衆議院

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第3号 平成17年1月28日(金曜日)

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平成十七年一月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    川上 義博君

      河村 建夫君    北村 直人君

      小泉 龍司君    小西  理君

      後藤田正純君    谷川 弥一君

      玉沢徳一郎君    中馬 弘毅君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西川 京子君    根本  匠君

      萩野 浩基君    福田 康夫君

      二田 孝治君    村井  仁君

      森田  一君    石田 勝之君

      市村浩一郎君    岩國 哲人君

      生方 幸夫君    岡本 充功君

      梶原 康弘君    小泉 俊明君

      篠原  孝君    津川 祥吾君

      津村 啓介君    辻   惠君

      中井  洽君    中津川博郷君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      原口 一博君    樋高  剛君

      松本 剛明君    米澤  隆君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      田端 正広君    佐々木憲昭君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      東門美津子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   総務大臣政務官      松本  純君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (国税庁次長)      村上 喜堂君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十八日

 辞任         補欠選任

  植竹 繁雄君     永岡 洋治君

  河村 建夫君     川上 義博君

  後藤田正純君     谷川 弥一君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  生方 幸夫君     松本 剛明君

  吉良 州司君     市村浩一郎君

  中塚 一宏君     津村 啓介君

  佐々木憲昭君     高橋千鶴子君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     河村 建夫君

  谷川 弥一君     小西  理君

  津島 恭一君     津島 雄二君

  永岡 洋治君     植竹 繁雄君

  市村浩一郎君     岡本 充功君

  津村 啓介君     中塚 一宏君

  松本 剛明君     生方 幸夫君

  高橋千鶴子君     佐々木憲昭君

  阿部 知子君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  小西  理君     後藤田正純君

  岡本 充功君     梶原 康弘君

  東門美津子君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  梶原 康弘君     吉良 州司君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十六年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十六年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計補正予算(第1号)、平成十六年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官柴田高博君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、国税庁次長村上喜堂君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 昨日の川端達夫君の質疑に関連し、岩國哲人君から質疑の申し出があります。川端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岩國哲人君。

岩國委員 おはようございます。民主党衆議院議員の岩國でございます。

 民主党・無所属クラブを代表して、総理そして関係各大臣に、国政全般、とりわけ経済の実態、そして政治献金をめぐる疑惑等について質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、総理にお願いがあります。

 この議場で立って話しているのは、今私一人でございますけれども、一人の議員に対して、一々同じような質問にとか、また一つ一つ丁寧にというのは、大変面倒くさい、あるいは疎ましくも思われることがおありかもしれません。しかし、私の後ろには私を支持してくれる何万人もの選挙民がおります。総理の後ろにもいらっしゃるでしょう。

 民主主義というのは、この議場にいる我々だけで事を運ぶのではなくて、この議場の外にいらっしゃる多くの国民、この中にいるのは一%にも満たない人数ですけれども、外には九九%の国民がいらっしゃる。きょうは、私一人に対してお答えいただくというよりも、多くの、九九%の、国会の建物の外にいて、国の行く末を案じ、自分たちの暮らしの心配をしておられる、そういう国民にわかりやすい論理とわかりやすい言葉でぜひお答えいただきたいということを、まず最初にお願いしたいと思います。

 私自身も、民間の企業であるいは地方の議会で同じような思いを持ったこともございます。しかし、民主主義というのは、手間暇はかかりますけれども、大きな仕事、大きな改革をしようと思えば思うほど、私は丁寧な説明と納得が必要だと思います。

 政治の先輩である総理に対しては大変失礼な物の言い方になるかもしれませんけれども、そのことを常にお忘れにならずに、一人一人の議員の後ろには何万人ものあるいは何百万人の人が、真剣に、心配しながら聞いておられる。きょうもこの時間、恐らくテレビを通じて多くの方が、総理の一つ一つの発言に心配し、国の行く末を案じながら聞かれる方が多いと思います。ぜひそれをお願いしたいと思います。

 私が総理にお会いしましたのは出雲市長のときでした。出雲市で市民の代表者の意見をよく聞いていただき、感謝し、また出雲市政についても耳をよく傾けていただきました。そして、出雲市が進めておりました健康管理のための福祉カードについて、これはその場で厚生大臣としての小泉さんが直ちに反応していただき、私は感激したことがございます。

 それ以来、どういう御縁でか、私は今横浜市の青葉区、緑区を選挙区としております。総理もよく御承知のように、すぐ隣は川崎市。川崎市は、小泉総理がかつて選挙区とされたところです。鷺沼を中心として、今でも私がたまプラーザで街頭演説をしておりますと、そこで、私も小泉さんに投票してきたんだ、小泉純一郎という名前を書いてきたんだ、そういう方が、よく私の資料を受け取ったり、あるいは私に話しかけていただきます。小泉さんに機会があったらぜひこれを言っていただきたい、これをぜひ質問してほしい、私は今でもそういう小泉総理を支持された方からもいろいろな注文を受けて、そしてここに来ているということもお忘れなく答えていただきたいと思います。

 その中の一つに、あのころの小泉さんとは少し違ったというイメージを持っておられる方もおありのようなんですね。例えば、あのころの小泉さんは、郵便局をあんなに熱心で好きだとはとても私は思いませんでしたという方もいらっしゃるし、それから、あれほどアメリカと仲よく戦争に出かけていくという姿をとても想像していませんでしたという方もいらっしゃいます。今、恐らくその方はこれを見ていらっしゃるでしょう。

 私自身も、パリ支店長のときにベイルート所長を兼務し、アラブの砂漠の中を走りながら、そしてアラブのスタッフと一緒に仕事をしてまいりました。アラブの砂漠の中を走りながら、いろいろ考えたこともあります。

 私は、イラクへの自衛隊派遣については、はっきり言って民主党の多くの同僚議員同様に反対であります。こうした戦闘地域、非戦闘地域、非常にあいまいで判断の難しいところに自衛隊を派遣するということについては反対であります。

 何よりも、大義名分とされた大量破壊兵器を発見するといって勇んで出かけていったアメリカが、イラクで発見したのは何だったのか。結局、アメリカそのものが大量破壊兵器だったというお粗末。このお粗末に総理はつき合ってこられたんです。そして、アメリカが壊し、日本の自衛隊が直し、壊し屋と直し屋が仲よく活動している。

 私は、日本の自衛隊であれば、新潟の県民、あるいは新潟に知人、親類を持っていらっしゃる方、あるいはそういう方でなくても、自衛隊はあの雪の新潟の方へ先に行ってほしかった、そう思うのが国民感情ではないでしょうか。イラクの水道を復旧するよりも、新潟の水道の復旧作業を待っておられるんじゃありませんか。寒い雪を避けて、なぜ暖かいイラクへ自衛隊を派遣するのか。寒さを恐れているような自衛隊員ばかりではないと私は思います。北海道の雪で鍛えられた、そういう自衛隊だからこそ、雪の新潟へ行っていい働きをしてもらいたかった。

 それは、私だけではなくて大勢の市民がそのように言っております。決して、国内だから助けに行く、国外の人はやらない、そういうことではありません。現に、民主党は、そうした今度のスマトラ沖地震にも一刻も早く救援すべきだと言い、私自身も、街頭でスマトラ沖地震のための募金運動もやってまいりました。新潟のためにもやりました。

 私は、新潟かイラクか、そういう単純な構図だけでこれを言っているわけではありません。多くのこれに絡んだ問題があります。例えば、戦闘地域か非戦闘地域かという問題についても、自衛隊が行っているところは非戦闘地域であると。これについては、昨日も同僚議員からの質問もありました。

 私は、もっとわかりやすい表現を小泉総理が望まれるのであれば、これは、交通信号に例えて言えば、青信号だから渡っていい、赤信号は渡ってはいけない。日本の子供たち、憲法をわからない子供たちでさえも知っているたった一つのルールは、青信号なら渡っていい、赤信号は渡ってはいけない。

 だからこそ岡田代表が、あそこは自衛隊が行ってもいい非戦闘地域なのか、戦闘地域なのか答えてほしい。自衛隊が行けば非戦闘地域になるんだということは、人が渡れば、それは信号を見なくても青信号に決まっている、これは子供たちにとても説明できる論理ではないんです。信号を見てから渡りなさいと学校の先生は子供たちに教えているんです。そういう子供たちが大人になっているんです。

 にもかかわらず、信号は見なくても、人が渡っていれば青信号だというのは、総理、これは論理の矛盾どころか、私は教育上も大変悪い説明の仕方だと思います。一言、御意見があればおっしゃってください。

小泉内閣総理大臣 私は、その例えが必ずしもいいとは思っておりません。赤信号は渡ってはいけないんです。生徒さんに渡ってもらうときは青信号。ですから、教育の場面においても、はい、青信号ですよ、みんなで渡りましょう。赤信号で渡ったらいけませんと注意しなきゃいけないんです、早く走りなさいとか、やっちゃいけませんと。

 そして、自衛隊が活動する地域は非戦闘地域である。そもそも、非戦闘地域でなければ自衛隊は活動しないんです。戦闘地域だったら、自衛隊はその地域では活動しないんです。だから、一番わかりやすい説明は、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域である。裏返せば、非戦闘地域でなければ自衛隊は活動しない、そういう説明を申し上げたわけであります。

岩國委員 それでは、人が渡っていれば、信号は赤でも青とみなされるということになりやすいんです。岡田代表が聞いたのは、今の信号は赤だからとまったのか、青だから渡ったのか、それを聞いているときに、人が渡っていれば信号は青に決まっています、こういう考え方を子供たちにさせてはいけないということなんです。そうでしょう。

 世の中にいろいろな人がいて、赤信号でも横断する人はいます。それを見て子供が、ああ、あのおじちゃんが渡っているから信号は青なんだ、総理大臣がそうおっしゃったといって、それで渡ったらどういうことになりますか。そういうわかりやすい質問なんです、これは。

 問題をやたらに複雑にしないで、戦闘地域でないという根拠で私はそういうふうに判断したんです、信号は青信号です、だから渡らせたんだという説明をしっかりとしていかないと、子供たちが混乱しますよ。人が歩いていれば青信号だ、こういうふうな説明に国会ではなっているわけです。

 ベイルート所長のとき、私の運転手はフセインという名前でした。フセインという名前はあそこら辺に非常に多いんです、御承知のように。このフセインという私の秘書兼運転手は、レバノン陸上界の星と言われた、若くて勇敢で優秀な青年でした。今は戦渦の中に消息を絶ちました。

 このフセインという運転手が私にいつも言っておったのは、このアラブの世界では赤信号と青信号がある。しかし、彼は赤信号でも一遍も私の車をとめなかったんです。なぜか。それは赤信号でとまっている車を狙撃するテロやゲリラがその辺にいっぱいいる地域だったんです。彼は、私にちゃんとそれを説明し、赤信号でも私はとまりません、そのときには車の中で身を伏せていてくださいと。そういう地域なんです、アラブのレバノンでさえも。テロやゲリラがどこにいるかわからない。

 今、総理の判断としては、あの地域は依然として青信号なのか、赤信号なのか、故障している信号なのか、簡単に答えてください。

小泉内閣総理大臣 サマワ地域、自衛隊が今活動している地域は、非戦闘地域だから行っている。なぜか。イラク特措法にある戦闘行為というのは、継続的、計画的、組織的な戦闘行為、こういう行われる地域は戦闘地域である。今考えてみますと、自衛隊は、今までサマワ地域において一発も弾丸を発射したこともない。住民に対して銃口を向けたこともない。市内に活動に出れば市民が手を振って歓迎してくれる。交流も友好的に行われている。そして、各種世論調査にあっても自衛隊の活動は評価され、活動を今後も継続をしてほしいという要望が日本政府にも来ている。

 そういうことから考えて非戦闘地域である。だから自衛隊の諸君が、献身的な活動をしながら、サマワの住民からも評価され歓迎されているということだと思っております。

岩國委員 この点についてはまた同僚委員からも質問があると思いますけれども、こうした、他国の軍隊によって保護され守られなければならないという一般環境が存在する地域というのは、私は、明白な青信号の地域とは言えないと思います。

 現に、大野防衛庁長官が緊急で出張されました。大野防衛庁長官自身が、零泊三日、つまり一泊もしないで三日間かかって帰ってきたという、大変お忙しい日程だったようですけれども、一泊もできなかったということに問題があるんです。防衛庁長官であれば、自衛隊員と一緒にまくらを高くしてそこで一晩眠ってみせる。それでこそ、あそこは非戦闘地域で、安心できるところであるはずでしょう。なぜ、御自身の口で、防衛庁内で零泊三日という言葉が有名になるぐらいにお忙しい日程で、そして一泊もしないで、サマワを避けてよそで泊まらなければならなかったのかということも、その地域が決して安全な地域でないということを私は物語っていると思います。

 時間の点で、問題を移しまして、次は、経済の問題について。

 経済について戦闘地域、非戦闘地域があるわけではありませんけれども、景気がよくなっているのか、景気は悪くなっているのか。赤信号か、青信号なのか。今政府がともしていらっしゃるのは赤信号なのか、青信号なのか、黄色の信号なのか。総理、簡単にわかりやすくお答えいただけませんか。

 総理自身はどういう認識を持っていらっしゃるのか。国民の皆さんに青信号を示していらっしゃるのか、黄色の信号なのか、赤信号なのか。それぐらいお話しできるんじゃないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 景気を、赤、青、黄色で表現するというよりも、私から言うべきことは、回復基調にある、それがより、信号で言うよりもいい表現だと思います。

岩國委員 赤信号がもうすぐ青信号に切りかわる直前だというふうな感じでおっしゃっているんじゃないかと思いますけれども、もうそろそろ青信号だというような感触が本当に世の中に満ちておるのかどうか。

 例えば、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 生活保護費というのは、生活が苦しいという世帯に対して支払われるものと理解しております。この生活保護費のための予算は、ふえているのですか、減っているのですか。最近五年間の傾向について、どれだけふえたのか、ことしもふやさなければならないのか、なぜなのか、その三つを簡潔に御答弁いただきます。

尾辻国務大臣 生活保護についてのお尋ねでございます。

 まず、被保護人員でございますけれども、すなわち保護を受けておられる方々の数でいいますと、平成十一年度、世帯数で七十万世帯、人数で百万人であります。これに対して、直近の十六年十月の数字を申し上げますと、世帯数で約百万、人数で百四十三万人になっております。したがいまして、被保護人員はふえております。

 それを受けまして、生活保護費全体はどういうことになっているかといいますと、平成十一年度で一千三百八万……(岩國委員「けたが違うんじゃない」と呼ぶ)はい、けたが違いました。千三百八十七万五千円。済みません、億の単位で申し上げなきゃいけません、大変失礼をばいたしました。一兆三千八百七十五億円から、平成十五年度には一兆八千十八億円という数字に変化をいたしておるところでございます。数字がふえておることも事実でございます。それだけでよろしいでしょうか。

岩國委員 ただいま厚生労働大臣にお答えいただきましたように、困窮生活保護対象の世帯数は五割も激増しているんですね。そして、毎年毎年、当初予算で一兆円以上計上しながら、補正予算で毎年二千億円以上をまた補正しなければならない。事態は悪化に悪化を重ねているということがこの数字で非常に明らかなんです。

 こういう困っていらっしゃる方に対して、厚生労働大臣がけたを間違えたり、億円と万円が違ったり、私は、この点は大変残念に思います。就任されて間がないとはいえ、私はやはり、こういう困っている方のためのこの補正予算を、大切な税金を使って二千億円もここへ積み増ししなければならないという、これは非常事態というか異常事態ですよ。景気がよくなっている、暮らしがよくなっているという状態からいえば、ほど遠い話じゃありませんか。大臣までがけたを間違えるぐらいに異常な事態が発生しているということをまず認識いただきたい。

 また、生活困窮を通り越して、自殺する方も最近はふえているということが言われております。

 警察庁の方から、最近の五年間あるいは十年間の自殺者がどういう状況にあるのか、三万人を超えているという事態はいつから、いつ発生したのか、何年ごろから三万人以上、そして、それは今でも続いているのか、簡潔にお答えいただけませんか、警察庁。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 年間の自殺者数が三万人を超えましたのは平成十年でございまして、同年の自殺者数は三万二千八百六十三人というふうになっております。その後、年間の自殺者数は毎年三万人を超えておるという状況でございまして、十年前という御質問でございましたけれども、平成六年という時点で見ますと、約二万一千人の方が亡くなられております。

岩國委員 明らかに、困窮を超えて、自殺しなければならない。経済的理由だけの原因では私はないとは思いますけれども、この経済実態の悪化ということが、生活困窮世帯の世帯数が広がる、そして自殺が過去五年間一年たりといえども三万人を下回ることがない。世界の先進国のどこにこんな国がありますか。豊かな国と言われ、教育程度は進んでいると言われ、そして治安状態がいいと言われている国の中で、これだけの自殺者が毎年毎年続いている。

 これは、経済実態がよくなった、そして小泉内閣の改革路線が着々と功を奏して、景気は回復基調にある。景気と暮らしの実態というものは違う言葉なんでしょうか。我々は、一般庶民は、景気がよくなると暮らしもよくなると単純に思い込んでいるんです。ところが、暮らしは悪くなっているのに、景気はよくなるという発表を政府から聞かされると、景気と暮らしというものは関係がないのかと。そんなはずは私はないと思います。

 例えば、一般家庭の貯蓄がふえているのか減っているのか、谷垣大臣、お答えください。最近の傾向はどうなのか。貯蓄は着実にふえているのか、それとも取り崩しで減っているのか。どういう傾向にありますか。

谷垣国務大臣 かつて日本の貯蓄率は極めて高いと言われておりました。ただ、高齢化が進んでまいりまして、この数年、その貯蓄率がかなりのカーブで低下をしてまいりました。もっとも、一番最近の統計では若干持ち直したと承知しておりますが、ちょっと今手元に数字がございませんので、これ以上の答弁は差し控えさせていただきます。

岩國委員 そうした貯金は、残念ながら、収入が伸びない、むしろ家計所得が減っているために、貯金の取り崩しというものが昨年から始まっております。今までの貯蓄心の非常に高かった日本人にとっては、これも異常なことなんです。やむにやまれず最後の貯金にまで手をつけなければならない家庭がふえているということ。

 そしてもう一つは、老後の安心。平均寿命がどんどん長くなる、結構なことです。しかし、長くなればなるほど心配なのは、老後の年金が安心できるかどうか。年金に対する満足度が世界の先進国で最低だということです。ということは、日本の年金は安心度が最低。年金も安心できない、貯金は取り崩さなきゃならぬ、そしてあと考えるのは、生活保護を受けるか、あるいは自殺を考える方さえ出てくる。

 OECDは何と言っていますか。国の財政も持続可能な状態にはない、危険な状態であると、つい先週の二十日、これは外国の経済専門家と言っていいでしょう、OECDの発表がなされています。政府の発表とは余りにもかけ離れています。外国の専門家も、国の財政は持続可能な状態とは言えない危険な状態にあると。日本の財政もそうなら、家計の方ももう既に破綻に近い。

 経済という言葉は、釈迦に説法ですけれども、経世済民、国を治め民を助けるということであるならば、総理、私は、今こそ政治が大きな決断をし、そしてその責任にこたえなければならないときだと思うんです。そして、総理のお好きな言葉で、政は正なり、正確には政とは正なりだという文献もありますけれども、いずれにしても、政治というものは正しくなければならない、正義が貫かれなければならない、そして正しく事実を語らなければならない。信なくば立たずとおっしゃる総理の言葉を別な表現ですれば、まさに政治というものは、正しく実態を国民に説明し、だから政治はどういうことをやりますということを説明し説明し説明し、納得していただく。

 改革も私はそうだと思います。改革というのは、すべてわかりやすく説明し、納得し、そして国民が期待を持って喜びを分かち合えるような決断、それこそが改革ではありませんか。やればわかる、やったらできる、後からわかってください、それは十七世紀、十八世紀の話です。そういった点についても、総理初め各大臣がもっと懇切丁寧に、それぞれの実態がどうなっているかということを正確に、事実に基づいて説明していただきたい、そして政策を打ち出していただきたいと思います。

 特に、私が何度もこの予算委員会で取り上げたゼロ金利政策について、私は再度お伺いしたいと思います。

 皆さんも給料が欲しい、一般の人も給料が欲しい、そして皆さんのお金も給料が欲しい。お金がもらう給料のことを金利といいます。日本のお金は五年前から給料をもらえていない。給料の遅配、欠配、無配。世界の国の中で、お金が給料をもらえないのは日本の国だけなんです。

 ゼロ金利政策がいろいろな意味で必要だということは、私もその世界におりましたからわかります。しかし、このゼロ金利政策が、だれに恩恵を与え、だれに負担をかけてきたかということを今こそ率直に総括し、そしてその結果を私は国民に説明しなければならないと思います。

 ゼロ金利政策の担当の日銀総裁にお伺いします。このゼロ金利政策の結果として、過去十年間に日本の一般家庭の貯蓄が得べかりし利子が幾ら奪われたのか、それを端的に金額で御説明ください。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 いろいろな計算の仕方があろうかと思いますけれども、国民所得統計で、日本の家計の受取利子というものが過去の金利の低下でどれぐらい減ったか。平成五年、一九九三年と比べますと、十年間ということになります、毎年の受取利子の減少額を足し合わせますれば、累計で百五十四兆円ということになります。

岩國委員 百五十四兆円、丹念に御計算いただきまして感謝いたします。

 決して福井総裁のときからこれが始まったわけではありません。私は、速水日銀総裁にもここへ来ていただいて、同じことを、なぜゼロ金利政策が昨年、一昨年から始まったのかということを三年前に質問しました。私は速水総裁に、あなたはお金の印刷ばかりしていらっしゃるけれども、お金に生活費を払っていらっしゃいますかと聞きました。払っておりません。世界のどこの国がこういうことをやっていますか。どこの国もやっておりません。あなたはどういう御心境で仕事をしていらっしゃるんですか。大変心苦しい思いでございます。私は、本当に率直な答弁をしていただいたと思います。

 そして今、福井総裁にも、百五十四兆円の一般家計に入るべき利子が所得移転。所得移転というのは経済用語の言葉です。一般用語では、これは泥棒というんです。百五十四兆円が、入るべきお金がどこかへ持っていかれている、どこかで使われている。これが、銀行を救済し、不良債権を減らし、そしてあのスーパー、あの建設会社の救済に使われている。そうした建設会社、スーパーから預金者に対して礼状でも出ましたか。あなたが得べかりし利子を途中、流用させていただいて、そのために私の会社は助かりました、私の銀行は助かりましたという礼状ぐらい私は出すべきじゃないかと思います。

 国民勘定からいえば、百五十四兆円というのは消費税に換算して幾らになりますか。毎年毎年、私が取り寄せた調査でも、今から十年前には毎年三十兆円、今ではわずか五兆円、これが利子として入っているんです。アメリカの家計利子、日本の家計利子の収入を見てください。この激減ぶり。一九九〇年には三十四兆円の利子を受け取っていました。今はわずか五兆円です。今、このパネルにはアメリカの利子収入統計は入っておりませんけれども、アメリカの利子収入は過去十五年間コンスタントに家計に対して払われています。

 竹中大臣、今一生懸命聞いていただいていますけれども、竹中大臣ならアメリカの経済についてもお詳しいと思いますけれども、こうしたアメリカの家計所得への利子収入というのは家計の一〇%を割ったことはないんです。家計の一〇%は利子という形で入ってくる、これが一般家庭の姿。

 ところが、日本の場合には、今や家計所得の一%そこそこしかもらえない。はっきり言って、これはゼロの状態ですよ。お金はあっても、世界で一番たくさん金融資産があるという国が、そのお金が収入を生まない。毎年二十兆円の所得が奪われているということは、消費税に換算すれば、一〇%の見えざる消費税が日本では課せられているということなんです。日本の消費税は五%ではありません。一五%です、一般家計に与える影響を考慮するならば。

 これについて、福井総裁、家計所得という家計を中心とした経済の観点からすれば、これはもう限度に来ているんじゃありませんか。利子が入らないどころか、貯金を取り崩さなきゃいかぬ。元本までも減っていく。利子は入らない、元本は減っていく。その上、来年度から、いよいよ定率減税の縮小といったような形も含めていろいろな負担がふえている。負担はふえる、収入は減る。これでは、踏んだりけったりというよりも、踏んだり取られたりの状態がこれから始まっていくんです。

 福井総裁、どういうふうにお考えになりますか。

福井参考人 委員御指摘のとおり、ゼロ金利政策に限らず、経済の状況がよくないときに日本銀行が行います金融緩和政策は、一般的に家計部門に負担をおかけする、それはそのとおりでございます。

 しかし、それは同時に、金利全般の引き下げを通じて、企業活動、これを、問題を克服して前向きの活動が展開できるような状況に持っていくという、同時にそちらの方の作用もございまして、あわせて、経済全体がなるべく早くいい状況に持っていく、これが目標でございます。

 もちろん、すべての企業がそうした低金利政策の効果を正しく使っていただいているかどうか、これはわからないと思いますけれども、しかし、私は、日本の企業の多くは正しい方向に努力を続けていただいているというふうに確信をいたしております。

 緩和政策を長く続けておりますけれども、これまでのところ、緩和政策が経済活動全体を下支えして、日本経済は本当にデフレスパイラルに落ち込むその瀬戸際にあったということは委員もよく御承知だと思いますが、それを未然に防ぐ上に効果があった。これからは、景気の回復をより持続的なパスにきちんと乗せていく、あわせてデフレを脱却していく、この目的に照準を合わせて効果をより強く発揮させていく必要がある、こういうふうに認識しております。

岩國委員 総裁、ありがとうございました。

 私は、今、家計を中心とする経済というところに政治の座標軸を移すべきだと思います。今まで大企業中心で、銀行が助かれば、企業が助かれば雇用が助かる、本当にそうだったでしょうか。利益がふえた大企業は外国へ結局移転し、外国の雇用をふやすお役になっているかもしれません。一般家庭の負担が外国の雇用をふやすというようなことになってはおかしいんです。そして、このゼロ金利政策の犠牲となった百五十四兆円が、その人たちを今潤すプラスの配当になって返ってきているかどうか、五年、七年たって。

 さっきの総裁のお言葉は、五年前にも七年前にも私は聞かされました。プラス効果はいろいろなところに生じて、それが回り回って、ゼロ金利で我慢していただいている方にも恩恵が及ぼされるんだと。プラスの配当はやってきましたか。やってこないどころか、それでも足りないから、今度は来年から、再来年から負担をふやそうという話じゃありませんか。これは明らかに政策の失敗だと言わざるを得ないと私は思います。

 政策が成功しているんであれば、五年もたてばプラスの配当が一般家庭に返ってこなきゃいかぬじゃないですか。待てど暮らせどプラスの配当が来ないどころか、配当通知書どころか請求書が今やってきています。封筒の中をあけてみたら請求書です。これはまさに政策の失敗、政策破綻と私は言わざるを得ないと思います。

 私は、日銀総裁として、見識そして経歴も十分持っていらっしゃる、また決断力も持っていらっしゃることは承知しております。私は、メリルリンチの代表として、日銀の方針に異を唱えたことがありました。そのとき、営業局長の福井さんのところへ行きました。なぜ、外国の証券会社が日本の証券会社と差別されなければならないのか。営業局長として、福井総裁は直ちに決断していただきました。私は驚きました。こういう大きな機構で古い歴史を持つところが、新しい時代に敏速に対応していらっしゃる。

 民主党は、不明にして福井総裁の任命に国会の中では賛成しませんでした。しかし、私は賛成します。そして、今でも期待しております。だからこそ、今、大きな政策転換を決断されなければならない時期に日本は来ている、そして、日本の一般家庭はもうこれ以上負担に耐え切れないということを申し上げます。

 さらに、つけ加えて一つ質問させていただきます。

 山一証券の破綻、千百十一億円、昨日も新聞に報道されております。この千百十一億円のツケは日銀に残るんですか、財務省へ行くんですか。だれがこの千百十一億円は負担しなければならないんですか。日銀でそのまま受ける、そういうお考えですか。それとも、どこかへ持っていくお考えですか。端的にお答えください。

福井参考人 お答えいたします。

 山一証券の破産手続がつい最近、一月二十六日に最終的に終わりまして、終結時の日本銀行の特融残高が千百十一億円というものでございます。

 これからこの最終処理ということになるわけでございますが、そもそも、山一証券に特別融資を発動しました九七年の時点で、日本銀行の判断として、システミックリスクは絶対防ぐ必要がある、そしてそのことができるのは日本銀行だけだ。ただ、日本銀行の財務に最終的な大きなダメージを与えるかどうか、この点が最終的に非常に難しい点でございました。

 したがいまして、もし万一日本銀行のバランスシートに損失が大きくかぶるというふうなときには、政府が最終的に善処していただけるというお約束のもとにこの特融に踏み切ったという経緯がございます。その後、政府の方の姿勢として再三御確認いただいているところでございます。

 これから、本件特融の最終処理に適切な対処を、政府の方で処理していただけるように、改めてよく御相談してまいりたい、こういうことでございます。

岩國委員 ありがとうございました。

甘利委員長 谷垣財務大臣、何かありますか。

谷垣国務大臣 今、日銀総裁から御答弁がございましたけれども、山一証券に対する日銀特融の回収不能額、これにつきましては、日銀は既に貸倒引当金が積まれておりまして、新たな損失が発生することはないという形になっております。そして、この引当金を積んだ時点で、引当金相当額の国庫納付金が減少するという形になっているわけでございます。

 そこで、今日銀総裁がおっしゃった、新たな損失が発生することはないとしても、この日銀特融の毀損によって支障が生じないように、いろいろ今までも政府が約束をしていたというお話がございましたけれども、これによって日銀に支障が生じないようにしなければならないと考えておりまして、今後、日銀とも相談しながら適切に対処してまいりたいと思っております。

岩國委員 貸倒引当金が積まれておりまして、そしてその結果として、その分国庫収入は減少するわけでございます。説明としてはまことに理路整然。しかし、結果として国民の財布を傷めるということには全く変わりはありませんね。

 どこか外国のヘッジファンドでも買ってくれるという話でもないし、民間の証券業界の積み立てた基金が、今から七年前、そこの席に座っておられた三塚大蔵大臣は、証券業界の積立金でその債権を買い取らせる、そういうことも視野に入れてという説明をされたはずです。今は証券業界のショウの字も出てこない。

 日銀と財務省とのやりとりで、結果的にはどっちへ転ぼうと、国民の懐にツケが寄ってくるということしか考えておられないんじゃないですか。それはおかしいと思いますよ。この席で三塚大蔵大臣が答弁されたその原点に返って、しっかりと業界と話し合うべきではないかと私は思います。そのことを要望して、次の質問に移ります。

 竹中大臣に質問いたします。

 経済の実態と関連しまして、竹中大臣が名古屋で今月、二%成長を期待したい、それが実現するならば三十二年後に国民の所得は倍になると。おめでたい席だからこういうおめでたい話もされたでしょう。所得が倍になる、久しぶりにこの懐かしい言葉を聞かせていただきました。

