上げさせていただきます。

 石川県の警察におきましても、国外移送目的拐取について最大限の努力をもって証拠の収集に努めたものの、被害者からの事情聴取というものはできないわけでございます。ということからいたしますと、国外移送目的拐取の立件に至らなかったということでございます。

筒井委員 今、金世鎬に関しては国外移送目的略取誘拐罪で逮捕状をとって国際手配したと言われたでしょう。それは被害者から事情聴取したんですか。しなくても逮捕状とれたんでしょう。同じじゃないですか。

小野国務大臣 これは、その後の立件の上ということでございます。

筒井委員 今、あなたは、被害者から事情聴取できないからと言ったから、被害者から事情聴取できないという点では金世鎬も一緒でしょうと言うんですよ。

小野国務大臣 被害者から事情聴取ができなかった、しかし、その後のさまざまな情報収集の中で立件することができるようになったということでございます。

筒井委員 そうしたら、被害者から事情聴取できなかったことが最大の理由じゃないじゃないですか。被害者から事情聴取できなくたって、それは拉致されているんだからできっこないですよ。だけれども、それだって逮捕状とって国際手配しているんだから、金に関しては。在日朝鮮人に関して、先ほどから確認していますが、拉致の経緯、動機、状況に関して詳しい具体的な供述を得ているんですから、これはもう犯罪としては国外移送目的略取誘拐罪しかないでしょうと言うんですよ。

小野国務大臣 この在日朝鮮人を昭和五十二年の九月二十日に外国人登録法違反で逮捕いたしまして、翌二十一日に、出入国管理令違反、いわゆる密出入国幇助で再逮捕したということでございます。

筒井委員 だから、これを、まさに供述の中身は国外移送目的略取誘拐罪、まさに拉致の犯罪を自白しているのに、それで全く逮捕もせずに直ちに釈放しているんですよ、その後。しかも、そのことを一切公表もしていなかった。

 ただ、もっと言えば、これは認めるかどうかわかりませんが、警察庁としては、検察庁に、この誘拐罪でもって起訴すべきだというふうに要求したでしょう。だけれども、検察庁は拒否したんだよね。その点、どうですか。

笹川委員長 筒井先生、今のは、検察がというのは法務省の方に答えさせるんですか。

筒井委員 いや、警察の方に。警察の方からは要求した、だけれども、検察の方から拒否されたのではないですかという質問です。

小野国務大臣 詳細なところは、私は承知をいたしておりません。

筒井委員 私は、だから前もってそれは通告しているので、きのう。そうなんでしょうというふうに。

 それと、この事実関係、そういうふうに明らかになった時点でなぜ公表しなかったんですか。まず一つ、警察の方から聞きます。

小野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、石川県警察におきましては、国外移送目的拐取につきましても最大限の努力をもって証拠の収集に努めてきたわけですけれども、先ほどから申し上げておりますとおり、被害者からの事情聴取ができないという事情から国外移送目的拐取での立件に至らなかったということでございます。

 このため、警察におきましては、共犯者の解明を含め、この立件に向けて引き続き鋭意捜査を進めることとし、同罪につきましては公表することができなかったと承知をいたしております。

筒井委員 先ほどから同じような答えをしているけれども、被害者からの供述を得なければ立件できない、そんなことないでしょう。死亡事件なんか、みんな、被害者は供述できないんだから。被害者から供述を得なかったからみんな立件できなかった、こんなの何の理由にもならないんですよ。だから、そればかり言っていたら理由にならないんです。(発言する者あり)

笹川委員長 静粛に。

筒井委員 しかも、今のその答えは私の質問に全く答えていないんです。私は、別に政治的な発言を言えと言っているんじゃない。事実関係だけ、なぜ公表しなかったのか。(発言する者あり)だからそれは前から通知しているんですよ。通告しているんですよ。質問でこれは聞きますよというふうに通告しているんですよ。

 これが一番最初の拉致事件ですから、この時点で行政がこれを公表していれば、その後の拉致事件は防げましたよ。これが一番最初の拉致事件ですから、それを全く隠しちゃったから、その後ずっと拉致が続いたんですよ。なぜ公表しなかったのか、事実関係だけ、これをもう一回聞きます。

小野国務大臣 被害者からの事情聴取ができないということが当時大変大きなネックになっていたということは、これは事実でございます。そのほかに、そういう事情からかんがみまして国外移送目的拐取に至らなかった、立件に至らなかったという点は、今申し上げましたように、被害者からの事情聴取ができない、向こうに行っているわけですから当然といえば当然ですけれども、そのことは当時としては非常に大きなネックになっていたということでございます。

筒井委員 私の質問にまた答えていないんだけれども。

笹川委員長 筒井先生、警察が立件をしたいと思って幾ら捜査しても、最終的な起訴権というのは、立件は検察庁がしますから、検察庁の部分まで恐らく公安委員会は答えられないんじゃないですか。

筒井委員 いや、それは、検察庁の起訴に関してはまた聞きますが、ただ、逮捕の権限は警察が持っていますから。それから、公表の点も警察ができますから。今、起訴に関して聞いているんじゃないんです。

 そして、今、被害者から事情聴取できないできないと言いますが、ということは、拉致事件の場合に、国内の拉致事件だってそうですよ、解決するまでは拉致事件は一切立件できないということですか、今言われたのは。それが国家公安委員長としての発言ですか。

小野国務大臣 当時といたしましては、本人がいない、事情聴取ができないということで、それ以外の点でそれを立件するに値する、支える要件が出てこなかったということでございます。

筒井委員 だから、そこで、先ほど私が言った、具体的な供述の中身を聞いている。ただ、先ほどから私が聞いているのは、なぜその事実関係を公表しなかったのか、その点です。それに関しては何も答えていない。

小野国務大臣 それは拉致という要件を立件できなかったからでございます。

筒井委員 同じことを聞いてもまた繰り返すだけでしょうから。

 それから外務省、まず一つ聞きたいのは、この金世鎬についての身柄引き渡し要求、これを北朝鮮にしましたね。いつしましたか。

川口国務大臣 これは、具体的なその日にちについて、もし事前にお話しいただいていたら調べてまいりましたけれども、具体的に申し上げることはできませんが、これについて逮捕状が出されたのが平成十五年一月八日でございます。したがって、その後、多分それに近い日取りではないかというふうに推測をいたします。必要でしたら、具体的な日にちについては別途調べたいと思います。

筒井委員 北朝鮮に対して身柄引き渡し要求をしたことは、大臣も知っているんですか。認識しているんですか。

川口国務大臣 失礼いたしました。

 今の話について、これを確認いたす努力をしておりますけれども、おっしゃった要求をしたかどうか、これについて、確認をしておりますけれども、まだその確認をできる情報が手元にないということでございますので、これについて引き続き調べたいと思います。

筒井委員 私は、きのう、これを外務省に聞きますよというふうにはっきり通告していますよ。警察庁の方で、外務省を通じて身柄引き渡し要求をすると、先ほどもそういうふうに答弁されましたが、では、外務省で実際にしているのかどうか、しているとすればいつしているのか、これを聞きますよと。きのう質問取りに来られたでしょう。それを何でやっていないの。

川口国務大臣 先ほど、その日にちについて確認はできないというふうに申し上げましたのは、その御質問の通告をいただいて、それで調べているわけでございます。それで、それを確認できる情報がまだ見つかっていないということでございます。したがって、引き続き、今調べております。

筒井委員 日にちについてもそうですが、あなたが、まだ確認していないと言ったのは、したことは認識していますかという私の質問に対して、確認していないと言ったんですよ。身柄引き渡し要求をしたのかしないのか、それは認識しているんですかと。それも、今――まず、外務大臣は認識していないことは今の答弁ではっきりしましたね。それをちょっと。

川口国務大臣 したがいまして、きのう、その質問の御通告をいただいて、それをどの時点でどのように伝えたかということを今確認しているということであります。

 したがいまして、それを見つけるということでございます。今の時点では、今調査中であるということで、申しわけございませんが、引き続き、これは鋭意調べさせます。

筒井委員 いいですか。私は、厳密に区別して聞いているんですよ。したことはしたのかという質問、それについては、あなた、確認していないという答えだったんでしょう。いつしたかというのは、その後の問題ですよ。したのかしないのかについても、まだ確認していないんですね。

川口国務大臣 向こうに対してそれを伝えたということについて、今、確認をしている、その作業をしているわけでございまして、もちろん、それができれば、いつそれをやったということが申し上げられるということでございます。

 これは大事なことだと私も思っております。引き続き、鋭意調査をさせます。

筒井委員 何か、言い方がどうも官僚的な用語でよくわからないのだけれども、要するに、したかどうかわからないということですね、はっきり言えば。ちゃんとそういうふうに答えてください。

川口国務大臣 したがいまして、おっしゃったように、したという証拠が見つかっていない。したがって、したということを、いつ付でしましたということを申し上げられるためには、いつ付にそれをしたということについてのきちんとした資料を見つけないと申し上げられないものですから、今それをやっているということでございます。

 今の時点で、私は、これをしましたということを明確に申し上げることができないということでございます。これは大事なことですので、もし万が一、これをしていないというようなことがあれば、これは即やらせます。

筒井委員 いや、本当に大事なことなので、しかも、警察庁は、国家公安委員長は外務省にそれを要請したとも言っているんですよ。国家公安委員会からの、警察庁からの要請にも拒否したということになるんだよ。すぐ確認できるし、大体、きょうはそんな答弁が出てくるなんて想像もしなかった。だから、きのう聞いたんだから。ちょっと確認すればいいことです。ちょっと確認してください、今すぐ。

笹川委員長 外務省、いっぱい来ているんだろう、応援に。――外務大臣。

川口国務大臣 これは申しわけないんですが、いつ、例えばどういうルートでこのようにいたしましたということの確たる情報を見つけることができませんと、本当にいたしましたということを申し上げられないんです。それで、それを今鋭意やらせておりますし、また、督促を今いたしました。それで、万が一、もしそういうことが見つからなければ、この時点で再度やらせたいと思います。

 いずれにしても、外務省としては、これにつきまして最善を尽くして対応しております。

笹川委員長 外務大臣に申し上げますが、その質問については、早急に調べて、すぐ返事するように職員を督促してください。

 筒井先生に申し上げますが、今、早急に調べさせますので、それはおいておいて、ほかのできる質問をひとつお願いいたします。

筒井委員 委員長の御指示ですから、不満ですが。すぐやってくださいね。

 そして、今のは一九七七年の事件でしたが、七八年に田口八重子さんの拉致問題が発生をいたしました。それで、これについて、一九八八年の一月に、大韓航空機爆破事件が起こって、その実行犯の金賢姫が李恩恵という日本人女性の教育係の存在を明らかにいたしまして、それが田口八重子さんである、こういう判断がされました。

