衆議院

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第3号 平成18年10月6日(金曜日)

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平成十八年十月六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      赤澤 亮正君    新井 悦二君

      井上 喜一君    臼井日出男君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      大島 理森君    大野 功統君

      河井 克行君    河村 建夫君

      倉田 雅年君    佐藤 剛男君

      笹川  堯君    中馬 弘毅君

      土井 真樹君    中野  清君

      中山 成彬君    西村 康稔君

      野田  毅君    橋本  岳君

      馳   浩君    深谷 隆司君

      細田 博之君    三ッ林隆志君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      やまぎわ大志郎君    安井潤一郎君

      与謝野 馨君    若宮 健嗣君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      大串 博志君    太田 和美君

      岡田 克也君    川内 博史君

      菅  直人君    園田 康博君

      田中眞紀子君    高井 美穂君

      中井  洽君    原口 一博君

      馬淵 澄夫君    前原 誠司君

      松木 謙公君    三谷 光男君

      山井 和則君    赤羽 一嘉君

      伊藤  渉君    西  博義君

      東  順治君    丸谷 佳織君

      佐々木憲昭君    志位 和夫君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

      亀井 久興君    徳田  毅君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣         菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      久間 章生君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     佐田玄一郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   総務副大臣        田村 憲久君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   国土交通副大臣      望月 義夫君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   防衛庁長官政務官     大前 繁雄君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   文部科学大臣政務官    水落 敏栄君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   経済産業大臣政務官    松山 政司君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月六日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     橋本  岳君

  中山 成彬君     新井 悦二君

  野田  毅君     やまぎわ大志郎君

  馳   浩君     宮下 一郎君

  深谷 隆司君     若宮 健嗣君

  三原 朝彦君     安井潤一郎君

  山本 公一君     土井 真樹君

  小川 淳也君     田中眞紀子君

  大串 博志君     菅  直人君

  原口 一博君     高井 美穂君

  前原 誠司君     園田 康博君

  松木 謙公君     太田 和美君

  東  順治君     伊藤  渉君

  佐々木憲昭君     志位 和夫君

  糸川 正晃君     亀井 久興君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     中山 成彬君

  土井 真樹君     赤澤 亮正君

  橋本  岳君     臼井日出男君

  やまぎわ大志郎君   野田  毅君

  安井潤一郎君     三原 朝彦君

  若宮 健嗣君     深谷 隆司君

  太田 和美君     松木 謙公君

  菅  直人君     大串 博志君

  園田 康博君     山井 和則君

  田中眞紀子君     小川 淳也君

  高井 美穂君     三谷 光男君

  伊藤  渉君     丸谷 佳織君

  志位 和夫君     佐々木憲昭君

  亀井 久興君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     山本 公一君

  三谷 光男君     原口 一博君

  山井 和則君     前原 誠司君

  丸谷 佳織君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  西  博義君     東  順治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として社会保険庁長官村瀬清司君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。昨日に引き続き、菅直人君。

菅(直)委員 昨日に引き続き、質疑を続けさせていただきます。

 まず、北朝鮮の核実験を行うという宣言に関して、最近の報道では、実際に近日中にも実験が行われるのではないか、そういう憶測といいましょうか報道も飛び交っております。

 総理にお聞きいたしたいんですが、この実験が行われる可能性についてどのように認識されているのか。それをとめる手だてとして、今度、日中あるいは日韓の首脳会談も予定されているわけですが、どのような形でそれを押しとどめることを考えておられるのか、見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮が実際に核実験を行うかどうかについてはまだ定かではございませんが、現在、情報の収集、分析を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、北朝鮮が、今までも、拉致問題やミサイル問題、また核の開発について国際社会の懸念にこたえようとしていない中で、我々は対話と圧力の姿勢で、北朝鮮がこうした姿勢を続ける限り現状はもっと悪くなる、そう認識させるべく圧力を高めてきているところでございますが、さらに核実験ということになれば一層厳しい状況になるという認識を北朝鮮に持たせるべく、国連の場において議論し、メッセージを出さなければならないと思います。

 また、日中、日韓それぞれ首脳会談を行い、状況をお互いに現状認識について共有し、また認識を共有することが大切ではないか。そして、それぞれの国とともに、北朝鮮にこうした暴挙を行わないようにメッセージを出したいと考えています。

菅(直)委員 総理も副官房長官として同席された日朝平壌宣言の中で、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」こういう確認がなされていますね。

 この平壌宣言はまだ生きていると考えられているんでしょうか、それとも、一方的に北朝鮮側が、今回の行動を含めて、前回のミサイル発射を含めて、破棄したと考えられているのか、その見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々政府としては、そうした国際的な約束について、北朝鮮に、平壌宣言にのっとって遵守するように、そして、拉致問題を初めさまざまな問題を解決するように今求めているところであります。

菅(直)委員 相変わらずはっきりしませんね。もちろん、求めるのは当然です。私たちもそうすべきだと思います。そう書いてあります。

 しかし、現実には、せんだってもミサイルが何発か飛んだわけですし、また、今回は、国際的なルールに全く反する形で核実験を行うとまで宣言したわけで、そういう事態に至ってこの宣言がまだ生きていると考えているのか考えていないのか、そこを聞いているんです。そこをちゃんと答えてください、逃げないで。

安倍内閣総理大臣 今の私の答弁を聞いていただければよく御理解いただけると思いますが、この宣言が生きているからこそ、この平壌宣言の精神にしっかりとのっとった行動をするようにと我々は求めているところであります。

菅(直)委員 今の総理の答弁は、その前よりははっきりしました。生きていると考えているから、これに基づいてそれを遵守するように求めるんだと。しかし、私が感じるところは、生きている生きていると言っても、明らかに違反している。明らかに違反している行動をとっているけれども、それでも生きていると言っているのは、何か私は、必ずしもそれが納得できる答弁とは言えません。

 そこで、この問題は、これからの日本の安全保障のまさに最大の課題でありますので、中国や韓国を含めた六カ国会談の再開を目指して努力していただくことは、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 もう一点、少し違った問題を御質問しておきたいと思います。

 総理は、改めて、総理大臣に就任されてから、国民との対話を重視するというふうに所信表明でも述べられております。しかし一方では、報道によりますと、それまで小泉政権のもとで、当初毎日二度、ぶら下がりというんでしょうか、取材を認めていたのを、原則一度にするといった形をとられたと報道されております。それについて、国民の皆さんとの対話を重視するという所信表明で言われたことと取材を従来よりも削減されたことは私は矛盾しているように思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私は全く矛盾していると思いませんね。少なくともテレビカメラの前で私は一日一回必ずぶら下がりに応じて、質問に答えているわけであります。

 小泉政権当時は、カメラが入ったものを一回、そしてペンだけのものを一回午前中に行っていたわけでございます。しかし他方、ではインターネットテレビ等々はどうなのかといろいろな意見もある中において、今、記者クラブ側と話をしているところでございます。

 官房長官が一日に二回記者会見を行っております。それ以外にも、行っている政策については十分にブリーフを行っているわけでありまして、私は、国民との関係においては、こうした場において、もちろんいろいろな質問にお答えをしている。

 あるいはまた、メールマガジンを発行したり、タウンミーティングにおいて双方向の国民との対話を進めています。また、官邸からもしっかりとインターネットを通じたメッセージを発出していく。そしてまた、国民の皆様からのメール等の御意見も伺っているところでございます。

 そういう意味において、私は、今後とも国民の皆様との対話を重視してまいりたいと考えています。

菅(直)委員 これも私は国民の皆さんの判断を待ちたいと思います。

 確かに、取材というのは大変なときもあります。しかし、一般的に言えば、私たちもインターネットでの記者会見の公表などもしておりますが、双方向といいながら、その間にしっかりした質問者がいなければ、結果としてはワンウエーの方向と同じになります。双方向というときには、やはりしっかりとした質問者がある形、ある意味では、記者会見とか、ぶら下がりのような取材でのやりとり、あるいはこういう予算委員会のやりとり、国民にかわって記者の皆さんが聞かれることに答えることが重要だと私は思っておりますので、それを半分に削減したのが矛盾しないというのは、私には矛盾しているように思えますが、これは国民の皆さんにその見方をお預けしたいと思います。

 そこで、きょうは少し国内の政治についてお話をしたいと思います。

 総理は、格差について、所信表明などで、格差が必ずしも広がっているという認識を示されてはおりませんよね。表現としては、格差を感じる人がいれば、それに光を当てるのが政治の役割である、こういう表現をして、格差そのものが拡大しているという認識は示されていないようでありますが、この認識について改めてお聞きします。

 格差は拡大しているんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる格差についてどういう数値をもって判断するか、こういうことだと思うわけでありますが、ジニ係数によるとだんだん格差が広がる傾向が出ているわけでありますが、しかし他方、その中で老人の世帯がふえているという現象を差し引いていきますと、基本的には格差はそれほど拡大はしていないという見方もある。また、例えば中流意識を持っている方の構成比率についてもそれほど大きな変化が出てきていないという数字もあるわけであります。

 一方、非正規雇用あるいはフリーター、ニートがふえてくる中において将来の格差拡大が懸念されているのも事実でありますし、また、都市や地方間の格差感があるのも私は事実であろう、このように申し上げているわけであります。

菅(直)委員 前半は経済学者のような答弁でありましたが、政治家として答弁されるんであれば、自分の実感を答えられるべきじゃないでしょうか。

 私は、この間、大変、例えば何十億、場合によってはそれを超えるような大きな資産を若くして得る人もかなり出てくる一方で、三百万円あるいは二百万円の年収以下の人がだんだんふえてきて両極化が進んでいる、それをいろいろなところで聞きますし、そういう実感を、私たち、地元などを通して、全国歩いていて感じるわけであります。

 総理として、そういう実感を持って当たられるのか、ジニ係数といったような経済学的なところでしか感じられないのか。私は、これは、政治家である総理のこれからの行動をやはり大きく左右するのではないか。

 そこで、具体的な例を一つ挙げてみたいと思います。

 まず表をお示しいたします。これは、比較的そうたくさんではない、まあまあの年金を受け取っておられる年金受給者が、まさに年金受給者をねらい撃ちしたかのような形で負担が急増している。これは多分、与党の皆さんも地元で聞かれるんだと思うんです。住民税がこんなに上がった、従来は均等割しか払っていなかったのが、これが十倍にもなった、あるいは介護保険料がどんどん上がっている、私たちにもう生きていくなと言うのかという悲鳴が聞こえてきませんか。

 それで、私も調べてみました。これは大阪の、衆議院でいえば九区、茨木の数字であります。しかし、厚木も私の住む武蔵野も大きくは違っておりませんので、茨木の数字を挙げてみました。

 まず、〇一年。小泉内閣が誕生したときには、年金に対する控除が百四十万、老年者控除が四十八万、そして配偶者特別控除が三十三万、これは配偶者ですから高齢者だけではありませんが、こういう控除があった関係で、これだけで合計二百二十一万の控除でありました。これ以外にも基礎控除とかありますので、二百五十万程度、年金だけを受け取っておられる方は、実際上は税金を払わないで済んだわけであります。

 しかし、〇七年。これは、〇六年にもう既に決まっているという意味で〇七年の数字をあえて挙げさせていただきます。つまりは、定率減税などが全部終わった後の数字でありますが、公的年金控除が二十万下がって百二十万になっております。老齢者控除の四十八万がなくなっております。この二つは年金受給者だけに係る、その世代に係る控除がそれだけ削減された。二つだけで六十八万円の控除がなくなっております。配偶者特別控除は一般の人もありますが、これもなくなった結果、控除が二百二十一万から百二十万、ここだけで変わりました。これによって、それまで課税所得以下と認定されていた年金受給者の皆さんの中で、かなりの人が課税世帯に移ったんですね。

 課税世帯へ移るとどうなるか。単に税がかかるだけではありません。介護保険の場合に、ここに書いてありますように、基準保険料に対して、非課税世帯は、その所得によって〇・五から一・〇という軽減措置が設けられております。しかし、課税世帯になると逆に基準保険料に一・二五という、つまり、それほど所得が低いわけではないという見方で、課税世帯に対しては基準保険料に一・二五という形になっております。

 つまりは、非課税世帯から課税世帯に変わった。所得が上がって変わったんなら、これはある程度納得もできるでしょう。制度が変わったために、同じ額であっても、非課税世帯から課税世帯に変わったために、介護保険料が、この基準そのものが変わってくるんですね。

 その結果がどうなったかをお示しします。年金収入が、夫の年金が二百四十万円の夫婦世帯の場合、〇一年には、税は、所得税はゼロ、あるいは住民税も所得割はゼロでありまして、負担総額が十七万六千円であったものが、何と、〇七年、来年の参議院の選挙までこの制度が続いたとすると、負担総額が、介護保険料が上がり、国民健康保険料が上がり、それに住民税、所得税が上がったために三十万九千円になる。何と十三万三千円の負担増、一・八倍程度になろうとしております。これは、福井さんのように二千万、三千万の所得の上に七百万の年金世帯じゃないんですよ。二百四十万の年金だけで生活しておられる世帯、夫婦でこういう状況です。

 こういう実態をまず総理は御存じですか。御存じなら、こういうことが、結果において、比較的所得の低い年金受給者に、より二極化の、つまり格差を広げる結果になる、このように考えますけれども、いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 詳細については厚生大臣からお答えをいたしますが、先般の年金制度の改正は、いわば年金受給者世代と現役世代、あるいはまた世代間の公平性を確保するためのものでありまして、そういう観点からの改正でもあったというふうに承知をしております。その中で、基本的には、平均的な年金以下だけで生活をしている方々に対しては新たな負担はない、このように承知をしております。

菅(直)委員 ちょっと今の答弁は、私は納得できません。

 今の総理の答弁だと、年金だけで生活している受給者には負担がふえないと言われたけれども、具体的に示したじゃないですか。これは衆議院の調査室でつくらせた資料ですよ。

 総理は負担がふえないと言うんですか。ふえているじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 私が今申し上げましたのは、平均的な年金以下だけで生活をしている方々に対しては新たな負担増はないというふうに認識をしております。

 その中で、先ほど申し上げましたように、こういう制度改正については世代間の公平性ということも考慮しながら改正が行われた、このように認識しております。

 詳細については厚生大臣から答弁をいたします。

柳澤国務大臣 菅議員にお答え申し上げます。

 まず最初に、税の問題ですけれども、税の問題は、菅議員も御承知だと思いますけれども、我々は従来は、高齢者は即弱者である、低所得者であることが多い、あるいは所得に担税力がない方が多い、こういうような考え方で、高齢者なるがゆえの控除をいろいろたくさん設けておったわけであります。しかし、高齢者社会が徐々に進行するに従って、我々は考え直すべきである、こういう認識に達したのです。

 それは、高齢者であるから、その年齢だけで控除の制度を設けるべきではない、やはり高齢者も現役世代と同じように、稼得する所得のレベルに応じて必要な控除を設けるべきである、こういう考え方に転換したのでございます。それが老年者控除の廃止でございます。

 それからまた、公的年金等控除も、実はこれは、年金は給与の後払いというような考え方で、年金についても給与所得控除と同じような控除を設けるべきである、これで、名前を変えまして公的年金控除ということにしたんですが、このレベルが現実の現役世代の給与所得控除に比べて割高というか、レベルが高かったわけであります。そうしたことを調整いたしまして、これについては減額という措置をとったということでありまして、この点についてはやはり御納得、御理解をぜひ賜りたい、このように思います。

 さて、その次に、実は同様の、これは国税の公的年金控除、老年者控除でございますが、地方所得税、住民税につきましても同じようなことがございまして、それぞれがそれに応じて引き下げられました。若干時間的な前後の問題、特に地方税は後になったわけですが、そういうことが起こったわけです。

 そうしますと、介護保険料あるいは国保といったものは市町村が大体保険の主体でございますので、自分のところの地方税にスライドしてこれが定められているということがございます。したがいまして、ちょうどこの地方税の課税最低限、課否の境界線でありますが、それがおおむね二百六十六万までは今までは非課税だったものが、これが二百十一万に下がるという事態が生じました。

 今総理がおっしゃった、通常のモデル年金をもらっている、あるいは年金だけで世帯が成り立っているというところは大体二百万ぐらいでございますから、この中に入って、地方税の変動による影響は受けない階層に属しておられるということを総理はおっしゃった、こういうことであります。

 そこで、今例に出されました年収二百四十万の世帯につきまして、茨木市の例を挙げたんでございますけれども、私ども、国民健康保険料がこんなに大きな幅で図示されているということはほとんど理解ができません。こんなに影響は受けない、国保はほとんど影響を受けません。若干、もう何千円の単位でございます。しかも、四年間にわたって徐々に平年度化に向けてやるというような調整をしておりますから、こういったことはほとんど我々は理解ができないのです。かなり強調、あるいはデフォルメが行われているというふうに私は考えるわけでございます。

 そういうようなことで、この茨木市の例、我々は、茨木市のように、市町村が現実に保険者でございますので、それぞれのところが独自に保険料は規定しているということもありますので、この茨木市の例については、すぐコメントを求められても私もそのコメントをする用意がございませんけれども、基本的には、今総理がおっしゃったように、二百十一万以内の年金所得者であれば、これは何らの影響を受けない。それから、二百十一万から二百六十六万についても、かなりきめ細かな実は負担調整措置を講じているというのが実態でございますので、御理解をお願いしたいと思います。

菅(直)委員 柳澤さんはどちらの大臣ですか、財務大臣ですか。

 私が申し上げたこの表をよく見てください。

 まず、国民健康保険料がデフォルメされていると言うけれども、余り変わっていませんよ、これ。一番ふえたのは介護保険料と税負担がふえているんですよ。そして、いいですか、一番ポイントはここなんです。つまり、たしか以前の大臣が言われたのかどうか、私はこれは聞き伝えですから正確ではありませんが、税制の改正が、介護保険料のこのランクを上がっていくというような影響に関連しているということは考えていなかったんだということをだれかが言われたと聞いております。

 つまり、税制は財務省ですね。しかし、現実には、ここに書いてありますように、非課税世帯が課税世帯になると、介護保険料の基準保険料が上がるだけではなくて、基準保険料の問題ではなくて、基準保険料に掛ける軽減措置がなくなるという形で二重にきいてくる。ダブルパンチなんですよ。

 私が厚労大臣にお聞きしたかったのは、このダブルパンチに関してどういうふうに認識されているかというところでも答えていただけるのかと思ったら、税制についてばかり答えられるので、ついつい、どこの大臣かとお聞きしたんです。

 そこで、もう一度総理にお聞きします。

 総理は、平均的な年金収入の方は負担増がないと言われました。確かに、今の二百十一万まではそうかもしれません。しかし、現実に二百四十万といえば、決してそんなに平均から大きく上に乗った人ではありません。その人でさえこれだけふえるんです。しかも、それは税だけではないんですね。いいですか、税だけではないんですよ。介護保険なんですよ。さらにこれに加えて、この十月からは医療費の問題でも自己負担がふえます。皆さん、聞こえていませんか、本当に地元で。私たちはもうこれ以上長生きするなと言うのかという悲鳴が聞こえていませんか。

 私は、そういうことからして、少なくとも公的年金控除に関しては、引き下げたのは誤りではないか。公的年金控除は、少なくとも、もし老年控除を引き下げるのであれば、年金だけで生活している人に一番きくわけですから、福井さんのように二千数百万も年金以外の収入がある人はいいですよ、老齢年金控除がなくても。おっしゃるとおりです。しかし、年金だけで生活している人にとっては、公的年金控除は引き下げるのではなくて、老年控除を引き下げたのであれば逆に維持する、あるいは引き上げるという措置がとられて私はしかるべきだったと思いますが、総理はいかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が答弁させていただきましたように、これは、いわば現役世代の方々と年金で生活をしておられる方々、現役世代の方々も税金をもちろん支払っておりますし、そういう中においていろいろな保険料も支払っているわけであります。介護保険料もそうでしょう。その中で、同じ所得があれば、やはりある程度、年金生活者の方々にも御負担をお願いしなければいけない。

 しかし他方、標準的な年金だけで生活をしておられる方々以下の方たちに対しては当然配慮がなされているわけでありますし、そしてまた、所得の低い方に対しましては、介護保険や医療保険では、住宅と施設の給付と負担の公平性の観点から、食費、居住費について自己負担を求める改正が行われたわけでありますが、そういう方々に対しましては適切に配慮をしていると思います。

菅(直)委員 この問題だけに絞るわけにいきませんですが、今、最後に総理が言われたところの、適切に配慮はされていると。つまりは、一般的に言うと、非課税世帯について軽減措置を設けると言ったのは、これは介護保険料に対するそういう措置なんですよ、もともとは。しかし、この基準が課税世帯か非課税世帯かで変わるんですよ。こういうところがダブルパンチだと言っているのに、相変わらず総理は一般的なお答えしかない。ダブルパンチになっているということの理解がないんですね、結局。ですから、私は今の総理の答弁を聞いていると、やはりわかっていないんだなと。

 本当に年金だけで生活しておられる夫婦二人の、夫婦の生活者の人の悲鳴に近い声が聞こえませんか、皆さん方の中でも。

 私はそれに対して、税の公平性、大いに結構です、再チャレンジ、大いに結構です。しかし、七十、七十五の老夫婦が再チャレンジしろと言われても、これからの人生を年金で何とかやっていこう、これなら何とかいくかなと思っていたら、基準が変わったから、金額が上がったからじゃないですよ、基準が変わったから介護保険もあなたのランクは今度は一・二五倍の方ですと。

 この点については、来年の参議院選挙での私は最大の課題だと思っています。いや、今度の衆議院の統一補選。これは茨木の例ですけれども、神奈川の十六区の厚木もほぼ同じ数字です。もし反論があれば、大いに選挙の過程の中で反論していただきたい。

 そこで、次の問題に移ります。

 先日、私、岐阜県庁に行ってまいりました。税金の無駄遣いというよりも、税金の猫ばばを組織ぐるみでやっていた岐阜の調査に行ってまいりました。現知事、現労働組合の委員長、あるいは調査委員会の弁護士さんなどにお会いをいたしました。報告書もいただきました。

 それを見てつくづく思ったのは、現知事はついせんだってかわられたばかりでありますが、前の知事あるいは元副知事、そして労働組合を含む県庁挙げての上から下までの組織的な税金の猫ばばである。私はその場で、これは背任に当たるんじゃないですか、背任で訴えるべきじゃないですかと調査委員会の弁護士さんにも申し上げましたが、残念ながら、現知事もそこまでは首を縦に振られませんでした。

 ここに報告書がありますけれども、この中に、当時の知事の梶原さんのことや、当時の森元副知事のことが出ております。

 ところで、平成八年度、三重県や愛知県などの近県で不正経理が次々と明るみに出て実態解明が進んでいたところから、梶原前知事も、岐阜県で総点検すべきであると考えていた。ところが、平成八年三月に自治省から赴任してきた森元元副知事は、問題が表面化する前に知事がイニシアチブをとって総点検すれば、知事のために苦労してきた職員から批判が起きたり、職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え、梶原前知事に対して、梶原前知事の出張旅費の一部に不正経理による資金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し、事態の推移を見守ることを進言した。その結果、前知事もこれを了承し、しばらく様子を見ることになった。

 梶原前知事は、森元元副知事との間で前記のようなやりとりはなかった旨述べているが、森元副知事の供述は、これ、御本人ですよね、森元副知事の供述は極めて具体的かつ自然なものである上、梶原前知事が現にそのころに不正経理の資金の存否について徹底的な調査をしなかったことも事実であって、同供述の信憑性は高いと考える。

 そうすると、森元副知事の梶原前知事に対する上記進言がなければ、また、梶原前知事がこれを了承せずに徹底的な調査を行っていれば今日の事態を招かなかった可能性が高く、当時の両氏の決断は極めて重大な意味を持つと考えられている。

 総理、この森元副知事、今どこにおられるか御存じですか。

安倍内閣総理大臣 現在、参議院議員であります。

菅(直)委員 いずれの党に所属されていますか。

安倍内閣総理大臣 それはもう御承知のように、自由民主党であります。

菅(直)委員 私は、労働組合の責任もはっきりあったと思います。当時の出納長がもとの労働組合の委員長で、預かってくれと言われたけれども、一部は使ったそうでありますが、大変な問題です。

 しかし同時に、当時の知事、当時の副知事が責任者であったということから考えて、まさに組織ぐるみの税金の、これは無駄遣いじゃないですね、まさに猫ばばですよ。そういう人物が、自民党に公認されて参議院議員になって、今活動されている。

 私は政治家として責任があると思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、森元さんがまるで何かそのお金を流用したかのごとく……(菅(直)委員「言っていないじゃないですか」と呼ぶ)いや、猫ばばという言い方だったですよね。そういう印象を今発言の中で与えているのは、それはおかしいと私は思います。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 それまで慣例的に続いていた中において、それぞれの判断だったということだと思います。

 つまり、それはやはり、労働組合の中でそういうことが慣行的に行われていたという大きなまず問題があったということを認識しなければならないのではないか、このように思います。

菅(直)委員 この報告書を読まれればわかりますが、この報告書で報告されている労働組合の関与は、比較的最近、そういういわゆる裏金を隠す目的だったんでしょう、組合の金のような形で預かるといっても、実際は一部使っているわけですが。しかし、実際には数十年前から県ぐるみで行われていたということをこれは認識しているんですよ。組合が始めたというよりも、組合ももちろん知っていたんでしょう。しかし、当時の知事や副知事が知っていたということがここにはっきり出ているんです。

 自民党の皆さんは、何か税金の無駄遣いがあると、組合が中心になってやったように言われますが、ではもう一つ、この問題と違う問題を提示してみます。

 官製談合というのがありますね。私は何回も、前の小泉総理の時代にやりました、官製談合。防衛施設庁の官製談合、道路公団の官製談合。多くの中央省庁で、つまりは、発注者がわざわざ高い価格のその価格にそろえるように順番を決めさせている。なぜそんなにわざわざ高く発注するのか。それによって天下り先をつくらせる。天下り先をつくるために高い値段で受注させて、裏金というのか何というのかわかりませんが、不当な利益を上げさせる。

 私は、そういう官製談合と天下りは表裏一体だから、官製談合をやめさせるには天下りをやめさせるべきじゃないか。もっと言えば、天下りした企業には発注をやめたらどうかと何度もこの委員会で前総理にお聞きしましたが、残念ながら、小泉総理は一度として、官製談合、天下りを廃止するために天下った先には発注しないということについては、とうとう答弁すらされませんでした。

 それが安倍政権になって少しは変わるのかと思っておりましたら、所信表明の中で、あるいは代表質問の中で我が党の幹事長あるいは政調会長が天下りについて聞きますと、わざわざ答弁は、官僚の皆さんの再就職問題につきましてはと答えているんです。天下りという言葉を何か避けているんですね。

 しかも、その答弁の中で、今でさえ事実上骨抜きになっている、あるいはすっぽ抜けになっている二年間の天下り規制を廃止する。つまり、すぐでも天下りができるようにする、そのかわりに関与を規制する。しかし、幾ら関与を規制すると言ったって、これまでだって関与してきたことでチェックができていないわけですから、結局は、自由民主党という政党は官僚の天下りはタブーなんだ。タブーがないと言いながらタブーなんだ。

 私は、この五年間、小泉政権で何度もこの問題を取り上げましたが、とうとう一度としてそれに前向きな答弁がなかった。前向きどころか、公然と官僚の天下りを、これまで法規制していたものまで認めていこうと。これで税金の無駄遣いがなくなるんですか。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私が申し上げておりますのは、今までのように、官と民、これは全く別々の存在として交流がないということではなくて、民から優秀な人材は官において一定の期間活躍していただく、あるいはずっと活躍をしていただいてもいいんですが、あるいはまた官から民に行って民の実態を、経験を積んだことによって、もう一度その経験を生かして公のために仕事をしたいという人がまた入ってくる、こういうダイナミックな仕組みに変えていくことが私は大切ではないか、こう考えているわけであります。

 その中で、私は、例えば官邸機能強化においても、しばらくの間、民間にいた人をまたもう一度官邸において仕事をしてもらおう、そういう仕組みをつくっていきたい、こう考えています。つまり、労働の流動化を図っていく、人材がより活性化されていくような全体の仕組みを考えていく中で、いわゆる天下り、また公務員の再就職の問題も私は位置づけていかなければならないと思います。

 そして、その中で、例えば絶対に二年間、五年間、では、ますます長くすればそれでいいのかということではないんだろう。つまり、かつて役所にいたことを利用して仕事を得たりしてはだめだ、そういう人に対しては行為規制として厳罰をかけていく、これが私は一つの考え方ではないかと思います。

 そういう中において、今後、どうこの公務員の再就職の問題も含めて考えていくか、検討をしてまいりたいと思います。

菅(直)委員 国民の皆さんによく聞いていただきたいんですね。

 私は何度もこの場でも申し上げましたが、大体、国、地方あるいはいろいろな公的団体が年間に調達する公共調達は約四十兆円近くに上ります。一般的に、官製談合が摘発された後、入札価格の上限に対して二割から三割価格が下がっております。二五%が官製談合などによって高いものを買わされている、大体そういう数字だと私は見ておりますが、四十兆の二五%というと年間約十兆ですね。つまりは、それほどの規模のものが、無駄遣いというのか、天下りのために使われているということを総理はわかっていないんでしょうか。少なくとも官房長官として同席されていたはずです、私の議論に。そして、今、一般的な話にすりかえられました。

 しかし、実際には、防衛施設庁が発注した先、道路公団が発注した先、そういう発注した先のいろいろなメーカーに天下りが行っているんじゃないですか。天下りと言っているのは、何も、例えばどこかの大学の先生になった、どこかのシンクタンクに行かれた、だれも天下りなんて言いませんよ。役所が役所の権限でもって、あなたのところ、うちの官房長がやめるから、次官がやめるから、このぐらいの待遇で二年間は面倒を見てくれよ、三年間見てくれよ。つまり、国の権限を盾にしてやっているのを天下りというんですよ。それを一般的な話にすりかえる。

 私は、総理はもうちょっと歯切れのいい総理大臣かと思っていました。すりかえばかりじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる官製談合については今までも議論がございました。談合の排除を徹底していくというのは私の内閣の方針でもあります。そのことはまず申し上げておきたいと思います。

 公共調達の適正化に向けて私どもも取り組んでまいります。その一環といたしましては、一般競争入札の拡大といわゆる総合評価方式の拡充を柱とする入札契約の改善にさらに私たちは取り組んでまいります。また、入札談合等関与行為の排除や罰則の強化などを内容とする入札談合等排除防止法案が現在議員立法によりまして国会に提出をされ、継続審議となっていると思います。

 いずれにいたしましても、今委員が御指摘になった官製談合については徹底して排除をしてまいります。

菅(直)委員 安倍総理にも一つだけ提案をさせていただきます。以前、小泉総理にも提案いたしました。官製談合をやめさせる手だてがあるんですよ、総理の一存で。

 安倍内閣として、関連した官僚が天下った先には発注しない、こういうふうに決められたらどうですか。

 何も、天下りが欲しくて天下りを受け取っているメーカーが大部分じゃありません。ほとんどは、天下りをとらないと仕事をくれないんではないかということ、それで天下りをとっているんです。ですから、関係のないところに職を求められるのは大いに結構です、天下り、いわゆる権限の範疇でないところに。

 ですから、安倍内閣として、この次の閣議で、閣議の了解事項でも結構ですよ、安倍内閣としては、今後、関連した官僚が天下った、今後で結構ですよ、これまでのことは言いません、今後、天下ったところには、安倍内閣が続く限り発注はしない、こう決定されれば、少なくとも国の発注に関する官製談合はなくなる。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 要は、官製談合を排除、全くなくしていくことが大切だと思います。それを行っていくために我々はしっかりと取り組んでまいります。

 他方、公務員とはいえ、これは職業選択の自由もあるわけでございます。そこで、我々は、そうした中において、結果としてしっかりと官製談合がなくなるように取り組んでまいります。

菅(直)委員 これも小泉内閣の悪いところの踏襲ですね。とうとう天下りについては、そうした改革をするということを一歩なりとも出ない。結局はタブーだということですよね。

 そこで、次の問題に移りますが、私たちは、社会保険庁は解体すべきだということを従来から言ってまいりました。

 私は、二〇〇四年に、社会保険庁が、私が厚生大臣時代のその期間だけの年金、国家公務員共済の長期給付を受けたと間違ったようでありますが、専門家がそういう間違いをして、国民健康保険から脱退する手続をとれということで脱退という形になりまして、その後、それは間違っていたということで、その未加入は取り消されております。そういった契機もあって、社会保険庁とはその間いろいろやり合ってまいりました。

 そういった個人的なことを超えて、社会保険庁については余りに問題が多い。我が党の長妻議員がまさにそこにおける無駄遣いを言って、そして、我が党としては、こういう役所は必要ない、ある意味では税の徴収と一緒にした形にすれば社会保険庁は解体していいんだ、こういうことを主張し続けてまいりました。

 そこで、はっきりお答えください。総理は社会保険庁を解体するんですか、それとも解体的見直しなんですか。どちらですか。

安倍内閣総理大臣 私は、もう既に申し上げておりますように、解体的な見直しを行っていく。

 要は、国民にとって親切でサービスをしっかりと行ってくれる組織、そして信頼できる組織に変わっていけばいいわけであります。その組織の形態を、我々はこれから議論を行い、考えていかなければならない。国民に信頼を得ることができる新しい組織をしっかりと私たち議論し、つくってまいります。

菅(直)委員 社会保険庁の解体を断行するということなのか、解体を断行するのではなくて解体の見直しを断行するということなんですか。どちらですか、もう一度きちんとお答えください。

安倍内閣総理大臣 今もう既に政府は法案を提出しているわけであります。これも社会保険庁の抜本的な改革でありますが、果たして、本当に解体的な出直しになっているかどうか。あるいはまた、必ずしもこれは国がやる仕事かどうかということも含めてさらに議論を深めていく。そして、その結果、国民から信頼を得ることのできる組織に生まれ変わらせなければならないと考えています。

菅(直)委員 総理、これを見ていただけますか。これは自民党が出されたものですか。社会保険庁長官、これを見てもらえますか。

 この資料は、我が党同僚議員が、自民党でたくさん配られているということで手に入れたものでありますが、まず信憑性について、私も、昨日の夜でしたので、総理・総裁にお聞きするのが一番正しいと思いますので、お聞かせをいただきます。いかがですか。

 では、社会保険庁長官でも結構です。村瀬長官、御存じですか、この事実を。

村瀬政府参考人 自民党の方でお配りになられているということは承知をしております。

菅(直)委員 総理はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 私はこれ自体を見たのはきょうが初めてでございますから、よく読んでみないとその内容についてわかりませんが、自民党が出しているものであれば、当然、責任を持って出しているものだと思います。

菅(直)委員 少なくとも社会保険庁長官がそういう認識を示されたので、本物だという前提で話をさせていただきます。

 まず、本物だとすれば表紙から変えてもらわなきゃいけませんね。これには「自民党は社会保険庁解体を断行します」、我が党と同じことを言っていますね。「解体を断行します」と書いています。しかし、今の総理の答弁は、解体的出直しを行うとしか言われておりません。これ、変えられますか、もしこれが本物だとすれば。総理。

安倍内閣総理大臣 私ども、議院内閣制でありますが、政府として決定をしたことと党が目指すことがあるわけであります。その中で、党と政府が議論をしながら、最終的に党と政府で決定していく、こういうことでございます。

 いずれにいたしましても、解体的な出直しか解体、私どもは事実上の解体をしっかりと行っていきたい、こう考えているわけでありまして、要は結果が大切でありまして、結果として国民から信頼される組織に変えていくことが極めて私は重要であると思います。

菅(直)委員 国民の皆さんにぜひ御理解いただきたいのは、今政府が案を出されているんですよね。私は前の国会でも、これは看板のつけかえじゃないか、解体どころか解体的見直しにもなっていないじゃないかということを指摘してまいりました。そして、小泉総理時代に、二年前ですか、わざわざ民間から先ほどの村瀬長官を長官に任命して、改革をするんだ。道路公団も、当時ですが、民間人を入れました。社会保険庁も入れました。民間人がトップだからできるんだと言っておられましたが、結果として、進むどころか隠ぺいあるいは偽装工作が進んだことは皆さんも御承知のとおりであります。

 このパンフレットの中では、長官は頑張ったけれども、仕事をしていた組合が悪いんだと書いてあります。いや、確かに組合も問題があったかもしれません。組合も問題があったでしょう、確かに岐阜県の職組だって問題がありましたから。私たちは……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いいたします。