 所得は三十二年後に倍になる、そのときに国民の借金はどうなっているんでしょうか。今のお立場は、評論家でもなければ、業界の一経営者でもありません。国会の議員であり、そして内閣の一員であれば、いい方の話だけではなくて、三十二年後に二%成長で、そういう数字をおっしゃるのであれば、三十二年後に国の借金の方はどうなっているのか。国民の方から見れば、所得が倍になる話よりも、早く借金を減らしてほしい、そういう気持ち、不安の方が今は強いんじゃありませんか。三十二年後の話をされる以上は、三十二年後の国の借金もちゃんとポケットの中に持っているはずだと私は思います。お答えください。

竹中国務大臣 岩國委員の御指摘は、経済は必ずコインの両面のようにいろいろな面があるんだから、いろいろなことを議論しなければいけません。大変私もそのとおりだと思います。

 基本的には、例えば先ほどの低金利の話でも、金利の収入が低いけれども、家計から見ると、ローンの金利が下がっていますから支払いだって低いわけですから、それを総合的に見なければいけない。そういうふうな観点から私は経済を運営しているつもりでございますし、岩國委員が先ほど御紹介されたOECDのその報告でも、日本の経済は過去十年間で一番よい状況にあるという総合的な判断をしておられる。

 それで、私の講演に対するお話でございますが、私が申し上げたのは、成長に注目をして、二%成長すると、三十二ではなくて三十五だと思いますけれども、二%成長をしますと一・〇二倍に毎年所得がなっていきますから、一・〇二倍の三十五乗は二になりますね。

 したがって、まさに二十世紀のアメリカというのはこういう二%成長を実現したわけで、こういった成長ができる経済というのは、全体のスケッチとして悪い経済ではありませんねと。だから、頑張って構造改革をして、この二%成長軌道に戻そうじゃありませんかということを申し上げました。私は予測を申し上げたのではございません。したがって、経済の改革を進めて成長軌道に戻そうという趣旨で申し上げたわけでございます。

 三十年後の借金はどうなっているか。借金の意味にもよると思います。対外的な債務というようなことを意味しておられるのか、国の借金、政府の借金を意味しておられるのか、個人の借金を意味しておられるのか。

 これは、そういう別に予測の話ではございませんから、今、三十年後の日本の経済がどういう姿になっているのかということに関しては内閣府でいろいろなビジョンの議論をしておりますけれども、そういう中で、明らかにできるものは明らかにしていきたいというふうに思っております。予測の話ではございません。一つの経済の考え方を申し上げたまででございます。

岩國委員 大臣の立場にある方が、評論家なら一方的な話をされても結構です、期待であろうと希望であろうと何であろうと。しかし、内閣の閣僚であるならば、行政権の一端を担っておられる方が述べられる数字は、新聞は三十二年後と報道しておりますから、訂正されるんだったら訂正された方がいいと思います。そうしたものを話されるときには、当然、そのコインの裏側の話もされてこそ完結するわけであって、一方的な話だけが、いかにもそれで経済がよくいっているかのごとく思わせるような発言は慎むべきだ、私はそのように思います。

 次に、西武鉄道の株式について質問いたします。

 この西武鉄道の上場資格が、正確な報告がなされておったならば、いつからこれは上場廃止になっておったのか。伊藤大臣、金融庁として、西武鉄道からの連絡をお受けになりました。そして、金融庁としても、取引所と連絡をして、いち早くとは言えないけれども、対応は相当おくれておりましたけれども、その後、お調べになったでしょう。八〇%という制限を超えた違反事態が発生したのは、さかのぼって何年前なのか。三年前なのか、三十年前なのか、五十年前なのか。いつからこれは違法な株式としての取引が継続されておったことになるのか、端的に時期だけをお答えください。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 昭和五十七年十月に導入された大株主上位十名の所有株式割合に係る上場廃止基準は、三カ年以内に上場株式数の八〇%以下とならない場合、上場廃止とする旨規定されたところであります。

 昭和五十八年三月末のコクド及びプリンスホテル二社の所有株式割合は八〇・〇三%となっていることから、その三年後の昭和六十一年三月末の割合、八〇・〇三%が確定した段階で上場廃止となった可能性があるものと聞いております。

 なお、昭和五十七年以前の上場廃止基準では、浮動株式数が一定の数量に満たない場合などに上場廃止を行う旨規定されておりますが、当時の株式分布状況にかかわる記録が残されていないことから、東証においても判断することができないと聞いておるところでございます。

岩國委員 少なくとも二十年以上、違法な、違反した状態でもって、この西武という株式の取引が堂々と取引所の中で行われていたことになります。

 にせ札が今問題になっておりますけれども、にせ株式の取引も私は大きな問題だと思います。金融庁としては当然、これについては、今度の補正予算でも人員の増加を要求しておられますけれども、私はもっと大幅な増員さえ必要ではないか。既に違反状態にある会社は、西武にとどまらない。きょうこの時刻においても、既に違反状態にありながら上場株式として、いわば偽りの株式が取引所の中できょうも取引されているんじゃないんですか。そういうことを考えれば、一刻も早く、この違反状態、にせ株式は退治しなければならないと思います。

 日銀総裁、今、まだおいでになっていらっしゃいますけれども、私はそうしたにせ札の問題についても憂慮する一人であります。私は、昨年、日銀へにせ札の展示がしてあるかどうかを見学に出かけました。日本銀行の中ににせ札の展示はありませんでした。あるのは本物しかありませんでした。同じように、金塊の本物を私は見に行ったんです。総理は、日本銀行を見学されたこと、おありですか。

 ニューヨークの連銀はウォール街の真ん中にあって、連銀の中で、私は、本物のお札も、そして本物の金塊も見ました。私は、同じように日本銀行の本店には、たくさんおいでになる見学者のために、金塊というのはここにある、展示されていると思って行ったんです。お札は本物でした。金塊はにせものでした。見せかけだけの、金紙で張った張り子の金塊しか置いてなかったんです。

 日本銀行には、見せるための金がないのですか。そうして、にせ札はいけないという日本銀行の本店で堂々とにせゴールドを見せるというこの感覚。本物志向の日本であれば、日本銀行は本物しか扱わないというその権威と信用にかけて、本物の金塊ぐらい見せたって減るものじゃないでしょう。

 なぜ、本物の金塊を見せることができないのか。どういうお考えなのか、端的にお答えください。

福井参考人 委員がごらんいただきましたのは、多分、本館の旧金庫をごらんいただいたのかなというふうに思いますが……(岩國委員「一般の方の見学コースの中に入っていたんです」と呼ぶ)はい。

 見学コース、金庫をお見せする部分と、それから貨幣博物館をごらんいただく部分と二つございまして、旧館の金庫の部分は、明治以来の古い歴史的価値のある建物、その心臓部分の金庫を詳しく見ていただくというコンセプトで見学コースを組んでおります。一方、貨幣博物館の方は、これは、歴史的あるいは外国のも含めまして、お金そのものをごらんいただく。この中には、日本の金貨及び昔の分銅金等も入っております。

 御指摘のとおり、金塊は置いていないかもしれませんが、そういうふうに分けておりまして、本館の建物の方は、気楽に建物をよく見ていただく、そしてセキュリティーレベルもそれなりに低くしております。そういう違いはあることを御了解いただきたいと思います。

岩國委員 治安とかセキュリティーの問題があるから、そう簡単に一般見学者にはお見せできないと。それほど治安状態があそこは悪いんですか。私は行ってみましたけれども、すぐそばに三越の本店はあるわ、旧三井銀行の本店はあるわ、私は日本でも一番治安状態のいいところだと思っています。そんなに治安状態が悪いんだったら、本物のお札を置かないで、あそこにはにせ札でもたくさん置いておかれた方が安心ではないかと私は思います。

 ニューヨーク連銀に倣って、やはり本物の金塊を見せる。だから、日本では本物しか扱わないのが日本銀行でございますということを、一般の見学にわざわざ来られる方ににせものを見せることは私はないと思います。ぜひ御一考をお願いしたいと思います。

 次に、小泉総理にお伺いします。

 先ほどの西武鉄道、こういう違反な上場で違反な株式を取引させ、そういう状態で増資を繰り返してきて、そして金を手にした。その西武鉄道から自民党に毎年幾らお金が入っていますか。この二十年間に、違反状態が発生した違反会社から自民党の国民協会に政治献金が幾らなされているんですか。お答えください。

小泉内閣総理大臣 今突然伺われても、それはまだ調べておりませんので、いずれ、幾ら献金を受けているか、調べて報告いたします。

岩國委員 突然の御質問ということですけれども、国会の質問は突然が原則なんです。そんな、あらかじめ予定して、しかも、そういう問題企業からのお金が入っておったかどうかは気にならないんですか、小泉総理。

 私は調べました。昨日、総務省で調べたところでは、一年間に一千万円、少なくとも名前が出ている範囲で。名前の出ていないやり方はわかりません。一千万円のお金がほとんど毎年のように西武鉄道グループから、三社の名前で国民協会に献金が行われています。こういう違反状態で大きな信用疑惑を起こしたところから受け取っているということは、私はおかしいと思います。(発言する者あり)残念ながら、民主党には入っておりません。

 そういうことについて、ぜひ自民党総裁として調査報告書を出していただきたいと思います。

 ここで一つ、総理に、前回の予算委員会でも質問いたしましたけれども、私は、透明性を高めるために、今、我々政治家も政治献金の出し入れのための番号制を持つべきではないかと思うんです。今、納税者番号、これは政府も与党の皆さんも、そして我々民主党も、納税者番号について真剣にその具体化に取り組んでいるときです。納税者の皆さんに番号を強制するのであれば、その皆さんからいただく献金について、我々は当然、番号を使うことによって透明性、公開性を高めることは必要じゃありませんか。

 収支公開室、私自身も入ってみました。総務省は既に、我々国会議員一人一人の政治資金団体に番号をつけているんです。皆さんの団体にもついています。総務省につけられるのではなくて、我々みずから立法化して、政治の浄化のために、そして政治資金の透明性を高めるために、国民の皆さんから、政治献金というのはきれいな流れをするものだという信頼と認識を持っていただくために、我々はそういう番号を持つべきだと思います。

 ここで一つのアメリカの例を申し上げます。

 総理、これはヒラリー・クリントンの献金番号です。ヒラリー・クリントンは上院議員ですから、この番号はSで始まっております、セナター。下院議員はCで、コングレスです。Sで始まって、ニューヨーク州の数字番号がゼロ、そしてニューヨークのNYが入っています。偶然ですけれども、ソニーという名前ですね、SONY。これはソニーの名前をとったんじゃなくて、偶然、S0NY。そして、ヒラリー・クリントンの数字の番号が00188。インターネットでこれをクリックしますと、そこへ入ってきた献金が全部公開されるんです。ですから、名寄せが非常に簡単にできる、不正がしにくい。

 そういう点で、透明性を高めるために、我々は、納税者の皆さんに納税者番号をこれから義務づけようというのであれば、隗より始めよ、総理、いかがですか。我々政治家自身が番号を持つことによって、決してもうこれからいいかげんなことはいたしません、透明性を高めるために、そして皆さんの疑惑があったら、いつでも私のこのコード番号をたたいてみてください、だれが献金しているか、それが全部わかりますよと。

 イギリスは、献金する人が番号を持っています。これは、会社の番号、法人番号、取引所に上場された番号を使って、全部その番号を使わないと献金ができない。アメリカは、受ける方が番号を持っています。

 一長一短それぞれあると思いますけれども、ぜひ、政府は真剣にこの制度化に取り組んでいただきたい。総理の御所見をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 それぞれの国によって選挙制度も政治資金規正法も違うと思いますが、こういう点について、今後、日本の制度としてどのような制度がいいか、よく協議する価値があるものだと興味深く拝聴いたしました。各党それぞれ協議していただきたいと思います。

岩國委員 こうした透明性を高めるというのは、与党、野党を問わず、我々国会議員、政治家の職業としての信頼度は、残念ながら、官僚の方よりも郵便局の局員よりも、職業としての信頼度は低いところに落ちてきております。我々の面目にかけても、ぜひ与党も野党も一緒になって、そして小泉総理自身が政治家の代表として、リーダーシップを持ってこれの実現化に取り組んでいただきたい、取り組む姿勢を一刻も早く出していただきたいということを私は要望し、私の時間が終わりましたので、ここで質問を終わらせ、同僚の永田委員に交代いたします。

 ありがとうございました。

甘利委員長 この際、永田寿康君から関連質疑の申し出があります。川端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。永田寿康君。

永田委員 民主党の衆議院議員、永田寿康でございます。きょうは、川端幹事長の持ち時間の範囲内で最後まで頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくおつき合いいただきたいと思います。

 さて、冒頭、まず、我々は今、思ったよりも速いスピードで突っ走っているんだということを皆さんに申し上げたいと思います。今、我々は時速何キロぐらいで走っていると思われますか、総理。

 ちょっと答えにくかったかもしれません。説明しましょう。

 今我々が審議している一般会計補正予算、並びにその特別会計予算もあるわけですけれども、両方とも合わせて四兆七千億円というような補正予算を審議しているわけであります。また、この補正予算の審議が終わったら、八十四兆円に上ろうとする国家予算もまた、本予算も審議されるわけであります。

 例えば、八十四兆円の一般会計予算がわかりやすいので、このことを例にとってお話をしたいんですが、財務大臣、ちょっと通告もないのでお話をしたいんですが、八十四兆円の国家予算、一万円札で積み上げるとどれぐらいの高さになるか、考えたことはありますか。

谷垣国務大臣 八十二兆二千億、平成十七年度でございますが、大体、百万円が多分一センチだと思いますので、ちょっと今すぐ計算が、ゼロで正確に割れませんが、そういう計算でやれば、答えは出てくると思います。

永田委員 そうなんです。百万円で一センチだとすると、百センチ、つまり一メートルで一億円、その一万倍は一兆円ですが、これは十キロメートルということになります。八十二兆円ということは、八百二十キロメートルです。大体、飛行機が飛んでいる高さが十キロメートルです。スペースシャトルが飛んでいるのは百キロメートルぐらいです。その八・二倍にもなろうとする本予算を我々は恐らくこれから審議する。

 そして、今回の予算でいえば、四兆七千億円、四兆七千億ですか、補正予算、であれば、これは四十七キロメートルの高さになるわけです。四十七キロメートルを、この補正予算を審議するのに、予算委員会では十二・五時間かけます。つまり、一時間当たり三キロか四キロ、それぐらいのスピードで、つまり、一万円札で三キロか四キロの厚さのところを一時間で走ってしまうわけですよ。時速三キロか四キロ、そんなものですね。でも、国家予算、本予算の方になると、これは、八百四十キロメートルを走るわけですから、もっともっと速いスピードになる。そして、一般会計まで入れたら、今度は一般会計も入れると、一年間の国家予算は三百二十兆円ぐらいになるんですね。三百二十兆円は、一万円札で積み上げると三千二百キロメートルです。これを一体何時間で審議するのかということは皆さんにぜひ考えていただきたい。

 これから恐らく本予算の審議の時間は決まるんですけれども、十分な時間をとって審議するということを、まず、予算委員会の理事の方々を初め皆様に御要望を申し上げたいと思います。

 さて、冒頭、政治と金の問題がきょうは中心的なテーマになりますが、その前に、NHKの会長が交代をされて大変大きなニュースが流れているので、そのことについて質問をしたいと思います。

 まず、総務大臣、NHKの海老沢前会長がおやめになって、そして後任の方が決まって、何とこの海老沢前会長が顧問に就任する、そういうニュースが流れておりました。この顧問の方の経済的な待遇、すなわち、報酬は払われるのかどうか、月給は幾らになるのか、あるいは会長を辞任されたときの退職金は一たん支払われることになるのかどうか、この二点について説明をしてください。

麻生国務大臣 基本的には、永田先生よく御存じなのだと思うんですが、これは放送法第十四条によって決まっているところでありますので、経営委員会の議決事項ということになっているところでして、私どもが直接監督するところではありません。これはよろしいですね。

 NHKから、海老沢さんの、一月二十五日退任したばかりですから、これはまだ今とてもじゃないけれども、まず議決が終わって、その後、退職金を幾らにするかというのは、その後直ちにできたとは、とても今私の段階では思っておりませんので、決まり次第、正確に御存じになりたければ御報告申し上げることは、決まった後ならできると思いますが、今の段階で決まっておりませんので、その段階で申し上げることはできないと存じます。

 退職金が支給されるということだと思いますが、ちょっと個々の事例について幾らかというのについては、さらに私どもとしては理解のできるところではない、当たり前のことだと思いますが、そうだと思っております。

 それから、基本的な退職金の計算の仕方というのは、これは法律に書いてありまして、当該役員の役員として各役職ごとの在任月数に各役職ごとの退任時の報酬月額を乗じて得た合計額に百分の二十八の支給率を乗じて得た額を基本として、経営委員会の議決を得て決定されるというように書いてありますので、その方法が方法でありまして、内容までまだ決まっていないと存じます。

永田委員 いえ、端的に、顧問として月額幾らという報酬は取られることになるのかどうか、把握しておられると思うので、これは把握しておらないということになったら監督官庁として本当に恥ずかしいことなので、ぜひ、払うのか払わないのか、そこをまず教えてください。

麻生国務大臣 退職金が支給されるということを聞いておられるんですか、顧問としての収入。

 私、それについては、顧問として幾ら収入を得られるようになるのか、待遇についてはどのようなものかということについては、必要な手当を支給することができることになっておりまして、任期は一年、原則二期を限度として再任できることになっておりますが、その額はその都度会長において定めるということになっておりますので、今現在の段階で幾らになるかは存じておりません。

永田委員 まあ、海老沢会長がどうしておやめになったのかということを考えると、去年から、NHKのチーフプロデューサーが受信料から成る番組制作費を一部着服していた、数千万の単位ですよ。そして、NHKを懲戒免職になって、そして立件されている。そのことがまず一つ。それから、その後、いわゆる番組改編圧力問題というのがあって、これがあったかどうかというのは、それはそれぞれによって、人によって言うことは違いますけれども、しかし、そこで大きな疑惑が持たれた。そして、なおかつ、この一連の不祥事に対する対応が、海老沢会長の対応が非常にまずかった。釈明番組をつくっておきながら、あれでは、「NHKに言いたい」という釈明番組のタイトルではありましたけれども、海老沢会長が言いたいという番組ではなかったかという指摘もあるぐらいです。

 こうした一連の対応のまずさから、今まで払ってきた受信料、これをもう今後払わないというふうに受信料の不払いを決める方が大変多くなってきた。そして、NHKの予算、ことし審議されるであろう予算を見ますと、ついに対前年度比減収というNHK始まって以来の前代未聞の事態に発展したわけであります。

 ところで、NHKの会長は、この海老沢会長が始まって以来七代目、七人目の会長であります。そのうち、海老沢会長を含む四人の方々は、任期途中での引責辞任というまことに恥ずべきやめ方をしています。そして、海老沢会長のほかに過去三人引責辞任でやめられた方がいらっしゃるんですが、この方々すべて、一人の例外もなく、顧問に就任することなくただの人になっています。海老沢会長だけがなぜ顧問に就任することができるのか、そのことに受信者、国民みんな怒り狂っているんです。

 経営委員会は、この海老沢前会長の顧問就任は問題がある、このような発言をしている方もいらっしゃいます。経営委員会の委員長がみずからそのように発言されているようです。これでは、NHKの受信料の不払いがより一層広がることになるのではないかと私は心配をしています。

 ですから、総務大臣、これは総務大臣はNHKに対して意見を言うことができるように法律上規定されております。まあ、どのような意見を言うかは、それは総務省の判断ではありましょうけれども、しかし、今のところ、総務大臣のお気持ちとして、NHKの前海老沢会長が顧問に就任されるかもしれないというこのニュース、どのように受けとめられるのか、ぜひ御意見をお伺いしたいと思うのです。

麻生国務大臣 基本的には、NHKの人事に関して政治介入を勧めるかのごとき話に響きかねませんので、これはよくよく注意して発言をして、お互いに答えていかないかぬところになりますので、そこのところはよくよくお互いさま理解した上での話ということをあらかじめ前提とした上でお話をさせていただかないと、話は込み入ると思います。

 私どもとしては、基本的には、この種の人事につきまして、私どもが、NHKの予算の執行に関して総務省がコメントをつける際に当たりましては、NHKが信頼を損ねたという事実にかんがみて、この点をいかに早く信頼回復に努められるかというのが一番の重要な点だという点はコメントの中に付したいと思っておりますけれども、三日前にちょうだいしたばかりでありますので、私ども、今その内容を審査中としか、今の段階で、コメントの内容、細目について今答えられる段階にはございませんが、今言われた点につきましては、信頼回復が第一、そこの点だけは今度就任のごあいさつにお見えになったときにも申し上げましたし、そのとおりに答えていると思います。

永田委員 信頼回復が大事、それ以上は言いようがないのかもしれませんけれども、私は、確かに報道の中立性、独立性を損なってはならないと思いますし、政治が人事やあるいは経営方針、番組内容などについて不当な介入をするのはよくないことだと思っています。しかし、やはり公共放送として放送、報道の一翼を担うNHKですから、これが国民から信頼されないようでは、本当に民主主義も何もあったものじゃありません。

 ですから、信頼回復に努めてほしいということは、すなわち海老沢会長が局内にとどまること自体が信頼を損なっているんだという認識のもとに、顧問につくのも問題があるのではないかというような意見だというふうに勝手に解釈をさせていただきたいと思います。

 さて、政治と金の話をちょっとしたいんですけれども、その前に、麻生総務大臣に、僕、一つ提言をしておきたいと思います。

 NHKの改革で、僕はやはり参考になるのはBBCの改革だと思います。BBCの信頼回復、つまりイギリスの公共放送ですね、あそこでやったことというのは、政治が公共放送のあり方をどうこうするのはなかなか問題があるから、第三者機関をつくって、有識者をつくって改革に努めて、一応それは成功したというふうに歴史的には評価されているんですね。それを参考になさって、第三者機関を、つまり政治とは離れたところで、NHKとは離れたところでNHKのあり方を議論するような組織をつくられたらいいのではないかというふうに提言をして、次の政治と金の問題に移りたいと思います。

 国民経済が大変疲弊をして、そして、一方で増税の足音がだんだん近づいてきています。政治活動には政党助成金が投入され、これはすなわち税金から来ているお金ですね、政治家が献金を募るときにはこれまた非課税になっている。つまり、政党や政治家というものは、税制上非常に有利な立場にあるわけですね。一方で、国民、政治を支える国民は、増税の足音に日々おびえているわけであります。

 こうした状況の中で、政治家の金の使い方、集め方に対して、国民の不信感が今非常に高まってきているわけです。どの新聞を見てもみんな、この国会は政治と金の問題をぜひ解決してほしいという論調で一色であります。

 そして、昨日ではありますが、これは川端幹事長が言及をしましたけれども、橋本龍太郎元総理大臣それから野中広務氏、青木幹雄氏、この三名に対して、政治資金規正法違反で我々が告発をした。我々というのは、ここにいらっしゃる辻惠議員と私永田寿康でございますが、告発をして、不起訴処分になった。不起訴処分になったのは私たちは不満だったから、検察審査会という東京地裁の中にある組織に不服を申し立てた。これはもう一回調べ直して起訴をするべきではないか、そういう不服を申し立てた。その結果が昨日私どもの手元に届きました。結果は、不起訴不当という結果でありました。不起訴不当というのは、検察が不起訴処分にしたというのは不当だということです。

 検察審査会は、十一人の民間人で構成されます。このうち六人ないしは七人が、これは起訴した方がいいのではないかというふうに言われたときには、不起訴不当という判断がなされて我々の手元に結果が通知される、こういうことになっております。

 これは、検察制度のあり方に疑問を呈するような文言まで書かれた非常に厳しい内容でした。つまり、橋本元総理大臣、元総理大臣といえども、検察は及び腰になることなく深く捜査を掘り下げるべきであった、このような文言が言われている。つまり、大変形式的な捜査に終始をして、そして、もう最初から結論ありきの、つまり起訴はしないんだ、そういう前提に立った捜査が行われたのではないか、そういう指摘がなされたわけです。

 私は率直に申し上げて、このような、元総理だからといって最初から起訴しないという立場に立って捜査をされるような検察制度を税金を使って支えることにいかほどの意味があるのか、本当に疑問を感じています。ですから、検察にはぜひ、あの不起訴不当の判断の内容、その理由をよく読んで、そしてもう一度捜査をやり直して、司法の場にあの問題を持ち込んでいただきたいというふうに切に希望いたしております。

 加えて、この不起訴不当の判断があった後に自民党の議員が手をたたいて喜んだというニュースが、私仄聞をいたしました。これはすなわち、不起訴不当でこれから捜査をやり直すということになれば、橋本元総理大臣について私たちが証人喚問を要求しているわけですが、これができなくなる。つまり、司直の手にゆだねられているのだからもう国会に呼んで話を聞く必要はないのではないか、このような態度を自民党がとれるから、ああ、おれたちは証人喚問を拒否する理由ができてうれしいなと手をたたいて喜んだと言われております。しかし、これはお門違いもいいところであります。

 自民党諸君、よく考えてください。いいですか。検察制度、司法制度というのはどういう役割を担っているかというと、現行法に基づいてこの行為が違法行為かどうか調べる、そして、違法であるならばどれぐらい大きな罪をかぶせるべきか、これを判断するのが検察と司法の仕事であります。

 一方で、国会は違う機能を持っています。すなわち、現行法の抜け穴、政治資金規正法や公職選挙法、その現行法の抜け穴を利用して政治的によからぬことが起こったのであれば、それは直さなければならない。どの穴をふさがなければならないのかを国会では議論をし、そして誠実に自浄作用を発揮していかなければならないと思っています。(発言する者あり)自民党の諸君から今大変大きなやじが飛んでおりますが、これは図星に当たったから痛いんだという悲鳴にしか私には聞こえない。ぜひ、静かに、冷静にお聞きになった方が国民から見て格好いいので、そのようにされた方がいいと思います。

 さて……(発言する者あり)また図星に当たりましたか。ですから、今回、政治資金規正法改正案が与党から出ています。私たち民主党も対案を出しています。これは、去年の日本歯科医師連盟にかかわる一連の事件、この事件の再発防止を図るための政治資金規正法改正案です。この改正案を私たちはやむなくつくりましたけれども、しかし、国会としてやるべきは、まず第一に関係者に国会に出てきていただいて、事件がいかなるものであったかを証言していただき、実態把握をしなければならないというのが、これがまず第一のステップ。そうじゃなければ、国会は法律のどこに抜け穴があるのかわからないんですね。だからまず証人喚問をしなければならない、それは当然の論理であります。

 しかし、自民党ははなからやる気がない。そして何より、昨今の政治家の金銭スキャンダル、鈴木宗男さんもそうでした、あるいは坂井隆憲さんもそうでした、辻元清美さんの場合もありました、みんな事件が起こったときに党の倫理委員会が調査をするんですね。今回の日歯連の問題では、自民党は党内の調査を一切していない。これは異例のことであります。党として、もうはなからやる気がない、そういう意思表示だと私は受けとめています。

 ぜひ、党内調査をした上で、実態をまず国会に報告していただきたいと思いますが、自民党総裁小泉純一郎内閣総理大臣、お気持ちはいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 橋本氏は、昨年、院の政治倫理審査会に出て、それぞれの各党の質問にも答えて、疑問に答えて答弁されたと思います。そして、今、政治資金規正法の改正案ですか、これが与野党で提出されていると聞いております。そういう中で協議が進められるということでありますので、よく協議していただきたいと思っております。

永田委員 政治倫理審査会というのは非公開の組織でありますし、また、橋本元総理大臣の主張というのは簡単に言えばこういうことです。一億円を日本歯科医師連盟からもらったかもしれない、もらったのだろう、しかし、その一億円をもらったということを自分は報告を受けて、つまり、どういうふうに処理をするか、つまり政治資金収支報告書に載せずにやみで処理をするという方針について、自分は指示もしていないし事後の報告も受けていない、こういうことであります。

 しかし、その指示もしていないし事後の報告も受けていない、自分はあずかり知らぬことだったということを裏づける証拠は一切出されていません。証拠なき主張は信憑性に乏しいというのが世の中の常識であります。ですから、証拠に基づいて、本当に彼は知らなかったんだということをもう一回国会で証明してもらう必要があると考えていますので、ぜひ自民党諸君はそのことを念頭に置いて今後証人喚問に応じていただきたいと思います。

 さて、小泉総理、ここに自民党から小泉総理が五千万円受け取ったという領収証が二枚あります。じゃ、そちらにも見せましょうか。こんな感じです。サインがあります。(発言する者あり)間に合いませんでしたから資料つくりませんでしたけれども。

 総理のこのサイン、御自分のものでしょうか。五千万円、二枚、自民党から受け取ったというこういう領収証になっているんですが、これはサインは御自身のものでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは「小泉純一郎代」と書いてありますね。代ということは私の代理ということですかね。

永田委員 そのとおり、代理の方が受け取ったというふうに私も受けとめています。

 それで、この五千万円受け取ったわけですけれども、これは、代理の方が受け取ったとはいえ、総理個人が扱うお金として一たんは総理の手元に置かれたものと私は解しています。

 このお金、一体何に使ったんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、各党もそうだと思いますが、党の活動費として受け取って、その内容については記載する必要はないんです。

永田委員 記載する必要はないと言いますけれども、確かに記載する必要はないかもしれない。しかし、説明する必要はあると思うんです。

 やはり、先ほど申したように、自民党が集めているお金というものは、政党助成金かもしれない。これはもともと税金由来のものです。そして、各企業や個人から集めたお金、あるいは党費、こうしたものもすべて無税で受け取ることができる。つまり、払う側はそのお金については税金を払わなくて済む、こういうお金であります。準公金と呼ぶべき性格のお金です。ですから、その使い方については可能ならば説明をするというのが、やはり公職にある者の務めではないかと私は思っております。

 しかも、政治資金規正法は政治資金について報告の基準を定めておりますが、その報告の基準以下のものであっても、つまり報告をするときに明らかにしなくてよいものであったとしても、支出の明細を帳簿に残しておかなければならないことになっています。ですから、帳簿を見れば今からでも説明はできるはずなんです。

 一体何に使ったのか、もう一回説明をしてください。

小泉内閣総理大臣 政治活動というのは多くの国民の協力によって成り立つものでありますので、一方で、不正な資金によって政治活動がなされないように政治資金を規制するという観点があります。同時にもう一方で、政治活動は自由でなくてはいけない、国民から資金を供給してもらいやすいような制度が望ましい、税金だけで頼るようなそういう政党活動というのは望ましくないという意見も多々あるわけであります。そういう点から、政治活動を支えるために献金する、寄附する人に対しては優遇制度があります。

