衆議院

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第21号 平成17年5月16日(月曜日)

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平成十七年五月十六日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 甘利  明君

   理事 伊藤 公介君 理事 金子 一義君

   理事 渡海紀三朗君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 佐々木秀典君

   理事 島   聡君 理事 田中 慶秋君

   理事 石井 啓一君

      石原 伸晃君    植竹 繁雄君

      尾身 幸次君    大島 理森君

      川上 義博君    北村 直人君

      小泉 龍司君    後藤田正純君

      坂本 哲志君    菅原 一秀君

      田中 和徳君    竹本 直一君

      玉沢徳一郎君    中馬 弘毅君

      津島 恭一君    津島 雄二君

      西川 京子君    根本  匠君

      萩野 浩基君    萩山 教嚴君

      福田 康夫君    二田 孝治君

      森田  一君    石田 勝之君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      大出  彰君    菅  直人君

      吉良 州司君    小宮山泰子君

      篠原  孝君    仙谷 由人君

      津川 祥吾君    辻   惠君

      中井  洽君    中津川博郷君

      中塚 一宏君    永田 寿康君

      長妻  昭君    原口 一博君

      樋高  剛君    松木 謙公君

      米澤  隆君    赤松 正雄君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      穀田 恵二君    佐々木憲昭君

      東門美津子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         町村 信孝君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   政府参考人

   (国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長)  福本 秀爾君

   参考人

   (西日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長)     垣内  剛君

   参考人

   (西日本旅客鉄道株式会社代表取締役専務取締役鉄道本部長)         徳岡 研三君

   参考人

   (航空・鉄道事故調査委員会委員)         佐藤 泰生君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  伊吹 文明君     菅原 一秀君

  河村 建夫君     川上 義博君

  津島 雄二君     津島 恭一君

  村井  仁君     田中 和徳君

  生方 幸夫君     大出  彰君

  小泉 俊明君     松木 謙公君

  篠原  孝君     仙谷 由人君

  辻   惠君     菅  直人君

  中塚 一宏君     小宮山泰子君

  田端 正広君     赤松 正雄君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  川上 義博君     竹本 直一君

  菅原 一秀君     萩山 教嚴君

  田中 和徳君     村井  仁君

  津島 恭一君     坂本 哲志君

  大出  彰君     生方 幸夫君

  菅  直人君     辻   惠君

  小宮山泰子君     中塚 一宏君

  仙谷 由人君     篠原  孝君

  松木 謙公君     小泉 俊明君

  赤松 正雄君     田端 正広君

  穀田 恵二君     佐々木憲昭君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     津島 雄二君

  竹本 直一君     河村 建夫君

  萩山 教嚴君     伊吹 文明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(外交等)


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     ――――◇―――――

甘利委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ち、一言申し上げます。

 去る四月二十五日のJR西日本福知山線列車脱線事故によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、お悔やみを申し上げます。

 また、負傷された方々には、一刻も早い回復を心から願い、お見舞いを申し上げます。

 ここに、お亡くなりになられた方々に対し、衷心より哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

甘利委員長 黙祷を終わります。御着席ください。

     ――――◇―――――

甘利委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

甘利委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、外交等についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として西日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長垣内剛君、西日本旅客鉄道株式会社代表取締役専務取締役鉄道本部長徳岡研三君、航空・鉄道事故調査委員会委員佐藤泰生君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として国土交通省鉄道局長梅田春実君、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

甘利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

甘利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。

仙谷委員 ただいま、JR西日本の福知山線の大変大きな事故によってお亡くなりになられた方、そして重傷を受けられている方、そしてまたマンションの住人の皆さん方にとっては物理的、精神的被害が大変大きいと思いますが、そういう方々について、この委員会で皆さん方と一緒に黙祷、そしてお見舞いの気持ちをあらわさせていただいたわけでございますが、私も個人的にも関係の深いところでございまして、偶然乗ろうと思って乗らなかった方とか、普通は乗らないけれども乗って帰らぬ人となってしまったとか、そういうお話が相当数寄せられております。

 改めて、この事故の真相をちゃんと究明し、それも本質的なところから究明をし、そして、今後この種の事故の再発のないように、政府においては、対策をとっていただきたいと思いますし、今度の事故に伴う被害の補償や手当て、これまた十全に行っていただきたいとお願いをいたしておきます。

 この問題については、私の次に質問に立ちます菅直人議員の方から詳しくお伺いをすることになろうかと思います。私は、今の日本の置かれた状況、日本を取り巻く状況、この問題の外交、内政について、総理大臣、外務大臣、総務大臣、厚生大臣にお伺いをしたいと考えております。

 まず、この間、急に反日デモというふうなものが韓国と中国で巻き起こったわけであります。

 私は、あのデモを見ておりまして、私が子供の時代に、日米安保条約をめぐって羽田でハガチー事件というのがありました。アメリカから来られた大統領特使のハガチーさんという人をデモ隊がみんなで取り囲んで、袋だたきのような状況にして追い返してしまった。そういう時代も日本はあったんだな、まさに、オリンピックの四年前の話であります。今、北京オリンピックの三年前の状況ということを考えますと、そういう時点というのはそういうことがあるのかなと一方で思います。

 そしてまた、反日あるいは抗日デモあるいは暴動というふうなものは、田中角栄さんがアジアに、特にタイとインドネシアでありますが、そこに行かれたときに、先般の中国あるいは韓国の様相とは、もっともっと激しい暴動的デモが行われたというのを改めて思い出しました。どうも、私の記憶では一九七二年だったように思います。その前段階で、中国では、私どもにはそれほど明らかじゃなかったわけでありますが、いわゆる中国文化大革命という、街頭の動員によって、ある種の権力闘争が行われていたということを後で聞きました。

 今度のデモの特徴というのは、どこまでの大衆が、あるいは韓国や中国の人々が、今の時点でそれに賛同し、唱和しているのかどうなのか、見きわめがたいところはあるわけでありますが、いずれにしても、小泉総理が数年前、二〇〇二年からでございますが、我々は、日本は東アジア共同体を目指すという、ある種の理想といいましょうか理念を掲げて進まれておったこの時点で起こったということであります。

 もう一つは、日本が国連改革に積極的に賛同し、あるいは関与し、みずからが国連の常任理事国になりたい、なる資格もあれば意欲もあるということを公言しているそのさなかに起こった、こういうデモであります。近隣諸国で起こったデモであります。現に、韓国のデモは、日本の常任理事国入り反対、許さないという、これをデモ隊の横断幕が掲げております。あるいは私どもが仄聞をいたしておる情報によりますと、韓国政府、盧武鉉大統領、この盧武鉉大統領が、日本の国連常任理事国入りについては反対であるというふうなことをどうもほのめかしている、あるいはそういう角度から発言をされているというふうに聞こえてまいります。

 一九九八年の金大中大統領の訪日以来、日韓は、ワールドカップサッカーも経て、非常に国民レベルではその関係がよくなってきた、こういうふうに私は見ておって、この十五年間、日韓交流を進めてきた一人として、隔世の感があるな、よくなったな、こういうふうに思っておったわけであります。

 ことしは、図らずも、日韓友情年、日韓基本条約四十周年記念ということであります。そういう時点で、なぜこんな状態になっているのか。総理、総理自身はどういうふうに考えているのか、総括をされているのか。なぜこんなことになってしまったのか。この結果といいましょうか、現在の状況についてどういうふうにお考えなんですか。

小泉内閣総理大臣 中国、韓国との関係というものは、近年ますます交流も深まり、経済関係も相互依存体制が強まって、お互いの交流を深めてきたと思います。しかしながら、ここに来て反日感情が強く出てまいりまして、これに対して、お互い自制的な対応をとりつつ、過去の経緯も踏まえまして、未来に向かって友好関係を発展させていかなきゃならない、そういう認識は共通しております。

 これは、国連常任理事国入りの問題あるいは領土をめぐる意見の相違等に対しまして、過去の戦争の経緯もありまして、なかなか複雑な感情もあるのは事実でありますが、私は、両国政府とも、この問題につきましては、未来に向かってより一層友好交流関係を深めていこうという点においては、今後も変わらない基本方針だと思っております。

仙谷委員 そういう抽象レベルの基本方針は結構なんでありますが、なぜこんなことになったのかというお答えにはなっていませんよね。何が原因なんですか、これは急に。

 日本国民の多くの方から見ると、まあ日中については、昨年の秋のアジアカップサッカーで、重慶とか済南とか北京でああいうことがあった。何か中国の人々は日本に対してそれほどいい感じを持っていないんだな、一部の人はああいう格好で暴発といいますか破裂するんだな、ここまで僕もわかっておったわけでありまして、中国の人と会うたびに、あれはまずいんじゃないですか、これはもう日本人の嫌中感みたいなものを増幅させますよ、ちゃんと政府の方からもメッセージを送った方がいいということを、中国政府の方々にも、あるいはその周辺の方々にも申し上げておった。

 ところが、韓国は、私にしても、普通の国民の方々は、夜うちへ帰ってみると、我が妻たちは韓国ドラマをずっと見ているわけだ。(発言する者あり)立派なところは見ていないのかもわかりませんが。いやいや、物すごい冬ソナブームが行き渡っておるわけですよ。韓国のあの純な思いのドラマが行き渡っている。これも、要するに金大中大統領の文化開放というところから始まったんだろうと私は思います。

 私は、当時、金大中さんが文化開放するについては、国内的にもいろいろな反発や抵抗があったのを押し切ってなさったということを聞かされておりました。それでも、日韓が相互依存、そして協調を深めていく、そのことが大事だということで思い切って開放したと。

 突如、あの反日、抗日デモ。まだデモだけならば、歴史問題については、時々大使館あるいは公邸へ行って卵をぶつけたりするのが報道されますから、一部もしくは相当数の方々は、戦後処理をめぐって、日本の戦後処理は不十分だということで運動されているというのは私も知っております。それで、そこには、国際人権法の観点から、日本も考える余地があるのかもしれないというふうに考えてまいりました。ところが、大統領までが改めて批判的な言動をする。何が原因になっているんですか、これは。何がこんなことになっているんですか。国連についても、否定的な態度を韓国政府はとられる。何が問題なんですか。どうですか、小泉さん。

町村国務大臣 韓国あるいは中国、それぞれの政府がどれだけああした抗議活動といいましょうかデモにかかわりを持っているのか、それは私どもも定かではございません。ございませんが、その底流にあるものを私が余り評論家風に申し上げるのが適切であるかどうかわかりませんが、あえてのお尋ねでございますから申し上げます。

 やはり一つは、中国あるいは韓国の皆さん方が、日本の歴史認識というものについて、どこか我々とは違うものを持っているなという違和感をずっと持ち続けているというのが底流にあるということは、そこは率直に認めなければいけないのだろう、こう思います。

 私どもが戦後六十年、戦前の反省の上に立ってひたすら平和国家としてやってきた、その活動というものをどれだけそれぞれの国で評価しているのかという問題もありますけれども、特にその戦前の活動について、私どもは再三にわたっていろいろな機会において反省なりなんなりはやってきたつもりでありますが、そのことについて、意図的か意図的でないかは別にして、そうしたことについての不満というものを常にずっといろいろな機会に言ってこられましたよね。僕らは、例えば、さっきお話の出た金大中大統領の折で、これでやっと一つの区切りがついたか、こう思ったりもいたしました。しかし、またこれが繰り返されている。

 これは一つには、例えば韓国の中では韓国の新しい世代というものがどんどん台頭してきている。その新しい世代の代表選手がいわば盧武鉉大統領というようなところも私はあるんだろうと思います。したがって、その新しい世代にアピールする物の言い方、行動の仕方というものを、歴代政権とは違った形で韓国の今の政権がとっているという側面もあるんだろうな、こう思っております。そういうところで、ちょうどたまさか、戦後六十年ということで、島根県が県の条例、竹島の日というものを通した。それがいわばきっかけとなって一挙に噴出をしてきた。それはむしろトップリーダーの方からそういった運動が出てきたという感じが強くするわけであります。

 それに比べると中国はどうかといいますと、中国の最初のデモのきっかけというのは、これは常任理事国入り反対というのが、その署名運動が行われ、それがいわば発端となって毎週末デモが繰り返される、中には過激な行動が出てくるということでございました。

 これもまた、ある種の新しい世代の運動といいましょうか、インターネットでどんどん情報が流れていって、いついつどこでデモがあるからみんなで参加しようというような、今までの中国では多分考えられなかったような新しい世代流のやり方でああいうデモも起こってきた。そんなに単純な性格ではないんだろうとは思うんですが、現象的にはそのように見えてくるわけでございます。

 そういう底流にあるものと、新しい動きというものが加わって、今回のこのような反日の動きになっている面があるんだろう。そのほかに、それぞれの国の教育の問題でありますとか、いろいろな御指摘もあります。それぞれがそれぞれできっと正しいのかもしれませんけれども、そうしたさまざまな要素の複合的な結果が今回の事象になってあらわれたのだろう、このように受けとめております。

仙谷委員 まことに評論家的なお話でございます。

 この間、この種の問題について、日中会談、これはことしの四月二十三日のようでありますが、胡錦濤主席から五項目の提案があって、特に歴史認識と反省については、適切に判断する、こういうふうに小泉さんはお答えになった、こういうことになっておるわけですが、その際も、反省を実際の行動に移してほしい、こういうふうに胡錦濤さんから言われたんですか。それから、盧武鉉さんも、意思表示を行動と実践で見せてほしいと。

 これは何を言われているんですか。つまり、あなたは反省と行動が違うじゃないか、こう言われているんじゃないですか。言うこととやることが違うじゃないか、こう言われているんじゃないですか。何のことを言われているんですか、これは。つまり、歴史認識、反省というふうなことで言行不一致を指摘されて、だから本質的に信用できないんだと言わんばかりのことを言われているというのは、これは一国の総理としていかがなものなんですか。

 それで、小泉さんが、私どもが得ている情報だけを整理いたしますと、適切に判断する、あるいは配慮する、こういうお答えをなさったということになっておるわけですが、何をどのように配慮をして、どのような行動をとったら適切な行動になるのか。どうお考えなんですか。

小泉内閣総理大臣 胡錦濤主席と先月会談いたしまして、日中共同声明また日中平和条約、日中共同宣言等、これまで交わした日本と中国間の認識については、これはこの方針のもとに今まで日本も行動してきた。さらに、未来に向かって、日中関係は重要であるし、二国間の関係のみならず国際社会において日中が協力していかなきゃならない分野はたくさんある、そういう観点においては共通した認識を持っております。

 歴史観におきまして、お互いの会談の中で、両国が思っている気持ちと、日本が思っている気持ちというのについては、常に同じではないということもあると思います。それは、このような日中国交正常化以来あるいは戦後六十年、日本は戦争の反省をしたのかという意見も先方にはあるでしょう。しかし、私は、日本は戦争の反省をし、平和国家として発展してきたと思います。

 行動に示してくれと中国側が言っておりますが、六十年間、日本は、戦争の反省を踏まえ、国際社会と協調して、二度と戦争をしないという、まさにその言葉どおりの行動によって戦争の反省を示してきたんですよ。それを違うということは言っていませんよ。それは、認識においては違いがあってもいいと思います。どの国でも認識においては違いがあると思います。日本は、十分戦争の反省を踏まえ、二度と戦争をしないということで、実際の行動によってそれを示してきたと思います。

 また、韓国の盧武鉉大統領とは、昨年も私が済州島を訪問し、そして昨年十二月には盧武鉉大統領が鹿児島の指宿を訪問され、お互い、一泊ではございましたけれども、和やかなうちに、両国関係の未来に向けた進展を図ろうという会談をいたしました。韓国盧武鉉大統領も、余り過去のことにとらわれることなく未来志向で日韓の交流を拡大していこう、そういう共通した認識を持っているわけであります。

 今般、韓国におきましては、竹島の問題におきまして、これは領有権の問題に対して大きな見解の相違がございます。その点について韓国民が憤慨しているということも承知しております。しかし、日本には日本の立場があります。そういう中でも、今、日韓の交流も深まっておりますし、ことしは日韓の交流年でありますし、各地区で日韓友好の行事が進められております。

 そのような状況を踏まえまして、対立のみをあげつらうのでなく、未来へ向かって友好がいかに大事かという観点から、これから話し合っていこうということで日韓の政府の間におきましては合意しておりますので、お互い、国民感情におきましてはかなり感情的に反発する場合もありますが、両国の関係と将来の展望をよく考えれば、日韓におきましても日中におきましても両国の友好関係は重要だと思っておりますし、そういう観点から、今後も日中、日韓の交流を図っていきたいと思っております。

仙谷委員 しかし、いい気なものですね。こんなに私どもには閉塞状況に見えるんですよ、アジアの。いや、これはすごいですね。では、なぜこんなになるのかという回答には全然ならないじゃないですか。反省を実際の行動に移してほしいというのは何を言われたのか、全然我々にはわからないですよ。我々、直接話していませんからね。だから聞いているんですよ。

 靖国参拝についても、多分、やはりここが問題だという指摘は胡錦濤さんからはあったんじゃないんですか。これは問題になっていないんですか、総理の靖国参拝は。少なくとも、我々の理解をしている限りにおいては、A級戦犯が祭られている靖国神社については、総理の在任中には控えてほしいというのが、中韓とも、まずは入り口の、歴史認識について反省を実行に移してほしいということの一つの言い方じゃないんですか。なぜ、中曽根総理が参拝をしたけれどもやめて、それから現職の総理は行かなかったのに、小泉さんだけが行くんだ、この大事なときにそういう、いわば小泉さんの言い方で言えば国民の気持ちを、少なくとも国民の気持ちを逆なでするようなことをされるんですかというのが彼らの疑問でしょう。

 そういう問題について、私から見ますと、少なくとも外交の上で、いろいろな外交カードを切り合うんでしょう、それは。しかし、何かこういうもつれることになってきた口実を与えていることは間違いないですよ。

 それを、従来のように、二国間でああだこうだということを言っていて済む時代ならばまだいいんですよ。あなたが、国連常任理事国入りをすべきだということで、従前の、十年前の主張を変えられて、とんとことんとこ走っていっているじゃないですか。十年前、反対のことを言っていたじゃないですか、田中秀征さんと一緒に。そうでしょうが。

 それで、東アジア共同体、まことにすばらしい。私も、そういう時代が来たと思うんですよ。これだけの、相互経済、金融、あるいは海賊、知的財産権、環境、より重要なのはエネルギー。このエネルギーの逼迫状況を見れば、まさに東アジアの中でエネルギーの開発や供給について取り組みを結んで、安定的な供給や、お互いが足を引っ張り合わない経済の発展、あるいは民生の安定のためにそういうことをすべきだ。そういうフォーラムなり会議が必要だと思っているから、東アジア共同体を進めるのは賛成ですよ。あるいは、SARSや鳥インフルエンザのように、保健や感染症対策にも、こういうことをガバナンスできる機構をつくる、大いに賛成だ。

 そういう時点で、なさっていることは、逆にベクトルが働いているじゃないですか。近隣諸国にこれだけクレームをつけられて、国連の常任理事国入り、東アジア共同体の形成、このことが小泉さんの外交の戦略としてどう位置づくんですか。そんなことをやる必要はないんだというのであれば全然問題ないんですよ。問題ないことはないけれども、まあ理解はできる。合意はしないし、納得はしないけれども、理解はできる。ばらんばらんじゃないですか、やっていることと言っていることが。

 そこで、靖国神社、これについて、適切な行動、適切に判断するとか配慮していきたいとか、そういうふうにお答えになったんですか。お答えになったとすれば、年内は行かないんですね。どうですか。

