衆議院

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第5号 平成17年2月3日(木曜日)

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平成十七年二月三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    川上 義博君

      河村 建夫君    北村 直人君

      小泉 龍司君    後藤田正純君

      竹本 直一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 雄二君

      寺田  稔君    中山 泰秀君

      西川 京子君    西村 明宏君

      西村 康稔君    西銘恒三郎君

      根本  匠君    萩野 浩基君

      原田 令嗣君    二田 孝治君

      宮下 一郎君    村井  仁君

      森田  一君    石田 勝之君

      市村浩一郎君    岩國 哲人君

      内山  晃君    生方 幸夫君

      岡本 充功君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    篠原  孝君

      鈴木 康友君    園田 康博君

      津川 祥吾君    辻   惠君

      中井  洽君    中津川博郷君

      中塚 一宏君    中村 哲治君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      原口 一博君    樋高  剛君

      松崎 哲久君    三日月大造君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      田端 正広君    佐々木憲昭君

      志位 和夫君    横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)

   (行政改革担当)     村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        山本 公一君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人     

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  磯部 文雄君

   参考人

   (日本道路公団総裁)   近藤  剛君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月三日

 辞任         補欠選任

  石原 伸晃君     中山 泰秀君

  河村 建夫君     竹本 直一君

  後藤田正純君     西村 康稔君

  津島 雄二君     西銘恒三郎君

  福田 康夫君     宮下 一郎君

  岩國 哲人君     岡本 充功君

  吉良 州司君     横路 孝弘君

  小泉 俊明君     市村浩一郎君

  樋高  剛君     園田 康博君

  米澤  隆君     三日月大造君

  佐々木憲昭君     志位 和夫君

  照屋 寛徳君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     川上 義博君

  中山 泰秀君     寺田  稔君

  西村 康稔君     後藤田正純君

  西銘恒三郎君     津島 雄二君

  宮下 一郎君     西村 明宏君

  市村浩一郎君     小泉 俊明君

  岡本 充功君     岩國 哲人君

  園田 康博君     中村 哲治君

  三日月大造君     鈴木 康友君

  横路 孝弘君     内山  晃君

  志位 和夫君     佐々木憲昭君

  横光 克彦君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     河村 建夫君

  寺田  稔君     原田 令嗣君

  西村 明宏君     福田 康夫君

  内山  晃君     吉良 州司君

  鈴木 康友君     松崎 哲久君

  中村 哲治君     樋高  剛君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     石原 伸晃君

  松崎 哲久君     米澤  隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房行政改革推進事務局内閣審議官磯部文雄君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 昨日の仙谷由人君の質疑に関連し、横路孝弘君から質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。横路孝弘君。

横路委員 おはようございます。

 いよいよ本格的に来年度予算の審議が昨日から始まったわけでございますが、もちろん大変大事な予算案でございます。予算案をつくるときには、今の国民の生活の状態がどうなっているのか、あるいは日本の社会の状況がどうなっているのかということをやはりいろいろと検討された上で、将来の日本の社会のあり方、あるいは日本の国民の生活のあり方といった点を目指して予算編成をされたというように思っています。

 ただ、総理の施政方針演説をお聞きいたしますと、では一体、今、国民の人々が安心して生活をしているのか、いや、さまざまな不安を持っているのかどうか、あるいは日本の社会の状況というのは安定しているのか、あるいは秩序そのものが不安定になっているのかといった点についてはお触れになっておられませんでした。

 私は、総理がこういう問題、今、国民の生活の状況がどうなっているのか、日本の社会がどうなっているのか、こういう状況について関心がないのではないか。あるいは知って知らぬふりしているのか、あるいは全く知らないのか、無視しておられるのか。一体これは、今の状況をどういうぐあいにお考えでございますか。

 自殺もふえ、ホームレスもふえ、生活保護もふえている、犯罪もふえている、こういうような状況。国民の生活もなかなか、低所得階層がふえていってしまっている。こういった状況についてどんな御認識でしょうか。

小泉内閣総理大臣 施政方針演説をよく聞いてくれた方、あるいはよく読んでくれた方は、わかっていると思うんです。今の日本の抱える問題、外交、内政問題、全般的に触れていると。

 私に対する批判というのは、主に言うと二つあるんですね。郵政民営化ばかり言っているじゃないか、ほかの問題に触れていないじゃないかという批判と、総花的だという批判なんです。総花的だという意味、御存じですか。これは、すべてに触れているということなんです。どうしてこういう全く逆の批判が起こるのかなと。

 これからの新しい時代に向かって、政策の問題も意識の問題も、大きな変化にどう対応していくか。例えて言えば、雇用問題一つとっても、かつての終身雇用の制度から大きく変わってきた。フリーターと言われる人たちもふえてきている、あるいは豊かさの中の問題で言われるニートと言われる問題。

 あるいは、これからの構造改革の問題におきましても、かつては役所なり公務員がやっていた方が経営においても仕事においても国民に信頼感があった、いわゆる官尊民卑の考え方。そうでなくて、最近は、むしろ民間にできることは民間の経営者に任せた方が、サービス展開もいろいろ多様化し、国民の要望にこたえ得る、効果的、効率的だ、民間にできることは民間に任せた方がいいんじゃないか。

 あるいは、地方の問題におきましても、全国画一的な発展よりも、地方独自の特色を生かしていった方がいいのではないか。それぞれの地方の個性なり、あるいは企業の創意工夫、そして個人も、やればできるというような自信を持ってもらうような、そういう対策をしていくべきではないか。余りだめだだめだという批判論よりも、悲観論よりも、人間というのは、新しい時代に意欲を持って取り組めるような、そういう支援をしていくべきではないか。

 そして、犯罪が多いということに対して、国民も不安感を感じている。治安の回復、世界一安全な国日本の復活を目指すにはどうしたらいいか。

 外交問題をとりましても、戦後一貫して日本の平和と安全を維持して、こうして一度も戦争をせずに今日まで発展をもたらしてきた。この点に関して言えば、やはり日米同盟と国際協調、これを今後堅持していく、これがやはり日本の平和と発展のために必要ではないか。

 もう総花的と批判されるぐらいにいろいろな問題に触れて、これからの政府の方針を説明しているわけであります。ですから、批判する人は何でも批判しますけれども、郵政しか論じていないといいながら総花的だと批判しているということは、私もよくわからないんですよ。

 私は、今後とも、こういう新しい時代の変化、男女共同参画時代にいたしましても、これは、かつては女性の仕事は家事、育児と言われていたけれども、家事も育児も、男も女もともに分かち合おうという時代になってきた。いろいろな、制度の面においても、あるいは意識の面においても大きな転換期にあるときに、日本は改革を恐れず推進していこうという意欲を持って私は施政方針を述べてきたわけでございます。

横路委員 すべてに触れられているということですが、総理が触れておられない点について、しかも国民生活の大事な点について、これからお尋ねをしていきたいと思います。

 まず最初に、これを聞いていただきたいと思うんですね。新聞の投書ですけれども、今、午前四時です、夫はまだ仕事から帰ってきません、このままでは倒れるのではないかと心配をしていますと、電機関係のシステムプログラマーの人です。大体毎朝午前七時四十分に出ていって、帰ってくるのはもう夜十二時を回ってから。食事をして、休むのが二時、三時ということで、毎日の睡眠時間が大体四、五時間ぐらい。日曜日は一日寝ている。そして、手当はどうかというと、月二万円の手当で終わりだ、こういう投書が載っていました。

 子供のことを心配したり、御主人のことを心配したりする、そういう状況というのは今あるんですね。こういう長時間労働の実態。この今の心配ですというのは、本当にこれはもう大変なことですね。これを総理、どういうぐあいに受けとめますか。これが日本の現実ですよ。

小泉内閣総理大臣 長時間労働といいますか、各従業員の皆さんが仕事をよくするためにも、休養をとることの重要性、会社というものもやはりそういう点に十分配慮しなきゃならないし、そのような点から日本には労働基準法という法律もありますから、それをよく守るように、会社も十分、従業員の意欲をそがないように、よく働けるように、よく仕事をするためにはよく休養をしなきゃならないということをよく経営者は考えて、従業員を大事に大切に、待遇面においても配慮していかなきゃならないと私は思っております。

横路委員 もちろん、こういう事態というのは、これは労働基準法違反なわけですけれども、しかし総理になって何が一番変わったかといいますと、やはり雇用のあり方、特に、労働基準法というのはあってなきがごとき状況になっています。

 ちょっと資料を見ていただきたいというように思いますけれども、総理のお手元にお渡しした資料にはあるかな、これをちょっとごらんいただきたいと思うんですが、労働時間です。

 労働時間が非常に二極化いたしておりまして、一般労働者の人の総実労働時間、というのは所定内と所定外合わせた労働時間です、これが平成十五年で二千十六時間。総理になってから毎年だんだんだんだん労働時間は上がっているんですね。こういう物すごい長時間労働の人とパート労働、この二つに、完全に二極化しているんですね。

 まず、この長時間労働についてお尋ねいたしますが、どんどんどんどんふえているわけですが、日本政府としては、労働時間というのは一定の目標を持って進めてこられたと思うんですけれども、何時間が目標だったんですか。

尾辻国務大臣 年間一千八百時間でございます。

横路委員 欧米から批判を受けて、千八百時間ということで時短法をつくって進めてきたわけですよ。しかし、このように、時間外含めた労働時間は小泉政権になってからもどんどんふえていっているんですね。これはどうしますか。今二千十六時間。昨年の新しい数字ですと、まだふえていますよ、まだふえている。やはり総労働時間というのは抑える方向でいかなければいけないというように思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それはその目標に向かって進むべきであって、労基法に違反するような長時間労働はあってはならないことだと私は思っております。

横路委員 次は、時間外労働です。

 総理にお渡しした資料の二枚目を見ていただきたいと思います。

 今、週六十時間以上働く男性の割合一八・五%、平成十五年の調査ですが、三十から三十九歳ですと二三・七%。それだけの人が、その資料の二枚目、二枚目の右下の方の資料です、これだけたくさんの人が週六十時間労働というのは、週休二日を前提としますと、一日十二時間以上の労働になります。一日十二時間以上労働。それから、左側の数字は、週に五十時間以上働く人の割合ということでILOが作成したものですが、二〇〇〇年の時点です。まだ労働時間はふえていますが、日本が断然トップなんですね。日本が断然トップです。

 こうした長時間労働。これは十二時間ですと、通勤に時間がかかりますから、一時間通勤にかかる人は往復二時間かかるわけですから、十二時間プラス二時間というと、もう十四時間そのことだけに時間をとられてしまって、あと何か行う時間というのはとれませんね。こういう状態にあるんですよ。

 これはどうしたらいいんですか。私は、やはり思い切って大幅にこれはもう制限をしていくということをやらなきゃいけないんじゃないか。世界の先進国の中でも断然トップです。総理、いかがお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 千八百時間を目標にしているわけですから、その目標に向かって各企業、これに対しても、この方針に沿って対策をとるような指導なりあるいは話し合いなり協議なり、労使双方、今後ともよく、この実現に対してどうしたら効果的になるかということをやはり考えていくべきだと私は思っております。

横路委員 労働時間も時間外労働も、これは労使関係でもちろん解決するというのは非常に大事な一つの点ですが、しかし同時に、政府として方向性を与えていくということも大事なんですね。これは後で、最後に議論したいと思いますが。

 そこで問題は、この時間外労働の中でサービス残業があるということですね。サービス残業というと、労働時間、働いているけれども不払いだということで、労働基準法でいえばこれは犯罪なわけですね。責任者は処罰されるということなんです。厚生労働省の方で最近は摘発を重ねていまして、ある企業など、もう七十億近いそういう残業があったということで摘発されて、働いた人にそのお金を支払ったりしています。

 どのぐらいそのサービス残業というのはあるんだろうかということで、連合の調査ですと、月二十八時間ぐらい。働いている人への直接の調査の結果は、月に二十八時間は残業してもお金をもらっていないなと。

 それからもう一つは、統計で総務省の労働力調査と厚生労働省の毎月勤労統計というのがあるんですが、この毎月勤労統計というのは、事業者の方の申告ですね、どれだけ働いているか。それから総務省の方は、実際に働いた時間が何時間かということで、この差が、いろいろと検討して推定している学者の人たちがいるわけですが、それを見ますと、卸、小売、金融、保険といったところを中心にしまして、やはり月三十五時間から四十時間ぐらいは残業手当を払っていないという実態があるんじゃないかということが言われております。

 それで、これは厚生労働大臣、大体どのぐらいサービス残業というのは日本の社会で今あるのか。ずっと摘発をされてきたお立場からちょっとお答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 この賃金不払い残業、いわゆるサービス残業でございますけれども、事実の把握そのものが大変困難なこともございますので、すべてを把握することは極めて難しいところでございますが、厚生労働省において行いました平成十五年四月から平成十六年三月までの一年間の監督指導の状況でお答えいたしますと、未払いになっていた割り増し賃金について是正指導の結果は、百万円以上支払った企業数が千百八十四企業、当該割り増し賃金を受け取った労働者の数で十九万四千六百五十三人、当該割り増し賃金の合計額は二百三十九億円となっておるところでございます。

 また、平成十六年六月にこの賃金不払い残業の解消を重点として実施しました監督指導の際に、サービス残業があったとして是正指導を行った事業場の割合は、この指導したものの数の中の二二・二%でございました。

横路委員 ほんの一部の調査でもそういう結果が出ています。ですから、総理、これはぜひ、やはりみんなで是正していかなくちゃなりませんから、一つは、労働基準監督署が今やっているように、立入調査をして、そして是正をする、ひどい企業は公表するということをして、抑止効果というものを発揮しなければいけないというように思いますが、総理、いかがお考えでしょう。

小泉内閣総理大臣 そうですね、企業も、かなり利益を上げて、業績を上げている企業もあります。そういう点から考えますと、その業績を上げたり利益を上げたりするのは、従業員がよく働いてくれた結果ですから、よく経営者も考えていただいて、できるだけ従業員の皆さんが休暇をとれるように、そして、休暇をとることによってまた仕事への意欲がわいてくるような、そういうことについても今後より大きな配慮が必要だと私は思いますので、労使間でよくそういうような対策についても、サービス残業をなくすような方向で努力していただきたい。政府としても、労基法初め労働者の待遇改善についても、どのような整備ができるかということを今後とも真剣に考えていかなきゃならないと思っています。

 何よりも、国民が意欲を持って働いたり、あるいは自分の家族を大事にしたり、あるいは自分の趣味を楽しめるような、そういう待遇を経営者も真剣に考えてもらいたい、私はそう思っております。

横路委員 もう一つ、有給休暇なんですけれども、この有給休暇の消化も、総理になってからだんだん下がってきていまして、今四七%、これは有給休暇消化率というんだそうですけれども。四七%だというので、私、厚生労働省にほかの国はどうなっているんだと聞いてみたら、ほかの国には消化率という考えはありませんと。みんな一〇〇%やっているわけですね。これは当然の話なんですよ。消化率の議論で上がったとか下がったとかと議論をしていること自身が本来はおかしいんですね。

 しかも、どれだけの有給休暇が与えられているかといいますと、一つは、年次有給休暇に関するILOの条約があります。そのILOの条約でいきますと、三週間ということですね。それから、EUができまして、EUの指令によりますと四週間ということになっています。しかも、ILOの条約では、三週間のうちに二週間は連続して一回はとらなければいけないというような規定があって、これは日本はまだ批准していないんですね、残念ながら。

 それで、今総理がおっしゃったように、家族とも団らんし、そして時には自分の趣味も楽しみ、友人とも語らう、そんな時間というのは、だから今、一日の時間にもなければ、一週間の時間にもないし、年間の時間にもない状態なんですね。有休の消化が半分以下だと。しかも、日本の場合は大体平均で十八日です。そのうちの半分以下ですから、九日弱ぐらいとっているという感じなんですね。こういう実態にあります。これもやはり変えなくちゃいけないと思います。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、欧米、ヨーロッパでは一〇〇%をとっているということに比べて、日本は四八%ですか、その有給休暇というのは当然認められている休暇ですから、とる方が少ないというのは、やはり意識の面もあると思うんですね。

 認められているのに、そういう休暇をとると、忙しいときに何で休んでいるんだ、休んだ後には、休みをとらないで一生懸命働いている人の方が評価されるというような、そういう面もあると思うんです。だから、休みたくても休めない。そういうことを考えますと、有給休暇という認められているものについてはできるだけとるように勧めているわけでございますが、まずは意識面、日本国民全体にもあると思うんです。

 私も、休みなのに映画とかコンサートに行くと批判されますけれども、政治家も、休暇をとるとやはり選挙民から批判される場合が多いから、なかなかとれませんね。国会に出ているだけが仕事じゃないんです、政治家も。土日、本当は休めるんだけれども、むしろ選挙区の活動を考えると土日も忙しくて休む暇がないというのが現実の政治活動じゃないですか。

 そういうことから考えると、やはり国民全体の意識、社員にとりましても経営者にとっても、むしろ休みをとらないで一生懸命働いている、休み時間以外でも会社に出ている、そういうのがよくやっているなという評価があるわけでありますが、むしろ、そういう意識の面においても、休みはしっかりとってよく仕事できる人もいるな、そういう状況になってくると、もっと自然に、おおらかに、休みをとっても評価に変化はない、あるいは休みをとっても、休みをとらないときに一生懸命働いていれば評価されるというような、やはりそういう意識の面においても変えていくというか、社会の変化に対応して、日本も先進国ですから、もっと休暇を楽しむというのが当たり前だ、休暇をとるのが変人だと思わないような、そういう社会環境をつくっていくのが必要だと思っております。

横路委員 政治家は、国民の皆さんがゆっくりと休暇をとれるようになってからとるということだと思いますが。

 どうしてとれないかということの理由は、調べますと、やはり休んでいる間に仕事を引き継いでくれる人がいない、それから、やはり仕事の量が多過ぎて休んでいることができない、あるいは有給休暇制度そのものがないというのも二〇%ぐらいあるんですね、調査しますと。

 それで、何としてもやはりこの有休もふやして、とるものをちゃんとみんながとれるようにする、長時間労働や時間外を抑えるというと、企業にとって何となく負担がふえて、あるいはそのことが経済に対してもマイナスじゃないかというような議論というのがあるんですね。

 しかし、有休を全部消化する、あるいはサービス残業をやめることによって、ではどうなのかということを、これは政府がやった調査もありますよ、国土交通省や経済産業省一緒にやった。有休を全部とったらどうなるか。これを見ますと、経済の波及効果が十一兆八千億で、雇用創出は百四十八万人だというんですね。百四十八万人。みんなが有休をとった場合ですよ。それから、サービス残業をやめた場合にどうなるか。それも同じような計算をした人がいまして、雇用が百六十一万生まれるというわけですね。

 もちろん、有休をとる、あるいはサービス残業をやめるというと企業は雇用をふやさなければいけませんから、そのことによって確かに収益は減って、そのことは設備投資にマイナスに響いていきます。しかし同時に、他方で雇用が生まれるわけですから、その人たちの所得も生まれてくるということで、トータル、GDP、ネットでいうとどうなるかというと、プラスになるというのが大体一致した傾向で、しかも、この有休の消化のものは、政府みずからがこれは平成十四年にやられた結果なんですね。そこに企業経営者の皆さんの中にはやはり非常に誤解があって、何となく雇用をふやすことというのはマイナスだろうというように思っていますが、経済全体としては大いにプラスです。

 では、個々の企業としてどうなのかといいますと、しかし人々はリフレッシュするわけですから、これは後でお話ししますが、いろいろとイギリスのケースなんかを見ていますと、やはり労働生産性が上がって、企業業績もよくなっているんですね。

 私どもは、やはり基本的にそういう認識をしていくには、どういう社会をつくっていくのかという目標をはっきり持って、先ほど来総理がここで御答弁されていることというのは、それはそれで結構だと思うんですよ。しかし、実態は全然そうじゃないし、実は政府がやっていることもそういう方向でやっていないんですね。そこが非常に大きな問題なわけでありますけれども、有休を消化する、あるいはサービス残業をやめることによって経済への生産波及効果、雇用吸収力も上がるというこの政府の試算についてはどのようにお考えですか、総理。

尾辻国務大臣 今お話しいただいたものは、平成十四年六月に経済産業省、それから国土交通省が「休暇改革は「コロンブスの卵」」という題で出したものをお述べになったものだと思います。

 確かに、この中で書いてありますのは、まず、十二兆円の経済波及効果、これは休暇をとる人が多くなると観光などに出かけますから、観光産業とかそういったようなことの経済波及効果であります。そういうことによる雇用がふえるということと、それから、休暇をとる人がいればその間の代替の雇用が生じる、かわりに働く人を雇うといったようなことで、この両方を足すと百五十万人ぐらいの雇用が創出される、こういうふうに言われております。これはもう事実でございます。

横路委員 そこのところの認識をみんなで早く共通のものにしなければいけないと思います。

 労働時間が長いということはいろいろなところに影響していまして、例えば通勤が一番長いのは南関東なんです。男性の場合、平均で九十分通勤に時間がかかっています。そして、時間外労働も全国で一番多いところでございます。

 厚生労働白書によりますと、この南関東地域というのは出生率が一番低いんですね。これはパラレルになっていまして、つまり時間外労働の長いところというのは出生率が低いんですね。ある意味では当然のことだと思います。南関東の場合九十分ですから、十二時間以上労働しているうち通勤が往復で三時間かかるわけですから、一日の十五時間以上とられているというのが南関東地域なんですね。全国で一番高い地域です。都市の周辺部ですね。周辺の住宅地域を抱えているところ。近畿もそうですけれども。ですから、労働時間の問題というのはいろいろなところに影響していくんですね。

 日本の今の少子社会の理由の一つというのは、やはり男性全体、あるいは人々、男も女も含めて人の働き方自身を変えないとやはり変わっていかない。働いている女性のところだけに対応して、やれどうこうと言っても、なかなかやはりそれは解決しないということをこういう数字は示しているということを御指摘しておきたいと思います。

 もう一つ、雇用の問題のもう一つは、最近はパート労働がどんどんふえていっています。

 総理にお渡しした資料のナンバー4というのをちょっと見ていただきたいと思うんですけれども、これは平成十五年の九月の賃金総額です。このときは、正社員が六五・四、非正規社員が三四・六です。パートは二三%でございました。今はもうちょっと非正規社員やパートがふえているというように思います。

 その賃金を見ますと、パート労働の賃金というのは、月収十万未満というのが半分を超えているんですね。五〇%を超えています。十万から二十万というのが四割ということですね。やはり契約社員、正社員ということになるとだんだん上がっていっているということで、問題は、最近少し雇用が改善されたと言っていますが、パート労働がふえていっているわけですね。そして、そのパート労働というのは非常に低賃金なんです。

 同時に、パート労働の人たちの意見を聞くと、一つは、雇用が不安定である、賃金が低いということがやはり大きな問題なんですね。パート労働も、もう御承知のように、仕事はほとんど正社員と同じ仕事をしているという方が大体半数を占めておられます。私は、企業が厚生年金の負担が大変だからパートに変えるとか、人件費を削減するためにパートに変えるとかいうようなことで、個別企業は収益を上げるためにやっていることが、しかし結局国民経済的にいうと大きなマイナスになっているということなんですね。

 ですから、今国民の年収を見ますと、三百万以下というのが大体四割近いんですよ。年収三百万以下という人が四割近いんですよ。三七、八%ぐらいいっているんじゃないでしょうか。二百万以下の年収の方が二〇%ちょっとぐらいということで、非常に低賃金になっていっているんですね。低所得層がだんだん形成されているということなんです。

 それで、問題は、そのパート労働をどうするかということなんですね。

 これは、もう世界の先進国はどこでもパート労働がふえていっていますから、どうするかということを、これもILO条約でいろいろな規定がございます、日本政府が批准していませんけれども。そしてそれは、やはり同じような仕事をしているフルタイム労働者と比較して、同じような労働をしているならば同じ、時間当たりの賃金などに差をつけてはいけない。そのほか、社会保険の適用、有休、そういう点のことについても差別をしてはいけないというのが大体世界の先進国の流れになっていますが、日本の場合は、給与についても、例えば男性の一般労働者を一〇〇としますと、パートの女性は五割を切っているという状態になっています。パートの男性の場合も五割を切っている、そういう状態なんですね。

 そして、いろいろと調査しますと、企業の方は、今後ともできる限り正社員をパートにしたいというのが、ある調査ですと二五%ぐらいある。どちらかといえばそうしたいというのが、やはり三五%ぐらいある。だから、このままほっておくと、どんどんパートばかりふえていって、低賃金の働いている人々というのはふえていくという構図、構造なわけです。

 日本も、皆さん方御承知のように、できるだけ均等待遇しようということで、パートについての指針なども変えながらやってきました。やってきたけれども、なかなか流れとしてはそれがうまくいっていない。どんどんパートがふえて低賃金労働ばかりふえているという状態にあるわけですね。

 だから、まず第一は、やはり差別をしないということ。よく世の中に誤解があると思うんですが、正社員であるか非正規社員であるかという区分とフルタイム労働とパートタイム労働という区分は別なんですね。だから、オランダのように、正規社員であってパートタイム労働者というのはたくさんいるわけですよ。週休三日の人、週休四日の人、子供が学校に行っている間だけ働きたいというパート労働をやっている正規社員もいるわけです。

 正規か非正規かというのはやはり身分にかかわってきますから、いろいろな労働条件、社会保険の適用などがそこで一緒に受けられるということになるわけですね。時間が違いますから、その分が違うのは当たり前の話なわけですよ。責任が違って形態が違えば、そこに差が生まれるのも、その範囲の中ではやむを得ないことだと思うんですね。しかし、同じように責任を果たして、同じ仕事をしているならば、同じ扱いにすべきだということは、これは世界の流れですし、日本も早くそこのところの原則をしっかり確立しないと、今の二極化、貧富の差の拡大というのはますます進んでいきます。

 総理、これを何とか、やはりもっと積極的に是正する道をお考えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これからの時代は、今までの終身雇用とか、そういう形が普通だという時代から大きく変わってきていると思います。

 今横路議員が指摘されたように、週休三日でも四日でも正社員がいる、あるいは毎日出てきてもパートもいる、さまざまだと思います。また、同じ仕事、種類においては同じでも、待遇面でも違うということもあると思います。それは、それぞれの個人の能力によっても違うし、同じ仕事をしているから同じ給料かというと、やはり人間によっては信用度によっても差がありますから、それはなかなか、同じ種類の仕事をしているからすべて同じだということは限りませんけれども、そういう点にも、企業がどういう判断をするかということもあると思いますが、できるだけ従業員の待遇の面については公正を期すような配慮は、今後ともぜひとも必要だと私も感じております。

横路委員 働いている人の不満の第一というのは、所定外労働時間が大きいということなんですね、長過ぎるということですね。それから二番目が、所定内労働時間も長いという不満もあります。それからもう一つは、柔軟な働きができないという、大体この三つが、今働いている人たちの不満としては大きい不満なんですね。

 これを直すためには、パート労働とフルタイム労働の今ある賃金の格差とか、社会保険の適用の有無、そのほか有休だとかいろいろありますが、そういう差をできるだけなくしていくという努力。そのなくすための基準は、先ほどILO条約でありました、同じように働いているフルタイム労働者と比較して差をつけないということが、やはり一つベースになるんだろうと思うんですね。

 じゃ、それをどうやってやっていくのかということなんですが、私は、基本的には、今は努力義務規定みたいな感じなんですね、企業の方はそれを努力しなければいけないと。だからそこを、努力しなければいけないじゃなくて、差別をしてはいけないと、もう一歩踏み込んでいく必要があるというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 企業もやはり質のいい従業員を雇用したいと思うと思うんです。そういう点について、企業の中でもどのような労働者を確保するか、従業員を確保するかという点について、今後みずからの会社のイメージアップということを考えますと、やはり労働条件のいいところに質の高い労働者は行きたいと思うわけでありますから、そういう点についても、企業間がそういう点においても私は競争していただきたいですね。

横路委員 あと、パート労働でいいますと、フリーターという、若い人たちがアルバイトだけで正規の就職ができないでいるという問題がございます。これは非常に日本社会にとって深刻だと思うんですね。

 日本の社会というのは、学校を卒業しまして、会社に入ったりお店に入ったりして、先輩がいて、先輩にいろんなことを教わりながら、社会で生きていく社会人としてのいろんな知恵とかいうものを得ていくわけですよ。その過程がない人たちが四百万人も超えている。

 どんどんふえていって、じゃ、若いときだけのフリーターなのかといったら、そうじゃなくて、だんだんみんな年をとっていって、年をとっていってもフリーターと。大体、アルバイトして年収百万ぐらいで、そして親と同居しているという人が七、八割という状態です。

 これは、本人にとってももちろんそうですね、仕事のいろいろな経験を蓄積するということがなかなか難しいわけです。企業にとっても、問題は新規採用をしないからこういうことになっているわけなんですけれども、新しい人を入れることは、企業の中で蓄積されたノウハウ、技術というものがやはりしっかり伝承されていくわけですね。このまま若い人を採用しないでおりますと、五年、十年、もう大体穴があきつつあるわけですよ。そういう技術の伝承ということができませんから、日本の製造業にも大きな穴があくということももちろん心配になってくるわけであります。

 さらに、収入が少ないわけですから、結婚している人も少ないわけです。まあ結婚するかしないかは自由ですが、しかし、結婚できない人がふえていると言っていいと思うんですね。

 私ども、日本の中で今、社会保障について、どういう費用をどういうぐあいに負担するかというのは議論になっていますけれども、失業給付とか積極的な雇用政策という点についてのお金の使い方というのは少ないですね、ヨーロッパに比べると。まあ今まで失業率が低かったということもあるわけですけれども。各国は、若い人たちの就職のために非常に、マンツーマンで、その本人の適性を見ながら、あるいは意欲のない人もいるからその意欲を惹起しながら、就職促進の活動をしているわけです。

 いろいろなことを政府もやり始めていますけれども、もっとやはり思い切ってここにお金を投入しなければ、将来の日本は大変なことになりますよ。そういう本当に危機が、私はこのフリーター、だんだん今、二十代の前半から二十代の後半、三十代の前半に山が移ってきています。三十四歳を過ぎてもフリーターという人たちもたくさん出てきているんですね。ですから、ここは思い切ってやはり予算も投入すべきじゃないか。来年度予算にもいろいろなことが細々とありますが、思い切って、若い人たちに本当にマンツーマンで就職指導をしていくという体制をさらに強化すべきだというように思いますが、総理、いかがでしょうか。内容は結構です、わかっていますので。

尾辻国務大臣 お話しのように、フリーターが、今は若いところでありますが、これがこのままずっと年とって、そのまま、フリーターのまま年とっていってというのは、これは大変深刻な事態だと考えておりまして、これは全力を挙げて私どもも取り組まなきゃいけない課題だ、こういうふうに思っております。

 そこで、具体的にやっていることはもうよく御存じで、言う必要もないというお話でございましたから、一つだけ申し上げますと、今委員がおっしゃった中で、私も本当にそうだと思っていますのは、マンツーマンでやっていくというこのきめ細かさが必要でありますから、そうしたことをしながら全力を挙げて取り組んでいきたい、こういうふうに思います。

横路委員 それで、収入がどんどん減ってきていることがどうなっているかというのを、ナンバー5の資料をちょっと見ていただきたいと思います。

 これは山田さんという大学の先生が書かれた最近の著書の中にあった数字なんですが、上の方が男性です。それで、フリーターの人は大体年収で百万前後です。そして先ほど言いましたように、四割が年収三百万以下というようなことになっていっています。低所得の人がだんだんふえていっているという中で、この数字を見ますと、結婚して家庭を持つというのは、先のことですから、将来がやはり見えてこなければいけないわけですね。だから、何が大事かというと、やはり雇用なんですね。長期的で、継続して、安定している雇用があって初めて先の生活設計も立ってくるわけですから、結婚もできる、結婚もしよう、子供を産んで家庭を持とう、こういうことになっていくわけですよ。

 これを見ますと、何かはっきりと数字が出てきていまして、問題は、やはり低所得階層がふえているというところを解決しなければ、日本の社会の抱えている問題はむしろだんだん深刻になっていくということでございます。

 それで総理、一つ、これは文部科学大臣にお願いしておったんですが、時間がありませんので私の方でお話しさせていただきますが、小中学生で、生活保護を受けている子供以外に、生活が困窮していて学用品が払えないとか、給食費が払えないという子供たちがいます。

 そういう子供たちに対していろいろと費用を支給する制度があるんですね。これが準要保護児童生徒というんですが、大体どのぐらいいるかといいますと、平成十五年で百十万人を超えているんですね、その数字の中にもありますけれども。百十万人というのは、全国の小中学生の一〇%を超えている数字なんですよ。全国の小中学生の一〇%を超えている子供が、学用品が買えないとか、あるいは体育のいろいろなものが買えない、あるいは給食費が払えないということで補助を受けているんですね。

 これはやはり都会に集中していまして、一番数が多いといいますかパーセントが高いのは、大阪であります。大阪が大体二三%を超えています。二三%というと、五人に一人ということになりますね。東京も二二%を超えています。五人に一人。そしてあと山口県が二〇%ということで、この三つのところが二割を超えているんですね。つまり、二割というのはどういうことかといえば、小中学生の子供五人に一人がそういう援助を生活困窮家庭ということで受けているということなんですね。ですから、生活保護ももちろん急増していっています、こういった低所得層がやはりふえてきているということですね。

 母子世帯も、これも急増いたしまして、いろいろな要素があると思うんですけれども、前回の調査、五年に一回の調査ですが、九十五万世帯だったのが、今百二十二万世帯。収入は、年収が二百十二万。母子家庭のお母さん方は八割以上の方がもちろん働いておられまして、働く年収というのは大体百六十万ちょっとぐらいで、半分がパートのお仕事をされています。ですから、日本の社会の中で、もちろん物すごく収入を上げている人もいる反面、三分の一ぐらいの人々、さらに東京、大阪といった都会に生活がなかなか大変だという人々がふえてきているというのが日本の現実なんですよ、総理。

 だから、私はそこにやはりしっかり目を向けていっていただきたい。それをどこで是正していくのかというと、私はやはり雇用のところだというように思うんですね。こういう実態についてどう思いますか、子供の、要保護児童のこの実態。

中山国務大臣 今横路委員から御指摘がありましたが、確かに東京とか大阪、いわゆる準要保護児童、二三%を超えている、前後でございますが。一方、例えば栃木県は三・九三%、あるいは静岡は三・四六……(発言する者あり)青森ですか、青森は一〇・一六。大体、平均が一〇・一六、一〇%ぐらいでございまして、今、都会の方が貧窮しているというよりは、やはり地域差が物すごいあるなと。東京、江東区は夫婦子二人で年間四百十七万以下だとこれは準要保護になるわけでございますから、地方で四百万を超えているところはないですから、地方、それぞれの市町村によって決め方が違う。ですから、高いところもあれば低いところもあるというのが実態だろう、このように考えております。

横路委員 低所得層がふえているということばかりじゃなくて、例えばホームレスがふえているとか自殺がふえているわけです。

 お渡しした資料の五ページ目を見ていただきたいと思います。

 これは失業率と自殺率なんですね。やはり失業率が高くなると自殺される方もふえているという状態でございまして、いろいろな社会的指標は大体一九九八年からずうっと悪くなってきています。いろいろな要素があるわけですけれども、日本の特徴は、四十代、五十代の男性、しかも経済や生活問題を理由にする人が最近は四分の一というようにふえてきているということでございます。

 WHOの資料によりますと、自殺の、各国はどうなっているかといいますと、上から言いますと、リトアニア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン、ラトビア、ハンガリー、エストニア、スロベニア、日本というようになっているんですね。つまり、冷戦が崩壊して、そして旧ソ連、東欧圏というのは非常に混乱をしたという状況と日本の今の状況というのは、これを見る限り同じなのかなというように思います。

 各国政府の中には、やはり自殺をできるだけなくしていこうという努力をして成果を上げている国がございます。これは、ですから個人の問題なんだというようにしないで、やはり背景含めてございますので、政府としてもしっかり取り組むべきじゃないかというように思いますけれども、その御見解をいただきたいというように思います。

 それからもう一つ、ホームレスの方なんですが、ホームレスも、昨年の調査で四十七都道府県すべてでホームレスの方がおられるという状態になったわけです。ホームレスの方も、調べてみますと、一年前に正社員だったという方が四割もおられるんですね。一年前はちゃんと働いておられたという方が四割おられるわけですよ。

 こういう人は、住宅だとか仕事が提供されれば、そこから立ち直っていくことができるんですね。ですから、これに対する政策なども、法律ができましてようやく動き出したばかりでございますけれども、政府としてやはり考えていく必要があるんじゃないかというように思います。

 総理の御見解をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 御指摘のとおりに、近年、自殺やホームレス、児童虐待、さまざまな社会的な問題が増加をいたしております。こうしたことに対して、大きくどう取り組むのかというお話でございます。

 その中で、特に自殺のお話がございましたので申し上げますけれども、そして外国の例もお述べになりましたけれども、今、委員御存じだと思いますけれども、一番自殺の数が多かったのが秋田県でございましたけれども、秋田県でも地域レベルで大変真剣に取り組んでおられる、それなりの効果が出てきたというふうにもお聞きをいたしております。

 この自殺予防対策の効果というのは、すぐには効果が見えてこないところもございますけれども、厚生労働省といたしましても、幾つかの施策も講じておりまして、この施策それぞれについては申し上げませんけれども、安心して暮らせる社会の実現に向けて最大限力を尽くしてまいりたいと考えます。

横路委員 構造改革を進めてこられた一つの影の部分というのも、決して見過ごすことのできない状況に日本社会があるんだ。だって、日本の歴史の中でこんなに多かったときはないんですから。そこをしっかり認識していただきたいと思います。

 そこで、今のような日本の長時間労働、片っ方で安いパート労働というのをどうやって克服していくのかということが大変大事なわけです。

 サラリーマンの人にとっては、まだまだ朝早く起きて夜遅くまで仕事をしている。昔サラリーマン川柳に、まだ寝てる帰ってみたらもう寝てるという川柳がございましたけれども、それぐらい激しい労働だったわけですね。本当に、子供と遊ぶ時間も、一家で夕食をとるようなそんな団らんの時間もなければ、まして個人の趣味だとか地域のボランティア活動をやるなんという時間もないわけですね。他方で、今度は仕事がなくて困っている人たちがいるわけですよ。仕事を求めて必死になって、時間はあるけれども仕事がない。あるいは、仕事があって、最近は業務請負なんという形での、パート労働の本当にこれまたひどい労働実態というのがあるわけです。

 そういう中で、仕事と生活をどうしていくのかということで、イギリスのブレア政権が、仕事と生活の両立の政策というのを打ち出しました。

 打ち出した政策はどうかといいますと、一つは、やはりまず労働なんですね、労働規制。あそこも割と長時間の国なんです。一週四十八時間に労働時間をかなり厳しく限定をして、もちろん例外的に個人が申請したときに働くことはできるのですが、もう原則四十八時間に封じ込める。そして年休、有給休暇は四週間とる。そして、パート労働は、先ほど言った同じ労働をするならば同じ賃金を払うという、同一価値労働同一賃金という原則をつくりました。