 ですから、政治活動の自由を保障する点と、政治活動を支える人たちに対して、もっと政治活動に協力してください、資金のある方は提供してくださいという奨励する面と、それを受けた政治家がそれを有効に自由に使う、その際には不正があってはならないということで政治資金規正法があるわけであります。

 そういう点を考えますと、各党の、自民党のみならず各党の政策活動というのは、党勢拡大とか、あるいは党の政策広報等いろいろあると思います。そういうために支給されておりまして、その目的に沿って使用しているわけであります。でありますので、この収支報告書にそのような活動費については適正に記載されているわけであります。

 ただ、こういう内容がどうかというのは、各党だって政治活動はいろいろなんです。それぞれ、言わなくてもいいし、自由民主党においても、どういう政治活動をしているのか、政策広報をしているのか、それは言う必要はないことなんです。

永田委員 説明する必要があるかないかは、総理ではなくて、この議論を見ている国民が決めることだと思っています。

 一億円という金額、恐らく一年間で使われたんだと思いますが、毎日三十万円使い続けたということです。総理の給料は、恐らく四、五千万でしょうか、年間それぐらいもらっているはずです。その二倍に及ぶお金を自民党からもらって政策活動に充てている。一体、人間小泉純一郎という存在は、内閣の長なのか、それとも自民党の長としての意味の方が大きいのか、非常に疑問を抱かせるものであります。

 自分の給料よりも二倍も大きいお金を自民党からもらって、政策活動、つまり自民党の政策活動をしている。一体、小泉純一郎という存在は何なんでしょうか。やはりその疑問にこたえるためにも、総理は、このお金を使ってどのような政策活動、政治活動をしたのか説明した方が、私は国民にはわかりやすいと思います。ビラを配ったんでもいいんです。演説をして回ったんでもいいんです。あるいは、政策の勉強をするために本を買ったんでもいいんです。何に使ったのか、いろいろではなくて、何に使ったのかちゃんと説明してください。

小泉内閣総理大臣 それは、永田さんも議員を経験して、やってみればわかると思いますけれども、政治活動というのは金がかかりますよね。

 まず、例えば街頭に出て党の政策を訴えよう、これも政治活動です。その際に、では、一台車を購入しよう、この車の購入費に一千万円なんてすぐ飛んじゃいますね。もう何千万ですね、遊説カーというのは。普通の乗用車とは全然違います。それを一台買っただけで何千万円飛ぶ。それに対して、では、マイクをつけるとか、看板をつけるとか、パンフレットをつける。もう一億、二億、まさに羽根のように政治活動で飛んでいきます。

 私の受け取りというのは、個人じゃありません。党の代表として、党の幹部として、政治活動、主として資金を受け取り、そのような活動なり、あるいは政策の広報の宣伝に使ったり、それはまさにいろいろですよ。

 これは、恐らく、政治を経験した党の幹部になれば、いかにその政治活動には費用がかかるかというのは御理解いただけると思います。仮に、党員に対して、党員に対してこういう通知をする、あるいは選挙の年に投票用紙を発送するというだけで、例えば一通百円がかかるといったら、何億すぐするでしょう。何十万人、百万人の党員にはがきなり通信費なりをかけたら、どれだけかかりますか。何十億もかかっちゃうんですよ。一回電話をかけて何百万、何千万かかるんです。その辺は、私は永田議員も御理解いただけるんじゃないかと思います。

永田委員 驚くべき金銭感覚であります。僕は街頭宣伝車も自分で、後援会に、後援会というか政治資金団体で買っていますけれども、車体価格でせいぜい二百万か三百万か、そんなものですよ。そしてそれを、スピーカーを載っけたり改造したって、改造費用は百万もかからないです。驚くべき、一台買って何千万、驚くべき金銭感覚であります。こんな人がこれから八十四兆円にも上る一般会計、八十二兆円ですか、一般会計を執行していこうとするときに、どれほど金銭的にルーズなことが行われるのか、私は国会議員の一員として非常に心配をいたしております。

 さて、もう一つ、この政治家あるいは政党のお金の使い方と並んで、国民が不満に、あるいは疑問に思っているのは、派閥のお金の使い方であります。

 自民党は、簡単に言えば、派閥の集合体です。派閥に所属をしていない無派閥の議員もいますけれども、ごくごく少数派。ほとんどの議員が派閥に所属をしていて、しかも派閥は、それぞれ事務所を構え、個別に政治資金パーティーを行い、寄附を集め、会費を取り、そして、所属議員にお金を払っている。

 こんな中で、派閥のお金の使い方の中で非常に目につくのが、やはりこれまた政策活動費。つまり、派閥が派閥としての政策を実現するために必要な活動費として所属議員等に配られる、候補者に配られているケースもあるようですね、これが政策活動費というふうに言われております。世の中ではこれをもち代、氷代と呼ぶ場合もあるようであります。

 最近問題なのは、森派、つまり清和会ですね、清和政策研究会。こちらで、政策活動費が年間四千万円を超える支出が計上されているのに、一切明細が書かれていない。だれに、幾ら、いつ払ったのか、一切記述がない。このことについて、昨日、小泉総理は答弁をされました。これは一件当たり五万円以下の支出であるから政治資金規正法上は明細を記述する必要がないんだという答弁がありました。しかし、ほかの派閥は全部書いているんです。ほかの派閥は、私の調べたところ、大体書いてあります、何月何日、幾ら、だれに払ったか。しかし、森派は書いていないんですね。

 そこで、私が森派の所属議員を調べたところ、杉浦正健官房副長官の問題に当たりました。

 ちょっとパネルをごらんください。これは杉浦正健官房副長官の平成十二年の政治資金収支報告書であります。ここに、清和政策研究会から五百万円もらった、平成十二年六月五日。もらった相手は、職業欄に小泉純一郎と書いてあります。これは当時森派の会長、清和政策研究会の会長が小泉純一郎その人であったからこう書いてあるんです。

 一方、ここにも、次の段には、清和政策研究会、二百万円、平成十二年十二月二十二日と、これも同じく小泉純一郎さんからもらったことになっています。総理、このことは覚えていますか。

小泉内閣総理大臣 私は、そういうことは覚えていませんし、していないと思いますよ。各議員がどういう報告をしているかも知っておりません。

永田委員 全く事実をとぼけて今答えなかったわけでありますが、では、逆の、杉浦正健官房副長官にお伺いしましょう。この記述について説明をしてください。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 その書類は、間違いなく私の事務所から届け出た書類に間違いございません。

 そこに記載されているうち、十二年度、選挙のあった年ですね、清和政策研究会からちょうだいした五百万円と二百万円、これは記載の間違いでございます。訂正いたしました。既に訂正をいたしました。そして、その下の一千万円と三百万円は公認料と貸付料として党からちょうだいしたものだ、自由民主党からちょうだいしたものだというふうに記憶いたしております。

 その七百万円はなぜ訂正したかと申しますと、自由民主党からの政策活動費として、私は清和研に属しておりますが、清和研の事務局を通して私がちょうだいしたものでございます。しかし、それを事務方に渡す際によく説明しなかった、説明不足だったということがあったと思いますが、事務方は清和研から経由してきたというふうに誤解いたしまして、清和研からちょうだいしたというふうになっておったものでございます。

 清和研から、私は、中選挙区時代は別にいたしまして、小選挙区になってからは、清和研から政治献金と申しますか、寄附をいただいたことはありません。いただいたものはいずれも党から清和研の事務局を通じてちょうだいしているものというふうに認識しておりました。ですから、ほかの二年度についても間違っていたことがわかりましたので、一昨日ですか、訂正手続をとった次第でございます。

永田委員 この下の方にある自由民主党からもらったと言われる一千万円と三百万円、これが公認料と貸付料だというふうに、つまり自民党からお金を借りたんだというふうにおっしゃいましたけれども、これは寄附の欄なんですよ。寄附の欄に貸し付けを書いちゃいけないんじゃないのかなと思うんですけれども、これはやっぱり寄附なんでしょう。これは東京大学経済学部を卒業されて弁護士登録までされたことのある杉浦先生におかれては、その間違いは私は通らない話だと思うんですけれども、もう一回、貸付金なのかどうか答弁してください。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 それを受領する際に、貸付料についても、これは事実上返さなくてもいい、返すことは予定されていないお金だという説明を受けましたので、これは事実上の寄附金に当たると私は解釈いたしまして、恐らく自民党候補には私同様にそういうふうに出されたと思っておりますが、私はそう理解いたしまして……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください、答弁中です。静粛に。

杉浦内閣官房副長官 貸付金ではありますが、寄附金として記載させていただいた次第でございます。

永田委員 自由民主党総裁小泉純一郎さんにお伺いします。

 事実上返さなくていい貸付金という制度は自民党の中ではどのようなものなのか、ちょっと通訳をしてください。今のはよくわかりませんでした。

小泉内閣総理大臣 それは書いてあるように、公認料は公認料、貸付料は貸し付けているわけですから、議員がそれぞれの判断によって処理するべき問題だと思っております。

永田委員 弁護士登録もしたことのある杉浦官房副長官にもう一度お伺いします。

 法律上、事実上返さなくていい貸付金というのはどういう位置づけのものなんでしょうか。民法上はどういうふうな扱いになるのか、説明をしてください。

杉浦内閣官房副長官 まあ、ここに弁護士さんいらっしゃいますが、自然債務と申しまして、返してもいい、返さなくてもいいと。ただし、これはあくまで貸付金であります。それはちゃんと理解していただいておるわけですが……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。

杉浦内閣官房副長官 私は、選挙のために必要な資金としてちょうだいしたものだというふうに認識をいたしまして、そう記載したわけでございます。

永田委員 杉浦官房副長官、あなたは弁護をする側から弁護をされる側に回った方がいいんじゃないかと私は思いますね。いいですか。では、契約書はあるんですか、この貸付金の。契約書は交わしているのかどうか、説明してください。

杉浦内閣官房副長官 私、ちょうだいしたときに領収書にサインした記憶はございます。契約は交わさなかったと思います。

永田委員 私の隣に座っている辻惠先生も弁護士の方で、今こっそり教えていただいたんですが、自然債務というものは、例えば賭博なんかをして負けたときに債務が発生する、任意に払えばいいけれども、請求権は存在しない。つまり、払ってくれるんだったら受け取ることはあるけれども、請求権はない、こういうものを自然債務と呼ぶんだそうです。

 自民党の政治資金がそんな性格のあいまいなお金の使い方をしているというのは、果たして許されることなんでしょうか。(発言する者あり)済みません、図星に当たったのは、痛いのはわかりますけれども、少し静かにしてください。図星に当たったのはわかりますが、少し静かにしてください。(発言する者あり)

 委員長、議事整理をしてください。議事整理をしてください。

甘利委員長 静粛に。静粛に。

 辻君に申し上げます。一たん席にお戻りください。(発言する者あり)いや、一たん戻って、場内協議してください。辻君、委員長の指示であります。

 では、永田寿康君。

永田委員 もう一度聞きます。

 自然債務、自民党の政治資金が自然債務として所属議員に渡っているというのはいかなることなのか、事情を説明してください。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 自然債務というのは返済する義務のない債務の性格がございますので、私は、そういうふうに認識して選挙のために使用すべきだ、貸付金という名義ではあるけれども……(発言する者あり)

甘利委員長 答弁中ですから、静粛にしてください。

杉浦内閣官房副長官 寄附金と同様の性格のものだと認識いたしまして受け取ったという趣旨を申し上げておるわけでございます。

永田委員 テレビをごらんの皆様、こんな人たちに金を貸すのは本当に危ないことだと思います。銀行からも莫大な金を借りているのが自民党であります。あるいはそれぞれの議員も、計上されている部分だけを見ても幾らか借金をしている方々もいらっしゃるんです。しかし、自民党の議員に言わせれば、返す必要のない自然債務というふうに勝手に解釈をされるおそれがありますから、これからは気をつけていただきたいと思います。

 ところで、杉浦官房副長官、昨日記者会見をされましたね。

 そこで、今私が問題とした清和会からいただいていると今まで報告をしてきたお金、平成十二年は総額で七百万円、十三年は四百万円、十四年は四百万円、このお金は、実は清和会から受け取ったのではなくて自民党から受け取ったんだというふうに、錯誤、勘違いをしていた、間違っていたので報告書を訂正したという記者会見をされていますね。そして、領収証も書いた、自民党あてのものを書いたというふうにおっしゃっていますね。

 今まで記者会見の内容を私はお話ししましたけれども、間違いがあったら訂正をしてください。いかがですか。コメントしてください。

杉浦内閣官房副長官 若干違っていると申しますか、誤解があって、誤って記載をしたということは、そのとおりでございます。

 ただ、私は、先ほども御答弁申し上げましたように、小選挙区になってから三期目、当選以降ですね……(発言する者あり)中選挙区時代は別です。中選挙区時代は清和研から政治寄附をちょうだいしたことはありますが、小選挙区になってからは、清和研の事務局を通じていただくお金も、これは党の政策活動費だというふうに認識をいたしておりました。認識いたしておりました。

 ただ、それを事務方に渡す際に、そうだよというふうにきちっと説明をしなかったために、経理担当は、まあ勘違いをして、清和研経由で来たから清和研の寄附だろうということで記載したということがわかったわけであります。

 したがって、これは党からいただいたお金だから記載すべきようなものではないということで修正したわけであります。

永田委員 もう一つ、きのうの記者会見で、私がメモでもらったのは、これは、こういう場合は領収証は出さないんですかというふうに記者から聞かれたところ、活動費として党に出した記憶はありますね、サインをしてと。その事実関係は党の方に聞いていただきたいというお話もありましたが、御自身、領収証を書いたことは、そのこと自体は記憶をしているというふうにされているんですが、これは事実ですか。

杉浦内閣官房副長官 正確に記憶しておるわけじゃありません。私の記憶としては、書いた記憶がございます。サインをした記憶がございます。

永田委員 官房副長官、これは非常に重要な答弁なので、このあたりの、官房副長官にお伺いしていること、間違いがあったら重大な責任をとっていただきたいと私はちょっと申し上げたいんですね。ぜひ官房副長官の職をかけて答弁をしていただくということを確認したいんですけれども、よろしいですか。

杉浦内閣官房副長官 いつも誠意を持って御答弁を申し上げております。職をかけて答弁しております。

 私の記憶では書いたように記憶しておりますが、本当に書いたかどうか。大体、お金をちょうだいするときは、受取書といいますか、政治活動の場合は書いておりますから、書いたという記憶でございます。

永田委員 ということは、例えば平成十二年でいえば、先ほど、六月とか十二月にいただいた、これは、もらった先が清和会じゃなかった、自民党だったというだけのことだから、金額と日付は正しいものだというふうに解してよろしいですね。

杉浦内閣官房副長官 正式に報告書に記載のとおりだと思います。その直前ぐらいだと思いますが。

永田委員 ここに、自由民主党から杉浦正健議員に対して渡ったお金の表があります。実は、ここはおととい訂正された部分です。すなわち、平成十三年、平成十四年ですね。平成十三年は六月二十九日に二百万円、平成十三年十二月十九日に二百万円、十四年は七月三十一日に二百万円、十四年は十二月十一日に二百万円、平成十五年は記録なしです。清和会からもらったという記録はありませんでした。これがそっくり自民党からもらったものになったというのであれば、もらったのは自民党だけれども、金額と日付はそのままにならなきゃいけないんですね。

 ところが、自民党側が出した記録というのが全然違うんですね。自民党が出したという記録は、平成十三年は十二月十一日に四百万円になっています。一方で、平成十四年は六月二十七日に四百万円、平成十四年十二月十一日に……

甘利委員長 永田君に申し上げます。

 資料を提示する場合には、事前に理事会の了解が必要であります。(永田委員「これは単なるメモですから。見ていただきたいんですけれども、これは重大な」と呼ぶ)そして、それを提示した場合には、中止を求めることを理事会で先ほど了解をいただいております。

永田委員 これは単なるメモですから。大きく書いてきただけだよ、これは。自分の手元にあるメモを見せているだけですから。これは、しかも事実ですよ。ちょっと答弁を。(発言する者あり)

 では、いいですよ。自分の手持ちのメモとして使いましょう。いいですか、これが、つまり日付も金額もばらばらなんです。唯一、日付が当たっているのが平成十四年十二月十一日。いいですか、ゆっくり言いますよ。唯一、日付が当たっているのが平成十四年十二月十一日。これは、自民党側から出したという記録もあるし、杉浦議員が、まあ訂正されましたけれども、訂正前は清和政策研究会からもらったという記録もあるんです。しかし、金額は、自民党が出したのは四百万円、杉浦議員がもらったのは二百万円ということになっています。そのほか、自民党側から出したという記録は六件あって、杉浦議員がもらったという記録は四件ありますけれども、全部日付も金額もばらばらなんです。

 一体、どこをどういうふうに調べて解釈をしたら、清和政策研究会からもらったお金は自民党からもらったものだったんだと言えるのか、説明と釈明をしてください。

杉浦内閣官房副長官 事前に事実を御連絡いただきませんと、調査した上でないと御回答できませんが、そこに記載されていなくて自由民主党から直接活動費としてちょうだいしたものもございます。ございます。

 ですから、前もってちょうだいできれば、精査した上で御回答申し上げられると思います。

永田委員 では、調査ができていないから答弁できないというのであれば、調査をするまで予算委員会を暫時休憩にしていただいて、調査をした後に、調査をした後に答弁していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

甘利委員長 永田君、質問を続けてください。――永田君、質問を続けてください。(発言する者あり)続行中です。続行中です。続行中です。――続行中です。

 永田寿康君。

永田委員 それでは、調査した結果を委員会と理事会に報告をしてください。

 そして、おととい訂正をされたのであれば、なぜ自民党側とつじつまが合うような訂正をしなかったのか、ぜひ教えていただきたいと思いますし、加えて、平成十五年、もう一つ質問します、平成十五年、自民党から杉浦議員が受け取って、それをそのまま杉浦正健後援会に寄附をした、そういうお金の流れがあるはずです。一体幾らですか。平成十五年、おととしのことだから覚えているでしょう。

杉浦内閣官房副長官 よく調査した上で回答させていただきますが、理事会でよく御相談をいただいて、事前に御通告いただきたいと思います。

 ただ、政治資金報告書に記載された三年分につきましては、清和研の事務局から党の活動費としてちょうだいしたものを誤って記載したものだということは、はっきり申し上げられます。

永田委員 平成十五年、杉浦正健議員個人から杉浦正健後援会に、個人から後援会に寄附をした金額は、総額で二千三百万円となっています。そのうち六百万円は個人からの普通の寄附で、残りの一千七百万円はいわゆる特定寄附というものになっています。特定寄附というのは、政治資金規正法に規定がありまして、資金管理団体の届け出をした公職の候補者、つまり杉浦議員個人ですね、個人が政党から受けた寄附を当該資金管理団体に取り扱わせるためにする寄附。つまり、政党から受け取った寄附をそのまま、政党から杉浦議員個人が受け取った寄附をそのまま自分の資金管理団体に回すときに、これを特定寄附と呼ぶんです。その金額が一千七百万円だというんです。

 自民党から一千七百万円もらったという記録、本当にあるかどうか、これから確かめてみたいと思いますけれども、杉浦議員、これは本当にそれほど莫大な金額を自民党から受け取った、これは一千七百万円受け取ったということを忘れたとはよもや言わないと思いますけれども、御記憶はいかがですか。

杉浦内閣官房副長官 調べた上で正確に答弁いたしますが、私のおぼろげな記憶ですけれども、議員歳費の中に通信費というのがありますね、これを資金管理団体に入れるのを忘れておりまして、相当長年月にわたって、それは私の個人の口座に入っておりましたから、それを入れた記憶はあります。恐らくそうじゃないかと思いますが、いずれにしても、正確に調べた上で御答弁申し上げます。

永田委員 文書通信費を後援会に寄附をして、それを特定寄附に扱わせるというのは、これまた弁護士会に所属をした方とは思えないような珍答弁であります。ぜひ調べた上で、正確に御答弁をされた方がいいと思います。

 それからもう一つ、一千五百万円の清和会からもらったとされた寄附、平成十二年、十三年、十四年と総額で清和会から一千五百万円もらったことになっていたのを、それをおととい訂正されて、実は自民党からもらったんだというふうにされました。

 その結果、直近の収支報告書の繰越金が一千五百万円減額されています。つまり、それまで五千六百万円余りが繰り越されていたのが四千百万円に、一千五百万円減らされています。五千六百万円と四千百万円を間違える人が、一体この世のどこにいるでしょうか。なぜこのような錯誤が起こったのか。つまり、四千百万円しかないのに、五千六百万円あると思ってしまった詳しい事情を説明してください。

杉浦内閣官房副長官 その点も、誤解がございましたので、繰越金に計上すべきでないものを計上したということで訂正したわけであります。

永田委員 財務大臣に質問したいと思います。

 これほど金銭管理がルーズな人が官房機密費の金庫番になっているんです。財務大臣として不安を感じませんか。いかがですか。

谷垣国務大臣 今までやりとりを伺っておりましたけれども、杉浦議員、官房副長官、しっかり調べられて、きちっとまた御答弁をされると思います。

永田委員 国民の皆さんに申し上げたい。あれほどルーズな金銭管理しかできない人が金庫番をやっていても、財務大臣は、次から頑張ればよいと言っているわけです。こんな人が出してきた予算を審議する義理など私はないと思う。予算は数字の積み上げです。そこにこれほど大きな錯誤をして平然とただの錯誤だと言い張る人がいる。そんな人が出してきた予算を審議する義理がどこにあるでしょうか。私はおかしいと思う。この予算は審議すべきではない。違う人がつくったものを出し直すべきだと思う。

 財務大臣、反論があったら、どうぞお述べください。

谷垣国務大臣 私どもはきちっと仕事をしてこの予算案をつくりました。きちっと御審議をいただきたいと思っております。

永田委員 我々の求めるきちんとは、こんなレベルではありませんよ。国民が求めるレベルもこんなものじゃないと思う。総理の政治資金の使い方もでたらめだし、自民党もでたらめだし、会計がでたらめだし、派閥もでたらめ、所属議員もでたらめ。これほどでたらめな人たちがつくった予算はやはり審議しちゃいけないし、また、これを審議するのは、私は、本当に国民に対する背信行為だと思う。数字の積み上げだということをぜひもう一度認識をした上でやっていただきたい。

 そして、最後に、杉浦正健官房副長官、あなたの日本語の使い方も私は一つ注文をしておきたい。

 あなたがやったことは、政治資金収支報告書の訂正ではない。あれは改ざんというんです。日本語の使い方が間違っていますので、ぜひそれは胸にとどめていただきたいと思います。何か言いたいことがあったら。いかがですか。

甘利委員長 答弁、ありますか。――ないそうです。

永田委員 それから、総理、最後にもう一つ当てておきたい。総理、済みません、もう一つ当てておきたいんですが、総理、聞いてください。

 二〇〇三年の選挙のときに、選挙資金、総理、小泉候補が使われたと思いますが、収支を計算すると八百万円余りの黒字になっているはずです。これは一体どうして、その八百万円余りはどこに行ってしまったのか説明してください。

甘利委員長 質問時間が終了しております。総理、簡潔にお願いします。

小泉内閣総理大臣 総選挙に関する収支については、法令に基づいて報告し、公表しております。

 二〇〇三年の総選挙では選挙に関する支出を上回る寄附をいただきましたけれども、この余剰金は、いただいた寄附の趣旨と関係法令にのっとって適切に取り扱っております。全く問題ありません。

永田委員 これで終わりますけれども、また次もお願いしますね。よろしくお願いします。

甘利委員長 これにて川端君、菅君、石井君、島君、岩國君、永田君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、年末のインドネシア・スマトラ沖地震、インド洋大津波で犠牲になられた皆さん、また、十年目を迎えた阪神・淡路大震災の被災者の皆さんに対しても、改めて心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 新潟中越地震を初め、豪雨、台風など昨年の連続した災害から、被災者の皆さん、そして二月からいよいよ帰島が始まる三宅村の皆さんが希望を持って新たな生活をスタートさせることができるように、心から応援をしたいと思います。

 私は、災害から犠牲をなくし、最小限に被害を抑えるための備えを尽くすこと、災害被災者が一日も早くもとの生活に戻れるようにすることが政治の最優先の任務だと思っております。連続する災害に、被災地のみならず全国の皆さんが胸を痛め、また、いつ、どこで自分の地域でもこうした災害が起こるかもしれないと不安を抱えている中ですから、国がどうその役割を果たすのかは注目をしているところではないでしょうか。

 総理、まず最初に、この災害に対する国の責任についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 日本は台風や地震の多い国でありますが、昨年は特に台風の襲来が多く、また、集中豪雨も重なり、さらに新潟県においては大地震に襲われて、多くの方々がこの被害に遭われたわけであります。心からお見舞いを改めて申し上げたいと思います。

 そして、年末には、これはスマトラ沖で、これまた百年に一度あるかないかというような大地震と大津波、これまた十万、二十万人とも言われるような未曾有の災害に襲われて、この災害対策というのは、もう単に国内の対策だけではなくて、国際社会が一緒に取り組まなきゃならない、そういう認識が現在できてきたと思います。

 我々としては、今回の、きょうも審議していただいております補正予算において、日本国内での被害者にどのようなこれからの支援をしていくか、同時に、海外におきましても、スマトラ島沖のあの被害につきましては、日本としての支援ができる分野、独自にできる分野もあります。また、各国と協力しながらやっていかなきゃならない支援もありますし、国際協調の考えから、国連の一員としての責任を果たすという観点から、できるだけの支援をしていきたいと思っております。

 いずれにおきましても、災害に対して支援をしていこうということについては、各党各会派、立場は日ごろは違いますけれども、していこうという共有の今認識はできているのではないか。それぞれの御意見は違いがあると思いますけれども、できるだけの手を被災者の方々に差し伸べていかなきゃならないと思っております。

高橋委員 その支援の中身について、共有の気持ちをまず確認したいと思うんです。

 私も確かに、青森、豪雪都市の出身でありますが、新潟は特に、雪が水分が多く非常に重い、そういうところであります。人けのない人家が雪の重みに耐えかねてつぶれる、そういう報道が毎日のように伝わり、きのうの毎日新聞によりますと、つぶれた家が五十二棟を数え、除雪や雪おろしに絡んで亡くなった方が四名になるということであります。私が新潟に行ったときに避難所で声をかけた男性が、雪のことが一番心配だ、冬の間に家がつぶれるかもしれない、そう訴えていたのが心に残っております。

 豪雪という新たな被害と闘い、長い冬を耐えながら、今被災地の一番の関心は、住宅をどう再建し、もとの暮らしをどう取り戻すかということであります。総理にまず、その点で同じ思いであるかどうか確認したいと思うんです。住まいをしっかり再建し、もとの暮らしを取り戻すことが被災地の共通の願い、その点では同じだと確認してよろしいですか。

小泉内閣総理大臣 被災者の方々がこの困難あるいは悲しみを乗り越えて再建できるような、どういう支援がいいかということについては、皆さん同じような認識を持って、必要な支援策を講じなければいけないと思っております。

高橋委員 ありがとうございます。被災者がまず住まいを確保して、もとの暮らしを取り戻す、このことが共通の願いであることは異論のないことかと思います。

 そこで、昨年十一月に新潟県知事から出された、名前がいいんですね、「新潟県中越地震の被災者自立に向けた緊急要望」、この中では、自宅に戻った方がその後の生活の再建が円滑に進むことが自明ですので、ぜひとも、住宅本体の建築、補修等にかかわる経費や生業を再建するための経費を国の支援対象としてくださいと求めています。

 村田大臣にお尋ねしますが、政府は、今回の緊急要望を受けて、一つ一つ精査をし、大体三十数項目ありましたけれども、その六割方、要望にこたえる形で補正予算に盛り込んだと認識をしております。

 今私が読みました新潟県知事が現時点で最優先の課題とされている住宅本体の建築、補修費にかかわる要望についてはどうなりましたか。

村田国務大臣 被災を受けた方々が一刻も早くもとの生活に戻りたい、そういう切なる気持ちについては、私も担当大臣として共有しているつもりでございます。

 実は明日、雪による住宅の状況等につきまして視察をするために、私は再び、これは三回目になりますが、現地を訪れたいというふうに思っているわけでございますが、今回の被災に対しての復旧につきまして、私どもは、とにかく雪が迫ってくるという状況でございましたので、仮設住宅を早く建てるということで、約でございますが三千五百棟建てました。

 今御質問の、住宅本体についての御要望が新潟県知事からも出されたということは私どもよく存じておるわけでございますが、政府の役割としていろいろな形があるというふうに思いますが、その中で、私どもは、公共インフラの復旧活動、これを最優先にするのが政府の役割、こういうふうに考えておりまして、そうした知事からの御希望というものもよくわかるわけでございますが、そういう中で、私どもはとにかく、昨年の通常国会で改正された内容、これも限度額を引き上げたり、あるいは対象の事業も、その被害も非常に大幅にふやしたという中で、それを活用してやってもらいたいということでありました。

 そのほかに、いろいろな運用も弾力的に応じたつもりでありますし、また、半壊の方々についても、応急修理の資金として六十万円というものも、これは全く新たな措置でございましたけれども提供するという形にして、努力をしたつもりでございます。

 公助あるいは自助、共助、そういうことを組み合わせながら、被災者の方々が再建に向かいまして立派に自立の足音を響かせていただきたい、心から私も願っておるわけでございます。

高橋委員 いろいろおっしゃいましたけれども、結論は、要望はかなえられないということですよね。そうですよね。住宅本体には使えないと。そこを私は聞いたんですから。今紹介いただいた昨年創設した居住安定支援制度、これを改正したけれども、でも、それは本体には公費を使えない。これが最大の問題なんです。

 総理、昨年はあれほど災害が連続しました。今大臣がお話しした居住安定支援制度が改正されたのが三月、それから六月、七月、ずっと災害が起きて、支援制度が使われるかどうか、役に立つかどうか試された年だ、そういうことが言えると思うんですね。どうだったでしょうか。

 例えば、七月の新潟豪雨の中之島町。県単独で床上浸水などに補修費を支援した、この数字がありますけれども、たった二カ月で二百六十八戸が申請をしました。単独の支援制度には、住宅本体に使う。ところが、国の支援法は、改正したから適用になっているんですけれども、十二戸にすぎませんでした。十二戸です。

 ですから、担当者は、これでは被災者を支援しない法だ、支援法と名前がついているけれども支援しない法だと声が上がっている。そういう声が今脈々と、昨年は全自治体から上がった。現場で日々被災者と向き合っている自治体から、なかなか使えないぞと声が上がっていることを御存じですか。また、この声になぜこたえようとしないのですか。総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 支援法をいかに活用するか、それぞれ地域、実情が違うと思いますが、その点は極めて、各家によっても、住居の状況も違うと思います、収入も違うと思います。その点については、よく地方の実情を踏まえて、この支援法が生かせるか生かせないか、また改善点があるか、今後よく協議する必要があると思っております。