小泉内閣総理大臣 私の言うことを誤解してとらえておられるようですが、私は、国連常任理事国入り、これについては十年ほど前から大きな関心を持っておりましたし、今のP5、同じようなことはできないということをはっきり言わなきゃいけないと言っていたわけであります。日本の立場というのは現在のP5とは違う。核保有国でもないし、海外で武力行使をしない、こういう国である。そういう点について誤解のないような、日本の基本方針が国際社会にわかった上で、そういう上で国連常任理事国入りに手を挙げるなら、これは差し支えないであろうと。現に、そういう方針でやってきております。

 そして、今ほど国連常任理事国を含めて国連改革の機運が高まっていることはございません。各国がそれぞれ六十年前の世界情勢をよく反映した現在の国連かというと、そうではない。各国の六十年前の敵対国が今は友好国になっている。それぞれの国が六十年を経て、それぞれ国力にも違いができている。そういう中で、今のままでいいかというとそうでないということで、いまだかつてない高まりを見せているし、そういう中で、国連常任理事国なり非常任理事国をふやすという場合には、日本も常任理事国としての資格があるのではないかということで改革に臨んでいるわけであります。これにつきましては、私は、民主党におきましても、反対もあるでしょうが賛成の方も多いと思います。

 東アジア共同体におきましても、これはEUも、多くの国が国家の主権を維持しながら、EUとして統合的な政治経済共同体をつくろうと今実現に向けて懸命の努力をしており、大きな共同体として、将来国際社会の中においても大きな影響力を持つに至っております。

 これも考えてみれば、四、五十年前はEUという言葉はありませんでした。ECという言葉がよく使われておりました。当時、恐らく、ECというのはどうなるかと議論していた中にも、なかなか、共通の通貨を持って同じ憲法を持って、このようなEUの形で発展するということを思っていた方は少ない方だったと思います。それが実現に向かって動いている。東アジアも、ヨーロッパ諸国ほど各国のそれぞれの共通の認識というものはまだ固まっておりませんけれども、将来、東アジア共同体としてともに歩みながらともに進むという方向で、共同体意識を持っていくことは大変重要であるということで、今、東アジア共同体あるいは東アジア・サミットを開催しようという動きになっております。

 そういう中で、日中間の問題におきましても、靖国の問題がお話出ましたが、これは私がかねがね申し上げておりますように、どの国でも戦没者に対する追悼を行う気持ちを持っているはずであります。どのような追悼の仕方がいいかということを他の国が干渉すべきではないと私は思っております。

 今日の日本の繁栄は、あの六十年前、過酷な戦争で日本国民も大きな犠牲を受けた、そして、当時、家族を持ちながら、戦場には行きたくなかった方も心ならずも国家のために戦場に赴いて命を落とさなければならなかった、そういう方の犠牲の上に今日の日本の平和と繁栄があるのではないか。そういう戦没者に対して心からの追悼の誠をささげるというのがなぜいけないのか、私は理解できません。そして、日本は二度と戦争をしてはいけないという気持ちでお参りをする。現に、六十年間日本は、二度と戦争にも巻き込まれず、戦争もしていないんです。そういうことに対して、靖国参拝してはいけない、この理由が私はわからないんです。

 民主党の中にも、靖国参拝すべしという議員がおられます。国民の中でも、すべきである、しない方がいい、した方がいいといろいろな議論があります。しかも、中国が、胡錦濤国家主席との間でも、あるいは温家宝首相との会談でも、靖国の問題が出ました。靖国参拝はすべきでないというお話もありました。しかし、今のような理由を私は申し上げました。現に東条英機氏のA級戦犯の問題がたびたび国会の場でも論ぜられますが、そもそも、罪を憎んで人を憎まずというのは中国の孔子の言葉なんです。

 私は、日本の感情として、一個人のために靖国を参拝しているのではありません。心ならずも戦場に赴いて命を犠牲にした方々、こういう犠牲を今日の平和な時代にあっても決して忘れてはならないんだ、そういうとうとい犠牲の上に日本の今日があるんだということは、我々常に考えておくべきではないか。現在の日本というのは、現在生きている人だけで成り立っているものではないんだ、過去のそういう積み重ねによって、反省の上から今日があるわけでありますので、戦没者全般に対しまして敬意と感謝の誠をささげるのが、これはけしからぬというのはいまだに理由がわかりません。

 いつ行くか、適切に判断いたします。

仙谷委員 総理、個人的な感慨と、一国、主権国家を背負ったトップリーダーは、やはりちょっと分けて考えてもらわなきゃいけないんですよ。いいですか、そこをごちゃごちゃにしてはいけないんですよ。

 総理、もう一遍ポツダム宣言を受諾したことの意味を思い出してくださいよ。我々は、心ならずもか……(発言する者あり)ポツダム宣言を受諾したから独立できたんでしょうが。何を言っているんだ。

 ポツダム宣言の中にどう書いてありますか。軍国主義の解体と民主主義的傾向の復活と書いてあるじゃないですか。民主主義の復活というところにも意味があるんだけれども、軍国主義の解体、そこについて、どう評価をされようとも、当時政治としてはそれを受け入れたんですよ。

 あなたの靖国参拝は国際政治問題になっているんですよ。中国がどう言うからとか、干渉されたくない。干渉されないでいいんです。干渉されないで自律的に、我が国がアジアの中にどうやって溶け込んでいくかという努力をするためにどういう政治選択をしなければいけないか、それがトップリーダー、総理に課された使命なんですよ、私に言わせれば。

 個人的には、靖国神社に行きたい、結構です。総理としてはそれを自制するのが政治的な判断、決断じゃないですか。いつまで戦後に生まれた我々の世代に、あるいは今の二十代、三十代の方々に、この戦争の戦後処理の問題をだらだらと残すんですか。後世代のためにけじめをつける発想すらないんですか、政治家として。私は残念で残念でしようがない。

 そこで、この問題についての総理の返答については、ことしじゅうに靖国神社に行く、こういうふうにここでおっしゃったものと理解して次に進みますが、いいですね。

小泉内閣総理大臣 私が靖国神社に参拝することと、軍国主義を美化しているととられるのは、心外であります。なぜ靖国神社を参拝することが軍国主義を美化することにつながるんでしょうか。全く逆であります。

 日本は、戦争に突入した経緯を踏まえますと、国際社会から孤立して米英との戦争に突入した。国連も脱退した。二度と国際社会から孤立してはいけない。そして、軍国主義になってはいけない。だから、戦後、戦争中の敵国であった国とも友好関係を結んできた。そして、国際協調というものを実践によって示してきた。

 軍国主義、軍国主義と言いますが、一体日本のどこが軍国主義なんですか。平和国家として、国際社会の平和構築に日本なりの努力をしてきた。この周辺において、戦争にも巻き込まれず、戦争にも行かずに、一人も戦争によって死者を出していない。平和国家として多くの国から高い評価を受けている。そういう中にあって、なぜ私の靖国参拝が軍国主義につながるんですか。

 よその国が言うから、けしからぬ、よその国の言うことに従いなさい。それは、個人的な信条と、両国間、国際間の友好関係、これはやはり内政の問題と外交関係の問題におきましてはよくわきまえなきゃいけませんが、私は、こういうごく自然の、過去の戦没者を追悼する気持ちと、二度と戦争を起こしてはいけないという政治家としての決意、これを六十年間、みんな日本国民は反省しながら実践してきたじゃないですか。それを、一部の外国の言い分を真に受けて、外国の言い分が正しいといって、日本政府の、私の判断を批判するというのは、政党が違いますから歴史的な認識も違うかもしれません、御自由でありますが、私は、これは何ら問題があるとは思っておりません。

仙谷委員 私の問いに端的に全然お答えにならないじゃないですか。そのひとりよがりの内向きの論理が国際政治の場でどう見られているかということを、もうちょっと考えた方がいいですよ。もうちょっとヨーロッパやアメリカのオピニオンの意見でもごらんになった方がいいですよ。笑われているじゃないですか。

 そこで、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、もう一点、郵政民営化についてお伺いします。

 小泉さん、この郵政民営化、私どもにも全くわからない法案でありますけれども、法案修正は考えていない、それから、廃案になった後は何が起こるかわからない、こうおっしゃっていますよね。それから、中立はない、政府がつくった法案に賛成か反対か、二つに一つだ、こうおっしゃったんでしょう。このお気持ちは変わりありませんか。特に、法案修正は全く考えていないんですね。

小泉内閣総理大臣 現在、政府が提出しております郵政民営化関連法案、修正する考えはありません。また、この問題については、賛成か反対しかないでしょう。議員として、これに賛成か反対か、自由に判断してもらうしかないんですよ。

 それと、廃案になったら何が起こるかわからない。私は、成立のために全力を尽くしているんですから、廃案は考えていません。廃案になった場合のことでありますが、それは、私は考えていないんですから、何が起こるかわかりませんよ。

仙谷委員 これは、改革の本丸と称して、ともかく実を捨てても名をとる、民営化という言葉だけでも残ればいいんだみたいな、こんな法案をつくったわけですけれども、しかしながら、廃案になったらやはり責任をとらなきゃいけないんじゃないですか、改革の本丸とまで言っているんだから。

 私は、日本の改革の本丸はまさに財政再建、財政改革だと思います。その一つの端っこの問題ではあるけれども、私は本体ではないと思う、この郵政改革は。特に、今やっている、あなた方が考えておる郵政民営化は、財政再建の問題と全く連動させないで、後は野となれ山となれの、改革と称するにせ改革ですな、こう思っているんですよ。

 これは、廃案になったらやはり総辞職じゃないですか、考えていないじゃなくて。あるいは、修正も、命をかけて修正をさせないということで、もし修正論議が出てきたら、解散するか総辞職じゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 政治の責任者として、成立しても廃案になっても責任は私にあるんですよ。責任をどうとるか、そのときにどういうとり方をするかというのは、そのときに判断すればいいことであって、成立にも私は責任を持っている。廃案にしたら責任があるんだから総辞職しろという議論はわかりますけれども、総辞職しなきゃならない理由があるんですか。(仙谷委員「改革の本丸と言っているんだから、できなかったら」と呼ぶ)だから、成立に全力を尽くすと。

 私は、廃案にするつもりはありませんし、成立によって責任を果たすということを考えているわけであります。

仙谷委員 結局、この問題は、三百五十兆の郵貯、簡保、このお金がパブリックセクターというか公的部門に集中して、もし我々が一千万の定額貯金を持っていたとしても、五百五十九万円がまだ財政融資資金に預託されているという計算になるんですよね。それから、国債には三百十九万、社債とか外債とかを買っている分、地方債を買っている分、これが七十二万円、利用者、貯金をしている人に貸しているのが十万円、その他で四十万ぐらいだ、こういう計算になるようですね、パーセンテージでいえば。

 とにかく膨大なお金が、金額としては、国債が約八十九兆から九十兆、財務省に預託されているのが百五十六兆、このお金が、これは郵貯だけですよ、二百二十兆円のうち、これは信用付与もありますから、何と二百四十五兆円が、郵貯二百二十兆と言われているのが、二百四十五兆円が計算上公的部門に入っている。

 さあ、このお金をどうするんだ、効率的に使えないのか。私に言わせれば、もうこのお金のリスクを国家がとれない。経済構造までおかしくしているし、あるいは出先、財投の部門では腐敗を生んでいる。特殊法人、いろいろなところで腐敗を生んでいる、利権を生んでいる、族議員を生んでいる、やめようじゃないかというのであればいいんですよ。だけれども、それにはそれなりの制度設計と物事の順序があると思うんですよ。

 これを一挙に民間銀行にするといきがっておりますけれども、民間銀行がバブルを起こしてお手伝いをしておかしくなって、その反省が生きていないじゃないですか。五年間で百兆円も貸すところがなくなって、百二十二兆円も国債を買うような民間銀行ですよ。要するにオーバーローンが是正されていない。どうやってこんなお金を投資、運用するんですか、民間銀行になった郵貯バンクが。どういうイメージなんですか。私は全くわからない。

 ちなみに、小泉さん、中小企業金融公庫とか昔の開発銀行、今の政策投資銀行とか、大体融資規模はどのぐらいか御存じですか。そういうことをまず考えてから制度設計をしていただきたいんだけれども、御存じですか、どうですか。

 事ほどさように、今、資金循環とか銀行の問題というのは、どこに貸して、あるいはどこに投資をして、どういう運用の仕方をして利子を稼いでくるか、ここが一番難しいというのは我々が得た教訓じゃないですか。だから、間接金融から直接金融という話になったんでしょう。そしてなおかつ、中央集権的に中央が吸い上げて、とりわけそれを官僚的に配分するというこのことの不合理さを直そうという話だったんでしょう、もともと。そうですよね。

 だから、それにはそれなりのやり方をしないと、株式会社にしただけで何とかなるなんて、あなた、そんなおいしい話が転がっているんだったら、銀行の皆さん方も証券会社の皆さん方も苦労しませんがな。そうじゃないですか。何を考えているんですか。いや、政府保証がなくなるから動くと。では、勝手に動いて、今度は財務省の方はいいんですか。あなた、毎年毎年百三十兆も借換債だけであるような国の財政が、勝手に動く当てはあるんですか。

 そこで、私は先般から総務省に一生懸命聞いているんですよ、麻生総務大臣。一生懸命聞いているのは、定額貯金の口数がなぜ三億五千万もあるのか、それから、これを各満期別に一覧表に出してきてくれ、満期別一覧表を出してくれ、そして、保有国債の満期の一覧表も出してくれ。それがない限り、いつ定額貯金がどのぐらいおろされるのか、そして、それに伴って保有国債を満期まで持つとしても売れるのかということが一切わかっていないんですよ、今。

 これは、理財局がわかっているのか、総務省がわかっているのか、どこでわかっているのかわからないけれども、このお金の動きに一番関係するところをオープンにしていないんですよ。私が申し上げてから四カ月たつけれども、総務省は持ってこない。

 この資料をつくって提出してくれますか、総務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 今の質問は通告になかったので、全然聞いておりませんので、内容をよく調べて御答弁申し上げます。

仙谷委員 この郵政民営化問題も本格的に論議する基礎的なデータが国民には提供されていない、我々にも提供されていない。これは例の年金の問題とも同じでありますけれども、客観的な事実を我々がちゃんと直視して、それを前提に議論しない限り、絵にかいたもちのような話ばかりを論争してもしようがない、そのことだけを申し上げて、質問を終わります。

甘利委員長 この際、菅直人君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。

菅(直)委員 現在、私は、民主党の中で、国土交通ネクスト大臣という役職を仰せつかっておりまして、JR福知山線の事故についての対策本部長も務めております。きょうはこの問題を中心に、時間があれば外交問題についても総理の考え方をただしていきたいと思っております。

 まず冒頭に、百七人の方が亡くなられたあの大事故について、亡くなられた方の御冥福をお祈りし、御家族に対して心からのお悔やみを申し上げたいと思います。また、多くの方がけがをされ、今日も療養されております。そういう皆さんの一日も早い御回復を、これも心からお祈りをいたしたいと思います。

 私も、事故のあった翌日の昼、現地を訪れまして、あの二両目あるいは一両目、まさにマンションの壁に手が届くところで現場を拝見させていただきました。最初のうち一両目が見つからなかったという話を聞いて、そんなことがと思いましたが、現地を見てみて、そのことが決して大げさではない、一両目が完全に駐車場に半分ぐらいの長さが入り込んで、しかも、駐車場にあった昇降機のようなものを全部はね上げて、自動車のタイヤが横からはみ出している。車体そのものは、車が入る方向、よく撮影される方向の左側ですが、そこから見てもよくわからない。こんな状況でありまして、懸命な救出活動がまだ続いている段階でありました。

 そこで、今回のこの大きな事故、なぜそれをとめることができなかったのか、あるいはなぜこういう大きな事故が起きたのか、もう少し大きな観点から議論をしてみたいと思います。

 総理、小泉総理は、民でできることは民に任せるとよく言われますよね。そういう意味では、JR西というのは、小泉総理流に言えば優等生ですね。つまり、官営であった国鉄からJRに変わって、そして近隣の私鉄との競争に打ちかってシェアをどんどん伸ばしてきた、業績をどんどん伸ばしてきた。まさに、民でやれることを民でやって、官から民に移して大変な業績を上げた。小泉学校の優等生ですよね、小泉さんの話をそのままちゃんと受けとめれば。

 しかし、そのことが何を招いたか。つまりは、一分、場合によっては一秒のおくれさえ報告しろという効率優先、競争優先、そういうものが、安全性やあるいは人間性を無視し、軽視した、そういう大きな背景が私はこの事故を招く背景にあった。また、このことは、単に今回の事故にとどまらず、日本社会全体がまさに小泉流の、強いやつはどんどん競争に勝てばいい、弱いやつはどんどん負けて、それは仕方がないんだ、そういう社会に向かいつつある今日の一つの私は大きな警告として存在する、このように思います。

 総理に、まさに小泉学校の優等生、JR西の今回の事故についてどういう見解をお持ちか、しっかり総理御自身の考え方を述べていただきたい。

小泉内閣総理大臣 菅さんの話を聞いていますと、国営から民営化されたからこの事故が起こったんだというふうに受け取られますが、私は、民営化したから、効率性を優先してきたからこの事故が起こったんだ、そういう一面的にとらえるべき問題じゃないと思います。民間の会社も安全第一ですよ。その上で効率を考える。

 私は、今回の事故が国鉄の時代だったら起こらなかった、民営化になったから効率優先になったんだというような言い方というのは賛成できません。私は、民営化の会社でも安全第一、そういう中で、いかに競争を通じて国民によりよいサービスを提供するかと努力している会社はたくさんありますし、国営だったら安全、民営化だったら効率優先だから安全でないというふうにとられるような意見はいかがなものかと思います。

菅(直)委員 これが小泉流なんですよ。私は、国鉄だったら事故は起きなかったなんて言っていません。実際に大きな事故はかつて起きました。

 そうではなくて、JR西が小泉さんの言っている優等生じゃなかったですかということを言っているんです。そのことを何も言わないで、急に、何か国鉄だったら、いわゆる国有鉄道だったら事故は起きなかったのかなんという、私が言いもしないことを取り上げて反論するというのが、これが小泉流なんですよ。

 そこで、小泉総理……(小泉内閣総理大臣「委員長、ちょっと言わせてください。私が言っていないことを言っているから」と呼ぶ)ちょっと待ってください、私の発言ですから。これから話をしますから、よく聞いてください。

 では、小泉総理は、そういう安全第一という責務を果たしていたのかということが問題になるわけです。

 きょうは国交大臣ももちろん来られておりますが、国交省は、民営化したJRに対しても、あるいは私鉄に対しても、多くの点でいろいろな責任あるいは権限を持っています。このときの事故を起こした列車の平成十五年から今日までの時刻表の変化が、皆さんのお手元に、総理のお手元にもお渡しをいたしております。どういうことになったのか。

 まず、国交大臣にお聞きしますが、こういう列車のダイヤ変更ということについては、安全性を含めて、適切であるかどうか、これをチェックする責任が国交省にある、法律にはそう書いてあると思いますが、そういう認識でいいですか、国交大臣。

小泉内閣総理大臣 菅さんも、私が言っていないことを総理が言ったと批判されているけれども、私がいつJR西日本が優等生と言いましたか。(菅(直)委員「私が言ったんですよ」と呼ぶ)だから、私があたかも言ったように、総理がそういうことを言っていると。そんなこと、私は言っていませんよ。私が言っていないことをあたかも私が言ったかのようなことを言わないでいただきたいということです。

