衆議院

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第7号 平成19年2月13日(火曜日)

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平成十九年二月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      阿部 俊子君    赤澤 亮正君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      稲田 朋美君    臼井日出男君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      大島 理森君    大野 功統君

      河井 克行君    河村 建夫君

      倉田 雅年君    佐藤 剛男君

      笹川  堯君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      高鳥 修一君    中馬 弘毅君

      中野  清君    中森ふくよ君

      西村 康稔君    野田  毅君

      橋本  岳君    馳   浩君

      広津 素子君    深谷 隆司君

      福岡 資麿君    馬渡 龍治君

      増原 義剛君    三ッ林隆志君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      宮下 一郎君    安井潤一郎君

      山本 公一君    荒井  聰君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      大串 博志君    岡田 克也君

      川内 博史君    菅  直人君

      寺田  学君    中井  洽君

      原口 一博君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    松木 謙公君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      丸谷 佳織君    佐々木憲昭君

      志位 和夫君    阿部 知子君

      糸川 正晃君    亀井 静香君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務副大臣        大野 松茂君

   総務副大臣        田村 憲久君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   国土交通副大臣      望月 義夫君

   環境副大臣        土屋 品子君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   総務大臣政務官      河合 常則君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   国土交通大臣政務官    藤野 公孝君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   丸山 剛司君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    津田 広喜君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  榊  正剛君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十三日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     橋本  岳君

  河村 建夫君     中森ふくよ君

  西村 康稔君     関  芳弘君

  野田  毅君     鈴木 馨祐君

  馳   浩君     馬渡 龍治君

  深谷 隆司君     杉田 元司君

  細田 博之君     広津 素子君

  三ッ矢憲生君     高鳥 修一君

  三原 朝彦君     井脇ノブ子君

  小川 淳也君     菅  直人君

  川内 博史君     寺田  学君

  丸谷 佳織君     伊藤  渉君

  佐々木憲昭君     志位 和夫君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     三原 朝彦君

  杉田 元司君     深谷 隆司君

  鈴木 馨祐君     赤澤 亮正君

  関  芳弘君     福岡 資麿君

  高鳥 修一君     三ッ矢憲生君

  中森ふくよ君     河村 建夫君

  橋本  岳君     安井潤一郎君

  広津 素子君     阿部 俊子君

  馬渡 龍治君     馳   浩君

  菅  直人君     荒井  聰君

  寺田  学君     川内 博史君

  伊藤  渉君     丸谷 佳織君

  志位 和夫君     佐々木憲昭君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     細田 博之君

  赤澤 亮正君     野田  毅君

  福岡 資麿君     西村 康稔君

  安井潤一郎君     臼井日出男君

  荒井  聰君     小川 淳也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算、平成十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官丸山剛司君、内閣府沖縄振興局長清水治君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、財務省主計局長津田広喜君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、国土交通省住宅局長榊正剛君、環境省大臣官房審議官寺田達志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 去る九日の山井和則君の質疑に関連し、菅直人君から質疑の申し出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。

菅(直)委員 まず冒頭、これは質問通告はしておりませんが、大変大きなニュースですので、お聞きをいたしておきたいと思います。

 六カ国協議が合意に向かっているという報道がなされております。これが北朝鮮の核放棄、さらには拉致問題の解決につながる合意であれば、私たちも、大変喜ばしいもの、このように思っております。

 そこで、総理にお聞きします。この六カ国協議で合意に向かっているという報道について、そのとおりなのかどうか。さらには、二国間の協議も行われたようですが、核放棄と同時に拉致問題での前進があったのかどうか。この二点についてお尋ねをいたします。

安倍内閣総理大臣 六カ国協議につきましては、今回の六カ国協議において、核問題について、早期に北朝鮮が核廃棄に向けて具体的な行動をとるように、各国と連携してこの協議に日本も臨んだわけであります。そして、もう一つの大きな問題であります拉致問題についても、この六カ国協議の場を活用して、何とかこの問題が解決に向かって進むように、我々も努力をしたわけでございます。

 その中で、今般、北朝鮮が、早期の措置について、一定の考え方について六者協議の中において共有する状況に至ってきたわけでありまして、そういう意味におきましては一定の前進があった、このように思うわけでありますが、さらにこの核の廃棄に向けて北朝鮮が決断をし、進んでいくように、我々も注意深く見ていかなければならないと考えております。

 そしてまた、この六者協議の場におきまして、日朝で会談を行いました。その場におきまして、日本からは拉致問題の解決に向けて強く北朝鮮に求めたわけでございますが、具体的な進展はなかったわけでございます。しかし、こうした場を通じて、さらに対話の場も生かしながらこの問題の解決を目指していかなければならないと考えております。

菅(直)委員 今のお話だと、拉致問題での進展はなかったと。ただ、報道によれば、五カ国がそろって支援を行うという方向で核廃棄のことが話し合われたということですが、これまでの総理が言われていたことと今回の合意は矛盾しないんですか、それとも矛盾するんですか。

安倍内閣総理大臣 全く矛盾はしておりません。

 六者協議において、北朝鮮に核の廃棄に向けて具体的な行動をとらせるように各国と協議をしていく、協力をしていく。何とか実績を、この六者協議において結果を出していこうということで努力をしてまいりました。私もそのように申し上げてきました。

 しかし、その際、日本としては、拉致の問題があるので、エネルギーの支援とかそういう援助を日本は行うことはできない。しかし、そういう枠組みをつくる中において、北朝鮮を各国が促すということについては日本も協力をしていこうということであります。日本の立場はほかの国々も十分に理解をしております。そのための外交を展開してきているから、日本が拉致の問題があるからこの問題について援助を行うことができないということは、理解をされている。それは各国も、その旨、全く承知をしているということでございます。

 そして、核を廃棄させるための北朝鮮の行動を促すという中において、そういう方向で議論が進んでいるところでございますが、これはまさに私たちが主張してきた中において、そのラインで進んでいる、私はこのように考えております。

菅(直)委員 報道によれば十一時ごろからの最終会議での決定ということですので、これ以上余り細かくはお聞きをあえていたしません。(発言する者あり)ちょっと小野寺君のやじをとめてください。

 つまり、核の問題は、まさに我が国にとっては本当に全国民がかかわる安全保障上の問題でありますから、核廃棄を求めるということは大変重要だし、同時に、拉致問題は、これは逆に、安倍総理が、いわばライフワークというのか、最も重視されてきた問題でありますから、この両方の解決というのは本当に大きな努力が必要だと思います。そういう意味で、矛盾がないという答弁でありますから、矛盾のない結果が出てくることを期待して、この問題は、きょうのところはここでとどめておきたいと思います。

 そこで、私たちは、この国会を格差是正国会というふうに位置づけました。しかし、安倍総理は、今回の施政方針演説の中でも、経済的な格差という意味での格差という言葉はほとんど使われておりません。また、参議院の青木自民党参議院会長が、格差の存在は紛れもない事実だ、こういうふうに言われて、何か格差という言葉から逃げているんじゃないか、避けているんじゃないかという指摘がありましたが、これに対しても真正面から答えられておりません。つまり、今の安倍総理の姿勢は、格差問題に真正面から取り組もうとしていないのではないかと私は国民の皆さんに映っていると思います。

 しかし、現実を見てください。例えば、生活保護世帯は、この数年でどんどん上がっていって、今百万世帯を超えました。貯蓄がゼロという世帯も、二〇〇一年、一二%程度だったのが、今や約倍の二三%まで上っております。また、国民健康保険など、無保険者が三十万世帯。一年間の自殺の人も、三万人という高いレベルをいまだに維持されてしまっております。

 そこで、総理にお聞きをいたします。

 総理は、昨年の十月ですか、私の予算委員会での質問に対して、格差について聞きましたら、格差は拡大していないという見方もある、こう答えられていますね。今でもそういう認識をされているんですか、それとも、その後の議論を経て、やはり格差は拡大していた、何とかしなきゃいけない、そういうふうに考え方を変えられたんでしょうか。いずれでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、菅委員が、私が格差から逃げている、そういう指摘がございましたが、それは全く当たらないということは申し上げておきたい、このように思います。

 まずは、格差は何かということをはっきりとさせる必要があるであろう、このように思うわけであります。

 一生懸命頑張った人、汗を流した人とそうでもない人がある程度の差がつく、これはある意味ではみんな当然のことだろう、こう思っているんだろうと思います。しかし、その結果が、不公平や不公正な競争の結果であってはならない。あるいはまた、これはもう日本の社会では許容できないような差があるということであればそれはやはり問題であろう、このように私は考えているわけでありまして、ですから、何度でもチャンスのある社会をつくらなければいけないという中で、再チャレンジ可能なチャンスにあふれた社会をつくるための政策を我々は推進してまいります。

 さらには、やはり、成長の下支えをしている基盤を強化していくことによって経済全体が下からどっと成長していくような、そういう社会をつくっていくための成長力の底上げ戦略も進めていかなければならない、こう考えているところであります。そうした政策をしっかりと私たちは前に進めていかなければならない。

 そこで、いわば格差をどのように認識をしているかであります。

 昨年、私が質問に答えた際には、いわばそうした格差をあらわす係数としてジニ係数というものがありますね、緩やかにジニ係数においては日本はいわば少し格差のある方向に動いているけれども、それは、老人の世帯がふえた、またあるいは世帯の員数が縮小しているということも要因の一つであって、そういう要因を取り除けば余り格差は拡大をしていないけれども、しかし、二十代、三十代の人たちには格差が増加をしている傾向があるので、そこは注目をしなければいけない。フリーター等々が固定化している、そこは注目をしなければいけないし、そのための政策を我々は展開していかなければならない、このような認識でございます。

 先ほど、しかしまた、菅さんは生活保護の実態等々について数字を挙げられたわけでございますが、いろいろな指数があるわけでありまして、例えば、一つの指数の中には絶対的貧困率というのがあるわけでありまして、この国際的な比率、絶対的貧困率といえば、生活必需品を調達できなかった者の割合であります。生活をしていく上においてどうしても必要な生活必需品を獲得できない、取得できない人たちの割合、この人たちがいわば絶対貧困と言われる方々であって、その比率がどうなっているかといえば、日本は、絶対貧困と言われている方々の比率は先進国の中では最も低い水準にあるということでございまして、そういう状況も御理解をいただきたい。しかし、そこが大切なところであるわけであります。

 その上で、相対的な貧困率ということになりますと、日本はOECDで五番目、そういう指摘もあるわけでありますが、別の基礎統計を使うとOECDの平均を下回るという数値もあるわけでございます。

 しかし、こうした分析とは別に、やはり格差があると感じている人たちがいるのであれば、また、そういう地域があるのであれば、一生懸命頑張っていてもなかなか生活が向上していないという地域があるのであれば、そういう地域にも光を当てていくというのが安倍政権の一つの柱でございます。そのための、地域活性化を初め、頑張る地方を応援していく政策を推進していく考えであります。

菅(直)委員 今の答弁を国民の皆さんは聞かれて、どうでしょうか。

 格差を感じている人があるのであれば、また、地域的な格差があるのであれば、あるのであればということを二度言われましたね。しかし、青木幹雄さんは割と率直に言われていますね。政府はここへ来て格差という言葉を避けておられるようでございますが、私は、格差が存在することは紛れもない事実であると考えますと。私が言っていることと同じことを青木幹雄さんは言われていますね。こういった意味で、結局のところは、安倍総理がいかにこの格差という問題の認識が甘いか。あるのであればではなくて、あるんですよ。多くの皆さんがそれを痛感している。

 その具体的数字を先ほど述べました。絶対貧困率のことも言われました。いろいろと勉強されたんでしょう。しかし、格差という言葉は差をあらわしているんですよ。ですから、格差という問題は、差がどれだけ広がっているかなんです。

 そこで、このパネルをお見せいたします。

 まず、よく政府の方でイザナギ景気を超えたという言い方をされております。これはイザナギ景気の一九六五年から一九七〇年、確かに、全産業の経常利益はこの間で、一〇〇としてそれを三四三、つまり三・四倍までふえていますね。当時は、同時に一人当たりの給与も一〇〇から一八五、つまり一・八五倍ふえたんですよ。これがイザナギ景気のときの、まさに景気上昇と国民生活の上昇がいわば並行して進んだ時代であります。

 それに対して、今回の景気の拡大はどうでしょうか。確かに、二〇〇一年から比べてみますと、全産業の経常利益は一・八倍にふえています。その中で、一人当たりの平均給与はどうなっているのか。一〇〇に対して九九、九八、九七、九六、つまりは四%下がっているわけですよ。つまりは……(発言する者あり)ちょっと委員長、後ろから、やめさせてください。小野寺君。

金子委員長 静粛にしてあげてください。

菅(直)委員 そういった意味で……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。

菅(直)委員 いかにこの間の景気の拡大が、企業の収益は高めたけれども、給与は高めるどころか下げているということをこのグラフはよくあらわしているじゃないですか。

 そこで、申し上げます。私は、この間あったことは、国民の皆さん、よく知っていると思うんです。つまりは、バブルの崩壊の後、多くの企業が大規模なリストラを行って正社員が減りました。そして、それに対して非正規のパートのような人がたくさんふえて、平均賃金が下がったんですよ。逆に、下がることによって企業の収益が改善したという面があるんですね。

 私は、それは景気回復の局面では必ずしも否定されることではないと思います。しかしながら、今総理が何と私に答弁されたかというと、いや、格差の問題は再チャレンジとか成長とかが、成長も下からの底支えと言われたんですか、底上げと言われたんですか、つまりは、経済を伸ばせば格差が小さくなるというふうな趣旨のことを言われましたが、そういう局面も確かにあるでしょう。しかし、そうでない局面も現実にあったじゃないですか。この五年間は、経済は成長したけれども、格差が逆に、少なくとも賃金が下がったじゃないですか。

 そう考えてみると、果たして、成長力底上げ緊急チームというものをつくられたそうですが、そのことが格差是正につながるのかどうかということが何もその言葉の中では論証されていない。もっと真正面から格差是正緊急対策チームをつくらないんですか。なぜつくらないんですか。

安倍内閣総理大臣 今、菅委員が御指摘になったイザナギ……(発言する者あり)私、答えていますから、聞いてください、後ろとの討論の前に。(菅(直)委員「やじがうるさいんだよ」と呼ぶ)よろしいですか。

 いわゆるイザナギ景気に入る前の段階で、一九六〇年の初頭においても成長が先か格差の是正が先かという議論があったんですよ、あのときだって。あのときもあったんですよ。いわゆる下村・都留論争というのがあって、成長を先にするべきか格差を先にするべきかという論争があって、しかし、やはり成長することによってその果実を均てんしていこう。その政策が正しかったことはもう既に私は証明されている、このように思います。ですから、今、菅さんがイザナギ景気の例を挙げられたから、私はそのときの時代の論争をこうして例として挙げているわけであります。

 そこで、今回の景気回復については、確かに、企業部門の強化、三つの過剰を解消していくということを中心に、また、デフレ下においての景気回復であったがために家計部門への広がりに欠ける、あるいは、雇用、給与への広がりが欠ける、そういう点があったのは事実である、このように思います。

 しかしながら、今、この景気回復を、成長を続けてきている結果、完全失業率も一時は五・五%まで悪化していたものが四%ちょっとという状況まで低下をしてきております。有効求人倍率も〇・五だったものが一%を超えているわけであります。そして、この地域情勢においても、北海道、東北、九州、四国はまだまだ厳しい。しかし、それ以外は一%を超えているという現状になったじゃないですか。そして、私は……(発言する者あり)一を超えているじゃないですか。私は今事実を申し上げているわけでありまして、また、正規雇用……(発言する者あり)ちょっとあの方も非常にうるさいので、私も聞かれて答えているんですから、答えている間は少しはまじめに聞いてください。

金子委員長 与野党とも御静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 正規雇用については前年比で三四半期連続増加を続けています。また、高卒で四年連続、大卒で三年連続、新規学卒の就職内定率は改善をしています。そして、高卒の初任給が二年連続、大卒の初任給は三年ぶりの増加になっているわけでございまして、私はこれはまさに数字が事実を示している、このように思うわけでありまして、今後とも、我々はさらに成長戦略を進めていくことによって景気拡大を続け、景気の回復を続けて成長していくことによってさらに家計部門に広がっていくように、しかし、それを見ているだけではなくて、先ほど申し上げましたように、成長力を底上げしていく戦略をとっていく。

 それは、例えば人材を育成していく、あるいは就業を支援していく、中小企業を支援していく、こういうことを行いながら、いわば成長を下支えしている皆さんにさらに頑張っていただく、頑張れるような仕組みをつくっていきたい。また、再チャレンジを支援していくことによって、機会に満ちあふれた社会をつくっていくことによって、私は、今のこの成長の果実が国民全体に広がっていくように努力をしていきたい、このように考えております。

 また、労働法制においても、パートの均衡待遇等々、六本この国会で提出をするわけであります。地方の活力を増すための法律も九本この国会に提出をしていきたい、こう考えているところでございます。

菅(直)委員 正規雇用が若干ふえてきているというのは大変喜ばしいと思っています。しかし、この五年間の正規と非正規のグラフは、これを見てもう一目瞭然ですね。正規雇用が約三百万人減りました。非正規雇用が三百九十万人……(発言する者あり)ちょっとうるさいよ。ちょっととめてください。後ろまでしゃべっているな。

金子委員長 与野党とも御静粛に願います。

菅(直)委員 非正規雇用が約三百九十万人増大しているわけでありまして、そういう点で、この大きな流れが果たしてとまるかどうかということが本当に心配されております。

 そこで、もっと本質的な話をいたしますのでちょっと静かに聞いてくださいね。格差がこれだけ拡大した本当の原因はどこにあるかということなんですね。私は二つ大きな原因があると思っています。

 一つは、産業構造が変わってきた。最近、ニューエコノミーという言葉がありますけれども、いわゆる大量生産、大量消費といった時代から、ある意味で情報をうまく活用した、そういう企業やそういう分野が伸びている。それによると、やや単純化した、マニュアル化した、そういう仕事がふえ、他方、数は少ないけれども、より高度な、例えば同じコンビニエンスストアをつくるにしても、その出店の企画をするような仕事、こういう高度な仕事と、店番をするといいましょうか、レジで仕事をするような比較的マニュアル化した仕事と、こういう二極化が起きたことがこの大きな背景にあるんですね。だから、これは、今から四十年前の経済成長のときとは根本的に違うんです。

 それからもう一つは、まさに政策としての不十分さがあったのではないか。特に、市場原理主義というんでしょうか、新自由主義とでもいうんでしょうか、そういう市場原理主義のやや行き過ぎが今日のような状況を招いた、そういう側面がある。

 私はそういう二つの側面があると思いますが、総理は、この格差の拡大の原因についてどのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 この五年間、先ほど申し上げましたように、失われた十年の間、日本の経済は停滞をしていました。この停滞から何とか抜け出すために、我々は構造改革を行い、企業の競争力を高めたわけであります。

 今の時代は、経済がグローバル化をして、世界の競争の中で勝ち残っていかなければ日本の中で生き残っていくことはできない、よって、日本においても雇用を確保することができないということになってくるわけであります。その中で、構造改革を進め、企業も体質を強化させていったわけでありますが、競争力のあるところと、かつての時代ではよかった分野、産業はなかなか時代についていけなくなっているのも事実であります。その中で、やはりある意味、格差を感じている人たちもいるわけでありますし、そういう産業が集中をしている地域によっては、なかなか将来を見詰めることができないという地域があるのも事実でございます。

 そういう中にあって、我々は、中小企業においても、競争力を、生産性を上げていきたい、このような意欲を持っているところにおいては生産性を上げていくことができるようにする。そしてまた、人材にも着目をしながら、フリーターと言われて、単純な仕事のみをやっていて、キャリアアップしていくチャンスのなかなかない人たちについては、本人が望めば職業訓練を受けたり新たな技術を身につける機会を持つことができる、そういう仕組みを我々はつくっていきたい、このように考えております。

菅(直)委員 全く私が聞いたことは答えられていませんね。

 私は、皆さんの前で言ったんですよね、格差が拡大している原因についてどうお考えですかと、私は二つ原因があると思いますと。一つは産業構造の変化、そして一つはそれに対して市場万能主義的な形の政策の行き過ぎではないかと、二つ申し上げたんですが、総理は、格差拡大については原因はわからないということですか。ちゃんと答えるなら答えてください。

安倍内閣総理大臣 ですから、私が申し上げているように、経済がグローバル化をしている中において、競争力をつけなければいけない。かつては、護送船団方式的に、国内の中でみんなが話し合って、こういうパイを分け合っていこうということが可能であったわけでありますが、それが可能でなくなったということにおいて、世界の中で競争力を持たなければいけない。これはもう現実なんですよ。そこで勝ち抜いていかなければ、日本においても雇用の場を確保することができないということであります。ですから、そのことが可能な企業、可能な産業の分野と、そうでないところが出てきたのも事実であります。

 ですから、その対策として、私が先ほど申し上げましたように、特に中小企業が厳しい状況であれば、中小企業が生産性を高めていくことができるような施策を私たちは打ってまいります。

 そしてまた、市場万能主義という言い方をおっしゃったわけでありますが、確かに今、世界はグローバルな市場主義の中で動いているわけでありますが、決して私はそれを万能主義とは申し上げていないわけであって、もう一回挑戦したいと思う人たちにはチャンスがあふれていて、そしてまた、セーフティーネットはしっかりと張っている社会でなければならない。日本はやはりお互いが助け合っていくという麗しい社会を守ってきましたから、この社会は守っていきたい、このように考えております。

菅(直)委員 今のお答えの中で唯一格差の原因という意味で言われたのは、競争に勝てる、いわゆる競争に打ちかった企業と打ちかてない企業の間で格差が生まれた、そういう趣旨のことを言われたと思います。私は悪いと言っているんじゃないんですよ、それこそが市場というものに任せるという考え方なんですね。ですから、私は市場というものに任せる部分があっていいと思いますし、それも先ほど、二つの原因の一つで言いました、私自身。

 しかし、最初のことについて総理は全く同じ認識を持っておられないのかもしれませんが、つまり、今の第三次産業革命とも言われるこの産業の変化というのは、先ほど申し上げたように、大量のマニュアル化した単純労働的な仕事と、そして、比較的少ないけれども、非常にクリエーティブな仕事に仕分けをされがちなんです、二極化されがちなんです。その根本的な産業構造の変化というものをきちっと認識しておかなければ、どうしても対症療法的な対策しか出てこないから、私はあえて原因をお聞きしたんですが、残念ながら、総理にはそういう部分は認識がなくて、とにかく競争に勝つことなんだということを言われているんですね。

 そこで、少し先に申し上げたいと思います。

 総理は先ほど、労働法制について、六本の法律を出されると言われました。今、経済財政諮問会議とか労政審の中で労働ビッグバンということについての議論が始まっております。この労働ビッグバンの中に、例えば、政府は断念されたようですが、ホワイトカラーエグゼンプションというような考え方とか、中には、先日同僚議員からもありましたが、奥谷さんという労政審の委員は、とにかく過労死するのもそれは本人の自己管理、自己責任なんだというふうな発言も出ております。つまりは、労働ビッグバンというものが、必要な部分も私はあると思っていますよ、しかし、やりようによってはますます格差を拡大し、ますますそうした過酷な労働を一方で強いることになる。

 総理は今、競争競争と言われましたが、この労働ビッグバンが、もしかしたら競争に打ちかつのには有効かもしれませんよ、成長力を底上げするのには有効かもしれませんよ。しかし、働く人の人権とか生活には大変厳しいものが来る可能性がある。どのようにお考えですか、労働ビッグバンについて。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 それでは、私がお答えをいたしまして、詳しくは厚労大臣の方からお答えをいたします。

 いわば、この数年間で、働き方に関する考え方も随分変わってきているわけでありますし、また、ライフスタイルも多様化してきた、このように言えると思います。その中で、人口が減少する中において、高い成長率を維持しながら国民の生活の質を高めていくことも重要な課題でございます。先ほど菅代表は我々が成長を目指しているということを否定的におっしゃっていたわけでありますが、しかし、経済が成長していくということは、きょうよりもあしたをよくしていく、ことしよりも来年の生活を豊かにしていくということにおいては、極めて重要になるわけであります。

 成長力を維持しながら、そのためにも企業の競争力は向上させていかなければならない。それと同時に、そこで働いている人たち一人一人が働きがいを感じることができるように、働くことに誇りを持つことができるように、これは当然のことでございます。また、それと同時に、やはりワーク・ライフ・バランスも考えなければならないということではないでしょうか。働き過ぎ、あるいは長時間勤務が恒常化することも、これからは見直しをしていかなければならない。そして、それと同時に、その中で、経済の活力を維持できるよう、環境の整備も図っていくことが重要であります。

 そうした観点から、経済財政諮問会議において、成長力の強化に向けて、すべての人が活躍できるような人材活用のあり方について、幅広い観点から検討することとしておりまして、平成十九年においては特に集中的、効果的な能力形成支援などの課題に取り組むこととしております。

 その中でも、今後の議論の中におきましては、正規雇用で働きたい人ができる限り正規雇用の形を得られるように、また、正規、非正規の……(発言する者あり)菅さん、いつも我が党の委員に対しては注意しますけれども、おたくの党の筆頭理事にも注意してくださいよ。

 正規、非正規の均衡処遇を実現……(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 均衡処遇を実現するという基本方針を我々は貫いていきたい。つまり、非正規から正規になりたいという人たちがいれば……(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 その方々の希望がかなうような、そしてまた、正規、非正規の均衡処遇を進めていく、これは当然我々は進めていかなければいけない、このように考えております。

菅(直)委員 労働ビッグバンについては今後しっかり議論をしていかないと、本当に日本の社会が荒廃しかねない、職場が荒廃しかねないところがありますから、このことは今後の議論をもっと推し進めていきたいと思います。

 そこで、我が党は、この国会に格差是正緊急措置法を出そうとしております。その前倒しで、障害者自立支援法の一部凍結については、先日の山井議員の質問にもありましたように、既に法案を出しております。また、パート労働者についてのいわゆる均等待遇についても法案を用意しております。また、最低賃金の引き上げ、これは、時給千円は二千時間の労働で二百万ですから、国際的な比較を見ても、アメリカも相当引き上げるようですから、やはりこのくらいは認めるべきだ、こういうことを内容とする一連の法案を我が党も出そうと思っております。

 それに対して、総理、これをごらんになったことがありますか、そこに資料があると思いますが。自由民主党がファクスニュースという形で、片山さつき広報局長名をもってこんなものを出していますね。「民主党の格差是正策は二番煎じのオンパレード。」そして、その具体的な例として、正規、非正規の均衡処遇については次期通常国会にパート労働法とかを政府は出す、民主党は自民党が既に対策を講じている内容の二番せんじにすぎませんとか、障害者自立支援についても同じようなことが書いてあります。

 そこで、もう一つのパネルをごらんいただきます。よく見てくださいよ、総理。自民党の人もよく見てくださいよ。

 パート労働者に対する、つまりは正規、非正規の均衡処遇について、我が党は、二〇〇四年、二〇〇六年、二度にわたって法案を提出しているんですね。それを廃案にしたのはだれですか。自民党、公明党、与党が、審議を拒否したり廃案にしたんじゃないですか。政府・自民党が出そうとしているのは、ことしですよ。私たちは、三年前あるいは昨年、法律案を出したんですよ、提案だけでなくて。

 そして、障害者自立支援法については、一部凍結法案を昨年出しているんですよ、ことしじゃなくて。それを受けて、総理はあるいは内閣は、どうも障害者自立支援法は評判が悪いからというので、慌てて補正予算でそれに対する千二百億の補正をしたんじゃないですか。

 そういった意味で、どうです、総理、どっちが二番せんじなんですか。民主党より先に政府なり自民党が法案を出したと言うんだったら、何年に正規、非正規の均衡処遇の法案を出したか言ってください。それが言えないんだったら、自民党総裁として、二番せんじと言ったことをまず撤回し、国民の前で謝罪してください。どちらですか。

柳澤国務大臣 事実ですから、事実の問題ですから私から御答弁させていただきます。

 まずパート労働法ですけれども、パート労働法は、確かに菅さんがおっしゃられるように、十六年と十八年に民主党は出されております。しかし、これは一律にパートの労働について差別の禁止をするというようなことでありまして、今回私どもがパート労働法と出しているのは、パートにはいろいろな形態がある、正社員と同じようなことをやっている人もいるし……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

柳澤国務大臣 また、コールセンターか何かで電話の応答をしているというような、まさに文字どおりのパートをしていらっしゃる方もいる。そういうようないろいろな働き方をしている人たちを一視同仁にして、全部、差別撤廃、差別の禁止というようなことを御提案になったのが実は民主党案でありました。

 そこで、我々は、今回はパートの現場を子細に見まして、そして、本当に正社員とほとんど同じようなことをやっている、これはいろいろな要素に我々分析しまして、そういう立場にある方には差別禁止をする、そういうようなことで、それ以外の方々にはそれぞれにふさわしい均衡待遇をする、例えばこういうようなことを今回改正法案でもって出させていただくということにいたしたわけでございます。

 したがって、同じものを出しているわけではありませんから、どちらが二番せんじなんというような必要は全くないと私は考えます。

菅(直)委員 今の柳澤大臣の答弁は、大変私は内容的には正確だったと思います。同じものを出してはいないと言われましたね。ということは、我が党が出したのと今政府が出そうとしているのは同じものではないということを認められたわけですね。しかし、なぜ、では自民党のビラでは二番せんじだと言っているんですか。二番せんじというのは、同じものを二回目に出すから二番せんじじゃないんですか。つまりは、今の答弁は二番せんじではないということを認めているんじゃないですか。

 二番せんじというのは、自民党や政府が言ったことと同じことを民主党が言ったのなら二番せんじですよ、法案を出したのなら。全く違うじゃないですか。内容については、後ほど時間があれば申し上げます。

 今、厚生労働大臣が言われたことは……(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。

金子委員長 御静粛に願います。

菅(直)委員 一日四時間とか六時間とか働くいわゆる本来のパート労働者は、政府案では対象にしないと。正規社員と同じように、一日八時間、一週間ずっと働くような人しか対象にしない、そういう法案なんですよ、政府が出そうとしているのは。私たちはもっと根本的な内容を二年前、三年前から出しているんですよ。その中身の問題を先に言っていただいたので、逆に言えばこの問題がはっきりしなくなると困りますので、総理に話を戻します。

 今の話を聞かれても、我が党は二番せんじではない、我が党の独自案を正規、非正規についても出しましたし……(発言する者あり)ちょっと、うるさいね、本当に。この小野寺君というのはうるさ過ぎるよ。

 障害者自立支援の一部凍結についても、我が党の方が先に出したんです。これでも二番せんじと言われるんですか。自民党総裁として、二番せんじであるなら、あるという根拠を示してください。ないのなら、撤回をして謝罪してください。(発言する者あり)

金子委員長 お互いに静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 どっちの党が早く出したとか自分の案をとるなというのは、それは、よく菅さんも……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 いや、答えている間は少しは静かにしてくださいよ、少しは。いいですか。

 それは、菅さんもよく言っていることじゃないですか。自分たちが考えた案を与党にとられた、そういう次元の話なんだろう、私はこのように思いますよ。

 先ほど厚労大臣がお話をしたように、我が党の案と御党の案は違います。しかし、働き方、特にパートの均衡待遇を確保しよう、そういう大きな趣旨においては大体同じ方向の法案であって、しかし中身は違う、その対策においては同じである、こういうことではないだろうか、このように思います。

菅(直)委員 私たちは、よく我が党案が与党や政府に採用されるのはうれしいことだと思っていますよ。それは、とられたとかいう言い方はしますけれども、少なくとも、二番せんじであるかないかは前後の関係なんですよ。だから、私たちが先であれば、二番目が政府であれば、二番せんじというニュアンスのことを言うこともありますよ。

 しかし、総理、これは私が最初に言い出したものじゃないんですよ。自民党のファクスニュースの中で、「二番煎じのオンパレード」と我が党を批判している、中傷しているんですよ。今言われたことは、内容も違うけれども、大きな趣旨では方向は同じだけれども、民主党が先だということを事実上認められた。では、二番せんじでないということを認められたということですね。どうですか。

安倍内閣総理大臣 私は別に、自民党の方が後だったとか、それは認めていませんよ。

 いつどういうときに議論をなされていたか、自民党において部会でどういう議論がなされていたか、あるいはそれは私はつまびらかには存じ上げていません。しかし、恐らく、それに書いてあるのであれば、自民党の部会の中で一つの方向性はもう既に私は出されていたんだろうと思いますよ。そういう中で、我々は、間違いのない認識のもとにそういう反応をしているんだろうと思います。

 大切なことは、パート労働者の均衡待遇をどのように確保していこうか。どっちの案がすぐれているか、すぐれていないかを議論しましょうよ、菅さん。

菅(直)委員 二番せんじの議論はこれ以上やっても水かけ論でしょうから。しかし、少なくとも、聞いておられる皆さんは、我が党が二〇〇四年、二〇〇六年に既に出していた、障害者自立支援法も昨年に出していた、そして政府が出そうとしているのはせいぜいことしだということは、まずわかっていただけたと思うんですね。

 そこで、中身の問題です。まさに正々堂々と中身のことを議論しようと言っているんです。

 先ほども申し上げたように、まさに柳澤厚生大臣みずからが認められたように、政府案は、パート労働を支援といいながら、実際はいわゆるパート労働者の一割にも満たない人たちを対象としているということは、自民党の皆さん御存じなんでしょうね。つまりは、正規社員と同じように働いている人についてだけは正規社員と同じようないわば均等待遇、均衡待遇をしよう、しかし、例えば時間が一日四時間とか六時間で、仕事の中身そのものは正社員と同じ、その四時間の分だけとれば全く同じ仕事をしていても、それは対象外だというんですよ。これが政府の言うパート対策ですか。

