衆議院

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第6号 平成17年2月4日(金曜日)

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平成十七年二月四日(金曜日)

    午前九時十二分開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    奥野 信亮君

      加藤 勝信君    川上 義博君

      北村 直人君    小泉 龍司君

      後藤田正純君    坂本 剛二君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      鈴木 淳司君    鈴木 恒夫君

      谷  公一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 恭一君

      津島 雄二君    寺田  稔君

      西川 京子君    根本  匠君

      萩生田光一君    萩野 浩基君

      福田 康夫君    二田 孝治君

      松島みどり君    御法川信英君

      村井  仁君    森田  一君

      石田 勝之君    生方 幸夫君

      岡本 充功君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    篠原  孝君

      下条 みつ君    津川 祥吾君

      辻   惠君    中井  洽君

      中津川博郷君    中塚 一宏君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      原口 一博君    樋高  剛君

      松崎 哲久君    三日月大造君

      吉田  泉君    米澤  隆君

      笠  浩史君    遠藤 乙彦君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      田端 正広君    山名 靖英君

      佐々木憲昭君    塩川 鉄也君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   総務大臣政務官      山本  保君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   国土交通大臣政務官    岩崎 忠夫君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 和田 智明君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人   

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   鈴木 康雄君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   林  景一君

   参考人

   (日本道路公団総裁)   近藤  剛君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    武藤 敏郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月四日

 辞任         補欠選任

  伊吹 文明君     萩生田光一君

  大島 理森君     松島みどり君

  河村 建夫君     川上 義博君

  北村 直人君     柴山 昌彦君

  小泉 龍司君     寺田  稔君

  後藤田正純君     加藤 勝信君

  玉沢徳一郎君     鈴木 淳司君

  中馬 弘毅君     鈴木 恒夫君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  根本  匠君     菅原 一秀君

  福田 康夫君     坂本 剛二君

  二田 孝治君     御法川信英君

  岩國 哲人君     吉田  泉君

  篠原  孝君     松崎 哲久君

  坂口  力君     山名 靖英君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     後藤田正純君

  川上 義博君     河村 建夫君

  坂本 剛二君     奥野 信亮君

  柴山 昌彦君     北村 直人君

  菅原 一秀君     根本  匠君

  鈴木 淳司君     玉沢徳一郎君

  鈴木 恒夫君     中馬 弘毅君

  津島 恭一君     谷  公一君

  寺田  稔君     小泉 龍司君

  萩生田光一君     伊吹 文明君

  松島みどり君     大島 理森君

  御法川信英君     二田 孝治君

  松崎 哲久君     篠原  孝君

  吉田  泉君     三日月大造君

  山名 靖英君     遠藤 乙彦君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     福田 康夫君

  谷  公一君     津島 雄二君

  三日月大造君     下条 みつ君

  遠藤 乙彦君     坂口  力君

同日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  笠  浩史君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官和田智明君、内閣府政策統括官柴田高博君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、総務省政策統括官鈴木康雄君、法務省入国管理局長三浦正晴君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省国際法局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本剛二君。

坂本(剛)委員 我が党の松岡利勝委員が、二日の本委員会において民主党の政治と金に関して質問をしたところ、きのうの理事会の場で民主党から強い抗議と会議録からの削除要求が正式になされました。

 この点に関し、私も速記録を見直しましたが、民主党の理事会における削除要求は全く矛盾しているのではないかと思われますので、私からもこの点につき質問をしたいと思います。

 すなわち、民主党は、ことしに入ってからの予算委員会において、政治に対する国民の信頼を回復するために、政治と金の透明性を明らかにすべきだと主張されております。それならば、我が党の松岡委員の、疑問の点、不明瞭な点をただそうとすることに対し、その質問の大半を削除しろとの要求は、民主党の常日ごろからの主張と大きな矛盾、乖離があるものと思われます。

 つまり、二日の松岡委員の質問によれば、民主党に合流した自由党は、収支報告書によると、平成十二年、大和銀行から借り入れた十億円を二回に分けて返済したとあります。

 ところが、平成十三年には、十億円を借りたと報告書に記載がありながら、同じ報告書の資産等の状況の欄には、百万円を超える借入金はなしと記載しております。

 この点について、二日の本委員会において民主党の田中慶秋委員から、返済等について、完済の証明も、本日、二日ですね、銀行で確認している、あるいは、借入金の返済疑惑、使途不明、記載漏れのようなものは一切なかったと発言がありました。

 ならば、なぜ、平成十三年に銀行から二回目の十億円を借り入れたことを報告に記載しながら、同じ報告書の資産状況欄には借り入れなしと記載し、なおかつ、その後、返済の報告記載がないのでしょうか。しかも、みずからの収支報告書で明確に十億円を借り入れたと報告したのに、その返済の記載がないことを質問したことについて、何ゆえに速記録からの削除を要求されなければならないのかわかりません。国民の目から隠したいからでしょうか。日ごろ民主党が主張している政治と金の透明性に大きく矛盾をしているんではないでしょうか。

 また、理事会において、民主党の理事から、借入金は借り入れた年の年末までに返済されていれば収支報告書に記載する必要はない旨の主張がありましたが、二日の松岡委員の質問に対する久保政府参考人の答弁を聞けばその根拠は全くなく、借り入れたものを返済したならば、平成十二年のときのようにきちんと返済の報告をすべきです。

 平成十三年の二回目の十億円の借り入れは、いつ、何月何日に、どこの資金を使って幾ら返済したのかを報告すべきであります。その点、民主党は明らかにすべきじゃないでしょうか。政府は、私の言うことをどう考えますか。

久保政府参考人 個別の事案につきましては、具体の事実関係を承知する立場にございませんので御答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、一般論として申し上げますと、政治資金規正法におきましては、政治団体の会計責任者は、収支報告書に当該政治団体のすべての収入、支出について所要の事項を記載するものとされております。

坂本(剛)委員 現在民主党の代表代行を務めております藤井裕久議員が自由党の幹事長だったとき、藤井氏個人に対し、自由党の政党助成金が二回にわたり計十五億二千九十万円支出されていることについては、自由党の収支報告書を見れば明らかなことであります。

 であるにもかかわらず、この件について松岡委員がただしたことがなぜいけないのか。また、なぜ速記録から削除しなければいけないのか。政治の透明性と政治の信頼を取り戻すための真実を問うことがなぜいけないのか。民主党の主張は大きく矛盾していると思います。

 選挙部長にお尋ねしますが、自由党の平成十三年の収支報告書並びに平成十四年の自由党の政党助成金の使途等報告書に、先ほどの二点について松岡委員の質問のとおりの記載があるかどうか、お答えください。

久保政府参考人 自由党の平成十三年分の収支報告書について確認いたしましたところ、大和銀行から十億円の借入金があった旨の記載がございます。また、同報告書の資産等の状況の項目には、借入金の記載はございません。

 また、平成十四年分の使途等報告書の記載について確認したところ、藤井裕久に対し十五億二千九十万円を支出した旨の記載がございます。

坂本(剛)委員 また、この自由党の助成金、つまり国民の税金が、その後、民主党との合流で今日の民主党が結成された折、解散した自由党の政治資金団体である改革国民会議に、残った政党助成金五億六千九十六万四千百四十三円と政党助成金以外の政治資金七億四千五百八十九万九千四十一円をまぜて、合計十三億六百八十六万三千百八十四円が寄附されたことになっていますが、こんなことが道義上許されるんでしょうか。

 今申し上げた改革国民会議は、現在、政治団体として、どんな存在として法律上届けられているのでしょうか。一般のいわゆる政治団体、自民党でいうと派閥と同じ扱いの政治団体ではないでしょうか。そうだとすると、現在の民主党結成の折、国民の税金が民主党内の一部グループの政治団体に移され、流用されていることになります。そんなことが許されるのか。民主党は、きれいごとを並べる前に、まずこの大変大きな疑惑に、みずから調査、解明し、国庫に返納すべきではないでしょうか。

 以上、強く申し上げまして、次の質問に移ります。

 国家戦略等についてお伺いしたいと思います。これは、私の年来の考え方を申し上げながら、二、三質問いたします。

 今年は戦後六十年、こう言われております。そして、去年の暮れごろから、いろいろな角度でいろいろな議論が起こっていることは御承知のとおりであります。私も、成熟した民主国家として目指すべき方向、国家としての戦略をこの辺でいま一度考えてみる必要もあるんじゃないか、こう思っているところでございます。

 総理が自民党総裁になって間なし、国家戦略本部を立ち上げました。私はその場でも実は申し上げたんです。今、日本が国家戦略としてやるべきことは、日本にないもの、欠けているものを備えるべきじゃないか。自前の憲法であるとかエネルギー資源であるとかですね。

 それで、いろいろありましたけれども、その中で私が最もこれは大事だなと思っていることは、この国には友達がいないんですね。友人がいないということを私は憂えるわけであります。(発言する者あり)どういう意味というと、日本が災害とかあるいは国際紛争とか二国間問題等で困ったとき、そういうときに、真に日本のためになって本当の友情で日本をカバーしてくれる、守ってくれる、そんな国があるのかということを私は疑問視しています。アメリカの核の傘で守られている日本に本当にそういう友人がいるのか、こういう感じもいたしておるわけでございます。

 冷戦終結後、国連の機能麻痺というのはもう明らかなものです。それから、今は民族紛争、宗教紛争が行われていますけれども、これがおさまっていったときに、果たしてアメリカが今のようなスタンスで引き続き日本を支援してくれるのか、これも考えておかなければならない事項だと思うんです。

 そこで、アメリカとのつき合いはさらに密度を濃くして一生懸命なおつき合いをしなくちゃなりませんけれども、一方では、真の友人を得るような新たな外交戦略、いわば国際社会を複眼的に見ていく、そういう時代にいよいよこの六十年でなってきたんじゃないのかな、こんなふうに思っているわけでございます。

 日本と似た国でイギリスがあります。このイギリスは、イギリスが一たん何か問題が起こったときには、旧英国領、いわゆるコモンウエルス五十四カ国が一生懸命に物資の支援とかさまざまなことをやってくれる、こうありますが、日本はどうも、いろいろと国際社会に貢献をしておりますけれども、何か容易でないものがたくさんあります。

 例えばオリンピック。ソウル・オリンピックは名古屋が負けました。大阪は北京に負けました。二〇〇二年のワールドカップは、直前まで日本単独開催が、いろいろな理由があったにしろ、日韓共催になっていったわけであります。それから鯨の問題ですね。国際捕鯨委員会では、日本の言うことがいまだに通りません。それから中部太平洋流し網漁業も、日本の最もいい漁場だったんですが、ここからも締め出されました。

 今度のこの国会には、中西部太平洋マグロ類条約というのが来ています。これも日本の漁場を締め出す、いわば向こうさんに言わせれば水産資源の保護だと言っていますが、外務省はかなり抵抗したらしいです。しかし、何といっても多勢に無勢ですからね。とてもじゃないから、最後まで反対するよりは枠組みに入った方がいいだろうということで、今国会にその条約批准の案件が提出されているんです。

 オーストラリアの南にミナミマグロというのがあります。これも日本漁船が行って開発した漁場であり魚であるのですが、オーストラリアとニュージーランドは日本の漁業を禁止させろという提訴をしました。しかし、提訴した場所が間違っていたものだから却下されまして、水産庁は勝った勝ったと喜んでいますが、またやられますよ、別な形で。私はそう思っているんです。

 ですから、日本は随所で孤立化させられるような状況が多々実はあるわけでございまして、今から七十年前、国際連盟を脱退するなんという、こんなばかなことを招いてはいかぬと私は思っております。そのためにも、友人をつくるということは必要ではないかなと思っているんです。

 友人を得るにはどうしたらいいかということでありますけれども、スマトラ沖地震に対して大変な支援をしております。アフガニスタンやイラクの復興支援にも相当日本は力を入れています。それから、ODAは、長い間、全世界にお金をばらまいてきたわけです。

 しかし、いずれもこれは我が国ができる範囲内の支援なんですね。本当の友情、友達をつくるということは、相手の国のために、ある国のために犠牲を払ってまでも支えてやる、抱えてやるという姿。いわゆる、単なる支援と犠牲というのはやはり違う。そこから友情というものが出てくるんじゃないのかな、私はこう思っているんです。

 今までに、では、友達をつくるチャンスがなかったかというと、幾たびかあったと思うんですが、一、二、例を挙げますと、ミャンマー。ミャンマーは日本が最大の支援国家だったんです。ところが、ある日軍政府ができました。軍政になると、民主化を求める国際世論やアメリカの圧力で、日本はその後、支援を手控えちゃった。しかし、今なお、アウン・サン・スー・チーさんも軍政府も日本に救いを求めてきている。今度は農林省がいろいろなことでまた新たな支援をミャンマーとやるということで聞いていますが、これなどは、ミャンマーは、どちらかというと日本と同じモンゴル系なんですね、民族が。それから仏教国なんですね。非常に共通点がこれはあるわけです。

 今、モンゴルの話が出ましたが、モンゴルも、社会主義から資本主義に移行するときに、全面的に日本を頼ってきました。しかし、日本は結局、アメリカを通しての支援しか行わなかったわけですね。モンゴルが日本を頼ってきたのは、そういう民族的な同一性もあるということもあったでしょう。こういうふうなチャンスを実は逃してきているわけです。

 サミュエル・ハンチントンも、「文明の衝突」の中で、EU圏、アラブ圏、北アフリカ圏、東南アジア圏といろいろ経済圏、文化圏が世界にあるが、ただ単一なのは日本だけなんだ、全く特異な存在だ、こういうことを指摘しているんですね。

 ですから、自由貿易協定とか経済連携協定が脚光を浴びていますが、この経済連携協定やODAで真の友人をつくっていく、そういう方向でこれから活用していく必要があるんじゃないかな、私はこんなふうに思っております。

 今、アジア各国とFTA、EPAの交渉に入っておりますけれども、メキシコとか中南米あるいはヨーロッパ各国と交渉事をやるように、お願いします、頼みますと言ってきているアジアに対して、だめなものはだめ、譲れないものは絶対譲れないんだよなんという、そんなスタンスで臨んでいって果たして友達ができるのかということですよ、友人が。中東、アラブ各国にしてもアフリカにしても日本を頼ってきている、中央アジア各国なんかもそうです。

 前の財務大臣塩川さんは言っていました。何をやっているの、日本政府は、みんな中国と韓国にとられちゃうんじゃないかと大変騒いでおりましたけれども、そういうようなことが随所にあるわけです。

 今度のFTAなんかでも、タイが今FTAの過程にありますけれども、タイという国はモンゴル系なんですよ、仏教国なんですよ。それで、唯一皇室文化を持っている国なんですね。さらに、交通ルールは自動車は左側、日本の交通ルールを完全にまねているんです。これほど同一性の強いタイ、こんな国を、生涯日本とともに歩む、そんな友人にしていくことも私は可能なんじゃないのかなと思っております。

 これは我が国六十年間の外交の大いなる欠陥だと思いますけれども、しかし、外務省が戦略的な行動はとれませんから、これはやむを得なかったと思う。これからです。この種の動きを示すのはやはり政治なんです。政治がリーダーシップを発揮しないと、そういう問題は解決しませんね。だから、あらあらでも結構ですが、日本は、六十年を迎えた今を一つの契機として、あらゆる面で国際戦略的な方向づけをやっていくべきではないか、私はこんなふうに思っております。

 そこで質問でありますけれども、総理は、昨年十二月の経済諮問会議において、自由貿易協定の担当大臣は私だ、こう言っております。今まで、外務省、農林省、経済産業省、ばらばらに省益ばかり追求しておったと聞いておりますが、私は、この言葉を聞いて本当に安心したわけですね。今後の経済連携交渉に向けて、総理は、どのような戦略に基づき、どのようなリーダーシップを発揮されようとしているのか、伺いたいと思います。

 また、政府開発援助、ODAについても、このような真の友人づくりという視点を忘れてはいかぬと思うんです。そういう意味で、今後の政府開発援助の具体的な方向づけ、さらには、真の友人づくりのための支援という考えがあるのかどうか、これは町村外務大臣にお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 坂本委員にお答えをいたします。

 大変大きな視点からの戦後六十年の問題把握、なかんずく日本の対外政策のあり方についての貴重な御示唆をいただいたものと受けとめております。

 私も、外務大臣になっていろいろな国の首脳あるいは外務大臣等と話をしております。確かに、本当にこの国とは仲がもうちょっとよかったはずなのになと思いつつ、どうも最近変わってきたとか、あるいは、意外と私どもが気がつかなくても相手は本当に日本のことを頼ってくれているんだ、いろいろな感想を持つことがあります。

 その際に、今委員御指摘のように、例えば今、これは総理が打ち出された東アジア共同体ということで、その具体的なツールとして経済連携協定というものも位置づけられ、ODAの活用といったようなことも位置づけられてくる。あるいは、そうした経済関係のみならず、時としては、それは文化面の交流もあるだろうし、スポーツ面、あるいは人的交流、やはり幅広いつながりというものをつくっていく。

 日米間だって、先ほど委員御指摘ありましたけれども、いろいろ、時として経済摩擦があったり、いろいろないわば国対国の厳しい関係があったけれども、日米というものは非常に分厚い交流があるからそれが揺らぐことがない。それと比べると、アジア諸国とのつながりは、実は意外と、濃いようで薄い面がある。

 もう大分前になりますけれども、福田赳夫総理がフィリピンで有名な演説をされました。これはハート・ツー・ハート、心と心のつき合いだと。お金というのは、あるときはお金のある方にみんな向いていきますが、お金が乏しくなれば一遍にその関係が薄くなってしまうというのではいけない。やはり人の心と心のつき合いをより深めようじゃないかというのが福田ドクトリンと言われておりまして、東南アジアの諸国に行くと、福田先生、福田ドクトリン、ハート・ツー・ハートという言葉が今でもよく出てまいります。やはりそういうコンセプト、そういう考え方でやっていくということも必要なんだろうと思います。

 いずれにしましても、日本の利害ばかり主張してはならない。やはり相手の国が本当に大切だと思うようなことを、例えばODAを供与する際にはよく相手の国のニーズに合ったものをできるだけ出していくということが当然のことでありましょうし、経済連携協定においても日本の主張ばかりしてはいけない。やはり日本は、それは比較しようもないほど日本の経済力の方が強いわけですから、できる限り相手の国の意向も尊重し、日本が譲れるところは思い切って譲る、こんな姿勢でやっております。

 昨年の十二月二十一日、経済連携促進関係閣僚会議という場で今後の経済連携協定の推進についての基本方針というものを決めまして、今まで何となくみんな頭には描いていたんですが、改めて、昨年の十二月、そういったものを文章で描いて、今委員が言われたような、国と国との関係をいかによくしていくのかということも非常に大きな要素として考えて今後はやっていこうと。

 したがって、世界の国々から来ておりますが、私どもは、この連携協定についていえば、マレーシア、フィリピン、ASEAN全体ですが、あと韓国もありますが、こういった国々で、今とりあえずアジアを中心にこうした経済連携協定をやっていこうというのはそうした発想に立っているというふうに御理解を賜ればと思います。

小泉内閣総理大臣 日本は、日米関係のみならず、ASEAN諸国、各国との友好関係をこれまで築いてまいりました。特にASEAN諸国の首脳と会いますと、さきの通貨危機の際の日本の支援、これを高く評価しております。今回のスマトラ島沖の地震・津波におきましても、日本の素早い支援に対しましては評価をいただいておりますし、これからも継続していかなきゃならない。

 特に、またアフリカにおきましては、日本とはるか地理的には遠いんですけれども、アジア諸国と同じように日本とおつき合いをしたいと。日本も、アフリカは遠い国でありますけれども、多くの困難を抱えている、それに対して日本ができることをやっていかなきゃならない。

 さらにFTAにおきましても、坂本議員、主張されましたけれども、これから日本も各省よく連携して進めていかなきゃならない。日本の利害ばかり考えるんじゃなくて、相手が利益を得るようなことも日本は考えるべきじゃないかということで、今、シンガポールとメキシコはFTAを締結いたしましたけれども、これから、マレーシア、タイ、フィリピン、韓国、それからチリとも将来FTA交渉を始めるような準備を進めております。

 日本も、多くの友好国、国際協調体制の重要性をよく認識しておりますし、今まで日本も多くの国の援助を受けてここまで発展してきたわけであります。災害が起これば多くの国が日本に対して支援の手を差し伸べます。日本もまた多くの国に支援の手を差し伸べる。アラブとの関係もそうであります。

 御指摘のとおり、世界各国と友好関係を発展させるように今後も努力していきたいと思っております。

坂本(剛)委員 続いて、貿易・投資戦略の重要性とジェトロの活用について質問したいと思います。

 冷戦が終わりましてから、世界の各国は、我が国経済の拡大のために首脳がどんどん経済人を連れていっていますね。これはトップセールス、こう言われていますが、日本もかつて工業社会に移行するころに、池田総理大臣がフランスに行きました。ドゴールが、やあやあ、トランジスタのセールスマンが来たぞと言った話は有名。今、そういうことで一生懸命世界が動いております。

 イギリスやアメリカなどは、政府の職員として大使館の中に貿易・投資の専門家を配置しておって、ビジネスマンと一緒にその国を歩いて自国のセールス拡大、企業進出をやっているということ。韓国も、例の経済危機以降、国家挙げて貿易・投資促進のために力を入れています。

 日本もぜひそれはやるべきなんでありましょうけれども、日本には、五十年以上にわたって海外のそういったいろいろなノウハウを身につけておるジェトロというのがあるんですね。このジェトロをもう少し活用したらどうか、余りにも温存し過ぎているんじゃないのか、思い切ってジェトロを海外展開に民間企業と一緒に活用させていくべきじゃないのかな、こう思っておるんであります。

 総理は、対日投資五年間で倍増ということを去年のこの委員会で言われたわけでありますけれども、私は、その意気でこれから一生懸命対日投資促進あるいは海外投資ということをやっていただきたいと思うんですが、総理のリーダーシップ、考え方、それからジェトロをどうこれから活用していくかということもこの辺で方策を考えてはいかがか、こう思っております。総理の答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 かつては輸出振興でありましたけれども、最近は、外資警戒論からむしろ外資歓迎論、そういう発想の転換が必要ではないか。

 先進国に比べますと、日本は外資が極めて低い水準にあります。外国企業が日本に入ってきますと日本の企業に影響があるということで反対論も強いのも事実でありますけれども、そうでなくて、外国企業にとって、外国資本にとって日本を魅力ある市場にしていかなきゃならない。雇用の面においても、あるいはまた経営者の考え方においても、日本と違う、多様性を尊重するという意味においても日本経済にも刺激を与えるのじゃないかということから、むしろ今後も、外国企業も、ああ、日本に投資してみたいな、そういう開かれた国になる必要があるのではないでしょうか。だからこそ五年で倍増させる、外資の投入を。大体、その実現、見通し、できそうであります。

 これからもその方針で、外資警戒論よりも、外国資本、日本の市場も魅力ありますよ、投資すれば日本の市場はいいですよというような形で、日本企業も外国から温かく迎えられているわけであります、日本人も外国の企業を温かく迎える、そういう発想が必要ではないでしょうか。

坂本(剛)委員 中川経済産業大臣が昨年インド、インドネシアを訪問した際に、経済人を大量に連れていきました。これは大変高い評価を受けております。日本も、総理先頭にトップセールスというものも復活してどんどんやっていって、国を挙げて進んでおるよという切れ味のよさを見せないと、国民はいつまでも不景気感から抜け出せないんですね。何をやるにも切れ味が足りない、日本の政治は。私はそんなふうに思っています。何を気にしているのかわからぬけれども、いま一つ切れ味がない。三位一体改革も、ひとつ切れ味を持って臨んでいただきたい、こう思うわけでございます。

 中川大臣の名前が出たついでに、中川経済産業大臣は、朝日新聞の一連の報道において、大臣がNHKに圧力をかけたのではないかとか言われておりますけれども、その事実関係についてちょっと詳しくお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 坂本議員は、つい最近まで経済産業副大臣として、通商交渉を初め大変我が国の政策に貢献していただきました。それを前提にした御質問で、先ほどから大変感銘を受けておりました。

 インドの話が出ましたが、その後、総理みずから、中南米を訪問するときにも日本の経済界の方々を大勢連れていって、これまた大変な、総理、文字どおりトップとしての経済外交をし、また、ウイン・ウインの関係を構築してきたということでございまして、顔の見える経済あるいはまた文化、その他多方面の交流を坂本議員の御提案に基づいてやっていきたいと思いますし、そのために、ジェトロにつきましても、単に物を輸出するだけではなくて、投資する、また、投資を呼び込む、さらには、向こうが必要としている中小企業支援あるいは人材づくり等々、多方面の支援をこれからしていく必要があると思っております。

 さて、御質問でございますから、朝日新聞の一月十二日報道の問題に関しまして、ほぼ一カ月たちまして、今改めて振り返ってみますと、この問題は、当初報道されたように、政治が報道、放送に対して圧力をかけたということがタイトルであり、そしてまたそれがポイントだったというふうに理解をしておりますが、どうも最近になりますと、当時は事前に会って圧力をかけたのがけしからぬということが、前であっても後であってもとにかく会ったことがけしからぬとか、あるいは、呼びつけたということが、今度は接触したとか、だんだん表現が変わってまいりました。

 事実関係については、私に関しては、放送前に会ってはおりませんし、呼びつけたわけでもございませんし、松尾さんという方とお会いしたこともございませんし、もちろん圧力もかけていないわけでございます。ただ、私が心配をしているのは、政治と報道、放送との関係は適度な緊張関係が必要だと思いますが、その問題を直視することなく、うやむやのままこのまま時が流れ、そして忘れられることを、私は、自身の問題としてのみならず、政治全体として恐れるものであります。

 したがいまして、私自身も、また、私以外の政治家あるいはまた当事者と言われている人が次々に事実関係についてみずからの責任において発表しているにもかかわらず、一部の人たち、あるいは一部の報道関係者、当事者が一切表に出てきていないということは、私は、まことに不透明なもの、あるいはまたある種の意図を感じるわけでございますので、どうぞ関係者は全員出てきて、公の場できちっとした形で私はこの問題を、政治と放送、報道の健全な関係構築のためにぜひとも必要なことだろうというふうに思っております。ありがとうございました。

坂本(剛)委員 いろいろお話をいただきましたけれども、とにかく官僚では限界というものがありますから、どうぞひとつ政治リードでこれから頑張っていただきたい、心からお願いいたします。

 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて坂本君の質疑は終了いたしました。

 次に、松島みどり君。

松島委員 自由民主党を代表して質問いたします。

 政治と金の問題について、連日、民主党から質問がなされています。民主党は、政治に対する国民の信頼を取り戻さなければいけないとも言っています。きのうも、日本歯科医師連盟の政治資金について、我が党所属の閣僚あるいは小泉総理に対して厳しく質問されていました。それに対し、小泉総理及び関係大臣は、政治資金については法律に基づいて対応していると明確に答えています。

 そこで質問がございます。

 このパネル及びお手元の資料をごらんください。これは、政治資金規正法に基づいて日本歯科医師連盟が作成した収支報告書です。これによりますと、日本歯科医師連盟は、平成十一年六月七日、民主党に対して会費として二百万円を一括して支払ったとの記載がなされています。総務省選挙部長、間違いはございませんか。御答弁をお願いします。

久保政府参考人 日本歯科医師連盟の平成十一年分の収支報告書の記載について確認したところ、民主党に対し、平成十一年六月七日に二百万円を支出した旨の記載がございます。

松島委員 これはパーティー券を購入したものと思われます。と申しますのは、この会費の支出が行われた平成十一年六月七日の二週間後、六月二十一日に、民主党結成一周年レセプション、つまりパーティーを開いているのです。パーティーの会費だとしましたら、選挙部長、幾ら以上なら収支報告書に記載しなければいけないのでしょうか。

久保政府参考人 政治資金規正法第十二条第一項によれば、一つの政治資金パーティーの対価に係る収入のうち、同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払いで、その金額の合計額が二十万円を超えるものにつきましては、当該対価の支払いを行った者の氏名、金額、年月日等を記載することとされております。

松島委員 しかしながら、この年の民主党の収支報告書には、日本歯科医師連盟からの二百万円の入金について、パーティーの欄にも寄附の欄にも、いずれにも全く記載がありません。

 例えば、日本医師連盟から、この年、民主党に百万円入金がありました。これはちゃんと記載されているのです。これについては間違いありませんか。もう一度確認いたしますが、歯科医師連盟については記載がありません。これでよろしいでしょうか。

久保政府参考人 民主党の平成十一年分の収支報告書の要旨の官報告示を確認したところ、日本医師連盟から政治資金パーティーの対価に係る収入として百万円の収入があった旨の記載がございます。また、日本歯科医師連盟から寄附または政治資金パーティーの対価に係る収入があった旨の記載はございません。

松島委員 今選挙部長の答弁にございましたように、民主党は、平成十一年、日本歯科医師連盟から二百万円の収入がありながら、そのことはどこにも記載されていません。他党に対しては不記載を厳しくあげつらいながら、日本歯科医師連盟から自分の党が得た収入についてはなぜか隠す。一体どういうことでしょうか。恥ずべきことだと思います。(発言する者あり)問題は違いません。

 民主党は、この一週間、政治と金の問題について厳しく発言していますが、まずこの事実関係を解明し、不記載の責任を明らかにした上で発言することが、国民の政治に対する信頼を取り戻す第一歩になるのではないか。

 以上、自民党を代表して申し上げさせていただきます。

 引き続き、昨日の民主党石田委員の質問に関し、再度道路公団総裁にお尋ねいたします。(発言する者あり)補足質問でございますから、ちゃんと聞いてください。

 日本道路公団のファミリー企業について、公団出身の社長以外の代表者、代表取締役副社長などですが、これが三十二名ふえたとの話でしたが、これらの方は公団出身者なのですね。はっきりさせていただきますように、総裁、お願いいたします。

近藤参考人 お答えをいたします。

 昨日答弁申し上げましたとおり、平成十五年度以降新たに公団から代表取締役副社長などになった者はおりませんが、先生の言われた三十二名につきましては、もともと、石田先生が資料にて御指摘なされておられましたとおり、公団の出身者でございます。(発言する者あり)

松島委員 お静かに願います。次の質問に移りたいと思います。

 さて、これから小泉総理に対する質問に移らせていただきます。

 私は、国会議員になって四年七カ月でございます。きょう初めて予算委員会で小泉総理に対して質問させていただけることを大変喜びに感じております。

 ちょうどこの二月、私は、前の職業をやめて政治の道を歩み始めて、ちょうど十年になります。その間、国民の目線に立っていろいろなことを考えよう、それを信条にしてまいりました。

 小泉総理のお言葉の中で、永田町の常識は国民の非常識、国民の常識は永田町の非常識、この言葉が私は非常に好きでございます。どうか国民の目線で総理に答えていただきますように、よろしくお願いいたします。

 一つは治安の問題でございます。

 奈良の小学校二年生の女の子が殺された事件、捕まった三十六歳の男は二度逮捕されている。幼い女の子に対する性犯罪で逮捕され、二度目は三年十一カ月刑務所に入って、出てきました。しかしながら、こういう人がどこに住んでいるか、今の日本では全くわからないことになっております。

 法務省は、この事件をきっかけに、性犯罪者の出所情報を警察に伝える、そういう今計画が進んでおります。これはこれでいいことだと思いますが、私は、警察が情報をつかんだだけでは不十分だ、警察は二十四時間国民を、幼い女の子たちを守って見張ってくれるわけではない、そう考えております。

 また、こうした連携によって、出所後最初にどこにいるか、それについては警察が捕捉できましても、元受刑者自身に、その後の転居先、引っ越し先を警察に届け出る義務を負わせる仕組みをつくらないといけないのではないか。また、情報開示の範囲を、警察に限らず、小学校やPTA、保護司、そして地域の防犯組織まで広げるべきではないか、そういうふうに考えております。

 また、法務省は、今の国会で予定しています監獄法の改正で性犯罪者向けの矯正プログラムを義務化する方針ですが、それは評価できるものの、精神科や心理学の専門家の中には、小児性愛という癖というか病気というか、これは治療によっても治らないケースがあると見る人が数多くいます。

 今の制度では、執行猶予中の人や仮出所中の人には保護司がつきますが、刑期を終えた人は保護観察の対象となりません。またやりそうだけれども刑期満了だから社会に出て自由に過ごさせる、そういうことでは困るのであって、こうした特定の犯罪については、刑期満了で出所した人についても保護観察処分とすべきではないか。私は、子供を持つ数多くの親たちと、あるいは世間の一般の人たちと話して、こういう考え方を持つ人が非常に多い、そういう人たちに囲まれて仕事をしております。

 総理、一般常識で、国民の目線でどのようにお考えになるか、御意見を伺いたいと思います。

甘利委員長 ちょっと待ってください。

 答弁の前に、昨日、民主党の石田議員が道路公団総裁に対して質問をしました。その答弁がもし間違っているのであるならば、訂正して陳謝をしてください。

 日本道路公団近藤総裁。

近藤参考人 お答えをいたします。

 昨日答弁させていただきましたのは、お尋ねが、公団出身の社長以外の代表者が三十二名ふえた、その内訳についてということでございました。したがいまして、私は、公団、三十二名全員が公団出身者であるということを前提にお答えしたつもりでございます。

 もしそれがそのように受け取られていなかったということでありましたら、大変、私の答弁の言葉足らずであったかもしれません。その点、誤解を与えたといたしましたら、大変残念でございます。改めておわびを申し上げます。(発言する者あり)

甘利委員長 それでは、松島君の質問に、総理、お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 犯罪を防止するという観点から松島議員が指摘されました性犯罪者の過去の逮捕歴等の情報管理、これは私も、法務省が知っているけれども警察に知らせなかった、警察もそういう情報を要求していないということに非常に不自然さを感じました。

 今、犯罪というのは広域です。県ごとだけではおさまらない。犯罪も、ある地域でやったら、また別の県に犯罪者も行く。もっと広域捜査、そして、お互いが、各省の情報は他の省に教えないというんじゃなくて、犯罪を防ぐために、また、犯罪を起こした人を検挙するためにどういう方法が必要かということを真剣に考えるべきだということで、改めて指示しております。

 有識者の意見を聞くよりも、犯罪のプロは警察のはずなんです。そのために、どういう体制をとれば犯罪を少なくできるか、また、犯罪を起こした人の再発を防ぐか、そういう点については、これから各省連携をとって、世界の中でも治安については安全だというような評価を得られるようにこれからも努力すべきだという今までの御指摘も踏まえ、指摘については反省しながら、あるべき姿を早急に整理して、各省一体となって、犯罪防止、犯罪の少ない国を目指して努力しなければいけないと思っております。

松島委員 警察が情報を知っていても、それは捜査には役立つかもしれませんが、未然に防止するためには、せっかく今、地域社会の中で、子供たちを安全に過ごさせる、育てる、そしてお年寄りも犯罪から守るということを、地域の人たちがせっかくいろいろな防犯活動を行っているわけですから、ここにもある程度の情報を出してもらわないと進んでいかない、私はそのように思っております。

 これまで日本では、加害者の人権や犯罪者のプライバシーが随分大事にされてきました。しかしながら、被害を防ぐこと、そして被害者の心情、経済的措置を考えることが大事だと思って、私も、昨年秋、犯罪被害者基本法の議員立法に一緒に取り組みました。どうか、総理のリーダーシップもこの分野でも発揮していただきたいと思っております。

 今、総理大臣が多省庁にわたってということを言われました。別のことで、多省庁横断的に取り組んでいただきたいテーマを申し上げたいと思います。それは、外国人労働者受け入れの実態に合わせた制度をつくる必要ということでございます。

 今、政府は、二十五万人に上る不法滞在の外国人を五年間で半減させるという目標を立てて、これは非常に正しいことで、しっかり取り組んでいただきたいと思っています。しかしながら、現実には、飲食店や例えば中小零細製造業の現場には外国人が数多く働いておりまして、その多くは不法就労と思われます。しかし、彼らを全部国外へ退去させましたら、日本経済のあちこちで立ち行かなくなる、破綻を来すことは目に見えております。

 そしてまた、今、これがきちっとした法整備がなされていないために、その網をくぐって、お金を払って、お金をつかませて中国の悪い組織を使って日本に入ってくる外国人がいたり、あるいは日本の側も、研修とか技能実習のあいまいな制度があります。これは、農林水産業や建設、製造業の六十二職種につきまして、一年間の研修そして二年間の技能実習をするという制度が認められているんですが、しかし、この研修、日本の方が技術が進んだから研修に来るという名目ではございますけれども、現実には、出稼ぎで働きたくて日本にやってくる、そういう人が多くでございます。

