衆議院

メインへスキップ



第6号 平成19年2月9日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年二月九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      安次富 修君    井上 喜一君

      井脇ノブ子君    伊藤 忠彦君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      浮島 敏男君    臼井日出男君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    大島 理森君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      大野 功統君    片山さつき君

      河井 克行君    河村 建夫君

      倉田 雅年君    木挽  司君

      佐藤 剛男君    笹川  堯君

      鈴木 馨祐君    薗浦健太郎君

      中馬 弘毅君    中野  清君

      丹羽 雄哉君    西村 康稔君

      野田  毅君    橋本  岳君

      広津 素子君    深谷 隆司君

      福田 良彦君    細田 博之君

      増原 義剛君    松本 洋平君

      三ッ林隆志君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 公一君

      若宮 健嗣君    岩國 哲人君

      小川 淳也君    大串 博志君

      岡田 克也君    川内 博史君

      菊田真紀子君    北神 圭朗君

      小宮山泰子君    後藤  斎君

      中井  洽君    原口 一博君

      古本伸一郎君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    松木 謙公君

      松本 大輔君    三谷 光男君

      山井 和則君    大口 善徳君

      北側 一雄君    丸谷 佳織君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)

   (再チャレンジ担当)   山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (国・地方行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)

   (地域活性化担当)

   (道州制担当)      渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   環境副大臣        土屋 品子君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   総務大臣政務官      河合 常則君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  雅彦君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      風岡 典之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月九日

 辞任         補欠選任

  井上 喜一君     井脇ノブ子君

  臼井日出男君     薗浦健太郎君

  遠藤 武彦君     若宮 健嗣君

  大野 功統君     安次富 修君

  河井 克行君     橋本  岳君

  河村 建夫君     盛山 正仁君

  北村 茂男君     丹羽 雄哉君

  笹川  堯君     浮島 敏男君

  中馬 弘毅君     鈴木 馨祐君

  西村 康稔君     福田 良彦君

  野田  毅君     木挽  司君

  山本 公一君     大塚 高司君

  岩國 哲人君     松本 大輔君

  小川 淳也君     山井 和則君

  中井  洽君     小宮山泰子君

  原口 一博君     三谷 光男君

  馬淵 澄夫君     古本伸一郎君

  前原 誠司君     北神 圭朗君

  丸谷 佳織君     北側 一雄君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     広津 素子君

  井脇ノブ子君     井上 喜一君

  浮島 敏男君     笹川  堯君

  大塚 高司君     山本 公一君

  木挽  司君     野田  毅君

  鈴木 馨祐君     中馬 弘毅君

  薗浦健太郎君     臼井日出男君

  丹羽 雄哉君     石破  茂君

  橋本  岳君     河井 克行君

  福田 良彦君     伊藤 忠彦君

  盛山 正仁君     越智 隆雄君

  若宮 健嗣君     大塚  拓君

  北神 圭朗君     菊田真紀子君

  小宮山泰子君     中井  洽君

  古本伸一郎君     馬淵 澄夫君

  松本 大輔君     岩國 哲人君

  三谷 光男君     原口 一博君

  山井 和則君     小川 淳也君

  北側 一雄君     丸谷 佳織君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     西村 康稔君

  石破  茂君     松本 洋平君

  越智 隆雄君     河村 建夫君

  大塚  拓君     遠藤 武彦君

  広津 素子君     大野 功統君

  菊田真紀子君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 洋平君     片山さつき君

  後藤  斎君     前原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     馳   浩君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算、平成十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官原雅彦君、宮内庁次長風岡典之君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、総務省情報通信政策局長鈴木康雄君、厚生労働省職業安定局長高橋満君、国土交通省住宅局長榊正剛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽雄哉君。

丹羽(雄)委員 自由民主党の丹羽雄哉でございます。

 本日は、我が国の経済、財政、外交、そして社会保障を中心にいたしまして、私の考え方を率直に申し上げて、安倍総理を初め、関係閣僚のお考えをお聞かせいただきたいと思っておるわけでございます。

 まず、安倍政権が、最初の当初予算として、改革を加速する、こういう基本理念のもとに編成されました十九年度の予算案でございますが、新規国債発行は、景気回復の自然増収もございますけれども、前年に比べまして、過去最大の四・五兆円、そして交付税関係の償還分を含めますと、何と六・三兆円もの財政健全化を図ったわけでございます。

 かつて、思い出すと、前内閣時代に、新規国債発行額三十兆円をめぐりましてけんけんがくがくの議論がなされたことは、これは何かうそのような気がいたしておるわけでございます。

 私は、我が国財政の健全化、財政再建の道筋が明確に示されたこの予算案を画期的なものとして高く評価するものでございますが、まず、財政再建に対する安倍総理の確固たる信念をお尋ねしたいと思っています。

安倍内閣総理大臣 引き続き、我が国の財政状況は極めて厳しい状況にあるわけであります。しかしながら、景気におきましては改革の成果が着実にあらわれつつありまして、力強い景気回復の軌道に乗ったと言ってもいい、このように思っております。企業は収益を上げ、そして税収もふえてきております。

 しかし、こうして自然増収がふえてまいりますと、これは何となく新たな歳出に使っていきたいという気持ちになるわけでありますが、しかしそこは、今のこの厳しい財政状況の中で、子や孫にツケを回さない、そしてまた、何といっても世界は、日本の政府がどういう予算案を組むか、財政規律を果たして守っていくのかどうか、これを見ているわけでございます。

 ここでやはり私たちは、財政規律を守っていくんだ、財政再建にしっかりと取り組んでいくんだという強い意思を示す必要がある、このように考えたわけでございまして、国債の発行額につきましては過去最大の四兆五千億円の削減、減額を行ったところでありまして、全体で六・三兆円の財政再建に資する予算を組むことができたわけでございます。

 我々は、今後とも、二〇一〇年代の半ば、債務残高、GDP比、これは安定的に減少になるように、そしてまた、二〇一一年、プライマリーバランス、国と地方を合わせて黒字となるように、計画的に私どものこの歳出歳入の一体改革に正面から取り組んでまいりたいと考えております。

丹羽(雄)委員 ただいま、総理の御決意をお聞きいたしまして大変心強く思ったわけでございます。と申しますのは、自然増収がちょっとふえると何となく気が緩んでくるんじゃないか、こういうことを私は危惧する者の一人でございます。

 そこで、財務大臣に、中期的な財政見通しについてお伺いをいたしたいと思っております。

 政府は、引き続き、十八年度と同じような税収増を見込んだ上で徹底して歳出削減を行えば、今総理から御答弁がございましたように、二〇一一年度には国、地方を合わせましてプライマリーバランスが実現できる、こういうような試算をお示しになられたわけでございます。

 しかし、率直に申し上げて、財政の現状は大変厳しいものがございます。苦しいけれども、将来に向けてさらに厳しさが増すという現実から目を離すことができないのではないか。毎年の赤字額は改善したとはいえ、債務残高は、よく尾身大臣もおっしゃっておりますけれども、先進国中最悪の七百七十五兆円にも達する。もう気の遠くなるような話ですね。

 ですから、私は、プライマリーバランスの黒字化というのは、いわゆる財政健全化のための一歩にすぎない。民主党さんは、枝野先生もいらっしゃるけれども、いろいろ議論をしましたけれども、基礎年金の全額税方式であるとか、あるいは零細農家には所得補償などを、一見耳ざわりのいいことをおっしゃっております。これは、今総理もおっしゃいましたけれども、今の自分たちの世代さえよければという、ある意味でいうと身勝手な考え方にもつながりかねないのではないか。私どもは、責任政党としてそのような無責任なことを言ってはならない……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。将来の世代の負担までを考えて議論するということが、大変つらいことではありますけれども、今安倍総理がおっしゃったような財政再建の道ではないか、こう思っています。

 そこで、膨大な債務残高を減少させるために、今後の財政再建に対してどのような道筋をお持ちであるか、財務大臣にお聞きします。

尾身国務大臣 安倍総理からお答えが先ほどありましたように、十九年度予算につきましては、約七・五兆円の大幅な税収増がございました。しかし、そういう中で一般歳出の増加は、社会保障、やむを得ざるものをぎりぎりに詰めた中で〇・三兆円の増加にとどめまして、先ほどの総理の答弁のとおり、六兆円を超える財政の健全化を実現し得たところでございまして、私ども、厳しい財政規律を守るという方針を貫き通せたと考えております。

 しかしながら、御指摘のように、この我が国の財政の現状、国、地方を合わせました長期債務残高が平成十九年度で七百七十三兆円、対GDP比で一四八%という非常に大きな債務残高を持っておりまして、主要先進国の中で最悪の水準でございます。二番目に高いのがイタリーの一二一%、その他ヨーロッパ諸国やあるいはアメリカなどは、大体GDPの五〇%から七〇%ぐらいが国、地方を合わせた債務残高という水準でございます。

 他方、国民の負担の指標といたしまして、所得の中で租税あるいは医療保険、雇用保険等の保険料の支払いを全部合わせました合計額がどのくらいの比率を占めているか。国民負担率という表現でありますけれども、その国民負担率がどのくらいの数字かというと、我が国の場合、十九年度におきまして三九・七%でございまして、先進国中、実は実質的には最低の水準になっております。

 ちなみに、ほかの国を見ますと、国民皆保険をとっていないアメリカは三二%でございますが、このアメリカの場合には私的保険に入っておりまして、それを考えると八%ぐらいの差があると言われておりまして、約四〇%ということになります。そのほかヨーロッパの諸国は、この国民負担率は五〇%から六〇%程度でございますし、社会福祉の非常に進んだ国と言われている、高福祉の国と言われているスウェーデンは七〇%になっているわけであります。つまり、申し上げますと、所得百万円の方は七十万円の税金あるいは保険料の負担をしているのがスウェーデンである、日本は百万円の所得に対して四十万円という世界最低の水準の負担率である、こういうことになっているわけでございます。

 端的に申し上げますと、我が国の財政の現状は、債務残高が主要先進国の中で最悪の水準にある反面、国民の負担をあらわします国民負担率は最低の水準でございます。

 このような財政の姿につきまして、財政制度等審議会におきましては、膨大な財政赤字が存在することによって、国民全体の受益と負担が乖離して中福祉・低負担ともいうべき状態にあり、その差は結果的には将来の世代にツケを回す、こういうことになるという指摘をされているわけでございます。

 先ほど申しましたように、十九年度予算では、かなり私ども頑張って財政健全化の方向に進めておりますが、なお、将来の見通しにつきましては、現在は三人の働き手で一人の高齢者を支えているわけでありますが、二十年後には一・八人で一人を支える、五十年後には一・二人で一人を支えるという見通しになっているわけでございまして、これに伴いまして社会保障関係支出の増加が見込まれるわけであります。

 他方、人口問題研究所の見通しによりますと、今後、何の対策も講じなければ我が国の人口は、五十年後には九千万人を切る、百年後には四千五百万人になるということが見通されているわけでございまして、この推計を私どもは現実のものにするわけにいかない。どうしても人口対策をしていかなければならない。一昨日もこの少子化等についての議論がなされましたが、この少子化対策の本格的な実現を図っていかなければならない。そのためにも、どうしても負担がかかるというふうに考えております。

 さらに、基礎年金の国庫負担の割合を三分の一から二分の一に引き上げる、そのための財源も二兆五千億は必要であるというような要因もあるわけでございまして、こういう大きく分けて三つの要因を考えますと、私どもは、子供や孫の世代に負担を先送りしないためにも、成長なくして財政再建なしという理念のもとに、安定的な経済成長を実現しつつ、財政健全化にしっかりと取り組んでいかなければならないと考えております。

 したがいまして、先ほど総理のお話にもございましたが、二〇一〇年代の半ばに向けまして債務残高のGDP比を安定的に引き下げることを目指し、そして、二〇一一年度までにプライマリーバランスを確実に黒字化するということを目標に、歳入歳出一体改革を進めてまいりたいと考えております。

 さはさりながら、非効率的な歳出を放置したままで負担を国民に求めるということでは国民の皆様の理解を得ることは困難であると考えておりまして、今後とも引き続き、国民負担の最小化を第一の目標に歳出改革に取り組んでまいりたいと考えております。

 今後増加する社会保障給付や少子化への対応等につきましては、国民が広く公平に負担を分かち合う観点に留意しつつ、基礎年金の国庫負担割合の引き上げのための財源も含め、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにする必要があると考えております。

 このような考え方のもとに、本年七月ごろに判明をいたします二〇〇六年度決算の状況や、医療制度改革を受けた社会保障給付の実績等を踏まえ、本年秋以降、税制改革の本格的、具体的な議論を行い、与党税制改正大綱に沿って、二〇〇七年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現すべく取り組んでまいりたいと考えている次第でございます。(発言する者あり)

 今、野党の皆様からいろいろとやじめいたものがありますが、ここは予算委員会でございまして、来週からは主として野党の皆様の質疑が始まるわけでございますが、国家の経済財政についての御議論をぜひさせていただきたい。予算委員会として、国の将来の財政経済のあり方についての議論を私どもは徹底的にさせていただきたいと思いますので、議論の方も、そういう点を含めてしっかりと野党の皆様にも御議論をいただきたいと思います。

丹羽(雄)委員 大変御丁寧な御説明、ありがとうございます。やはり、そこまでお話しにならないと、率直に申し上げて国民の皆さん方はなかなかもう一つ御理解しにくい面があるのではないか。

 そういう意味において、尾身大臣の、足元もさることながら、将来に向けて今安倍総理は改革を加速する、こういうことをおっしゃったわけでございますが、そういう意味で、ひとつ道筋を十分に示しながら、国民の皆さん方の御理解をいただきますようお願いを申し上げる次第であります。

 そこで、ちょっと話がまたもとへ戻って恐縮でございますが、総理からいわゆる確固たる財政健全化に対する御信念をお聞きしたわけでございますが、改革を通じて我々の子供の世代あるいは孫の世代にどのような資産を残すべきか、また、この国の将来に向けてどのような美しい国を切り開かれ、そのため政治というものは何をすべきか、改めて安倍総理の基本的な政治姿勢、理念をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、施政方針演説におきまして、世界の人々が日本に対してあこがれと尊敬を抱き、子供たちの世代が自信と誇りを持つことができるように、まさに日本を、世界に開かれた、活力とチャンスと優しさに満ちあふれた国にしていきたい、そして、二十一世紀の世界にとって模範となる国にしてまいりたい、このように申し上げたわけでございます。

 そのためにも、子供たちの世代にとって、また日本人にとって、あるいは世界の人たちにとって日本というのは、チャンスがある、いろいろな人たちに対して機会がある国である、開かれた国である、そういう仕組みをつくっていく必要があるわけでございます。

 そして、それと同時に、やはり日本人というのは、すばらしい、何といっても家庭で子供にしっかりとしつけができている、日本人の動作も含めて、日ごろの行い、これは美しいな、こんなように思ってもらえるような子供の教育を行っている国である。そして何よりも、世界に対しても貢献をしていく国である。世界の人たちが困っているのであれば、我々もその人たちの悩みを救っていきたい、そのための人的な貢献、あらゆる貢献をしていくという国でなければならない。そのことによってのみ世界の人たちから尊敬をかち得ることができるであろう。

 そのためにも、大切なことは教育であり、昨年の臨時国会において教育基本法を改正することができました。その上に立って、教育再生を進めていくことによって、人材、やはり何といっても一番大切な日本の資産は人材であろう、このように思うわけであります。人材を育成し、子供たちに夢のある社会をつくっていくこと、これが私たちの最大の資産ではないか、このように考えております。

丹羽(雄)委員 総理の御所見をお聞きいたしておりまして、夢と希望が持てるような国づくりを目指していく、これは、政府・与党、野党の皆さん方も十分にその点を心に抱いていると思いますが、政治家全員が考えて取り組んでいかなければならない問題ではないか、こういう認識を新たにいたしたものでございます。

 次に、我が国の経済財政についてお尋ねをしたいと思っております。

 我が国経済は、失われた十年、こういう苦しい時期を乗り越えまして、今や戦後最長のイザナギ景気と言われている。イザナギ景気というのは四十年前でございますので、私の学生時代のころでございますので、何か、この四十年前と経済が成熟した今の時点を比較すること自身なかなか難しいものがあるのではないかと思っておりますけれども、二〇〇二年に始まりました景気拡大は、昨年の十一月にはイザナギ景気を超えまして二〇〇五年まで四年連続のプラス成長、そして三年連続の二%台の成長を実現し、今年度も、そして来年度も二%の成長が見込まれておるわけでございます。あの失われた十年の時代を思い出すと、感慨無量な思いがいたしておるわけでございます。

 そこで、ここ数年の経済成長の要因及び今後の経済の見通しについて、経済財政担当大臣から御所見をお伺いしたいと思っています。

大田国務大臣 緩やかですが、大変息の長い経済回復、景気回復が続いております。この要因として、主に三つがあると考えております。

 一つは、企業が過剰雇用、過剰設備、過剰債務を解消し体力をつけたことで、少々の経済変動に耐えられるような体質になってきております。さらに、現在に至るまで、設備投資などで慎重な企業経営が続いております。

 第二に、海外経済の景気が回復する中で、内需、外需、バランスのとれた景気回復が続いております。

 第三に、金融政策、財政政策ともに適切なマクロ経済運営が行われております。

 この三つの要因で息の長い回復が続いております。

 今後の展望ですが、先般閣議決定されました「日本経済の進路と戦略」に沿った取り組みを行うことで中長期的に新たな成長のステージへと引き上げ、今後五年間で新成長経済への移行を目指すとしております。

 「進路と戦略」に盛り込まれた政策が実行される場合、潜在成長率が徐々に高まることなどから、今後五年間のうちに、二%程度あるいはそれをかなり上回る実質成長率が視野に入ることが期待されます。

 また、物価につきましては、デフレ脱却後、安定的なプラスの物価上昇率が徐々に実現していくと見込まれます。これによって、名目成長率につきましては、五年間のうちに、三%台半ば程度、あるいはそれ以上も視野に入ることが期待されます。

 当然のことながら、政策の効果のあらわれ方、外的な経済環境、種々の不確実性がありますので、この展望につきましては、相当な幅を持って理解される必要があります。

丹羽(雄)委員 そこで、総理にお尋ねをいたします。

 昨年からは消費者物価がプラス基調になってまいりました。デフレ脱却も確実なものになりつつあるわけでございますが、確かに景気はよくなった、しかし、一般の国民の皆さん方にはその実感もなかなか感じられない、このギャップをどういうふうに考えるのか。イザナギ景気、先ほど申し上げましたけれども、実質成長率が平均一一・六%であったのに対しまして、今回は二・一%にすぎないのも事実でございます。

 しかし、私ども何か古い話を申し上げて恐縮でございますが、四十年前は、いわゆる三C、カラーテレビであるとかクーラーであるとか、あるいは自動車であるとか、こういうものが高ねの花でありました。そして、私どもの生活というのは、十年前に比べても二十年前に比べても、道路もよくなった、社会福祉も確実に向上していることは事実でございます。ようやく回復の基調が定着しておるわけでございます。

 今、私どもは、再びこの豊かさというものを国全体で享受し、そして実感できるものとするには、いわゆる低所得者と言われる社会的弱者の底上げ、この問題について政府も御検討を始めたようでございますけれども、また、いわゆるワーキングプアと言われる方々をなくし、汗を流した者が報われるような社会、こういう社会を目指していかなければならない。率直に申し上げて大変難しい問題だと思いますが、どのような手だてをお考えになっていらっしゃるのか、総理のお言葉をいただければ幸いです。

安倍内閣総理大臣 ただいま大田大臣からも説明がございました。

 我々は、改革を進めることによって、確かに景気を回復し、そして経済の力を強化したと言ってもいい、このように思います。しかし、この間の回復におきましては、三つの過剰の解消といった、いわば企業部門の強化によって経済の回復を見たわけでございまして、雇用とか、また家計部門への広がりはおくれてきたわけであります。

 しかし、ここに至って雇用においてもだんだんいい傾向が見られてきたわけでありまして、昨日の日経新聞にも、いわば非正規雇用が減少し正規がふえてきているという記事が出ていました。そしてまた、賃金によってこれは家計部門にまさに広がっていくということになりますが、賃金においても、初任給を上げようという企業もふえてきているわけでありまして、ボーナスにおいてもそうであります。

 つまり、さらにこの成長戦略を着実に前進させていくことが大切であって、成長していくこと、そして景気をしっかりと力強く上昇させていくということが、家計部門にも広げていく、国民にも隅々まで広げていくことにつながっていく、これはまさに私は基盤であろう、このように思うわけでございます。

 その上に立って、さらに、いわゆるワーキングプアと言われている方々、非正規の方々たちに対しても政治の光を当てていく必要があるわけでございまして、パートタイム労働法を改正して、正規労働者との均衡処遇の実現や、正規雇用に移りたいという方たちに対してその道を開いていくことが大切であろう、このように思います。

 また、最低賃金制度を、セーフティーネットとして果たしてちゃんと機能しているかどうか、約四十年ぶりの改革に取り組んでまいりたいと思います。

 そして、ただいま丹羽先生がおっしゃった、いわば成長を下支えしていただいているこの基盤を強化していく、まさにそれは成長力の底上げを図っていくという必要があると思います。働く人全体の所得や生活水準が上がっていくことを目指していきたいと思います。そのために、官房長官を主査とする成長力底上げ戦略構想チームを設置いたしまして、人材能力、就労支援、中小企業の三分野に着目をいたしまして、成長力底上げ戦略を短期集中的に取りまとめて、総合的に政策を展開していかなければならない。

 すべての人たちに対してチャンスがあり、キャリアアップしていくことが可能な日本にしてまいります。

丹羽(雄)委員 最近の安倍総理のリーダーシップによって確かに好ましい方向に流れてきているな、こう私自身大変期待をいたしておるわけでございます。

 そこで、もう一度総理にお聞きして恐縮でございますが、再チャレンジを掲げ、就職氷河期にはいわゆる正社員になれなかった年長フリーターのこれをどうやって支援していくとか、あるいは、今お話にもございましたけれども、パートタイマーの待遇改善の促進を打ち出されておるわけでございます。

 総理は、最近、これと同様に問題となっております正規社員と非正規社員、この待遇の差というものを、今の御答弁の中にもございましたけれども、どのようにして縮小していくべきか、また、再チャレンジ支援策としてさらに何かお考えになっていることがもしございましたならば、この際、お尋ねをしたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 いわゆる就職氷河期にたまたま新卒として就職の機会を迎えた方々が、就職の時期を逸して、その後フリーターとして、もう一度就職のチャンスを待っていた方々がおられる。その方々が、いわば年長のフリーターとして、なかなか一つの固まりとしていわば正規雇用の場を得ることができないという状況にあります。一つは、何が阻害をしているかといえば、これは新卒一括採用という仕組みでございまして、中途採用という道がなかなか開かれていないのが事実であります。

 そこに着目をいたしまして、我々、再チャレンジ支援策といたしまして、中途採用をもっと広げていこう、まずは隗より始めろということで、公務員の中途採用の道を開いたところであります。

 企業に対しても、もう少し柔軟にこの中途採用をふやしていくようにお願いをしていたところではありますが、生命保険業界等々が中途採用に大きく道を開いていくという記事が載っておりました。さらに、そういう柔軟な、まさに複線化した社会、働き方の日本に変わっていく、雇用形態を変えていく。そういう意味において、経営者側もそういう考え方に頭を切りかえていただくことによって、この年長フリーターの方々に大きなチャンスが出てくる。

 そしてまた、この皆さんがさらに職業訓練を受けたり勉強して、就職するに際して選択肢の幅を広げていきたいという方々に対する支援も行っていきたいと思いますし、そういう方々を採用する企業に対して応援をしていくことも考えていきたい、このように思っております。

 また、二十五万人のフリーターの常用雇用化プランも着実に前進をさせていきたいと思います。

 そして、先ほど委員から御指摘がございました。正規労働者と非正規労働者の待遇の差を縮小していくこの具体的な方向でございますが、パート労働者の方々を見てみますとさまざまな形態があるわけでありまして、会社の中で管理職としての役割を担い、あるいは担い得るような、正社員と同一な就業実態の方から、短い時間に補助的な仕事をする方まで千差万別あるわけでございます。

 こうしたことをよく勘案して踏まえながら、基本給や賞与の決定、教育訓練の実施、例えば細かいことでありますが、食堂の利用とか、あるいはまた、これは大切なことでありますが、福利厚生施設の利用などについて、それぞれのパート労働者の就労実態に応じて、正社員との待遇の差に関して、差別的取り扱いの禁止と均衡待遇の確保の組み合わせにより、きめ細かく待遇を改善することとしたい、このためのパートタイム労働法の改正案を今国会に提出をしていきたい、このように考えています。

 また、正規、非正規雇用のいずれにあるかを問わずすべての労働者に対して適用される最低賃金制度について、セーフティーネットとして十分に機能するよう必要な見直しを行うことといたしまして、最低賃金法の改正案を今国会に提出をする考えでございます。

丹羽(雄)委員 次に、総理がかねてからおっしゃっているイノベーション、オープンのキーワード、成長戦略をしっかり構築、実現していくことが大変重要ではないかと思います。

 イノベーションというと、何か、技術革新ということで新しい科学技術だけに目がどうしても行きがちでございますが、私は、宅配便であるとかあるいはコンビニだとか、身近な分野、これもある意味でイノベーションになるのではないか、こう考えている者の一人でございます。

 また、オープンにつきましては、我が国の企業や資本が中国やあるいはインドなどの市場に積極的に進出する一方で、我が国自身もまた海外に対してもっと開放をし、新興諸国の活力というものを取り込むことによって生産力というものを高めていかなければならない、こう考えておるわけでございます。

 これについて大田大臣、御所見をお願いします。

大田国務大臣 丹羽先生御指摘のように、イノベーションというのは、単に技術革新だけではなくて、ビジネスモデルですとかライフスタイルをも含む、広く経済社会のシステムの革新であると考えております。

 したがいまして、例えば、ITを本格的に生産性の上昇につなげるようなビジネスモデルが導入されたり、あるいは、社会のITネットワークが飛躍的に進むことによって消費が喚起されたり、あるいは生産性が上昇し、成長力が高まります。

 それから、オープンな経済システム、これも、丹羽先生御指摘のように、海外に進出するだけではなくて、国内も開放され、国内で質の高い企業間競争が生まれるというこの相互作用を意味すると考えております。

 したがいまして、アジアとの連携強化がなされることによって相互に成長のエネルギーが高まっていく、これが成長力の強化につながると考えます。このような角度からオープンとイノベーションによる成長力の強化を図っていきたいと考えております。

丹羽(雄)委員 次に、経済成長の果実を国民一人一人に、全国津々浦々にどうやって広げていくかということについてお尋ねを申し上げたいと思います。

 安倍内閣は、成長なくして財政再建なし、こういうことを柱にしておるわけでございますが、着実にこの景気回復を持続させ、我が国を豊かにすることが使命である、再三繰り返していらっしゃることでございます。しかし、パイが拡大しても、その配分が国民の隅々まで行き渡らなければ、社会全体の健全な成長というものが望めないのではないか、こういう意見も出始めておることも事実でございます。

 最近の経済指標によりますと、企業収益は依然として好調であるにもかかわらず、家計への波及は必ずしも十分ではない。労働分配率は欧米諸国に比べまして決して遜色はないんです。遜色はないんですけれども、今、労働分配率そのものが、十年前は七〇%とよく言われておりました、これがやや下降ぎみでございます。

 そこで、大田大臣にお聞きをいたしたいと思います。

 成長の果実が、率直に申し上げて、なかなか勤労者の方に行き届かないじゃないか、こういう指摘があるわけでございますけれども、まず、昨今の状況についてどうお考えになっていらっしゃるのか。私は、景気拡大というものを持続的に長いものにしていくためには、消費の拡大というものは欠かすことができない、こう考えておるわけでございますが、この点について経済財政政策のかじ取りをどのようになさっていくのか。重複してちょっと恐縮でございますが、お願いいたします。

大田国務大臣 今回の景気回復は企業のリストラの過程での回復でしたので、企業から家計への波及がおくれました。しかし、緩やかではあっても、波及は進んでおります。

 失業率は五・五%から四・一%に低下いたしました。有効求人倍率は〇・五一倍から一・〇八倍に上昇しました。正規雇用者も、平成十八年以降、増加に転じております。昨年の夏以降、波及に足踏みが見られまして、賃金の伸びが鈍化していることが懸念されますけれども、他方で、新卒の就職内定率あるいは初任給は改善しておりまして、全体の雇用環境は悪くありません。人手不足感も高まってきております。したがって、景気回復を持続させることで、企業から家計への波及は今後も進むと見ております。

 一点追加いたしますと、原油価格が一時期よりも低下してきております。原油価格というのは中小企業の収益を押し下げる大きい要因でしたので、原油価格が下がり、仕入れコストが下がりますと、常用雇用者の七割強を占める中小企業の収益圧迫というものが緩和され、賃金にもよい影響を与えるということが期待されます。

 それから、委員御指摘の、長期的にはやはり家計が潤い消費が拡大するということが重要である、これは私もそのとおりだと思います。それで、消費を拡大させる方策ですが、なかなか特効薬というのはございませんけれども、何より、適切なマクロ経済運営でこの景気を持続させるということが必要と考えます。

 あわせて、総理からの答弁にもありましたように、非正規雇用の待遇改善ですとか職業能力形成の支援によって全体の底上げを図っていくことが必要と存じます。また、消費者の立場に立った規制改革で、潜在的な、消費者ニーズに合った消費を喚起していくという構造改革が必要であろうと考えております。

丹羽(雄)委員 思い出すんですけれども、一昨年の、アメリカのニューオーリンズを襲いましたハリケーンのカトリーナ、これは、災害の大きさもさることながら、繁栄するアメリカのある意味でいうと光と影というものを白日のもとにさらけ出した、こういう見方をする方もいらっしゃるわけでございます。

 最近、アメリカではいわゆる所得の上位一%の方々が全体の富の半分近くまで占めている、こういう見方もなされております。これは何もアメリカだけでなく、このいわゆる格差の問題ということは、先進諸国あるいは新興諸国、こういう国々においてもこういう傾向があります。

 ですから、これは一つの国際的な潮流であることは事実なんですけれども、我が国において、所得のある人はますます所得がふえる、所得の低い人たちは一向に所得がふえない、そういう社会が日本にもやってくるのではないか、こういう不安があるわけでございますけれども、これについて、いわゆる格差の現状認識と状況について大田大臣からお尋ねしたいと思っております。

大田国務大臣 家計間の所得格差は、八〇年代以降緩やかに上昇しております。この格差につきましては、どの層のどういう格差が問題であるかということを明らかにしていくことが重要と思います。一番今問題ですのは、正規雇用がこの景気回復過程でおくれたことによって、特に二十代、三十代で賃金格差が拡大していることだと思います。

 それで、先生御指摘のように、先進諸国どこも高所得と低所得の二極化で悩んでおります。年の初めにアメリカに参りましたときも、あるいは先日ダボス会議に出席いたしましたときも、このことが議論になっておりました。

 このとき、日本の特徴的なこととしまして、企業内訓練が中心ですので、正規社員にならないと職業能力を形成するチャンスにも恵まれない。したがって、一度非正規雇用になりますと、正規雇用の職が得られないまま非正規を繰り返して年齢を重ねてしまうというところにあると考えます。このように、頑張っても頑張ってもいい状態になれないという格差の固定化を防ぐことが何より重要と考えます。

 そこで、先ほど総理も答弁されましたように、職業能力を形成する、ここを支援して何とか安定した職を得られるような道を図っていくこと、そして格差の固定化を防ぐということが重要であると考えております。

丹羽(雄)委員 要するに国民の間にあるのは、いわゆる格差感なんですね。こうした国民の声にこたえていくために、再チャレンジ支援策というものを掲げて、いわゆる自立支援を総合的な対策として打ち上げておるわけでございます。

 今お話がございましたけれども、国民の中には、再チャレンジというのは、ある意味でチャレンジする能力のある者が再チャレンジできるんだ、その一方で、障害者であるとか、あるいは母子家庭の方々、あるいは高齢者の方々、こういう社会的弱者の方は自立支援の対策というものは必ずしも十分ではない、私はこう思っておるわけでございます。

 今、格差の固定化についてお話がございました。この固定化させないということも大変重要なことであるわけでございますけれども、この問題について、再チャレンジ担当大臣の山本大臣にお尋ねをしたいと思います。

山本国務大臣 従来の物の考え方、すなわち壮年男子中心社会での観念からすれば、身体能力が劣れば、それはもはや福祉の対象、セーフティーネットの対象という概念がございました。しかし、障害者、高齢者、母子家庭、今日、労働の内容や環境が変わることによりまして、例えばスポーツでも芸術でも、センスでも情念でも情緒でも、むしろ、壮年健常男性にまさるとも劣らない能力があるということが明らかになってくるわけでございます。

 そういった観点からすれば、福祉よりも自立を支援してあげるということの方が、むしろ、人間にとっては自己実現の機会があり、幸せになる可能性の方がもっと高いのではないかというような考え方をとってこざるを得ないわけでございます。

 障害者に例をとっていきますと、例えば、障害者に健常男性と同じことをやれと言うのではなくて、そこに例えばヘレン・ケラーのサリバン先生のような一つの愛情やアドバイザーがいれば全然違う世界が広がるということを我々は考えておりまして、その意味におきまして、私ども、今度、障害者に対する一つの大きな施策の中で考えておりますことの障害者の職業的自立に向けた就業支援、この予算の中に入れさせていただいておりますが、障害者就労支援チームを結成いたします。特に、福祉施設の授産・更生施設、小規模作業所なんかとハローワークが手を組みまして、就労支援計画の作成をし、チームが連携して支援を実践して、それを企業の方にお願いし、さらにそれをフォローアップしていくというような細かな支援策があるわけでございます。

 こうしたことを考えながら、また高齢者につきましては、七十歳まで働ける企業の実現に向け、企業に対する奨励金を設けまして、七十歳以上への定年の引き上げ策を促進する。あるいは、母子家庭の母親に対しましては、母子家庭等就業・自立支援センターの設置の推進等により、就業相談、就業情報の提供、養育費の相談等の自立支援を総合的に推進するような内容でございますので、必ずいい社会が実現すると確信をしております。

丹羽(雄)委員 山本大臣のお話をお聞きいたしておりまして、私ども、大変期待をいたしているものでございます。

 安倍政権は、発足直後、昨年の臨時国会において、長らく懸案でございました教育基本法の五十九年ぶりの改正、地方分権改革推進法、そして防衛省の昇格法など、二十一世紀の我が国のあり方にかかわる重要な法案を多く成立させたところであります。内閣の最重要課題であります教育改革については私の後に同僚の河村議員が触れることで、私は外交問題を中心にして議論を進めさせていただきます。

 まず、日米関係のあり方でございます。

 昨年の北朝鮮におけます核やミサイル、この問題は我が国の安全保障にとって大変不安定な要素をはらんでいる。今後、我が国の国益、安全を確保するために、アメリカとの同盟関係維持強化というのは、大変重要なことは言うまでもありません。そこで、総理がおっしゃっていらっしゃる、世界とアジアのための日米同盟という考え方をさらに進めていくことが私どもは必要ではないか、こう考えておるわけであります。

 来年はアメリカで大統領選挙もございます。総理は、日米同盟を強化していく上において何が最も重要である、こうお考えでいらっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 日米同盟関係は、利益と価値を共有する、極めて重要な、最も重要な二国間関係であり同盟関係である、このように思うわけであります。我が国の安全保障上また外交上、そしてアジアの平和と安定のためにも重要な関係であり、この日米関係を強化することによって、より日本の安全は高まり、アジアの安定は向上していくだろう、私はこのように思います。