 つまり、内容的に私たちの方がよほどパート労働者全体のことを考えた法案であり、政府が今回出そうとしているものが、いかに、パート労働というよりも、疑似パートともよく呼ばれますが、正規社員と同じ仕事をしているけれどもパート扱いをしている、その人だけに絞った極めて狭い範囲の対策であるということを、この場で国民の皆さんに判断してもらいましょう、どちらがいいか。

柳澤国務大臣 パート労働についてはいろいろな形態があるということを、まず私、申し上げました。

 まずパート労働の要素をあえて言うと、仕事の内容、責任、これがあります。それから、人事異動に対して、どれだけの予定が、枠組みが事前に考えられているか、そういう人材であるかという位置づけがあります。それから、契約期間の問題があります。こういうように、労働にはそれぞれ要素がありまして、人はそれぞれの位置づけがなされている。パートについても同じです。

 それから、今度は待遇の面ですけれども、待遇は、賃金と教育訓練と福利厚生と我々は大別いたしました。もっと細別することもできますが、とりあえずここではそのことを申し上げます。

 そういうようなことで、先ほど言った職務の内容、責任、それから人材活用の仕組み、契約期間、これらについて正社員と何も変わらない、こういうのは全く差別を禁止するということで、まずそこできっちり決めさせていただきます。

 それから、職務と人材活用の仕組みがある一定期間同じ、例えば売り場の店長ぐらいまでにはなるというような人で、職務も責任もそこのところは同じだというような方々については、これは、賃金とそれから職業訓練と福利厚生の面では均衡待遇を義務化します。

 それから、今度は、職務が同じだけれども、人材活用の仕組みも人事の枠組みも違う、契約期間も違う、これらについても、賃金であるとか職業訓練であるとかあるいは福利厚生については、例えば職業訓練あるいは福利厚生、こういったようなものについては全く待遇を同じだということを義務化する。それから……(発言する者あり)いや、そういうことではありません。

 そういうようなことで、一つ一つきめ細かく、今度のパート労働法の改正では、労働の実態、労働というのも、日本では菅委員が想定するような職務給ではないということを御存じでしょう。一人の人を見るときに、契約期間も違う、人事の枠組み、転勤ができる職員、できない職員、皆違うわけです。そういう日本の今の雇用の慣行というものを従業員はそれぞれ反映していますから、それぞれに見合ったような均衡の処遇をかち得ていこう、それで、それを労働局の行政でしっかり監視し、指導監督をして、これを担保していこう、こういう考え方で今度の改正法はでき上がっております。

菅(直)委員 対象はパート労働者全体の何割ぐらい、何%ぐらいに当たるんですか。(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

柳澤国務大臣 差別禁止は、全体の四、五%かなということを私どもは考えております。

 しかし、現実に、菅先生、職務も異なるというような方々が、コールセンターの電話の受け付けなんかをしているような方々が非常にパート労働全体の中では大きなウエートを占めますから、そういうようなことになるということも御承知おきを賜りたいと思います。

菅(直)委員 国民の皆さんに今の答弁を聞いていただけたと思うんです。つまり、パート労働者全体の四、五%しか対象にならない法案が私は本格的なパート労働に対する法案だとは思いません。そういった意味で、我が党は全部のパート労働者に対する対応を入れているということを明確に申し上げておきたいと思います。こういった議論はこれからも大いに、まさにやりましょう。

 そこで、時間もかなり経過をいたしましたので、官製談合について話を申し上げます。

 今、税金の無駄遣いという問題は、国民の政治不信のある意味では最大の原因ともなっております。今回、公正取引委員会が初めて中央官庁である国交省に、官製談合として認定し、改善要求などを出すことが決まりました。私は、このことは大変重大だと思うんですね。

 国土交通大臣、冬柴さんは、昨年四月七日の記者会見で、国交省の官製談合についていろいろ指摘が報道であるけれどもという質問に対して、そういう事実があるとは聞いていない、こう答弁されましたね。四月七日、昨年ですよ。四月じゃないですか、では、日程は間違いましたかもしれませんが……。(発言する者あり)

 では、もう一つ。

 平成十九年の一月十九日、これは間違いないですね、大臣。十九年の一月十九日に、事実とすればまことに遺憾です、こう答えられましたね。私は、事実とすればまことに遺憾ですというこの答弁は、国交省の責任者としての答弁として果たしてこれでいいんでしょうか。

 今、不二家でいろいろな問題が起きました。あるいはリンナイでいろいろな問題が起きました。そのときに社長が出てきて、いや、大変うちの製品が不良品のためにいろいろな方に被害を及ぼして遺憾ですで済むんですか。つまりは、国交省の責任者、官製談合をやった責任者が、役所の責任者が、自分たちがやったことについて、遺憾ですでは済まないでしょう。どうですか、大臣。

金子委員長 柳澤厚労大臣、先ほどのやりとりで、きょうはテレビが入っています。言い間違い、聞き間違いは困りますので。(発言する者あり)

 お静かに願います。

柳澤国務大臣 菅委員がパートの労働者のわずか四%のためにパート労働法の改正をするというような誤ったメッセージを国民の皆様に与えるような御発言がありましたので、それは全く違う。我々の案こそ、すべてのパート労働者を対象にしまして、そしてそれぞれのパート労働者の労働の形態に応じてきめ細かく均衡処遇、差別禁止を実現していこう、このような考え方でありますから、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それで、私が四、五%と言うといかにも小さい部分のように印象づけようとされますが、実際には職務も異なる、正社員とは全く異なるような方々がパートの中の九〇%近くいらっしゃるんだということも、ぜひこれは誠実に御理解を賜りたい、このように思います。

金子委員長 はい、それで結構です。

冬柴国務大臣 先ほどの冒頭の質問をお取り消しになっておりませんので答弁させていただきますと、私が国土交通大臣に就任したのは昨年の九月二十六日でございまして、四月七日に答弁をしたというくだりは私にとっては全く違うことでありますので、その点は御訂正いただきたいと思います。

 それから、一月に私は、もしそういう事実があるとするならばまことに遺憾であるということを申し上げたわけであります。

 現在、入札談合があってはならないことであり、特に、それに官が関与するような、官製談合はもう言語道断であります。したがいまして、国交省としてはこれまでもそういうことが起こらないように努力を重ねてきたところであります。

 しかしながら、一月の六日、七日に、我が国における著名な日刊紙において、国土交通省の職員がそれに手を染めたのではないかというような記事がありました。したがいまして、私は、もしそういうことが事実であればまことに遺憾であるということを申し上げたわけでありまして、現在、それはまだ公正取引委員会においても確認されていることではないわけであります。

 ほかの事件があったように逮捕者が出たとかそういうことも一切ない段階で、もしそういう事実があったとするならばまことに遺憾でありますということを申し上げたわけでありまして、私としては、それは私の気持ちを申し上げたとおりでございます。

菅(直)委員 先ほど昨年四月七日と申し上げたのは、時の国土交通大臣はどなたでしたっけ、北側大臣だったですね。ですから、北側大臣の答弁でした。ですから、そこは訂正をいたしておきます。

 今、冬柴大臣は、一月十九日のことについて、そういうことがあればと言われましたね。しかし、もうその時点で公取委の調査が入っています。当然知っていますよね。役所の中に、このすぐ後に何か委員会をつくられたんじゃないですか。

 ちょっと待ってください、つまり、不二家の例とかこのパロマの例とかリンナイの例で、もしこんな言い方を社長がしたらどう言います。つまり、自分の会社の中で不祥事があったと少なくとも公取委が言われていて、いや、もしあったとしたら、逮捕者が出たら、そういう言い方で済むんですか。民間だったら、逮捕者が出るどころか、その前から大変なことになりますよ。

 私も厚生大臣を経験したときに、最後には逮捕者が出ましたよ、元局長が。しかし、少なくとも薬害エイズについて逮捕者は出ておりませんでした、私が厚生大臣になったときには。しかし、明らかにおかしいということで調査を命じて、その中で、実際上はいろいろなことを知っていたにもかかわらず、役所は、知りません、知りません、見つかりません、見つかりませんと言って、最後まで逃げようとしていたんですよね。冬柴さんも当時議員だったから覚えておられるでしょう。

 私は、今の冬柴大臣の答弁を聞いていると、国民の利益を守るための弁護人なのか、国土交通省の利益あるいはその天下ったOBの利益を守るための弁護人なのか。

 私は、大臣というのは、ある意味で副大臣とかを含めてですが、事務次官以下は国民が直接は選べないんですよ。大臣は、国民が選んだ国会議員が選んだ総理大臣が選んだという意味では、ある意味では国民から選ばれて国土交通大臣になって、国土交通省のやることをしっかり国民の利益に沿うようにするのが大臣の仕事でありながら、先ほどの答弁を聞いていると、いや、まだ逮捕者が出ていないので、私の方はそうなったら遺憾ですと。これが民間の企業の社長であれば、そのこと自体が、その発言自体を、責任をとらされる発言ですよ。ちゃんと国民の前に……(発言する者あり)うるさいね、静かにしろよ。ちゃんと国民の前に、税金の使い方について背任的なやり方があったということについて、謝罪をすべきじゃないですか、責任者として。

冬柴国務大臣 今、いろいろと事実と違う御発言が重なりました。私にとっては大変それは遺憾であります。

 まず、この実名報道があったのは、一月七日のことです。ことしの一月ですよ。実名報道があったのは七日、そのような実名報道はないけれども報道があったのは六日。六日、七日にそういうことがあったわけです。そのときには、残念ながら連休中でございました。私は、連休明けの一月九日早朝に、一番に事務次官初め幹部を全部集めまして、こういう、公共事業の七七%を直轄事業として発注している官庁として、これが疑われた記事が出た以上、これはもう省を挙げて徹底的に調査をし、再発防止を図ろうではないかということで、九日の日に、事務次官をキャップとする入札談合防止対策委員会というものをつくれという指示をいたしました。そして、大事なことは、その委員の中には、いわゆる職員でない有識者の人を、そしてまた、国民の方々が、ああ、この人だったらということを評価できるような人をぜひ入れて、そういう人たちに企画立案、そしてまた、現実に聞き取り調査もそのようにやっていただく、そういう組織をつくってほしいということを申し上げました。また、防衛庁でいろいろありました、証拠隠滅を起こしたようなこともありました。そういうことも一切してはならないということも申し上げました。

 私どもは、そういう中で、菅さんは、公正取引委員会が何か我々が官製談合に関与したことを確定したような言い方をされていますが、現時点、まだ調査中でございます。その点は、菅さんの言われていることは違います。

 私は、もし将来、そういうことが事実であるということになれば、これほど遺憾なことはない。したがいまして、公正取引委員会の調査結果をまつまでもなく、我が省挙げて、六十一人体制で今やっていますよ。そして、菅さんがやられたときには第三者は入れていませんね。私の方は、例えば高等裁判所の長官とか、それからまた地方検察庁の特捜部の検事を経験した人とか、あるいは公正取引委員会の事務局長をやった人とか、あるいは経済、法律、工学、それら大学教授等にも入っていただきまして、客観的に事実を確認し、そして、その背景を見きわめ、再発防止策を、国民に納得していただけるようなものをつくり出そうと今努力しているところでございます。

 しかし、確定はしていないわけでございますから、不二家とか、死亡事故を起こした社長と一緒にしないでください。私は、その時点時点で申し上げているわけでございます。そういう事実が確認されたときには、私はそれなりの発言をいたします。国民に納得していただけるような発言をすることは皆様方にお誓い申し上げたいと思います。

菅(直)委員 冬柴大臣がいろいろとおっしゃったのは大変よかったと思っています。というのは、よく国民の皆さんに聞いていただけるチャンスがあるからです。

 まず、公取委は、今調査を国土交通省にかけて、たしか百七十名以上の現職の人からヒアリングをしたと聞いております。そして、最終的には、今月終わりか、多分三月の初めごろに正式に幾つかの要求を出すと聞いていて、事前に国土交通省にもそのことは伝えてある、このように聞いております。ですから、そういうことを踏まえて、冬柴さんはその委員会をつくられたんでしょう。

 そこで、今、私の厚生大臣当時の調査委員会についても言われましたので、いい機会ですから、よく申し上げておきます。

 私が薬害エイズに関して資料を調べようとしたときにどういう状態が起きたか。私も、外の人を入れようと思いました。しかし、外の人が勝手に役所に入ってきて扉を開いたら家宅侵入、不法侵入になると言われました。つまりは、本当に調査をする権限があるのは、それは捜査権があれば別ですよ、いわゆる検察とか警察なら別ですよ、幾らそういう委員会であっても、民間人は直接の調査権限はありません。権限があるのは、私の当時でいえば、大臣と政務次官、あるいは連れていった秘書官だけです、役所に入ってですよ。

 ですから、私は、この委員会を見て、ああ、また大臣はやられたなと思いましたよ。トップは事務次官ですね。つまり、トップが事務次官であること、そのことは否定しませんが、まず事務次官から聞かなきゃいけないんですよ、あなたはこういうことは知っていましたかと。あるいは、前の大臣にも聞かなきゃいけないんですよ。

 私は、北側大臣のときには、道路公団の談合問題で何度も議論をしましたが、今の冬柴さんと同じように、役所を守ることにきゅうきゅうとされていましたね。公明党大臣というのはどうも役所を守る大臣なのかなと思ったですよ、そのときに。

 そうでないというならば、調べ方を私が教えますから。私が調べたときはどうやったかというと、歴代の薬務局長を全部名前を並べました。歴代の生物製剤課長を全部名前を並べました。そういう関係者に対してどういう質問をすべきかということを全部項目をつくりました。そして、その質問を、だれが、いつ、どういう形で質問したかということを全部公開するということを決めて、事前に発表しました。

 つまりは、そのぐらいしなければ、役所に役所を調べさせるのがどれだけ難しいか。そのことは政治家なら知っているはずですよ。それを、こういう委員会をつくって、後はそれがやってくれるだろうというのではだめでして、まさに大臣みずからが血刀を提げてもやるほどの、そういう決意でなければできないということを申し上げているんです。いかがですか。

冬柴国務大臣 私が直接指示し、全責任を負いながら今やっております。

 菅さんのときの委員会も、長は事務次官じゃなかったんですか。大臣じゃないんです。私のときも事務次官ではだめなんですか。(菅(直)委員「あなたがやれるかどうかですよ」と呼ぶ)私はやっています。何をやっている、何という……(発言する者あり)ちょっと待ってください。ちょっと待ってください。

 薬害エイズのときに事務次官を長にされた人が、私が事務次官を長にしたのはだめだという、それは……(菅(直)委員「そんなこと言ってない」と呼ぶ)いや、そうじゃないですか。

 それから、第三者が入ってきたら家宅侵入、それは、私は法律家ですから、とんでもない議論だと思います。私どもがお願いして、大学教授とか裁判官とか検察官とか公取の事務長とか、経験者をお願いして、その人たちにも調査の全責任を負っていただくメンバーとして入っていただいているわけであります。

 そして、菅さんの方は聞き取り調査ではなしに書面による照会をされたと承知しておりますけれども、私どもは、二百名にも及ぶ人たちを、六十数名の監査官を用いて調査を今継続する、そうしたことをやっているわけであります。そういうことを、菅さんが私がやる気がないような言い方をされるのは、私はまことに遺憾であります。むしろ取り消していただきたい。

 それから、公明党に対して、公明党選出の大臣は官庁を守るというふうな言い方をされましたけれども、それは取り消していただきたいと思います。

菅(直)委員 まず最初に申し上げますが、私が申し上げたことは、先ほど冬柴大臣が最初に何と言われたかというと、つまり、公取委がまだ結論は出していない、だから、もしそういうことがあるとすれば遺憾だという非常に腰の引けた記者会見での話だったので、そうじゃないでしょう。既に公取委は、三月の初めにそういう要望を出すということを事前に国土交通省に伝えているわけですから、事実上はそういうことを前提としてこの委員会がつくられたんだから、遺憾とか、そういうことがあるかないかじゃなくて、一応、公取委が指摘していることを前提として徹底的に調査します、そういう言われ方をされたのなら、私もこれほどまでは申し上げませんでした。

 それから、先ほど前大臣の話が出ましたが、前大臣の議事録も見ていただければ結構ですが、同じように、道路公団で、副総裁が官製談合で背任で逮捕されたんですね。その直前まで、官製談合について私が質問しても、今の冬柴さんと同じような、いや、まだ逮捕されていないからとか、今まだ調査中だから、そういう答弁が繰り返されたのを私記憶しているものですから、私の質問でしたから。何だ、これじゃ冬柴さんも北側さんも、どちらかといえば役所の利害の方を重視して行動されているのかなという感想を申し上げたところです。

 そこで、私の持ち時間がそろそろ終わりますので、最後に総理大臣にお聞きをいたしておきます。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

菅(直)委員 私は前の竹中大臣とはいろいろと意見を闘わせました。いろいろ議論が違うところもありました。しかし、ただ一つ、私は竹中大臣と全く同じ意見だなと思ったことがあります。竹中さんが最近、インタビューを出された本を見ておりますと、まだこの時点は小泉政権の末期で、やめられることが決まったときですが、ポスト小泉の条件としてはどういうことが必要ですかと聞かれたときに、まだ安倍政権ができる前ですが、官僚と闘う決意のある人、こういうふうに答えられていますね。

 私は、今、冬柴大臣にいろいろお聞きしましたが、冬柴大臣はあくまで安倍内閣の大臣であって、安倍内閣の責任者は言うまでもなく安倍総理であります。つまりは、国土交通省が官製談合をやって税金の無駄遣いをしているということが公取委によって指摘をされているわけですが、そのことについての総合的な責任、最終的な責任は、当然ながら総理にあるんですね。

 そういう意味では、私は総理に、闘う決意のある闘う政治家ということを自分の目標にしていると言われましたが、総理自身が、こうした官製談合を根絶するために、まさに政治生命をかけて官僚と闘う決意があるのかないのか、そのことだけ最後にお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、私の内閣において、官製談合、談合を根絶させるためにできる限りのことをやる、そのことをまずお約束を申し上げる次第であります。

 そのためには、談合がいかに割に合わないか、この考えを社会に徹底させる必要があります。そのためには、もし国の職員が入札談合に関与した場合には厳しい対応をしてまいります。それは、その役所がそういうことをしたら、もうこれは今後やっていくことができないと思われるような厳しい対応をとっていくことが大切であります。

 そして、それと同時に、予算や権限を背景とした押しつけ的な、いわば公務員の天下りがあってはならないわけでありまして、そうした再就職は当然根絶をしなければならないわけでありまして、そのための厳格な行為規制を導入してまいります。

金子委員長 この際、馬淵澄夫君から関連質疑の申し出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 予算委員会基本的質疑、機会をいただきました。菅代表代行が冒頭に質疑をさせていただきましたが、引き続いて私の質疑、まずは、今国会で大きな課題となる格差是正の問題、これは菅代行が今閣僚の皆様方にこの問題提起をさせていただいたわけでありますが、もう一つの大きな課題であります政治と金の問題、まさに、古くて新しき、常に国会でも取り上げられる課題ではございますが、これも事務所費の問題として大きくマスコミ等での報道が上がりました。この政治と金の問題、国民に対して明らかにすること、説明責任を果たすことが、政治不信を払拭し、そして信頼される政治、未来に続く政治を実現する大事な課題であると考えております。

 さて、今国会の冒頭で、本会議の代表質問の中で、この事務所費の問題が取りざたされている閣僚お二方に質問がなされました。伊吹文科大臣そして松岡農水大臣、お二方が三十日の衆議院本会議で、それぞれが指摘されている多額の事務所費支出をめぐり、領収書などの自発的な公表について、制度上の不備を理由に、現時点では応じないという考えを示されております。

 それに対して我が党の小沢代表は、代表質問の中で自身の事務所費について、支出の詳細だけでなく、その領収書及び関係書類も含めて、いつでも公開する用意があると述べられております。

 改めてお伺いをします。伊吹文科大臣そして松岡農水大臣、お二人は、その御発言の中で、法律のとおりやっているのだからよいのだ、自発的に関係書類を出すことで国民の不信を払拭する必要はないのだ、こういうことを発言されているという理解でよろしいんでしょうか。お二方、端的にお答えいただけますでしょうか。

伊吹国務大臣 馬淵さん、これは端的にということじゃないんですよ。(発言する者あり)いやいや、それはいけません。きょうは国民のテレビが入っていますから、真実をしっかりと申し上げなければなりません。

 まず、本会議で私が申し上げたのは、私の収入と支出はすべて帳簿にきちっと記載されております、そして、政治資金規正法と一つ一つの項目について疑義がある場合には、当時の自治省、総務省に尋ねて資金区分をしながら報告をし、公開をされておりますと。したがって、私の主たる事務所はなるほど会館に置いておりますけれども、京都の事務所、これは東京でいえば丸の内のようなところです、二百平米の事務所を借りております。これはどの程度の時価かはおたくの前原さんに聞いていただければわかります。そして、東京の外の事務所がございます。だから、この問題の発端になったある党の機関紙が、その主たる事務所を会館に置いているという一事をもって、経費が多額であるから疑惑がある、だから公開をしろということには無理がありますと。

 しかし、私がその後申し上げたのは、政党あるいは政治家で一定以上の事務所費を持っている人たちがすべて皆それを公開するということであれば、私は率先してそれに従います、こういうことを申し上げたので、法律どおりやっているからどうでもいいなんということは私は一言も申し上げていないですよ。

 そして、いいですか、これから申し上げます、大切なことを。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

伊吹国務大臣 馬淵さんは平成十五年の御当選ですから、平成六年のときの、政治資金規正法の資金管理団体をつくったときの議論をずっとフォローしていただきたいんです。私は党内でこれに参画をしておりました。そのときは、すべての入りを、そして出を資金管理団体に集中することによって、もう一方の選挙区支部とあわせて政治家の政治活動を透明化するということになっておったんですよ。

 ところが、幾つもの、例えば地元の後援会団体を別に置いて、地元の後援会活動をそこで行って資金管理団体からそこへ資金を投入しておけば、事務所費は二分されるんじゃないんですか。そして、ある党は、資金管理団体も政党支部も何も置いておられませんよ。すべて政党が一括管理しているんです。私の地元では、その政党の事務所費だけで一億六千万ありますよ。

 こういうこともすべてあわせてきちっとしていただかないと、このことは、その政治家の政治活動の自由という言葉は私は国民のためには使いたくありません。政治活動だということで一般の人と違うことをしていると思われちゃ困ります。しかし、政治活動はすべて平等でなければなりません。ある政党だけが、ある政治家だけが資金の内容をすべて公開するということは、選挙の準備活動たる政治活動をすべて公にしてしまうということなんですよ。それは困るんです。

 そして、もう少し正確に申し上げます。(発言する者あり)いやいや、これは大切なことですから。いいですか、答えているんですから。例えば、皆さん方のところへ……

金子委員長 ポイントをついて言ってください。

伊吹国務大臣 はい。

 今皆さん方のところへ、いよいよ十八年度収支報告をしなければなりませんから、収入支出項目の分類表というのが来ています。これをごらんになったら、非常勤の人件費はどこへ入れるんですか。人件費というところには政治団体の職員と書いてあるんですよ。それから、例えば当該団体内の渉外費はどこへ入れるんですか。そういうことをすべてきっちりと総務省に問い合わせて、一つ一つ私の事務所は積み上げてあるんですよ。

 ですから、私的な経費を政治資金として報告するなんということは、政治資金収支報告だからあり得ないんですよ。グレーゾーンみたいなところは、私の性格からしてすべて自費で賄っております。だから、疑惑と言われることは一切ありません。

松岡国務大臣 お答えいたしますが、基本的には今伊吹大臣がお答えになったとおりと同じでありますが、私も、私の立場からこれはしっかり答えさせていただきたいと思います。

 本会議で申し上げましたのは、私の当該政治団体の事務所費というのは、これは、正直にかかったものをきちんと整理をして計上し報告を申し上げておる、このことを申し上げたわけであります。そして、法律で決められていないから一切公開する必要もないなんという言葉は一つも使っておりません。これは、今お話しございましたように、各政党政派で取り扱いをお決めになれば、それに従って対応いたします、こういうことを申し上げたわけであります。

 以上であります。

馬淵委員 お二方の大臣、御説明をいただきました。伊吹大臣は、当初、この問題が発覚した時点から御自身の言葉で説明をされておられました。京都の事務所のお話もされておられ、また、実際には都内と京都市内の事務所があり、これらの家賃二千万円が含まれている、こうしたコメントも事務所からも発せられております。

 しかしながら、松岡大臣は、この問題が発覚した当初、一月十六日の本省における、これは農水省ですね、農水省における会見室での御説明というのは、今のお話のとおり、とにかく適正に処理しているんだ、この一点張りでございました。先ほど、伊吹大臣からは大変事細かに御説明をいただいた。まだまだ足りないのかもしれませんが、そうした中身についても述べられている。また、ほかに名前の挙がった政治家の方々も、御自身の言葉なり、あるいは事務所なりその内訳については、詳細ではなきにせよ、お話をされています。

 しかし、松岡大臣は、御自身は、この会見の中身を見てみましても、説明責任を果たしている、法的にきちっと処理されているというこの一点張りでございました。お一人だけが一切その内容については触れず、法的に問題なきように処理している、この一点だけで答弁を繰り返されています。

 さて、松岡大臣の先ほど問題になったと言われるこの政治団体は、松岡利勝新世紀政経懇話会、所在地はこの衆議院の第一議員会館の二〇四号室でございます。平成十五年、事務所費として経常経費として挙がっているのが二千六百三十二万円、平成十六年、三千百六十六万円、平成十七年、三千三百六十万円、計九千百五十八万円でございます。この松岡利勝新世紀政経懇話会、これはこの事務所一カ所であるのでしょうか。大臣、お答えいただけますか。

松岡国務大臣 一カ所であります。

馬淵委員 先ほど、伊吹大臣は京都市内にもあるというお話もありました。さまざまな形でさまざまな政治活動が行われていることについては十分理解ができます。

 しかし、松岡大臣は、先ほど申し上げたように、この記者会見、一月十六日では、説明責任を果たしているという一点のみで説明をそこで絶っています。しかし、その後一月三十日、衆議院の本会議、また、当日の朝のこれも本省会見室ですね、一月三十日九時五十二分から五十六分、この段階で御自身は、みずからは法律に従って全部やっているという言葉を発せられた段階で、本会議に先ほど述べたような答弁をされているわけであります。

 さて、ここでほかの方々も答弁が一様に変わり出しました。伊吹さんは、先ほど申し上げたように、発覚後は御自身でさまざまな用途についてもお述べになられたわけでありますが、伊吹文科大臣もあわせてこの答弁が、資金管理団体、これは適切に処理し報告していると承知、このように言葉を変えていかれ、詳細については、これは制度の見直し、各党各会派においてしっかりと議論していくべきものと承知している、このように述べられるようになりました。閣僚内で答弁が一致をし出したわけでありますが、そこで、下村官房副長官、お尋ねをいたします。

 この一月の三十日、この段階で閣僚の皆さん方の答弁が一致をしていくわけでありますが、政府内でこの事務所費問題についての想定問答を作成されたという事実はございますか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 一月三十日、閣議出席のうち政治資金を預かる立場である政治家の閣僚が、閣僚懇談会終了後、政治資金に関する対応について立ち話をしたというふうに承知をしておりますが、いずれにしても、安倍内閣の現閣僚は政治資金について法にのっとった処理がなされているとの報告を受けており、国会においてもその旨明らかにしているところでございます。

馬淵委員 私のお尋ねは、下村官房副長官に、想定問答集、これは集なのか一枚の紙なのかわかりませんが、これが終了後に配付されていた事実はございますかとお聞きしています。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 閣僚としての立場を離れて与党の政治家同士が政治活動のあり方について立ち話をしたことについて、この場においてお答えする必要はないと考えます。

馬淵委員 済みません、質問をよく聞いていただけますでしょうか。私は、立ち話の有無を聞いているのではありません。想定問答が配付されたかどうかをお尋ねしております。お答えいただけますか。

下村内閣官房副長官 先ほどもお答えいたしましたように、閣僚の立場を離れて与党の政治家同士が政治活動のあり方について議論したことについては、いずれにしても、この場でお答えする必要はないと考えます。

馬淵委員 一月三十一日十三時二分配信の時事通信では、下村博文官房副長官が三十一日午前の記者会見で、これは、三十日の閣僚懇談会終了後に想定問答集が配付されていたことがわかったということに対して、記者会見で、そのようなことがあったと承知していると認めたと報道されています。これは事実ではございませんか。あなたがお答えになられたと報道されていますが、この報道は、では事実と違うということでしょうか。重ねてお尋ねいたします。

下村内閣官房副長官 記者会見におきまして、メモが配付されたかどうかという質問について、そのようなことについて、これは政治家同士の立ち話の中での話でございますので、記者会見のときにも、そのようなことについてお答えする必要はないと考えるというふうに最後にきちっとお答えをしているというふうに承知しております。

馬淵委員 立ち話をされていたということを承知しているとお話しされたということでしょうか。

 改めてお聞きをしますが、A4一枚程度の紙が配られたということに対して、これは、ここでは、記事は、配付されていたことがわかったということですから、具体的にどのような書式でどのような紙が配られたのかということはこの記事からはわかりませんが、少なくとも、下村官房副長官がそのようなことがあったと承知していると認めた、こう記事で書かれていますが、これは、では事実ではないということでしょうか。

下村内閣官房副長官 閣僚懇が終わった後、政治家同士が立ち話の中でのことの御質問でございますので、だれがメモを配った、作成した等々についてこの場でお答えする必要はないと考えます。

馬淵委員 閣僚懇が終わって配られたということの事実を今お認めになったということだと私は理解をいたしますが、下村官房副長官がそこにはかかわってはおられなかったということでしょうか。そこについてはどうですか。

下村内閣官房副長官 何度もお答えをしておりますが、これは政治家同士の立ち話の中の話でございますので、この場においてお答えする必要はないと考えます。

馬淵委員 閣僚懇が終わって政治家同士の立ち話、しかし紙が配られたかもしれないと、今、これはだれが聞いても感じるお話じゃないかと思います。それに対して、ここでお答えをする必要はない、すなわち、政府としては、このような問題に対して火消しを行っているかもしれないという疑念に対してはお答えする必要がないという一点で通されるんでしょうか。

 官房長官、お尋ねをしますが、政府としては、こうした問題、安倍総理は明確にこれをしていかねばならないという御決意があると私はそう感じておりますが、官房長官は、このような想定問答、答える必要はないと今副長官はおっしゃっていますが、想定問答を配られたかもしれないというようなニュアンスで今とられると思います。これを政府が主導しているということでよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 安倍総理からは、常々、この政治資金についてはきちっとした扱いを法令にのっとってやれということを繰り返し言われていることでございます。

 今お話しになっている点は、今、下村副長官から答弁申し上げたとおり、閣議も閣僚懇も終わった後の政治家同士の話し合いの中でのお話だと思いますので、政府として御答弁申し上げる立場にはないというふうに思います。

馬淵委員 お答えいただけないようでありますが、総務大臣にちょっとお尋ねをします。

 この政治資金規正法、先ほど伊吹文科大臣からは、平成六年からの議論であると。私がそれこそ議員になるはるか前でございます。そうしたときからのこの政治資金規正法の議論の論旨、何を最も目的とするのかという理念の部分でございますね、ぜひ国民の皆さん方に、収支報告書と言われてもぴんとこない方もたくさんいらっしゃると思うんですが、ここも、大臣、なぜこのような制度がつくられてきたかということを端的にお答えいただけませんでしょうか。

菅国務大臣 政治資金規正法は、同法の第一条において、政治団体などにより行われる政治活動が国民の不断の監視と批判のもとに行われるようにするため、政治資金の収支の公開や授受の規正などの措置を講じることにより、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与することを目的としているということであります。

馬淵委員 そうなんです。この政治資金の規正法というものは、収支報告書あるいはいわゆる帳簿と称するもの、会計帳簿は収入簿、支出簿、運用簿、これらを含むわけでありますが、会計責任者と呼ばれる方がこれらをすべて記載し、備え置き、また、収支報告書という形態で提出をすることによって、政党、政治団体、政治家個々の政治活動が公明正大に行われること、これをしっかりと守るために、政治活動が国民の不断の監視と批判のもとに行われるようにするためつくられた法律であります。

 こうした法律は、つまり、国民にわかるように、わかりやすく政治家の活動が報告されるために、国民の監視のもとに行われるためにこの法律はつくられ、収支報告書等の要件がつくられていったわけであります。

 しかし、政府は一貫して、法律に適正にのっとって処理しているという閣僚の御答弁、さらには、それを想定問答の中で、答える立場にないというお話でありましたが、経常経費については詳細な説明をすべきということについて、収支報告に当たっては、会計帳簿に基づき個々の支出を積み上げて収支報告書を作成しており、法で求められるとおり適切に報告を行っていると承知と、このような形で閣僚の皆さん方が答弁をされる想定問答をつくられている。こうした事態は、まさに政治資金、政治と金の問題をうやむやにすることにはならないんでしょうか。総理が、明らかにするという姿勢を国民の皆さん方に示すべきではないんでしょうか。