北側国務大臣 菅委員に御答弁申し上げます。

 ダイヤの変更については届け出が当然なされます。安全の確保をすることは何よりも大前提でございますので、そのダイヤの変更について、当然、届け出があったものについて安全面からのチェックをするのは国交省の役割であると考えております。

菅(直)委員 総理も何か耳が悪いのか、私が、JR西は、小泉さんが言う、民ができることは民でやるべきだということに対する優等生ではなかったんですかとお聞きしたら、急に、国鉄だったら事故が起きないのかと言われたから話がおかしくなるので、よく聞いておいてください。

 そこで、国交大臣が今言われたように、国交省にはそういうチェックをする責任があるんです。

 この資料を見てください、総理も。ちょっとよく見てください、そばにあるのを。

 平成十五年の十月まで、宝塚発のこの列車は、中山寺を通過していたんですよ。そして、宝塚から尼崎まで十六分で運行をしておりました。それが、平成十五年の十二月になって中山寺に停車するんですね。そして、その後小さな変更がありますが、平成十七年、つまり事故を起こしたときの時刻表を見ていただきますと、宝塚から尼崎まで十六分二十五秒となっております。

 どういうことかというと、駅が一つふえて、宝塚から川西池田駅まで行くのに、当初五分五十秒で行けたものが、三分十秒と停車駅十五秒とさらに三分十秒で六分三十五秒、平成十五年十二月にはかかっていた。つまり、六分三十五秒ということは、四十五秒延びたわけですね。その後も、平成十七年を見ていただいても、中山寺駅の十五秒を含めて所要時間が、三分十五秒、十五秒、三分十秒で六分三十五秒。つまりは、中山寺駅を通過よりも四十五秒川西池田駅に着く時間が延びるわけです。これは当然ですよね、一駅ふえたんだから。しかし、その延びた時間をその後で取り戻して、つまり、二十五秒所要時間が延びるだけに抑え込んでいる。

 そこでどうしたか。十五年の十月と十七年の三月の比較を見ますと、まず、川西池田から伊丹までの所要時間を十秒切り下げる、四分を三分五十秒にする。伊丹駅の停車時間を、二十秒というのもかなり短いんですが、何と十五秒に五秒短縮する。そして、伊丹から尼崎に五分三十秒かかったのを、ここも十秒短縮する。川西池田から尼崎に至るこの間を、何とこの短い間で、十秒、十秒、五秒、二十五秒短縮をした、そういう新しいダイヤになっているわけです。そこが、あの直線から半径三百メートルという急カーブに至るところです。

 私は、このダイヤを見て、ちょっときついんじゃないのと。その下の方を見てください。出発時間が違う七時四十八分とか八時四分の時刻表、同じようなルートを通っている時刻表の変化を見ますと、まだ停車時間が四十秒とか五十秒とか、短くなっても三十五秒とかあって、所要時間も十七分二十秒ぐらい。あの事故を起こしたものよりは約一分長い時間で宝塚から尼崎まで行くダイヤになっているわけです。

 これだけ厳しいダイヤを組んで、どうですか、これが国交省が安全第一で考えていたんですか。総理が安全第一で考えていた、それがこういうものを見逃すことになぜつながるんですか。答えてください。

北側国務大臣 首都圏においても、また関西圏におきましても、いわゆる過密のダイヤというのは、もっとこれ以上の過密ダイヤというのはございます。

 大事なことは、ほかの面も含めまして、安全上の基準がすべて守られているかどうか。この件に関しましては、制限速度を守るというのは当然の話でございます。それが守られていたならば今回のような事故が起こらなかったわけでございまして、私は、そこにむしろ大きな問題があると考えております。

菅(直)委員 だんだん国交大臣も総理大臣に似てきましたね。

 私が聞いているのは、まずダイヤのことを聞いているんです。当たり前です、制限速度を守らなきゃいけないなんというのは。しかし、その前提として、ダイヤについてチェックをする責任があるんじゃないですか。日々の運転士がどれだけスピードを出していたかを国交大臣に見てくれとは言っていません。そんなこと、できるわけないじゃないですか。ダイヤはちゃんと届け出があってチェックすることになっているから、その責任があるところを聞いていたら、そのことは答えないで、スピードの問題です、何とかの問題ですと。全く、これが小泉政権のもとの安全第一なんですよ。

 そこで、具体的にさらに詰めていきます。

 結局、あの事故は、伊丹から尼崎まで五分二十秒、秒数にすると三百二十秒で行く予定になっていたのに、前の駅のオーバーランで一分三十秒、九十秒おくれたわけですよ。秒数でいいますと、本来三百二十秒かけて伊丹から尼崎まで行くところが、九十秒おくれちゃったものだから、二百三十秒で行かなければいけない。つまり、本来なら約三百秒で行くところが二百秒で行かなきゃいけない、三分の二の時間で行かなきゃいけない。

 当時、JR西は定時運行確保というのをやっていましたね。きょうはJR西にも来てもらっています。社長にお聞きします。定時運行確保で、何秒おくれまで報告義務がありましたか。

垣内参考人 JR西日本の社長の垣内でございます。

 ちょっと、お答えさせていただく前に、今回私どもが起こしました脱線事故によりまして、百七名の方がお亡くなりになられました。また、五百名を超えるお客様が負傷されました。亡くなられた方々の御無念や、大切な御家族を失われた御遺族の方々の御心情をお察し申し上げ、私としても胸の張り裂ける思いでございまして、まさに痛恨のきわみでございます。

 ここに、改めまして、お亡くなりになられました皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様に深くおわび申し上げます。同時に、負傷された皆様と御家族には心からのお見舞いとおわびを申し上げますとともに、一日も早い御回復をお祈り申し上げます。本当に大変申しわけございませんでした。

 ただいまの先生の御質問でございますけれども、お客様の利便ということから、定時運転にするように、慫慂といいますか、そういうふうなことはしておりますけれども、列車がおくれることについてはいろいろな事情があるわけで……(菅(直)委員「報告義務は何秒までですか」と呼ぶ)そういう報告義務、何秒までというものはございません。

菅(直)委員 おかしいじゃないですか。国交委員会で言ったことと違うんですか。定時運転確保ウイークで、一秒単位で遅延報告義務がある。私、国交の委員会、全部見ていますよ。もう一回答えてください。

垣内参考人 お答えをいたします。

 一秒単位での報告といいますのは、これは年に何回かでございますけれども、ダイヤ改正を行った後等、特に新入社員だとか新しい学生が多くなったようなときには、列車に乗りなれていないこともありまして、そういったときには、一秒単位といいますか、いろいろな、ダイヤ上、実際にそのとおり動いているかどうかにつきまして調べておるわけでございますが、それらは、次のダイヤ改正においてそれらの資料をもとに改善するためにしているものでございまして、日常的におくれをきちっと報告するというふうなことにしておりません。(菅(直)委員「事故のとき何秒単位だったんですか」と呼ぶ)

甘利委員長 指名してから質問してください。

垣内参考人 事故のときにはそういう報告をいたしておりません。(菅(直)委員「だから、何秒単位で報告義務」と呼ぶ)

甘利委員長 指名して。

 菅直人君。

菅(直)委員 私は国交委員会に出ていますから、あるいは全部テレビで見ていますから。そのときは特別な定時運行確保ウイークだったんじゃないですか。そのとき一秒単位だったというふうに答えていませんか。議事録を見ればわかりますよ。

垣内参考人 先ほど申し上げましたように、実態とダイヤがうまく合っているかどうかを調べて次のダイヤ改正に生かすための調査ということでございますから、例えば、四月でいいますと新学期の開始から一週間というふうなことでございますし、五月についてはゴールデンウイーク明けから一週間ということでございますから、四月二十五日はその報告義務がございません。

 以上であります。

菅(直)委員 少なくとも国交委員会での答弁とちょっと食い違っていますが、私が聞いているのは、定時運行確保ウイークで、一秒単位で報告義務があったと。議事録を精査してください。これは理事の方にもお願いしておきます。

 そこで、せっかくきょうは事故調にもおいでいただいています。事故調査委員会は、あの信楽鉄道の事故から鉄道についても範囲を広げたわけですね。

 事故の兆候という言葉があります。事故の兆候があったときには、それで防ごうということです。どこまでの権限があるかによりますけれども、私は、事故の兆候あるいは危ないなという指摘はいろいろなところであったと思いますが、こういう場合、事故調はそれに対応できるんですか、あるいはしているんですか。それとも、国交省に基本的には任せているんですか。お聞かせください。

佐藤参考人 お答えいたします。

 航空・鉄道事故調査委員会は、法令に基づきまして、事故や重大な事故の兆候、これは重大インシデントというふうに申しておりますが、この調査を行っております。そうしまして、調査報告書を作成して、これを公表いたしております。

 また、事故及び重大な事故の兆候の調査過程におきまして調査、分析されて明らかになりました事故及び事故の兆候に結びつくような関与要因につきましても、事故及び事故の兆候の再発を防止するという点から、調査報告書に記載しまして、これを公表しております。

菅(直)委員 少なくともこの事故については、そういう兆候をきちっと把握して、とめることができなかったわけです。

 そこで、国交大臣、国交省として、大臣が就任する前かもしれませんが、こういった問題が国会で指摘をされたことがあったんじゃないですか。このJR西日本では、理由は別ですが、少しのおくれでいわゆる日勤教育というのを受けた運転士が自殺したという事件がありまして、その事件をめぐって国会でもそのことが取り上げられて、マニュアルはこうなっていてもあえて列車をとめるとか、そういうことが大事なんじゃないかと思っているんですよ、それが一番安全なんです。マニュアルがこうなっているから、時間をおくらせたら大変なことになるとか、そういうことが余り強調されると本当に大きな事故につながりますよということを最後に言って、またこういうことが二度と再び起こらないようにぜひ御指導をお願いしたいと思います、こういう議論があったんじゃないですか。役所として理解していますか。

北側国務大臣 鉄道輸送において、当たり前の話でございますが、安全に輸送するというのは大前提のことでございます。ですから、何よりも、例えば速度の問題でいいましたら、決められた速度をきちんと守るということ、たとえそれがおくれていようとも、制限速度をきちんと守っていくということが優先であることは当然であると思います。

菅(直)委員 どうも、本当にみんな小泉症候群でして、こういう議論があったことを役所としてちゃんと理解しているのかと聞いたんですよ。

 もう一回聞きます。あらかじめ聞いたんですよ、私は国交省のお役人に。国会での議論があったんじゃないですかと。知らないんですか。

北側国務大臣 そういう事案があったことは聞いております。

菅(直)委員 平成十三年十一月八日、参議院の国交委員会で、北側大臣と同じ政党の弘友和夫議員から、この件についてしっかりとした質問が出ているじゃないですか、こういうことが二度と起こらないように指導をお願いいたしたいと思いますと。どう対応されたんですか。

梅田政府参考人 先生の御指摘の議論は、西宮の、これは現在訴訟になっておりますけれども、日勤教育によって、それが原因で自殺をしたという運転士の件だろうと思います。

 この件につきましては、御指摘のような国会での御議論がございました。我々といたしましては、その後裁判になったことでございますので、今件については、その裁判の推移を見ていたということでございます。

菅(直)委員 結局、何もしなかったということじゃないですか。何もしていないということじゃないですか。

 もうちょっと前のところを読んでみましょうか。今の局長の説明で、要するに逆転、というのは、これは先頭車が入れかえで、あるところに着いて、ターミナルに着いて戻っていくわけですが、要するに逆転の何か機械を動かしたらそれでもとに戻るような程度のものを、よくわからないで、呼んで点検したのでおくれたんだ、本人の責任だ、こう会社の方が言われているということを今言われたんだと思うんですよ。私は、この考え方を変えないと今後大きなミスに、事故につながりますよと言っているんですよと。

 つまりは、事柄はいろいろです。しかし、その場合には、ある駅に着いた。二十分間時間があったんですが、今度は先頭車両が逆に、一番最後の後方車両が先頭車両になってそこに行った。そうしたら、後ろの車掌室のライトがまだついている。何か逆転の装置をやればよかったんだけれども、そこに気がつかないか、確かに知識が不十分で、歩いて、おりてまた後方車両まで行った。いろいろとだれかに聞いて、やっとわかって戻ったら、出発が五十秒、一分おくれて、十三日間日勤教育をやらされた。そして、その翌日に命をみずから絶った。

 この事件に対して弘友さんが、それは、日勤教育というのが安全性のためにやられている、その建前は大いに結構です。ベテランの人について教わるとか、大いに結構です。しかし、草むしりをやらされたりいろいろなことをやらされてこういうことになった。

 裁判は裁判です。しかし、この中で弘友さんが言っているのは、そういう五十秒のことが起きたときに、おまえのやり方が悪かったから五十秒おくれたと言うのか。いや、しっかり後ろまで見ていって、それは、本当なら、ベテランならもっと簡単にできたかもしれないけれども、そこまで丁寧にやったことについては、少なくともそのことをもって、懲罰的なと言われている日勤教育をやらせるというのはちょっとおかしいんじゃないですかということがここに含まれているわけですよ。

 それを、今局長は何ですか。裁判だから、裁判の様子を見ていると。結局、この弘友さんの質問の最後のところに指導をちゃんとお願いしますよと言っているけれども、全く無視しているじゃないですか。事故につながりますよと言っているじゃないですか。北側さんの同僚じゃないですか。ちゃんと答えてください。

北側国務大臣 言われております日勤教育の問題につきましては、昨年九月にJRの関係者の方から、そうした懲罰的な再教育としての日勤教育、具体的な事実関係の指摘がございまして、それは問題ではないかという指摘がございました。

 それを受けまして、JR西日本に対し事実関係の調査を連絡し、昨年の十月に、運転取り扱いに必要な教育とは別に職場の環境整備の一環として実施しているという回答をJR西日本がしてきましたけれども、その際、再教育として、今おっしゃったような草むしりなどの懲罰的なものは含めるべきではない、そのような指導もしているところでございます。

菅(直)委員 とにかくいろいろな背景があるわけですが、少なくとも安全第一というものが貫かれていたとは、今のどの答弁を聞いても、どうです、聞かれている皆さん、どこにそのかけらがあるんですか。悪いのは本人だから裁判だとか、草むしりはやめさせたとか、当たり前の話じゃないですか、そんなことは。草むしりをやめさせることが安全第一なんですか。安全第一と言うなら、例えばちゃんとベテランの運転士が同乗して、君はここはこういうふうに運転したらいいよとか、そういうことならわかりますよ。

 そこで、JR西の投資についてちょっとお聞きしたい。

 まず、ことしの利益と安全に対して、特にATS―Pというんですか、それに対する投資額。投資額は、数年前はそれでも何十億かあったのが最近減っていると聞いています。その変化も含めて、利益を上げて民間企業としては大変優秀だけれども、安全に向かっての投資が極めて細っていたのではないかという指摘がありますが、数字も含めて簡単に説明してください。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 私ども、鉄道事業をやっているわけでございますけれども、安全が第一であるというふうなことでこれまでも経営をしてまいりました。それで、安全投資につきましては、私ども、全体、およそ九百億から一千億ぐらいの投資をしておりますが、そのうちの約半分、五百億前後が安全投資でございまして、最も重要視している投資だ、こういうふうなことでございます。

 御指摘の点につきましてはATS―Pの整備のことなのかと思いますけれども、これらにつきましても、安全輸送を確保する上で大変重要ということで、特に京阪神地区におきまして、線区における列車本数とか列車種別利用人員を総合的に勘案いたしまして、順次進めてきておるところでございます。

 以上でございます。

菅(直)委員 これに関して、国交省、大臣、JRが民営化するときに、基本的には民間と同じ基準になるべきところだと思いますが、きょうの新聞にもありまして、私もいろいろな資料を見ておりますと、ATS―PあるいはATSの速度照査型というのが新しい形で、旧来型は単に赤信号に突入したらブレーキがかかる。この速度照査型というのは、本来のスピードより高過ぎるとそれを落としていくという機能がついている。基本的にこれについては、ある範囲は設置しなければいけないという基準になっていたのに、JRが民営化するときには、一遍にやらせるのはなかなか大変だからといって、それにしてもいいけれどもそれでなくてもいいということになって、私鉄なんかに比べておくれてきたのではないか、こういう指摘があります。

 つまりは、国交省がそういう緩い基準しかJRに課していなかったために、業績第一、たしかことしは八百億近い利益ですよね、社長、そうでしょう。そういう利益が上がりながら、この分野については二億円とか三億円とかしか投資をしなかった。それが可能になったのは、国交省のそういう、つまりは、安全性に対して私鉄に比べて緩い姿勢にあったんじゃないですか。どうですか。

北側国務大臣 詳細は鉄道局長の方から答弁させますが、そのようなことはないと聞いております。

梅田政府参考人 まず一点、誤解をしていただきたくないんですが、速度照査型のATSというのは、ついていないのとついているのはどう違うのかということでございますが、ついているものは、信号機の手前で、急ブレーキではなくて、徐々に速度が落ちていってとまるということでございます。ついていないのは急にとまる、こういう点でございます。

 そこで、今の話でございますが、昭和三十七年に三河島事故が起こりました。そこで、国鉄は、昭和四十一年に全線でATSをつけました。これは、先ほどおっしゃいましたように速度照査型ではございません。ございませんけれども、全部つけました。その際に、ここ一年ぐらいの間に、四十二年でございますが、民鉄で三件立て続けに、信号の見直しによって事故が起こりました。そこで、大手民鉄につけるように指導いたしまして、昭和六十二年の国鉄改革の際にATSの設置を義務づけました。

 最近、二年ぐらい前になってようやくATS、最低限のATSでございますが、地方のローカル線を含めまして、民鉄は設置されたというのが現状でございます。

菅(直)委員 答えていないじゃないですか。私が言ったのは、旧型でも構わない、民間よりも新型でなくてもいいという配慮が今日まで続いていたんじゃないか、これは幾つかの指摘があるんですよ。きょうの新聞だけじゃありません。そこのイエスかノーかを聞いているんですよ。

梅田政府参考人 国鉄もJRも、それから民鉄も基準は同じでございます。信号機の赤信号のところで、これは鉄道の場合、閉塞区間というのがございますから、前に列車があったら入れません。その手前に信号機がついています。その信号機のところで列車をとめるという役割でございまして、この点においては、国鉄も民鉄も全く同じ基準でございます。

菅(直)委員 これも国交委員会でもさらにやりますけれども、少なくとも、速度照査型というものの義務づけが緩かったんではないかという指摘があることは事実でありまして、それについては、今の答弁で果たして正確なのかどうか、さらに委員会でやらせていただきたいと思っています。

 そこで、せっかく尾辻さんにも来ていただいていますが、尾辻さんは、何か厚生省として答えられていますよね。労働安全衛生法に基づいて、日勤教育などを含めて、どういう形で安全性が維持されるのか調査するというようなことを記者会見等で言われていますが、どういう結果になったでしょうか。

尾辻国務大臣 厚生労働省といたしましては、事故発生当日、直ちに所轄の兵庫労働局とそれから尼崎労働基準監督署において職員を派遣いたしまして、事故対策本部を設置いたしました。そして、労働基準法でありますとか労働安全衛生法上の問題がなかったかという観点から調査を行っておるところでございます。私も徹底して調査しろという指示をいたしておるところでございます。