 例えば、東北地方にある縫製、ブラウスなんかを縫う工場では、中国の農村部から女性の工員さんを研修の形で入れている。研修の間は実費として数万円しか支払われないことになっているわけですけれども、この人たちは日本の従業員よりもずっと能力がある。ブラウス一枚二十分でつくれるというような、そういう試験を受けて、来たりしているわけです。こういう即戦力になる人だけれども、研修の間は実費だけだし、彼女たちにも不満が募る。また雇用主の方も、もっと働いてもらってしっかり給料を出した方がいいと思って、そういう半端な存在がございます。

 そして、その後の技能実習に移ったら、そこで雇用契約が結ばれまして、年金とか保険とかきちっとつくわけですけれども、この年金というのも、六十五歳まで日本にいないとわかり切っている人に年金を納めてもらって、本人は帰るときに戻してもらうからいいけれども、企業、雇用主負担は戻ってこない。これもちょっとおかしな制度である。

 こうした問題について、法務省が第三次出入国管理政策の策定を進めていますけれども、法務省は、労働政策や経済政策やそういったことがわかる、あるいは年金や保険の制度がわかる、そういう役所ではございません。教育や文化、そういったことも全部総合判断する必要がございまして、これはぜひ総理の諮問機関、いろいろな諮問機関がございますけれども、この外国人労働者の実態に合わせた制度、日本にとって何が必要か、日本にとって何が得かという、その発想に基づいた制度をつくるための諮問機関をいろいろな立場の専門家や実務者を加えてつくっていただきたい。そのように、これは省庁横断的なテーマであり、そしてまた政治的判断が必要なテーマだと考えております。その際に、これまでのように、専門的、技術的分野は受け入れを促進するけれども単純労働は一切認めないという、この色分けはやめるべきだと考えております。

 そもそも、一見単純に見える仕事を一日八時間毎日繰り返してやるというのは、これはなかなか大変なことでございますし、今若い人たちがこういうことができなくて困っているぐらいなわけでございます。

 ですから、もちろん日本の若者たちにこういう単純労働もできるような、そして単純労働の中に効率化を図る、そういう工夫も凝らせるような教育も進めるべきですが、外国人についても実態に合わせた制度をつくる。今は、フィリピンとのFTAの交渉で看護師や介護士の受け入れをフィリピンが言うから日本も考えるとか、あるいはタイからマッサージ師を要望されるから日本がどう対応するか考える。いつも受け身なんですけれども、日本にとってどうすべきかということを考える機関を、いろいろな役所横断的に官邸が主導してやっていただきたい。ぜひこれは総理大臣にお答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、外国人労働者の受け入れの基本的な考え方、これについては私の方から申し上げておきたいと思います。

 これは、第九次雇用対策基本計画、平成十一年八月に閣議決定されておりますけれども、これに述べられておるわけでございます。先ほどお触れになりましたけれども、専門的、技術的分野の外国人労働者については受け入れをより積極的に推進する、しかし、いわゆる単純労働者の受け入れについては、国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対応することが不可欠、これが今、政府の閣議決定された基本的な考え方でございます。

 そこで、保険、年金の話もお話しになりましたので、少し触れさせていただきたいと思います。

 こうした外国人労働者の受け入れを検討するに当たりましては、外国人労働者の皆さんが安心して働けるよう、社会保障制度の適用も含めまして、労働者としての地位の確保に留意する必要がございます。外国人に対しても自国民と同じように社会保障制度を適用し、必要な保障を行うこと、これは国際的にも要請されておるところでございます。

 その国際的に要請されておる外国人労働者の社会保障制度を自国民と同じように適用するということでございますが、厚生年金保険につきましては、適用事業所に常時使用されておる労働者は国籍にかかわらず被保険者としておりまして、そして、仮にこれらの方々が、我が国に滞在中、障害や死亡という保険事故が発生した場合には、厚生年金保険から障害給付、遺族給付が行われております。すなわち、ここのところはしっかり行われておるということをまず申し上げます。

 しかし、お触れになりましたように、では、本人が帰った場合にどうなるかということでございますけれども、最終的には社会保障協定によって解決すべきではございますけれども、とりあえずとして、特例措置として、短期滞在の外国人が帰国した場合には、脱退一時金、すなわち本人負担分はお返しするということを平成七年四月から実施いたしておるところでございます。

 今後、外国人労働者の我が国への受け入れについては、さまざまな御議論がございますけれども、年金制度について言いますと、内外人、外国人、日本人平等を原則として、社会保障協定による対応を推進しつつ、政府全体の議論の動向を踏まえ、広範な視野から慎重に検討していくべきものと考えております。

小泉内閣総理大臣 人の面において労働者をどの程度受け入れるべきかという問題は、今、タイとかフィリピンで、具体的な要請に基づいて検討しております。

 今後、日本が各国と協力関係、あるいはFTA、EPA等の協定を考える場合には避けて通れない問題でありますので、今御指摘の面も十分考えて検討をしていきたいと思っております。

松島委員 私が申し上げたいのは、現実にこれだけたくさんの人が、単純労働者が入ってきているのに入ってきていないことになっていたりしていたりというのはやはりおかしいんじゃないか、実態と法律をきちっと合わせていった方がいいんじゃないか、そういうことでございます。

 あと、中小企業の保証問題、貸し渋り対策について伺いたいと思います。

 中小企業にとって大きな悩みの一つに、保証の制度がございます。昨年の秋、民法を改正いたしまして、包括根保証制度を禁止する画期的な法改正を行いまして、今度の四月からこれは実施されます。既に根保証している人も、契約内容によりますけれども、四月から、例えば三年あるいは五年たったら一度契約を打ち切って、もう一度結び直す、こういう制度でございまして、うまく活用されれば平成の大徳政令ともいうべき問題でございます。

 しかし、せっかくこういうことをやりましても、これは期限を設けて、五年以内の期限を契約書に書く、そしてまた限度額を設けるというものですが、これが非常に青天井みたいな、その人間の身の丈に合っていない限度額だと実際には救われない。

 これについて金融庁にガイドラインなりなんなりをつくっていただいて、きちっと実施されるようにしたいんですが、いかがでございましょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 松島委員がこの問題について熱心に取り組まれていることを承知いたしておりますし、委員を含めて関係の議員の皆様方の御努力によって成立したこの法律の趣旨というものを私どももしっかり踏まえて適切な対応をしていかなければいけないというふうに思っております。

 具体的には、金融庁といたしまして、業界団体を通じて金融機関に対して、同法の内容の周知徹底及び同法の趣旨を踏まえた適切な対応に努めるよう、繰り返し要請を行っているところでございます。

 委員から今二つ御指摘がございました。金融庁といたしましては、保証の限度額を初めとする契約条件等について、金融機関から顧客に対して適切かつ十分な説明が行われることが極めて重要であると認識をいたしておりますので、民法改正の施行される四月一日に合わせて顧客への説明態勢に係る事務ガイドラインへの所要の改正を行っていくとともに、取引関係の見直し等に際して包括根保証の禁止を口実とすることがないように、不適切な説明体制がとられないように、しっかり監督をしてまいりたいと考えております。

松島委員 最後に、国語教育の充実について総理に伺いたいと思っています。

 今、子供たちの学力、特に漢字の力が落ちている。あるいはOECDの調査でも、韓国や香港などに比べて読解力が非常に低いレベルになってきている、レベルが下がってきている。私は、とにかく小学校におきましては、一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数だと考えております。これは私だけでなくて、例えば、数学者でございます藤原正彦お茶の水女子大学教授や、同時通訳者でもある鳥飼玖美子立教大学教授も同じように考えておられる。もう少し国語を充実させるべきだ、そういうことについてどう思われるかということ。

 もう一つ、総理は厚生大臣のころから、そして総理になられても、官庁の言葉などでこなれていない英語は追放しようということを言ってこられました。これに関して、私、全省庁を通じて非常に気になる言葉、パブリックコメントというのがございます。これは意見を募集すると言えば済む。せっかく人々から、一般の人から意見を聞こうというのに、パブリックコメントに付すなどというわけのわからない言葉を使っているのは役所だけでございます、霞が関だけです。これをぜひ総理のお言葉で追放していただきたいと思いまして、国語教育の充実とこれについてだけ、総理に最後に伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は厚生大臣のときから、余りにも英語かどうかわからないような言葉が多過ぎるから、これはもっとわかりやすい日本語に直したらどうかということを言ってきたわけであります。現在でも、総理になってからもそうであります。パブリックコメントだけじゃなくて、特に高齢者に使う言葉でも、高齢者は余り英語教育を受けていないわけです。

 最近、なぜこんなどんどんどんどん、英語を日本語に訳すのにそのまま英語を使っちゃうのか。これは結局、大学を出て頭のいい人たちは、英語教育を受ける、英語の文献を読む。そのまま、自分がわかるんだから相手もわかるだろうと思って、頭のいい人に限って、英語のわからない人のことを考えないで勝手に英語にしちゃうから、なおわからない。

 確かに難しい訳もありますね。ノーマライゼーションというのは、初めて聞いたとき、私はわからなかった。ノーマライゼーション、正常化じゃないかと。普通の意味。英語を学んだ人ならそうですよ。これは障害者の平等な完全参加、社会参加。

 それからニーズ。最近、全部ニーズと言う。私もこれは感心しないんですよ。ニーズというのは何だ。ひざのニーズか、貧窮者のニーズか、アイ・ニード・ユーの必要とするか。要請でしょう。さまざまな要望と言えばいいものを、何でニーズと言うんだと。

 いろいろな言葉がありますよ。だから、そういう、余りそのまま直訳じゃなくて、わかりやすい言葉。例えば、フィロソフィーを哲学と訳したりベースボールを野球と訳したり、あの明治の先駆者のよくわかりやすい言葉というものをやはりもっと真剣に考えるべきじゃないか、そういう点は特に感じます。

 映画でもそうですね。先日ベーカー大使夫妻と会食した際に映画の話になって、小泉さん、どんな映画が好きかと。その中で、「ハイヌーン」も好きだけれども、あれ、ハイヌーンなんて、訳したら真昼か正午でしょう。それを「真昼の決闘」と、日本というのはうまく訳したんだよな。最近なんて、「リバー・ランズ・スルー・イット」、何だかわからないね。そして、「心の旅路」というのは、英語では「ランダムハーベスト」と言うんですよ。

甘利委員長 総理、もっと伺いたいんですけれども、時間が来ております。

小泉内閣総理大臣 無作為の収穫。「心の旅路」、昔、グリア・ガースンとかコールマンひげの名優が出た、いい映画ですよ。あれは日本語は実にうまい訳だ。

 そういう、やはりもっとわかりやすく、日本人にわかるような日本語を考えるべきじゃないか。役所は特にそうですね。もっとわかりやすい言葉を使うべきだ、そう思っております。

松島委員 どうもありがとうございました。

甘利委員長 これにて松島君の質疑は終了いたしました。

 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 私はまず、安心、安全な社会をつくるという意味において、治安対策について伺いたいと思います。

 お手元に資料が行っているかと思いますが、最近の犯罪状況をずっと見てみますと、凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯等、いずれにおいても、五年前と比較しても大変数字の上でもふえているわけでございます。しかも、検挙率が非常に落ちてきているというのもこれまた大変ゆゆしき事態だと思っておりまして、例えばこの平成十六年の二六・一%ということになれば、これは四件に一件ということになるわけでありまして、大変これは大事な問題だな、こう思っております。

 しかも、かつて日本は大変治安がすばらしいということで、一九七〇年代ぐらいは検挙率だって六割は超えていたわけでありますから、そういう意味では、愕然とするような数字になっているわけであります。

 また、外国人の刑法犯罪も大変にふえているわけでありまして、この総数を見ていただいてもわかりますように、件数においても検挙人員においても二千を超えるふえ方、この五年間でなっているわけであります。そういう意味では、先ほど来議論がありますように、事件そのものが広域化、むしろ外国をも巻き込んだ、そういう事態に今なっているんだろうと思うわけであります。

 例えば、かつてありましたが、大阪で宝石荒らしが外国人によって行われて、外国人グループがその日にもう成田に行って、成田から出国してしまう。こういうことになってきますと、これは今までの警察のあり方で果たしてやっていけるのかなというふうな感じもいたすわけであります。

 しかも、最近は、クレジットカードの事件あるいは振り込め詐欺事件等の知能犯的といいますか、非常に進化したといいますか、そういう犯罪も多数あるわけです。

 私は大阪の西成区に在住でございますが、ここは薬物の密売でも大変多いところでありますけれども、いまだに、十年前と比べても薬物の密売そのものが減っていない。私が見ていても目の前でわかるわけでありまして、そういう意味では、非常に困った事態だなということも感じているわけであります。

 そういう中で、先日も、キャッシュカード被害に遭って、レイクウッドゴルフ場に行って三千万被害に遭ったという方ともお会いいたしましたが、これらの事件は本当にどうなっているんだろうと、全く気の毒な思いがいたしました。

 キャッシュカード事件で思うことは、この被害者の方が何ら補償もされていないという意味においては、これは早急にひとつ考えていかなきゃならないし、総理も昨日もそういうようなこともおっしゃっているようでございますので、ぜひ、そういった意味で、緊急を要する課題として、まず銀行がどれだけ安全な対策をとるか、そういうことも具体的に決めていただいて、今ATMの約四割は無制限だとも言われているわけであります。そういう意味ではぜひ、安全確保のために銀行のあるべき緊急対策、そういうものもひとつ行政指導としてしっかりやっていただき、同時にそういう被害補償ということも考えていただく、そういうことが当面必要かと思いますが、まず、こういう犯罪の今の状況について、総理の御所見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 私は、偽造カード犯罪、よくこういう巧妙な手口を考えるなと、ちょっと想像できないような犯罪が最近ふえてきましたね。知能犯というか、恐らく、これは個人じゃなくて、組織的な背景があるんですけれども。

 こういう点につきましては、被害者が泣き寝入りする場合が多いという観点から、昨日も質問がありましたけれども、こういう点は各省連携をとって、どのように犯罪を防止するかと同時に、全く自分個人が落ち度がないのに被害を受けている、そういう人に対してどのような救済の手を差し伸べるか、両面から考えなきゃいけないと思っております。

田端委員 伊藤大臣、ありましたらどうぞ。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 委員から今、二つ重要な点の指摘がございました。一つは、安全策というものをしっかりとっていくこと、そしてもう一つは、被害者の補償を含めた利用者保護策というものをしっかり確保していくということであります。

 きのうの委員会でもATMのジャーナルを含めた資料が配付をされたわけでありますけれども、銀行の窓口で使えないような偽造キャッシュカードが今ATMで使用されている、ここに問題の一つがあるわけでありますから、そうしたことに対して適切なセキュリティー対策というものをしっかりとっていく、このことがまず非常に重要なことではないかというふうに思います。

 委員からも御指摘がございましたように、こうした問題を防いでいくためには、まず被害を最小限度に抑えるためにも、ATMの利用者の限度額というものを引き下げていくということも重要でありますし、また、ICカード化によってこうした偽造キャッシュカードが使えないようにするという対策も重要だと思います。また、本人確認を徹底していくために、生体認証の技術を活用していくということも大切なことではないかというふうに思っております。

 先日も全国銀行協会において申し合わせがなされたわけでありますので、そうした申し合わせにおける取り組みの強化というものが、着実な成果が上がっていくように私どもとしても期待をいたしておりますし、その実効性というものを注視していきたいというふうに思っております。

 また、補償を含めました利用者保護策の実効性を確保していくためにも、私どもも、諸外国の例というものを参考にしながら、どのような形が実効性ある保護策になっていくのか、今のままの対応でいいのか、あるいは見直していく必要があるのか、総理の指示もいただきながら真剣に検討をしていきたいというふうに思っております。

田端委員 ぜひ、補償も含めて、必要ならば法改正も含めて、緊急に御検討いただきたい、こう思うわけであります。

 昨年来、私、振り込め詐欺の与党のプロジェクトチームの一人として、銀行口座の本人確認法の改正に関してもいろいろ議論してまいりましたし、また、携帯電話のプリペイドカード、これの本人確認についても近々、法案の提出準備もしているところでありますけれども、驚いたことに、この事件も先日、施行後第一号の犯人が捕まったと思って喜んでいましたら、もう既に犯罪者は上を行っていました。

 例えば、マンションとかビルに空き家がある、その空き家を確認した上で、そこに住んでいることに成り済まして、そして運転免許証を偽造する、偽造したその免許証を持って銀行に行って新たに口座を起こす、これがネット市場で今売られている。こういうことが今、既にもうこれでは銀行は本人確認しようがないわけでありまして、そこまで悪知恵が先に進んできたというふうに思うわけでありまして、大変これはゆゆしき事態だ、こう思います。

 そこで、こういうことも含めて、あるいは広域化あるいは外国人も含んだ、そういう今の犯罪のあり方を考えていきますと、警察官については、十四年、十五年、十六年で一万人ふやしていただきました。そして、十七年予算でも三千五百人ふやしていただきました。しかし、これで果たしてこれらの対応ができるかということが非常に疑問であります。

 そこで、資料にもおつけしていますが、警察の機構図を見てみますと、警察庁の刑事局が、昨年組織犯罪対策部というのが設置されまして、そういう国際化、広域化、進化した犯罪対策を担当することになったわけであります。先ほど総理も答弁で広域捜査が必要だということをおっしゃっておりましたが、ここに情報をもっと集中させて、各省庁からの、例えば外務省とか、そういう情報も入れなければ、テロ対策とかということになってくるとなかなか進まないんじゃないか。

 先般、アルカイダの関係者が日本で三カ月滞在していて、ドイツかどこかで捕まって初めて日本にいたということがわかった、こういうニュースもありました。そういうことがノーチェックであるということ自体が大変な問題でありますから、ぜひこの組織犯罪対策部、ここを強化充実する、そういう仕組みが必要ではないか。

 そこで、例えば、日本の警察のモデルになっているのが英国だと伺っておりますが、英国においてすら、一九九二年に国家犯罪情報庁というものが設置されまして、一九九八年に国家犯罪捜査庁というものも設置されました。そして、来年から、この二つが合併するのだそうでありまして、このNCISとNCS、これが合併して全国重大犯罪組織庁ということで、SOCAというものがスタートするというふうに伺っております。

 それほど各国とも、今はこういう重要凶悪犯罪に対しての対策が大事なことになっているわけでありますから、ぜひ日本も、そういったことも参考にして、大胆な組織改革といいますか対策をまずこちら側がとるべきではないか。

 そんなことで、国家公安委員長である村田大臣にそこのところをお伺いしたいと思います。

村田国務大臣 冒頭、振り込め詐欺とかあれですが、偽造の運転免許証が使われるというような例も私も存じておりまして、なかなか偽造運転免許証は巧妙にできているわけですけれども、警察といたしましては、ICチップ入りの、偽造しにくい、されにくい、そういう運転免許証を発行したい、こういうふうに考えております。

 なお一方で、銀行の窓口でそういう運転免許証の本人確認をやる場合には、警察に問い合わせてもらいたい、もう少し金融機関に本人確認の作業のレベルアップをしてもらいたいということで私も指示したところであります。

 今御質問の点でございますけれども、私も委員の御指摘、御見解と意見を共有するところがございます。ただ、昨年、通常国会で警察法を改正していただいて、重大テロとかあるいはサイバーテロに対しての警察庁の関与、これを強化し、かつまた刑事局に組織対策本部、こういうものを設けたわけです。これはなぜかというと、暴力団による犯罪あるいは外国人による犯罪、あるいは組織的な銃器の密輸入とか薬物の密輸入、販売というものが行われている、こういう実態に即して、そういう警察法の改正をお願いしたところであるわけです。

 ただ、問題は、警察庁に直接捜査力を付与するかどうかということについては、今の警察の体制、都道府県警が捜査権を持っている。そういう意味で、その都道府県警察との競合をどうするかという問題、あるいは行政改革の見地ということもございますので、まずは去年の警察法の改正の実効性を高めていくということに努力をしたい、こういうふうに考えているわけでございます。

田端委員 ぜひ、実態に対応できる体制、そういうことを御検討いただきたいと思います。

 次に、麻生大臣にお尋ねしたいと思います。

 二〇〇五年までにIT国家を目指すということでやってまいりまして、それがことしになるわけでありますが、ほぼ目標も達成できた、こう思っております。これから先は、今度は、ユビキタス社会、いつでもどこでもだれとでもコンピューターにつながる、そして人に優しい、そういう社会をつくろうという意味で、u―Japan計画というものがこれから大事になろうと思いますし、大臣が一生懸命汗をかかれているわけであります。

 例えば、十年前に携帯電話を持っていた人はこの中でも非常に少ないと思います。この十年間で携帯電話だけでも三十兆からの経済効果があったと言われているわけでありまして、これから五年先、二〇一〇年にユビキタス社会ということになれば、これがまた八十兆ぐらいの経済効果をもたらすと言われています。

 しかし、問題もたくさんあるわけでありまして、例えば、アジアに行って、そこで持っている皆さんの携帯電話を見たら、ほとんどノキアとかモトローラとか、サムスンがちょっとぐらいあるだけで、ほとんど日本の機材はない。

 例えば、ことしですか、南北ベトナム二千キロに光海底ケーブルをODA予算で設置するということが決まりました。そして、これができれば全ベトナムに携帯ネット網ができ上がる、こういうことになるんです。ところが、インフラ整備は日本がしたけれども、機材は、実際に使われているソフトはどこかということになると、ノキアであったりどこかであったりする。

 こういうことになるわけでありますから、このユビキタスという考え方をぜひ日本発の世界に対するIT技術の情報として発信していただいて、日本がリーダーシップをとれるような、そういう仕組みを、そこまでいくようにこのu―Japan計画を政府一体の施策として立ち上げていくことが必要ではないか、こんな思いをいたしておりますので、大臣の御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今お話のありました、e―Japanを立ち上げましたときに比べまして、現実問題は、一昨年法律を通していただきました行政手続オンライン化法等々によりまして、ただいま現在、世界で最も電子化された政府を目指すという計画に対して、達成率はほぼ九九%、この四月までに一〇〇%になろうと思っております。現実問題、これをスタートさせましたときに、韓国におくれること三年と言っておりましたけれども、一昨年の十二月で、韓国に先立つこと三年というところまで規制の緩和等々によって技術が進歩し、規制が緩和されたおかげで達成をされております。

 これを維持するためには、次の目標ということで、ユビキタスという、ラテン語ですけれども、ちょっと先ほどの日本語じゃないじゃないかという点でいきますと、なかなか難しいんですね。いつでもどこでもだれとでもというのは、何か別のことを考えられても困りますし、そういった意味で、ここで、神はどこにでも遍在するという意味でこのユビキタスというラテン語が最も通じやすいし、ユニバーサルのUと考えていただいても結構なのでということでu―Japanということを言い始めたんですが、昨年から韓国もu―Koreaという計画をスタートさせておりますので、そこそこ定着していくのかなと思っております。

 これはインフラの整備が結構大変なところでもありますので、私どもは、よく総理が話されます電子タグの話、回転ずしの計算の話ですが、電子タグに限らず、電子タグとかトロンとかいうシステムを使いますと、少なくとも、高齢者等々、要介護者が自宅を出て飛行機に乗るまで全く介護を必要としないで行けるというようなことが、もう既に実験を始めておりますし、この種のことにおよそ進んでいるとは思えない建設省の道路局ですらこれくらいのことは考えるようになりつつありますので、そういった意味では結構なことだと思っておるんです。

 いずれにいたしましても、介護をされていた人たちがそういう技術の進歩によって介護を受けずに済むような社会というものができて、かつ、先ほど御心配いただいております安心、安全ということも同じくいきますと、少なくとも日本という国は高齢化していくことはもう世界じゅう間違いないところなんですが、日本というところは、そういった技術進歩のおかげ、治安のよさのおかげで、世界で最も安心かつ活力ある高齢化社会という、何となく暗く貧しい高齢化社会と違って、活力ある高齢化社会というものが目指していけるんだと思っております。

 したがって、そういったもののスタンダードというものを日本製にしようという御指摘でしたけれども、これはとても大事なところでして、例えば、こういったものを最初にだれがするかというのは大事なところで、たしかまだ中国の天津あたりだと、水道の蛇口は多分十一口径あると思うんです、異なった口径が。フランス租界、日本租界、ドイツ租界、イギリス租界、それぞれ全部違った水道を持ち込みましたから。多分その設備はそのまま使っておるというのは、非常に後で効率悪いことにもなりますし、いろいろな意味で大事なところだと思いますので、こういったものは最初にきちんと金をかけて整備をするとそれが後ずっといい意味で尾を引きますので、そういった考え方は大切なところなんではないかと思っております。

 世界情報サミット、一昨年の十二月、この話をさせていただいて以来、去年で一年たちますけれども、おかげさまで少しずつ確実なものになりつつあると思いますので、きっちりこの方向で進めてまいりたいと思っております。

田端委員 今、建設省ということでございましたので、北側国土交通大臣にもお伺いしたいと思います。

 昨年来の大変な災害等がありまして、それで、大臣も現地をずっと見てこられたと思います。そういう中で、IT技術が避難誘導等にも大変役立っている。あるいは、気象庁を抱えているわけですから、リアルタイムで情報を流していくという意味でもこれからのこのIT技術というのは大変重要だと思いますが、その点についての大臣の御所見を伺いたい。

 それから、資料の中におつけしていますが、こういう写真が入っています。これは、上の写真はドイツの跨線橋ですけれども、橋の上にそのまま緑がつながっているわけでありまして、動物が行き来できる。下の写真は、小さい小山であっても、山を切り開いて道路をつくらずに、むしろ道路を土の中でトンネル化して、そして自然を生かしていくという、これはドイツの道路であります。EU各地では、こういう自然を生かして、そして生態系というものを大切にするという理念を持って行政が取り組んでいるわけでありますので、国づくり、地域づくり、まちづくりにおいて、国土交通大臣として、ぜひこれからこういうふうに取り組んでいただきたいと思うわけでもございます。

 また同時に、もう一つ資料をつけておりますが、自然再生推進法に基づいて、現在、全国で自然再生協議会が十二カ所で始まっておりまして、壊れてしまった自然をもう一回取り戻そうということで、荒川とか釧路川とかいろいろなところで始まっています。そういったこともぜひ、これはほとんど建設省といいますか、河川局であったり、ほとんどが国土交通大臣の所管のところでございますので、どうぞ、自然再生というものをぜひ大切に、そしてまた推進を一生懸命お願い申し上げたいということで、大臣の御所見を伺いたいと思います。

北側国務大臣 まず、防災に向けてのITの活用ということでございますが、災害時の情報を的確に被災地に通知する、連携をとるということは、極めて被害を少なくするために大事なことだと思っております。

 今、お話ございました気象庁の方では、こうした技術を活用させていただいておりまして、できるだけ狭い地域のところに、そして短い時間単位で情報を的確に流そうということで、今やっておりますのは降水ナウキャストといいまして、一時間先まで十分単位で、それも、一キロメートルのエリアの地域について、これから一時間後こうなりますよという情報を十分単位で必要なところに連絡する。これを受けた市や当局が住民の方々の避難を的確に進めていく。

 こうしたことは、災害時情報を的確に流すということは本当に重要なことであるというふうに考えておりまして、こうした洪水予測情報の充実にこれからもしっかりと努めてまいりたいというふうに思っております。

 それから、社会資本整備を環境との関連でしっかり環境に適合した形でやっていけよと。これも全くおっしゃるとおりでございます。例えば、道路整備につきまして今幾つか例を示していただきましたが、生態系を極力分断しないような道路整備をこれからもしっかりと推進させていただきたいと思っております。一方でコストを少なくするという努力も必要でございますが、こうした自然環境との調和ということも非常に大事な視点だと思っておりまして、この二つを両立できるように進めてまいりたいと思っております。

 自然再生事業、委員の御努力によりまして自然再生法が議員立法で成立をいたしました。この自然再生推進法に基づきまして、今、全国で十二カ所、自然再生事業が進められておりますが、国土交通省といたしましても、自然との共生という観点、自然を再生する、また自然環境を保全していくということは極めて大事な理念だと考えておるところでございます。

 これからの河川事業を初めさまざまな社会資本整備におきまして、例えば河川でありましたら、今までは、治水という観点からは早く海に流すというふうな観点が強かったわけでございますが、そうではなくて、そういう治水に当たっても、総合治水といいまして、もちろん治水は大事なんですけれども、環境を大切にしながら、水環境を大切にしながら、そうした治水事業を進めていく。例えば、川を真っすぐ流すのではなくて、もともと自然に蛇行河川、河川とはそんなものですよね、瀬とふちがあって、そういう蛇行河川を保全する、また、復元をしていくというふうなこと。これは、今具体的には釧路湿原でやっているわけでございますが、こうした事業についてもしっかりと進めさせていただきたいと思っております。

田端委員 二〇〇二年の九月にヨハネスブルクで地球環境開発サミットが行われまして、その席で小泉総理が、持続可能な開発のための教育の十年ということを日本政府の提言として申し上げました。そして、それが、その年の十二月の国連総会で全会一致で採択されまして、二〇〇五年、ことしから始まるわけで、この十年間、持続可能な開発のための教育ということが全世界的に取り組まなければならないことになりまして、今、ユネスコでこの実施要綱を作成中だと伺っております。

 日本が果たして提案国としてこれをどういうふうに推進するのか、日本においてどの省庁が取り組むのか、その辺のところ、総理の御決意を伺いたいと同時に、環境大臣として、これを受けて環境教育推進法という法律が一昨年できまして、昨年から完全施行になっておりますけれども、例えば愛・地球博なんかは自然の英知をテーマにしているわけですから、これなんかも生きた教育になろうかと思います。そういった意味で、具体的に環境大臣はどういうことをお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 後ほど具体的な問題は環境大臣に答弁させますけれども、持続可能な開発のための教育の十年、これは、ヨハネスブルク・サミットの後、我が国が提案して採択された国連総会決議において、ユネスコが実施のための全般的なガイドラインを作成する一方、各国はその国に応じて国内施策を進めることが奨励されているわけであります。

 我が国として、持続可能な開発のため、これはやはり教育が大事であるということからも、国際的に推進していかなければならない。我が国だけの問題ではありませんから、ユネスコなどを通じまして普及や啓発のための行事を行っていくことを考えております。

 今回、三月二十五日から愛知万博が始まりますが、こういうのは生きた実物教育といいますか、自然の重要さ、排気ガスを出さない自動車で全部地域内の展示場を回れるとか、レストラン等では、全部、たとえごみに捨てられてもそれは土に返るとか、そういう環境面に配慮した、自然を配慮した、そういう点にかなり配慮しておりますので、そういう点も、訪れた日本人のみならず外国の方にも、ああ、日本というのは経済発展と環境保護に力を入れているんだな、そういう点をよくわかってもらうような努力も必要だと思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

小池国務大臣 具体例ということでございますので、まず、ことしの愛・地球博におきまして、環境省として、環境問題、環境配慮に関しての普及啓発を行うような、そういった出展をさせていただいたり、環境の日がございます、そこでのイベント、エコツアーなどの事業を中で行う。

 と同時に、やはり家庭の中での環境ということを、これは予算委員会ですので、予算の面でも申し上げますと、例えば我が家の環境大臣事業、私、環境大臣一人ですけれども、これから日本全国に十万人ぐらいの環境大臣になっていただこうと思うような形で進めてまいりたいですし、また、学校などのエコ改修・環境教育モデル事業なども進めてまいりたい。そういった予算も今回に盛り込ませていただいております。

田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。

甘利委員長 これにて田端君の質疑は終了いたしました。

 次に、樋高剛君。

樋高委員 民主党の樋高剛でございます。

 きょうは、冒頭強く抗議をさせていただきます。

 先ほどの坂本委員そして松島委員のやりとりでありますけれども、一方的に疑惑があるかのごとく言われるのは心外であります。法律的に何ら問題ない。欠席裁判です。そもそも、経理の話についてでありますけれども、当時、自由党は、関係法令に則して、しっかりとした外部の監査法人を入れて適正に処理をしているということで、全く問題ないのであります。そもそも言われる筋合いのない話であります。

 一方的に言うばかりでなくて、事実と異なるパネルを使っている、しかも政府側にそれを答弁までさせる。国民に誤解を与えてしまいかねない。私はこれはしっかりと訂正をすべきであると思いますが、委員長、いかがですか。

甘利委員長 この件については、理事会でいろいろと理事さんを通じてお話をしていただきたいと思います。午前中の理事会でも、この件に関しては協議している部分もございます。

樋高委員 政府と与党が一体となって野党を批判する、そして反論させる機会も与えないということ、そもそも議会制民主主義の崩壊ではないかと思うのであります。

 政府にお尋ねをいたします。

 具体的、個別的な中身について言及するのはおかしいと思いますけれども、総務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 質問予定をいただいておりませんので答える立場にはないんですが……(発言する者あり)いつもないんですが、今御質問ですから。

 一般的に、個別具体案と言われますけれども、答弁の方も、審査権を持っていない総務省といたしましては、一般的なところでお答えする、書いてある事実をそのとおり申し述べる以外に方法はありません。

樋高委員 今までの政府の答弁は、個別的、具体的なことには答えていただいておりませんでした。

 かつての話でありますけれども、例えば、ここに議事録がありますけれども、具体的な事実を承知する立場にありませんのでお答えは差し控えさせていただきますということを何度も聞いたわけですが、いつから方針が変わったんでしょうか。

甘利委員長 どなたに。

樋高委員 総務大臣に伺います。

麻生国務大臣 質問の意味をもう一回正確に言ってください。

樋高委員 具体的、個別的中身に言及をするということは今までなかったと思います。なかったですね。それがいつから具体的、個別的中身について答弁をするようになったんでしょうか。いつかということを伺います。

麻生国務大臣 収支報告書に書いてあることを正確にそのまま伝えるということだったと思います。

樋高委員 これは第百五十九回の国会、内閣委員会、平成十六年五月二十六日付でありますけれども、政府参考人の方がこのように言っています。「私ども、具体的な事実を承知する立場にございませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。」ということでありますけれども、そもそも、与党の委員が質問したことには答えて、野党の委員が質問したことには答えないということなんでしょうか、総務大臣。

麻生国務大臣 今、与党と野党との間に差別があるかのごとき発言をしておられるように聞こえましたが、今、答弁の方だけ一方的に言っておられますが、そのときの質問の内容は、個別具体的なことをという話でしたけれども、そのときの質問と先ほどいただいた御質問に対する答えは、先ほどのは基本的に記載事実を述べたというだけでありまして、審査権とかいうものはないのはもう何回も申し上げておりますので、個別具体案に対するあれではなくて、記載事実を述べたということで、個別具体案とは違うと存じます。

樋高委員 記載事実は今まで述べておりません。いつから述べるようになったんですか。総務大臣に伺います。

麻生国務大臣 収支報告書というものは、これはたしか公開されているんじゃないですか。だから、収支報告書を、公開されているものなのであって、別に特別に申し上げているわけではないのであって、今までの質問等は、公開されているものに関しての質問に対して個別具体案と申し上げたという記憶はないのであって、公開されているものに関しては公開されている事実を申し上げているのであって、個別審査権を使ってどうのこうのとやる種類の話ではないから申し上げられたんだと思います。

樋高委員 では、公開されているものというのは全部政府が答弁してくださる、これから具体的に全部答えてくださるということなんでしょうか、総務大臣。

麻生国務大臣 公開されているものでありまして、あらかじめ公開されているものでしたら、別にホームページをお調べになったらそのまま出てくる話だと思います。

樋高委員 そもそもなぜ今まで具体的な事例について答えていなかったかというと、そのことを言うことによって、例えばプライバシーの侵害であるとか、あるいはそのことを言ってしまうことによってうまくない部分が出てきてしまう、うまくない状況が生まれてしまうということによって、多分言われてこなかったのではないかと思われるわけであります。その部分は理解できます。しかしながら、今回、恣意的に、意図的に、政府と与党が一体となって、しかも、疑惑でも、全く問題もないのに、疑惑であるかのごとく議論をすること自体、おかしいというふうに思います。

 なぜ、今まで具体的な答弁をしない、しなかったことがすることに変わったんでしょう。その理由は何ですか。理由は何ですか、総務大臣。

麻生国務大臣 具体的な御質問をいただいて、私どもの個別審査権がないところに関しましては個別具体的な事例にはお答えできませんとずっとお答え申し上げてきておりましたし、今回のように、一般に既に公開をされております資料のものにつきましては、御自分でお調べになってもすぐ出る話ですし、これは御自分で、公開しておられるわけですから、特別なことをしているというわけではないと存じます。

