衆議院

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第2号 平成17年1月27日(木曜日)

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平成十七年一月二十七日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    川上 義博君

      河村 建夫君    城内  実君

      北村 直人君    小泉 龍司君

      後藤田正純君    菅原 一秀君

      谷  公一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 恭一君

      津島 雄二君    西川 京子君

      根本  匠君    萩野 浩基君

      福田 康夫君    二田 孝治君

      御法川信英君    村井  仁君

      森田  一君    与謝野 馨君

      石井  一君    石田 勝之君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      川端 達夫君    菅  直人君

      小泉 俊明君    近藤 洋介君

      篠原  孝君    達増 拓也君

      津川 祥吾君    辻   惠君

      中井  洽君    中津川博郷君

      中塚 一宏君    永田 寿康君

      長妻  昭君    原口 一博君

      樋高  剛君    古本伸一郎君

      本多 平直君    村越 祐民君

      米澤  隆君    赤羽 一嘉君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      田端 正広君    佐々木憲昭君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   総務副大臣        山本 公一君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十七日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     川上 義博君

  玉沢徳一郎君     御法川信英君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  西川 京子君     与謝野 馨君

  根本  匠君     菅原 一秀君

  吉良 州司君     本多 平直君

  篠原  孝君     川端 達夫君

  辻   惠君     菅  直人君

  中塚 一宏君     村越 祐民君

  樋高  剛君     達増 拓也君

  田端 正広君     赤羽 一嘉君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     河村 建夫君

  菅原 一秀君     根本  匠君

  津島 恭一君     城内  実君

  御法川信英君     玉沢徳一郎君

  与謝野 馨君     谷  公一君

  川端 達夫君     篠原  孝君

  菅  直人君     辻   惠君

  達増 拓也君     樋高  剛君

  本多 平直君     近藤 洋介君

  村越 祐民君     古本伸一郎君

  赤羽 一嘉君     田端 正広君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     津島 雄二君

  谷  公一君     西川 京子君

  近藤 洋介君     石井  一君

  古本伸一郎君     中塚 一宏君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  一君     吉良 州司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十六年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計補正予算(第1号)、平成十六年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官柴田高博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。

与謝野委員 この予算委員会は補正予算を審議する予算委員会であるわけですが、先般行われました本会議での野党質問、しばしば中断をするという異例のことが起きたわけでございますが、私が知っている限り、以前の本会議での質疑というのは今よりは格調が高かったんではないかと思いますし、また、戦前の国会運営というのは本会議中心主義ですが、戦後の国会運営というのは変わりまして、委員会中心主義ということになっておりまして、再質問というのは異例のことであって、無用な混乱を国民はどう見ているかということを私は大変心配しているわけでございます。

 そこで、まず第一の質問は、総理にお伺いしたいんですが、この補正予算を提出する意義、目的について、簡単で結構ですので、補正予算の意義をお話しいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回、昨年の台風あるいは集中豪雨、さらには新潟県中越地震等、多くの国民がこの被害に襲われました。そういう中で、被災者の救援あるいはその地の復旧復興等、その手当てをするための費用、これを早急に計上して被災者の方々の支援に役立てなきゃいかぬということで、今回補正予算を計上したわけであります。

 今、多くの地域でいまだに困難な生活を余儀なくされている方がたくさんおられますので、こういう方々の要望をよく踏まえながら、しかるべき予算を計上して、今後の復旧復興に生かさなきゃならないということで補正予算を計上したわけでございます。

与謝野委員 この補正予算は、災害対策のほかにいろいろありますけれども、新たな国債を発行しているわけではなく、手持ちのお金の範囲内でやりくり算段しているわけですが、財務大臣にお伺いいたしますけれども、どうやりくり算段したのか、その辺を国民に説明していただきたいと思います。

谷垣国務大臣 やりくり算段と言っていただきましたけれども、このたびこの規模の補正予算を出しますについては、やはり大分一時よりも景気が回復してきたということがございまして、ある程度税収が上がってきたというようなこともございました。それから、過去むだなことを排除して、やらなくていいというようなことも出てまいりましたので、そういったことを全体まとめましてこういうような補正予算案となったわけでございます。

与謝野委員 新潟で地震が起きまして、それから三カ月たって、今は被災地の方々は、雪のシーズンということで大変苦労されているわけでございます。

 新潟については、いろいろな手持ちの政策手段を動員して、被災地の方々の御不自由をなるべく少なくするということで政府も与党も努力をしてまいったわけでございますが、新潟県に対する復旧復興支援、今までの取り組み状況、また今後、これから追加的にどうするのかということについて担当大臣にお伺いしたいと思います。

村田国務大臣 新潟県中越地震に対しましては、発災後、私ども、応急対策のために非常災害対策本部というものを立ち上げまして、さまざまな支援をやってまいったわけでございます。

 その中で、次の段階として、被災地の復旧復興対策について支援を行わなきゃいけないということで、激甚災害の指定というものを行いまして、それで国からの補助金のかさ上げ措置を図ってきたところでございます。

 その意味で、そうした措置の内容が予算化されて今回の補正予算の中に入っているわけでございまして、私どもとしては、この補正予算が速やかに成立いたしまして、中越地震の災害地の復旧が速やかになし遂げられることを期待しているところでございます。

 なお、今委員が指摘されましたように、現地は非常な豪雪地域でございますので、そういう意味で、その雪解けの事態も見届けながら、新潟県も復興プランというものを今固めているところでありますので、そういったことも参考にしていきたい、こういうふうに考えております。

与謝野委員 そこで、国土交通大臣にお伺いしたいんですけれども、台風も随分たくさん日本列島を直撃し、また集中豪雨もありまして、現地の方にお伺いしますと、やはり堤防等をきちんと整備してきたところはなかなか決壊しなかった、整備がおくれていたところは決壊したということで、今回の災害復旧プラス、災害に備えるいわゆる公共事業というのはやはり大切なのではないか。

 百年に一度、三十年に一度とか、いろいろな災害の発生の確率はありますけれども、災害に備えて、例えば河川整備等について、国交大臣としてどのように今お考えになっているかを明らかにしていただきたいと思います。

北側国務大臣 御指摘のように、昨年は豪雨災害また台風被害が重なりました。それを受けまして、私の方で、これまでの豪雨災害対策、これをもう一度総点検しましょう、見直しをしようということで今やらせていただいておるところでございます。

 まず、中小河川においてのはんらんが多かったわけでございますが、この中小河川につきましても、堤防の整備につきまして、優先順位というものを明確にしてしっかり整備をしていこうということで、例えば、堤防がない地域について早期に堤防をつくる、また、幅や高さが不足している堤防の拡幅、かさ上げ、そういう優先度の高いところから今重点的に堤防整備を進めていこうということで進めているところでございます。

 また、中小河川の中で、中小河川もたくさんあるわけでございますが、特に治水の観点から重要と思われる約二千の中小河川につきまして、堤防点検・対策ガイドラインというものをつくらせていただきまして、各中小河川のいわばカルテというものをつくらせていただこうということで、市町村長の皆様と御協力をしながら今進めているところでございます。

 こういうハード整備もしっかり進めるとともに、ソフトの面もやはり大事だと思っておりまして、専門家の方々の御意見もちょうだいしながら、例えば、中小河川においても、洪水予測精度を向上する、いち早く災害の情報、洪水の予測情報というものを地域の方々に連絡していけるようなシステムというものを今つくっております。

 さらに、ハザードマップ、中小河川においては必ずしもハザードマップが十分にできておらないんですが、洪水ハザードマップにつきましても今、これから五年間で約二千三百市町村で作成し、公表をお願いしようと思っておるところでございます。

 いずれにしましても、昨年の豪雨災害、台風災害を経験いたしまして、ハード面そしてソフト面、しっかりと整備を進めさせていただきたいと思っておるところでございます。

与謝野委員 それで、村田大臣にお伺いしたいんですけれども、市町村長が住民に対して避難を指示したり避難の勧告をしても、なかなか末端のところまで情報が行かないという問題が今回生じたのではないかというふうに私は考えておりまして、皆さん避難をしてくださいということがすべての住民に伝わるようにすることが犠牲者を少なくするあるいは被害を少なくするという大事なところだと思うわけですが、今そういう対策はお考えいただいているのでしょうか。

村田国務大臣 今委員から御指摘のございましたように、夏の集中豪雨、それからその後相次いで上陸いたしました台風、それから中越地震、そういう災害の中で不幸にして命を落とされた方々の多くがお年寄りであった、こういう現実がございました。

 そういう現実を踏まえまして、これは総理からも御指摘をいただいたところでございますけれども、一つは、今御指摘なさいましたように、避難勧告等の伝達のやり方、これに問題はないかどうか、それからお年寄り等、高齢者等の、災害のときに避難に助けを必要とする要支援者、こういう方々の避難のあり方についてどうすべきか、そういう課題がございました。

 そういう課題を前にしまして、十月から私どもとしては検討会を立ち上げまして、昨年の末までに骨子を取りまとめました。

 その内容は、一つは、伝達方法につきましても、まずお年寄りにつきましては、もっと前段階、今は避難勧告、避難指示ということでレベルアップをしていくわけでございますが、その前に、そういう避難に時間を要する方々のために、まだ名前が定まっていないわけですけれども、避難準備勧告みたいな、そういう制度を設けたらどうか、そういう提案が一つ。三段階になるということですね。

 それからもう一つは、お年寄りなんかについては、これは市町村によりまして先進事例もございますけれども、一人一人、だれがその地域でそのお年寄りを助けて避難するか、そういうプランというものをつくっていくということが必要ではないかという指摘がありまして、その骨子を昨年末まとめたところでございます。

 今、年度内に向かいまして、こうした骨子を中心に、一つは、市町村長さんが、いろいろな気象情報、例えば豪雨の状況とか川の水位とか、そういう情報をもとに、いつになったらその指示を出すのか、勧告を出すのかという判断基準というものもきっちりと教えてやらなきゃいけないということも含めまして、年度内に、私どもとしてはそうしたマニュアルなり、あるいはお年寄り等を避難させるガイドラインみたいなものを示していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

与謝野委員 そこで、外務大臣と防衛庁長官にお伺いしたいんですが、日本としては、国際協力の中で、人も派遣し、また資金も提供し、また将来は津波の警報技術等も提供するということを今やろうとしておりますけれども、町村外務大臣に、日本としてこの種の問題にどう取り組んでいくのかという、その国際協力に対する姿勢、また、こういういろいろな国が共通してこうむった大きな災害、これに対して、日本の政府として、あるいは日本の国としてどう取り組んでいくのかということについて、その基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 今回の未曾有の災害ということでもあり、また、私ども自身が、先ほど委員お話しのようにいろいろな災害の経験がある、そういった知見も生かすことができる、同じアジアで起きた事件だ、こういうことでありまして、政府全体でこれはしっかり取り組もうという方針でございます。

 一月六日の日にインドネシアで、津波サミット、結果的にはそういう名前になりましたけれども、そこで、日本が会議全体のイニシアチブをとるというような形で、全体の資金協力の規模、あるいはその内容、あるいは津波の早期警戒警報システムの構築についての日本の貢献といったような面、さまざまな面で、日本がこれから一生懸命やっていこうではないかという基本的な考え方を小泉総理から述べていただきました。各国からも、そのとおりだというような賛同があったところであります。

 今後、いろいろなこういう災害があり得ると思います。その際に、日本は本当に、災害経験国としてこうした問題については今後全力を挙げて取り組んでいく、各国をリードして引っ張っていく、そういう役割を今後とも果たしていきたい、かように考えております。

与謝野委員 インド洋に派遣されていた自衛艦がその帰途に、たまたま地震の、あるいは津波の被害地のそばを通るということになって、緊急にいろいろな捜索活動に携わった。その後、自衛隊の方々が現地に赴いているわけですが、現在の自衛隊の活動状況について、大野防衛庁長官から御報告をいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、昨年のスマトラ地震・津波の際に、御指摘のとおり、たまたまシンガポール沖を海上自衛隊の護衛艦が通過しておりました。私どもは、タイからの要請をいただいて、直ちに現地に派遣をいたしました。そして、五十七体の遺体を収容して、タイから大変感謝をされた次第でございます。

 今、さらにインドネシアの方から要請をいただきまして、約九百人に及ぶ自衛隊員が現地へ派遣されております。

 その主な仕事というのは、第一は医療支援業務であります。防疫、治療等でございますけれども、そういう防疫、医療支援業務が一つ。それから運送業務でございます。運送業務の方は、C130を一機出しております。さらに、ヘリコプターを五機出しております。そのうち既に二、三機は稼働している、こういう状況で、いよいよ本格的に取り組んでいる状態でございます。

 以上でございます。

与謝野委員 そこで、こういう国際協力をして、他の国の人々に自分たちが持っているいろいろな能力や手段を提供するというのは国民的な支持があると私は思っております。こういう他の国の人々が困難に遭遇したときにやはり我々としてはできるだけのことをする、これが世界の信頼を獲得できる一つの重要な道であると私は思っておりますので、これからも政府におかれましては格段の御努力をしていただきたいと思っております。

 そこで、私は一般的な質問をいたしますが、国民は今、国の財政はどうなるのか、それから、日本の経済がよその国にどんどん負けていくんではないか、あるいは、我々の社会保障制度が本当に持ちこたえられるのか、持続可能なのか、こういうことを非常に心配しているわけです。

 その中でも、谷垣財務大臣にお伺いしたいんですけれども、小泉政権になりましてから、公共事業も抑制し、なるべく国債を発行しないようにという最大限の努力をされてこられましたけれども、それでも三十兆を超える国債を発行しないと予算を組めない、これもまた現実でございます。

 一方、政府の考え方は、二〇一〇年の初頭、今は二〇〇五年ですから、五年から十年ぐらいの間に基礎的収支をバランスさせよう、いわゆる借金のことは除いて、その年に入ってくる国の歳入でその年の借金以外の歳出を賄おうというプライマリーバランスを達成するんだ、こういうふうに言っておられますけれども、前にも谷垣大臣にお話ししましたけれども、その道筋が本当には我々よくわからない。

 どういう道筋で二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスを達成するのか。それから、大臣として、相当気合いを入れてそういう方向に進まないとなかなかそういう目標は達成できないんじゃないかと思うんですが、谷垣大臣がお考えの、それは厳密なことは恐らくないと思うので、大体こういう道筋で進んでいかなければならないというそのアウトラインをお話しいただけないかと思うわけです。

谷垣国務大臣 今与謝野委員がおっしゃいましたように、日本の財政が二十一世紀に持続可能なものになっていくのかどうかというのが国民の心配の根源にあるものだと思いますし、それがきちっとできませんと元気も出てこない、活力も出てこないということではないかと思います。

 それで、今与謝野先生が御指摘になりましたように、ことし平成十七年度の予算案をこれから御審議いただくわけですが、相当体質の改善に努力したつもりでございますが、それでも予算の四一・八%は国債、つまり借金に頼らなければならないという姿でございます。

 それから、今まで随分借金を重ねてまいりましたので、平成十七年度末、国及び地方の長期債務残高が七百七十四兆円に達すると見込まれておりますので、これをこのまま手をこまねいて放置しておりますと、経済の活力を阻害する、経済の健全な成長にも足かせとなってくるのではないかと思います。

 そこで、私どもが目標としておりますのは、二〇一〇年代初頭に、おっしゃいましたように、その年にいただいた税金でその年の政策を打っていく、つまり、ツケを後の世代に残さないようにしていこうということでいろいろ取り組んでいるわけでございます。その際に、昔から入るをはかって出るを制すというふうに申しますけれども、結局、歳出面をどうしていくかということをまず考える必要があろうかと思います。

 その際に、歳出項目の大きなウエートを占めておりますのは、このように高齢化が進んできております、やはり社会保障というものが非常に大きい。それから、三位一体ということで取り組んでまいりましたけれども、国と地方の関係というのも非常に大きな支出項目。それと借金の利払い費というのを合わせますと、一年間の予算のうちの大体六七、八%になっているのではないかと思います。したがいまして、ここにメスを入れていかなければいけない。やはり、社会保障を身の丈に合った持続可能なものにしていくという努力を徹底的にする必要があろうかと思います。

 それから、国と地方の関係、これも三位一体ということで取り組ませていただいておりますけれども、地方の権限を高めていくと同時に、私どもの視点でいえば、乏しい経費を一番切実なところに回して有効に使っていただくという体制を整えていかなければいけない。それから、それにあわせて税も考えていかなければなりませんのは、一つは、全体が元気がなくなってはなかなかそういう体質の改善もできませんので、あるべき税制というものをつくって、経済の活力も高めていくというような視点も必要ではないかというふうに考えております。

 その上で、これだけ高齢化が進んでまいりますと、高齢化の必要な支出というものはどうしてもございますから、歳出カットだけでやろうといたしますと、本当に必要なところになかなか金が回っていかないと申しますか、バランスも悪くなってくるわけでございまして、やはり歳入と申しますか、歳出歳入両面からバランスをとっていくということが必要ではないかと思います。

 そこで、今度は税の方をどうしていくかということになるわけでございますけれども、まず、今私どもは、重点強化期間というのは、平成十八年度末まで重点強化期間ということにいたしておりますが、その中で、いろいろな、これからの公共サービスがどのぐらいの水準であるべきかということは徹底的に議論をし、また見直すべきものは見直していく中で、ではその公共サービスを支える税のあり方というのはどういうものであるかということもあわせて議論していかなきゃならないんだろうと思います。

 そういう中で、平成十七年度、十八年度は、先ほど三位一体ということを申しましたが、所得税から地方住民税に本格的な税源移譲をして地方の財政の骨格もつくっていかなければならないわけでありますけれども、十八年度に国と地方の所得課税のあり方というものを徹底的に見直していく必要があるだろうと思います。

 それから、平成十九年、ここをめどにいたしまして、先ほど申しましたような、これから必要な行政サービス、特に社会保障というものがどうあるべきか、その負担というものはどう国民に公平に担っていただくかというようなことを議論させていただくと、おのずから消費税をどうするかという課題が出てくるのではないかと思っております。したがいまして、そのあたりを含めて、そこは平成十九年までに結論を得られるようにいろいろ議論を詰めていくということではないかと思います。

 こういった、歳出歳入それから全体の体力を強くしていって、税収も自然にふえていくということも視野に入れながら、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していく、こういう道筋をつけていくべきではないか、このように考えております。

与謝野委員 私は、倹約だけで日本の財政が回復するともとても思えない。今谷垣大臣言われたように、増大する社会保障費をどう考えていくのかという問題もありますし、所得税、法人税、消費税を含めた税体系全体の中で歳入増をやはり考えなきゃいけない。

 それともう一つは、やはりこれは、地方の財政というものもそんなに豊かではないんですが、地方にも御協力をいただかないと国の財政はうまくいかない。特に、国から地方に地方交付税等の形でお金が行っておりますけれども、たしか、昨年十一月、十二月にかけて、谷垣大臣は地方交付税は七兆円ぐらい上げ過ぎだということを主張されたんですが、その点について今どういうふうにお考えか、お伺いしたいわけです。

谷垣国務大臣 与謝野先生にも大変大きなお力で御指導をいただいた三位一体の改革でございますけれども、この改革の目指すところは、もちろん、地方でなすべきことは地方でやっていただく、権限を高めていくということもあります。それから、財政をお預かりする私の視点からいいますと、乏しい金でございますから、有効に使わないといけないというのはこれからの要請だろうと思います。

 そのときに、要するに、東京の中央で判断するよりも、地方で、うちの地域ではこれをやると一番よくなるんだというような切実な判断もお願いしなきゃならないという視点が多分、この三位一体、地方分権の考え方の中にはあるんだろうと思います。そして、そうやって乏しい資金を有効に使っていくとなると、当然、国も地方もむだなものを省いてスリム化をしていくという視点がないとやっていけないということではないかというふうに考えております。

 昨年秋に私が申し上げましたのは、昨年の段階でございますが、地方財政計画というのを毎年つくるわけでございますけれども、その歳出と歳入に七・八兆円のギャップ、これは平成十六年でございました。そのギャップというものはやはり埋めていかなきゃならないわけでございますけれども、去年も私が申しましたのは、二年ぐらいかけてこの七・八兆円の差額というものを埋められないかということを提言申し上げたわけでございます。

 それで、実は、七・八兆の差が平成十七年度の地財計画では四・三兆まで圧縮できております。これは、むだを省いたりいろいろな御努力を麻生大臣のもとでしていただきまして、二年間でやるというところまではいっておりませんけれども、七・八兆ありましたものを四・何兆台に圧縮したというのは、それなりの三位一体の努力というものが形になってあらわれてきているのではないかと思います。

 しかし、今後とも、地方財政計画をつくるに当たっては、透明性、説明責任がある中でむだなものを排除していく、これは地方も随分努力をしていただいているわけでありますけれども、そういうむだを排除していくという努力が必要ではないかと私は考えております。

与謝野委員 もう一つ、税のところを考えざるを得ないという御答弁があったわけですが、法人税、所得税、消費税、それぞれ歴史がある税でございますけれども、谷垣大臣は、消費税と社会保障費、これは小泉総理の本会議の答弁の中にも出てくる話ですが、その関係については、別にここで約束していただく必要はないので、大体どういうふうにお考えになっているのか、そのことだけお伺いできますでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、これからさらに高齢化が進む中で、社会保障経費、どうするか、どうしてもそれが増大していくという圧力がございます。それを国民の間にどう公平に負担していただくかという観点に立って考えますと、いろいろな税、それぞれ性格がありますけれども、恐らく消費税というものが社会保障費用を広く公平に負担していただく観点では一番適合したものではないか、多分、これはほとんどの方がそのようにお考えなのではないかと思います。それは、私もそのとおりだと思います。

 ただ、消費税というものは、ある意味では非常に幅広く使える税制でございますから、財政を再建していく上で、また社会保障だけではなく、消費税というものはどう位置づけを与えるべきかということもあわせて議論をしていかなければならないのかなと思っておりますが、これから幅広くいろいろな形での御議論をお願いしたいと思っております。

与謝野委員 そこで、社会保障費がたびたび話題になっておりますが、尾辻厚生労働大臣にお伺いしたいのです。年金、医療、介護等、いろいろ毎年、制度改正をしたり、お金を上げたり給付を下げたりということをやっておりますけれども、尾辻大臣の個人的なお考えで結構なんですけれども、日本の社会の将来を考えた場合、どのぐらいの国民負担率の社会にしたら、国民の活力も失われない、またその制度自体も持続可能か。

 例えば、北欧に参りますと、税と社会保険料で収入の四分の三、七五%近く取られちゃう。アメリカに参りますと、また国民負担率は三〇%台。ヨーロッパ、例えばイギリスなんかは大体五〇前後、フランスは意外に高くて六五%ぐらい。こういうことなんですが、日本の社会の将来を考えた場合、日本の社会に合った国民負担率と申しますか、国民の活力を失わない、なおかつ社会保障制度自体は続けることができる、その折り合いというのは何%ぐらいというふうにお考えになっているでしょうか。

尾辻国務大臣 大変難しい御質問をいただきました。

 まず、骨太の方針にどう書いてあるかといいますと、これはもう釈迦に説法みたいな話になりますけれども、例えばというまくら言葉はついておりますけれども、例えば潜在的国民負担率五〇%に抑える、そういうものを一つの目安にすると書いてございます。

 ただ、それは政府の方針でありますからそのとおりでもございますけれども、私ども社会保障をお預かりする立場からいいますと、今の仕組みで申し上げますと、社会保障に係る経費というのはほとんど義務的な経費でございますので、それを積み上げさせていただくということが一番大事なことだというふうに考えております。

 そうした中で、改めて、ではという、その一つの、何か政府全体の支出の中で社会保障の占める割合を示すものがあるのかということになりますと、今まさにそのことを社会保障の一体的見直しの中で御議論いただいておるところでございまして、そうした御議論を待ちたい、こういうふうに思います。

与謝野委員 実は、昨年、年金法案が衆議院を通りますときに、自民、公明、民主の間でいわゆる三党合意というものがなされて、私どもは三党がきちんと国会内で協議をするものだと思っておりましたが、それがいまだにスタートしておりません。まことに私は残念でありますし、やはり公党間の約束というのはきちんと履行されるべきものだと私は思っております。

 今国民は、少子高齢化社会を目前にいたしまして、年金、医療、介護、これらについては本当に持ちこたえることができる制度なのか、持続可能かどうかということについて非常に心配をしておりまして、そういうものに対する将来像をきちんと描くということは、与野党共通の、私はいわば責任であると思います。

 そこで、国会内の三党協議、これがまだ行われておりませんけれども、社会保障制度というのは一つの制度を改革しただけではだめで、我が党も党内では、年金、医療、介護とばらばらに検討するのではなく、一体的に制度を検討し改革をしていこうということに今なっております。

 そこで、総理にお伺いしたいんですが、私どもとしては、あの与野党間協議はなるべく円満な形で三党合意に基づいてスタートさせるべきだと思っておりますが、それについての総理の御感想をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私どもは、議論を重ねてようやく自民党、公明党、民主党、お互いこの年金改革を含めた社会保障、党派を超えて協議しようという合意ができた。そこで、各党立場が違うし意見も違うんだから、協議を進めて、いい結論を出してほしいということで、この合意を尊重する立場でやってまいりました。今でも、せっかくできた三党合意ですから、尊重することに変わりはないんです。

 どういう形がいいかというのは、それはせっかく三党合意された方々で各党で協議していただく。どこの場でやるのか、どこから先にやるのか。年金を先にやるのか、医療を先にやるのか。それはそれぞれの考えがありますから、まずこういう前提条件じゃなきゃだめだというのが来るわけでありますが、これをしないと協議に入れないというんじゃなくて、そこまで協議しようということになったんですから、その協議の場で、我が党はこう考える、我が党はこう考える、出して進めた方がはるかに私は建設的だと思うんです。

 まず審議拒否する場が国会ではないんです。審議するのが国会の場なんです。そういう点から、我々は胸襟を開いて、今の意見は違うけれども、意見を開陳しながら、よりよい成果を目指しましょうということでありますから、できるだけ早くその協議は始めた方がいいと思っております。

与謝野委員 そこで、もう一つ国民が心配しておりますのは日本の経済のことですが、まず竹中大臣にお伺いしたいのは、大臣は現時点での日本の経済の状況をどう認識されているのか。ことし一年間の、あるいは来年まで含めて、日本経済の道筋をどういうふうにお考えになっているかということをまずお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 お答え申し上げます。

 日本の経済は、二〇〇二年の最初からようやく景気の回復を始めました。その間、踊り場的状況もあったのでございますけれども、それを脱してさらに回復を続けて、約三年間、景気の回復過程にあるというふうに認識をしております。しかしながら、ここ半年ぐらいは再び、昨年の四―六月期ぐらいにアメリカの消費が落ち込んで、この背景には原油高というのがあったわけでございますけれども、再び踊り場的な状況になって、幾つか弱い動きも見られている、そのような状況であると思っております。

 しかしながら、ここから先、このまま腰折れしていくのかというと、私たちはそのようには考えておりませんで、再び回復の過程に入っていけるというふうに思っております。幾つかの要因はございますが、世界経済全体が非常に順調な流れの中に本年もあるだろうということを多くの専門家が見通している。

 実は、ここから腰折れするか先に上に行くかということに関して、民間のシンクタンクの予想なんかも、八割ぐらいは上に行くだろう、二割ぐらいは下に行く懸念があるというふうな見通しをしているようでございますけれども、我々も基本的には、しっかりと経済を運営することによってそのような回復過程をたどることが可能であるというふうに思っております。ぜひ、しっかりとそのようなシナリオを実現していきたいと思っているところでございます。

与謝野委員 そこで、中川経済産業大臣にお伺いしたいんですけれども、最近、東南アジアの国々あるいは中国、韓国を見ていますと、どうも向こうの方が頭もよさそうだし働き者だしという、そういうふうにだんだん心配になってきて、日本の経済の中でも得意とした分野がどんどん失われていくんじゃないか、どんどん押されぎみになっていくんじゃないか。これは文部科学大臣にもお伺いしなきゃいけないんですけれども、どうも日本の学力も何か落ちてきたということで、日本の将来に非常な心配が出てきております。

 日本の経済がよその国の経済に負けない、また日本の社会の豊かさを維持するためには、やはり競争力を持った産業が必要だというふうに考えておりますけれども、国際競争力に関して、中川大臣あるいは経済産業省はどういう取り組みをされようとしているのか、それについてお伺いしたい。

中川国務大臣 今与謝野委員御指摘のとおり、日本は物づくりで世界と、貿易を通じて日本の富あるいはまた世界にいいものを供給するということでやってまいりましたけれども、今後もそういう方向でやっていかなければならないと思っております。

 そういう中で、特にここ十数年、景気低迷の中で、企業の研究開発投資でありますとか人材育成投資に対して、どうしてもそれが不十分であった。したがって、今御指摘のような活力のある近隣諸国を初めとした多くの国々との競争の中で、何としても勝ち抜いていかなければならないということで、経済産業省が昨年の五月に新産業創造戦略というものを取りまとめまして、総理の御指示、御了解のもと、政府の方針というふうにさせていただいたところでございます。

 具体的には、世界の競争の中で勝てる新しい産業分野、あるいは技術基礎分野と言ってもいいんでしょうけれども、燃料電池でありますとか情報家電でありますとかロボットであるとかコンテンツ、あるいはまた国民生活において必要な環境・エネルギーあるいは健康・福祉、ビジネス支援、そしてまた地場の伝統技術をさらに生かしていけるような活性化、あるいはまた食といった伝統的な地域の大事なもの等を頑張っていこう。国の内外でこれを、総理もよくおっしゃっておりますが、日本の食が今世界に大変に理解をされ、評価をされているということなんかも、ぜひ新産業の中で位置づけていきたいと思っております。

 そのために、突き詰めてまいりますと、その戦略、最後は人づくり、今与謝野先生がおっしゃるとおりでございまして、人づくりであると同時に、新技術をどうやってつくっていくかということについての体制づくりということになりますと、人づくりと、例えば知的財産権の保護といった問題も必要になってくると思います。

 したがいまして、この新産業創造戦略につきましては、この後御審議いただきます予算の中にも、経済産業省だけでもこの関連で一千三百億円の予算をお願いしておりますし、あるいはまた、中小企業にも十分配慮をした人材育成のための投資減税といったものも税制の中でお願いをしております。

 あるいはまた、不正競争防止法で、企業秘密あるいはまた知的財産の保護の強化というものもやっていきたいと思っておりますし、さらには、新技術をミックスした形で新しい事業を創造しよう。これは特に中小企業でありますが、新事業創成のための企業連携を育てていくためのいろいろな税制あるいは補助金、あるいはまたいろいろなアドバイス等も含めた支援等々もやっていかなければならないと思っております。

 もちろん、企業だけが頑張ってもだめでありますし、大学だけが、あるいはまた個人が頑張るだけでも限界がございますので、産学を柔軟に、スピード感を持って、そういう最大限の能力が引き出せるようにしていくように政府としてバックアップをさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、本当に、最後の日本のとりで、重要な財産は人でございますので、経済産業省としても、特に産業関係の面を重視いたしますけれども、人づくりというものに全力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。

与謝野委員 それとの関係で文部科学大臣にお伺いしたいんですけれども、文部科学大臣は、ゆとり教育というのはちょっと行き過ぎかなということで、少しブレーキをかけておられるように見えるわけですが、学力も低下しているし、ゆとりを与えれば勉強するか、物を考えるかといえば、やはり遊ぶ方が楽しいわけですから。

 今中山文部科学大臣は、今まで文部科学省がゆとりという言葉を使ってきたんですが、それについてどういうふうにお考えなのか、またどういう方向にかじを切っていかれるのか、その点についてお伺いしたいと思うんです。

中山国務大臣 今中川大臣もお答えいたしましたけれども、まさに知的な大競争の時代に入っている。中国とか近隣諸国が本当に目の色を変えて学力向上に取り組んでいるわけでございますけれども、昨年秋に出ました国際的な学力調査の結果によりますと、日本の子供たちの学力が低下傾向にある、このことは認めざるを得ない、また深刻にとらえなきゃいけない、こう思っております。

 それ以上に大変なのは、要するに、日本の子供たちが勉強しなくなった。あるいは、何のために勉強しなきゃいかぬのかという動機づけといいますか、学習意欲が落ちてきているのじゃないかということが心配でございまして、これまで、いわゆるゆとり教育という名前で呼ばれてきました。知識を詰め込むだけではなくて、その基本的な知識を生かして自分の頭で考えて判断して行動する、そういう人間力といいますか、たくましい子供たちを育てようということだったんですけれども、どうもその本来の趣旨に合わないような結果が出ているということについてどう考えたらいいのか。

 今、私どもは、とにかくまず学校現場に出かけて、学校の先生方とか保護者がどういうふうに考えているんだ、今子供たちがどういう状況にあるんだということをしっかり踏まえた上で、まさにタブーを設けることなく、どうしたらもう一回日本の子供たちの学力が世界一に復活できるか、そういう観点から教育全般について考え直そう、そういうことで取り組んでおるところでございます。

与謝野委員 伊藤金融担当大臣にお伺いしたいわけですが、一応不良債権の額も、総額も大分減ってまいりましたし、大手都市銀行の経営の健全性というものも一応確保されている。また、地方でまだまだ改善の余地はあると思うんですけれども、全体として日本の金融システムは健全性を一歩も二歩も回復したと私は思っておりますが、伊藤大臣は現在の日本の金融システムの健康状態をどういうふうにお考えになっているか、また、これからどういうことをしなきゃいけないのかということについて、お考えをお伺いしたい。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 不良債権問題は、経済構造改革を進めていくに当たっての最大の関門であり、政府といたしましても、金融再生プログラムに基づいて不良債権の正常化に向けて努力をしてきたところであります。