 今、調査中でございます。

菅(直)委員 冒頭に申し上げましたように、小泉総理は、官から民へ、効率、競争と。確かに、そういうことが重要なところもあります。しかし、特にこういう交通機関の場合には、果たしてそういう考え方で通るのか、あるいは社会全体がそれで通るのか。

 私も、飛行機で飛んでいって、車で三十分で行って、十五分しゃべって飛んで帰るような行動を、特に代表時代は忙しかったですから、やっておりました。その後、四国を歩いてみて、歩いているときの時間の流れというのは非常にゆっくりしています。そんなに、何時何分にどこに着くなんということを考えてみたって始まらないんですね。ですから、自分の足に聞きながら、昼飯はどのあたりでとろうかな、夕方の暮れになる前には予定の宿に着きたいな、大体そんな時間の流れであります。そのことが私にとっては、少なくとも何か人間性を回復するような一つの、そういう気持ちがいたしました。

 もちろん、通勤電車に長年私も揺られてきた人間ですから、一分一秒のその気持ちがわからないわけじゃありません。しかし、そういう大きな、今、何でもかんでも効率だとか競争だとか、強いやつが強ければいいんだという社会に小泉さんはアクセルを踏んでいるけれども、そこの大きなある意味での見直しをしなければ、何のための効率なのか、何のための競争なのか。つまりは、人間のための効率であり、人間のための競争が、実は、企業の利益なり、そういうものが優先する社会になってしまう、それは私は本末転倒だと思います。

 そこで、この問題についてはしっかりと総理にも、決して他人事じゃありません、特に国交大臣は他人事じゃありません、たくさんの権限を持っているわけですから。先ほど来指摘したことについてしっかり取り組んでいただきたい、そう申し上げて、次の問題に移ります。

 総理、私の目から見ると、今、小泉外交は四面楚歌の状況にあると思います。小泉総理がことしの所信表明で東アジア共同体ということを言われました。私も一月の予算委員会で、そのことについてある意味で共感の気持ちを含めながら総理の考え方をただしましたが、余り明確なイメージは語られませんでした。しかし、この東アジア共同体に対して、総理の最も頼りにしているアメリカの前国務副長官アーミテージ氏は、東アジア共同体には反対だ、アジアからアメリカを締め出すのか、そういう姿勢でこの問題に警戒心を持たれております。

 もう一つ、小泉総理が最高の日米関係として誇られているブッシュ大統領との間で、先日、電話までかかりましたよね。BSEの問題で、おまえ、約束したのに何なんだ、いつになったらやるんだと。私は約束は間違いだったと思いますが、ブッシュ大統領の選挙の前にブッシュ大統領の地元から、アメリカにとって牛というのは日本の米に当たるわけですから、輸入を再開してくれと。その首脳会談があって、総理がブッシュ大統領に、うん、わかった、わかったと言われたんでしょう、合意となっていますよ。いよいよ、その効果もあって、ブッシュ大統領が二期目の当選をした。いつやってくれるんだ、こう言われているんじゃないですか。

 ライス長官が来たときに、ライスとビーフなんという本当におじん臭い、そういうしゃれを言われておりましたが、大丈夫なんですか、これで日米関係は。

 東アジア共同体を所信表明で言ったら、知日派の代表だと言われている人が反対だと言われ、ブッシュ大統領から、おまえ、約束守れよと。そんなことは大したことないで済むんですか。

 アジアについては言うまでもありません。

 一九九五年、自社さ政権でした。私も、新党さきがけの政調会長として、国会決議とあの村山談話にかかわりを持ちました。当時の自民党政調会長は加藤紘一さんです。社会党は関山さんです。そして、あの村山談話によって、私も、戦後のこの問題は、歴史問題はこれでほぼ決着がついたな。その後来日される韓国や中国の人も、大体、もうそれ以上のことを要求するという姿勢はありませんでした。

 それが、なぜここに来て、またいろいろなことが起きるんでしょう。もちろんそれぞれの国の事情もあるでしょうが、それに対してとられた総理のやり方は何ですか。バンドン会議で、改めて、村山談話にほとんどなぞらえるような事実上の謝罪を国際会議の場でわざわざもう一回みずからしたんじゃないですか。そんなことをするぐらいなら、もともと、一九九五年の村山談話に沿った行動をとっていればいいんですよ。

 小泉総理はいろいろな答弁をされますが、あなたの行動が、単なる衆議院議員小泉純一郎だったらそれほどじゃないでしょう。野党の党首だったら大したことないでしょう。国の代表として、総理大臣としての行動だから、単なる個人の信条の問題を超えたことだということは当たり前のことじゃないですか。だから、十年前の村山談話も、当時の総理大臣の談話だから、一政治家の談話ではない、総理大臣の談話として、自社さ政権、自民党も含めて、大事にされているんじゃないですか。

 それなのに、その談話と全然違うことをやっているんじゃないですかと指摘されて、小泉総理はきょうの仙谷政調会長の質問に対しても全く答えていない。自分自身がやったことについてそういう悪影響が出ているんじゃないですかというのに、すぐ相手のことにしてしまう。相手の要素が、それは六割あるかもしれない、七割あるかもしれない、いや、四割かもしれない。しかし、あなたのやったことが、せっかく傷がいえて、かさぶたができて、もうそろそろその問題では血が流れたり不愉快な目をしないで済むようになったのに、みずから引っぱがしたんじゃないですか。

 あなたの総裁選挙のときの公約じゃないですか。国民のための公約なんですか。総裁選挙に通るためには、当時の遺族会会長の橋本龍太郎さんに勝つためには、私は、総理がそれまでそんなに靖国に何回も行かれたということを聞いておりません。そういう人が、急に総裁選挙になってそのことを大きく取り上げる。九五年に決着したものをわざわざ大きく取り上げて、まさに成功して、今総裁・総理を四年間も続けられている。アメリカとの関係もよくなったと。全然よくなりません。中国の関係も、まともに北京や東京を相互に訪問したことがありますか。国際会議の席で何回か会ったというだけじゃないですか。こんなことは異常ですよ。

 総理、あなたの行動がこういう悪影響を及ぼしている。アメリカとの関係もいよいよ行き詰まってきている。四面楚歌じゃないですか。どのようにお感じになっていますか。

小泉内閣総理大臣 菅さんは菅さんなりの解釈でしょうが、外交は四面楚歌になっているとは思っておりませんし、行き詰まりなんというのは全然思っていません。菅さん特有の悲観的見方は悲観的見方で結構でありますが、日本外交は順調に進んでおりまして、世界各国から、これまで戦後六十年間、日本の実績、日本の考え方に各国から高い評価をいただいております。

 それは、友好国であるアメリカであろうが、意見の違いもあるでしょう。問題におきましては対立する場合もあるでしょう。しかし、一部の対立や意見の相違があるからといって日米間全体がおかしくなるとも思っておりません。それは、日韓、日中しかりであります。

 よく世界を見渡してみて、冷静に客観的に考えれば、日本は各国から信頼を受け、多くの国が日本みたいな国になりたいと言われているような国まで発展してきた。それは、この六十年間、反省を踏まえて多くの日本国民が努力してきたたまものだと思っておりますし、余り自虐的に、日本が悪い、日本政府が悪い、悲観的な見方はなさらない方がいいと思います。

菅(直)委員 小泉総理、私はこの日本が大好きですし、日本はすばらしい国だと思っていますよ。小泉総理自身がみずからやっていることについて語らないというのが、総理大臣としてまさに自分の責任を放棄しているんじゃないですか。何も私は、日本の国がおかしなことをやったとは言っていない。小泉総理がおかしなことをやったと言っているんですよ。小泉総理がおかしいことをやったと言ったら、これが自虐史観なんですか。

 小泉総理、あなたはこの間のバンドン会議で、村山談話に沿った、いわば内容的には謝罪のあいさつをされましたね。なぜされたんですか。自虐的ということをもし言われるんなら、あの中身はどういうことなんですか。総理自身がしたんじゃないですか、せざるを得なくなって。翌日の日中会談ができるかどうかというぎりぎりの場面でせざるを得なくなったんじゃないですか。見通しが間違ったんじゃないですか。総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 これも全く菅さん独自の特別な考え方であって、違います。

 菅さんもよく言われました村山談話、これは日本内閣として、政権がかわっても同じ認識を持っているわけであります。アジア・アフリカ会議、いわゆるバンドン会議五十周年の機会に、日本の総理として、過去五十年の歩みを振り返り、現状をとらえて、将来どういう考え方を持って日本がアジア・アフリカ諸国に対して、あるいは国際社会の中で日本は生きていくかということを簡潔に述べた内容であります。これは、私は各国から高い評価を受けていると思っております。

 日本がこの五十年間、多くの国民の努力がこれは大きな原因でありますが、今日まで発展してきたのは、日本国民だけの努力のみならず、国際社会からも支援と協力を受けてきて日本の発展がある。今後、ここまで発展してきた日本としても、アジア・アフリカ諸国に今の日本にふさわしい支援、協力をしていき、そしてアジア・アフリカのみならず国際社会におきましても日本としての責任を果たしていこうということを述べたわけであります。

 私は、自分の考え方、日本の政府の考え方を述べてきたわけであって、私の言動が悪いから国際関係が悪くなったとは思っておりません。それは菅さんの考え方と全く違います。

菅(直)委員 私と小泉総理の意見が違うのは当たり前でして、小泉総理がみずからやったことを全部人のせいにしたり、そういう形をとる限り、それは当たり前なんですよ。だから、こういう質疑の中で具体的に聞いているわけじゃないですか。

 時間がもう間近ですので、最後に、私は昨年の連休にバチカンに出かけまして、多くの枢機卿とお話をいたしました。今回、ヨハネ・パウロ二世が亡くなられたときに、東京のバチカン大使館にも代表の名代のような形で弔問に訪れました。世界から、イギリスでいえばブレア首相とチャールズ皇太子、アメリカ大統領はブッシュ・シニアも含めて、たくさんの方が出かけられました。日本では川口総理補佐官が出られました。

 今月号の文芸春秋を読んでおりましたら、イタリアに在住されて、私も何度かお会いしている塩野七生さんが、最悪の選択だと明確に書いておられます。本来、特別補佐官なら、私じゃ不十分だから、できれば総理あるいは皇室のどなたかに出ていただくことが適切ではないかとアドバイスすべき人が、総理からの指示なのか外務大臣からの指示なのかわかりませんが、出ていって、あの葬儀が終わったわけです。

 私は、本当に、バチカンというものが持つ意味、あるいは特にヨハネ・パウロ二世の存在というものが、冷戦崩壊のポーランドにおいて、あるいは、総理とは意見が違うかもしれませんけれども、イラクやそういうアメリカの単独行動に対するある種の歯どめ的な発言なり、さらに言えば、世界が間違えば宗教的対立による戦争に進みかねない中で、ヨハネ・パウロ二世は、イラクを含め、どんな戦争も宗教によってそれを正当化することはできない、こういう発言をされたヨハネ・パウロ二世について、最大の敬意を持って見てきたわけであります。

 総理がこの葬儀に川口さんを派遣されたのは、それで十分だという判断だったのか、それとも、いや、まずかったという判断なのか、その見解をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 バチカン、法王の逝去に関して、葬儀にだれを派遣するかというのはその国によって判断すべきものであり、私は、川口補佐官が適切だったと思っております。

菅(直)委員 もう時間が終わりましたのでこれぐらいにしますが、まさに総理が適切だと思っていることが適切でないから日本が外交的に孤立している、総理は、今や何も見えない裸の王様だということを申し上げて、私の質問を終わります。

甘利委員長 この際、田中慶秋君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中慶秋君。

田中(慶)委員 民主党の田中慶秋です。

 今、仙谷政調会長初め菅議員からそれぞれの議論がありましたが、私は、外交、安全保障というものは、与党、野党の別なく、国家として、国家国民のための政治を前提として行うべきものであって、そういう中で考えてまいりますと、すなわち、国際的に日本がいかに尊敬される国になるべきか、とりわけこの日本を取り巻くアジア、あるいはまたアメリカを初めとする同盟国でありますそれぞれの国との関係等について、今改めて、日本の国家戦略なり、あるいはまた国家目標としての取り組み方を総理に具体的にお示しいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、日本の外交、国家戦略、基本方針、これにつきましてはかねがね申し上げているとおりでございまして、それは、六十年前の戦争を反省して、二度と戦争を起こしてはならない。そのためには、国際社会から孤立してはならないし、敵対国であったアメリカとも友好的関係を結び、今や同盟国として、最も信頼する国として、安全保障条約も締結している、なおかつ、各国と協力し、国際社会の中で生きていかなきゃならない。いわゆる国際協力、国際協調、これが重要であるということで、戦後一貫して、日本は外交方針として、日米同盟と国際協調、これを重要な基本方針としてやってまいりました。

 これは今後も変えてはならない日本の国家戦略として、外交方針として貴重なものだと思っておりますし、現在でも、そういう観点から、国連改革あるいは東アジア共同体、隣国の中国、韓国との関係、ASEANとの関係、ASEANプラス日中韓定期的な協議、あるいはAPECの会合とかASEMの会合とか、国際社会の場で、日本としての責任を果たすべく積極的に参加し、世界の平和と安定の中に日本の発展があるんだという観点から、アフリカにおきましても、あるいは中東和平に対しましても、日本と最も遠い距離にありますが、日本として何ができるかということを考えながら、日本としての外交を進めております。

田中(慶)委員 戦後六十年たち、改めて過去を振り返ったときに、今まさしく日本の内政、外交ともに、ある面では行き詰まり状態、このように言われているわけであります。

 特に、日米関係等についても、総理の盟友とも言われますブッシュ大統領が二期目の当選をされて現在に至っておりますけれども、そういう中で、今まで親日派あるいはまた国際協調派と言われましたパウエル国務長官や、親日派のアーミテージ国務副長官等が退任され、また、強硬派と言われるゼーリック前通商代表部、あるいはまたライス国務長官等は、日米関係等について、先ほどもお話がありましたように、日本の牛肉等の問題等についても日米関係に対し悪影響をもたらす、もたらしつつある、このような発言をされました。

 テロ対策やイラク問題で日米同盟国として協力をし、そして今牛肉の問題一つでこれだけの厳しい発言を浴びせられるということ自体は、私は日米関係に陰りがあるんではないか。特に日本の食の安全ということを含めて、BSEの問題は、日本ではそれなりに、全頭検査を初めとして取り組んできた。そのことを明確に相手に伝えているならばこのような発言はなかったと私は思っておりますけれども、日米関係の陰りがこういうところにあらわれているんではないか、このことも言われているわけであります。

 特に、先ほどもお話がありました国連の常任理事国入りの問題等について、ブッシュ大統領がアジアの環境を見、あるいは日本の状態を見ながら、今、時期尚早であるべきような発言もされた、このような形も承っております。

 こういうことを含めて、アメリカの日本戦略といいますか、アジア戦略における日本の立場というものが逆に後退しつつあるのではないか、このことも心配をされ報道されている、こういうこともあるわけでありますけれども、総理あるいは外務大臣はこのことについてどう考えられているのか、お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 日米関係、私は、一言で言えば、非常に強固なものであることについてブッシュ第二期政権になっても何ら変わりはない、こう思っております。

 もとより国と国との関係でございますから、従前から日米間にだっていろいろな問題が起きてまいりました。今回、たまたまそれがBSE、こういった問題になって出てきておりますけれども、だからといって、この日米のしっかりとした関係、世界の中の日米同盟という実体にはいささかの影響も与えていない、こう私どもは考えております。

 BSEの問題、それは確かに、今、日本の国内で慎重な手続を踏み、そして、今度は輸入牛肉について食品安全委員会で取り扱われる。このことについても一貫して小泉総理は、ブッシュ大統領に対して、日本の食の安全というものの基準で考えていきますということで、いわゆる輸入再開の時期をいつにするかということについては一切お触れになっておりません。そのことについてはブッシュ大統領も理解をしておられると私は思っております。

 もちろん、彼らの国内政治の必要上、それはいろいろな要求が出ます。それはそれで私どもも受けとめなければならないと思いますが、基本的なBSEにかかわる問題について日米間の理解の違いはない、こう考えているところでございます。

 また、国連の安全保障委員会の常任理事国入りの問題、これについて、ブッシュ政権が第二期になって人がかわり、なかなかスタンスがはっきり見えてこなかったという部分は確かにあったかと思います。

 ただ、今や体制も固まり、先般、それまでどちらともとれるような発言があったのを、改めて四月に入って国連総会の場で、アメリカは、日本の常任理事国入りを支持する、それから一定の期限を限って答えを出す、もちろんそれ以前に徹底した議論は必要だけれども、いつまでもコンセンサスということで決定を後ろ延ばしにすることは適切ではない、こういうような、いわば日本の主張に沿った形での発言も明確にしておられるところであります。

 ただ、依然として、必ずしもはっきりしないのは、これはアメリカのみならず、現在の五つの常任理事国そうでありますけれども、その五つの常任理事国のいわば独占的な地位というものが、幾つかの常任理事国が入ることによって、いわば立場が弱められるということについて、本当にそれを歓迎しているのかどうなのかということは率直に言ってなかなか見きわめがたいところもありますから、私どもとしては、アメリカのみならず中国もロシアも、すべての常任理事国に対して、より一層の理解を深める努力というのを一生懸命今やっているということであります。

 結論として申し上げれば、私は、日米関係にいささかの揺るぎもない状態である、かように考えております。

田中(慶)委員 そうであるならば、先般の、ライス国務長官が外務大臣、あなたとの話の中で、この牛肉問題等について、日米関係に対し悪影響をもたらしつつあるということを明言されたと思いますけれども、その真意はどこにあるんですか。

町村国務大臣 細かい外相会談のやりとりの一言一句、私も正確に覚えておりませんし、またそれを引用すべきでもないかもしれませんが、米国政府の希望として、できるだけ早くこの問題を解決してもらいたい、それは彼らの希望としておっしゃることは当然だろうと思っております。

 私どもも、何もいたずらに時間をかけて、ひたすら引き延ばして、何か日本の該当する業界を保護しようとか、そういう立場で物を言っているわけではございません。あくまでも食の安全性の確保という観点から、今、食品安全委員会が慎重な手続で議論をしているということを彼らに説明し、その日本の手続がこうやって行われているということについて、アメリカ政府も理解をしている。ただ、願わくは早く答えを出してくださいねと、彼らの希望として言うことは、それは別にある意味では当然かもしれませんし、我々も願わくはできるだけ早く正しい答えが出ることを期待しているということでございます。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

田中(慶)委員 いずれにしても、こういう一連のことを含めながら、日米関係の基軸というものが崩れつつあるのではないかと心配する向きもあるわけでありますから、尊敬され信頼される日米関係ということを考えたときに、やはりそのことを明確に表現しておく必要があるだろうと思います。

 そこで、外務大臣及び防衛庁長官もきょうお見えいただいておりますけれども、日本は基地県として、大変大きいわけでありますが、沖縄に次ぐ基地県、神奈川のことも考えても、総理の地元であります横須賀、これは海軍の司令部がそこにあるわけでありますけれども、そういう中で基地の再編が問われているわけであります。そういう基地の再編の中で、今、日米ガイドライン等々を含めてその協議が行われつつ、あるいは行われているんだろうと思います。

 しかし、私たちはそのことがオープンになっておりませんからわかりません。特に、陸軍第一司令部、ワシントンからキャンプ座間に移転をするというような報道が今よくなされているわけであります。こういうことを含めながら、やはりこの問題等について、決まったから地元に説明するとか、決まったからこうであるということよりは、むしろ、全体的な日米関係の信頼があるならば、そういうことを含めて明確に国民に知らせるべきであろうし、あるいはまたそのことがこれからの全体的な協力関係をより構築することであろうと思います。