樋高委員 要するに、公開をしていることと、あと国会という場において答弁をすることは全く違うんです。そもそも、公開をしているからといって国会で答弁をしていいということになるんですか。総務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 何回も申し上げるようで恐縮ですけれども、個別具体案につきまして、いわゆる審査権、私どもは個別具体的なことに関して強制捜査権を持っているわけではありませんから、その強制捜査権を使わずに、少なくとも公開されている事実を申し上げるということに関しては、別に公開されているものをそのまま申し上げているだけだと存じます。

樋高委員 では、これからすべて答えていただけるということなんですね。そういう理解でよろしゅうございますね。総務大臣、答弁だけ。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますが、公開されているものという前提をつけた上でのお話にしていただきませんと、いかにも個別審査権があるかのごとき思っていただくと、それは違いますので。

樋高委員 そんなことを言っていないのでありますけれども、いずれにいたしましても、今後、今答弁ありましたが、個別具体的な事案についても、公開されているものについてはしっかりと政府は答えてくれる、国会の場で答えてくれるというふうに、方針がいつから変わったのかわかりませんけれども、確認をいたしたいと思います。

 本題の方を進めさせていただきます。

 きょうは総理と率直に議論させていただきたいと思いますけれども、ごまかさず、はぐらかさず、国民にわかりやすく、しっかりと答弁をしていただきたいと思います。

 まず、靖国参拝についてでありますけれども、総理の靖国神社参拝についてお伺いをいたします。

 ことしも参拝に行かれますか、総理大臣。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

樋高委員 昨年の秋にチリで日中首脳会談が行われました。それより以前は、総理ははっきりと靖国に一年に一度は参拝するとおっしゃっていましたけれども、この総理の方針、年に一度靖国参拝をするということに、その方針に変わりはありませんか。

小泉内閣総理大臣 ことし、来年のことについては、適切に判断してまいります。

樋高委員 そうではなくて、総理が選ばれるとき、総裁選挙のとき公約しました、年に一度靖国参拝をするというその方針に変わりがあるのかないのか伺っているんです。もう一度お伺いします。

小泉内閣総理大臣 そういう点につきましても、適切に判断してまいります。

樋高委員 これまで靖国参拝について聞かれますと、年に一度は参拝をすると言っていた総理が、今は適切に判断しますとおっしゃっていますけれども、何で言うことが変わったんでしょうか。原因があったんですか。

小泉内閣総理大臣 それぞれ外交交渉については、すべてを公開する必要はないんです。相手の立場も考えなきゃなりません。何を言ったか言わないか、それは相手との立場もあります。適切に判断していかなきゃならない問題であります。

樋高委員 総理は、総理就任後、毎回あれだけ騒動になりながらも、毎年靖国に参拝を今のところされております。しかも、その靖国参拝をみずからの信念であるとおっしゃっていますけれども、では、ことしは靖国神社に参拝をしないということもあり得るでしょうか。イエスかノーで答えてください。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

樋高委員 外交辞令でころころ変わるということのようであります。

 ところで、総理が国会議員に初当選をしてから約三十年、昭和四十七年初当選だったと思いますけれども、総理大臣に就任するまでの約三十年間でありますが、何度ぐらい靖国に参拝をなさったんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 覚えておりません。

樋高委員 総理に就任する前に行かれた事実がありますか、ありませんか。

小泉内閣総理大臣 あります。

樋高委員 総理は、靖国神社への参拝は、就任前はほとんどないんじゃないでしょうか。別に正確な数を聞きたいと言っている話ではないんですけれども、大体何回ぐらい、例えば二回か三回なのか、あるいは十回も二十回も行ったので数え切れないと言っている話なのかを伺いたいんです、総理就任前に。

小泉内閣総理大臣 厚生大臣のときも郵政大臣のときも参拝しておりますし、平議員、一議員のときも何回か行っております。

樋高委員 靖国参拝は信念であるとおっしゃっておいででありますけれども、その信念はいつごろから持たれたんですか。

小泉内閣総理大臣 いつごろかわかりませんけれども、私は、今日の日本の平和と繁栄は現在生きている人だけで成り立っているものではない。もしも私があの第二次世界大戦時に徴兵されなければならない年代であったら、私も当然戦場に赴かなければならなかったであろう。家族と別れて、場合によっては命を落とさなければならなかったであろう。多くの若い人たちが、自分のしたいこともできずに、国家のために命をささげざるを得なかった。こういう方々のとうとい犠牲を我々は片時も忘れてはならないと思っております。そして、二度と戦争を起こしてはならない。戦争ほど悲惨なものはありません。

 そういう心情を思うと、心ならずも戦場に赴き命を落とさなければならなかった方々に対して敬意と感謝と哀悼の誠をささげるのが、人間として極めて自然な感情だと思います。そういう思いから、政治家としても参拝しております。

樋高委員 では、そんな中にあって、ことしは戦後六十周年ということでありますけれども、毎年八月の十五日には戦没者のいわゆる式典を行っておりますけれども、ことしは六十周年ということでありますが、政府として何か特別な式典などをなさる御予定がありますでしょうか。もしくは、式典などを行いたいという思いはありますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 毎年、八月十五日には戦没者の追悼式典を挙行しております。ことしもその式典は行う予定でございますが、ほかのことについては、今のところ考えておりません。

樋高委員 今のところは考えていないということでありますけれども、では、その六十周年を迎える八月の十五日でありますけれども、総理として、六十周年ということでありますと、何か談話や声明を発表なさる御予定でしょうか。

小泉内閣総理大臣 ことしは、いろいろな行事は各国との間に予定しておりますが、その都度どういう声明を出すなりメッセージを出すか、今の時点では考えておりません。そのときに出さなきゃならない声明、メッセージがあれば、出さなければならないと思っております。

樋高委員 総理の歴史観についてお尋ねをさせていただきます。

 六十年前、日本の国土は焼け野原となって、その後も含めて、国民は塗炭の苦しみを味わったわけでありますけれども、総理は、あの戦争が起こったのはどうしてなんだ、一体どういう経緯で日本はアメリカや中国との戦争に突っ込んでいってしまったのか、その原因についてどのような歴史認識をお持ちでしょうか。お伺いいたします。

小泉内閣総理大臣 戦争の理由は一個人が断定すべきものではないと思いますが、私は、あの当時、やはり国際協調の重要性というものを認識していなかった面も、戦争に突入せざるを得なかった大きな理由の一つだと思っております。

樋高委員 私が習った歴史においては、戦前、軍部の一部が暴走して、それをとめられなかったということで戦争に突入してしまいましたということは教わりました。そして、三百数十万人のとうとい犠牲者が出、そしてアジアにおいては一千万人以上もの方々が亡くなるという悲惨な戦争が起きたと思っておりますけれども、総理は、この戦争に至った日本の軍部の責任をどうお考えになっていらっしゃいますか。

小泉内閣総理大臣 当時の状況に対してどう思うかと。私もかなり当時の歴史書を読んでおりますが、軍部をあおり立てたマスコミもありますね、国民感情もありますね、軍部の責任もありますが。あの当時の新聞をよくごらんになったらいろいろわかると思いますが、やはり、行け行けどんどん、強硬論というものについて慎重論を唱えるのは、いつの時代でも、外交は弱腰だという批判が朝野を問わず多かったですね。そういう状況もあったんじゃないでしょうか。

 軍部という、それだけの責任かというと、これまた問題があると思います。軍部の責任も大きいと思いますけれども、政治家もマスコミも国民も含めて、日本の海外での権益を維持しろ、外国の言うことを聞くのは弱腰だというような批判もかなりありましたね。あの当時の新聞をごらんになったらおもしろいですよ。もう朝野を挙げて、この戦争に対して、余り否定的な議論というのはなかったですね。そういう点もよく考えなきゃいけないですね。

樋高委員 総理の敬愛する司馬遼太郎さんでありますけれども、戦前の軍部の暴走ということを書いております。軍部の暴走がそのすべてではないにしても、戦争を引き起こした一因ということを考えたときに、極東軍事裁判の問題は避けて通れないというふうに思います。

 この裁判につきましてはいろいろな批判もありまして、裁判の正当性に疑問を投げかける声ももちろんございます。ただ、やはり、あれだけの人が亡くなって、大きな惨禍がもたらされたのが事実である以上、だれかが責任をとらなければいけないというふうにも思います。正しいか間違っているかは別にしまして、それが十四人のA級戦犯だというのが極東軍事裁判であったと思うんですけれども、そのA級戦犯が、その結果を受けての延長線上で日本の独立が現実にあって、今日に至っているということであります。

 そのA級戦犯が靖国神社に合祀されているわけですけれども、そのことについて総理はどのようにお考えになりますか。

小泉内閣総理大臣 私は、靖国神社がどういう方々を合祀するかについて、いけない、いいとか言う立場にはございません。

樋高委員 その立場がいいとか悪いとかということではなくて、今まで靖国神社に参拝を毎年してこられたわけですけれども、当然、A級戦犯を含めてすべての人々に哀悼の誠をささげるという理解でよろしいのでしょうか。そういう意味で行かれているんですね。

小泉内閣総理大臣 特定の人を想定して参拝しているものではございません。

樋高委員 特定の人を想定していないにしても、A級戦犯の方々も含めて靖国神社に参拝をしているという認識でいらっしゃるわけですね。

小泉内閣総理大臣 すべての戦没者に対して哀悼の意をささげるために参拝しております。

樋高委員 総理の歴史観がどういうものであるのかということを純粋に、本当に伺いたかったから伺ったわけでありますけれども、そもそも、そのA級戦犯についての議論もまたあります、軍事裁判についての議論もありますけれども、今日これだけ世界情勢が激変する中にあって、やはり第二次世界大戦における政治の役割がどうであったかということもいま一度検証してみる必要がある。やはり、これから日本がどういう方向に進もうとしているのかということをしっかりと政治が責任を持って判断し、そして、国民合意の上で、間違いのない方向にこの国を引っ張っていかなくてはいけないという認識を持っているわけでありますけれども、次に移らせていただきます。

 平壌宣言、日朝関係についてでありますけれども、総理に伺います。

 この平壌宣言でありますけれども、宣言では、国際合意を遵守するということになっております。いまだに北朝鮮側は遵守しているという認識なんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言は、これからの、日朝間の不正常な関係を正常化していこうという、それを目指す重要な政治文書だと思っております。

 そういう点をよく考えて、この日朝平壌宣言を実行に移すように双方が努力していくための文書であります。その方向で粘り強く交渉をしていきたいと思っております。

樋高委員 その北朝鮮側が遵守をしているという認識を総理はお持ちなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 遵守するようにこれから働きかけていくことが必要であります。

樋高委員 ということは、今現在、遵守をしていない部分があるという御認識なんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、遵守しようと働きかけているわけでございます。

樋高委員 この平壌宣言、明らかに破綻をしていると思います。

 日朝平壌宣言でありますけれども、平成十四年九月の十七日付でありますけれども、双方は、相互の信頼関係に基づき、諸問題に誠意を持って取り組む強い決意を表明した、そして、双方は、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認したということでありますけれども、この平壌宣言は、今、有効なんですか、有効でないというふうに指摘する方々が多いですけれども。

小泉内閣総理大臣 これは、有効であります。

樋高委員 これは、私の認識なんですけれども、国家間の約束事であって、努力目標を定めたものではないと思います。

 昨今の北朝鮮の対応を見ておりますと、明らかにこの中身に反している、北朝鮮側はほごにしているとしか私は思えないんですけれども、総理の御認識をもう一度伺います。

小泉内閣総理大臣 私は、この日朝平壌宣言、これをこれからの日朝間の正常化を目指す重要な文書として認識しておりますが、今大事なのは、北朝鮮側の個別の行動を列挙して反しているということを問うのではなくて、お互いこれを誠意を持って実行していくということが重要であると思っております。

樋高委員 要するに、何が重要であるかどうかということを伺っているのではなくて、それでは、あの平壌宣言というのは、国家間の宣言でありますから、約束事ではなかったんですか。ただ単なる、二人で、親しいので会って話をして、努力目標をお互いに掲げましょうというだけの話だったんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言は、これからの、日朝間の不正常な関係を正常化に導くための有力なてこだと私は思っております。

 日朝平壌宣言がなかりせばどうなっていたでしょうか。日朝平壌宣言を破棄すればこれからどうなるかということも考えていただきたいと思います。

樋高委員 そんなことを聞いているわけじゃないんですけれども、そもそも、その中身について、総理が認識をされて、どのように認識をなさっているかということをお尋ねしたいわけであります。

 あの文書がありますけれども、その中で、文書の中身で、総理の御自身の認識として、その精神が守られている、その中身について今全く問題ないという御認識ではないということですね。

小泉内閣総理大臣 問題がありますが、だからこそこれを、日朝平壌宣言をよく思い起こしながら、正常化に結びつけていくような努力が必要だと申し上げているわけでございます。

樋高委員 平壌宣言の中身に問題があるという総理の発言であります。具体的にどういう問題点があるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言が問題があるということは言っておりません。そのことに対して、今までの対応には問題がある。それを、日朝平壌宣言にのっとってこれを実行していくことが必要だということを申し上げているわけでございます。

樋高委員 では、平壌宣言の中身はもう全く問題ない、一〇〇%問題ないと。

 昨今の北朝鮮の対応を見ても、例えば横田めぐみさんの遺骨の話もあります。これは明らかに違反をしている、あの精神に反しているというふうに思いますけれども、総理はそれに反していないという御認識なんですね。総理、答えてください。

小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言は重要な文書だと思っております。

樋高委員 反している部分がございますか、ございませんかということを聞いているんですけれども、反している部分はないという認識なんですね。

小泉内閣総理大臣 今重要なのは、一々その行動を列挙して問題がある問題があると言うことも一面では必要でありますが、問題なのは、この日朝平壌宣言をお互い確認した、そして、これに沿って日朝間を正常化していこう、その重要なてこになる文書である。それに沿って、日本のみならず関係諸国とも粘り強く働きかけていこうということが重要ではないかと思っております。

樋高委員 この宣言の中に、諸問題に誠意を持って取り組むということがありました。誠意を持って北朝鮮側が取り組んでいるというふうに総理は思われているんですか。

小泉内閣総理大臣 誠意を持って取り組んでいない部分がありますから、誠意を持って取り組むように促していくための重要な文書であると思っております。

樋高委員 誠意を持って取り組んでいないと思われている具体的な中身は、総理、どういうところと思っていらっしゃるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、拉致の問題でも核の問題でもそうだと思っております。

樋高委員 そもそも、国家間でお互いに宣言をしたということの中身が今守られているという認識がない、国民の大多数の方々が思っていらっしゃるわけですけれども、総理は、そもそも平壌宣言の中身は守られている、すべて守られているんだという認識に立っていらっしゃるということなんですね。これは最後にお聞きします。

小泉内閣総理大臣 何回も答弁しておりますが、この日朝平壌宣言は両国の関係を正常化するための重要な文書であるし、それが守られていない、守られているということも、それは議論としてはできます。しかし、守るように努力していくことが重要である、そのための有力な文書である、重要文書であると思っております。

樋高委員 守るように努力をしていくのはもちろん重要であります、当たり前の話でありますけれども、それを守るように努力をしていくに当たって、そもそも、その前提条件が崩れているのではないかということを御指摘申し上げたいわけなんですけれども、総理の認識もまだ全然はっきりいたしません。

 次に、時間の関係で先に進みます。きょうは、環境問題について伺いたいと思います。

 そもそも、地球環境保全というのは、人類にとって、人類生存の基本条件であるというふうに思います。実は、今月の十六日、二月の十六日でありますけれども京都議定書が発効する、国際的な温暖化対策の取り組みがスタートをするということでありますけれども、総理に伺います。

 地球環境保全の思想についてでありますけれども、環境の保全は人類生存の基本条件であるということを今申し上げましたが、二十一世紀においては、やはり国や国民すべてが本来地球環境の保全の義務を有しているということを憲法に私は明記すべきであると思いますけれども、総理の御所見を伺います。

小泉内閣総理大臣 今後、憲法改正の議論の中で、あるいは新憲法草案をつくる作業の中で、そういう問題も議論していくべき重要な問題ではないかと思っております。

樋高委員 御存じのとおり、去年の十一月でありますけれども、ロシアが京都議定書を批准いたしまして、議定書が採択されてから八年目にして、ようやくことしの二月の十六日に発効することになりました。まさに地球規模の問題として温暖化対策を進める上で非常に大きな意義があって、私自身も非力でありますけれども長年環境問題に携わってきた、私としても大変喜ばしいことであります。

 しかしながら、喜んでばかりもいられない。議定書の発効によりまして、日本も九〇年比で温室効果ガスの排出量を六%削減するという義務を果たす必要が生じてきます。現状では、九〇年比で逆に八%も地球温暖化ガスの排出量が増加をして、合計一四%以上の削減をしなければならないという厳しい状況の中にありますけれども、国内対策についていよいよ待ったなしの状態であり、今、政府が一丸となって、国が一丸となって真剣に取り組んで、そしてなおかつ結果を出していかなくちゃいけない。ただ単に一生懸命やりますやりますと力むだけではだめで、実際に成果が問われてくると思います。

 しかも、京都議定書、日本は生みの親であります。まずみずから率先してその約束を実行していかなくてはいけないと思いますけれども、この京都議定書を発効するに当たって、削減目標を達成するために国全体として今後具体的にどのような対策を進めていこうとしているのか、お尋ねいたします。

小池国務大臣 今、京都議定書について詳しく御質問の中でお述べいただきました。

 確かに、二〇〇三年度の速報値で八%の上回りが出ておるわけでございまして、六%の削減ということを計算しますと、プラスマイナスで合計一四%。高いハードルではございますけれども、京都が発信の地であり、そして我が国が既に批准をしているということにありましては、六%の削減へ向かって追加的な対策、施策を講じるということで、今、内閣官房を中心に調整を進めているところでございます。

 その対策といたしましては、エネルギー起源の二酸化炭素の排出を抑制するその対策について、そしてそのほかの温室効果ガス、フロンなどがございますけれども排出抑制対策、それから森林吸収源対策、さらには京都メカニズムの活用などということでございまして、議定書の六%の削減約束を達成できますようにしっかりとした計画をつくってまいりたい、政府一丸となってつくっていきたいと思っております。

樋高委員 今お答えをいただきました対策で、果たして削減目標を達成できるかどうかというのはこれからだという話でありましたけれども、御案内のとおり、第一約束期間は二〇〇八年からスタートするわけでありまして、もうすぐ目の前まで来ているのであります。

 本当にこの議定書は日本は議長国としての責任があるわけですけれども、今、これから進めようとする対策で、本当に目標達成は可能なんでしょうか。その根拠をお示しいただきたいと思います。精神論ではだめだと思います。いかがでしょうか。

小池国務大臣 そのために必要な追加的な対策、施策とは何か、何をしなければならないか、各省庁、関係省庁一丸となって取り組んでいるところでございます。

樋高委員 総理にお尋ねしますけれども、この京都議定書、いよいよ発効をする、そして国際的取り組みがスタートをするということであります。CO2、二酸化炭素、温室効果ガスを削減するということを、きちっとした結果を出していかなくちゃいけないわけでありますけれども、実際は、九〇年に比べて八%ふえている。そして、九〇年比マイナス六%を目標に削減をしなくちゃいけないというわけですから、トータル一四%削減をしていかなくちゃいけないという中で、私自身は、これはただ単にいろいろな罰則あるいはインセンティブを与えるということだけではなくて、私の問題意識は、やはり国民一人一人がしっかりと認識をする、やはり、環境、地球温暖化対策についてしっかりとした意識を持っていかなくてはいけないと思うのであります。

 そもそも、この京都議定書の存在、国民の中でどのくらいの方が認識していらっしゃるんでしょうか。

小池国務大臣 内閣府の調査、そして新聞社によるアンケート調査などの結果を見ますと、京都議定書を知っているかということについて、知っていると回答した人、平成十年、一九九八年の段階でわずか一五%ぐらいだったんですけれども、平成十六年の十月、昨年十月の段階で五四%に増加、それから、名前だけは知っていると言った方々を含めますと、平成十年の時点で四九%であったのが、平成十六年については九九%に増加をしているということでございます。

 ただ、その中身について、そしてまた、この京都議定書の約束を果たすためには何としても国民の皆様方のそれぞれの行動が、また参加が必要でございますので、二月十六日、まさに京都議定書が発効するその日に、京都議定書が話し合われました国立京都国際会館におきまして、発効の記念行事を開催することとなっております。それぞれ批准をした国々とインターネットでライブで中継を結ぶなどして、批准をした国々との連携なども深めながら、そしてまた、日本の国民の皆様に対して、京都議定書について、どういうものなのか、また何をしなければならないのか、そういう呼びかけをしっかりとやらせていただきたいと思っております。

樋高委員 素朴な疑問なんでありますけれども、我が国が九〇年比六%削減をするという目標を目指すわけでありますが、これが達成できなかった場合、総理、だれの責任なんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 だれの責任といいますか、この目標、実現を目指して今努力しているわけですから、その目標に向かって、容易ではありませんけれども、努力していく必要があると思っております。

樋高委員 これは、政府の責任ではないんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 この実現のために政府は全力を尽くさなきゃならない、それが責任だと思っております。

樋高委員 いつの政府の責任なんですか。小泉内閣ですか、それとも二〇〇八年当時の政府ですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは国を挙げて取り組まなきゃならないと思っております。

樋高委員 全く答えていただいていないようであります。

 環境問題は国際問題でもあります。地球的規模の取り組みが欠かせないわけでありますけれども、議定書からアメリカは離脱をしているという状態であります。このアメリカが議定書の枠組みに参加をしていないということについて、どのようにお考えになっていますでしょうか。

町村国務大臣 アメリカあるいはインドあるいは中国、こういう大きな国々、排出量の多い国々が参加をしていない状況というのは、私ども、何とかこれは改善をしなきゃならない、こう思っております。

 アメリカに対しても、私どもはいろいろな機会にそうしたことを直接働きかけをし、ぜひ加盟すべきである、こう言っておりますが、彼らは非常にかたい、強い態度でございまして、全体の有効性の問題、あるいは主要な途上国が参加していないといった現状に対する批判、あるいはそもそも科学的知見の上からもいかがなものかといったような意見、いろいろなことが理由にあるようでございます。もちろん、アメリカ経済に対する悪影響というものも言っておられるようであります。

 いずれにしても、私どもとしては、アメリカに最大限の努力をするように働きかけをしております。加入するようにも働きかけをしております。そういったことを、今後とも適切に関係諸国に対して働きかけを続けていくと同時に、先ほど小池大臣が御答弁されたような国全体としての取り組みも同時にやっていくことが必要だろうと思います。

樋高委員 総理は個人的にはブッシュ大統領と仲がよろしいようでありますけれども、今まで会談した際、米国が京都議定書の枠組みに復帰するということを直接要請したことはあるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 日米首脳会談におきましても、ブッシュ大統領にこの京都議定書批准を働きかけましたが、ブッシュ大統領ははっきり受け入れることはできないと表明しております。

 しかしながら、科学技術の面において、環境保護は重要だ、そういう面で環境保護と経済発展が両立できるように日米は協力していこうというのがアメリカの現在の方針でございます。

樋高委員 総理はやはりアメリカもこの議定書の枠組みに入った方がいいという認識でしょうか。

小泉内閣総理大臣 入った方がいいという認識でありますが、ブッシュ大統領ははっきりと受け入れられないと何回も言明しております。

樋高委員 また、いわゆる排出量でいいますと、アメリカが世界で一番多い、約四分の一の温室効果ガスを排出しているということでありますけれども、途上国の排出量、排出も、これはしっかりと抑えていかなくてはいけないというふうに思います。世界で二番目に多い排出国は中国、あるいは五番目に多いのはインドであります、日本は四番目でありますけれども。この五番目までの国家で、世界で温室効果ガスを排出しているのは半分に至るわけでありますけれども、中国あるいはインドに対する働きかけも、総理、行ったことはありますでしょうか。

町村国務大臣 委員御指摘のポイント、私どももそういう思いで、いろいろな機会にそうした働きかけをしております。

 例えば中国では、昨年の三月に日中気候変動対話というものがございまして、そこで中国政府に働きかけをしておりますし、またインドは、昨年十二月の気候変動枠組み条約締約国会議の際に働きかけをしております。

 さらに、これは日本のイニシアチブで、中国やインドを含む主要排出国の参加を得まして、「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合というものを開催いたしておりまして、これは三年前から実はやっております、毎年一回なんでありますけれども。これは要するに、ポスト京都議定書というものをにらみながら、もちろん、彼らに参加を呼びかけると同時に、その後のことも含めてこの非公式会合の場で、日本とブラジルが共同議長という形で、中国あるいはインド等々もこのメンバーでございまして、率直な議論をしているところでございます。

樋高委員 ところで、その世界第二位の排出国であります中国についてでありますけれども、中国へのODA、いわゆる政府開発援助でありますが、その中身を京都メカニズムにありますCDMに転換すべきである、クリーン開発メカニズムに転換をすべきであるという指摘もありますけれども、どのようにお考えでしょうか。

 私自身の問題意識は、やはり今までのODAは、私はそれはそれなりにもちろん効果を上げてきたというふうには思っておりますけれども、やはり中国が世界で第二位の排出国であるという現状をかんがみたときに、そこには日本の技術も供与し、そして資金も供与して中国の環境に資する。すぐ隣でありますから、それは日本にも直接携わってくるわけでありまして、やはりこのODAのあり方そのものを見直して、そして、私自身はこの京都メカニズムにうたってありますCDM、クリーン開発メカニズムに転換をしていくべきであるというふうに思いますけれども、シフトしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 中国に対するODA全般につきましては今見直し作業を始めたところでございますが、それはそれとして、現在の対中ODAの中での一つの大きな柱がまさにこの環境問題ということでございまして、これについて、まさに対中ODAの柱ともいうべき形で現在進めているところであります。

 今委員御指摘のこのCDMにつきましては、これは開発途上国が持続可能な開発を達成すると同時に温室効果ガスを減らしていく、そういう社会をつくっていく上で重要な手段であろうということで、これを推進していこう、こう思っております。もっとも、これは受け入れ国、中国側の考え方というものもあろうと思いますので、今後、中国側ともその可能性について大いに検討しながら取り組んでいきたいと考えております。

小池国務大臣 今の点でもう一つ、別の角度からではございますけれども、CDMプロジェクトのODA資金の利用に関して、これがODAの流用でないとして、CDMとして認められるか否か、そういうこともございまして、CDM理事会がプロジェクトごとに個別に判断をして、そして決定をする、このような流れになっております。

 しかし、我が国、京都議定書の約束達成ということにつきましては、その目的に向かっては、補足的でなければならないという位置づけではございますけれども、CDMなどの京都メカニズムの適切な活用ということが必要と考えております。

樋高委員 技術と資金を供与することによって、世界第二位の排出国であります、しかも隣であります中国について、中国の環境に資するということであります。総理、これは真剣に考えていただきたいのでありますけれども、検討に値すると思いますけれども、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 中国との関係は、環境面においても極めて重要だと思っております。また、環境面においても中国とは協力できる分野がたくさんありますので、こういう点につきましても、鋭意両国間での協力の道を今後とも探っていきたいと思っております。

樋高委員 去年の十二月に行われましたCOP10、いわゆる気候変動枠組み条約第十回締約国会議についてお尋ねをさせていただきますけれども、第二約束期間、つまり二〇一三年以降の温暖化ガスの排出量削減について、参加国に削減を義務づける体制の提案を今回行ったんでしょうか、行っていないんでしょうか。日本政府として、参加国に温室効果ガスを第二約束期間において削減をするという提案は日本国として行ったのか、行っていないのか。

小池国務大臣 今回のCOP10におきましては、これからの枠組みをどのような形で話し合うかということなどが、具体的には、セミナーを持つか持たないかというような具体的な話、そちらの方に討議が集中をしたところでございます。

 我が国とすれば、これからのポスト京都の枠組みづくり、大変重要な論点だと思っておりますので、これからも世界に向けまして、日本として発信できるように取りまとめをしていきたいと思っております。

樋高委員 この国際会議の場において、日本がちぐはぐな、つまり経産省と環境省で、お互いそれぞれの違う主張をなさったということが国際的な批判を浴びております。

 経産省はアメリカや途上国の参加を促すということについては前向きではないということでありますけれども、一方で、環境省の方は数値目標をきっちりと打ち出していくべきであると。双方の調整が日本国内においてしっかり行われたのかということについて疑問を抱かざるを得ません。

 例えば経産省は、セミナーを開いて、国際会議の場、その現地で、いわゆる数値目標はただ単なる努力目標にしておけばいいんじゃないかということを堂々と論陣を張られておりましたし、一方で環境省さんは、数値目標を出すべきだということを主張なさっておいでであった結果、国際社会において、日本は一体どっちなんだ、どうしようとしているのかということが批判されておりますけれども、どのように反省していらっしゃいますか。

中川国務大臣 京都議定書の六%削減は、これはもう政府としての目標でございます。現実が実質一四%増という状況に対して、我々も非常に厳しい現状であるという認識は持っております。

 だからこそいろいろな対策をとっているわけでございまして、例えば産業用、それから民生用、運輸用と三分野、経済産業省あるいは国土交通省等々が主に所管する分野がございますけれども、産業用につきましては、各産業界の御努力によりましてかなり省エネが進んでおります、CO2の削減が進んでおりますが、さらに努力をしていただくように今督促をしているところでございます。

 また、運送用がふえておりますけれども、これにつきましても、国土交通省と協力をしながら、単に運送事業者だけに努力を押しつけるのではなくて、荷主あるいはメーカー等にも一体となってCO2削減の努力を、全体として支援をしていくというような取り組みを強化するように今しておるところでございます。

 それから、先ほど委員も申されましたが、民生用、特に国民的な御理解というもの、小さいところで言うと、電気の消し忘れとか節電とかエネルギーをできるだけ節約するとかいったものも必要でありますし、事業所あるいは工場等でのエネルギーの節約も必要であります。さらには、省エネあるいは新エネ技術も含めまして最大限の努力をして、政府の目標であります達成に向けて政府を挙げてやっておるわけでございまして、どこの省がやっていないとか怠慢であるという御指摘は当たらないものというふうに理解をしております。

小池国務大臣 基本的に、第一約束期間のこの達成についてはもう既に国家として批准をしておりますけれども、この後のポスト京都ということに関連いたしまして、今、中央環境審議会、産業構造審議会それぞれで、あり方、報告書の発表もされております。基本線ではきっちりと一致をいたしておりまして、これからの国際交渉の中において粘り強い交渉をしていくためにも、今しっかりと、両審議会の報告も踏まえて、政府として一致した交渉で臨みたい、このように考えているところでございます。

樋高委員 国際舞台で異なる見解を示して足元の乱れをさらさないようにしていただきたいと思います。議定書に京都という名前がついている以上は、そして環境先進国を目指すというふうに看板を掲げている以上は、日本国として、議定書をしっかり守る約束を果たしていかなくてはいけないと思います。

 総理にお尋ねいたしますけれども、目標の達成のために努力をして、結果を出していかなくてはいけない義務があるわけです。しかしながら、国際社会においても、今環境大臣と経産大臣はああいうふうに言っておりましたけれども、実際に現地に行かれた方から私は聞いているわけでありまして、やはり国際社会において政府内の不一致ばかりが露呈をしているようでは、とてもその目標達成にはおぼつかないと思うわけであります。

 最高責任者として、総理はその責任をしっかりと果たしていただきたいと思いますけれども、最後に答弁を伺います。

小泉内閣総理大臣 環境問題は、日本が実に熱心だという評価を私は多くの国からいただいていると思っています。

 現に、サミットにおきましても、日本の環境に対する取り組み、そして私が新たに提案いたしました、これからの時代は大量生産、大量消費、大量廃棄じゃない、できるだけ廃棄物を削減していこうというリデュース、廃棄物、使い物にならなかったものを何回も使えるようにしていこうというリユース、再使用、そして循環型の社会をつくろうというリサイクル。日本ではできるだけ、この環境問題につきましては、京都という名前が冠されているわけですから、日本が率先して取り組んでいかなきゃいけない。この三R、いわゆる循環型の社会をつくろうということについては、G8、サミット参加国からも賛同を得ております。また、ことしイギリスで行われるサミットにおいても、環境問題がアフリカ問題と並んで主要の二課題になるはずであります。

 そういう点から、日本としては、この環境問題、過去の高度成長の成功と失敗の面も生かして、発展途上国がこれから成長を目指している、経済発展するためには環境問題をある程度犠牲にしないと経済発展はできないんだというような考え方をやめてほしいということも、何回も私は途上国で日本の例を持ち出しながら申し上げているわけであります。

 そういう点で、政府だけでなく、民間も今取り組んできていただいていると思います。例えて言えば、政府は今年度でもう既に、政府の使う公用車は全部低公害車になります。そして民間も、大企業ではそのような方針、一万台以上使っている大企業では、自分たちの企業もそういうふうにしようという取り組みを始めております。

 そういう点において、民間の皆さんにも、自動車のリサイクル、あるいはペットボトルのリサイクル、あるいは森林の面においても違法伐採等、バイオマス、いろいろな取り組みをして、ぜひともこの京都議定書の趣旨を実現させるために、環境保護と経済発展は両立するんだ、そのかぎを握るのは科学技術だと思いますけれども、政府を挙げて取り組んでいかなきゃならない問題だと思っております。

樋高委員 いずれにいたしましても、後世の世代に対する責任をしっかりと全うされますように、そして、今総理も言っておりましたけれども、経済と環境の両立ということでありますが、これはかけ声だけではだめなわけでありまして、実際に結果を出していかなくちゃいけないという思いであります。

 どうか、環境といいますと、どうしても後回しにされる政策分野でありますが、日本はこの二十一世紀、生き残っていく上にあって、もちろん経済の発展も重要でありますけれども、環境とこれは相反するものではない、同じ、経済と環境は両立が十分可能である、しかしながら、それは口先だけで終わってはいけないという問題意識を持っております。これからもしっかりとただしてまいります。

 きょうはありがとうございました。

甘利委員長 これにて樋高君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは郵政民営化問題について質問いたします。

 まず最初に、国民の利便性にかかわって、ユニバーサルサービスについてお聞きしたいと思います。

 郵政民営化のメリットとして、基本方針では、国民の利便性の向上とうたい、内閣官房の政府広報でも、郵便局をもっと便利にすると強調しております。しかし、国民の多くは、かえって民営化によって身近にある郵便局がなくなってしまうのではないかということを心配しております。特に心配なのが金融サービスです。身近なところで、年金の受け取りやあるいは家族への仕送りなどの金融窓口として、郵便局が大きな役割を果たしてまいりました。それは、金融窓口サービスをあまねく公平に提供するというユニバーサルサービスがあるからこそだと思います。

 しかしながら、この基本方針では、郵貯、簡保会社にはユニバーサルサービスの義務づけがありません。これでは国民が不安に思うのは当然ではないかと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 金融サービスにしても郵便サービスにしても、利便性、これは大変重要な問題でありますから、郵政民営化になってこういう今までの利便性が損なわれることがないように、さらに発展できるような、そういう民営化の制度設計をしていきたいと思っております。

竹中国務大臣 総理の御答弁にもありましたように、利便性を高めるというのは、我々が郵政の民営化で目指す最も大きな目標の一つでございます。そのために五つの原則を定めておりまして、その原則の中の一つが、まさに利便性の原則、利便性を高める原則ということになります。

 今、委員は二つの問題を指摘されました。一つは、郵便局がなくなってしまうのではないのかということ、そして二番目に、局で金融のサービスが提供されなくなるのではないか。実は、各地を回りましてテレビキャラバンをやっておりますが、非常に素朴な御心配として、そのような声は確かによく私も耳にいたします。

 この点、ぜひ御理解をいただきたいんですが、まず、局がなくならないのかということに関しましては、私たちは明確な設置基準を定めるということを決めております。その設置基準を定めるに当たりましては、過疎地に特に配慮するということも閣議決定の中に明記をしておりまして、そういう御心配がないように、しっかりと制度設計をするつもりでございます。

 もう一つ、金融でございますけれども、これはなかなか難しい問題でございます。

 一つには、金融についてユニバーサルサービス義務を課している国というのは、私の知る限りない、先進工業国の中では少なくともないというふうに思います。金融というのは非常に自由が求められる業種でございますので、この点が大変重要だ。

 しかし、自民党からの申し入れの中にも、金融についてもユニバーサルなサービスが提供されるようにしっかりと制度設計してくれという申し入れがありまして、この点は私たちも大変重く受けとめております。

 局は設置基準でつくる、その局というのはいろいろなことができるようになってきて、その中でこの金融の事業も、窓口のサービスを委託するという形でこういうサービスが続くということを想定しておりますので、そういう意味でも御不便はかからないようになるというふうに思います。