 現在、半減目標に向かって順調に進捗いたしているところでございますので、この目標を達成していくために、改革の手綱を緩めることなく、一生懸命さらなる努力というものを続けていかなければいけないというふうに思っております。

 また、主要行だけではなくて、地域の金融機関、中小の金融機関においてもリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの諸施策を着実に実施することによって、全体として改革は進捗してきているというふうに思っておりますが、ペイオフ解禁拡大を控えて、さらに経営基盤の強化に対する取り組みというものを進めて、そして、預金者の皆様方に経営の改善が進んでいるんだということをわかりやすく説明していく、そのことも非常に重要なことではないかというふうに考えております。

与謝野委員 小池環境大臣にお伺いしたいんですが、日本は環境問題では世界に相当貢献できると思いますし、また、環境については日本は相当誇るべき実績を持っております。最近、小池大臣のお考え方の中で、やはり外来種の規制をやらなきゃいけないというお考えが出てきたようで、私は、ブラックバス等の規制というのは、外来種が余りはびこるというのは好ましくないと思っておりましたので、大変立派な御決断だと思っておりますが、それについて大臣の御見解をお伺いしたいと思うんです。

小池国務大臣 我が国の自然を守っていく、生態系、大変複雑なものがございますけれども、やはり国の意思として、こういった外来生物をこれからどのように扱っていくのか、それのメッセージを伝えていくという必要があるというふうに思った次第でございます。

 これからも審議会の方でしっかりと御審議を続けていただきたいと思っております。

与謝野委員 この国会にはまだ郵政民営化法案等重要な法案が政府から提出される予定になっておりますけれども、政府におかれましては、ぜひ国民や国会の意見をよく聞いていただいて、そして、本当に真に国民のためになる郵政改革をやっていただきたい、このことを御要望申し上げまして、私の質問を終わります。

甘利委員長 この際、金子一義君から関連質疑の申し出があります。与謝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。金子一義君。

金子(一)委員 自民党の金子一義でございます。

 村田大臣に防災の関係で、まず今回、新潟、新潟だけではなくて全国各地区、台風の被害に多くの方が遭われまして、お亡くなりになられた方も大勢おられます。お悔やみを申し上げますとともに、お見舞いも申し上げます。同時に、市町村の役場の人、それから総理以下、防災大臣以下、中央官庁の方も、今回補正をおまとめいただく過程で大変な御努力をいただいたと思っておりまして、皆様方にも御礼を申し上げます。

 総理、ボランティアの方というのはすごいですね。今度の、スマトラの話も出ましたけれども、国内でも、新潟もそう、私の地元でも相当死者が出る被害者が出ましたけれども、それでもボランティアがみんな来てくれる。五十センチ床上浸水、床上と床下というのは天国と地獄なんですけれども、二週間で、ボランティアの皆さんが来てくれて、何とかもう一遍住めるようになるというような話も随分伺いましたけれども、こういう、日本でもボランティアの方々がどんどん全国で活躍してくれる、このことは本当にうれしく思っております。

 村田大臣、与謝野先生から御質問がありましたので重複は避けます。補正予算と本予算で大体今度の災害については大方のめどが、予算としては盛り込まれているというふうに伺っているんですが、状況はいかがですか。

村田国務大臣 ただいま補正予算を、今御審議いただいているところでございますけれども、私ども、一兆三千六百億円、災害対策にかかわります予算の御審議を提案したところでございまして、それによりまして、今回、一連の災害対策について万全を期したい、こういうふうに考えております。

 平成十七年度の予算につきましても、例年、災害復旧事業費というものを予定しておりまして、これも御審議をいただきたい、こういうふうに考えております。

金子(一)委員 新潟が中心になってきているんですが、四国、兵庫県、三重県、各地区、台風でもかなり被害が出ております。

 それで、村田大臣、こういうところは、今度は激甚あるいは本激甚という指定をされて、そして国のかさ上げ、国がなるべく地方負担を少なくされようという御努力を今回された。どういうふうにそこをされたのか、工夫を今回しているのか。及び、できましたら、国がどこまで補助率を上げておられるのか。もう一つ、あわせて、補正と本予算に入り込んでいるわけでしょう、対策費が。工事は、実際の復旧は一年で終わるわけではないですね。やはり二年かかる、あるいは三年かかる。それは、使い切れない予算というのはちゃんと繰り越せるんですか。

村田国務大臣 激甚災害で積み上げたものでございますが、その激甚災害につきましては、被害額を地元に積み上げて計算をして報告していただくというわけでございまして、通常の場合ですと三カ月ぐらいかかる、こういうことになっておりましたけれども、それにつきましては、被害の想定をして、あらかたの予想値でもって激甚災の指定をさせてもらったというのが、その地元の災害復旧に非常に支障のないようにするという観点から大切なことであった、こういうふうに考えております。

 細かいものについては、例えば、新潟地震につきましては通常の補助率を八割五分ぐらいにするとか、非常に、全体でのそういう一つ一つの積み上げでございますから、私どもとしては、また要すれば詳しい数字は申し上げますが、一番工夫したところは、例えば農業集落排水、これについては激甚災の補助率のかさ上げの対象となっていないということでありますが、そういうものについて拾い上げたということは工夫した点であろうか、こういうふうに思っております。

金子(一)委員 総務大臣、麻生総務大臣、こういう激甚あるいは本激甚で指定されて補助率がかさ上げになった、そういう中で、今度さらに、自治体負担を少しでも減らそうということで、特別交付金を今度の補正でも本予算でも配慮していただいていると伺っております。どんな状況になっておるんでございましょうか。

麻生国務大臣 今回、補正の額の中において、御存じのように、六%の分は自動的に回される分がありますので、それを引きまして、今回の中で、十六年度の国税五税のうちから、自然増収があっておりますので、その増収しました分の中から約六%ということになりますと、七百一億というものが出てまいりますので、災害被害に合わせての対応といたしまして、平成十七年度の特別交付税等々を上乗せしたところということになるんだと思います。

 十二月分ということで既に約七百億、七百一億円ということに達しておりまして、過去五年間の災害にかかわりますこの種の平均は約二百十四億ということになっておりますので、七百億ということになりますと、台風は秋までということになっておるという前提で、地震などというのは別にいたしまして、そういうことを考えますと、災害にかかわる需要額には大体これで見合っているのではないかと思っております。

金子(一)委員 重ねて総務大臣にお伺いして恐縮でございます。

 今ちょっと数字でお答えいただいたんですが、ちょっと地方の皆さん、どういう、おれたち自分たちでどこまで負担しなきゃいけないのかというのがありますので、パーセントでいきます。

 仮に激甚で九〇%、補助率がかさ上げされたと。残り一〇%について特別交付税で九五%出るということになりますと、地方の負担は、残り一〇%の九五ですから、〇・五%は地方で負担をしてくださいよというあらあらの計算になるというふうに考えてよろしいんでしょうか。地方の負担、皆さんがそこは心配されているんです。

麻生国務大臣 これは、ちょっとケースによって違うんですよね、田中さん、ね。これは違うので、これは一律どうという話じゃありませんので……。

金子(一)委員 そのまま立っていてください。

 九〇%、激甚でかさ上げされたと。そうすると、一〇%、地元は本来負担しますね。その一〇%について特別交付税を配慮されていると。そのうちの九五%配慮されているということを事務方から伺ったんですが、そうしますと、単純に計算して、地方自治体の負担は〇・五%だということでよろしいか。(麻生国務大臣「〇・五じゃなくて五%」と呼ぶ)いや、五%。ごめんなさい、五%でいいか。ちょっと、もう一遍確認。

麻生国務大臣 〇・五じゃなくて五%ということで。これは地域によって、場所によって違いますけれども、五%ということになります。

金子(一)委員 わかりました。いずれにしても、かなり今回の災害に対しては国でそれなりの配慮をした、地方は安心してくれ、これを我々は言い切りたいんですね、特に与党としては。

 それからもう一つ、被災者生活支援法。

 村田大臣、今回は、従来全壊でなければだめだった、今度は大規模改修もこの対象にしよう、それから撤去費用も対象にしようと、かなり苦労をしていただいていると思います。ただ、野党からは、そんなのじゃ手ぬるいのでもっと広げるべきではないかという御意見が出ていますが、それに対して、村田大臣。

村田国務大臣 お答えをいたします。

 被災者生活再建支援法につきましては、平成十年にできたわけでございますが、当時は、百万円、対象は家財道具、こういうことだったわけでありますが、昨年の通常国会で、与野党を含めて大変熱心な御議論をいただきまして、まず最高限度額を百万円から三百万円に一つは上げたこと、それから、全壊のほかに大規模半壊、そういう枠を設けたこと、それから、今までの家財道具から、例えば住宅の撤去費用とかあるいは住宅のローンの利子に充てるためのお金とか、そういうものを加えまして、対象も広げさせていただいた、こういうわけであります。

 野党から、民主党からですが、新しい改正案が提出されているということは伺っております。しかしながら、私ども国がやるべき措置といたしまして、まずは被害を受けた公共的なインフラの復旧にお金を使う、こういうことがまず第一だというふうに思います。

 被災者の個々の住宅が損壊するという状態はまことに、被災者にとりましても、私個人から考えても、大変気の毒な状態ではございますけれども、災害に対しましては、特に地震につきましては地震保険でやる、こういうこともできますし、それから、私ども耐震化を進めているという政策的な要請もございまして、そうした観点からなお検討が必要なのではないか、こういうふうに考えております。

 ただ、被災者再建支援法の昨年の審議の過程でも、附則で、四年後に見直す、そういう規定もございますので、そこで皆さん方とともにまた検討してまいりたい、こういうふうに考えております。

金子(一)委員 村田大臣、もう一遍ちょっと重ねて聞きます。

 今あなたが、なぜ民主党のもっと拡大できないかということに対しての答弁は、総理からあなたと同じ答弁を伺っているんですよ、既に。あなたは総理じゃないんだから、もう一歩ちょっと踏み込んで、工夫して答えてくれませんか。

村田国務大臣 やはり、国の税金の使い方といたしまして、例えば災害で家を失ったというケースにおいて、住宅本体について仮に支援をするとしたら、これをどういう政策体系ですべきかということを皆さん方に検討してもらいたい。例えば、大変お気の毒だからということで社会保障的な観点からされるのか、あるいはやはり村おこしという、集落が、そういうコミュニティーがつぶれるからこれをどうすべきかという観点からするのか、その他の観点がいろいろあろうかと思いますので、そうした政策的な、どういう観点から考えていくかということはまず考慮しなければいけないことだと私は考えております。

金子(一)委員 これは昨年、議員立法をつくって、さらに四年後はこれについては見直しをすると。与党としてもこれは責任を持ってさらに議論し見直していきたいと思いますので、村田大臣もさらに工夫をしていただきたいと思います。いじめているわけではありません。

 中川経産大臣、岐阜県に御嵩町、これは今回の災害とはちょっと離れますが、戦後の大事なときに亜炭を掘った跡地があるんです。比較的地表から浅いところで穴を掘られちゃっているんです。時々、これは亜炭を掘った跡の浅いところでの陥没、浅所陥没というんですけれども、これが出てきているんです。

 通産省・エネルギー庁が持っている鉱業災害復旧基金というのがありまして、ここで陥没が起こった後はその事後処理をしてもらっているんですけれども、なかなか防災まで回らない。東海沖地震でいろいろ工夫されている。それから、新宿直下があったらばどうするというようなシミュレーションまで出てきている。放置できない問題が出てきたものですから、今、この地域の問題については、町長、県、防災担当も含めていろいろ御相談をしていただいています。

 この問題について、中川大臣、きょうは回答は要りません。ぜひこの基金の運用については、いろいろ規制もかかっているといいますか考え方もあるようでありますので、弾力的な運用で、ちょっと放置できない状況になってきているもので、ぜひ頭にとめておいていただいて、御検討を進めていただきたい。

 ちょっと中川通産大臣に話しかけたついででありますので、あなた、NHKでいろいろ圧力をかけたのではないかと言われていますが、言い分があればどうぞ。

中川国務大臣 まず冒頭の、金子委員の御地元の、岐阜県御嵩町の亜炭廃坑の陥没に対する基金の問題でございますけれども、今、金子委員御指摘のとおり、基金の当初の目的、これは県に対して国が補助をしている基金でございますが、陥没が発生したときにはその穴埋めをするというんでしょうか、陥没した後の処理をするというのが当初の目的でございました。

 私も、このことを金子委員から御質問いただくということだったので、それでは万が一、浅い地域でもございますので、だれも人がいなくて事故がなければいいんですけれども、万が一、人がいる、あるいはまた住居等々にそういうことがあって、物的、特に人的な災害があった場合にはどうするんだといったら、当初の目的としてはそういうことなんですと。

 もう一方、東海地震に近い地域でもございますから、大きな地震の影響も受けやすいということで、私としては何としても、後になって人災なんということになると、これはもう制度はそうでしたでは説明がつかないということにもなりかねませんので、何とかして、今御指摘のように事前に調査をきちっとやれるようにすべきだというのが私の内部での打ち合わせで申し上げたところでございます。

 いずれにいたしましても、これは、県、そしてまた国とがよく御相談をしていただいた上で、そしてこの基金の目的を変えなければいけないわけです、実際やる場合には。そういうことも含めまして、よく御相談をしていただいた上で、そういうことのないように、多分金子委員と私の趣旨は同じだと思いますので、そういう方向でよく相談をさせたいと思います。

 それからまた、ついでにということでございましたが、それではついでに、できるだけ短くお話をさせていただきますが、今回の一連のことにつきましては、私としては、きちっとした取材に基づいてきちっとした報道をしていただきたいと。当然のことだと思いますけれども、今回のことにつきましてはきちっとした取材ではなかった、少なくとも私に対してはきちっとした取材ではなかった、そしてまた、きちっとした報道ではなかったということを、どうしても申し上げなければいけないと思っております。

 つまり、一月十日、私が地方に出張しておりますときに、突然、朝日新聞の本田さんという記者さんから電話がかかってまいりまして、二〇〇一年の一月三十日の放送について、あなたは政治的圧力をかけましたかというような趣旨の取材でございまして、非常に短時間の、私は講演と懇親の間のトイレに行く時間にそういう電話があったということだったものですから、ほかならぬ大事な日本を代表するマスコミでありますから、電話をいたしまして、しかし、時間がありませんのでちょっとポイントだけというやりとりをやらせていただきましたが、私としては、最初から最後まで何回も、私の記憶にある部分と記憶にない部分、あるいはまた不明な部分がありますということを何回も申し上げながらお話をしたところでありますが、先方は、これはNHK内部での告発に関する問題であって、これに関しての証言があります、証人があります、こうだったんでしょうというような言い方を何回もされました。

 特に、その放送を見たのか見ないのかとか、NHKと会ったか会わなかったか、これは会ったと申し上げました。この件について話をしたかしないか、これもしたということは申し上げました。だれと会ったのか、何日に会ったのか、放送を見たのかということについては、放送を見た記憶はないし、ひょっとしたらビデオだったかもしれないし、はっきり申し上げられません、だれと会ったかについても、正確な人数、それからいつ会ったかも、正確な日付は、当時瞬間的に聞かれて、思い出せませんということを申し上げたんですが、一月十二日の記事としてああいう報道をされたわけでございます。

 四点、私は明らかに事実と違うところをこの際申し述べさせていただきますが……(金子(一)委員「短くお願いします」と呼ぶ)はい、短く申し上げます。

 一点、NHKの方が、当時例年説明に来ておられました事業計画あるいは予算について、先方から、つまり呼びつけたのではない、先方から来たということが第一点、そしてその日付が二月二日であるということが調べてみてわかりました。根拠はいろいろありますが、一番客観的なのは、議員会館の面会証というものを議員会館に調べていただいた結果、二月二日以前には、一月五日から調べてもらいましたけれども、二月二日には会っておりますけれども、それ以前には会っていない、会ったという要するに面会証がない、事務所の記録にもそういうものがないということが一点目、二点目であります。

 松尾さんがいらしたかいらしていないかについても、面会者の名前、それから、人数が三人でございましたので、伊東さんという方と塚田さんという方と三人が来られたということで、松尾さんはいらしておりません。

 それから、政治的圧力をかけたでしょうということに関しましては、これは一月十日の取材のときから、一切政治的圧力はかけておりません、放送法に基づく公正公平な報道をお願いいたしますということは申し上げたところでございまして、いずれにしても、四点については明らかに事実が違いますので、私としては事実訂正と謝罪を今求めているところでございますが、今週中に返事が来るものと思っておりますけれども、今のところ来ていないというのが事実でございます。

金子(一)委員 北側大臣、お願いします。

 今度の台風で、新潟だけではなくて全国各地区で台風の通り道になったところ、鉄道がやられているんですね。道路だけでないんです。JRの四国、谷垣大臣の丹波の山奥、私のところの名古屋と富山を結ぶJR高山線、これは道路と一緒に、富山県側、富山県の岐阜県側、今でも三カ所で寸断されているんですね。

 北側大臣、これはやはりJRも民間ですから、その負担の部分ですね、どうやってお互いに負担していくかという部分が、結構やはり全国で同じように難渋するという部分がある。なるべく早く、大動脈ですから、それぞれ全国の大動脈でありますから、早く復旧できるように、予算が、補正と今回本予算ついても、本当にこの期間中に復旧できるかというのはちょっとまだなかなか見えてこないという部分があります。御指示してやってください。

 もう一つ、ついでに、ついでにが多いんですけれども、総理が社会保障制度の、バリアフリーを、今度バリアフリー化をやろうと本会議でも言われたんですが、いい言葉だと思いますよ。ただ、公共施設のバリアフリーがおくれているところ、結構あちこちでありますよね。

 御茶ノ水駅。御茶ノ水駅というのは乗降客が物すごく多いんですね。だから、多過ぎてエスカレーターができないというんですよ。そんなばかな話があるのかなと。やはり、そういう話をこういう機会にぜひ進めてあげたいと思っておりますけれども、ちょっと意見をお願いします。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

北側国務大臣 最初の御質問のJR高山線でございますが、今約三十八キロにわたりまして運転中止になっている状況でございます。大変な被災状況でございまして、河川それから道路の災害復旧とこの鉄道の復旧とは一体的に実施する必要があるということで、今岐阜県の方と協議をしている真っ最中でございます。

 いずれにいたしましても、重要な鉄道の幹線でございまして、この高山線の全線の早期の運転再開に向けましてJRにお願いをしたいというふうに思っておるところでございます。

 それから、御茶ノ水駅の話でございます。

 御承知のとおり、この御茶ノ水駅というのは非常に乗降客が多い駅でございます。一日に約二十三万人。また、御承知のように、あの駅は周辺に病院がたくさんございます。

 そういう意味で、駅のバリアフリー化を急がないといけない駅だというふうに私は思っておりますが、難しいのは、駅のホームが狭いだとか、それから神田川とビルに挟まれて、非常に構造的にバリアフリー化が技術的に難しいという問題点があるようでございますが、しかし、さることながら、この御茶ノ水駅の乗降客の多さ、また周辺の環境等を考えてみましても、バリアフリー化は急ぐべき事項であるということで、早期にJR東日本の方には計画をつくっていただき、そして早くこのバリアフリー化が実現できるようにお願いをしたいというふうに思っております。

金子(一)委員 御指摘のとおり、病院が物すごく多いんですね。あれだけ病院が多い中で何でバリアフリーができないか、不思議なんですけれども、ぜひ御指導お願いいたします。

 財務大臣、三位一体の関係で、今度地方自治体に財源、予算を、補助金をゆだねる、地方にお任せする。三兆円。そして財源もおおむね三兆円。こういう、地方にお任せするということですね。十七年、八年でそういう姿を描くと。

 数字は結構です、細かい数字はもう聞いていますので。どういう中身のものを地方に今回十七年度ではゆだねるということを、予算の項目をちょっと教えてください。

谷垣国務大臣 今回の三位一体改革の中で、補助金改革というのはその柱の一つなわけですね。それで、これには、補助金改革、平成十七年、十八年度の二年間で三兆円の補助金改革をやろうとしているわけですが、大体中身は三つあるわけです。

 一つは、今金子委員がおっしゃった税源移譲を伴うもの。つまり、これは国がもうやるのをやめて地方にやっていただくべきことだ、だからその財源もお譲りしよう、地方にお渡ししよう、これが一つです。

 それから、もう一つは、今まで国から、悪い言い方をすると、はしの上げおろしまでいろいろ言われて、地方でなかなか裁量が生かされない、自由にできない、こういうような御批判がありました。したがって、地方に全部お譲りするわけじゃないんだけれども、国として使い勝手のよい交付金にしてもっと自由度を高めていこう、こういうものが一つあります。

 それから、もう一つは、これは国で補助金としてやっていたけれども、いろいろ精査してみると、スリム化とかむだを省こうという観点からいえば、もうやるべきではないんじゃないか、やめよう、こういう三つのものがありまして、この三つで合わせて三兆ということであります。

 それで、今金子委員がおっしゃった、地方に、自治体にお渡しすべきものは、やはりこれからもやっていく必要があるけれども、地方の主体性、地方の自主性、こういうものを高める意味で地方でやっていただこうというものが税源移譲になっている。(金子(一)委員「どんな項目」と呼ぶ)

 項目ですか。ちょっとお待ちください。項目は、税源移譲に結びつくものとしては、義務教育費の国庫負担金、これは暫定的な形でありますが、これがございます。それから国民健康保険の国庫負担金、それから養護老人ホーム等の保護費負担金、こういうようなものがございます。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

金子(一)委員 地方に予算をゆだねるということですから、地方が今度は自主性を発揮できる。これは国の補助金じゃなくなっちゃうんですから、それぞれ地方が工夫ができるという部分がそこら辺にあるんだと思います。

 厚生大臣、国保、これは財源ともに地方に譲ると、地方はどういうことができるようになるのか。あるいは福祉の関係で、福祉施設の関係で、今度は地方がどういうことができるようになるのか。

 村上大臣、その後に、今度、地域再生ということで下水道、これを、従来は建設省、農林省、厚生省、環境省というふうにばらばらに省庁横断になっていたものを、今度は村上大臣のところで一括して、地方が使い勝手がよくなるという仕組みをこの中に織り込まれた。

 その点について、まず尾辻大臣、その後、村上大臣、お願いします。

尾辻国務大臣 このたびの三位一体の改革に盛り込まれたものの中から、二点のお話がございました。

 一点が、まず国民健康保険制度の改革についてでございます。これは、都道府県に国の財政調整権限の一部を移譲した上で都道府県負担を導入する、こういうことにいたしたものでございます。

 すなわち、大きく言いますと、国保、国民健康保険の財政は二分の一が保険料でございまして、二分の一が国の負担でございます。この二分の一の国の負担分の、全体でいうと一割、一〇%……(金子(一)委員「いや、何が地方でできるようになったか」と呼ぶ)今それを御説明申し上げておるつもりでございます。

 そこが、従来は、国が直接市町村に対する、国保の保険者は市町村でございますから、市町村に対する財政調整をいたしておった分でございますけれども、そこの一部を都道府県が自分の都道府県内の市町村に対する調整ができるように交付金としてお渡しして、県が独自に調整をしていただく、こういうことにいたしましたから、そこの部分で実情に合わせた運営ができる、都道府県の自由度が増した、こういうことでございます。

 それからもう一つ、地域介護と福祉空間整備交付金のお話がございました。

 これは、従来は一つずつの施設に補助金が出ておりました。すなわち、特別養護老人ホームをつくる、それに対して補助金を出しましょう、こういう仕組みでございましたけれども、今度は、都道府県それからまた市町村に一括して交付金としてお渡しをする。都道府県、市町村は、自分のその地域の全体の、そういった施設をどうするか、大きな施設を一つつくるか、あるいは小さな施設をいっぱいつくるかという、地域全体で、まさに都道府県、市町村の御判断でやっていただくというふうにするための交付金、こういうふうにいたしましたから、ここのところも自由度が増した、こういうふうに考えております。

金子(一)委員 ちょっと村上大臣の前に、尾辻大臣、今度は大臣がそれを、例えば特別養護老人ホーム、地方で地域計画で出てくる。そうすると、その場合に、今までは最低基準二十人以上とかなんとかありましたけれども、それを今度はサテライト方式ということで地域に二つあるいは三つつくっても、その空間、地域としてはいいと。お医者さんの数、看護婦さんや介護士さんの数、これも、今までは施設ごとだったのが、今度は面的に一括して認められるようにするという考え方はあるんですか、ないんですか。

尾辻国務大臣 今、そこまでは考えておりません。

村上国務大臣 ちょっと初めての試みなので、説明させていただきます。

 今、金子筆頭理事から御質問ありました今回の新しい制度は、今まで汚水処理につきまして、例えば公共下水道、集落排水施設及び浄化槽は、それぞれ国土交通省それから農水省、環境省がやっていたわけです。また、例えば道に関しては、道路、農道、林道、それぞれまた建設省とか農水省がやっていたわけです。それから、御高承のように、港湾は昔でいえば運輸省、それから漁港については農水省と、今までそれぞれ補助金等がばらばらであったわけですが、実は戦後初めて、各省間にまたがる補助金を一括しようというのが今回の法案であります。

 今まではそのようにばらばらであったために、これらの施設を一体的に整備しようとする地域にとっては手続面や運用面においてなかなか使い勝手が悪かった、だから何とかしてくれという、地方公共団体からの補助金制度を直してほしいという要望は多々ありました。そういう中で、こうした地方からの提案を踏まえまして、省庁の枠を超えた新たな交付金制度を創設することとして、汚水処理を一括してやる。四百九十億円を今計算しております。

 特に、新たな交付金制度には大きく三つの特徴というかメリットがありまして、一つは、特区室と同じなんですが、予算要望等の手続の窓口が内閣府に一本化され、各市町村長さんがいろいろな省庁を回っていたのが、そのところへ、一口の窓口で済むことになるということです。

 それから、一本化された交付金を活用して、地方の裁量で自由度の高い施設配備ができる。そして、事業の進捗において、事業間での予算の融通や年度間の事業量の変更ができるといういろいろなメリットがあり、地方公共団体にとって使い勝手が格段に向上すると考えております。

 それからもう一つは、金子前大臣や鴻池元大臣が一生懸命やってくれた特区が、非常にいろいろなアイデアが出ています。そういう中で、そういう自主的、自律的な取り組みを進めながら、今の財政状況では、やはり地域の特性を生かした知恵と工夫によるアイデア合戦の時代だと思うので、まさにその特区と絡めて一層地方が活発化することを期待しております。

 以上であります。

金子(一)委員 尾辻厚生大臣、先ほどの私の質問、まだ考えていない、そこまではというお話でしたけれども、せっかくお考えいただいているわけですから、お医者さん、介護士さん、看護婦さん、それもグループとして、全体として考えられるように、ぜひ御検討いただいた方が、同じ施設でも効率的に使えるんです。それをぜひお願いだけしておきます。

 総理、恐縮です。

 新しい、こういう省庁を超えてどんどん規制改革も進む、縦割り行政も進んでいく。今村上大臣も歴史上初めてというお話がありましたけれども、これをさらに進めていかれるために、これも総理が主導して、発言して進めていただいたことでもありますので、ぜひこれがうまく、地方自治体が、やる気のある地方自治体がこれがうまく使えるように、ぜひ今後も御指導いただきたいと思いますが、ちょっと各省にまたがりますものですから、総理の御所見をお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 今回の地方分権に関連するいわゆる三位一体改革については、地方も異論がある中で、地方団体は何回も議論を重ねてよくまとめてくれたと思います。それぞれ、反対、賛成、各論になると出てくる、その中をまとめてきたんですから、私は、この地方案を真摯に受けとめてやるようにと。

 当然、そういう中で、初めて地方の代表にも大臣との協議の場にも出ていただいて、議論を交わして、そして地方も結論においては評価をいただいている。まだまだやるべきこともある、それは、今後のことにつきましても、さらに進展が見られるように努力しようということでありますので、今後協議を重ねて、よりよい、使いやすい、地方の裁量権が拡大するような方向で、来年度におきましても議論を進めていただきたいと思っております。

金子(一)委員 後先になりました。麻生総務大臣、三位一体、これは、国の補助金を地方に使い勝手がよく渡す、財源もそれなりに渡す。もう一つは、国もそうだけれども、地方にもスリム化を求める、これにあわせて地方交付税も見直すというのが三位一体の原点だったと思います。ただ、おととしの十二月、地方交付税一兆円減額と来ちゃったものですから、去年、地方から、何だ、予算が組めないじゃないかという苦い経験を我々したこともありました。

 今度は、十七年度予算について、そこのところ、かなり麻生大臣御苦労いただいたと思います。この地方交付税、今回減額にならない、地方はほっとしていると思います。ただ一方で、何のスリム化を地方に求められたんですか。

麻生国務大臣 昨年と今年度の差というのは、もともと三兆の話、その前に一年ありますので四兆円、三年間で四兆という話だったんですが、簡単に言えば、初年度一兆円の補助金の削減をやったら、税源移譲は四千億しか来なかった。差額六千億は、何だ、来ないじゃないかというところに、さらに三兆やるということになりますと、三兆やったら今度は一兆しか来なかったでは地方中小団体はもちませんので、それで、三兆円の税源移譲は確実にしていただきたいということを総理にお願いして、それでまずスタートしたのが今回非常に大きく事が前に進んだ理由だと思っております。

 その後、補助金を削減するということになりますと、権限の移譲というのは、その権限を持っておられる方々にとりましては、これは力が削減されるのと同じことになりますので、余り希望される方はおられない。したがって、補助金をもらう側の方からどの補助金が要るか要らないかは決めてもらったらどうだという話を申し上げて、結果的にこれも御決断をいただいて、先ほど総理から話がありましたように、地方団体もよくこの点を検討していただいて、最終的に三兆二千億円の補助金削減というのをやられたということだと思っております。

 まだ幾つか今年度に残した分がありますけれども、一応約八割を達成することになりましたので、二兆四千億ということになったんですが、問題は、これから権限を移譲されたら、その移譲された分だけ責任が出てまいりますので、その分はちゃんと、地方は地方を経営するという感覚でやっていただかないと、今までどおりやっておいたら、うまくいかなかったら国で何とかしてと、それはだめですよ、それはおたくの方でやっていただかないかぬということは当然のことなのでありまして、そういったようなことはやっていただきますということです。

 例えば、よく例に引きますけれども、地方は給与が高いではないか、国家公務員に比べてということに関しましては、戦後初めて、ラスパイレス指数というのがよく使われますが、これが一〇〇を切った。初めてのことですが、九七・九まで減っております。一番少ないところで七五%ぐらいのところまで減らしておるところもあります。

 そういたしますと、地方としては、中央に比べて、実は財政という面の、お金のところだけでいえばそういうことになりましょうし、人員の点につきましては、少なくとも、今は治安が悪いということで、県によって、埼玉県等々犯罪発生率が極めて高いところは、警察官一人当たりの県民の負担率が七百何十人、全国平均で五百ちょっとだと思いますので、そういったところでは差がかなりあるのはちょっといかがなものかということもありましたので、警察官、増員をいたしております。来年度は三千五百人増員しているんだと思いますが、三千五百人増員した上で、純減として、人員を一万二千四百十一人純減をしておるというのは、これは地方で皆純減をしておられる、努力をしておられるんだと思います。

 スリム化という意味においては、そういった人件費とかいうようなところもきちんとしておられますし、よく言われます投資的経費につきましても、これは六年連続前年度比マイナス、今年度は四千億円のマイナス等々、いろいろ地方にはスリム化をしていただいているということは、なかなか外に出てこないところですけれども、結構地方に、ただ、金子先生、これはいろいろきのうの本会議の質問でも出ましたように、自転車通勤のやつに通勤手当がついておるじゃないかというような話を含めて、いろいろ地方によって取り組み方に差があることも確かでありますので、そういったところはきちんと個別に対応していかねばならぬ問題だと思っております。

金子(一)委員 小泉総理、今度、四回目の予算、取り組まれるわけでございますけれども、改めてこの構造改革の成果というものを、総理、本会議でもお述べになられましたけれども、どうぞこの場でもう一遍わかりやすくお話しください。

小泉内閣総理大臣 構造改革はこれからも進めていかなきゃなりません。

 当初は、こういう不況の時代に不良債権処理を進めるべきだ、いや違うと、さんざん賛成論者からも反対論者からもそれぞれ批判を受けました。

 しかし、不良債権一つの例をとりましても、どちらについても専門家の間でも議論は分かれてきたことです。こういう不況のときに不良債権処理をやれば、古いのはなくなるけれども、新しいものはどんどんどんどんふえていくよ、企業倒産はどんどんふえますよ、失業者はふえますよ。小泉さんがやっていることは、台風が来ているのに雨戸をあけるようなものだ。かつて浜口雄幸首相の不況のときの政策と似ている、デフレが一層激しくなって、財政破綻、経済破綻になりますよ、恐慌になりますよというような批判を受けました。(発言する者あり)

 今しているじゃないかというやじが飛んでおりますが、そういう認識はほとんど今聞かれなくなりました。やはり経済は緩やかな回復を続けているな。不良債権処理も、額においても約十五兆円減っている。率も、当初は八%台だった。これを四%台にするという目標はもう半年前倒しで実現をできるような状況になってきた。