 外務省は、その判断をされた時点で、直ちに、北朝鮮に対して、それについての真相究明とそれを帰せというふうな要求をいたしましたか。

川口国務大臣 当時、日朝の国交の正常化は交渉も行っていなかった時点でございまして、一九九一年の時点で第一回の日朝国交正常化交渉が行われたわけでございます。それで、その後、第三回の本会談、これは九一年の五月の時点でございますけれども、この時点で、日本側から、この李恩恵さんの問題を提起いたしております。

筒井委員 そうすると、九一年の五月までは、一切、その追及と帰せという要求を北朝鮮に外務省としてはしていなかったということですね。

川口国務大臣 外務省として、これは国交正常化交渉が九一年まで始まっていなかったわけです。したがって、北朝鮮の政府に突如それを言うという手段はその正常化交渉が始まって初めてできたということでございます。

 それよりも前の段階に外務省が北朝鮮に李恩恵さんのことを提起することができたかどうかということですけれども、そういうことをもするチャネルがなかったということでございます。

筒井委員 そんなチャンネルなんて、いろいろな形を考えなきゃいかぬ。国家主権の侵害をされた事件ですから、それを国交正常化がなされないからできないなんというのはおかしいけれども、事実関係として、それまでやらなかった。

 それから、その後、今度は三組のアベックの拉致があって、四組目が未遂になりました。これは国家公安委員長の方に聞くというふうにお聞きしたんですが、四組目が未遂になったときに、いろいろな遺留品をその北朝鮮工作員は置いていきました。この遺留品が北朝鮮のものであることは明らかになりましたね。それをお答えください。

小野国務大臣 お答えを申し上げます。

 御指摘の遺留品につきましては、ゴム製の猿ぐつわ、手錠、タオル、寝袋などが残っていたところでございますが、タオルのうちの一本につきましては、大阪府下で製造されたものであることが判明いたしております。その他のものにつきましても、いずれも粗悪品であり、製造場所や販売ルートなどは不明であると承知をいたしております。

筒井委員 それは韓国の方にも鑑定を依頼して、北朝鮮製のものである、そういう判断が当時されたんじゃないですか。もう一度聞きます。

小野国務大臣 それは承知をいたしておりません。

筒井委員 それから、その次に原さんの拉致事件が起こりましたが、この原さん拉致について、辛光洙という北朝鮮工作員が韓国当局に逮捕されて、原さんの拉致を自白いたしました。

 この辛光洙が原さん拉致事件を自白したときに、まず外務省、この辛光洙の身柄引き渡し要求を韓国政府にいたしましたか。

川口国務大臣 おっしゃったのは、八〇年のこの拉致事件について、八八年に当時の梶山国家公安委員長が答弁をなさって、北朝鮮へ拉致された疑いのある事実として述べられたということであるかと思います。

 それで、外務省……(筒井委員「違う違う、私の質問は全然違う。それは別の答えだ」と呼ぶ)別の答えですか。失礼しました。

筒井委員 梶山答弁に関してはこの後聞く予定だといって通告してあるでしょう。ちゃんと聞いていてくださいよ。

 今聞いているのは一九八五年ですよ。辛光洙という北朝鮮工作員が逮捕されて、原さんの拉致事件を自白した。韓国当局に対して、その逮捕している――それ、今、原稿が来たのかな。辛光洙についての身柄引き渡し要求を外務省は韓国政府にやったかという。

川口国務大臣 大変に失礼をいたしました。

 これにつきまして、八五年に韓国当局に逮捕されたということでございまして、その後、日本から、捜査共助といたしまして、この件に関する捜査の書類の送付や証拠物の提供を求めたということでございます。

 それから、一昨年の八月でございますが、捜査当局が逮捕状を出したということでございまして、国際手配の手続をとったわけです。それ以降、外務省といたしましても、日朝の局長級の協議あるいは国交正常化交渉の場におきまして、北朝鮮側に対して、その身柄の引き渡しを要求いたしております。

筒井委員 今、また私の質問を聞いていない。

 北朝鮮に対しての身柄引き渡し要求を聞いたんじゃなくて、韓国当局に逮捕されたわけですよ、その韓国当局に対して、韓国に対して、この身柄を日本に移送してくれと、身柄引き渡し要求を韓国政府にしたかという質問なんです。(発言する者あり)大臣席で余りやじると品がないよ。

笹川委員長 大臣席はやじってはいけません。

 閣僚みんなに申し上げますが、きょうは大切な日だからきちっと答弁ができるように、きのう委員長から注意してあるはずですよ。

 外務大臣。外務大臣、外務大臣、外務大臣、言っていますよ、三遍。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、捜査共助ということで、これに対しての捜査書類の送付や証拠物件の提供を求めております。

 我が方が、外務省が身柄引き渡しの要求をしたかどうか、これは、そのとき、もし警察からそのような要求があれば、それは外務省からいたしたと思いますし、そうでなければ、外務省としてはできないということでございます。

 その件については、私からちょっと直接に、そういう事実があったかどうか、外務省としてそういう要求を警察からいただいたかどうか、これについては今調べさせております。

筒井委員 要するに、していないんだと思うんだけれども、しているかどうかわからない、今調べさせていると。では、さっきのと一緒に直ちに答えてください。身柄引き渡し要求したかどうかという質問ですから、捜査資料の要求じゃないんですから。

 それから、国家公安委員長、この辛光洙について、まさに日本で捜査、供述を得たいから身柄引き渡し要求してくれというふうに外務省に要求しましたね。

小野国務大臣 外務省を通じまして、北朝鮮に対し身柄の引き渡しを要求しているところと承知をいたしております。

筒井委員 私が聞いているのは、韓国に対する辛光洙の身柄引き渡し要求をするように外務省に要請したかという質問です。

小野国務大臣 外務省に対する要請は行っておりません。(発言する者あり)

笹川委員長 閣僚席、聞かれたことをよく理解をして答弁してください。(筒井委員「委員長、ちょっと速記とめてよ」と呼ぶ)今、理事と相談していますから。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として、警察庁刑事局長栗本英雄君、警察庁警備局長瀬川勝久君、法務省刑事局長樋渡利秋君、公安調査庁長官大泉隆史君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、厚生労働省保険局長辻哲夫君、厚生労働省年金局長吉武民樹君、厚生労働省政策統括官水田邦雄君、社会保険庁運営部長薄井康紀君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 この際、先ほどの筒井君の質問に関し、外務大臣及び国家公安委員会委員長より発言を求められておりますので、これを許します。川口外務大臣。

川口国務大臣 午前中は御迷惑をおかけいたしました。

 金世鎬の身柄引き渡しについての御質問でございましたけれども、それについて調べましたところ、引き渡し要求は北朝鮮に対し行っておりません。

 それで、理由でございますけれども、これは久米裕さんについての事件でございますが、この件は、日本政府として、北朝鮮に対しまして、拉致の案件であるということでずっと真相究明を求めてきております。それに対しまして、北朝鮮からは、一切返答がございません。外交関係は北朝鮮との間でございませんで、また、この点についての問い合わせに一切返答がないという状況で、犯人の引き渡し要求を行っても実効性は得られないということでございます。そのような判断をいたしたということです。

 同時に、ICPOを通じまして、この件につきましては、金世鎬の国際手配は、これは警察庁の方でやっていただいているわけでございます。

笹川委員長 小野国家公安委員会委員長。

小野国務大臣 辛光洙事件についてでよろしゅうございますね。どのような捜査を行ったかということを申し上げたい。よろしゅうございますか。

 御指摘の事件というのは、昭和六十年六月に韓国当局から発表されました事件でございまして、北朝鮮工作員辛光洙らが北朝鮮からの指示を受けまして、昭和五十五年六月に、大阪府在住の原敕晁さんを宮崎県の青島海岸に連れ出しまして、工作船で北朝鮮に拉致をしまして、さらに、その後、辛光洙は原さんに成りかわりまして同人名義の日本旅券等を不正に取得の上、数回にわたって海外渡航をし、海外拠点の設置もし、さらに、対韓国工作等の活動を行っていたとされる事件と承知をいたしております。

 警察におきましては、事件発表当時、担当官を韓国の方に派遣いたしまして、韓国当局と緊密な情報交換を行ったほか、辛光洙や共犯被疑者の供述書を入手いたしまして、これらにより得られました情報や供述に基づきまして、国内において、被疑者等関連人物の特定あるいは関連場所の確認などの裏づけ捜査や、被害者が拉致されたとされる現場の状況見分などの捜査を行うなど、最大限の努力をいたしまして捜査を行ってきたものと承知をいたしております。

 警察におきましては、こうした一連の捜査の結果、昭和六十三年に至りまして、本件に関して、北朝鮮による日本人拉致容疑事案と判断いたしまして、国会の場においてもその旨を明らかにしたものと承知をいたしております。

 さらに、警察におきましては、辛光洙が、拉致いたしました原敕晁さんに成りかわって運転免許証あるいは旅券を不正に取得いたし、その旅券を使用し不法出入国を繰り返していたことに対する捜査を継続いたしまして、平成十四年八月一日に、警視庁が辛光洙の逮捕状の発付を得て国際手配を行うとともに、外務省を通じて北朝鮮に対し身柄の引き渡しを要求しているところと承知をいたしております。

 なお、辛光洙の身柄の確保につきましては、警察といたしましては、捜査共助を通じまして韓国の捜査・公判記録を入手した上で、同人の逮捕状の請求を行うべく鋭意努力を重ねてきたところでございますけれども、こうした文書が直ちに我が国で証拠能力を認められるかという点等、国外捜査に伴う種々の困難が存在したために、逮捕状の取得に必要な証拠の収集には至らなかったところでございます。

 したがいまして、韓国への身柄の引き渡しの要求については、その根拠となる我が国での逮捕状の取得に至っていないほか、韓国の国内法上の問題も存在していたため、これを行っていないということでございます。

笹川委員長 質疑を続行いたします。筒井信隆君。

筒井委員 午後になって多くの参考人を呼ぶことに同意をいたしました。本来、真意では、本意ではありません。しかし、余りにも午前中の大臣の答弁が、質問を勘違いしていたり、あるいは質問を聞いていなかったり、まさにこちらとして聞きたいことに全く答えられないので、それなら、本意ではないし、本来、国会の役割は大臣が直接答えるべきなんだけれども、例外中の例外として参考人を呼ぶことを認めたわけでございまして、これは委員長の御要請でございましたから応じましたが、本来そういう形ではないようにしていただきたい。

