衆議院

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第20号 平成17年3月2日(水曜日)

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平成十七年三月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      伊吹 文明君    石原 伸晃君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    川上 義博君

      北村 直人君    小泉 龍司君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      竹本 直一君    玉沢徳一郎君

      中馬 弘毅君    津島 雄二君

      西川 京子君    根本  匠君

      萩野 浩基君    福田 康夫君

      二田 孝治君    宮下 一郎君

      村井  仁君    森田  一君

      石田 勝之君    岩國 哲人君

      生方 幸夫君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    篠原  孝君

      津川 祥吾君    辻   惠君

      中井  洽君    中津川博郷君

      中塚 一宏君    永田 寿康君

      長妻  昭君    原口 一博君

      樋高  剛君    牧  義夫君

      米澤  隆君    佐藤 茂樹君

      坂口  力君    田端 正広君

      穀田 恵二君    佐々木憲昭君

      阿部 知子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     棚橋 泰文君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        滝   実君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣府産業再生機構担当室長)          藤岡 文七君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          倉吉  敬君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    井戸 清人君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 小平 信因君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     松永 和夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     竹本 直一君

  小泉 龍司君     宮下 一郎君

  森田  一君     佐藤  勉君

  篠原  孝君     牧  義夫君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     森田  一君

  竹本 直一君     川上 義博君

  宮下 一郎君     小泉 龍司君

  牧  義夫君     篠原  孝君

  穀田 恵二君     佐々木憲昭君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     河村 建夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府産業再生機構担当室長藤岡文七君、金融庁監督局長佐藤隆文君、法務省大臣官房司法法制部長倉吉敬君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済局長石川薫君、財務省国際局長井戸清人君、社会保険庁長官村瀬清司君、資源エネルギー庁長官小平信因君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長松永和夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 これより締めくくり質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。

伊藤(公)委員 おはようございます。自由民主党の伊藤公介でございます。

 いよいよ締めくくりの質問ということになりました。

 小泉内閣になって、ことしで四回目の予算編成ということになりました。この間、内外ともにまさに激動の連続ではなかったかと思います。総理を初め皆さんも、それぞれのポジションで、構造改革に向けて内閣一丸となって取り組んでこられました。

 小泉内閣が発足した十三年当時、まさに、三月危機であるとか、次々と危機的な状況が伝えられていました。特に、金融パニックが起きるのではないかという大変な状況もございました。しかし、今や不良債権問題は確実に終結の方向に向かいつつあるように思います。そして、地域経済にはなおいろいろな問題があることは私も肌身で感じますけれども、大枠、日本の経済は前向きになっているというふうに私は思います。小泉構造改革の中で、財政出動をしないで、じっと、将来にツケを回さないという前提でさまざまな改革に取り組んできました。もちろん、道半ばの感もございます。しかし、今民間は、もちろんリストラもしたし、そして経営改革をして、自力で新たな方向に挑戦を続けているように思います。

 これは、最近、道路公団であるとか、あるいは医療制度の改革だとか、あるいは地方税財政の改革であるとか、内外にいろいろな抵抗があるけれども、しかし、積極果敢に大きな風穴をあけてきた、私は率直にそう思います。いろいろ重要な問題に、党に任せて全部できるという状況でもない。もちろん官僚の話を聞いていてできるわけでもない。そういう意味で、この構造改革は大変なエネルギーの要る仕事だ、多分総理もそうお考えいただいていると思います。

 限られた時間であります。

 これは私が申し上げるのではなくて、最近新聞で、総理のこれまでの構造改革に取り組んでいる状況を評価されて、首相は聞く耳を持たない、頑固だという声もあるけれども、非常に一般大衆にわかりやすいという声もある。抵抗勢力とぎりぎり限界を見きわめる勘どころがある。あるいは、感性で動いているようだけれども、クールに計算できる人だ。最後に、最後まで追い込んでしまうことをしない、寸どめが小泉総理の手法だと。これは私が申し上げるのではなくて、ちゃんとした新聞の評価であります。

 私は、これからのいろいろな質問の中で申し上げるわけですが、寸どめの手法というのも、私は空手をやってきて、今地元の空手の会長ですからこれもよくわかりますが、最近、大衆に人気のあるのは、評価の高いのはK―1やPRIDEです。これは殺しはしないんですけれども、ノックアウトするんですね。私は、これから本丸に迫るわけですが、郵政改革などには総理が新たな決意で臨んでもらいたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 そこで、私、日米安保協議、2プラス2から質問をさせていただきますので、ちょっと順序が変わりますが、世界の中の日米同盟ということについて、まず総理に伺いたいと思います。

 2プラス2の日米両政府は、今後の日米同盟の再定義と在日米軍再編の基本指針となる共通戦略目標に合意をしました。2プラス2の成果は、これまでのことを合意したというだけではなくて、世界の環境が変わってきている、さまざまな出来事がありました、そういうことを受けて、日米が共同して、かつて極東からアジア太平洋地域に拡大された日米同盟協力の範囲を、さらに地球規模に拡大することに合意をされた。これは、基本的には日米のグローバルな協力関係を念頭に置いたものと私は理解します。

 今後、地球の裏側でも日米が協力をして活動していくようになるという意味で、今回の2プラス2も私は大いに意義があったと思うわけであります。つまり、自衛隊を海外に派遣するための恒久法の制定なども今いろいろ議論されているようでありますが、こういうことも含めて、私は無関係ではないのではないかというふうに思います。

 総理は、日米協力は今後どのようにあるべきと考えられているか、また、協議はこの後どういう日程で進められるのかをまずお伺いさせていただきます。

小泉内閣総理大臣 日本とアメリカとは、共通の価値観を有する同盟国であります。民主主義の重要性をよくわきまえていますし、経済を繁栄させるためには市場経済を重視していこうという共通の価値観といいますか、理念を共有しております。しかも、経済力においても、日本とアメリカ、世界の中では大きな位置を占めている。

 この両国が世界の平和と安定のためにどのような役割を果たすかということにおいて、お互いの考え方を整理して今後協力していこう、そういうのが世界の中の日米同盟。これを今後、具体的にどのような形で、お互い、役割の分担とかあるいは両国の問題とかというものを話し合いながら、今後とも日米関係の友好協力を発展させていこうというのが趣旨でございます。

 世界の平和と安定というものは、どの国にも大きな影響を持っております。自分の国とは関係のない小さな国の紛争でも、あるいは地域の遠く離れた紛争におきましても、日本やアメリカ、各国に無関係ではないということから、世界の平和と安定のために日本とアメリカがどのように協力していくことができるか。その中には、当然、日本にとっては最も重要であります日本の安全保障、これを確保するためにはアメリカとの協力が不可欠であるという観点から、日本とアメリカにおける安保体制を堅持しながら、より緊密な協力をしていく必要がある。

 と同時に、世界の平和と安定をもたらすためには、軍事力だけで解決できるものではございません。日本には日本の役割がございます。また、世界の平和と安定のためには、日本が軍事力を行使しない、武力を行使しないで、貧困の削減とかあるいは医療、教育の支援とか、よその国にできない実績も積んできております。そういう観点から、世界の中のいろいろな事案に対しまして、日本とアメリカとやり方は違ったとしても、平和と安定をもたらすために、アメリカの役割、日本の役割というものがそれぞれ、独自の国の特色を生かしながら、あるのではないか。

 そういう政治、経済、文化等の面において、国際社会の中で日米が協力してできる分野は数多くあると思いますので、そういう点につきましても、今後幅広く協議をし、連携を深めていこうというのが趣旨であります。

伊藤(公)委員 そこで、ちょっと時間があれなので端的に伺っていきたいと思いますが、アメリカのワシントン州の陸軍第一軍団司令部の座間移転について伺いたいと思います。

 世界的な規模の米軍の再編に関連して、現在ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部の座間への移転が日米間で協議されていると報じられています。これは、アジア太平洋地域のみならず、中東、北アフリカまでも指揮統制下に置く司令部で、陸軍大将の第一軍団司令官が在日米軍全体を指揮監督すると報じられています。米陸軍第一軍団司令部の座間移転についてどのような認識を持っておられるか、伺いたいと思います。

町村国務大臣 今委員御指摘の座間への移転問題、いろいろ報道があることはよく承知をいたしております。

 先般の2プラス2の会合で、今委員が御指摘になったような問題は、今後第二段階、第三段階と私ども名づけておりますが、とりあえず第一段階の共通戦略目標では合意をいたしました。この後、さらに具体の自衛隊あるいは米軍の役割、任務というものを議論し、さらにそれをまた具体化した形で、米軍基地がどういう展開をしていくのか、再編成をしていくのかということについては、今後数カ月かけてじっくり議論をしていこうということでございます。

 したがいまして、今お話しになったようなこと、まだ先般の会議でも具体になっておりませんし、今後さまざまな、お互いに共同作業をするわけでございますから、議論をしていく過程で、全く出ないと今から申し上げることもできないし、出るとも申し上げることもできませんが、いずれにしても、日本にとって、日本は安保条約というものを基礎にしながら、さらに、今総理がお答えのとおり、安保条約を超えた国際的な連携もあるということでございますので、そうした日本の考え方に基づいて、今後よく抑止力を維持しながら基地負担を軽減する、こういう基本原則に立って取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(公)委員 それから、在日米軍の再編協議と基地負担の軽減について伺っておきたいと思います。

 私は、学生時代から沖縄返還運動に参加してきた一人であります。最近も、沖縄に行くたびに、もちろん、日本の安全保障とか、あるいは日米関係ということを考えると、沖縄の基地の存在というものを認識しなきゃなりませんが、やはり沖縄の基地というものは、少なくとも削減をしていくべきではないかとずっと考えてまいりました。

 実は総理も、昨年の十月に、沖縄の負担軽減問題について、沖縄以外の都道府県のどこかに持っていく、日本政府は考えて、自治体に事前に相談しなくてはいけないこともあるかもしれない、自治体がオーケーした場合には、日本はこういう考え方を持っているということでアメリカと交渉をするということも述べられています。

 最近、先週だったと思いますが、NHKの町村外務大臣の討論、私の記憶が定かであるかどうかちょっとあれなんですけれども、辺野古以外の可能性も排除しないという討論があったようにも伺うわけであります。

 つまり、私は、最近のアメリカの国際戦略、そういう中で日本の基地というものに対してどういうように考えているんだろうか。アメリカはアメリカとしての戦略があるし、日本は日本の戦略があって、そういう中で日米が密接な協力をしながら世界に貢献をしていくということだと思います。一連の流れを見ていると、アメリカの司令部というものはさらに日本で強化していく、しかし基地はやや削減をしていくという方向にあるのではないのかな、もしそうだとすれば、それは新しい展開だと私は思います。長年日本に在日米軍基地が、世界のどこを見ましても、大変、日本には独立国家の中に至るところに基地がある。こういう状況は、世界の情勢が変わっているときには、日本は日本としての外交防衛という戦略があっていい。

 しかも、外交防衛問題について、これほど総理自身が最前線で国会の論戦をしてきたことも珍しいことであります。だから、日本の外交が、あるいは安全保障が、国際社会の中でもきちっと見えるようになってきたんじゃないでしょうか。今、日米関係がかつてない緊密な関係にあるときに、私は、日本の外交防衛というものがしっかりと見える、さらにそういう方向で努力していただきたいと思いますが、基地負担の軽減についてお伺いをさせていただきます。

町村国務大臣 今委員がお話しになりました、米軍が全体として世界各地の展開兵力を減らしていく、どちらかというと本土に引き揚げてくるという方向性は、確かに私もそうだと思います。

 それは、もう言うまでもないことでありますが、東西冷戦のもとで大きな軍隊がそれぞれ相対峙しているという姿からは、むしろそういう戦争の可能性がだんだん減ると同時に、他方、ゲリラ、核の拡散といったような、突発型といいましょうか、今までにはない新しい脅威の形態が出現をしている。それに対抗できるための、より柔軟で、しかも技術が進歩しておりますから、大量に輸送できる等々の技術進歩も踏まえれば、現場に置いておく兵力の数が従前よりは少なくていいではないか。むしろ、本土に置いて、そこから迅速に派遣をするという方がいいんじゃないかという流れであろうかとは、多分間違いがないと私も思っております。

 そういう中での日米間の話し合いであります。両国間では、やはり抑止力の維持というものはお互いに必要だ。日本の安全にとっても必要である。それと同時に、沖縄を初めとする基地所在地の負担はできる限り軽減をしたい。なかんずく、沖縄は基地全体の七五%が集中しているという、それは確かに重い負担がある、これを軽減しようということまでは先般の2プラス2でも合意をしているわけでございまして、その基本方針に沿って、今後最大限の努力をしてまいりたい。

 他方、基地の負担ということを、我々、言葉としてはいつも言います。確かに負担はあります。しかし、もう一つ、基地があることによる、日本全体が得た恩恵といいましょうかメリットといいましょうか、それは、なぜならば、米軍がいることによって日本は相当程度のエネルギーを経済に特化して注ぐことができた。やはりそういうメリットもあったんだということをバランスよく考えながら、私ども、この問題に対処していくということもまた必要なのではなかろうかと考えております。

伊藤(公)委員 町村大臣も大野大臣も、ともに満を持した仕事を今やられているわけでありますから、日本の外交や防衛が、さらに国際社会の中で日本の見える外交あるいは安全保障というものをしっかりと進めていただきたいと思います。

 さて、そこでもう一問、横田基地の日米共用と軍民共用空港の実現性について伺いたいと思います。

 米軍横田基地において、府中の航空自衛隊航空総隊司令部を移転させて航空自衛隊との共用化を進める。これは、基地管理権と首都圏上空の航空管制権を日本に移して、東京都もこれは主張しているわけでありますけれども、軍民共用化によって、米軍がこれを原則受け入れる方針であるということが報道されてまいりました。横田基地の軍民共用化が実現をすればということで、既に東京都は、その周辺の道路整備を進めるということで、今年度の予算に約十億円を計上しているところでもあります。

 横田基地の日米共用化あるいは軍民共用化について、政府は現在どのような見解を持っていられるのか。特に、首都圏の空港、将来の、小泉総理も大変主張されている観光日本、そういうことを考えましたときに、首都圏の第三国際空港構想も私はこの機会にぜひ実現をしていただきたいと思いますが、御見解を伺っておきます。

町村国務大臣 先ほど申し上げたように、個別具体の施設・区域の話につきましては詰めた議論の段階にはなっていないということは、先ほどお話ししたとおりでございますが、この横田の問題、軍民共用化につきましては、二〇〇三年五月、これは小泉・ブッシュ日米両首脳間でその実現の可能性の話が始まり、共同の検討を行うということになっているという意味では、ちょっと他の案件とは違うスタートを切っております。

 もちろん、石原都知事からの大変強い御要請もあったということもこれありまして、関係省庁と東京都の間では連絡会というものを過去数回開いておりまして、意見交換をするなどして検討作業を進めております。その場で出た議論は米側に伝達し、またアメリカ側の動きなどを東京都の方にも連絡をするなど、幅広い議論もしておりますが、ただ、時間がかかり過ぎているといって、東京都知事、大変御不満の趣であることもまたよく承知をしているところであります。

 私ども、今、先ほど申し上げたようなタイムスケジュールで、大体向こう数カ月間で答えを出していきたい。その中でも、この横田の問題というものはその一つの大きな柱として、どういう形で今後具体化をしていくのか、自衛隊の、府中にあるということも視野に置きながら、今後議論をしていかなければいけないと考えているところであります。

伊藤(公)委員 いずれにしても、日本は日本としての、この横田基地をどうするかということを明確に示して、アメリカといい結果になるようにぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 さてそこで、時間がなくなってしまいましたので、大変恐縮ですがちょっと順序を前後させていただいて、日銀総裁にお見えをいただいておりますので、まず総裁にお伺いをしたいと思います。

 今、政府は、定率減税の縮減を進めるわけでありますが、これは、日本の経済というものがある一定の前向きになっているという前提になっているわけでありますが、日銀は今、日本の経済をどのように認識されているのか。

 時間がありませんので、もう一問も一緒に。

 ちょっと資料を出させていただきましたけれども、これはずっと出ている資料でありますが、配付資料の一の公定歩合の国際比較を見ると、大変金利が低いことは当然おわかりいただいているわけであります。図の二で、家計の預金と借り入れの動きを見ますと、預金は借り入れのほぼ二倍程度に推移をしております。しかしながら、図三においては、家計が受け取る利子と支払う利子を比較しますと、一九九六年以降マイナスに陥っております。

 最近の、二〇〇三年の数値では、家計は四百十・四兆円、貯蓄超過の状態にあるにもかかわらず、受け取りの利子はマイナス八・六兆円になっています。長期、短期金利の姿を通常の状態にそろそろ戻して、年金生活者や家計に金利の恩恵をもたらすということもそろそろ考えていいのではないか。政府、日銀の今後の中長期的な金利政策についても、あわせてお伺いをしたいと思います。

福井参考人 お答え申し上げます。

 委員がお示しくださいましたこのグラフが明確に示しておりますとおり、諸外国に比べても日本の金利は非常に低い水準で、かつ、これが非常に長く続いているということは事実でございます。

 一般的に、金融緩和政策を行いますと、家計部門に負担がかかり、そして、その負担を企業の方としては支援材料として受け取って景気の回復につなげていく、そういう構図になるわけでございますが、日本のように、ほぼゼロ金利、しかもこれを非常に長く続けているという状況のもとでは、家計部門の負担が異様に重くなってきている、このことは私どもも十分認識いたしております。

 私自身も、町に出ますと、多くの年金生活者の方々とか、家計を預かっておられる主婦の方々、その他多くの方々から、もうそろそろ金利は少し上がってもいいのではないですかという率直な声をお聞きいたします。そのお声を聞いておりますと、確かに、随分長い間我慢したという負担感と同時に、やはり経済が少しずつよくなってきているのではないかという感覚を同時にあわせ持っておられるように私どもは感じております。

 私どもの経済の分析とも、その点は平仄が合っておるわけでございまして、私どもの分析でも、やはり民間部門、特に企業部門の構造改革が過去数年のうちに相当進捗して、日本経済の底はかなり固まってきたというふうに思っています。間もなく四月になりますと、いわゆるペイオフの全面解禁が恐らく無難に実行できる。ここまで経済はよくなってきたということは確かだと思います。しかし同時に、私どもの判断は、ペイオフ解禁後、本当に、企業の前向きの活動と金融機関の前向きの活動が歯車が合って、景気回復の持続性という意味で、より強固に基礎を築いていかなきゃいけない。今、そこが重要なターニングポイントだというふうに思っています。

 同時に、委員お示しいただきましたこのグラフで、日本の金利が一番低いわけでありますけれども、物価の変化率で見ますと、このグラフのイギリス、アメリカ、ユーロエリア、いずれもプラスでございます。日本だけがまだわずかにマイナスの物価上昇率を持ち続けているということで、その点でも違っておりまして、景気の回復の持続性をしっかり確保すると同時に、やはりこのデフレは脱却していきたい。

 日本経済はショックにかなり強くなってきておりますが、デフレを引きずっているという点から見ますと、十分ショックに強いというところまで行っておりません。しばらく、なお家計部門の方々に我慢をお願いして、我々としては、粘り強く金融緩和を続け、この目的を達成していきたい。今、その重要な局面に来ていると認識しております。

伊藤(公)委員 どうぞ総裁、お帰りください、結構ですから。

 郵政問題は、限られた時間でなかなか、改めてしなければなりませんが、一点だけ伺っておきます。

 手紙、はがきの改革については、法律は通りましたけれども、現実には民間参入ができないという状況です。一つだけ、きょうはユニバーサルサービスについて伺っておきたいと思いますが、これは民営化法案をめぐって、新基金を設立するということが示されてきました。私は、ユニバーサルサービスは必要だと思いますが、改革は時に痛みを伴うし、そして、ドイツは大きく郵便局の数が減ったとよく言われますが、それが私は改革だと思うんです。一つも郵便局の数が減らなかったら、それは改革にならない。

 本当にどうしても必要なところで、採算がとれないというところをどうするかという問題は私はあると思います。余り手かせ足かせして、結果として改革ができないということになると、私は、この小泉改革の本丸と言われてきた郵政民営化、冒頭に申し上げましたが、寸どめではなくて、しっかりとこの改革を今度はやってもらいたい。そういう意味で、ぜひ、金融資産は国民のものですから、やはり国民に還元するという基本に立たなきゃならないと思いますが、この点について、担当大臣から御意見を伺っておきます。

竹中国務大臣 伊藤委員御指摘のとおり、改革、特に民営化というのは、やはり経営の自由度を持っていただいて、その中でしっかりとその成果が国民に還元されるということであろうというふうに思っております。その意味では、重荷といいますか義務をできるだけ課さないような形で自由な経営をしていただくような改革をしたいと思います。

 伊藤委員お尋ねの、成果を国民に還元する、特に金融の面でございますけれども、昨日のこの委員会でも生田総裁が、今後十年ぐらいで相当資産が、いわゆる預金額とか資産額が減るだろうという認識を示しておられます。そういうふうに、今三百五十兆郵政に行っているお金が、生田総裁のお言葉によると、十年で二百四十兆ぐらいになる。そうすると、この百兆円はまさにマーケットに出ていくわけでございますから、そうしたお金が民間の金融機関等々を通して民間に還流されるように、そのような制度設計をしっかりしていきたいというふうに思っております。

伊藤(公)委員 大地震に対する対応はできているかという問題を御質問しようと思いましたが、財務大臣には今後の機会にさせていただきますが、私は今、党の住宅土地調査会の会長として、ぜひお願いだけしておきます。

 今、日本には四千七百万戸の住宅があります。そして、三百四十万戸のビルがあります。五十六年の耐震基準に合わないものは、住宅は四分の一、ビルは三分の一は耐震基準に合わないものです。次々と世界一のビルをつくっている日本が、日本人が住んでいる住宅やビルが耐震基準に合わない。

 私は、提案だけしておきますけれども、自分のお金で耐震基準に合ったリフォームをするものを減税対象にしてもらいたい、それから自力でやっていくいわゆる地震保険に対しても減税の対象にしていただきたいと思いますので、これはことしの税調でも私は申し上げていくつもりですが、ぜひ財務大臣に強く陳情して、私の質問を終わります。

甘利委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、米澤隆君。

米澤委員 久しぶりにここに立ちます。総理と質疑するのは初めてです。四、五年休んで、繰り上げ当選して帰ってきたときに、ちょうど国家基本政策委員会をやっておりまして、あれはコンビも悪かったんでしょうが、小泉、菅の質疑を聞きました。そして、久しぶりに帰ってきて気づきましたのは、非常に総理の答弁等が軽過ぎるという印象を持ちました。重くない。揚げ足をとっちゃやっつけて、見たことかというような顔をして席に座られる。これはかつてなかった質疑応答の情景でございました。