高橋委員 今総理、よく協議をするとおっしゃいました。二十四日から始まった本会議では、ずっと聞いていますと、議論を深めると。意味がどこか違うかなと今ちょっと考えておりましたけれども、いずれにしても、議論をするということではあるんですよね。ただ、もう待てないんですね。

 実は、この住宅再建に国が支援するべきだということは、神戸から、阪神・淡路大震災のときから、もう十年来声が上がってきていることであります。こうしている間にも雪が積もり、家も人も押しつぶされるような気持ちになっているんです。それでもまだ議論とか協議とか言っている。いつになったら前に進むのか。

 大事なことはスピードなんだと思うんですね。いかに早く被災者が立ち直るか、もとの生活を取り戻すのか。そのときに、初動の段階で政治がどういう姿勢をとるのかが問われているのではないでしょうか。それを立証しているのが、よく言われる鳥取県の例だと思うんです。

 二〇〇〇年の十月の鳥取県西部地震、発生して十一日後に、住宅建設には三百万円、補修には百五十万円支援をすると県が発表しました。それに、町独自で支援を重ねたところもありました。

 一番最初にそれで住宅をつくったところが、溝口町の百万円の上乗せ制度があって、安達さんという方の記事が載っていましたけれども、家が全壊し、牛小屋に使っていた納屋に仮設のふろとトイレをつくって三カ月ぐらい暮らしていた、蓄えがないのでもう住宅はあきらめていたけれども、県がそういう制度をつくってくれるということで、あきらめずに、五百万かかったそうですが、二DKの家をつくった、そういうお話がありますが、この溝口町の町長さんは、地震が原因で町を離れた人は一人もいないとおっしゃっています。

 私は、二つのことが言えると思うんですね。初動で支援するというメッセージを出したことが被災者を大きく励ましたこと、住宅を再建できるということによって町を離れなくて済んだ、鳥取県の知事はこれが最大のポイントだとおっしゃっていますけれども、地域にとっても大きな役割を果たした。そのことについては、総理、当然評価されますよね。どう受けとめますか。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 その地域の村長さんにおいても知事においても適切な対応がなされたということから、評価されているんだと思っております。

高橋委員 評価されるべきだと。

 鳥取県に続いて、一昨年の宮城県、あるいは一番直近では東京都が独自の支援策を発表するなど、全国に広がっています。

 片山知事は、昨年二月の定例記者会見の中でこんなことをおっしゃっています。住宅再建支援を決めて発表したのが二〇〇〇年の十月十七日。あの知事も、そのとき本当にこういうことをやっていいのかなと不安だったそうです。認定が難しいんじゃないかとか、国が何を言ってくるかとか、いろいろ不安を抱えていたけれども、一夜明けたら、神戸の方から大喝采があった、自分たちが望んでいたことにかなり近いことを実現してくれたと。そのとき、神戸の皆さんが長い間このことで運動していたのを初めて知った、被災地になって初めてそういう問題があるということを認識されたと。しかし、そのことがまた全国を励ましてこうした取り組みが進んできたと思うんですね。

 このことを考えれば、やはり神戸が初動で立ち上がれなかった、そのことが十年たった今も尾を引いているし、その教訓こそが住宅再建への支援だと思うんです。

 総理は、先日の本会議で、阪神・淡路大震災から十年が経過いたしましたが、被災地域では、地元自治体、地元住民を初めとする関係者の御努力により、目覚ましい復興が図られたと述べました。もちろん、その一方で、被災者の抱える課題もそれぞれ個別多様化しているとも述べられました。

 私も十周年記念行事に神戸に行ってまいりましたけれども、被災者にとって住まいと暮らしはまだ復興していないということを実感しました。この点では、総理、同じお気持ちでしょうか。

小泉内閣総理大臣 あの被災にめげず、乗り越えて見事に復興を果たした方々もおられるとは思いますが、同時に、今なお、あの傷がいえずに、困難な生活を余儀なくされている方もたくさんおられると思います。それだけに、今後も、そういう方々に対して、立ち上がれるような対応策は何かという点については、まだまだ課題が残っていると思っております。

高橋委員 立ち上がれるような課題は何か、そのことを先ほどから提案をしておるのであります。

 十六兆三千億円を注いで、復興経費を使って、神戸の町並みは一見、すっかり震災から立ち直ったかのように見えました。その一方では、長田区を初め、区画整理をしてもなお更地が多く残されておりました。六千四百三十三人ものとうとい命を失い、消えることのない深い悲しみや、生活を立て直すことができない被災者の痛みを感じました。

 災害復興公営住宅でこの五年間に、ひとり暮らしでだれにもみとられずに亡くなった孤独死、三百二十七人。その前の五年間、仮設住宅では二百三十三人ですから、大きく上回っています。

 神戸の記念集会では、被災者の十年、その厳しかった十年の一端を聞くことができました。ケミカル工場を再建した女性は、だんなさんが震災のショックで自暴自棄になったあげく病気になった、金策に追われ、何度運河に飛び込もうと思ったことかと訴えました。そして、国の個人補償制度があったらと訴えました。

 今、全国でも、新聞各紙やあるいは知事会も住宅本体への支援を求めていますし、世論調査でも八割が支持をしています。あの地震直後に、市民団体の皆さんが住宅再建への個人補償を迫ったときに、気持ちはわかり過ぎるくらいわかりますが、国の成り立ちとしてそういう仕組みになっていないんですと述べたのは、当時の村山富市首相ですが、十年目の今になって、十七日の毎日新聞の取材では、政治に残された課題は住宅再建への国の支援だと答えています。

 もうそろそろ住宅本体への支援に踏み出してもいいのではないでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 そういう指摘も踏まえて、支援策の手が差し伸べられたわけであります。しかし、まだまだ再建とか個人の住宅の事情も違います。額も、百万円から三百万円、そして、三百万円から足りなくて五百万円にしろという意見も今出されております。いろいろな点があります。そういう点をさらに協議していく必要があるのではないかと思っております。

高橋委員 今、額がいろいろとか需要が多いとかさまざまあって、それを協議しておこうとおっしゃったんですけれども、まず、それはそうだと思うんです。私たちは、後で紹介しますけれども、野党三党で改正案も出しましたしね。ただ、そういうことを、昨年も十二月の国会で私たち改正案を出しましたし、何度も訴えてきて、もう国民の意思もはっきりしていて、それで何でそこにこたえられないのかなと。

 では、需要はこうだ、やはりこうだというときがいつ来るのかなと思うんですけれども、その点は何か、では、逆に言えば、めどでも考えていらっしゃるんですか。

村田国務大臣 やはり一つは、国の施策の体系として、個人の資産に税金をつぎ込むことについて、公平があるか、あるいはコンセンサスが得られるかということ、これを十分検討してみなければいけないのではないか、こういうふうに思います。賃貸住宅にお住まいであった方で被災を受けた方がある。あるいは、ほかの面でもっとお気の毒な方もある。そういうときに、税金の使い方として一体どうしたらいいんだということをみんなでさらに詰めて議論をしていく。

 だから、そういうことで、昨年の通常国会での被災者生活再建支援法の議論もそういうことを大いに議論した結果、とりあえず、それでは本体ではなくて住宅のローン等々含めて住宅の再建に必要な、本体ではないけれどもそうしたお金も必要なんだから、そこに二百万円アップして、そして支援しようという、そのぎりぎりのところで協議がまとまったと私どもは聞いているわけでございます。

 私は、総理が今おっしゃいましたように、いろいろな観点からの議論をさらに進めていくことがよろしいのではないかというふうに考えております。

高橋委員 やはりそこに来たかという気がするんですが、個人の資産だからという、それは十年前からお話しされていたことと変わっていないわけですよね。これが本当に、昨年の三月の災害対策特別委員会でも、当時の井上防災担当大臣は、憲法や法律に特にそれを私有財産に使っちゃいけないということは書いていないということをおっしゃったわけですし、なぜ、そこにこだわっているのかなと、そして本当にそうなのかなということを少し幾つかの角度から検証してみたいと思うんです。

 新潟県の特徴は、中山間地が多く、そのために地盤災害が多かったということです。これが非常に自治体から要望が上がって、何とかこれに支援をしてくれとなって、十一月二十九日に、私自身もこの委員会室でこの点を取り上げました。

 今回の補正予算案では、自然斜面だけでなく、人工の斜面、いわゆる宅地擁壁等、個人のものも含めて対象とする災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業が提案されました。がけ崩れ対策事業での特例措置は、新潟が実質初めてと聞いております。個人の宅地だけれども、これを公共の復旧事業として支援できるスキームを今回の補正予算で提案されましたよね。

 個人だからできないと言われて、新潟の皆さんの何とかしてくれという声にこたえることができた、その決め手は何だったでしょうか。国土交通大臣に伺いたいと思います。

北側国務大臣 委員御指摘のように、このたびの中越地震は中山間地を襲いました直下型地震であるということで、御指摘のような住宅宅地における擁壁の倒壊等の地盤災害が多数発生をいたしました。私どもといたしましては、今ある制度をできるだけ柔軟に活用しようということで、精いっぱいの運用をさせていただきました。

 本来、御指摘の災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業とか災害関連地域防災がけ崩れ対策事業、これはともに自然斜面を対象とするのが本則でございます。しかし、そういう人工でつくられた斜面であっても、その崩壊の危険、そのままほうっておきますと道路とかその他ライフライン等の公共施設等に被害のおそれがある、そういうことを前提といたしまして、こうした、今申し上げました制度についても、今回の中越地震におきましては適用をさせていただくということにした次第でございます。

 ちなみに、宅地擁壁への対策を行う特例は、阪神・淡路大震災、それから芸予地震に続きまして三例目でございます。

高橋委員 ありがとうございます。

 今お話をしていただいたんですけれども、整理の都合で、国土交通省が昨年の十二月二十日にこの特例措置について説明する報道資料を出しておりますので、私は三点あると思うんですね。「宅地擁壁等の被害が多数生じていること」「自力での再建が困難な状況となっていること」、これは国土交通省の文章ですから。「周辺の住家及び各種公共施設等に甚大な被害が生ずるおそれがあること」。

 今お話しいただいたように、人工のものや個人のものであっても、おそれがある、公共のものに影響があるということ等、やはりこの三つが非常に私、ポイントだと思うんです。つまり、自力では再建できない、被害が甚大である、そして公共等に影響がある。これは個人の問題でも、個人の住宅でも同じことが言えると思うんですね。住宅が一つの地域をつくり、コミュニティーをつくり、公共性がある、個人のものであるけれども公共性があると述べたのも、被災者生活再建支援法に基づいて設置された旧国土庁のあり方検討委員会の報告でありました。

 こういう要素があれば、個人の宅地でも支援ができる。なぜ住宅ならできないんですか、総理。

村田国務大臣 今、国土交通大臣から御説明いたしました件でございますが、私たちも知恵を絞りまして、何とかぎりぎりのところで、そうした危ない箇所、一番大事なメルクマールは公共性ということですね。今委員もおっしゃいました。そこで、私どもは、そういう人工の擁壁あるいは急傾斜地等についても国の力で直す、こういう措置を講じたわけでありまして、そこのところは、公共性があるかどうかということが大きく判断の材料となった措置であるというふうに考えております。

 住宅本体になぜできないかということでございますが、先ほどの御答弁の繰り返しになりますけれども、私どもは、そういった私有財産については税金を使うのはいかがかという観点からいって、そのぎりぎりのところで、住宅に関しての再建のためのぎりぎりの支援策としてああした拡大を認めた、こういうことになっているわけでございます。

高橋委員 メルクマールは公共性とおっしゃいましたけれども、ですから、先ほど私が言ったように、また大臣も認めたように、住宅は個人の住宅であるけれども公共性があると、これまで認めてきたことじゃないですか。何でまたそこに戻るのか。認めてきたのに、住宅だけやれないというのは、それはどうしても理屈が通じない。

 それで、今ぎりぎりのとおっしゃいました。ぎりぎりの支援をやっていると。私、そのぎりぎりのラインの話なんですけれども、やはり歴史的に見ると、これはもうできないというラインというのはどんどん変わってきている、国民の中で変わってきている、そう思うんですね。

 今当たり前になっている災害弔慰金制度ですら、最初は、個人に直接支援するのはどうかと拒んできたはずであります。当時の議事録などを見ますと、これは昭和四十一年の参議院の災害対策特別委員会の議事録ですけれども、「個人災害に対して国がどこまでめんどうを見るかという問題、これは非常に広範な大きな問題であります。」云々として、あくまで融資が基本だというふうなお話をされて、そういう時代から始まって、今は当たり前の制度になっている。

 なぜか。これは先輩議員の皆さん、大変よく御存じだと思うんですが、昭和四十二年の八月二十九日の新潟県下越の集中豪雨で両親と二人の息子さんを亡くされた故佐藤隆衆議院議員らが訴えて、実現まで七年かかった。いろいろな方たちとやって七年かかった、著書、その経過を私読ませていただきました。

 両親と三人の息子さんが宿泊していた旅館の裏山が崩れて、土石流で押しつぶされてしまった。その中でお一人、次男がわずかな空間で生存していたという描写があるんですけれども、あの新潟の優太ちゃんのことを思い出すような、そういう経過があって、国会に出て、個人災害救済法、いわゆる今の災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律が成立したわけですけれども、このことに関して故佐藤議員は、「個人災害に対する公的給付が行われたということが、本制度の最大の特色であり、画期的意義を有する」、その考え方の基礎として、「個人災害の補てんは個人の責任であるという大原則の修正がある」、このように述べています。

 そうして、九八年の被災者生活再建支援法、昨年の居住安定支援制度、市民の大きな運動を背景に、一つ一つ乗り越えてきた。つまり、できないという幅はどんどん狭まってきた。それはいかがですか。そのとおりですか。

村田国務大臣 私も防災担当大臣として、公共性というその定義といいますか、その概念の幅について、歴史的に全く変わらないものではないというふうには考えておりません。これは、みんなで、そうした、先ほど申しました税金の使い方としての公平性の観点とか、改めて、公共性があるかどうかということについて、時代時代について議論すべきものというふうに考えております。

高橋委員 変わらないものではないとおっしゃいましたので、今がそのときだと言っておきたいと思います。

 大事な点がもう一つあります。この著書の中にも出てくるんですけれども、やはりこういう制度は、市町村が始めたことを国が追認するといいましょうか、国が制度としてしっかり発展させてきたということであります。

 昭和四十一年の松代群発地震、個人住宅の補強の材料を市町村が供給していた。これだって個人に対する補助金、個人の財産に補助する、市町村がやっていた。でも、これも、ほっておくと、個人の住宅が破壊されたらいずれ火災が起こるかもしれない、公共に影響を及ぼす、そういうことで特例として認めてきた。

 あるいは、今紹介した四十八年の災害弔慰金の制度だって、四十七年に市町村に災害弔慰金補助制度が設けられて、国はそれに補助するという形でやっていた。これが、これではまだ十分とは言えないという理由で、委員長提案、全会一致で弔慰金制度がつくられた。ですから、今全国に広がっている自治体の制度、これがまさに広がっていって、やはり国だってやらなくちゃいけないとなっている、そういうときなのではないかと思うんですね。

 続けますけれども、要するに、時代が変われば変わっていくだろうということ、やろうとすればできる、いろいろ言ってやろうとしないんじゃないか、今の段階はですよ。なぜ、ここでは総理お得意のやればできると言わないのでしょうか。

 冒頭言いましたように、被害を最小限に抑え、一日も早くもとの暮らしに戻ることができるようにする、これが政治の責任だと思います。新潟の中越地震の被災者から、二十五日の我が党の穀田議員の質問とそれに対する総理の答弁を聞いて電話がありました。自分のせいではない地震によって職を失い、家を失い、お金も借りられず本当に困っている、失業したのはだれのせいでもなく地震のせいなのにと訴えています。

 災害によってこれまでの人生を一瞬にして破壊された被災者に、あなた方はあきらめろと言うのですか。この方に対しても自分の責任で何とかしろと言うおつもりですか。喫緊の課題である住宅本体への支援を決断してこそ、政治の責任を果たすことではないでしょうか。総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 先ほど佐藤議員のことを紹介されましたけれども、私も、生前佐藤議員と大変親しくさせていただいておりまして、御家族を災害で亡くされて、それが自分が政治家になるきっかけになったという話、直接伺ったこともあります。災害に対する思い、被災者に支援の手を差し伸べなきゃならないという、それを発言するときのあの佐藤議員の迫力ある、また説得力ある言葉は、今でも私は耳に残っております。非常に精力的な活動をされて、当時は無理だと思われるようなことを実現してきた。

 今回のこの災害に対する問題につきましても、やはり地域の事情、異なりますが、それだけに現場の皆さん方の、被災者の実情もそれぞれの地域によって違いますが、今、国会の議論も踏まえ、これから何ができるかという点につきましても、より具体的に、全部事情が違いますので、全体的に何ができるかということは、やはりもっと議論を深めていく必要があると思っております。

高橋委員 総理、今、無理だというのを実現してきたお話を受けとめてお話しされていますので、ぜひそれをやってほしいなと思うんですね。

 その上でも、ちょっと確認したいんですが、細田官房長官に。

 一月十七日付の読売新聞で紹介されておりますが、官房長官は十七日の閣議後の記者会見で、被災者生活再建支援法に基づく支援制度の拡充について、「一つの課題だ。政府としても様々な需要に」(発言する者あり)これで最後ですから。「さらに調査をしたい」と述べられました。

 調査をいつまでに、どんな調査をやるのか、やるからにはきちっと実態をつかんでいただきたい、これにお答えしていただきたい、これで終わります。

甘利委員長 官房長官。簡潔にお願いします。時間が終了しております。

細田国務大臣 私は記者会見でそういうふうに申したわけでございまして、我が地元の島根県でも、先ほど言われた鳥取県と一緒の地震が起きまして、大変に苦労をした経験がございますし、水害も多いわけでございます。そういった被災者の気持ちというものを体して、できるだけ被災者の気持ちに沿うような制度を検討しなさいということで、私は、現に、どういう支出をしたかという証拠書類をそろえさせるような今までの運用は非常によくない、そこで、実際に再建するには一千万円以上かかるんだから、全体として見て、ぱっとお金を出しなさいというような運用改善も指示して、それは現にやっております。

 それから、先ほどの、じゃ、どこまで、幾らまで出すのかということについては、検討をしなさいということを言っておりますので、今回の震災も含め、これまでずっと起こっております災害も含めて調査を進めるべきであると考えておりますし、現に進めております。

高橋委員 終わります。

甘利委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 ただいまの共産党の高橋委員が質疑の中心に据えられました個人と公共、一番個人が、小さな個人が、弱い個人が困ったとき、災難に遭ったとき、一体国はどんな手助けができるのか。これが私は、この間ずっと論じられながら、しかし、やはり本当に個人が生き生きと生きていけるための仕組みがなかなか今に至ってもないのが、今回の補正予算も含めた構造的な問題だと思います。

 そして、冒頭、小泉首相に、今の論議をじっとお聞きでございましたから、構造改革をお願いしたいと思います。二点にわたります。

 私は、今回の補正予算案の中で、災害対策が全体で一兆三千億円、しかし個人に渡るのは二百六十一億円。常にそうでございます。個人の、先ほどの住宅の問題も、あるいは一人の方が病院にかかられたときのそのさまざまな支出も、本当に困ったときは、最後にはその個人に幾らお金が入り、幾ら必要な医療が届きという問題だと思います。

 例えば、総理はお考えになったことがあるでしょうか。今回のような大地震に際して、一番個人に近い、住民に近い新潟県に、もっと包括的にまとめて、小泉首相はまとめるのがお好きですから、ぼんと、きっちりと、新潟県に裁量権をもっともっと持たせた形で補正予算案というのが考えられないのかというのが一点。

 それから、全体の予算の枠内で、もっと個人への直接的な目配りがきくような構造。先ほど細田官房長官はいいことを言ってくださいました。やはり、いろいろな申請とかいろいろな法律が細か過ぎて使い勝手が悪いというのが、被災した個人側からの実際の実感でございます。

 であるならば、やはり、こうした今後も起こる災害に対して、国はまず、災害が起きたその地域について、非常に裁量権の多い形での災害に対しての支出を考える方向性を検討していただけまいか。そして、個人補償は、住宅も含めてさらに充実の余地があると思われますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 個人に対する支援が少ないのではないかという点の御指摘につきましては、これは、個人に直接行く場合の支援と、それと、公共的といいますか全体的というのは、個人が集合して公共的になるわけでありますけれども、数が多いです。そのほとんどの方々が、利便になる、利益になる、また、支援を受けられるような一つの公共的な支援というのは、その中からまた個人に行く支援もあるわけです。その点について、公共的な支援から個人が受ける便益を図っていくという点と、そうではなくて、個人個人別なんだから、個人に直接、そのまま救済できるような、利便が図られるような支援が必要だという声と、それはバランスをとっていかなきゃならないと思っています。

 同時に、今までの議論でも、他の議員からも、阿部議員からも言われていますように、もっと、地域のことは地域がよく知っているんだから、その支援の整備あるいは支援法も、使いやすいように、地域の実情を知っているその地域の裁量権が拡大するような形で、細々とした難しい書類とか規制とかがなくて使い勝手のいいような、本当に支援を受けたいという人の立場に立って手続等をもっと考えたらどうかという点、さまざまな御指摘があります。だからこそ、そういう点をよく協議して、今後改善すべき点もあると私は認識しておりますので、そういう意味を込めて、もっと議論を深めていただきたいということを申し上げているわけでございます。

阿部委員 そうして議論しているうちにも、震災が起こり、そして阪神大震災、そして中越の今回の地震、あるいは台風の災害等々で、どんどんどんどん弱い個人から一番大きな負債を受けていくというのが現在の日本の状況かと思います。

 例えば、昨日の新聞報道でございましたが、新潟の小千谷市の近隣の旅館業者の方が、営業されておられる旅館のおふろ場に、屋根にたくさん雪が積もって、お二人が亡くなられました。私は、このこと一つとっても、例えば、もちろんこの旅館では雪おろしをやっておられたそうですが、今、豪雪によって屋根の上に雪がたくさん積もって、この雪かきをどうするかということが非常に一方で問題である。御高齢者しかいないおうちでは、あるいは人が住んでいないおうちでは、またつぶれていくかもしれない。そして一方で、ハローワークにはたくさんの仕事を求める人が列をなしている。

 生活再建には雇用と住宅が極めて重要。そして、雪の多い地域での雇用と住宅ということに関して、私は、もっと地方に裁量権があれば、例えば雪おろしにそうした方たちを雇用するなどの予算枠もとれるかと思います。

 そして、もしもそういう目配りができないのであれば、例えば神戸の大震災のときには、特別立法というか特別措置法において、阪神・淡路大震災を受けた地域における被災失業者の公共事業への就労促進に関する特別措置法というのもできております。私は、本来はその権限を地方に、そして現状で今そうなっていないのなら、こういう就労に関しての特別立法なり特別措置法が必要と思いますが、あわせてその点についてお伺い申し上げます。

村田国務大臣 雪おろしについてだけ、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。

 例えば、全村避難指示が出ている山古志村では、村がそうした雪おろしの人を雇って、そのお金を出して雪おろしの作業をしている。それから、ほかのところでも、市町村が雪おろし、特にお年寄り等の要支援世帯に対しての雪おろしの費用を負担している、こういうことでございます。

阿部委員 続いて、尾辻大臣が御答弁くださいます前に申しわけありませんが、例えば、私がお願い申し上げたいのは、そうしたことが、先ほどの鳥取県でもそうですが、住宅支援でも何でも、市町村が、あるいは県が独自にお金も手当てしなければいけない。であるならば、もっと大きな枠で、市町村が自由に使える震災復興のための考え方、予算のとり方をやっていただきたいという点でお願い申し上げました。

 もちろん、生活に近い市町村は必死です。続いて死者が出ないよう、家が壊れないよう、仕事が生まれるよう。しかし、そのためにもお金が必要です。そのための予算案を私どもは今審議しているのだと思います。

 引き続いて、恐縮です、尾辻大臣にお願いします。

尾辻国務大臣 まず、先ほど具体的に阪神・淡路大震災のときの公共事業就労促進法ということが出てまいりましたので、まずこのことから申し上げておきたいと思います。

 確かにこのとき、特別立法をいたしました。そして、無技能労働者を雇用する場合に被災失業者を四〇%以上吸収する仕組み、こうしたのでありますが、実は、これは大変低調でございまして、結局、この制度で雇い入れた方というのが九十七人にとどまったということもございまして、こういうこともございますので、それぞれよく制度も考えてつくっていかなきゃいけないというふうに思っておるところでございます。まず、そのことを申し上げます。

 それから、今、現状でありますけれども、特に緊急地域雇用創出特別交付金、これで対応していただける分が相当ございますので、こうしたこともお願いをいたしております。

 あと、細かなことはいろいろありますけれども、申し上げません。

阿部委員 今の尾辻大臣の答弁も、私はあらかじめ大体調査しておりましたので、やはり地方に使い勝手のよい形でお金が渡らないと、就労問題もなかなか解決しないということを申し添えて、そして村田大臣が明日行ってくださるということですので、ぜひともハローワークの窓口等々で、どのような状況であるのか、とにかくこの就労という、現実に仕事がないという状況を解決していただくために、また御尽力をいただきたいと思います。

 引き続いて、いわゆるこうした個人への補助とあわせて、先ほど来この委員会でも問題になっております、公共性のあるものについて国がどうバックアップしていくかという点について、私は既に厚生労働委員会で病院等の、いわば弱い方、体の弱い、自分で動けない方が入っておられるところもまた震災の大きな弱点になってまいると思いまして、果たしてそうした病院等々が耐震構造はどのくらい安全ですか、安心ですかということを伺いました。

 既に、内閣府の調査、平成十三年から始まり、十五年発表では五六%内外ということで、逆に言うと、残り半分は地震が来ても崩れちゃう、壊れちゃう、つぶれちゃう、そういう現状が今も私どもの中にあると思います。

 この点については、厚生大臣であられたこともあるので小泉首相は御存じと思いますが、私はぜひとも、待機児童ゼロ作戦と同じように、耐震化率一〇〇%作戦を小泉首相のじかのお口から承って、本当に安心して入院できる、だって、動けない、逃げられない。小千谷の総合病院では、本当に医療者が全力を挙げて担架であるいはシーツで全員を無事に外に運びましたが、その労たるや、本当に涙のにじむような苦労だったと思います。

 耐震構造について、きちんと政府として目標と期限を持って臨むおつもりはおありかどうか、お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 地震が多い日本にとって、災害に強い国ということを考えると、まず、それぞれの家屋、建物、地震が来てもそれなりに耐えられるような構造を強化していくべきだという点は、政府としても、これを今真剣に受けとめて進めなければならないと思っております。

 病院等は、まず公共性を考えますと、一番重点的に考えなきゃならない点でありますので、そういう点も含めて、今、何年までにとかいうことはお答えできる段階ではございませんけれども、防災という観点からも耐震性を強化していくという点につきましては、単に病院のみならず、ほかの建物においてもこれから進めていかなきゃならない課題であると認識しております。

阿部委員 私は、これこそ数値目標を、年限の目標を持っていただきたい。そのことによって、総理もよく御存じのように、予算のつき方、あるいは改修にもお金が必要です。そして、公と民とを問わず、やはり公共性のあるものについてきっちりとした政策を打たなければ安心して暮らすことができません。ここは総理の英断ですから、あいまいなことを言わずに、きちんと政策目標、政治目標を持って臨んでいただきたいと思います。三月末には実態調査の新たな、今回厚生労働省が行われましたものの数値も出るやに伺っておりますので、ぜひとも予算にも今後反映していただきたいと思います。

 そうした国内の問題と、いま一方、昨日の新聞報道にもございましたが、今や我が国にとって最大の輸出相手国は中国となりました。そして、輸出入額の総計も二十二兆という巨額に上っております。

 小泉総理の所信表明演説でも、この日中関係について、あるいは東アジアのこれからの展望について非常に重要性を御指摘されておられますが、はたまた、昨日の民主党の菅前代表との質疑を聞いておりますと、特にこの靖国参拝問題に関して、小泉総理は、適宜適切に判断いたしますを八回繰り返しておられます。

 私は、例えば富士ゼロックスの会長である方が銃弾を置かれたり脅迫されたり、あるいは北城IBM会長もこの件について御発言がございますが、今、国民も経済界も挙げて、この中国と我が国の本当の友好関係がどのようにあったらもっともっとよい関係になるかということに心を砕いている、簡単に言えば心配していると思います。

 そこで、小泉総理に伺いますが、この靖国の件、とりわけ懸案となっておりますが、総理はどのような形で具体的にお互いのそごを詰め、よりよい了解に持っていこうとなさっているのか。総理はいつも、結果としての行動か、あるいは極めてあいまいに、適宜適切に判断しますというお答えしかありませんので、具体的にはどのような形で、お互いそごがあるとすれば、あるいは冷え込んだ関係があるとすれば解決していくのかについて、お考えを伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 昨年十一月ですか、胡錦濤中国国家主席とも、また温家宝首相とも会談をいたしましたけれども、両氏との会談におきましても、未来志向で日中友好関係を発展させていこう、そういう認識を共有したわけでございます。これから、日中の問題につきましては、意見を異にする問題もあるけれども、大局的見地に立ってお互いの友好協力関係を増進していこう、そういう話し合いをしたわけであります。靖国だけではございません。

 既に日本と中国は、貿易額におきましては米国を抜いて大きな額になってまいりました。今なお中国も目覚ましい経済成長を遂げております。日本も、アメリカや中国、最大の貿易相手国として、政治のみならず、経済の面においても国際社会の中においての協力も重要になってきていると思いますので、そういう観点から、今後とも友好関係に意を用いて、両国がますますともに発展できるように良好な関係を築いていきたいと思っております。

阿部委員 私が小泉首相にお聞きしたいのは、そのような表面的な答弁でなくて、具体的にどうしていけばお互いの信頼が醸造されるかという中身でございます。そのことは国民のだれもが案じているから御答弁をいただきたいとお願いを申し上げているわけです。

 そして、もう一点、NHK問題が話題になっておりますが、その中でも、わけても従軍慰安婦問題についての歴史認識を一点だけ問わせていただきます。

 既に、総理の手紙という形で従軍慰安婦の皆さんに毎年毎年送られるお手紙の中に、日本とかつての個人個人に引き起こした従軍慰安婦という現実の過酷な運命について、日本は国としてこれを大変に申しわけなく遺憾に思うという総理の手紙というのを毎年、小渕首相もそうですし、歴代総理は従軍……

甘利委員長 質問時間が終了しておりますので、簡単にお願いします。

阿部委員 はい。慰安婦の方につけておられます。

 小泉首相は、その点については現在も同じ認識で、お手紙に首相のお名前もございますから、そのように理解してよいのかどうかという一点だけお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 これまでの政府の見解に変更はありません。

阿部委員 ありがとうございます。

甘利委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより締めくくり質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。