菅(直)委員 私たちは、税金を無駄に使うようなことは本来労働組合がやるべきことではないと思っていますから、当然そういうことに対しては、私たちも断固としてそういうことはやめさせるべきだと批判をしてまいりました。

 しかし同時に、岐阜県の例も同じですが、社会保険庁も、二年間、丸二年ですよ、長官をやっていた村瀬長官が結局そういったことが改革できないまま今日を迎えて、政府がわざわざ法案を出されているんですよ、今。

 みずから出した法案が出ていながら、これは解体的見直しにならないからと言うのであれば、まず法案を取り下げて、出し直してから議論を始めたらどうですか。いかがですか、総理。

柳澤国務大臣 我々は、あれは最初の閣議の日でございますが、継続案件にしていただきました社会保険庁の改革案、法案を、前国会の意思をそのまま踏まえて再提出して御審議をお願いするということにいたしました。

 しかし他方、今、菅議員が指摘をされましたように、自民党の中にも、その後のいろいろ時間の経過の中で起こった出来事を背景として、いろいろ御意見が出ております。ただ、御意見は出ているんですが、しからばどういうことをやるかというところまではまだ全然議論が進んでおりませんので、今後御議論が進むに応じて我々もそれに対してよくよく意見を申し上げまして、そして一番いい案を最後に国会が御議決いただくのがよろしい、このような姿勢を私どもは持っているわけでございます。

菅(直)委員 この自民党が出されたと長官が認められたパンフの中で、「大切な年金を流用して、ゴルフボールやマッサージ器などを購入。」これを国会で取り上げたのはどなたでしたか。我が党の長妻議員がこういったことを徹底的に取り上げたんじゃないでしょうか。あたかも自民党がそれを取り組んだかのごとき、こういうのをデマゴーグというんじゃないですか。

 総理はよくデマゴーグという言葉を使われますが、あたかも自分たちが指摘したかのようなことを言われて、そしてこういうパンフレットをつくり、また、解体するかのようなものをつくって、実は解体的見直しであったりする。全面的にこれを変更するなり削除して、法案を出し直す気があるならちゃんと出し直してから、まさに顔を洗って出直してもらいたいということを申し上げて、質疑を終わります。

金子委員長 この際、田中眞紀子君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中眞紀子君。

田中(眞)委員 民主党・無所属会派、私は正式には無所属ではございますけれども、民主党と会派を組んでおりますので、その中で時間をいただきまして、質問をさせていただきます。

 随分、今、社保庁の問題でちょうど息が上がっておられて総理もお疲れかと思いますので、私の優しい面の、優しい質問からくつろいでちょっとお聞きいただきたいと思います。

 私ども、私も総理もですが、平成五年の七月十八日、初当選でございますから、いわば同期の桜といたしまして、このたびの総理大臣就任、お祝い申し上げます。

 どこかの機会で、もちろん総理になられてからでございましたけれども、こうおっしゃっておられましたね。いわゆる決まり文句ですけれども、もとより自分は浅学非才でありますけれどもと謙虚におっしゃって、最善を尽くすということをおっしゃられました。

 私もかねがね、自分の環境でありますとか、自分の十三年間、総理もそうでございますけれども、そういう議員生活をしていて、内閣総理大臣の職というものを間近で見ていて、非常に大変な重責、一億三千万の国民の頂点に立って、世界に向けてメッセージを発信して、牽引をするというのは大変な重責であるというふうに私なんかは思っております。

 今、席に着かれて十日間たちましたけれども、御自分のことをどのように、なるほど、あの総裁選挙のときから手を挙げて、そして、今の制度では、常態でいきますと、自民党総裁になるということは即内閣総理大臣ですから、なられてみて、御感想、すなわち、やはり私は器量が大きい、内閣総理大臣にふさわしいと思っていらっしゃるかどうか。優等生的な官僚答弁で、いえいえ、そうじゃなくて毎日誠実に過ごしておりますではなくて、同期でございますので、気楽に本音をちょっとおっしゃっていただけますか。

安倍内閣総理大臣 今から約十三年前に、平成五年の選挙で田中委員と一緒に当選をさせていただきました。

 当時は田中議員も自由民主党の公認で当選をされたわけでありますが、あの選挙は自由民主党が野党に転落をした選挙でございまして、普通、自由民主党の場合は、一つの選挙で三十人、四十人、多いときで五十人ぐらいいるわけでありますが、たしか二十八名ぐらいしか当選しなかった、このように思い出しておりますが、あのとき、同期の中で田中眞紀子さんこそ総理になるのではないか、こんな印象を持っていたわけであります。

 十三年たって、今日、私がこの席に座っていることは当時は思いも寄らなかったわけでありますし、当時の常識としては、総裁選にまず手を挙げるまでに二十年、三十年の時間を要するわけであります。また、私の父もほぼ三十年近い年を経てやっと総裁選に出たのであります。ですから、私も、十三年しか政治経験のない私が本当にこの総裁選挙に出る資格があるかどうかということを自問自答してきたわけであります。しかし、この変化の中で新しい時代をつくっていくために、国民の期待に真っ正面から真摯に向き合うべきだ、このように決断し、総裁選に立候補したわけであります。

 幸い、多くの方々から御支持をいただいて、総裁に就任をした以上は、しっかりとこの重責を担って日本を正しい方向に進めていくためのリーダーシップを発揮してまいりたい、こう決意をいたしております。

田中(眞)委員 一つ間違いがございます。同期当選でございますが、私は無所属で、自民党から公認をいただけませんで、当時から大変苦労をしておりまして、後でやっと御許可が出たという経緯がございます。

 いずれにいたしましても、最善を尽くされるということは大変よろしいことなんですが、客観的に見ておりますと、いろいろ期待もございますけれども、この永田町で見ておりますと、大変失礼かもしれませんけれども、ちょうど、ちいちゃな子供が玄関先にちょちょっと出ていって、そこで大人の、パパの革靴があったので、ちょっとそれをいたずらで履いて道路に出てきてみたというような印象があって、しかも、その子供が右の方へ右の方へ寄って歩いていきそうな、右傾化しそうなものですから、ちょっと危なっかしいかなという印象を持っている人もおります。

 それから、美しい日本ということでございますけれども、美しい日本というからには、どんなにか美しい閣僚の皆様方がお出になるだろうと思いましてひそかに楽しみにしておりましたけれども、結果は、こういう皆様方とそれから補佐官、官邸にも党にも布陣ができて、ああ、なるほど、美しいという形容詞は個人的な思い、抽象的なものがありますし個人差があるので、ああ、そういうことかいなというふうに思ったりもしております。

 このお忙しい中で、森、小泉内閣で六、七年近く、主に官邸、もちろん幹事長もなられましたけれども、大変多忙をきわめていらっしゃる中であの本をお書きになったわけですが、いつごろお書きになりましたか。また、口述筆記でございましょうか、どなたかがお書きになった、ゴーストライターか、ちょっと教えていただけますか。簡単で結構です。

安倍内閣総理大臣 政府として答えるべき質問ではないんだろう、このように思いますが、私なりに、二年ぐらいの時間をかけ、私が書きためてきたもの、あるいは私が口述したものを合わせてまとめさせていただいたということでございます。

田中(眞)委員 もちろん、この内閣の性格に影響するものでございますから、今のようなお尋ねをいたしました。

 中西輝政さんという京都大学の教授、御存じでいらっしゃると思います。お親しいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 何度かお目にかかったこともございますし、けいがいに接しております。

田中(眞)委員 ちょうどこの総裁選挙の始まる前に、議員会館に、私は面識ございませんが、この「日本文明の興廃」という本が中西先生から送られてきました。それを全部読みました。

 その中で、七章で「させられた「あの戦争」」というページがございまして、ポイントだけかいつまんで申します。

 要するに、戦争というのは邪悪な戦争という物の考え方があるけれども、侵略戦争観だけは今日、正確な歴史の検証からはっきりと否定されなければならない、少なくとも日本の側にすべての責任が課せられる侵略戦争という見方は、もはや検証にたえないと言われております。栄光ある戦争という言葉で表現できる、あの戦争がアジアの独立につながったことはやはり間違いのない事実である。これは、この中西輝政先生のお考え。

 何より注目すべきことは、あの戦争ですべての日本人が大変な団結心を示し、目覚ましい自己犠牲の精神を示したことである、特に特攻隊のドラマはまさしくそれにふさわしい、大いなる民族の叙事詩であるということを言っておられて、これは果たして本当に、志願兵もおられたけれども、赤紙一枚で戦場に駆り立てられたという実態に対してはどういうふうに思っておられるのかなと思って読んでおりました。

 そして、満州事変、日中戦争、太平洋戦争、いずれも日本の積極的な意志ではなく、文字どおり追い詰められて仕方なく踏み切らざるを得なかった戦争である、日本を孤立させ包囲し開戦へと追い込もうとするソ連や中国、そしてアメリカ、英国などの企図があれほど明白だったのに、みすみす相手の術中にはまったのである、日本の政治、外交がはまったんだということをこの方は認識しておられます。

 政府が戦時中に行った行為で、法律を犯して行った殺りくは一つもない、侵略戦争へ向けた共同謀議の証拠は全く存在しない、ほとんどが外交上、戦略上の失策によってはまり込んでいったというのが専らあの戦争の本質であるということを書いておられます。第七章です。

 しかし、第二次大戦では、日本の戦死者は約三百二十万人、アジア各国、周辺の国では千七百万人、アメリカやイギリスでは十三万人の方々が、たくさんの犠牲者が出ているという事実でありますけれども、こうした歴史観を持っておられるわけです。

 もちろん、昨日、菅代表と総理との議論の中で、随分いろいろな認識を変えてこられているということは承知しておりますけれども、これは国民だれから見ましても、あさってからですか、中国一日、韓国、行かれますね、そういう間際で、もろもろの選挙も控えていて、そして総理が行かれるということの意味合いはどういうことなのかと思うわけです。

 今、この中西先生の御本、何度かお会いになったことがあるとおっしゃいましたが、私も、この方がゴーストライターとは言いませんが、非常にあの美しい日本と重なるのかなと思ったりいたしましたのですが、今この文章をお聞きになって、どういう印象か、一言でお答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 今、重なっているというふうにおっしゃったんですが、私の本を本当に読んでいただけたのかな、こんな印象を持っております。どの部分が重なっていたのでしょうかということもお伺いをしたいと思います。

 そして、今、私は田中委員のお話を伺っておりますと、中西先生も、外交的、政治的ないわば失政によってああした結果を招いた、こういうことでございまして、正しかったということをおっしゃっているわけではないんだろうと思います。

 そしてまた、こうした歴史観、また、そうした学者の分析は当然なされるわけであります、歴史家において。それを私は一々政府としてコメントする立場には当然ないということは申し上げておかなければならないと思います。

田中(眞)委員 基本的には、外交、防衛問題と、これから本当のお話をさせていただきますが、歴史認識について伺うんですが、その前に、一般の生活者として、地元だけではなくて全国で、東京でもそうですけれども、よく問題にされている、私たち生活者に最も身近な問題について伺いたいと思います。食の安全でございます。

 いろいろと、種の入れかえとかいろいろなことがございますけれども……(発言する者あり)この後、伺います。これは一言で終わりますから。

 要するに、食の安全というと、米国産の牛肉の問題なんですけれども、この問題については過去のるる経緯があったので、これは割愛いたしますけれども、二〇〇六年七月二十七日に二回目の再開が決定されました。

 そして、その条件は、月齢二十カ月以下の牛に限る、それから特定危険部位をもちろん除去する、そして、アメリカが一回目のときに、再開できなくなったときに検査を、少し頭数を減らしていたけれども、また前の状況に戻して、四万頭を検査対象とするということで輸入が再開されたというふうに聞いております。

 しかし、現実問題といたしましては、日本の年間の牛肉の消費量というのは約八十万トンであって、日本は約三十五万トンですから、四〇%近くが自給をしていて、残りは、アメリカがストップしてからは、オージー、オーストラリアや、ほんの少しニュージーランドがある。

 私たち消費者の目からいけば、一番安全な食品をできるだけ安くいただきたい、おいしいものを。それはもう世界じゅう同じなんですけれども、その中でもって、やはり輸出してくださる国の数が多い方が競争の原理が働きますから、アメリカから入ってくることも本来大歓迎なわけでございますけれども、実際問題として、アメリカという国が、牛の数が非常に多いために、全頭検査というのがほとんど不可能に近い。四千二百万頭もあって、そのうちのたった〇・一%の四万頭しか検査ができない。

 日本でありますとか、あるいはヨーロッパ、EUは、トレーサビリティーがはっきりしていますからよろしいんです。もちろん、でもEUは、イギリスで発症して以来、まだ今、輸入はできないでおりますが。

 問題は、トレーサビリティーの面ではっきりしていなくて、今入ってきているという段階において、私たちが一番心配に思うことは、食品安全委員会がゴーのサインを出したというふうに思っておりますが、この安全委員会というもののメンバーは、獣医学界の、獣医学の専門家で、科学的にチェックをする機関だけである、リスクの分析をするだけであって、一度として、一〇〇%安心である、安全であるということは言っていない。要するに、お墨つきは与えていないということであります。

 そうすると、リスク管理をするのは、総理、どこでしょうか。

安倍内閣総理大臣 リスク評価とリスク管理という仕組みになっているわけでありますが、リスク評価は今委員の御指摘になった食品安全委員会が行うということになっておりますが、リスクの管理については行政機関が負っているということでございます。

田中(眞)委員 具体的には、農水省とそれから厚生労働省ということになるわけですけれども、要するに、私たちは、その発表を信じる以外に消費者はないということでございますから、もし何かが起こった場合には、トレーサビリティーをできるだけはっきりしてほしいと言っても無理なわけですから、そうであれば、ぜひ、もしも万一虚偽の表示等が小売や店頭であった場合には、業者の罰則はもちろんですけれども、担当の大臣であるとか、あるいは官僚であるとか、そういうところに責任を、しっかり処罰をしていただきたい。

 ましてや、一番心配しているのは、役所自身が情報隠しをするようなことがあってはなりませんので、その辺の覚悟を、自民党の農林族のドンでおられて、農水省出身で、この間から私はちょっと、よかったのかなと思っておりましたら、御就任早々、献金問題か何かで、狂牛病というとへたり牛と言われて、へたり農林大臣になっちゃうのかなと思って、第一号かと思っておりましたけれども、ぜひ、ここのところを簡略に。経緯はわかっておりますので、今私がお尋ねいたしました表示の責任の問題、罰則の問題を含めて、一言お答えください。

松岡国務大臣 田中先生にお答えさせていただきます。

 田中先生の選挙区にも私も二度ほどお伺いさせていただきまして、ウルグアイ・ラウンドのときも一緒に回らせていただきました。

 今のお尋ねでございますが、食の安全の問題というのは、これは何といっても国民の健康、生命の最大基本ですから、何よりも重要問題であることは間違いありません。

 そこで、BSE発生が十三年にありました後、私ども当時自民党でありましたけれども、これにどう対応するか。イギリスの例をいろいろ調べまして、その結果、やはり科学者の判断、これが一番基本である、こういったことから、イギリスの例等も参考にいたしまして、食品安全委員会というものを日本においても科学者の方々に集まっていただいてつくった、こういういきさつがあるわけであります。

 そして、何といっても、これはすべて科学的な根拠に基づく、それを判断とする。例えば、ブッシュ大統領から小泉総理がこれを求められましても、小泉総理は、それは頑として、これは科学的な根拠に基づく、それ以外の判断はない、こういうことで、したがいまして、食品安全委員会において下されましたその判断に基づいて行政は対応しておるというのが今の仕組みでございます。

 また、もう一つ、食品衛生法という法律がありますが、これは厚生労働省が所管いたしております。そこで、今、農林水産省の所管というのは、実は生体のとき、生きているときでありまして、したがって、屠畜場に入るまでは農林水産省、屠畜場に入ってからは厚生労働省、こういうことになっております。

 そういった意味からも、本来、食品行政の一元化というのは、ある意味では今後大きな課題かとも思います。安倍内閣の行政改革でそういったことも一つの方向かな、私自身は個人としては思っておりますが、いずれにしましても、田中眞紀子先生から、一番最初のころのおつき合いももとにしていただきまして、へたり牛にならないようにということでありましたので、重々心してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

田中(眞)委員 いや、大臣、私がお尋ねしていますのはリスク管理ということでありまして、その管理の部分について消費者が不安を、奥様にお聞きください、あのきれいな奥様に。ここにおられる方々の奥様方は、皆さんそうだと思いますよ。スーパーやお肉屋さんに行きまして、きょう牛肉買おうかなと思うときに、あるいは決めていないとき、鶏肉、豚肉というときはいいんですが、牛肉と思うときに、値段も気になるけれども、どんな方に聞いても必ず、この牛肉はどこから来たのかなというのはやはりみんな気になっていますよ。奥様方にお聞きになってごらんになればわかるんですが。

 そこで、やはり絶対に安全であるということを、もう輸入を再々開してしまったからには、これは最後の機会ですから、アメリカもあれだけいろいろな要求をしてきている国ですから、これは十二分に承知しております。したがって、リスク管理、それでもしも万一、前回だって万全だと言ったわけですから、人のやることですから、問題が起こった場合には、責任をとるなり罰則なりをきちっと徹底してなさるかどうか、ここを伺っているんです。もう一度、お願いします。

松岡国務大臣 御指摘の点はもっともなことと思いますし、これは何といっても安全が最優先であります。したがいまして、そのためにはやはり消費者の皆様方が十分選択ができるような、そして確認ができるような表示の制度、こういったことを万全を期してしっかりとやってまいる。

 また、アメリカに対しましても、再々開の条件になりました、この条件の内容につきましては徹底遵守、そして何より消費者の皆様方のこれは意向ですから、本当に安心であるということがしっかりと定着していくような、こういう努力を、アメリカはもとよりでありますが、日米双方でやっていくべきものと思っております。田中議員の御指摘を受けて最大限に対処してまいりたいと思っております。

 なお、食品という観点からは、厚生労働省が所管の主管でありますので、またそちらの方からもお願いをしたいと思っております。

田中(眞)委員 柳澤厚生労働大臣のことはよく御信頼申し上げております。大体何をおっしゃるかわかっておりますから、核心の方の質問について総理に伺わせていただきます。

 外交、防衛、殊に北朝鮮問題でございます。

 この問題につきましては、安倍総理が誕生した背景も、自民党内での要するに総裁候補、ほかの二名の方を制してなられたことも、対北朝鮮政策で非常にメッセージが明確であるということが国民の皆様からもメディアを通じて支持をされて、そのことで大きな動きがあった、そして、総理御自身も強く自負しておられるというふうに存じます。

 そこで、二〇〇二年九月十七日に小泉前総理は当時の安倍官房副長官を伴って平壌に行かれました。そして、平壌宣言が発出されたわけですけれども、前文があって、四つの各論があります。そして、その次の月、十月に、三家族五名ですかが帰国なされました。そして、二〇〇四年の五月二十二日に小泉総理は再度訪朝されていまして、そして、その二〇〇四年には五人の子供さん方やジェンキンスさんが日本の土を踏まれたという経緯がありまして、二度目のときは、北側は、その他の行方不明者の安否、真相究明の調査を約束したというふうに承知しております。そして、六カ国協議が今までに五回行われています。

 それらを客観的な経緯、事実として踏まえた上で、どうしても私が、このとき私はもちろん外務大臣じゃございませんでしたので、よく落ちついて分析をしている中で一番感じたこと。初訪朝の日に、午前十一時から小泉・金正日会談がセットされていた。しかし、それに先立って当時の田中均局長と北朝鮮の幹部との事前会談があって、その席で、五人生存、八人死亡という通告があったというふうに聞いております。報道も当時もありますけれども、あのとき、その後に総理が初めて金正日と握手をされるとき、本当にこわばって、テレビの印象ですけれども、顔面蒼白のような、かたいかたい表情でした。その事前に話を田中局長から聞かされて、会談の始まる前、官房副長官としてどういうお気持ちでいらっしゃいましたか。

安倍内閣総理大臣 当時、私は官房副長官でございました。同行が決まりまして、事前の勉強会等におきまして、何とか事前に安否状況がわからないかということを外務省側にも申し上げてきたわけでありますが、残念ながらそれは難しいということでございました。しかし、何人かの安否については、北朝鮮から間違いなくその情報がもたらされるという成果は間違いない、そういうことでございましたし、また、小泉総理もその確信があって訪朝を決断されたのだと思います。

 そして、訪朝した当日の会談の前に、局長が先方と会い、安否の情報を聞き、まずその情報について私に話がございました。私も大変驚いたわけでございますし、その中に、当初、報道等で入って、生存と言われていた横田めぐみさん、有本さんを初め、生きていると言われた方々の名前がなかったということも大変ショックでございましたし、八名の方々が死亡されているという、当時は、北朝鮮側からもたらされたこの情報、私ども最初は、事実かもしれないということで大変なショックを受けたわけで、事実かもしれないということで大変な衝撃を受けたわけでございます。そして、その後、首脳会談に臨んだ、そういう経緯でございます。

田中(眞)委員 その後の会談のときに、あの日は日帰りですぐ、午後帰ってきていらっしゃいますよね。そのときに、今まで外務省なり警察が持っていた行方不明者、特定失踪者といいますが、そういう方々のリストや過去の捜査から出てきたものがあるわけですから、そういうものを当然踏まえて、そのトップ会談のときに、これはどうか、これはどうか、これはどうなのかといってやるのが外交交渉であって、もちろん核やミサイルの話もあったでしょうけれども、拉致の問題については、あれだけの熱を持って出発されたにしては、完全に金正日ペースで、納得をされて帰ってきてしまったのではないかな、腰砕けであったのではないかというふうに思います。

 国民も皆、本当に大勢の方たちがはっきりと帰ってこられる、その確約をとってこられると思ったんですが、なぜ、本当に机をたたいて、激論を交わして、わざわざこちらが出向いていったんですから、そこでもって、せめて官房長官ぐらいは残られて、何日間でもひざ詰め談判をするということはできなかったんでしょうか。それが外交交渉じゃないんですか。

安倍内閣総理大臣 私も、当選当初からこの問題については熱心に取り組んでまいったつもりであります。めぐみさんの御両親とも、また有本恵子さんの御両親とも何回かお目にかかって、何とか救出をしたいという思いでありました。

 当然、私自身は、すべてのいわゆる当時の拉致被害者と認定された方々のことは知っておりました。しかし、それ以外にも、当時は被害者がどれぐらい広がっているかということは、今と状況が違いますから、それ以外の拉致被害者がいるかもしれないということについては、これはまず、当時認定されている方々を救出しようということだったんです。当時熱心に議論をしていた議員はみんなそういう思いでした。先生はその場にはおられませんでしたけれども、我々はそのように考えて、熱心に取り組んでまいりました。

 そして、しかし、だれかが大きな決断をしなければ扉があかなかったのは事実であります。小泉総理も、大きな政治的なリスクがあることを承知で訪朝を決断し、金正日委員長と会談をしたからこそ、まず五人の被害者が帰ってくることができた。

 しかし、この五人の被害者が帰ってくることができるかどうかということも、これは大変な難関だったんです。当初は北朝鮮側も、本人たちは帰国を望んでいない、こう主張していました。その主張を覆させるのは大変な難事であったわけでありますが、現在、いろいろな判断があった結果、五人の被害者の方々は御家族と一緒に日本で平穏に暮らしているということでございます。

 私は、あのとき考え得るベストを尽くしたつもりであります。

田中(眞)委員 もちろん、あの五人の方々が帰国なすったことはもろ手を挙げて喜んでおりますし、国民みんなが祝福していますし、それは一つの成果ですが、第二回目の訪朝もなさっているんですね。そして、その後どうでしょうか。あの後、帰ってきているんでしょうか。どういう努力があったんでしょうか。

 マツタケだけをもらって帰ってきたあの当時の報道では、だれがどう分けたとかそんなおちゃらけたことを言っていましたけれども……(発言する者あり)いや、過去の経緯が大変大事だからしっかりとお聞きいただきたいんですけれども。初めて行かれるときにお土産を持っていくというふうなことは外交上は必ずあり得るわけでございまして、例えば、金大中大統領が初めて金正日と会ったときにも、五億ドル、五百五十億円だということが言われておりますし、日本でお米が、五十万トン支援というのは、お金に換算すればこれは一千億円に相当する額であるということであります。

 そして、二回も総理は行っておられるわけですけれども、二回目はもちろん同行されていませんけれども、二回目に行った後に、もちろん即日でしたか、子供さん方が夜の便で帰ってこられましたけれども、どういうことがあったのか。

 これは外交、相手があることだし、今後のことがあるからこういう情報については開示しないというのは、役人の一種の秘密主義といいますか、非常に聞こえはいいんですけれども、そういうことによって主権者国民が、しかも日本の主権が侵犯され、何の悪いことのない、傷のない、無辜の人々がこうやって長い何十年間の間、きのうも横田さんのお誕生日だったそうで、あれを見ますと、子供を持つ身として本当に胸が張り裂ける思いですし、どんなにかつらいだろうと思います。それは人類であればみんながそう思っているはずなんです。

 しかし、その中でどうやって、残りの人たちがいるのに、だから情報を開示しませんとおっしゃりながら、小泉さんの二回目の訪朝から何も進捗していない。そのことについてはどういう解決策があるか。拉致者全員が帰ってこなければということをおっしゃっておられますけれども、では、それは何人を今現在ターゲットにしておられて、どういう方法が、手のうちを言うとわかってしまうとおっしゃいますけれども、六カ国協議で随分いろいろな国から情報も聞こえますので、おっしゃってください。

安倍内閣総理大臣 外交においては、その時々のいろいろな判断がございます。それは、委員も外務大臣をやっておられたからよく御承知のとおりであります。

 小泉内閣発足当時、金正日委員長の御子息が日本に入ってきて、それを直ちに送り返すというのは、それは当時の外務大臣がなされた判断だったと思います。

 そして、先ほど、二回目の小泉訪朝、何も成果がなかった、こうおっしゃっておりますが、小泉総理が訪朝した結果、五人の被害者の方々の御家族が帰ってくることができたわけであります。

 これは、私たちにとって大変な難関だったんです。私たちは、五人の被害者を北朝鮮には戻さないという判断をいたしました。当時は、その判断はおかしいという非難を私も受けました。北朝鮮側が望んでいるんだから帰すべきだという論調も随分あった。しかし、我々は、北朝鮮によって被害者となったこの五人の被害者を守るのは、彼らが生まれ育った日本以外にはないということで、国として戻さないという判断をしたわけであります。

 しかし一方、その後、残念ながら北朝鮮との交渉の場はなくなってしまった中において、この五人の被害者は子供たちと引き離される状況が続いたわけであります。私も、その間、この被害者の方々と何回かお目にかかって、苦しい胸のうちをお伺いしました。一日でも早く帰したい。一方、北朝鮮側はこの状況をある意味利用したのも事実であります。

 そういう中において、何とかまずこの五人の被害者の家族を戻す、ここに全力を尽くしたわけであります。死亡したと言われた方々の生存ももちろん求めなければいけないわけでありますが、その中で、我々はまずこの五人の被害者の御家族を戻すことにも大きな力を使った。そして、その結果、小泉総理が訪朝した後、五人の被害者の御家族、これは、曽我ひとみさんの御主人、お嬢さんたち以外は全員が帰国することができたわけであります。

 当時、私は幹事長でありました。その後、曽我さんとジェンキンスさん、まだ引き離された状況でありますが、何とかジェンキンスさんとお嬢さんたちを、これを一つにできないか、いろいろ考えました。

 再会の場は、当初北朝鮮が望んだ場所でない場所を私は主張しました。そして、その結果、そのとおりになったわけでございまして、ジャカルタで再会をし、そして、何とかこの場から直接日本に連れてくることができないかという中において、アメリカ側とも交渉し、何とか米国側の了解も得る中において、やっとジェンキンスさんやお嬢さんたちが日本に帰ってくることができたわけでありまして、さまざまな難関を我々は乗り越えてきた。

 しかし、まだ最大の問題であります、死亡したと言われている方々を何とか生還させなければならない、このように考えています。私ども、これは全力を尽くしておりますが、相手があることでございます。一番やはり心配をしておられるのは、田中眞紀子さんではなくて被害者の御両親たちなんだろう、このように私は思っております。そういう方々からは、私がこれまでしてきた努力に対してそれなりの御評価をいただいているのではないか、このように思います。

田中(眞)委員 ちょっと違ったおっしゃり方をなさっていましたので申し上げますけれども、金正男の小泉内閣発足当時のことは、田中外務大臣の決断ではなくて小泉総理大臣です。今、安倍総理が反対しているのに、外務大臣が決定を外交問題で全部できるでしょうか。それを考えたらわかることですから、こういうふうなそれこそデマゴーグを流すのは、ああ、あの方だったのかと今ごろになってよくわかった次第でございます。

 私が申し上げているのは初動です。一番初めにそれほどの覚悟を持って行ったのであれば、なぜそこで頑張らなかったのか、なぜ帰ってきちゃったのかと言っているんですよ。外交交渉というのは、半日行ってタッチ・アンド・ゴーで帰ってくるものじゃないんですから。それが、あなたが行かれたじゃないですか。あなたには連帯責任があるんです。その後、ジェンキンスさんのときにアメリカがどうであるかとかそういうことを聞いているんじゃありません。本当の問題として、御自分はどうなのかと。(発言する者あり)委員長、少し黙らせていただけますか。

金子委員長 どうぞ。

田中(眞)委員 ですから、そういう中で、最初の初動で頑張り通せたんですから。それを頑張れずにいたことによって、あの五人の方は帰ってこられたけれども、ほかの方々の落胆、その後の方々のお気持ちも考えなきゃいけないんですよ。私との比較なんかしてくださらなくて結構ですが、一般の帰ってこられない方々は、あの五人でかんぬきがかけられてしまった。現に、金正日は、あとは流されてしまった、入国していない、死亡してしまったと一貫しているではないですか。これにブレークスルーをあけられないから、どうやってやるのかと伺っているんです。もう一度どうぞ。

安倍内閣総理大臣 それは二〇〇二年の訪朝のときのお話だと思いますが、あのときの私どもが与えられていた状況、二〇〇二年の九月十七日の状況であります。二〇〇二年の状況において、私は午後の会談において、北朝鮮側が拉致を認めて、そして政府の関与を認めなければ、これは平壌宣言に署名せずに帰ってくるということも考えなければいけないということも申し上げました。そして、その後の会談において、北朝鮮側は国家としての関与と謝罪を行ったのであります。そして、平壌宣言に署名をして帰ってきたわけでございますが、しかし、それまでの中において全く北朝鮮は認めていなかった拉致をとうとう認めたわけであります。これを総理が決断しなければ、五人の被害者が帰ってこなかったんです。それはもう厳然たる事実であって、総理の判断があったからこそ帰ってきた。

 しかし、そこで、残りの方々の問題については、今私が申し上げておりますように、生存しているということを前提に、これは私ども全力を挙げて交渉していかなければいけない。しかし、これは相手があることですから。ですから、私たちは今、対話と圧力の姿勢で北朝鮮に対して圧力をかけているわけであります。しかしそれは、これをこうやっていけばこう解決をしていくというほど簡単な問題であればこんなに時間がかからないわけであって、私はベストを尽くしてまいるつもりでありますし、そうした批判は私は甘んじて受ける覚悟でございます。

田中(眞)委員 ブッシュ大統領は、二〇〇二年の小泉さんの初訪朝に対しては消極的であったと。なぜかといいますと、日本が経済協力資金を出すということは、それが核に転用される可能性がある。しかも、ブッシュ大統領は北朝鮮を悪の枢軸、お好きな片仮名で言えばジ・アクシス・オブ・イーブルということになるんでしょうけれども、完全にマネーロンダリングをやったり、あるいはにせ札をつくったり、それからテロ国家を支援したり、いろいろなことをやっている、拉致ももちろんそうですし。

 そういう中で、この国に資金援助を出すことは、しかも国民を飢餓であれだけ苦しめているところに軽々に行くということは、核・ミサイル開発を促進することにつながりかねないというところを、小泉さんは、先ほど総理がおっしゃったように、当時の社会情勢を見ますと、なぜか知りませんが、外務大臣の更迭と外務省のいろいろな不祥事等で八〇%の支持率が四〇%に落ちていた、今もその数字が出ています、そういう中で、一か八か起死回生でやったからかんぬきをかけてしまう。五人しか連れ帰せなかった。

 外交というものは、もっと時間をかけて、そして戦略を練って、そして踏み切るということ。ですから、あの初めのときからもう四年もたってしまって、あの被害者の御家族が日に日に年をとっておられるわけですから、そういう中で一体どういう見通しがあるのか。今の答弁の中では、今まで努力をしたということは伺いましたけれども、あの五人の方以外の方々は、何の確証も今の総理の答弁からは得られなかったということを、多分印象を持たれたというふうに思います。

 北朝鮮問題は、この内閣のコアであってシフトするものであると思いますけれども、これは、言いかえればもろ刃の剣でもありますから、あのときに唯一一緒に行かれた、最初の訪朝をなさった安倍当時の官房副長官の連帯責任が非常に大きいし、そのことをしっかりと、国民は黙っていてもじっくり見ているのだということを申し上げさせていただきます。

 そして、次の質問でございますけれども、歴史認識、きのう……(発言する者あり)

金子委員長 その前に、与党の諸君、多少御静粛に願います。

 どうぞ、田中眞紀子君。

田中(眞)委員 歴史認識、きのう菅代表代行との質疑の中でいろいろおっしゃっておられましたけれども、メディアなんかにも書いておりますが、私も常々、安倍総理ということになると、一言で言えばかなり右なんだろうということは、この十三年間の発言、行動を見ていて思いました。政治家個人としての思いと政府の立場というのを結構巧妙に使い分けておられる。例えば、この間も過去の戦争認識については、きのうちょっと変わりましたけれども、どのぐらいこれが続くものかと思って今、きょう再確認をさせていただきます。

 後世の歴史家にゆだねるべきであるとか、それから、政治的、外交的影響が大きいから政治家の発言は謙虚であるべきだ。急に何か人ごとみたいなことを言うところは前任者によく似ているなと思うんですけれども。これは大変大きなことでありまして、近々訪中韓を控えておられるので刺激をしないようにという御配慮、そういうアドバイスが党や官邸から、外務省で、あるのかというふうに思いますけれども、しかし、これはちょっとふさわしくないというふうに思いますね。

 急に歯が浮くような物の言い方をされているなという印象を受ける理由は、例えば、一九九七年でしたか、日本の前途と歴史教育を考える会というものをつくられて、後ろにおられる官房副長官の下村先生とかなんかも入っておられて、歴史認識の問題、いろいろと教科書の記述についてかなり具体的に提言をなさった。これは、村山内閣の後でしたか、村山談話で、橋本内閣ができたころに発足したというふうに承知しています。

 要するに、村山内閣ができた後は、左か、そうするとこちらの右に少しぶれてくるということが起こるわけでして。

 その後は、二〇〇一年一月、NHK「戦争をどう裁くか」というドキュメンタリー、戦時中の暴力というふうなことがあったときに、報道内容を変更するように、当時の安倍先生と中川昭一先生でしたかが圧力をかけたということが、当時の担当者であったという記者から内部告発がされて、いろいろと報道され、取材にも答えておられるところを拝見しました。結果的には、まあNHKと朝日新聞の話でうやむやになったんですけれども、こういう戦時中のことについては、一議員としてといいますか、非常にナーバスに反応なさる方なんだなと。

 教科書問題、今回は教育の再生会議をつくったりして、いろいろと考えて、大局的におっしゃる内閣なんだと思いますけれども、根底にあるのはやはり教科書というものを、いろいろなチョイス。私の答えからいきますと、世の中いろいろな種類の考えの人たちがいるんですから、そういういろいろな教科書を若いうちに読ませて議論をして、自分なりの戦争史観とか、そういうものを持たせるべきだと思います。ですけれども、そうじゃなくて、一つのものに絞り込みたいというはっきりとした意図がおありなんだなと思うものですから、そういう方が急に謙虚であるべきであるとか言うのは御都合主義であるし、後世の歴史家にゆだねると言われても、早晩そういうふうなメッキははがれてしまうんじゃないかというふうに思います。