 したがって、この人とは余り物を言わぬ方がいいなと思うてここまで来たんですが、うちの田中慶秋理事が、最後だからやれ、やらなかったら予算委員会、追い払う、こう言うものですから、きょうはここに立たせてもらいました。

 それで、お聞きしたいのは、まず、総理の好きな郵政民営化の問題です。

 もともと、この郵政民営化が議論されるころには、この郵政民営化は財投改革とつながって初めて本質をつく議論になるということを言い聞かされてきたつもりです。総理も時々、郵政改革は財政改革、財投改革、特殊法人等の民営化や廃止や、そこにつながって、貴重な金がむだな方向で使われるということのないようにすることが郵政改革の大きなねらいでもあると聞いたんですが、今は違ったのかどうかわかりませんが、どうも、郵政改革は財投改革だというこの認識が少しずつ薄くなってきているような感じがします。

 だから、本当にうぶな質問かもしれませんが、小泉総理に、今なぜ民営化を急がれるのかという点で、いろいろな方がこれを質問していますね。確かにいろいろな広報宣伝等は流れておりますが、小泉首相の声で、今なぜ民営化を急がねばならぬのか。例えばお国の立場から、例えば国民の立場から、例えば小泉さん個人の立場から、いろいろありましたら、なぜ今民営化を急がれるかということを明快にちょっと教えてほしいな、こう思います。

小泉内閣総理大臣 これは、簡単に言えば、民間にできることは民間にやらせた方がいいということなんです。郵政三事業は本当に民間でできないのかといえば、そうではないと思うんです。本当に国家公務員じゃなきゃできないのか。商売というのは、役所がやるよりも民間人に任す方がうまくできる、国民のいろいろな要望にもこたえることができる。この民間にできることは民間にということを考えていきますと、郵政三事業は、私は、役人じゃなくても、役所じゃなくてもできる仕事だと思っております。

 なおかつ、この郵貯、簡保で集めた資金、これがいろいろ特殊法人に使われておりますが、その間、財政投融資制度というのがありました。集める部門と使う部門が違う、ここで見えない負担が生じてくる。集める方は集めるばかり一生懸命やればいい、採算を考えない、赤字になったら税金で負担する。これは、必要だからということで特殊法人が使いますけれども、やはり後、採算がとれなかった場合、どういう負担が出てきて、それをだれが返すのかというところがはっきりしない。

 しかも、これは融資、投資等で使われますから、その融資をした時点ではどのぐらいの負担があるかわからない。利益が出れば返しますよというと、特殊法人の部分、かなり利益は出てこない、積もり積もって赤字になる。民間だったらば、集めた方の責任も問われるわけです。ところが、この郵貯、財投、特殊法人、全部責任が違うんです。集める方は、私は投資先、融資先なんか考えていませんよと。責任の所在が明らかじゃない。いつの間にか特殊法人の機関が融資した先はかなりの赤字になって、この赤字は結局、郵便貯金が、あるいは簡易保険が契約している部分で、その人たちが負担するんじゃなくて、税金で負担している。財政投融資制度、これはもう郵貯の資金を使って、各省庁につながる特殊法人が使っている。

 こういう入り口の集める部分と出口の部分、その間をつなぐ財政投融資制度、全体を見る必要があるということから、もとの、この資金がなかったら特殊法人等はいろいろ仕事ができない、あるいは、仕事をする場合にはどの程度の税金を負担しなきゃならないか、将来その負担をだれが返すのかという検証というのがおろそかになる。そういうことから、私は、この郵政の改革は、財投の改革、特殊法人の改革を考える場合に不可欠だと考えて、かねがね郵政民営化の必要性を説いていたわけであります。

 なおかつ、今、いろいろな改革がやられておりますが、役所のお金の使い方、役所の事業の仕方ということを見ますと、役所は商売が下手だな、むだな部分に投資しているなという部分が、かなり国会でも与野党から指摘されている。そういうことを考えますと、民間にできることは民間にということを賛成しながら郵政民営化に反対する方々の理論が、私はなかなか理解できないわけであります。

 総論賛成、各論反対の最も強い部分だなという点が、与野党一貫して今まで郵政民営化に反対してきた部分もありますが、国会では、なかなか私の郵政民営化論というのは取り上げられなかったし、暴論扱いをされてきた。今、ようやくこれが政治の表方になってきている。

 これについて真剣な議論が行われて、今国会中で、ぜひともこの郵政民営化を実現させて、今まで非効率な部分に使われたこの郵貯、簡保の資金を民間の分野に流していけば、より効率的な使われ方がされるのではないか。ひいては、それが経済の活性化にもつながっていくのではないか。民間にできることは民間にという総論賛成を各論まで進めていく改革が必要ではないかということで、郵政民営化の必要性を説いているわけであります。

米澤委員 この郵政民営化が本格化する前に、御承知のとおり、郵政事業庁は、郵政三事業の在り方について考える懇談会、田中直毅先生が座長で、勉強されまして、報告書が出ています。

 その報告書には、今おっしゃいましたように、我が国の財政が逼迫した状況にある中、郵貯、簡保の資金運用を通じて思わざる債務が発生したとすれば大変だ、したがって、巨額の納税者負担が発生する可能性のあるこのような財投については極力小さくしていく、そういう姿勢で取り組まねばならないというのが第一点ですね。

 第二点は、特殊法人等の改革の推進との関係で、安全な貯蓄手段として郵貯、簡保に託された国民の資金は、国会が制御不能だと言われて、財投機関の非効率な膨張につながってしまった。結果として、資産の悪化となり、特殊法人等改革を不可避とする状況になっている。

 第三は、これは財務大臣、よう聞いてください。公社後のあり方を考える視点として、郵政事業改革は、日本政府が抱えるすべての債務に関する総合的なコントロールをどのように行っていくかという行財政改革の枠組みの中に位置づけられなければならない。このことを考えることが、郵政改革を議論しながら常に念頭に置く我々の宿題ですよ、こういう提言をいただいておりますけれども、残念ながら、そういう話をこのごろ全然聞きませんね。財務大臣、こんな話をしますか。

谷垣国務大臣 今、郵政改革と結びつけて財投改革、出口をもっとやるべきだ、多分そういう御議論だと思いますが、平成十三年度に財投改革をやりまして、要するに、入り口と出口を切り離していこう、それで、郵貯への財投の預託義務、従来はもちろん、御承知のとおり全額預託義務でございましたけれども、郵貯と財投の資金的なつながりを切り離したわけですね。それで、債券、財投債、財投機関債を発行して、市場の規律のもとで真に必要な資金だけを財投に集め、調達する仕組みにいたしました。

 それから一方、財投機関の方は、政策コスト分析の導入とか、貸出先の特殊法人等における民間準拠の財務諸表の導入といった改革を進めまして、民業補完性とかあるいは償還確実性について厳格な審査を行って、むだな事業を見直してきたところでございます。その結果、財投は、ピーク時は平成八年でありますが、四十・五兆の規模がございましたけれども、現在、平成十七年度はその約四割、十七・二兆となっておりまして、既に相当程度の縮減が図られております。特に特殊法人向けについては、ピーク時の三分の一の規模に圧縮をしてきているところであります。

 それから、十七年度財投計画をつくるにつきましては、財政審ですべての財投事業について総点検をしていただいて、財務上問題のあった機関については対処方針をつくりました。特に財投残高で大きなウエートを占める住宅金融公庫については、民間で取り組んでいる直接融資は廃止する、そして都市再生機構についてはニュータウン事業から撤退する、こういうような抜本的な見直しを実施していくことにしております。

 こういう措置によりまして、将来の財務上の懸念が解消されまして、財投事業全体として健全性を確かなものとすることができたと思っておりますが、さらに特殊法人等整理合理化計画などを的確に反映して、これからも詰めるところは詰めていかなきゃならないと思っております。

 それからもう一つは、今、結局、国の債務全体をどう管理していくかということでありますが、これは、特に集中的には国債管理という形であらわれてくると思いますが、この国債管理政策を的確にやっていくということももう一つの非常に大きな柱でございまして、これも鋭意取り組んでいるところでございます。

 これについては、また申し上げますと長くなりますので、このぐらいでこれは終わらせていただきます。

米澤委員 今おっしゃいましたように、住宅金融公庫、都市再生機構の両機関については、早期の損失ゼロを実施するということでございますから、一歩前進であります。

 ただ、この公的資金を注入する前提であるリストラ計画の実施状況は一体どうなんだ。結局、特殊法人があるから金を出す、そして、みずからはこの仕事をやめたとは言わない。やはり、特殊法人のむだな金が流れるのをとめるためには、特殊法人が完全にリストラされていくということが確保されなければ、仕事が進まないはずなんですよね。そのあたりは一体どうなっておるんでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、今もちょっと申しましたけれども、特殊法人等整理合理化計画というのをつくって進めておりますので、これに合わせて、財投計画も一層重点化、効率化を図っていかなければならないということであります。

米澤委員 それなら、今、財投融資における不良債権がどれぐらいあるのか、これは心配ですね。あるいは、返還不能な損失になっている額は一体どれぐらいあるのか、これをお答えいただけますか。

 というのは、郵貯、簡保として集められた金が財投融資の原資になっておる。その先で腐ってしまったら、本当は郵貯も簡保も色はついておりませんが、そこで毀損を受ける。それがだめなら、政府保証ですから、政府が金を払って最後はおさめねばならぬ。そういう意味から大変興味があるのは、財投融資において、不良債権の量はどれぐらいあるのか、損失、返還不能の量は幾らぐらいあるのか。郵貯、簡保の金に毀損を受けさせないという意味で、この金額をちょっと、わかるだけ教えてください。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったこと、二つあると思うんですが、財政投融資によって財投機関に貸し付けているわけですね。そこは、延滞債権等になって不良債権になっているというのはございません。

 問題は、今委員がおっしゃったことのもう一つは、そこからさらに、例えば政府系金融機関でいえば、いろいろ国民金融公庫等が貸し付けている、そこには不良債権等が、それぞれの機関、ございます。

 ただ、それがその機関そのものとしての健全性を損なうようなものがあるかというと、そこは、先ほど申しましたように、いろいろ書類を、民間準拠の財務諸表の導入等をやりまして、見ております。確かにそこに債務超過になっている機関等もございますが、それについては対応方針等を既に立てているところでございますし、先ほど申し上げたような措置もとったわけでございますので、全体としての不健全性というものはないという状況でございます。

米澤委員 その発想が私は甘過ぎると思うんですよ、財務大臣。

 例えば、ここに、財政投融資リポート二〇〇四というのを理財局が持ってきました。それにはわざわざ「「財政投融資には不良債権がある」って聞くけど本当なの?」というクエスチョンがあって、そしてずらずらと、そげなことありませんと書いてあるんです。財政投融資における財投機関に対する融資については、すべて回収されており、いわゆる延滞債権等の不良債権はありませんと。

 ところが、そうは書いてありますけれども、それはそうですよね、赤字になったら補助金をもらって埋めるだけで、表面上はきれいにしてあるんだから。終わった後の数字だけはそうですよ。理財局といったって数字を合わせるだけですからね。その中身がどうなっておるかなんて全然吟味しない。これが縦割りの一番悪いところだね。

 だから、財投機関に不良債権があるなんというのは適当ではありませんなんてぬけぬけと書いてある。こんなのをわざわざ、これも自分のばかさかげんを示すようなこんな文章をこんな高い本に書いて配ることはないですよ。あれはもうみんな首だね。

谷垣国務大臣 例えば政策金融機関というようなものでそれぞれのリスク管理債権の状況がどうなっているかということを申し上げますと、例えば国際協力銀行をとりますと、いわゆるリスク管理債権の割合は七・〇八%でございます。それから、日本政策投資銀行でいえば三・三〇%、国民生活金融公庫でいえば一〇・三八%、住宅金融公庫五・二四%、農林漁業金融公庫六・〇一%、中小企業金融公庫八・二七%、公営企業金融公庫〇%、沖縄振興開発金融公庫一〇・一七%、商工組合中央金庫八・一〇%というような形になっております。

 そこで、これを民間金融機関のリスク管理債権と比較いたしますと、民間金融機関は六・四七%。確かに機関によっては若干高いものもあるわけでございますが、例えば国民生活金融公庫等でいえば、これは、なかなか民間等が貸せないかなり零細な方々に、担保の状況等も無担保貸し付けはどうするかとかいろいろなことがございますが、そういう政策的配慮を加味して貸し付けておりますので。

 もちろん、こういった公庫の、金融機関の経営状況は、それはよく見ていかなければならないことは事実でございます。ですから、先ほど申しましたように、民間準拠の財務諸表等をつくってやっておりますが、ここらはまた政策的な判断もあるということを御理解いただきたいと思います。

米澤委員 財投機関の財務的な健全性というのは一体どこがチェックするかという問題ですが、結局、財投として金を流すところの業務内容、これをチェックしながら金を出すというなら、まだわかる。従来どおり、この機関は予算をもらっております、ちょっとマイナスがありますが、今度の予算もいただいたら、それで埋めますと、表面上きれいに化粧がなされておる。しかし、本当は、その化粧の下にごろごろあるんですね。その業務内容が本当に金をつぎ込むような必要のある業務なのか、その業務は腐り始めていないのか。そこらをチェックしないのが理財局なんですか。

谷垣国務大臣 いや、それは、先ほども申しましたように、財政制度等審議会で、財政投融資分科会というのをつくっていただきまして、座長は大阪大学の本間教授でいらっしゃいますが、特殊法人等が行うすべての財投事業につきまして、民間準拠の財務諸表も参考に総点検をしているところでございます。

 その結果、先ほど申しました住宅金融公庫、都市再生機構等々の見直しも行いまして、人員の整理等を含む経営改善計画をつくる、あるいは、最大限の自助努力を行うことを前提に財政投融資の繰り上げ償還等々をやったところでございます。

米澤委員 というような言い方で今までお茶を濁してきたんですよね。しかし、不良債権は残っておるんですよ。

 ある学者の論文を読みますと、財投機関の財務状況は惨たんたるものだ、多くの特殊法人が債務超過状態に陥っていると考えられ、多くの地方自治団体の財政がまた事実上破綻している、財投機関への融資総額三百五十七兆のうち、実に七六%に当たる二百六十七兆円がそのような財務的には不健全な機関への融資である、これら実質破綻状態の財投機関の損失を補てんし、さらに既に失われた出資金を再注入するために要する費用は、少なく見積もっても七十八兆円ある。

 これが本当じゃないですか。

谷垣国務大臣 今、委員がお引きになったような論文は私どもも当然参照しておりまして、そういう議論があることは私どもも承知しております。

 それで、今、委員がお引きになったかどうか、ちょっとはっきり記憶していないんですが、多分、その論文では、財投貸し付けのうち二百六十七兆が不良債権化しているというような議論だろうと思うんですね。

 これは、財投機関債のうち、特殊法人等についてはそれぞれが作成、公表した民間準拠のバランスシートがございますが、確かに、その論文もこのバランスシートを引いて議論をしておられるわけです。

 ただ、例えば、融資機関におきます貸し出し条件緩和債権等のリスク管理債権の全額を回収不能債権として当該機関の資産からすべて控除するというような、これは民間の会計基準にもない資産圧縮の計算を行っておられます。その結果、少しでも債務超過にあった機関に対する財投貸し付けは、延滞等の問題がないにもかかわらず、その全額が不良債権であるというような、非常に会計基準にもない資産圧縮引き当てをやってそういう結論を出しておられるというような問題点がございます。

 それから、財投機関のうち地方公共団体については、個々の地方公共団体の財政力に関して、地方交付税を財源から除外するという現実の地方財政調整制度とは異なる前提を置いて議論を立てておられます。その結果、多くの地方公共団体を債務返済不能団体であるというふうに認定をされまして、それに対する財投貸し付けは、延滞等の問題がないにもかかわらず、その全額、これは四十二兆円でございますが、不良債権であるという断定をしておられます。

 それから、旧国鉄債務については、これは約束どおり返済をしているわけでありますが、これについても返済されない不良債権であるというふうに断定をしておられます。

 幾つか問題点がまだまだあるわけでございますけれども、二百六十七兆の不良債権が存在するという御指摘には、随分無理な前提があるのではないかというふうに考えております。

 私どもは、先ほど申しましたように、財務の健全性について総点検を行ったわけでありますが、その結果、大半の事業について資産超過であるということが確認されたわけでありますが、債務超過五機関というものが確かにございます。これは、環境事業団、福祉医療機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、日本育英会、それから国民生活金融公庫、こういうところが資産超過である。これは全部がというわけじゃなしに、それぞれの中に幾つかの勘定が入っているわけでございますが、(発言する者あり)債務超過であるということが判明したわけでありますが、そういう五機関についても対処方針を策定しているところでございます。

米澤委員 結局は、郵貯とか簡保から入った金が財投資金でそういうところに流されて、結果としてそこが不良債権化する。そうしたら、たどっていけば、預けた郵便貯金がそこで腐れてしまうという例が出てきますよね。

 今度郵貯の改革をされるときには、少なくとも、今そういう現状を前提にしたときに、一挙に郵貯が民営化しますと、民営化会社が罰をかぶることになりますね。前の集めた金がそっちの方に行って不良債権化しておるならば、民営化会社が今度はそれを調達せないかぬようになるんでしょう。

 私は、できれば、(発言する者あり)ちょっと黙れ。郵政改革ができる前に、政府の責任で不良債権をきれいにしてあげるというのが前提だよね。そうでなければ、官の借金みたいなものを民にもらってくれという話は、道理に合いませんよね。本当は、郵政改革というのはそんなものじゃない。郵政改革が始まるならば、その前までに汚い金はちゃんと整理してあげます、きれいな金でお嫁に行きます、それが原理でしょう。

谷垣国務大臣 従来、郵貯、全額預託義務というのがございまして、財投に流れていたということでございますが、今の委員のお話は、そこにたくさん汚れたものがあるじゃないか、それをきれいにして返してやれ、こういうお話だと思いますが、これは現在、今預託して、財投の方で、財投といいますか財政投融資の方でお預かりしているものは順次返却をいたしておりまして、平成十九年度までにその預託をお返しするということで、計画的に進めているところでございます。

米澤委員 それから、このごろのニュースで非常に気になったことがあります。それは、コンピューターシステムの構築の問題です。

 生田さんが、コンピューターシステムについて、ちょっと無理じゃありませんか、ちょっと時間がかかりますと総理に陳情された。そうすると、やかましいことを言うな、やればできるんだよといって何かやった感じですね。そして、何か懇談会、システム検討会議というのをつくって、そこで検討してもらえばいいじゃないかといって引き取って、結果的には暫定的にやろうという話になったそうですけれども、このコンピューターシステムなんというのは、もう一番心臓の部分ですよね。これがいいかげんにそんな、いいじゃないかいいじゃないかでやられたんじゃ、もう最初から崩れるのはわかっておるじゃないですか。だから、これを聞いて、あのおじさんはやる気じゃないんじゃないかと僕は思ったね。

 確かに、これを真正面にぎりぎり詰めたら、それは時間がかかるかもしれません。あるいは、方法によってはやれる方法があるのかもしれません。ただ、七年の四月にぎりぎり間に合わせるようにということがもし前提であるならば、それに合わせるような議論をしてもいいじゃないかというところまではわかりますが、しかし、せっかく公社の良心として、ちょっと時間がかかりますよという話を何かむげに、むげじゃないかもしれませんが、むげに、いいじゃないかいいじゃないかで押し切られたような様子の報道が結構あるんですね。

 だから、その経緯は一体どうだったんだ。もしこれが本当に間に合わなかったらどうするの。民営化は看板だけ何しろかければいいのか。あとは、回り始めたらこんなのはゆっくりやればいいんじゃないかと、そんな話なのかなと思って、ちょっと不愉快になりました。

 経緯を教えてください。

小泉内閣総理大臣 民営化する場合に、その準備、システムがどういう体制だったらばできるかというときに、当初、生田総裁は、二〇〇七年四月から民営化ということを考えた場合に、今の公社の体制から民営化に移行するシステムが間に合うかどうか確たる自信がないという話はされたということは承知しております。

 そこで、どういうシステムにしたら二〇〇七年四月に間に合うかどうかというのは、私も専門家でないからよくわかりません。そこで、その筋の専門家の意見をよく聞く必要があるんじゃないかと。そこで間に合いませんというのと、こうやれば間に合うという議論があるのならば、よく検討してほしいという話になったんです。そこで、生田総裁とじかにお話ししまして、間に合うのならやります、間に合わなかったらこれは二〇〇七年四月をおくらせた方がいいという話があったのは事実であります。

 そこで、私どももお互い、総裁も私もその専門家じゃないから、では専門家でよく協議しましょうと。専門家の皆さんでこうやったら間に合いますという結論が出ればそれに従いたいというのが生田総裁の話でしたので、私は、それではそうしようということで、専門家の皆さんによく議論してもらって、こうやれば間に合いますという結論が出たものですから、そのようにしたわけでございます。

米澤委員 検討委員会の座長の加藤先生は、僕らもお世話になった人ですから、ぼろくそ言えません。しかし、加藤先生がコンピューターの専門家だと聞いたことはない。まあ、それなりの人を集めてやられたんでしょう。しかし、出てきた結果、こういう文書ができておるんですね。

 日本郵政公社がたびたび主張してきた不安とともに活動していくということは、まさに民営化の本質であると考える。直面する課題の困難さを十分に承知しながら、自分たちこそが未来を切り開いていく主役なのだという決意を、日本郵政公社をはじめとしすべての関係者が抱くことこそ、民営化の貴重な財産である。また、システムのリスク管理も、国民にとって何が重要であることを意識しながら、高い理想を持って取り組みを進めることが何よりもリスク回避の方策になる。

完全にこれは精神論ですね。民営化するというのは、そういう苦しいところに直面するものなんですよ、そこへ一生懸命歯を食いしばって頑張れば未来は開けるんですよ、みんなが寄ってたかってやりましょうと。

 システムのリスク管理も、国民にとって一番大事なんですね、これは。ところが、そこを意識すればすべてが済むようなことが書いてある。「高い理想を持って取り組みを進めることが何よりもリスク回避の方策になる。」だから、取り巻きの人がリスク、リスクという感じを持っておればリスクは起こらないと。これは立派な論文ですね。これは役人が書いたんですか。役人が書ける文章じゃないと思うんですね。

 そして、「福沢諭吉先生の言葉を借りれば、」僕も不明にしてわかりませんが、「立国は私なり。公に非ざるなり。」関係者が協力して頑張れと書いてあるんです。

 こういう高邁な哲学を披露されて、コンピューターシステムというのは動くのでしょうか。

竹中国務大臣 米澤委員には、報告書を丁寧に読んでいただきまして、ありがとうございます。

 今委員が引用されたのは、まさに報告書の一番最後の「おわりに」というところで、前半にずっと技術的なことを、まさにリスクのファクターについて専門家がしっかりと詰めた後、最後の結びの言葉として、これは察するに加藤座長が思いを込めてお書きになった部分だというふうに思いますが、決して気力だけでやれというふうなことをこの報告書は述べているわけではございません。