西川(京)委員 自由民主党の西川京子と申します。よろしくお願いいたします。きょうは、本当にこの発言の機会をいただきましてありがとうございました。

 まず最初に、恐れ多いんですが、小泉総理に御質問させていただきたいと思います。私、まだ議員歴が五年目で、大変未熟な者でございますので、発言その他でもし失礼のことがありましたら、どうぞ御寛容の心をもってお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 小泉総理が総裁選に立候補されるときのお言葉として、自民党をぶっ壊すとおっしゃって総理大臣に見事になられました。私は、そのときの言葉を私なりに解釈いたしまして、小泉総理は本当に自由民主党を心から愛し、そのときの自由民主党のさまざまな状況をかんがみた上で、一種の反語だ、そういう思いで理解しておりましたけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 よく私のことをワンフレーズだと言いますけれども、私はワンフレーズだけ言っているんじゃないんですよ。マスコミが取り上げるのがワンフレーズしか取り上げない。自民党をぶっ壊すと言ったのも、その前言を書いていないんです。私は、自民党を変える、変わらなければぶっ壊すと言ったんです。(発言する者あり)変わってきたでしょう。

 自民党にはいろいろな意見があります。それは民主党も同じです。その中で議論を重ねて、政権政党の責任も十分認識して必要な政策を打ち出していく、常に改革推進をしていかなきゃならない、改革に完成はない、そういう気持ちで、自民党は変化に対応できるような政党、改革推進政党になるべきだというのが私の本旨であります。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 確かに、ことしは自由民主党結党五十年ということでございます。その間、一時野党になったことはありますが、ずっと戦後、政権を担ってきた政党として、さまざまな中で、もちろん、この戦後の日本の繁栄をつくったのは自由民主党だと自負をしておりますが、その中でいろいろな不祥事ももちろんありました。そして、長い制度の中で制度のルーチン化、いろいろなマンネリ化の状態、そういうことも確かにあったと思います。そういう中で、自由民主党よ目を覚ませ、そういう思いでのお言葉だろう、私はそう解釈しておりました。

 そういう中で小泉内閣がずっとここ三年近く続いたわけでございます。私は最初、本当にそういう思いでおりましたが、最近、正直申し上げて、少し、政権与党、国会議員の意見の集約の思いと政府との調整というんでしょうか、その辺がもう一つすっきりいかないような思いは正直持っております。そしてそれは、国会議員の多くの方々が何となくそういう思いを持ちながら、しかし、やはり何となくはっきり言わないというような状況を私は正直に感じております。

 その中で、本当に今、まさに日本の進路が大きく変わっていく、明治以来の大きな政治の変革期だと思います。そういうときには、私は、みんなそれぞれ国会議員、やはり十万票、私はもちろん比例という立場ですが、十万票近い票をいただいて、それぞれの代表という思いで国会に来ています。そういう中で、なるべく多くの皆さんの思いが結集した中で改革、変革は行われるべきだろう、私はそういう思いでおります。

 その中で、このごろ、正直少し、その辺の党との意見の交換、すり合わせというんでしょうか、そういうことが余りうまくいっていないような、これは私の感じですが、そういう思いがありますが、総理として、ぜひそういうところに対してのお考えを一度聞かせていただきたいと思いましたので、よろしくお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 与党の意見をよく聞いて調整するというのは、政府として極めて重要なことだと思っております。

 大体、多くの政策については、よく協議をして、違いがあってもそれを乗り越えて、一つの形として協力して法案を提出して、国会で審議をして成立させるというのがほとんどだと思うんです。たまたま意見が違うと報道で大きく取り上げられますから、どうもしっくりいっていないなという印象を与えますが、それは中にはありますよ。しかし、それは、今までの長年の経験からいって、よく協議をして、最終的にはお互い納得いく形でさまざまな法案を国会に提出して、与党の協力を得て成立させなければいけないと思っております。

西川(京)委員 ありがとうございます。総理のそのお言葉を聞いて私は少し安心というんでしょうか、納得というんでしょうか、ぜひそういうお気持ちで今後の政権与党との交渉、政府との調整をお願いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、教育基本法と今回の三位一体改革での義務教育の税源移譲の問題、これをちょっと御質問させていただきたいと思います。

 今、世の中で、この十年ぐらいの間に、私たちが信じられないような事件が、子供を取り巻く環境の中でいろいろなことが起きています。そのことだけで判断するつもりはないのですが、私は、今のさまざまな矛盾が噴き出ている中の、突き詰めていくとやはり教育だよ、そういうところに帰するような気がいたします。

 私は、去年一年間、女性局長として全国の、自民党の支持層の女性たちばかりですが、集まりの中でいろいろなお話をさせていただきましたが、皆さんの思いはみんな、やはりそこが一番国民の心の中にひっかかっていることのような気がいたします。

 教育基本法というのが、戦後、言うなれば連合軍の占領政策の中ででき上がったという経緯がある中で、この教育基本法を五十年以上持ち続けてきた。日本人として、日本人の子供たちを育てるという中で、果たしてこのままでいいのかという思いが国民の間にも大きく広がってきたと思います。

 その中で、この教育基本法改正という問題が自由民主党のまさに党是、その思いの中でこの何年か大きな議論になってまいりました。そして、今回、これをある程度条文化して、党の中でもいろいろなプロジェクトチームをつくってきちんとした形に、草案もつくるということまでなっていったわけでございますが、政権与党としての、そして野党、もちろん民主党の皆様の思いも、一つのきちんとしたものを出したいというのは政治家のみんなの思いだと思います。

 その中で、きのうでしたか、朝日新聞に、これは今回提出をあきらめたような文章が載っておりまして、ずっとかかわってきた先生方の思いとはちょっと違うような気もいたしましたが、この問題についての文部大臣のお気持ちと、その現実をお聞かせいただけたらと思います。

中山国務大臣 教育問題に関しまして、国民の関心が非常に高まっております。特に、昨今いろいろな問題が起こっていまして、心の問題といいますか、心の教育が必要ではないかとか、そういった中から教育基本法の改正の議論が出てきているわけでございます。

 教育基本法というのは、昭和二十二年に制定されて以来ずっと改正されないで来たわけでございますけれども、この改正問題は、さかのぼりますと、平成十二年の教育改革国民会議の提言をいただいて以来、中央教育審議会でずっと議論されてまいりました。

 ちょっと調べてみましたら、総会だけでも十五回、基本問題の部会では二十八回議論されまして、それで、二年前の三月に教育基本法改正についての御提言をいただいたわけでございます。

 その後、西川委員が御指摘されましたように、与党の中にこの改正についての協議会が設けられて、それこそ精力的に数多く議論してきていただいておるわけでございます。

 教育改革全般について文部科学省は精力的に取り組んでおりますが、やはり一番大事なもの、先ほども申し上げました日本人の心といいますか、精神的なよりどころといいますか、そういったものをまず打ち立てるべきじゃないか。それがないと、幾ら学力向上だとか体力を向上しましょうとかいいましても、やはり何か欠けるものがあるんじゃないか。そういうことから、私ども文部科学省としては、一刻も早くこの教育基本法を改正したい、そういう気持ちでおるわけでございます。

 きのうぐらいから、一部のマスコミに与党が断念したというような記事が出ておりますけれども、いろいろお聞きしますと、決してそういうことではない。教育基本法改正については、小泉総理もおっしゃっていますけれども、できるだけ早く改正するということでございますので、私どもも一生懸命取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。

西川(京)委員 ありがとうございます。ぜひ今国会提出を目指して、お互いに頑張ってまいりたいと思います。

 それにつけましても、教育基本法、国の教育の一番の基本の法律を決めるということに当たって、教育は国が責任を持って全面的にするものなのか、あるいは地方にもう任せるべきものなのか、そこら辺の議論がいろいろ分かれるところだと思います。

 小泉総理は、総理になられてしばらくたってから、米百俵のお話を私たちにしていただきました。まさにこのことは、人づくり、あるいは未来への投資、人材こそ国の宝だという、その精神をあらわしている非常にわかりやすい逸話だと思うんですが、今、教育というのは、個人個人の、一人一人の人間を育てること、それともう一つは国を支える国民を育てること、この二つの意味が私はあると思うんですね。

 そういう中で国がどういう責任を持ってしていくか。それが一つの考え方だとは思いますが、去年の三位一体の改革の中で税源移譲の問題が出てまいりました。それの地方団体の意見というのが、一つは、平成十二年の地方分権一括法により教育は自治事務に整理されたという、このあたりが一つの根拠になっていることだろうと思います。

 しかし、これはやはり、自治事務であれば国の財政負担は不要というような不毛の極端な論議ではおかしいと私は思います。それぞれ、本来この話は、国がどこまで責任を持つことなのか、その思想は同じであっても、地方がどこまで責任を持って自主的にやることなのか、まずその基本的な議論があってから税源の話になるべきであろうと私は思いますけれども、そのあたりが私にはちょっと不明確だったような気がいたします。

 そういう中で、今回のこの問題についての文部大臣のお考えを聞かせてください。

中山国務大臣 義務教育というのは、国民の権利であると同時に、今委員がおっしゃいましたように、まさに国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に基づくものである、このように考えていまして、これは憲法の要請でもあるわけでございます。

 最終的には、義務教育というのは国が最終的な責任を持つというふうに考えておるわけでございまして、その責任を制度的、財政的に担保する制度が義務教育国庫負担制度である、このように考えているわけでございまして、憲法の要請でございますが、やはり全国すべての地域において、ひとしくといいますか、地方を回ってみますと、豊かなところあるいは豊かでないところでやはり違うんですね。例えば図書購入なんかにつきましても、本当に半分ぐらいしか整備されていないところもあるわけでございますが、そういったことを何とか防止するために、国が責任を持って、すぐれた教職員を必要な数確保する、そして教育の機会均等、それから教育水準の維持向上を図るという意味で極めて重要なことである、このように考えているわけでございます。

 昨年、三位一体の議論の中でいろいろなことが議論されたわけでございますけれども、最終的には、十一月二十六日の政府・与党合意に基づきまして、平成十七年度限りの暫定措置として四千二百五十億円が地方にということになったわけでございます。その合意におきましても、義務教育の国の責任というのは引き続き堅持するという方針のもとに、費用分担についての地方案を生かす方策、それから教育水準の維持向上を含みます義務教育のあり方全般について中央教育審議会で議論してもらおう、その議論をことしの秋ごろまでにやっていただいて、その後結論を出そう、こういうことになっているわけでございます。

 私ども、それこそタブーを設けないで今教育改革を進めておりますが、その中で、やはり義務教育国庫負担制度という国の責任をしっかり踏まえた上でないといろいろなことがやれないというふうに思っているわけでございまして、引き続き国の責任というものをしっかり堅持した上でやっていきたい、このように考えておるところでございます。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 日本の政治、過去の教育史の中で、当然、最初のうちは寺子屋から始まって、地方でもちろん任せられていたわけですね。そういう中でやはり県ごとにかなりの教育の格差が出てくる。そして、それはこれからの、まさに交付税、地方自治体が厳しくなる中で、当然そういう地方格差という問題も出てくるかもしれません。

 この地方格差の問題というのを何とかしなければいけない、税源も足りない、ないという中で、実は昭和十五年、初めて旧国庫負担法が成立いたしまして、これが国が責任持ってお金も出してやることだよというふうに決まったそうでございます。実はこのとき、小泉総理のおじい様が提案されたということを聞きまして、実は総理のおじい様自身が教育に関して大変な思いを持っていらしたということを聞きましたけれども、総理、一言その問題に関してお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 教育は、だれでも一番重要なものだと私は認識しております。

 私の祖父又次郎は、私が十歳のとき亡くなりましたけれども、よく、遊びながらいろいろなことを教えていただいたと思っております。しかし、単なる学問だけが教育じゃないと思っています。遊びも教育。私は、子供のころから花札も教えてもらいましたし、マージャンも教えてもらいましたし、猿飛佐助、霧隠才蔵、あの本を祖父から読んでもらいながら寝るというのは大変楽しい思い出です。生け花、鶏の世話、押し花のつくり方、鶏のすりえのすり方、今から思うと、これも学校では教えてもらえない、いい教育だったんだなと、今さらながら祖父の偉さを感じております。

西川(京)委員 大変プライベートなお話を聞かせていただきましてありがとうございます。

 まさに、教育は、子育ては各年代層が関与しないといけないというような一つのお話だったように思いますけれども、この国庫負担の問題について、では、総務大臣の御意見をちょっと聞かせてください。

麻生国務大臣 西川先生、これは平成十年の閣議決定にさかのぼって話をしないと、一貫性というか、関連が全部ありますので、少し時間をいただきます。

 平成十年の五月の閣議決定に基づいて、国庫負担を、真に国が義務的に負担を負うべきと考えられる分野に限定すべきとされ、その中に義務教育が含まれたというのが、平成十年の五月の閣議決定によるものだと思っております。

 しかし、その後、いろいろ時代が変わったこともあるんですが、平成十二年、いわゆる地方分権一括法というのができて、その中で、教育は自治事務だ、地方自治事務にされるべきものだということがこのときに決まりました。そのときに、地方の地方税の財源の充実強化という観点から、平成十四年には、税源移譲を含みますいわゆる税源配分のあり方というものを一体として見直すということを前提にして、そして、教育分野を含め、国庫補助負担金の廃止並びに削減について検討を進めるべき旨、これは閣議決定がされております。

 さらに、その翌年の六月には、平成十八年末までにいわゆる義務教育費国庫負担金の全額の一般財源化について所要の検討を行うべきである旨の閣議決定が出されておるというのが歴史的経緯であります。

 そうして、昨年、基本方針二〇〇四に基づきまして、いわゆる地方の改革案というものが出されたんですが、その中に、政府・与党の合意によりまとめました三位一体の改革の全体像におきまして、義務教育のあり方及び義務教育の費用の負担につきましては地方案を生かすという方向で、平成十七年秋までに、義務教育費の負担等々は、中教審、中央教育審議会においてその結論を得るというのが昨年という、ずっと長い経緯があります。

 この負担制度につきましては、これら一連の議論というのが、長いこと流れがあるんですが、この閣議決定を踏まえまして、地方の自主性やら自立性の向上の観点から、あり方につきましては抜本的見直しを行っている最中でして、今、地方税の財源の充実という観点を含めて、いわゆる地方分権、地域主権に向けまして新たな検討段階に入っているというところだと思いますので、今から中教審にも地方団体から委員を入れていただく等々のことをさせていただこうとしておりますけれども、そういったものを含めて今から真剣な検討がなされるということだと思っております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、この問題は、いたずらに国対地方という対立関係になってしまっては大変国にとって不幸なことでございますので、おのずからそれぞれの役割があるという認識のもとに、国と地方が一致して日本の将来の子供たちを育てるために考えていきたいなという思いがあります。

 その子供たちの問題なんですが、実はきのう菅代表も少子化社会の問題について、東京都の出生率が一だというお話をしていらっしゃいました。この少子化問題について、今まであらゆる、エンゼルプランから新エンゼルプラン、新新エンゼルプランあるいは少子化社会対策基本法、さまざまな支援が図られてきたわけですが、一向に改善されない。ということは、今までやってきたことが実は本当の本質をついた支援ではないんではないのかなという、その辺の思いが私にはちょっとあります。そして、それは実は、戦後のベビーブーマーの子供たちが今ちょうど結婚年齢、子供を産む年齢になっているこの時期、ここ四、五年から十年ぐらいに手を打たないと、実は大変なことになるという思いがあります。

 ですから、少子化に対する対策というのは、短期的な対症療法的な政策と、もっと若者たちのメンタルな考え方、生き方、そういうものの中に非常に問題があるんじゃないかという、それに対する対策、長期的なビジョンにのっとった対策と、二つに私は分けて効果的にしていかなければ解決できないように思います。

 その中で一つの短期的な考えとしては、当然、対症療法的ではありますが、待機児童ゼロ作戦、あるいは、非常に都市部では保育園が足らなくて待っている、その辺の整備、これは今かなりのスピードでどんどんできているわけでございますけれども、それとともに、やはり国民の意識調査をすると、子育てに大変お金がかかる。私は、子供を育てることがお金の問題でどうこうするというのは余り好きではありませんが、現実にはやはりかかるという、その辺のところにスピーディーに対応しないといけないと思っています。

 その中で、私はやはり、仕事を持って子育てをする、これは一番大変な問題で、これに対する何とかしなければいけないという政策はかなり整備されてきていると思いますが、片方で、実は家庭で、家で専業主婦として子育てしている人への支援というのが今までほとんどされてこなかった。税制でも、おととしの税調でしょうか、配偶者特別控除というのが廃止されました。そして、その財源が恐らく二千五百億ぐらいあると思いますが、子育て対策にそれは回そうということになったと思いますが、財務大臣、それでよろしいんでしょうか。

谷垣国務大臣 子育ての問題、意識改革も含む息の長い取り組みが必要だという点は、委員がおっしゃるとおりだと思います。

 それで、今おっしゃいました税制の改革に伴いまして、二千五百億ほど少子化対策に使おうということでいろいろやっております。

西川(京)委員 その中で、ぜひ私、考えていただきたいのは、児童手当が、四千億からその分の二千億が入って今六千億ぐらいになって、少し手厚くなったという実態があると思うんですが、一方的に、仕事を持って頑張っている人たちだけでなく、家で子育てしている人にもそれなりの財政支援を私はすべきだと思うんですね。

 言うなれば、保育園に子供を預けるという時点で、一人に対して十万から二十万何がしか税金が入るわけですから、そういうことを、全然国の援助を受けないで家で次世代を育てている人たちにも当然何がしかの援助をしなきゃいけない。しかし、私は、今この財政危機の中で、お金を新たに出してそういう人たちに上げる、これはかなり厳しい話だろうと思います。

 その中で、税額の控除、この考えは、やはりもっと、全面的に子育てという分野にするべく考えるべきだろう、私はそう思います。例えば、一人だんな様が働いていて家に主婦がいるというような場合には、その働き、サラリー全体は、主婦の働き分も含めて二つに割って、その中からまた税額の控除という考え方も出てくると思いますが、そういう考えに関して、ひとつ。

谷垣国務大臣 子育てを応援する税制としては、今、扶養控除というのがあるわけですけれども、これだけ少子化が進んでくると、もっと突っ込んで考える必要はないのかと私も思っております。

 それで、この面では、おととしに政府税調中期答申をいただいておりまして、人的控除のいわば基本といいますか基礎を見直していく中で、子育て支援というものはどうあるか、もっと突っ込めというような御示唆もいただいておりますので、委員のお考えも踏まえながら、我々も研究をきちっとやりたい、こう思っております。

西川(京)委員 では、もう時間ですので、一言質問をお願いします。

 私は、長期的な面で、大変若者の精神的なもの、生き方、それに大きな影響を与えているのは何か。やはり家庭での子育て、学校での教育だろうと思います。

 今、豊かになり、なかなか自分の家が居心地がよく、独立しにくい若者たちもいる、いわゆるモラトリアムの人たち。あるいは、対人関係がうまくいかなかったり、いろいろなそういう意欲がわかないで、働きもしない、勉強もしない、何もしないというニートの人たち。それと、私は、もう一つ大きな原因が、実は、学校教育の中で、女の子、女性に、子育てをすることの大切さ、そういうことが家庭科の授業で非常に軽視されてきている。

 女性が仕事を持って働くこと、これはすばらしいです。私もそういう思いで来た人間でございます。しかし、それとともに、やはり人間として次世代を育てていく、子供を生み育てるということの大事さ、母性の大事さ、私は、そういうことも本当に一緒に教えなければいけない。ところが、やはり、女性の自己実現ということにややウエートを置き過ぎた学校の家庭科教育、そういうものが、現実に教科書の中であちこちに見られます。

 そういう中で、男女共同参画社会基本法の考え方の中に、常に両性の平等、男性と女性の違いを出してはいけない、あるいは固定的役割分担、いろいろな問題がありますので、ぜひこういうことに関して、やはり……

甘利委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

西川(京)委員 男性として、女性としてお互いが尊重し合って、機会が平等の社会をつくってほしい、そういう思いがありますが、官房長官、一言だけ。

細田国務大臣 お考えに賛成でございます。

西川(京)委員 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。簡潔な御答弁をお願いしたいというふうに申し上げます。

 先ほど永田委員からも質問がるるございましたけれども、杉浦副長官にお伺いします。

 一千五百万、これは実は間違いだったということで訂正をされた。しかし、自民党への領収書はあるということでありますので、この一千五百万分の自民党に出した領収書、これは発表して、お見せいただきたいと思うんですが、いかがですか。

杉浦内閣官房副長官 領収書の件でございますが、政治活動費については領収書を出さないことになっておるようでございまして、党の方にお聞き賜りたいと思います。

 メモ程度のものは、書いたか書かなかったか、ちょっと記憶にございませんが、党の方にお聞きいただきたいと思います。

長妻委員 さっきの話と今全く違う御答弁をされて、きのうの記者会見で、領収書はある、そういう領収書を党に出した記憶がある、杉浦さんが、そういうお話でしたから、党の方にお尋ねいただいて、その領収書を見せていただく、公表していただく、こういうことをお願いしているわけです。

杉浦内閣官房副長官 正式な領収書ではなく、メモ程度のものだと思いますので、そういうものがあるかどうか、よく調査しましてまた御報告いたしますが、メモ程度のものは書いたかもしれません。

長妻委員 そうしましたらば、何らかの、党からお金が入ったんだ、こういうような証拠のもの、領収書あるいはそのたぐい、これは出していただくということで、再度。

杉浦内閣官房副長官 そういうものがあるかどうか、党の方によく伺ってまいりますが。

長妻委員 総理にお伺いするんですが、総理は、清和研の会長というのはいつからいつまでお務めになられましたか。

小泉内閣総理大臣 私がいわゆる森派の会長になった時期は、たしか、平成十二年四月五日から平成十三年四月二十六日までであったのではないかと思っております。

長妻委員 平成のお話でしたけれども、二〇〇〇年から二〇〇一年の四月二十六日までということでございますが、まさに、その二〇〇〇年の六月と二〇〇〇年の十二月、総理が会長だったときに、総理の派閥から杉浦さんの団体に五百万円と二百万円が入っている。こういうようなことで話が食い違ったわけでございますけれども、これは、総理、どういう御認識でございますか。

小泉内閣総理大臣 私は、いわゆる森派から杉浦さんに資金を渡したということはありません。森派というのは、議員のいわゆるグループの俗称といいますか、グループの集まり、清和会とは違うんです。(長妻委員「清和研です、清和研」と呼ぶ)清和研。

 清和政策研究会というのは清和研といいますけれども、この代表者ではないんです、私は。清和研の代表者となったことはないんです、私は、当時も現在も。別の者が代表者として会の運営を行っていると承知しております。

長妻委員 森派の責任者、代表は総理が一年間務められて、清和研の代表者というのは機械的に置かれているものだと認識しておりますけれども、杉浦副長官、これは、記憶が違った、おとつい気づいたというのは、何でおとつい気づいたのでございますか。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 報道等で森派の政治資金云々ということがございましたので、念のために調べてみた結果、わかったわけでございます。

長妻委員 そしてもう一つ、永田委員の質問の中で、自民党が杉浦さんの団体に出したお金の記述と受け手の杉浦さんの団体の記述、金額が異なっている。この点についても説明をいただければと思うんですが。

杉浦内閣官房副長官 お答えいたします。

 今、永田先生が最後の方で質問された点も含めまして調査中でございます。いましばらく時間をいただきたいと思います。

長妻委員 そして、きょうは閣僚の皆様にお出ましをいただいておりまして、森派の方といいますと、小池大臣、細田官房長官、南野大臣、町村大臣、中山大臣でございますけれども、お一人ずつ、過去、森派清和研から、いわゆるもち代、氷代など寄附を受けたことがあるかどうか。大臣就任中じゃありません、過去の国会議員時代でございます。一人ずつお答えをいただければと思います。

小池国務大臣 私は、いわゆるもち代、氷代、受け取ったことはございません。

細田国務大臣 私もございません。

南野国務大臣 私もいただいておりません。

町村国務大臣 私もございません。

中山国務大臣 いただいておりません。

長妻委員 先ほど私の質問で申し上げたのは、国会議員時代も含めてということで、閣僚のときだけじゃないということでお尋ねしておりますので、今ないというお話でございましたけれども、いま一度調査をいただければというふうにも思うわけでございます。

 いずれにしましても、杉浦副長官からきちっとした調査と発表があるということでございますので、至急よろしくお願いします。

 そして、懸案になっておりました橋本元総理の一億円の問題でございますけれども、総理、日本歯科医師会はなぜ一億円橋本総理に渡したのか、どうしてだと思いますか。

小泉内閣総理大臣 わかりません。

長妻委員 わからないから我が党は証人喚問を主張しているわけでございまして、これはやはりわかる必要があると思うんですが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私に聞かれたから、わかりませんと言ったんですよ。それは今議員間で協議しているから、よく協議していただきたいと思います。

長妻委員 厚生労働大臣にお伺いいたしますけれども、かかりつけ歯科医の初診料の要件緩和というのが二〇〇二年の四月から緩和、実質値上げになったということでございますが、そうすると、要件緩和がされた前と後で、この初診料に限っていいますと幾ら増収になったのか、お答え願えればと思います。

尾辻国務大臣 お話しのように、かかりつけ歯科医初診料は、平成十二年に創設をされたものでございます。これに対して、十四年度にこれをさらに推進しようということで算定要件の緩和を行いました。

 このときにどういう変化をしたかということでございますが、歯科の初診料と合わせてお答えをいたします。すなわち、かかりつけ歯科医初診料と歯科初診料と合わせての数字でございますが、合わせて十四年度と前年度を比べますと、二百八十億円増加をいたしております。

長妻委員 今お答えがございまして、二百億円以上、初診料に限定すると伸びたということでございます。

 これは日本の構造的な問題にも絡むのでございますけれども、仮に、一億、二億、三億、四億の裏金でこの初診料が値上がりしたということになるとすれば、たった数億円の投資で、投資という言葉をあえて使いますけれども、投資で二百億以上の収入が毎年毎年ふえる、こういう構造的な問題があるとすれば、これはもう是正する、これがやはり国としてやるべきことだというふうに思います。

 時系列的に申し上げますと、橋本元総理が一億円もらった時期というのが二〇〇一年の七月でございます。そして、二〇〇一年の六月、前の月に、例の逮捕されました中医協の委員が都内料亭でわいろをもらって、橋本さんがもらったのと同じ七月に、中医協で、そのわいろをもらった方が要件緩和の後押し発言をしたというふうに言われております。ちょうどその初診料の要件緩和の攻勢、陳情攻勢といいますか、それがピークを迎えていたまさにその時期に、一億円が、トップである臼田さんから橋本さんに渡ったということでございまして、これはやはりその絡みがあるんではないのか。

 これは本当に多くの皆さんの関心事だと思いますけれども、総理、これはぜひ喚問をしないといけないと思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、今、理事同士で、多くの喚問要求している中でどう対応するか協議していることだと思いますね。その協議をしている最中に、院の運営に対して私があれこれ言う立場ではないと思うのであります。

長妻委員 総理は、国会のルールである再質問などでもかなり行政府の人としては踏み込んだ発言をされておられるぐらいですから、この証人喚問、では総理、個人的な意見はどうですか。やはり証人喚問はするべきなのかどうなのか、個人的な考えをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 これは、なぜ証人喚問が全会一致で行われるようになったかという経緯もやはり考えなきゃいけないと思うんです。多数決でやると政争の具になりかねない。少数派が多数党の横暴で多数決でやられて、証人喚問というものを政争の具に使っちゃいかぬということで全会一致になっているんですね。だから、少数党でも、何人でも、少数党が反対するとこれはできないんです。

 だから、そういう点も含めて、証人喚問については、いろいろなことを考えて、よく各党協議で、何人にするのか、だれを呼ぶのかということについては院の運営に任されているわけであります。そういう点については、各議員が良識を発揮されて、よく協議していただきたいと思います。

長妻委員 これは、永田議員、辻議員の御尽力で検察審査会が不起訴不当という結論が出ているわけでございまして、これを総理、どう受けとめますか。

小泉内閣総理大臣 それは検察がそういう判断をしたことに対して審査会で違うというような判断をしたんですから、これは検察が判断すべき問題だと思います。

長妻委員 厚生労働省の報告書によると、こういう報告があります。平成十六年の九月二十八日に、「今回の贈収賄容疑となった不適切な働きかけによって影響を受けた可能性を完全に払拭することはできない」ということなんですね。ただ、その後に、「ものの、殊更にこの問題について発言をして議論をリードしようとした形跡は認められなかった。」と。

 払拭はできないけれどもリードしようとした形跡は認められないという非常に玉虫色の言葉なんですが、前段では「影響を受けた可能性を完全に払拭することはできない」ということで、一部厚生労働省も、今回の事件でいろいろ議論がゆがめられたということを認めておられるわけで、これ、一時、初診料の要件緩和、これを撤回する、一時的に撤回して、そしてきちっと議論をし直す、こういうおつもりはありませんか。

尾辻国務大臣 ただいまの件につきましては、昨年の九月に、これに対する中間報告も出しております。

 その中で申しておりますことは、中医協における審議について、支払い側委員が殊さらこの問題について発言して議論をリードしようとした形跡は認められない、あるいは、事務局の行動も、中医協の事務局として、一貫して中医協における審議の流れに沿った対応をとっているものと認められること、改定内容も、支払い側及び診療側双方の意見を反映した内容となっていることが認められるから、政策決定がゆがめられたものとは認められなかった、こういう報告をいたしております。

長妻委員 前段を意図的に読まないというのは本当にフェアじゃないと思うんですが、前段では、「今回の贈収賄容疑となった不適切な働きかけによって影響を受けた可能性を完全に払拭することはできない」、こういうふうに厚生労働省の報告書にも書いてあるわけでございまして、これは、日本という国はどういう国なのか、ばれてもばれなくても結局裏金が有効に機能する国なんじゃないか、こういうふうに多くの国民の皆さんは疑念を持つんじゃないかと思います。

 お金を払って、そして逮捕者が出て、ばれた。ばれても別に変わらない。では、裏金、ばれてもばれなくても得じゃないか、こういう風潮が広がること自体が問題だと思うんですよ。やはり、何で臼田さんは橋本さんに一億円を渡したのか、ここを解明するということが、本当に日本の国にとって重要だと思います。

 総理、個人的でもいいですから、そういう解明は必要だと思うか思わないか、そのぐらい答えてください。

小泉内閣総理大臣 その解明のためにどういう手だてが必要かということを今真剣に協議しているわけでしょう。それは協議が必要だから。いい結論を出していただきたいと思います。

長妻委員 では、証人喚問はどう思いますか。

小泉内閣総理大臣 先ほどもお話し申し上げましたように、国会が決めることであります。

長妻委員 総理、こういうときは自分の考えを全く言わない。かばっているとしか思えないんですよ。もう一度御答弁ください。

小泉内閣総理大臣 それは、よく、立法府のことに口出しするなと言うときもありますから、私は、これは今真剣に皆さんが議論している。会の運営でも、私は、出てこいと言えば出てきますし、そういうのは院の国会運営に任せているわけですから、それは国会で今真剣に各議員が協議しておりますから、その結果を尊重いたします。