 靖国参拝につきましても、総理になられる前でしたかに行かれたわけですね、総裁候補になられる前に。そして、行った行かない、行く行かないについては私は言わないと。そんなことないでしょう。自信を持って行かれたんだったら、はっきりと、行きました、なぜなら私はこういう考えだと、男らしくやってもらわないと、これじゃ田中眞紀子が男らしくなって困っちゃいますので。何とかはっきりと明言をなさるべきで、スタンスをはっきりしないと、外交はほかの国を巻き込みますよ。これからアメリカにも欧州にも行かれるように、時間がもしも許せばですよ、内閣が続けばですけれども、そういう中でもみんな見ているんです。日本の新しい総理大臣はあいまいなのか、使い分けているのか、本当はタカなのか。

 例えば、能あるタカはつめを隠すということわざがありますけれども、それは違う意味で使われているんですが、今のこのメンバーの方々を見ていて、非常に顔がはっきり出ていて、党の方も、それから補佐官の方も、閣僚、副大臣、見ていましても、つめも隠さない、手袋もはめていない方々がずらっと出ておられると思います。なぜかといいますと、一九七二年の日中国交回復の後に、そのころ総理は何しておられたでしょうか、あれがありましたね、青嵐会。お聞きになったことはおありでしょうか。

安倍内閣総理大臣 田中委員がずらずらずらずら、いろいろなことをおっしゃったんですが、その中で幾つか事実認識が違うので、少し私も訂正をさせていただきたいと思います。

 先ほど、私と中川現政調会長が圧力をかけたかのごときの御発言があったわけでありますが、まず中川議員については、そもそもその番組放送前には会っていなかったということがはっきりいたしております。それで、私も呼び出してはいないということが事実上はっきりしていて、朝日新聞も、随分長い間検証した結果、私が呼び出したということを証明することができなかった、真相に迫ることができなかったということを最後に論評しているのであって、むしろ、うやむやにしているのはそれを書いた朝日新聞ではないかというふうに私は考えているところでございます。

 青嵐会については、青嵐会という議員の集団があったことは承知をしております。

田中(眞)委員 権力の立場にある方がおっしゃると、一サラリーマンの内部告発などというものは非常に力がないものかなというふうに感じております。

 青嵐会は、日中国交回復が終わった後に、ちょうど一九七三年でございましたかに立ち上げられました。派閥横断的で、いわゆるタカ派と言われる衆議院議員の方たちが三十一人近くでつくられて、これは日中国交回復に絶対反対の姿勢を貫いて、当時、結成時には血判状も押したというふうにも言われております。

 そのメンバーが、今の自由民主党元総理森喜朗さん、石原慎太郎知事さん、それからお友達の中川先生のお父様中川一郎さんとか、渡辺美智雄さん、副大臣のお父様ですが、浜幸さんとか、そういう方々が若き日に日中国交に反対をして、台湾派と言われておりまして、こういう方々は主に福田さんとか岸先生の系列の人間が多かったというように聞いておりますし、そういう方々が、日中国交回復をした後にはこういうリアクション。アクションを起こせばリアクションがあると同じように、今回も、村山談話、村山内閣の後にはそういうリアクションが起こる。

 その青嵐会のDNAをしっかりと受け継いでいる方たちが党だとか内閣だとか官邸とかにおられるので、そういう中で、冒頭申し上げましたような歴史認識について、総理がちょっと軌道修正したやに、きょうの新聞なんかではなさったと断定的に書いてありますが、これがにわかに信じていいものか、これからの中でどんどんと証明されていくだろうというふうに私は思っております。

 そこで、もう一回、歴史というものは過去があって現在がありますので、伺いますけれども、総理は一九七二年の日中国交回復の肝は何であったとお思いになりますか。

安倍内閣総理大臣 肝と言われても、何が肝かというのは私はよくわからないわけでありますが、いわば一九七二年の田中総理の初訪中のことをおっしゃっているのでしょうか。つまり、これは、それまで国交がなかった両国が国交を開くという方向を決めたということではないでしょうか。

田中(眞)委員 政界用語でも世間でも肝と申しますので、大変失礼をいたしました。美しい日本語を閣僚の皆様のように心がけますけれども、要するに、日中国交の交渉の中で一番の難題、一番大きなテーマ、イシューは何であったかということを伺っております。

安倍内閣総理大臣 それまでは国交がなかったわけでありますから、それはいろいろな課題があったんだろうと。その中の例えば一つが、過去の日本の歴史の問題であったということだと思います。

田中(眞)委員 これはいろいろな歴史家も書いておられますし、関係者、当時の一緒に行った官僚等の本にも書いてありますが、台湾問題だったんです。台湾です。日本は台湾と交渉がありました。

 そのときに、先ほど申し上げた青嵐会にしろ、そういう方々は台湾派です。お父様がどちらでいらしたか私は存じませんが、もちろんおじいちゃまはそちらの方向でいらっしゃったというふうに思いますけれども。その台湾、この日中国交回復の中で、中国においては中華人民共和国が正式な国家であって、台湾はその一部であるということを認めるということでした。すなわち、日華条約をなくすということでしたから、当時の自民党の中の右派と言われた台湾派の議員さんたちは烈火のごとく怒ったわけでありまして、それが今も私は余韻を引いているというような印象を、時々、自民党の動きを見ていて、チルドレンとか、わからない方たちもいっぱいおられるから過去のことをやはり申し上げた方がいいと思うんですけれども、そういう非常に根の深いものがあるというふうに思います。

 そして、中国があのときに一番交渉の中で大事にしたこと、中国が国交を回復するために、今度は肝ではありませんよ、知恵ですね、一番知恵を出してくれたものは何だというふうに総理はお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 外交の交渉においてはお互いが知恵を出すことだ、このように思うわけでありますが、日中間においては、先ほどおっしゃった台湾の問題については、いわば中国は一つであるというこの中国の立場を理解し尊重するというのが日本の立場であるということになった、このように承知をしております。

 そしてまた、その後、先ほど申し上げましたように、歴史の問題等々について、お互いにお互いの国民への説明について、いろいろと知恵を出し合ったということもあるかもしれないと思います。

田中(眞)委員 これは総理に就任なさったばかりのときにおっしゃっていたことですよ。周恩来が発言して一部の軍国主義者と国民を分けたというのは、紙に書いていないじゃないかと。あのときは今と違ってもっとかたい発言をなさっていましたね。そのときのことです。要するに、軍国主義者、戦争を引き起こした人たちと一般日本国民を分けることによって日本に対する損害賠償を放棄したんです。これが中国側の周恩来による大変大きな英知、知恵でありました。

 では、二つ目に伺いますけれども、GHQが極東軍事裁判を行いました。このときにアメリカ政府が日本に出した、これは大変お得意な分野だと思いますので、大きな英知、裁判のとき、その前後を考えて何だとお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの最初の質問のところでおっしゃった、いわば日本を指導者と国民とに分ける、しかし、日本側もそれに同意して国交正常化が成ったわけではないということは申し上げておかなければならない、このように思います。

 後段の質問については、私も御質問の意味がよくわからないのでありますが。

田中(眞)委員 そうですか。よく総理があちこちで御発言なさっているので少しお疲れになったんでしょうかね、先ほどの菅さんの激しい攻撃で。この午後もありますから頑張っていただかなきゃいけないんですが。

 これは、アメリカ側は先ほどの中国と同じように何をやったか。天皇陛下を訴追しないということだったんですね。戦争放棄、武力を不保持にするということ。戦争放棄と天皇陛下を訴追しない、これは密接不可分、一体なことだったんですよ。ですからA級戦犯が処刑もされたんじゃないんですか。ここにアメリカ側の知恵が非常にはっきりと出ているんです。これが密接不可分な一体化した考えです。今言った中国の英知、その以前にさかのぼってのアメリカの英知、そういう中で日本も外交努力をし、ともに共存共栄をしてきているわけです。

 ですから、外交というのは、先ほど北朝鮮のときに対話と圧力、対話と圧力と。それは薄っぺらいと私は思いまして、本当に必要なことは外交で、世界を幸せにし国民を幸せにするのであれば、広い心と愛情が必要なんです。洞察力を持って、先を見て、美しい心も大事かもしれませんが、それは後からついてくるものでございまして、決断して、実行して、そして本当に世界じゅうの人がなるほどねと共通した歴史認識を持つこと。日本だけがひとりよがりの狭隘な歴史観を持つのではなくて、アメリカも、日本が侵略戦争をした、そしてほかのアジアの国々も、欧州も、それは日本もしっかりと認めなきゃいけないわけですから、そこのところをしっかりとおなかに据えていただきたい、そのように私は強く思っております。

 これから外交をなさるに当たって、一番お得意な分野が外交だそうでございますので、どうぞそこのところをしっかりと、同期の桜でございますから、アドバイスを聞いていただきたい。

 そして、いろいろと、この結果日本は経済も発展しましたし、とはいいながら、数十年の中で、民主主義の中でこうして言いたいことを言えるようになってきました。国民の努力、そして世界じゅうの皆さんの協力、みんな違うけれども、違うところを認め合って、そして、よいエネルギーを出すことによって、違った民族、宗教、文化が共存共栄できるわけです。違った意見に耳を傾けて認めていくということ、そのことには大変、民主主義をその結果として受け入れる、獲得するには、長い時間と大きなエネルギーを必要としているわけなんですね。

 そこで、私はぜひ総理に申し上げたいんですけれども、マックス・ウェーバーの本を何かお読みになったことはおありになりますか。

安倍内閣総理大臣 質問に答える前に、先ほど、対話と圧力という姿勢が薄っぺらい、愛情を持って接しろということでありますが、愛情を持って接して北朝鮮に態度を変えさせることができないというのは私は常識ではないか、このように思います。我々は、この問題を何とか解決しようという中から対話と圧力の姿勢で今交渉を行っているのであって、対話そのものも、またあるいは圧力そのものも、それが目的ではなくて、結果を出さなければならない、こういうことでございます。

 マックス・ウェーバーについて今先生から御指摘がありました。「職業としての政治」、あれは余り厚い本ではございませんが、それを若いころ読んだことがございます。

田中(眞)委員 北朝鮮問題については結果を出さなきゃなりませんので、政治というのは結果だとおっしゃっておられますので、愛情は、拉致された皆様に、みんな、世界じゅうの人が愛情と慈悲の思いを持って、一日千秋の思いで解決を待っておりますけれども、しかし、北朝鮮に愛情を持つ、金正日にということはどんなものであろうかと思います。

 そこで、申し上げます。

 マックス・ウェーバーの、私も「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を大学のころゼミで読みましたし、これも薄っぺらい本ですけれども、「職業としての政治」、この中で、マックス・ウェーバー、この間、お休みが長くて時間があったものですから読み返してみましたら、こういうことを言っています。

 政治とは国家が行う指導である。国家は強制力を行使する権利の唯一の源泉である。強制力は国家特有の手段である。要するに、国家には強制力とそれを行う手段、指導力、権力があるということを言っているわけですが、その中でこう書いてあります。指導者が権力をかさに着て大言壮語したり、むなしく鏡に映る自分の姿に見とれていると、政治の力を失い、損ない、ゆがめる結果となる。空虚なジェスチャーの背後に内面の弱さともろさが潜んでいる。人間行為の意味に対する恐ろしく貧弱で浅薄な無感覚の所産である。政治的行為が巻き込んでいる悲劇にみずからが気づかない、このことが大変なことであるということをマックス・ウェーバーは書いております。

 きのう、お友達の中川元農林大臣の質問で、朝御飯は何を食べてきましたかと言われたときに、ふだんは青汁一杯であるけれども、きょうは御飯と、総理がおっしゃったことですよ、おみそ汁に、おネギを入れたと言いましたかね、それと納豆。おネギは北海道ということもおっしゃっていて、私は笑ってしまいましたけれども。

 そんな頼りない、青汁一杯みたいな食事をしておられますと、目指されるところの、筋肉質の政府であるとか人生二毛作なんというのは無理でございますから、おなかを壊してもいけませんので、ぜひ健康な朝御飯を召し上がっていただきたい。もしもメニューがなければ、我が家のよい朝食メニューをお届け申し上げます。もしだめそうでありましたらば、早目にギブアップしていただければ、いつでもこちらの皆さんが政権交代をなさいます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

金子委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 ちょっと雰囲気を変えまして、私は午前、午後に分かれておりますので、午前は、内政問題を中心に政策論を総理と議論したいと思っております。

 総理が所信表明演説で述べられたこと、あるいはその後国会答弁で述べられたこと、あるいは総裁選挙の最中にお話しになった、その発言をもとに議論を進めていきたいと思いますので、総理御自身が御答弁いただくことをお願いしておきたいと思います。

 まず、一つ確認だけしておきたいと思います。

 総理は、社会保障制度について、介護、年金、医療、一体的な改革ということをたびたび強調しておられます。所信表明演説の中でもそういう表現が出てきます。一体的改革というのは具体的にどういったことを考えておられるのか、簡明に述べていただけますか。

安倍内閣総理大臣 介護、医療、年金、あるいはまた、いざというときの生活保護を含めたそうした諸制度について、こうした制度はまさに国民のセーフティーネットでありますから、しっかりと維持をしていかなければいけない。維持をしていくためには、これは負担が伴うものでありますから、持続可能なものにしていく必要があります。持続可能なものにしていくためには、また負担がある程度納得できる負担でなければならない。その納得できる負担の中で給付を図っていくということになる、こういうことではないか。

 その中で、例えば年金と医療との関係においても、ある程度年金を保障している中において、老齢者の医療費においてはこの年金の中でどれぐらい賄えるものが保障されているかという観点からも考えていく必要もあるでしょうし、またあるいは、施設の介護等々においては、施設費をどれぐらい個人が負担すべきかどうか、または、在宅でしている人たちとの公平性も考えなければならない、こういうことではないかと思います。

 また、医療制度と介護、これをどうお互いに役割分担をしていくかということも考えなければならないということではないか。さらには、例えば、治療や介護から、予防の観点、介護が必要にならないための予防をどうするかということもあるんだろうと思います。また、例えば、よく指摘されていることでございますが、国民年金の年金の給付と、あるいはまた生活保護の給付とのバランスについても、いろいろな議論があるところでございます。

 こうした全体を常に一体的に議論していくことが私は大切であって、一つ一つをばらばらに議論することではなくて、全体的に議論をしながら全体の負担と給付のバランスを考えていく必要があるとの観点から、常に一体的な見直しを考えなければならないということを申し上げてきたところであります。

岡田委員 私はやはり、年金というものがきちんとしている、つまり、すべての高齢者がきちんと一定の額の年金を受け取っているという前提で、その上で医療とか介護の、例えば自己負担とか保険料とか、そういうものを組み立てていく、そういう意味で一体的だ。総理も最初におっしゃったんですけれども、そこのところが非常に重要だと思うんです。ということは、やはり年金制度がしっかりしているということが大前提ですね。ここが壊れちゃうと全部崩れちゃう。一体改革はいいけれども、全体が崩れちゃうということにもなりかねません。

 そういう意味で、私は年金の問題にこだわり続けているわけですけれども、総理は、年金が破綻するというのはどういう意味だというふうにお考えですか。総裁選挙の最中に、一円ももらえないことを破綻という、こう言われましたね。今でもそういう認識ですか。

安倍内閣総理大臣 破綻というのは、もう事実上給付することができなくなっていく状況をいうのではないか。そこで、例えばそれが所得代替率何%かということを直ちに今申し上げることはできないわけでありますが、国民が期待をしている年金額、当初保険料を払い始めて期待している給付が全く受けることができないということではないかと思います。

岡田委員 給付が全く受けられない、つまり、一円ももらえない状態を破綻というのは、私は間違っていると思いますよ。だって、一円ももらえないなんてことはあり得ないですよ。

 ということは、破綻しないということを総理は言っているわけですけれども、しかし、一円もらって、それで意味がありますか。一円ももらえないという、その表現は、いや、一円でももらえればそれは破綻じゃないということになるじゃないですか。違いますか。

安倍内閣総理大臣 私も、演説をしてきた文脈すべてを覚えているわけではありませんが、私は恐らくこう申し上げていたんだと思うんです。世の中で、破綻すると一円ももらえないかのごとく議論が行われているけれども、それはおかしいということを申し上げたわけであります。

岡田委員 総理は、日本記者クラブでの討論会で述べられているんですよ。議事録もあります。「厳しいと制度が破綻するのかということです。破綻というのは、つまり年金が一銭も払えませんよということですね。それは全くの誤りです。」当然ですよ、そんなことは。「例えば出生率一・一。皆さん、おそらく一・一になったら、もうだめだろうと思っておられると思います。が、一・一になっても、四六%の代替率を確保できます。しかし、五〇%という約束は破ることになる。」

 後段、総理の言っていることは正しいんですよ。つまり、今約束しているその制度が維持可能でなくなったときに破綻というんじゃないんですか。ですから、今、年金改正によって現役所得の代替率五〇%、そして最高の保険料率が一八・三%ということを法律で約束している、国として約束している、そのことが持続可能でなくなったときに、それは制度は破綻したということじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 先般の年金制度の改正において、私どもが予測している出生率の中において、年金をもらい始めた段階においては代替率五〇%を確保する、しかしながら、その後出生率が大きな変化を示す中においては、それは給付を調整するということも、見直しをするということも法律には書いてあるわけでございまして、法律自体が想定している状況が全く崩れたということではないということでございます。

岡田委員 しかし、法律上五〇%ということはちゃんと書いてあるんじゃないですか。ですから、五〇%が維持できなくなるということは、今政府が約束している制度を変えざるを得ないということでしょう。

安倍内閣総理大臣 この法律の中に、いわば出生率が大きく変化をしたときにはまた見直しをするということが書いてあるわけでありますから、その中で対処をする。

 しかし、私どもは、例えば二〇五〇年に一・三九ということを予測しているわけでありますが、先ほど私が講演の中で申し上げましたように、一・一でも四六にはなりますよということは申し上げました。しかし、さらに一・三九にするべく全力を尽くして少子化対策を行い、また、よってこの年金制度を何とかさらに安定させたい。そして、給付において代替率五〇%、これはもらい始めの段階でありますが、それを確保するために頑張ってまいりたいと思います。

岡田委員 所信表明演説の中でも、年金について総理は、「公的年金制度は、国が責任を有しており、破綻したり、払い損になったりすることはありません。」こう書いておられますね。

 ということは、総理の定義によれば、公的年金制度は国が責任を有しており、一円ももらえないということはありません、こういうことですね。

安倍内閣総理大臣 講演においては、わかりやすいお話をいたします。まるで年金が直ちに破綻するかのごとくの議論があるから、それはそうではないですよと。年金が直ちに破綻するかのごとくがあることによって、つまり保険料の納付率にも大きな影響を与えているということから、私はわかりやすくお話をしたのでありまして、そんなに簡単に崩壊するわけではないですよ、そして公的な年金制度、例えば国民年金においても、今三分の一税金が入っていて、将来半分にしていくわけであって、これは安定させていく、当然払い損になることはないということを私は強調したわけでありまして、事実、そうであります。

 出生率においても、まるで一・三九を割って、例えば、一・三を割るともうほとんどもらえないかのごとくのそういう印象を持っている人たちが多いのも事実でありまして、私が一・一で四六%代替率がありますよということをお話ししたら、ああ、そうですかという人も随分多かったのも事実であります。

 そういう意味におきまして、年金制度の実態をこれから国民の皆様によく説明をしていくことが大切であり、また、我々もそういう努力をしていきたいと思います。

岡田委員 厚生年金が直ちに破綻すると言っている人は、私は聞いたことがないんですよ。ですから、聞いたこともないような話を前提に、まるで我々が言っているような前提で言われるのは、私は全く筋違いだと思いますよ。国民年金は、それは非常に厳しいですよ。三人のうち一人は保険料を払っていないんですから、国民年金は。だけれども、厚生年金が直ちに破綻するなどとは言っていませんよ。

 そしてもう一つ、総理が言っておられる「払い損になったりすることはありません。」これはそうですか、事実ですか。

安倍内閣総理大臣 払い損にはならない、こういうふうに考えています。

岡田委員 つまり、今の制度が維持できなくなる、例えば、出生率が総理のおっしゃるように想定よりも低くなって維持できなくなれば、その時点で法改正、制度改正が必要になりますね。そうすると、保険料率、最高一八・三を上げるか、あるいは所得代替率五〇%を下げるか、どちらかが必要になります。そのしわ寄せはそのときの働く世代にみんな来るんじゃないですか、基本的には。そういう意味で、若い人は払い損になるんじゃないんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 どの世代のことを言っているかということによっていろいろな議論があるところでありますが、基本的には、今厚生年金のことについておっしゃっているのだとしますと、半分自己負担で半分は使用者が払うという仕組みになっている制度であります。

 その中で、上限を一八・三ということで決めたわけでございますが、その後、先ほど申し上げましたように、上限をそのような上限にして、また積立金もある中において、その積立金を給付の方に回していくという中において、代替率を、先ほど申し上げましたように、一・一まで下がったとしても四六%は確保できるという中において、これは平均寿命まで生きるかどうかということもあります。それは、もちろんそういうリスクの上で年金制度というのは、保険ですから、成り立っているというのは当たり前のことでありますが、これは平均寿命まで生きれば、自分が払った額以下になるということはないということでございます。

岡田委員 自分が払った以下になることはないというお話ですが、それは、ですから使用者側が払った保険料をどうカウントするかの問題ですから、本来それは給料だ、本来もらうべき給料だと考えれば、明らかに違うわけですね。

 それは、今年金を受け取っておられる世代の方は幸せですよ、そういう意味では。そのことが悪いとは私は言いません。だけれども、これから若くなればなるほど、払った保険料に対して受け取る年金の割合が悪くなっていくことは間違いないし、自分で払った分だけ見れば、損をするというか、それはマイナスになることも間違いない、そのことを申し上げておきたいと思います。

 そこで、総理、年金についてお聞きしたいと思いますけれども、年金の抜本改革、つまり、総理は、共済年金と厚生年金を一つにすれば、一本化の話ですね、その後はもうそれでいい、抜本改革は基本的にそれで終わりだというふうにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 私がお答えをした後、また詳しくは厚生労働大臣からお答えをいたしますが、まずは被用者年金である共済年金と厚生年金、これは、同じ給料をもらっていれば同じ保険料で同じ給付であろう、そういう仕組みにしていかなければ官民の格差を放置することになるわけでありまして、私たちは、まずできることからやっていかなければいけないと考えています。

 そして、厚生年金と国民年金の統合につきましては、いろいろとハードルがあるのは事実でありまして、果たして国民年金の保険料を支払っている方々の所得を厚生年金を払っている方々と同じように捕捉できるかという問題もございます。

 そしてまた、国民年金を支払っている人たちにおいて、彼らの人生設計が厚生年金を支払っている人たちとは大分違うところがあるわけでありまして、いわば、被用者年金においては定年があって定年後ということになるんでしょうけれども、国民年金の方々は自営業者の方々が多くて、まさに、ずっと自分は生涯現役でいこう、それをある程度補助してもらう程度でいい、だから保険料は安くて、給付もそれを補てんする程度でいいという人たちの人生観もあるわけでありまして、そういう中で、果たして統合することがお互いにとっていいのかどうかということも、当然考慮をしなければいけないものではないか、このように考えています。

岡田委員 ちょっと先ほど言い間違えましたので訂正しておきますが、使用者と本人の合計を下回る、支払った額の保険料の合計を下回るということですので、訂正しておきます。

 さて、今の総理のお話ですが、捕捉の話ですね。自営業者の方はちゃんと捕捉できるかどうかという問題があると言われました。しかし、私は、これは日本国総理大臣に言ってもらいたくないんですね。だって、これは年金だけじゃないんですよ。社会保険料すべてに言えることですよ。介護保険だって医療だって、みんな所得水準によって違ってくるんですよ、サービスが。ですから、そのことを最初にあきらめてしまう、もっと言えば、では、うまくごまかした人はそれでもらい得になっちゃう、それが美しい国ですか。

 やはり、きちんと国民の責任として払うべきものは払っていく、そういう国を私は目指したいと思うんですよ。もちろん、自営業者の方の多くはちゃんとしておられると思いますよ。でも、一部のそういった不心得者をまるで認めんがごときそういう発言は、私は総理としては控えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 すべて把握をするためにはそういう仕組みももちろん構築をしていく必要もあるでしょうけれども、しかし私が申し上げているのは、厚生年金の保険料を払っている方々にとっての不公平感が出やしないか、こういうことでございます。被用者の年金を払っておられる方々はまさに、これはもうすべて把握をされているわけでありまして、新しい仕組みをつくっても、例えば性悪説に立てば、すべて把握するのはなかなか困難であるのも事実であります。

 そういう中で、果たしてこれは公平性を担保できるのか。だから、国民年金の方は、これは定額において、そして水準も厚生年金に比べれば低い水準になっている、こういうことではないかと思います。

岡田委員 我々は納税者番号制の早期導入ということを言っているわけです。納税者番号制を導入したからどこまで捕捉できるかという問題があることは私も認めます。しかし、今より大きく改善することは間違いない。どうしてそれができないのか。これは小泉さんと議論していても、いつも小泉総理も認められませんでしたが、ぜひそういうこともしっかり検討してもらいたいと思います。

 そして、さっき総理のお話を聞いていて私は思ったんです、ああ、だから国民年金を含めた抜本改革に消極的なのかなと。つまり、国民年金に対する認識が違うんですよ、総理。

 国民年金というのは、もともとは、確かに自営業者の方が大半で、そして、その自営業者の方は定年もないし一定の資産を持っている、それだけの収入があるから補完的なものとして位置づけられていた。しかし、今や国民年金加入者の中で自営業者というのはごく一部になりました。そして、多くの人が定年を持ち、定年制の中で働き、そして資産もない。そういう人たちが本当に今苦しんでいるから、困っているから、そういった国民年金そのものの性格が変わってきているから、その国民年金の改革を含めて、全体の大きな改革が必要だというふうに私たちは言っているわけであります。

 ぜひ総理、国民年金に対する認識だけちょっと改めていただけませんか。

柳澤国務大臣 先ほど来岡田委員がおっしゃった捕捉の問題もそうなんですけれども、やはり現実を公平に処理するということで、例えば給与所得者に対しては給与所得控除、これは経費なんですけれども、本当に満額が経費かと言われればなかなか、どちらからどういう御議論を聞いてみても、やはりそうではない。自営業の方々とのバランスをとる、そういう働きというか効果も期待しているというのも、これはもう日本の税制の中に決められていることでありますので、全くのきれいごとの上に現実を処理する法制というのは成り立っていない、これはやはりお互い認めてかからないといけないと思います。それは、自営業者がすべて虚偽の申告をしているなどということとは全く違います。

 それから、国民年金の見方でございますけれども、今たまたま、本来厚生年金に抱えるべきそういうような人についても国民年金の方に追いやられてしまう人がいるんではないか、そういうことが発生しているんじゃないかというようなことであれば、これは我々は、社会保険庁の行政を通じてしっかりそれは制度を適用していかなきゃいけない、このように考えます。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が申し上げましたのは、自営業者を中心として当初は国民年金ができたのは事実でありまして、その経緯も踏まえてお話をしたわけでありますが、現在、いわばパートを初め、非正規雇用の方々がふえているのも事実であります。

 ですから、私は今、再チャレンジの推進等々におきまして、非正規と正規雇用者の例えば社会保険についての不公平を是正していくために、社会保険の拡大を進めていかなければいけないと思っています。

岡田委員 年金の方の問題、この辺で終わりたいと思いますが、柳澤さん、柳澤大臣は大臣になられて健忘症になられましたか。大臣、すばらしいことを言っておられるんですよ、与野党の年金の合同協議会で。私、感激しましたものですから、ちゃんと自分のメモにも書いてあるんです。「民主党さんの多くの方が言ったように、雇用の形態とかあるいは生活の形態というのが全く変わってきたことに対して誠実に年金制度も対応すべきだ、このように思っておりまして、改革である限り相当ドラスチックなことも避けられないというように実は思っています。」その初心を忘れないように、しっかりやってもらいたいと思います。(柳澤国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、いいです。次に移ります。私はお願いをしただけですから、質問はしていませんから。

 次に、格差の問題について総理にお聞きしたいと思います。

 小泉総理は私との議論の中で、私が格差の拡大は問題ではないかというふうに小泉総理に言ったときに、小泉さんの答弁を聞いてやや驚いたんです。小泉さんは、最低限のセーフティーネットがあれば格差の拡大は悪いことではない、こう言われました。総理も同じ御認識ですか。

安倍内閣総理大臣 格差について申し上げれば、それはある程度頑張った人と、やはり汗を流した人が報われる社会をつくっていくという中にあって、そういう人たちが達成感を感じる社会であることが大切だろうと思いますね。頑張った人とゆっくりしていた人がある程度収入に差が出てくるのは当然ではないかと思います。

 しかし、人間、うまくいくとき、頑張ってもうまくいかないときもあるわけであります。そこで、格差のない社会というのはそもそも存在するわけではありませんし、我々はそういう社会をつくろうと思っているわけではありません。要は、その格差が不公正、不公平な競争の結果生まれたものであってはならないというふうに考えておりますし、また、格差の大体国民的なある種の許容範囲というものもあるんだろう。そのための所得再分配機能という税制等々がございます。厚生年金もそういう側面も持っているわけでありますが、そうした制度の中でどれぐらい修正をしていくかということではないか、このように思います。

 その中で、恐らく小泉総理は、今言われている格差というのはそれほど、絶対にこれは許容できないというものでもないし、不公平、不公正な、もちろん社会規範、ルールに反した企業活動をするところもありますが、しっかりと摘発をされているのも事実でありますから、そうではないのではないかということを総理はおっしゃっているのではないかと思います。

岡田委員 小泉総理は、最低限のセーフティーネットがあれば格差の拡大は悪いことじゃない、積極的に是認しているわけですよ。これは一つの考え方ではあります。最低限の網だけ張っておいて、あとはもう自由にやらせたらいい、国はそこに何もしない方がいいんだと。

 安倍総理は、そういうお考えをどう思われますか。違いますか、安倍総理のお考えは。

安倍内閣総理大臣 格差の感覚というのは、国が成長していくときは、何となく格差が出てきたという、そんな雰囲気が漂ってくるわけであります。一九六〇年代の初頭にも格差が生じているという議論があって、池田内閣の高度経済成長路線に対して、エコノミストの都留重人氏は格差解消をする方が先だという議論がありまして、ここで下村・都留重人論争というのがあったと記憶しておりますが、高度経済成長をしてその果実を均てんする、そういう道に進むという議論をし、結果として、高度経済成長を行い、と同時に、社会保障のセーフティーネットを随分厚くしてきたのも事実であります。それがなければ、今は八十数兆円の給付を行っていますが、かつて一九七〇年は三・五兆円ぐらいの給付がここまで厚くはならなかったろう、これはやはりしっかりと経済成長をしてきた結果だと思います。

 そこで、格差があってもあとはセーフティーネットを張っておけばいいということではないわけでありまして、やはりそこは政治の使命というものがあって、頑張っているけれどもなかなかうまくいかないという人たちや、あるいはまたそういう地域があれば、そういう地域や人たちの気持ちになって光を当てていくということも私たちの大切な使命であると思います。

 ですから、人間は頑張っていれば必ず結果が出て高い収入を得られるわけではないわけでありますが、しかし、一回失敗しても何度でもチャンスのある社会をつくっていきたいと思っておりますし、また、あるいは不幸にして会社を離れなければならなくなったとしても、研修を受けたり資格を取ったりしやすい環境をつくっていくことも私たちの使命ではないか、こう考えております。

岡田委員 今、総理も少し言われましたけれども、努力した人が報われる社会というのは、だれも異論を述べることのできない正しい命題だと思います。

 ただ、では、政治がそういう社会を実現するためにどこまで力が果たせるかというと、一定の限界があることも事実で、そういう中で、総理が今おっしゃったような、努力しても報われないという人が出てくるし、私はそういう人が実は大半だと思うんですね。そのことをやはり忘れずに、政治家はきちんと対応していかなきゃいけない、そういうふうに思います。

 そしてもう一つ、中間層の厚みという問題ですね。だんだん二極分化が進んできた、こう言われます。しかし、日本は、やはり中間層の厚みがあるということが日本のよさであり、強さだと思うんですね。例えば、これだけ日本の産業に競争力があるのは、やはり現場が強いからですよ。現場というのは中間層の皆さんが支えているわけです。

 したがって、二極分化、これはもちろん、グローバル化が進んでいけば、世界的な現象として二極分化の傾向というのはあるんですけれども、しかし、それに対して、やはり日本は日本なりのやり方で、中間層の厚みを大事にしてやっていくんだ、そういう決意で私は政治に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本社会というのは、基本的に農耕の社会がかつては基盤であって、農耕というのは、やはりお互いに水を分け合っていく、そして収穫時期にはお互いに人を出し合って、手伝い合って、ともに闘って助け合っていく、共生していくというのが、私は日本的な麗しさではないか、このように思います。現在、私たちがしっかりと構築をしてきたセーフティーネットも、いわば社会主義的な延長線上ではなくて、むしろ日本で大変うまくいってきたのは、こうした日本的な助け合い、共生の精神の延長線上だからではないかと思っています。

 そこで、勝つ人が勝利を誇って、敗者の前でいわば勝ち誇ることをよしとするというのは日本的ではない、このように思うわけでありまして、やはり、それぞれ謙虚に対応していく、あるいは、それぞれお互いのことを考えながら日々の営みをしていくということも大切であろう。つまり、その中で、中間層が厚いということは私は大変重要な点ではなかろうか、こう思います。

 一方、グローバル化している社会の中で、日本で何とか勝ち残れば生き残れるということではなくて、世界の中で勝ち残ることができないというのも現実でありますが、その中で、日本的なよさを生かしながら世界で勝ち残ることができる日本モデルを模索してまいりたいと思います。

岡田委員 私も、競争は非常に重要だという前提でお話をしております。そして、今総理が言われたことを、では具現化するとしたら、やはり税制ですよね。そういう意味で、これから税制の議論を政府の内外で詰められるんだと思いますが、所得税の最高税率の問題や相続税、あるいは証券関係税制、そういったことでしっかりとした対応をされる、そのことを期待しておきたいと思います。

 次に、財政再建の問題に触れたいと思います。

 安倍総理は、成長なくして財政再建なしと言われました。これは、小泉総理が改革なくして成長なし、こう言われたメッセージと比べると非常にわかりにくい。改革なくして成長なしというのは、改革のためには時には当面の成長を犠牲にしてもいいんだ、こういう意味だと思うんですね。現に、あの大変な不況の中で改革を、非常に部分的ですが、例えば不良債権の処理などを進められたのは、そういうことだったと思います。

 では、この改革なくして成長なしのアナロジーでいうと、成長なくして財政再建なしというのは、成長のためには財政再建を時には犠牲にしてもいいんだ、こういう意味ですか。それとも違うんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 小泉政権が発足した五年半前のことを思い出しますと、当時は、いわばある程度財政出動をして何とか景気を回復しようという政策が大体中心であったのも事実であります。それに対しまして小泉総理は、成長を本当にするためには今までのやり方ではもううまくいかないんだ、今までのような形で財政出動をしたとしても成長はしない、景気回復はしないんだと。つまり、構造を変えなければ成長しないし、世界の経済の中で日本の経済は力を持つことができないという中において、いわば成長と改革が対立概念であったものを、いや、実は違うんだ、改革をすれば成長するんだという処方せんを示したものであって、つまり、成長するためには改革をするんだ、こういうことだったと思います。

 私も、つまり成長と財政再建を対立概念としてとらえているのではなくて、やはり成長することによって自然増収を上げていく、日本経済の規模を拡大していくことによって財政再建も可能になってくる。当然、経済が縮小していく中においては、税収もどんどん縮小していくわけでありますから、財政再建はできないという考え方でございます。

岡田委員 そこで、財政再建の具体的目標。基本方針の中でも二つの目標があると思うんですね。一つは、二〇一一年、プライマリー黒字の達成、もう一つは、二〇一〇年代半ばと書いてありましたが、債務残高の対GDP比の安定的引き下げ、この二つは、どちらがより重要な目標なんでしょうか。

 基本方針の中では二つ並べて二期、三期ということで書いてあったと思うんですが、総理の所信表明の中では、二〇一〇年代半ばに向け、債務残高の対GDP比を安定的に引き下げるため、まずは二〇一一年にプライマリーバランスを確実に黒字化します、こう書いてありますね。ということは、これを見る限り、二〇一〇年代半ばの債務残高のGDP比の引き下げ、つまり借金をGDP比で小さくしていくということの方がより上位概念なのかな、こう思って読んだんですが、そういう意味は含まれているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 目標として、つまり、債務を発散させないことがまず大切であります。そして、その意思を内外に示し、日本経済に対する信頼性を確保しなければならないと思います。そのためにも我々の目標を示したわけでございまして、二〇一〇年代の半ばごろにはGDP比の債務残高が減少していく方向にしていきたいと思います。