 それから、柔軟に働くということで、そういう請求権を働く人に与えまして、例えば、六歳以下の子供、十八歳以下の障害児を持っている親は柔軟に働く権利を経営者に対して要求することができるという規定がありまして、全体的に企業の業務計画と働いている人々のニーズがありますから、それをどう調整するかということで、例えばアドバイザー、あるいはそういう会社が入って、相談する場合にはその費用を政府が持つということで、一つ一つ従業員の声などを聞いて、そして、どういう働き方をするかということをやってきたわけですね。それに子供手当をふやす、育児休業をふやす、保育所を整備するということをあわせて、トータルなパッケージとしてやって、出生率が上がって、労働生産性が上がって、そして企業の業務成績もよくなったんですね。

 これをやはりやっていかなきゃいけないというときに、今、日本で新新エンゼルプラン、それから次世代を育成しようということで行動計画を企業につくるという政策が出されています。ただしかし、これには目標がないんですよ。みんなそれぞれ労使で話をしてやりなさいという話なんですね。だから、どうしても長時間労働はなくならない、年休はとれないということになるんですね。

 私は、もっと明確に、イギリスで出したような、例えば年休四週間、パート労働についても待遇は一緒ですよ、そして一週間の労働時間は四十八時間、これにもう抑え込みますよ、こういうようなやはり思い切った雇用政策、目標を明確にしてやるということを他の政策とパッケージにしてやるということが、今一番日本の社会にとって大事ではないかと思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 エンゼルプランなり次世代育成なり、あるいは自立支援プログラムなりという点につきまして、厚労大臣あるいは文科大臣等、それぞれ具体的に進めておりますが、今横路議員の御指摘のように、イギリス等の施策、一つではなくてかなり広範にわたって総合的な対策を練ろうという案、これもやはり今後の社会のあり方を考えると、日本も参考にすべき点が多いのではないかと思っております。

 そして、意識の面においても、イギリスは週四十八時間労働といいますが、制度的には日本と大して変わらないけれども、意識の面において、有給休暇はほとんど、認められているものはとる、あるいは長期休暇もとれる、そういう意識の面。さらに、企業が最近、正社員といいますか、終身雇用をなくしていかなきゃならないというような企業もありますが、こういう時代だからこそ、逆に、うちの会社は終身雇用が原則だというような企業も出てきていると聞いていますね。

 だから、新しい時代において、みんながやっていることとやはり自分は違う、給料だけが高ければいいというんじゃない、労働条件はこうですよというようなそういう競争も、私は、企業はぜひともしていただきたい。それで、従業員にとっては、ああ、自分たちの生活を大事にしてくれるな、そういう企業に行きたいと。私は、法の整備も大事でありますが、そういう意識といいますか、民間の労使間、企業間、経営者間のやはり意識の転換なり、自分たちの会社はこのようにいい会社ですというようなそういう競争も、ぜひともしていただきたいと思っております。

横路委員 なかなか企業に任せたのじゃうまくいっていないということが現実でありますので、そこを見ていただきたいと思います。

 もう時間がございませんので、最後に、お渡しした最後の、一番下の表をちょっと見ていただきたいと思うんですが、六ページです。

 「先進二十二カ国における所得格差」ということで、これは九八年の数字なんですが、日本はアメリカ、イギリス、オーストラリアやアイルランドに次いで所得格差の大きい国というようになっています。まだ最近は所得格差が開いていますから、もっと所得格差の大きい国になっている。アングロサクソンの国と大体同じような状況なんですね。労働時間は非常に長い、労働時間が長いところもこの所得格差の大きい国と大体重なっております。そして、御承知のように、租税や社会保障負担というのは日本は先進国並みに、アメリカ並みに低いんですね、負担は。

 では、国際競争力はどうなっているかと見ますと、ダボスのあの世界経済フォーラムの二〇〇四年の競争力というのは、トップがフィンランドですよね。二番目がアメリカで、三番はスウェーデンですね。つまり、物すごい負担が大きくて、労働時間が短くて、所得格差もない国は国際競争力が強いわけですよ。それは何かといったら、人に投資をしているんですね。みんなそれぞれ個人の能力というのはやはり上がっていっているわけですよ。だから、そこが大事なんですね。

 私は、小泉さんが総理大臣になってからこの間、非常に心配するというか見ていて心配なのは、前に土光さんという土光臨調をやった方にお目にかかったときに、土光さんはこういう話をされました。経営者というのは何を考えているか。まず、やはり従業員とその家族の生活のことをまず第一に考えているんだ。そして、従業員と一緒になって一生懸命働いて国に税金を納めたときに、ああ、ことしもこれだけ税金を納めることができたということを誇りにしているんだという話を聞いて、私、感激したことがあります。

 ところが、今総理の周りにおられる経済人から聞こえる話はどうですか。税金は払いたくない、社会保険の負担はしたくない、従業員と家族の生活、そんなのあなた方の責任じゃないか。そして、何か自分だけがお金を手にするような発言をされるような方もおられて、ここは非常に残念に思っています。やはり税というのは能力に応じてきちんとみんなで負担をするということがなければ、この国はやっていけません。

 同時に、今の、お話し申し上げたこういう国民生活の状況ということにも、総理、もっと目を向けて、関心を持っていただいて、その是正のために御努力いただきたいというように思います。私ども民主党として、どうも今のこの政権じゃできないから我々が政権とってやっていきたい、このように思っております。

 以上申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

甘利委員長 この際、石田勝之君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石田勝之君。

石田(勝)委員 民主党の石田勝之でございます。

 小泉総理は、就任、この四月で間もなく四年をお迎えになるわけであります。就任以来ずっとこの委員会でも、また本会議でも指摘をされておりますが、改革改革と声高に改革を叫ぶだけで、道路公団とかあるいは年金とかあるいは財政構造改革とか、すべて中途半端で、改革の成果は上げていない、私もそう思うわけであります。

 私は、この一月、地元の新年会あるいは商店街の会合等々に随分出まして、そういう中でそういう方々の意見を聞きますと、景気の回復を何とかしてほしい、そういう声が非常に強いんですね。本当に景気がよくならないのは、改革の成果が国民に還元されておらず、その一方で、改革のためと称して国民に痛みを増しているばかりではないか、そういうことから改革の成果が出ていないんじゃないか。

 昨年の春から夏にかけて、景気が一部企業、一部業種で回復の兆しが見えてきたときに、小泉総理も、また竹中大臣も、改革の成果だということで胸を張られたわけであります。しかし、回復基調は長続きせず、個人消費が停滞に拍車をかけてきている、そういうのが今の現況ではないかというふうに思っております。構造的に消費が低迷する最大の要因は、政府の社会保障制度と財政再建政策が信頼されていないからではないか。GDP六割を占める個人消費が回復しなければ本格的な回復はあり得ないというふうに思っております。

 なぜ小泉改革が成果を上げないのか。改革の検証から私の質問を始めさせていただきたいと存じます。

 私は、昨年、この予算委員会で道路公団の問題を取り上げさせていただきました。あれから一年が経過したわけでありますが、その中で、道路公団からファミリー企業への天下りをただしました。そうしますと、当時の国土交通省の道路局長が、ほぼ半減しましたと誇らしげに答弁されたわけであります。扇元大臣、扇さんは、全員やめさせる、こう大見えを切ったわけであります。その後、石原大臣もその方針を引き継いだと聞いているものであります。その中で、石原大臣も委員会の答弁で、この問題は改革の中でも重要な課題の一つである、近藤総裁もこの点十分認識されておって、民営化が迫っておるので整理をしっかりしていくと決意を語っておった、こういうふうに委員会で答弁されておるわけであります。

 私は半分でもまだまだ多いというふうに思ったわけでありますが、一応、天下りの社長数は、その後も、ゼロにならないものの減り続けてはいるんです。今、パネルにありますように、お手元に配付いたしました資料のとおり、ことしの一月二十七日現在で、六十人が十七人まで半減をいたしました。この公団出身者の社長数、六十人から十七人、四十三人、半減したわけであります。

 ところが、社長は退いたものの、実は、代表権を持つ代表取締役副社長、代表取締役相談役、何と代表取締役常務なんぞという肩書で代表権を持って居残っていることがわかったんです。私は、役人の悪知恵、これはほとほと感心をいたしました。

 さらに、この表の右側、代表取締役副社長など新たに三十二名ふえましたが、このうち何人が代表取締役社長から横滑り組で、新たに代表取締役になったのは何人ですか。道路公団総裁、答えてください。

近藤参考人 お尋ねの公団代表出身の代表取締役の件でございます。

 一応整理して数字をお示ししたいと存じますが、公団出身の役員の数、平成十三年度におきましては三百三十名でございました。現在ではそれが百三十六名になっているわけでございます。

 お尋ねの社長の数でございます。

 六十名が御指摘のとおり十七名に減っているということでございますが、このうち、代表取締役に就任した人間、四十三名社長を退任しているわけでございますが、そのうち、社長以外の代表取締役に就任している人間が十七名でございます。

石田(勝)委員 代表取締役社長をやっていた人が、社長の数は減らしますということを扇さんも石原さんも答弁されたんですよ。そこで、代表取締役社長をやめて、同じ人が同じ会社の代表取締役副社長になるんですよ。そうすると代表取締役社長じゃなくなるわけでしょう。それが十七人なんでしょう。

 新たに公団から来た社長は何人ですか。

近藤参考人 新たに社長になった人間はおりません。

石田(勝)委員 副社長は何人ですか、代表権を持つ役員。

近藤参考人 先ほどお答えいたしました十七名のうち、代表取締役副社長に就任した人間は七名でございます。

石田(勝)委員 役員ですよ。公団から新たに来た役員は何人ですか。

近藤参考人 公団OBの役員就任は、平成十五年度以降ゼロでございます。

石田(勝)委員 代表取締役社長が代表取締役副社長になり、あるいは、中には代表取締役常務あるいは代表取締役相談役、そういうふうになっているわけでしょう。

 新たに道路公団から十二人の代表取締役副社長が役員になったんじゃないですか。

近藤参考人 代表取締役あるいは普通の取締役を含めまして、平成十五年度以降、公団から天下った人間は一人もおりません。

石田(勝)委員 では、この三十二人の内訳はどうなんですか、三十二名の。

近藤参考人 御指摘の三十二名でございますが、そのうち、公団から就任した人間はおりません。

石田(勝)委員 横滑りは十七人。そうすると、公団からではなく、どこから来たんですか。

近藤参考人 これは、はっきり事実関係を存じておりませんので想像でございますが、内部昇格あるいは外部からの招聘であろうかと思います。

石田(勝)委員 ファミリー企業、公団から天下りをなくせ、特に社長の天下りはゼロにしろと、歴代大臣がさんざん言っていたんですね。それで、あなたはせっせせっせと、代表取締役副社長とかそういう名目にして、十七人、社長から副社長にさせた。そして、あなたが総裁になって、石原大臣の答弁にもあるように、これは重要問題の一つなんだから、これを何としてもゼロにするようにやります、こういうふうにおっしゃったわけでしょう。

 公団に乗り込んで、それらの実績というのは、社長をやっていた人が何で代表権を持つ副社長にならなきゃならないの。社長をなくせと言ったら、社長をやめさせて、何で代表取締役副社長に同じ人がならなきゃならないんですか。

近藤参考人 代表取締役の就任につきましては、これは、株主総会また取締役会の専決事項でございます。我々、いわゆるファミリー企業という対象に関しまして、残念ながら株主権を行使する立場にございません。株式を持っているわけではありません。また、法律的な権限も何もないわけでございます。

 そういうことでなかなか思うようにはいかないというのが現実でございますが、しかし、繰り返し、いろいろな工夫をしていただきたい、そのようにお願いをしているわけでございます。

 また、事実、公団ができること、これは公団からの天下りを自粛するということでございまして、これは一切やらせておりません。

 したがって、これからも、関係会社あるいは子会社と言われるいわゆるファミリー企業に関連いたしましては、株主権の行使はできませんが、しかし、できる限りのお願いはしてまいりたい、また、そのようにこたえていただけるものと期待をしております。

 ことしも、本年度決算、間もなく終了いたします。取締役会あるいは株主総会の時期が近づいているわけであります。その機会に再度私からもお願いをしてまいりたい、そのように存じております。

石田(勝)委員 いろいろ今総裁がぐだぐだ、工夫してもらいたいとか、株式会社の、任命するのはと言っておられましたが、公団に乗り込んでいっても、役人のいいように祭り上げられているだけなんですよ、あなたは。そんなことで改革ができるんですか。

 ではそこで、ファミリー企業の剰余金はどのぐらいあるんですか。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に、静粛に。答弁中です。静粛にしてください。

近藤参考人 いわゆるファミリー企業の剰余金の実態についてのお尋ねでございます。

 平成十五年度行政コスト計算上の子会社、関連会社、七十七社ございますが、その剰余金合計は千百十七億円、一社平均いたしますと十四・五億円と承知をしております。

石田(勝)委員 道路公団の本体は四十兆円の赤字を抱えているわけであります。そして、道路公団からの天下り役員、先ほどお話にありましたように、三百三十名の人件費などを払ってこれだけの剰余金が蓄えられた。いわば道路公団本体の赤字四十兆の上に積み上げられた数字だというふうに私は思います。

 この剰余金は、何らかの方法で返還を求めるんでしょうか。

近藤参考人 剰余金の返還についてのお尋ねでございますが、お答えをさせていただく前に、一つ、先生の御質問の中で、四十兆の赤字というお話がございました。これは事実ではございません。我が日本道路公団の借入金総額は二十八兆でございます。赤字ではございません。借入金でございます。四十兆は、恐らく四公団合わせての借入金の総額のことを言われたことだと思います。

 それで、まず剰余金の問題でございます。

 当公団におきましては、国土交通省より政府・与党協議会に報告されました「道路関係四公団民営化に関し直ちに取り組む事項について」、これは平成十五年三月二十五日の文書でございますが、その内容を踏まえまして、子会社、関連会社の剰余金につきまして、可能な限り高速道路利用者に還元するために具体的な活用方策を検討するよう、いわゆるファミリー企業の皆様方に要請をいたしたわけでございます。

 その結果、平成十五年八月に、子会社、関連会社によりますこの問題に対する協議会が設立をされておりまして、平成十五年十一月には、身障者の方のETC御利用の促進を目的とする助成費として十億円が拠出されたところでございます。

 引き続き剰余金の利用者への還元に関しての検討の要請をしておりますが、先般の参議院の附帯決議もございました。その内容も踏まえまして、いわゆるファミリー企業、子会社、関連会社に対しまして、さらなる要請を、私の名前で、文書で、昨年の六月でございます、再度お願いをしております。また、この要請に基づきまして、今、いわゆるファミリー企業の皆様方、いろいろと検討をしていただいている、そのように私は承知しております。ぜひ還元ができるだけ多くなされますように、また早期になされますように、私としても期待をしているところでございます。

石田(勝)委員 次に、道路公団の職員住宅についてお尋ねをいたします。

 現在の公団の職員数、これは八千五百名でありますが、これに対して職員住宅はどのぐらいありますか。

近藤参考人 住宅、職員宿舎についてのお尋ねでございます。

 現在、職員数、約八千三百名でございます。そのうち、保有宿舎が五千四百二十六戸、借り上げ宿舎が千五百八十三戸、合計をいたしまして七千九戸となっております。

石田(勝)委員 約八千三百名に対して職員住宅が七千九戸。これはいかにも多い数字だと私は思います。

 では、使っていない住宅は今どのぐらいあるんですか。

近藤参考人 空き室についてのお尋ねでございます。

 保有宿舎のうち、あいている宿舎、九百二十戸でございます。借り上げ宿舎についてはございません。

石田(勝)委員 九百二十戸も空き部屋なんですね。これは民間の企業では考えられないですよね。こんなにあいているんだったら借り上げする必要ないじゃないですか。

近藤参考人 確かに空き室が大変多いと私も思っております。ただ、空き室の率につきましては、民間の企業と比べましても大差ないものと思っております。

 かといって、この空き室、このままでいいのか。そのようには思っておりません。それでまた、保有比率も大変高いものになっております。この是正は私は必要だ、そのように考えているところでございます。

 まず、この空き室も含めまして思い切った処分をするように、着任以来指示をしております。昨年一年間で約百戸ほど売却を実行したというところでございますが、しかし、これから民営化、間もなくでございます。この作業を急がなければいけない、そのように思っておりまして、その専任体制も社内で確立し、また、処分についての作業も加速をさせているところでございます。

石田(勝)委員 私の調査によりますと、都内の二十三区内の住宅だけでも、世田谷とか杉並とか、高級住宅地に本当に豪華な職員宿舎があるんですよ。五LDKとか二百平米を超える住宅とか、そういったものがあるんです。そういったところを、やはり民間会社だったらどんどん処分しているんですよ。赤字対策のためにどんどん処分しているんです。そういった民間企業の血の出るような努力というのを道路公団はわかっていないんじゃないですか。

近藤参考人 宿舎の問題も加えまして、いろいろと合理化の努力を今やっているところでございます。また、宿舎以外の固定資産の流動化をできるだけ図る、そのような努力も今やっているところでございます。公団一丸となりまして合理化に努めているということはぜひ御理解いただきたいと存じます。

石田(勝)委員 総理にお伺いしますが、今のやりとりをお聞きになって、総理は、道路公団の改革について、画期的な改革だということで自画自賛しておられたわけであります。

 しかし、今、実態は惨たんたるものだというふうにおわかりになったと思うんです。高速道路はすべてつくることになって、天下りはなくならない、ファミリー企業の剰余金は戻らない、公団の職員の住宅など、むだ遣い体質も改善されていない。これは、民間の努力から比べれば、全然もう比べ物にならないですよ。公団の職員の住宅など、むだ遣いなんか全然改善されていません。これで……(発言する者あり)何が改善されているんだ、黙っていなさい。何が改革なんですか。何が民営化なんですか。

 総理も、新聞報道によると、道路公団改革は失敗した、今度、郵政民営化をしっかりやると側近に漏らしているようでありますが、この道路公団改革というのは失敗したんじゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 石田議員と全く違いますね。さっき、新聞の報道で道路公団改革は失敗したというのは、朝日新聞の虚偽報道です。私は先日も朝日新聞の記者に申し上げたんですよ、本当のことは書かなくても仕方がないけれども、せめてうそだけは書かないでくれと。私と親しいある閣僚経験者が、小泉がそう言ったと。親しい閣僚経験者はだれだか言わない。私は、そんなこと一度も言ったことはない。こんなに大きな画期的な改革は珍しい。

 私は、今まで、総理就任前は、道路公団民営化なんかできるわけないと反対が多かった中をやり遂げて、今、民間から来て、参議院議員になった近藤さんが総裁になってくれて改革している。今、石田さんが、民間企業だったらこんなことはあり得ないと。だから民営化したんでしょう。

 民主党は、民間にできることは民間にと言いながら、道路公団を民営化したとき何と言いましたか。通行料金無料にしろ、税金で負担しろと言ったじゃないですか。何ということを言うんだ、民主党は。民主党こそ、言っていることとやっていることと違う。私はあきれているんですよ。

 しかも、この抜本的改革、二、三、言いますけれども、九千三百四十二キロメートルのこれまでの整備計画を前提とすることなく、未供用の区間について費用対便益分析等を厳しく実施すること、抜本的見直し区間を設定し、これについては現行の計画のままでは整備を進めないこととしているということをはっきり表明しているんです。

 コストの縮減。約二十兆円の有料道路事業費をほぼ半減するんですよ。約十兆五千億円にするんですよ。こんなこと、民営化しなきゃできないですよ。

 ファミリー企業の見直しだって、今まで、天下りを六十人から十七人に減らしたんでしょう。半分以下に減らす、ちゃんと実現しているじゃないですか。

 しかも債務の確実な償還。債務については、このまま税金を投入しないで、民営化時点の債務総額を上回らないようにして、民営化後四十五年以内にすべて返済すると言っているんです。

 しかも、道路公団、分割しろと。競争原理の導入のために日本道路公団を三分割するんです。今まで東名の上がった利益をほかの利益の上がらないところに回すようなことをしないために分割しろというから、これも三分割するんです。

 しかも、高速国道料金をこれからは値下げするんですよ。道路公団のときには値下げは一度もなかった。値上げすることはあったけれども、値下げすることは一度もない。それを既に、去年法案が通ったからことしから民営化実現するんですけれども、もう実現する前から、ETCを活用した割引制度によって、平均一割以上の引き下げを実現しているじゃないですか。

 そして、今後とも、できるだけむだな道路をつくらない。しかし、高速道路は、どの地域でも、つくってくれ、つくってくれという要請が多いのも事実です。ですから、地域によって、真に必要な道路は、お互い、税金をどのぐらい投入すればできるのか。道路公団の負債をふやさないように、地域の、国民の利便に供するためには、お互い、これだけの税金負担ならできますよ、これだけ税金を負担するなら嫌ですよと住民が言ったらつくらない。しかし、これだけの税金を負担しても国も地方もやると言うんだったら、必要だと言うんだったらつくりましょうという形で、必要な道路はつくる。

 こんな改革は民営化しなきゃできません。民主党は、民営化できるなら民営化としながら、いざ選挙の前に、何と言ったんですか。税金でやれ、高速道路を無料にしろと言った。こんな無責任なこと、ないじゃないですか。

石田(勝)委員 今総理が、民営化、民間企業と比べていろいろお話しになりました。民営化というのは中身なんですよ、これ。民間企業は、血の出るような努力をして、リストラ等々で、業績を上げるために必死なんですよ。だから、この道路公団が民営化するに至るに当たって、その中身について私はただしているんですよ。それが大事なんですよ。

 それから、総理は、民主党の公約について、高速道路の料金無料化できっこないと、きのうも仙谷さんの質問にそう答えておられましたよ。これは、道路整備特別措置法では、償還が終わった高速道路は無料化することになっているんですよ。しかし、プール制が採用されたのでなくなったんでしょうというふうなことになったんですが、道路公団の発表では、二〇四四年、つまり平成五十六年には無料化することに今でもなっているんですよ。その点だけは、小泉さん、絶叫して言っておりますが、そういうふうになっているということを指摘しておきます。

 今回の三位一体の改革の政府・与党の決着案は、先送りばかり目立つわけであります。中でも、義務教育費の国庫負担は秋の中教審の結論待ちとなりました。もし中教審が、国庫負担制度の堅持、現状維持と結論として出せば、八千五百億円の国庫負担削減という話は……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。

石田(勝)委員 来年からなかったことになるんですか。文科大臣、いかがですか。

中山国務大臣 突然質問がかわりましたのでよく聞こえなかったんですが、義務教育の国庫負担制度についての質問だというふうでいいですね。

 これにつきましては、中教審の結論がどうなったか、そういう仮定の質問に答えるわけにいきませんが、義務教育国庫負担制度というのは、これは地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国どこでもすべての地域において、すぐれた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために極めて重要な制度と考えておりまして、私といたしましては、義務教育に係る国の責任をしっかり踏まえてその改革に取り組んでまいりたい、このように考えております。

石田(勝)委員 つまり、八千五百億円の削減が白紙に戻ることを期待されているんですね、文科大臣は。

中山国務大臣 今申し上げましたように仮定のことについては答えるわけにいきませんが、私としては、義務教育の国庫負担制度という国の根幹にかかわる制度については堅持してまいりたい、このように考えております。

石田(勝)委員 文科大臣はそういうふうに答えられましたが、総務大臣はどう思いますか。

麻生国務大臣 今、今回の全体像の取りまとめというのをやらせていただいておりますが、今回の案は、地方から出されました案を真摯に受けとめた結果、私どもとしては、取り急ぎ、八千五百のうち半分の四千二百五十億円を平成十七年度分として振り向けるというような形で、政府・与党、また国、地方等々で数次にわたって議論の検討を行った結果であります。

 したがいまして、今、地方六団体の代表者の方々も参加する形で中央教育審議会、これは文部大臣の諮問機関でありますけれども、義務教育のあり方というものを、そもそも義務教育はということを考える意味で幅広く検討していただくことにいたしまして、費用の負担につきましても地方案を生かす方策というものをあわせて検討していただきたいということで、今年秋までに結論を出していただくということで、今十分な議論が深められつつあるというように理解をいたしております。

石田(勝)委員 つまり、中教審で今協議をしている、これから始める、それの結論は尊重する、こういうことですね、総務大臣。

麻生国務大臣 中教審に出されました案というものは、これは文部大臣が中教審に諮問をされておられるという形であります。地方六団体の分につきましては、これは政府として移管をしておるという形でありますので、地方六団体に対する移管した主と中央教育審議会に依頼をしたところは、文部大臣と政府と違いはあろうとは思いますけれども、文部大臣の諮問機関であります中教審というものが出された案というのはそれなりに尊重されてしかるべきだと存じます。

石田(勝)委員 それでは、教育改革について、もう一点総理にお伺いをいたしますが、ゆとり教育が失敗して学力が低下した。OECDの学力到達度調査でもランクが下がってきている。少年の非行とかあるいは教育現場が荒れて、そして子供たちが勉強しなくなったというんですね。勉強する時間が極めて減ってきた。それから、教員の資質も問題になっています。今、まさしく教育改革こそ最大のテーマであるというふうに私は思うんです。

 かつてアメリカのレーガンは、やはり日本と同じように教育が荒廃してきて、教育レベルも下がってきた。そういう中で、レーガノミックスということで経済政策で知られていますが、レーガンが一番力を入れたのは教育改革なんですね。アメリカは、御存じのとおり、いわゆる不動産税という税を教育目的税に充てているんです。それで連邦から約七%ほど、国から出しているわけですね。

 イギリスのサッチャーも、サッチャーイズムといってイギリスを再建させた、そういったことでつとに知られておりますが、教育の問題というのがやはり日本と同じような状況にあったときに、このサッチャーも、とにかくこれからは教育だと。今のブレアも、一に教育、二に教育、三、四も教育、こういうふうに言っているぐらい、教育最優先でイギリス、アメリカも復興をなしてきたわけであります。

 そういう中で、小泉さんは郵政民営化というのはかなり力説されるわけでありますが、小泉さんの教育改革について私は余り聞いたことがないんですね、米百俵というぐらいしか。私は、郵政改革とこの教育改革、今起こっている、教育の荒廃を含めた中でのいわゆる学力低下だとか、あるいは子供の数が減ってくる。そういった子供がこれから日本を支えてくるわけですね。だから、子供に対する教育というのは極めて私は重要だというふうに思っておりますし、最優先でこの国の課題として私は取り上げるべきだ。ところが、聞こえてくるのは、郵政民営化、郵政民営化、そればかりなんですね。私は、教育改革を最優先に掲げてやるべきだ。

 郵政改革と教育改革はどちらが大事なんですか、総理。

小泉内閣総理大臣 郵政改革と教育改革、どちらが大事かといえば、これは教育が一番大事ですよ。

 しかし、よく考えてくださいよ。施政方針演説でも述べたように、郵政改革ばかり言っているんじゃないんです。皆さんからは総花的と批判されているぐらいあらゆる分野に私は触れて、重要性を指摘しているんです。教育改革は日本にとって最も重要な問題なんです。資源のない国、教育こそ日本が発展するために重要である。

 しかし、教育改革にしてもほかの改革にしても、だれが総理大臣になっても重点的に取り上げなければならない課題なんです。なぜ私が郵政改革を言うかというと、郵政改革は、私が総理大臣でなかったらだれも取り上げない改革でしょう、与野党反対しているんだから。だから取り上げているんです。ほかの改革は、社会保障の改革にしても雇用の対策にしても、みんな重要ですよ。しかし、私が総理大臣をやめたって、これはもう最重要課題ですから、どんな人が総理になっても取り上げなきゃならない改革なんです。

 しかし、私が総理をやめたら、あるいは今だれが総理をやっても、郵政改革なんというのは必要ないといってだれも触れないでしょうね。与党も野党も、これはもう、こんなことは触れたら大変だというので黙っちゃう。だから今まで政界のタブーなんですよ。それだからこそ私は、ほかの総理大臣だったらこれは触れないであろうし、やらないであろうけれども、大事な改革だから私は今取り上げているんです。

 教育は、私は、米百俵の例ですけれども、外国へ行って驚いた。サミットへ行ったら、日本は教育について随分重視していると。あの米百俵の本は、今のいろいろな、食料が足りないとか飢えで苦しんでいるとかいうときに、あの長岡藩の小林虎三郎が、いや、このもらった米を藩士に分けたら、わずかな量だけれども、何日かで食べてしまえばそれっきりなくなっちゃう。当座の飢えをしのぐ足しにはなるけれども、それよりも将来の人材を育てることが大事だということで、そのもらった米を藩士に分けないで、これを売って学校を建てようということであの米百俵の話は有名だったんです。

 それが端緒になって、やはり日本はこれから教育を重視していこうということで、明治政府は無学の人をなくしていこうということで、学校をどんどんどんどん建てて教育に力を入れてきた。私は、この古人の方針というもの、教育を重視する方法はこれからも日本は大切にしていかなきゃならない。

 そこで、これからの教育でございますけれども、今、ゆとり教育とかあるいは学力の低下に対していろいろな御指摘がございます。私は必ずしも詰め込み教育がいいとは思っておりません。これから、生徒の能力においても差があるのは当然でしょう、先生の質においても差があります。そういう点をなくしていくために、私は、国が教育の責任を担っていくということは大事だと認識しております。

 同時に、だれでも、教育を受けたいという人にとっては、その経済的負担に耐え切れなくても、すべての人たちが、勉強したい、教育を受けたいという人に対しては機会均等、これも国はしっかりと責任を果たしていかなきゃならないと思っております。

 そういう中で、学校の今までの教師のあり方も、あるいは生徒の学力向上の面においても、足らざる点は改革していかなきゃならない。特に、習熟度別授業なんというのは今まで反対していました。これは生徒にとってみれば、学校に行ってわからない授業をされたら、こんなつまらないことないですよ。不登校になっちゃう気持ちわかりますよ。だから、わからない生徒にはわかるように教える。ある程度生徒には能力の差があるんですけれども、余りわかり過ぎることをやったら、能力のある人はこれまたつまらない。だから、ある程度能力の差に応じて、わかる人は進めるような授業の方法、わからない人には、どうしてもこれだけは必要ですよという基礎的なことがわかってから上に、上級のクラスに進めるような習熟度別授業も進めていかなきゃならない。

 そして先生というものも、やはり、子供に教える喜び、教育の重要性をわかっている人に先生になってもらいたい。先生しかなれないから先生にでもなるか、そういう先生ではなくて、教育に情熱を持って、志を持って、子供たちが好きで、将来社会に出て働いてもらいたい、能力を向上してもらいたいというような人に先生になってもらえるような方法をこれからぜひとも考えていかなければならないと思っております。

石田(勝)委員 初めて小泉総理が教育について語ったのを……(発言する者あり)いや、余り聞こえていないですね。

 さて、今教育について議論をしました。そして、この教育に関連して、少子化の問題というのが極めて深刻であります。

 二〇〇三年、合計特殊出生率は一・二九まで落ち込んで、回復に向かう兆しはありません。日本経済はこれからの本格的な人口減少時代に向かうことになり、人口減少のマイナスの影響を少しでも軽減させるためには、社会保障などの社会経済制度を少子化に合わせて再構築すること、少ない人的資源のレベルアップを図る、すなわち教育改革拡充、そして、いわゆる少子化対策と言われる国家の支援制度が私は必要と思います。

 民主党は、義務教育終了時まで月額一万六千円の子供手当の創設、それから出産費用の二十万円の助成金など予算配分を要求しておりますが、この点について、厚労大臣、見解を求めたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、児童手当のことでございます。このことについて、私どもが今やっておること、考えておることを申し上げます。

 平成十六年度から支給対象を小学校三年までに引き上げました。それからまた、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランでは、社会保障給付について大きな比重を占める高齢者関係給付を見直すことに加え、地域や家庭の多様な子育て支援や児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってそのあり方などを幅広く検討することといたしておりまして、今お話しになりましたように、今後の少子化社会の中でどうするかという社会保障制度全般にわたる一体的な見直しの中で検討を進める、こういうことにいたしております。

 したがいまして、少子化に対する、深刻な問題だという認識と、今後やれることをやらなきゃいけないという認識は共通しておるんだろう、こういうふうに思います。

 そこで、民主党は、このたび、義務教育終了まで月一万六千円という子供手当を出そうということを提案しておられます。そうしますと、かかって財源の問題だと思うものですから申し上げるのですが、約三兆円ほどの追加財源が必要となると考えられます。その財源のために、扶養控除だとか配偶者控除の廃止という極めて大胆な提案をしておられます。

 そのこと自体も大きな議論をしなきゃならないというふうに考えますけれども、これをやったとして、まだ一・九兆円ぐらいだと見込まれますから、さらに残りの一・一兆円という財源をどこから持ってくるか。こうした財源に対する議論をする必要があるだろうというふうに思います。

 それから、出産にかかる費用についてでございますが、これは昨日も答弁させていただきました。私どもの国立病院における分娩費の全国平均を見ますと、私どもが設定根拠にしております費用では三十万円、こういうことになっておりますので、今、三十万円の出産育児一時金を支給しておるところでございます。

 これに対して、国庫を財源として、出生児一人当たり二十万円の助成金を給付しようという御提案だと思いますけれども、出産育児一時金や児童手当が既に支給されている中で、その位置づけをどうするかということが一つ議論になろうと思いますし、それから、二十万円とおっしゃるその根拠をどう考えるか、さらに、先ほど申し上げましたように、財源をどうしようかといったような問題があると考えております。

石田(勝)委員 今、厚労大臣から御答弁いただきましたが、その財源は、扶養控除とか配偶者控除、そのほかに行革によってその財源は捻出すべきだ。

 そしてなおかつ、この出産費の二十万円の根拠というのは、きのうも予算委員会で議論されましたが、一回出産すると約四、五十万かかるんですね。これが非常な負担になってくる。それで、きのうも議論の中で、それを健康保険が適用できないかというふうな議論もありました。

 それだけやはり産む側にとっては、この四十万円、五十万円というのは過重な負担なんです。そういったことで、私どもは、二十万円の助成金など出して、子供を産んでほしい、こういう姿勢を示すべきだということを言っているんです。どうですか。

尾辻国務大臣 財源の議論が必要だということを大きく申し上げたつもりでございます。

 そこで、この財源の話になりますと、例えば配偶者控除あるいは配偶者特別控除などを廃止いたしますと、御提案のいうふうにいたしました場合には、中学以下の子供を持つ家庭の負担というのは、これは当然、児童手当がもらえますから、民主党の言っておられる言葉で言いますと子供手当になりますが、もらえますから、その分が増収になります。

 ただ、では高校生以上の子供を持つ家庭はどうなるかなと考えますと、控除がなくなりますから、いわば増税になるというか税負担が大きくなる。そしてまたその収入が入ってこないというようなこともありますので、こういったようなことを議論する必要があるのではないかな。

 今、私が、いただいた御提案を見て思いますことを率直に申し上げておるわけでありまして、そうした議論が必要になるだろうなということを今申し上げておるところでございます。(石田(勝)委員「出生、出生」と呼ぶ)二十万円の話ですか。

 再三申し上げておりますように、私どもが持っております数字では、国立病院における分娩費の全国平均、これが約三十万円でございますから、私どもはその三十万円を根拠にして出しておる、こういうことでございます。

石田(勝)委員 私は長年、去年の予算委員会でも質問いたしましたが、児童虐待問題、これに長くかかわってまいりました。この児童虐待というのは本当に非常に根深い問題でありまして、児童虐待が実際に児童相談所に通告されるのが約二万六千件なんですね。でも、実際は、それをはるかに超えて、十万件を超えているというふうに私は思います。

 児童虐待防止のための行政の中心というのはどこかというと、これは児童相談所になるんです。児童虐待の件数は今言ったようにウナギ登りでありまして、その対応に追われております。そして、その対応に当たるのは児童福祉司ですよね。これのやはり増員は不可欠だというふうに、大臣、私は強く思っているんです。

 そこで、民主党は、この虐待のための児童福祉司の増員等々について百四十億円の国庫支出を要求しているんですが、児童相談所の機能強化のために、私は、必要な予算を獲得すべきだというふうに思っているわけであります。ちなみに、その百四十億というのはどういうことかというと、大体一人当たりに七百六十万、それで千八百人必要だということであれば百四十億、こういうふうな試算をしておるわけでありますが、児童相談所の機能強化のために必要な予算を講ずるべきだ。

 児童虐待というのは非常に深刻でありまして、やはり次の世代、次の世代に輪廻してくるんですよね。きょう時間があればやろうと思いましたが、犯罪の問題だとかそういった問題で、いわゆる凶悪犯罪に走った人間が、過去を洗うと、要するに、子供のときに非常な虐待を受けていたということがわかってくるんですよ。だから、この虐待問題というのは極めて重要な問題で、私は、この問題は国を挙げて取り組むべきだというふうに強く思っているんです。その点について、大臣、答弁を求めます。

尾辻国務大臣 御指摘のとおりに、児童虐待相談件数というのは近年極めて増加しております。私も、昨年の十一月八日には児童相談所を見に行きましたし、その後いろいろな施設も見ました。そして、改めて、極めて深刻な状況にあるということは承知をいたしております。

 したがいまして、お話のように、児童相談所の機能強化を図ることが必要であると考えております。このために、平成十七年度予算案においても、いろいろ施策の拡充を図っておるところでございます。

 そうした中で、今後とも、児童虐待、申し上げておりますように極めて深刻な事態でございますから、適切に対応できるように、児童相談所の機能強化、重ねて申し上げますが、努めてまいります。

石田(勝)委員 次に、カード犯罪の件に移らせていただきます。

 銀行の約款では、偽造あるいは盗難キャッシュカードを使ってATMから現金を引き出しても、暗証番号が正しければ、銀行は、正しい相手にお金を渡したとみなされ、免責される。被害者である預金者には一銭のお金も戻ってこない。再三ここでも議論になったところであります。

 これは民法四百七十八条に依拠しているところ、これは法務省の現状の法解釈について求めたいと思うんですが、「債権ノ準占有者ニ為シタル弁済ハ弁済者ノ善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有ス」。つまり、債権者らしい者に弁済したとき、本当は債権者でないけれども、だれが見ても債権者らしく見える者に対して本当の債権者と信じて弁済したときに限りその弁済は有効である、したがって、債務は消滅し、二重に弁済する必要がなくなる、こういうふうなことであります。

 いわゆるキャッシュカード等々の事件が多発しておりますが、この四百七十八条に依拠して、銀行約款で、今みたいな問題で返ってこないというふうなことになっているんですが、法務大臣、法務省の御見解を求めたいと思います。

南野国務大臣 では、御答弁申し上げます。

 民法第四百七十八条は、本来の権利者ではない者に対して弁済をした場合であっても、真実の権利者であると信じさせるような外観を有する者に対して善意無過失で弁済をしたときは、その弁済が有効になることを規定いたしております。