 委員御指摘くださいましたけれども、この会のメンバーというのは、取りまとめは加藤座長にお願いをいたしまして、トヨタのCIOの天野さんでありますとか、さらには、プロジェクトマネジメントの日本の代表的な権威である東大の宮田教授とか、そういう方々にさまざまなリスクを検討していただいた上で、暫定システムとしてやることは可能であるということを結論いただいた。

 それを受けて、公社の生田総裁御自身が、「加藤座長を始めとする六名の専門家の先生方により二ケ月半に亘る精力的な検討が行なわれて来たものと理解している。」云々ありまして、そういうことが可能だとの判断が示された、「公社としてはその指針に従い、今後全力を挙げて取組んでいく所存である。」生田総裁御自身がそのような御意向を示されている。

 また、この検討会議には、当然のことながら公社のCIOの方もオブザーバーとしてお入りになっている。ぜひその点、御理解をいただきたいと思います。

米澤委員 そういうことで始まったこのコンピューターの検討だから、四月に間に合うように何とか手法を考えようということで、専門家が今から知恵を絞られるのであろうことはわかる。それはそうですね。検討した結果、これは回らないけれども入れましょうなんという話になりませんよね。そういう意味で、何かキツネか何かにたぶらかされたような感じでこの文書を読んだわけでございます。

 コンピューターはまさに命なのに、そういうものは適当にやればいいじゃないか、気合いでやれるんだと言ってやるほど急がないかぬものなんですか、郵政民営化は。四月に間に合わねばならぬという何か約束があるんですか、総理。なぜ小泉さんは、七年の四月に民営化するというこのリミットを金科玉条のごとく掲げて、そして追い込んでおられるような感じなんだけれども、何の理由があるんですか。一秒たりともおくれちゃいかぬのですか。聞かせてください。

小泉内閣総理大臣 私は、郵政民営化というのはもっと、十年前、二十年前にやっていればよかったと思っています。今、早過ぎるなんて全然思っていません。そういうことから、できれば早い方がいい。決して急いでいるわけじゃありません。今でも遅きに失していると思っています。そういうことから、まだ、二〇〇七年で二年間あるんです。二年間、できないのかという方が私は不思議でたまらない、最初。

 だから、コンピューターにしても、専門家の意見を聞いて、できるんならやればいいじゃないかと。私はコンピューターの専門家でありませんから、わかりません。コンピューター等のいろいろな専門家の議論を踏まえて、できるならいい。生田総裁自身も、そうできる結論が出たら一生懸命取り組みましょうと。

 公社の人も入っての協議ですから、こういう方法でやればできるんだなということで出た結論でありまして、別に私は、一刻一秒を争うとかじゃなくて、民営化というのは早くやった方が国民負担は少なくて済む、経済活性化にも通ずるということからやっているわけでございます。

米澤委員 まさにコンピューターが回り始めるかどうか神頼み、ついに郵政公社は神頼みになってきた、そんな感じしますね。

 さて、ここに、外務省からいただいたアメリカの政府要望書というのがあります。日米規制改革及び競争政策イニシアチブに基づく日本国政府への米国政府要望書、昨年の十月十四日、出されたものでございます。

 どうもこういうものは、ちょうど二〇〇一年六月の日米首脳会談で規制改革、競争政策に関する分野横断的な規制改革イニシアチブを発足させて以来、毎年秋になったらアメリカから日本に送られるものだ。日本も送っておるんでしょうね、これ。相互に要望書を送るということで始まったんだそうでございますが、この二〇〇四年、少なくとも昨年のアメリカからの対日要望書、要望書というのか命令書みたいなものが来ていますね。文書を読みますと、僕は、英語を日本語に訳して、どんな言葉で訳されたかわかりませんが、お願いしますじゃないんですよね、求める、やれと書いてあるんですね、これ。

 そしてことしは、御存じのとおり、郵政改革のみ別紙になって書いてきている。民営化というペーパーがある。そして、日本が郵政改革に取り組んでお利口さんと書いてある。できればそれがアメリカや日本の経済にとっていいものになるように頑張ってくれと書いてある。そして、何か決めるときにはちゃんとおれたちの意見も聞けと書いてある。

 これを事細かく読んでいきますと、何かアメリカに郵政公社改革準備委員会、準備室みたいなものがあるような感じしますよ、これ。日本の準備室があっちに引っ越したのか、アメリカが符牒を合わせて日本のために準備室をつくってくれたのか。だから、書いてある内容を見ますと、これで法案ができるんですよ、もうほとんど。もう準備室なんか要らないですよね、これ。そんなにお世話になっておるんですか、アメリカに。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 何か制度の改革をする場合には、外国の例を参考にする場合がよくあると思います。決してそれは悪いことではない。アメリカの例も参考にする場合がありますが、アメリカとは違うことを日本はやるんです。アメリカがやっていないことを日本は今やろうとしているんです。アメリカは、郵便事業についてはたしか国営だと思います。日本はアメリカのやっていないことをやろうとしているんですから、アメリカの言うとおりにやるということではありませんけれども、アメリカのやっていいことは参考にしたいと思っております。

 今、いろいろなお話を聞いていまして、米澤議員の指摘される点はいずれも重要な点だと私は思っています。こういう点をよく議論していけば、今後ともより建設的な議論になっていくと思いますし、このアメリカの指摘においても、参考にする点は参考にしていきたい。日本はアメリカと違いますから、アメリカと同じようにやるわけにはいかない。アメリカのやっていないこともやる場合もあるでしょうし、その点は各国の例を参考にしながら進めていくというのは、重要な指摘だと思っております。

米澤委員 昨日、同僚の岩國先生の方から指摘があったと思いますが、民営化を日本に迫る世界最大の郵便国アメリカは、改革法案を二度も議会で廃案とし、ついに二〇〇三年七月三十一日の大統領への報告の中で、郵便事業は公営で継続すべきと断定して、依然として国営堅持のままであると。

 アメリカは完全にこれは民営化しない、国営でやるという国が、なぜ日本にだけ民営化を迫るんでしょうか。何か、どういう魂胆があるんでしょうか。それほど日本の国が民営化することが彼らの利益にとって相当のものがあるんでしょうか。

 だから、そういう意味で、日本にこんなに事細かに注文をつけてこられるゆえんは何だとお思いですか、アメリカの本音は。

小泉内閣総理大臣 私はアメリカの総理じゃありませんから、アメリカの意図はわかりません。日本国民のためになると思ってやっているんです。アメリカのいい例というものはそれぞれ参考にしなきゃならないと思いますが、日本は日本独自の改革があるはずです。日本にとってどうしても必要だと思うから、私は、これはやらなきゃならないと思っているわけでございます。

米澤委員 この対日要望書は、いろいろと縦から斜めから見てみますと、まさに微に入り細に入り注文がつけられていますね。透明性、市場原理、公正な競争なんというきれいな言葉を使いながら、郵貯と郵便保険の完全民営化要求、民営化前の新しい商品販売の厳禁、民営化移行後での疑義を外資系企業が直接総務省等に提案する権限を確保しろ。アメリカ政府、米系金融機関の求めるものがいろいろと書いてある。

 これは確かに、アメリカから送ってきたんですから米国政府の方がいろいろと勉強されて書かれたんだと思いますが、ここまで細かになりますと、これは何か、日本にもアメリカ人がおりますね、日本の政府にも。そんな感じがしてなりません。

 結局は、彼らが一番欲しいのは何かといったら、やはりこれは三百五十兆ですね。本当のねらいは、郵便貯金と簡易保険で集めた三百五十兆円もの膨大な資金、マーケットをどうやら有利に展開するために、自分たちの言うことをちゃんと聞いて、いつでもすきをつけるような法案にしておけという命令書が下っておる。日本がブッシュの言うとおりに今郵政改革をやっておるとは思いたくはないが、しかし、もうどこかで符牒が合って、アメリカさんが今から押しかけてくる、準備体操をしておけ、土俵をちゃんとならしておきなさいというような文書にしか見えない。非常に残念というか、厚かましいやつだなというか、余り愉快ではないね。これでまた唯々諾々とついていったならば、これは本当に大変だなという気がしないわけではありません。

 特に、今からそれぞれが株式会社になり、十年の間に株がどんどん売られていく。終わった後にどんな姿の銀行ができておるのか、どんな保険会社ができているのか。そして、この微に入り細に入り大変都合のいいものを取り入れた銀行というのは、本当に一人で歩いていけるぐらいに力のあるものになるだろうか。ひよこになればかみつきたい。もうそれは民営化したらかみつき放題ですからね。今まで郵便貯金も保険も国営だったから、厚かましい彼らでも食いつきようがなかった。しかし、それが民営化されて、ぴよぴよ歩き出したら、いつでもかみつけるね。

 そういう意味で、やはり心配するのは外資規制なんですよ。昔は、例えばNTTとか日本航空とか、日本の国益に関係するところは、アメリカ資本にかまれたらだめだ、支配下に入ったらだめだということで外資規制をかけました。しかし、この前新聞をちょっと読んでいましたら、今回は外資規制をかけないことに決まりそうだ、結局外資規制はかけずに市場原理に基づいてきれいにやるんだと書いてあるね。しかし、市場原理というのは強いところのための原理ですよ。神様が与えたようなものじゃないですよ、これは。そういう意味で非常に心配になりました。

 市場原理、いいですよ。せっかくここまで進んだ市場原理ですよ。しかし、市場原理、市場原理と言うてこられるところに、その市場原理を本当にうまく回してくれるほどの度量があるか。もう金がすべてだからね。金融コングロマリットなんて僕ら見たこともないでっかいものが日本に押しかけてきてこの三百五十兆を食い散らす、そういう姿は見ておれませんわね。

 特に心配なのは、非常に竹中さんには大変御迷惑な質問かもしらぬが、竹中さんは日本とアメリカをまたにかけた優秀な経済学者、そして小泉内閣に入っても快刀乱麻を断つごとく頑張っておられる。だから立派な人だなと思う。しかし、残念なのは、その後に、竹中さんはハゲタカの手先だとか、日本をアメリカに売る男とか、不名誉な言葉がついて歩く。火のないところに煙は立たぬといいますが、そういう話が次から次に文章になってきますとボディーブローできいてくる。その上、この郵政改革の親分は竹中さんでしょう。この竹中さんが、そういう意味で、そんな人であれば、そうでないかもしらぬ、そうであるとすれば、もう完全にツーツーに手を結んで、三百五十兆はもう行き先まで決まっておるんじゃないかという心配を年寄りだからやっておるんです。

 何かそういう意味で、外資規制のあり方みたいなものをちょっと勉強してもらいたい。ちゃんとした株式会社になって、ひとり立ちしてひとり歩きできるぐらいの強さを持ったら、まあ、市場の原理でしょう。しかし、なったばかりで、民営圧迫するな、あれはするな、これはするなと、何とか委員会がやってやめろと言う。わけのわからぬ人がどんどんどんどん、おまえらそれはやめろ、それをやれというような会合の中で、郵便貯金会社なんかうまくやれるものですか、保険会社がうまくやれると思いますか。よちよち歩かざるを得ない。脆弱な存在として飛び出してきたときに、私は、やはり外資規制が、ある程度何らかの機会で外資規制が行われない限り、竹中さんが思うようにいくということを心配するんです。

 一言、竹中大臣、やれますか。どうぞ。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 私のことを外資の手先、ハゲタカ云々というふうな雑誌記事をたくさん承知しておりまして、それを読む限りは、私を批判して飯を食っている評論家が世の中にたくさんいるんだなというふうに笑っておりましたが、やはり、国会でこういうことを言われますと、笑っておるわけにもいかないと思います。

 これは、まあ委員は引用としておっしゃいましたので委員のお言葉ではありませんが、ハゲタカの手先ということをおっしゃるんだったらその証拠を出していただきたい、それは証拠がないんだったら言葉は撤回していただきたい、そのことを広く世間に申し上げたいと思います。

 私は、国務大臣として、日本国をよくするために郵政の改革に取り組んでおります。その中で、市場の原理というのは、これは重要でありますが、そこにはルールがある。そのルールをどのようにつくっていくかということもこれまた政府の重要な仕事でありますから、今、今回の郵政の問題について、まだ制度設計の途中でありますから、外資規制云々、結論を出しておりませんですけれども、これは広く皆さん方と議論をしながら、どのようなルールをつくるべきなのかということをしっかりと議論していきたいというふうに思っております。

米澤委員 今おっしゃったとおりに頑張ってもらいたいと思います。

 ただ、やはり、最後の姿を、このでかい資金量を持つ郵便貯金会社が世に出るときはどんな姿で出てくるのかということです。

 でかいから分けろという話も出てくるかもしらぬ。業務の仕方によっては、そこらの地方銀行はばたばたですよね。つぶした銀行はうずたかくたまるような銀行の出現の仕方かもしらぬ。そうなったら、またあちらの方は喜ぶ。

 そういうことを考えますと、郵便貯金会社というのは、最終的にはどんな姿で出てきて、分割があるのか。郵便局は、あれは支社になるのか支店になるのか。それで中へ統合されていくのか、業務は何をやろうとするのか、そこらをもっと今から明らかにしてもらって、このあたりの議論が進捗するように心から期待をしております。

 できれば初期の段階では外資規制。市場の自由化なんというのは、彼らに食われる原理ですから、これは。そのことを肝に銘じて担当者は法案をつくってもらいたいと心から念じております。

 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて米澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中慶秋君。

田中(慶)委員 私は、民主党の立場から、特に今、日本における企業そのものが、先ほどお話がありました外資の問題、企業買収を初めとするMアンドA、いろいろなことを含めながら大変厳しい環境になりつつある、こういうことを冒頭に申し上げておきたいと思います。

 審議の関係がございますので、最初にデータを若干確認しておきたいと思っております。

 最近三年間、外資が日本企業を買収した件数、金額はどうなっているのか。さらに、製造業の占める割合はどのぐらいになっているのか。そのうち、中国、台湾、韓国の企業が日本の企業を買収した件数と金額もあわせてお述べいただきたいと思います。

井戸政府参考人 我が国国内に対します直接投資につきましては、外為法上、報告あるいは届け出という形で計数を把握しているわけでございますが、外為法におきまして把握しております対内直接投資等は、例えば、上場会社等の株式の取得のうち当該会社の出資比率が一〇%以上になるもの、あるいは、期間が一年超で二億円相当額を超える貸し付け等でございまして、必ずしも企業の買収とは直接結びつかないものも広く対象としております。

 したがいまして、ただいまお尋ねがございました日本企業の買収の件数というものについて確たることは申し上げられませんが、対内直接投資の報告について計数を申し上げますと、過去三年間で我が国への対内直接投資は、四千三百九十三件で六兆四千八百三億円でございます。このうち製造業が、件数でいいますと一五%、金額でいいますと二五%を占めてございます。

 また、中国、台湾、韓国からの対日直接投資の件数、金額でございますが、これは製造業ということではなくて全体でございますけれども、過去三年間、平成十三年度から十五年度までで、中国からは七十一件で十億円、台湾からは六十六件で二百二十七億円、韓国からは百十二件で九十九億円というふうになっております。

田中(慶)委員 確かに、このような形の中で、日本に対する外資がじわりじわりと押し寄っているわけであります。

 総理は、こういう問題を含めながら、インベスト・ジャパンといって、外資を、対日投資を歓迎する、こういう表現を使っておりますし、また、日本のよき雇用慣行を破壊するような投資や日本の技術を盗みに来ているような投資、あるいは最近のニッポン放送等のような問題等々を含めて利益を中心とするような問題、企業解体を初めとするあらゆる問題を含めて、外資の歓迎ということが、想定をすると、日本の本来の企業の長い間の歴史と伝統と文化が今崩壊をするのではないか、このように心配しているわけであります。

 そういう中で、先般来、今のように心配したものですから、RCCの買収債権のうち外資に買収された件数、全体に占める比率につきまして公表する資料は全然現在ありませんので、金融庁に問い合わせましたところ、提出は難しいということ。あるいはまた、産業再生機構が再生を引き受けた件数について、資産や株式の売却の際、入札に外資が応札した例などを公表してほしいということを申し上げましたが、これらについても難しいということで、ある面では外資が秘密裏にだんだん日本に押し寄せてくるような状態が、今の日本の現状で、そういう環境があるわけであります。

 少なくとも、日本という国が、戦後今日に至るまで、物づくりを初めとする製造業がこの日本の発展を築き上げてきたわけでありますけれども、そういう中で、現在、外資によるあらゆる問題が日本に押し寄せてきているというのが現状であります。このことを総理はどう考えられ、どう対処しようとしているのか、冒頭にお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、外資が日本国内に投資をしてくれるということは、今後、警戒論が今まで強かったわけでありますが、むしろ歓迎すべきことではないか、外資警戒論よりも外資歓迎論という姿勢をとるのも大切なことではないかということで、インベスト・ジャパン、五年間で外資の対内投資を倍増させよう、そういう目標を立てて、警戒論から歓迎論という姿勢に転換すべきだということを申し上げております。

 日本の企業も各国に進出して投資をしております。先進国諸国の状況を調べますと、外資の対内直接投資、日本に対する投資は極めて低い、倍増しても依然として最下位、もう格段におくれているわけであります。

 外資にとって日本の市場が魅力ないものでは、日本の経済は活性化しない。外国の企業にとっても、日本の市場というのは魅力的なものである、投資をしてみたいなと思うような市場にしていかないと今後の日本の経済の発展はあり得ないという観点から、そのような目標を立てて進めているわけであります。

 その際には、日本の安全を脅かすとか、あるいは特別の配慮が必要という場合にはそれなりの規制は必要でありますが、基本的に、外国企業にとっても日本の市場は魅力あるものにしていかなきゃならないという観点から、今投資は少な過ぎる、どの国も、投資をしたいと思うような国にならない限り発展しません。

 私は発展途上国の首脳とよく会談しますけれども、日本の企業、ぜひとも来てください、来てくださいという陳情なり要請を受けます。その際にも言っているんです、日本の企業が進出しやすいような投資環境をあなたの国もつくってくださいと。

 そういう観点からいえば、先ほど米澤議員が言われたように、日本も、アメリカから言われるまでもなく、透明性を確保する、市場原理の原則を重視する、公正競争ができるような環境を整備するというのは、アメリカに言われるまでもなく日本自身が整えていかなきゃ、これからの経済発展はあり得ないと思います。

 そういう観点から、私は、外資警戒論から、余りにも低い今の外資の国内投資を見ると、外資歓迎論をとってもいいのではないかと基本的に思っております。

田中(慶)委員 総理のその発想は評価をする部分と、もう一つは、例えば、今アメリカの例を出されましたけれども、アメリカが、先般、中国の企業、IBMのパソコン事業部の買収のときに、それを、アメリカの政府が、国益を損なうからという形でストップされた、これが現実であります。こういう形のもので、アメリカは、不法な技術の流出をふさぐ意味でエクソン・フロリオ条項というものがあって、そして具体的にこのことについてしっかりと精査をする、何でもかんでも、海外を初めとするそういうことに。日本の場合、何もないんですよ。無防備なんですよ。あるならば、外為法ぐらいであります。

 ですから、先ほど米澤議員が言っているのも、こういう点では、はっきりとした、日本の国益を損なわないように、外資が入ってきてもそれに十分対応できるような法体制が必要だろうと。

 極端なことを言えば、企業間のスパイの問題、スパイ防止法があるわけでも何でもないし、いろいろなことを含めながら、日本がむしろ無防備の中でやられているというところに、総理が本当にウエルカムで外資歓迎ということであるならば、まずその基本的な部分の防御をしっかりとした上でやっていかないと、この国の技術も何も、今そういう傾向があるんです。技術も、経験も、特許も、すべてそういうところに行ってしまったならば、この日本の技術は、日本のこれからの将来はどうなっていくのか。そういうところが不安だから申し上げているわけであって、総理が言っているところについての、外資についてすべてノーと言っているわけじゃありませんので、まずそういうものをしっかりと整えた上で何事も僕はやるべきじゃないかな、このように思いますが、総理、どうですか。

中川国務大臣 外資を日本に呼び込むことについては今総理から御答弁がございました。日本は何でもかんでも、あらゆる企業について、いわゆる外国から投資、買収してもいいよということではないことは田中委員も御承知のとおりでありまして、今も御発言ございましたように、外為法あるいは個別業法で、例えば航空機、あるいは宇宙開発から農林水産業に至るまで列挙しておりますので、そういう意味では、国益を損なうものにつきましては外資規制というものがあるということは御承知のとおりだと思います。

 他方、今、いわゆるエクソン・フロリオ条項に基づいて、これは国防生産法という法律に基づいているんだそうでありますけれども、IBMのパソコン部門については、今アメリカの政府部内で、これがフロリオ条項に抵触するかどうかということを検討しているやに聞いております。

田中(慶)委員 大臣、私なぜそういうことを申し上げるかというと、最近の、整理回収機構、RCCの問題等々含めて、そういう外為法やいろいろなところをくぐり抜けて、日本の今のこのRCCが、あらゆるところがそういう形になってきちゃっているでしょう。

 例えば、何回かお話もしたことがありますけれども、日本のゴルフ場はどうですか。日本の旅館がだんだんそういう形で外資がほとんど入ってきている。そしてまた、今改めて、物づくりを初めとする製造業はそうされている。現実にそうですから。先般も、ライブドアのような問題も申し上げました。

 しかし、そうではなく、もっと、今、日本がなぜ景気がいいところと悪いところ、そして、よくなっていても、現実問題として原材料が高騰して、鉄が上がり、石油関連が上がる。そういう中で、例えば三井鉱山を見てください、今これが、逆に外資によって買収されようとしているんですよ。それは確かに三井鉱山そのものが、不良資産といいますか回収の関係で、そういうところも含めながら、しかし、日本は鉄鋼材がもう十倍も値上がりしているでしょう。そしてなおかつ、そのときと三井鉱山の現状というものは違うわけであります。

 しかし、この国の政策がはっきりしていれば、むしろ外資はここに手を出すような状態がなくなるだろう。あらゆるところでそういうところが日本に押し寄せてきているわけですから。そのことを私は心配しているんです。国策としてしっかりしたものをつくっていかないと日本の産業というのはおかしくなってくる、こういうことですよ。

 ですから、今鉄鋼の問題を申しましたけれども、日本には鋼材がないわけですから、ほとんど輸入。しかし、せめて、あるものだけでもしっかりと守るようなことをしていかないと、私はこの国の物づくりというのはやがて崩壊してしまうんではないか、そんな心配があるから今申し上げているわけでありまして、そのことについて、経産大臣ですか、これは。

中川国務大臣 今、田中理事からは、企業そのものの話と、それから技術、物づくりというお二つ、御質問があったと思います。

 企業そのものについては先ほど御答弁をさせていただいたということで、法制度がございますし、もちろん、これは仮定の話でありますけれども、今後また充実を、当然、必要があればしていかなければいけないと思っております。