 しかし、そのためには、まず通過点として、二〇一一年にプライマリーバランスを黒字化していくということを道程の中において目標として掲げている、こういうことでございます。

岡田委員 この二〇一一年のプライマリー黒字化というのは、そういう意味で一里塚、そして、二〇一〇年代半ばに確実に債務残高のGDP比を減らしていく。ここまで来るとかなり、それから何年かかるかという問題はありますけれども、現在のこの財政の非常に悲観的な状況から、何とか方向性が見えたというところに行くんだと思います。そういう意味でもこの二〇一一年というのは、一里塚ですから、確実にこれをやっていかなきゃいけない。

 そこで、歳出削減のやり方ですね。やはり構造改革、歳出改革をやる中で減らしていかないと、単に一時的に頭押さえで抑制しただけじゃだめだと思うんですよ、これはずっと続くことですから。中には、例えば公共事業だって、今は減らしているけれどもまたふえるんだとか、そういうふうに言っておられる政治家もいるんですけれども、そうじゃなくて、これは構造的に減らしていく。

 それでは、どういう構造的な歳出改革というのを総理はお考えなのか。基本方針の中ではいろいろ別表で書いてありますけれども、しかし、あの小泉さんのつくった二〇一一年のプライマリー黒字化の中でも、二・二兆から五・一兆円は残されているんですね。つまり、十六・五兆円の要調整額の中で、それぞれ積み上げは一応ある、しかし二・二兆から五・一兆はない。ほうっておけばこれは増税だ。

 しかし、そこも含めて歳出改革でやっていくとすると、一体どういうことを総理はお考えなのか。もしそれがないということになると、少なくとも二・二兆から五・一兆の増税は避けられないというふうに判断していることになりますが、いかがなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 政府として、要調整額として十六・四兆円ということをお示ししております。

 その中で、どの程度歳出削減で対応できるかということは今委員が御指摘になったとおりでありまして、十一兆円台か十四兆円台かということになるわけでありますが、いずれにいたしましても足らざる部分が残るわけでございまして、歳出削減につきましては、社会保障費につきましては五年で国と地方を合わせて一・六兆円程度の削減をしなければいけない。そして、それ以上社会保障費の合理化、適正化が図れるかどうかという努力も当然していくべきなんだろうと思います。

 また、事業規模は落とさずにコスト削減を図れるかどうか、あるいはまた公務員の削減に一層前進を見ることができるかどうかという絶えざる改革努力は行わなければならないと考えておりますが、足らざる部分につきましては、これは基本的に二〇〇九年の、先ほども議論をいたしました、基礎年金の国庫負担三分の一から二分の一に引き上げるその財源、あるいはまた、ふえていく社会保障費、また少子化対策等々もあるでしょうし、地方の税源の充実というものもあるでしょうし、また例えば国際競争力ということも考えなければいけない。そういうことを勘案して、来年の秋以降に抜本的な税制の改革を議論しなければならないと考えております。

岡田委員 今言った以外の別のファクターとして、例えば再チャレンジ支援策、これは総理が言われて、いわば基本方針の枠外、かなりの部分は枠外だと思うんです、まだ具体化していないわけですから。それから、やはり少子化対策をどうしていくか。それから、一部に言われている、減価償却見直しによる法人税の減税とか、あるいは、総理も積極的な方向性を少しお見せになった承継税制とか、そういうものをどんどん足し合わせていくと、さっき言った二・二兆から五・一兆というものがもっと積み上がっていく可能性がありますね。

 そういうものを増税をなるべく少なくして、あるいは増税なしでいこうとすれば、これはよほどのやはり歳出削減を追加的にやっていかなくちゃいけないわけです。そして、その歳出改革をやるチャンスは、もうこの年内なんですよ。これはだんだんやっていくということじゃないんですよ。やはりこの年内に思い切った歳出削減のもう一段の具体的プランを出さないと、結局は大きな増税になってしまうということだと私は思うんです。

 総理、決意はいかがですか。総理の決意を聞きます。

安倍内閣総理大臣 私がまず決意を述べましたら、また尾身財務大臣からも、財政を預かる責任者でございますから答弁いたしますが、まず、私は、来年度におきまして、新規の国債発行額を今年度の新規国債発行額以下に抑えるということをお約束いたしております。そしてさらに、歳出削減のための努力をしてまいります。

 そしてまた、今後五年間の中で、成長戦略をしっかりと練りそして実行していくことによって、日本の成長力を高め、経済を活性化させ、そして自然増収を図ってまいりたい。日本はまさに今成長しているからこそ、例えば昨年度の予算におきましても、当初よりも五兆円近い増収があったわけでございまして、その額はかなりの大きな額になってくる。そのための努力も当然してまいりたいと思います。

岡田委員 総理、ちょっと認識が甘過ぎますよ。まず、三十兆以下に抑えるって、それは大幅な増収があるんですから当たり前ですよ、そんなことは。

 そして、成長戦略でありますが、この基本方針では、名目で三%という数字を置いていますね。特に実質二・二。この二・二なり三・〇を超えることを前提に総理は組み立てておられるんですか。

安倍内閣総理大臣 またこれも詳細については大田大臣からぜひ御答弁させていただきたいと思いますが、政府の方針としては、成長戦略で何とか実質二・二%を目指したいというふうに考えております。また、名目において三%の成長。

 しかし、何とかまたこの成長戦略によって、それ以上の成長を目指していくべく努力を当然重ねていきたい。そのかぎは、イノベーションであり、またさらに国や経済を開いていくオープンではないかと思っています。

岡田委員 高い成長、特に実質成長を目指していくという方向は私はいいと思います。

 だけれども、財政の計算をする中で、それを前提に置いてしまったらだめだというのが今までのいろいろな議論の結果だったんじゃないですか。そういう中で実質二・二、名目三・〇という数字が決まってきたのであって、もちろん、それ以上いければいいですよ。特に、実質成長が二・二を超えれば、それはすばらしいと私は思う。だけれども、それを前提に計算しちゃったら、結局、最後つじつま合わせできなくなっちゃいます。

 そういう意味で、私が申し上げているのは、成長戦略はもちろん結構です、大いにやっていただきたい、だけれども、同時に歳出削減の努力をお忘れなくと。それを相当認識をしっかり持ってやっていかないと、結局、最後は全部増税でつじつま合わせすることになりますよということを申し上げているわけです。

 そういう意味で、具体的にちょっとお聞きしたいと思いますが、例えば、公共事業の削減はどうお考えですか。最初は三%減でしたよね、毎年毎年、五年間。ところが、三から一になった。私が聞くところによると、参議院の方で、参議院選挙もあるのに何だといって文句がついたという話もある。一たんそれは経済財政諮問会議で合意して、総理も官房長官としてお入りだったし小泉総理もお入りの中で毎年三%ずつと決めながら、それが党によってひっくり返されたわけですね。

 小泉さんは確かに公共事業予算は削減されてきました。ピークから比べると、一九九六年に対GDP比で六・四だったのが二〇〇四年で三・九に、二・五ポイント減った。私はそれは評価しています。しかし、もし毎年一%ずつしか減らさないということですと、ほとんど減らないんですよ、対GDP比は。三%ということであっても、一ポイントしか下がらないんです、五年間で。

 そういう意味で、三%じゃなくて、より深掘りをしていくということが私は確実にプライマリー黒字を達成するために必要だ、こういうふうに思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに予算の中身についてですから、私の後、ぜひ尾身大臣から答弁させていただきたいと思いますが、小泉改革の中で公共事業については、これは当初予算と補正予算も合わせて考えなければいけないと思うわけでありますが、これを合わせればこの五年半に約半分にしたと言ってもいいんだろうと思います。十四兆が七兆ぐらいになっていった。これは大変な削減努力であった、このように思います。そういう意味では、今まで公共事業中心だと言われていた自民党も大きく変わったことの証明ではないか、私はこのように思うわけでありますが、大変な努力をしてきた。

 しかし、公共事業が全部悪いわけではないわけでありまして、必要な公共事業もありますし、その地域が立ち上がっていくため、むしろその地域の経済を活性化させていくための公共事業、まさに未来への投資というものもあります。そういうところを、公共事業のための公共事業はやめなければいけませんが、まさに未来への投資となる公共事業については当然考えなければいけない。

 そういうめり張りをつけながら、しかし、歳出の改革、削減は当然我々取り組んでいかなければならないと思います。

岡田委員 ピークから半分になったと。私は半分とは言いませんが、しかし半分近くになったということはそれなりに評価できることですが、ピークが高過ぎたんですね。ですから、先ほど言いました対GDP比三・九%、二〇〇四年の数字ですが、これは、ほかの国と比べると依然として非常に高い。例えばアメリカは二・五%だし、イギリスは一・八%、ドイツは一・四%ですよ。

 そういう意味で、三・九で安住することなく、さらに下げていく。いや、お金がいっぱいあるならいいんですよ、何をしたって。しかし、限られた財源の中で、これは結局、増税するか公共事業をするか、そういうチョイスになるわけです、最後は。そういう意味で、これは確実に下げていくという決意が必要だと私は思いますよ。

 総理は、重点化とか今言われましたけれども、そこで一つお聞きしたいのは、これから公共事業予算を減らしていく、あるいは重点化する。もちろん私も公共事業が悪いなんて言っていませんよ、必要な公共事業はたくさんある。例えば、地震のための対応、学校の耐震構造の強化とか津波に対する備えとか、バリアフリー化とか、あるいは競争力をつけるための港湾の整備とか、限られた財源ですから相当選択と集中でやっていかないといけないと思うんです。しかし、現実に霞が関の構造は、基本的に局あって省なしだし、道路、港湾あるいは農業土木、それぞれがかなり独立性を持ってやっているわけです。

 総理は、首相官邸がリーダーシップをとってというふうに一般的に言っておられますが、では、この公共事業の見直しについて官邸はどういう役割を果たされるのか。各省庁のそれぞれのエゴに対してどうやってくさびを打ち込んでいくのか、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。(発言する者あり)総理のお考えを聞かせていただきたいんです。

安倍内閣総理大臣 すべて分担管理でありますから、私が総理としてその分担管理をしている各大臣に指示をするわけであります。

 当然、私は各大臣に対して、この公共事業に対してしっかりとめり張りのあるものにするようにという指示をいたしておる次第であります。予算については、分担管理をしている尾身大臣が責任を持っているということでございます。

岡田委員 分担管理はいいんですけれども、小泉総理の時期を見ても、公共事業全体の数字は減ったものの、その内訳は余り変わらなかったなというのが私の実感なんですよ。それを本気でやっていこうとしたら、やはり仕組みが要りますよ。今までの延長じゃできないですよ。官邸主導だとおっしゃるなら、私は官邸主導賛成ですよ、それなら公共事業の削減についてもきちんとした仕組みをつくって、そして各省庁のエゴに対して切り込んでいく体制が必要だ、こういうふうに私は思っております。ぜひ真剣に考えていただきたいと思います。

 それでは次に、子育て支援についてちょっとお聞きしたいと思うんです。

 これは総理が官房長官のときに、少子化社会対策推進専門委員会の報告書というのが官房長官あてに出ていますよね、猪口大臣から。総理も当然中身は御存じだと思いますが、よく言われるのは、五年間が大事だよと。五年間が大事だよと言われ始めてから随分時間もたって、いまだに五年間が大事だよと言っているんですが、とにかく、団塊ジュニアの世代が子供を生み育てるという、これからのせいぜい五年でしょうね。もうかなり押し迫ってきたと思いますが、この間に思い切ってやはり対策を集中的にやっていかなきゃいけないんだ、こういうことだと思います。

 その中の経済的支援の問題ですけれども、経済的支援の問題については、乳幼児期の経済的負担の軽減というのがこの中では強調されています。具体的に何かお考えだというふうに思いますが、手当で対応されるんですか、それとも税制で対応されるんですか。総理のお考えはどうなんでしょうか。

柳澤国務大臣 子育て支援として、乳幼児の時期における児童手当の増額というようなものをイメージされての御質問だと思うんです。歳出の方面の措置としてはそういうことだろうと思うんです。

 しかしまた他方、今御指摘のように、税でこれを考えていくというようなことの中で、今は扶養控除で基本的に対応しております。特定扶養控除は、もっと年齢の上の、教育控除のような形になっています。この扶養控除を例えば年齢制限して、もっと若年者に集中的にこれを差し向けていく、こういう考え方もある。それからまた、扶養控除を全体として低年齢のところの税額控除にしてしまう、こういういろいろな考え方があるわけでございます。あるいはフランスのようにN分N乗にする、そういうようなことにするということもあります。

 また、税については、先ほど岡田委員の前の議員の言われるように、それがすぐ課税最低限に響いちゃうんです。課税最低限に響くと、地方税も同じようにやれば、今度はまた国民健康保険税だとかあるいは介護保険料に響いてしまう。こういうような問題がありますので、これは歳出の方面ともリンクしておりますので、総合的な検討をするという以外、今この段階で申し上げるわけにはまいらない。

 しかし、いずれにしても、我々は危機意識を持って対処しよう、こういうふうに考えているということを申し上げたいと思います。

岡田委員 私は総理にぜひお考えをお聞きしたいんですよ。というのは、こんな議論はもうずっと何年もやっているんですよ。税がいいのか、手当がいいのか。私は当然、税の方が問題が多いと思いますよ。つまり、所得の少ない人には恩典がないですから。やはり手当制度がいいと思いますし、与党の中でも公明党は同じ意見だろうと私は思うんですけれども。

 そういうことをきちんと決めなきゃいけないんですよ。同じ効果を持った、児童手当とそして税で対応するという控除制度があるんであれば、やはりそれを一つにして、ヨーロッパは基本的には手当制度が主流ですよ。手当にすれば、所得の少ない方に幅広くその恩典が行くわけですよ。そういったことについて決めなきゃいけない。決めないままずるずるやって、もう二年も三年もたって、あと五、六年といって本当はもう二年ぐらいしかないかもしれない。ここはやはり決断のしどころですよ。

 ですから、それを総理に、しかも官房長官として今まで少子化の問題に取り組んでこられたはずですから、この問題に思い切った決断をやってもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回出しました少子化対策については、特に、乳幼児期に対する加算を行っていく、あるいは手当を拡充していくということについて方向性を決めたわけであります。やはり乳幼児期が大変負担が重たいだろう、この乳幼児期の負担感をある程度減少することによって少子化に資するのではないか、こういうことだと思います。

 また、児童手当についてはこの数年間ずっと拡充を図ってまいったところでありますが、税の控除と児童手当の関係、このどちらでいくのかというお話でありますが、世界の中で少子化対策がうまくいっている国とそうではない国等々もあるわけでありますが、そうした点を参考にしながら議論を詰めてまいりたいと思います。

岡田委員 税といっても所得控除と税額控除がありますが、総理、どっちがいいと思いますか。

安倍内閣総理大臣 それぞれにいろいろな意見がございまして、そもそも手当を中心で控除をやめてしまうのかどうかということも含めて、まだこれから議論を深めていく必要はあると思います。

岡田委員 所得の少ない子育て世帯に対する支援という意味では、私は、所得控除よりは税額控除の方がいいというふうに思います。そういうことも含めて、同じお金を使うのであれば実効性のある、必要なところにきちんと行く、そういう制度として組み立ててもらいたいというふうに思っております。

 次に、人件費の問題ですが、この基本方針の中でも五年間で五・七%、約一万九千人の国家公務員の定員削減を行うということになっております。一万九千人、五年間ということは、五で割れば約四千人ですね。純減です、これは。年間四千人の純減。

 しかし、私は、今の各省庁の要求状況を見ていると、かなり数が出てきていますから、本当に四千人以上削ることができるんだろうかというふうに思うわけです。しかも、今景気が拡大局面にある。しかし、これから五年間、いろいろなことがあると思いますよ。やはりできるときに思い切ってやっておかないと、また景気が悪くなったらそんなに、もっと採用した方がいいんじゃないかという議論も出てくると思うんですよ。

 そういう意味で、私は、ことし、これはもうすごく大事で、四千人といわずそれ以上の深掘りをして定員の純減をすべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 公務員の純減については、当初は、五%という目標もとても無理ではないか、こう言われていたのは事実でありますが、それをさらに五・七%という目標を掲げているわけであります。

 公務員については、いわゆる生首を切れないという中にあって、配置転換等々も含めて、新規採用をどれぐらい抑えることができるかどうか。それが国民へのサービスの低下につながらないようにしながら、我々としてもさらに努力できることがないかどうかということについては、さらに深掘りできるのであれば努力をしていかなければならないわけでありますが、留意する点もやはり頭に置きながら、この公務員の削減、純減については、少なくとも五・七%は確実に達成する、そして、それ以上の深掘りができるようにさらに努力をしてまいります。

岡田委員 総理、ちょっと歯切れよくないんですよね、小泉さんとやっていたときと比べちゃうせいかもしれませんが。

 そして、やはり最初が大事なんですよね、ロケットスタート。財政再建をやろうとしたら、やはりできるときに思い切ってやるということでないと、五年間で少しずつやっていけばいい、その間、何が起こるかわかりませんから、やはり厳しくなっちゃうんじゃないか。そして、二〇一一年黒字化というのができなければ、その先の目標も遠のいちゃうわけです。

 そういう意味で、私は、ことしの予算編成はすごく大事で、総理、そういうことに余り御関心ないのかもしれませんが、歳出削減のためにねじり鉢巻きでしっかりとやってもらいたいというふうに思います。

 終わります。

金子委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡田克也君。

岡田委員 残された三十分、歴史認識の問題を中心に、外交など聞いていきたいと思いますが、本題に入る前に、総理、一つ確認をしておきたいんです。

 先ほど我が党の菅代表代行も話題にされたぶら下がり取材の問題ですが、小泉総理のときからこのやり方が導入をされました。テレビを見ていると、記者の質問に対して非常にアドリブで小泉総理が的確にお答えになっているその姿をテレビで見て、さすが小泉さんだ、そういうふうに思った人も多いと思うんです。ただ、あれは実はアドリブではなくて、質問というのは事前に小泉総理は通告されて知っていたんだという話もあるんですが、事実はどちらなんでしょう、官房長官ですから当然御存じだと思いますが。

安倍内閣総理大臣 小泉総理時代に二回ぶら下がりをやっておりますが、テレビが入るのは午後の一回だけであります。ですから、私も、一日に一回必ずテレビの前で国民の皆様にお話をいたしますということを申し上げているわけであります。

 事前の質問については、私は、それは記者側がやりとりが深くなることを望んでいる場合は事前にあらかじめ通告する場合もあるかもしれないし、基本的に私の場合には、八割方は事前にわからない場合もあります。また、何となく雰囲気で大体その日どういう質問があるかということを予測できる場合もございますが、いわゆる質問通告というのは、事前には小泉総理のときにもなかったのではないかと思います。

岡田委員 つまり、事前にどういった質問が出るかということをわかって答弁しているのと、準備して答弁するのと、その場で答弁するのでは大分違うんですね。多くの国民は、あのテレビを見ていて、その場で全部答えているというふうに私は受け取っていたのではないかと思うんですね。それはやはり大いなる誤解。今の安倍総理のお話を聞いても、そういう場合もある、事前にわかっている場合もあるということですから、それならそういう前提で国民は見なきゃいけないわけですね。そういうことの情報開示もやはりきちんとなされる必要がある、そう思って私は質問をさせていただきました。

 さて、歴史認識の問題について、総理は昨日あたりからいろいろ言い方を従来とは変えてきておられます。変えている方向は正しいものですから、私はそれに対してとやかく言うものではありませんが、しかし、それならどうして最初からそう言わなかったのか。総理になって言い方が変わった。そうすると、また何かの機会でもとに戻ってしまうかもしれない。それではやはり余りにも御都合主義ですから、昨日言われたことは、つまり総理大臣として、例えば村山談話その他の扱いについて言われたわけですから、それをきちんと通していただきたいというふうに思います。

 その上で、A級戦犯の話について確認をしておきたいと思います。この議論は総理とも二月に予算委員会でやらせていただきました。

 まず、小泉総理は、私はA級戦犯というのはさきの戦争において重大な責任を負うべき人ではないかというふうに聞いたところ、総理はさらにそれを飛び越えて、A級戦犯は戦争犯罪人であると断言されたんですね。そのことについて、当時官房長官だった安倍さんに同じ質問をしたところ、安倍さんは、日本において犯罪人ではないと答弁されました。その御認識は今も変わりませんか。

安倍内閣総理大臣 日本において、国内法的にいわゆる戦争犯罪人ではないということでございます。遺族援護法等の給付の対象になっているわけでありますし、いわゆるA級戦犯と言われた重光葵氏はその後勲一等を授与されているわけでありまして、犯罪人であればそうしたことは起こり得ない、こういうことではないかと思います。

岡田委員 今、私の質問に総理はお答えにならなかったんですが、日本において犯罪人かどうか。日本法において犯罪人かと日本において犯罪人かは違います。つまり、日本法において犯罪人かどうかというのは、日本法において裁けなければそれは犯罪人にはならないわけです。これは罪刑法定主義といいますか、日本の法律で裁かれた場合には日本法において犯罪人です。しかし、では、日本において犯罪人なのかどうかということを聞いているわけです。

 東京裁判、極東軍事裁判があり、これは占領時代に日本としてこの裁判は受け入れたわけですし、そして、サンフランシスコ条約十一条で、独立後も刑の執行について責任を持ったわけですね。ということは、日本の国内法でもちろん裁かれてはいませんが、しかし、そういった条約とか国際裁判とか、そのことを日本は受け入れているわけですから、当然条約は国内法に優先するわけですから、日本において犯罪人であるというのが正しい答えだと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今私が申し上げましたように、日本の国内法において犯罪人ではないわけであって、罪刑法定主義上、そういう人に対して犯罪人であると言うこと自体、私はおかしいのではないかと思います。

 それと、いわばサンフランシスコ平和条約十一条との関連で委員は質問をされているのではないか、このように思うわけでありますが、サンフランシスコ平和条約十一条については、その段階で服役をしている服役囚に対して、国際法の一般的な解釈においては、講和条約が結ばれた段階で戦争裁判は未来に向かって効力を失うという中にあって、普通であれば釈放されるこの服役囚に対して、連合国の了解がなければ服役したままになる、こういうことであったわけでありまして、その後、昭和三十一年、三十三年、累次にわたって釈放され、三十三年に全員の服役囚が釈放された。しかし、その間、獄中で亡くなった方々もいたということではないかと思います。

岡田委員 占領下において極東国際軍事裁判を日本は受け入れたわけです。そして、あとは執行に関して、独立後もサンフランシスコ条約十一条でその結果をさらに引きずった。つまり、占領下においていわゆる東京裁判の結果を受け入れているわけですから、それは国内法に優先するわけですよ。だから、国内に具体的な法律がなくても、それに優先する裁判というものを前提にする限り、やはり日本における犯罪者、そういうふうに言わざるを得ないと私は思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私はそのようには考えておりません。

 サンフランシスコ平和条約十一条について言えば、いわゆるA級と言われた人たち、B級と言われた人たち、C級と言われた人たちを犯罪者扱いを私たちはしますということを約束したものでは全くないわけであります。このことについてははっきりと申し上げておきたい、こう思います。

 先ほど申し上げましたように、あの十一条を受け入れたということは、つまり、あのときサンフランシスコ講和条約を我々が受け入れなければ独立できなかったということでございます。その中においてあの十一条を受け入れるということは、日本のみならずフィリピン等々で、海外で服役をしている人たちについても頭を悩ませながら、しかし、通常であれば国際法的に講和条約を結んで釈放されるべき人たちについても、ここは連合国の了解なしには釈放できないという条件を我々はあえてのんで独立を達成したわけであります。

 その後、国会において累次釈放すべしとの決議がなされたものと承知をしておりますが、その結果、先ほど申し上げましたように、昭和三十一年にいわゆるA級、そして昭和三十三年にいわゆるB、C級と言われる方々が釈放された、こういうことではないか。つまり、この方々を我々は犯罪者とこの講和条約の結果呼ばなければいけないということではなくて、あの講話条約を受け入れたことによって、この裁判について我々が異議を申し立てる立場にはないということではないかと思います。

岡田委員 例えば、今総理言われたように、A級戦犯十人が昭和三十一年仮出所を認められ、そしてその後赦免をされたということです。しかし、それは刑の減軽が行われただけであって、刑そのものが消えたわけじゃありませんよね。つまり、服役した期間だけの刑期に減軽をするということを正式に決めて行われただけであって、その前に犯した犯罪行為が、それは犯罪行為じゃないということじゃないわけですよ。

 総理の話を聞いていると、そうじゃなくて、いや、そもそもこれは犯罪者じゃないということですから。さかのぼって無効になっているなら別ですよ。そうじゃないんですよ。減軽されているだけなんですから。ですから、罪は罪として残っているわけですよ。いかがですか。認識、全然違うんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも日本においては、いわば国内法的に犯罪者ではないということははっきりしているわけであります。

 そこで、いわゆる東京裁判においての刑がなされたわけでありますが、基本的には、先ほど申し上げましたように、国際法の観念からいえば、講和条約が結ばれた段階で将来にわたってその判決は効力を失うわけでありますが、サンフランシスコ平和条約の十一条において、日本が勝手にそういう行為を行わないようにした。我々は独立をするためにあえてその条項をのんだ。それが結果であって、よって我々は、今、私が例えばいわゆるA級の方々、BC級の方々を犯罪者と呼ばなければいけないといういわれは全くないのではないかと思います。

岡田委員 そうすると、総理、六十一年前の戦争について、責任を負うべき、責めを負うべき人はだれなんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、私も従来から答弁をしておりますように、いわば当時の指導者であった人たちについてはより重たい責任があるんだろうと思いますが、その責任の主体がどこにあるかということについては、政府としてそれを判断する立場にはないと思います。

岡田委員 私もかつてから申し上げておりますように、東京裁判そのものを全面的に肯定するものではありません。中には事実認定の誤りとか、かなり粗っぽいやり方もなされたと思います。B級、C級に至っては、さらにその程度はひどかったというふうに思います。

 しかし、日本としてそれを、少なくとも東京裁判、A級戦犯について受け入れた以上、そのA級戦犯の多くはやはりあの戦争について責任を負うべき人だと、そういうふうに言わなければ、総理のように言ってしまうと、一体だれが責任を負うのかということについて日本政府としては全く関知しないということになりませんか。

安倍内閣総理大臣 さきの大戦については、何回も私も申し上げておりますように、あの大戦の結果、日本人の多くが塗炭の苦しみの中にあったわけでありますし、アジアの国々に大きな被害を与え、そしてつめ跡を残したのも事実であります。その中の反省に立って、今日のこの平和で民主的な日本を、そして世界の平和に貢献する日本を構築してきた、こう思います。

 その中で、先ほど委員がおっしゃったように、ではだれが責任があったかということでありますが、これは繰り返しになりますが、当時の指導者の人たちには当然重い責任があるのも事実でありますが、では、このいわゆるA級戦犯と言われた方々の評価について、それは当時の東京裁判によってその評価がなされ、刑が下ったわけであります。そして、それはいわゆる平和に対する罪と人道に対する罪で裁かれたわけでございまして、その段階で新たにつくられた概念であると思います。

 しかし、いわゆる人道に対する罪ではだれも起訴されなかったというふうに承知をしております。平和に対する罪で起訴をされた、こういうことでありますが、国と国との関係において私たちは異議を申し立てないというのが、この裁判を私たちが受け入れた、サンフランシスコ平和条約によって私たちが受け入れたということではないか、こう思います。

 あの大戦についての評価、だれがどれぐらい責任があるのかどうかということについては、それはまさに歴史家の仕事ではないか、政府がそれを判断する立場にはないと私は思います。

岡田委員 総理のお話を聞いていると、本当にだれが責任を負うべきなのかということを日本国政府として全く判断していないということになりますよ。

 私は、例えば、東条英機さんのお孫さんがテレビでこう言っておられるのを聞きました。東条英機も時代の流れに流されて、抗しがたい流れの中でああいった決断をしたんだと思うと。しかし、私は、物すごくそういうことに違和感を感じるんですね。もちろん、当時の時代状況、それは簡単じゃなかったとは思います。私も、当時もし国の指導者だったと仮定して、あの戦争にいく過程、あれだけの世界恐慌の中で経済的な厳しい条件、地方によっては子供を売り飛ばさなきゃいけない、そして政治家や経済家に対するテロも横行している、そういう中で私自身が間違えない判断ができただろうか、こう問い返すと、それはひょっとしたらやはり戦争への道をいってしまったかもしれないと思うときはあります。だけれども、やはりリーダーというのは、結果責任も含めて、その時々できちんとした判断をしなきゃいけない。何かが足らなかったからああいう悲惨な戦争にいったんじゃないんですか。

 そして、そのことに対して、まずは一義的にはA級戦犯、この人たち、一人一人を私はどうこうしろと言っているんじゃないですよ。だけれども、A級戦犯の多くはやはり責任ある人じゃないんですか、こういうふうに申し上げているんですが、総理はそのことも否定されるんですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆるA級戦犯と言われる方々の七名は処刑されているわけでありますが、先ほど名指しされました東条英機元首相も恐らく大きな責任を感じているからこそ従容として刑を受けたということではないかと思います。それぞれまさに命をもってある意味責任を果たしているという考え方もあるわけでありますが、このいわゆる歴史の問題については、政府が、またあるいは政治家がそれを判断するということについては、私はもう少し謙虚でなければならない、このように思います。

岡田委員 今総理は謙虚という言葉を使われましたが、だれに対して謙虚であるということですか。

安倍内閣総理大臣 それは歴史に対してでありまして、歴史は長い連続性の中にあって、冷静な分析が必要ではないか、このように思います。

 私は、責任がないということを言っているのではなくて、どのような判断を下すかどうかということについて申し上げているわけでございます。政府としての立場については、もう累次申し上げてきているとおりでございます。

岡田委員 小泉総理はA級戦犯は戦争犯罪人であると言われたわけですが、安倍総理はそれとは全く違う考え方をお持ちであるということはよくわかりました。戦争犯罪人であるということは言われないわけでしょう。

 では、もう一度聞きますけれども、A級戦犯は戦争犯罪人であると小泉総理は言われましたが、安倍総理はそうではないということですね。

安倍内閣総理大臣 いわゆるA級戦犯と言われる方々は、東京裁判において戦争犯罪人として裁かれたわけでありますが、国内としては、国内法的には戦争犯罪人ではないということは私が先ほど申し上げたとおりであります。私の認識もそうであります。

岡田委員 何度も言いますが、私は国内法の問題を言っているんじゃないんです。我が国、日本として彼らをどう評価するかということを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 法律によって裁かれていないにもかかわらず、私が総理大臣として、政府として、この人は犯罪者だ、犯罪者でないということは言うべきではない、これは当然のことではないかと思いますよ。

岡田委員 総理、全然わかっていただけないんですけれども、国内法の問題ではなくて、東京裁判というのは国内法の上位概念としてあるんですよ。条約とか東京裁判、サンフランシスコ条約とか東京裁判というのは国内法に優位するわけですから、そこで決まっているわけですから、日本国政府も拘束するというのは当然じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 この条約によって、日本は国と国との関係において異議を申し立てる立場にはないということで、この裁判に対して異議を申し立てる立場にはないわけであって、私たちがA級、B級、C級の方々に対して、あなたたちは戦犯ですと言わなければいけないという立場には全くないということではないか。

 十一条については、先ほど申し上げましたように、服役をしている方々を私たち独自の判断では釈放できないということをいわば規定したものであって、連合国の了解なしには、それぞれの地域において服役をしていた方々を私たちは勝手に釈放することはできなかったわけであります。

 できなかったことによって、当時、多くの、千名近くの方々が服役をしていました。この方々が釈放されるまでには、随分の、先ほど申し上げましたような年月を経て、その間外地においても亡くなる方がいたのも事実であります。その中にはもしかしたら、裁判の中身自体が煩雑なものであった者もあるかもしれない。しかし、そういう中において、我々は独立をしなければいけないということにおいて、我々は講和条約に署名をしたということではないか。

 十一条というのは、今申し上げましたような、国と国との関係において異議を申し立てないというものであると思います。

岡田委員 総理は別の場所で、異議を申し立てないということは損害賠償などをしないということだということも言われていますが、私は、基本的な認識がそこは違うと思います。そして、刑も減軽されたのであって、無効になったんじゃないですよ。将来にわたって効力をなくすということであって、刑そのものあるいは罪そのものは残っているわけですよ。そして、刑期が短縮されたというだけなんですよ。

 そして、総理は、援護法や恩給法の適用を言いますが、それがあったからといって、いや、この人は犯罪者じゃなかったんだということは言えないんですよ。それは特例として認めた。それは、現実、B級、C級戦犯の現状を見れば、その御家族の現状を見れば、余りにもひどい状況があったんでしょう。ですから、それは特例として認めたのであって、だからといって、もともとなかったんだというのは、私は論理の飛躍だし、私は日本国総理大臣としての認識としては全くおかしな認識だということを申し上げておきたいと思います。

 さて、外交の問題をもう少し申し上げたいと思いますが、イラク戦争の話、もう余り時間もありませんので、簡単に申し上げたいと思いますが、例の大量破壊兵器が見つかりませんでした。そして、その見つからなかったことについて、従来、イラクに大量破壊兵器が存在すると信ずるに足る理由が当時あったんだ、だからあの戦争は、あるいは判断は正しかった、開戦を支持した判断は正しかったということを言っておられます。私は、これは極めておかしな理屈だと思うんですね。

 つまり、裁判において事実認定が誤った、しかし事実認定を誤ることに正当な理由があった、だから死刑判決は正しいんだ、こう言っているのに等しいんですよ。事実認定に誤りがあった、いかに正当な理由があったとしても、結果が誤ったら、そのことについてはきちんと認めて、そしてそのことについてはきちんと謝罪をする、責任を認める、これは当然のことじゃないですか。ちょっと私は、日本国政府、開き直りが過ぎると思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 当時私どもは、イラクに対する武力行使を支持したわけであります。しかし、もちろん、自衛隊がイラク戦争に参加したわけではなくて、自衛隊はイラクの復興支援に参加をして、大きな成果を上げています。

 あのときになぜ我々が武力行使を支持したかといえば、十二年間にわたって累次の国連決議に対してずっと違反をし続けてきた、全くこの国連決議を遵守しようとしなかったという事実があります。もう一つは、イラクは大量破壊兵器を確かに保持していた、そして、事実それを自国民であるクルド族に使ったり、あるいはイラン・イラク戦争においてこの大量破壊兵器を使用した特異な国であるというのも事実であります。

 持っていた、そしてまた使ったという重大な事実があった。そして、累次にわたる、十二年間にわたって国連決議にずっと違反をし続けてきた。そして、持っていないということを証明する機会を与えたにもかかわらず、それに対しても応じようとしなかったということから、当時は、それは合理的な理由として、恐らく持っているだろうということが当然政府としての判断の根拠であったということではないか。合理的な理由があったということでございます。

岡田委員 しかし、それが間違いであったということです。

 国連決議があったということは、これは湾岸戦争のときの国連決議ですから、私は理由にならないと思いますが、百歩譲ってそれを認めたとしても、それは単に手続を踏んでいましたということにすぎないのであって、そこにおける判断が正しかったかどうかということにはならない。現に、フランスやドイツやいろいろな国がこの段階での武力行使には反対した。そして、国連の検証委員会も、あと数年とは言わないが、数日でもない、あと数カ月待ってくれ、検証のために時間が必要だと。こういう中で戦争を始めたわけですよ。そして、それを日本は支持した。

 それは、やはり私は早まったと思うんですよ。そのことについて、やはり責任をきちんと認めるべきだ。そういったことの責任を回避しているということは、私は、国として、まさしく他国から尊敬されない国になってしまうと思うんです。

 五万人以上のイラク人が亡くなって、二千七百人の米兵が亡くなったというこの戦争ですから、やはり、そのことについては率直に、ミスはミスとして認める、それがきちんとした国としての立場、態度じゃないか、私はこう思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本においては、情報収集において、それは限界があります。日本独自の情報収集力を生かして、最大限の努力をして情報収集を図っていたのも事実でありますが、他方、先ほど申し上げましたように、累次の国連決議にも違反をしていたし、事実持っていた、あるいは使ったという事実があった。そしてさらに、当時のことを思い出していただきたいと思うわけでありますが、いわば米軍は展開を始めて、だんだんそれは、規模を維持するということを続けていくというのは大変な費用がかかるし、それはいつまでも続けていくことができない中にあって、イラクはただ時間稼ぎをしていて、いわば武力行使による制裁をできなくしようと考えていたのではないか、そういう推測もあり得たわけであります。