 それが小泉内閣の使命じゃないですかね。小泉総理大臣、どうですか、その点は。

小泉内閣総理大臣 それは、大臣にする質問と、より詳しく事務的なことを知っている局長なり役所の担当者に聞く質問と、分けてなされるべきであると。何でも大臣が答えればいい、副大臣が答えればいいという問題でもないと私は思っております。

筒井委員 私が聞いているのは、私の質問を聞いていなくて、全然違う、その先の質問通告したことに対して答えている、こういう姿勢だからこの審理が円滑に進まないんですよ。そういう姿勢をやはり変えていただきたい、小泉内閣として。そのことを言っているんです。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それも、政治家として大臣の考え方を聞くことと、事実確認といって大臣よりも担当者がいいという場合も質問によってはあると思います。それは参考人を呼んで悪いということでもない、私はそう思っております。

筒井委員 私が今聞いているのは、特定して聞いているんです。私は質問通告を全部している、前もって。そして、私が事実関係を問いただしているのは、公になっている事実関係だけ。しかも、さっき聞いたのは、外務大臣自体が、極めて重要な問題ですと、そういう答弁をされた事実について聞いていた。それで、今聞いているのは、北朝鮮に対して身柄引き渡し要求をしたのかどうか、極めて重要な、まさに外務大臣自身が知らなければならない問題ですよ。事務的な問題じゃないですよ、これは。今の総理の答弁自体がおかしい。

 それともう一点、私がさっき特定して聞いたのは、私の質問を聞いていなくて、その次に聞きますよと質問通告したことについて答えているから、これもおかしいじゃないかと。

 この二点について聞いているんですから、今の総理の答弁自体がおかしい。

小泉内閣総理大臣 私は一般論を言っているんです。(発言する者あり)今、一般論と具体論を分けて二点言います。

 最初に言った、具体的な質問通告があったのにそれに対してはっきりしない、御迷惑をかけた点はよろしくないと思っています。もっと質問通告に誠実に対応するような態勢を大臣はとるべきだと思っております。

 同時に、私は、大臣に質問する問題と役所の人に質問する問題は分けてもいいと思っています。参考人を呼ぶことがいけないとは思っておりません。政治家としての考え方と、そして技術的な、役所の人で済む問題は役所の人に聞いた方がより詳しく答弁できる場合もありますから、すべてが大臣に質問して、本来役所の役人が答弁した方がよくわかる問題までも大臣に答えさせることもない、大臣に質問しなくてもいい場合もあるのではないかと言っているんです。(発言する者あり)

筒井委員 こんなの、一言で終わらすつもりだったけれども、開き直っているから、今後のためにもよくない。私は今、一般論として聞いているんじゃないんですよ。一つは、質問通告したことについて……

笹川委員長 小泉総理に申し上げます。

 筒井君の午前中の質問の中で答えられなかった通告してあることについて、調べていただきまして、確実に答弁をしていただきました。

 ただ、総理が前半発言された、間違ったこと、あるいはまた聞かれたことが答えられないことについては遺憾であったということでありますので、そういう趣旨のだけで結構でございます。

筒井委員 委員長の裁定に従うことにいたしますが。

 では、今の外務大臣の答弁ですと、金世鎬について北朝鮮に身柄引き渡し要求をしていない、こういう答弁でございました。午前中、そう言えばそれで終わったんですよ。

 そして、していないこと、これは、国家公安委員会の方で、警察の方から身柄引き渡し要求してくれという要請をしていたと言っているんです。その要請は応じられないという答えは、警察の方に、国家公安委員会の方にしているんですか。答えているんですか。(発言する者あり)

笹川委員長 外野で余計なことを言わない。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの委員の御質問でございますけれども、警察庁との連絡の中では、警察庁においてはもう国際手配はしたという連絡をいただいておりまして、このタイミングというか、北朝鮮に実際にこれをやることが実効性がどのぐらいあるのかどうかということで、そこは、その十分な連絡はしておりません。

筒井委員 今の答えは、警察の方から、国家公安委員会の方から要請はあったけれども、それは拒否した、しかし、拒否したこと自体を国家公安委員会の方に連絡していないという答えですね。

 国家公安委員長、では、要請はあったけれども拒否しますという連絡は受けてないんですね。そして、それはそのままほってたんですね。

瀬川政府参考人 私どもの方として外務当局にいろいろお願いをしておりますが、まだそれに対する明確な御返事はいただいていない状況であるというふうに承知をしております。

筒井委員 要請して返事がない、そのままほってる。しかし、警察の方では、いろいろな対外的な国民に向けた文章としては、外務省を通じて身柄引き渡し要求をいたしますと言っているんですよね。それは、今でもそういう必要を、警察は出しているんですよ。これは間違いですね、そうしたら。それと、外務省がそういう要請について何も答えないで拒否している、これについて、国家公安委員長、どう思いますか。

瀬川政府参考人 私どもとしては身柄の引き渡しの要求をお願いしたいということで要求しておりますけれども、それを具体的にどのような形で、いつ相手方に伝えるかというのは、これは努めて外交上の問題であろうかというふうに承知をしております。

筒井委員 だから、外務省は、さっき、その要請には応じられないというふうに答弁したわけですよ。しかも、応じられないということを国家公安委員会には一切連絡していないんだ。そのままほってるんだ。それについて国家公安委員長としてどう思いますかという質問なんです。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 引き続き、私どもとしては身柄引き渡しの要求をお願いしたいと考えておりますし、外交上のいろいろな状況が整った段階で、外務省において適宜措置していただけるものというふうに考えております。

筒井委員 私の質問に答えていないんです。外務省は、先ほどの答弁で、明確に拒否したでしょう。その事実関係、はっきりしたでしょう。しかも、国家公安委員会の要請があったけれども、警察からの要請があったけれども、それを拒否した。しかし、その連絡は一切してない。こういう外務省の姿勢について国家公安委員会としてどう思いますか。――いいえ、国家公安委員長ですよ。

小野国務大臣 拒否をしたとは思っておりませんでした。ですから、いつ、いかなる時点でそれを提案するかは、韓国の方に提案あるいは北朝鮮の方に提案するかは、それは外務省がイニシアチブをとって、そこでやっていくことではないかと思います。

筒井委員 では、外務省に確認しますが、さっきの辛光洙に関しては、身柄引き渡し要求を北朝鮮にしたと言われました。そして、しかし今の金世鎬に関しては、しても仕方ないと言われました。だから、どうして一方はして、一方はしないんですか。それと、しても仕方ないんですから、もうしないという方針なんでしょう、外務省は。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 辛光洙事件の場合には、身柄引き渡し要求を行いましたが、一切、向こうからの反応はございませんでした。

 そして、金世鎬事件につきましては、まさに久米裕さんの拉致事件であると日本政府はこれを認定して、先方に、拉致事件である、したがって、この被害者の安否、これの絶対的な徹底した安否調査を求めてきておりますけれども、先方から、そもそも、久米裕さんの件について、拉致事件であると向こうは認めておりません。そうした中で、外交関係もない中で身柄引き渡し要求をやって、果たして実効性があるのかという問題でございます。

 他方、毎回、我々は、十人の方々の、これは久米裕さんを含めた十人の方々の徹底した真相究明を求めております。これは毎回毎回行っておりまして、それに対して先方から何の返答もない、こういう状況でございます。

筒井委員 真相究明のことではなくて、身柄引き渡しに限って今聞いているんです。

 金世鎬については、そういう北朝鮮の対応だから身柄引き渡し要求をしない、そういう方針ですね。

薮中政府参考人 今申し上げましたとおり、この事件自身について、久米裕さんの事件について、我々は徹底した真相究明、これは拉致事件であるということで、北朝鮮側に今までもやっております。これからもやってまいります。向こうがそもそも事件として認めていない中で、その犯人としての金世鎬の身柄引き渡しを求めるということの実効性、これはもちろん今後の日朝間の話し合いの中でそれが有効と考えた時点においてきちんと身柄の引き渡し要求を行いたいと思いますけれども、他方において、先ほど申し上げましたように、警察庁において国際手配も行われている、そういう段階全体を踏まえて今後とも判断してまいりたいと思います。

筒井委員 今みたいな答えで言えば、やや不明確だけれども、ほぼわかるんですよ。初めからそういうふうに言えばいいんですよ。(発言する者あり)呼んでおけばってこと。いや、大臣がそんなの……。前もってこれを聞くと言っているんだから。

 それで、さっき前もって外務大臣が答えられた梶山答弁ですが、先取り答弁されましたが――いや、答弁してないんだ。途中でやめたんだ。梶山さんが、国家公安委員長として初めて、公式の場所で、北朝鮮による拉致の事件であるという判断をされました。これを聞いた時点で、外務省は直ちに何らかの行動をとりましたか。

川口国務大臣 その後、直ちに行動をとったかということについては、直ちにはとっておりません。

 それはなぜかということでございますけれども、当時、日朝の国交正常化交渉はまだ開始されていなかったということでして、北朝鮮に対して働きかけを行う、そういったルートに制約があったということでございます。

筒井委員 梶山さんのその答弁は一九八八年ですが、では、外務省が、直ちにとらなかった、最初に北朝鮮に対して拉致事件の解決についての追及、真相究明、何でもいいですが、行動をとったのはいつですか、最初にとったのは。いつだけで結構ですから。その後で、何をとったか聞きますから。

川口国務大臣 これは、九一年の日朝国交正常化交渉第一回、このときでございます。

筒井委員 では、九一年までは一切とらなかったということですが、とることは不可能だったという判断ですね。一切、何の方法もなかったということですね。そこだけ。

川口国務大臣 そのような判断であったと思います。

筒井委員 正規の外交ルート以外にも、こんな国家主権侵害ですから、それはいろいろなことを考えてやらなきゃいかぬ。それをやらなかったことについて、私は、冒頭申し上げましたが、外務省がまさに不作為による拉致加担である。当初の警察あるいは法務省もそうですが。ただ、警察の現場は一生懸命捜査をした、努力をした。しかし、上へ行くと全部それが抑えられ、つぶされた。外務省は全くそれに関して、もう傍観者というか、余り北朝鮮を刺激したくない、北朝鮮問題については一切何もしたくない、こういう姿勢が余りにも明確だった。この点、強く反省を求めて、年金問題の方の質問に移ります。

