衆議院

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第4号 平成17年2月2日(水曜日)

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平成十七年二月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    川上 義博君

      河村 建夫君    北村 直人君

      久間 章生君    小泉 龍司君

      後藤田正純君    菅原 一秀君

      竹本 直一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 恭一君

      津島 雄二君    西川 京子君

      西野あきら君    根本  匠君

      萩野 浩基君    福田 康夫君

      二田 孝治君    村井  仁君

      森田  一君    石田 勝之君

      一川 保夫君    岩國 哲人君

      生方 幸夫君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    佐藤 公治君

      篠原  孝君    島田  久君

      仙谷 由人君    津川 祥吾君

      辻   惠君    中井  洽君

      中津川博郷君    中塚 一宏君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      鳩山由紀夫君    原口 一博君

      伴野  豊君    樋高  剛君

      松木 謙公君    吉田  泉君

      米澤  隆君    井上 義久君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      田端 正広君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君    山本喜代宏君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        滝   実君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   国土交通副大臣      蓮実  進君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   総務大臣政務官      松本  純君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣府経済財政分析担当・計量分析室長)     大守  隆君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     川上 義博君

  北村 直人君     西野あきら君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  西川 京子君     久間 章生君

  萩野 浩基君     菅原 一秀君

  石田 勝之君     島田  久君

  生方 幸夫君     一川 保夫君

  吉良 州司君     松木 謙公君

  篠原  孝君     鳩山由紀夫君

  辻   惠君     仙谷 由人君

  中井  洽君     佐藤 公治君

  永田 寿康君     吉田  泉君

  米澤  隆君     伴野  豊君

  佐藤 茂樹君     長沢 広明君

  坂口  力君     井上 義久君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     竹本 直一君

  久間 章生君     西川 京子君

  菅原 一秀君     萩野 浩基君

  津島 恭一君     津島 雄二君

  西野あきら君     北村 直人君

  一川 保夫君     生方 幸夫君

  佐藤 公治君     中井  洽君

  島田  久君     石田 勝之君

  仙谷 由人君     辻   惠君

  鳩山由紀夫君     篠原  孝君

  伴野  豊君     米澤  隆君

  松木 謙公君     吉良 州司君

  吉田  泉君     永田 寿康君

  井上 義久君     坂口  力君

  長沢 広明君     佐藤 茂樹君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     河村 建夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府経済財政分析担当・計量分析室長大守隆君、内閣府政策統括官柴田高博君、警察庁刑事局長岡田薫君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、文部科学省初等中等教育局長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久間章生君。

久間委員 おはようございます。十七年度の予算に関連して各大臣の皆さん方に御質問したいと思います。また、総理には最後に御意見を伺いたいと思っております。

 まず初めに、郵政の民営化についてでございますけれども、大分国民の関心も高まってきたようでございまして、きょうの新聞等でも、賛成、反対、いろいろな意見が拮抗しておるようでございます。ただ、最近、政府がいろいろと説明しておられるのを聞いておりまして、また総理もそういうような言い方をされておるわけですけれども、郵政の民営化、いわゆる郵政公社を民営化することによって官のお金が民に流れるようになるんだ、そういうような話があるわけであります。

 しかしながら、郵便局が果たしてきた、いわゆる郵便貯金として国民の皆さん方の貯金を利用して、財政投融資という形で重点的にそれを必要なところに持っていく、そういうようなやり方でこれまで日本の郵便貯金が果たしてきた役割、あるいは簡易保険が果たしてきた役割というのは非常に大きかったわけですけれども、だんだんと国全体としてお金が余ってまいりまして、民間でも金が十分にあるときに国がそこまでやらぬでもいいんじゃないか、もう少し民の方にシフトしていいんじゃないかというようなこと、財政投融資が少しむだにも使われているんじゃないかというようなことから、そこにメスが入れられて財政投融資制度が改革をされたというのは、皆さん御承知のとおりであります。

 したがいまして、財投の制度が変わったわけでありますから、現在の郵政公社のお金が郵政公社のままで、官のまま使われるということにはもうなっていないわけであります。財投改革を行ったときにその辺を非常に強調してやられまして、私たちもその方向で納得してそういう制度に変えたわけでありますが、その辺について、財務大臣、どうなっているのか、お尋ねしたいと思います。

谷垣国務大臣 財投改革をするまでの財投制度は、委員がおっしゃいましたように、郵貯あるいは年金と密接に結びついた制度でございまして、そこからの預託金を原資として特殊法人などに貸し付けていくという制度でございました。

 今委員がおっしゃいましたように、だんだん我が国も発展してまいりますと、財政政策上のニーズよりも、むしろ、これだけ金が集まってきたから、それをどう回していくかというような運用ニーズを優先させて制度が運営されているのじゃないか、そのことが特殊法人などの財投事業がやたらに肥大化していく原因になったのではないかという批判がございました。

 こういった批判を踏まえまして、平成十三年度にいわゆる財投改革を行いまして、郵貯等の義務預託によって資金が自動的に財投に入ってくるということを遮断する、それと同時に、真に必要な資金だけを市場から集める仕組みにしていこうということで、いわゆる財投債や財投機関債の仕組みをつくりまして、移行を図った。こういうことによりまして、特殊法人といったものの効率化あるいは改革にも役立つのではないか、こういうことでやってきたわけであります。

 平成十三年度以降、こういう改革を進めてまいりまして、財政投融資対象事業の見直しとか重点化を推進してまいりました。その結果、平成十七年度の財投計画の規模、これは十七兆でございますが、ピーク時の約四割というような形に圧縮をしてまいりました。

 それから、今般、すべての財投事業について財務の健全性といったものの総点検を行いまして、今財投残高で大きなウエートを占めておりますのは住宅金融公庫とか都市再生機構でありますが、住宅金融公庫については、民間でも直接融資みたいなものは取り組んでいるじゃないかということで、これはもう廃止しよう。それから都市再生機構についても、ニュータウン事業、これからはもう撤退するといった見直しを実施いたしまして、今まで、財投機関に財務上の懸念があるんじゃないか、あそこが不良債権の巣窟になっているんじゃないかというような見方がございましたけれども、この財投機関に対する将来の財務上の懸念というものを解消して、財投事業の健全性を確実なものにする、こういうことをやってきたところでございます。

 ただ、まだ過渡期でございますから、平成十九年度までは引き受けていただくというような制度が残っております。

久間委員 今財務大臣がおっしゃられましたように、財投改革によって、従来のように郵便貯金がそのまま官の事業に使われる、いわゆる特殊法人に使われるということではなくなったわけでありますから、そういう意味では、この郵政公社が現在のままあっても、あるいは民営化されても、そのスタイルは基本的には変わらないわけです。

 ただ、私は、郵貯を民営化するということには基本的には賛成でありますけれども、それは、そういうふうに官の金を民間に持っていくというんじゃなくて、今までみたいに、簡保も合わせて三百兆円を超えるお金を公社として持っているときに、それを民間的な手法を使わなかったならば運営できるんだろうか、そういう懸念がありますから、そういう意味では、郵貯とか簡保のお金をもう少し民間的な能力、ノウハウといいますか、そういうものを入れながらやっていくということについては、基本的には私は必要だと思っているわけです。しかし、官の金が民営化したらすぐ民に移ってしまうんだという言い方は、そういう意味では正確でない。そこのところにどうも国民の皆さん方に違和感があって、いま一つすとんと落ちないところがあるんじゃないかな、そう思うわけですね。

 それともう一つは、確かに総理がおっしゃるように、二十八万人の国家公務員がおって、そしてまたそれに付随する臨時の約十万以上、合計で四十万もの公務員がそれに従事している、全体で。それについてはちょっと異常だなという感じはいたします。

 しかしながら、この公務員というのは、今までの郵貯の中で運営された、郵貯といいますか郵政事業の中で運営されていましたから、税金でいわゆるこれを払っているわけじゃありません。だから、そこのところを、どうもこれを、働いている人たちあるいはまたそれを取り巻く人たちから見ると、公務員がやっているからけしからぬ、それじゃ民間に、民営化されたら民間になるんだ、そこで必ずしもメリットが生じるか、そういう素朴な疑問がやはりあります。そこのところももう少し何か、みんながもろ手を挙げて賛成というところに来ないのは、その辺にも事情があるんじゃないかなと思うわけです。

 だから、そういうことを考えますと、この郵政の民営化というのは、もう時代の流れであって、それはやむを得ないけれども、どういう形でそれを民営化しなきゃならないのか、そういう説明をもう少し国民の皆さんに浸透するような形で説明してもらいたいものだと思うんですけれども、竹中大臣、その辺についてはどうお考えですか。

竹中国務大臣 久間委員から極めて本質的な重要な御指摘をいただいたというふうに思っております。

 今財務大臣から御説明がありましたように、日本の場合、非常に特徴的だと言われた財政投融資の制度があった、この改革は既に始まっているわけでございます。簡単に言いますと、郵貯から直接財投機関にお金が流れるのではなくて、郵政等々で集めたお金が市場で運用される、また財投機関は財投機関としてさまざまな形で市場から運用する、そういう仕組みに変わりつつある段階であるということだと思います。

 そうしますと、今まさに委員御指摘のように、今度は入り口の改革、これがまさに本丸としての郵政、郵貯の改革でございますが、その場合に郵政が、今までのように制度的にお金が流れる仕組みがなくなっていく以上、しっかりとした、みずからで運用できるような力を持たなければいけないのではないか。実はそのために、まさに御指摘のように、民間の自由な発想、そして民間の柔軟な対応が必要なわけで、私は、そこにこそ郵政民営化のやはり必要な、最も重要なポイントがあろうかというふうに思っております。その意味では、このままではなかなか運用ができなくなるぞ、将来先細りになるぞという健全な危機感をやはり持つ必要があるのではないかと思います。

 実は、同じことは、これは郵便事業にもございまして、郵便というのは、今Eメール等の普及で毎年二%から二・五%ずつ取扱高が減っているわけでございます。これは将来さらに減るだろうということは多くの方々が予想している。もしもこういう状況が十年続きますと、郵便の取り扱いが十年で二割、三割減るということは十分ある。

 であるからこそ、実は、もう十年以上前から世界じゅうの郵政、郵便が大変な危機感を持って、やはりこのままではだめだ、何とかここに柔軟な民間の創意工夫、柔軟な経営を入れて対応していくことが必要ではないかということで、世界的にこの郵政の改革は進んでいると認識をしております。そうした中で、オランダ、ドイツ、イギリス、イタリア等々が民営に踏み切った。

 委員御指摘のように、これは特に金融に関してでございますけれども、技術革新がすさまじく速い中で、しっかりと経営の自由度を持っていただいて、将来的には、民間機関としての責任ある資産と負債の運用、ALMを行っていただいて、しっかりと貸し付け等々の力もつけていただいて、結果的に民間部門にお金が回るような仕組みをつくっていく。そういうところをまさに郵政の改革は目指しているわけでございまして、そのような趣旨、これはなかなか技術的なところもございますが、我々としても、ぜひもっとしっかりと説明をしていきたいというふうに思っております。

久間委員 時代の流れとして、そういうふうに官から民へお金が行く、そしてまた、今のままやっておったのでは恐らく、郵便貯金で集めた、あるいは簡易保険で集めた金の運用がそんなに、これまでみたいに順調にいけないんじゃないか、そういう危惧を私も持っています。

 だから、今までも郵便事業が、どちらかというと郵便貯金とか簡易保険とか、そっちの方で稼いでくれている分がかなり応援団になっておったからやれておった。ところが、そっちの方が、三百兆の金も運用がなかなか難しくなってくるし、だんだんそこは縮小してくるだろう、利幅も減ってくるだろう。そうすると、郵便事業だって、今までのままではやっていけないかもしれない。あるいはまた、今言われたように、郵便事業はこれから先、小包は別として、郵便事業のうちの信書の方なんかも、やはりEメールその他の、そっちの方が使われるようになったら減ってくるだろう。そういう意味では、大変心配なことは心配であります。そのために、何かこのままのやり方ではちょっとよくないんじゃないか、そういう懸念はみんなも心配しておるわけですから、そこに何か知恵を働かさなきゃならないというのは、私も同じでございます。

 ただ、そこでちょっと気になりますのは、郵便という、信書についてはやはり非常に公的な性格があるわけでありまして、それを全く民間に任せてしまっていいのか、そういう不安感が国民の中にもありますし、また皆さん方の中でも、そういう公的機能をどうするのか、そういう問題があるんじゃないかと思うわけです。

 そこできょうは、法務副大臣がお見えになっておれば、法律もお詳しいから副大臣で結構ですけれども、法務省で、例えば民事訴訟法で特別送達、まあ公示送達と言うかもしれませんが、そっちの仕組みがありますが、これは必ずやはり今の民事訴訟法では公務員をして送達せしめるような、そういうことになっていますから、その辺についての現在の法的な取り扱い、これについてちょっと述べていただきたいと思います。

滝副大臣 民事訴訟法の関連でのお尋ねでございますから、法的な問題として、私の方から御答弁をさせていただきたいと存じます。

 委員がおっしゃるように、民事訴訟法におきましては、裁判所の送達は原則として執行官ないしは郵便による、こういうふうに規定されているわけでございまして、郵便による送達につきましては、郵便の業務に従事する者を送達する公務員とするというのが民事訴訟法九十九条の条文に規定されております。これを受けまして、同じ民事訴訟法の百九条で、送達をする公務員は、送達した場合には書面を作成して送達に関する事項を記載してこれを裁判所に提出しなければならない、こういうことでございますから、いわば郵便を送達する公務員はそこで公文書を作成する、こういうような建前を民事訴訟法で規定しているわけでございます。

 これを受けまして、郵便法の六十六条で、郵便の世界ではこれを特別送達というふうに規定をいたしまして、細かな規則でさらに扱いについて規定をしている、こういうような建前になっているわけでございます。

久間委員 今おっしゃられましたように、やはりどうしても、こういう公務員をして送達するという制度がある以上は、公的機能といいますか、それが残るわけですね。これが、だから、そういう意味では全く民営化するというわけにはいかぬわけで、どんな場合でも、やはりせめてみなし公務員みたいな、そういう制度を置くか、何らかのほかの方法をつくらなきゃならない。

 ところが、裁判所がそのために自分のところでそういう公務員をつくって配置して、いつあるかわからぬのにそういうのを使おうと思ったら、それは実際、行政改革に逆行するわけですから、そういうことはできない。そうなってくると、やはりここの問題は真剣に考えなければいけないんじゃないかなと思います。

 ついでですから、ちょっとこの際私の方から言っておきますけれども、この特別送達を利用した形で、最近、おれおれ詐欺といいますか、ああいうたぐいの詐欺が非常にふえているわけです。裁判所、簡易裁判所に行きまして、とにかく債権があるという形で文書をつくってもらいまして、督促状を出して、それで裁判所がそれを持っていくわけですよ、郵便局を通じて。そして、持っていきますと、それに対して二週間以内に異議の申し立てをちゃんと書かなきゃ、これは債権が確定してしまうわけですね。

 ところが、そういうときに、とにかく郵便局の配達人が持っていって、これが来ていますよといったときに、例えばおばあちゃんならおばあちゃんとしましょう、何か知らぬけれども、ああそうですかと受け取って、息子が帰ってきたときに出せばいいなと思っておったら二週間たってしまったというようなことだってあるわけですよ。

 だから、特別送達、きのうも風間先生が言っていましたけれども、あれはにせの通知でやった場合ですけれども、本物を使って、そして督促状をその中に入れておいて、そして返ってこないために債権が確定する。そういうときに、やはり、今の郵便局じゃないけれども、そういうような配達だったら、おばあちゃん、これね、二週間以内に返事書かないとだめになるんだよというようなことを、そこでコミュニケーションがあるとか、非常に地方ではそういう意味で郵便局というのは今でもありがたいと思われている点があるわけですから、特別の送達員を置くというよりもやはり郵便局を、そういう形でも、ちゃんと日ごろからやっておった方がいいんじゃないかなと思う。これは余談ですけれども、そういう問題が最近は非常に発生していますから、これは非常に大事なことなので、用心してもらいたいと思います。

 ところで、もう一つ、そういうことで、この機能の中に内容証明とか配達証明というのがあります。これもやはり公的な機能を持ち合わせている郵便局の機能じゃないかと思うんです。だから、ここら辺を考えますと、やはりどうしても、郵貯と簡保については完全民営化ができたとしても、郵便事業、郵便事業のうち特に、小包とかあるいは郵便番号で流れていく、そっちの方はもう民営化されてもいいですけれども、配達とかあるいは内容証明を受け付ける窓口、これについてはどうしてもそういうような機能が残るので、ここは完全民営化はできないということを最初に観念しておった方がいいと思うんですよ。それについての竹中大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 特別送達、内容証明等々、いわゆる郵政が担っている公的な機能というのは、私自身もこれは極めて重要であると思っております。大臣になりましてから三年九カ月、一体何通の内容証明郵便を私自身も出したことかというふうに思っているところでございます。

 この議論を、郵政民営化の議論を始めた極めて初期の段階から、久間委員、このことの御指摘をしてくださっておりまして、改めて、今、制度設計の中で、その洞察力に敬意を表するところでございます。基本方針におきましてもこの点は大変重視をしておりまして、特別送達等の公共性の高いサービスについては提供義務を課す、これは必要だということは我々明らかにしているところでございます。

 その上で、それをしっかりと制度として担保するために、これはしっかりとした工夫をしなければいけないと思っております。今、委員からは、例えばみなし公務員というお話もございましたけれども、こういうやり方がよいのか、また別の工夫があるのか、今しっかりとさまざまな角度から適切な制度設計に取り組んでいるところでございます。

 この点につきましては、自民党からの申し入れの中にも非常に強い問題意識が示されておりまして、与党ともしっかりと協議をしながら納得のいく制度設計をしてまいりたいというふうに思っております。

久間委員 それから、郵政民営化の問題でもう一つお聞きしておきたいんですけれども、この二十八万人、現在二十八万人で、年金をもらっている人は二十四万人おられるのですね、たしか。だから、二十八万人で二十四万人を支えているわけです。これが民営化されますと一体どうなるのか。厚生年金に移ってしまう。

 ちょうど国鉄が厚生年金に移ってしまいました。そのときには、厚生年金の方が持参金を持ってこいということで、その持参金を出すために随分苦労して、当時の国家公務員共済はかなりの金を出しました。それでも足らなくて、あのときは、たばこを吸う人には悪いですけれども、一本につき一円ずつ出して一兆円の金を出した。あるいは、郵貯もたしかそのときに五年間かかって、郵貯で上げた利益の中から交付金か何かの格好で二千億ずつ五年間で一兆円出した、そういうことがあったわけですね。これはなぜかというと、国鉄は、もう事実上つぶれてしまってといいますか、破綻してしまってから慌ててやったものだからそういう形になったわけですね。

 そういう意味では、これから先、郵便貯金その他が先細りになっていって、そういうことのないように今のうちからこれについて考えておこうというのは非常にいいことなんですけれども、この年金の問題については、しかしボリュームが大きいだけに、これが厚生年金に移っていったら、厚生年金の方も大変だけれども、また、今全体の国家公務員共済の中で郵政が果たしている役割というのは約四分の一ぐらいあるわけですね、それがごそっと抜けられると、こちらの共済の運営も確かに大変になってくる。

 そういうことを考えると、これは非常に難しい問題ですから、将来の国家公務員共済あるいは厚生年金、全部の一元化の中で議論するのはわかりますけれども、今度の民営化をする場合には必ずこの問題は避けて通れない問題だと思うんですけれども、これについてはどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 職員の方々の年金についてのお尋ねでございます。

 基本原則で、これは雇用についてはしっかりと配慮するんだということを明記しておりますが、同様に基本方針の中で、その待遇について制度設計の中で十分工夫するということを我々も明確に述べているところでございます。これは、やはり職員の方々の納得、安心が得られないとよい改革というのはできませんから、御指摘の点は極めて重要だと思います。

 その場合、これは今後職員の方々ともしっかりと話し合いをして、非公務員化していくとした場合に、自然な流れとしては、国家公務員共済から厚生年金ということに自然の流れとしてはなるのかもしれませんが、それはそれほど簡単ではないという御指摘もそのとおりだと思います。共済に占めるウエート、組合員の数でも受給権者の数でも四分の一を占めているわけでございますから、そういった意味での影響というのを十分に考えなければこれはいけないというふうに思っております。

 国鉄の例が出されましたが、国鉄や電電公社の民営化の際も同じ問題がございました。結局、どのようにしたかというと、非常に時間をかけてしっかりとした調整を行って、十年から十二年の年月をかけてその制度を移行させたという経緯があるというふうに承知しております。

 こういった例も念頭に置きながら、この職員の待遇については、待遇に関して不利益が生じないようにするということ、それと、公的年金制度の安定性、公平性を確保するようにする。与党初め関係者の皆さんと十分に意見交換をしまして、適切な、問題が生じないような制度にしていきたいと思っております。

久間委員 それから、もう一つ問題を言っておきますと、全部会社が別々になります。今のおたくらが言っておられる案のとおり四つになるとすると、郵便貯金あるいはまた簡易保険、そういったものを扱っている会社が、今度は、窓口ネットワーク会社といいますか、要するに特定郵便局を初めとするそういう郵便局会社、こういうところにいろいろなことを窓口としてお願いするわけですね。そうすると、別会社ですから、普通の状態でいくと、そこに消費税が発生するわけですよ。

 ところが、いろいろな銀行にしても保険業界にしても、本店と支店との関係では、それは支店ですから消費税は発生していないわけですね。ところが、今度の場合は、窓口ネットワークといいますか窓口会社といいますか、郵便局会社の場合は別会社ですから、黙っておったら消費税が発生することになるわけです。

 これは、消費税、今の五%でも大変ですけれども、ましてや、これから先七%、一〇%に上がってきた場合は大変なことになりますね。だから、そういうことについては特別な配慮をしなけりゃならない。ところが、特別な配慮をしようとすると、やはりそこの郵便局会社だけ何でそういう配慮をするんだということになります。しかし、形式的に言えば、全く同じような、本支店関係みたいな関係ですから、消費税を取るのもおかしい。そういうことから考えますと、やはりこの特定郵便局会社というのは、何か特殊会社、さっき言った公的機能も持っていますし、特殊会社として位置づける必要があるんじゃないかなと思うんです。

 だから、そういう意味で、特殊会社というと、さも民間じゃないといいますけれども、例えば日銀なんかを見てみても、あれは株式会社ですよ、五一%は政府が株を持っていますけれども。ところが、日銀、あれもみなし公務員になっているわけですね。だから、そういうふうなことを考えますと、何かそういうような知恵を出さないと、いろいろな問題がクリアできないんじゃないかと思うんですけれども、それらについてはちゃんと考えておられるかどうか、お尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 私たちが制度設計上、大変ある意味で苦労しているところを次から次へと御指摘をいただきまして、ある意味で大変心強く思っているところでございます。先生の御意見を入れながら、よい制度設計をしたいと思っております。

 消費税そのものについては、これはもう言うまでもございませんけれども、国内において事業者が行った事業に対して対価を得て行われる資産の譲渡でありますとか資産の貸し付け、役務の提供といったものに課せられる。したがって、税の理論から申し上げますと、民間会社が窓口ネットワークに業務委託した場合には、役務の提供として消費税が課税されるということになります。

 その上で、さはさりながら、この郵政という会社の性格やそれまでのもろもろの要因を考えて、これをどのようにするかということは、これは今皆さんとも協議をしながらいろいろなことを議論している最中でございます。今先生が御指摘のような問題意識は持っておりますが、一方で、税の論理として、その整合性をどう保つかという点も重要な問題だと思っておりますので、今の御意見も含めまして、税制も含め、与党とも十分協議しながら、納得のいく改革案にしたいと思っております。

久間委員 私は、特別な会社というのは、特殊会社といいますか、みなし公務員というと、何かしら非常に、今の公社とさも差があるように思われがちですけれども、だから特定郵便局長さんにも言っているんですよ、あなた方は日銀の支店長だ、そう思えばいいじゃないかと。そんな話をしながら、そういうような位置づけにしてやったらいいんじゃないかなというような、そういう思いも私自身、個人としてはあります。

 ところで、こういう形で、ネットワーク会社といいますか、そういうような形でいろいろやっていきましたとき、郵便貯金会社と簡保会社、これは将来、これが高く売れるなら売ったらいいという話があるわけです。私はそれでいいと思うんですよ。

 ただ、これが、こういうことを言ったらちょっと、腹を立てずに聞いておいてもらいたいんですけれども、竹中大臣が言われますと、どうも郵貯の持っている金を外国企業に買われてしまうんじゃないか、長銀のときにあんなふうになったじゃないかとすぐ連想してしまって、そういうようなつまらぬいろいろなことを考える人がおるわけですよ。だから、郵貯会社とか簡保会社を売るときは、やはり五一%、五〇%以上を政府が手放すときには国会の承認をもらうぐらいの、そういうようなことでやっておれば、そういう危惧をする人も余り心配しないと思うんですよ。

 だから、やはり国会の承認を得て売りますぐらいの、それぐらいのことで、将来心配はかけませんと。まあ十年先の話なんですけれども、そういうことをみんなに安心感を持たせないと、何かアメリカからハゲタカファンドが来てぱっと持っていくんじゃないかというふうなことを、そういうつまらぬ発想でこの話が壊れたら大変なことになりますので、どうですか。

竹中国務大臣 私は日本を愛しております。いろいろな議論があるということは承知をしておりますが、まさに先ほどの税の議論と同じで、税の論理、ないしは内国待遇の同等化の論理、そういう中で、やはり多くの方々が納得する制度をつくらなければいけないというふうに承知をしております。

 久間委員の持論は私もかねてから存じ上げておりまして、なるほどと思う面が確かにございます。しかし、今の制度の中でも、例えば主要株主の規制等々、さまざまな制度がございますので、そういうものも考慮に入れながら、これはある意味で世界じゅうが注目している大きな改革でもございますので、私の愛国心、それと世界から見られた場合の評価を両方しっかりと勘案しまして、納得のいく制度に仕上げたいと思っております。

久間委員 このグローバル化時代にグローバルのいろいろな問題を取り上げておられるから非常に気の毒でありますけれども、えてしてみんなが、変なスズメたちが、無国籍じゃないか、そういうようなことを冗談に言うのに、私は、今言われたように国を愛する立派な大臣だと思っておりますから、どうかひとつ頑張っていただきたいと思います。

 さて次に、三位一体の改革に関連いたしまして、総務大臣の方にお尋ねしたいと思います。

 実は、十七年度の予算編成に当たりまして、大分地方の皆さん方からも、地方交付税が減ってしまうんじゃないか、そういう批判、心配がございました。総理からも、やはりこの改革を、三位一体の改革を推進しているときにそういう懸念を地方から持たれたらいかぬのだから、党の方においてもしっかりここは担保せねばいかぬぞ、そういうような指摘を受けておりました。

 結果としては安堵するようなことになったんだろうと思いますけれども、来年度の、今度の十七年度予算において、交付税については地方のそういう心配がなくなったのかどうか、昨年度と比べてどうだったのか、総務大臣からお答えを願いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘をいただきましたように、今年度、平成十七年度の地方交付税等々につきましては、地方六団体の中から、特に町村長からは、最大の関心事がこれだったと思っております。

 結果的には、御存じのように、やはり国と地方との信頼関係が、昨年度、地方交付税の大幅減等々によってかなり損なわれていたと思っております。そういった意味で、特に財政力の弱い団体の方からは、非常に厳しい予算を組まなければならないということになって、大変いろいろ御意見が出たのは御存じのとおりであります。

 先ほど御指摘のありましたように、総理等々からも、少なくとも平成十七、十八年度、いわゆる三位一体改革をやっておる間においては約束はきちんと守る、地方六団体に対して改革案を投げ、その改革案を受けた、それを真摯に受けとめて対応しないとこれは約束違反になる、信頼を大いに損なうからきちんとやらねばならぬという御指摘をいただいておりましたので、少なくとも今回は、歳出の削減等々につきましては地方の納得を得た上での話でなければということで、形としては、財政力格差がさらに拡大するというようなことがないような形で決着をいたしております。少なくとも、地方団体が最も不安に思っていたところはかなりの部分が解消され、結果としてそれなりの評価もいただいたと思っております。

 また、地方財政はそういった中において削減をしなければならぬ、スリム化しなければならぬという点も確かです。いろいろ今御指摘が出ておりますけれども、いろいろありますので、その中にはきちんとやっているところもあればそうじゃないところも、いろいろ格差があることは、もう三千も二千五百もありますので、いろいろ地域によって差が出ておるのは確かであります。

 そういった中にあって、傍ら、国民の最大の関心事は治安の悪さということが最大の関心事というのはあらゆる世論調査がそうなっておりますから、治安の解消という点につきましては、これは何も歌舞伎町だけの話ではないのであって、いわゆる都市近郊の地方におきましては、警察官と県民の数との格差が著しい。七百人を超えるような地域においては圧倒的に犯罪発生率が高いという数字も出ておりますので、警察官の増員は必要ということで、過去三年間、警察官の増員をやってまいりましたが、まだ足りないということで、今年度さらに三千五百人を追加いたしました上で一万二千四百人純減するなど、いろいろしております。

 問題は、御質問になられる一番のところは、多分、所得譲与税のところなんだろうと思っております。

 これは、所得譲与税というものが今回のルールによって六千九百十億円ふえておりますが、ふえた分だけ、例のパーセント、三二%のパーセントで、その分だけ減るじゃないかと。だから、三二%掛けて二千二百ぐらい減ることになりますので、その分はどうするんだというところが一番御意見の出てくるところかなと思っております。これはルールがありまして、補てんするルールになっておりますので、そこのところはきちんと補てんをした上でやっていかねばならぬところだと思っております。

久間委員 地方の人たちも、税源譲与してくれ、してくれという話、それは、税源譲与すると、今言われるように、所得税、法人税、そういった一定比率が交付税に行くわけですから、交付税は自動的に減るわけですよね。だから、そこのところはやはり知っておいてもらわぬといかぬわけです。

 ただ、その一方で、今の交付税のそういうような算出の仕方が果たしていいのかどうか。やはり日本全体をバランスよくするためには交付税が必要なわけですよ。所得税の、あるいはまたそういう税源譲与でいったときには、どうしても、総論としてはいいわけですけれども、各論になってくると、富めるところと貧しいところとあるわけですから、その貧しいところにどう配慮するかがやはり政治なんですね。そうすると、今までのままではうまくいかないんじゃないかなという気がします。

 そしてまた一方、交付税を、決まったとしても、その交付税を全国に分配するやり方も、従来の人口比率だとか、あるいは道路の、国道なりなんだという道路の数が多いところとか、そういうところで決まっていますけれども、これも戦後ずっと決まったのがそのままルール化されていますけれども、それもおかしいんじゃないか。

 本当は、交付税というのは、例えば森林面積が広い、これはCO2なんかを吸収してくれている。東京みたいに炭酸ガスをどんどん吐くのを、森林面積が大きいためにそういうようなところで吸収してもらっている。しかし、そういうところは産業活動は活発に行われない、人口は少ない。少ないけれども、そういったところにも人が住んでおいてくれないと、数は少なくとも住んでおいてくれないと、そういうところに密入国とか密輸とかがあってしまう。人口が少ないとそこには警察官も少ない、そういうことになるわけですね。

 私が防衛庁長官のときに、下甑島というところに不審者が入ったというので、消防団が全部人捜しに動員されましたから、自衛隊も一緒に行ったところが、朝日新聞が、何で、どんな根拠で自衛隊が捜すんだという話が出て、そんなこと、消防団と一緒に、村人なんだから、やらなかったらおかしいじゃないか、しなかったら問題だというようなことを言って、余り、一回書いただけで終わっちゃいましたけれども、そういうような離島あるいは国境の町、そういったところは、過疎化してでもそこは人が住んでもらわなきゃならないわけですね。

 今までは、政治の知恵として、そういうところで公共事業をやったりなんかしながら、そこは人が、経済活動がないものだから、そういう形で残しておった。ところが、最近は、それがなかなか通らなくなってきた。通らなくなってきたら、ここは地方交付税かなんかで、そういうのでカバーせざるを得ないというふうに私自身は思うんです。

 ところが、ずっと一貫して同じような形で交付税の配分がされておる、そこにも問題があるんじゃないかと思うので、やはり、この改革期間中あるいはその直後に、そういう交付税についても、算定基準なりあるいは配分基準なり、それについて一考を要する時期に来ているんじゃないかと思うんですけれども、総務大臣の意見を聞きたいと思います。

麻生国務大臣 まことにごもっともな御質問だと存じます。

 何となく、人口一人頭幾らという話だけがすべての正義のような話がまかり通るのは、都市部の話ではよくわからぬわけじゃありませんけれども、現実問題、例えば八丈島の南七十五キロに青ケ島という島があります。人口はたしか二百一人。日本で一番小さな行政体が二百一人だと思うんですが、その二百一人のところにも人が住んでもらっているから、いわゆる竹島みたいな話にはならぬ。何となくそこに、無人島だったら、いきなり人に住みつかれたりなんだと言われたら、どうにもならないことになるわけですから。

 そういった意味では、そこに住んでもらっているがゆえに、いろいろなややこしい問題が起きずに済んでいるという実態等々というのは、これは現実問題として我々は大事にしておかないかぬところだと思っておりますので、先ほどおっしゃいましたように、いろいろ、水やら何やら、空気やら考えてみれば、そこらのところが頑張って森林を保全してくれるから、水質を保全していてくれるから、結果として国の歳出総額は減っておるというようなことは、その人たちの日々の努力、まことにささやかな努力であろうとも、その努力の積み重ねの結果が国全体としての歳出を削減しているという事実は、これは認めないといかぬのだと思うんですね。

 しかし、そういうところが高齢化して、どんどん離村している、過疎になる等々でコミュニティー、社会が成り立たなくなってきているというのを、何らかの形で維持しないと、人間一人では生きていけませんので、そういったところをきちんとやってやるという意味では、交付税がいいかどうかは別にいたしまして、今、離島なんかではある程度割り増しなんかのものはしておるとはいえ、それだけで十分かと言われると、かなり問題があるのではないかというところが率直なところでもあります。

 いろいろ地方団体の意見を伺いながら、これは今すぐというわけではありませんけれども、中期的には考えないかぬ大事な問題で、さらに過疎化していく、さらに高齢化してくるという状況においては、今御指摘のあった問題はまことに根本的な、かつ大事な問題だと思いますので、真摯に検討させていただきたいと存じます。

久間委員 どうかひとつ、そういう地域に光が当たるような政治をぜひ政府としても行っていただきたい。財政諮問会議その他、どうも最近の、経済合理性だけが議論されているような気がして、非合理といいますか不合理であるけれども、そういったところが非常に大事なので、そこで穴があくと、それからずっと東京みたいな都市部へ侵入してきて手がつかないようになってくるわけですから、やはり入り口で、きちんとそこに人間が住めるような、住んでおることがいいことだ、そういうコンセンサスを得られるように、政府として全体としてやはり努力していただきたいと思います。

 そこで、環境大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、環境行政の中でもごみとか焼却炉とかあるいは最終処分場とかいうと、いつも、反対運動ももちろんありますけれども、何となく暗いイメージがするんですけれども、人間生活をやる場合は、これは必要なあれですよね。最近では、例えば煙突のない焼却炉とか、あるいは最終処分場でも、グリーンが、緑を敷き詰めて公園かと思われるような最終処分場とか、結構いいのができているわけですよ。

 それで、最近は環境省でも評価基準みたいなものをつくって、少し評価制度をつくって、いいものはいい、合格点に達していないものはだめとか、そしてまた、何か日ごろから透明性を持って、住民にもいろいろな、ここはこういう形で廃液なども出ていませんよとか、そういうこともきちんとやっているとか、そういうようなことをやって評価した方がいいんだという動きがあるというふうに聞いておりまして、かねがね私はそういうことをすべきだと思っていましたから、いいことだと思っていますが、やはりもう一歩踏み込んで、そういう形で、モデルになるような地区については、各県から推薦してもらって大臣表彰をするぐらいな、そういうことをやったらいいんじゃないかと思うんです。

 ある県の、たしか福島県だと思いますけれども、そこの最終処分場なんかは、小学校の皆さん方が見学に来て、人間社会をやるときにはこういうのが必要なんですよ、そういうモデルになっている、そしてまた各県からもそういうのを見に来ているというような話を聞いて、いいことだなと思っていますが、全国でも選んでいったら結構いいのがあるんじゃないかと思うんですよ。

 ごみとかそういう最終処分場とか、何かじめじめした暗いイメージだけを今まで与えてきましたけれども、人間社会にとって必要だし、それはもっと明るくオープンに、こんないいものがあるんだということを推奨していくことはいいことだと思いますが、大臣、どうですか。

小池国務大臣 御指摘、まことにありがとうございます。焼却場にしろ処分場にしろ、結局それを担っている人という点も重要かと思います。

 そういうことで、施設もそうですし、それを担っておられる方々、それに対して、優良なところには励ます意味で、そしてまた近隣の住民の皆さんにも安心を与える意味で、評価システムをつくってということで、三つほどその基準をつくっております。施設がどうか、情報公開をどれぐらい進めているか、それから環境保全への取り組み、ISOの取得、そしてまた法律的にきちっと守っているかというようなことで、三つほどの基準をつくりまして、そして、優良なところにはしっかりと頑張ってくださいという意味を込めまして表彰していくということで、各地に環境大臣賞受賞の地域ができるように頑張らせていただきたいと思っております。

久間委員 非常にいいことですから、別に票を稼ぐんじゃなくて、本当にいいものはいいとして表彰するようにしていただければいいと思います。

 それから次に、地域再生計画について村上大臣にお尋ねしたいと思います。

 ダイエーみたいに大きな、こういうのはすぐ産業再生機構で取り上げるとかいって割とやるけれども、地域の再生については政府が余り力を入れていないんじゃないか。経産大臣の方で、経産省の方では融資を初めとしていろいろなことをやっているけれども、政府全体としてもう少し地域再生に取り組んだらいいんじゃないかというような、そういう話がございます。

 そこで、今回は何か地域再生についての法律までつくってやろうというような話もあるようでございますが、どういうふうに取り組もうとしておられるのか、決意のほどと具体的な内容について教えていただきたいと思います。

村上国務大臣 御高承のように、財政事情が厳しい中、地域再生を進める今、従来のような財政的な支援ではなかなか難しい。そういうときで、地域の特性を生かした、自主的な、自律的な取り組みを行うように仕組んでいきたい、そういうふうに考えています。そういう面で、今回考えている地域再生は、このような地域の取り組みを総合的かつ効果的に行うようにするためにいろいろ考えております。