 そして、その強化のためには、同盟関係というのは、その基盤は両国の信頼関係であろう、このように思うわけでありまして、その信頼関係を強化していく、対等のパートナーとしてお互いに信頼に足る国でなければならない、このように思うわけであります。その意味におきましては、今の同盟関係を、いわば信頼の意味におきましても強化をしていく努力を我々もしなければならない、こう考えているわけであります。

 ただいま、委員からアジアにおける日米同盟というお話がございましたが、まさにそのとおりでありまして、アジアへ日本が貢献をしていく上におきましても、同盟関係をてこにしていく、同盟関係を基盤として貢献をしていくということも有益であろう、私はこう思っております。

 また、現在行われている六者会合におきましても、米国は、六者会合の場におきまして、米朝協議だけではなくて、日朝の協議が進まなくてはならないということをはっきりと明言をしているわけでございまして、これはまさに日米が連携をとって、この北朝鮮をめぐる問題、日朝の関係、日朝の協議ということは、核の問題だけではなくて拉致の問題も入っているということでありますから、その問題についても米国がこの六者会合においてこのことを明言しているということは重要なことであり、それこそが同盟関係ではないだろうか、私はこのように考えます。

丹羽(雄)委員 総理の今の答弁に尽きるんですが、一昨日から六者協議が開かれております。一部報道によりますと、既に米朝間で枠組みができているんじゃないか、こんなようなことも報道されておるわけでございます。

 いわゆる北朝鮮の問題における我が国として譲ることができないこと、今おっしゃったことでございますけれども、国民が大変関心を持っていることでございますので、改めて、その六者協議の見通しと、そして我が国が譲ることのできない条件というのは何なのか、このことについて総理のお考えをお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、日米の同盟関係というのは、共通の利益そして共通の価値に基づく同盟関係であり、この同盟関係を強化していくということは、我が国の安全にとって、また、地域の安定の向上にとって極めて重要であるという観点から、我が国が主体的にこの同盟関係を強化していく、その方向を決めたまさに大戦略であると言ってもいいのだろう、こう考えているところであります。

 そこで、この六者協議におきまして、日米でよく連携を図りながら、もちろん、韓国、中国、そしてまたロシアとも連携を図りながら、北朝鮮が核の廃棄に向けて早期に具体的な行動をとるように促していくことが重要であります。日本もその中においてそうした国々と連携を強化して、また協力もしていくのは当然でございます。

 一方、日本と北朝鮮との間にある問題は、核の問題だけではなくて、拉致の問題が存在するわけでありまして、拉致問題の解決は私の内閣の最重要課題であります。この拉致問題の解決がなければ日朝国交正常化はないということは、もう施政方針演説でも申し上げているとおりでございまして、この拉致の問題も必ず解決をしなければいけない。そして、そのためにも日朝が交渉をしていくことが必要であるわけでございまして、この六者協議の場におきましてもそうした枠組みができることも大切なことであろう、私はこのように思います。

 しかし、その枠組みができればいいというものではなくて、その中で結果が出ていくことが大切であろう、このように思うわけでございます。

丹羽(雄)委員 大分時間が押し押しになってまいりましたが、一点だけお聞きしたいのは、アメリカのチェイニー副大統領が近々来日されると聞いておるわけであります。これを機会に、イラクやアフガニスタンの情勢などの課題が今大変大きな関心を呼んでおるわけでございます。

 この問題についてまさに日米がどのように協力していくのか、ぜひとも率直な議論をしていただきたい。総理の御見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 イラクやアフガニスタン、こうした地域に我々はエネルギーを依存しているわけでありまして、こうした地域の安定は我が国の国益にとって極めて重要であります。また、現在のテロとの闘いにおきましても、このアフガニスタンあるいはイラクの平和と安定、そしてまた復興、それは不可欠なことであろう、このように思います。その観点から、日本は、主体的な判断として、アフガニスタンあるいはイラクの復興支援のために人的また経済的な支援を行っているところでございます。

 その中におきまして、かけがえのない同盟国であるアメリカとの連携を図りながらそうした復興支援も行っているところでありますが、今般、米国がさらなる政策を発表したわけであります。そしてまた、アメリカのアフガニスタンやあるいはイラクに対するこうした支援、努力が効果的に行われることを期待しておりますし、我々は、その観点から、やはりこの地域の平和と復興を図らなければいけないという観点から、理解し、また支持もしているわけでございまして、今後とも我々は、日本として国際社会における責任を果たしていくという意味におきましても、アフガニスタン、イラクの復興支援のために力を注いでいきたいと考えております。

丹羽(雄)委員 ありがとうございました。

 時間が大分迫ってまいりましたものですから、まだまだお聞きしたいことが山ほどあるんですが、次に、社会保障について一、二お尋ねをします。

 我が国の社会保障というのは、もともと、良質な労働力を確保する、こういう観点から、積極的に事業主が保険料の半分を負担する、こういうことから、医療にしても、年金にしても、そして介護にしても、実は児童手当もそうなんです、そういうところからスタートしておるわけでございます。現実問題、社会保障給付費の三分の二は保険料によってなされておるわけでございます。

 そこで、我が国の社会保障というのは、テレビであるいはいろいろなマスコミで取り上げられておりますけれども、世界のそれぞれの国々に比べまして、この国ほど社会保障制度というものが充実している国はない、こう私は確信を持っている者の一人でございます。それはなぜかというと、いわゆる所得のある人も所得の低い人たちも均等な医療サービスを受けることができる、均等な福祉サービスを受けることができる、そしてアクセスが確保されている。これは、率直に申し上げて、皆保険あるいは介護保険の中でなされておるわけでございます。これはまさに私は、社会保障というのは人間の尊厳を守る問題である、そして、国民の皆さん方の安心、社会の安定にもつながっていく、こう考えております。

 ところが、この問題で、いわゆる税方式、つまり保険料は関係ないんだ、一部にこんなような意見がちらちらしておるわけでございますが、厚生労働大臣は、引き続きこの社会保険方式というものを持続可能なものにしていくお考えがあるのか、その点について御決意をお聞きしたいと思っています。

柳澤国務大臣 我が国の社会保障制度が、国民皆年金、国民皆保険ということで世界に冠たる給付内容を実現しているという御指摘、社会保障を専門としてこれまで数々の実績を挙げてこられた丹羽委員の御指摘は、私も全く同感でございます。

 二つ問題があるのだろうと思います。一つは、すべて税方式、税の収入に頼ることがどうなのか、それからもう一つは、事業主負担というものをどういうふうに位置づけていくであろうか、このことが問題かと思うわけでございます。

 まず、税方式ということになりますれば、これはもう本当に、まず自立の契機が全く否定されているというようなこと、それから、権利性がどうしても希薄になりますから、勢い、社会福祉政策としてこの皆保険というようなことにかなり侵食というか腐食が起こる、縮小が起こりがちになる、こういうことはもう否めないと思うわけでございます。

 もう一つ、事業主負担については、今御指摘のように、沿革的には、確かに、個別の企業の自分の従業員に対する福利政策としてスタートしたことはございますが、それがだんだん時期を経るにしたがって、また国際的な潮流としても、大きくこの保険料負担の分担者として位置づけられるということが共通になってまいりました。

 私は、丹羽委員のおっしゃる、こういう皆保険を維持するための自己負担部分、自己が保険料を負担するということ、それから、折半が多いわけですけれども、事業主も負担しつつ、と同時にまた、不足の部分について国費の負担で税を投入する、こういうような仕組みは、今後とも、国民皆保険、皆年金を非常にうまく運用するためには必須の条件である、これは維持すべきである、このように考えております。

丹羽(雄)委員 柳澤大臣の手腕、力量に期待するものでございます。

 年金改革の議論の際に大変大きな問題となりましたのが、あの悪名高い社会保険庁でございます。

 この社会保険庁の改革は、これまで安倍総理の強いリーダーシップのもとで進められてまいりました。私どもは、国民の皆様方のため、いわゆる公的年金制度はしっかりと守ります。公的年金制度は守らなくちゃいけない。しかし、社会保険庁の組織を守るつもりは毛頭ございません。私どもは、あくまでも国民の目線に立って国民の期待にこたえていかなければならない。社会保険庁を廃止・解体分割、これを今回安倍総理の決断でおまとめになったわけでございますが、保険庁改革と公的年金制度への国民の信頼回復に向けての安倍総理の御決意を改めてお聞きしたいと思っています。

安倍内閣総理大臣 社会保障制度、また年金制度というのは、持続可能性も重要でありますが、その持続可能性も含めまして、国民の信頼が大切であります。その国民の信頼という観点から、年金の運用を行っております社会保険庁は既に残念ながら国民の信頼を失っているわけでありまして、やはり、国民の信頼を得る組織に変えていく必要があります。

 その観点から、私どもは新たな改革法案をこの国会に提出いたしまして、年金制度に対する国の責任というのは、当然これは確保しなければならないわけでありますが、その中で新たに非公務員型の法人を設置するなど、社会保険庁を、今先生が御指摘になったように、廃止・解体六分割をしてまいるわけであります。新組織におきましては、能力と実績に基づく、めり張りのきいた職員人事を徹底していく必要がある、このように思います。

 やはり、今まで、これは余りいい言葉ではございませんが、親方日の丸的に徴収率を上げていくということ、また、実績等とはかかわりのない人事が行われていたのではないかという指摘もあるわけでありまして、みんながやる気を持って、目標を持ってやっていく、そういう人事を行っていく必要がございます。また、民間へのアウトソーシングの積極的な推進を行う必要があります。そしてまた、特に悪質な滞納者につきましては、強制徴収の国税庁へのこれは委託を行っていくわけであります。

 そうしたことによりまして規律の回復と事業の効率化を徹底して、真に国民のための年金制度を守ることができる。国民の皆様に、この組織であれば大丈夫、このように信頼をしていただける組織に必ず変えてまいります。

丹羽(雄)委員 総理の強い決意をお聞きいたしまして、私どもだけではなく、国民の皆さん方も大変大きな期待を持っているものではないかと思っています。

 そこで、この問題にも関連するわけでございますけれども、公務員制度の改革の問題について若干お尋ねをします。

 私は、公務員制度の目的というのは、国、地方を通じて、国民のために貢献したいというやる気と能力のある有為な人材に働いてもらうと同時に、国民の負担をいかに最小化するか、このことが大切だと思っております。

 そのためには、一つは、省あって国なしとも言われております縦割り行政の問題、もう一つは、優秀な民間人を、先ほどちょっと違う分野でお触れになっておりましたけれども、中途から入りやすくすること、そしてもう一つは、能力主義、成果主義の導入、またもう一つは、労働基本権制約の解除のあり方などが挙げられております。

 そこで、公務員制度の改革の目的をどう考えるのか、渡辺担当大臣からお聞きします。

渡辺国務大臣 丹羽先生御指摘のとおりだと思います。

 政治の方はいち早く政治モデルの大転換が行われました。安倍内閣では、自民党の旧式ぽんこつエンジンを取りかえまして、年功序列、派閥均衡というような旧式型から、まさに最新型のターボエンジンを搭載したんですね。

 一方、霞が関の行政モデルはどうかというと、省庁再編とか官邸主導型の体制というモデルチェンジが行われたにもかかわらず、御指摘の各省割拠主義とか年功序列人事とか、スーパー護送船団方式が相変わらず横行しているわけでございます。

 したがって、そういうエンジンの部分を取りかえるというのが今回の公務員制度改革の基本的な発想ではなかろうかと考えております。

 詳細については、今御指摘になられたような事項を、今、制度設計を詰めているところでございます。

丹羽(雄)委員 公務員改革についてはこれから御議論をいただくわけでございますが、国民の立場に立って、率直な疑問を一点だけ申し上げます。

 公務員の中には、民間と同じ仕事をしながら、公務員であるがゆえに、民間よりも大幅な高い給与を得ている者が少なくないと言われております。具体的に例はあるんですが、ちょっと問題になってもいけませんので。

 現業部門のある職種は、平均年収が、民間が四百五十万円なんです。ところが、公務員の中は二倍をはるかに超えている、一千万近くになってきている。こういうことが私実際にデータとして持っておるわけでございますけれども、同一労働同一賃金、これでなく、まさに安倍総理がおっしゃったような、親方日の丸の公務員であるがゆえに優遇される、こういう実態をどうお考えになるのか。

 それからもう一点、財政が厳しいにもかかわらず、地方自治体の中には、地方公務員の給与の引き下げであるとか人員の削減については極めて消極的なところも少なくない。こういうことを私どもは実際現実問題として見ておるわけでございます。

 この点について、また能弁家の渡辺大臣と、そして、担当の菅総務大臣の考え方をお聞きします。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 御指摘のような、民間の給与水準よりも同一労働で二倍も給料をもらっているなんというのは言語道断でありまして、こんなことは是正をしなければならないと考えております。

菅国務大臣 委員御指摘は、地方公共団体の、交通やあるいは病院の企業職員や、あるいは清掃の職員、あるいは給食の調理員ですか、そうした現業の給料が高いという話だと思います。私どもの調査でも大体一・五倍から二倍ぐらいになっている、このように私どもも考えております。

 そういう中で、総務省としましては、現業とか事務というだけでなく、全体をとにかく総点検してほしい、民間にできるものは民間に、そういうところで今取り組んでおります。民間委託や、あるいは国民の厳しい視線の中で徹底した行政改革を行ってほしい、こういうことを地方公共団体にも今要請をしておりますし、さらに徹底をしたいと思います。

 そして、いずれにしろ、やはり国民や地域の住民の皆さんから見て、そうした類似の適切な給料体系になるように、こうしたことにも努めるように要請をしていきたい、このように考えています。

 そしてもう一点でありますけれども、実は、地方公共団体の赤字のところでもという話がありました。

 これにつきましては、地方公共団体の企業職員の給与については、地方公営企業法第三十八条第三項の規定によって、国やほかの地方公共団体による類似の職種の者や民間企業の従事者の給与のみならず、その経営状況等も考慮して定めるべきである、このように実は規定をされております。

 そういう中で、私ども総務省としては、十七年三月の新行革指針に基づいて、こうした赤字状況の地方の公営企業に対しましては、適正化に努めるべきである、このことを実は要請いたしております。具体的な事例としては、給与の一部カット、五十五歳以上の職員の昇給停止、特殊勤務手当の廃止、こうしたことを徹底し、企業が健全な経営になるように今取り組みをいたしておるところであります。

 いずれにしろ、こうした給料というのは、やはり徹底的な情報開示、そして給与水準引き下げの給与構造改革、このことに全力で取り組むように私ども徹底してまいりたいと思います。

丹羽(雄)委員 その問題に関連してもう一点、恐縮ですが、菅大臣にお聞きします。

 確かに国の方はわかりやすいんですが、地方の場合は地方自治という問題がある。なかなかこれ、二階から目薬という言葉が適当かどうかよくわかりませんけれども、実際問題として、その効果が上がっているのか上がっていないのか非常にわかりにくい面があるわけでございます。

 この点もう少し、地方自治を侵すということではないんですけれども、住民の皆さん方に目覚めていただいて、やはり、この程度の財政規模のところはこの程度の給与で我慢してもらう、じゃないと夕張のようになってしまう、こういう意識がややもすると、最近大分芽生えてまいりましたけれども、欠如しているのではないか、こう思っておるわけでございますが、この点についてもう一度、恐縮ですが、菅大臣のお考えをお聞きします。

菅国務大臣 私ども総務省としても、例えば改革において、五年間、職員の数も国は五・七%以上削減する、地方もこれに準じて削減できるように、こういうことも実は徹底をいたしておりますし、また、地方公務員給与全般については、平成十八年四月一日現在、地方公共団体の約過半数の六一%が年額千六百五十億円の独自の給与抑制措置を実は行っております。

 いずれにしろ、情報開示というのが私は一番大事であるというふうに思っていますので、そのことを徹底してまいりたいと思います。

丹羽(雄)委員 時間も参ったわけでございますので、最後の質問にさせていただきます。

 総理は、クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」を何かごらんになったということを報道で聞いております。実は、私もこの映画を見ました。その映画よりも大分前に、この栗林忠道中将を扱った「散るぞ悲しき」、こういう本を拝読しました。

 この本を通じて私なりに感じましたことは、栗林中将というのは、軍規には大変厳しく、作戦立案においても名将の誉れ高い方であると同時に、非常に人間味のある方だ。奥様にも、戦地から家の修理のことなどを手紙に書いていらっしゃる。小さなお子さんにも、親のしつけを聞いて立派な大人に成長してほしい、こんなことを書いております。

 私が感心しましたことは、この本の中でいろいろ触れているんですが、辞世の句を幾つか残しておるわけでございます。辞世の句の中で、部下が次々と戦死していくことを、悲しきという言葉を使っている。当時、悲しきなんと言うことは言語道断だ。これが悲しきではない言葉に変わっているという説がこの本の中にはあるんです。私は、この本を読んでいて、指揮官としての苦悩というものを率直に表現されておるわけでございます。

 私は、この本を読んで大切なことは、こうした無謀な戦争というものを引き起こした政治家であるとか軍部の責任というものは大変大きいものがある。政治家の一人としてみずからを戒める一方で、戦争というのは、一たん起きてしまえば、雪だるまが坂を転げ落ちるように、なすすべもなくなってしまう。指導者個人の、先ほど申し上げたような人間味あふれた思いなどは全く無力なものになってしまうということをしみじみと痛感いたしました。

 総理も、恐らく、一国の最高指導者の目で「硫黄島からの手紙」という映画をごらんになったと思いますが、どのような御感想をお持ちであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま先生が御指摘になった本は、梯久美子さんが書かれた「散るぞ悲しき」だと思いますが、私も拝読をいたしました。また、栗林中将は、同僚議員の新藤義孝議員の母方の祖父に当たられていることもございまして、新藤議員から、「硫黄島からの手紙」という、米国勤務時代からの書簡を集めた本をいただきまして、それも読ませていただいたわけでございますが、今先生がおっしゃった小さなお子さんにというのは、ちょうどそれは新藤さんのお母さん、たか子さんのことでありまして、たか子さんのことを栗林中将はたこちゃんと呼んでいまして、最後の手紙、いわば手紙をそろそろ出せなくなる寸前の手紙においては、「たこちゃんへ」と書いていて、自分の心残りは小さなたこちゃんをかわいがってあげる時間がなかったことだ、このように記していました。栗林さんの家族に対する愛情の深さを改めて感じたような次第であります。

 この映画におきまして多くの兵士が家族に書簡を送っている、それも一つのテーマであったんだろう、このように思います。この灼熱の地獄で戦った兵士たちは、まさに、故郷に残した両親や愛する人たちのために何とか頑張ろう、危険をできる限り先延ばしするために自分たちはこの苦しさに耐えようということであったのだろう、こう思うわけでございます。

 戦後、私たちは、平和で、そして民主的で自由な日本をつくってきたわけであります。過去の教訓もしっかりと胸に刻みつけながら、私たちが営々と築いてきたものに対しまして誇りを持ちながら、平和に対して、また、我が国の国民の生命と財産を守るということに対して、政治家としてさらに責任を果たしていくという決意を新たにしたところでございます。

丹羽(雄)委員 ありがとうございました。

 以上で終わりますけれども、総理の基本的な方向は全く正しいことでございます。これからも国民の期待にこたえて頑張っていただくことを申し上げて、私の質問は終わります。

 ありがとうございました。

杉浦委員長代理 この際、河村建夫君から関連質疑の申し出がございます。丹羽君の持ち時間の範囲内でこれを許します。河村建夫君。

河村(建)委員 自由民主党の河村建夫でございます。

 委員長の御指名によりまして、丹羽議員の持ち時間の中で一時間いただきまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 NHKの朝のラジオ、テレビじゃなくてラジオなんですが、早朝に「きょうは何の日」という番組があります。お聞きになった方もたくさんいらっしゃると思いますが、きょうは何の日、実は、もう皆さんお忘れになっている方も多いと思いますが、ハワイ・ホノルル沖でえひめ丸がアメリカの原子力潜水艦と衝突をして、乗組員を入れて九名のとうとい犠牲が出た日でございます。四名の水産高校生、亡くなりました、練習船。きょうは七回忌がホノルルでも行われると伺っておりまして、私も心から哀悼の意を表するとともに、やはり政治たるもの、あの人たちのあの当時の痛みというものをしっかり受けとめておかなきゃいかぬ、こういう思いがいたすわけであります。

 たしか、安倍総理はあのとき官房副長官でいらしたかと思います。私は文部科学副大臣でございまして、水産練習船ですから、これはやはり教育現場の事件だ、こういう話もございまして、宇和島に飛んでいったことも覚えております。また、外務省もこの問題を重視して、当時の政務官、ハワイへ飛んでいかれるというようなこともございました。アメリカ側もこれにはきちっとした対応をしてくれたと思っておりますが、心から哀悼の意を表したい、こう思っております。

 また、きょうは私は教育問題を中心にということでございますが、その前にもう一つ、総理が、まさに心の痛みといいますか、それを受けとめたとうとい決断をされたことについて、さきにも予算委員会でも取り上げられておりますが、改めて国民の前にそのことについてお披瀝をいただきたいと思っております。

 それは、中国残留邦人の問題でございます。たしか一月中旬ごろ、プロジェクトチームで座長をなさっております野田毅先生から、私が今党の政調会長代理という立場にございますものでありますから、PTとしても、この問題について、まさに戦後レジームの、体制の中で処理しなきゃいけない大事な問題である、党としても、中川政調会長とともに一つの方向づけをしてもらいたいんだ、こういうお話でございました。

 実は、一月三十日に東京地裁の判決があり、国側の勝訴となりました。あのときの残留邦人の皆さんの落胆ぶりというのは目に余るものがあったのでありますが、これを受けて、総理は、やはり同じ日本人として、戦後ここまで来てこのような思いを抱かれておることについては、裁判の結果いかんを問わず、政治が決断をしなきゃいかぬということで、この問題について適切な処理をするように厚労大臣に指示をされた。

 残留邦人の皆さんは、まさに地獄から天国へ、こういう思いをされたと伺っておりますが、その決断をされた、そのときの総理の気持ちというものを改めてお聞かせいただきたい、こう思います。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 先般、残留孤児の皆様とお目にかかりました。そのときに、孤児の皆様は、何とか自分たちの国、祖国日本に帰りたい、それが本当に長年の夢であった、しかし、その夢がかなったけれども、生活の習慣の違いあるいは言葉の壁でなかなか生活がうまくいかない、いろいろな困難があった、そして、その中で、だんだん年を重ねてこられている中で、自分はせっかく日本に帰ったのに、自分の夢、期待は裏切られたような気持ちだということをおっしゃっておられました。

 確かに、言葉を初めとして、いろいろな困難な点があったんだろうと思いますし、だんだん年をとられてきた、そして、何といっても、戦争の中で子供たちが取り残されてしまった、そういう悲劇があったわけでございます。

 そこで、私たちとしては、法律の問題や裁判の結果とは別に、この皆様方に対してきめ細かな支援、誠意ある対応をしなければならない、こう判断をいたしたところでございます。この方々が、孤児の皆様が、日本に帰ってよかったな、やはり日本というのは温かい国だ、祖国は温かい、このように思っていただけるような対応を、そして、日本人として尊厳を持って生活をしていける対応、支援をまた与党とよく協議をしながら決定していきたい、考えていきたい、このように考えております。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 もう柳澤大臣にお聞きはいたしませんが、ぜひ総理のこの気持ちを体して、この問題について真正面からしっかり取り組んでいただくようにお願いをいたしたいと思います。

 と同時に、これを前例としてという意味ではございませんが、原爆症の認定問題あるいはカネミ油症問題等々、苦しんでおられる皆さんの心の痛みを受けとめなきゃいけない政治課題も後にあるということもこの際申し上げ、また決断をいただきたい、こう思っておることを申し添えさせていただきます。

 さて、それでは、いよいよ教育問題に入りたいと思いますが、今国会を安倍総理は教育再生国会であると位置づけられました。私は、大変大きな位置づけだ、こう思っております。「美しい国、日本」をこれからつくっていくんだと。新しい国といいますか、いわゆる国づくりに入るには、やはりその根本は人である、国づくりは人づくり、こう言われております。まさに国家百年の大計に真正面から取り組もうとされておる。この思いに、私も高くこれを評価すると同時に、政権与党自民党としても、しっかり協力し、これを成就していかなきゃいかぬ、こういう強い決意でおるところでございます。

 米百俵の精神でということで、小泉内閣も教育の重要性は述べてきたところでありますけれども、ややもすると教育問題が、いわゆる経済財政諮問会議であるとかあるいは規制改革会議であるとか、こういうところでどうしても教育議論をするような状況もございまして、本格的に内閣においてこの教育問題を述べるその必要を、私も当時、小泉内閣の文部科学大臣として感じておったわけでございます。今回、安倍総理においては、この教育再生会議というものを閣内に、いわゆるまさに閣議決定をもって設置をされて本格的にこの問題に取り組まれんとしているということ、このことに私は心から敬意を表する次第でございまして、真正面からこの問題にまさにしっかり取り組んでいかなきゃいかぬ、こう思っておるところでございます。

 この教育再生会議というのは、昨年の十月十日に実は設置をされておりまして、一月二十四日に第一次報告書をいただきました。

 また、御案内のように、昨年十二月十五日に、安倍総理の強い教育改革、教育再生にかける熱意と、また伊吹大臣のリーダーシップのよろしきを得て、改正教育基本法が成立をいたしまして、既に昨年十二月二十二日にこれは公布、施行されておるわけでございまして、まさに今の、これからの教育は、改正教育基本法、また新しいこの教育基本法のもとで教育が行われていくわけでございます。

 そういうことを考えますと、今回のこの教育再生会議というものは、並行的にスタートいたしておりますが、まさに教育基本法改正の理念といいますか、これを踏まえながら、そしてその具体的な、あるいはこれからの国家百年の大計に当たる方針を第一次報告書は示してきておる、このように思うわけでございます。

 そういう理念のもとで行われているということを、まさに教育再生会議設置のねらいとともに、この教育基本法、これを手元に置きながら、この理念のもとでまさにこれを進めていかれようとしているんだということについて、改めて総理に御確認を申し上げたいと思います。

安倍内閣総理大臣 大変長い間、河村先生は教育問題に熱心に取り組んでこられました。河村先生の熱心な取り組みもございまして、与党において教育基本法の改正案の取りまとめができて、そして昨年の臨時国会で、まさに五十八年ぶりに教育基本法が改正されたわけでございます。新しい時代にふさわしい理念を盛り込むことができた、このように思います。

 この改正された新しい教育基本法の上に立って我々は教育再生を実現させていかなければならない、このように考えているわけでありまして、まさにこの教育基本法の改正ができたからこそ教育再生がさらに進んでいくことになると思います。

 この教育基本法の改正を基本として、また前提として、我々は、教育再生会議について、あるべき教育の姿について議論をしたところでございます。その中におきまして、学校を再生して、安心して学べる規律ある教室にする、あるいは、あらゆる手だてを総動員して、魅力的で尊敬できる先生を育てていく、やはり教育というのは人材、人である、このように思うわけでありますが、そしてまた、社会総がかりで子供の教育に当たる、そうした提言を盛り込んだ第一次報告ができたわけでありますが、まさにこうした報告は新しい教育基本法を前提、基盤としたものである、このように思います。

河村(建)委員 総理のこの強い教育再生にかける思いというもの、これによって、この再生会議、そして再生会議の第一次報告、極めてスピード感を持ってここまで来ておるわけでございます。

 ただ、この教育再生会議に対する評価といいますか、いろいろな議論もあるわけでございますが、教育現場においては、中央教育審議会との関係はどうなるんだろうというようなことも聞こえてきておりまして、まだまだ教育再生会議に対する期待感というのがもう一つ今盛り上がっていない嫌いもございます。

 これについて一、二伺っておきたいと思うのでございますが、中央教育審議会が文部科学大臣の諮問機関としてあるわけでございまして、これが、新しい、今度は会長は山崎先生におかわりになりました。山崎会長のもとで、これから法案についてもいろいろ議論をされる。

 再生会議の第一次報告は、今総理言われたように、まさに社会総ぐるみで、総がかりで教育再生をやっていこうという熱い思いの中で、当面の緊急課題としてこの法案を早急に出したい、こういう意向が示されておりますので、これは伊吹大臣も、中央教育審議会でしっかり議論をして、そして法案成立を期したい、こう言われてきておるものでございます。

 この国会でということになりますと、時間的な問題もかなりありまして、かなりスピードアップしなきゃならぬと思いますが、その点、この中央教育審議会での議論、準備。教員免許法の改正問題等は、これはもう随分前から言われてきておることでありますし、中教審、既に答申を出しておりますから、こういう問題はすぐにやれると思うのでありますが、後ほど触れたいと思いますが、教育委員会の問題等々、かなり濃密な議論も必要だろう、こう思っております。

 この点を踏まえて、大丈夫か、こういう思いで伊吹大臣にちょっとお聞きしたいと思いますが。

伊吹国務大臣 教育問題については我が党の大専門家の河村委員でございますので、私がちょうちょう申し上げることもありませんが、少し整理をしておきたいのは、まず、教育再生会議というのは政治的には非常に重い。つまり、安倍総裁が、自民党総裁に立候補されたときに教育の再生というのを最優先の課題として掲げて、そして御自分の内閣でぜひ、教育基本法の改正を受け、今先生が御議論になったように、教育を再生させたい、そのために閣議決定をしてつくったアドバイザリーボードですから、これは政治的に大変重いものだと私は思っております。そして、事実、ここでいろいろ御議論いただいていることは、的を射たことが私は非常に多いと思います。

 しかし、再生会議がおっしゃったからやるのではないんです。再生会議は安倍総理に対するあくまでアドバイザリーボードであって、行政権を持っている内閣の長として安倍総理が決断をされたから我々はやるわけなんです。

 その中で、四つのことを安倍総理は私にお話しになりました。

 一つは、荒れている学校現場ですね。いじめの問題あるいは校内暴力の問題について、現行法制の中でできることを学校の先生方あるいは教育委員会について自信を持ってやってもらうようにしてもらいたい。これは既に、御承知のように、御指示があって十日以内に通知を出しました。

 そして、改正教育基本法を受けて、これを実現するためには十本以内程度の法律を改正しなければなりませんが、当面、先生がおっしゃったように、学校教育法と地教行法、それから教員の免許の法案、この三つは、おのおのもう既に中教審に答申を求めてあるわけです。しかし、その後状況が若干変わっておりますので、それを含めて、スピード感を持ってぜひ御答申をちょうだいしたい、補足的な御答申をちょうだいしたいということを先般お願いいたしました。

 中教審はあくまで国家行政組織法と文部科学省設置法に基づく法定機関であって、法律を出すときはここを通さねばなりませんから、先生がおっしゃったように、国会の御議論の時間をとらねばなりませんので大変急ぐことになるわけですが、濃密に、スピード感を持って、ぜひ補足的なお考えをちょうだいしたいということをこの前お願いしてございますので、できるだけ国会の議論に早く付して、国民の総意をもって御議論をしていただきながら教育再生に取り組みたい、そう思っております。

河村(建)委員 自由民主党、我が党の方も教育再生に係る特命委員会も用意をいたしておりまして、第一次報告をいただいたものについて、この問題をやっておりますし、また、公明党との与党協議会におきましても相当濃密な議論を進めながら、この国民的課題に取り組まんといたしておるところでございます。

 この教育再生会議は、社会総ぐるみでやろうということ、こういう方針というのは私は非常に大事だと思います。教育再生会議と中央教育審議会とが同じことをやっておったのでは、これはまさに時間の無駄になるわけでございまして、今回、総理の強い決断で、社会総ぐるみでやろうということでありますから、私は、学校が直接扱わなきゃいけないような課題については、これはしっかり中教審で話し合いを進めてもらいたい。

 特に私は再生会議に望むのは、文部科学省一省ではなかなか対応できないような問題が教育界にはございます。まさに、マスコミの有害報道とかそういうようなもの、あるいは、今まさにネット時代、こういうものからどうして子供を守っていくかというような大きな課題がございます。あるいは、産業界の教育への協力、これは子育ても含めて、そういうものがございます。そうした、一省では対応できないような大きな課題、まさによく言われる骨太の方針といいますか、そういう議論をしっかりしていただかなきゃなりませんし、また、国家財政投資は、教育はいかにあるべきか、こういう議論も当然そこでやっていただく。

 あるいは、まさに次の課題でありますが、ゆとり教育の見直しによって高い学力、こうありますが、その学力観というものは一体どういうものなのか、こういう議論をしっかりしていただくこと、そして最終的な報告をまとめていただくことが教育再生会議に期待をされている、このように思っておりますので、ぜひ、この中には総理みずからお入りになって、また伊吹大臣もお入りになっている、こういう教育再生会議というのは、私の知る限り、まさに国を挙げての体制ができた、まさに明治以来の体制だ、こう思っておりますので、我々もしっかり協力をいたしますが、ぜひ成果を上げてもらいたい、このように思っておるわけであります。

 特に、今回非常に話題にもなりましたが、ゆとり教育を見直して学力を向上するということが、今回の第一次報告の第一点に挙がっておるわけでございます。

 このゆとりという言葉、これがどういうときに使われ始めたかということでございますが、皆さんの資料にも参考までに出させていただきましたが、昭和五十一年の教育課程審議会で、ゆとりのある、しかも充実した学校生活を目指してと、ここからスタートをいたしておりまして、ゆとりを持ちながら充実した学校をつくっていこうというところからスタートをいたしておるわけでありますから、その方向は間違っていないと私は思うのであります。

 五十一年十二月の、一つは読売新聞の社説がここにございますが、皆さんのお手元にございますが、ちょっと読み上げますと、「今回の教育課程の改定は、詰めこみ教育の是正を最大の目標にして進められ、結果として、総授業時数では約一割、教育内容では二―三割の削減となった。これまでの教育課程が、改定のたびに教える内容が増加し、質的にも高度になってきたことを審議会が厳しく反省し、学ぶ立場に立って検討を加えたことは評価したいと思う。」これも朝毎読、どの社説も同じ方向でありまして、当時の有識者は、これはいい方向だと賛同したわけでございます。

 しかし、現実には、詰め込み教育ということになると、基礎、基本をやらなきゃいけないことがまさにおろそかになった、そういうこともまた詰め込みだ、こういう意識が働いて、実際の基礎教育はおろそかにされたのではないか。現実に、大学では分数計算がよくわからない大学生も出始めたという指摘がございます。そのようなことにどう対応するかということでありますから、今回の提言で、一割、時間数を戻そうではないかという議論が出た、これは当然だと私も思います。

 ただ、メッセージとしては、当時問題にされたあの詰め込み教育時代といいますか、そういうことに戻すのではなくて、この欠点を補いながら、まさに教育はこれからは人間力をつくっていくという大きな課題に向かっていかなきゃなりません、まさに人格の完成というのが教育基本法の最大の中心概念でありますから、それにはやはりこうしたゆとりのある、しかも充実した学校生活を目指していく、これであるべきだ、私はそう思っております。