 お尋ねの偽造キャッシュカードによる貯金払い戻しの事案におきましても、民法上、銀行の弁済が有効となるかどうかは、一般的には銀行が無過失で弁済したと言えるかどうかにより決せられることになります。そして、この点は、銀行が機械による貯金払い戻しのシステムの設置、管理について必要な注意義務を尽くしていたかどうかなど、諸般の事情を総合して判断されることになると思います。

 さらになお念のため申し上げておきますけれども、キャッシュカードの利用に関する約款がある場合には、いろいろ書いてございますが、その約款が有効である限り、約款の定めに従うことになります。

 以上でございます。

石田(勝)委員 今、法務大臣の答弁にもあったように、銀行は守られ過ぎていると私は思うんですよね。イギリスとかアメリカでは、百ドルあるいは百ポンドまで預金者の負担で、あとは銀行が損害を補償するようになっているんです。我が国の対応は余りにもおくれていると思いますが、最後に、金融庁、金融担当大臣、答弁を求めたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 我が国の民事法制の枠組みについては、今法務大臣から御答弁があったところでございます。委員からも海外の状況について御指摘がございました。私どももそうした取り組みについて、今研究をし、調査いたしているところでございます。

 そうしたことも踏まえて、より実効性のある利用者保護策というものをどうやって確立していったらいいのか。そのためにも、被害が生じた場合の預金者の補償も含めて、現在の対応でいいのか、見直す必要があるのか、今真剣に検討させていただいているところでございます。

石田(勝)委員 このカード等々につきましては、私、時間が参りましたので、次の中塚委員にお願いいたしまして、私の質問を終わります。

甘利委員長 この際、中塚一宏君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 本日は、まず景気の話をお伺いしたいと思います。

 総理初め政府は、景気が回復しているということを盛んに言われる。でも、ちまたで景気が回復しているなんて言われると、本当にもうぶっ飛ばされそうな感じですね。総理も今うんうんとうなずいていらっしゃるわけなんですけれども。

 では、何で景気の回復というのが実感できないのか。

 皆さんは、消費が伸びている、あるいは設備投資が伸びているということを景気の回復の根拠にされているわけなんですけれども、どうして市井の人が景気が回復していることを実感できないのかということをお話ししたいと思います。

 もう一つは、皆さんが景気回復をしているというふうにおっしゃっている。ここに月例経済報告がございますが、いつも政府が毎月発表するものですけれども、表紙には、景気は、一部に弱い動きが見られ、このところ回復が穏やかになっているというふうに書いてある。下の方には、「先行きについては、」「景気回復は底堅く推移すると見込まれる。」と。「底堅く推移すると見込まれる。」景気が回復するというふうには書いてないわけですね。だから、そこのことも含めまして、お話をしたいというふうに思います。

 今、皆さんのお手元に資料をお配りいたしております。それに即してお話をしたいと思うんですが、まず、この一枚目の資料、図一と図二というのが書いてあります。企業の経常利益を上のグラフにとってある。そして、下の方に雇用者の報酬をグラフにとってあります。

 これを見ていただいてもうおわかりのとおりだと思うんですが、確かに企業の経常利益というのはすさまじい勢いで回復しているんですね。バブル期のころよりも収益は改善をしていて、利益がすごく上がっているんです。ところが、他方、下の方は、雇用者の報酬はどんどんと減り続けてしまっているわけなんですね。ここにまさに、景気が回復していると幾ら言ったって実感をできない一番の原因というものがあるわけなんです。

 まず、総理にお伺いをいたしますが、このグラフをごらんになって、どういう御感想をお持ちになりますか。

    〔委員長退席、茂木委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 確かに、このグラフを見ますと、企業収益の改善は著しい、しかし一方、雇用者の所得はそうでもない。これは、感想はどうかと言われますが、私は、これだけ企業の業績を上げて利益が出た企業は、でき得ればもっと雇用者に対して配慮していただきたいですね。(発言する者あり)確かに設備投資とかあるけれども、従業員がよく働いたからこれだけの業績が上がっていると私は思うんですよ。(発言する者あり)リストラの面もあると思いますけれども、そうでない従業員が働いているんだから、こういう人たちに対してはもっと配慮して、おまえ頑張ったな、給料も上げてやろう、そういう配慮があってもいいんじゃないかと思いますね。

中塚委員 今の答弁が果たしていい答弁なのかどうなのかというのは大変に疑問が残るところでありまして、企業は、はっきり言って、手元にお金を残さなければいけない理由というのがあるわけですね。そこを政策的にどういうふうにアシストしていけるのかというのが一番大切なポイントになるわけなんですね。だから、総理の意見として、もうかっているんだから給料をふやしてやれ、個人としておっしゃるのは確かにそうなんですが、それは総理大臣としておっしゃるということとはちょっと違う。

 次に、まず、このグラフを見ていただいておわかりをいただけると思うんですが、企業は利益を上げても、所得はふえていないということなんですね。実は、このことが自律的な景気回復軌道に日本経済が乗ることを妨げているわけなんですよ。だから、月例経済報告には、景気は、回復が穏やかになっているとか書いてあるけれども、でも、自律的に回復をするということは書いてないですね。

 総理にお伺いしたいんですが、景気が回復するということ、確かに、いろいろな統計を見れば、いいものもあります。それだけじゃないんですが、いいものもあります。でも、自律的に景気が回復するというのは一体どういうことなのか、どういう御理解をされているのか、お答えいただけますか。

小泉内閣総理大臣 これは、企業の努力また個人の努力があると思いますが、実際の経済指標を見て、今まで、経済指標を見て、小泉は何もやっていない、小泉が総理をやっているとますます景気が悪くなる、失業者はふえる、倒産件数はふえる、不良債権はどんどんふえていくと言われました。しかし、今、経済指標がよくなっているということに対しては、皆さん、何も言ってくれないんですよ。

 失業率は五・五%から今四・四%まで下がっている。では、不良債権処理を進めれば失業率がふえると言ったけれども、どうなのか。不良債権比率はちゃんと減っている。有効求人倍率も十二年ぶりに上がって、求人数もふえている、就業者数もふえている。そして、会社の、倒産も出ておりますけれども、同時に、新しく会社を起こす人もどんどん出ている。そういう、経済指標が今まで悪い悪いと私を責めていたのに、よくなったときには何でその経済指標をもとにして議論、質疑をしないのか。

 だから、私は、そういう点から見れば、改善をしている。この傾向は、政府が今までみたいに財政出動をして国債を増発して、公共事業をどんどんふやしなさいといって景気が回復したんじゃないんです。企業がやる気を出すような環境を整備してきた。規制を改革してきたから、ああ、こういう規制を外してくれればできるな。設備投資の面においても減税をした。ああ、設備投資をすれば減税するのか、それではやるということで、企業が自発的に創意工夫を発揮して努力してくれたからこそ、いわゆる政府が目標としている民間需要主導の回復軌道に乗ってきているな。

 これをさらに持続的な回復過程に持っていくように、今、竹中大臣初め、政府を挙げて、企業にやる気を出してもらおう、個人も頑張ってもらおう、地方も特色を出していただこう、そういう改革を進めていくことが、これからの、今踊り場的な景気局面において、その踊り場が下がらないように、上がっていけるような状況にしていこうというのが大事な局面ではないかなと思っております。

中塚委員 雇用関係の指数というのは遅行指数なんですね。それはおくれて出てくる指数なわけなんです。また、それともう一つは、失業率云々については、後からちょっとその中身の分析というのも議論をしたいというふうに思っています。

 私がお尋ねしたのは、景気回復ということと自律的な景気回復軌道ということの違い。今のが説明になったというふうに思っていらっしゃる方は、やはり景気がいいというふうに思っていらっしゃるんでしょうね。私は、そうじゃなくて、景気回復と自律的な景気回復軌道というのは違う、それが切れているということをお話をしたいと思っているわけです。

 企業がこうやってどんどんと経常利益を上げている、大変結構なことですね。結構なことだと思います。

 ところが、雇用者の報酬というのは全然上がっていないわけですね。これは……(発言する者あり)いや、バブルのときとかそういうことじゃない。ちょっと不規則発言はやめてください。

 大事なことは、企業が利益を上げる、その上がった利益というのが雇用者の所得に乗っかる。雇用者の所得に乗っかって今度は消費がふえる。消費がふえれば、今GDPの六割は消費なんですね。消費が拡大することによってGDPが拡大をする。GDPが拡大をしたら、今度はさらにそれによって企業収益が改善する。これがいわゆる自律的な景気回復軌道、内需主導の景気回復軌道ということになるわけなんです。

 ところが、過去の景気回復と今回を比べると、極端に純輸出に偏っているんですね。だから、純輸出が昨年マイナスになった瞬間に、景気はもう失速している。総理は踊り場だというふうにおっしゃるが、現実問題として、景気はもう今失速してしまっているわけなんです。結局、景気の好循環の輪というのが切れているんですね。

 輸出リード型でも構わない。まず景気回復のその発火点が輸出だって構いません。過去、公共事業をやったこともある、減税をやったこともある。でも、今回はそれはやっていない、輸出である。それはそれで大変結構なことで、構わないんだけれども、その輸出リード型の今回の回復が、要は内需に結びついていないということがこのグラフからおわかりいただけるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 中塚委員の御指摘、大変しっかりと経済をごらんになっているなという面と、しかし、ちょっと補足的にやはり説明をさせていただかなけりゃいけないなという面が、私は両方あるかと思います。

 まず最初に、中塚委員がお示しになっているグラフで、企業収益はふえているけれども、雇用者の報酬はふえていないではないか、これはまさに事実でございます。

 重要な点は、経済というのは、公的な部分が価値を生み出せるわけではございません。これは、常に民間部門しか価値を生み出せません。その民間部門が価値を生み出すというのは、企業があって、そこに資本があって、そして働く人々がいて、それらがまさに共同して価値を生み出す。重要なのは、まず価値を生み出せる力がなければいけませんから、これがだんだんついてきたということは、不良債権等々がなくなって、だんだんついてきている、これは一つの重要な事実でございます。

 さらに、加えて、じゃ、それがどのように働く人と資本、企業に配分されるか、これが次の重要なポイントになります。

 今まで日本はどうなっていたかといいますと、これは、ぜひ、中塚委員、九四年から書いていますけれども、その前からのグラフもずっと見ていただきたい。それに尽きるんだと思います。

 価値を生み出して、今まで、平均的に見ますと、日本では三分の二ぐらいが給与として払われて、労働者の方に行きました、三分の二。それで、三分の一ぐらいが企業、資本に割り当てられる。これは労働分配率、資本分配率といいますが、三分の二ぐらいが労働者の取り分であった。

 これが九〇年代を通してどうなったかというと、三分の二から四分の三まで高まったんです。六七%から七五ぐらいまで高まったんです。これだけ高まった。その後、ようやく近年になって、これはその中にはいろいろな努力が含まれますけれども、これが修正に向かいつつあって、今ちょうど半分ぐらいまで修正されている。

 その過程で、当然、この期間だけとると、企業の収益はふえるけれども、労働者の所得は余りふえないな。これは、しかし、やらなければいけない調整ですから、しっかりと、それぞれ痛みを分け合って甘受しなければいけない。しかし、いいところまで来たんです。半分ぐらいまで下がってくる中で、日銀短観によりますと、雇用の過剰も資本の過剰も、いろいろな過剰がなくなって、なかなかよいスタート台にようやく立てたのではないかというのが今の状況だと思います。

 雇用者所得がふえなきゃいけない、雇用者報酬がふえなきゃいけない、全くそのとおりでございますが、その雇用者報酬も十六年度ようやくプラスに転じるということに見込まれておりまして、十七年度はさらにそのプラスがふえるということでございますので、今おっしゃるように、まさにそれが自律的な回復軌道に今乗せる非常に重要なポイント、私は乗りつつあるというふうに思っております。

中塚委員 私が、別に、企業の利益がふえているということで、そのことは評価をしているんです。企業の利益がふえているということは評価している。でも、雇用者の報酬がふえていない。これで自律的な経済回復軌道に乗れるんですかということをお尋ねしているんであって、そのふえている理由と減っている理由をお伺いしているわけではないんですよ。

 次に、消費のお話をしたいと思うんですが、消費はまだ……(発言する者あり)バブル経済を発生させたのは皆さんじゃないですか。

 消費の伸びに根拠がないということなんですね。結局、所得が伸びていないわけですから。(発言する者あり)委員長、ちょっと注意をしてください。

茂木委員長代理 与野党ともに静粛に。

中塚委員 消費の伸びに根拠がない。それは、所得がふえていないんですから、消費の伸びに根拠がないということなんですね。そんな中で、やはり貯蓄率がどんどんと低下をしてしまっているということ。それをこの下の方のグラフにあらわしてみました。

 要は、収入がふえないものだから、みんな貯蓄を取り崩しながら消費をしているということがこの下のグラフを見ていただければよくおわかりいただけると思う。総理、その下のグラフの方もごらんいただいてよろしいですか。お休みになっていないで見ていただきたいんです。貯蓄率の推移というのを見ていただければ、六十歳以上の方はどんどんと貯蓄を取り崩しているんですね。そして、もう一つ、三十歳―三十九歳、若い人ほど貯蓄をしたいというふうに考えていらっしゃる。

 結局、六十歳以上の方というのは、ある程度金融資産もお持ちの方もいらっしゃる、また年金もあるということですね。それで消費に何を買っているかというのは、それはさまざまです。高いものを買っている人もいらっしゃる。薄型テレビ、プラズマディスプレーが売れているというふうな報道もある。他方、預貯金を取り崩して、食うや食わずで頑張っている人だっていらっしゃるわけですね、この中には。その反対に、若年層は貯蓄をどんどんとふやしたいというふうに考えているわけなんです。

 ところが、収入というのは減ってくる、それに加えて社会保険料も上がる、また税金も上がるということになっていて、この貯蓄増加というのも今限界に突き当たりつつあるんですね。だから、消費が伸びていると言ったって、所得が伸びていないわけだから、その消費自体に根拠がない。経済回復のエンジンであった純輸出というものがマイナスになった途端に、消費にも今陰りが見え出しているということなんですよ。いかがですか、ここまでで。

竹中国務大臣 繰り返し申しますが、委員おっしゃるように、雇用者の所得がふえていかなければいけないというのは、これは全くそのとおりでございます。今、その条件が、先ほど言いましたように、労働者の取り分がバブルを通して非常に高くなっていたのがようやく今正常に戻りつつあるので、そういうスタート台に今立ちつつある。これで、雇用者報酬というのはようやくふえ始めたということを申し上げているわけでございます。この雇用者報酬がさらに十六年度から十七年度にかけてふえるというような状況にあると思っておりますので、その中でまず、消費全体、所得全体がしっかりとふえていくような環境が整いつつあると思っております。

 それともう一つ、貯蓄率の話でございますが、貯蓄率の低下が急速に起きているというのは、これは事実でございます。その要因についてはこれからさらに専門家が精査しなければいけないと思いますが、基本的な要因は、やはり高齢化が進んでいるからであるということだと思います。

 私自身、今何がしかの所得があって、ためております。老後に備えてためますが、老後になって、それで所得がなくなって、それを取り崩して使うというのは実は当然のことでありまして、年金だって同じ理由でございます。年金だって、私たちは今払って、これはためて、老後にもらうわけでありますから、高齢化が進むと貯蓄率が下がるというのは当然。特に委員が御指摘の高齢者の貯蓄率が下がっているというのは、これは高齢者の中でも、これはちょっと字が細かいですけれども六十以上、その中でさらに八十以上とかの高齢者がふえていきますから、その意味では、ここで貯蓄率がどんどん下がっていくというのは、これは重要な理由であると思います。

 それともう一つ、貯金を取り崩しているという議論がよくあるわけでございますが、これは国民から見ますと、一方で、住宅ローン等々の借金がありますから、借金を今のうちに払っておこうということで、資産が若干減っている分、それを上回る形で債務が減っております。したがって、これはこれで、家計としてはある意味では健全な行動をしているわけでありまして、貯蓄の変動だけで、取り崩している、そういうことではないというふうに思っております。

中塚委員 私は、消費との関連で貯蓄の話をしているんですね。収入がふえない中で消費が伸びているとおっしゃるが、これを見ておわかりのとおり、貯蓄率は下がっていますね。その一方で、若い人たちは、やはり将来に備えてためにゃいかぬというふうにお考えになっている方が、これを見れば多いということがおわかりいただけるということなんです。

 だから、要は、輸出がちょっと揺らいだだけで消費まで揺らぐようになってしまっている、そういうのが今の日本経済の実態じゃないでしょうかということをお話ししているんです。

 そして、次に設備投資のお話をしたいと思うんですが、過去、この図一のグラフでいったところの九五年やあるいは一九九九年の景気回復のとき、この二つの景気回復のときと比べて、実は設備投資は大変に弱いんですね。設備投資は伸びています。伸びていますけれども、過去二回に比べるとそれは大変に弱い。

 それはなぜかといえば、やはりこれは輸出関連の設備投資しかないからなんですね。結局、人件費を抑制して、そして収益が上がってきた。その上がった収益で過去の借金を返している、あるいは非効率な設備を廃棄している、不動産の損切り、そういうことをやっている。それをやっているんだけれども、ただ、ではその余ったお金を全額設備投資に使っているかというと、全然そういうことではない。設備投資はやはり輸出関連ということに偏ってしまっているわけなんです。(発言する者あり)

 きょう、日本銀行の総裁にもお越しをいただいておりますが、これから伸びるという今不規則発言がありましたけれども、全国銀行貸出という統計もあるわけですね。ところが、この全国銀行貸出だってずっとマイナスなわけなんですよ。

 要は、企業は確かにもうかっている。手元に資金もある。設備投資はやっていないわけじゃないけれども、輸出関連だけだから、過去二回の景気回復に比べて設備投資は弱くなってしまっている。そして、なおかつ、銀行から金を借りてまで設備投資をしようというふうには考えていないということ、これが大変大きな問題なわけなんです。

 貸し出しが伸びない理由はいろいろある。銀行からすれば、貸したいところがないからだというふうなことを言う銀行の方もいらっしゃる。不良債権は、確かに処理はどんどんと進んではいるものの、四%に下がったといったって、国際水準からするとまだ高いわけですね。

 今銀行は何をやっているかというと、外資に買収をされないように、合併して時価総額をふやしていこうということを一生懸命やっている。だから、貸し出しというものは全然、こうやって伸びていかない。加えて、地域銀行、地方銀行の不良債権の処理というのは、まだまだやはり峠を越えていないということになるわけなんです。

 この設備投資の問題と、そして銀行貸し出しの問題について、日本銀行の総裁、いかがですか。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 日本銀行、かなり長い期間我慢強く超金融緩和政策を続けておりますけれども、このねらいは、持続的な景気回復軌道に日本経済をしっかり乗せてデフレから脱却を図る、こういう意味でございます。

 持続的な景気回復の軌道に乗せるために前提条件として非常に大事なことは、民間経済部門がしっかりとした新しい国際競争力を身につける。そのためには、まず、過去の過剰設備、過剰借り入れ、そして過剰雇用、こういったものの調整をきちっと終えて、そして新しいイノベーションを前向きにやっていける、この条件を整えて初めて前向きの動きが出てくる。その間は我慢強く緩和を続けなきゃいけないということでございます。

 ただいま委員の御質問の中で、設備投資が昔と少し姿が違うではないか、それから銀行借り入れがまだ減っているではないか、それから賃金の状況、なかなか雇用者所得にうまく還元されていないじゃないか、三つのことを御指摘なさいました。民間部門の構造改革がまさに想定どおり進んでいるということをあらわしていると私は思っております。

 設備投資も、過去のような高度成長時代のように、大量生産、大量販売を図るために猛烈な投資を銀行借り入れをして行うという時代から、企業ははっきり投資の対象を、焦点を絞って、付加価値創造力の強い投資をしようというふうに的を絞っているということがそこにあらわれていると思います。したがいまして、借金によって、レバレッジをきかせて投資をするということは企業はもう今後はしなくなっている。

 それから、過剰雇用の調整の一環として賃金レベルの修正ということもかなり今速いテンポで進めております。私の見ておりますところ、雇用者所得もようやく下げどまってきた、これから上昇に向かう可能性が強いと言える段階まで今来たということでございまして、民間部門の構造調整は非常に順調に進んでいる、もう少し我慢して我々緩和政策を続ければ景気回復軌道に乗せていける確信があるというふうに思っております。

中塚委員 企業が利益を上げても、それを賃金に転嫁できないという一番の原因は、要はやはり手元に資金を置いておきたいわけですね。何で資金を置いておきたいかといえば、それは過去に対する借金の返済というのもあるでしょう。もう一つは、やはり景気の先行きというものに企業だって自信が持てないということですよ。日本銀行総裁、今うんうんとおっしゃっているが、だからこそその資金を手元に置いておきたいということになってくる。

 これから企業は資金需要がないようなお話をされました。企業は銀行から借りて設備投資まですることはないんじゃないかということをおっしゃいましたが、でも、ちまたではそんなことは決してないですよ。やはり、貸してほしいんだけれども貸してくれないという声の方が圧倒的に多いんですね。

 もう一つ、中小企業の話をすれば、大体政治の世界や経済の世界で言うところの中小企業というのは、私らが選挙区で回ったときには中堅企業なんです。私たちがふだん会うのは、ほとんど統計の中にもあらわれてこないような人がほとんどなんですね。そういった零細企業のようなところが大多数なわけであって、そういう意味で、銀行の貸し出しが伸びてこないというのは、この設備投資というものに、ふえてはいるが勢いがないということ、そのことをあらわしているというふうに私は思います。

 そんな中で、今申し上げたとおり、一つ一つのコンポーネントの成果について、私はそれを全部否定するつもりはありません。構造改革はいいこともあるし悪いこともあるでしょう。しかも、民間企業がやっていることですから、これは。政治家がやらせているわけじゃない、私らは経営者じゃありませんからね。民間の方がやっていらっしゃることで、それがいいとか悪いとかいうことを申し上げているわけではないんだけれども、問題は、いろいろな、景気がよくなってきているんだというふうに具体的に皆さんのおっしゃる指標に全然相関関係がないということを申し上げているわけなんです。

 企業の収益が上がったって、雇用者の所得は上がっていませんね。設備投資がふえているとはいうものの、輸出関連に偏っているじゃないですか。しかも、銀行から金を借りてまで設備投資をしようという会社はないじゃないですか。だからこそ、自律的な景気回復の軌道にはまだ至っていないんじゃないですか。

 加えて、その自律的景気回復軌道に、景気の回復の端緒であった輸出というものが今大変に弱含んでしまっている。だから、私は、景気は踊り場じゃなくて、失速したんだということを申し上げているわけなんです。

 そんな中で、やっちゃいかぬことというのは、何といったってやはり国民負担なんですね、国民負担をふやしていくということなわけなんです。四年の十月以降、一七年までずっと年金の保険料が上がっていく、年金の給付もどんどんと下がっていくことになるでしょう。また五年以降、ことしの国会では介護保険料の引き上げというものも議論になってくる。所得税では、もう四年に配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止をやった。老年者控除の廃止もした。そして、公的年金控除の上乗せ部分というものもなくした。こういったことで、いろいろな負担増というものがふえてくる。

 所得がふえていかない中で所得に対して課税を強化するということ、これはやはり今行うべき政策ではないんじゃないのかということなんですね。いかがですか。

谷垣国務大臣 今、中塚委員と竹中大臣、それから日銀総裁の間でなかなか私はいい議論をしていただいたと思うんですね。ですから、政府の景気認識は竹中大臣から御答弁がありましたから、私はつけ加えようと思いません。

 そこで、今おっしゃったことは、一つ一つ個々のことで言っていただくとやはり違うんだと思うんです。全体を見ていただく。

 例えば、年金課税の見直し等というようなこともございました。これは、それだけをとれば負担増でありますけれども、年金の、三分の一から二分の一に国庫負担をふやしていこうということで年金に対する安心につなげていこう、そういう中で年金の支給額も年々増大している、こういう形があるわけでございます。それから、例えば配偶者控除の見直し等も、これは当然、女性の、主婦の雇用といいますか、仕事を持っているというのが進んできた結果でもございますけれども、それを廃止したかわりに少子化対策をやっていこうというような、全体で見ていただかなきゃなりません。

 それから、多分、今おっしゃった中に定率減税をどうして圧縮していくのかということもあろうと思いますが、定率減税、これは段階的に私はやっていく必要があると考えているわけですが、平成十七年度では千八百五十億ほどのいわば負担をお願いするということでありますが、四十四兆の税収の中で千八百五十億。それからほかにも増減がありますので、全体では千七百億をちょっと切る程度の負担増でございますので、先ほど竹中大臣あるいは日銀総裁から御答弁したような経済の認識を踏まえますと、私は、今委員がおっしゃるような、失速とおっしゃいましたけれども、委員の御議論は大変いい議論でしたけれども、失速というところはちょっと当たらないんではないかと思っております。

中塚委員 それは、失速したなんて言ったら定率減税の縮減なんかできませんからね。皆さんは、景気は回復をしているという前提で定率減税を縮減する、廃止するということをおっしゃっているわけだから、それは皆さんは、失速したとは口が裂けても言えないと思いますよ。でも、私は、失速しているのではないかということを申し上げている。それで、そのタイミングでこういった定率減税の問題に手をつけるのは、本当に今のタイミングとして大丈夫なのかということを問題提起している。

 あともう一つ、雇用者所得が減少している。そのことについて申し上げたいのは、やはり社会保険料の引き上げというのはすごい大きいんですね。輸出関連大企業は、生産回復の過程の中でどんどん正規雇用を優先的にリストラしている。残った正規社員の時間外労働と非正規雇用の増加で生産増加を賄っているわけなんです。結局、社会保険料が引き上がっていくものだから、正規雇用で、要は正社員で雇うと社会保険料の負担というのが本当にでかいんですね。

 今、社会保険いろいろありますが、年金、医療、介護、雇用保険、全部合わせると支払い給与の一〇%ぐらいですよ、企業家が負担するのは。しかも、保険料というのは税金と違って外形標準的ですね。赤字、黒字には関係ない。要は、支払い給与に応じて一〇%の保険料を払わなきゃいかぬということになっている。十人雇ったら十一人分の給料を払わなきゃいけないということなんですね。だから、正社員をどんどんと切っていく。そして、あるいは生産拠点を海外に移していく。

 だから、保険料をこうやってどんどん上げていくということは、我が国の産業の空洞化というものをますますと促進してしまうことになるわけなんですね。この正規雇用を切る、パートにするということが、支払い給与総額の減少ということにも結びついているわけなんですよ。

 だから、そういった意味で、国民負担のお話をしましたが、それは収入がふえていないからしちゃいかぬということ。これは、働く人の立場で申し上げればそういうことなんだけれども、企業の立場から考えたって、やはり社会保険料を引き上げていくということになると、正規雇用を削減せざるを得なくなってしまうし、パートを使わなければいけなくなってしまうし、生産拠点を海外に移さなければいけなくなってしまうということなわけなんです。

 だから、この負担増を行ってはならないということの理由の一つに、社会保険料の引き上げが我が国の産業構造に与える影響、雇用が減少していくということがあるというふうに考えますが、いかがですか。

竹中国務大臣 大変、個々に御指摘の点は、これは我々も非常にそのとおりだというふうに思う部分がたくさんございます。企業に重い保険料の負担を課すれば空洞化を助長するであろう、これはもう御指摘のとおりで、そうならないように、限度、その負担をできるだけ低く抑えて、まさに小さな政府にしていきたいというのが私たちの基本的な考え方でございます。

 一点だけ、先ほど、設備投資が強くない、弱いという話がございましたが、これは解釈の問題かもしれませんが、法人季報で、十六年の七―九月のが一番最近で出ていますけれども、設備投資は一五・六%の増加です、製造業で。非製造業でも一三・一%の増加です。これを低いと見るかどうかというのは、かつて高度成長期は三〇%増加していたとかいうことかもしれませんが、これはまさに新しい時代の中ではそれなりにしっかりと設備投資が起きているということではないかと私は思います。

 もう一つ、先ほど貯蓄率のお話があったときの話と関連するのでございますが、委員がおっしゃるように、負担をふやすと厳しい。それは、負担はふえないよりふえる方が厳しいに決まっているわけですが、では、負担をふやさないで、保険財政、まさに国の財政全体の先行きが不安になったらどうなるかというと、これはこれでまた、まさに将来不安があると貯蓄率が高まる、委員おっしゃったようにそういうことが起こるわけでございます。これは大変狭い道でありますけれども、負担はできるだけふやさないようにする、そのために小さな政府をつくる。しかし、その中で、将来の保険財政、国の財政に不安が出ないような形でのしっかりとした負担、そういった狭い道をやはり歩んでいかなければいけないということに尽きるのではないかと思います。

 結果として、雇用者報酬は今ようやく下げどまって増加の兆しにありますので、負担は大きくならないように我々は注意をしておりますけれども、将来の安定性のためにも、今の時点でそれが経済の失速を招くというような状況では私はないと重ねて申し上げたいと思います。

中塚委員 小さな政府ということをおっしゃった。でも、だからこそ、今この国会で問題になっているのは政治と金のことなんじゃないんでしょうか。

 負担がふえるということについて、いや、これは大事なところだから聞いてください。要は、私は景気の話をしている。その貯蓄率との関連で、竹中さんが小さな政府ということをおっしゃったから、私は、だからこれは政治と金が大事なんだということを言っていて、その根拠は、確かにこれから少子高齢化時代になる、ある程度の負担増はやむを得ないと思っている人は国民の大多数ですよ、そういった意味では。ただ、その前にもっとやることいっぱいあるんじゃないのかというのが国民の意見なわけですね。

 小さな政府というふうにおっしゃるが、それは行政改革ということでも構わないんですけれども、では、一体その行政改革の努力というのは本当にやっているんですか。年金の話でいえば、給付と負担の関係を明確にするということは大変大事な課題ですが、今、給付と負担の関係が、では明確になっているんですか。何で保険料から年金給付の事務費なんか使うんですか。保険料は年金だけに使ってくださいよ、これをやって初めて給付と負担の関係というのは明確になる。

 今、税金のむだ遣いというのは、先ほどの石田委員の、例の道路公団の例を挙げるまでもなく、日本じゅう至るところにあるんですよ。その政治改革。政治改革と言ったのは、行政改革の前に、まず政治家みずからが襟を正せということを国民の皆さんは言っているわけなんですね。だから、小さな政府ということをおっしゃるんだったら、行政改革は当然です、その前に、政治と金の問題にちゃんと決着をつける、結論を出すということが今一番求められているんじゃないですか。

 だから、景気の話に戻りますが、そういった意味で、景気というのは、私ははっきり言ってもう失速したというふうに思っています。鉱工業生産、昨年の七―九以降、マイナスですね。在庫率も上がってきている。景気動向指数の一致係数は、八、九、十と五〇割れですよ。十一月は五〇より上がりましたけれども、恐らく、発表される十二月の指数はまた五〇を割ると思うんです。三カ月連続で五〇を割ったら、これは景気が後退局面に入ったということに間違いない。だから、皆さんは踊り場だとかいろいろなことをおっしゃるが、輸出が落ちてきたということ、それに関連をして日本経済は失速している。

 アメリカのブッシュ大統領も二期目に入りましたが、二期八年しかできないアメリカの大統領がこれ以上財政政策を使って景気を刺激するというふうには私には思えない。やはり、残りの四年間でやらなきゃいかぬのは、アメリカにとっても財政の健全化ということになっていくはずですね。

 中国だって、余りにも景気が過熱していくことによって、不良債権の問題あるいは貧富の格差の増大、いろいろなことがある。だから、私は、中国、アメリカに対する輸出主導の景気回復というのはもはや終えんをしたというふうに思っているわけなんです。恐らく、ことしの末ぐらいには、去年の秋口をターニングポイントに景気は低迷をしてきたということを言わざるを得ないような状況になるんではないかというふうに思っています。そのことを申し上げておきたいと思います。

 きょうは、日本銀行の総裁にお越しをいただいていまして、日本銀行は、経済、物価の見通し、中間評価というのをお出しになっている。その中で、二〇〇五年度はCPIがプラス〇・一になるという予測をされているわけですね。

 CPIがプラスになるまで金融緩和を続ける、ゼロ金利政策を続けるというふうにおっしゃっていたわけですから、これが〇・一になったということは、そろそろ、ゼロ金利政策、金融緩和というのも解除の条件が整いつつあるんではないか。今まで総裁のおっしゃっていたことを考えれば、〇・一になるというふうに日本銀行も言っている、また政府もデフレ脱却だというふうに言っている。そんな中で、そろそろ、この金融緩和、そしてゼロ金利政策は解除をするときに来ているんではないのかというふうに思うわけなんですが、でも、日本銀行としては今の政策態度をしばらくお続けになるということのようですね。

 私は、このことは、日本銀行としても今の景気の回復の足取りが強いというふうにはお考えになっていないからこそ、金融緩和はCPIがプラスになったっておやめにならないというふうにお考えになっているんじゃないかと思うわけなんです。

 今、景気の現状認識、政府は、景気がよくなったということで定率減税の縮減、廃止にまで手をつけようとしているわけですが、日本銀行も、同じように景気がよくなると言いながら、ゼロ金利政策はやめない、金融緩和はやめないということについて御説明をいただきたい。

 結局、政府のやっている政策のしわ寄せが全部日本銀行に行っているんじゃないか。要は、日本銀行は独立しているということになっていますが、政府の景気、経済に対する政策のしわ寄せはみんな日本銀行に行っていて、ひょっとしたら総裁は、ゼロ金利政策を解除したい、金融緩和をやめたいというふうにお考えになっているのかもしれないけれども、もうどうしようもない、自縄自縛に陥っていらっしゃるんじゃないか。いかがでしょうか。

福井参考人 日本銀行は、みずから与えられた使命と能力の範囲内で精いっぱい政策をやっておりますけれども、政府のお仕事を我々がお引き受けするほどの能力は持っておりません。そこは謙虚な気持ちを持っております。

 まず、経済の認識でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、日本経済の底力は次第に整ってきているけれども、まだ本当に持続的な回復パスに乗るまでに、あるいは物価の面で見てデフレ脱却ということに確信が持てるまで、もう少し距離を残しているということでございます。

 CPIをお話しになられまして、そちらの面から少し条件が整ってきているんではないかという御判断をおっしゃられましたけれども、私どもの方は、そこのところはまだかなり厳しく見ております。非常に厳密に見ておりまして、消費者物価指数の前年比変化率が足元の指数で安定的にゼロ以上になることと、それから先行きの見通しがプラスになること、かつ、もう一つ条件は、経済全体の動きも総合的に判断して本当にこれで大丈夫だという確信が持てるまでと、三つの要因に分解して常に判断しておりますが、現在のところ、まだ近い将来にこの条件が満たされるというふうに判断しておりません。

 したがいまして、現在とっております量的緩和政策の枠組み、これは堅持しながら、景気がより持続的な回復パスにしっかりと乗っていくこと、同時に、物価の面でデフレ脱却の確信が持てるようになること、ここをしっかり見届けたいということでございます。

中塚委員 今の日本銀行総裁の御答弁、自律的回復軌道にしっかりと乗るまでということがありました。要は、私が今まで申し上げたことを裏づけていらっしゃるわけですね。だから金融緩和もやめない、ゼロ金利政策もやめないということなわけであって、だから、今、総裁の御答弁を引用しても、政府が、景気はよくなった、これからもよくなり続けるとして、その上で定率減税を縮減する、廃止をするというのは、やはり誤った政策態度であるということが言えるというふうに思います。

 そして次に、消費税の問題に関連して日本銀行の総裁にお伺いをしたいんですが、現状であっても景気の回復というものに確信が持てない、回復軌道にちゃんと乗っているというふうには思えないということだったわけでありますが、他方、政府の方はこの消費税の問題を議論し始めている。「平成十九年度を目途に、長寿・少子化社会における年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する。」ということを政府として言っているわけですね。いろいろこれから議論をされていくんでしょう。

 ただ、政府の政策態度の方向性として、今回、定率減税も縮減する、廃止をするという法律案が出てくるということになれば、消費税の引き上げを緩和するための施策ということについては恐らく政府はとれないでしょうね。そうなると、結局、今と全く同じことなんだけれども、消費税を上げるということになったら、経済政策は金融政策がどうしてもメーンにならざるを得ないということになりかねない。結果、今と全く同じですが、定率減税の廃止、縮減というものを政府がやる、それで日本銀行はこの金融緩和を続けていくということですね。

 要はショックアブソーバーの役割をお果たしになろうとしているということだと思いますが、消費税が今後引き上がっていくということになったときに、そのときに、では、金融緩和、ゼロ金利政策やめますというふうに果たして本当に言えるんでしょうか。今、日本銀行の独立性ということについて申し上げましたけれども、果たして、本当に日本銀行が独立しているということであるならば、政府のそういった消費税の引き上げ、その引き上げのもたらす景気に対するマイナスのインパクト、それを緩和するために金融政策はやはり今と同じフルアクセルを踏み続けていかなければいけないということになるんじゃないですか。いかがですか。

福井参考人 私の単なる感想でございますが、政府におかれていろいろな政策をとられる場合にも、あるいは私ども自身が金融政策を行っていきます場合にも、その政策をとるに当たって、全く何の障害もない、極めて無菌状態の中で政策が遂行できるというふうなことは、実際の生身の経済のもとではないというふうに私は思っております。と同時に、一つの政策がとられた場合に、差し引き計算で別の政策に単純に負担がかかるというふうな考え方も、必ずしも私は適当でないというふうに思っています。

 現在の状況に即して言えば、委員がおっしゃるとおり、日本の財政の現状、それから社会保障制度の再構築が国民的要望になっている、こういう現状からいきまして、政府におかれて、今後非常に長期的なプログラムになると思いますけれども、具体的に、歳入歳出面、それから社会保障制度の再設計ということが国民的合意のもとにきちんとなされていくべきだ。

 私ども金融政策をお預かりしております立場からも、ここは重大な関心事項でございますけれども、仮に、税金の面で厳し目の政策がとられる、あるいは社会保障制度の面でプラスの面もマイナスの面もと申しますか、国民にとってこれは少し負担じゃないかというふうな政策が加味されていく場合にも、その全体の制度設計と将来の方向性、つまり、道筋や手段について長期的な方向性が国民の前にできるだけ透明な形で示される、つまり、国民生活一人一人のことを考えた場合に、将来の予見可能性、将来の生活設計の中にそれを取り入れていけるという条件を少しでも多く政府が提供してくださるということは、金融政策の負担はそれだけ軽くなるわけでございます。

 そういううまい組み合わせで、ぜひ国会の議論も進めていただければ、あるいは政府の方の決断もしていただければと願っておりまして、我々は単純な差し引き計算でネガティブなインパクトを金融政策が全部受けとめていく自信はございません。