 それから、いわゆる技術あるいは知的財産についても、正直言って数年前までは日本は本当に法制度が充実していなかったわけでありますが、田中委員に大変御指導いただいて、平成十五年のあの不正競争防止法の罰則強化、刑罰の導入というものも充実いたしましたし、今国会におきましては、さらにまた強化する改正案を御審議いただくことになっているわけであります。

 アメリカにおいては厳しい産業スパイ法というような法律等々があるわけでございまして、日本がこれから生きていくのは、まさに田中委員御指摘のとおり、物づくりという、人を中心にした技術国家としての発展しかないというふうに思っておりますので、その発展のインセンティブになるためにも、また、成果がきちっと守られるためにも、そういう知的財産等の諸権利をきちっと守っていくように、さらにまた我々も努力していかなければならないというふうに考えております。

田中(慶)委員 やはり国家戦略を持って日本の産業政策を打ち出していかないと、中国は、確かに、日本の空洞化という形の中で日本の企業がぼんぼん進んでおります。中国抜きにして日本の経済は語れないぐらい今行っておりますけれども、しかし、将来、本当にそれでいいんだろうか。技術を持ち、特許を持ち、資金まで持って向こうに行って、やがてそれが制度上の、極端なことを言えば、みなし課税でもがんとかけられたら、全部引き揚げてこなきゃいけない状態が出てくる。

 こういうことを含めて、やはり日本の技術、特許、もう少し大切にしていかなきゃいけないし、もう一つは雇用という問題。外資がぼんぼん入ってきても、日本の雇用環境なり長年培ってきた問題というものが、今外資が入ってきてもそれが受け入れられるかどうか。年功序列型はもう変わってきているにしても、あらゆる、労使協調の問題とか、そういう形で今日まで日本という産業が成長してきたと思います。

 ところが、今のような形の中で、極端なことを言えば、利益中心主義でいったならば労使協調なんというのはあり得ないことでありますから、そういう環境にじわりじわりと来て、日本の産業全体がボディーブローとしてそれが今ききつつあるということを私は心配して申し上げているわけでありますから、日本のこれからの産業、日本の経済を守る意味でも、このことをはっきりしておかないといけないと思います。ぜひこれについての考え方をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 基本的に田中理事のおっしゃるとおりでございまして、我々も、そういう意味で、人、物、技術といったものを守っていく。そしてまた、これは、一義的に企業自体あるいはまた民間の活動自体がいろいろな防衛策を講じておられるということも承知しております。

 例えば、今どんどん、一時期は、海外、中国等に出てまいりましたけれども、コア技術の流出を防ぐために、むしろ企業が日本に戻ってきて、そして日本の中で優秀な人材を生かしてコアの技術をブラックボックス化して、極端に言えば特許すらとらないでずっとブラックボックス化するというようなこともあります。

 人材も、流出していって、そしてまた向こうで頭の中のデータをベースにして、何か似たようなものあるいはもっといいものをつくられてしまっては大変なことになるわけでございまして、この辺はなかなか難しいのでございますけれども、先ほど申し上げました不正競争防止法等でこれからまた御審議、御指導をいただきたいと思っております。

 まさにいろいろな諸施策をこれからも、国家戦略についての田中理事の御指摘は当然の御指摘でございますので、そういう観点から我々としてもさらにやるべきことがあればきちっと対応していかなければならない。これはある意味では、企業同士あるいはまた国家同士の競争でございますから、競争の中で、不正な行為、あってはならない企業買収等は厳に我々としても対抗していかなければならないというふうに考えております。

田中(慶)委員 ぜひ、この国の今の状態、そして今の置かれている環境、十分いろいろなことを総理も存じていると思います。しかし、この国の今歴史が侵されようとしている、これが一番私は心配しているわけであります。

 やはり、培ってきた技術、培ってきたいろいろな環境、こういうことを含めてしっかりとした、資源がない日本なんですから、そういうことを含めて技術や人を大切にして、これから、外資も大切でしょう、しかしそのことを前提として法の整備をしながら、十分対応できるようなことをしてほしい。総理、その考え方について、短くて結構ですから、述べてください。

小泉内閣総理大臣 ただいま経産大臣が答弁されたように、不正に技術が流出しないような法案というものも今国会に準備しているということを聞いております。

 また、日本の国策にとって重要な保護の問題についてどのような規制が必要かという点については、よく議論をして、外資歓迎論と、そして日本の国内が混乱しないような、そういう両立を図るようなきちんとした法整備が必要だという点については私も同感でございます。

田中(慶)委員 次に、私は、日本のエネルギー問題。すなわち環境については、京都議定書を初めとするCO2対策がいろいろな形で議論をされる。しかし一方、エネルギー問題は、この環境を実現するためには、かねて、クリーンエネルギーなりそういうことが述べられ、要求されておりました。

 しかし、現実には、この京都議定書を守るためには、あらゆることを検討しても、やはり最終的には原子力エネルギー、これに頼るところが大である、こういうことであったわけでありますが、その計画が、実現するためには少なくともあと十基から十三基つくらなければいけない、こういうことであったわけですが、今はむしろ後退をしている、これが実態であります。

 中でも、この京都議定書を実現するために、CO2対策。原子力が現在あらゆるところで、事故があったことも事実でありますけれども、しかし、過度な要求、いろいろなことをされたり、あるいはいろいろな心配をされたりしながら停止されていることも事実であります。

 ところが、一方においては、この三年間において、化石燃料を中心として、日本の需要に賄うような形で供給をされてきた。そして、六%の京都議定書を今はるかに、八%台までいった、これが現実であります。ところが、その結果、いろいろなことを調べてみますと、原子力が休止をしている関係で五%ぐらいその影響が出ている、こういうことであります。

 一方においては、化石燃料そのものが、私は、日本における全体的な、今、石炭、石油を初めとする、これが全体で四〇%台ですから大きいわけでありますけれども、電力の自由化という名のもとに、化石燃料に反面頼ることが大きくなってきている、これが実態だと思います。

 そういう中で、例えば、私は、このCO2対策の中で、京都議定書をしっかりこれから実現するんだ、あるいは、地球の環境をいろいろなことを含めて守るんだ、こういうことも大切であろうと思いますが、そのために、電力の自由化という名のもとに、例えばこの国会も含めて、役所の電気が今どうなっているか、全部調べてみました。これは今、化石燃料による低価格の電力が使用されている。これが実態なんですよ。東京電力を初めとする原子力のエネルギー、ここには来ておりません、価格的に見ると。これが実態なんです。

 私は、京都議定書を一方実現しなきゃいけないということであるならば、せめて公的なところぐらいは、民間はそれはいろいろな形でそれぞれの経営の考え方がありますから、公的なところはそのぐらいは使用しなければいけないんじゃないか。ところが、会計法がある。こんな形で、それならば、では、この京都議定書を調印しながら、これはこのままでいいのか、こうなってくると思います。

 ですから、矛盾したやり方を今行っているわけでありますけれども、このことはどうクリアをしていくのか、まず教えてください。

中川国務大臣 京都議定書の目標達成のために地球温暖化対策大綱で、今、田中理事おっしゃったように、原子力発電所が非常にクリーンで安定的なエネルギーを供給するということで、二〇一〇年までに、これは計算の仕方によって若干違いますけれども、十基から十三基を新設するということがこの目標達成に必要であるという目標を立てたわけでございますけれども、現実には、既存、新設含めて五基ぐらいしかめどが立っていないのが現実でございます。

 そういう意味で、田中委員おっしゃるように、原子力発電というものは、まず安全性という大前提があって、そしてまた、地元を初め国民の皆様の御理解というものが大前提でございますけれども、その上に立って、温暖化対策のためにも大きな貢献を果たすエネルギーであるというふうに思います。

 今、プラス八%という最近の数字の御紹介がありましたけれども、これは、昨年、一昨年と例の原子力発電所がストップしたことが、はね上がっている原因の一つにもなっているわけでございますので、そういう意味で、先ほど申し上げたように、安全性、御理解というものを大前提にしながら、私は、基幹エネルギーの一つとして、温暖化防止にも貢献する原子力発電所を一つ一つ着実に進めていくことが大事なことだろうというふうに考えております。

甘利委員長 大臣、国の施設を化石燃料でいいのかという質問がありましたが。

中川国務大臣 失礼しました。

 国の施設につきましても、経済産業省を初め多くの施設につきましては、いわゆる入札によりましてできるだけ安いエネルギーを、これは化石燃料が中心ではございますけれども、やっているわけでございます。

 化石燃料を脱却という一つの方向性への御指摘でございますけれども、例えば新エネをもっと活用するとか、そういう意味で、政府機関においても委員御指摘のような方向というものは、国民のある意味でコンセンサスの中の一つの手法として我々もこれから引き続き努力をしてまいりたいと思います。

田中(慶)委員 いずれにしても、こういう形で、環境問題が私は一貫した政策でなけりゃいかぬと思うんですね。今のように何か非常に苦しい答弁をしていたって、現実問題として役所が使っているのは化石燃料を中心とする安い、悪いとは言いませんよ、安いものを使ってやっているわけですから、そういう点で矛盾しているやり方。環境大臣、どうですか。

小池国務大臣 京都議定書の目標達成ということにおきましては、例えば業務部門、オフィスビル、これには自治体も含みますし、霞が関も入るということでございます。

 環境省として、隗より始めよということで、CO2の排出量の少ない燃料電池の導入をことしの夏から始めようということにいたしております。また、総理官邸の方でも燃料電池そして風力発電などを取り入れるということで、まずはそれをモデルケースとしてもやっていきたい。

 ただ、霞が関全体ということに関しましては、これから、グリーン購入というものがございますけれども、発電に伴う温室効果ガスの排出量が少ないといったような要素を加味した電力の購入方式、こういったものを関係省庁と連携いたしまして早急に進めるべきではないか、このように思っております。

田中(慶)委員 皆さん、本当にきれいごとばかり言っているんですね。例えば、総理、よく聞いてください。原発一基をつくるに当たって、キャパシティー、容量ですね、それから費用、大体三千億ぐらいが原発一基です。それで、では極端なことを言えば、それに相当する、今お話のある太陽光を考えてみますと、どのぐらいかかるかというと、太陽光だけでも、一基分で二万一千八百七十五基必要だ、費用が大体七兆円ぐらいかかる。こういうことが試算で出ております。あるいは風力発電、大体四千基ぐらいかかります。原子力一基について四千基ぐらい、それで費用は約二兆円ぐらいかかる。こういうことが試算で出ております。

 あるいは、これを太陽光の家庭用にしますと、一基分で、業務用と家庭用を分けて考えていきますと家庭用はもっとコストは低いですけれども、そういう形で、この投資、今のような形の中で、それは単なる比率はいかぬと思いますけれども、原子力発電の一基のものというのは、太陽光なり風力発電、クリーンなエネルギー、同じクリーンであります、そのぐらい違う。

 一方は、石油や石炭を使ってその補完をしているわけでありますけれども、今の太陽光あるいは風力発電は、現実に需要と供給が間に合わない。これが実態でありますから、やはり、きれいごとを言うのも私は一つの方向性としてはいいと思いますけれども、いかにこれを実現できるか、そのためには、一つには、安全、安心ということが述べられるんだろうと思います。

 そういう点で、今、これは財務省の方にも関係あるわけですけれども、例えば、この安全の問題等々を含めて、地元の協力、地方自治体なり設置の協力を得るためには、電源三法とかいろいろなことがあります。そういうことを含めて、時代とともに変わってきている、ひもつきになっている。電源三法だって、使う用途が全部決められております。

 こういうことを含めて、一方においては、地方自治体の設置のところの協力がなければできない。しかし、本来は国の政策ですよ。ですから、地方自治体の協力、極端なことを言えば、民主主義ですし、いろいろなことが現実にはなければできないわけですけれども、国の政策ですから、もっと明確にしなければいけないんだろう。

 特に、時代とともに変化をする問題の中で、今のようなことを含めて、例えば国の安全規制の充実の問題、あるいは原子力の防災等の問題があります。こういうことも含めながら、それぞれ原子力にまつわる地方自治体が心配している。あるいは、設置をしているために、テロ対策が十分なのか、十分じゃないと思います、それぞれの地区で考えてみますと。あるいは人材の確保と育成、国はそういうところにどれだけ力を入れているのか。ある面では、それは全部、業者任せといいますか、事業者任せになっております。

 こういう形、電源三法にしても、ひもつきでありますから自由に使えない。時代は変わってきているんですから、それぞれの自治体に合ったようなことを、こういうことを含めて、それぞれの地方自治体にこれは関連するわけでありますから、総務省が自治体を管轄していると思いますし、電源三法の関係の使い道については財務省が関係すると思うし、トータルとして、こういう問題についてどう対処されて、このエネルギー一つとってもこういう問題が、縦、横、斜めの関係があるわけでありますから、このことをどう皆さん方が対応されているのか、お聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、電源三法の関係で私を名指しでおっしゃいましたので。

 電源三法、特会のあり方、私どももよくよく相談をしてまいりたいと思っておりますが、私もかつて原子力委員長も務めさせていただきましたので、原子力発電の重要性は十分認識しているつもりでございます。

麻生国務大臣 これは、今おっしゃったように、風力発電にかかるコストと原子力発電所一個のコスト、同じ出力を出すに当たって、この計算をイニシアルコストだけで言われましたけれども、後のメンテナンスするときに当たりますメンテナンスコストは、たしか風力発電の方がかなりかかりますよ。その計算もしていただかぬと、実際に、最終的な一キロワット当たり幾らでできるかという話は、そのコストも計算されるとさらに違いやしませんかね。

 私は、日本の場合は風が一定しませんものですから、あそこのギアのシャフトがよく壊れるというのが、これはだれでも、あの種の製造業をやっておられる方は皆知っておられると思うんですが、そこのところが一番、ほかの外国の場合に常に一定の偏西風が一定の風力で吹いているところと全然日本の場合は違うという点も計算いたしますとさらに差がつくという意識がありますので、原子力というものの安全性の確保の上にも、当然のこと、配慮するにしても、コストというところは非常に大きな配慮を払わねばならぬところだと思っております。

中川国務大臣 いわゆる化石燃料重視からの脱却という方向性については御指摘のとおりでございまして、そもそも日本はいろいろなエネルギーを活用していかなければならないということと、それから環境とエネルギー、あるいは環境と経済との両立というものも当然考えていかなければいけないわけでございます。例えば、御承知のとおり、九電力では原子力発電エネルギーはもう三分の一ぐらいでございますし、また新規の事業者については、微々たる数字ではありますけれども、いわゆる新エネを徐々に導入しておりますし、例のRPS法の目標もございます。

 そういう意味で、今後も新エネ等々を原子力も含めてやっていくことが、エネルギー政策あるいはまた環境政策からも非常に重要なことだと思います。

 一つ具体的な例を、ちょっと宣伝めいて恐縮でございますけれども、三月二十五日から始まります愛・地球博の二つの日本館のエネルギーは外部電力を一切使っていないわけでございまして、太陽光と、会場施設内で出るいわゆるごみから発電するエネルギーで自賄いをするというのも一つの売りでございますので、ぜひ委員の先生方も愛知万博にお越しいただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

田中(慶)委員 総務大臣、今、それぞれ町村合併がされる等々含めて、今のような電源三法等についても、町村合併しますと、今まで関係ないところと一緒になるわけですからそういう心配も出てくる、こういうことでありますので、そういう地方自治体の協力がなくてこれができないということであれば、そういうところに配慮をしていく。

 経産大臣、あなたに申し上げて返事が来ていないわけですが、返事は要りませんけれども、ただ、やはり人材教育というものをしっかりしておかないと、これは今はどちらかというと事業者に任せっ放し。ですから、これは国を挙げて、国のエネルギー政策であるならばそういう点での人材育成もしっかりとしていかないと、本来のエネルギー政策になっていかないと思いますよ。ですから、このことをしっかりと対応してほしい。

 今、原子力の話をしましたけれども、もう一つの問題は、我々が日常使っている自動車の問題だと思います。これもほとんど化石燃料に頼っているわけであります。

 ところが、どうでしょう皆さん、電池自動車にしてもまだ普及が、それは一部国の省庁の中では使っておるということでありますけれども、高くて一般大衆がこれは買えないわけであります。やはり今使っている自動車と同じような値段にする努力をすることは、民間に任せっ放しじゃなく、これは一つの産業革命として国を挙げてやるべきじゃないかな、そんなふうに思っておりますけれども、具体的にこれは総理にお伺いしましょうか。

 産業革命として、今の自動車に対する、燃料電池等々含めて開発はされておりますけれども、実用段階では現実に一般の人は手が届かないわけでありますから、それを国を挙げてやるべきじゃないか、結果として日本に新たな産業革命が起きるんじゃないか、私はこんな考え方を持っているわけでありますが、この辺について。

中川国務大臣 総理の強い指示で、我々の車は全部低公害車にかわっているわけでございまして、これをもっと普及するということでございます。

 確かに今は高いというのが現実でございますけれども、低公害車を含めて、環境に優しい、そしてまた、私なんかはいわゆるハイブリッドの車に乗っておりますけれども、要するに、高いというものについてどんどん値段を下げていかないとやはり国民に広く普及していかないという御指摘はもっともなことでございます。

 これは売れれば価格が下がるということも経済原理としてはあるのかもしれませんけれども、やはり国としても、こういう化石燃料からの脱却、あるいはまた環境に配慮したエコカーのようなものの普及については、我々としても当然普及のための努力をしていかなければならないというふうに考えております。

田中(慶)委員 確かに普及すればいいんでしょうけれども、原価が高いからなかなか買えないわけですから。やはりそのことを含めて、みんなそれぞれ役所は使っても、一般のところはなかなか使えない、結果として、環境に優しいといったって優しくないわけですから、そのことを国策としてやることによって新たな産業革命が生まれるだろう、私はこういうことを申し上げているわけであります。

 これは総理が非常に関心をお持ちのようですから、総理に答弁お願いします。

小泉内閣総理大臣 環境革命といいますか、環境保護を重視すると経済発展の阻害になるんじゃないかという考えはもう捨てなきゃいかぬ。そういうことで、私は、環境保護と経済発展を両立させる努力が必要だ、そのかぎを握るのは科学技術だということで、鋭意政府としても率先して努力しております。

 例を挙げれば、就任する前は、低公害車は高くて買えないと。環境省も低公害車を使っている率が一割程度、何でそんなに少ないのかということで聞いたらば、これは普通の車に比べて高いから予算がありませんと言うから、それでは、三年間で、政府、役所の使う車は低公害車以外は買いませんと宣言して、ちょうど三年目、実現したわけです。そうしたら、民間の自動車会社も、ああ、低公害車しか買ってくれないのかということで設備投資を始めて、安くなって、今民間の方々も、新規の自動車の場合は六割がもう低公害車になっています。

 だから、このように、私は、高いから使わないんじゃなくて、環境に適するもの、環境保護に適するものは、政府が率先して購入するなり、努力していかなきゃならぬ。役所は、太陽光発電、太陽光を全部使うように今指示しています。そういう点をもちまして、できるだけ環境保護に適するような、そういう努力を政府も率先してやっていきたいと思います。

田中(慶)委員 まだ通告をしている質問もあるわけでありますが、時間の関係もありまして、次に移りたいと思います。

 実は、今度の国会の大きな争点は、定率減税の問題も年金の問題もありました。もう一つは、やはり政治と金という問題もあったわけでありまして、さきの臨時国会から、政治と金、特に証人喚問の問題でいろいろな議論をされてきたわけであります。私たちは、こういう一連の中で、この国会の大きな、政治と金という問題は大きな議題として集中審議もしました。そして証人喚問の要求もしてきたわけであります。委員会、理事会でさんざんその議論をしておりますけれども、しかし、委員会には見えないとか、国民にはわからないということも、現実、そういうことでしょう。

 私たちは、その経過を踏まえながら、与野党間でお互いに誠意を持ってこれに取り組むとか、委員長のあっせんでいろいろな文書をしながら行ってきたところであります。しかし、現実には、証人喚問がいまだできていないことも事実であります。

 一方においては、迂回献金を初めとするあらゆることを含めながら政治資金規正法の見直し等についても一歩前進させる、こういうことで、それぞれ、昨日の岡田代表の質問の中でも、総理は前向きな答弁もございました。

 しかし、私が委員長にお願いしたいことは、これこれ、今までさんざん私たちは証人喚問の要求をしてまいりました。きょう予算が、朝の文書の中にも、予算が成立する。参議院で成立するわけでありますけれども、きょう、衆議院を通過しようとしているわけであります。

 そういう中で、私たち予算委員として、この問題に一定の決着をつけなけりゃいかぬだろう。予算を通過させる。一方においては、今のような、ハウスの違うところに証人喚問が未解決でそのまま送るということも、これまた、我々予算委員会として使命を果たしていかないんじゃないか。

 そのことを含めて、本来ならば、委員長、特段の、こういうことを含めて理事会ではさんざん議論してまいりました。しかし、そのことが全体にはわからないわけでありますから、私は、本来、ここで証人喚問についての一定の結論を出すべきだと思いますが、委員長、どうですか。

甘利委員長 御案内のとおり、現在、理事会で協議中でございます。

田中(慶)委員 確かにそういうことでありましょうけれども、昨日の総理答弁を見てください。総理答弁は、今までは委員会では、自分はそれはそうだと思うけれども、委員会でぜひ検討してほしい、こういうことであったと思います。

 しかし、きのうは総理は、一歩それに前進というか、一歩踏み込んで、お互いに率直な意見を交換し、この問題の結論を出していただきたいと思う、こういうことを岡田代表の質問で述べられたわけであります。ということは、この委員会で結論を出してほしいということだと思います。

 総理、総理がきのう述べられたことは間違いございませんよね。まず、総理にそのことを確認したいと思います。

小泉内閣総理大臣 きのうでしたか、岡田代表の質問に答えて、そのような発言をいたしました。

田中(慶)委員 そうすると、総理がそういうことを含めて、総理は、はっきりと我々が選んだ総理大臣でもあろうと思います。これは全部で選んだんですから。その総理がはっきりとそう述べられているわけですから、両院の責任者、政府、こういうことでありますから、そのことに、私は、委員長として、やはり重く受けとめながら一定の結論を出すべきじゃないか。

 それを今のような形では私は納得いきませんので、委員長、この証人喚問の問題について明確な答弁をお願いしたいと思います。

甘利委員長 田中委員、御承知でおっしゃっているんだと思います。

 理事会協議中でありますし、特にこの問題に関しては全会一致が大原則でございます。委員長という立場上、個人的な見解を申し述べるべきではないというふうに思っております。

田中(慶)委員 本来ならばここで議事進行をかけておかなければいけないわけでありますが、今の委員長の、この理事会の話し合い、もう既にこれはずっとやってきているわけですから。なおかつ今総理の答弁、それについて言うならば、私は今の委員長の答弁には納得できません。