 大きく柱は三つあります。

 一つは、まず、交付金制度を新たに創設して、複数の省庁にまたがる同種の補助金を内閣府に一括計上することであります。この補助金の一括計上につきましては、戦後初めての取り組みであります。

 具体的に国民の皆様方にわかっていただけるように簡単に説明しますと、今まで、汚水処理ですと、例えば下水道、農業の集落排水、浄化槽、それぞれ国土交通省、農水省、環境省の管轄でありました。それを一括します。例えば道路整備につきましては、道路、農道、林道、それぞれありましたが、それを、国土交通省、農水省、それぞれありました。それから、港につきましては、港湾については国土交通省、漁港については農水省、今までそれぞれの省庁にまたがっていたものを一括します。

 このように、これまで、異なる省庁の異なる補助制度に基づく施設を一体的に整備しようとする場合には、手続面や運用面で不都合な面が多かった。市町村長さんが来るたびにいろいろな省庁を回らなきゃいけなかった。そういう新たな交付金制度のもとで、各種手続を一元化して簡素化を図るとともに、施設整備の自由度を高めるなど、地方公共団体にとって使い勝手を格段に向上させるように考えております。

 それから二番目は、税についての特例措置でございまして、地域再生に役立つ事業を行う企業に対して投資を行う場合には、投資額を控除する課税の特例措置を設けることであります。収益性が低いものや地域再生の観点からは意味のある事業に、民間の資金が集まりやすくするように考えております。

 それから三番目は、補助金等適正化法の特例を設けて、補助金で整備した施設を当初の補助目的以外に転用する際の手続を簡素化そして迅速化し、既存施設の有効活用をすることを推進することも考えています。

 地域が、これらの支援措置を活用しながら、それぞれの地域の特性を生かした知恵と工夫によって取り組む。正直言って、これからは地域のアイデア合戦の時代だと思いますので、そういうアイデア合戦を進めて、地域経済の活性化や雇用の機会の創出が得られるように一生懸命考えていきたい、そのように考えております。

久間委員 非常に総論としてはいいんですけれども、やはり具体的にいろいろな目玉をつくりながら、こういうことをやりますよということを国民にもう少しPRしながらやっていただきたい。

 それで、今言われました中でもちょっと気になりますのは、例えば補助金適化法上は八年たてば補助金は返さぬでいい。ところが、公共事業でやったために農振地域に指定されているところは、そこに地域再生のために何かやろうと思ってもなかなか地区除外できない、そういうケースだってあるわけですよ。そういう、各省庁いろいろ問題はありますから、今度の法律ではそういうことは盛られていないけれども、その辺については運用面でうまくやって、地域再生につながるものだったらいいじゃないかというような、そういうことを各省の大臣の協力を得ながらもっともっと進めていただきたいということをお願いしておきます。

 それから次に、官房長官にちょっとお尋ねしたいというよりもお願いしたいんですが、小型の政府専用機、この間総理が自衛隊の指揮連絡機といいますか輸送機で、神戸で会議があったときに行かれまして、帰ってこられるのがえらく早かったなと思ったら、私のときに自衛隊に入れたU4という機種がありますけれども、これに乗って行かれたらしいんですよ。

 私のときにも、外務大臣が外国出張するときに政府専用機を使わせてもらえぬかという話があったから、私は、どうぞ、そのかわり経費はこれだけかかりますよと言ったら、いや、そんなにかかるならもう民間のチャーター機で行くわというようなことで、外務大臣はそのとき池田さんでしたけれども、出張されました。

 やはりこれから先は、そういう、もっと経費のかからない政府専用機の方が非常に利便性があって、非常に小回りがきいて、いいわけなんですね。あれは十八人乗りですけれども、もう少し、テーブルなんか置いても十四人ぐらいは十分乗れます。そして、あの当時のU4というのは航続距離が七千ぐらいでしたから、東南アジアまでは行けたわけですけれども、それ以上行けなかった。ところが、これの後継機は今一万二千キロ、ワシントンから逆風でも日本まで十分帰ってこられるそうです。それでやはり同じぐらいの人数が乗れます。

 だから、こういうのをやはり政府で持っておいて、運用は自衛隊に回すか、あるいは海上保安庁でもいいんですよ、そういったところにゆだねておいて、それでこれから先は、例えばFTAとかあるいはまたWTOとか、各大臣が海外に出張することがふえていますし、本来、国会のとき大臣が国際会議があって行くというと、今までは、そういうもののために副大臣をつくったんですけれども、最近はまた昔に先祖返りして、大臣じゃないとだめだというような人たちがふえていますから、まあ、夜のうちに行って帰ってくるような、そういうことだってしなきゃなりません。だから、そういう意味では、これはちょっと考えてもらいたいなと思いますけれども、どうですか。

細田国務大臣 久間議員がおっしゃいましたように、現在は、政府専用機というのは、いわゆるジャンボジェット機の二機体制で運用をしておりまして、主として総理の外国出張等に使っておるわけでございますけれども、おっしゃるように、さまざまな需要の変化も生じておることは事実でございます。

 ジャンボ機は一機で、今買えば三百数十億ですし、おっしゃったような飛行機は、その後継機、新型機としても数十億円で済むという経済性もあるわけでございます。また、この週末には財務大臣がロンドンへG7で出張するんですが、今の規定では、どうしても民間機を乗り継ぐ、ロンドンまでこの週末行かなきゃならぬということで、非常に大変な御苦労をされるという面もあります。

 したがって、今後の国際活動等の増加にも対応できますように、現在の政府専用機の一層の有効活用を図りますとともに、おっしゃいますような小型機というものについても検討をしていかなければならない。機能性や経済性等の面から多角的に分析をしていくことが必要である、こう考えております。

久間委員 それから、棚橋大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、我が国がこれから先二十一世紀、もう二十一世紀の半ば過ぎたら私たちいないわけですけれども、二十一世紀を通じて日本が世界に負けないためには、やはり科学技術、これで立国していかなきゃならないと思うんですよ。そういう意味では、科学技術担当大臣として就任されて頑張っておられるのはわかりますが、国民にもう少し目に見える形で、政府のやっておる科学技術についての、こういうことでやっているんだということをやはりもうちょっと言ってもらいたいと思うんです。

 例えば今度の予算でも、昨年と比べて今度の予算に当たっては、そういうサイドから、どういうような目で見て予算を財務大臣と相談しながらやったのか。私の聞く話では、SだとかAとかBとか、こうやって、Cに該当するものは予算はむしろ減らすとか、Sはこれだけ伸ばすとか、いろいろなことをやったというふうに聞いているんですけれども、国民の皆さん方にもう少しわかりやすく説明していただきたいと思います。

棚橋国務大臣 久間議員にお答えをいたします。

 久間先生おっしゃるとおりでして、私は、科学技術は日本の未来を切り開くかぎだと思っておりますし、そもそも戦後の日本の発展は、勤勉な国民性と、やはり科学技術に政策の重心を置いた政策の成果だと私は思っています。そういった中で、二十一世紀においても日本が発展していくために、さらには、単に経済成長とか発展という部分だけではなくて、久間先生がおっしゃったように国民生活を豊かにしていくためにも、科学技術の分野というのは私は非常に大きいと思っております。

 例えば、現在、我が国は世界最高水準の平均寿命を享受しておりますけれども、やはり人生の目的は、長生きができると同時に、健康で人生の目的を追求できる、そういった健康の分野、まさに人生の質を高めていくためには健康は不可欠なわけでございますが、こういった分野において、ライフサイエンスに代表されるような科学技術の分野が貢献する部分は非常に大きいと思います。まさに科学技術が国民に貢献する、あるいは国民に還元されるものでなければいけないと思っております。

 平成十七年度予算におきましては、これはしばしば総理がお触れになりますが、自然増がございます社会保障関係費を除いては科学技術振興費だけがプラスでございまして、それは、一つは、我が国の発展のためには科学技術をきちんとやっていかなければいけないという思い、それからもう一つは、何よりも国民生活を豊かにするためにもこれが必要だという思いでございます。

 しかし一方で、限られた予算を効率的に、国民の皆様方に成果を還元するためにやっていくためにも、今久間議員がお触れになられましたように、財務省さんとも御相談しながら、第一に、すべての科学技術関係予算を私どもはチェックいたしまして、SABCと我々は呼んでおりますけれども、Sは非常にいい、Cは、だめとまでは言いませんが必ずしも評価を十分にできない、こういったものをつけながら、財務省さんに予算編成にまた反映していただいている、これは外部の専門家に協力していただきながらやっております。

 それから二つ目に、各省ごとにプロジェクトがありますものを、例えば燃料電池なんかがその最たる例ですが、これを横ぐし的に私どもの部署で見させていただいて、連携施策群と言いますが、総合的に戦略的に連携してこれを進めております。

 それから三つ目に、競争的研究資金と我々は言っておりますけれども、研究者の方々にもやはり競争的な環境で創造的な研究をしていただきたい、そういう観点から、そういった競争的な研究資金に関しての予算を大幅増していただいているところでございます。

 こういったことも含めて、科学技術は国民に貢献するものだということをきちんと示してまいりたいと思います。

久間委員 時間も余りなくなりましたが、最後に、防衛庁長官ですか、米軍再編の問題がございます。

 大統領がまだ決まる前にそんな話が出ておりましたが、これはもう大統領が決まらないと、どこまで本気かどうかわからないから、ほっておけと私はそういうことをよく言っていたんですけれども、きょう大統領の一般教書演説がございまして、いよいよ第二期のブッシュ政権がスタートするわけでありますから、向こうも本気でいろいろなことを言ってくるんじゃないかと思いますので、具体的に今どういうふうな話になっているのか、それについて防衛庁長官の御意見をお聞きしたいと思います。

大野国務大臣 トランスフォーメーションについての現状についてお尋ねでございます。

 昨年秋ごろまでは、どちらかといいますと、在日米軍の基地の問題を中心に議論がありました。そうなりますと、基地について、対する関係みたいに、交渉事になってしまう。それじゃいけません。日米同盟の中で、安全保障という大事な問題、共通の共同作業として進めていかなきゃいけない。したがいまして、やはり安全保障をどういうふうに考えていくか、こういう問題を中心にすべきだという雰囲気が出てまいりました。

 私も、昨年十一月にワシントンへ参りましてラムズフェルド国防長官にお目にかかったときには、まず、やはり日米双方で安保環境の問題について共通認識を持つべきじゃないか、そしてまた、基地一つ一つの問題については、地元との調整その他がありますから時間がかかるのではないか、こういうことを言ってまいりました。

 現在、一つ、安全保障環境認識を踏まえた戦略目標、二つ、日米の役割、任務、そして三番目に、米軍の軍事態勢見直しの基本的な考え方、こういう三つの共通認識を得るべく交渉というか話し合いをしているところでございます。

 三番目の軍事態勢見直しというのは、全体としてアメリカ軍の兵力構成がどうなっていくのか、あるいは日本でいいますと、小泉総理がしょっちゅう、いつもおっしゃっているとおり、例えば米軍の抑止力がどうなっていくか、維持すべきである、そしてまた沖縄を中心とする負担を軽減すべきである、こういうことでございますけれども、今久間先生がおっしゃったように、大統領選の後きちっと就任式をやりまして、今後大いに進めていくべきである。

 この点につきましては、やはり共通認識を得た上で、いつかの段階で、これから一生懸命やっていこうというキックオフをやる必要があると思っています。それは、外務大臣と心を合わせ、力を合わせて、例えば2プラス2をやって、さあ一生懸命やるよということを二月なり三月なりにぜひともやりたい、このように思っているところでございます。

久間委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、総理、きょうの郵政民営化の話で竹中大臣といろいろ話しましたけれども、やはりいろいろな問題点があるようでございますから、どうかひとつ、与党だけではなくて野党も含めて、国民世論の動向を見ながら、いい落ちつき先を考えていただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

甘利委員長 この際、松岡利勝君から関連質疑の申し出があります。久間君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松岡利勝君。

松岡委員 おはようございます。自民党の松岡でございますが、きょうはこのような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思いますが、本日は、まず初めに、政策的なテーマといたしまして二つ質問をさせていただきまして、総理の御答弁をお願いしたいと思います。

 その二つのうちの一つでございますが、これはもう総理が施政方針演説でも特に強調されておられまして、前々から再三大変強い意欲も表明されておられます農産物の輸出を中心とする攻めの農政の問題についてでございます。

 そしてもう一つは、これもまた総理がサミットにおいて大変主導的な役割を果たしてこられました、そして特にエビアン・サミットにおきまして画期的な首脳宣言が出されました違法伐採の問題でございます。

 最初に、攻めの農政の大きな柱であります農産物の輸出でございますが、私どもは、約二年くらい前から、自民党の有志議員で農産物等輸出促進議員連盟を結成しておりまして、これに富山の宮腰代議士が幹事長、また新潟の近藤代議士が事務局長、そしてまた徳島の後藤田代議士が事務局長代理、私が会長を仰せつかっておりまして、こういったスタッフで、多くの先生方とともに、農林水産省を初めといたします関係各省、それからジェトロ、農業団体を初めとします関係団体、一体となって積極的に取り組んで活動を行ってまいりました。

 この私どもの取り組みの発端でございますが、今から二、三年前になりますけれども、アメリカで日本の米がキロ千五百円で売れている、また台湾でもキロ九百円で売れている、そしてリンゴもイチゴも日本よりもはるかに高く売れている、そういう話を聞きまして、早速調べてみますと、まさしく本当でありました。そして、改めて世界をよく見渡してみますと、今やまさに世界は日本食ブーム真っ盛りであります。しかも、高級なものほど需要が高いという傾向にあります。これは驚きでございまして、輸入物との太刀打ちに追われておった、そういう目から見ますと、全く別のすごい世界、ある意味では大変な可能性を持った宝の山の、新大陸の発見につながるかもしれない、私はそういう興奮じみた思いに駆られたわけでございます。

 なるほど国内の需要だけに頼っておっては、人口も減ってまいりますし、また輸入物との競争もありますし、なかなか拡大をしていくことは困難でございます。それならば、今こそ海外に大きく羽ばたいて積極果敢な輸出戦略を強力に展開し、このときを逃さず日本農業の一大発展を図るべきだと、強い思いを持って議員連盟を結成したというのが経過でございます。

 そして、活動を重ねますうちに、日本の農業、農産物は、私は、間違いなく一大輸出産業に発展することができる、また、それによって電化製品や輸送や販売など関連の業種も含めて大きな発展を遂げることができる、そういう強い確信を持つに至りました。この判断を裏づける事実関係でありますけれども、もう既に総理はこのことはよく御承知でございますが、幾つか事例を挙げてみたいと思います。

 欧米では、先ほど申しましたように、ニューヨーク、そしてまたロンドンでもキロ千五百円。まさに欧米の代表的な都市で、日本の四倍高い値段で売れておる、こういう事実がございますし……(小泉内閣総理大臣「何が」と呼ぶ)お米です、お米が。英国の野上大使やフランスの平林大使、こういった方々に聞きましても、ヨーロッパで、日本のもので絶対売れるものが三つある。一つは日本食、そしてもう一つは宮崎駿監督に代表されますアニメ、それからテレビゲーム、もう間違いなく売れると。

 そういった中で、日本食でございますけれども、これは高級なものほど求められる。逆に言えば、高級なものでないと売れない。リンゴ、果物もそうでございますが、とにかく大変な日本食ブームであります。日本の農産物は高級品として絶対売れる、あとはいかにこれをどう売り込むかという戦略が必要だ、こういうことであります。

 また次に、アジアでございますが、これも先ほど言いましたように、台湾でお米がキロ九百円。それから、北京の百貨店では日本のリンゴが一個千五百円から二千円。そしてまた食品につきましても、北海道産のクリームシチュー、それからカレーのこくまろ、晩餐館の焼き肉のたれ、こういったものが北京のデパートで実に日本の二倍から三倍、こういった値段で売れておるわけでありまして、もはや北京や上海もそういう消費水準になっておると実感をしております。

 またそれから肉にしましても、これは牛肉を初め日本のおいしい肉というのは、肥育技術がすぐれていますから非常においしいものになるわけであります。官房長官の島根牛もそうですけれども、飛騨牛もそうですけれども、一遍食べたら病みつきになるというか忘れられなくなる、そういったことを本当に頻繁に聞くようになりました。

 例えば、タイの農業大臣が日本で松阪牛を食べた、こんなにおいしいものが世界にあるのか。また、鹿児島の知事が中国の要人にごちそうして、鹿児島和牛を食べさせた。全くタイの農業大臣と同じ感想でありまして、これは中国で食べられるようにならないか、こういった話だったわけであります。それから先般、WTOのグローサー農業委員会の議長が参られまして、我が党の、自民党本部でメロンを出しまして勧めましたら、感想を求めましたら、これは本当に相当の高級品で高く売れる、世界じゅうでこれは高く売れるはずだ、こういった感想でございました。

 このような事実はもうまさに枚挙にいとまがない、そういう状況になっておりまして、まさしく日本の農産物は、私は、車に例えればベンツかロールスロイスか、そういった超高級車だ、こういう実感を強くしております。

 このように、この二、三年の活動を通じましての調査研究の結果、二十一世紀の日本農業、農産物は、一大輸出産業、成長産業として間違いなく大飛躍、発展をすることができると私は確信を持っております。きょうの質疑の模様をテレビやラジオで見たり聞いたりされておられる全国の農村や農家の、とりわけ若い担い手の皆様方が、きょう、日本国の最高責任者であります総理から農産物輸出への強い意欲と今後の方針をお示しいただきまして、そうか、自分たちの将来には間違いなく明るい、これは確かな未来があるんだ、よし、自信を持って頑張ろう、こういう大きな勇気と希望を持っていただけること、そういったことを私はきょうは期待しておるわけであります。そしてまた、この輸出によりまして農村や農家が発展し潤えば、地方の商店街を初め地方の全体が大きく活性化につながる、そういう一大事業だ、このように思っております。

 そこで、農産物の輸出を二十一世紀における最重要な国家戦略の一環として強力に進める価値があると私は思いますし、ぜひ総理からそのことについての基本的なお考えなり御方針を示していただきたいとお願いをいたします。

小泉内閣総理大臣 松岡さんは農業、特に詳しいということで、私が言うことは十分承知だと思いますが、私も、農業は人間にとって最も重要な産業だという認識を持っているんです。私の地元は横須賀、三浦でありますけれども、都市農業で有名なところですから、農業の重要性はよく認識しているつもりであります。

 そして、食料が人間の健康をつくるんだと。確かにお医者さん、薬も大事です。しかし、基本的に食物が血をつくる、いい、健康な体をつくるということから考えますと、食、これはもう極めて重要である。そういうことから、農業の重要性もよく考えながらやっていかなきゃならない。

 そして、日本は最大の農産物輸入国です。かといって、今、輸入を阻止するばかりでいいか。そうじゃない。やはり重要な産業として位置づけて、攻めの農業、輸出もできるんだということを考えなきゃならないということで、今ようやく、安いものを阻止するという考えじゃなくて、高くてもいいものなら売れるということが今の松岡さんの議論でわかってきた。

 そのいい例が、私は、お米もそうでありますけれども、お米は今大体、日本じゃ十キロ三千円、四千円、五千円。十キロ五千円となるとかなりいい方でしょう。ということは、一キロ三百円か四百円、五百円、一般の方。それがアメリカとかロンドンでキロ千円近くで売れているわけでしょう。(松岡委員「千五百円」と呼ぶ)千五百円。あるいは、中国でも千円で、日本の米はうまいと。台湾でもそうですね。台湾ではお米が、島根県の農家が台湾に輸出している。台湾の人が食べているお米よりも十倍近いお米でも、日本の米がうまいといって台湾の人が買おうとしている。

 そこで、松岡さんは先日中国へ行かれたと聞いています。中国に日本の高い米を、企業がつくっている炊飯器と一緒に、セットで売ろうということを考えて、日本の企業と農家が一緒になって中国に売り込みを図っている。こういう積極的な姿勢が私は大事だと思っております。

 先日、中国の外務次官が日本に見えたんです。それで私、ある話を聞いたんです。というのは、日本のイチゴが一粒三百円で売れている。これは私、ちょっと信じられなかった。一箱三百円じゃないですよ。一個、一粒三百円、上海で売れていると聞いているが、本当なのかと聞いたんです。そうしたら外務次官は、いや、それだけじゃないんです、北京では何と日本のリンゴが百五十元で売れているというのがある、というと日本円に換算して二千円以上なんですよ。これにはびっくりして、私は、日本のある一番高い果物を売っているところで有名な東京の店で、本当にそんなリンゴはあるのかと言ったら、東京の一番高い果物を売っている店で一個千五百円だと、青森産のリンゴが。それを中国・北京では日本円にして二千円で売れているというのを聞いて、メロンやナシや桃だけじゃない、いいものは売れるなと。

 そこで、今後とも私は、日本食というものを多くの人が今好んでいる。健康にいいということでありますので、かつて、生ものは欧米人は食べない、お米もそんなに好きじゃないと言われたのが、すしは生ものでありお米を使っていながら、ニューヨークでもロンドンでも、チリでも、ブラジルでも、モスクワでも、どこでもすしはおいしいおいしいということで食べているわけですから、固定観念にとらわれないで、こういうものは食べないとか高いものは売れないということじゃなくて、もっと、いいものなら売れる、農産物も外国に売れるということで、攻めの農業で、日本も農産物の輸入国だけじゃなくて輸出もできるということで、農業の振興に大いに自民党も松岡さんも努力していただきたい。政府も頑張っていきたいと思います。

松岡委員 ありがとうございました。総理から大変積極的なお話を聞きまして、本当にありがとうございました。

 そこで、次の段階がまた今度は必要なわけであります。

 そういう可能性が多きにある、こうなりましたとき、ではどうやって可能性を実現していくか、これが重要なわけでありますが、私は、幾つか重点的にターゲットを絞って本格的な市場調査を行う、そして、確かなしっかりした見通しを立てて、戦略を立てて取り組んでいくということが必要だと思っております。

 さらに、そうなりますと、輸出相手国との貿易交渉、特に農産物は動物、植物の検疫がございますから、これをしっかりと交渉することが必要であります。

 あわせて、フランスあたりは、どこの国もそうですけれども、国の大きな大きな一大方針として、国を挙げて取り組んでおる。したがって、日本の国際交流事業というのもあるわけでありますけれども、私は、重要な一環としてこれもぜひ進めるようにしていただきたいと思うわけでございます。

 そこで、では一つの例として中国への米の輸出を挙げてみますと、中国は御案内のとおりの経済の大発展であります。今総理からもお話がございました。もはや日本との貿易もアメリカ以上、こういう状況になってきております。そして中国には、日本人以上と言われておりますが、そういうお金持ちが五千万とも一億とも、こう言われるわけでございます。それを裏づけるものとして、例えばパソコンとかデジカメとか化粧品とか、こういったものも本当に高級品志向、本物志向、こういう状況で、その中で食生活についても同じことが言える、こういうことであります。

 先般、私ども、中国に何度か参りまして、COFCOという中国の貿易商社、十三兆円規模とも言われる一大商社がございますが、農産物の貿易を扱う、そのCOFCOの劉総裁とも何度か話をしてまいっておりますが、日本の米は必ず売れる、すばらしいから、おいしいから、おかずも要らないぐらいだから必ず売れると。そして、必ず日本の千円ぐらいでは売ってみせる、また売りたい、こういうお話でございました。

 なだ万にもちょっと寄ってきましたが、ここの総支配人が言いますには、中国の人の方が日本人よりも高いものを食べると。一人千元、ということは一万四、五千円です。場合によっては一人三千元、四万四、五千円。本当にそうかと言ったら、いや本当ですと。近々上海にも進出するんだと。ただ、その場合、日本のお米はまだ中国に行っていませんから、ぜひ水産物も含めて、後藤田代議士は水産物も、特に徳島の水産物を一生懸命言っておりましたが、水産物も含めてこれはぜひ早く、中国からすれば輸入できるようにしてくれ、こういうことでございます。

 そこで、ちょっと簡単に、この前、菅さんが、総理はリンゴ一個かナシ一個かぐらい売ってそれで攻めの農政なんてことを言っているんですかなんて、ちょっと茶化していましたけれども、全く物を知らないというか無知というか、これは、木を見て森を見ずという言葉がありますが、どうも菅さんは葉っぱさえ見ていないんじゃないかと私は思うわけでありまして、中国は十三億です。そして二億四千万トンの米を食べているんですよ、二億四千万トン。そして、高級品志向の中で、仮に日本の米が一%シェアをとったとしたら二百四十万トン、キロ千円だったら二兆四千億ですよ。リンゴ一個やナシ一個の話とは違うんです。

 こういう宝の山、これをみすみす気づかないどころか、見もせずに、確かめもせずに、果たしてそういうことで民主党の農業戦略とか再生というのはあるのかないのか、ないんじゃないか、こう思っておりまして、私はそういった点からも、この点につきましては、ぜひとも、先ほど言いましたように検疫の問題、そうなると貿易交渉が必要であります。また、国際交流事業ということでやりますと、これはやはり国を挙げて、官民一体となって、特に外国の場合、私ども、国会議員ともいろいろ会いますと、向こうの国会議員は、向こうの大使が、自分たちの国のこういうものを買ってくれ、こう言いますから、ぜひ総理、先頭に立っていただいて、そういう体制をひとつしっかりとつくっていただきたい。

 この点について、総理のお考えをちょっと伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 農業の話、重要なんですが、かつて日本は、車はアメリカ製がいい、カメラはドイツ製がいい、時計はスイス製がいいと。今はどうでしょうか。日本の車はアメリカでもヨーロッパでも、カメラも時計も車も、日本の車は高いけれどもいいということで、アメリカでもヨーロッパでも自分の国の車よりも日本の車を買っています。

 とても追いつけないだろうと思っていたところを、努力して、ここまで質を高めていい車を輸出したんです。車だけじゃない、時計だけじゃない、カメラだけじゃない。私は、農業もその気を持つべきだと思う。大いに今の意欲で、農業も輸出できるんだ、農業は重要な産業だということで、今日本は最大の農産物の輸入国でありますけれども、これから、世界一とならなくても、十分農産物は輸出できるということで頑張っていただきたい。

松岡委員 ありがとうございました。

 総理のおっしゃるとおりでありまして、先ほども申し上げましたが、品種改良、お米にしても、果樹にしても、肉にしても、この品種改良というのは日本はもう世界で特別すぐれている。そしてまた、それを育てる技術。同じリンゴの木からでも、日本の農家がつくるリンゴとよその国の農家がつくるリンゴとでは味が全然違う。やはりプロセスが違うわけです。牛にしても、同じ品種改良の牛でも、これはもう全く肥育技術がすばらしい。したがって、ああいうおいしい肉ができる。こういうことでありますから、こういった技術を背景としまして、私は、これは間違いなく、そういった方向は大きな方向をとっていけると思っております。

 もう一つやはり重要な点がございまして、先ほど総理は炊飯器のことをおっしゃいました。

 実は私も、中国にお米をと思ったときに、お米だけ持っていったのではこれはただの生ですから、やはりこれをおいしく食べさせる道具が必要だと。それを思いついたのは、日本にパンが入ってきたときに、やはりトースターがあったわけですよ。それで思いついて、これはやはりセットでないとだめだな、こう思ったものですから、これを幾つか、複数のメーカーにそのことを打診しました。そうしたら、早速、それはそうだと、全く中国市場をそういうふうに見て同じ判断をしておると言って飛んできていただいたのが、松下電器の大阪本社の副社長さんでした。それから、炊飯器、これはセットだ、こういった話でありました。

 したがって、お米を売る、日本の野菜や果物を売る、やはりそういったときは、先ほどおっしゃいましたように、こういう炊飯器とのセットのように工業との連携、それからまた輸送や販売、関連業種との連携というのはどうしても必要なわけでありまして、この点につきましても、私はこれは大変な取り組みが、やはりそういったことを政治なり行政なり、中心になって主導していくことが重要だと思っております。

 そしてまた、松下電器の話を聞きますと、中国では、皆さん、年間千六百万台ぐらい今炊飯器が売れておる。日本は三百万台か四百万台ですから、お米の消費にしましても、そういうことにしましても、やはりけた外れの市場なんですね。けた外れの巨大市場が隣に、物すごく、ますます大きくなろうとしてある。これが実態です。

 そうしますと、千三百万台ぐらいはただ炊くだけ、あとの三百万台が高級な炊飯器の市場。やはり、日本のいいお米が行って、そしてそれに伴って炊飯器も売れる。また、炊飯器が売れることによってまた日本のお米も売れる。まさに相互作用なんです。そして今度は、今松下は中国で工場をつくっておられる。これは、中国の人の雇用や所得の増大にもなる。

 この前、王毅大使とお会いしましたときに、三つある、環境とエネルギーとFTA、これはぜひ進めたいと。私も、環境は、これはもう全く、今、緑化事業、私どもも日中緑化推進議員連盟をつくってやっておりますが、そういった意味からも、エネルギーもまた、クリーンな緑のエネルギーを開発していく、これもやろうという一番問題でありますし、またFTAも、これはそういったところと一体となって、日本の貴重な、まさにベンツやロールスロイスみたいな、こういったものがしっかりと売れていく。そのためには関連業種一体となって取り組んでいく、こういったことも必要だと思います。

 もう総理が先ほど言われましたので、私は、この点につきましては、もう総理もそのような御認識を強くお持ちである、そして、ぜひそういったことで関連業種も含めて日本の国を挙げての取り組みにリーダーシップをお願いしたいということを申し上げまして、次に移りたいと思います。

 あと、攻めの農政という中で、海外だけではなくて国内の問題でございます。

 これまた先般、菅さんが言っておられましたが、農業土木の予算を、これを全部やめてというか削って、そして一兆円ぐらい農家にこれをお配りするといいますか、そういうことをおっしゃっておられました、所得補償でやると。(発言する者あり)いや、そういう話でしたから。

 それで、私は、農業土木の予算というのは、これは水洗トイレ、こういったことを普及していく上で一番大事な予算なんです。農家の水洗トイレ、生活環境をよくしていく。また、農業は何といっても水が大事ですから、水を確保していく、維持していく、そういう水路の維持管理なんかの予算も全部入っているわけです。また、農家が一番今求めが強い土地改良の負担の軽減、こういったものの負担軽減策も全部入っているわけです。これを全部やめて、そしてただただやみくもに配るというんじゃ、これは全く農業振興にも何にもならない。

 そういったようなことを含めまして、私が思いますのは、私ども自民党は、そういうことではなくて、フランスのシラク大統領がやっておられますように、国民から見て、いろいろな地域の、あらゆる地域のあらゆる農業が役割を果たしておる、その役割をもっともっと高めていくような、そういう努力に対して国は経営所得といいますか、しっかりと支えることをする。我々もそういう考え方でありまして、国民から見て、なるほど、国民の生活にとって重要な役割がもっともっと高くなっていく、高めていく、そういったことに対してはきっちりと対策をとっていく。

 したがって、私どもは、やる気のある、意欲のある認定農家、そういった担い手を中心にして、また、それ以外の兼業の人たちでも、あらゆる農家を対象に集落単位でそういう取り組みをしていただく、こういったことに対して、私どもは、経営所得安定対策というものをしっかりと実現していきたい。

 アメリカ型、またヨーロッパ型、フランス型、オーストラリア型、カナダ型、我々も、自民党はいろいろな所得政策というものをずっと研究して、蓄積はいっぱい持っております。したがいまして、日本型の経営所得対策というものをしっかりとやって、国内においてそういう攻めの農政というものを、そして多面的機能、やはり水にしても、いろいろな緑や自然にしても、国民の生活の上になくてはならないものでありますから、そういったものがもっともっと国民の生活にとって役割を大きく果たすような、そういう国内における攻めの農政をやっていきたい、こう思っております。

 この点についても総理の、総理はそういう本部の本部長でございますから、総理、一言、総理も先頭に立ってそれはやっていくんだというようなことをおっしゃっていただいて、後、島村大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 松岡さん、いずれも重要な指摘をされましたし、農業を振興する、そして、今言ったように、財政的な支援を拡充しないでも農業というのはやっていけるんだ、そして、個人に対する所得補償ということだけでなくて、農業全体の振興を図るような環境改善の予算とよくバランスを考えて、農業振興、やる気のある農家をいかに育てていくかという観点から、政府としても今の御指摘を踏まえて農業振興のために努力をしていきたいと思っております。

島村国務大臣 さすがに農業の専門家、先ほど来いろいろ傾聴しておりますが、今御指摘のように、経営所得安定対策を含めまして、まさに攻めの農業というのは、農産物の輸出だけではございません、まさにやる気と能力のある農業の経営者に対してこれからは集中的な支援をして、国際的にも十分競争できるような体質をつくっていこうということが一つあります。同様にまた、バイオマス等の活用によりまして、地域の資源の活用、こういう面においても意を用いて、これとあわせて、あなたがまさに我が国の核弾頭として国際社会でいろいろ御努力いただいている、農産物のすぐれたものを売り出しに行っていこう、こういう面を、すべての面を含んでいるわけであります。

 そういう中で、御承知のように我が国は、例えば、一三%ぐらいの農地でありますけれども、約四割が中山間地域、いわばアメリカや豪州などでは考えられないような農業を営む中に立派な農産物をつくっているのが日本の農業でありますから、こういうことに対しては、当然その背景に農業土木その他の支えがなければやっていけない面もあるわけですし、新しい時代に向けての体質強化のためには、むしろこの面に力を入れなきゃいけない、今そう考えているところであります。

松岡委員 ありがとうございました。

 総理、島村大臣から、大変積極的なお答えをいただきまして、特に、総理が本部長をお務めになっておられますのが食料・農業・農村政策推進本部、いよいよ農業基本計画も三月にはまとめなきゃならぬという運びであります。我が党におきましても、野呂田総合農政調査会長また松下農業基本政策委員長を中心に取り組んでおりますので、ぜひとも特段の、また総理の強力なリーダーシップをお願いしたいと思います。

 あともう一点でありますが、違法伐採の問題でございます。

 これにつきましては、これもずっと首脳会議、サミットで総理が発言を重ねてこられまして、エビアン・サミットでは画期的な宣言が出されました。

 違法伐採といいますのは、文字どおり違法な伐採でございまして、これが、特に南方材では五割から七割がそうではないか、また北洋材も二割から三割が違法ではないか、これはNGOの調べでございますけれども、そのように言われております。そういたしますと、熱帯の林が破壊をされる、と同時に、それだけではなくて、そういったことで影響を受けたまともな森林経営の木材が売れなくなる、そして地球全体の森林がおかしくなってしまう。これをとめさせなきゃならぬ、こういうことでありますが、エビアン・サミットの首脳宣言の後、イギリスは非常にこの取り組みが進んでおりまして、もう既に、政府調達、こういったものでは違法なものは一切使わない、こういうような宣言をして取り組みを進めております。

 私どもも、イギリスから昨年、環境大臣モーリーという人がお見えになりまして、また二度、三度日本でも会合を重ねましたが、ことしのイギリスのグレンイーグルズ・サミットでは、ブレア首相は、アフリカ問題と気候変動問題の二つを主要テーマにする、この二つに関連して違法伐採の問題を取り上げる、こういうことでございまして、エビアン・サミットを受けてさらに進んだ具体的な対策を打ち出したい、こういう思いであると。

 そこで、私は、ことしの一月の六日から八日の間、向こうの招きもありまして、この違法伐採問題で行ってまいりました。といいますのは、麻生政調会長のときに、十三年でありますが、違法伐採対策検討チームを自民党につくっていただきまして、環境、外務、経済産業、農林という各部会合同の、またがったチームをつくっていただきました。私はその座長を仰せつかりました。そういったことでこの問題に取り組んでおるんですが、今度行ってまいりまして、そこでイギリスの方から、モーリー大臣や王立国際問題研究所、関係省庁、NGOのスタッフが申しますには、ぜひともこのイギリスのサミットにおいて日本の小泉総理にまた大きな役割を果たしていただきたい、こういう話でありました。

 私も、今までもそういう大きな役割を果たしてこられたし、また我々日本としても、これは政府・与党一体となってこの問題についてしっかりした前進が図れるような取り組みは、ぜひとも総理にもお伝えいたしますし、私どももそういう思いでおります、こういったことを伝えてまいった次第であります。

 このことにつきましても総理、一言、ぜひ御決意なり御方針をお聞かせいただければと思います。お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 この違法伐採問題について私はサミットで取り上げまして、G8のサミット、エビアン・サミットあるいは昨年のアメリカでのジョージア・サミットでも取り上げて、議長総括という形で参加国から賛同を得ました。具体的に言いますと、サミットの問題というのは、環境、温暖化、非常に重要なものですから、今まで我が国の取り組みとしては、二国間協力とそれから地域間協力と多数国間協力、こういう面でこれからも推進していこうという方針なんです。

 具体的に言いますと、二国間協力では日本とインドネシアの間で違法伐採対策協力、こういうものを発表して、衛星データを用いた森林の現況や伐採状況の把握等を実施しよう、違法伐採を取り締まっていこう、これはメガワティ大統領との間でこういう取り決めをしたわけであります。さらに、地域間協力ではアジア森林パートナーシップ、これは二〇〇二年にヨハネスブルクのサミットで発足したんです。こういう、ASEAN諸国等で、合法性の基準の明確化、木材追跡システムの開発等にASEAN諸国と協力して取り組もうと。さらに、多数国間協力というのは、国際熱帯木材機関というのは本部は横浜にあるんです。これを通じまして、貿易統計の分析による違法木材取引の把握等、そういうプロジェクトを支援していこうと。

 つい先日ですか、松岡議員はロンドンに行ったんじゃないですか。ロンドンに行って、食料・環境・農村地域省閣外大臣と会談されたということを私は報告を受けています。

 こういうことで、ことしの英国で行われるサミットについては、環境問題とアフリカ問題を主要議題にしようとしていますから、その環境問題の中でこの違法伐採、森林保全、環境保全、こういう面についても、日本の立場と、そして日本から各国との協力の重要性を私も訴えて、世界が一緒になってこの環境対策、森林保全等、取り組んでいきたいと思っております。

松岡委員 ぜひとも、人類にとって最重要の課題であります温暖化対策、地球環境問題、総理の特段のその点での役割を発揮されることを強く期待をし、お願いをしたいと思っております。

 それでは、次の問題に移りたいと思いますが、まず、民主党は、先般から衆参の予算委員会におきまして、政治と金の問題について、あたかも自民党及び我が党議員の政治資金に関して不正があるかのごとき質問をされておりますが、これについては、総理及び関係大臣から明確に答弁がなされていたと理解しております。