 ゆとり教育を見直し、学力をつけよう、こういうふうな第一次答申を出されたことについて、このゆとり教育という問題について、総理、これはいかにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘をされました詰め込み、そしてゆとり。ゆとりというのは、これはだれもが、ゆとりを持った方がいい、こう思うのは当然のことだろうと思いますね。一方、詰め込みという言葉になると、詰め込みはまずいだろう、しかし他方、基礎的な学力を学んでいくのだといえば、それは当然だな、こう思う。では、どこまでが詰め込みでどこまでが基礎的なものかという判断も当然これは大切になるんだろう、このように思います。

 そもそものゆとり教育についての理念、考え方は私は間違っていなかった、これは再三私も申し上げているわけであります。それは、基礎的な、基本的な知識を身につけた上で、それを活用して考える力をはぐくんでいこう、そのためにはいわゆるゆとり教育が必要であろうという理念であったわけであって、この考え方は間違っていなかったわけでありますが、しかし、理念が正しくても、結果として、なかなかうまく現実の問題としてその方向に行かないということは、これはたまに起こり得るわけであります。ですから、我々が目指すべき方向、そのための政策と結果がどうなっているかということは絶えず検証していく必要があるのだろう、このように思うわけであります。

 この考え方、理念としては間違っていなかったわけでありますが、現状を見ますと、子供の主体性などを重視する余り、必要かつ適切な指導が実施をされていなかったり、あるいは読解力の低下や学習意欲、学習習慣が必ずしも十分ではないなど、理念が十分達成できていない状況が見られるわけでございます。

 そうした現状を見た上で、現行の学習指導要領の理念を実現し、すべての子供に必要な学力を身につけさせるための具体的な方法が必要である、このように考えます。その観点から、子供たちや学校現場の状況をしっかりと把握して、これまでの経緯を検証しながら学習指導要領の見直しを進めていくことが重要であると考えています。

河村(建)委員 ありがとうございます。ぜひ、ゆとり教育の理念といいますか、これが誤った方向に行かないように、この是正というのは必要だと思います。

 ややもすると、マスコミは何か、ゆとり擁護派とゆとり反対派があって、論争が行われているようなイメージが起きておりますが、決してそういうことではないわけでありまして、よく例に出されますフィンランドの例。私も、昨年、一昨年と教育改革の問題で欧米へ参りました。特に、フィンランドにも行ってまいりましたが、ここは世界一の学力上位国である、こう言われておるわけであります。

 私もフィンランドの授業そのものを見てまいりましたが、まさにフィンランドの授業は我々が考えているゆとり教育そのものであると言っていい、物をみずから考えさせる授業をやっております。今、総合学習の時間というのがございますが、あらゆる授業がその体制をとっていて、みずから考え、みずから発信をする。ある国語の授業では、小説、物語を読ませて、そしてそれぞれ主人公になったつもりで、自分だったらどうするかを言え、このような教育をやっておりましたが、フィンランドは既に先生の質を上げることに大変力を入れております。いわゆる教職というのは、社会的地位が非常に高い、尊敬される職業であるということ。しかし、そのかわりに、義務教育の先生は今大学院修士課程修了を義務づけておりまして、相当力を入れている。特に、落ちこぼれをつくらないという言葉は余りいい表現ではありませんが、成績下位に対する厚いマンツーマンの授業が行われております。習熟度別、こう日本では言っておりますが。

 日本の学力低下という問題が、あのPISAのいわゆる学習到達度調査、OECDの四十カ国をやります、あの中で読解力が八位から十四位に落ちたということが非常に大きく喧伝をされたし、事実そういう結果が出た。まさにみずから考え、みずから発信する、生き抜く力といいますか、そういうものが不足しているのではないかという指摘、そういうものは、やはりそうした総合学習的な、みずから体験をしながら、みずから考えるようなものでないと生まれてこないということははっきりしております。

 と同時に、その中身を見ますと、特に日本では、上位層といいますか、上位五%、この層はほとんど変わらない、落ちていない。しかし、真ん中から下ですね、下位層といいますか、ここの落ち込みが激しいという結果も出ておりますので、こうした学力の二分化といいますか、あるいは学習意欲の二分化というものに十分配慮しなきゃいけないときを迎えております。このことを考えながら、これからの学力向上というのを図っていかなきゃならぬ。

 そうすると、どうしても、これは先生の質をいかに上げるかという問題も出てまいりますし、財政再建のときでもあるので、教育にもという話がございますけれども、やはりマンツーマン、習熟度別をやろうとしたら、教師の質も高めると同時に教師の数もふやしていく、こうした問題も当然課題になってくるであろう、こう思っておるわけでございまして、こういう視点に立ってこれからの教育への支援策をとっていかなきゃならぬ、こう思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 フィンランドの例、これは本当によく我々も研究をしてみなければならない、こう思っています。

 確かにフィンランドは、いわば授業時間数についてそれほど多くないにもかかわらず、成果を出している。しかし、確かに、先生がおっしゃったように、なぜかといえば、先生の質が極めて高い。やはり教育は人なんだなということを改めて感じたような次第であります。そして、それと同時に、ただあらわれてきている授業時間数だけではなくて、理解に時間がかかる子供たちに対しては徹底して、時間外も含めて、また休日等々も含めてそれは特別に教育をする、その人たちに合わせて教育をしていくということに取り組んでいることもありますし、そしてまた、さらには、これはもうみんなで子供を教育していこう、隣近所で子供たちを教えていこうという機運が非常に強い。そして、子供たち同士でも、もしおくれている子がいればみんなで協力して助けていこうという機運が強いという話も聞いたような次第でございまして、そういう意味では、社会総がかりで教育を向上させていこうという気持ちが大切であるということを改めて再認識したような次第でございます。

 また、確かに、今御指摘のように、成績下位層が増加をしているとの課題があるわけでありまして、今後は、伸びる子は伸ばし、理解に時間のかかる子には丁寧にきめ細かな指導を行うことが必要でありまして、習熟度別指導の一層の充実を図ることも大切であり、また、本年四月にスタートする全国の学力・学習状況調査を継続的に行い、教育施策や授業の改善を促していきたいと思っております。また、来年度予算に盛り込んだ放課後子どもプランを通じまして、放課後や土曜日を活用した学習機会の充実も図っていきたいと思っております。

 そして、さらには、繰り返しになりますが、やはり先生がいかに重要か、先生の質が重要かということでありますし、また、この習熟度等、きめ細かな対応を行っていくためにも、先生の質の向上を図っていくことが大切であります。そしてまた、頑張っている、一生懸命いろいろな工夫をして取り組んでいる先生に対しての支援を当然我々も考えていかなければならないと思います。

河村(建)委員 総理みずからがまさにこの教育の重要性を具体的に語っていただいたということ、これは教育現場にとっても私は大きな刺激になると思います。

 いよいよ学力調査も行われるわけでございまして、たしか四月二十四日だったと思います、その結果も出る。これがなかなかできなかったというのは、やはり教育現場も反省をしてもらわなきゃいけない点がある。この結果というのは、確かに、これを比較して、ただしりをたたくだけではよくないと思いますが、この結果を受けとめて、何をどういうふうにしていけばいいかということをしっかり考えてもらわなきゃいかぬ。その先にはやはり評価という問題が当然入ってくるわけです。これは避けてはならない、こう私も思っておるわけでございまして、これにやはり真正面から教師の皆さんも向かい合ってもらわなきゃならぬ。そのことによって、私は、教育が変わっていく、よくなっていく一つの方向だと思います。

 イギリスのOFSTED、あの基準局のやり方というのは非常に厳しいものがございます。日本にそれがなじむかどうかという話もありますけれども、まさに査察官が学校を閉鎖する力を持ちながら教育レベルをきちっと見ていく、そこまでイギリスはやって教育再生を図ったという事実もあるわけでございます。

 そんなことを考えながら、これから教育再生をやっていく。それは、先ほど申し上げました教育基本法の改正案、これによって私はかなりのウエートが入ってくるであろう、こう思います。

 そこで、改正教育基本法において、その第十一条に新たに幼児期の教育ということがきちっと入りました。条文には、幼児期の教育は生涯にわたる人間形成の基礎を培う重要なものである、そのことをきちっとうたっておるわけでありますが、今、しかし実際に起きている痛ましい事件を見ますと、親がしっかり責任を持って子供を育てているのかということがございます。

 安倍総理は、高い学力とともに規範意識も植えつけたい、持ってもらいたい、こう言っておられますけれども、そもそも親そのものの規範意識が非常に弱いということがあります。これは幼児教育だけじゃない、小中もそうでありまして、最近話題になりました、学校給食費を払わない親が出てきた。百人に一人はそうだというような、こういう記録、そして二十二億、給食費の未納がある。学校ではてんやわんや、校長先生たちがそれを補っている学校もあるそうでありますが、そのうちの六割は、家庭の貧困とかそういうことじゃなくて、わかっていて払わないんだと。この規範意識ですね、ここから直していかなきゃいけないという問題に実は遭遇をしているということは、非常に残念ではありますが事実であります。

 現実に国際比較等を見ましても、どうも日本の青少年は、生活規律、いわゆる生活でのルール、こういうことを親から厳しく言われてないという点が指摘をされております。また、親が子育てに非常に孤立をしている、相談相手がない、父親は子育てに参加をしない、こういう問題が明らかになってきておるわけでございまして、これは、働き方、ワーク・ライフ・バランスの問題を総理は言っておられますが、こういう問題とすべて連係をしておるわけであります。だからこそ、社会総がかりで教育再生をということになるであろう、こういうふうに思うわけでございます。

 家庭教育の段階で、特に幼児教育とあわせて、同時に家庭教育の重要性も今回の教育基本法ではうたわれておるわけでございまして、保護者が子の教育については第一義的に責任を持つんだ、こういうことがきちっとうたわれておるということ。これも、これまで言われ続けてきたことが教育の中心になかったということであります。これまで、どっちかというと、教育を直接担当する教育現場は家庭のことまで口出すべきではないんだということがあった。しかし、これが一体でありませんと教育はうまくいかないということが明らかになってきております。

 百升計算を進めておられます、再生会議のメンバーの一人であります陰山英男先生もそのことを言っておられまして、まさに学力をつけるには、まずその段階の生活改善が必要だ、それこそ早寝早起き朝御飯、これがきちっと励行されているかどうかが学力に大きく影響するんだということを明確に言っておられまして、事実、その取り組みをされております。

 私の地元の山陽小野田市では、新しい学習システムということで、これを正面から取り上げて、文部科学省のプログラムでありますが、これを今実際に取り組んで、基礎、基本をしっかりやらせる、そして、まさに読み書きそろばんじゃありませんが、音読で声を発してやる、そして計算をやる、そのことが脳科学的に見ても子供の学力をつける基礎であると。子供が生き生きとしてきた、子供が生き生きとしてくると親も非常に前向きに取り組むようになってきた、私が今やっているここは次の学力調査ではいい結果が出ると思う、だからこれを全国にひとつ広めていただきたい、そういうふうに言っておられましたが、まさに今現場ではそういういろいろな取り組みが行われております。

 その前提として、やはり親の教育はどうなんだということが盛んに言われておるわけでございますが、これは、文部科学省が親学問をつくるということになるのかどうか、私もPTAの皆さんと話しますと、実質はそこに行き着くんですね。PTA活動で熱心な親たちはいいんです、しかし、ここに来ない親をどうするんですか、これも文部科学省の責任なのかというと、何か考えてもらわなきゃこれはとてもやっていけません、こういう現場があるということ。これについて、文部科学大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 今般改正をいたしました教育基本法には、保護者が一義的に子供の教育に責任を持つということを明記いたしておりますし、先生がおっしゃったように、幼児期の教育という条項も起こしております。

 したがって、御指摘のように、これは率直に言うと、目先、文部科学省だけでやれることではありませんが、この教育基本法の改正をされた理念に基づいて学校教育法を直し、指導要領を直していき、それによって教えられた人が親になり、またその親がおじいさん、おばあさんになりということを積み重ねていく必要がやはりあると思います。

 しかし同時に、目先の議論としては、社会教育の一環として学び直しの機会あるいは子育て教室その他をやりながら、大きな歴史の中で日本人の考え方が変わっていくまでの間、少しずつ少しずつ支えていくより仕方のないことだろうと思いますので、教育はやはり国家百年の計ということを肝に銘じて、積み重ねを誠実に行っていきたいと思います。

河村(建)委員 ぜひ、教育界においてもこうした取り組みをしっかりやっていただきたい。まさに、幼稚園、保育所、これは親もともに学び育つところでなければならぬ、こう思っておりますので、そうした機能を保育所、幼稚園にもしっかり持っていただくということが必要であろう、このように思っておるわけであります。

 先ほど早寝早起き朝御飯のことを申し上げましたが、やはり食事のことというのは非常に大事でございます。私、小泉総理から文部科学大臣を命ぜられたときに、その指示の最初に書いてあったのは、知徳体、知育、徳育、体育プラス食育を重視した人間力向上の教育改革に努められたし、こう書いてあったわけでございます。そのとき、公に、かねてから言われておったのでありますが、食育ということがきちっと出てきた。今、学校現場も、学校給食を通じてこの問題にまさに取り組んでいただいております。

 この食育という考え方は一石三鳥でありまして、食べることの重要さ、これを知識として知っていく、そのことは学校給食を通してやりながら、栄養の問題等もやってまいります。そして同時に、一緒に、愉快に楽しく食べる親子団らんの時間を持て、こういう教育になっていく。と同時に、これは健康でありますから、生活習慣病の防止にもつながっていく。これはまさに厚生労働省の医療費の問題とも絡んでくるというような問題。一方、農林水産側から見れば、地産地消の問題だ、ふるさとのものをしっかりここで子供たちに、そして、御飯のおいしさをしっかり学んでもらいたいという面がある。

 こうした食育でございますので、これをまさに社会総がかりで進めてもらいたいと思っておりますが、一言、学校現場においては、私も、学校給食を直接担当しておられます学校栄養士の皆さん、これを学校栄養教諭として現場でしっかりやってもらおうということで、栄養教諭の免許を取れるようにいたしました。これはまだ義務化をしていないということもあって各県まちまちでございまして、これの取り組みが遅い県もたくさんある。これはぜひ、一万人からおられる学校栄養士の皆さんが早急に栄養教諭の免許が取れるような促進方をお願いしたいと思っておりますが、文部科学大臣、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 食育は、先生がおっしゃったような多くのプラスの面を持っておりますし、特に、さらにつけ加えて言えば、自分で命を育てて、その命をいただきながら自分が生きていくんだということをやはり児童生徒に理解させるという意味合いも私はあると思います。

 そういうものを、いかに料理をして、バランスのとれた食事として人間が生きていけるのかということを教えてくれるのが今先生がおっしゃった栄養教諭だと思いますので、現在、必置義務はございませんが、予算で少しずつ少しずつ、御承知のように設置を助成しておりますから、いずれ先生がおっしゃった方向に行けるように万全を尽くしてやらせていただきます。

河村(建)委員 ぜひ、栄養教諭の配置について御努力をいただきたい、こういうふうに思います。

 命をいただくという非常に大事なお話もされました。まさに学校教育においてもそういうことをきちっと教えていく。今回、宗教教育のところにつきましても、宗教の一般的教育といいますか、これをきちっとやるようにということになっておるわけでございます。かつて学校給食現場で、我々日本人は御飯を目の前にして自動的に手を合わせますが、これは仏教なんではないかというような指摘があって、教育現場に宗教がというような行き過ぎた話も残っておりますけれども、今はそんなことはないと思いますけれども、そういう大事な宗教観というものを同時に養ってもらわなきゃいかぬ、このように思うわけでございます。

 先ほど、総理みずから放課後子どもプランのお話もされました。これは要請にとどめておきますが、これまで厚生労働省が中心にやってきておりました学童保育、これも非常に効果を上げてきたわけでありますが、それは低学年であります。文部科学省は高学年の子供の居場所づくりというものをもって、これと一体でやってきたのでありますが、これを今度一つにして放課後プランということであります。

 特に子供の居場所づくりを担ってきたのは、各地域のNPOであります。一般の方々が随分入ってきております。これを直接文部科学省は補助していたのでありますが、今度一体で、市町村を通じてやることになります。行政がもろに入ってまいりますと、NPOが排除されるということがあってはならない、こう思っておりますので、これについてはぜひ十分な配慮をいただいて、このNPO法人は相当な実績を持っておりますから、これを大いに活用していただいて、この大事な放課後子どもプラン、子供の居場所をしっかりつくっていただくということが大事でございますので、その点をお願い申し上げておきます。

 もう一つ、教育委員会制度の問題でございます。

 これにもかなり高い関心がございますが、先般、新聞にも、教育再生会議が、文科相に教委の是正権限、勧告や指示を盛るというような話も出ておりますが、やはり教育委員会の問題は、教育委員会そのものが形骸化しているんではないか。いじめの問題についても、適切な指示ができていない。特に北海道教組ですか、この調査にも協力できないような、教育委員会は一体どういう指示をしたのか、これは今問題になっておるところでございますし、また、未履修の問題についても、これについて的確な指示ができていなかったんではないかということで、教育委員会そのものの存在については、これを廃止して、首長に権限を渡したらどうか。

 実は、教育基本法改正の問題では、民主党案はそういうふうになっておったと思いますが、しかし、これは否決をされたわけでありますから、やはり教育委員会の存在価値というのは、教育の中立性をきちっと担保する……(発言する者あり)ごめんなさい、廃案。まあ廃案といいますか、ということで、改めて否決の形はとっておりませんが、廃案になったということであります。

 私は、やはり教育委員会の存在というのは、教育の中立性を守る、その意義というのはあると思いますね。しかし、これをきちっとしたものにしていくということが必要であろう、私はこう思っておりますので、これから根本的に洗い直すということでありますが、この問題について文科大臣はどのような方向で進めておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 教育基本法の民主党が出していただいた案については、参議院ではこれを否決したわけです。しかし、中に立派なこともたくさん書いてあるということは、国会の議論はそのためにあるわけですから、私は十分それを受けとめて、教育委員会の問題も考えたいと思っております。

 そこで、基本的にはやはり、当事者能力を最大限に引き出すためには、地方でできることは地方という分権の流れは私はとめるべきではないと思っております。その上で、先生がおっしゃったように、国が全国統一にお願いをしたことを各地域が法律を守ってくださらないという場合に、最後に、抜いてはいけないけれども、どうしても守らなければならないものを守るようにしていただく権限ということだけはお与えいただかないと、できないんですね。

 ちょうど、自由競争社会で、資本主義社会ですから、政府は基本的に取引に介入してはならないんですよ。しかし、アンフェアな、あるいは法律に違反したことが行われる場合には、公正取引委員会というものが厳然として存在するわけです。

 したがって、うまくやった地域とそうじゃない地域、うまくやった教育委員会とずるをせずに誠実にやった地域というものが混在している教育界というのは、私はやはりよくないと思います。これは私の考えです。今、これはしかし、再生会議の意見も総理が御判断になって、そのことも念頭に置きながら中教審で議論していただきたいということをお願いしているわけですから、その議論を私が先取りするということは不適当でございますので、スピード感を持ってやっていただく中教審の答申を待ちたいと思っております。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 時間も押してまいりましたので、最後に、総理に一言、確認といいますか、決意をお聞きしたいと思いますが、先ほど、これからの日本の教育再生を図る場合には、教育に対する公財政支出をどう考えるかという視点もどうしても必要だろうと思います。財政当局はこうした財政支出の縛りというのを非常に嫌うのでありますが、しかし、第三期科学技術基本計画では一つの数字がきちっと出ておるわけでございます。

 この問題についても国民の関心が高まっておりまして、あなた質問するなら、総理に、教育に金をかけてください、こういうことをしっかり言ってくれ、こういう話も来ておるわけでございますが、教育再生を、内閣の最重要課題ということであれば、まさに教育振興基本計画の中に織り込んでいかなきゃならぬと思いますが、ぜひ、総理の決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、総裁選挙のときから申し上げておりますように、教育改革、教育の再生は最重要課題である、このように申し上げてまいりました。

 その考え方のもとに、教育基本法を昨年の臨時国会で改正したわけでありますが、そして、社会総がかりで教育の基本にまでさかのぼって改革を徹底していく、そして教育新時代を開いていきたい、このように決意をしているわけであります。

 六十年ぶりに改正された教育基本法で明確にされた新たな教育の目的や理念に基づいて、教育振興基本計画を早期に策定してまいります。その際には、政府として、教育投資の充実に関する考え方など、中教審の答申を踏まえまして、何を充実し何を効率化するかなどの中身についての吟味をしっかりと行いながら、教育改革が実効あるものとなるよう計画の策定に取り組んでまいります。

 なお、教育再生を推進していくためには教育予算の内容の充実が重要である、このように私も認識をしております。そのもとに、十九年度予算案においては、教育再生を推進する施策について重点化を図るなど、めり張りをつけた真に必要な教育予算の充実に努めているわけでありますが、今後ともこの考え方に基づいて進めてまいりたいと思います。

河村(建)委員 ありがとうございました。教育現場、大いに元気が出るお話だと思っております。

 あと残りの時間で、最後の質問になりますが、宇宙開発の問題について、ぜひお伺いしておきたいことがございます。

 総理は、このたびの施政方針演説で、宇宙分野、さらに海洋分野も含めて所信をお述べになった。特に将来的な可能性に言及されたということ、アメリカ、中国等も、国家戦略として、国家元首、大統領みずから中心になってこの問題に取り組んでおりますが、日本の総理大臣がこの宇宙開発、宇宙の問題、方向性をきちっと出されたということは画期的なことだ、初めてのことだ、こう思って、評価いたします。

 日本の宇宙開発の技術は、御案内のように、あの小惑星イトカワ、これは大宇宙から見ればほんの点の、米粒のような、そこへ「はやぶさ」を軟着陸させる、こういう技術を持っておるわけでございます。これは、限られた宇宙予算、これもこれから伸ばしていかなきゃいけない分野だと思いますが、国際的にも高い評価がございます。

 宇宙の実利用の面といいますか、これに目を向けてみますと、これもややもすると、自主的な技術といいますか自主技術の獲得、これを集中的にやってきましたが、どうしても技術開発の比重が大きくなって、必ずしも利用分野に十分これが進んでいないという嫌いがあるわけであります。

 「第三の波」著作、有名な未来学者のアルビン・トフラー氏は、新著「富の未来」、この中で、イノベーションが進むことによって二十一世紀の富は宇宙からつくり出される、このような指摘をいたしております。宇宙は、その極限的な環境から最先端の技術が結集して取り組まれる分野でございまして、これもイノベーションの源泉となる大きなポテンシャルを秘めている、こういうことが言えると思います。

 このような観点に立ちまして、現在、自民党と公明党とで、宇宙基本法案といいますか、まだ仮称でございますが、これを検討いたしております。与党の合意ができ次第、国会に出させていただく。その間、民主党との合議もさせていただきたいと思っておるところでございます。

 この法案は、従来の研究開発を中心としてきた我が国の宇宙政策というものを、国家的な戦略として宇宙政策を展開していきたいということで、産業振興、外交、安全保障、そして研究開発、この三本柱で政策を展開したいと思っております。そして、国家戦略として取り組んでいくということですから、省庁横断的な宇宙政策の企画立案、総合調整を図るということが大事でございます。政策の意思決定を一元化して、内閣に総理大臣を本部長とする宇宙戦略本部を創設したい、同時に宇宙担当の大臣も置く、こういう方向が大きなねらいになっております。

 宇宙の平和利用につきましては、昭和四十四年、これは佐藤内閣のときでありますが、国会決議がございまして、これは、平和目的ということに限定をする、こういう国会決議がございます。

 平和目的ということは非軍事ということになっておるわけでありまして、政府はこれまで、宇宙の平和利用として、非軍事の枠内でこれを取り組んできたわけであります。しかし、欧米、ロシア、諸外国は、これと異なる解釈をとって、宇宙条約等によれば、偵察衛星のような、直接的な攻撃力、殺傷力とならないこうした防衛目的の軍事衛星は平和目的に入り得るんだということで、実際に打ち上げをやり、運用をいたしておるところでございます。

 昨今の世界情勢、技術力の進展を踏まえますと、独自の情報収集能力を高めることが我が国のこれからの存立を確固たるものにしていくと考えます。私は、我が国としても、平和目的の考え方、これは国際標準に則したものに変えていく必要があろう、こう思っております。

 総理としても、我が国が、国家的な戦略としての宇宙政策といいますか、この位置づけ、これを国を挙げて取り組む必要性についてどのようにお考えか、また、平和的目的の解釈をそういう意味で世界のスタンダードに合わせていくという認識をお持ちいただけるであろうかということをお伺いしておきたいと思います。

 と同時に、最近、中国の衛星の破壊実験がございました。宇宙にごみが散乱するという問題、それだけではなくて、これが宇宙の軍拡につながっていくという懸念がございます。これは政府としても既に懸念を表明されておりますが、意図的に衛星を破壊するような行為を禁止する国際的な枠組みを構築する、こういうことに我が国も積極的にかかわる必要があろうと思いますが、あわせて総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 宇宙開発といえば、一九六〇年にケネディ大統領が人間を月に送るという計画を発表したわけでありますが、その段階ではまだ科学技術的にいろいろな困難な問題もあったわけであります。しかし、結果としてそれは成功したわけでありますが、いかに人間には可能性があるか、そして宇宙には可能性があるかということを示した例ではないか、こう思っております。

 私も、施政方針演説におきまして、宇宙に関する分野は二十一世紀の日本の発展にとって極めて大きな可能性を秘めていることを申し上げました。政府としては、先端的な研究開発、宇宙産業の競争力強化とともに、総合的な安全保障を含めた幅広い宇宙利用の推進を図ることが重要であると考えておりまして、関係省庁が一丸となって戦略的に施策を推進してまいりたい、こう考えております。

 また、先ほど先生が御指摘になった昭和四十四年の国会決議における「平和の目的に限り、」という文言については、この解釈をめぐって議論があるのは事実であります。

 確かに、御指摘のように、情報の収集、その分析というのは、我が国の平和と安全を確保するためにも極めて重要でありますが、宇宙に関する現在の施策は御指摘の国会決議の趣旨を尊重して行われているところでございまして、この決議の解釈を見直すか否かについては、まず国会において御議論をいただきたい、このように認識をしております。

 なお、現在、与党におきまして河村先生を中心に宇宙基本法に関する議論、検討がなされておりまして、政府としても関心を持ってこの議論を見守っていきたいと思っております。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 もう時間が来たようでございます。安倍総理は、私と同郷でございますし、一度選挙戦をともに戦った間柄でもございますが、教育再生を最大の国家課題といいますか内閣課題にしておられます。私もしっかり御支援を申し上げたいし、成果をしっかり上げてもらいたい。山口県民はもとよりでありますが、国民注視、監視、そして期待をいたしております。どうぞ頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 この際、石破茂君から関連質疑の申し出があります。丹羽君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石破茂君。

石破委員 河村委員に倣いましてきょうは何の日めいたお話をいたしますと、あさっては何の日でしょうかというと、建国記念の日なのですね。昔で言うがところの紀元節であります。

 私は、国会議員になってずっと、それ以前もそうですが、国民の祝日は必ず自宅に国旗を掲げる。そして建国記念の日には、鳥取市内の聖神社という神社がありますが、必ずそこにお参りをして、建国祭の行事に参加をして、そういうようなことを続けてまいりました。そういう人間であります。

 国を愛するというのはどういうことなのかということですが、私は、愛という非常に面映ゆい言葉が声高に語られるとするならば、それにはいささかの違和感を覚えざるを得ません。愛というのは、本当に口にするだけでとても面映ゆいのですが、それはすぐれて内面的なものなのだと思っております。強制をされるものでも何でもないと思います。

 そしてまた、いいところばかり見るというのは、それはある意味、ラブ・イズ・ブラインドというのか恋は盲目というのか、あるいはあばたもえくぼというのか、それは本当の愛とは言わないんだろうと思います。いいところももちろん見る、だけれども、悪いところもちゃんと見る勇気を持って初めてそれは愛の名に値するのではないか。生意気なことを言えた義理ではありませんが、私自身、そういうような反省をしながら考えておるところであります。

 総理は憲法改正ということを掲げておられる。私はそれに全面的に賛同するものであります。私はなぜ国会議員になったか、なぜ自由民主党に所属をしておるか、それは憲法改正というのを掲げた政党だから。だから私は国会議員をやり、自由民主党に所属をする、誇りを持っておるつもりであります。

 よく、憲法改正というと、国民には余りぴんと響かないとか関心を持たれないとか言いますが、私はそうではないと思っているのです。こちらがきちんと語りかければ国民の皆様方はきちんと答えてくださる、そのように思っているのですね。憲法改正、それは、どこをどのように改正し、どのような国をつくりたい、そのことをきちんと示し、国民に対して語りかけ、説得をする、その努力を私は怠ってはならないと思っているのであります。

 そして、某テレビ番組で私の論争相手でありますある方が「憲法九条を世界遺産に」という本を出されました。これはやたら売れているんですね。何十万部も売れて、ベストセラーになっている。私はその内容にはいささか疑義を持つものでありますけれども、それはそれとして、そういうような内容の本、真摯に書いてある本です、それが多くの国民に読まれているという事実。

 もう一つ指摘をしておかねばならないのは、私は、昭和三十二年の生まれであります、ことし五十歳になりました。総理は、たしか昭和二十九年の九月二十一日でしたか、お生まれだったと思います。戦後生まれの初の総理と言われますが、もう一つは、ある意味自分もそうなのですけれども、戦争を知らない世代の初めての総理なのだということ、私はよく認識をすべきなのだと思っています。

 私は、憲法調査会、憲法委員会に長く籍を置いておりますが、その場である委員の方がこういうことをおっしゃいました。戦争を経験した世代の方々が毎日毎日二千人ずつ、大体数字を丸めれば二千人ずつお亡くなりになっているという事実、十日で二万人ずつお亡くなりになっているという事実、このことを我々は忘れるべきではないと。つまり、戦争を実際に経験された方々が、なぜあの戦争になってしまったのか、そしてなぜ途中でやめることができなかったのか、どうしてあんなに悲惨な負け方をしたのか、そのことを身をもって体験しておられる方々がこの我々の生きている世代におられるうちにという言い方をあえてするとするならば、そのときにきちんと憲法改正をしなければいけないのであって、あの戦争を知らない者ばかりでこの憲法を論じていいとは思わない、だからこそこの憲法改正の議論は急がねばならないと。野党の方ですが、私は、本当に見識のある御発言だと思って、傾聴したところであります。

 私は、集団的自衛権というのは認めるべきだと思っています。そして、それは必ずしも憲法改正によらずして可能なことなのだと思っています。なぜ集団的自衛権というものを、つまり、国連憲章五十一条によって主権国家の当然の権利、自然権として認められ、国連加盟国百九十何カ国の中で我が国だけが行使できないと言われているこの権利、これを行使することがいかなる国益に資することであるのか、あるいは行使できないとすることがどのような国益に資することであるのか、このことをきちんと論ずることが私は何よりも必要なことなのだと思っております。

 まず、この点について総理の御見解を承りたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 ただいま集団的自衛権の問題について御質問がございました。

 日本を取り巻く状況、また世界の状況は、この六十年で大きく変化をしているわけでございまして、いわば、大量破壊兵器の拡散、テロとの闘い、地域紛争の続発等があるわけであります。その中で、日本はこの六十年間、経済成長を果たし、経済大国となり、そしてまた、世界において大きな貢献をなすことができる国になってきたと言ってもいいのだろう、こう思うわけであります。

 そして、我々政治家は、国民の生命と財産を守るという大きな責任がある中において、集団的自衛権の行使を含めて、今までの解釈と個別具体的な類型との関係において、我が国の平和と安全を守るために研究をしていく必要がある、研究を進めていかなければならない、私はこう考えているところでございます。

石破委員 総理のお答えとしては本当にそれがぎりぎりだろうと思いますけれども、繰り返して申し上げますが、私は、あの戦争を体験した世代の方々がおられるうちにこの議論はきちんとしておかねばならないと思っているのです。なぜあの悲惨な戦争になったか、なぜとめることができなかったか、そのことについてきちんと認識をした上でこの議論はしなければいけないと思っているのですね。

 私は、党内の議論でもよく使うのでありますし、そしてまた、若い方々にもよく申し上げている、久間大臣には御関心を持っていただき、いろいろとアドバイスもいただいたところでありますが、猪瀬直樹さんが書いた「日本人はなぜ戦争をしたか 昭和十六年夏の敗戦」という本。これをぜひ多くの方に読んでくださいということを私はいつも申し上げている。総理もあるいはお読みになったかもしれません。なぜ昭和二十年夏の敗戦ではなくて昭和十六年夏の敗戦なのかということであります。

 昭和十六年四月一日に、今のキャピトル東急ホテルのあたり、首相官邸の近くですね、当時の近衛内閣でありますが、総力戦研究所という研究所をつくりました。そこには、ありとあらゆる、官庁の三十代の俊才、あるいは軍人、あるいはマスコミ、学者、三十六名が集められて、どのようなテーマが与えられたか。もし日米戦わばどのような結果になるか、自由に研究せよというテーマが与えられた。

 八月に結論が出た。緒戦、最初の戦いですね、これは勝つであろう。しかしながら、やがて、国力、物量の差、それが明らかになって、最終的にはソビエトの参戦、こういう形でこの戦争は必ず負ける、よって日米は決して戦ってはならないという結論が出て、八月二十七日に、当時の近衛内閣、閣僚の前でその結果が発表されるのであります。

 それを聞いた東条陸軍大臣は何と言ったか。まさしく机上の空論である、日露戦争も最初から勝てると思ってやったわけではない、三国干渉があってやむを得ず立ち上がったのである、戦というのは意外なことが起こってそれで勝敗が決するのであって、諸君はそのようなことを考慮していない、この研究の成果は決して口外しないようにと言って終わるわけですね。

 なぜあの戦争は負けたか。要は、輸送というものを徹底的に軽視したからですよ。つまり、輜重兵、輸送に当たる兵隊さんのことですね、陸軍では、輜重兵が兵ならば、電信柱に花が咲く、輜重兵が兵ならば、チョウチョウ、トンボも鳥のうちと言われて、そして、南方を幾ら占領しても、輸送する船が要る。しかしながら、それに護衛がつかない。なぜならば、帝国海軍は、日本海大海戦もこれあり、艦隊決戦ということを重視したのであって、商船を護衛するようなのは、それは腐れ士官の捨てどころだ、このように言われた。

 しかしながら、戦争を始めるに当たって損耗率というのを計算しなきゃいけない。つまり、南方から本土に向かう船のどれだけが沈められるかというデータがなければ開戦に踏み切れない。そんなデータはどこにもなかった。帝国海軍にもなかった。どこかないか、とにかく出せということで、ようやっと引き出してきたのが、第一次世界大戦でドイツの潜水艦にイギリスの商船が沈められた、その損耗率の一〇%、よしよし、これだということでこの数字を入れた。それならばやれるなということであの戦争になってしまった。しかし、その数字がでたらめであって、結果として、この国はああなってしまうわけですね。

 なぜあの戦争になったのか。それは、政治をつかさどる者が、おのれも知らず、そしてまた相手の国力も知らずそんなことできないじゃないかと言ったらば、きさまは大和魂をどこに置いた、それでも日本人か、こう言われてしまって、前線に飛ばされるか、首になるか、それだったらば、山本七平さんに「「空気」の研究」というのがあるけれども、やっちゃえ、やっちゃえということで、とうとうあんなことになってしまったということだと私は思っています。