 そうした点も含めまして、私たち今、一生懸命制度設計をしておりますので、過疎地の方々に特に御不便をかけないようにしっかりと対応してまいります。

塩川委員 金融のユニバーサルサービスについて、諸外国にはないんだという話がありますけれども、私は逆に、日本のこのユニバーサルサービス、金融のサービスの義務づけということは大いにやはり、世界に誇るべきすぐれた制度ということで、自慢した方がいいんじゃないですか。そういう制度だと思いますよ。

 総理は利便性が損なわれないようにするんだと言いますけれども、しかし、基本方針を見る限りは、配慮するとかと書いてあるだけで、はっきりしているのは、この身近な金融窓口を保障してきたユニバーサルサービスの法的な義務づけがなくなるということですよ。郵便貯金法にあるように、「郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させる」、これに基づいて日本郵政公社法でも「郵便局をあまねく全国に設置しなければならない。」その根拠となってきた金融のユニバーサルサービスのこの法的な義務づけだけは外すということでは、国民の不安が解消しないのは当然じゃないでしょうか。

 その上で、では実際に民間金融機関は今どうなのか。このユニバーサルサービスに基づいて、郵便局は今すべての市町村に店舗が置かれています。総理は民間にできることは民間にとおっしゃいますが、郵便局のように、民間金融機関で全国あまねく公平にサービスを提供しているところがありますか。すべての市町村に店舗を配置している民間金融機関があれば、名前を挙げていただきたい。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 民間の金融機関がすべての市町村に配置されなくても、金融のサービスは受けられる、そういう状況に現在ではなっておりますし、将来、郵便の民営化がなされても、そのような金融サービスにおいては、私は、全国民が利便を得られるような体制にはしていかなきゃならないと思っております。必ずしも、ユニバーサルサービスを義務づけることが、金融サービスを受けられるとは限らないと思っています。

塩川委員 全市町村に店舗を配置しているという民間の金融機関は、当然のことながら、ないわけです。

 私が言いたいのは、今過疎地においての民間金融機関はどうなっているかということなんです。

 お手元に資料を配付させていただきましたけれども、過疎地域における郵便局、民間金融機関の店舗の配置状況です。

 金融ビッグバンなどを機に、郵便局については、一九九八年から二〇〇四年にかけて、四千六百七十六、四千六百七十四と現状を維持していますけれども、民間金融機関、これは農協、漁協も含みます、その数字で見ますと、五千百七十四から四千七十四と、この間に二一%も過疎地域における店舗を減らしているんですよ。

 特に、過疎地域において大きな役割を郵便局と一緒に果たしてきた農協などはどうかといえば、やはり同じ期間に、三千五百九から二千四百六十五と二五%減らしている。四分の一も減らしているんですよ。これが現状じゃないですか。

 過疎地域における郵便局の役割が高まっている。過疎地域における民間金融機関と郵便局の比率が逆転をして、今では郵便局が五三・四%、過半数を占めるような状況になっている。採算重視の民間が過疎地域の店舗を大幅に減らしている中で、郵便局の値打ちが一層増しているときじゃないでしょうか。

 総理、民間にできることは民間にというのを踏まえても、民間にできない過疎地域での金融窓口サービスを提供してきたのが、ユニバーサルサービスが義務づけられている郵便局だったんじゃないですか。その意義が極めて大きいということだと思いますけれども、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 必ずしも、過疎地だから金融サービスを受けられないという状況ではないと思っています。郵便局も、ふえてきたのはむしろ都市地域です。そういうことを考えますと、これから金融サービスというのは、私は、義務づけなくても、各金融機関の競争によって、国民が利便を受けられるような体制に民間の努力によってなされ得ると思っております。

竹中国務大臣 過疎地において郵便局がいろいろな意味で重要な役割を果たしている、それは大事にしたいという原則論は、先ほど申し上げたとおりでございます。

 ただ、今、これは委員がお示しになった図表の読み方の問題だと思いますが、私は、やはり民間金融機関、特に過疎地では大変だと思いますよ。片や政府保証がついていて、預金を集めるにはやはり集めやすい。こちらは政府保証がついていない。この間、金融の状況も大変厳しくなった。そういう中で、イコールではない、対等ではない競争を民間金融機関はしてきたわけでございます。

 私は、過疎地においても、また市中においても、郵政が民営化されることによってまさに民間と対等な競争をして、対等な競争の中で、民間に対して非常によいサービスを提供していくというのが、まさに利便性を高める最大の要因であるというふうに思っております。

 加えて、民間の金融機関、特に地方の信金、信組等々を中心に、今、リレーションシップバンキング、間柄を大事にした金融の計画というのを立てて、しっかりと実行していけることでございますので、私は、まさに郵政を民営化して、その中で、健全な競争の中で、郵政も民間も、過疎地を含めてしっかりとしたサービスを提供していただけるものと思っております。

塩川委員 いや、竹中大臣の話を聞いて驚きましたよ、対等な競争の条件のもとに置くと。そうなったら、民間金融機関のように過疎地域の店舗を減らすということになるんじゃないですか。

 民間金融機関が過疎地域で減らしている、そういう中で、ユニバーサルサービスの義務づけがある郵便局が現状を維持しているんじゃないですか。これを取り払ったら同じように減ることになるんじゃないのか、こういう不安の声が国民に上がっているじゃないか、これに対して政府はまともに答えていないということを聞いているんですよ。いかがですか、総理。

竹中国務大臣 ちょっと、私の申し上げたことを非常に誤解をしておられるように今おっしゃいましたけれども、今、この間、民間の金融機関が地方で減ってきた一つの要因として、競争条件が同じではなかったという要因があっただろうということを申し上げているわけです。

 片や有利ですよ。片や有利ですよ、政府保証がついて預金を集めやすい。片や不利ですよ、政府保証がついていない。そういう中でこういう変化のバランスがあったという面もあるのではないですかと。これをまさに両方しっかりと同じ条件で競争していただくことによって、これはやはり地方の住民に愛された、そういう金融機関を目指して競争していただくわけですから、健全な競争の中でしっかりとしたサービスが提供されていく、これが市場経済の基本的なメカニズムであると思います。

塩川委員 それを心配しているんじゃないですか。過疎地域における店舗がなくなるんじゃないかという不安の声が上がっているわけでしょう。

 総理、いかがですか。金融のユニバーサルサービスを外すということが、身近な金融窓口サービスがなくなるんじゃないか、こういう不安の声が出ているわけですよ。これに対して今のような説明じゃ、納得いかないですよね。改めてきちんと総理の言葉で説明していただけますか。

小泉内閣総理大臣 それは、民間の金融機関は、いかに過疎地であろうと都会地であろうと、国民の利便を向上させるサービスを提供するということで努力してきてここまで繁栄してきたわけであります。

 仮に例えて言えば、宅配業者なんというのは、過疎地は採算がとれないからやらないという批判がありましたけれども、そうですか。そうじゃないでしょう。過疎地でも、今や民間の宅配サービスは、全国津々浦々、あまねく展開されております。

 むしろ、どのような民間サービスを提供したかということを考えてみれば、郵便局よりもよりサービスを提供して、郵便局は、民間がやっているからそれはおれたちもやらなきゃいけないということで、後追いの方が多いじゃないですか。夜間サービスしかり、あるいは重量の多い品物を運ぶのもしかり、冷凍食品を運ぶのもしかり、全部民間が先行しているじゃないですか。

 国がやらなきゃできないということじゃないんです。民間は、過疎地でも都会地でもそういうサービスを展開して、今や、郵便局の扱う量よりも民間の方が多い。義務はないけれども、それだけサービスを展開しているんです。そこが、民間に対して、民営化できるものは民営化した方が国民の利便に供する、そういう点も私は成り立つのではないかなと思っております。

塩川委員 宅配サービスの話をされましたけれども、ではお聞きしますが、郵便事業での信書の全国サービス、どうなったか。

 総理が、〇二年六月十一日の衆議院の総務委員会、信書便法案の審議の際にどう言っていたか。「この法案が成立すれば、必ず、ヤマト運輸はどうかわかりませんけれども、民間企業は一つでも二つでも参入してくる」と断言をしていたじゃないですか。

 全国サービスを行う一般信書便事業への参入事業者は、では一体何社あるんですか。

竹中国務大臣 この問題は本来総務省からお答えいただく問題かもしれませんけれども、一般信書について今参入はないと承知しておりますが、特定の信書については、特別の信書については七十数社、たしか参入していると思います。

 これについては、その参入の条件をどのように定めるのかということとも関連をしますから、これはこれとしてしっかりと制度をまた必要があれば改善をしていく、保つところは保つ、そういうことだろうと思っております。

塩川委員 特定信書便事業者は七十四社ありますよ。しかし、全国での一律サービス、ユニバーサルサービスに伴う一般信書便事業への参入事業者はないんでしょう。

 でも、総理は、必ず参入すると言ったじゃないですか。できないということを証明したということになりますよね。ユニバーサルサービスが民間企業にできないということをこういう形で総理はみずから証明したということになりますよ。金融のユニバーサルサービス、これが外されるということがどれだけ国民にとってサービスの後退になるのか、このことが改めて明らかになった、このことを改めて思います。

 その上で、もう一つお聞きしますが、郵政民営化によって、国家公務員全体の三割を占める郵政職員を民間人にする、小さな政府をつくるといいますけれども、そもそも、今郵政公社に直接税金が投入されているんでしょうか。この点をまず確認したいと思います。

竹中国務大臣 直接投入されている税金、そういうものはないと承知をしております。

 一方で、例えば先ほど申し上げましたように、政府保証をしております。本来、民間でしたら、保証に対しては、預金保険機構に加入をして預金保険料を支払わなければいけないわけでございますけれども、預金保険料は支払わない。その間、政府は、保証しておりますから保証債務、債務が発生をしている。支払いはしていないけれども、国民の負担はその分発生はしているということだと思います。

塩川委員 税金が投入されていないというのが事実であるわけです。しかしながら、これで申し上げたいのが、国民の中には誤解があるということなんですよ。

 時事通信の郵便局に関する世論調査で見ると、郵便局が独立採算方式で税金を使わず行われているということを知っているという人は二七・九%、知らないという人が五七・四%、わからないという回答を加えれば、七割がこういう現状を知らないと。これに便乗したようなごまかしは許されないということなんです。

 そこで、国会議員の中でも、郵便局に税金投入などと言う人がいます。総理自身です。二〇〇三年の十月二日、参議院の予算委員会、尾辻秀久議員への総理答弁で、「サービスはすべて民間が上だった」先ほどおっしゃっていたことですけれども、「夜間配達始めたのも、民間がやったから、後から郵便局でしょう。生鮮食品、冷凍食品、これも民間が自分の金で、夏でもアイスクリームが解けないような車を開発して、運ぶようになった。そうしたら、郵便局は、予算要求で税金使って保冷庫を作りたいと言ってきた。」郵便局、税金を使って保冷庫をつくりたいと言ったと。

 税金は投入されていない、竹中大臣が言ったとおりです。これは間違いですよね。訂正していただけますか。

小泉内閣総理大臣 広い意味で、税金は投入されているんです。なぜか。(発言する者あり)保冷庫にしても、たしか予算要求したと思いますね。予算要求をしているんです。そして……(塩川委員「税金が投入されているかどうかなんですよ」と呼ぶ)まあ、それは確認していただきたいと思いますが、私は、なぜそうかといいますと、税金投入していないということではないんです。それは、郵貯の金等は財投というものに入って、そしてそれから各特殊法人に使われております。

 そして、本来だったら、民間金融機関だったらば、その特殊法人に対して、負担が起こった、赤字が出たというんだったらば、その民間金融機関自体がそれを処理しなきゃならないんですけれども、郵貯というのは、たとえ特殊法人が使われて、各法人が国民のために使われたからと言ったとしても、郵便貯金に入っている人とか簡易保険に加入している人に対して負担を転嫁することができません。その赤字は税金で埋めなきゃできないんですよ、特殊法人の事業は。

 そういうことから見れば、私は、税金が投入されているんだということを申し上げているわけでございます。

甘利委員長 塩川君、簡潔にお願いします。時間が終わっております。

塩川委員 税金が投入されていないという明確な事実も、そういうごまかしで切り抜けようとする。とんでもない。こういうごまかしを解消することにこそ政府が金を使うべきじゃないですか。

 ユニバーサルサービスを投げ捨てて民間任せにすれば、国民サービスの後退は明らかです。郵政民営化とは、金融のユニバーサルサービスに端的にあらわれている公共の福祉の増進や、経済生活の安定という郵政事業のそもそもの目的を投げ捨てるものだ、このことを指摘して、質問を終わります。

甘利委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 まず最初に、イラクの情勢について総理にお伺いをいたします。

 イラクの民主化の行方を占う国民議会選挙、三十日に行われました。開票が進められて、スンニ派が圧勝というふうなことも報道されております。

 この結果を受けて、イラク戦争を主導した米英両国に加えて、EU諸国、選挙の成功ということを言っております。イラク戦争の開戦の是非をめぐって米英と対立したフランスのシラク大統領も国際社会にとっての成功ということは表明しておりますが、しかし、選挙の正当性ということについての評価は、いまだに示されていないのではないかというふうに思います。

 スンニ派のほとんどが選挙に参加しなかったということとか、選挙人登録も大分登録がなかったという意味で、スンニ派のイスラム聖職者協会というのも選挙は正当性を欠くというふうに述べていますが、イラクの選挙の正当性についての評価、これは総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 選挙が行われましたが、スンニ派が圧勝したとは私は思ってないんです。

 テロ組織の脅迫に屈せず、多くのイラク国民が選挙に参加した、これはよかったと思います。やはり自分たちの国を自分たちの意思によってつくり上げていこうという、一つの大きな歴史的な一歩だと思っております。

 これについて、まだまだ安定した民主的な政権をつくるためには道のりは長いと思いますが、国際社会として支援をしていかなきゃならない。日本としても、できるだけ早くイラクが自分たちの国を自分たちの力でつくり上げていくような支援を継続していかなければならないと思っています。

 今回の選挙の評価はどうかと問われれば、それは、大方の国民は、大方の国々は成功と見ているのではないでしょうか。私も、これだけの脅迫にめげず、投票に行く者は皆殺しにするぞという、そういう無謀な、非道なテロリストの脅迫に屈せず参加したということは、大変意義のあることだと思っております。

山本(喜)委員 総理としては成功だったというふうに受けとめているようでございますけれども、選挙当日、多くの武装勢力の攻撃によって四十人を超える方々が亡くなっているという報道もあります。選挙をきっかけに治安が改善するという見方もありましたが、依然として武装勢力の攻撃が続いているというのが現状でございます。

 今この選挙をめぐって、選挙以降、米軍の撤退期限を設定すべきだというふうな声も出ているというふうに言われています。国民議会選挙で躍進する勢いのイスラム教シーア派の統一会派、統一イラク同盟は、米軍など駐留外国軍に撤退時期を示すように求めているというふうに報道されているわけでございます。

 こうしたイラク国民の多数の声というものに耳を傾けなければならないというふうに思うんですが、アメリカは、イラク国民が納得する撤退の道筋、これを示すべきと考えますが、総理はどのように考えますか。

小泉内閣総理大臣 アメリカがイラクからいつ撤退するかというのは、アメリカが判断すべき問題であると思います。

 イラクの暫定政府は、アメリカに現在駐留してくれということを要請しているということを聞いております。イラクの多数の国民がアメリカ帰れと言っているとは思っておりません。一部にはアメリカ撤退せよという声があることを承知しておりますが、フランスも含めて、今、アメリカは撤退しろという国は恐らくほとんどないのではないかと思っております。

山本(喜)委員 今の自衛隊の状況、オランダが三月に撤退をするというふうに言われております。しかしながら、サマワに九回の迫撃弾の攻撃が行われたというふうな状況でありますとか、さらには、自衛隊が雇用している地元住民に対して、イスラムに反する仕事をやめなければ殺害するというふうな脅迫のビラがまかれているというふうな報道もあるわけでございます。

 今後、自衛隊の安全の確保というものをどのように考えているのか、さらには、イラクにおける今後の治安情勢の推移、これをどのように考えているのか、お伺いします。

大野国務大臣 まず、九回にわたるロケット、迫撃砲が自衛隊へ向けて発射された、あるいは、自衛隊の中にも三つばかりロケット弾が着弾しております。しかし、いずれにしましても、これは信管がなかったり火薬がなかったりというケース、あるいは、最後には、そういう信管それから火薬がありましたけれども角度等から破裂をしなかった、こういうケースでありまして、いずれも夜中であります。

 夜中につきましては、何度も私御説明申し上げておりますとおり、大変な防護措置をとっているわけであります。そして、これらの背景については、あらゆる情報収集をやっておりますけれども、この点につきましては我々は確固としたことを言えるわけでありますけれども、組織的な背景はないというようなことでございます。

 したがいまして、まあ、いろいろうわさは出ております。嫌がらせじゃないかな、こんなうわさも出ておりますけれども、そういうことで、今後ともあらゆる手段を通じて自衛隊員の活動の安全確保には努めてまいります。

山本(喜)委員 イラクにおける復興支援の内容についてお伺いしますけれども、給水活動ですが、我が国の援助で六基の浄水装置が設置をされて、浄水活動が進められるわけでございます。フランスのNGOも自衛隊の給水量よりかなり規模の大きい援助をしているという中で、自衛隊の給水活動というのはもう必要がなくなっているのではないかというふうに判断しますし、給水活動以外の復旧ですけれども、道路や学校などが対象で、大半は現地の業者に委託して、陸自隊員は作業を監督するというだけの仕事のようでございます。

 陸自幹部の談話ということで、サマワでは電力不足が深刻で、電力施設など都市基盤を整備する大規模プロジェクトへの期待が大きいというふうに言われております。ですから、現地の要望というのは、大規模なインフラの整備ということでございますし、それに伴う雇用をつくってほしいということでございます。ですから、この自衛隊の活動にかかわる経費をそのまま無償資金としてイラク現地に供与した方が、イラク人が求めている雇用の創出にもなるのではないかというふうに思います。

 こうした状況の中で、もう既に自衛隊の役割は終わったのではないかというふうに思いますが、この点、いかがですか。

大野国務大臣 自衛隊による人的支援とそれからODAによる資金協力、これは車の両輪でございます。

 水について言いますと、確かに、私もこの目で確認いたしましたけれども、宿営地のすぐそばにODAでつくられます二基の浄水機ができておりました。竣工式は既に一月十八日にやっておりますし、二月中旬にはこの給水施設は稼働してまいります。したがいまして、水に対する需要はなくなっていくものと考えております。

 しかしながら、その他の分野で、先生も今おっしゃいましたけれども、多くの事業を継続しておりまして、一々申し上げませんけれども、現地ではこれらのニーズが強い。今おっしゃったようなほかに、医療支援活動、それから雇用、ほんの自衛隊がやる活動については雇用というのは少ないのでありますけれども、やはり雇用を創出している、こういう問題があります。

 先生は、早く帰った方がいいんじゃないか、こうおっしゃいますけれども、現地サマワの人は、自衛隊の皆さん、おってくださいと。そして、サマワの評議会の中ではこんな声があるんですね。自衛隊というのは、まさにサマワに安全と平和を運んでくれる極東から来たハトである、こんな声もあるわけであります。

 私が申し上げたいことは、このように自衛隊の活動が現地において評価されている、そして自衛隊の派遣延長についても八割の人が支持してくれている、こういうことは、高い評価を受けているということは、まさに自衛隊が醸し出している、何といいますか、心の触れ合いというか、ソフトパワーとでも申しましょうか、これは非常に国際関係の中で大事なことじゃないか、このように思っております。

 今後とも、自衛隊について、これらの分野で一生懸命頑張ってまいりまして、国際社会の中の責任ある日本として頑張らせていただきたいと思っております。

山本(喜)委員 自衛隊に対する現地の期待が高いというのは、自衛隊の後に来る民間の援助ということを期待してのことだと思います。そういう意味で、自衛隊の撤退をして、早急に国連主導の支援に転換をしていくべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

甘利委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。

 質問をたくさん用意してきたんですが、どの程度時間内でできるかわかりませんが、一生懸命させてもらいたいと思います。

 まず、李登輝台湾前総統の訪日についてでありますが、昨年の末そしてお正月と、日本に奥様と御家族とお孫さんで来られまして、大変、李登輝さん本人はもちろんですけれども、台湾と日本は同じ自由主義、民主主義を愛する国でありまして、多くの日本国民も喜んだと思うんです。そして総理も、中国からいろいろ圧力があったと聞いておりますが、断る理由はないと、快く政府がビザを発給したことに対しまして、私は、大変これは意義のある、また個人的にも感謝を申し上げるところであります。

 李登輝総統は、私が申すまでもなく、台湾に自由主義、民主主義というものを定着させまして、既に三回の、あちらでは大統領のことを総統というんですが、総統選挙が行われて、民主的な手続の中で李登輝さんが初代の総統になって、陳水扁さんが二代、三代の今総統になっている。経済も教育もすごく発展をして、ある部門では日本よりもはるかに超えているところもあるというところであります。

 そして今、日本人が忘れております武士道精神、そういうものを、日本の武士道精神とはすばらしいんだということを台湾の李登輝さんから日本人が教えてもらっている。総理もごらんになった「ラストサムライ」では、アメリカのトム・クルーズに日本が教えてもらった。変な現象だと思うのでありますが、李登輝さんは、日本のわびとかさびとか、日本の文化というものを大変理解されておりまして、奥の細道、これも大好きな本であると。そして、御自宅には、五十一句の奥の細道の俳句がびょうぶや書にして飾ってあるということであります。

 李登輝さんはこう言っているんです。

  なぜそこまで私は日本文明にこだわるのでしょうか。私が二十二歳まで日本人であった、ということを越えて、それは、グローバリズムとテロリズムのまさに未曾有の人類の危機の時代にあって、数千年にわたって営々と築き上げられてきた日本の歴史と伝統こそが、人類を救う普遍的精神である、と確信するからです。

  戦後、日本は歴史と伝統を否定する自虐史観に支配され、肝腎の日本人自身が、人類を救う普遍的価値である日本精神=大和心を忘れてしまいました。とんでもないことです。いまこそ大和心を発揮し、世界で最も信頼され、尊敬される国として、人類社会の指導国家として、立ち上がってもらわなければ、人類は生存の羅針盤を失いかねないのです。

台湾の元総統が言っている言葉であります。

 今度暖かくなったら奥の細道をぜひ歩いてみたい、こんなことを言っておりますが、総理、感想あるいは御意見があったら言ってください。

小泉内閣総理大臣 きょうは民主党の質問ですよね。党派を超えてきちんと日本のことを考えて、お互いの国との友好を考えてやっていかなきゃならない。これは、与野党の立場を超えて我々考えなきゃならない問題だと思っております。

 今、李登輝氏の話でございますが、中津川議員お話しのように、日本文化を愛して、そして、政治活動ではなくて日本を訪れたいということでありますので、私は、中国との関係を重視する立場ではございますが、これは断る理由はないのではないか、日本の旅を楽しんでいただくことがいいのではないかなと思いまして許可したわけであります。

 ぜひとも日本としては、中国との友好関係を重視しておりますが、中国におきましても、台湾との関係、平和的な立場からこの問題、友好裏に中国、台湾の間の関係を発展させ、平和的解決に結びつけていただきたいと心から願っております。

中津川委員 当初、李登輝さんの訪日をめぐって、日本の程公使がビザを発給するなと言いました。総理は、断る必要がないと毅然としました。そうしたら、もうこれはビザを発給するなとわかったら、中国の前駐日大使の武、今次官が日本の大使を呼んで、来てもいいけれども政治的な行動をするなと。中国、これも外交カードとして使ってきたんですね。だけれども、李登輝さんが今日来れたのは、総理、総理初め皆さんたちが毅然とした態度をとったからなんですよ。これが大事なんです。

 そこで、李登輝さんのお兄さんが靖国に祭られているんですよ、総理。御存じですか。靖国に祭られているんです。事あるごとに李登輝さんは、自分の兄が祭られている靖国に参拝したい、こういうふうに言っているんです。ぜひ今度来られたら参拝させてあげたい、していただきたいと私は思っております。これについては答えなくて結構であります。

 そこで、総理、この委員会で、菅さん、そして午前中の樋高さん、この靖国参拝の、総理が行くか行かないかという議論がありました。いろいろ菅さんも、行くのか行かないのか、あるいは行くんだったらいつかと。総理、同じ答えを四回か五回しました。きょうも樋高さんのも、そういう質問に対して同じ答えを繰り返しました。

 私はそういうまどろっこしい質問をしません。八月十五日、総理は靖国参拝に行くんですか、行かないんですか。

小泉内閣総理大臣 適切に判断してまいります。

中津川委員 そこまで言われちゃうとおもしろくも何ともない。総理、そんな答えをしちゃだめですよ。不適切に判断する大臣なんてどこにいるんですか。ふまじめですよ。適切に判断して皆さん答えているんでしょう。違いますか。

 中身を聞いているんですよ。もう一回答えてください。

小泉内閣総理大臣 いろいろなことを判断しているんですよ。これは外交問題もありますし、相手の立場もありますから、適切に、適切に、これはいい表現だと思っています。

中津川委員 総理、中国がそんなに怖いですか。

小泉内閣総理大臣 どの国とも私は友好関係を維持していきたいと思っております。怖いとか怖くないとかいう問題じゃないんです。

 きのうも新聞記者の質問に、節分で豆まきだ、鬼退治ですけれども、どういう鬼を退治したいですかと聞かれたから、できたら鬼とも友達になりたいなと言ったんですよ。

中津川委員 総理、日本の経済界も怖いですか。

小泉内閣総理大臣 怖いとかいう問題じゃないんです。経済界とも協力していかなきゃならないと思っています。

中津川委員 総理が出てきたときに、八月十五日に行く、自民党をぶっ壊す、国債枠三十兆円、一内閣一閣僚。わあ、格好いいな、何かしてくれるな、自民党はがたついているけれども、小泉さんだったらやってくれる。

 あなた、十五日を十三日に変えたでしょう。行かないよりは行った方がいい。これがそれ以降の、すべて小泉ストーリーじゃないですか。そうでしょう。みんな中途半端じゃないですか。十五日に行く、八月十三日に変わった。ああ、これから小泉さんはこの路線でやっていくんだなと、見識ある人たちと議論したことも今思い出しました。

 みんなそうじゃないですか。同じことを聞いたらまた同じ答えをするんでしょう。公約なんですから、八月十五日に行くべきですよ。何か意見があったら言ってください。

小泉内閣総理大臣 自民党の議員から八月十五日に行くべきだという話は聞いたことがありますけれども、民主党の議員から八月十五日に行けというのは初めてであります。

 これは、私は、そういう意見は意見として傾聴に値する意見だなと思っていますし、戦没者に哀悼の誠をささげる、二度と戦争をしてはいけないという気持ちは、党派を超えて皆さん持っているのではないか。そういう気持ちで靖国を参拝していますが、八月十五日に行けと言われても、これはやはり、いろいろな状況を考え、私も言った手前がございます、そういう点を、諸般の情勢をよく考えながら、相手の立場も考えながら、適切に判断していかなきゃならないなと思っております。

中津川委員 公約ですよ。公約を守れということなんです。公約なんて守れなくたっていいんだじゃだめなんですよ。公約は守るべきですよ。総理が八月十五日に行っていたら、改革は進んでいたかもしれません。我々民主党の認識だと、改革は進んでいない、中途半端だ、そもそもスタートからあなたは失敗した、こういう認識であります。

 総理がそういうような態度でいるから、経済界までおかしいですよ。富士ゼロックス会長小林陽太郎さん、日本IBM会長北城恪太郎さん、これは経済同友会の代表幹事ですが、二人とも、総理に靖国に行くなと言ってきましたよね。私、この二人、今までいろいろなところでこの人が、何かそういう靖国問題とか国家の議論、聞いたことない。

 調べてみたら、富士ゼロックスというのは、二〇〇五年までに九割の、複写機とか、それを中国へ移管するんでしょう。生産も九万台から三十万台までに拡大する、従業員も二倍にすると。本当はこれ、商売のためですかね。IBMの北城さんの発言、これも、十一月に何か、一千数百億、六百億か八百億かよくわかりませんが、ちょうどその商談交渉中で、十二月に商談が成立したと。十一月に発言しているんですよね。

 何ですか、これは。自分の、私企業の利益のために、我が国の今根幹である靖国問題、これを僕は利用しているとしか思えない。中川大臣、何かコメントがあったら言ってください、経済産業省のトップですから。

中川国務大臣 今の経済界の方々の御発言等については、私はマスコミ以上のことは承知しておりません。

 ただ、日中間の経済の交流、発展というのは、日本だけではなくて中国にとってもプラスになる話であるべきでして、いわゆるウイン・ウインの関係として、経済関係の強化というものは、私は、日本、中国にとって大事で、必要なことだろうと思っております。それとこの報道されております靖国問題とは全く次元の違う話だと私は考えております。

中津川委員 そのとおりですよ、大臣。そのとおり。

 総理、今、中国は、政冷経熱というんですか、政治は冷たくて経済は熱いというような言葉をこれは戦略的に使っているわけですが、何で、総理、今大臣言われたとおり、総理みずから中国に向かって、政治と経済は別なんだということを言わないんですか。

小泉内閣総理大臣 政治と経済は別ですけれども、日中関係をお互い友好的に発展させていこうという共通認識は、胡錦濤主席とも温家宝首相とも私は共有していると思っております。

中津川委員 外交問題全般について、きょうは時間がないですからやりませんけれども、北朝鮮からもなめられっ放しじゃないですか。おどせば金が出る、言えば言うことを聞く。中国もそうですよ。知らない間に、日本の周りの海洋調査、経済上の問題だけじゃなくて、安全保障の視点でもってがんがん入ってきている。もっと私は戦略的な立場を持って、総理は言うべきところを言う。

 例えば、総理が靖国に行ったら日本の経済はだめになると思いますか。

小泉内閣総理大臣 私が靖国参拝しても、日本経済はだめになるとは思っておりません。

中津川委員 全くそのとおりですよ。

 そうすると、総理、もうこのカードは使えないと思うんですよ。李登輝さんのカードも、もう今度使えなくなった。いつまでも靖国参拝、こんな政治カードを使わせちゃだめですよ。

 きょう、たくさん、いつから歴代の総理が靖国参拝したかというのを調べて資料を持っているんですが、ずっとやっていたんですよね。たしか中曽根さんのときですよね。これが、向こうも今まで何も言っていなかったんですから。それはまた改めて議論したいと思うんですが、今総理も言ったじゃないですか。全然変わらないと思いますよ。

 たくさんきょうは用意してありますので、この問題、総理、毅然とした態度をとってくださいよ。日本の総理大臣ですから、八月十五日に靖国に行く。それが総理のポリシー、哲学、美学だったんでしょう。十三日に変えちゃだめですよ。それからぐちゃぐちゃになっちゃった。これだけ申し上げます。

 今、資料をお渡ししておるんですが、今、日本におられる外国の方たくさんいらっしゃいますが、このうち台湾の方ですね。この一番最初に台湾の登録証明書というのがあるんですが、これ、皆さん見てもらうとおわかりかと思うんですが、国籍名、中国と書いてあるんですよ。それで台湾省とあるんですよ。こんなのおとぎの世界で、実際ないんですよね。ないんです。

 それで、私は台湾からの若い留学生に聞いて、何が一番困るかというと、総理、部屋を借りるとき、中国と言うとみんな貸してくれない。

 次のデータを見てください。

 これは外国人の犯罪を調べたものなんです。平成十二年から載っていますが、例えば十六年を見てください。これは凶悪犯罪です。アジアが多いわけですが、次の中国を見てください。圧倒的でしょう。犯罪件数は三百十一で、百四十ですよ。中国が百四十でして、台湾はありません。過去を振り返っても一件か二件です。不法滞在者あるいは組織的な暴力、これが、今、日本の国民の治安の一番大きな問題なんです。

 そこで、今台湾では、国を変える、国名を変えるという運動がある。私は、基本的に、台湾のことは台湾の人たちが決めればいい、そういうことが筋だと思います。それはそれでいいんですが、今、中国という国籍も、正確に言うとないんですよね。中華人民共和国。台湾の人も少し不満だろうけれども、中華民国はある。それを区別して、外務省、そろそろやらなければだめなんじゃないですか。これをやったら、警察関係もきっと私は歓迎すると思いますよ。いかがですか。もし総理からそういう決断があったらお聞きしたいと思います。外務大臣でも。

町村国務大臣 委員のおっしゃっているのは、中国、いわば人民共和国と台湾を別の国として扱え、こういう御趣旨ですか。私どもは、それは日中共同声明でそういうポジションはとっておりません。

中津川委員 質問の意味を聞いてください、時間があるんですから。別の国としてなんて私は言いませんよ。区別をしてくれというんです、区別。

 町村さん、ちょっとよく読んでくださいよ、これを。国籍と書いていないんですよ、国籍等と書いてある。台湾から来た人か中国から来た人かを区別しろと。それ、勉強してください。そんな、国をどうしろとか言っているわけじゃないんです。今来ている人がしっかり生活をして、日本の治安というものも考慮すべきではないか、こういう発言ですので、ぜひこれは検討してください。急なことでびっくりしていないで。大臣がまずそういうことをよく知って、そして認識をしてから、ひとつまたこれは質問したいと思いますので。

 そこで、台湾、韓国のノービザ緩和措置。たくさん来ているんですよ、お客さんが。ありがたいんですよ。日本は今景気悪いけれども、台湾も韓国からもたくさん来ている。三月二十五日から万博が始まります。これは、急いでひとつ万博に合わせてこの緩和措置をやってもらいたいと思いますが、法務大臣ですか、どうぞ。

南野国務大臣 その件につきましては、中国人団体観光旅行のビザ発行対象地域拡大に当たって、不法滞在の問題もありますので、本制度が悪用されることがないよう必要な対策を図りつつ、観光団体への円滑な対応に努めてまいりたいというふうに思っております。

 それから、愛知万博期間中の台湾に関する査証免除、そういった措置につきましては、議員立法によりまして今実施する動きがあるというふうに承知いたしておりますので、法務省といたしましても、愛知万博成功に向けて、観光立国推進の観点からも早期に成立を望んでおるところでございます。

中津川委員 法務大臣、それは中国も含まれるということですか。

北側国務大臣 現在、与野党で御議論いただいているところでございますが、これは台湾という、地域の問題でございます。

中津川委員 ぜひそういう措置をとってもらいたいと思うんですが、私は、決して、中国を私個人敵視したり嫌いだとかいうんじゃありません。一人一人の人は、本当に立派な人がたくさんいるんですよ。個人的にも知っております。

 しかし、まだあの国は、これからなるのかどうかわかりませんけれども、民主主義、自由主義ではありません。共産主義ですからね。その中で、十三億あるいはそれ以上と言われる民に飯を食わせなきゃいけない、国を維持しなきゃいけないということで、それは、我々、自由主義、民主主義の国では考えられないようないろいろあの手この手を使ってやっているということもわかります。

 しかし、今、日本の現実は、このビザの件一つとってみても、これだけ犯罪が多い。命がけで彼らは来て、日本で犯罪を犯して持って帰る。中国も、もしも同じように、今度は枠をどんどん広げて台湾、韓国と同じようにやっていったら、不法滞在者がふえたり、あるいは、先ほどから申しております凶悪事件等もふえるという懸念は、日本国民全部が持つところであります。この点について、法務大臣と外務大臣にお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 お答えいたします。

 先生が御心配な件につきましては、平成十六年中に入管法違法により強制退去手続をとった外国人は約五万五千人でございましたが、このうち、中国人の方は約一万五千人余りで、国籍別では第一位となっております。

 そういう意味では、法務省といたしまして、こうした状況を踏まえながら、今後とも、不法滞在者の減少に向けて強力に不法滞在者対策を推進してまいりたいと考えております。

町村国務大臣 委員が今言っておられた、中国人による犯罪の比率が非常に高い、人数も多いという問題、これは政府全体としても共有している問題でございまして、昨年のたしか十二月だったと思いますけれども、犯罪対策閣僚会議というのが開かれまして、そこでも一つの大きなテーマになったところでございます。総理の施政方針の中にも、一番に治安対策というものが出てまいりました。

 したがいまして、私どもは、外国から大勢の人が特に愛知万博の期間中来てもらいたい、そういう思いはありつつも、やはりその際に治安ということを常に念頭に置きながら対応していくということで、先ほど法務大臣が言われたように、台湾と中国本土の方とは違う扱いになっているということでございまして、それはまさに、そういう問題意識があるからでございます。

 万博期間後のことをどうするのか。これは、実際にこの万博期間中の実績等を踏まえながら考えなきゃなりませんが、その際に治安ということを重要な考慮要素として考えるのは当然のことだろうと思っております。