 つきましては、政治資金に関し、民主党にかかわる不明瞭な点につきまして、二、三、質問をしたいと思います。

 まず、政党助成金の趣旨と個人に対する支出についてでございますが、自民党は、国民の税金である政党助成金の使い道に関しましては厳格に取り扱っております。政党助成金は国民の税金でございますし、その使い道について我が党は厳しい内規を策定しております。この内規に従って、党本部も選挙区支部も厳格に助成金を取り扱っているところであります。

 国民の税金であることにかんがみ、我が党の内規では、助成金を使って、支部から他の政治団体に寄附したり、また飲食費の支払いに充てたり、政策活動費の支出に充てることは禁止しているわけであります。

 民主党の議員が衆参両院の予算委員会で口をきわめて小泉総理に迫っておりましたが、同党の収支報告書によりますと、民主党の代表代行でいらっしゃいます藤井裕久議員が民主党と自由党が合併する前の自由党幹事長のとき、平成十四年に限っても、国民の税金である政党助成金から約十五億二千万円が組織活動費として藤井氏個人に支出されております。

 ちょっとパネルを、お許しをいただいておりますから出していただきたいと思うんですが、これは、総務省の情報公開で求めていただきました資料でございますが、それをパネルにしたものであります。

 まず、上の方でありますけれども、平成十四年七月三十一日、九億七千九百万円、平成十四年の十二月の二十五日が五億四千百九十万円、合計十五億二千九十万円、こういうことであります。自由党の助成金から民主党代表代行の藤井氏個人へ支出されたことがわかります。しかし、この十五億円余は、その後どう使用されたのかわかりません。

 そこで、総務大臣にお尋ねいたしますが、政党助成法の趣旨からいって、国民の税金である政党助成金から個人に対する支出が行われた場合、その個人がどこへ支払ったか、何に使用したのかということを明確にすべきであると考えますが、総務大臣、いかがでございますか。御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 今の御質問ですが、基本的には、政党助成金というものは、いわゆる国民の信頼にもとることのないように適切に使用しなければならないということになっておりまして、いわゆる政党助成法第四条に細かく書いてありますのは、もう松岡先生御存じのとおりであります。

 これは、基本的には、一般的に、政党は、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意をし、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないよう、政党交付金を適切に使用しなければならないと第四条第二項に明確に書いてあるところであります。

 そこで、この政党助成法というのを読ませていただきますと、政党がいわゆる支出の相手方、金額等々というものは記載することになっておるんですが、政党助成法において求められておりますのは、政党から政党交付金による支出を受けた者までということになっておりまして、当該政党交付金による支出を受けた本人が受領した資金をどのようなものに用いたかについては、報告を求められないということになっていることになっております。(発言する者あり)それはどうなっておるかと。それは、ずっと政党の活動費として渡しておるわけでしょうから、そこのところで答弁がずっと続いてきておりますのは、御存じのとおりであります。

松岡委員 改めて総務省にお伺いいたしますが、平成十四年の政党助成金の使途報告上、自由党の藤井幹事長への、当時ですけれども、組織活動費の支出は幾らありますか。

久保政府参考人 自由党本部の組織活動費につきまして、平成十四年分の使途等報告書の記載について確認をいたしましたところ、藤井裕久に対し十五億二千九十万円を支出した旨の記載がございます。

松岡委員 それでは、再度お尋ねしますが、こういう事実をどうお考えになりますか。

久保政府参考人 政党助成法上、使途等報告書には支出の相手方、金額等を記載することとされておりますが、当該支出を受けた者が受領した資金をどのように用いたかにつきましての報告は求めておりません。

松岡委員 仮に法律上はそうであったといたしましても、いやしくも国民の税金である政党助成金の十五億円余に上る金の行き先が全く不透明であるということは、驚くべきことでございます。

 あれだけ政治と金の問題を取り上げ、自分はクリーンで相手が不透明であるかのように主張されております民主党の、その民主党の代表代行を務めていらっしゃる藤井氏に対し、自由党の政党助成金から支出された十五億円余がその後どう支払われたか全くわからないというのは、これは、我々も含めて、国民として納得できるものではないと思います。ふだん政治と金について極めて厳しい態度をおとりになっておられます民主党ですから、まず、みずからの党のことを明らかにされることが必要だと思います。

 民主党のこのような行為が法律の趣旨に反しないということであるならば、国民は納得できないと思いますが、総務大臣はどう思われますか。総務大臣にお願いいたします。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください。静粛にお願いします。

麻生国務大臣 今の……(発言する者あり)

 静粛にさせてください。

甘利委員長 静粛にお願いします。

麻生国務大臣 ただいまの質問は、雑音でよく聞こえなかったんですが、国民の税金である政党助成金が個人に対してこのように多額に支出されているが、その使途が明らかにされていないことについて総務大臣がどう思うか、簡単に言えばそういうことだと思います。

 政党からの支出の相手先、金額等は御存じのように報告、公開されておりまして、いわゆる公開をされておりますので、その是非は国民の判断にゆだねられるというのが肝心なところなんですが、政党交付金の使途につきましては、いわゆる政党の政治活動の自由を保障するために何らの制限も設けられておらず、政党交付金の使途の適正さを確保することにつきましては、使途報告を通じて国民の批判と監視のもとに置くことということにされているところであります。

 したがって、政党交付金を用いて政治家個人に支出が行われた場合につきましては、使途報告の公開を通じてその是非は国民の判断にゆだねられているというルールになっております。

松岡委員 民主党が常日ごろから主張されております政治と金に関する透明性の問題でありますから、この透明性の問題について今申し上げておるわけでありますが、我々も常に心がけねばならないと考えますが、この際、国民の皆さんに対しまして、十五億円ものそういった政党の助成金、もとは税金でありますから、それがどのようになされたのか、これはやはり明らかにしておくことが透明性を確保する上で大事ではないか、そのことを強く求めたいと思います。

 次に、民主党の同じく藤井裕久代表代行が、民主党と合併する前の自由党の会計責任者であったころの政治資金でございますが、まず、平成十二年の収支報告書によりますと、五月三十一日に大和銀行から十億円を借り入れ、七月十九日に五億円、十二月二十日に五億円を返済したと記載されています。

 ところが、平成十三年の収支報告書によれば、平成十三年六月二十九日、大和銀行より十億円を借り入れた旨の記載がありますが、返済の記載がないまま民主党と合流して合併しています。しかも、自由党の同じ平成十三年収支報告書の資産等の状況の欄には、百万円を超える借入金はなしと記載されています。

 借り入れの記載はあるが返済の記録がない。矛盾しています。そして、自分たちは百万円以上のお金を借りていないと主張する。これは虚偽記載に当たりませんか、どうですか。選挙部長、いかがですか。

久保政府参考人 個別の事案につきましては具体の事実関係を承知する立場にございませんので、御理解をいただきたいと存じます。

 なお、一般論として申し上げますと、政治資金規正法におきましては、政治団体の会計責任者は、収支報告書に当該政治団体のすべての収入及び支出について所要事項を記載することとされております。

 また、十二月三十一日において百万円を超える借入金があった場合には、借入先と借入残高、これを資産等として報告をするということになっております。

 また、故意または重大な過失によりまして記載すべき事項を記載しなかった者、または虚偽の記入をした者につきましては、五年以下の禁錮または百万円以下の罰金に処する旨の定めがございます。

松岡委員 先ほどお話しいたしましたが、政党助成金から組織活動費が平成十四年に総額約十五億円、当時の藤井氏に支払われています。政党助成金を借り入れた金の返済に使うことは法的にできないと思いますが、仮にこの組織活動費から返済されているとするならば、脱法行為に当たると思いますが、いかがでしょうか。この点について、選挙部長。

麻生国務大臣 これは松岡先生、個別の事案につきましては具体的な事実に即して判断をされるべきものでありまして、これは総務省としては、いわゆる実質調査権というのを有しておりませんので、少々お答えしかねるのですが、ただ、政党助成法第十四条第一項において、借入金及び貸付金の貸し付けは、定義上、政党交付金による支出から除かれているところであります。参考としては、政党交付金による支出から借入金の返済及び貸付金の貸し付けが除かれておるということは、政党交付金の使途の公開を担保するというところからの観点であろうと理解をいたしております。

松岡委員 また、仮に、政党助成金から支出をした民主党の組織活動費の中から民主党代表代行である藤井氏個人に約十五億円余を支払い、それを藤井氏が自由党の大和銀行からの借入金十億円の返済に充てた場合には、藤井氏個人が自由党の借入金の肩がわりをしたものとして、自由党の収支報告書に藤井氏による寄附と記載する必要があるのではないでしょうか。この点につきまして、では、選挙部長。

久保政府参考人 個別の事案につきましては私ども事実関係を承知する立場にございませんので、御理解をいただきたいと存じます。

 なお、一般論として申し上げますと、会計責任者は、収支報告書に政治団体のすべての収入、支出について所要事項を記載するものとされておりまして、寄附につきましては、同一の者からの寄附で年間五万円を超えるものにつきましては、寄附者の氏名、住所等の内訳を記載することとされております。

松岡委員 であるはずなのに、自由党の収支報告書には藤井氏からの寄附についての記載を確認することができないわけであります。

 一方、藤井氏からの寄附について記載がないのでありますから、合流した民主党が肩がわりをしている可能性もあるわけでありますが、調べてみましたが、民主党の収支報告には、我が党の調査では、民主党の収支報告書にも符合する返済の記載がありません。

 自由党にも民主党にも収支報告書に返済についての記載の事実がないとすると、大和銀行に対する返済がいまだになされていない、あるいは……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

松岡委員 仮に返済がなされているにもかかわらず、収支報告書にその旨を記載していないのいずれかであるはずです。しかし、自由党の収支報告書には借入金なしと記載されているわけでありますから、いずれにしても、これは明確な虚偽記載と言えると思いますが、選挙部長、この点、いかがですか。

久保政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたが、一般論として申し上げますと、会計責任者は、収支報告書に当該政治団体のすべての収入、支出について所要事項を記載するほか、十二月三十一日において借入金の残高が百万円を超えるものにつきましては、当該借入先及び借り入れの残額を資産等として記載することとされております。

松岡委員 それでは、合併直前に民主党から自由党へ流れた政治資金の問題でありますけれども、平成十五年九月二十四日、民主党は二億九千五百四十万円を自由党に対し寄附をしております。二日後の平成十五年九月二十六日、自由党は解散したわけでありますが、わずか二日後に解散する自由党に対し、なぜ民主党が三億円近い金を寄附する必要があったのか。政党を金で買ったのと同じではないか、こういう疑いもあるわけです。

 また、解散した九月二十六日、自由党は改革国民会議という政治資金団体に七億四千五百八十九万九千四十一円を寄附しています。さらに、同日、自由党は政党助成金から五億六千九十六万四千百四十三円を改革国民会議に寄附をしております。合計で十三億六百八十六万三千百八十四円という莫大な額であります。

 政党助成法第三十三条には、政党助成金は、解散時に残高がある場合には国に返還しなければならないとありますが、解散する自由党が解散日に政党助成金も合わせて約十三億円以上の金を他団体に寄附するというのは、国民の目から見ますと、これは返還逃れのための行為ではないか、そういう思いになるわけであります。

 解散間近の自由党には十三億円以上もの金が残っているにもかかわらず、なぜ民主党は三億円近い金を、二日後に解散するとわかっている自由党に対し寄附をするのか。常日ごろから政治と金に透明性を求め、口をきわめて自民党が悪者のように言っておられます民主党にはおよそ想像できない実態と思われますが、これを聞いておられる国民の皆様方がどうお感じになりますか。

 こういったことを私は強く指摘をいたしまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

甘利委員長 この際、西野あきら君から関連質疑の申し出があります。久間君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西野あきら君。

西野委員 自由民主党の西野あきらでございます。

 先日、当委員会で、我が党の金子一義筆頭理事が質問をされました山梨県教職員組合の政治活動について、さらに掘り下げて、時間の許す限り御質問いたしたいと思いますので、関係の大臣の方の御答弁をお願いしたいというふうに思っております。

 昨年の十一月ごろからでございますが、新聞報道でこの山梨県教職員組合、いわゆる山教組と呼んでおりますが、この政治活動についてたびたび報道されておりますし、実は、私どもの方にかなりの投書、内部通報が数多く寄せられてまいりました。

 そこで、我が党といたしましては、与党で、自由民主党と公明党がこれらの問題、山梨県教職員組合の政治活動について一体実態はどうなっているのか調査をしようということで、調査団を編成いたしまして再三にわたり山梨県の方に入らせていただいて、関係者等々の事情聴取といいますか、調べをいたしてまいりました。

 きょうはそのことについてお尋ねをいたすわけでございますが、まず冒頭、調査をいたしましたところで、実は驚いたことがあります。

 それは、端的に申し上げますと、政治資金カンパに対して、教員が半ば強制的に、非常に強力な態度でカンパを要請しておるという事実が明らかになってまいりました。さらには、民主党の参議院の幹事長であります輿石東さんの後援会、東明会といいます。この東明会の入会カードを集めることに対して、いわばノルマを課している。こういうことを教員、学校の先生がやっておるということの実態がわかってまいりました。さらには、選挙のために、電話作戦とか、あるいは選挙事務所に動員をするための駆り立て行為をこれまた強力にやっておった、実はそういう実態がわかってまいりました。

 これについて、申し上げましたとおり、多くの証言もございますし、また、その違法行為に対する内部資料も私どもは数多く入手いたしておりますので、後ほどここに提示をしたいというふうに思っております。

 まず、皆さんのお手元に配付しておると思いますが、資料一を見ていただきたいと思います。

 これは、県の教頭会の会長に対して、東明会カード、すなわち輿石さんの後援会のカードを一人当たり十枚、これを取り組んでほしいという要請文であります。その下には、教頭のカンパは一人当たり何々というふうに書いてありまして、実はこの要請はまずいとみえて、読んだらこの用紙は破棄してください、こう指示をいたしておるわけであります。

 さらに、資料一の二でございますけれども、これによりますと、教育会館からそれぞれの分会長に対しまして、今度は、今申し上げたカードの督促状であります。

 ちょっと読みますと、昼休みに分会会議を開いていただき、もう一度、分会員に指示した徹底をお願いいたします。目標達成していない分会を中心に、不足分、追加分を本日の午後七時までに届けていただきたいと思います。組合員があと一人、五人分協力していただければ目標達成ができますので、何とか本日中に目標達成したいと考えていますので、御協力をお願いします。この文章もまた、読んだら分会長の責任で処分してください、こんなことを言っているわけであります。

 次に、三枚目でございますが、今度は、申し上げました電話作戦に対する電話行動のお願いでございまして、それも、目標までもうあと一息のところまで来ておりますといって、それぞれの日にち割りに、この学校名は消しておるかもしれませんが、私の手元には、日にち割りに、三回に分けて各学校の担当のものが出ております。

 さらに、資料一の四枚目でございますが、今度はポスターの張りかえの動員手配書であります。これによりますと、五月二十八日、輿石先生ポスター張りかえ、五班役員四名プラス各分会一名、動員氏名が決まりましたら先生まで御報告、これは現役の先生です、名前はわかっていますけれども、これは消してありますけれども、現役の先生まで御報告をお願いいたします、このようなことをやっているのです。

 一体、これは、だれが、何のために、何をさせたのか。その結果どのような違法行為が行われたのか。その責任を一体今度はだれが負うのかということであります。これらを考えておりますと、実は、山教組の全体の構図をしっかりと押さえていかないことにはいかない、こういうふうに思ったわけであります。

 山梨県の教育委員会が、昨年の暮れ、二十七日に、教育公務員特例法に違反した教員を口頭訓戒処分いたしておるのです。実は、すべてこれで一件落着したわけじゃないんです。これは、処分を受けた教員はむしろ犠牲者なんです。

 なぜかといいますと、もう一つ資料をお配りしておりますので資料二を見ていただきたいと思いますが、これは山教組の三十年史、三十年の歴史をみずからが書いた歴史の中に、真ん中にあります。ちょっと読みます。

 「「国会議員を送り出せる山教組」という、」山梨県教職員組合ですが、「みずからの闘いによって勝ちとった大きな「政治力」は、つぎには、山教組と共働しうる県知事を当選させ、」今度は「県議選に大きな力を発揮してきた。」「こうして、一つ一つ積み上げてきた選挙を通してつちかってきた「政治力」が、山梨県の教育行政をして、」ここが問題なんです。「「山教組を無視してはうまくことが運ばない」という状態にまで、大きく前進してきた。」と、みずからがこれを認めておるわけなんでございますね。

 ですから、私はここでお尋ねをしたいのでございますが、山教組は、政治力を養うために政治活動、選挙活動というものに力を入れているわけなんです。文部科学大臣中山さんにお尋ねしますが、さきの予算委員会で、大臣は、事実をしっかりと確認して適正な対応を行うよう指導する、こう答弁をされておるわけであります。単に教育公務員特例法に違反した一部の者だけのみならず、実は、その後ろ、背後で教職員を扇動してきた教職員組合の実態を含めた全体像を解明すべきだというふうに思うのでございますが、大臣、いかがですか。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

中山国務大臣 御指摘の件につきましては、昨年、報道のあった当初より、山梨県の教育委員会に対しまして、事実関係をしっかりと確認の上、必要な措置をとるようにということで、再三にわたり指導してきたところでございます。

 ところが、昨年の十二月、突然、一部の方々に対していわゆる文書訓告等の処分をしたということでございまして、この一部の方々については、その事実について明らかにしたにとどまっております。事実関係の全体像について明らかにする、解明することが今後の対策をとる上で重要である、このように考えているわけでございまして、県教委に対しまして、再三再四にわたりまして事実関係の全容を解明するようにということで指導しておるところでございます。

西野委員 全容解明に向けて努力していく、こういう心強いお話がありました。ぜひそれを期待しなきゃいかぬというふうに思っております。

 ところが、これは今は山梨県の教職員組合だけなんです。これを山教組と呼んでおりますが、山教組だけの調査では、実は不十分なんです。

 山梨県民主教育政治連盟、これは通称で県政連と呼んでいます。県政連と呼ばれる政治団体が別にあるんです。この規約……(発言する者あり)いやいや、これは現在の規約でもあるんですが、この県政連の規約第五条、これは資料三を見ていただきたいと思いますが、第五条に会員の構成が書いてあります。それを見ますと、県市町村教育委員、校長組合組合員、教頭組合組合員、県教組組合員。要するに、校長も教頭も一般教員もそれぞれ組合を持っていまして、問題なのは、教員が当県政連のメンバー、会員になっているということなんです。

 これは、次の資料三の三を見ていただいてもわかると思うんですが、県政連、政治団体ですね、政治団体のそれぞれの副支部長の中に、実は、現役の教員、山教組支部の委員長が入っているんです。政治団体に教職員組合の役員、副支部長が入っているんです。役員である幹事の中にも、副執行委員長、書記長、女性局長、青年部長等、数多く県政連の幹事、役員が実は組合の役員を兼ねておる、こういうことをこの表で出しているわけです。事務局長も山教組の支部の書記長が当たっている。実は、県政連と組合とが一体になっているということをあらわした内部資料であるわけなんですね。

 ですから、これがいざ選挙ということになりますと、今度は政治団体である県政連というのは表看板にいたしまして、実際は教員が、個人のみずからの自発的な意思だということにして体裁をとって、実は教師を選挙活動に駆り立てておるというのが実態であるということがわかってきたわけなんです。

 そこで文科大臣にお尋ねをしたいのでございますが、教員が県政連のような政治団体の役員についたり、これと同様な役割を持つ構成員となった場合、人事院規則一四―七に違反し、教員の服務観点から問題ではないんでしょうか。文科省が政治団体の内部に関する調査をすることは難しいということは承知しておりますけれども、具体的に人事院規則の一四―七に違反しておるという疑いがある以上は、これらについて直ちに調査をする必要があるのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 公立学校の教員の政治的行為の制限につきましては、教育公務員特例法によりまして、国家公務員の例によるものとされております。具体的には国家公務員法及び人事院規則に定められており、これによれば、政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割を持つ構成員となることが禁じられているわけでございます。

 山梨県教育委員会の調査結果によりますと、どうもなってはいないようであるというふうなことではございますが、教員が政治的団体の役員等になっていた事実がもしあるとすれば、これは法令に反するものである、このように考えておりますが、こうした違法行為のないよう、まずは、教員を監督すべき校長や市町村教育委員会において服務規律の徹底をしっかり図る必要があるんじゃないか、このように考えております。

西野委員 ちょっとパネルを出させてもらいます。今お尋ねしたのは、政治団体の県政連と、いわば上の教職員組合とが役員が一体しておるということの例を申し上げたわけでございますが、実はそれだけではないんでございます。いざ選挙ということになりますと、東明会、これは輿石東さんの後援会の団体でありますけれども、この東明会の存在が浮かび上がってきたわけなんです。

 見ていただきますと、名前は消したんですけれども、この政治団体の会長が後援会の副会長になっているんですね。政治団体の県政連の副会長が同じく後援会のまた副会長になっている。もう一人の副会長は上田京子さんという方なんですが、この方も、県政連の副会長であり後援会の方の副会長でもある。会計責任者は、同じく東明会のこの副会長は、いわば会計責任者は、実は県政連の、政治団体の方の責任者でもあるわけなんです。事務局の次長は、今度は県政連の方の支部の事務局を兼ねている。こういう、県政連、政治団体と後援会それから教職員組合が、文字どおり三位一体という形が出てくるわけなんですね。

 今お手元に配付しております資料四を見ましたら、県政連の会長が、政治団体の会長がそれぞれの支部の会員に出している文書があるんですね。それによりますと、県政連支部総会、国政報告会、参議院選決起集会、東明会国政報告会等に対して、予定されているからということで、実は、徹底をして周知してもらうような内部文書も来ておるわけなんでございますね。

 ですから、これを言いますと、この教職員組合と政治団体それから東明会、これは輿石さんの政治団体ですね、それと輿石さん自身の……(発言する者あり)民主党の輿石幹事長です、参議院の幹事長ですが、いわゆる文字どおり一体になっておるということを実はこの表でわかっていただけると思いますし、内部の資料からも明らかであるというふうに思うわけであります。

 そこで、これらの教員が犯した教育公務員の特例法違反は、実は、申し上げたとおり、県政連と東明会、政治団体ですね、それから教職員組合、この三位一体の構図の中に出てきた根の深い問題であるというふうにわかります。

 こんなことが何で今まで浮上してこなかったのかということを調べてみますと、何と、教員の、先生の任命権者であり、かつまた教員を、先生を監督する立場にある教育委員会、そして教育長というのは、実はこの人たちは教組の出身の方が大変多いんです。ですから、山梨県の教育界は、挙げてすっぽりこの構図の中に当てはまっている、こう見たらいいというふうに思います。

 そこで大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、今申し上げた、これらの県政連、教職員の団体それから後援会、この三位一体のことに対して、先生が政治団体の中枢を担って、そして後援会の政治活動の手足ともなっている。これは教育公務員特例法に違反するんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 文部科学省は……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください。

中山国務大臣 みずからこれを調査するわけにいきませんので、先ほど申し上げましたように、山梨県の教育委員会に、再三再四にわたりまして事実関係を明らかにするようにということを要請しているわけでございますが、山梨県の教育委員会からの話によりますと、県政連と東明会それから組合、その状況は必ずしも把握していないという報告しかないわけでございます。調査結果は、県政連と山梨県教組は、ただ所在地が同一であるということでございまして、このことから、何か密接な関係があるんじゃないかなということは考えられるわけでございます。

 また、先ほど来話がありますように、県政連から校長会とか教頭会を通じて資金カンパの要請があって、これを受けて教頭あるいは校長が法令に反する資金カンパを行ったとか、あるいはその他の政治行為を行ったということがあれば、これは教育行政に対する信頼を大きく損ねるものでございまして、このことについてはしっかりと懲罰処分を含めた措置を行うべきだ、このように考えております。

西野委員 大臣、そういうことがあったら、これは法違反でございますから、懲罰を含めてしっかりやっていく、そうあってほしいと思います。

 さらにもう一点指摘をしておきたいというふうに思いますが、資料五を見てほしいんですが、これは電話行動と書いてある。私どもは電話作戦とよく言いますが、電話行動表。この三行目を読んでください。これは担当者にそれぞれ指示をしたことでございますが、担任した学級の名簿、先生が担任した学級の名前、名簿等を持ち寄って拡大の電話をかけていただきたい。電話行動について実は指示しているんですが、これは、教員の立場を利用しますと公選法の違反ということにはならないんでしょうか。大臣、お尋ねいたします。公選法違反。

久保政府参考人 個別の事案につきましては、私ども、具体の事実関係を承知する立場にございませんので、御理解いただきたいと存じます。

 なお、公職選挙法第百三十七条は、「教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。」と規定されております。

 当該規定は、教育者たる地位に伴う影響力を利用して選挙運動を行うことを禁止するものでございまして、違反をした場合には、一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金に処するものとされております。

西野委員 ぜひ調査していただいて、それらの法違反があれば的確に処理をしていただきたいというふうに思います。

 もう一点、山梨県教職員組合の政治と金の問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、山梨県の教職員組合の組合員は四千五百人ほどおられるそうです。これは組織率からいいますと約九五%だと言われています。何と、全国で教員の組織率が九五%以上もあるというようなところは、ほかにはもう一、二県しかないですよ。これはすごい絶大な組織を持っている教職員組合だというふうに思いますね。その教職員組合が、教員に、資金カンパと称して毎年二回、ボーナスのとき、夏、冬だと思いますね、それから選挙になりますと選挙の直前の臨時カンパ、これを集めているんです。

 ちょっと大臣にお尋ねしますけれども、先ほどの問題は、いわゆる政治活動としての法令違反です。今これから申し上げようとしていることは資金カンパなんです。この資金カンパというものが強力に推し進められたということになった場合は、これはいかがでございますか、やはり法令違反になるんではないですか。

中山国務大臣 公立学校の教員につきましては、法令によりまして、政治的目的を持って、賦課金、寄附金、会費またはその他の金品を求め、もしくは受領し、または何らかの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与することが禁じられているわけでございます。

 したがいまして、公立学校の教員が選挙資金の資金カンパについて援助、勧誘、仲介、あっせん等の関与をすることは法令に違反するものであり、集めた資金カンパを取りまとめて政治的団体に届ける行為もこれに当たるものと考えております。

西野委員 今明確にわかったわけでありますけれども、この間、山梨県教育委員会が発表しました調査結果というのがありますね。これに基づいて違反があったということのようでございますが、これは民主党関係のことでございますが、一体どこが違法なのか、それをちょっと明確にしてほしいと思います。

銭谷政府参考人 山梨県教育委員会が昨年十二月二十七日に発表いたしました調査結果によりますと、校長、教頭らが、政治的目的を持った資金カンパにつきましてその要請を伝達し、また、集まった資金を政治的団体に届けるという行為があったという事実認定をした上で、これらの行為は教育公務員特例法に明らかに違反する行為ではないにしても、人事院規則に規定する関与ではないかとの疑いを招きかねない紛らわしい行為であるとの判断によるという報告でございます。

 ただ、文部科学省といたしましては、県教委の調査結果を見る限り、これらの行為は法令に違反する政治的行為に当たるものと考えておりまして、県教委に対して厳正な対応をとるように指導しているところでございます。

西野委員 文科省の方は、県の方と違って、明確に違反している、こういうふうにおっしゃっていただいたです。法に従ってしっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 ちょっとカンパの話を出しましたけれども、カンパの総額を計算してみますと、ボーナスカンパで、校長が一万円で教頭が七千円で一般教員が五千円。そして臨時カンパになりますと、今度は校長が三万円、教頭が二万円、一般教員が一万円。これが、九五%の組織率の先生方に半ば強制的に集めるんですから、間違いなく、総額だけでこれは一億円を超えますね、一億円。

 ところが、このカンパの領収書は一切ありません。領収書はないんです。収支報告書もないんです。そういう証言を私どもはたくさん聞いているんです。一体、この集められた巨額のお金はどこへ行ってしまったんでしょうか。

 県政連というのは、そのメンバーである教員に対して、やはり教組が徴収するカンパを行っているわけなんです。カンパをした現職の教員からの話もいろいろ聞いているわけなんです。それによりますと、このカンパの多くは民主党の輿石議員の選挙活動のために徴収されたものだと認識しているという証言を私どもは多くとっているんです。

 そこで総務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、資料六、七をあけていただきたいと思います。資料六、ここには、県政連の平成十五年度の政治資金収支報告書であります。その一枚めくっていただいた資料六の二を見ますと、一切受け取っていない、ゼロになっていますね。個人からの寄附はゼロ。

 これは、今申し上げたような金額が入っているにもかかわらず、ゼロとは一体どういうことなんでしょうかね。これは政治資金収支報告書の虚偽記載にはなりませんですか。総務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 西野先生御存じのように、総務省としては実質調査権があるわけじゃありませんから、したがって、具体的な事実に即して判断をされるべきもの、このような個別の事案につきましてはそういうことになります、まず基本的には。

 一般論として申し上げれば、基本的には政治資金規正法におきましては、政治団体の会計責任者は、収支報告書には当該政治団体のすべての収入、支出について所要事項を記載することとされており、寄附につきましては、同一の者から寄附で年間五万円を超えるものにつきましては、寄附者の氏名、住所等の内訳を記載することとされております。

 また、この法律におきまして、故意または重大な過失により収支報告書に記載すべき事項を記載しなかった者、または虚偽の記入をした者、記載もしくは記入をしなかった者につきましては、五年以下の禁錮または百万円以下の罰金に処する旨の定めが政治資金規正法第二十五条によって定められております。

西野委員 総務大臣は、一般論でありますけれども、虚偽の場合はかくかくしかじかの問題がある、こういうことの御指摘であります。

 今その具体の例を、私は民主党関係の山教組の問題についての、カンパで記載されていないということを明確に申し上げたわけであります。

 警察庁の方にお尋ねをしたいんですが、私が今申し上げてまいりましたこのカンパは大変巨額な金額になるんですが、政治資金規正法の虚偽記載には当たりませんか。法違反、刑事罰に当たりませんか。いかがですか、警察庁。

岡田政府参考人 犯罪の捜査の関連につきましては、個別の事案についての答弁は差し控えたいと存じますが、一般論として申し上げれば、警察といたしまして刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて厳正に対処してまいる所存であります。

西野委員 これは具体の例を私は申し上げておるわけでございますから、法と証拠に基づいて、どうぞこういうものについてしっかりと調査していただきたい、捜査をしていただきたい、そのように思います。

 最後に小泉総理にお尋ねをしたいと思いますが、この山梨県教職員組合、これは民主党に関連する団体であることは明らかでありますが、今申し上げたような三位一体、いわゆる政治団体と教職員組合そして民主党の議員の後援会との一体になった活動がいろいろな問題を起こしているわけなんです。ですから、片や一方で地方分権という問題が今進んでいるわけでございますが、地方分権を推し進めることは私も大いに賛成でありますし、また、やらなきゃならぬというふうに思いますが、こういう、組合の組織が余り強力であり過ぎるところになりますとどうもいろいろな問題が出てくるんではないか、ほかにも山梨県のこのような問題が出てくるんではなかろうかというふうにも思いますので、総理のこれらの問題についてのいわば御感想と、今後の地方分権に対する教育行政のあり方等について御意見をお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 公務員は厳しく政治活動、選挙活動を禁止されているんです。制限されているんです。教員も公務員なんです。法律をきちんと守っていただかないと困りますね。

西野委員 時間の関係もありますのでこれ以上の質問はできないわけでありますけれども、きょう申し上げましたことは、民主党系のこの山梨県教職員組合の、いわば問題の入り口にすぎないんです。まだまだ大きな問題が、政治と金の問題があるわけでございますから、我が党でも、この調査団の中に先輩の議員もおいででございます。他の党の方もおられます。さらには、山梨県だけではなくて、神奈川県、三重県、他府県においても同様、似たような状態があるわけなのでございます。そういうことをしっかりと究明していくことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

甘利委員長 この際、渡海紀三朗君から関連質疑の申し出があります。久間君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡海紀三朗君。

渡海委員 自由民主党の渡海紀三朗でございますが、冒頭、通告はいたしておりませんが、昨日、一昨日と、かなり日本全国で雪が降っているようでございます。ことしは阪神・淡路大震災十年ということで、去る十七日には祈念式典も行われたわけでありますし、国連防災世界会議、総理も十八日に、さっき久間さんがお話しになっておりましたが、ヘリで飛ばれたということであります。そういう中で、特に中越地震の被害に遭われた地域、ここの地域の雪というのは、もともと豪雪地帯でございまして、テレビを見ておりますと、本当に完全に仮設住宅が埋まっているというふうな状況であります。

 私は兵庫県でございますが、まともにあの阪神・淡路大震災を体験いたしておるわけでございまして、あの不安というのは大変な不安がございます。そういう中で、今、それに加えてあの豪雪地帯で雪が降っている。こういう状況を踏まえて、防災担当大臣として現状どういう対応をされているか、また、今後どういうふうに対処していかれるか、そのことを、これは通告なしで恐縮でございますが、お伺いさせていただきたいと思います。

村田国務大臣 三十一日から日本上空付近に大寒気団が襲来いたしまして、今委員が御指摘になりましたように、日本海沿岸地方から西日本地方まで含めまして大変な豪雪に見舞われております。特に私ども心配しておりますのは新潟県中越地方でございまして、実は、昨夜七時に、内閣府に情報を集める情報対策室を設けまして、現地の情報収集あるいは被害の状況について情報を集めているところであります。

 なお、本日一時から災害対策関係省庁の連絡会議を開く予定でございまして、引き続き関係省庁からの、被害状況あるいは現在の積雪の状況等の情報を集めて対策を講じたいと考えておるわけでございます。

渡海委員 今、被災された皆さんは大変不安な気持ちでおられると思うんですね。そういったさまざまな会合を開かれて情報収集をされてということでありますけれども、ぜひ迅速にメッセージを送っていただきたいということをお願いさせていただきたいというふうに思います。

 さて、与えられた時間が限られておりますので、基本的な問題について総理並びに関係閣僚の皆さんに質問させていただきたいと思います。

 小泉総理、ことしの四月になりますと、総裁に就任され、総理に就任され、四年になるんですね。歴代でも五位だというふうに聞いておるところでございますが、その間、総理は一貫して、改革なくして成長なしという、これは基本理念といいますかスローガンといいますか、そのもとで、民間にやれることは民間に、地方でやれることは地方にということで改革を推進されてきたと承知いたしております。

 道路公団の問題、三位一体の問題、また構造特区ということで、農業、医療、教育と、従来少し考えられなかった分野にも、聖域なきということでメスを入れて改革していこうということでやってこられたわけでございますが、御自身として、改革の思いというのはいつも聞かせていただくんです、しかし、今まで振り返って、どういうふうに総括をされているか。ざっくばらんに言えば、実はもうちょっとやりたかったんだけれどもできない部分もある。個別具体的には、これはいろいろと意見もあるところだと思いますけれども、そんな思い、そして、これからも改革に取り組んでいく、そういう決意をお聞かせいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

小泉内閣総理大臣 改革路線に対して批判があるのは承知しております。こういう不景気な状況においては、まず景気を回復させてから改革を考えるべきだという考えも盛んにこの委員会でも披瀝されましたけれども、やはり現状を変えるということに対しては必ず反対なり抵抗がある。これは承知しておりますけれども、予算というものは国民の税金から成り立っているわけであります、財政は。

 そして、この限りある財源の中で、どういう対策、国民に必要な予算を編成して支出していくかということを考えますと、現状のままでそれぞれの要望にこたえて全部手当てしていくということは、それは、国債をもっと増発するか、あるいはもっと増税するかということでありますので、それはなかなか難しい。できるだけ歳出にも切り込んでいこう。税制も改革していかなきゃならない。それから、今まで、規制というのは保護の面もありますけれども、余分な保護というのはかえって地域なり企業の手足を縛る、規制も改革していこう。

 何よりも、なぜ今までこのような、日本の企業なり経済界が新しい意欲を持っていろいろな分野に投資しないのかというと、やはり不良債権がどうもその足かせになっていたということで、就任当初は、いかに不良債権の処理を進めていくかということが大きな議論になりました。そういう際に、不良債権処理を速くするともっと失業がふえる、あるいは倒産がふえる。逆に、不良債権、倒産が出ても失業が出ても、これは必要なことだからそういうのを恐れずもっと速くやれと、両方の批判が出てきたわけであります。

 しかし、結果を見れば、今、四年近くたちまして、政府の当初の八%台の主要金融機関の不良債権比率を四%台にする、そういう状況、目標を立ててやってまいりましたけれども、その目標は実現できる状況になりました。そして失業率も、五%を超えていたのが、ふえるどころか、今四%台に減ってきました。就業者数もふえてまいりました。倒産件数も、このような不良債権処理を進めていくと倒産はどんどんふえるということでありますけれども、倒産件数も連続して減少しております。

 こういうことから、私は、ようやく今、景気の面においても各企業が業績を上げてくれて回復基調に乗ってきたな。しかも、それは、今までのように、財政を出動して、公共事業を拡大して、減税をして拡大してきたというよりも、むしろ民間がやる気を出して、税収を上げて景気回復基調になってきたということでありますので、やはり改革なくして成長なしだな、この路線を進めていくことが、今後とも、余り政府が余計なことをしないで、民間あるいは地方、個人の意欲を引き出すような環境整備をしていくのが政治で一番重要な役割だなということを改めて感じております。

 これからも、政治というのは余り余計なことをしない。セーフティーネットを確保することは大事であります。どうしても自分の力では立ち上がれないという人に対して手厚い対策をするのは必要であります。しかし、努力しよう、政府のことを、余り余計な口出しなんかしないでくれ、自分でやるという人の意欲を盛り上げるということがより重要ではないかなと思っております。

 この改革路線を今後も進めていって、民間主導の持続的な景気回復軌道に乗せていきたいと思っております。

渡海委員 時間が限られておりますので、できるだけ簡明にお答えをいただきたいと思います。

 次に、実は、改革の行き着く先が一体どういう国家なのか。日本の国家、日本の国を一応どういう国にしたいのかというのは、政治家はビジョンとしてやはり持っておく必要があろうというふうに思います。

 今、総理は、要は、頑張れる人が自由に頑張れるような社会をつくっていこうということをお答えの中で言っていただいたわけでありますけれども、小泉総理が目指す国家像といいますか国家ビジョンというか、日本はどういう国でありたいというふうにお考えなのか、その点について率直な御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。簡明で結構でございます。