 その中において、彼らに対して何回も大量破壊兵器を持っていないということを証明するチャンスを与えたにもかかわらず、それにこたえなかった。こたえなければ我々は持っていると考えざるを得なかった、このように思います。

岡田委員 こたえなければああいった形で、イラク自身が何か武力行使を他国にしたわけじゃないんですよ。にもかかわらず、いわば先制攻撃的に攻撃していいんですか、こたえないというだけで。(発言する者あり)フセインがいいかどうかの問題じゃありません。これで五万人以上のイラク人が亡くなっているんですよ。やはり、そこの責任はちゃんとお認めにならないと、私は、そこをごまかしてしまうということでは決して尊敬される国にならないし、美しい国とは言えないと思います。

 最後に一言、主張する外交について申し上げて終わりたいと思いますが、総理は主張する外交を言われる。しかし、所信表明演説を読んでおりまして、幾つか気になる点があるんですね。

 例えば、国連について、改革の対象としては国連を挙げておられるが、しかし、国連の重要さとか、あるいは国連を中心とする国際協調というもの、これは従来から日米同盟と並んで日本外交の二本柱の一つでした。そういう表現はないんですね。そういったことを見ると、あるいはグローバルな課題、例えばエイズとかマラリアといった疫病の問題とか、あるいは健康の問題とか貧困の問題とか、そういった問題についても所信表明演説の中には出てこない。

 私は、主張する外交は結構だと思います。当然だと思います。しかし、主張するその背景にあるのはやはり深い洞察力や先見性であって、そういうものがないまま主張をするということは、ひとりよがりの外交になっちゃうんです。ですから、総理には、ぜひそういった広い目で世界を見ていただいて、偏りのない、主張する外交をしていただきたい、そのことを最後に要望しておきたいと思います。

金子委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 まず、貸金業法改正についてお尋ねをしたいと思います。

 貸金業法改正については、最高裁の判例もありまして、自民党内でもいろいろもめておられたようでありますが、後で申し上げますとおり、内容については問題があると思いますが、この国会が始まる前に一応まとまったということですので、所信表明でどういうふうに語られるのかなと楽しみにしておりました。私は、ある意味ではこの国会で最優先しなければならない課題がこの貸金業法の問題ではないかと思っておりますが、残念ながら所信表明にはございませんでした。総理としては、この貸金業法改正についてどういう御認識を持っておられるのか、まずお話しください。

安倍内閣総理大臣 いわゆる多重債務によって、多重債務を背負った人たちが二度と立ち上がれない状況になっているというのも事実であります。そうした状況を何とかこれは改善していかなければいけないという中にありまして、利用者の債務負担を軽減し、また、利用者利便にも配慮しながら、新たな多重債務者を発生させない枠組みを一日も早く構築していく必要があると認識をいたしております。

 政府としても、与党において基本的に了承されました改革案を踏まえて法案策定作業を進めています。この多重債務問題について、政府を挙げて取り組んでまいります。

枝野委員 本当にこの多重債務問題というのは深刻な問題でありまして、借金を苦にして自殺をされるという方、あるいは家庭が崩壊をされている方、そういう声というのはいろいろなところでたくさん出ています。借金というと、例えばギャンブルなどで自己責任ではないかという話もありますが、そういう方も一部はいらっしゃるでしょう。しかし、あれだけテレビのコマーシャルなどで気軽に借りられるような印象を振りまいて、気軽に返せますというような印象の中で、実態は余り知らないまま借金をしてみたら、いつの間にか雪だるま式に何倍にもふえてしまっていて、どうにもならなくなっているという方が世の中たくさんおられます。

 そこで、どこが問題なのかということを、特にテレビをごらんなどの皆さんに御説明をしたいと思います。

 これは、まず赤線を見ていただければと思います。日本には、利息制限法という、これは大変立派な法律があります。この赤線以下の利息でなければお金を貸してはいけないということになっております。十万円以下の少額の場合は年二〇%、十万円から百万円のところは年一八%、百万円以上の場合でも年一五%、これ以上の金利でお金を貸してはいけないということが利息制限法で決まっています。

 ところが、貸金業者を規制している貸金業法では、二九・二%以上の利息を取らなければペナルティーがない、罰則を受けないというのが現行の法律であります。その結果、多くの貸金業者は、利息制限法に違反をして、二〇%を大幅に超える金利を取ってきている。少なくとも、そうした金利での約定をしている、契約をしているという実態であります。

 幸い、近くに法律家がいて、多重債務で困っているということで相談に行って裁判の場に訴えますと、二〇%とか一八%とか一五%とかという利息制限法を超えた利息は無効であるから払わなくていい、あるいは、既に払った部分のところを、それは利息じゃなくて元本を返済した扱いにしていいという最高裁の判例も出ておりまして、救済をされておりますが、それは、たまたま近くに弁護士とか司法書士とかがいた場合に救済をされているだけでありまして、現に今の時点でも、法律に違反をしている、利息制限法に違反をしている金利を支払っておられる方が世の中にたくさんおられます。

 もし、テレビ、ラジオをお聞き、ごらんの皆さんの中でそういう方がいらっしゃったら、払う必要がないということをぜひ知っていただいて、近くの司法書士さんなどに駆け込んでいただければ、支払いの義務がなくなります。

 それで、これはちゃんとそろえないとだめですね、利息制限法で二〇%あるいは一八%という金利に決まっているんだから、それ以上取っているのはおかしいんだから、だから、それ以上取っちゃいけないことにちゃんとしましょうということで議論が進んでいるんだと思っておりましたら、与党でまとまったと称するもの、金融庁にも説明をいただきましたが、実は違っているんですね。

 このグラフにも書きましたけれども、従来、十万円から五十万円の間の借金の場合は金利が一八%に抑えられていたものが、今度の法改正がもし認められると、年二〇%に二%金利が上がる。それから百万円から五百万円の間の方は、一五%から一八%に三%金利が上がる。

 ちなみに言うと、いわゆるサラ金と言われているところで個人の方が借りている部分が圧倒的に多いのは、この十万円から五十万円の範囲です。商工ローンと言われる、事業者の方がこうした貸金業者から借りている部分で圧倒的に多いのが、百万円から五百万円の範囲です。

 つまり、金利を引き下げてくれる法改正をするのかなと思ったら、金利を引き上げる法改正をしようとされている。こういう認識でよろしいですね。

山本国務大臣 サラ金のためでも商工ローンのためでもなく、多重債務をこの社会から一掃するために改正するという法案づくりを今やっております。

 特に、枝野先生、貸金業法でなくて出資法というのは、御承知のとおり、刑法体系の中での罰則規定でございまして、二九・二%、それが上限金利でございます。利息制限法は民法体系でございまして、これを超える部分は無効という措置になりまして、不当利得返還請求、こういうことでございまして、民法体系、刑法体系の中の間の部分がグレーゾーンと言われるわけでございます。そこをできるだけ小さくすることによって、多重債務者が二度と多重債務にならないような措置、すなわち、ここに明確な基準を設けることというわけでございまして、今の貸金業者からしますと二九・二%から二〇%に下げられるという意味でございまして、その激変につきましてはかなり厳しいものがございます。

 その意味におきましては、恐らく、ここに書かれておりますプラス二%、プラス三%というものは、これは利息制限法の刻みを変えた場合の物価変動におけるこの考え方についての御異論であろうというように思いますので、この貸金業法の改正及び出資法の改正、利息制限法の改正、三法の改正におきましては、決して業者のためにやっているものではなくて、あくまで多重債務者の一掃ということに徹底して頑張っているところでございます。

枝野委員 少なくとも、私の今の質問の中に業者のためにやっているだなんて質問しておりませんが、よほど後ろめたいようで、御自身から自白をされているようであります。

 いいですか、少なくとも、現行法が全く変わらなくても、法をしっかりと知り、あるいは法を知っている人が身近にいれば、どんな契約を結ぼうが、この赤線の利息しか払わなくていいんです、今現在でも。しかも、最近そうした最高裁判例も出ました。今回の法改正などをめぐって世の中にも周知されてきました。弁護士会や司法書士会の皆さん、一生懸命頑張っておられます。相当部分の人たちが、ああそうだ、払わなくていいんだということで、現行でほうっておいても赤線になる方はたくさんいるんですよね。したがって、この利息制限法の金利を変えるということは、少なくともこの部分については金利が上がる。今、金利が上がる必然性があるんでしょうか。

 例えば、利息制限法の歴史を振り返ってみました。最初は太政官布告という形で明治から出ていますが、例えば昭和二十九年に利息制限法を改正したときに、この当時、いわゆる調達金利、銀行貸出約定平均金利といいますが、銀行がお金を貸し出すときの平均の金利は九・〇八%でありました。平成十八年六月現在、同じ金利は一・六三三%であります。非常に低金利の時代であります。

 さらに言うと、最近は、デフレ脱却したのかしなかったのかということで、与党の中もいろいろな御意見や、政府の中もあるようでございますが、デフレの時代で、基本的に物価が大きく変動しておりません。

 したがって、実質的に利息制限法の金利を引き上げなければならないというような社会的な背景は全くないというふうに思いませんか、総理。総理、認識の問題です。認識としてありませんか。

山本国務大臣 明治十年にこの法律は出発しておりますが、そのときにおきましては、ゼロ円から百円までが二〇%の上限金利でございました。それが改正されたのが大正八年でございますが、それまでにおきましては、銀行貸出金利が八・〇六七%、あるいは公定歩合が八・〇三%とか、貸出金利の上下もございました。しかし、ここで一五%と低い金利にし、また、昭和二十九年には二〇%上限金利をつくったというような形で、それぞれの時代時代に応じて、物価の推移やあるいは経済の動向に合わせて利息制限法の上限金利は定められておるものでございまして、総合勘案した判断でございます。

枝野委員 ですから、私は総理の認識を聞いているんです。今の全体としての低金利、そしてデフレ状況で、少なくとも大きなインフレになっていないという状況で金利を上げなきゃならないというような社会情勢であると思われますか。一般的な認識ですよ、総理。

山本国務大臣 利息制限法の上限金利の変動につきましては、貸出金利の動向もすべて勘案した上で今日まで考えられてきておりまして、今、昭和二十九年における物価変動は五倍から六倍、そして、国民所得におきましては三十七倍という変動がございます。そういったことを勘案しての改正の作業だろうというように思っております。

安倍内閣総理大臣 要は、私どもの目的は、多重債務者を何とかこれをなくしていく、この問題を解決していくことだ、こう考えております。

 その中で、多重債務者をなくしていくためには何をすべきがいいかということで、利用者の利便ということも考えなければならないわけでありまして、他方また、貸す側も対応できるという観点もその利便性のためには必要かもしれない。そういうことも総合的に判断をしてこの法案を最終的に決めていかなければいけないとは思います。

枝野委員 借りる方の利便と言いますが、返すことのできないことがわかっている人に貸す利便というのはむしろ害なので、返す可能性のない人に貸してはいけないんだと僕は思うんですよね。

 その上で、今、例えば二%や三%上がりますという話は小さな話のように見えるかもしれませんが、一般的に、百万円をいわゆるサラ金で借りました、毎月毎月二万五千円ずつ返していきます、例えばこういう例を考えた場合、現状の一五%の金利であれば、支払いの総額は百三十九万五千十四円になると弁護士会が計算をしてくれました。一八%、三%金利が上がると、これが百五十三万八千六百九十五円、つまり、十二万三千九十四円、支払い返済総額は三三%も大きくなるんですね。二%とか三%という話ではないんですよ。

 ですからこれは、明らかに今の低金利、インフレにならないという状況のときに、違法な金利を取ってはいけませんよというようなことをするに当たって、どさくさに紛れて金利を上げる、サラ金など、商工ローンなどの金利を上げる、こういう法改正であると言わざるを得ない。少なくとも、この部分のところは撤回をしていただかなければいけないと思っておりますが、もう一つ、決定的にこの法律には問題があるというふうに思っております。

 何が問題かといいますと、改正法の経過措置の期限は、改正法公布後、おおむね五年を目途とする、公布から上限金利引き下げまでの体制準備期間はおおむね三年を目途、上限金利引き下げ後、少額短期貸し付けを実施する経過期間は二年と。少なくとも三年は何もやらぬ、そしてその先二年も特例を残す。

 事実関係だけで結構です、理由は聞きません。事実関係は間違いないですね、金融大臣。

山本国務大臣 多重債務者を一掃するという物の考え方の中で、問題性は、枝野委員がおっしゃるとおり、返済能力を度外視した貸し付けある実態、これを一掃しようじゃないか。お金がないことは心細いんです。お金を貸してもらえないことは惨めなんです。そこの精神的な弱さをついた、マイナス心理状況をついた契約というのは任意性がない。そこを我々は一掃したい。

 さらに、やみ金融は犯罪であり、そこを我々は一掃したいというようなことでございますので……(発言する者あり)

金子委員長 静粛に願います。

山本国務大臣 私どもとしましては、この経過措置というのは、それに合わせた十分な、万全な措置を考えてのことでございまして、私ども、その経過措置があることはお認めするところでございます。

枝野委員 事実関係をお尋ねしているので、事実関係は今の御答弁だとお認めになったんだというふうに思います。

 現状でも、この赤い線を超える金利を契約していても、金を貸している側はその金利を取ってはいけないんです。そして、出るところに出れば払わなくていいということになるんです。支払い義務がないんです。支払い義務のない契約をこれから三年間も少なくとも続けさせるんです。支払い義務のない支払いを、世の中のことを、新聞とかテレビをごらんになっていればおわかりになるかもしれませんけれども、気づいていない人はこれからも払い続けるんです、この三年間というのは。

 私が泥棒の例を出したら、泥棒の例は、これは刑罰、刑事犯罪だからこの場合は違うということになるかもしれませんが、現行法でも、利息制限法ではこの赤い線を超えてはいけない、違法行為なんですね。ただし、先ほど失礼しました、貸金業法と言いましたが、出資法で刑罰を受けるのは二九・二だから、刑罰は受けないけれども、違法であるのは間違いないわけです。違法であることをやめさせるために三年間準備期間をください、今は泥棒やっているんだけれども、正業に戻るために三年間準備させてください、その間は泥棒させてください、こんな理屈が通るわけないじゃないですか。

山本国務大臣 多重債務の問題性を考えましたときには、貸す方、借りる方、そして金利政策、三つの万全の措置が要ろうというように思います。

 その意味におきましては、まず名寄せをさせてもらう。名寄せをさせていただくとどうなるかというと、全体の年収の三分の一、それまでしかこれは貸すことができない、そういうような情報をしっかり持つということを考えていきますと、大体、そのシステムをつくるのに……(発言する者あり)

金子委員長 場外、お静かに願います。

山本国務大臣 専用の回線をつくって、コンピューターを導入して、各貸金業者にネットを張ってというようなことも必要でございます。単に金利操作だけでこれが片づくわけではございませんので、その意味におきましては、我々は万全を期したい、この際、社会から一掃したいという考え方のもとにやっていることを御理解いただきたいと思います。

枝野委員 いいですか、現状で二十何%だなんという例えば大手五社の、固有名詞挙げましょうか、アコム、武富士、アイフル、プロミス、三洋信販、大手五社のトータルによると、二五%以上で貸しているのが全体の七一・五%なんです。しかし、利息制限法違反なんです、民事ですが。刑罰がないけれども、違法な行為をやっているんです。違法な行為をこれから三年間も、彼らが体制を整備するために待たせてください、これは泥棒に追い銭ではないですかと私は申し上げているんですが、さらに申し上げますと、これは総理にお尋ねしたいんです、いいですか。

 総理は、美しい国、美しい国、結構なことです。美しい国であるならば、例えば、今現にサラ金などからお金を借りている皆さんがいらっしゃいます。そうした中で、たまたまいろいろな情報量に乏しい、ある意味では一番厳しい人たちだと思います。そういう人たちは、これからもこの赤い線を超えた高い金利を払い続けるんです。たまたま近くに弁護士とか司法書士とかがいたりして、たまたま近くに教えてくれる人がいたら、この赤い線以下の金利で済むんです。

 同じように借金をしている、もしかすると、近くに弁護士がいて赤い線以下になる人は、ギャンブルのための借金かもしれない。本当に生活が苦しくて金を借りた人が、近くに情報がなかったがために、赤い線を超えた高い金利を払い続ける。こういう人が出てくるんです。このアンフェアはどう考えるんですか。こんな不公正な社会はないですよね。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 多重債務者問題については、この問題を解決することは、私の内閣においても大きなこれは責任であり使命である、こう考えております。

 先ほど山本大臣から答弁をいたしましたように、さまざまな観点を踏まえて、与党において、一定の準備期間や経過措置としての少額短期貸付制度を導入するということを決定したもの、このように思います。

枝野委員 これは現に、その多重債務のためにみずから命を絶つ、これはきょうは追及しませんけれども、生命保険をサラ金の側が掛けさせて、そして、自殺でもしてくれたらそこで金が入ってくるわなと受けとめられても仕方がない仕組みの中で、命を担保にして貸しているみたいな話もたくさん報道されています。まさに国民一人一人の、特に厳しい状況にある人たちの命にかかわる問題です。これは、三年間は自殺者が出ても仕方がないという政治は、私は政治のあり方として間違っていると思う。一日も早くこれを防ぐということのためにできることをどうするのかと考えるのが私は政治だと思う。

 簡単な話で、現行法でも利息制限法を超えたものは違法なんですから、利息制限法を超えたものは、今すぐにでも、本当は貸していちゃいけないはずなんですから、今、サラ金業者は、刑罰がないんだから違法だけれどもやってもいいやといってやってきている話ですから、あしたからやめさせたとしても全然問題はない話である。あしたからでもやめさせるべき法案を我々としては今準備をしておりますので、対案としてお示しをしたい、提出をしたいと思います。ぜひ、国民の皆さん、どちらが正しいのか。お金を借りていらっしゃらない方にとってもこれは大事な話なんです。

 なぜかというと、多重債務で返せない人がたくさんいる、自己破産をする人がたくさんいる、その分は貸し倒れになるんです。その分の金利を、ちゃんと返している人たちが支払っているんです。金利というのはそういう世界です。つまり、多重債務で自己破産する人がたくさんいるような貸し方をしているということは、ちゃんとまじめに払っている人は、今度は逆にその人の分までたくさん金利を払わされているという問題なのであって、皆さんにかかわる問題だということをぜひ御理解いただければというふうに思います。

 次に、さらに厳しい皆さんのお話をさせていただきたいと思います。

 障害者自立支援法の話をしたいと思うんですが、その前に、総理、ビッグイシュー、私一つサンプルを持ってきていますが、御存じでしょうか、こういう雑誌を。

安倍内閣総理大臣 いわゆるホームレスと言われる人たちのみが売ることができる雑誌ではないかと思います。たまたま私も、数寄屋橋で演説をしたときに、それを売っている人から話しかけられたことがございます。

枝野委員 これは、報道、あるいは私にこれを教えてくださった方によると、九〇年代初めにロンドンで始まった運動のようでございまして、ですから、この日本版の表紙も、ベッカムですかね、こういう著名人が記事に載っておりまして、ボランタリーに、この日本版では、市民パトロンという言い方でいろいろな方が参加をされておられます。これを、日本の場合、二百円で駅前などでホームレスの皆さんに売っていただく。ホームレスの皆さんに売っていただくと、二百円で売ると、うち百十円が販売員の方の手元に残る。

 しかし、この雑誌、例えばベッカムの本来の取材の場合の一般的な相場を考えれば、それだけ考えても大赤字だと思いますね、経済的コストを考えたら。だけれども、そういったことを考えずに、とにかくホームレスの皆さんが自分で労働して、そのことによって収入を得た、そのお金で、さあ次どうしようかということを考えていただく。まさに自立というのはこういうことだ。経済的なコストを考えたら多分赤字なんだろうと思いますが、それをボランタリーの皆さんが支えている。

 私は、自立というのは、自分の力で稼いだんだという自己満足と、そのことによって、その手元に残ったお金で、さあ自分でどうしようか、これが自立だと思うんですけれども、どうでしょう、総理、こういった考え方は大変すばらしいと思うんですが。

安倍内閣総理大臣 私も、再チャレンジの触れ合いトークにおきまして、大阪におきまして何人かのホームレス経験者の方々とお話をいたしました。

 彼らが一度ホームレスを経験したときに、また普通の生活に戻る際に何が一番困難だったかといえば、規則正しい生活と、いわば自分で何かを稼いでそれを使う、そういう規律が自分のリズムの中に戻ることが大変困難であったという話を聞いたことがあります。その中のある方は、それはビッグイシューではなかったのでありますが、やはり支援事業の一環として、空き缶等々を回収してそれを買ってもらうということから、自分で稼ぐ、そして、その達成感を認識することによってまた普通の常用の雇用に移っていった、こういう話を聞きました。

 つまり、そういう方々に対して、ただ給付を出すということではなくて、いかに普通の生活に、また納税者に戻ってもらえるかということが私は重要ではないかと思います。

枝野委員 障害者自立支援法という法律が、昨年、我々の猛烈な反対を押し切って成立をしてしまいました。四月から一部施行で、この十月から本施行をされております。いろいろなところの報道で悲鳴の声が聞こえてきます。もちろん、私のところを含めて、我々の仲間のところにはたくさん障害者の皆さんから悲鳴が届いております。

 例えば、七月三日にNHKが放送した「クローズアップ現代」、幾つかの例が出ておりますが、沖縄県の浦添市の男性、右半身麻痺の中、印刷製本などの授産施設で作業し、法改正前は、一生懸命右半身麻痺の中で働いて毎月四万六千円工賃を受け取り、その中から応能負担による利用料三万四千円を支払っておりました。今回、応益負担による利用料一割負担ということになりまして、工賃は基本的には変わらない中で、毎月六万二千円の負担が求められることになったということであります。四万六千円を稼ぐために六万二千円を支払わなければならないということで、とてもそこで働くことができないという状況になっておられます。既にこの作業所、百三十人の施設で十人が退所をし、引きこもり状態になっていると言われております。

 同じく、NHKの「福祉ネットワーク」、七月四日ですと、都内の視覚障害者、三十五歳の方、改正前は、毎月頑張って工賃四万二千円、障害者年金八万三千円でぎりぎりの生活を行っておりましたが、これまでその作業所の利用料がゼロだったところが、利用料と昼食代を合わせて一万七千五百円の負担をしなければならなくなったというような事例も出ております。

 実は、この二つの例、工賃四万円からもらえているこうした障害者の授産施設は非常に恵まれている方でございまして、私の地元の大宮などでも伺うと、一人一万円稼げるところは大変恵まれている方で、だけれども、月数千円のお金を障害者の方がそれぞれのハンディキャップを抱えながら自分の努力で稼いでいるんだ、そういう実感を持ちながら頑張っているにもかかわらず、そういったところに通うための利用料が、そうして手に入る工賃を大きく上回る状況にこの四月からなり、この十月から本格スタートをするという状況になっておられます。現実に、多くの作業所などから退所せざるを得なくなった方が出ているということになっています。

 これは、障害者自立支援法で、今までは、応能負担といって、障害者の皆さんの自己負担はそれぞれの収入、支払う能力に応じて負担をしてくださいという制度であったものを、応益負担、つまり、受けるサービスの量に応じて支払ってくださいという制度に変えたわけです、法改正で。この結果として、実は収入がない、収入が少ない、にもかかわらずたくさんの負担を余儀なくされて、今までの生活でさえ障害者の多くの方はぎりぎりでございましたから、これ以上負担がふえるのではとてもやっていけないという方がふえております。

 こうした現実についてまず総理が認識をされているのかどうか、お尋ねしたい。

安倍内閣総理大臣 いわゆる授産施設等で仕事をしている障害者の方々の工賃が安いということも、これは現実として私も承知をしております。

 その中で、この工賃倍増計画を我々政府としても支援をしていきたい、また、就労支援もしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

枝野委員 これから本当に倍増をいつかしていただきたいと思いますし、倍増されるなら大変いいことだと思いますが、例えば、先ほどのNHKで報道された例は大変恵まれた方の例です、月四万円から稼いでおられるというのは。私の地元などを見ても、数千円、七千円とか六千円とかというところがほとんどでございます。倍増しても一万二千円です。こうした作業所の利用料、一般的には二万円から取られておりまして、つまり、働きに行ってむしろお金を負担する。働きに行って、自分の力で稼いだんだというその実感を得ていただいてということとは全くあべこべの状況になっている。こういう人が今現に生じているわけですね。この生じている人たちに対して総理は、日本の行政権の責任者としてどういうメッセージをお出しになるんでしょうか。

 総理のメッセージです。制度の中身を聞いていません。現に退所をされている方に対して総理のメッセージ、どういうメッセージを発信されるのかということを聞いていて、制度の中身、頭でっかちの理屈をやるつもりはありません。総理のメッセージをお聞かせください。(発言する者あり)

金子委員長 柳澤厚生大臣の話を聞いてから総理のメッセージをもらいます。

柳澤国務大臣 枝野先生は、応能でやってきたものを応益にしたというのがこの障害者自立支援法のあり方だ、こういうお話でありましたけれども、今までの障害者支援というものがそれでは本当に満足すべき状態だったと思っていらっしゃるんでしょうか。我々はそうは思っていない。

 そこで私どもは、どちらかというと、施設に入ったらもう入りっ放し、実際はそういう状況であったということであります。(発言する者あり)

金子委員長 委員外発言は静かにしてください。

柳澤国務大臣 それを我々は一歩一歩今改善しているわけでありまして、それを、措置費じゃなくて支援措置にする、それから、この支援措置を今度応益負担にして、むしろそういう施設の利用者がはっきり自分たちが利用者であるという意識を持って、契約の相手方に対していろいろ物を言う、こういうようなシステムにして、施設のサービスそのものを向上していこう、障害者の実態に合ったサービスをしてもらおう、こういうようなことで今度の改正をいたしたわけであります。

 そして、応能負担を応益負担に変えたと言っていらっしゃいますけれども、これについては、非常にきめの細かい、所得に応じた、いわば上限の利用料を設定しておりまして、そういったことに十分配慮している、我々はそのように確信をいたしております。

 したがいまして、この応益負担を導入することによって施設の利用をやめられた方、これは我々は神経質なまでに今追いかけているんです。追いかけていますけれども、〇・五%以下というのが現状だということを我々は認識しておりまして、その厚生省の情報は総理にもお届けしてある、こういうことを今お答え申し上げる次第です。

安倍内閣総理大臣 今、詳細については厚労大臣からお答えをしたとおりであります。

 この障害者自立支援法については、まさに、障害者の方々が自立していく、それを支援していく、障害者の方々も一定の負担を利用料として払い、負担をし、そしてまた、それと同時に自立をしていくというそれを支援していく形、今までのように、ただ単に障害者は障害者として扱うということではなくて、しっかりと社会にも参加をしていただいて、経済的にも自立をしていただくようなそういう思いでこの法律をつくったわけであります。

 その中で、ただいま大臣が答弁をいたしましたように、例えば月額の上限を設けたり、あるいは、収入の低い方については光熱水費に対する配慮等々も行っているわけであります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、労賃が低い水準にある、それと利用料の関係についてはこれから我々も努力をしてまいりたい、このように思っています。

枝野委員 その負担上限なんですが、例えば年収八十万円以下の場合、障害基礎年金二級に相当する方がこういうぐらいではないかと言われていますが、一カ月の負担上限が一万五千円なんですよ。一カ月の負担一万五千円ということは、十二カ月になるとどうなりますか。十八万円ですね。八十万円以下の所得の人が年間十八万円からの負担をする、それが適正な負担だというふうに皆さん思われますでしょうか。障害者の方ですよ。ほかに収入があるわけではない。それから、作業所などに通われるほかに、例えば自宅についても、いろいろな、普通の健常者の皆さんとは違った配慮が生活の上でたくさん必要になります。

 そうした方が、八十万からこうした自己負担金十八万円を引いて、残り六十二万円で一年間暮らせ、月五万円で暮らせということを小泉内閣、安倍内閣はおっしゃっておられる。これが低所得者に対する配慮と言えるのかどうかと私は思っています。

 総理ばっかり聞くなと委員長がおっしゃっていますので大臣にお尋ねしますが、今現場の声を調べていると言いましたが、我が党の仲間が実態調査をしろと言ったら、お断りに厚生労働省はずっとしてきたと聞いています。

 確認をいたしたいと思います。幾つかこれは確認していただきたいと思います。

 実際にこの負担に耐えられず退所をされている方がどれぐらいの数おられるのか。それから逆に、事業所などを運営されている方、特に小規模でボランタリーにやっているところは、工賃も下げられていたりして大変経営が困難になっている。そういうところの経営実態がどうなっているのか。それから、何とか助かっているところがあるんです。助かっているところがあるというのは、これではだめだということで、一番現場の声を聞いている地方自治体が、その悲鳴に応じて、厳しい財政状況の中で支援をしている自治体が出てきています。ところが、支援をしているところとしていないところの差が物すごくでかくなっています。ですから、この各市町村による支援の実態、この三つを早急に調査していただきたいと思いますが、いつまでに調査して発表していただけるのか、お聞かせをください。

柳澤国務大臣 現在、今枝野議員が御指摘になられたように、この法律は、四月に施行され十月に完全施行ということの中で推進をされているわけです。

 そういう中で、各市町村等の、あるいは都道府県等の事務もかなり錯綜しているということが現実にありますので、そういうときに本省がいろいろ新しいロードをかけて調査に乗り出すというのは、これは法律の円滑な施行に逆行することになりかねない、このように考えまして、私どもとしては、そういうものとうまく調和がとれるような情報収集に努めている、こういうのが実態でございます。(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

柳澤国務大臣 したがいまして、現在、利用者負担を理由に利用を中止したものにつきましても、十三都道府県を情報収集しておりまして、もうちょっと細かい数字も実は持っていますけれども、私どもとしては、〇・五%を下回るという程度である、そういう情報を得ているということです。

 今後の実態調査については、私どもとしては、今議員の指摘したものの中で、地方自治体の措置についてどういう状況にあるかということについて、私どもが調査をするのが本当に適当かどうかという思いはありますが、他の問題については、私どもも、今言った事務の円滑な運営というものに支障のない限り、できるだけ早期に情報収集したい、このように考えております。

枝野委員 障害者の皆さん、生活なんです。そして、まさに障害者の皆さんあるいはその方を家族で抱えている皆さんというのは、本当にぎりぎりの生活、もちろん、たまたま親が大金持ちで、資産があって遊んで暮らせる、そういう御家庭の障害者の方も一部はいるかもしれませんが、ほとんど大部分の方は、お子さんが例えば障害児であられると、親御さんの収入自体も実はなかなか稼げないという中で、全体苦しい中にあるんです。

 例えば、一カ月、二カ月、三カ月、半年という状況が続けば続くほど、先ほどのサラ金の話ではありませんけれども、現に、みずから命を絶つというのは、なかなかその因果関係を正確には証明することはできませんが、障害者の方の家族が将来を悲観して命を絶ったなどという事件も、実はもう既に報道をされています。

 まさに、行政の事務とかなんとかという話じゃなくて、本当に自信を持っておられるならば堂々と調査をされるべきであると思いますし、それから、まさに障害者自立支援法の基本的な考え方は、もともと地域間の格差をなくそうという話だったんじゃないですか。それなのに、実態としては、これは新聞報道などの方が先行して調査して、やっているところとやっていないところの差が物すごくでかくなっている話はもう報道されているんですよ。これはまさに、障害者自立支援法のいい部分についてすらだめにしているという話なのであって、本末転倒なわけですね。

 ですから、当然のことながら、調査ぐらいはしっかりとお約束をしていただけるのかなと思ったのに、やはりこういうところには残念ながら冷たいんだなと言わざるを得ません。

 私はあえて申し上げます。総理、これは考え方の問題です。障害者福祉の世界に応益負担というのは、私はよほどの所得保障がない限り間違っていると思います。基本的な行政サービス、例えば、公共料金で鉄道の料金など、長い距離を乗るほどたくさんサービスを受けるんだから高い料金を払ってください、普通席よりもグリーン席はいいサービスなんだからたくさんお金を払ってください、こういったように、普通は応益負担、受けるサービス、利益に応じてたくさん払ってくださいというのは一般論としては間違っていないだろうと思います。しかし、障害者福祉の世界では明らかに間違いです。

 なぜならば、障害が重い人ほどより多くのサービスを受けなければ生きていけない人たちです。そして、より多くのサービスを受けなければ生きていけない障害の重い人ほど、自分の力で収入を得る可能性は閉ざされているんです。その人たちにより高い負担をしろというのは、明らかに本末転倒、あべこべだ、物の考え方が間違っていると思いますが、これは制度論ではありません、物の考え方です。総理、そう思いませんか。

安倍内閣総理大臣 先に私がお答えいたしまして、詳しくは大臣からお答えをいたします。

 この障害者自立支援法を作成するに当たりまして、私どもも、障害者団体の方々あるいは障害者の方々とずっと対話を重ねてまいりました。その中で、障害者の方々のやはり自立ということをまず中心の柱に据え、その中で自立できる仕組みをつくっていこう、また、いわば今までの中において対象とならなかった方々もちゃんと全部その輪の中に入れるようなそういう仕組みをつくったのであります。

 そこで、応能、応益という問題であります。確かに、サービスを多く受ける方は障害の重い方々であるのも事実でございます。しかし、例えば介護保険も、いわば介護度は高い方々の方が当然厳しい状況であるわけでありますが、当然利用料も一割負担の中では高くなる、こういう仕組みになっているわけであります。

 ですから、その中で応益負担を負うという中においては、先ほど申し上げましたように、月額の上限を設ける等いろいろなきめ細かな配慮を行った上で、障害者の自立という観点からこの応益負担という仕組みを取り入れたわけであります。

枝野委員 今、介護保険のお話もされました。ある意味ではむしろそうなんだと思います。介護保険の世界も、つまり障害を負っておられるという場合については、障害が重いほどサービスがたくさん必要で、そういう人ほどみずからの力で収入を得る可能性は全体としては低い。これは間違いないわけであります。ですから、実は介護保険の世界についても、果たして単純な応益負担でいいのかどうか。

 ただ、介護保険の場合について、高齢者に限定をすれば、むしろ、年金という所得保障の部分のところをしっかりとやればまだ話はわかるという部分があります。(発言する者あり)しかし、障害者年金の水準で本当に皆さん食べていけるとお思いでしょうか、今、後ろからやじがありましたけれども。

 障害者年金一級でも、月八万円とか六万円とかそういうレベルの年金でございます。親が稼いでくれて、障害児である皆さんのところは、まだそれでも親の収入でという救いはあるかもしれませんが、成人障害者で、そして親も亡くなられた後、特に親御さんが今回の法改正で泣いておられるんです。自分が生きている間はまだいい、自分が命をなくしたとき、子供が残ったとき、とてもこんな制度になっていく中では子供を残して死ねない、こういう思いをどうにかするのが政治の仕事じゃないですか、安倍さん。こういう一人一人のところに目を向けるのが美しい国ではないですか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 私どもも、障害者の方々また団体の方々と話をしたときに、いろいろな悩みを伺いました。それは私たちも同じです。その同じ思いの中で、しかし、そこで自立を支援していく、つまり、障害者が自立を目指していけることのできる仕組みをつくっていこう、そしてまた、今までこの範囲の外にいた方々もみんなこの仕組みの中に入っていただくようなそういう仕組みをつくったのでありまして、そしてまた、先ほど申し上げましたように、我々はいろいろな月額の上限等々の軽減措置もつくっております。グループホーム、入所施設で暮らす方で、資産が少ないなど負担能力が少ない方については、月額六万六千円までの収入の方は定率負担をゼロとするということにしているわけであります。

 また、新たな食費等……(発言する者あり)済みません、答えておりますから、少し冷静になっていただけますでしょうか。新たに食費等の負担をいただくこととなる入所施設の方については、食費等の負担をしても、少なくとも手元に二万五千円が残るよう、負担を軽減いたしております。また、通所施設や訪問ヘルプサービスを利用して在宅で暮らす方については、社会福祉法人減免により、定率負担の月額負担上限額が半額となるよう、負担を軽減しているわけでございます。