 失業率、これは二けたになるんじゃないかと、五・五%にいったとき。現実には四%台に減ってきた。有効求人倍率、いわゆる求職、求人の有効求人倍率、これは十年ぶり以上に求人がふえてきた、倍率が上がってきた。そういうことからいって、倒産がふえるふえると。いまだに厳しいんですけれども、二十カ月以上倒産件数は減少している。

 こういうことを、やはり私は、改革なくして成長なしだなと。まず成長ありき、公共事業もふやして、財政ももっと出動して、そして経済を立て直してといいますが、景気をもっとよくしてから改革に取り組めという批判を浴びましたけれども、ようやくここに来て、私は、改革しながらこうして民間主導の景気回復軌道に乗ってきたなと。

 これをさらに地域や中小企業にも浸透させて、より各地域が発展できるような、そして各企業が業績を上げることができるように、そして個人も、やればできるんだなという意欲を持って頑張ってもらうような、そういう形で景気をさらに回復していかなきゃならないと思っております。

金子(一)委員 地域も中小企業も本当に各地区で、おや、こんなところがこんなことをやるのという実例が全国各地区でも、あるいは中小企業でも出てきている。そういう意味で、これまでと地合いが変わってきたのかな、経済全体の、あるいは社会構造全体の地合いが変わってき始めたのかな、これは私、素直な印象であります。

 ただ、自民党の私が小泉総理いい、いいと言うと、何となく、うさん臭いと言う人が必ずいます。ですけれども、しかしOECDも、日本は十年ぶりにいいという表現もつい先般出ておりました。ぜひそこのところを推進していただきたいと思っております。

 文部大臣、学習指導要綱の見直しを促進する気持ちはありませんか。

 最近、特区で小中学校一貫というのが随分出てきたんですよ。特区じゃないとできないんです。例えば品川だけ、例は全国でありますけれども、四・三・二で分けるんですね、六・三制を。そして五年生になったらば、もうクラス担任じゃなくて教科担任が教えられるようにする。そして五年生になったらば、能力のある人は中学一年生の数学も学べるようにできる。

 逆もあるんです。中山大臣のような優秀な人は十歳にして、神童は五年生で中学のを学べる。逆に、私のようなできの悪いのは中学一年でもう一遍五年生の数学を勉強できる、そういう選択もできるようにするんですよね。

 ところが、それはかなりやっていますけれども、現実には学習指導要領というのがありますね、学習指導要領。あれは、かなりもう学年で科目ごとにやることを決めていますよね。小学校四年は算数でいえば面積の計算と分数、小学校五年生になると円周率とか、決めちゃうんですね。

 ところが、今みたいなそういう小中学校の教育を伸ばしてやろう、私みたいなできの悪いのがもう一遍、そのまますっと卒業しちゃうよりも、小学校の基礎数字を学んだ方が結果としていいんですよ。学力向上になっていくんです。そういう学習指導要綱、今特区でやっているものはみんな手探りなんです。学習指導要綱、何しろ文部省怖いですから、だから、逆らわないように逆らわないようにというので、余り深掘りもしない、しようがないから上乗せするとか。だから、そういう意味で、学習指導要綱見直しを促進していくということも、ゆとり教育の大事さというのもあわせて、学力向上という観点からも私は大事だと思っているんです。

 ところが、聞いてみると、来年にならないと検討しないというスケジュールになっちゃっているんですね。前倒ししてやったらどうですか。

中山国務大臣 金子委員には、特区担当、規制改革委員長と、いろいろ画期的な企てをやっていただきましたけれども、まさに御指摘がありましたように、日本の子供たちの学力が低下傾向にあるという中、そしてまた子供たちを取り巻く環境が随分変わってきているという中で、昨年の暮れに、中央教育審議会に、この学習指導要領についても全般的な見直しをしてくださいという諮問をしたところでございまして、今、私ども手分けいたしまして現場の学校に参りまして、先生方や保護者からいろいろな話を聞いておりまして、それをまとめまして、早いうちに中央教育審議会に審議をお願いしたい、こう思っているわけでございますが、その中には、まさにおっしゃるような、六・三制をどうするのかという話も含めて、まさにタブーを設けないで議論していこうということも含まれているわけでございます。

 私どもは、現場の学校とか市町村が創意工夫をして、それぞれの伝統とかあるいは地域の特色等を生かしながらやっていただきたい。とにかく、自分の経験からしても、もう少し勉強すればよかったなと思うわけですけれども、鉄は熱いうちに打てという言葉もありますが、子供たちにとりましては一日一日が非常に大事でございますし、子供のときに受けた教育というのは、これは一生を左右するということから、子供の立場に立って、そのときに最善と思われるような教育を授けていく、そういう観点から、まさにスピード感を持ってこの教育改革に取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。

金子(一)委員 もう何年前になるんですかね、国民教育会議、曽野綾子さんが教育基本法で書いてくれた、教育という川の流れの清冽な一滴、家庭教育、道徳教育を教えるのに何のためらいが要ろうか、あの当時書かれた文章というのは、ますます光り輝いていると思っております。

 ちょっと、きょう新聞を読みましたら、教育基本法改革断念というニュースも流れましたけれども、一刻も早い御提出をされますように、整えていただきますことをお願い申し上げます。

 最後です。ちょっと嫌な質問を文部大臣にします。

 山梨県の教職員組合の政治活動の事件であります。日教組。

 これは、山梨県の県の教育委員会、昨年の十二月に事実関係を発表してくれました。校長会、校長、教頭を含む小中学校の教職員らから組織的に資金を集めた、そして校長、教頭会、資金カンパの要請の伝達、あるいはこれを集めて届けるといった行為が行われた、県の教育委員会がそういう発表をされました。これは、教職員の政治的行為に、違反ではないんですか。

中山国務大臣 今御指摘の山梨県の問題でございますけれども、これは、教育委員会の調査によりますと、校長、教頭らが政治的目的を持った資金カンパの要請を伝達して、集まった資金を政治団体に届けたという事実が認められるわけでございまして、この調査結果を見る限り、法令に違反する政治的行為に当たる、このように私どもは考えているわけでございます。

 今回、教育委員会の方で文書訓告、そういう処分を行ったわけでございますが、これは本来市町村が行うべき服務監督上の措置ではないか、教育委員会がやるとすれば、これは懲戒処分等を含んだもっと厳しいものであるべきじゃないかということで、今、文部科学省としては、山梨県の教育委員会の方に、もっと厳しい指導をやるようにということを伝えているところでございます。

 以上でございます。

金子(一)委員 今、文部大臣の認識では、かなり違法性が高いという認識があると。しかも、ちょっとこれは手続上の話かもしれませんが、本来、県の教育委員会で、処分するところでないところがこういう厳重注意のような処分というミスをやっている。

 もう一遍繰り返します。県に対して文部大臣は、この問題についてもう一遍指導あるいは何らかの措置をとられるおつもりがありますか。

中山国務大臣 文部科学省から山梨県の教育委員会に対しまして、再三再四、事実をしっかり確認してしっかりとした処分をしてくれ、こういうことを言っているわけでございますが、これからも違法な行為に対しては厳正な対応を行うように、引き続き山梨県の教育委員会に対して十分な説明を求めながら指導してまいりたい、このように考えております。

金子(一)委員 以上で終了させていただきます。ありがとうございました。

甘利委員長 これにて与謝野君、金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 まず、防災に関しまして質問させていただきますが、昨年は、国内外ともに大変な災害が相次ぎました。ここに、亡くなられた方々と御遺族に対して深く哀悼の意を表しますとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。

 昨年の災害で、我が国は改めて自然災害を非常に受けやすい国であるということを認識させられたわけでありますけれども、政府は、国民の生命財産を守り、災害による被害を最小限にとどめるために、これまでの災害対策を抜本的に改めて、災害に強い国づくりを進めるべきであるというふうに思います。

 総理も、施政方針演説の中で「災害に強い国づくりを一層進めてまいります。」というふうに表明をされておりますので、どのように災害に強い国づくりを進められていくのか、まず総理にお伺いをいたします。

小泉内閣総理大臣 災害は忘れたころにやってくるという言葉がありますけれども、最近、去年等は忘れないうちにいろいろな災害に見舞われたわけであります。やはり、いつ災害はやってくるかわからない、不測の事態に備えていくことが重要だと思っております。

 今回の、日本での昨年の台風、集中豪雨、新潟地震等だけでなく、スマトラ島沖の大地震・津波を見ますと、まさに予想もつかない不測の事態だったと思うんですね。それで、百年に一度あるかないかという未曾有の被害を引き起こしているということを見ても、起こってからの対策よりも、費用はかかっても未然に防ぐあるいは不測の事態に平時から備えをしておくということがいかに重要かが、多くの国民なり我々政治を担当する者の間にも浸透してきたと思います。

 私自身、インドネシアの緊急津波会議、俗に言うそういう会議にことしの一月五日、ASEANの首脳とともに出席いたしました。そのとき、目の前に座ったシンガポールの首相が、小泉さん、日本で津波が起こったとき、ある人が自分の稲に火をつけて救った話があるというのを私聞いているんだけれども、その話は本当なのかと私に問いかけてきました。

 それを私たまたま知っていたからよかったんですけれども、実は、それは和歌山県、安政の時代に、浜口梧陵という人物が、地震が起こった後、海が引いた、これは今から、いろいろ聞いていたけれども、津波じゃないかと。もう帰ってこいと言う余裕はないから、収穫した大事な稲わらに、道筋が暗くなっていた、道筋をつけようと、ふだんではやってはならない、大事な稲わらに火をつけたんですね。それで何だというので村人が高台に寄ってきて、多くの住民を救った。

 その後、この浜口梧陵の偉いところはそれだけじゃなかった。東京で商売をして、そのみずからの利益を、その災害地の堤防をつくろうと言って、私財を投じて堤防をつくらせた。何とそれが九十年後、またその地域に津波が来たわけですね。そのときにまた多くの住民が救われた。そのとき、もちろん浜口梧陵はもうこの世にいなかったわけです。そのときになって、ああ、あの浜口さんがこの堤防をつくってくれたのかということで、我々も日ごろから不測の事態に備えるということで、今でも当地では浜口梧陵を慕い、災害に備える準備を多くの住民参加のもとに行っているということであります。

 そういう教訓を学びながら、不測の事態にどう対処していくかということを、災害が起きない前から我々は常に考えておかなきゃならないと思っております。

石井(啓)委員 総理の強い御決意を確認させていただきましたので、しっかりお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、国土交通大臣に伺いますが、水害の関係でございますけれども、昨年の水害では、局所的な集中豪雨が多発をいたしまして、中小河川における堤防の破堤、それから土砂災害が多く発生をいたしました。また、避難勧告がおくれた自治体もございまして、高齢者を中心に多くの死傷者が出た、こういうことがございます。

 こういった反省を踏まえて、国土交通省では今、従来の豪雨災害対策を全面的に見直しをしている、その上で、昨年十二月には緊急に取り組むべきものとして緊急アクションプランというのを策定して進めようとされている、こういうふうに承知をしております。

 私もその中身を全部読まさせていただきましたが、非常に重要なことをやはり盛り込まれていると思います。全般的に重要だと思いますが、特に、従来手薄であった中小河川対策をしっかり取り組もうということが一つ重要だと思います。もう一つは、従来の防災といいますと、どうしても施設の整備になりがちだったんですが、今回の検討の中では、むしろソフト面の対策を充実させよう、今ある施設を有効に使って、なるべく被害を軽減させようということで、さまざまな対策が盛り込まれております。

 先ほどの大臣の答弁の中でも、例えばハザードマップというのがございますけれども、ハザードマップというのは、どの地域にどこまでの水の深さで浸水するかということが明示されて、避難場所が記載されている地図でございますけれども、これは従来努力義務になっていたのを今後義務化していこうということ等を初め、ソフト対策を全面的に打ち出して被害軽減策を図っていく、このことが重要だと思います。ぜひ推進していただきたいと思いますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

北側国務大臣 今委員の方から御指摘のあったとおりでございます。

 我が国は、歴史的に見ても地形的に見ても、この豪雨災害、台風災害、風水害から私は避けて通れないというふうに思っております。

 三点重要な点があるかと思うんですけれども、一つは、河川整備等、そういう社会資本整備をしっかりやっていく、これはもちろん大事です。しかし、社会資本整備というのは限られた予算の中でやっていかないといけませんから、当然時間もかかってしまいます。ですから、そこは優先順位をつけて河川整備等をしっかりやっていくということだと思います。

 二番目に、災害時情報。そういう風水害があったときに、必要なところに的確に、正確に災害情報を流せるかどうか、ここが被害を最小化していくための非常に大事なポイントであると思っております。昨年もさまざま教訓がございました。こういう災害時情報をその地域の方々に、市町村の皆様と連携をし合って、正確に、的確に、できましたらワンポイント、そしてリアルタイムでそういう情報を流していく。

 三番目に、やはり平時の備えだと思います。平時の備えがどれだけできておるかということが、いざ災害に遭ったときに被害を少なくできるかどうかの本当に大きなかぎを握っている。そういう意味で、浸水想定区域というものをこれからしっかりと公表させていただきたいと思っておりますし、また市町村の方々に予算の支援もさせていただいて、洪水ハザードマップも、今おっしゃったように、義務的にお願いをしたいというふうに思っておるところでございます。治水という観点から、中小河川でも約二千ぐらいの中小河川については、ハザードマップ、浸水想定区域についてまた公表をさせていただきたいと思っているところでございます。

石井(啓)委員 ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 ほかの、地震あるいは津波等の災害については、後ほど関連議員から質問させていただきたいと思います。

 続いては、最近、各種の詐欺被害が出ておりますので、詐欺被害対策ということできょうは幾つか取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、いわゆるおれおれ詐欺、最近は振り込め詐欺というふうに言っておりますけれども、これが、平成十五年で六千五百四件、被害総額四十三億円でありましたけれども、昨年は十一月までの分で既に一万三千四百三十六件、被害総額は百六十七億円ということで、大変急増をしております。

 このおれおれ詐欺の犯罪の手段として二つ使われている、大きな犯罪手段としてですね。一つは他人名義の銀行口座、もう一つは利用者が匿名された携帯電話、これが二大犯罪手段と言われていますけれども、銀行口座の方は、従来、口座をつくるときにはきちんと本人確認をしていましたけれども譲渡するときは何にも規制がなかったということで、他人がつくった口座を譲り受けてそこに振り込みをさせるということがありましたので、昨年の臨時国会で金融機関の本人確認法を改正いたしました。これを大いに活用していただきたいというふうに思っております。

 もう一つ、携帯電話の方でございますけれども、これは特に、プリペイド携帯電話が料金が前払い式なものですから、契約者の確認が必ずしもきちんと行われていなかったということがございまして、この対策については与党のプロジェクトチームで昨年末までに対策をまとめまして、この国会に法律案の提出の用意がございます。これはぜひ、野党の皆さんにも御理解と御協力を得て、なるべく早く提出をして成立をさせていきたいというふうに思っております。

 この法律、新法でございますけれども、携帯電話事業者の方にシステムの変更をさせるということから、法律施行に日数を要するということもございまして、それまでの間、放置しておられませんので、これはぜひ携帯電話事業者の方で自主規制をきちんとしていただいて、契約者の匿名性、利用者の匿名性を排除するような規制をやっていただきたいと思いますし、そのことを総務省の方もぜひ強く指導していただきたいと思いますので、これは麻生総務大臣、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 今お話しになっておりました、最近は振り込め詐欺、おれおれ詐欺と言われるものの手段として、プリペイドカードという、電話機と別にカードを買って、五千円なら五千円のカードを買って、そのカードをはがして、はがしてというか落として、その番号を電話機の中に入れますとその分だけ、五千円だけ電話がかけられるようになるという電話機の種類なんですが、この種類のものは匿名性が非常に高いものですから、これを利用して多く犯罪に使われているという状態につきましては、私どもよく理解をしているところであります。

 総務省としては、携帯電話の事業者とともに、とにかく匿名性を排除するという対策について検討を開始したところでありまして、既に昨年六月から、過去に販売したもの及び譲渡、転売されたものを含むすべてのプリペイド式携帯電話につきまして、携帯電話事業者のシステムは完成いたします、ことしの四月です。ことしの四月をめどに、契約者情報の届け出義務を課しまして、携帯電話事業者がすべての契約者を確認、本人確認、また登録する制度を、約款を変更するということにいたしております。変更後、契約者の情報の届け出がないというのもいるでしょうから、そういった確認ができない場合には利用は停止。

 そして、なお、このシステムができ上がるまでが問題ではないかという、御指摘のとおりなので、昨年の十二月から、携帯電話事業者は自治体、東京なら東京都からの要請に応じて、可能な範囲で契約者のいわゆる届け出を求めて、一定期間内に届け出がないという場合には利用は停止ということにして、こういう前倒しな対策を講じることといたしております。東京都からの要請に基づきまして、契約者確認及び利用停止を既に実施いたしております。

 総務省としては、こうした事業者によります自主的ないわゆる対応というものが着実に実行されることによりまして、各党いろいろ御議論もありますので、これは関係省庁と連絡をいたしまして、きちんと対応をしてまいりたいと思っております。技術的なものも大事なところだと思っております。

石井(啓)委員 これはぜひしっかりと指導していただきたいと思います。

 続いて、架空請求詐欺でありますけれども、通常は、身に覚えのない請求が来たときは、これは無視しておくのがいい。そこに、通知に来ている連絡先にも連絡しない方がいい、新たに個人情報を伝達してしまうようなことにもなりますので、ほうっておくのがいいというふうに言われておるんですが、最近、架空請求で新手の手口が出てきまして、簡易裁判所の督促手続を悪用して架空請求するケースがある。この場合は、放置しておくとかえって強制執行を受けるなどの不利益をこうむる可能性があるというんですね。これはとんでもない話なんですが。

 どういうことかといいますと、そもそも督促手続というのは、簡易裁判所の書記官が債権者からの申し立てに応じて、債務者の言い分を聞かずに金銭等の支払いを命じるんです。それで、督促の請求状を受けた方が二週間以内に異議申し立てをしますと、通常の訴訟手続に移って、そこで改めて裁判官が債権者の方の申し立てが妥当かどうかを判断するんですけれども、異議申し立てがないと、債務者は債権者の言い分を認めたということになって、強制執行の方の手続に移行することができるというふうになっているんですね。

 ですから、この督促手続を悪用されると、架空請求であったとしても強制執行をされる可能性が出てくるということで、これは私はちょっと納得がいかないんですけれども、この制度を改めていただくのか、また、こういった督促を受けたときにはどう対処したらいいのか、これは法務大臣、ちょっと御説明いただきたいと思います。

南野国務大臣 では、お答えさせていただきます。

 先ほど先生がおっしゃいましたように、そういう督促の異議の申し立てをすべきであるということですが、裁判所から来たその手続が、ちゃんと、封書が適正なものであるかどうかということについては、先生は電話をかけてちゃんと確認せよとおっしゃっておられました。そのとおりでございます。

 民事紛争の中には、簡便な手続によって解決するものが適当なものがあります。先ほど申しました督促手続自体は合理的な制度でございますけれども、悪用があるとすればできる限りその被害を防止することに努めなければいけない、その必要があるということは考えております。もっとも、本当に債権があるかどうかを当事者の異議の申し立てを待って判断するという現在の制度の仕組み自体を見直すということを先生おっしゃっておられますが、これはちょっと難しいのではないかなと思っております。

 この制度の悪用による被害を防止するためには、まず、架空請求を受けた方が弁護士や司法書士といった専門家の助言を得ることが重要であると考えられております。さらに、法務省におきましても、督促手続についての説明や架空請求に対する注意点をホームページにも記載いたしております。また、国民の方々への周知を図っているところであり、今後もそのような努力をしてまいりたいというふうに考えておりますし、また、質問等を参考にいたしまして、これは改正作業なども行っているところでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

石井(啓)委員 大臣は制度の改善は難しいという御答弁でありましたが、裁判所の手続が架空請求詐欺の何か下請のように使われているというのはまことに遺憾なことでありまして、本来は架空請求を排除できるように制度を改めていただきたいと思いますけれども、当面、自衛策としては、発送元が裁判所からの請求が来た場合は、これは絶対放置しないで、裁判所に確認したり、あるいは警察や弁護士さんや司法書士さんやあるいは消費生活センター等にきちんと確認する、こういうことでございますね。

 これは大変大切なことだと思いますので、きょうはせっかくテレビで放映されている機会でありますから、ぜひごらんになっている方あるいはお聞きになっている方はこの点については心にとどめておいていただきたいと思いますけれども、法務省の方も、ホームページに出しているからいいということではなくて、これは裁判の手続が悪用されるということは遺憾なことでありますので、しっかりと、こういった点についても国民の皆さんにお知らせをしていただきたいというふうに思っております。

 それから、偽造キャッシュカードの問題でありますけれども、これも大変被害が急増しております。

 全国銀行協会の調べでは、十五年度で年間九十一件、被害総額二億七千二百万円でございましたけれども、十六年度に入りますと上半期だけで百二十二件、被害総額四億六千百万円ということで急増しております。現在は、被害が出ても補償されるケースは非常に少ないというふうに聞いております。

 一方で、諸外国では一定のルールで補償されている。例えばアメリカでは、消費者が責任を負いますのは盗難、紛失をした後二日以内なら五十ドルまで、いわゆる五十ドルルールというのがございます。六十日以内なら四百五十ドルまでということで、これは法律で定められております。またイギリスでは、これは銀行業界の自主規制ルールで、顧客の損失負担は五十ポンド、約一万円まで、こういうふうになっているんですけれども、我が国の場合は、預金者に過失がないにもかかわらず、過失がないことを銀行の側が確認をしなければ補償しないというふうな約款になっているんですね。だから、過失がない方も補償されないということになっていまして、これは私はちょっとおかしいんじゃないかと思うんですね。

 総理も、我が党の神崎代表の本会議の質問に対しまして、被害発生後も利用者保護の実効性を確保し得る対応を要請する、こういう答弁をされていることでもございますし、我が国でも、利用者保護の観点から、必要ならば法的措置も含めて被害者の補償をこれはぜひ行っていただきたいと思います。また、そもそもカードが偽造されないような対策を強化していただきたいと思います。これは金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

 あわせて、日銀総裁がこの件について先日記者会見でお述べになっていらっしゃいますので、日銀についても対応を伺いたいと思います。

 まず伊藤大臣、それから日銀総裁、お願いします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今委員から御指摘のありました偽造キャッシュカード犯罪の被害の急増にかんがみまして、金融庁といたしましても、金融機関に対して、犯罪防止対策の強化でありますとか、あるいは、被害が発生した後、適切に対応を求めてきたところであります。

 こうした中で、各金融機関においては、ATMの利用限度額というものを引き下げる、あるいはキャッシュカードをIC化していく、こうした動きが出てきているところでありますけれども、一昨日、全国銀行協会においては、偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせが行われたところであり、金融機関における一層の取り組みの強化が着実に成果を上げるよう、私どもとして期待をしているところでございます。

 金融庁としましては、現在、この問題の実態調査を行っておりまして、この結果を踏まえて、より実効性のある犯罪防止策、そして利用者保護策を速やかに金融機関に検討していただくよう、問題の所在、取り組みを示しながら、来月中を目途にさらに要請をしていきたいと考えております。

福井参考人 議員御指摘のとおり、先般、記者会見で私一つ答弁申し上げましたけれども、キャッシュカードをめぐる犯罪というのは、私ども一人一人の経済生活に著しいダメージを与えるというだけではありませんで、国民経済の血脈であります決済システムを壊す心配がある。そういう観点からも、日本銀行としては、これは非常に重大な問題だということで強い関心を持っております。

 まず、こうしたキャッシュカードについてセキュリティーが十分施されるということが大前提、続いて補償の問題ということになると思いますが、キャッシュカードのセキュリティー向上という点につきましては、ICカード化とか、あるいは生体認証技術の適用とか、あるいは場合によってATM引き出し限度額の引き下げ、こういうことが考えられるわけで、現に、そうした方向で金融機関が具体的な取り組みを進めている。かつまた、幅広い観点から、なるべく共通の取り組みが必要だということで、今大臣もおっしゃいましたとおり、全銀協で申し合わせが行われて、これから実行に移されていくという段階でございます。これはやはり実効が大事なので、形だけではなくて、本当に実効の上がる対策になるかどうか、よく注意して見ていきたい。

 私どもの方でもそうした点ではさまざまな研究、勉強を前からやっておりまして、特に、セキュリティー対策の充実、高度化、先端セキュリティー技術の研究も含めて、日本銀行も多少の知見を深めておりますので、そうしたことも提供しながら金融機関と協力を力強く進めていきたい、こういうふうに考えております。

石井(啓)委員 ちょっと伊藤大臣、もう一度確認しますけれども、来月末をめどに新たに要請すると。より実効性のある利用者保護策の検討を要請するということでありますが、これは、被害補償のルールの検討を要請するという理解でよろしいんでしょうか。

伊藤国務大臣 今委員からも御指摘がございましたように、私ども今、実態調査をいたしております。その結果を踏まえまして、現実に被害が発生した場合の預金者への補償のあり方も含めて、現在の対応でよいのか、あるいは見直しをする必要があるのか、真剣に検討してまいりたいと考えております。

石井(啓)委員 補償のあり方ということでありますから、被害補償策をしっかり検討していただきたいと思います。

 もう一つ確認ですけれども、これは、今後の被害は当然のことでありますけれども、過去に受けられた被害者の方への対応も含んでということでよろしいでしょうか。

伊藤国務大臣 重ねてになりますけれども、今私ども実態調査をいたしておりますので、その実態を踏まえて、より利用者の保護に資するような実効性のある対応策というものをしっかりつくり上げていかなければならないというふうに思っております。

 今、金融機関においてもさまざまな取り組みがなされているわけでありまして、日銀総裁からも、その実効性が非常に重要だと。利用者保護の観点は金融システムの信用秩序においても非常に重要な観点でありますので、こうした観点も踏まえながら、私どもとして、来月を目途にさらに金融機関に対して要請を行っていきたいと考えております。

石井(啓)委員 これは、利用者保護はもちろんでありますけれども、先ほど日銀総裁お答えになりましたように、金融機関に対する信頼性ということにかかわる重要な問題でございますので、これは被害補償策が必要であることを重ねて申し上げたいと思います。

 残りの時間、同僚議員に譲りたいと思います。

甘利委員長 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 本日は、限られた三十分間の時間でございますが、災害対策関連に絞りまして質問をさせていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。

 まず冒頭、近年、国内外を通しまして発生しております自然大災害により、とうとい命を落とされた皆様、そして被災をされた皆様方に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 小泉総理、本年一月十七日で、あの忌まわしい阪神・淡路大震災から丸十年の月日が経過したわけでございます。私自身もあの阪神大震災で住む場所を失った被災者の一人であり、被災地選出の数少ない衆議院議員として、この十年間、一日も早い復旧復興を願いながら全力で駆け抜けてきた者の一人として、いろいろ振り返りますと、さまざまな思いが去来をするところでございます。

 この一月十七日、天皇、皇后両陛下が御出席を賜りました、兵庫県公館で開催されました追悼式で、毎年のことでありますが、遺族代表としてお話をされた村松京子さんという女性がいらっしゃいます。村松さんというのは、実は、私が震災の当時住んでいた東灘区近所に住まれていた女性でございまして、あの震災で御主人と十一歳と九歳のお嬢さんを一瞬にして亡くした方でございました。

 この方のごあいさつの中で、一瞬にして一人この世に残されてしまった私はこの厳しい現実をなかなか受け入れることができず、失意と絶望のふちをさまよいながら、三人のもとに行きたい、そればかり考える毎日が続きました、こういったお話がありました。

 その中で、お母さん、そして地元の地域の皆さんが毎日自宅に来ていただき、励ましの言葉をかけていただき、そして、その中でようやく、主人と子供たちは私の心の中に永遠に生き続けていく、私をずっと見守っていてくれる。泣いてばかりいては、悲しむだろうし、心配するだろう。同じ思いで苦しんでいる人たちのためにも力強く頑張ろうと決意したとき、私の心は晴れ渡っておりました。そして、悩み、苦しみ、また友人に励まされ、勇気づけられてきた十年でありましたが、これからは、会社で頑張り、輝く女性として精いっぱい生き抜いていく決意ですとのごあいさつがございました。

 私はその話を聞きながら、本当に十年という月日が経過いたしましたが、あの震災で家族をお亡くしになった残された皆様、そしてまた、一生の買い物という形で購入された家が一瞬にしてなくなりローンだけ残っている皆さん、そしてまた、会社を首になったり御商売が倒産したり、こういった方たちにとって、時間が経過しても風化をするということは私はあり得ないと思うし、十年で確かに町はきれいになってはおりますが、真の復興ということにはまだまだ時間がかかるというふうに私は思っておるところでございます。

 であるがゆえに、この阪神大震災から復興十年のさまざまな教訓をこれからの国内また国際社会における防災の行政に、まず日本の政府としてこういった教訓を大きく反映していただきたい、こう強く願うわけでございます。この阪神大震災被災者の思いをぜひ、まず小泉総理に御理解いただきたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。

 そしてまた、昨年は、この阪神大震災を風化させまいとするかのように、国内また国外で大変な自然災害が起こりました。

 台風二十三号では、我が兵庫県も大変な未曾有の大災害が起こったわけでございます。年末には、十二月二十六日にスマトラ沖大地震が、大変な津波の災害が起こったという一報がございました。公明党としても、二十七日に東京で緊急の対策本部を開催いたしまして外務省からいろいろ情報を聴取したわけでございますが、なかなか正確な情報が伝わってこない、ライフラインも分断していてなかなか情報がとれない。

 そんな中で、私はあの阪神・淡路大震災のときに、やはり被災地の現場を見なければ真実は何もわからない、まず現場に行くことが大事だ、こういう思いの中で、公明党の同僚議員とともに、十二月三十一日の大みそかから一月三日まで、今回の被災で日本人の被災者が最も多かったタイのプーケット地域に現地調査をさせていただいたところでございます。

 ちょっときょうはその写真を持っております。

 まず、私たちが写真に写っているあれですけれども、これはプーケット県の北部。実はこのホテルは、外務省の犠牲になられた方が宿泊されていたホテルの隣の地域でございました。ほとんどずたずたにやられている状況でございます。それで、これが、さらに車で一時間ぐらい行ったカオラックという大リゾート地域でございまして、海から内陸に向けての一帯がずたずたにやられております。これがその全体像というか、全体の一部の写真でございます。まさに阪神・淡路大震災の当時の被災現場をほうふつさせる、大変大きな悲惨な現場でございました。

 この報告は、帰国後、一月五日に小泉総理に直接詳細な報告もさせていただきまして、その報告に基づいて政府としても早速の対応をしていただき、今回はジャカルタの緊急首脳会談で、またその後の会議の中で、日本が五億ドルの緊急の無償資金協力、緊急の援助物資の供与、そして国際緊急援助隊の増派、こういったものがいち早く手を打たれたこと、これはいろいろな議論があるかと思いますけれども、実質的に最も大きな援助を各国に比較しても日本はとることができた、そういった意味で、私は高く評価をするところでございます。また、私が評価するだけではなくて、これは国際社会においても、間違いなく日本のリーダーシップというものが高く評価されているもの、そう私は確信をするところでございます。

 しかしながら、自然災害というのは途上国で往々にして起こって、先進国からの支援というのは、緊急支援まではするけれども、復興の段階の開発というところまでなかなかいかないケースが多い。これはやはり、緊急支援も大事だけれども、各国の状況を今でもCNN等で見ておりましても、まだまだこれから、まだ復旧の段階にも入っていない。遺体の安否確認ですとかそういったことが現状でございまして、これから復旧が始まる。復興はまだまだ時間がかかる。神戸の経験を通しても、まだまだ大変な年月がかかる。

 その中で、我が国の復旧復興ができたのはやはり日本のサポートのおかげだ、こういうふうに被災各国の被災者の皆さんに共感していただけるような具体的な支援が大事なんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。

 今回ニュースとして伝わっておりますが、モルディブの首都であります最大の島であるマレ島は、海抜が一・五メートルという低い地域だった。しかし、この国に対して日本政府が一九九四年から二〇〇二年にかけて四回にわたって無償資金協力、ODAで、同島の周囲に防波堤をつくった結果、今回はこのマレ島における津波の被害を最小に食いとめられた、こういったことも報告をされているわけでございます。

 まさにこれから、いろいろな各国の情報を聞いておりますと、社会資本をつくっていく上で、例えばセメント工場も全部流されてしまって全くどうなるかわからない、こんなような話もございますので、今後の推移を見ながら、各国の復旧復興支援のプロセスの中で、日本がしっかりと、志が届く具体的な支援策を行っていただきたいと思いますが、総理の御見解を伺わせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 実際、赤羽議員は現地を見られて、今写真を提示されましたけれども、私もじかに、先日、ジャカルタでの緊急首脳会議へ行く前に報告を聞かせていただきました。そういう報告も参考にしながら、これから後の復旧復興をどうしていくべきかにつきまして、つい先日、村田防災担当大臣が議長を務めた、国連主催による防災世界会議が神戸で行われました。

 これは今回のスマトラ島沖の地震・津波が起こったから予定されていたわけではなくて、たまたま、阪神大震災の十周年の節目を迎える、そこで防災会議をしようというときに、こういう予想もしなかった津波の被害がインド洋を中心に起こったわけであります。極めて多くの国々の首脳あるいは防災担当関係者が出席されまして、真剣な議論が交わされました。