 特に、地元の地方自治体等については、この首長であります座間初め相模原等、そして神奈川県知事も、外務大臣にこの問題について明確な答えを求めていると思いますし、そしてその時期も、なおかつ、それぞれ地方の議会等についても、署名活動をやったり、いろいろなことの地元の動きがあるわけであります。信頼関係があって、そしてお互いに共通の認識を持っているならば、そういうことも明確に伝え、なおかつそれぞれの同盟国としての役割を果たすのであれば、そのこともはっきりとすべきだろう。

 ところが、全部ベールに包まれて、ある日決まった段階でぼんと言う、これが今までの日米関係。あるいは、外交のいろいろな問題で、外交ですからいろいろなことを言えない部分もあろうということはわかりますけれども、やはりそれを受け入れる、そして後々、全体的な問題、そして今、特にキャンプ座間の問題等については、基地の恒久化等々を心配されながら地元でおられるわけであります。こういう一連の問題を含めながら、この日米の、海軍司令部、そして陸軍第一司令部、ワシントンからこちらに来るということであります。

 そうすると、世界戦略的なあるいはアジア戦略的なことを含めて、こういう配置を、再編をされるのではないかという、こんなことも盛んに新聞でも報道されているわけでありますから、こういうことを含めて、やはり信頼があればあるほど、そのことを明確に伝え、あるいはまた地元の意向もはっきりと伝えていくべきだろうと思います。

 沖縄の米軍の基地の縮小問題もなかなか進んでいない等々を考えても、こういう一連のことを含めながら、はっきりとした態度を示していくことがやはり信頼関係をより構築することになるだろう。このことについて、総理の地元の問題もあります、等々含めて御答弁をお願いします。

町村国務大臣 田中委員には米軍再編成問題に常日ごろから御関心をお持ちいただいて、大変にありがたく思っております。

 この問題につきましては、基本的な視点として、在日米軍の抑止力というものを維持しつつ、同時に、基地所在自治体の住民の皆さん、地元の皆さんの負担の軽減をできる限り図っていく、この視点から取り組んでいるところでございます。

 それで、二月に2プラス2という、日米の外交、防衛担当の大臣が集まりまして、基本的な理念について共通的な理解に達した上で、その上で、現在、役割、任務をどのようにお互いに分担するか、さらにそれと同時に、個別の施設・区域をどのように再編成していくのかということは、今まさに議論をしている最中でございます。

 したがいまして、今この段階で議論の途中経過をすべて明らかにしていくということは、いたずらにまた地元の皆さん方にいろいろな誤った情報、変わるかもしれない情報を途中でお出しするというのは不適切であろうということで、日米間で一定の合意に達したところで地元の皆さんにお示しをする。

 もちろん、それは最終決定ではなく、地元の皆さんにお諮りをし、御理解をいただき御納得をいただくというプロセスを経た上で、その上で改めて日米間で最終決定にしていくという手順を踏んでいこう、こう考えているところでございまして、日米間合意が出た、もうこれでびた一文変わりませんという性格のものではないという点はまず御理解をいただきたい。また、地元を含めて住民の皆さん方への説明責任というものを政府は持っている、そのように考えております。

 神奈川の知事さんにはもう二度三度お目にかかっております。また、沖縄の知事さん初め、座間市とかあるいは相模原市、横須賀市の市長さん等々ともお目にかかっております。一番最近では三月二十八日になりますが、そうした関係自治体の知事さんの集まられる渉外自治体というお集まりがございまして、そこの皆さん方と私と大野防衛長官、一緒になってお話を伺ったところであります。

 したがいまして、今後も、一定の合意ができたところでこの渉外自治体等の皆さん方にきちんとしたお話をし、そしてまた御意見も伺い、それを持ち帰りながらまたアメリカ側と再協議をして、そして最終結論に持っていきたい、こういう手順を踏んでやっていこうと思いますから、頭越しにぼんと決めて、はい、これで終わりです、そういう形をとるつもりは私どもございませんので、その点はひとつ御信頼をいただければと思います。

田中(慶)委員 大臣はそうおっしゃられても、この問題は、もう昨年から報道されたり、あるいは地元で大きな話題になっているわけでありまして、大臣にも何回となく地元の首長が申し入れをしていると思います。そういう中で明確な答えがない。そして、今までの経過からすると、ある日突然というような問題も出てくる。こんなことから、地元ではそれぞれ署名活動が始まった、こういうことであります。

 ましてや、地元の協力なくしてこのトランスフォーメーションの座間への移転というものはなかなか難しいことであろうと思いますし、また、なぜ座間に来るかということ自体も地元では非常に話題になっているわけであります。アジア全体なりあるいはまた日本全体を考えてまいりますと、横須賀にあり、また今度は座間に持ってくるということになりますと、何か非常に、ある面ではテロやいろいろな形の標的に神奈川がならぬか、こんな話まで話題になっているぐらいでありますから、日本の全体的な問題として基地問題というものは考えていかなければいけないだろう。

 沖縄、神奈川が非常に基地の負担というのが大きいわけでありますから、そういうことを含めながらこの考え方を明確に示していかないと、今大臣が幾ら協議中だと言っても、私は、ある程度の中間報告もすべきであろうし、それがお互いの信頼関係につながるんだろうと思っております。良好な日米関係を築くということも大切でありますが、国内もまた同じような形の中で、それぞれの自治体との良好な関係を築く意味でもそのことを明確にすべきだろうと思いますが、大臣の考え方をお伺いします。

町村国務大臣 今、いみじくも委員が、中間報告をしたらどうか、こういうお話がありました。まさにそういう意味で、私どもは、中間的な取りまとめを行ったところで各自治体に御説明をし御理解をいただく努力をする、そして、その間のフィードバックをした後、最終結論に導くという意味で、まさに中間報告を、いつごろになりますか、今鋭意作業をやっております。

 その作業のプロセスの中で、いろいろなアイデアをそれぞれ出します。その一部が、なかなかマスコミの皆さん方も敏腕な人たちが多いものですから、どこかで情報が抜けて出ていく。正しいものも間違っているものも実際僕はあると思いますけれども、なかなかそれを十分な形で防御できないのは残念なことだと正直言うと思っております。したがいまして、そういう個別の情報について私どもは一々コメントをいたしませんが、したがって、委員御心配の座間のことも今まさにいろいろな議論をやっている最中でございます。

 一つだけ決めるというふうにはいかないわけですね。やはり、いろいろなところと関係を持つものですから、全部のパッケージで、一つのいわば中間報告をあと何カ月かのうちにまとめてお示しをしたい、こういうふうに考えているところでございます。

 地元の皆さん方のお考えもよく頭に置きながら、私ども、アメリカ側と議論をしている最中でございます。

田中(慶)委員 ちゃんとした話をしないものですから、いろいろな形でマスコミがリークをする、それに基づきながらまた大きな課題のいろいろな話題が飛ぶ、これが今の実態でありますから、正しい一つのコメントというものはぜひやっていただきたい、このように要望しておきます。

 さて、今、先ほども話題になりましたけれども、国連の改革の問題等について、日本は国連の分担金、外務大臣、アメリカに次ぐ日本の負担、どのぐらいになっておりますか、教えてください。

町村国務大臣 二〇〇五年の分担率、アメリカが二二%、日本は一九・四六八%、ドイツが八・六六二%ということで、日米が図抜けた一位、二位になっているところでございます。

田中(慶)委員 これだけの分担金を出しているわけでありまして、日本の経済は決して楽な状態じゃない、にもかかわらず、国際貢献という形でこれだけ出しているわけであります。総理が一生懸命この常任理事国の問題をとらえ、なぜそれに賛同いただけないのか。その理由はどこにあるんだろう。例えば中国、韓国は、このデモでもおわかりのように、日本の常任理事国を物すごく反対している。それに対するメッセージはどうなっているのか。

 少なくとも、そういうことを含めて、この今の負担状況、お金だけじゃありませんけれども、いろいろな負担の状況や、あるいは全体的な日本の役割、国際貢献というのは十分私は果たしつつある。中でも、戦後の処理の問題も含めて、現実には敵国条項等の問題もまだ解決されていない。こういうことを含めて、なぜいまだにそういうことについて明確に政府としての取り組みを行っていないのか。

 そしてなおかつ、常任理事国入りの問題は、世界の多くの皆さんのうち、特にこの五カ国の常任理事の皆さんが一つでも反対するとできない、こういうことを承っております。中国がノーと言ったらば常任理事国に入れない、こういうことでしょう。そのことを含めて、どこに問題があるのか明確にすべきだろうと思いますが、大臣の答弁をお伺いします。

町村国務大臣 戦後、この常任理事国に関して一回だけ規約の改正が行われておりまして、それは、非常任理事国の数をふやすという決定が行われたのみであります。

 例えば十年前、ちょうど国連ができて五十年のときも相当いろいろな議論がありましたけれども、結局何も決まらなかった。それは何かと言うと、まず、先ほどちょっと申し上げましたけれども、常任理事国の五カ国にとってみると、その彼らのある意味では優越した地位が相対的に下がるわけですね、ほかの常任理事国が入るということによって。したがって、それは決して、いやすばらしいですねという話にはもとよりならない。

 では、大勢のその他の国々について言うとどうかというと、自分たちが常任理事国入りする可能性があるならばそれは非常に熱心に取り組むでしょうけれども、まず自分たちが常任理事国になるということが考えられないということですから、いわば、これはどっちでもいいですよと。強いて言うならば、今、コーヒークラブと呼んでおりますけれども、非常任理事国の数だけをふやすという案にそれなりに多くの国々が関心を示すというのは、今ですと十年に一回とか十五年に一回しか非常任理事国が回ってこない。それを、もしかすると、非常任理事国の数がふえると自分たちもなれるかもしれないという期待を持つわけでありまして、何もなければ、多分、非常任理事国の数のみをふやすという案の方が、一般的に言えば人気のある案になりやすいわけです。

 それにもかかわらず、私ども今、日、独、ブラジル、インドとともに、そうじゃないんじゃないですかと。やはり、世界の現実、実際の国の力、地域の代表性、あるいは委員の言われた財政的な貢献、こうしたもの、さらには、先ほど来から議論のありました戦後のそれぞれの活動というもの、特に日本は、平和維持のため、平和をつくるための、ODAでありますとかPKOでありますとか、さまざまな活動をやってきた。そうした平和活動での実績というものがあるからこそ、私どもは常任理事国入りする資格がある、こう主張しているわけであります。

 そういうことを現実的に踏まえるということになれば、常任理事国の数をふやすということに私は正当性があると思うけれども、しかし、多くの国々がそれに熱心に賛成するかどうかというと、なかなか本質的に難しい問題があるということは御理解をいただければと思います。

 しかし、そういう中で、今、アナン事務総長も大変熱心に、三月に報告を出し、取り組みを進めておりますし、先般、私は四月下旬にニューヨークに参りまして、日本主催の国連改革委員会をやりましたところ、反対の国も含めてですが、百六十五カ国以上が集まってくれたというのは、やはり今国連改革をしなければいけない、そういう考え方が相当広く浸透してきたことのあらわれだろう。中国、韓国でさえも、国連改革は必要だし、安保理改革が必要だというところについて彼らは異論を唱えていないという点は、私は議論の出発点として大切なことだと思っております。

田中(慶)委員 ですから、私は、最初に総理に伺ったわけであります。日本という国が尊敬される日本になるためにということで申し上げて、一生懸命努力をしておりますということでありますが、現実に常任理事国入りができないということ自身は、総理が言っていることと周りが評価していることの違いがここにあらわれているんじゃないかと思う。

 日本の平和の実績とか負担であるとか、そういうことも含めて、こういう問題を明確にそれぞれの国にPRする必要があるでしょうし、現実問題として、なぜ中国がそんなにこだわっているのか。今まで、ODAの問題を見てくださいよ、過去にどれだけ中国の発展のために貢献されたんですか。

 いろいろなことを含めて、日本の国が、極端なことを申し上げて、日本経済は今、中国抜きにして語れないというぐらいまで、経済部門においては大変な協力関係があります。しかし、政治の分野においては冷戦だと言われているわけであります。こんな状態をつくっているのは、やはり政治のリーダーシップがないから、あるいはまた、我が国のそういう問題に対する取り組みの希薄から来ているんじゃないか。自分はこうしていると思っていても、相手から評価されなければ何にもならないことであって、それは自己満足というものじゃないでしょうか。

 私は、そういうことを含めて、少なくともこういう一連の問題は、総理が言っている、外務大臣が言っていることと違って、この常任理事国という問題は、ある面ではそういうことが進んでいるんじゃないかと思いますけれども、見解をお伺いします。

町村国務大臣 もし、日本だけが常任理事国入りすることについて皆さん賛成ですかどうですかという、それだけのテーマで投票すれば、私は、もう圧倒的多数でそれはなれる、こう確信を持っております。それだけ日本の活動というのは、先ほど総理が言われたように、評価はされております。そのことは、私は、いろいろな国の外務大臣と話をしてみるとよくわかります。もちろん、外交辞令もそれはあるのかもしれません。しかし、私は、日本という国はそこにもっと自信を持っていいと思うんです。余り自虐的になる必要はない、こう思っております。

 ただ、では、常任理事国入り、日本だけがなるという運動を日本だけでやってうまくいったか、そうではない。やはり、多くの国々と一緒になってやらなければここまで運動は盛り上がらなかったという点がある。それでは、ブラジルがどうですか、ドイツがどうですかというと、またそれぞれに、いや、あいつだけは嫌だ、あいつだけは嫌だというのがいろいろ出てきて、全体として、なかなかそれでは三分の二とか圧倒的な多数が今とれる状態かどうか。

 これは今後の活動いかんということで、本日、国連で、G4と呼んでおりますが、日本を含む四カ国のグループから共同決議案の案を関係国にお示しをしております。それは、常任理事国を六カ国、非常任理事国を四カ国、都合十カ国ふやす、こういう枠組みの決議案を出して、まずその枠組み決議案を第一段階通した上で、第二段階として、今度は個別の国ごとの賛成、反対というものをとっていく、そういう手順を踏むという形で、私、今後ともその活動を前向きに進めていこうと思っているわけであります。

田中(慶)委員 私が聞いたのは、少なくとも、常任理事国入りをするためには、この五カ国のまず協力がなければできない、こういうことでしょう。多数をもってじゃないんですよ。この五カ国がちゃんとオーケーをしないと、今の組織上は進まないわけです。その一つに中国があるんですよ。ロシアがあるんですよ。中国との関係が今のような膠着状態で、あるいはまた、デモを含めて、韓国や中国がデモを行っている一つの原因に、日本のこの国連常任理事国入り反対ということを明言されているわけです。

 こういうことを含めて、今のような大臣の答弁では私は納得できない。はっきり申し上げて、隣、一番近い、近くて近い中国が、経済分野においては非常に大変な日本に影響力のある状態をつくり、政治は冷戦状態だと言われている。ですから、このことにもっとしっかりと、幾らお題目を唱えて、国連常任理事国入りを幾ら望んでいても、その五カ国がみこしを上げない限り進まないわけでありますから、こういう一連のことを含めてしっかりとしておいてほしい。これは要望しておきます。

 特に、中国問題に絡んで、今まで、中国に対するODAというものは約三兆円、日本は協力関係をとってきたと思います。ことしの予算を見ても八百五十九億円、こういう形で拠出をしているわけであります。しかし逆に、日本が反日デモをされるという日中関係。そして、あの反日デモ以来、日本の少なくとも大使館や日系企業が大きなダメージを負っている。その原因はどこにあるのか。さっきも議題になりましたけれども、この原因を明確に追求を、あるいはまた調査をしないで次の段階に進むと、また大きな問題になるだろう。

 結果として、今までは空洞化という名のもとに、日本の企業は中国へある面ではいろいろな形で進んでまいりました。そして中小零細企業も、バスに乗りおくれないようにというような形で、中国にいろいろな形で進出したわけであります。

 こういうことを含めて、今中国に行かれている人たち、そしてまたこれから、それぞれ、この帝国データバンクの調査によっても明らかなように、三分の一は中国の企業進出をもう後退したい、あるいはまた引き揚げたい、こういうことを言われております。そしてなおかつ、この中国の問題等について、あのデモ以来、日本の多くの経済にダメージを負っている、こういうことについて、経済産業省はどうとらえ、そしてどうこれを指導していっているのか、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

中川国務大臣 今、田中委員御指摘のように、ここ一、二カ月、反日デモ等で、企業の影響が非常に大きくなっているということは事実でございます。

 統計によると、進出企業の五五%が不安を感じているとか、あるいはまた損害額は九兆円、これは知的財産権等々セットの被害額でございますけれども。そういう中で、他方、二万社を超える日本の企業が既に進出をしていて、現地調達率が五〇%を超えているということでございますから、これは、日本企業にとってもマイナスですけれども、中国経済にとってもマイナスだという認識を日中共有していかなければいけない問題だろうというふうに思っております。

 決してこれは日本だけの問題ではなくて、中国がしっかりと法に基づいて、知的財産権、投資ルール等も含めまして、きちっとルールを遵守して、治安を維持していただかないと、日中双方のお互いの経済、それから日中の連携というものに大きな影響があるというふうに思っておりますので、我々としても強い関心を持って、中国政府のきちっとした対応をとっていただくように、我々も期待しております。

田中(慶)委員 民でできることは民ということで、余り政府が関与しないようでありますけれども、これだけデモがあり、そして不買運動まで起きているんですよ。なぜ政府がこれを阻止しないんですか、発信しないんですか。このことが日本企業の不安につながっている。両国にとってプラスじゃないですよ。民でできることは民だと言っておきながら、そういうことを、今のように、民でできること以外のことですよ。デモは政府が政治的に解決しなきゃいけないことでしょう。それをどういうふうに努力されているんですか。明確に答えてください。

中川国務大臣 中国の政府の方と話していると、率直に、先方も困っているという認識を持っております。不買運動、いいものを買うな、日本製品を買うなということ。それから、日中だけではなくて、今回の一件の出来事は、ヨーロッパ、アメリカにとってもある意味では大変な警鐘を鳴らしたわけでございますから、日本経済にとっても、あるいは日中にとっても、そして中国自身にとっても決してプラスではないというふうに思っておりますので、日本としては、中国政府に、こんなことをやっていたら経済発展に影響を与えますよということは私自身強く申し上げ、中国政府もそういう認識があるというふうに思っておりますので、これは中国にとって決してプラスではないということは、私は、中国はよく認識をしていることだろうというふうに思っております。

町村国務大臣 デモがあった後、四月十七日、そして五月、外相会談でもこの問題、提起しております。そして、中国の商務部長さん、通産大臣のような方でありますが、その方も、四月のたしか二十日ごろだったと記憶をしておりますけれども、公の場で、こういう不買運動等々は日本のためにもならないのみならず、中国の国民にとってマイナスである、したがって、こういうばかなことはやめようということを、非常にはっきり彼らも認識した上で発言をしているという事実だけちょっと補足をさせていただきます。

田中(慶)委員 もう少し強く申し上げたっていいと思うんですよ。中国の発展のために日本は、大変財政的に厳しい中でもODAという金をたくさん協力しているわけですよ。協力は協力、そういうこととは関係ないみたいなことじゃ困るわけであります。