村田国務大臣 私どももその点は大変懸念しているところでございまして、私も一月の十日から中国を訪問いたしまして、中国の周永康公安部長に、残念ながら在日外国人犯罪の中で四割を中国人の犯罪が占めるということを率直にお伝えして、こういう問題について双方協力して解決すべきことを先方に伝えてまいりまして、先方も率直にそのことについての懸念を表明されたところでございます。

中津川委員 町村外務大臣、台湾と中国とはそういう意味では違うと今おっしゃられました。ここで今議論している中で、先ほど私がお願いしました台湾の人たちの証明書の問題も、何か町村大臣、この短い時間の中でだんだんと認識を深めて、私はそういうふうに理解いたしました。

 次に、反国家分裂法というのが今出ているんですが、これは一体どんな法律なんでしょう。これはまた、どういうふうに政府として受けとめていらっしゃいますか。

町村国務大臣 昨年の十二月に、中国の全人代常務委員会がこの法案の草案を採択した、そしてことしの三月の全人代で審議される、こういうことでありまして、概要は記者会見、公式発言等で出されておりますが、具体の案については、まだ私ども、内容を承知していないところでございます。

 ただ、お互いに交流を活発にしようという内容が一つと、もう一つは、台湾を中国から分割することを絶対に容認しないという中国人民の意思を表明するという、何か二つの内容に大きく分かれるということでありましょう。後半の意味がどういうことであるのか、必ずしもはっきりしませんけれども、私どもとしては、両当事者が直接話し合って平和的に解決していく、先ほど小泉総理が答弁をしたようなことを、累次、私どもの基本方針としてそれぞれに申し述べているところでございます。

中津川委員 それで、町村大臣、今のお答えの次に私なりにつけ足させてもらいますと、要するに武力攻撃をする口実をつくる法律だ。そこまでしっかり政府は認識してもらいたいんです。こんな、世界で笑い物になるような法律をつくるなと、総理、言ってやってくださいよ。

 総理、総理が靖国に行けるように、あるいは、総理が今非常に中国のことを心配している。もしも反靖国国家分裂法というのをつくって、総理が行ってやられちゃう場合、これだって考えられないことないんですよ。いや、総理、笑っているけれども、そういう国なんですよ。

 今、日本の排他的経済水域、EEZに中国は無通告で、本来なら通告で来なきゃだめでしょう。どんどん入ってきているんでしょう。それで、これをよく私調べてみたら、九二年に領海及びその隣接区法というのを勝手につくっているんですよ。それで南沙諸島や尖閣諸島まで、尖閣諸島、この問題もやりたいんですけれども、中国領と明記したわけで、日本や、今、ベトナム初め関係諸国と物議を醸し出している。やるんですから。自分たちで法律をつくって、国内法をつくって、それを国際的に使っちゃうという。

 ぜひ、どうぞ中国、ウイン・ウインならば、総理が、もうやめなさいと。そんなことをやって、日本の国がどうなるのか。国民が、今、中国を嫌っている人たちがどんどんふえているんじゃないですか。こんな残念なことありますか。それをよく教えてやってくださいよ。今のような中国の姿勢だと、どんどん中国を嫌いな人が日本で大量生産されているんだぞと。総理、何か感想はありますか。

小泉内閣総理大臣 国民感情というのはさまざまでありますが、そういう感情はともかく、お互い長い目で見て、両国の友好関係を発展させていくための努力が必要だと思っております。

中津川委員 中国のODAなんですけれども、国民も、あれだけ大国になって、もう立派に自分たちで経済活動もできる国であるからODAなんて不必要だと。総理も、もうODA卒業だというようなコメントを述べられました。私もそう思います。私だけではなくて、日本国民だけではなくて、世界の人もそう思っていると思います。

 今までに、私の認識では、二〇〇二年までに、円借款、国際協力銀行の資源ローンというんですか、それから日本が膨大な出資をしている世界銀行、あるいはアジア開発銀行等の迂回、第三者の迂回等を合計しますと、総額で大体六兆円ぐらい援助しているんですね。だけれども、中国から、本当にありがとう、そういうような姿勢が全然日本には伝わってこない。

 これ、ODA廃止に向けて今どこまで具体的に話を詰めているか、お聞かせください。

町村国務大臣 この問題につきましては、昨年の秋、参議院の本会議で、総理大臣及び外務大臣に御質問がございました。

 そのとき、これまでの対中国ODAの果たしてきた役割に触れながら、現実に、既に二〇〇〇年度がたしかピークだったと思いますけれども、それと比べて現在はもう既に半分近くに減ってきているという状況を踏まえながら、今委員がお触れになった、彼らも既に援助国になっているという実情、さらには、これだけの経済発展を遂げている、さらに、中国の軍事支出といったようなものがかなり急速に伸びていることに対する懸念などなどを考えたときに、私どもとしては、いつまでも中国に対する巨額の援助を続けていくという時期ではもうそろそろなくなっているのではないだろうかという基本認識を持ち、そういうことで、今、どういう形で有終の美を飾るか、せっかく仲よくやってきたものですから、何もけんか別れをするわけじゃございませんので、先方といかにして軟着陸を図るのかというようなことを考えているところでございまして、少しずつ今事務方との話し合いが始まっているところであります。

 今後、対中国政策全般の中でこの円借款の位置づけというものもしっかりとやっていかなければいけない、こう思っておりますけれども、いずれにいたしましても、この問題、対中国政策の大きな一つの課題でもございますので、国民に十分理解されるような形での答えを出していきたいと思っております。

中津川委員 あと、尖閣の問題とか東シナ海EEZの海底油田とか日中共同声明とかロシアの問題、またBSEの問題、たくさん質問を用意してきたんですが、中途半端になりますので、一般質疑の方でやらせてもらいます。

 きょう、島村農水大臣お越しでございますので、実はこの間、大変気にかかる大事な御発言をされた。私たち同僚の長妻議員が、小泉総理は、もう天下りはよくない。時代じゃない。そして、事務次官といえどももうそうじゃないんだと。それで、一番直近に控えた改選期に、三月三十一日のは四つある、これはみんな事務次官だ。この中で、あなたは、農林漁業金融公庫高木総裁、この件について、小泉総理のそういう考えを踏まえてどうなんだということを聞いたところでありますが、議事録を読み直してみますと、こう書いてあります。

 この農林漁業金融公庫高木総裁ですが、たまたま私、前の農林大臣のときに事務次官を務めてくれた人です。JRAの理事長の高橋さんも同じです。これ、別に聞いていなくて、こういうふうに答えたんですけれども、JRAというのは日本競馬協会ですね、これも大変な大きな組織。この二人は、少なくとも私は、こんなにすぐれた役人がいるのかと今でも記憶し、感謝しているくらい非常によくできた誠実な人でありますし、改革の意欲が満々の人でありますし、高木さんの場合は、任期途中で就任をいたしております関係から、まだ一年半しかやっておりません。そういう意味合いも含めて、私は、もし許されるならばこういう人材は活用すべきである、そういう意見を持っていると。

 何かもうそのまま。ほかにもたくさんいるんだ、その中でこれこれこうなんだということじゃなくて、もうこれ、まさに高木さんがそのまま。しかも、まだ中途半端だからやるんだという。何か小泉総理の考えと全然違うんじゃない、これ。閣内不一致じゃないですか。いかがですか。

島村国務大臣 私は、総理のお考えは今までにもいろいろ聞いたり読んだりして、よく承知しております。

 総理御自身というのは、普通の人にはなかなかできないくらい、どんな障害があろうと、どんなに慣習めいたことがあろうと、全部を打破して新しいあるべき姿を求めるという改革の精神においてはすぐれた人だと思っています。

 そういう意味で、天下りと俗に言う言葉は私は大嫌いですけれども、少なくもこのことに関して、従前、例えば次官であった者がそのままその関連の金融機関の総裁になる、こういういわば安直な感覚で何で改革ができるんだ。やはり本当になるべく人がなるべきだというのを基本にお考えでこういう発言をされていると私は理解しています。

 ちなみに、私は十数年民間の一流会社におりましたが、大体、重立った人がどういう人事の流れで選ばれていくかわかりますけれども、本当に、いわば金融公庫の総裁になるような人材、企業の中にもそういるものじゃありません。したがって、それを全部、次官になった人はだめということで排除したら、あと肝心のところで埋める人の人材が今度いなくなってくる場合が出てくる。

 私は、特にすぐれた、正義感に富み、改革の精神に富み、かつ能力的にも人格的にも立派な人間がいるならば、総理に、こういう人は適格だと私からは御相談しようと思っている、そういう意味であります。

中津川委員 島村さん、この方はいい人、立派な人だと思いますよ。だけれども、とてもいい人だ、私に対していい人だと。それは、大臣に仕える役人はみんないい人に決まっているんですよ、その人にとっては。悪い人なんて一人もいないよ、そんな。自分がいいとか悪いとかの問題じゃない。ここまで出てきた人、それは見識もあって、やはりリーダーです。そうじゃないんでしょう、総理が言っているのは。最初事務次官ありきじゃないんだと。

 民間にはいないとは、何を言っているんですか。民間にたくさんいますよ。探していないんじゃないの。これだけいて、これから検討しますならいいんですよ。あなたは正直だから、自分にとってもいいし、優しいし、それはもう大変、そばにいた方が気分がいい。それは言っていることはわからないこともないけれども、それじゃやはり改革はできない。

 島村さん、この三月末の任期四人というのは、みんな注目していますよ。注目していますよ。ここの金融公庫なんというのはもう大変なものです。これは、今、金融機関の問題、大きな問題になっている。農林漁業も大変厳しい。大変なところですよ。これが四つ全部天下りだったら、ああ小泉さん、丸投げじゃないけれども、また結局同じなんだなと。これは国民は見ていますからね。あなたが幾ら言ったって、国民がそれを納得しなかったら、これは今までの人事と全く変わらないんだ、こういうふうに解釈されてもしようがない。何かあったら言ってください。

島村国務大臣 私は、学生のころ野球部の選手で通しましたので体育会系ですが、もし私が学生時代に勉強に専念して、学業成績優秀で、あの就職難のときにどこか選ぶとなれば、私は官僚の道も考えの一つに入れたと思います。

 官僚諸君、たくさん優秀なのが集まって、我こそと思っている人が長い年月の争いの中で勝ち抜いて初めて次官ですから、そういう人の中に人材がいておかしくないのは、だれでもわかることです。それが、六十を前にして全く一切合財先を閉ざされるようなことにしたら、先行き、優秀な官僚が今度は全然来なくなりますよ。

 日本の戦後を築いたのは官僚の力によるところが極めて大きいと私は評価していますが、私はそういう意味で率直に、優秀な人、改革の意欲のある人、汚れのない人、そういう人を慮外に置いて人事は行われるべきじゃない、そう思っています。

中津川委員 委員長、あれですね。どうも島村さんは、民より官の方が優秀だというような潜在的な認識をお持ちのように承りました。官にも民にもすばらしい人はいっぱいいるんです。

 この間の長妻さんの質問で、あなたは正直だから即答えた。しかし、これはやはり、小泉総理が、先ほどいろいろ私が申し上げました、公約の中で、今役人が信用されていないんです。役人、まあ政治家も信用されていない。そして、社会保険庁を初めとする、我々民主党がどんどん、こんなこともある、あんなこともある、普通の役人のそういう事実というものをあぶり出しました。しかし、役人のトップはやはり事務次官じゃないですか。事務次官なんです。その上に大臣がいる。私から言わせれば、さらに上にそこには政権があるわけですよ。今の小泉自民党政権。長く続いた自民党政権なんです。

 役人のトップである事務次官を前提として天下りの第一候補者と認識している島村さんに国民が本当に理解できるのか、私は疑問を思います。その人がいいか悪いかということよりも、やはり、例えば何人かあって、こういう人、こういうのもあった、こうだというなら話はわかりますよ。ほかは考えられないといって、最初に言いましたけれども、違う人の名前まで、聞いてもいない人の名前まで出しておられるわけですから。

 私は、ぜひこの人事はしっかり見ておきたいと思いますし、四人の人たちのこの内容も、これは三月、その次に続く役人のやはり人事に大きく響いてくると思います。ぜひ国民の視野に立って、島村さんの立場じゃなく国民の視野に立ってひとつ決定していただきたいということを申し上げて、いっぱい質問を残しましたが、終わります。

    〔委員長退席、茂木委員長代理着席〕

茂木委員長代理 これにて中津川君の質疑は終了いたしました。

 次に、小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。

 何といいましても、国民の今最大の関心は、景気、経済にあると思います。そこで、今までこの点について小泉内閣が一体何をやってきたのかということを、まず検証してみたいと思います。

 小泉総理大臣、そして竹中大臣、今ちまたでお二人は何と呼ばれているか御存じでしょうか。小泉総理はコイズミではなくコイズーミ、竹中大臣はタケナカではなくタケナーカ、二人ともアメリカ人だと言われているんです。これは、アメリカやアメリカ企業の利益になることばかりやっているからだそうであります。現実に、この三年九カ月間の小泉内閣のやってきたことを経済政策の結果から見てみますと、やはりさっきの言葉のように、日本のたたき売りをしているんじゃないかというような現実が浮かび上がってくるわけであります。

 お手元に資料をお配りさせていただいておりますが、まず第一の資料であります。

 これは、最近の為替介入をした記録であります。平成十五年一月から十六年三月までの十五カ月間で、三十五兆円という史上最大規模のドル買い・円売り介入をしました。

 次のページを見てください。

 この史上最大のドル買いにより積み上がった外貨準備高によりまして、二枚目の資料は、アメリカの債券を一体どこの国がどのぐらい持っているかという話であります。二〇〇二年末、三千七百八十一億ドルですね。二〇〇四年の十一月末までしかデータがありませんが、これで七千百四十九億ドル、日本円にして三十兆を軽く超える金額を、日本の国は米国債を買ったわけでありますね。

 この割合を見ていただくと、二〇〇二年末三〇・五%だったのが三七%、世界全体の約四割を日本が米国債を買うようになったわけであります。この巨額の米国債買いが、大統領選挙を控えました米国の低金利と米国の株高を支えたわけであります。私は、ブッシュ大統領の再選の最大の功労者は我が日本であり、そして、小泉総理大臣がその最大の功労者じゃないかと思っております。そして、このアメリカに行きました三十兆円以上の余剰資金、これが還流をして、外資による日本の株式と土地に投資をされたわけであります。

 資料の三をごらんいただきたいと思います。

 この資料の三は、過去十七年間、日本の株式を一体だれが売って買ったかという資料であります。

 この外国人というところのデータを見ていただくと、平成十五年、八兆二千億ですね。十六年で七兆六千五百億。この二年間で約十六兆円もの株式が外国人によって購入をされているわけであります。

 この間何をしてきたかといいますと、不良債権の強制的な処理、また銀行の持ち株解消、時価会計制度の導入などによりまして、実体経済は悪化の一途をたどったわけであります。これによって、経済の鏡と言われます株価、小泉総理就任当時の平成十三年の四月二十六日、これは私の誕生日なんですが、一万三千九百七十三円だったものが、ちょうど二年後の平成十五年四月二十八日、七千六百七円と、約四六%、半分に下落しました。この結果、ばか安値で外資が株式を購入したり、また債権のバルク買いをしたわけであります。その結果どうなったか。UFJ銀行初め三井住友グループ、日本の大手銀行グループの筆頭株主が外国人になりました。約四割持っていると言われています。

 また、資料四をごらんいただきたいと思います。

 この資料四は、日本の企業、東証一部上場の企業の中で外国人がどのくらいの株式を持っているかという比率の表であります。

 右側を見ていただければ、第一位、持ち株比率、何と七九・八九%、第六十位で実は約三五%であります。これは六十番までしか書いてありませんが、第百位の企業でも約三〇%外資に株を持たれているのが現実の姿であります。

 この巨額のドル買い介入によって、もちろん円安になりました。一兆円で二円動くと言われていますから、三十五兆円、ドルを買ったわけですから、猛烈な円安政策だったわけでありますね。これによって、確かに、この予算委員会でも総理や竹中さんがおっしゃっているように、輸出産業は絶好調ですね、それに伴う設備投資も非常に好調でありました。しかし、その一番利益を上げた輸出産業も、このデータを見ていただければわかるんですが、日本を代表する輸出企業の所有者というのは、実質的には外国人に株を買い占められて、ほとんど外人になっちゃっているんですね。

 これは、結果だけを見ると、もとのお金は日本で、これがアメリカに行き、戻ってきて、日本のお金で日本の企業や土地が買収されているというのが、どうも現実の姿なんですね。株主は何かといいますと企業の実質的所有者でありますから、日本の企業の実質的所有権がどうも外資に移っちゃったんですね、外国人に。

 このような結果を、小泉総理大臣、どのようにお考えになられますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 必ずしも悪いことではないと思っております。

 日本は、先進国に比べて、外資が投資する額にしても率においても極めて低い。外資警戒論から、私は、むしろ外資歓迎論を持つべきじゃないか、意識の転換が必要だ。日本も外資にとって魅力ある市場にしていかなきゃならないと思う。

 日本の企業も外国に行って投資をしております。また、外国に進出して、外国人から信頼を得て温かい評価を得ております。同じように、日本は外に出るばかりじゃなくて、外国企業にとっても、もっと日本はいいところたくさんありますよ、日本の企業だって捨てたものじゃないですよ、外国企業が投資すれば利益を上げることができますよということによって、日本の経営者にも刺激を与えるし、日本の消費者にも、今まで日本人が考えた発想以上に、いい商品なりサービスを提供してくれますよと。だから私は、就任以来、外資倍増計画、外国企業、外国資本、日本にもどんどん投資してくださいというような目標を掲げて、だんだんその目標に向かって、実現に向かって進んでおります。

 だからこそ、日本の経営者も、これはうかうかしていられないな、外資に負けないように、より競争力を回復しようということで一生懸命やっているのも事実であります。株だってそうですよ。外国人が買ってくれるような企業じゃないと、これから発展しないんです。

 そういうことを考えると、私は、外資警戒論から外資歓迎論、まだまだ先進国に比べれば外国資本が日本に投資する割合が少ない。もっと日本は魅力があるはずだ。外国企業にも日本に進出してもらう、外国人にももっと来てもらう。今外国人は一年間五百万人しか来ていない。日本人は千六百万人外国に出ている。かつて日本人は五百万人外国に行っていたのを、一千万人ぐらい日本人も外国に行けるようにしようと言ったんですが、もうそれを遂げて、一千六百万人。

 これからは逆に、パリだけで年間五千万人の観光客が、外国人が訪れている。だから、日本も今五百万人しか年間来ていませんが、二〇一〇年ぐらいまでには一千万人ぐらい外国人が日本に来てもらおう、旅行もしてもらおう、そういうことをしていますので、今言われているような、外資が日本に投資するということに対して、警戒論よりも、むしろ温かく迎える歓迎論をとってもいいのではないかなと思っております。

小泉(俊)委員 総理大臣、私は外資が日本に投資をするのが悪いと言っているわけじゃないんですよ。これは健全ですが、三の資料をもう一回見てください。

 これは、ここ十五年間、個人の株主が売りっ放しですよ。黒三角は全部売りですからね。また、事業法人も売りっ放しでしょう。生損保も売りっ放し、金融機関も売りっ放しで、ただひとり、買い占め、買っているのが外国人だけなんですよ。こんな国、どこにありますか、総理。

 それで、正当な価格で外資が入ってくるのはいいわけですが、外資が入る前に極端に株を七千六百七円まで落としたわけですよ、一回。こういったやり方をして、ばか安値で売りたたくというようなやり方は、私は好ましくない。適正に投資されるなら、どんどん来ていただいて私もいいと思います。

 そこで、次の質問に行きますが、外国人の投資家が日本の企業を八割から三割、仮に百社持っているといたしますと、外国人というのは非常に短期的志向でありますので、株式配当に対して、物すごい重視するんですね。ある企業なんかは、内部留保、いろいろ人材に投資したり研究開発に投資するために、日本の企業というのは結構それを持っていたわけですよ。

 ところが、外資に半分以上持たれた企業が、その内部留保を株式配当で配当されて、結局外国にそれが行っちゃったために、企業の力が落ちていってしまう危険性があるのではないか。要するに、日本企業の強みでありました長期的視野での企業経営というのがやっていけなくなるおそれがあるのではないかと思うんですが、小泉総理大臣、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、株価を政府の意向によって左右することはできませんよ。これは、投資家にとって、安いときに買うのが一番将来利益を上げるんですよ。だから、日本人が株はまだまだ下がる、八千円から七千円台になった、これはもう底なしになるぞ、五千円、四千円に行くんじゃないかというときに買った人が今一番もうけているんですよ。

 そういうことによって、それは、日本人が買わなかったらけしからぬとか、外国人に買われているとか、それは投資家自身の判断ですよ。だから、一番安いときに、あのとき日本人がもっと買っていればよかったんです。だから、そういう点を考えれば、株価を政府の意向によって左右することはできません。(小泉(俊)委員「質問に答えてください」と呼ぶ)市場がこの株価というのは決めていくわけですから。そういう点にとって、低いときに外国が買ったからよくないというのは言えないんじゃないでしょうか。

 だから……(小泉(俊)委員「時間がないから」と呼ぶ)私は質問に答えているんですよ。(小泉(俊)委員「いや、私は、短期的経営になるんじゃないですかという質問をしているんですよ」と呼ぶ)短期的経営になるかどうかは企業経営者の判断です。そういう見方をする人もいいです。外国人だから短期的な視野しかないというのは一面の見方じゃないでしょうか。日本人だから長期的な視点しか考えないというのも一面的じゃないでしょうか。日本人だって短期的なことしか考えない人もいますし、外国人だって長期的視野から投資している人もいます。そんな、外国人だから短期だけだというのは一面的だと私は思います。

小泉(俊)委員 小泉総理、時間が余りありませんので、質問にぜひともお答えいただきますようよろしくお願いいたします。

 企業は金の卵を産む鶏なんですよ。日本の富の源泉ですよ。私は、外国もどんどん投資していただいていいでしょう、ただし、日本の個人のお金持ちにもたくさん買っていただきたい。

 それで、私は、健全な株式市場を育てることが非常に大切だということで、四年半前から実は財務金融委員会で一貫してこの質問をしております。その中で、いろいろな意見はありますが、私は、三十年以上の長期リスクのとれる年金の資金や簡易保険の資金、そして特に無制限でリスクのとれる個人株主がもっと市場に参入できるような積極的政策をとるべきだということを宮澤大臣、塩川大臣のときから訴えてまいりました。

 最近、確かにこの譲渡益課税が減ってきたんですが、私は、先ほどのような、極めて外資が一方的に市場に入ってきているような状況においては、もっと日本の株主、個人投資家が参入しやすくなるように、株式の譲渡益課税をドイツ並みにゼロにしたり、特にこの低金利時代でありますから、株式配当に対する課税も一歩踏み込んでゼロにするような施策をもっと積極的にとっていくべきだと思うんですが、谷垣大臣、この点についてはいかがでございましょうか。

谷垣国務大臣 今ドイツ、ゼロとおっしゃいましたけれども、私、もう少しそこは不勉強かもしれませんが、私の知る限り、株式の譲渡益課税や、あるいは配当に課税ゼロ……(小泉(俊)委員「ドイツはゼロにしていた」と呼ぶ)ずっとかけていない……(小泉(俊)委員「前は。最近やってきたんです」と呼ぶ)ああ、昔ですね。最近は余りそういうところはないと思うんですよ。ここらは小泉委員の年来の御主張であることはよく理解しております。

 ただ、今、多分お触れになったと思いますが、貯蓄並みの手軽さで株式をやっていただこうということで、源泉徴収だけであとは申告も要らないという制度も入れましたし、それから、五年間は一〇%ということで平成十五年度にやっておりますから、ぜひこれを活用して、さっきおっしゃったような個人投資家を初め、もう少し株式市場が大きく育つように利用していただきたいと思っております。

小泉(俊)委員 次に、地方経済の景気の現状、先行き、そしてその対策についてお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、地方経済の現状なんですが、小泉総理大臣、いろいろな声が総理大臣には届くと思いますが、経済、特に地方経済の現状について、国民からどのような声が総理に届いていますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私の耳にはいろいろな声が届いていますよ。特に国会なんか、野党の声を聞けば、小泉だめだ、小泉改革はだめだ、企業は停滞している、不景気だ、もう悪いことばかり私の耳に入ってきますよ。

 地方に行っても、私はいろいろ意見を聞いております。(発言する者あり)

 どこへ行っているのかと言いますから、せっかくの御質問ですから答えさせていただきますけれども、総理になってからも、札幌に行ったり、小樽に行ったり、視察の農場へ行って農家の意見を聞いたり、酪農家の意見を聞いたり、北海道では、木の城たいせつという、北海道の木材しか利用していない、そして百年もつ木造建築を建てる、そして、本州からも引き合いがあるんだけれども本州には出ません、北海道だけで、冬の期間も仕事ができるようにしています、木を捨てるところはない、捨てるところまで使ってやっている、そういう方の意見も聞いている。

 それから、北海道なんかでは、冷凍のすしをつくって、イラクの自衛隊にも輸出しています。そういう、不景気不景気だと言っているけれども、私たちは頑張っていますという声も聞いているんです。

 それから、北海道の十勝では、長芋を外国に輸出しています。あのとろろ芋を、私、大好きなんだけれども、日本人ではなくて、何と外国、台湾ではもう日本の長芋、とろろ芋おいしい、輸出してくれ輸出してくれと言って、日本の注文に間に合わないぐらい、北海道では長芋を生産して輸出している。これは農家は、輸出できるな、攻めの農業で農業を考えなきゃいかぬということで今やっているんです。

 青森県。大間の女性は、都市と田舎というと、田舎という言葉を卑下する必要はない、私たちは一流の田舎になりたい。これはいい言葉だなと思った。一流の田舎になりたい、こういう意見も言ってきたり、それから、何と青森のリンゴは一個二千円で北京で売れている。日本では百円、二百円でも高いなと思っているのに、何で北京で二千円で売れているのか。

 岩手県。遠野の観光カリスマと対談して、岩手も頑張っていますよ、これからどぶろく特区もつくって、民宿も頑張ります、旅館産業だめだだめだと言われているけれども、むしろ日本的な民宿を好む人もたくさんいます、自分たちは小さいけれども農家をやって民宿も経営して頑張っている、そんなに中小企業悪い悪いと言わないでくれ、いいんだという声も聞いています。

 さらに、四国にも行っております。それから、長野にも行っております。三重県にも、それから鹿児島にも、もういろいろ……(発言する者あり)どこへ行っていますかと聞いているから丁寧に答弁しているんです。もっと答弁しましょうか。(小泉(俊)委員「いや、いいです」と呼ぶ)もういい。はい。

茂木委員長代理 お互いに小泉ですから、指名された方がしっかり答えてください。

 小泉君。

小泉(俊)委員 小泉総理、宰相の相という字はきへんに目と書きますね。この意味は、木に登って高いところから見るということなんですよ。これは、きへんに目でしょう。宰相の相ですよ。小泉宰相の宰相の相は、木の高いところに登って高いところから見るという意味なんですよ。ですから、高いところから見ると、確かに、いいところも見えるでしょうし、悪いところも見えるんですよ。ただし、いいところばかりじゃなくて悪いところもしっかり見ないと宰相の意味がないと私は思いますよ。

 それで、総理が今大変いいことばかり言いました。しかし、私は、今地元にいて聞こえるのは、実は悲鳴しか聞こえてこないんですね、茨城県なんですけれども。

 実は、先週一週間、月火水、三日連続で飛び込み自殺で電車がとまりました。そして、先ほど総理がしゃべっているときにも後ろから声がかかりましたが、昨年の自殺者、何と三万四千四百二十七人と、六年連続で三万人を超えて、これは統計をとり始めた昭和五十三年以来最悪の数字なんです。だれが宰相をやっているんですか。小泉総理ですよ。

 生活保護を受けた人数が、五年前は百万人だったのが、百四十三万人、大体一・五倍にふえたんですよ。そして貯蓄率も、いい、いいと総理たちはおっしゃっていますが、預金ゼロの人が二割この日本の中で出てきた。こんなこと今までありましたか、ここ十数年の間。

 そして今、私が地元に帰りますと一体どういう相談が多いか。よく聞いてくださいよ。住宅ローンや会社でお金を借りていて返せなくなっちゃったんでどうしたらいいんだという、その相談が実は多いんです。もう、お金を貸してくれという話じゃないんですよ。そして、社会保険を滞納して払えなくなっちゃったんですよ、企業の社長が。それでも払えという請求が来て、どうしたらいいんだということで相談に乗ってほしいというお話。

 また、実際、今世の中どうなっているかといいますと、九九%の中小企業、これは実は、銀行やRCCに、今お金の取り立てが結構きつくて、みんなどうなるかわかりますか、総理、がんになったり病気になっちゃうんですよ。それで、私は、本当にたくさんの人数に病院を実は紹介しているというのが現状なんです。

 今、私の通っています床屋さんも、ここ五年でお客さんが半分になったそうであります。お客さんは、昔からの床屋さんですから、年金をもらっている人たちですよ。どういう話が床屋さんでされているかというと、今のこのままの増税政策でいったんじゃ、もう家の中にこもっているのが一番だという話を、お客さんたちがそういう話をしている。

 また、地方の建設労務者、これは実は、かつてはお給料が一日一万三千円ぐらいあったんです。今八千円まで下がって、実はそれでも仕事がなかなかないために、どんなに一生懸命頑張っても月十三万か十五万しか収入がないんです。これで家族四人が暮らしていけると思いますか、総理大臣。

 米作の農家も、今回の米価の下落とか、あと兼業農家が仕事がないために、農水大臣、大体一農家、一軒一千五百万ぐらい、トラクターとか耕運機であるんですよ。そして、これは減価償却が五年ですから、年間二百万ずつぐらい返していくことがもうできないんですね。先ほどの自殺者の中身を見ると、今農村での自殺者が物すごくふえてきているんですよ。

 あと、四千五百万、大体マンションを買った方々、今実はローンが払えなくなって、売ると幾らだと総理は思いますか、一千万ですよ。売ったとしても、残りのローンが二千五百万ぐらい。家は失った上に借金だけは二千五百万も残るんですよ。こういうマンション、今全国にいっぱいありますよ。

 そして、地元のスーパーも、売り上げがピークの約三割ですね。もう、肉屋も八百屋も飲み屋も商店もすべて閉店していって、ゴーストタウンになっちゃっているんですね。これが地方の実態なんですよ。宰相であれば、木の上に登ってこういった点もしっかり見ないとだめですよ、総理大臣。

 総理、確かにいいところはあるのは私はわかります。しかし、悪いところにしわ寄せが来ているのも事実なんですね。こういう今私がお話ししたような弱い人たちというのは切り捨てちゃっていいんですか、総理大臣。いかがですか。

中川国務大臣 小泉議員もまた総理も、一言で一〇〇%悪いとも一〇〇%いいとも簡単に言えないということは、おとといですか、田中慶秋委員のときにも、マクロとして竹中大臣から、総じてよくなって今踊り場という。私はミクロを見る立場でございますから、去年の春夏の、いい、いいと言われている時期でも、業種、地域あるいはまた規模、特に中小企業によってはまだまだということをずっと言い続けております。これは私の立場上、そういう認識を持つわけでございます。

 そういう意味で、今十勝の長芋という話、もろ私の地元でございますけれども、そういうたまたまいい農業もございますが、十年前、私の地域北海道は、酪農でそれこそ借金一億、一億五千万で、本当に死ぬことも考えていたような農家もいっぱいあったわけでございまして、たまたま今はいいわけでございますから。ですから、そういう状況が地域、業種、規模によっていろいろあるということも共通の認識として議論を進めていかなければいけないと思います。

 それからもう一つは、今後どうなるんだろうということに関して言いますと、ちょっとこの質問の御趣旨からそれるかもしれませんけれども、人間、当然、将来のことを考えますから、先ほど、冒頭、小泉委員がおっしゃったようなことで申し上げますと、来年、例の株式交換による敵対的買収みたいな制度がスタートされるということに関しまして、企業は今大変心配をして準備しております。もっと近いことを申し上げますと、確定申告がそろそろ始まるわけでございまして、これに対して個人事業主だとか確定申告をする人たちが、これからどういうふうに申告して、去年と比べてどうなるんだろうかというような不安をそろそろ持ち始めているという話もよく聞きます。

 そういう中で、総じて申し上げますと、我々としては、困っている業種、困っている地域、困っている特に中小企業対策は、御承知のように、もう多くは申し上げませんけれども、無担保無保証でありますとか、債権の証券化でありますとか、あるいはまたいろいろな諸制度を通じて、困っている業種、困っている地域、困っている人々に対して、政府を挙げてそういうところにも全力を挙げていろいろな対策を、国会等の議論を通じながら法律をお願いしたり、予算をお願いしたり、税制をお願いしたりしながらやっているということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

小泉(俊)委員 実は総理にお答えをいただきたかったんですが、今中川大臣がおっしゃったように、いいところもあり、悪いところもあるんです。しかし、政治は何のためにあるかというと、弱い者のためにあるんですよ。ですから、小泉さんの答弁をずっとこの委員会でも私聞いておりましたが、どうも強きを助け弱きをくじく、そういうふうにしか思えないです。しかし、総理大臣、これは日本人の美学に反しますよ。私は、しっかりとその悪い点も正々堂々と認めて、そこにきちっとした配慮をするように大臣に指示したり、そうするように猛省を促しますよ。

 それで、今、先に中川大臣から景気の先行きについてお話がありました。

 この予算委員会でずっと私は傍聴しておりまして、総理大臣と竹中大臣は、今、踊り場にあるとおっしゃっています。確かにそういう見方も一面にはあるでしょう。しかし、実際、日本の景気が先行きどうなるかというと、まず、きょう日銀もおいでいただいておりますが、日銀が金融市場に資金を供給するための買いオペが、今、札割れしちゃっているんですね。極めて異常なことが起きています。資金が金融市場にだぶついているんですよ。だぶついているのに、株価は幾らですか。就任当初よりも二割も安いんですよ。きょうの前場で一万一千三百七円ですよ。二割安いまま。

 一方、十年物の国債を見ますと、半年前から見てみると、きのうで一・二九%なんですよ。ずっと実は金利が下落してきているんです。これは、機関投資家たちが、日本の景気が先行きよくないと思って、株式よりも安全な債券に投資をしてきている。やはり日本の先行きはかなり見通しが明るくないということを、専門家の人たちがそう見ているわけであります。

 また、先ほど冒頭申し上げましたように、確かにいいところがあります。それは、輸出産業とそれに絡む設備投資であります。しかし、これは何でよくなったかというと、史上最大、空前の、三十五兆円のドルを買うことによって百十円のレートをずっと維持してきたんですよ。これでよくならなかったらおかしいんですよ。三十五兆も、市場で、世界じゅうで歴史上やったことないんですから、これほどのことは。

 しかし、御案内のように、アメリカのブッシュ政権、二期目になって、貿易赤字が六千億ドルを超える勢いであります。これをどうしても、公約ですから半減したいということで、貿易赤字の削減をするためにドル安容認の姿勢をスノー財務長官がずっとメッセージを送っていますね。ですから百十円から百一円までいったんですよ、落ちたときは。五年ぶりにここまで来たのに、財務大臣は一円も為替介入しなかったでしょう。ですから、この日本を支えてきた輸出産業も、非常に先行きは厳しい状態にあると思います。

 また、内需に関しましても、この委員会でさんざんやりとりされましたが、やはり定率減税の廃止、配偶者特別控除の廃止、そしてまた年金の負担の増大、いろいろなものを見ますと、個人消費が伸びる可能性というのは非常に先行き難しい。内需も、私は大変厳しいと思っております。やはり景気の先行きは極めて厳しい。いい見方もあるけれども厳しい。この両面をしっかりと見て経済政策を、総理大臣を初め谷垣大臣、やっていただきたいと思います。

 そこで、しかしどうするかということであります。このまま指をくわえていますとみんな死んじゃいますのでね。そこで、対策をお聞きいたしますが、特にまず地方、非常に空洞化が進んで、今壊滅的状態なんですね。その一因が、私はやはり、かつて大店立地法を緩め、規制緩和によって大規模店舗を出店させた、この法律がかなりの大きなウエートを占めていると思います。

 そこで、しかし規制緩和というものは、無限にすれば強い人が勝つに決まっているんですね、自由にしたら。やはり私は、一定の歯どめがもうそろそろ必要になってきたのではないか。その中で、大店立地法を私は抜本的に見直すべき時期が来たんじゃないかと思うんですが、小泉総理大臣、いかがでございましょうか。

中川国務大臣 私も、全国を回っておりますと、特に商工関係の皆様方の話を聞きますと、地方の非製造業がよりウエートが高いんですけれども、特に小規模事業者、そして中心市街地の空洞化、もうほとんどどこの地域に行ってもこの問題が出てまいりまして、その原因としての、今小泉議員御指摘の、まちづくり三法を何とか町活性化のためにやっていただきたいという御要望を私自身もいっぱいいただきます。