 日本でできること、現地の人と協力できること、そして、現地からは遠く離れていても同じ協力をしたいという国がたくさんありますので、そういう世界各国と協力していくこと、多岐にわたっていい意見が出、それをまとめる、大変大勢参加した会議でありますが、村田議長、よく務めていただきまして、さまざまな対策、出たいい提言を今後どのように具体化していくかということが今後の課題だと思っております。

 もとより、被害の程度も、写真で示されたように地域によって違います。それから、当地の生活習慣も違いますし、病院とか道路とか、その状況も違います。そういう点も考えて、これから具体的に何をすべきかということを、できることからやっていかなきゃならない。

 同時に、これは中長期的に考えなきゃならない問題でもあります。当面だけでいいということではありません。まして、四十年前には、チリ沖の地震が岩手県の三陸沖に二十二時間後に襲ってきて百人以上の日本人が犠牲になったんですから、そういうことも考えまして、その被害があったから太平洋の諸国においては津波警報が構築された。そういう知見も踏まえまして、中長期的な観点をしっかりと踏まえて、今何ができるかという対策が必要だと思って、日本は日本としてできる責任を果たしていかなきゃならないと思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 今、総理の御答弁から、今回の一月十八日から二十二日まで神戸で開催されました十年に一度の国連防災世界会議のお話もございましたので、この点について一言確認をさせていただきたいと思います。

 この会議は、当初の参加予定者を大きく上回り、今の総理の御答弁にもありましたように、百六十八カ国、七十八の国連機関、国際機関、そして百六十一のNGOの皆さん、合計四千名を超える方々が参加をされた。パブリックフォーラムなんかにも一般の国民の皆さんも参加をされまして、延べ四万人の参加者があったという大変大きな会議となったわけでございます。

 その中で、ODAを活用した、今総理の御答弁にあるような、防災協力イニシアチブを日本でとっていくとかデータベースを集めるとか、こういった御提案もされたようでありますし、地元兵庫県からも、震災当時の貝原前兵庫県知事からは、とにかく二十世紀の都市文明が、ある意味では、自然災害、テロ、感染症、またライフラインの事故、こういったことの危機にさらされてきた。二十一世紀は、そういった危機に対して対処できる都市文明をつくっていかなければいけない。そのための災害対策拠点であり、また支援拠点をつくるべきだ、人材を育てるところとかネットワークをつくるところとか、世界じゅうの、被災地が出てきたら支援するような機関、こういった国際防災復興協力センターの設置構想も提案をされているところでございます。

 こういったことも踏まえて、先ほど御答弁をいただきましたが、中長期的な、今回のことをきっかけに、また、十年間の教訓を踏まえての復興の支援に御努力いただきたい、このように重ねて申し上げておきたいと思います。もしあれでしたら、防災担当大臣から御答弁をいただければと思います。

村田国務大臣 十八日から二十二日まで五日間、国連防災世界会議が神戸で開かれまして、また、私も議長を務めさせていただいたわけでございますが、実に大変多くの国々が参加をしていただきまして、熱心な議論が続いた、こういうふうに思っております。

 災害は、本当に、国々によりまして、我が国のように、地震、台風、豪雨、津波あるいは火山、いろいろな災害の洗礼を受けてきた国もありますし、それから、災害が非常に少ない国もある。あるいは、我が国にないようなバッタの襲来とか大規模地すべりがあるとか、モンゴルのように、寒波によって草が凍りついて羊が大量死するというような災害もある。いろいろな災害を経験している各国が集まって、これから、持続的な成長の阻害になります災害をみんなで減らしていこう、そういう共通の認識が高まったということは大きな成果だったというふうに思います。

 会議では、十年前に開かれました横浜宣言、これをテークノートいたしまして、それから、スマトラで総理が提案いたしました、特別セッションのインド洋におきます津波早期警報システムの構築の問題、これについて日本の提案も採用されまして、とりあえず、太平洋のシステムを活用しながら中長期的に備えるという合意ができたというふうに思います。

 それから、兵庫行動枠組、兵庫宣言という中で、やはり災害の恐ろしさというものをみんなで共有いたしまして、それで、これから災害に強い世界をつくっていくというその足並みがそろってきた。我が国は、これまで積み上げてきた経験がございますので、そういうデータあるいは優良事例を提供する仕組みをつくりたい、そういう発言もいたしました。

 最後になりますけれども、我が国は、ODAを通じた人材の育成とかいうことをやっていく、そういう中で世界の防災に貢献できる、こういうことでありまして、我が国のそうした活動がこれから期待されると考えておるわけでございます。

赤羽委員 ぜひとも、今回の世界会議で合意をされました兵庫行動枠組に基づいて、今後十年間の国際社会における災害の減災と予防に努めていただきますよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。

 プーケットに行ってちょっと気になったことが一つございまして、プーケットというのは、大変観光地で日本人も多いんですが、定住の在外邦人が少ないということもあってか、領事館がない地域なんですね。ですから、今回、津波が発生直後にバンコクの大使館から人が十数名出て、このプーケットのホテルの一室を借りて緊急の現地対策本部を設営されました。

 しかし、行方不明の御家族の方もたくさんいらっしゃいまして、プーケットに来られては、どこに行ったらいいかなかなかわからない。現実にはプーケットの日本人会のところに行く。そうすると、プーケット日本人会といっても、バンコクの日本人会などですと大企業の背景があってそれなりにしっかりした組織だと思いますが、プーケットの日本人会会長さんともお話をしましたが、地元で御商売されている方たちが集まってつくられている組織でありまして、経済的な背景もそんなに厚いものではない。しかし、そこに登録をされているボランティアの日本人の人たちが、今回の家族のためにということで、来られると、ボランティアの方が車を出して被災現場に行くとか、こういう状況でありました。

 では、領事館、大使館は何もやっていなかったかというと、そうじゃなくて、現地に着かれた対策本部長を初めとする十数名は、二十四時間、もう髪振り乱して不眠不休で仕事をされている、こういった状況でありました。

 このときに私感じたのは、今回は日本人の被災者の数はこの程度だった、しかし、例えばスウェーデンとかオーストリアのように、あのような割合で日本人の被災者が、犠牲者というか被災者が五千名とか数千名の単位でもし出たとしたならば、一刻一秒を争う邦人の皆さんの救助とか安否というのはどういうふうに対応するのか。

 今の外務省の領事部門というのは、人数的にも制限もあると思いますし、能力的にも制限がある、これはもう客観的な事実でありまして、今の改正した自衛隊法によりますと、邦人の緊急退避のために輸送手段として自衛隊機が活用されるということは今認められておりますが、当然のことながら、救助とか捜索はできないという現状がございます。また、国際緊急援助隊、国際緊急援助隊法で今自衛隊を含めて出ているわけですけれども、国際緊急援助隊というのは、まさに被災国の救援、支援が原則でありますし、相手国の要請がないと出ていけないわけです。

 ですから、日本人の被災者がいっぱい出ている、しかし、なかなか相手国の支援の要請がないというような話とか、こういったことは、今の現行法では少し欠落した部分なんではないかな。具体的に、大変なオーダーの数の被災者、日本人が海外で災害に遭遇した場合の危機管理体制というものを国会は一度見直す必要があるんではないか、私はそのようなことを感じて帰ってきたわけでございます。

 この点についての質問と、もう一つは、現地の日本人会というのはまさにボランティアの組織でありまして、国の援助というのを全く出すツールがないんですね。災害に日本から行くようなNGOに対しては国の援助が出ています。今回も十億円という予算が計上されております。しかし、現地で頑張っている、手弁当で、仕出し弁当を出したりとか、車で被災現場を行くという一番御苦労されている人たちが全く経済的な援助を受けられないというのは、私は、ここはやはり柔軟に対応するべきではないか、こういうふうに考えております。

 この二点について外務大臣の御見解をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 災害が起きて早々に、赤羽先生初め、現地に赴いていただいたということに感謝をしております。

 私は、先生方がお見えになった数日後、一月八日にプーケット及びカオラックの方に私自身も足を運んで、その場でプーケット日本人会の皆さん方ともお目にかかりました。大変な活躍をしていただいたという実態のその一端を私は知ることができまして、大変に感謝をいたしましたものですから、気持ちだけではございますけれども、感謝状を先般差し上げてまいったところでございます。

 今お話しの、こうした場合に一体日本がどこまで緊急対応できるか。ある意味ではたまたまなんですけれども、ちょうどアフガンの方に展開をしていた自衛隊の船がシンガポールにいた、そこから急遽タイの方に回って捜索、救援をやりまして、数十の御遺体を海上で発見することができたというようなことで、これはいわば緊急的な国際緊急援助隊の発令をしてやるというようなことができたわけでございますので、こういう方法は一つあり得るんだろうと思います。

 ただ、今委員も御指摘のように、数千人規模になったときに果たしてどこまでできるかなということは、率直に言ってそこまでの想定が政府全体としてございませんので、これはちょっと、今後真剣に、どういうことができるか考えていかなければいけない、こう思います。

 また、プーケット日本人会といったような善意のボランティア、ある意味では本当に任意団体で、小人数でやっておられる。そういう方々が現実に果たしている、かつ相当な負担もしていただいたんだと思います。そういった方々に何ができるか。

 確かに、今の仕組みでは、これまた想定外のことなものですから、きちんとした対応ができているわけではございません。何らかのことができないかなと思って私どもも今一生懸命考えて、とりあえず、申しわけないが感謝状をお出ししましたが、そういうことで十分ではないんだろうと思います。

 各国大使館で持っている報償費がもう少したくさんあれば、そういうところに大使の使えるお金という意味でそういうものも出せるかもしれないし、しかし、それでも不十分かもしれない。草の根無償あたりを何か活用できないのかな、そんなことも考えたりしております。

 ただ、私が彼らと会ったときに、そういう支援もありがたいが、本当は日本からたくさんまたプーケットに観光客等で来ていただくのが彼らの生活再建にとっては一番ありがたい、ひとつ、プーケットはすぐ回復するから、皆さんに来てもらうような観光支援みたいなものをやっていただくとありがたいということを言っておられたのも事実でありました。

 もろもろ含めて、できる限りのことをこれから考え、またやっていきたいと思っております。

赤羽委員 どうか、ぜひ心の通った支援策をしていただけますように、よろしくお願い申し上げます。

 この今回の一連の防災、国内において防災に関する施策をどう進めていくのか、こういった議論が国会でもあるわけでございます。住宅再建の問題につきましても、内閣総理大臣の御答弁にも、まず耐震化を進めるんだ、また地震保険の活用も考えていくんだ、このような答弁が再々ございました。

 まさに耐震化を進めていくというのは本当に喫緊の課題でありまして、阪神大震災のときも六千名以上の方がお亡くなりになりましたが、瞬間に亡くなられた方の九割が家が壊れて圧迫死だったという統計からも明らかでございます。

 現状、国土交通省の調べでは、日本の家の中で、耐震性が不十分だ、こう認定されているのは今四分の一以上に上る。こういう中で耐震性をどう進めていくのか。

 これが今本当に、これからの防災、予防ということを国際会議でも話して、日本からも発信をして、では、国内を振り返ってみると、地震保険は使いにくい、耐震化の基準はなかなかない、税制制度も認められない、税制控除も認められない。こんなことじゃ、言っていることとやっていることとちょっと違うんではないのかな、このようにも思いますし、万が一何かが起こったときに、あのとき少し政治的に決断をしておけばよかったな、こう言ってしまっては、やはり今いる私たち政治家の責任に係る大事な問題だというふうに思うわけでございます。

 ですから、まずこの耐震改修というものを、今年度、国土交通省としても新しい助成制度も用意されていると思いますが、助成制度だけではなく、やはり税制にも踏み込んで一気に変えていくということを、政府を挙げてそういった施策を導入していただきたいということが、強く、我々の声だというふうに思っております。

 このことについて、総理大臣、財務大臣からいかれますか。よろしくお願いします。

谷垣国務大臣 地震に強い住宅に改めていくというのは、地震から地域を守るという意味からも重要な課題だと思います。

 それで、税制をどうしていくかについては、平成十七年度の与党の税制改正大綱の中で、国、地方を通ずる施策の一環として、そしてまた地域の実情に応じた助成制度等の関係も踏まえて検討せよという整理をしていただいておりますので、私どもとしてもそういう整理にのっとって検討を進めたいと思っております。

赤羽委員 総務大臣にも。

 この前税制改正が決着ついた直後ですから、なかなか踏み込んだ御答弁はしにくいと思いますが、政治家麻生大臣として御答弁をいただければと思います。よろしくお願いします。

麻生国務大臣 これはこの間決着ついたばかりの話ですので、赤羽先生、これはなかなか難しいところだということと、税額控除というのは低所得者層には、税金を払っておられない方には全然波及効果はありませんので、そういった意味では、税でなじむかなというのが率直な実感であります。

赤羽委員 それは徴税する立場の人の言いわけにしか聞こえない。非課税世帯はそうかもしれませんが、それは補助制度を充てればいいわけであって、やはり、課税世帯で、本当に耐震化を進めたい、しかしちょっと固まった大きなお金がないというようなところには、やって悪いわけじゃないんじゃないですかと私は思うわけです。

 中長期的に見ると、これは別に損な話じゃないと私は思いますので、ぜひ、今すぐ御答弁はしにくいと思いますが、十八年度税調に向けていろいろ御検討していただきたいということを強く求めたいと思います。

 この点も踏まえて、あと、新幹線の安全性というものも大変な、被害規模を大きくしないということも踏まえて、住宅の耐震化と新幹線の安全性について、最後に北側国土交通大臣から御答弁をいただければと思います。

北側国務大臣 住宅の耐震化につきましては、私ども、要求官庁の方でございます。予算面におきましても、また税制面におきましても、耐震化を支援する措置は極めて重要であるというふうに思っております。

 それから新幹線でございますが、今、事故調査委員会で事故の原因について調査をしておるところでございます。先般、中間的な御報告もいただきました。

 また一方で、国土交通省の中で新幹線脱線対策協議会というものを設けさせていただきまして、JR各社、専門家の方々に入っていただきまして、いかにして脱線を防ぐか、また、万が一脱線があった場合も被害をいかに最小化できるか、そういうところを今検討していただいているところでございます。

 この協議会におきまして、今年度末までをめどにいたしまして、当面できることについてはしっかり進めていく必要がありますので、それについて、今、中間的な取りまとめをしていただこうということでお願いをしておるところでございます。

赤羽委員 国連防災世界会議で日本から世界に発信した減災と災害予防、これが実質的に行われるように、ぜひとも政府を挙げて格段の御努力をいただきますことを心からお願い申し上げまして、質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

甘利委員長 これにて石井君、赤羽君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川端達夫君。

川端委員 民主党の幹事長の川端達夫でございます。

 総理とはこういう立場では初めて議論をさせていただきますので、ひとつよろしくお願いします。閣僚の皆さんもよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 御案内のとおり、戦後六十年という大きな節目を迎えました。ただ単に六十年目が来たということだけではなくて、振り返れば、ちょうど六十年前の戦争が終わって本当に日本は何もなくなったという中から、諸先輩、私なんかでいいますと親の世代になるんですが、一生懸命とにかくまじめに働こう、正直に暮らそう。そして頑張って、いい日本をつくっていただいた、ありがたいことだと思っています。世界で類のない豊かな国になった。奇跡とまで言われている。そして平和。世界じゅうで一番平和で安全な国だと言われておる。先輩の皆さん、頑張っていただいてありがとう。

 そして、この国は、同じようにまじめに頑張っていけば、正直に暮らしていけば、ずっとまた続いていく、多分十年ぐらい前まではみんなそう思っていた。ところが、国際環境もどんどん変わり、きのう頑張ったからきょうといういい日がある、ありがとう。しかし、きょう、きのうと同じやり方で頑張っても、きょうと同じあしたは来ない、経験は大事だけれどもやり方は変えなければいけない時代に来たというのは、もうみんなわかっていることだと思います。

 そういう中で、経験したことのない超少子高齢社会、そして天文学的な国の財政赤字、こういう中で国民の生活をどう守っていくか、希望を持たせるかは、党派を超えて、政治にいる者のみんなの責任だというふうに思うし、その部分は総理以下閣僚の皆さんも、与党の皆さんも一緒だと思うのです。ただ、私たち民主党と皆さんとでいろいろな議論で違うなと思うのは、現状の認識が違うのかな、危機感の認識が違うのかな。

 いろいろなやり方についてはいろいろな議論があるのはおいておきまして、私たちは、特に小泉内閣になってここ何年間かで、こういう新しい時代に踏み込んでいろいろ変えなければいけないときに、いい方向ではなくて、むしろ足元から生活基盤まで崩れ出してきた。そして将来の不安はどんどんふえる。子供を見ていても、この国どうなるんだろう、あしたの私の生活はどうなるんだろうというふうに、どんどんとこの危機は拡大をしてきている。

 だから、政治の責任、本当にしっかりしなければならないと同時に、小泉改革という名のもとに進んできた状況はだめである、政権交代しかないと我々は考えている。総理は多分、そんなことはない、小泉改革によって着々と改革の芽は出てきてどんどんいい方向に進んでいるとおっしゃっている。この部分の認識の違いだと思います。

 そこで、違いはあるということで当然でありますが、この国の内外の直面する大変大きな課題何点かについて、総理がどういうふうに感じられ、認識され、どうされようとしているかということに関して何点かお尋ねをしたいと思います。

 この国をどうしていくかという部分で、私も真っ正面からまじめにお尋ねしたいと思いますし、総理も、今までどおりひとつ真っ正面からお答えいただきたい、お願いを申し上げます。

 まず初めに、三十万人を超えるのではないかという大災害、スマトラ沖大地震・津波が起こりました。政府においても迅速な対応をされたということは一定の評価をしております。ただ、こういう大災害が起こると、被害に遭っていくのは弱い者順、そして、復興して起き上がっていくのは強い順、これは大体もう相場になっております。ですから、子供たち、お年寄り、女性、いろいろ障害がある人、あるいは貧しい人、そういう人が先にやられていくというのはいつでもそうです。

 ですから、国が、国を挙げて、アジアの一員として、先頭を切って救いの手を差し伸べる。本当に大事なことだし、ぜひともやらなければいけないことですが、そのときに、より届きにくいところ、内戦もありますから、情報も途絶えている、何が起こっているかも内乱状態でよくわからない地域まであるというときに、地域的に孤立あるいは内戦状態にあるところとか、女性や子供、極貧の人たちというところに本当に届くような援助をするべきである。

 同時に、相当多額のお金が動きますから、やはり透明性はいつもチェックされなければならない。先般も国連のエグランド事務次長が、スマトラ沖巨大地震・津波に関する閣僚級ドナー会議で、多大な資金の使用法について透明性を持ったシステムを構築していくとおっしゃっている。

 同時に、いろいろな形で活動されたときに、出しっ放しではなくてモニタリングというのもしないと、ニーズが変化していくときに機敏に対応できないということもいつも指摘をされる。

 そして、一九九五年から、ボスニアの戦後処理で、これも五億ドル近い金が日本から出されたと思うんですが、このときは、外務省から、あるいは関係機関からそこの機関に人が行っていつも一緒に動いているということをされたのは、私はこれはいいことだったと思っています。

 そういう意味で、届きにくいところ、より困っているところに透明に、そして臨機応変にという部分で生きたお金が届くということに尽きると思うんです。このことに関して、とりわけ、日本のNGOも頑張っていただいている、そのときの、そういうNGOなんかへの連携も今以上に深めてやる必要があるんだというふうに思いますが、そのことを含めて総理の御認識と御決意を、我々も総理に対しても文書で要請しておりますことを踏まえてお聞かせいただきたい。

小泉内閣総理大臣 災害対策といいますか、今回のスマトラ沖大地震・津波だけでなくて、我が国の国内における台風被害とかあるいは集中豪雨、新潟の地震等の被害、これに対しての被害対策をしっかりやれという点については、私は川端さんと意見を異にすることはないと思うのであります。

 今後、この災害対策なりこれからの防止対策等、これは国内挙げて取り組むべき問題だし、同時に、今、世界、国際社会が関心を持っておりますし、国連が加盟国と一緒に、防災対策どのようにすればいいかということで、資金も供給しよう、あるいは物資も供給しよう、人間も出そうということで協力体制をとっておりますし、具体的に被災地に対して、あるいは被災者に対してどういう手を差し伸べていけばいいかということを真剣に議論しております。

 日本としては、過日十八日から始まりました神戸での国連主催による世界防災会議におきましても、議長国として、世界各国からの貴重な提言もいただきました。そして、日本としてできるだけの支援をするという表明もいたしました。

 そういう点から、川端議員御指摘のように、これだけせっかく支援の手を差し伸べるんだから、それが本当に被災地に対して、被災者に対して効果的に使われるべきだ、全く異論はありません。同時に、資金を提供した後、どう使われているのか、また被災者に対してどのようにこのような支援が差し伸べられているか、よくチェックしなさい、これも異論がありません。

 そういう評価なり、効果的に、効率的に、最も現地の人たちが必要としているところに支援の手を差し伸べるという観点から、それぞれ、日本としてできること、国際社会と協力してやらなきゃならないこと、今後もそのような視点を踏まえて日本としての責任を果たしていかなきゃならないと思っております。

川端委員 国会でも決議もいたしました。これから私たちも、現地ともいろいろな形で情報をとる中で政府に対しての要請もしてまいりたいと思いますし、今の総理の基本的な認識は、我々も共有するものとして受けとめたいと思います。

 あわせて、今も若干お触れになりましたが、昨年は、水害そして新潟中越地震、大変な自然災害が猛威を振るった。今なお大変な御苦労をされている方がたくさんおられる。

 そういう中で、今回議題になっています補正予算も、四兆七千六百七十八億円の中で災害対策費が約一兆三千六百十八億円。いろいろな地域、地元のニーズも含めて、県、市町村の要請を含めて対応されたものというふうに理解しております。地方交付税あるいは地方財政対策として、この補正あるいは本予算でしかるべき対応は当然されていると思うんですが、地方交付税のこれからのあり方を含めて、三位一体改革を含めて、地方もいろいろな混乱もあります。そういう部分で、少なくともこういう災害対策に関しての部分は、必要な部分に関しては地方交付税を含めてしっかりと対応するという方針をお持ちだと当然ながら思っておりますし、時々刻々、ニーズは変わってまいります。

 そういう意味で、今はこういうことで補正も本予算も対応されるんだと思うんですけれども、新たなニーズが出てきたときも、柔軟に、真摯に対応されるということを、これは答弁は要りません、要請しておきたいというふうに思っております。

 さてそこで、昨年、特に新潟で大震災が発生したということで、今の補正もいわゆるインフラ整備ということで、公共事業を中心とした社会資本の整備に関しては補正とかいろいろな手当てをされて着々と、まあそれは規模によってはいろいろ速度はあるにしても、一定の手が打たれてきて進んでいることは評価をしたい。ところが一方、被災された生活者の生活再建ということでいえば、本当にめどが立っていないというのが実態ではないか。

 そういう中で、昨年、被災者生活再建支援法が改正された。ところが、いろいろ調査をしてみますと、例えば、この対象になるには一定の規模が要るというのは当然かもしれませんが、この適用を受けようとしたら、もとの同じ場所に家を再建するということでなければならない。ダム化して水没したとか土地ごとなくなったとかいうところはもう対象にもなりもしないとか、年収に応じて所得制限がかけられている。若い人ほど、余り所得があると、この対象にならない。

 あるいは、家が全壊であったら対象だけれども、半壊はだめだ。全壊と半壊の判断基準が、屋根の部分でどうなっているか、天井はどうなっているか、壁がどうなっているか、柱がどうなっているか、一戸一戸評価していって、総合でこれは半壊ですと。どう見ても住めもしなくなっている家が、そういう評価方法とか、まことに使い勝手が悪い。

 これは再三指摘をして、我々も対案を出したけれども、今そういう状況にあるという中で、特に、一番被災者の皆さんが生活を再建したいというときに願っておられることは、どうしてこの被災者生活再建支援法が住宅本体の再建をバックアップしてもらえないのか。いろいろなアンケートをとると、とにかく住宅をちゃんとしたいというのが、それが生活が再建できるスタートである、そのめどを立てたいというときに、全くその対象にならないということでありますが、このことに関しては先ほどの議論でもありましたけれども、どうしても住宅に対して出せないんでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

村田国務大臣 先ほども御質問がございましたけれども、まずは公共インフラ、こういうものに対して税金を使っていくということを前提といたしまして、今、個人の住宅の再建についての必要性あるいはそうしたニーズが寄せられているということは私どもも知っておりますが、税金の使い方として、前回の通常国会でも御審議いただいて決められたような枠組みの中で、要するに住宅本体には税金は使われない、しかし、その中でも、生活再建に支援するという意味から、撤去費用とか住宅ローンの利子とか、そういうものに対してお金を使うのが適当だ、そういう議論の結果が出たということで、今そういう仕組みになっているわけでございます。

 なお、今後、税金の使い方につきましていろいろな観点から御議論を進めていただきまして、法律にも、四年後には見直す、再検討するという規定がありますから、どうぞ皆さん方の議論をさまざまな観点からおやりいただきたい、こういうふうに思います。

川端委員 全国知事会のアンケートでも、四十七都道府県の知事さんのうち四十四知事が、居住の確保が生活再建の基本、住宅再建は地域の再生のためにも重要ということで、今、社会インフラに税金を使うと言われたけれども、大きな意味でいえば、地域再建、そして個人がそこで頑張るという部分でいったら、住宅再建にどうして支援の手を差し伸べようとされないのか、全く理解に苦しむんですよ。

 それで、私有財産だから税金をと言われるのであれば、農地が大変なことになったときというのは、農地の部分で整備されるのに補助金出ますよね。農地も私有財産なんですよ。しかし、社会的に大変大事なものだからということだったら、個人の住宅だって地域社会にとって一番大事ではないのかということが一つ。

 もう一つは、実は、国が何もやらないから、県が独自にやり出したんです。私が調べた範囲でも、鳥取県、宮城県、兵庫県、福井県、徳島県、三重県、新潟県、岐阜県、京都府、東京都は、住宅の建設、補修経費に補助金を出すと。やっているんですよ。国は冷たくて地方は温かいということなんですか。それか、国の考え方でいえばやってはいけないんだけれども、地方はフライングしてやっているんですか。どっちなんですか、これは。

村田国務大臣 今、川端委員の御指摘になったようなこれまでの議論があるということも私も存じておりますし、平成十二年の被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会でも、被災された住宅についてどういう見方をするかという議論も、私もこの検討会の報告書を見て読んでおります。

 しかしながら、個人の住宅については、個人の資産への支援を、それに対して税金を使うというよりも、政府のやる優先度からいって、まずはインフラ等の再建にお金を使う、そういうことから始まっているわけであります。

 農地につきましては、農地法等の適用によりまして農地の移動が厳しく制限されている等の事情がありまして、そういう観点から農地の再建については国の支援が厚くなっている、こういうことと私は理解しておるわけでございます。

川端委員 どれだけ被災者の思いを共有して、何とかしようと思うかどうかにかかっているんですよ。

 総理は、代表が本会議質問でこの件に触れたときに、さまざまな角度からなお議論を深める必要があるとおっしゃった。前向きといえば前向きなんですが、阪神・淡路大震災から十年、さまざま議論されてきたんですよ。

 そして、実は、先般の国会で政府が再建支援法の改正を出されたときに、我々は、ここにも踏み込むべきだという修正案を出した。国会では審議はされた。しかし、採決はされなかった。政府が出された分に我々は修正案を出した。こういう、今言った個人住宅に対しても、あるいは額も踏み込むべきだということに対して採決をしない。なぜか。多分、ここにおられる方も議員としては賛成なんですよ。だけれども、役所の論理で、抵抗があってそこに踏み込めないから、踏み絵を踏まされるのは嫌だから採決はしないでおこうといって廃案になったんではないかと言わざるを得ない。だから、我々は今回も出しました。

 総理、今この中継も、多分、雪深い仮設住宅の中で見ておられる方もたくさんおられると思うんですよ。そういう人に対しても、先ほど答弁がないんですけれども、県がやっているのは優先順位はそっちが先で、国は後だというふうなことなのかよくわかりませんでした。もうあえて聞きませんけれども、そういう意味で、総理、やはり政治の判断として、いろいろな工夫も要ると思うんですよ、今までの理屈も含めたら。しかし、何らかの形で、住宅再建に、今よりも税金あるいはいろいろな形でバックアップによって支援がされるという方法をやるべきだと思うんです。踏み込むべきだ。

 私たちは法律を出しました。この補正予算、本予算と重大にかかわる問題です。この部分に関して、総理も前向きに、じっくりいろいろな角度から議論じゃなくて、ここの部分にはひとつ踏み込もうと。合意を得るのは、郵政改革よりはるかに簡単な合意ですよ、みんな思っているんですから。そこの部分のリーダーシップを期待して、答弁を求めます。

小泉内閣総理大臣 被災者の住宅支援等にかかわる問題については、できたら被災者の要望にこたえたいなという気持ちは党派を超えてあると思うんです。そういうことから、今まで、百万がいい、いやいや三百万がいい、いや五百万がいいといって議論を積み重ねて、現実にできているものもある。

 と同時に、一方では、その支援についても、これは、非常に微に入り細に入ってここで言うべきものじゃありませんけれども、さまざまな支援があります。だめになった家財に対する支援か、あるいは、全く新規の住宅を建てても支援が差し伸べられるのかとか、さまざまな議論があるということは私も承知しております。だからこそ、そういう点も含めて、もっと議論を深めていったらどうですかと。幸い、両方からいろいろな意見があるんですから。

 そういうことを、私はさまざま意見を承知しているけれども、どの支援が国民的な合意が得られるかという観点からも、もう少し私は議論を深めてもいいんじゃないかなと思っております。

川端委員 さまざまな制度があるんですよ。そして、さまざまな基準があって、物すごく使いにくいんですよ。それで、使えないんですよ。そして、結局は住宅本体の再建ということを一番願っておられるときに、ローンもそれはバックアップしてもらうのもいいですよ。いろいろな部分で細かくて、調べていくと適用されない、物すごい書類が要るというふうなことが現実です。

 それも議論していかなければならないというのは当然ですが、何よりも、住宅再建への支援を地方だけに任せるのではなくて、国も支援するという方向で考えるというふうにぜひともやっていただきたい。総理がそういうふうに、いろいろなことを踏み越えてそういう方向でやれと言われたら終わるんじゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 そう簡単な問題じゃないんですよ。だからこそ議論がたくさん出ているんであって、地震の規模は地域によっても違います、そして、かなり地盤によっても、倒壊した場合にも被害は違います。それから制度も違います。そういう点も含めて、使い勝手のいいような支援策をつくるようにそれぞれ今知恵を出しているわけですから、もっと胸襟を開いて、被災者が最も、あれもこれもというのは難しいけれども、どこに一番必要かという点については、今までの既存の制度、法律を含めてもう少し議論をしてもいいじゃないでしょうかということなんです。

川端委員 もうこれ以上申しませんが、あれもこれもというときの一番大事な部分は住宅再建に尽きるんです。そこに関して、政府のメッセージとして、いろいろ規模も違うだろう、程度も違うだろうということはあるけれども、いろいろな範囲は当然あっても、住宅再建にも、県だけではなくて国も支援する姿勢を持っているというメッセージが出せるかどうかにかかっているんですよ。

 そこは何度聞いてもお答えにならないのですが、我々は本当にこれがこの国の形の、困った人が、国が何でもかんでもやってくれということじゃなくて、そういう一番困ったときに一番やってほしいことに対してしっかりとしたメッセージと政策が出るという政治をやってほしい、このことであります。そのことに対して、私は残念だと思いますが、これは何度聞いても多分同じ答えなのでもうこれ以上聞きませんが、思いだけはぜひとも受けとめていただきたいと思いますし、我々としては、改めて生活再建支援法の提案をいたしました、この審議も含めて、これからも議論をして実現に向けて頑張ってまいりたいと思います。

 それでは次に、今、これからの部分で、定率減税を半分にする、あるいは将来なくすというふうな議論が、与党税調を含めてやられております。

 年末年始、皆さんもそうですが、私もいろいろな会合に出ました。忘年会もあれば新年会も年賀会も、いろいろなところへ出ました。異口同音に聞かれるのは、川端さん、政府や新聞、テレビで、景気が回復してきている、踊り場基調にあってちょっと足踏みだけれども、また秋からよくなるんだと言われるけれども、それはどこの国の話だと。実感がないんですね。そして、確かに、タクシーに乗って運転手さんにお伺いしても、あるいは飲食店に行ってそういう商売をしておられる方に聞いても、何か、景気がいい、数字がいいと言われるけれども、実感としてはほとんどないというのが現状という認識を私はしています。

 そういう中で、景気回復、景気回復と言われるけれども、そうでないなという中で、お手元には資料を、ちょっと見にくいかもしれません、こういう資料です。

 パネルにありますが、小泉内閣になってから、いわゆる国民への負担、いろいろな背景もあり理由もあるということは当然承知をした上でいますが、今までも含めて、国民に負担なかった分は、負担してきた。お酒、たばこの税制あるいは配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止とか住民税の均等割の増税等々を含めた税金の部分。それから年金の保険料が引き上げられた、これは毎年どんどん上がっていく。あるいはサラリーマンでいえば、雇用保険料が一回目、二回目と引き上げられていく。医療費負担も上がった、二割負担が三割になった。あるいは高齢者の医療の部分が変えられた、介護保険も見直しされるという部分を含めると、定率減税を除いてざっと、いろいろな計算があるんですけれども、大まかで言うと約三兆八千八百億円ぐらい、小泉内閣になってから、今予定されているものを含めて負担増に来る。これは結構な額ですね。