 年金問題について、前回お聞きいたしましたが、きょうお配りしている資料、一枚紙のものがありますが、これは厚生労働省が作成したものでございまして、前回も確認をいたしましたが、世帯の六類型、そのうちの一番目の、四十年間、夫がフルタイムで就労して、四十年間、妻が専業主婦である、この世帯だけが五〇%の代替率の給付を受ける。それ以外の五つの世帯はすべて五〇%を切る。これはもう前回確認したところでございます。

 それで、そのことを、前回の質問を前提に厚生労働大臣にお聞きしますが、今度の国民年金法等の一部改正法案の附則の二条で「給付水準の下限」という条文がございます。これは、公明党の石田議員さんが、この前、初めての規定で極めて大きな意義があるという趣旨で質問されて、厚生労働大臣もそれに答えております。

 あのやりとりを聞いていると、この附則の二条も、五〇%以上確保する、まさに年金受給者全員に確保するかのごとく感じを受けるんですが、この附則の二条の適用対象になるのは、さっき言った一類型、つまり、四十年間フルタイムで夫が就労し、妻は四十年間専業主婦である、この類型だけがこの附則二条の対象ですね。

坂口国務大臣 御指摘のとおり、平均的な男子の賃金で四十年間夫のみが就労してきたサラリーマン夫婦世帯の、基礎年金二人分を含む年金の現役世代の平均的な手取り賃金に対する割合でございます。御指摘のとおり。

筒井委員 しかし、この附則の二条の条文の題名は「給付水準の下限」とあって、そんな限定は全然ない。これは素人が読んだら絶対わからないわ。中身を本当に厳密に専門家がよく調べて、やっと、ああ、これは四十年間フルタイム就労、四十年間専業主婦だけが対象なんだなということがわかる。

 そして、この二条の二項、三項に書いてあることは、出生率とかあるいは賃金上昇率とか、こういう状況が変化した場合にどうするかということが二項、三項に書いてありまして、三項を見てみますと、今言った出生率だとか賃金上昇率とか経済状況とか何か変化した場合には「給付及び負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるものとする。」こうなっておりまして、高齢化率が物すごく高くなった、賃金上昇率が非常に予定よりも低まった、こういう場合には負担も給付も再検討する、こういう規定になっていますね。

坂口国務大臣 この五〇・二%、いわゆる五〇%を切るような事態に、まずはならないようにしなきゃいけないわけでございますが、なりましたときにどうするかということは、これはこれから一七年にかけまして年に〇・三五四%ずつ保険料を上げていくということになっておりますが、ここがもしもできないときには一時ここを休止する、休止すると申しますか、上げるのを一時中断するといったようなことが考えられるというふうに思っております。

筒井委員 ですから、私が聞きたいのは、負担と給付両方とも再検討する、つまり、給付に関しても五〇%以上であることを前提にしない、場合によっては五〇%を切る場合もあり得る、それはこの条文から排除されておりませんね。

坂口国務大臣 それは本則の方に、五〇%は堅持することになっているわけでございますから、そこを堅持できるようにどうするかという、他の分野でそれは見ていかなければならないということを申し上げているわけであります。

筒井委員 本則というか、一項、二項、三項になっているんですよ。一項に、確かに五〇%を確保すると。二項になった場合に、何とか五〇%を確保するためにこういういろいろな努力をするとありますよ。三項めには、負担と給付を両方とも検討する場合もあり得る。こういう規定でしょう。五〇%未満になる場合があり得ることを三項において排除していないでしょう。どこかで排除していますか。

坂口国務大臣 いや、ここは五〇%は堅持をするということにいたしております。

 ですから、先ほど申しましたように、それが足らないということになってまいりましたら、それは保険料の引き上げの部分を早めるということになるだろうというふうに思っておりますが、ただし、そこはいろいろの方法があるだろうというふうに思います。

 いずれにいたしましても、五〇%はここは堅持をするというふうにいたしているところでございます。

筒井委員 私は今、条文も要綱も持っていますが、三項においても五〇%は堅持するんだと。それは、この条文のどこにそういう規定がありますか。

吉武政府参考人 今先生お尋ねございましたけれども、第二条の第一項に、モデルでございますけれども、モデルの水準を「百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。」という基本的な考え方を述べてございます。

 それで、これは大体二〇二三年前後になってまいります。二〇二三年ぐらいまでは、今後、出生が減りましても、あるいはふえましても、生産年齢人口に入る方の数というのはほぼ決まっておりますので、むしろ出生の影響は二〇二〇年を越えてから出てまいりますので、その時点で五〇%を切るということが見込まれます場合には、ここに書いてございますように、「調整期間の終了」というふうに書いておりますのは、いわゆるマクロ経済スライドでございまして、賃金の伸びより少し伸び方を抑えさせていただく、その「終了について検討を行い、その結果に基づいて調整期間の終了」あるいは「その他」、「その他の措置」というのは、調整を少し緩めるとか、そういう措置を講ずるということでございます。

 そういう措置を講じました場合に「給付及び費用負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずる」ということでございますので、基本は、五〇%を確保できるように所要の措置を検討するというふうに考えています。

筒井委員 給付について五〇%以上を確保する、どんな場合でも、それは出生率とか経済状況の変化にかかわらず、こういう規定はこの条文のどこに書いてあるのかという質問なんです。

吉武政府参考人 お答え申し上げます。

 今は、附則の第二条第一項に、給付水準を将来にわたり百分の五十を上回ることとなるよう確保するものとするという原則が書いてございます。(筒井委員「三項は」と呼ぶ)

 三項につきましては、給付の調整を終了いたしまして、その場合に、給付と費用負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずるということでございますので、一項の原則との兼ね合いで検討を行うということになるだろうと思います。

筒井委員 一項の給付のあり方との関連でなんて、今、何も書いてないことを読み上げていたけれども。

 ちょっと厚生労働大臣に視点を変えて聞きますが、どうも官僚に聞くと何かわけのわからないことを言うから。

 出生率の状況、つまり高齢化の進展あるいは経済状況の変化によっては、一八・三%では五〇%を確保できない場合が当然起こり得るんですよね。起こり得た場合にどうするんだ、それがこの二項、三項に書いてあるわけですよ。そして、私は、三項に給付も負担も再検討を行うというふうに書いてあるんじゃないかと言っているんですよ。

 そういう場合に、どんな場合でも本当に五〇%は確保するということであれば、では、負担の方は一八・三%より上げるということですか、将来的には。それとも、そうじゃないのか。その点を厚生労働大臣。

坂口国務大臣 まず、この問題は、大前提として、これを守っていくような政策を行うということが大前提でございます。

 大前提でございますが、しかし、経済、これは日本の国だけの話ではありませんし、世界経済も含めての話でございますから、いろいろのことが起こる可能性はございます。また、少子化におきましても、これは国がどうこう言いましても、個人の意思もありまして、変化することもございましょう。そこは我々もよく覚悟しているところでございます。

 これがプラスに転じる場合は問題はないわけでございますが、マイナスのときにどうするかということにつきましては、先ほどから答弁をしておりますように、一つは、これからの計画を多少変更するということはあるだろう、保険料の問題での変化はあるだろうというふうに思っておりますが、それ以外の方法というのも、それは検討の余地があるだろう。それは、保険料だけではなくて税の問題もあるだろう。

 ですから、そうしたことの今後につきましては、そこまで我々がどうこう言うことはでき得ませんので、それは将来のその時点で御検討をいただくということになるんだろうというふうに思います。

筒井委員 今の法案を読んでみて、まさに今言われた、将来、法律に違反しないで負担も給付も変えられるような条文になっているんですよ。だけれども、今の宣伝は違うんだわ。この前、誇大広告と言っていたけれども、虚偽広告なんですよ。

 今は、保険料についてちょっと変更があり得ると。具体的には、保険料について上げるのを早めると言われましたが、一八・三%に上げるのを早めるだけじゃなくて、一八・三%をさらに上げるという可能性もあるでしょう。まず、その点。

坂口国務大臣 ここは今後の話でございますから、将来の話でございますから、その時々でやらなければいけないというふうに思いますけれども、先ほど申しましたような範囲の中でまずは処理をする。

 先ほど申しましたように、一番問題になりますのは経済成長の問題でございます。一つは少子化の問題もございますが、この前、海江田委員から間違っておるといって御指摘を受けましたけれども、二〇二二、三年ぐらいまでは、今もう既に生まれている人については計算済みでございますから、これはいいんですが、これから生まれてくる人の問題はあり得る。二〇二二、三年ぐらいまでは既にもう今生まれている子供の話でございますから、ここは少子化ということでの心配は要らない。その後、今後生まれてくる子供の数でどうなるかということは、それはあり得る。そこは少子化対策をしっかりやっていかなければならないというふうに思っているわけであります。

筒井委員 今、だから、年金の負担に関して、将来のことだからそれはそのときの話だ、あり得るということを事実上認められましたが、給付に関してもそうですよね。

 大体、こんな二〇二五年の話をしているんだから、今。その先の話なんだから。今は五〇%確保するために最大限努力する、それは当たり前ですよ、しかもモデル世帯に限って。だけれども、そのモデル世帯に限っても、それだって将来の話で、そのときになってみて、またいろいろな検討が必要だ、必要になるかもしれない、こういう事態であることはそうでしょう。

坂口国務大臣 それは、その時々の経済動向等を勘案しながらさまざまなことも考えなければならないことは事実でございますが、今決めておりますのは、しかし、そうはいいますものの、これだけは守りますよということをきちっと明示しているということでございます。

筒井委員 そのあたりで、今回、きょうのところはいいでしょう。

 そして、そのモデル世帯の数をこの前聞いたんですが、確認しますが、現在の専業主婦世帯は全体の世帯のうちの二七%余りしかない、一番多い世帯ではない、一番多い世帯は共稼ぎ世帯であり三〇%ぐらいだ、これはそうでしょう。

吉武政府参考人 御説明申し上げます。

 現在働いておられる方、勤労者世帯でございますが、その中の共働き世帯は二九・七%、それから、奥様が働いていない世帯が二七・二%でございます。(発言する者あり)はい。今働いている世帯では一番多い状態でございます。

筒井委員 だから、一番多い比率は共稼ぎ世帯であり、専業主婦世帯ではないんですよね、現在においても。どんどん共稼ぎ世帯の方が今ふえている傾向にある。専業主婦世帯はどんどん減っている傾向にある。それなのに、現在でも多数ではないのに、何でこれを標準モデル世帯とするんですか。