甘利委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

甘利委員長 速記を起こしてください。

 田中委員に申し上げます。

 御指摘の問題に関しましては、昨日の岡田委員の質問に対して、総理からも、引き続き与野党間の協議を見守りたい旨の発言もありました。私からも、引き続き、予算の現場、理事会並びに各党間での協議を引き続き要請したいと思います。

 質疑を続行してください。

田中(慶)委員 私は、かねてからこの問題についても、さきの国会からずっと続けて、その都度その都度、今のようなことを繰り返し申し上げてまいりました。

 しかし、それは理事会の席上ですから、余り、はっきり申し上げて、こういう委員会の委員の皆さんにはわかっていただけないということで、今改めてこのことも申し上げたわけでありますけれども、昨日も総理の発言もありましたし、あるいは今、委員長からの発言も踏まえながら、本来ならば、私は、採決を先送りしてでもやるぐらいの重要な問題だと思っております。

 今のようなことを含めながら、もう一つ委員長にお願いしておきたいことは、やはり一定の結論を出す方が望ましい。まして、我々は、予算委員会として、この予算そのものを参議院にきょう送付、最終的になること、そして、今の問題を先送りすることはいかがなものかと思いますけれども、委員長の今のような形で御裁定でありますから、それをよしとして、一応、今後、理事会初め各党の中でより前進する結論が出るように期待して、私の質問を終わらせてもらいます。

甘利委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木秀典君。

佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。

 私は、きょうは、最初は司法改革の問題から入りたいと思っております。

 去る一月二十一日、この百六十二回国会での小泉内閣総理大臣の施政方針演説の中で、この司法改革について触れておられます。大変短いフレーズでございましたけれども、「国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、裁判の迅速化や刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入など、我が国の司法制度のあり方を半世紀ぶりに改めました。今後は、制度の着実な実施を図ってまいります。」これだけでありますけれども、非常に私は重い言葉をいただいているんだろうと思います。

 言うまでもなく、この司法改革は、ここでもおわかりのように、五十年に一度、場合によりますと、今後五十年を見据えてということですから、百年にわたる大改革である、私はこう思っております。

 そして、恐らく、小泉内閣はさまざまな聖域のない改革ということを言っておられる中で、私は、最も具体的に成果を上げて進んでいるのがこの司法改革ではないかと思っております。

 ところが、この司法改革の提唱がなされたのは実は小泉内閣の前の橋本内閣のときでありまして、具体的には、それを受けた小渕内閣のもとに司法制度改革審議会がつくられました。ここで審議に加わった民間の方々、委員が、まことに精力的に二年間の審議をして、あらゆる角度からこの司法制度の改革に取り組んだわけですね。

 その結果として、その後、司法制度改革本部の本部長を務められた小泉総理大臣に対して、この二年間の審議の経過をまとめた意見書を渡された。そして、これに基づいて、小泉内閣が、これを具体化するさまざまな法律案をつくられて、国会に提出をされました。

 実は、昨年の通常国会、そして秋の臨時国会までかかりましたけれども、当時、私も法務委員会の野党筆頭理事をさせていただいて、非常に難しい法案が幾つもあったわけですけれども、これに取り組みました。その中でも、幾つも幾つもたくさんの大事な法律案があった中で、最も大きなものは、私は、一般の有権者の中から選ばれた国民が職業裁判官と一緒に裁判をするという画期的な裁判員制度、これが一つだろうと思うんですね。

 それからもう一つは、これまで、法律扶助事業、例えば経済的な理由からなかなか裁判をやりたくても裁判ができないというような人々に、経済的な援助を与えて裁判の権利を使用させようという、これが実は、事業主体が、従来は日本弁護士連合会の外郭団体である法律扶助協会が主体になってやっていたんですね。これに対して国が一定の援助をするというやり方でございました。ところが、今度はこれを改めて、いわゆる司法ネットというものをつくって国営としてやる、国の事業としてこれを行って、この法律扶助事業あるいは刑事の国選弁護事業、これも行う。地方にセンターがありますけれども、各地方にもこの司法センターというのを置いて、それで国民のニーズにこたえていこうという、これもまた画期的な大きな事業だと私は思うんです。

 それからもう一つは、法曹に各方面からの広い人材、いろいろな社会的経験をした人々を迎え入れることによって、固定的な法曹ではなくて、いろいろと豊かな教養や知性や社会的経験を持った人々に法曹として働いてもらいたい、そのための企画として、いわゆる法科大学院をつくることになったわけですね。これは昨年から実施、もう動いておるわけですが、私は、この三つが大きな大きなやはり目玉だったのではないかと思っております。

 その中で、特に今の司法ネットなどは、さっき申し上げましたように、今まで民でやっていたものをむしろ官でやるということで、総理大臣の郵政民営化、あるいは、民にできるものは努めて民にということとはちょっと違っているかもしれないけれども、しかし、私は、それだけに大きな大きな重みを持つものだろう、こんなふうに思っているんですね。

 きょう私の方で用意いたしました資料で、法律扶助の予算の関係のペーパーがあると思いますので、見ていただければわかるのですけれども、今まで少ないとはいいながら、確かに、国の民事法律扶助国庫補助金は大きくなっているのは間違いありません。例えば、平成十二年度のときには二十一億だったのが、本年度の予算、ここにありますけれども、この中では四十五億にまで上がっておりますので、この点はいいんですけれども、しかし、もう一枚、諸外国の法律扶助支出額の概要というペーパーを見ていただきますと、先進国の中で日本は非常にこの点の予算が少ないんですね、明らかに少ない。

 国民一人当たりの負担の額を見ますと、これは歴然としております。日本円に直して、イギリスの場合は七千二百四十六円、アメリカの場合には千百三十六円、フランスで三百四十五円、オランダでも二千四百九十七円というように大きいのに、日本では国民一人八十五円しか負担になっていないわけですね。

 総額からいっても、本当に大変な違いです。イギリスの場合には、民事の法律扶助関係で一千六百二十六億円、大きな金額。日本の場合には、この表よりはことしの予算は上がっております。さっき御紹介のように四十五億ですけれども、しかし、とにもかくにもこれだけ違う。

 そこで、司法改革が今大きな成果を上げつつあるんですけれども、裁判員についても、あと四年間準備期間がありますけれども、しかし、実際には、マスコミが国民の皆さんにアンケートなどを行っているところでは、今のところ、進んで裁判員になりたいという人は決して多くない、四割程度にとどまっているというんですね。それだけに、私は、皆さんの御理解をいただくさまざまな方策も立てなければならないと思います。

 過日、NHKのテレビが二日間にわたって特集を組んで、模擬裁判的なドラマなどを入れて、非常に感動的な、この裁判員制度をお知らせする、よい番組をつくっていただいた。こういうことをいろいろなところでやっていただかなければならないと私は思っております。

 そこで、総理大臣、この裁判員制度、あるいは司法ネットなどに限っても結構なんですけれども、これからこれを本当に魂のある充実したもの、効果のあるものにしていくにはどうしたらいいのか。国民の皆さんにどんな御理解を求め、あるいは国としては、これから相当やはり人もお金も要ることになると思うんですけれども、それをしっかりと手配するだけの決意をお持ちになっているか。これをお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回、佐々木議員、御努力いただきまして、関係者の皆様方とよく協力もしていただき、このような画期的な改革ができたことにつきまして、皆さん方に敬意を表したいと思います。

 今御指摘のように、新しい制度改革に伴って、まだまだ国民に周知徹底が行き渡らない面が随分あります。その一つの例が今御指摘の、国民みずからが、専門家ではない国民も裁判員になって一つの事件に判断を下さなきゃならない、こういう点については、まだまだ国民の間に、もし自分がそうなったら受けるかどうか迷っておられる方も随分おられると思います。そういう点について、よく理解と協力を得られるような啓発活動もこれからしていかなきゃならない。

 また、余りにも裁判が遅過ぎるじゃないかという批判もあった。地域によっては、相談する弁護士もいないというような、そういう状況がある。いろいろ不備な点を皆さん方の御努力によりまして改善していただいた画期的な制度でありますので、御指摘の点も踏まえまして、まだ時間がありますので、十分この新しい制度に理解と協力が得られるように、政府としても、広報なり啓発活動により一層力を入れて、この新しい制度に国民から理解を求められるようにしていきたいと思っております。

佐々木(秀)委員 何といっても、制度も本当によい制度にならなければいけないものですから、お互いに努力をする必要があると思います。

 私ども、議員同士で相図りまして、この司法改革をしっかりするものにしようという、推進のための議員連盟を超党派でつくりました。自民党の保岡さんが代表でございまして、私どもの参議院の江田さんが代表代行、私も副会長を務めておりますので、しっかりひとつこの問題については取り組んでいきたい、こう思っております。

 そこで、司法改革のもう一つの問題であります法科大学院ですけれども、実は、この法科大学院が非常に大事なんだ。そして、ここを出る人が司法試験を受けることになるわけです。

 この司法試験の合格者のめどなどについて、先日の当委員会の論議で、私どもの小林千代美さんが質問に立って法務大臣にもお尋ねをしたところですが、その後、二十八日の日に司法試験委員会から、新しい司法試験の合格者と、それから、この数年、旧来からの司法試験制度とが併存していくわけですね。ただ、新しく法科大学院を出た人々に対して行われる新司法試験については、時期も異なる、それから試験の内容も異なっていくということになっているんですが、この合格者のめどが実は大変、法科大学院のこれからの存立の問題と絡んで問題になるわけです。

 つまり、せっかくそこで幅広く勉強しながら、理想的な法曹を求めるということで応募をしてきた人たち、かなりこれは入学試験は難しかったんですけれども、いろいろな社会的な経験をした人たちが入ってきているわけです。いわゆる法学部の学生だけじゃなくて、既に社会人になった人が来ている。あるいは、家庭の奥様だった方が来ているとか、半分ぐらいの方がそういう方々なんですね。その方々がこれから二年なり三年なりしっかり勉強して司法試験を受けるということになるわけですけれども、この合格者がうんと少ないということになると、この制度をつくった意味がない、こういうことになるわけですね。

 そこで、かつて一部の報道が、今度は、司法試験の合格者を仮に千六百人ぐらいと想定する、そうすると、新旧の合格者の合格割合が半分ぐらいずつで八百、八百ぐらいになるという予想を立てた新聞があったものですから、そんなことになったら大変だということで、法科大学院の関係者の皆さん、あるいはそこで学んでいる学生の皆さんからいろいろな意見が出てきた。それに対する答えのように、二月の二十八日、一応これが出ました。

 そして、来年この新制度が行われるわけですが、来年は、新司法試験の合格者のめどは九百人から千百人ぐらい、そして旧の試験の合格者、つまり、法科大学院に入らない人で旧の試験を通る人は五百人から六百人ぐらいというめど、一応の目安とされています。ですから、一応、心配された半々よりは、法科大学院の卒業生の方の合格率を上げるということにはなっているんですけれども、しかし、これについて実は、さきの司法制度改革審議会の意見では、法科大学院を出た人たちの七割から八割ぐらいが試験に合格できるようにすべきだという提案をされているわけですね。

 来年はこのぐらいですけれども、そして、この司法試験委員会の一応の決定によりますと、次の年度、つまり平成十九年については、新司法試験の合格者を来年より倍ぐらいにしたい。そうすると、仮にこれが九百人だとすると次の年には千八百人、それから千百人だということになると二千二百人ということにはなるのです。

 しかし、再来年、恐らく、この司法試験を全部が受けるかどうかわからないにしても、法科大学院の卒業生が約六千人だと見られているんです。そして、来年、法科大学院の卒業生は司法試験を受けるけれども、入れなかった人が約千人ぐらいあるだろう。そうすると、合わせて七千人ぐらいなんですね。

 七千人に対して、この司法試験委員会が今度目安として出した再来年の新試験の合格者の数ということになると、いっぱいいっぱい見積もっても二千二百人ぐらいにとどまるとすれば、三分の一強にとどまってしまうのではないか。そうすると、さきに審議会の言っていたような目標とは違ってくるのではないかという心配がまた新たに出ているわけなんです。

 この一応目安とするということの意味と、これが確定的なものなのかどうなのか、今後この辺については、どこでどう検討していくのか、この辺をまず法務省にお尋ねしたいと思います。

倉吉政府参考人 数字のお話もございますので、ちょっと事務当局から答弁することをお許し願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、八百、八百という数値がございましたが、あれは司法試験委員会でさまざまなシミュレーションを組んで考えていたようですが、あれが法務省の素案であるとか司法試験委員会の当時の意見であったということは一切ございませんので、御了解いただきたいと思います。

 それから、今、合格率というお話がございました。

 合格率でございますけれども、これも司法制度改革審議会の意見書の中に記載されておりますが、量だけではなくて質も豊かな法曹を養成するということだということになっておりまして、その中で、今先生が御指摘になった箇所でございますけれども、ここを読み上げさせていただきますと、「法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約七〜八割)」となっておりまして、その者が「司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」と。

 したがって、ここで書いておりますのは、法科大学院に入った人がみんな入れるということではなくて、そこで七、八割の者が受かる程度の充実した教育を行うべきである、こう記載しているということをまず御了解いただきたいと思います。

 委員御指摘のありましたとおり、今、法科大学院にはさまざまなバックグラウンドを持った、理科系の方であるとかお医者さんであるとか、非常にすばらしい方がたくさん入っておられます。私どもとしても、そういう方にたくさん入ってきていただきたい。司法試験委員会もそれと同じ思いでございまして、そこで、新しいプロセスとしての法曹養成の中核となるロースクールにシフトをした、そういった合格者の数字を出したもの、こう承知しております。

佐々木(秀)委員 この問題は意外に重要な問題なので、今法務省のお役人の方からの答弁だったけれども、法務大臣もしっかりこれを聞いていただいて、司法試験委員会でこういうことを全部決めるのかどうかということだって本当は問題なんですよ。だから、このことについては、これから非常に大きな、いろいろな意味での重要性を持つものですから、また法務委員会でも議論をさせていただきたいと思います。

 そこで、先ほど御紹介したように、この問題について、この間、同僚の小林千代美委員が質問をした。最後に南野法務大臣に対して、この委員会での議事の内容が明らかになっていないじゃないか、議事録も公開されていないしと。それに対して法務大臣は、要旨が見られる、こういうことを言ったのですが、要旨だけでは全容が全然わからないし、しかも、だれがどういう発言をしたのかということが顕名になっていないじゃないかという話が出ているわけですね。

 これも、私はかねがね、本当に問題にすべきことだと思うんです。この司法試験委員会だけじゃないんですよ。法務省、ほかにもそうですけれども、いろいろな審議会がある。審議会の審議内容がどうも非公開になっている方がまだまだ多いんですね。ところが、さっき御紹介した司法制度改革審議会、あれは全部公表していたんですよ、名前も含めて。インターネットでも全部見られた。僕はすばらしいことだったと思う。だけれども、それが発表されて、公開されたことによって支障なんか何にもなかったですよ。委員にも御迷惑かかるようなことはなかったですよ。

 そういう点で、この問題についての、司法試験委員会の内容がわからないということについては、これはやはり考えていく必要がある。

 このことについて小林委員が質問をしたのに対して、今後も法務委員会で議論を続けましょう、それをぜひ約束してください、これに対して南野法務大臣が、適切な御質問をいただけるならば粛々として検討させていただきます、こういうお答えだった。そうすると、見ようによっては、聞きようによっては、小林委員の質問が不適切だったのかなととられかねないんですよ。これは、私は不穏当だと思うんですよ。これがあなたの真意なのか。真意でないとすれば、この答弁は僕は明らかに適切ではないと思う。ここで、この点について訂正される意思があるかどうか。

 それから、今後、この問題については、大事な問題ですから私もまたやりますけれども、審議会の議事録の問題、公開の問題、そういうことについて検討されるお考えがあるかどうか、これを言ってください。ただし、きょうそうするとはいいですけれども、検討するかどうか言ってください。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 少し長くなるかもわかりませんが、最初の問題につきましては、当日の議事録を見ながら省みますと、言葉足らずで、私の真意が伝わるような答弁になっておらず、これは申しわけないと思っております。

 私の真意は、委員の御指摘の点は重要な点でありますので、十分御議論をさせていただきたいと私なりの説明を申し上げたことであります。今後とも、法務委員会において十分な討議をしていきたいと思っております。

 さらに、先生がお尋ねの議事録の顕名……(佐々木(秀)委員「委員長、それでいいです」と呼ぶ)議事録の顕名、よろしいですか、続けて。(佐々木(秀)委員「それだけ」と呼ぶ)はい。議事録の顕名につきましては、これは、審議会等におきましては、審議内容に即した自由な議論を確保しつつ、議論の透明性を確保することは極めて大切なことであると思います。

 法務省に置かれております審議会等の現状を御説明申し上げるならば、法務省に司法試験委員会、法制審議会、検察官適格審査会、それから検察官・公証人特別任用等審査会、中央更生保護審査会がございます。例えば、法制審議会の議事につきましては、法制審議会令第九条が「審議会の議事及び部会に関し必要な事項は、審議会が定める。」と規定しております。法制審議会の御判断に基づき、発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を記載しない議事録を作成し、公開しているところであります。

 途中で中断いたします。

佐々木(秀)委員 聞いていないことを余計にしゃべられると困るんですよ、時間が限られているんだから、こっちは。だから、十分今後も検討するとさえ言ってもらえば、それでいいの。余計なことは言わないでください。

 本当に時間がなくなって困っちゃうんですけれども。そこで、私は、もう一つの大きな問題として、実は、我が国における農業の将来の問題というのは非常に重要な問題なんですよ。そこで、この間、いわゆる基本計画についての新しい計画が一応発表された。このことについて十分議論したいと思っていた。ところが、その前に、島村農林水産大臣のゆゆしい発言がこの予算委員会の審議の中で飛び出してきた。私は、これは本当に見逃しにできないという思いなものですから、まずこれをお尋ねしたいと思います。

 これは、御承知のように、二月の二十五日に当委員会の分科会が行われたわけですが、第六分科会の島村農林水産大臣のBSEの問題に対する答弁、これが二十六日の新聞各紙一斉に報道されましたね。私は第四分科会の担当だったものだから、直接にはお聞きをしていない。そこで、議事録を取り寄せてみましたけれども、これはいささか驚きましたよ。

 御承知のように、総理大臣は、一月二十一日の施政方針演説の中で、先ほど御紹介した例の司法改革の問題にどういうわけか続いて、食品の安全性と絡んで米国産牛肉の輸入再開の問題について述べておられるんですね。これによりますと、「消費者保護を最優先に、科学的知見に基づき、正確でわかりやすい情報を国民に提供することで、食品の安全確保に取り組んでまいります。米国産牛肉の輸入再開については、日本と同等の措置を米国に求めることを基本に協議します。」こうお答えになっておられる。

 そして、これは申し上げるまでもなく、日本の牛肉の安全性ということは四つの問題がセットになっているんですね。一つは危険部位の除去、それから安全な屠畜の方法、飼料の規制、それから全頭検査ですよ。問題は全頭検査。

 ところが、この全頭検査について、島村農水大臣は、全頭検査は世界の非常識、日本の常識であっても世界の非常識、こういう発言をされておられるでしょう。

 それからまた、このことについては、例の二十カ月以下の若い牛を検査の対象にするかどうかということが食品安全委員会で検討されていますね。結論は出ていません。これについてはさまざまな意見がありますけれども、特に消費者の皆さんからは非常に心配だという声が高くて、そのために結論が出ていない。

 その結論がまだ出ていないことに対して、島村大臣はこの答弁の中で、いかにも結論が遅過ぎる、そして、アメリカの方ではいろいろ言ってきている、これは国際問題になるんじゃないかということまで言われている。これは、独立である食品安全委員会に対して圧力をかけているととられるのは当然だと私は思うんですよ。

 この発言については、こうやって議事録がありますから、これをあなた否定することはないと思う。しかし、私が読んだところでは、これは思いつきの発言だとか何かじゃない。先ほどの南野法務大臣のあの発言の場合にはまだ、真意が伝わっていなかったということがあるけれども、私は、あなたのこれはまさに真意、いわゆる確信的な発言だと思うんです。

 そこで、食品安全委員会を掌握されておられるのは棚橋大臣ですね。一昨年、私が内閣委員長のときにつくった法律ですよ、食品安全基本法は。しかも、協議の上で、谷垣大臣が担当だったけれども、みんなで協議をして重大な修正を加えたんですね。外国から入ってくる食品について、厳重な安全点検の規制を加えなければならないという改正を加えたんですよ。そういう点から見ても非常に問題だと思うんだけれども、棚橋大臣、この農水大臣の発言に対して、あなた、どう考え、どう対処しようとしているんですか。コメントもしているようだけれども、ここでもう一回はっきり言ってください。

棚橋国務大臣 お答えをいたします。

 今御指摘がございました第六分科会、私もちょっと出席しておりませんので、ただ、まず一般論として、発言というのは、その前後のニュアンスを相当、それから総合的なもので判断されるべきものでございますので、その中で島村大臣がどのような御趣旨で御発言になったのか、ちょっとそこをまずきちんと確認してからでないとコメントしづらいと思います。

 ちなみに、今委員が、昨日コメントしたんじゃないかという話がございましたが、昨日、閣議後の記者会見で、私は、食品安全委員会は中立公正な立場から科学的知見に基づいてしっかりと精力的に仕事をしていると申し上げた次第でございまして、今、島村大臣の御発言に関しては詳細を存じ上げておりませんので、コメントしておりません。

 いずれにせよ、食品安全委員会は、科学的な知見に基づいてしっかりと議論しております。

佐々木(秀)委員 あなたの所管にかかわる重大なことについて、議事録を見ていないんですか。農水大臣に確かめていないんですか、何を言ったのか。世の中でこれだけ騒がれているんですよ。消費者団体からだって政府にいろいろな声が来ているはずだ。あなたのところにだって来ているでしょう。それなのに、あなたはこれを見ていないんですか。職務怠慢じゃないですか、これは。

 総理大臣、どうですか。農水大臣の発言は、これはもうミステークだとかなんとかじゃ済まされない問題だと思いますよ。確信的な発言でしょう、農水大臣。これはあなたの言った施政方針のさっきの姿勢とも違うんじゃないですか。どうですか。

棚橋国務大臣 お答えをいたします。

 議事録は拝見をしております。ただ、先ほど申し上げたように、全体の中での発言のニュアンスその他、真意がどうかということは、これは私ではわかりませんので、農水大臣でないとわかりませんので。

佐々木(秀)委員 それでは読みましょうか。

 「もう十月十五日に諮問という形でお預けして以来、」これは食品安全委員会にですね、それを言っているんでしょう。「後は、今か今かとその結論を待っているわけでございますが、いまだに結論が出ない。 しかし、私たちは思うのは、やはりこういうことについて、本当に安全、安心ということに縛られて、これをいつまでも論議しておると、いつになったら結論が出るのかということになるし、正直申して、アメリカ側に大変いら立ったものもあって、」こういう発言ですよ。