 つまり、集団的自衛権というものは私は認めるべきだと思っています。例えばアメリカと日本との関係においても、アメリカは日本がやられたら助ける義務を負う、日本はアメリカがやられても何もできません、そのかわり基地を提供します、今そういう関係に立っているわけですね。非対称的双務性と言われるゆえんであります。本当にそれでいいのだろうかということは考えねばならぬでしょう。私がやられたらあなた助けに来てね、あなたやられたら私知りませんからね、それで本当に同盟関係が続くのかという当たり前の話。持っているけれども使えない権利なんて本当にあるのかという話。

 そして、何よりも総理にお尋ねしたいと私が思うのは、日本国憲法の九条のどこから集団的自衛権が認められないという結論が導き出されるのか。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」一項ですね。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを有しない。国の交戦権は、これを認めない。これは九条二項ですね。このどこから集団的自衛権は認められないというのが出てくるのか、ロジカルにどこから出てくるのかという議論はしなきゃいかぬでしょう。そして、本当にこれで日米の信頼関係が保てるかということ。

 のみならず、NATOというのは集団安全保障の機構でありますけれども、ベースになっているのは集団的自衛権ですね。そして、冷戦が終わり、もっとちゃんとした言い方をすれば冷戦に勝利している。じゃ、冷戦が終わったらNATOは要らなくなったか、そうではないですね。NATOにはどんどん加盟国がふえているという状況ですね。

 もし日本がこのアジアでそういうような組織をつくろうとしても、集団的自衛権がなければできないわけ。アジアのどんな国が不当な攻撃を受けたとしても、それに対して助けるということはできないわけ。本当にそれで抑止力がきくのかという議論もしていかねばならないと私は思っています。

 しかしながら、集団的自衛権を認めるに当たっては、私は、前の戦争、なぜこのようになったのかという総括をきちんとしなければならないだろう。そしてもう一つは、いろいろな理由があったにせよ、アジアの人々に大変な迷惑、御苦労、つらい思い、犠牲、これを強いたことは事実であって、このことはきちんと反省をしなければならぬであろう、それが前提だと私は思っているのです。それを踏まえた上で集団的自衛権の議論というものをきちんとするべきではないか。

 私がやられたら助けてね、あなたがやられたら知らないよ、そういう国家であって本当にいいのかということを総理は問われるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、さきの大戦の結果、なぜそうなったか、そのことについて我々謙虚に受けとめながら、その教訓に立って日本の平和と安全、自由と民主主義を守り、そして日本の国民の生命と財産を守る、この職責に真摯に向き合わなければならない、これは当然のことであろう、このように思います。

 そのときの判断がどうであったか、これは、確かに国内の分析もありますが、そのときの国際情勢というのもあるわけでありまして、それは相互作用でもあるわけでありますから、国際情勢と分離して自己完結ではないということも当然のことであろうと思います。であるからこそ、その国際情勢をどうして見誤ったのかということもあるんだろう、こう思います。

 特に補給の概念。日露戦争においては、当時の児玉源太郎は、補給の概念ということを念頭に置いたからこそ、シベリア鉄道の拡充との関係で、むしろ開戦を早めるべきだと彼は考えた。しかし、物流の持つ重要性を彼は確信して、この重要性を確信しながら、むしろ産業を強化する、興していくことが安全保障につながっていくという考えに至ったということでございます。

 そうしたさまざまな観点から当然分析をしていくことは大変重要であろう、このように思うわけでありますが、歴史は繰り返すといいますけれども、全く同じ形で繰り返すことはないわけでございます。今日の日本をめぐる国際情勢が違います。そしてまた、もちろん、戦後六十年、日本が歩んできた道、平和と民主主義、そして、自由を守り、基本的な人権を守り、法律の支配を確立したこの六十年の私たちの歩みに対しては誇りを持っていいのではないだろうか。

 そして、シビリアンコントロールであります。防衛庁の省昇格については、これはまさに日本のシビリアンコントロールと民主主義の成熟に対する自信のあらわれでもある、このように私は考えるわけでありますし、アロヨ大統領もそのように私に発言をしておられたということは紹介させていただきたい、このように思うわけでございます。

 そこで、その上に立って、集団的自衛権の行使の問題、また憲法の改正についても石破委員は指摘をされたわけでありますが、我々は、この現在の社会において、この国際状況の中において、国民の生命と財産を守ることに大きな責任を持っているわけでございます。その中で、日米同盟の重要性、そして、その重要性というのは、我々、大体それは認識は一致をしているんだろうと思いますが、その中で、日米同盟の強化と維持が大切であって、それはやはり信頼関係の基盤の上に成り立つという中において、現在の国際状況を見ながら、個別具体的な類型に即して、憲法が禁止をしているところの集団的自衛権に当たるかどうかという研究を進めながら、より一層日本の安全を向上させ、また地域の安定を向上させていくために考えていくということは当然ではないかと思います。

    ―――――――――――――

金子委員長 議事の途中ではありますが、ただいまバレンティン・ドミニカ共和国下院議長の御一行が本委員会にお見えになりました。この際、御紹介いたします。

    〔起立、拍手〕

    ―――――――――――――

金子委員長 議事を続行いたします。石破茂君。

石破委員 それでは、日米関係ということに焦点を当てたいと思います。今、総理もお触れになりました。

 平成十四年に情報公開になった資料ですが、これは総理のあるいは原点ではないかと私は思っているのですけれども、昭和三十年七月二十七日、ワシントンにおける外務大臣重光葵氏と合衆国国務長官ダレスとの会談であります。そこに同席をしておられたのは、総理のおじい様であられる岸さん、そしてまた河野一郎さんが同席をしておられました。私は、この記録を読んで、昭和三十年にこういうことを考えていた人がいたということに、ある意味、胸を打たれる思いがしたのであります。

 重光葵は、ミズーリ号で降伏文書の調印をした人であります。それから十年たって、自分の手でこの日米の関係を変えたいという思いがあったのでしょう。重光はそこで新しい条約の案も提示をしているのであります。その条約の内容は何であるのか。日本は集団的自衛権を行使することができる、グアムまでは、西太平洋ですね、アメリカを守ることができる、よって、段階的に米軍は撤退すべしということが、この重光が提案した条約の内容であります。

 そのことの議論が、激論が交わされた記録がここに残っております。そのときにダレスは何と言ったか。日本の憲法でそのようなことができるとは聞いていない、そもそも自衛隊にそのような能力はない、だからそのようなことは受け付けられないと言いました。

 しかし、その前の国務省の中のやりとりで、日本に集団的自衛権を認めさせる利益よりも、日本の施設・区域、基地ですね、それを自由に合衆国が使える利益の方がはるかに大きいのである、したがってこの提案はのめないのであるということを言っている。当時の合衆国からすればそうでしょう。自衛隊にそのような能力もなかったし、そしてまた、憲法はそのような考え方を許していなかった。

 しかし、それから五十年がたって、いまだにそのままでいいのかということに我々は思いをいたすべきではないでしょうか。自衛隊の能力は向上した。そして、まさしく総理が憲法について研究しようとおっしゃっておられる。それはひっきょう何をもたらすものかというと、日米の関係が根底から変わるということです。義務として米軍を駐留させるのではなくて、我が日本国が、日本人が、徹底した議論の結果、自衛隊にはこの能力が足りない、あるいは、日本の独立と平和、極東の平和と安全、世界の平和と安全のためには、かくかくしかじか、かくなる理由で米軍を駐留させる。義務ではなくて日本人の選択の結果として在日米軍を置く、これがあるべき姿だと私は思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私も、この重光葵氏が訪米した際の話について祖父から聞いております。重光葵氏は、まさにミズーリ号で降伏文書にサインをした。それと同時に、いわゆるA級戦犯でもあったわけであります。

 しかし、その提案をした際にはほとんど米側から相手にされなかったのも事実であった。なぜならば、当時は旧安保条約の状況であって、この旧安保条約が今の安保条約と大きく違う点は、これはいわば、日本がやめようと思ってもやめられないわけであります。アメリカの意思いかんにかかっているわけでありまして、新条約にするにも、アメリカが判断しなければ新条約にならないというものであります。一条から五条までしかない、極めて片務的な、まさに占領軍としての駐留米軍をそのまま認める、そういう条約であっただろう。

 何とかそれを対等なものにしたいというのがそのときの政治家の悲願であって、そして、その後、安保の改定を行い、先ほど委員が御指摘になったように、五条において、共同対処をする、いわば米軍に日米の防衛義務がある、こういう解釈もありますが、共同対処をしていく。そして六条において、日本の安全、そして極東の平和と安全のために日本の基地を米軍が使うことができる、こうなっているわけでございます。そして、その中で、この安保条約の前文には、両国に集団的自衛権があるということも書いてあるわけでございます。ちなみに、日ソの五六年宣言の中にも書いてあるということもつけ加えておきたい、このように思うわけでございます。

 そこで、やはり我々は、同盟関係というのは対等な関係でなければずっと安定的に維持していくことができない、だからこそ、これは当時改定をしなければこの安定性が失われるという危機感も持っていたんだろう、このように思うわけでありますが、この安定性を確保するということは、強化にもつながり、当然それは日本の安全にも資するのではないだろうか、こう思うわけでございまして、そうした観点からも、私は常に、強化をしていくために何をすべきかということを考えなければならない。そういう観点も含めて、また国際情勢も変わった中において、集団的自衛権、何が禁止されている集団的自衛権の行使に当たるか、類型ごとに研究をしなければならないと思います。

石破委員 午前はもう終わりますが、私は、米軍は削減すべきだと言う人に限って、九条は守れ、集団的自衛権は認めないと言うのは倒錯した議論だと思っているんですね。つまり、米軍を削減すべきと言うのであれば、さればこそ集団的自衛権を認め、米軍駐留を義務として受け入れるという関係からは脱皮すべきだというふうに言わないと、論理的には全く通らないんですね。そこの倒錯した議論というものを一回整理しなければ、このお話はちっとも前に進まないと思っている。

 繰り返して申し上げますが、本当に、戦争を経験した世代の人たちが生きているうちでなければ、私はこの議論というのは進めることができないと思っているんです。ですから、総理からきちんと語っていただき、ビジョンをお示しいただく。私どもは、それを最大限サポートしてまいりたいと思います。

 午前は以上をもって終わります。

金子委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として厚生労働省労働基準局長青木豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑を続行いたします。石破茂君。

石破委員 午前に引き続いて質疑をやらせていただきたいと思います。

 私は、集団的自衛権を認めるべきだということを申し上げました。そして、それは必ずしも憲法によらずして可能であるということを申し上げました。

 しかし、そこにおいて必要なのは、午前も申し上げましたが、どういう歴史認識を持つかということであります。きちんとした歴史認識なしに集団的自衛権ということを論議した場合に、場合によっては、アジアの諸国から、かつての大東亜共栄圏みたいな、そういう批判が起きかねないことを私は危惧するものであります。

 私たちが子供をしかるときに、子供が、だって、みんなやってるもんとか、だれだれちゃんもだれだれちゃんもやってるもんと言うことがありますよ。みんながやってるとか、だれだれがどうしたとか、そういうことではない、あなたがよくないことをしたのをきちんと認めなさいということを私たちは言うことがあります。

 私は、自虐史観というのは、それはよいものだと思いません。すべて日本人が悪かったというのはよいことだと思いません。しかし同時に、仮にあえて名づけるとするならば自慢史観、すなわち日本は正しかったということばかり言うのも、私はいい見方だと思っていないのであります。

 きちんとした歴史観を持って集団的自衛権を論ずるべきだと思いますし、同時に、研究するというふうに総理はおっしゃっておられます。それはそのとおりだと思います。

 しかしながら、研究の中身は何かというと、集団的自衛権行使を可能とする、そして憲法改正によらずしてもそれは可能であるとするならば、それは安全保障基本法みたいなものが必要でしょう。そこにおいて、例えば、日本国は、国連憲章第五十一条に定められた自衛権を保有し、行使することができる、そう書くことは考えられるでしょう。

 それだけではだめなのであって、武力攻撃事態法というのがありますね、小泉内閣において、防衛出動の場合にどういう手続を踏むかということが書かれているものであります。あれを集団的自衛権を行使する場合にはどうするか、そういう手続法が必要であります。そして、現行自衛隊法は、個別的自衛権による防衛出動しか書いてありませんから、それを集団的自衛権による出動という規定も必要でありましょう。

 先ほど申し上げましたように、日米の関係が変わるとするならば、私は一つのモデルはANZUS条約だと思っているのですが、日米安全保障条約をどう変えるか、そして地位協定をどう変えるか。つまり、法律が三本、条約が一本、協定が一本、それをセットにして、さあ、これはどうなのだということを提示していかなければ、私は議論は進まないと思っているのです。

 抽象論ばかり言っても仕方がなくて、どのような法律をどのように変えるか、どのような条約に変えるか、まさしく重光さんが提案したようなものであります。そして、日米地位協定はどう変わるのか。

 午前の最後でも申し上げましたが、米軍は撤退すべし、削減すべしと言う方に限って、集団的自衛権は認めてはならない。これは論理倒錯以外の何物でもないのであります。そこをきちんと押さえた上で、政府として、あるいは自由民主党として、きちんと提示をすべきではないのか、私はこのように考えております。

 私が小委員長を務めます自民党の防衛政策小委員会では、そのことをずっと議論してまいりました。まだ仮の案ではありますが、このような法律、このような条約、そしてこのような協定、それを提示いたしております。

 どうか、政府におかれて、研究するとおっしゃるからには、その具体論まできちんと踏み込んで研究をし、国民に問うていただきたい。それは、本当に戦争で悲惨な体験をされた、そういう方々が現役でいらっしゃるうちにきちんとやることが必要だということを申し述べておきたいと思います。

 次に、いわゆる一般法についてお尋ねをいたしたいと思います。

 ことしの七月であったかと思いますが、イラク特措法はその期限が参ります。そして、十一月の初旬にはテロ特措法の期限が参ります。私は、イラク特措法も、そしてまたテロ特措法も、我が国の国益、そしてまた国際社会における責任、そして日米同盟の信頼強化、そのために絶対に延長していかねばならないものだというふうに考えておりますが、特措法でありますがゆえに、必ず期限が来る。そして、そのときに発生した事態にしか対応することができない。したがって、必ずしも最も迅速で最も的確な対応ができるとは限らない。だからこそ自民党は、さきの選挙において、一般法あるいは恒久法を検討するということを掲げ、国民の支持をいただいたと思っております。

 これも自民党の小委員会において、こういうことであるべきだという提示をいたしました。そこにはいろいろな議論がありましょう。国連の要請を必要とするのかしないのか、あるいは本当に人道復興支援や後方支援だけでよいのか、あるいは危険への接近ということもある意味において認めるべきではないか。

 なぜならば、憲法九条によって明文で禁ぜられているのは、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇または武力の行使なのであって、仮にどこかの地域に自衛隊が派遣をされたとする、そこにNGOが行ったとする、選挙の監視団が行ったとする。彼らに危害を加えられたときに、助けにも行けなくて本当にいいのか、あるいは彼らを警護することができなくていいのか。それは憲法九条のどこに触れるかといえば、触れるはずがないのですね。それは憲法論ではないはずなのであります。そういうこともきちんと示した上で、私は、できるだけ早い機会にきちんとした議論をして、一般法というのを問うべきだ。

 そこにおいて重んぜられるのは、そういうことを言いますと、自衛隊を世界じゅうどこにでも派遣をするつもりなのかというふうに言われます。そうではありません。一般法には、いろいろなメニューを提示して、ある事態において日本が国益のために各国と協調してやるのはこれとこれとこれである、ある場合には輸送であり、ある場合には治安維持を、現地の当局のサポートをするということで、そういうメニューを提示した上で、必ず国会の事前承認にかける。それがまさしくシビリアンコントロールというものでしょう。国民から選ばれた国会議員が、政府が何を言おうとも、それはだめだと言うならば出さない、これが文民統制というものだと私は思っている。それができることが、国民から選ばれた国会議員の責任であり、誇りであると私は思っている。

 もっと文民統制をきちんと強化し担保した上で、一般法というものをきちんと制定し、日本の国益、国際社会における責任を果たすべきである、私はかように考えますが、総理の御見解を承ります。

安倍内閣総理大臣 私も基本的に石破委員の考えと同じ考え方でございます。

 そこで、一般法についてでございますが、我が国として的確な協力の推進を図る必要は、国際平和協力のための多様な取り組みに機動して対応して、我が国として的確な協力の推進を図る必要があるというふうに思うわけでありますが、そこで、この国際平和協力のためのいわゆる一般法の整備については、世界の平和と安定に一層貢献するためにも、与党における議論を初め、国民的な議論の深まりというものを踏まえて検討をしてまいりたいと考えております。

石破委員 私は、総理、集団的自衛権でもそうですけれども、この一般法においてもそうですけれども、そういうことをやると、日本は何こそするかわからない、だからできないようにしておこう、そういう考え方はとるべきではないと思いますよ。

 戦後六十数年、我が国は、平和主義に徹し、文民統制に徹し、民主的な、そういうような政治をやってきたはずです。そして、自衛隊がティモールに派遣された。イラクに派遣された。どこでも、本当にこんなすばらしい組織があるのかと言われています。私が大臣のときもそうでした。イラクに自衛隊を派遣した。デモが来ました、そういう報告が来たんですよ。私は、ついに自衛隊帰れというデモが来たのかと思いました。そうではありませんでした。自衛隊はぜひいてほしいというデモが来たのであります。

 東ティモールの当時のグスマン大統領が防衛庁に来られました。元首です、元首が防衛庁に来られた。何をおっしゃったか。自分はいろいろな国の軍隊を見てきた、だけれども、日本の自衛隊のように、現地の人を見下さず、ともに汗を流し、ともに笑い、ともに涙してくれる、こんな組織があるとは自分は思わなかった。まさしく日本の誇りだ、私はそのように思って、本当にありがたい思いをしたところであります。

 私たちは、もっと自信を持とうと思う。自信を持ち、誇りを持ち、そしてきちんとした責任を果たしたいと思う。そのために、私は、集団的自衛権の問題も、あるいは一般法の問題も、恐れずに、逃げずに、正面から語るべきだ、かように思う次第であります。

 次に、いわゆる核の問題についてお話をさせていただきたいと思います。

 非核三原則についてであります。つくらず、持たず、持ち込ませず、これが非核三原則ですね。私は、結論から申し上げれば、これは堅持すべきものであると考えております。しかしながら、何にも議論をせずに堅持すべきであると言っても、これは何の意味もない。これは下手すると、知らず、語らず、考えずという変な三原則になっちゃうんですね。知らず、語らず、考えず。とにかく非核三原則を維持しますと言っていることは、何も語らないに等しいのであります。

 なぜ日本は核を持たないことが国益に資するのか、そして、なぜ核を持たなくても抑止力が維持できるのか、そのことをきちんと示すことが私は政治の責任である、このように考える次第であります。

 では、なぜなのかということを申し上げます。

 一つは、エネルギーのことを無視して語ることはできません。我が国は、電力の四割を原子力発電によっているのであります。仮に核を持つということになれば、NPTを脱退しなければならない。そうすると、燃料供給を可能にしている、七カ国と結んでいる協定はまず破棄されると考えるべきでしょう。原子力燃料も永遠ではないのであって、再処理ができない限り、今あるものが終わればそれはとまってしまうわけですね。では風力発電か、では太陽光発電か。原発一基分の電力を起こそうと思えば、山手線の中を全部風車だらけにしてようやっと原発一基分の発電量しか賄えないのであります。エネルギーはどうするんですかということがまず問われねばならないでしょう。

 そして、唯一の被爆国たる日本、その悲惨さは総理が一番よく御案内のことだと思います。唯一の被爆国たる日本が、何でNPT体制崩壊の引き金を引かなきゃいかぬのですかということなのであります。

 NPT体制というのは、最初から議論されたように、一番最初は、フランスや中国だってこんなの入りたくないと言ったほどのシステムですよね。つまり、アメリカ、ソ連、今でいうロシア、中国、イギリス、フランス、今核を持っている国はいいよ、だけれどもあとの国はだめですよという内容であり、そしてまた、NPT体制に入っていない国はおとがめがないのであり、そして、やってしまえばやった者勝ちみたいなところもある。全然完全だと思いません。不完全なものだと私も思います。

 さはさりながら、日本が持つとするならば、あの唯一の被爆国たる日本が持つとするならば、我も我もということであちらこちらの国が持つようになる。不完全だけれども今のNPT体制を維持することと、世界じゅうが核を持つことと、どっちがよりましな世の中かといえば、不完全ではあるけれども今の方がよりましな世の中だということでしょう。その体制崩壊の引き金を我が国が引くメリットは、全く認められない。

 そしてまた、今、ミサイルディフェンスであるとか、そのような新しい抑止力というのが生まれてきている。そのことに我が国は非常な力を入れている。あるいは、我が国はその能力を保有していないけれども、精密誘導兵器というもので、国民に被害を与えずピンポイントでたたくということもできるようになっている。そのときに、なぜそれを、新たに核を持たなければ抑止力がないということを我が国は言わねばならないのか。

 そして、日米の信頼関係、すなわち、アメリカは核攻撃を受けてまで日本を守らないだろうから、だから日本も核を持ちますよということは、私は、日米体制にとって決していいことだと思っておりません。それよりは、日米の信頼性を高めるということが必要であって。

 抑止力はいろいろなものがあるでしょう。例えて言えば、余り語られませんけれども、避難するということだって、北欧なんかはみんなそうですよね。スウェーデンなんかの例を総理はよく御案内のことだと思いますよ。きちんとしたシェルターをつくる、避難訓練をする、そのことは憲法に何にも触れるものではない。やろうと思ったらできることです。きちんと避難をするということによって被害は局限することができるはずなのであります。

 抑止力というのは、避難であり、あるいは日米の核の傘の信頼性を高めるということであり、ミサイルディフェンスであり、いろいろな抑止力というものを一生懸命考えるべきなのであって、大きな国益を損じてまで核を持つ必要はないし、抑止力はそれでなくても維持できるというふうに私は考えますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 我が国は、ただいま石破委員が御指摘になられたように、非核三原則をこれは守ってきたわけでありまして、これはまた、今後ともこの姿勢に変わりがないということを申し上げておきたいと思います。

 例えば原子力基本法において、法的にも平和利用しかできないということになっています。また、NPTにおいて、日本は製造することを行わない、あるいは、もちろんそれを日本が買ってくるということもしないということでございまして、つまり、そういう意味において、条約上も、また法的にも、この三原則において核武装するということは考えられないわけであります。

 もちろん、我が国は世界の中における唯一の被爆国であります。そして、核軍縮を進めていく義務は日本にもある、日本にこそあると考えているわけでありまして、国連の場において日本が中心的に核軍縮の決議を行っているわけでございます。そういう意味におきまして、日本は、まさにそういう国として核軍縮を推し進めていかなければいけない。

 他方、いわゆる大量破壊兵器が拡散する中において、いわば抑止力ということについては日米の同盟があるわけであり、そして、この同盟関係をまさに信頼の上に強化をしていくことがこの抑止力を高めていくことにも当然つながっていくであろう、このように思うわけでございます。

 そういう中から、当然、我々としては、今後ともこの非核三原則を守っていく、この姿勢には変わりがないということでございます。

石破委員 久間大臣が一生懸命取り組んでおられますミサイルディフェンスについて、効果がないじゃないかとか、費用対効果から見たらどうかとか、本当に当たるのかねとかいうことをおっしゃる方があります。

 私は、ミサイルディフェンスが万能だとは思いません。ミサイルディフェンス、そしてまた避難をきちんとやること、訓練をちゃんとやること。北欧の国はそうやって冷戦を生き延びてきたわけですからね。そんなことやりたくないというのは、私はそれはあるべきだと思いませんよ。そしてまた、日米の信頼関係をきちんとしていくこと。その三つが重層的に重なっていってきちんと抑止力が担保できるんだということを言うことは、私は政治の責任だと思っております。

 例えば、大戦中に高射砲というのがありましたよ。B29が飛んでくる、これを落とさねばならぬということで高射砲があった。ある程度の効果はあったわけですね。高射砲要らないという人はいなかったわけです。ミサイルというのは、決められたとおりに飛んできますので、ある意味、飛行機よりは落としやすいという面もあるわけですよね。そのこともきちんと考えていかねばならぬのではないかというふうに思っておるわけであります。

 なぜ持たなくてよいのか、抑止力はどうやって維持するのかということをきちんと言っていただきたい、私はそのように思う次第であります。

 次に、北朝鮮について一言申し上げたいと私は思っております。

 六カ国協議が始まる、我が国としても総理の強いリーダーシップのもとで毅然とした態度で臨む、大変によろしいことだと思っております。

 私が何で防衛という仕事をやるようになったかといえば、それは、北朝鮮という国をこの目で見た、それが一番大きな理由なのであります。

 金正日のお父さんであるがところの金日成、これの八十歳の誕生日ということで、超党派でチャーター機を仕立ててお祝いに行くという時代がありました。平成四年のことだったと思います。

 私たち日本海側で育ちました者は、この海を渡ると恐ろしい国があるよと教わって育ちました。そしてまた、海岸には、怪しい人を見たら警察へという立て札を見て育ちました。それは、我々日本海側に育った者は、北朝鮮という国に対して決して好感は持っていなかったけれども、見ないで批判することはいかぬだろうと思って、見に行きました。

 そこで見たものは、徹底した反日であり、そして徹底した個人崇拝であり、そして徹底した国民の管理でありました。この国は、いつの日か、我が国にとって、地域にとって、世界にとって脅威になるに違いないと思って、私はそのときから防衛をやるようになった、私ごとをお話しして恐縮であります、そのように思ってまいりました。

 どういう国なのか。非難することは簡単です。しかしながら、あえて申し上げます。私は自民党の会議でも申し上げるのですが、「昭和十六年夏の敗戦」というお話をしました。あのときの日本と何が違うのか、どこが違うのか。鬼畜米英と言いました、米英は鬼である。そして、日本は神の国である、大和魂もってすれば恐るるに足らず。欲しがりません勝つまでは。ぜいたくは敵だ。足らぬ足らぬは工夫が足らぬと言って、そう言ってきたのではありませんか。

 つまり、我々の政治の目標というのは、国民が飢えに泣かない国家をつくりたい、病気になれば、けがをすれば、ちゃんとお医者さんにかかれる国家をつくりたい、望めば教育が受けられる国家をつくりたい。大それたことじゃなくて、政治の目標はそういうものであり、政府も国家も国民のためにあると思っていますが、かの国は多分その逆なのでしょう。国民が飢えに泣こうが、教育を受けられまいが、お医者さんにかかれまいが、国家体制を維持するためには我慢しなさい。何がそれを可能にしているかというと、かつての日本がそうであったように、今は戦時なのだ、戦争なのだ、あのアメリカが攻めてくるのだ、だから国民よ耐えよということでもっているのではないですか。

 しかし、お金はありませんから、例えば、戦闘機一機維持するのは物すごいお金がかかるわけですね。我がF15戦闘機、一時間訓練するのに二百万円かかる。一機百億円しますが、一時間訓練するのに二百万、これを年間百五十時間飛ばしているわけですね。きちんとした空軍を維持する、我が国でいえば航空自衛隊ですが、大変なお金がかかる、海でも陸でもそうですよ。あの国にそんな力はないがよってに、体制を維持する道具として、ミサイルを飛ばし、核を持ちということをやっているわけですね。体制維持の道具であるわけです。拉致というのだって、彼らに言わせれば軍事作戦の一つだったかもしれない。

 これをどうやって解決するのかというのは、そんなに私は容易なことだと思っていないのであります。六カ国協議は、各国の関心がそれぞれ違います。私は、拉致を解決する、当然のことです。総理、官房副長官をお務めのころ、一緒に拉致議連というものをやった。国際的な圧力を加えていかねばならないけれども、我が国はきちんとしたというよりは徹底した対話と徹底した圧力。中途半端な援助をするから、それは、将軍様がありがたくも下げ渡すぞということで国家の求心力を維持することにしかならないわけですね。体制を崩壊させるというのはどういうことなのか、かつての日本がどのようにしてこの民主主義国家に生まれ変わったかということも私たちはきちんと念頭に置く必要があるだろうと思っております。

 御答弁は要りません。もしあれば後ほどいただきたいと思います。

 次に、米軍再編について申し上げます。

 この国会に米軍再編に関する法案が提出をされます。この法律は、どうしてもこの国会において我々全力を挙げて成立をさせねばならないものだと思っています。理由は二つあります。一つは、この法律をつくることによってあの沖縄の負担がどれだけ減るか。八千人の米兵が引き揚げていく、そしてまた、家族も入れれば一万七千人引き揚げていく。沖縄の負担を減らすためにもこの法律は絶対にやらなければいけないということが一つ。もう一つは、米軍がグアムに移ることによってこの地域の抑止力がさらに確保されるという点を我々は見逃すべきだと思っておりません。

 すなわち、今の戦いというのはいきなり海兵隊が上がってというような戦いはしていないはずです。遠くからどれだけピンポイントで相手をたたくかという戦いになっているのであり、さすれば、司令部というのはミサイルから遠いところに置いた方がよりよいに決まっているのであります。そしてまた、兵力というのは分散した方がより抑止力を持ち、抗堪性があるはずなのであります。

 我が国の独立と平和のためにも、地域の平和のためにも、そして沖縄の負担を減らすためにも、この米軍のグアム移転というのは、どうしても全力を挙げて速やかに実施せねばならぬと思っております。総理の御見解を承ります。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 ただいま私どもが進めようとしている米軍の再編、抑止力を維持しながら、地元の負担を軽減していくということでございます。そして、沖縄の米兵を八千名グアムに移転するというのもこの中の一つでございます。

 これはまさに、米軍全体のトランスフォーメーションの中の一部でございますが、こうしたことを通じて、地元の負担が軽減されることによって同盟の今後の安定性は当然高まっていくということにもなるわけでありますし、その中で、部隊の展開等々を考えた上で行っていくわけでありますから、当然、抑止力を維持するということの念頭の中においてそれも行われるということではないかと思います。

 その中で、一層、我々、同盟関係を信頼の上に強化していくことによって、このトランスフォーメーションを生かして、さらに地域の安定が高まっていくことにつながっていくことも十分に可能である、私はこのように認識をしております。

石破委員 私は、いろいろなことを雰囲気で語るのではなくて、きちんとロジカルに詰めるということはとても大事なことだと思っております。

 今の米軍移転もそうですね。今、お金がどれぐらいかかるという不規則発言が野党からありました。しかしながら、このことによって沖縄の負担が減り、そしてまた日本の独立と平和、そして地域の抑止力、これが維持されるとするならば、それは当然我が国は負担すべきものでしょう。それを国民に対してきちんと問うべきものだ、私はそのように思っておるところであります。

 防衛庁が省に移行いたしました。私は昇格という言い方を使いませんで、移行という言い方をしておりますが、これは安倍内閣の大きな功績として後世に語られるべきものだと思っています。ここで大事なのは、自衛隊は今までの自衛隊ではない。存在し、訓練する自衛隊。もちろん、いろいろな活動で多くの成果を上げてきた、抑止力を維持してきた。隊員たちの努力は大変なものだと私は心から尊敬をしています。しかし、そういう自衛隊から、機能する自衛隊になっていかねばならないということだと思います。機能する自衛隊というのは、勝手に機能するわけではない。問われているのは、まさしく機能させる側の意識が問われているのだと思います。

 そして、防衛大臣をトップとして動くわけですけれども、それをサポートする機構というのは本当に今のままで万全かということは問われてしかるべきものでしょう。文民統制は本当になされているか。それは、冒頭申し上げた、なぜこの国が戦争になったかといえば、政治家が何ができて何ができないかを知らなかったからです。それを知らなければ、文民統制というのは絶対にできません。その仕組みというものはきちんとしているかどうかも問われるべきでしょう。

 あるいは、法制も問われるべきだと私は思っています。総理、自衛隊法の百条の八というのを御存じだと思います。邦人救出とはなっておりません。邦人輸送なのであります。何か海外であった場合に、自衛隊の輸送機あるいは輸送艦、それが助けに行くことができることになっていますが、どういう場合に行けるかというと、輸送の安全が確保された場合に限り行けるということになっているわけですね。

 総理が拉致に一生懸命取り組んでおられるのは、国家主権の一部である国民の生命財産、これが侵害されて、それを看過することは主権独立国家としてあってはならない、そういう思いのもとにずっと真摯に取り組んでこられたと私は認識をいたしております。だとするならば、海外で邦人が危ない立場にいるときに、安全が確保されたら行く、そんな百条の八であって本当にいいのかということであります。自衛隊法は、防衛庁が防衛省になったことによって、防衛省としてこれはどうなのだということを問うべきでありましょう。

 あるいは、九・一一と同じことがあした東京で起こったとして、日本国籍の飛行機がハイジャックされ、その飛行機がどんどん高度を下げてきたときに、領空侵犯措置は使えませんね、防衛出動も使えませんね。だとしたら、どの法律をどのように使い、総理からどんな御指示が出て、それに対する抑止力を持つのかということも、私はきちんきちんと論ぜられるべきだと思う。

 そういう問題について一つ一つきちんとした答えを出していくことが安倍内閣の責務であり、私どもはそれを全力を挙げて支えたいと思います。

 総理の御所見を承って、質問を終わります。

安倍内閣総理大臣 日本は長い間、今、石破議員がされたような議論がしにくい雰囲気が充満をしていたわけであります。また、それをしなくてもある意味では許されていたのかもしれない。

 しかし、今や世界は、大きな変化の後、状況が随分変わってまいりました。先ほど申し上げましたように、大量破壊兵器が拡散をしてきている、そしてまた地域紛争も多数勃発をしているわけであります。テロとの闘いもある。そして、日本の国際貢献も求められている中において、まさに石破委員が指摘をされたように、論理的な緻密な安全保障の議論を積み重ねていく上において、私たちは責任を果たしていかなければならないと考えています。

 もちろん、その中でシビリアンコントロールを確立させていくというのは当然のことであります。戦前の大きな反省としては、陸軍大臣は現役の軍人だった、そして、その後、総理大臣すらもそうなっていくという大きな問題があったわけでございます。私どもは、そのシビリアンコントロールをしっかりと確立をし、私はシビリアンコントロールは確立をしてきている、このように思っておりますが、さらにそれを念頭に置いていく必要があるだろう、その中で必要な法的な基盤を整えていくということは当然のことであろうと思います。

石破委員 終わります。ありがとうございました。

金子委員長 この際、斉藤斗志二君から関連質疑の申し出があります。丹羽君の持ち時間の範囲内でこれを許します。斉藤斗志二君。

斉藤(斗)委員 私は、自由民主党の斉藤斗志二でございます。

 平成十九年度予算に関連し、御質問をさせていただきます。

 一月末に施政方針演説が、力強く安倍総理のもとで行われました。美しい日本、美しい国をつくっていくんだという大きな目標を掲げられた大演説だったというふうに思います。その中に私は、スピード感を持ってこれをやり遂げるんだという若さを感じました。それから、真摯な政治に対する姿勢も感じられたところでございます。そして、結びに、全力投球をすると。全力を投球することによってこの国を変えていく、新しい形に変えていく、その意気込みを感じ、期待もしたところでございます。

 その中で、美しい国をつくっていくには美しい地方がなければならないということも触れていただきました。総理は、魅力ある地方の創出ということをうたわれたわけでございますが、この演説をしたその直後の週末には秋田県の大仙市という地方都市に行かれまして、みずから行動を起こされているんですね。そこでは、畑に入り、そして農家の人と話をし、さらに商店街にも訪問をし、地域の実情をつぶさに聞く、そして、苦情を聞きながら、また御意見を承りながら、勇気づけもされてきたということでございます。