坂口国務大臣 これは先日も申し上げましたけれども、夫婦の場合で五〇%というふうに言っております。これは少なくなってきているではないかという御批判がございますけれども、しかし、これは二人ででございまして、いわゆる一人割りの勘定にするならば、ここが厚生年金の中で一番低いグループなんです。一人一人で勘定いたしますと、もっとこれは額は多くなるわけでございますから、だから、一番下のところを、ここを押さえているということに意味があるということを私は申し上げているわけであります。

筒井委員 そうじゃないですよ。専業主婦世帯は、これは基礎年金の保険料を払っていないから比率が一番高くなるんですよ。だから、これをモデル世帯にしているんでしょう、実態は。だけれども、標準モデル世帯というならば、その世帯の比率が一番多いところ、そういうのをとるべきであって、昔ならあるいはよかったかもしれない、少なくとも今は共稼ぎ世帯が一番比率が高いんだから、どんどんこれからもそれがふえてくるんだから、標準モデル世帯とすれば共稼ぎ世帯を選ぶべきじゃないですか。

吉武政府参考人 御説明申し上げます。

 働いている方ではそうでございますが、これは推計でございますが、現実に受給している方で推計をいたしますと、奥様が働いていない世帯、これは厚生年金の、御主人が二十五年以上加入した場合で推定いたしておりますが、五一%でございまして、これが、二〇二五年に四二%。受給の状態と現実に払っておられる状態は、年金でございますので、そういう少し時間差が出てくるという状態でございます。

筒井委員 私が聞いているのは、これから将来の年金の今計算しているんでしょう。二〇二五年時点で五〇%だとか一八・三%と言っているんでしょう。将来のことを言っているんですよ。それは、過去のことにさかのぼれば、専業主婦世帯の方が多いでしょう。過去は、それをモデル世帯としても実態に合ったかもしれない。しかし、現在は違うし、これからも違ってくる。これからやはり標準モデル世帯は共稼ぎ世帯にすべきじゃないか、それを厚生労働大臣に私は聞いているんですよ。

坂口国務大臣 夫婦で稼がれる家庭がふえてくるということは、それはあるでしょう。しかし、どこをモデルにするかというのは、過去との継続の中でどこをモデルにしたらいいかということもあり得るわけでありまして、そして、現在の、共稼ぎではない家庭を中心にして考えるというのも一つの考え方でありますから、それで、ここだけのことを言っているわけではなくて、今このペーパーをお出しいただきましたように、お一人のところだったらどれだけになります、そして、夫婦ともに働いていただいているところだったらどうなりますというのもちゃんとお出しを申し上げているわけであります。

 しかし、我々は、中心に考えておりますのは、御夫婦の間で奥さんの方が働いておみえにならない家庭を中心にしてやっているということでありまして、先ほども申しましたとおり、ここは年金額の一人当たりにすれば一番少ないところでありますから、ここをチェックしていくということが非常に大事だということを私は……(筒井委員「額のことじゃない」と呼ぶ)いや、額です。パーセントというのは、額とこれは関連してくるわけでありますから、そのことを申し上げているわけであります。

筒井委員 いつも厚生大臣は額の問題を言う。私は今、パーセントの問題を聞いているんですよね。パーセントが一番高いところをモデル世帯に選んでいるんですよ。

 それで、出生率の問題で、これは公明党の議員さんも聞かれましたが、今まで厚生労働省の出生率の見込みは、この近年に限っても、全部間違ってきましたね。実態よりも高い出生率の予想を立ててきましたね。これはまず認められますね。

坂口国務大臣 過去二、三回の計算におきまして、中位よりも低位の方にいつも来たということは、これはもう事実でございます。

筒井委員 今まで全部、実態よりも高い予測を立てて、それが修正されてきた。だからまた、一つは、現在、一・三九を二〇二五年まで平均すればそうなるだろうという予測のもとにこの五〇・二%という計算もしているわけですが、この出生率も、今までの経過から見たら、やはりもっと低かったという可能性は高いですね。

坂口国務大臣 ここは、けさもお答えを申し上げましたけれども、過去のデータを見ましたときに、晩婚化そして未婚化というのが非常に進んできているということを中心にして計算をしてきた。しかし、それだけでは足らないということがわかってまいりました。

 それは結婚をした皆さん方の子供の数も減ってきたというところを十分に評価をしていなかったという、ここは、今までの失敗を踏まえまして、そうしたことも念頭に入れて新しく計算をしているということが一つでございます。

 それからもう一つは、どこまで少子化が進んでいくかということにつきましては、現在の皆さん方が本当に欲しいお子さんの数というのはもっと多いわけでありますから、それに対してどうこたえていくかという政策とこれはセットになった話だというふうに思っております。

 ですから、そちらの方向に向けていかに努力をするかということが今後問われているわけでございますから、これから二十年ないし二十五年の間にその方向に向けて努力をしていくということを申し上げているわけであります。

筒井委員 今、過去の失敗を教訓にして変えたと言われましたが、その過去の失敗を教訓にして出生率の数値の見通しを変えたのはいつですか、いつからですか。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの直近の人口推計でございますけれども、国立社会保障・人口問題研究所が平成十四年一月に行ったものでございまして、平成十二年に実施された国勢調査に基づく人口を基準として、人口学的、統計学的な手法により行ったものでございます。

筒井委員 私が今聞いたのは、過去の失敗、今言ったやり方はずっとその前からやっているんでしょう。人口調査に基づいてそのままその数値を使ってきた。それがいつも間違ってきたから、過去の失敗を教訓に今度変えたと言われたんでしょう。いつからどういうふうに変えたんですか。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げました平成十四年一月の人口推計におきまして、初めて、夫婦の出生力の低下、これは大臣が申し上げたことでございますけれども、この要素が新しく判明したという要素を織り込んだわけでございます。

筒井委員 それから、物価、賃金、利回りについても長期の見通しを立てているわけですが、そんな長期でなくたって、この二、三年間の見通しだって政府は間違ってきている。

 これも既に指摘されていることですが、経済財政諮問会議で、デフレ克服というまさに最重要な、小泉内閣の経済政策として一番大事な見通し、これも間違ってきている。二〇〇二年の中期展望では、二〇〇三年にデフレを克服する見込みだと。それが今度、翌年では二〇〇五年に、二年間も変更になって、それがことしになったら、今度また二〇〇六年に変更になっている。こんなまさに最重要なデフレ克服の見通しに関しても変更を繰り返している。

 まず、その事実は、竹中大臣、そうですね。そういうもとでこんな二十五年間の見通しなんというのは、また誤るのは当たり前じゃないですか。

竹中国務大臣 経済を正確に見通すのは大変難しいことであると思います。

 しかしながら、まず事実関係としまして、昨年の「改革と展望」からことしの「改革と展望」にかけてデフレ克服の時期を変えたという事実はございません。これは、集中調整期間が終わった時点でデフレが克服していく、そのシナリオは変えておりませんので、それはぜひしっかりと御確認をいただきたいと思います。

 大変その見積もりが甘いという御指摘がございますが、例えばでありますけれども、実質成長率の見込みに関しては、今年度当初、我々は〇・六%という見通しでありましたが、これは二%を超える見通しになりそうである。これはむしろ、かた過ぎた見通しだ、楽観的ではないという面もございます。プライマリーバランス、基礎的財政収支の減少につきましては、これはほぼ見込みどおりということになっております。

 いずれにしても、経済は生き物で、見通しは難しいわけでございます。これは何回も申し上げさせていただきましたけれども、であるからこそ、ぜひ民主党にもその見通しを出していただいて、建設的な議論を今後していただければありがたいと思っております。

筒井委員 こちらが政権をとったときにそう言ってください。こちらが政権をとったときにそういう追及をしてください。

 それで、デフレ克服に関して、見通しの変更を繰り返したことは事実でしょう。その事実はどうなんですか。

竹中国務大臣 経済は刻一刻と変わってまいります。であるからこそ、小泉内閣になってからやり方を変えまして、「改革と展望」は、これまでの、中期の五年なら五年据え置きではなくて、毎年ローリングして見直す、その都度、最新の情報を取り込んでできるだけの説明責任を果たしていくという体制になっているわけでございます。

 これは大変難しいですけれども、与えられた情報の中でしっかりと対応していきたいと思っております。

筒井委員 デフレ克服というのは最重要な政策ですよ。それについて、経済は生き物だ、だから見通しが間違っていたって後で訂正したっていい、こういう姿勢ですか。見通しを政府がはっきり出した限り、それを完全に実現させる。特にデフレに関してはそうでしょう。そうでないと、デフレ克服なんか、そういう姿勢でなきゃできないですよ。

 今言ったように、経済は生き物だから、デフレの見通しを立てて、それがまた誤ったって別にいいんだという姿勢では、デフレ克服は特にできないですよ。どうですか、今の点は。

竹中国務大臣 我々は社会主義計画経済の中にいるわけではございませんので、しっかりとこれは見ていかなければいけないというふうに思っております。

 いずれにしましても、これは、各国、そういう悩みの中でしっかりと経済運営をしているわけでございますが、もう一度、事実関係に関しましては、デフレ克服に関しては、昨年からことしにかけて「改革と展望」の中で見方を変えたという事実はございません。

筒井委員 今の質問の答え、答弁になっていませんが、時間が来ましたので、終わります。

笹川委員長 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 最初に、小泉総理にお聞きをいたしたいと思います。

 ここに、「家計の金融資産に関する世論調査」というのがありまして、これは金融広報中央委員会、日銀の調査であります。この中に大変深刻な統計が出ておりまして、貯蓄を取り崩す世帯というのは大変ふえているわけです。昨年、貯蓄が減った世帯は五一・一%、半分以上が貯蓄が減った。貯蓄を取り崩して全くゼロになった、こういう世帯が二二%に上っております。実に五軒に一軒が貯蓄ゼロという大変な事態でございます。

 そこで、このような事態をもたらした理由でありますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 人によって違うと思いますが、私が思うに、収入が減るとやっぱり貯蓄を取り崩そうという方も多いんじゃないかと思っております。

 世界の中でも、日本の貯蓄性向が高い、消費性向はなぜ低いんだというようなことを言われていましたけれども、最近はだんだん貯蓄性向も低くなっている。これはいろいろな理由があると思いますが、やっぱり収入が減ってきたというのも一つの要因じゃないかと思います。