 これは、全く御趣旨は私自身も重く受けとめておりまして、いろいろな、再生協議会でございますとか、あるいは地域中心の、若者あるいは経験を持った人たちのまちづくりというもの、それぞれオーダーメードであるんだろうと思いますけれども、それを支援していくために、経済産業省といたしましても、このまちづくり三法そのものを検討していかなければいけない時期に来ているんだろうというふうに思います。

 具体的なことを今まだ申し上げる時期ではございませんけれども、これは全国の多くの関係者の声だと思っておりますので、そういう検討をしていきたいというふうに考えております。

小泉(俊)委員 規制の緩和というものは、官の持っている規制を緩和することによって民間の活力を生むものならいいんですよ。例えば携帯電話ですね、数兆円の市場になったでしょう。しかし、規制を緩和することによって民の大と小を戦わせるものであってはならないと私は思います。やはり弱肉強食から共存共生へという、それを生かしたものをまちづくり三法についても私は中川大臣にお願いをしたいと思います。

 また、先行き、先ほど申しましたように、輸出産業による保護をして、これで外需で日本を引っ張っていくというのは、私はもはや限界に来ていると思います。私は、国民がお金を使いたくなるような内需拡大政策へ大転換をすべき時期がやってきたんじゃないかと思います。

 特に、アメリカのブッシュ大統領、二期目になりまして、日本に非常に内需拡大と輸入の拡大を求めておりますが、この点について、私は内需拡大政策に転換すべきだと思うんですが、総理大臣、いかがでございますか。

竹中国務大臣 小泉委員の御指摘、私も大変よく理解できるところはたくさんあるわけでございます。先行きについて特に御心配していると。我々は、先行き決してそんなに楽観しているわけではなくて、非常に厳しく見なきゃいけないというふうに思っているところでございます。

 ただ、ちょっと幾つか申し上げたいんですが、日本にとって、今、海外の需要というのは重要である、外需が重要であるという点は、それは私も否定をいたしません。しかし、一番最近の年次統計で、二〇〇三年のGDPというのが一番新しいわけでございますが、それによれば、実は内需が六割ぐらいなわけですね。

 したがって、内需がなくて外需だけに依存しているということでは決してないわけで、まさにその意味では、お答えになるわけですが、内需拡大に転換せよという御指摘ですが、我々は一貫して内需を拡大しようというふうな政策をとっているわけです。しからば、では内需を拡大するためにはどうしたらよいのか。まさか、これに加えて今以上に財政赤字を拡大してやれというふうにはおっしゃらないと思います。

 そうしますと、これは先ほどの弱者に対する切り捨てという御批判のお答えにもなるわけですが、そういう中小企業等々に関しては、中川大臣おっしゃったようなセーフティーネットをしっかりとしていかなきゃいけないということに加えて、新たな挑戦の機会をつくっていく、それを政府が準備していくということこそがまさに内需拡大の正道なのだと思います。そのために特区もやりました、一円起業も始めました。これはぜひ先生にも、地元を、しっかりと特区の活用等を御指導いただきたいと思いますが、我々は一貫して、内需をしっかりと拡大する、そのための構造改革を続けたいというふうに思っているところでございます。

小泉(俊)委員 竹中大臣、何度も竹中大臣とは質疑しておりますが、私は、内需拡大のポイントは、土地の継続的下落をとめることだと思っております。

 OECD三十カ国で、実は、十五年間も土地が平均七%下がり続けている国は、日本ただ一カ国であります。これによって、企業も個人も、資産も担保力もどんどん目減りするわけであります。ここをとめなければ、経済のバケツの底が抜けたところに幾ら水を注いでもだめなんですよ。ですから私は、内需拡大を高める根本として、地価の継続的下落をとめることに注力すべきだと思います。特に、現金を持っているよりも土地で持っている方が有利にすることですよ。

 これは財務大臣にも関係するんですが、まず、土地の相続税、不動産取得税、固定資産税の大胆な軽減、そして我が党が主張しておりますように、住宅ローン利子の所得控除、こういったものを前向きに取り上げて、私は、やはり土地の価格の下落をとめなければ、いつまでたっても内需の拡大は本格化しないと思います。いかがですか、大臣。

竹中国務大臣 税制の細部につきましては、担当のそれぞれの大臣から御発言があるかもしれませんが、私も、土地の下落がストップするような状況に持っていくということは、これは絶対にやはり我々の目標としなければいけないところだと思います。

 ここ数年間こんなふうに土地が下がってきた国はないというふうにおっしゃいましたが、ただ、難しいのは、その前の三十五年間ぐらいを見ますと、日本は、消費者物価が五倍になる間に、都市圏の住宅地は何と二百二十倍になったわけです。それの今修正過程にあるものですから、これは、土地の値下がりをとめたいわけですけれども、それほど簡単ではないという大変大きな宿題を私たちは背負っているんだと思います。

 要は、土地を買っていただけるようにしようと。今まで土地は持っていれば値上がりしました。だから、持っていることに価値があったから、みんな土地を買いました。しかし、持っているだけではだめですから、それはどうするかというと、土地の利用価値を高めるしかない。現実問題として、最近、六本木でも、ほとんど同じようなところにある土地でも、ある程度広くて使い勝手があるような土地と、狭くて地形が偏っているような土地では、もう地価は、単価で数分の一に違うわけです。

 だから、利用価値を高める。それは何か。結局、小泉内閣が当初から目指してきた一つの都市再生というのは、まさに、その地価を念頭に置いたものであったわけです。稚内から石垣までそのような、実はそのためには規制緩和も必要になるわけでございますが、土地の利用価値を高めるための都市再生をさらに一つの大きな軸にしていく。加えて、土地の税制についても、徐々にではありますけれども、いろいろな改善が行われているわけで、そういうことを組み合わせていくということが重要だと思います。

小泉(俊)委員 ぜひとも、内需拡大を推し進めるためにも、私は地価の下落をとめることに全力を尽くしていただきたいと思います。

 次に、あと、景気に大変大きな影響を与えるのが、やはり金利ですよ。きょう、日銀副総裁おいでですが、今、ゼロ金利政策、四年目に入ったわけでありますが、いずれにしろ、このゼロ金利政策を未来永劫続けていくということは当然無理だと思うんですが、いかがでございましょうか。

武藤参考人 御指摘のとおり、現在日銀は、量的緩和政策という、異例の思い切った緩和策を実施しておりまして、消費者物価指数が前年比プラスになるまで、デフレ脱却するまで継続するという約束でやっているわけでございます。

 将来これがどういうことになるかということになりますと、現時点で余り具体的に申し上げることはできないわけでございますが、あくまでも一般論ということで申し上げますと、この約束が、もう少し具体的に申し上げますと、消費者物価指数の前年比が基調的にゼロ%以上になること、将来再びマイナスにならないこと、さらに経済情勢、物価情勢を見て量的緩和政策を続けるかどうかを考える、こういうことでございます。

 したがいまして、今申し上げた条件が整ったと判断されれば、これは量的緩和政策を解除することになるだろう、そういうふうに考えております。

小泉(俊)委員 資料の九をごらんいただきたいと思います。これは、過去二十五年間の日本の長短金利の推移であります。これは、大体真ん中を見ると三・五とか四なんですね、実は平均金利が。今は確かに金利が安い状況にありますが、将来的にはこれは徐々に上がらざるを得ない。そうしたときに、この委員会で先ほどもほかの議員からも質問ありましたが、やはりこれは金利が上がったメリットとデメリット、両面あるわけであります。

 メリットは何かといいますと、家計収入はふえるということであります。ただし、金利上昇のデメリットというものもあります。これは、御案内のように七百十九兆円の国債の利払い増ですね、当然これも負担となります。また、もう一つは、金融機関全体で何と国債の保有が五百兆円を突破したわけですね。実は、金利が上がりますと国債の価格が下落しますから、含み損がふえてくる、これも大きな問題であります。

 ところが、もっと大きな問題が、実は、変動金利で住宅ローンを抱えた方たちにとって、家計に最大の影響を与えるということであります。今、住宅金融公庫の縮小によりまして民間の住宅ローンが大変ふえております。資料の五と六をごらんいただけますでしょうか。資料の五を見ていただきますと、実は、これは何かといいますと、民間の住宅ローンを借りている方は九割が変動金利なんですね。資料の六をごらんいただきますと、では何世帯ぐらい変動金利の方たちがいるのかというと、何と九百万世帯も住宅ローンの変動金利を抱えている世帯がいるというわけであります。

 次の、もう一枚、七を見てください。これは、今民間の銀行が一%のキャンペーンをやっています。これで三千万円、三十五年借りると、毎月の返済は八万四千六百八十五円です。ところが、三年後に普通に戻ったときに、仮に金利が上がって四%になると、月々八万四千円だったのが十二万八千五百五十一円、何と年間だと五十二万円もアップをして、アップ率五二%という大変な状態になるわけです。

 そして、もう一枚、八ページをめくっていただきますと、これは二十年間の日本の住宅ローンの平均、実は三十年平均も出していますが、借り入れが大変長いものですから、四・五%ぐらいが二十年平均なんですね。そうしますと、九百万世帯の変動金利を使っている住宅ローンを抱えている家計が、金利が上昇してきますと膨大な数のローン破産が続出する危険があるわけであります。そこに関して、私は、やはり政治というものは、先ほど申し上げました、高い木の上に登って遠くを見るものです。ですから、やはりこういった、将来必ず来る、それも九百万世帯にも及ぶ危機に十分対処していかなければならないと思います。

 その中で、資料の十をごらんいただきたいんですが、これは、アメリカでどうなっているかという話であります。アメリカは、住宅ローンの変動金利を使っている人に対しては、借り入れの際に金利変動のリスクを詳細に情報開示するように法律で義務づけられているんですね。消費者がちゃんと保護されているんです。ここにその内容が書いてあります。これは非常によくできております。

 私は、日本においても九百万世帯を超える世帯がリスクにさらされるわけでありますから、やはり貸し出しの際にしっかりとこういった銀行の金利上昇リスクの説明責任を法律で課すべきではないかと思うんですが、伊藤大臣、いかがですか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員からは、金融機関の説明責任の重要性について御質問がございました。金融庁といたしましては、金融機関が住宅ローンも含めた融資契約を顧客と締結する際には、顧客に対してその契約の内容や金利変動リスク等について適切かつ十分な説明を行うことが極めて重要であると認識をいたしております。

 このため、銀行に対して、説明責任の的確な履行を求めているところでございますが、まず、銀行法によりまして、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた重要な事項に関する十分な説明体制を整備するよう義務づけております。

 これに基づきまして、総合的な監督指針において、与信取引に係る契約の意思形成のために、顧客の十分な理解を得られることを目的として必要な情報を的確に提供することとしているか等を、当局が金融機関の内部管理体制を検証する際の着眼点の一つとして明記しているところでございます。さらに、今年度の事務年度の検査及び監督の基本方針におきまして、重点的に検証していくこととしているところでございます。

 また、こうした当局の取り組みに加えて、銀行業界自身も、公正取引委員会の認定を受けて、銀行業における表示に関する公正競争規約を定めておりまして、その中で、銀行が、住宅ローン等の貸し出しについて金利を表示する場合には、あわせて、リスクや借り入れ条件に関する事項等を明確に表示しなければならないことといたしております。

 さらに、昨年の十二月二十一日、全国銀行協会におきまして、住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について申し合わせを行っておりまして、この中で、利用者に対して十分な説明を行うことといたしているところでございます。

 金融庁といたしましては、以上のような現行法令の厳正かつ的確な運用に努めるとともに、金融機関自身においても自主的な取り組みを行っていただくよう、それを促していきたいというふうに考えております。

小泉(俊)委員 伊藤大臣、実は私、住宅ローンを現実に借りたことがあるからわかりますし、いろいろ聞いても、ほとんど説明されていないんですよ。

 それで、今おっしゃった昨年の十二月、銀行協会が出した内容とこのアメリカの、余りにも開きがある。あんなの説明に入らないんですよ。こういったちゃんと、十五年間の金利変動実績データなどとか、最悪シナリオによる返済額の例とか、やはり私はこのぐらいのところまで踏み込まなきゃだめだと思いますよ。

 それで、金融庁、投資サービサー法、リスクの高い投資商品に係る説明責任を課すという、これを制定しようとしているわけでありますが、私は、住宅ローンもこれに含めるべきだと思います。

 また、時間がありませんので最後の質問になると思いますが、住宅金融公庫の改編に伴い、大変な時間をかけて証券化ローンをつくったわけですよ。これは投資家にとってもいいですし、銀行にとってもリスクがありませんし、また、利用者にとっては三十五年の長期固定の借り入れができるわけであります。しかし、実際にはまだまだ利用が少ないんですね。都市銀でこれを最大に利用しているのは、みずほ銀行ぐらいだと思います。

 大臣、やはり金融機関を統括される責任者として、先ほどお話ししたように、九百万世帯、これからどんどん金利が上昇していったときに、ローン破産が大量にふえる危険が今あるわけですよ。ですから、金融機関を統括する責任者として、私はやはり、せっかくつくった制度であります、そしてすばらしい制度でありますので、この証券化ローンをしっかりと推し進めるように銀行に指導するべきだと思うんですが、伊藤大臣、いかがですか。

茂木委員長代理 伊藤金融担当大臣、簡潔に答弁してください。

伊藤国務大臣 委員から、その証券化支援事業についてお話があったわけでありますが、これは、住宅取得予定者に根強い需要のある長期固定金利の住宅ローンの供給を容易にするものと私どもとしても認識をいたしております。

 民間金融機関は、近年、住宅ローンの販売に力を入れているところでございますけれども、例えば上限金利つき住宅ローンやあるいは長期固定金利住宅ローンなど、その多様な顧客の要望に的確に対応した商品開発の取り組みを進めていると承知をいたしているところでございます。

 そこで、金融機関がどのような商品やサービスを顧客に提供するかは、これはやはりみずからの経営戦略の中で判断していくべき事項でありますけれども、現下の金利情勢を踏まえて、住宅金融公庫の証券化支援事業の活用も選択肢の一つとしつつ、各金融機関が顧客の要望に対応したよりよい商品を提供していくことが重要だと考えております。

小泉(俊)委員 政治は、先ほども申し上げましたように、弱い人、困っている人たちのためにあります。ぜひとも、いいところばかりではなくて、そういった困っている人、弱い人のところを見てしっかりと政治をしていただきますようお願いをして、質問を終わります。

茂木委員長代理 これにて小泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 五十分ほど時間をいただきまして、先ほど小泉議員は日本経済全般の問題について質問されておりましたけれども、私は、地方の活性化、地域経済の活性化という観点に絞りまして質問させていただきたいと思います。

 皆さんのお手元に十七ページ余りの資料、お配りすることになっておりますけれども、まだ届いておりませんでしょうか。領収書の写しとか収支報告書の写しとか、そういうのは入っておりませんので、安心して、嫌がらずにごらんいただきたいと思います。

 まず、教育問題。今、少子高齢化についていろいろな議員の方が質問されております。ですから、少子化問題については触れません。教育問題、節目ということで教育基本法の改正とかいうのが取りざたされております。憲法も同じなんじゃないかと思います。

 教育問題についていいますと、やはり戦後の占領政策の延長線上に我が国の教育制度があったんじゃないかと思います。アメリカの占領政策、農業でいったら農地改革とかいろいろございました。ですから、教育問題についてもいろいろやっているはずなんですが、占領政策下の教育改革について、文部科学大臣、どのように検証されておられますでしょうか。

中山国務大臣 我が国の教育は、第二次世界大戦の後、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、その時々の時代の要請に対応しつつ、人材の育成を通じて我が国経済社会の発展の原動力になってきたものでございまして、このことについては世界からも高く評価されているものと考えております。

 具体的には、占領下におきまして、教育制度に関しましては、昭和二十一年の憲法、それから昭和二十二年の教育基本法の制定、さらに六・三・三・四制の学校教育体系の導入、そして義務教育期間の九年制への延長、こういったことを通じまして、教育の機会均等とその普及、充実に大きく踏み出してきたもの、このように理解しているところでございます。

 しかし一方、戦後六十年が経過いたしまして、社会情勢が大きく変化する中で、昨今の教育の現状を顧みますと、これは平成十五年の三月の中央教育審議会の答申において指摘されているとおりでございますけれども、青少年が夢や目標を持ちにくくなった、そういう状況の中で、規範意識やあるいは道徳心、自律心が低下している、さらにいじめとか不登校とか中途退学、学級崩壊などの深刻な問題、青少年の凶悪な犯罪が増加している。

 こういったことで、道徳面といいますか、心の教育というのがおろそかにされてきたんじゃないかな、こう思うわけでございまして、今、教育改革を進めておりますけれども、根本にさかのぼって、心の教育といいますか、精神面についてのそういった改革も必要じゃないかという観点も考えておるところでございます。

篠原委員 ありがとうございました。

 教育改革、ストッダード団長以下が来て、今大臣のお答えをいただいたとおりです、私の記憶しておるところによりますと、ローマ字化というようなことも提言されておったようなんですが、それ以外はほとんど実現されておる。

 しかし、アメリカの教育改革の中に隠された部分があった。どういうことかといいますと、日本人は皆非常に立派な軍人になっておった、戦争中ですけれども、お母さん、先立つ不幸をお許しください、天皇陛下万歳と言って亡くなっていた、こういう恐ろしい人たちばかりをつくっている日本というのは一体どういう国かと。ルース・ベネディクトは「菊と刀」という本を書きました。簡単に言いますと、これは露骨な表現になってしまうかもしれませんけれども、日本人をもう少しやわらかく、もっと言えば軟弱化させるための政策というのを真剣に考えたはずなんです。

 それで、細かいことをちょっと申し上げますと、軍隊の強いところはわかっておったわけですね、地方別の軍隊でしたから。またも負けたか第八師団というのがあって、大阪の方には悪いんですけれども、そこは改革しなかったんです。(発言する者あり)八連隊。済みません、八連隊。ところが、強かったのは、きょうおられませんけれども、松岡さん、大体あの末裔だと思いますけれども、熊本が強かったわけですね、過激なのが多くて。仙台とか金沢、そういうところは徹底的に教育改革をして、なぜかというと、団結心を弱めよう、そういう戦略的なことがあったように記憶しております。

 それで、ちょっと気がつきますと、農政についても、農地改革とかいうのはまあよかったのかもしれませんけれども、意外なところで軟弱化する手だてを講じておったようなんです。それは何かといいますと、今は行革、行革で名前も消えてしまっているんですが、生活改善普及事業というのがありました。田舎が地元の皆さんは、助けていただく方がいっぱいおられるんじゃないかと思いますが、この事業、アメリカの非常なてこ入れで始まったわけです。

 これは、どういった肩入れが行われたのか、島村農林水産大臣、承知されておられますでしょうか。

島村国務大臣 専門家にお答えするので、今ちょっと整理をしておりました。今あなたに正確にお答えしなきゃいかぬ、こう思って整理をしておりました。どうも失礼いたしました。

 農業普及事業は、都道府県の普及員が直接農業者に接して経営や農村生活の改良に必要な技術、知識を普及するものでありますが、戦後、GHQから、農家が主体的に農業改良を行うことにより農村を民主化すべきとの考え方のもとで、積極的な指導助言を得て、米国の普及事業を範として昭和二十三年に創設されたものであります。

 創設時の普及事業は、農業生産の拡大を目的とした農業改良普及事業、そして農村の生活改善を図るための生活改善普及事業との二本柱で実施されたところであります。生活改善普及事業の推進に当たっては、ロックフェラー財団からの援助を受けるなど、米国から強い支援を受けたいきさつがございます。

 以上でございます。

篠原委員 今、最後に大臣がお答えになりましたロックフェラー財団がお金を出したというのも、異例のことなんだろうと思います。それで、アメリカ大使館がてこ入れしまして、皆さん余り御存じないかと思いますけれども、ホテルオークラとアメリカ大使館の間を突き当たった左側に生活技術研修館というのがありまして、アメリカが土地まで提供したんです。

 どうしてそこまでしたかというと、その立派な軍人は皆すべて日本の農村の安定した地域社会で育っている、ここを民主化させることが大事なんだと。まあ、言ってみれば、いいことかもしれませんけれども、立派な軍人を育てるという観点からは、困ったなんて言っちゃ悪いんですが、そういうことだったわけですね。

 こういう支援、アメリカというのは、そういう長期戦略に立って日本にいろいろ言ってくるということ。だから、経済問題で、私はきょうは申し上げませんけれども、グローバルスタンダードだとかいってアメリカンスタンダードを押しつけられるのは、相当気をつけなくちゃいけないということをちょっと申し上げたいわけでございます。

 それで、教育問題。私は愛国心というのは大事だと思っております。ですから、ちょっと行き過ぎたような発言があるとかいってマスコミは批判されますけれども、率直な中山文部科学大臣の発言に共感するところも多々あるわけです、ちょっと困ることもありますけれども。

 私は、今、文部省の関係で、小学校区の自由化というのがひそかに進められているというのは、これは正直申し上げまして反対なんです。もう品川区とかいろいろなところでやっている。平成九年に通達を出して通学区を自由化して、どこか小学校、あっちの小学校へ行っても、こっちの小学校へ行ってもいい。

 なぜかというと、臨教審の中で議論が行われていたんです。そのころにあるわけです、中曽根康弘内閣の臨教審で。どういうのかというと、怠け者の先生がいるところには生徒をやらなければいい、そうすると先生は一生懸命鍛錬して立派な先生になるからというんですね。そんなところまで競争原理を導入するなんて、信じがたいですよ。

 では、これはいろいろ意見があると思います。大臣、どういうふうにお考えでしょうか。それで、結果はどうなっているか、ちょっと教えていただきたいんです。

    〔茂木委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 今、教育改革を進めていると申し上げましたけれども、これは要するに、国はしっかりと義務教育の根幹は堅持するけれども、しかし、やはり現場に任せる、学校、教育委員会等に任せて、その中で、子供たち、保護者の意見を聞きながら、そしてみんなで力を合わせていい学校をつくっていこうと。ある意味では競争原理の導入になるかもしれぬわけですけれども。

 そういう意味で、公立学校のいわゆる学校選択制というのは、保護者の意向や要望に対応するとともに、特色ある学校づくりを進めて学校の活性化を促進する、こういった観点から、地域の実情等に即して市町村教育委員会の判断において導入されているものでございます。学校選択制につきましては、まず学校同士が競い合って、それで充実した教育が推進されること、そして保護者が学校に対してより関心を持つようになること、そして保護者の選択や評価を通じまして特色ある学校づくりが推進される、こういった評価があるわけでございますけれども、一方では、学校と地域のつながりが希薄になるのではないかとか、あるいは、先ほど指摘がありますように、一部の学校に児童生徒が集中するのじゃないかとか、こういった懸念もあるわけでございます。

 そういう意味で、学校選択制の導入に当たりましては、これらの点を十分に踏まえた上で、それぞれの教育委員会が適切に判断して進めていくということが大事ではないか、こう思っていますが、最初に申し上げましたように、できるだけ現場、現地の方々の意向が十分組み込まれて、創意工夫に基づいた、そういった学校運営、経営ができるようにということを基本にしてこれからもやってまいりたい、このように考えております。

篠原委員 競争原理の導入というのは、私はビジネスの場面などではいいのじゃないかと思いますけれども、教育の場面で小学校を、あっちの小学校、こっちの小学校、東京の何とか区だったらすぐ通えますけれども、私の地元の長野県の田舎の方なんか、あっちの小学校へなんて行けようもないわけですね。そういうことを考えたりした場合はどうかなと思う。僕は高校ぐらいからだったらこうしておってもいいような気がしますけれども、地域の紐帯というか連帯感がなくなっていく、地域社会のたがが緩んでいるというところに、せめて小学校ぐらいは、みんな一緒で同じような原体験をするというのが必要なんじゃないかと思います。そういうことは考えていただいた方がいいんじゃないかと思います。

 それで、資料の二をちょっと見ていただきたいのですが、青年の意識調査というのを各国でやっておるわけです。経年で五年ごとにやっておるんですが、ちょっと見ていただきたいのです。「愛着を持つ理由」という二ページのところ、「友だちがいる」、これは一緒に勉強した小学校、中学校の友達がいるという理由が、その土地に、後で触れますけれども、その国に愛着を持つ理由になっているわけです。ちょっとパーセントは違いますけれども、相当高いわけです。五〇%を日本も韓国もアメリカも超えている。アメリカなどは八四%も友達がいるからだということを言っているわけですね。

 それで、次のページを見ていただきたいのですが、「自国と自分との関係」、肯定する者、これは五年ごとに調査しているわけですけれども、自国に、日本に誇りを持っているという数、これはなかなか高いわけですね。日本人の場合七〇%以上が日本人であることに誇りを持っている。次に、問題なのは、自国のために役立つと思うようなことをしたいかどうかというのになると、下の各国比較を見ていただきたいのですが、結構低いのですね。なぜかしらドイツは低いのですが、ほかの国と比べると低い。

 ただ、いいことはありまして、上の方を見ていただくと、一九八三年が、二十年前は白けムードが漂っていたのだろうと思います、自国のために役立つというようなこと、それが三九・七%であったのに、今は一〇ポイント上がっている。ボランティア活動とかが盛んになったせいだと私は思います。やはり、愛郷心、いきなり愛国心とかいうのが出てくるわけじゃなくて、地域を大事にし、友達を大事にし、家族を大事にする、その延長線上にあるのではないかと私は思います。

 それで、突拍子もない数字なんですが、四ページを見ていただきたいのですが、これは、何も自衛隊に入るのが、あるいは防衛大学校に行くのだけが、愛郷心というか、そういうのが愛国心じゃないのですが、1、2というのは、県の人数、これは人口比にするともっと明らかに出てくるわけですけれども、結構、九州の方なんかさっきの延長線上で多いんですね。左側が防衛大学校、右側が普通の自衛隊員全体ですけれども。(発言する者あり)青森も多いですね。北海道も多い。長野は低いです。こういうのがあるわけです。

 ですから、こういう公徳心、ほかのヨーロッパ、欧米先進国と比べて愛国心とかが少ないというのはやはり問題になっているわけですが、これについてどう改善していくかというのが今度の教育基本法の問題でもあると思うんです。文部科学大臣、どのようにしたらこういった事態、まあ改善されつつあるんですけれども、ほかの国と比べたら、まだ何か、世のため国のため人のためというのはええ格好しいみたいなムードがあるわけです。そういうのを直していかなくちゃいけない。どうしたらいいんでしょうか。

中山国務大臣 御指摘のように、日本の若者には、公徳心とかあるいは国とか郷土に対する愛着が弱いんじゃないか、公共心や規範意識が低下しているんじゃないか、こう言われていますけれども、今御指摘ありましたように、台風や地震がありますと、いち早く駆けつけて、本当に一生懸命頑張っているボランティアもいらっしゃるわけでございまして、そういうのを見ますと、まだ捨てたものじゃないな、そういう気持ちもあるわけです。

 しかし、ほかの国に比べてみますと、御指摘のように、ドイツに比べるとまあいいけれども、ほかの国に比べるとまだ低いな、こう思うわけでございまして、こうした学校教育におきまして、特に社会科や道徳などにおきまして、我が国の歴史とかあるいは郷土の文化、伝統に対する理解を深めるということも大事だろうと思うわけでございます。

 私どもがいつも申し上げていますのは、やはり日本の子供たちに、この平和で豊かでいい国に生まれたことのありがたさを感じて、そして一生懸命勉強して、自分のこともさることながら、できれば郷土、そして日本に貢献するような、そういう人間になるんだ、そういうふうに目標を持って、将来の夢を持って頑張るような、そういう子供たちを教育することが大事じゃないかな、このように考えておるところでございます。

篠原委員 私も初めて、今までしたことがなかったんですが、中越地震の募金活動というのをやってみました。そうしたら、意外と若い、こう言ってはなんですが、とても募金しそうもないようなお姉さんやお兄ちゃんたちが、額は少ないですよ、募金してくれるのにびっくり仰天いたしました。お年寄りはしてくれるかと思うと、なかなかけちで、してくれませんでしたけれども、それはおいておきまして、若い人たちには非常に感心いたしました。

 その若い人たちが卒業しまして役立とうといったときに、失業という、失業じゃないですね、まだ着業できない。少子高齢化とかいって少子化を問題にしているのに、卒業したのに仕事がないというのはおかしいわけですね。

 総理、よくなった数字を全然示さないというので、悪いので、一つ示します。一ページのところ、高校生の就職内定率が改善してきている。それから、きのう、おととい答弁していただいておりますけれども、失業率が五・六%から四・四%に下がった。これは、全体では承知しておるんですが、若者の失業率というのは一体どうなっておるんですか、厚生労働大臣、お答えいただきたいんですが。

尾辻国務大臣 お示しいただきました資料とも関係いたしますので、まず、今春卒業の新規学卒者の就職内定状況から申し上げます。

 大学生で見ますと、昨年十二月一日時点の内定率が、前年同期を〇・八ポイント上回る七四・三%となっております。高校生につきましては、お示しもいただいておりますけれども、昨年十一月末時点の内定率が、前年同期を六・三ポイント上回る六七・七%になっております。回復は見られるということでございます。

 そこで、全体をもう一回見直しますと、昨年十二月の完全失業率が全体で、これはお話しのとおりに四・四%、ところが、一番若い層、十五歳から二十四歳という一番若いところで見ますと、これが七・五%でございます。非常に、低下はいたしておりますけれども、依然として高い水準にあるということでございます。

 若者の失業率が高いというのが基本的な問題でございますが、さらに問題点が私は二点あると思っておりまして、一点は、失業率でいうとそうなんですが、今度は有効求人倍率で見ますと、実はこの十五歳―二十四歳のところでは一・六八なんです。一・六八なんです。有効求人倍率が一・六八でありながら失業率が七・五%、この関係というのはやはりおかしいと言わざるを得ない。ここに問題点が一つあると思います。それからもう一つは、きょう盛んに先ほどから先生がいろいろ言っておられる地域間の格差がこの若者の失業率の中でも大きい。この二点がさらなる問題点だ、こういうふうに思っております。

篠原委員 わかりました。一般のは四・四%に下がったけれども、七・五%で、十五歳から二十四歳は高い。有効求人倍率は高いんだけれども、それにつかないで仕事を選んでいるということなんでしょうか。しかし、やはりこれは大事な問題だと思います。

 総理は、どういう社会をつくるのか、それを示してくれといういろいろな議員の質問に対しては、努力が報われる社会をとおっしゃっていました。しかし、努力の場も与えられないんじゃ努力のしようもないんじゃないかと思います。ですから、私は、若者の失業というのは、失業というか着業できないというのは大問題で、どういうことかというと、若い人たちに対して社会がノーと言う、死刑宣告するようなものだと思います。ですから、ほかの政策が大事じゃないとは言いませんけれども、若者の雇用創出というのは非常に大事な政策じゃないかと思います。

 改革、改革と言いますと、私なんかの頭の中に真っ先に浮かんでくるのは、サッチャー政権の改革です。相当大胆な改革をされました。先ほどの教育改革もされました、詳しいことは申し上げませんけれども。雇用改革というのも盛んにされていまして、いろいろどぎついことをされたので雇用問題も生じたんだろうと思いますが、しかし、相当大胆なこと、例えば、十六歳から二十歳の人たちで仕事がない人たちに、二年間、訓練の期間を与え、その手当も出して、そして技術をつけさせて就業させる、その対象になったのが四十一万人もいる。それから、十八歳とか二十代未満の若手を雇用した人には、一年間、一週間企業主に十五ポンドやるというようなことをして、若者の失業を全くなくしたわけです。

 こういった大胆な政策をやはり、郵政改革が大事じゃないとは言いません、どんどんおやりいただいていいのですが、若者の雇用対策もぜひやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 若者たちが今、職につくかつけないか、これはもう大変大きな問題だと思っております。意欲がある人に対しまして、今どういう支援ができるか。あるいは、もともと、ニートと言われるように、教育も受けない、あるいは仕事にもつけない、訓練もしないというようなのが深刻になっておりますが、今言われたサッチャー政権のときの大きな改革等、これは大変当時にとっては大胆な改革だったと思いますし、結果がどうなっているか、よく参考にしまして、若者が職を持てるようにする、また、仕事の喜びというものを、勤労の喜びというものを、勤労の重要さというものをわかるような対策、各省連携しながら取り組んでいかなきゃならない問題だと思っております。

篠原委員 厚生労働大臣は、具体的にことしの、ことしというか、最近の政策ではどのような手だてを講じておられるのでしょうか。

尾辻国務大臣 私どももこの若者の雇用問題というのは大変重要なことだと考えております。

 そこで、どういうことをしているかということでございますけれども、平成十五年六月に策定いたしました若者自立・挑戦プランというのがございます。これをまず推進いたしておるところでございます。

 中身をちょっと申し上げますと、例えば、若年者ジョブサポーターによる新規学卒者に対するきめ細かな就職支援ということでございますが、これは、学校に出かけていって、最初の就職のときからいろいろ相談に乗っているのですが、在学中に就職が決まってぱっと就職できればそれにこしたことはないのですが、そうならなかった人たちには引き続き就職の相談に乗るとかいうような事業でございまして、こうしたことをやっております。

 あるいは、フリーター等の常用雇用の促進を図る若年者トライアル雇用でございまして、これは、今サッチャー政権の例をお出しになりました。大きく三つぐらいサッチャー政権は若者のための雇用対策のメニューをつくりましたけれども、そのうちの二つ目の雇用訓練事業、先生がお述べになりました、こうしたものと大体似通ってはいるというふうに考えております。

 そういったようなものでありますとか、日本版デュアルシステムだとかジョブカフェだとか、こういうことをやってきたということでございます。

 さらに、平成十七年度、今お願いをしております予算の中では、若者人間力強化プロジェクトというのを推進しようということでございます。これは、例えば若者自立塾をつくろう、こういうふうに考えております。これは、若者たちに、合宿生活の中で、生活訓練、労働体験などを通じて働く自信と意欲を沸き立たせて就職につなげよう、こういうことを考えております。

 いろいろこういうことをやりながら、努力を続けておるところでございます。

篠原委員 わかりました。若者の問題もそうなんですが、若者が消え去りつつあるところがあります。それは過疎地ですね。少子高齢化が非常に深刻です。

 この状況、東京なんかにいますとなかなかわからないわけですけれども、過疎地に例えば落下傘企業みたいなのが来ていたのが、給料も高いしというので東南アジアに行ってしまったというので企業がなくなった。農業も悲惨だということで、過疎地全般の状況、それから中山間地域の農業の状況、相当悲惨だと思われますけれども、総務大臣と農林水産大臣、過疎地の現状、中山間地域の農業の現状をちょっと御説明いただけたらと思います。

麻生国務大臣 今、過疎地の少子高齢化の状況についてのお尋ねだったんですが、年齢別人口というのが一番わかりやすいと思いますが、平成十二年度の国勢調査の結果ですけれども、全国を比較いたしますと、十四歳以下、いわゆるゼロ歳から十四歳までのところの人口割合は、一四・六が全国平均。その中にあって、過疎地域では一三・五と、その差、数字だけを見ますと今おっしゃるように大した差はないんですが、先ほど言われましたように、過疎地においては他の子供と接触する機会が激減しますので、その意味では、こういうのは数字だけでやりますと現実からちょっと遊離したことになりかねないので。数字にお詳しいので、そこらのところは御理解いただいているところだと思いますが。

 他方、六十五歳以上の方の人口比を見ますと、これは非常にはっきりしていまして、全国平均は一七・三というのに対して過疎地では実に二九・二ということになっておりまして、今から約十七、八年、二十年ぐらい後の数値になっております。

 重ねて、東京のお尋ねもあっておりましたので、東京も言わせていただきますと、東京都へ高齢者がどっと移っているというお話等々はよくあるところですが、これは平成十二年では四万人ふえております。これは、平成二年では二万七千人でありましたので、この十年間で見ますと、東京都への流入人口は一万三千人、高齢者のところでふえておるという形になっております。これは、数字がいろいろありますので、御所望でしたらこの数字を差し上げますけれども、三十五から三十九のところがえらくふえている割には、逆に四十歳から四十四歳のところが減っておるというような形で、ちょっとこれはなかなか判断のしにくいところですけれども、現状としてはそういう数字になっております。

島村国務大臣 平野部の外縁から山間地に至るいわゆる中山間地域は、耕地面積あるいは総農家数及び農業産出額の約四割を占めるなど、釈迦に説法ですが、非常に重要な役割を担っております。また、冷涼な気候や地形条件を生かした農業生産が行われておりまして、果実や畜産については、それぞれ全国の産出額の約五割を占めているわけです。