 こうしたきめ細かな対応をしながら、しかし、それと同時に、障害者が自立を目指すという中においてこの法律を整備した、このことは御理解をいただきたいと思います。

枝野委員 現実の現場の声というものと今の総理の御答弁が一致をしていないということは、特に当事者の皆さん、一番御理解をいただいていると思います。私どもは、障害者自立支援法の全体の枠組み全部だめだと言っているつもりじゃありません。この負担の部分のところが問題だと申し上げています。

 私ども、この国会に、この一割の応益負担を、従来、四月以前の仕組みに戻すという法改正案を提出することを決めました。法制局の手続が済みましたら国会に出したいと思っていますので、ぜひ、たなざらしにすることなく、厚生労働委員会でしっかりと審議をしていただきたい、その中できちっと説明をしていただきたいと思います。

 私どもの計算では、そのことによってふえる財政負担というのは、あえて言いますが、わずか三百億から四百億程度と思っています。ダムを一年当たり一つつくるのをやめれば、それぐらいの金は浮いてきます。どちらの方が大事なのか、どちらの方が優先順位が高いのか、国民の皆さんに御判断をいただきたいというふうに思っております。

 次に、岡田さんなども……

金子委員長 ちょっと柳澤厚生大臣に、事実関係の整理がありますので、答弁させてください。

柳澤国務大臣 別段あれなんですけれども、今までの枝野委員のおっしゃり方は、全部が全部否定されるわけではないということで、私も若干の救いの気持ちを覚えたんですけれども、この法律は、障害者のソサエティーというか、そういうものがやや閉じられた感じが今まであったというのは否めないんです。これをもっと外に出そう、そしてその方法としては、生活の場と就労の場というようなものを引き離そうということ等を今盛り込んでいるわけです。何かこう小さなところへ閉じ込められて、ずっと同じような生活をされていくというようなことを何とか打破したい、それにはどうしたらいいかといえば、もっと障害の区分なんかをきちっと分けて、それにふさわしいサービスが与えられるようにし、そうして……(発言する者あり)いえ、そういうことなんです。そういうことでありまして、今度の法律、よくよく……。それでまた、それでは応能負担にしたらどうなるかというと、利用者の目がもうそれ以上働かなくなるんです。そういうことを枝野委員はどうお考えになるか。これに対しても答えを与えないと、我々は、にわかに皆さんの声に従って旧に復するというわけにはまいらないということであります。

枝野委員 机の上の金勘定で人間は生きていないと私は思っております。理屈を言えば、例えば応益負担であれば、自分でこのサービスを受けるか受けないかという選択をする。しかし、障害者の皆さんが現に受けている障害者福祉サービスというのは、これはお金がかかるから要らないなとか、これは安いからやろうかなとかという選択ができるような水準なのでしょうか、日本の障害者福祉は。生きていくために、あるいは社会参加するために必要最小限のぎりぎりのところであると私は思っています。

 そうしたところについての負担というのは、やはり基本的には支払い能力に応じてで、それが、例えば障害者の方が、特別、それ以外の方よりもより大きな、あるいはより快適な生活を受けるためのプラスアルファのような部分は応益でもいいのかもしれませんが、生きていくための最低限の部分だというふうに私は思っておりますので、やはりそれは、応益負担、もしするならば、相当な所得保障をしっかりとされるということが前提だ。私も、実は所得保障こそが軸であって、しっかりとした所得保障がされるのであるならば応益負担というのはある意味で正しいことではないかと思いますが、そのための方が恐らく財政負担は大きくかかるのではないでしょうか。

 年金について、先ほど岡田さんも聞いておりましたが、ちょっと違った切り口でお尋ねを申し上げます。数字の話のところの確認だけは厚生労働大臣でも結構ですが、総理の認識、印象をお聞きしたいと思っていますので、机の上の理屈の話をしようとは思いません。実感としてどう考えられるのかということです。

 現状の国民年金保険料は月額一万三千八百六十円となっております。ほぼ同じ金額を給料から天引きされている厚生年金の方の所得というのは、月額報酬というのは、標準報酬月額で十九万円。つまり、給与が十八万五千円から十九万五千円の方が厚生年金の場合、月額一万三千九百九円を給料から天引きされてお支払いになっている、これは、事実関係、間違いございませんね。

柳澤国務大臣 そのとおりでございます。

枝野委員 国民年金の保険料を納めておられる方の今や半分が事業主ではない。そして、最近、ワーキングプアという言葉が言われておりますけれども、月十万円いくかいかないかなどという給料でもやむなくそうした働き方をしておられる、こういう方が世の中にどんどんふえておられます。こうした方は当然厚生年金には入れません。国民年金ということになって、一万三千八百六十円を負担しないと、それに対応する将来の年金給付は受けられない。免除をされた場合には、その月の対応する分は将来の給付には対応されませんので、国民年金の免除の場合は。

 十九万円という給料よりもずっと所得の低い人がより高い国民年金の保険料を支払っている、支払い義務がある、こういう実態にあるということは、まず、客観的事実としてお認めになりますね。

柳澤国務大臣 枝野議員の、同じ年金をもらうのに倍ぐらいの保険料を納めなきゃならない、あるいは、同じ保険料を納めていたら半分の年金しか受けとめられない、こういう事実があるのではないかという御質問でございます。

 計数の真偽について私が今ここで正否を申し述べるだけの材料を持っていませんが、いずれにしてもそういうポイントだと思いますが、これは事業主負担の問題であるということは、枝野議員ももう既に、つとにお気づきのとおりであります。

枝野委員 理屈はよくわかっておりますので、理屈の話をするつもりはありません。

 こういう話なんです。つまり、同じ職場、例えば、スーパーのレジを打って同じ仕事をされているお二人の方がいらっしゃる。一人は正社員であって、十九万円の給料を毎月もらっています。この方は、厚生年金で毎月一万三千九百九円お支払いになります。一方で、例えばお隣でレジを打っている、本当は正社員になりたいんだけれども、正社員になれないパートやアルバイトの方、例えば十九万円の半分、九万五千円の月収であったとしてもこの方は、国民年金で一万三千八百六十円、所得は半分なのに払わなければならない、こういう仕組みに現状はなっている。このことは、うなずいておられて、お認めになっておられます。

 では、将来どれぐらいを受け取れるのかということになりますが、国民年金で一生を通じた方、ずっと払い続けた場合で月額六万六千八円というのが現状の国民年金の制度であります。現在価格で厚生年金について毎月毎月給料から一万三千九百九円をお支払いになられていた方が基礎年金と合わせて将来受け取る年金額は、月額十一万九千九十一円。二倍とまではいきませんが、二倍弱の将来受け取る差が生じてまいります。

 給料から支払っている保険料額がほぼ同じである。片方は、収入が半分なのに同じ保険料をお支払いになっている。そして、同じ保険料を支払っているのに、将来受け取る金額は逆に所得の多い正社員の方の方が約倍もらえる。これは、現状、その理屈がいい悪いと言っていません、その理屈はよくわかっていますが、こういう実態、総理、美しいですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど大臣からもお触れになったように、いわば保険料については、厚生年金については本人と事業主が払っているわけでありますから、つまり、これを足せばいわば倍になるわけであります。そして、それぞれのこれは制度の設計上そうなっているということではないかと思います。

枝野委員 質問に答えてください。その理屈はよくわかっているんです。美しいですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆるこの厚生年金と国民年金のいわば成り立ちの問題もあると思います。そしてそれと同時に、私が申し上げておりますように、正規と非正規の方々について社会保険の拡大をぜひ実施していきたいと思っております。

枝野委員 つまり、改める必要はある、そういう認識はお認めになるんですね。現状のままでは、ない方がいいということはお認めになるんですね。

安倍内閣総理大臣 今、負担の、年金の保険料と受給ということからということではなくて、つまり、同一労働であれば同一賃金でなければならない、あるいはまた非正規から正規社員になる道ももちろん開いていくと同時に、非正規雇用の方々に対して社会保険を拡大していくというのが、我々が今進めている再チャレンジの推進策の中にも入っているところであります。

枝野委員 確かに、こういう差がつくのは、事業主負担がついているかどうかということですね。厚生年金になれば、給料から自分が支払っている分と同額を会社が払ってくれている。だから、それが全体としての保険料になりますから、将来受け取るのが多くなる。これは当然のことだということで、その理屈は理屈としてその限りとしてわかります。

 だから、パートやアルバイトの人も厚生年金と同じ仕組みにしたらいいんですよね。違いますか。パートやアルバイトの人も同じように会社が雇っているんですから、会社がその社会保険料についての半額を負担する、こういう制度にすべきではありませんか。違いますか。

柳澤国務大臣 これはもう私がちょうちょう言うまでもないことですけれども、要するに、事業主負担をなぜするかといったら、事業主の側にもいろいろな見方があって、その労働者が本当に自分らのチームの一員として同じチームワークを遂行してくれるかどうか、こういうこともあろうかと思います。他方また、今度はアルバイトの側で、例えば、勤務時間は非常に長いけれども期間としては非常に短い、そういう労働の仕方を選択するというようなこともあろうと思います。

 したがいまして、そういったものを総合勘案して、今総理が申されるように、全くほとんど同じように働きながら、片方は正社員で厚生年金、片方は非正常な勤労者でそれは国民年金だというようなことは、これはできるだけ改善をしていかなきゃいけない、その考え方をこれからどうやって具体化していくかという問題だ、こういう認識です。

枝野委員 幸か不幸か厚生省と労働省が一緒になって、労働政策も柳澤大臣は所管をされておられます。後で時間があれば、経済全体、マクロの話をしたいと思いますが、日本の経済の回復の多くの部分がコストカットです。コストをカットして、労働分配率を下げることによって企業収益を高めています。そのコストカットの手段としてこの間進んできているのは、正規社員を抑制して、できるだけ非典型、例えばパートやアルバイト、あるいは派遣などの形態にどんどん切りかえていく、そのことによって労働コストを下げていこうという努力を企業はしてきました。企業としては当然の努力だろうと思います。

 そして、同じような労働をしていても、正規雇用であれば社会保険料の負担が物すごく大きい、パートやアルバイトにすれば社会保険料の負担をしなくていい、労働コストを切り下げるためにはできるだけ正社員を少なくしてパートやアルバイトに切りかえようというのが、この五、六年間進んできた結果ではないですか。つまり、鶏と卵が私はあべこべなんだと思います。

 もちろん、世の中にはたくさんいろいろな方がいらっしゃって、自分はパートやアルバイトで、縛られずにいろいろな職を転々としたい、そういう方も一部はいらっしゃいます。しかし、今問われているパートやアルバイトの多くの方は、残念ながら正規雇用の道がふさがれていて、パートやアルバイトにやむなくなっている。それを会社側の都合で、この人は長く勤めてくれそうだから、だから社会保険に入れて社会保険料の負担を会社がします、だけれども、この人はすぐ切るから社会保険料の負担はしません。では、いろいろと細切れにして正規雇用を抱えないようにするという方向をどんどん加速するだけではないですか。

 どんな働き方、就業形態にかかわらず、企業として人を雇って、そしてそこに対して人件費を払っているならば、その人件費に対応しての何%かを社会保険料の負担として負担していただく、こういう仕組みにすればいいだけじゃないですか。

柳澤国務大臣 枝野先生、もうすべてわかっておっしゃっていらっしゃるだろうと思いますけれども、労働者の労働の態度あるいは生産性等々が、単純に時間だけに規定されるというものではない。やはり、日本の労働者がよく言われましたように、マニュアルを与えられなくても、しっかり全体を見て、自分の労働がいかにあるべきかということを自己規定してしっかりやる、そういう全体への参加者、こういうようなメンタリティーを持っていない方々もいらっしゃるんだろうと思うんです。

 ですから、そのあたりのことをこれからどういう切り口でもってそこのところをしっかり峻別できるかというようなこともよく考えて、できるだけ多くの方を、全く同じメンタリティーで同じ仕事、同じ時間を働きながら違った処遇になるということだけは避けなきゃいけない、こういう考え方で我々は取り組んでいこうと考えております。

枝野委員 メンタリティー、大事ですけれども、それは外部から客観的に評価、判断しようがないんですよね。この人はパートやアルバイトを希望してパート、アルバイトをしているのか、正社員になりたいんだけれども、口がなくて、しようがなくてパート、アルバイトをしているのか。匿名で聞けば、それは本音を話してくれるでしょうけれども、あなたは半年間だけだよ、半年間だけで次は別のところに行くんだよという約束だったら雇ってあげるよと言われたら、雇われる方としては、本当は正規雇用してほしいと思ったって、私は半年限りでいいんですという答え方を表向きはせざるを得ないというのが、雇用の雇い主と雇われる側との関係だと私は思っております。

 まさにこの部分のところが、年金制度をどうするのかということの私は根本的な問題だと思っていまして、私は、そういったことを考えると、別に案が変わっているわけじゃありません、全部一元化すべきだと思いますが、百歩譲って個人事業主は別だとおっしゃるんだとしても、確かにわかります。私も弁護士でありますので、個人事業主です。弁護士のような個人事業主は会社から給料をもらって働いている方とはちょっと違う扱いというのは、それはわからないではないけれども、しかし、現実に国民年金の半分ぐらいの方が、同じように会社で働いて給料をもらっている、そして、むしろ厚生年金に入っていらっしゃる方よりも少ない所得でありながら高い保険料を少なくとも実感としては負担をしているという実感になり、なおかつ将来受け取る年金額は大幅に低い、こういう実態は変える努力はしなきゃいけないんじゃないですか。

 理屈はいいです。いろいろな理屈をつければいいです。私たちは全部一元化してしまえという理屈を言っています。少なくとも改善をすべき努力をしなきゃいけないと思うんですが、総理の思いをお聞かせください。理屈はいいです。

安倍内閣総理大臣 この非正規雇用の方々、いわゆるパートの方々に対して、厚生年金の適用、社会保険の拡大ということにつきましては、私はそれを進めていきたいと思っておりますし、経団連を初め財界の団体の方々にも、この方針については御説明をしているところでございます。

 もちろん、その中で、例えば勤務の実態等ということについて、ある程度の勤続の期間、また、一週間にどれぐらいの仕事をしているかということは、これは基本的に実態としてなければならないのは当然でございますが、そういう要件等々を勘案した上で、拡大について検討をしてまいりたいと思います。

枝野委員 今の適用を拡大するという話はいい話のように一見聞こえるんですが、私は間違いだと思っています。

 現状は、正規雇用の四分の三以上の勤務があると厚生年金に加入をさせなければいけないという制度になっていますね。ですから、四分の三を下回るような細切れで雇用をしているんですよ。皆さん、いろいろなところの雇用の求人広告を見てください。私も最近あるところで見つけました。週の勤務日数、月の勤務日数など、何日以内ということを意識的に最初から絞っている。この四分の三を超えないように分割して仕事を発注するんですよ。だから、これが例えば正規雇用の二分の一とすれば二分の一以下に細切れにして、ますますいわゆるワーキングプアの問題が拡大をするんですよ。三分の一にすれば三分の一以下に細切れにして、拡大をするんですよ。一律に、どういう雇用形態をしようが、会社として雇って給料を払っているならば、どういう働き方をしようが、細切れにしようが、一人の人でまとめて働いてもらおうが、同じ人件費を払ったら同じ社会保険料負担をするという仕組みにしないと、拡大の適用ではますますワーキングプアをふやすことになる、これが実態である。

 だから我々は一元化を言っているんだということを申し上げておいて、今の話ともつながりますが、一件だけ、経済政策に入る前に、実は、きょうの新聞あるいはニュースでちょっと気になるものがありましたので、法務大臣にお尋ねをしておきたいと思います。

 日本で初めて海外の女性に代理出産をしていただいた御夫妻の出生届が日本では不受理になって、これが裁判になりました。みずからも記者会見されているので名前を隠さなくていいと思いますが、タレントの向井亜紀さんと元プロレスラーの高田延彦さんの御夫妻。これは、東京高裁で、出生届を受理するようにという至極真っ当な決定が出たと私は思っていますが、報道によると、法務省は抗告をするという方向で検討に入ったという報道がなされております。現行法の、法のある意味ではエアポケットだと思います。代理出産ということは現行法は想定をしていなかった。

 ただ、実は私も不妊治療で、私がというより私の妻が大分苦労をいたしまして、幸いことしの七月に、うちは体外受精でありますが、出産ができましたが、それでも生まれなくて、それでもわらにもすがる思いで代理出産という方法をとられたというこのお二人の思いというものは大変重いものだというふうに思っています。

 現場の行政窓口が受理しなかったというところまでは理解できないことはありませんが、東京高等裁判所というそれなりに権威のある司法機関で、これは受理しなさいという決定をしたのでありますから、これは司法の判断に従いますということで法務省として処理をして、あとは立法的に、今後もこういうケースが出てくる可能性はたくさんありますので、どうするのかということを検討する。

 現に今、出生届が出されていない、一種無国籍で宙ぶらりんの状態でお子さんはあられるということでありますので、これは上告すべきではないと思いますが、法務大臣の見解をお願いいたします。

長勢国務大臣 今委員お話しのとおりの事実関係でございます。抗告期限が十日というふうに伺っております。

 この判決は、議論の中身が、基本的に決定の中身は、アメリカの裁判所で確定をした裁判の効力を我が国において認めるということを中心にした決定というふうに承知をいたしております。従来、実子として認めるかどうかということについての判例、学説のほとんどは、分娩という事実によって発生をするという考え方で来ておりましたので、それとの関係が非常に不明確になっております。

 そういうこともありますので、現在、今委員おっしゃるようなああいうお気持ちの方もおられることもありますし、また、高裁の決定でもございます。一方、これを抗告しないということになった場合に、今後の行政その他の取り扱いについての影響をどういうふうに考えるかという問題もあります。

 そういうことを含めて、今、どうするかを検討中でございます。

枝野委員 今後の立法政策論、これはできるだけ早く法務委員会の場で議論をされる必要があるかと思います。そういう問題は残ると思います。

 しかし、現に、双子のお子さん、うちも双子なんですが、こちらも双子らしくて、双子のお子さんが出生届が出せない状態で宙ぶらりんでおられる。だれにとってもこれは受理をして問題はない。つまり、机の上の話以外は何の問題もない話だと思います。

 しかも、東京高等裁判所の決定という、司法の一定の権威ある決定がなされているわけでありますから、やはりこれは、こうした場合の当事者の福祉というのを、別にこの件が特にではありません、一般的にこういった場合については、当事者の福祉というのを、法務省としては余り建前としての法律論のところに縛られずに進められることを期待したいというふうに思っています。

 経済政策についてお尋ねを申し上げます。

 まず、総理の御認識を伺いたいと思うんですが、日本経済新聞などとか政府の発表を聞いておりますと、景気はいいそうでございます。

 ことしの夏、私も、十三年、ああそうですね、安倍総理とは初当選同期でございまして、十三年国会議員をやらせていただいてきまして、選挙もなく国会もなく、こんなに長い期間があいたというのは十三年間で初めてでございまして、自民党の場合は総裁選挙があったのでお忙しかったんだろうと思いますが、地元の大宮と与野をかなりゆっくりと、ミニ集会を開いたり、個別にいろいろな方からお話を伺ったりとかする機会をつくることができました。約三カ月、地元を歩いていまして、景気いいよというお話をされたのは三人でございまして、どこが景気いいんですか、枝野さんという声ばかり聞かれました。

 さて、今の経済状況は、こういう聞き方をしましょう、国民の多くの皆さんは今景気がいいと……(発言する者あり)確かに、今後ろからやじが飛びましたが、やはり、もうかってまっせと余り人に向かって言う人はいないだろうと思いますが、しかし、枝野さん、どこが景気いいんですかという声、皆さんもお聞きになっていませんか。皆さんの周り、景気いいんでしょうか。

 総理、今の日本の経済実感、国民の皆さんが今日本は景気がいいと受けとめられている方が多数であると思っておられますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 二〇〇二年から始まりましたこの景気回復は、割と息の長い景気回復であると思います。またこれは、いわば企業の活動、また家計部門等々においても、また輸出、バランスよく景気は回復をしているという全体の認識はそうではないか、このように思います。

 他方しかし、産業界個々においてはばらつきがありますし、地域間においてはそれぞれ違いもあるのも現実だろう、このように思います。しかし、例えば私の地元におきましても、山陰側はなかなかまだ感じとしては厳しいのは現実でございますが、山陽側においては、実際に仕事が多いという会社も大分ふえてきたのも現実ではないか。

 個々によって当然ばらつきはあるわけでありますが、全体的には、長いトンネルを抜け、力強い景気の回復軌道に乗っていると認識をしています。

枝野委員 例えば、全世帯の消費支出というのを見てみますと、平成十三年マイナス一・七、平成十四年プラス〇・一、十五年マイナス一・〇、十六年プラス〇・四、十七年マイナス〇・四、ほとんど伸びておりません。平成十八年に入ってからの月単位で見ていきましても、一月のマイナス二・四を先頭にして、直近の七月でもマイナス一・三、個人消費、消費支出はずっとマイナスであります。

 勤労世帯の実収入、これは平成十六年だけプラス一・三でございましたが、平成十三年からすべてマイナスでありまして、ことし平成十八年に入ってからも、これは七月だけプラス五・九になっておりますが、六月はマイナス五・六でございまして、それまで全部マイナスです。

 よく分析をしてみますと、七月は世帯主の臨時収入・賞与のところだけプラス二五・九となっていまして、ボーナスは少しよかったんだなということがデータで実証されておりますが、昨年、平成十七年の十月と十一月、これもやはりボーナスなんでしょう、同じような世帯主の臨時収入・賞与のところがプラス四四・七とか六一・一と大きく伸びたんですが、そのときでも全体は〇・〇とかマイナス一・二程度。今回も賞与は二五・九伸びておりますが、全体としては、トータルすると五・九しか伸びていない。

 やはりこれも、これ以降果たしてプラスになっていくのかということは、かなり悲観的ではないかと見るのが一般的ではないだろうか。勤労世帯に限った消費支出は、七月で若干所得がふえたことになっているにもかかわらず、マイナス二・〇でございます。つまり、家計消費は全然伸びていない。

 この家計消費は伸びていないということについて、これは経済財政担当大臣でも結構ですが、この事実はお認めになりますか。

大田国務大臣 今回の景気回復は、企業が厳しいリストラをする中での回復でしたので、企業から家計への波及はおくれております。しかし、昨年前半から少し雇用の潮目も変わってまいりまして、だんだん求人がふえ、正社員も次第に求人がふえてきております。所得も一時期よりは下げどまってきていると感じます。

 消費につきましては、少し夏も天候不順で足元が落ちておりますけれども、まだ堅調な状態を示していると思います。

枝野委員 今私は客観的な、これは日銀でしたかの数字をお示ししてマイナスですねと申し上げているんですが、マイナスで堅調なんですね、この国の消費というのは。よくわからないんですが。

 今、リストラ効果ということを事実上お認めになったんですが、その前に、今、日本の景気は何がいいのかとちゃんと我々は認識しなきゃいけないと思います。私は、ある部分で小泉改革の、副作用もあったけれども、効果の部分も後で認めますが、一番最初にあるのは、実は円安ではないのかということを申し上げたいんです。

 日本のGDP全体に占める輸出の比率というのを例えば名目ベースでとってみますと、二〇〇六年の第二・四半期は一五・六となっております。これが、実は八〇年代前半の水準とほぼ同じ水準です。つまり、八四年第四・四半期が一五・三、現状が一五・六、GDP全体に占める輸出の割合ですね。逆に、これはずっとこの間U字カーブを打っていまして、一番低かったときが九五年第二・四半期で八・八、輸出がGDPに占める割合。

 これは、実は相関関係のある数字がございまして、円の実効為替相場、円高か円安か。便宜上、一九七三年三月を一〇〇とした数字で見てみますと、今は一〇三・九、六年第二・四半期。その前の一番低かったときというのは、八五年第一・四半期の九〇・四でございます。そこからどんどん円の実効相場は上昇を続けて、九五年二月、一六三・三でピークを打って、徐々に下がってきて現状です。

 つまり、この間、円の実効相場が高くなるにつれて輸出が減っていって、円安が進むにつれて輸出が伸びていった。つまり、為替によって日本の輸出入が増減をしたことが、日本の経済が悪くなり、そしてよくなってきたことの大きな、一番とはお認めにならないでしょうが、大きな要因だと思いますが、総理、そう思いませんか。

大田国務大臣 景気判断を担当している者としてお答えいたします。

 実質実効為替レートは、確かに八〇年代の水準に下がってきております。これが景気を支えているのは事実です。しかし、今回の景気回復過程の最大の要因は二つございます。一つは、企業が過剰設備、過剰雇用、過剰債務を解消して体質を強化したということ、それから二番目に、アメリカ、アジアの経済の好調です。

 一つ目の、日本企業が体質を強化したからこそ、アジアとアメリカの好況を生かすことができたというふうに考えております。

枝野委員 大企業、製造業がリストラをすることによってコストを引き下げた、それは統計上もよく出てきております。労働分配率で見てまいりますと、この五年ぐらいで一五ポイントぐらい大企業、製造業の労働分配率は下がっております。当然、それに応じて従業員一人当たりの付加価値というものは大きく伸びておりまして、これが景気回復の一つの要因であるということは私も認めます。

 ですから、それを加速させたのが小泉改革であるんだとすれば、それはプラスの側面かもしれませんが、そのかわり副作用も大きいとは思います。大企業、製造業はリストラすることによって、つまり、給料を下げたり納入価格を下げさせたりすることによって利益を上げている、これはそのとおりでありますが、では、そうやって伸びた大企業、製造業のところからどうやって国内の本格的な景気回復につなげていくんでしょうか。

 つまり、今、輸出の競争力もつきましたということを大田さんはおっしゃいました。それもそのとおりでしょう。コストを下げた、労働分配率を下げて、給料をカットして、下請いじめをして、それで利益が上がった、輸出でもうけた。問題は、それをでは、どうやったら内需につなげていけるのかという問題なんです。

 輸出はたまたま好調でした。それは円安の効果もあった。今おっしゃられたとおり、この間たまたまアメリカやイギリスが景気よかった。でも、アメリカやイギリスが未来永劫景気いいわけではありません、中国が未来永劫景気いいわけじゃありません。日本の本格的な景気回復のためには、内需をしっかりと回復させなければならない。この間やってきたのは、労働分配率を下げて、コストを下げて、給料を下げて、下請をたたいて、その結果としてですから、国内にはお金が流通しない、お金がめぐらない、こういう構造になっているわけですね。

 総理、どうやってこれを回復しようとしているんですか。

大田国務大臣 労働分配率の高さは、九〇年代、日本企業の構造問題だと言われてきました。それが今、大企業、製造業だけではなくて、非製造業、中小企業、次第に広がりつつ労働分配率が下がってきております。これが家計への波及をおくらせた大きな要因ではありますけれども、最近になりまして人手不足感も出ておりまして、雇用環境は改善しております。実際に失業率も下がってまいりました。

 これから先、企業と家計の好循環が生まれていくものと見ております。

枝野委員 まさに、ここの認識が自民党と民主党の一つの対立軸かなと思います。

 高度経済成長の時代は、強い企業を強くすることによって、そこが利益を上げてくれる、国際競争力を持ってどんどん強くなってくれる。そのことが国内にいろいろな形で波及をしてきました。例えば財政が豊かになります。利益を上げてたくさん法人税を払ってくれて、そのお金を当てにして、例えば借金をしてでも公共投資をしてそれが波及をしていくとか、そういう効果がありました。あるいは、リーディング産業がもうかる、その人たちが会社で、工場での給料が上がる、その人たちが地域で消費をする、そのことによって経済に波及をしていくということは、右肩上がり経済で日本がどんどん成長していく時代には、こうやってもうかっているところをもうけさせる、強いものをより強くするという政策で日本経済全体がよくなっていきました。

 しかし、日本がトップランナーに立ってから、きのうの菅さんの話でしょうか、四十年周期で、戦後の四十年を過ぎたぐらいのところから、世界の経済的なトップランナーになって以降は、従来のようにリーディング産業といっても、ばあんと伸びていくわけではないんですよね。リストラ努力などをすることによって、まさに安倍さんの言葉を転用すれば、筋肉質になることによって、つまり、労働コストなどを下げたり下請の納入価格などを下げたり抑えたり、こういう努力、価格を抑えるということによって、そのことによってもうかる、国際競争力を持つ。したがって、それが波及をしない構造がこの二十年間続いてきているから、時々バブルになったりバブルが崩壊したりということはあるけれども、日本全体の本格的な経済の回復になってきていないんではないか、私はそう思っています。

 まさに構造改革というのは、右肩上がり、高度経済成長の時代は、リーディング産業が頑張ればそれで全体が豊かになる。もちろん、リーディング産業は頑張ってもらわなきゃいけません。輸出で稼いでくれる企業は頑張ってもらわなきゃいけません。でもこれは、いろいろな自助努力で、まさに国際競争の中で頑張っておられます。

 問題は、そうやって稼いだお金が日本の国内できちっと流通する、一番言えば、消費にきちっとつながる、消費につながるためには国民一人一人の可処分所得が大きくなる、こういう政策をどうやってつくっていくのか、このことが重要であるというふうに思うんですが、大田さんはうなずいています。これは、基本的な経済の大きな方向についての考え方なので総理の御認識を伺いたいんですが、今の私の考え、見方に対して。

安倍内閣総理大臣 まず、輸出産業というか、今や、まさに世界の多くのグローバルな市場の中で勝ち残ることができなければ日本の中で勝ち残ることができないという中において、各企業において大変な努力をしてきた、こういうことであろう、こう思います。そしてまた企業においても、新たな設備投資を図り、また技術開発、またイノベーションに向けた開発を行い、まさに、新しい波に乗るべく努力をしているわけであります。そうして利益を上げている中で、雇用者に対してもこの利益が均てんされていくことが望ましいわけであります。

 そしてまたさらに言えば、新しい成長分野にもっともっと人が集中をしていく必要があります。成長分野は、例えばITの分野もそうでしょうし、医療分野もあるでしょうし、介護の分野もあります。こうした新しい成長分野にしっかりと人もさらに集中をし、またその中で、イノベーションによって生産性が向上していくことによって一人当たりの生産性が向上し、そして一人当たりの所得もふえていく、つまり、縮小均衡的な方向ではなくて、しっかりと成長し拡大していくことによって日本全体の経済を底上げしていくことが大切であろうと考えております。

枝野委員 従業員の三分の二は中小零細なんですね。日本の消費を拡大させて国内消費を拡大させていくためには、ここの所得がふえない限りどうにもならないんです。しかも、半分は非製造業なんですよ。非製造業というのは、技術革新などによって、急にイノベーションでもうけがばっと出るというふうな世界ではないと私は思っています。

 そうした中で、むしろこの間、消費税や住民税、国民の消費を冷え込ませる政策を打ってきたのは間違いではないか、こうしたことを今後議論していきたいということを申し上げて、時間ですので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金子委員長 これにて菅君、田中君、岡田君、枝野君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、安倍首相に質問いたします。

 過去の日本が行った侵略戦争と植民地支配にどういう態度をとるかは、二十一世紀に日本がアジアと本当の友好を築く上で避けて通れない重大問題であります。また、戦後世界の国際秩序は、日独伊が行った戦争を誤った侵略戦争として認定し、こうした戦争を二度と繰り返してはならないという土台の上に成り立っており、この土台を否定することは、日本が二十一世紀に世界とアジアの一員として生きていく資格にかかわる問題でもあります。

 私は、本会議の代表質問で、首相の歴史認識の問題をこういう角度から重視し、幾つかの問題をただしましたが、首相は、どの問題に対してもみずからの言葉で語ろうとはしませんでした。そこで、本会議に引き続き、この問題をただしたいと思います。

 私は、本会議質問で、靖国神社が立っている歴史観、日清、日露の戦争から中国侵略戦争、太平洋戦争までの日本が過去に行った戦争すべて、アジアの解放、自存自衛の正しい戦争だったとするいわゆる靖国史観について、首相がこれを是とするのか非とするのかについてただしました。しかし、首相からは、その是非についての御答弁がありませんでした。この場ではっきりとお答えください。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 私も従来から申し上げておりますように、歴史認識については、政治家が語るということは、それはある意味、政治的、外交的な意味を生じるということになるわけでありまして、そういうことを語ることについてはそもそも謙虚でなければならない、このように思っています。

 靖国史観というのは、靖国史観がいわゆるどういうものであるかということについては承知をしておりませんが、それは、宗教法人である靖国神社の考え方を披瀝したものであるかもしれない。私が政府としてそれをコメントするのは適当ではない、このように思います。

志位委員 私は、安倍さんは国政の責任者になられたわけですから、歴史観を語らないのは、謙虚ではなくて無責任だ、このように思います。

 同時に、そういう答弁を繰り返すのならば、聞かなければならないことがあります。それは、首相自身が過去に、政治家として特定の歴史観、戦争観についてそれこそ大いに語り、その立場で行動してきたということを今日どう考えているかという問題です。

 ここに、一九九四年の十二月一日に結成された終戦五十周年国会議員連盟の結成趣意書がございます。次の一枚はこの国会議員連盟の名簿でありますが、その中には安倍晋三さんの名前も記載され、事務局長の代理を務められていると述べられておりますが、まず、事実関係について確認したいと思います。間違いありませんね。

安倍内閣総理大臣 随分昔のことでありますし、事務局長代理というものはそれほど偉いポストでもないわけでありますが、もしそこにそういう書類があるのであれば、それは事実なんだろうと思います。

志位委員 事務局長代理というのは、四役のうちの一人ですから、重要な役職ですよ。

 そして、この結成趣意書を読みますと、公正な歴史への認識を明らかにすることは国政にあずかる者の責務だというふうに述べて、過去の日本の戦争について、日本の自存自衛とアジアの平和のための戦争だったという歴史観、戦争観がはっきりこの結成趣意書には述べられています。

 首相は、先ほどの答弁で、歴史観を政治家が語ることは謙虚であるべきだ、つまり語らないことが謙虚なんだということをおっしゃられたけれども、あなたも賛同したはずのこの結成趣意書には全く違うことが述べられているじゃありませんか。これはどう説明するんですか。

安倍内閣総理大臣 いわば、語る、語らないというよりも、歴史観を、これはこういう歴史観でなければならないとか、あるいは、これはこうなんだということを特定することはできないということではないか、このように思うわけでありまして、いずれにいたしましても、今、私は政府の立場にある者として、こうした歴史についての認識、考えを語るということについては謙虚でなければならないというのが現在の私の考え方であります。

志位委員 謙虚だと言われることと全く違うことをされていた、あなたの言葉で言えば、謙虚だということと全然正反対の行動をされていたということについての説明はありませんでした。

 特定の歴史観を語ったものじゃないというふうにおっしゃいますけれども、日本の自存自衛とアジアの平和、これは、当時のあの侵略戦争を進めた戦争指導者が使った言葉です。特定の歴史観そのものです。

 それでは、この議員連盟が何をやってきたのか。この終戦五十周年議員連盟は、終戦五十周年に当たっての国会決議に対して、まさに日本の戦争は正しかったとする立場から、さまざまな行動をしております。

 これが一九九五年四月十三日付の議員連盟の運動方針でありますが、ここにはこう述べられております。「本連盟の結成の趣旨から謝罪、不戦の決議は容認できない。また反省の名において、一方的にわが国の責任を断定することは認められない。」さらに、「終戦五十年に当り戦後、占領政策ならびに左翼勢力によって歪められた自虐的な歴史認識を見直し、公正な史実に立って、自らの歴史を取り戻し、日本人の名誉と誇りを回復する契機とすることが切望される。」これが運動方針です。

 それから、声明があります。六月八日付です。これは、与党三党、当時の自民党、社会党、さきがけがまとめた国会決議案について、次のように声明では述べています。「与党三党の幹事長、書記長会談において合意に達した決議案は、わが国の「侵略的行為」「植民地支配」を認め、わが国の歴史観を歪めており、われわれは決して賛成できない。」

 この国会決議というのは、米英も日本も両方に問題があった、いわばどっちもどっち論の立場でありまして、そういう弱点を持っていましたから私たちは反対いたしました。しかし、そういう弱点を持つ決議案でも、終戦五十周年議員連盟の立場からは、すなわち安倍さんの立場からは認められないというものでした。

 この運動方針を見ましても、声明を見ましても、戦争への謝罪や反省をすること、そして、侵略的行為、植民地支配を認めることは歴史観をゆがめるものだ、断固として拒否するとはっきり書いてあります。こういう立場から、議員連盟の多くの議員が本会議を欠席しました。安倍さんも本会議には欠席されています。