中塚委員 総裁からお願いをされましたが、これは私に対してというよりは、ここの委員室にいらっしゃる皆さんに対してのお願いであるというふうに理解をいたします。

 いずれにしても、やはり金融政策はちゃんと金融政策として独立をしてやっていく。くれぐれも政府の政策によって自縄自縛に陥るようなことがないように。かつて消費税が導入をされるときに、あのときに金利の引き上げということができなかった、そのことが結果としてバブル経済を生んだと言う方もいらっしゃるわけですね。だから、政府の経済財政運営というものと日本銀行の金融政策というものは別だと、その上でちゃんと御判断をいただきたい。

 きょうは時間がないのでもう聞けないんですが、例えば、郵貯が民営化される、簡保が民営化される、そうしたら、民間会社になってしまえば、ポートフォリオはおのおのの会社に任せるということになる。だったら、今郵貯が持っている国債、簡保が持っている国債、だれが買うんだということが議論になってくるかもしれない。すぐ、短絡的に、簡単に日本銀行に買わせろという話だって出てこないとは限りませんね。もちろん、法律ではやっちゃいかぬということになっているから、直接引き受けなんということはないと思いますが。でも、あの手この手を使って、日本銀行に国債を買わせろという圧力だって来ないとは限らない。そういった意味で、ぜひとも日本銀行の総裁には、日銀の政策の独立性ということを強く強く求めておきたいというふうに思います。

 残りの時間で、偽造キャッシュカードの被害の問題をやりたいと思っています。

 総理、二枚目の紙をちょっと見ていただきたいんですが、私は、この偽造キャッシュカードの問題を去年の三月三十一日、財務金融委員会で取り上げました。それで、本当にこんな不条理な話はない、不合理な話はない、こんなに被害者が哀れな話はないというふうに思っているんです。

 この絵を見ていただきますと、まずA銀行というのがある。ここの下に書いてある人はA銀行の預金者で、A銀行のキャッシュカードを持っているんですね。このキャッシュカードが偽造されて、B銀行からお金が引き出されていく。偽造カードによってB銀行からお金が引き出されていくということなんですが、この事件の被害者は一体だれかということになる。この事件の被害者は、何と預金者じゃないんですね。キャッシュカードを偽造されるというのは電磁的記録不正作出という罪名になるんですが、その電磁的記録不正作出の保護法益、要は法律が守っているものは社会的信頼である。そして加えて、データ自体は銀行のものだということになっていて、カードを偽造されたら、この被害者というのは銀行になるんです。

 もう一つ、B銀行からお金が抜かれるということになるんですが、この場合の被害者は一体だれかということになると、実はこれはB銀行なんですね。B銀行のATMからお金を抜いたということで、このB銀行に対する窃盗罪ということになってしまう。というわけで、お金をとられた人は実は被害者にならないんです。法律上そうなっているんですね。だから、実質的な意味でいうところの被害者の方は、預金を抜かれた方は被害届も出せないんです。

 このことを去年三月三十一日、財務金融委員会で取り上げて、政府の方でちゃんとそこは対応していただきました。ちゃんと銀行に被害届を出させるという方向になった。それを受けて、先日やっとそのスキミングの犯人が逮捕されたんですね。

 犯人が悪いのは当然ですから、捕まって当たり前ということもあるんですけれども、ところが、やはり踏んだりけったりで、救われないのはこのお金をとられた人なわけなんです。刑事の問題としては、被害者じゃないから被害届も出せない。それで今度は、お金のやりとりは民事の問題になるんですけれども、民事は対等だという話になってしまう。先ほど石田委員がお話をされていました。銀行と預金者とどっちに過失責任があるのかということが問われるようになるんですけれども、ほとんどの場合、預金者の方が自分が無過失であったということを証明するのは困難なんですね。だから、そういった意味で、何かやはりこれは救済策を講じてやらにゃいかぬということだと思います。

 資料の三枚目なんですけれども、これは実はジャーナルというふうにいいまして、このジャーナルというのは何かといえば、ATMの中に、お金を引き出したときに、こういう写しが残るんです。トイレットペーパーみたいなロールペーパーになっているんです。だから、ここにみんなキャッシュカードがあるわけなんですね。この三枚目の紙は、よく見ていただくと、この黒く塗りつぶした右のところにキャッシュカードと書いてあるのがおわかりいただけると思うんですが、これは真正のキャッシュカードで抜いたものなわけです。

 対して、もう一枚めくっていただいて、四枚目にお示しをするジャーナルのコピーは、全部偽造カードなんです。偽造カードですから、ここのところが全部真っ黒になっていますね。この四枚目ですが、この紙を見ていただくとおわかりのとおりで、字なんか出てこないですね。このカードの上部、数字の書いてある上のところは真っ黒に塗りつぶされている。真っ黒に塗りつぶされているというのはどういうことかというと、真っ白なカードだということなんです。要は、偽造用のカードですね。スキミングの犯人というのは、こういう偽造用のカードを大量につくって、そしてそのカードを何十枚と持ってATMに行って、長時間にわたってどんどんとこうやってお金を抜いていく、これが実は被害の実態なわけなんです。

 ここまでお話しして、総理は、こんなばかな話はないというふうに思っていただけると思います。何せ、お金をとられた人が被害者にならないわけですからね。これはやはりちゃんと法整備をしなきゃいかぬということです。これは本当なんです。ちゃんと警察庁あるいは法務省の方に、後で南野法務大臣にお聞きをいただければいいんですが、今の日本の法律ではそういうことになっているんです。お金をとられた人は被害者にならないんですね。その上で裁判をしたって、ほとんどそのお金が返ってくることはないんですね。だから、これだけ社会問題になってしまっているということなんです。

 五枚目、これはある銀行のカード約款です。キャッシュカードの約款をコピーして持ってきております。どんな銀行も似たり寄ったりのカード約款ということになっているんですが、このカード約款の(二)の真ん中ぐらいを見ていただきたいんですけれども、入力された暗証と届け出の暗証との一致を確認した上は、カードまたは暗証につき偽造、変造、盗用その他の事故があっても、そのために生じた損害については、当行及び入金提携先、出金提携先、カード振り込み提携先は責任を負いませんと書いてある。偽造カードであっても、暗証番号さえ合っていれば銀行は責任を負わないということが書いてあるんです、この約款に。これを総理は、こんなばかな話はないというふうに思っていただけると思うんですね。

 時間がなくなってまいりました。三つのことを伺いたいと思う。

 まず、こういう銀行の姿勢をどういうふうにお考えになるか。偽造キャッシュカードであったって、暗証番号さえちゃんと確認できれば、そのことについて銀行は責めを負わぬと。

 二番目、偽造されるようなカードを野放しにしておいていいのか。

 どっちに過失があるか、銀行に過失があるか、あるいは預金者に過失があるか、それを争うわけなんですが、じゃ、果たして、そんなぽこぽこ偽造されるようなカードを銀行がつくっている、つくらせているということについて過失責任はないのかということですね。暗証番号さえ合えばお金を引き出して、もうそれで責任を負わないと言いますが、じゃ、何でATMにはカメラがついているんだということにもなるわけですね。だから、あくまで銀行が銀行側の過失をでき得る限り排除する努力というものをしていたかどうかということになれば、やはり私は銀行に対してその過失が全くないというふうには言えないと思うわけなんです。

 そして、最後ですが、銀行と預金者が果たして本当に対等だというふうに言えるのかということなわけですね。

 それは、民事上は対等かもしれません。でも、銀行と預金者はやはり非対称ですね。それが対等であるなんということはあり得ない。無過失かあるいは過失があるかの挙証責任を預金者に負わせる、被害者に負わせるというのは、やはりこれは無理があるというふうに思います。その被害者が、自分が無過失であるということを証明する手だて、手段、そしてそれにかかるコスト、そんなことを考えると、ほとんどそれは無理なんですね。だから、私は、無過失であるということの挙証責任については、預金者じゃなくて銀行に負わせるようにするべきだというふうに思います。

 具体的な法律の改正としては、まず第一に、被害者が本当の意味での被害者になるように法律改正をすることですね。それが第一点。第二点目は、どちらに過失責任があるかということを問われるときに、この過失責任の挙証は銀行にあるということ。この二つを法改正するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

    〔茂木委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 極めてこのカード犯罪をする人は悪知恵があるなということが改めてわかりましたけれども、確かに、被害者がいるのにもかかわらず被害者がいない。これは、普通から考えてみれば、預金をしてカードを保有している人が被害を受けている、なぜ被害者にならないのか、これは常識的に考えておかしいと思います。それと、銀行も、これもある面においては被害者ということにもなり得る。

 新しい巧妙な犯罪ですから、今中塚議員が言われた問題、これは私もおかしいと思うし、多くの国民も何とかこの対策を講じなきゃならないと思っておりますので、これは関係担当大臣初め政府あるいは銀行等、被害者の状態等をよく把握しまして、こういう犯罪に対する被害をどのように救済するか、また犯罪を防止するか、これは真剣に検討していきたいと思っております。

中塚委員 終わります。

甘利委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、佐々木秀典君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。

 久しぶりの予算委員会の質疑です。いろいろな点が考えとしてはありますので、ひとつしっかりお答えをいただきたいと思います。

 まず最初に財務大臣にお答えをいただきたいんですが、毎年の予算、私学に対する国の助成、これは私学もなかなか経営が大変だということで国の助成を期待している、それにこたえて毎年の予算で私学の助成が予算づけされていると思いますけれども、ことしはその点は予算上どうなっておりますか、本予算で。

谷垣国務大臣 平成十七年度予算における主な私学助成予算の概要ですが、私立大学等の経常費補助が三千二百九十二・五億円と、昨年に比べて三十億円増、それから私立高校の方でございますが、これが千三十三・五億、プラス五億円でございます。

 私立学校は、大学生総数からしますと約七五%ぐらいだったと思いますし、また、高校生は大体三割だったと思いますが、大変大きな役割を占めておりますので、いつもこれは、最後、大臣折衝まで大概残るんですが、私学助成予算については、大変厳しい中ではありますけれども、その重要性にかんがみまして、今申し上げたような対前年度増となる予算を組ませていただきました。

佐々木(秀)委員 この点について文部科学大臣のお考え、私学助成の必要性といいますか重要性、あるいは私学からの要請にこたえる国側の対応、これについてのお考えを、どうぞ。

中山国務大臣 御承知のように、我が国の私立学校というのは、今財務大臣も答弁いたしましたけれども、大学生で約七五%、高校生の約三〇%、幼稚園児に至りましては八〇%を占めていまして、我が国の学校教育の普及、進展に大きな比重を占めております。また、特に建学の精神がございまして、建学の精神にのっとりまして特色ある教育、研究をしていただいているということで、高く評価しているわけでございます。

 文部科学省は、従来から、このような私立学校の重要性にかんがみまして、私立学校振興助成法に基づきまして、教育研究条件の維持向上とか、あるいは学生や保護者の修学上の経済的負担の軽減という点から、私学助成については力を入れてきているわけでございまして、来年度につきましても、今財務大臣お答えいただきましたけれども、大変厳しい財政状況ではございますけれども、大学につきましても、また高校につきましても、前年に比べて大きく、本当に予算措置をしていただいた、このように考えております。

佐々木(秀)委員 つまり、国としては私学教育の大切さを十分認識して、それに対して助成に力を入れている、こういうことでいいわけですね。

 ところが、そこで今度は総理大臣にお尋ねするわけですが、先日の一月三十一日の参議院予算委員会の質疑の中で、自民党の若林議員の質問、これは憲法改正についてどのような姿勢で取り組むかというその決意を総理大臣にお尋ねしたのに対して、総理大臣は、議事録によりますと、ちょっと省略しますけれども、よく問題点になるのは憲法九条ばかり取り上げられますけれども、しかし、憲法八十九条というのをこれで本当に日本は憲法を守っているのかどうかよく考えていただきたい。これは、若林議員からの質問に関連して、具体的な質問はないのに積極的に総理の方からこの八十九条問題を持ち出しておられますね。

 それによると、この八十九条をわざわざ総理は読み上げられておるんです。公金その他の公の財産の支出についてですね、この条文は。これが、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、または公の支配に属しない慈善、教育または博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならないというのが条文で、その後で総理は、私立学校、公の支配に属していないですね、公金が支出されてないんでしょうか、私学助成、こうなっているんですよ。

 ここまでを読み聞きすると、どうも総理のこの答弁というのは、国の私学助成が憲法八十九条に反しているではないかというようにとられかねない。どうもそう見える。これは今の文部科学大臣のお話あるいは財務大臣の御答弁と大分違うんじゃないでしょうか。一体その点の御真意はどういうことなんですか。ここではっきりさせてください。

小泉内閣総理大臣 これは、憲法の問題が議論になりましたからその中で述べたことなんですが、解釈によって一般の人もまた専門家の学者の方も意見が分かれるところだ、しかし、日本政府としては、私学助成というのは憲法違反ではない、憲法八十九条に違反していないということで私学助成に対して公金を支出しております。

 それで、ここでは省きますが、憲法九条も、陸海空その他の戦力を保持しないと明記しておりますが、一般的に常識で考えると、自衛隊は戦力を保持していないのかというと、これもおかしいなと。そして、学者の専門家の中でもいまだに自衛隊は憲法違反であるという解釈もあります。しかし、政府としては、憲法に規定している戦力、これには今の自衛隊は当てはまらないんだという解釈をもって、憲法違反ではないということで自衛隊の存在を認めている、合憲だと言っている。

 それと、自衛隊と教育とは違いますが、憲法の問題で改正論議が出てきたものですから、私は、九条ばかりではありませんよ、憲法八十九条をよく読んでください、常識的に考えて、もうこれは条文を読み上げるのはやめますけれども、公の支配に属さない慈善事業、博愛事業、教育事業に対して公金を支出してはならない、これを素直に常識的に考えれば、これは憲法違反ととられてもおかしくないような部分もあるということを言ったんです。

 現に、衆議院の憲法調査会においては、大学教授を招いて、参考人を招いております。名前は控えますが、お二人の参考人から、私学助成は憲法八十九条に反し憲法違反であるという、学者で参考人も述べているんです。同じく、別の参考人は、私学等に対する公的助成を正面から認める規定に憲法八十九条を改めることもよろしいのではないかとそれぞれ発言しているんです。

 こういうこともありますから、今の憲法を明確にだれでもがわかるようにわかりやすく、憲法違反であるとか違反でないとか、学者が議論しても意見が分かれているような条文よりも、一般の普通の学力、普通の常識があれば、まあこれは憲法違反していないな、自衛隊の存在にしても私学助成にしても、これは憲法違反ではないとだれが考えても素直に読めるような条文に改めたらいいのではないか、だから憲法は改正した方がいいと私は思っているということを述べたわけであります。

佐々木(秀)委員 つまり、総理大臣の真意は、現在国のやっている私学助成そのものを否定するというのではなくて、第九条の解釈論法と比較をしてこれを引き合いに出した、こういうことのようですね、今のお話を聞くと。

 しかし、私の今まで見聞きしているところによると、九条の方については、確かにいまだに議論があるのはわかっております。例えば自衛隊の合憲、違憲などをめぐってかねてから議論があるところですから。しかし、私学助成の問題まで八十九条違反だということで憲法違反だという議論は、まあ学者の中でも言う人があったそうですけれども、これは極めて特異な学者で、まさに少数論であるだろうと私は思っておりまして、それを引き合いに出して憲法論議をされるというのは、改憲論をするというのは、私はいかがなものかと思います。

 きょうは余り時間がありませんけれども、これは大事なところですから、いずれまたじっくりやりたいと思いますよ、総理大臣とね。ただ、きょうは、私の問いただしたかったのは、要は、国として私学助成を軽んじているのではない、これをもう一回確認したかったものですから、そういうことでお尋ねしたわけですから、きょうのところはその程度にしておきたいと思います。

 それからもう一つ、今度は、これは公務員制度の改革の問題です。

 実は、一月の二十四日の衆議院の本会議で、自民党の武部幹事長がこの公務員制度改革の問題について質疑をされていますね、質問されています。それによりますと、ここに議事録がありますから見てみますけれども、こういうような質問をしております。

 これは武部幹事長ですが、我が党はというのは自民党ですね、我が党は政権公約で、公務員制度改革法案を二〇〇四年の国会に提出すると約束しています、しかしながら、労働組合との調整がつかずにずるずると時を過ごし、ついに国会に提出されることなく年を越しました。それから、中略ですが、その後に、公務員制度改革は、主として官公労の強い反対によって難航しておりますが、本来、国民が費用を負担する公務員の雇用、評価、賃金等、制度改革に労働組合の了解を求める必要があるのかどうか、国民は疑問を感じているのではないでしょうか、こういう問いをされておられます。

 これに対して、総理大臣は余り的確に答えているとは思えないんですね。職員の理解を高め制度を円滑に運用できるようにすることにも留意しつつ、関係者間の調整をさらに進めるとともに、能力・実績主義の人事評価を試験的に実施してまいります、こういう答弁に終わっておりますので、この武部幹事長の問いに対する適切な、的確な答えとはとらえられないわけです。

 そしてまた、これまでの公務員改革についての論議の推移ですけれども、昨年の十二月の二十四日に閣議決定がありますね。公務員制度改革の方針を含む「今後の行政改革の方針」というのを決定しておりますけれども、ここでは、関係方面との調整をさらに進めて改革の方針を定めていく。残念ながら、いろいろな関係方面との調整がつかなかったので、法案の提出まで至らないで年を越したということになっているようですけれども。

 そして、これについてはこれまでも、例えば自民党の行革本部がありますね。こちらの役員の方々が連合とも話し合いをされているということがございます。それからまた、昨年の十二月の十七日に行政改革推進本部の松田事務局長がたしか談話を出していると思うんですけれども、公務労協とはこれまで意見の交換もしてきている、それからまた、今後も関係者間の調整をさらに進めていきたい、こういうことを言っておられる。

 つまり、公務員労働者の団体、あるいは連合という労働組合組織ともこの問題については協議をしてきたという経過があるわけですね。この武部氏の質問というのは、こういうような今までの態度を変えて、もう組合の言うことなんか聞かなくていいじゃないか、政府だけで決めればいいじゃないかというふうにとられるんですけれども、さあ、この辺について政府としてはどう考え、どう対応されるのか。行革担当大臣からまずお聞きしましょうか。

村上国務大臣 委員の御質問にお答えします。

 御高承のように、公務員制度改革につきましては、新たな人事制度を円滑に実施するためには、やはり職員の理解を高めることが重要だと考えています。組合とはやはり幅広く、常に意見交換をする必要があると私自身は考えております。私も、去年の十二月に組合の皆さん方とお会いしまして、お互いに顔を見て率直に話し合うことが重要であるというふうに申し上げたところであります。

 今後とも、組合とは幅広く意見交換をしつつ改革を進めてまいりたい、そのように考えております。

佐々木(秀)委員 総理大臣はどうですか、この点についてのお考えは。

小泉内閣総理大臣 公務員制度改革を進めるに当たって組合と話し合う必要がないなんということは全く申し上げておりませんで、組合とも話し合う、そして政府部内の関係者とも話し合う、いろいろな、さまざまな意見がありますので、よく話し合っていかなきゃならない、私はそう思っているんです。

佐々木(秀)委員 今の御両所の御答弁を聞いて、私もやや安心をいたしました。いずれにしても、関係者間で、いろいろな問題があることはよくわかりますけれども、十分に話し合いを進めていただいて、それぞれの立場も考えながら、何よりも公務員制度というのは、国民のために、みんなに納得されるような制度でなけりゃいけないわけですから、その制度改革には十分に御留意いただきたい。

 特に、ILOの勧告もありますから、例の労働基本権の問題も含めて、これをはっきりともう一度認めるというようなことも含めて、ぜひ、しっかりと組合の意見も聞き、あるいは公務員で働く皆さんの御意見も聞いて進めていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。

 先日、私どもは補正予算を成立させました。これは私も、この間の討論で述べましたけれども、災害対策をメーンにしながらも、実際には災害対策の部分がやや少ないのではないかという苦言も呈したわけですけれども、とにもかくにも去年の災害は本当にひどかったわけですから、被災者の皆さん、被災地自治体のことを考えると、どうしてもこれを通さなければならないという思いで賛成をいたしました。しかし、ここのところ、皆さん、もうテレビで実際にごらんになって驚いたり心配されていると思うんですが、被災地だけではありませんが、日本全国、雪がすごいですね。とにかく、被災地のあの豪雪状況というのはすさまじいものがあります。

 実は、私の地元も北海道旭川市なものですから、ここも多いんですよ。また、札幌もことしはめちゃくちゃ雪が多くて、この除雪、排雪予算……(発言する者あり)青森もそうでしょうね、もう一様にすごいですね。この間も札幌市にちょっと聞きましたら、今年度の除雪のための札幌市での当初予算が何と百四十六億なんですよ。それがもう底をついているというんですよ。それで、補正を組むかどうかで今頭を痛めているというんです。私のところの旭川も多分そうだろうと思います。

 私なんかも、先週の週末に帰ったら、うちの前がもう雪でいっぱいなものですから、私と家内しか労働人口がないものですから、除雪で大変だったんです。これは、やった者、遭った者でないとなかなかわからないというところがあるんですけれども、しかし、おとつい、きのうあたりの、新潟の例の小千谷などなど、あの辺はすごいですね、もう二メーターを超えているんですから。うちの出入りもできないような状況で、除雪をしている人たちが、割合若い人でも、三十代の奥さんでも死ぬ思いをしているという。そして、年寄りなんかになったら一体どういうことになっているのかなと思うんですけれども、これはいろいろ、自治体では業者さんなんかも頼んでいるけれども、あそこまでくると業者だって間に合わないですよ。

 ところが、あの地震の後などでは自衛隊の皆さんの働きぶりが見られたんだけれども、今度の豪雪の中で自衛隊の皆さんの姿というのは全然見えないんですね。ああいうときこそ、私は、機械によらないで、やはり若いばりばりした働ける自衛隊の皆さんがああいうところでお手伝いをされたらどうかなとしみじみ思うんですけれども、防衛庁としては、自治体からそういうような援助要請があった場合に、自衛隊の皆さんを除排雪のために、これは一種の災害対策として出動させるというような態勢はあるんでしょうか、ないんでしょうか、防衛庁長官。

大野国務大臣 まず、大雪のため被害に……(佐々木(秀)委員「なるべく簡単で結構ですから」と呼ぶ)さようでございますか。

 防衛庁長官といたしましては、知事等からの御要請があれば直ちに柔軟に対応していく、即応していくということでございます。

 ただ、要請ということを申し上げている、これは大変大事なことなんです。自衛隊の性格として、やはり自衛隊法第八十三条がございます。この八十三条によりまして、災害があれば必ず対応していく、こういうことになっております。要請があれば対応していく。ただし、例外として、緊急、必要性のある場合には独自に対応することもございますが、原則はやはり要請主義でございます。

 それから、雪につきまして、今回でいいますと新潟県山古志村におきましては、これまで十九日間この対応をいたしておりますことを御報告いたしておきます。

麻生国務大臣 昨晩、総理の方から、各市町村、県が安心して除雪できるように十分に配慮しろという御指示がありましたのを受けまして、特別交付税で補正予算約七百億円をもちまして、除雪に係る経費を十分見られるようにいたしたいと思っております。

佐々木(秀)委員 ぜひそういうような要請に応じられる体制を講じていただきたいということを強く要請しておきたいと思います。

 そこで、これから少し、政治と金の問題に入らせていただきたいと思います。

 御承知のように、昨年来、政治と金をめぐる問題は国民的な大きな関心を呼んでおります。そうした中で、例えば、自民党の派閥である平成研に対する日歯連からの一億円の献金事件、それと、その収支報告の記載などをめぐって刑事裁判も起こっております。これに関しては、議員関係では、元議員でありました村岡兼造氏が起訴をされている。ところが、この一億円の献金、それを直接に授受、受け取った橋本元総理大臣は起訴されておりません。

 橋本さんについては、昨年、衆議院の政治倫理審査会で弁明がございました。私も傍聴いたしましたけれども、しかし、これはとても真相を解明するものだとは思えなかった。むしろ、授受自体については、さまざまな周囲の状況からしてあったのだろうと思うけれども、自分が受け取ったということについては記憶していないということで、まことに納得のいかないような釈明だったわけでありますね。

 しかし、検察としては、この事件をめぐって、受け取った側の橋本総理、それからこの授受があったとされる席に同席されていたということがいろいろなことからはっきりしている野中前衆議院議員、それから現在参議院議員、現職であります青木議員などについても、被疑者として一応調べたようでありますね。その結果、検察は村岡氏だけを、その席に居合わせなかった村岡氏だけを起訴して、橋本元総理それから青木参議院議員については嫌疑不十分で不起訴、野中前議員については、一応疑いはあるんだけれども、情状によりということなんだろうと思いますが、起訴猶予という処分にした。

 これは明らかに不公平だし、事実に反するのではないだろうかということで、私どもの同僚議員、辻議員と永田議員がこの三人について改めて捜査をするようにという告発をしたのに対して、東京地検はこれまたこの告発の申し出を却下いたしました。これに不服を唱えて検察審査会に審査の申し出をしたところ、きのうも仙谷議員から話があったように、東京第二検察審査会が、この不起訴処分は不当だ、捜査をしなさいということを、東京地方検察庁の検事正あてに議決書を一月の二十七日付で送っているわけですね。そういうことがあります。

 それで、村岡さんの裁判が続いておりますけれども、実は一月の十二日に、この村岡さんの指示で一億円について橋本元総理から金を受け取って銀行に入れ、そしてそれをまた銀行から引き出して現金化して選挙資金その他として使ったと言っている滝川という人、この人はもう既に調べられたことについて全部容疑を認めて、去年のうちに裁判が一日で片づいて、二日目にはもう判決が出ているというので有罪が確定して、控訴もしないでいるわけですが、この滝川氏が一月の十二日の村岡裁判では検事側の証人として出廷をいたしました。実は、私も実際に傍聴してまいりました。そこで彼の供述は、検察官に対する供述と一部記憶違いがあったということで、訂正などもあったりしているんですが、いずれにしても、村岡さんとは全く違ったことを言っているわけですね。

 それから、さっき言ったように、橋本元総理の供述も、私どもとしては非常に納得しがたいものがある、そういうことで、司法の場とは別に、やはりこの国会の場でこういうことについては私どもとしては明らかにする必要があるという考えで、さきの、昨年の臨時国会では十二名の証人喚問要求をいたしましたが、今回はそれをさらに絞って、現実的にしようということで六名に絞って、さきに理事会で証人喚問請求をする、それからこの委員会でも、さきに質問いたしました私どもの川端幹事長がこれまた請求をしております。しかし、残念ながら、それが実現せずに今日まで至っておるわけです。

 しかし、私ども、理事会でこの問題を協議しておりまして、与党の理事の皆さんもこれを真剣に考えなければならないということで、これまで協議が進んだ。それで、二月一日の理事会において、委員長の方から、政治と金に関する諸問題については、これまでの与野党間の協議と今後の集中的な審議の経過を踏まえて、お互いに誠意を持って協議、検討し、対応するというメモが出されております。

 私どもとしては、どうしてもこの問題について集中審議をしなければならない、あるいは証人、場合によっては参考人でもやむを得ないかなと思いますけれども、これについては協議させていただきますが、どうしてもこのことについては議論をする必要がある。そしてこういう関係者の方々にここに来ていただいて、真実を話していただかなければならない、言っていることが違うんですから、どっちかがうそを言っているに違いないんですから、こういうように思っております。

 総理にも、このことについては議会の方にお任せする、こういうことですけれども、この態度、お考えに変わりはないですね。

小泉内閣総理大臣 ただいま佐々木議員がお話しされたように、今、与野党の中で、そういう指摘された点も含めて真剣に議論しているという報告も受けております。今後、十分協議をしていただきたいと思います。

佐々木(秀)委員 委員長にも改めて、この問題についてできるだけ早く協議を進めるように率先、リードしていただくことを要望したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

甘利委員長 理事会で引き続き協議をします。

佐々木(秀)委員 さてそこで、この検察審査会の重みなどについては同僚議員もこの後質問することになっておりますので、私はちょっと割愛して、次に行きたいと思います。

 きょうは杉浦官房副長官、お見えですか、お見えですね。官房副長官も、あなたのいわゆる会派からの寄附受領の問題、あるいは党からの金の受領の問題について、再々ここでお尋ねがありました、お答えがありました。

 しかし、どうもその後、あなたは、一月の二十六日に収支報告書、あなたの政治資金管理団体の収支報告書の記載、これを訂正されている。そして、それに続いて、日を置かずして一月の三十一日にもう一度再修正をしているわけですね。そして、その結果を私ども理事会に報告していただいたわけですけれども、どうも、その御報告と修正内容を見ると、この委員会で私どもの同僚議員である永田さんなどなどにお答えをいただいた内容と、相当食い違っているわけですね。

 なぜこの段階に来て二度にわたってまで収支報告を修正しなければならなかったのか、その修正の最も重要な点はどこだったのか、これをもう一度、端的にお話しいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 私の政治資金収支報告書に誤った記載があり、二度にわたって修正したということは、もちろんあってはならないことでありますし、まことに申しわけなく思うと同時に、反省をしておるところでございます。

 私の政治資金収支報告書の訂正は、二回、御指摘のとおりでございます。

 まず、清和政策研究会からの政治資金収支報告書に関する報道などがございましたので、念のために調べてみましたところ、清和政策研究会から受領していないにもかかわらず、政策研究会から寄附がなされておるというふうに届け出られていることが判明いたしまして、これは勘違いによるものでございましたので、これに関する訂正をしたのが一回目でございます。

 その後、当委員会におきまして私に対する質疑がございました。そして、さまざまな御指摘がございましたので、さらに全体にわたって、御指摘の点を踏まえまして再度調査いたしました結果、判明したものを訂正したというのが二回目の訂正でございます。時系列でそうなっております。

 この点につきましては、一昨日、理事会に資料を提出させていただきまして御説明申し上げましたが、まず、清和政策研究会から私の政治資金団体に寄附したとされる記録につきましては、清和政策研究会から受領した党の政策活動費を、私が後援会の事務局に渡す際に説明不足があったために、事務局職員が清和政策研究会からの寄附と勘違いして届け出たものであったことがわかりましたので、一月二十六日に訂正いたしました。その事情と内容につきましては、先日の本委員会で答弁いたしましたし、理事会でも詳しく御説明申し上げたとおりでございます。

 次に、平成十二年分の収支報告に党からとして記載してございます一千万円と三百万円につきましては、先日の本委員会で、公認料と貸付金であるかのような説明を行ったわけでございますが、精査いたしましたところ、六月にちょうだいした一千万円は、五百万円の政策活動費と五百万円の公認料であるということが判明いたしましたので、そのうち公認料につきましては、既にその年に行われました選挙の選挙運動費を収支報告書に記載してございますので、いわば二重記載でございます。したがいまして、私の政治資金収支団体の収支報告の金額を、二回目、一月三十一日に訂正した次第でございます。また、十二月の三百万円も政策活動費でございます。貸付金や自然債務というような言葉を使いまして、過去の、大分前の古い記憶とごっちゃになりまして、そのような表現で皆様方に誤解を与えたことをおわび申し上げなければならないと思います。

 平成十五年分の収支報告でございますが、まず四月の私個人の六百万円の寄附につきまして、議事録を精査しましたところ、文書交通費を寄附したような趣旨になっておりましたが、調べた結果、私個人から六百万円を政治資金団体に寄附しているものでございました。残り三件の特定寄附は、党からの政策活動費でございます。ただし、一千万円は五百万円の政策活動費と五百万円の公認料でございましたので、公認料につきましては、十二年分と同じ理由で、一月三十一日、二度目の訂正で後援会の収支報告書を訂正いたしております。

 さらに、党からちょうだいした政策活動費を、私の政治資金団体において党本部からの寄附と記載しているものにつきましては、特定寄附として処理すべきものでございますので、記載方法が間違っておりましたので、資金管理団体への特定寄附として二度目の訂正で修正した次第でございます。

 いずれにいたしましても、私の資金管理団体の収支につきまして、誤解、私自身を含む勘違い等によりまして間違った記載がなされておりました。また、委員会におきましても、後ほど調べてお答えすると申し上げながらも、あいまいな記憶に基づきました発言をいたしまして皆様方に誤解を与えましたことにつきましてはまことに申しわけないと思いますし、通告外の御質問でございましたので、あいまいな記憶に基づいて発言申し上げたのはまことに不本意なことでございますので、いたく反省をいたしております。本当に申しわけない次第であったと思っております。

佐々木(秀)委員 今お答えがあったわけですけれども、それでも全部がこれで氷解したというわけじゃないんですね、問題点は。

 特に、今度の修正は二回にわたっているわけですけれども、一月の二十六日の訂正では、平成十二年分、十三年分、十四年分と、これは一緒なんですね。今からだともう五年も前のものですよ。これを一緒にして、事実が違っていたからというので、そんなに簡単に訂正できるものですかね。わかるものですか、事実が。

 それと、それをさらに、一月の三十一日にまた再修正しているでしょう。その結果、今までとの大きな違いは、あなたの資金管理団体の繰越金ががたんと減額されたわけですね。二〇〇一年分として五百万、二〇〇三年分として五百万、結局一千万ががたんと減額されているんですよ。このお金、どこへ行っちゃったんですか、一体。これは説明つかないですよ。あなたはわかっているんですか。この点どうです、簡単に。

杉浦内閣官房副長官 清和政策研究会からちょうだいしたのは党の活動資金でございますから、それを誤って清和政策研究会からちょうだいしたと記載したのは明らかな誤りでございますので、その部分は、三年分ですが、訂正させていただいたわけであります。その結果、繰越残高等、ほかの部分も実態に即して訂正をしたということでございます。

佐々木(秀)委員 先般、我が同僚議員の質問に対しては、かなり自信を持ったお答えのように、私どもとしてはお見受けしたんですよ。職を賭してまでという言葉がたしか出たと思います。しかし、それが今度のこの修正によってがらっと変わっちゃっているわけです。この点は、私どもとしては本当に納得がいかない。それと、貸付金あるいは自然債務というようなお言葉が出て、これについても物議を醸して、これも訂正されたということがあるわけです。

 私は、実は杉浦議員は根は正直な方だなと本当に思います。だからこそ、こうして届けをしたんじゃないか。中には、派閥からあるいは党からも相当な金を受け取りながら、これを収支報告もしていない、ポケットに入れただけという人の方が私は相当あるんじゃないかなと。そういうことを考えると、杉浦さんはまじめなんだけれども、しかし、きちんとそれを精査していないでルーズにやっていたという嫌いがあるんじゃないかとも思うんですよ。

 この間、たしか永田議員の質問だったと思いますけれども、永田議員は別な資料を出されて、清和会からの寄附だと思われるということで、清和会代表の、現在総理ですけれども、小泉純一郎という代表の名前が書かれた寄附の記載もあるように言っておられたんだけれども、これは杉浦さん、率直に言って、お聞きしているんですけれども、そういう清和会からお金をもらう場合には、そのお金は、現金が封筒に入っていて、その封筒の上にそのときの会派の代表者の名前が書いてあるんじゃないですか。それをそっくり渡しているから、もらった事務方あるいは秘書さんの方は、それを清和会からとして、小泉純一郎、ないしは他の代表者のときはその代表者の名前を書いた。森さんのときは森さんの名前が出ている。

 それをこの間、永田議員があなたにもお示ししたと思うんですけれども、そういうことが実際ではなかったんですか。その点、どうですか。

杉浦内閣官房副長官 またあいまいな記憶でとおしかりを受けるかもしれませんが、清和研を通じていただいた党活動費の上には何にも書いていなかった、真っ白だったと記憶しております。私の記憶ではそうでございます。

佐々木(秀)委員 それがそうだとすれば、どうしてある金額についてはその収支報告で時には小泉代表、あるいは時には森代表という名前が出てくるのか、その辺も、どうも私どもは理解に苦しむところなんですね。

 それから、これも時間が限られておりますので、私の時間が終わりましたら、また同僚議員がフォローしてくれると思うんですが、いろいろ訂正されたわけですが、党から受け取った金については領収書を出しているかどうかということに対して、記憶としては領収書を出しているんじゃないか、つくったんじゃないかということを言われていた。であれば、理事会にまたお出しいただきたいということを言っていたのですが、きょう段階までまだ出ておりません。

 たまたま私の手元に何枚か、杉浦さんが作成されたと思われる領収書のコピーがございますので、これを見ていただきたいと思いますが、委員長、よろしいでしょうか。あらかじめ皆さんに配付してございます。官房副長官、お手元にございますか。(杉浦内閣官房副長官「いただいております」と呼ぶ)では、ちょっとそれを持っていただいて、こちらに来ていただけますか。

 それでは、まず、ここに番号が一から八まで振ってありますけれども、ここに書かれてある氏名欄の氏名の記載、これは杉浦さん御自身の筆かどうか、手かどうか、これをまずお答えください。

杉浦内閣官房副長官 いずれも私の自筆でございます。

佐々木(秀)委員 この今見ていただいた一から八まで、確かに筆跡が、多少崩しているのもあり、楷書で書いているのもあるんですけれども、私は書をやるものですから筆跡などは興味があって大体わかるんですけれども、大体同じだと思います。

 ただ、これはいかがなものかと思うのは、日付があるのが少ないんですね。八枚のうち五、六、七、八、つまり半分。ナンバーファイブからは丸印の日付の記載があります。ただ、この「右領収いたしました」という左に日付の記載欄があるのに、ここは八枚とも全部白紙です。全然ありません。それから、名前の記載はありますけれども、その下に捺印はありません。いずれも自由民主党あてになっております。

 私も弁護士ですけれども、杉浦さんも弁護士です。こういうお金や物のやりとりについて、後日のことを考えると、領収書をとることがもちろんたくさんあるわけです。裁判などでは、この領収書の存否あるいはその成立というのは実に重要な意味合いを持ちます。政治資金規正法でも、領収書をとるべきところについては、日付、金額、氏名、これを明記するということが義務づけられています。

 ところが、弁護士であって、この領収書の重要性あるいは作成のことについても十分熟知しておられる杉浦さんが、日付の記載をしない、しかも、この使途、あるいはこの金の性質、これはただし書きのところに書かれるべきところですけれども、ただし書きのところも全部白紙になっている。一枚だけたしか政治活動費というのが、これは七枚目ですけれども、「五百萬圓」、「政治活動費」、これは平成十五年の十月十日の分ですけれども、それ以外はない。

 これは、杉浦さん、どうしてですか、どうしてここを記載しなかったのか。あるいは、あなたにこの金を渡した自民党の側から、この点は記載しないようにということを言われたんですか。この点、どうです。

杉浦内閣官房副長官 お答えをいたします。

 この筆跡は、明らかな私の筆跡でございます。私が書いたものでございます。印鑑をつくよりも何よりも、最も確実なものでございます。

 日付を書かなかった、ただし書きがないという点でございますが、サインをして受け取って、これを書いてほしいとかいう趣旨はお話がございませんでしたので、事務をやっておられる方が後で書かれるのかなと思ってサインだけで受け取ったわけでありますが、今後は、受け取る際には日付を入れたいと思っております。