 繰り返し申し上げますが、私どもの小沢代表は、衆議院の本会議の代表質問の中で、御自身から、支出の詳細だけでなく、その領収書及び関係書類も含めていつでも公開する用意がある、このように述べています。

 総理、閣僚として……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。

馬淵委員 閣僚の長として、この政治資金規正法の趣旨にのっとった、国民に明らかにする姿勢というものをこの場で国民の皆さん方にお伝えいただかねばならないと思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま、伊吹大臣からも松岡大臣からも答弁いたしましたように、政治資金規正法にのっとってしっかりと適法に処理をしている、こういうお答えをしたところでございます。

 その中で、やはり私ども政治家、国民の信頼の上で初めて政策を実行できる、李下に冠を正さず、この考え方のもとに我々政治を行わなければならない、こう考えています。

 その中で、このいわば事務所費のあり方についての議論がございます。各大臣が、事務所費が多いではないか、あるいは、議員会館に事務所があるから事務所費がただではないか、そんな御指摘をいただいているわけでありますが、先ほど伊吹大臣が御説明をしたとおり、そういう指摘は当たらないということではないかと思います。

 そして、各閣僚は、各閣僚の職務に関して問題が生じている、あるいはそういう指摘がなされているわけではなくて、まさに、議員活動における政治資金のあり方、事務所費についての議論が行われているわけであります。だからこそ私は、各党各会派において、この事務所費のあり方、政治資金規正法の改正も含めて議論を行うように指示したところであります。

 これはまさに、内閣で行うということではなくて、各党各会派が、議員の活動のあり方、国民への信頼をいかに確保するかという観点から議論をするべきではないだろうか、私はこのように思うわけでありまして、その中で、各党各会派において、この水準ですべて公開しようということが決まれば、もちろん、我々議員は当然それに従っていくということは言うまでもないことではないか、私はこのように思います。

馬淵委員 総理、今の御答弁のその制度の見直し、各党各派においてしっかりと議論をしていくべきもの、実はこれ、過去の国会の議事録を引いていくと、閣僚の皆さん方がこの政治と金の問題について問われると、必ずこの答弁の言葉が出てくるんですね。結局これは、ある意味ずっとそうやって各党会派がしっかり議論をするという形で言い逃れてきたというそのあかしにほかならないのではないかと思います。

 ぜひ総理がリーダーシップを持って、これは繰り返し申し上げますが、我が党の代表は公開する用意があると申し上げているわけであります。これは、リーダーシップを持って、この予算委員会の中で明らかにするということをお述べになられたらいいんじゃないんでしょうか。

 委員長、理事会で、閣僚の皆さん方のこの事務所費問題、明らかにするということを、これを御協議いただきたい。そして、先ほど下村官房副長官からは、立ち話という言葉で濁し、そして、その想定問答集については答えることを控えさせていただくというお話でございました。存在そのものを否定されているわけではありません。この予算委員会の中で、理事会で資料要求をしていただきますようお願いいたします。

金子委員長 協議いたします。(発言する者あり)

馬淵委員 さて……

金子委員長 では、伊吹文部大臣。(馬淵委員「ちょっと、質問していないですよ。質問はしていませんから」と呼ぶ)

伊吹国務大臣 いやいや、簡単にやりますから。

金子委員長 何について。

伊吹国務大臣 いやいや、公開しろとおっしゃっているから、閣僚が。

金子委員長 それは理事会でやりますから。

伊吹国務大臣 だって、人の名誉を傷つけるようなことを言ってはだめですよ、それは。だめですよ。

金子委員長 伊吹大臣、閣僚会費の件について理事会で協議ですから。理事会に資料を出すということではありません。理事会で協議するということでありますから。

伊吹国務大臣 それは幾らでも出しますよ。

金子委員長 いやいや、そのことを言っているわけではありません。理事会に協議するということについて……(発言する者あり)ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

金子委員長 では、速記を戻してください。

 馬淵澄夫君。

馬淵委員 委員長に理事会の協議のお許しをいただきました。引き続き、予算委員会にてこの問題は国民の前に明らかにしていただきたいというふうに思います。

 さて、この国会では、平成十九年度総予算の審議ということでこの予算審議が始まったわけであります。平成十九年度のこの予算、当然ながら安倍内閣は小泉内閣の継承という形で、小泉前総理が、改革なくして成長なし、こう述べられてきた、そして、安倍総理はこれを受けて、成長なくして財政再建なし、このように発されています。財政再建はまさにこの国の焦眉の課題である、この認識は与野党一致しているものだと思っております。とりわけこの財政再建は、厳しい景気の中でようやく浮上しているという状況の中でも今もってこの債務はふえ続ける。

 そこで、財政の健全化に対しては、総理も、所信、施政方針演説の中でも述べられておりますが、尾身大臣が財政演説を一月二十六日になされました。平成十九年度の予算及び税制改正の大要というところで、財政の健全化をさらに進めるとの考え方のもと、徹底した歳出の削減、見直しに取り組む、このように発せられています。

 徹底した歳出削減の方針を貫く、大変大事なことであります。無駄遣いを排し、そしてめり張りのきいた重点配分を行う。国民の生活に資するその予算の使い道というのはだれもが望むところであり、その一点に関しましては私たち民主党も、この国会の中で、生活の課題、格差是正、そしてそれは、とりもなおさず国民の生活を向上させることが政治の使命だ、こう申し上げてまいりました。

 そこで、この平成十九年度予算について、一つ、地域振興という問題で取り組んでおられる、沖縄の科学技術大学院大学の予算についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思っております。

 お手元の資料には、沖縄科学技術大学院大学のパンフレットの、経緯をお配りしております。こうした立派なパンフレットがございますが、沖縄科学技術大学院大学、これが、二〇〇一年六月に、当時内閣府特命担当大臣になられた、沖縄・北方対策、科学技術担当の大臣になられた尾身大臣、現在財務大臣でいらっしゃいますが、尾身大臣がその構想を提唱されました。そして、二〇〇一年の段階では、構想を提唱ということでありますから、これについて内閣府の中でその議論が進められていくことになります。二〇〇一年、構想を提唱し、そして経緯としましては、二〇〇一年八月、平成十三年の八月に構想検討会が開かれます。これはその後計八回開催されました。そして、翌年には国際顧問会議が開かれ、計三回、四月以降に開催されていきますが、この沖縄の科学技術大学院大学、国民の多くの方は御存じない方もいらっしゃるかもしれません。

 少しだけ私の方でこのパンフレットの御紹介をさせていただきますが、これは尾身担当大臣ですね、このパンフレットに書いてありますが、構想を提唱された。そしてここには、「沖縄において世界最高水準の研究及び教育を行う自然科学系の大学院大学を設立しようとするものである。」「世界の科学技術の発展に寄与すること」「沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させていくこと」、大変すばらしい目的だと思います。こうした形でアジア太平洋の中核となること、私も大変これは構想としてはすばらしいなと思います。

 基本コンセプトは、これもまた特異なものであります。世界最高水準、世界トップクラスの英知を結集する、ノーベル賞受賞の方々等々、世界の最高水準の頭脳を一堂に会する、そんな場所にしよう。そして、柔軟性に富んだ、国際性に富んだ機関にするんだ。これは、世界トップクラスの教育研究を行うために組織運営は柔軟にしようということであり、また、国際性という部分では、講義や会議等は英語で行って、教授や学生の半数以上を外国人にするんだ、さらには、世界連携、産学連携という形で、世界のトップクラスの大学や研究機関と連携をし、また、企業との共同研究などを深めていくという基本のコンセプトがございます。こうしたコンセプトのもと、内閣府においてはこの推進が進められていくわけであります。

 またお手元の資料に戻っていただきますと、今申し上げたように、平成十三年、構想が提唱され、やがて国際顧問会議が行われた後に、平成十五年には国際シンポジウムが開かれる。

 平成十六年には、この運営を進めていこうということで、ボード・オブ・ガバナーズ、これは、運営を進めていく中で、顧問会議を開いたりあるいはシンポジウムを開いたり構想の検討を行っていく中でだんだん集約されていくということなんでしょうね。集約されていく中で、ボード・オブ・ガバナーズ、いわゆる運営をつかさどる役員会といったイメージでしょうか、BOGと称するようでありますが、これが平成十六年の七月に第一回会合が開かれ、その後五回開かれております。

 平成十七年、今から二年前でございますが、九月には晴れて独立行政法人として機関が設立いたします。独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構、それがこのお示ししました独法のパンフレットとなるわけでありますが、ここにおいて、内閣府からはひとつ切り離した形でこの独立行政法人が今後の大学を設立、運営していくということになるかと思います。

 さて、今このような形で進んでいくわけでありますが、これらに係る予算、これをパネルでちょっとお示ししますが、皆様のお手元には資料で配付をさせていただいております。

 沖縄科学技術大学院大学の予算の推移でございますが、構想が提唱された十三年、そして平成十五年から予算がつき出します。平成十五年には十四・二億、十六年、二十九億、そして十七年、五十一億四千万という形で予算がつき、そして独法化されます。先ほど申し上げた機構に変わって、予算は七十七億。そして平成十九年度、本年度は八十七億三千万円というこの予算が計上されていくわけであります。今日までにおいて、この平成十九年度予算はまだ確定はしておりませんが、これらの累計はおよそ二百六十億、この構想の総事業費は七百億とも言われておりますから、大変な事業であるということは間違いございません。

 さて、先ほど申し上げたように、尾身大臣の提唱によって推進をされ出したこの沖縄科学技術大学院、これらの検討委員会は繰り返し行われていくわけでありますが、尾身大臣は、当然ながら、大臣になられて、尾身大臣の任期の期間中、ここには当然出席もされておられます。大臣が任期をされたのは平成十三年の四月二十六日から平成十四年の九月三十日まで、小泉内閣においてこの沖縄担当をなされておられました。そして、平成十四年の九月三十日離任をされ、その後は細田大臣、茂木大臣、小池大臣、そして今日、安倍内閣においては高市大臣が担当されておられます。

 局長にお尋ねをいたします。きょうは政府参考人として局長にお越しいただいておりますが、これら、先ほど申し上げた構想検討会やあるいは大学院の国際顧問会議、さらには評議会、またボード・オブ・ガバナーズ、BOGと呼ばれる会議、これらに対して尾身大臣は離任後も出席をされていますでしょうか。お答えいただけますか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 担当大臣離任後におかれましても、オブザーバーとして出席しておられます。

馬淵委員 担当大臣から離れられた後に出席をされているのは、ほかの担当された大臣の方でいらっしゃいますでしょうか。

清水政府参考人 担当大臣離任後に出席されたほかの大臣はおりません。

馬淵委員 尾身大臣が構想を提唱され、そして離任後もこの会議には出席をされているということでありますが、どういうお立場で出席をされているんでしょうか。局長で結構ですよ。(発言する者あり)

清水政府参考人 オブザーバーという立場で御出席されております。

 もう少し申し上げますと、尾身大臣離任後でございますが、構想の提唱者でございまして、科学技術政策に対する知見、経験を有しておられる、また、世界最先端の大学院大学の設立準備を進めるに当たって必要となる科学者などとの世界的なネットワークを有していることなどにかんがみまして、内閣府、あるいは沖縄科学技術研究基盤整備機構に置かれた運営委員会からの要請に基づいて、オブザーバーなどとして参加してきたものと承知しております。

馬淵委員 大臣はまさに、先ほど後ろから熱心だというお話がございました、熱心に取り組んでいらっしゃるんだと思われます。熱心な理由というのはいろいろおありだと思うんですが、お手元の資料には、大臣が出席をされた実績を7に示しておりますが、さて、お尋ねをします。

 大臣が離任後も熱心に出席をされた、そこに同行された方がいらっしゃいますでしょうか。局長、御答弁いただけますか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 尾身朝子、尾身議員の御長女が、尾身議員の国際会議等への出席の際に、尾身議員が出席し、その専門性を生かす上で、外国人有識者との間の通訳、連絡係兼秘書役的な役割として出席が必要であると運営委員会等が認め、御長女が同席されたものでございます。

馬淵委員 今もうお名前もおっしゃったんですが、御長女ということであります。三年前の選挙に自民党の参議院比例区でも御出馬されておられますので、お名前は出ても問題ないのではないかと思われますが、局長、お尋ねします。

 その御長女、尾身朝子氏、同席をされたということでございますが、その御同行された目的はどういう形ででしょうか、改めて。

清水政府参考人 尾身議員がオブザーバーとして国際会議に出席されるに際しまして、その専門性を生かす上で、外国人有識者との間の通訳、連絡係兼秘書役的な役割として御出席が必要であると認められたものでございます。

馬淵委員 通訳ということでありますが、お尋ねします。

 朝子氏が、御長女が同行されたときには、通訳というのはこの国際会議では設置されていたんでしょうか。いかがでしょうか。

清水政府参考人 御長女が御同席されたときにおかれましても、通訳が設置された場合はございます。

馬淵委員 局長、お尋ねします。尾身朝子氏には公費は支出されていますでしょうか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 会議への出席者につきましては、一般的に、共通して提供される食事や宿泊あるいは現地での移動に要する経費、現地との往復の航空賃等の公費の支出が一般的に行われてございますが、御指摘の御長女の件につきましては、これらの会議出席者に準じた扱いとなりますが、一回の宿泊費の例外を除き、宿泊費、航空賃については辞退をされているところでございます。

 他の会議出席者と共通して提供される食事やレセプションについての公費の支出はございました。(発言する者あり)失礼いたしました。報酬は受け取っておられません。

馬淵委員 お尋ねをしましたのは、公費による支出があるかということでございますが、今のお話は、要は公費の支出はあったということですね。これは、ホテルは公費支出があったということであります。よく聞いていただければ、今の御答弁は、例外を除いてというふうにお話にありましたように、公費の支出はあったということであります。

 さて、お尋ねをしますが、こうした形で御長女をお連れになるといった、これは当然、通訳も設置される場面で御長女をお連れになるということが、これは果たして、このような公費、先ほども申し上げたように、大臣は徹底した歳出削減という御姿勢を示されているにもかかわらず、御自身の行動というのはいかがなものかと問われるのではないかと思うのでありますが、これは担当大臣にお聞きしたいと思います。

 高市大臣、こうした形で御長女やあるいは御親族をお連れになるということは、これは適切でしょうか。

高市国務大臣 尾身大臣の御長女が出席されていた会議の件でございますけれども、いずれも内閣府及び運営委員会、機構になってから運営委員会がその同席を認めたということでございます。

 それで、一つ一つの会議についてちょっと具体的に申し上げます。

 通訳の必要があったかないかということなんですけれども、十五年六月の会議は、同時通訳は入っているんですけれども、聞いていただけますか、ウイスパリングという形で委員同士が話すような場合に必要だったと。それから、十五年一月も同時通訳は入っているんですけれども、これも、レセプションそれから会議の合間のウイスパリングを御長女がされていたということです。

 あとの会議、十五年十月ですとか、十六年九月、十七年四月、十七年七月等の会議は、御長女が陪席されていますけれども、通訳そのものが設置されていなかったということで、これは、会議での通訳及びウイスパリング等で活動されたと聞いております。

 ただ、私自身の感想を申し上げますと、もしも通訳としてウイスパリング等で必要であれば、その時点で御長女にも通訳の経費を支払うなり、すべての会議に必要な経費、例えば航空運賃ですとか、そういったものも支出されていれば誤解はなかったんだろうと思います。ただ、尾身大臣の方で、ほかにもまた寄るところがあるのでということで、航空運賃等を辞退されたりホテル代を辞退されたといったケースがほとんどでございましたので、そういったところで恐らく誤解が生じたんだと思います。

馬淵委員 誤解というふうに、今大臣は随分と先輩でということでお気を使われたのかなとも思うんですが、私は、これは誤解というよりも、国民から見ればどういうことなんだろうと思うのが一般の感情ではないかというふうに感じるんですね。

 公費の支出、その金額の多寡ではございません。公務であるならば、公務であるという形でこれは当然ながら公明正大にわかる形ですべきではないか。高市大臣がおっしゃられたように、まさに通訳としての報酬を払う。そして通訳として報酬を払うのであれば、これは、通訳としてのそのプロとしての資格やあるいはプロとしてのその力量が問われるわけであります。もし本当に必要であれば、そうしたプロの方を雇うのが本来の筋じゃないんでしょうか。それを、御親族の方を連れていくということが非常に大きな疑念を持たれるというのは、私は無理からぬことではないかという気がいたします。

 いいですか、これは結局国民から見れば、何だ、では、お父さんの出張に私も連れていってよ、ほとんど辞退はするけれども、一回実はちょっと払ってもらったこともあるんだというのを、これはテレビをごらんの主婦の方々から見れば、ああ、そんなことが通るのかという気になりませんでしょうか。

 大臣の在任中であれば、大臣が行かれる、これはよくわかりますよ。秘書官の方であればよくわかります。しかし、御自身の御長女。私は、大臣が、財務大臣という、まさに財政規律を高めて、そして財政再建を図ろうとする、徹底した歳出削減を図ろうとするその御姿勢が問われる立場にありながら、されてきたことが、高市大臣がおっしゃるように、随分と誤解を招くような行動をされていることに対して国民の皆さん方は非常に不快な思いをされるのではないかなということをお尋ねさせていただいているわけであります。

 これは公費の使い方としていかがなものかということを私は申し上げさせていただきますが、大臣、先ほどから手がうずうずされているようですので、一言だけどうぞ、結構です。

尾身国務大臣 この沖縄科学技術大学院大学構想は、私が小泉政権の大臣のときに提唱したものでございまして、私がいわば言い出しっぺでございます。

 そして、どういうことかといいますと、沖縄は日本全体の面積の〇・六%でございますが、在日米軍の七五%がいる。そういう中で、この米軍の存在は、この日本のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に極めて大きく貢献をしている。反面、沖縄の方々に大きな負担をかけていることも事実でございます。そういうことを考えますと、我々としては沖縄の発展をさらに実現しなければならない。

 そういう中で、非常にいい方法はないかということをいろいろ考えた末、国際的に通用する、日本にないようなベスト・イン・ザ・ワールドの大学院大学を沖縄につくることによって、沖縄の経済発展を実現し、そして日本の国際化を実現し、科学技術の発展を推進し、そして世界に貢献する、そういうことが大変大事であるというふうに考えて、私が提唱したものでございます。

 そして、そのときに、どういう大学にするか、どういう大学院大学にするかということをよく調べなきゃなりませんし、意見を聞かなければなりません。私はその後、例えばMITとか、ハーバードとか、スタンフォード大学とか、UCバークレーとか、北京大学、清華大学、ケンブリッジ、世界の一流大学をほとんど回りましていろいろな方々に意見を聞きました。そして同時に、世界有数の科学者と言われている方々にお願いをして意見を聞きました。その中には、MITのノーベル賞受賞者のフリードマン教授や、利根川先生や、あるいはロックフェラー大学の学長であったトーステン・ヴィーゼル、あるいはその他、大勢の方々がおられるわけでございます。シドニー・ブレナー博士もその一人でございます。

 そして、そういう方々を中心として、どういうふうにしたらベスト・イン・ザ・ワールドの大学院大学ができるかという御検討をいただきました。そして、検討委員会とか国際顧問会議とかいろいろ名前は変わっておりますけれども、皆この方が、ほとんど報酬をもらわずに、その世界的な大学院大学をつくるのはやはり夢だな、人類としてこれが大事だなということで全部協力をしていただいたわけであります。

 結果的に、外国の方々で集まった方は全員ノーベル賞の受賞者でございました。ほとんどの方々は私がお願いした方でございます。

 そして、私が科学技術担当の大臣をやめましたときに、さあどうするということになりましたときに、利根川先生やフリードマン教授やヴィーゼル教授が全員こぞって、尾身さん、大臣をやめたけれども、このプロジェクトから手を引かないでほしい、我々は尾身さんに頼まれてこのプロジェクトをやることにしたんだから、あなた一人が逃げるわけにいかないよということを強く言われました。あえて言うならば、尾身さんがやめるんなら我々もやめると言ったんですよ。私は、自分が頼んでこの世界的なプロジェクトをやる以上、私が逃げるわけにいかない。だから、皆さんの求めに応じ、正式にボード・オブ・ガバナーの会議で決めていただいて、オブザーバーとしてその後参加をする、こういうことになったわけであります。

 したがって、私は、自分が大臣のときに言い出したこの世界的にも大事なプロジェクト、日本の将来にとっても大事なプロジェクトを政治家として支援をしていくというのが、私の、政治家の義務であると考えてやっているわけであります。

 そして、私の娘のことについても話がありました。最初、法人ができてからは幾らか報酬も払っておりますが、国際的なノーベル賞の学者の皆さんは、ほとんど報酬なしで、旅費とそれから宿泊費だけで来ていただいているんですよ。これだけのものをするのならば、みんな一肌脱いでやろうということでやっていただいています。もちろん、したがって私が参加するときも、私はほとんどこの飛行機賃はもらっていません。ホテル代は出してもらっています。食事もしています、そこで。しかし、報酬は一切もらっておりません。

 私の娘は、私がニューヨーク勤務中に、ニューヨークの小学校の三年と中学一年、四年間向こうのパブリックスクールに行っておりました。したがって、英語と日本語が同じくらいしゃべれる。いわばバイリンガルであります。その娘に頼んで来てもらうことにしました。しかし、誤解があるといけないので、その航空運賃もそれからホテルも全部別です。娘一人は安いホテルに自分の金で払っているんですよ。それで泊まっている。それで、私の通訳兼連絡係としてこのプロジェクトにずっと協力してもらっています。私は、このノーベル賞の学者の皆様や何かにこれだけのことをお願いする以上は、私の家族も能力のある者は使うべきである、そういう考え方で連れていきました。

 通訳をつけないというのは、これは、この大学は全部英語でやる、それから、学生の半分以上も教授の半分以上も全部外国の人にして、グローバルスタンダードの大学をつくる。したがって、会議も全部英語で通訳なしでやるんですよ。私はニューヨークに四年いましたけれども、しゃべるのは幾らかできる。しかし、聞く方、ヒアリングの方が難点がある。だから、向こうで何かしゃべったときに、何か言ったかわからないことがあるんです。そういうことのために娘を手伝いとして連れていった。しかも、その娘は報酬は一切もらっていません。

 そういう手伝いの仕方が何か疑惑があるようなことを言うのは、高い志でこれをやろうという我々の考え方に対して、民主党も賛成したこの法案に対して、こういうテレビの前で失礼じゃないかと私は思います。

馬淵委員 大臣が今御自身の思いをお伝えされたのは、これは国民の皆さん方がごらんになっていると思いますので、それは国民の皆さんの御評価です。私は、こうした場合に大臣として正すべき道はあるのではないかということを指摘させていただいたわけであります。

 時間も余りありませんので、この問題でさらに確認をさせていただきますが、大臣が今るる説明されたような形でこの問題についてかかわってきたのは御説明のとおりだと思いますが、さて、確認をさせていただきます。

 先ほど来、こうした委員会に、あるいは検討会、そして現在では運営委員会等に参加をされております。こうした委員会の中で、運営委員会というのが機構にかわって新たに設置をされたわけであります。ボード・オブ・ガバナーズが名前を変えました。

 さて、昨年の平成十八年、このボード・オブ・ガバナーズが開かれる約二カ月ほど前、十月二十四日にどういう会議がありましたか。局長、事実関係をお答えください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 機構の運営委員の間での非公式の電話の会議が行われたと承知しております。

馬淵委員 この電話の会議では、どのような委員がどういう議論をされたでしょうか。局長。

金子委員長 資料を準備してください。

清水政府参考人 これは、私ども参加していない会議でございますので、私どもが情報収集したところで承知しておりますのは、七名の運営委員の先生方の間で非公式に意見交換がされたと聞いております。(馬淵委員「どのような」と呼ぶ)中身については、十二月に正式の運営委員会が予定されてございますので、それに向けた、機構の組織、人事あるいは運営計画、予算を含めた、そういったものについての非公式の意見交換と承知しております。

馬淵委員 その運営委員の皆さん方の議論の中で、予算について語られた部分はありますか。

清水政府参考人 機構の予算についての御議論があったとは承知しております。

馬淵委員 その予算について、尾身大臣から、来年度の予算の確保に向けて強い要求があればより大きな予算が確保される可能性が高い旨の話があったという委員の発言は承知されていますか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 この電話の会議につきましては、十二月の正式の運営委員会を準備するための非公式な意見交換ということで委員の間で行われまして、私どもは参加しておりません。後ほど情報収集させて聞き取りによるものですので、その中身については、正確なところについて確認する立場にないところでございます。

 以上でございます。

馬淵委員 もう一度確認しますよ。

 この電話会議の中身については承知されていないんですか。会議録等はお持ちではないですか。いかがですか。

清水政府参考人 非公式の電話会議について、私どもが聞き取りをして作成したメモを持ってございます。

馬淵委員 会議録の概要並びにそのメモ、それをこの当予算委員会に資料要求します。予算委員会理事会に資料を提出してください。

金子委員長 資料はあるのですね。

馬淵委員 今、あると答えましたから。理事会に提出をお願いいたします。

金子委員長 理事会協議します。

馬淵委員 そこで確認をさせていただきますが、尾身大臣が、この予算獲得に向けて、円滑な施設整備に向けて施設予算については非常にプライオリティーが高いとの指摘をされた、こういう事実は、尾身大臣、ありますか。いかがでしょうか。

尾身国務大臣 私は、九月の二十六日、閣僚に就任前は、自民党の沖縄振興委員会の大学院大学小委員会の小委員長という仕事をやっておりました。したがいまして、予算要求の段階で原案をつくるときには全部見ております。ただし、大臣に就任して以来、先ほどのオブザーバーの職責を辞退しております。

 そして、予算につきましては、そういう事情でもございますので、これは事務的な折衝に一切任せておりまして、本来、この項目は大臣折衝には上がってきておりません。事務レベルの折衝で処理したものでございまして、財務大臣として、予算編成全体の責任者でございますけれども、本件に関する個別具体の予算折衝は事務方に任せておりまして、特別の口出しはしておりません。

馬淵委員 十月二十四日の会議録にてそれを確認をさせていただきたいと思いますが、財政の大臣、財務大臣として、予算編成の事務処理の責任を持つお立場であります。そのお立場である方がその会議の中で、委員を通じてであれ、予算編成に対して言及するということは、これは決してあってはならない。その立場としてそのことは厳に慎まねばならないことは、これは言うまでもありません。

 かつて、平成十二年、同じように金融担当でおられた越智道雄金融再生委員長は、会合の場で、もし検査があれば言ってくださいということを発言したことによって、手心発言と批判をされました。そして、それによって御本人は職を辞するというような形にまで発展をいたしました。

 このように、財政規律、非常に厳しい立場で物を見なければならない方がそうした発言をもし仮にされたとすれば、これは大変な問題でもあります。再生委員長が辞任をされたということでありますが、こうした財政にかかわる方がこのような形で発言をするということについては、私はこれは厳に慎まねばならないと思いますが、これは、先ほどお尋ねをしましたように、会議録を出していただくようにお願いをしております。

 当時、越智再生委員長が辞任をされた。その前任であったのは、今厚生労働大臣をされている柳澤大臣でございますが、柳澤大臣、済みません、通告はしておりませんが、御本人がつい先日まで、御発言の中でその職を辞する云々ということも厳しい議論があったと記憶しております。柳澤大臣、当時、御自身、前任の再生委員長でおられましたが、越智委員長が辞任されるという場面、これはいかがお考えだったでしょうか、御感想をお聞かせください。

柳澤国務大臣 私は、あの任を解かれまして、金融再生委員長あるいは金融担当大臣というのはもう本当に全力を尽くして取り組みますので、任を離れますと少しほっとする、させていただくというようなことがございますので、その間の事情をつまびらかに記憶をいたしておりません。大変恐縮です。

馬淵委員 記憶をされていない、こういうことでありますが、いずれにせよ、先ほど申し上げたように、この沖縄の大学の問題は、尾身大臣が提唱されて、そして、引き続きそのことについては常にオブザーバーあるいはアドバイザーという形でかかわってこられた。さらには、この電話会議、これは後々資料で確認をさせていただきますが、その発言があった、インプットがあったという委員の発言があるとも聞いております。

 また、尾身大臣は、かつて自民党総務局長時代、沖縄の知事選にかかわり、そして、それまでは一円も沖縄の企業からは政治献金がなかったのが、その後沖縄の企業から政治献金を受け、今日まで続いております。その沖縄企業は、今、沖縄幸政会という尾身大臣の後援会団体の中におられる企業が、この大学院大学の造成工事、一月二十九日、先日これも落札をされました。またさらには、シーサイドハウス等の建築工事も、その沖縄幸政会の主要メンバーの業者が落札をされております。

 先ほど申し上げたように、この問題については、積極果敢に取り組む御必要があったのではないかということがこの問題の中には隠されているような気がしてなりません。

 もう本日時間がございませんので、また後ほど質疑もさせていただきますが、この問題は引き続き予算委員会の中で明らかにしていくこと、そして、残念ながら、通告をしましたがお尋ねできませんでしたが、耐震偽装の問題もございます。

 これは、昨年の六月一日、新聞紙上で明らかになった後、六月七日に私が国土交通委員会で一般質疑をさせていただいた。しかし、その後八カ月間、国土交通省は、残念ながらこの問題についてはなかなか腰を上げたとは言えない現状がございます。この問題につきましても、政府の責任、この問題につきましてはアパグループがかかわっておりますが、これにつきましても当予算委員会で引き続き質疑をさせていただくことを申し上げ、私の質疑を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

金子委員長 この際、荒井聰君から関連質疑の申し出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。荒井聰君。

荒井委員 荒井聰でございます。

 総理、総理にお尋ねしたいんですけれども、二月七日の予算委員会で、枝野君の質問に対して柳澤厚生労働大臣が答えておられますね。産婦人科医が少なくなっている、それに対してどういう見解かということを枝野議員がお尋ねになりました。これに対して柳澤国務大臣は、産科は、先ほど私も触れましたが、出生数の減少で、医療ニーズがはっきり低減しているということの反映というふうに承知をしていますと答えています。これは違うんじゃないですか。

 現実は、産婦人科医は勤務が非常に厳しいんですよ。夜勤も必要としますし、あるいは医療事故に遭ったときに訴訟にも遭う、そういう危険性も高い、そして診療報酬はほかの専門科と比べてそんなに高くない、だから産婦人科医というのは少なくなっているんです。特に地方では厳しいですよ。地方の産婦人科医は、非常に減少しているというか、少なくなっています。

 この状況、この見解について、あなたはどうお考えになりますか、総理は。総理の見解をお願いします。

安倍内閣総理大臣 産婦人科の先生が減少している、この減少している状況をどう認識しているかという質問でありますが、その中で、厚生労働大臣が、出生数、赤ちゃん、子供の数が減っている、妊娠の数が減っているということも一つの原因である、こう答弁していました。これも私は一つの真実だろう、このように思います。

 確かに、この出産の数が減っていることによって産婦人科医をやめた先生も私は知っています。そういう方々もいます。しかし、他方、地方にあっては、それとはかかわりなく、だんだん産婦人科の先生が減っている。その減っている理由の中には、今委員が御指摘されたような、そういう理由も当然あるんだろう、私は、このように思うわけであります。

 そういう中において、地方の方々が安心して生活できるように、また、安心して出産できるような体制を整えていきたい、このように思うわけでありまして、産科については、医師が集まる拠点病院づくりや医療機関相互のネットワークを構築していく必要があります。また、小児科医については、初期小児科救急における当番制による開業医等の活用もしたい。また、産科や小児科は大変女性の先生が多いわけでございますから、この女性医師の就労を支援するための女性医師バンクを設立したり、医療資源を効率的に活用するためのさまざまな取り組みを行ってまいりたいと思います。

 そして、今委員が御指摘になられた診療報酬についてでございますが、私は、来年、診療報酬の改定において、小児、産科などへの対応も含めた診療報酬のあり方について検討をすることが必要であると認識をしております。

荒井委員 出生数が減少しているから産婦人科医が少なくなっている、そういう見解を持っていたのでは、少子化率なんて改善できないですよ。

 どうやって出産の機会をふやしていくのか、そして、そのための、安全ネットといいますか、セーフティーネットというか、お母さんたちが安心して産めるような環境、育てやすいような環境をつくっていくのか、そこが大事なんですよ。それを、出生数が減っているから産婦人科が減るのは当然だという考え方をしていたのでは、いつまでたっても出生数は上がっていかないですよ。総理、もう一回。

安倍内閣総理大臣 私は、子供の数が減るから産科の先生が減るのは当たり前だとか、そんなことは一言も言っていませんよ。

 産科の先生がなぜ減っているかという分析に当たって、これはまず分析をしなければいけませんから、その分析を申し上げたわけであって、そしてまた、出生数が減っていることが、すべてではないけれども、それは一つの原因だというふうに申し上げた。これは全く違うとは先生も言えませんよね、それは。それも一つの大きな原因です。事実、それでやめた先生方も、私、何人も知っていますよ。

 しかし、それと同時に、いろいろな原因もある中において、今私が申し上げたように、後段の部分もちゃんと委員は聞いていただきたいと思います。後段の部分において、ネットワークもつくっていく、拠点病院もつくっていく、そしてさらには、女性の先生をもっと活用していかなければならない、そしてさらには、先ほど申し上げましたように、診療報酬においても、産科、小児科の診療報酬のあり方を改定において検討していきたい、このように申し上げています。

荒井委員 出生数が減っているからというのがあたかもメーンのように柳澤厚生労働大臣は答えられたんですよ。もしも、メーンの理由が、厚生労働大臣が、本当に産科のお医者さんの仕事が厳しい、あるいは診療報酬がそんなに高くないということを本当に理解していれば、そういう答えになったはずですよ。