小泉内閣総理大臣 これを説明すると長くなるものですから、簡明にということになりますと、これは要するに、人間の本質というものをやはり理解して政治をやらなきゃいけない。本質とは何か。これは、努力すれば報われる、努力する者としない者が同じでは努力しなくなっちゃう、こういう、努力する人が報われる社会。そして同時に、人間は、自分を認めてもらいたい、自分を大事にしてもらいたい、だれでも思うことであります。そういう本質的な問題、これを理解して、もろもろ政策を打っていく必要があるんじゃないか。

 そして何よりも大事なのは、やはりみずから助ける精神とみずからを律する精神。そして、やればできるというような意欲を持つ人がどんどんどんどんふえていく。

 それで、どうしても自分の力では立ち上がれないという人に対しては、公的な支援も必要でしょう。お互いが助け合うことが必要でしょう。

 しかし、要するに、自分も努力すれば生活できるんだな、いろいろな事業ができるんだなと、自分を大切に思う気持ちを持てば、やはり相手の気持ちも大切にしなきゃならないという……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

小泉内閣総理大臣 そういう本質的な人間の持つ精神といいますか、気持ちを大事にしていくような対策がこれからも必要じゃないかなと思っております。

渡海委員 党内では、努力はしているけれども総理が全然認めてくれないというふうな声も聞こえておりますので、よくこれから配慮していただいて、今のお言葉を実行していただきたいというふうに思います。

 次に財務大臣にお伺いをしますが、予算を編成するというのは、当然、大事な税を執行するための予算ですから、そういう意味では、現在の状況をどうとらえるかということが大変大事ですね。これが間違っていたら、せっかくつくった予算も的外れの予算になってしまう。

 そういう意味において、今の日本の置かれている社会経済情勢といいますか、そういったものをどのように考えて今回この予算をおつくりになったのか、そのことをお聞かせいただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 まず、いろいろな改革に取り組んでやってきたわけですが、デフレは依然として緩やかに進行している、まだおさまっていない。これはやはりどうしても関心を払わざるを得ない一つでございます。

 それから、少子高齢化が進んでいく中で、これから日本を支えていく労働力がきちっとあるのかどうかというような問題もございます。

 考えると切りがないんですが、そういう基本的ないろいろな心配の中で、では改革の成果は上がっていないかというと、やはり私は上がっていると思うんです。

 一つは、不良債権処理とか、あるいはその裏表の関係に立ちます産業再生が進んでまいりまして、そういう中で有利子負債がバブル崩壊後一番低い水準になったというような現状がございます。それから、企業業績は確かによくなってきた。

 ただ、皆さんが御心配になるのは、それが果たして個人消費に結びつくのかというようなことはやはり心配でございます。

 ただ、失業率が、この十数年来見ますと、これはそのときそのときで上がったり下がったりしますが、ずっと趨勢的に失業率がふえたのが、この十数年来初めて失業率が下がってきたというような状況がございますので、そういうことがやはり、企業業績が家計に結びついていく、そういう傾向ができたんじゃないか、そういうような現状認識のもとで今度の予算をつくったわけでございます。(発言する者あり)

 今、パート労働者ということがありました。確かに心配の中に、さっき言い忘れましたが、若年労働力の問題は非常に心配でございます。特にニートとかフリーターというような問題があって、そういう若い人たちが十分な経験を蓄積できないようなことをどうしたらいいか、こういうようなことも、冒頭、実は申し上げるべき心配の一つでございました。

渡海委員 今いろいろと、例えばニートの問題であるとか、それから、まだデフレの問題等々いろいろ考えますと、社会保障の負担もふえている。これは財政演説の中でもお述べになっておられるわけでありますが、財政運営、財政改革というのが非常に大きな国家としての課題であり、これは予算編成においてもそのことがしっかりとなされなければいけないというふうに思います。

 これも財政演説の中に、二〇一〇年の初頭に、ここではプライマリーバランスという言葉は使っておられませんね、「基礎的財政収支の黒字化を目指し、」というふうに書いておられるわけでありますが、各いろいろな数字を見ていますと、二〇一〇年の初頭に本当にこんなことができるのかなと、正直疑問でございます。

 国債の発行残高は十七年度末で五百三十八兆円ですか、そういったことも含め、いろいろなことを考えると、今までの、払いだけに抑えるということで予算を編成するというのはなかなか難しいんじゃないか、そんな気がするわけでございますが、このことに対して、財務大臣、どういうロードマップを考えておられるか。

 また、「目指し、」ですから、それはやってみてできなかったらしようがないやということかもしれませんが、やはりこの財政構造改革というのをしっかりとやらないと、国債のマーケットの信頼も非常に下がるわけでありますから、いろいろな心配が起こってきます。

 もう一点大事なことは、ついでにお話をします、世代間の公平という問題に対して多くの人が心配をされているわけですね。我々は、今生きていくために、まだ生まれていない、まだ誕生もしていない、それどころか、まだこの世に存在していない世代のある意味お金を使って今の運営をしているんじゃないか。

 こういったことを考えますと、この財政構造改革、大変重要だと思いますけれども、ロードマップといいますか、そういったものについてお聞かせをいただければ幸いと思っております。

谷垣国務大臣 渡海さんから極めて大事な御指摘があったと思います。今、先進国の中で最も悪い財政状況と言わざるを得ない状態でございますけれども、その中で財政運営をどうしていくか、財政再建をどうしていくか。基本的な考えは、今渡海先生がおっしゃったとおりなんだというふうに思うんですね。

 まず、余り財政が肥大して大きな政府になっていますと、これから人口が減ってきますと、資金力、日本がどうなるかということがあります。そうしますと、限られた資金を政府ばかりが使うようなことではいけないので、やはり政府をきちっとスリムにしていって、必要な金が民間に流れていくようにしなきゃいけない。それは、財政改革の一つの目標でございます。

 それからもう一つは、これだけ国債が、たくさん借金がありますと、それをきちっと直していくという意思があらわれませんと、財政に対する信認が崩れてしまう。日本は大丈夫か、こういうことになってしまう。

 それから三番目の問題として、渡海さんがおっしゃった、後の世代にツケを先送りしているかどうか、世代間の公平という問題があると思います。

 プライマリーバランスの回復ということがよく言われますが、要は、その年にいただいた予算でその年の政策を打っていく、ツケを先送りしないようにしようということでございますから、それを、今申し上げたような三つの観点を総合しますと、そこで我が国が立てておりますのは、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復する、後の世代にツケを先送りしないような体質に持っていこう、こういうことであります。

 では、それをどうしたらできるかということでありますが、まず歳出構造を大きく見直していかなきゃならないのは当然だろうというふうに私は思うんですね。そういう中でやはり大きいのは、どうしても高齢化等の圧力がありますから、社会保障全体を見直して身の丈に合ったものにしていかなければ、これは長もちしないということがございます。

 それから国と地方の関係。今三位一体ということで行われておりますけれども、やはり国と地方両方がスリム化をして、ぜい肉を切り落としていくという苦しい作業をやらなければいけないだろうと思います。

 ただ、まだほかにもありますが、こういう作業を幾らやりましても、高齢化等でどうしても歳出はふえていくということがありますから、歳出カットだけでやろうとしても、私は限界があるだろうと思います。どうしても歳出歳入両方バランスのとれた改革をしていかなければならないということだろうと思います。

 そうすると、どうしても税ということになってくるわけですが、税は、単に歳入をどれだけ取るかということだけではなくて、あわせて、これからの人口構造やグローバル化を踏まえて、日本の成長を支えられるものになるかどうか、そういう形で税制改革をしながら、あわせて歳入歳出両面からの財政の規律をつくっていかなければいけないんだろうと思います。

 ただ、これはなかなか簡単なことではございませんので、つまり、歳入歳出両面から、歳出を切り込めばそれによって苦しさを覚える方がある、歳入面でいろいろお願いをすればまた負担もお願いしなきゃならない局面が出てくるということでありますから、我々はやはり粘り強く、財政の現状、それをどうやって立て直すかというのを国民に説明しながら、対話を十分積み重ねて、そして国民の間にある不安とか不信とかいうものを我々もよくよく見ながら、考えながら、対話を続けてこの改革をなし遂げていくということではないかと思います。

 極めてざっくりした答えでございますが、そういう努力をこれから私どもは積み重ねなければいけないのではないかと思っております。

渡海委員 まさに最後に財務大臣がおっしゃった部分を私も申し上げようと思っていたんですが、我慢をしていただかなきゃいけない部分が歳出で出てくる。そして同時に、時には負担をお願いしなきゃいけない、これは税でもありましょうし、保険料を上げるといったような。しかし、それはやはりしっかりとした信頼関係がないと、国民に説明責任が果たせないとそのことはなかなか難しいわけでございまして、今後ともあらゆる機会を通じてしっかりと、日本の財政の現状、また、先が見える説明というものをお願いしたいというふうに思っております。

 一点だけ、少し違った観点からですが、財政がここまで膨らんだ責任というのは一体だれにあるかということを考えますと、これはだれとはなかなか言いにくいんですが、いろいろな国の責任なり立法府の責任ということがあると思うんです。現行憲法では、財政の処理には国会決議を経よというのが八十三条ですね。それから租税法定主義が八十四条。予算の作成、提出、これは内閣、八十六条なんです。これは手続だけしかないんですよ。

 私は、今、憲法改正の議論が衆参両院の憲法調査会、これは報告書を出すということです。何も、提案をするということではありませんけれども、各党もされておるようでございますが、やはり憲法の財政の項目にしっかりと、国は国家の財政の規律に対して責任を持つ、この文言を入れるべきだというふうに、これは私自身の考えでございますが、大臣の感想はどうですか。お聞かせをいただきたい。

谷垣国務大臣 財政規律をきちっとしていくというのは、国家運営の一つの基本的な考え方ではないかと私は考えております。財政法の基本的精神もそこにあるんだと思いますが、それを憲法にどう書くかということになりますと、これは今までも、国会の憲法調査会でも、あるいは党の御議論でもいろいろな御議論があったと思います。私は、十分にそこは議論を積み重ねていただきまして、憲法は、人権もありますけれども、国家統治の基本的な仕組みをつくるわけですから、財政に関して憲法はどう考えるか、十分に衆知を集めて議論を尽くしていただきたいなと思っております。

渡海委員 ありがとうございました。特に最近気になるのは世代間の公平ということなんですね。ぜひ先頭に立って財政規律を正していくという、司令塔といいますか広告塔の役割を果たしていただきたいというふうに思います。

 時間が限られています。次に、実は介護保険の質問もしたかったんですが、まだ介護保険は多分他の委員会でもしっかりと議論をされるというふうに思いますので、尾辻大臣、失礼でございますけれども、ちょっと飛ばさせていただいて、私が一生懸命やってきました科学技術のことを少し聞かせていただきたい。

 棚橋大臣の登場する場所が実は今までなかったなと思いましたら、きょう登場されましたけれども、ことしはちょうど第二期科学技術基本計画が終了する年でございます。来年には第三期、これをつくらなきゃいけない。

 ちょうど十年ちょっと前にこの法律を超党派の議員立法でつくりまして、そして、そのもとでこの基本計画をつくり、科学技術政策というものをリードしてきたわけでありますが、今までの科学技術基本法が果たしてきた成果、役割、そういうものについて、棚橋大臣、どういうふうにお考えか。

 そして、時間が限られておりますから、あわせて、第三期科学技術基本計画に向けて今どのような作業が進んでいるのか、また、今後どういうことが議論の中心になっていくのか、そのことをお聞かせいただきたいと思います。

棚橋国務大臣 渡海委員にお答えを申し上げます。

 まず、科学技術基本法それから科学技術基本計画の運用に当たりまして、渡海先生が大変強力なリーダーシップを発揮され、また、日ごろから御指導いただいておりますことに心から敬意を表させていただく次第でございます。

 科学技術基本法の中で、特に、御承知のように、総合科学技術会議という科学技術政策の司令塔を中心に私どもは日本の科学技術戦略を基礎づけておりますけれども、特に第二期につきましては平成十三年度から平成十七年度までの五年間でございまして、その中で、先ほど久間委員の御質問にもお答えをいたしましたが、科学技術関係の予算の優先順位づけを明確にし、すべての科学技術関係の予算をチェックしている。あるいは、各省の中で縦割りの施策で進んでいたプロジェクトを横ぐしで連携させていただいてその重複を排除し、総合的な効率性を高めている。あるいは、研究環境を競争的にして、そのことによって創造的な研究をしていただくための競争的研究資金、これは特に第二期において、平成十三年度に比べて平成十七年度予算では約一・五倍の予算の伸び等をお願いしているところでございます。

 また、特に第二期、渡海先生の御指導もいただきながら、具体的成果を幾つか数値で挙げさせていただくならば、例えば論文の数というもの、あるいは質でいうならば、二〇〇一年にアメリカに次いで世界第二位の論文発表国になりまして、特にネイチャーとかサイエンスという、先生方御承知のように、質の高い論文が掲載される誌面において、このシェアも増加しているところでございます。

 あるいは競争的研究資金におきましては、プログラムオフィサーあるいはプログラムディレクターというのを設けて体制を充実しておりますし、創造的な研究開発システムを開発するために世界最高水準の研究教育拠点を形成するという観点から、二十一世紀COEプログラムというのを実施しております。

 そして、何よりも産学官の連携の枠組みをつくっておりまして、産学官連携サミット等を開催したり、あるいは、共同研究が平成十一年度は三千件ぐらいしかなかったものが平成十五年度では八千件を超えておりますし、それから、いわゆる大学発のベンチャーが平成十六年の夏ぐらいで約九百件を超えるというような着実な成果を上げております。

 これも含めて平成十八年度からは第三期の基本計画をつくっていくこととなると思いますが、先生の御示唆も踏まえながら、まず第一に、国民の皆様方にとってわかりやすい科学技術である、あるいは、科学技術政策というのは、最終的にはその成果を国民の皆様方に還元するものであるということをまず明確にしていきたいと思っております。

 その観点から、まず、研究開発の成果を社会へ効果的に還元するにはどうしたらいいかという視点。それから人材育成。これは、もちろんノーベル賞クラスも大事でございますし、そういう人材も育成してまいりますが、各分野においてやはり科学者がいていただかなければいけないわけで、一言で言うと、すそ野の広い人材育成。そういったようなことを中心に、総合科学技術会議を中心に議論してまいりたいと思っております。

渡海委員 時間が余りありませんから答弁は求めませんが、実は一つ心配しておりますのは、国家を支える基盤的な技術というのがあるんですね。それは、実は、例えば宇宙から出てきたり、海洋のああいった最高の技術ですね、ステンレスを磨く技術とか。そういうものが、どちらかというと、これは竹中大臣に実は聞こうと思っていたんですが、時間がもうありません、お答えは要らないです。最近ちょっと、確かにビッグサイエンスというのはお金がかかりますから、あれを縮めれば、例えば重点四分野に簡単に回せるじゃないかということは理解はできるんです、私もそう考えたことがありますから。いや、もうお答えはいいです。だけれども、やはり今、日本を支える基盤的な技術というものだけはしっかりとやっていかなきゃいけないということをぜひ第三次科学技術計画の中に入れていただきたいということと、それからもう一点。

 これは我々、今実は国会の方に申し入れをしておるわけでございますが、二〇〇〇年に省庁が再編されましてから、国会で科学技術が議論をされる時間が実は非常に少ないです。時間がありませんから今は数字まで挙げませんけれども、データはとっております。ほとんどない。棚橋さんなんか、全体の内閣府の、これは茂木さんのときかな、四%ぐらいしかないんですね。これではなかなか議論にならないというふうな気を持っております、これは政府の責任ではないかもしれませんが。

 そういった意味で、ぜひきょうは野党の皆さんにも、もう少し科学技術の議論を活発にする場所を国会で我々考えていきたいということで、今、立国調査会長尾身先生を先頭に頑張っておりますので、御協力いただきたいということをこの場をおかりしてお願いさせていただいて、時間でございますから、質問を終わります。

 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて久間君、松岡君、西野君、渡海君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 初めに、イラクの問題につきまして質問をしたいと思います。

 イラクの国民議会選挙、世界が注視する中で、多くの困難にもかかわらず、投票が実施できました。私は、イラクの民主化に向けた重要な第一歩であった、このように思っております。今後とも、我が国はイラクの新しい国づくりのために全力で支援をしていかなければいけないというふうに思いますけれども、今回の選挙について、総理の評価をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 イラクの議会選挙、テロリストグループの脅迫に屈せずイラクの多くの国民が投票に赴いて、自分たちの国を民主的な政権にしよう、国民の意思を反映できるような政府をつくろうということで、多くの国民があのような厳しい状況の中で投票したということは、これは将来イラクの安定した政府づくりに希望を抱かせるものである。多くの国々もこの選挙は成功だったと評価しているように、将来、この選挙が安定した民主的なイラクの国づくりに結びつくように、日本としてもできるだけの支援をしていきたいと考えております。

井上(義)委員 今後の民生の安定を考えますと、やはり地元のイラク人の雇用確保が重要なかぎになるのではないか、このように認識しております。

 我が党は、かねてから、メソポタミア湿原の再生事業の具体化によって百万人の雇用も望める、このように主張してまいりました。昨年は、国連とも連携をとりながら、イラク人の専門家を日本に招きまして研修事業のバックアップを行った実績もありますし、日本は幅広い貢献ができるのではないか、このように思います。

 メソポタミア湿原の再生事業も含めまして、我が国は今後イラクにどのような支援をしていくのか、具体的な政策をお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 イラクの今後の復興についてのお尋ねでございました。

 特に今、メソポタミア湿原再生、これは公明党の皆さんがかねてより全力を挙げて取り組んでおられることをよく承知いたしておりますが、今委員御指摘のように、国連環境計画、UNEPがこのメソポタミア湿原を対象といたしまして大規模な技術協力プロジェクトということでございまして、これはとても大規模でございまして、日本だけというわけにもまいらない、国際社会が協力をしてやっていこうということでございます。昨年の九月から始まっておりまして、これにつきましても、私どもとしては積極的に取り組んでいきたいと思っております。

 これを初めとして、私どもは五十億ドルの支援をやろうと言ってまいりました。うち十五億ドルは無償資金でということで、そのうち大半はもう既に支出済み、着手済みでございまして、残る三十五億ドルを今後円借款等々で使っていこうかな、こういうことでございます。

 どういうニーズがあるかどうか、今現地に調査団といっても、実際調査団が入れないものですから、近隣国に参りまして、あとは現地の方を使って調査を始めたりいたしておりまして、今後、もう少し治安情勢が落ちつき、政治情勢が落ちついてきますと、具体的に、電力の問題でありますとか水道の問題、あるいは産業基盤の整備等々いろいろ出てくると思いますので、ある意味ではその辺が我が国がまた得意とする分野でもございます。こうした問題について、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

井上(義)委員 今後、自衛隊による人道復興支援等、ただいま外務大臣からもお話がございましたように、ODAを初めとする経済支援、これは車の両輪としてこれからますます重要な役割を果たしていくと思います。

 ただ、サマワの治安状況については綿密に情報収集を行い、自衛隊の安全確保に万全を期すべきであるというふうに思います。三月にはサマワからオランダ軍が撤退する、かわってイギリス軍が治安維持を担当するというふうに伺っています。自衛隊の安全確保について、例えば迫撃砲レーダー、これを自前で装備するなど万全を期すべきだ、このように思いますけれども、自衛隊員の安全確保について今後どのように取り組んでいかれるか、防衛庁長官、お伺いしたいと思います。

大野国務大臣 三月の半ばにオランダ軍がサマワから撤退いたします。その後、イギリス軍が六百名を展開してサマワの治安に当たる、こういうことでございます。

 フーン国防相から下院に書簡が出ておりまして、その中でも言っておりますけれども、サマワの治安の状況、あるいは日本の自衛隊の安全、プロテクションという言葉を使っておりますが、安全を確保するには六百名で十分であろう、こういうことが書いてあります。そして、もう一つ書いてございますことは、関係国と十分相談していく、こういうことであります。

 その後、私、すぐ在京大使館のフライ大使に、どうかイギリスのフーン国防相に伝えてほしいということで二つのことを申し上げました。一つは、こういう決断を大変評価するということであります。もう一つは、今後十分連絡調整していきたい。特に、井上先生今おっしゃいました対迫レーダーを含めて、情報をどう共有していくのか、こういう点についても十分に相談をしていきたい。もし直接会うことができなければ電話でも調整してまいりたい、こういうことをお願いしてあります。

 また、安全確保というのは長官として本当に責任を持って当たらなきゃいけないことでございます。そういう意味で、自衛隊の安全確保がどのようになっているか自分自身の目で見ておきたい、こういうことで、十二月初旬でございますが、参りました。冬柴幹事長も行っていらっしゃいますけれども、武部自民党幹事長も参りました。

 そこで、私、簡単に申し上げたいと思うんですが、宿営地内では、まず九百メートル四方の宿営地の外に堀があって、その外に、余り何重と言うわけにいきませんけれども、何重かの外さくがある。それから、中へ入りますと、宿営地、寝るところは厚い天井、厚い壁になっております。そういうことで、安全確保を十分に、ある程度高度なレベルでなされているのではないか。

 それから、外へ出ますときは、宿営地外で活動いたしますときには、ヘルメットをかぶる、それから防弾チョッキを身につける。そして、必ず地元の部族長等と十分連絡調整をしながらやっていく、こういうことをやっております。

 さらに、例えば自衛隊が非常に歓迎されている、地元のサマワの人々に歓迎されている、これはやはり治安がよくなることについて大いに貢献していることではないか、このように思っています。

 今後とも、情報の共有あるいは協議を頻繁にする、そして今おっしゃった対迫レーダーの問題、もしイギリス軍の方でその備えがなければ必ず日本の方で備えていくように、安全確保には責任を持って万全を期してまいります。よろしくお願いします。

井上(義)委員 次に、スマトラ沖地震並びに津波による、沿岸各国に未曾有の被害を与えました。発生から一カ月になるわけでございますけれども、まず、被災された方々に心からお見舞いと哀悼の意を表明させていただきたい、このように思います。

 さらに、いまだ安否が確認されていない邦人の方が二十九人いらっしゃいます。御家族を初め関係者の悲痛な思い、察して余りあるところでございます。政府は、この安否確認に全力を尽くしてもらいたいということをまず要望しておきたいと思います。

 その上で、公明党も、十二月の二十六日の発生直後にスマトラ沖津波災害対策本部を立ち上げまして、現地調査団を大みそかの三十一日に派遣するなど、政府と協力して対策に取り組んできました。

 これまでの日本政府の支援は、アジアの一員として、我が国の今後の国際貢献の一つのあり方を示したんじゃないかということで、私も高く評価しているところでございます。

 そこで、総理に今後の支援方針についてお尋ねしたいと思います。

 当面の世界の緊急支援が功を奏して、各国も、被災地の安定化や自立に支援の軸を移しつつあるということでございます。緊急支援の段階を経て、中長期的な復旧復興支援に対するニーズが高まってきているのではないかというふうに思います。

 例えば、津波の早期警戒システムの構築や、あるいは被災地の自立を支援するための観光事業のバックアップ、さらには堤防を初めとする防災施設の建設協力など、我が国の幅広い貢献が今後必要になってくるのではないかと思います。

 我が国として、今後の中長期的な支援について、政府の方針をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 スマトラ沖の大地震・津波の被災者に対する支援、あるいはその関係の国々に対する復旧復興事業につきましては、現在でも、緊急援助隊等医療活動、積極的に自衛隊初め関係者が大変現地の皆さんから評価されている活動をしております。被害が甚大なものですから、これには相当時間がかかるのではないか。

 先日行われました神戸での国連主催による防災世界会議におきましても、日本の今までの災害に対する経験、あるいは防災に対する日本の今までの経験というものを披瀝しながら、日本として、災害対策というのはほかの国に比べてかなり高い水準にあるのではないか。日本にとっては、台風とか集中豪雨とか地震が多いものですから、この対策についてはほかの国に比べて日ごろから対応していかなきゃならない、そういう面からも、大いに日本の今までの対策について各国が耳を傾けてくれたと思います。

 今後、津波の警戒システム等、世界各国と連携しなきゃならない面があります。また、被災国に対しましては、支援の手を差し伸べても、政府までは届いても、それから先に本当に被災者に届くのかどうかという面もあります。その各国の実情、状況に応じてどういう対策が必要かという点につきましては、今、日本としても、国連を中心とした防災の対策を練っているところでありますので、できるだけアジアの一員として、また国際社会の一員としての責任を果たすべく、資金的な支援と物的な支援を含めまして、どういう支援ができるか、できるだけの支援をしていきたいと思っております。

井上(義)委員 今回のあのスマトラ沖地震・津波の惨事、これは日本でも起こり得る可能性が十分にあるわけでございます。例えば、東南海・南海地震につきましては、マグニチュード八・六が想定されているわけですけれども、それによる津波の想定では、十二メートルの津波が起きると。これによって、一万八千人の方が、そのうち津波で九千人の方が亡くなるというふうに言われておりますし、それから、水門が閉鎖不能の場合は、これが二万一千人、うち津波が一万二千という大きな被害をもたらす可能性があるわけでございます。

 万が一の災害に備えるのは国の責務でございますから、この東南海・南海地震あるいは日本海溝地震など海底で発生する地震の可能性が指摘されておりますので、その津波に対してどう備えるのか。今回のインド洋津波を教訓として、今後我が国がどのような対策をとろうとしているのか、特にハード面、つまり施設整備面で国土交通大臣の方針をお伺いしておきたいと思います。

北側国務大臣 このインド洋の大津波を受けまして、やはりこれを我が国の今後の教訓としていかなきゃいけないということで、私の方から、国内での津波対策の現状と課題について総点検をしてもらいたい、そして、専門家の方々にも入ってもらって、今年度中、ことしの三月までに今後の津波対策の基本的な方針について取りまとめてもらいたいという指示をしてございます。

 二月の六日に、今月の六日でございますが、専門家の方々に入っていただきまして、津波対策検討委員会の第一回を開かせていただきまして、今後、ハード面、ソフト面での減災対策を取りまとめ、強力に推進させていただきたいと思っているところでございます。

 また、十七年度予算案では、津波危機管理対策緊急事業というものを創設いたしまして、堤防護岸等の施設整備をしっかり進めていく、また避難用道路の整備、さらには津波ハザードマップの作成支援等、しっかり取り組みをさせていただきたいと思っているところでございます。

 さらに、この津波の問題というのは、本当に、百年に一回とか五十年に一回とか、非常に長いスパンで起こってまいります。そういう意味で、この経験というものを風化させないことも非常に大事でございまして、国民の皆様に津波に関する基礎的な防災知識を身につけていただくことも重要と考えまして、その啓発の一環として、本年七月に全国規模で大規模な津波防災総合訓練を実施させていただきたいと考えております。

井上(義)委員 今国土交通大臣からも指摘がありましたけれども、日本は周囲を海に囲まれているわけでございまして、常に津波被害の危険にさらされているわけです。津波来襲までのわずかな時間、五分から十分、これが生死を分けるわけでございます。要するに、早く逃げるということが大事なんですけれども、ところが、なかなか逃げる体制になっていないということが今指摘されております。

 例えば、昨年九月に紀伊半島沖地震が起きました。津波警報が出たんですけれども、対象となった四十二市町村のうち、避難勧告を出したのは十二市町村だけ、それから、勧告を出した市でも、避難した市民は一割といった事例に事欠かないわけです。

 さらに、地域防災計画に津波対策がない都道府県、これは海岸のない八県を除くわけですけれども、これが二十三県に達しています。それから、津波避難計画を策定している市町村はわずか六・七%、それから、津波のハザードマップを整備していない市町村は九〇・四%というなかなか厳しい現状でございまして、これに対して今後どう対応していくかということが一つ。

 もう一つは、津波というのはどうしても地震発生に伴って起きることが多いものですから、地震対策に従属する災害として対策が立てられている、そういう傾向があるわけです。

 ところが、津波というのは、遠方の地震だとかあるいは海中の地すべりでも発生して津波が襲ってくるわけです。したがって、その津波の特性に着目した対策というものを総合的に立てる必要があるのではないかというふうに思います。

 政府の中央防災会議や津波対策省庁連絡会議等で津波対策全般を根本的、総合的に構築し直すことを検討すべきではないか、こう思うわけです。必要があれば、やはり法律の整備についてもきちっと検討すべきではないか、このように思うわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

村田国務大臣 今委員が御指摘なさいましたように、昨年の東海道沖の地震におきましても、今御指摘のような状況が見受けられまして、市町村の反応も大変鈍い。それから、せっかく避難勧告を出された市町村においても、住民の反応が大変鈍いということがありまして、我々としては、常にそうした住民あるいは公共団体の啓発をしていかなければいけない、こういうふうに考えております。

 中央防災会議の専門調査会におきましても、こうした地震の対策にあわせて津波の対策についても真剣に講じられておりまして、今先生の御指摘なさったように、法的な整備も含めまして、私どもは津波対策について万全を期していかなければいけないというふうに考えているところであります。

井上(義)委員 次に、少子化対策についてお伺いしたいと思います。

 まず、このパネルをちょっと見てもらいたいんですけれども、これは出生数及び合計特殊出生率の年次推移というパネルですけれども、一九八九年に一・五七ショックというのがありました。特殊出生率が一・五七に下がったというので、これは大変だということで、一・五七ショックというのがありました。それから十五年たって、平成十五年の合計特殊出生率は一・二九ということで、少子化傾向に歯どめがかかっていないというのが現状でございます。

 この少子化というのは、私は避けられない課題だというふうに思うんですけれども、まず、この出生率一・二九、ここまで下がったということについて、総理、どのように認識をされているか。

 それから、この間、例えばエンゼルプランとか新エンゼルプランとか、少子化に歯どめをかけるためのさまざまな取り組みが行われてきたんですけれども、少子化に歯どめがかからない。そのことについて、まず総理の認識をお伺いしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 少子化に対して歯どめをかけていくための対策がいろいろこの十数年間立てられてきたんですけれどもなかなか抑え切れないということなんですが、これはやはり、対策という制度、あるいは予算手当てのみならず、社会状況とか男女の意識、これも影響あると思います。

 私が就任して以来、もっと女性が子供を持っても働きやすい環境をつくってほしいという要望の中で、一番の要望が保育所の待機児童、これを何とか解決してくれ、これが一番優先順位が高かったわけです。そういうことで、待機児童ゼロ作戦を展開して、三年で、当時十五万人、これをゼロにしようという、その目標は達成できるようになったんですけれども、それでも今足りないということで、さらに予算手当てをしております。

 それだけでなくて、男性も女性も、識者によると、この少子化の一番の原因ということ、なかなか特定できませんが、大きな要因は晩婚化だと言っていますね。男性も女性も結婚がおくれている、そういう面もあると思います。

 しかしながら、いろいろな識者の意見を聞きながら、子を持つ喜び、子育ての喜び、そして、育児に対しても、女性だけじゃなくて男性もともに育児の喜びを味わおう、あるいは、育児は手間がかかるというけれども、その手間というのは、将来の子供を考えれば煩わしいことではなくて、子供の成長を考えるなら喜びである、そういうような意識を持ってもらうような対策はどうか、いろいろな面があると思います。

 しかしながら、今後とも、少子化対策というのは、これからの将来を考えますと、子供は社会の宝、国の宝ということを考えても、非常に大事な問題でありますので、厚生労働大臣のみならず、文科大臣、関係大臣、協力して、政府を挙げて、この少子化対策に取り組んでいきたい。厚労大臣が今熱心に具体的な策を検討されておりますので、この機会に厚労大臣から答弁していただければ、なお具体的なお話ができるのではないかと思っております。

井上(義)委員 総理、就任以来、一生懸命やってきていただいた。ただ、それになかなか歯どめがかからなかった。今総理がおっしゃったように、子供は日本の宝ですし、未来からの使者、こう言われておるわけで、やはり安心して子供を生み育てられる、そういう社会になっていないというところが非常に大きな問題で、これは厚生労働大臣というよりも、国を挙げて、総理が先頭に立って取り組まなければいけない課題じゃないかな、私はこう思うんですけれども、そういう認識でいいのかどうか、総理もそういう認識になっていらっしゃるのか、もう一回ちょっと決意をお伺いしたい。

小泉内閣総理大臣 これは、少子化対策は国を挙げてやっているわけですが、同時に、昔の産めよふやせよという、そういう時代でもない。強制すべきでないという意見もありますし、自然に、子を持つ喜びといいますか、子を持ちながら仕事がしやすいような環境をとるためには、当然、政府を挙げて、国のこれからの将来の大事な問題という意識を持つのが重要であるということは、全く同感でございます。

井上(義)委員 では、少し具体的にお話をしたいと思います。

 子供を産むか産まないかというのは、これは親の選択で、全くそのとおりです。したがって、少子社会というのは避けられないことであって、私は、それに合った社会というものをもう一回つくり直していかなければいけない、こう思います。

 一方で、この表を見ていただくとわかるんですけれども、「妻の年齢別にみた、予定子ども数が理想子ども数を下回る理由」、要するに、例えば自分は三人子供が理想なんだけれども、実際には一人あるいは二人。なぜ、欲しいと思っているんだけれども子供を産まないか、子供をつくらないかという理由を年齢別に聞いたんですね。

 そうすると、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」というのがやはり圧倒的に多いんですね。これはあらゆる年代層の平均でも六二・九%。特に二十代から三十代前半、七割以上、八割ぐらいの人たちがやはり経済的に大変だからなかなか理想の子供をつくれないというふうに答えているわけで、要するに、産みたくても産めないというのが現状だということを、まず総理、わかっていただきたいんですね。

 そのほかに、例えば若い人ですと「自分の仕事に差し支える」とか、これはまた後でやりますけれども、やはり何といっても経済的理由が一番大きいということをまず指摘しておきたいと思います。

 次に、この表は「子どもへの公的支出と出生率の関係」なんですね。これは、GDPに占める家族、子供向けの支出の割合です。この縦軸は合計出生率です。見ていただくとわかるように、日本はGDPに占める支出の割合は〇・六%。主要国の平均は大体一・九%です。日本が最下位クラス。イタリアも低いんですけれども、イタリアは今一・二七。出生率の低さでは、今、日本とイタリアが競っているという状況です。やはり、子育てへの投資と出生率には相関関係があるということは、否定できない事実だと思うんですね。

 アメリカというのは、支出は少ないんだけれども出生率は高い。これは、後で話しますけれども、企業の取り組みが非常に進んでいるんですね。

 ですから、子育て支援というのは、日本の国は諸外国に比べて非常に貧困だ。やはり、社会保障制度の中でこの子育て支援というものをしっかりと位置づけをして、予算配分をしっかり行うということがまず必要じゃないか、このように思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今の表に示されたように、そういう関係もあると思います。その他いろいろな要因があると思いますが、それに対する対策、子育てに対する支出をふやした方がいいか、あるいは税制の面で、子がふえるほど税負担が少なくなるような形にすべきだという意見もあります。どういう組み合わせがいいのか、手当てがいいのかというのはこれからの問題で、いろいろ、この子育て、出生率の関係、いい対策を打っていかなきゃならないと思っております。

 こういう例を示されますと、確かにお年寄りに対する支出の方が多いのは事実だと思います。それをもっと子育てに振り向けろという議論もあります。

 いずれにしても、そういう子育てに対する各国の対応も参考にしながら、これから日本の対策を打っていく必要もあると思っております。

井上(義)委員 要因はたくさんあるんですけれども、この一つ前のパネルでお示ししましたように、やはり経済的理由というのが一番大きいということを、こちらはしっかり、政治の立場ですから、踏まえなければいけない。

 明らかに、GDPに占める支出の割合と出生率というのは相関関係があるんですね。ですから、先ほどから、総理が先頭に立ってというふうに申し上げていますけれども、やはり子育てというのは、そういう意味で、財政支出を含めて、国を挙げて取り組まなければいけないということを改めて指摘しておきたいと思います。

 それで、具体的に、この経済支援ということの一つですけれども、例えば出産の費用ですね。これはこども未来財団が行った調査ですけれども、妊娠、出産のコスト、どのぐらいかかるかということで、出産費としては、定期健診、分娩、入院で大体四十五万四千八百三十三円かかっています。

 それに対して、経済負担の軽減策として、例えば出産一時金という形で、これは健康保険から現在三十万円が支出されています。それから、妊産婦健診の費用、これは一回六千円から九千円ぐらいかかるんだそうですけれども、大体市町村で二回分ぐらいは助成をしている。それが公的な支援としてあるわけですけれども、結局、出産費用とこの公費助成分の乖離、十万円から二十万円ぐらい負担しているわけで、若い人にとっては非常に大きな負担になっている。

 例えば、妊産婦健診一つとっても、厚生労働省は、妊娠してから出産までの間大体十二回ぐらい健診するのが母体の健康のためにいいと言っているんですけれども、公的に補助しているのは二回にすぎないわけでございます。

 平日出産をしてこのぐらいですけれども、これが、出産の日が休日とか深夜になると、例えば看護婦さんの当直代なんかがそれに加算されて、さらに負担がふえる。一つの事例として、三泊四日で五十七万円ぐらいかかる、こういう例もあるわけでございまして、若いお母さんの中には、何とか平日の昼に生まれるようにということで一生懸命祈っているという大変涙ぐましい話もあるようなわけで、まずは、経済的支援の一つとして、この出産費用の実態を踏まえて、例えば一時金を増額するというようなことを負担軽減として検討すべきだと思いますし、私は、やはりこの問題、将来的には、妊婦健診の費用も含めて、出産費用を健康保険の対象とするというふうに大きく方向転換すべきじゃないか、このように思いますけれども、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、現在、出産育児一時金、これが三十万でございます設定の根拠を申し上げますと、私どもの持っております数字では、これは国立病院の平均値なのでありますけれども、今お触れになりましたような定期健診の費用は含めませんと約三十万、こういうことになるものですから、今のところ、それを根拠にして出産育児一時金を三十万にさせていただいておるところであります。

 しかし、今先生がお話しになりましたようなこともございますので、今後、分娩料の状況を踏まえて対応してまいりたいと考えます。

 それから、医療保険を適用すべしということでございます。これはもう釈迦に説法みたいなことを申し上げて申しわけないのですけれども、疾病とか負傷とかといったような保険事故に対して給付するというのが医療保険制度の基本的な性格でございますので、妊産婦健診や正常な出産自体は疾病や負傷とはならない、こういうことで保険適用にしていないところでございます。