 しかしながら、中山間地域、御承知のように傾斜地が多く、農業生産条件が不利である。また同時に、高齢者が二五%でございまして、一般の平均と比べますと一・五倍となっているなど、将来に向けていろいろな問題も非常に多いわけであります。

 我々は、このような状況を踏まえて、平成十七年度以降においても中山間地域等直接支払い制度を継続して実施するなど、これからも中山間地域というものに重きを置いて配慮していきたい、こう思っております。

篠原委員 いずれにしても、田舎のお年寄りは非常に大変なわけです。

 ちょっと資料をごらんいただきたいんですが、五ページ、ちょっと見ていただきたいんですが、これは皆さん、初めて聞かれるようなお話かと思います。この数字がちゃんとして、きちんと数字でパーフェクトに説明できないんですが、それなりに説明できるんです。今、麻生総務大臣からお答えいただきましたけれども、東京都に老人が意外と来ておるんです。その数字が、きちっとしたのは出ないわけですけれども、もう一つ、東京と正反対にある、ど田舎なんて言っちゃ悪いんですが、田舎というのは大間の人は田舎という言葉は卑下する必要ないと言っておられますが、島根、別にこれは官房長官が島根だからといって出したわけじゃなくて、典型的な過疎の県ということで出したわけです。

 これをちょっと見ていただきたいんです、五ページ。左側が転出で、転入です。七十五歳以上になって結構転出が多いんですね。見ていただきたいんですが、七十五歳から七十九歳で百十八人とか百二十人。右側の転入と比べたら二倍か三倍の数なんです。こういう人たち、どこに行くのかというと、こういうことなんです。

 ちょっと話が長くなって済みません、聞いていただきたいんですが、三十年ほど前に、有吉佐和子さんは日本の社会問題に気がつかれました。それで二つの社会小説を書いて亡くなりました。今、「華岡青洲の妻」はテレビでやっていますけれども、ああいうのでデビューされたんですが、一つは「複合汚染」です。食べ物が大変になる、日本が汚れている。もうアトピーとか花粉症とか、この辺で悩んでいる方もおられると思いますが、ああいうのがあるわけです。

 もう一つ、「恍惚の人」という大ベストセラーを書かれました。覚えておられると思います。映画化されました。それで、森繁久彌さんが、今でいうとアルツハイマー病かもしれませんけれども、痴呆症の老人役を演じました。そして、お嫁さん役を高峰秀子さんがやって、映画の好きな総理はごらんになったかと思う、映画も結構見られたわけですね。これは、田舎から、東北のさる寒村を退職した両親が、息子がいるというので、杉並区松ノ木とまで書いてありました、東北はぼかしてありました。青森県何とかかもしれませんけれども、そこはぼかしてありました。

 それで、そこのところを見たとき、僕はそのとき、あり得ないなと思った。二人生きている間に知らない東京になんて出てこない。しかし、何十年後、事実になっている。どういうことになっているかというと、お二人が健康だったら絶対来ない。一人が亡くなっても、まだ一人で田舎にいる。しかし、そのひとり暮らしをした老人が病院に行きがちになると、だれも面倒を見ない、特養老人ホームもない。したがって、息子、娘のいる都会に出てこざるを得なくなるんです。三十年後に悲惨な状況でこれが出てきているわけです。

 右側に、一九九二年の島根県の数字でありますね、十五歳から十九歳は就職していくわけです。それに対して、六十五歳以上は、ふるさとにいたいのに東京や大阪に、言ってみれば死にに出ていくわけです。おわかりになりますか。もういられない、こういう悲惨な老人がふえているということです。ついでにこの資料を見ていただきますと、若者流出型から、こう過疎問題が深刻になっているという。

 この次のページ、先ほど総務大臣にもうお答えいただいたので、高齢者が結構、平成二年と平成十二年を比べて、転入が東京にふえているという数字、一番下を見ていただきたい。

 それから次の、もう一つのページ、七ページ。これも総務省の親切な担当者と相談してつくってもらった資料なんですが、東京への転入と転出。これはバツとマル、何の意味があるかというと、六十五歳以上と七十五歳以上なんですが、マルは転入の方が多い、転出の方が多いのがバツなんです。そうすると、六十五歳以上は転出の方が多いんです。どういうことかというと、企業をやめて田舎へ帰っていく人がいるということです。今度、七十五歳以上になると、逆に転入が多いんです、さっき言いました島根県との対比で。これは大変な問題なんだろうと私は思います。

 この七十五歳以上を厚生労働省用語で後期高齢者と言うそうです。六十五歳以上を高齢者と言っていたんですが、余りふえ過ぎちゃったので。私は、変な名前をつけて、入試の前期、後期じゃないのに、八十五歳以上を末期高齢者と言うのかとか、心配になるわけですけれども。

 次に、八ページを見ていただきたいんです。それで、都会でそういう人たちが亡くなるんです。亡くなると、八十何歳のおじいさん、おばあさんが亡くなっても、これは、お葬式、だれも来る人がいないんです。それで、地味葬という、部屋で五万円でお葬式をするんだと。これは哀れな最期じゃないかと思う。こういう哀れな老人を私は絶対つくってはいけないと思います。こういうことを真剣に考えていただきたい。過疎地の活性化等をしなくちゃいけないんです。

 そのときに、その次、手前みそになりますが、ヒントになると思うので、ちょっと資料の九ページを見ていただきたいんですが……(発言する者あり)いるから東京じゃないですか。もうがたがたになって、来るだけで、一年か二年しか……

甘利委員長 個人的にやりとりしないように。

篠原委員 済みません。

 それで、長野の特徴をちょっと見ていただきたいんですが、十ページを先に見てください、長寿、寿命がどのぐらいかというのを。長野県が男子では一位。丸の順番は一位、二位ですよ。男子では一位、女子では三位になっておるんです。それで、丸でいきますと、結構これを見ているとおもしろいのですが、大阪府、三角は寿命が短い方からで、大阪は男女とも下なんですよね、それは触れません。大阪は多分、食い倒れで生活習慣病、これはそのままあらわしているんじゃないかと。それで、神奈川県なんかは男子で五位ですけれども、これはストレスを余り感じない人がいるのかなという気もしないわけではないです。

 冗談はさておきまして、それで、長野県が男子が一位というのは、私はこれは五、六年前から知っているんですが、昔は、野沢菜にしょうゆをかけてがばがば食べて、お茶を飲んで理屈ばかりこねて私みたいなのができちゃうんですけれども、そういうので脳溢血の死亡率が高かったんです。物すごく改善されたんですが、理由は、私は素人なんですがそれなりに考えがあるんですが、それは後から述べることとして、厚生労働大臣、長野県が一位、二人足せば一位なんです。福井県か長野県が一位。どうしてこうなっているかというのを専門家はどのように分析されておるんでしょうか。

尾辻国務大臣 お話しになっておられますように、そしてお出しをいただきました資料にも出てくるわけでございますけれども、長野県は男性の平均寿命が全国第一位、女性が全国第三位、それから、資料の中には出てきませんけれども、六十五歳からの自立期間を示します健康余命が、男性が全国第二位、女性が全国第四位であります。それから、資料では、一人当たり老人医療費、順番に書いてありますから、順位四十七と書いてありますけれども、これは一番低いということでありますから、低い方からいったら一番目ということになるわけでございます。そうした数字を挙げるまでもなく、全国で有数の健康長寿県であるというふうに言えると思います。

 今、その背景は何だろう、こういうことでございますが、私が専門家であるわけでもございませんが、いろいろな御指摘がなされておるところでございまして、その主なものを申し上げますと、高齢者の就業率が全国第一位でございます。それから、公民館の数が人口比で全国第一位である。こういったようなことを見ますと、仕事や地域活動を通じ、生きがいを持って暮らしておられる高齢者が多いのだろう、こういう見方が一つでございます。

 それからもう一つ、人口十万人当たりの保健師の数が全国三位でございまして、住民の自主的な保健活動組織が活発に保健活動を行っている、これは最後に先生も御指摘になった部分でありますけれども、そういったような指摘がされておるところでございます。

篠原委員 専門家がそういうふうに分析されているのかなと。私なんかもっと素人なんですが、九ページをごらんいただきたいんです。別に長野県の宣伝をするわけじゃないんですが、ちょっと見ていただきたいんですが、今大臣お答えいただいたとおりでして、上の方に就業率、女性就業率、高齢者就業率というのがあります。要するに、今どなたかおっしゃいましたけれども、本当に、働いているということが大事なんじゃないかと私は思います。それも、年をとっても働いている、ゲートボールなんかしていない、一生懸命働いている、これが一番長生きの原因なんじゃないかと思います。それで、一番下、一人当たり老人医療費も非常に少ない、四十七位。

 そして、今度十一ページをちょっと見ていただきたい、十一ページ。一人当たりの老人医療費です。これから年金問題の延長線上で保険制度改革がございます、医療保険。これを見ていただきたいんですが、長野が一番低いわけです、五十九万六千円。一番かかっているのはどこですかね、福岡ですね。なぜですかね、よくわかりませんが、福岡が九十万。そうすると、一番の県と次の県とで三十万も差がある。それで、六十五歳の高齢者が何人おられるかというと、二千五百万人です。これを掛けると、全員が長野県人、全員が福岡県人と想定すると、七兆五千億円の医療費の差が出てくるわけです。これは、介護にも年金にも全部波及していくわけです。ですから、保険問題とか、何か、これを考えるときに、やはり根本的な問題がありまして、働いてもらう、これが非常に大事なんじゃないかなという気がいたします。

 それで、次ですけれども、農林水産大臣にお伺いしたいんですが、それにはどうしたらいいか。やはり田舎に住んでいただく、これが一番なんじゃないかと思います。そして、EUでは、田舎に住んでいただくために、農家に直接支払いというのをやっているんですよ。数字にも、ちょっと資料の中にも入れてあるんですが、大臣の方から、EUが一体、地方の援助、条件不利地域等を中心として、そういったところにどういうお金を出しているかというのを御説明いただきたいんですが、お願いします。

島村国務大臣 EUの主要農業国であるドイツ、フランス、イギリスにおいて、経営規模二ヘクタール以上の農家に支払われている直接支払いの額は、二〇〇一年でございますが、ドイツ百六十四万円、フランス百六十五万円、イギリス三百八万円となっております。これらの直接支払いの農業所得に占める割合は、ドイツ五九%、フランス五四%、イギリス七九%となっております。ただし、経営規模は、ドイツ三十六ヘクタール、フランス四十二ヘクタール、イギリス六十ヘクタールでありまして、我が国の一・五ヘクタールとは甚だしく差があります。

 以上です。

篠原委員 大臣からお答えいただきましたが、もっと明確に、数字に、十三ページを見ていただきたいんですが、農業は過保護だ過保護だということを言われておりますけれども、ヨーロッパ諸国も相当、農政はやはり難しいんです。島村大臣、同情いたしますわ。ほかの行政も難しいかもしれませんけれども、世界じゅうで農政がうまくいっている国はありません。ですから、いろいろ金をつぎ込んでいる、そして直接支払いでやっているということですね。

 それで、ここだけちょっと民主党の農業再生プランの宣伝をさせていただきますと、一兆円を直接支払いにやってもいいんじゃないかと言っているわけですね。七・五兆円と比べたらいかにわずかなのかというのを、これをちょっと後でよく見ていただきたいと思います。欧米諸国と比べてもそれほど多くやっているわけではない、出しているわけじゃないということなんです。

 それで、先ほどから話にあります、過疎地が大変だと。かつて、ばらまきとは言われませんでしたけれども、竹下内閣のときにふるさと創生資金というのがありました。あれは一年で終わったと勘違いされている方がおられるかと思いますが、そうじゃないんですね。何年続いたんですか、相当長く、十年は続きませんでしたけれども、何年も続いた。それはどうしてかというと、あのころのうるさい人たちでも、田舎には援助が必要だということを暗黙のうちに何となくわかっていたんです。それは、農業というとだめだけれども、ふるさとにお金を出すのはいいんだという。

 今、大合併が行われている。だから田舎の村が消えている。ですから、今度は、そういった田舎の過疎村とか町はなくなっているわけですけれども、過疎の集落、例えば長野、大長野市に鬼無里村とか戸隠村とか大岡村というのが合併されているんです、こういったところは、集落は疲弊しています。だから、田舎の過疎集落にどんとお金をつけて、お年寄りも住んでください、若い人たちも住んでください、足りない分は補いますという、そのような資金等をどんと出してもいいような気がするんですが、小泉総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 おもしろい、参考になる話を聞かせていただきましたが、田舎に住んでもらうということについてもいろいろ工夫しているんです。

 例えて言えば、緑の特区とかいって、和歌山、過疎地なんですね。そこに都会の、東京も大阪も含めて都会の方々に、森林の間伐事業ですか、緑の雇用というんですよ、これが意外と好評でして、もっとふやしてくれ、長く続けていってくれと。当初は短期間で時限的に考えていたんですけれども、若い人もそこに住み始めて、現地の人と結婚して子供までできている人も出てきている。東京では一クラス三十人、四十人あるんですけれども、小学校、三十人なんですけれども、私は一クラスかと思ったんですよ。そうしたら、一年から六年まで、合わせて三十人か四十人だと。だから、先生もすごい熱心なんですね。それで、もっとここに住みたいという人が出てきて、こういうのはいい案だなと。

 それで、長野の例も出しました。これは、長野は全国に比べて病院も少ない、にもかかわらず、なぜ一番長生きなのかというのを今例を出しました。そういう点をやはり参考にする必要があると思いますね。

 島根なんかも、地方の例を出しましたけれども、島根の中で、ほかの市は過疎地になっているんだけれども、ある小さな町役場のところでは、一人の役所の人が、おれはこの課でいいんだ、上に行く必要はないとか、ほかの役職につく必要はない、これに情熱を持っているんだというので、何とかこの過疎地の村をもっと活性化したいと言って、その地域はふえているんですね。

 岩手でも、花巻というと有名だけれども、その隣のところは寂れている、悔しいと言って、何とか花巻に負けないような、人口もふやしたい、地域も活性化したいというと、だんだんそうなってきている。要は、人ですね、熱意のある人。

 こういう、地方に移ってもらうような対策というのは、お話も参考にしながら、これからどんどん進めていかなきゃならないと思っております。

篠原委員 時間がなくなりましたけれども、ちょっと資料十四ページを見ていただきたいんですが、ぱっと説明いたします。

 今総理からお答えいただきましたけれども、意外と目があるということなんです。UJIターンに関する調査結果を見ていただきたいんですね。これは、農業、全体のもので農業をやりたいという人、ちょっと薄くなっちゃって済みませんけれども、一〇・六%、農業をやりたいと。それから、下は、地方圏に住みたいという人だけだと、農業、林業、水産業、こんなにやりたいと。

 それから、次のページを見ていただきたいんですが、上はいいです、下。「UIターン意向別」、Uターンしたいという人、福岡県が非常に、ふるさとを愛している人が一番多いんです、割合が。だからこれが、さっきお気づきになったかと思いますけれども、防衛大学にも自衛隊員にもいっぱいなっている。愛郷心が強いという人たちが、国を愛するとか、そういうのにつながっているんじゃないかと思います。

 ちょっと手前みそになりますが、Iターンというのは、全然関係ないのに行きたいというのは、長野がなぜかしら人気が一番なんですけれども、これだけ一つ。こういうように目があるわけです。これは何か端緒を国がつけてくれたら行くと。

 そして、大問題になるのは私の世代です。何も一期生の私ども民主党の議員が問題だと言っているわけじゃないんです。団塊の世代です。昭和二十三年生まれです。二十二年、二十三年、二十四年というのが六百八十万人いる。前後を合わせると、二十一も合わせたりすると、ちょっと少ないんですけれども、一千万人以上の人がいる。この人たちがどっと退職する。しかし、元気がいいです。六十歳以上で元気な人、その辺にうようよいます。そんな、退職するのはもったいないです、働ける。長野と同じように、働いてもらえばいい。その働ける仕組みを国を挙げてつくる、これが本当の構造改革じゃないかと思う。

 そうすると、年金問題も一挙に解決する。何とか大臣、金融何とか大臣なんて要らなくなるかもしれない。全部うまくいくようになるかもしれない。こういうことをぜひ、小泉さんも郵政改革と並んで取り組んでいただきたいということをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

甘利委員長 これにて篠原君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。

 きょうは初めて小泉首相にも質問をさせていただきますけれども、イラクへの復興支援、そしてODAの方針ということを中心に、時間があれば年金改革の大げさですが哲学ということと、教育改革について質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、イラクについてでありますけれども、先日行われました選挙、これは予想したよりも高い投票率もあり、成功裏に終わったと私自身も思っておりますが、これはイラク国民の、みずからの手でみずからの国をつくっていくんだという強い意思のあらわれだというふうに感じておりまして、そういう意味では、ああいう混乱の中でその強い意思を見せたイラクの国民の方々に心から敬意を表したいというふうに思っております。

 私自身、また民主党は、イラクへの自衛隊派遣及びその延長について反対の立場をとっておりますけれども、派遣した以上、その自衛隊の安全確保に最善を尽くすということと同時に、この選挙の成功を機会に、出口戦略、撤退戦略、その明確化、確立、この観点から質問をさせていただきたい、このように思っております。

 まず、イラクへの復興支援、これは、政府として自衛隊派遣による支援と経済援助が車の両輪だというふうに理解しておりますけれども、いかがでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 イラクに対する復興支援というのは、自衛隊は一部であります。自衛隊が出る必要がなくなって、民間の企業、民間人が出られるような状況になるように、できるだけ努力していかなきゃならないと思っています。現に、イラクの政府の人も、またサマワの住民たちも、日本の企業の能力とか電力等の事業についての技術の高さをよくわかっています。もっと企業が出てくれないかという話も来ております。

 しかし、現時点において、そういう民間企業なりが進出できるような状況にないから、自衛隊の皆さんがみずから、自己完結能力といいますか自己防御能力というのを持っているから、自衛隊の諸君にあの地域で活動していただいて、当地からも歓迎され、評価を受けている。

 今後、一日も早く、そういう自衛隊員以外の、日本のODAなり日本の企業、民間人がイラクの復興に手をかすことができるような状況にしていきたいと思っております。

吉良委員 今、総理の方から復興支援に対する基本的な考え方ということをお聞きしたわけですけれども、実際にもう援助計画ができている、またできつつあるという中でのその援助の中身について、町村外務大臣にお伺いしたいと思います。詳細は結構ですけれども、援助方針に基づいたその中身について御説明いただけますでしょうか。

町村国務大臣 現在の状況というのは、今総理がお話をされましたように、自衛隊とそれからODA、特に無償資金協力ということでやっているわけであります。十五億ドルの無償資金ということで、そのうち十四億ドルは既にお金を先方に渡した、あるいは一部着手が始まったということで動き始めていると私どもは認識しております。その中には、緊急的に必要な水道でありますとか、あるいは緊急に必要な学校の修理でありますとか、自衛隊あるいはODAの一部をそっちの方に回して、だんだん水道の方は整備をされつつあるということだろうと思います。

 これから先はだんだん、もちろん無償の中でも電力とかそういうものはやっておるんですが、これからより大規模な、電力網の整備でありますとか通信網の整備でありますとか、基本的な、基幹的なインフラ整備というものにこれからは重点が移っていく。その辺を、五十億ドルのうち残った三十五億ドルの円借を中心にやっていくことになるんだろう、こう思っておりますが、そこまで詰めた話を先方政府なり自治体なりとするほど、先方もまだそう落ちついているわけでもありませんし、まだ十分な検証ができているわけでもございません。

 日本からも既に二回、直接イラクではございませんが、ヨルダンの方に調査団を出し、そこから現地の人たちに頼んで調査を始めておりまして、どういうニーズが高いんだろうかということをやっております。ただ、現場にやはり入ってみないとわからないところもたくさんあるものですから、その辺は、もう少し治安情勢が落ちつく度合いを見ながら、次第次第にそちらの活動を活発にしていこう、かように思っているわけであります。

吉良委員 今、町村外務大臣からあった説明は、恐らく、一昨年のマドリード会議から端を発して、支援国の間で会議を重ねた結果日本も応じている、そういう金額また方針だと思いますが、今、町村外務大臣からありました、十五億ドル、そのうち十四億ドルはほぼ着手またはコミットしているということなんですが、そのうちの国際機関への拠出額、また、イラク復興信託基金への拠出額、それは幾らで、そこへの拠出が決まったプロセス、そしてどういう判断基準で決めたのかについて御説明いただけますでしょうか。

町村国務大臣 私のわかっている範囲だけで、もう少し詳しくは事務当局によければ答えさせますが、十五億ドルのうち、国際機関の方にはイラク復興関連基金というのがございまして、そこに五億ドルというものを出しております。これは、国連が管理している部分が三・六億ドル、世銀管理部分が、ちょっと端数のあれですが、一・三億ドルというぐあいになっているわけでございます。

 そのほかにも、あと、NGOを経由した支援でございますとか民間に一部出しているということで、あとイラクの方に直接、イラクの各自治体等に出しておりますのが約七億七千万ドルというようなぐあいになっております。

吉良委員 貴重な無償資金協力の中で、今指摘ありましたように、五億ドルが復興信託基金へ、それから国際機関へ等々説明いただきましたけれども、今、七・七億ドルの直接支援というものが決定されているという御説明でありました。そのうち、サマワ及びその周辺に投じられる金額はどうなっておりますでしょうか。そしてまた、その中身について説明いただけますでしょうか。

吉川政府参考人 事実関係でございますので、私の方からお答え申し上げます。

 サマワにつきましては、先生御案内のように、ムサンナ県全体に対するODAという格好で進めておりますが、これまで実施決定しました支援総額は約六千万ドルでございます。これまで無償で決めております十四億ドルのうちの約二十五分の一ということになります。人口的には、ムサンナの人口は全国の五十分の一でございますから、人口割でいきますと、平均の倍ぐらいをムサンナ県に費やしているということでございます。

 分野につきましては、水・衛生、保健医療、それから公共施設の復旧、電力、治安その他、サッカーボールを出すとか、ムサンナ・テレビの機材供与をするというようなことで、現地におります自衛隊の部隊と一緒に活動をしてまいっております。

吉良委員 この資料は届いていますね。

 今の説明で、六千万ドルということと、一部内容についても説明をいただきましたけれども、お手元の資料にもありますように、ムサンナ県に供与されている事業といいますか機材、ほとんどが供与、供与、供与、供与で、実際、必要なものではあるんですけれども、持っていって、運んで、渡しておしまいという案件が中心になっております。

 外務大臣にお伺いしますけれども、今説明を受けました金額及びその内容で、サマワ、ムサンナ県に対する援助は十分だとお考えでしょうか。

町村国務大臣 十分かと言われると、なかなか、私も答えにちょっと窮するのでありますが、これは去年の、私が大臣になった直後ですから十月だったと思います、ムサンナの知事さんがお見えになりまして、実は、もっとあれもこれもというお話をいただきました。それで、かなり私どもとしてはそれにおこたえしたつもりなんでありますが、あるいはこたえつつあったつもりなんですが、知事さんは、何だ、これきりかみたいな、若干の不満を漏らしておられた現場も実はあったわけでございます。

 しかし、これはイラクの暫定政府の方と話をすると、ムサンナ県を重視するのはわかるけれども、そんなにムサンナ県ばかりでも困るよというようなことも別途、暫定政府の方からはそう聞いておりました。

 しかし、私どもとしては、確かに供与というのは、これは何といっても無償資金でございます。これが円借だとまた話は変わってまいりますけれども、給水タンクの供与、浄水施設の供与、病院に対する機材供与、これは確かに、渡してそれまでというか、でも病院などは、自衛隊の方が行って、機材を渡し、薬を渡し、それを実際に使ってみせて指導するというようなところまでやっておりますから、ただ単に全部が全部上げてばかりでもないということではあろうかと思いますが、現状、無償が中心なものですから、どうしても供与を中心にならざるを得ないんだろう、こう思っております。

吉良委員 一方、御存じのとおり、サマワの宿営地には昨年の四月七日を初めに九件、宿営地内、宿営地外への迫撃弾またはロケット弾の着弾がございます。この迫撃弾、ロケット弾の着弾を受けまして、それぞれ、自衛隊としての防衛策、そして外務省としてといいますか、国として、サマワ及びムサンナ県に対するいろいろな働きかけ、自衛隊の安全確保策を講じておられると思いますけれども、防衛庁長官、そして外務大臣に、その具体的な対応策についてお伺いします。

 断りますけれども、せんだって、ある委員会での質問で、自衛隊の安全に関することで、防衛庁の方としては機密事項があり得るという答弁がございましたので、しゃべれない部分はそれで結構であります。しゃべれる範囲でお願いをいたします。

 外務省の方はきっちり全部お願いします。

大野国務大臣 御配慮をありがとうございます。

 昨年十二月初旬にサマワへ行ってまいりましたので、私の目で見た安全確保、現地で耳で聞いた安全確保について簡単に御報告いたしたいと思います。

 まず、宿営地内でございます。

 宿舎、隊員が休むところでございますが、完全に厚い壁、厚い屋根で囲われております。どのぐらい厚いかというのは御勘弁いただきたいと思います。

 それから、ロケットは夜飛んでまいります。九発とも夜飛んでまいりました。したがいまして、隊員にはなるべく早く宿舎に入るようにと言っております。何時から何時までは宿舎におるように。ただ、何時から何時までというのは御勘弁いただきたいと思います。

 そして、そのとき感じましたのは、長い夜を隊員はどう過ごしているのか聞きましたら、みんな、読書をしたりトランプをやったりというような答えでございました。大変厳しい生活をやっているということを御理解いただきたいと思います。

 その他、空中監視装置、それから外堀、宿営地の外に堀があったり、いろいろなさくをつくったりしております。

 それから、外での活動でございますけれども、まず、事前に情報調査をいたします、情報収集をいたします。その上で、隊員はすべてヘルメットをかぶり、そして防弾チョッキを着て活動いたしております。これまでに一発もこの自衛隊に弾を撃たれたことはない、これはもう御理解いただいているとおりでございます。

 それからもう一つは、オランダ軍、それからサマワの治安当局とも十分な情報交換をいたしております。このことは特に強調しておきたいと思います。

 それから、これからの課題といたしましては、オランダ軍がイギリス軍とかわりますので、イギリス軍と密接なる接触を続けてやっていかなきゃいけないと思っております。既に、フーン・イギリス国防大臣から、私、手紙をちょうだいいたしまして、るる説明をいただいております。

 我々の念頭には、イギリスが対迫レーダーを備えてくれるのかどうか、そして、これまでもオランダとやっておりましたが、新しい気持ちでイギリスとの間で情報交換、情報共有システムをつくっていこう、それからもう一つは、協議を密接にやっていこう、こういうことを考えております。

 そのほか、前にもお答えしておりますけれども、やはり、こうして自衛隊が現地の人の共感を呼んでいる、この点は特に御注目いただきたい。その共感がやはり治安の維持につながってくる、こういうことだと思っております。

町村国務大臣 今、大野長官が言われた自衛隊みずからによるさまざまな努力ということに加えまして、その周辺として、私ども外務省で、あるいは政府全体としてやっていること。

 一つは、今お話が少し出ましたけれども、オランダ軍千四百名にかわってイギリス軍が六百名入ってくるということ。それは、随分人数が減って危険度が増すではないかという御指摘もあろうかと思いますが、オランダ政府が議会に対して説明をしたペーパーによりますと、自分たちは一生懸命彼らを教育訓練し、彼らというのはイラク自身の治安部隊、警察とか軍とかですね、こうしたものを一生懸命訓練してきた、したがって彼らに相当能力が高まってきたので撤退できるんだ、こういう説明をしておりました。

 どこまでそれが本当に訓練が行き届いたかどうか、十分であるかどうかわかりませんが、一応、ムサンナ県には五千名のそうした治安部隊がいるという説明を私どもは受けております。

 それらの警察、治安部隊に既に、例えば、千百五十台イラク全体でパトカーを私どもは実は供与したんですが、そのうち四十台をムサンナ県に配備をしてもらうというようなこともやっておりますし、それから、今手続中でございますけれども、サマワ市内の警察署にいろいろな小型発電機とか照明器具などを、機材を供与するということもやっておりまして、これは三月中に現地に到着をして、すぐ動かせる。そのほか、実は、防弾車両を二台ムサンナ県に配備しようということで、夏までにはこれを配備するというようなこと。

 そのほか、今後新たにどういうことができるかということを、これは総理の御指示もあるものですから、今検討して、さらに追加できれば、こう思っているところでございます。

 このような形で、地元の治安能力の向上ということもありましょうが、ただ、より重要でありかつ基本は、先ほど大野長官言われたように、自衛隊と地元の皆さん方との関係、あるいは、私どもが出しております無償資金協力等によって、日本に対するいいイメージといいましょうか、頼りになるとか信頼できるとか親しみが持てるとか、そういういい環境づくりというものをバックグラウンドとしてやっておくことというのが、やはり私は、自衛隊の安全というものを広い意味で確保する有機的なバックグラウンドとして有効ではないだろうか、かように考えております。

吉良委員 今、防衛庁長官そして外務大臣からの説明をいただきましたけれども、一番新しいロケット弾の着弾というのは、御存じのとおり、ことしの一月十一日であります。昨年の四月七日から始まって、合計九件着弾があった。これは、いろいろ言われておりますように、やはりテロリストが、このサマワにおいて、住民が積極的な協力まではしないにしても、少なくとも黙認をし始めているということを意味するというふうに私は理解をしております。

 実際、私の非常に近い友人、現にアラビア語でサマワの友人から情報をとれる人たちからいろんな情報を聞いておりますけれども、今防衛庁長官の方では、自衛隊の方々が歓迎されている、歓迎されていることは確かだと思います、一定段階までは。ただ、当初の期待に比べて、日本の貢献または自衛隊の貢献というのがやはりはるかに小さい。それは、主に雇用に対する期待、経済浮揚に対する期待、それが裏切られているという結果で、サマワの住民が少しずつ離れている。このあらわれが九件の迫撃砲またはロケット弾だというふうに思っております。

 そういう意味で、私が今心配しておりますのは、先にコミットメントありきで金額がある、緊急ということで無償援助ということでいろいろな機材は提供している、だけれども、必要なんだけれども、決してサマワの人たちのニーズにはこたえ切れていないというのが現状だと思います。

 これは、民主党の党としての考え方とは多少異なるかもしれませんけれども、私がきょう総理を初め政府に申し上げたいのは、自衛隊の方々の安全確保義務があるという中で、日本独自のお金を出し得るこの無償援助、それも直接援助、これを、通常の外務省の無償援助はこういう条件だ、こういうプロセスでやっているとか、そんなことではなくて、もうなりふり構わずサマワに日本が独自で出せるお金を集中すべきなんではないか。そこで雇用創出をさせ、そして次に来るであろう、安全になってから民間が入り始めれば大型のプロジェクトがやり得る。そうなれば、今お答えいただいたような期待にこたえられるわけですけれども、今まだ危険な状態が続いているときに、八方美人的にあっちにもこっちにもと、日本の日の丸が見えない、顔が見えないような国際機関、復興基金に何億ドルも出すのであれば、それを直接サマワにぶち込んで、なりふり構わず自衛隊の安全確保に努める、これが政府の役目なんじゃないでしょうか。総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 なりふり構わずという表現というのはどうかとは思いますが、できるだけサマワの住民の要望にこたえられるような支援を、自衛隊にしても外務省にしても、よく連携をとってやっていかなきゃならない。確かに、多くのサマワ住民の期待からすれば、今までの自衛隊の活動というのが、もっとしてくれると思ったという不満はあると思います。しかし、自衛隊でできることとできないことがありますから、そういう点は承知の上で、できるだけ自衛隊、防衛庁、外務省、連携をとって有効な支援策をこれからもやっていかなきゃならないと思っております。

吉良委員 私が得ている情報では、やはりサマワ住民、それも直接自衛隊だとか外務省のスタッフに接することのできる人たちの不満というのは、日本の援助が絵にかいたもちにすぎないということなんですね。幾らコミットメントをしても、実際そのプロジェクトを発掘しそれをプロモートする民間人が入れないという中で、コミットだけはひとり歩きしている。

 一方、これはこういう場では言いづらいんですけれども、国連それから世銀を含めて、イラクの人たちは、彼らに渡るお金がプロパーそれから現地スタッフのボディーガード代にかわったり、プレゼンテーションドキュメントにかわったりして、イラクの人たちに直接その支援が行き届かないということに物すごく不満を感じているんです。それだけに、日本に対してはより直接的な支援を期待しているわけなんです。

 ところが、先ほど言いましたように、外務省は今までの支援の状況というか支援のプロセス、それを大事にするがために、絵にかいたもちで、いや、いずれこういう形で援助しますからということで説明はしているけれども、彼ら聞く方からしてみれば全くそれが実現しそうにない。今、現にそれだけの直接援助をする余裕があるのであれば、自分たちの雇用に使ってほしい、自分たちが必要だと思っている道路の補修、橋の架橋、水の供給についてはやっておりますけれども発電所の建設、こういうのに充ててほしい。そういうものをどれだけ今政府が取り上げて実施しようとしているのか。

 先ほど私が、マドリードの会議以降どういうプロセスでその金額が決まり、また中身が決まったのかということをお聞きしました。これは通常の要請主義に基づくプロセスとは全然違うはずなんです。先に支援国全体としての、総額これぐらい要るだろうというのがあって、後、そのうち日本でこれぐらい頼むと、えいやの世界なんです。そういう意味では、もうイラクに対する支援そのものが、今までの提供プロセスがこうだああだというような状況ではないと思っているんです。

 にもかかわらず、外務省は今、サマワの切なるニーズに対して、通り一遍の今までの方針ということを前面に出してこたえ切れていない。それがサマワ住民の不満につながり、それがテロリストの活動の黙認につながって自衛隊の安全を脅かしている、こういうふうに私は思っておりまして、政府として自衛隊に対する安全確保義務があるのであれば、なりふり構わずという言い方はちょっと適切でなかったかもしれませんけれども、とにかくそこに、日本で独自でできることはとことんサマワ周辺に投じていく、こういうことをお願いしたいと思っております。

町村国務大臣 今改めて、先生がお配りになった資料、あるいはもう少し詳しい資料を見てみますと、かなりそれでもやっていますよ。それは、彼らの期待値がどれほど大きかったか。それこそ日本からもうとてつもなく大きなサンタクロースさんの袋が届くかと思ったらば余り大きくなかったという、それは期待と現実のギャップはあるのかもしれません。

 今、水の方はかなりやっている、確かにそうであります。例えばサマワ母子病院に対する医療器材、これは自衛官による技術協力もついておりますけれども、これなども十分やられておりますし、サマワ総合病院に対する医療器材供与約八千六百万円とか、あるいはイラク、これはサマワ総合病院以外の病院にもやっております。救急車の供与もやっております。

 あるいは学校を見ましても、これは昨年の九月末時点でありますけれども、ムサンナ県の六十五ある学校のうち十三校が再建完了、八件再建中、十三校が入札事前審査中というようなこともやっておりますが、こういうのも、これは全部自衛隊がやるわけじゃありませんから、お手伝いはするけれども、かなり地元の企業に発注をされるというようなものもあります。

 道路改修にしても、五億七千四百六十六万円という形で、サマワ及びその周辺の道路改修あるいは舗装といったようなこと。オリンピックスタジアムの改修、これはムサンナ県じゃありませんかね。あと警察車両、消防車、防弾車両、果てはサッカーボールに至るまで、随分これはやっていますよ。それは、まだまだあれもやる、これもあると言われればそうかもしれませんけれども、なかなか、どうでしょうかね。

 それから、確かに、余り国際機関を使わずにという御意見もあろうかと思う。しかし、やはり日本が国際機関の顔を立てながら、そして、日本ばかりではなくてほかの国の支援も呼び込むために、日本は例えばUNDPにこれこれを出す、ユニセフにこれこれを出す、そしてそれを見てやはりほかの国も、じゃ、自分たちもこうやらなきゃいけないかと。

 確かに、そこに人件費がとられたりなんなりという、全部現地の人にお金が回らないという若干のデメリットはあるかもしれない。しかし、そうはいっても、やはり国際機関の、うまく諸外国の協力を引き込むという呼び水として日本が協力をするという面もあるわけでありますから、これを全部直接、ダイレクトにやればいいというばかりではやはりないんだろうと思いますね。

 まして、今後の開発といいましょうか復興というものを考えたときに、それすべてを日本がカバーし切れるものでもない。やはり国連のいろいろな機関の協力というものがなければ、イラクの復興復旧は難しいだろう。そんな先を少し考えたときに、すべて直接日本がやるというわけにもやはりいかない部分もあるんだろうと思います。