 さて、それで、今、総理は、産科の診療報酬を引き上げることも検討すると言いましたから、ぜひそうしてほしいと思うんです。

 ところで、地方の医療過疎というか医療の深刻さというのは大変厳しいものがあります。お医者さんがいなくなっている、お医者さんがどんどんいなくなっているんです。

 かつては、市町村財政がある程度よかったから、かねや太鼓をたたいてでもお医者さんを集めたんです。あるところではお医者さんに来てもらうのに三千万円を用意した、あるいは四千万円を用意したといったような話さえ聞こえてきます。しかし、それさえも今できなくなってきています。なぜできなくなったか。市町村財政がどんどん厳しくなったからです。(発言する者あり)そのとおりですよ。市町村財政が厳しくなったから、お医者さんを集めるだけの財源が不足してきたからなんですよ。

 そして、政府自体も、それに対するちゃんとした制度設計がうまくいっていないからですよ。今度の制度設計では、中核都市に、中核の病院に集めるように、お医者さんや看護婦さんが中核に集まるようなそういう研修制度の制度設計をしたでしょう。結局、地方からどんどんお医者さんが今いなくなっているんですよ。そういう現状を認識していただかないと、私は地方と都市との格差というのはますます開くと思います。

 さて、地方の格差の中で象徴的な事例が夕張の問題ですね。夕張の地域は、私は、当初、政府の要人の方々は、これは自己責任だ、放漫財政が招いた自己責任だから自己責任で解決しろ、そういうトーンが主流だったように思います。しかし、ここへ来て、政府のトーンあるいは総理のトーンも変わりましたね。基礎的なサービスは提供する、あるいは高齢者や子供さんたちにはちゃんと支障のないようにする、そういうトーンに変わってきたんですね。

 これは何年前だったでしょうか、イラクの人質の問題が起きたですね。あの人質問題のときに、政府は当初、これは自己責任だ、だから助ける必要はないんだといったようなトーンが大きな流れだったですね。しかし、その後、世論の様子が変わってきた。あるいは、あの人たちが草の根の交流をしていたということがだんだんはっきりわかってきた。したがって、これを助ける必要があるという動きに政府は変わっていった。今度も僕は似たような動きなのではないかと思うんです。

 つまり、市町村の財政破綻というのは、本当に市町村だけの責任だったのか、夕張問題では夕張だけの責任だったのか。違うんじゃないですか。

 さて、住民の基礎的なサービスは維持する、これは、福島みずほ委員に対して総理が、基礎的な行政サービスは維持する、こうお答えになっていますね。それから、高齢者と子供には特段の配慮を行うとも言っております。この基礎的な行政サービスあるいは特段の配慮というのは、具体的に何をおっしゃっているんですか。

安倍内閣総理大臣 詳しくは総務大臣からお答えをさせたいと思いますが、その前に、政府があのイラクの人質事件のときに、自己責任だから助けなくていい、自己責任だという言葉も助けなくていいなんということも両方とも言っていないですから、それは訂正をしていただきたい、このように思います。

 また、その問題とこの問題は全く別の問題ではないか、私はこのように思うわけでありまして、地方分権というのは、地方もやはり責任を持っていただかなければならない、地方にも責任を持っていただいて、財政規律ということも考えていただきたい、これは当然のことではないだろうか、私はこう思うわけであります。

 夕張市の財政再建計画の素案は、多額の赤字を解消するため、徹底した歳入歳出の見直しを図りつつ、一方で、基礎的な住民サービスの提供を確保して、特に高齢者の皆さんや子供たちに配慮した上で策定されたものであるというふうに理解をしておりますが、この素案には北海道が行う支援策も盛り込まれており、市民生活に必要な一定の行政サービスが維持され、財政再建が早期かつ確実に推進されるよう支援がなされるもの、このように承知をしております。

 国といたしましても、私が答弁をいたしましたように、北海道と緊密に連携をして、地域の再生に向けて必要な支援を行ってまいりたい、そして、当然、お年寄りや子供たちに対しては特別な配慮を行っていかなければならない。

 具体策につきましては総務大臣からお答えをさせます。

菅国務大臣 基本的に、夕張の破綻というのは自己責任である、私はこう思っています。

 それは、夕張市は、会計年度をまたがる貸し付けだとか償還を行って赤字を見えなくするような不適切な処理を行ってきて、その積み重ねが今日の夕張市の破綻を招いたというふうに私は思っています。同じような状況であっても、頑張っている北海道の市町村もたくさんあります。また、福岡にもたくさんあります。そのことはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 ただ、それと同時に、私ども政府として、日本人がどこで生活をしても一定水準の行政サービスを保障するのは、これは国の責任であるというふうに思っています。

 私は、昨年の暮れに夕張市を視察しました。行く前に、総理から、特に子供やお年寄りに配慮をするようにという指示を受けて、私は行ってまいりました。私自身、まず、この夕張市の破綻について、昨年、副大臣当時に、昨年の六月に財政再建を市会で決めた後に、七月のボーナスを前の年より多く出したんです。国に対しての甘えの構造というのは、やはりこれは払拭した上でなければ、財政再建、私ども、国民の皆さんの理解を得られないと思いました。

 そういう中で、夕張市の皆さんも大変頑張られまして、全国の最低水準ぐらいに今一生懸命に水準を落として、自分たちの町を自分たちでつくっていこうという、そうした温かい声がどんどんと上がってきておりますし、全国各地からも夕張の応援団がふえてきています。

 そういう中で、具体的に申しますと、お年寄りに対してのパスでありますけれども、これは廃止をしているところも北海道でもあります。しかしながら、現地に行きますと、病院まで片道九百三十円もかかるんですね。こちらの感覚と非常に違ったものですから、それについては継続をするようにしたいというふうに思っていますし、また、子供でありますけれども、保育所の保育料でありますけれども、一カ月に一万ずつふえる世帯が実はあります。しかし、これも、北海道の中で二カ所ほど国水準で行っているところがありますけれども、しかし、幾ら何でも一カ月一万円は多過ぎるだろう、そういう中で、暫定的にこうした措置も講じさせていただいたところであります。

 私ども、責任としては、夕張市にまず徹底して歳出削減に努めていただいて、そこでかなわぬ分は、私どもとしても、一定水準の行政サービスができるようなことは国としてもやはり責任を持って行う、そして夕張市で将来希望を持って生きていただく、このことが私は大事なことだと思っています。

荒井委員 これはニューヨーク・タイムズです。このニューヨーク・タイムズの一面に、皆さんのお手元にあると思いますけれども、一面それから五面に、これだけでかい夕張の記事が出ています。この夕張のニューヨーク・タイムズの記事の中でこういうふうに報じています。

 数え切れないほどの自治体に対して、夕張市を見せしめにしている政府の態度は、夕張市民の怒りを買っている。夕張のような自治体が政府の援助金に頼らなくなると、自分からコスト削減に臨むというのは政府の理屈のようだ。夕張に長年住んでいるクドウカズコさんは、中央政府は何も言わずに私たちにこのお金を渡したが、急にそれが間違いだと言っている。私たちを急に見せしめにするなんて、だれも思っていなかった。これがニューヨーク・タイムズの記事です。

 私は、このとおりだと思いますよ。こうだと思いますよ。いいですか。借金をするのに、借金を許可してきた地方債あるいは補助金、これは全部国が絡んでいるんですよ。補助金は、例えば「めろん城」、これは農林省の補助金ですね。ほかにも、ほとんどの建物、箱物は補助金ですよ。あるいは政府系関係金融機関の借入じゃないですか。貸し手責任というのがあるでしょう。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。

荒井委員 私は、そういう点を全く無視して、全部夕張の責任だというのは言い過ぎではないか。政府は、ちゃんともっとその点をしっかりと分析をする必要があるんじゃないですか。総理の見解を問います。

安倍内閣総理大臣 私は、はっきり申し上げて、そのニューヨーク・タイムズの記事自体、取材が不十分ですね、極めて取材が不十分な記事だろう、このように思います。その記事の中には、先ほど総務大臣がお答えしたように、財政の中身をごまかしていたということも書いていないじゃないですか。あるいは、もう破綻が明らかになった後ボーナスをふやした、とんでもない話じゃないですか。これはまさに税金の無駄遣いでしょう。

 そういう体質を根本的に変える必要があるんですよ。そういう体質を根本的に変える必要がある。ほかでも、ちゃんと一生懸命やっている市町村、たくさんあるじゃないですか。この写真にも写っているようなああいう遊戯施設、果たして本当にうまくいくのかどうか、それはちゃんと自分たちで考える必要があるんです。

 ですから、その上で、最低限私たちが保障しなければいけないものは保障していこう、先ほど総務大臣がお答えをしたとおりです。そして、子供たちやお年寄りにしわ寄せが行かないように特別な配慮を行っていく。その上で、当然これから財政規律ということを住民の皆さんにも考えていただいて、再建の道に向かって進んでいただきたい、このように思います。

荒井委員 私は夕張市に責任がないとは言っていませんよ。だけれども、国や道にも責任があるでしょうと言っているんです。

 例えば、総務省の市町村別決算状況調を調べてみますと、夕張市への地方交付税額はこの十年間で七十三億から四十三・五億になっているんです。地方交付税は、どこの市町村でもそうですけれども、大幅に減額しています。どこの市町村も今厳しい財政事情に陥っているんですけれども、その厳しい財政事情の原因になっているのは、二〇〇三年から二〇〇四年にかけた地財ショックと言われている、地方交付税を大幅に減額したからなんです。この減額で、全国で今、夕張とまではいかないけれども、夕張の状況に似たような市町村は四百以上あるんですよ、借金の率が一八%以上という。四百以上あるんですよ。これはもう夕張だけの問題じゃない。地方財政全体にどういう責任を持つのか、市町村に対してどういう責任を持っていくのか。それに対してこたえていかないと地方と中央との格差はますます広がりますよ。違いますか、総理。

菅国務大臣 まず、このニューヨーク・タイムズの、国が夕張市をいけにえにしたということは、全く違います。財政再建というのは、それぞれの自治体が申し出なければ、私どもはそれを同意することはないわけでありますから、そのことはぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

 そして、今委員から指摘をされました、全国で赤字団体がふえている。確かに高齢化等の進展によって、現在、平成十七年度によりますと、都道府県で二団体、市町村で夕張市のほか二十五の団体が赤字団体になっています。しかし、夕張市の場合は、表の会計でなく、裏にあったいわゆる第三セクターとかそうしたものが表にできていなかった、そこに実は一番問題がありまして、そこを毎年毎年一時借入金等によって財政で、私ども、どうも見つけることができなかったことが今日の破綻につながってきたと私は思っています。

 夕張のような状況のことはないかということを、私ども、あの後総務省で、全国に都道府県を通じて指示して調べました。あのような状況の団体はないということをはっきり申し上げておきます。

荒井委員 今、二〇〇三年、二〇〇四年の地財ショックと言われているそのものに対する政府の見解、それをちょっとお聞きしたいんですけれども、総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 二〇〇四年度の地財計画についてですね。二〇〇四年度の地方財政計画においては、三位一体の改革の一環として行われた地方交付税等の削減によって財政力の弱い団体を中心に予算編成が大変厳しいという声があったのも事実である、このように私は承知をしております。

 二〇〇四年度の地方財政は十四・一兆円もの巨額の財源不足を抱えて極めて厳しい状況にあったことから、思い切った歳出の抑制等を通じ、財政再建化について一層の努力を図る必要があるとの考え方で地方財政計画が策定されたものであります。こうした財政状況を踏まえれば、徹底した行財政改革に取り組み、財政健全化を進めることは必要であったわけであります。

 このため、二〇〇五年度以降も引き続き地方歳出の徹底した見直しに努めるとともに、二〇〇四年度の状況も踏まえて、二〇〇五年度以降は、地方自治体の安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税等の一般財源総枠を確保しております。

荒井委員 昨年の七月七日、当時の竹中平蔵総務大臣がこういうふうに言っているんですね。小泉政権五年間、地方は歳出を減らし財政健全化に努め、国は税収増によって基礎的収支を持ち直している、こういうふうに言っているんですよ。

 そうなんですよ。この間ずっと、政府は、政府の方がたくさん借金を抱えているから、だから地方をどんどん減らしていくんだという考え方で、地方の交付税なり、あるいは地方が自由に使える資金をどんどん締めていったんですよ。それが二〇〇三年の地財ショックと言われている。三兆円もの資金を減らしたので、各市町村がそれぞれ相当な危機になったんですよ。それが引き金になっているんですよ。

 つまり、地方財政をしっかりさせるためには、地方交付税をもとへ戻すような、あるいは地方交付税の歳入をもっと膨らませるような、そういうことを考えないと地方財政は健全化しませんよ。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 まず私が答えて、詳しくは総務大臣がお答えしますが、地方においてもたくさん無駄遣いがある、これは夕張市でもはっきりしたわけでありますし、いろいろな指摘もあるところであります。まずそれを、やはり地方においても国においてももちろん無駄遣いをなくしていかなければいけない。公共事業においては我々も半分にいたしました。これからも減らしていく。そういう無駄遣いをなくしていく努力を地方もやはりやっていただきたい。

 という中で、先ほども申し上げましたように、地方においても十四・一兆円もの巨額の財源不足は抱えていたわけでありますが、そういう中において、やはり地方も努力をしていただこうということで、我々は地方にも行革を進めていただきたい。その中で、先ほども申し上げましたように、一般財源総枠は確保しているところであります。

 詳しくは総務大臣からお答えをいたします。

荒井委員 時間がないので結構です。いいです。

 総理、今度総理の肝いりで、約二千七百億円の、元気基金じゃないな、地方応援プログラムというのをつくるんですね、これは特別交付税で。しかし、特別交付税というシステムは、本来、ある一定のサービスを維持するために地方交付税というのはあるんですよ。特別な何かを奨励したり助成したりするためにあるんじゃないんです。この趣旨ならば、私は、これは一般会計で、補助金でやるべきですよ。それだけの金があるのならば、地方財政がこれだけ緊迫しているんですから、緊急になっているんですから、その資金を、地方財政が緊迫している市町村に対して、財政再建のための基金として使うべきだと私は思います。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これも詳しくは総務大臣からお答えしますが、頑張る地方応援プログラムは、特別交付税だけではなくて普通の交付税もあります。

 そして、これは、例えば財政再建の努力をしていく、行政改革を行って。かつてであれば、行政改革を行って人員を減らしてしまうと、結果として交付税が減ってしまうということになっていく。そういう努力をしたところは、そういう結果に対して交付税を出すべきではないか。あるいはまた、企業を誘致する、日本に対して、自分の地域に対して外資も導入しよう、そういう努力をしているところに対しては、その結果に対して交付税を出そう、成果が出てくればその成果に対して出していこう。それによって税収もふえていくかもしれない。そういうことをやっているところにはそういうインセンティブを与えていこうという新たな仕組みであって、かつては、頑張ったらその分減らされてしまう。ということでなくて、頑張ったらその分、頑張るだけ交付税がふえていくという、地方の頑張りを本当に引き出し応援していく仕組みであろう、私はこのように思います。

菅国務大臣 交付税の算定基準というのは二つありまして、一つは、義務教育や福祉等の、法令によって決められている義務的なもの、そしてもう一つは、基礎的なこうした経費に加えて、条件不利地域等の特別な財政需要や行政改革などの全国共通の政策課題に係る経費、この二つを実は地方交付税は対象にしております。

 今回の頑張る地方応援プログラムは、魅力ある地方を目指して取り組む全国の政策課題であるということで、当然、地方交付税の政策課題に入るというふうに思っていますし、使途は、特定をされない一般財源としてこの頑張る地方応援プログラムの交付税は使用していいということになっています。

荒井委員 私は、もう一回はっきり話をしたいんですけれども、地方交付税というのは地方の独自財源なんですよ。地方の独自財源をこういうふうに奨励的に使うというのは、私は、地方交付税というものを通して、地方自治体あるいは地方分権というものに対する基本的な考え方が今の政府は間違えているんじゃないかということを指摘しておきます。

 さて、ちょっと時間がなくなったので、もう少し話をさせてください。

 FTAの交渉が今続いていると思いますね。この三月にニュージーランドの首相が来るようですけれども……(発言する者あり)ごめんなさい、オーストラリア。来るようですけれども、交渉はどういうふうにするんですか。しかも、これをやると、北海道庁の試算によると一兆四千億減額になると言っているんです。しかし、政府はどういうメリットがあるか全く指示していませんよね。そして、WTOの交渉が今進んでいる中で二カ国間でこういう交渉を進めるということは、WTOはもうやらないということを言おうとしているんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず私がお答えをして、詳しくは農林水産大臣からお答えをさせます。

 私は、人口減少局面にあっても日本が力強く成長していくためには、イノベーションによって生産性を高め、そして、オープンな姿勢により海外の、特にアジア、中国やインドもそうなんですが、アジアの成長を日本に取り入れていかなければいけない。これは、お互いに国を開いていくという姿勢が大切であり、その中で、WTOはもちろんですが、EPA、FTAも広げていくということを公約として私は掲げているわけであります。

 そこで、オーストラリアとの交渉においても、交渉はスタートします。その中で、日本の利益を最大限に確保するために交渉において努力をしていかなければいけない。そして、当然、農業についてでありますが、農業については、これは国内農業への影響を十分に踏まえる必要はあります。守るべきものはしっかりと守り、そして、攻めるべきものは攻めていきたい、この姿勢で交渉に臨んでいかなければいけない。

 そして、WTOとの関係でありますが、あくまでもWTOは国際ルールとして信頼できるルールであって、日本は貿易立国ですから、このWTOの信頼できるルール、仕組みを確立させていくことが必要であると考えております。それを補完する形でFTAやEPAを活用していくのは当然のことではないだろうか、私はこのように思っております。

荒井委員 今、総理は、日本の国益を最大限に守っていく、その中で交渉していくという趣旨だととらえていますので、その方向でぜひ、日本の農業を守るという方向で交渉してください。

 ところで、さきの国会で、北海道を中心とする道州制特区法案というのを通しまして、私どもは反対をいたしました。これは地方分権や道州制の本来の趣旨からいってもはるかに及ばないものだということから反対をしたんですけれども、もしも本当に道州制にモデルとしてのこの法案を活用するんだとすれば、北海道には北海道開発予算という公共事業が特殊にありますね、この北海道開発予算の中で北海道に独自に配分権を持たせる、そこまで考えられませんか。

 あるいは、北海道は、今新幹線を非常に強く希望しています。新幹線というのは、私は、交通体系の軸ですから、全国、例えば北海道の稚内から九州の鹿児島まで新幹線の軸を通す、そのぐらい本来考えるべきなんだろうと思うんですよ。それを公共事業としてしっかりやる、社会インフラとしてしっかりやるということが必要なんじゃないかと思うんですよ。それは、社会インフラとしてしっかりやるとすれば公共事業ですよ。公共事業として実施をするということを考えられませんか。それをこの道州制特区法案の中でしっかり盛り込んでいくということ、総理の考え方はいかがでしょうか、この考え方。

安倍内閣総理大臣 道州制特区法案が成立をいたしました。この道州制特区法案を生かして、北海道の発展を我々国としてもサポートしていきたいし、その方向で努力をしていきたい、こう考えております。

 新幹線については、整備新幹線のあり方については、もう既に政府としての考え方は述べているとおりであります。その中で我々は進めていきたいと思っております。

荒井委員 かつて私は地下鉄予算を公共事業の予算に組み込んだことがあるんですけれども、北海道の場合には、私は、整備新幹線というのは公共事業としてやるだけの意味もあるし、あるいはそれだけの財源の措置も出てくるんではないかというふうに思います。

 以上、私の考え方を発表いたしまして、終えさせていただきます。ありがとうございました。

金子委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょう午前中、トップで菅代表代行が格差の問題を中心に質問されました。私も、格差や経済の問題を中心に、四十五分間という限られた時間ですが、安倍総理の御見解をお聞きしたいと思います。

 まず最初にお聞きをしたいと思いますが、所得税の定率減税を廃止することになっております。ことしの六月から一・七兆円の負担増が始まるわけですが、これは恒久的減税の一環として行われたものであって、経済の状況が変わったのでもとに戻すんだという説明をされていると思います。

 恒久的という言葉は、経済の状況が変わればもとに戻すという意味ではないと私は思っておりますが、それはさておいたとしても、一方で、法人税もその恒久的減税の名のもとに減税がなされたわけですね。法人税率を変えました。その法人税の税率を三四・五%から三〇%に下げたわけですが、そこはそのまま据え置いて、そして、加えて設備投資に対する法人税の減税までして、そして、個人の所得税は当然のように増税をしている。やはり国民感情として、そのことに対して割り切れないものを多くの国民が感じていると思います。

 どうしてそういう形で、両方廃止するというならわかりますよ、一方はさらに減税して、法人税の方ですね、所得税の方は当然のように戻すのか。そのことについて納得のいく説明を総理に求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 詳しくは財務大臣からお答えをいたしますが、いわば定率減税について、当時の小渕総理が恒久的という言葉を使われたのは、これは一年限りでなく、期限を定めないで制度改正を行い、その後特に法律改正を行わない限り継続していくという趣旨で、継続的な減税、こう表現をしたわけでありますが、しかし、そもそもその趣旨としては、大変経済が厳しい状況であったので、経済がある程度回復するまでは、こういう趣旨で導入されたということにおいては、これは当時の小渕総理もそういうお考えであったということは間違いがない、こう思うわけであります。

 景気の状況もやっと回復傾向に至った中にあっては、この定率減税を廃止するというのは当然のことであろう、このように思うわけでございます。

 そしてさらに、法人税については、減価償却についての法人税の見直しを行ったわけでありますが、やはり今、世界の中で競争力を高めていかなければいけない、そして投資も引き入れて、引き込んでいかなければいけないという中にあっては、当然そうした投資が活発に行われるようにするためにも、我々はこの法人税の減税を行った、こういうことでございます。

 詳しくは財務大臣がお答えいたします。

岡田委員 私が聞きましたのは、恒久的減税ということで、今の総理の恒久的減税の説明は私は納得しませんが、それは今回、横に置きます。本来の問題ではありません。私が聞きたいことではありません。

 一方で所得税については、恒久的減税という中で所得税と法人税をやったわけです、パッケージで。所得税については当然のようにもとに戻し、法人税については、それを戻さないばかりかさらに減税するという、そのことが納得できないと申し上げているわけです。納得のいく説明を求めたいと思います。

尾身国務大臣 ただいま総理から説明ございましたが、八年前の小渕政権のときに、いわゆる定率減税を実施いたしました。そのときは消費がマイナスになっていて、一・七%ぐらいのマイナスになっておりましたし、経済全体もマイナス成長ということでございました。雇用状況も非常に厳しい状況でございました。かつ、金融面でも不良債権の問題が深刻化しておりまして、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が相次いで破綻をするという日本経済にとって極めて厳しい状況でございました。

 この状況に対応して、臨時異例の措置として定率減税をしようということになりまして、一九九九年、平成十一年から、所得税につきましては、税額の二〇%を減税する、二十五万円を限度とする、住民税については、税額の一五%を控除して四万円を限度とするということを決めたわけであります。

 しかし、その後、経済が順調に回復する中で、例えば昨年の経済見通しも、二〇〇六年一・八%という増加になりました。それから、名目成長率も、かつてのあの時期には一・八%減とマイナスでございましたのが、二・〇%の増加を見込みというふうに大幅に改善をされております。雇用情勢についても、いわゆる有効求人倍率が低かった、〇・五であったのが、一・〇八にまで上がってきております。それから、不良債権の比率も、かつては六・一%でございましたのが、一・五%まで低下をして、いわゆる不良債権問題はほとんど解決した、こういうことになっております。

 こういう経済情勢の中で、定率減税を二回に分けてもとに戻すわけでありまして、これは増税とは全く異なるものであると我々は考えている次第でございます。

 法人税の問題につきましては、日本の法人税は、全体の税率が大体四〇%で、アメリカ、ドイツと比べて世界一高い、この二つと並んで世界一高いという状況であります。

 経済がグローバル化をいたします。あらゆる世界じゅうの企業が、どこの国に生産活動の拠点、経済活動の拠点を移すかということを企業が選ぶ時代になりました。企業が国を選ぶ時代になりました。そういう時代になったときに、日本という国が企業活動にとってプラスになるような、有利になるような条件にしなければならない。少なくともマイナスでないような、イコールフッティングの条件を整えなければならないと考えております。

 そういう観点から見ると、減価償却については、ほとんどの国が一〇〇%まで償却できる、日本だけが九五%までしか償却できないということでございまして、その点、世界並み、ほかの国並みに一〇〇%まで償却できるという制度に、イコールフッティングの制度に直したわけでございます。これは、大企業だけではありませんで、中小企業も直しまして、経済全体の体質を改善する、少なくとも国際的にイコールフッティングにするという考え方で行ったわけであります。

 したがって、これは、しかも減価償却でありますから、最終的には増収減収ゼロでございまして、減税をしたということには当たらないと考えておりまして、むしろ、経済活動を活性化するという意味ではこういう改革が必要であるというふうに考えております。

岡田委員 聞いていないことを長々とお答えになったわけですが、今おっしゃったような法人税の問題、国際的な比較の問題、そういう議論があることは私もわかります。だけれども、本来、税制の全体の見直しは、あなたたちはことしの秋からやるんだとおっしゃっているんじゃないですか。そのときに、法人税も、所得税も、あるいは消費税初めそのほかの税金も含めて全体をこうするという絵を示した上で法人税を減税するというならわかりますよ。なぜ、つまみ食い的にここだけ減税をし、そして一方で所得税を増税するのか。

 今、日本経済、輸出と設備投資はそれなりに好調だ。だけれども、消費に本当にそれがきちんと波及していくかどうかが問われているときに、これだけ消費を冷やすことをしているということが私にはわからない。

 私は思うんですけれども、安倍さんは、いろいろな方のお話を聞かれると思うけれども、経済財政諮問会議の関係もあるんでしょうけれども、経済界の声、特に輸出関連の製造業のトップの声を聞き過ぎているんじゃないですか。もっと国民の声をしっかり聞く必要があるんじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 当然、私は国民の声を聞いています。経済財政諮問会議には、それぞれ民間議員が、その方々の見識を買われて議員に就任をしていただいているわけであります。他方、実際にいろいろな困難を抱えている国民の声も、私も、できる限りお伺いをしようということで、できる限り地方にも足を延ばしていろいろなお話を伺っているわけであります。

 しかし、日本全体としては、景気は回復をしているわけであります。それはもう間違いがないことであります。そして、先ほど、午前中の議論でも申し上げましたように、やっと雇用においても明るい兆しが見えてきました。高卒、大卒の就職内定率も上がってきました。初任給においても、上げていこうという動きが出てきた。

 ですから、私たちは、さらに新経済成長戦略を前に進めながら、景気の拡大、そして成長を目指していきたいと思っております。

岡田委員 所得税の定率減税をやめる、六月から一・七兆円、住民税と合わせて負担増になるわけですが、このことに関してはもう一つ言わなきゃいけないことがあります。それは、公約違反という問題です。

 特に、武部幹事長、安倍さんはそのもとで幹事長代理をしておられたと思いますが、都議会議員選挙あるいは総選挙、サラリーマン増税をしないと何回もそのことを主張された。しかし、総選挙が終わったら、定率減税を全部廃止するということを決められた。これはどう考えても約束違反、公約違反だと思いますが、安倍さんはどう考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 いわゆるサラリーマン減税というのは、被用者の、所得をすべて把握している人たちを、これはこの人たちから税金を取りやすいということで、この人たちを目がけて増税を行うことを我々はサラリーマン増税、このように申し上げているわけであります。

 定率減税については、すべての方々、自営業者の方々も当然入っておられますから、これはサラリーマン増税とは言えないと思います。

岡田委員 今の御説明は小泉総理と同じ御説明なんですが、しかし、所得税の納税者のどれだけが給与所得者、つまりサラリーマンだと安倍さんはお思いですか。

尾身国務大臣 この税を考えるときは、私は、税の国際比較というのをする必要があると思っております。

岡田委員 質問に答えてくれよ。そんなこと聞いていないよ、全然。全く答えていない。質問に答えなさい、質問に。何割かと聞いているんだよ。

 安倍総理も、そして財務大臣も御存じないようですから申し上げますが、九割が給与所得者です、所得税納税者の九割なんですよ。ですから、サラリーマン増税しないと言ったら、九割の人に増税しないと約束したわけです。しかし、残りの一割があるから全体を増税したって構わないんだ。これは明らかに公約違反なんですよ。そういう不誠実なやり方がまかり通るというのは、私は見過ごせないんですね。

 やはり、マニフェスト選挙、しっかり国民に政策を約束してやる選挙、それが簡単に破られてしまう。例の復党問題も同じですよ。郵政民営化に反対するような人はこれは古い自民党だといって追い出しておいて、一年たったらまた戻す。そういった簡単な公約破り、そういったことを安倍さんはこれからも行われるつもりですか。

安倍内閣総理大臣 それは、働いている方の九割近く、八割強という事務方の話でありましたが、大体九割とすれば、しかし、私が申し上げているこのサラリーマン増税というのは、所得を把握しやすいからといってその人たちに増税をすることはしないということであって、今岡田委員がおっしゃった言い方で言えば、働いている人の中の例えば九割がそうであるならば、では、例えば消費税であれば、その九割がそうだからといって、ではサラリーマンだけにかける税金かということになるわけでありまして、ですから、私が申し上げているのは、所得が把握しやすいからといってサラリーマン、被用者に……(発言する者あり)場外の方は静かにしていただけますか、雑音ですから。いわば所得を把握しやすいからサラリーマンを目がけて増税するようなことはやらない、そういうサラリーマン増税は私たちはしないとお約束をしたわけであります。(発言する者あり)

金子委員長 委員外の皆さん、やじを気をつけてください。

岡田委員 安倍総理、当時は幹事長代理ですが、安倍幹事長代理が今のようなお話を選挙のときにきちんとしていれば問題ないですよ。全くしていないんですね。サラリーマン増税しないと言われれば、サラリーマンは増税なしだと当然思いますよ。

 そのことをまず御指摘申し上げ、さて、安倍総理にちょっとお聞きしたいんですが、安倍総理は、代表質問に対する答弁の中で、二極化の問題、格差の問題について、過去の景気回復局面を見ても、経済の拡大に伴い、賃金も上昇している、今後とも、労働市場がタイトになることを通じて、賃金が上昇することを期待したい、こういうふうに答弁されていると思います。きょうも、わざわざ一九六〇年代の下村・都留論争まで引用されて菅さんにお答えになっていました。

 しかし、私、基本的認識が誤っていると思っているんです。つまり、もちろん経済成長していけば一定の雇用改善は当然あります。しかし、今、これは日本だけではなくてアメリカやヨーロッパの国々がここ十年ぐらい、日本は最近かもしれませんが、直面しているのは、経済成長をしても、あるいは繁栄する中で、それについていけない、そういう人たちが大量に発生するという二極化の問題なんです。ですから、経済成長をすればそういう問題が、格差の問題が当然解決する、そう考えるのは基本的認識が間違っていると思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今の質問にお答えをする前に、我が党の公約について申し上げますと、サラリーマン増税についてですが、その公約においては、所得が捕捉しやすいサラリーマン増税を行うという考え方はとらない、これはちゃんと、所得が捕捉しやすいということが書いてありますから、そういう意味でのサラリーマン増税は行わないという説明をちゃんと公約でしているということは申し上げておきたい、このように思います。

 その上で、先ほどの質問にお答えをさせていただきたい、このように思うわけでありますが、成長をすることによって、そして、それによって景気を拡大していくことによって、この景気の果実、まさに成長の果実を家計にも広げていく、あるいはまた、雇用の拡大、非正規雇用者の方々にも正規雇用者への道を開いていくことにつながっていく、成長によってですね。そういうメカニズムは私は今も変わらない、このように思っているわけでございまして、私どもといたしましては、さらに新経済成長戦略を進めていきたい。

 しかし、それだけではなくて、こうしたいわば、今岡田委員は、二層化している、このように表現をされたわけでございますが、なかなかチャンスを生かせない方々あるいはチャンスそのものになかなか恵まれないという方々に対して、例えば、パートで頑張っていて正規雇用になりたい、不平等であるということを感じている方々がいるのであれば、均衡待遇を我々は目指していくという中において、パートタイム労働法を改正していくわけでありますし、また、最低賃金も四十年ぶりの改革を行っていかなければならないと考えておりますし、何度でもチャンスのある社会にしていきたい、そういうチャンスをとらえて頑張ろうという人たちにはチャンスがある社会にしていくための政策を行ってまいる次第であります。

 また、人材の育成を図っていく。そしてまた、就労の促進、生産性の低い中小企業に対して生産性の向上を図るための支援も行ってまいりたい。

 我々は、そのように二極に分かれないような政策もしっかりと打っていきたい。と同時に、当然、経済成長をこれは目指していくということは、こうした格差において、経済を下支えしている人たちの基盤を強化、そして上昇させていくことにつながっていく、このように思います。

岡田委員 ここは基本認識のところ、やはり安倍総理と私の間で大分違うと思うんです。ここの認識をしっかり持たないと政策を誤ります。

 つまり、アメリカがまずスタートだと思いますけれども、アメリカあるいはヨーロッパ、日本、それぞれの国々が直面していること、ロバート・ライシュというハーバードの先生が「勝者の代償」という本を書いたのはもう十年以上前のことだと記憶していますけれども、結局、繁栄の中でそれに乗り切れない人たちがいる。一つは、そのときに言われたのも、きょう菅さんも言いましたけれども、情報技術の発展、それに乗れる人と乗れない人が出てくる。もう一つは、経済のグローバル化、常に賃金については下押し圧力がかかる。そういう今までにない新しい事態に先進国は直面していて、それをどう乗り越えていくかということが政治の大きな課題のはずなんです。