 なお、昨年の秋からはこれは振り込みになりまして、党の方から党の支部の方へ振り込まれるようになったと承知をいたしております。

佐々木(秀)委員 杉浦さんにまだまだいろいろお尋ねしたいのですが、だんだん時間がなくなってきました。

 そこで、実はこの間、同僚議員が閣僚の何人かの方々について、いわゆる氷代、もち代などについてはどうなんだと言ったら、受け取っていないというお話がございました。しかし、私ども聞いているところでは、そういうものが会派によっては出されていて、受け取っているというところもあるようです、率直に語ってくれるところもあるようですが。

 今津副長官、私と同じ選挙区で親しいんですけれども、たしか平成研の会員さんだと思いますが、あなたは、その会派からもち代、氷代を受領したことはございますか。簡単にお答えください。

今津副長官 私は平成研究会に属しておりますけれども、今お尋ねの件でありますが、いわゆるもち代、氷代、いただいておりまして、法に沿って報告をいたしております。

佐々木(秀)委員 非常に率直にお答えいただいたわけですけれども、どうも森派の皆さんというかそちらの方では、この間は、全部受け取っていない、これは閣僚だからということなのかとも思うんですけれども。しかし、私どもの調べでは、いろいろお聞きをしたところでは、そのほかにも選挙の年には陣中見舞いなどがあって、この陣中見舞いについてはもらっているという方もあるようなんですね。

 例えば、町村外務大臣、この間はもち代は否定されましたけれども、選挙のときの陣中見舞いは、これは会派からは受け取ったことはありますか。

町村国務大臣 清和政策研究会から、選挙に関していただいておりません。

佐々木(秀)委員 陣中見舞いについてはあるということですね。

 こういうことについてもまたこれからフォローしていきたいと思うんですけれども、いずれにしても、時間が大分なくなりましたけれども、まだまだ杉浦さんの問題についても、それからまた、各会派あるいは自民党から所属の議員の皆さんに対する活動費の支給、特に自民党からそのときの幹事長さんに対する政策活動費の支給、これがもう相当頻繁に、しかも多額に行われている。その使途の問題なども本当はいろいろ問題があるところだろうと思います。

 そして、私どもとしては、政治資金、これを何といっても透明なものにしなければならない。そこで、さきに政治資金規正法の改正案も提案しているわけですけれども、上限を明らかにすること、何よりも迂回献金をやはりなくさなければならない、こういう思いを持っておりますので、これについても今後しっかり議論していきたいと思います。

 時間がなくなりました。どうも私は、最近の世相を見ておりまして、世の中もそうですし、それからまた政治もそうだと思います、今の政治と金の問題をめぐってもそうですが、道義あるいは道理、これが非常に廃れてきているんじゃないかと思えてなりません。犯罪などについてもそうですし、それからまたおれおれ詐欺、振り込め詐欺なども、これは従来考えられないようなこと。しかも、これが災害の被災地の方々までターゲットにしてこういう犯罪が行われるなんて、とんでもないことだろうと思いますけれども、しかし、政治の場面でも、私は道理そして道義ということが必要だろうと思います。

 私は毎年、私の後援会の会報に二文字または四文字熟語を出しておりまして、そういうことを考えてことしは世道人心と書いたわけですけれども、この辺について、政治資金の透明化、はっきりさせることなどを含めて、総理としてはどんなお考えを持っていますか。

小泉内閣総理大臣 政治資金規正法にのっとってきちんと適切に記載すべきは記載する、法律を守るということが何よりも肝要だと思っております。

佐々木(秀)委員 といいながら、実は実態は、今の議論の中でも出るように、それから、これからもまた出るように、法律にのっとっていないところがあるからこういうように問題になっているわけですね。国民の皆さんからも大きな不信がわき起こっているわけですから、これを、やはりきちんと真相をただし、そしてそれに対する対応を立てていくというのが私たち政治家の責務だと思いますので、どうかひとつ、これからも質問に対しては逃げないでしっかりと答えていただきたい。そして、早く政治と金の問題をめぐる集中審議を設定するようにぜひお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

甘利委員長 この際、辻惠君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 本日は、政治と金の問題について、主に総理に対して質疑をさせていただきたい、このように思います。

 まず、冒頭でお願いしておきたいことがございます。

 例えば、第二東京検察審査会が不起訴不当だという結論を出したことについてどう思うのか、それは議会で論議をすればいいことだというようなお答えがあったり、また、それは検察庁が判断すべきことだというお答えがあったり、また、橋本元首相の喚問については、それは議会で議論されているからそれにゆだねるんだというお答えがあったり、そしてまた、収支の問題、政治献金をめぐる収支の問題が問題になったら、それは政治資金規正法にのっとってやっているんだからいいんだ、こういうお答えをされている。

 これじゃ議論にならないんですよね。何が問題であって、それについて総理の立場で、問題点が何、そして、どうそれを克服していかなければいけないのか、何をどう解決していかなければいけないのか、そのために総理の立場でどういうリーダーシップをとろうとするのかという、御自分の姿勢をはっきり言わなきゃだめなんですよ。

 だから、そういうお答えをぜひしていただきたいということで、私も質問、少しは工夫をして、そういうお答えをいただけるような質疑をしたいと思いますのでよろしくお願いしたい、このように思います。

 まず、お手元に配付しております資料の一―一、お手元に資料がございます。これは先日、東京第二検察審査会が、これは永田議員と私あてにそれぞれ議決通知書ということを送ってきていただいたものであります。

 そのうちの資料一―一については、これは被疑者橋本龍太郎さん。この議決通知書の理由として何を書いているか。三、四のところをごらんいただければ端的でありますが、「会計責任者である瀧川が、有罪の判決を受けているのに、その会の代表者が嫌疑不十分では、国民の間では通用しないし、納得することはできない。」「なぜ、政治資金規正法が制定されたか、その理由を忘れてはならない。かつての内閣総理大臣が、その法律に違反している疑いがあるとすれば、司法の一翼である検察官は、臆することなくもっと掘り下げ広く捜査をすべきである。」このように述べております。

 資料一―二。これは被疑者は青木幹雄さんと野中広務さんであります。まず、青木さんについて、「議決の理由の要旨」の一の(二)のところで、「検察官は、被疑者青木をはじめ他の関係者からも再度捜査を仕直し、真実を明らかにすべきである。」野中さんについて、二の(二)のところの中段以降でありますが、「被疑者野中は、瀧川が、虚偽の収支報告書の提出をするにあたって指示を仰いだ幹部の一人であるので、瀧川と共謀したと考えられる。 村岡が、起訴されていることを考えれば、被疑者野中も起訴すべきである。」このように述べております。

 これは、国民の常識に沿った極めて妥当な議決の内容だろうというふうに思います。そういう意味で、非常に重たい意味を持っていると思います。

 まず、総理に伺いたいと思いますが、この問題をどう扱うのか、それは再捜査を命ぜられている検察庁の問題であろう。しかし、国民の常識に沿って物を考えるという立場からすれば、総理自身、この議決の内容について、やはり総理としてのお立場としての意見があり、リーダーシップを発揮する前提としての認識があると思うんですね。その点についてお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この資料によりますと、東京第二検察審査会が、今、辻議員が指摘されたような議決通知書を提出されたということでありますので、これは検察当局に対してこういう通知書を出しているわけですね。

 これに対して、検察がこれからどういう判断をするか、どういう捜査をするか、それを我々は待つべきではないでしょうか。

辻委員 だから、冒頭にお願いしたように、そういう話では、木で鼻をくくったような回答でしかないんですよ。

 これは、御自分の過去の発言をお忘れになっていないとは思いますけれども、司法改革の推進本部の本部長として、裁判員制度を導入するに当たって、国民の常識が司法判断に反映されるように裁判員制度を導入するんだ、こういうふうにおっしゃった。検察審査会もまた、一般国民十一人によって構成されているんですよ。そういう意味では、裁判員制度も検察審査会も、国民が参加して、国民の常識を反映できるそういう制度として設定されているわけであります。

 だから、そういうことからすれば、総理は、司法改革に当たって、裁判員制度導入に当たって、国民の常識を反映させるんだということをおっしゃった、そういう言葉を語った御自分の立場からいって、この判断について、国民の常識にこれは反するものなんですか。この点をお答えください。

小泉内閣総理大臣 私は、三権分立ということも承知しております。総理大臣の立場というものもわきまえているつもりです。

 今、司法の場で一つのこういう通知書が行われた、しかも個別の案件に対して、私が果たして指示できるでしょうか。これは、こういうことに対して、検察にこういう通知書を検察審査会が提出しているんです。あと検察当局がこれにどういう判断を示すか、その辺もぜひとも御理解いただきたい。私の最高権力者としての立場というものも御理解いただきたい。

辻委員 私は、検察庁に何らかの指示をしろとか、そういうことを言っているのではないんですよ。冒頭に述べましたように、この予算委員会でこの議論というのは、政治と金の問題を議論する、予算委員会であるから国会の立場として議論するために今ここでやっているわけですよ。ですから、例えば橋本元首相の証人喚問をどうするのか、これは政治家としてリーダーシップをとる立場で御自分の意見を述べるべきなんですよ。その前提として、この議決の内容についてどういう認識を個人としてお持ちなのか、このことを聞いているんですよ。

 国民の常識を反映させるという立場にお立ちでありながら、自分の都合の悪いと思われる結論については口をつぐむというのは、全く態度としておかしいんじゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、議論を分けて考えなきゃいけない問題だと思います。

 司法当局であります検察当局に対して、総理大臣が個別の案件に対して指示をすべきかどうかというお話と、それと、国会の場で与野党がこういう政治と金の問題につきまして、今与野党でそれぞれの提案をされて、現行でいいのかどうか、あるいは現行に改善策を講ずるべきかどうか議論されている最中であります。

 そして私は、政治家として、政治活動にはお金がかかるのは当然であります。そして、その政治活動を十分にするための資金をどのように国民から寄附なり献金を仰ぐか、資金を調達するかということと、その資金がどのように使用されるべきかという点については、政治資金規正法がありますから、現行法でどういう対処がなされるべきか、現行法で不十分だったらどのような改善策を講ずるべきか、これは議会で議論すべきだと。

 私はかねがねお話ししているんですけれども、政治活動は金がかかるからといって、献金が悪だからということでもって企業献金を禁止しろという議論もあるのを知っております。しかし、そういう点も含めて、これから与野党で、本当に税金だけで政治資金を賄うのがいいのかどうか、そういう意見もあります。私は、そういう意見も含めて、与野党で、政治活動を保障するための自由と、そして監視のための公正を図る透明性と、よくバランスをとって議論していただきたいと思います。

辻委員 司法に対して行政として容喙をしろなんということは一言も言っていないんですよ。ただ、政府の最高責任者として、今、政治と金が国民の大きな関心の的になっているわけですよ。その中で、明らかに常識的に考えて、お金を受け取ったところにいた三人が不起訴になって、その場にいない村岡さんが起訴になるというのは、これは国民の常識から考えておかしいんですよ。これについて、やはりもっと真相を解明して、何が問題なのかというのを政治の立場でやるべきことがあるんです。それは証人喚問であり、参考人招致なんです。だから、そういう観点で、総理の主導権、リーダーシップを発揮するおつもりがあるのかないのか、その点に関してお伺いしていたんですよ。ちょっと後で引き続いて御質問しますから、その点をまず申し上げておきたいと思います。

 それで、資料の一―三、これは東京新聞の一月二十八日の朝刊でありますが、橋本氏らの不起訴不当について、久間自民党総務会長、法律を知った人と知らない人の違いではないか、法律を知らない人なんだからこんな決定が出るんだと。だからこれは、言外にそれは妥当でないんだということを言っているんですよね。

 自民党は、裁判員制度を、やはりこれは導入に主導権をとって行った政党ではないですか。そこの総務会長が、まさに国民の意思を反映することに背反する、それに水をかぶせるような発言をしているんですよ。この点について、自民党総裁としてどうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 これは新聞の報道ですから、私は、本当に久間氏がこういうことを言ったのかどうかは別にして、政治家ですから、いろいろな個人の自由の意見はあると思います。これはこれとして、個人がどういう意見を発表しようがそれは自由だと思っております。

辻委員 政治と金の問題について、これは国民の関心事を究明するのかしないのかということが問題になっているときに、自民党の総務会長がこのような水をかぶせるような発言をしているというのは、これは極めて重大な問題ですよね。しかも、総裁の立場で、それは言わせておいていいんだ、自由だ、こういうことをおっしゃっている。全くリーダーシップがないじゃないですか。見識を感じることができないということ、極めて問題だというふうに思います。

 さらに問題は、議決通知書の中でも書かれておりますが、東京地検特捜部がこの案件について受け持った。しかし、検察は憶することなく再捜査をせよというふうに議決通知書にあるように、検察庁は最初から結論ありき、形式的に野中さんや青木さんを調べて、結局はスケープゴートに村岡さんを当てはめたということが、本当にある意味では見え見えなんですよね。そういう疑いを持たざるを得ないような状態なんですよ。だから、東京地検特捜部が再捜査をするとして、本当に適正にみずからの職務に忠実に権限を行使するかどうか疑わしい。

 それに関連して、資料の一―四を見ていただきたいのですが、現にここにその証左があります。東京地検特捜部の井内特捜部長が、マスコミはやくざ者より始末に負えない悪らつな存在だということを言っている。そして、週刊誌に、これは週刊誌の二誌にも出ておりますけれども、この特捜部長は日歯連を手がけたというふうに書いてあるじゃないですか。橋本、野中、青木さんの不起訴を決定したのは、実質上は東京地検特捜部であります。その特捜部長が日歯連問題を手がけていて、そして、マスコミはやくざ者より始末に負えない、事前にいろいろなことを言うから捜査がやりにくくて仕方がないんだ、こういうことを言っている。極めて傲慢な体質であります。この東京地検特捜部に、今回の検察審査会の議決を受けて、再捜査がゆだねられることになるんですよ。

 こういう中で、南野法務大臣、この井内特捜部長に対して、特捜部長が謝罪をした、そして穏当に欠ける部分があったというふうに言った、だから注意をされたという趣旨の記事になっております。改めて捜査を始めるに当たって、しっかりとやる、厳正中立に、このようなことについて反省してやるというような指示をされたんですか。一般的指示は法務大臣としてすべきだと思いますが、いかがですか。

南野国務大臣 御指摘の文書は、捜査をする上で障害となる報道は避けていただきたい、そのような気持ちから書かれたものだと聞いております。その内容が事件の捜査や指揮に関係するとは私、思っておりません。しかしながら、表現に穏当を欠く部分があったということは事実でございます。

 東京地方検察庁においては、御指摘の議決を踏まえまして、必要な捜査を行うものと承知いたしております。

 以上です。

辻委員 法務大臣がそんな態度で事にかかわっているとすると、極めて問題ですよ。この問題は、時間をとって別にまたただしていきたいというふうに思います。

 それで、総理に伺いたいと思いますけれども、この政治と金の問題、そしてとりわけ今やみ献金問題として問題になっているこの問題、これは国民の関心も高い、政治の場でも重要な問題と私は思いますけれども、重要な問題だという認識があるんですか。重要な問題だという認識がおありだとすれば、どういう意味で重要だとお考えになっているんですか。端的にお答えください。

小泉内閣総理大臣 政治と政治資金、これはもう表裏一体といいますか、政治活動には、政治資金なくして政治活動はできませんから、これについて、どのように政治資金を調達するか、そして使用するかという点については、私は、今後とも、与野党胸襟を開いて、規制も大事です、政治活動の自由を保障することも大事です、これは十分考えていただきたい。

 そして、現実にどういう事項を記載すべきか、記載する必要がないかの点についても、十分与野党、どちらも政権をとる可能性があり、どちらも野党になる可能性があるんです。そして、政治資金というのは国民から拠出をいただかないと、健全な政党は生まれないんです。税金だけで政治活動を賄うなんて、これは無理なんです。

 そういうことを考えますと、共産党は政党助成金を受け取ることを拒否していますよ。そういう政党もあるんです。そういうことも考えて、率直に、規制と自由活動を保障すること、両面から冷静に慎重に考えていただきたいと私は思います。

辻委員 政治と金の問題がどういう意味で重要なのかということについて、時間の関係がありますから、ちょっと簡単に私の方の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 これは迂回献金の問題ということで、やはり政治資金規正法違反で不起訴になった元宿仁さん、そして佐藤勉衆議院議員の問題について、今また東京の検察審査会に審査申し立てがされている。これは私どもが改めてまたやっている例なんですけれども、その審査申し立ての事実を簡単に述べますと、二〇〇一年の十一月二十日ごろに、日歯連の常任理事である内田裕丈さんが自民党本部を訪れて、元宿さんのところに三千万の、茶封筒に四つ、一千万、一千万、五百万、五百万という茶封筒を四つ持っていった、そのうちのすべてに名前が書いてあったらしいんですが、わかっているのはその五百万の茶封筒の上に佐藤勉さんの名前を書いていた、このように報道されているわけであります。これは、結局、元宿さんのアドバイスで、国民政治協会に入金になって、そして自民党を通じて、経て、そして御本人たちの手に渡ったというふうに今言われております。

 これは何のためにこういう話になったのかというと、当時、歯医者さんのかかりつけ初診料の請求要件を緩和するということが非常に重要な日歯の側の政策要求課題になっていて、それを依頼していったわけなんですね。

 これについて、佐藤勉議員は、当時厚生労働政務官で、二〇〇一年の十一月一日には勉強会の場に厚労省歯科担当者を呼ぶ、十一月三十日には政務官室に担当者をまた呼ぶ、そして、二〇〇一年の十二月にはホテルの会議室にまた幹部を呼んだということになっているわけであります。その結果、かかりつけ初診料の請求要件が非常に緩和をされた、こういう事実が存在します。

 ちょっとパネルを見ていただきたいんですが……(発言する者あり)報道によればというふうに言っております。そして、審査申し立ての内容について申し立てをしております。これは資料の三―一でありますけれども、結論的に申し上げますと、平成十三年度から十四年度、かかりつけ歯科初診料が、結局、年間点数が、平成十三年度二十一億、それが平成十四年度には百七億にふえて、そして年間初診料が、千五百四十億から千八百二十億、二百八十億ふえたということが明らかになっているわけですよ。

 結局、この年、日歯連から、これは資料の三―二、これが十一月二十日の三千万円でありますが資料の三―二、この三千万を初めとして、この二〇〇一年には日歯連から国民政治協会に四億四千万の政治献金がなされているんです。

 四億四千万政治献金をなしても二百八十億売り上げが上がる、これが政治献金をなす動機になっているわけなんですね。これが政治と金の重要な問題なんですよ。巨額の政治献金を行う、それによって、特殊利害だと思いますが、その利害に基づいた政策がゆがめられる、そういう政治のシステムが問題なんだ、それが、どう解決していくのかということが今問われているわけなんですよ。

 これは、日歯連の問題だけではなくて、医師、歯科医師、薬剤師、そういう業界だけで年間三十数億の政治献金がなされているということが言われております。こういう巨額の政治献金によって政策がゆがめられる、それがこの政治と金の根本問題なんですよ。

 この点についての認識があれば、人に任せるとか、リーダーシップをやはりこの点について発揮しないというのは、みずからの政治責任が問われる問題だと思いますよ。この点を指摘しておきたいと思います。

 しかも、問題なのは、これが巧妙な迂回献金という形を通してなされている点であります。

 これは、(パネルを示す)石原さんには申しわけないけれども、自民党東京都第八区選挙区支部の石原伸晃支部長の支部に、二〇〇〇年から二〇〇二年にかけて、八日から二十日の間に、日本歯科医師連盟から国民政治協会、自民党本部、そして石原さんの東京第八支部にお金が流れている。これは同じ金額がそのまま流れてきません。だけれども、こういう趣旨で流れてくるんです。

 先ほど、このパネルで、領収書の右の上に番号が四つ書いてあります。これは、この番号で日歯連が伝票を切っていて、だれにこれを渡すということで指定したのかということが、書いたんだということを臼田、内田両氏は供述しているんですよね。だから、そういう意味で、鈴木宗男さんもまた、指定献金というのは自民党の中では常態化していたということを新聞でも言っておられますし、集まりでも言っておられる。

 だから、武部幹事長に指示をされて、迂回献金の問題について、迂回献金があるのかないのかということについて調査を指示して、迂回献金はないというふうにおっしゃいましたけれども、こういう事実、これを言葉として迂回というかどうかはともかく、こういう金の流れの実態があるということについて、総理としてはどのようにお考えなんですか。それをそのまま放置していいというふうにお考えなのか。この点はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 この問題については、今までも御指摘をいただきましたから、幹事長のもとで、国会や報道で取り上げられた件に関して、資料の収集や聞き取りなどを行って調査を行ったと聞いております。調査の結果、自民党が政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はないという報告を受けております。

 先ほど辻議員は、政治資金の話で、献金を受けて、それを受けて政策がゆがめられたという話がありました。それは、政治献金をする団体、組合はたくさんあります。これは先ほど話がありました教職員の組合でも、特定の人に対して、あるいは特定の団体に対して献金をしている。そして、どの政党だって、支持する団体が自分たちの意見を反映してほしいと思って政治献金するということは、政治資金規正法で違反ではないんです。禁止されていないんです。(辻委員「どういうリーダーシップを発揮するかですから。床屋談義しているんじゃないんですよ」と呼ぶ)私、床屋談義なんか全然していませんよ。(辻委員「では、リーダーシップを発揮する内容を言ってください」と呼ぶ)よく、丁寧に答えろと言っているから答弁しているんですよ。

 それで、政治献金する人の立場にも立って考えてくださいよ。自分たちの意見をよく聞いてくれる候補者、よく聞いてくれる政党、これに政治活動を応援するために献金したいと思う気持ちも、私は十分わかります。組合もあります。企業もあります。それも認められております。団体もあります。それについて、ゆがめられたかどうかというのは、それはまた全く別の問題でしょう。

 どのような候補者だって、自分の選挙区の有権者の言うことを聞かないで当選できますか。そういうこともあるんです。民主主義というのは、いかに国民の要望にこたえて、政治資金を集めるか、使うか。候補者の、要求にこたえて支持を集めるか。そういうのが民主主義の政治家であり、政党なんです。

 どこまでそれが許されるべきか。献金の額は上限はどうあるべきか、そしてどのような形で、どういう団体が、個人が、企業が、組合が、その政党に対して献金をしたかというようなことは、記載すべきは記載すべしということを、今の政治資金規正法でもなっているんです。そういうことに対して率直に議論をしていただきたいと私は言っている。

 辻議員が質問したから私は答えているんですよ、今までの。余計なことは言うな、床屋談義は言うなと、私に対してはかなり失礼なことを言っているけれども、私がちょっと批判すると、けしからぬけしからぬと野党の諸君は言っている。それはやはりよく、私は丁寧に質問に答えているつもりですから。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。

辻委員 この問題は、もっとしっかり、いろいろな立場で議論したいと思います。だから、集中審議をぜひ、政治と金の問題について保証していただきたい、このことを要請しておきたいと思います。

 そして、最後の質問でありますが、杉浦官房副長官について、先ほど、訂正と再訂正の内容について御説明がありました。二〇〇三年の分についてはこのパネルに書いておりませんけれども、二〇〇〇年から二〇〇二年について整理してまいりました。

 まず伺いたいのは、清和政策研究会からの五百万と二百万は削除した、これは自民党から政策活動費としてもらったという趣旨です。自由民主党本部からの一千万と三百万、これについて、一千万のうちの五百万は公認料だけれども、残りの五百万と三百万は政策活動費だという御説明でした。

 一方で、自由民主党本部の収支報告書を見れば、この年に、二〇〇〇年五月十八日に三百万、六月二日に五百万、二〇〇〇年十二月十二日に三百万、これをもらっているというふうになっておりますけれども、この事実については、杉浦副長官、どうなんですか。そして、領収証はどうなっているんですか。また、一千万の領収証はどうなっているんですか。お答えください。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 清和研からいただいてまいった党活動費を削除したのは、そこに記載してあるとおりでございます。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。傍聴席からの発言は控えてください。

杉浦内閣官房副長官 ちょっと静かにしていただきたいと思いますが。

 それで、先生、御記載されているとおり、自民党本部からちょうだいした一千万円のうち五百万円は、公認料でございましたから削除した、再訂正した、そのとおりでございます。

 それで……(辻委員「受け取ったかどうかだけ答えてください」と呼ぶ)受け取っております。右の方も、両方とも受け取っております。(辻委員「これも受け取っているんですか」と呼ぶ)おります。受け取っております。両方とも受け取っております。

 それで……(発言する者あり)ちょっと待ってください。私の政治資金収支報告書に記載していない分が、一番、二〇〇〇年五月十八日、三百万円は記載してございません。党活動費として適切に使わせていただきました。

辻委員 時間がありませんから、じっくりこれは議論したいところでありますけれども、前回、副長官は永田議員の質問に対して、返すことが予定されていないお金だという説明を受けたというんですよ。返すことは要らないお金だという説明を受けた。具体的に、臨場感ある具体的な言葉で言っているんですよ。政策活動費だという話はどこにも出てこない。そして一方で、七百万、四百万、四百万については、これは政策活動費として受け取った、明確に趣旨を区別して述べているわけなんですよ。

 それを今になって政策活動費だと言うのは、これは明らかにおかしい。前回、職を賭して述べたことが全く間違いなんですよ。それは、本当に誠実であれば、みずから職を辞するぐらいの覚悟があってしかるべきだと思います。

 それから、最後に一点つけ加えますが、先ほど、この二〇〇〇年六月というのは総選挙の直前なんですね。それで、清和研と書いてあるこの五百万、二〇〇〇年六月五日、そして自由民主党からの一千万、これは二〇〇〇年六月五日、そして、右の方にある二〇〇〇年五月と六月の三百万、五百万、これは全部合わせると二千三百万ですよ。

 これは手元に、資料の四―二、四―三でお配り申し上げておりますけれども、選挙の収支報告書、これは、二〇〇〇年の選挙について杉浦さんは、千四百八十八万の収入で、千四百八十八万の支出になっている。

 資料の四―三、これを見ると、二〇〇三年のこの選挙区の法定選挙費用は二千五百四十九万三千百円なんですよ。五月、六月に受け取ったお金は、これは選挙資金として使っているのは明らかじゃないですか。そうすると、ここに書いておられる千四百万以外に千五百万を足すと三千万、明らかに法定選挙費用を上回る選挙活動をやっておられたということになるわけです。これは公選法上、当選無効になる事案ですよ。この点も含めて、さらに私は追及をしていきたいということを申し上げ、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

甘利委員長 この際、生方幸夫君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方でございます。

 大変与党席が騒がしいんですが、我々が何で今政治と金の問題を論じているのかというと、これは政治の信頼の問題なんですね。やはり政治が信頼されていなかったら、幾らいい政策を掲げても国はよくならない。

 本当に、国会が開催されるたびに、残念ながら、私はここで政治と金の問題を取り上げているんですよ。私、政治家になって九年になりますけれども、毎年国会が開かれるたびに、政治と金が論じられない国会がないんですよね。そのたびに国民の政治に対する信頼がどんどん低くなっているんですよ。小泉さんが幾ら改革だというふうに意気込んでも、国民が政治を信頼していなければ改革などできるはずないんですね。だから我々は、ここで政治と金について徹底的に論議して、国民の皆様方の政治不信を晴らそうというのが我々の目的なんですよ。

 そこをあなたは誤解して、さも自民党を攻撃されているとか私を攻撃されているとかいうように誤解されて皆さん方いろいろやじを飛ばすんですけれども、そうじゃなくて、一番肝心なことは、この論議を通して政治の信頼をいかに取り戻すのかという観点から私も質問いたしますので、総理もぜひそうした観点から、誠意あるお答えをいただきますようにお願い申し上げます。

 今、辻議員からも質問がございました。何でこうしたことが問題になるのかというと、例えば日歯連の問題にしても、今、辻議員が指摘をしましたように、四億数千万円の政治献金がなされた、これは事実です。それからもう一つの事実として、歯科医師政治連盟が、初診料に絡んで、これを緩和してくれ、少しでも初診料を高く上げてくれというふうに要望していたのも事実です。それで、現実に二百八十億円余りのお金が前年度よりふえたのも、これも事実です。この三つは事実なんですね。

 この事実の間をどう結ぶかというのは我々の想像力なんですけれども、普通に考えれば、さっき総理がおっしゃったように、自分の好きな政党だからお金を渡す、そういう方もいらっしゃるでしょう。だけれども、そうじゃなくて、自分の利害をきちんと、よりよく実現してくれるためにお金を渡そうということで、数々の贈収賄事件が起きてきたんですよ。現実に起きてきたんですよ。この日歯連の事件だって、現実に逮捕されているという事実があるんですよ。

 だから、我々が指摘しているのは、献金によって政策がゆがめられるというようなことがあったら、これは大変である。これは政治の根幹、民主主義の根幹ですからね。だから、この問題をはっきりと国会の場で明らかにしなければ政治不信は取り除けない。そういうことで、我々は、証人喚問をぜひして、国民の皆様方の前に何とか政治不信を晴らそう、これが我々の目的なんですよ。

 だから、総理も、これは党と党で話し合っていることだということでいつもお話しになっていますけれども、政治不信をなくすということは総理にとっても非常に大事な問題だと思いますから、総理からもぜひ、この問題には前向きに両党で合議をしてほしいという発言をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

小泉内閣総理大臣 政争の具にならないように、証人喚問要求合戦にならないように、よくその点も考えて協議していただき、政治がどうあるべきか、そのような形で資するように、与野党でよく協議していただきたいと思います。

生方委員 総理から、多分前向きな答弁があったというふうに私は思っております。

 やはりこれは、政治の信頼を取り戻すという意味から、あるいは橋本元総理自身にとっても、ここへ来てきちんと話をすることが、もし本当に真実を述べるのであれば、私はその方がよりいいと思いますよ。今のような中途半端な状態で置かれるよりも、橋本さん個人のためにも、私は、出てきてきちんと話をするべきである。

 委員長におかれましては、ぜひとも、理事会の協議で、総理の発言も受けた中で、前向きに、証人喚問について、あるいは参考人招致について検討していただきますように、まずもってお願いを申し上げます。

甘利委員長 理事会で協議中でございます。

生方委員 それから、杉浦官房副長官はいらっしゃいますか。(発言する者あり)帰っちゃった。

甘利委員長 通告はされていますか。

生方委員 通告はしていないですけれども、官房副長官はいつもいるということの前提で。わかりました。では、それは官房副長官が戻ってから……(発言する者あり)ルールの問題じゃないでしょう、そんなものは。官房副長官が戻ってから質問をいたしますので、結構でございます。

 今、杉浦官房副長官はいらっしゃらないですけれども、お話をいたします。

 今の官房副長官の話、我々のこれまでの論議の話を受けましてどういうことがわかるかというと、真実は一つなんですね。

 先ほど平成研の議員の方がおっしゃいましたが、自民党の議員にもち代、氷代が配られていたというのは、これは事実であり、ほとんどの方が受け取ってきたわけです。ところが、小泉総理が、森派はこれまでもち代、氷代を払わなかったということを言ったのを受けて杉浦さんが自分の政治収支報告書を訂正したというのは、これはだれが見ても明らかなんですね。だから非常に無理があるわけですよ。我々は、そう安易に政治資金収支報告書が変えられたのでは、信頼しようがなくなっちゃうんですね。我々も総務省に行って一々あの分厚いものをめくってみたって、後でその事実が簡単に訂正されてしまうようだったら、あそこに書いてあることを幾ら調べても意味がなくなっちゃうわけです。

 だから、我々は、前の臨時国会で、政治資金規正報告書の改正案を出したんですね。その中の一項目に、我々が臨時国会に提出した改正案では、百五十万円を超える寄附を行って、それを過失によって訂正した場合は、これは重過失とみなして罰則を設けているんですね。これぐらいしないと、杉浦さんのように、一回変えて、また間違えていたからまた変えるというのに対しては、これじゃ全然収支報告書を出す意味がなくなってしまうんですよ。

 総理、これは自民党も出しているんですよ、政治資金規正法の改正案を。ところが、百五十万円を超える過失については、我々は罰金を科すというふうになっているんですが、自民党案ではそれについて何にも触れられていないんですよ。

 私は、やはり政治資金報告書の信憑性というのを高めるためにも、間違えた、百五十万というのは普通の方にとったら非常に大きな額ですよ。その額を普通だったら間違えて記載するはずがないわけで、それ以上の額を間違えて記載した場合は、これは過失ではなくてやはり重過失とみなして罰金を科すぐらいのことを私はするべきだというふうに思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 必要な事項は正確に記載するというのは、私は当然だと思っております。どういう点が現行法で問題か、あるいは改善すべきかという点について、それぞれの党で案があると聞いております。よく協議していただきたいと私は思っております。

生方委員 今の問題なんですけれども、政治資金規正法というのがどういう目的でつくられているのか。これは総理には釈迦に説法のような感じですが、「基本理念」の中に、政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければいけないというふうに書いてございます。

 質問なんですが、先ほど来問題になっております政治活動費、政策活動費とも言われますが、総理自身もこの間お認めになられましたように、一億円。五千万円、五千万円で一億円の政治活動費をお受け取りになっていた。その使途について、総理は同僚議員の質問に対して、政治にはいろいろお金がかかるんだ、したがって、街宣車を買うのでも一億円かかってしまうこともあるじゃないかというような御答弁をなさいましたが、あの一億円は本当に街宣車を買うお金に使われたんですか。

小泉内閣総理大臣 あの質問と答弁をよく見ていただければわかると思います。政党の活動は、党によって違うけれども、いろいろお金がかかりますと。例えばの話です。党の街頭宣伝車を購入する際にも、自民党の場合は一千万円以上かかる街頭宣伝車も使っていると聞いております。個人によっては百万、二百万で使っている人もいるでしょう。例えば一千万円の街頭宣伝車を十台購入すれば、一億円、すぐ飛んじゃいます。自民党は、全国の都道府県に、街頭宣伝車、来てくれ来てくれという要請を受けています。全国の都道府県にそんなに回す台数もないし、お金もないから、そういう要求にはこたえられないから、あるだけで、必要なだけ、できるだけ党勢拡大に支障のないように提供している場合もあります。

 ですから、この前の答弁でも言いましたように、私に支給されている活動費というのは、また別のものもたくさんあります。記載すべきは記載すべき、記載する必要のないのは記載する必要はない。

 先日も、民主党も、かつての自由党も、三億、四億、五億、十五億の組織活動費を一議員にあてがっているでしょう。そういうことに対して、記載すべきことと記載する必要のない活動がどの党にもあるんです。そういう点があるから、では、どこまで必要なのか、どこまで必要ないのかという点は、政党の活動の自由にかかわることですから、これは各政党、共産党を含めて全部あることです。それをあたかも自民党だけが、記載されていないから不明なことがあるというのは、いかにも心外であります。

生方委員 私が言ったのは、この間総理がお答えになったのは、一億円を何に使ったんですかということに対して、街宣車を買うこともあるでしょうというようなことを例に挙げたわけですよ。(小泉内閣総理大臣「議事録を読んでください」と呼ぶ)いや、例に挙げたんですよ。私、ここで聞いていたんですから。

 そうしたら、そういうふうにちゃんと使途が明らかになるものだったら明らかにすればいいでしょうという、一億円ですから、一億円で、一億円だけじゃないわけですよ、後ほど質問いたしますが、非常にたくさんの政策活動費というのが出ているわけで、それがすべて党から個人に出たという形でやみの中に葬られてしまうというのは、先ほど申し上げましたこの理念の、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければいけないというのが基本理念なんですよ。基本理念に反しているんじゃないんですかということを私は聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 言っているでしょう、政党の活動のことを言っているんです、私は。政党の活動、コマーシャル、何秒やるかでどのぐらい費用がかかるか、皆さんわかっているでしょう。それも政党の活動費なんですよ。そして、それは、計上すべき、記載すべきは全部記載しているんですよ、収支報告書に。記載する必要のないのは記載しなくていいんです。

 だから、民主党だって一人の議員に何億円という活動費を提供しているじゃないですか。十五億円なんというのは私よりはるかに大きいじゃないですか。そうでしょう。私はもっと言いたいことがあるけれども言わないよ、ここは余り。余りほかの政党の活動に干渉するようなことは言いたくないから。資料はたくさんありますけれども、その辺は礼儀も心得て、言わないようにしておきます。

生方委員 私は最初にわざわざ言っているわけですよ。この論議を何のためにするのか、政治の信頼を取り戻すためにするということを最初に言っているわけですよ。

 それで、総理、いいですか、記載できないものがあるというふうに今おっしゃいましたね、政党活動はいろいろなものがあると。コマーシャルもあるし、街宣車を買うものもある。それは、街宣車もコマーシャルもきっと計上されて、国民が見て何にも疑問を持つことはないと思うんですよ。

 総理がおっしゃる、記載をする必要がない、それは政治活動の自由にかかわることだ、例えばこういうことについては記載をしちゃったらまずいんじゃないのという事例があればぜひ教えていただきたいんですが。

小泉内閣総理大臣 それは記載する必要がないから言う必要ないんです。民主党だってそうでしょう。五億、十億もらって、記載すべき必要がないから記載していないんです。

生方委員 いや、五億、十億もらったというのは一体だれなんですか。だれなんですか。何を根拠に言っているんですか。きのう最後にちゃんと、それはお金を返したと言っているじゃないですか。全然、政策活動費として使っているわけじゃないんですよ。事実と反するんですから、それは訂正してください。(発言する者あり)

小泉内閣総理大臣 何が事実に反するんですか。何が事実に反する……(生方委員「政策活動費の話をしている」と呼ぶ)では、質問してください。

生方委員 だから、今、政策活動費の話をしているんです。民主党のだれが五億、十億の政策活動費をもらったというんですか。

小泉内閣総理大臣 名前は言いませんが、民主党と自由党が合併する直前、二日前、平成十五年九月二十六日、民主党は自由党に対して二億九千五百四十万円を寄附しているという報告が出ている。そして、個人に対して、あと、まあ、この場で個人の名前を言うことは控えておかなきゃならない。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。

生方委員 だから、事実じゃないんですよ。

 党から党に行ったお金の話をしているんじゃなくて、今、小泉総理に私が聞いているのは、自民党を通して小泉さん個人に入ったお金が政策活動費として計上されているそれについては使途は一切言わなくていいというふうになっているのに、今、総理がおっしゃった、民主党にも五億、十億もらっている人がいるだろうと言う。人じゃないんですよ。別に民主党を経由して政策活動費が出ているわけじゃないんですから。事実が違っているんですからね。

小泉内閣総理大臣 それでは、あえて質問ですから、言います。正確に言います。

 これは、民主党に合流した自由党は、平成十四年七月と十二月に、当時自由党幹事長だった藤井裕久議員、現在、民主党代表代行藤井裕久議員個人に対し、約九億七千万円と約五億四千万円、合計十五億を超える組織活動費を支給している。しかも、この組織活動費は、国民の税金から支払われた政党助成金が原資になっていると言われている。

 これは、支援者の自発的な寄附を原資とする自民党の政策活動費とは全く性格が異なっている。私はそういうことを申し上げているわけであります。(発言する者あり)