 それで、実はこの額は、小渕内閣のときにスタートしたいわゆる定率減税、景気対策のためから議論がスタートをした定率減税が、半分で一兆六千五百億と言われているんですから三兆三千億ですか、そうすると、定率減税の分はもう元を取られているんですよね。帳消しになっているんですよ。定率減税で下げた分は税金だけではないとおっしゃるんだと思いますけれども、負担という、払うものは一緒ですから、社会保険料や税金といった負担としては、もうそれだけの分はお返しをしている。それに加えて定率減税が半減される状況になるという。国民……(発言する者あり)いや、国民の痛みの実感を私は申し上げているのです。

 そういう意味でいったときに、いろいろな報道でも、試算をするとというので、要するに、標準的なサラリーマンの家庭あるいは年金暮らしの人、負担としては直撃されることは間違いない。

 その部分で、今これだけ負担、負担というときに、一つは、生活をこれ以上直撃することが、もう悲鳴しか上がってこないという部分に関して、この定率減税は、私は縮減をすべきでない。同時に、後で景気の中身もちょっと申し上げますが、景気に対して悪影響、少なくとも個人消費はこれでまた落ち込むと言われている。いろいろな学者の言い分もあるんでしょうが、民主党は、国民生活の、特にサラリーマンや高齢者をこれ以上直撃するという痛みと景気に対する悪影響という部分で、この定率減税は縮減すべきでないというふうに考えておりますが、そういう観点を含めて総理の見解を伺いたい。

小泉内閣総理大臣 負担といいますけれども、今個別の項目を挙げていましたけれども、考えてみれば、すべての予算というのは、国債を発行しようが税負担を求めようが、全部負担なんです、国民の。国民の負担なくしてはあらゆる予算を組めない。

 そういうことを総合的に考えると、いや、これを全部やらなくて、ほか、国債を発行して賄えばこれは負担がないかというと、そうじゃないんです。すべての国民の負担を求めないと、これはあらゆる、福祉を含めて公共事業を含めて、できないんです。そして、それ相応の、国民が負担し合うことによって国というのは成り立っていくわけでありますから。

 今、定率減税のこともお話しされましたけれども、一兆六千五百億円ということであります。これは平年度化するとそうなんですけれども、ことしは、景気情勢もありますから、半減するといっても、来年の一月からといいますと約一千八百億なんです。やはり景気をよく状況をにらみながら、急激な定率減税縮小、廃止はしないという配慮である。よく見なきゃいけない。財政状況を考えるということも、これは景気に影響があります。国民に対する負担を求めないで、それを財政で見ようというふうになると、これも一つは負担であります、財政負担であります。

 そういうことから、私は、全体的に考えていただかないと、これからの経済も財政も景気もなかなか難しいな。日本の行く道というのは、税負担を減らして、それでは、歳出を削減して国債発行を減らして景気がよくなるかというと、必ずしもそうじゃない。極めて限られた狭い道を行かなきゃならない。そのためには、お互いどうやって負担を分かち合うかというのが必要だと私は思っております。

川端委員 すべてが負担だというのを言っているのではなくて、総理になってから負担増になりましたと言っているんです、私は。もういいです。

 それで、やはり当然ながら負担をしていかなければいけない状態であるというのは、基本の認識はそうですよ。ただ、納得しているのかどうか。そして、政府の部分でもむだな部分はなくしていって、私、総理に就任されて次の年ですが、初めて予算を組まれたとき、代表質問で申し上げたんですが、日本は体の状況が悪くなってきているというのはみんな思っている。治したいと思っているときに、検査をして、そしてお医者さんと信頼の中でよく相談して、こうして治そうというインフォームド・コンセントがあるから、苦いけれども薬も、痛いけれども注射も、怖いけれども手術も、つらいけれどもリハビリもするんですよ。先も見えない、実態もわからない中で、とにかく取りやすいところからまずもらいますわと言われたら、これは、納得していないという部分と同時に、痛みの悲鳴が上がっていますということを私は指摘したんです。それで、景気の動向が心配だというときに、少しずつ段階的にやるというふうにおっしゃった。

 与党の税制改正大綱に「今後の景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応する。」と書いてある。これはどういうふうに読むんですか。今後の景気動向によっては、やはり縮減しようと思ったけれどもやめておくということなのか、景気がよくなってきたらもっと早めて一気に最後までやってしまうということなのか。ここら辺の部分に関してはどういうことと理解しておられるのか、総理として。お尋ねしたい。

谷垣国務大臣 まず、その前提として、先ほど一覧表をお示しになって、三兆八千八百七億ですか、既に十五、十六年度二年度で定率減税分ぐらいは元を取っているじゃないかということをおっしゃいました。

 川端さんは慎重ですから、いろいろ理由はあったりするんだろうけれどもというのを慎重に先につけておられましたけれども、実は一つ一つ、では、十五年改正のときに先行減税の分があったり、あるいは配偶者特別控除の見直しの関連で少子化対策をやったとか、年金課税を見直して基礎年金に充当する税金、国税を多くしていくとか、いろいろな見合いのことがあるわけでございますから、それを全体として見ていただかなければ、私は判断を誤ることになるのではないかと思います。

 今そこを一つ一つ申し上げてもいいですが、それをやりますとえらく時間がかかりますから今の点だけ申し上げますと、「平成十七年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に「デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力を更に強化する。 なお、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う。」こうありますが、これが私どもの一番基本的な考えで、これでもって対処していくわけです。

 それで、与党税制改正大綱では、川端先生が今御指摘になったような記述がございます。これは確かに、景気動向が悪くなった場合にどうするかということですが、ただ、これは、直ちに定率減税縮減の見直しを行うという趣旨のものではありません。今後の経済運営に当たって、こういう方針を踏まえながら、要するに持続的な成長軌道に乗せていくために必要なことを適時適切に行う、こういう意味であります。

川端委員 政府と与党の決断によりという、何か場合によっては景気が悪くなったらやめるかもしれないというふうに言いながら、一方では、実は絶対そういうことはなしにやっていくということの使い分けをされているのかなというふうに感じてしようがなかったので聞いたんですよ。本当に弾力的にやるということなんですねと。それは、その分でいえば、景気動向に関しては懸念も持っておられるということだと私は理解しました。

 ちょっと時間が限られていますので、もう一つ、この点で大事なことを総理にお尋ねしたいんです。

 一昨日の野田議員の本会議での質問のときに、総理が、定率減税は景気対策のための臨時異例の措置と御答弁されたんです。(発言する者あり)今お話に出ましたが、総理が一九九八年に総裁選挙に立候補された。小渕、梶山、小泉という三候補で争われたんです。そのときに、三候補とも、特に小渕さんと小泉現総理は、恒久減税をやる、所得税減税をやるというのをいわゆる総裁選公約にされた。その経過があって、小渕総裁が誕生のときに、いわゆる定率減税が導入をされた。

 そのときに、公約もありましたから、恒久減税だとおっしゃったのが、施政方針のときに恒久的減税になった。恒久的減税はどういうことかという議論があって、これは未来永劫という意味ではないけれどもずっとやるんだということで、いろいろな議論の中で今日に至っているのであって、総理は、そのときは残念ながら総裁に当選されませんでしたけれども、恒久減税ということで旗を掲げられて、小渕さんと同じ政策で争われて、ここだけは争いがなくてスタートした恒久減税、恒久的減税というものが今日に至っているのにもかかわらず、総理が臨時異例の措置という認識を示されたことは私はおかしいと思うのですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 小渕前総理との総裁選挙での御発言だと思うんですが、これはたしか平成十年八月十七日の小渕総理の答弁で、「本来税制は、毎年税制改正が行われているように、社会経済情勢に適切に対応するよう不断に見直しを行っていくべきものであり、未来永劫に改正しないということはあり得ないと思っております。」というのは、これは小渕さんが総裁選の際に私と戦って勝利を得て、小渕さんが総理になって言った答弁であります。

 そこで、小渕さんはよく、総裁選挙での討論の経緯から質問を受けたんでしょう。恒久的減税という用語は、私の述べた趣旨を超えて未来永劫にというようなこととして受け取られかねない面もありまして、一年限りでなく期限を定めないで制度改正を行い、その後特に法律改正を行わない限り継続していくという趣旨で恒久的な減税と表現したものである、そういうふうに小渕さんは、総裁選後、総理になってから答弁されております。

 私も総裁選挙でいろいろな主張をしましたけれども、なるほどなと。小渕さんが提言して総裁に当選して総理になって、ああ、そういう考え方なのかなと思って、いまだにその考え方を理解しながら税制改正に取り組んでおります。

川端委員 今の経過は……(発言する者あり)

甘利委員長 発言中です。静粛にお願いします。

川端委員 今経過をるるお述べになりましたが、その部分でいえば、臨時特例、異例のものではないんですよ。それを言っているんですよ。だから、法律的に、小渕元総理がきちっと変えるまで恒久減税というのは未来永劫いじらないものではないということを説明された部分を今言われただけであって、法律を変えたらどんなものでも直るという意味では、ということを言われた。

 そこで、この法律は、そうしたらどう書いてあるんだ。経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律、平成十一年三月三十一日法律第八号というのに、第一条「趣旨」、経済状況に対応しなければいけないとは書いてある。それで、「これらの事態に対応して早急に実施すべき所得税及び法人税の負担軽減措置を講ずるため、個人及び法人の所得課税の在り方について、税負担の公平の確保、税制の経済に対する中立性の保持及び税制の簡素化の必要性等を踏まえ、この法律が施行された後の我が国経済の状況等を見極めつつ抜本的な見直しを行うまでの間、所得税法及び法人税法の特例を定めるものとする。」と。

 要するに、経済が大変になってきたから個人の消費を回さなければいけないという背景はあるけれども、そこで税制、所得税、法人税をいじることに関していえば、今度変えるというのは、当然そのときの経済状況を勘案しましょうと。これは勘案されているのはそれでいいのですが、そして、所得税と法人税の抜本的な見直しを行うまでの間このままでやりますと言っているんです。

 どこかで抜本的な見直しをされたんですか。

谷垣国務大臣 今、川端委員がおっしゃいましたように、これは平成十一年のとき、著しく停滞した経済活動の回復に資する当時の状況を見据えたものと、今おっしゃったように個人所得課税の抜本的見直しまでの間の特例措置として導入された、このことをずっと総理も言ってこられているわけですね。

 それで、これはやはり当時の非常に危機的な状況に対応する臨時異例の措置だったというのは、私はやはりそう言わざるを得ないだろうと思います。それで、経済の状況は、当時のせっぱ詰まった状況から見ると大きく改善してきているというふうに私は考えております。

 それから、三位一体の改革との関係で、平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要になるということを私たちは展望しながら、今、平成十七年度は二分の一縮減しようということを、今度この法律を出させていただくわけでございますので、その前提に、個人所得課税の国、地方を通ずる見直しというものがあるわけでございます。

川端委員 要するに、簡単に取れるところからは先にいただきます、負担をしてください、そして、いろいろ抜本的に所得税のあり方とかいうのはやるけれども、もう少し先だと。結局、このパターンが多いんですよね。ですから、私は、こういうやり方は、信頼をどんどん失うと同時に、痛みだけ押しつけている、取りやすいところからやっているということにすぎない、これに尽きると思うんですね。小泉さんのやり方はみんなこうだというふうに私は思います。

 それと同時に、景気が回復した、回復したと言うけれども、実感がないと私は申しました。なぜなのか。この景気回復の数字は、実は二極化によって支えられているということなんですよ。会社の収益は非常によくなってきている。しかし、生活実感は全然ない。(発言する者あり)失業率が下がっているという御指摘がありました。定期雇用者はどんどん減っているんですよ。不定期のパートや派遣というふうな不安定な雇用がふえているんですよ。トータルで失業率が直ってきたといって喜んでいるのは、国民の実態を知らない。

 きょうの新聞に、企業の余剰資金が最高にという報道がありました。要するに、企業の持っているお金が一番多くなった、バブルのときを入れても最高だと。そして、勤労者へのいわゆる労働分配率は最低だと言われている。

 何が起こっているか。企業はいろいろリストラもし、スリムになって競争力を持ったということは、海外移転をして収益は上がる構造はつくった。しかし、そこに死屍累々のサラリーマンの犠牲があっただけではなくて、そこに残っている企業の人に対する労働分配率でさえどんどん低下をしてきている。そういう中で、見かけ上、景気がよくなったと言われるから、世の中の人はだれもそれを実感しないというのは当たり前じゃないですか。

 そこへもってきて、とりあえず所得税は、最終的には見直すけれども、やはり景気のためには個人の支出を促すということが大事だから、所得税を下げましょう。そして、それはいわゆる減税の臨時的なものではなくて、これからあるべき税制の先取りとしてやりましょう、抜本改正までずっとやりましょうと言うていたはずが、不景気のときに特別に下げてやったんだからもとへ戻すなんということをしゃあしゃあと言っているわけでしょう。

 私は、全部痛みを押しつけてやるようなことで、景気が回復し、そして改革の成果が着々と出てきたということは間違っていると言わざるを得ない。そのことを指摘しておきたいと思います。

 それでは、年金の議論を、この前、代表が本会議で質問いたしました。

 昨年、いろいろな経過で我々は反対しましたが、法律は実施をされた。そういう中で、未加入率は相変わらず改善されないで悪化をする、滞納もふえる。そして、実は、正社員だと厚生年金、企業負担が大変だ、これから大変になるということで、正社員からパートや派遣という不定期、非定期、非常用雇用者がどんどんふえていっている。パート労働に至っては、本来、この仕事だったらこれぐらいの勤務時間でこれぐらいの労働対価というのは仕事によって決まるはずですよね。

 今何が起こっているか。年金を企業が負担しなければならないようなところでないところで労働条件を決めよう。だから、労働時間も、一カ月で払う賃金も、年金の企業負担の対象にならない範囲に抑えようということで動いているのがもう常識になってきた。年金制度で労働条件が支配されているということまで起こってきている。企業の雇用は、やはり企業の状況も背に腹はかえられぬ部分もあるんでしょう、しかし、雇用から見たら大変なことになるということでいうと、このまま今の年金制度が動いていくことは重大な社会的な影響を与えるという認識に私たちは立っています。限度は一五%までだろう。

 そこで、代表は、何点か、月曜日の本会議で質問をさせていただきました。

 この国会で、こういう年金の状況を認識して抜本的な改革に向けての議論をしようではないか。

 それから、今の年金制度は、今言った指摘も含めて、国民の安心を確保するには至っていないという部分では不十分であって、抜本改革が必要と認識されているのかどうか。

 そして、年金保険料は一五%、上限を超えると、企業も雇用者も働いている人も社会も大変深刻な事態を起こしてしまうということで、ここまでが一つの目安、時期的にも数字的にも限度ではないか。

 そして、年金は、やはりこれからは仕事もいろいろな仕事にどんどん変わっていく、終身四十年間同じ会社に勤めました、四十年間専業主婦でしたというモデルケースなんというのはあり得ないという部分でいえば、一元化、そしてその部分でいえば消費税の議論、そして当然ながら税の問題で納税者番号、こういうものに対して一定の認識を共有しなければ次に進めないという部分で、このことに関して議論しましょうというふうに提起をいたしました。

 総理は、本会議で、一歩踏み込んだ部分も含めて確かに抜本改革を、我々はやり直せと言っています、当然ながら。そうすると、去年通った法律は、それは総理もいろいろお立場も含めてお答えだったと思いますが、年金制度自体は持続可能な制度に見直すことができたとこれは言わざるを得ないんですね。年金制度自体が持続可能なものになったから、もう変えなくていいと言われたら議論する必要ないという意味では、課題はいっぱいある。だから、これは手をつけないと国民に責任を果たせないという認識は、私は一緒だと思うんですよ。

 ですから、その部分で、まずはこういう諸課題についてこの予算委員会でいろいろな課題に、現状をどう思っているのか、何を克服しなければならないのか、そしてそのことに対して、ここからは多分各党違うと思うんですね、こういうやり方があるんだということを含めての部分の議論をまず徹底的にしよう。これは参議院選挙のときから言い続けてきたんですよ。だけれども、国会を余り開いていただけなかったり審議の場を持っていただけなかった。

 しかし、総理はこの前、半歩か一歩か踏み込まれた。我々もそういう認識は持っているから、この予算委員会で集中的に各党が議論をする、総理も御参加いただくということで私はやるべきだと思うんですが、総理はそれでいいとおっしゃるかどうか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、半歩どころか、大きく踏み出しているんですよ。前から民主党の提案も承知しております。そして、三党合意ができたということも私は歓迎しております。そして、岡田代表の質問の際にも、岡田さんの考え方にも私は理解を示したつもりであります。

 そこで、この年金の問題につきましては、一番国民の皆さんが関心を多く持っているし、なおかつ、国会におきましても何回も議論されております。ここで大いに議論する、結構です。それは、予算委員会だろうが厚労委員会だろうが、国会の委員会、それぞれあるわけですから、それはよく協議していただければ結構だと思いますが、胸襟を開いて、年金一元化も含めて社会保障全体について、私は、各党が早く協議に入った方がいいなと率直に思っているんです。それを本会議で答弁しましたし、その気持ちに今も変わりはございません。

川端委員 委員長にお願いします。

 理事会で、この年金問題に関して、総理も、議論すべきだ、国会の場でと御答弁をされているわけですから、年金問題を集中的に議論する、そして総理も御出席いただくということで開催することを我々としては求めたいと思いますので、理事会で前向きに、総理の重き発言も踏まえて御検討いただきたい。要請をしておきます。

甘利委員長 後日、理事会で協議いたします。

川端委員 もう一つ、年金でやはり非常に国民の皆さんが不信を持っておられる部分の一つに、社会保険庁の問題があるんですね。

 これは、私たちは、前、ちょっと記憶間違いかもしれませんが、厚生労働大臣が、まあ相次ぐものだから、反省の仕方を反省しなければならないとおっしゃったというのを読んだんですよ。これはもうふざけるなという話なんですね。

 個々にはもう言いません。私たちは、社会保険庁は解体すべきだと言っています。これもまだ議論をしたいと思いますが、社会保険庁は今のやり方の延長線ではもうだめだ、これが一つ、総理。

 もう一つは、この中で、一つは随意契約の話が出てきました。もう一つは、いわゆる監修料ですね。行政にいる人、これはここだけじゃないですよ、ほかの役所も、行政にいる人が自分の職務の部分でガイダンスの本をつくって、そして監修料というお金をもらって、実は、その出版社からお金をもらって、その出版社は関係する財団や協会に押しつけ販売で全部売ってもうけて、みんなでいろいろなやみの金に使うなんという、もうこれは犯罪じゃないかと私は思うんですけれども。

 そういう意味で、随契は原則廃止と同時に、この監修料をもらうとかいう、監修をするということ自体はもう禁止するということを方針として出すべきだと思うんです。

 そういうことをしないと、ああだこうだと言ったら、国民は信頼をもうとっくに失っている部分、回復できない。反省の仕方を反省してもらってもしようがない。総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 施政方針演説でも申し述べましたように、今できることを改革として始めている、そればかりでなくて、組織のあり方とか、これからの改革のあるべき姿については、有識者等いろいろな方の意見を聞いております。

 国会におきましても、私は、さまざまな議論がありますので、今、尾辻厚労大臣を中心にこれから大いに改革に取り組むということでありますので、今後、多くの方の意見を聞いて、あるべき改革の姿をできるだけ早く示していきたいなと思っております。

川端委員 反省の仕方を反省しなければならないとおっしゃったというのを引用したのは、今みたいなことで、いろいろやらなければいけない、実態を調べて対策をしますと言われて、しばらくたったらもっとひどいことが出てくるということの繰り返しじゃないかということを私は言っているんですよ。

 だから、それを、今総理が言われたように、どうしてこういう問題に対して、これはやはり、これからの国のあり方についての本質的なところに触れているわけですよ。こういうことに関して、どうしてほかの部分で、それいけどんどん、与党が反対しようが何しようががんがんいくという姿勢をこういうところで持っていただきたい。国民はそれを願っているんですよ、行政の長に。

 これは何度聞いても同じ答えであろうと思いますので、次に行きたいと思います。

 きょう、二十七日、東京第二検察審査会が議決通知書というのを出しました。一つは、不起訴処分になった被疑者、橋本龍太郎、事件名、政治資金規正法違反、不起訴処分をした検察官、何がし、議決の趣旨、不起訴処分にしたという部分と、あと、青木幹雄、野中広務両氏に対しての同罪の不起訴処分という部分に対して不服申し立てをされていた。この不起訴処分は不当ではないかという申し立てに対して、東京第二検察審査会から本日、当検察審査会の議決としては不起訴不当。要するに、検察が不起訴としたのは不当であると審査会としては答えを出した。

 私は、これは、国民の率直な気持ちそのままがあらわれたと思うんですよ。一億円という、普通でいえば見たこともないお金の小切手が料亭で渡され、そしてその部分をもらわれた人は、当日の会合、会食の日程、車の運行記録、その料亭の支払い記録から見て、そして翌日等々のお金の流れから見て、私がその場で一億円をもらったのは事実であろうと思うけれども記憶にない、そして、帳面に書かなくていいというふうな不記載の指示は絶対していないという不思議な記憶をもって、政倫審でお述べになった。そして、その現場にいたこの人と、あと二人の方は不起訴、現場にもいなかった村岡さんは起訴。これはおかしいという不服審査申し立てに対して、この審査会は不当であるというふうに言われた。

 私は、こういう政治の、特にこの部分のお金の流れ、そして当事者が全く違う供述をしている。そして、村岡さんは、国会に呼んでいただければ証人喚問でも何でも立つとおっしゃっている。それにもかかわらず証人喚問が実現しない。裁判、裁判とおっしゃるけれども、裁判でいろいろ議論される部分と違うんですよ。裁判で争われているのは、この一億円を会計処理しなかったことはだめですよということが争われている。

 国民が非常に不信を持っているのは、密室で一億円もの巨額の金が、ばれなければやみからやみで動くという世界を政治は持っているのか、何をやっているんだ、そして、そのことを根絶するための法改正をしろと。その前提としては、何が起こっていたのか、言い分が全く違うのであれば国会の場できっちりと真相を解明するのは、それこそ政治の根本にかかわる責任ではないかという指摘をしているんですよ。

 私たちは、証人喚問を既に昨日、かくかくの人たちというのを理事会で提案いたしました。改めて私からも実現するよう要請をしたいと思いますが、総理は、この一連の一億円をめぐるお金に関して、橋本元総理の弁明、政倫審の弁明を含めて大体納得されておられるのか、そして、国民はこれで大体理解をみんなしているだろうというふうに思っておられるのか、総理の見識をまずお尋ねしたい。

小泉内閣総理大臣 私は、この点につきまして、橋本氏も既に昨年、政治倫理審査会で申し述べたわけであります。そういう点につきまして、今後どういうことが必要かというようなことにつきましては、それぞれ、今、川端議員がお話ありましたように、各党で協議が進められていると聞いております。委員会にどういう証人を呼ぶのか、何人か証人の要求が出ているということも承知しております。よく理事会なり各党各会派で協議をしていただきたいと思います。

川端委員 前の国会で、党首討論だったと思いますが、村岡さんは本人が証人喚問にも出たいとおっしゃっているということで、総理はどう思うかという岡田代表の問いに対して、御本人の意向であるけれども、それは各党で協議したらいいとおっしゃった。今も趣旨は一緒だ。

 実現しないのは、自由民主党がノーと言い続けるからなんです。自由民主党総裁として、これだけ国民の不信を買っているものを、政治不信を解くには、国会と同時に政治家の自浄能力を政党も含めて発揮すべきである。だから、可能な部分は自由民主党も対応するようにという指示をされたら済む話じゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 その点も含めて、各党で今協議中だと聞いております。折衝中だと聞いております。よく協議をしていただきたいと思います。

川端委員 全くやる気をお持ちでない。本当に、もう総裁はおやめになったんですかね。

 委員長、昨日理事会で申し入れたと思いますが、橋本龍太郎氏、村岡兼造氏、野中広務氏、滝川俊行氏、臼田貞夫氏、元宿仁氏の証人喚問を改めて要求したいと思います。国会の場で……

甘利委員長 理事会協議項目といたします。

川端委員 お願いします。

 総理、もう一点。

 政治とお金という部分で非常にやはり国民は不信を持っている、これを解かないといけない。そのときに、一部報道されましたけれども、総理が所属されておられます、そしてある時期は会長をやっておられた清和会という政治団体、易しく言いましたら派閥ですね。その部分の収支報告で、項目的に言いますといわゆる支出の寄附という項目。

 例えば、平成十四年の平成研究会という団体の収支報告を私ここに持っておるんです。そうしますと、代表が橋本龍太郎さんなんですが、そして会計責任者が滝川俊行さんなんですが、支出の政治活動費の寄附・交付金というのが三億八百万円。詳細にそれぞれの、ここにも何人かおられると思いますが、政治家の政治団体あるいは総支部に百万円、百万円、二百万円というのが詳細に書いてありまして、日付が七月十日で八十数名ですか、そして十二月二十数日にまた八十数名。これは俗にこの世界で言う氷代、もち代。平成十四年、平成研で七月で八十九件、十二月で八十五件出している。

 これはまさに適正に処理されているんだと思いますが、一方、清和政策研究会というのを見ますと、同じ項目の中で、平成十四年でいいますと四千五百万円、政治活動の中の寄附・交付金というのがあるんですが、その他の支出四千五百万円。要するに、五万円以下で領収書の要らないものが四千五百万円で、五万円以上のものはゼロであるという報告が出ているんです。

 これでお尋ねをしたいんですが、会長もしておられましたので、責任ある立場にもおられました。清和会は、ここ何年間か、いわゆるこの世界で言う氷代、もち代は出しておられないんでしょうか。

 時間が限られておりますので、そのことと、総理が会長であった時代にどうであったか、それから、ごく最近の分はどうなのか、今お答えできる範囲でお答えできればいただきたいし、あす、さらに詳しくは同僚議員が質問をいたします。その部分ではぜひともによく調査をしていただいて、本会議の質問では全く政治資金規正法上適正に処理されているという趣旨の御発言をされましたが、このことに関して、四千万円以上のお金が、五万円以下、領収書の要らないお金だと八百口以上になるんですよね。八百件以上の五万円以下のものが支出をされたというのは、普通では極めて不自然です。

 そういうことを含めてぜひともに調査して、この委員会に報告をいただきたいし、委員長におかれましては、あす同僚議員も質問しますので、この部分を総理にも督促していただくようお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 既に新聞報道でそのような記事が報道されているということを聞いております。

 そこで、清和政策研究会、いわゆる氷代、もち代、どうなっているのかと私も聞いてみたところ、そういうものは支給していないと聞いております。

 私は、政治資金規正法上、一件五万円未満の支出は収支報告書に一件ごとの相手先を記載する必要はないとされており、清和政策研究会は法令に従って適正に収支報告書を作成していると聞いております。

川端委員 あした、同僚議員がもう一度詳しく聞かせていただきます。今調査をされた分ではまだ少し足りないかもしれませんので、しっかりと御調査いただきたいことをお願い申し上げておきたいと思います。

 それで、もう時間が終わりになりましたので、総理、総理はよく揮毫をされるときに、信なくば立たずと書かれる。官邸のホームページを見ますと、座右の銘、信なくば立たず。自民党が去年売りました、これ、去年のカレンダーですけれども、立派な字が書いてあります。どういう心境でこのことを思っておられるのか、いま一度お聞かせいただきたい。

小泉内閣総理大臣 論語の言葉で、信なくんば立たず。信用が一番大事、信頼が一番大事だということでございます。

川端委員 もう少し詳しく言いますと、孔子に政治の要諦は何かと子貢という弟子が聞いたら、三つあると。まずは兵を持て、兵隊、軍隊を持て。そして食を備えよ。そして民を信用させろ、信頼されるようにならなければいけない。兵と食と信だと。

 一つだけ持てなくなったら何を外すんですかと問われて、孔子いわく、まず兵をやめろと。二つになった。もう一つ持てなくなったらと言ったら、食を捨てろと。いずれ人間はだれでも最後は死ぬ、しかし、民の信頼がなくなったらすべて成り立たなくなるというのが信なくば立たず。

 私はそのときに、今、先ほどから痛みが押しつけられているとか言いましたけれども、一番もとになる、国民が政治を信頼するという部分が物すごく揺らいでいる。そして、その部分の一番厳しい部分が今の最後の政治とお金の問題というときに、総理がこれを座右の銘にされる。なるほど、そのとおりだなと思えるような対応をしていただきたい。きょうの部分で言うと、もうちょっと足らぬなというか、まだまだ信なくば立たずの、まさに立たなくなってきていないか、この国はというふうに感じました。

 きょうから、あと同僚議員もたくさん質問いたします。私は、あとイラクの問題等々含めて質問する予定でしたが、時間が来てしまいましたので後に譲りますが、本当に危機的な状況の中で、私たちは、政治を変える、今のような総理のもとに国民がいたら国民は不幸がどんどんふえるということを肝に銘じて、政権交代に向けて頑張ることを誓って、終わります。

 ありがとうございました。

甘利委員長 この際、菅直人君から関連質疑の申し出があります。川端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。

菅(直)委員 総理と国会で質疑を行うのは、代表をやめて以来初めてですから、九カ月ぶりになろうかと思います。

 私は、この間、お遍路などで全国を歩いてまいりました。四国の皆さんの本当に優しい気持ちに触れまして、心身ともに何か洗われるような、解放されるような気持ちを持ってまいりました。

 総理は、この九カ月、大変忙しい中におられたわけでしょうけれども、先日の岡田代表に対する質疑などを聞いておりまして、変わってないなと。私が代表時代の議論と全く変わっていない。まさに、すべての質問に対してきちんと説明をするのではなくて、開き直り、すりかえ、そのオンパレードだな、そんなふうに感じたところであります。

 そこで、ひとつパネルをお見せいたしたいと思います。こういう議論の仕方はやめてもらいたい、そういう意味で申し上げるわけですが、お手元にもあると思います。小泉発言の発言録ということです。

 約束を守れなかったといって大したことではない。これは私に、公約について実施をしなかったときに言われました。

 フセイン大統領が見つかっていないからイラクにフセイン大統領は存在しなかったとは言えない。大量破壊兵器はいずれ見つかる。見つかったんでしょうかね、これも言いっ放しでありました。

 どこが非戦闘地域かわかるわけがない。これも私にされましたが、その後、岡田代表には、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域、こんな開き直りの答弁、これが説明になっているでしょうか。

 そして、人生いろいろ、これなどはまさに開き直りの象徴だとも言えるわけであります。

 私たちに対する切り返しではないんです。国民の皆さんが、非戦闘地域について、あるいは公約について、あるいは総理の厚生年金について、ある意味で国民を代表して私たちが聞いていることに対してこういう答弁をされるのは、国民そのものをいわばばかにしたような答弁じゃないか。こういう答弁をやめるべきだと思いますが、反省の弁と、やめることをお約束いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、いつも誠意を持って、いかに国民にわかりやすく答弁しようと心がけているんです。

 そして、最初の、約束を守れなかったというのは大したことではないというのは、これは三十兆円の枠を守れと言ったときの発言だと思うんです。

 確かに、この言葉をとれば、この言葉は適切だったとは思わない、これは反省しているんです。三十兆円は、大胆かつ柔軟に、経済は生き物だから、守れない場合は経済を重視して、経済を落ち込めないためには枠にこだわらないで発行しなきゃいかぬという意味で使ったんです。しかし、約束はやはり守ることは大事だということは、考えてみればこれはいい言葉じゃなかった。

 しかし、フセイン大統領が見つかっていないからイラクにフセイン大統領は存在しなかったとは言えない、これは私は当然だと思いますよ。

 あのころ、いろいろな質問に答えていた。大量破壊兵器が見つかっていないから永遠にないというようなトーンだったから、そうとは限らない、あのときの状態、国連での議論、国連での決議、フセイン大統領が審査を拒否する、妨害する状況を見れば、これはあるなと思っても不思議じゃない。私も、あのころはいずれ見つかるんじゃないかと思っていた。しかし、結果的にはないということ。思いと予想と見込みは、外れる場合がある。しかし、あのころの状況から見れば、本当に大量破壊兵器を持っていないと思うんだったらば……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

小泉内閣総理大臣 フセイン大統領は国連の査察を受け入れて、みずからないですよと証明していれば戦争は起こっていなかったんです。そうなんです。

 それと、これも菅さんとの討論で、どこが非戦闘地域ですか、どこが戦闘地域ですかという議論になったんです。私が、非戦闘地域、わかるわけない、当たり前でしょう。だれに聞かれたって、総理大臣に聞かれたって、防衛庁長官に聞かれたって、日本に、ここにいて、私がどこが非戦闘地域か、どこが戦闘地域か、イラクに行って調べたってわかりませんよ。それは、よく専門家に聞いて……(発言する者あり)