 その基本的認識を欠いて、いや従来と同じだ、六〇年代はこうだった、そういう認識では、私は対策を誤ると思う。そこの認識はどうなんでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いや、ですから、我々は対策を誤っていないんですよ。まさに正しい対策をやっている、このように思いますよ。

 今、ITを中心に第三の産業革命が起こっていて、こうした技術を身につけることができるかどうか、そういう機会があるかないか、これが大きな差をつけるという認識は、当然我々も持っています。そしてまた、例えば、仕事をしながらさらに研修、職業訓練をして、そういうチャンスがある人はキャリアアップをしていく、そういうチャンスがない人はなかなかそういう望みがないというのも事実であります。

 だからこそ、例えば中小企業においては、あるいはまたパートタイム、非正規の方々はそういう研修をする機会が恵まれていない、ですから、そういう方々には研修をする機会を我々は提供、確保していかなければならないと考えています。その場を活用して、まさにそうした情報を入れ、また技術を身につけ、未来を見詰めていくことができるようになっていく、このように思うわけでありまして、人材全体の底上げを図っていくことは私は十分に可能ではないか。

 いずれにせよ、成長していかなければ果実が生まれてこないのも事実であります。全体的に成長していきながら、だれも後ろに置いていかないということが大切ではないか、このように私は思います。

岡田委員 安倍さんは、底上げ、底上げ、底上げ戦略と言われますが、私に言わせれば、そのバケツの底が抜けているわけです。先ほども言われました、非正規から正規へと希望する人にはその願いがかなうようにしたい、こう言われましたね。それでは、そこはどうなんでしょうか。本当に簡単に非正規から正規に行けるのか。むしろ今の制度は、非正規の働き方がふえるようなやり方になっているんじゃありませんか。

 平成十五年に、製造業の現場に派遣労働を認めると法改正しました、我々は反対しましたけれども。それから製造の現場もかなり変わりました。もちろん、その当時、失業がふえる中で、そういったことが必要だという声も、私は全く理解できないわけではない。反対しましたけれども、理解できないわけではない。しかし、今、経済が大分変わってきた中で、これ以上そういった規制の緩和をするのは間違いだと思うんです。

 経済財政諮問会議の中でも意見が出ていますよね。いろいろな偽装請負について今摘発が進んでいますけれども、そういうものを合法化してもらいたいという声もある。それから、三年間派遣をしたら正社員にする、そういう三年間を外して、永久に派遣で働けるようにすべきだという声も経済財政諮問会議の中で出ている。

 そういうふうにして、どんどんどんどん緩めて、これ以上緩めていったら、本当に穴のあいたバケツの底になって、そして、コストを全体を抑えなきゃいけないと経済界はそれは当然考えますよ。そういう中で、政治がしっかりそれを押し戻すような制度改革をしていない限り、この二極化というのはどんどん進んでいくと私は思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ですから、先ほど私が申し上げましたように、パートで働いている方と正社員の方々の均衡待遇を我々は目指していかなければいけない。そしてまた、パートで働いている人、あるいはいわゆる非正規の方々が正規雇用になりたいということであれば、その道を開くべく、いろいろな仕組みを考えていかなければいけないと思っています。また、パートの方々が厚生年金に入りたい、社会保険制度の中に入りたいということであれば、その道をちゃんと私たちは確保していくことも考えています。

 その中で、この労働関係の法律について、我々は六本法律を出しているわけであります。また、最低賃金も約六十年ぶりに今度は改めるわけでございます。そして、今委員が御指摘になったように、派遣を三年雇ったら正規雇用の申し出をしなければならないということについては、我々は、それをなくしたり長くしたりという考え方は今のところ全く持っていないということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 今、総理は、その三年間を取ることは考えていないとおっしゃったわけですが、請負についても、これの要件緩和、今偽装請負として摘発されているようなことが合法化するような、そういう制度改正もぜひしないということを、総理、しっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 総理もお忙しいとは思いますけれども、ぜひ現場もしっかり見ていただきたいと思います。私も、幹事長、代表の時代はなかなか、通り一遍の視察しかできませんでしたけれども、今、少し腰を据えて、いろいろな物づくりの現場なども、地元も含めていろいろ見させていただいています。やはり三、四年前と比べてさま変わりです。それは、三年、四年前も、パートで働いている、例えば子育てが終わった、そういう女性たちが製造の現場で働いているということはありました。しかし、今は、派遣で働いている人たちはもっと若い人たちなんですね。本来、正社員になっていてもおかしくない人たちが派遣でたくさん働いているという現実、そして、アパートを借りて住んでいて、言われたら全然違うところにまた行かなければいけない。非常に不安定で、結婚もできないし子供もできないという人が本当にたくさんいるということをわかってもらいたいと思うんです。

 そしてもう一つは、やはり外国人です。

 これは、きょうはもう余り詳しい質問はしませんけれども、また別の機会にしたいと思いますが、外国人もすごくふえた。もちろん、それなしでやっていけないという現実もあることもわかる。しかし、これはやはりきちんとしたたがをはめていかないと、例えば私の地元では、四月から、ある小学校では半分以上が外国人、そういう学校が出てきます。学校に行く子はまだいいんです。学校に行っていない子供たちがたくさんいる。こういう人たちが、将来、義務教育も受けずに定住化したらどうなるんでしょうか。

 そういったことに対して、私は政治が非常におくれていると思うんです。ある意味での究極の二極化になっちゃうんですよ。だから、そういうことに正面からしっかりと取り組んでいただきたい、そういうふうに考えております。

 そこで、ちょっと経済の問題に移りたいと思いますが、一年前、総理も官房長官として御参加だったわけですが、「改革と展望」で、二〇一一年の実質成長率を一・七、名目成長率を三・二と、これはうまくいったケースですけれども、お決めになりました。ところが、安倍総理が誕生してから、「進路と戦略」の中では、実質成長率が一・七から二・五に、名目成長率が三・二から三・九にと、実質、名目ともに〇・七から〇・八、一年間で急に上がったわけですね、二〇一一年ですが、数字が。これはなかなか納得しがたいというか、どうしてなんだろうと素朴にそう思いますが、総理、どうして一年でこんなにさま変わりするんですか。

大田国務大臣 参考試算を担当した者としてお答えいたします。

 「改革と展望」二〇〇五年改定に比べて、次の二つの点が成長率の違いをもたらしております。

 一つは、昨年七月の経済成長戦略大綱、それから、ことし四月に策定いたします生産性加速プログラム、こういった成長力強化を最重要課題と位置づけ推進していることを反映しまして、生産性が向上する、それによって、潜在成長率が上昇し、実質成長率が上がるというシナリオを見込んでおります。

 それから二番目、もう一つございます。労働力の人口が減少いたしますと、これは成長の下押し要因になりますが、複線型でフェアな働き方を実現させることによって、この下押し圧力が緩和されると見込んでおります。

 この二つの点が主に違いますが、今回の試算におきましても、政策の効果が十分に発現しない場合、あるいは外的な経済環境が悪化する場合、この成長制約シナリオもあわせて描いてお示ししております。

岡田委員 今の御説明でも、四月に生産性加速プログラムをまとめる、これは総理も施政方針演説の中で言われました。これからまとめるものが、何で数字ではもう出ちゃっているんですか。中身がまだないのにどうして数字だけ上がるのか、非常に不思議な感じがするんですね。ですから、内閣がかわれば考え方が変わるというのはわかりますよ。だけれども、安倍さんは、今は総理だ、しかし、一年前も官房長官で中心メンバーの一人だったわけですよ。同じ人間が中心になってやっていながら一年でこれだけ数字が上がるというのは、私は政府の数字のその信頼性を問われることになると思いますが、総理、いかがですか。

大田国務大臣 信頼性を問われるとおっしゃられると答えざるを得ませんので、お答えさせていただきます。

 成長力強化のための政策がとられることで、供給能力をあらわす潜在成長率が高まります。これが、二〇〇六年度一・六から二〇一一年度二・四%まで高まると見ております。

 この背景を御説明いたします。(岡田委員「いや、もういいです」と呼ぶ)

 潜在成長率は、資本と労働と生産性上昇で説明されます。まず、生産性につきましては、第一に、グローバル化と、それを生かす国内市場改革……

金子委員長 なるべく簡単にしてください。

大田国務大臣 はい。それからITの本格活用、これによって〇・六%ポイント高まると推計しております。これに労働力減少の下押し圧力が加わる。これが、毎年平均〇・二%から〇・三%見込んでおります。

安倍内閣総理大臣 小泉内閣から私の内閣にかわって、そして新たに、経済財政政策担当は大田大臣が担当大臣として就任をしたわけであります。そして、ただいまその大田大臣から数値についても申し上げたわけでありますが、そして、それを算定の基盤として、私どもが「進路と戦略」でお示しをした成長シナリオをお示ししたわけでございます。

岡田委員 ですから、具体的にとる政策の中身が明らかであれば、そういう説明もわかるんです。それを、四月までにまとめる、つまり、今はないと言いながら数字だけ上げるから、私たちはわからないと言っているんです。ですから、そういうのを聞いていますと、上げ潮路線とかあるいは底上げ戦略とか言いますが、私に言わせれば、これは底上げ戦略じゃなくて上げ底戦略ですよ。数字だけ勝手につくっている、中身はない。

 そして、その数字の中で、一つは、それだけ数字が上がっていくから雇用の問題も改善していくという仮定に立っている。そしてもう一つは、財政もそれでプライマリー黒字が二〇一一年に、うまくいけば見込めるという仮定に立っている。私はそこにすごく大きな懸念を感じるわけです。

 特に財政の問題は、私は安倍内閣が取り組むべき最大の課題だと思う。今でもそれは変わっていないはずです。経済がよくなってきたときに、ここでしっかりと、経済がよくなってきたのならそれだけ歳出削減もやりやすいわけですから、よりしっかりと歳出削減をやっていくのか、それとも、ここで緩んでしまうのか。

 今回の安倍内閣の予算案を見ておりますと、それは歳出削減も私は十分だとは思いませんが、しかし、それは一応たがを小泉内閣のときにはめられた。しかし、そういう中で、それをバイパスする形でやられたのは私は減税だと思うんです。法人税の減税、中小企業に対する減税、これは歳出の増になりませんから、そういう形で、結局、歳入がふえた分を還元して、もっと歳出削減ができたのに、それをやらなかったということになると私は思っております。そういったことが続いていくと、これはもう最後のチャンスですからね、財政を立て直す、次の世代のために責任を果たす。そのことをぜひしっかり安倍さんにやっていただきたいというふうに思っております。

 そこで、具体的にお聞きをしたいと思いますけれども、歳出削減をよりしっかりやっていくという観点で見ると、公務員の人件費とか公共事業、こういったものは政府の意思でできますから。経済成長ができるかどうかは、最後はこれは政府の手を離れます。経済は生き物です。だけれども、歳出削減は政府の意思でできることですから、それをしっかりやっていただきたいと思うんです。

 公共事業についてお聞きしたいと思いますが、実は公共事業については、昨年四月の段階で、経済財政諮問会議で、一たんは二〇一一年度まで毎年三%ずつ削減するということが合意されました。しかし、その後、主として、報道によれば、参議院自民党から異論が出て、選挙もあるじゃないか、結局一から三%という形で異例の修正をした、こういうことであります。

 ことしもう一度骨太方針をまとめられるということですが、そういう中で、もう一度、公共事業の削減、毎年三%というふうに戻すおつもりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 公共事業については、構造改革をスタートして以来、我々、もう約半分にしてきた、このように自負をしております。これは大変な困難であったわけでありますが、我々は、構造改革を進めた結果、大幅に公共事業を圧縮したわけであります。

 「進路と戦略」の参考試算において、基本方針二〇〇六で示された歳出改革の内容に基づきまして、公共投資の毎年度三%削減など全体で十四・三兆円の削減に対応するケースと、そして、公共投資の毎年度一%削減など全体で十一・四兆円の削減に対応するケースについて試算が行われておりますが、後者の場合は、歳出削減のみでは国と地方を合わせた基礎的財政収支は赤字となる結果になっているものでございます。これはもう委員も御承知のとおりなんだろうと思います。

 公共投資の削減については、基本方針二〇〇六において、今後とも重点化、効率化を徹底し、これまでの改革努力を基本的に継続することとしておりまして、その際、今後の資材価格や賃金の状況等を考慮する必要があることから、毎年度の削減率は幅を持たせているわけでございます。いわば、今まではデフレ下における歳出の削減であったわけでありますが、デフレを脱却した後は、このように多少幅を持たせなければ、資材また人件費が上がっていくことも十分にあり得る、このように考えたところでございます。

 いずれにせよ、まずは二〇一一年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することが重要であります。国民負担の最小化を第一の目標に、その時々の経済社会情勢に配慮をしながら、今後とも基本方針二〇〇六に沿って歳出改革を計画的に実施して、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保して将来世代への負担の先送りを行わないようにしていかなければならない、これが基本的な考え方でございます。

岡田委員 今総理も御自身お認めになったように、毎年一%の公共事業費の削減では、我々から見れば、私から見れば、非常に楽観的な成長を遂げた、そういうケースであっても、二〇一一年に基礎的財政収支は黒字にならないんです。三%カットしたら黒字になるんですよ。そして、黒字にならないということは、総理も今おっしゃったように、別の財源措置、つまり増税をするということです。

 ですから、増税を避けるためにも、ここは公共事業を三%削減する、そういう内閣の方針をきちんとおまとめになるべきじゃありませんか。逆に言うと、一%でいくということは、どんなに楽観的に見たって増税するということをはっきり国民の皆さんに示すことになりますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 我々、三%から一%まで幅を持たせましたのは、先ほど申し上げましたように、今までの歳出削減の中においては、まさにこれはデフレ下で行っていた、これからはデフレを脱却するということを目指しているわけでありますが、賃金やまた資材が上昇している中において、いわば必要な公共事業を確保することができるかどうかということも考えなければならないわけでありまして、それなりの幅も持たせているということでございます。

岡田委員 小泉内閣で公共事業の予算が半分になった、それは、異常に高かったものが半分ぐらいに減ってきたけれども、それでも国際的に見るとまだ高いんですね。しかし、デフレ下でも公共事業を減らしてきた。では、経済が立ち直ってきたんなら公共事業をさらに減らせるはずじゃありませんか。そして、国際的な水準に持っていくことができるはずじゃありませんか。

 総理もそう思うからこそ、昨年の四月に一たんは経済財政諮問会議、みずからもメンバーですけれども、そこで毎年三%削減するということに合意されたんじゃありませんか。それが参議院から横やりが入って一から三に変えた。総理なんですから、やはり三と総理がおっしゃれば三になりますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、私が先ほど説明しているように、これは何も景気対策的に公共事業をやろうとしているのではないわけでありまして、今でも地方はもっと公共事業をやってもらいたいという声はたくさんあります。しかし、その中でも我々は、財政を再建しなければならないから、公共事業を減らしていくという目標を持っているわけでございます。

 来年度の予算についても補正予算についても、我々、財政規律を守っていくという意思を表明した予算であったということを私は自負しているところでございますが、そこで幅を持たせたということについては、これから労賃が上がっていったり、あるいは資材がどんどん上がっていくということも考えなければいけません。そういう中で、やみくもに三%、絶対これは決め打ちということは自信を持って言えないという状況であります。ですから、幅を持たせていますが、いずれにせよ、公共事業は減らしていく、この意思には変わりはないということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 この問題はこれで終わりますけれども、ただ総理、やはり参議院に弱過ぎますよ。総理も一度は決めたんですから、官房長官のときに。しっかりとそこは総理としてのリーダーシップを発揮すべきだ、そのことを申し上げておきたいと思います。

 最後、五分間、ちょっと核の問題、特にインドの核の問題について、少し総理の見解をただしておきたいと思います。

 先般、シン首相も来られて、いろいろな議論を総理とされたと思いますが、アメリカとインドの間の、米印の原子力協定、これについて記者会見で問われて、総理は、まだ日本政府の態度は決まっていない、こう言われました。私は、これは絶対に簡単に認めてはならない話だ、こういうふうに思っているんです。つまり、これは結局、今までの国際的なルールに反して核を持ったインド、もちろんパキスタンもそうですけれども、そこに対して、それを是として認めて、そして一定の核燃料を供給していくということです。

 今でもインドは五十発、六十発ぐらいの核を持っているのではないかという話もありますが、そういう形でアメリカが核燃料を一定の民間の原子力発電に供給することで、インド自身が自家生産する核燃料、それを核兵器の生産に充てることができる。恐らくインドが百発、二百発の核兵器を持つのは時間の問題になってしまうだろう、こういう議論もあるんです。

 つまり、今までの五つの国が核を持ってきた時代から、インドを含めた大きな六つの核大国が出てくる、そういう瀬戸際に今あるんだという基本認識、総理、お持ちですか。

安倍内閣総理大臣 日本が今まで核の不拡散また核不拡散体制の維持強化に力を注いできたのは、これは委員も御承知のとおりであろう、このように思います。

 インドにつきましては、インドの戦略的な重要性、同国において増大するエネルギー需要を手当てする必要性ということについては私も理解をしているわけでありますが、同時に、NPTに加入していないインドへの原子力協力については、国際的な核軍縮、不拡散体制への影響等を注意深く検討する必要がある、このように思います。

 以上の点を考慮しながら、今後とも、本件に関する国際的な議論の場に積極的に参加をしていく考えであります。

岡田委員 総理の御発言で、何回も私は気になっているんですけれども、インドの戦略的な重要性というのは具体的にどういったことなんでしょうか。

 よく言われているのは、こういうことですよ。一つは、アジアに核大国は一つより二つの方がいい、戦略バランスから考えてその方がいい。アメリカの中にはそういう声はある。しかし、これは日本にとっては、今までの政策とは全く違う政策ですね。もう一つは、経済的にインドは大事だ。これはわかります。だけれども、では経済が大事だったら核を持っていいのか、では北朝鮮やイランに対して日本はノーと言えるのか。

 そういったことに対してきちんと説明できる、そういう答弁を求めたいと思います。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、日本とインドでありますが、お互い、日本とインドは価値を共有していると思います。自由や民主主義、基本的な人権、法律の支配といった価値を共有している、これは間違いないことだろうと思います。そして、インドは極めて親日的な国である、これも間違いのないことではないか、こう思います。

 そして、今後インドはさらに発展をしていく国であります。人口もふえていきますし、目覚ましい台頭が期待されるであろう。我々はこのチャンスを生かしていかなければならない、こう考えています。

 そしてまた、インドはいわば安全保障上においても極めて重要な位置がある……(発言する者あり)済みません、ちょっと筆頭理事、静かにしていただけますか、しゃべりにくいので。極めて重要な位置を占めているわけでございます。

 そういう意味において、戦略的な重要性、これは私は否定する人はいないのではないか、こう思うわけでありまして、原子力の供給グループにおいて議論がなされるわけでありまして、その中において、日本もしっかりと他の国々とともに議論をしていかなければならないと考えております。

岡田委員 これは、戦後の核政策の大きな岐路です、今。総理の判断で、そこで全く今までと違う方向に行きかねないという重大な岐路に立っているということをしっかり認識してもらいたいと思います。

 原子力供給グループの話が出ました。ここでは全会一致が原則です。日本が反対したら、アメリカとインドの原子力協定はできません、基本的に。それだけのポジションに日本はあるということもしっかり踏まえていただいて、そして、核に対して、これは絶対に核の拡散を認めてはいけない、核のない世界を目指していくんだという日本の基本方針、外交の基本方針を総理の代で曲げてしまうことにならないように期待をして、強く期待をして、私の質問を終わりたいと思います。

金子委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 まず、外交問題につきまして、総理並びに防衛大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 現在進行形で北京で六カ国協議が今行われております。中国、議長国でありますが、最終合意案というものを出してきているということでございまして、現時点で、それを北朝鮮が受け入れるかどうかまだわからない、そして残りの五カ国はそれについては合意をしているということで、恐らく総理のお耳にもその点については入っているのではないかと思います。

 中身につきましては、議長国中国から提示された合意文書案というのは四点あります。

 一つは寧辺の核施設の稼働停止、それからIAEAの査察を受け入れ、寧辺以外の核施設を申告、これは北朝鮮に対してのオブリゲーションとしてこれを課すということ、そして、それを行った上で、二段階に分けてエネルギー支援を残りの五カ国でやっていくということで、ある程度それが動き出せば五カ国が重油計五万トン、そしてさらに進展が見られれば残りの九十五万トン、計百万トンの重油支援を行うということでございますが、総理に伺いたいのは、拉致問題の進展なくして支援なしということを午前中も答弁されましたけれども、この方針にいささかの変更もないのかどうなのか、その点について簡単にお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になった、拉致問題の進展がなければ我々は支援をしない、この方針には変わりがないということでございます。そしてまた、この私どもの方針については、六者会合に参加をしている国々、もちろん北朝鮮以外でありますが、この国々は私どもの立場をよく理解をしているということでございます。

前原委員 ということは、六カ国で合意をしたとしても、拉致の進展なくしては日本としてはこのエネルギー支援には踏み出さないということを今おっしゃったということでよろしいですか。確認だけです。

安倍内閣総理大臣 いわゆる私どもが支援をするということは行わないということでございます。

前原委員 これは私は、我が党の中でもそうだと思いますし、また政府・与党の中でもいろいろな意見が出てくると思います。

 少し大きな観点から私はこの北朝鮮の問題を議論させていただきたいわけでありますが、この北朝鮮の問題というのは、平和裏に、外交的に解決していかなくてはいけないと思っております。ただ、これが万が一暴発をするということになったときにどの国に一番被害が及ぶかということを、我々は安全保障の観点から真剣に考えなければいけないんだと思います。

 例えば、この六カ国協議に臨んでいる北朝鮮を除いた五カ国の中で、総理は、北朝鮮が暴発をすればどの国が最も危険にさらされると思われますか。

安倍内閣総理大臣 この暴発でございますが、暴発の定義として、例えば、軍事行動を起こして、一〇〇%間違いなくそれは成功に終わらずにみずからの国が滅んでしまう、または自分も含めて命を奪われてしまうという中にあっての暴発ということであれば、その可能性というのは極めて小さい、このように私は考えております。

 金正日委員長と小泉総理が首脳会談を行った際、私も同席をいたしたわけでございますが、金正日委員長は、金正日委員長の中においては合理的な判断ができるという人物ではないか、このように思ったような次第でありまして、北朝鮮が万が一武力に訴えた際には、これはもうかなり短い期間に金正日政権は崩壊するのは間違いがないであろう。果たしてそういう手段をとるかどうか、これは大変可能性が、もちろんゼロではありませんが、極めて低い、このように思います。

 その前提の上で答えれば、北朝鮮が持っているミサイル等々は基本的に日本をターゲットにしているものであるということにおいて言えば、もちろん、当然韓国が大変大きな被害を受けるわけでありますが、日本もかなり大きな被害を受ける可能性もある、このように考えております。

前原委員 暴発の定義は、それは万が一のことですから、細かく議論しても仕方がないというふうに思っております。

 しかし、最悪の事態を考えるのが防衛でありまして、それに対して巨額のミサイル防衛だって日本は計上しているわけであって、それについて我々も賛同しているわけであります。それは、与党、野党関係ないわけです。つまりは、日本が北朝鮮の攻撃にさらされる可能性はゼロではないし、先ほど申し上げたように、総理は韓国もその可能性があるとおっしゃった、それはあるかもしれません。

 ただ、私は、例えば核を使うことになったときに、同胞に対して使うかどうか。一番北朝鮮が今敵視をしているのはアメリカと日本でありまして、そういう意味においては、アメリカには、それは工作員が持っていって、それで核を使うということがあるかもしれないけれども、ミサイルは少なくとも届かない。ミサイルは、二百発以上のノドンミサイルというものが日本を射程に置いている。そして、この間、核実験が行われたというふうに言われている。核を持っている、核兵器を持っているという前提に立って物事を考えざるを得ない。そのときに、私は、核とミサイルが結びついた形で最も攻撃にさらされる可能性が高いのは日本だというふうに思っているわけです。

 その中で、この北朝鮮の核の問題というものを平和的に解決しようと思ったら、私は今二つのものしかないと思うんですね。一つは今行われている六者協議、もう一つは国連ですよ。一七一八という国連決議がまとめられて、そして各国がそれについての制裁に従うということになっているけれども、なかなか、百九十一カ国の中ですべてが制裁に乗っているわけではありません。五十カ国そこそこではないかという言われ方もしておりますが、少なくとも、国連という権威のあるところで決めたものについて、北朝鮮に対して制裁を一生懸命に協力してやっていく、このダブルトラックでいくしかないんだろうと思うんですね。

 その際に、拉致の問題が重要でないということを言っているわけではありません。しかし、万が一の暴発を考えたときに、果たして、六者協議で合意がされた、そして日本の立場というものを理解するようにほかの国に言ってある、しかし、ほかの国が重油を供給していくということが現実に生まれてくる中で、もし北朝鮮が暴発をすれば最も被害を受ける可能性のある日本が、拉致問題があるからといってそれに参加をしないことは本当に国益にかなうんでしょうか。

 私は、この拉致問題があるということは極めて大事。これは私、安倍政権になってから、かなりハードルを上げていっていると思うんですよ。安倍さんがなぜ人気が出たかというと、この拉致問題がスタートですから、拉致問題に対して極めてこだわりを持ってやってこられたということは敬意を表します。しかし、この核の問題、ミサイルの問題、そして現実的な六者協議という外交の場でこういった議論がなされている中で、拉致の問題があるから我々は合意したってやりませんよということが果たして日本の国益にかなうと思われますか。

安倍内閣総理大臣 今まさに最終的に協議が詰めの段階でございますから、中身については余り私は申し上げることはできないわけでございますが、この核の問題について、日本にとっては、運搬手段を持っているということにつきましては、安全保障上極めて重大な問題、こう認識をしておりますし、北朝鮮に核の放棄に向けて具体的な行動をとらせなければいけない、その必要性を最も感じているのは日本であり、私もそうであります。だからこそ、この六者会合が開催されるべく、我々も実はいろいろな努力もしてまいりました。

 そして今般、六者会合が開かれたわけでありまして、そして、合意に向けて進んでいる上においても日本はそれなりの役割を果たしています。それなりの役割を果たしている。合意のまとまっていく過程においても日本はいろいろな役割を果たしているということは申し上げておきたい、このように思います。

 そこで、この問題について、では、日本が重油を供給していかなければまとまらないかといえば、まとまらないことはないんです。我々が供給をしなくてもまとまるということについて、そういうスキームをつくっていくことにおいて了解をとることができたわけであります。それは外交努力の結果と言ってもいい、このように思います。一切そういう外交努力もしなくて、日本は知りませんよという態度であれば、確かにそれは、その態度は日本の国益を損なうと思います。

 しかし、私たちは、拉致問題の重要性について各国に働きかけをして、説明をして、私たちの立場は理解していただいています。それと同時に、この核の問題についても日本は北朝鮮に行動をとらせるために努力をしてきているということも、彼らも理解をしているところでございます。

 そういう中において、日本が今回重油を提供しないという枠組みの中で今物事は進んでいて、それは理解をされているということにおいては、何ら国益を損なっていることにはならない。

 そしてまた、北朝鮮側に拉致の問題の解決の重要性を認識させなければいけない。この問題を解決しなくても大丈夫だと彼らが思ってしまった瞬間に、もうこの問題は一歩も動かなくなるわけであります。そこを私たちは決して忘れてはいけないし、そこを放棄してはならない、これが私の考え方であります。

前原委員 外交的に政策決定の軽重というものをやはり判断する場面というのが私はあると思うんですね。例えば、拉致問題は極めて大事だ、拉致の問題解決なくしては日朝国交正常化はあり得ないし、例えば日本が独自で北朝鮮に対しての支援というものをやることはない、これはもう国民全員がコンセンサスとして得られる話だと私は思いますよ。

 ただ、先ほど申し上げたように、もしこの問題がうまく解決できなかったときに、どんどん北朝鮮が核開発を継続する可能性がある、それをとめなきゃいけない。そして、それに対しては、中国を議長国として各国が一生懸命外交努力をしている。

 私は、この外交問題、後でお話をする日米同盟関係についてはライフワークでやってきましたので、いろいろなアメリカの、総理とも人脈がかぶっている部分があると思いますけれども、どちらが大切なんだということをよく聞かれる。拉致の問題なのか、核の問題なのか。どちらも大切ですよ。どちらも大切だけれども、核の問題のマネジメントを間違えば、何十万、何百万という国民を被害に陥れる可能性がある、また、核のいわゆる環境破壊というものに何十年、何百年、ひょっとすればさらされる可能性もあるわけですね。

 その中にあって、外交問題で、この六者協議で合意を得るのに、それは日本の固有の問題、韓国も拉致問題があったとしても、日本の固有の問題を理解すると言ったとしても、それは私は、この六者協議の枠組みの中からどんどん日本が発言権を失っていく話になるのではないか。大きな枠の中で、これは後でお話ししますけれども、日米関係にも大きな影を落とすと私は思いますよ、これにこだわり過ぎていれば。だから、変えるなら早い方がいい。

 つまりは、拉致の問題も大切だけれども、六者協議の中で合意した重油支援というのはやりますと、そこは。そして、この拉致の問題を解決するに当たっては日朝で作業グループをつくる、そして、日朝国交正常化の前提としては拉致の全面解決以外はあり得ない、そして、日本がバイの関係の中で北朝鮮を支援することはあり得ない、そういうことでしっかりと拉致の問題に対してもメッセージが行くんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 私は、賢明な前原委員がなぜそういうことをおっしゃるのかわからない。

 もし今、交渉において、日本が重油を出さないということにおいてこの協議がとまってしまったということになれば、我々はそういう選択を迫られます。重油を供給するかどうかという選択を迫られるわけでありますが、しかし、私たちは、その前に、外交を展開した結果、米国とも緊密な連携を図っています。中国ともそうです。韓国だってそうですね。ロシアともそうです。その結果、日本の立場を理解してもらって、このスキームの中には日本は入らない。

 もちろん、しかし、例えば北朝鮮のエネルギー事情を調べる、エネルギー支援のために事情を調べるということについては、日本もそれは協力するかもしれない。重油は出しませんけれども、これを出すという、何かスキームの全体においての協力は日本もしてまいります。それはもちろん当然のことであろうし、そのことも期待をされている。

 しかし、日本が出さないということを今の段階では了解をされているわけでございます。それは日本の強い意思だということで先方に申し上げて、向こう側から了解をとっている状況にあっては、まさに北朝鮮に対して日本の援助、北朝鮮はやはり日本の援助をもらいたいと思っている、これは拉致問題を解決していくための大切なてこでありツールである限り、我々はそうたやすくこれを手放すわけにはいかないと考えております。

前原委員 私は、賢明だとおっしゃっていただいたので申し上げますが、トータルで考えた場合に、安倍さんが突き進もうとしていることは、私は日本にとっての利益にならないと思う。

 外交問題の中でこの問題を解決し、北朝鮮に最終的に核の放棄をさせる、これは日本だけではできないですよ。拉致の問題も、結果的には、北朝鮮に核の問題を含めて外交的な圧力を国際社会でかける中で一緒に連携していかざるを得ないし、その中にあっては、日本だけは了解されと言っているけれども、私は、この問題については現在進行形なのでこの程度にとどめますけれども、他国の評価がどういうものなのかということはおのずと明らかになるはずですから、そこは安倍政権の大きなマイナスの評価になるということも改めて申し上げておきたいと思います。

 その上で、もう一つ、日米の同盟関係というのは極めて重要でありますし、この六者協議の今までの数年間の紆余曲折を見ても、アメリカとの連携というものが極めて重要であったことは間違いありません。六者協議が二対四になっていたころもあるわけですね。アメリカと日本が孤立をして、そして北朝鮮の肩をロシアや中国や韓国が持つというような状況が生まれたときもありました。

 そういう意味では、この日米関係というのは極めて重要だというふうに思っておりますが、その中にあって、担当大臣が、麻生外務大臣そして久間防衛大臣が日米関係を損なうような発言をされている、このことについて私は極めて憂慮をしているわけであります。

 特に、久間大臣につきましては、おっしゃっている中身については我々が言ってきたことでありますので、その中身については批判をするつもりはない。

 例えば、アメリカのイラク攻撃は早まったのではないかという思いがそのときもしていたということをおっしゃっている、これは昨年の十二月。そしてことしの一月には、アメリカは、イラクに大量破壊兵器がさもあるかのように戦争に踏み切ったが、判断が間違っていたのではないか。中身は我々が主張していたとおりでありますから、それについては異論を挟むつもりはありません。

 しかし、政府は、いまだに懲りもせずに、イラクに対するアメリカによる攻撃というものが正しかったし、それに対する日本政府としての支援の表明というものは正しかったと言い続けているわけですよ。そうですね、総理。いまだに安倍総理も、小泉政権からずっと、イラクに対する攻撃は間違っていなかった、そしてアメリカが起こしたイラク戦争について支持する態度というのは間違っていなかった、正しかったんだという評価に変わりないですね。イエスかノーかだけで結構です。