 いいですか。模造品を見てくださいよ。大体、特許庁を初めとして日本のリサーチの中では、約九兆円と言われているんですよ。そして、純利益が五千八百億円と言われているんですよ。では、これについてどう具体的に政府が関与し、中国政府に対して申し入れをし、この模造品に対して、日本に与えているこれだけの大きな影響があっても、民は民だ、こんな形でいいんでしょうか。お互いによきパートナーであるならば、そのことをはっきりと、政府のラインで向こうにしっかりと対応すべきであろう、このように思いますが、答弁を願いたいと思います。

中川国務大臣 模造品、海賊品対策は、これは日本にとって極めて重要な問題でございます。特に、WTOに入ってきちっとした市場ルール、経済ルールを守るという前提の中で、この模造品、海賊品はひどいと言わざるを得ません。と同時に、これは日本だけの問題ではなくて、アメリカ、EUといった国々にも同じ問題がございますし、それから中国の政府の方に聞きますと、いや、一番困っているのは中国自身なんだという話もありますけれども、それは一番じゃなくて三番か五番の話であって、第一に困っているのは、日、アメリカ、EUだと思っております。

 中国もそれなりに対策をとっているようでございますけれども、とにかく中国のイメージがよくないということになってしまいますから、私は、中国が経済発展を遂げていくためには、この問題は中国自身の問題として対応をしていかなければいけないというふうに思います。

 今田中委員から御指摘がございましたように九兆円、あるいは中国国務院のデータでも三兆円という大変な被害が出ているわけでございますし、それから、知らない人が買うととんでもない粗悪品をつかまされるという意味で、もともとの企業のイメージにも影響するわけでございますから、これは政府全体として、もちろん私も中国の高官に会うたびに、これは決して中国のプラスにもなりませんし、一刻も早くやめてもらいたいということを強く申し上げているところでございまして、これは中国の自主的な積極的な対応というものが必要だと思いますし、取り組みつつあるというふうに私どもは理解をしておりますが、日本政府の積極的な責任のもとでこの問題には取り組んでいかなければいけないというふうに思っております。

田中(慶)委員 中国は経済と政治が一体でありますから、やはりそのことを強くアクションを起こさない限り、この模造品の解決にはならぬと思います。もう長いこと、これはきのう、きょうじゃないですよ。前からさんざん私もこのことを指摘しましたよ。十年以上指摘しているんですよ。にもかかわらず、一向に解決できない。これはやはり、日本の政治がはっきりとイエス、ノーを主張していないからこんな結果になるんだろうと私は思っております。ODA、それだったらやめますよぐらい、そこまで言うことはどうかわかりません、そのぐらい強い気持ちでやらなければ、私はなくならないだろうと思います。

 再度、決意を聞かせてください。

中川国務大臣 ODAとか、日中関係、非常にパイプが太くなっておりますから、いろいろなカードはあるんだろうと思いますけれども、この模造品、海賊品対策はそれ以前の問題として、私はこれだけでも強く中国と闘っていかなければいけないというふうに考えております。

田中(慶)委員 そこで、中国に関連する問題で、さらに東シナ海の大陸棚問題、石油開発の問題であります。

 尖閣諸島を初めとするあの海域で、この問題が大きくクローズアップされているわけであります。初めは昭和四十年代、四十四年ごろからこの問題が議論されました。昭和四十二年、東海大学の新野教授が国連アジア極東経済委員会というところで、尖閣諸島海底油田存在ありという問題について論文を発表されたわけであります。それ以来、中国政府が、今までは中国の領土という問題とは別に、余り関心なかった問題が、その油田問題以来、大変な関心を持っておられる、こういうことでありまして、それが今日、大陸棚の油田の開発問題等について大きくクローズアップされております。

 日本でもこの問題について、帝国石油を初め石油資源開発や芙蓉石油開発、うるま資源開発等、いろいろな申請をしたり、いろいろなことをしてまいりました。最終的には、帝国石油がこれに対して本格的な取り組みをしようとしているわけでありますが、これらについて、いろいろなことを含めて、資源のない日本、そして今のような状態で、石油価格の変動によって、日本の経済に与える影響は非常に大きい。ところが、自主開発の問題、ここの問題に大きく関心が集まっているわけでありますけれども、中国政府との問題で、その辺に対する結論、許可等の問題がずっと先送りをされてきました。

 昨年ですか、この許可について検討をされる、あるいはまた経済産業大臣、担当大臣として中国にそのことを強く発信をされておられるわけでありますが、その辺の状況についてお伺いいたします。

中川国務大臣 今田中委員御指摘のとおり、昭和四十年代に国連のエカフェというところで調査をしましたら、この東シナ海に石油、天然ガスが存在する可能性が高い。そこで、日本の、今御指摘になったような民間企業が鉱業権の設定の申請を出したんですけれども、ずっと三十数年間、イエスでもノーでもないという状況が続いたわけでございます。

 中国側のデータあるいはまた当時のいろいろなデータを総合しますと、日本は、排他的経済水域がまたがるところについては中間線というやり方をとっておりますけれども、中国は、今では余り多数説ではない、むしろ少数であります大陸棚自然延長論、したがって沖縄トラフまでが自分のEEZなんだということでございます。これはちょっと、出るところへ出ればという話になりますけれども、日本としては、お互いの中間線で分けるべきだと。

 そうしましても、例の春暁とか断橋とかこういったガス田、石油田がまたがる可能性があるので、それについては作業の中止あるいはまたデータの公開を去年来ずっと求めているわけでございますけれども、誠意ある回答がないということでございますので、日本としても、国連海洋法条約あるいはまた鉱業法に基づきまして粛々と申請者に対して、大変時間がかかりましたけれども、営業のリスクといいましょうか、メリットといいましょうか、そういうものを判断した上で試掘をしたいということでございますので、試掘権付与の作業に入ったわけでございまして、これはあくまでも日本の主権的な立場で粛々と進めているということでございます。

田中(慶)委員 経済産業大臣と、一方、外務大臣は何か慎重論を唱えているやに伺っております。時間の関係もありますが、閣内不統一にならないように、これをしっかりと申し上げておきたいと思います。外務大臣、答弁は時間の関係でいいですけれども、そういうことが報道されておりますから、現実にそのようなことのないようにしておいていただきたいと思います。

 最後になりますが、北朝鮮の問題について申し上げたいと思います。

 特に、北朝鮮の問題で、核開発の問題等々が、私たち日本として、隣接国でありますから非常に興味があり、あるいは心配になってくるわけでありますけれども、こういう一連のことを含めながら、北朝鮮は八千本の使用済み核燃料棒の取り外しを完了して、核開発がもう進んでいるというふうに承っております。こういう一連の問題。

 一方においては、日本の拉致問題等々を考えても、総理が二度訪朝され、そして五人の家族八人の皆さんが帰ってこられましたが、残された人たちに対する問題というのは遅々として進展をしない。

 こういうことを含めながら、国会の決議として、外為法の問題あるいはまた船舶接岸禁止の問題等々が国会で議員立法として承認をされているわけでありますが、その発動もせずに、そして一方においては、核の開発やら核を持っているよというある面ではおどし的な要素も見られるような発言がされ、報道されているわけであります。こういう一連のことを含めて、政府の態度というものは余り国民にとって、まあまあという考え方ではないかと思います。刺激をしないように、対話と圧力なんというようなことをいつまでもやっている時代ではないと思います。

 特に、家族の皆さんがいろいろなところで集会を開き、そして北朝鮮に対する圧力を求めているわけでありますから、そのことを、既に議員立法としてこの法案ができているわけでありますから、一日も早く、家族のことを思い、そしてお互いの国のこういう脅威の問題を含めてやるときに、その解決が望まれるし、政府の態度というものがしっかりと求められておりますので、最後にその考え方を総理に答弁を求めて、私の質問を終わります。

小泉内閣総理大臣 北朝鮮に対して、特に拉致された御家族の憤りの念というのは私も十分に理解しております。残された御家族の安否に対しまして、政府は何をやっているんだといういら立ちも、家族の立場に立ってみればこれはまた当然なことだと思っております。

 そういうことから、日本として独自に経済制裁を発動すべきだという声も強く上がっておりますが、私どもとしては、この北朝鮮との問題につきまして、拉致の問題のみならず核の問題、ミサイルの問題、これを包括的に解決していくためには、日本独自の動きだけでなくて関係諸国との協力が重要だと考えております。

 特に、今回六者協議というような場が設定されましたが、昨年来、一年近くたってもいまだに六者協議に北朝鮮は応じてきておりません。そういう中で経済制裁を発動して、この拉致の問題が、今日本が思っているような対応を北朝鮮がするかどうか、またそれが効果的かということを考えると、必ずしもそういう面ばかりではない。

 そういうことから、日本としては、六者協議に早く北朝鮮が応じてくるべきだと。この六者協議の場で平和的な解決を目指すべきだというのは、アメリカも韓国も中国もロシアも一致しているわけであります。

 そういう際に、今、北朝鮮が非常に強硬発言といいますか、挑発的な発言なり、何か核開発あるいは核実験等、事実かどうか日本としてははっきり確認しておりませんが、この核の問題を一つの政治的な道具として、みずからの立場を有利にしながら北朝鮮と各国との関係を考えていこうという態度をとっているようでありますが、我々としては、核を持つことによって得られる利益というよりは、核を廃棄する、拉致問題等、日本との場合を考えまして、誠実に対応するということが北朝鮮にとって最も利益になるんだということを今までも働きかけてまいりましたし、これからもそのような働きかけが必要だと思っております。

 ぜひとも、これから、そのような方針で、この関係を重要な関係だと認識しておりますので、粘り強く働きかけていきたいと思っております。

甘利委員長 これにて仙谷君、菅君、田中君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、JR西日本福知山脱線事故について質問します。

 質問に先立って、お亡くなりになった百七名の方々にお悔やみ申し上げ、五百名を超える負傷者にお見舞いを申し上げるものです。一日も早い御回復を祈念したいと思います。

 今度の事故についてのJR西日本の責任は極めて重大です。事故の詳しい原因究明については事故調査委員会の解明を待たねばなりませんが、スピードの出し過ぎに要因があったことは既に明らかです。事故の路線にATS、列車自動停止装置が設置されておれば事故は防げたのではないかと国民の多くが思っています。

 そこで、社長に聞きたいと思います。

 国交省からの資料で、ATS―P型を設置していないのは、この福知山線、JR西日本の数ある近畿圏の主要路線の中で福知山線だけです。設置しなかったのはなぜか、この一点だけお答えいただきたいと思います。

垣内参考人 お答えさせていただきます。

 ATS―P型の整備につきましては、鉄道事業の根幹である安全・安定輸送を確保する観点から大変有効な手段であるということで、この認識のもとに、京阪神地区におきまして、線区における列車本数、列車種別、利用人員等を総合的に勘案いたしますとともに、計画設計、施工能力を踏まえて、順次計画的に整備を進めてきたものでございます。

 それで、当該の福知山線でございますけれども、これらにつきましては、私どもの一番の中心でございますJR京都線、神戸線のATS、これは整備延長が非常に長くて、かなりの工期なりお金も要したわけでございますが、その整備がおおむね完了いたしました平成十五年度から着手したものでございます。

 以上でございます。

穀田委員 とんでもない話なんですね。

 大体、福知山線は、JR西日本が発足した八七年に比較して、電車の本数は四倍近くもふえている路線なんです。だから、きょうの新聞でも報道されていますように、新幹線の問題や、そして迅速なダイヤ復旧を第一とする機構には力を入れるが、そこは後回しだったということが問題なんですね。だから、こここそ急いで真っ先にATSを設置すべき箇所だったことは余りにも明らかだと思います。

 そして、二〇〇三年の十二月のダイヤ改正の際、宝塚―尼崎間では中山寺という停車駅をふやしました。停車のために必要な所要時間が一分以上増加したのに、所要時間をふやさなかった。その上、事故を起こした快速電車は、ダイヤ上、トラブルなどによるおくれを駅間で回復する余裕のない、余裕時分がゼロの設定で、その中でも最も短い運行時間でした。余裕時間ゼロの快速は百三本のうち三十一本。事故電車以外は宝塚―尼崎間の所要時間が十六分三十秒だったものが、事故電車は十六分二十五秒でした。余裕がないから、おくれるとスピードを上げて時間を取り戻す、これが常態化していた。

 この路線では、ATSを設置すれば制限速度以内のスピードしか出せない、定時運行やおくれを回復するのにATSのブレーキが作動しては困る。だから、設置をおくらせてきたのではありませんか。実際に、調べてみますと、(パネルを示す)これがJR西日本の経営状況とATS―P型の設置工事費の推移です。結局、経常利益はどんどん上がっているのだが、そのP型設置の工事費は下がっているという現状です。

 これだけではないんです。JR西日本大阪支社長方針、これです。これは、一番が稼ぐ、そして二番は安全を目指すというふうに、全社員に配付されたパンフであります。つまり、これらに明らかなように、肝心かなめの安全よりも、稼ぐことに中心が置かれる。そして、安全よりもスピード、そして定時運行。安全よりも利益を優先した、このことがJR西日本の経営方針であることは明らかです。

 国交省の責任も見逃せません。事故は未然に防ぐことができなかったんだろうか。国交省は安全のチェックをしていたのか。これまた多くの国民の思いです。

 二〇〇二年の四月、京都駅ポイント切りかえのミスなど先行列車に異常が出るなど、三件の事故につながりかねない事態がありました。このとき事故調査委員会は、二十二ページに及ぶ鉄道重大インシデント調査報告書を発表しています。三件の重大な兆候に関する共通する要因として、定時運転確保に対する強い意識が、異常時に焦りを招き基本動作の確実な実施を阻害した可能性があると指摘しています。つまり、余裕時間がないことを問題にしているんです。

 これを受けて国交省はどう指導したのか、答えていただきたいと思います。

梅田政府参考人 御指摘のように、京都駅構内におきまして、大体三件の重大インシデントが起きました。その際、私ども、JR西日本に対しまして、御指摘を踏まえまして、マニュアル等のチェックリストの点検指導、あるいは訓練をきちっとやるようにというふうに指導したところでございます。

穀田委員 そのマニュアルどおりということが基本ではないんですね。事故調の調査に対して、JR側は、余裕のない時間設定に問題があったと回答しているんですよ。それを是正すると約束しているんです。JRが回答どおり是正するか、そして、ほかにそのような路線はないのか、きちんと点検し、そして監督指導するのが国交省の責任のはずではありませんか。

 今度の脱線事故の後、国交省は、編成ダイヤに問題がなかったか総点検を行っていますが、二〇〇二年に、そのときやっておれば、事故は防げたじゃありませんか。

 しかも重大なことは、国交省は点検指導を強めるどころか、事故調が問題を指摘した二〇〇二年の十月の後、三年の十二月にJR西日本がダイヤ編成の改正を申請して、フリーパスしているんですね。余裕時間の極端に少ない宝塚―尼崎間の過密ダイヤを、事故が起こった今でも、この間の国土交通委員会の審議においては、鉄道局長は適切だったと述べているわけです。全く許しがたいと言わなければなりません。

 しかも、そればかりではありません。では、もう一度ATSの設置問題で聞きたいと思います。

 先ほど述べたように、このように新三田から尼崎間だけはATS―P型がおくれていたということですね。国交省は、今回の事故を受けて、福知山線の復旧に際してはATS―P型の設置が条件だとしています。だとすると、なぜ二〇〇二年に国交省の事故調が指摘したときにATS―P型の設置の指導を強めなかったのか。なぜ余裕時間がないダイヤ改正を申請したときにATS―P型の設置を義務づけなかったのか。ATSの旧型を、せめてカーブの危ないところに地上子を置きなさいとなぜ指導しなかったのか。悔やまれてならないと思います。その点の答弁を国土交通大臣に求めます。

北側国務大臣 今回の重大事故の事故原因につきましては、今、事故調査委員会が究明をしております。

 今までの調査で、少なくとも次の点ははっきりしているというふうに言えるわけでございます。それは、半径三百メートルのカーブのところでございますが、その中ほどにおきまして、制限速度を大幅に上回る速度により、ここは制限速度は七十キロでございます、そこを大幅に上回る速度により左側に脱線転覆をしたということは、これは現在までの調査で明らかなところでございます。

 なぜそのような制限速度を大幅に超えるような速度で走っていたのか。それは、車両に問題があったのか、施設に問題があったのか、もしくは運転士の人的な要素だったのか、そこはしっかりと究明する必要があると思っておりますし、事故調査委員会もそういうことで今調査を進めていると思っております。

 このような重大事故になった以上は、これは安全対策がやはりきちんと確保されて初めて運転再開というのがあってしかるべきでございまして、その一つの条件として、今委員の御指摘のように、この地点におきましては、ATS―P型の設置、これをまさしくしようとしておったんです。しようとしておったのが、まだできていなかったわけでございます。これをきちんと整備することが、運転再開のやはり一つの条件であるというふうに言わせていただいたところでございます。

穀田委員 私は、しようとしていたことを問題にしているのじゃなくて、しようとするチャンスはあったと、そこを言っているんですよ。予兆があった、そこをすべきだった、その国交省の指導がおくれている、ここが問題だと私は言っているんです。

 同時に、政府がJRに対して安全指導を緩めた問題があったと思います。先ほど議論になりましたけれども、政府は一九六七年に大手私鉄に対してATSの設置を義務づける通達を出しています。これは速度照査機構を備えるものとして指示を出しています。ところが、この通達をJR発足時には廃止をして、JRに義務づけをしなかった。こういうことをやったからこそ、事態は生まれたという点を指摘しなければなりません。

 総理に聞きたいと思います。

 これまで質問してきたように、政府に責任がないとは言えないと思うんです。国民の命と安全を守る、今回のような鉄道事故を起こさないための監視、監督の責任は政府にある。それを認めるかどうか、端的にお答えいただきたい。

小泉内閣総理大臣 今の御指摘も踏まえて、私鉄に対する指示なり対応とJRに対する指示、特に安全対策に対して違うという点が、これが事実だとすれば、政府にも反省すべき点があったのではないかと考えまして、このようなことがないように、御指摘を踏まえて、より安全第一、安全重視、こういう点に向けて、より一層公共輸送機関には厳しい安全対策をするような措置を講じなきゃいけないと思っております。

穀田委員 私、先ほどの通達と通達の撤回の経過をお示しし、同時に、この間の一連の事故の兆しがあったときにきちんと手を打っていればいけたはずだという問題を指摘しました。

 今回の事故の最大の責任は、当然これはJR西日本にあります。しかし、国民の命と安全を守る最終責任は政府にあるんだ。民営化と称して安全まで民営化し、規制緩和して、国の責任を放棄してきた結果が、利益第一主義を許して今回の事故につながっていると言わざるを得ないと私は思うんです。だから、この視点から徹底して事故の究明と再発防止策を立てる必要がある、このことが、とうとい命を亡くされた方々に対する本当の責任の表明である、このことを申し上げて、私の質問とします。

甘利委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 昨日五月十五日は、沖縄県にとっては本土復帰後三十三回目の復帰記念日でした。その記念日に、多くの県民と全国から駆けつけてくださった支援者合わせて二万三千八百五十人が、普天間基地を包囲し、世界一危険だと言われる普天間基地の閉鎖、返還を求め、そしてその代替施設となる辺野古の海の埋め立てに反対をして、手をつなぎ、人間の鎖を成功させました。子供、学生、大人、障害を持つ人持たない人、高齢者など、参加者一人一人が一日も早い普天間基地の閉鎖を願い、閉鎖されるその日が来るまで連帯をして運動を続けることを誓い合った日になりました。