 あと、どういう理由かというのは、よりもっと専門家に聞かなきゃわからない点もあると思います。一つとして、そういうことも考えられるんじゃないかと思っております。

佐々木(憲)委員 収入が減ったというのが、確かに、この中でもその理由として一番多いわけです。ですから、総理の答弁は正解であるということになるわけでありまして、定期的な収入が減ったという理由が一番多くて五九・六%、約六割を占めているわけですね。実際、家計調査報告を見ましても、勤労者世帯の実収入は、小泉内閣の三年間で四十三万円、これはマイナスであります。

 なぜこんなに収入が減少したのかということが重要でありまして、最近は大手の企業は史上空前の利益を上げておりますが、しかし、それは、輸出の増加もあるけれども、大変重要な要因として、リストラ効果というのがあります。労働者を減らし賃金を抑え、あるいは中小企業下請単価を切り下げるという形で利益を上げていくわけですね。

 したがいまして、国民の収入が減ったというその理由として、こういうリストラ、大手の企業の行動というのも一つの要因ではないかと思いますが、総理はどのようにお感じでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それも一つの要因だと思います。そういうことから、景気の回復、このためにも、金融改革、税制改革、また、規制改革、歳出改革をしていかなきゃならないと思っておりますし、最近ようやく、企業の業績にも明るさが見えてまいりました。この動きを、地方にも、また中小企業にも広がっていくような改革を進めていかなきゃならないと思っております。

佐々木(憲)委員 一つの要因ということでお認めになったわけですけれども、問題は、一番、日本経済で六割を占めている個人消費、これが大幅に減っている、そこをどう支援していくか、どう支えていくかというのがやはり国の、政治の役割ではないかというふうに思います。

 この家計を支援するということ、つまり、国民の生活を安定させていく、これはやはり内閣としても非常に重要な視点だと思いますが、総理はどのようにお感じでしょうか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、改革なくして成長なしと。経済全体をよくしていく中で個人の家計も改善していこうということが必要であって、一つだけとってこれだけに焦点、歳出だけ、歳入だけということでは全体の経済を論ずるのには不適切じゃないかと思っております。やはり総合的に考える必要があると思っております。

佐々木(憲)委員 総合的に考えていく場合、予算の組み方というのが大変重要でございまして、やはりこの家計をどう支えるかという角度が財政の上でも大変重要な発想の柱になければならないと私は思うんです。果たしてそうなっているのか、今審議されておりますこの来年度予算案が。

 例えば税制について見てみたいわけですが、どうも実態は逆を向いているんじゃないかと思うわけです。

 財務省に数字をお聞きしますけれども、これは政府参考人で結構でございます。今度の予算で提案されている六十五歳以上の老年者控除の廃止と公的年金等控除の廃止、この二つで国と地方合わせて幾ら負担増になるか、お答えをいただきたい。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま先生からお話のございました、老年者控除の廃止と、公的年金等控除は廃止じゃございませんで縮減でございますが、その負担増のみを取り出した場合の平年度増収額は、国、地方合わせて約三千八百億円となっております。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 もう一つお聞きしますが、昨年は、配偶者特別控除の一部廃止、消費税の免税点引き下げなど中小企業特例の縮小、さらに、酒税、たばこ税などの増税が決められました。昨年決められてことしから実行されるこれらの増税分は幾らでしょうか。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 十五年度税制改正は、十六年度におきましても、約一・五兆円の減税が継続している。それからさらに、別途、いわゆる歳出措置もありますが、今先生が御指摘になりました見直しのみを取り出した場合の平年度増収額は、国、地方合わせて約一兆六千六百億円ということかと存じます。

佐々木(憲)委員 昨年から……(発言する者あり)

北村(直)委員長代理 大臣に、着席してください。

 佐々木憲昭君、どうぞ。佐々木憲昭君、質疑を続行してください。

佐々木(憲)委員 今の答弁では、一兆六千六百億円ということで、これは、昨年からことしにかけまして政府の税制改革の中で決定され、実行されつつある、また、今年度予算案で実行しようとしている、その内容であります。合わせますと二兆四百億円ということで、これは、国民一人当たりにしますと二万円近い増税になるわけであります。

 あわせてお聞きをしたいんですが、与党が既に決めております所得税の定率減税を廃止すると幾らの増収になるんでしょうか。あるいは、国、地方合わせて、この負担増となりますと幾らになりますか。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 今先生がお話のございました所得税の定率減税による減収額、国税で二兆五千億、それから地方税で約八千億円ぐらいと現状では推計しております。

 ただ、定率減税の今先生言われた廃止というのは、やはり社会経済動向とかあるいは年金国庫負担割合の引き上げとの関連を踏まえながら、国、地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しの中で検討を行っていきますので、定率減税の廃止だけを取り出して負担増が幾らになると言うのは余り適切ではないのではないかと思います。

佐々木(憲)委員 後半の説明は、それはいろいろな解釈があるでしょう。しかし、我々は、具体的に国民にどのような負担が加わっていくかということから見ると、これだけ大変な負担になるわけであります。合わせて、これだけでも三兆三千億円になるわけですね。

 仮にこれを合わせますと約五兆円、今までの負担増の税金分だけでも、今の答弁を合わせますと五兆円ぐらいになるわけですね。このほかに、昨年来、医療、年金、介護などの社会保障の分野でも、これは負担がふえる。

 ともかく、出てくるのは負担増ばかりというのが今の実態でございまして、総理にお聞きしますけれども、確かに家計消費が、これは今の経済全体の中で重要な役割を果たしているという認識だというふうにおっしゃいましたが、このように今は負担増、それはそれぞれの改革の中身は議論があるとしても、実態で国民の暮らしにかなり重くのしかかってくると思うんです。これはやはり消費全体にマイナスの作用を及ぼすと思いますけれども、総理はどのような認識でしょうか。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 これは、一部だけ取り上げて論ずるというのではなくて、減税もしているわけであります。同時に、年金に充てられる部分もあるわけであります。さらに、経済全体が上向いてくれば、これは雇用にもいい影響を与えてくる。そして、今、各企業が業績が上がってくれば、社員の給料も上がってくれば、家計においても好影響を与えてくる。そういうことから、最近は、設備投資も増加傾向にある、そして、消費も伸びてきている、景気の方にも明るい兆しが出てきたというような実態にあらわれているんじゃないでしょうか。

谷垣国務大臣 ちょっと総理の御答弁に補足させていただきます。

 先ほど佐々木委員、統計を引かれて、苦しくなっているところが多いということをおっしゃいました。財務省は、先日、法人企業統計というのを発表しましたが、これを見ますと、確かに企業収益は改善しているんです。人件費についても、前年同期比で見て約二年半ぶり、十四半期ぶりに増加することになったと承知しておりまして、企業活動の活性化の恩恵が徐々に家計にも及んでくる、そういう状況になってきたんじゃないかと思っております。

 もちろん、まだまだ手を緩めてはいけないと思いますけれども、そういう経済全体の好調が徐々に家計にも及んでくるというふうに私は期待できると思っております。

佐々木(憲)委員 人件費のことをおっしゃいましたけれども、実際に、常用雇用はかなりマイナスになっておりまして、非常に雇用は不安定になっております。それから、失業率というのも下がっていない。さらに、働いている方々の賃金の統計を見ましても、決してこれはふえているわけではない。家計収入はマイナスである。

 これらを考えますと、一部の企業は確かに利益がふえていますけれども、その要因としては、相当のリストラをやり、家計にしわ寄せをし、下請にしわ寄せをしているということが実態としてあると思うんです。したがって、我々は、そういう家計をどう応援していくかというのが、やはり弱いところをどう支えていくかというのが政治の役割だというふうに思うわけですね。

 それでは、減税もしているというふうにおっしゃいました。その減税はどうしても大企業向け減税が多くて、例えば、今年度予算の内容を見ましても、法人税の欠損金繰越期間の延長、あるいは連結納税制度導入の際につくられた連結付加税というのが廃止されるわけであります。これを合わせますと、約二千億円になるわけであります。こういうことで、大企業向けにはさまざまな減税措置というのが実際にとられているわけであります。

 時間がありませんので端的に聞きますけれども、どうも、政府がやっている政策というものは、今お配りしたこの資料、経団連の「平成十六年度税制改正に関する提言」、これとそっくりでありまして、欠損金繰越期間の延長、五年から七年に、これも全くそのとおり行われております。あるいは、連結付加税を廃止してほしい、そのとおりやっておりますし、先ほど言いましたように、高齢者に対する増税措置も、全く同じ要望を取り入れている。個人住民税の引き上げの問題もそのまま。それから、昨年の、例えば法人関連の研究開発減税などを見ましても、軒並み、いわば財界、経団連の要望がそのまま通っているというのが実際の税制改革の内容ではないか。

 したがいまして、こういう状況を考えますと、国民に対しては、相当の負担増がのしかかっているんだけれども、大企業の方は、相当、減税、減税という形になっている。利益がどんどんふえているところには減税、体力のあるところには減税……(発言する者あり)うるさい。静かにしなさい。うるさいな、本当。尾身さん、うるさい。ちょっと委員長、注意してくださいよ。

笹川委員長 静粛に。静粛に。

佐々木(憲)委員 私の質問中に勝手なやじを飛ばさないように。

 それで、私が聞きたいのは、つまり、財界から言われたものがそのまま通っているんじゃないかということであります。そういう状況ですから、私は、経団連の要望ばかりを聞いて、どうも国民の声が届いていないのではないかと。

 こういうときに、最近、経団連は、政策評価をして各政党に献金を行うんだ、こういうことをやっております。どうも自民党の評価は高いと思ったら、経団連の言っていることがそのまま実行されている、こういう状況でありまして、総理に、もう時間がありませんので端的にお伺いしますけれども、この経団連の献金再開ということは、私はかなり大がかりな政治買収じゃないかと思うんですけれども、自民党の総裁として、この経団連の献金を受け取るというつもりなのか、それとも、それは拒否するということなのか、はっきり答弁していただきたい。

小泉内閣総理大臣 民主政治を発展させたい、日本の経済社会をさらに健全化していきたい、そういう点において、個人も企業も団体も、それぞれの支持する政党に献金しようというのは、これは悪いことではなくて結構なことだと思っております。

 そういう点、献金してくれるところだったら、自由民主党は堂々とこれからの政治活動に生かすように使わせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 結局、経団連の政策を取り入れ、経団連からお金をもらい、それが自民党政治だということが大変よくわかりました。