 首相が、この当時こういう考え方を持ち、それに基づいて行動してきた、これはお認めになりますね。事実の問題です。

安倍内閣総理大臣 恐らくその議員連盟は、その決議のときに発足をして、決議が終わった後は活動していない、私もそれほどよく覚えていないわけでございますが。あのときの議論においては、恐らく、こうしたことを国会で決議するのはおかしいのではないかというのが大体議論の中心ではなかったか、このように思います。

 今、私の内閣総理大臣としての考え方は、累次この委員会でも、また本会議でも述べてきているとおりでございます。

志位委員 私の設問に答えておりません。

 この国会議員連盟の運動方針や声明では、侵略的行為や植民地支配を認めることは歴史観をゆがめる、自虐史観だと述べているわけですね。当時、あなたはこういう認識だったかどうかを聞いているんです。お答えください。

安倍内閣総理大臣 当時も、私は、さきの大戦において多くのつめ跡をアジアの地域に残した、このように考えていたわけでございます。そして、日本人を塗炭の苦しみの中に落とした、こういう認識を持っていたわけでございます。しかし、その中で、いわゆる侵略戦争ということについては、これは国際的な定義として確立されていないという疑問を持っていたような気がするわけでございます。

志位委員 侵略戦争についての定義の問題をあなた方は問題にしていたんじゃないんですよ。侵略的行為、植民地支配自体の事実を書き込むことをやめろと言って行動されてきたんですよ。

 首相は、首相になってからの答弁では、歴史観を語らない方が謙虚なんだ、政治家は歴史観を余り語るべきじゃないんだということをおっしゃるけれども、首相になるまでは、さんざん、それこそ、植民地支配、侵略的な行為、それを言うこと自身が自虐史観であり、歴史観をゆがめる、そういう立場で行動してきたじゃないか。これは説明がつかない矛盾じゃありませんか。どう説明するんですか、それを。

安倍内閣総理大臣 今急に、随分昔の議員連盟で出した文書を出されても、私も何とも答えようがないわけでありますが、現在の私の総理大臣としての考え方、立場については、もう既に累次申し上げてきているとおりでございます。それをそのまま受け取っていただきたいと思います。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

志位委員 随分昔にとおっしゃいますけれども、十年前のことですよ。そして、そのときに国会決議に対して欠席したという事実も残っております。

 私は、この問題で、まず首相がお答えできないのは、あなたが、そもそも、たって、ずっと主張してきた歴史観、戦争観というのは、首相になったらもう口にすることができないような性格のものだということを物語っていると思います。

 そこで、次に、一九九五年の村山談話についての首相の立場をただしたいと思います。

 村山談話は、我が国は、遠くない一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えましたとして、痛切な反省と心からのおわびを述べています。

 私は、本会議でも首相に、村山談話を継承し、首相自身の歴史認識に据えるのかどうか、特に、村山談話で明記されている、国策を誤って戦争への道を歩んだという認識を共有するのかどうかとただしました。しかし、首相は、政府の認識は村山談話などにおいて示されているとおりと言うだけで、国策の誤りについては答弁されませんでした。

 私は、あの村山談話の重要な点は、植民地支配と侵略が国策の誤りとして行われたことを公式に認定したところにあると思います。

 首相にもう一度この問題を問いたい。

 首相自身が国策の誤りという認識を持っているのかどうかについて、御自身の言葉ではっきりとお答えください。

安倍内閣総理大臣 これは、私が今まで累次申し上げておりますように、さきの大戦をめぐる政府としての認識は、御指摘の記述を含めまして、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話において示されてきているとおりであります。

 御指摘の談話については、戦後五十年という節目に閣議決定されたものでありまして、内閣総理大臣として、また私の政府として引き継がれているということでございます。

志位委員 政府の認識だけではなくて、安倍さん個人の認識を伺ったわけです。

 それで、政府の認識は二つの談話に示されたとおりだ、御指摘の記述も含めてと言われました。そういう持って回った言い方ではなく、あなた自身の言葉で、自分は国策を誤ったと認識していると、もし認識しているんだったら、そういう言葉ではっきりおっしゃっていただきたい。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は、総理として今この場に立っているわけでございますので、総理として答えるわけでありますが、今委員がおっしゃった、国策を誤り、戦争への道を歩んだ、このように指摘をされたわけでありますが、今指摘された記述を含めて、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話において示された考え方を政府としては引き継いでいるということでございます。

志位委員 あなた自身の認識も国策を誤ったということですね。

安倍内閣総理大臣 何回も申し上げておりますように、私は内閣総理大臣として申し上げておるわけであります。

志位委員 それでは、その国策の誤りの具体的中身について、過去の戦争に際して日本がどのような国策をもって臨んだのかについて具体的にただしていきたいと思います。

 歴史の事実に照らしてみますと、日清、日露の戦争、中国侵略戦争、太平洋戦争のすべてが、自国の領土の拡張と他国の支配を目指すことを国策とした戦争だったことは否定しようのない事実だと思います。

 ここに、日本の外務省が一九五五年に編さんした外交文書集「日本外交年表並主要文書」という文献があります。これを、私、ずっと読みましたが、これを見ましても、そのことを裏づける日本政府自身の無数の決定があります。

 私は、そこにおさめられているものの中から、中国侵略戦争から太平洋戦争に至る時期の三つの重要な決定について首相に具体的にただしたいと思います。委員の皆さんも、それから首相も配付資料をごらんください。昨日、質問通告した資料です。

 一つ目の資料は、日本が中国への全面的な侵略戦争を開始した翌年の一九三八年一月十一日に決定された「「支那事変」処理根本方針」なる文書であります。これは、御前会議、すなわち天皇の出席のもとに、政府と軍の首脳部が集まる日本国家の最高の戦争指導機関の最初の決定です。まさしく、戦争遂行に当たっての国策を述べたものであります。

 この決定をごらんいただきたいんですが、これを見ますと、日支講和交渉条件として中国政府への要求がずらりと並んでいます。

 その要求の中核に据えられているのが、北支及び内蒙に非武装地帯を設定すること、中支占拠地域に非武装地帯を設定すること、北支、内蒙及び中支の一定の地域に日本軍の駐屯をなすこと、これが要求の中核なんですよ。すなわち、北支、北京を中心とする華北地方、それから内蒙、内モンゴル地方、中支占拠地域、これは上海を中心とする揚子江下流三角地帯などに非武装地帯を設ける。非武装地帯というのは中国軍は立ち入ることができない。そして、ここに明記されているように、日本軍が駐屯できる地域をつくるという要求がはっきり書かれております。

 そして、この要求を中国政府が受け入れない場合には、帝国はこれが壊滅を図ると書いてあります。すなわち、中国政府を軍事力で壊滅させると述べております。これが最初の御前会議の決定なんですよ。

 この決定は、日中全面戦争が、中国領土に日本軍の駐兵権を認めさせ、中国を支配下に置くことを目的とした戦争だったことをはっきり示していると思います。

 首相は、日本が日中全面戦争に際してこうした国策を決定したことを、まず、事実としてお認めになりますか、事実の問題として。

安倍内閣総理大臣 事実として認めるかどうかということでありますが、その文書が存在するということについては、その文書が存在するという事実があるということではないかと思います。

志位委員 文書の存在は当然なんですが、つまり、日中戦争が、日本軍の駐兵権と中国に対する支配権を目的にした、それを獲得することを目的にした戦争だったと最初の御前会議で決定している、そういう戦争目的を持っていたという事実を認めるかと聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 そうした歴史の出来事一つ一つの分析については、それを分析することは政府の役割ではない、私はこのように考えています。まさにそれこそ、歴史家が資料を集め、証言を集めながら分析していくことではないか、このように考えております。

志位委員 また歴史家に逃げ込むわけですけれども、この文書はどこかの歴史家がつくった文書じゃないんです。日本政府が御前会議という最高の戦争決定機関でつくった文書なんですね。ですから、それに対して日本の最高責任者である総理がきちんとした見解を持つことは、これは当然なことだと言わなければなりません。

 二つ目の文書を見ていただきたいと思います。文書の三ページです。

 これは、太平洋戦争に乗り出す一年前の一九四〇年九月十六日、大本営政府連絡会議、すなわち軍と政府の共同の戦争指導機関が決めた「日独伊枢軸強化に関する件」と題する決定文書です。これは、この同じ年の九月二十七日の日独伊三国軍事同盟締結を前にして、皇国の大東亜秩序建設のための生存圏の定義について決めております。この決定では、日本の生存圏、領土拡張と支配圏の範囲として次のように述べています。

 資料の五ページの下の段をごらんください。それをパネルにすると、こういうことになります。

 独伊との交渉において皇国の大東亜新秩序建設のための生存圏として考慮すべき範囲は、日満支を根幹とし、旧ドイツ領委任統治諸島、フランス領インド及び同太平洋島嶼、タイ国、イギリス領マレー、イギリス領ボルネオ、オランダ領東インド、ビルマ、オーストラリア、ニュージーランド並びにインド等とす。日本の生存圏、この広大な範囲ですよ、これを大本営政府連絡会議で決めているわけですね。太平洋戦争の始まる前の年です。

 太平洋戦争の性格について、こうなりますと、領土の拡大と他国の支配を目的とした戦争であったということは、これは紛れもない事実だということをこの資料は示していると思いますが、総理の見解を伺いたい。太平洋戦争の基本的な目的です。

安倍内閣総理大臣 当時のいろいろな決定、出来事については、例えば、当時の日本をめぐる状況や国際社会の状況もあるでしょうし、どういう時代であったかという分析も必要でしょうし、歴史は連続性の中で見ていくことも大切ではないか。

 ですから、そういう事象について、今ここで、私は、政府としてそれがどうだったかということを判断する立場にはないということでございます。つまり、一定の、政府としてこういう考え方に立って歴史を判断するということは私はしないということでございます。

 共産党としては、例えばマルクス史観に立ってすべてを決めていくということかもしれませんが、こういう事柄については、先ほど来申し上げておりますように、まさに歴史的な分析を歴史家がするべきではないかと思います。

志位委員 太平洋戦争の目的について、これも歴史家の分析に任せるべきだ、マルクス史観ではそうだというふうにおっしゃいましたけれども、これは私どもの特殊な立場ではありませんよ。日本の戦争が侵略戦争だったというのが、戦後の国際秩序、国連憲章でも、あるいはポツダム宣言でも、すべての世界の秩序の土台になっている問題であります。そして、私がさっき示した表が、まさに生存圏をとるために起こした戦争が太平洋戦争だったということは、実際の戦争の経過がそういうふうに進んだことが証明していると私は思います。

 三つ目の文献を見ていただきたい。これが一番決定的な、日本政府のまさに本音がむき出しになった文献です。資料の八ページをごらんください。

 一九四三年五月三十一日の御前会議の「大東亜政略指導大綱」と題する決定です。これは、太平洋戦争に乗り出した日本が、東南アジアの地域ごとにどういう政治体制にするかを決めたものです。

 資料の九ページの上の段をごらんください。そこにはこのように明記しています。

 マライ、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベスは帝国領土と決定し、重要資源の供給地として極力これが開発並びに民心把握に努む。これは御前会議の決定ですよ。「重要資源の供給地」とありますが、これらの地域というのは、石油、ゴム、すずなどの重要資源の産地としてもともと日本がねらっていたところでしたが、資源を我が物にするために「帝国領土」と決定しているんですよ、御前会議で。これは動かせない事実です。

 私は、この決定というのは、太平洋戦争というのが日本の領土の拡大を目的にした戦争だったということを疑問の余地なく示していると思います。首相はこれをお認めになりますね。

安倍内閣総理大臣 さきの大戦の結果を踏まえまして、我が国は、こうした結果に対して全国民で責任をとるという立場に立って、その後、まだまだ貧しい中にあったわけでありますが、各国と、賠償を払いながら講和条約を結んでいった。この中において我々は国際社会に復帰をしたわけでございます。

 そして、今委員が挙げられた、こうしたこと一々について政府としてはコメントする立場にはないということは、申し上げてきたとおりであります。

志位委員 私は、あなたが国策の誤りということも含めて村山談話をお認めになるということをおっしゃったので、その国策の誤りの具体的な中身を三点示しました。すべて、政府の正式な決定、国策として決めたことです。これは、日本の過去の戦争が領土の拡大と他国の支配を目的にしたことを疑問の余地なく明らかにしています。私は、この戦争の誤りの核心部分はここにあると思います。こういう戦争のことを侵略戦争というんですよ。そして、そこに国策の誤りの核心があるんです。

 ところが、どの問題についても、具体論になれば、総理は、歴史家に任せると言って、領土拡大と他国支配を目的にしたという事実すらお認めにならない。これでは、本当に日本の過去の戦争を反省したことにはならないということを私は指摘しなければなりません。

 いま一つ私が聞きたいのは、従軍慰安婦問題です。

 一九九三年に、日本政府は、河野官房長官談話で、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については旧日本軍が直接、間接に関与したこと、慰安所における生活は、強制的な状況のもとでの痛ましいものであったことを公式に認め、心からのおわびと反省を述べるとともに、歴史教育などを通じて、同じ過ちを決して繰り返さない決意を表明しています。

 私が本会議質問でこの問題をただしたのに対して、首相は、いわゆる従軍慰安婦問題についての政府の基本的立場は河野官房長官談話を受け継いでいると答弁されました。しかし、河野談話を受け継ぐと言うのなら、首相の過去の行動について、どうしても私はただしておきたい問題があります。

 ここに、一九九七年五月二十七日の本院決算委員会第二分科会での議事録がございます。安倍議員の発言が載っております。「ことし、中学の教科書、七社の教科書すべてにいわゆる従軍慰安婦の記述が載るわけであります。」「この従軍慰安婦の記述については余りにも大きな問題をはらんでいるのではないか」「いわゆる従軍慰安婦というもの、この強制という側面がなければ特記する必要はないわけでありますが、この強制性については全くそれを検証する文書が出てきていない」、こう述べられております。そして、結局、これは、教科書から従軍慰安婦の記述を削除せよという要求です。さらに、教科書にこうした記述が載るような根拠になったのは河野官房長官の談話だとして、談話の根拠が崩れている、談話の前提は崩れていると河野談話を攻撃しています。

 河野談話を受け継ぐと言うのだったら、私は、首相がかつてみずからこうやって河野談話を攻撃してきた、この言動の誤りははっきりお認めになった方がいい、このように考えますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この河野談話の骨子としては、慰安所の設置や慰安婦の募集に国の関与があったということと、慰安婦に対し政府がおわびと反省の気持ちを表明、そして三番目に、どのようにおわびと反省の気持ちを表するか今後検討する、こういうことでございます。

 当時、私が質問をいたしましたのは、中学生の教科書に、まず、いわゆる従軍慰安婦という記述を載せるべきかどうか。これは、例えば子供の発達状況をまず見なければならないのではないだろうか、そしてまた、この事実について、いわゆる強制性、狭義の意味での強制性があったかなかったかということは重要ではないかということの事実の確認について、議論があるのであれば、それは教科書に載せるということについては考えるべきではないかということを申し上げたわけであります。これは、今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか。

 また、私が議論をいたしましたときには、吉田清治という人だったでしょうか、いわゆる慰安婦狩りをしたという人物がいて、この人がいろいろなところに話を書いていたのでありますが、この人は実は全く関係ない人物だったということが後日わかったということもあったわけでありまして、そういう点等を私は指摘したのでございます。

志位委員 今、狭義の強制性については今でも根拠がないということをおっしゃいましたね。あなたが言う狭義の強制性というのは、いわゆる連行における強制の問題を指していると思います。しかし、河野談話では、「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、」とあるんですよ。政府が自分の調査によってはっきり認めているんです、あなたの言う狭義の強制性も含めて。これを否定するんですか。本人たちの意思に反して集められたというのは強制そのものじゃありませんか。これを否定するんですか、河野談話のこの一節を。

安倍内閣総理大臣 ですから、いわゆる狭義の強制性と広義の強制性があるであろう。つまり、家に乗り込んでいって強引に連れていったのか、また、そうではなくて、これは自分としては行きたくないけれどもそういう環境の中にあった、結果としてそういうことになったことについての関連があったということがいわば広義の強制性ではないか、こう考えております。

志位委員 今になって狭義、広義と言われておりますけれども、この議事録には狭義も広義も一切区別なく、あなたは強制性一般を否定しているんですよ。そして、河野談話の根拠が崩れている、前提が崩れている、だから改めろ、こう言っているわけですよ。

 ですから、これも、河野談話を認めると言うんだったら、あなたのこの行いについて反省が必要だと言っているんです。いかがですか。広義も狭義も書いてないです、そんなこと。あなたが今になって言い出したことです。

安倍内閣総理大臣 当時私が申し上げましたのは、いわば教科書に載せることが、中学生の教科書に載せることが適切かどうかということを申し上げたわけであります。

 そして、私が累次申し上げておりますように、私は、今内閣総理大臣の立場としてこの河野談話を継承している、このように思います。

志位委員 今の総理の答弁は全く不誠実です。中学生の教科書に載せることだけを問題にしたんじゃない。強制性がないと言ったんですよ。これだけ反省すべきだと言ったのに、あなたは答えない。

 強制性の問題については、先ほど言ったように、その核心は慰安所における生活にある。慰安所における生活が、強制的な状況のもとで、痛ましいものであった、これは河野談話で認定しています。これを裏づける材料は、旧日本軍の文献の中にたくさんあります。

 以前、橋本元首相あてに、ある韓国人の被害者のハルモニ、おばあさんから次のような手紙が送られたことがあります。読み上げたい。

 私はキム・ハクスンと申します。一九九一年八月十四日に初めて証言し、日本政府が隠し通してきた慰安婦問題の歴史的な扉をあけてから、もう五年もたちました。誇らしいことなど一つもない私自身の過去を明らかにし、名乗りましたのは、幾らかのお金をもらうためではありません。私が望むのは、日本政府の謝罪と国家的な賠償です。三十六年間の間植民地とされた苦痛に加えて、慰安婦生活の苦悩を一体どのように晴らしたらいいとおっしゃるのでしょう。胸が痛くてたまりません。韓国人を無視しないでください。韓国のハルモニ、ハラボジに当時の行いの許しを請うべきではないでしょうか。

 首相に、私、伺いたいんです。

 あなたは、政府の基本的立場は河野官房長官談話を受け継ぐとはっきりおっしゃったんですよ。ならば、あなたは、これまで河野談話を根拠が崩れていると攻撃して、歴史教科書から従軍慰安婦の記述を削除するように要求してきたみずからの行動を反省すべきではないか。そして、この非人間的な犯罪行為によって犠牲となったアジアの方々、とりわけ直接被害に遭われた方々に対して謝罪されるべきではないかと私は思います。もう一度答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 ですから、私が先ほど来申し上げておりますように、河野官房長官談話の骨子としては、いろいろな苦しみの中にあった慰安婦の方々に対しておわびと反省の気持ちを表明しているわけでありまして、私の内閣でもそれは継承しているということでございます。

志位委員 河野談話を継承すると言いながら、みずからの誤りについての反省を言わない。これでは、心では継承しないということになりますよ。

 私は、先月、韓国を初めて訪問する機会を得ました。国会議長や与野党リーダーと会談で党派を超えて共通して感じたのは、日本帝国主義による三十六年間に及ぶ植民地支配への痛みの深さでした。

 私は、ソウル市内の西大門と呼ばれる刑務所の跡の歴史館を訪問しました。この刑務所は、日本によって一九〇八年につくられ、植民地支配に反対して立ち上がった朝鮮の愛国者を残虐きわまりない弾圧、拷問、処刑によって迫害した場所であって、館長さんの説明によりますと、一九四五年までの間に約四万人が投獄され、四百人から四千人が亡くなったということでした。そのおびただしい犠牲に、慄然とする思いでした。

 日本共産党は、戦前の時代から日本帝国主義による朝鮮への植民地支配に反対し、朝鮮独立の闘いに連帯して闘った歴史を持つ政党であります。私は、そういう党を代表して、この刑務所で犠牲となった朝鮮の愛国者の皆さんに、敬意を込めて追悼の献花を行いました。

 同時に、私が韓国の皆さんと交流して共通して感じたのは、二十一世紀の未来に向けて日本との本当の友好を願っているということです。そのためにも、日本政府が歴史を歪曲するような行動をやめてほしいという強い思いです。私は、たとえそれが目を背けたくなるようなものであったとしても、過去に誠実に向き合い、過去の誤りを真摯に認めてこそ、日本は本当にアジアの友人を得ることができるというのが実感であります。

 安倍首相も中国、韓国と歴訪されると伺いました。私、ぜひ言いたいことがあります。

 政治家としての謙虚さというのは、日本が国家として犯した誤りに口をぬぐうことではありません。アジアと日本国民に甚大な犠牲を与えた侵略戦争と植民地支配という歴史の真実に向き合うことです。特に、相手の国に与えた痛みの深さに理解をすることが大切だ。ぜひあなたにそういう立場に立ってほしいということを強く述べておきたいと思います。

 最後に、私、国民の暮らしの問題で緊急にただしたい、どうしてもこれだけは聞いておきたい重大問題があります。高齢者への急激な負担増の問題です。

 ことし六月に入って各市町村から住民税の納税通知書が送付されますと、税額が昨年に比べて十倍になった、間違いではないのか、これでは暮らしが成り立たないという全国の役所への問い合わせと抗議が殺到いたしました。これは、小泉前内閣のもとで所得税、住民税の老年者控除が廃止され、公的年金など控除が縮小され、非課税限度額が廃止された上に、定率減税の半減などによって重なり合ってつくられたものです。

 住民税がふえますと、それと連動して国民健康保険料や介護保険料も負担増になります。介護保険料は、三年に一度の見直しでほとんどの市町村で大幅引き上げとなっており、二重の負担増となります。

 このグラフをちょっとごらんになっていただきたいんですが、これは東京の足立区在住のケースの場合です。年金月額二十万円のひとり暮らしのお年寄りの税、保険料負担の推移のグラフです。

 二〇〇四年度には合計六万四千円だったものが、二〇〇六年度、ことしは十八万九千円まで急激に膨れ上がっています。そして、その増加はことしにとどまるものではない。来年度も再来年度も続き、二〇〇八年度には二十六万八千円まで膨れ上がります。ですから、大体二十万円ふえるわけですよ、月額二十万円の年金暮らしのお年寄りの負担増が。つまり、丸々一カ月分年金が持っていかれるという、これだけの負担増です。

 私たち日本共産党は、ホームページで、「あなたの増税額がわかる負担増シミュレーション」という情報提供の活動をやっております。そこにびっしり書き込みが寄せられています。

 例えば、負担増が年金の一カ月以上になるとは驚きです。これでは、一カ月は飲まず食わずで生活しろということなのでしょうか。あるいは、私は現在七十六歳ですが、二〇〇四年の所得税はゼロ円でした。二〇〇五年は一万五千九百円、ことしは何と七万六千七百十三円です。驚くべき高負担です。その他、住民税、介護保険、国民健康保険など、すべて負担増です。もし病を得て入院するようになるとどうなるのか、先行きの不安でいっぱいです。

 総理に伺いたい。

 今、高齢者を襲っている負担増というのは尋常なものじゃありません。負担が数倍から十数倍にもなる。しかも、ことしで終わりじゃありません。来年、再来年と続く。これは余りに異常で急激な負担増じゃないでしょうか、余りに耐えがたい負担増じゃないでしょうか、そうお思いになりませんか。これは総理に伺いたい。

金子委員長 まず尾身財務大臣、その後、安倍総理大臣、お願いします。

尾身国務大臣 高齢化社会の中で、現役世代また高齢化世代が、ともに健康や老後に心配のないような暮らしをしていくためには負担の公平というのが非常に大事であるというふうに考えているところでございまして、現役世代と高齢者世代の税負担の公平を図る観点から、平成十六年度の税制改正におきまして年金課税の見直しをしたところでございます。

 この際、年金だけで暮らしている高齢者世帯に十分に配慮する措置を講じているわけでございまして、年金を受給する高齢者世帯とそれから現役の給与所得者の税とを比較いたしますと、同じ収入でございましても、税負担は現役世代の方が高くなっているという実情にございます。

 ちなみに、今の志位委員の表で申しまして、六年度の数字で申し上げますと、年金生活者の所得税は六万四千円となっておりますが、同じ収入を得ている現役世代は七万九千円の税を払っております。住民税に関しましては一万三千円ということになっておりますが、同じ収入を得ている現役世代は四万七千円払っておりまして、税合計で申しますと、同じ収入を得ている高齢者と、同じ収入を得ている給与所得者といいますか現役世代が、七万七千円の税と十二万六千円の税というふうに違っておりまして、同じ収入であっても、高齢者に配慮して、現役世代の方がはるかに高い税負担ということになっております。

志位委員 結局、世代間の公平ということを長々とおっしゃられたと思うんですけれども。

 私は、お年寄りに対して税についてのもっときちんとした配慮がされるというのが当たり前の姿で、例えば、介護の問題、そして医療の問題、健康の問題一つとっても大変な不安を抱えながらの生活です。私は、どんな理由をつけようと、これは余りに異常で急激じゃないかということを聞いたわけですけれども、答えはありませんでした。

 私、総理に伺いたい。

 こういうことをやる一方で、公平公平と言いますけれども、大企業の方の税金はどうなんでしょうか。大企業の法人税は減税を続けてこられました。二〇〇五年度の大企業の経常利益はバブル期のピークの一・五七倍と、空前のもうけですよ。ところが、税金は、バブルのときのピークの十九兆円から、今十三兆円に、法人税、減っています。

 私は、本会議で首相に対して、空前のもうけを上げている大企業に、もうけ相応の負担を求めるべきではないかとただしたのに対して、税制の検討に当たっては、財政の健全化と同時に、経済活力の活性化を図り、成長を促進させていくことも重要だと考えており、今後とも、企業に対する課税についてはそうした考え方を踏まえて対応していくと答弁されましたね。

 これは、一層大企業への減税を検討するということでしょうか、大企業へのさらなる減税を検討するということでしょうか。経済の活性化のために企業への課税を見直す、こうおっしゃったんです。もっとやるということですか、大企業に対する減税を。いや、総理の答弁ですから、総理です。

安倍内閣総理大臣 それでは、まず私が答えて、その後、詳しくは財務大臣がお答えをいたします。

 本会議で申し上げましたように、税の中身については、税制改正また税の抜本的な改革を議論する中でよく議論を詰めていかなければいけないわけであります。税においては所得の再配分という機能もございます。と同時に国際競争力ということも考えなければいけませんし、その中で、企業活動、経済活動を活性化させていく中において総体として税収を上げていくということも考えなければいけない。そういうことを総合的に勘案しながら税制の改正を議論してまいります。

志位委員 大企業へのさらなる減税について、私、伺ったんですけれども、否定されませんでした。

 自民党が「長寿世代の税負担増への御不満を聞いて」という文書を配って、こういうふうに言っているんですよ。いずれにせよ、打ち出の小づちじゃないのだから、だれかが負担しなければならない。

 しかし、高齢者にはこれだけ急激で耐えがたい負担増をかぶせ、さらに消費税の増税も検討しながら、大企業に対する大減税は手をつけようとしない。

 大企業には、打ち出の小づちどころか、打ち出の大づちでもって大減税の大盤振る舞いをやるというこのやり方、大企業に減税、庶民に増税というやり方を改めるべきだ、とりわけ高齢者への急激な負担増は中止すべきだということを述べて、私の質問といたします。

金子委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、私が安倍新総理に御質疑させていただきます初回になりますので、ぜひ全体的な総理のお考えを伺いたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 まず、総理は、この間の委員会の御質疑の中でもそうでしたが、御自身の一番の思いとして、美しい国ということを挙げておられます。その中身については、御自身の書かれた御本、もうこれだけメディアに有名になるとたくさん売れると思いますが、これを読んでくれればわかるよというふうにおっしゃっていたので、私も、しっかりかどうかはわかりませんが、読ませていただきました。

 読ませていただいた上で、一、二、この美しい国ということを語るに当たって、一つは総理にお願い、もう一つは私自身が総理にただしておきたいことがございます。

 総理は、明日、日中、あるいは明後日、日韓首脳会談のために日本を離れられます。ちょうど昨日から大変に雨が強く降っておりまして、こういう天候を前にいたしますと、今ほとんどの国民が、ああ、また土砂で山が崩れるんじゃないだろうかと。本当に、こんなに美しい国なのに、最近は自然災害と呼ばれるような環境の問題が、我が国も含めて世界じゅうを覆い尽くしてございます。

 総理のこの御本を読んで、もちろん、美しい自然ということは数行は出てまいりますが、私は、その時々の権力をお持ちの方がどんな施策をしこうとも、やはり最も根幹になる自然というものを強く守る決意をまず総理にお示しいただきたい。

 総理の行かれる中国は、日本と非常に長い歴史的なかかわりがございます。多くの日本人が好む漢詩、漢の国から渡ってきた詩で、杜甫の述べました「春望」という詩がございます。国破れて山河あり、城春にして草木深し。なぜこの詩が我が国で愛されるのか。恐らく、敗戦のとき国は破れました、しかし、帰り立った焦土であったかもしれない国土に山河があり、その焼け野原の中でもう一度立ち上がろうと決意した思いと重なり合っているのだと思います。でも、今、その大切な私たちの山河が形を崩しております。

 つい先月、森林・林業基本計画というのが発表された中で、日本は森と海の国です、二〇二七年度、この林業に対して、どれくらいの人に働いていただくかという計画が、五万人というふうに述べられておりました。

 私は、国土の三分の二が森であるということを考えれば、実は社民党の政策の中では十万人、森を守るため、私たちの大事な国土を守るための人員をどのくらい必要かと試算いたしまして、政府見通しの二倍と踏みました。

 これは質問通告をしてございません。でも、私はちょうどこの雨に、本当に土砂崩れが来るんじゃないか、すごく国民の懸念を代弁して、総理にはまず、環境行政は、その政党がどんな位置にいようと、本当に時々の政治の最も根幹になるものだという御認識を冒頭お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 私も、美しい国としての条件について、この美しい自然、長い歴史や文化や伝統をしっかりと大切にする国であるということを申し上げております。

 日本の自然、美しい自然、特に外国に旅をして帰ってまいりますと、この日本の自然、独特のまろやかさ、あるいは深みというものを感じるわけでありますが、特に日本の森林、これはヨーロッパと比べて急峻な山は多いわけでありますが、緑深きこの山々をしっかりと守っていくことも極めて私は重要であると考えています。

 特に林業については、従事する人たちの数は年々厳しい状況になっている。平成十六年で大体六万人というふうに私は聞いております。私も、家代々の山を、資産価値はほとんどないわけでありますが所有をしておりますが、森林組合に所属をしている方たちは相当高齢化している。一方、山での仕事は大変厳しいのも現実であります。そういう中において、新しい人たちが、いわば定年を迎えた方々が、自然の中で暮らしたいという人もおりますので、林業に従事する人もこれで第二の人生を歩んでいただけるような環境もつくっていきたいと思います。

 いずれにいたしましても、京都議定書の目標値達成においても、吸収源としての自然、また山、こうしたものをしっかりと大切にしていく取り組みは政府として行ってまいります。

阿部(知)委員 総理もよく御存じのように、林業は大変に危険な職場でございます。そして、定年後そこで第二の人生と言われても、なかなか、本当に若いうちから林業に対しての、林野を守るための労働に従事しないと、一朝一夕には、かえって転落事故が多くなって労災のもとにもなります。私どもが森林労働者十万人ということを上げますのは、この国を深く愛し、そしてこの国の本当の未来をそこに見ておりますので、ぜひ御検討をよろしくお願いいたします。

 あとは総理の歴史認識でございます。

 総理にかじ取りを任せたこの国の国民は、総理の深い歴史への英知と、そして主権在民、民が何を思い、民が何を望み、そのゆえにこそ我はこう行動すという姿を望んでいると思います。しかしながら、私が、昨日、そして本日、いろいろな委員と総理との御質疑を聞きまして、もしかしたら総理は君子豹変してしまうのかなと思う事項がございますので、失礼ながら確認答弁をとらせていただきます。

 総理は、まず、一九九五年、村山談話に先立ちます六月九日の決議、あるいは平成十七年、二〇〇五年八月二日の六十年の決議には、一回目は欠席、二回目は途中退場しておられます。その理由を伺いたいですが、もし許されれば、総理がこの「「保守革命」宣言」という御本の中に書かれた一節を引かせていただいて、今もその御認識であるか、それとも御認識を変えられたかどうか、お願いいたします。

 ここには、ちょうど自社さ政権でございました。「「戦後五十年」を迎えて、謝罪決議という大変にみっともない結果になってしまった。」と。大変にみっともない決議をあのとき上げ、しかし、今総理はその決議は政府として踏襲するというお立場なのか。何がみっともなくて、何が変わられたのか、この一点をお願いします。

安倍内閣総理大臣 私も、もう累次申し上げておりますように、総理大臣として、政府の立場として、村山談話についてはそれを引き継いでいくという立場を表明いたしております。また、決議については、累次国会で決議がなされている。私がその本で申し上げていることは、当時私が感じたことを書いたということでございます。

阿部(知)委員 では、恐縮ですが、変わられたんですか、御自身のお考えは。みっともなくなくなったんでしょうか、この決議は。そして、しっかり踏襲していかれるんでしょうか。もう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 内閣総理大臣として、政府として、既に閣議決定をしている村山談話については私の内閣でもこれは受け継いでいく、新しい認識について閣議決定する考えはないということはもう繰り返し申し上げてきているとおりでございます。

阿部(知)委員 私が主権在民でと申したのは、総理には国民に語る義務があると思います。

 なぜなら、この同じ御本の中で、おじい様のお話ばかり引いて恐縮ですが、かつて岸首相は、当時、大野伴睦さんという方に、自民党の古い方は御存じかもしれません、私は後に来ましたので存じませんが、安保条約を成立させるために次の政権を渡すという念書を書いて、いわばその念書は当初からほごにすることも覚悟した上で、こうしないと、この念書をとらないと政策が進まないと決意してそれに臨まれた。ということは、そういう権謀術策の、特に声明や決議や念書でも、それはほごにすることもあるし、総理もまたそのようなお考えを是とするのかどうか、ぜひ伺っておきたい。

 なぜなら、ここで何人かが聞いて、しかし最後まで総理は本音を語られませんでした。国民は不安です。むしろ、私は考えは変えていない、だけれども政府の立場だからこうしたんだとおっしゃるなら、それはそれで一つの考え方だろうと私は思います。総理は、自分が変わったか変わらないか言わない、だけれども政府はこうであるとおっしゃいました。そうすると、政府の決定や決議はまたほごにするんじゃないかという懸念も国民は抱きます。この重要な一点について、総理は心を変えられたのか、君子は豹変されたのか。どうでしょう。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が引用された私の祖父に関するくだりでありますが、それはたしか、安保条約を何とか成立させるために、党内で反対をするかもしれない方々に対して、後の内閣についての約束をしたという、念書を書いたというくだりであります。

 そのことについて、私は、午前中の審議で田中眞紀子議員が挙げられたマックス・ウェーバーを例にとりまして、政治家また人間には責任倫理と心情倫理があるのではないか。つまり、政治家というのは責任は結果としてとらなければならない、一方、心情倫理としては一般的な道徳律に照らしてそれが正しいかどうか。両方ともこれは大切であるが、そのバランスの中で政治家は苦慮しなければならないということの中で、約束をほごにするということについては、心情倫理的には問題はあったかもしれないけれども、責任倫理としては、結果として安保条約を成立させるという意味において、責任倫理においては政治家として果たすことができたのではないかということを述べたのでございます。

 その問題と私が今申し上げていることは、これはかかわりがないわけでございまして、村山談話につきましては、累次申し上げておりますように、私は内閣の総理大臣として、私のこの内閣において、この村山談話、閣議決定した村山談話を受け継いでいるということは明確にしているとおりでございます。

阿部(知)委員 そうやって言葉の中に逃げ込めば逃げ込むほど、国民には見えなくなります。

 そして、総理はこれから中国に行かれるわけです。今、北朝鮮の核問題が大きく東アジアという地域を揺るがしております。日中、日韓の共同した取り組み、六カ国協議という枠組みも現在できております。このことを、総理はよく政経分離だとおっしゃいますが、そうではなくて、経済のお互いの交流とあわせて、政治的にお互い体制が違うから、特に中国と日本は体制が違います。だからこそ、政治的にもお互いが気持ちを、本音を言い、そしてもちろん違うところもございますでしょう、その積み重ねの中での信頼関係こそ重要だということになるんだと思います。