 私は、美しい国は地方からという一つの大きな柱の中で、最初にこの秋田県の視察をされた、その御感想をまずもってお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先般、秋田を視察してまいりました。日本は、構造改革の成果によって力強く景気回復をしておりますが、午前中の議論にもありましたようなこともあり、まだまだ地方によってはばらつきのあるのも事実でございます。その中で、東北、特に秋田、青森等は、まあ山形もそうかもしれませんが、厳しい状況にあるのも事実でございまして、その中で、秋田におきまして、農家、商店街、また中小の企業を視察してきたところでございます。

 確かに今、商店街、シャッターも目立つわけでありますが、この商店街の方々は、何とか自分たちのアイデアや意欲でこの商店街を活気あるものにしたい、このような熱気にあふれていました。大曲の花火、これは日本的に有名でありますが、これを何とか商店街の活性化に結びつけることができないかと、さまざまなアイデアを出して、それを実施をしていて、それなりの成果も上げているというお話を伺い、大変私も心強く思ったような次第であります。

 地域には地域のよさがたくさん眠っているわけでありまして、そういうチャレンジをする人たちを私たちは応援を、支援をしていかなければならない、改めてそのように感じた次第でございます。

 また、農家を訪問いたしまして、寒さを生かして寒締めホウレンソウというのをつくっている、あるいはアスパラをつくっている。これはハウスで栽培をしているわけでありますが、夕刻に冷気を中に入れることによって発育を促し、また甘みを出していくという、これは付加価値をつける。これは、やはり日本人ならではの工夫であり努力であろう、こう思うわけでございます。それによって魅力ある農産物をつくっている農家。

 そしてまた、幾つかの農家が集まって営農法人をつくって、みんなで意欲を持ってやっている人たちの話を聞きました。その中には、新たに農業を始めた若い人もいました。その法人の中では、全く農業に関係のないというか、いわば、このグループの中で販売あるいは財務等々に当たる人たちもいるかもしれない。そういう人たちが新たな取り組みを行っている中において、我々も、今進めている担い手の育成をさらに進めていかなければならない、こんなように思った次第であります。

 また、アジアやアメリカに日本酒を輸出しているという酒屋さんも見てまいりました。これは長い伝統を誇る酒造メーカーでありますが、伝統の中だけに安住せず、新たな取り組みをたくさんして新製品を出している。そういう取り組みをする地場産品を、我々、育成のために支援をしていく必要も感じたような次第であります。

 私どもといたしましては、そういう頑張る地方、地域を応援していく、頑張っている中小企業や商店街を支援していくことによって、日本全体が活力ある国になるように努力をしてまいりたいと思います。

斉藤(斗)委員 総理には、私は、若さを感じています。それから、現場に入り込むその積極性も感じています。若い人は安倍さんに期待しているというふうに思います。これからも、ぜひとも地方に、また現場に入っていただきたいというふうに思います。

 そんな中で、この数年来、小泉内閣からでありますけれども、改革、それから合理化、リストラ、後ろ向き、厳しい状況の中で地方は疲弊している、しかしながら何とか光明をという中で、この数年の中で、御当地ナンバー、きょうパネルを持ってきましたが、十八つくっていただいて、今、十九番目が検討中ということでございますが、これは久々の大ヒットだなと思いますね。これは国土交通省の所管であります。

 同時に、御当地の地域活性化ということになりますと、地域ブランドというのを農林省もまた経済産業省も、それぞれ所管の中でつくっていただいていますね。この地域ブランド、現在まで百三十二まで伸びてまいりました。一つの目標をつくって、それに向かっていく、それに結集して、次の観光、また、人に寄ってもらう、その布石を幾つも幾つもつくってきた、これは久しぶりのヒットだと私は申し上げているんですけれども。

 この御当地ナンバー、私は、伊豆ナンバーが昨年御許可をいただきまして、これは選挙区なんですけれども、温泉で会議をもっとやってもらおうというのに使っていますね。それから、マラソンを始めようじゃないかという声も出てきて、その準備にも入っている。各地が勇気をもらっているんですね、これ。

 ですから、こういう勇気をもらえる施策を、お聞きすると予算はそんなに多くないので、予算少々、成果大、こういうような施策を、それと環境、観光ともに結びつけておつくりいただきたい。

 きょう、お二人にお越しいただきたいと思っていますが、冬柴大臣並びに、その後、地域ブランドに関しまして甘利大臣にお願いをしたいと思います。

冬柴国務大臣 御当地ナンバー、これは大変な要請がたくさんありまして、十六年十一月にその導入を国土交通省で決定いたしまして、その要綱等を公表したところでございます。

 十七年の五月には二十の地域から申し出がございました。そこに書かれているのは十九ですが、もう一つ、鹿児島県の奄美からも申し出がございました。しかしながら、富士山ナンバーと奄美だけはちょっと留保させていただきまして、同年七月には十八……(発言する者あり)鹿児島県が言っていますけれども、十八の御当地ナンバーが実現をいたしまして、昨年の十月十日から十七の地域でこの御当地ナンバーが走っているところでございます。ちょっとおくれましたが、つくばもことしの二月から走っておりまして、現在、十八の地域で走っております。

 なぜ富士山ナンバーが留保されたか、奄美ナンバーがなぜ留保されたか。

 奄美につきましては、残念ながら、登録台数が十万台未満でございまして、もうちょっと様子を見ようと。それから、富士山のところは、そこで見ていただいたらわかりますように、ほかは全部一つの県の中なんですが、富士山につきましては、静岡と山梨にまたがっておりまして、ナンバーを発行する運輸支局も二つに分かれているというところから、関係省庁とか、あるいはその発給についての手続が、早急に検討しなきゃいけないということで留保させていただきましたが、今、静岡、山梨挙げて大変強い要請がございますので、国土交通省におきまして、両県及び関係の官署との打ち合わせをしているところでございますが、今年度末、三月末までには前向きに検討をさせていただくことを言明させていただきます。

甘利国務大臣 アメリカのプロバスケットボールリーグに、コービー・ブライアントというスーパースターがいます。彼の父親がその昔日本に来まして、神戸牛を食べて、その余りのおいしさに感動して、やがて生まれてきた自分の子供にコーベという名前をつけました。英語読みをするとコービー。コービー・ブライアントであります。この話を私は何かの本で読みました。それが事実であるとするならば、日本の地域ブランドが世界の歴史を変えたわけであります。

 また、山形というのは、伝統工芸品の産地、ハンドクラフトの鉄瓶をつくっているところであります。そのハンドクラフトの鉄瓶、最近は余り売れません。そこで、山形の工房が、山形出身の世界的なデザイナーの奥山さんと共同で新しい鉄瓶のデザインをいたしました。私も一つ持っておりますけれども、どことなく伝統工芸に近代化のセンスが入って、日本家屋だけではなくて、洋室にも、それからマンションの一室にもフィットするような新しい鉄瓶であります。

 奥山さんという人は、あのイタリアのスポーツカーのフェラーリをデザインしている人であります。フェラーリデザインの鉄瓶でありますから、時速三百キロでお湯が沸くかもしれません。

 つまり、従来地域地域にある技術やブランドをいろいろな視点で見る、そうすると、それが地域を盛り上げるような産業に育っていくわけであります。その地域ブランドを登録して、それを振興する。マーケティングの力と、それから、それをどうやって世界ブランドにしていくかのノウハウ、いろいろな資金と人材を投入して地域おこしの材料にしていく。農産品やあるいは工芸品も含めて、今取り組んでいくところでございます。

斉藤(斗)委員 御丁寧に御答弁いただきました。

 委員席から不規則発言がたくさん出ているんだけれども、応援の声ですよ。それほど地域活性化については関心が高いし、ぜひ内閣を挙げてやっていただきたいと思います。

 冬柴大臣から、富士山ナンバーの件で、静岡県と山梨県と一緒になった二県申請だということの難しさの御説明をいただいたんですが、これは渡辺喜美担当大臣に、道州制のことについてお伺いしたいと思います。

 今、道州制、これは数県が多いんだなというのが私の感じなんですよ、なぜ隣接の隣県合併を優先しないのか。各県は、市町村合併やれやれと言っているわけですよ、県内で。だけれども、各県から隣県合併の話は出てこない。これはぜひ渡辺さんに最初に答弁してもらいたいと思いますが、私は、道州に行くまでには時間がかかり過ぎると思いますね。待てないですよ。

 なぜかというと、行政コストは削減しなきゃならない、行政の効率化は図らなきゃならない、それから権限は移譲しなきゃならない。実現性の高い施策をとるべきだと思いますが、渡辺大臣、お答えください。

渡辺国務大臣 県の合併という問題は、御案内のように、地方自治法の六条で、国が、国会が決めちゃえばできないことはございません。しかし、こういった廃県分合は特定の地域でありますから、憲法上、住民投票をやらなければいけないわけでございます。

 したがって、静岡県と愛知県は例えば東海県だと国会が決めたとしても、いや、この前選挙が終わったばかりだと住民投票で否決されちゃったりしますと、これはもう目も当てられないことになりますので、平成十六年の地方自治法改正で、合併する県の申請によってこれがスムーズにいくようにしたわけでございます。したがって、県の発意によってこういうことはできるようになっております。

 なお、北海道道州制特区がスタートをいたしました。三県合併をして道州制特区の申請をしていただければ、これで州政府ができちゃう、こういう時代になっておりますので、PRさせていただきます。

斉藤(斗)委員 市町村合併が大幅に進んで、数が半分、そういう状況になりましたので、ぜひ、行政コストの削減の観点、権限移譲の観点から、この改革を推進していただきたいというふうに思います。

 時間の関係で、次に、温暖化並びに環境問題に行きたいというふうに思います。防災担当の溝手大臣にお伺いいたします。

 異常気象が相次いでいますね。特に昨年は、豪雪でたくさんの方が亡くなられました。雪が多かったんですよ、去年は。ことしは雪がなくてスキー場も困っていて、せつない、せつないと言って困っているわけです。

 だけれども、大臣は瀬戸内が選挙区でいらっしゃると思いますが、水面も上がってきているんですよ。そうしますと、今までノーマークのところ、また想定外のところに被害がたくさん出てくる状況なものですから、これは単に瀬戸内だけじゃなくて全国のレベルなんですけれども、事前の予防、減災のための心構えをお伺いしたいというふうに思います。

溝手国務大臣 御指摘のとおりでございまして、我が国、異常気象というのがまさに到来したような雰囲気が出ております。

 平成十六年には、観測史上最多の十個の台風が上陸しております。昨年は、各地で千ミリを超える雨が降っております。世界的にも、ハリケーン・カトリーナとかインドネシアの大洪水とか、大変な状況になっております。将来はもっとひどくなるのではないかという大きな懸念が世界各地でもされておりますし、人の口にしょっちゅう上がるようなネタになってきたのは非常に残念なことでございます。

 こうした大災害、いかにして守るかということですが、先生の奥様の出身地は私と同じところですが、災害なんかほとんど経験したことがなかったところでございますが、先般も大雨によって越波しまして、従来の防潮堤が役に立たないような高波が来るような状況が起こっております。

 まず、観測や予報体制の整備をする、あるいは、ハザードマップを備えて対策を練るということも必要だろうと思いますし、また、大変なときには早く逃げる構えも、練習、訓練もやらなくちゃいけないだろうと思っております。

 政府、自治体一体となって、また、住民の皆さんとも一体になって防災対策に努めてまいりたいと思います。どうぞ御支援をよろしくお願いいたします。

斉藤(斗)委員 大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 関連して、環境問題は深刻ですね。これは若林大臣にお答えいただきたいと思いますが、二つの観点から。

 実は、アメリカ大統領ブッシュが、一般教書演説の中で初めて環境問題を取り上げたんですね。トゥエンティー・イン・テン、要するに、十年で二〇%削減するんだ。今まで、どちらかというと、アメリカは逃げていた節がある。残念なことなんだけれども、土俵に上がってこなかったという印象を私は持っているんですね。これは土俵にのってきましたよ。そして、IPCCという国連の機関が、今の地球環境は危機的だということを訴えられたんですね。

 そういうのを踏まえて、ぜひリーダーシップをとっていただきたいと思います。大臣、お願いします。

若林国務大臣 地球温暖化の動きは想定を超えて速いスピードで進んでいるというのが、世界の科学者、また、この問題に関心を持っている人の共通した認識でございます。

 この地球温暖化の問題は、先ほど異常気象による災害のお話が出ていますが、人間の健康とか食料問題とか水資源の問題、あるいはこの地球の平和と安全にまでかかわる、すべての分野にかかわる脅威でありまして、いわば安全保障の問題、そういう角度からとらえていかなきゃいけないんじゃないか、そういう認識が今高まっております。

 昨年、英国政府の依頼を受けて、スターン卿がレポートを出しました。スターン・レビューということで世界的な話題になりました。また、アメリカのゴア前副大統領の、「不都合な真実」、活動記録が映画になりまして、日本でも今公開中ですが、大変な関心を呼び、このことに大きなショックを受けたという人たちもふえているわけでございます。

 委員が御指摘になりましたように、ことしのアメリカ大統領の一般教書演説、まさに初めてこの気候変動に触れて、気候変動問題、地球の温暖化の問題というのは非常に重大な問題だということに言及しまして、お話しのように、自動車、ガソリンを十年間で二〇%削減するなど、バイオの燃料を自動車燃料に活用するというようなことも含めまして、かなり踏み込んだ発言をしました。これは、京都議定書を離脱したアメリカとしましては思い切った方向転換になっていくのではないかというふうに期待をしているところでございます。

 しかし、何といっても、我が国は、京都で決められました京都議定書の第一次約束、これをしっかり守らなきゃいけないということでございまして、六%削減の約束は確実に実施するということを前提に、今世界に協力を呼びかけているという状況でございます。決して容易ではない目標達成でありますけれども、これは何が何でも達成しなきゃいけない。来年から五年間ということになっております。

 国際的には、ことし、ドイツでG8サミットも行われますが、多分G8サミットの主要な課題はこの温暖化への対応ということになるんじゃないかというふうに予測をいたしておりますし、来年は、その後を受けまして、日本がG8サミットの議長国になるわけでございます。

 そういう意味で、今後、京都議定書の第一約束期間、一三年以降どういう枠組みで取り組むかということが大きな課題、世界的な課題になるというのがことし、来年の状況だというふうに認識をいたしておりまして、現在削減義務を負わないということになっております米国はもとよりですけれども、中国とかインドといった途上国を含めまして、主要な温暖化ガス、炭酸ガスの排出国も含めまして、世界的な取り組み、すべての国がその力、その状況に応じて協力し合うという体制をつくらないことには、この温暖化を防止することはできない。

 その意味で、我が国は、この動きに、運動に積極的にリーダーシップを果たしていく責任があるとも私は思っているわけでございまして、ことし、ドイツのG8サミットに先立って、G8の環境大臣会合が、やはりドイツで準備会合が行われますけれども、そういうような機会も活用して、世界に働きかけて枠組みづくりに努力をしてまいりたい、このように考えております。

斉藤(斗)委員 今大臣からお聞かせいただきましたように、日本の果たす役割というのは大きいんですよ。来年は日本でサミットがあるということもございまして、安倍総理には、環境での世界におけるリーダーシップをとっていただきたい。日本にはハイブリッドというすごい技術がありまして、世界の全自動車をハイブリッドにいたしますと石油の使用量は半分以下になっちゃうんですよ。ですから、安倍さんには、環境の世界のリーダーシップ、期待をしたいというふうに思います。

 時間の関係で次に参りたいと思いますが、新健康フロンティアについてお尋ねをいたします。

 新しい長寿社会、長寿だけじゃなくて健康長寿社会をつくるということの中で、間もなく発表になるというふうにお伺いしておりますけれども、特に内臓脂肪症候群、メタボリックシンドローム等々の対策等々が織り込まれてまいりますので、私は、新しい、もっとハイテク技術も利用した、そういうような戦略であるべきだというふうに考えておるわけでございますが、新しい取り組みにつきまして、これは労働大臣、よろしくお願い申し上げます。

柳澤国務大臣 斉藤委員が新健康フロンティア戦略に大変大きな関心を向けていただいておりますことを感謝したいと思います。

 私の記憶では、健康フロンティア戦略というものがまずあったわけですが、これは、イニシアチブをとった議員の名前を冠してその構想を呼ぶというならわしが余り日本にはないんですが、あえてそれをやらせていただきますと、これはもう完全に安倍プロジェクトであったというのが私の記憶です。

 それは、安倍総理がまだ党にいらっしゃったころに私ちょっと聞いたんですが、これからの医療、介護はやはり予防が中心でなきゃいけないというような考え方のもとで健康フロンティア政策というものを構想され、実施もされたわけですが、新たに今回、安倍総理が総理に御就任になられた後、今斉藤委員が御指摘になられたような健康寿命の延伸、健康での寿命が延びるということを目標にいたしまして、新健康フロンティア戦略というものをつくろうではないか、こういう御指示があったわけでございます。

 内閣官房長官が本当はお答えになられるのがよろしいのかと思いますけれども、官房長官が主宰しての賢人会議が設置されておりまして、本会議が開かれると同時に分科会が開かれまして、鋭意この内容が詰められているところでございます。

 厚生労働省は、この生活習慣病対策や介護予防対策等を健康フロンティア戦略で進めてまいったわけですけれども、新戦略には、今斉藤委員が御指摘のように、再生医療あるいはイノベーション、介護ロボット等をあえて例として挙げさせていただきますが、そうした技術の分野も含めまして、病気を患った人や障害のある人も、御自身が持っている能力を活用して、本当に充実した人生を送ることができる、こういうことのための施策を盛り込むために今検討を進めているところでございます。

 新戦略は、今ちょっと斉藤委員の方から御示唆もありましたように、年度内にこれを取りまとめる、そういう日程で今分科会の審議が鋭意進められている、このように御報告を申し上げます。

斉藤(斗)委員 新たな機軸として、病気を患った人や障害のある人にも、持っている能力をフルに活用する、発揮してもらう、そういうようなことにも焦点が当てられた新健康フロンティア戦略なんですね。ですから、ぜひ新しい機軸の中でしっかりとしたものを出していただきたいとお願いを申し上げたい。

 その中で、実は、障害者に関連してですが、補正予算で九百六十億円プラスアルファで組ませていただいた。そして、平成十九年度、平成二十年度を合わせると千二百億のプラスということで補正予算をつくっていただいたんですけれども、この平成十九年度を見ますと約九千億円になっているんですね、この障害者関連予算というのは。そして、非常に大きな金額になってきている。公共事業がどんどん減っていく中で、この障害者関連というのはずっとふえてきているという数字を今見ているんですが、それは間違いないですか、大臣。

柳澤国務大臣 斉藤委員御指摘のように、障害者保健福祉関係予算というものを取り上げてみますと、義務的経費、裁量的経費を合わせたところで、例えば十九年度においては一〇・七%増ということになっております。

 今、ちょっと義務的経費と裁量的経費のことを申させていただきましたけれども、裁量的経費はやはりシーリングの枠がかかっておりまして、これは減額ということになっているというのが実態ですけれども、やはり義務的経費ということになりまして、この障害福祉サービス分につきましても必要な経費が盛られている、こういう状況でございます。

 その規模は、今先生御指摘のように、九千四億円ということでございますので、補正予算のことを実質十九年度に加えて考えると、ほぼ一兆規模になるということが言えようかと思います。

斉藤(斗)委員 今大臣から数字の御説明をいただきました。昨年度比一〇・七%ふえる、一〇%。それから十七年度比では、十八年度は八%もふえてきているんですね。それだけ配慮した内容、心の優しい内閣の予算組みだということを感じたところでございます。

 そこで、脂肪症候群に対する対応として、実はいっぱい食品に対応しなきゃならないんだけれども、牛乳を一つ取り上げてみます、一例ですね。

 松岡農林大臣、お答えいただきたいと思いますが、今脂肪分の含有率が三・六まであるんですが、私は、脂肪対策ということでは基準を下げた方がいいんじゃないか、そういうような一つ一つの食品の取り組み方について配慮が必要なのじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

松岡国務大臣 お答えいたします。

 斉藤先生御指摘のように、通常、牛乳は、搾乳した生乳を殺菌したというのが牛乳でして、これは大体三・五%以上の脂肪を含んでおります。ところが、最近は、低脂肪に対する志向というのも強くなってきておりまして、メーカーによりましては、〇・五%以下を無脂肪牛乳、〇・五から一・五%の間を、言ってみれば低脂肪牛乳、こういう形でいろいろな商品開発も進んできております。

 そしてまた、もともとは、低脂肪というのは加工乳で、脱脂粉乳をもとにつくっておったんですが、最近は、生乳の中から脂肪を取り出して二・五%のものもつくる。いろいろな技術も開発されております。

 したがいまして、どれがいいこれがいいというか、消費者の皆様方が選択をして、健康志向も含めて御選択がいただけるような、そういういろいろな商品開発、こういったことも農林水産省としては積極的に推進して健康のために資するようにしていきたい、このような考えでおります。

斉藤(斗)委員 健康大国日本、世界でも最長寿国ですから、この勢いで頑張っていただきたいというふうに思います。

 時間の関係で、次は、「発掘!あるある大事典」で、あるある大事件になった、けしからぬじゃないかという話で大臣の答弁をいただこうと思ったんですけれども、時間がないので、ちょっと菅大臣、省かせていただきたいと思いますが、ただ、だらしない国にしないでください。これは、放送法があるし、電波法があって、電波は公共財ですから。ですから、きちっとやっていただきたいことをお願いしておきます。

 では、大臣、手短にお願いします。

菅国務大臣 この「あるある大事典」については、私ども今、事実関係を報告させておりまして、事実でないことをあたかも事実のように放送して、放送法違反であることは間違いないことであります。そして、さらに必要な報告を求めて、厳正な処分をしたいと思います。

 しかし、昨年も四件、実は行政指導がありました。白インゲンマメ、これがダイエットに効くとかいって、それを実際国民の皆さんが行ったら、入院したとか、いろいろな事件がありますので、再発防止策として、今のままでいいのかどうか、新しい法改正も必要じゃないか、そうしたことも考えて、深刻な状況であり、法改正も含めて検討して、しっかりと再発防止策を講じていきたい、こう思っています。

斉藤(斗)委員 マスコミというのは非常に重要な機能、役割を果たして、社会にも必要なものでございますけれども、時々行き過ぎるところがあるんですよね。

 それから、今回の柳澤大臣の発言につきましても、民主党の菅代表についてはほとんど報道されていないんですね。こういう報道があるんですよね。(発言する者あり)民主党代表代行ね、代行。民主党大会などでこういうふうに言っているんですね。生産性が高いと言われている東京や愛知でも子供を産むという生産性が低いと。これは大変けしからぬ発言ですよ。私は、菅さんにはいろんなことを発言する資格はないんだと思いますね。

 そこで、少子化担当大臣の高市さん、この発言につきまして、発言内容については事前にお渡ししているので、一言、コメントがあれば御発言ください。

高市国務大臣 私の手元にあるのは、これはウエブニュースですね、山陰中央新報でのインタビューでございます。「少子化問題でも、生産性が高い東京が、子どもの生産性は一番低い。」とおっしゃった部分、この資料はちょうだいしているんですが、ただ、私自身は、菅議員の発言をその場で聞いていたわけでもございませんし、また、本人の真意を伺ってもおりませんので、あくまでも、菅議員の発言云々というよりは、一般論として申し上げますと、出産ということを生産性という言葉で表現するのは適切ではないと私は考えます。

 やはり出産というのは、生命の誕生というのは非常に厳粛なものです。もう皆さんでイメージを一緒にしていただくしかないんですが、新しい命が体に宿ったその瞬間から女性の体はいろいろ変調を来して、つわりもあり、そして妊娠初期には流産の心配をしながら、ぎゅうぎゅう詰めの電車で苦労しながら通勤をされている。そして、安定した後も、本当に寝る姿勢もつらい、苦しい。今はもう医療技術が発達していますから、へその緒が絡まっているようだとかいうと、生まれてくるまで心配しながら、そして、出産の瞬間そのものは命がけなんですね。

 ですから、非常に出産というのは重いもので、今後医療技術がどんなに進歩しても、そんなに出産そのものが簡単になるとか効率的になるとかいったようなものではないと考えます。

 産業政策でしたら、確かに設備投資をした、技術革新をしたで生産性が上がるという結果は出るのかもしれませんが、少子化対策、野党からも御指摘がありましたとおり、一九九〇年代の半ばから、エンゼルプラン、そして第二次エンゼルプラン、そして子ども・子育て応援プラン、新しい少子化対策と、環境は徐々に整えておりますが、すぐに結果が出ない。

 なぜかというと、出産、子育てというのは、一人一人の人生、そしてその人の生き方、それから社会の空気、こういったものに係るものなんですね。本当に、おなかはぺったんこだけれども、流産するかもしれないと心配しながらぎゅうぎゅう電車に乗っている人に対して、周りが何かいたわれるかどうか、そしてまた、出産、育児のために休暇をとる人に対して、会社の同僚が理解をして応援してあげられるかどうか、そんな社会の空気づくりもしていかなきゃいけない。

 だからこそ、安倍内閣では、この重点プランをしっかりとこれから検討して、いい形で本当に総合的な出産、子育て支援ができるように頑張ってまいりたいと思います。

 以上です。

斉藤(斗)委員 残り時間が少なくなってまいりまして、この後、実は裁判官制度とか教育とかいろいろ触れたかったんですけれども、大変残念で、申しわけありません。お願いをしていた大臣にはおわびを申し上げなきゃならないんですけれども、特に裁判官制度は、新しい制度の導入で、あと二年に迫っているんですね。ですから、長勢大臣にはしっかりと……(発言する者あり)裁判員。ごめんなさい。裁判官と、新しい制度が裁判員制度なんですよね。その認知度を上げまして、また理解度を上げて、さらに支援度を上げていただくよう、切にお願いを申し上げます。現状ではとてもとてもその水準まで達していないということですので、お願いを申し上げたい。

 残り少なくなってきたので、私の残り五分の中で、政治と金について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 マスコミでさまざまな報道がされております。資金管理団体、これは菅大臣にお願いしたいと思うんですが、家賃のかからない議員会館に主たる事務所を置きながら多額の事務所費を計上している、これはおかしい、そういう報道があります。しかし、そもそも、資金管理団体が複数の事務所を持っている場合に、これらの事務所を一括して計上する、これはルール上当然なことだというふうに理解をしているんですが、まず、政治資金規正法の扱いについて御説明いただきたいと思います。

菅国務大臣 政治団体が複数の事務所を持って、それぞれの事務所において家賃などを支出した場合においては、これらの経費を当該団体の事務所として一括計上する、こういうことになっております。

 具体的に申し上げますと、例えば議員会館に主たる事務所を持っている、それで地元に従たる事務所を持っている、そして、地元の、例えば家賃あるいは電話代、切手代、さらに保険、税金、修繕料、そのほかに、通常事務所の維持に必要とされる経費、こうしたものを、地元で使用した分も一括として議員会館の事務所で計上してもいい、そういうことに実はなっています。

斉藤(斗)委員 ですから、事務所のあり方が各政治家個人または政党によっても随分違うんだ、ですから単純比較はなかなかできないんだということが一つあるのかなと思います。

 時間がないので、次に、マスコミでやはり話題になっている小沢さんの件についてお伺いしたいというふうに思います。

 民主党の小沢代表、政治献金を原資に政治団体で多額の不動産を取得していると報ぜられています。政治団体の活動にそのような多額の不動産が必要とは考えられませんよね。これが庶民の見解だと思いますよ、そんなに何でお金がかかるんだと。なかなかわかりにくいと思いますね。こういったことが政治への信頼性を低下させ、また、御案内のように、もうマスコミ報道でリストが出ているわけですよ。高級マンション、億ションと言われるものが、ずらりずらり出ているわけですよ。

 私は、このような不動産取得に対してどのように考えるのか、大臣、時間がないので、申しわけないんだけれども、しっかりとお答えいただきたいというふうに思います。最後の御質問です。

菅国務大臣 政治団体が土地や建物を保有している場合は、収支報告書に、その所在地、面積、取得の価額及び年月日を記載する必要があります。その不動産がどのように使われているか、このことについては、私どもは実質的な調査権を持っておりませんので、具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたい。

 政治資金収支の資産保有の状況については、それぞれの政治団体の収支報告書の公開などを通じて国民の監視にゆだねる、このように考えています。

斉藤(斗)委員 こんなにたくさんの事務所、小沢さんの事務所が本当に必要なのかどうか、これは小沢さんからの説明責任があってしかるべきだというふうに思いますよ。信なくば立たずという言葉がございます。私どもは、国民の負託にこたえるためにも、しっかりと襟を正してやっていきたいというふうに思います。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

金子委員長 これにて丹羽君、河村君、石破君、斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 閣僚の皆様、また予算委員の皆様、また委員長、大変御苦労さまでございます。時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。きのうの質疑通告から少し順序が変わりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、総理のおっしゃっている新成長戦略、あの施政方針演説でも一番最初にこの成長戦略についての御発言があったわけでございます。

 今、我が国というのは人口減少時代に突入しました。これから長く人口減少が続いてまいります。これはもう避けられません。また、本格的な高齢社会もまさしくこれから到来します。ことしは、団塊世代がいよいよ六十歳、定年退職時代を迎える、これから我が国社会は本格的な高齢社会を迎える。さらには経済のグローバル化。国境の垣根がますます低くなって、経済がグローバル化する中で企業がまさしく激しい競争にさらされている。こういう中にあって、成長力を強化して、生産性を高めて、また競争力を強化していくことというのは非常に重要である。

 人口が減少するのに伴って、同じように日本経済が縮んでしまう。縮小してしまっては、これはもう、例えば年金、介護、医療の社会保障の問題だって維持ができなくなってしまうわけでございまして、やはり人口減少であろうが、本格的な高齢社会であろうが、またグローバル化が進もうとも、日本経済が着実に維持されて発展をしていく、そういう日本経済をつくっていくということは物すごく重要なテーマだ、そういう意味で、新成長戦略というのは私も支持をしたいと思っているわけでございます。

 私、少し今お話をさせていただきましたが、なぜ今新成長戦略なのかというところの総理のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、なぜ経済成長が必要かということでございます。

 それは、私たちの日本国民の生活が、きょうよりあしたの方が、また、ことしよりは来年の方がもっと豊かな年になっていくという、未来に向かって夢や希望を持てる日本にしていくためにも、そしてまた、今、北側委員が御指摘になったように、大切なセーフティーネットである社会保障制度が維持可能なものになるための基盤を強化していくためにも、経済成長が必要であります。

 そういう中におきまして、人口が減少していく中にあって果たして大丈夫だろうか、こういう心配があるのではないか。人口が減少していきますと、いわば生産人口も減っていくことになります。また、消費人口も減っていく。大丈夫か。

 その中で、私たちは新成長戦略を実行していきたい。この新成長戦略とは、イノベーションによって生産性を高めていく、新しい技術をつくっていく、画期的なビジネスアイデア、取り組みを行っていく。それによって生産性を高め、企業が国際社会において競争力を高めていくことができます。人材の育成ももちろん行っていく必要があるでしょう。一人一人の生産性も高まっていく、企業は生産性を高めていく。

 そしてまた、消費者、減っていくわけでありますが、アジアにおいては、インドや中国の人口はふえていく。まさにアジアは成長の拠点となっていく。この成長力を日本に取り込んでくるためには、お互いが国を開いていく必要があります。オープンな姿勢によって、私たちは、このアジアの成長、世界の成長を日本に取り込んでいくことができる。そのことによって、私たちは、人口減少局面においても力強く成長していくことは十分に可能である、こう考えています。

 特に、イノベーションの面におきましては、現在IT革命が進行中であります。第三次産業革命の中で、私たちは、この中で乗りおくれるかどうか、そういう大きな岐路に立っている。今こそ新成長戦略をしっかりと打ち立て、それを実行していくことによって、将来、私たちは、人口減少局面にあっても成長していく、そして一人当たりの所得は当然ふえていくということになっていくわけでありまして、全力を尽くして新成長戦略を進めてまいりたいと思います。

北側委員 全く私も同感でございます。

 特に、今世界経済の中で一番ダイナミズムのある地域はどこかというと、この東アジア地域でございます。その中に日本はいるわけでございまして、その利点をしっかりと享受していかないといけないと私は思っております。ぜひ、東アジアの中での日本という観点で、隣国の国々との関係を、良好な関係をさらに強化していっていただきたいというふうに思うわけでございます。

 ところで、成長戦略、それは今申し上げたように、そのとおりだと思うわけでございますけれども、一方で、そうした成長の果実というのが一部の人たちだけにとどまっていてはならないと思うんですね。その成長の果実をやはり国民全体に波及させていく、及ぼしていくということが私は極めて大事だと思っておりますし、そのような、国民全体に広がっていくような、一部の人たちだけが何かもうかっているというのではなくて、国民全体にその果実が波及をしていくような、そういう政策、ビジョン、戦略というのが私は一方でとても大事だと思うわけでございます。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 構造改革の果実、また成長の果実と言ってもいいんでしょうけれども、日本の経済は現在力強く成長している、景気回復の軌道に乗っていると思います。

 しかし、いわば景気回復、経済成長は、企業がかつて抱えていた三つの過剰を解消していく、企業部門の強化によってなし得た、また、デフレ下における景気回復であったということもあって、家計部門への波及がおくれているのは事実であります。しかしその中で、私たちは、成長を進めていく、景気を上昇させていくことによって、さらに、これは雇用にも、非正規雇用から正規雇用がふえていく、そしてまたあるいはそれが賃金にも波及し、家計部門にも波及していくということになっていくと思います。

 しかし、それと同時にやはり底上げを図っていく必要がある、このように思うわけでありまして、何回でも挑戦できる社会をつくっていくことも当然でありますが、そしてさらに、今非正規の中にあって正規職員になりたいと思う人たちにはもっと道を広げていかなければいけません。

 そしてまた、例えばパートで働いている方々の均衡待遇も進めていく、そのためのパート労働法の改正も行っていくわけでありますし、また、セーフティーネットとしての最低賃金も、これは四十年ぶりにこの制度を見直していかなければいけないと思っています。

 そして、最初に申し上げましたように、底上げを図っていく上において、頑張っている人たちがさらに職業訓練を受けて非正規から正規にかわっていけるように、自分がさらに能力を開発したいと思う人たちがいれば、そういう開発が中小企業にあっても、あるいは非正規の人たちにはなかなかそういうチャンスがないんですが、そういうチャンスを得ることができるような、そういう仕組みをつくっていかなければならないと思っています。

 そして、各地域によってもばらつきがあるわけでありまして、頑張る地域を応援しながら、地域が地域のよさを生かして発展していくように、地域を応援していきたいと考えております。

北側委員 今政府の方で、新成長戦略のもとで、成長力底上げ戦略というのを御議論いただいている、また早急に取りまとめの指示を総理がなされたというふうに聞いておるんです。今はまだ検討中だと思うんですけれども、これは突然の質問ですが、これは官房長官なんでしょうかね、大田大臣の方がよろしいんですかね、今どんなことをこの底上げ戦略として考えておられるのか。簡単で結構です、御答弁いただけますか。

大田国務大臣 三本の矢で取り組んでおります。

 一つ目の矢が、就労支援です。これは職業訓練を中心に、企業内での訓練などを取り入れて考えております。今デュアルシステムというのがありますが、これをさらに拡大させていきます。

 二番目の柱は、福祉から雇用へという柱でして、公的扶助を受けておられる方々、母子家庭ですか、生活保護の中で公的扶助を受けておられる方々で就労を希望される方は就労できるように支援していくものです。