 また、基地包囲行動の後開かれた県民大会には、会場あふれんばかりの七千人余が参加をして、そこには我が社民党の又市幹事長初め、民主党の岡田代表、日本共産党の志位委員長も出席されて、力強い連帯のごあいさつをいただきました。県民の切なる願い、全国の多くの支援者の熱い思いを、小泉総理、ぜひわかっていただきたいと思います。

 さて、質問に入ります。

 総理も御存じのとおり、辺野古では、ジュゴンのすむきれいな海、豊かな海を埋め立てて軍事基地を建設することに反対をする地元の皆さんを先頭に、昨年の四月十九日に座り込みを始めてから一年余が経過しました。座り込みを始めて本日で三百九十三日になります。命がけで座り込みを続ける地元のおじい、おばあたちは、本当に疲れ果てています。中には体調を崩す人も出ています。

 このような中で、那覇防衛施設局は、先月四月二十六日未明、ボーリング調査のための機材搬入作業を開始し、作業は日の出一時間後、日の入り一時間前とする作業計画があるにもかかわらず、夜間も作業を行おうとしています。これに対して、反対派は、海上の作業のポイントとなる単管足場で徹夜の座り込みを行うなど作業を阻止すべく頑張っていますが、海上における夜間の阻止行動は大変危険であり、不測の事態が懸念されます。地元住民が命の危険を顧みず阻止行動を行っている中で、アメリカでも、与党内部からも見直し論が出ている代替施設建設のためのボーリング調査を政府がなぜ今強行しようとしているのか、私には全く理解ができません。

 ボーリング調査を一たん中止して、在日米軍再編協議の結論を待ってから改めて調査再開の判断をすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。総理の調査中止の決断で、おじい、おばあたちをしばらくの間でも休ませていただきたいのです。私は、それは何としても総理の見解を伺いたい、そのように前もって申し入れておりますので、よろしくお願いいたします。

大野国務大臣 普天間飛行場の返還、そして辺野古への移転という問題につきましては、その背景に大変いろいろな歴史があるわけでございます。一九九五年の沖縄における少女暴行事件に始まりまして、その翌年に、モンデールそして橋本総理大臣の間で返還の話がありました。その後、いろいろな紆余曲折を経まして、苦渋の選択が辺野古への移設でございます。そしてまた、その辺野古への移設をやり遂げていくことがやはり沖縄の県民に対する負担の軽減につながっていく。我々は、そういう認識のもと、二月に行われました2プラス2の合同の声明文でも、SACO合意を着実にやっていこう、こういうことでございます。

 もちろん、先生のおっしゃったいろいろな問題点はわかっております。四月二十六日に午前三時に作業をやった、こういうこともわかっておりますけれども、我々の認識は、やはり辺野古の作業を着実にやっていくことが沖縄の負担の軽減につながっていく、こういう認識のもとにやっているわけでございます。

小泉内閣総理大臣 ただいま防衛庁長官から過去の経緯も含めてお話がありましたが、東門議員のお話も私はよく理解できます。この問題は、SACOの合意以来、何回か地元との話し合いも進めて、そして、地元の中においても賛否両論がある中で今日に至っているわけであります。

 そういう状況を踏まえて、私としては、この問題を何とかして解決しなきゃいかぬということで、外務大臣、防衛庁長官、国務長官、国防長官の間で、米軍の基地負担、特に沖縄における負担の軽減と、それから日本における抑止力をどうやって維持するかという真剣な話し合いを今進めているところであります。地元の実情、そして座り込みをしている方々の強い阻止の決意、御苦労を私もよく理解しているつもりであります。何とか、地元とも話し合いをして、地元と協調できるような解決がないものかということを真剣に考えております。

 もう少し時間をいただけないでしょうか。今、交渉最中でありまして、交渉の経緯について周りがあれこれ、先方がどう言っているとか、日本はどう考えているかという、話し合いをしている中で、結論が出ていない段階で、こういう意見もある、ああいう意見もあると言うのは政府としては控えなきゃいけないと思っておりますが、今東門議員の話を聞きながら、よく検討したいと思っております。

東門委員 賛否両論あるというお言葉でしたけれども、確かにあります。しかし、総理、八〇%以上が辺野古の埋め立てには反対なんです。この八〇%、出発当初の総理の人気度には及ばないかもしれません。しかし、今の支持率からはるかに上に行っているわけですよ。八〇%というのは、私は、もうほとんど県民一致と見てもいいのではないか。まあ、少しの反対は確かにあります。それは私も理解しております。そういう中で、私がお願いをしているのは、すべてなしにしてくださいと申し上げているのではなくて、今、日米の協議が行われている中、交渉中であるとおっしゃいました。その間、結論が出るまで一たん中止をしていただきたい。そうすることが、本当に高齢者、九十歳を超える方々、八十歳を超える方々、その方たちが少しでもお休みできる期間だと思います。

 ですから、結論が出るまで何としてでも、総理の決断だけです、お願いいたします。一応はこれは日本政府の仕事ですから、日本政府に、それは今のところ中止をしておきましょうとおっしゃっていただくだけで結構です。よろしくお願いいたします。もう一度お願いします。

小泉内閣総理大臣 そのような動きも承知しておりますし、東門議員の気持ちも十分理解しております。その点も踏まえまして、よく検討させていただきたいと思います。

東門委員 本当にもうあと三十秒くらいの時間です。でも、やはり私はもう一度お願いしたい。

 小泉総理ならやれる、私は中断をできると思っております。実は、私が準備をしている次の質問は、沖縄県民の、地元住民の負担の軽減について、小泉総理のこれまでの発言についてお伺いするつもりでした。時間がもうなくなりましたので終わりますが、そういう小泉総理ならば、やはり今、沖縄県民の思いをしっかりと受けとめられるのではないかと私は思いますので、再度お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 よく現状を踏まえ、将来のことも考えながら検討していきたいと思います。

甘利委員長 これにて東門君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田康夫君。

福田委員 自民党の福田でございます。

 このような形で総理とお話をするのは初体験でございます。よろしくお願いしたいと思います。

 まず、今回のJR西日本の事故、このことについて最初に話をさせていただきたいと思います。

 今回、お亡くなりになられた方が百七名、また重傷を含めてけがをされた方々が五百四十名、合計六百五十名という、鉄道交通事故とすれば記録的な大事故となってしまいました。改めて、御遺族やけがをされた方、そしてまた御家族の皆様にお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思うわけであります。

 事故原因につきましては、いろいろと今調査をされておられますし、そのうちに原因も判明するというふうに思いますけれども、スピードの出し過ぎの可能性が問われておりまして、それからもう一つは、会社の安全に対する考え方が甘かったのではないか、こういうふうなことが言われているわけであります。原因究明、またその対策、これは十分に、可及的速やかに行って、また、国土交通省としてJR西日本に対する指導監督を十分にしていただきたいと思っております。

 今回の事故によりまして、鉄道の安全神話というものが私は崩壊したというふうに思います。鉄道も必ずしも安全ではないということでございまして、これはまことに残念でございました。

 それから、今回の事故の特異性というものを一つ申し上げれば、スピードが百二十とか百三十キロという、これは私ども、高速道路だって、百キロ制限だけれども、百二十、三十ぐらい普通に飛ばしているというような、非常になれたスピードでございます。そういうようなスピードが、これは直接原因かどうかは別として、原因の一端を担っているということで事故が発生したということでございますから、スピードも決して百二十、三十ということで安心はできない、状況次第では今回のような大事故が発生するんだ、こういうことをよく銘記しなければいけないと思います。

 事故の規模からいうと、これはジャンボジェット機の空港離着陸時の事故に匹敵するような事故なんですね。航空会社に対しては非常に厳しい監督をしているんだろうというふうに思いますが、そういうような可能性も鉄道の場合にもあるんだということになれば、やはり鉄道会社に対しても似たような監督というのは必要なんじゃないだろうか、このように思っております。

 ましてや、今回の事故の原因とされる列車のスピードの倍ぐらいで通常走っているという新幹線におきましては、これは格段の安全確保義務がある、こういうふうに思いますので、この際、新幹線についても、特に運転時間間隔の短い路線については十分な検討をお願いしたい、こういうふうに思っております。

 以上、国土交通大臣としていかが御見解をお持ちでしょうか。

北側国務大臣 今委員のおっしゃいましたように、今回の事故、大惨事でございまして、安全確保が最大の使命、役割である鉄道事業者にとって、このような事故を起こしてしまったこと、極めて遺憾と言わざるを得ないというふうに思っております。原因究明について、徹底してさせていただきたいというふうに思っております。

 今委員がおっしゃいましたように、この原因につきましては、カーブのところで制限速度を大幅に、これは異常とも言えると思うんですが、大幅に上回る速度により左側に脱線転覆したということがこれまでの調査で明らかになっております。なぜそうなったのかは、しっかりと究明する必要があると思っているところでございます。

 この制限速度の問題、きょう委員会でもさまざま御指摘いただいているわけでございますが、私は、やはり列車において、たとえおくれていようとも、決められた速度をきっちり守るということはしっかり守っていただかないといけないというふうに思うわけでございます。おくれてもいい、しっかりその制限速度を守っていただく。

 そういう意味で、この制限速度につきまして、今回このような異常な速度超過が行われていたというふうに考えられますので、このようなことが常態化していないかどうか、これはしっかり調査する必要があると思っておるんですけれども、列車の速度を記録する装置の設置について、ぜひこれは義務化を検討していかなきゃならない。後でその記録を見れば、その列車がどの程度の速度で走っておったのか、それが記録としてきちっと見られるようにしていく必要があるのではないか。それを後できちんと検証できるような仕組みということも検討していく必要があると思っているところでございます。

 また、効率化よりも安全性を優先すべきは当然のことでございます。効率化というものももちろん必要でございますけれども、安全性の確保があって効率性というのはあるわけでございまして、この安全優先ということを鉄道事業者の方々にぜひ徹底していただきたいというふうに思っているところでございますが、私ども行政といたしましても、鉄道事業者に対するかかわりのあり方、私は、法律、省令、また規則等々も含めまして、安全面において、安全面の規制において問題がなかったかどうか、制度面、運用面も含めましてきちんと検証していく必要があると思っております。そこもしっかりとさせていただきたいと今考えているところでございます。

福田委員 運転記録が今までなかったというのは、陸上の輸送についてはそういうことを求めているわけですから、これは随分おくれているなというふうな感じがいたします。そういうことも含めまして、交通の安全ということは、もう一度、一回総点検をしていただきたいというように思います。これは国土交通省の所管でないかもしれぬですけれども、自動車事故による死亡は相変わらず一万人近くいるんだということで、このことについて問題提起をさせていただきます。

 この際、それに関連して問題を一つ申し上げておきたいんですけれども、交通死亡事故の中には、これはけがも含めてでございますけれども、輸送業者のトラックなどによる人身事故、これは結構多いんでしょう。その中でも、大手よりも中小業者の事故が多いということ。このことは運輸行政の中でどういうふうに位置づけて考えていったらいいのか、その辺ちょっと検討していただきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、交通は、これは人命にかかわることでありますから、その点、十分なる人命面の配慮を行政の中に取り入れていただきたいということを申し上げておきます。

 次に、外交でございます。

 外交につきましては、いろいろ問題がきょうも指摘されておりましたけれども、私は、国際社会の中において、日本の存在感、これが近年非常に高まっているというふうに思っております。その理由は、日本がそれだけのことをしているということなんですね。今の国際社会は、そういうような高まりの中で一挙一動に注目をしているということじゃないでしょうか。

 このことは、私も実は、一年前まで官房長官をやらせていただきまして、その間に経験したことでありますけれども、官房長官記者会見をいたしますと、それについて内外からの反響が非常に大きいということでございます。連絡をしてくるというようなこともございますし、いろいろと意見等も聞くということもございます。そういうぐらいでございますから、今はさらに、今の官房長官もそういうことを実感しているのではないかというふうに思っております。

 なぜそのようになったのかといえば、これは、既にして日本は国際社会の中で経済的には十分な存在感を示してきたわけでありますけれども、近年はそれだけにとどまらず、外交面においてもまた非常に積極的に国際社会との協調行動をとって、日本らしい外交面の動きを示してきている、そういうことにもよるのではないかと思っております。

 いろいろ課題はございますけれども、小泉総理の小泉外交と申しますか、日本の外交というふうに申しますか、これが存在感を示した具体的理由をちょっと申し上げますと、例えば日米関係においては、これは申すまでもないのでありますけれども、これまで以上に理解と協力という、その度合いを強めたということが言えます。また、日朝交渉、これは特筆すべきことだというふうに思いますけれども、この日朝交渉によりまして、これは総理みずからの訪朝でありますけれども、拉致された方、またジェンキンスさんを含めて御家族十三人の方の帰国が実現したということは、これは総理の二度にわたる訪朝の成果、英断による成果というように言ってもよろしいんじゃないかと思います。いまだに解決していないということはございますけれども、大きな前進を遂げたというように考えております。

 次に、国際平和の面でいえば、例えばアフガニスタンの復興会議を、これは日本主導で東京で会議を開催したということでありますし、また同様に、スリランカの復興会議につきましても東京で会議を開催しているということもありました。そういうような点で国際社会の平和、安定のために努力をしてきたということもあります。また同様に、東ティモールへPKOの七百名派遣ということもしました。これも大変大きな成果を上げ、また東ティモール政府からも大変な感謝をされて、そして業務を終了したということがあります。

 また、イラク、これも人道復興支援のために自衛隊を派遣したということであります。これはサマワ地区でもって民生の向上に協力をしているということでありますけれども、そういう武力によらない日本らしい貢献をしているということは、これは国際社会の中で特異な存在であるという認識は十分に持っていただけたんじゃないかというふうに思っております。また、イラクの復興支援会議の際には、これは日本の支援を示して、支援額を示して国際社会をリードした、こういうふうな実績もあります。

 以上の例は、日本の国是でございます国際平和に貢献する、こういうふうな理念の実践ということでございまして、それらを含みます我が国の外交政策の一環を積極的に推進してきた、これは総理のリーダーシップをもって推進してきたということであります。

 私も思いつくままに申し上げましたけれども、これ以外にもいろいろな評価すべきことがあったんだろうというふうに思います。そういうことを私は申し上げましたけれども、総理御自身は、この日本の外交、もう総理も四年やっておられるわけでありますけれども、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。

小泉内閣総理大臣 官房長官時代には、私も頼りにし、いろいろ指導をいただきながら支えていただいたことに感謝しております。

 今福田議員が申されました外交の努力、これは、今までの過去の実績、積み重ね、そしてこれまでの長年にわたる日本の行動に対しまして国際社会が評価を与えていただいたわけでありますが、今後とも日本としては、日米同盟と国際協調、これを重要な外交の基本方針として進めていきたい。

 さらに今後、日中、日韓、隣国としての友好協力関係はますます重要になってまいります。人の交流におきましても、中国と韓国というのは日本にとっては第一の相手国でありますし、経済的な関係を見ますと、中国と日本との貿易額はついにアメリカを超えた。戦後六十年間、今まで常にアメリカが第一位だった、それが今回中国が一位になったということは、いかに相互依存関係があらゆる面において中国や韓国と深まってきたかという証左であると思います。

 そのような隣国との関係、過去の反省を踏まえつつ未来に向かって、両国との友好関係、さらには国際社会の場におきましても協力しなきゃならない面がたくさんありますので、今後とも日本としては、全世界、国際社会の一員としての日本の責任をいかに果たすかということに常に気をつけながら、日本としてできることをやらなきゃならない。特に、日本の発展は世界の平和と安定の中にあるんだという点を肝に銘じ、日本としてできるだけの国際社会の場での協力を考えていかなきゃならない時代に来ていると思っております。

福田委員 これからの日本の社会を展望するときに、大きな変化があるだろうということは、これはもうだれしも言っているわけであります。

 総理が主宰されておられます経済財政諮問会議でもって、先般、日本二十一世紀ビジョンというものを取りまとめたわけでありまして、そこでは、二〇三〇年の我が国のあるべき姿というものが書かれております。

 二十一世紀ビジョンによりますと、今から二十五年後、二〇三〇年というところに照準を合わせておりますけれども、このときの日本は、人口減少、高齢社会でありまして、今のまま推移すれば、経済は停滞、縮小し、そして、希望を持てない人がふえ、社会が不安定化するということになるということであります。また、外交的にいいますと、国際社会への影響力は低下し、国際政治の動くがまま、受け身の対応を迫られることになる、こういうふうなことが記述されているわけであります。

 そういうような事態に至らしめないために、国内的には、もちろん生産性の向上とか付加価値の高い産業への移行とかいうようなこと、さまざまな方策がとられますけれども、その一方、外交的には、国際社会とのかかわりを一段と強めて、国際社会とさらに良好な関係を築くことが極めて大事だ、こういうふうなことになっております。そのためには、経済連携はもちろんのことでございますが、人や資本の交流を進めて、今までも企業の海外での投資はグローバルで増加しておりますけれども、同時に、海外の投資を積極的に受け入れることになるわけであります。

 そういうことについては、もう既に総理のリーダーシップでもって、海外資本の増加それから観光客の増加というようなことを政策課題として今いろいろと取り上げておられるところであります。資本だけでなくて人の交流も飛躍的に増加して、あわせて、学術とか文化交流とかいったようなこともこれから強化していかなければいけない。例えば、そのビジョンでは、海外からの観光客は今の五百万人から二〇三〇年には四千万人になる、実現できるかどうか別として、そのぐらいの国際化というものも目指していこうということになっております。

 ですから、中長期的に見て国際社会との連携強化ということが大事であるということでございますから、外交の方針は国際社会との協調、これが何よりも大事であるということが言えるのではないかと思います。国際協調の基本に立った今後の外交を進めていただきたいというように思っております。

 国際社会には、さまざまな不安要因とか攪乱要因というのがございます。我が国は、これまでと同様に、国際社会の安定のためにより積極的な役割を果たしていくということでありますが、国際社会のためというのでなくて、それが我が国のためになることだ、また、我が国にとって好ましい結果をもたらすんだ、こういう考え方に立って外交を進めていくということが大事なのではないかと思います。

 総理、そういう考え方でよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 確かに、日本としては、人口がこれから減っていくということに対しまして、経済的に衰退していくのではないかという心配をする向きもありますが、今、二〇三〇年のビジョンの一端を披瀝されましたけれども、この中におきましても、少子高齢化の時代においても日本の健全な成長を促していかなきゃならない、経済成長率におきましても、人口が減っても二%程度の成長率は確保していこう、そういう展望のもとにいろいろ考えた場合に、今、二〇三〇年に四千万人の観光客が来るというお話が出たときに、そんな無理なという声も一部に出ましたけれども、私は決してそういう夢物語ではないと思っています。

 というのは、今まで日本は五百万人ぐらいしか海外旅行をする人がいなかったのが、これを倍増しようとしたところが、既にもう一千万どころじゃなくて、現在でも年間一千六百万人を超える日本人が外国旅行できるようになってきた。そして、今は五百万人しか外国人が日本に旅行していないから、これを二〇一〇年には倍増して一千万人にしよう。ことしはもう六百万人を超えそうだと。そして、これから、中国、韓国等が日本に対して非常に興味を持って、観光客もふえております。

 今はパリだけでも年間五千万人の外国人が訪問しているということを考えるならば、日本だってパリに劣らないような魅力的な観光資源がたくさんあるじゃないかとシラク大統領に励まされるぐらいですから、そういうことを考えると、私は、今から二〇三〇年を目指して、四千万人の外国人観光客が、日本に来たい、日本には魅力的な歴史資源もあるし観光資源もあるし、何よりも日本の食がおいしい。この食がおいしい、これは大変な魅力だということを多くの外国人が指摘しているわけであります。