 しかし、これも今先生のお話のようなこともありますし、十八年度に医療制度改革をいたしますから、その中でぜひ検討をさせていただきたいと考えます。

井上(義)委員 厚生労働大臣、反論するようですけれども、今申し上げたように、実態以上に負担が大きいわけです。せっかく子供を生み育てようという方が、妊娠、出産を前にして、経済的な負担が大変だと。実態が既に公費助成以上に大きく乖離しているわけですから、もう実態はわかっているわけですよ。ですから、もうこれは引き上げなきゃいけないわけですね。

 それから、保険適用ということも、理屈はそうですけれども、ただ、保険から出産手当というのを三十万支出しているわけですから、その延長線上で考えれば、保険適用といった方が、これはお母さん方にとっては安心して妊娠、出産ができるわけですよ。そういうことも非常に大きな意味があると思うんですね。

 重ねてもう一回、厚生労働大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、今お話しいただいたような分娩料の状況というのはあろうかと思います。したがいまして、その状況をよく調べまして、考慮しながら適切に対応してまいりたい、こういうふうに思います。

 それから、医療保険のことでありますが、確かに保険財政厳しいところありますけれども、十八年度の見直しの中でそうしたこともしっかりと検討したい、こういうふうに思います。

井上(義)委員 実態に即してきちっと対応する、こういう御答弁だというふうに理解をしておきたいと思います。

 次に、児童手当のことでございます。

 もう御案内と思いますけれども、日本は、第一子、第二子が五千円、第三子以降一万円、しかも小学校三年生までというふうになっています。これはドイツですと、第一子、第二子が一万九千円、第三子以降が二万一千円、しかも十八歳まで。フランスですと、第二子に一万五千円、第三子以降に一万九千円を加算する、しかも二十まで。それから、スウェーデンは、第一子、第二子が一万四千円、第三子以降が二万一千円で、しかも十六歳未満ということを考えますと、我が国の児童手当制度、諸外国に比べて極めて貧弱と言わざるを得ないわけです。

 こうした観点から、昨年は児童手当の支給対象を小学校三年生までようやく引き上げました。しかし、これでもまだまだ不十分だと思います。まずは小学校六年生まで対象年齢を引き上げるべきだと思いますし、そしてさらに、近い将来、中学校まで引き上げるべきではないか、このように考えております。

 といいますのは、小学校入学前までは、例えば乳幼児医療費の無料化なんかでかなり経済的支援があります。それから、中学校を卒業して高校生以上になりますと特定扶養控除があります。実は、小学校、中学校のところがほとんど何も手当てがされていないというような状況を考えますと、この児童手当というのは極めて私は有効だ、こう思うわけです。

 もちろん、財源という問題があります。これから年金、医療、介護、この安定財源をどう確保するかということで、与党でも税制の抜本改革ということを今視野に入れて検討しております。この年金、医療、介護に、この子育て支援ということをその財源の中にきちっと入れて、そして、税制の抜本改革の中で財源をきちっと確保していく、こういう考え方が必要じゃないかな、このように思いますけれども、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 お話しいただいたような認識というのは、私どもも持っております。

 そこで、昨年つくりました子ども・子育て応援プランでございますけれども、この中で、まず二点言っております。社会保障給付については大きな比重を占める高齢者関係給付を見直す。高齢者の給付と子供の給付のバランスをもう一回見直してみるということでございます。それからもう一つは、児童手当等の経済的支援等についてもそのあり方等を幅広く検討する。今おっしゃったようなことを検討するということを述べておりまして、二点述べております。

 そういう中で、今、これまたお触れになりました社会保障制度の一体的な見直しの検討をいたしておりますから、ぜひこの中で、今お話しのように、全体の中での見直しをしたい、こういうふうに考えております。

井上(義)委員 総理、今厚生労働大臣から御答弁ございました。年金、医療、介護、この安定化ということは日本の将来にとって極めて重要です。それにもう一つ、子育て支援ということを社会保障全体の大きな枠組みの中で税制を含めて抜本的に考える、このように方向をきちっと示すべきだと思いますけれども、重ねて総理、このことについてどうお考えか。

小泉内閣総理大臣 子育てというものを年金、医療、介護と一体的に考えろということについては、私も賛成です。同時に、税制ですね。年金一つとってみても、財源という問題が出てきます。子育てについてもそうです。ですから、これは子育てだけでなくて、年金、医療、介護、税制、総合的に考えていかなきゃならない問題だという認識は、私は井上議員とも共通していると思っております。

井上(義)委員 次に、先ほど総理からもありましたけれども、仕事を続けながら子育てができる環境整備、これも非常に重要です。

 総理、施政方針演説の中で、現在六〇%の育児休業制度の普及率を五年後には一〇〇%にすることを目指す、このように述べられておりました。しかし、問題は、制度はあっても育児休業をとれないという我が国の現状をどう打開するかというところにあるんじゃないか、こう思います。

 確かに、育児休業制度、これを就業規則に規定している企業の割合は、平成十四年ですけれども、六一・四%。しかし、育児休業取得率は、男性は〇・四四%、女性は七三・一%。この女性の七三・一%という数字ですけれども、これには出産等を機に退職した人の数は含まれていないんですね。

 育児休業法施行から十三年経過していますけれども、取得率を上げるためにはやはり実効性のある取り組みというのが必要なんじゃないか、このように思いますけれども、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 これは、お話しのように、育児休業を希望する者がすべて安心して育児休業をとれる、そういう社会をつくることは大変重要なことでございます。

 そこで、今お触れいただきました企業の両立支援の取り組みでございますけれども、今私どもは、代替要員、育児休業をとった人のかわりに働く人の意味でありますが、代替要員の確保等により、育児休業を取得しやすい環境の整備等を行う企業に対する助成金の支給でありますとか、あるいは、行動計画に掲げた目標を達成したことなどの一定の基準を満たす企業を認定いたしまして、認定の表示を商品等に使用することができる制度を創設いたしたりしておるところでございます。

 こうしたことを続けながら、今後とも、仕事と家庭の両立を図りやすい環境の整備に努めてまいりたいと考えます。

井上(義)委員 今、企業の環境整備ということの御答弁がありました。

 子育てと仕事を両立するためには、この育児休業制度の充実とともに、再就職支援が非常に大事だと思うんですね。我が国の現状では、出産後一年間で、大多数の女性、六七・四%が仕事をやめているんですね。妊娠をして出産を前に、女性は子育てと仕事の二者択一を迫られている。それで、結局やめざるを得ないというのが今の現状です。この両立のためには、企業の協力なくしては実現できないわけでございます。

 先ほど、アメリカの例、企業が非常に一生懸命取り組んでいるというお話をしましたけれども、諸外国の例なんかを見ますと、例えばアメリカは、ニューヨークにあるコンピューター・アソシエーツ・インターナショナルという会社ですけれども、この本社は、社員の子供四百人が親とともに出社をする。それで、社内の託児所に子供を預けて、昼は子供とともに食事をし、夕方は一緒に家に帰っているというわけですよ。要するに、優秀な人材を確保するために、働く母親を企業がサポートしているんですね。

 それから、イギリスの大手の電信電話会社は、従業員九万四千人を抱える最大手の電信電話会社なんですけれども、正社員に在宅や短時間勤務を認めております。今は、七千人が自宅で働き、六千六百人が短時間勤務になっている。これによって、離職率は三%にまで下がり、産休後に職場に戻る女性が九八%になった。社員を募集する費用など年間百億近い経費が減って、生産性は三〇%も上がった。これは、ブレア政権ができて、二〇〇〇年に仕事と生活の調和策を官民挙げてやっているんですね。

 こういう例を見ますと、育児休業制度や再就職支援など、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでいる企業とそうでない企業、大きな格差がある。やはり何らかの、何かマークをつけて顕彰しますというような程度のものじゃなくて、きちっとしたインセンティブの働くような仕組みを考えないと、これはなかなか普及しないんじゃないかということを思いますけれども、厚生労働大臣、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど申し上げましたようなことで私どもも取り組んでおるつもりでございますけれども、そういう意味ではまだ十分だとは考えませんので、今お話しいただいたようなことなども参考にさせていただきながら、今後取り組んでまいりたいと考えます。

井上(義)委員 それと、そのほか、住宅の問題とか教育費の軽減など、取り組むべき課題はたくさんあります。近年、特に若者の自立支援というのが問題になっています。この自立支援という観点から、奨学金制度の改革ということについてお伺いしたいと思います。

 子育て費用の中で教育費の占める割合は非常に高くなっています。例えば、幼稚園から高等学校まですべて公立で通った場合は、十四年間で五百十一万円かかるんだそうです。これに加えて大学に進学すると、国立で六百三十六万円、合計千百四十七万円。これが私立大学ですと八百六十万円で、合計千三百七十一万円。これは文部科学省の調査です。要するに、高校までよりも大学の四年間に一番お金がかかる、これが一番大変だというのが現状なんですね。

 これは一つの提案ですけれども、要するに、高校までは親が面倒を見る。そうすると経済的負担はそれほどないわけです。大学は、本人が奨学金とかアルバイトで、特に奨学金で進学できるように考え方を変える。これはアメリカ社会がそうなっていますけれども。そういうふうにしますと、若者も自立をする、親の経済的負担の軽減にもつながるということで、奨学金制度、これまで随分充実をしてきましたけれども、親の支援なしでも大学進学ができるような社会の仕組みに大きく日本の社会を転換させる、こういうことについて、総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 これは奨学金、充実していかなきゃならないということで、日本は特に、教育を受けたい、学業にいそしみたいという人に対しては、親が資金がなくてもできるように、今対策を充実させるように指示をしておりますし、文科省もその点については十分配慮しているということでありますので、どういう点が不足かという点がありましたら、これからも改善策を講じていかなきゃならない。

 今は、親が資金がなくても、本人が意欲があるというんだったらすべて教育を受けられるという制度になっているということを聞いておりますので、私は、もし不足があれば、そういう意欲のある人の意欲を奨励するように、また阻害しないような対策はこれからも必要だと思っております。

中山国務大臣 奨学金事業というのは、御承知のように、教育の機会均等とそれから人材の育成という面と、さらに、今話がありましたように、保護者の教育費の負担の軽減にも資するわけでございまして、この充実につきましては、少子化社会対策要綱にもしっかりと記載されたところでございまして、また、現に毎年この充実を図ってきておりまして、近年では、基準を満たす希望者はほぼ全員が採用されているという状況でございます。

 また、来年度予算におきましても一〇・一%増の七千五百十億円の事業費を組んでおりまして、七・二%増の百三万四千人の奨学生に奨学金を貸与する、こういうふうなことになっているわけでございます。

井上(義)委員 今、奨学金が充実していることは認めます。ただ、先ほど言ったように、基本的には子供は親の援助なしで大学は行くという、社会のあり方を大きく転換するということが若者の自立心にもつながるんじゃないか。ですから、奨学金もある意味で生活できる抜本的な、後で返せばいいわけですから、アメリカ並みの相当高額な奨学金をきちっと支給できるような仕組みに大きく転換したらどうかということを提案申し上げているんで、ぜひ御考慮いただきたいと思います。

 その次に、総理、このマークというのは見たことありますか。

小泉内閣総理大臣 いえ、今そのマークを見たのは初めてなんです。

井上(義)委員 これは、心臓病とか腎臓病など、体の内部に障害を持つ人たち、その人たちが、自分たちのことを全国の方々に理解してもらおうということで、このマークをつくって、シンボルマークとして運動している、そのマークなんですね。要するに、車いすマークとかつえをついたお年寄りのマークというのは社会に定着していますけれども、いわゆる内部障害を示す、ハート・プラスと言っているんですけれども、このマークはなかなか普及しないのが現状です。

 この内部障害者の人たちに共通の悩みがあるんですね。要するに、それは自分の中に障害があるものですから、外からはわからないということで、例えば、ある二十代の心臓病患者の体験の手記が出ていました。

 それによると、通院帰りの車内であいた優先席、すかさず座った私に、どこからか、若いくせに、今どきの若い子は年寄りに席も譲れないのかというつぶやき、しんとした車内で心の奥にしっかり刺さります、注目の中、顔を上げることすらできません、思いどおり動いてくれない重い心臓、ますます鼓動が高鳴り、輪をかけて苦しくなります、こういう体験が出ていました。

 要するに、こういう内部障害者というのは、身障手帳を持っている人だけで八十五万人いらっしゃるんですね。私は、こういう内部障害者の心の叫びに対して、温かい理解、支援というものを積極的に行うべきじゃないか。特に、就労なんかでも、職場環境、なかなか理解がないということで体を壊すような人たちも多いわけで、このことについてしっかりした取り組みをお願いしたい。このことについて、官房長官。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

細田国務大臣 おっしゃいますような心臓、腎臓等の内臓機能に障害のある方等、八十五万人もおられるということでございます。例えば、人工ペースメーカーを装着したというような方は心臓機能障害でございますし、いつも透析をしておられる方は腎臓機能障害、呼吸器機能障害とか、その他、免疫不全による免疫機能障害等々、非常に数多い方がこういう障害に悩まされておられるわけでございます。

 そこで、昨年改正されました障害者基本法の趣旨を踏まえまして、内閣府では、障害について知ってほしいことについて国民から意見を募集した際にも、内部障害のある方を中心に、外見ではわからない障害もあることを知ってほしいという意見が多く寄せられたところであります。こうしたことを踏まえまして、昨年十二月に、総理大臣を本部長とする障害者施策推進本部におきまして、私は副本部長でございますが、今後の効果的な啓発活動の展開を図る上での国民への呼びかけにつきまして決定した際、障害をよりよく理解するための項目の一つとして、外見ではわからない障害があることを明示いたしたところでございます。

 きょうは、ちょうどテレビの入ったこの予算委員会の中継で、ハート・プラスマークを国民の皆さんに見せていただいているわけでございますが、こういったことにぜひ国民の多くが認識をされて、また温かい手を差し伸べていただけるような運動をさらに展開していく必要があると思います。政府の広報その他を通じて施策を充実してまいりたいと思います。

井上(義)委員 その次に、まちづくりということについてお伺いしたいと思います。

 さきの代表質問で、水と緑のマイタウン都市づくりということを神崎代表が質問しました。総理から、総合的に推進したい、こういう答弁がございました。

 私は、今、まちづくりにとって最大の問題は、現代の都市が生態系を忘れているということじゃないかな、こう思います。自然との触れ合いとか自然との共生を実現するまちづくりが非常に大事だ、それはまた日本の固有の文化でもあると思うんですね。そういう問題意識は総理、共通だと思うので、きょうは少し具体的にお伺いしたいというふうに思います。

 まず、私は、二十一世紀の新しい都市づくりとしては、一つは、生態系を踏まえたまちづくり、水と緑に囲まれ、生き物とともに生きるまちづくり。それから二つ目は、やはり少子高齢化、ユニバーサル社会への対応を踏まえたまちづくりが必要。住みよく、安心、安全な、歩いて暮らせるまちづくり、そういう町はだれもが住みたいと思うわけで、そういう二十一世紀のまちづくりについて総理の基本認識をまずお伺いしたい、こう思います。

小泉内閣総理大臣 神崎代表も言われたように、水と緑を生かした景観、いい景観をつくったまちづくり、これは大変重要だと思っていますし、水と緑というのはやはり人に潤いを与えますね。

 今、東京は、かつて地下水をくみ上げ過ぎたせいか地盤沈下しちゃった、この対策をしなきゃいかぬということで、その効果かどうかわかりませんが、最近では、地下水がわき過ぎて困る。効果が出てきちゃったんですね。だから、地下水がどんどんわいてきて放置できないということだったらば、まさにその地下水がどんどん盛り上がってくるんだったら、これを利用したらどうか。夏などは、一々水道の水をまく必要ない、自然に地下水がわいてきて多過ぎて困っているんだったら、それを打ち水がわりに使えばヒートアイランド防止に役立つし、国民、市民も喜ぶ。

 緑だけじゃなくて、そういう、水というのは今までの環境対策がきいてきたなと。さらに一歩進めて、そうしたら、捨てないで、余分な湧水、わき水だったらば利用する方法を考えるべきじゃないか。何だか、一日十万トンぐらい地下水がわいているということを私は報告を受けています。逆に、これは放置しておくと地下鉄などが心配だというぐらい、今、地盤沈下どころか地盤が上がってきちゃう心配をしているというぐらいですから、そういう点も考え、私は、今後、水を利用した環境面に配慮した景観づくり。

 さらに、大阪などでは、市民と地方自治体が一緒になって桜並木を植えようと。これは結局、観光にも資するのではないかということで、市民一人一人が自分で一本一万円寄附する。その桜の並木には自分の名前をつけて、お墓がない人はお墓がわりにすればいいじゃないかといって、みずから手を挙げて桜の木を植えることに協力してくれる人が出てきている。

 昔から、大阪でも八百八橋と言われるぐらいですけれども、これは市民が中心になった、そしてああいう橋をつくったという話を聞いていますから、公共機関のみならず住民の協力を得ながら、水と緑を生かした景観、そして環境面に配慮したまちづくりというものは大いに振興していかなきゃならないと思っておりまして、神崎代表を初め井上議員、そういう提案については政府としても参考にさせていただいて、今後もいい対策を練っていきたいと思っております。

井上(義)委員 今総理からお話があったように、実は、水がいっぱいあるんですね。

 今、地下水の話が出ましたけれども、例えば地下鉄の湧水量、これは一日に二万トンあるんだそうです。例えばJR東日本だけでも、一日に六千百七十トンの地下水がわいている。この地下水、どうしているかというと下水に流しているんですね。地下鉄は、大体下水に流しているものですから、処理料だけで八億円ぐらい毎年払っているわけですよ。あるいは、JR東日本も一億円ぐらい毎年下水料として払っているわけですよ。ですから、この水、大体十万人が使えるきれいな水が毎日わいて、下水道使用料を払って流している。非常に水がある。

 あるいは、下水道の処理水というのがありますね。下水道の処理水も、一日に四百七十六万トン処理されて流されている。そのほかに、例えば雨水なんかを今貯留していますけれども、そういうことを考えますと、大変な水資源がむだのまま流されているというのが現状で、この水をどうやって活用するかということは、私は、先ほど言った生態系を重視したまちづくりの一番のポイントだな、こう思うんですけれども、北側国土交通大臣、この水問題にずっと取り組んでいらっしゃったので、ちょっとお伺いしたいと思います。

北側国務大臣 良好な、また快適な水環境をつくるというのは、私はこれからのまちづくりの重要な柱であるというふうに思っております。

 今御指摘ございました、例えば下水処理水でいいますと、東京都に限って申し上げますと、一日に四百八十万立米下水処理されています。その下水処理されているだけでも相当きれいになっているんですが、そのうち、本当にきれいになっている、高度処理されている水というのは五十四万立米ございます。これはほとんど飲める水です。そのうち、今おっしゃったような有効利用、活用されているのはわずか九万立米でございまして、二〇%にも満たないということでございます。

 これからまちづくりを進めるに当たりまして、こうした下水処理水、地下水などを積極的に活用いたしましてヒートアイランド対策等にしっかり活用していく必要があると思っております。

 現に東京都でも数々使われておりますが、例えば玉川上水の水は、大半が下水処理水をもって玉川上水は流れておりますし、また、JR東京駅の地下から地下水がわき出ておりまして、これを近くの河川に、この河川というのは大変汚かった河川だったんですが、これを流すことによって大変きれいな川になったということもございます。東京・汐留の方では、ヒートアイランド対策の一つとして、下水処理水を道路散水として活用する実験を今行っているところでございます。

 昔、東京は、小川やせせらぎ等の水路がいっぱいありました。戦後、約百キロメートルにわたりましてこの水路がなくなってしまったわけでございます。

 今、国土交通省の中で勉強会をしているんですけれども、こうした水資源につきまして、新たな地域資源として保全、再生するための検討をしているところでございます。

 地方公共団体、地域住民との連携協力のもとで、都市内の貴重な水資源でございます下水処理水や地下水などの一層の活用を図りまして、水と緑のまちづくりに向けた取り組みを進めてまいりたいと思っております。

井上(義)委員 総理、今、北側国土交通大臣から水の活用ということについてお話がありました。余り活用されていないということで、私は、この水を活用して都市を再生するということをぜひ提案したいと思うんですね。環境、治水、景観、これを一体的に行う。コンクリートとアスファルトから、水と緑と生き物とともに住む町にしたい。

 具体的に、例えばこういうことができるんですね。例えば、花と緑とせせらぎの流れる商店街、あるいは生け垣のある住宅街、あるいは緑の町、緑の通学路、あるいは屋上緑化、壁面緑化、あるいはビオトープ、朝のテレビドラマでもやっていますけれども、ビオトープ。あるいは太陽と緑の下を流れる小川、今東京の小川は地下を流れていますから。あるいは打ち水大作戦、こういうこともできる。それから、小水力発電というのもできるんですね。

 こういうことが今ある都市の水を活用してできるということを考えますと、これはもう国交省だとか再生本部、あるいは環境省、総務省、省庁全体にまたがっているんですね。

 私は、二十一世紀の新しい都市づくりというのは壮大なテーマだと思うわけです。やはり強いリーダーシップが不可欠だと思いますし、これは役人に任すというわけにはいかない、総理の出番じゃないか、総理が中心になって、国民各界各層の協力を得て、二十一世紀型の都市づくりに向けた国家的なプロジェクトというふうに取り組むべきだと思いますけれども、総理、どうですか。

細田国務大臣 総理答弁の前に、概略申し上げたいと思います。

 昨年の十二月に、屋上緑化や校庭の芝生化、利活用の不十分な下水再生水や地下湧水を活用した水面再生等を推進する新しい都市再生プロジェクトを、総理を本部長とする都市再生本部で決定いたしました。その一環として、今後、今おっしゃいました関係省庁と連携協力しまして、来月の末、三月末を目指しまして、モデル地域を選定いたします。十ないし二十カ所選びたいと思っておりますが、そこで、既存のまちづくり、都市再生の予算の中で推進を図ってまいりたいと思っております。

 さらに、緑の創出、河川の再生など、都市環境インフラの再生や、各地域での水と緑を生かしたまちづくりもあわせて推進してまいりたいと思います。例えば、仙台でも百年の杜プロジェクトというのもありますし、水都大阪の再生、先ほど言われました玉川上水や神田川や渋谷川の再生等々のプロジェクトが今候補で挙がっております。

井上(義)委員 今官房長官から御答弁がございました。総理も同じ決意であるというふうに受けとめて、それで、総理、隗より始めよということを申し上げたいんですね。

 実は、総理御存じだと思うんですけれども、汐留、再開発しています。あそこは今、芝浦下水処理場から再生水を保水性の道路に散布してヒートアイランド対策と緑化対策に使っています。この国会も芝浦からは遠くないわけですから、ほかの水再生センターからでもいいんですけれども、ヒートアイランド対策という面からも、まずこの国会から散水とか水と緑等を実施すべきじゃないかな。

 これは、議員会館の建てかえも計画されていますし、官邸も新しくなりましたし、そういう意味で、国会は立法府の問題ですから、総理の一存というわけにはいかないと思いますけれども、隗より始めよということで、まず国会から始めたらどうか。我々も全面的に協力したい思いますけれども、総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 水と緑だけでなくて、自然のエネルギー、環境保全という考え方からも、自然の景観を生かしたまちづくりということに、今、政府、都市再生本部挙げて努力しているわけでありますが、今御指摘の、地下水の捨てている部分を有効に使えばいいじゃないかという御提案もありました。そういう点も含めて、この永田町近辺あるいは霞が関の官庁街、自然を生かしたまちづくりにも積極的に取り組む必要があるという提案、全く賛成であります。努力していきたいと思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

井上(義)委員 それでは次に、食料自給率の問題についてお伺いしたいと思います。

 我が国の食料自給率は、近年四〇%で推移していますけれども、長期的には長期低落傾向が続いておりまして、主要先進国の中では最低の水準になっています。

 世界の農業問題に詳しいジェームス・シンプソン・アメリカ・フロリダ大学名誉教授にお話を伺ったことがありますけれども、日本の自給率について、次のように指摘をされています。このまま食料の海外依存が進めば、日本は常に輸出停止におびえる貿易のとりこになってしまう、自給率を向上させることは日本国民全体の権利を守ることにつながるというふうにおっしゃっています。食料自給は、単なる農業分野の課題だけではなくて、国民の生活、生存にも関係する、食料の安全保障の面からも非常に重要な問題です。

 現行の基本計画では、二十二年までに食料自給率四五%に目標を設定していますけれども、目標達成は極めて困難、こんな状況に今なっています。現行基本計画で唯一法定目標であったんですね、この食料自給率というのは。それが達成できないということについて、総理、どのように認識されているかということ。

 それから、食料自給率向上というのは、生産面だけじゃなくて、消費、需要面にわたる多面的な取り組みが重要で、これは昨年の委員会でも指摘したんですけれども、やはり総理のリーダーシップのもとに政府一体で取り組むことが重要じゃないか、こう思うわけでございます。総理は、攻めの農業、それ自体は私は評価しますけれども、やはり食料自給率ということをきちっと柱に据えて農業振興をやるべきだと思いますけれども、まず総理にお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本は世界最大の食料輸入国でありますが、同時に、午前中の議論におきましては、我が党の松岡議員からも指摘されましたように、日本は、食料、農産物を輸出できる、将来の可能性のある重要な産業であるという御指摘がありました。そのとおりで、輸入ばかりでなくて輸出も考える。そして、将来、人口を考えますと、世界的には人口はどんどんふえていきます。食料が足りなくなるという長期的な展望を視野に入れながら、日本としても食料自給率向上の重要性をよく認識して取り組んでいかなきゃならないと思っております。

井上(義)委員 時間がないので、もう一つ、総理に水産振興ということについてお伺いしておきたいと思います。

 かつて我が国は、世界一の水産国、このように言われておりました。昭和六十三年まで世界第一位の漁業生産国であったんですけれども、現在では世界第四位に後退しています。漁業生産量が減少した一方で輸入が増加したことから、昭和三十九年に一一三%あった水産物の自給率、これが平成十五年概算値で大体五七%まで下落しています。

 水産漁業というのは、国民に対する水産物の供給を通じて、いわゆる理想的な食事と言われております日本型食生活の一翼を担っているわけです。また、地域経済の振興とか海洋環境の保全、あるいは海難救助、国境監視、そういう多面的な機能も備えて、大変重要な役割を持っています。

 多面的な機能については、平成十七年度予算案で、離島における漁業の再生を通じて多面的機能の増進に資するという離島漁業再生支援交付金が措置されることになっておりまして、我が党もかねてから提唱してきたことなので、非常に評価しています。

 こうした施策を含めて、水産国日本の再生のために水産漁業の振興を積極的に進めるべきじゃないか、このように考えておりますけれども、総理の基本的な認識、また考え方というものをお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本人は水産物大好きであります。むしろ肉よりも魚介類を多く食べる。これがまた健康にいいから日本人は長生きなんじゃないかという説もあるぐらい、水産物の好きな国民だと思っております。

 かつて、三十年ぐらい前ですか、世界が二百海里水域になるぞと、そうすると、日本の食卓からサケは消えてしまうというまでもなく、今のような安い値段では食べられなくなるということが言われました。

 しかし、ここがまた日本人のすぐれたところで、それだったらば、海でサケ、二百海里でとれないんだったら、川から放流して、海に帰って戻ってくる、この栽培、養殖を初め、サケが回帰性の魚であるという点をうまく利用して、今でも日本国民はサケを比較的安い値段で食べられるような状況になっている。なおかつ、サケというのは北洋でしかとれないと思われていたのが、何と、南米のチリで日本人がサケの養殖を指導して、今や日本人に供されているサケの三分の一ぐらいは南米のチリから輸入しているぐらいだと。チリは、その日本の技術を学びながらサケの養殖を考えている。

 今や、大学生が研究家と協力しながら、マグロまで、最初から、稚魚から成魚まで養殖技術を開発したというぐらい、マグロが全世界の人に好まれるようになってから、マグロがなくなるという危機をこれで解消できそうだというような状況にまでなってきた。日本のホタテガイ、これまたフランスでは高級品で売れているということであります。

 そういうことを考えても、日本の水産物はやはり大したものだなと。こういうのは、水産物の輸入を阻止するということだけじゃなくて、むしろ、水産物も世界に輸出できるんじゃないかという意欲を持って、これから水産業の振興にも努力していかなきゃならないと思っております。

井上(義)委員 農業、水産業の重要性ということを指摘させていただいて、各論については改めてしっかり議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

甘利委員長 この際、長沢広明君から関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、大変に感謝をしております。

 私は、公正公平な選挙が民主主義の基礎であるという観点から、公選法の違反事件と政治家の対応という面で、大変短時間ではありますけれども、質問をさせていただきます。

 まず、さきの衆議院選挙に関しまして、衆議院宮城一区の今野東議員、宮城二区の鎌田さゆりさん……(発言する者あり)民主党です。比例代表東海ブロックの都築譲さん、いずれも民主党でございますが、この三件の公職選挙法違反事件に関しまして、事件の概要とそれから公判の結果について、法務省から報告を願いたいと思います。

大林政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの宮城一区の今野議員の関係につきましては、選挙運動者である労働組合関係者二名が、人材派遣会社関係者に対して、電話による選挙運動を行う要員を確保、派遣することの報酬として同会社に現金を支払う旨の意思表示をしたなどの点が公職選挙法の利害誘導罪等に該当するとして、平成十五年十二月に起訴され、同十六年三月に、両名を懲役二年ないし一年二月に処する執行猶予づきの有罪判決が言い渡され、控訴審、上告審でもこれが維持され、確定したものと承知しております。

 また、宮城二区の鎌田前議員の関係につきましては、選挙運動者である労働組合関係者四名が、人材派遣会社関係者に対して、電話による選挙運動を行うことの報酬として同会社に現金を支払う旨の意思表示をしたなどの点が公職選挙法の利害誘導罪に該当するとして、平成十五年十二月起訴され、同十六年三月に、四名を懲役二年ないし一年二月に処する執行猶予づきの有罪判決が言い渡され、控訴審、上告審でもこれが維持され、確定したものと承知しております。

 さらに、愛知十五区の都築議員の関係につきましては、その出納責任者を含む選挙運動者二名が、電話による選挙運動を行うことの報酬の支払いを約束したなどの点が公職選挙法の買収罪等に該当するとして、平成十五年十二月起訴され、同十六年三月に、両名を懲役一年六月に処する執行猶予づきの有罪判決が言い渡され、控訴審、上告審でもこれが維持され、確定したものと承知しております。

長沢委員 都築さんの場合は買収、それから宮城一区の今野東さん、鎌田さゆりさんの場合は利害誘導罪、広義、広い意味での買収罪、こういうことに問われたわけであります。この利害誘導罪のケースは、選挙における電話作戦を、金を払っていわば業務委託をしたということでありまして、組織的選挙運動管理者と認められる者が、候補者と意思を通じて、企業に電話による選挙運動作戦を依頼し、その際、八十万円あるいは五十万円という報酬を支払うということで、公職選挙法に違反したという事件であります。

 そこで、確認をいたしますが、これはあくまでも確認です。選挙運動員に対する報酬の支払いというものは公選法上どのように規定されているか、簡単に総務省から。

麻生国務大臣 公職選挙法百九十七条の二におきまして、一般的に選挙運動に従事する者の報酬を支給することはできないとされておりまして、例外は、事務員、車上運動員、いわゆるウグイス嬢及び手話通訳者に対してのみ報酬を支給することができるとされております。

長沢委員 つまり、公選法では、選挙運動のために使用する事務員、あるいはウグイス嬢などの車上運動員、手話通訳者という特殊技能の方ですね、そういう方に対しては一定額の報酬支払いが認められているわけですけれども、重ねてお伺いしたいんですが、選挙運動従事者に対する報酬支給が現行法のように対象人数などが限定をされているその趣旨、これは、なぜ限定をしているのか、選挙運動はどのように行われるべきかということについて、そういう基本的な事柄につながる問題だと思うのですが、その点のお考えを大臣に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 公職選挙法におきましては、いわゆる選挙運動というものは、運動員が自発的にかつ奉仕的に行うことが原則ということになっておりまして、選挙運動を自由に行うことは、不法不正な利益の成就によって歪曲されることがないよう、選挙運動者に対して当選を得るなどの目的を持って報酬を支払うことを買収罪として禁止いたしております。

 しかしながら、いわゆる選挙の実際的な要請というものにもある程度こたえにゃいかぬということで、選挙の実情を踏まえて、特に法律に定める一定の者に限って報酬を支給することができるということになっておって、先ほどのウグイス嬢等々がその例に当たるとされております。

長沢委員 つまり、選挙運動は自発的、今奉仕的とおっしゃられました。もっとわかりやすく言いますと、ボランティアで行われるということが最も重要な原則であると言えるというふうに思います。いわゆる公平性、公正性を担保するために、また、金がかからない選挙にしよう、そういうことで、選挙にかかる費用が無制限に拡大をして選挙の公正をゆがめないようにという点で、報酬の支払いについては限定をされているというのがこの公選法の規定であります。この問題に関しまして、現行の公選法の見直しを求める意見があることも承知をしております。

 この公選法の見直しという問題は、もちろんさまざまに角度がありまして、私は、個人的には現行公選法の場合は見直す角度が幾つかある。例えば、インターネットを活用した選挙運動のあり方というものも今積極的に検討すべきときに入っているのではないか、そういうことは思いますし、あるいはマニフェストの配布、これにつきましても、今、現行法におきましてはマニフェストの配布の仕方がかなり限定的にされておりますが、これは政策を中心にした、あるいは政党を中心にした選挙という方向に進めようという今の流れから考えますと、マニフェストの配布の規制についても緩和されるべきではないかというふうに考えております。

 あるいは、最近ちょっと感じておりますのは、選挙のたびの政党のテレビコマーシャルも大変に多くなりまして、これは巨額なお金がかかるということで、我が党のコマーシャルは大変高い評価をいただいておりまして、「そうはイカンザキ」と、いまだに生命力を保っているわけでございますけれども、こういうコマーシャルに費用がかかってしまうという問題もあります。

 さまざまな面で見直しをすることは必要だと思いますが、ただ、その際大事なことは、今申し上げたようにボランティアを原則として、選挙の公正性、公平性を守るという観点を踏まえて検討することがまず前提として大事だというふうに思っております。

 この宮城一区、二区における違反事件におきましては、御存じのとおり、二区の鎌田さゆりさんは、私の選挙だから私に責任がある、けじめをつける、このようにおっしゃって議員を辞職されました。一方、宮城一区の今野東議員は……(発言する者あり)今、場内からもやじがありましたけれども、古い法律だ、利害誘導罪というのは非常に古い法律だ、古い規定だから今の世の中に合わない、このようなことをおっしゃったというふうにも報道されておりますし、連座制適用を問う行政訴訟について、それは民意の否定だ、このようなことを言われているわけです。何か法律の方が悪いというふうに言わんばかりの姿勢で、居直るという姿勢をとられているとすれば、まことにこれは遺憾と言わざるを得ません。

 法律に違反して当選した者はその当選を取り消すというのが公選法の規定でありまして、その法律が古いからとか間違っているからとかいうこと自体、法に基づく民主主義に背くものであると私は言わざるを得ないと思う。

 例えば、昨年の一月四日のNHKの討論会で、当時の菅直人代表は、この事件について、ケアレスミスだと発言をされているわけです、注意不足だと。注意を怠ったこと自体が、注意をしなければならないと規定された公選法に背いているわけでありまして、それは、法に違反したということをみずから認めているに等しいというふうに言っていいと思います。

 昨年一年間だけでも、民主党から四人の議員辞職が出ております。秘書給与詐欺の佐藤観樹さん、学歴詐称の古賀潤一郎さん、出納責任者の選挙違反事件で議員辞職した都築譲さん、何か最近岡田代表の私設秘書になられたというような話も聞いておりますが、そして、利害誘導罪、公選法違反の鎌田さゆりさん。四人の議員が辞職をされております。

 このうち、ことし四月には宮城二区、福岡二区の補欠選挙が予定されております。どちらも民主党議員の不祥事、辞職で発生した補欠選挙でありまして、このような事態が政治不信を助長しているのではないかと思っているわけであります。こういう補欠選挙を政権交代のステップになどと位置づけているとしたら、その政党の見識が問われても仕方がないということを申し上げたい。

 いずれにせよ、宮城一区、二区というのは同じ仙台市の選挙区で、二つに分けた選挙区。片や辞職、片や居直りというのは、有権者の目から見て、政治家のあり方としてはどうなのかという疑問を深くするわけでありまして、政治不信を助長するのではないかと危惧するわけであります。司法の場で法律に違反したと明確に認定されたという事実からすれば、私は、政治家としての責任をあいまいにすべきではないということを申し上げたいわけでございます。

 もう時間ですので、総理に一つだけ感想を求めたいというふうに思っておりますが、このような民主主義の土台とも言える選挙において、選挙違反に関する政治家の対応、責任のあり方というものについてどのようにお考えになるか、感想で結構ですので、最後に一言伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 法律は守らなければいけません。政治家の出処進退というのは御自身が判断されるべきものだと思っております。

長沢委員 以上で終わります。

甘利委員長 これにて井上君、長沢君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷由人でございます。平成十七年度の本予算について質疑をいたします。

 当初の予定から変えまして、今、公明党の若い議員さんが政治の信頼についてお話をされました。私から、まず総理に、例の平成研究会と称する派閥集団の一億円裏金事件、このことについてお伺いするわけですが、つい先般、検察審査会が、検察庁の、橋本龍太郎さん、野中広務さん、青木幹雄さんに対する不起訴処分に対して、平成研究会が虚偽の収支報告書を作成したことは、日本の政治・選挙制度にもかかわってくる問題であり、なぜ政治資金規正法が制定されたか、その理由を忘れてはならない、内閣総理大臣が法律に違反している疑いがあるとすれば、元内閣総理大臣が法律に違反している疑いがあるとすれば、司法の一翼である検察官は憶することなくもっと掘り下げて広く捜査すべきである、こういう認定をしたわけであります。

 検察審査会という機関が、これはもちろん法律に定められた機関でありますが、政治と金の問題について検察官の捜査のあり方についてこのような判断をした。そして、不起訴は不当である、村岡さんと同じように起訴をすべきだ、こういう判断をしたということについて、総理はどう思われますか。御感想をお伺いします。

小泉内閣総理大臣 検察審査会の結果、それについてどうするかというのは検察が判断すべき問題だと思っております。

仙谷委員 それでは、法務大臣、どうですか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 東京第二検察審査会におきましては、先日、東京地検がした橋本元総理、青木参議院議員及び野中元衆議院議員に対する不起訴処分について、不起訴不当の議決をしたものと承知いたしております。