長妻委員 そうしましたら、次に、総理の発言の具体的な話をいろいろお伺いしますけれども、これは総理の一番お得意の郵政改革です。郵政改革の、これは総理の改革の本丸だ、小泉内閣、こういうことでございまして、その中でも出口改革、入り口の改革と出口改革、出口改革を聞きます。

 出口改革の一つの本丸は、総理も言われていますけれども、天下り、これを何とかなくしていく。特殊法人、独立行政法人にどんどんどんどん天下りが来て、そして税金や保険料、年金でも問題になりました、いろいろなお金が途中で消えちゃう。天下りの仕事をふやすために、なぜか、まじめに皆さんが払ったお金が途中で消えてしまう。こういうことはもうやめようじゃないか、増税する前にそういうことをやめろ、こういう声がちまたにあふれていると思うんですね。

 そこでお伺いいたしますけれども、小泉総理は、この本丸の出口改革でばんと公約されました。昨年の三月八日、参議院の決算委員会、我が党の松井委員の質問で、こう言われました。マスコミに今大きく報道されております。「事務次官が自動的に自分の役所の特殊法人に行ったり独立行政法人に天下りしていくのはもう許される時代じゃない」とはっきり総理は言われたんですね。

 ところが、私、これは調べてびっくりするわけですけれども、資料をお配りしておりますが、その二ページ目をごらんください。

 これは内閣総務官室がつくった資料、政府がつくった資料でございますが、総理が昨年公約された発言が三月八日でございますから、こういう資料をつくってもらいました。三月八日以降に就任した事務次官のOB、あれだけ、もう許されないと言っていながら、これ、数えてください。三月八日以降でございますけれども、十人。十人もの方が、総理が宣言した後、さっささっさ天下っておられるんですよ。これはどうなんですか、総理。

小泉内閣総理大臣 それは、固定的に事務次官が天下りする時代じゃないといって、既に民間人三十五人起用していますよ。

 適材適所はあります。全体的に、もう自動的に事務次官が天下りすることじゃない、その方針をよく踏まえて適材適所で対応しなさいと。だからこそ、もう三十五人も民間人が起用されているわけです。

長妻委員 これは、十人も、総理の発言の後、自動的に天下っているわけですよ、事務次官が。

 この十人の天下りというのは、国土交通省が、例えば一番最近でいうと、昨年の十一月一日に事務次官が独立行政法人のトップに座っている例がある。そして二番目に新しい例としては、昨年の七月の十六日に、阪神高速道路公団、これも事務次官がトップに座るということで、任命権者の大臣にお伺いしますけれども、これは総理の公約とどういう整合があるんですか。

北側国務大臣 今、総理からお話がございましたように、総理の御指示は、事務次官等行政経験者の任用を固定化しないというところにあるかと思います。

 今御紹介がございました鉄道建設・運輸施設整備支援機構でございますが、この現理事長は昨年の十一月一日に理事長になったわけでございますが、それ以前に副理事長としての経験がございました。内部からの昇任であるということはぜひ御理解をお願いしたいと思いますし、阪神公団につきましても全く同様でございまして、従前、副理事長の人が理事長に内部昇任をしたということでございます。

長妻委員 これは、総理、全然昨年の発言と違いますよ。あのときは格好よく、天下り、事務次官OBは、全部とは言っていませんけれども、事務次官OBに限定しては「許される時代じゃない」と明言しているわけですよ。特に政府系金融機関などははっきりと、さらにはっきりと言っているわけですよ、前の前の委員会でも。

 そして、三ページ目を見ていただきますと、これは、ことし以降任期満了を迎える事務次官のリストです。例えば、一番早く改選期を迎えるのが、ことしの三月三十一日、四つあります。これはみんな事務次官です。経験者が今トップです。

 これはもう認めないということを明言していただきたいんですが、任命権者にまず聞きますけれども、まず農水大臣にお伺いしますが、ことしの三月末に任期が来ます事務次官の方のトップの農林漁業金融公庫、これはどうですか。

島村国務大臣 農林漁業金融公庫高木総裁ですが、たまたま私、前の農林大臣のときに事務次官を務めてくれた人です。JRAの理事長の高橋さんも同じです。

 この二人は、少なくとも私は、こんなにすぐれた役人がいるのかと今でも記憶し、感謝しているくらい非常によくできた誠実な人でありますし、改革の意欲が満々の人でもありますし、高木さんの場合は、任期途中で就任をいたしております関係から、まだ一年半しかやっておりません。

 そういう意味合いも含めて、私は、もし許されるならばこういう人材は活用すべきである、そういう意見を持っています。

長妻委員 これは真っ向から違うじゃないですか。事務次官OB、全然見直さない。すぐれた人だというのは、それはそうなのかもしれませんけれども、民間にもさらにすぐれた人がいるかもしれないですよ。これは、初め独立行政法人の議論があったときに、やはりトップは公募する、こういうような議論があって、いつの間にかそれが消えてしまいましたけれども、やはり広く公募する、そういうことをしないと、今、総理の方針に真っ向から違うじゃないですか。

 そしてもう一つ聞きますと、同じ三月末で任期を迎える年金資金運用基金、これは独法になると思いますけれども、これは今も事務次官ですが、どうですか、見直しは。

尾辻国務大臣 ただいまの人事の件でございますが、固定的に事務次官OBを登用することはしないという総理の基本的な方針を踏まえて、適材を起用いたします。

長妻委員 ということは、事務次官の少なくともOBの方はトップには持ってこない、こういうことでよろしいですか。

尾辻国務大臣 人事でございますから適材適所でやらせていただきますけれども、総理の基本的な方針は必ず踏まえます。

長妻委員 ちょっと明言がなかなか出てこないわけですけれども、OBの方というのはいろいろなところでも事件が起こっているんですよ。談合の仕切り役になっていたとか、あるいは不透明な随意契約があったとか。OBの方なんですよ、OB絡みなんですよ。

 そして文部科学省にお伺いしますけれども、ことし三月末で元事務次官のトップ、任期が切れます国立博物館、これはいかがですか。

中山国務大臣 具体的に考えているわけじゃございませんが、総理のお考えもよくわかりますが、私は、役所に十六年、民間になりまして二十五年たちますけれども、役所にも民間にも立派な方がいらっしゃるな、こう思っております。特に組織のトップに立つような人というのは、やはりすばらしい人もいらっしゃるわけですから、初めから事務次官はだめだという考えはとらずに、幅広く柔軟に考えていきたい、こう考えております。

長妻委員 それは小泉総理が言われているんですよ、去年の国会で。

 総理、では、それ、ちょっと修正、訂正されますか、去年の国会答弁を。

小泉内閣総理大臣 よく私の発言を読んでいただきたいと思います。もう固定的に、事務次官だから天下りのトップになる、そういう時代じゃない、適材適所で考えなさい、過去こういうことをやったからだめだと、人間性なり能力を無視したような人事はしない方がいい、しかし原則として、固定的に、もう事務次官になればこれは決まっている、こういう時代じゃありませんよということを述べたわけで、そのとおりにやるように指示しております。

長妻委員 それ、国会答弁、皆さん、議事録を読み返していただきたいと思うんですよ。

 そういう答弁もあるし、去年三月五日の衆議院の予算委員会、これは私が質問しましたが、そうしたら、総理はこう言われました。「もう今の政府系金融機関の、財務省初め事務次官が総裁なり理事長になっているのは最後だぞと、」これはもう明確に言っていますね。

 ところが、今農水大臣が言われたのは、農林漁業金融公庫というのは政府系金融機関ですよ。これは農水大臣と全然違うじゃないですか。これは総理、どうなんですか。

島村国務大臣 私は、先ほど高木さん、高橋さんの話にも触れましたけれども、この二人は本当にずば抜けた人だと今でもつくづく評価して、感謝もしている。こういう人を、事務次官をやったからいけないという固定的な考え方は、かえって人材の先行きをふさぎます。

 総理のおっしゃっていることも、私たちは小泉内閣の一員ですから、十分承知をして判断しておりますけれども、その上で、この人間はぜひ活用すべきだということをまた総理にお伝えするつもりでおります。

長妻委員 これ、いつもそうなんですよ。結局は、総理はばんと発言された、次官OB持ってこないと。ところが、やはりあれはおかしいんじゃないかという発言がわっとあると、総理が微妙に発言を修正されていく。ほかの分野でもこういう手法が目立つんですよ。

 総理大臣がああいう国会答弁をした後、ある省の事務次官はこういう発言も記者会見でされているんですね。次官であるがゆえに制約を受けるのはいささか論理的ではないなどと、事務次官が。総理大臣が言っていることですよ。総理、これどうですか。政府系金融機関というのは郵政改革の出口、これの本丸だ、本丸だと。天下りは認めない、事務次官OB。これは、本当に総理の改革の本丸なんですよ、出口の。これどうですか、今の。注意してください。

細田国務大臣 まず、ちょっと事実について申し上げますと、昨年の三月十二日、そういう国会でのやりとりを踏まえまして、当時の福田官房長官ですが、記者会見をして、はっきりと発言しております。

 その内容をちょっと申しますと、特殊法人及び独立行政法人は、公共性の高い業務を効率よく実施することが求められており、法人運営には行政の経験と民間の感覚をともに活用することが必要だ。今後、これらの法人の役員人事に当たっては、三つありまして、一、法人の長については事務次官等のポストからの任用を固定化させない。二、法人の長及び役員については、官民の出身者をいずれかに偏ることなくバランスよく適材適所で登用する。三、内部登用を進めるといった考え方で進める方針である。具体的な法人の長及び役員の人事に当たっては、この方針に沿って法人の業務内容等を考慮し、個別に判断する。

 その結果、去年の三月八日以降、特殊法人等の長になった者の前職を見ますと、五十三人おりまして、その中で、事務次官経験者は十人、公務員OBが八人、民間人とプロパーから三十五人。民間人、プロパーが六六%、事務次官経験者が一九%、公務員OBが一五%となっております。また、現在、特殊法人等の長を次官経験者が占める法人数は、全体が百四十六でありますが、そのうちの一九・九%の二十九法人であります。

 そして、引き続き内閣官房としては、個別の人事を見ながら、その任期到来を機に、それぞれ非常に厳しく各省に対して、この基本方針に従って選ぶようにということを徹底してきております。

長妻委員 非常にこれもおかしいんですよ、官房長官。経緯は御存じだと思いますけれども、総理が国会で発言して、皆さん慌てて、結局福田官房長官の今のような発表があり、そして実は、先ほど言わなかったですけれども、半分、半分以下に抑える、天下りを。なぜか半分という数字が出てきたんですね。

 総理は、こういう形で許される時代じゃないというふうに言っているにもかかわらず、いや、半分はいいと。逆に言えば半分は禁止だ、こういう変な数値目標を出してきたじゃないですか。しかし、その半分さえ達成されていませんよ。この四ページ、一番下に、退職公務員の割合、合計百五十二人中八十九人。これは半分超えていますよ。その後退した公約さえ守られていないわけじゃないですか。

 これは総理に聞きます、総理に。総理の話ですから。(発言する者あり)違いますよ。総理の話ですよ。総理の認識ですよ。

甘利委員長 内閣官房長官。(長妻委員「ちょっと待ってください。総理に聞きます。総理を指名します」と呼ぶ)

細田国務大臣 総理には当然答えていただきますが……(長妻委員「今の話は総理の発言ですから。総理、どうですか」と呼ぶ)

小泉内閣総理大臣 私の基本方針に沿って、官房長官が、各大臣が任命権者ですから、指示を伝えて、この基本方針に従ってやってくれということで指示を出して、基本方針をつくってやっているんです。具体的に、よく官房長官の話を聞いてください。

甘利委員長 内閣官房長官。

 長妻君、ちょっと待ってください。指名をしてから発言してください。私の仕事がなくなります。

 長妻君。

長妻委員 それでは、政府系金融機関に限定して聞きます。

 今農水大臣から答弁がありましたけれども、総理に聞きますが、農林漁業金融公庫、政府系金融機関、ことしの三月に任期満了が来ます、事務次官の方。仮にまた事務次官のOBの方がトップに座る、こういうことがあっても、まあそれは時と場合によってはあってもいい、そういうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 これはいずれ、農林といいますと島村大臣ですから、時期が来れば私に相談に来るでしょう。いろいろな人選を考えているんだと思います。

 よく方針に沿って適材で考えなきゃいかぬと同時に、政府系金融機関はこれから経済諮問会議で統廃合を議論します。そういう観点から、今言った基本方針に基づいて人事はするようにいたします。

長妻委員 そうしましたら、OBもあり得る、時と場合によっては、そういう解釈でよろしいんですか、あり得ると。

小泉内閣総理大臣 それは民間人とよく比較していかなきゃならない。適材、トップですからね。それは固定的に考えるものじゃない、そういうことであります。

長妻委員 これは随分後退というか、公約違反ですよ。だって、郵政の改革のこれが本丸だと、小泉内閣。その出口の改革、その中でも政府系金融機関のことを何度も言われているじゃないですか。その問題意識は私も共有していますよ。にもかかわらず、OBあり得る。そんな、とんでもない。

 二番目に、総理、年金の問題に移りますけれども、我が党の城島委員の質問で、これは昨年の四月九日、厚生労働委員会での総理の答弁でございますが、「年金の保険料は基本的に年金に充てる、事務費には充てないという御指摘、これはやっぱり真摯に受けとめるべきだと思っております。より効率化を図っていかなきゃならないと思っております。」こういう御答弁があった。真摯に受けとめると言った事務費には充てないというのは、これは破られましたよ。国会が始まった今月の二十一日、財務省が、年金掛金を事務費に充てることができるという一年延長の法律をまた出してきましたよ。あれだけ去年議論があったにもかかわらず、見直し見直しのような非常に調子のいい答弁があったにもかかわらず、また出してきたじゃないですか。これは、総理、どうなんですか、総理が発言しているんですから。

小泉内閣総理大臣 後ほど財務大臣も答弁させますが、真摯に受けとめて、事務費を充てた方がいいのか、そうでないのかと真剣に議論して、そして結論を聞いて、結果的にどうなったかというのは財務大臣から述べさせます。

甘利委員長 谷垣財務大臣。(長妻委員「いや、ちょっと待ってください、総理に」と呼ぶ)谷垣財務大臣を指名しています。あなたは指名していません。

谷垣国務大臣 私が指名を受けておりますので、答弁をさせていただきます。(長妻委員「総理に聞いているんですよ」と呼ぶ)

甘利委員長 議事運営権は私の専権事項です。

谷垣国務大臣 昨年の議論でも長妻委員とも随分議論させていただきました。そこで、年金事務費については、国庫負担として行うもの、保険料財源で行うものの範囲を明確にしなければならない、平成十七年度の取り扱いについてはもう一度検討する、こういう旨の答弁をさせていただきました。

 そこで、平成十七年度予算においては、国会等におけるこれまでの議論を踏まえまして、保険料負担の対象を、制度運営に直接かかわる、適用、徴収、給付、システム経費、こういうものに限定して今度やらせていただくということで出させていただきました。

長妻委員 総理の発言の中で、年金事務費の効率化を図る、こういうことも言われました。効率化を図っているのかどうか。

 この資料、最後のページでございますけれども、結局こういうことなんですよ。今まで事務費は、年金の保険料で一千七十九億円使っていた。税金で一千七百九億円。ところが、保険料で使う部分は減らした。確かに減らしたけれども、何のことはない、その分、税金でふやしているんです。ふやした部分というのは、批判があった宿舎とか公用車とか、まずいものは税金に振りかえた、目立つのは。ところが、事務費でいうと、これは財務省の資料ですから、トータルで見ると、昨年とことしで、昨年が二千七百八十八億円、十七年度の予算が二千八百億円ということで、十二億ふえているんですよ。

 あれだけむだだ、むだだ、私もいろいろ調べましたけれども、むだだ、むだだと言われているのに、マイナスじゃなくて十二億ふえているんですよ、トータルで。年金保険料を充当した部分は若干減っていますけれども、トータルでふえているんですよ。全然、その効率化を図るという言葉と違うんですよ。

 これは総理の発言ですから、総理の見解を聞きます。

谷垣国務大臣 昨年、むだ遣いが多いという御指摘も受けまして、年金事務費の内容は精査させていただきました。そこで、今おっしゃったように、事務局の借料とか公用車の更新費用、それから職員研修費、職員宿舎関係費等の縮減とか、通知書、納付書の発行回数の合理化といった業務方法の改善を行うなど、いろいろ厳しく見直しをさせていただきました。

 そこで、今、長妻委員がおっしゃった、トータルで見ると結局ふえているじゃないかという御批判がありました。

 これは、平成十七年度では、年金制度を改正いたしますので、新しくシステム開発をしなきゃならない面があります。それから、レガシーシステムを見直ししなきゃならない、社会保険庁の端末設備のオープン化を実施しなきゃならぬというようなことがありまして、年金制度を維持運営していく上でやむを得ない経費の増加がありました。それを、今申し上げたシステム経費等を除きますと九・八%の減になっておるということを申し上げたいと思います。

長妻委員 あれだけの批判があったにもかかわらず、それはいろいろ理由はありますよ。ただ、私が精査すると、まだ大量に、監修料をもらった書籍を買うんですよ、平成十七年度も。全然やめていないじゃないですか、六法も含めて。

 そして、監修料問題、全然調査がなっていないと思います。これは、一体全体、何人の職員にヒアリングしたんですか、大臣。

尾辻国務大臣 約五百人から話を聞いております。

長妻委員 これが私わからないのは、監修料の調査、もらったかもらわないか。厚生労働省、社会保険庁はしたというふうに言われているんですが、何度聞いても、いや五百人ぐらいかな、こういうことなんですね、お役人の方に聞いても。これ、具体的に何人かというのはわかりますでしょう、具体的に五百何十何人とか。本当に調査していないんじゃないかなと、私、疑うんですよ。何人ですか、五百何人ですか。

尾辻国務大臣 申し上げましたように約五百人ということでありますが、それは三カ月ぐらいにわたって、長期にわたって調べましたから、約五百人と……(長妻委員「いや、五百何人と、約じゃなくてきちっと言ってください」と呼ぶ)三カ月にわたっておりますので、まあ五百人という数でございますから、正確に何人という数字を申し上げることは不可能でございます。

長妻委員 正確に数字を申し上げることは不可能と今御答弁、耳を疑うんですけれども、これだけ問題になった、回り回って監修料がポケットへ入って、年金の保険料がポケットへ入っちゃった。これだけ怒りを買った問題で、アバウトで、だって、調査したら、具体的に何十何人まで出ますよ、調査しているんですから。

 それで、五百人というのは、これは実数ですか。

甘利委員長 尾辻厚労大臣、時間が来ていますので、簡潔に答弁してください。

尾辻国務大臣 延べの人数でございます。

長妻委員 これは全然難しいことを聞いていませんよ。監修料の調査で、何人の職員に実数で調査したのか。何人ですか。基本的なことですよ。

尾辻国務大臣 今私が承知いたしております数字が約五百人でございますが、今の先生のお話でありますから、もう一回、これは本当に徹底して調査したものでございますので、調べて、もう一回お答えをいたします。

長妻委員 これは、私、今突然聞いているわけじゃありませんで、前々から何度も何度も聞いているんですよ。実は、余り資料が残っていないんです、具体的に何人聞いたかちょっとわからなくなってしまいました、こういういいかげんな答弁なんですよ、これは。本当にまじめに調査しているとは思えない。

 そして、もう一点指摘いたしますと、業者側は監修……

甘利委員長 予定質疑時間は超過しておりますよ。

長妻委員 監修料の中で、業者が払った、何人に払ったのかということで聞くと、五百七十六人延べ払いましたと業者の方は厚生労働省のヒアリングに言った。しかし、厚生労働省が名前を確認しているのはたった三百十四人だけだ。あとの差の人は、だれがもらったのか、いまだにわからない。これは調査されますか。

尾辻国務大臣 業者がだれに監修料を払ったのかということを正確に教えてくれますと調査しやすいんですが、なかなかそこを教えてくれません。

 そこで、内部の調査で、おまえ監修料をもらったのか、じゃ、だれとやった、こういうような作業を続けておりまして、今先生に御報告申し上げたような数字になっておるところでございますが、こうした調査は、何も、このたびこれで幕を引こうということで公表いたしたものではございませんで、今わかっていることを全部出したということでございますので、今後とも、必要があれば幾らでも調査をいたします。

長妻委員 そして、職場で監修作業をした人というのは何人いましたか。

尾辻国務大臣 それでは申し上げます。

 先ほど申し上げました、それから先生からもお話しになりましたように、監修料を受領した職員、業者が言っております数でいいますと五百七十六、御報告申し上げているとおりであります。そのうち、これも先生がお述べになった数字でありますが、特定された者が三百十四人でございます。

 その三百十四人のうちの、監修作業を職場内で行ったことがある職員、これが五十名でございます。

長妻委員 民間企業の感覚でいうと、職場でアルバイトをしていいという会社を、私、聞いたことありません。五十人もの人が職場でアルバイトをしていた。それも、聞いたところによると、夜ということですね。昼休みというのは、これは自分の時間という解釈もあるかもしれませんけれども、夜、職場で。職場は私的なオフィスですか。

 これは再調査をしていただきたい。名前がわかっていない方がまだたくさんおられるわけですから、再調査、一言約束してください。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、必要な調査は続けてまいります。

長妻委員 最後の質問でございますけれども、総理の個別公約ということで、政治と金でございます。

 これは、平成十四年の五月二十一日、衆議院の本会議で、我が党の荒井議員の質問に総理は答えておられます。これが総理の答弁ですけれども、「公共事業受注企業からの政治献金についてでございます。 政治と金の結びつきが国民から厳しい目で見られている中、国民の信頼を回復するには、公共事業受注企業からの献金等について、疑惑を招くことがないよう、法整備を含め、もう一段踏み込んだ仕組みを考えることが必要と考えます。」

 これは、法整備は成りましたですか。

小泉内閣総理大臣 この答弁後、十四年の野党の改正案では、一定期間、公共事業受注企業の寄附を禁止する内容となっていたと承知しております。これに対して、翌十五年に、与党の改正案では、規制の対象となる企業等の範囲の特定が難しいとの理由から、広く一般に、同一企業等から同一の政党支部に対する年間の寄附額に上限を設ける内容となったんですね。これで与野党が改正案を出して協議しているんですが、いまだに話し合いがつかず、成立しておりません。

 薄く広く公正に政治資金を確保するようなルールが今後もつくり上げられる必要があると思っておりまして、この基本的な考え方に従って、今後、各党各会派でさらに議論を深めていただきたいと思います。

長妻委員 結局、これもほとぼりが冷めたから、もう法整備はしていないんですよ、公共事業受注企業からの。これだけ御答弁があったのに。

 我が民主党は、二〇〇三年に、公共事業受注企業、これを特定いたして、その部分に関しては献金を自粛しています。そして天下りも、天下り禁止法を二〇〇一年の六月、衆議院に提出しております。

 これは公約を破ったというふうに私は言わざるを得ないんですけれども、ぜひきちっと、説明責任と公約の実行というのを果たしていただきたい。

 私の質問を終わります。

甘利委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 若干時間の調整がございましたので、昨日お渡ししたペーパーと、順序とか少し変わるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 まず、今回の補正予算の目玉でありますが、昨年の台風被害や新潟中越大震災などの災害対策費関係につきまして質問させていただきたいと思いますが、細かい議論に入らせていただく前に、冒頭、総理にお伺いしたいことがございます。

 昨日の本委員会でも、あるいはきょうも何人かの委員の方々が触れておられましたが、ことしはあの阪神・淡路大震災からちょうど十年でございます。今後も、首都の直下型ですとか、あるいは東海、東南海・南海、こういった大規模災害、大規模地震が予見をされる中で、やはり阪神・淡路大震災のときの教訓というのは決してむだにしてはならないというふうに思います。

 今振り返ってみれば、反省をしなければならないこともたくさんございますし、また逆に、悔やんでも悔やみ切れないようなことも多くございます。その反省も含めて、当時の経験や教訓を最大限生かすことが、残された私たちの使命だと思います。

 そこで、総理にお伺いしたいんですが、総理は、この阪神・淡路大震災や今回の新潟中越大震災、あるいは想定される東海地震などの大規模な自然災害に際して、国の責務というものをどのようにお考えになっているのか。

 というのも、あの当時の、十年前の神戸の地にありまして、現場で聞こえてきた言葉でありますが、私がいまだに耳から離れない言葉がございます。それは、日本には政治がないという言葉であります。当時、大変多くのボランティアの方々が全国から集まっていただいて、大変大活躍をしていただきましたし、また当然、多くの地元の自治体の職員の皆さんも、本当にそれこそ必死になって働いていただきました。また当然、もちろんのこと政府の関係者の方々、政治家の方々も、私は当時まだ学生でありましたけれども、それぞれ御苦労されながら、緊急援助、災害復旧と御尽力をいただいたことと思います。

 しかし、それでも現場では、日本には政治がないと言われた。マスコミでも何度か報道されたと思いますので、総理の御記憶の中にもあろうかと思いますが、この日本には政治がないという言葉、あのような未曾有の大災害に際して、政治、特に国はどのような責務を果たすべきとお考えか。

 特に最近の、都道府県の知事さんの行動ですとか世論調査等々を見ましても、本来は国がやるべきだけれども、やってくれないから、しようがない、都道府県でやるんだというような発言ですとか行動というものが見受けられます。全部国がやればいいという話ではないと思いますが、ああいう大災害のときの国の責務というものをどのように総理として御認識か、お伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本に政治がないと批判されますが、今回の国連の防災会議でも、各国の代表は、日本の対策に学びたい、日本は災害が多い国だけれども、防災対策も各国に比べると高い水準にある、日本の今までの対策を参考にしながら、自分たちの国の災害対策に役立てたいという声を多く聞いております。

 日本としては、こういう災害の多い国ですから、それに対する対策というのはこれまでもやってきたつもりでありますけれども、いざ起こってみると足らざるところが随分あるということから、この阪神・淡路大震災十年の節目にさらなる強化をしていこう。不幸なことでありますが、スマトラ沖、そういう十周年の会議をしよう、そういうさなかにスマトラという、外国でもあのような大地震、大津波が起こって、防災というのは一国だけの対応では間に合わないという形で、今、国連、世界が協力して、防災に強い国づくり、体制を協力してやろうということになっているわけであります。

 国としてやるべきこと、たくさんあると思います。

 まず、緊急時にはしっかりとした情報を伝えるということ。今、例えて言えば、津波が起こった際には、この地域には津波が来ますよとか、そういうような情報をしっかり伝える。あるいは、地震でも予知ができるんだったらば、どうも来そうだ、対策をしなさいというような、まず情報伝達とか、起こった場合の危機管理ですね。総合的に、その地域だけじゃない、全体的に、国の自衛隊はこう出動します、地方の消防、警官、地域の住民、地方団体はどうすべきかというやはり司令塔も大事でしょうね。それと、応急措置、あるいは被災者の即時の、臨時の対応等、さまざまな財政支援があると思います。

 それと同時に、不測の事態に備える不断の対応ですね。十年前では、自衛隊との訓練は嫌だといって自衛隊の訓練をしなかった自治体もあったようでありますが、今や、日ごろから自衛隊も消防も警官も住民も一緒になって災害が起こった場合の訓練をしている。あるいは、地方自治体が駆けつけた、消防ホース、これが合わなかったという事態もありました。せっかく助けようと思って持ってきて、火を消そうと思ったら、同じホースでも市によって規格が違うから使えないというような事態もあったようであります。そういうことをなくそうという、この十年間でも進んできた面もあります。そういう過去の経験に学びながら、反省しつつ、常に不測の事態に備えるような対応、これが必要だと思います。

 もとより、国だけでできることではありませんが、自治体、政府諸機関、住民、ボランティアの方々、この方々なども非常に熱心であります。そういうボランティアの熱意を、どのように実際に被災に遭われた方々の必要な部分にこの善意、好意が行き渡るような、ボランティアの皆さんの好意も生かすような対策、さまざまであります。それを国、国民全体で、これからも、国がやらなきゃならないこと、地方がやらなきゃならないこと、また住民がやってできること、総合的に考えていく必要があると思っております。

津川委員 るるお答えいただきましたが、少し整理をした形でお答えをいただくとして、例えば、よく言われるのが、自助、共助、公助という言葉が使われます。私は、自助も共助も公助もそれぞれ大事だ、当然でありますけれども。それぞれ大事だと思いますが、総理、先日の本会議質疑の中で、まず自助努力を促す、促進する方策を充実させるべきというような、そういった御答弁があったかと思うんですね。

 このお話を伺うと、考え方として、まず自助が大事である、それでカバーし切れないものについて共助、公助というものが必要なんだと言っているようにも聞こえたわけでありますが、大規模災害のときの国の果たすべき役割というのも、やはり最初は自助で、あとはそれで足りない部分について公助で補うんだ、こういう考え方で、総理、よろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、そのときの質問は災害に特定していなかったものだと考えております。国を発展させる上において一番大切なものは何かというような質問だったと思いますから、これは古今東西、どの国においてもどの時代においても、みずから助ける精神とみずからを律する精神、これは個人においても企業においても地域においても国においても変わりない。みずから助ける精神のない人、みずからを律する気持ちのない人にどんな支援をしても、その国というのは発展しないだろう。企業もそうだと思います。

 そういう点から、まず一番大事なのは、みずからの国はみずからの力で発展させていこう、みずからの国はみずからの力で安定した民主的な政府をつくろうという国民がなかったならば、その国は発展しないと思います。

 災害が起きたら、それはみずからの力でない、天災の場合があります。それはどうしようもありません。そういう場合には公の助けが必要であります。あるいは、けがして動けないという場合は、友人たち、付近の方々、ともに助け合うということが必要であります。しかし、ふだんの場合に危険なところに近寄らない、これは個人の判断も大事だと思います。

 そういうみずからの力で助けることが不十分な場合には、ともに助け合うことが大事であり、ともに助け合ってもまだ無理な場合は、公の政府、中央政府なり地方政府なり公共機関が助けなきゃならない。これが総合的に協力し合いながら、いろいろな場面に対応するのが一番望ましいことだということを申し上げたわけでございます。

津川委員 たしか我が党の岡田代表に対する御答弁の中で、確かに、国をよくしていくにはみずから律する云々という御答弁があったんですが、実はその前の答弁で、住宅に対する公的支援のあり方の中で、まずはと言ったかな、自助努力を促進する方策を充実させるべきというようなことを触れられたものですから。

 ただ、基本的には、災害に限らず言えば、まさに自助が大事でというような話であろうかと思いますが、この自助、共助、公助というのを、役割分担を事前に固定してしまうというのは、私は必ずしもいい考え方ではないと思うんですね。これは公助だから、これは自助だから自分でやりなさい、これは国がやってくれなきゃ自分はやらないよという話ではない。特に、大災害が発生をしたときは、そういった事前の固定された考え方でやるよりも、現場でまさに今必要とされているのは何か、それを助けられるのはだれなのか、こういう考え方でいくべきだと思います。