 毎日新聞もこういうふうに書いているんです。「洋の東西を問わず、経済界から政治サイドに余計な資金が流れ込むとろくなことがない。しかもそれは常に美しい言葉で美化して始まるものだ。政治は「カネ」に中立ではない。ここから政治の腐敗が始まる」こういうふうにも言われておるわけです。

 我々は、企業・団体献金は禁止、さらに、政党助成金は受け取らない、献金は個人に限る、そういう立場で、国民の立場でしっかりと今後とも頑張っていくという決意を表明しまして、質問を終わらせていただきます。

笹川委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 三位一体の改革については、予算委員会で多くの委員から質問があり、いろいろと議論が深まってきたところでありますが、きょうは締めくくり総括でございますので、私の方からも、三位一体の改革と地方財政について総理のお考えをお尋ねいたします。

 小泉総理の唱える構造改革は、地方にできることは地方にというのが基本理念であると私も承知をいたしております。小泉総理は、この理念に基づいて、いわゆる三位一体の改革で地方分権を実現しようとのお考えのようであります。

 ところで、人口の少ない地方あるいは財政基盤の弱い地方では、三位一体の改革は地方の実情を無視した地方切り捨てであると受けとめられておるようであります。

 去る三月一日、共同通信と加盟新聞社が全国の知事、市町村長、東京の特別区長ら三千二百四十人に実施したアンケートの結果が報道されました。小泉総理もごらんになったかと思います。

 アンケートに回答を寄せた者は三千二百十人、回答率は九九・一%であります。アンケートそのものは極めて多岐の項目にわたるものですが、小泉内閣の構造改革で自治体がどんな方向に向かっているのかという質問に対して、「良い方向」「どちらかといえば良い方向」との回答が三八%、「悪い方向」「どちらかといえば悪い方向」が約六一%となっております。三位一体の改革で初年度の地方交付税が実質昨年度比一二%減となった初年度の決着については、「評価しない」「あまり評価しない」の合計が七六%に達しております。

 小泉内閣による三位一体の改革は、国の財政再建が優先され、地方への税源移譲は進展せず、地方分権すなわち地方の自立に逆行していると批判せざるを得ません。紹介したアンケート結果に見る地方自治体の反応に対して小泉総理はどのような所感をお持ちか、お尋ねをいたします。

小泉内閣総理大臣 賛否両論といいますか、よい方向にある、あるいは悪い方向にある、両意見があると思いますが、やはり、地方の自主性を高めていくという、地方にできることは地方にという趣旨での三位一体の改革は必要だと思っております。

 その際、今までの百年以上にわたっていた制度ですから、国から交付税なり補助金をもらった方がいいという地方がかなりあるというのも事実であります。自主性を高めよう、あるいは税源を探そうといっても、税源もないという地方があるのも事実であります。そういうことから、今までの補助金と交付税と税財源、それぞれ一つずつ改革しようにしても、なかなか反対も強くてできなかった経緯もあります。

 今回、その難しい問題を一緒にやってみようという改革であります。もとより、地方のことでありますから、どれが自分たちでできる仕事か、どれが国がやるべき仕事かという、これ一つとっても、その地方によってもなかなか意見が違います。

 しかし、今の補助金、交付税の問題を考えてみますと、交付税は財政調整にも必要でありますが、ほとんどの地方公共団体が交付税を交付されないとやっていけない。果たして、それで本当に地方の自治というのは生まれるんだろうか。また、補助金につきましても、一々個別の事業まで決めないと補助金が中央省庁から来ないということで地方の自主性が高まっていくんだろうかということを考えますと、この三位一体の改革というのはやらざるを得ない、それがひいては地方のみずからのやる気を出していくことにつながっていくと思っております。

 しかし、財政状況、国だけじゃありません、地方も厳しいわけであります。財政再建ということを地方も考えるならば、今のままでずっと、財源なり収入があったままでやっていくというのは無理だとするならば、やはり削るべきところは削らなきゃならない地方もたくさん出てくると思います。それがまた難しいのも承知しておりますが、私は、そういう点につきましても理解を得られるように努力し、そして、よい方向であると向かっている方々の、さらにもっとよくしたらどうなるか、それは悪い方向に向かっているという意見に対して、地方団体によって違いますから、きめ細かに対応をしていく必要があると思います。

 できるだけ地方の自主性を生かしたような改革を今後も進めていきたいと思います。

麻生国務大臣 今、照屋先生が参考にされました共同通信の資料、同じ資料の中に、同様に、三大都市圏、人口五万人以上の市におきましては、構造改革は「良い方向」というのが答えておられますし、また、三位一体の評価につきましても、人口二十万以上の都市では、「評価する」という方が上回っておるというのも事実でありまして、今言われましたように、三千百三十市町村ございますので、町村の数からいきますと今言ったパーセントになろうかとは思いますけれども、私どもやはり、二百四兆円にわたります地方財政の借入金の累積総額というのは、これは無視できないところまで来ていると思いますので、何らかの形で、交付税を含めましていろいろな形で対応せねばならぬ。

 ただ、小さなところにおいては痛みが大きい。多分、沖縄を含めましていろいろあろうかと思いますので、その個別の点につきましては、これはちょっと、三千百三十いろいろございますので、個別に対応をさせていただく、きめ細かな対応をさせていただかねばならぬと思っております。

照屋委員 それでは、法務大臣にお伺いいたします。

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案についてでございますが、同法案十四条三項で、「心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者」との裁判員欠格事由がございますが、重大な刑事裁判の審理に市民が参加をし、健全な社会常識をより裁判に反映させるという法律の趣旨にそぐわないのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、裁判員制度の趣旨にかんがみまして、心身に何らかの障害を持っておられる方を含めまして、幅広い国民の参加をいただくことが極めて重要であると私どもは考えております。

 したがいまして、心身に障害を持っておられる方であっても、裁判員の職務の遂行に問題がないと認められる場合には、裁判員の職についていただくことにしておりまして、職務の遂行に著しい支障があると認められる場合についてのみ、これを欠格事由としておるのでございます。

 被告人の権利の保障を含めました裁判の公正を確保するためには、具体的な障害の内容や程度を考慮して、職務の遂行にどうしても著しい支障があるという場合について裁判員となることはできないとすることはある程度やむを得ない、こう考えております。例えば、写真なんかを目で見るというような証拠の査定とか、耳で聞いてテープで判断する、こういうような事案が想定されるわけでございます。

照屋委員 裁判所法の四十六条で、裁判官の欠格事由というか、それが定められております。それには、裁判員の今指摘をした欠格事由のような心身の故障云々というのはないわけでありますから、私は、法の趣旨に照らした、きちんとした法案にすべきだということを申し上げて、時間ですので、終わります。

笹川委員長 これにて照屋君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして平成十六年度予算三案に対する質疑はすべて終局いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 ただいままでに、日本共産党佐々木憲昭君から、平成十六年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、本動議について提出者から趣旨の弁明を求めます。佐々木憲昭君。

    ―――――――――――――

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、平成十六年度予算三案につき政府がこれを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提案理由及び概要を御説明いたします。

 まず、撤回、編成替えを求める理由についてであります。

 政府は、景気は着実に回復していると言いますが、経済の実態は、それとはほど遠いものであります。輸出大企業などの収益が急増しているだけで、肝心の国民生活は、勤労者世帯の年収が小泉内閣の三年間で四十三万円も落ち込んだことに見られるように、依然として深刻な事態となっています。国民の暮らしが元気にならなければ、日本経済が本当に回復に向かうことはできません。そのための対策こそが、政府の経済運営に求められているのであります。

 日本経済の回復を本当に実現するためには、公共事業や軍事費などの浪費を削り、年金を初めとした社会保障、雇用・中小企業・農業対策、国民の暮らしのために予算を重点的に配分することが必要です。以上の見地から、政府予算案は直ちに撤回して、抜本的に組み替えるべきであります。

 次に、組み替えの概要について述べます。

 一、国会審議を通じて、政府のイラク派兵の根拠はすべて崩壊しました。自衛隊のイラク派兵を中止し、現地にいる自衛隊は直ちに撤退させる。イラク復興支援は、国連を中心とした平和の枠組みの中で、有効な復興支援になるよう切りかえる。

 二、予算配分の重点を思い切って社会保障に移し、年金を初め社会保障を予算の中心に据える。1基礎年金国庫負担を直ちに二分の一に引き上げ、安心できる年金制度にする。そのために必要な二・七兆円は道路特定財源の一般財源化などによって生み出す。2窓口負担を二割に引き下げるなど医療保険制度の改善を行う。3特別養護老人ホームの増設など介護サービスの拡充。4生活保護など社会保障の改悪を中止し、拡充する。5庶民増税を中止する。

 三、政府が進めている地方財政の三位一体改革は、三年間で約四兆円もの国庫補助負担金を削減する第一歩であり、地方自治を破壊し、住民サービスの大幅な後退をもたらすものである。地方自治体の自主性を高め、住民の暮らし向上のための財源を拡充する改革を進めることが必要である。

 四、仕事があるということは、国民の暮らしと社会の基盤であり、安定した雇用の確保は、最も重要な政治の使命である。大企業のリストラを野放しにし、派遣労働の規制緩和など不安定雇用を拡大する雇用政策を改め、正規雇用を拡大する実効ある雇用対策に切りかえる。

 五、期限を切って無理やり不良債権を処理するやり方をやめ、中小企業と地域経済を守る金融行政に転換する。銀行の国有化や不良債権の買い取り、地域金融機関の合併促進などの資金源となる七十兆円の公的資金枠は廃止する。

 中小企業の資金調達を円滑化するため、資金繰り円滑化借りかえ保証制度を延長するとともに、借り手の使い勝手のいいものに改善し、地方自治体が同制度を継続できるように支援する。

 六、食料・農業、教育・子育て、中小企業、環境・エネルギー・新型鳥インフルエンザ・災害対策などの予算を拡充する。

 七、公共事業や軍事費を初め巨額の浪費の構造にはメスが入れられないままになっている。五・七兆円もの巨額に達している道路特定財源の一般財源化、採算性のない高速道路整備計画の廃止など浪費を改めれば、社会保障や暮らしの予算を拡充する財源を生み出すことは可能である。

 以上、編成替えの概要を説明いたしました。詳細は、お手元に配付した動議を御参照願います。

 御賛同をお願いして、趣旨の説明といたします。

笹川委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより討論に入ります。

 平成十六年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております平成十六年度予算三案につきまして、賛成の討論を行います。