 東京地検、検察庁におきましては、御指摘の議決を踏まえ、必要な捜査を行うものと承知いたしております。

仙谷委員 この検察審査会の健全な判断というのは、私は二つ意味を持っていると思います。

 一つは、検察権の行使がへんぱに、不公平に、不平等に、あるいはもう少し言えば、ある特定の人をねらい撃ちするかのような行使をされてはならない、こういうことだと思います。(発言する者あり)村岡さんがやられたのはそういうことじゃないんですか、当たり前だとおっしゃる方は。

 もう一点は、虚偽の収支報告書を作成したことは、日本の政治・選挙制度にかかわってくる問題であり、なぜ政治資金規正法が制定されたか、こういうくだりがございます。私は、ここに日本の国民の常識的な感覚が披瀝されていると思います。

 今また、清和政策研究会という団体ですか、総理も以前ここの会長をされておった団体、これも平成十年から平成十五年まで、多いときで九千五百万、少ないときで四千四十万、毎年毎年九千万から四千万の金がどこへ消えたかわからない、使途不明金のようなものがここに存在する。一口五万円以下だからこれは大丈夫なんだ、こんなばかな話がどこで通りますか。世間が聞いたらどう思うか。ああそうですか、約一億円のお金が全部五万円の小割りにされて配られているのか、使われているのか、そんなばかな話があるかと。

 一方では、清和会の方々が、いや、私はもち代もらいました、氷代もらいました、言っている人がおるじゃないですか、私も聞いたことがありますよ。それが悪いと言っているんじゃなくて、なぜ隠すのか、なぜ裏金にするのか、ここが政治不信を呼んでいるんじゃないですか。

 迂回献金なんかない、こうおっしゃってきたのは総理です。だれが見ても迂回献金のような献金が、ようなではなくて、まさに迂回献金が日歯連からもたらされたということは明々白々じゃないですか。あったことをないように言い繕ってしのぐ、政治家や総理大臣がもうそんなことやっちゃだめですよ。訂正するんだったら訂正する、率直に、透明度を高めなければ、国民の政治不信なんか解けるはずないじゃないですか。

 どうですか、総理。その清和政策研究会の会長もなさっていた経験からいって、一億円の金が、あるいは四千万の金が、全部五万円以下だった、こんなことをあなたは本当にしているんですか。本当に堂々とそういうことを言えるんですか。どうですか。おっしゃってください。

小泉内閣総理大臣 これまで何回も同じ質問で聞かれておりますので、同じ答弁しかないんですが、私は、政治資金規正法にのっとって、清和政策研究会でも適正に処理していると聞いておりますし、いわゆる党が迂回献金をしたということはありません。

 そして、政治資金規正法にのっとって、記載すべきは記載している、記載する必要のないものは記載しない。野党だって、十五億円の活動資金を一議員に渡しているでしょう。それ以上は、どういうふうに使われているかというのを記載する必要ないんですよ。だから、各党だって、それは一議員に対して三億、四億、十五億、その先どうかというのは、政党の活動は自由が保障されている。そして、記載すべきは記載すべき、記載する必要のないものは記載しないということでありますので、政治資金規正法にのっとって適正に処理しているわけでございます。

仙谷委員 そういうとぼけた、目くそ鼻くそのような答弁を続けられるんだったらどうぞ続けてください。多分、小泉さんが、総理が、日本の政治あるいは政治家を見る国民の目というものをその程度にしか思っていない、考えていない、そのあらわれだ、そういうふうに理解して、次に進みます。

 委員長、この予算委員会、民主党は六人の証人喚問を、この予算委員会で審査、質疑すべきだということを要求してまいったわけでございます。そのことが果たされないまま、本日から予算委員会に入っているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この一億円裏献金事件あるいは実質上の指名献金、迂回献金の事件、これは検察審査会が常識的にも指摘しているように、国会でも、このようなことを起こさないためにどういう手だてをしたらいいのか、ちゃんと政治のレベルでも議論をする、事実を解明する、そのことが重要だと思います。この証人喚問についてお取り計らいを願いたい。

甘利委員長 現在理事会で協議中でございます。

仙谷委員 小泉総理、予算をざっと拝見いたしました。「改革と展望」というのも拝見をいたしました。

 小泉構造改革というのは、私もそういうふうに評価をしておるわけでありますが、つまり、総理の声は大声だ、スローガンを叫び続けてきた。しかし、三位一体改革、後で私の方から説明しながら質問もいたしますが、甚だ中途半端。自民党流の言い方をすれば換骨奪胎の地方分権、財政改革、こういうふうに言えると思います。道路公団改革、何をやったのかわからない。とりわけ国民にとってはわからない、中途半端な改革だ。構造改革とは一体何なんだ。郵政民営化、何がどう変わるのかわからない。私にもわからない。自民党議員の方々にも、郵政民営化に至っては、青木幹雄さんの言をかりれば、圧倒的多数が反対している、こう言っています。

 小泉改革、小泉構造改革を、あと一年十カ月ですか、いわば来年の九月までの任期の中で仕上げたら、国民の生活というのはどんなによくなるんですか。何かバラ色の未来が見えてくるんですか。その先に見えてくる世界をどういうふうに描いているんですか。アジアとの関係でも結構ですよ。全世界との関係でも結構ですよ。あるいは、日本の今の疲弊した地域社会がどうよみがえるのか、おっしゃってください。

小泉内閣総理大臣 私が総理に就任してから三年九カ月経過いたしましたけれども、就任した当初は、現在の停滞した経済をどのように活性化するか。財政状況を考えますと、景気回復策として国債を増発して公共事業をふやすという意見もありましたけれども、今の財政状況を見ればもうそういうものではないだろう。

 景気回復のためには、一番有効な手だては公共事業をふやすか減税だ、これが一番効果があるという議論は前々から承知しておりますが、しかしながら、バブル崩壊以降、公共事業を国債増発してふやしてきた。同時に、財政状況厳しい中、減税もやってきた。それでもなかなか景気にいい影響は見られない。財政が悪化するばかりだということから、もう今までの手法は通じないなということから、現在の経済状況を見ると、企業も萎縮している、国民も悲観論が多い、自信を失っている。

 野党の皆さんからも、日本はだめだだめだ、小泉はだめだだめだ、小泉、退陣しろという声を何回も聞きましたけれども、退陣しろと言う人が勝手に退陣してしまったわけでありますが、私は、一昨年の衆議院総選挙によりましても、過半数の議席を与えていただきました。昨年の参議院選挙においても、与党は過半数の、安定多数の議席をいただきました。国民から選挙によって過半数の議席をいただいたからには、いかに厳しい批判を受けようとも、総理大臣の任務を実行していかなきゃならないということで今までやってまいりました。そして、改革なくして成長なしか、あるいは、いやいや、景気を回復させて、成長してから改革すべきだという議論は盛んに行われましたけれども、結果的に、小泉内閣就任以来目指していた方向どおりにだんだん進んできたなと。

 先ほども申し上げましたが、今、仙谷議員がゆっくり話してくれと言いますから、ゆっくり話させていただいてよろしいでしょうか、それはまず、不良債権処理を進めろという声は、私の就任前から、大方、この不良債権処理を進めないと経済の活性化はないだろうというのが多数意見だったと思います。

 しかし、いざその不良債権処理を進めていきますと、賛成論の中にも、このまま進めていくと、これは現在の不良債権処理は進んでも、新たな不良債権がどんどんふえていくという批判を浴びました。一方からは、この不良債権処理を進めると、失業が五・五%、六%からさらにもっとふえる、事によると、失業率は二けたになるんじゃないか。同時に、不良債権処理を進めていくと、企業の倒産がふえるという御批判をいただきました。

 しかし、結果的に、八%台の不良債権比率を主要銀行において四%台に、四年後には、今年度には抑えていこう、減らしていこうという目標を立てましたけれども、早過ぎる、遅過ぎるという批判をいただきましたけれども、結果を見れば、政府の予想どおり、予定どおり着実に、額にしても十五兆円減少し、率にしても四%台の目標に達し、実現できるような見込みになってまいりました。

 失業率は、高いときに五・五%か六%だったと思います。それが今、四%台に減少してまいりました。就業者数もふえております。同時に、有効求人倍率、これも今や十年ぶりに〇・九台に乗ってまいりました。(発言する者あり)

 早く、簡単にやれと言いますから、今度は簡単にやります。ゆっくりやれと言うから、私、ゆっくり説明しているんですけれどもね。

 そういうぐあいに、私は、民間にできることは民間にと言って、道路公団が民営化できるのかと。方針を発表したときには、大方、できるわけないだろうと言ったのが、民営化できるようになりました。こういう民間にできることは民間にと言いながら、民主党は、これは税金で高速道路をつくれと言って、民営化には反対いたしました。(発言する者あり)無料化にしろということは、税金で負担するということであります。そういうことは自由民主党なり私は考えていない。民間にできることは民間にということで、既に実現できました。地方にできることは地方にということでも、地方に裁量権を持たせようということで、三位一体の改革を進めております。

 そしてことし、郵政民営化、これは民間にできることは民間にということで、今の郵政三事業、これは民間人が経営してもらった方が今の郵便局は活性化する。郵便局をなくせなんというのは、私は一言も言っておりません。(発言する者あり)いや、今、構造改革はどう進めてきたのかということで、丁寧に答えろと言うから、私は丁寧に答えているのです。

 もういいというんだったら答弁をやめますけれども、いずれにしても、当初の方針どおり行財政改革を進めていかないと、これから将来、さらに税負担はふえる、民間にできることは民間にやらせないと、ますます公務員はふえていくということで、私は、民間にできるところは民間に、地方にできることは地方にという方針のもとに、具体的に各論に入って進めているわけであります。

 当然、与野党から猛反対が出ていることは承知しております。しかし、この反対者もいずれ私の主張に理解を示してくれて賛成してくれるのではないか。反対勢力を協力勢力にしていくことも総理大臣としては大事なことではないかなと。穏やかに、できるだけ円満に実現できるようにこの改革を進めて、将来、日本国民が、やればできるというような自信を持ってもらって、努力が報われる。

 そして、余り政府は余計なことをしないでくれと。自分でやることはやりたい、企業も創意工夫を発揮したいということで、企業も業績を上げてきております。地方も、自分たちの特色を出したいということで特区構想などを出してきています。個人だって、今まで三百万円資本金がなきゃ会社ができないというのを、一円の資本金があれば起業、会社ができますよと言ったら、もう二万件以上の会社が誕生して、やる気を出してやってきている。こういう、やる気を出す、やればできるという体制を個人も企業も地方も出してもらって、余り政府が余分な国債を増発したり増税しないで、日本の経済が活性化できるような体制をつくっていかなきゃならない、そう思っております。

 そして、国民が、自分の努力が報われるような、そういう社会にして、国際社会の中でも日本が、ああ日本はいい国だ、日本のような国になりたいというような、安定した民主的な、平和を愛する国家として発展するように、これからも外交面においても努力をしていきたいと思っております。

仙谷委員 お伺いしておりまして、小泉総理、あなたは本当に長生きできますよ。のうてんきこの上ない。いわば……(発言する者あり)やかましい。いわば、私に言わせれば……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛にしてください。

仙谷委員 ひとりよがりというか独善というか、もうこれは、何とかにつける薬はない、ここまでいくんじゃないでしょうか。

 といいますのは、一つ一つ反論できますよ。

 不良債権処理、幾ら公的資金を注入したか御存じですか。いいですか。四十六兆八千億です。そして、この五年間に超々低金利、ゼロ%へ行ったために、家計部門から、つまり多くの国民の預金金利が六十兆円ぐらい企業サイド、銀行サイドに移転されているじゃないですか。そうでしょう。

 さらに、かてて加えて、大蔵省が発行する国債を日銀に幾ら抱えさせておるんですか。約百兆円じゃないですか。あなたは不良債権処理は済んだと言うけれども、銀行の貸し越し残高は百兆円も減って、国債保有が百兆円ふえているだけじゃないですか。これが何で国民生活と関係あるんですか。国民経済とどう関係するんですか。そんなことをわからないで、何かすばらしいことができたように言うから、のうてんきだと僕は申し上げているわけですよ。

 事ほどさようにそういう、いわば塗炭の苦しみまではいかない、あるいはあなたの好きな浜口雄幸の時代のような、はい回るような苦しみまではまだいっていないかもわからぬけれども、しかし、地域経済、地方経済は完全に疲弊していますよ。これは、あなたが本当の構造改革というものを理解していないし、それを理解した上で遂行する、そういう政策をとろうとしない。(発言する者あり)今、丸投げだもんとおっしゃったけれども、まさにそうなんですよ。

 私はきょうの新聞でしか見ていませんけれども、昨日、経済財政諮問会議の二〇〇一年の議事録が公開された。宮沢大蔵大臣が、要するに、ばらばらに各省庁が遂行するんじゃこれは効果も上がらない。本間先生に至っては、現時点でも政府と与党自民党がばらばらだと。与党と内閣の一元化というのが全くない。議会制民主主義の本来の姿は全くない。ましてや、霞が関の縦割り、この構造でばらばらになっている。

 総理、今、先ほどから公明党の井上議員が少子化対応策についておっしゃっておりましたが、指摘をしておりましたが、今少子化対策をやっている官庁というのは何省あるか御存じですか。いや、総理、知らないんだったら知らないでいいです。

小泉内閣総理大臣 幾つあるかというのは、政府挙げてやっているんですから、省、幾つ挙げるか、正式に答えを調べますか。そういうことまで総理大臣が答えなきゃいけませんか。幾つ、それは全省挙げてやっているんです。

仙谷委員 だから、総理の、これが最優先課題だ、最重点課題だ、そこに資源を注入するんだ、集中的に投入するんだ、こういう政治スタイルになってこないんですよ。スローガンだけほえたらあと任せきり、丸投げ、こうなっているんですよ。

 我が党は、少なくともこの少子化問題、昨年の参議院選挙の前のマニフェストで、子供家庭省をつくる、少子化、子育て、この政策を一元的に一貫してとり行う政府、そういう部局をつくる。

 例えば、今の内閣府の男女共同参画局、厚生労働省の児童家庭局、厚生労働省の介護手当を渡しておる職業安定局ですか、あるいは経済産業省、ばらばらにみんなそれぞれが持ち帰って、薄められた金を振りまいている。こんなことでは絶対だめなんですよ。文部省、初等教育局、あるいはその下の幼稚園を担当する部局、みんな一つになって政策を立案し、一元的に執行する。現にヨーロッパは全部そうなっているんですよ、この種の政策は。

 私は、この少子化問題を見ておりましても、やはり政権交代がない限り、自民党、小泉さんですら、しがらみの少ないと言われている小泉総理ですら、この縦割り構造を一回解体して再編する、そういう政策の集中的な、一元的な執行というのはできないんだな、立案もできないんだな、つくづく思います。

 これはやはり、この六十年、あるいは成功体験を持つ、まあ成功体験、どうでしょうか、四十年、三十五年ぐらいの成功体験じゃないかと私は思いますが、あるいはもっと言えば一九五五年から一九八五年プラザ合意まで、ここが成功した。この成功体験から、霞が関も与党自民党も、そしてその上に乗っかる小泉総理も変えられない、そう思うわけであります。

 そこで、私どもは今度、きょう資料でお配りをしてございますように、民主党予算案というのをつくってみました。今の客観的状況の中で、我々が政権を持っておればどういう資源配分の仕方をするかということであります。そういうプランをつくってみたわけであります。

 基本的には、子供・子育て、地方の活性化、教育、財政健全化、これを最重点的に考えるということであります。特に、子供・子育てにつきましては、総額三兆六千億の子供手当を創設する。将来世代にこの負担を押しつけない観点から国債発行額を徹底的に絞り込んでおります。私どもは、政府案に含まれる多くのむだや不要不急の事業の、それに対する歳出を大胆に見直しております。

 したがいまして、全体像としましては、お配りした資料に書いてございますが、一般会計で政府案に比べて三兆九千億マイナスであります。一般歳出も三兆三千億マイナス、国債発行額も二兆五千億マイナス、プライマリーバランスも三兆九千億改善をさせるということでございます。

 さらに申し上げると、とりわけ、先ほど井上議員もおっしゃっておりましたけれども、それよりさらに、公明党の案よりも進んで、子供手当は月額一万六千円。これは、現在政府が行っております児童手当、約四千五百億ぐらいだと思いますが、それに追加するところ三兆円でできます。

 出産時助成金。先ほど健康保険の適用等々ということをおっしゃっておりましたが、これでは不利になる人も出てくるということで、今健康保険から三十万円出るわけでありますが、さらに付加をして二十万円。先ほどの井上さんの資料でも、一人当たり大体五十万ぐらい出産にかかるんじゃないか、五十万ぐらいかかるんじゃないかということに対しまして、二十万円助成金をプラスして給付するということを我々は必ずやるということであります。

 学童保育の拡充、九百六十億、児童虐待対策、百四十億、そして小学生までの医療費の窓口負担、一律一割、四百五十億の所要額であります。そういう、子育てに全面的に注入する、そして教育も三十人学級を推進する、こういうことであります。こういう予算案を組みました。

 さらに、ちゃんとよく見てください、地方を活性化するためにも、政府案は、今度の三位一体改革で結局一兆七千億の税源移譲と三千億の交付金化、実質そのぐらいのことしかやっておりませんが、私どもは、五兆五千億の税源移譲、そうして十二兆五千億の交付金化、一括交付金にするということでございます。

 お配りした資料の次のページにそのやり方を書いてございます。やる気があればできるんです。既存の縦割りの既得権益にとらわれなければできるんです。ずっと長々と公共事業をやらなければいかぬとか、まあそれほど効果がないばらまき型の縦割りの補助金型の事業をやめる、その気持ちになれば、その意思さえ、政治の意思さえあればできるんです。どうですか。総理、御感想を一言お願いいたします。

谷垣国務大臣 今、仙谷委員から民主党予算案のポイントを御説明いただきまして、まず、こういう予算案をつくられまして、これは今までのマニフェストの実現化だと思いますが、予算委員会の議論を活性化しようということには私は敬意を表したいと思います。

 ただ、今御説明を受けたばかりですので、十分中身を精査した意見を申し上げるわけではありませんけれども、今のお話あるいはこの文書の中に、例えば特殊法人向け支出の半減であるとか、あるいは一括交付金化をして二割を一律削減するとか、いろいろなことが書いてあるわけですね。それから、一般歳出も三・三兆削減する、四十四兆のうち、三・三兆削減する。かなりの削減です。やはり、具体的には何をやるのかということをもう少し示していただかないと、そこが一番難しいんだと思うんですね、個別のものをどうやっていくか。そこはやはり、もう少し議論を深めていただけたら我々も参考になるな、こういうふうに思います。

 それから、一括交付金化ということをおっしゃいましたが、やはり、地方分権を進めていく場合に、一括交付金というのは一見いいように見えますが、一体だれがどうやって配るのかということがありませんと、一括交付金みたいのは、あるいはそれを配る権限を持っている人が物すごい権限を持つわけですね。そこらを具体的にどうなさるのか。

 それから、補助金を一括交付金にしますとき、これを見ますと、例えば三十人学級を進めるとか、いろいろ国一律でこういうことをやりたいとおっしゃっているわけですが、そういうものを国の基準としてやろうということと、地方に大半の補助金を譲っていくということと、どうそこのやりくりをするのか、こういう具体的なところが実際は問題になるんじゃないかと思います。

 それで、子育てとか教育とか地方の活性化、財政健全化、こういうところに重点を置くとおっしゃいました。私どもの予算も実は理念においてはほとんど共通でございますから、私からのお願いは、この予算を早く通していただいて、共通の理念を実現するのを一日も早くやって対応していただくことを心からお願い申し上げます。

仙谷委員 谷垣大臣、私どもは、歳出改革十六兆円、ここまでも練りに練って提案をしているわけであります。(発言する者あり)どういうわけでというようなことを言う方は、ほとんど族議員の方々だと私は思うんです。

 つまり、既存の事業をボトムアップ型で積み上げる限り、歳出の改革などということはほとんどできない、痛いほど私もわかっております。つまり、この種の議論も、私に言わせれば極めてのうてんきな議論で、どこかで長期金利がぴゅっと上がった瞬間に、もうこの枠でしかあなたのところの省庁は、あるいは地方公共団体はやりくりしてもらわなければなりませんよという時代が来るというおそれを持って予算を組む、そういう時代だと私は思うんですね、今のこの財政状況は。

 つまり、だからこそ、議院内閣制、議会制民主主義の中での内閣が、トップダウンとして大枠を額で枠としてもう決めてしまうということがない限り、この時代、ずるずると、「改革と展望」を拝見しましたけれども、どんどん借金はふえざるを得ない。さあ、どこでこれを打ちどめするのかというのは、私には「改革と展望」でも全く見えません。プライマリーバランスも見えない。予算の組み方についての政治主導が、縦割りの省庁の、今まで補助事業とかなんとかかんとか言いながらやってきたものについて、これを、各省庁をそのまま置くとしても省庁に考えさせて、これはやめるということをやらない限りできない。

 分権を今主張する岩手県の増田知事が、公共事業を半減するようなマニフェストを出して選挙をしたようであります。当選した次の日に岩手県庁の役人が来て、あなたのマニフェストを実施するとすればこういうふうに予算を組み替えたらできますと言ってきたというんですね。

 つまり、やろうと思えば、ここは組み替えとかやりくりということを、知恵を出す有能な方々も霞が関の中にはいっぱいおるということは私はわかっているんですね。これを、族議員がうちわであおいで自分たちの票にしよう、できればキックバックまでもらおう、こういう政治の構造があるからできていなかっただけじゃないですか。私どもは、そういう政治からは完全に決別をするということであります。

 そこで、少子化問題についてお伺いするわけでありますが、少子化、なぜこんなに子供手当に注力するかといいますと、私も去年の年金国会、年金審議を見ておりまして、この少子化に対して、ああ、ここまで私自身が看過してきたか、それほど深刻に今まで考えてこなかった、この問題は大変なことだという自己反省、自己批判をしました。それにしては、もう十年も前から少子化対策ということは政府の文書等々では見えてまいります。エンゼルプラン、新エンゼルプランというのもあります。なぜこうなんだろう、なぜなんだ、ここが最大の問題だと私は思います。

 そして、先般、東京都のさる中学校を見に行ってまいりました。ここは地域に開いて、地域の方々の協力というか力をいただいて地域本部というのを立ち上げて、サポーター百人が、学校の授業から土曜日の寺子屋、ドテラというんですが、土曜日寺子屋から学校の緑化から全部一緒に生徒たちとやる、生徒たちは土曜日は任意でありますが。そういう体制をつくってやっている学校であります。「公立校の逆襲」こういう本を校長先生が書いていらっしゃいます、御存じかもわかりませんが。そこへ行ってまいりました。

 しかし、その中学校へ参りましても、戦慄を覚えました。一学年二クラスしかないんです。教室のサイズは一学年五クラスのサイズです、学校のサイズは。一クラス三十数人しかおりません。我々、三十人学級ということをここにも書いてございますけれども、それを主張しておりました。

 私は、例えば私の地元の徳島でもいろいろなところを見ております。徳島の山間部だけが過疎に悩まされていると思っておったのが間違いだったということがわかりました。東京ですらそうなっている。そして、この中学校が二クラス、一クラス三十数人になった瞬間に、つまり少子化の影響というのは、教育に与える影響というのが物すごく大きいということもわかりました。改めて根本的に考えて、これは、現場主導、現場主権のもとに教育の仕組みもつくり変えなければならないということをひしひしと感じたんですね。

 いいですか、厚生労働大臣、二〇〇四年、昨年の出生数、幾らだったですか。そして、出生率は、合計特殊出生率は幾らになるんですか。

尾辻国務大臣 一・二九でございます。(仙谷委員「二〇〇四年ですよ、昨年のと言いました」と呼ぶ)二〇〇四年。

 申しわけありません。二〇〇四年はまだ出ておりません。

仙谷委員 厚生労働大臣、人数もわかりませんか、出生数の。

尾辻国務大臣 生まれた子供の数でございますか。今手元に資料がございませんので、すぐ調べてお答えをいたします。

仙谷委員 正しいかどうか自信が一〇〇%あるわけじゃありませんが、一万六千六百十人、二〇〇三年に比べて減少しております。約百十万七千人であります。つまり、二〇〇三年が百十二万三千六百十人、合計特殊出生率一・二九。大変ショックだったですよね、年金審議しながら。

 これについて、当時の坂口厚労大臣が、これは瞬間風速だ、なぜならばミレニアム結婚というのがあって一時的にそこでふえた次の年だから減っているんだ、一時的に大幅に減少しておりまして、平成十五年の出生数の減少に影響したのではないか、このように考えておるところでありますと。つまり、平成十五年、ここだけは、二〇〇三年だけはどかんと落ちたけれども、次の年から回復するんだ、こういう答弁を堂々となさっているんですね。

 だけれども、私も前回の予算委員会でも御指摘申し上げたけれども、これはそのとおりなのかどうかわからぬけれども、東京が全国の先行指数であって、渋谷区が東京都の先行指数だというふうに統計的には見られるということをこの間も申し上げました。その東京は〇・九九八七であります。渋谷区は〇・七五であります。ということは、全国平均は東京に十年ぐらいで追いつこうとしているという今までの流れ、傾向を見ると、しっかりした対策をとらないとそこへ行ってしまう、一を割ってしまうという深刻な危機感ですね。一を割って、渋谷区のところ、〇・七五のところまで落ち込んでしまう、その可能性ですね。これを我々がしっかりと持って、この少子化対策をとらなければならない。

 今いろいろな、自分たちがたった毎月一万六千円の児童手当もおできにならないものだから、自民党の方々は、ほかのところを切らないからできないんですよ、ほかのところをカットできないからできないんですよ、できないものだから、そんなことできるかとか、やゆするようなことばかり言っています。だけれども、私は、本気でそのぐらいのことを考えて少子化対策に注力をしなければ、集中的に力を、資源を投入しなければこの国は危うい、そう思って、このような予算を我が党内で議論をして組んだわけであります。危機感の表現であります。

 これは、小国と同じように日本が動くかと言う方もいらっしゃるかもわかりませんが、現にエストニアは、一昨年ですか、日本円に換算すると一人当たり約二百万ぐらいのお金を一年間その家庭に渡す、子供さんを産まれた家庭には。それで、どのぐらいだったんですか、〇・三、四%出生率が上がったんじゃないんでしょうか。そういう例もあります。

 そこまではなかなか我が国は極端にできないかもわからぬけれども、しかしそのぐらいのことを、ひょっとすれば、一つの御家庭に、今我々の一万六千円でありますと約三十九万円、四十万円弱でありますけれども、これを百万ぐらい、援助、サポートの体制をつくるということを考えてもいいのではないか、そんなことを考えるわけです。

 現に、この少子化白書と言われている厚生労働省の文書には、昨年出された白書には、ちゃんとこう書かれているんですね。「少子化の流れを変えるためにも、大きな比重を占めている高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代や将来世代の負担増を抑えるとともに、少子化社会対策に関する施策を充実させる必要があると考えられる。」

 どうですか、この意見。私、全面的に賛成ではありませんが、総理、どうですか、この意見。少子化白書に書かれている「少子化の流れを変えるためにも、大きな比重を占めている高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代や将来世代の負担増を抑えるとともに、少子化社会対策に関する施策を充実させる必要がある」、どういうふうにお感じになりますか。

尾辻国務大臣 まず私からお答えいたしますけれども、今お述べになった部分は、昨年私どもがつくりました子ども・子育て応援プランの中でも述べておりまして、私どもは、そういう今いろいろお話しになりました少子化に対する大変な危機感を持っておりまして、こうした対策をとらなきゃならないというふうに考えておるところでございます。

仙谷委員 少子化対応策ですが、対前年比どのぐらいのパーセンテージで予算がふえているんですか、厚生労働省の予算としては。少子化対応策はどのぐらいでふやしていますか。倍とか十倍とかという感じでふやしていらっしゃるんですか。

尾辻国務大臣 少子化対策の予算をどこで見るかでございますけれども、雇用均等・児童家庭局予算ということで見ますと、今度の十七年度予算では伸び率六%で御審議をお願いいたしておるところでございます。

仙谷委員 この程度では、一兆一千億程度ですよね、子供関係予算が。私どもの書いた、我が党の案は、これは三兆六千億といいますか、三兆円上積みしますから四兆五千億になるわけでありますが、このぐらいの思い切ったことをやらないと、これからお子さんを産む世代をエンカレッジできないと私は思うんです。その支援をできない。我々おじさんたちもおばさんたちも見守っているよ、こういう雰囲気をつくらなければいけないと思います。

 ちょっと時間の関係がありますので、次に移ります。今度の三位一体改革であります。

 これを見てください。お配りした「補助金改革の結果一覧(地方六団体要請分)」というのを、一枚目をごらんいただければいいと思うのでありますが、これは、地方六団体が要請した補助金、件数が百四十八件だったんですね。私も、改めてこんなある種しんどい仕事をやってみました。なかなかこれが財務省からも出てこない、ほかの省庁からも出てこない、地方向け補助金等の改革の内容、一般会計、特別会計。

 補助金というのは、総理、幾らあるか御存じですか、件数。御存じなかったら答弁は要りません。御存じですか。

小泉内閣総理大臣 たしか大体十九兆円程度ですかね。

仙谷委員 件数はわかりませんか。つまり、件数ということは事業の数ということです。

 私も、財務省から出されたこれを計算してみました、自分で一つ一つ数えて。間違っているかもわかりません、このごろ老眼でありますから。一般会計が大体四百四十です。特別会計が百九か百十です。六百弱あります、補助事業の数が。その中で、地方公共団体、とりわけ六団体が削減、廃止をして税源を移譲してほしいというふうに要請したのが百四十八件でございました。よく覚えていますよね。

 本来は、地方六団体はもっと進んで、九兆円の補助金を削減すべし、そしてその中の八兆円を税源として移譲すべし、そういうことを建前的に言っておりましたよね。第一期分、十七年度、十八年度、平成十七年、十八年では、四兆円の補助金を削減して三兆円税源移譲してもらったら、まあ辛抱するんだ、こんな話だったと思います。

 この整理してきた表でいいますと、税源移譲したのはこれはたった六件しかないんですよ、総理。一部移譲したのが二十八件。スリム化と称して減らした、これは廃止と書いてあるとすれば間違いです、スリム化、削減というふうに変えてください。これが九十七件と書いてありますが、九十八件です。それから改革非対象、これが十一件です。本来の改革対象の予算額をその欄に記載してございます。

 要するに、どういうことかというと、百四十八件の要求に対してまともにこたえたのは六件だった、この六件も、自治事務が五件、法定受託事務が一件、こういうことです。それで、どうなったのか。完全に税源移譲したのはたった六件でありますから、当然のことながら、税源移譲額は六百十九億しかしていません。

 あとは、一部移譲というのはどういうことかといいますと、権限を残し補助金を残しているわけです。だから、いつでも中央官庁は口出しできる、コントロールできる。地方自治体が自由に使えるお金になっていない。自治体が自己決定できる本来の意味での分権化された財源になっていない。それが、結局のところ五千七十六億であります。

 どうも、それを全部足しましても税源移譲額は、その下に書いてございますように五千六百九十六億、裁量的経費はたった四百九十七億しかない。税源移譲を完璧にされた中の義務的な経費、ほとんど人件費のようでありますが、これが九一%。つまり、大騒ぎをした割には、地方の自己決定で自由にできる税財源になっている部分が極めて少ないというのが次の、お配りした資料でいいますと四枚目からでございます。「こんなはずじゃなかった 税源移譲」ということになるわけであります。

 改革全体が三兆八千六百九十億。それなのに、とどのつまり、一兆四千七百五十七億円は義務的な経費である、地方に裁量性があるのは二千九百六十三億しかない。次をめくっていただきますと、結局のところ、義務的経費の中から義務教育教職員の国庫負担額と国保だけを除きましても、三千九百二十七億円しかない。こんなことになっているんですね、今度の三位一体改革。

 我々はこれでは、地方の首長さんも、分権を、そもそも九兆円の補助金削減を要求したわけでありますから、次の第二期にはかない期待をかけるか、政権を交代するか、選択をせざるを得ないところへいくと思います。

 総理、「改革と展望」にも、どうも「改革と展望」の前提でも、十七年、十八年までしか税源の移譲のことが前提にされていないようですね。総理は、もうこの十七年度、十八年度の税源の移譲、三位一体の改革と称するもので、税源を地方にこれ以上、地方が言うように八兆円も移譲する、こんなお考えは全くないというふうにお伺いしていいですか。

小泉内閣総理大臣 十六年度に約一兆円削減し、十七年度、十八年度で三兆円の補助金を削減しようということで、いわゆる地方六団体、知事会とか市長会とか町村長会、それを含めまして六団体が、非常に難しい意見の調整をされてまとめられました。

 それを真摯に受けとめてやってきまして、今後、十七、十八年度、実際この補助金削減なり税源移譲なりしてみて、地方がどういう形で裁量権を拡大していくか、またそれぞれの移譲された権限というものを活用していくかということについて、今回の案に、中には異論があるのは承知していますけれども、六団体の代表の方々はそれぞれ評価していただいております。でありますから、十七、十八年度の状況を見て、十九年度以降、さらに地方における裁量権を拡大する方向で検討していく必要があると私は思っております。

仙谷委員 時間がなくなりましたが、鳩山さんのお許しを得て、一言申し上げたいのであります。

 地域の活性化なくして日本の再生というのは絶対にない、それも、この情報化社会というかポスト工業化社会においては、教育を軸として、核として地域をもう一遍興す、そこにしかないということで、先ほど私が見学した中学校のことを御紹介もしたわけであります。

 つまり、教育を、学びの社会をつくって、教育の力で、知の力で日本を再生するしかないと思います。そういうときに、現場主権というか、地域を信じて地域に任せる、ゆだねること以外に、中央の霞が関で仕切る、族議員がそれをうちわであおぐ、こんなやり方ではもう限界が来ていることは明らかであります。どうか、この税源の譲与、地方の財政の自立の改革、あと来年の九月までのようでありますけれども、もう一回予算を組む機会があれば最大限の配慮をしていただきたい、意を尽くしていただきたい、このことを私の方からも要請いたしまして、質問を終わります。

甘利委員長 この際、鳩山由紀夫君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鳩山由紀夫君。

鳩山(由)委員 主として総理に対して、外交問題に関してお尋ねをいたします。

 まず冒頭に、スマトラ沖地震、インド洋の大津波、この問題、大きな災害になりましたが、この災害に関しましては私どもも超党派で協力を申し上げたい。私も再来週に現地に赴いて視察をしてまいります。また御報告も申し上げたいと思っておりますので、こういう問題に関しては党派を超えて御協力申し上げることをお誓いいたします。

 この件に関して、私が町村外務大臣にすぐにお電話申し上げましたところ、特にNGOに対する協力を申し上げたところ、すぐに町村大臣から、特にジャパン・プラットフォームに対する十億円拠出ということを報告していただいたこと、大変よかったと思っております。なお一層の御努力を期待しております。

 さて、つい先日でありますが、私が尊敬しております寺島実郎さんが「脳力のレッスン」という本を著されました。その冒頭に書かれてあります文言が、やはり大変ショックであります。

 それは、九・一一から三年の世界の空気の中で、日本の選択はまさに思考停止とでもいうべき状態であった、二十一世紀の世界秩序のために情理を尽くして向き合わず、この国を守ってくれるのはアメリカしかいない、こういう貧困な固定観念の中で、仕方がないじゃないかとみずからに言い聞かせながらアメリカを支持して、自衛隊をイラクへ派遣するという選択をしてしまった、このように述べられております。

 そして、私は、このような外交問題に関して、今回の通常国会、いよいよ思考停止から、みずからの皆様方の頭で思考を始めていただきたいと思いながらこの予算委員会あるいは本会議の質疑を聞いておりましたが、いまだに思考停止の状態が続いているようであります。

 そこで、私はまず冒頭、特に小泉首相、岡田代表のかつての党首討論でありましたか、戦闘地域と非戦闘地域、このような問題に極めて非論理的な話をされて、しかも、それでいいではないかと開き直られた。こういうことが国会の中でしばしば起きるということは、甚だ国会というものに対して国民の信頼を失うものでありますだけに、私の方から、まずこの問題に関しては簡単に決着をつけてまいりたいと思います。

 ここに書いてありますように、イラクの地域は大きく、戦闘地域か、あるいはそうでない非戦闘地域か、そして自衛隊が派遣されるのは法律によって非戦闘地域に限られると、まさにこの図でしょう。この図でよろしいかと思います。

 しかし、岡田代表が尋ねたのは、非戦闘地域とはどういうものですかという定義を聞かれた。それに対する答弁が、自衛隊が、例えばここがサマワだとしますと、この活動している地域が非戦闘地域だと。実際には、そうでない地域にもまだまだ非戦闘地域というものがあるとすれば、非戦闘地域という言葉の論理的な説明に、総理は自衛隊が活動されている地域がそうだというふうにお答えをされましたけれども、これは誤りであるし、しかも、もし自衛隊が戦闘地域に行動したとしても、自衛隊がいる地域は非戦闘地域だという定義をお変えにならなければ、いつまでたっても、自衛隊はどこにでも非戦闘地域として行けるという話になる。これは大変危険である。

 さらに申し上げれば、私どもは、九回も迫撃砲が参ってくるようなサマワの宿営地は決して安全ではない、したがって、この地域ですらもう既に戦闘地域ではないかと極めて疑わしい状況になっている、こういう、もしお答えになるとしたらきちんと論理に合った話をされないと国民の笑い物になりますよということを、あえて皆様方に、国民の皆さんに、この問題にはもう二度とタッチをしないで、答えを申し上げましたので、これで終わりにさせていただきたいということであります。この点に対してはもうよろしいですね。

 そこで、私は、むしろイラクの現実の問題をお伺いしたい。

 イラクに関して、国民議会選挙が行われた。(発言する者あり)この国民議会選挙は、今もお話があったように、皆さんは成功した、成功したという話をされた。確かに、イラクの人たちが、ああいう厳しい状況にもかかわらず、選挙をしよう、それで民主主義を開こうではないかという思い、かなり多くの方が行かれたことは、私も評価をしたいと思います。当然です。

 しかし、これで終わった、あるいは成功したからよしだという話では、私は、まだまだとんでもない、非常に危ない状況ではないかと思いますが、まず、総理にこの基本的な姿勢に対して聞かせていただきたい。