生方委員 支援者の自発的な寄附に基づく自民党のお金とは基本的に違うといったって、自民党にだって政党助成金は入っているじゃないですか。半分は一緒じゃないですか。半分入っているじゃないですか。どこが違うというのですか。

小泉内閣総理大臣 自由民主党は、政党助成金の使い方と、自由民主党自身が多くの個人や団体から、あるいは企業から献金を受けている使い方と区別しております。

生方委員 それは、同じように財布に入っているのに、どう区別しているのか、我々はわかりようがないじゃないですか。どうやってわかるんですか。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。静粛に。

小泉内閣総理大臣 それは、生方さん、政党助成金の使い方は極めて厳しい制限があるんですよ。党が独自に集めた資金の使い方と、国民の税金から政党に交付されている政党助成金と、使い方は違うんですよ。同じだなんて、あなた、そういう感覚を持って、ごっちゃにしないでくださいよ。

生方委員 それは、自民党が、先ほど申し上げましたように……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください。静粛に。

生方委員 国会が開かれるたびに逮捕者を出していたんですよ、自民党の議員が。だから我々は信頼できないと言っているんですよ。(発言する者あり)

甘利委員長 質問が聞こえません。静粛に。

生方委員 それでは、ちょっと観点を変えてお話を伺います。

 財務大臣に伺いたいんですけれども、政策活動費として個人に入りますね。(発言する者あり)政治活動費でもいいですけれども、個人に入ったお金。その後は、行き先は、これはもう政治活動だからわからないということになりますけれども、仮に残ったとすれば、これは個人の雑所得になりますよね。いかがですか。

谷垣国務大臣 政策活動費で受け取ったものを使い残したのであるならば、それは、委員がおっしゃるように、雑所得の問題になります。

生方委員 後ほど述べますけれども、非常に多額のお金が政策活動費として入るわけですよ。

 では、それを使い切ったのか、残ったのかというのは、だれがどうチェックするんですか。

谷垣国務大臣 一つは、これは、私、財務大臣としてお問いかけだと思いますから税の問題としてお答えいたしますと、個別の問題については、守秘義務が課せられておりますのでお答えできません。

 一般論として申し上げるならば、これはやはり平生から、徴税の公正公平を確保するためにいろいろな情報を集めております。

 それから、それぞれの方から、これは政治家とは限りません、いろいろな方から当然申告書というものが出てまいります。そういうものを突き合わせまして、そこに不審なことがあったり、あるいは課税漏れがないかというような疑惑がある場合には、適切に税務調査を行ったりして課税の公平公正に努めております。

 今後ともこういう方針で臨んでまいりたいと思っております。

生方委員 政策活動費というのは非常に額が大きいわけですけれども、では、その政策活動費についても調査をしているという認識でよろしいんですね。

谷垣国務大臣 必要なことはいたしております。

生方委員 もう一点、小泉総理にお伺いしたいんですが、これは総理に聞くと嫌な顔をするんですけれども、まだ政策秘書の車の問題についてはっきりした結論が出ていないんですよ。

 同僚議員が何度も何度も質問をいたしておりますが、政策秘書が民間会社から車と運転手さんの給与を支給されて、その方が使っている。それはその企業からの寄附に当たるのではないか、それを我々の同僚議員が何度も何度も質問いたしました。それに対して総理は、私の政治活動のために使用しているのではないから寄附には当たらない、したがって収支報告書に報告する必要はないというふうに言っております。

 しかし、政治資金規正法の四条には、御承知のように、民間会社から長期にわたって自動車と運転手給与を肩がわりさせて、それを政治活動に使っているのであれば寄附とみなされるというふうになっているんですよ。

 だから、それは基本的には総理が政治資金規正報告書に寄附というふうに訂正をすれば済む話なのに、何でそれを訂正しないんですか。これは寄附なんじゃないんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、私の政治活動とは関係がないからであります。

生方委員 よろしいですか。私のといっても、総理の政策秘書ですよ。

 政策秘書が活動するのは、だれのために活動するんですか。

小泉内閣総理大臣 これはよく法律を見ていただければわかりますが、政策秘書といえども個人の活動があるわけでありますから、政治活動をしている場合と、ない場合があるわけですから。それが政治活動に当たらぬ場合は、これは政治活動とは違うということでございます。

生方委員 政策秘書ですよ。

 では、総理、お伺いしますが、この方はその会社の社外取締役をやっているんですか。やっているのかもしれませんけれども、政策秘書は普通、私の政策秘書だったら、一〇〇%、私の政治活動のために活動しているわけですよ。総理の政策秘書は何%ぐらい総理のための政治活動をやっているんですか。

小泉内閣総理大臣 これはよく法律を見ていただければわかると思いますが、三十年の長きにわたって私の秘書として働いている者、これが、民間会社からこれを提供されている。私のための政治活動に使用したことではないんですから。ですから、私に対する寄附に当たるものではない。そして、法律をよく読んでくださいよ。必要な法にのっとった手続をとって使用しているんですから。

生方委員 総理、わかりやすく話をしましょう。

 我々には公設秘書が三人います。そのうちの一人は政策秘書です。政策秘書が何で置かれるのかといえば、我々の政治活動で、政策をつくる場合にそれをサポートするというのが目的で置かれているわけですね。総理の場合の政策秘書というのは、総理の周りにはいろいろなたくさんの秘書がいらっしゃるから政策をその方一人でつくるはずもないし、いろいろな方がサポートするでしょうけれども、もともと個人の、政治家小泉純一郎とすれば政策秘書は一人で、その方は小泉総理の政治活動をサポートするためにいるわけですよね。

 その方がふだん使っている車というのは、まさにそれは小泉さんの政治活動のために使っている以外の何物でもないじゃないですか。そうであれば、当然、民間会社からその方に車と運転手の給与が出されていれば、寄附として記載するのが当然じゃないですか。何でそれを寄附として記載するということを拒否しなきゃいけないんですか。

小泉内閣総理大臣 法律に違反していることを指摘されたならともかく、法律にのっとったものまでいけないと言われても、私は答えようがない。

 よく調べて、疑問があったらまた質問してくださいよ。さっきみたいに政党助成金とごっちゃにしているなんて、そんな間違った解釈をして質問されちゃたまらぬですよ。

生方委員 だから、総理、政策秘書でしょう。政策秘書は個人の活動はもちろんありますよ。個人の活動があったとしても、個人の活動が多くなれば、今度は政策秘書として国からもらっている給与がおかしくなっちゃうじゃないですか。そういうことにならないですか。

 当然、一〇〇%それは、兼業はある程度認められていますけれども、もともと政策秘書というのはその政治家のために活動するのであって、その政策秘書が使っている車が民間会社から貸与されれば、普通に考えればこれは寄附なんですよ。

 だから、何で寄附にならないのかということを私は問題にしている。別に罪を言っているんじゃないんです。政治資金規正報告書を記載を訂正すればいいじゃないか、これだけ言っているんですよ。

小泉内閣総理大臣 私は、法律にのっとってやっていることに対して訂正する必要はない。しかも、よく読んでくださいよ。政策秘書も兼業できるんです。ただし、その場合は手続が必要だと。必要な手続をしてやっているんですから、全く問題ない。

生方委員 だから、基本的に、常識的に考えていただければわかると思うんですけれども、総理の政策秘書が、総理のためにそれは働いているんですよ。その方の車と運転手さんが民間会社から提供されていれば、何もそんなかたくなに拒否をしなくたって、別に、寄附の、では、これは書いておけばいいじゃないですか。

 細田長官はそれで訂正したじゃないですか。何で細田さんが同じようなことをやって訂正していて、総理は訂正しないんですか。何でそれほど強硬に拒否するのか、私はわかりませんよ。別に、微罪ですから、そんなもの罪にもなりませんから。杉浦長官だって二度も三度も書きかえているんですから。

 総理だって、普通に考えれば、総理のお姉さんが政策秘書をやっていて、その方が車を使っていて、それは当然総理のために動いている、それは当たり前の話ですよ。そうしたら、それは、政治活動、小泉純一郎の政治活動のために使われているのであるから、普通に、ちゃんと法律を読めば寄附に当たるというのはこれは当たり前の話じゃないですか。何でそんなにかたくなに拒否をするのか、私はわかりませんよ。

小泉内閣総理大臣 私も、何で、法にのっとって必要なことをやり、必要な手続を踏んでやっているのに、あれこれ、いけないいけないと言われるのか、これも私はわかりません。

生方委員 私は最初にわざわざ断ったように、政治不信を何とか解消しなきゃいけないということでこの論議をしているんですよ。だから、そういう政治資金規正報告書の信憑性の問題なんですよ。そういうことが寄附というふうに書かれないんだったら、ほかにもいろいろな不正な寄附があるんじゃないかというふうに考えるから、私はこれだけ執拗に言っているんですよ。それでもなぜか答えられないというなら、これはもうしようがないですが。

 では、ちょっと話をかえます。

 総理、今、サラリーマンの方の小遣いは大体一カ月で幾らぐらいか御存じでしょうか。

小泉内閣総理大臣 サラリーマンもいろいろですから、給料を言われたって、それは二十万円の方もいるでしょうし二百万円の方もいるでしょう。それはいろいろです。

 日本におきましては、サラリーマンの状況も、最近は、終身雇用から、随分フリーターも出てこられましたし、会社の形態も違います。正社員といわゆるフリーターの給料も会社によって違います。そういう点から考えまして、サラリーマンの給与もいろいろだと思っています。

生方委員 給料じゃなくて小遣いを聞いたんですけれどもね。

 これは去年の十二月二十八日の東京新聞の記事ですが、サラリーマンの小遣いは、これはアンケートをとったものですけれども、だから全部が全部正確というわけじゃないですけれども、アンケートをとったところを見ると、四十歳で月三万八千三百円だそうです。サラリーマンの小遣いが三万円台に落ち込んだのは、八〇年以来二十二年ぶりだというんですね。バブルのピークのころには七万六千円あった。七万六千円あった小遣いが、もう今や三万八千三百円に減ってしまった。サラリーマンは、この少ない小遣いの中で非常に苦労しながら、昼飯を幾ら安いのを食べようかというような苦労をしているわけですね。

 そこでお伺いしたいんですが、総理は、総理になる前のほぼ一年間、森派の会長をなさっておりました。清和研の会長をなさっておりました。総理がちょうど清和研の会長をなさっていた一年、四月におやめになっていますから、その年の四月までの政治資金規正報告書でございますが、その一部を持ってまいりました。

 その中に、先ほど申し上げました「政治活動費」というのがあります。その中のまた「組織活動費」という、この赤く塗ったところでございますが、それが一億一千五百六十九万九千七百四十四円計上されております。

 これは、ちょうど小泉総理が総理に就任する前のときの組織活動費の一覧でございます。それが四月十三日から四月二十四日まで出ております。これは名前が余り出ちゃうとあれでしょうけれども、見ていただければわかりますが、ほとんどが食事代としてお金が支出をされております。

 私、総務省に聞きました。組織活動費というのは一体どういうお金ですかというふうに総務省の政治資金課に聞きました。そうしたら、総務省の答えは、組織活動費とは、一般的には組織を固めるために使うお金、ただ、何のために使うのかという解釈を総務省として示しているわけではない、また、使途についても制限はない、要は、公開をして国民の皆さんに判断してもらうしかないという返事だったんですね。

 私は何を言いたいのかというと、このように、たった、これは十三日から二十四日までの十一日間です。十一日間に二百二十九万円の支出がなされております。総理がちょうど会長をなさっていたときでございますから、この飲食費というのが組織を固めるために使われたという解釈でよろしいんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、私はこの収支について答弁する立場にないんですが、今の質問に答えて、組織活動費として十一日間にわたって二百万円の支出をして不自然じゃないかと。(生方委員「いや、不自然じゃないかとは言っていないでしょう」と呼ぶ)いや、組織活動で……(生方委員「飲食費に使われているのが組織活動費というのでいいんですかと言っているんです」と呼ぶ)だから、組織活動費として飲食費に使われるのはいいですかと。いいんじゃないですか。何で悪いんですか。組織活動で大勢の人と例えば食事する、弁当を食べる、何でいけないんですか。

生方委員 私、国民の常識との乖離を言っているわけです。先ほど申し上げましたように、サラリーマンの方は、四十歳で小遣い三万八千三百円で苦労してやっているわけですよ。そういうときに、これは一回につき二十七万とか十六万とか二十万とかというお金が、組織活動費というお金で、政党活動のお金として出ているんですよ。こういうことが、政治家の不信を招いたり、政治活動に対して不信を招いたりしているんですよ。これは何もここの部分だけじゃなくて、ほかにもみんなこんなような格好で出ているわけですよね。

 だから、これはやはり、私は、組織活動費というのであれば、飲食代ばかりが組織活動費というのは幾ら何でもちょっと、まあほかの部分も、印刷代とか一部は入っておりますが、それは幾ら何でも、一般の国民の常識から考えれば、飲食代イコール組織活動費というのは常識にそぐわないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これはまたおもしろい質問をされますね。

 民主党も、組織活動費で弁当も食べないで、食事もしないで組織活動なんかするんですか。私は、人間関係の潤滑油として、たまには食事もする、お酒も飲む。それは政党活動としても人間関係としても、活動費として普通のことじゃないでしょうか。

 ただ、額の多い少ないというのは、それはサラリーマンのお小遣いと政党の活動、政治活動とはおのずから違いがあるじゃないですか。それをサラリーマンの小遣いと同じように、政治活動、組織活動、弁当代が違うからおかしいと。これも、私もちょっとわからないですね。

生方委員 だから、その感覚がおかしいんですよ。普通で考えれば、私だって、それは食事もすれば飲みにも行きますよ。だけれども、それは自分のお金ですよ。こんな、政治活動費で組織対策費なんて形で計上したりはしませんよ。それをするのがおかしいと言っているんですよ。自民党はそういう体質になっちゃっているから、我々はクリーンな体質に変えるように政権交代しなきゃいけないと言っているんですよ。そこがおかしいんだと言っているんですよ。いいですか。

 それでは、もうちょっと、先ほど同僚議員が示そうとして示さなかった部分があるんですけれども、政策活動費ですが、これは、山崎拓元幹事長への自民党政策活動費というものの一覧がここにございます。

 平成十三年五月一日から平成十五年十月十八日まで。先ほど杉浦正健官房副長官がお出しになった領収書と同じものがここにもたくさんあるんですね。全部、三千万円、三千万円、三百万円というような形で、これだけたくさん領収書がございます。これが、平成十三年から平成十五年までの三年間で、百十七回、計十九億五千八百四十万円あるんですね。

 これが、先ほど申し上げましたように政策活動費でございますから、一切使途について明示をする必要がないお金なんです。私は、このことを聞いたとき、あの機密費のことを思い出しましたね。官房機密費や外交機密費。これも同じ、同じよりかもうちょっと額は大きい額が出ているんだけれども、中身については一切論じられることがなかった。だから、そこにいろいろな不正が発生したという反省が我々にはあるわけですよ。

 したがって、総理にお伺いしたいんですが、先ほどから総理は、政治活動の自由との関連もあるんだから全部が全部縛る必要はないじゃないかと。それは一理あることは私も認めますが、政党活動費、政治活動費という形で余りにも多額なお金が、使途が一切明らかにされないまま出ていくというのは、やはり私はおかしいと思うんですよ。あのときも、あの機密費の問題を論じたときも、それでは、できる限り透明にできる部分は透明にしていこうというのが結論として出ました。

 総理、やはりこの政治活動費というのも、総理も先ほどおっしゃいましたように、それは透明にできる部分は透明にしていった方がいいというふうなお考えであれば、やはりある程度の基準を示して、この部分は記載しなければいけない、この部分は記載しなくてもいいという程度の基準を、私は、余りにも多額であるから設けるべきだというふうに思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、今、山崎拓さんに対して十何億……(生方委員「十九億」と呼ぶ)十九億支給されている、これは活動費として。また、先ほど言いました、野党に対しても一個人に対して十五億を超える活動費を支給した。それ以上記載する必要はないと。

 それで、今の法律ではそうなんです。自民党だろうが民主党だろうが共産党だろうが、これ。だから、これがいいかどうかというのは今後よく議論してくださいよ、政党として率直に。どこまで政党の自由が保障されるのか、どこまで明らかにした方がいいのか、これはよく議論していただきたいと思いますね。

生方委員 議論はもちろんしますが、自民党総裁としての小泉総理は、自民党総裁としてこのままでいいというふうに思うのか、やはり議論をしてきちんと変える方がいいというふうに思っているのか、お答えいただけますか。

小泉内閣総理大臣 私は、この政治資金規正法にしても記載方法にしても、実際事務を担当している人に伺うと、煩雑過ぎるという声を聞きます。これは各党同じだと思います。ですから、どこまでが必要か。そして、政党の活動は確かに表に出せない部分もあるというのは民主党も御存じだと思います。相手の立場がありますからね。すべてを出せばいいというものじゃない。献金だってそうです。自分の名前を出したくないという献金したい人もいるわけです。

 そういうことも含めて、何が問題で、どう改善していくかということは、与野党率直に、政党をどうやって育てるかという面と、どうやって信頼ある活動をするかという両面からよく考えていただきたいと思います。

生方委員 いや、だから私がもう再三言っているように、政治の信頼をどう取り戻すのかという観点から質問しているわけですからね。

 だから、常識に照らして、二十億も三十億ものお金について使途が一切問われないとなったら、それはやはりおかしな使い方をされる危険性もあるじゃないですか。総理がそれを、もちろんそれを奨励しているわけでも何でもないのはよくわかりますけれども、私は、総理の考え方として、やはり機密費だって見直したんですから、この活動費についても、全部が全部今のままでいいわけじゃないんですから、総理としてのお考え。やはりこれはちょっと見直すべきじゃないのかというような意見がいただければ、それは政党間で協議するときに、ではそういう方向で話をしようじゃないかということになるので、そこを聞いているわけです。

小泉内閣総理大臣 私は、どの点を改善すべきか、また、どの点を記載すべきか記載すべきでないかという点についてよく議論していただきたい。

 私は、実情、この収支報告している担当者でもありませんし、実際の事務はどうなっているのか、率直に言って余り詳しく知らないんです。記載する必要のあるのは記載する、報告する。そういう法律にのっとってやらなきゃならないから、それはきちんとやるように指示しておりますし、その監督責任も私にもあると承知しております。

 そういう点については、今どういう点を改善すべきかということは、与野党、お互い政治活動には資金も必要だし、そして記載しなくてもいい活動もあるわけですから、その点は、私は率直に、政争の具にしないで、よく話し合っていただきたいと思います。

生方委員 だから、わかりづらいのは、自民党を通して小泉総理に渡るとか、山崎拓幹事長に渡るとかという形で政策活動費になるわけですね。我々が日歯連のときに指摘したように、自民党、国民政治協会を通して迂回してある政治家に渡る。要するに、党とか党の資金団体を一回マネーロンダリングみたいな形にして使っているんじゃないかという国民の疑惑があるわけですよ。

 総理は再三迂回献金はないというふうにおっしゃっておりますが、去年、鈴木宗男さんが、この近くの星陵会館で、我々も入って話をしたことがございます。新聞記者もたくさん来ていて話をしたことがございますが、鈴木宗男さんは迂回献金という名前は使いませんでしたが、指定献金というのはあったと。党を介して、だれだれに入れてくれという形で指定した献金というのはなされていたというふうに鈴木さんはおっしゃっているわけですよ。

 鈴木さんは総務局長も務められた方でございますから、これは私は正しいんじゃないかと思うんですが、総理が言っている迂回献金は一切なかったということと、総務局長であった鈴木宗男さんが、指定献金という形で党を通して口座に入ったことはありましたよということを去年の暮れ言っているんです。どちらかが間違えていると思うんですけれども、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、鈴木氏が何を言ったのか、承知しておりません。

 自由民主党は、資金規正法にのっとって、記載すべき事項は記載して、きちんと報告しているということを聞いております。

生方委員 私は、これは鈴木さんがここにいないので、どっちが本当のことを言っているのかというのは確認のしようがないんですけれども、少なくとも鈴木さんは、指定献金という形で自分のところにもお金が入ってきたことはありますということを言っているわけで、総理が言っている迂回献金は一切なかったということと矛盾しているということだけ指摘をしておきます。

 それでは、次の問題に移りたいと思います。

 日本振興銀行というのが去年の四月につくられました。これは、御承知のように、木村剛さんという、竹中さんや伊藤さんと非常に親しい方が最初は社外取締役として参加をし、ことしの一月に取締役会が開かれて社長になられたということでございます。

 そこで伺いたいんですが、この木村剛さんは金融庁の顧問をなさっておりました。金融庁の顧問は、この日本振興銀行の予備免許というのを〇三年の八月二十日に申請したんですが、そのとき同時におやめになっております。事実関係だけ申し上げますと、〇三年八月二十日に予備免許の申請を出した。このときまで木村剛氏は金融庁の顧問をしていた。〇三年十月に免許をこの会社は取得し、〇四年四月から開業した。

 テレビをごらんになっている方たちは、日本振興銀行という言葉も余り聞いたことがないでしょうからちょっと申し上げますと、この銀行は、要するに、中小企業に対する貸し渋りというのが非常に三、四年前激しかったですから、中小企業に対してきちんとお金が流れるようにしようという意図でつくられた。その意図は、私は全然悪いというふうには思いません。まさにミドルマーケットというんですか、銀行は貸せない、かつ、商工ローンのように高い金利ではやっていけない、その間をねらった銀行である。

 これは、確かにそこに需要はあると思うんですけれども、それまでそういう分野に対する銀行がなかったということは、それだけリスクも大きい分野だということですよね。当然銀行金利より高く貸すわけですから、それが余り高く貸すような危険な企業であれば、これは貸倒引当金も積み立てなきゃいけないし、いろいろなリスクは出てくるわけで、これは本当に新しい銀行を一つつくるというんであれば、慎重な審査が必要なわけです。

 アイワイバンクというのができましたけれども、そのときは、免許申請から許可まで一年五カ月かかっているわけですね。ところが、この銀行についてはわずか八カ月で認可がおりている。しかも、非常にリスクが大きいかもしれないという中で八カ月で認可がおりた。それで、認可がおりた前の年まで、木村剛さんという方は金融庁の顧問をなさっていた。その金融庁が認可をしたというふうになりますと、それで、余りにも早く認可がおりたということになれば、これは木村さんの意向というのが反映をされたんではないかというふうに思われても仕方がないと思うんですが、その当時は竹中大臣が担当だったというふうに思うので、いかがでございましょうか。

伊藤国務大臣 今は私が金融行政を担当させていただいておりますので、私からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、金融庁の顧問は、許認可申請の権限というものを持っておりません。したがって、この免許申請に当たって何か影響を与えるということはありません。

 それから、今委員からは、何か免許申請に当たって適正じゃない審査が行われたのではないかという御指摘がございましたが、日本振興銀行の免許申請に際しては、金融庁といたしましては、銀行法の審査基準にのっとって、申請者が銀行の業務を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、申請者の当該業務に係る収支の見込みが良好であること。そして、申請者が、その人的構成等に照らして、銀行の業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であることについて申請内容を厳正に審査したところでありまして、したがって、適正に審査が行われているということであります。

生方委員 これは設立当初から、本当にうまくいくのかどうかという疑問の声があったわけで、これは銀行の経営に関することでございますから発言は注意しなければいけないということは十分自覚をいたしておりますが、発表された数字からいいますと、昨年の九月末でいうと、預金残高が三百億円に対して貸出残高は四十億円、その後努力をされたようで、十二月には六十億円ぐらいにまでふえたということでございますが、預金残高が三百億に対して貸し出しが六十億というのでは、もちろんこのままでは経営は成り立ちようがないんですね。

 こうしたことが非常に懸念をされたわけで、この先、もちろん立ち直ってくれてうまくいけばいいんですが、もしうまくいかないというようなことがあると、本当にきちんとした審査がなされていたのかどうかということに対して疑問符がつくと思うんですが、現在の日本振興銀行について、金融庁としては何か検査ないしは聞き取りというようなことをおやりになっていらっしゃるんですか。

伊藤国務大臣 今委員からも、銀行経営のことについては慎重に発言をしなければいけないというお話がございました。私どもとしても、銀行の経営の内容についてコメントをするということについては、これは差し控えなければいけないというふうに思っております。

 しかし、私どもとして、銀行の経営の健全性、このことについてはしっかり対応していかなければいけないわけでありますから、銀行法に基づいて監督を適正にやっていくということでございます。

生方委員 伊藤大臣にお伺いしたいんですが、去年十月に大臣の私的アドバイザリーチームというのをおつくりになったというふうに聞いておるんですけれども、これは事実でございますか。

伊藤国務大臣 事実でございます。

生方委員 このメンバーの中に木村剛さんが入っているというふうに聞いております。その木村剛さんは、ことしの一月の株主総会で、社外取締役から一転して社長におなりになりました。金融庁のいわば監督を受ける立場の銀行の社長が伊藤さんの私的アドバイザリーチームのメンバーというのは、ちょっと私は違和感を覚えるんですが、大臣、違和感はないですか。

伊藤国務大臣 このアドバイザリーチームというのは、個別の金融機関の問題について議論する場ではございませんで、これからの金融行政の構想、金融再生プログラムの後に続く新しいプログラムの問題について議論していくに当たって幅広い有識者の方々から提言を賜りたいということで、私の私的懇談会として設置させていただいたものであります。

 そして、この懇談会は、その中で新しい構想を企画し、また策定をする場ではありません。金融やITあるいは企業再生、法務、こうした専門家の方々に集まっていただいて、そしていろいろな専門的な議論をしていただいて、そのことを私どもが受けて、これからの金融行政のあり方についての金融改革プログラムという新しい構想をまとめさせていただいたところでございます。

 したがって、委員が御指摘されるような違和感というものは、私は感じておりません。

生方委員 私は、当然、日本振興銀行の社長になったら木村さんはおやめになったというふうに思っていたんですが、おやめになっていないということなんですね。

伊藤国務大臣 社長になられた時点で、アドバイザリーチームのメンバーからは自主的に御辞退をされておられます。それから金融庁の顧問も、これも御辞退をされておられます。

生方委員 私がこういうことを聞くのは、やはりちょっと木村さんとお三人の関係に公私混同があるんじゃないかという気がするんですよ。

 木村さんという方は、フィナンシャルジャパンという雑誌を創刊なさったんですよね。その一月号の表紙に、竹中さんと木村さんと日銀総裁の福井さん、三人がこうやって手を組んで表紙になっているんですよ。一銀行の社長と大臣と日銀総裁が並んで写真に写れば、これは何か政府がこの銀行をバックアップしているんじゃないかというふうに、読んだ方は誤解しますよ。幾ら何でも現職の大臣たる者がそういうものに出るのは私はおかしいと思うんですが、竹中さん、いかがですか。

竹中国務大臣 私は金融担当大臣ではございません。金融庁として、金融担当大臣として所轄する方とやったということではございません。

 一方で、私、今いろいろなところで、例えば財界人の方と対談をしたり一緒にシンポジウムしたりしますけれども、これは、私は国務大臣として、経済を語る、いろいろなことで説明するということでございますので、そのことに関して私の行動が特に問題があるというふうには思っておりません。

生方委員 雑誌の表紙に竹中大臣と木村さんと福井さんと三人で並んで、普通の方が見れば、やはりこの真ん中にいる人は信用できる、この人がつくった銀行は信用できると思うのは当たり前じゃないですか。あなたが立っているだけでこれは宣伝になるんですよ。大臣が一銀行の宣伝に使われるなんということがあっていいはずないじゃないですか。それを全然反省していないというのは全くおかしいですよ、そのセンスは。いかがですか。

竹中国務大臣 私は銀行の宣伝に出ているわけでは全くありませんですよ。これは経済を議論する雑誌の中で対談をして、それとの関連で表紙に出ているということでございますので、宣伝に出ているというのは全く違うと思います。

生方委員 それは竹中さんがどう思おうが、このフィナンシャルジャパンというのは木村さんがつくった雑誌なんですよ。木村さんがつくった雑誌で、自分が表紙に出て、それで両側に大臣と日銀総裁を従えているんですから。それはあなたがどう思おうが、宣伝に使われたんですよ、事実。そういうのは、何にも私は宣伝に使われていなかったなんという開き直った答弁じゃなくて、これからはやめます、これから注意しますと言うのが当たり前なのに、こんなことをやられたら、本当に金融庁や金融監督庁がきちんと調査しているのかという疑問にまでなっちゃうんですよ。

 万が一この銀行に何かあったときは責任とれるんですか、あなたは。どうなんですか。

竹中国務大臣 私は金融担当大臣ではございません。それは、基本的には経済の雑誌で三人で対談をさせていただいて、それとの関連で表紙になったということでございますから、当然、私なりに注意して行動しているつもりでございますけれども、その趣旨は御理解を賜りたいと思います。

生方委員 それは、五味金融庁長官もこの雑誌に出たりしていて、一私企業の銀行をつくっている方が出している雑誌に政府の要人がこぞって出ているというのは、これはやはり異常だというふうに言わざるを得ないので、ぜひとも総理の方からも注意をしていただきたい。

小泉内閣総理大臣 誤解のないようにこれから行動することが必要だと思っています。

生方委員 質問を終わります。

甘利委員長 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 最初、前半、政策の話をさせていただきます。

 まず、総理、きょう、ブッシュ大統領の一般教書演説、アメリカの大統領が議会に対して、どのような国政、外交の方針を立ててやっていくかという演説がございました。私たちも大変注目をしていて、まだ手元には英文しか入っていませんが、二期目のブッシュ政権は随分一期目とトーンが変わってきた。北朝鮮の問題についても、六カ国協議を中心に、この演説を見る限りにおいては、話し合いで解決をしていこう、さまざまな国々との協力で解決をしていこう、イランの核の問題についても同様だという演説でございます。また、イラク戦争で亀裂が生じたヨーロッパとの関係についても、国際的な協力を得ながら自由をしっかりと、圧制とテロに対して闘っていこうという方針でございます。

 そこで、総理に基本的な御認識を伺いますが、やはりこの六カ国協議、大統領選挙が終わるまでは、中国がこんなことをやるんじゃないか、あるいは、アメリカはまた政権がかわれば変わるんじゃないかということで、一時期ある意味での政治的なモラトリアムというか、そういうものがあったようでございます。そう私は認識しています。

 しかし、やはり北朝鮮の核の問題、この核の問題の最大の脅威は我が国であって、アメリカの中の論文を見ると、このような行動や言動を北朝鮮がすると、日本の中でも核武装の議論が起こってくるんではないか、そういう危惧の論がふえてまいりました。もちろん私たちは、唯一の被爆国としてそういう最悪のシナリオというものを想定してはならないんですが、しかし、何としてでも北朝鮮に、その不当な行為に見返りを与えることなく、しっかりとした核の断念ということを迫っていかなければいけない、そのことについての総理の御決意を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、茂木委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 この核の問題は、北朝鮮側は当初、アメリカとの問題だと言っていたわけです。私は、それはそうじゃないと。核の問題は、日本に対する問題でもある、日本の問題でもある。同時に、韓国のみならず朝鮮半島全体の問題であり、世界の平和に対する問題でもあるから、廃棄すべしということを何度も北朝鮮側には厳しく、早く廃棄するように言っているわけであります。ブッシュ大統領、アメリカも、この核の開発を、北朝鮮側に廃棄させるためには六者協議の場を活用したいということをはっきり言っていますから、そして、できるだけ平和的解決を模索したいということも表明しております。

 そういう中で、ようやくブッシュ二期政権が発足して、一般教書演説をされたわけでありますから、北朝鮮側も、アメリカ初め我々の意図を誤解することなく、早く核廃棄をすることが最も北朝鮮側にとっても利益になるということを理解させるような働きかけを、今後も各国と連携しながら続けていきたいと思っております。

原口委員 今総理が御答弁なさったように、私たちの意図は北東アジアの安定、平和であります。何も北朝鮮を敵視する必要もない。

 拉致の問題は、まさにこの人権侵害、国家侵害を、彼らは謝った。しかし、原状復帰までまだ遠いわけで、きっちりとした、拉致被害者を、総理が御努力をいただいて十名の方が帰ってこられた、御家族も帰ってこられた。それは大変私は大きな前進だと思います、それまでは拉致なんというのはないということを言っていたわけですから。しかし、特定失踪者という名前で、その会がございますが、その人たちは民間で、みずからのお金でこの拉致の疑いのある人たちを捜しているということも事実でございます。

 総理に冒頭要請させていただきますが、私は、曽我ひとみさんの問題は、本当に帰ってきていただいて、ジェンキンスさんも今いろいろな証言をしていただいているみたいですが、もともと曽我ひとみさんは日本政府が拉致被害者として認定した方ではありませんでした。つまり、我が国が拉致の問題に対して、どれぐらいの国民が被害を受けたのかということの認定から外れていた方でありました。この外れていたことで、何か弁明をした方もいなければ、あるいは責任をとった方もいない。

 これは曽我さんだけじゃなくて、今なお北朝鮮に拉致をされている可能性のある人たちにとっても、いわゆる特定失踪者と言われる人たちについても同じようなことが言えるわけで、ぜひ政府の中で、この特定失踪者と言われる人たちを一元的に捜して、認定をし、そして奪還をする、こういったことを前向きに考えていただきたい。

 さて、不良債権の処理の問題を二番目に行いたいと思いますが、委員長、パネルを使用します。

 総理、金融のシステム安定化のために、これがこれまで投入された公的資金でございます。お手元に資料を、同じものを配付していますので、一ページ目をごらんになってください。

 いろいろな法律がございまして、今回の平成十七年度予算では、十六年度予算に比べて預金保険機構の保証枠を一兆円だけ減らしていますが、ほとんど同じ。十六年度と十七年度の保証枠はほとんど同じなんです。

 そこで、一体、不良債権処理は峠を越えた、あるいは不良債権処理の問題は政治のさまざまな議論から消えたということにするには、私たちは、まだ早いということを申し上げたいと思います。

 なぜかといえば、銀行のバランスシートからは確かに不良債権といったことは一定の処理ということが行われてきた。しかし、これはある意味では、後で官房長官や担当大臣にもお伺いしますが、朝銀の問題も含めて、実際にこれをごらんになっていただくと、金銭の贈与という形で十八兆六千億、これだけ入れているんです。

 銀行に入れたお金は返ってきますよ、これは保証して、今大変金融危機だから、返ってきますよというようなことを多くの方々がおっしゃっていた。それは一部正しい。なぜかといえば、実際に回収されたお金は、合計四十六兆八千億のうち十一兆なんです。

 ところが、この十八兆六千億の内訳を見てみると、預金保険で積み上がってきたお金、これは各金融機関が拠出をしていますから、それと交付国債で面倒を見た十兆円、これでもこの十八兆の穴は埋まらないんですね。約三兆数億が預金保険機構のバランスシートの穴として残っている。この実態を私たちはきっちり踏まえておかなきゃいけない。そして、資産の買い取りについても、九兆六千億もの資産を買い取っている。資本増強についても十兆三千億。しかし、回収ができた額は、そのすべてを足しても十一兆五千億だということです。

 財務大臣、私たちはこの不良債権処理のときに幾つかの原則を立てたはずです。やみとは結ばない、あるいは国民負担を極小化する。そういう意味で、政府としては、銀行としたら、それこそ私たちから言わせれば超低金利で、それからこれだけの公的資金を入れて、そして不良債権が国民の力によって消えてきた。だけれども、政府のバランスシートの中にはこれだけ残っている。これを極小化する努力というのが今一番必要なんではないか、回収を極大化する努力というのが一番必要なんではないかと思いますが、総理並びに財務大臣の基本的な認識を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今原口さんがおっしゃったように、金銭の贈与をした部分は、要するにペイオフを延ばして全額保証したということでありますので、これは返ってこない。残念ながら返ってこないわけですが、そのことが金融秩序あるいは国民の安定に役立ったという面はあったと思います。残る部分、まだ回収できていないものがあるわけでありますけれども、それを極大化していく努力をする、おっしゃるとおりだと思います。

原口委員 総理にお伺いしますが、国民負担はもう現に確定した部分があるんです。そして、ぜひ、これは年末に平沼前大臣やいろいろな皆さんと一緒に官房長官や財務大臣をお伺いして、回収の現場を見ていただきたいということを申し上げました。回収の現場でまじめに頑張っている人たちが本当にばかを見る、こんなことがあってはならない。

 ちょうどこの予算委員会で一緒に質問をしていました上田さんは今埼玉の知事をしています。彼は、RCCに送られた、そういうような企業を自分の県で救い出して、そして再生するということもやっています。

 ところが一方で、RCCの問題については何回も議論をしてきましたが、これはいつまでに閉じるのか。これは時限ですね。議員立法の時限です。この回収というのは一体いつまでに終えるのか、そしてその期限はいつなのかということを聞いてみると、先ほど財務大臣がお答えになった十兆円の交付国債も、預金保険機構に対するさまざまな、いろいろな法律があります。これは一つ一つ言いませんが、その附則で入れていますね。継ぎはぎに継ぎはぎをしてきた。それは、日本の金融が本当に傷んで、塗炭の苦しみを味わってきた、そのあらわれのように法律もなっています。

 私は、もっと整理すべきだと思うし、それから、回収の期限といったものはいつにするのか、政策のターゲットが必要なんではないかというふうに思うんです。国民は、今、街金と申しますか、それこそ足の速いお金で随分苦労されている。しかし、この回収の時期というのは、聞いてみると明示をされていないんです。本当にこれでいいんだろうか、その辺についての基本的な認識。回収がおくれればおくれるほど国民負担はふえてくる、金利が増してくると思うんですが、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今委員御指摘がございましたように、整理回収機構は、これは破綻した金融機関の貸付債権というものを迅速的確に回収するための公的な役割を担っているわけであります。そうした中で、国民負担というものを最小限にしていくということを基本的な考え方として置きながら、企業再生の可能性がある債権については、できるだけその再生の可能性というものを踏まえて、そして対応していかなければいけないということで、今、再生本部というものもつくり、そして企業再生の可能性を追求しながら対応しているところであります。

 しかし、委員からも再三御指摘がありますように、今、金融をめぐるフェーズというものは転換しつつあります。そうした中で、RCCがこれから行っていかなければいけない役割というものも変わってまいります。また、官と民の役割というものも考えていかなければいけないというふうに思います。

 今RCCが抱えている債権の状況を考えますと、いましばらく、先ほどお話をさせていただいた使命というものを果たしていくために的確な仕事というものをしていかなければいけないというふうに考えておりますが、国民の負担の最小化ということを踏まえて、今後も厳正な仕事というものを行っていかなければいけない、また、そうした時期というものも十分念頭に置きながらやっていかなければいけないというふうに考えているところでございます。

原口委員 RCCの設置の根拠になる法律は、議員立法で期限を決めたはずです。あれは延長したんです。ですから、政府としてはいついつまでにやるという目標があっていいはずです。