 昨年十一月に行われました総選挙におきまして改めて国民の信任をいただいた小泉内閣のもと、政府は、構造改革なくして日本の再生と発展はないというこれまでの方針を堅持し、活力ある経済社会の実現を目指し、規制、金融、税制及び歳出の各分野にわたる構造改革を進めてまいりました。

 危機的状況にある我が国財政の改革については、財政規律を引き続き維持し、子供や孫の世代に責任を持てる財政を確立するとともに、限られた資源を真に必要な分野、施策に適切に配分することが求められているところでございますが、平成十六年度予算の編成に当たっては、このような理念のもと、引き続き改革路線を堅持し、一般会計歳出及び一般歳出について、実質的に前年度の水準以下に抑制する一方、予算の内容については、大胆なめり張りをつけることにより、重点的、効率的な予算配分を図る努力の跡が顕著に認められるところであります。

 以下、賛成する理由を若干敷衍いたしますと、第一は、本予算が、歳出の質の改善に努め、例えば科学技術や治安対策など、活力ある社会、経済の実現や国民の安心の確保につながる分野に重点的に配分したほか、各分野においても真に必要な施策への絞り込みを行うなど、めり張りのきいた予算配分を行っている点でございます。

 例えば、科学技術の分野におきましては、経済活性化のためのみらい創造プロジェクトを大幅に拡充したほか、公共事業については、大都市圏拠点空港、三大都市圏環状道路等の予算を伸ばすなど、経済活性化につながる事業への重点配分を行っております。また、治安対策については、警察官など関係職員の大幅な増員、刑務所等の収容定員増への積極的な対応など、国民の安心の確保に向けた取り組みを行っております。

 第二は、我が国財政が極めて厳しい状況にある中、歳出の合理化、効率化を進め、持続可能な財政構造の構築を図っている点でございます。

 本予算の編成においては、国と地方の改革、年金改革などの重要課題に着実に取り組むとともに、予算編成過程について、モデル事業や政策群といった手法の導入、予算執行調査の拡充を行ったほか、特別会計については、すべての特別会計を対象として幅広い見地から検討を行い、事務事業の見直し等を進めております。

 本予算においては、このような改革努力の結果、国債発行額を極力抑制しており、また、国、地方を通じた基礎的財政収支は改善が見込まれるなど、小泉内閣の目指す二〇一〇年代初頭のプライマリーバランスの回復に向けた一つの足がかりをつくることができたのではないかと考えられます。このように、財政規律の維持に努めている点は、積極的に評価できるものであります。

 以上、本予算に賛成する理由を申し述べました。平成十六年度予算は、今後の我が国の発展、国民生活の安心の確保に向けてまことに重要なものであり、ここに重ねて賛成の意を表し、ぜひともその一日も早い成立を期しつつ、私の賛成討論といたします。

 なお、共産党から提出された組み替え要求については、見解を異にするものであり、反対の意を表します。

 以上です。(拍手)

笹川委員長 次に、達増拓也君。

達増委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算に一括して反対する討論を行います。

 族議員と霞が関官僚機構が、国民生活も経済状況も顧みず、既得権益維持に走ってつくり上げた本予算は、芸術的とも言える既得権益と数合わせの組み合わせであり、その矛盾を国民負担増として国民に押しつけるもので、到底賛成できるものではありません。

 年金制度改革やいわゆる三位一体改革、また、道路公団や郵政公社の民営化など、小泉内閣が大改革だと叫ぶ分野についても、本質的な議論を先送りした結果、予算編成にゆがみが集中し、すりかえ、先送りによるごまかし予算となっています。

 また、構造改革というよりも財政の帳じり合わせを最優先にする結果、かえって税収の落ち込みと財政赤字の増大をもたらしながら、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復するという矛盾について、合理的な説明はなされていません。五百三十万人の雇用創出を掲げながら就業者の数が正味で減っていることについても、合理的な説明はなされませんでした。

 そもそも説明責任を果たすつもりがないのか、イラクへの自衛隊派遣を含め、説明できない政策を押し通そうとするからそうなるのか。本日の審議でも、閣僚のずさんな答弁が混乱を招きました。

 民主党は、高速道路の無料化、国債発行額の削減、セーフティーネットの強化、百二十五万人の雇用創出、税金のむだ遣いの徹底的排除、そして地方への十九兆円の財源移譲を盛り込んだ独自の予算案を対案として提起しました。暮らしの現場と仕事の現場が着実によくなっていく本物の構造改革予算の必要性を訴え、私の反対討論を終わります。(拍手)

笹川委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、平成十六年度予算三案に対して反対、我が党提出の編成替えを求めるの動議に賛成の立場から討論を行います。

 反対理由の第一は、本予算案が、年金保険料の引き上げや庶民増税など、今後十数年にわたる国民負担増のレールを敷く、文字どおり連続負担増予算となっていることであります。

 既に、小泉内閣誕生以来、同内閣が決定した国民への負担は四兆円にもなっております。加えて、年金保険料の引き上げを初め、生活保護の給付削減、高齢者への増税など、毎年一兆円前後の負担増が追加されるのであります。年金保険料に至っては、国会審議抜きで改定される自動引き上げの仕組みを導入し、今後十四年間にわたる連続的な引き上げが計画されております。

 地方自治体への一兆円補助金削減も、義務教育や公立保育所などの国の義務的負担を削減するもので、地方自治体と住民にツケを回し、住民サービスの低下をもたらすものであります。小泉首相の任期が終わる二〇〇六年度までの三年間をとってみても、新たな負担増は三兆円、合わせると七兆円以上にも及ぶ負担増が押しつけられるものであります。

 第二は、大企業奉仕や公共事業の浪費の仕組みは温存され、一方で、国債の新規発行は二年連続史上最高となるなど、財政破綻をますます進行させるものとなっていることであります。

 公共事業の浪費、天下り官僚とファミリー企業との癒着など、自民党政治の財政のゆがみが集中的にあらわれている道路公団問題にも、抜本的改革のメスが入れられておりません。そればかりか、五・七兆円にも及ぶ道路特定財源を温存し、新直轄方式によるむだな高速道路建設をさらに推進しようとしているのであります。巨額の債務のツケを国民に回すことは明らかであります。

 国債の新規発行は三十六兆五千九百億円、当初予算としては史上最高のものです。国、地方の長期債務は合計七百十九兆円、国民一人当たり五百六十万円以上もの借金を背負わされているのであります。

 第三は、イラク戦争の大義や自衛隊派兵の前提が明白に崩れたにもかかわらず、米英の占領政策への支援を中心としたイラク復興支援経費、自衛隊派兵に要する経費を組んでいることであります。

 当委員会の公聴会において、公述人の方からも支援経費の受け皿がないとの意見陳述が行われたように、米英の侵略戦争とイラク支配に加担する復興支援経費は削除すべきであります。

 さらに重大なのは、アメリカの軍事戦略に日本を組み込む弾道ミサイル防衛(BMD)システムを整備するための予算を本格的に盛り込んでいることであります。このような憲法九条の改悪につながる予算は、断じて認めるわけにはまいりません。

 今、求められているのは、社会保障、雇用・中小企業対策など、景気回復と国民生活防衛のための予算の拡充であります。このことを強く主張して、私の反対討論を終わります。

笹川委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、平成十六年度政府予算三案に反対する立場から討論を行います。

 反対する第一の理由は、政府予算案では、立ち直りの兆しが見えつつある日本経済を本格的な回復軌道に乗せることはできないからであります。

 今、我が国の経済は、設備投資と輸出の好調に支えられ、回復基調にあります。一方、失業率は五%台で推移し、家計の収入環境も依然厳しい状況であります。企業の雇用調整や賃金カットあるいはリストラが続く中で、多くの国民は預貯金を取り崩して生活をしているという状況であります。今の景気は国民の犠牲によって支えられていると言っても過言ではなく、この状況が続けば、景気はまた後退局面に入りかねません。景気を回復していくためには、国民生活の視点に立って、雇用や社会保障に大胆な予算配分を行い、国民の生活不安や将来不安にこたえることが必要であります。

 残念ながら、政府予算案は、物価スライドによる年金支給の引き下げ、厚生年金保険料率の引き上げ、基礎年金の国庫負担率の三分の一から二分の一への引き上げの先送りなどが主な柱であり、これでは、国民の将来不安は解消されません。景気回復どころか、景気回復に水を差す予算案だと言わざるを得ず、到底受け入れることはできません。

 反対する第二の理由は、防衛関係費に新たにミサイル防衛システム関係費が盛り込まれていることであります。

 従来型の正面装備費は減額されていますが、装備面では従来の防衛政策を大きく転換し、対米追従を一層強める内容となっています。

 また、米英軍によるイラク戦争と占領統治は、国連憲章を無視し、国際法にも違反する、大義なき戦争であります。自衛隊のイラク派兵は、かかる不法不当な米英軍の戦争と占領に加担するものであり、予算案に計上された派兵経費百三十五億円は削除すべきであります。

 第三の理由は、公共投資関係費の約八割が都市再生などに集中しており、地方切り捨て、都市偏重になっているということであります。

 しかも、公共投資の事業別シェアはほとんど変わらず、各省庁、各局への予算配分の硬直性は全く打破されていません。

 第四の理由は、地方財政の三位一体改革が不十分であるということであります。

 我が党は、三位一体改革に当たっては、分権すなわち税源移譲を先行すべきだと主張してきました。しかし、改革の初年度では、補助金一兆円削減が先行し、単なる削減策の寄せ集めにすぎないものとなったと言わざるを得ません。

 しかも、補助金と交付税の抑制ばかりが進み、地方の財源と権限の自由度は全くふえていないのであります。国の関与を大胆に縮小し、税源移譲で地方税の充実を図り、歳入歳出両面での地方の自由度を高めるべきであります。

 以上、平成十六年度政府予算三案に反対する理由を申し述べました。

 共産党の撤回のうえ編成替えを求めるの動議については、組み替え等の内容において反対せざるを得ないことを表明し、私の反対討論を終わります。

笹川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより採決に入ります。

 まず、佐々木憲昭君提出の平成十六年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

笹川委員長 起立少数。よって、佐々木憲昭君提出の動議は否決されました。

 次に、平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。

 三案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

笹川委員長 起立多数。よって、平成十六年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました平成十六年度予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 委員長として、一言申し上げます。

 去る二月十日の基本的質疑開始以来、終始真剣なる審議を重ねていただき、本日、ここに審査を終了いたしました。

 これもひとえに理事及び委員各位の御理解と御協力のたまものでございます。深く感謝の意を表して、皆様方にお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十六分散会


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