 三番目の柱は、中小企業の生産性上昇です。最低賃金を整えていくにしましても、生産性上昇とセットでありませんと中小企業は非常に苦しくなりますので、生産性を上昇させて、いい人材を確保できるようにという、この三つの矢で取り組んでおります。

 二月中旬の諮問会議で戦略の方向を御提示する予定です。

北側委員 その三つ目の矢の、三つ目の話なんですが、中小企業がやはり元気になってこないと、本格的な日本経済の再生とは言えないと私は思っております。

 それはもう、中小企業が日本の雇用の七割を支えているわけです。この後、雇用の話をさせてもらいますけれども、幾ら雇用のところでさまざまな対策をとろうとも、中小企業そのものがやはり収益を上げる体質になってこないといけないわけでして、そのためには、生産性を高める必要があるでしょう。

 とともに、一方で、私が中小企業の方々からお会いして聞く話は、取引先、それは大企業の場合が多いですね、大手の企業のところが多いわけですが、コスト縮減、コスト縮減ということで、非常に厳しいことを言われていて、なかなか収益をつけていくようなことにならないんだ、こういう話もよく聞くんです。

 中小企業そのものの生産性を高めること、もちろん、これはしっかりやっていただいていると思いますが、それとともに、例えば下請関係の問題だとか、そういうところで、強いところが弱いところに対していじめる、また、コストのダウンの転嫁、コストダウンをどんどん言っていって、なかなかその転嫁ができない、こういうふうな環境というのは、やはりこれは私はよくないというふうに思っているんですね。

 これは、経済産業大臣にも本当は聞きたいところなんですが、ぜひ、そういう点で、中小企業が本当に収益を持てるような、そうしないと家計にも波及してこないわけですよね、最終的には。だから、ぜひ、中小企業への支援策をしっかり取り組みをさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 今、三つの矢とおっしゃいました。私なりには、三つの波と日ごろ言っているんですけれども、三つの波をやはり起こしていく必要があると。

 それは、一つは、大都市から地方へ、この波です。大都市から地方へ、大都市から地域へ。二つ目の波が、これは大企業から中小企業へですね。大企業、大手の企業から中小企業へ。そして三つ目に、先ほど総理もおっしゃった、企業から家計へ。最終的に家計に来なければ個人消費はふえないわけですから、企業から家計へ。

 この三つの波をどう起こしていくのかというところが、新成長戦略とともに、この三つの波をいかに起こしていくかということを政府全体としてしっかり取り組んでいただきたいと思うわけなんです。

 きょう、私、これから、地域の再生の問題、また雇用の問題を中心に質問させていただきたいと思いますが、まず、地域再生、地域の活性化の問題について質疑をさせてもらいたいと思います。

 ちょっとパネルを。

 まず、地域格差というのがどうなんだという話なんですが、私も、全国、地方にあちこち行かせていただいて、これはもう地域格差は歴然としてありますね。はっきりしています。

 これは一つの経済指標ですが、有効求人倍率の推移です。一九九八年、これは金融危機のあったころですね。一番日本経済が厳しいときでした。この一九九八年のころは、オール・ジャパンの有効求人倍率も〇・五を切るような時代でございました。ですから、どの県をとっても、〇・五前後でしかないわけですね、〇・五倍。

 有効求人倍率というのは、一人の仕事を求める方に幾つの仕事があるか、こういうことですね。一人の仕事を求めている失業者の方々にどれだけの仕事があるんだという比率でございます。これが〇・五前後しかなかった。

 それが、足元のところ、昨年の十二月の数字でございますけれども、全国平均では一・〇八倍ですね。一を超えました。ただ、この超えたのはいいんですけれども、非常に地域間の落差が激しいことが、この有効求人倍率、各県単位で見たら明らかなんですね。

 愛知県は一・九一倍、すごいですね。愛知県全体で平均一・九一倍ということは、例えば名古屋市だけとったら、もっといいんでしょう。それが、北海道、高知、青森、沖縄の、ちょっと名前を出して恐縮でございますけれども、こういうところは、一九九八年のあの厳しい時代と比べて少ししかふえていなくて、いまだに〇・五前後の数字になっているんですね。

 今、こういう有効求人倍率という経済指標一つ見ても、地域間の格差というのは厳然としてあるというふうに私は思わざるを得ないわけでございまして、そういう意味では、先ほどの最初の、大都市から地方へ、大都市から地域へいかに経済改善の果実を波及させていくのかということが非常に大事だと思うわけでございます。

 そういう認識は、総理も当然十分に認識をされていらっしゃいまして、この通常国会においても、地域再生、地域の活性化、これが極めて重要なテーマだという認識をされた上で、私がちょっと調べてみましたら、新しい法律が五本、法律改正が四本、九本ですね。渡辺大臣、そうですよね。九本の法案を、地域再生をしていくための、進めていくための法案をこの国会に提出される予定であるというふうに聞いておりますし、また、昨年末の十九年度予算案を見てもさまざまな予算措置がとられているところでございまして、さまざまなメニューを提供されている。

 私は、地域活性化に向けての総理の意欲というのを非常に感じるものでございますが、改めて、地域再生、地域活性化の重要性についてどのように認識しているか、総理の御答弁をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地域の活力なくして国の活力はないというのが安倍内閣の基本的な考えでございます。

 先ほど大田大臣が申し上げましたような三本の矢によって、人材、就労、そして中小企業、この政策の推進によって、私は、三つの波は必ず起こる、こう確信をいたしているわけであります。

 まさに、中央から地方に波を起こしていくためには地方の活性化が重要であって、成長の果実によって有効求人倍率は確かに一%を超えて一・〇八になった。しかし、各地にはばらつきがあります。例えば私の地元においても、山口県全体としてはまあまあいいんですが、しかし、山陽と山陰では結構差があるわけでありまして、そういうところによく目配りをしながら政策を進めていく必要がある、このように思います。

 また、この地域の活力を引き出していく方法におきましても、かつては、中央で大体みんなメニューを考えてそれを押しつける、中央が考えたメニューに、やりたい地域ありますかといって手を挙げさせて、そして、該当するのは幾つですよ、そういう形で、いわば金太郎あめ的な地域をつくるというのが、かつての地域を支援していく、再生していく、そういうスタイルであったわけでありますが、そういうやり方から決別をして、やはり地域のことを一番よくわかっているのは地域ですから、地域の皆さんが考えて、アイデアを出して、やる気になって、責任を持って頑張っていく、それを国が応援していくという新しい仕組みにしなければならない。

 そういう観点に立って、地域活性化策、九本の法案を提出する、関係法案を提出するわけでありますが、この全体像を、いっぱい法律があっていろいろな役所にまたがっていますと地域にとってはなかなかわかりにくいという声がございましたので、地域活性化政策体系として取りまとめて、わかりやすくお示しをしているところでございます。

 そして、この中でいろいろな、地域の取り組みで成功事例、失敗事例等々があります。それをよく熟知した人が、要望によって地域に出向いていって、いわば伝道師的に地域おこしの指導をしていくということもしていきたい、こう思っているわけでございます。

 大切なことは、私たちは、しっかりと頑張っている、今なかなか大変な、困難な時期にある地方に対して我々は応援をしていくんだという強いメッセージを出してまいりたい、そして実際に応援をしていきたいと思っております。

北側委員 地域再生の主体者は、やはり地域の方々そのものだと私も思います。全国を回りましたら、どの地域にも、非常に経済が厳しいどの地域でも、我が地域を何とか活性させようと思って頑張っている、頑張ろうとする企業、また商店街の皆さん、またNPOの方々、住民の方々、こういう、やろうと頑張っている、いろいろな知恵を出して頑張ろうとする人たちというのはどこの地域にもいらっしゃいます。そういう人たちの主体的な、積極的な動きをしっかり県と連携をとってサポートしていくことが重要だと思います。

 さまざまなメニューが、きょうは本当は時間があったらそうしたメニューについても聞きたいんですけれども、地域の特性、魅力を生かして自立力を高めていこうとする中小企業や農林水産業の皆さんへの支援だとか、さらには、企業立地をやはり推進していこうということで、企業立地推進のためのインセンティブになるような政策だとか、さらには、地域が本当に競争力を高めていくためにはあの港につながるアクセスが必要なんだ、それが十分じゃないんだ、こういう基盤整備がやはり重要なところもありますね。こうしたことをしっかり応援していくようなメニューがさまざま、今回の地域再生の支援策には用意をされております。

 問題は、そういうさまざまなメニューがあるんですが、各地域のニーズはさまざまです。こうした地域のニーズや特色を生かしたマッチング、コーディネート、これをしっかり進めていくことが非常に重要だと思っておりますし、また、今回の対策というのはいろいろな省庁がかかわっておりまして、国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省等々、多くの省庁がかかわっております。その意味で、連携が非常に重要でございます。

 私は、渡辺大臣の役割というのは非常に大きい、その調整をするという意味で大きいし、ぜひきょうはお願いしたいのは、これは先ほどの有効求人倍率を面的に、現在ですよ、色で色分けしたんです。赤いのがいいところですね。上に行く、青いのが悪いところです。どこが悪いか、北海道、東北、四国の高知とか南九州とか出ていますよね。

 こういう厳しい地域に、どこでもいいんですよ、渡辺大臣が行っていただいて、各県ではそういう取り組みをしよう、各市ではやろうとしています、そういう声を、ぜひ出向いて、呼ぶんじゃなくて出ていって、いろいろな声を聞いて、一緒になって、その地域の活性化をどうしていけばいいのかということをぜひ大臣が先頭を切ってやっていただきたいなと。そのときには、大臣一人で行くのじゃなくて、経済産業省や国土交通省の官も連れていってやればいいと思うんです。それで、ぜひいいモデルをつくっていただきたい。渡辺大臣の決意をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 まさにおっしゃるとおりでございまして、私も時間の許す限り、出向いていこうと思っております。

 先月、もう既に熊本県に応援隊が入っております。きょうは、宮城県仙台市で活性化応援隊がいろいろなニーズに対しておこたえをしております。これから、応援隊、今のところ総勢六百名ぐらいでございますが、その中で、特に官民のすぐれ者を地域の埋もれたお宝発掘伝道師として私が認定書を出しまして、別に渡辺教をつくるわけじゃございませんけれども、そういう運動をしながら地域の掘り起こしに努めてまいりたいと考えております。

北側委員 それともう一点、地域再生に関連して、私は全体の政策を見せていただいたんですが、ちょっとこの点が不十分じゃないかなと思っている点があるんですよ。

 それは、今問題になっているのは、やはり人口が減少する、過疎化が進んでいく、高齢化が進んでいく、そういう、まさしく地域が大変なんですね。そういう地域、いずれこれは日本全国に及ぶんですけれども、それが先に来ている地域、そういう地域は、過疎化、高齢化で本当に苦しい思いをしているんです。

 それが一番あらわれるのはどんなときかというと、災害のときなんですよ。災害のときに、まあ、ことしは暖冬ですよ、去年、一年前のあの雪を皆さん思い起こしていただきたいんです。大雪が降りまして、だれが一番困ったか。過疎地にある人たちが、除雪だとか屋根の雪おろしとか、これで本当に大変で、私なんかは南の人間だからその辺の実感がよくわからなかったんですけれども、実際行かせていただいたら、本当に大変。それを、高齢者しかいない、高齢者夫婦しかいない、子供たちは東京に出ている、大阪に来ているという中で、高齢者しかいない中で屋根の雪おろしをしないといけない。そういう中で、高齢者の方々が事故に遭ったことが大変多かったというのが一年前の話でございます。また、地震や大雨があったときに被害をこうむるのはやはり高齢者、過疎地。道路が遮断されてしまって、村が孤立化をしてしまってどこにも行けない、こんな状態がある。

 私は、地域再生の一つのポイントは、こういう過疎化や高齢化が進む中で、いかにしてこの地域というものを活性化していくのか、こういう視点も一方で非常に大事だということをぜひ念頭に置いていただきたいんです。

 その上で、一つの例を申し上げたい。これはいい話なんですけれども、北海道に伊達市というのがあるんですね。北海道というのは、道として全体でいえば先ほどの有効求人倍率も大変厳しい状況、経済情勢も厳しいんですけれども、この伊達市というのは、人口がふえているんですね。人口がふえています。そういう取り組みをされていらっしゃるんですね。地価も、平成十五年度ですか、全国で一番地価上昇が、平成十五年といったら全国的にはまだ厳しかったんですけれども、このとき伊達市は都道府県地価調査で一番地価が上昇した地域だったんです。去年も三%ぐらい地価が上昇しています。

 なぜこの伊達市が、北海道でありながら人口もふえ、地価も上昇してきているのかというところなんですけれども、ここは伊達市への移住者が多いんですね。年間二百人から三百人ぐらい移住者がいるんですって。伊達市の売り出しキャッチフレーズは北の湘南。北の湘南、これがキャッチフレーズなんですね。地域づくりのコンセプトは、高齢者を対象とした新しい生活産業によるまちづくり。

 具体的にどんなことをやっているか、幾つかの例を申し上げますと、乗り合いタクシー、ライフモビリティサービスといいまして、六十歳以上を対象とする会員制、予約制、乗り合い制のタクシー、同じような方向、同じような時間帯に出かける方が乗り合うことで通常のタクシーに比べて安い料金で運行可能なような、こういうタクシーを開発してやっているだとか、それから伊達版安心ハウスといいまして、バリアフリー化された緊急時対応サービスの利用が可能な賃貸住宅、これを一生懸命つくっているんです。一戸建ての住宅に従来住んでおられた高齢者の方々が、なかなか自分たちでこの一戸建ての住宅では大変だというような方々には、あいた住宅をそうした安心ハウスに移住をしてもらうように提供する、入居を呼びかける、こういう事業なんかもやっている。それをきのうきょう始めたんじゃなくて、相当前からこういう事業を着実に進めておられて、そして移住者が多くなった、人口もふえている、地価も上がってきているという町にしているんですね。

 もちろん、今はいいところばかり言いましたけれども、介護保険が大変だというような話もあるかもしれません。ただ、私は、こういう地域地域で頑張っているこのような事例なんかも、ぜひほかの市にも知っていただくということも大事だと思いますし、また我々自身もこういう頑張っている地域のことを知って、ノウハウを知って、ほかの地に使っていくということも大事だと思っているところでございまして、こうした地域再生に、渡辺大臣初め、冬柴大臣も、経産大臣も、甘利大臣も、農水大臣もぜひ現場に出向いていただいて、地域再生に向けての取り組みをしっかり取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 そこで、雇用の問題に入らせていただきたいと思いますが、さっき、三つの波と申し上げて、その中の一つに企業から家計へと申し上げました。この企業から家計への波及には、もちろん企業が生産性を高めていかないといけないわけですが、企業から家計への波及には、何といっても雇用の安定が不可欠なんですね。賃金にやはり着実に反映されてくることが不可欠でございます。

 一方で、近い将来、人口が減少するわけですから、労働力人口というのは、これは減少してくることは避けられません。労働力人口が減少して、労働需給というのは、これは間違いなく逼迫をしてくるわけでございまして、持続的な経済成長をしていくためには、イノベーション、技術力、もちろん大事です。大事ですが、やはりもう一つの大きな柱は人材だと思うんですね。豊かな人材のすそ野がしっかり広がっているということがあって初めて持続的な経済成長が可能だと私は思います。雇用の安定が大事だ。

 さらには、多様な生き方が今求められております。多様な生き方を尊重していくためには、やはり長時間労働というものを抑制していかないといけない。長時間労働を抑制して、その地域にも家庭にも活躍できるような、そういう多様な生き方を求められていると思うんですね。仕事と生活とのバランス、よくワーク・ライフ・バランスといいますが、この仕事と生活とのバランスがやはり今の労働環境では大きな課題じゃないんでしょうか。

 この長時間労働の抑制というのは、私は、本当に今教育の問題も大きな課題になっていますが、会社に行ったら夜遅くまでしか帰ってこない、これではなかなか、家庭だって、それから学校現場を地域で支えるなんていったって、その方はできませんよね。やはり、地域社会や家庭の中でいろいろな役割を果たしていくためにも長時間労働の抑制というのは非常に大事であるし、しっかり進めていかないといけない。こういうさまざまな要請が私は雇用の現場にはあると思うんですね。

 これをしっかり取り組んでいく必要があるわけですが、この国会、先ほど地域再生に係る法案が多いと申し上げました。もう一つ多いのが雇用ですね。雇用に係る法案が非常に多い。それも重要法案ばかりでございまして、雇用国会というふうにおっしゃる方もいらっしゃるわけでございますが、今私が申し上げた雇用に係る課題、こうした課題について総理の基本的な認識をまずお聞かせ願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま北側先生が御指摘になったように、まさに働き方も随分変わりつつありますし、その要請もあるわけでありまして、人口も減少していく、働き方の多様化もしている、またその要請もある中において、十分に我々それに対応できているかといえば、対応できていないわけでありまして、我々、そうした国民の要望に対応していかなければいけないわけであって、国民のだれもが安心して、そして納得して多様な働き方を選択できるような、そういう社会にしていかなければならない。そういう中において、自分たちの能力を十分に発揮をできて、機会をとらえることができる、そういう社会にしていきたいと思っております。

 そのために、フリーターにつきましては、二十五万人の常用雇用化プランを進めまして、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減らしていかなければならない。そしてまた、正規労働者との均衡処遇の実現や正規雇用への転換を促進するために、パートタイム労働法の改正を行います。また、若者の雇用機会の確保や、募集や採用に係る年齢差別禁止の義務化を盛り込んだ雇用対策法の改正も行いたいと思います。

 そして、先ほど先生が御指摘をされました、やはり日本人は少し働き過ぎではないか、長時間労働が大体常態化しているという大きな問題があります。お父さんはいつも食卓にいない、これじゃ一家団らんもないですし、子供の教育等にとっても、これはやはり、家族みんなで子供を教育をしていく、育ててはぐくんでいくという観点からも、何とか家族の団らんを取り戻すためにも、働き方を変えていく必要があります。

 そのために、いわゆる残業の割り増し賃金を見直していく、法定割り増し賃金料率について中小企業にも配慮をしながら引き上げを行う労働基準法の改正、そして、先ほど申し上げました、セーフティーネットとしての最低賃金制度を十分に機能させるために四十年ぶりの最低賃金法の改正など、働く人たちのための労働法制整備六法案を提出いたしまして、働き方、暮らし方をよりよくしていきたい、国民の要望にこたえる仕組みをつくっていきたい、選択できる仕組みをつくっていきたいと考えております。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

北側委員 総理、去年の年末、またことしの年頭も、経済界の皆様との会合で、総理はまたあえて雇用に係るお話をたしかされていらっしゃったと思うんですね。賃金にしっかり反映させてくれというふうな、非常にある意味では異例な発言をされていらっしゃいましたけれども、私は、ある意味拍手喝采でございまして、そのとおりだと思いながら聞いておったわけでございます。

 この御発言の意図といいますか、簡単で結構でございますが、どういう意図でこういう御発言をされたのか。

安倍内閣総理大臣 この約六年近くの改革の成果によって、日本企業は競争力を向上させたわけであります。そして、企業部門における改革を進めて、いわば企業は収益を上げているのも事実でございます。そして、しかし、この景気回復を、国民にとっても、みんなにとっても本格的なものだな、いい循環をしていくためには、やはり家計部門にこれを波及させていくことによって消費もまた伸びていって、景気をより一層下支えしていくという循環もできるわけでありまして、これは経済界にとっても当然望ましいことではないか、こう思うわけであります。

 その中で、かつての三つの過剰という、ある意味では教訓があり、そこになかなか踏み出せない企業も多いのも事実かもしれない、このように思うわけでありますが、今申し上げましたように、我々、法制面からも底上げを図っていきたい、このように思いますし、企業においても、十分に現状をよく認識していただいて、我々が進めていこうという日本の姿に協力をしてもらいたい、そういう気持ちでそういう発言をさせていただいた次第でございます。

北側委員 そこで、一昔前に比べまして、雇用の形態というのは本当にさまざまになってまいりました。

 これは、正規、非正規労働者の推移を示す表でございます。ちょっと申し上げますが、私は、余り、正規とか非正規という言葉はよくないと本当は思っているんですけれども、それはまた後で述べるにしまして、正規労働者の方がずっと減ってきて、これは二〇〇五年ですけれども、三千三百七十四万人、非正規の労働者、パートの方々を代表とする非正規の労働者が一千六百三十三万人という形でふえてきています。

 きのう、おとついの新聞でしたか、昨年は逆に正規が少しふえてきているんだという話もありましたが、ただ、中期的な傾向はやはり正規労働者が減る、非正規がふえる、こういう傾向になっているわけですね。

 もう一枚、ちょっとお願いできますでしょうか。

 これは、非正規の方々のふえているのを棒グラフで示しているんですが、ずっとふえてきている。この一番最後の二〇〇五年平均、一番下の赤い、七百八十万人というのはパートの方。それから、その上の白いのはアルバイトの方ですね。これも短時間労働ということで、パートの一種でございます。そして、グリーンが派遣ですね。派遣がもうこの二〇〇五年段階で百六万人になっているんですね。そして、契約社員が二百七十八万。その他。こういう分類になってきていまして、非常に雇用が多様化をしてきているのが一目瞭然、よくわかる。また、非正規の労働者がふえているという傾向がよくわかるわけでございます。

 これをどう認識するかということなんですが、確かに、経済情勢が悪いときに正社員の方を削って非正規をふやしていったというふうなことも一面あるんですが、私は、一面、高齢者の方々の雇用だとか女性の方々の雇用だとか、こういうことを考えたときに、またこれからの日本経済を考えたら、まさしく高齢者雇用とか女性の方々の力とか、そういうのが絶対必要な時代にますますなっていくわけですよね。そう考えたときに、私は、この非正規の労働形態、多様な雇用形態が一方でやはりこれからもふえていくんではないんだろうかというふうな認識をしているんですね。

 総理、非正規の労働者の方々がふえてきている、多様な労働がふえている、一方で正規が減りつつある、ここをどう認識をされていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 正規、非正規、この非正規の中にもいろいろな形態があるわけでありまして、パートの方々、あるいは派遣の方々もいます、また、有期の契約の方々等々がおられるわけでありまして、その中で、やはりそういう形態を選んでいる方々もいるわけでありますし、また他方、そういう中から、いわば正規にかわりたい、さまざまであろうと思います。正規から一時的にそういう非正規になって、また正規に戻りたいという方々も結構おられるかもしれないと思います。そういう方々が、いろいろな多様な働き方を希望して、その方向に行けるような社会をつくっていく必要があると思います。

 雇用者側、また企業、そして働く側、労働者、双方のニーズもあって多様な働き方が広がっておりまして、趨勢的に非正規もふえているわけでありますが、近年、足元におきましては、雇用情勢が改善する中で、正規雇用者も前年同期と比べれば増加をしているわけでございます。ただ、フリーターなど若者を中心とした非正規の雇用の増加が、将来、格差の拡大になっていく危険性もあるということでございます。

 午前の審議でも議論があったわけでありますが、フリーターとかいわば非正規の方々にとっては、例えば職場でいろいろな能力の向上のための訓練をしたり、職業の勉強をしたり、いろいろとOJTをするというチャンスがなかなかないわけでございます。そして次のステップに行けない。これをやはり変えていく必要があるであろうと思うわけでありまして、要は、希望を持っている人が、その希望を阻害されて、現状が希望とは別に固定化されてしまうという世の中にしてはならないんだろう。

 一方、多様化は、これはむしろ働く側の望みでも一部あるわけでありますし、国際競争力という観点からも、柔軟性の確保ということもあるかもしれませんが、しかし、その中で、希望する人が希望する道に挑戦できる、そういう社会にしてまいりたいと思います。

北側委員 それで、ちょっとさっき少し申し上げましたが、非正規の社員とか非正規の労働とか、また非正社員とか、こういう言い方というのは、私はもうやめた方がいいんじゃないのかなと実は思っているんですよ。何か、派遣労働の方やパートの方は、自分は非正社員かということでしょう。

 麻生大臣、正社員というのは英語で何と言うんですかね。

麻生国務大臣 何と言うでしょうね。オフィシャルスピーキングというんでしょう、何と言うんだか、エンプロイーと言うので、普通はエンプロイーになっているはずですけれども、それがオフィシャルエンプロイーかアンオフィシャルなのかという、そういうふうに分けているでしょうかね。ちょっとわかりません。

北側委員 そうなんですよ。そんなオフィシャルエンプロイーなんて言わないんですよね、言わないんですよ。正社員という言葉は、これはどうも英語にはない。ほかの国でもどうもないようなんです。非常に日本的な言葉なんですよ、正社員、非正社員というのは。

 なぜこういう正社員という言葉、概念が出てきたのか、もう我々は当たり前のように使っているんですけれども、なぜ出てきたのかというと、そこはやはり伝統的な日本型雇用のもとでこの言葉が生まれていると思うんですよ。新卒で一括採用する、年功序列で上げていく、そして終身雇用、こういう日本型の伝統的な雇用形態のもとでこの観念があるんじゃないのかなと私は思っているんですね。

 それで、そういうのが普通の働き方でというのがまずあって、そういう観念が、そういうのが普通の働き方なんだ、典型的な働き方なんだというのがあって、そして、一時的に、臨時的に雇うのが非正規なんだと。多くの労働者は大半が正規で、ただ企業の都合、働く方の都合で一時的、臨時的な労働者が非正規、非正社員、多分こういう観念で我々は来たんだと思うんですね。

 ところが、ちょっとそれがもうそういう時代と違ってきているんじゃないのかと私は思うんです。そういう観念にあるから、正社員には賃金をきちんと払い、社会保険に加入させ、福利厚生もやり、そして、先ほどからおっしゃっているように、能力開発、教育訓練も企業内でやる、これが正社員だ、こういうイメージなんですね。そのかわり、正社員には長時間労働もありますよ、転勤もありますよと。もっと言うと、家庭、地域よりも会社ですよ、こういう価値観にどうしてもなってくるわけですね。一方、非正社員というのはあくまで一時的な企業内の雇用調整だから、そのような正社員に対するような待遇というのは十分にはしていかないんだ、これがこれまでの日本型雇用の形態だったと思うんです。そこで、正社員、非正社員というような言葉が出てきているんですね。

 厚生労働大臣、私、この言葉はもうやめた方が、日本型雇用形態そのものが今崩れつつあるわけですよ。その前提となっているのは、若い人たちが多い、経済はどんどん成長する、こういう中で初めて成り立ち得るこの雇用形態が今崩れ始めているわけですね。そして一方で、多様な雇用形態が増加してきている、先ほど申し上げたように。この多様な雇用形態というのは、企業にとっても、非正規の労働者の方々が、パートの方や派遣の方が、単に一時的な雇用ではなくて、企業を支えていく貴重な戦力として今はもう位置づけられてきているような、そういう時代になってきているんではないのかと。

 そう考えると、雇用の形態いかんにかかわらず、仕事の内容に応じて公平な待遇、賃金であれ社会保険であれ、を図っていくというのがこれからのやはり時代の大きな流れなんだということを私はしっかりと認識していく必要があるのではないか。そのためにも、正社員、非正社員の言葉なんかもうやめてしまえというふうに私は思っているわけでございます。

 正規と非正規の垣根を、今はまだあります、あるから正規の社員に移行せないけないとなるんですが、もちろんそれも現時点ではそういうことが大事だと思うんですが、これからの方向性としては、正規と非正規との垣根をやはり低くしていく努力を政府もしっかりと取り組まないといけないんではないのかと私は思っているところでございます。

 また、先ほどのワーク・ライフ・バランスの話をとりましても、正規雇用でも、これから本当に、家庭生活、地域生活、趣味等々、多様な生活を送れるようにしていかないといけないわけでございまして、正社員のあり方もやはり変えていかないといけない。

 というようなことを考えますと、正規、非正規の区別そのものの意味をやはり小さくしていく努力を我々はしないといけないんじゃないか。正規、非正規を通じた、正規、非正規にかかわらず、労働者の方々が安心して働けるようなルールの確立をしていくことが今重要なのではないかというふうに私は問題意識を持っているんです。

 総理、厚生労働大臣、もし御意見があったら。

安倍内閣総理大臣 まさに私どもが進めようとしているのが、ただいま北側委員が御指摘になったように、言葉としては正規、非正規でありますが、正規、非正規いかんにかかわらず、安心して、納得して働いていくことができるような環境をつくっていく。正規であれば安心して不安がない、非正規であれば不安で、どうも将来不安定だということではなくて、正規、非正規いかんにかかわらず、やはり安心して、納得して、仕事に生きがいを持って働いていくことができる環境整備をしていかなければならない、私も、全くそのとおりであろう、このように思うわけであります。

 その中で、先ほど申し上げましたパートタイム労働法の改正、また最低賃金制度の改定、そしてまた労働契約全般に関するルールを明確化するための新法の制定など、まさに正規、非正規にかかわらず、安心して働ける環境を整備してまいる考えでございます。

北側委員 今、厚生労働大臣に答えていただきますが、従来は、日本的な、伝統的な雇用形態のもとで正社員が多かった、大半だった、それが普通であった。その人たちの立場をしっかりと守っていくのが労働組合だったわけですよ。ところが、先ほどの図のように非正規の方がどんどんふえてきた。最近は労働組合の方々もそちらの方を意識していらっしゃいますけれども、やはり正規の社員の人たちの立場を守るのが労働組合ですね。

 そうでない人たちがどんどん今ふえてきている。多様な働き方がふえてきている。そういう方々の働きやすい環境とか、将来に本当に不安を持たないような、社会保険の加入の問題も含めて、そういうことをやっていかないといけない、これはやはり政府がしっかりやっていかないといけないと私は思うんです。どうしても、労働組合の皆さんは、どちらかというと正社員が組合員の多くの方ですから、その方々の立場を守ろうとするわけですから。

 だから、そういう意味では、非正規の立場の方々の働く環境をしっかり改善していく。また、そこにいろいろな規定もあります。それがちゃんと守られているのかどうかしっかり監視をする、そういうことは非常に大事だと思うんですね。

 先ほどの正規、非正規の区別、こういう名前をやめましょうと私は申し上げました。正社員とか非正社員、少なくとも厚生労働省も使うのをやめたらどうですか、厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 非常に興味深い御議論だというふうに思います。

 まず第一に、労働力の減少は、これはもう避けられないわけですが、それを補うために、二〇三〇年ころまでは、とにかく、少し年をとった男性の人たち、またM字型カーブで、通常だったら、今の現状だったら労働力率がおっこってしまう、そういう年齢層の女性の方々に、労働力として現実に働いてもらわなきゃならない、そういうことが実態としてあるわけです。

 そういうことを考えますと、では、その人たちは、今のいわゆる正社員のような形でそういう労働の形態が期待できるかといったら、期待できないだろうと思います。ここはかなり弾力的にいろいろな形の労働形態を選んでいただくということはもう必至だろう、必要だろう、こういうふうに思うんです。

 ただ、さはさりながらというところを、大変恐縮ですが、我々は現実に着目して、正規、非正規を分け、そして、正規の人たちにはどういう問題があるんだ。長時間労働が問題ではないか。非正規の人たちにはどういう問題があるんだ。正規に行きたい、正社員になりたいという人たちの希望をかなえられなくていいのか。あるいは、非正社員を選ぶんだけれども、それはえらく労働条件が違う。これはやはり同じような、均衡のとれた待遇をかち取っていくべきではないか。

 こういうような、それぞれに、今、労働の形態によって、必要な手だて、施策の手だてというものが違うわけでございまして、今のところは、しばらく私どもは、名前はともかくとして、そういうカテゴリーというか範囲を決めて、それぞれの労働形態に応じた必要な施策を打ってまいりたい、このように考えております。

北側委員 私が言いたいのは、そっちの方向に向かって行かないよということ、そこにしっかり定めた上で、当然今の現状があるわけですから、いろいろな対策が出てくるんだろうというふうに思います。

 きょうは、もう時間がないので、派遣労働の問題について本当はやりたかったんですよ。派遣労働の現場では、いろいろな問題が今起こっております。

 もともと派遣労働というのは、働いている場所の企業との雇用契約関係ないんですね。派遣先とは雇用契約ありません。だから、もともと不安定な地位、地位の不安定さをはらんでいるんです、もともと。さらに、現場では違法行為、脱法行為が指摘をされている事例も目につきます。例えば、派遣先の社員の恒常的な代替になっている事例だとか、違法な事前面接がなされているだとか、それから、いわゆる偽装請負の問題だとか、さらには、派遣はまず労働者派遣契約というのを交わすんですね、派遣先と派遣元の企業の間で。そこでの労働者派遣の対価というのが本当に適正なのか。これは、労働力を供給する、ある意味では労働力の売買になるわけですよね。その対価、それが本当に適正なのか。さらには、派遣元と派遣労働者との間の労働契約が交わされるわけですが、そこでの賃金が、派遣労働者に支払われる賃金が本当に適正なものになっているのかどうか、こうした問題もいろいろある。

 御承知のとおり、派遣労働については、一連の規制緩和をずっとやってきたんですね。もともとは職安法で禁止されていたものを、ずっと緩和してきている流れの中で、私は、ちょっと、派遣労働を否定しているわけではありません、派遣労働という働き方は大事だと思います。しかし、この規制緩和の流れの中でさまざま問題が指摘されているわけですから、ぜひ派遣労働の実態について検証をしていただきたい、特にこの労働現場について。そこをちょっと意識していただきたい。これはお願いとして聞いていただければ結構でございます。

 そこで、次の話題に行きたいと思いますが、地域医療の問題です。

 先ほど地域再生の話をさせてもらいましたが、人口減少、高齢化、過疎化の中で、そもそもこの地域医療をどう維持し発展させていくかというのは極めて重要な課題なんですね。ところが、私も地方を回っていまして、先ほど地域再生の話をしましたが、あちこちで医師が不足をしていると。小児科や産婦人科等の診療科がないとか、また、一部の公的病院では存続そのものが危ぶまれている、こういう事例も目についています。

 これは去年の十月でしたでしょうかね、奈良県であった事故。皆さんもまだ御記憶があると思いますけれども、奈良県のある町の町立の病院で重体になった妊婦さんがいらっしゃったんですね。ところが、そこでは手術ができない、施設もない。お医者さんもここは一人しかいないんですね、産婦人科医が。十九病院の搬送を断られて、お亡くなりになってしまった。こういう事件が、本当に悲惨な事件、私は、こういうことがあってはならない。ところが、こうした事件というのが、必ずしもここだけじゃないんですよね。ほかの地域でもあるんです。

 私は、この医師不足の問題、医師は、実を言うと、私もどれぐらいふえているのかなと調べたら、毎年三千五百から四千人ぐらいふえているんですよ、全体としては。医学部を卒業する方の、医師数はふえているにもかかわらず、あちこちの地域、最近は都会の中でもそういう声が上がっているんですけれども、医師不足の話が出てきているんですね。

 この地域医療の現場での実態を、総理、まず、どのように認識をされていらっしゃるのか、お答えをいただけませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 確かに今、医師の数はふえているわけでありますが、地域、病院によって偏在があるわけでありますし、また、診療科目によっても、産婦人科、小児科は減少しているという状況があるわけでございます。

 ただいま御指摘にあったように、全国的には毎年三千五百人から四千人程度増加をしているわけでございます。今後、あらゆる面から医師確保対策に万全を期すことが重要であり、特に、地方における医師の確保、医療体制の確保が極めて重要であると認識をしております。