 特に、この十年間の二度の大災害の現状を見る限りにおいては、今まさに総理御自身がおっしゃった、自然災害のときに、自分ではどうしようもないという状況にあって、公助が求められているにもかかわらず、その公助が決定的に不足しているという場面が余りにも多過ぎるのではないか。一番最初の、日本に政治がないとおっしゃった方の言葉は、まさにそのことをおっしゃっているんじゃないかと思います。別に、何もしてくれないとか政府の防災対策が全くゼロだという話をしているのではなくて、あの大災害の現場において、本当に自分ではどうしようもないというときに、公助が全く不足してしまっていた。

 その中で、特に限定して申し上げれば、昨日も我が党の委員からも何度か指摘がありました、住宅の問題になるんだと思います。

 住宅は個人の財産であるから、その再建には自助努力で対応するべきとされてきたこれまでの経緯は、私も理解をしておるつもりです。しかし、昨今の状況、現場の状況を見れば、自分だけではどうにもならない。総理がおっしゃるように、住宅の耐震改修や地震保険への加入を促すような公的援助、これも確かに大事だし、やらなければならないと思いますが、今私たちが深刻に受けとめなければならないのは、まさに今私たちの目の前に、住宅を失われて途方に暮れていらっしゃる被害者の方々がいるわけです。こういった方々を前にして、国がどのような公的支援ができるかということだと思います。

 今は、まだ災害がない段階で、一般論として国は何をするべきか、自助で何をするべきかという議論をしているのではなくて、これも大事な議論ですけれども、昨年の三月の法律改正はまさにそういう発想だったと思いますが、私どもが昨年の秋の臨時国会以来申し上げているのは、まさに今、昨年の台風水害、それから地震災害、確かに事前に耐震補強をしてもらいたかったし、地震保険にも入っていただきたかったけれども、やっていなかった方がこれだけたくさんいらっしゃって、もう間もなく雪がたくさん降るぞという中で皆さん本当に途方に暮れているというときに、やはり公助としてもう一歩踏み込んだ支援をするべきじゃないか。さまざまなこれまでの議論を踏まえても、やはりそこは国が支援するということに特に問題ないんじゃないかということも含めて議論をさせていただいたつもりです。

 また、この一連の議論の中で、住宅再建、本体部分の再建について国が支援をすると、国民の自助努力を抑制してしまうんじゃないかというような話がございました。これはちょっと無理がある話だと思います。これはまさに程度の話だと思うんですね。地震で自分の家が壊れて、国が何かお金を出してくれたら前よりいい豪邸ができてしまった、こういう支援だったら、これはいかがなものかと思います。うちもそろそろ地震が来て壊れてくれるといい家になるなという話になっちゃうんですよ。それはやり過ぎです。だから、まさに程度の話です。

 総理も、きのうも何度かお話をされました。三百万なのか五百万なのか、支給条件をどうするのかということについて、さらに議論を深める必要があるというお話をされました。これの程度ですね。中身あるいは条件についてなお議論を深める必要があるというのであるならば、それは私も理解します。しかし、議論が必要であることを述べるばかりで、住宅本体の再建部分についての公的援助についてはゼロ回答のままであるというのは理解ができません。

 例えば、自助努力を損なわない限りにおいて住宅本体の再建について公的資金を支援することもあり得るという見解をお示しいただければ、あとは条件の問題として災害対策特別委員会で防災大臣と議論をさせていただきたいと思いますが、総理の御見解をもう一度お伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、茂木委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 これまでも、個人支援は無理だという時代から、個人支援をして、百万から今は二百万増加して三百万円になった。これが、三百万は不十分だから、今は五百万円にしろという議論もあります。そういう点について、今言った自助も含めて、どの程度個人が耐震改修できるのか、あるいは地震保険に入っている人は少ないけれども、いることはいる。どの程度までそうすれば支援が出せるのか、多過ぎる、少な過ぎる、いろいろな議論があると思いますが、そういう点をよく私は議論していただきたいということを言っているわけです。

 今、個別の対策というのは、挙げればそれはたくさんあると思います。支援の方法、住宅本体に支援すべきという意見もあるし、いや、住宅よりもほかの支援がいいという人もいますし、それはさまざまなものですから、そこで私が、今こうだというほど私には、そういう支援に対して具体的な、今これが一番いいという考えは、むしろ専門家の皆さん、被災者の、一番困っている方の皆さん等の意見をよく聞いて一つの結論を見出すような議論をしていただきたいと思っているわけで、今後、防災担当大臣初め、それぞれの、よりそういう点に対して見識のある方々の議論を重ねていい結論を出していただきたいと思っております。

津川委員 議論はさせていただきますが、確かにいろいろな政策がありますよ。個々にどれがいいか悪いかという議論を今ここでしているわけじゃなくて、さまざまな議論がある中で、住宅の再建支援の法律もあって、三百万出すという話もある。あるけれども、瓦れきの撤去とかそういった部分にしか使えなくて、再建の部分には使えないものですから、使い勝手が悪いという、非常に具体的な問題が山ほど上がってきているわけですね。

 それは、ほかにもいろいろやってもらいたいという要請はありますよ。ありますが、この今の問題に対して、例えば特別大幅な予算措置が必要になってくる話でもないし、法律を少しだけ変えるだけで、使用目的を少し変えるだけで大変多くの方がこの制度をうまく利用することができるという状況であるならば、これは認めても当然いいんだと思うんです。

 ただ、では、私どもが提出をしている法案で、今総理が賛成か反対かという話は、これは今伺いません。それはまず委員会でしっかり議論をさせていただいて、与党の方々もいろいろな御意見があるでしょうから。その中で、もっとふやすべきだ、いや、もっと減らすべきだ、あるかもしれませんが、多いか少ないかというんじゃなくて、今住宅本体の再建部分についてはゼロなわけですよ。そちら側にも使ってもいいようにするべきじゃないですか。

 その金額の程度についてまだ議論を深めるべきだというのならわかります。こういう御意見だというのなら、我々は、総理がそこまで認めていただいているんだという認識に立ちます。しかし、これまでの議論というのは、まさに住宅の本体部分にはお金を入れてはいけないという議論だったわけです。それは入れてもいいんだという認識を今総理が示されるのか示されないのかは、今後の議論に大変大きな影響を与えると思います。

 さらには、午前中の議論にもありましたけれども、まさに住宅を失われた被災者の方々にとって大変大きな朗報になると思います。多くの方々は、やはり大変不安に思われている。災害に遭って自宅を失って、いつまでも避難生活を続けていられない、どうやって自分の生活を再建していこうかというときに、どこに住もうかという話は大変大きな話で、そのときに、多少なりともめどがつくかつかないかというのは、被災者の方々の精神的なケアに非常に大きな影響があるんです。

 ですから、これは方針として当然あり得る、程度については委員会でさらに議論を深めてもらいたいという話で言っていただけるのだったら、私どもは一歩も二歩も前進だと思いますが、そこまでやはり総理は言っていただけないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それはよく委員会で議論をしていただき、担当大臣がいるわけです。私はよく担当大臣の意見を聞きますよ。それで、これだけ大きな問題であります。責任者、担当者がいるわけです。物事、段階を踏んで総理の手元に来るわけであります。担当者を飛び越して何でも総理、総理ということも、私はいかがなものかと思います。何のために担当大臣がいるのか、国会があるのか、委員会があるのか、議員が存在するのか、そういう点もよく含めて、具体的な問題についてはよく協議をしていただきたいと思います。

村田国務大臣 総理が今発言されましたように、そういう機会があれば、みんなでこの問題について、私も先ほどから公平性の観点からいかがかとかいろいろなことを申しておりましたが、そういうことも含めて皆さん方の意見をお伺いする機会があればと思っております。

    〔茂木委員長代理退席、委員長着席〕

津川委員 もう一歩踏み込んだ発言をしていただけるんじゃないかなと思ったんですが、まあ意見があるなら聞きますよ程度というのはいかがなものかなというふうに思います。

 公平性という話が一つありました。

 もう一つ、大臣もこれまで、総理もおっしゃいましたが、優先順位があるんだという話をされました。公助というのは確かに大事だ、しかし、限られた予算の中で、住宅再建の本体部分云々というところよりも、まずはインフラの復旧だろう、それはよくわかります。インフラの復旧に優先順位が高いということはよくわかりますが、ただ、一方で、住宅も社会のインフラの一部じゃないかという意見もこれあり、やはり住宅に対する部分も必要じゃないかということなんだと思います。

 優先順位があるにしても、今回の補正予算の中の災害対策費一兆三千六百十七億円のうちに、実に一兆二千三百八十四億円が公共事業等の追加。これだけ見て多いか少ないかという判断はなかなか難しいと思いますが、今の被災者生活再建支援法にかかわる支援金の補助金のうちに、今回の新潟中越大震災に関する部分、何と二十五億円だそうであります。これは、資料を見ても全然出てこないので、役所の方にお伺いして教えていただいた数字なんです。災害対策費一兆三千六百十七億円の補正予算です。公共事業一兆二千三百八十四億円。住宅再建の部分は二十五億円、予算がないんですと、これはちょっとおかしいんじゃないだろうか。

 これも単純に、では、その公共事業の部分からほかにもう少し持ってきて、二十五億、これをふやしたらいいじゃないかという判断は、それは簡単にはできないところだと思いますね。というのは、特に今回のような災害復旧の公共事業の金額というのは、概算で出している部分が当然あると思います。ひょっとしたらこれで足りないかもしれないですから、これを削っていいのかどうかというのは、これだけではなかなか判断しにくいと思います。ただし、政府としてとりあえず二十五億確保していただいている。

 民主党が今回提出しております改正案、条件を少し緩和したり、金額をふやしたりということをやっておりますが、大ざっぱな試算でありますけれども、それで試算をしても、大体あと四十億から五十億足せば足りるだろうというふうに私どもは試算をしております。今首かしげていらっしゃるから、ひょっとしたら民主党案でもう既に試算をしていただいているのかもしれませんけれども、多分していないと思いますが。

 これは試算していただけばいいんですよ。いや、これだけ範囲を広げたら予算が足りなくなる。それは、予算は大事に使った方がいいですよ。それはもちろんそのとおりなんですけれども、ただ、これだけ少し条件を緩和して、多くの方に使っていただくというにもかかわらず、あと四十億か五十億で民主党の条件を満たして、今回の新潟の方々の住宅の再建部分について手当てができるんじゃないかということが考えられます。

 ただ、先ほど申し上げましたが、さっきの、公共事業を削ってこっちにあと四十億、五十億ふやせというのはなかなか言いにくい話です、よくわかりませんから。ただ、今回の予算の中身を見ますと、どうも災害復旧事業とは言えないんじゃないかというような予算が、多くはありませんけれども、ございます。

 一例を挙げますと、私、最初にぱらぱらと最後まで全部見たんですが、よくわからない数字ももちろんたくさんありますが、まず手がぱっととまったのは警察庁の関係。警察装備費、車両購入費、警察通信機器整備費、全体で四十七億。これは警察庁の方にも伺いました、中身何ですかと。それはそれぞれいろいろ必要なものかもしれません。何か、夜、ヘリコプターから下を見たときに物が見える赤外線暗視装置つきヘリテレビとか、情報収集車両とか災害用投光車、これは確かに災害に必要なものかもしれない。だけれども、ちょっとやはり違和感があるんですね。昨年、台風の水害がたくさん発生した、新潟で大震災が発生した。さあ、補正予算を組みました。投光器を買っている。これを今買ってどうするんですか。

 そのほかにも、国土交通省、ヘリコプター、十五億五千五百万円。防衛庁が三十二兆九千四百五十四万円のヘリコプター、この補正予算に関しては十八億だそうでありますけれども……(発言する者あり)大変失礼いたしました。三十二億九千四百五十四万円のヘリコプター。これは私、高いか安いかわかりません。消防庁が十億九千九百四十九万円のヘリコプター、今回の補正で六億円。

 それぞれ、確かにヘリコプターも大事だと思いますよ。阪神・淡路大震災のときも、マスコミのヘリばかりばんばん飛んで、本当に必要なヘリが飛んでいないじゃないかとかいう話も随分ありました。必要なんだと思います、わかりませんけれども。これは必要かもしれないけれども、今回、こういう災害が発生して、それに対して何とか緊急手当てをしなきゃいかぬと言っているときに出てくる予算としてはいかがなものか。

 これは、まさに全体的な国の防災計画の中で本当に整備をしなければならないものだとしたら、本予算でやるべきものじゃないですか。本予算でやらずに、今回の補正予算でこれだけ出てくる。むしろ今回の補正予算に必要なのは、もともとの考え方からいえば、確かに自助でやるべきところかもしれないけれども、実際にそれが足らずに今回本当に困ってしまっている方々がこれだけいらっしゃる、それに対する支援としてまさにやるべきなんじゃないか。これだけでも予算が、全部とは言いませんけれども、予算がある程度確保することも可能じゃないか、中身についてはいろいろあると思いますけれども。

 私は、こういった補正予算の性質、谷垣さんが今手を挙げていらっしゃいますから答えていただきますけれども、谷垣大臣の理由説明の中も、今回の補正予算は災害対策費など緊急を要するやむを得ざる経費が計上されておりますので、速やかに御賛同いただきますようお願いいたしますと書いています。確かに含まれていますけれども、これは別にこの後審議する本予算の中に入ってきてもいいような予算なんじゃないかと思いますが、どうぞ。

谷垣国務大臣 確かに、一兆三千六百十八億円の災害対策費の中に、今相当細かに見ていただきましたけれども、消防、警察関係等の緊急活動に必要な機材が入っているんですね。警察、山間部の夜間における情報収集活動のための情報収集用車両だとか、それから中越地震の被災地で二次災害等の監視活動をやるためにヘリコプターが北陸地方整備局に配備されていなかった。これはやはり必要だということで、補正予算の中に入れさせていただいたわけです。

 緊急活動に必要な資機材については、当初予算においても当然整備を行っていかなきゃならないというのはおっしゃるとおりだろうと思います。ただ、去年は台風二十三号とか中越地震初め、例年をはるかに上回る災害がございましたので、それで足らないものが出てきた、緊急に資機材を追加して整備する必要が生じた、こういうことで補正予算に計上したわけです。

津川委員 繰り返し申し上げますが、今上がったものがむだだと私は言ったんじゃないんです。これが必要かどうかの精査はまた細かくやることはあるかもしれませんが、私がヒアリングで伺った限りでは、それぞれ災害対策として必要なものだと思います。個別のものについても、予算は上げても、当然のことながら入札でもしていいものを安く買っていただくと思いますし、それはそういう努力を当然やっていただかなきゃいけないと思います。

 ただ、最初に気になった、警察庁の方からヒアリングを伺った際に、情報収集用にバイクを買います、何台買うんですか、三百十一台買うと言うんですね。確かに、たくさんあった方がいいかもしれませんが、いや、今回山古志村でとか言うんですけれども、山古志村のバイクに三百十一台要らないわけですよ。さらに気になったのが、いや、これ、前に買ったのが古くなったんです、いつ買ったんですか、阪神・淡路大震災の後に買ったんです。

 阪神・淡路大震災のときには、町が非常に混乱をして、渋滞もひどくなって、もちろん道路も壊れて、車がなかなか動けない、緊急車両もなかなか動けない、情報収集がなかなかできないというときに、バイクとか自転車が非常に活躍をした。そのときにバイクを購入されるのなら正しいと思います。なかったのでしようがない、これは急いで買わなきゃというのは正しいと思う。だけれども、阪神・淡路大震災が発生をしてバイクを買った、新潟中越地震が発生してバイクを買った。遅いというんですよ。必要なら、ちゃんと整備しなきゃだめでしょう。もっとちゃんと計画的に当然購入をしていただきたい。

 それからさらに、こういったものを細かく見ていくと、便乗購入じゃないかという話があるんです。災害に便乗して、関係ないものまで買っちゃうんじゃないか、こういう批判がある一方で、私が感じるのは、もう一方の部分で、こんなことでもない限り買ってくれないという予算ですよ。これはやはり危機管理からしておかしいと思います。

 質問をどんどん飛ばしまして、済みません、三位一体の改革もしたかったんですが、最後に、申しわけないですから、子供政策について伺います。

 総理、ぜひ総理にお願いしたいのは、大変お忙しいと思いますが、どこかの病院に行って、医者に診てもらってくださいというんじゃなくて、産科のある病院に行って、新生児室を見てもらいたいんです。私、一昨年の十二月に三番目の子供が生まれましたけれども、新生児室で本当にきのうきょう生まれた子供を見て何を思うか。まず私が感じたのは、彼らの将来、戦争のない平和な社会をつくってあげたい、彼らの将来に本当に幸が多い、そういう社会をつくってあげたい、そう素直に思いました。総理にもぜひ、時間があれば行って見ていただきたいなと思います。

 愛国心について伺います。

 愛国心というのは大事だと思います。ただ、愛国心はどうやって生まれてくるか。私は、子供が親とか兄弟、こういった方々に、家族に愛されて、そして社会に愛されて育ったら、親を愛し、家族を愛し、社会を愛すると思います。愛国心あるいは郷土愛、大変大事だと思いますが、社会が子供たちをしっかり愛している、こういうメッセージは非常に大事だと思います。

 総理のこれまでのさまざまな答弁、先日の本会議、昨日、本日の委員会の答弁を聞いておりますと、ちょっと子供には見せられないかなという思いがあります。

 学力低下ということを言われています。学力について総理の御見解も伺いたかったんですが、ちょっと時間がないですけれども。いろいろな学力が低下していると言われていますが、コミュニケーション能力が低下している。自分の意見を表現できない、相手の意見を理解できない。あるいは、それぞれの人たちが意見をそれぞれ持って、意見が違っても、なかなかこの議論がかみ合わない、けんかになっちゃう。これじゃ、コミュニケーション能力は高まらない。だけれども、国会の議論を聞いておっても、なかなか政治家はコミュニケーション能力が高いなという感じには見えない。

 あるいは数学、今は中学の二年生からやっているそうですけれども、証明というのがあります。得意な方と苦手な方あると思いますけれども、AであればBであるということであれば、BならばCであるときにAならばCである。何を言っているかわからないという方がありましたけれども、これは別に全然難しい話じゃないんですけれども、まあいいです。

 AならばBであるということが言われているときに、BならばAであるということは言い切れないわけですね。これはもう中学校の数学なんですよ。これを理解しない子供たちが大変多いかもしれないけれども、非戦闘地域であるならば自衛隊を出していい、だけれども、自衛隊を出しているからそこは非戦闘地域であるというふうには言い切れないんです、教科書によりますと。

 どういう例があるかというのを一つ出せばいいですね。自衛隊を出したけれども戦闘地域になってしまった、自衛隊が活動しているけれども戦闘地域になっちゃうということはあります。もう一つは、政府が出したけれども、政府の判断が間違っていた、そういったこともあり得るんです。

 こういったことがありますから、説明は非常にわかりやすいという話をされたけれども、これは論理的には大間違いでありまして、説明の仕方としてはやはり間違っていると思うんですね。

 それから、先日の我が党の野田議員に対する答弁で、総理は百四十兆の借金をつくられるけれども、次の世代に対してどういうものを残してあげると言えますかという話をされました。そのときに答弁として、自分の評価は死んでからだという話をされた。実は、政治家の評価というのは、天文学によりますと、死んでから百年たたないと落ちつかないということになっているんです。星の名前をつけるときに、政治家と軍人は没後百年で評価が定まってからじゃなきゃつけちゃいけない、こういうルールがあります。別に天文学に従う必要はないんですが。

 総理の評価を聞いているんじゃなくて、総理が百四十の借金をつくってしまったけれども、これからの将来の世代、次の世代、まだ生まれてこない子供たちに対してどういうメッセージを残しますか、こういう話なんです。

 ぜひ、今、与党だ野党だという話ではなくて、まさにこれからの世代の子供たちに対して愛情を持った答弁を最後に求めて、質問を終わります。

小泉内閣総理大臣 将来、健やかに成長して、夢、希望を持てるような社会にしていきたいと思っております。

津川委員 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて津川君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、企業・団体献金というのは禁止すべきだという立場でありますが、二年前の二〇〇三年二月二十日のこの予算委員会で小泉総理に質問をいたしまして、赤字で配当できないような企業が自民党に献金するのは問題があるんじゃないか、こういうふうに指摘をいたしました。これに対して小泉総理は、こういうような無配の会社からは献金を求めないという体制にしていかなきゃいかぬと明快に答弁されました。その約束というのは実行されていますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 現在、自民党では、無配当かつ赤字の法人からの寄附を自粛しているところであります。

佐々木(憲)委員 調べてみましたら、そうはなっていないのでございます。

 例えば、その年に百万円以上国民政治協会に献金している企業のうち、総理が答弁をされた二月二十日以後も無配でありながら献金している会社、私がざっと数えただけで十八社あります。例えば、そのとき私が指摘した建設会社、その後も無配なのに献金し続けているという会社が三社ありまして、五洋建設、真柄建設、松村組。今言ったように、合わせて十八社あるわけです。

 これは、国会の答弁と実際の実態が違うわけでありますので、調査して是正すべきは是正すべきと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 正確に言いますと、二期連続で無配当かつ赤字の法人からの寄附を自粛しているところでありますということでありますので、調べてみます。

佐々木(憲)委員 今おっしゃったけれども、二期連続無配当、赤字、そういう企業からも献金は受けているんですよ、受けているんですよ。調査していただくということですので、ぜひそれをやっていただきたい。

 それでは次に、放送法についてお聞きをしたいんですが、放送法第三条には、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」というふうに定められております。

 これは、日本国憲法第二十一条第一項の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」という規定、これを放送の分野で具体化したものだと言えると思います。これは、政府も我々議員もきちんと守るべきだと思いますが、総理はそういうふうに認識されておられるかどうか、あらかじめ確認をしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この憲法第二十一条は、表現の自由を保障しており、これを受けて、放送法第三条は、放送番組編集の自由を規定している。この放送法第三条の規定は、放送事業者については、みずからの責任において番組を編集し放送を行うことを保障しており、放送事業者以外の者については、法律に定める権限に基づく場合でなければ番組に干渉等を行わないように求めていると考えられる、そう思っています。

佐々木(憲)委員 総務大臣にお聞きしますけれども、この規定はなぜ設けられたのか、また、公共放送であるNHKと民放に適用の違いがあるのか、この点を確認したいと思います。

麻生国務大臣 設立、施行された背景は、今総理の答弁の中に出ていたとおりだと思いますが、扱いに関しましては、放送法三条、先ほど読まれたとおりで、扱いは全く公平に扱われております。

佐々木(憲)委員 放送というのは、周波数の割り当てを受け、無線局の認可を受けなければならない、そういうことから、もともと国家の介入を受けやすい性格を持っております。したがって、放送番組の編成について、この放送法第三条の「何人からも干渉され、又は規律されることがない。」という規定がとりわけ重要になってくるわけであります。放送番組編成に国が介入してはならず、放送局の番組編成の自律性、自主性を確立するということが特に大事であります。

 とりわけこのNHKの場合には、人事と予算について国会の承認を得なければならないという特殊な事情がございます。そういう意味では、介入を受けやすいからこそ、この放送法を厳守しなければならないわけでございます。

 そこで、中川大臣にお聞きをいたしますが、事実の確認です。大臣は、二〇〇一年一月三十日に放送されたNHKの特集番組、この内容について、事前に知っていたというふうに言われておりますが、いつ、どのような形でこれをお知りになったんでしょうか。

中川国務大臣 私が一月の十日に出張中に朝日新聞の本田さんという記者から突然電話がかかってまいりまして、二〇〇一年の一月三十日のNHK教育テレビにおいての、正確な番組名称はちょっと今は忘れましたけれども、これについての件ですけれども御存じですかという電話での御質問がありました。

 きのうも申し上げましたけれども、その番組については存じておりますと。ただ、後でまた御質問あるいは答弁があると思いますけれども、知っている部分と、知っていない部分と、記憶があいまいな部分とが、四年前のことを突然聞かれたものでありますから、それについてははっきり区別をしながら答えなければならないということで、幾つかやりとりをいたしました。

 そこで、佐々木委員の御質問でありますが、放送を一月三十日にやるということについては知っておりました。どういう内容の放送をやるかについては、もちろん放送前でございますから番組も知りませんし、後で聞きますと、番組自体も自主的にいろいろ中で変更をしていたということも聞いておりますし、また、そのときに、番組を見ましたかという質問に対しても、見た記憶がありません、ひょっとしたら見たかもしれませんけれども、その辺があいまいですと。ビデオで見たかもしれませんし、それから、その後のいろいろなマスコミ等の中身でもいろいろ取り上げられておりましたので、放送の中身自体についてはほぼ承知をしておりますと。

 きのうも申し上げましたが、実際には、私はビデオをその後半分ぐらい見て、実際には、四十数分ですか、その番組全体を実は見ておらないわけでありますが、御質問の、知っていたか知っていないかについては、その前の年の十二月に行われました市民団体の模擬裁判というんでしょうか、市民活動というんでしょうか、それについては、いろいろなところから情報が入ってまいりましたし、市民団体そのものも広く宣伝をしていたということもございまして、市民団体のやっていた二〇〇〇年十二月の内容については、間接的ではありますけれども、ほぼ、逐一ではございませんが、概略知っていたというふうに認識をしていたわけであります。

 いずれにしても、私は、一月三十日午後十時から放送されたNHKのETVでの番組自体は見ておりませんでしたし、御質問が、放送の内容について事前に知っていたかということについては、放送内容、番組内容については、私は事前に存じておりません。

佐々木(憲)委員 いろいろなことをおっしゃいましたけれども、一つ一つお答えをいただきたいと思います。

 一月十八日の朝日新聞によりますと、こういうふうにあなたは答えているんですよ。「同じような問題意識をもっている我々の仲間が知らせてくれた」。この場合、その「我々の仲間」というのはどなたのことなのか。それから、その内容について知ったときにどのような感想を持たれたか。この点について、それだけに限ってお答えをいただきたい。

中川国務大臣 我々の仲間というのは、当時、私は、御承知のような議員連盟のメンバー、会長でございましたので、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会だったと思いますけれども、その議員連盟の会長を当時務めておりまして、教科書に載せるべき歴史の記述についていろいろ勉強をしていたわけでございます。

 その議員連盟の仲間たち、あるいはまた、この活動をするに当たっては多くの国民の皆様あるいは学者の皆様、その他いろいろな方々とも一緒に勉強しておりました。もちろん我々は、その数年前に一冊の本を出しましたけれども、その研究の途中経過という形ではございましたけれども、その中には、私どもと全く意見を異にする方々のお話もいろいろとお聞きをしながら勉強していたわけでございまして、その方から聞いたわけではございませんけれども、そういう活動の中で、議員あるいはまた一般の方々、あるいは大学の先生といいましょうか専門家の方々から、そのような、二〇〇〇年の十二月にそういう市民団体の開催する模擬裁判というんでしょうか、そういうものがあって、こういう内容であったということを間接的に聞いたということであります。

 そのときに、今度はNHKで放送をすると。先ほど申し上げたように、市民団体、主催団体そのものが、今度はNHKで放送されますからみんな見てくださいというようなことを世の中にいろいろと、インターネットその他、ホームページその他でも言っておりますし、何かNHKでも、こんな番組をやりますよというようなことを報道したという話も、これはちょっと正確じゃございませんけれども。

 その他この他で、実際に放送するということでございましたので、話が飛ぶようでありますけれども、持った印象は、先ほど佐々木議員と総理とのやりとりにもありましたように、放送法に基づいてきちっとやってくださいということを、やってくださいではございませんね、そのときは日付があいまいでございましたけれども、二月二日にお会いをしたときに、ああいう番組があったそうですけれども、そのときにはもう放送されておりましたが放送の内容は実際には見ておりませんので、いずれにしても、いい番組であろうが、いろいろな番組であろうが、私は、NHKに限らずいろいろな放送局の方に、あの番組はよかったですね、この番組はちょっとつまらなかったですねということを折に触れて申し上げますので、そういう形の一環としてこの話が出ましたが、いずれにしても、放送法に基づいて公平公正に今後もやっていただきたいということを申し上げた記憶がございます。

佐々木(憲)委員 簡潔に答えていただきたいんです。質問をしたことに答えていただきたい。

 模擬法廷とおっしゃいましたけれども、女性国際戦犯法廷ということで、これは、ベトナム戦争の後に組織されましたラッセル法廷がその端緒をなすというふうに言われているような、国際的な弁護士などが集まってやった、そういうものであります。

 それで、若手議員の会のメンバーからもそういう話を聞いた。そのときに、この番組は公正ではないという評価をなされていた。というのは、最近、一月十九日に、この議員の会の方が見解というのを出されていまして、当時、二月九日に党総務部会で、出席した海老沢NHK会長にこの番組の内容について強い抗議の意思表明を行ったというふうにされておりますので、みずからそれをおっしゃっているわけですから、当時、この番組そのものについては、これは非常に問題がある、こういう意識を持っておられたというのはわかります。

 そこで、あなたはフジテレビで、私が当時会長を務めていた若手議員の会の議員たちも事前にNHKに会っていろいろなことを言っているというふうにおっしゃっています。つまり、事前にその見解を伝えていた。NHK側はそれを聞いていたから若手議員の会に説明に回っていた。一月十九日の記者会見で、安倍氏、中川氏などに説明に行ったのはなぜですかと聞かれて、NHKは、若手議員の幹部だから行ったんだ、こういう説明をされているわけであります。

 中川大臣は放送後の二月二日にNHK幹部と会ったと言われますけれども、若手議員の会の当時の事務局長であります安倍晋三議員、副幹事長の古屋圭司議員、平沢勝栄議員などは放送前に会ったとおっしゃっています。あなたは二十三日のフジテレビで、朝日新聞の取材に対して、先ほども言ったけれども、放送の前だったか後だったかについては定かではないと言ったとおっしゃいましたね。つまり、二日というのは、確かに証拠は記録が残っている。しかし、その前に会っているかいないかは、これは記録がないわけですから、それは定かではないということだと思うんです。

 議員の会のメンバーのほとんどはNHKに事前に会っているわけです、放送前に会っている。そのときにいろいろ意見を言っている。中川さんはその後だと。会長が後だというのは余りにもこれは不自然でありまして、私は、この議員の会、前か後かというのは、これはいろいろ調べなきゃいけませんけれども、しかし、議員の会のメンバーがNHKの幹部に事前に会って、公平でないよ、こういう意見を言っていた、そしてNHKは安倍さんや中川さんに、このようにバランスのとれたものにいたしました、こういう報告に来ているわけですね。