安倍内閣総理大臣 あの段階で、国連決議に基づいてイラクをアメリカが攻撃をした、その攻撃については、そのときに大量破壊兵器を持っていた、そのことを持っていなかったと証明する機会がずっとあったにもかかわらず全くその証明をしなかった、そして累次にわたる国連決議を無視してきたという中においては、私は、やむを得なかったし、あの段階で日本は米国の武力行使を支持する、それについては当時は正当な理由があった、このように考えています。

 しかし、日本が武力行使を支援したことはありません。日本が支援をしたのは、まさに復興支援に対して支援をしたということでございます。

前原委員 久間大臣、今の総理の発言というものを聞かれた上で、御自身の発言は個人のものであったのか、大臣、閣僚としてのものであったのか、その点だけ御答弁ください。

久間国務大臣 あの当時の感想について記者会見で聞かれましたので、そのとおり私は答えました。そして、あの当時は私としては核兵器はないんじゃないかなという、そういう思いがあった。それを具体的に、前原委員にもあのときに電話で報告しましたが、イラク特措法の中に大量破壊兵器の処理というのが政府原案に入っておったけれども、それは我が党において、それは外そうということで官房長官にお願いして外すことになりましたという、そういう閣議決定する前に報告したこともございますから、あの当時の感想としては、その当時、そのままでありました。

 ただ、政府がイラクへの武力行使に米国が踏み切ったということを支持したというのを、それを私は閣議決定したということは知りませんでしたから、それは私の不明の至りだったということでそれを言ったわけであります。というのは、私は党の幹部はしておりましたけれども、そのときの閣議決定については党の総務会にはかかっておりませんでしたので、それで私はそれは知らなかったという自分の不明を恥じたわけでございます。

 しかし、私は閣外におりましたので、どういうような総合判断に基づいて閣議決定された、あるいはまた支持をするというふうに言われたかわかりませんけれども、先ほどから総理も答弁されておりますように、その当時の判断としては、政府の判断としてはそれは正しかったんだという、そういうようなことを一貫して姿勢をとっておりますから、今でもそれはそうなんだというふうに自分にも言い聞かせているところであります。

 ただ、今総理が言われましたように、イラクへの武力行使の戦争に日本が支援しているんじゃなくて、イラク特措法はあくまで、その後の国連からの要請に基づいて、いわゆる人道支援、復興支援と平和維持活動、これに対する支援を現在やっているわけでございますから、それは法律に基づいて、そのとおりでございます。

前原委員 その当時は閣外におられた、あるいは自民党の総務会のメンバーではなかった、知らなかったということをおっしゃっても、今は、十二月の発言は防衛庁長官のときの発言ですし、一月は防衛大臣になられた後の発言ですよね。つまりは、そのときにそのときの感想をおっしゃったとしても、その発言が今は大臣としての肩書で表に出る、そしてまた、それがアメリカの耳にも当然ながら入る。そうすると、同盟関係でありながら、お互い水面下で交渉する中でそのことを言うのは、それは私はあっていいと思う。それは国益に照らして相当激しいやりとりをしなきゃいけないと思いますから、それはあっていいと思うけれども、例えば記者会見とか記者クラブの発言の中で、大臣である久間大臣がこういう発言をされたということが回り回って伝わっているということは、私は日米関係を損ねると思うし、先ほど私が問いかけた質問に答えていただいていないんですよ。

 つまりは、感想を申し上げたということだけれども、それは、個人も大臣もないんですよ、大臣のお立場というのは。大臣として発言をされたら、このおっしゃったことが、つまりは、もう一度申し上げますよ、大量破壊兵器がさもあるかのように戦争に踏み切ったが、判断が間違っていたのではないかという発言は、これは大臣としての発言なんですよ。違いますか。

久間国務大臣 そのようにその当時私は思っておりましたということを、二十四日に聞かれたので、そのとおり答えたわけでありまして、それをあなたがもし聞かれたとしたら、その当時私はそう思っておりませんでしたという答弁はできないわけでありますから、その当時どう思っておったかと言われたから、そのとおり思っておりましたということでありまして、それは、だからアメリカに対して、もし聞かれれば私はそのとおり答えます。

 ただ、今は閣内の一人としては、それからのずっと政府の一貫した政策については、自信を持ってそれは支持している、そういうことでございますから、これから先も私は政府の一員として与えられた仕事を着実にやっていくことを、それを見ていただければいいわけであります。

前原委員 では、簡単にお答えください。

 今、大臣の立場としては、大量破壊兵器がさもあるかのように戦争に踏み切ったが、判断は間違っていなかったということを大臣としては答弁されますか。

久間国務大臣 その当時の気持ちとしてではなくて、今でも、私はあの当時、核兵器の処理について法律から外れたのはよかったというふうに思っているぐらいですから、それはなかったと今でも思っております。

 だから、私はどう思っているかということを聞かれたからそれを答えているのであって、それで、あのときのアメリカが踏み切ったのが、政府は支持しているわけですけれども、アメリカがそのときそういうふうに言ったことについての論評はしていないわけでありますから、とにかく、私はないと思っておった、そして法律からも外れてよかったなと思いましたということを率直に言ったわけであります。

前原委員 私の質問に答えてください。

 では、判断は間違っていなかったんですか。今、先ほどの総理の答えを聞かれて、大臣としては、総理大臣の言うことをしっかり閣内の一員として受けとめて、間違っていなかったということをおっしゃるわけですか。

久間国務大臣 総理の先ほどの答弁でも、核兵器があるとかないとかのそういう判断をしてやっているわけじゃないわけですよね。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。

久間国務大臣 いや、小泉総理も含めて、核兵器があるとかないとかの判断じゃなくて、それについては、先ほど言いましたように、福田官房長官にもお願いして法律から外してもらったわけですから、核兵器があるとかないとかじゃなくて、武力行使に踏み切ったことを支持するという閣議決定をされているわけでありますから、核兵器があるとかないとかの判断をそのときにしていたわけじゃないわけでありますから、そこは今でも一緒です。

前原委員 アメリカのイラク攻撃は早まったのじゃないかという思いがそのときはしていたと。では、今はどうですか、大臣として。

久間国務大臣 現在は政府の一員でございますから、その当時の政府が支持するという決定をしたのは、私以上のいろいろな情報があったんだと思います、閣外でしたから。だから、そういう意味では、そのときについて私がどうこう言うわけじゃございませんが、政府の一員としては、そのとき判断したことを現在の内閣でも支持すると言っているわけですから、それは支持するということで変わりないわけであります。

前原委員 早まったのではないかという思いがそのときもしていたということは、今もしているから発言されているんじゃないですか。今もしているから発言をされていて、そして、今は大臣として、そのときは大臣じゃなかった、そしてより詳しい情報に接する立場になかったということで考えを変えるんですか。この発言は、早まったのではないかという思いがそのときもしていたということは、今もしているけれどもそのときもしていた、変わらないということじゃないですか。

久間国務大臣 雑誌の対談とかいろいろな場ならともかく、ここは政府に対する質疑ですから、私は政府の一員としての政府の立場で答弁するわけですから、私は、政府が、あのときの判断は正しかった、そういう決定をして、その後踏襲している以上は、あのときの判断は正しいんだ、そういうふうに答弁せざるを得ないわけであります。

前原委員 アメリカ側は、これはアメリカの関係者の方の話でありますけれども、要は、同盟国として、久間大臣の発言あるいは麻生外務大臣の発言については、これは礼を失するという意見が私の中にはありますよ、耳に入っている。

 つまりは、先ほど言ったように、お互い交渉の中では、それはかんかんがくがくのやりとりをやるんでしょう。しかし、こういう発言を繰り返して行っていく、そしてまた、今、六者協議という大変重要なものをやっているし、時間がありませんのできょうは取り上げませんが、沖縄の基地の再編も含めて大変重要な局面にあるわけじゃないですか。そういう大臣が、昔はそういう思いをしていたということを軽々しく言って、今、しかし、大臣というお立場の中でそれが向こうに発せられて誤解を生んでいるのは事実じゃないですか。そのことを結果としてやはり責任をとらなきゃいけないですよ。

 自分の発したことを、それがどういう反響を呼んだかということを結果として責任をとらなきゃいけないし、これは総理にも言えることだと思いますけれども、これからイラクがより混乱をしていって、アメリカは抜き差しならないような状況になっていますよ、増派をするかどうかという話になっていますけれども。そのときに、私は、これがより泥沼化して、そして撤退せざるを得なくなったときには、これは支持した日本が共同して責任をとらなきゃいけないような状況になると思いますよ。そのときは、今の発言がアメリカに対して不信感を呼んでいるということ、日米関係を揺らしているということ、そしてまた、支持をした結果、しかしながらうまくいかなかったことに対する政治責任は、最終的には総理はとるおつもりがあるんですか。そのことについて御答弁をください。

安倍内閣総理大臣 あのときの米国の武力行使について日本が支持をした、なぜ支持したかについては先ほど申し上げたとおりであります。これは、日本が一緒に武力行使をするということではなくて、累次にわたる国連決議にイラクが反し、そして、何度もチャンスを与えた、大量破壊兵器を持っていないということを証明するチャンスを与えたわけであります。しかし、そのチャンスを生かそうとしなかった。かつ、イラクはかつて大量破壊兵器を使ったことがあった。イラン・イラク戦争において、また自国民であるクルド族をそれで虐殺したという過去があった。確実に彼らはそれを使って、しかし、使ったからには持っているだろう、そしてそれを持っていないということを証明しなかった。

 という中にあって、我々は、最終的にアメリカがそう判断をした、また、何といっても、アメリカは日本にとってかけがえのない同盟国であります。そういうことも総合的な判断をして、検討して考慮した結果、当時、小泉総理が、また政府として支持をした、その判断は私は誤っていない、このように思います。

 そして、それと、その後の復興支援についてはまさに国際社会で、国連決議で決めて、国連決議にのっとって、今、復興支援をみんなでやっていこうという中において我々も協力をしているわけであります。責任をとる、とらないという問題では全くないと私は思います。日本は、国際社会における、まさにこれは日本の責任として復興の支援に参加をしているということではないでしょうか。(拍手)

前原委員 そんな拍手をするところじゃ全然ないですよ。

 つまりは、泥沼になったイラク戦争を支持したんですよ、日本は。そして、日本はそれに対して、今抜き差しならないような状況になっている。アメリカが撤退をしなければいけない、アメリカでは、このイラクに対しては、戦争に突き進んでいったことは反対じゃないかという意見が六割、七割にも達している。

 しかし、今のような答弁をずっと続けていった中で、イラクが今のような状況、さらに悪くなって、アメリカが撤退をして、そして中東が混乱になった場合に、それを支持した日本の責任はどうとるのかということを私は聞いているわけですよ。それについては明確に答えがないわけです。これについてはしっかりと今後も議論はさせていただきます、イラクの情勢の変化に基づいて。

 しかし、先ほど申し上げたように、政治は結果責任ですから、イラクについても責任をとる意思をしっかり総理は持たなきゃいけない。また、先ほど申し上げた北朝鮮の六者協議に対して、私からすると、拉致問題というものに余りに引きずられる余りに、そして日本の国益を損なうのではないか、それについての責任も負わなきゃいけないし、また、久間発言、麻生発言において、結果としてアメリカとの関係に非常に大きなマイナスになっているということ、それについても今の政権は責任をしっかり負って外交をやっていかなくてはいけないということを、私は改めて申し上げておきたいと思います。

 さて、外交の問題はこのぐらいにいたしまして、きょうは、国と地方、また、分権の話をさせていただきたいというふうに思います。

 その中で、私が特に安倍総理とお話をさせていただきたいのは、分権の最終ゴール、あるべき姿をどう考えていくのかということであります。

 小泉政権の五年半で、分権、三位一体ということが言われていたわけでありますけれども、結果的に最終像を示すことはありませんでした。三位一体もやはり一部分の数字合わせであったわけであって、最終的にどういう形をこの分権の社会で目指していくかということが見えてこなかったわけであります。

 さてそこで、あるべき姿、最終ゴール、所信表明演説におきましては、魅力ある地方の創出というところで総理が発言をされている中身については、新分権一括法案の三年以内の国会提出ということ、そして、交付税、補助金、税源配分の見直しを一体的に検討を進める、こういうことが言われているわけであって、明確な、どういう最終ゴールを分権像で目指すかということについては触れておられません。

 集団的自衛権の話も、検討するということで具体例については余りおっしゃいませんが、検討するといっても、分権が必要であるとすれば、なぜ分権が必要で、どういう像を安倍内閣としては模索していくのか、その最終ゴールを、自分なりのビジョンを語っていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もう既に答弁をいたしておりますように、三年以内に地方分権一括法案を提出いたします。この法案の中に、まさに私どもが進めようとしている、地方の本来あるべき姿、地方分権の姿を書き込んでいくわけでございます。

 ですから、今の段階ではその骨格についてしか申し上げることができないわけでありますが、国は本来、国のやるべき仕事、外交であるとか防衛であるとか、そうした基本的な役割のみに専念をして、そして、身近なことはほとんど地方にお願いをしていく。そのためには、まず、国と地方がやることを徹底して仕分けをしていく必要があるわけであります。そして、その仕分けをしながら、国が余計なことに口出しをしないという仕組みもつくっていかなければいけない。そして、自主財源を地方が持ち、責任を持って、自分たちのアイデアで地域の未来をつくっていくということになるわけでございます。

 まずは徹底した仕分けを行っていく。基本的には、国は外交そして安全保障等々の最低限することに限定をしていく、身近なことは基本的にはほとんど地方自治体が責任を持って担っていくということではないだろうかと思います。

前原委員 その場合に、地方自治体というのはどういうイメージですか。つまりは、現在では地方というのはいろいろあるわけですね。都道府県があって、国の出先機関があって、そして政令都市があって、中核市があって特別市があって市町村があるという、極めて多層にわたっていますよね。それがまた行政の無駄、コストの無駄、時間の無駄というものを生んでいるわけであって、だから、分権というものでその受け皿論というのが一番大事になるわけです。

 その受け皿論というのは、どういう形、それとも何層、つまりは、私がイメージする大きな分権像というのは、基礎自治体、これは大体人口は目安でいえば三十万前後。もちろん、大きなものがあってもいいですし、今から申し上げるように、政令都市並みの権限は少なくとも与えなきゃいけないと思っていますので、今の政令都市の規模があってもいい。しかし、目安は三十万。地方に行くと、三十万でも集めるとすると相当大きな広い面積にならなきゃいけない。

 だから、そういう基礎自治体があって、そして、河川、道路などについては道州のような広域調整をやって、そして補完性の原理の中で、そこでできないものについては最終的には国がやるという、私のイメージは三層的なものでありますが、総理の、先ほどおっしゃった地方に任せるという総論は結構であります、概念論は結構でありますが、何層、そして、そういう受け皿の自治体というのはどういうイメージなんですか。

安倍内閣総理大臣 私ども、市町村の合併を、これは大胆に行ってきたと思います。それは、行政改革という面と、そして行政力をアップさせていく、そしてまた、まさに地方分権においての受け皿づくりという意味において意義があったのではないかと思います。これを行う中において住民の意思も大分変化をしてまいりました。そういう中核的な地域また市がその地域の生活を担っていく、その方がいいのではないかという考えも大分私は芽生えてきたのではないか。そういう芽生えの中で、県の必要性についても議論され始めてきたのではないかと思います。

 私は、基本的には道州制をやはり考えていくべきではないか、このように思うわけでありまして、道州制を進めていくことによって初めて一極集中から地域に核ができてくる、そういう日本に変わっていくのではないか。しかし、これは相当まだまだ時間がかかるわけでございますが、道州制を見据えながら、それと同時に中核的な市を、また広域的な連携も進めていくべきではないか。最終的な姿としては、私は、割と今前原委員が指摘をされたような姿に近いのではないか、しかし、これはまだしばらく時間がかかるのではないかと思います。

前原委員 お配りした資料をちょっとごらんいただきたいわけでありますが、きょうは最後に夕張のことも少し含めてお話をしたいと思いますけれども、和歌山県に白浜というところがあります。年間大体約三百万人以上の観光客が来られるというところで、有名なところ、温泉もあるところでありますが、その白浜というところが市町村合併を行った。隣の日置川町というところとやったわけであります。

 これをごらんいただいたらわかりますように、大体の市町村合併、うまくいっているということをおっしゃいましたけれども、中核的な都市、これは白浜ですね、人口でいうと約二万人、そして合併をしたところというのは日置川町、約四千五百人、足して二万四千人ぐらいになっているわけでありますが、面積でいいますと、旧白浜町が六十四キロ平米、そして日置川町は大体その二倍ぐらい。広いところで人口が少ないというところ。そして、財政力指数というところを見ていただきたいわけでありますけれども、財政力指数は、ここにも書いてありますけれども、簡単に言えば、支出を分母に収入を分子にしたものが財政力指数でありますけれども、大体、その中核になる市が、日置川町のような、〇・一八、極めて財政力指数の悪いところを合併して、そして何とか成り立つような形になっているということで、当然ながら財政力指数は落ちる、〇・五〇四になっているということであります。

 経常収支比率というのは、簡単に言えば、一般財源の中で固定費がどれだけ占めているか。つまりは、この比率というのは、固定費が少なければ少ないほどいい、一般財源、自由に使えるもののうちに固定費が少なければ少ないほどいいわけでありますので、そういう意味では経常収支比率は低い方がいいわけでありますけれども、結局、高いところを合併して、広域になってより財政が悪化をしているということであります。

 なぜこういう合併が行われたかというと、簡単に言えば、合併特例債というものが発行されて、これでようやく救われたというものであるわけであります。そして、こういう地域は今、先ほど同僚議員の議論もございましたけれども、徹底的なリストラもやっている、徹底的なリストラもやっているけれども、しかし、だんだん予算が組めないような状況になってきているわけです。それは何かというと、交付税がどんどん下がっていっているからであります。

 つまりは、もちろん地方の無駄というものも削っていかなくてはいけないけれども、交付税が下がる、地方財政計画というものが下がっていく、そして、特例債という起爆剤でやったけれども、結局は、大変な地域と一緒になる中で全体的に極めて逼迫をした財政状況にあるということであります。

 そして、これは平成十七年度の経常収支比率ということで、先ほど申し上げましたように、経常収支比率というのは低ければ低いほどいいというものであります。これは一番上が夕張になっているわけでありますが、夕張と同じような数字のところがかなり多く並んでいるということでありまして、こういう数字を見ていただきましても、夕張は特別ではあるけれども、夕張予備軍というのがたくさんあるわけです。

 そして、もう一つ、これを見ていただきたいわけでありますが、これは実質公債費比率ということでありますけれども、では問題になっている夕張はどこにあるかというと、八番目なんですね。つまりは、夕張よりも実質公債費比率が高いところというのがこれだけあるわけであります。

 地方というのは多かれ少なかれ、市町村合併もした、リストラもやっている。特に、こういう実質公債費比率の高いところやあるいは経常収支比率の高いところは、一生懸命にリストラをやっているわけであります。つまりは、そういう状況の中で地域が頑張っていて、しかし報われない要因というのはどういったところにあるかということをお話ししたいわけであります。

 一つには、交付税が減らされて自由に使える金が少なくなってきている。そして、地震とか津波対策、こういうものもやらなきゃいけない。明石市の海岸での事故、これはいわゆる行政の責任が問われたわけでありまして、こういうものをやらなきゃいけない。学校の建てかえもやらなきゃいけない。しかし、実際問題は、人口がどんどん減少していく中で税収も上がらなくなってきている。

 これは、日本の人口・合計特殊出生率というものを政令都市で挙げたものでありますけれども、要は、こういう特殊出生率、日本全体は一・二六でありますが、政令都市それから東京都は低いんですね。しかも、平成十二年と比べて平成十七年は、一つ以外は極めて下がっているわけであります。しかし、人口は大都市はふえている。

 つまりは、どういうことかというと、先ほど白浜の例を出しましたけれども、地域で育った子供さんたちが高校を卒業して大学に行く、そしてそこで就職をして、出生率は都市では低いけれども、結果的には大都市に住みついて、大都市の人口集中がふえてきている。その中で、人口をベースにした今の交付税のあり方では、どんどん地方が疲弊をしていく、二極化が進んでいくということは避けられないわけでありますね。

 こういう仕組みを、さらに今回拍車をかけるような新型交付税、つまりは人口掛ける面積というものを出してきている。これは、先ほどあるべき分権の話をいたしましたけれども、それに移行するまでにもう地方がもたないという状況をちゃんと認識されているのかどうか。その点、総理に私は伺いたいと思います。

金子委員長 前原委員、きょうテレビが入って、質疑終局しておりますので、答弁は遠慮させてください。

前原委員 それでは、またこの質問をさせていただくことを申し上げて、私の質問を終わります。

金子委員長 これにて山井君、菅君、馬淵君、荒井君、岡田君、前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 この間、柳澤厚生労働大臣の発言に国民の厳しい批判と怒りが集中しました。この発言のどこが問題か。まず、柳澤大臣の女性は子供を産む機械という発言が、女性の人格と尊厳を否定する、政治家、閣僚としてはもとより、人間としても絶対に許されない発言であることは論をまちません。同時に、それに続く、あとは産む役目の人が一人頭で頑張ってもらうしかないという発言には、私は、女性を国家の人口政策の道具としてしか考えない思想があらわれていると思います。

 ドイツのウェルトという新聞は、柳澤発言を痛烈に批判した日本のコラムニストの次のような言葉を紹介しています。女性は人口問題を解決するために子供を産むのではない、幸せのためだ、そのとおりだと思います。

 これは、一九九四年に国連が開催した国際人口・開発会議において採択された文書であります。ここには、すべてのカップルと個人が、子供を産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを自由に決定する基本的権利を持つこと、個人に国家が目標や割り当てを強制してはならないことが明記されています。私は、日本における少子化問題を克服する上でも、これは大前提とされるべき原則だと思います。

 一人頭で頑張ってもらうという発言は、この国際的に合意された基本原則に真っ向から反しているところに重大な問題点があると思います。

 総理に伺います。柳澤発言の問題は、不適切な言葉遣いあるいは表現という問題にとどまるものではありません。この発言には、女性を国家の人口政策の道具としてしかとらえない考え方、思想があらわれており、さらには、すべてのカップルと個人が自由に決定するという国際的な基本原則に反する、ここに反省すべき根本問題があると考えますが、総理の見解を端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 御指摘の厚生労働大臣の発言については、子供を生み育てるということは、男女が人間としての営みとして行うことであって、人間としての営みであって、そしてまた、この発言によって多くの方々が傷つけられた。いろいろな御事情のある方々もおられます。女性を初め多くの方々を傷つけることになったということは、まことに申しわけない、このように思う次第であり、極めて不適切であった、このように思います。

志位委員 極めて不適切でまことに申しわけないということは繰り返されるんですが、そのどこが間違いだったか、この根本問題として私が指摘した問題については、柳澤大臣は一言の反省も自分の言葉ではお述べになっていないんですね。何が問題かをいまだに理解していないと言わざるを得ません。そういう厚生労働大臣でどうして少子化克服のための取り組みができるか、私は改めて罷免を要求したいと思います。

 次に進みます。私は、さきの本会議の代表質問で総理に、ワーキングプア、働く貧困層の広がりなど、貧困と格差についての基本認識をただしました。今広がっている貧困の問題は、国民の一部の問題ではありません。国民のあらゆる層、あらゆる年代をとらえてそれは広がっています。高齢者の中での貧困の広がりも大変深刻でありますが、きょうは、特に子供の貧困、すなわち、貧困な家庭のもとで暮らしている子供がふえているということについて総理の見解をただしたいと思います。

 子供の貧困というのは、既にさまざまな社会問題となってあらわれています。例えば、静岡県のある中学校の話ですが、修学旅行に行けないと申し出た生徒が三十名に達し、教師と保護者が何度も話し合って、うち二十名は修学旅行に行けたものの、残りの十名は、同級生が修学旅行に出かけている間、図書館で毎日を過ごしたとのことです。先生、おれ、修学旅行には興味がないから平気だよと強がりを言っていた生徒たちでしたが、この十名は、級友が修学旅行から帰った後、集団で暴れ出し、親にも教師にも反抗し、授業も抜け出して、とうとう卒業式にも参加することはなかったといいます。この子たちのように、修学旅行にさえ行けない生徒が全国の中学校で激増しているという事実があります。これは一例です。

 ここに、OECD、経済協力開発機構が昨年七月に発表した対日経済審査報告書があります。これを見ますと、特にその中で重視されていることの一つは、日本の子供の貧困率が高まっているということです。

 OECDでは、その国の平均的所得の半分を貧困ラインとしています。日本の場合、夫婦子供一人の世帯で手取りで年収二百四十万円が貧困ラインになります。その貧困ライン以下の所得しかない家庭のもとで暮らしている子供の割合、これを子供の貧困率と規定しているわけですが、これが日本では一四・三%に達し、OECD諸国平均の一二・二%を上回っている。OECDによりますと、日本の子供の貧困率はこの間じりじりとふえ続け、近い将来にはOECD諸国平均の二倍にまで高まる危険があるとされています。

 OECDのこの報告書には、日本における子供の貧困率が増大していることについて次のように警告しております。学校教育や塾の費用の高さを考慮すると、貧しい家庭の子供は不十分な教育しか受けられず、それゆえ成長の可能性が阻まれがちで、貧困が次の世代に引き継がれていく危険にさらされている。

 総理に伺いたい。OECDのこの報告書は、日本における子供の中での貧困の広がりが一人一人の子供の成長の可能性を阻むだけではなく、貧困が次の世代に引き継がれる危険をつくり出しているという点でも日本の未来にとって重大な問題になっていることを指摘しております。総理はそういう認識をお持ちでしょうか、認識を伺いたいと思います。端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 子供たちが貧困によって未来に向かって進んでいくというその芽を摘まれ、いわば貧困が再生産される、そういう日本にしてはいけない、こう考えています。

 その中で、今委員が引用されましたOECD対日審査報告二〇〇六については、引用された数値やデータに根拠が不明なものもあって、その妥当性については精査が必要ではないか、こう考えています。また、後ほど担当大臣から詳しく答弁をさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、最初に申し上げましたように、低所得の家庭においても適切に教育を受けることができるように支援をしていくことが必要である、このように思っています。

 また、子供を養育する低所得家庭については、児童手当、児童扶養手当あるいは生活保護といった経済的な支援と同時に、そういう家庭において、保護者が就労できるそういう支援も行っていかなければならないと考えております。

志位委員 OECDのこの調査というのは、各加盟国に資料を求めた上で出されている数字ですから、私は確かなものだと考えます。

 今の答弁で総理は、こういうことが再生産されてはならないということを述べました。そこで、もう一問伺いたい。このOECDの報告書では、日本における子供の貧困率の増大の原因の一つとして、母子家庭、一人親家庭の中で貧困が広がっていることを重大視しております。

 これをごらんいただきたい。これは、働いている母子家庭、一人親家庭の中で、貧困ライン以下の世帯に暮らす子供の割合を示した国際比較のグラフであります。日本では、これは一番左でありますが、母一人子一人の母子家庭の場合、貧困ラインは手取りで百九十五万円、そのライン以下で暮らしている子供が何と五七・九%、圧倒的多数です。OECD平均が二一%ですから、三倍近い貧困率になります。アメリカの四〇・三%、カナダの二七・七%、イギリスの二〇・六%、ドイツの一五・三%、イタリアの一三・四%、フランスの九・六%、こういう諸国と比べても断トツに貧困率が高い。

 私は、本会議の代表質問で、NHKテレビのワーキングプアの特集番組で紹介されたある母子家庭の生活実態を示して、総理の認識をただしました。二人の小学生の子供を育てながら働いている三十一歳のお母さんは、昼と夜、二つのパートをかけ持ちしながら働いている。昼のパートでは時給六百五十円程度にしかならず、手取りが七万円しかありません。そこで、夜のパートの仕事もかけ持ちせざるを得なくなりました。帰宅は毎晩真夜中の二時、睡眠時間は四時間から五時間という働きづめの生活が映し出されていました。

 とりわけ私の胸に刺さったのは、このお母さんが番組の中で述べた、あと十年頑張れば、自分の体がぼろぼろになっても子供たちは巣立つという言葉でした。昼の仕事だけでは生活できない、昼も夜も働き、その中で子供たちと向かい合う時間をどうやってつくり出すかで苦闘している。これは、全国の母子家庭の多くの共通した実態であります。

 私は、本会議の質問で、シングルマザーが我が身を犠牲にしなければ子供を育てられないような社会がまともな社会と言えますか、この認識を総理にただしました。しかし、総理から答えがありませんでした。自分の身も心もぼろぼろにならなければシングルマザーは子供を育てられない、これはまともな社会と言えないと私は思いますが、この認識について総理にお答え願いたい。端的にお答え願いたいと思います。

金子委員長 先に、柳澤厚生労働大臣。(志位委員「いやいや、総理に聞いたんです」と呼ぶ)OECDのデータもありますので、先に。

柳澤国務大臣 志位委員、大変恐縮ですが、データのことでちょっと申し上げます。

 今、依拠されておりますデータでございますけれども、先ほどちょっと総理が違ったことをおっしゃったかもしれませんが、私どもの承知しているところでは、OECDの対日審査には掲載されていない文書であるということがございます。

 それから、そもそもこのデータは二〇〇〇年のデータでございまして、それ以降、我が国では児童手当の対象年齢の拡大、御存じのとおり小学四年から小学六年までこれを拡大しました。それからまた、所得制限を緩和いたしました結果、今、子供たちの九〇%がその対象になるというような、児童向けの社会保障政策というものを充実させておりまして、やはり、これらのことも反映したデータで論じていただくのが正しい情報に基づく議論になる、私どもはそのように考えます。

安倍内閣総理大臣 母子家庭の皆様に対する支援としては、先ほど申し上げましたように、我々、児童手当、児童扶養手当あるいは生活保護といった経済的な支援、これを当然行っていくわけでありますが、さらには、就労の支援も行っていかなければならない。今、志位委員が例として引かれたのは既に仕事をしておられるという方々だろうと思いますが、そういう方々がより給料の高い仕事、また、正規社員になることも可能なようなそういう就労支援も我々行っていかなければならないと考えております。

志位委員 データの問題を言われましたけれども、これは直近の数字でそろえてあるんですよ。それから、児童手当のことを言われました。しかし、児童手当というのは広く薄く配られている制度ですから、貧困率の問題に寄与しません。ですから、このデータは全く正しいデータです。

 私、総理にこんな、つまり、母子家庭のお母さんが自分の身を犠牲にしなければならないような状態というのは、これはまともな社会と言えないんじゃないかとこう聞いたのに対して、いろいろ言われたけれども、それについて、まともな社会でないという認識をお述べにならなかった。ここが問題だと思うんですよ。

 そこで私は、子供の貧困、母子家庭の貧困という大問題に政治がどう向き合うかについて、二つの角度から、これから政府の姿勢をただしていきたいと思います。

 第一は、国の予算のあり方の問題であります。

 貧困と格差が広がったら税制と社会保障によって所得の再分配を行う、すなわち、お金持ちから所得の低い方に所得の移転を行い、その是正を図ることが予算の役目のはずであります。日本の予算はそういう役目を果たしているか。

 もう一枚見ていただきたいんですが、これはOECDの報告書から作成したグラフです。税制と社会保障による所得再分配で子供の貧困率が上がるのか下がるのか、これを国際比較したグラフであります。

 OECD諸国を見ますと、平均で八・三%、貧困率が下がっております。すなわち、子供全体の八・三%を税と社会保障によって貧困から救い出しているのが国際水準です。ほかの国も、アメリカで四・九%、カナダで七・五%、ドイツで九・〇%、イギリスで一二・九%、フランスで二〇・四%、程度の差こそあれ、税制と社会保障によって子供の貧困率が削減されております。

 それに対して、驚くことに一番左の日本を見ていただきたいんですが、逆に一・四%、貧困率が増大しております。数にしますと三十万人を超える子供たちが、税と社会保障によって逆に貧困ラインの下に突き落とされている。これはびっくりする数字であります。これは、所得の低い子育て家庭に対して余りにも税金と社会保険料負担が重く、余りにも子育て支援が貧しいことの結果であります。

 OECDの報告書では、所得再配分によって子供の貧困率がふえるのは、OECD加盟二十三カ国の調査のうち日本だけだと指摘しております。

 総理に伺いたい。日本では、子供を持つ貧困家庭に対して税制と社会保障が、貧困を減らすんじゃなくて逆に貧困をふやす方向に逆立ちして働いている。これは異常なことだと思いませんか。いかがですか。いや、総理に聞きます。

金子委員長 では先に、データの関係について、柳澤厚生大臣。

柳澤国務大臣 データを申し上げますが、今志位委員が引用されているのは、二〇〇〇年の、当然、諸国をそろえなければならないという都合でそこを引いていらっしゃるわけですが、私どもの新しい、例えば二〇〇三年のデータで申し上げますと、この十年間に、エンゼルプラン以降、子供に対する社会保障給付というのは、絶対額で一・六倍、それから給付費全体に占めるシェア、割合も三・四%から三・八%に上昇しているという状況にございます。したがいまして、仮にそういうようなことが、私ども、ちょっとOECDのその積算根拠がわからないという立場でございますが、仮にそうだとしても、それからさらに改善が進んでいるということは申し上げてよかろうかと思います。

 いずれにいたしましても、私どもは、社会保障の中における現役世代向きの給付というもののシェアがかなり諸外国に比べて低い、これは事実でございまして、これから先、私どもはそれらに思いをいたして、特に子供、児童、この人たちに対する目配りというものを的確にやってまいりたい、このように考えているところでございます。そのための戦略会議も最近スタートをいたした、こういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。