 ただ、委員がおっしゃるように、自衛隊の安全のためだから思い切ってというお気持ち、お考えも私どももよくわかるわけでありまして、そういう意味から、かなり直接的なことも先ほど申し上げたようにやっているということは御理解をいただければと思います。

吉良委員 先ほど私の方から指摘させてもらいましたように、いろいろやっているんですけれども、供与供与が中心で、サマワの住民の期待にはこたえられていないということは、再度指摘をさせていただきたいというふうに思っております。

 それと、日本全体が財政的にかなり厳しい状況にあるわけですから、あれもこれもというわけにはいかない。そうなったときに、明確な優先順位をつけるのがやはり政治の役割だろうと思っています。日本の援助は、民間が入り始めて、借款を含めて本格的な援助が始まれば、必ず感謝されます。それだけの実績を日本はイラクで、または中東地域でつくり上げております。

 したがって、ここは、限られた資源をまずは自衛隊の安全確保に努めて、治安が改善し、日本の民間が中心となった援助ができるようになれば、当然そのときには自衛隊を撤退させられるわけですから、まず自衛隊の安全に貴重な資源を使うべしということを指摘して、次に移らせていただきたいというふうに思います。

 続きましては、常任理事国追求とODA方針ということなんですけれども、まず、また外務大臣になろうかと思いますが、外務大臣、国連安保理の常任理事国を追求していくという方針は、もう政府としての確立された方針である、このように理解してよろしいでしょうか。

町村国務大臣 これは、昨年九月の国連総会におきまして小泉総理が、日本はその資格があるしまた意欲もある、責任を果たす決意であるということを明確に述べ、その他いろいろな機会、私も、個別にいろいろな外相会談等々の場でそのことは随分はっきりと申し上げております。

 先般、一月の下旬に国連の総会がありまして、これは各国の常駐大使が九十四カ国前後発言をして、この国連改革、なかんずく常任理事国の問題について発言をしておりますが、そのときにも日本は、この国連改革の中で、特に常任理事国についてはモデルA、Bというのがございますが、モデルAを支持するというようなことで、非常に明確にそこは言い切っております。

吉良委員 この十七年度の予算案の中で、その常任理事国を目指すという具体的な活動方針が予算の中でどう反映されているんでしょうか。御説明をお願いいたします。

町村国務大臣 直接的にこの予算がということは別に明示をされてはおりません。

 ただ、いろいろな国際機関の活動に対する協力という面では、率直に言って、これは国会の中でも、国際機関に対してお金の出し過ぎではないか、これだけ財政厳しいんだからもう引き揚げたらどうかという相当強い御批判、御意見もあることを承知しておりますが、その中で、私どもとしては、厳しい財政の事情のもとではありますが、できる限り、そうした国際機関への拠出。

 あるいはODAの予算、これにつきましては、確かに前年と比べますと三・八%減ではございますが、これは、先般御承認をいただきました十六年度の補正予算の中で、PKOを初めとするODA予算、PKOの予算あるいはODAの予算がその中に入っております、例の津波対策なんかも含めてですね。それらを見ると、ようやっと下げどまり、このところちょっと減ってきているものですから、下げどまり感がこれでできたかな。

 今後は、これをきっかけとして、ここから先に行くと、もうお立ちになってしまった財務大臣は、そこまではおれは言っておらぬぞと言われるかもしれませんが、幸いなことに、谷垣大臣もう外国へ向けて今出発されましたから、鬼のいぬ間にというわけじゃございませんが、私ども外務省としては、できる限り今後ODA予算についても、できるだけこれを確保する努力をしていきたい、今後よく政府部内で議論をして煮詰めていきたい、かように考えております。

吉良委員 厳しい財政状況の中での外務省の胸のうちを聞かせていただいたと思いますが、お手元にお配りした資料がございます。

 これは、主要先進国のODA実績の推移で、それを見たら一目瞭然のごとく、日本だけが減額という形になっております。

 それと、今の答弁の中でも、じゃ、常任理事国を目指すということでの具体的な方策についてまではお聞きできなかったんですが、全体としてここまで下がると。

 それから、国連の要人、ちょっと名前を忘れましたけれども、そしてコロンビア大学の教授も、せめてGDP比〇・五%はとか、〇・七%までは、そういう発言がある中で、こういうデータが現実問題として出ているわけなんですけれども、こういう状況の中でも、その常任理事国を目指す、それが具体的な政府の活動として、また予算としてあらわれているというふうに断じられるんでしょうか。もう一度、外務大臣、お願いします。

町村国務大臣 委員御指摘のように、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、このODAのGDP比〇・七%を二〇一五年までに達成する、そういうコミットメントをしたらどうかという勧告が出された、報告書が出されているわけでございます。

 日本として、今〇・七というのは、率直に言ってこれは極めて厳しい目標になってまいります。ただ、これはGDP比で見るのか、あるいは絶対水準で見るのかという議論、両方あると思うんですね。だから、アメリカとか日本のように大変GDPの大きな国は、これを〇・七というと大変な金額になってまいります。現在の日本は〇・二%、アメリカは〇・一四%ということでございますから、それでも絶対額でいえば一位がアメリカ、二位が日本という関係がありますので、私どもとしては、国際的な責務というものは十分果たしているとは思っております。

 思っておりますけれども、今委員、図でお示しをいただいたように、各国ともこの何年かずっとODAが増加傾向にあります。日本がちょっと下がっているのが、したがって非常に目立つ。これは日本の財政事情の厳しさ、そんなお金があるんだったら外国に持っていかないで、うちの県に、うちの町にという声だってそれは確かにあります。私も、北海道新幹線をぜひお願いしたいと言って、ODAとともに谷垣大臣に北海道新幹線をよろしくというお願いもしたものですから、いささかそれは、外務大臣としてはまた裂き状態になってしまうこともあるわけでございます。

 いずれにしても、厳しい財政事情の中で、これはプライオリティーのつけ方ということになろうかと思います。私どもとしては、今後、閣内でよく議論をして、このGDP比率もこれ以上下がらないように、願わくば少しでも上がっていくように努力をしていきたい、こう思っておりますが、一遍に、急に、コンセンサスがまだ今とれているわけじゃございません。今後、関係閣僚でよく議論をしていくべきテーマであろう。

 それを、今回の、特に九月のサミットの集まる場というものが常任理事国入りの一つの大変大きな山場でございますから、それに向けて、今後、日本国としてこのODAをどうしていくのかということはよく議論をして、私、外務大臣の立場では、何らかの新しい方針が決められればいいな、かように考えているところでございます。

吉良委員 こう言っています民主党自体も、民主党が出した独自の予算案の中で、民主党としては、国際貢献の必要性は十分強調しながらも、やはり財政規律重視という観点で削る予算案を出していますので、党としてそのことは言えないんですが、私自身は、今の政府というのは、先ほど言いましたように、なりふり構わずという言い方は適切ではなかったかもしれませんけれども、優先順位を明確にする必要があるんだろうと。

 ですから、私も、未来永劫ODA予算を伸ばしていけ、こういうふうに言うつもりはないんです。ただし、この安保理改革というのは、限られた時間しかない中で、そのときだけは、時限立法じゃないですけれども、緊急避難的にそこだけは増額をする、そのかわり来年以降は必ずまた削りますとか、そういうようなめり張りのきいた予算をつけてもいいのではないか、こういうことを指摘させていただきたいというふうに思っております。

 きょうは基本的質疑ということで、一般質疑の中で、ODA、経済外交のあり方についてはまた質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 次に、年金改革についてというふうに申し上げましたが、年金改革についての細かなことを議論するつもりはございません。私がちょっと指摘しておきたいポイントは、民主党が提案をした消費税の目的税化による、今でいえば基礎年金、民主党案では最低保障年金、これはやはり社会の構成員全体で支えていくという税方式でやっていくべきだということをまず申し上げたい。

 それからもう一点は、これは私の持論なんですけれども、戦後六十年が経過して、この国はほぼ四世代が同居する社会になっております。そして、今の七十過ぎ、六十五以上になりましょうか、特に七十過ぎの高齢者については、あの戦争というものを経験して、自分の人生があの戦争によってゆがめられた人も大勢いる。また、戦前の家長制度の中で、やはり家業を継いでいくという習慣が残っていた中で、自分の人生は必ずしも自分だけで切り開けなかった。そういう世代が一方でおり、しかも、その世代が本当に土曜も日曜もなく働き続けて今の豊かな日本がある。一方、その方々が築いてくれたインフラの中で、私どもを含めて、豊かな社会に生まれ育った世代がいる。

 こういういろいろな時代背景を持った世代を全部一つの制度でマネージしていこうなんて、これはしょせん無理があると私は思っております。

 基本的な考え方は、今申し上げましたように、国の行為によって自分の人生が切り開けなかった今の高齢者に対しては、私は、とことん国が面倒を見ていくといいますか、国が手を差し伸べ続けていく。一方、豊かな時代に生まれ育った若い世代は、自分の人生、その気になればどれだけでも切り開けたわけですから、やはり自己責任で、自分のことは自分でマネージしていく、自立していく、これが原則であるべきだというふうに思っているんです。

 したがって、今の高齢者、よく批判があります。今の高齢者が一番お金を持っているんじゃないかとか、高度成長に乗って一番得をしたのは高齢者じゃないか、こういう意見もありますけれども、でも、先ほど言ったような時代背景を考えれば、まずは国が責任を持つ、その中でとことん裕福な方々がいれば、またいろいろなお願いをして、特例でもって、まあ特例を受理してもらう。一方、若い世代については、基本的には自己責任を前面に押し出して、その中でもどうしても切り開けない方々に対して手を差し伸べていく。こういうふうに、四世代も違う時代背景をしょった世の中で、一つの制度ではくくれない。世代によって扱いが違って当然、それは正当な、それこそ公平だというふうに私は思っています。

 そういう中での年金の議論であり、社会保障の議論であるべきだ、このように思っておりますが、小泉首相、それから尾辻大臣のコメントを聞きたいというふうに思っております。

小泉内閣総理大臣 民主党の方々も幅広い意見を持っておられるようでありますが、それだけに年金の問題は難しいんだと思います。

 公式的に民主党の考え方というのは、国民年金それから厚生年金、共済年金とを一元化しようということでありますが、今、若い人たちは独自のものを持つべきだ、四世代、違う考えなんだからということでありますが、そういう意見があるのも承知しております。

 しかしながら、現在、民主党が提案している年金一元化を含んでこれは協議しよう、そういう方向だと思うのでありますので、今さまざまな議論がある中で、果たして、そういう若い人だけが自力でやっていけるような形を議論すればいいのか。その自力でやればいいということはどういう考えか、まだはっきり御意見を聞いたわけではありませんが、例えば確定拠出年金みたいなもので公的年金の部分は減らしていくべきだという考えもあります。あるいは、生活保護は弱者に対して、あるいはどうしても自力ではできない人に対しては生活保護という部分だけで、これは税を投入しなきゃならないけれども、ある程度余裕のある人は自分で貯蓄なり投資なり民間の保険でやれという考え方もあるのを承知しておりますが、今の前提において、与野党の中では一元化を含んでという議論がありますので、そういう中でそのような考えを入れていくとなると、これはなかなかまた議論が収れんしていかない部分があるんじゃないかと思っております。

 まずは、政府としては、共済と厚生、これの一元化を目指していこう、そして国民年金の部分についても納税者番号とか、民主党が提案されております、国民年金も厚生年金も全部一緒にしろという考え方に対してどうかという要求をされておりますので、そういう点も含んで、これから胸襟を開いて議論した方がいいんじゃないでしょうか。

 御意見は御意見として、私は理解できます。四世代も一緒の中でずっと一本にするのは難しい、難しいから今までできなかったんですから。そういう点もよく考えて、これから年金の議論の場において、率直な意見交換ができる場を早く民主党も考えていただければなと思っております。

尾辻国務大臣 年金制度、各世代ごとの時代背景を踏まえて制度を検討すべきであるというお考えについては、各世代が制度の意義、役割を十分理解して、納得して参加していけるようにするという上で、一つの大事な視点だと思います。

 ただ、先生、四つの世代が今、日本に生きているからとおっしゃって、その後の具体的なお話を余り伺っておりませんからよくわかりませんけれども、もし、それが四つの制度にしようというようなことではないですよね。一元化ということで考えておりますから、その四つの世代をどういうふうにうまくつなぐかというのは非常に大事なポイントになるだろうというふうに思います。

 またいろいろ御意見を聞かせていただきたいと存じます。

吉良委員 今、最初に私が申し上げたのは、この日本で生きる以上、先ほど言った、消費税を目的税化することによって、最低限はどの世代も安心をかち得るということは大前提の上で、その二階建て、三階建ての部分についての意見を申し上げたということで、民主党の考えをベースに協議をしていきたい、このように思っております。

 あとちょっと、教育問題、また国際災害、復旧について意見を申し上げたかったんですが、次の一般質疑に譲らせていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。

甘利委員長 これにて吉良君の質疑は終了いたしました。

 次に、永田寿康君。

永田委員 政治と金の問題をいろいろやりたいんですけれども、冒頭、ちょっと一つ気になるニュースが飛び込んできたので、一個だけ触れさせてください。

 南野法務大臣、いらっしゃいますね。けさの閣議後の記者会見で、三井環容疑者が収賄罪などに問われた大阪地裁の判決を受けて、検察の調査活動費の実態解明が必要だと判決文の中で指摘をされたにもかかわらず、大臣は、この地裁からの指摘について、私としては予算は適正に執行されていると思っている、現段階で法務省として調査しようとは考えていない、このようにお述べになっていますが、この考えは今でも変わりませんか。

南野国務大臣 私の申し上げたことはそのとおりでございますが、検察庁の予算は適正に執行されているものと考えておりますが、今後とも、国民の誤解を招かないよう、適正な執行を確保していくことが必要と考えております。

 そのような観点から、検察庁の調査活動費については、事前事後のチェック体制を整えるなど、これまでにもさまざまな工夫をしてきたものと承知しております。

永田委員 検察の調査活動費の実態解明が必要だと裁判所から指摘をされたのに、そのように指摘をされたのに、過去の事例ですよ、恐らく三井氏が告発をしようとしたあの件について、一切調査をする必要がないという立場をとっておられる。

 しかし、大臣、ちょっと聞いてください、これは外部の者にはうかがい知れない話なんです。国民の税金が投入されているのに、一切合財が秘密のベールに包まれていて、そして、秘密が秘密である理由まで秘密になっている。我々ですら知ることができないようなことなんです。これは、法務省がきちんと調査をしなかったら、野放しになっちゃうんですよ。

 大臣は今、力強く、予算は適正に執行されているというふうにおっしゃった、断言された。そして、国民の誤解を招かないようにとおっしゃったけれども、結局、みんなから思われている、この調査活動費に向けられている疑い、そして三井氏が話そうとしたことは、これは単なる誤解で片づけようとしているんですか。裁判所が実態解明が必要だと言ったのに、それは単なる誤解だというふうにおっしゃっているんですか。大臣、もう一度そこの部分を答弁してください。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 検察庁の調査活動費は適正に執行されているものと考えております。現段階では、特に法務省として調査することは考えておりません。

 最高検察庁では、監察担当検事を置き、調査活動費その他の経費の執行等に関する監査を実施して、検察庁における予算執行等についての監査体制を強化いたしております。

永田委員 漏れ伝わっているところによると、政治と金の問題は集中審議の時間がどうやら設定されそうなので、そっちに私の質問は回せますから、この問題もう一回聞きたいんですけれども、大臣、なぜ疑いが持たれている予算が適正に執行されたと信じているんですか、その根拠。なぜそういうふうに考えているのかという根拠をお示しいただきたい。

 わかりますか、大臣。大臣、私の話を聞いてください。役人の話ではなくて、大臣、私の話を聞いてください。なぜ適正に執行されていると信じているのか、その信じている根拠をお話しいただきたいと思います。

南野国務大臣 お答えは同じになるかと思います。

 検察庁の調査活動費は適正に執行されているものと考えております。現段階では、特に法務省として調査することは考えておりません。最高検察庁では、監察担当検事をもうちゃんと置いております。調査活動費その他の経費の執行等に関する監査を実施して、検察庁における予算執行などについての監査体制を強化いたしておりますので、信用するという段階でございます。

永田委員 それがどうだっていうんでしょうか。

 もう一度お尋ねします。それが何だっていうんですか。答弁になっていないんですよ。答弁になっていないんです。それは私の質問に答えたことになっていませんから、それが大臣の本当のお答えとどのような関係があるのか、お尋ねいたします。だからどうだっていうんですか。

 大臣、それがどうだっていうんですかというのはどういう意味かというと、私が求めている答えとは全然違うことをお話しになったので、私が求めている答えと今のお話がどのような関係にあるんですかという、そういう質問なんです。わかりますか。

 だから、同じ答弁にはならないはずですよ。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛に。与野党とも静粛にしてください。

永田委員 大臣、過去に執行された検察の予算です、この調査活動費というのは、過去にですね。疑惑が指摘されたから新しい監察体制を置いたとか、それは今後はある程度適正に執行される、そういう信頼度は高まるんでしょう。しかし、過去にはそういうものはなかった。そのころはひょっとしたらむだがあったのかもしれないというふうに現場の担当者がまさに告発をしようとした、そして逮捕された。私たちもここは十分疑うに足る理由があるというふうに思っています。

 しかし、大臣は、過去のことに対して、裁判所が判決文の中で、これは実態解明をする必要があるというふうに指摘を受けたにもかかわらず、過去のものについても適正に執行されたと信じているとおっしゃる。ならば、監察体制が強化される前の予算について適正に執行されたと信じるんだ、そういうふうに断言するんだったら、信じるに足る根拠があるでしょう。なぜそういうふうに信じているのかということをお話しいただきたいんです。

 ぜひ大臣、前の答弁と同じことにはならないと思いますよ、繰り返しにはならないと思います。ぜひ、どうしてなのかということを答弁してください。

南野国務大臣 先生の質問に対しての答弁でございますが、検察庁の調査活動費は適正に執行されているものと考えており、これは私が考えているということでございます。現段階では、特に法務省として調査することは考えておりません。

 それは、先ほど申したとおり、最高検察庁では、監察担当検事を置いて調査活動費その他の経費の執行に関する監査を実施して、検察庁における予算執行等についての監査体制を強化しているからであります。

永田委員 ちょっと一言言わせてください。

 大臣、なぜこういう執拗な質問が出るかというと、事情をちょっと説明しますと、仮に予算の執行が不適切だった場合、困るのは法務省なんですよ。そうですね。その困る立場の法務省がみずから調べた結果適正でしたというふうにおっしゃるのは、普通の人だったら信用できないと思うのは当たり前ですよ。

 それは、要は裁判でいえば、被疑者が自分の行為を、過去を調べてみたところ、違法な行為は一つもありませんでした、私は無罪ですと言っているのに等しいんですよ。それは判断とは言わないし、調査とも言わないし、それを信じる根拠があるんだったらぜひ示していただきたいけれども、示せないんだったら、そんなものは信じちゃだめですよ、法務大臣。

 やはり、こうこうこういう調査をしました、それは総理、人ごとじゃなくて、後から聞きますけれども、自民党内でどうして迂回献金がないと思ったのかという調査についても同じことが言えるんですよ。そういう、我々から指摘された事項があったら困るのは、まさにあなた方でしょう。その人たちがみずから調べたことがどれほど信用のあるものかというふうに議論されているんですよ。

 大臣、誠実に御答弁ください。これは大変大切なことなんです。大臣、本当に、伏してお願いしますから、なぜそういうふうに信じるに至ったのか、その根拠、理由を示してください。そうじゃなければ、大臣の言葉を我々は信じることができないんです。信じたいんです、大臣の言葉を。だから、十分に信じる根拠を示してください。

南野国務大臣 私は、自分の考えで申し上げておりますし、自分はこう信じているから申し上げているところでございます。

永田委員 質問というよりは発言ですけれども、信じているからいいんだというのであれば、例えば裁判所で、私は私の無実を信じている、だから私は無実だと言われたら、どうやって裁くんですか、その人を。

 それはちゃんと、検察側がそれは疑うに足る部分があるでしょうと言い、弁護側が全力を尽くしてそれを弁護する、その中で、どう考えてもこれは弁護できないという状態に至ったときに初めて人は有罪になるんですよ。一片でもその人を有罪にすることはできないという疑いがあったら、それは無罪になるというのが裁判なんですね。だから、お互いやりとりをするわけですよ。私はこういうような理由で有罪だと思う、私はこういう理由で無罪だと思うという議論をするわけですよ。信じているから無罪だという話がどこの世界に通るんですか。

 私は、これ以上質問する義理はないと思います。大臣、答弁を修正するまで私は質問の権利を留保したままここに座り続けますから、大臣、誠実な答弁が用意できるまで全力を尽くしてください。

甘利委員長 答弁をいたしております。質問を続けてください。永田君、質問を続けてください。(発言する者あり)静粛に。静粛に。小泉君、静粛に。議事整理権は私にありますよ。出ますか、あなた。

 南野法務大臣、南野法務大臣、答弁をしてください。(発言する者あり)静粛に。

南野国務大臣 お答えいたします。

 検察庁の調査活動費は適正に執行されているものと承知しており、現段階では、特に法務省として調査することは考えておりません。

 なお、事前事後のチェック体制を整えてまいりましたが、これも、これまでにもいろいろな工夫をしてきておりますが、今後もなお一層これらを真剣に取り扱うものと考えております。

甘利委員長 永田寿康君。(発言する者あり)

 もう一度南野法務大臣に答弁してもらいます。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 現在まで最高検において監察を行っていましたが、不適切な点はないと承知しております。それが理由です。

永田委員 では、お尋ねいたしますけれども、最高検の監察がいつから始まったかといったら、ずっと昔からやっているわけですよ。それでも、この三井氏が指摘をしようとした調活費の疑いというのは出てきた。そして、大阪地裁ですかの判決にもやはり指摘をされるようになった。ということは、最高検だけでは、調活費の適正な執行を信じてはいけないということを示しているんじゃないんですか。それだけを信じて、いいんだというのであれば、これは大臣、やはりそれは信じちゃいけないことを信じているということになりますよ。最高検の監察が十分に機能していたかどうかが問題なんですよ。

 だって、これは昔からずっとやっているんでしょう。なのに、昔からやっていることが今でも機能していると思っている、あるいはあのときも機能したと思っている。それは、やはりおかしいんじゃないですかね。だったら、これは指摘されたのがおかしいということになっちゃうじゃないですか。ほかにも理由が必要です。もう少し補足の答弁を、ぜひお答えいただきたいと思います。

南野国務大臣 お答えいたします。

 現在まで最高検において監査を行っていましたが、不適切な点はないと承知しております。今後さらに検討してまいります。

永田委員 同じ答弁をされたので、質問を繰り返すこともないので、それは、要はそれを信じることが妥当かどうかという議論をしようとしているわけで、最高検の監察はずっと昔から行われている。それでも問題があると指摘をされた。それでも信じるに足ると考えている大臣の気持ちは改めてお伺いしますし、総理、一つお伺いしたいんですけれども、もう少しましな人材は自民党にはいないんでしょうか。まともな議論が、かみ合っていない。

 総理、任命権者ですから、ぜひお伺いをしたいと思う。総理、お答えいただけますね。ちゃんとした自分の考えがお答えいただけない、そして、根拠にならない根拠を根拠だとおっしゃる。総理、任命権者としてのお気持ちもあわせてお答えください。

小泉内閣総理大臣 南野大臣は、長年看護婦をされ、努力し、選挙民の審判も受けて当選され、国民の支持と多くの方々の信頼を受けて国会議員として活躍されてきた方であります。そして、今法務大臣として努力されておりますし、私は、極めて優秀な、能力のある人物だと思っております。

永田委員 では、法務大臣、もう一回質問を繰り返しますけれども、最高検の監察が信じるに足ると考えている理由をもう一回述べてください。

南野国務大臣 お尋ねの件につきましては、かねて検察庁として調査をしております。この結果を後日理事会に文書で報告したいと存じます。

永田委員 理事に敬意を表して、満足いく報告書が来ることを期待して、ちょっと質問続けますけれども、大臣、ぜひ気をつけてください。大臣、ちょっと聞いてください。

 報告書をつくるときに本当に気をつけていただきたいのは、なぜ三井氏が指摘をしようとした部分が大丈夫だと思ったのかという十分な、だれが読んでも納得するような、まあ、だれが読んでもといっても百人が百人というわけにいきませんよ。だけれども、大半が納得をするような、そういう報告をぜひ期待しておりますので、気をつけて書いていただきたいと思います。

 それから、総理、以前予算委員会で質問したときに、同じく自民党の迂回献金問題を私取り上げました。迂回献金があるんじゃないかというような指摘をして質問したわけですね。そうしたら、総理は私の目の前で、では幹事長に調査をさせるとお約束をされました。そして、私そのときに、予算委員会と理事会に報告をしてくださいというふうにたしか申し上げたと思います。しかし、正式な形での報告はまだなかったというふうに思っています。なぜ報告されないのか、まずそこの、なぜ報告を省いているのか、それを教えてください。

小泉内閣総理大臣 今まで何回も同じ質問ですから同じ答弁しかないんですが、しっかりと私答弁していますよ、委員会で。

 いわゆる迂回献金あるかどうかの調査については、幹事長のもとで、国会や報道で取り上げられた件に関し、必要に応じて資料の収集、聞き取りなどを行い、調査を行ったと聞いている。そして、調査の結果、自民党が政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はないと報告を受けているわけであります。

永田委員 その調査の中身について具体的に踏み込んで質問をしていきたいんですけれども、まず、総理の御本人の認識をお伺いしたいと思います。

 いわゆる迂回献金と呼ばれるものがありますね。AさんからBさんに直接資金を渡したいのに、途中に別の政治団体などをかませて、Aさんから別の政治団体に渡して、別の政治団体がここに渡るように先に仕組みをつくっておいて献金をする、そういうようなことが迂回献金と世の中の概念としては言われているわけですよ。これは政治資金規正法上、合法だと思いますか、違法だと思いますか。

小泉内閣総理大臣 いわゆる迂回献金はあってはならないものと思っております。

 自由民主党の場合においても、恐らく民主党におきましても、いろいろな団体から政治献金を受けています。そして、その資金というものを、党としては、政治活動費にしても組織活動費にしてもいろいろ支出している。これがどの議員に与えたかどうかということについて、さまざまな献金がありますから……(永田委員「違法か合法かと聞いているんです」と呼ぶ)だから、いわゆる迂回献金というか、この人にと、そういうのはあってはならない、違法である、そういうのはあってはならないと私は思っています。

永田委員 私の認識とちょっと違うんですけれども、形式的にお金を回すこと自体は、法律的には可能なんですよ、私の認識は。

 だけれども、問題なのは、今、AさんからBさんにお金を渡そうとしたという話をしていますね。間に別の政治団体をかませたから、AさんからBさんに直接お金が行ったように見えない。これが何が問題かというと、AさんとBさんの間で贈収賄事件が立件されようとするときに、間に政治団体がかんでいるから直接的な資金のやりとりがない。だから、何かBさんがAさんに対して政治的な便宜を図ったということが事実だとしても、AさんからBさんに対してお金を渡したという事実が立件できないから、贈収賄にできないんですよ。それが問題なんですね。

 だから、贈収賄とかが関係なければ、お金を渡すこと自体は、法律上は僕は許されていると思っているんですよ。総理は今違法だというふうに答弁されたけれども、それは違うんですね。

 そこで問題になるのが、総理がたびたびこの迂回献金問題、ちょっと総理、聞いてください。総理、お役所の方とお話が終わった後に聞いていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。(発言する者あり)理事が待ってと言っているんで、ちょっとだけ時計とめていただいてもいいでしょうか。

 総理、問題なのは、今言ったように、お金が単に動くことではなくて、贈収賄との絡みなんですよ。そういうことからすると、総理が迂回献金の問題を答弁するときにたびたび言われる、政治資金規正法に違反するような迂回献金はなかったと承知していると言うけれども、迂回献金そのものが政治資金規正法上僕は違反していないと思うんで、そういう限定がつけられると全部オーケーになっちゃうんですよ。

 だから、いわゆる迂回献金という部分だけで答弁していただきたいんですけれども、つまり、AさんからBさんに渡ることを前提として、間に自由民主党に渡されたこういうお金、それはあったかなかったか。指定献金と呼んでもいいですよ、あったかなかったか、それをちょっと答弁してください。違法かどうかは問わないです、ここでは。形式的にあったかなかったか、それだけお願いします。

小泉内閣総理大臣 自由民主党においては、いわゆる迂回献金はないということでありますが、違法かどうか、これは実際の贈収賄の事件において、個別の案件によって違ってくると思います。

 政治献金を受ける自体は別に違法でもない。ただ、どういう請託を受けて、政治資金規正法に違反するかどうかというのは、これまた個別の案件で違ってくると思いますが、その点は個別の案件じゃなきゃわからないんじゃないですか。もちろん、政治献金というのはいろいろな団体から来ていますから、まじっている場合もあります。これを、色はついていませんから、自民党を含めて各党はいろいろな団体から政治献金を受けているとします、そうすると、各議員に公認料だろうが活動費だろうが、当然党として議員には活動費を渡します。それが、あなたはこの団体からの献金だろうということは、これはないでしょう。それがいいと私は思いませんね。

永田委員 では改めて、幹事長がなさったと言われる調査、さまざまな資料を収集し、関係者から話を聞いたといいますけれども、どのぐらいの範囲の人にお話を聞いて、どのぐらいの資料を集められて、それの結果がどうだったのかということをできるだけ具体的に詳しく、抽象的なことは短くていいです、具体的な部分はたっぷり時間をとってもらって構いませんから、具体的な部分を、調査をした手法ですね、どういう調査をされたのかということをぜひ御答弁をお願いします。

小泉内閣総理大臣 それは政治資金規正法にのっとって必要な事項は記載すべきと、そして、必要でない事項は記載しなくていいと。これは各党同じですよ。それは理解できると思うんです。自由民主党は銀行への振り込みをやっていますから、銀行への入金状況の確認なども行ったと聞いています。

 ですから、必要な事項は全部公表していますから。それを、必要とされていない事項を、何調べるといって、もし各党がそれをやり出したらどうなんですか。政党活動の干渉でしょう。今、私は……(永田委員「いや、そんなことは言っていない」と呼ぶ)だから、それは当然でしょう。(永田委員「その調査はどうなっているか」と呼ぶ)調査は、公表すべき資料は全部公表しているんですから。

 これをやり出したら、各党それは、政党活動というのは、各党の立場がありますから、私の活動は人に知られたくない、政党の活動は、ほかの人のことを考えて、この活動が知られたら不利になる、有利になるという立場がありますから、それは、記載する必要ない事項もあるというのが政党の活動の自由を保障しているんじゃないですか。それは、必要な事項以外の事項を記載していないから、あんた、不正をやっているというのは、これは誤解じゃないですか。

永田委員 今、具体的な調査手法として述べられたのは、銀行振り込みだけでした。銀行振り込みだけを見て、迂回献金があったかなかったか判断できるでしょうか。振り込んだという事実しかわからないんですよ。もらった人が、自民党にお金をくれた人が、これは自民党所属議員何がしに渡してくれという約束のもとに渡したんだ、あるいはそれが実行されたんだということを確認する上で、あるいはそういうことがなかったということを確認する上で、銀行振り込みだけを見たんじゃだめなんですよ。ほかにも見なきゃいけないことはいっぱいありますよ。例えば何を見たんですか。

小泉内閣総理大臣 それも含めて、何を見たか、だれからの聞き取りをやったか。それはいろいろな関係者から、この国会の議論を通じた問題、新聞の報道等の問題、そういうのをよく勘案しながら聞き取り調査もしました。そして、現に、いわゆる、今言われたような事案に関する党の調査報告については既に提出しているんですよ。これを全部読むのは大変ですからね。これをよく読んでください。これは理事会に提出しますよ、理事会に。ちゃんと調査報告出しているんだから。それで検討していただければいいと思うのです。

永田委員 恐らく、理事会に今から出しますとおっしゃられたから、理事会にはまだ出たことはないんだと思うんですけれども、報告をするというのは、理事会とか委員会に出して初めて報告なんであって。

 総理、要は、調査の結果がどれぐらい信憑性があるかということは、どのような調査が行われたかと密接な関係があるんですね。ずさんな調査をしたんだったら信じることはできないし、きちんとした調査をしたんだったら信じることはできるわけですよ。

 それは、南野大臣の先ほどの調査活動費の話と同じなわけですよ。昔から行われている最高検の監察等、それを信じていた。だけれども、その中でおかしな疑惑が起こったかもしれないと言われたわけですよ。それと同じように、じゃ、監察というのはひょっとしたら調査としては不十分なのかもしれないと我々も信じるに足る合理的な理由が僕はあると思うんですね。

 総理、同じく自民党の調査についても、どういう手法で行われたのかというのは非常に重要な問題なんです。きちっとやっていればいいと思うんですよ。僕は、総理がそうおっしゃるんだから、今のところはそう信じたい。信じたいから、私の気持ちをそう信じるようなところまで持っていってほしいんですよ。それにはどうしても、どういう手法で行われたのかという説明が欠かせないんです。

 それを一つお願いをするのと、もう一つ。この迂回献金については、総理、幾つか重要な事実が判明しています。それは、やはり、自民党の経理の事務方のトップである元宿さんという方が、迂回献金はあったと公的機関に証言をしている。あるいは、鈴木宗男氏が、これは指定献金という名前だけれども、指定献金という名の迂回献金は常態化していたというふうに我々の前でも証言された。私の目の前でしゃべっていました。そして、加えて、この間も、石原伸晃議員には申しわけないけれども、彼みたいに、お金の動きがどうも迂回献金に相当するんじゃないかと思われるような客観的事実も存在する。

 そして最後に、総理、私が指摘をしたいのは、昨年の八月十七日です、たしか。私、日本歯科医師連盟の本部に行って、今の日本歯科医師連盟の会長である大久保さんという方と直接お話をしました。そこで僕は彼に直接聞いたんです。自民党を使った迂回献金、ありましたねと聞いたら、大久保さんは、ありましたと答えました。そして、今後どうするんですかと聞いたら、もうやりませんと言ったんですね。今までどんな人に迂回献金してきたんですかと聞いたら、捜査当局に資料を押さえられたから全部は特定できないけれども、幾つかのものは特定できるケースもあるとおっしゃったんですよ。これは、僕の目の前で明確におっしゃった。これは、つまり総理、迂回献金があったんではないかと疑うに足る十分な証言があるんですよ。

 それに対して、総理、調査で結果的になかったというふうに言い張るのではなくて、これは一個一個反証が必要です。この人は、例えば、鈴木宗男さんはこう考えているけれども、鈴木宗男さんのケースは何月何日のどういうお金の動きのことを言っているので、それは本来の我々の思いとは違うものだから迂回献金とは呼べないんだ、あるいは大久保さんも誤解している、このようなことを一個一個反証する必要があります。

 なぜか。調査というものは必ず漏れがあるからなんです。自民党の幹事長がやった調査であっても、それは天網恢々何たら漏らさずといいますけれども、必ず漏れはある。その漏れた中にひょっとしたらこの鈴木宗男さんのケース、大久保さんのケース、元宿さんのケースがあるかもしれない。

 だから、一個一個反証が必要なんです。それを調べて反証する責務が自民党総裁にはあると思います。百歩譲って、自分ではできないかもしれないけれども、幹事長なりに命じてしっかりこれを反証する義務が僕はあると思います。ぜひその指示を出していただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、私は、あの週刊誌の記事について、私は読んでいませんから承知していませんけれども、こういうことについて幹事長によく調査するようにということで、調査の結果の報告を受けているわけです。具体的な事実の指摘があれば、私は、幹事長にもよく調べるようにと。

 しかしながら、そういう調査の結果、そのようなものはないということを報告を受けていますし、報告書を提出していると聞いています。だから、これから、ないと言うんだったら、改めて理事会に報告書を提出しますよ。

永田委員 総理、くれぐれも申し上げたいのは、これは一個一個の事実について反証が必要だということなんですね。必ず調査には漏れがあるので、そういう観点で、反証になるような調査をした上でやっていただきたいというふうに思っています。

 最後に、では、短い質問を一個だけして終わりにしたいと思いますが、山崎拓補佐官の経済的な報酬、給料について通告をしていると思いますので、具体的な数字をお答えいただいて、きょうのところはこれで閉じたいと思います。総理補佐官の給与、幾ら支給されているか。

細田国務大臣 山崎補佐官については無給でございます。

永田委員 法務大臣に対して多少失礼な発言があったかもしれませんけれども、本意ではありませんので、ぜひ報告書をお待ちして、終わります。

 以上でございます。

甘利委員長 これにて永田君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、来る七日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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