甘利委員長 委員以外は発言しないように。

小泉内閣総理大臣 自衛隊が派遣される地域は非戦闘地域でなければならないという、その法律を守って自衛隊を派遣する場合は非戦闘地域に派遣するという意味で言ったのであって、今だって聞かれれば、どこが非戦闘地域でどこが戦闘地域かという、そういうことを想定していたイラク特措法じゃないんです、これは今でも。そこで、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ、これは一番わかりやすい答弁ですよ。(発言する者あり)そうでしょう。これは党首討論で私が答弁しているんです。

甘利委員長 静粛にお願いします。

小泉内閣総理大臣 私は、丁寧に、誠実に答弁しているんです。私、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だと、これは極めて妥当でわかりやすい答弁なんです。

 それで、法律に書いてある定義を、継続性、計画性そして組織性、そういう定義だったら法律を引っ張り出せばだれでも言えますよ。そうじゃなくて、党首討論なんだから、役人がするような答弁は避けなきゃいかぬ、できるだけ国民にわかりやすい答弁をしようと思って、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域である。ということは、非戦闘地域でなければ自衛隊は派遣しないということを言っているんですよ。こんなに率直にわかりやすくかみ砕いて答弁しているのはないでしょう。だから、私は、これは今でも正しい適切な答弁だと思っていますよ。

 それと、人生いろいろ、これは当たり前じゃないですか。その人生いろいろをおかしいと思う方がおかしい。人生は画一的じゃありません。人によっていろいろなんです。経験も違う。そういうことから、一律的に、画一的に判断しない方がいいですよと。政党もいろいろ、議員もいろいろ、人生いろいろなんです。それを率直に言ったんですよ。これをおかしいと言う方がおかしい。

菅(直)委員 私もかなり多くの総理大臣を見てまいりましたけれども、確かに総理大臣もいろいろですね。これほど国民をばかにして開き直った総理大臣を私は見たことがありません。

 特に、自衛隊が活動しているところが非戦闘地域だ。国民は、現実にサマワでロケット弾が撃ち込まれている、果たしてそれが非戦闘地域か、そういうことに対して岡田我が党代表が聞いたのに対して、つまりは論理を逆転させて、非戦闘地域だから自衛隊を出した、だから、自衛隊が出ているところは非戦闘地域だ、こんな子供のけんかのような、そういう論理をする総理大臣は初めて見ました。

 これは、小泉総理、せっかく小泉総理の発言語録と書いておきましたが、変えようと思います。ここをはぐりますと、小泉妄言録ということになるわけであります。まさに小泉妄言居士、これは、私は改めて総理に命名をしておきたいと思います。

 そこで、具体的な討論に入っていきたいと思います。

 日米関係におきまして、いよいよブッシュ大統領の第二期目が始まり、ラムズフェルド国防長官も留任をいたしました。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

菅(直)委員 この中で、米軍のトランスフォーメーション、いわゆる変革、再編の問題と、それに関連して、在日米軍の再編の問題が大きな課題になってきております。いろいろな報道では、例えば、現在ワシントン州にある米陸軍第一師団の司令部を座間に移転したい、そういう話題も出ている。あるいは、空軍において横田、グアムの統合、そういった議論が出ている。こういう報道も多くなされております。また、大野防衛大臣は、十一月十九日にはラムズフェルド国防長官とこのトランスフォーメーションについて意見交換をした、そういうふうに聞いております。

 そこで、総理にお聞きをいたします。これは大変重要なことですから、総理、またあんないいかげんなことで逃げないでくださいよ。

 総理は日米関係を大変重要視され、ブッシュ大統領とも、あるいはラムズフェルド国防長官とも何度もお会いになっているはずでありますが、アメリカがこのトランスフォーメーションに関連して日本の在日米軍を再編しようとする、そのねらいはどこにあるというふうに御理解されておりますか。

 特に、不安定な弧と言われる中国や東南アジア、インド、パキスタンさらには中東に及ぶこの地域に対して、いわば総合的な司令部を日本に置きたい、そのために第一軍団司令部を座間に移そうとしているのではないか、こういう指摘もありますけれども、総理はこの問題についてどういう認識をお持ちなのか、アメリカが何を考えているとお考えなのか、総理の認識をまずお伺いします。

小泉内閣総理大臣 まず最初にお断りしておきますが、具体的個別の問題について、今私がこういう場で、どことどこの地域が米軍再編の場で協議になっていると言う段階ではございません。

 そういう前提で、日米が緊密に協力していく、そして朝鮮半島のみならず、世界の平和と安定の重要性を日米両国がよく認識して、いわば世界の中の日米同盟として、今後どのように世界のいろいろな分野に協力していくかという話の中で、今、在日米軍の再編成の話をそれぞれ意見交換しているところであります。

 そういう際には、当然、日米安保条約という、日本の独立と平和を守る大事な条約でありますが、この日米安保条約におけるいわゆる侵略勢力に対する抑止力、この抑止力をどのように今後も維持し続けていくか。同時に、米軍の基地によって、沖縄初め多くの住民が負担を余儀なくされております。その負担をいかに軽減させていくかという観点から、今、いわゆるトランスフォーメーション等の話し合いをしているところでありまして、これを個別に、最初に申し上げましたように、今こうだああだと言うまだ段階ではございません。

菅(直)委員 総理がトランスフォーメーションについてその程度の認識しかないとしたら、私は本当にあきれてしまいます。

 ラムズフェルド長官がこのことを指摘し、あるいはブッシュ大統領も指摘をしたのはもう数年前です。つまりは、ポスト冷戦という構造からさらに変化をして、兵力の数ではなくて、いわゆるハイテクなどを使った新しい軍事戦略、そういう中で、例えば三十八度線に張りつけている米軍も下げていく、そういういろいろな大きな変化の中で、日本に対しても幾つかの課題について議論をしている。しかし、総理の話は、単なる従来のSACOの延長上としか思えない程度の認識でもしこの問題に対応されているとしたら、余りにもギャップが大きいんじゃないでしょうか。

 そこで、本当なら総理に聞きたいところですが、大野長官、あなたは直接ラムズフェルドさんとも話をされたと聞いておりますが、例えば座間にこの第一軍団司令部を移したときに、兵力的には八百人とか、数からいえばそうでしょう。しかし、ラムズフェルド氏の言葉をかりれば、数ではない、能力なんだという言い方をしています。つまりは、不安定な弧に対してアメリカが戦略的にはにらみをきかせる、その中心を置こうとしていると多くの人は理解をしていますが、そういう場合に、重大な配備の変更ということになりませんか、その点についての見解を伺います。

大野国務大臣 菅先生は四国にお遍路回りをされたということでございます。優しい四国の心にお触れになったということで、私も四国の優しい心を持った男でございます。よろしくお願いします。

 トランスフォーメーション、もちろん、一つは安全保障環境の変化、もう一つは軍事科学力の大変な発達、この二つからの発想法でございます。全世界的にやっている。

 その中で、日本とアメリカとの話し合いは、まず個々の施設・区域の話から始まったわけでございますけれども、それはやはり、もう先生十分御指摘のとおり、哲学から始めなきゃいけない。安全保障環境全体の変化をどう見ていくのか。そして、二番目に、日本とアメリカの任務、役割分担、これをどう考えていくのか。これを同時にやっていかなきゃいけないということが昨年の秋ごろからの考えの変化でございました。

 我々は、今、この全体の安全保障環境の変化、共通認識をどう持っていくか、それから、日米の役割分担をどう考えるか、そして、個々の分担ということを考えているわけでございます。

 したがいまして、その全体像がはっきりしませんと、結論としてどこにどう、個別の問題はもちろん触れられない、こういうことを御了解、御理解いただきたいと思います。

菅(直)委員 ですから、今、一般的にいろいろなところから指摘をされている、もちろん決まったとは言っていません。いろいろと議題になり、いろいろな話題に出ていると言われている、座間に第一軍団司令部を移転した場合に、それが配置の重大な変更に当たらないかということをお聞きしたのです。具体的に答えてください。

大野国務大臣 個別具体的な問題というのは、仮定の問題になってしまいますので、もし仮に、そういうことじゃなくて仮定の問題としてもお答えしますと、それは誤解を呼びます。したがいまして、その辺は、具体的に決まってくるまで答弁を差し控えさせていただきます。

菅(直)委員 先日、たしか、どなたですか、防衛庁でしたか、お役人が答えていましたね。司令部を変更した、それだけでは一概に配置の変更とは言えないという答弁が出ておりました。

 つまりは、官僚は答えられるけれども、大臣は答えられない、それが答えですね、大野さん。

大野国務大臣 一人の官僚としての一つの意見を言ったんだろうと私は思います。しかしながら、私ども政治家は、日本の安全保障全体として責任を持ってやっていかなきゃいけない。そういうときに、一つ一つの意見を仮説に基づいてやっていく、これは不安のもとになります。

 私たちは、仮に決まった場合には、きちっとそれを皆様にお訴え申し上げ、そして、皆様の御理解をいただく努力をしてまいります。したがいまして、今の段階では個別具体の話は差し控えさせていただきたい、このことを申し上げている次第であります。

菅(直)委員 重大ですよ、今の答弁は。決まったら説明する。つまり、国会で事前には説明しない。決めるまでは説明しない。総理が、イラク派遣の延長のときも、まだ決めていない、まだ決めていない。国会が終わったら、あしたそろそろ期限だというときに決めました。まだまだ詐欺じゃないですか。大野さんもまだまだ詐欺をするんですか。こんな答弁でいいんですか、こんな答弁で。

大野国務大臣 個別の具体の問題につきましては、交渉の相手がおります。したがいまして、ある程度案が固まってくるまでは、例えばここはいいとなりますと、それが玉突きになっていく、こういう状態になってまいりますから、個々具体的な問題につきましては、ある程度固まってくるまでは発表できませんし……(発言する者あり)聞いてください。そして、これは地元の皆さんにも御相談しなきゃいけないことなんです。地元の皆さんに御相談もしなきゃいけない、そして固めていかなきゃいけないことであります。その際には当然皆様にも御理解をいただくと思いますけれども、そういうプロセス、非常に難しいプロセスがあるということを御理解いただきたいと思います。

菅(直)委員 では、せっかくですから、町村外務大臣、不安定な弧という言葉はもちろん御存じでしょう。不安定な弧というのは、連日報道にも出ています。先ほども言った、いわゆる中東まで含む範囲に対しての、アメリカが一番重要視している。この範囲は、明らかにいわゆる日米安保で言う極東条項の範囲を超えております。この範囲に対して、その押さえとして総合的な司令部を置く、そういう場合に、この日米安保の極東条項との関係はどういうことになるんでしょう。

 既に外務省はそれに対していろいろと検討をして、一部でも極東に絡む、日本に絡む問題があれば、それは今の極東条項で読めるんだということが検討されているという報道も出ております。まさか、こんな大きな問題も、個別的な具体的なことが決まらなければ議論できない、同世代の町村さん、そんなことは言わないでしょう。答弁してください。

町村国務大臣 今、司令部というお話がありました。司令部といいましても、それがどういう機能を持つか、やはりそこをよく議論した上でないと、実は余り頭の体操をいろいろやってみてもしようがないんです。したがって、私どもはこれから、先ほど大野長官が申し上げましたように、現状は、今、日本とアメリカの間でどういう共通認識を持って……(発言する者あり)ちょっと静かにしてくれませんか。どういう共通認識を持ってやるのかということについて、かなり詰めた議論をやっております。それから後は個々、アメリカ軍あるいは日本の自衛隊がどういう役割を担い、どういう分担をしていくかということを、それからだんだんやっていきます。

 その上で、では、それを実現するためにどういう、それぞれ米軍の基地が必要で、あるいは日本の自衛隊の配置というものが必要ですかということを議論していくのであって、今から、ある局限された特定の、一部報道されているものについて、それがどうですかこうですかということを議論することは、まことに議論が逆転をしているんです。そうやった逆転をした各論から入っていったのでは、きちんとした日米、あるいは世界の平和と安定を築くという役割を日本が果たせなくなるんです。ですから、余りこの部分についてこれがどうだ、どうだという議論をすることは現状では生産的ではないから、私はあえて申し上げない。

 極東の範囲のお話もありました。それは、先ほど司令部というものが、どういうふうな機能を現実に持って果たし得る司令部というものが、仮に彼らが考えたかどうかということは、今後いずれそれは議論になり、そして、それはまた議論がある程度煮詰まったところで国会にも御報告をし、地元にも御報告をし、その上で皆さん方のなるほどなという答えを出していくのは当然のことであります。その際に、極東との関係等々は、もちろん私ども認識をしながら議論をしていくことは当然であろうと思います。

菅(直)委員 不安定な弧という概念が各論なんですか、これが。冷戦後の世界の中で、特にアメリカが、かつてのソ連、NATOを中心にした押さえを必要がなくなった。そして、次の一世紀か半世紀、最も重要な不安定な地域として不安定な弧というこの地域を名指しをして、それに向けての対応の一つとしてのトランスフォーメーション、日本における在日米軍の再編。韓国も欧州もそうです。これが各論なんですか。これが各論だったら、一体何が全体なんですか。まさにアメリカの世界戦略そのものじゃないですか。

 それを受けて立つ防衛庁長官も外務大臣も、個別各論のことは言えません。では、これ以上大きなことを言うといったら、何を言えばいいんですか。地球の最も大きな少なくとも安全保障上の課題をテーマにしていたら、これは各論なんですか。総理に至っては、まだ決めていない、まだ決まっていない。いつ決めるんですか。国会が開かれていないときに決めるんですか。

 総理、こういう議論の仕方で国民を欺いているんじゃないですか。だんだん、大臣までが総理と同じような性格になっているじゃないですか。総理のこのアメリカの大戦略に対するもし見解があれば、全く考えていないというんだったら考えていないということも含めて、お答えください。

小泉内閣総理大臣 先ほども申し述べたところでございますが、私は、世界の中の日米同盟、これは極めて重要な認識であるということを述べたわけであります。世界の中で日米が協力して、世界の平和と安定のためにどのような協力ができるか、貢献ができるか、そこであります。そして、日米安保条約というのは、日本に万が一のことがあったら、もし日本に侵略勢力が襲来した場合には、アメリカは日本と一体となって、協力しながら日本を守るというのが日米安保条約であります。

 世界の中の日米同盟というのは、日米安保条約以外に、日米間だけじゃなくて、例えばテロとの闘い。今、アフガニスタンでようやく選挙によるカルザイ政権ができました。(菅(直)委員「聞いていることに答えてください。不安定な弧に対して」と呼ぶ)聞いていることを今話しているんですよ、私。それを、質問に誠意を持って答えているのに……(発言する者あり)今答えている最中なんですよ。これから不安定な弧とかいろいろ入っていくのに。不安定……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

小泉内閣総理大臣 不安定な弧、アフガニスタンも不安定な弧の地域の一部なんです。そういうことをおわかりいただきたい。中東からアフガニスタンからアジアから、将来安定していくとは限らない。

 そういう、例えば、インド洋においてはアフガニスタンのテロ対策特措法、これは、日本にとって安保条約によって自衛艦が出ているんじゃないんです。きちんとテロ対策法という法律を定めて、その法律の中で日本はアメリカと協力する、各国と協力する。

 イラク特措法によっても、日米安保条約があるからイラクに自衛隊を派遣しているんではないんです。きちんとイラク特措法をつくって、その範囲内で日本は、世界の中で、国連の加盟国として、イラクに民主的な政権をつくるということは、日本のみならず……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。与野党とも静粛にお願いします。

小泉内閣総理大臣 世界のためにとっても必要だ。だから、日本は日本にできることをやりましょう。アメリカと同じことはできない、イギリスと同じことはできない、日本は日本としてできる人道支援、復興支援をしますということなんです。

 そして、これからも、中東の和平についても、日本は、やはり中東というものは、パレスチナ、イスラエル、これは共存してもらいたい、共存平和の考えでいってもらいたいということで、広い地域にわたって、不安定の弧のみならず、世界の中でそれぞれが、日米が協力する分野はたくさんある。

 そういう観点からお互い協力しましょうという考えで、さて、その中で、これからの在日米軍の問題、そして日本の基地負担の問題、軽減していく問題、それを今協議しているんですよ。その協議している段階で、個別に今、どの地域とどの地域がどういう形で再編されるかということにおいては、個別の問題については今申し上げる段階ではないと言っているんです。

菅(直)委員 まあ、総理は、私の質問の最初のところで言ったことを忘れているんじゃないですか。私は、トランスフォーメーションに関して、在日米軍の再編ということについて聞いたんですよ。

 まさに、イラクとかアフガニスタンで、現在は特別法で行われているけれども、今回、このトランスフォーメーションに関連しては、在日米軍の再編の中で、そこをにらんだ総合司令部が来るという話がかなり出ている。そこから考えて、この問題が、例えば極東条項、例えば日米安保条約で言う事前協議の対象になる重大な配置の変更になるのか。まさに、イラクやアフガニスタンの特別法のことを聞いているんじゃないんです。

 トランスフォーメーションに関して、在日米軍の再編のこと、在日米軍のことが日米安保でなくて何なんですか、一体。日米安保条約というのは、日本がアメリカに基地を提供するかわりに日本も守ってもらうかもしれないけれども、実際には、アメリカの世界戦略の多くの部分を日本にある基地がカバーしているというのは世界の常識じゃないですか。

 本当なら、もっともっとこの問題で議論をしたいんですが、今の小泉さんの頭では、私の言っていることすら、その関係すらわかっていないようですから、これはまた、この問題としてしっかりと、大野さんも本当ならもうちょっとしゃべりたいんだと思いますけれども、総理に遠慮してその程度しか言われませんでしたけれども、国民の前で議論してくださいよ。

 我が党は、何が何でも全部が反対なんて言っているんじゃないですよ。場合によったら普天間の飛行場をどうするか、場合によったら横田をどうするか、場合によっては座間をどうするか、そういう議論をしようじゃないかと言っているのにもかかわらず、総理が、防衛庁長官が、外務大臣が全部議論を逃げている。何も聞いていない、まだまだだ、決めていない、具体的な問題が各論からは言えない、こういう、国民の前から安全保障の議論を逃げている。これが日本の不毛な安全保障議論を招いてきた一方の責任、自民党の責任だということを申し上げて、次の同じ外交問題に移りたいと思います。

 総理は、施政方針演説の中で、東アジア共同体という言葉を使われています。共同体といえば、EUの欧州共同体がまず頭に浮かぶわけですけれども、一体、総理はどういうイメージでこの東アジア共同体を目指そうということを言われているのか。

 ヨーロッパは、戦後六十年の中で、まさに戦った同士の相手であるドイツやフランスが信頼関係を構築して、そして長い時間をかけてECからEUをつくり上げ、現在、ユーロの共通通貨、さらにはその拡大、そして緊急展開軍という、ある意味ではEUの独自の安全保障体制をつくり上げようとしています。

 残念ながら、アジアにおいて、そういう萌芽と言えるものも、経済の分野では多少はあるかもしれませんが、政治、安全保障の分野では起きておりません。特に、小泉総理になってから、アジアの関係は政治的にはぎくしゃくしっ放しです。それが、国会の本会議で、東アジア共同体、大いに結構です。どういう戦略でどういうものを目指していくのか、国民にわかりやすく答えてください。

小泉内閣総理大臣 将来、東アジア共同体構想というものを展望しながら、日本とASEAN、そして中国、韓国等と今後緊密な連絡協力しながらお互い発展していこう、そういう一つの考え方であります。

 日本は、もともとASEANを重視しております。日本とASEANの会合、そして日本と中国、韓国とASEAN諸国との会合、毎年開かれておりますが、ことしは東アジア・サミットを開こうということで、マレーシアでことし開催されますが、これはASEAN諸国と日中韓が加わる。そこで、東アジア共同体については、将来、我々としては、日本としては、オーストラリアもニュージーランドも参加できるようにした方がいいんじゃないかという展望を持っております。

 しかしながら、EUといわゆる東アジア共同体とよく比較で論議されますが、EUの基盤と東アジア共同体ということを比べる場合に、このアジア諸国等の実情とEU諸国等の実情は、私は違うと思います。そして、EUのような関係になるのかどうかという議論もされますが、そこまでいくのはまだまだ時間がかかると思っております。しかしながら、アジア共同体という考えを持ちながらお互い緊密な連携協力をしていこうという考え方として、私は、今のような、東アジア共同体というような考えを持ちながらそれぞれとの交流を深めていった方がいいんじゃないかということを申し上げているわけであります。

 第一、政治体制も経済体制も、EUとこの東アジア共同体の諸国、違います。しかしながら、今まで日本とASEANとの密接な関係、そして中国、韓国等の近隣諸国との関係を考えますと、この関係をより深めていこうということで東アジア・サミットがことし開かれますが、その際に問題になるのは、今のASEANプラス3と東アジア・サミットとどういう違いがあるのかという問題が出てきます。メンバーは同じであります。

 だから、そういう点も含めて、何年か会議を重ねていくことによって、より東アジア共同体の考え方がはっきりしてくるのではないか、というふうになると思います。

菅(直)委員 今の最後は何ですか、議論をしていく上にはっきりしてくるでしょう。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

菅(直)委員 本会議の席で総理自身が東アジア共同体ということを言われたから聞いたんですよ。私が言ったんじゃないんですよ。

 そして、まだまだ時間がかかると言われましたが、まだまだ時間がかかるというのは、目指すということを前提にした言葉だと聞こえるんです。しかし、本当に目指しているのか。

 例えば、先ほどの不安定な弧という考え方の中には、中国に対しても、その軍事力の増強に対して警戒心を持つという側面が入っているわけです。つまり、アメリカにとっては、多分、日本を含む、中国を含む、EUのような存在というものは余り望ましいとはもしかしたら考えていないかもしれません。

 つまりは、対アメリカ外交、対アジア外交という中で、私は、アメリカとの関係も友好状態をきちっと維持しながら、まさに時間をかけて、総理が言われたように時間をかけて、EUが六十年かかったものが百二十年かかるかもしれないけれども、日本と近隣のアジア諸国との関係を再構築して、将来、まさに東アジア共同体というものをつくるべきだ。五十年かかるか七十年かかるかわかりませんが、そういう方向を目指すべきだと思っています。

 しかし、今の総理の話は、目指しているのか目指していないのか、議論しなきゃよくわかりませんねという話です。

 そこで、少しだけ話を進めたいと思います。

 二週間ほど前、毎日新聞に、グラックさんというアメリカ・コロンビア大学の教授が、なかなかおもしろいインタビュー記事を載せておりました。一部読んでみますと、戦後の日米関係の中で、いわゆる戦前の帝国日本は忘れ去られてきた。アメリカにとっての戦争はパールハーバーから広島までであり、満州事変も盧溝橋事件もその中になかった。日本は米国のことが中心で、中国や韓国のことに思いをめぐらせず、そうした問題に対処してこなかった。それが現在の歴史問題などの一因になっている。日米関係への過度の集中が生み出した視野狭窄の影響だ。こういう言い方をされています。

 私は、これは小泉さんを指して言っている言葉かな、そういうふうに読み取りました。

 つまり、アジアとの関係を考えるときに、日本はアメリカとの関係がよかった。まさに、それはパールハーバーから終戦までかもしれません。しかし、アジアの関係、特に中国や韓国の関係は、韓国併合がたしか一九一〇年でしょう、あるいは盧溝橋、さらにはその前の満州事変、あるいは台湾併合まで言えば一九〇五年から七年でしょう。そして、戦後も、少なくとも中国の関係は、田中内閣の日中国交回復までは戦争状態は終わっていなかったわけであります。

 つまりは、日米は重要です、しかし、日米だけに余りにも集中し過ぎて、視野狭窄になっているのではないかとアメリカ人の学者が毎日新聞に述べていて、私は、なかなか示唆に富んだ中身だと感じました。

 そこで、これにも関連しますが、日本のあり方の中で、特に総理は、靖国神社を非常にいわばいろいろな意味で尊重される、こだわっておられます。そこで、靖国神社というものについて少し議論をしたいんですけれども、まず総理は、総理になるときの公約、総理として靖国神社に必ず毎年お参りをしますという約束をされました。ことしはいつお参りをされるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

菅(直)委員 適切に判断するということは、行くこともあるけれども、場合によっては行かないこともあるということですか。ただ時期だけを適切に判断するということですか。総理は、行くという約束を総裁選、総理としても約束をされています。どちらなんですか。行く行かないも含めて適切に判断するということですか。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

菅(直)委員 つまりは、行く行かないを含めてということですね。そうでないんだったら、そうでないと言ってください。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

菅(直)委員 これが総理のいつもの手ですよ。答えたくないことは、たとえ公約したことでも、同じことを言えばそのうち相手が時間切れであきらめるだろう。

 もう一回答えてください。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

菅(直)委員 もう一度、行くのか行かないのか、行かないこともあり得るのか、答えてください。

小泉内閣総理大臣 同じ質問ですから同じ答弁でありますが、適切に判断いたします。

菅(直)委員 答弁になっていません。

 もう一度聞きます。行くか行かないかを含めて判断するのか、行くのは決めているけれども、行く時期を適切に判断しようとしているのか、適切という意味を聞いているんです。はっきり答えてください。

小泉内閣総理大臣 適切は適切です。(発言する者あり)

甘利委員長 菅直人君。(発言する者あり)菅君。(菅(直)委員「答えていないじゃない。答えていないじゃない」と呼ぶ)答弁はしました。菅君、質問を続けてください。(菅(直)委員「答えさせてよ、ちゃんと」と呼ぶ)総理は答弁をいたしました。答弁はいたしました。続けて質問をしてください。(菅(直)委員「中身が答弁になっていないじゃない」と呼ぶ)そのことを質問してください。

菅(直)委員 では、もう一回いきましょう。もう一回。

 では、委員長にも聞きますけれども、私が聞いていることは、多分、皆さん、あるいはテレビを見ている皆さんもわかりやすいと思うんですよ。

 総理は、かつて、従来から、自分は毎年総理として靖国神社に参拝しますと約束をされ、日にちは変えられたけれども、確かにこれまで毎年参拝されてきました。そこで私は、ことし参拝されるのかどうか、そして、ことし参拝されるのだったらいつかと聞きました。そうしたら、適切に判断すると言いました。ということは、参拝されるかどうかも含めて決めていないということなんですね。

 参拝、そちらだけ聞きましょう。時期は聞きません。参拝されるかどうかだけ聞きますよ。参拝されるかどうかについてお答えください。それを適切に判断するということは、参拝しないこともあり得るというふうに当然日本語として理解できますね。適切な判断だから、適切が、従来自分が考えていたのが適切でないとしたら、今度はそれを変えて、出ないこともあるわけですから。そこだけ聞きますよ。委員長、それだけは答えさせてくださいよ。

 つまりは、靖国神社にことし参拝されますか、されませんか、まだ決めていないんですか、いかがですか、総理。

小泉内閣総理大臣 菅さんも、代表をやめてお遍路回りした割にはちょっと……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

小泉内閣総理大臣 もうちょっと丸くなっているかなと思ったんだけれども。あえて、同じ質問ですから、同じ答弁しますが、適切に判断いたします。

菅(直)委員 最後の答弁で、時期だけでなく、行く行かないを含めて適切に判断するというお答えだったと理解しましょう。

 そこで、さらにお聞きします。

 靖国神社という神社は、総理は御存じかもしれませんが、明治二年に大村益次郎陸軍卿のもとで、官軍の死者を祭るために東京招魂社として誕生しました。西南の役の後、明治十二年に現在の名称になりました。官軍でない、賊軍だという理由で西郷隆盛公は、明治のまさに貢献者ではありますけれども、靖国神社には祭られておりません。

 この靖国神社について、哲学者の梅原猛さんが、昨年四月二十日の朝日新聞のインタビューの中で、次のように述べられています。

 つまり、靖国神社は、伝統的な神道とは性格を異にしている。つまり、当時の欧米の国家主義の影響を受けたものではないか。伝統的な神道というのは、味方より、味方に滅ぼされた敵を手厚く祭るものである。このことを、中曽根内閣のときに設けられた靖国懇でも言われたわけであります。

 私もいろいろ調べてみました。私は……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。質問者の発言中です。

菅(直)委員 明治のこの時期、明治憲法は、天皇を神聖にして侵すべからずという、ある意味では天皇を神に位置づけて、そして国家神道というものをつくり上げて、それが昭和初期には、天皇のためには一億総玉砕もあり得る、子供たちの教育に、私も先日、七十歳代の方と話をしましたら、自分は小学生のときに、早く大人になって戦争で敵を殺して天皇陛下のために死にたい、そう思ったと言われていました。多くの人がそういう教育を受けました。まさにジハードですよ。

 そういう時代があって、戦後、天皇はみずから、自分は神ではないということを言われたわけであります。まさに靖国神社は、その時期には、天皇のためには一億総玉砕も辞さずというジハードの象徴的な存在であったということは、これは歴史が示すとおりであります。

 総理は、この靖国神社の歴史について、あるいは哲学者の梅原さんが言われているような、伝統的な神道とは性格を異にするという見解について、総理の御意見を明確にお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 どなたであろうとも、それは解釈は自由であります。私は、とやかくそのようなことに対して言う気はございません。

 しかし、私が靖国神社を参拝するのは、二度と戦争をしてはならない、そして、戦争のときに心ならずも戦場に赴かなければならなかった、家族と離れて命を落とさざるを得なかった、そういう方々に哀悼の誠をささげるために、私は靖国神社を参拝しております。

 そして、今、若い方々、努力されておりますけれども、今日の平和と繁栄というのは、今生きている人だけで成り立っているものではない。亡くなられた方々、戦争に行って命を落とさざるを得なかった、そういう方々のとうとい犠牲の上に今日の日本があるんだな、そういう方々に、先輩たち、命を落とした方々に敬意と感謝をささげつつ、これから二度と戦争をしてはならないという気持ちで毎年参拝しております。

菅(直)委員 私は、私自身も参拝をしたことがありますし、私も参拝するときには、今総理が言われたような気持ちで参拝しております。

 ただ、私が質問をしたのは、そういうことをお聞きしたのではありません。少なくとも靖国神社というものが、この日本の歴史の中で、それも遠い昔ではありません、明治の初めから昭和二十年、さらにはその後の歴史の中でどういう位置づけにあったかということについて、総理がもし見解をお持ちならお聞きしようと思って、私の意見を含め、あるいは梅原さんの意見を含めて申し上げたわけです。総理はそういうことについては一切コメントをされないで、それは、ほかの場所でも同じ気持ちでお参りをすることはありますよ、靖国神社じゃないところでも。それは一般的にあっていい。だれも否定しません。

 そこで、もう少し、時間が余りありませんが、明治ということを考えてみたときに、一体、日本は、明治の初めから四十年間、いわゆる近代化をかなり達成し、日清、日露戦争で勝利をいたしました。しかし、その後、一九〇五年の日露戦争勝利から四十年で、我が国は太平洋戦争でまさに敗戦の憂き目に遭ったわけであります。何が間違っていたのか。

 総理はしきりに司馬遼太郎さんの本を取り上げられて、元気が出るということを言われています。司馬遼太郎さんは、確かに「坂の上の雲」という、まさに明治の生き生きとしたその人物像を書かれています。

 しかし同時に、司馬遼太郎さんは「この国のかたち」という随筆をずっと文芸春秋に連載され、今単行本として出ております。読まれたことがあればおわかりだと思いますが、司馬さんは、その後のノモンハンの事件から日本が何か変なものがどんどん大きくなってきた、異胎がどんどん大きくなってきて、まさに明治憲法十一条、陸海軍の統帥権を天皇が持つというその統帥権の独立が暴走し、それを国民が、政治家がとめ切れなくて戦争に突入した。

 また、満州で、十五歳のときに引き揚げた人に先日会いましたが、まず逃げ出したのは関東軍でした。だれも一般の満州に移住した人たちに逃げろと言わなかった。そういう反省の中から戦後がスタートしたわけです。

 我が党でも、私も含めて、憲法について今の憲法をどのように変えていくか議論をしようと、いろいろな議論を始めております。しかし、そのときに、明治から昭和二十年八月十五日までの中で、引き継がなきゃいけないものと引き継いではならないものとがあるはずです。

 例えば、愛国心というのは、私たちはこの日本の自然を愛し、子孫の繁栄を願う、そういう愛国心は私にもあります。当然のことです。しかし、戦争直前のように、天皇のためには全員が死んでもいい、一億総玉砕、それに向かって子供たちも少国民として頑張れ、これを愛国心の名で教育してきた。こういう形で間違った愛国心を教えてきた歴史があるわけですから、そういうものは排除しなきゃいけない。

 ある自民党のOBの方と、OBかどうかわかりませんが、お話ししましたら、自分はパトリオティストだけれどもナショナリストじゃないという言葉をいただいたことがありました。この意味するところを私も一〇〇%は理解をまだできていませんけれども、本当の意味で国を愛するということと、いわゆる国粋的に何かと一体化することによって、つまりは一億総玉砕でも構わないといったような形で物事を考える、そういうナショナリズムというものは多分とらないという意味だったろうと私は理解をいたしております。

 そういう中で、時間がありませんので、もう一つだけ。

 明治から近代化、工業化で今日の日本まで来ましたけれども、その行き詰まりが今我々の上にのしかかっています。その象徴が、出生率が一・二九。これは東京の出生率ですが、一ですね。〇・九九八七。おじいちゃん、おばあちゃんが八人いて、息子、娘が四人です。孫が二人、ひ孫が一人。私は、この実態を考えたときに、工業化、近代化、都市化も、日本を成長させたかもしれないけれども、行き詰まった。都市と農村が両立する、そういう日本をつくらないことには日本の再生はない。