 そういう構図が浮かび上がってくるわけでありまして、特に重大なのは安倍さんの場合でありまして、安倍さんは、中川さんが会長をしていた若手議員の会の事務局長でありました。二〇〇一年の一月二十九日にNHKの放送総局長らが安倍氏に面会をして、番組の説明をしている。これは両方認めているわけです。安倍氏はホームページでこう言っているんですね。明確に偏った内容であることがわかり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘したと。これは自分で書いているわけです。

 ここで総理にお聞きしますけれども、議員の会の事務局長で、かつ、官房副長官という政府の中枢にいた安倍さんが、番組が明確に偏った内容だと判断をし、その立場から公正中立にと言えば番組内容への政治介入になるということは、これは明白じゃないんでしょうか。

中川国務大臣 佐々木議員は今幾つか誘導的な、あるいは誤解を招く、あるいは前提を置いた幾つかの間違いの御質問がありましたので、事実関係を、まず訂正を求めさせていただきたいと思います。短くやりましょう、できるだけ。

 私は、二月九日の総務部会では発言をたしかしておりません。二月七日の総務部会の幹部会、私は逓信委員長を経験しておりましたので……(佐々木(憲)委員「中川さんが言ったというんじゃないんですよ」と呼ぶ)いや、私が言ったんです。(佐々木(憲)委員「九日は別の方が言ったんです」と呼ぶ)ああそうですか、ああそうですか。では、それは私じゃないんですね。私ではないですね。(佐々木(憲)委員「はい、メンバーです」と呼ぶ)はい、わかりました。

 それから、公平ではないと言ったのは私ですか、私以外ですか。(佐々木(憲)委員「公平ではないというのは、あなたも言ったし」と呼ぶ)私は、公平ではないではなくて、二月二日にお会いをしたときに、こういう番組が放送されました、確かに私はそのとき、取材を受けたときには、前だったか後だったかは記憶にありませんがということを言いながらではありますけれども、しかし、二月二日、これについても今申し上げますが、放送の後に、いずれにしても、放送法に基づいて公平公正にやっていただきたいということを、番組の話が出ましたので申し上げまして、あの番組がけしかるとかけしからぬとか公正でないとか、そういう具体的な話は申し上げておりません。

 それから、二月二日以前に証拠がないから、それはまるで二月二日の前に会ったのではないかというような……(佐々木(憲)委員「記憶はない」と呼ぶ)記憶ではございません。(佐々木(憲)委員「記憶は明確じゃないんでしょう」と呼ぶ)ですから確認をして、きちっと記者会見等で発表をさせていただいて、その証拠というのは、私の事務所のもちろん秘書、それから事前の私の日程表、それから、事前以外にお客さんが来ることがありますので事後の面談記録、何月何日の面談記録。これだけでは多分佐々木議員は、それはおまえのところの内部の資料にすぎないじゃないか、疑わしいとお聞きになる可能性もあると思いますので、議員会館の面談記録を、二〇〇一年の一月五日から二月十五日までの間にわたって議員会館の職員の方に調べていただきました。NHKの方が中川のところに来た記録があるかといったときに、たった一枚だけ、二月二日以前にはない、二月二日が最初の面談記録で、塚田さんという名前で私のところに社用で、これは、あるときに、必要があれば私はコピーでありますけれども公表したいと思います。

 いずれにしても、事前になぜ会長である私のところに説明に来なかったのか。先ほど申し上げましたように、私は逓信委員長という経験者でございますから、事前に、事前にというのは国会で審議をお願いする前に、NHKの事業計画あるいはまた予算の説明にその前の年も、その前の前の年も来ておりまして、その用件で来たときにこの話が出たのでありまして、その日付は二月二日であり、私から呼びつけたわけでもございませんし、それから、朝日新聞の本田記者が書いているような、松尾さんが私のところに来たわけでもございませんし、政治的圧力もかけておりませんので、どうぞこれは、私の名誉と国会の権威にかけてこの事実関係だけははっきりさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 もう時間がありませんから長々言う必要はありませんが、若手議員の会がこのNHKの報道について事前に情報を得、中川さんにもそれを知らせ、これは偏っている、こういう判断をされて、それでそれを抗議した。それが二月二日に、その後バランスがとれているという説明をした、こういう話であります。

甘利委員長 既に質疑時間をオーバーしております。簡潔にお願いします。

佐々木(憲)委員 私は、この実態を解明するために、NHKの松尾武、伊東律子、野島直樹、長井暁の各氏、安倍晋三衆議院議員を参考人として招致することを求めたいと思います。よろしく取り計らいをお願いいたします。

甘利委員長 理事会にて協議いたします。

 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 通告と少し順序が変わります。中身は変わりませんが、済みません、総理の将来像については最後にお聞かせいただきたいと思います。

 まず最初に、施政方針演説の中で日米関係に言及されました。その中で、「米軍再編については、米軍駐留による抑止力を維持し、かつ、沖縄等の地元の過重な負担を軽減する観点から、米国との協議を進めて」いくと総理は発言されておられます。

 「過重な負担を軽減する」、軽減すると言うだけならだれでもできます。口で言うのは簡単ですが、それを実現することがたやすくないことはだれもが認めるところだとは思います。しかしながら、一国の総理たる者、軽減するとはっきりとおっしゃるからには、しかるべき見解を持って発言されていると確信しております。

 総理がおっしゃる「過重な負担を軽減する観点」とはどのようなことを想定しておられるのか。具体的には、何をどうすることによって軽減を図っていくのかについて、明確に御説明いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは、沖縄におきまして米軍基地の負担が重い、そして、日本の安全というものを考えますと米軍の基地は必要である、そういうことから沖縄県の皆さんに多くの負担を強いているわけでありますが、そういう観点から、日本の安全ということ、いわゆる抑止力を維持するということと、沖縄を初めとする米軍基地を抱えている皆さんの負担を軽減するという意味を指しているのであって、具体的には、SACOの委員会に従って今現実にいろいろ負担軽減策をとっております。

 そのほか、数々の個別の地域の問題がありますが、それを今、個別の問題、地域を挙げたり、具体的な基地のところを挙げて申し上げますと、これは相手の立場もあります、そういう点も考えて、具体的にここを指しているということを今の段階で言える段階じゃないんです。その辺を御理解いただければなと。そういう中で、沖縄の過重な負担を軽減しなきゃならない、現実的にそういう方針で米軍と協議していかなきゃならないなと思っております。

東門委員 代表質問で、我が党の横光議員への答弁ですが、普天間問題で、普天間飛行場については、市街地にあることもあり、一日も早く周辺住民の方々の不安を解消したいと考えておりますというお答えですが、総理の中で、一日も早いとおっしゃるのは大体どれぐらい、一年なのか十年なのか二十年なのか、そういうのがあるのかどうかお聞かせください。一日も早いということは、私たち期待を持ちます。総理はどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 沖縄県の問題につきましては、SACO最終報告を速やかに実施に移していかなきゃならないんですが、一日も早いというのはいつかというと、本当に一日も早いとしか言えないんですよね。できるだけ早くしてくれという声は常に聞いております。そこが難しいというのも承知しておりますが、できるだけ早く、一日も早くというその沖縄県の思いを胸に置きながらこの問題に対して対応しなきゃいかぬということは常に思っていることであります。

東門委員 これまで本当に、三年九カ月、在任期間、何も変わらない沖縄なんですが、答弁もいつも同じように返ってくる。これはもう悲しい限りですが、余り時間がありませんので進みます。

 さらに総理は、普天間飛行場の移設、返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の早期実現に努めていくと発言されておられますが、これはすなわち、普天間飛行場の移設、返還はあくまでもSACOの枠内で実現に努めていくということで、昨年一月の施政方針演説と全く同じ内容となっています。これはすなわち、昨年八月十三日の沖縄国際大学構内への米軍ヘリ墜落事故で高まっている沖縄県民の普天間基地即時撤去の声を全く無視しているとしか言いようがないことをまず強く指摘しておきたいと思います。

 そこで、米軍再編とSACOの関係について伺います。

 米軍再編については今後日米間で協議を行っていくとのことですが、米軍再編とは、単に在日米軍を対象としたものではありません。四軍の統合運用を含め、世界的に駐留米軍の再構築を図るものであり、我が国の事情だけではどうにもならない部分も多々あるのではないでしょうか。

 特に、町中に存在する普天間基地については、総理もおっしゃっていました、また米軍自身もその危険性を認めており、今後SACOの枠内で八年ないし十年かけて移設を行うなど米軍としても受け入れがたく、米軍再編の枠の中でSACOと両立させることは不可能に近いと思います。

 SACOの最終報告の実施状況を見ますと、八年を経た今、返還予定面積五千二ヘクタール中三十八ヘクタールの返還が実現しているだけにすぎないんです。こうした現実を見ましても、既にSACOは破綻していると見るべきだと思います。SACOにはこだわらず、先ほどから何度もSACOを出しておられましたけれども、SACOにはこだわらず、米軍再編とあわせて、改めて米軍基地の撤去、移設について米軍と協議を行うべきであると思います。

 米軍再編とSACOの関係をどのように整理されるのか、総理の御見解をお伺いいたします。これは、総理から伺いたいと思います。

町村国務大臣 本来、SACOの報告、もうちょっと早く進んでおれば、こう思っておりました。

 しかし、これは地元の御意見、当時の大田さんの御意見がいろいろ当初の予定とは変わってきたとか、いろいろなことがあって、現実におくれているのは残念なことだ。本来であれば、五ないし七年でできていたはずなんでありまして、これは全部、政府が何かサボっていてうんとおくれたというのならともかく、そうではなくて、地元の皆さん方のお声も実は途中で変わった、地元調整を丁寧にやると時間がかかったという事情もあっておくれているということは、よく御承知の上で言っておられるんだろうと私は思っております。

 その上で、今、SACOの話と米軍再編の話をどう絡めていくのか。私どもは、一応今、原則SACOを進めていこうという立場であります。しかし、それも当然、再編成の中で、全くそれとはかかわりなく、SACOはSACOで進めていくかというと、どこかでこれは接点が出てくる話であろうと私は思っておりますが、それはまだ具体の話に現状立ち至っておりませんので、どこでどういう接点が出てくるのか、こないのか、これはいま少しお時間をいただかなければ、その関係を明確に述べることは、現状は、今の時点では不可能であるということも御理解を賜りたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 今、外務大臣が答弁したとおりで、なかなか難しい問題でありますが、米軍の再編の問題、そしてSACO最終報告の実施の問題、これは密接に関連している部分もあるものですから、今の時点で具体的な地域を挙げて言う段階でないということも御理解いただきたいと思います。

東門委員 普天間の飛行場の問題ですが、総理は多分ごらんになっていないと思います。けさの新聞です。住民二人が精神的疾病、お聞きになっていますか。米軍ヘリの墜落事故の後、本当に精神的に疾病、病んでいるということで、今それに対して米軍が初の治療費補償へと。もちろんこれはSACO関連ですから、日本政府も二五%負担するという状況が出てきているわけです。

 あの普天間の飛行場を、いや、米軍があるから時間がかかるとか、もう長いこと待っておれないんですよ。本当に緊急に、喫緊の課題だと思います。急いでやらないと、ますます住民は苦しくなり、大変なことになっていく。そういう思いがあるということをぜひわかっていただきたいんです。

 もう一問やりたかったんですが、終わります。

甘利委員長 これにて東門君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして平成十六年度補正予算三案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題となっております平成十六年度補正予算三案に対しまして、賛成の討論を行うものであります。

 以下、本補正予算に賛成する主な理由を申し述べます。

 その第一は、追加の内容について十分に吟味した上で、緊急かつ真に必要な経費を計上していることであります。

 まず、昨年は、たび重なる大型台風や新潟県中越地震など例年を大きく上回る災害が発生いたしました。この災害への対応に万全を期すことは政府の責任であります。そこで、災害対策費につきましては、十六年発生災害等による公共土木施設等の災害復旧等並びに台風及び地震等による災害の防止のため緊急に対応すべき事業を推進するため、災害復旧等事業費、一般公共事業関係費及び施設費等を追加するのに必要な経費等を計上しております。

 次に、義務的経費の追加につきましては、生活保護法に基づく生活保護費負担金の十五年度精算不足額及び十六年度不足見込み額や、老人保健法に基づく老人医療給付費負担金の十五年度精算不足額及び十六年度不足見込み額などにつき、必要な補てんを行うなど、所要額を計上しております。

 また、その他の経費のうち、国際連合平和維持活動分担金につきましては、国際連合が行う平和維持活動部隊等の紛争発生地への派遣、停戦の監視及び治安の維持に係る分担金の支払いに必要な経費を計上しております。

 さらに、中小企業金融公庫出資金等につきましては、中小企業金融公庫の経営基盤の確保を図るため、中小企業信用保険準備基金に充てるための同公庫に対する出資等を行うために必要な経費を計上しております。

 このほか、行刑施設緊急整備費など、特に緊要となった事項について所要の経費を計上しているものであります。

 賛成の理由の第二は、財政規律の確保の面から見ても評価できる点であります。

 すなわち、既定経費の節減に取り組むとともに、公債の償還財源に充てるため、財政法に基づき、十五年度の決算上の剰余金の二分の一に相当する額を国債整理基金特別会計へ繰り入れるために必要な経費を計上しているほか、改革推進公共投資事業資金貸付金の一部について、償還期限を繰り上げて償還させることにより、国債整理基金特別会計への繰り入れを行っております。

 また、平成十五年度補正予算に引き続き、国債を増発せずに編成を行っております。

 以上、賛成する理由を申し述べ、賛成討論といたします。(拍手)

甘利委員長 次に、佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、平成十六年度補正予算三案に対し、賛成の立場で討論いたします。

 昨年来、国の内外で大規模な災害が続発しております。ここに、亡くなられた方々とその御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。

 民主党は、昨年秋の臨時国会において、速やかに災害対策の補正予算を編成するよう求めました。しかし、残念ながら、小泉内閣の対応は遅過ぎたと言わざるを得ません。小泉総理には猛省を促したいと存じます。

 また、災害対策の補正予算と言いながら、本補正予算案で災害対策費は全体の三分の一であるという点も大きな問題であると考えます。しかも、その災害対策費にしても、被災者が最も求め、本当に優先すべきは住宅再建支援なのに、それが決定的に欠けているのが実情であります。

 災害という個人の努力では防ぎ得ない不測の事態により物心ともに甚大な被害をこうむった被災者に対し、個人財産の回復に税金を使うのは妥当でないとする旧来の役人の論理をいまだに振りかざしているのでは、何のための政治かと言わざるを得ません。野党三党提出の被災者生活再建支援法改正案を早期に成立させるべきであることを強く申し上げます。

 さらには、例えば刑務所増設予算のように、本来本予算で講ぜられるべきことであり、災害対策とは関係のない公共事業や経費が含まれていることも問題です。また、生活保護費負担金が二千億円も含まれていることは、まさに小泉内閣の経済失政が経済の二極化をもたらしていることのあらわれであります。既定経費の節減にしても、そのほとんどが、金利が見込みよりも低かったことによる国債費の減額分であり、実際に何かを節減したというわけではありません。

 以上のように、本補正予算案には多くの問題がありますが、既に厳しい寒さと豪雪の中で不自由な生活を余儀なくされている中越を初め多くの被災者の方々と被災地地方自治体の切実な願いを思い、本補正予算案に賛成することといたします。

 以上で討論を終わります。(拍手)

甘利委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、二〇〇四年度補正予算案三案に対して、賛成の討論を行います。

 理由の第一は、本補正予算案の主な内容が、昨年の大型台風や新潟県中越大震災等に対する災害対策となっていることであります。予期せぬ自然災害で、とうとい家族の命を奪われ、住むところも働く場所も失った人々の悲しみは、想像を絶するものであります。本補正では、従来の枠を大きく超えたものとは言えませんが、災害の復旧、被災者への支援など、幾つかの分野で緊急かつ必要な措置が盛り込まれており、これらは当然のことであります。

 また、新潟中越大震災に関連して、がけ崩れ対策事業への補助など、県独自の要望をも反映しているのが特徴であります。

 第二は、今回の補正で税収の増加分と前年度決算の剰余金を財源として充てており、国債の新たな発行を行っていないことであります。普通国債の残高は、二〇〇五年度末には五百八兆円が見込まれ、日本の財政事情はますます深刻となっています。国民に多額の借金のツケを回さないためにも、新規国債の増発を行わない今回の措置は当然のものであります。

 以上、今回の補正予算案に対し、基本的に賛成するものであります。同時に、本補正では、被災地を中心に深刻となっている雇用対策が不十分であること、また、第二の思いやり予算とも言われるSACO関連経費やPKO分担金に多額の予算を計上するなど、問題点を含んでいることを指摘しておくものであります。

 今日、災害被害に対する対策は政治の責任であります。日本共産党は、今国会冒頭、民主党、社民党と共同で被災者生活再建支援法改正案を提出しております。これは、住宅本体再建への公的支援、つまり個人補償の実現に道を開いてこそ、真に被災者の願いにこたえ、抜本的な災害対策となるからであります。このことを改めて強調して、私の賛成討論とするものであります。(拍手)

甘利委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 私は、社民党・市民連合を代表して、二〇〇四年度補正予算について、被災地の切実な声を大事にし、賛成する立場から討論を行います。

 昨年は、集中豪雨、相次ぐ台風、新潟県中越地震などの大災害に見舞われました。災害被害に緊急に対応するために、社民党は、補正予算の早期編成を行い、昨年の臨時国会中に提出することを強く求めてきたところです。今回ようやく災害対策費一兆三千六百四十八億円の増額補正が行われますが、遅過ぎたし、額も不十分であると言わざるを得ません。

 加えて、補正予算は、財政法二十九条で、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費とされているにもかかわらず、行刑施設整備費や沖縄の米軍基地移転に関する日米特別行動委員会の経費、市町村合併推進体制整備費補助金などのように、災害対策とは言えないものや問題の残るものも含まれています。

 災害対策は、補正予算だけで終わりではありません。中越地震は中山間地帯で発生した地震であり、現行法だけでは被災地や被災者が望む対策が十分にできないことは明らかです。社会資本の再構築、農業、農村の再生、教育、福祉、医療等の再生、地域産業の再生と雇用の確保、地方財政措置などに万全を期すための特別立法措置を講じるべきです。また、被災者生活再建支援金を住宅本体の補修や改築、再建費にも適用できるよう、被災者住宅再建支援法を改正すべきであります。

 以上を申し上げて、賛成討論を終わります。

甘利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 これより採決に入ります。

 平成十六年度一般会計補正予算(第1号)、平成十六年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。

 三案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

甘利委員長 起立総員。よって、平成十六年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました平成十六年度補正予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

甘利委員長 次に、平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、審査に入ります。

 まず、三案の趣旨について政府の説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

    ―――――――――――――

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 平成十七年度予算の大要につきましては、既に本会議において申し述べたところでありますが、予算委員会での御審議をお願いするに当たり、その概要を御説明申し上げます。

 平成十七年度予算につきましては、歳出改革路線を堅持、強化するという方針のもと、従来にも増して、歳出全般にわたる徹底した見直しを行うとともに、活力ある社会経済の実現や国民の安全、安心の確保に資する分野に重点的に配分するなど、めり張りのある予算の配分を実現しました。

 まず、一般会計の歳出面については、一般歳出の規模は四十七兆二千八百二十九億円、一般会計全体の予算規模は八十二兆千八百二十九億円となっております。

 国家公務員の定員については、治安など真に必要な部門に適切に配置しつつ、行政機関職員全体として、七百二十八人の縮減を図っております。

 次に、歳出の主要な経費につきまして、順次御説明いたします。

 社会保障関係費については、介護保険につき、制度間の重複の是正や在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から、施設における給付を見直す等の取り組みを行うこととし、二十兆三千八百八億円を計上しております。

 文教及び科学振興費については、教育、研究の質的向上を目指した改革を進めるとともに、競争的研究資金の拡充等により、予算の質の向上を図っており、五兆七千二百三十四億円を計上しております。

 恩給関係費については、一兆六百九十三億円を計上しております。

 防衛関係費については、思い切った削減を行う中で、新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画を踏まえ、テロや弾道ミサイル等の新たな脅威への対応等に重点化を図りつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行うこととし、四兆八千五百六十四億円を計上しております。

 公共事業関係費については、全体として抑制しつつ、我が国の競争力の向上に直結する投資等への重点化を行うこととし、七兆五千三百十億円を計上しております。

 経済協力費については、戦略的かつ効率的な援助の実施に必要な経費を確保しつつ、人間の安全保障の推進等への重点化を行うこととし、七千四百四億円を計上しております。

 中小企業対策費については、新事業への挑戦や経営革新の推進を図るとともに、円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を行うこととし、千七百三十億円を計上しております。

 エネルギー対策費については、安定供給確保のための施策や省エネルギー対策等の地球温暖化問題への対応等を着実に進めることとし、四千九百五十四億円を計上しております。

 農林水産関係予算については、全体として抑制しつつ、構造改革の加速化や食の安全、安心の確保に向けた重点化を行うこととし、公共事業関係費のうちの農林水産関係部分を含め、全体で二兆九千六百七十二億円を計上しております。

 国債費については、十八兆四千四百二十二億円を計上しております。

 地方交付税については、地方歳出の見直しを行い、一般会計における総額を抑制すると同時に、地方に配分される総額について、地方の財政運営に配慮し、前年度と同規模を確保しております。

 この結果、一般会計からの地方交付税交付金を十四兆五千七百九億円計上し、地方団体に交付する地方交付税交付金としては、十六兆八千九百七十九億円を確保することとしております。また、地方特例交付金は、一兆五千百八十億円を計上しております。

 次に、一般会計の歳入面について申し述べます。

 租税及び印紙収入については、税制改正を織り込み、四十四兆七十億円を見込んでおります。

 また、その他収入については、三兆七千八百五十九億円を見込んでおります。

 公債発行予定額は、三十四兆三千九百億円となっております。特例公債の発行については、別途、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案を提出し、国会での御審議をお願いいたしております。

 以上、主として一般会計について申し述べましたが、現在三十一ある特別会計につきましては、我が国の厳しい財政事情のもと、そのあり方につき、従来から各方面より種々の指摘や批判が見られたところであり、引き続き、国全体としての歳出の合理化、効率化を図るため、財政制度等審議会の提言等を踏まえ、事務事業の見直しや事業評価の活用による事業の重点化等の視点から着実に改革を進めることとしております。

 また、政府関係機関の予算につきましても、資金の重点的、効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしております。

 財政投融資については、すべての財投事業について、財務の健全性等の総点検を行い、財政投融資残高において大きなウエートを占める住宅金融公庫について、民間で取り組んでいる直接融資を廃止し、都市再生機構について、ニュータウン事業から撤退するなどの見直しを実施しております。これにより、将来の財務上の懸念を解消し、財投事業の健全性を一層確かなものとしております。

 平成十七年度財政投融資計画については、特殊法人等整理合理化計画等を反映しつつ、事業の重点化、効率化に努め、総額を十七兆千五百十八億円に抑制しております。

 以上、平成十七年度予算の概要を御説明申し上げましたが、後ほど田野瀬副大臣より補足説明をいたします。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 なお、本日、本委員会に、「平成十七年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」及びこれに関連する「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」を提出いたしました。よろしくお目通しのほどお願いいたします。

甘利委員長 これにて財務大臣の説明は終わりました。

 財務大臣以外の大臣は御退席いただいて結構でございます。

 引き続き、補足説明を聴取いたします。田野瀬財務副大臣。

田野瀬副大臣 平成十七年度予算につきましては、ただいま財務大臣から説明いたしましたとおりでありますが、若干の点について補足説明いたします。

 初めに、一般会計歳出について補足説明いたします。

 社会保障関係費については、介護保険について施設における居住費用と食費に係る給付の見直しを行うとともに、国民健康保険制度について都道府県の役割、権限の強化に伴う都道府県負担の導入を実施するなど、歳出の合理化、効率化を行うこととし、二十兆三千八百八億円を計上いたしております。

 文教関係費については、教育、研究の質的向上のため、競争原理に基づく支援施策の充実等を図るとともに、義務教育費国庫負担金について、国と地方のいわゆる三位一体の改革に関する平成十七年度の暫定措置を講ずることといたしております。

 科学技術振興費については、予算の質的向上を図るため、総合科学技術会議による府省横断的な優先順位づけを活用しためり張りづけを進め、競争的研究資金の重点的拡充、基礎研究や経済活性化のための研究開発プロジェクトの推進等を行うこととし、一兆三千百七十億円を計上いたしております。

 防衛関係費につきましては、合理化、効率化を図りつつ、弾道ミサイル攻撃、ゲリラ・特殊部隊による攻撃などの新たな脅威や多様な事態への対応、統合運用に必要な体制の整備、情報通信機能の強化、国際平和協力活動への主体的かつ積極的な取り組み等を重視することとし、四兆八千五百六十四億円を計上いたしております。

 公共事業関係費については、治山治水対策事業費一兆七百五十七億円、道路整備事業費一兆六千九百八十五億円、港湾空港鉄道等整備事業費五千四百五十六億円、住宅都市環境整備事業費一兆七千二百六十億円、下水道水道廃棄物処理等施設整備費一兆千三百七十億円、農業農村整備事業費七千七百五十六億円、森林水産基盤整備事業費三千三百九十一億円、調整費等千六百九億円及び災害復旧等事業費七百二十七億円を計上いたしております。

 経済協力費のうち主なものとしては、二国間無償援助千七百六十五億円、独立行政法人国際協力機構運営費交付金千六百一億円、国際機関分担金・拠出金等千四百七十三億円及び国際協力銀行出資金千七百四十四億円を計上いたしております。

 中小企業対策費については、異分野の中小企業同士の連携への支援や、創業、新事業開拓に挑戦する人材の育成等を推進するほか、セーフティーネット対策に万全を期しつつ、証券化支援等、資金供給手法の多様化等により中小企業への円滑な資金供給を確保することとしており、中小企業対策費全体として千七百三十億円を計上しております。

 エネルギー対策費のうち主なものとしては、一般会計から石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計へ繰り入れ三千九百四十三億円及び原子力平和利用研究促進費等九百二十三億円を計上いたしております。

 農林水産関係予算のうち主なものとしては、食料の安定供給の確保に直接的に資する諸施策を実施するための食料安定供給関係費六千七百五十五億円を計上しております。

 三位一体の改革を推進し、その成果を平成十七年度予算に反映させたところであります。

 まず、国庫補助負担金について、税源移譲に結びつく改革のほか、スリム化を図ること等により、一兆八千億円程度の改革を行い、この結果を受け、所得譲与税による税源移譲を行うこと等により地方に対する財源措置を講じております。

 さらに、地方交付税について、地方歳出の見直しを行い、一般会計における総額を抑制すると同時に、地方に配分される総額について、地方の財政運営に配慮し、前年度と同規模を確保しております。

 今般の見直しの結果、地方の公債依存度、基礎的財政収支等の財政指標は大幅に改善することとなります。

 次に、一般会計歳入について補足説明いたします。

 国税収入全体の構成を見ますと、所得税の割合は三〇・二%、法人税の割合は二四・四%、消費税の割合は二一・五%になるものと見込まれます。

 なお、平成十七年度の租税等を基礎として国民所得に対する租税負担率を推計いたしますと、国税におきましては、一二・五%程度になるものと見込まれます。また、国税、地方税を合わせた負担率は、二一・五%程度になるものと見込まれます。この租税負担率に社会保障負担率を合計した平成十七年度の国民負担率は、三五・九%程度になるものと見込まれます。さらに、国民負担率に財政赤字の対国民所得比を加えた平成十七年度の潜在的国民負担率は、四四・八%程度になるものと見込まれます。

 また、その他収入の主な内訳は、外国為替資金特別会計受入金一兆四千百九十億円、日本銀行納付金三千三百五十二億円、日本中央競馬会納付金二千九百九十三億円及び国有財産売り払い収入二千三百四十七億円であります。

 財政投融資については、すべての財投事業について総点検を行い、財投事業の健全性を一層確かなものといたしております。

 さらに、主な機関について申し上げると、道路関係四公団については、平成十七年度中に予定されている民営化への円滑な移行を支援するため、財政融資資金からの融資を廃止し、調達資金の一部に対する政府保証の付与に移行することといたしております。また、教育の充実への取り組みとして、日本学生支援機構については、意欲と能力のある個人の自助努力を支援するために必要な有利子奨学金の貸付規模を確保しております。さらに、高齢化社会への対応として、福祉医療機構については、特別養護老人ホーム等の福祉・医療関係施設の整備に対応するための事業規模を確保いたしております。

 財政投融資の原資としては、財政融資について財政融資資金十一兆三百四十億円、郵便貯金資金四千三百億円、簡易生命保険資金七千五百億円を計上し、産業投資について千六十四億円を計上するとともに、政府保証について政府保証国内債四兆千二百二十九億円、政府保証外債七千八十五億円を予定いたしております。なお、財政融資資金による新たな貸し付け及び既往の貸し付けの継続に必要な財源として、財政融資資金特別会計国債三十一兆三千億円の発行を予定いたしております。

 平成十七年度予算を前提として推計いたしますと、平成十七年度に償還期限が到来する国債のうち日本銀行が保有している国債についての償還が対民間収支には計上されないこと等から、平成十七年度の財政資金対民間収支は、十一兆千九百九十億円の受け取り超過となります。

 以上、平成十七年度予算についての補足説明をいたしました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

甘利委員長 次に、西川内閣府副大臣。

西川副大臣 予算の参考資料として、お手元にお配りしてあります「平成十七年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について御説明いたします。

 これは、去る一月二十一日に閣議決定したものであります。

 政府は、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四を策定し、この基本方針も踏まえつつ、構造改革の取り組みを進めているところであります。

 政府としましては、平成十七年度においても、改革なくして成長なし、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にという方針のもと、各分野にわたる構造改革を引き続きスピード感を持って一体的かつ整合的に推進するとともに、日本銀行と一体となってデフレ克服を目指した政策努力をさらに強化し、民間需要主導の持続的な経済成長を図ってまいります。

 さらに、地域再生の本格的な枠組みを構築し、各種政策手段を組み合わせた地域の地力全開戦略としての取り組みを強力に推進します。また、活力ある中小企業の革新と再生を積極的に支援してまいります。

 こうした経済財政運営のもとで、平成十七年度の経済見通しにつきましては、世界経済の回復が続く中で、生産や設備投資が増加するなど企業部門が引き続き改善することを背景に、景気回復が雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及する動きが強まり、消費は着実に増加すると見込まれることから、我が国経済は、引き続き民間需要中心の緩やかな回復を続けると見込まれます。

 物価につきましては、政府、日本銀行一体となった取り組みを進めることにより、デフレからの脱却に向けた進展が見込まれます。

 こうした結果、平成十七年度の国内総生産の実質成長率は一・六%程度、名目成長率は一・三%程度になると見通しております。

 以上で、「平成十七年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」についての説明を終わります。

甘利委員長 以上をもちまして補足説明は終わりました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま説明を聴取いたしました平成十七年度総予算の審査中、日本銀行及び公団、事業団等いわゆる特殊法人並びに独立行政法人の役職員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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