 官房長官、記者会見のお時間があるということで、先に朝銀について。

 朝銀については、この金銭の贈与というのはばかでかいんです。一兆四千億ものお金を入れて、しかもそのうちの一兆一千億が贈与ですよ。これはもう返ってきません。そして、資産の買い取りが千八百十億円。

 金融担当大臣、千八百十億円の、この一兆四千億のうち、実際にこの朝銀、受け皿から今皆さんが回収された額というのは幾らですか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 一兆四千億の中で金銭贈与が一兆一千四百四億円あります。この金銭贈与というのは、御承知のとおり、預金を保護して、そして破綻金融機関が次の受け皿の金融機関に行くときに債務超過を解消しなければいけません。そのときに使われる資金でございます。債権の買い取る額が一千八百十億円でありまして、この中で回収額が現在一千四十億円でございます。

 私どもといたしましても、国民負担の最小化ということを十分踏まえて、回収のためにRCCを中心として最大限努力を続けていきたいというふうに思っております。

原口委員 何でこういうことを聞くかというと、これは二次破綻もしているんです。しかも、これは平成十一年ぐらいでしたか、この予算委員会のテレビのこういう席でしたけれども、何でおまえは朝銀なんというのをこんなときに質問するんだ、もっと大きな問題をやればいいじゃないかということを言われたことがありました。しかし、現実には今一兆四千億もの公的資金が入っている。

 そして、そのときの破綻の状況も、総理、おかしいんですよ。平成十一年の五月二十一日に一斉に四つの朝銀が破綻しているんです。同じ日にそんな独立の金融機関が破綻しますか。それから、平成十一年の五月十四日に、これは実に五つの金融機関が破綻をしている。そして、破綻をするだけではなくて、その間、当時の金融担当は破綻管財人さえ一年間入れていなかった。そのことによって二次破綻やこの不良債権の拡大を招き、ひいては国民負担をふやしたんではないか。ここに、目の前にいらっしゃる小池さんやあるいは中川さんたちと、こんなことはやっちゃいけないということを当時超党派で言ってきた記憶がございます。

 さて、官房長官、北朝鮮問題を総括する立場におられて、あなたは予算の理事のときも随分この問題に熱心でございました。どのように責任追及をしていくのか、あるいは回収をしていくのか。私がいただいたこの資料では、先ほど伊藤大臣がおっしゃったように、預金者を守るんですと。しかし、これはいわゆる預金者を本当に守ったことなんだろうか。まじめに朝銀に取引があって頑張っていらっしゃる方々を本当に守ったんだろうか。逆に言うと、野方図なことをやっている、そこを守ったんではないのか。私はその疑いを持っています。

 官房長官、会見に行かれる前に、これからどのような決意でいくのか、これだけ組織的になっているとしたら、ここから送金が行われているということも、疑いを前原代議士初めここでも問いただしましたけれども、その辺はどうなのか、官房長官の御答弁をいただきたいと思います。

細田国務大臣 北朝鮮系の信用組合、いわゆる朝銀についての事実関係は、原口議員のおっしゃるとおりでございます。まさに日本の税金が一兆数千億投入されている。もっとも、韓国の系統の商銀も同額が投入されておりまして、この間韓国の議員が来ましたけれども、そのことを余り御存じなかったですが。

 そこで、この朝銀の関係は、さらに追及をいたしていきますと、明らかに損害賠償の対象となるようなものが二十二件、そして横領、背任等の刑事告訴、告発が必要であって、そういうことをしておるものが五件というふうに、極めて乱脈な実態も浮かび上がってきておるわけでございます。

 したがいまして、今後、買い取った債権については、さらに預金保険機構の指導助言等も得ながら、整理回収機構において引き続き回収に最大限の努力を行っていくとともに、責任の追及、あるいは、今議員のおっしゃったような種々の問題点についてしっかりと検査監督、金融庁その他の仕事でございますけれども、やってまいりたいと思っております。

原口委員 私は、この一兆四千億に上るまで、債務超過、そして破綻とその受け皿探しを繰り返した政治の責任は免れないと思います。

 今、五件というお話がございましたけれども、商銀についてもこの場でそのとき申し上げました。商銀と朝銀についての対処の仕方が違っていたのではないか、あるいは、今、RCCの回収の現場という話がありましたけれども、これは財務金融委員会で、この委員会の中でもですが、その実態についても私自身の手で明らかにしていきたいというふうに思います。官房長官、どうぞ。

 さて、次は年金の問題です。

 総理、資料をごらんになってください。資料の二でございます。

 これは、総理が厚生労働大臣のときにもグリーンピアについて質問をし、あのときの、いわゆる負債というのが千八百億でした。今はそれは、グリーンピアについては三千八百億。あのときは、総理は厚生大臣でしたけれども、すぐ売りますという御答弁をいただいて、やはり小泉総理しかいないんだな、財投を改革できるのは小泉さんしかいないんだ、私はそのとき本気でそう思いました。しかし、今や舛添議員から、おまえの政治力がなかったから今でもこういう状況になっているんだなんというやゆをされている状況です。

 私は、この二のところ、これは平成十四年度の年金の運用の一部、一昨年の十月一日に総理にお願いをしまして出てきました、厚生労働省の厚生年金保険及び国民年金における年金積立金運用報告書、この中の株の国内アクティブというものをとったものです。これをごらんになってください。市場平均を大きく下回って、一社当たりマイナス二七%、マイナス二三%。こんな損をするんだったら株で運用してくれない方がいいじゃないですか。十五兆円のお金を運用して、三兆円の、このときに穴があいています。これは、坂口厚生労働大臣が、こういうやり方を変えます、見直しますということをここで約束をいただいた。

 しかし、今度、では実態はどうなっているか。これは、平成十六年度の同じアクティブ、これは資料に載せていませんが、確かにマイナスの額は減った。しかし、マイナスの額は減ったけれども、市場より大きく下回る運用をしていることは変わらないんです。これはだれが責任をとるのか。だれがこのポートフォリオを書いているのか。

 この資料三をごらんになってください。三党合意。

 昨年、IMFが、日本の年金改革の最終列車はもう出てしまっている、ちょうど私たちが総選挙をしているときに改革がやられておくべきなんだ、抜本改革が必要だったんだ、そういう資料を出していました。

 私は、与野党が両方話し合って本当にいい案をつくる、これは大事なことだと思います。しかし、総理、年金には二つの部分があると思います。一つは、どのように持続可能な年金制度をつくっていくか。もう一つは、そのつくられた年金制度の中で、どのように公正で、そして国民の皆さんが納得のできる運用がされているか。

 よく三党合意を言われますから、皆さん、この三をごらんになってください。三の、これは自由民主党さんと公明党さん、それから民主党で合意をしたものですけれども、この一の「5 衆・厚生労働委員会において、年金に関する委員会決議を行う。」これを飛ばさないでほしいんですよ。

 ここには何が書いてあったか。今までの社会保険庁のさまざまな問題や年金の実態、運用の実態について全部明らかにするという決議があったはずなんです。この決議は、あの与野党の対決の採決で吹っ飛んでいるんです。ここが一番大事なんです。

 次は十八ですね。これをごらんになってください。驚きますよ、総理。

 この間、社会保険庁長官とあるところでお会いして、年金運用については自分たちは関係ない、年金運用は厚生労働省の年金局の責任なんだという意味の御答弁をされていました。

 これは何か。これは席次表だそうです。我が党の長妻議員が中心に、監修料の問題を追及してきましたけれども、この中の、本の中の一項なんです。これは、実はこの○○というところには名前が書いてあります。社会保険庁の方の席次をそのまんまコピーしてこれを本にして売っているんです。そして、これは年に二回出ています、四月と十月。五百二十五万円掛ける二、一個これは幾らするんだ、千三百五十円。これがですよ。そして、社会保険庁の方が監修料として一回につき六十万円取っていたということがわかっているんです。一体何をやっているのか。

 三年前、あの外務省の不祥事があったときは、総理が陣頭指揮をとって、わかることは全部出せという指示をされました。ところが、今回、厚生労働省、何人に聞き取りをしましたか。この間、長妻議員が明らかにしましたが、延べの五百人じゃないですか。そして、五十人の人間が、まさに自分たちの社会保険庁の仕事の合間に、そこでこの監修をしていたということを厚生労働大臣がおっしゃっているわけです。

 私は、こんな実態があったら、今回、年金の保険料の中から使うことをやめるということを皆さん出してこられると思いました。しかし、半分は税金に行きました、税金負担に行った。だけれども、全体からふえているじゃないですか、額が。社会保険庁、これだけむだなことが指摘されて、何をどれぐらい減らしたんですか。今年度予算でどれぐらいの削りをやったんですか。

 旧のレガシー、レガシーという言葉は国民の皆さんはわかりにくい。レガシーというのは古いシステムですね。FORTRANとかCOBOLとか、私が大学時代やっていたような、そういうコンピューター言語を今なお使っている。何でそんなことをやっているんでしょうか。

 私は、もう一回本当に解党的な、解党じゃないですね、解体的な出直しが社会保険庁は必要だと思いますよ。そのことについて……(発言する者あり)村上大臣、人の党を解党なんて言わないでください。解体的な見直しをしなきゃいけない。そのためには、今までだれが何をやったかという調査をきっちりやるべきじゃないでしょうか。厚生労働大臣、それから総理に御決意を伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 今、社会保険庁どうあるべきか、これは有識者会議で御議論いただいております。そして、そこで存続を前提としない、それから、新しいグランドデザインをかく、ここまではもう既にきっちり決めていただいておりますから、私も先日それを一〇〇%尊重するというふうに申し上げました。すなわち、新しく出直す、そのつもりであります。

原口委員 本当に、私は一回解体して出直すのが一番いいと思いますよ。

 年金についてはもう時間がないと思う。もうじき負担率が一五%になる。中小企業、働く人たち、塗炭の苦しみを味わう。そのときに私たちは、また国民の皆さんにさまざまなお願いをしなきゃいけないかもわからない。税で取るか年金保険料で取るか、どっちかだと総理はよくおっしゃいますね。その前提が壊れているんです。その前提を壊しているのは、まさに総理が率いておられる内閣の指導力によって変えなきゃいけないんです。その変える決意を総理から伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この社会保険庁の改革につきましては、今厚労大臣も答弁されましたけれども、存続を前提としないで改革していこう、組織のあり方も今までのやり方も含めて。そして、今官房長官のもとで、有識者の意見を聞きながら、原口議員の指摘も踏まえて、どういう改善が必要か、また、組織を解体する場合にはどういう組織がいいか、また、民間に委託する場合はどういう点が委託できるか、それを真剣に検討しております。

 同時に、今までも、私もこれはひどいなと思われるような、社会保険庁と自治労の協議会、確認事項が何と九十七件もあるんですよ。これもどうかと思いますよ。

 一つ例を挙げますと、端末機導入に伴い、窓口装置の一人一日の操作時間は平均二百分以内とし、最高三百分以内とする。二百分以内というと四時間ない。最高三百分というと五時間か、五時間以内とする。これは、民間じゃこんな、社員と、コンピューターとかパソコンとかを導入する場合に、人が減るから職員の待遇を考えなきゃならない面もありますけれども、こう一々確認事項をして、これに違反したらつるし上げられるかもしれないというようなそういう恐怖感を持って、実際、健全な社会保険庁の仕事ができるかどうか。また、国民の要望にこたえられるかどうか。これは真剣に考えなきゃいかぬ。

 だから、これは私は、民主党と自民党と政府と協力できる改革だと思いますよ。党派を超えて率直に、今までの組織を前提としないで、皆さん方の意見も真摯に検討して、あるべき改善策を講じなきゃいけないと思っております。

    〔茂木委員長代理退席、委員長着席〕

原口委員 大変前向きな答弁をいただいたと思います。私や長妻委員を派遣していただいて、社会保険庁に入れていただければ、今まで出てきていない数字も出てくると思いますので。

 ちょうど財務省の、あれは何とかしゃぶしゃぶのときでしたか、そのときに、この予算委員会でいわゆる検査示達書というのを、あれは秘密会でしたけれども全部見ました。悪事の山でしたよ。何とかしゃぶしゃぶに接待をされたところだけは、財務省の人たちはそこだけは義理がたいですね、義理がたいというか、それは犯罪だと思うけれども、見逃していて、あとは全部書いていた。やはり国民の皆さんに明らかにするところから改革が始まるんだという総理の御答弁だったと思います。

 もう一つ、厚生労働省で許せないのはフィブリノゲンです。

 私ごとで恐縮ですが、八八年と九〇年と九九年に妻が子供を産みました。そのときに、これは九四年以前に出産をした人たち、大きな外科手術をした人たち、その人たちは、これは第二の薬害ですね、厚生労働大臣。私たちは家西代議士を中心に、今は参議院議員ですけれども、彼が代議士のときに、ずっと一貫して、私たちと一緒に、早く病院名を出してくれ、そうしないと、C型肝炎というのはまさに肝硬変になったりあるいはひどいときには肝臓がんになる、塗炭の苦しみを味わう、だから早く出してくれということをずっと言い続けてきた。ようやっと昨年の暮れに全国の七千件の病院名を出された。

 一体このフィブリノゲンというのはどんな検査をしてきたんですか。それから、フィブリノゲンののりについてもまだ不法に使っているんですか。厚生労働省の対応というのは、あの薬害エイズのときと全く同じなんじゃないですか。大臣の明確な答弁を求めます。

尾辻国務大臣 フィブリノゲン製剤の公表の件でございますけれども、これを公表すべきであるかどうか、ずっとそれなりの検討がされてきた。そうした中で、厚生労働省としてどう対応していくか随分悩んだところもあるようでございますが、私が大臣になりましてこの話を聞きましたから、これはもうとにかくいろいろなことを言わずに、待たずにすぐ出せと言いまして、出させていただいたつもりではございます。

 ただ、今お話しのように、遅きに失したということは反省をいたしております。

原口委員 大臣が公表する決断をされたことは、私は多としたいと思います。しかし、現実にはどうだったのか、それを国民にもっと正確に知らせる必要があると思います。

 十二万件、十二月だけで全国から問い合わせが来たと言われていますが、私どもの調査では、フィブリノゲンというのは、薬価点数、いろいろな問題もあって、実際は大量の出血のときに使うものだけではなくて、日常茶飯にそういう出血の可能性があるときには使われていたんではないか。

 実際にここに報告が出ていますけれども、旧株式会社ミドリ十字、これは、破綻をして、そして新しい会社になって、彼らが出してきた数字じゃないですか。フィブリノゲンのり、ちょっと専門的になるからあれだけれども、これは手術のときに開いたところをくっつけるものですね。だけれども、これは研究用にしか使えないじゃないですか。研究用にしか使えないこののりが、何でこんなにたくさん出ているんですか。薬事法の違反じゃないですか。薬事法の違反をずっとそのまま放置していたんじゃないですか。私は、国民に対する大変な背信だと思います。

 そして、今の七千件についても実際にカルテを、そこに当たらなきゃいけないんです。私は、医療法は、総理、変えるべきだと思っているんです。昭和二十六年にできた衛生法の形をしている。衛生法、つまり、衛生状態の悪い日本で、数を規定しているんです。何人病院に医師がいなきゃいけない、看護師がいなきゃいけない、あるいはベッドが幾つなきゃいけない。数なんです。

 テレビで実名を挙げるのはやめますが、ある有名な女子医大病院の被害者の会の事務局長をしています。その方の名前は言いませんが、小学校六年生、心臓の手術で、しかも手術のミスで亡くなった、その手術のカルテが改ざんされていたということがわかって、今裁判になっています。私の同級生のお嬢ちゃんも、私の子供と同じ日に生まれてきましたけれども、三歳の誕生日を一緒に迎えることはできませんでした。三歳の子供さんの心臓ってこのぐらいですよ。

 それで、厚生労働省に、何でこんな医療の質をチェックすることができないのかということを聞きました。そうしたら、法律自体がそうなっていないんです。私たちは、患者の権利法というものを出している。カルテの開示義務さえ医療法の中に書いてないんです。

 ちょうど二年前です。あれは九月の十六日だったと思いますが、厚生労働省が通達を出しました。患者の皆さんが医療機関にカルテを開いて見せてくれと言ったら見せなさい、それを県に通達したんです。だけれども、総理、見せられたって何語で書いてありますか。ドイツ語で書いてあるかもわからぬ、英語で書いてあるかもわからぬ。よしんば日本語で書いてあったとしても、そんなの開いて見せてもらってもわかりゃしないんです。つまり、主権者の立場に立った法律に変える必要がある、私はそう思うんです。

 今の責任も含めて、どのようにこの対策をとっていくのか。それから、薬事法や、あるいは、これを保険請求していたらそれこそそこの違反になるんじゃないでしょうか。どのような調査をされているのか、ここもあわせてお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 私も気になりましたので、その件については調べてみました。のりの方の話からまず申し上げます。

 こののりについては、確かに薬事法で承認されておるものではなかった、これは事実でございます。

 ただ、では、これを医師が使うことが違反なのかどうかというと、医師は医師の判断で使える。したがって、医師が使ったことは違反ではない、こういうことに整理をされるということでございます。

 のりについてのことは、以上申し上げます。

原口委員 違うでしょう。のりというのは研究用なんですよ。研究用を一般の人に使ったら、それで違反が問われない。だって、一般の医療行為にしたら、そんなのだったら混合診療をもうやっているという話じゃないですか。そうでしょう。保険適用にない薬を使ってお金を取っていたら、まさに不正請求じゃないですか。厚生労働大臣がそんなことを言っちゃだめですよ。

 私は、この薬害、家西さんがみずから闘ってきたHIVの闘い、これと同じものがもっと大きな大きな国民的な被害を及ぼしている、この危険性を本当に皆さんは認識しているんだろうか。

 あなたが大臣になって公表されたのはよかった。だけれども、この公表で本当に十分なのか。今の答弁では、私は納得がいかないと思います。

尾辻国務大臣 それでは、順次申し上げたいと思います。

 まず、医師がフィブリノゲン製剤を適用外で使用することがあったとしても、その当時の医学水準に照らし不合理なものでない限り、直ちに医師法違反の問題にはなりません。まずそのことであります。

 それから……(発言する者あり)今そういうお話がありましたので申し上げますけれども、薬事法上の承認と保険適用、あるいは医師が使えるか使えないかということで申し上げますと、まず、薬事法上の承認を受けた効能、効果、用法、用量に基づく使用、これは当然薬事法にのっとるわけでありますから適法でありますし、そっくりそのまま保険が適用できる、当然のことでございます。

 そこで、今度は、薬事法上の承認を受けた効能、効果、用法、用量の範囲外の使用ということになります、この場合もそれに当てはまるわけでございますが。これは大きく二つに分かれまして、まず一つは、有効性、安全性が確認された医薬品を薬理作用に基づいて使用する場合、これは審査支払い機関において、医学的判断に基づき、個別事例に即した審査を経て保険適用が行われます。これ以外の場合には保険適用はされない、今のこの二の場合はされないということであります。

 今私が申し上げているのは、薬事法上、医師が、これが必要な措置だと思ってそれを施した場合、薬を使った場合、これは違反にはならないという、そこの部分だけを申し上げておるつもりであります。

原口委員 いや、そういうわかり切ったことを答弁されても困るんです。

 何を言っているかというと、そこを大幅に踏み越えて、のりというのはいわゆる手術の接着剤ですよ、簡単に言うと。その接着剤を実際の医療行為に使って、しかもそのフィブリノゲンにはC型肝炎ウイルスが、まさにそれが消されないで残っていた。だから問題にしているので、これは後日しっかり詰めます。

 大臣、厚生省の役所の人が書いた言いわけを読まれても困るんです。私が欲しいのは、今、皆さんだってそうじゃないですか、お孫さんや子供さんやそういう人たちが出産という、みんなが本当に祝福をするその瞬間に、この製剤を投与されて、そしてどれだけの人がC型肝炎にさらされた、危険を負ったか、このことを聞いているんです。

 時間があれですから、次の問題に行きます。後で委員会でやります、一般質疑でやります。今の答弁ではとても……。何かほかに国民を安心させる答弁ができるんだったら、やってください。

尾辻国務大臣 私は、妙な言いわけをするつもりは全くありません。ただ、これだけはおわかりいただいておきたいと思うものですから申し上げているんですが、まずそこの部分を一つ言わせてください。

 今の薬というのは、お産なんかの場合に大量出血が起こる、それをとめる薬がそのころそれしかなかった。だから、その薬を使わなければその患者さんの命が危ないというとき、その薬を使わざるを得なかったということだけはぜひ理解をしていただきたいと思ったから申し上げたんです。

 それから、最後に大きく一つだけ、これは私の思いますことを率直に言わせてください。

 行政というのは、医療の評価はやはり難しいです。医療の監督まではできます。言うならば、病院に行って、お医者さんが何人いますね、看護婦さんが何人いますね、廊下の広さがどうですねというような監督はできるんですが、今、医療の評価を行政にやれと言われると、これは大変難しいと思っていまして、そこのところは今後の大きな課題だということで認識をいたしております。

原口委員 問題を逆に拡散させますよ。医療の評価してくださいと、行政にしてくれと言っているんじゃないですよ。

 法律が、その質を担保するために中央政府がやるべき責任を明記し、地方政府がやるべき責任を明記し、岸田さんや河野太郎さんと一緒に、昨年、消費者基本法をつくりましたよ。あの法律はどうなっているかというと、消費者の権利を明定して、八つの権利を明定して、それに対して公が何を保障するかという法律なんですよ。そのことを申し上げているので、私はこういうものを見過ごしてきた責任について言っているので。七千件で、では、ずっと何で隠すんですか、今までずうっと答弁をしてきて。

 さっきの社会保険庁だって、あなた、そういう答弁をされるから申し上げますが、社会保険庁長官、総理、何とおっしゃっていますか。あの中で、やっているのは、民間もそういうことやっているんだ、監修やっているんだなんという記者会見の報道があるのは何でですか。

 私は、役人をバッシングする気で言っているんじゃないんですよ。たくさんの人たちが被害を負っているかもわからない、そして、今なお何で自分がC型肝炎になったかわからないという人がいっぱいいるから聞いているんです。

 ちょっと時間が迫りますので、次の問題に行きます。

 これは「郵政民営化の基本方針」。これは、自由民主党さんの中でもこういう広報のあり方については問題提起があったというふうに聞いていますが、総理、やはりこれはおかしいですよ。これは、百億ぐらいの内閣の啓発予算というものを持っていて、そのうち、この資料をごらんになってください。これは、我が党の松野代議士が調べた「「郵政民営化」に関する広報について」ですが、こんな広報をやっている。

 広報をやるなと言うんじゃないんです。広報は大事です。国民に理解を得るためのものは必要。ちょうど消費税のときにも、政府は国民の理解を得るために広報をされています。消費税のときはどうだったかというと、法案が通ってから、確定してから、こういうものですよという説明をされています。

 今回は方針だけですね。そして、閣議決定をされた。しかも、これをごらんになりましたか。「だから、いま民営化」、閣議決定にも書いていないようなことをいっぱい書いてあるんですよ。これを自分たちの勝手にやっていいんだったら、私たちだって政策を、与党になったときですよ、自分の政策のイシューはこうですと。例えば、そのとき私が民主党だったとする、自民党はこれは反対しているけれども、この人たちの考え方は間違いですということを政府のお金も使ってできるじゃないですか。私は、これは行き過ぎだと思う。

 例えば、この「だから、いま民営化」というところを見ると、「郵政民営化によって、国家公務員総数の約三割が民間人に。」こう書いてあるんですよ。こんなの、だれが決めたんですか。閣議決定にも書かれていない、そして法案も出てもいない。それを国民にこうだと説明するんだったら、国民は、ああ、そうなるんだと思いますよ。私は、これはどうかと思う。

 総務大臣、私は一昨年の十月一日に、今の約六千の集配局の収支、郵政三事業ごとの収支を出してくださいということをお願いしました。そのときに、この場で総務大臣は、恐らく出せると思う、全部は出せないかもわからないけれども恐らく出せると思うと。そうですよね、基本的なシミュレーションがなければ郵政民営化後の姿もわからないわけですから。ところが、三日後でしたか、わざわざ大臣からお電話いただいて、あれはどうもないようだというようなお話でした。しかし、ぜひつくってください。

 なぜ今まで郵政事業というのが公でやられてきたのか、公でなきゃなぜやれなかったのか。きのう久間さんがここで、司法の問題やさまざまな問題、公に負っている郵政事業の公的な性格の必要性ということを述べられていました。一理も二理もあるなと私は思って聞いていました。郵政事業というのは、大体なぜ公がやっているんでしょうか。

 あるいは、これは二問お聞きしますが、あのシミュレーションというか、今の実態というのは、今の郵政公社につくらせていただけませんでしょうか。そうしなければ、私たちは、自分の周りの郵便局という、これは金融社会圏と言ってもいいと思います。私どもの地方では郵便局しか金融機関がない、そういったところでは、自分たちがどうなるのかというのを一番不安に思っているわけで、総務大臣の御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 最初の質問と二つありますので、そもそも論の話は担当大臣に聞いていただくとして、先ほど原口先生から聞かれたことに対して、平成十五年の十月一日に私の方で答弁をさせていただいて、二万四千七百のあれを全部出せというのは、それはちょっと無理ですと。そこで、局単位では出せると思いますということで、では出してくださいということで申し上げたんですが、御存じのように、今までやったことがないのが一つと、もう一点は、郵便局は、ここで郵便を売りますという、郵便切手を売るところと現実に使うところとは、特定のところで売っている率が圧倒的に高いというところで、個別の損益は出しにくいということになっておるのが現実なんです。

 それはそれとして、現実は現実として、出した方がいいということで、平成十六年度いっぱいに、多分三月末までには出せると思います。

原口委員 後段については答えていただけなかったけれども、前段については一個だけ訂正します。

 これは小泉厚生大臣のときでしたけれども、あのときは自見郵政大臣でしたが、あの方のときには出していただきました。私はこんな資料を持っています。そのときの資料が正しければ、今の単純な民営化ということをすれば、ほとんどの地方から郵便局が消える、そういう資料です。

 さて、もう一つだけ郵政の民営化で聞いておきたいのは、これは閣議決定の中にあったと思いますが、最終形態、郵政の株式会社化で中央政府が持つ株は最終三割にするというような方針があった、あるいは大臣がそういうことを審議会でおっしゃっていると承知していますが、これは事実ですか。

竹中国務大臣 基本方針の中身の話でございますけれども、基本的には持ち株会社をつくります。持ち株会社は政府が全額出資でつくります。それで、持ち株会社がこれまた全額出資をしまして、郵便の会社、窓口ネットワークの会社等々をつくるということを基本方針では想定をしております。

 三割とおっしゃいましたけれども、恐らくそれは持ち株会社ですね。持ち株会社の株を最終的には三分の一超持つようにしよう。その三分の二ぐらいまでについては、これは民営化でありますので、民間に持っていただくということを想定しております。

原口委員 三分の一超というその根拠を私は聞きたいと思うんです。

 と申しますのは、出資比率と商法との関連で、まさに三分の二以上持っていれば、株主総会において、三分の二以上持っている出資者は単独で特別決議事項を決議することが可能になります。二分の一以上であれば、同じく株主総会において、単独で普通の決議事項を決議することが可能になります。ところが、今おっしゃる三分の一超では、株主総会において特別決議事項の決議を阻止することが可能になる、これが商法の規定ですね。だから、なぜ三分の一なのか。

 総理、私は年末にベナンという国に行ってきました。北朝鮮の拉致の問題をベナン大統領に言った。そのときに、あれは奴隷海岸のある国なんです。自分たちは七百年の奴隷と植民地の歴史を持っている、そんな拉致なんか絶対許さない。御子息を北朝鮮に二人とも留学させているような、昔は社会主義国家で親しい国だけれども、自分は絶対に許さない、自分が直接出かけていってこの拉致の問題を金総書記に訴えてもいいということまで言われました。

 ただ、アフリカの現実は本当に厳しいなと思いました。これは子供たちの絵ですが、文化が全部フランスなんです、フランスの植民地ですから。パリからしか入れない。言葉もフランス語。ですから、文化や、あるいは文字や教育が全部自分の国でないから、教育が継承しないんです。乳幼児死亡率が本当に、所によっては九割というところでございました。世界の飢餓で悩む人たちの四千万人がアフリカの人たちです。毎時間何万人が亡くなっているかわからない。

 そこで私はつくづく思いました、公でやらなきゃいけないものは何なんだろうか。今、テロとの闘いだということを言っている。さまざまな資金が今、財務省からも、こういう資金を凍結します、テロリストの資金を凍結しますということを言ってきている。我が国のコミュニケーションの基本的な手段について、中央政府はどれだけの責任を持てばいいのか。あるいは、いい人ばかりとは限りませんから、資本です、そこを奪って、そして特別決議でだれかに売っ払われたときに、私たちのコミュニケーションの基礎というのは、郵政事業というのは本当に成り立つんだろうか。こういう議論をしていかなきゃいけないというふうに思います。

 ただ反対、ただ賛成というのでなくて、なぜこれが三分の一ということになったのか、総理のお口から明確なお答えを伺いたいと思う。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、世の中のことを政府がどこまで責任を持つかというのは、これは政策を決める上での最も重要なポイントであると思います。

 民営化のそもそもの趣旨は、これまた原口委員には言うまでもないことでございますけれども、環境変化が激しい中で、できるだけ経営の自由度を発揮していただいて、柔軟な、そして大胆な経営をしていただきたいということになります。しかし一方で、郵便には、これはユニバーサルサービス、全国一律のサービスということで、まさに非常に公共的な性格もございます。

 そこで、民間の活力は取り入れていただきたいけれども、三分の一以上は持つようにしようではないか。その趣旨も、今御指摘にありましたように、商法において、株主総会の特別決議、それを阻止する力を持とうではないか。特別決議というのは、定款の変更でありますとか営業の全部の譲渡であるとか、これは大変重要な問題で、そういうことはきちっと阻止できるようにしよう、そこが基本的な考え方でございます。我々としては、できるだけ小さな政府をつくって民間の活力を生かしたい、しかし最低限の公的な機能は担保したい。

 ちなみに申し上げますと、NTTの持ち株会社につきましても、国は三分の一超という形で決められていると承知をしております。日本たばこ、JTについても同じ、高速道路についても同じ、同様の考え方に沿って我々はこの考え方を組み立てております。

原口委員 いや、今NTTのことを出されましたけれども、今、中国市場は、総理、個別名を言って悪いけれども、シスコというジャイアンツがIPルーターを配りまくって、それこそ席巻していますよ。我が国は、長い間、経営論議でNTTを揺らして、そして足を持ったまま飛べという形で、どれだけ我が国の力をそいできたかわからない。

 私は、小さな政府にするというのは正しいと思う。しかし、小さな政府で大きな公共なんです。官を単に民じゃなくて、官の中で私物化されていることを公にしなきゃいけない。

 そういう意味で、きょうは、政治とお金の問題、最後に一つだけ指摘をしておきます。

 年末に鈴木さんの証言をいただきました。指定献金という形で御党の事務局長に言って、そして、だれかが献金したものを自分のところに献金する、その仕組みを詳細にお話をしていただきました。

 また、裁判においても、これは滝川事務局長その人が、この間の一月二十三日、村岡さんの公判に立って、これは政治の、選挙のために使う裏金なんだ、表に出してしまえば、それこそ政治資金規正法じゃなくて公職選挙法の方に触れていろいろ言われるから裏に回したんだという証言をしています。

 総理は私に党の問題でないとおっしゃったけれども、まさに党の問題じゃないですか。杉浦さんがいろいろな答弁をされたけれども、私は最初に言われた方が正しいと思う。政策活動費で最初に取っているんです。何で清和会だけ派閥で配らないんですか。平成研はちゃんと、会長が国会議員ですよ。清和会は、会長は違います。自由民主党さんの派閥の中では、二つだけが会長が違うと思います。

 政治と金の問題、指定献金というのをやめなきゃいけない理由は、私は、政治活動は自由であっていい、だけれども、公職にある人間がその権限を利用してお金をもらえばまさに汚職になるから、国民の側に説明できないからこのことが禁止されているんじゃないでしょうか。総理の明確な答弁を伺いたいと思います。

甘利委員長 質疑時間が終了しております。簡潔にお願いします。

小泉内閣総理大臣 鈴木氏が何を言われたか承知しておりませんが、党として指定献金はないと報告を受けております。

原口委員 終わります。

甘利委員長 これにて仙谷君、鳩山君、田中君、横路君、石田君、中塚君、佐々木君、辻君、生方君、原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、小泉内閣が今進めようとしている増税路線について質問をいたします。

 昨年末、政府の予算案が発表されたときに、メディアは一斉に、本格増税路線に踏み出したと報じました。総理はこれまでも、痛みに耐えよと社会保障の切り捨てを進めてこられましたけれども、今度の政府予算案というのは、それに加えて税制でも本格的な庶民増税に踏み出すものになっていることが最大の特徴であると私は思います。

 今度の予算案には定率減税の半減が盛り込まれました。二〇〇五年度と二〇〇六年度の二年間で定率減税の縮小、廃止を行って三・三兆円の増税を実施し、続けて、二〇〇七年度には消費税の増税を実施に移す、これは与党税制大綱に明記された二段階の増税シナリオですけれども、政府の予算案はこのシナリオに基づいて庶民増税の第一歩に踏み出すものとなっている、これは明瞭であります。

 こうしたもとで、政府・与党の一部や経済界の中からも、これでは橋本失政の二の舞になるのではないかという声が起こってまいります。一九九七年に橋本内閣が、九兆円の負担増、消費税の値上げ、特別減税の打ち切り、そして医療費の値上げ、これを行ったことが大不況の引き金を引いた大失政となった、その二の舞になるのではないかという危惧の声であります。

 そこで、私は、まず総理の事実認識をただしたいと思います。

 これは、この十年間の家計所得の推移を政府の国民経済計算からグラフにしたものであります。大体九三年から九七年ぐらいまでの時期は、年間で数兆円の規模で家計の所得が伸びております。しかし、九兆円負担増をきっかけにして、その後をずっと見ますと、年間数兆円の規模で今度は家計の所得が減っております。これは明瞭な数字として出てまいります。

 そこで総理に伺いたいんですが、こういう規模で家計の所得が減り続けているもとで増税路線に踏み出したということが戦後かつて一度でもあったでしょうか。これは戦後初めてのことじゃないでしょうか。事実認識の問題として伺いたいと思います。端的にお答えください。総理、どうぞ。

小泉内閣総理大臣 経済指標等につきましては後ほど担当大臣から答弁いたさせますが、定率減税にしても、三兆三千億円の増税と言われましたけれども、これはやはり、現在の景気情勢を考えて、来年一月から千八百億円の増税なんですよ。三兆三千億円は、地方税とあわせて全部これをなくしちゃうとそうなる。

 だから、景気に配慮しているんです。定率減税の面においても一月から、地方税においては六月からということでありまして、二分の一ですから、三兆三千億どうか、やるかというのはこれから、そういう状況になるかというのはことしの秋以降よく状況を見なければいけない。経済全体、財政全体を見ていかなきゃならない。だから、三兆三千億円今年度増税するんだという、そういう誤解はしないでください。

 それと、雇用者所得も、確かに今、表にあるように、九七年は二百八十兆円、そして二百六十五兆円まで減っていると言いますけれども、九七年の物価上昇率はかなり高かったですよ。今、デフレですから、物価上昇率もマイナスです。

 そういう点も考えて、確かに景気は厳しい状況でありますけれども、できるだけ景気に配慮しながら、財政状況の健全化というものを考えていかなきゃならない難しい局面に来ているということも御理解いただければと思うんです。

志位委員 私は、来年度三・三兆円の増税を実施すると聞いたわけじゃないんですね。確かに、来年度は定率減税の半減で、きいてくるのは千八百五十億円の増税だというのは私も存じております。しかし、二年間で廃止するというのは与党の大方針でしょう。だから、じわじわ廃止するとしたとして、あるいは一気に廃止するとしても、三・三兆円の増税路線に踏み出したことは間違いがないんです。これが一点。

 それから、もう一点ですが、このグラフについて、これは確かに名目の数字ですが、では、実質の数字はどうなんだということをおっしゃられたんだと思いますが、実質で見ても、実は九七年と二〇〇三年で七兆円減っております。名目でも実質でも雇用者報酬は減っている。

 総理の答弁の中で、結局、私が聞いたのは、こうやって家計の所得がどんどん減っているときに増税路線に踏み出したというのは、これは戦後初めてのことだ、これは否定されなかったわけです。そこで、私、初めてのことをやるんですから、これが景気と経済にどういう影響を及ぼすかについて真剣な吟味が次に必要になってくると思います。この議論を次に進めたいと思うんです。

 私は、日本経済を本格的な回復の軌道に乗せるには、経済の六割弱を占めるのは個人消費、家計消費ですから、この消費が力強く持続的な回復の軌道に乗って初めて景気の回復が本物になる、これは総理も同じ認識だと思います。今、首を振っておられますから、それは同じだと思います。問題は、その家計消費を持続的な回復の軌道に乗せるために今何が必要かという問題だと私は考えております。

 その点で、私、内閣府が昨年十二月に発表した「日本経済二〇〇四 持続的成長の可能性とリスク」というレポート、これを大変興味深く読んだんですよ。なかなか情勢分析は正確なことが書いてあります。例えば、ここで繰り返し強調されているのは、今後消費が持続的に回復していくためには所得の回復がかぎである、これは繰り返し述べられています。

 この中で述べられていることは、これまでは所得がふえないもとでも消費は底がたく推移してきた、これまではそういうふうに推移してきた、しかし、それは国民が貯蓄を減らして消費を維持してきたことによるものであって、これはなかなか長続きするものじゃない、今後消費を持続的に回復させていくためには、所得そのものを、所得の本体そのものをふやすということがどうしても必要だ、これがかぎだということを、この「日本経済二〇〇四」にはっきり書いてあるわけですが、私は、この診断は正確な診断だと思います。

 しかし、総理がやろうとしていることは、その診断に対する処方せんは、増税路線に踏み出して、そして家計の所得を奪うというものでしょう。所得の回復がかぎだという診断、これは正しい診断ですよ。家計の消費のためには所得の回復がかぎだという正確な診断をしているんですけれども、出している処方せんは、所得を大幅に奪う増税路線への踏み出し。これは、私は、診断と処方せんを百八十度たがえている、風邪と診断しておいて布団をはぐようなものだ、こう思いますが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、見方が全く違うんですよ。

 というのは、確かに家計所得が景気に与える影響は大きいですよ。しかしながら、歳出の削減も、そして増税も、確かに景気に対してはマイナスの影響を与えます。かといって、じゃ、国債を増発すればどうかというと、これまた将来の増税です。今は、それじゃ、増税しないで国債を発行しよう、増発しようということになれば、今は楽かもしれない。今も国債費だけでも最も税金を使っているのに、これ以上国債を増発するということに対しては、極めて抑制的に考えなきゃならない状況であります。

 だからこそ、国債の発行と、そして歳出の削減と税収動向、どう考えるか。これは極めて微妙な段階に来ているんです。だから、全体を見ないと。そういう中で、ようやく国債を増発して公共投資をふやさないでも民間主導の回復力を持ってきたなという、大事な局面にいるということも、全体の状況から見ていただきたいと思うんです。