 私が代表の時代に、民主党の農業再生プランをつくるときに、二つの目標を私は指示いたしました。

 一つは、まさに農山村地域で子供を生み育てることができる、長期的な、安定的な生活ができるようになる、そのことが一つの目的。そしてもう一つが、地産地消、安全なものをできるだけ国内でつくって自給率を高めていく。そのために一兆円規模の直接支払い制度というものを提案いたしました。

 これまでの農業土木中心で、農業そのものに対してはそれを崩壊するのを放置して、かわりに公共事業を地方に流してきた今までの大間違いの自民党農政から、農業そのものが自給率を高め、農山村地域で子育てができるような長期的な展望に立った、そのときには、農業土木に充てられた一部の資金やいろいろな資金を同じ農林省予算の中で振りかえることによってそのことが可能になる。(発言する者あり)ばらまき、ばらまきというやじが飛んでいますけれども、目標が明確なんです。目標が、農山村地域を守るという、農山村地域を子育てができる地域として再生させる。全部が東京になったら、今の、こうなるんですよ、こういうふうに。

 こういうことを申し上げていますが、最後に総理大臣に、この総理大臣の施政方針の中で農業について何と書いてあるか。攻めの農業と書いてありますね。攻めの農業というのは何だろうと思って読んでみたら、ナシやリンゴが外国で売れるような農業という意味なんでしょうか、あれは。一体何が攻めの農業なんですか。何に対して攻めるんですか。

 私たちは、農山村地域が都市と両立した地域として成り立つ、そして自給率が上がっていく、それを政策目標とした新しい農業再生プランを昨年五月に出しました。総理の言われる攻めの農業、民主党のプランとどこが同じでどこが違うのか、説明をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 民主党の考え方につきましてはまだ不勉強で定かにわかりませんが、攻めの農業というのは、簡単に申し上げますと、今まで農業は、輸入を阻止しようという守りの考え方が強かったのを、これから、日本の農業、農産物も輸出できるんだ、そういう積極的な可能性のある産業として考えていくべきだ、お米も輸出できるぞ、ナシやリンゴだけじゃないと。

 かつて、いわゆる生ものやお米は欧米人は余り好まないと言われたのが、すしなんというのは欧米人はどんどん好んできた。そういうこだわりの発想よりも、もっと柔軟に考えて、お米も将来輸出できるぞ、そして、安いものだけを輸出するという考え方から、高くてもいいものだったら売れるんじゃないか、そういう考え方を持ってもいいのじゃないか。

 しかも、日本食、これはだんだん世界でも評価されてきております。これも、輸出という考え方だけじゃありませんが、日本の文化、日本の食というものも世界にこれからは好まれるように、大いに意欲を持って農業全体を考えていこうじゃないかということから、私は、単に閉鎖的な、守るような狭い農業でなく、将来の発展の可能性に富んだ農業、これがいわゆる攻めの農業で、農業は重要な産業であるという考え方を言いたかったわけでございます。

菅(直)委員 時間ですので終わりますが、攻めの農業が産業としての農業と言われましたが、産業としての農業だけで考えるのではなくて、地域政策として、子育てが可能な地域として農山村を再生させるのが我が党の、私が農業再生本部の本部長のときに決めた方針ですので、その差を国民の皆さんに理解していただければありがたい、このように思って、質問を終わります。

甘利委員長 この際、石井一君から関連質疑の申し出があります。川端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石井一君。

石井(一)委員 石井一です。

 できるだけ冷静にやりたいと思いますので、よろしく御答弁をお願い申し上げたいと存じます。

 本会議で、また本日の予算委員会で阪神・淡路大震災の問題につきましては相当議論が出ましたので多くを申し上げませんが、行政のトップとして、十年を経た今日、どう現状認識をされており、神戸の復興をどのように評価されておるか、総理の御見解を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 阪神・淡路大震災から早くも十年が経過いたしましたけれども、その間、地震による被害というのはいかに大きいものか、また、多くの方々が困難に今なお直面しているか、これに対する防災、さらには予知体制を含んで、災害に強い国づくりをどのようにつくっていくかということをこの十年、真剣に考えてきたと思います。

 そういう中にあって、進歩が見られた面もあります。同時に、十年たったといっても、なお、傷のいえない、困難に直面している方々もまだまだ多くおられます。

 今後、防災の観念というものを、政府も常日ごろからその対策を強化するのは当然でありますが、これを各機関と一体となって、そして住民とも一体となって、少しでも災害に強い国づくり、万が一災害が起こった場合にはその被害を最小限に食いとめる手だて、そういう点をこれからも真剣に考えていかなきゃならない。特に、スマトラ島沖のあの大地震・津波を見ても、これまた、一たび警戒態勢を怠れば未曾有の被害をもたらす、いかに日ごろからの不測の事態に備える対策が必要かということを改めて教えられたわけであります。

 そういう点から含んで、今後、日本は特に地震が多い、台風も多い、集中豪雨も多い、そういう国でありますので、より一層、日本自身の防災対策、そしてこれまで得られた知見というものをやはり世界各国と共有しながら、日本としてもできるだけの防災対策に寄与できるのではないか、日ごろから危機管理体制をしっかりとしていかなきゃならないということを、改めて、阪神の大震災と今回のスマトラ島沖の地震、昨年来の台風、集中豪雨、新潟地震等は教えていると思っております。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

石井(一)委員 阪神・淡路の十年を経て何が起こっておるのか、おわかりにならぬところもあると思います。

 今、補正予算の審議をやっております、四兆数千億。しかし、災害対策については一兆三千億ぐらい計上されておりますが、この中で公的部分の復旧は次々に進むでありましょうけれども、被災者個人に渡る金額というのはたった二百六十一億、これは新潟へ行く金ですよ。四兆の補正予算の災害対策の中でそれプロパーに計上されておるのは一兆三千億、しかも個人に渡るのは二百六十一億、こういう予算を今我々は審議いたしておるわけであります。

 問題は、公的インフラを初めとする部分、あるいは、そのほか間接的経費は出るんですけれども、結局、これを繰り返すと、強い者、恵まれた者は生き残れるけれども、取り残される者はいつまでたってもだめだ、回復できないということが繰り返されておる。

 この十年間、何か法律が基本的に変わったか。ほとんど変わっておりません。我が国は、個人補償はしないんだと。地震保険の加入率も上がっておりません。抜本的なものが何も変わっていない。総理は施政方針の中で、世界一安全の国の復活ということも言っておられる。安全は与えられるものでなく、つくるものでありますとも言っておる。しかし、できていないんですよ。

 まあ、経済、雇用は八割、表向きはきれいな町になったかもわからぬが、裏へ回ったらどうなっておるか。空き地がたくさんたくさん残っておる。しかし、余裕がある人は家を建てますけれども、余裕のない人は建てられませんよ。田舎へ身を寄せたり、公営住宅に住んで、いつかは長年住んだ土地へ帰りたいと家族散り散りばらばらで生きておる人がどれだけあるか。抜本的な制度を変えない限りどうにもならないということを我が党は主張しておる。

 そういう裏の部分を見なければ、新潟で今、寒い冬、積雪の中で生きておる人々も、今の制度の法制であれば全く変わらない。恵まれた者と恵まれない者と、これほど歴然と出てくるという制度をいつまでも放置してもらいたくないということを申し上げておきたいと思います。

 我が国の危機管理体制がその後どれだけインプルーブしたか、この十年間何が前進したのか、簡潔にお答えいただきたい。

村田国務大臣 阪神・淡路大震災が起こりまして、その後の体制についていろいろな変更がなされましたけれども、一つは、発災をしたとき、地震が起こったときに、関係省庁の局長レベルによります緊急参集チームというのがすぐ集まる体制というのをつくりました。今回の中越地震でもその体制がすぐとられまして、官邸の地下にその参集チームがすぐ集まったわけであります。

 それから、常に二十四時間、担当者の宿直体制というのをとっておりまして、いつ何どき大きな災害が起こってもすぐ動ける体制というものが構築されている、こういうわけであります。

 それから、中越地震のときにもまさにそうでありましたけれども、地震被害早期評価システム、こういうのがすぐ動きまして、直ちに被害の想定をする、こういうシステムが動きます。そういうシステムの結果も参考にしながら、同時に、ヘリコプターが飛び立ちまして、被災地の上空から映像でもって危機管理センターに映像を送って情報を集める、こういう体制も整っているわけであります。

 あとは緊急災害対策本部でございますが、これも、災害対策基本法を改正しまして、以前よりも、全閣僚を本部員といたします緊急災害対策本部がスタートする、それも非常に容易にした、こういうことでございまして、とにかく発災をしたときの初動体制、それからそれに集まるチームの編成そして情報の収集、それから応急体制の指示、そういう一連の体制が阪神・淡路大震災を契機に打ち立てられてきたと考えておるわけでございます。

石井(一)委員 十年間の成果を今被災を受けておる方が聞かれたり、あるいは帰らぬ人をたくさん持っておる家族がどう思うか。私は、今の答弁、この間、レスキュー隊ですか、皆川優太ちゃんですか、救われたあの姿を見て、阪神・淡路で六千四百三十三人の人が亡くなった、あれがあればもう少し少なかったんじゃないかな、そんなことを感じましたけれども、実態はほとんど制度的に変わっていない。地震大国で、これでいいのか。惨々たる今の防災対策であるということ。

 私も地震を直接受けました。一瞬にして文明社会から暗黒社会に入る。家がつぶれたら、私だってここに今立っていない。受けた者でないとわからぬ、その惨々たる体験を通じた中に、政府の遅々とした施策に対して、もう一度反省と、そして、総理の言葉どおり安全な国づくりのために、これを契機に、昨年は大変な猛威を振るったときであります、お考えをいただきたいと思います。

 そこで、神戸の教訓で大きく残っておりますのは、東京の危機管理はどうなったかということです。

 東京の危機管理について、資料をお渡ししておりますので見ていただきたいと思うのでありますが、「世界の主要なメガシティの自然災害危険度」というペーパーがございます。東京についている大きなサークル、これが東京に対するリスクの度合いであります。

 一ページ飛んでいただきまして、その内訳が書いてございますけれども、ここにあります、東京、サンフランシスコ、ロサンゼルスから二十の世界の大都市、この都市圏で世界の三〇%の富をつくっておるというわけでありますから、過密な地帯ほど、大きな富をつくっておるけれども危険度が高い、こういうものでございます。

 総合点で東京は世界でワーストナンバーワン、総リスク総点七百十点。東京・横浜圏七百十点、二番目のサンフランシスコ百六十七点、四分の一です。ロサンゼルス百点、七分の一。こういう危険度がミュンヘンの再保険会社で提示されておる。

 この三十年間、三百万人以上の人が世界で亡くなったといいますから、どこでも、企業が進出するのにも保険を掛けるんですけれども、東京へは進出しない。進出するためにはこれだけのペイをしなきゃいかぬ。これほどの大きな危険を持っておるわけであります。

 しかも、東京の一極集中というのはすごいものがある。

 もう一つのものを見ていただきたいんですが、一ページ目、二ページ目。これはもう皆さん御承知のとおりですけれども、テレビを見ておられる方、おわかりにならぬ方もあるかもわからぬから書いていますけれども、一、二、三、四、五、六、この中に、立法、行政、司法から経済、金融、日銀も含めて、もちろん我々のおるこの場所も含めて、すべてが二キロ四方に一極集中いたしております。

 防衛用語に断頭攻撃なんというのがございますけれども、ギロチンというか、頭さえやれば全部飛んでしまう。しかし、東京一極に何らかの有事が起こったという場合に、どれだけの壮烈な被害がこの国にもたらされるか。恐らく、即死状態になって二度と立ち上がれぬという状態が起こってくるんじゃないですか。

 神戸や淡路だって、新潟だって、東京に司令塔がありますから復興ができますけれども、それが全部飛んじゃうんですよ。NHKのテレビを見ようと思ったって、それが飛んじゃうんですよ。災害というのは予期せぬときに来るわけですけれども、これほど壮烈なものを、十年間、東京に対する危機管理というのは、阪神・淡路の教訓を受けて何か政府でやられましたか。東京に対する危機管理を聞いております。

村田国務大臣 まず、石井委員がお示しの資料からちょっとコメントさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。(石井(一)委員「それはいい。東京について」と呼ぶ)いいですか。はい、わかりました。

 それでは、首都直下型、これが私ども一番、国民が将来を考えたときに、これに対する備えというものを、このことをやはり防災の観点から考えておかなければいけないということでありまして、中央防災会議に、十五年の九月に首都直下地震の専門調査会というものを発足させました。

 御案内のとおり、被害想定につきまして、この専門調査会が昨年十二月に十八のケースを想定いたしまして、被害想定を公表しております。このうち、東京湾北部を震源地といたしますマグニチュード七・三の地震では、最悪の場合に、建物が全壊、焼失棟数が八十五万棟、阪神・淡路が十万棟でございましたので、そういう意味では相当な被害に達する。死者は一万一千人、こういう想定を出しました。

 対策につきましては、ことしに入りまして、できるだけ早いうちに議論をして皆さん方にお示しをする機会がある、こういうふうに思いますが、一番大事なことは、一つは耐震化ですね。それからもう一つは、首都の中で一定の区域で木造住宅が密集しているところがありまして、この状態をどう改善していくかという問題。それから、地震が起きる時間によりまして、例えば千葉県から通ってこられる方が帰れなくなるという、帰宅困難者というのが、想定では六百五十万人発生する。この人たちをどうやって対応していくか、夜寝るところ、あるいは情報伝達というもの、こういうことについて、とりあえず重大な問題として検討していかなければいけないというふうに考えております。

 それから、経済的な問題なのでございますが、これは私ども、防災白書でもことし出したわけでございますが、企業がそうした事態を想定いたしまして、災害直後にどういう要員を確保したらいいのかとか、業務を継続していくためにはどういうことをしたらいいのかというような、そういう全体的な戦略として、企業がそういう体制をしいておくということが防災上必要ではないかということを我々も主張しているわけでございます。

 最後に、実際起こった場合に、いろいろな対策がさらに必要になるわけでございまして、一つは、中心地がやられた場合に、官邸の危機管理センターが壊れた場合どうするかということですが、最終的には、立川に広域防災基地というものを設けておりまして、そこで指示を、動き出させるセンターを設ける、こういう形になっているわけであります。

 それから、基幹的な広域的防災拠点といたしまして、国と都県の合同現地対策本部を設置する。活動要員のベースキャンプ、災害時の医療の支援拠点等を有明の丘地区に設ける。それから、救援物資の中継拠点というのが必要になりますが、これは川崎になりますが、東扇島地区に整備していく。こういうことになっておるわけでございますが、しかしながら、これから出されます中央防災会議の専門調査会におきます被害想定、それから対策を踏まえまして、さらに完璧なものにしていきたい、こういうふうに考えております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

石井(一)委員 被害想定をされたということですけれども、どう危機管理が進んだのかということを聞いておるんであって、いずれにしても、阪神・淡路で六千人、新潟では人口密度も少ないし過疎地でありますから数は少なかったけれども、この中心の核地帯、昼間人口八十五万人ぐらいと言われております、夜間人口は三万五千といいますけれども。これがラッシュアワーであるとか何とかのときにやってまいりましたら、何十万という死者が出る、そういう恐ろしい状態になっております。

 それから、それに対する対策というものがほとんどできていない、こう申し上げてもいいと私は思います。

 一つ危機管理体制でおくれておりますのに、先ほど回しましたペーパーの中にアメリカと日本の緊急時の日米比較後継順位表というのがありますが、アメリカの場合は十七位まで位置が決まっております。特に注目すべきものは、第二位、第三位に置かれておる人々であります。日本の場合は組閣のたびにこの五名が指名される、こういいますけれども、その都度指名をされるということですが、例えば、おかしなことを言うようですが、今どかんとこれが全部落ちてきてあれしたら、この国の司令官が全部飛んでしまう。すべてにおいて、制度的においても機能的においてもほとんど何もできていないまま、教訓を生かしていないというのがその姿じゃないでしょうか。

 首都機能移転というのがどうなったのか。今は議長に預けられておりますけれども、現実的には、三候補地が絞り切れずに、国会の委員会は消滅し、予算計上はなくなってしまった。いずれ財政がよくなったらできるかもわかりませんが、何年先のことですか。

 さあ、これをどうするか。私は、緊急避難的にアメリカのFEMA的な機能を備えた副首都を簡潔につくるということだと思います。副首都があるという例が世界にありましたら、国交大臣、お答えいただきたいが、いかがですか。

北側国務大臣 今委員のおっしゃっております首都機能を代替し得る危機管理的なものという意味の副首都は、世界の主要な国ではないと承知をしております。ただし、立法府と行政府が別々の都市にあるだとか、それから行政府が複数の都市に分散されている国々というのはございます。

石井(一)委員 私が調査したところでは、チリとかスイスとかドイツというのが一つのそれに似たようなものであります。チリの場合は立法府だけを分散したり、あるいはスイスの場合は司法府だけを分散、一部配置したりしておりますが、私はこういう考え方じゃないんですよ。首都は東京で継続してやってもらう。ここまですべてが集結しておるんですから、メリットも大きいんですから。しかし、今言うた危険を避けるためには、どこかでそれをバックアップできる機能というものを早急につくらないかぬ、こういう提案をいたしておるわけであります。

 どこにやるかということになりますと問題がございますけれども、私はほかにたくさん問題を抱えておるので、余りこういう議論ばかりもおもしろくないから急ぎますけれども、私はやはり、日本列島二眼レフ論というのもありますから、関西にそれをつくるべきだ、適地があれば。

 適地をいろいろ考えた条件なんですが、次の条件に合ったところがいいと思うんです。トータルで三百から五百ヘクタール、皇居の二倍ぐらいの広さ、公有地や国有地で買収の要らぬもの、高層建設やら地下設備をつくるために埋立地でないこと、新しい開発やら自然破壊というものをしないこと、そして交通のアクセスが全部そろっているところ。

 四つ五つ探してみたけれども、僕は、一番いいのは、もうあえて言いますが、伊丹空港用地だと思うんです、今の大阪国際空港用地。

 今関空とどういう問題になっていますか。伊丹を廃止するという前提で関空をつくったんですよ。二期工事が始まったけれども、どうにもならぬという膠着状態にあるんです。しかし、伊丹という用地は二キロ下に新幹線が走っているんですよ。将来道州制にでもなれば、関西の州都にもなり得るところですよ。土地は一坪も買収する必要はありません。直ちに高層ビルでも地下でも建設ができます。

 この話を私は、豊中、伊丹……(発言する者あり)岐阜県だと、木を切って、道をつけて、空港をつけて、新幹線をつけて、どないもならぬのや。一々コメントはやめます。

 そこで、これをやったらどうだろうということを、私、この間、塩川正十郎先生に言うた。いや、ピンさんはええこと言うな、おれは大賛成やと。中山太郎さんにも話した。二階さんにも話した。

 それより驚くべきは、豊中、伊丹、川西、池田、周辺の四市ですよ、市長に話した。このごろ政府は一種を二種に下げると言うてきている、そしてチャージを乗客から取ると言っている、何と政府はわがままなことばかり言ってくるんだ、それなら、石井先生、あなたの意見は、我々は真剣に検討しますよ、政府は考えてくれるんですか、こういうのがございます。きょうの話はこの程度にしておきますけれどもね。

 私は、そうでもしなければこの国は救えない、直ちに、即死したまま二度と立てぬという状態に置かれるぞ、十年間何もしていないじゃないかと。立川に何かつくったって、立川だって電話も通じませんよ、マグニチュード七の地震が来たら。そこへ行くのにだって、高速道路は飛んでしまう、道は飛んでしまう、地下鉄は動かぬ。帰宅不能が、政府のあれでも六百五十万人出るんでしょう。どうしてそこと連絡してやるんですか。三百から五百離れていなかったらどうにもならない。

 余りこれを言うといかぬから、仙台でも名古屋でも、ええところがあったら手を挙げてもろうたらいい、金がかからずにこれと条件の合うところであれば。しかも、この間、堺屋太一さんにこの話をしたら、石井先生、ええ案やな、ただでできるぞと。それは全部国有地でしょう、民間に払い下げたらただでできるよと。

 だから、公共事業に二兆円、三兆円、五兆円とやっておるときに、こんなすぐれたプロジェクトはないじゃないですか。しかも、国家の危機管理を救うんですよ。強くお考えいただきたいと思いますが、コメントがあれば、総理、ひとつお答えいただきたい。

小泉内閣総理大臣 私はもともと、場所はともかく、余り東京に一極集中し過ぎるのは好ましいものとは思っていない、そういう考えを持っているんです、個人的に。

 そこで、今のお話を聞いていて、実に参考になるし、おもしろいと思いました。ただし、場所は私に言わせないでください。伊丹がいいということではなくて、万が一東京にそのような大地震があって被害が起こった場合、それを代替できるような、危機管理ができるような都市が日本にあった方がいいなと私は思っています。今のお話を聞かせていただいて、非常におもしろい考えだなと、率直に言ってそう思いました。

石井(一)委員 北側大臣、あなたもよく理解をされておる方ですが、総理から今のような答弁もございましたので、御省において真剣に検討していただきたいということを要望しておきたいと思います。

 次に、NHKの問題についてお話をしたいと思うのでありますが、これはきょう、委員長、私は、NHKの松尾元総局長それから朝日の横井社会部長ですか、出席を要請したが出てこれない。しかし、これほど大きな問題を起こしておって、私は、両社から出てきてくれれば、二つの言い分がどこが違うかすぐわかるんですから、簡単にこの問題は解決すると思ったんだけれども、出てこれない。我が党の理事に聞いてみたら、朝日は民間会社だから手続が要るのでと。そんな前近代的なことを言うんですか。朝日の記者だってどれだけこの中におるのや、この中だったって。電話一本で来れるじゃないか。それは、委員長、扱いとしてはいささか問題がある。

 私は中川さんに、安倍さんはおられぬから、余り聞きたくない。二人が来てくれれば済むと思っていたんだけれども、やむを得ぬからちょっとだけ中川さんに聞きますが、中川さん、あなたは問題の番組を見られましたか。御感想はいかがですか。

中川国務大臣 一月十日のときにも、朝日新聞の本田という記者さんから電話でそういう話を聞きまして、二〇〇一年の一月三十日に報道されたということでございまして、まず、その日付を正確に覚えておりませんでした。番組を見たかどうかについて、はっきり覚えていないということを申し上げました。ただ、ビデオで見たかもしれません。

 それから、その後いろいろ一部マスコミ、雑誌等で、その内容についても詳しく報道されている記事を読んだ記憶もございますし、それから放送前にも、その前の年の十二月にこういう民間団体主催の、まあ模擬裁判というんでしょうか、ドラマというんでしょうか、そういうものがあったということは聞いておりました。

 それで、実際に、私は後で調べてみたところが、二〇〇一年の一月三十日の午後十時からNHKの教育テレビで四十数分間放送をされたということが後でわかりましたけれども、放送の時点では、私は見ておりませんでした。どうも、いろいろ思い出したり家族の話を聞いてみますと、ビデオを半分ほど見て、私は途中で見るのをやめました。

 いずれにいたしましても、その放送の内容自体は、ビデオで全部は見ておりません。

石井(一)委員 けさあなたが答弁をされておるところを、私、ちょっと車の中で聞いておったんですけれども、四つの点、無理があるよね、多少。僕はそう思うよ。堂々と言うべきよ。あなたは中川一郎の息子なんだ。あなたは、その何とか、未来と歴史を考える会の代表として、何も言うていなかったら責任を果たしていないじゃないか。それに期待しておる人もいるんですよ。おかしい。

 私があの答弁を聞いて感じたのは、一つは、その何とかいう記者、記者バッジ持っておるのと違う。そんなもの、一々登録されていないんじゃない。どうか知らぬけれども、本田という人が持っておるか持っていないか、調べたらすぐそんなことはわかるけれども。

 第一、放送されて三日後にそんなものを見るのなら、あなたは政治家じゃないと言えるよ。それは、物の言い方はいろいろあるでしょう。圧力かどうかというのは相手の感じ方ですよ。それを、見ていない、知らぬとは言えないと思いますが、私の聞いておることに率直に答えてください。

中川国務大臣 本田記者という方は社会部の記者ですから。それから、一月十日、私は長崎に行っているときに、長崎まで飛んできたらしくて、今長崎にいるんだけれどもということで、結局電話でしかやりとりはできませんでした。ですから、顔も見ておりませんし、まして記者バッジをつけていたかどうか全くわかりませんけれども、とにかく電話をくれということで電話をしたところであります。

 どうも取材の観点は、私がNHKに会ったのは放送の前か後かということと政治的圧力をかけたかどうかということでありまして、その番組自体をどう思うかとかそういうこと以前に、政治的圧力をかけたのか、そしてそれは放送の前にNHKに会って圧力をかけたのか、どうもそれがポイントらしいと私は判断をいたしましたので、内容については、今申し上げましたように、事前にいろいろなところから、あるいはまた後で聞きますとその市民団体自体がインターネット等で宣伝をしているという事実もございましたので、内容自体についてはもちろん間接的ではありますけれども知っていたつもりであります。ただ、そのことと圧力をかけたということとは全く別の次元の話だということをぜひこの場ではっきり申し上げさせていただきたいのでありまして、あくまでも放送というものは放送法に基づいて公正公平にやってくださいということは申し上げましたということを申し上げました。

 それから内容についても、NHKに会ったということと、内容についても事前に、放送ではございませんが、そういう内容のものを放送するということも知っておりました。ただ、それがいつだったのか、だれと会ったのか、呼びつけたのかと。呼びつけたことではないということは、午前中も申し上げましたように、毎年事業計画、予算の説明に来ておりますので、先方から来られたということを改めて確認して申し上げたわけであります。

石井(一)委員 あなたをこれ以上追い込めるのは、この席ではやめましょう。

 ただ、いいですか、二月の前に会うなり、意見を言わなければ政治家じゃない。二月の二日に会って、その代表は務まるはずはない。だから、そういう言い方は中川一郎らしくないよ。私は強くそれを言うておきます。もし仮に、その前に会ったという記録でもテープでも出てきたらえらいことになるよ。これは公的な場ですよ。厳粛に受けとめてください。

 このことに対して、NHKの会長は今辞任されたというけれども、いろいろそれにも批判があるが、何か政府として意見を言うんですか、総務大臣。(発言する者あり)

 ごめんなさい、どうせ通告してありますから指名をしたんですけれども……(麻生国務大臣「それを修正していただかないと」と呼ぶ)

 今、正確に質問するために、国会に予算案なりを承認を求めてくる場合に総務大臣が政府としての意見を言われる、そういうしきたりがありますので、そういうことを今回されるのか、その場合に、今問題になっているこの問題に触れられる意向が総務大臣としてあるのかどうか伺っております。

麻生国務大臣 石井先生御存じのように、これはしきたりじゃなくて放送法で決まっておりますので、放送法第三十七条第二項に基づいて意見を付して国会に提出することになっております。

 一昨日、その放送法に基づいて私どもの方に収支、予算報告等々のものをいただきましたので、一昨日それを提出されておりますので、それを受けて私の方で検討するのは今からということになろうと存じます。

 今の話でいろいろ、どんな意見を付すのかということの内容は、意見は付すんですが、今の御質問のなさり方だと、今中川昭一、安倍晋三に関する話についての意見を付すかということですか。(石井(一)委員「いや、NHKの経営改善なり」と呼ぶ)

 経営改善のことにつきましてということでございましたら、これを一応読ませていただかないとわかりませんけれども、経営改善ということでありましたら、基本的には信用等々をきちんと、信頼回復をするために一層の努力ということを付すつもりでおります。

 ただ、その他のことにつきましては、きのう、もらってがちゃがちゃの騒ぎになって、それらに巻き込まれてちょっと手がこうなったという話なので、えらく皆さん御関心をお持ちの方も多いようですけれども、これはそのときの騒ぎでごちゃごちゃなったので、まだその内容を今から検討するところでありまして、その内容につきましては、今まだ申し上げる段階にはございません。

石井(一)委員 この問題は、総理、報道の、NHKと朝日の問題で政治は関係ないというような答弁に聞こえた、本会議では。それはおかしいですよ。

 このことでだれが一番迷惑をこうむっているんだ、国民ですよ。大朝日と大NHKといおうか、いろいろ形容の仕方はあると思いますが、これが、きょう、どっちの言うていることが正しいかわからずに、NHKは公器の放送を通じて自己の主張を何分間やっておるんだ。片や朝日は、紙面を割いてこれに対して反論し、公開質問状を送り、しかも、それは政治との距離、政治との関与ということから起こっておる問題なんですよ。これを全然知りません、報道機関のことです、これでは筋は通りません。

 私は、総理がさらにそういうことを言われるなら反論するけれども、あなた、反論されるときは反論されてもいいが、やはりこれはというときは謙虚に反省してくださいよ。さっきの菅とのやりとりでも、やはりこれはちょっと言い過ぎやというところはありますよ。郵政の問題だってありますよ。それはまあ、脱線はしますまい。

 そこで、私は、委員長、今回、私の要求した参考人が手続上遅くなったんですから、この参考人を招致し、そして、後日、この予算委員会においてこの問題の解明をし、NHKが正しいのか朝日が正しいのか、国民に対してそれをはっきりと説明する必要がある。そして、総理大臣も、この問題は単なる報道機関の対立というふうな認識では間違いだ、真摯に受けとめていただきたいということを要望しておきたいと思います。

甘利委員長 ただいまの御要求につきましては、後日理事会で協議いたします。

 ただ、本日実現ができなかったということは、まず、理事会で合意が成り立つ、その上で、公文書として発送する必要があります。物理的にもできないと、二つの理由でございます。

石井(一)委員 それでは、この問題、総理のコメントを省略して次へ参りますが、総理、最後にあなたに対して、きょうはたくさん問題があるんですが、外交問題について少し申し上げたい。

 さっき菅委員とのやりとりの中に、東アジアに対する提案という話もありましたが、私は、あなたの、今の東アジア、とりわけ中国外交、北朝鮮外交、最も近隣である国、むちゃくちゃな状態になってきておると思うんですよ、残念ながら。

 中国は、今やアメリカを抜いて貿易額ではそれ以上のところまで来ておる。私は、中国大使のあの傲慢な姿を見て、時々コメントしていますよ、いろいろなことで。台湾問題その他、まあやむを得ぬかもしれません。しかし、あれが中国政府の本来この国へ来ている大使なら、もっとにこやかに親善を図らないけませんわね。しかし、彼は中国政府の命を受けて、そうしてこの国に赴任し、あれが中国の首脳の今の我が国に対する態度ですよ。いろいろの理由はあるにしても、これでいいのかという問題が残っています。

 北朝鮮の問題、どうですか。

 私もこの国はしばしば訪ねたことがありますが、平壌宣言が間違っているんですよ。あれは何が書いてある。拉致のラの字も書いてないじゃないか。あそこに書いてあることは、何を上げる、これを上げる、日朝国交をやりましょうばかり書いておる。向こうからすれば、書いてあることをやってくれぬのに何だ拉致とはと。拉致はむちゃくちゃですよ、やっていること、向こうは。しかし、今、経済制裁や何かをやったってどうにもならぬ膠着状態に入っていますよ。

 私は、あなたのパフォーマンス外交というか、思いつきでやった二回の訪朝、そこから出てきている結果というものは、これは厳粛に受けとめなきゃいかぬ。我が国の外交の重大な危機にある、そういう認識はありませんか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、北朝鮮との関係を正常化しようというこの目標を持つんだったら、過去二回における私の北朝鮮訪問は正しい選択だったと今でも思っております。

石井(一)委員 結果を見たらいいんですけれども、一体、横田めぐみさんの、あの違った骨だって、あんなことできませんよ、よっぽどなめないと。むちゃくちゃな国の行為じゃないか。それでも、私のやったことは正しいと。それだったら、うまくそれを解決したらどうですか。結果は何も出ていないじゃないですか。最悪の状態に行っているじゃないですか。

 時間がありませんから次に申し上げますけれども、イラクの自衛隊一年間延長の問題。

 これはたびたび議論に出ました、きょうも出ておったようでありますけれども、私は、国会へ出てきて説明されるべきだったと思いますよ。あなたは自衛隊を統括している最高の指揮官だ。しかも、それが命を張って一年間出ていくというときに、情勢はだんだん刻々悪くなってきている、しかしブッシュとの約束もあり行かざるを得ないということであったんでしょう。それなら率直に、出てきてそれを国会で言えばいいじゃないか。説明もせずに。

 当時の、国会が終わったのは十二月の三日、そして閣議決定されたのが十二月の九日か何か、これを執行したのは十二月の十四日。十二月十二日の毎日新聞の世論では、派遣反対が六二%、賛成は三一%。世論ですよ。そうしてその中でもっと重要なのが、国民に対する説明が不十分だというのが八四%、十分だと言ったのが一一%。派遣に賛成した人でも七二%の人が説明は不十分だと言っているんですよ。意味はわかっていただけますね。これをあえてあなたの立場が、これだけの重要な、命をかけたインド洋の果てへ送るときに、休会中審査にイラク特があるのに、そこへ出てこない。これは間違っていますよ。

 これが今度初めての国会です。あなたは国会でこれを何もまだ言っていないんだよ、それは多少は本会議の質問に答えていますけれども。延長したのは過ぎ去ったことです。なぜ延長したのか。それまでは、この国会での議論の中では、党首討論でも、まだ決めていない、諸般の事情をわきまえてとばかり言い続けて、腹の中では決まっておったと思うんですが、しかし国民にそれを言わぬからこういう問題が起こっておると私は申し上げていいと思うのであります。黙っておられるから、恐らく私の言い分もある程度理解をされておるんだと思うのです。あなたは反論するならすぐ立ってくるものな。