小泉内閣総理大臣 前段のお話でありますが、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域であるということは、極めてわかりやすい、適切な答弁だったと私は今でも思っているんです。

 戦闘地域においては自衛隊を派遣しません。活動もしません。イラク特措法に定めているのは、自衛隊が活動する地域は非戦闘地域でなければならないから、その規定に基づいて自衛隊を派遣しているわけであります。私は、これがおかしいという論理はいまだにわからないんです。

 戦闘地域に自衛隊を派遣なんて、私は絶対しません。非戦闘地域だからこそ自衛隊は派遣され、そして活動をして、現在、派遣されている地域の住民から歓迎されているわけであります。なおかつ、イラクの暫定政府からも住民からも、引き続き自衛隊の活動を継続してほしいという要請が来ているわけであります。自衛隊が活動している地域は非戦闘地域である。おかしい、おかしいと言っている理由が私はいまだに理解できません。

 そして、今回イラクの選挙が、テロリストの脅迫に屈せず、多くのイラクの国民が参加して選挙が行われました。これについて、国際社会が一様に成功だったと評価しておりますし、今後、イラク人がみずからの国を安定した民主的な政権にするためにどのような支援ができるかというのは、その国にふさわしい支援をしていかなきゃならない。

 そして、スンニ派の住民の中には、これをボイコットしろとかあるいは投票に行くなという働きかけが行われましたけれども、現在の選挙が行われた後、ヤワル大統領は、スンニ派の人からも主要な責任ある地位を与えようと働きかけているということも承知しております。

 私は、こうして脅迫に屈せずイラク人自身が投票に行って選挙が行われた、これが将来安定した政権に移行できるように、日本としても継続的な支援を行っていく必要があると思っております。

鳩山(由)委員 せっかく数学的に集合論でお話を申し上げたんですが、一切おわかりにならなかったということは極めて残念でありますが、これ以上こんなばからしい議論を続けたくはありませんから、私は、イラクのこの次の、今の答弁に関してお話をさせていただきたい。

 私が非常に心配しているのは、スンニ派の問題だけじゃないんです。クルドの方々はみずからの独立運動をかけて選挙の投票に行かれたという話もあります。非常に内戦になる可能性があると私が思っているのは、スンニ派がボイコットあるいは排除をされていく状況、そしてクルドの人たちは独立をしたがっている。一方で、シーア派の皆さんは、御案内のとおり、例えばイランとイラクと両方のパスポートを持っている人が投票したとか、イランの影響力が極めて強くなってきている。

 そうなりますと、シーア派が勝つということが予定されているような話でありますが、もしそうなった場合に、アメリカのライス国務長官あるいはブッシュ大統領が圧制国家だと言っているイランが背後に来るイラクという姿が浮かび上がってくる。そういう状況は逆に極めて危ないと思われませんか。

町村国務大臣 それは、いろいろ心配すれば切りがなくそれはございます。

 ただ、やはり私どもとしては、まず今回の選挙、貴重な第一歩を踏み出したんだという位置づけでありまして、これでもうすべて後はバラ色で、全部イラクがすばらしくうまくいきますなんということは、総理も政府も全く言っておりません。

 そして、今確かに、クルドのお話あるいはスンニ派、シーア派、それぞれの問題がありました。私、それぞれ間違ってはいないと思います。だけれども、例えばイランのスンニ派、これが今大宗を占めております。イラクのシーア派、同じシーア派だからとても仲がいいだろうと。実は、こちらはペルシャ人のスンニ派なんですね。こちらはやはりアラブ系の……(発言する者あり)ごめんなさい。こちらはアラブ系のシーア派で、そこはやはりペルシャ対アラブという、それこそ歴史とともに古い対立関係がありますから、同じシーア派だからといって一くくりするのは、それは早計なんですね。

 そのことを、実は私は、ヨルダンの国王陛下がお見えになったとき、ややそういうイランの影がちらつくというお話をヨルダンの国王もしておられたので、でも私の知り得る限りではそこはちょっと違うんじゃないですかと言ったらば、ヨルダンの国王陛下も、それはそうです、ただ懸念がありますと言うから、それはもう懸念は我々も共有しております、そんなお話をいたしました。

 ですから、私は、鳩山委員のお話が全部間違っていると言うつもりもありませんが、そう簡単に、同じシーア派だからすぐそれがくっついてということにも必ずしもならない。また、クルドの扱いは、今後憲法の中でこれがどういう位置づけになってくるのかということによって、どの程度の自治裁量権、自治区的な扱いにするのか。これはまさに、憲法がどれだけそうした地域住民あるいはクルドの人たちの意見を反映したものにこれから仕上がっていくかどうかということにかかってくる。

 そういう意味で、確かに難しい問題だと思いますが、難しいからといって、直ちにこれが一挙に瓦解する、分裂国家になってしまうということではなくて、我々は、そうならないようにまた国際社会として支えていく努力というものが大切なんだろう、かように考えます。

鳩山(由)委員 別の角度からそれではお尋ねをいたします。

 ブッシュ大統領が就任演説で、御案内のとおり、圧制から自由へという大変ある意味での理想論を述べられた。圧制に終止符を打つんだ、そのために各国も協力してくれという話がありました。このような圧制に終止符をというブッシュ大統領の考えに賛同されるかどうか、まず小泉首相、お答えください。

小泉内閣総理大臣 すべての国民が圧制から解放される、その趣旨には私は賛成であります。その圧制というものに対して、どういう圧制が行われているかというのはその国によって違うと思っておりますが、基本的に、どの国民でも圧制から解放されたいという希望は大事にしていく必要がある。そして、ブッシュ大統領が、遠大な理想でしょう、全世界の国民が圧制から解放される、自由を謳歌できるような、そういう国になってほしい、そういう趣旨については私は賛成であります。

鳩山(由)委員 おっしゃるとおり、圧制というものから解放されることが望ましいことは言うまでもありません。

 ただ、これも見方によっていろいろあるということも申し上げなければなりません。例えば、私の後援会長のお嬢さんがジンバブエに最近まで行っておられて、このジンバブエが、ライス国務長官によれば圧制国家だということになっております。ただ、必ずしもそのような圧制を受けたということではなくて、むしろ白人の農家、農園というものを、農地を黒人に解放するという、ある意味で日本もかつて経験した農地解放に近いような形が行われているところもある。これを見方によって、白人から見れば大変な圧制だということになります。黒人から見れば解放運動だという話になる。したがって、一概に言えない話の難しさというものは、私もわかります。

 そこで、イランに対して、六つライス国務長官が圧制国家を指摘されたわけですが、イランもその中に入っていました。イランに関して総理は、圧制国家だという認識を日本として持つべきかどうか、お尋ねしたい。

小泉内閣総理大臣 日本としては、イランが圧制という定義はしておりません。

 日本は、アメリカと違って、イランと友好関係を持っております。しかしながら、国際社会はイランの核開発について懸念を持っております。だからといって、アメリカがイランと国交がないから日本もイランと友好関係を持つなという関係ではありません。日本はアメリカと違いますから、日本は日本としてイランと友好関係を持っているということでございます。

鳩山(由)委員 その言葉をぜひ私も信じたい。むしろ、イランに対しては、日本とアメリカはアプローチが違います。ただ同時に、イランという国が核を武器にいろいろとおかしなことを行おうとしているということもあります。

 したがって、総理に対して、これから総理がブッシュ大統領にきちんとこの問題を、我々はこう考えている、必ずしも圧制国家だとは思わない、そしてそのイランがイラクに対して強い影響力を行使しようとしている問題に対しても、それは一概にすべてが悪いとは必ずしも決められない非常に複雑な問題がある、そこを懇切丁寧にブッシュ大統領に説明をする責任というものが、私は日本の総理大臣としてあなたにあると思う。

 そこをしっかりと、私は別に何も敵対的に申し上げるつもりはない。このイランの問題に関して、きちっと、アメリカとは違うアプローチを日本はとるんだ、そしてそのことによって、イラクもイランもより正しい国際社会の中で活動できる方向というものをつくり出すために日本がむしろアメリカとは違う道をとるんだよということも、ぜひはっきりと提示して行動してもらいたい。よろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日本はアメリカではありません、日本であります。キューバとアメリカは非常に険悪な関係でありますけれども、日本はキューバとも友好関係を持っております。日本は、先ほど申し上げましたようにイランとも、アメリカとは違います。同時に、ミャンマーに対しても、アメリカは今回のライス長官等、圧制という言葉を使っていますが、日本はミャンマーとも友好関係を持っております。そして、日本とアメリカは、協力すべき分野は多々ありますが、それは必ずしも同じではございません。

 日本にふさわしい貢献をアメリカとともにする場合と日本独自でする場合と、両方あるということは常に私も考えていることでありまして、今までもそのとおりにしてまいりました。

鳩山(由)委員 ぜひその方向で、しかし、アメリカに対してもきちんとそのことを伝える役割を果たしていただきたいということであります。

 イラクに話を戻しますが、これは、イラクの方から、高官から聞いた話でありますから真実でありましょう。イラクには、フセインの圧制というものはあった、確かにあった、しかしテロというものは当時は存在はしていなかった、アメリカが輸入したのがテロであるという話でありました。

 そのテロと闘う、テロの温床にしないということでさまざまな行動をされたとは思いますが、現実問題として、イラクにおけるテロというものは減っているんでしょうか、どうなんでしょうか。イラクがテロの温床になっていないという保証はあるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、フセイン政権下にあっては、テロの活動ができないほど圧制が行われていたんではないでしょうか。報道管制は行われる、虐殺はする。しかしながら、今みずからの国をつくり上げようとして選挙が行われる、テロリストは安定した政権をつくらせないために妨害しようとする。そういう中にあって、テロが起こっておるのは事実であります。

 しかし、かといって、このまま国際社会がイラクから手を引いて本当にイラク人だけで現在民主的な安定した政権がつくれるかと思うと、そうではないからこそ、国際社会が一致して、国連が全会一致で決議されたことを見てもわかるように、それぞれの国が加盟国としてふさわしい支援を行ってイラクに安定した政権をつくるということは、イラク国民にとって一番うれしいことでありますけれども、世界にとっても必要なことだということで協力しているんではないでしょうか。

鳩山(由)委員 そのイラクに対するこれからの日本の協力でありますが、総理は当然その中に自衛隊の協力ということもお考えになっておられるんだと思います。

 そこでお尋ねをいたしますが、これも聞かれた話だとは思います。オランダ軍が三月に撤退をする可能性が極めて大だと。その後イギリス軍に頼むという話も聞いております。六百人くらいがサマワに派遣されるのではないかという話も仄聞はいたしております。

 一方、ライス国務長官が、まだ国務長官になられる前でありますが、イラクにおいて養成されている保安部隊はどのぐらいいるのかという話を聞かれたときに、十二万人だと答えられたところ、即座にある民主党の議員が、そうではない、実際に訓練をされている兵士はたかだか四千人以下であるという話でありました。十二万対四千という大変大きな数字の開き、三十分の一でありまして、もしそのイギリス軍で足りない部分をイラクの訓練されたはずの兵士で賄おうとしたとき、たとえ千人そこに張りついたとしても、その三十分の一とすれば、訓練された方は三十人ぐらいしかいないという話になります。

 これで果たして自衛隊を安全に、安全確保義務というのが総理にあるんですから、その安全確保義務を果たすことができるかどうか。どのようにお考えになっておられるんでしょうか。

    〔委員長退席、茂木委員長代理着席〕

町村国務大臣 それはいろいろなイラクの治安部隊の見方というのはあろうかと思います。それは本当のところは私どもも、これが絶対ですということを言い切ることができるかどうかわかりませんが、一応、発表されたところによりますと、イラクの治安部隊というので全国で、イラク全土で、イラク人による治安部隊、イラク軍であるとかイラク警察であるとか、あるいは国家警備隊とか国境警察とか、全部含めて二十三万一千人余という統計が出されております。そのうち、自衛隊がおりますムサンナ県には約五千人が配備をされている。それがどれだけ十分訓練されているかということについては、それはいろいろな見方があるだろうし、これも本当のところはよくわかりません。

 しかし、私ども、千四百人のオランダ軍から六百人のイギリスで、これじゃとてもいかぬなと単純に思いがちでありますけれども、まず基本は、自衛隊がみずからの手でみずからを守るということがまず基本であります。これはもう最初からそういうことになっております。それに加えて、基本的には平穏な地域であるというベースもあります。また、その五千人のうち、またその何割かがサマワ周辺あるいはサマワ市内にいるんだろうと思いますが、それはそれでかなりしっかりやってくれているということを理由にして、オランダは撤退をした。現地の人たちを相当訓練したので、自分たちも安心してとまで言ってはいないようでありますが、一応バトンタッチできる状況にはそれなりになってきたので自分たちは撤退するんだということをオランダの政府がオランダの議会に対して説明文書で出しております。

 そういったことなどを総合的に勘案したときに、これからまた詳細については防衛庁・自衛隊とイギリスの軍隊の方とよく相談をして調整をしていきますが、私は、にわかに、自衛隊が一挙に危険な状態に落ちてしまうということにはならないんだろうというふうに理解をしております。

鳩山(由)委員 私どもは、自衛隊に早期撤退を求めているものでありますが、当然、今行動している自衛隊の方々が安全に活動してもらわなければ大変な話でありますから、それに対しては、我々としては非常にある意味で心配をしているという話でございまして、今も町村大臣のお話を伺って、自分でお確かめになった話ではないだけに、五千人といってもどのぐらいが訓練をされているかわからないと。バイデンさんという民主党の議員は、実際に現地に行って確かめたところ、三%ぐらいしか訓練された人がいないという話でありました。

 私も実際に見て言っているわけではありませんから、見てこられた方の話を聞いて、そのように感じて、その意味で、例えば五千人であっても、その三%ということになると百五十人程度という話でありますから、かなり心配だなという思いを申し上げておきます。ぜひ、こういった問題に関して、私どもも極めて関心を持っておりますだけに、安全に対しては確保義務を果たしていただきたい。

 あと一点申し上げたいのは、これは総理にお伺いしたいんですが、御存じだったかどうかなんですが、かつて私は、数カ月前に防衛庁の方からだと思いますが伺ったのは、無人のヘリがこの周辺を、サマワ周辺というものを監視して飛ばしているから、それで安全というものが確認されているんだという話がありました。しかし、伺うとその大半が壊れている、故障している、使い物になっていないという話を伺っておりますが、それは小泉総理、御存じだったですか。

大野国務大臣 昨年の十二月初旬に私、サマワへ参りました。しっかりとこの空中監視のヘリは飛んでおりました。現在、三機ございますけれども故障はございません。

鳩山(由)委員 私が伺ったところ、その三機が一機しか使い物になっていないという話を伺っております。真偽のほどは後で確かめていただければと思います。

 そこで、時間がなくなって、あと半分でありますから、私が伺いたいことは、このような状況の中で、すなわち、イラクというものが大変まだ、将来、道半ばというよりもスタートラインに立ったという状況でありますだけに、日本として、全力を挙げてさまざまな角度から協力を願いたい。ただ、私どもは、自衛隊というものの派遣よりも、そうではない形での協力の仕方の方が圧倒的に多いのではないかと思いますし、日本にとって役に立つ話だと思っておりますので、それを付言させていただきます。

 その意味で、同じ流れで申し上げると、国際協調をとるか、あるいは対米重視で日米同盟の方が重要なんだという立場をとるかという議論でございます。これをさまざま、これは岡田代表も話をされましたが、両方両立させるんだという答えでありました。私も、一つだけに、どちらかにすべて偏れというつもりで申し上げるつもりはありません。むしろどのようなバランスをとるかということで、これから総理にお話を聞かせていただきたいと考えています。

 私は、むしろ国際協調と対米重視というものを両方うまくバランスをとらせていくために、新たなこの国の姿というものを構築すべきではないか。その姿というものをどこに表現するかといえば、憲法の中に表現をすべきではないかと考えているんです。

 先日、私は、自分自身の憲法試案というものを発表させていただいたところであります。これをぜひ皆さん方も検討していただきたいと思っています。

 ぜひその中で私が申し上げたいことは、三点ありまして、一つは、いわゆる憲法の平和主義、侵略戦争というものは二度と行ってはならないという、過去の過ちに照らしてそのようなことは、必ずきちっといわゆる憲法九条の平和主義の部分は入れるという問題であります。そして、その意味で、国際紛争を解決する手段としての武力行使というものは行わないということを誓うことであります。

 と同時に、しかし日本の今の憲法には、決して、読みようによっては自衛権があるんだという話なんでしょうが、自衛権というものが明記されておりません。その自衛権の明記を、私は、自衛軍という形で書き入れるべきだと思います。軍でも、ある意味で隊でもいいと思っておりますが、自衛隊あるいは自衛軍という形で明記すること。そのことによって、個別的でも集団的でも自衛権というものを保持しているということであります。

 そして第三点は、国際的な協力に関しては積極的に行う。ただし、行う場合に、例えば自衛軍、自衛隊を派遣するという場合には、周辺の部分はこれは除くかもしれません、しかし、海外に派遣をする場合には、それは国連というもののお墨つきが必要だ、国連の決議というものが必要だと、この三点を憲法の中に明記すべきだと私は考えていますが、総理の御見解をぜひ聞かせていただきたい。

小泉内閣総理大臣 憲法の改正の問題につきまして、ことしじゅうに衆議院、参議院の憲法調査会で論点整理が出されることになっております。

 今、鳩山議員が言われました平和主義、それと自衛軍の明記、そして国際協力、この点について私も賛成であります。そして、その自衛軍なり自衛隊なりが海外派遣される場合に、国連の決議が必要であるという場合におきましても、自衛隊の武力行使はしてはならない。

 そして、自衛隊の派遣の場合も、国際緊急援助隊みたいなものがありますから、自衛官が。こういう場合について、受け入れ国が了承なり要請なりしないと行かないのは当然でありますけれども、そういう武力行使以外の場合で自衛隊が協力する場面も、これから将来出てくることが可能性としてあると思います。

 でありますから、武力行使はいたしませんけれども、常に、自衛隊の人道支援、復興支援が今後国連決議が必要かということについては、よく議論していただきたい。私は、武力行使はしない、しかし、自衛軍の明記、平和主義、これはやはりしっかりと新しい憲法においても守っていかなきゃならないものと思っております。

鳩山(由)委員 ぜひ総理、主導的立場を総理として、また自民党総裁としておとりをいただいて、こういう問題は当然のことながら民主党一党とか自民党一党でできる話ではありませんから、特に一番大事なのは、国民的議論というものを巻き起こすことであります。その意味でも、どんどん自分の思いを述べていただいて、また、今自民党としてこのように考えているからという話ではなくて、御自身の考えをお述べいただいて、そしてリーダーシップを発揮していただきたい、私はそのように考えております。

 その国連重視という考えで申し上げれば、私は非常に重要だと思っているのは、ここはひょっとして自民党さんと意見が分かれるところかもしれません。私は、ただ非常に重要だと思っているのは、例えば国連と国家主権というものが競合をするという可能性がある場合、例えばEUというものができたときに、EUの憲法のもとでそれぞれの国の憲法というものが、EUの方が上に立って、そしてそのもとでそれぞれの国が行動する以上、主権というものをそれぞれの国がEUに対して移譲するということが、それぞれの国で憲法を改正してつくられていったわけであります。

 総理は、国連の問題もそうですが、施政方針演説で東アジア共同体という構想を述べられた。私も、この東アジア共同体という話を何度か申し上げたことがありますだけに、我が意を得たりという思いをいたした。ただ、その場合に、その東アジア共同体、これは菅委員とのやりとりだったでしょうか、伺っていますと、まだそれほど考えが煮詰まっておられないように感じた。

 私は、非常に大事なことは、例えばEUでは、ユーロというものが生まれてくるときに、それぞれの国が通貨の主権というものの一部を移譲しているわけです。同じように、日本も将来、東アジア共同体、共同体という以上そのぐらいのことを行わなきゃならないと思いますが、東アジア共同体という発想が現実のものとなってきたときに、主権の移譲というものを今のうちに憲法にきちんと記述しておく必要がある、そのように思いますが、いかがでしょうか。

    〔茂木委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 これは私は、憲法改正と東アジア共同体の構想を一緒にしようという考えは、今のところ持っておりません。憲法改正は憲法改正として、日本国自身の問題であると思っておりますし、東アジア共同体というのは、もちろん、日本と東アジアと協調し経済的繁栄を図っていく、なおかつお互いの国々の多様性を尊重しようということでありますので、この東アジア共同体が現在のEUみたいになるかということについては、私はまだ近い将来そこまではいかないと思っております。しかし、将来、東アジア共同体の目標を持ってお互い協力していこうというのが必要だと言っているわけであります。

 そして、この東アジア共同体において、現在考えても、ASEANプラス日中韓、日中韓をスリーといいますから、この際ASEANプラス3と言わせていただきますが、このASEANプラス3を考えても、中国一つとっても政治体制が違うわけです。EUと違うんです。民主的で市場経済を重視するということを考えますと、政治体制そのものが中国と日本と違いますから、その点やはり、EUと同じようにASEANプラス3、東アジア共同体が一緒になるかとなると、これはまだ遠い先のことではないかなと思っております。

 同時に、私が考えている東アジア共同体は、いわゆるASEANプラス日中韓のプラス3だけでなくて、オーストラリア、ニュージーランド等も含めた考え方であります。開かれた共同体を目指しているわけであります。そして、ASEANの中にも、やはり日本が考えている民主主義の国とは同じではありません。

 ですから、EUとこの東アジア共同体とは、今の時点において随分違いがあるなと。しかし、夢と思われていたようなEUが今実現している。そういう夢とか将来の展望を持った協力体制を強化していくということは、今の時点においても私は重要だと思っております。

鳩山(由)委員 私は、この五十年に一度の憲法改正のときに、これから五十年ぐらいを展望した憲法改正の議論をするべきだと思うんです。

 それは確かに今、来年、再来年、東アジア共同体ができて、そこで通貨が一つになるなんという話は不可能ですよね。それは私もわかります。そうではなくて、しかし今、夢のまた夢みたいなものが現実になってきたというような話をされた。将来、東アジアだって変わってくる可能性は十分にあります。そのときに、通貨の統合、通商交渉権とかそういうものに対して、主権を移譲するという話は必ず出てくる。私は、そのときに、日本の憲法はこういうものを目指しているんですよということをうたえるような憲法にすることによって、それこそ東アジアの皆さん方に信頼を醸成させるということが十分可能ではないかと思って申し上げた。

 もう一つ申し上げれば、せっかくニュージーランド、オーストラリアを中に入れるという話をされた。私は、これはEUでも緊急展開軍というような話が出てくるわけでありますから、ある意味での軍事的な統一ということすら考えているわけであります。

 そうなると、東アジア共同体といって、オーストラリア、ニュージーランドを入れてアメリカを入れないというのはいかがなものか。ある意味で、日米同盟というものがあるわけですから、その安保があるので、私は、もし今の発想を持っておられるのでしたら、東アジア共同体ではなくてアジア太平洋共同体で、アメリカまで含むようなものにしていかないと、将来、これは安全保障の議論が起きたときに大変な問題が起きる、そのように思っておりますので申し上げておきます。うなずいておられましたので、もう御返事は要りません。御理解をいただいたことだと思っております。

 あと……(発言する者あり)いやいや、理解されたんですよね。皆さんは理解できなかったかもしれませんが、総理は理解をされたと私は思っております。

 ところで、もう一つだけ申し上げるとすると、アメリカと国際協調という話の中でどうしても腑に落ちないのは、日本の政府が国際刑事裁判所、ICC、これは党首討論でも一度お話を申し上げたことがありました。テロというものに対して対処していく国際的な環境をつくる、戦争犯罪というものに対して個人を裁くような国際的な環境をつくる、いい話じゃありませんか。それを日本は、私が三年前に伺ったときにも、政府は、今勉強している最中です、準備中ですと。きのう聞いたときにも、実は今準備中ですという返事でありました。こんなのは、準備中ではなくて、アメリカに配慮して、アメリカがそのように個人を裁かれるのが嫌なものですから徹底的に反対しているので、日本もそれにおつき合いをしている、とんでもない話じゃありませんか。

 やはりこういう問題に対しては、国際的な協調路線の中で歩みを遂げる、むしろリーダーシップを発揮するのが日本じゃないんですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 この問題は、いろいろな問題を含んでいるものですから、今検討しているんです。それぞれの国の事情、そして国内の法整備、極めて多岐にわたっておりますので、現在検討中でありますので、別に私は否定するものではございません。

町村国務大臣 短く補足をさせていただきますが、今総理が言われたように、まさに検討中なんであります。

 しかし、これは確かに日本で時間がかかる、かからざるを得ないという部分があるのは、ぜひ御理解をいただきたいのは、ようやっと昨年です、日本で有事法制というものができ上がった。それまでは、日本が戦争をするかもしれないということを一切考えてはいけませんということで、この国会、ずっと日本は動いてきたわけですね。ようやっとそういった議論をする基盤が昨年あたりで日本も一つ整備されたなということがあります。

 それともう一つは、これは日本の官庁の長いならわしとでもいいましょうか、緻密に、完璧に全部詰めるんですね。いや、こんなの詰めないでまずぼんと受けたらいいじゃないかという大ざっぱなやり方がそれはあるのかもしれませんが、それはどうも日本国の風土に合わない。そうすると、やはりそこを緻密に、今の日本の刑法なり、あるいは場合によれば憲法なり、いろいろな法律と、あるいは訴訟法に関する、それの整合性をやはり考えていく。

 そのかわり、日本は一度その準備ができて受けたらば直ちにそれが動けるというメリットがあります。よその国は、格好だけぽんとつけて、実は全然それを実行しないでいるという国が実に多いんですね。政治的にはその方が格好がいいのかもしれませんが、私どもは、やはりそれはやる以上はきちんとやろうということでやっておりますから、いましばらく検討のお時間をいただきたいというのはまことに正直な現在の姿なんです。

鳩山(由)委員 町村大臣らしくない官僚的な答弁ではなかったかなと思います。

 今、自民党側からもこれはやるからという話を伺っておりますので、意を強くしておりますので、こういう問題は官僚的な発想だといつまでたっても遠慮してできなくなる可能性があります。改めて、強くお願いを申し上げておきます。

 そこで最後に、北朝鮮、いわゆる拉致問題に関して皆様方の御意見をぜひ聞かせていただかなければなりません。

 それは、御案内のとおり、横田めぐみさんの御遺骨と言われていた遺骨が実はそうではなかったということがDNA鑑定で判明をいたしました。千五百度で焼いてしまえばDNAももうわからなくなるだろうということで、千五百度で焼いたようでありますが、どうも骨相学の先生によれば、三十代から四十代の女性の骨であるということであります。ということは、やはり横田めぐみさんに似せたものを、骨を焼いて、そしてそれを横田御夫妻に送って、それでもうこの拉致問題は終わりにしようというけしからぬ、まことにけしからぬ思惑で北朝鮮が行動した。明々白々であります。

 その状況の中で、日本政府が、何を言うかと一応は怒ったんでありましょうが、逆に北朝鮮の方から、そのような鑑定結果は捏造であったなどというようなとんでもない話が返ってきている。

 つい二週間ほど前の労働新聞には、金正日総書記が、日本帝国主義は過去もそうであったが、今日も我が人民の百年の敵であり、恨み骨髄に徹する敵であるというふうに述べたと書いてあります。これは御存じですよね。こういった状況にもかかわらず、日本政府がなぜか沈黙をしているというふうに見られております。

 拉致の被害者、また家族の皆さん方は、大変いたたまれない思いで毎日お暮らしになっておられる。横田めぐみさんの御両親はもうくたくたになっているという話を先ほど伺いました、いつ倒れてもおかしくない状況なんだと。その中で、全国で遊説というか、全国を回って訴えを続けておられます。まさにこのようなお気持ちをぜひ酌み取っていただいて、早急にこの問題の解決に力をかしていただきたいんですが、なぜか政府が沈黙をしています。なぜなんですか。

小泉内閣総理大臣 沈黙しているわけではございません。だからこそ、二年前に私みずから北朝鮮を訪問して、拉致の問題、核の問題等を解決して、この現在の北朝鮮と日本における不正常な関係を正常化しなければならないということで、交渉を始めたわけであります。

 その横田めぐみさんの御家族等の悲痛な思い、それは当然だと思います。こういう拉致の問題に対しまして、御家族はもちろん、私どもも含めて多くの国民が憤りの念を持つ、これも私は当然だと思っております。

 そういうことで、現在、北朝鮮側の対応に対しまして厳しく抗議をし、今後、この問題の解決に誠意ある対応を強く求めていくということで、これからも交渉を続けていかなければならない。一日も早くということでございますが、今、交渉を続けているさなかにあるわけでありますので、それは、なかなか解決しないということに対していら立ちを覚えているのも、これも理解できます。

 そういう中で、日本としては粘り強く、関係各国にも働きかけながら、北朝鮮との、拉致の問題を含めた正常化に向かって努力していかなきゃならない。この対応にこれからも変わりないわけでありまして、今後とも、国民の皆さんの支持を得ながら、政府としては厳しく対応していかなきゃならないと思っております。

鳩山(由)委員 厳しく対処しながらといいながら、厳しく対処しているとは到底思えないから申し上げているのであります。

 岡田代表の質問に対して、小泉首相は答弁で、北朝鮮から迅速かつ納得いく対応を得る最も効果的な政策を進めると述べながらも、しかし、まず制裁ありきとは考えていないというお答えをされた。迅速、納得いく対応、その政策を進める、その姿が見えないから申し上げているのでありますが、世論はもう既に八割の方が制裁を求めております。また、期限を切って、期限を切った中でさまざま条件を詰めて、条件が満たされないときに制裁を行えという立場を、多くの方がそのように主張されております。

 そこで、私は、総理には最後にお聞きしたいんですが、全閣僚の皆さんに、制裁というものを行うべきか、あるいは期限を切って制裁というものを行うべきか、このいずれでも構いませんが、今の状況を改善していくためにどういう手だてを考えていくべきなのか。それが、イエスかノーで結構ですから、制裁を行うべきかどうか、全閣僚にぜひお一人お一人聞かせていただきたい。

小泉内閣総理大臣 北朝鮮と日本との関係、交渉、正常化を図るというのは政府一体で取り組んでおります。さまざまな、閣僚も政治家ですから意見はあるでしょう。しかし、政府一体で取り組むべき問題であり、その点については一致結束しております。

鳩山(由)委員 お一人お一人は答えられないという発想ですか。こういう国民の皆さんにとって大変重要な問題に関して。

谷垣国務大臣 今、総理から政府一体になって取り組むという御答弁がございました。

 私も、先般の北朝鮮の対応というのは納得のいくものではないと思っておりますので、対話と圧力という方針がございますが、そういう中で、どうすれば納得のいく対応を速やかに促すことができるのか。その際に制裁も、初めから制裁ありきというわけじゃありませんが、制裁も一つの可能性として検討すべきだろうと思っております。私は外為法を所管する閣僚でございますから、政府の態度が決まりましたときは、法に従って厳正に対応してまいりたいと思っております。

町村国務大臣 先ほど総理がお答えをしたとおりで、政府はまさに一体であります。そういう中で私どもも、どういう対応をしたらいいか、どういうタイミングでどういう手段をとったらいいのかということを今いろいろ検討しております。

 先ほど、何の日本政府は、無反応ではないかというお話ですが、そんなことはありません。先方から、つい最近時点でいえばいわゆる備忘録ですか、これは回答だといって送ってきた。直ちに私どもは反論をしております。しかし、一応そこにもっともらしく科学的検証を経た結果であるというものがありましたので、今私どもは、それについて専門機関で、そのあれがいかにナンセンスであるかという結論が今度出てくると思いますが、その回答を今準備しておりまして、でき次第、それについては直ちにまた反論するということであります。

 いずれにいたしましても、これは政府全体で、いろいろな省庁が絡んでくる問題でもございます。一体となって小泉総理のもとで、どうやったらば、生存しているかもしれないその方々が一刻も早く帰ってもらう、あるいは、より正しい真実の証拠といいましょうか、情報といいましょうか、それを引き出すかということに今全力を尽くしているところでございますので、そういう姿勢で政府一体となって臨んでいるということを申し上げます。

中川国務大臣 小泉総理の対話と圧力で拉致問題を一刻も早く解決するという基本方針のもとで、圧力、制裁に関しましては、私は、去年議員立法で改正していただきました、我が国の安全に関する状況によって制裁ができるという法律がございますので、制裁ということになったときにはいつでも対応できるようにしておかなければいけないというふうに考えております。

甘利委員長 御質問にかかわる主なる大臣からは答弁がありましたが、ほかにもしてもらいますか。

鳩山(由)委員 時間が参りましたから。

 担当の方々のお話を伺いました。基本的にはしかし、政府一体となって従うだけだという話。それがどういう状況になっていくのか、国民には見えてこない。非常に寂しい思いで今の答弁を聞かれた被害者の方がたくさんおられると思います。

 ぜひ、私ども、本当はもっと、民主党として北朝鮮の人権侵害救済法案というものを用意しようとしておりまして、三枚目のカードを民主党から出そうとするぐらい考えておりまして、そのような考え方の中で、一刻も早く皆さん方が国民の皆さんと同じような考え方になっていただくことを心から期待する次第であります。

 小泉首相あるいは政府が、こういう状況で向こうから備忘録がぼんと出されて、それに対して一枚紙で答えておられるのかもしれませんが、十分に国民には何を日本がやっているのかわからない、小泉首相は黙っているじゃないかというふうに見られているんですよ。そのことによって、北朝鮮は、やはり自分たちの方が正しかったんじゃないか、あるいは国際環境が、それならば拉致問題、もう余り小泉首相は考えていないんだな、これは北朝鮮の方に分があるなというふうに思われたら大変だから、今こそ、こういうときに何らかの制裁のメッセージを、あるいは措置を施すことが国民的には物すごく重要なことだということを最後に申し上げて、私の質問時間が終わりましたから終了いたします。ありがとうございます。

甘利委員長 この際、田中慶秋君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中慶秋君。

田中(慶)委員 民主党の田中慶秋です。

 私は、さきの松岡理事の質問についてでありますけれども、やはり民主党は、今は議院内閣制でありますから、そういう点では与党と政府というのは一体であろうと思います。そういう中でさきのような質問をされてまいりますと、野党が、現実問題として、それに十分答えることも何もできない。言われっ放し。これでは、少なくとも本当の真実かどうかということが国民に伝わっていかないと思います。

 そういう中で、お話がありました藤井裕久、これは本人の名誉のためにもはっきりしておきたいと思いますので、申し上げておきたいと思います。

 現在民主党の代表代行をしております、自由党時代の会計責任者として、平成十三年度分の借入金の扱い等について先ほど御指摘をいただいたわけであります。関係法令に則し、また、当時、自由党の監査法人による外部監査を行って、適正であるという処理をされていたということを、この際、明確にしておきたいと思います。

 さらに、この返済等についても、十月二十五日五億円、十二月二十五日五億円返済したということの完済の証明も、本日、銀行で確認をしております。

 等々を含めながら、先ほどの松岡理事の発言ですと、借入金の返済疑惑、使途不明、記載漏れのような形で指摘をされておりますけれども、それは一切なかったということでありますので、その辺を明確にして、先ほど申し上げたように、議院内閣制の中における与党と政府一体という中で、野党がこれに対する反論も何もできませんから、そういうことを明確に申し上げておきたいと思います。

 以上です。

 そこで、次に、それぞれ通告をさせていただきました質問に応じてこれからさせていただきたいと思います。

 私は、今回の質問に当たりまして、実体経済というものは政府が言っているよりも非常に厳しい、こんな観点からアンケート調査をさせていただきました。はがきで五千枚、ファクスで五千、こういう形で、約一万のそれぞれアンケート調査をさせていただきました。この質問に使わせていただきますということもあったせいか、六千五百八十二回答がございました。

 そういう中で、今具体的に申し上げますけれども、政府が、現在、景気に対する考え方として、景気は一部弱い動きが見られますが大局的に回復の局面にあるということを言われておりますが、現実問題として、現場あるいはまた実体経済として、政府の考え方と乖離があるということを明確に申し上げておきたいと思います。

 なぜかというと、政府調査でも明らかになっている、財務省と内閣府の調査で、昨年の十月から十二月の法人企業景気予測等々についてもマイナスであります。さらには、民間のシンクタンクの一つであります帝国データバンク等によってもマイナスが明らかであります。

 こういう一連のことを含めて、今政府がいろいろなことを言われておりますけれども、現実問題として、大企業と中小零細企業の格差が広がる一方、あるいは業種間の格差が広がる一方、さらには地方と中央、この格差が広がる一方であります。

 こういう形の中で間違った指針を出しますと、私は、これからこの国の経済のあり方、景気のあり方を対応するときに大変な問題が、認識の甘さ等々の問題が出てくる。少なくとも皆さん方がその認識を、私は乖離があるということを、先ほど指摘しましたように、そのように感じております。

 まず、担当大臣であります経済産業大臣に、この考え方について、実態をどう把握され、あなたはどういうふうに考えているか、率直にお答えいただきたいと思います。

中川国務大臣 田中議員は日ごろから中小企業対策に大変熱心に取り組まれておられるわけでありまして、今回のこの一万サンプルのアンケート、実はデータの方もいただきまして、興味深く読ませていただきました。最後の部分についてのコメントは差し控えさせていただきますけれども。

 去年の夏ぐらいまでは緩やかな回復ということでございましたが、その時点におきましても、地域によって、あるいはまた委員御指摘のように業種によって、そしてまた規模によってばらつきがあったわけでございますが、その傾向は依然として解消されておりません。特に私の地元の北海道、あるいは東北、四国といった地域、あるいはまた、製造業に比べまして非製造業、特に小売とか商店街といった地域、そして、言うまでもなく大企業よりも中小、個人事業、個人商店が依然として厳しい状況にあるというふうに思っておりまして、ミクロを見る、個別を見る所管といたしましては、日本全体として景気が回復したというふうな実感を多くの方々が全国にわたって実感できているという状況にはいまだなっていないというのが私の認識でございます。

田中(慶)委員 先ほど、どういうところにアンケートを出されたかというようなつぶやきもありましたけれども、大体、神奈川、東京、千葉、こういう一連の関東地区を中心とした形でこのアンケートをさせていただきました。

 その回答はこういうことであります。景気について、政府が言うように今景気は回復基調にあると思いますかというアンケートに対して、回復していると思っているのはたった八・五%です。変わらない、悪くなっているというのが全体で約八〇%を超えているわけであります。この状態を考えても、大変な厳しい状態になっていること、これが実態だと思います。