 これは明らかに、食品安全委員会で早く結論を出せ、しかも、アメリカの意思に沿ったやり方をしろ、つまり、全頭検査は世界の非常識なんだから、それを外すのは当たり前だというふうにとれる発言だと、素直に読めばだれだってそうでしょう。

 加えてもう一つ、これは三月二日の産経新聞です。この間の例の2プラス2、町村外務大臣、行かれましたね、帰ってきてから風邪を引いたようでお疲れですけれども。ライス長官にこのとき会っているんでしょう。そうしたら、日本政府がこの牛肉の輸入再開時期を明示しないことに対して不満を示して、良好な日米関係に影を落としかねないと指摘した、内閣府の食品安全委員会などの審査を早めるよう求めた、こういうことがあったということが大きく報道されているんですよ。もしかしたら、このことも影響しているんじゃないんですか。

 だとすれば、先ほどの米澤委員の、郵政の民営化問題に関してアメリカのプレッシャーが働いているんじゃないかということもあったけれども、これなんかもっともっとじゃないですか。一体どうなっているんですか、小泉内閣のこの対応は。総理大臣、どうしていくんですか、このことについては。お答えください。

小泉内閣総理大臣 せっかく全閣僚が出席しているんですよ。当事者がおられるんだから、よく聞いてくださいよ。

佐々木(秀)委員 当事者に聞く必要がないから言っているんですよ。当事者は、この議事録を見る限り、さっきの南野法務大臣のように、私の真意じゃありませんというんじゃない。真意じゃないですか。島村さん、そうでしょう。これを否定するんですか、あなたは。では、そのことだけ言ってくださいよ。真意なんでしょう。

島村国務大臣 全頭検査は、御承知のように、平成十三年九月に我が国でいわば発症して以来、翌月からこれを実施いたしたところであります。自来、もう三年余が経過しているわけでございますが、少なくも、あの時点においての消費者のおびえとかおそれを払拭するためには、あれは英断だったと思います。そして同時に、その間、約三百五十万頭の牛の検査を実施して、牛の安全性の確認とか、あるいは消費者の安心とか、そういうものをかち得るためには大変効果的であったと思います。

 ただし、佐々木先生御存じのとおり、世界で全頭検査を実施している国、御存じですか。世界じゅうどこにもないわけですね。例えば、いわば発症国、EUなどを見ましても、EUの基準は三十カ月以上でございます。日本の場合は、今回、二十カ月未満はいいのではないかというので現在食品安全委員会に諮問をしているわけですから、むしろ厳しい線で、私たちは中間とりまとめに沿って諮問をしているところであります。

 なお、私に対して圧力があって、私がその圧力にいわば何か押されて云々という憶測がありますが、全く事実でありません。当初はなるほど、大統領選挙もこれありとか、あるいは一日も早くその結論を出してほしいとか、例の、大使が帰任に当たってこの問題を残して帰ることが大変心残りである、こういうお話等いろいろありましたけれども、私はその都度、我が国に輸出する以上は我が国の国内措置に沿った対応をしていただかないことには困る。我々は、あくまで科学的知見に基づき、肉の安全と安心を前提にこの問題に取り組んでいるので、郷に入っては郷に従えという言葉のとおり、我が国においてはそのように対応していただきたい。自来、アメリカは私に対して電話一本ございません。

 さはさりながら、私にも、政治家とかあるいは評論家とか、あるいは専門の学者とか経済人、いろいろな友人がおりますから、アメリカからいろいろな情報は入ります。アメリカがいら立っていることは容易に察知することができるわけでありますが、そのうちそのうちと私たちも思っていることは事実でございますけれども、少なくも今時点で、全頭検査というのは世界の常識にあるかといえば常識にあらずであるので、私は、全頭検査というのは非常識という表現をした、そういうことでございます。

佐々木(秀)委員 皆さん、今の農水大臣の答弁を聞いても、いかに彼が確信的にそう考えているか、これは全頭検査の必要はないんだというようにとれるでしょう。

 ところが、小泉内閣は、総理大臣の施政方針演説でもはっきり、食の安全について、輸入牛肉の問題についても言っているわけじゃないですか。そうすると、今の農水大臣の発言で、まだ食品安全委員会の結論も出ていないのに、はっきりと、全頭検査というのは世界の潮流じゃないとか、常識じゃないとか言っているということは、日本は日本として決めたことでしょう、この方法を。今までも実施してきたわけでしょう。これを変えたんですか、農水大臣。もしもやっていないとすれば、こういうような農水大臣の専行、独行を許していいんですか。

 しかも、本来、この問題については、これは農水大臣の担当じゃないんじゃないですか。厚生労働大臣の方じゃないんですか。そして棚橋さんの方じゃないんですか。違うんじゃないですか。総理、どうするんですか、この問題。

棚橋国務大臣 お答えをいたします。

 食品安全委員会は、これはもう先生重々御承知のとおりでございまして、まして、この形をつくっていただくに当たって、先生にも大変御知見をいただきました。あくまで食品安全委員会は、最新の科学的知見に基づいて、安全と言えるかどうかを中立公正な立場からきちんと議論しております。そして、今中身についてはまさに議論しているところでございまして、この議論につきましては、精力的かつしっかりと実質的にやってまいります。

佐々木(秀)委員 全くどの御答弁も私は納得いかないんです。

 しかし、ここでいつまでやっていてもしようがないので、最後に、これは総理大臣、本当に言ってくださいよ、あなた、この問題どう決着つけるのか。僕は、農水大臣は、こんなことだったら閣内にいるべきじゃないと思いますよ。一議員としての立場で物を言うんだったら許せる。しかし、少なくとも農林水産大臣としては、僕は許すべからざる発言だと思う。こういうことで小泉内閣の閣内にとどまるというのはとんでもない。どうですか。

小泉内閣総理大臣 このBSE、牛肉の輸入の問題につきましては、科学的知見に基づき、食品の安全、安心確保、これは大事な点でありますから、そういうことも施政方針演説に述べたとおり対処していきたいと思っております。

佐々木(秀)委員 ということになると、私は閣内不一致だと思います。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください。静粛に。

佐々木(秀)委員 きょうは時間がありませんし、また、責任を明らかにしていただく、あるいはとっていただくようなことを申し上げる機会もあると思いますので、一応この程度にしておきますけれども、私は非常に問題だと思う。

 そして、実は、もう時間がなくなりましたけれども、今度発表された……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。静粛に。質問中です。

佐々木(秀)委員 いわゆる農業の基本計画との関連でも、私は、島村さんはやはり問題発言をしていると思うんですよ。

 本当はいろいろやりたかったんだけれども、今度の基本計画で画期的なことというのは、今までの価格政策から直接払いの所得政策に改めて相当突っ込んで入っていく、私はこの点は評価できるとは思っているんだけれども、しかし、その対象は非常にあいまいなんですね。この点、きっちりしてくれというようなことが一つ。

 それから、自給率の向上については、まだまだ消極的だと思うんです。私たち民主党の方で出したものでは、一〇%、十年間で上げると言っているんだけれども、今度の基本計画でも五%しか上がらないわけです。

 自給率を上げていくためには、小泉首相は、攻めの農業ということを盛んに言われて、輸出できるものは輸出にと言っているけれども、逆に、もう一つ、今一生懸命頑張っている人たちをどう守るかという配慮が少し足りないんじゃないか。そうすると、外国から入ってくるものについてどういうような輸入規制をするかということについてはっきり述べていないあたりも、まだまだ私は議論の余地があると思うんです。

 それからまた、国の援助が、やる気のある農家に対して援助をしていくというんだけれども、やる気のあるというのはどういうような基準で決めるのか、この辺についてもはっきりしない。

 やる気のあるということとの関連で、実は、きょうは全然違うようなリーフがあるんですが、私の地元の旭川市営の旭山動物園というのが今全国的に注目を集めています。この間、二十五日の日には紀宮様もおいでになりました。

 雪の中で動物たちが生き生きと動いているんですが、今やこの最北端の旭山動物園、旭川の動物園、これは今から三十数年前に、かつて村山内閣のとき官房長官をやった五十嵐さんが市長のとき、四十そこそこで市長のときに、一番北の動物園としてつくったんですよ。しかし、その後、なかなか入りが悪くて、いっとき入園者が二十万人ぐらいになった。

 やめようかといったときに、今、園長をやっている小菅さんだとか、働いている若い人たちがみんないろいろなアイデアを出して、そしてそれを生かしていった。決してそんなに金はかかっていないのですが、アザラシ館だとかペンギン館だとかシロクマ館、ホッキョクグマがじゃぶんと飛び込んで目の前まで来るということがよく見えるんです。

 それで、これが話題に話題を呼んで、ついに去年の入園者は百三十万人、上野動物園を超えちゃったんですよ。上野動物園の園長が見学に来たぐらいですからね。だから、この間は惜しかったんです。小泉総理大臣、せっかく札幌の雪祭りに来たんだから、足を延ばして旭川まで来てもらえば、やる気のあるところでこんなことができるということがわかる。

 これは、何も小泉総理大臣が言ったからやったんじゃないんですよ。みんなそれぞれ地方では、こうやってやる気を出して頑張っているんです。そういう人たちを支援する。農業についても、私は同じだと思うんです。その辺を十分に議論したかったんですけれども、残念ながら時間が来た。

 しかし、島村農林水産大臣、本当ににこにこ笑っている場合じゃないよ、あなた。消費者は本当に心配しているんだから。牛どん屋さんのだって、みんな食べるのが好きでも我慢しているんでしょう。牛どん屋さんの方だって、商売の主要な品目にならないけれども我慢しているんでしょう。何よりも食の安全が大事だからなんですよ。それを逆なでするようなあなたの発言は、私は許すわけにいかないということを申し上げて、終わります。

甘利委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

甘利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫と申します。

 初めて、予算委員会での質問をさせていただくわけでございます。予算の方もいよいよ大詰めということで、予算委員会のメンバーの皆様方には心から御慰労を申し上げたいと思います。

 私は、実は文部科学委員会に所属をいたしておりますので、きょう飛び入りで、ここに参加をさせていただきました。最後の最後、ここで発言をお許しいただきましたことを、御無礼をお許しいただきたいと思うわけであります。

 三十分、時間をいただきましたので、いわゆる地方分権、三位一体の改革、とりわけ、中でも一番重要な義務教育国庫負担制度、これが一部、四千二百五十億という暫定措置が今回講じられているわけでございますけれども、この問題に限って集中して質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 来週から私どもの文部科学委員会においてこの法案の審議に入るわけでありますけれども、正直、私どもとしては、そのまま我が委員会にこの問題を丸投げされたんじゃたまったものじゃないという意識でございます。また、中山文部科学大臣もお座りになっておられますけれども、中山大臣にも私は心から同情するわけで、このまま委員会に付託されて、いろいろ大臣なりの苦渋の答弁をこれから引き出さなきゃならないわけですから、その前に、まずは総理及び財務大臣、総務大臣等々からもぜひお考えをお聞かせいただきたい、そんな気持ちで、きょうはここに立たせていただいたわけであります。

 きのうの集中審議においても、与党の議員から、小泉改革がいよいよ総仕上げの段階に来ている、そういった歯の浮くようなおべんちゃらの言葉も聞かれたわけであります。私は、そういうことはちょっと、よう言わぬわけでありますけれども、確かに小泉総理の政権、いよいよ終わりに近づいている、そういう意味では、そういったお話も間違いではないんだろうと思います。そろそろ、この小泉政権というのは一体何だったんだろう、小泉改革というのは何だったんだろうということを総括する機運が高まっていることも、また事実ではないかと思います。そういった意味で、この四年間の小泉総理の、まさに看板だけの、かけ声だけの改革にもううんざりして、辟易する国民の多くの皆様方の声も代弁しながら、質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 ただ、私なりに残念なのは、今回のこの義務教育費国庫負担制度の法改正、中身が余りにもずさんである、そして教育論についての議論が全くないがしろにされたまま、ただただ財政論、数字合わせだけに走ってしまったということが残念でございまして、法案そのものを見ても、切ったり張ったり、足したり引いたり、また係数を掛けてそれぞれに配分するというだけの話で、こういった加減乗除というのは、本当に小学生でもわかりそうな足し算、引き算、割り算、掛け算で、そういう言い方をしたら小学生に失礼かもしれませんけれども、そんな内容でございます。

 わかりやすくていいという話もありますけれども、私には、これが一体どこが改革なのか、どこが地方分権なのかということが皆目わからないわけで、まず、その辺からお聞かせいただかなければならないと思うわけであります。

 これは、二兆五千億から四千二百五十億を引いて、そして、その分をただ今までの比率に応じて地方に配分するだけということですから、本当に、わかりやすく例えるならば、例えば、今まで両親が子供の学費を月一万円学校に納めていたとします、その一万円を、今度から子供の自主性に任せるといって子供に持たせて、これを学校に払いなさいと言っているのに等しいわけで、それは、どっちにしろ子供は学校に一万円納めなきゃいけないわけですから、何にも子供の自主性の尊重にもならない。簡単に例えればそれと全く同じような内容になるわけであります。

 この問題に特化して私は質問しますけれども、この問題というのは本当に、事の本質を解決することについてはまさに先送り、義務教育の今後のあり方についても、結局はこの秋の中教審にその結論をゆだねるという形でありますし、また、四千二百五十億の用途についても地方に丸投げということであります。結局は、最終的には十七年度、十八年度において三兆円の税源移譲を果たすという数字合わせだけですから、まさに小泉改革の特徴である先送りと丸投げということであるわけで、そして、最終的には数字合わせ。丸投げの先送りの数字合わせ、この三点そろった、まさに三位一体の改革であると言わざるを得ないわけであります。

 そこで、私なりに質問を進めさせていただきたいと思うのですけれども、先日、文部科学委員会で、中山大臣から所信の表明がございました。その中で、大臣は「義務教育は、国家、社会の形成者たる国民の育成と、子供たち一人一人が、この世に生を受けたありがたさを実感し、一生を幸せにかつ有意義に生きることができる土台をつくるという二つの目的を持っていると考えます。」このようにいみじくもおっしゃったわけで、私も全く同感であります。

 我が国が戦後の焼け野原から経済復興をなし遂げ、そして世界の先進国の仲間入りをして、また、主体的にとはまだ言いがたいのですけれども、国際貢献の一端をも担うような、そんな国になってきたというのは、ひとえに基礎教育、本当にあまねく行き渡った基礎教育がその土台になっているということは否めないわけです。そしてまた、その根幹をなす義務教育の国庫負担制度というものがそこにはあったわけで、義務教育の無償制だとか、あるいは教育水準の確保、あるいは地域間の格差のないそういった教育水準の維持というものは、まさにこの制度に支えられてきたわけであります。

 小泉総理は、総理就任直後の所信表明演説の中で米百俵の精神に言及をされたわけで、私は、そのときは、小泉総理もやはり教育の重要性というものを十分認識しておられるんだなと期待を持ったのも一方では事実でございますけれども、期待をした私がひとり愚かだったのでしょうか、本当に今さらのように思うわけであります。まず、いま一度ここで総理の、教育、とりわけ義務教育についての基本的な理念をただしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 教育を重視するということについては、私も、そのことについては幾ら重視してもし過ぎることはないと思っております。そういう中で、地方には地方独自の特色がありますから、全国一律でなくてもいいのではないか。

 そういう観点から、全国的な教育水準を確保する、これはやはり国の責任だと思います。また、教育の機会均等、これも確保しなければならない。日本の資源といえば人材です、人間であります。この人材養成とか人間力向上、こういう点については、私も日ごろから強調しているところでございます。そういう中で、教育においても、地方と国とは違っていい面もあるんじゃないか、国の基準に合わせなくても地方独自のやり方もあっていいのではないかということで、私は、この補助金の問題、今回、義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、今年度は約八千五百億円の中での約半分、今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。

 これからも、補助金、税源移譲、地方交付税、この三者の改革はどれも難しい、いわば難しくてできなくて三すくみの状態だった、だから、どうせ難しいんだから一緒にやろうということでこれを三位一体と称しておりますが、一緒にこの難しい問題を解決していこうということで、義務教育の問題も、補助金の改革案を地方団体が賛否両論の中まとめてきたものですから、地方の案を真摯に受けとめて改革していこうという判断をしたわけでございます。

牧委員 地方によって教育の自主性、独自性というのが尊重されるというのは当然のことですし、なければならない方向性であるという意見には私も異論はございません。ただ、今総理の言葉の中にもございました教育の機会均等、そういうことを考えると、やはりここは守らなければならない最低ラインではないかなということで、私はあえてこの質問をさせていただいているわけで、今の御答弁ではその質問にお答えになっているとは言えません。

 そしてまた、総理の言うところの、よく言われるところの、地方にできることは地方にという言葉もよくわかります。ただ、総理の頭の中で、何がこういう地方分権への流れの中でなじむ話なのか、あるいはなじまない話なのか、どの辺のところが頭の中で仕分けされているのか、その基準が、今回この義務教のことでますますわからなくなってきたというのが私の実感であります。

 地方分権というのは、そもそも、私なりの理解では、やはり住民の皆さんの目が届くところ、手が届くところ、声が届くところで税金が使われる、そんな使われ方を模索した結果が地方分権だというふうに私は理解しているんですけれども、今回の例えば義務教の問題についてもそうですけれども、地方の自由度が高まらない、いわば義務的な経費である教員の給与という部分で税源移譲がなされたところで、地方分権の本旨からはそれた話になってしまうということを私は言いたいわけで、そこら辺のところをまずお聞かせいただきたいと思うんですね。

 総理の頭の中で、どういうふうに、どういうことが地方分権になじむ話なのか。ただ、何とかの一つ覚えみたいに、地方でできることは地方にということだけでは私どもは納得できないわけであります。お願いします。

小泉内閣総理大臣 私は、教育の分野においてどの部分を地方がみずからの裁量にゆだねたいかということについては、地方の案を真摯に受けとめてやると言ったわけであります。具体的な個別の問題に関しましてはよく関係者等で協議していただきたいという、方針を掲げるのが大事だと思います。その中で、総務大臣、文科大臣、財務大臣、地方団体、よく協議して決めたことでございます。

牧委員 だとすると、地方の意見を重視されたというお話ですけれども、例えば地方案の中に、同じ文教関係の予算でも、公立小学校の施設整備、これも入っていたわけです。その辺については全く今回外されている。これは細かく、何とか小学校の体育館の屋根の補修事業で幾らだとか、そういう箇所づけまで行ってやるものですけれども、これこそまさに地方の裁量にゆだねるべき話だと思うんですけれども、財務大臣、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今総理からも御答弁がございましたように、この数年、義務教育費の国庫補助負担金をめぐりましては、今までのような、どちらかというと中央で基準をつくって、画一的と言うとちょっと言葉は悪いかもしれませんが、統一的にやるよりも、それぞれの地方の自主性とか特色を生かせる方策はないものかという議論が、私はずっとあったんだろうと思います。地方の自由度を拡大するということはないんだろうかと。

 そういう中で、総理もおっしゃいましたように、では、補助金改革三兆円を進めるときに、どうしようかと地方の案をまとめてもらったところ、その中に義務教育国庫負担金の、これは中学校部分ですが、一般財源化という提案があり、あわせて、今おっしゃった施設費に関しても地方から御提案があったわけですね。

 そこで、義務教育国庫負担金の問題に関しましては、昨年、政府・与党の方針をまとめたわけですが、その中で、義務教育制度に関する国の責任を引き続き堅持するとの方針のもとに、費用負担についての地方案を生かす方策、それから、義務教育のあり方について幅広く検討して、平成十七年秋までに中教審の答申をいただこうということとあわせて、それが出るまでの暫定措置として、四千二百五十億をこの三位一体の中で措置しよう。

 それで、御指摘のさらに先は、では、なぜそっちをやって、施設費については先送りをしたんだと。これは今後も、公立の文教施設を含む施設費に係る補助金についても引き続き議論、検討課題にはなっております。ただ、率直に言って、例えば麻生大臣と私の間の意見もまだまとまっているわけではないんですが、私どもといたしますと、これは施設費も含めまして、建設国債を財源とする公共投資関係の補助金については、その財源のあり方等に照らして、もともと税源移譲の対象とするのは不適切である、適切ではないという考え方を持っておりました。

 もうちょっと細かに申し上げますと、一つは、公共投資は引き続きスリム化を要請されている分野である。それから、建設国債を財源としておるわけでございまして、お譲りすべき税源というものがない。それから、三番目には、公共投資は、形成される資産からの便益がこれは長期間にわたるから、次の世代も含めて、将来世代も含めて費用負担をともにしていこうという考え方で、公債発行を原則として禁止している財政法の例外である。それから、地方においても、こういう事業については建設地方債の起債により財源調達している等々の理由から、不適切であるというふうに言ってまいりまして、ここのところを切り離したのは私どものそういう議論があったからでございます。

 ただ、先ほど申しましたように、今後の、次の、来年度、十八年度に向けての検討課題ということにされておりますので、そういう中でさらに議論を私どもも積み重ねていきたいと思っております。

牧委員 建設国債を財源にしている等々の話は私も存じております。

 ただ、これは技術的に不可能ではないと思いますし、国債を財源にして、そこからまた交付金化することだってできるでしょうし、あるいは、政府保証で地方の公債発行を認めていくという方法もあるでしょう。また、これは別の省庁に関係することですけれども、例えば都市公園の整備費なんというのは、これは国土交通省なんでしょうけれども、こういうものが千数百億地方におりている。これも今回、別に税源移譲の対象になっておりませんけれども、例えば、この間の中越地震の被災地の様子なんかを見ていても、やはり逃げ込むところは学校だったり、あるいは都市公園もあるんでしょうけれども、そういった地域の中で公共の施設があったり、あるいは民間でも広い場所があったりとか、それは地域の実情に応じたいろいろな整備の仕方があると思うんです。

 そういった意味で、むしろこっちの方が地方分権になじむ話だと私はあえてつけ加えさせていただきたいと思いますし、今、谷垣大臣のお話の中にも、義務教の話ですけれども、引き続き国の責任は堅持するという前提がついているのであれば、それを何もこういう形で切った張ったやらなくたって、それだったらそのまま、国庫負担のままでも何ら変わりはないわけで、優先順序のつけ方が私はおかしいと思うことをつけ加えさせていただきたいと思います。

 そして、時間がございませんので、続けて参ります。

 こういった暫定措置によって、本当に果たして教員の質の維持ができるのか、あるいは教育の水準の確保ができるのかというさまざまな意見やら、あるいは懸念の声というのはもう既にたくさん上がっているわけですけれども、結果としてやはり教育に対する投資が減ってしまうのではないかという懸念というのは、きのうの質問の中でも出ておりました。