 あなたはだれに指名されたんだ。議院内閣制ですよ、国会において指名された内閣総理大臣ですよ。それは、国民に記者会見をすることもいいです、重要です。しかし、記者会見して納得したらこんな結果は出てこないですよ。国会で正規の手続をし、堂々と信条を訴えて、そうして、だから我々は自衛隊にお願いをしなければいかぬのだということを、それをやって初めて総理大臣の責任が果たせるんじゃないですか。何か意見があったら言うてください。

小泉内閣総理大臣 私は、必要なときにいつも説明しているつもりであります。決定した際には記者会見もいたしました。そして、国会の審議におきまして、過日の代表質問においても答弁しております。きょうもまた何度か答弁しております。世界各国、私ほど国会に出席して質疑を受けている首脳はおりません。全世界の中でですよ。真摯に野党の皆さんの質問にも答えております。

石井(一)委員 そういう答弁も前にありましたので、それを繰り返されるとは思わなかった。

 私は、やはり議院内閣制度その他から考えて、休会中の決定でもあったということだから、それはせめて、できなければ、ここで初めてやるときに、施政方針演説の中で、こういう理由でこういうふうにさせていただいた、こういうことで出なかったというぐらいのことはあってもいい。それが説明不足というふうに言われておるところです。(小泉内閣総理大臣「だから、説明しているじゃないか」と呼ぶ)まだ反論するのか。よし、それでは最後に、私の時間はあと五分ですよ、延長してもいいですけれども、またの機会にやりましょう、郵政民営化という問題ですよね。

 あなたはこれになったら雄弁になるな。すばらしいよ、五倍、七倍の時間をかけてとうとうとやるから。今ここでも一遍最後にやってもらいたいんやけれども、私は説明を聞いておって、郵政民営化、いいことやと思うのよ。やるべきだと私も思っています、我が党がどう決めるかわからぬが。私が一人、反対するか賛成するかということもあるかもわからぬが、私は気持ちの上ではそうだよ。

 しかし、郵政民営化に対する国民の理解というものが余りにも低い。十七つの、景気から始まって年金だとかなんとかというのがあった世論調査の中で十五番目だ。支持するというのは六・七%と出ておる。だけれども、まず国民に説明するというのが総理大臣の務めですよ。それもせずに、これをやるんだ、やるんだと言ったって、どうして国民の世論が受けとめるんだ。

 この間、本会議が終わったときに、こんなものはあほらしくて聞いておれるかいと出ていった人もおるし、これは全土に地雷を埋めて何やかんやと言うた人もおる。我が党じゃないですよ。おたくの方の裏の本丸が燃えておるんだよ。それでもまだやると言うんだから、それは政治家として、信念として偉いかもわからぬ、やり切ったらいいかもわからぬ。しかし、そこまで身を張るんなら、意地を張るんなら、もう少し国民世論に対して訴えることをやりなさい。

 そして、もしこれが、この国会、約束どおりにできなかったら、あなたは退陣すべきですよ。それでもまだおめおめとおるという、あの道路公団みたいに変な妥協をせんといてくださいよ。堂々とその道を進んでやり切るのかどうか、その決意をお伺いしたい。

小泉内閣総理大臣 まず、道路公団も大きな立派な改革だったと私は思っております。ほとんどの方々が、最初、道路公団民営化は可能ではないかと言ったときに、そんなばかなと同じように言われました。しかし、現実に道路公団は民営化され、ことし十月から正式に民営化されると思いますが、これも私は大きな改革であり、将来必ず評価される改革だったと思っています。

 また、郵政民営化でありますが、石井議員は賛成していただけるというのなら、これはありがたいことであります。確かに反対論は強いです。そして、今のところ、ほかの項目に比べると国民の関心も低いようですが、郵政民営化、賛成か反対かといえば、私は、今後、審議を重ねていくうちに、国民も多数の方は賛成してくれると思います。賛成論が反対よりも多くなると思っております。

 そして、この法案がいずれこの国会で提出されます。そのときには、じっくりと国会の場で議論されますが、過去、総選挙においても私はこの問題を訴えて、公約に掲げて、さきの衆議院選挙を戦ったんです。そういうことから、今国会で成立させると言明しておりますし、私は、この法案を提出して、この法案の成立に全力を尽くしますし、これは今国会中に成立させるように努力するのが私の立場であり、成立しないということは全く考えておりません。必ず成立させます。

石井(一)委員 いや、ちょっと小泉さんらしいところが見えたよ。しかし、地雷もあれば、山あり谷ありだ、こうおたくのベテランが皆言うておるわけよね。それぐらい難しい問題なんだよ。

 しかし、最も重要なのは、国民の支持が十七の重要項目の中で下から二番目、情けないじゃない。なぜ総理大臣がそこまで狂気じみたほどそれに入れるんだと。それこそ国民世論に乖離した、そういうリーダーですよ。

 私は、あなたがそれだけの信念を持ってやるのならやっていただきたいし、それを見守りたいけれども、道路公団のようななまじっかな妥協でなく、筋を通して、やるかやらぬかという結論をこの国会に出していただき、やめたくないのなら解散を打って国民に聞いてくださいよ。当たり前ですよ。それぐらい大きな問題ですよ。(発言する者あり)

 だれかがそんなことを言うたらとか言っているけれども、これぐらい国民に、その国民の世論を聞く、自分のやったことが正しいのか、自民党の守旧派が正しいのか。自民党の守旧派と言うたらいかぬよ、あれは推進派かもわからぬから。進歩派が正しいのか、問うべきですよ。おめおめと来年の九月まで任期をやってしもうたら、この間、中国とも開かれぬ、北朝鮮も進まぬ、アメリカにべったり、日本の国民はどうなるか、しっかり考えてください。

 きょうはこれで終わらせていただきます。

甘利委員長 この際、島聡君から関連質疑の申し出があります。川端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。島聡君。

島委員 民主党の島聡です。

 民主党で危機管理監を務めております。昨年の二十二号台風、二十三号台風、新潟中越地震、さらにはイラクの人質事件及び中国潜水艦と、非常に多くの危機が襲いました。私も、危機管理監として、民主党陣頭にありというその迅速な対応をしてまいりました。その目から総理及び官邸の動きを見ていると、本当にこれでいいのかということが目立ちました。

 新潟中越地震のときには、鳩山次の内閣大臣を初めとする議員がいち早く現地に入りました。二十三号台風で兵庫県豊岡の視察に行っていた岡田代表は、その場で翌日の新潟県への視察を決めて、ヘリコプターで入りました。極めて迅速に我が党は対応をしました。

 そして、危機管理というのは、危機の予測、予知、そして防止、危機対処、このとき初動が一番大事なんです。最も大事なのが初動。そして、その後に再発防止ということになります。総理、総理の動きは、どう考えても危機というものに対処が甘い。総理が危機管理に対する発想が甘ければ、国家が危機に陥ります。

 スマトラ沖の地震による津波、大変なことでありますが、復興のつち音が聞こえてきました。新潟中越、ごらんの方々も、非常に我々は一生懸命やっていますけれども、まだまだこれからです。しかし、今少し落ちつきましたので、改めて、十月二十三日、そのときに総理が、官邸がどのような形で危機に対処したかということを検証します。

 二十三日の動き、総理、お忘れかもしれませんので、資料につくってきました。何をしていたかです。

 十月二十三日五時五十六分、新潟中越地震が発生しました。マグニチュード六・八、震度六強。五強六弱という言葉がありまして、総理、御存じかと思いますが、首都圏で五強、震度五強だったら危機管理監以下は全部集まるんです、官邸へ。地方で六弱でも集まるんです。六強というのは相当な地震なんです。

 それで、そのとき国家の危機管理の最高責任者である総理は何をしていたか。

 十月二十三日五時半に公邸を出て、六本木ヒルズに行きました。東京国際映画祭オープンセレモニーであいさつをしました。五時五十九分。五時五十六分中越地震発生、マグニチュード六・八、最大震度六強。六時三分余震発生、震度五強。六時十一分余震発生、震度六強。さらに、六時三十四分余震発生、震度六強であります。そのときに、総理は東京国際映画祭オープニングセレモニーであいさつ。六本木ヒルズであります。

 オープニングイベントには、けやき坂に二百メートルのレッドカーペットが敷かれていた。出品作の監督や出演者、関係者のVIPが集まっていた。ドレスアップして入場した。沿道やセレモニー会場は沸き立っていた。もしこれが映画だったら、片や新潟中越で余震が何回も起きている、片や危機管理の最高責任者はドレスアップした人たちの中で話をしていた。どんな話をしていたか。最近は批判が多くて映画館へなかなか行かれないんですよとやっていた。これは映画だったら喜劇、国民にとっては大変な悲劇。

 それだけだったら、まあいいでしょう。六時三分余震発生。恐らくそのときには会場の首相に連絡が入っていたはず。連絡が入っていたはずでありますから、そうすると、あいさつ終了後グランドハイアット東京発で、六時三十五分に映画館のVIPルームに入られました。連絡が入っておられて、結局、六本木ヒルズを出たのは七時六分、一時間後であります。

 私は、この六本木ヒルズの映画館に行く、VIPルームに行くときに、ちょうど切れ目ですから、行けたはずであります。どういう判断で、どういう基準でそのような行動をされたか、言ってください。

小泉内閣総理大臣 あの日は、東京国際映画祭、あいさつしてほしいということで、あいさつした後、壇上からおりて情報が入りました。そして、秘書官を通じて、防災担当大臣初め危機管理監等、正確に情報収集するように、対応に万全を期すようにということで指示して、いつでも情報を入れるようにということで待機しておりました。東京におりますから、どのような状況でも対応できるように、しっかりとするように、私自身もそういう気持ちで六本木ヒルズ内にとどまっておりました。

島委員 その後、映画館VIPルームに入った後、映画「隠し剣 鬼の爪」の出演者の舞台あいさつを見られて出られた。それでよろしいですね。

 それで、これだけだったら、私もいろいろなこともあるだろうと思います。ただ、二十三日にはもう一つ、国家の危機管理上大きな事件が起きています。

 二十三日にサマワの自衛隊基地で爆発音が確認されて、初めてサマワの宿営地にロケット砲が落ちました。二十三日午前五時ごろであります。防衛庁が発表しましたのは、午後八時半でした。でも、官邸には多分連絡が行っていたはずであります。

 サマワのロケット砲というのは、射程三キロぐらいあるんです。サマワの宿営地八百メートル、ロケット砲で撃てば大体入るそうであります。すぐに自衛隊の皆さんにこれを確認しろとは私は言いません。夜であります。砂あらしがあったらもう見えないという話であります。皆さんは安全だと言われますけれども、明かりをつけるとそれが危ない、そういう状況の人に早く捜せとは言いません。

 だけれども、イラク特措法九条では、自衛隊の安全確保義務というのがあります。総理にも当然あります。二十三日五時にそういう状況が起きていたとするならば、二つのことがあったんですね、二十三日。そうしたら、少なくとも、余り華やかな場所に行く、余り、より早く待機する、そういうことが必要だったんじゃないですか、総理。

小泉内閣総理大臣 常に対応できるように準備しているのが必要だと思っております。

島委員 スマトラ沖地震というのが起きました。これはマグニチュード九と聞いて、私も非常に驚きました。マグニチュード一違いますと、三十倍エネルギーが違うんです。マグニチュード六・八というのが新潟中越ですから、二つ違いますから、三十掛ける三十、九百倍違うようなものなんです。そうすると、相当な地震なんです。

 総理、十二月二十六日、高松宮妃の葬儀である斂葬の儀に参列された後、映画を見られましたね。どんな映画でしたか。

小泉内閣総理大臣 たしかあの日は、葬儀が終わってから、「鬼の爪」でしたかね、映画鑑賞しました。

島委員 見られた映画は、十月二十三日のときに見られなかった、帰られた、「隠し剣 鬼の爪」であります。人は……(発言する者あり)今、映画見ちゃいけないのか、そういう話がありました。

 スマトラ沖地震の問題について、スウェーデンの外務大臣が非常に危機に陥っています。スウェーデンの外務大臣。恐らく、自民党はそういうことに対して極めて寛容、危機に対して私たち民主党は、より慎重にしなくちゃいけない、もっと迅速に対応しなくちゃいけないという政党であるということが今の審議でよくわかる。今、スウェーデンの方では、外務大臣が責任を問われつつあります。なぜか。観劇に行っていたからです。劇を見ていたからです。劇を見ていて、そして言った言葉が、すぐに情報が伝わらなかったんだと。政権も非常に今危機に陥っています。

 総理、十二月にイラクへの自衛隊派遣を、総理は国会が閉会した後に決断されました。今、サマワでは自衛隊員が、私は今、皆さんは安全だと言われるけれども、九回もロケット砲が撃たれている、非常に危険だと思います。

 イラクの場合はなかなか情報が入ってこないんです。それは仕方ないと思う。そうすると、私、ぞっとすることがある。もし仮にサマワの自衛隊基地で不幸にも何かの事件が起き、そして不幸にも犠牲者が出た場合に、総理が余りに間の悪いような場所におられ、余りに、例えば映画をここのところ見られないというようなあいさつをしておられたら、これは自衛隊の最高指揮官、総理として本当に大変なことだと思う。

 だから、総理、私はそれを言うんですが、今危機ですから、本当にイラクの自衛隊が帰ってくるまで、あなたが安全だとおっしゃるなら、帰ってくるまでそのような行動は自粛され、観劇なんかやめられたらどうですか。

小泉内閣総理大臣 今、そういうことを言われるのは初めてですね。

 私の知っている方からは、余りにも窮屈過ぎる、少しは観劇に行ったらどうですかとか、もっと多くの友人と親しむ機会をつくったらどうですかとか、各国の首脳も戦争が行われたとしても常に兵士と同じような生活をしているわけじゃない、少しは気の休めるような時間を持たないと仕事に支障が出るんじゃないですかとか、むしろ、私が大体土日は公邸にいるよりは、もっと好きなゴルフをやったり、コンサートへ行ったり、映画へ行ったり、友達と遊ぶことを考えた方がいいんじゃないですかと言う人が多いんですけれどもね。

 きょうみたいに、何もしないで常にじっとしていろ、そういうのは初めて聞きましたけれども、そういう危機感を持って常に職責に臨んでいるつもりでございます。

島委員 今うまくすりかえられましたけれども、私が言ったのは、いいですか、私が言ったのは、基本的に、今はイラクのサマワでもいつ危機が発生するかわからない状況なんです。そういうときにすぐに対応できるように、それをしないと、これは本当に日本としての、今、実際に一つ検証しただけでこれだけ。(発言する者あり)

 大野防衛庁長官、やじはいろいろ言っているけれども、本当に真剣に考えた方がいいですよ。二十四万自衛隊指揮、それは本当にこれでとどまるのか、うまくいくのか。これは国会議員全員が我々の今の状況というのを見る必要がある。たった今でもサマワで何か起きているかもしれない。総理がそのようなことを言われたとしても、本当に今私は、普通ならともかく、危機であるということをまず指摘して、本当に危機が起きたときにはもう一度この質問に立たせていただきます。

 次に、総理、地震というものに対しての質問をしますが、マグニチュード六以上の地震というのが世界で起きますが、そのうち二一%は日本で起きています、マグニチュード六以上。そして、日本の国土面積は〇・一%にすぎないのが、二一%起きています。

 それで、東海地震。東海地震の被害総額は九十四兆円、そして東京直下型地震の場合八十二兆円であります。東海地震は唯一予知ができる地震だと言われています。その予知の警戒宣言を出すのは総理であります。気象庁長官が進言して、警戒宣言を出す。総理、警戒宣言が出て、東海地震の場合九千二百人ぐらいがお亡くなりになるという予測が出ています。総理が的確な警戒宣言を出したら、九千二百人のうちどれぐらいの方が救われると予測されていると思いますか。これは内閣府のデータに出ていますが。

村田国務大臣 東海地震のケースですね。東海地震のケースで何人死亡者が出るかというのは、私、ただいま資料を持っていませんので、また御連絡申し上げます。

島委員 答えは、九千二百人が二千三百人になるんですというのが内閣府の試算であります。そうすると、七千人の方が総理の決断一つで助かる、そういう重い決断なんです。ただ、その予知が失敗すると、一日当たり約二千億の経済損失が出るというほどの重い決断であります。

 この法案の非常に大変なところは、閣議決定を経て、そして総理が決断するという話になっているんですね。そうすると、迅速な決定ができるかどうかということが大きな問題になります。

 総理、今ミサイル関係において、迅速に対応できるような方法論を考えよう、そういう話になっています。東海地震におきましても、これは本当にいつ起きるかわからないものであります。七千人の方が助かる、そういう重い決断でありますので、総理、これをもっと迅速に対応できるようにすべきだと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そうだと思っております。そういう対応をしなきゃいけないと思っております。

村田国務大臣 お答えいたします。

 東海地震に関しましては、予知の可能性がある、予知できるということから、平成十五年の閣議決定で、電話による連絡、あるいは事後による連絡で閣議を了する、こういうことを既に決定しております。

島委員 本当にこれはいつ起きるかわからないということでありますので、重要に思ってください。

 もう一つちょっと、政策体系を少しこういう形に変えてほしいという話をします。

 東海地震に関しましては、かなりみんな、予知に関して重要であるとか、そういうことがわかってまいりました。

 実は、東海地震がどうしてこういうことになったかというと、一九四四年に東南海地震という、資料を見ていただきますと、東南海地震が起きて、駿河湾の沖だけが残っているから、それだけが今度起きるだろうということで東海地震が大変だと言われたんです。

 だけれども、重要なことは、過去を見ますと、先ほど安政の地震を言われましたけれども、一八五四年から一六〇五年、一七〇七年、全部東海地震と東南海地震と一緒に起きているんです。全部起きている。一九四四年だけ、東南海地震だけが起きて駿河湾トラフ沖が残ったものだから、東海地震を注意しようという話になったんです。東南海地震から六十年もうたっているわけなんですね。

 今津波の問題が大きく出ていますけれども、東海地震だけですと津波は余り影響がないと言われます。名古屋港で大体一メートルぐらいだと言われる。だけれども、東南海地震ですと、津波が二・五メートルになって、川をさかのぼるときには五メートルになる。みんな、多くの方が東海地震だと。そういう小説もあるんです。「震災列島」というのがありまして、そこにもある。

 したがって、もちろん、東南海地震、南海地震は二〇〇一年の特別法があって、東海地震は、私が二十歳のとき、昭和五十三年の立法があることは知っています。だけれども、これは一緒にするようにしないと、危機管理上、プリペア・フォー・ザ・ワーストですから、これは気をつけないといけないので、もう六十年たっているので、そういうように政策体系を変えるべきだと思うが、いかがですか。

村田国務大臣 私どもといたしましては、今委員の御指摘のように、二つの地震が同時に起こる、そういう可能性も排除していないわけでありまして、そういう最悪の場合も想定しながら訓練をしている、こういうことであります。

 今のところ、東海地震については、いろいろな研究の結果、予測可能性があるということ、それから観測体制が、発災するそういう地域、地点が陸の上にあるということから、大変稠密な観測体制がとれている、こういうこともありまして、ただいまのところ東海地震は予測できるということになっておりますが、なお引き続き調査を進めて、地震の予測体制、予知体制について研究を深めていきたい、こう考えております。

島委員 本当に、地震というものを、危機をあおる必要はありませんが、危機を直視してやっていかなくちゃいけないと思いますし、私たち民主党は、地震に対して被災者生活再建支援法を住宅にも使えるようにして、きちんと対応できるようにしていることを申し上げます。

 さて、総理、郵政民営化の問題に入ります。

 前もお見せしましたが、この本を再び持ってきました。「郵政民営化論」という本でありまして、一九九九年にこの本のための研究会ができまして、もちろん、郵政の問題についての議論は今党内で精力的にやっておりますので、結論はまだまだこれからであります、まずそれを申し上げますが。

 そして、この郵政民営化論、九九年六月にやったときに、今でも思い出します、第一議員会館で部屋をとって、この郵政民営化論の勉強会をやると。私、最初、話を今の神奈川県知事の松沢知事に聞いたら、自民党も何人か出てくるし、こっちもやるから島さんもと言われたから、私も、郵貯、簡保、当時で三百兆ぐらいありましたかね、それぐらいのものを民営化、民間に回すということは重要だからということで、そのときの研究会に入りました。

 そして、部屋に行ったら、メディアの方がたくさん来て、取り囲んでいました。民主党の方は若い議員中心に六、七人いましたかね。自民党の方は総理一人。私の顔を見て、何となくちょっと寂しそうに、やあと声を。当時も寂しそうでしたが、今も寂しそうだなと思っていますが、そういう状況でありました。

 そういう私が、今回の内閣の基本指針その他を見て、政策論としてこれではまだ疑問があるという点があります。それを総理にきちんとお答えいただきたいと思います。

 第一、国債の問題であります。

 当時は、総理、九六年当時は国債の金利、利回りも三%以上あったんですよ。その後、金利が、おわかりのように低下傾向でずっと来て、今もうゼロ金利になっています。だから、私、余り気にしなかった、郵政公社が国債をたくさん持っているということを。余り気にしなかったんです。だから、国債、今百三十四兆、郵貯、簡保が持っていると思います。全部で五百四十兆あるうちの約三分の一持っていますね。その三分の一持っている、当時は余り気にしなかった。なぜかといったら、三%から結果として今はゼロ金利になっているという非常に低下傾向だから。

 でも、これからは違います。恐らく金利は上昇傾向になる。金利が上昇傾向になると、財務大臣なんか大変だと思っていらっしゃると思いますが、国債費の利払い費で財政が破綻するかもしれない、そういうリスクもある。総理にそれをお聞きすると、国債管理は適切な方法をとると答えられる。適切ではね、それは適切にやるのは当然であります。

 もちろんオペレーションの段階でそんな具体論まで話をしてくれとは言いません。だけれども、こういうふうだから安心だというふうにならないと、私のように総理と一緒に郵政民営化の研究をしてきた人間ですら、このままでは不安なわけですよ。

 総理、国債の問題についてお答えください。

谷垣国務大臣 国債の問題ですけれども、島委員がおっしゃいましたように、金利の問題もございます。それから何よりも、今現在、これからも、努力をしましても、借換債等を含めますと、大量の国債を当分は発行せざるを得ない状況でございます。

 それで今、郵貯、簡保合わせまして、私の記憶では国債発行高の二三%台だったと思いますが、やはり国債引き受けの重要なインフラになっているわけです。したがいまして、あすから民営化すると言われても、私もなかなか対応できません。したがいまして、当然移行期が必要でございます。

 それで、その移行期につきましては、この間の基本方針で、公社勘定の運用に際しては、安全性を重視する、郵貯それから郵便保険事業に関しては、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行う、それから、大量の国債を保有していることを踏まえて、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行う等々とされておりまして、では、具体的にどういう制度設計にするかは、今財務省も含めまして関係者で詰めて、いい制度にしていかなきゃいかぬと思っているんです。

 それから、民営化が実現された後は、これはそれぞれの会社のそれぞれの自主性でやっていただくわけですが、完全民営化した後は。それはやはり、資産規模の大きさを踏まえて、市場のことを考えながらやっていただくということだろうと思います。

 しかし、これから移行期をどうしていくか、それで、移行期の中でさらに民営化、完全民営化を踏まえてどうしていくかは、我々も十分研究もし、対応もしなきゃいけない。その一番基本は、財政規律をしっかりして、国債に対する信頼をつないでいくということじゃないかと思います。それは、財政金融委員会でもよく委員とも議論させていただきましたけれども、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復するということがまず一番、イロハのイではないかと思います。

 その上で、今もいろいろ国債管理の新しいあり方に工夫をしておりますけれども、市場のニーズをどうとらえていくか、あるいは保有者層を多様化する、こういう今努力をしておりますけれども、さらに我々も意を用いて工夫をし、制度設計もきちっとやっていかなきゃいけないと思っております。

島委員 それはよくわかっています。国債管理政策はそれこそよく議論しました。でも、マーケットはもっと敏感に反応しますよ。将来的に国債が放出されると思ったら、長期金利は上がりますよ、これ。どうですか。

竹中国務大臣 国債管理政策全般について、まさに今谷垣大臣がお話しになったとおりでございますけれども、マーケットへのショックが心配ではないかという島委員の御指摘に対して、そうならないように基本方針ではいろいろな工夫をしたつもりでございます。

 それについて谷垣大臣からも今お話がございましたが、その移行期間に関して、当面の移行期間に関して私ども一番重要だと思いますのは、郵貯、簡保の既契約、つまり政府保証がついた勘定というのがございます。これを別の、公社勘定という形で承継法人で別に管理する。この政府保証がついた預金に関しては、それに見合った資産運用ということで、これについては安全資産を重視する。まさに今、政府保証がついているからそれが国債等々で運用されているという仕組みになっておりますので、そのいわばバランスシートの塊を承継勘定というところでしっかり管理していく、そういう仕組みをとっておりますので、おっしゃるようなショックは最小限に食いとめられるというふうに思っております。

島委員 総理、このときに、総理はよく来られた、本当に。当時まだ総理じゃありませんでしたが、よく勉強会に来られて、非常に熱心にやっておられた。どちらかというと、私の方が余り行かなかったぐらいであります。

 そのときに議論していたのは、この郵貯、簡保、そのままやったら、三百五十兆円もある公的金融をそのまま民間に民営化したら、各金融機関、銀行どうなるだろうという心配をしていて、この郵政民営化研究会、総理が座長の報告書では、それを心配して分割したんですよ。覚えておられると思いますけれども。

 その答えは全然ないです。今回の政府の基本方針でも、経済財政諮問会議では公的金融の縮小をするという話をしましたよ。だけれども、全く公的金融の縮小等、今回は書いてありません。

 このままいったら金融が乱れると思いますが、総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 既に、民営化しなくても、現在の公社のままで、このような官製の金融機関があること自体、これは正常な姿ではないと思っているんです、金融機関の健全性を考えると。民業圧迫、民業圧迫と、民営化した場合の民業圧迫を心配していますが、現在自体、既に民業圧迫しているんですよ、現在の。だから、今、島議員が御指摘のような不安を解消するために、いろいろ今制度設計しております。

 国債の問題、これは今のままでも、公社が国債を大量に保有していますけれども、これだって、財政がもっと今よりも不健全になったらば、国債は暴落するわけですよ。今の状況を考えてみても、これだけ大量に国債発行していたら、普通だったら、普通の常識的な経済金融理論だったら、もっと金利は上がっていてもいいはずですよ。もっと円安になっていてもいいはずですよ。

 それが、現実の経済というのはなかなか理論どおりいかないという一つのあらわれだと思いますけれども、歴史始まって以来の超低金利で安定している。そして、これほど財政状況が悪いのに、円安どころかもう円高を心配するぐらいになっているということでありますので、こういう郵政公社を民営化する場合には、国債管理政策、財政状況、そして現在の民間金融機関に整合性を持ってこの現在の郵貯、簡保を民間資金として適切に流れるようにしていくためにはという、総合的な観点からこの民営化を図っていきたいと考えております。

島委員 総理、それは本当に日銀の大変な今の量的緩和ということが背景にあるんですよ。だから、日本経済、本当に一歩間違えると、今デフレですけれども、一歩間違えると大変なインフレになる可能性すら私は持っていると思います。

 こういうのを、今から郵政民営化やられるわけですけれども、信書便法案のことを思い出すんです。信書便のときに、これさえやれば、民間企業が入ってきて非常にいろんなところで競争が大きくなって消費者のためになるだろう、そんなつもりで信書便法案を議論していた。結果として、どうか。今、十万本のポストとかそういうのがあって、だれも入ってきていない。郵政省の局長に聞いたら、その一個しか入っていないのは独占と言わないのかと言ったら、いや、独占状態は排する法律になっておりますと。

 ということは、今回も、郵政民営化やるやると言って、本丸である、例えば公的金融三百五十兆円を民間に流すというようなことが全くだめになる、結局骨抜きになって本丸が落ちないままになる、私は今そういう思いを持っています。これから民営化の議論があるわけですが、結局骨抜きになる、そういう思いもありますので、しっかりそれを監視させていただくつもりです。

 次に、イラクの話をさせていただきます。

 国民の皆さん、イラク、安全だというふうに、非戦闘地域だという話をされるけれども、これを見てもらってわかりますように、今度、三月にオランダ軍が撤退します。資料にございますので。三月にオランダ軍が撤退します。ムサンナ県というところにオランダ軍があって、サマワはそこにあるんですが、ムサンナ県一つとっても、これは九州より大きいぐらいなんです。バスラとかマイサンにイギリス軍八千五百人いますけれども、今度、イギリスに頼まれるという話でありますが、ますますこれは明らかにサマワのリスクは私は高まると思います。

 サマワ特措法九条に自衛隊員の安全確保義務があるわけですが、その安全確保に対してどのように対処されるのか、総理、お聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 安全確保策については、万全を期すように指示してありますし、現に自衛隊の諸君もその面については、住民との交流等、あるいは市内に出ての活動等、注意をし、安全面を確保しながら人道支援、復興支援活動をしております。

 その自衛隊諸君の献身的な活動のゆえに、私は、多くのサマワの住民から好感を持たれ、派遣を継続してほしいという要請が私のところにも、イラク政府からも、ムサンナ州の知事からも、住民からも届いているわけであります。

 そして、自衛隊の諸君も、今まで一度も市民に対してけん銃等、銃を発砲したこともないし、銃を向けたこともない。むしろ、市内に出れば住民からは手を振って歓迎されるという状況でありますので、これはかなり自衛隊の活動が評価されているな、そして安全面にも十分配慮しながら活動してくれているんだな、そしてなおかつ、銃弾なりロケット弾等が飛んできた場合にも、それに耐え得るような防護施設も十分建設しているなと。

 さらには、今後、情報収集の面におきましても、より一層情報収集しやすいような警戒態勢、それで各国との連携、住民との連携を強化して、自衛隊の諸君のこの活動が、これからもイラク並びにサマワ住民から評価されるような活動を継続していくのが日本にとって必要であり、また、国連、社会の一員として、今イラクが一番苦しんでいる、そして、もうじき国民議会選挙が行われる。テロリストたちあるいは武装勢力は、何とかこの選挙を妨害したい、テロの本拠地にしたい。アメリカのみならず各国の、イラクに協力している、民主的な政権をつくろうとしている勢力を追い出そうとしている。何としてでもこの安定した民主的な政権をつくらせない、そういう人たちと今イラクの人自身が闘っているんです。そこに日本としてできることをしていくということは、まさに世界の平和と安定に必要なことではないでしょうか。

 私は、そういう観点から、日本にできることを今イラクの安定した政府をつくるためにやっているということをぜひとも御理解いただきたいし、これからも自衛隊の諸君が日本の多くの国民から激励され、そしてサマワの住民から歓迎されるように、日本政府としては、全面的な安全確保策、これについてこれからも細心の注意を払って、安全確保策については万全な策をとっていきたいと考えております。

島委員 最後に端的に聞きます。

 総理が非戦闘地域と言われる、それで定義を聞いたときに、総理は、自衛隊がいるところが非戦闘地域だと言われた。これは、我々の岩國議員がおっしゃっていたんですけれども、要するに、岡田代表が聞いたのは、今信号が青か赤かと聞いたんです。そうしたら、総理が言っていることは、みんな渡っているからこれは青でしょうと言っていることなんです、人が歩いているから。

 私、聞きます。総理、今サマワでは九回もロケット砲が撃ち込まれています。いろいろな、米軍のヘリもあちこちで落ちています。一体どういう状況になったら戦闘地域になって、どういう状況になれば自衛隊は引いてくるんですか。要するに、戦闘地域ってどうだったらなるんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、法律の定義に従って言いますれば、計画的、継続的、組織的に攻撃が加えられる、そういうときには戦闘地域として言えるでしょう。しかし、今そういう状況にあるとは思っておりませんし、私は、自衛隊の活動している地域は非戦闘地域であるというのは、極めてわかりやすい話し方だと思いますよ。今でもそう思っています。

 そして、信号とイラクとは違います。信号の歩道と今のサマワと同じにしてもらっちゃ困りますよ。そういうのをいろいろ情報を調べて、非戦闘地域でなくては自衛隊は活動しないんです。そして、イラク特措法も、非戦闘地域でなければ自衛隊は派遣できないんです。それを極めてわかりやすく、自衛隊の活動している地域は非戦闘地域であると。もし非戦闘地域でなくなったら、自衛隊は退避するか、あるいはほかの地域に引き揚げるか、いろいろ対策を講じなきゃいけない。

 ですから、戦闘地域に自衛隊を派遣はしません、自衛隊の派遣されている地域は非戦闘地域に限るということを私は説明しているので、この説明をおかしいと思う方がおかしいと私は今でも思っているんです。

島委員 極めて詭弁であります。こういう詭弁の論戦というのは本当に国民に申しわけないと私は思う。

 私ども民主党は、この国会、覚悟を持って臨んでいます。きょう新たに証人喚問、橋本元首相以下六名要求しました。この論戦におきまして、極めて覚悟を持って、こんなすれ違いをして、そしてまた詭弁を弄するような論戦じゃなくて、本当に国民のために、わかりやすい論戦をしっかりすることを要求して、私の質問を終わります。

甘利委員長 次回は、明二十八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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