 そういう点を考えますと、我々は、少子高齢化で人口が減っていく中におきましても、高齢者の社会参加、女性の社会進出ということを考え、なおかつ、外国人が日本を魅力ある国である、魅力ある市場であるというふうに受けとめていただけるならば、私は、日本としても、この活力を維持しながら、国際協調体制をとってますます発展する可能性は十分にある、また、それに向かって実現の手だてを考えていかなきゃならないと思っております。

福田委員 総理の国際協調主義はよくわかりました。

 そこで、外務大臣に今度はお尋ねしますけれども、我が国の基本方針が、今のように国際社会との協調を重視するという方針が明確である、こういうことであるならば、足元の東アジア、その中でも、中国、韓国というところとの関係は早急に改善しておく必要があるのではないかというように思っております。

 中国、韓国両国とは、仮に先方に問題があると考えたとしましても、中長期的な両国の重要性ということを考えたときに、できるだけ早く考え方のギャップを埋めておくということが必要なのではないかと思います。その際、相手国のみならず、我が国にも求められることは、これまでの経緯を考察して、その上で将来を展望するということ、そして大局的な判断をするということが必要なのではないかと思います。

 前に申しましたとおり、我が国の国際社会における存在が非常に大きいということでございますから、このことには私はもっと自信を持っていいんだろうというふうに思いますよ。そして、そのかわり責任もあるんだということを自覚する必要があると思います。

 東アジアでは、日本がとりわけ中国との関係がスムーズでないといったようなことになりますと、それは世界のビッグニュースになるんですね。アジアにおける新たな不安定要素が生じたなんというようなことになりますと、それはいかがなものかなと。そして、その認識が仮に違ったといったことがあったとしましても、それらしく思わせてしまうと、世界各所にあります立案機関でもって戦略構想が変わってくる、変化してくるということにもなりかねないということでありますから、これはなるべく早く問題解決に努力をする必要があるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 福田委員御指摘のとおり、日中、日韓、それぞれ、何といっても近隣国でございます。これまでも、福田赳夫元総理を初め、あるいは福田康夫先生、大勢の皆さん方が大変な御努力をして、今日の日韓、日中のそれぞれの礎を築き、また、いい方向に大局としては向かっている、私はこう思っております。

 もちろん、個々の問題について意見は違いが、私は、国と国との関係ですからある意味ではあるのが当たり前かもしれない。特に、歴史認識において一致するといっても、国内ですら一致することが難しいんですから、まして国と国を超えるとなかなかそれは難しいかもしれない。

 しかし、そういうものを乗り越える努力というものを具体にしていかなければいけないだろうということで、日韓については、例えば共同歴史研究というものを三年間やり、またさらに新しいメンバーで引き続きやっていこうということを合意しております。

 日中においても、今、どういうテーマで、どういうメンバーで、どういう形でということを詰めておりますけれども、共同歴史研究を始めようではないかという提案を中国側にし、基本的には賛同を得ておりまして、そのような歴史認識という大変難しい問題においても、今具体の作業をこれから始めようということにしております。

 日中についてはそのほか、今、共同作業計画というものをお互いにつくってやっていこうではないかということを四月の十七日、私が訪中をした折に合意をいたしまして、それは本当にさまざまなレベルの交流を促進したり、あるいは過去にまつわる問題で懸案の事項が幾つもございますので、それについて適正な解決を図っていくといったようなことなど、より具体にそうした中身を今詰めている、そして具体的に作業をしていく。文化交流については、例えば日中交流基金というものを年末までに具体の形でまとめて、お互いにそれを活用してやっていこうではないかなどなど。

 というようなことでございまして、私は、日中関係、だれよりも大切だ、こういう認識を持ちながら、しかし同時に、これは日本だけの努力ではどうにもならない部分もございます。先方にも努力をしてもらう、そういう努力を求める部分もあるわけでございまして、双方がそれぞれ努力をしてよりよい日中関係を築いていく、そういうことが大切ではなかろうかと考えております。

福田委員 歴史認識の話が出ましたけれども、この歴史認識の問題でもって中国と正常な形で首脳会談ができないというのは、これはやはり正常でない、異常な状態だというように思っています。ですから、両国首脳は、やはり徹底的な議論をして、そして大局的な判断を示すということが必要なのではないでしょうか。それは、政府だけでない、また国民に対する義務でもあるというふうに私は思っております。首脳同士の忌憚のない会話ができますれば、中国とは重要な問題について相当程度の話ができるんです。また、我が国のためにとっても、中国とは協力関係を持っていなければいけない問題があるんだろうというふうに思います。

 一つの例、これは中国から発生する問題でありますけれども、環境問題がございますね。これは日本の問題でもあるわけであります。そういう問題との関連で申し上げれば、エネルギーの問題もあるんですね。これも、エネルギーから出る環境破壊というような問題もありますので、そういうようなエネルギー問題についても、やはり協力して話し合ってやることが必要なのではなかろうかなというように思っています。

 中国は石油資源の確保に今全力を挙げているようですけれども、過度にその調達努力をするということになりますと、資源競争をもたらしてしまうということになりまして、市場価格をつり上げる。結果は、国際社会にとっても、中国自身にとっても大きな負担になる、こういう問題なんですね。そういうことは、我が国は、もう既に第一次石油ショックのときに体験をしているわけであります。

 また、原子力発電所の建設、これは中国の中でもこれから傾斜して、この建設拡大にいくんだろうというふうに思いますよ。今もう既に九基ですか、ございました。さらに数基建設中であるというふうに、建設中と稼働中合わせて十一、二基あるんだというふうに聞いておりますけれども、これは、今から十五年後というと二〇二〇年です、二〇二〇年に今の五倍、少なくとも五倍の原子力発電所をつくる、こういうふうな計画があるようであります。これは、環境問題を考えれば、中国が持ってくれることは好ましいんです。

 ただ、問題があります。それは安全の問題なんです。原子力発電所がうまく機能していればいいけれども、もし万一事故とかそういうことがあったときに、排出する放射能、そういう安全の問題については、我が国はこれは他人事では済まない問題であるということでありますから、こういう面についても、日本は協力する余地はあるのではなかろうかというふうに思います。

 既に十年以上前から、日本に中国人を呼んで、そして原子力発電所の安全管理のことについて教習を行っています。もう二百人以上というふうに聞いておりますけれども、既にそういう協力が始まっているんですよ。民間の方がそういうことは早く、民間が考えているかどうか別として、案外早く、そういう協力関係というのはスタートしているというように言ってもいいのではないかと思いますけれども、そういうことを考えれば、今後の中国の原子力発電所の建設については、これは日本が積極的に関与してもいいんじゃないか。もちろん中国が希望すればの話ですけれども。そういうことで、我々自身としても、中国の原発の安全性というものについて自信を持って、安心していけるというようなことはあってもいいのではないか。

 しかし、その場合に、資本とかそれから技術の面で、例えば米国などと協力をする。そういう場合には、日米中の枠組みといったようなことで、このエネルギー協力、原子力開発協力というものを進めてもいいのではないかということを思うわけであります。

 しかし、これも、やはり首脳同士で忌憚のない話ができないような状況の中では進まないのだろうというように思います。これは日本の安全のためにもぜひ考えていただきたいというように思うのでありますけれども、大臣、どうですか。

町村国務大臣 世界のエネルギーとか地球環境というのは、もう中国抜きには考えられません。日本が今、例えば石油換算で五億トン、年間の消費量ですが、既に中国は十二億トンということですから、二・五倍ぐらい。これが、さっき出た二〇三〇年になると二十五億トンというんですから、とてつもない量のエネルギーを石油換算で使うということが予想されているわけでございますから、こうした地球環境、エネルギーの分野で、日本として中国に対して協力できる点は積極的に協力をしていかなければいけない。

 現実に、今原発のお話が出ました。もちろん安全性が最重要でございますが、原発建設に向けて既に各国の相当な、いわば受注合戦が現実にもう始まっております。今、中国の原発の幾つかは、日米共同でJVをつくり、ヨーロッパと対抗して受注合戦をやっているというのが現実の姿で幾つも見られるわけでございます。

 それはそれとして商売ベースの話として、しかし、今おっしゃったような安全性の確保といったようなことというのは、日本が世界に冠たる技術水準を持っているわけでございますから、積極的にそうした面も活用していくということが大切だろうと思います。委員御指摘のバイの関係、あるいはアジアの中の日中韓の関係、あるいはマルチの関係で、エネルギーあるいは環境に関するいろいろな枠組み、会議というのができておりますので、そういうものを積極的に活用していきたいと考えております。

福田委員 最後に十秒、言いっ放しにさせていただきますけれども、留学生の問題です。先ほど歴史認識のお話がありまして、私は思いますのですけれども、歴史認識問題のあるところからの留学生、これを大幅にふやすということは考えられませんかね。そういうようなことで、教科書でいろいろ教わっても、現地に行ってみたら違ったよ、そういうことを実感してもらうことがやはり国際理解を進めるために必要なのではなかろうかと思いますので、このことを提案させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

甘利委員長 これにて福田君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 今、含蓄のある前官房長官の御質問を聞いておりまして、官房長官時代に総理に御進言されたのかな、されなかったのかなと思ったわけでございます。

 まず、私、冒頭に、私が住んでおります兵庫県の尼崎におきますあの悲惨な鉄道事故、先ほど来お話がありますように、百七人の方が亡くなり、そして五百人を超える皆さんが大変な負傷をされたこの事故に対しまして、亡くなった皆さんに心から哀悼の意をささげますとともに、事故に遭われた、負傷された皆さんの一日も早い御回復を祈るものでございます。

 先ほどもお話ございましたように、日本の安全、安心神話というものが本当に崩れてしまったということについて、まことに残念な思いがいたします。こういった事故が起こるたびに、二度と再びこういうことは起こさないということを私たちも口にするわけですけれども、そういった言葉を吐いたところで、亡くなった人は帰ってこない。こう思ったときに、本当に私たちは、この皆さんの死をむだにしない、こういうことを強く銘記していきたい、そう思う次第でございます。

 きょうは、時間の都合、非常に短い時間でございますので、私は、中国の問題、主にそれに絞ってお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず、きょうのこの予算委員会、第一義的には中国あるいは韓国との外交課題が集中審議のテーマであったと思うわけですけれども、直接的に話題になっていったのは、あの中国の反日デモに見られるような一連の動きであります。この動き、始まりから終わりまで、普通の日本人の感覚からいきますと、二つの不思議というのがあると思います。

 一つは、要するに、今なぜ中国の皆さんがああいう格好で反日デモをするんだということが一つです。もう一つは、あのバンドン会議、先ほど町村外務大臣からのお話もありました、ジャカルタで行われたバンドン会議五十年を記念する会合で、総理があのような発言、いわゆる一般的に、国民から受けとめると、謝罪という格好で言われた。大体、謝るのは向こうじゃないのか。今回の問題に関して言えば、まず第一義的には中国じゃないのか。そのことが表に出ないで、何だかまた日本の総理大臣が謝った、こういうふうな印象でとらえられるということは非常にすっきりしない、こんなふうに私は思います。

 日本と中国との国交が正常化されて約三十年、正確に言うと三十三年目を迎えているわけですけれども、この間、前半は、いわゆる中日友好、日中友好という流れが続きました。しかし後半は、特にこの十五年ぐらい、いわゆる反日という感じの動きが強まってきているわけです。中国の方に視点を合わせれば、周恩来総理から胡耀邦主席に至るまでの流れというのは、明らかに親日というものが強くにじみ出た、そういう中国の指導者の流れがありました。しかし、今やそれが非常に難しくなっている。今、福田前官房長官のお話にもありましたように、なかなか首脳同士の会議もおぼつかない状態である。こういうふうな事態が続いているわけです。

 私は、戦前の日本の行動に対して、日本の侵略ということについて、明確にそれを謝罪し、その反省をするということについて全く異論はございません、当たり前のことでありますが、それでいいと思います。しかし、先ほど午前中の総理の答弁にもありましたように、戦後の日本の一連の行動につきましては、やはりこれは誇っていい、平和主義に徹した生き方というものについては堂々と言っていかなくちゃいけない、こんなふうに思うんです。

 こういうふうなとらえ方をした上で、先ほど福田前官房長官はかなり抑えて言っておられましたけれども、やはり総理の一連の行動、私は基本的には総理を支持しておりますよ、支持しておりますけれども、若干対中国の行動につきましては、いささか少し神経を逆なでし過ぎられる側面があるんじゃないのかな、こういうふうに私は思うわけです。

 そこで、どこかで決着をつけなくちゃいけないという意識を強く私は持っていたわけです。そこで、過去の、一九七二年の日中共同声明あるいは一九九五年の村山談話、そして一九九八年の日中共同宣言、こういう、過去において三つの主要な、いわゆる歴史認識に関する謝罪関連の意見表明というか、日本から発信したそういうものがあるわけですけれども、これに対して中国は、それぞれ細かくは申し上げませんけれども、中国に直接言ったものじゃない、中国を言わないでアジア全体を指したものじゃないかとか、あるいは、謝っていない、反省じゃ謝ったことにならない、あるいは口頭でなくて文書で、こういうふうな中国側の主張があったわけであります。

 私は、きょうここで質問をしたいのは、そういう流れの中で、決定版となるようなものを出される、ことしは総理は出されるに違いない、こう思っていたわけであります。ところが、今回のバンドン会議の中身を見ますと、先ほど同僚委員からもありましたけれども、いささかちょっとそういう決定打という観点からは遠いな。これは、先ほど来話をしました反日デモということにかかわって、それに引きずられての発言だったのかなと思いましたら、先日、町村外務大臣が外務委員会のやりとりの中で、かねてより用意していた、バンドン会議五十年ということで、総理としっかり相談をした上でかねてより準備したものだ、こういうお話をされました。

 しかし、それにしてはいささかちょっとばかり足らないものかな、こんなふうな思いがいたします。カードを切るのが早過ぎたんじゃないか、こういう思いがいたしますけれども、総理、この問題について御見解をお聞かせ願いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 アジア・アフリカ首脳会議、いわゆるバンドン会議に対しまして、私は早くから、四月に行われれば出席する予定でありますという意向をインドネシア側に伝えておりました。それは、昨年のスマトラ沖大地震・津波後に、一月、インドネシアのユドヨノ大統領と会談した際にも、このバンドン会議、津波の被害で果たしてできるのかどうかということをユドヨノ大統領は心配されておりました。そういう話もありましたけれども、もし予定どおり開催されれば日本も出席する意向であるということを伝えていたわけでありまして、その際には、日本の基本姿勢なり考え方を表明する場がある、いわゆるスピーチの時間があるということでありましたので、早くから、戦後この六十年間の歩みを、アジア・アフリカ諸国の首脳を前にして、今までの日本の姿勢なり実績なり、これからの考え方を表明しようと思って準備しておりました。

 しかも、時間は、間際になって、各国首脳が発言するので短時間に絞っていただきたいということで、決められた時間の枠内に何を言うべきか、重点的に考えてあらわされたことであります。

 全文を見ていただければ、過去の日本の実績を踏まえて、過去の戦争を反省しながら、今まで国際社会の協調体制、そしてアジア、アフリカに対する支援がいかに重要か。日本は、今後、アジアとアフリカの友好関係をもとにして、アフリカに対しましても日本としてできるだけの支援をしていく、そして二度と戦争をしてはならない、戦争によって経済の繁栄はない、平和の中に初めて経済の発展があり、国民生活が豊かになっていくんだという気持ちを率直に私は表明したつもりでございます。

赤松(正)委員 総理、今のお話は私はわかります。しかし、それは、私が先ほど言ったような、この問題に関する対中国という観点に絞って言えば決定版にはなり得ない、言ってみれば、また謝罪、反省の逐次投入ということになるんじゃないか。また将来、こういうことをしなくちゃいけない場面が起きてくる、そういうふうなことを懸念するということを指摘しておきたいわけであります。

 次に、町村外務大臣、先ほども話が出たわけですけれども、今回の日中間の関係、韓国も含めまして、五月七日でしたか、三国の外相会談が行われたわけでありますけれども、その場でいわゆる歴史共同研究の話について合意をされたということ、先ほど、対韓国あるいは対中国、韓国は三年前にやって一区切りがついた、新しいメンバーでこれからやろう、中国はまた新しい枠組みでやろう、こういう話でございます。

 私は、その際にぜひ、これは一つ提案でございますけれども、対韓国とのこの三年間の第一回目の集約というのは、古代と中世史それから現代史と三つのパートに分けてやったわけですけれども、ぜひとも近過去、今からさかのぼること十五年、こういったところに力点を置く、そういった歴史の共同研究というものを、韓国との間でももちろん、韓国は全体を見据えた、先ほど言いましたように、古代にさかのぼってのものを一応やっているわけですけれども、その上に近過去、この十五年ぐらいを中軸にした戦後の歴史研究というものをしっかり共同でやる必要がある。中国においてもそうだと思います。

 といいますのは、この十五年というのは、結局、冷戦後の十五年ということになるわけでありまして、先ほど、中国と日本の関係が当初はよかった、しかし後半厳しいというのは、文字どおり冷戦後にかかわってくるわけで、要するにソ連共産党の崩壊、いわゆる東西の対立というものが壊れて、かつて外務大臣とも議論しましたけれども、要するに中国共産党にとってみれば求心力を高めるために反日という目標が必要であった、こういうふうな規定づけをせざるを得ない側面があるわけでございます。韓国も長い間、軍事政権で苦しんだというか悩んだ時期があった。

 また、日本も、この十五年というのは、言ってみれば自由民主党の一党支配といいますか、そういう政治から連立政権の時代に変わってきたというふうなことで、この十五年というのは、お互いがその以前に比べて非常にわかりづらい側面があるということで、しっかりとお互いに認識を深め合う。なかなか難しい作業で、さっき町村外務大臣、今何か苦笑いしておられますけれども、国内でも難しいことが海外でという話がありましたけれども、しかし、やはりそれを真剣にしっかりとやらない限り、日本、中国、韓国、この北東アジアに本当の意味の安定、平和はやってこないと思います。

 そういう意味で、迂遠に見えるようでも、この歴史共同研究、せんだって外務大臣に直接このことを提案させていただきましたけれども、改めて、その中身については直近の過去の両国の、あるいは三国の、三国でやろうという提案があったようですけれども、まあ私は三国でもいいと思っているんですが、そういう問題についてじっくりと近過去の歴史を中軸に据えた議論を、ぜひ共同研究をやっていただきたいということに対しまして御答弁をお願いいたします。

町村国務大臣 貴重な御提言、感謝を申し上げます。

 韓国との間では、例えば日韓国交正常化まではテーマにして取り上げておりますが、ここ十年、十五年というところまでは至っておりません。

 中国との間で今後どうしていくか、これから議論をしていきたい。特に、中国の皆さんと話をすると、歴史に学び、歴史をかがみとしと盛んに言われますが、どうも彼らの言う歴史というのは終戦前の何年間のことなんですけれども、実際に日中の歴史というのは二千年以上の長い平和と友好の歴史があるし、戦後もまたそうであった。だから、歴史をかがみとしという、その歴史を余り狭い範囲でとるというのはちょっとおかしいんだろうな、私はこう思ったりもいたしております。

 いずれにしても、相手もあることでございますから、今、委員の御提言を踏まえながら、いろいろ相談をして、できるだけ意味のある歴史共同研究にしていきたいと考えております。

赤松(正)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

甘利委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時八分散会


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