 例えば学校図書整備費、これの実態としての進捗状況を見ると、惨たんたるありさまで、自治体によっては全く別の用途に流用されてきてしまっているという実態もある、そういう質問もきのうの中に出ておりましたので、細かいことは申し上げる必要はないと思いますけれども、そういった懸念に対して、その財源を確保するためのどういう方策をとられているのか。その辺、総務大臣にもあわせてお聞かせいただきたいと思います。文部科学大臣からもお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 来年度につきましては、四千二百五十億円カットされた分につきましては、御承知のように、税源移譲予定特例交付金四千二百五十億円ということで、一般財源化の中ではございますが措置されている、こう思っておるわけでございまして、文部科学省としては、それがきちっと予算化されているかどうかということを各都道府県に照会しながら、確保されるように努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

麻生国務大臣 これは牧先生よく御存じのように、義務教育の教職員の配置というのは標準法がございますから、その標準法に基づいてきちんと定員を確保することにしておるのが現状なんだと思っております。いろいろ、それを使わないでどこかぽっぽに入れるんじゃないかという地方に対する不信というものの上に成り立っておられるんだと思って、その例として、過日の学校図書の話をされておられましたけれども、あちらには標準法がございませんから。こちらの方には標準法がきちんとでき上がっております。

 ちなみに、先ほど総理からもお話があっておりましたように、教育は、これは各県かなりいろいろ、県知事いろいろいらっしゃいますけれども、それぞれ教育についてはかなり熱心にしておられます。東海地方のことにそんなに詳しいわけではありませんけれども、例えば、私どもの福岡県、熊本県、佐賀県ぐらいのところを見ましても、これは基本的には義務教育でも何でもありませんけれども、少なくとも熊本でしたら済々黌、福岡だったら修猷館、佐賀だったら佐高等々、県立の高校というのはかなり各県、皆そこの県立高校の資質、質のよさを競っておられて、いろいろな意味で、どちらの高校の方がいいかと単純に比較ができないぐらい、やはりいい意味での競争が働いている、私ども、少なくともその三県を見る限りに関しては、そのように思っております。

 したがって、仮に今なくなっても、何となく、教職員の分を減らすというよりは、そういった義務じゃないところでも教職員をむしろ補充していろいろ質を高めるように努力をしておられるという実態がありますので、今御心配しておられるところはあろうかと思いますけれども、私どもとしては、標準法というようなきちんとした基本のところだけ定めておけば、御懸念のようなところは余り起こる可能性はないのではないか、基本的にはそう思っております。

牧委員 この問題については、また委員会の方でもじっくりと詰めていきたいと思います。

 次に進みたいと思います。

 今回、そもそも、この三位一体改革についての政府・与党合意が昨年十一月二十六日になされたわけですけれども、私も、与党の合意文書というものを拝見いたしました。与党自民、公明の政調会長、それから内閣官房長官、総務大臣、財務大臣、内閣府特命担当大臣、それぞれの署名がそこにあったわけでございますけれども、私がおやっと思ったのは、そこに文部科学大臣の署名がなかったということであります。

 改めて文部科学大臣にお尋ねをいたしますけれども、昨年十一月二十六日は、大臣、何か御都合が悪かったんでしょうか、それとも最初からお呼びがかからなかったんでしょうか。

中山国務大臣 十一月二十六日の政府・与党合意、あれは私は入っていなかったと思うんですけれども、これは政府と与党の間の予算全体の話だ、こう思いましたから、そうなんですけれども、それまでに、まさに牧委員が御承知のように、この三位一体改革の中で、義務教育費国庫負担制度、これは堅持すべきだということについては再三再四主張し、またお願いもしてまいりましたから、そういったことを踏まえて、御承知のように、今年の秋までに中教審において議論して結論を出す、こういうふうなことになったということについては、私の主張といいますか、入れていただいた、このように考えているところでございます。

牧委員 私なりに中山大臣のざんきにたえないお気持ちはただただおもんぱかる次第でございます。まさにそこに文部科学大臣が入っていない、教育の根幹をなす義務教育国庫負担制度、それが今土台から崩れようとしている、その重要な議論の中に文部科学大臣が入っていないということは、つまりはこの三位一体の改革、中身が議論されないまま、ただ数字合わせにすぎない、そんなことがそれだけ見ても如実に物語られているんじゃないかなと私は思うわけですけれども、そのことについて改めて中山大臣の感想を伺いたいと思います。

中山国務大臣 三位一体改革の中で私が主張してまいりましたのは、義務教育の話を、いわゆる三位一体の議論の中で、単に財政論だけで論ずるのはどうか、やはり世界の趨勢を見ても、国がむしろそういう負担をふやす方向、全部持とうという国もある中で、日本が減らす方向というのはいかがなものであろうかと。また、現実に地方に任せた場合にどうなるかということは、今言われましたように、教材の話とか図書購入の話がある。

 さらに、これから三位一体の改革の中で、最後の交付税の改革、こういったこともございますから、地方財政が非常に厳しくなる中で、本当に地方が責任を持って教育関係の予算をしっかり守っていただけるんだろうか、そういう懸念もあったわけでございますが、政府・与党の合意というのは、これはまさにそういった予算という、十七年、十八年度の予算関係での合意だっただろう、私はこう思うわけでございまして、そういった中で、中教審の議論を経てという文言を入れていただいたというのは、これは、私が主張してまいりました、財政論だけではなくてぜひ教育論も入れてほしい、そういった私の主張が受け入れていただいたものだ、こういうふうに考えているところでございます。

牧委員 もう時間がなくなりました。最後に二つだけちょっとお聞きしたいと思います。

 そもそも、今回のこの件で、義務教育費のうち八千五百億という数字があらかじめ出てきております。ことし限りの暫定措置として四千二百五十億という数字があるわけですけれども、ちょっと矛盾すると思うんですね。これはあらかじめ、来年も引き続き四千二百五十億という前提のもとでことしの四千二百五十億という話だと思うんです。これは明らかに、それ自体、ことし限りの暫定措置ということと八千五百億ということは結びつかないわけですから、これ自体一つの矛盾であるということ、これについては、もう時間がないので説明は要しません。

 ただ、その八千五百億という数字の根拠だけ、これだけはちょっと教えていただきたいと思うわけであります。

甘利委員長 簡潔な答弁でお願いします。

中山国務大臣 この八千五百億円というのは、中学校の分の先生方のお給料の半額ということでございます。

牧委員 大変残念ながら、きのうの質問の中にもそういった質問をされた方がいらっしゃると思うんですけれども、中学校分というのは、地方団体が言ってきたのは中学校分ということで、今回の八千五百億というのは決して中学校分じゃないわけですよね、ただその数字をかりてきただけの話であって。

 小泉総理は先ほど地方の意見を尊重しながらと言いましたけれども、地方の意見というのは、今中山大臣がおっしゃったように、中学校教職員分ということでありますけれども、今回は違うわけですね、ただ八千五百億という数字をかりてきただけの話にすぎないわけです。どうぞお答えください。

甘利委員長 もう質疑時間を過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

中山国務大臣 今申し上げましたように、この八千五百億円というのは、まさに中学校の分の先生方の給料の半分ということで、それがそのままだというふうに御理解いただきたいと思います。

牧委員 あと、細かいことはまた委員会でお願いしたいと思います。ありがとうございました。

甘利委員長 これにて牧君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 日歯連の旧橋本派への一億円やみ献金事件は、日本歯科医師連盟から橋本総理に対して一億円のやみ献金が渡され、その金が橋本派によって政治資金規正法違法の処理が行われていた。司法の場において、政治資金規正法違反で平成研事務局長の有罪が確定し、今、村岡氏の関与をめぐる裁判が行われています。

 司法では事件の具体的法令違反が追及されるだろうが、問題は、この事件の全容が解明されず、政治的道義的責任がいまだに明らかになっていないことです。日歯連はなぜ一億円もの政治献金を橋本総理に渡したのか。橋本元総理や同席した橋本派の幹部がどういう金と認識して受け取ったのか。このような団体からの献金という金の力で政治がゆがめられたことはないのか。これらの解明は政治の責任だと思います。

 総理にこういう認識はございますか。

小泉内閣総理大臣 政治資金をどのように提供する側が考えるか、また、受け取る側が考えるか、それは当事者じゃなきゃわかりませんが、私は、政党として政治活動をする際に、税金だけでやっていくわけにはいかぬと。税金の補助、いわゆる政党助成金がありますが、これだけではできないというのはおわかりだと思います。

 そういう中にあって、各団体、各企業等から、また各個人から資金提供を受ける際に、その提供する側がどういう趣旨かによって提供しているかというのは、団体によって私は違うと思いますし、その点について、私に、その団体がどう考えて提供しているか、あるいは政治団体、政党なりがどういう形で受け取るかというのは、私は今時点でこうだということは断定できない。

 しかし、政党として、多くの国民から寄金の提供を仰ぐ努力はしなきゃならない。そして、その資金に基づいて、国民に理解を得られるような政党活動をしていくという中で、どのような政策判断、あるいはそういう提供する団体の意向を受け入れるかというのは、政党によって私は違ってくると思います。

穀田委員 解明することは政治の責任かどうかということを聞いているんですよね。

 当事者と言ったけれども、片っ方の当事者は何でお金を出したかとしゃべっているんですよ。ところが、もらった側の方は話をしていない、だんまりを決め込んでいる。事は、元総理、元内閣官房長官、そして自民党参議院幹事長という、政権の中枢を担った政治家ですよ。当の橋本氏は、政倫審で、一億円もらったのは事実でしょうととぼける。野中氏は献金自体を知らないという。橋本氏は記憶にないという。

 ところが、真相に迫る上で、この間、一連の公判が行われて、次々と重要な証言が行われていることに私はきちんと着目すべきだと思うんです。

 献金をした側の日歯の内田前常務理事は、一億円の小切手を提供した際に、やりとりの、身ぶり手ぶりを入れながら法廷で初めて語り、次のように再現しています。

 食事の前に、茶封筒に入れた小切手を臼田被告が橋本元首相に渡すと、橋本首相は、小切手を出して金額を確認し、すぐに野中元幹事長に渡した。野中元幹事長も金額を確認し、橋本元首相に返そうとしたが、元首相は、いやいやと手で遮るようなしぐさをした。しかし、野中元幹事長がどうぞどうぞと受け取りを勧めると、小切手を受け取り、スーツの内ポケットにおさめた。おくれて到着した青木幹雄自民党参院会長に、橋本元首相が、身を寄せながら小切手を見せ、一億円の小切手をいただいたと小声で報告。青木議員会長は、ありがとうございましたと礼を述べた。

 極めてリアルな証言なんです。

 三氏は、この証言が事実なのかそうでないのか、それこそ当事者として国民の前に堂々と真実を述べるべきではありませんか。総理、三氏は真相解明のための説明責任を果たしたと思いますか。

小泉内閣総理大臣 その件につきましては、今、裁判中の叙述を述べられていることは私も承知しておりますが、その問題について今、裁判中であります。そして、この問題について、橋本氏も昨年国会の委員会に出て、質疑を受けて、自分の考え方、立場を申し述べていると聞いておりますし、そういう中において、疑惑に対しましては、基本的に、その疑惑を受けられた政治家個人がどのような対応をするか判断すべき問題だと私は思っております。

穀田委員 裁判をやっているのは、未記載か記載かという問題の話なんですよ。そういう問題をめぐってやっているのだし、国会でと言いますけれども、国会の政倫審で弁明をなされた後にこの証言は出ているんですね。

 一億円やみ献金というのは、単に橋本派の問題だとか、すぐ個人の問題にしはりますけれども、自民党自身にかかわることなんですね。一連の公判で、これに自民党自身の問題だということが衝撃的に証言されていることがあるわけです。

 まず、日歯連が献金の額を決定する際に、元宿自民党事務局長に相談をし、指示を受けたと証言しています。

 臼田氏は、二月九日の公判で、当時、橋本派は最大派閥で幾ら献金すればいいかわからなかった、自民党事務局長に相談するよう指示した、事務局長と相談して額を決めたと証言を一回しているのです。

 さらに、日歯連のやみ献金の処理をめぐって、自民党元宿事務局長が関与していたことを明らかにする二つの証言がありました。二月十七日の公判で、日歯の内田前常務は、領収書を国民政治協会名義でもらえないかと自民党事務局長に打診、再度断られたと証言しているのです。一月十二日の公判で、滝川元会計責任者は、領収書の話を外部に相談したことはないかと問われて、自民党事務局の元宿氏に相談した、国民政治協会か何かの名目で領収書を切ってもらえないかと証言しているのです。

 献金した側も、受け取って処理した側も、要するにやみ献金の処理の方法について自民党事務局長に相談に乗ってもらったことを証言しているじゃありませんか。要するに、献金の額の決定からその処理の方法に至るまで、自民党事務局長がかかわっている。これを関与と言わず何と言うのか。

 自民党の事務局長の関与となれば、一派閥の問題と違って自民党全体の問題になるじゃありませんか。そういう認識は、総理、ありませんか。

小泉内閣総理大臣 そのような話がありましたから、私は武部幹事長に、このようなことはどうなのかと調査を命じました。調査したところ、そのような事実はないという報告を受けております。

穀田委員 持ってきました。これでしょう。

 これには、いわゆる日歯、日本歯科医師連盟事案に関する党の調査報告について、当時、迂回献金の問題が問題になったころ調査したという話なんですよ。しかも十一月九日付ですよ。この証言があった、そしてやみ献金で処理された方法について元宿氏がかかわったというのは、証言は一月なんですよ。だから、全然関係ないということを指摘せざるを得ない。しかも、この報告書は何と十一月九日に発表されて二月七日に当予算委員会に出されたという経過ですよ。話をごまかしちゃだめですよ。

 私は、そういう点でいいますと、やはりやみ献金の処理にあずかるのは、このときもお話がありました、迂回献金というのはあってはならないことだとお話がありました。これで調査したというんだったら、自民党の事務局長がこの一連の問題について関与したか関与していないかということを調査する必要があるじゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 調査をした、事実、そのような事実はないということでございます。

穀田委員 このときの調査はそれとは違ったことをしておって、やっていると。しかも、十一月九日だと言っているんですよ。しかも、二月七日に出されたということは明らかです。そういう、やはり真相解明の態度がない、逆行するものだと私は言わなくちゃならぬと思っています。

 先ほど、当事者という話を何度も繰り返します、総理は。やはり、疑惑を持たれた三人が貝のように口を閉ざしている中で、自民党の本部の関与を裏づける新たな証言が出てきた。だからこそ、今度の一連の事件の真相解明のためには証人喚問がいよいよ必要だと思います。

 委員長、橋本龍太郎元総理、野中広務元自民党幹事長、青木幹雄参院自民党会長の三氏と、元宿自民党事務局長の証人喚問を改めて要求します。

甘利委員長 理事会で協議中であり、各党間でも協議中でございます。

穀田委員 次に、裏金問題について聞きます。

 総理は、政治と金の疑惑が噴出するごとに、政治資金は法律にのっとって適正に処理と常々発言してきました。ところが、政治資金規正法を守るとか守らないとか以前の重大な問題が明らかとなっています。

 滝川氏は、自分が関与してきた政治資金に絡む裏表の一端を明らかにし、裏金づくりを行った事実を証言したことです。その裏金づくりの手口は、一つは、政治資金集めパーティー券の売り上げのうち、現金で受領した部分は政治資金収支報告書に記載しない裏金として処理したこと、こうした処理は慣例となっており、その現金分は年一億円を超えていたこと。二つ目に、派閥幹部からの寄附の一部を裏金として処理したこと。三つに、自民党から支給された資金を裏金として処理したこと。こうした資金でつくった派閥収入のうち半分しか表に出ていないことも証言しています。驚くべきことだと私は思うんです。

 総務大臣、パーティー券の売り上げのうち現金で入った分は収支報告書に載せないというやり方は、法に照らして適正な処理と言えるでしょうか。

麻生国務大臣 一般論として申し上げさせていただくと、今の例、いかにも、橋本派の例はどうかと言われて、都合のいいように解釈されると話が込み入りますので、一般論として重ねて申し上げますが、一般論を申し上げれば違法ということになろうと存じます。

穀田委員 当然、違法なんですよね。だから、非常に大きな問題なんです。

 この滝川氏は公判で、逮捕前日、長女に、お父さん、本当のことを話してくださいと言われ、真実を話したと証言しているんです。その重みがわかろうというものです。

 裏金づくりの手法を証言しただけではありません。その集めた金が何に使われたかについても、次のような重大な証言をしています。二〇〇一年の参議院選挙では、四億数千万円を選挙費用として支出し、収支報告書に記載しなかった、派閥から支給される選挙資金を収支報告書に記載しないのは慣例だった、法定費用の範囲で選挙運動が行われないのは永田町の常識だ、こんなふうに克明に述べているんです。

 総務大臣、およそ政治家たるもの、選挙は法定費用の枠内で行うべきというのは常識だと思うんです。このようなやり方が公選法に違反することは明らかだと思うんです。その点、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、公職選挙法の百九十七条というところになろうかと思いますが、候補者または出納責任者と意思を通じて支出した支出以外のものは選挙運動に関する支出でないものとみなす旨規定をされておるというのは御存じのとおりでありまして、今言われましたように、法定選挙費用の制限額を超えて選挙運動ということに関する支出がなされた場合には、出納責任者につきましては三年以下の禁錮または五十万円以下の罰金ということに処するとともに、候補者の当選も無効ということに百九十七条で定められております。

穀田委員 事ほどさように重要な問題なんですよね。今総務大臣が答弁なさったように、このことが明らかになれば、候補者もそういう処置を受けざるを得ないというぐらい大事な問題なんですね。

 問題は、今それらのことについて、自民党本部もそのことについて相談を受け、かかわっているというところが大事なんです。法にのっとり適正に処理どころか、法を無視して裏金をつくり、その裏金を使って選挙を行う、公正であるべき選挙が金の力でゆがめられるとしたら、民主主義の根幹にかかわる重大問題ではありませんか。この実態の解明こそ求められているのではないですか。

 総理大臣、改めて見解をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 法律を守らなければ重い罰を受けるというのは、今麻生総務大臣の答弁のとおりであります。

 まず、法律を守る、そして、この政治と金の問題について、今この委員会におきましても与野党が協議している最中だと聞いております。お互いの政党、政治と金の問題について、これからも国民からの信頼を得られるような努力をしていかなきゃならないと思っております。

穀田委員 今お話ししたのは、宣誓をして公判で証言している内容に基づいて、そういう事実上の法に違反する事態が生まれているということをお話しをし、それだとしたらどうなるかという問題をるる聞いてきたわけですね。だから、総理大臣が、この一連の政治と金について各党で協議中だと言っているのは、そういう人ごとではなくて、自民党の責任として、総理・総裁としてこの問題を明らかにする必要があるし、そして、そのことによって真相の解明に努力する必要があるということを私は述べているわけであります。

 今のお話でいきますと、結局、逆に一層の政治不信を招くものだと考えざるを得ないと私は思います。政治の信頼回復というのは、何よりも政治がけじめをつける、政治と金の問題について真相を究明する、そしてそれにかかわった人々がその事実を明らかにする、このことで私はできるんだと思っています。

 今、国会で政治資金法の改正で与党内で一致したと報道されていますが、改正以前の問題だと私は思っています。あれこれ法をいじって済む問題ではありません。守るべき法を守らない、法破りの徹底した真相解明、このことこそが大事だと私は思います。

 最後に、臼田氏の証言について引いて明らかにしておきたいと思うんです。

 冒頭陳述を見ますと、日歯連盟から歯科医療政策の陳情などをするためには、自由民主党最大派閥である平成研の幹部との関係を修復しておく必要があると考え、この際多額の寄附をしておこうと考え、平成研に対する寄附の金額を一億円と決めた、こう言われています。つまり、出す側の方は、政策の陳情をする、そのために金を出すということで、まさに団体献金は何を目的にしていたかということを明らかにしているわけです。

 その意味でも、私は、真相解明と同時に、こういう企業や団体の献金を禁止するということ自体が真相解明の重大な、そういう一つの段階を画することになるということを述べて、質問を終わります。

甘利委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 平成十七年度の予算審議も、あと、私に与えられた時間を残すのみになりました。いろいろな問題が、例えば今の政治と金の問題あるいはBSEの問題、三位一体改革の問題、いずれも中途半端なままに、きっちり論議されずに終わっていこうとするこの予算委員会というのが私は非常に不満でもありますが、私自身のこの十分間の中で、日本の戦後六十年の過去と未来の骨格にかかわる質疑をさせていただければ幸いと思います。

 この予算委員会でも、あるいはまた厚生労働委員会の場でも繰り返し取り上げさせていただきました遺骨の収集の問題です。第二次大戦で、海外戦没者二百四十万人。

 冒頭、小泉総理にお伺いいたします。

 私は、議員になって早々、これは、パプアニューギニアというところで収集された一九九九年の御遺骨でございます。御家族がこれを、御家族というか、どなたのというのではありません、御遺族が収集に行かれました。私は、この御遺骨の写真を見たときに、政治家としてこのような形で戦後を終わらせて済むんだろうかと思いを深くいたしました。引き続いて、私は、昨年、夏にはモンゴル、そして暮れにはビアクに行ってまいりました。

 皆さんのお手元に資料がございますが、我が国で一体幾つの遺骨が収集されたかは、これは尾辻大臣がよく御存じでありますが、二百四十万のうちまだ百十六万が、あえて言えば、このような形で、これは去年の暮れでございます。よく見ていただければわかりますが、あごの骨あるいは歯がございます。このような形で、土に返るにも返れず、そして、お迎えを待ったまま、無言で今も、これはインドネシアでございます、ビアクの地にございます。

 また、その向かい側のジャヤプラというところで、これは岩場に置かれた風化そのものの御遺骨でございます。頭蓋骨がまだまだ幾つか転がって、重なって、打ち倒れたままでございます。私は、あえてこのようなお姿をこういう場で見せたいとは思いません。でも、これが現実であります。

 小泉総理は、六十年を迎えた重要なこの時期の総理として、このような現状についてどのように御認識であるか、冒頭、お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 私も、平成二年でしたか、厚生大臣のときにパプアニューギニアを訪れまして、今もなお海底に眠る御遺骨、そしてあの熱帯の山脈に倒れて眠る御遺骨、慰霊をし、パプアニューギニア政府が御遺骨に対して丁重な配慮をされていることに対しての御礼と、今後も遺骨収集に御協力いただきたいという思いを込めて、訪問いたしました。

 また、モンゴルにも伺いまして、モンゴルにおきましては、戦争が終わったにもかかわらず、戦後に、はるか日本、故国に帰りたいと思いながら、帰ることかなわず病床のうちに亡くなられた多くの方々、その御遺骨に対しまして、モンゴル政府も慰霊の碑を建てて、丁重に遺骨に対して数々の配慮をされていることに対して、私も、慰霊を兼ねて御礼に伺いました。