北側委員 お医者さんの数がふえているにもかかわらず、なぜ医師不足の問題がここまで大きくなっているのか。なぜなのか。ちょっとパネルを、閣僚の皆さんも委員の皆さんもごらんになっていただきたいんですが、これは、こういうことで医師不足が起こっているのではないかという、ちょっと私なりの意見を申し上げますので、厚生労働大臣の御意見を聞きたいと思うんです。

 医学部の大学、六年制ですね。六年を卒業されますと、国家試験を受けて医師免許の取得をされるわけです。卒業した後にどうされるかというと、これまでは多くの学生はその大学の附属病院に皆さん行っていたんですね。二年間、卒後研修ということで大学附属病院にほとんど行ったんですね。そして、さらに後期の卒後研修、これは二年から三年程度ですが、同じく大学の病院にいて、研修が終わる。大体四、五年で研修が終わります。そして、終わって、大学医局に入るわけですね。これが普通のお医者さんのコースだったんです。今も、もちろんこれが主流ではあるんですけれども。

 二〇〇二年に、ここに書いています新臨床研修制度というのが導入をされました。それは、お医者さんになる人にはいろいろな診療を経験してもらおうじゃないか、また、さまざまな経験をしてもらった方がいい、必ずしも今までの仕組みがいいとは限らないねと。むしろ、この二年間は義務化をして、そして、大学病院だけではなくて、いろいろな自治体病院、また民間の病院なんかも含めて手を挙げていただいて、自分のところでぜひお医者さんの卵の方を受けますよ、私たちの病院で研修を受けてもらいますよというふうな、こういう制度が、二〇〇二年新臨床研修制度が導入され、始まりました。

 そうしたら、学生は、今までかなり多くの人たちがその大学の病院に行っていたのが、一遍にここの線が細くなりまして、卒業した学生さんたちがどこへ行っているかというと、いや、自分の能力を高めるためにはあの公的な病院がいい、あそこは施設もいいし、それから一生懸命お医者さんたちが頑張ってやっている、そこでぜひ自分のキャリアを形成したい、そういう公的病院に行きたい、また、そういう民間病院に行きたいというニーズもあったりしまして、大学を卒業して大学附属病院に入るというここが一挙に、これは五割以下になったんでしょうかね、たしか四〇パー、四割ぐらいでしょうかね、減りました。

 減りましたから、何が言いたいかといいますと、従来は医局に多くのお医者さんが入っていたので、そこの医局の教授の先生方が各地域の公的病院や民間病院に医師を派遣していたんです。派遣していたんです、お医者さんを。自治体病院なんかは、どこどこの大学病院に行って、何人の先生をくださいと言って、医師の派遣をしていた。この医師の派遣ができなくなってきて、逆に、今まで公的病院や民間病院にいた先生方の引き揚げを、というのは、病院自体の先生の数が減っていますから、医局は先生方を公的病院や民間病院から引き揚げをする。そして、医師の派遣はなかなか十分にできない。この医師派遣の、これは事実上、制度的じゃないんですね、事実上大学医局が果たしていた、地域医療を担う公的病院、また民間病院への医師派遣機能が著しく低下をしてしまってというのが第一点だと思うんです。これがやはり大きなきっかけだったんですね。私はこの新臨床研修制度そのものは決して悪いとは思いませんけれども、それがきっかけになって医師派遣機能が弱まってしまった。

 二番目に、ここは実を言うと大学の先生方にも聞いたんですけれども、学生たちから見ると大学病院の魅力がないと言うんですね。魅力がない、魅力が低下してきている、これが二つ目ですね。だから、どうしてもほかのもっと魅力あるところに行く。

 そして三つ目に、これはまた後でやりますけれども、もう時間は余りないんですけれども、この地域医療を担っている公的な病院のお医者さん方の、これはお医者さんだけではなくて看護師さんなんかも含めて、医療スタッフも含めて、公的病院での労働実態、勤務実態というのが、もう大変。もうきょうは細かな数字は出しませんけれども、週に八十時間ぐらい働かなきゃいけない、夜勤が週三回ある、そういう先生方も多いんですよ、医者が少ないもので。

 そういうのに疲れてしまった先生方は、いつまでもこの公的病院におられませんから、例えば開業医の方になっちゃうんですね。開業医の方が給料はいいんですよ。勤務医は大変なんです。労働時間は長い、仕事も大変。ところが、給料は必ずしも開業医に比べると高くない。そうしたら、これは開業医にシフトしますよね。そうすると、開業医になってしまって医師が減ってしまうと、ますます公的病院のスタッフの人たちは少ない人数でやらないといけませんから、もっと大変になる。これが悪循環を重ねて、とうとう公的病院そのものが維持できなくなるというふうなことまで幾つかの自治体病院で起こってきているんですね。

 私はこうした理由でこの医師不足問題というのがあると思うんですが、厚生労働大臣、認識はいかがですか。

柳澤国務大臣 今、大変わかりやすい絵図でもって北側委員から御説明がありました。多くのところは私どもの認識と同じでございます。

 一つは、やはりお医者さんの意識が、昔のように、大学の教授、自分の教わった先生だけのことで、忠実で、少なくとも博士号を取るぐらいまではいたいというような気持ちもやはり変化をしてきている、そういう面もあるようですし、大学そのものが、例えば国立ですと独立大学法人というような形で、非常にいろいろ従来とは違った環境のもとにある。あるいは、三つ目には、女性のお医者さんが今や三分の一を占めてきておりまして、女性ということになりますと、やはり出産とか結婚ということが男性とは違った意味で非常に重要な影響を与えるというようなこと。それからまた、訴訟リスクがあるというような問題等々がありまして、今のような状況になっているかと思うわけでございます。

 そこで、私どもとしては何とか、先ほど総理がお答えいただきましたとおり、あらゆる手だてを講じて、この地域的なお医者さんの偏在というものに対して手だてを講じてまいりたい、このように考えております。

北側委員 今女性医師の話をされましたが、女性医師は物すごくふえているんですよ、今。

 例えば、総理、二十五歳、先ほどの図ですと、研修が終わると二十代後半になるわけですね。例えば、産婦人科の先生というのは、この二十代後半の方の何と六五・九%が女性なんです。小児科の先生の、二十代後半のお医者さんの中の約五割、四九・二%が女性なんです。女性の医師がどんどん今ふえてきているんですよ。女性医師の方々の働く環境、条件というのを整備していかないと、これは大変なことになりますよ。これはやはり保育所の問題等も必要でしょうし、院内の。これはしっかりと、女性医師が持続的に働ける、また復帰がしやすい、女性医師のバンクなんかをつくろうとされているみたいですが、そういうのを、これはもう早急に厚生労働省もしっかりやっていただきたいと思います。

 あと、看護師の方も不足をしておりまして、これも過酷な勤務実態が言われているわけですけれども、この看護師の方々の労働環境も改善をしていかないと、これは医者だけでは、やはり医者とスタッフ、それがあって、チーム医療で医療というのはできるわけですよね。そういう意味では、看護師の方々、さらに言うと、助産師の方々も含めて、私は医療スタッフの充実をしっかり図っていただきたいというふうに思うわけでございますが、今、この地域医療システムというのは、私は、ある意味、一種の危機に来ていると思います。

 そこをぜひ認識していただきまして、冒頭申し上げましたように、そもそも人口減少、高齢化、過疎化の中で、地域医療をどう安定的に運営していくのかというのは物すごく大きな課題です。地域に住む人たちにとって、医療というのは基本的な問題ですから、基本的な安心の問題ですから。この地域医療システムの再構築に向けて、私は、今までももちろん取り組んでいらっしゃるんですよ、取り組んでいらっしゃるんですが、改めて国としてビジョンをしっかり策定してもらいたいというふうに思っているんです。

 地域医療を担う公的病院等が、人材の面でも財政の面でも持続的に成り立ち得るシステムをつくらないとだめです、これは。さらには、そのためには、公的病院そのものを、ちょっと病院の集約化とか機能分担とか必要かもしれません。さらには、診療所とのもちろん連携も必要ですし、診療所の開業医の先生方にもこういう公的病院の医療をサポートしてもらうような体制も必要かもしれません。

 こうした取り組み、ビジョンというものを、しっかりこれからの先を見据えていただいて、ぜひ策定をしていただきたいと思いますし、また地方の方の病院は本当に大変で、地域枠といいまして、卒業して研修が終わってもちゃんと自分の県に戻ってもらうように、また僻地、離島に行ってもらうようにということで、奨学金をお貸しして、働いていただいたら奨学金の返済はいいですよ、このような仕組みまでつくってやっているわけです。

 こういう取り組みも、しっかりサポートを国としてやってもらいたいと思うわけでございますが、ぜひ地域医療の再構築に向けてのビジョンを策定すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 地域医療の確保については、昨年八月でしたか、私ども事務局でつくった確保対策という取りまとめの資料がございます。しかし、なかなかその内容自体も、現在浸透しているかというと、あるいは普及しているかというと、必ずしもそうでないという状況でございます。

 しかしながら、今、北側委員が御指摘のように、もう一度現状を踏まえて考え直してみたらどうか、私も今大変啓発されるところがございました。ぜひ、その方向でもう一度実態をしっかり把握して、それぞれの場所で事情が違うという面もあるんです、医師会とそこの中央にある病院とが割と円滑に意思疎通がいっているところとか、あるいはいろいろないきさつでそうでないところ等々、いろいろありますので。しかし、そんなことを、円滑にするように努力しなさいなんといったら、すぐ二、三年たってしまうというようなこともありますので、それぞれの地域に応じた確保対策、これをぜひ考え直していきたい、このように思います。

北側委員 これを最後にしますが、総理、今のやりとりを聞いていただきまして、私は、地域医療の現場は今本当に困っているところがたくさんあります。ぜひ、そういう現場も、総理また厚生労働大臣も行っていただきたいと思うんですが、きょうのこの地域医療のやりとりを聞いていただいて、御感想、御意見ございましたら、最後にお聞きして終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国の健康保険制度というのは、本当に世界に冠たるものであろうと思います。だれでもアクセスできるこの仕組み、しかし、医師がいないということになれば、その仕組みも役に立たないわけでございます。

 その中で、我々、地域に暮らしている人たちが安心して生活できるように、また、そこで子供を産んで、安心して生み育てることができる、そういう地域にするためにも、地域の、地方の医療制度を安心できるものにしていく、そしてまた医師の補充をしっかりとしていく。全力を挙げていきたいと思います。

北側委員 終わります。

金子委員長 この際、大口善徳君から関連質疑の申し出があります。北側君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 私は、安倍総理は、どのようなあらしがあっても暴風雨があっても、この日本丸、このかじを絶対放さない、そして本当に責任感を持って引っ張っていく、国民が乗っているわけですから、そういうことを大いに期待させていただきたいと思います。

 また、安倍総理は、昨年の十月、真っ先に中国そして韓国を訪問されました。我が党の太田代表が一月の七日、八日と訪中しまして、八日には胡錦濤主席と会いました。胡錦濤主席が、安倍総理が訪中して劇的に変わった、関係は改善された、こういうことを太田代表にも伝え、そして、この四月には温家宝首相、そしてまた胡錦濤主席も来日される、こういうことであるわけです。非常に大きな決断をされた。私は、立派だ、こう思っております。

 それから、今回の平成十九年度の予算、参議院選挙前ですから、本当は、大盤振る舞いしたい、そして選挙目当てのばらまきもしたい、こういう圧力があった。これをはね返して総理が、過去最大の四・五兆円、新規公債発行を抑制した。そして、交付税特別会計の健全化をして、実質六・三兆円、財政健全化をした。これも、ある学者も高く評価しているわけでございます。

 地方は、本当に今頑張っています。頑張る地方を何とか応援していきたい。例えば、私は静岡市なんですが、ことし、家康、大御所四百年祭といいまして、一六〇七年にこの静岡市、駿府に入城をされた。実は家康は、七十五年の人生の間、この駿府、静岡市に二十五年間、三分の一いた。そして、十七年間三河、江戸には十年弱だった。この大御所時代というのは、外交から文化から芸術から、静岡市というのは中心であったわけでございます。今、四百年祭で燃えています。地方は頑張っています。そういう全国の地方頑張れという思いを総理が発信していただきたいな、こう思っております。

 では、総理、一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 頑張る地方ということで、地方にはいろいろな資産があって、そして誇るべき文化や歴史があるんだろう。静岡市はまさに徳川家康、これはもう大変な資産なんだろう、ある意味では日本、世界に発信することのできる資産なんだろう、私はこのように思います。

 まさに、駿府入城四百年ですか、それを機にさらに地域の活性化に取り組んでいただきたいし、そういう取り組みをする地域を我々も応援していきたいと思っております。

大口委員 次に、行政改革についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が党は、無駄ゼロ推進、こういうことをやってまいりました。その中で、公明党もかなり主張させていただきましたが、政府の契約というのは競争入札が原則であります。随意契約は例外であるわけですね。この原点に立ち返って、やはり国民の目線に立って、厳格かつ徹底的な随意契約の見直し、これを我が党は主張してまいりました。

 そこで、この随意契約の見直しについてどのように取り組んでいるか。

 そしてまた、平成十六年、我が党、神崎前代表がこの質問をさせていただきまして、無駄一掃対策本部をつくるべきだと。これを受けていただいて、行政効率化関係省庁連絡会議、これの取り組みが始まったわけでございます。

 国全体で、公共事業のコストの縮減効果も入れてどのくらい節約がなされたのか、その内容、金額を示していただきたいと思います。

尾身国務大臣 随意契約につきましては、先ほどのお話のとおり、昨年二月に公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議が設置されまして、各府省におきまして見直し作業が行われてまいりました。

 その結果、まず昨年六月に、所管公益法人等との随意契約約二・二兆円の七割に当たります一・五兆円を一般競争入札方式に変えたところでございます。さらに、本年一月になりまして、残りすべての随意契約約一・二兆円の約六割弱に当たる〇・七兆円を一般競争入札の方式に改めました。その結果、全部合わせまして、これまで競争を行っていませんでした随意契約の合計三・四兆円のうち、金額にして約六割強の二・一兆円を一般競争入札等の方式に改めたところでございます。

 今後、また各府省におきまして見直し作業を着実に推進してまいりまして、引き続き政府調達の適正化、透明化に努めていくことが重要であると考えております。

大口委員 これにつきまして、もっと無駄のゼロを推進していかなきゃいけない。関係省庁会議は、各省庁から吸い上がっていく、そういうことなわけですけれども、後で官房長官にまた御答弁願いますけれども、やはり、職員がもっときめ細かく、直接官房の方に、こういう無駄があるからここはこういうふうに工夫した方がいい、こういうような意見を直接受けられるような、こういうシステムをつくっていくべきではないかな、こういうふうに考えております。

 そういうことで、その点をちょっと御答弁願います。

塩崎国務大臣 先ほどの大口先生の後段の質問については、行政効率化関係省庁連絡会議における節減効果だろうと思いますが、二月六日にこの会議が開催をされまして、十九年度予算、今お話がありましたように、幾つかの提案もあり、細かな点を節減してまいって、合計で三年間で節減効果六百六億円ということでございます。

 内訳を若干申し上げますと、電子政府関係の効率化で二百八十七億円、アウトソーシングによって二十六億円、公用車の効率化によって十八億円といったようなことで、十九年度の予算のみで二百七十四億円の節減効果が出ている予定でございます。

 それから、公共事業のコストの縮減、これについてもあらゆる見直しをしておりますけれども、十五年度から五年間で、十四年度と比較いたしまして一五%の総合縮減率を目標としてこれまでやってまいりましたけれども、十七年度までの総合コスト縮減効果は四千五百七十七億円、九・六%減です。一五%の目標に対して九・六ということで、かねてより無駄ゼロということでいろいろと御指導いただいてまいりましたが、現段階でこんなような感じになっております。

 今後、新たな方策を講じて、各省庁の職員から行政における無駄や改善に関する建設的な意見、提案を内閣官房で直接に吸い上げることを検討してまいりたいと思っております。

大口委員 その上で、もう一度お伺いしますけれども、これは毎年毎年やるわけですが、さらに、現場の職員の提案というものを内閣官房で直接受けてやる仕組み、こういうものもつくって、本当に、現場の職員もこれは無駄だと思っていることがあるわけですから、そういうものを吸い上げるシステムをつくっていただきたい、私はこう思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 徹底して無駄を省いていく、無駄ゼロを目指して、そして筋肉質の政府をつくっていきたいと思うわけでありますが、そのためにも、今先生が御指摘になったように、現場の生の声、その中でも、特に建設的な意見は吸収していく、やはり私ども、よくそういう声に耳を傾けていく必要がある、このように思っております。

 どのようにそういう仕組みをつくっていくことができるか、今、先生の御意見を踏まえて検討していきたいと思います。

大口委員 次に、公務員改革でございますが、公務員改革につきましても、安倍総理は施政方針演説におきましてかなり具体的におっしゃっておられる。その中で、「予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる再就職を根絶するため、厳格な行為規制を導入します。」こういうこともおっしゃっておられますし、また、新たな人事評価を導入して能力本位の任用を行うこととする、官と民がお互いの知識、経験を生かせるよう、官民の人事交流をさらに推し進めてまいります、こうおっしゃっておられるわけです。

 私は、公務員は国民に奉仕すべきものであり、公務に専心するということとともに、やはり誇りとやる気を持って、そして能力を最大限発揮する、こういう仕組みが必要だ、こう考えておるわけです。

 天下り規制、これは今、国民からは非常に、官製談合もありまして、天下りを厳しく規制すべきだ、こういう声が満ち満ちているわけでございます。そういう点で、私は、政府で、天下り、再就職管理について一つの統一した方針を出していただく。それから、再就職の管理情報、これを内閣で一元的に管理していただいて、そして統一方針に照らしてどうなのかということの検証をしていただく。さらに、徹底した情報開示をしていただく、これも大事であろう。そして、総理がおっしゃった、予算、権限を背景とした再就職の押しつけ的なあっせん、これを根絶する。そのためには、厳しい行為規制、そして罰則も含めたペナルティーを科す、そしてそれを監視体制でもってきちっとやっていく、これが大事であろう。

 ただ、今、早期退職慣行ということであります。この問題、やはり解決しなきゃいけません。今、政府も努力はしています。また、スタッフ専門職といいますか、こういう類型も考えなきゃいけないわけでありますが、こういうこと。

 そして、今、現行で、人事院による事前承認制度、これがありますね。この事前承認制度については、行為規制によって本当に予算、権限を背景とした再就職の押しつけ的なあっせん、これが根絶するということを、ちゃんとこの行為規制、そして監視体制で担保されるまでは、私は、内閣で事前承認制度というものを継続実施する必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。

 いろいろ今述べてまいりましたが、公務員制度につきましては、このほか、今、専門調査会において、公務員の労働基本権の付与の問題、そして分限処分の見直し、官民の人材移動の促進等々の論点があるわけですが、総理のこの公務員改革に対するお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに大口委員の御指摘のとおりだろう、私は、このように思うわけであります。

 公務員の皆さんに自信と誇りとやる気を持って業務に専念をしてもらわなければならないと思います。そのためにも、国民の皆様から後ろ指を指されない、信頼があって、そしてまた尊敬を得るような公務員、そういう働き方ができる仕組みを我々はつくっていかなければならない、このように考えております。

 その中でも、特に、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる再就職はあってはならないわけでありまして、それは根絶をしていく、これはもう、はっきりとした方針でございます。

 そして、そのためにも、厳格な行為規制の導入と監視体制の整備を図っていく。そして、それと同時に、新たな人事評価を導入して、能力本位の任用を行う。また、そのために、具体的な制度設計を進めていかなければいけない。今進めさせているところでございます。

 また、専門調査会で議論されている公務員の労働基本権の問題については、早期に方向性を整理して、中間的な取りまとめをいただきたいと考えております。

 さらに、分限処分の見直しや、官民の人材の移動の促進、これは、官の人材も民の人材も、お互いに経験を官や民でそれぞれしながら、そうした人材を生かしていくということは極めて重要ではないかと私は思います。

 そうしたことも含めまして、また、ただいまいただきました御提案を踏まえまして、高い使命感と働きがいを持った公務員による、本当に、ぜい肉をそぎ落とした、そして国民にとって頼りがいのある筋肉質の政府を実現していきたいと思っております。

大口委員 特にこの再就職の行為規制につきましては、渡辺大臣も大変今御苦労をされているわけでございます。各省庁の再就職のあっせんのうち明らかに不正なもの、これは当然規制しなきゃいけないわけですね。ただ、予算、権限を背景とした押しつけ的なあっせんの根絶をするためには、ただ単に明らかに不正な行為だけを規制していたのでは、これは不十分である。そういう点では、投網をかけていかなきゃいけない、こういうことが一つあります。

 それからまた、再就職先につきましても、営利企業だけじゃなくて、公益法人、独立行政法人、また特殊法人、政策金融機関等、こういうものもやはり対象にすべきだ、こう大臣もおっしゃっておるわけですね。そしてまた、今人材バンクというのが総務省にありますが、これは機能が全くしておりません。やはり表玄関からも正々堂々と透明性を持って再就職をすべきだ。経済財政諮問会議では、内閣にこういう人材バンクというものを設置して、ここで、正面玄関でやるべきじゃないか、こういう議論もあります。

 私も、国民がこの天下りに対して非常に厳しい目で見ておられる、そういうことを考えまして、非常に渡辺大臣に対する期待は大きいんですね。これについて積極的な御発言をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 今、大変具体的な御提言をいただきました。そうした御提言を踏まえて、今、詳細な制度設計を行っているところでございます。

 また、人材バンクでございますが、これは、御案内のように、六年ぐらい前にできまして、たったの一件しかマッチングしていない。これはちょっと幾ら何でも使い勝手が悪過ぎるんですね。この長寿社会にあって公務員は再就職しちゃいかぬというのは、これは大変酷な話でございますから、御指摘のように、正面玄関から正々堂々と再就職ができる透明なシステムとして、やはり人材バンクは大いにバージョンアップを図っていく必要があるのではないかと考えております。

大口委員 次に、住宅問題に行きます。

 今、少子化ということからいきましても、今のファミリー世帯に適した賃貸住宅のストック、これだって、三大都市では百六十一万戸不足している、こういうふうに言われています。布団を敷いたらその布団の端がたんすに当たる、こういうところもあるんですね。そう考えますと、そういうストックが足りない。

 実は、民間の賃貸住宅に居住する子育て世帯の最低居住面積水準未満が一六・八%ある。大都市東京都ですと二五・六%、大阪府二二・〇%、こういう状況になっているわけですね。また、手すりの設置、それから段差の解消、広い廊下幅の確保、こういうバリアフリー化、これはもう日本の住宅全体がおくれていまして三・四%なんですね。特に賃貸の場合は一・五%、持ち家が四・三%。やはりバリアフリー化、これはもう喫緊の課題である、こういうことで、税制においても今回いろいろ工夫されたわけであります。

 そして、民間賃貸住宅の賃貸し人ですね、大家さんです。高齢者、障害者、子育て世帯等に対する入居制限、これが一五・八%、こういう状況であるわけです。なかなか貸しづらい、こういうことなんですね。では、公営住宅はどうかというと、公営住宅については、お手元の資料にありますように、要するに、公営住宅はなかなか応募倍率が高い。全国平均九・七倍、東京で二十八・五倍、大阪で十三・二倍だというんです。ですから、公営住宅の供給も大事ですが、やはり、民間活力というものを活用した賃貸の供給、スピード感を持ったことをやっていかないと間に合わない。

 こういうことで、国土交通省といたしまして、こういう住宅事情の課題をどう認識されておるのか、そして、この十九年度の予算案において地域優良賃貸住宅の制度というのが創設されたわけでありますが、この制度が今述べた住宅課題に十分こたえられているのか、御答弁のほどよろしくお願いします。

冬柴国務大臣 高齢者とか障害者、そして子育て世帯をめぐる住宅事情、大変厳しいものがある、御指摘のとおりだと思います。

 二つの面から。一つは、例えば子育て世帯の、特に賃借している住宅の面積というのは非常に狭小であるということも御指摘のとおりでございますし、高齢者につきましても、バリアフリー改修がされていない。そういう優良でない住宅の中にお住まいの人がいらっしゃるということを考えまして、平成十九年度予算では、本当に大幅に今までの考え方を改めまして、特優賃、特定賃貸優良住宅、あるいは高優賃、高齢者向け賃貸住宅、こういう制度をもう一度再編いたしまして、そのような高齢者とか障害者、あるいは子育て世帯に重点的に住宅が回るようにするために、今御指摘のように、地域優良賃貸住宅制度というものを創設することといたしたわけでございます。

 この制度は、民間事業者に対して、そういう優良な賃貸住宅を建てていただくように、そしてまた、高齢者とか子育て支援という、地域で住宅を確保するために特に配慮が必要な世帯が入居できるような家をつくっていただく、そのために、国も地方も大きくその整備には助成をすることによって供給を促進させようということが一つでございます。

 それから、悲しいことに、そういう事業者は障害者とか子育て世帯に家を貸し渋るわけです。これはいろいろな理由があるんでしょうけれども、一つは、賃料が滞納されたときに本当に取れるんだろうか、あるいは、出ていっていただくときに、賃貸借終了したときに原状復帰してもらえるんだろうかという心配があるからだと言われております。

 したがいまして、今回、そういう心配を回避するために、公的にこれを保証する、賃料あるいはそういうものを賃貸人に保証するという制度をつくったわけでございます。そういうことで、家賃保証とかそういうものを総合して、そしてこういう弱い立場にある方々のセーフティーネットを張りめぐらせるために今回相当大きな予算も投入して頑張ってまいる、そのような趣旨でございます。

大口委員 今、力強いお話がありました。

 我が公明党におきましても、昨年六月に住生活基本法を制定したわけでありますが、この基本理念を踏まえまして、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯の方、住宅の確保に特に配慮を要する人々、そういう方々のために今法案を準備しております。骨子もこの前発表しました。そして、これをさらに、自民党さんとも相談させていただいて、法律化してまいりたい、こう思っております。

 まず、公営住宅、これはセーフティーネットの中核であります。そして、今大臣御説明になりました地域優良賃貸住宅、これは民間の活力を利用してやっていく。そして、入居の円滑化ということで、民間賃貸への円滑な入居。こういうことで、例えば家賃保証でありますとか、あるいは入居制限をしない住宅の登録とか、それから居住支援、NPOと連携する、こういうものによって民間賃貸住宅へ、特に配慮を要する方のためにこういうものをもっと推進していく。

 これを地方自治体が、地域の実情に応じて、多様な、住宅確保に特に配慮を要する人、DVで被害を受けておられる方、あるいは田舎から都会の息子さんのところへ、近居、近いところに住みたい、こういうようなことも自治体がこの地域住宅計画に書き込んでいけば、地域住宅交付金というものを積極的に活用して、ハード面、ソフト面を支援する、こういう法案を考えております。総理、これについて御答弁願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま先生がおっしゃった住生活基本法の基本理念でございますが、高齢者、障害者や子育て世帯の居住の安定確保を図ることでありまして、これは住宅政策の極めて重要な使命である、このように思います。

 また、さらには、再チャレンジが可能な社会の構築にも寄与するのではないか、こう思うわけでありまして、このため、平成十九年度予算案に盛り込んだ各種の取り組みに加えまして、公的賃貸住宅への優先入居について、これまで対象としてまいりました高齢者、障害者や子育て世帯に加えまして、職を求めて再チャレンジに取り組んでいる方々を対象とするなど、施策に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

大口委員 まだまだいろいろと質問したいことはございます。例えば品目横断的な経営安定対策、これについては今、国と自治体とJAの関係者が担い手づくりに大変努力されている。ただ、地域によってはまだ仕組みが理解されていない、準備が整わないという集落営農者も多いと聞いています。こうした不安を取り除くために、対策のさらなる周知徹底や集落の組織化に向けた支援、こういうものをやっていただきたい。

 そしてまた、我が党が非常に強く主張しました農地・水・環境保全向上対策、これも今一生懸命、平成十八年度、全国六百カ所で実験事業をやっておられます。こういうことについても大いに進めていただきたい。

 また、海洋国家日本でございますので、海洋基本法の議員立法、これも検討しております。こういうこともしっかりやってまいりたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。浜松も、これは家康ゆかりのところでございますので、今浜松は元気ですが、地域の元気を私どももしっかりと支援していきたいと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 これにて北側君、大口君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 これから一時間にわたって、安倍総理を中心に、格差国会ということで、格差論議の第一弾をさせていただきたいと思います。

 まずその前に、先ほど自民党委員からの質問の中で我が党の代表のことが触れられました。政治資金規正法に基づききちんと報告、公表されて、さらに、詳細を明らかにする旨先日の本会議でも明言している件について、何か違法なことでもあったかのような発言をされたことは甚だ遺憾であります。

 政治資金規正法は、その第十二条第一項第三号において、「有する資産等」として、明確に「土地」「建物」「地上権」「土地の貸借権」を列記しております。

 そこで、総務大臣にお伺いします。不動産の取得は規正法で認められていますよね。

菅国務大臣 認められております。

山井委員 認められているということであります。

 我々民主党は、事務所費について国民に隠し立てしているとの不信を与えることのないよう、使途のはっきりしていない多額の事務所費の詳細を公表すべきと考えています。この点については、来週の十三日の質疑で同僚議員から、該当する、使途のはっきりしない多額の事務所費を計上しているここにおられる大臣の見解を伺い、議論をしたいと思います。

 さて、この国会は格差国会であります。民主党は、そのため、格差是正緊急措置法案を今つくっております。私はその策定チームの事務局長をしておりますが、本当の格差是正ができるのは民主党なのか与党なのか、競い合おうではありませんか。

 今や労働者の三分の一の千数百万人が非正規労働者、働いても生活保護以下の生活しかできないワーキングプアと言われる方々が約四百万人。格差是正は待ったなしであります。

 安倍総理も最低賃金引き上げをおっしゃっておられますが、具体的に一円なのか十円なのか百円なのかはさっぱりわかりません。私たちは、全国平均で時給千円を目指して、その趣旨を書き込んだ法案を現在つくっております。アメリカでも最低賃金は時給五ドルから七ドルに引き上げることが決まり、今や、先進国で日本の最低賃金は最低になりつつあります。

 また、短時間労働者、つまりパート労働法についても、政府もパート労働者の支援と言っていますが、現在の政府案の差別禁止は、千二百七十万人のパート労働者のうちほんの数%しか対象にならず、ほとんどのパート労働者は差別禁止の対象にならず、逆に、大部分のパート労働者への差別を容認しかねないパート差別法ではないかという批判すら出ております。

 一方、民主党が策定している格差是正緊急措置法案では、すべてのパート、短時間労働者に対する差別を禁止するパート労働法改正を盛り込んでいます。政府のようにかけ声やスローガンだけではなく、民主党は具体的な実効性のある法案をつくっております。どちらが本当に格差是正、非正規労働者やフリーター、ワーキングプアの方々を支援する実効性のある法案なのか、勝負しようではありませんか。

 さて、そんな中で、最初に、改めて柳澤大臣に要望したいことがあります。

 それは、枝野議員から一昨日要望がありましたキヤノンの件であります。枝野議員は、偽装請負でたびたび厚生労働省の指導を受けているというキヤノンの新聞報道を取り上げました。そのような違法行為でたびたび国の指導を受けている企業のトップが、政府の基本政策を決める経済財政諮問会議の中心メンバーであるということはいかがでしょうか。この点について、厚生労働省には、キヤノンへの指導内容を公表し、この委員会に提出していただきたいと思います。柳澤大臣の答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 結論的に申しますと、個別の、今御指摘の企業名を挙げての現在の労働行政の執行の状況を申し上げるわけにはまいらないということです。

 ただ、一般的に申し上げまして、労働者派遣法の法令違反が起こった場合にどうするかということを申し上げますと、各労働局におきましては、まず是正指導を行い、違法状態の解消を図っているところでございます。

 また、派遣先につきましては、労働者派遣法において、このような是正指導を行ってもなお違反している場合には勧告が行われる、それで、この勧告に従わなかった場合には公表できる。こういうように、公表そのものが法制度の中で一種のペナルティーとしてしっかり法定化されているということでございますので、ただいま私が冒頭に申し上げたことのとおりとなるわけでございます。

山井委員 これは、一般の会社ではなく、経済財政諮問会議のメンバーという政府の一員、公職であるわけですから、当然公表すべきと考えます。

 それで、またこれも枝野議員が一昨日要望した件ですが、キヤノンの御手洗会長も、恐らくこの件について御意見、自分の御見解をお持ちでしょうから、この予算委員会に参考人としてお越しいただき、お話をお聞きしてはどうかと思います。再度、委員長にお願い申し上げます。

金子委員長 理事会で協議をいたします。

山井委員 さて、本題に入ります。

 今の安倍内閣の格差拡大社会で最も御苦労されている、一番しわ寄せを受けておられるのが、障害者や障害のあるお子さんたちではないでしょうか。民主党が現在作成している格差緊急是正法案には、格差拡大の深刻な例としてこの障害者の問題を盛り込んでおり、去る一月三十一日に、議員立法として障害者自立支援法の改正法案も提出をいたしました。これは、定率一割負担、障害が重いほど自己負担が重くなるという天下の悪法、この部分を凍結するということを盛り込んで、昨年までの措置費、支援費制度に自己負担を戻す、そういう内容をメーンとしております。

 そこで、以下、今の障害者や障害のあるお子さんたちが置かれている状況について、基本的な質問をこれから安倍総理に行わせていただきます。安倍総理も、以前、自民党の社会部会長であり、このような福祉の問題の御専門とお聞きしておりますので、基本的なお考えをお聞かせいただければ幸いでございます。

 まず、障害者自立支援法について、一つだけパネルをまず最初にお見せして、簡単に御説明をしたいと思っております。

 今問題になっていることが大きく四点あります。

 一つは、定率一割負担、応益負担というものを導入したということで、大幅に自己負担がアップしたということであります。

 二番目は、この法律によって、月割り制から日割り制というものに施設の報酬が変わりまして、その収入が大幅に減少して、そして施設職員の方々の給料やボーナスがカットされている。

 それと三つ目は、障害者の方々の授産施設や作業所、そういう働きに行って工賃、一カ月の給料をもらっている場でも、給料を例えば一万円もらっているにもかかわらず、そこに働きに行ったら逆に一万五千円とか二万五千円払わねばならない、そういう現状が今起こっております。

 最後に、こういう負担を一番直撃を受けているのが障害のあるお子さんたちの療育、児童デイサービスにおいても原則一割の負担が入って問題になっているということです。

 そこで、安倍総理にまずお伺いしたいと思います。安倍総理、スペシャルオリンピックスというのはお聞きになったことはございますでしょうか。名誉会長を細川佳代子さんがされているということで、障害者の方々のスポーツなんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 スペシャルオリンピックスというのは、これはパラリンピックとは違いまして、自閉症の方々とか知的障害の方々も含めて、そういう方々が参加をして、いわばメダルをとるという種類、タイプのスポーツではないわけでありまして、かなりこれは世界各国が注目をして、また参加をして、支援をしているわけでございます。これは、特にケネディ家が中心になってこの運動が始まった、このように承知をしております。

山井委員 安倍総理、そのような取り組みをいかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 こうした取り組みは、障害を持ちながら、いわばチャレンジド、こう言われていますが、そういう中において、まさに目標を持って頑張っていこうという勇気を与える取り組みだろう、このように思います。