志位委員 民間主導の回復力、これはどこに根拠があるんでしょうか。

 総理の本会議の答弁では、企業の利益が随分上がってきた、企業の利益が上がってきたから、これはだんだんと家計の所得にも回ってくるだろうと。ここに、回復力は、あなたは根拠を見ているんでしょうか。端的にお答えください。

小泉内閣総理大臣 それは、現実の姿を見ても企業の業績は改善しています。不良債権処理も進んでおります。そして失業率も、一時の五・五%から、つい最近は四・四%台に減ってきました。雇用者数も増加しています。そして、有効求人倍率といいますが、企業が人を欲しいという、これは十一年ぶりに高い水準で〇・九台になりました。

 こういう状況を見ても、これは民間は頑張っているなということが言えるんじゃないでしょうか。

志位委員 要するに、企業が利益を上げているから家計の所得がふえる、そこに根拠を見出しておられるわけですね。その力があるから多少負担増があっても景気は大丈夫だろうというのが、総理の御答弁だったと思うんですよ。しかし、私は、この先ほどの「日本経済二〇〇四」を読みまして、そうじゃないという分析もしているんですね。

 これは、こういう分析があるんです。企業の利益と給与の関係についての分析ですけれども、この報告書では、一九八〇年代までは企業の利益と給与とは高い相関関係を持っていた。つまり、企業がもうかればある程度家計に行った。しかし、九五年以降は、むしろ逆相関が強まっている。つまり、逆相関というのは、企業の利益が伸びても家計の所得は減る、そういう相関になっちゃっている、これが強まっているという分析を政府の内閣府のレポートは書いているんですね。

 私は、このレポートを大変興味深く読みまして、政府の統計で実際グラフをつくってみました。こういうグラフになるんですね。

 これは企業利益と家計所得の関係でありますけれども、青い棒は企業の方ですけれども、大体九七、八年から今日まで、ジグザグはありますけれども、二十一兆から三十六兆に十五兆ほど利益をふやしていますでしょう。逆に、赤い棒は家計ですけれども、同じ時期に二百八十兆から二百六十五兆に十五兆所得を減らしているんですよ。こういうのを逆相関というのですね、まさに。これはまさに、企業の利益というものが、賃金を減らして、家計から吸い上げて、リストラによる増益だということを物語っていると私は思います。

 つまり、企業が利益を上げて、そのうち家計に及ぶから、景気は回復力を持っているんだ、多少負担かけたって大丈夫なんだとおっしゃいますけれども、成り立たないんですね。成り立たないことは、これはもう国民の皆さんの実感ですよ。企業がもうかったって懐ぐあいはよくならない、みんな実感ですよ。そして、このグラフでも明瞭ですよ、逆相関です。そして、逆相関だというのは、何よりも内閣府のレポート自身に逆相関と書いてある。しかも、強まっていると書いてある。

 これからどんどん、行く先でも所得がふえていく見通しのないところに増税かけて、どうして景気がよくなるか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今の表の逆相関でありますけれども、確かに企業の業績がこれだけ上がっているのに雇用者の所得が逆であるということは事実なんですが、今まで日本が、この景気停滞の理由で、余りにも雇用者を多く抱え過ぎていたのではないかということで、企業は随分苦労してきたわけです。これはリストラで被害を受ける面もあるんです、両方。過剰雇用をどう解消していくか。

 あるいは、債務の面においても過剰ではないかという企業も多かった。金融機関においても、なかなか回収できない債権、これで足をとられてなかなか成長分野に資源が回らない。それを、労働生産性というのは日本は低い、この状況を脱皮しないと日本は新しい経済再生はない、景気回復はないと言われて、これからの経済再生は不良債権処理はまず不可欠だということで、政府としても進めてきた。企業も頑張ってきたんです。

 リストラだって、ゴーンさんじゃないですけれども、かなり日本の経営者にできないような経営改革をやってきたということで評価されていますけれども、あの場合には、大きな企業だったから、リストラになった人たちがほかの中堅企業に回って、余り失業者を出さないで済んだ。

 さらに、今ようやく、過剰労働の面においても、過剰債務の面においても、いわゆる企業にとっては足かせの部分が軽くなってきたんですね。これから、雇用者所得にもいい影響を与えるように、そういう状況になってもらいたいなということで、そういう環境を今政府としては、いろいろな制度の改善とか規制改革とか、あるいは税制改革とかしていかなきゃならない。

 確かにこういう状況でありますが、余りそれは雇用者所得を上げると企業が海外に逃げちゃうんですよ。今まで何で海外に逃げていたかというと、日本の労働者の賃金が高過ぎて、ほかの発展途上国に行けば安い労働賃金で同じような製品がつくれるということで、どんどん逃げていった。これでは困る。今までも企業の空洞化を心配していたんです。

 ところが、ここが日本のすぐれたところで、日本はやはり労働力の質が高いというのがわかってきた。一度、海外、安い賃金のところに企業が行っても、いいものは日本で、つくれないものがあるということで、最近戻ってきているんですよ。そういう点も、やはり新しい時代の変化に企業は巧みに耐え得るように改革してきているんです。そういう点が今雇用の改善にもあらわれてきている。

 だんだんこれを雇用の改善から雇用所得の上昇に向けるように努力していかなきゃならないということは、私は十分理解しているつもりでございます。

志位委員 雇用の改善、失業率が下がったということを言われますけれども、失業率が多少下がっても、正社員の数はどんどん減っていますよ。正社員を減らして、パート、アルバイト、派遣労働に置きかえている。ですから、賃金の総額は減っているんです。厚生労働省が出した最近の、昨年一年間の賃金の統計を見ても、〇・七%やはり賃金の総額は減っているんですよ。

 私は、企業が利益が上がったら家計に回る、これが成り立たないじゃないか、これは逆相関だということをレポート自身認めているじゃないかということを言ったのに対して、総理は全然答弁していないですよ。ですから、所得が伸びる見通しもないのに負担増だけかけたら、橋本失政の二の舞になること、これは明瞭です。いかがでしょうか。

竹中国務大臣 午前中の御答弁で述べさせていただいたことでもあるのでございますけれども、志位委員の御指摘は基本的には、最近、付加価値の中で労働者の取り分が減っているではないか、資本の取り分がふえているけれども労働者の取り分では減っているではないか、そのことに尽きているのだと思います。しかし、もしそうであるならば、先ほど九三年か九四年からのグラフをお示しになられましたが、それ以前まで含めて、ぜひその分配の割合がどうなっているかということをごらんいただきたいと思います。

 日本の労働の賃金の取り分というのは、大体三分の二で長い間ずっと一定してきました。それが、九〇年代これが上がって、四分の三ぐらいまで行きます。十年近くの間で十ポイントも労働分配率が上がった国というのは、世界じゅう、先進国ではないと思います。それだけ実は、日本の経済に大きなショックを受けたときに、九〇年代、労働者の取り分をできるだけ減らさないで、結果的に企業が利益を減らして疲弊したというプロセスがあった。しかし、このままでは国全体が沈むだろうということで、今、少しずつ構造改革をして不良債権も減らして、それで今、この正常化のプロセスにあると思っております。

 労働分配率は、一時上がって、それが今半分ぐらいのところまで落としておりますけれども、その中で、先ほど総理の御答弁にもありましたようにようやく過剰感が消えてきて、その結果、今、これも先ほど志位委員がお示しになりました雇用者報酬でございますが、これは二〇〇三年までしか書いておりません、二年前の数字でございますが、これは、私たちの見通し、実績見込み等々では、十六年度からこれが上昇に向かう、そして十七年度もそれが上昇に向かうであろう。これは、名目でもプラスになるであろう、したがって実質はもっとプラスになるわけでございますが、そういう見通しの中で経済をさらにしっかりと運営していきたいというふうに思っているところでございます。

志位委員 竹中大臣、虚偽の答弁をされたら困りますね。雇用者報酬が今年度から上昇に向かうという根拠をあなたは雇用者報酬の数字で恐らく言ったんだと思うんだけれども、これは去年の四―六月期にちょっとプラスになっただけの話でしょう。その後の七―九はマイナスなんですよ。それから、先ほど言った厚生労働省の二〇〇四年全体の数字もマイナスなんですよ。あなたは、これから所得が上がってくる上がってくる、上がってくるというのは、何の根拠もなく言っているんですよ。私、先ほど、あなた自身の所轄している内閣府のレポートを使って、企業の利益が上がったって所得は上がらないじゃないか、逆相関じゃないか、これを言ったのに対して、だれもまともな答えがない。

 もう一つ言いましょう。日本銀行が、調査季報一月号、ことしの一月号で興味深い分析をやっております。この最初の論文で「雇用・所得情勢にみる日本経済の現状」、調査統計局がやっておりますけれども、これを見ますと、「企業収益に比べて雇用者所得の動きは弱く、労働分配率は大幅に低下している。」、低下し続けている、こういうふうに言っております。そして、これは企業の根強い人件費抑制姿勢に基づくものだと。つまりリストラですよ。あなたが主導してやっているリストラですよ。これに基づくものだと言って、これは構造的なもので今後も続くと。「企業の人件費抑制姿勢は当面根強く残る」、今後もリストラは続いて所得は減っていくという見通しを立てているんですよ。将来的に景気が回復して所得が回復する場合でも、いつそうなるのか、どういう規模でなるのかは不確実性があって、予測がつかないというのが日銀の判定なんです。

 私、きょう、この議論をしておりまして、ちょうどこの場でやりました、一九九七年に橋本総理とやった九兆円負担増のときの議論を思い出すんですね。あのとき私は、あのときはまだ所得は伸びてはいたんです、しかしこの所得の伸びが弱いから、九兆円も負担をかけたら必ず景気に底が抜ける、こう言いました。しかし、橋本さんは、いやいや、所得の伸びはなかなか力強いから、負担増を吸収して大丈夫だ、こう言ったけれども、結果は大失政になりました。

 きょうの議論も、私は、今の状況というのは企業から家計に回るような状況じゃない、家計の所得はどんどん減り続けている、そのときに増税路線に踏み出して大丈夫なのか、これを言ったのに対して、大丈夫だという根拠は何一つないじゃありませんか。私は、これでは大失政の繰り返しになるということを強く警告しなければなりません。

 しかも、私、総理に次にもう一つ聞きたいことがあるんですね。

 当面の負担増というのは、定率減税の縮減、廃止だけじゃありません。高齢者には年金課税の強化、若者にはフリーター課税の強化、中小業者には消費税の徴税の強化、あらゆる分野で庶民増税が計画されております。さらに、年金の保険料、介護保険の保険料、雇用保険料の値上げ、社会保障もあらゆる分野で負担増であります。これは、合計しますと、二年間で七兆円の国民負担が新たに加わってくることになります。

 私、総理に認識として伺いたいのは、庶民の生活実態がどうなるかということについての認識であります。

 例えば、政府・与党は、お年寄りの住民税の非課税措置を廃止するとしていますでしょう。三年間で廃止するというんだけれども、これによって、全国で百万人、東京だけで二十万人のお年寄りが、住民税が非課税から課税になります。これは、非課税から課税になりますと、税金だけじゃありませんよ、国民健康保険料、介護保険料、連動して値上げになるんですね。負担増が雪だるま式に膨らんでいくことになります。

 これは私、試算してみたんですけれども、国保とか介護の保険料は自治体ごとに違いますから、東京・大田区の場合ですけれども、年金百八十万円のひとり暮らしのお年寄りの負担増がどうなるかです。現在は非課税ですから税がかかっておりませんが、保険料を二つ合わせて大体五万九千円。それが、増税後は税がかかってきます。税だけじゃないんですよ。税がかかると、連動して国保料も上がる、そして介護保険料も上がる。全部連動して雪だるま式に上がるんですね。そうしますと、今大体五万九千円の負担が、十二万四千八百円ぐらいの税と保険料の負担になる。倍以上になるんですよ。

 こういう一つの負担増の問題をとってもこういう事態になるということを、総理は、影響は小さい、負担増は大したことないということをおっしゃるけれども、例えばこういう高齢者の負担増一つとっても雪だるま式に膨らんでいくということについて、十分承知の上で、十分認識した上で今方針を進めようとしているのかどうか。これは総理の認識を伺いたいと思います。総理、どうぞ。

小泉内閣総理大臣 今、答弁する前に、竹中大臣に、あなた、誤りだと言ったでしょう。これに対して、ちょっとやはり答弁する機会を与えてあげないと、それは不公平じゃないですか。

竹中国務大臣 私の答弁が虚偽だという御表現だったと思いますが、私、先ほど、労働の取り分、労働分配率の話等々、かなりわかりやすく御説明したつもりですが、御理解いただけていないようでございますので、もう一度申し上げますが、労働分配率はもっと長期で見てくださいということでございます。

 ここ数年だけとって、それで企業の取り分が大きいと。それは、当然のことながら、それ以前に、ここにつながる動きがあるからでございます。先ほど言いましたように、日本の労働分配率はずっと高くなってきたんです。これを何とかやはり修正せざるを得ない、つらいけれども修正せざるを得ないというプロセスに入って、それが今ようやく半分かそこらぐらいまで進んできたという段階でございます。

 今、そういう中で、雇用者の報酬がふえるかどうかでございますが、私たちは経済見通し、経済実績見込み等々で雇用者報酬をきちっと出しておりまして、その中で、これはまだ、労働分配率が上昇して、修正はまだ半分ぐらいしか来ていませんですから、まだこういう調整はやはり時間をかけていかなければいけない。その意味では、そんなに経済の回復は容易ではございません。しかし、容易ではないけれども、ようやくその兆しが出始めたというところで、この動きを大事にしていこう、この長期的な動きを見ていただきたいという点をぜひ御理解賜りたいと思います。

志位委員 私が虚偽だと言ったのは、雇用者報酬がプラスと言ったことが、これは全く何の根拠もないということですよ。あなたが言ったのは四―六の数字で、その後マイナスになっているじゃないか、あたかも今どんどん伸びているような、そういうことを言うのはおやめなさいということを言ったんですよ。そのことについて何にも答えていない。そして、労働分配率はまだ下げどまりになっていないんだったら、もっと所得だって落ちるということになるじゃありませんか。語るに落ちる答弁ですよ。

 総理、総理。もういいです。総理、総理が答えてください。私が聞いたのは、こういう実態についての認識があるかどうかの総理についての答弁を聞いたんです。総理、答えてください。総理、答えてください。だめです。もうこれで時間つぶしたらだめです。総理、答えてください。

竹中国務大臣 雇用者報酬については、今志位委員は四半期でどうだということを申されましたが、私たちは経済見通し等々の中で十六年度の実績見込みというのを出しております。その中で、さらに経済見通しも出しております。ぜひとも、もしこれに反論がございますのでしたら、共産党としても政府見通しに匹敵するような経済見通しを出していただければよろしいのではないかと思います。

 それと、負担増の話でございますけれども、これは、一方で、先ほど総理から御答弁がありましたように、この負担の話をある程度きちんとしていかないと、将来の負担がまた重くなるぞということで期待所得が下がるわけです。それが経済に極めて悪い影響を及ぼすわけでございます。負担をふやすのは、これはみんな大変つらいことでございますけれども、しっかりとそのことを負担していかないと、期待所得が下がって経済に悪い影響が出るということだと思います。

志位委員 総理の答弁をお願いします。この問題に答えてください。

小泉内閣総理大臣 それは、税の負担だけで言いますけれども、予算というのは歳出があるんですよ。この予算全体を見れば、今の、来年度の予算におきましても、日本は今まで大分国債を増発してきましたから国債費の利払い費が一番多いんですけれども、一番使っている予算は、地方に行く金を除いて政策費は社会保障ですよ。国民の税金の分や一般歳出の部分に、どの部分に一番使っているというと、年金も医療も介護も生活保護も含めて、一番、日本国民、政府は税金をその部分に使っているんです。だから、負担の部分だけ挙げて、福祉をやっていないという批判は当たらない。

志位委員 私が聞いたのは、お年寄りの負担増が雪だるま式に膨れ上がっていく、これは非常に深刻な問題ですよ。それで、先ほどの十三万円もの負担というのは、これは一カ月分の年金に匹敵するようなものですよ。こういう問題について知っているのかと聞いたんです。私は、そういう問題について本当に真剣に誠実に答える姿勢がなくて、そういう冷酷な姿勢のまま国民に隅々まで負担増を押しつけるというようなことをやったら、これは絶対景気がよくなる道理がない、橋本失政の二の舞になると思います。

 私は、総理が歳出のことも考えてくれというふうに言ったので、では聞きましょう。

 来年度の予算案を報じたメディアがもう一つ強調したことがあるんですよ。それは、大型事業は聖域化だという問題です。つまり、庶民に増税を押しつけながら、大型開発事業が復活し、むだ遣いを拡大しているじゃないかという問題であります。

 例えば今大問題になっている問題を一つ挙げましょう。総額一兆円を超す巨大事業である関西空港二期工事に新たに三百億円の予算を今度の予算案で計上している、これは事実ですね。これは、埋め立てがほぼ終了して、滑走路や空港ビルの上物をつくる新たな段階に入るための予算であります。

 関空というのは、今一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力を持っている。ところが、実績は十万回ですよ。今一本でも余っているんです。需要の見通しもない。その上二本目の滑走路建設というのは、これはむだそのものだというのが世論の圧倒的多数の声だと私は思います。

 そこで、総理に伺いたいんですが、私、総理の答弁の中で非常に印象的だったので読み上げてみたいんですが、これは二〇〇二年の七月十日の予算委員会の答弁ですが、こうおっしゃっておられます。「小泉内閣の方針は、増税ではなく歳出削減で無駄な税金の使い方を徹底的に直すということであります。」「増税よりも歳出削減が先だと、無駄な税金の使い道、これを徹底的にやるのが先だという方針で臨んでまいります。」こう公約されたわけですね。

 しかし、関空二期は、どうしてこれが必要な事業ですか。これはむだそのものだというのは、離発着の回数一つとったってもう明瞭であります。私は、増税よりもむだ遣いを徹底的に直すことが先決というあなたのこの公約に照らすならば、新たなむだ遣いに乗り出しながら庶民に増税など到底許せる道理はないと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 後ほど北側大臣に答弁していただきますけれども、その公約どおりやっているんですよ、私は。公共事業、四年連続マイナスじゃないですか。関空のことを言っていますけれども、今回の公共事業費は前年度に比べて三・六%削減したんですよ。ふやしたのは社会保障関係費と科学技術振興分野の予算だけ、あとは前年度に比べてマイナスにしなさいと。しかし、必要な治安対策とか、そういう分野、警官を増員する場合は、増員しなければ、ほかの部分は減らしなさいと。その公約どおり進めているんですよ。そして、このまま負担を軽減して、国債を発行しようといったならば、国債増発だってこれは将来の増税ですから、できるだけ抑えていかなきゃならない。そういうめり張りをつけて予算をつくっているんです。

 だから、今回、そのような御指摘も共産党としての御主張としてはわかりますけれども、全体として見ていただければ、これだけ厳しい財政状況の中、これだけ公共事業をやれやれという中で、四年連続マイナス予算を組んで、そのマイナスの中で必要な事業を組んでいるんですから、その辺もやはり理解していただかなきゃ。

甘利委員長 北側国交大臣、簡潔に。簡潔に答弁してください。

北側国務大臣 関西空港の需要見込みでございますが、二〇〇七年度の二本目の滑走路を必要とする時点では十三万回程度、また、二〇〇八年度には十三・五万回程度の総発着回数を想定しており、見込んでおるところでございます。

 昨年も関西空港は、一昨年のSARSの影響から脱しまして、需要は国内線も国際線も伸びております。この見通しは達成できるというふうに考えておりまして、また、成田空港も、かつて平行滑走路を供用する時点では、年間十三・三万回で平行滑走路をつくったわけでございます。また、必要な費用につきましても大きく見直しをさせていただいて今回予算をつけたわけでございまして、そういう意味で決してむだではないということをぜひ御理解をお願いしたいと思うわけでございます。

志位委員 まず、小泉首相の公共事業の問題についての御発言ですけれども、全体を減らしたとおっしゃいました。確かに三%ほど減らしているんでしょう。しかし、減らしたらむだな事業をやっていいというふうにはならないですよ。

 それからもう一点、減らした減らしたと言うけれども、これを見てください。財政制度審議会に財務省が出した国際比較の数字ですよ。減らした減らしたと言うけれども、例えば、学校、病院、福祉施設、そういうものを除いた、いわゆる日本で公共事業と言われているものの水準は、アメリカ、ドイツ、フランスの三倍ですよ。イギリスの十倍ですよ。こういう水準にある。額でいえば十数兆円も多いということを認識すべきであります。

 それから、北側さん、先ほど言われました。しかし、関空がむだだというのは、私は、北側大臣と谷垣大臣の十二月十八日のこの合意文書、ここにはっきりと自分で言っていると思います。なぜならば、ここには、関空は、二〇〇七年度には十三万回程度、二〇〇八年度には十三・五万回程度の「需要の確保のために、集客・利用促進・就航促進に向けた更なる努力を行う。」と書いてあるんです。努力を行うですよ。つまり、需要の予測じゃないんですよ。需要があるから空港をつくるというんだったらわかりますよ。しかし、この文書に書いてあるのは、そうじゃない。空港をつくったから需要をつくるというんですよ。お客を集め、航空機を集め、需要を集める。これは、これこそむだ遣いですよ。

 私は、一方でこういうむだ遣いを押しつけながら、国民に巨額の負担増や増税を押しつける、これは絶対に認めるわけにいかない。今からでも、七兆円の負担増、さらにはそれに続く消費税の増税の計画はきっぱり見直して、中止すべきだということを最後に言って、質問にいたします。

甘利委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 質問をいたします。

 まず最初に、お願いでございますが、一月三十一日に東京地裁で、ハンセン病元患者に対し国側は請求どおり五千万円全額を支払うよう命じる判決が下されました。当然控訴を断念されるとは思いますが、総理のお考えをお聞かせください。

尾辻国務大臣 お話しのように、一月三十一日に東京地方裁判所において、ハンセン病を再発された方の昭和五十六年から平成四年までの間の治療が不適切であったとする医療過誤訴訟について、国側敗訴の判決が言い渡されました。

 今後の対応につきましては、現在、判決内容を検討しておりまして、関係省庁とも協議をしているところでございます。現時点ではコメントを差し控えさせていただきたいと存じます。

横光委員 私は、今回のこの元患者さんの全面勝訴という判決を聞いて、改めて国のハンセン病政策の罪深さというものに対して怒りを禁じ得ませんでした。

 どうか、長年にわたって苦しんできたこの女性にようやく司法の場から救済の手が差し伸べられたわけでございますので、今度は政治の場から手を差し伸べるよう、二週間という期限を待つことなく、早急に控訴を断念していただきたい、このことを冒頭、心から総理にお願いを申し上げておきます。この対応を適切に対応すれば、また総理の評価も私は上がるのではなかろうか、このような気がいたしております。

 その評価ですが、小泉内閣の支持率が下がり始めております。昨年末の毎日新聞の調査では三七%と初めて四〇%を下回りました。また、その他各種の世論調査でも支持率の下落傾向が際立っておるんですね。そして、先般の朝日新聞の調査では、政権発足後最低の三三%となったわけでございます。

 このように内閣支持率が下がった原因はどこにあると総理はお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まあ、社民党よりは上だと思うんですけれどもね。支持率は上がったり下がったり、支持率が変わっても小泉内閣の改革路線は変わりません。

横光委員 余り危機感がありませんね。八四%あったのが三三%です。私は、ここまで下がるにはやはり下がった理由があると思うんですね。総理は今言われませんでしたが、さまざまな私は理由があって、それが集大成されてこのような今の国民の声になっているのではなかろうか。

 いわば市場万能主義による二極化が進んで、そして片一方が置き忘れられようとしている、あるいは国民の願いとずれがある。つまり、国民がやってほしいと思っていることと総理がやろうとしていることに大きなずれがある。これはもう年金もしかり、イラクへの自衛隊派遣延長もしかり、そして郵政民営化も恐らくそうでしょう。さらには、政治の腐敗が多過ぎる、そしてそのことに対する改善に向けての努力が国民からすると見られない、そういったこともあるでしょう。また、国民に対する説明責任も、相も変わらずはぐらかし答弁が多い。こういった、要するに総理の国民と向き合う姿勢、これが三三%にあらわれているんじゃないかという気が私はいたします。

 さらにもう一つ。各種の負担増を国民に押しつける、とりわけ高齢者の痛みが大きくなっております。つまり、トータルでいえば、私は、やはり冷たい政治である、このことを今国民がそのように受けとめ始めたのではないかという気がしておるんです。

 冷たいといえば、きのうまで、十九年ぶりと言われる大寒波がまた日本列島じゅうを襲いました。昨年はさまざまな災害によって被災者がたくさんおられるわけですが、この寒波によって、また被災者の方々は身も心も冷たい思いになっている。しかし、その被災者に対して、今度は国の支援対策はさらに冷たいと言わざるを得ないと私は思うんですね。

 私たちは、そういった被災者の皆さんに少しでも温かい政治をという思いで、この国会にも被災者生活再建支援法案を提出いたしております。昨年の臨時国会にも提出いたしましたが、審議未了ということで、与党の皆さんから廃案とされてしまいました。しかし、私たちは、これは今必要である、そういった思いで、何とかして支援者の方々に少しでも温かい手を差し伸べることができないかという思いで、この法案を提出いたしております。

 しかし、この委員会でもこの問題で何回か質疑が行われておりますが、依然として冷たい答弁しかありません。住宅本体の再建に対しては、私有財産に対する公費の支出は困難である、こういった姿勢を崩していないわけでございますが、これは、いわゆる公共性がないからという理由なんでしょうか。お聞かせください。

村田国務大臣 災害が起こったときの被災者の皆さん方、まずは住宅の再建というのがこれはかなめでありますので、私たちも、被災者に対して何とかしてあげたいという気持ちは皆さん方に負けず劣らず持っているわけなんです。

 一つは、要するに地震保険、これだけ見ましても、これは自助によるものなんですが……(横光委員「公共性がないからできないのか」と呼ぶ)いやいや、そうじゃなくて、それはもちろんいろいろな議論がございますけれども、地震保険、あるいは建物更生保険というのはこれはJAのものがありますけれども、これだけで、両者合わせて……(横光委員「自助も必要」と呼ぶ)ええ、自助をちゃんとやってきた方は、それだけで五百億円ぐらい支払いが行われているという現実もあるんですよね。そういう中で、大体、農協の組合員は、組合員の八割がJA建物共済というのに入ってあって、それで救われているという現状もあるわけです。

 まず、そういう自助というものを基本としつつ、今度は本当に困った人、建物、住宅を持っている人、持っていない人、それから、不幸にして再建できない人に対しては、災害公営住宅の制度とか、それからいろいろな、ひとり身のお年寄りの住む、政策体系というのが全体で出ているわけでございます。

 その中で、公共性があるか、あるいは優先順位をつけていく体系になっているということを、私も時間があればゆっくりと御説明差し上げたいと思っておりますが、そういう意味では、お金の使い方として、どれが優先されるかということをお考えいただきたいと思っているわけでございます。

横光委員 私が聞いたのは、私有財産には公費は支出できないとずっと言い続けておられる。その理由として、公共性がないからだという理由なのかと聞いておるんですが、まあそういうことでしょう。

 しかし、省庁再編の前の旧国土庁ですね、災害対策の省庁でございましたが、この国土庁の被災者住宅再建支援検討委員会、これは、阪神・淡路大震災が起きた後これができて、平成十二年の十二月に報告を出しておるんです。ここでは、住宅は単体としては個人資産ではあるが、阪神・淡路大震災のように大量な住宅が広範にわたって倒壊したときには、地域社会の復興と深く結びついているため、地域にとってある種の公共性を有しているものと考えられると、住宅再建に公共性を認める方向を打ち出しておるんです、政府の検討委員会で。たとえ個人の住宅を再建する場合でも、既にもう公共性はあるんだとここに書かれておる。

 そういったことがあるから、言われている、個人資産には公費は出せない、あるいは公共性がないから出せないというのは、もう最初から崩れているわけですね。

 しかも、いわゆる農地、これもある意味では個人資産でございます。ここの災害のときには、やはり国庫補助が出されている。しかし、農地を持っていない人がこのことに対して何ら異論を挟むことはない。認めているわけですね。いわゆる生産基盤の大変重要なものであるという理由で国庫補助をしている。これは、ある意味では私有財産でございます。こういうふうにもう始まっている分野もある。

 さらに、各自治体では、既にもう公費を支出しておるんですね。いわゆる基金を出す、そして政府の支援策がある、それでも十分でない。だから、さらに被災者の人たちの再建のために各自治体が公費を出して、再建のために制度をつくって実施しておる。制度があるのは十八都府県、実施しているのは十一都府県。一番最初にここに取っかかってやったのが鳥取県ですよ。要するに、地域再生のためには住宅再建に公費を入れるのは必要だというコミュニティー論でやっておるんですよ。

 それで、国が私有財産だから公費支出はできないと言い続けておりますが、自治体はやっている。自治体は公費じゃないんですか。税金でやっておるんですよ。そういうふうに、政府がそういった理由でできないというのはもう成り立たないわけです。

 さらに、世論ですね。これも先ほど、この問題で大変重要なのは、公平性があるかということが確かに言われます。しかし、これも世論調査ではもう八〇%以上の国民が、災害に遭わない、余り来ないところの人も、あるいはそういった個人の家を持っていない人も押しなべて調査した結果、八〇%の人が国が支援をすべしという結果が出ている。

 こうして見ると、あと何が問題なのかということになるわけですね。ほとんどの問題はクリアできているわけです。そうすると、最後はやはり財源ということになろうかと思います。

 しかし、これは比較にはなりませんけれども、ちょうど先ほど原口さんが、金融機関の安定化のために公的資金が注入される、これはもちろん個人資産と違うから比較にはなりませんが、こういうところには十兆も公的資金をつぎ込んでおるんです。これはある意味では人災でしょう。今度の災害は天災なんですよ。あらがいようがない。不可抗力。片一方、金融システムの安定化というのは、ある意味では人災です。人が起こした災難ですよ。ここには十兆円も国の税金をつぎ込みながら、今苦しんでいる、本当に天災であらがいようがない人たちには何で、理由はすべてもうクリアできたにもかかわらず、公費を支出するということに踏み込まないのか。これは、耐震の奨励と同時に、要するに防災と救済、両輪でやる必要があるんですよ。今苦しんでいる人たちに手を差し伸べるとともに、これからの未来のための制度でもあるんです。

 そういった意味で、どうか総理、本当に今必要な、一番最初にかからなきゃいけない住宅再建に国が手を差し伸べる。解体とかいろいろなごみ処理とか金融の補助とかいうことはやっておるんですが、建物本体の再建だけには踏み込めないわけですよ。実際やっているんですよ、支援は。しかし、そこのところの線引きが非常にあいまいで使い勝手が悪くて、ほとんど利用されていないということになっている。

 総理、ここは非常に、きのうの大寒波でも、大雪害でまたまた家の倒壊が数多く発生しております。総理のお考えをお聞かせください。

村田国務大臣 不良債権、金融機関の問題でございますが、あれはとにかく、金融システムを守っていくという、先ほど先生がおっしゃった公共性の問題があったわけでございまして、それから、例えば今度の制度でも、災害復興公営住宅とか小規模集落を復興していく、そういう制度もありまして、家を持たない方、不幸にして家の再建ができない方にはそうした制度を優先的に利用していく、こういう形で、優先順位をつけてお金を、税金を使わせていただいているということであります。

横光委員 今言われたように、そういったこともやっていますが、今ある支援法はほとんど利用されていないんです。なぜかというと、いろいろな制限があるんですね、要件が。いわゆる年収とかあるいは年齢とか、そういう要件がある。

 ですから、一カ月前の内閣府の報告では、あれだけ災害があったにもかかわらず、支援法の災害の支援の要求が一割ぐらいしかまだないと。一カ月前ですね。一カ月後ですから、内閣府は各市町村からの報告が来ていないのでまだわからないと言っておりますが、そんなに伸びていないでしょう。なぜか。いわゆる要件が厳しいんですよ。せっかくある支援法が役に立っていないんですよ。そうでしょう。

 つまり、お手元に配っておりますが、こちらが現行法、これが今度我々が出している法案でございます。この現行法が、四十五歳以下、そして年収が五百万以上、いわゆる年収が五百一万で、そして四十五歳以下の人たちは今度の支援法を全然使えないんです。住宅ローンの利子補給の補助をしてほしいと思っても使えないんです。この四十五歳以下で五百万以上の人たちが、実は倒壊した家を再建する必要性が一番求められている世代なんですね。ここの人たちには全然使えないような現在の制度の不備、ここだけはまず第一段階として何としても埋めてほしい。

 そうすると、私は、今の支援法でも利用者が随分出てくるでしょうし、そしてまた、その後には、何とかして本体の再建のときに国の力でサポートする。これはあなた、ほんの一部をサポートするのであって、すべてをサポートするわけではない。それも、我々もやはり八百万という制限はつけております。

 そういった意味で、年齢はすべて取っ払って、年収だけはつけておりますが、こういった形で、私は、ぜひこの法案が今国会中に、いやいや、答弁を求めておりません、国会中に成立することをこれからも努力してまいりたいと思っております。

 では、この改正のところに答えてください、この穴をとりあえず埋めるということを。

甘利委員長 村田防災担当大臣。指名してから答弁してください。

村田国務大臣 総理からも、細かく規制されておって使い勝手が悪いような、そういうところは改善したらどうかという御指摘もありまして、私どもも、ぜひともこういう制度を、使える方には、条件の合う方には使っていただきたいと思っておりますので、そこは改善方を指示したところでございます。

 なお、もう一言だけ言わせていただきますと、米国では同様の制度がありますけれども、これは大体二万五千ドルでございます。二百五十万円程度ということで、国際的にもそんなに貧しい、低い制度ではない、こういうふうに思っております。なおかつ、この申請期間は三年ありますから、中越の方は雪が解けてからでないと申請できませんので、そういう意味で三年間ありますから、これから応募していただきたい、こういうふうに思っております。

横光委員 一番不備な部分だけは何とか埋めようという意思表示が今ございました。これによって、現在被災された方は随分この支援法を活用する道が開けたと思っております。しかし、最終的には、やはり本体の再建のために国がサポートする、そういった法律の成立のためにこれからも我々は努力してまいりたいと思っております。

 次に、政治と金についてお尋ねをいたします。もう耳にたこができるほど嫌な問題でしょうが、嫌だからといって避けるわけにはまいりません。

 橋本派の要するに一億円のやみ献金事件は、本当にやみくものうちに年を越してしまって、今なお真相はやぶの中なんですね。そして、この解明のためにはどうしても証人喚問が必要であると、これはもうすべての国民が思っているんですね。(発言する者あり)思っているんですよ、すべての国民。要するに、朝日新聞、産経新聞の調査では九〇%が証人喚問に応ずるべしという答えが出ているぐらい、何とかしてほしいと国民は願っている。しかし、これが進まない。

 事は自民党の犯した不祥事なんです。総裁、いいですか。総理とは言いません、総裁。自民党の総裁なんですよ、あなたは。それで、自民党が犯した不祥事なんです。(発言する者あり)起こした不祥事なんです。であるならば、何で、先ほどから各党の協議に任せるなんという投げやりや丸投げのことを繰り返しておりますが、自民党総裁としてこの真相解明に向けて努力する姿勢が一向に見られないんですが、総理、もう一回お聞かせください。あなたの政党の問題なんですから、お聞かせください。証人喚問は。

小泉内閣総理大臣 この点につきましては、もう各党から何人も証人喚問要求が出ておりますし、その点についても、何人に絞るかとか協議が進んでいるということを聞いております。

 国会の運営のことにつきましては、今、与野党の議員が努力している最中ですから、私は、その協議を見守って今後判断していかなきゃならないと思っております。

横光委員 私は、しつこいようですが、ほかの政党の人が起こした問題ならいいと思うんですが、自民党が起こした問題で国民が証人喚問を求めているのに、自民党の総裁がそういった姿勢じゃ進みませんよ。

 一言、やはり説明責任があると、疑惑を持たれたならばそういった場で説明すべきだと総理はかねがね言っておるじゃないですか。それをもう一言強く言えば進むと私は思うんですね。でなければ、これは恐らくまた国民の中から政治不信が、うやむやのうちに置いていかれて不信感が募るんじゃないかという気がしてならないわけです。

 それから、きょう同僚議員も質問されましたが、東京第二検察審査会の議決、これは非常に重いと思うんですね。まさに国民の声でもあると思うんですよ。金銭一億円を渡した場所にいたとも言われている三人はいわばおとがめなしですね。そして、その場にいなかった村岡さんは起訴される。そして、滝川さんはトカゲのしっぽ切りのように、いわゆる罪を着せてこの問題は一件落着にしようとしている、そんなふうに国民は見ている。それはおかしいじゃないかという国民の声が今度のあの審査会の議決だと私は思うんですね。そういった意味で、ここは性根を据えてこの問題に取り組まないと、国民の政治不信はさらに募ると思っております。

 それでは、もうちょっと時間がございません。杉浦官房長官にお尋ねをいたします。

 杉浦官房長官は訂正を……(発言する者あり)官房副長官、訂正をされましたが、その訂正をされたのは、党からの活動費であるということで説明がございました。森派の清和研究会からのお金ではないと。しかし、平成十四年、片一方では同じ六月、十二月に党から活動費が出ておるんですね。そして、その数日後に、出た金は、本当は清和会と書いていたのが結局党だということに変えたわけですが、党からもらった。しかし、何で、片一方の方は活動費として直接いただいているわけですね。片一方は何で、同じ党の活動費なのに森派を経由しなければならないんですか。この説明をいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 お答えいたします。

 問題になっている党の活動費、いずれも党からちょうだいした活動費でございまして、私としては適正に使わせていただいておるわけですが、ただ、収支報告書に対する記載の方法とか中身が間違ったということでございまして、清和研を経由してちょうだいしたのも党活動費であった。勘違いで清和研からの寄附と記載いたしましたので、訂正させていただきました。

 それから、党活動費としてちょうだいしたのも、私が寄附する場合には特定寄附として記載しなきゃならないのを、党からの寄附と誤って記載したのも訂正させていただいたわけでございます。

甘利委員長 横光君、時間が終了しております。

横光委員 私が聞いているのは、なぜ、同じ活動費なのに、片一方は直接もらう、片一方はほぼ一週間後ぐらいに、同じ活動費として出たのにもかかわらず、片一方は森派を経由する、ここがわからないということ。

 そして、森派を経由したということは、事務総長から受け取ったということですか。ちょっと、これだけお聞かせください。

甘利委員長 時間が終了いたしております。ごく簡潔に。

杉浦内閣官房副長官 詳細記憶しておりませんが、清和研でちょうだいしました。どなたから受け取ったかは記憶しておりませんが、党の活動費としてちょうだいしたわけでございます。

甘利委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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