志位委員 今、この間、所得の少ない子育て家庭にあたかも予算をふやしてきたかのようなことをおっしゃいました。しかし、例えばこの間、これから聞きます児童扶養手当一つとっても、どんどん削減してきたわけですよ。実際は、所得の低い、少ない子育て世帯に対する支援をどんどん減らしてきたのが実態じゃありませんか。

 そして、二〇〇〇年以降ということをおっしゃいましたので、現時点での計算を私たち自身もやりましたけれども、私たち自身の計算でも、税と社会保険料によって貧しい子育て世帯の貧困率は逆に上がる、これは今の数字でも出てきます。

 そこで、具体的に二つただしたいと思います。

 一つは今の問題です。母子家庭に対して子供が十八歳になるまで支給されている児童扶養手当の削減の問題です。

 児童扶養手当とは、所得の低い母子家庭を対象に、児童の心身の健やかな成長に寄与することを目的に支給されているもので、額は、子供一人に対して、親の所得に応じて最大四万一千七百二十円から九千八百五十円となっています。母子家庭の約七割が児童扶養手当を受給していますが、その多くが、昼も夜も必死に働いているお母さんです。児童扶養手当は、そういう母子家庭の命綱としての役割を果たしてきました。

 ところが、政府は、この命綱を来年四月から大幅に削ろうとしています。二〇〇三年四月に、児童扶養手当の受給が五年を超えた後は給付を最大半額まで減額する法改悪が行われました。これが、来年、二〇〇八年四月から実施されようとしています。五年で削減とは、母子家庭の子供は高校に進学するなと言うのか、少子化と言われる時代に必死に子育てをしているのにこの仕打ちは許せない、こういう怒りの声が全国から寄せられております。

 総理の認識を伺いたい。先ほど見たように、今でさえ日本は所得の低い子育て家庭への支援が弱く、税制と社会保障が貧困を減らすのではなく、貧困をふやす方向に働いているわけですね。児童扶養手当を削減したら、母子家庭の子供の貧困をより悪化させ、結局この逆立ちをもっとひどくする、これは明瞭じゃありませんか。いかがでしょう。児童扶養手当の削減、いや、総理、総理に伺いたい。(柳澤国務大臣「事実だけちょっと。いやいや、後で総理に」と呼ぶ)

金子委員長 まず、柳澤厚生大臣、ちょっと事実を教えてください。その後、総理に聞きます。

柳澤国務大臣 児童扶養手当につきましては、平成十四年の改正におきまして、これは、激変緩和措置、離婚等による生活の激変緩和のための措置ということでスタートをいたしたわけでございますが、その位置づけを見直しまして、受給期間が五年経過をした場合には、その一部を支給停止するという仕組みを導入いたしました。

 しかし、母子家庭の置かれた厳しい経済状況を踏まえまして、法律では、八歳未満の児童を養育している者、障害や重大な疾病を有する者などについて一部支給停止のこれも対象外とする、あるいは、支給停止をする場合も、給付額については少なくとも二分の一は保障するということにもう既にしてあるところでございます。

 今後、一部支給停止の対象外とする者の範囲をどのようにするか、それからまた、支給停止とする額についてどうするかということについて作業を進めるわけでございますが、具体的には、夏ごろにまとまる全国母子世帯等調査の結果を踏まえて、また秋以降、関係団体などの意見を聞きながら年末の予算編成に向けて結論を出していきたい、こういう状況にございます。

志位委員 今いろいろ言われましたけれども、結局二分の一まで削減することはあり得る、今後の状況を見ながら判断するということですけれども、二分の一の削減をやるということはあり得るという御答弁だったと思うんですね。

 それで、厚生労働省が設置している国立社会保障・人口問題研究所が二〇〇五年に出版した「子育て世帯の社会保障」という本があるんですよ。この研究報告書を読みますと、児童扶養手当の削減が母子家庭の自立促進につながるかどうか、詳細な検討をしています。そこでは、日本の母子家庭の母親の就労率は今でさえ八五%、非常に高い。先進諸国の中で突出して高い。にもかかわらず家計が苦しい。それが日本の特徴であって、それは、母子家庭も含めて女性の仕事の多くが、長時間労働をしても低い賃金しか得られない仕事、パート、アルバイトなどに限定されていることからきているという分析を行っています。そして、こうした仕事の多くは長年勤続しても賃金上昇が見込めないものであり、児童扶養手当の減額や打ち切りなどのペナルティーを与えても、それが自立につながるかどうか疑わしい、こう言って次のように結論づけています。これは非常に重大な結論です。

 児童扶養手当について、「マクロの雇用情勢が改善しない状況で支給条件を厳格化させたり、支給期間に制限を設けたりしても、「自立」促進にはつながらないばかりか、母子世帯の子どもの経済状況を悪化させる恐れがある。」それからもう一つ、「母子世帯の経済的困窮は必ずしも母子世帯になった直後の一時的なものとはいえず、支給期間に制限を設ける措置の導入は現状では望ましくない。」これは、厚生労働省の所轄の国立の研究所の調査結果ですよ。

 あなたは、離婚などによる激変緩和の措置だ、激変緩和で五年間たったら切ることもあるんだというふうにおっしゃいますが、実際、女性の方がつける、母子家庭のお母さんがつける仕事というのはパート、アルバイトなどに限られる。長く働ければ所得がふえると言えないわけですよ。だから五年で打ち切るということは望ましくないと言っているわけですね、国立の研究所自身の詳細な検討に基づいて。これは日本のデータですから、きちんと答えてください。これはやはり重く受けとめるべき結果じゃないでしょうか。

柳澤国務大臣 今、志位委員の読み上げられた文章を私ちょっと聞いておりまして、間違いはないと思いますけれども、要するに、今、私どもは、福祉から就業へということ、あるいは自立へ、そういう基本的理念のもとでこうした政策の展開をいたしているわけでございますが、先ほどお読みになられた文章も、現在の雇用情勢のもとではというふうに書かれていた、そのように志位委員もお読みになられたと思います。

 私どもは、やはり基本的に、ただ家庭におられて、そして公的な扶助を待っていられるよりも、より社会的に自立をする、就業することを初めとして、そういうような中で子育てをしていただくということのメリットもあるのではないか、このように思います。

 したがいまして、いろいろ、ハローワーク等におきまして、また、母子自立支援センターですか、そういったセンターの事業を通じまして、できるだけその母子世帯のお母さんにも就業の機会を持ってもらう、こういうような方向での努力をいたしているわけでございます。その成果はかなり実は上がっておりまして、実際に就業をされて、家計においても、また子供さんの教育においても非常に明るい展開をされている例もあるということを伺っているわけでございます。

 例えば、本人四十八歳のお母さんと高校生の子供二人の世帯でございますけれども、卸売業で長く働いていましたけれども、給与の遅配等があるから転職するというようなときに、パソコン教室を受講していただいた。そうしてハローワークの支援を受けつつ積極的な求人検索を行って、正社員としてはるかに給与においても賞与においてもいい条件で再就職されたというようなことが現実にありまして、こうした努力の方向というのは大いに促進されてしかるべきだ、私はこのように考えるわけでございます。

志位委員 先ほど私が読み上げた文章で、現在の雇用情勢のもとではと確かに書いてあります。しかし、これは二〇〇五年の段階ですよ。二〇〇五年と、削減するのは来年、二〇〇八年でしょう、三年間で女性の雇用情勢が変わりますか。パート、アルバイトから正規に大きく変わりますか。そういう見通しもない状況でそんなきれいごとを言っても、これは実態を知らないものと言うしかありません。

 先ほど、自立支援をやっている、自立支援センターをつくって成果を上げていると。中にはそういう例もあるでしょう。しかし、自立支援センターの窓口をつくっても、安定した職業につきたいからと何回も足を運んでも、実際には求人がない。若い人でも就職できないのに、母子家庭の私たちには到底無理だというケースがほとんどですよ。窓口があっても中身がない、これが今政府がやっている対策ですよ。

 私はもう一つ聞きたい。来年度予算案には、生活保護を受けている母子家庭の母子加算の廃止が盛り込まれております。母子加算というのは、片親がいないことにより子供を育てる費用が余分に必要になるとして加算される制度で、都市部で一人当たり二万三千二百六十円支給されています。これも、生活保護を受けている母子家庭にとって文字どおりの命綱であります。

 ところが、二〇〇五年度から二〇〇七年度にかけて、十六歳から十八歳までの子供に対する母子加算が段階的に廃止され、さらに、二〇〇七年度から二〇〇九年度にかけて、十五歳以下の子供に対する母子加算も段階的に廃止されようとしております。

 これは総理に伺いたいんです。私が代表質問でこの問題をただしましたら、総理はこうおっしゃいました。現行の母子加算を含めた生活保護の基準額は、母子世帯全体の平均的な所得層の消費水準を上回っている、生活保護を受けている母子家庭と受けていない母子家庭との公平性の確保のためだ、こうおっしゃいました。私は、これは余りに実態を知らない、心ない答弁だと思います。

 広島市に住む、生活保護を受けながら四人の子供を育てていらっしゃる母子家庭のお母さんからこういう訴えが寄せられました。足が悪くて働けず生活保護を受けていますが、一番の恐怖は食費です。育ち盛りの子供が競争のように食べるからです。しっかり食べて早く大きく育ってほしいと思う反面、心の中では、いいかげんにしてよと思ってしまうのです。次に怖いのが着るものです。すぐにサイズが合わなくなるのです。さらに、子供たちを遊びに連れていけないことです。夏休みに海水浴にも連れていけないことがふびんで仕方ありません。

 総理に伺いたい。公平性の確保と言うんでしたら、働こうにも働けず、少ない生活保護費で懸命に生きている母子家庭から母子加算を取り上げるのではなくて、必死に働いても生活保護水準以下の暮らししかできない母子家庭、ワーキングプアの母と子の暮らしの水準を引き上げることのために心を砕いてこそ本当の公平になるんじゃありませんか。それこそ本当の政治の責任じゃないでしょうか。今度は総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 母子加算については、本会議で答弁申し上げましたように、生活保護を受給している世帯と受給していない世帯のやはり公平性は見なければいけないわけでありまして、母子加算を含めた生活保護の基準額は、母子世帯全体の平均的な所得層の消費水準を上回っているわけでございます。ですから、今回の見直しは、生活保護を受けている母子世帯と受けていない母子世帯の公平性の確保という観点に立って、また、当然、激変緩和にも留意をしながら、段階的に加算を廃止するということにしているわけであります。あくまでもこれは、生活保護を受けている母子世帯とそうでない世帯の公平性の観点から行っているということであります。

 そしてまた、先ほど大臣が答弁をいたしました、こういう母子世帯への支援の一つとしての就労支援であります。その中で志位委員は、それは一つの例にすぎないのではないか、こういうことをおっしゃっていましたが、それは違うんですよ。ハローワークにおける就労支援について見ますと、母子家庭については、平成十四年度から十七年度の間には、紹介件数で一・五倍になっています。そして、就職件数では一・四倍に増加をしているということでございます。

 生活保護においては、全自治体の五割の自治体で、就労支援に向けた六百二十のプログラムを策定して個別の支援を行っていますが、これにより、平成十八年四月から十二月の間で、四千四百の母子世帯で新規就労、増収を実現しているんです。

 このように大きな成果を上げてきて、自立に向けて進み出している世帯もたくさんあるということもぜひ知っていただきたい、このように思うわけでありまして、今後とも、ハローワークや自治体を通じたきめ細かな就労支援や母子家庭の自立支援に我々はしっかりと取り組んでまいります。

志位委員 一・四倍とか一・五倍とかいっても、母数が小さいのですから、ごくわずかなんですよ。数千という単位のことをおっしゃいましたけれども、一人親世帯というのは百四十万世帯いるんですよ。その中の六割が貧困なんです。この問題を私は問題にしている。

 公平性と言うのだったら、働いているお母さん、ワーキングプアの母と子の暮らしを引き上げることこそ本当の公平性だと言ったのに対して、本会議の答弁と同じことを繰り返しただけでした。母子加算というのは単なる上乗せではありません。一人親で幼児や成長期の子供を育てるためには、どうしても余分な出費が必要になり、母子加算があってこそ初めて最低限度の生活が保障される。憲法二十五条の生存権の保障に裏打ちされた制度が母子加算であります。

 私は、児童扶養手当の削減、母子加算の廃止という、いわば母子家庭にとっての二本の命綱を二本とも断ち切ろうという仕打ちは、余りにも母子家庭の置かれている厳しい現実を知らない、そして冷酷無情と言うほかない政治であり、憲法二十五条の生存権を侵害するものだと考えます。これを中止することを私は求めます。

 仮に児童扶養手当を半減し母子加算を廃止したとしても、それによって削減する国と地方の予算の額は二千五百億円にすぎません。今度、来年度予算案では、大企業向けを中心とした企業減税の拡大、大資産家向けの証券優遇税制の温存で合計一・七兆円もの大減税の大盤振る舞いをやろうとしている。これを中止すれば、そのごく一部を振り向けただけでも、母子家庭や子供のいる貧困な家庭への支援をふやすことができると私は思います。

 第二の問題ですが、最低賃金の問題について伺いたい。

 日本における貧困の広がり、子供の貧困の広がりの土台に、最低賃金が世界でも最低水準になっているという問題があります。日本の地域ごとの最低賃金は、時給にしてわずか平均六百七十三円です。これでは、仮に、年間三千時間、一日十二時間、過労死ラインを上回るような働き方をしても年収は二百万円程度で、二人世帯なら貧困ライン以下になってしまいます。

 最低賃金とは、この賃金で働かせてもいいですよと言って国がお墨つきを与える制度であります。その水準が貧困を選ぶのか過労死を選ぶのかという二者択一というのは、私は大変な問題だと思います。

 私は、総理にこの最低賃金の問題ついての基本的な考え方を伺いたいと思います。

 もう一枚見ていただきたいんですが、これは、労働者の平均的所得に対する最低賃金の比率の国際比較のグラフであります。ごらんになっていただければわかるように、ヨーロッパ諸国では既に四割台を超え、五割を超えている国もあります。アメリカも最近最低賃金を大幅に引き上げる方針を決め、引き上げようとしています。そういう流れの中で、赤い棒が日本ですが、ひとり日本だけが取り残され、三二%という、最低賃金が世界でも最低水準の国になっております。

 OECDなど世界で広く採用されている国際基準でいいますと、国民の平均的所得の五割以下が貧困世帯とされます。ヨーロッパ諸国は、最低賃金を当面労働者の平均的所得の五割に引き上げ、さらに六割を目指すことを決めています。それは、最低賃金で働いても貧困にならない社会が、目指すべき当たり前の社会だと考えられているからであります。

 我が国でも最低賃金についてこうした考え方をとるべきではないのか。最低賃金で働いても貧困にならない社会、すなわち、最低賃金は労働者の平均的所得の五割を目標に抜本的に引き上げるという考え方に立つべきではないのか。現在は平均的所得のわずか三二%ですね。この最低賃金を五割を目標に引き上げるとしますと、時給で大体千円程度になります。時給千円というのは、全労連や連合などが労働団体やナショナルセンターの違いを超えて共通して要求している額ですが、我が党は、それには合理的根拠があると考えます。

 これは総理に伺います。基本的考えです。最低賃金で働いても貧困にならない社会を目標にする、そのために、最低賃金は労働者の平均的所得の五割を目標とする。仮にこの水準がすぐに実現できなくても、考え方として五割を目標に掲げることは当然だと考えますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 最低賃金については、低廉な労働者の労働条件の下支えとして重要なものであると認識をしております。今国会に提出する改正法案においては、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するように、生活保護の水準とも整合性を図りながら考慮することを明確にすることとしております。

 また、ただいま委員がおっしゃった、全国一律に千円にしろということでございますが、これはやはり、現実面を見てみますと、中小企業を中心に、労働コスト増によって事業経営が圧迫された結果、かえって雇用が失われるということになる可能性の方が高いのではないか、非現実的ではないかと私は思います。そしてまた、全国一律ということは、これはやはり、地域によって物価の水準に差がありますし、また生計費も異なっているわけでございまして、適切ではないのではないか、こう考えております。

 いずれにせよ、今回の法案が成立した暁には、各都道府県の地方最低賃金審議会において、法改正の趣旨に沿った議論を行い、現下の雇用経済状況を踏まえた適切な引き上げ等の措置を講じてまいりたいと考えています。

志位委員 抜本的に引き上げると中小企業の経営を圧迫するということをおっしゃいました。私は、最低賃金の抜本引き上げを中小企業の経営を応援する政治と同時並行で進めるべきだ、こう思います。

 中小企業の経営の圧迫と言うのでしたら、今問題になっているのは、例えば大手親企業による単価の買いたたきなど、下請いじめを横行させている政治の責任が問われると私は思います。例えばあのトヨタの場合、部品関連メーカーなど一次、二次、三次などの下請企業に対して、乾いたタオルを絞るとまで表現されるコストダウンを要求しています。ある部品メーカーの二次下請は、韓国価格と大きく表示された注文書で発注されたといいます。韓国並みの賃金でやれということですよ。アジア価格とか中国価格などの発注もされるといいますが、日本一の大もうけを上げている巨大自動車産業が、下請に対して最低賃金を全く無視した賃金を前提にした単価を要求している。こうした下請いじめの無法をやめさせることが必要ではないか。

 また、政府が進めてきた規制緩和万能論というのは、中小企業を本当に痛めつけています。大型店舗の出店が野放しになった結果、全国の地元の商店街が荒廃させられ、どこでもシャッター通りです。タクシー業界に規制緩和を押しつけられた結果、タクシー労働者の収入は激減し、多くは最低賃金ぎりぎりの生活を強いられています。平均賃金が地域の最低賃金を下回っていると推定された県が、宮崎、大分、高知、島根の四県あります。宮崎のタクシー労働者の時給、御存じでしょうか。時給換算わずか五百十八円です。地域最低賃金の六百六円よりもはるかに低い水準で労働を余儀なくされている。中小企業を痛めつけている規制緩和万能論を抜本的に見直すことが必要じゃないでしょうか。

 私は総理に聞きたい。最低賃金の抜本引き上げを、今述べたような中小企業の営業を守る政策に本腰を入れて取り組むことと同時並行に進めるべきじゃないでしょうか。そうすれば、最低賃金の引き上げは、労働者の収入をふやし、消費をふやし、地元の中小企業の売り上げ増につながり、そして日本経済を草の根から温めていく力にもなるでしょう。最低賃金の抜本引き上げと同時並行で中小企業の営業を応援する政治に切りかえるべきだ、これは同時並行でやるべきだ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私たちがやろうとしていることは、まさに、最低賃金を四十年ぶりに改正するということと、中小企業を支援していく、中小企業の生産性を上げていく、あるいは地方の中小企業を支援していく、地方の中小企業において地場産業としていろいろな特性を生かしているのであれば、それを応援していこう、そういうことにおきまして、私どもはまさに、この最低賃金の改正と中小企業の支援を同時に行っていきたいと考えております。

志位委員 同時と言われますけれども、抜本的引き上げはやらないと言うわけでしょう。生活保護の水準に見合ったものにしか、その程度にしか引き上げないと言うわけでしょう。私が言っているのは、五割の水準を目指すべきだ。そうしなかったら、最低賃金で働いても貧困から抜け出せない社会なんですよ。それではいけないということを私は申し上げた。

 なぜ抜本的引き上げということが言えないのか。もう一回答えてください。

安倍内閣総理大臣 私どもはまさに四十年ぶりの改革を行います。しかし、その中で、中小企業の実態を見ながら、結果的に経営を圧迫して雇用が失われないようにしなければならない。そこも私たちはやはり留意をしなければいけないんです。そして、全国一律であってはならない。東京と地方とではいわば物価も全然違うわけでありまして、かかる生活費も違う中において、そしてその中で地方がその地域の特性を生かして、強さを生かして頑張っているのであれば、その強さを奪ってはならない、私はこのように思います。

志位委員 四十年ぶりの最低賃金制の改定だと言われました。最低賃金制度が創設されたのは一九五九年ですけれども、時の首相は岸信介首相でありました。

 創設の際にもこれと同じような議論があったんですよ。すなわち、最低賃金制度をつくるよりも中小企業対策を先行させるべきだ、中小企業を圧迫するから最賃制はふさわしくないという議論があったんですよ。それに対して当時の岸首相は、国会答弁でこう言っている。むしろ並行して進めるべきだ、この制度が施行されて、中小零細企業の劣悪な労働条件が改善され、能率も上がり、事業も安定し、過当の競争もなくなるということがむしろ中小企業の対策としても効果があるし、それによって混乱を生ずることはないと考えておりますと述べております。私、立場は違いますが、見識ある発言だと思います。引き継ぐと言うのだったら、こういう見識こそ引き継ぐべきではないか。

 一律の制度は適さないと言いました。しかし、全国一律の制度をつくって、地域ごとに上乗せしたらいいんです。私は、格差と貧困の度合い、これを土台から正していくためにも、最低賃金を抜本的に引き上げ、全国一律の制度にすることが本当に強く求められているということを強く求めて、質問を終わりにいたします。

金子委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 二十一世紀に入り、七度目の春がめぐってまいりました。今多くの国民にとって、しかし、この春は、不安と不穏と、そして希望をどこに見出していいのか、なかなか見えない春のようにも思います。

 実は、私どもを取り囲みます環境は、国の内外を問わず、一つには地球の温暖化という、この地球自身が持続可能なのかどうかという問題、あるいは広がる戦争の影、特に核は、核廃絶に向かうべきところ、あちらこちらで核の拡散が生じております。また、きょうの質疑の中でもいろいろな方が取り上げられましたが、グローバル化経済のもとで、世界のあらゆるところで格差が広がり、むしろ新たな貧困が出現しております。

 こうした中にあって、先日伺いました安倍総理の施政方針演説は、残念ながら、小粒で内向きで、希望の見えないものでありました。

 私は、本日は、まず基本的な施策について主に安倍総理に三点、そして関連する具体的な施策につきまして三点、他の国務大臣にお伺いしたいと思います。

 冒頭、通告外のことでございますが、せんだってフランスで行われました政府間の地球温暖化をめぐるさまざまな会議、今、私どもの住む地球は非常に温暖化を早めております。我が国の都市の名を冠した京都議定書は、その提唱国、取りまとめ国である我が国すら、既に目標達成にはるかに及ばず、そして地球はどんどん熱していっております。

 総理が所信表明演説の中でお取り上げになった地球温暖化への対策は、しかし、たった六行、紙に直してです。そして、特に私が不思議に思いますのは、「京都議定書目標達成計画に基づき、」云々と書いてございますが、もうすぐこの見直しが迫ってございます。二〇〇八年でございます。

 それからまた、二十一世紀環境立国戦略ということを述べておられますが、これは、我が国がどのように立国していくかということにとどまっており、今我が国が世界の温暖化に対して発揮すべきリーダーシップが見えてまいりません。

 総理に伺います。本当に今、世界に向けて日本が発信すべき環境問題は何であるのか、どのようなプロセスを、どのような取り組みを総理はお考えか、お願いします。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 私が施政方針演説で述べました二十一世紀環境立国戦略、これは今委員がおっしゃった我が国だけの中で終わってしまうようなものでは全くなくて、むしろ逆なんですね。全く逆だということを申し上げておきたいと思います。

 まずは、京都議定書の目標達成のために、私たちは全力を尽くしていきます。何とか私たちに課せられたこの義務を果たしていきたい。何といっても京都という名前がついている以上、私たちには大きな責任があるし、子供たち、孫たちの世代のためにその目標は必ず達成したいと考えています。

 そして、それと同時に、ポスト京都議定書の枠組みについても、枠組みづくりにおいてこそ、まさに日本も大きな役割を果たしていきたい、リーダーシップを果たしていきたい、それこそがこの二十一世紀の環境立国戦略である、こう申し上げてもいいと思います。

 先般、ヨーロッパに出張をいたしました際にも、ブレア首相あるいはメルケル首相とも話をしました。今度のドイツのサミットにおいても、環境問題、地球温暖化が大きなテーマになるわけであります。来年は日本がホスト国になるわけでありますが、その際にも当然大きなテーマになる。そのことは、ドイツ、日本、お互い連携をとって、その連携の中でさらにこの温暖化対策が進んでいくように努力をしていこう。そして、ポスト京都議定書については、これはアメリカとか中国とか大きな排出国が入っていません。途上国の問題もある。そういう国々を枠組みの中に入れていくための仕組みを、日本もこれはまさにリーダーシップを発揮して役割を果たしてまいりたいと考えています。

阿部(知)委員 非常に抽象的で、やはり国内の政策一つとっても、みずから見返していないと思うんですね。本当に京都議定書の目標は達成できるでしょうか。あるいはまた、炭素税などの取り組みも、環境省の方ではこの数年、いろいろ形を変えて税制の改革の中で提案されておりました。しかし、政府として前向きに検討された気配がなかなかございません。あるいは排出権の取引をどうするか。いずれも今総理がおっしゃったのは気構え。でも、具体的には進んでいない。そして、地球はもう待ってくれない。

 私は、きょう、このことは通告外のことですし、また時間制約がございますので、今の総理の御答弁は、一応心意気としては伺いましょう。しかし、具体的にお進めいただかねば、本当に大事な私たちの地球がもう悲鳴を上げています。これが国際政治の合意事項であります。日本は、ぜひその意味でも、世界の中で……(発言する者あり)後ろがおっしゃるように、アメリカも中国も、大国が乗ってきていないのです。だからこそ大変なのです。だからこそ日本が頑張らねばならないのです。いろいろな方策と枠組みを新たに提案していけるだけの実績、まず国内目標の達成、何度も申しますが、はるかに及んでおりません。総理はそのことを御存じであろうかと思います。具体的な数値目標、少子化ではありませんから、挙げていただいて結構ですから、きちんとやっていただきたいと思います。

 二点目。これは、先ほど民主党の岡田委員がお取り上げでありましたが、今、核の問題をめぐっては、むしろ核拡散の恐怖が、私どもの身の回り、すぐ近くをとれば北朝鮮問題、あるいは中東の問題もしかりでございます。イランもそうでしょう。そして、インド、パキスタンというこれから核大国になってくるやもしれない、南アジアにまたもう一つ核大国ができるかもしれないぎりぎりのところに、瀬戸際に立ってございます。中身の論議は、先ほどの岡田委員とのやりとりで重なりますので。

 私は、あれを聞いても、総理には核廃絶のリーダーシップをどうとっていくのかの見識がうかがえません。なぜならば、四十五カ国が、この核のいわゆる材料となるものの取引をめぐって、やはり野方図になってはいけないと、核提供国グループと申しますが。その中で、今度アメリカとインドが約束した、民生用なら核の、特にプルトニウム等々の生産もいいであろうということ。しかし、民生用と軍事用は、分け隔てが実はなかなかできません。民生用が外から材料が入ってきたら、インドの国内の材料は軍事用に行きます。日本は、この四十五カ国の枠組みの中で、それこそ戦争による唯一の被爆国であります。であるならば、周りの皆さんともいろいろ御相談申し上げてではなくて、ここは、我が国がリーダーシップをとる。インドは核拡散防止条約も締結しておられません。辛うじて民生分野だけIAEAの査察を受け入れたとして、今言ったような問題がございます。

 さて、総理はどうなさるおつもりか、もう一度明言していただきたい。ここは世界の核廃絶に非常に重要な岐路に立っております。さっきの御答弁では到底納得もできませんし、リーダーシップも見えません。お願いします。

安倍内閣総理大臣 先ほどの答弁で申し上げましたように、日本は、核の不拡散、また核不拡散体制の維持強化に力を注いできたのも事実であります。また、国連の場において核軍縮の決議を、日本がリーダーシップをとって採択をずっと毎年行ってきているわけでございます。そして、非核三原則を堅持しているということでございます。

 インドについては、先ほど申し上げましたように、日本と同じ、共通の価値を持つ国であって、自由や民主主義、基本的な人権や法律の支配、そういう価値観を共有しているわけであります。日本とあわせてアジアの二大民主主義国家と言ってもいいのではないか。このような観点を踏まえまして、昨年の十二月に訪日をされましたシン首相との間で、日印戦略的グローバルパートナーシップ構築に向けて、政治、安全保障、経済、人の交流等、幅広い分野で協力していくことで合意をしたわけでございます。

 しかしながら、先ほど申し上げました日本の立場、またインドは、今委員が御指摘になったように、NPTにも加盟をしていないわけでございます。他方、しかし、先ほど先生が例として挙げられた北朝鮮とイランとはやはり違うというふうに申し上げたいと思いますが、核の不拡散に北朝鮮やイランと違って明確にインドはコミットしているということも、これは申し上げておかなければならない、このように思います。しかしながら、インドへの原子力協力については、国際的な核軍縮、核不拡散体制への影響等を注意深く検討していく必要がある、考慮をしていく必要がある、こう考えています。

 インドのシン首相は、昨年の十二月に我が国の国会で演説を行いました。その際、普遍的核軍縮に対するインドのコミットメントは不変である旨述べているわけでありまして、同国と軍縮、不拡散分野においても可能な協力は進めていきたい、こう考えています。そして、今後、先ほど申し上げましたように、この問題については国際的な場で日本も発言をしていきたい、協議をしていきたいと考えております。

阿部(知)委員 総理、今おっしゃっていることは、今世界じゅうで既に、カットオフ条約というのは御存じですよね、日本語で言うと核分裂性物質生産禁止。既に核を持っている五大国はカットオフ条約をきちんと枠組みとして守っているんですね。でも、今度のインドの場合に、何度も申しますが、民生用と軍事用を分けて、しかし民生用の材料は輸入してもらう、自国のものは軍事用に使うとなっていく可能性が否定できないんですね。カットオフ条約も、これで核分裂性物質を、とりあえず生産を禁止しようという今の五大国の枠組みすら壊れるんですよ。そんな認識で、本当に総理、核廃絶と言えるでしょうか。私は、余りにも情けない、その態度は。

 そして、麻生外務大臣に伺います。

 今、安倍総理は、いわゆる価値観を共有しておるから、これからインドとの、いわゆる今後の、麻生大臣の所信表明にもありましたね、自由と繁栄の弧だ、インドやニュージーランドあるいはオーストラリア、そうした国々との自由と繁栄の弧、価値観を同一にすると。それは、自由主義あるいは市場主義、そういうことが同一であると同時に、もっと根本的な価値観として核廃絶というものがなければ、今、地球も消滅、人類も消滅、こういう危機的な時代なんですよ。

 麻生外務大臣に伺います。

 インドのこの核の問題、また、大臣の所信表明演説の中で、なぜこの自由と繁栄の弧の中に核の問題が触れられないのか。私ども社民党は、例えば東アジアにおける非核共同体というふうな表現を用いて、常に核の問題と外交の問題と平和構築の問題を、それは理想形であれ、言い続けることによって、世界の常識にしていきたいということで進んでおります。

 麻生大臣に伺います。

 このたびのインドとアメリカの間に行われた、アメリカの国内法の改正も踏まえた上で、果たして、これからインドが核大国にならないための歯どめ、あるいは我が国は、四十五カ国の核提供国グループ、原子力のグループの中でどんな対応をみずから率先して歩んでいくべきか、御意見があればお願いいたします。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 最初に、自由と繁栄の弧の中に、オーストラリアとかニュージーランドとかいうような名前よりは、むしろカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムというところからスタートしたと思いますので、オーストラリアとかニュージーランドとかいう名前をあのときあえて挙げておりませんし、韓国も同様に挙げていないと思っております。なぜなら、これらの国は既に自由と繁栄をしている国だからだと思っているからであります。

 ちょっとそこのところは私の記憶が違っているかもしれませんけれども、それが基本的に私どもの考え方でありまして、ユーラシア大陸の周辺国家の中にあって、今から自由とかそういった基本的人権とかいうものをきちんと確立していこうとして、この十年、十五年、今やっとスタートしたようなところを我々は支援をしていくというのを基本的なコンセプトとして自由と繁栄の弧というのを申し上げておりますので、今言われましたニュージーランド、オーストラリアという名前は多分入っていなかったと記憶をいたします。

 インドのお話があっておりましたけれども、インドのことにつきましては、先ほども安倍総理の方からお話があっておったのが基本だと存じます。インドというところは、先ほど阿部先生の言われた環境の問題の点からいきますと、この国にうまく原子力発電等々を使っていってもらうということ、環境問題等々を考えますと非常に大きな関係があるということは、もうよく御存じのとおりだと存じます。

 したがって、ここは民生用できちんとしたものをやっていく。例えば日本がその例かもしれませんけれども、日本も原子力の平和利用というものに関して、IAEA等々、最も信頼の高い国の一つだと存じます。そういった国として、インドという国も同様に、いろいろな意味でこれから日本と一緒に経済的な繁栄をやっていってもらうことの期待できる国、可能性の極めて高い国だと思っております。

 ただ、それは、急に発展をいたしますとどうなるかというのは、もう過去に例のあるとおりであって、環境問題等々は、あそこの十億、十一億の民というのは極めて影響が大きいと思っております。

 したがって、NPTに加入しておりませんインドのことでありますので、その点に関しましては、いわゆるIAEAとインドとの間の協定とかいうのがいろいろよく言われるところでありますが、保障措置の協定とかいろいろなものが今言われているところでありまして、今後とも、この内容をどうやっていくかというのは、これは日本一国でできるわけではありません、いろいろな意味で協力していかなきゃ話にならぬ、基本的にそう思っております。