山井委員 確かに、障害のある方々が新たな生きがいを持たれる、そういう勇気を持つというすばらしい取り組みだということを安倍総理から御答弁いただきました。

 この新聞記事を見ていただきたいと思います。昨年十月三十一日の朝日新聞でございます。

 「自立支援法で生活費負担増 スペシャル五輪断念 知的障害者 長野の施設 参加費捻出できず」、長野県の知的障害者の施設浅間学園が、障害者自立支援法のあおりを受け、熊本県で開催されるスペシャルオリンピックスの国内大会出場を断念していたことがわかった。自立支援法で学園の生活費の自己負担がふえ、参加費用の捻出が難しくなったという。大会関係者によると、長野以外にも自立支援法が要因で出場を断念したケースがあるという。スペシャルオリンピックス日本の細川佳代子名誉会長は、「長野以外も(同様の理由で)出場を断念したケースがあると聞いている。私たちの活動目的は障害者の自立と社会参加応援。そのチャンスを阻まれるのは残念だ」と話しておられる。

 この法律、名前は障害者自立支援法ですけれども、この一例を見ても、障害者の自立を阻害しているんじゃないですか。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私はその個別の例については詳しく承知をしておりませんし、また個別の例について質問の通告はございませんが、この障害者自立支援法につきましては、障害を持った方々もいわば引きこもらず、自宅とかそういうところに引きこもらざるを得ない状況から、社会や地域に出ていくように、そしてまた就労の機会、チャンスに恵まれるようにという目的でこの法律ができたわけであります。また、国の責任もこれは明確になっているわけでございます。

 そういう中におきまして、負担の上限の設定、一割負担をお願いしているわけであります。みんなで支えていこうという精神のもとに一割の負担をお願いしているわけでありますが、負担の上限を設定するなど、また、障害が重い方の負担が過重なものにならないような仕組みをつくっているわけでありますが、さらに、現場の状況、皆様の声に耳を傾けながら、新たに、補正予算あるいは十九年度当初、そして二十年度の当初で千二百億円のさらなる予算を組んだところでございます。

山井委員 いろいろ趣旨のすばらしさをおっしゃいました。障害のある方々が引きこもらないように、そしてまた就労ができるように、そういう趣旨は大賛成であります。しかし、おっしゃっておられる趣旨と実際起こっていることが正反対ではありませんか。

 この障害者自立支援法、やはり現場では非常に苦しんでおられます。そこで、障害者の方々、在宅で暮らしておられる方々がどういうふうな御不便になっているかということを、次、またグラフで見てみたいと思っております。

 これは障害者団体がやった三百八十七名に対するアンケート調査でありますが、自立支援法で自己負担がふえた、それによってサービスが減った、どんなことになったか。三百八十七人中ですが、トイレに行く回数を減らした方十七人、おふろに入る回数を減らした方二十四人、食事の回数を減らした方二十二人、外出を減らした方八十二人、その結果、体調を崩した方が一割以上の四十二人ということなんですね。

 安倍総理、こういう現実に関して安倍総理はいかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 この後、厚生労働大臣から詳しく、今個別事例をいろいろと挙げておられますから、個別事例についても御説明をさせていただきたい、このように思うわけでありますが、法の施行後、毎年、この障害福祉サービスの予算につきましては一〇%以上の伸びを確保しております。また利用者数においても、前年度に比べて一〇%近くふえているのも事実であります。

 障害福祉サービスは、全体としては着実に充実をしていると思います。そしてその上で、さらに、先ほど申し上げましたように、きめ細かな対応もしなければいけないということで、千二百億円の予算で特別の対策を講じたところでございまして、負担がより厳しいとされている通所の利用者や障害児世帯を中心にもう一段の負担軽減措置を行うことによって円滑な運用に努めていきたいと思っております。これは、まさに障害者の皆さんにとって、この仕組みをつくってよかったと思っていただけるような運用に努めていかなければならないと考えています。

山井委員 安倍総理にもう一問お伺いします。

 安倍総理、今、障害者の方々にこの法律を入れてよかったと喜んでもらえるようにとおっしゃったわけですが、みんな、もう本当に困っているわけです。

 どういう声があるか。トイレに行くのにもお金がかかると。今までの支援費制度のときには、障害者年金しかない人は無料だったわけですね。トイレに行くのにもお金がかかる、食事をするのにもお金がかかる。生きていくための最低限の行為にすべてお金がかかるのはおかしいということを私の知り合いの障害者の方がおっしゃっておられますが、これについて、安倍総理、どう思われますか。

柳澤国務大臣 実際に委員の今おっしゃられたようなことがどこで起こっていらっしゃるかということも……(山井委員「全国で起こっていますよ」と呼ぶ)いや、そういう意味ではなくて、入所の方々で起こっているのか、あるいは在宅の方々で起こっているのか、そういうこともやはりしっかりと指摘をしながら問題を我々に提起していただかないと、私どももイメージのしようがないわけでございます。

 それで、私どもは、通所、在宅の方々であれば、特にその方々に対して今回配慮する措置を講じたのでございまして、その後の状況なのか、あるいはその以前の状況なのかということも、非常に我々としては関心があるところでございます。

山井委員 これは、特別対策でやっても、ここに厚生省の資料がありますが、現在が、通所の授産施設だったら、低所得者、無料で利用できた方が一万二千五百六十円になった。でも、これが低減になっても八千八百円にしかならないわけですね。

 安倍総理に根本的なことをお伺いします。障害が重いほどたくさん自己負担をせねばならない、このような制度というものに関してどう思われますか、総理として。

安倍内閣総理大臣 であるからこそ、我々は負担の上限を設定しているわけでありまして、軽減措置を図っている。そして、先ほど申し上げましたように、通所の方々あるいは障害児を持たれている世帯の方々に対して、さらなる軽減措置を講じたわけでございます。

山井委員 今、安倍総理、だからこそ軽減措置を図っていると言うならば、軽減措置を図る前に、そもそも、障害が重いほど自己負担が重くなるというこの定率一割負担の制度を導入しなかったらいいじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 この一割負担というのは、みんなでこの仕組みを支えていこうという基本理念において、障害者団体の方々とも話し合いを行いながらこれは導入したわけであります。多くの方々も、自分たちも一緒に負担していくんだ、そしてその中で当然……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 サービスを利用していく上において堂々と利用していくし、また、利用を提供するサービス側に対してもいろいろと意見も堂々と言える、こういうことでございました。

 そしてまた、いわば障害が重い方、当然、その中で一割という率であればそういうことになっていくわけでありますが、介護保険制度も一割ということによりまして、これは介護が重くなっていく上において重たい仕組みになっていくわけでありますが、しかし、その中で当然、この障害者の方々に対しては、先ほども申し上げましたように、軽減措置を講じているところであります。

山井委員 今、介護保険とのかかわりをおっしゃいましたが、若いときにしっかり働いて資産を形成する能力がある、そういう介護の問題と、もともと障害があってなかなか就労のチャンスに恵まれないというケース、もっと言えば、障害のあるお子さん方、全く所得、収入が本人にはない、そういうケースというのは全く違うわけなんですね。

 そこで、今、安倍総理からも、障害のある御家庭あるいはお子さんたちに関してはかなり配慮をしているという御発言がありましたので、お聞きしたいと思います。

 実は、きょう、与党の議員の方々からも、この障害児の療育の問題、ぜひとも頑張らないとだめだという励ましをいただいたんですが、一歳半健診などで、生まれた赤ちゃんに障害があるということがわかったときのショックというのは非常に大きいわけですね。先日お目にかかったあるお母さんも、一カ月半の間毎日、ティッシュの箱がなくなるぐらい泣き続けたということをおっしゃっておられました。

 そういう方々にとっての一番大切なサービスが、安倍総理、児童デイサービスや通所療育サービスと言われるものなんですね。週に何回か、あるいは毎日、その専門の施設に行って、そこに行くことによってお母さんも、子供がいろいろな障害で言うことを聞いてくれないともうパニックになってしまったりしている、それに対してどういうふうなかかわり方をしたらいいかとか、そういうことが教えられたりするわけです。

 安倍総理、こういう障害のある御世帯に対する療育サービスについていかが思われますか。安倍総理に感想を聞いているんです。いやいや、感想を聞いているんです。(発言する者あり)

柳澤国務大臣 一割負担と先生はおっしゃいますけれども……(発言する者あり)いやいや、そうじゃなくて、上限というのは定額なんです。上限は定額ですから、スライドして、サービスの量にスライドして伸びていくというものではないんです。もう頭打ちになってしまう。その頭打ちの限度を四分の一にしたということでございますから、これは最大限でも九千三百円ということでございますので、通常の介護だったら三万七千二百円なのが今度は九千三百円になったということでございますので、そこはよく御理解を賜りたいと思います。

山井委員 質問もしていないのに勝手に出てこないでください。

 安倍総理、今の療育サービスについていかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員長が指名をされたから、厚生労働大臣が立ったわけであります。確かに私が手を挙げたわけでありますが、指名するのは委員長の権限ではないか、このように思うわけでございます。

 それでは、お答えを申し上げます。

 我々も、障害者の方たちに対して、障害者の方が大変な困難を抱えている中で頑張っておられる、それを支援していく、そういう思いがあるのは同じですよ、それは。その中で、みんなでそれを支えていく仕組みをつくって持続可能なものになっていく、そういう安心感の中で、そしてさらには、先ほど申し上げましたように、その中で就労したいという方々には就労を支援していく、当然のことであるわけでありますが、その支援を行っていく。あるいはまた、きめ細かな、先ほど大臣から答弁をいたしましたように、対応、軽減措置もとっていく、それは当然のことであります。

 その中でさらに、現場において新しい仕組みを導入するわけでありますから、いろいろなきしみが起こっているのであれば、これは我々もそうした声に耳を真摯に傾けながら対応したところでありまして、その中で我々は、緊急に補正予算の中にも含め、そしてまた十九年、二十年の当初予算も含めて千二百億円の予算を、対策を組んだわけであります。その中でも、特に通所の方々が厳しい状況にある、また、障害児を持っておられる世帯の方々が厳しい状況にある、そういう方々を中心に我々は対策を組んだわけでございます。

山井委員 安倍総理、思いの問題と実際起こっていることとは違うんですね。それは、精いっぱい障害のある御家庭を応援したいという思いはわかりますよ。でも、私がきょう聞いているのは、実際、今やっていられることは逆の結果になっていますよということなんですよ。

 それで、実際、この障害者の療育や児童デイサービスでも、自己負担のアップによって利用抑制、何と九月、十月の二カ月だけで千六百人もの障害のある御家庭がこのような児童デイサービスや療育サービスを完全にストップしたり、利用回数を減らしているわけですね。それで、今年度から、この四月から軽減をしたとしても、去年の十月よりは数倍高い自己負担を払わねばならないわけですよ、特別対策をした後でも。

 実際、あるお母さんはおっしゃっていました。この療育サービスを受けていなかったらどうなっていましたかと言ったら、もう自分は子供と一緒に心中していたかもしれない、療育サービスに行くことによって、自分も同じ悩みを抱えていられるお母さん方と出会って本当に救われたと。また、あるお母さんはおっしゃっていました。ここでいい療育サービスを受けて、だからこそ、やはり自分だけで我流でやっているのと、プロの方々のお世話を受けて指導を受けるのとで、全然違うみたいなんですね。もし療育施設に行かなかったら、学校に上がってからまたいじめを受けていたんじゃないか、でも、それでも、かなり療育施設でサービスを受けて成長することができたという声もありました。

 もっと言えば、将来の人生にもかかわるんですね。二歳から六歳の間は一番いい療育サービスを受けることが大切なんです。脳の発達もあります。体の発達もあります。本人にとっても家族にとっても一番大切なサービスが、この障害者自立支援法によって、サービスの利用が抑制あるいは中止に千六百人もなっている。実際、私の地元の調査では、その数倍じゃないかと言われているんですね。

 だから、安倍総理が、自分たちも思いは一緒だ、頑張っているという答弁はそれで結構なんですが、実際、逆の結果が起こっていて、特別対策をやっても自己負担は去年よりも数倍になる、こういう現実について安倍総理はどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 まず私から答弁して、詳しくは厚生労働大臣から答弁しますが、先ほど申し上げましたように、利用率においては一〇%、これは向上しているわけでございます。

 そしてまた、個別の例でいろいろと申し上げますが、この仕組みを導入した大きなねらいの一つは、障害を持っている人たちが家に引きこもらなくてもいい、社会にも出ていけるし、就労するチャンスをつかむことができるようにしていくという制度でございます。

 東京都の知的障害者の小規模通所授産施設におきましては、それまで、書類封筒詰め、ペン封入作業などを実施して、座位作業から立位作業への転換等、作業の効率化に努めた結果、平均の、均衡賃金約九万円を実現したという例もあるわけでございまして、そういう、うまくいっている例もあるわけでございます。

 つまり、この制度を導入するまでは……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 このように、収入をある程度実現することができなかった方々が、収入を引き上げることに成功している事例もあるということも申し上げておきたいと思います。

山井委員 安倍総理、今、私は非常に大事なことをおっしゃったと思いますよ。全体としてサービス利用者はふえているんだと。でも、そうじゃないでしょう。全体が伸びることも大事ですけれども、実際、その陰で、今まで利用していたのに利用できなくなった方がたくさんいるという、このことが問題なんじゃないですか。それでうまくいっているケースもあるとおっしゃいますが、政治というのは、うまくいっているケースよりも、逆にそういうセーフティーネットからこぼれている人に配慮をするのが本来の政治なんじゃないですか。

 安倍総理、子どもの権利条約、これは一昨日も高井議員が質問をされました。一番根本的な理念ですので、読ませていただきたいと思います。子どもの権利条約、九四年に日本も批准しております。第二十三条の三項で、障害を有する児童の特別な必要を認めて、与えられる援助は、父母または当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えるものとすると書いてあるわけですね。これを批准しているんですよ。にもかかわらず、これだけ負担増をしている。やはり、こういう子どもの権利条約にのっとって、かなりお金のある方は払うのは結構でしょうけれども、財政的に厳しい方は無償にする、そういう方向性について、これは基本的な考え方ですから、安倍総理、いかが思われますか、こういう考え方。

柳澤国務大臣 山井委員が障害者の問題について非常にいろいろの情報をお集めになられて、私、厚生労働委員会でいろいろなことを、情報をもたらしていただいた、そういうことを踏まえて今回の特別措置を講じたのでございます。それでございますので、そのことをぜひ理解していただいて、山井委員のように障害者の方々と非常に意思疎通がよくいっていらっしゃる方々だったら、この四月からはこうなるんだから、それでひとつお考えいただいたらどうですか、そういうことこそやっていただきたいと私は思いますよ。

 いいですか。ですから、今度の、四分の一なんです。所得の少ない人は……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

柳澤国務大臣 一番低いんだったら三千七百円なんです。ですから、もう、一日当たり百何円というようなことで、できる限りの配慮をしている。それで、一番所得のある方でも、先ほど申し上げたように九千三百円ということに今度は引き下げていただきましたので、ぜひもう一度お考えいただいて、通所の方も入所の方も、特に通所の方、在宅の方が問題なんですが、ぜひこの新しいスキームのもとで御利用をいただいて、そして、先ほどの、この制度の本来の趣旨をぜひ生かしていただきたい、このように思います。

山井委員 これは特別対策をやっても、ここに厚生省の資料がありますが、低所得の方は、千百円だったのが五千円になる。五倍に高くなっているんですよね。それで、今、柳澤大臣、数千円だという話になりましたが、私は、そこの感覚、本当に御苦労されている方々の感覚とちょっとずれているんじゃないかと思いますよ。

 ここに、障害児のお母さんからいただいた手紙があります。

 九月までは九千三百円だったのが、十月以降は二万円になった。そして、ぜんそく予防に毎日薬を服用のため、かかりつけの小児科医へ週二回、障害がある子供のための歯の予防、治療、言語指導、摂食指導で障害者口腔センターに毎月二、三回、眼科二カ月に一回、耳鼻科二カ月に一回、発達診断の病院に六カ月に一回、そして学習支援のコース、年に約十三万円もかかっている。子供にかかる家庭の出費が負担になることは明らかです。弱い立場の人からお金を巻き上げなくてもいいではありませんか。幼児からこのような不安があるのですから、成長するにつれ、もっと費用がかかるのかと思うと、この法案には憤りを感じざるを得ません。

 私が言いたいのは、このような、自立支援法だけじゃないんですよ、お金がかかるのは。病院に行っても、そこに行く足代もかかる。そして、本当だったら、パートをして、その何千円か値上がりになったものを稼ぎたいけれども、障害のあるお子さんがおられたらパートにも行けないわけです。私が話を聞きたいと言っても、預かってくれる場所もないから国会にも来れないんですよ。そういう意味では、ただでさえそういう御苦労をされている方々に、なぜさらに負担をかけるのか。もっと軽減をしようと言うべきところじゃないのかと私は思います。

 それでは、安倍総理にお伺いをします。このような状況の中で、非常に残念な事件が起こりました。昨年の十二月六日に、琵琶湖のほとりで、障害のある娘さん二人とお父さんが無理心中をされたという事件が起こりました。安倍総理、このことは御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 報道等によって承知をしております。

山井委員 そして、その報道が、自立支援法の影響もあったと書かれていることについては御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は、自立支援法とのかかわりについては、それは承知をしておりません。

山井委員 この記事を見てください。ここに書いてあります、「障害の娘二人負担重く」、滋賀県の「甲良の無理心中」「父「将来不安」と遺書」「のしかかる自立支援法」と。

 でも、不思議ですね。この無理心中が報道されているのは、自立支援法の影響ではないかということでこの無理心中の事件は非常に残念ながら報道されているわけで、安倍総理が、この無理心中は知っていたけれども、自立支援法の影響があったかもしれないということは知らなかったというのは、非常に何か変な話のように思います。

 それで、娘さんが、十歳、十四歳という障害のあるお子さんが養護学校に通っておられました。お父さんが四十歳。そして、自立支援法で、ヘルパーの利用がそれまで月千円だったのが六倍の約六千円に増加。そして、短期間娘さんを預かってもらう短期入所サービスが、千円だったのが、自立支援法によって二万円となりました。出費が痛いと役場の職員にお父さんはこぼしておられたそうです。親子水入らずの時間は週末だけで、一緒に博物館にも行きました、娘もとてもうれしそうでしたと学校の連絡ノートに残っておりまして、お父さんがみずからお弁当をお子さんたちのためにつくる、非常に子煩悩な方だった。残念ながら三年前に奥さんが病死をされてしまわれていたということなんですね。

 それで、十二月の初旬、「週末明けの月曜日。三人の遺体は、車の中で折り重なって見つかった。」と。そして、この問題について、やはりここに書いてありますように、「四月に施行された障害者自立支援法。過重な負担が父の背中にのしかかっていた。」というふうに報じられております。

 つけ加えておきますが、これは滋賀県であります。滋賀県は、全国で最も軽減措置をやって、いろいろな措置をやって、まさに今回政府が発表された特別対策を先行してやっていたところであります。まさにこの滋賀県をある意味でまねて、今回特別対策をやったわけです。そういうところでもこういう事件が起こったわけなんですね。

 安倍総理、聞きづらいことをお聞きしますが、この御家族にとって自立支援法というのはプラスに働いたと思われますか、マイナスに働いたと思われますか。

安倍内閣総理大臣 それは前もって、個別の事例について質問されるのであれば、それを前もって通告していただかなければ、それについてどういう状況かということは、我々としてもその背景について調べさせていただかなければいけないから、これはわからないじゃないですか。(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 そして、先ほど申し上げましたように、この自立支援法というのは、もちろん、障害児を持っておられる方々については、厳しい状況があるということにかんがみて、特別対策を行いました。しかし、この障害者自立支援法においては、これによって、先ほど例として挙げましたように、工賃が上がっていった人もたくさんいるわけであります。それを実現した人もたくさんいるんですよ。

 先ほど申し上げました例もありますが、それとはまた別に、大阪府の知的障害者の授産施設においては、それまで縫製作業等で月平均で大体三千円から一万円ぐらいの工賃だったものが五万円に上がった、これは洋菓子の製造販売に事業を転換して、その中で、この授産施設で働く障害者の方々の月平均の工賃が五万円を実現した、こういう例もたくさんあるわけでありますよ。そういうことを我々は実現するためにこの障害者自立支援法を進めているということもどうか知っておいていただきたい、このように思います。

山井委員 安倍総理の現状認識が現場と大きくかけ離れていることに私は驚きました。

 今回の自立支援法で、工賃は下がっているんですよね。実際、私の地元の施設でも、一万円だったのが七千円になりました。その理由は明らかです。ここに京都新聞の報道もありますが、全国的に障害者施設で年収が一割減、ここに、報道に出ております。こういうふうに大幅に減っているわけですよ。障害者施設の収入が減っているんですから、工賃も下がる方向に働くのはある意味で仕方がないことなんですよね。

 それに対して安倍総理は、そういう一部の例外的な、本当に例外ですよ、自立支援法で工賃が上がったところというのは、そういうところを取り上げるということに関しては、私はやはり現状認識が大きく違うのではないかというふうに思います。

 それで、今工賃のことをおっしゃいましたので、続いて安倍総理にお伺いします。

 私の知り合いの、よく行く知的障害者の施設であります。そこでは、知的障害の方々もこういう織物をつくって、これはコースターであります。これは百六十円でありますが、こういうものを日々つくって、そして、週末やバザーやいろいろなお祭りには、毎週末のように、御両親や、主にお母さんですが、当事者の方々が出かけて、こういうものを売り歩いているわけなんですね。それで一万円という工賃を得ているわけです。こういう障害のある方も、こういう可能な範囲で織物とかをやって、それで一万円を稼がれるということに関して、安倍総理、どう思われますか。

柳澤国務大臣 そのような通所の共同作業所等で一生懸命、ある意味でこれは創造的な仕事という範疇のものだと思いますけれども、そうしたことを実にけなげにやっていらっしゃることは、私どももよく承知をいたしております。

 そういうことで、むしろ、できるだけそれが、値段が高く売れるように私ども努めていかなくちゃいけない、このように考えます。

山井委員 そういうものができるだけ高く売れるように努めると。

 それで、この施設は一カ月の工賃が一万円だったわけですね。しかし、ここに厚生省の資料がありますが、今回の自立支援法で、そこから平均すると、食費も含めて一万二千五百円を徴収する。つまり、働きに行って、それよりも自己負担の方が多くなったわけなんですね。

 安倍総理、これはやはり、働く場で、逆に働きに行ってお金がかかるということが就労の支援になると思われますか。実際、今何が起こっているかというと、今までは子供が働きに行ったら一万円を稼いできてくれた、ところが、この自立支援法が入ってからは逆にお金がかかる。そして、この特別対策をやってでも、この厚生省の資料にありますように、低所得者の場合は八千八百円、ほぼ工賃が消えるぐらい払わないとだめになってきているわけなんですね。

 だから、先ほどから安倍総理の答弁のキーワードは就労支援ということなんですが、実際にはこの自立支援法で、特別対策をやったとしても、働きに行ったら、その半分か全額以上を逆に払わないとだめな制度にしてしまったわけなんですね。これは、やはり障害者の労働意欲をそぐのではないかというふうに思います。

 それで、安倍総理にお伺いしたいんですが、先ほどからいろいろな答弁をされていますが、実態をぜひ知っていただきたいのは、これは個別の話じゃないんです、全国の平均的な話をしているんです。三千万円、一つの施設で自立支援法以降赤字が出ました。そしてそれは、六年間、来る日も来る日も、お祭りやバザーや週末のいろいろなときに、御両親や当事者や、一番多いときにはボランティアの人が百人以上手伝って、地域を挙げて障害者の施設を応援しようということでためてきた三千万円、六年間かかったお金が一年間で、自立支援法で、赤字になって消えてしまったんですよ。

 安倍総理、私はやはり、普通の企業の収入減という話と、こういう、本当に地域や家族やボランティアが支えておられる施設というのは違うと思うんですよ。今回の特別対策で九割の保障をされるということですけれども、本当に涙と汗で稼がれた、そういうところの収入が自立支援法で減るというのは私はおかしいのではないかと思います。安倍総理、いかがですか。

柳澤国務大臣 まず、工賃の点は、山井委員もよく御存じだと思うんですけれども、これは、平均の一万五千円を上回るというような事態を避けようということで今回の特別措置を講じました。

 それからまた、今いろいろおっしゃっていただいたんですが、収入が六万六千円まででしたら、資産をこの場合には調べさせていただきますけれども、五百万円以下であったらこれはゼロにするというようなことでございますので、今いろいろなケースをおっしゃられましたけれども、非常にきめ細かな措置が今回講じられております。

 先ほどのことを申しますと、当初一万五千円を上限にすると言っていた、低所得者第一の階級についても、これを三千七百五十円にする、低所得者二については、二万四千六百円にするというのを六千百五十円にするとか、あるいは、年間収入六百万円程度の方ですけれども、三万七千二百円というのを九千三百円にするというようなことで、極めてきめ細かな措置を講じておりますので、この四月から新しい制度のもとで、ぜひこの制度を御活用いただいて、さらにまたいろいろ問題があれば、我々聞くにやぶさかでないというか、十分聞いて、この制度の定着を図ってまいりたい。山井委員も、この方向は悪くないとおっしゃった上での御議論をなさっているわけですから、ぜひそのような方向での御努力をお願いしたい、このように思います。

安倍内閣総理大臣 私ども、今回の千二百億円の措置によりまして、今言われたような問題についても、収入保障を九割に引き上げたわけでございます。また、いわば工賃と利用料との関係におきましても、ただいま大臣から答弁をいたしましたように、平均工賃一万五千円を下回る場合には、それを超えないような措置をとったわけであります。今回も、おおむね年収の六百万円以下の方々については、すべて、平均の工賃一万五千円を下回る利用料にしているわけでございます。

 こうしたきめ細かな配慮を行いながら、当初の目的である障害者の方々の、未来を見詰めて就労したいという方々の夢が実現するように、我々はこの制度をさらに、運用していきながら、また障害者の方々の声にも耳を傾けながら、障害者の方々にとっていい制度となるようにしていきたいと思います。

山井委員 過去一年半、この議論はし続けてきているんですよ。それで私たちが、野党が、こういう法案をやったら大変なことになりますよということを必死で訴えた。それを、強行採決したんじゃないですか、与党が。今聞いた答弁、一年前にも聞きましたよ、まずはやってみましょうと。その結果、何になりましたか。工賃を上回る利用料を払って、まさに安倍総理が、障害者が引きこもらないようにとおっしゃったのに、利用料が高いからと言って、どんどん今、引きこもる障害者がふえているじゃないですか。

 残念ながら、私が聞いただけでも三組の御夫婦が、十月に自立支援法が障害児の療育サービスに導入されてから、離婚をされました。もちろん、その理由がすべて自立支援法にあったとは言いません。自己負担が九万円だったのが三万七千円に上がった、十月から。ではどうするんだと。今までからうまくいってなかった御夫婦だろうかとは思いますが、その中でそういう、障害のあるお子さんを育てる御家庭というのは、ただでさえ大変なんですよ、それは。そういう方々に対して、この自立支援法はそういう方々の負担を軽減させる方向に行っているのか、それか、重くする方向に行っているのか、その根本的なことを私は聞いているんですよ。いろいろ軽減措置とおっしゃっているけれども、去年の十月は四月より上がっているじゃないですか。

 そして、これは非常に重要なことがありますよ。所得に応じての応能負担から、応益負担、定率一割負担に変えたことによって、実は、ごく一部の高所得の方々だけは自立支援法で自己負担が減っているんですよ。そして、低所得の人ほど自己負担の倍率は高いんですよ。まさにこれが格差社会じゃないですか。

 安倍総理、法律というのは一番困っている方々を守るものじゃないですか。しかし今、一番困っておられる方々に対して負担を与えていると思います。法律というのは人の命と暮らしを守るものです。にもかかわらず、逆に、法律の影響も一つじゃないかということで、こういう心中事件やあるいは離婚された家庭というのも出てきたという話も出ている。にもかかわらず、柳澤大臣は、一回やらせてくださいよ、そう言ってこの法律をやったんじゃないですか。そしてやってみて、一年で千二百億もつけないとだめになるような、まさにそれは欠陥法じゃないですか、完全な。どこにそんな法律があるんですか。

安倍内閣総理大臣 しかし、委員はそのようにおっしゃいますけれども、先ほど申し上げましたように、利用者は一〇%はふえているわけであります。そしてまた、予算におきましても、障害者全体について一〇%ふやしていますし、自立支援に対しては一一%、我々は予算をふやしているわけでございます。

 そして、さまざまな軽減措置をとっております。月額六万六千円までの収入の方は、定率負担をゼロにするということもしております。そしてまた、新たに食費等の負担をいただくことになる入所施設の方については、食費等の負担をしても少なくとも手元に二万五千円が残るように、負担を軽減しているわけでございます。

 そしてまた、利用者負担につきましても、今回の千二百億円の施策によりまして、実際は一割負担ということになっておりましたが、居宅サービスでは四%、そして通所サービスは四%、入所サービスは五%、このように、一割ということではなくて、四%、四%、五%という負担になっておりますし、さらに、利用者負担については上限が設定をされておりますので、重度の方ほど負担率としては低くなる、こういう仕組みになっています。

山井委員 民主党は、ですからこそ、そこまで軽減軽減とおっしゃるんだったらもとに戻せばいいじゃないですか、そういうことで法案を出しているわけです。

 先ほどちょっと九万円から三万円と言ったみたいですが、間違いで、九千円から三万円に値上がりしたということです。

 安倍総理の答弁で、私、一番気になるのは、トータルで人数がふえたからそれでいいじゃないか、そうじゃないんですよ。トータルの人数がふえようがどうしようが、この法律によってサービスを受けられなくなった人が数多く、数千人単位で出ているという、その現実に目を向けてほしいんです。

 それで、時間の関係もありますので、最後にB型、C型肝炎のことに移りたいと思います。

 先日、安倍総理は、係争中の中国残留孤児の方々、裁判で負けた方々に会われました。しかし、B型、C型肝炎の感染者の方々は三百九十万人。そしてこれは、B型肝炎に関しては、こういう注射針、皆さんも経験あると思いますが、昔は回し打ちでしたね、これによって感染したと言われるそういうB型肝炎の訴訟で、十七年かかって、ここに新聞報道もありますが、最高裁で勝訴したわけですね。にもかかわらず、まだ政府の幹部の方には一人も会ってもらえない。

 そして、C型肝炎に関しては、ここにございますこのフィブリノゲンですね。アメリカでは、当時もう禁止をされていた。C型肝炎ウイルスが混入しているということで禁止をされていたこのフィブリノゲン、それを放置したということで、日本では訴訟が起こっておりまして、多くで国が負けております。しかし、国はまた上告をしております。

 やはり、こういう、感染者は三百九十万人、そして、B型、C型トータルすればその中の半数ぐらいの方がそのうち肝硬変になって肝がんになるのではないか、こういう切実な問題に対して、ぜひとも、安倍総理、お会いになって、やはり政治決着をやっていただきたいと思うんです。

 二つまとめて質問をしますが、ぜひとも会っていただきたい、中国残留孤児の原告の方々に会われたように。それとともに、ハンセン病の訴訟のときにも、小泉総理の政治決着で最後は収拾が図られました。やはり今回も、裁判をしている間に、原告の方や多くの患者の方々が肝硬変、肝がんになって亡くなっていかれるわけなんですね。一刻の猶予もないと思います。ぜひとも、治療費の助成を含んだ抜本的な救済策を講じて、そして、訴訟を長引かせるのではなくて、政治的な決断を安倍総理にお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 さまざまな事情によってB型肝炎、C型肝炎になられた方々の御苦労は大変なものがある、このように思っております。またさらに、その肝炎が悪化した事態になったときの状況等に対して不安を持って日々生活をしておられる、こう思うわけでございます。その中におきまして、B型肝炎のケースまたはC型肝炎のケース、それぞれあるわけでございます。

 現在、B型肝炎につきましては最高裁の判決が下された、このように承知をしているわけでございますが、この患者さんの皆様方の声をどのように私ども聞いていくか。総理として私が会うかどうかは、また係争中ということもあり、それは勘案をしなければならないわけでありますが、そのことも踏まえ、そしてまたさらには、これはやはり政治的にも判断が必要であろう、このように思うわけでありまして、そうしたことを勘案しながら判断してまいりたいと思います。

山井委員 C型肝炎の東京地裁の判決は三月二十三日に出ます。これは、ほかのトンネルじん肺の訴訟もそうですが、上告、上告とやっていけば、結局やっているうちに、残念ながら、原告の方々や御病気の方々は、高齢ということもあって御病気で亡くなっていかれるんですね。裁判ばかりに任せるのであれば、立法府、政治というのは必要ないと思います。ぜひとも、三月二十三日をめどに、この肝炎の問題も政治決着をしていただきたいと思っております。

 安倍総理、障害者自立支援法の問題ですが、先ほども言いましたように、こういう親子心中というような、そんなことも起こってきているわけです。これはどこの場所でお亡くなりになられたかというと、湖東三山、琵琶湖の東の湖東三山の、もみじの名所の西明寺というお寺の門前なんですね。その車の中でしちりんをたいて、親子三人が一酸化炭素中毒で亡くなられた。なぜその場所であったかというと、その西明寺の前であれば、子供たちも天国に仏様によって導いてもらえるんじゃないかという最後の親心だったわけですね。

 政治というのは、最も弱い人々を助けるのが政治ではないでしょうか。政治というのは弱い人たちのためにあると思います。にもかかわらず、安倍総理は、今回の参議院選挙の争点が憲法改正というようなこともおっしゃっておられる。しかし、きょうの御答弁を聞いてみても、一人一人の障害のあるお子さんや障害者がどれだけ苦しんでいるかという実態をお話ししても、工賃がふえているところがある、そして就労支援をしていると。安倍総理がおっしゃっているその答弁と実態は全然違うんですよ。安倍総理はこういう一般の庶民の痛み、生活というものが、やはりちょっとわかっておられないんじゃないかというふうに、私はきょうの答弁を感じました。

 憲法改正とか、そういう大きな議論をする前に、日々、障害のあるお子さんたちを抱えた御家族は、本当にこの子の将来どうなるのだろうかということで、本当に必死に生きておられます。ここに障害者の施設のパンフレットもございますが、本当に一人一人の障害のあるお子さん方がこれから社会でどうやって生きていくのか。いじめに遭うんじゃないか、就職はできるのか。そして、親亡き後、子供はどうやったら生きていけるのか、そんなことで、日々の暮らしで苦しんでいるわけです。そして本当にお母さん方も、親子心中をしようか、そんな思いを持ちながら苦しんでいる。

 そして、肝炎患者の方々も、この肝炎というのは、感染してから二十年、三十年たってから発病する、あした、あさって発病するんじゃないかという、そんな恐怖におびえながら暮らしておられる。そういう、一日一日苦しみながら生きておられる方々の声を、一番最優先で対応するのが本当の政治なのではないでしょうか。

金子委員長 時間が参りましたので、簡潔に願います。

山井委員 安倍総理、私は最後に申し上げたいと思います。

 滋賀県の障害者福祉の開祖である糸賀一雄先生はこうおっしゃいました、障害児の方々のことについて。この子らを世の光にということをおっしゃいました。本当に美しい国というのは、障害のあるお子さんや障害のある人々も笑顔で暮らせる社会、それこそが本当に美しい国なのではないでしょうか。

 きょうは、格差是正の第一弾で障害者のことや肝炎のことについて取り上げましたが、これからも格差是正についてしっかりと議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 次回は、来る十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.