 総理は、小渕内閣時代の日中共同声明というものを御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、先ほどの質問の中で、政経分離は、つまり経済がよければ政治が冷えていてもいいということでは全くないわけでありまして、昨日の予算委員会でも申し上げたとおり、私は本の中で、経済関係が大変いい状況にある、これは両国が切っても切れない状況の中にあるということを申し上げて、この基盤は大切にしなければならない、だから、政治問題を達成するために経済に悪影響を及ぼしてはならないということをお互いの共通の基盤にしようということを申し上げているわけであります。

 そして、その中国を語った項の中で、最後の方には、両国は体制が違う、また国境を接している国であればいろいろな問題が起こるからこそ、そうした問題を最小限に食いとめるためにも、いい関係を続けていくためにも政治のレベルにおいて、特に首脳間は胸襟を開いて会って話をするべきだということを書いているわけでございまして、どうかそこのところは誤解のないようにしていただきたい。そういう意味では、よく読んでおいていただきたい、このように思います。

 そして、その上で、小渕総理の時代の日中共同声明でございますか、その共同声明、いわば日中間で出された声明におきまして、今突然の御指摘でございますが、中身についてはつまびらかには承知はしておりません。

阿部(知)委員 ぜひ中国に行かれる前に、政府としてお出しになった共同声明ですから、日本の侵略の過去について、そこには侵略の過去という形で明確に明記されております。総理が実はさっきから本心をおっしゃらない、ずるずるずるとしてきたところに、侵略の過去や植民地支配というところにこだわっておられたんだろうと思います。随所に書かれていることからもそれは推測できます。

 総理は、やはりあす中国に行かれるに際して、実は田中首相の日中国交回復から小渕内閣の時代まで、少しずつ少しずつ積み重ねてきた日中の政治的な信頼関係というものがあったんだと思います。その後、首脳同士が会えなくなった小泉首相の時代、それをもう一度私どもは取り返し、さらに二倍、三倍、前に進めていかなければ北東アジアの危機は乗り切れないんだと思います。北朝鮮の核開発にしても、やはりキーを握るのは中国だと思います。このことを総理がしっかりと念頭に置いて、国の方向性を過たないためにも、ぜひ小渕首相の時代の日中共同声明、お読みいただきたいと思います。そして、あした、そのことを胸に中国に旅立っていただきたい。あしたも雨もよいと伺いました。御無事で、私は本当に、大任ですからきっちりと果たしていただけますように、心からお願いを申し上げるものであります。

 さて、この日本の侵略という事実に対して、総理は、それは後から歴史家が決めるんだと。今もって、きょうの答弁も、とどのつまりはそこへ行ってしまうわけです。しかしながら、今例えばアメリカが一つの極にあり、こちら側にヨーロッパがEUという一つの共同体をつくりました。EUの中でもドイツとフランスはおのおのいろいろな経済的な衝突もあり、あるいは炭鉱の開発をめぐってもいろいろな障壁があり、そして第一次、第二次大戦という大きな大戦があった後、今EUという新しい共同体を生み出しました。

 そのドイツにいて非常に日本のことを愛する、ドイツの新聞でツァイト紙というのがございますが、この新聞の元編集主幹のテオ・ゾンマーさんという方が十月四日に投書をしておられているのを私は拝読しました。そこには、なぜドイツがヨーロッパの中で自分たちの新たな共同体づくりに違う歩みをなし得たか。ドイツの侵略の過去、ナチス・ドイツの問題、そういうことをきっちりと踏まえて、みずからの過去を反省し、前に進んだ。

 歴史が違うという言い方をなさる人があります。今、日本と中国の一番の障壁は、もしも総理が今もって、侵略の問題も含めて、もちろん日本人も傷つきました、硫黄島の例も昨日挙げられました、本当に悲惨な戦争、しかし、それこそ、未来志向に向けるためにやはり押さえておく過去があるということだと思います。

 これ以上おくらすわけにも、時計をもとに戻すわけにもいかないのですから、ドイツの取り組みと日本の現状置かれているところの問題、総理はどうお考えですか。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 まず申し上げておきたいのは、小泉政権時代にも、常に日本は扉を開いているという立場でございました。問題があるからこそ、これは当然、両国の首脳が会って話をするべきである。問題があるから会談をしないというのは、話は逆ではないかということを申し上げてきていたわけでございます。

 そこで、日本とドイツについてお話をされたわけでありますが、日本とドイツは、それぞれ過去について、これは相当違った過去を引き継いでいるのではないかという指摘もあるわけでございまして、それを一概に議論するのは難しいだろうと思います。賠償の仕方においても違う歴史をたどってまいったわけでございます。日本は日本の反省の上に立って、この戦後六十年、賠償すべき国々に対して、もちろん十分な額でないという思いを持っておられる方もおられるかもしれませんが、当時の日本としては賠償を行い、そして、それぞれ講和条約を結び、交流を進め、そして六十年間、信頼関係を今積み重ねているところだと思います。

 何といっても、この戦後六十年の中で、民主的で自由な、そして基本的な人権を守り、世界の平和に貢献をする、そういう日本をつくってきた、このように思います。

阿部(知)委員 それらはもちろん平和憲法のもとにあったわけですが、今ドイツと日本が歴史が違うのは当たり前です。違いがあり、しかしなおかつ、戦後、おっしゃるような人権や自由経済や、そしてお互いの相互交流のもとにここまで発展してきた。

 もう一つは、アメリカとの良好な関係というのもあったと思います。その中で、しかしなお、日本が今アジアの孤児になろうとしているという指摘をそのドイツの主幹の方はなさっていました。そういう指摘を私は謙虚に受けとめた上で、本当に日本が今アジアの中で、北東アジア、あるいはASEAN諸国、いろいろな広がりのある、勃興するアジア、あるいはユーラシア大陸の広い、この日本を含めた将来において日本が果たすべき役割は数多い。しかし、その中でも中国との関係はネックになってくると思います。その意味で、ドイツの問題をもう一度念頭に置いていただきたいと思うと同時に、もう一方のアメリカとの関係についてもただしておきたいと思います。

 私は、戦後のアメリカとの関係もまた、ある意味で我が国の現在のこの体制をつくっているという認識には立っております。しかしながら、例えば小泉首相は、「日本とアメリカとの関係がよければよいほど、中国に対しても、近隣諸国に対しても、世界に対しても、これはよりよい関係を維持できると思っております。」「日本とアメリカとの関係が緊密であればあるほど、友好であればあるほど、日本は諸外国と友好的な関係を維持できると思っておりますし、今後ともそのような方針で日本の外交は進めていかなきゃならない」と。これは一面真理でありますが、他面、ドイツは、もう一つのいかりをヨーロッパという中におろしたというふうにみずからを総括しています。アメリカとの緊密な関係、そしてもう一つの足場をヨーロッパに築いたということが現在のドイツの今日あるをつくっている。

 さて、日本の場合、果たして総理は、アメリカとの関係が緊密であれば緊密であるほどアジアがうまくいく、世界がうまくいく、そういうお考えでしょうか。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 まず、そのドイツ人の認識として、日本がアジアの孤児になりつつあるというのは全く間違っている。間違った認識は、これは正しておかなければならないと思います。

 アジアは広いわけでありまして、多くの国々は、最も好ましい、頼もしい国として日本を挙げております。BBCが調査した中においても、単独の国家としては最も信頼できる国としては日本が第一位であるということは申し上げておきたい。これはやはり戦後六十年の歩みによる信頼感なのではないか、このように考えているわけでございます。

 そして、その中で、今ドイツについて言及があったわけでありますが、冷戦時代のドイツは、まさにNATOの一員として、ソビエト連邦というものに対してまさに一枚岩、米国を初めとしたNATOの中でのお互いの相互の扶助関係、同盟関係の中で信頼関係を醸成していったのではないか、このように思います。その後、ソビエト連邦が崩壊をした中においてEUが誕生していったという、全体の、かなり地域の違いがあります。

 まだアジアには北朝鮮という、ある意味では冷戦を引きずった情勢にあるわけでありますが、しかし他方、日本は、アジアにおいては、例えばASEANプラス3もありますし、APECもあります、ASEMもあります、そしてまた昨年末に行われました東アジア・サミットもあるわけでございます。こうした重複的なマルチの会議の中で日本が主導的な役割を担っているのも事実であるわけでございます。今後とも、日本はアジアの国として、私はアジア外交を当然重視してまいります。

 一方、日米の同盟関係というのは、これは日本の安全保障、外交の基本的な基盤であるという考えにも変わりはございません。

阿部(知)委員 中国との間にも、本来、小渕さんの時代の日中共同声明では、ホットラインの話まで話題に上っておりました。そこまでいったものがなぜここまで困難をきわめているのかということも含めて、もう一度御検討いただきたい。

 私に残された時間はあと十分ですので、次のテーマに行かせていただきます。教育における格差の問題を取り上げさせていただきます。

 小泉政権時代に各種格差の問題は、例えば所得の格差、あるいは賃金の格差、経済格差、あるいは若い世代と御高齢者の間の格差、いろいろなことが問題にされました。しかしながら、私は、最も深刻であり最も政治が手をつけなくてはいけない部分は、子供たちの中、特に公教育における子供たちに起きている格差の問題であると思います。

 きょう私がここにお示ししたのは、世帯別の所得別算数の学力平均値というのが上段、これは地方都市でございますが、比較的都市部にある地方都市の小学校六年生の子供たちの親の世帯所得と算数の点数の平均値のグラフでございます。ここには、残念なことに非常に所得に比例した平均値の分配。そして下段には、これもまた学校外のいわゆる塾に対して使った費用と点数の差が出てございます。塾というのは公教育以外の部分でございます。塾に月五万円以上かけられる家庭と、ほとんどかけられないゼロの家庭との間で、非常に点数の差が生じておるという事実であります。もちろん、都市といっても近郊都市であるということはございます。しかし、これは、私は実は小児科医でありますが、私自身の実感ともかなり近いところにございます。

 総理は、特に公教育にお力を入れるとおっしゃいました。こうした現実が生じているという指摘、お茶の水女子大の教授の指摘で、学会発表のものを使わせていただきましたが、これについてどうお考えかということと、あわせて、文部科学大臣におきましては、このような事態を是正するために、あるいはこうした御認識がおありかどうかということを含めてお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 我が国では、国際学力調査の結果では、諸外国と比べて保護者の学歴や職業等が得点に与える影響が弱いという結果が出ているということでありますが、しかし、やはり公教育の場での教育力が落ちているという中において、塾に行ったりあるいは私立に行ったりする子供たちとの差が出てきているということを感じている人たちがたくさんいるのも、これは厳然たる事実である。

 だからこそ、私は、だれでもが通うことができる公教育を再生していかなければならない、このように思います。そのため、優秀な教員の必要数の確保や学校評価のシステム、また就学援助等を実施していくことも大切だろう、このように考えております。

伊吹国務大臣 ただいま総理が御説明を申し上げましたように、OECDの調査では、世界的に見ますと、保護者の社会的な地位だとかあるいは所得、また学校相互間の格差は、日本は非常に格差のない国なんですね。しかし、今先生がおっしゃったような現象が国民の実感としてあるということは、私どももいろいろな調査で拝見をいたしております。

 それで、来年は全国の学力調査の年に当たりますので、一人一人の親の所得を聞くということは、これはプライバシーの問題があるので非常に難しいと思いますが、例えば、生活保護その他で就学の援助を受けておられる方の多い都市と学力のバランスがどうなっているかとか、そういうことはよく調べてみたいと思います。

 しかし、その原因は、最終的には、やはり所得いかんにかかわらず公教育の場で直していかなければならないんですよ。ですから、義務教育の国庫負担制度を出したりいろいろなことをして、できるだけ全国一律にしたいという努力をいたしておりますので、何に欠点があるのか、教師にあるのか学校そのものにあるのか、これをやはりしっかりと把握して、先生がおっしゃったようなことにならないように、公教育の場に出れば、日本に住んでいる人の児童である限り同じ学力を得られるように公教育を直していきたいというのが総理の言っていることでございますので、よろしく御理解をお願いいたします。

阿部(知)委員 結局、教育には費用がかかります。教師をきっちりと手当てすること、それから子供たちを少人数学級にすること、あわせて、もし御家庭に問題があれば、その子の放課後の時間もきっちりと学習的なサポートをしてあげる。塾に多額なお金を使える子とそうでない子の格差が起きるようでは、格差は次世代に再生産されていく国になってしまいます。

 ちなみに、今大臣がおっしゃったことにお答えするためにも、資料集の五ページには、就学援助率が高いほど学力が低いというデータも報告されているというのを、日本の教育を考える十人委員会からの資料をとらせていただいてここに載せてございます、時間の関係でさらには触れませんが。

 やはり今最も必要な教育現場の再生とは、少なくとも、子供たちがしっかりと公教育の中で、学力も含めて、それからいろいろな人との関係も含めてサポートされるという体制をつくっていただきたいとお願い申し上げます。

 ちなみに、私どもは、それは教育基本法の改正によってなされるものではなく、教育における予算の、もう一度徹底的な見直しにあると思ってございますので、添えさせていただきます。

 もう一点、質問をさせていただきます。

 ここには社会保障費の項目別推移というタイトルがございますが、ずっときょうも問題になっております社会保障費、いわゆる事業主が負担される分と被保険者が拠出されている分と税の配分を三段階に分けて書いてございます。

 ここは、ずっと見ていただきますとわかりますが、年度で一九九四年から二〇〇三年までしかデータがございませんが、もともと一九九四年段階では、事業主と税と被保険者、すなわち私たちの保険料と比べた場合に、事業主負担が額においても一番多うございました。それが、見ていただくとわかりますように、年次、だんだん被保険者の拠出、保険料拠出が上がってきて、さらに昨今は税負担が上がってくる。税は、すなわち我々が納めているものでございます。企業負担は逆に下がってくる。

 時代が少子高齢化になっているのはよくわかっています。しかし、こうやって企業負担だけが下がっていき、保険料負担はウナギ登りで、税も合わせて、これはまだ消費税がない段階ですから、これからここに消費税、それから今、所得税も住民税も控除がなくなったために上がってきているというのをとると、実は、企業負担は減る、保険料負担は上がる、税負担はさらに上がるという形に日本の社会保障が変わってまいります。このことについて総理はどうお思いか。

 そして、もう一点。私が実は尊敬する柳澤大臣が先ほどの御答弁の中で、菅さんの御利用になった保険料の負担額が、これは実際より多過ぎるとおっしゃいましたが、多くありません。あの表はあのとおり。なぜならば、世帯負担ですから、あそこはお二人分の保険料なんです。今しっかり保険料は上がってきて、保険料が払えないから国民健康保険の保険証を失う世帯が四百六十一万、二〇〇四年の統計です。私は、あれだけよく御存じの大臣が何であんなことをおっしゃるのか。

 今、税負担もさりながら保険料負担が多くなり、これじゃ本当に、共助の仕組みの中で事業主だけが抜けていって、残るところを国民だけで負担したら、みんな耐えられない、つぶれちゃう、経済だって再生しないと思います。

 まず総理に、こういう形に変わっている現実をどう思われるか。大臣には、保険料負担が多いという事実をどうお考えか。お願いします。

安倍内閣総理大臣 社会保障については、給付を確保するためにはだれかが負担しなければならない、そのバランスにおいてどうしていくかということは、政治の場で判断をしていくことになります。個人の負担、企業の負担、そして保険料とは別に税をどう組み合わせていくかということが大切でありますが、そこで企業の負担をどう考えるかということであります。企業がいわば国際競争の中で勝ち残っていかなければ、雇用もそもそも確保できないし、企業が払っている法人税も確保できない。そのあんばいなんだろう、このように思います。

 この図の中で税が急速に伸びているのは、これはやはり老人への給付においては、税が大体割合が重くなっている中において、老人の比率が上がってきた結果、税がどんどん伸びてきたということもあるんだろう、このように思います。

 この被保険者拠出と事業主拠出の割合については、今後、先ほど申し上げましたような観点から、これはよく検討をしていかなければいけない。どちらにしろ、年金や医療や介護や、こうした社会保障の一体的な改革を進めていく中において、負担のあり方等々についてもよく考えていく必要があると思います。

 また、先ほどの議論の中でありました、いわゆる非正規労働者においても社会保険の適用等については、これは我々、企業側ともよく話をして、お願いもしていかなければならないと思っております。

金子委員長 時間が参っておりますので、簡潔に。

柳澤国務大臣 簡潔にお答えします。

 まず、この「社会保障財源の項目別推移」におきましては、事業主負担の最近における低下というのは、これは先生お気づきのとおり、厚生年金基金の代行返上が反映しているんだろう、このように考えております。

 それから、保険料につきましては、やはり高齢化がどんどん進行するに従いまして、社会保険全体の金額がふえているということの中で、あるルールで保険料を算出するというのが介護保険でございます。また国保も大体似通ったルールでやっておりますので、そういうことで、分割した結果、単位当たりの保険料が増嵩しているという事実がございます。

 それからまた、特殊な要因として、今回、年金課税を変えさせていただいたわけですが、それが地方税の課税最低限を随分変えまして、これが介護保険あるいは国民保険料に反映するということが起こりまして、それがたまたま、介護なんかについては、財政再計算の時期と今言ったはねの時期が重なってしまった、こういう特殊なことが起こったということが保険料の増嵩の大きな要因でございます。

 事実だけ御説明させていただきます。

阿部(知)委員 済みません、時間をまた、残余はほかの場でお願いいたします。

金子委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 最後の質問でございます。皆さんお疲れと思いますが、もうしばらく御辛抱いただきたいと思います。

 まず、安倍総理、御就任おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

 安倍総理は山口県でございますが、私のふるさとは山口県との県境の津和野という小さな町で、県境を越えればすぐ山口県でございますから、私、個人的には安倍総理に長い間大変親しみを感じてまいりました。また、私のふるさとでも、山口からまた総理が誕生したということを喜んでいる人たちもたくさんいるわけでございます。

 それはそれとして、個人的な気持ちでございますけれども、今、私は野党の立場でございますから、総理に対しても、また閣僚の皆様方に対しても、相当厳しいこと、あるいはまた失礼なことも申し上げるかもしれませんけれども、お許しいただきたいと思います。

 まず、総理の政治姿勢に関連して最初に伺いたいと思うんです。

 長い休会を経て今国会は始まりましたが、あの通常国会の終わりごろを思い出していただきたいと思います。昨年の選挙のときにいろいろなことがあって、いわゆる勝ち組の代表選手だった堀江さん、そして村上さん、そういう方々が相次いで逮捕される、そういう事態が起こったわけでございますが、その村上ファンドに関連して、日銀の福井総裁の問題が大きくなりました。国民の皆様方も大変このことに対しては憤っておられたわけでございます。

 バブル経済が崩壊して以降、長い間、低金利政策が続いてまいりました。ようやく日銀の量的緩和が終わったといいながら、依然として低金利は続いております。年金生活を続けておられるような方々が金融機関にお金を預けても、利子はさっぱりつかない。もろもろの手数料がどんどんふえてまいりまして、預けておいても何の意味もない。そして、貯金がゼロという世帯がどんどんふえている。それが今日の姿でございます。

 そうした中で、いかに日銀総裁に就任前のこととはいいながら、その契約を引き続き総裁になってからも続けておられた。そして、一般の国民の感情からはとても許しがたいようなそのリターンを受けておられた。そういうことに対して、あの当時の報道機関等の調査でも、七割の人たちは、日銀の総裁は責任をとってやめるべきだ、そういう判断をしておられたわけでございます。

 三カ月もたちますと、もうみんな過去のことみたいになって、マスメディアも余り報道しないということかもしれません。しかし、福井日銀総裁が、まさに金融政策の中心にあってそうしたことをされ、日銀の信頼を失わせるようなことをされたということに対して、私はやはり大きな責任はあると思っております。いずれまた、村上さんの裁判が進んでいく中でこうしたことも追及をしていかなくてはいけないと思っております。

 総理は、日銀の総裁の任命権は持っておられますけれども、罷免権は持っておられない。したがって、やめろと言うことはできないわけでございますが、この村上ファンド並びに福井日銀総裁との関連についてどのようにお考えになっておられるか、承りたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福井日銀総裁に関して、今議員が御指摘になられたような、そういう日銀の総裁という立場は、国民から本当に信頼をされながらいわば金融政策を担っていく立場にあるわけでございまして、そういう意味におきましては、そういう指摘がなされることは大変残念だ、このように私は思っております。その中において、福井総裁を初め、日銀として厳しい内規を定め、こうした指摘を受けることのないようなそういう体制を整えたことはよかった、このように私は思っております。

 今後、しっかりと職責を全うしていただきたい、このように思っております。

亀井(久)委員 安倍総理は、小泉内閣五年半の間、一貫してその政権の中枢におられ、あるいは党の中心におられたわけでございますから、小泉政治を大きく転換するということにはなかなか勇気も要ることだと思います。その小泉政治がすべて間違いとは私申しませんけれども、小泉政治のいわゆる負の部分というものは率直に反省をしていただいて、こういう点はやり直すんだということをやはり正直に言っていただくのが安倍総理の一つの政治姿勢として大切ではないか。今のこともそうしたことから申し上げたことでございますので、よく受けとめていただきたいと思います。

 次に、教育基本法のことについて御質問をいたします。

 前国会で、終了間際に教育基本法が政府からばたばたと提出をされた。私ども、教育基本法というのは、まさに長年の間、与党においても野党においても議論をされてきたことでございますし、国民の皆様方にとっても一番関心の深い事項の一つでございますから、各層各界の意見を十分に聞いて、しっかりコンセンサスをつくっていくべきだと思っておりまして、拙速は避けるべきだ、そういう考え方をとっておりますので、今国会においても、教育国会というようなことを言われておりますが、私は、今臨時国会で拙速に法案の成立を図るということは反対をいたしております。

 その教育基本法、政権政党であります自由民主党の中で、長年にわたって教育の目標の中の一つに、国を愛する心、愛国心を養うということを教育の目標の一つにしっかりと位置づけるべきだ、これは自由民主党の長年の課題だったと私は思います。

 私は、愛国心というのが、何か国民がここにいて、国がこっちにあって、これは愛するに足る国だから愛しましょうとか、愛するに足らない国だから愛するのはやめましょうとか、そういう話ではないと思うんですね。それこそ、親子や兄弟のきずなを大切にして、家族を愛し家庭を愛するというその自然な広がりの中で隣近所の人たちに対する愛情を持つ、さらには、地域社会そしてふるさとに対する愛情、それのまた自然な広がりの中で国に対する愛情というものはあるんだろうというように思います。

 ところが、どうもその愛国心ということに対して非常なこだわりが与党の間であったようでございまして、例えばサッカーのワールドカップとか国際試合において、サポーター、応援する人たちが、だれも別に強制されたわけではないけれども、ニッポン、ニッポンと言って合唱をいたします。あれはまさに、日本という国の、自分の国の選手が一生懸命頑張って、そして堂々と戦って勝ってほしい、そういう自然な心のあらわれがああいう態度に出てきたんだというように私は思います。

 ですから、どうも、政府の今度の案では、国を愛する心ではなくて態度だというふうに変わっているわけですが、態度というのは私にはどうもよくわからないですね。心のあらわれが態度なんじゃないか、だから、心を養わなければ態度も私は出てこないんじゃないかというようにごく素朴に思います。それが、いつの間にやらその文言が消えて、国を愛する態度というように変わってしまった。

 最近、親が子を殺したり、子が親を殺したりというのが当たり前のようになってまいりましたけれども、親に対して憎しみを持っていたりばかにしたりしているそういう子供が、心ではそういうものを持っていても、親が怖いから態度では従っているようなふりをしている。そんなことではいい家庭というのは私はつくられないんだと思います。ですから、やはりもとは心だというように思います。

 それが、政権政党の中で連立を組んでおられる公明党さんとの間で非常に難しい調整をされたというようにマスコミ等でも報道されておりますけれども、そこで公明党さんの意見を聞かれてそういうことになったというように言われておりますけれども、私、きょうその担当ではございませんけれども、冬柴国土交通大臣、長い間公明党の幹事長というかなめの立場におられまして、その推移もよく御承知のはずでございます。

 私、そこまで言うと言い過ぎになるかもしれませんけれども、公明党さんはいいんですけれども、公明党さんの支持母体であります創価学会、創価学会は、申し上げるまでもなく日本で一番大きな宗教教団でございます。その宗教教団の考え方というものが公明党さんを通じて与党の政策に反映をされてくる、そしてまた教育基本法という大変重い法律をつくる、そのことに何かその宗教団体の意見が反映されて中が変えられてしまうということは、これは私、別に公明党さんや創価学会に何ら他意はございませんけれども、やはり今の憲法の基本的な考え方からいって、私は、そのことを黙って見過ごすということはいかがなものかな、そういうように思いますので、そのことについて冬柴国土交通大臣の御見解を承りたいと思います。

冬柴国務大臣 通告も何もありませんでしたけれども、私は、愛国心において人に劣るとは一つも思っておりません。私も、今挙げられたように、サッカーだけではなしに、オリンピックのときも、あるいは野球も、本当に自然な心で、日本頑張れと応援します。全然知らない、会ったこともないスケーターも、あのイナバウアーをやってくれたら本当にうれしかった、そういう気持ち、これは自然なものです。

 しかし、教育の場で愛国心というものを教える基本に入れていいかどうか、そういうふうになりますと、私には異論があります。遠くない過去において、愛国心で鼓舞されて国論を統一されたことはみんなが知っていることであります。それに従わない人は非国民でありました。

 もう一つ、国というのは三要件あります。一つは国土であります。一つは国民であります。もう一つ最後が、統治機構なんです。その三つがそろって国家が成り立っているわけであります。国土を愛することは郷土愛の延長で、自然な気持ちです。また、人を、国民を愛することも、本当に同胞愛としての自然の気持ちです。

 しかし、時の政府に迎合しなければならないような、時の政府の政策を支持しなければならないような、そういういわゆる権力に迎合するような教育がなされるとするならば、私は体を張ってでもそれを阻止しなければならない、こう思いますよ。近い国にあるじゃないですか。金正日さん、この人の考え方、この人の立てた国家観というものに従えない人は、脱北しなければ生きていけないじゃないですか。そうでしょう。また、サダム・フセインの統治下でもそのようなことが言われました。戦前の日本も非国民と言われたじゃないですか。

 私は、教育の場で統治機構まで愛するようなものはやめてほしい、その部分がはっきりするならば私どもは賛成したい。もう制定後六十何年もたっていろいろなことも変わった、新しい概念も出てきた、だから変えてくれと言ったんです。

 そこで七十回やったんですよ、七十回。そして、その結果出てきたのが、歴史や文化を尊重し、それらをはぐくんできた国と郷土を愛しと書いてありますよ。そして、愛しつつ、他国を尊重し、国際社会の平和に寄与する態度を養う、そういうことですよ。その中には、私が今言ってきたものが、概念が排除された、非常に苦労した結果いいものができた。私は、この国会でぜひ成立させていただきたいと思っています。

亀井(久)委員 この話はまた別の場でじっくりとさせていただきたいと思います。

 最後に安倍総理、このことについて、心と態度というものをどう受けとめられるのか、なぜ心はいけなくて態度ならいいのか、そのことについて総理の御見解を承りたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この教育基本法の問題につきましては、ただいま冬柴大臣がお答えになったように、本当に与党内において真摯な議論が行われたわけであります。我が党は、当時は保利耕輔先生が本当に深い深い哲学の中から何回も交渉を重ねられたわけであります。私も、幹事長として当時冬柴幹事長と御議論をしたことがあるわけでありまして、統治機構ということは考えられませんよ、我が党としても、小泉内閣のこの権力を愛すとはだれも考えておりませんということを申し上げたことを思い出すわけでありまして、そのことは当然でありますということを申し上げました。

 そういう中で、お互いに意見を表明し合いながら、誤解は解消しながら、懸念点は払拭しながらまとまったのがこの案でございまして、私は、先生の言われるとおり、態度というのは、心があって態度があるというのは当然のことであろう、心がないのに態度を示せというのは、まさにこれは欺瞞であるのではないか、このように思うわけであります。

 私も、先生と同じ山陰の出身でございます。山陰というのは、やはり古来から共生を大切にする地域であります。小泉総理は、いわば太平洋側の御出身でございまして、日が当たっているという感じがするわけでありますが、山陰は、光の影というこの中でこつこつとお互いに共生の中で生きてきた。こういう思いの中で、私も、この教育基本法というのは、私どもが出している教育基本法については大変自信を持って、ぜひともこの国会で成立を果たしたい、そして理念法として新しい改革に一歩前進をしていきたい、このように思っております。

金子委員長 冬柴国土交通大臣がちょっと一言あるようなので。簡明にお願いします。

冬柴国務大臣 私どもの支援団体である創価学会の影響で私どもがそういうことを牢固に主張したようなことを言われましたけれども、全くもってそういうことはありません。それはもう侮辱です。撤回してください。お願いいたします。

亀井(久)委員 今の点について、もし事実と異なるということであれば撤回をいたします。

 ただ、私は、私がそう言っているということではなくて、報道機関等でもってそういうことが言われておりますという意味で言ったことでございます。

 伊吹大臣の御見解も聞きたいんですが、時間がありませんので、また改めていたします。

 それでは、郵政の民営化のことについて御質問します。

 郵政の民営化というのは、昨年、選挙後に法律が成立をしたのでもう終わったかのようなことを一部では言われますけれども、来年の十月に民営化がスタートということでございますし、完全民営化ということになりますとそれから十年後ということでございますので、私は、郵政民営化はまだ決して終わってはいない、そういうように受けとめております。私は、郵政民営化絶対反対ということで行動いたしましたけれども、やはり今に至っても、何で民営化しなくちゃいけないのかというその疑問は解けないわけでございます。

 今、持ち株会社、日本郵政株式会社はもう既に発足をしておりますが、その下に、いわゆる窓口会社、郵便局会社、それに郵便事業会社、さらに金融機関としての郵便貯金銀行、保険会社、そうしたものがスタートするということでございます。郵便事業会社とそれから郵便局会社は、株式は持ち株である日本郵政株式会社が全株保有するということですから、本当の意味での民営会社ではないですね。これは、言ってみれば特殊会社と言ってもいい、そういう経営形態だと思います。ところが、貯金銀行と保険会社の方は、これは市場で全株売却をするんだ、そういうことになっております。ですから、私に言わせれば、郵政民営化法ではなくて、貯金・保険分離民営化法ということだというように受けとめざるを得ない。

 もともと、三事業一体でうまく回っていて黒字経営をしていた。国民の側からも、そんなに郵便局けしからぬというようなそういう声があったとは思えない。うまく成り立っていて、財政資金を全く投入しないでもうまく回っていたものをばらばらにして、わけのわからないような姿が今出てきている。

 まだ民営化がスタートをしていないのに、もう既に今の公社の手によって郵便局改革のマスタープランというのが進められて、そして、地域で従来は郵便の集配業務をやっていたところが集約されてよそに移ってしまう。明らかに地域の人たちにとってはサービス低下でございます。

 あの当時の担当大臣、竹中さんと随分議論をいたしましたけれども、竹中さんは、郵便局の数は減らしませんよ、ネットワークは守りますよ、そして、特に過疎地の郵便局はしっかり守ります、さらに、サービスは今のサービスを維持しますよ、それ以上に新しい多種多様なサービスがそこでできるようになるんですということを言われた。多くの国民は、その竹中さんの言われたことを信じておられたんだと私は思います。ところが実際には、まだ民営化も始まっていないのにそういう現象が生じております。これは一体どういうことなんだと郵便局の局長さんに聞いても、自分たちにもわかりませんということでございますから、今、地域社会は非常に困惑をしているというのが現状だろうと思います。

 ですから、こういう中で、やはり三事業一体でうまく回っていたものを切り離しますから、どう考えてみても、うまく郵便事業や郵便局会社が回るはずはない。そうすると、最終的に財政資金で応援しないと国民への約束を果たすことができなくなるなんということになったら、何のための民営化だったんだということになるわけでございます。

 ですから私は、今、持ち株会社、日本郵政株式会社のコントロールがきいている間は、これは、例えば貯金銀行にしても保険会社にしても、その業務を窓口に対して一括委託契約をするということであれば、すべての郵便局で同じように貯金や保険も取り扱われることになると思いますけれども、しかし、その株式がどんどん売却されていって完全な民間会社になったとしたならば、損をするようなことは、あなたの会社はこれをやりなさいなんということは、これは国が言えることではないわけでございますから、やはり、その三事業の一体性というものを担保しておかないと、私はこの郵政事業というのが成り立たないというように思いますので、郵便貯金銀行や保険会社の株式売却について、持ち株会社のコントロールが常にきくような一定の範囲にとどめておくというようなそういう思い切った修正をやらない限り、私はこの郵便事業はうまくいかないだろうというように思います。

 担当大臣の菅大臣、就任されたばかりですけれども、副大臣もやっておられたので経緯はよく御承知だと思いますが、このことについてどうお考えですか。

菅国務大臣 お答えをいたします。

 全国に張りめぐらされています郵便局のネットワークというのは私は国民の重要な資産であると思っていますから、この資産を十分に活用し、国民の皆さんの御期待にこたえられるようにぜひやっていきたい、こう思っています。

 今、委員から問い合わせがありました三事業一体の問題であります。

 おっしゃるとおり、効率的な経営を行うためには、現在の持ち株会社、それと四子会社が統合的に、戦略的に行っていかなきゃならない、こう思っております。

 先生が御懸念をされておられました点でありますけれども、そういう中で、安定的な代理店契約というものを義務づける、あるいは基金の設置、株式持ち合いによる一体的経営が可能となる等、民営化後も郵便局において貯金、保険のサービスが続くよう実効性のある仕組みをつくってまいりたい、こういうふうに思っております。

 先ほど、集配局の再編のお話もございました。これにつきましても、集配はなくなりますけれども、郵便局はそのまま残します。これは、国会の審議の中でも答弁もされていますし、あるいは附帯決議があります。過疎地の郵便局は全部残して、地域の皆さんには心配のないような形にしたいと思います。

 それで、無集配になっても、集配局と同じようなサービスはこれは電話等でやるということも明言しておりますので、十月一日の民営化に向けて全力で頑張りたいと思いますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

亀井(久)委員 もう時間がありませんので、その郵政の問題はまた改めてやりたいと思います。

 最後に、「美しい国、日本」をつくる、そういう総理の思いは私もよくわかります。

 ただ、私は、小泉政治の最大の弱点といいますか欠点といいますか、目指すべき社会がどういう姿なのか、つくろうとする国がどういう国なのか、そのことをトップリーダーとしてまず示して、そのためにもろもろの改革が必要だから理解をして協力をしてくれというのが物事の筋だと思うんです。私はずっと言い続けてまいりましたけれども、小泉前総理は最後までどういう国をつくりたいということを言われなかった。安倍総理は、ですから「美しい国、日本」をつくるんだということを言われたのは大変結構だと思いますが、ただ、それを実現するための手だてが要るわけで、当然、その国土計画、国づくりのための計画というものがなくてはいけないというように思います。

 たまたま私、橋本内閣当時に「二十一世紀の国土のグランドデザイン」という国土計画をつくった責任者でございますけれども、随分いろいろな議論をいたしました。そういう中で、私自身が、まさに総理と同じことですけれども、「地域の自立の促進と美しい国土の創造」というサブタイトルをつけた、これは八年前のことでございます。そういう中で、やはり競争原理、経済合理性というもので国土政策を割り切るということは私はできないと思うんですね。

 ところが、竹中前担当大臣とお話をいたしますと、常に競争というものを地方自治とか地方行政とかそういう中にも持ち込んでいこうとされる。それで、国土政策にも地域間競争を激しくさせろなんということを言われました。しかし、公平な競争条件、同じような競争条件のないところをただ同じスタート台に立たせて走れと言ったら、格差はますます広がっちゃうわけですから、やはりその競争条件というものは、全国土バランスよくきちっと整備をしていくというその計画が必要だと思っております。

 もう時間がありませんから、その各論についてはまた改めてさせていただきたいと思いますけれども、国土交通大臣もこの御担当だと思いますので、しっかりとした国土形成計画がございますが、それを具体的にどうその財政的な裏づけをしながら進めていくのかということについてもしっかりとお考えいただきたいと思います。

 最後に総理に。

安倍内閣総理大臣 私も、地方の活力なくして国の活力はないと思っています。バランスよく日本全体が発展をしていくことが美しい日本の姿になっていく、そのために、今委員が御指摘になったように、国土形成計画の中で具体的な施策を取りまとめてまいりたいと思っております。

亀井(久)委員 終わります。

金子委員長 これにて亀井君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十日午後一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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