 戦後六十年たっても、なおかつ多くの日本の方々が異国の地に眠っておられる、こういう点に関しまして、私は、戦争の悲惨さというものを改めて感じました。

 今後、政府といたしましても、無念の気持ちで倒れられた、そして、今なお海、山に眠っておられる遺骨収集に対しては、一日も早く故国日本に帰れるよう努力していかなきゃならないと思っております。

阿部委員 総理のお言葉に二言がないようにやっていただくためには、圧倒的に人手が足りない、あるいは、外務省と厚生省との連携が足りない、それ以上に、我が国には、御遺骨を御帰還させるための法律も枠組みもございません。今は、御家族あるいは御遺族が御自身で行かれて、その場で発見されたものを厚生労働省に言って持ち帰るという枠組みでございます。

 総理は御存じかどうかわかりません。アメリカは、いまだ未帰還の御遺骨が八万人、そして日本は百十万人。事にかかわる職員は、アメリカは四百人以上、我が国は二十人でございます。予算は、アメリカは六十六億、我が国は五億でございます。私は、このことをまずきっちりと仕組みとして、国の責任としてやっていただきたいと思います。

 私に与えられた時間があと少々しかございませんので、未来にかかわる問題をお願いいたします。

 例えば、皆さんのお手元にございます中国を見ていただきますと、東北部、二十四万五千四百人の方が戦死され、いまだ二十万以上が帰国されておりません。事情はよく御存じと思いますが、日中間の国民感情の問題、あるいは、我が国の戦死者と同様、向こうにも戦死者が出た問題などなどがございまして、私は、これこそ本当に、過去と未来をつなぐ、誠心誠意、我が国の日中関係の良好な運営の中でしか解決しないと思います。

 先般、町村外務大臣にお願いし、お聞き申し上げましたが、中国要人との交流はどうなっておるかということで、町村大臣は近く中国の外務大臣とお会いになる御予定もあると思います。総理におかれましては、今後、例えば総理御自身が訪中なさり、さまざまな問題を抱えている、しかし最も重要な今の東アジアにおける日中関係について、お互いの腹蔵のない話し合いを行っていかれるおつもりがおありや否や、御予定がおありや否や、最後にお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 日中関係は重要でありますし、日中友好は両国の発展のためにも大事な関係でございます。

 そういう観点から、さまざまな機会をとらえて首脳会談は行っておりますし、双方の都合のいいときに、首脳におきましても要人におきましても、訪問し合いながら、率直な意見交換をすることは極めて大事なことだと思っております。

阿部委員 私は、小泉総理の日朝関係における御尽力を高く評価するものであります。まだまだ不十分な点もあるかもしれませんが、時代を大きく一つ動かしたと思います。

 その意味においては、今、日中関係、このことがまた我が国の東アジアにおけるいろいろな今後の未来を大きく支え、また、日中、日米の関係の良好な運営が全世界の平和にとっても非常に肝要と思いますので、ぜひとも総理の訪中あるいは要人との意見交換を求めまして、私の質疑を終わらせていただきます。

甘利委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして平成十七年度予算三案に対する質疑はすべて終局いたしました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 ただいままでに、日本共産党佐々木憲昭君から、平成十七年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、本動議について提出者から趣旨の弁明を求めます。佐々木憲昭君。

    ―――――――――――――

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、平成十七年度予算三案につき政府がこれを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提案理由及び概要を御説明いたします。

 まず、撤回、編成替えを求める理由についてであります。

 小泉内閣による国民への負担増は、定率減税の縮小廃止だけでなく、年金課税強化、フリーター課税強化、中小業者に対する消費税徴税強化など国民生活の隅々にまで及んでおり、これらの合計は七兆円にも上ります。同時に、政府案は、むだな大型公共事業を復活、継続させるとともに、大企業や高額所得者に対する大幅な減税には手をつけず、専ら庶民にツケ回しするものであります。このような大増税路線には全く道理がなく、国民の暮らしと日本経済に対する破壊的な影響ははかり知れません。

 今求められていることは、大増税路線を中止し、年金、介護など必要な社会保障の充実拡充、災害対策の強化、雇用、中小企業、農業の危機打開などのために予算を重点的に配分することであります。また、イラクから自衛隊を直ちに撤退させ、自衛隊の海外派兵体制づくりを中止し、軍事費を大幅に削減することであります。以上の見地から、政府予算案は直ちに撤回して、抜本的に組み替えることを求めるものであります。

 次に、組み替えの概要について述べます。

 一、大増税路線を中止し、むだな公共事業、軍事費、大企業・金持ち減税にメスを入れて、暮らし、国民経済のための財源を確保する。

 今こそ、むだな公共事業に大胆なメスを入れなければなりません。政府は、庶民には負担増を押しつけながら、大企業や高額所得者に対する大幅な減税には指一本触れようとしておりません。大企業向け減税と高額所得者向け減税の見直しを行うべきであります。

 二、自衛隊の海外派兵体制づくりを中止し、イラクからの撤退で軍事費の大幅削減を行う。

 本予算案は、海外派兵を自衛隊の本来任務と初めて位置づけた新防衛大綱などのもとで、それを最初に具体化するものであります。アメリカの無法な先制攻撃に加担する国づくりをやめ、関連する軍事費は計上せず、軍事費を大幅に削減するべきであります。

 三、年金改革をやり直し、医療、介護、障害者福祉などを拡充する。

 国民生活が深刻になっている今こそ、暮らしを支える社会保障制度の役割は重要となっています。1、基礎年金国庫負担を直ちに二分の一に引き上げ、年金改革をやり直す。2、介護保険の負担増を中止し、サービス基盤の拡充など、予算配分の重点を思い切って社会保障に移すことであります。

 四、生活再建への支援を抜本的に強化し、災害への備えを厚くする。

 阪神・淡路大震災から十年を経たものの、被災者の自立支援のおくれは新たな社会問題になっております。政府や自治体ではこれまでの支援策を切り捨てる動きを強めておりますが、このような無慈悲な態度を改め、今こそ実態に合わせて、生活と地域経済の再建への支援を継続、強化することであります。

 五、実効ある雇用対策を進め、中小企業支援を強化する。

 安定した雇用の確保は、国民の暮らしの基盤であると同時に、社会経済の発展のためにも最重要の課題であります。乱暴なリストラと不安定雇用への切りかえをやめさせ、正規雇用を拡大するとともに、正社員とパート労働者、派遣労働者との不当な差別をなくす雇用政策に転換するものであります。

 六、食料・農業、環境、教育・子育てなどの予算を拡充する。

 政府による無責任な政府米売却によって、米価の暴落に歯どめがなくなっております。このような事態のもと、農家経営に打撃を与える米改革を中止し、直ちに米価の下支えと暴落に対する補償を実施すべきであります。BSE対策として、アメリカの圧力に屈することなく、全頭検査は維持すべきであります。

 七、住民サービスの低下をもたらさないよう、地方財源の拡充を図る。

 政府は、三位一体改革の名のもとに、今後二年間で三兆円の国庫補助負担金を削減するとして、〇五年度は義務教育費や国民健康保険などを中心に約一・八兆円を削減しました。全国の多くの自治体で苦しい財政運営が強いられることは必至であります。住民サービスの低下をもたらさないよう、地方財源の拡充を図るべきであります。

 以上、編成替えの概要を説明いたしました。詳細は、お手元に配付した動議を御参照願います。

 委員各位の御賛同をお願いして、趣旨の説明といたします。

甘利委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 これより討論に入ります。

 平成十七年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。松岡利勝君。

松岡委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案に対しまして、賛成の討論を行うものであります。

 小泉内閣においては、改革なくして成長なしの一大方針のもと、各分野にわたって聖域なき改革を強力に進めておられますが、十七年度予算の編成に当たっても、このような考え方に沿って、歳出改革については、財政規律を維持し、将来世代に責任が持てる財政を確立するとともに、限られた資源を真に必要な分野、施策に適切に配分することが、今まさに政府に求められているところであります。

 このような理念のもと、平成十七年度の予算の編成は、歳出改革路線を堅持、強化するという方針のもと、従来にも増して、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、歳出の抑制と所管を超えた予算配分の重点化、効率化を図ることとされました。

 以下、賛成する主な理由を申し述べます。

 その第一は、本予算が、歳出の質の改善に努め、科学技術や治安対策など、活力ある社会経済の実現や国民の安全、安心の確保につながる分野に重点的に配分したほか、各分野においても真に必要な施策への絞り込みを行うなど、めり張りのきいた予算配分を行っている点であります。

 賛成の第二の理由は、極めて厳しい我が国の財政事情を踏まえ、歳出の合理化、効率化を進め、持続可能な財政構造の構築を図っている点であります。

 本予算の編成においては、国と地方のいわゆる三位一体の改革、社会保障制度改革などの重要課題に着実に取り組むとともに、特別会計については、事務事業の見直し等の視点から着実な改革を進めております。

 本予算においては、このような歳出改革努力などの結果、三年ぶりに一般歳出を前年度以下に抑制するとともに、新規国債発行額についても四年ぶりに前年度より減額し、一般会計の基礎的財政収支が昨年度に引き続き改善するなど、持続可能な財政の構築に向けて大きく一歩を踏み出したものと考えられます。

 以上、本予算に賛成する理由を申し述べました。平成十七年度予算は、今後の我が国の発展、国民生活の安全、安心の確保に向けてまことに重要なものであり、ここに賛成の意を表するものであります。

 平成十七年度予算には、これまで百時間を超える審議時間をかけております。ぜひともその一日も早い成立を期しつつ、私の賛成討論といたします。

 なお、共産党から提出された平成十七年度政府予算に対する組み替え要求については、見解を異にするものであり、反対の意を表します。(拍手)

甘利委員長 次に、石田勝之君。

石田(勝)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算に一括して反対する立場で討論を行います。

 最初に、今回の予算審議中に大きな問題となった証人喚問についてであります。

 この国会の冒頭より、民主党は、橋本元総理を初めとする関係者の証人喚問を強く求めてまいりましたが、これが実現しなかったことは極めて遺憾であります。

 もちろん、司法における事実の究明が重要なことは論をまちませんが、同時に、国民から選ばれ、負託を受けている政治家が、真実を解明し、これに基づく政治的道義的責任の所在を明らかにすることは、我が国民主主義の健全性維持、国民の政治に対する不信感の払拭の意味から不可欠であるにもかかわらず、政府・与党は、言を左右にしてこれを逃れてまいりました。仮に自民党に何らやましい点がないのであれば、証人喚問に応じ、堂々と、疑惑に根拠のないことを国民に対して説明すればよいだけのことであります。

 予算の審議の締めくくりに当たって、改めて、本委員会における速やかな証人喚問の実施を求めます。

 続きまして、平成十七年度予算案について、反対する主な理由を申し述べます。

 第一の問題点は、定率減税の縮減であります。

 この定率減税の根拠法には、我が国経済の状況等を見きわめつつ、根本的見直しを行うまでの間の特例を定めているとあります。すなわち、この定率減税の解除条件は、経済状況の好転及び所得課税の抜本的見直しの二つであることは、法律に明確に書いてあるのです。

 経済状況は、三四半期連続でGDPはマイナス、政府の月例経済報告でも、昨年十一月、十二月に基調判断を下方修正したところであります。国民の声も、景気をもっと何とかしてくれという話ばかりです。これを経済状況の好転と認識しているなら、国民の感覚とは大きく乖離していると言わざるを得ません。

 加えて、既に決定済みの増税、社会保険料引き上げなど、国民負担増がメジロ押しであります。とても、一兆円超の新たな国民負担を求める状況にないことは明らかであります。

 また、もう一つの解除条件である所得課税の抜本的見直しについては、政府は何らの具体的な案を示しておりません。今回政府が提案している定率減税の縮減は中間所得層をねらい撃ちするものであり、我が国社会における勝ち組と負け組という二極化を一層進めるものであり、この一点をもっても、政府案に賛成することは到底でき得ません。

 第二の問題点は、財政健全化に対する取り組みであります。

 政府は、平成十七年度予算をもって、新規国債発行額を減額したと胸を張っていますが、これは、民間企業の自助努力による税収増あるいは国民への負担押しつけによる歳入増によるものであり、決して歳出改革によるものではありません。

 第三の問題は、平成十七年度予算の最大の眼目の一つであった三位一体改革であります。

 補助金改革、地方への税源移譲については、今回で三回目の予算となりましたが、来年度予算でも具体的な税源移譲は全く進んでおらず、相変わらず、所得譲与税、税源移譲予定特例交付金といった国の裁量による配分を続けています。地方交付税交付金の改革においても具体的な姿は示されておらず、予算に盛り込まれていません。

 真の地方分権が小泉政権によって推進されるとは全く考えられません。

 その他、問題点は数限りなくあります。

 例えば、昨年あれだけ国民から強い批判を受けた社会保険庁による年金保険料の事務費流用を来年度も継続することや、道路公団のファミリー企業への天下り、親方日の丸体質は、民営化直前になっても全く変わっておりません。また、特別会計の改革も全く進んでおりません。

 このような、国民に痛みだけ強いるだけで、改革、改革と空虚に叫ぶ小泉内閣の国民不在の政策をぎっちり詰め込んだ政府予算案に、民主党が賛成できるわけがありません。改めて、明確に予算三案に反対を表明し、なお、先ほど議題となりました共産党の組み替え動議につきましては、立場を異にいたしますので、反対の立場を表明し、私の討論を終わります。(拍手)

甘利委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 私は、公明党を代表して、平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案に対し、賛成の討論を行うものであります。

 我が国の景気は、足元は踊り場的な状況にあるものの、基調としては民需主導の回復が続いております。その主役は、言うまでもなく民間による経営努力でありますが、それを促す役割を果たしたのが、小泉内閣が一貫して進めてきた構造改革であったと考えます。徐々にではありますが、着実にその成果があらわれ始めております。

 具体的には、金融の安定と健全化に向けた金融システム改革による不良債権半減目標の確実な達成、国から地方への理念に立った三位一体改革の具体的推進、官から民への流れをつくる構造改革特区などの規制改革、財政健全化を見通し、徹底したむだを排除していくための歳出構造の改革、少子高齢社会を見据えた税制改革などであります。

 私は、こうした観点から政府・与党が進めてきた構造改革路線の基本的方向を今後も推進していくことが、日本経済の再生、そして活力ある安心社会の構築につながると確信するものであります。

 こうした認識に立ち、以下、本予算案についての主な賛成の理由を大きく三点にわたって申し述べます。

 第一には、本予算案は、先ほど申し上げた小泉内閣が進めてきた構造改革をより一層推進し、活力と安心ある社会実現に向けた重要な予算であるということであります。

 財政健全化の重要性を十分に踏まえ、官から民へ、国から地方への流れを堅持、強化するなど、構造改革を推進するため徹底した歳出の見直しを行い、むだを省いて、歳出にめり張りをつけております。

 中でも、聖域なき改革として、引き続き公共事業関係費を抑制、重点化するとともに、防衛関係費については前年比一%減額しております。

 他方、重点配分として、保育所の拡充を初めとする少子化対策、マンモグラフィー、介護予防拠点整備など健康フロンティア戦略の推進、スクールガード、警察官の増員など治安対策の強化、若年雇用対策など若者自立・挑戦プランの着実な実施等の予算をふやしました。

 また、地方に配分される地方交付税総額を前年度と同規模を確保するなど、三位一体改革を進める地方公共団体にも十分に配慮しております。

 将来への安心を確保するため、平成十七年度税制改正における定率減税の見直し、縮減による税収のほとんどは基礎年金国庫負担額の加算に充当しました。

 昨年、数多く発生した地震、災害への対応及び今後の防災対策も欠かせません。さきに成立した平成十六年度補正予算とあわせ、本予算案でも、災害対策のための費用として、床上浸水解消対策、土砂災害対策が大幅に上乗せ計上されており、災害に強い国づくりを進める上でも、本予算案の速やかな成立が重要であります。

 賛成する第二の理由は、予算制度の改革を進め、質の向上と効率化努力を進めている点であります。

 具体的には、モデル事業や政策群といった手法の導入と拡大、予算執行調査の実施と予算への反映、特別会計の着実な見直しなどであります。

 また、道、港、汚水処理などの整備について、複数の省庁の縦割りの補助金を横断的に統括し、内閣府において一括して取り扱う交付金制度を創設するなど、地方の裁量性を高める施策も拡充しました。

 さらには、公明党の主導によって発足した政府内の行政効率化関係省庁連絡会議にて、事務コストの削減、事業運営の見直しなど、細部に至る見直しを徹底した結果、平成十七年度予算案では、公共事業コスト縮減を別にして、百十五億円の削減効果が見込まれております。

 国民の大事な税金をむだにしないためにも、こうした地道な積み重ねが重要と考えるものであります。

 賛成する第三の理由は、本予算においては、このような歳出改革努力並びに税収増などの結果、前年度当初比マイナス二・二兆円と、新規の国債発行額を大幅に抑制している点であります。

 政府として、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目指した財政健全化努力を進めておりますが、国の一般会計のプライマリーバランスについても、平成十六年度の六千億円に続き、十七年度はさらに三兆円改善する見込みであり、二年連続の改善で財政悪化に一定の歯どめをかけたことは大きな前進と考えます。

 以上、本予算案に賛成する主な理由を申し述べました。

 平成十七年度予算案は、今後の我が国の発展、国民生活の安心、安全の確保に向け、まことに重要なものであります。

 ぜひともその一日も早い成立を期待しつつ、私の賛成討論といたします。

 なお、日本共産党から提出された組み替え要求については、見解を異にするものであり、反対いたします。(拍手)

甘利委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、平成十七年度予算三案に対して反対、我が党提出の編成替えを求めるの動議に賛成の立場から討論を行います。

 本予算案に反対する第一の理由は、本格的な大増税路線に大きく足を踏み出すものになっているからであります。

 年金保険料の値上げ、配偶者特別控除の廃止、消費税の免税点引き下げ等々、小泉内閣のもとで既に実行され、もしくは予定されている国民負担増は、極めて巨額に上っています。加えて、今回の定率減税の縮小廃止は、所得税、住民税を納税している人々とその家族すべてに影響するという、かつての増税と全く次元の違う内容となっていることであります。増税と負担増の規模は七兆円にも及びます。

 しかも、重大なことは、今回の定率減税の縮減廃止が、〇七年度以降の消費税引き上げへと続く連続的な大増税路線の始まりだということであります。このことをまず初めに指摘するものであります。

 反対の第二の理由は、負担増の中身が、これまで住民税が課税されていなかった高齢者やフリーターへの新たな課税、障害者などの福祉サービスの自己負担の増加など、およそ負担能力のないところにまで負担を求める、情け容赦のない施策が盛り込まれていることであります。

 介護保険へのホテルコストの導入、国立大学授業料の値上げ、生活保護の母子加算の見直し、雇用対策予算の削減など、庶民に対してあらゆる分野で痛みを押しつけようとするものであります。その一方で、大企業や高額所得者向けの減税は温存し、専ら取りやすい庶民から取るという極めて理不尽な仕組みに何ら手をつけようとしていないのであります。

 さらに、地方分権の推進という看板とは裏腹に、地方への国の支出を削減し、地方財政の圧迫と住民サービスの切り捨てにつながる危険性をはらんだ三位一体改革が本格的に実施されようとしていることも重大であります。

 第三の理由は、深刻な事態が続く財政状況の中、相変わらずむだと浪費の公共事業や軍拡予算が組まれていることであります。

 採算と需要の見通しが立たない関西国際空港の新滑走路着工工事や地元の合意もとられていない整備新幹線、諫早湾干拓、八ツ場ダムなどのむだな公共事業、さらには、五兆円近い枠を維持し、ミサイル防衛システムを初め自衛隊をアメリカ補完の軍隊へと変貌させる事実上の軍拡予算となっていることであります。

 当委員会の公聴会でも、公述人の方から、消費税増税など九兆円の負担増を押しつけ、経済を失速させた橋本内閣の失政に触れ、失敗の轍を踏んではならないとの意見が出されました。

 今、必要なことは、予算を生活支援の方向に根本的に組み替えることであります。このことを強調して、私の反対討論とするものであります。(拍手)

甘利委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算の三案に対し、反対の討論を行います。

 政府予算は、定率減税の縮小、住宅ローン減税の縮小、フリーター課税、年金課税の強化など、明確な増税路線にかじを切った与党の税制改革大綱と、国民健康保険の都道府県負担の導入、補助金スリム化の名のもと、地方への赤字ツケ回しに終始した三位一体改革を前提にしながら、歳出歳入両面から国民への犠牲と痛みの強要が際立つ負担増突出・生活破壊型の予算となっています。雇用の充実、景気の後押し、財政再建、社会保障制度の根本改革などは先送りし、安易な増税で帳じりを合わせた小泉内閣の姿勢は、政治の責任を放棄したに等しいと言わざるを得ません。

 あわせて、国民年金と厚生年金、雇用保険の各保険料の値上げ、介護保険施設のホテルコストの自己負担、国立大学の授業料値上げなどが家計を圧迫し、ただでさえ下降ぎみの景気にさらに拍車をかけることを強く懸念するものです。

 また、関西国際空港の整備拡張、整備新幹線の新規着工に加え、諫早干拓事業や川辺川ダム建設にも巨額の予算措置がされるなど、政官業の癒着の象徴である大型公共事業は温存されたままです。さらに、ミサイル防衛の予算増や辺野古への移転経費、イラクへの自衛隊派遣関係費などを含む防衛関係費、「もんじゅ」運転再開準備、ITER、国際熱核融合実験炉関係、核燃サイクル事業などの原子力関係予算など、極めて問題が多い事業にも血税が垂れ流されています。批判を浴びた社会保険庁の年金事務費の転用も継続されたままです。

 今、私どもに問われていることは、自然環境の破壊や災害をいかに食いとめ、少子高齢社会に見合う循環型経済社会へと転換していくこと、また、社会保障をどう充実させていくのかにあります。国民の不安を解消し、いかに安心と安全を取り戻すのか、来年度予算はそのための政治のメッセージでなければなりません。

 私は、雇用や社会保障、農林水産業の再生、食の安全、災害、環境、子供、若者、教育の分野に大胆に予算を振り分ける人間中心型予算へ転換することを訴え、三案への反対討論といたします。

 なお、共産党から出された組み替え動議については、我が党として検討する時間がございませんので、反対をさせていただきます。(拍手)

甘利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 これより採決に入ります。

 まず、佐々木憲昭君提出の平成十七年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

甘利委員長 起立少数。よって、佐々木憲昭君提出の動議は否決されました。

 次に、平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算、平成十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。

 三案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

甘利委員長 起立多数。よって、平成十七年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました平成十七年度予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

甘利委員長 この際、一言申し上げます。

 去る一月二十八日の審査開始以来、時には厳しい意見の対立を見ることもございましたが、委員各位には終始真剣なる審議を重ねていただき、本日ここに審査を終了いたしました。

 これもひとえに委員各位の御理解と御協力のたまものであり、ここに深く感謝の意を表するものであります。ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十二分散会


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