 そういう中で、私は、この経済の、政府が出しておりますとらえ方の、予算の後年度歳出歳入の影響等についても、これをずっと見ていきますと、これからはっきりと国債がふえる一方でありますよね、こういうこと。それから歳出についても、あらゆるところが非常に、これからいろいろな改革をしようとしても、例えば社会保障の問題を含めて、ふえる一方になってきております。

 こういうときに、私は、単なる国債に依存するとかそういうことではなくして、最終的に景気をよくすることが前提じゃないかな、こんなふうに思っておるんです。ところが、今政府が打ち出しているのは、景気をよくするというよりは、むしろ景気の足を引っ張るようなことを次々と行っているのではないか。それは増税路線ではないかな、このように思っているわけであります。

 例えば、政府が今回も出されております定率減税の問題が、一応ことしは半分にするというような形も出されておりますが、そればかりじゃなく、昨年決定されました配偶者特別控除の問題、専業主婦の問題でもありますけれども、こういうこともなくすとか、あるいはまた高齢者に対する年間所得の問題等について、六十五歳以上の高齢者に対する適用が、個人住民税、これを非課税にする非課税措置が逆に三年をもって段階的に廃止する、こういうことも決めたり、いろいろなことをして、結果的に景気をよくするというようなことはどこも見られない。

 GDPの六〇%は消費だと言われているわけであります。ところが、その消費を具体的にあおるような形のものが出てこない。これが実態じゃないかと思います。例えば、私は横浜ですけれども、横浜の昔からありました三越というデパートはことしの四月で引き揚げます。あるいは、上大岡の三越は引き揚げました。なぜ引き揚げたか。売り上げが少ないからでしょう、単純に言えば。これが実態なんですよ。そういういろいろなことを含めて見てみますと、消費が上がるような政策というのは何も出てこない、こういうことじゃないかと思います。

 そういうことで、今政府が打ち出している景気の見通しというのは私は大変乖離があるというふうに思いますけれども、総理、どう思いますか。

小泉内閣総理大臣 後ほど竹中大臣からも答弁があると思いますが、私は全体の経済状況を担当大臣から伺っておりますが、緩やかな回復基調にあると。踊り場という表現を使っておりますが、これは、階段を一階から二階へ上がるときに、そのままどんどん上がっていくという状況じゃなくて、何歩かわかりませんけれども、平らな地域があるところ。この平らな地域、どんどんどんどん景気が上昇しているんじゃなくて、その上がる段階の……(発言する者あり)中二階というのは表現はちょっとわかりませんけれども、ここから、これは上がっていく段階の少しの段階だ、そういう状況にある。だから、決して楽観は許されないという状況にある。

 現に、いろいろな経済指標は落下するという傾向ではありません。現実の失業率にしても、有効求人倍率にしても、倒産件数にしても、あるいは実質成長率にしても、名目成長率にしても、それからまた海外の見方にしても、日本の経済状況を見ますと、輸出の主要相手先でありますアメリカにしても、中国の経済を見ても、それほど悲観するような状況じゃないということを見ると、この踊り場的状況が、私は、下に下がるんじゃなくて、やはり上に上る状況の段階の踊り場ではないかということを、竹中大臣初め経済関係の専門家から聞いて、指標も見ながら思うと、過去数年間の状況から判断して、やはりこれから上がる段階の踊り場ではないかなと判断しております。

田中(慶)委員 総理、確かに踊り場というのはそういう表現もあるかもわかりませんが、踊り場というのは逆に下がってくる踊り場もあるんですよ。上から来て、下がってまた下がる、これも踊り場なんです。特に、総理が言っているような状態になっていないということ。

 例えば、倒産件数は確かに昨年度は減りつつありますけれども、倒産件数は減っておりますけれども、廃業、これは逆にふえているんですよ。これが実態。

 それからもう一つ。あなたはいろいろな形で景気がよくなりつつあるということを言われておりますけれども、今の実態、企業の実態の中で、雇用の問題、特に大企業で正規労働者というのは六割を切っているんですよ。派遣労働さらには契約労働そしてアルバイト、こういう形で、そのことによって利益が上がっている。あるいはまた、海外で生産をして、連結決算で上がっているでしょう。こういう中で、その数字だけを見ながら景気はよくなっているとか、こういう判断は私は危険だと思っております。これが今の実態なんです。

 もっと突っ込んで言うならば、中小企業の問題。先ほど言われておりますけれども、倒産件数、確かに先ほど申し上げたように減りつつありますけれども、廃業の方がふえている。自殺者を見てください。五年連続ふえているんですよ。三万人を超えているんですよ。三万人を超えていることは事実。これは私は政治の責任があると思うんです、はっきり申し上げて。

 例えば、これは表現はよくないかもわかりませんけれども、交通事故で大変多くの犠牲者が出ました。それに対して、国を挙げてこのことに取り組んで、交通事故死というのは減っております。しかし、現実に三万人を超えて連続五年も続いているにもかかわらず、これに対する政府の取り組みというのは私はどこにも見えてこない。これは、やはり何とかしていかないと大変なことになってくる。

 例えば、総理、ガソリンスタンドを見てみましょうか。今、神奈川でいうならば、十年前の半分ですよ。昭和四十年のガソリンは五十三円。今は大体レギュラーで百円ちょっとですね。倍ぐらい、こういう状態です。しかし、そこで昔はいろいろな形で中小の人たちが何とかスタンドをやっていたんです。今、中小の人、一店舗。二店舗持っているスタンドはもうほとんどありません。みんなメーカーとか、あるいは具体的に、大手のところが全部そういう形でなっているんです。これがガソリンスタンドの実態ですよ。

 そればかりじゃありません。総理も正月回ったかどうかわかりませんけれども、私は地域をずっと回ってまいりました。業界団体の人たちと会ってきました。そういう中で、私の身近なところでも、去年の暮れで八百屋さんも閉鎖したのが二つもあります、ほんの身近なところで。酒屋さんもそうですよ。

 そればかりじゃありません。総理がこの前、おすし屋さんの話が出ましたら回転ずしの話になりましたけれども、日本の文化はどこへ行っているかわからない。私はすし屋さんの皆さんとよくおつき合いしているんですけれども、本当にすし屋さんも半減ぐらいになってしまいました。これは、昔から、すしの職人と言われて、日本の文化だったんです。お米がぼんぼん、総理が言うように海外でもすしが売れているんですけれども、現実問題として回転ずしが出たために、そういうものが出てきている。これが実態です。

 そればかりじゃありません。はっきり申し上げて、肉屋さんもそうなってきております。いろいろなところが中小企業のお店。

 そして一番いい例は、プロパンなんというのは本当に大企業がぼんぼん、エネルギー革命をしたのはプロパンじゃないですか。一軒一軒ボンベを持って歩いて、いろいろな形でエネルギー革命をしたんです。ところが、今はそれを大手のところが全部それぞれ価格破壊をしながらやって、現実問題として、中小のところはみんな店じまいになってつぶれている。

 こんな形の中で日本の中小企業や経済がよくなるわけがない。それをよくなったという発想自体が過ちじゃないか、あるいはまた乖離があり過ぎる、私はこう思っておりますよ。大臣、どうですか。

谷垣国務大臣 先ほど、私どもの役所でやっております法人企業景気予測調査のを引いておっしゃったわけですね。足元の景況判断は、委員がお引きになりましたように、総理の表現によれば上り坂の中の微調整が見られるのは確かだと思いますけれども、弱含んでいる面が確かにあるんですね。だけれども、先行きに関しては、先ほどの予測調査も、大企業も中堅企業も中小企業もともに景況感の改善が見込まれているということでございまして、企業部門の改善は私は続いていると思います。

 それから、先ほどおっしゃった、後年度どうなるかという数字で、どんどん国債がふえるとおっしゃいました。確かにそういうふうになっておりますが、あれは、一定の前提のもとに、何ら改善の努力をしないでやっていくとそういうふうになってしまう、だから、さらに構造改革を進めろというふうに読んでいただきたい資料でございます。

 確かにいろいろな問題点はございますけれども、それから、私も実は私の親戚に小売の酒販とかいろいろございまして、委員がおっしゃったようなそういう苦しい局面があるのはよく承知しております。しかし、全体として、何というんでしょうか、やはり問題は、いろいろなことを考えると、個人消費がまだまだだなというのはみんな共通した認識だと思います。先ほどのような、三越がどうしたとおっしゃったのも多分そういうことにつながっていると思いますけれども。

 私は、このところの趨勢で見て大きいのは、さっき総理もおっしゃいましたけれども、失業率がこの十年来の中で回復の趨勢にあるということはやはり大きなことだろうと思っております。そのことが企業業績の好調と結びついて個人の家計に及んでくる、そういう下地はできてきているのではないか、こう思っております。

田中(慶)委員 大臣、あなたは失業率がどうのこうの言っておりますけれども、雇用率と全然違っていますよ。先ほど言いましたように、正規労働者が少なくなる、派遣労働者が多い、契約社員が多い、パートタイマー、そればかりじゃありません、若年労働者の現在雇用率、見てください。失業率が約一〇%に近くなっているんですよ。これが実態ですよ。

 そういう形で、やはり私は、こう見ていながら、日本に雇用政策なり産業政策、はっきりとした産業政策をしなきゃいけないんじゃないですか。経済産業省になってから、むしろどちらかというと経済中心主義で、産業政策や通商政策というものがなくなってきている。ここが今、日本の大きな問題点だと思いますよ、はっきり申し上げて。

 ですから、国家ビジョンとして、国家政策としてこのことをやっていかないと、今の時代、今の現実のことだけを言われていたのでは、この国はおかしくなってしまう。競争になんて勝てませんよ。(発言する者あり)本当ですよ。大臣、いや、竹中さんに聞いていませんよ。あなたに聞いたって、それは産業政策ですから。

中川国務大臣 日本はもとより資源がない国でございますから、人間力で、文字どおり、田中議員のお言葉をかりれば競争していかなければいけないわけで、昨年の五月、総理の御決定のもとで新産業創造戦略というものを出しまして、先端四分野だけではなくて、地方の伝統技術あるいは食産業等々も含めまして、とにかく頑張っていけるようにしていこうということで人材投資減税なんかも認めていただきまして、今国会で御審議いただくわけでありますが、そういう形で、最終的にはやはり人間力ということでございますので、経済産業省といたしましても、産業政策、通商政策はもとよりでありますけれども、やはり、質の高い産業人あるいは技術者、お仕事をされる方々をつくり上げていくということが重要な我々の政策の柱だということをぜひ御理解いただきたいと思います。

田中(慶)委員 新産業政策、私は、あれを見ながらすごく期待しておりますけれども、現実問題として、次代を本当に先取りできるかというと、若干問題があると思います。

 例えば、見てください、大企業も含めながら、それぞれ空洞化という名のもとに、技術も特許も、あるいは設備のお金も下げて中国へ全部行っちゃっているんじゃないですか。決算的に見れば黒字かもわかりませんけれども、現実にはそういう状態なんです。

 そして、日本の、今、中小企業を含めて大変な状態になって、空洞化という名のもとにこの国の産業政策がおかしくなっているんですよ。日本の人口の十倍いる中国、それから国土を見てください、五十倍近くあるんですよ。こういう中で競争をこことしようといっても、大変難しい状態になる。

 そういう中で、やはり国家政策として、知的財産、特許を持って中国にぼんぼん行ってしまう、安いものだけを売っていくような、あるいは原価主義、こんなことばかりやっていたら、この国の経済あるいは産業はおかしくなってしまう。そのことをしっかりと国家ビジョンとして持たなきゃいかぬ。このことを申し上げているわけです。

中川国務大臣 新産業創造戦略の先端四分野は、御承知のとおり、燃料電池、ロボット、情報家電そしてコンテンツ、そのほかいろいろあるわけでございますけれども、多分、田中議員と私とは同じ考えだと思いますが、自動車であろうが情報家電であろうが、トップメーカーだけが頑張っているんじゃなくて、日本の経済、産業の強さというのは、周辺産業といいましょうか、事業数で九九%以上を占めるいわゆる中小企業の技術と技能というものが、まさに日本の品質を支えていると思います。

 こういう例を出していいかどうかわかりませんが、外国に進出しているある自動車メーカー、立派な車をつくっておりますけれども、日本に逆輸入したらどうですかと去年聞いたことがございますけれども、やはり、日本の消費者が求めるクオリティーにちょっとクリアできない部分があるので日本にはまだまだ逆輸入できないんだというような話も実際に聞いてまいりました。それだけ日本のユーザー、消費者のニーズは高い。それにきちっとこたえられるのが日本の技術力だと思いますので、一時期は随分と海外に、労賃が安いとかそういうことで行ったわけでありますけれども、逆に今、日本に戻ってきていることは、もう田中議員も御承知の企業がいっぱいあるわけであります。

 一つは知的財産権の問題もございますし、それから、日本の優秀な技術者が、ほかの国では四人、五人でやることを一人でできちゃうとか、そういうことを考えますと、人件費でもそんなに、安いところに行けばいいという時代ではなくなったということもございますので、まさに先端産業を支えるのは技術力であり、その技術力をキープし続けることが今後の日本にとっての、新たな物づくり国家としての役割だと思います。

 ちなみに、総理の御了解をいただきまして、そういう意味で、ことしの夏には、あらゆる分野の名人、あるいはまた技術を持った人を総理大臣以下で表彰して、みんなの目標にしようということを今準備中でございまして、人づくりイコール日本の発展だということを私ども経済産業省としても最重要課題と位置づけておりますので、御理解いただきたいと思います。

田中(慶)委員 ぜひ、これから本当に、企業再生を含めたこの国の国家ビジョンというものを明確にしながら、将来にわたる、日本の九九%が中小企業なんですから、ここが元気の出るような政策を打ち出さなきゃいかぬと思っているんです。

 ところが、今どうでしょう、皆さん。原油が上がる、鉄が上がる、そのことのしわ寄せが全部中小企業へ来ているんですよ。仕事をしても全然赤字、これが実態ですよ。(発言する者あり)いや、そうですよ。知らない人はそういうふうに言っている。現実に本当なんですから。

 そうして、例えば、では自動車産業、黒字のようですけれども、二次下請、三次下請になってくると、今のような、材料費が赤字で、材料費によって財政的な赤字が生じて、今、二次請、三次請の人たち、労働組合に、何とかこれを、材料費の高騰分をひとつ面倒見てもらうようにお願いしたい、こんな話まで出てくる。これが実態なんですよ。これが今の日本の、今皆さんが考えている経済のあり方と実態の違いというのはこれが出ているわけですから、これをちゃんとしていかないと中小企業は伸びていきませんよ。

 こればかりじゃありませんでしょう。例えば倒産関連防止資金の問題一つとっても、中小企業の皆さんがそれを頼りにしているんです。ところが、金融そのものが、総理、いまだに貸し渋り、貸しはがしが起きているんですよ、現実に。雨の降っているときに、傘を貸してくれないんですよ。これが今の中小企業です。本気で仕事をしようとしていても、結果的に、総理が言っているように、仕事量がふえてきた、お金が足りない、そのお金を貸してくれない。これが実態なんですよ。

 やはり、そういうことを含めてもっともっとこの手当てをすることによって中小企業というのは元気が出るわけですから、そのことをしっかりとしてほしい。総理。

中川国務大臣 企業活動は、技術あるいは人材だけではなくて、やはり資金というものが必要でありまして、今までですと、不動産を中心にした有担保あるいはまた保証、あるいは本人の無限保証、無限責任といったものが原則でございましたが、もう田中議員もよく御承知のとおり、ここ数年の間に、政府系と民間とのすみ分けの中で、政府系も民間も、無担保無保証の貸し付けでありますとか売り掛け債権とか、在庫、債権を担保にした貸し付けでありますとか、さらには、ハイリスクではありますけれども、リターン、リスクをみんなでシェアして、例えば民間のファンドを大いに活用するでありますとか、そういう形で資金供給につきましても、特に中小企業向けの資金供給については柔軟かつスピーディーにやっていかなければならないという観点からいろいろな施策を講じておるところでございまして、引き続き御指導をお願いしたいと思います。

伊藤国務大臣 今委員から御指摘がございましたように、中小企業が本当の意味で再生していくためにも金融というのは非常に重要であります。

 政府といたしましても、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムというものを展開して、そして、中小企業の再生と地域経済の活性化を図りつつ不良債権問題を解決していくんだということで、さまざまな取り組みをしてきたわけであります。そうしたことによって、今、地域の金融機関の中で、経営改善の指導を行っている中の約二割が業況が改善して、そして債務者区分というものも上位遷移をしている、こういう成果もあらわれてまいりました。

 また、過度に担保や保証に依存しない商品というものを開発してそういう融資をしてほしい、こういう要望も非常に強いわけでありますけれども、約八割の金融機関がそうした分野についても挑戦をしているわけであります。

 これから中小企業金融の円滑化を図っていくためにも、その審査能力を上げていくということが非常に重要でありまして、先ほど委員から御指摘がされているように、単に数字を見るだけではなくて、企業の技術力でありますとか将来性でありますとか販売力でありますとか、数字にあらわれない定性的な部分についても評価能力を上げていくことが非常に重要でありますから、そうした面についても、今、地域の金融機関は一生懸命努力をしているところであります。

 私どもといたしましても、そうした取り組みというものを後押ししながら、中小企業金融の円滑化が実現できるように努力を続けていきたいというふうに考えております。

田中(慶)委員 今大臣が言っていることが本当に真実ならば、中小企業はこんなに困っていないんですよ。今、現実問題として、あなたが言っていることを本当に実行に移されていたならば、日銀の短観の中でも、九月調査の中でも、中小企業の問題が資金詰まり、これは打ち出されているんじゃないですか、こうして。実態なんですよ、これ。私が言っているんじゃない。これは日銀がそういうことを発表されているわけですから。

 もっとありますよ。金融庁を初め経産省、財務省は、中小企業向けの公的信用保証の問題について縮小しようとしている、こういうことが新聞にも出ていますでしょうし、また、そういうことを含めて、担保の問題も先ほど中川大臣から言われました。いいですか、担保そのもの、土地を、今どちらかというと土地担保主義ですよ。ところが、土地が今のような形の中で値下がりをしている。極端なことを言えば一時の半値以下でしょう。しかし、そのときに、そのものが担保になって融資をまたお願いしますと、あなたは担保価値がありません、だれかの、極端なことを言えば、担保をさらに追い担と言われる形の中で担保を出しなさい。でなければお金が出ないんですよ、現実に。

 これが実態なんですから、やはりそういうことのないように、活力のある中小企業にできるために、伊藤大臣、かつてあなたも経済産業の筆頭理事をやっていたでしょう。実態をあなたはよくわかっているわけですよ。そういうことを含めて、もっともっとこういう実態を、あなたは大臣になったら中小企業のことはわからないじゃしようがないので、中小企業みずからも経営者であるでしょうし、本当に実態はこうなっているんですから、やはりそのことをしっかり対応してほしい。

 担保というものが土地担保だけではもはやだめだということで、経産省がいろいろなことを工夫した。しかしそれは、現実問題としてなかなか実行に移されていないんです。その周りにいろいろな問題があり過ぎて、なかなかクリアできていない。こういう点では、せっかくつくった制度をもっともっと使いやすい制度にしていかないとだめですよ。

 これが今の実態でありますから、経産省及び伊藤大臣の方も、このことについて何かコメントがあったら言ってください。

中川国務大臣 使い勝手が悪いということであれば、これは何としてもそういう問題を解決していかなければいけないと思います。

 本当に困っているところに対しての対策と、それから、やる気と能力のある人がもう一押し何とかしてくれないかというのと、あえて区別をしてお話をしなければいけないと思いますが、いずれにいたしましても、土地中心の有担保主義でありますとか、あるいはまたいろいろな企業連携であるとか、新しいノウハウをどうやって実現し、ビジネスに生かしていくかといったものに対して柔軟かつスピーディーに対応していく。

 それから、今ちょっと苦しいんだというときに対しては、全国の商工会議所、自治体、そして民間等で中小企業再生支援協議会なんというものも実績を上げていただいておりますし、また、戻りますが、やる気のある企業は、一円企業がもう既に千社ぐらい出ておりますし、最低資本金を下回った企業も二万社を超えて既にスタートをしております。

 また、産学官の連携でありますとか、新しい有限責任組合なんというものもこの後御議論いただければというふうに思っておるところでございまして、柔軟かつスピーディーにニーズにこたえられるような、使ってもらわないと制度としての意味がございませんので、そうなるように我々もきめ細かく努力をしていきたいと考えております。

伊藤国務大臣 日銀短観についてのお話もございましたが、昨年の六月の調査から、中小企業に対する金融機関の貸し出しの状況というのはプラスに転じて、そして、最近の動向を見ても、プラスに向けての動向というのがより明確になっているというふうに思っております。

 しかし、委員が言われているように、まだまだであることは事実でありますから、中小企業金融の円滑化に向けてさらに努力していくことは非常に重要なことだというふうに思っているところでございます。特に、現場の声を幅広く聞いて、その実態に即した金融の政策をやっていかなければなりません。

 そういう意味からも、私どもとして、中小企業懇話会というものを設立し、また、中小企業の立場から、どういうところに問題があるのか、こうした意見も幅広くお伺いするために、中小企業金融のモニタリングという制度も設けさせていただいて、四半期ごとにいろいろな意見をお伺いしながら、私どもの検査やあるいは監督に反映させていただいているところでございます。

 一番重要なことは、成熟産業といえどもさまざまな今努力をしているわけであります。そうした努力というものを評価して、そして地域や中小企業のニーズにこたえられるような資金供給ができるような、そういう地域金融というものを確立していくために、私どもとしてもさらに努力を続けていきたいというふうに思っております。

田中(慶)委員 先ほど総理が、まじめに努力する者は報われなきゃいかぬと。ところが、今中小企業は報われていないんですよ、はっきり申し上げて。まして、閣内不一致なんですから。経済産業大臣は、今の問題を含めて、中小企業の景気はまだ厳しいという見解、私はそのとおりだと思うんです。ところが、片方は、踊り場で、景気がよくなりつつあるよ。現実には、閣内における景気の見方がこうなっている。

 ですから、こういう一連のことを含めながら、日本の物づくりというものがやはりもう少ししっかりと共通の認識でやっていかないと、この国はだめになってしまいますよ。私たちはそのことを心配しておりますので今申し上げているわけですから、素直に、率直にそういうことをちゃんとしていただかないと、今一番しわ寄せになっているのは中小企業なんですから、ぜひそのことをちゃんと認識してほしい。閣内不一致的なことが新聞に報道されていたんじゃだめですよ。これは別に私が言っているんじゃない、新聞がちゃんと書いているんですから。そういうことであってはいけない、私はそう思いますよ。

 竹中さんにはもっと厳しいことを聞きますから、いいですよ、あなた。

 今、日本の不良債権処理ということであなたが打ち出して、RCCの問題、いろいろなことがある。確かに不良債権の処理はよくなってきたでしょう。ですけれども、ゴルフ場にしても、旅館にしても、ホテルにしても、全部外資じゃないですか、半分近くは。日本の香港と言われた熱海を見てくださいよ。今もうがたがたですよ。そして、多くのところはアメリカ資本が入っている。これが実態ですよ。日本の整理回収機構、まさしくハゲタカ軍団と言われるような形で表現されているんです。こういう問題を含めて、あなたがこのことをしっかりと指導したんじゃないですか。

 そして、日本の産業、それは不良債権は回収したかもわからないけれども、そのぐらいの思いがあったならば、そのぐらい思い切って処理をするならば、その経営者たちにそのぐらいコストダウンしてやっていたならば、もっと日本の企業というのは再生したんじゃないですか。今そうじゃないですよ。本当に、バブルが崩壊したときのような形になっておることは事実であります。

 例えば、今、先ほど言ったレジャー関係だけじゃなく物づくりまでそれが影響している。一例を申し上げましょうね。

 皆さん、たばこを吸うときに百円ライターがあったでしょう。日本の百円ライターというのは、本当に世界的にすごかったんですね。この百円ライターも、東海さんというのがやっていたんですよ。ところが、これが、設備投資も若干あったでしょう、それから、中国を初めとする競争相手が出て、これが不良債権。しかし、労使で賃金を七割ぐらいまでカットしたりいろいろなことをして、それで再生したんです。

 再生もした、特に、商社がそれにバックアップしたんですね、名前を言うと失礼だから言わないですけれども。その商社が、今度、一年、二年ぐらいで利益が六十億出たんです。そうしたら、四十億を配当だといって持っていっちゃったんです。なおかつ、その東海を外資系に売っちゃう、これが今進んでいるんです。経済産業大臣も知っているでしょう。

 こんなことをして、日本の物づくりが全部そんなことをされたら、この国はおかしくなってしまいますよ。優秀な技術、いいものをやって大衆に貢献した、この企業が今そんな憂き目になっている、これが実態なんですよ。竹中さんがやってきた先ほどの不良債権回収のための努力というのは評価されるかもわからないけれども、国内的に見るとそういうことが現実問題として起きているわけですから。不良債権の処理と今のような問題は相反して起きているということ、実態。

 やはり、これをちゃんとしていかないと、この国、本当に、アメリカの五十一番目の州かどうか知りませんけれども、全部外国の資本が入ってきて、日本独自の物づくりなんていうのはおかしくなってしまう。大臣、どう思いますか。

中川国務大臣 まず、今のライター会社の例は、一般論としては、商法上は問題がないのではありますが、今、田中議員がおっしゃられたように、従業員の皆さんが中心になって再生のために賃金カットまでして頑張って、やっとうまくいったら何か利益をすっと持っていかれちゃったということであれば、努力をしてきた社員の皆さんの気持ちからは、私は一人間として、やはりこれはちょっと社員の士気にかかわるのではないか。特に最近は、CSRでありますとかコーポレートガバナンスという社会的な責任という観点からもいかがなものかと思います。

 他方、外資にみんな持っていかれて日本が五十一番目になるかならないかという議論は、この件とは、結果は同じでありますけれども、多分本質は別々のことだろうと思いますが、総理としても、また日本としても、どうぞ外国から日本に投資をしてくださいというのが日本の今のスタンスでございます。

 他方、では何でもかんでも日本に投資をしていいかということになりますと、これは、例えばアメリカでも、例のエクソン・フロリオ条項みたいな、国家の安全にかかわるものについての歯どめがございます。ドイツ、イギリス、フランスにも似たような法律がございますし、日本でも、外為法上、国家の安全にかかわるものについては届け出許可というもので、ぎりぎりのところはきちっとやはり国家としての歯どめをかけなければいけない。独立国家として当然必要なことだと思います。

 そういう前提のもとで、日本としては、こういうグローバル化の中で、日本もどんどん海外に投資をする、そして日本にも投資をしてもらうということも必要なことではないかというふうに考えております。

竹中国務大臣 御答弁の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 田中委員からは、私自身、本当に大変重要な御指摘をいただいていると思っております。本当に中小企業経営のことに大変お詳しいし、思いをいたしておられる。

 まず、閣内不一致ではないかという御意見がありましたので、それはそうではないということをぜひ申し上げたい。

 小泉内閣ができました二〇〇一年というのは、御承知のようにマイナス成長でございました。マイナス成長の中で、不良債権が積み上がって、金融危機だというようなことを、これは新聞も雑誌も書いておりました。そういう中から小泉内閣はスタートして、そして何とか経済を立て直そう、不良債権に象徴されるようなバブルの負の遺産を何とか片づけないことには経済は立ち行かないということから始まりました。

 委員御指摘のように、経済実態が大変厳しいということは私も十二分に承知をしております。しかし、そうした中で、マイナス成長からようやく二%程度の成長の軌道に今戻ってきておりまして、最近のOECDの対日経済報告は、日本経済は過去十年の間で一番よい状況にあるという評価が得られるところまでこぎつけた。しかし、繰り返しますが、経済実態は大変厳しいということは私も認識をしております。

 委員、先ほど中小企業の状況がございました。実は、私の父親自身がまさに和歌山という地方都市で零細企業を営んでおりまして、私が中学、高校のときに、同じような業種を営んでいる、これはなりわいとしての履物の小売でございますが、和歌山市内で約六十軒ありました。父親はその小さな商店の会長をしておりました。五年、六年ぐらい前に父親は七十何歳で廃業いたしましたが、そのとき和歌山市には、なりわいとしての履物小売は十数軒しかなかったそうでございます。これはまさに私たちが直面している問題なんだと思います。

 申し上げたいのは、経済の状況が厳しいということは認識をしている。しかし、これは単に景気がよいか悪いか、景気はよくなったり悪くなったりいたしますが、景気がよいか悪いかの問題ではなくて、消費者の行動が変わる中で、そして人々の住み方が変わる中で、中小企業中心にやはり競争力が残念だけれどもなくなっていっている。銀行も競争力がなくなった。それを立て直す一つの過程が、不良債権の再建であった。そして、今、中小企業にも、もっともっと競争力を持ってもらわなければいけない。それが先ほどから中川大臣がおっしゃっているようなことに尽きる。同じように労働市場でも、一人一人がスキルを高めて、いわゆる競争力をつけていただかなければいけない。

 繰り返し言いますが、これは単に景気がよいか悪いかということではなくて、まさにこれは構造問題である。その構造問題を解決するために、委員にもいろいろと御意見を賜りながら、中小企業の対策等々、骨太の方針の中に、しっかりといろいろなことを実現させていっていただいているという状況であろうかと思っております。

 その中で、また委員御心配のように、これはしかし、こういうふうな改革の中で、外資がどうしても入ってくるのではないだろうか。このようなことに対しては、私、けさも申し上げましたが、私は日本にどっぷりとつかった愛国者でございます。その中で、日本にしっかりと競争力を持ってもらって、むしろ日本がしっかりと外国に出ていくということも現実にはやっているわけでありますので、そういう構造をしっかりとつくっていきたい、そのための構造改革を引き続きしっかりと小泉総理のもとでやっていかなければならないというふうに思っております。

田中(慶)委員 竹中さん、あなた、物には順序というのがあるんですよ。今景気がよくなりつつあろうというときに増税路線を歩んで景気がよくなるわけないじゃないですか。このアンケート、みんなそうですよ。やはり、景気をよくするということに、今、全知全能を出すべきじゃないですか。

 確かに、小泉さんのとき、マイナス成長からプラスに今変わりつつある。だからこそ、今大切じゃないですか。それを、次々と増税路線を歩んでいったらば、またもとになってくるでしょう。一番いい例は、橋本さんのときそうやったんじゃないですか。そういうことですよ。間接的増税と同じですよ、今やっているのは。

 アメリカを見てください。レーガン大統領のときに大幅増税をしましたよ。そのときはできなかったかもわからない。しかしクリントンのとき、景気は完全に回復したでしょう。そして、今ブッシュさんがまた第二期目で大幅減税を打ち出しているでしょう。日米関係を大切にしている小泉総理初め竹中さんが、そういう一つのいいサンプルがあるにもかかわらず、逆に今、どちらかというと、僕から言わせれば増税路線ですよ。そういう状態になっているんです。だから、今の経済は逆におかしくなりつつある。

 これが実態でありますから、もっとこの辺をしっかりしておかないと、それは一時的に、あなたの任期は確かに永久に続いているわけじゃないですから。ですけれども、経済も日本という国も永久に続くわけですから、そのことを真剣に、小泉総理は来年の九月かもわかりませんけれども、そうじゃない、やはりそのことをちゃんとしないといかぬと思うんですよ。

谷垣国務大臣 今の景気状況の中で安易な増税路線はとるなという御忠告だろうと思います。

 それで、最初にアメリカのことをおっしゃいましたが、私、今アメリカのブッシュ大統領がやっておられる増税について言う限りではありませんけれども……(田中(慶)委員「減税だよ、減税」と呼ぶ)減税路線ですね。同時に、ブッシュ大統領は、アメリカの財政赤字を五年かけて半減するということもたびたびおっしゃっているわけですね。ですから全体を、やはりブッシュ政権の評価についても考えなきゃいけないのだろうというふうに思います。

 それからもう一つは、ことしは確かに定率減税を半分もとに戻していただく、平成十七年度、そういうことをお願いしておりますけれども、定率減税をもとに戻すのは千八百五十億ぐらいでございますから、それと、ことしは四十四兆の税収のうち、いろいろ出入りがありますけれども、全体で見ますと千七百億でございますから、それがそんなに大きな影響を与えるというふうには私は思っておりません。

 それからもう一つは、増税路線とおっしゃいますが、いろいろ今まで、例えば中小企業、物づくり、それから設備投資、ITというようなこともにらみまして、十五年度に先行減税をやらせていただいたとか、それからやはり全体の安心感がなければなかなか景気もよくなりませんから、例えば年金の課税を見直したのも、あるいは今回の定率減税等も、基礎年金をどうしていくか、税は三分の一から二分の一に持っていくというようなステップの中の一つだということもございますし、年金の給付額というのもこれからだんだん伸びていくわけですね。そういう全体を見て御判断をいただきたいと思っております。

田中(慶)委員 今あなたは、基礎年金の二分の一、それはかつて小渕さんが約束したことなんですよ。小渕さんが約束したことを今実行に移す。何年たっているんですか。(発言する者あり)そうですよ。よく見てください、議事録でも何でも。たわ言言わないで。本当ですよ。小渕さんが、この予算委員会の席上でちゃんと約束したんですから。それが今実行に、もう十年近くなるでしょう。

 こういうことを含めて、そればかりじゃありませんよ、例えば、先ほど言った日本企業の合併、買収、これが今非常に加速度的になってきているんですよ。投資ファンド、こんな形の問題、あるいはまた皆さんも御承知のように、MアンドAの問題を含めて、私は、日本の企業は危機になっているんじゃないかな、こんな状態を今心配しているんです。いや、本当ですよ。このことをしっかりとしないと、この国の政策を打ち出していかないとおかしくなってしまうんじゃないか、こういうふうに心配しているんです。

 例えば、先ほどRCCの問題を言いました。私の友達も、はっきり申し上げて、自分の問題ではなくして、保証人になっただけで全部持っていかれちゃったんですよ、家まで。家まで持っていかれただけだったらいいですけれども、命まで持っていかれましたよ。ということは、自殺をしたということです、そのために。こういう問題が現実問題としてあるんですから。それを何か、回収機構がさも日本の不良債権処理のために大変な貢献をされている。昨年だけでも、三万四千人のうちどれだけこれに関連して亡くなっていると思いますか。私は相当数になっていると思いますよ。私の知っているだけで二人もそれで亡くなっているんですから。

 こういうことを考えたときに、やはり今の政府、国の政策は、本気でこの国の産業再生や中小企業、そして将来にわたる大きな道筋というのを立てていないような気がする。だから、先ほど来、税収なり景気をよくする、そのことを最優先でやることによって税収がふえる。そうでしょう。

 あるお年寄りの人は、自分は退職金を全部貯金していた、金利を楽しみにしていた。金利ゼロじゃないですか。年寄りから楽しみまで奪っているんですよ。昔は、五・五%当時は、それによって、旅行もすれば、孫にもいろいろなものを買ってあげることができた。今はそれどころか、自分のそれぞれ貯金を全部切り崩して生活をしているのが実態なんですよ。

 これは政策の失敗ですよ。ゼロ金利、こんなことを含めて、今やっている国のいろいろな政策をしっかりとしない限り、この国は本当に、人を大切にしなきゃいけないということを言っておりましたけれども、人を大切にしている政策じゃない、私はそう思いますよ。総理、どう思いますか。

小泉内閣総理大臣 いいところもあれば悪いところもあるというのは事実です。そして、自殺者があるというのもこれは本当に悲しい現実でありますし、そういうことがないような状況をつくらなきゃならないという趣旨、お話もよく理解しております。

 しかし、これからの経済を考えてみれば、今言ったような対策と同時に、さらに、構造変化といいますか、今言っている、商売がうまく立ち行かなくなったという方もおられると同時に、新しい時代に対応して、我々が想像できないような分野に進出して、意欲的に働いている中小企業もたくさんあるわけであります。もとより、大企業の業績がいいというのは中小企業に支えられているというのも、これは事実だと思っております。

 日本の企業が外国で歓迎してもらえるように、日本の企業が外国に進出できるように、日本も、外国にとって魅力ある市場である、外国の企業が日本に投資してみたいなと思われるような状況をつくらなきゃならないというのも事実であります。

 よく調べてみますと、先進国の中で、日本は外国の投資が極端に低い国なんです。それではいけないということで、私どもは、外資警戒論から外資歓迎論という気持ちに意識を変えていかなきゃならない。

 外国にとって魅力ある市場ということは、それは、外国企業が出ることによって倒産せざるを得ないような企業も出ます。同時に、外国企業が入ってくることによって、ああ、こういう今まで日本人にない発想があるかと、刺激を受ける部分もあるわけです。そして、外国企業が日本に来ることによって、日本の雇用にも与えるいい面もあるんです。悪い面ばかりじゃないんです。

 そして、中国とか進出していた企業が、ああ、やっぱり高くてもいいものは日本に戻ってこないとつくれないなということで、日本に戻った企業もたくさんあるんです。そういうことを考えて、私は、物事、両面を見ながら、今の状況、厳しい状況がありますから、よりよくしていこうと。

 今の御指摘、田中議員は本当に中小企業に詳しいです。今まで中小企業に最も力を入れてきた議員ということも私はよく知っています。地元ですから、私の選挙区の隣なんですから、中選挙区時代は。私の支持者も田中さんを応援しているのも知っていますよ。だから、そういう話、よくわかっていますので、今言った意見を参考にしながらよりよくしていきたいと思います。

田中(慶)委員 総理によいしょされても、私はそう思っていないんですよ。例えば、外国から日本に企業、私は本当に入ってもらいたい。ですけれども、金融庁を初め、それぞれ規制とかいろいろなものがあり過ぎる。総理が先ほど言っているように、民間でできるものは民間に、余計な口を出さない政府であってほしい。ところが、政府がいろいろなことを次々と口ばかり出しているんです。例えば、建築基準法を見ても、都市計画法を見ても、みんなあの法律は役人のためにあるような法律ですよ。

 ですから、今回の、外国から企業が日本に入ってきたい、監督庁が注文をつけたりいろいろなことをするでしょう。そういうことを含めて、今しっかりと見直しをしておく必要がある。

 時間が参りましたけれども、ぜひ皆さん方は、もっと現場を、経済の現場、それぞれ皆さんの選挙区もあるわけですから、しっかりと見きわめて政策の中に反映することを要望して、終わります。ありがとうございました。

甘利委員長 次回は、明三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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