阿部(知)委員 これも麻生大臣の所信表明をもう一度文書で確認せねばなりませんが、たしかあのとき、豪州という形でオーストラリアは入っていたと思います。

 それから、なぜ私がこの質問をしたかというと、今大臣もおっしゃいましたが、インドや豪州という日本にとって非常にある種遠い国、ここと、逆に、価値等々を共有している、一応市場経済を共有する韓国等々、そのこちら側ばかりがなぜ入って、韓国等々のことが言及がないんだろうと素朴に思いました。そして、大臣の所信では、アメリカ、そしてこの豪州、そして、たしかインドでございました。

 いずれにしろ、私ども、外交の骨格の基本精神に、やはり核の問題はきっちり置いていただきたい、それが日本が世界にできる大きな役割であると私は思います。

 大臣と総理にもお願いがありますが、インドの例えば原子力政策、これから地球環境の問題で、何とか共存可能なことで取り上げていかねばならないとしたら、やはり核拡散防止条約と包括的核実験禁止条約にきちんと入って守って、世界の枠組みを壊さない、そういう方向に事を進めていただくべきです。この原則が吹っ飛んでしまっては、さっき申しましたカットオフ条約すら逸脱するような、核兵器になり得る物質がためられていくのです。

 この二点については、私は、本当に日本の国の将来や世界を過つと思いますので、よろしくお取り組みいただきたいが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 委員のおっしゃるように、すべての国がNPTあるいはCTBTに加盟する、これは理想の姿であろう、そして核を廃絶する、これは我々の究極の目的であろう、このように思います。しかし、その中でインドという存在をどう考えるかということで、私も大臣も答弁したわけでございます。

 十一億の民がいて、さらに人口がふえていく中において、最初に委員が御指摘になったように、温暖化を防がなければいけないという中においては、原子力発電をどう考えるかということも我々は真剣に考慮もしなければならない。もちろん、インドに対しても我々もいろいろな観点からいろいろな意見を申し上げているということは申し上げるまでもない、このように思うわけでありますが、私どもとしては、先ほど申し上げましたように、インドについては、いろいろな観点から考慮をしていきたい、国際的な場で議論をしていきたい、こう考えている次第であります。

 あと、カットオフ条約については、まだ交渉が始まっていないという状況でございます。

阿部(知)委員 今はちょっと御答弁になっていませんが、私は、原子力政策云々をおいたとしてもと申しました。やはり、核拡散防止条約、包括的核実験禁止条約、カットオフ条約は、きちんと守られねばならないのです。そこの原則を政府は持っていただきたいと重ねて申し上げます。

 さて、今、私は、環境の問題、核と戦争の影の問題、そしてもう一点、世界がグローバル化したことによって、日本の国内での格差の問題もありますし、世界じゅう至るところで実は貧困が拡大していると思います。それがまた世界を不穏にし、テロなどの温床になっているということも、恐らくここにいる皆さんは共通認識だと思います。

 そして、時間の関係で、本日は申しわけございませんが、国内の問題で私は一つ総理にお伺いしたいです。

 先ほど来、総理は、イザナミ景気、特にイザナギ景気を超える好景気であると。そして、これからは、その果実が庶民に、国民に行き渡るように政策をしたいと思っていられるんだと思います。

 では、そもそも伺います。

 先ほど、どなたでしたか、委員のお一人がお示しになりました。イザナギ景気のころ個人の所得は上がっていったのに、今回は個人の所得も下がっている、消費も低迷しているという状況です。なぜ私たちの暮らしは楽にならないんでしょうか、何が目詰まりしているんでしょうか、何がいけないんでしょうか、いつ楽になるんでしょうか。教えてください。

安倍内閣総理大臣 最初に私が答弁いたしまして、詳しくは担当大臣から答弁をいたします。

 再々この委員会でも議論があったわけでございますが、今回の景気回復は、いわば企業部門を強化する、三つの過剰を解消しながら景気が回復をしてきたわけでございます。そして、いわばデフレ下の景気回復と言ってもいいかもしれません。その中で、残念ながら、家計部門にまだ景気の回復の波及がない、大変弱いということではないかと思います。

 しかし一方、雇用については大変明るい兆しも見えてきたわけでありまして、有効求人倍率も、〇・五だったものが一を超えてまいりました。失業率も、かつては五・五%ぐらいまで上がってきたものが四%ちょっとになってきた。そして、大卒や高卒の方々の就職内定率もよくなってきた。そして、初任給を上げようかと考える企業もだんだん出てきているわけでございます。そういう意味におきましては、この息の長い景気回復によって、やっと雇用や給与にも反映されつつある、こう考えているわけであります。

 その中で、私たちは、さらに、新成長戦略を進めながら労働法制を変える、あるいはまた、先ほど労働法制の中で最低賃金についても申し上げました、パート労働法についても申し上げたわけでありますが、そうしたことをしっかりと行いながら、働く人たちが働くことに生きがいや誇りを見出せるように政策を実行してまいりたいと思います。

 大田さんから。

阿部(知)委員 申しわけありません。大田大臣には、時間の関係で、また後ほどゆっくりと伺いたいと思います。

 なぜ、企業が利益を上げる中で、まあ空前と言ってもいいかもしれません、一人一人の生活は楽にはならないのか。

 私は、この年明け、地元で、いわゆる飲食店街の皆さんの新年会に出席いたしました。何せ、売り上げが本当にこの十年のうちでも最低なんだと。普通にお食事をするような、ちょっとしたサラリーマンの皆さんが寄る、あるいは私たちが会合に使うような普通の飲食のお店です。その、最低なのよ、売り上げがという言葉の中に、私は本当に実態と実感があるんだと思います。ちょっとのお金の余裕がありません。そして、もちろん、先ほど来志位委員がお取り上げになりました子供の貧困化、あるいは生活保護以下の家庭でお暮らしの家庭もふえてまいりました。

 今、総理は、このことを解決していくのに二つの政策をお挙げになりました。今、政府のお取り組みで、最低賃金を、抜本的、画期的ではないけれども少し上げようということと、働き方も、やはり、一千七百万人非正規雇用、これはだれが考えたって不安定だし困るよねと。もう、そうです、そのとおりです。ただ、そのどの程度が対策されるかは、ちょっとさっきの柳澤大臣の四、五%も私はまた別途論議したいと思いますが、もう一つ、総理もお気づきでしょうが、税制の問題がございます。働き方、最低賃金プラス税制が、私は、三つ絡まって今の庶民の暮らしを苦しくしたんだと思います。

 せんだっての少子化問題のときの質疑で共産党の佐々木委員がお取り上げになりましたが、二〇〇四年から二〇〇七年のいわゆる庶民増税と言われている所得税や住民税の増税で、約四兆五千億という数値を挙げられました。一方、実は、橋本内閣が終わってからと言わせていただきますと、この十年余りで企業に対して行われた減税のトータルは、何とほぼ同一の四兆五千億です。庶民増税と企業減税がそっくりバーターされてしまうような形、これではいかに何でも、庶民の暮らしは、民のかまどはにぎわわないと思います。尾身大臣、いかがですか。

尾身国務大臣 企業減税について、これをやり過ぎだというようなお話がございました。

 これはどういうことかといいますと、経済の活動が国際化した、したがいまして、日本関係の企業といえども、あるいは外国の企業といえども、どこにその生産活動の拠点、経済活動の拠点を移すかということは、その企業の観点からどこがいいかということを中心として決定する。つまり、企業が国を選ぶ時代になりました。そういう時代になったときに、この日本という国が企業活動の拠点として選ばれるような状況になっていかなければならない。その点、日本の税制が本当にそういう状況になっているかというと、いろいろな問題がございます。

 法人税の実効税率は、実は、アメリカ、ドイツと並んで日本が一番世界的に高い水準でございます。そういう中で、十九年度については、減価償却のやり方について、ほかの国が全部一〇〇%まで認めていたものを日本だけが九五%しか認めていないというハンディキャップを直す、つまり、イコールフッティングにするという改正を一つ行いました。

 そういう意味で、これは大企業だけではなしに中小企業にも適用したわけでございますが、そういうことによってイコールフッティングに一歩近づいたというふうに考えております。

阿部(知)委員 質問したことに答えていただきたいと思います。

 企業減税、トータルで、九八年からことし、二〇〇六年末まででもいいですよ、四兆五千億なんです。中には、いろいろなものがあります。もちろん、平成十年度にはいわゆる法人の税率が下がってまいっております。三七・五から三四・五、さらに翌年、現在の三〇%。そのほかにも、いわゆる連結決算になさいましたよね。それから、例えば銀行などは、今、真っ黒々でも法人税を払わなくていいことのもとには、欠損金の繰越期間の延長とかもありました。とにかく、繰り返し繰り返し企業に対して行われた減税の総額が四兆五千億です。

 そして、何度も申します、これはせんだって佐々木委員がお示しでしたので。庶民増税は、いわゆる恒久的減税と言われた定率減税の廃止や配偶者特別控除の廃止で、住民税と所得税と合わせて、ちょっきり、本当に四兆五千億内外なんです。このバーターは、この取っかえっこはひどいんじゃないのと。

 そこで、企業がよくならないからということを常におっしゃいますが、一方で企業を支える人をこれだけ痛めつけたら、いわゆる橋本内閣のときの九兆円の増税が、その後、失敗だったからこそ恒久的減税が小渕内閣のもとにとられたんじゃないですか。冷え込ませて立ち上がれなくしてしまう、そういうことを税制の中でもしてきたんじゃないですかという御指摘です、私の言いたいのは。

 そして、大臣には見ていただきたいものがあります。お手元の三枚資料では、一番最後のページになるかと思います。テレビをごらんの皆さんには、簡略なグラフに示してまいりました。

 これは、九八年、橋本内閣の終わるときと思っていただいていいです。それから、九九年の恒久的減税の定率減税。それからどんどん来て、七年度の今日です。私は、恒久的減税を、恒久的にでなく、やめてしまったことも本当に問題だと思いますが、それ以外にもこのグラフにはもう一つの特徴があります。恐縮です、尾身大臣、何だと思われますか。

尾身国務大臣 年収五百万円の個人が、一九九八年のときよりも、現在ただいまが増税になったということをおっしゃりたいんだと思います。よろしいですか。(阿部(知)委員「そうです」と呼ぶ)これは、そのとおりでございます。

 なぜそのとおりかというと、一九九八年には、年収五百万円の夫婦子供二人で専業主婦家庭は十七万円の税収でございました。しかし、一九九六年に共稼ぎ家庭といわゆる専業主婦の家庭の数の比率が逆転をいたしまして、専業主婦の家庭だけに適用していた配偶者特別控除というのは、共稼ぎ家庭と専業主婦家庭の間の負担の均衡を崩すものであるということで、これを廃止いたしました。

 したがいまして、その結果、先ほどのように十九万五千円。これは、よく御存じのとおり、定率減税のことを、これは定率減税が始まる前からの話と終わった後の話でございますので、除いて考えまして、今のような結果になっているわけでございます。

 ただ、私どもは、その場合、そういうことになっているのでありますが、それでは国際的に見てどうかといいますと、日本の十九万五千円は、同じ五百万の所得の人に対して、アメリカでは二十四万円、イギリス四十五万円、フランス四十二万円ということになっておりまして、ほかの国よりも税金は低い。

 そして、ただドイツだけが、給与、年収五百万円の夫婦子供二人のいわゆる専業主婦家庭は、税率ゼロになっております。ドイツの場合には、いわゆる子供に対する減税が非常に多くありまして、その結果としてゼロになっている。したがいまして、ドイツの場合においても、夫婦だけの世帯の場合には日本よりも税が高い、こういうことになっておりまして、所得課税は、ほかの国と比べて日本は全体として低いという数字になっております。

 ちなみに、国民所得に占める税の負担の割合で見ますと、個人所得課税では、日本が八%であるのに対して、アメリカ一一%、イギリス一三%、ドイツ一一%、フランス一〇%ということで、全体の国民所得の中における所得課税というのは非常に低い。反面、法人課税は、日本が七%、アメリカ三%、イギリス四%などなど、法人課税は、実は、世界的比較で見ると現在でも一番高いという数字になっております。

金子委員長 簡潔に願います。

尾身国務大臣 ちなみに、消費課税は、日本が七%、アメリカ六%に対して、イギリス一五、ドイツ一四というようなことで……

金子委員長 尾身大臣、簡潔にお願いいたします。

尾身国務大臣 いや、税の現状ですから、これは国民の皆様によく理解をしていただかなければなりません。(阿部(知)委員「聞いたことに答えていないんです」と呼ぶ)いや、聞いたことに答えております。

 そういう全体のバランスもお考えいただきたいということを申し上げております。

阿部(知)委員 論点をずらしたら、いい審議なんてできないんですよ。

 私は、なぜ年収五百万の世帯の方が課税の額がふえていっているのか、年収の少ない方に重い課税がかけられていったら、中間層と言われる、私どもの社会を支える大事な中堅層がどんどん疲弊していくということで申しているんですね。尾身大臣はさっき、橋本内閣の九兆円の負担増のあのときよりも今の方が負担が高いんですよと言いましたよ。まさにそのとおりなんですよ。だから民のかまどはにぎわわないんです。

 どんどん貧困化が進む、生活保護以下のお暮らしの方がふえる、と同時に、今の我が国の最も深刻な問題は、中間層が二極に分化していかされているんですね。ここに政府が目配りをしないと、本当に安心した暮らしはないんですよ。そこをきっちり、尾身大臣、法人税の話はまた別にしますから、時間のあるときに。

 私にも言いたいことがあります。だって、企業は、全部この間、社会保障負担をパートやアルバイトにして免れて、そこの保険料負担も免れ、減税もして、さらにこれから法人税減税などということがよもよも考えられるのであれば、きちんと法人税の姿を、社会保険料負担も含めて是正していただかなければ次の論議はないと私は思っておりますから、恐縮ですけれども、大臣にはまた別途改めて伺います。

 ここで伺いたかったのは、なぜ五百万円の、七百万円の人だってあの橋本内閣のときと同じようにひいひい言っているんです。でも、五百万円の人はもっと苦しいんですよ。そんなことをして日本の消費が伸びるわけないじゃない、景気が回復するわけないじゃないですか。

 安倍総理、いかがですか。ごめんなさい、もう今度は総理にしてください。

金子委員長 では、先に尾身財務大臣。簡潔に願います。

尾身国務大臣 私は、先ほどの、税の五百万円の分が一九八〇年ころより上がったということを認めた上で、それでも国際的に日本の所得課税は低いということを申し上げております。

安倍内閣総理大臣 現在のことをお話しいたしますと、まさに今、力強く景気は回復の局面にあるわけでありまして、さらに私たちは、この景気回復局面を維持していく、力強く経済を成長させていきたい。そして、この景気の果実を家計に波及させることによって消費の伸びを呼び込み、さらにそれによって健全な景気回復の循環の中に入っていきたい、こう考えています。

阿部(知)委員 何度も示しますが、こんなことをしていたらそうならないんですよ。本当に、消費がどうやって上向いていくか真剣に考えていただきたい。今の総理の答弁は何かわけわかんない、本当に。真剣味がないですよ、申しわけないけれども。私は、まだ一生懸命言う尾身大臣の方がその分真摯だと、申しわけないけれども、思いますよ。これは間違っているんですから。

 次に行かせていただきます。個別の問題に入らせていただきます。

 実は、もう総理も御存じかもしれませんが、現在非常ににぎわいのある築地の市場が、平成十八年度から移転計画が既にオンゴーイング、始まっておって、埋立地である豊洲、元東京ガスの跡地に移転が計画されております。

 ところが、この豊洲という地域は、もともと埋立地であるばかりか、東京ガスの調査によりましたらば、さまざまな有害物質が出るわ出るわ。こんなところに、例えば砒素、砒素なんてあっても困りますよね。聞いても恐ろしい。超過倍率というので四十九倍。あるいはシアン、これは、ゼロでなくてはいけないものが四百九十。そしてベンゼン、有機溶剤、千五百。どれを見ていただいても、ぎょっとするような値なのであります。

 さて、皆さんのお手元にも配ってありますので、しっかりここを見ていただきたいですが、このような汚染地に大事な食の安全をつかさどる築地中央市場が移転するといいます。農水大臣松岡さん、お伺いいたします。果たして安全でしょうか。一問です。

松岡国務大臣 お答えいたします。

 先生の御指摘のとおり、築地の市場が老朽化し、手狭だ、こういったことから豊洲の方に移転の計画がある、そのように承知をいたしております。主体は東京都が行うわけでございますが、今先生が御指摘の点につきましても私ども承知をいたしております。現在東京都が環境影響評価を行っておる、こういうことでございまして、これは十分私どもしっかり見守りながら確認をいたしたい、こう思っております。

 そして、先生これは御指摘のとおりでございまして、間違っても、東京都民はもちろんでありますが、国民の食生活にとって、安心、安全にとって、これは一番健康、生命にも重大なかかわりを持つ問題でございますから、私ども、先ほど申し上げましたように、科学的見地に立って、十分万全な基準をクリアできる、そういったことをしっかり求め、確認をしてまいりたい、このように思っているところでございます。

 改めて申し上げますが、本当にこれは重大な関心を持って私どももしっかり対応してまいりたい、このように思っております。

阿部(知)委員 では、環境大臣にお伺いいたします。

 私は、一点目、地球温暖化問題を取り上げましたが、土壌汚染問題あるいは地下水の汚染問題も極めて深刻になっております。日本が高度経済成長期にいろいろな工場ができ、そこが、工場が立地されたところは土壌が汚染されております。

 今、この築地のこれまでの調査、築地移転にかかわる豊洲の調査は、実は二〇〇三年に土壌汚染対策法が成立する以前の基準にのっとった検査しか行われておりません。どういうことかというと、汚染状況を調べるのに、十メートル、十メートルの百平米で調べるのか、三十メートル、三十メートルの九百平米で調べるのか。九百平米でしか調べてございません。土壌汚染対策法も、そもそもまだまだ予防原則にのっとっていなくて問題があります。地下水の汚染もなかなかこれでは防止できません。

 ただしかし、私がここで環境大臣にお伺いしたい、あるいはお願いしたいのは、この築地の市場というのは、先ほど松岡農水大臣もおっしゃられました、日本全国の国民の食の台所でございます。であるならば、きちんとした、環境省が安全だという宣言をしていただいて後です。地方自治の問題だけではないと私は思っております。日本全国の国民にかかわります。

 特に私が非常に懸念いたしますのは、地球温暖化の中で海面の水位が上がってくると言われています。豊洲には、大臣、行かれたことはありますか。同じ高さなんですよね、豊洲の予定地と海面は。地球温暖化して水面が上がってくる、あるいは地熱で中が温まれば、ベンゼン等々は上に出てまいります。幾らアスファルトで囲っても、この亀裂の中から出てくるものが当然予想されます。

 地球温暖化の影響も加味して環境省として安全宣言を出すとすれば出していただきたいが、いかがでしょうか。

若林国務大臣 阿部委員が御指摘のように、東京都の設置管理しております築地市場が豊洲地区に移転をするという計画のもとに、いろいろ事業が進められております。その移転先であります豊洲地区の所有は主として東京ガスでございますが、東京ガスが長年にわたって事業用地として使用した結果としてその地区の土壌が大きく汚染をされているということは、御指摘のとおりでございます。

 そこで、その土壌の汚染を解消しなければ、心配ない状態にしなければ新しい土地利用というのは適当ではない、このように考えるわけでございますが、現在、この豊洲の市場予定地では土壌汚染対策が積極的に講じられております。この土壌汚染対策の考え方は、汚染土壌のあるところについては、二メートル掘り下げて、全部その土壌をクリーンにします。その上にさらに二・五メートルの土壌を積み重ねます。したがって、四・五メートルの汚染されていない土壌を置きまして、その上にアスファルトを敷くということになっています。

 一方、これは土壌汚染法の適用前の事業ですから法律の適用がありませんが、実は土壌汚染法上の、もし適用されるとすればどうかとすれば、実は五十センチメートル以上の被覆によって安全であるということを中央環境審議会等の専門家の意見を踏まえて決めているところでありまして、今進行しております四・五メートルの土壌の入れかえとアスファルトの被覆によりまして、ほぼこの問題は、安全上の問題はないという判断をいたしております。

阿部(知)委員 結論だけ端的にお願いしたかったのですが。

 そういういろいろな理論に基づいて、大阪のアメニティパークでも実際に埋立地等々の土壌汚染の問題が起こり、今大変に係争中であります。何度も申しますが、食の安全、環境対策から環境大臣がそんな姿勢では、本当にこの先、日本は真っ暗けです。

 最後に一問だけ、総理にお願いいたします。

 この図、ごらんいただきたいのですが、これはいわゆるお産の無過失補償制度です。脳性麻痺のお子さんが生まれた場合に、裁判外の紛争の処理によって何がしかの給付金をしようということです。

 時間がないので、総理には一点だけ伺います。

 先ほど総理は、小児科や産婦人科は大変だから、産科や小児科に診療報酬上の手当てをしようとおっしゃいました。具体的に、産科の診療報酬手当てというのは、どういうことでしょうか。この最後の一問で終わらせていただきます。

安倍内閣総理大臣 診療報酬については、診療報酬の改定の際に議論をしていただくことになるわけでありますが、小児科、産婦人科もあわせて、診療報酬上においてどういう考慮が可能かということを検討していきたい、こういう趣旨で申し上げたわけであります。

阿部(知)委員 お産は保険診療から出ておりません。診療報酬手当てで解決する問題はごく限られております。総理もおわかりでしょう。お産は出産一時金なのです。診療報酬ではないのです。保険診療外なのです。その原則を、さっきからの質疑を聞いておりますと、あたかも診療報酬で手当てできる。違うじゃないですか。私は、時間があればこの仕組みをもっときっちりと論議したいと思います。

 以上です。終わらせていただきます。

金子委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、亀井静香君。

亀井(静)委員 総理、あなたに野党の立場で質問することになろうと私は夢にも思わなかった。総理、もう小泉政治、こんなものとはさっさと決別して、本当に私は、あなたの思想、信条、御性格、かねがねすばらしいものだと尊敬しておる一人です。あなたの思想、信条、お人柄で政治をやられませんか。国民はだれも怒りません。みんな喜ぶんですよ。

 総理、あなたにはわかるはずだ。この日本列島の津々浦々から弱いうめき声が聞こえているでしょう。今また鶏の悲鳴さえ聞こえてきている。松岡大臣、あなたは閣内でも仕事ができるという評判の高い大臣だと私は思っています。しっかりやってくださいよ。

 総理、今の日本、本当にいいんですか。総理のお話を今までいろいろ聞いていると、バラ色のようなことをおっしゃっているけれども、今の日本は経済の面でもしぼんでいるんじゃないですか。六年前に五百十兆円の国民所得は、今五百三兆円になっているんじゃないですか。縮んでいるのは経済だけじゃない、人間の心まで。あなたの目から見てそう思いませんか、縮んでいっていませんか。また、国土だって、竹島は事実上韓国にやられ、尖閣列島も中国や台湾の遠慮会釈ない振る舞い、北方四島は漁船員が殺されるような事態まで起きていますね。

 経済もしぼみ、心もしぼみ、国土もしぼむ。あなたは小泉総理の負の遺産を負い過ぎている。私は、この際、いろいろなことを、もういい、謙虚に今の日本の状況を眺めて、あなたの信ずるところの政治をぜひともやってもらいたい。

 今、経済全体のことも言いましたけれども、日本人の精神状況はどうですか。これで本当に大丈夫なんだろうか。結局、幾ら機械化したところで、生産だって何だって最後は人間がやるものだ。この激しいモラルハザード。

 小泉総理も、目的のためには手段を選ばない、何でもやっちゃった。参議院、二院制まで否定するようなことまで、あの、アメリカから言われた郵政民営化を実現するためにおやりになったんですね。また、日銀の総裁なんて、庶民は利息ももらえない状況で、犯罪者と組んで巨額の富を得た、これは事実でしょう。後からもうけた分を返したといったって、そんなことがやられていいんですか。その席にとどまっておっていいんですか。あなたはそのままでいいとおっしゃっている。権力を握れば、富を握れば、もう、総理、それでいいんですか。

 今、テレビ時代で、トップリーダーのモラルハザードは茶の間を直撃しているじゃないですか。親子、兄弟、夫婦、殺し合いをやる。そんなこともかつてあったけれども、めったになかったことだ。今やもうニュースにも余りならない。今は女房とベッドインするのが怖いような時代になっちゃったでしょう。本当に冗談じゃなくて、そこまで夫婦のきずな、家族のきずなというのが信じられないような、こんな時代になっていること。

 我々政治がきっちりとせにゃいかぬ。私は、総理が心を毎日悩まされておられるということ、私にはわかるような気がするんです。改革、改革と言って、この六年間、日本はよくなったんですか、さっき言いましたように。そうでしょう。

 米俵百俵、財政が大変だ、我慢してくれ、それは結構な話。しかし、だれに負担を求めたんですか。人生の最後を迎えようとするお年寄り。若い者にもっと働けと言うのはいいんだ。そういう人たちに、年金、医療、介護、三点セットで。あそこに何で集中的な痛みを求めなければならぬのですか。

 総理も山口の地方からの声は届いていると思います。肩を寄せ合って生きていかなければ生きていけないような、この五、六年で十兆円以上の金を引き揚げましたね、地方から。仕方ないから町村合併。一緒にやれば面倒見る、総務省はそう言った。総理、去年の暮れに、私の選挙区の消えてなくなった町々が、今、広島県はほとんどないですよ、私のところ、三次、庄原、尾道、三原と、もう市しかなくなっちゃった。全部一緒になっちゃった。六区の町村長だけじゃありませんよ、広島県の町村長をやった人が集まって、飯食って、だまされたと。合併協議会で決めたこともやれない。今度の選挙だけは、総理、反自民でいこうと申し合わせしたというんですよ。地方改革、地方改革と言ったけれども、地方に痛みを与えてきた、これが実態なんですよ、これがね。

 改革には痛みを伴うというけれども、その結果が、せめて財政再建がうまくいっていればいいけれども、総理は国債依存度をことしは減らして編成されました。本当に御苦労だ。ただ、おととしです、去年は、二十兆円、政府の借金がふえているじゃないですか。この六年近くで五百三十兆の借金が八百兆に今なんなんとしよるじゃありませんか。何のためにお年寄りや地方の人は苦しんだんですか。

 改革といったって、郵政民営化が改革への一里塚だ、もうそれだけで、この間は私なんかもバッジをもがれちゃった。まあ余談になるけれども。刺客は送ってきたけれども、総理、あなたに責任があるかないかわからぬけれども、もうちょっとましな刺客を送ってください。女の心は金で買える、天皇制反対と堂々と言った人間を自由民主党は私に刺客として送ってきたんですよ。そんなことはまあどうでもいいけれどもね。いや、よくない、自民党がそこまでなっているということだからね。あなたもあのときは非常に苦しかったと思いますよ。

 しかし、民営化して何がいいことがあったんですか。何にもいいことないじゃないですか。もう明らかでしょう。郵便の遅配が起きる。そして、山の奥のお年寄りは本当に今寂しい思いをしている。経営だって混乱しちゃって、郵貯は減ってきているでしょう、どんどこ。日本に民営化しろと言ったアメリカは国営じゃないですか。こんなことを改革の一里塚だと言って、参議院まで無視をしてやってしまった政治、それを継承するというのは、総理、あなたにふさわしくない。本当にふさわしくない。今、安倍政治がどうも元気がないと言われているのは、これは当たり前なんだ。あなたが本心の政治をしていないから迫力がないんだ。当たり前のことだと私は思いますよ。

 今、イザナギ景気を超えるものだと言っているけれども、先ほど来もいろいろ質問が出ているけれども、国民大衆には何も関係ないじゃないですか。かつて岩戸景気、神武景気という時代があったんですね。あのときはみんな少しずつ懐が暖かくなったんです。今はそうじゃないでしょう。逆に、政府統計でも明らかでしょう。景気が回復してよくなっているんなら、消費がふえにゃおかしいんですよ、どう考えたって。ところが、消費は減っているじゃありませんか。消費が減っていくような経済で、上澄みの一部の人が自家用ジェット機を買おうが何をしようが、そういう人たちの消費で日本経済はもっていくんですか。中国やアメリカへの輸出、それも大事だけれども、内需をきっちり拡大していく。

 私は、総理の言っておられる成長路線、賛成ですよ。かつて小泉総理は、改革なくして財政再建ないとおっしゃったけれども、成長なくして財政再建ない、当たり前ですね。私は、それは正しいと思うけれども、しかし、この六年間で日本の経済構造も生活の仕方もがらりと変わっちゃったんですよ。だから、大企業が景気がよくなったって、みんなに及ばなくなっちゃった。

 総理、簡単に言うと、機関車と後の客車が切り離されちゃった。連結器が壊れちゃっている。機関車だけ、たたたたたっと行っちゃった。客車だけ取り残されているんですよ。そういう日本の経済がうまくいくはずがない。やはり総理、ここで、過去にとらわれないで、現実をしっかりと見詰めて、それに即した経済政策、社会政策をぜひやっていただきたいと私は思います。

 今の大企業、総理も心の中じゃ思っておられるでしょう。かつてマンハッタンのビルまで買収しようとした、事実上世界一の経済大国になったときの日本、あのときの経済構造と今、どうですか、同じですか。当時は、下請、孫請、護送船団方式なんて悪口をアメリカが言ったんだけれども、アメリカは意図的に言っているんだ、日本をぶっ壊すために。そうでしょう。それを大事にしながら、そこももうけさせながら従業員も豊かにしていく、その中で利益を上げていくというのが経営者の生きがいだったんじゃないですか。そういう経営者が世間から立派な経営者だと言われたんでしょう。今はどうですか。偽装請負をやった会社の会長か社長か知りませんが、経団連の会長をやり、ピンはねをしていくことを奨励するようなことを経済界のトップが言っていますね。総理、じっくり話されたことがありますか、経団連の会長と。ぜひ話してみてくださいよ。

 そんなことで日本はいいんですか、簡単に言うと。我々、資本主義経済でずっとやったわけじゃない、しかし、何千年の営みの中で我々がやってきた生活の仕方、それを急に、ここに来てアメリカ流の経済に変えていかなければならぬ理由があるんですか。神のお告げですか。そんなことは私はないと思いますよ。我々日本人には日本人としての生き方があるはずだ。それを離れて、よそのまねをして、当面はいいかもしれない、生きていけるはずがないということは、これはだれが考えたって当たり前のことだと私は思いますけれども、今はどんどんそう行っていますね。

 総理、私はぜひ、もう下請、孫請、余りにも今ひどい目に遭っている。ちゃんと、もうかったら、果実は、よき日本の伝統に従って、下請、孫請におすそ分けしてやったらどうですか、報賞金とかいうような形でも。これはできるはずですよ。税制上のいろいろな問題はあるけれども、これはできるはずだ。従業員にも分けてやったらどうなんだ。

 今は労働組合が骨抜きになっているから経営者が自由自在にやっているという面もあるけれども、何で、もうかっているのに正社員をどんどんパートやアルバイトに切りかえていくんですか。かつてそんなことはなかったでしょう。松下幸之助さんにしても、そんな経営は絶対許さなかったはずですよ、どこにしても。

 ところが、今そんなことばかりやっているじゃないですか。そうして、正社員が従業員の三分の一、同じ仕事を半分や三分の一にしてコストを下げていくというようなことをやっているんでしょう。これは長続きするはずがありませんよ。そんなことをやって、パートが都合がいい、アルバイトが都合がいいと正社員をどんどんどんどん減らしていって、会社経営というのは本当に成り立つんですか。

 よく総理は再チャレンジということを言っておられますけれども、正社員からパートにけ落とされた者がどうやって将来重役や社長になっていけるんですか。いけるはずないじゃないですか。熾烈な社員同士の頑張り、いい意味の競争の中で、そうして幹部も育っていったんでしょう。

 今のように、人間を人間として大事にするんじゃなくて、安く物をつくる道具だと。それを残念ながら自公政権は推進しているんでしょう。柳澤大臣が本当に気の毒だ、この間から見ていると。一人であなたがやられまくっているけれども、あなたの言ったことはよくないに決まっている。しかし、柳澤発言というのは、たまたま大臣だけが悪くて言ったことじゃない。今の、人間を道具にしたらいいという世の中の風潮、自公政権のそういう政策の中でぽろっと出てきた話でしょう、こんなものは。

 総理、私は本当に事態は深刻だと思う。やはりここで、我々が、日本人がどういう生き方をしていけば本当に幸せになれるのかという、その原点を押さえた上での経済政策、社会政策を私はぜひやってもらいたいと思います。

 あなたにいろいろ申し上げたいことがあるんだけれども、私が一方的に言っているのは、あなたが私に答弁をしても、本心の答弁ができないのがわかっているから私は言っている。そんなの聞いたってしようがないから、私は一方的に言っている。いいですか。

 それと、競争、競争でしょう。それは資本主義社会だから、競争するのがある面では当たり前。しかし、それは、みんなで助け合いながら、みんなで幸せになっていこう、そういう中での競争をやってきたんでしょう、日本は。今はひどいんじゃないですか。バランスを崩していますよ、競争すればいいと。終点が百メートルなのか一万メートルなのか、マラソンなのかさっぱりわからぬで、ただ走らされているだけ。その後来る社会が、どういう社会になるんですか。

 今、新聞やテレビでは、談合摘発だ、談合摘発と出ていますね。それは、一部の者が不正に、本来安くできるものを高くやって不当な利益を得る、そういう談合は徹底的に摘発せにゃいけませんよ。

 しかし、バランスを失していると私が言うのは、総理、今どうなっているんですか。一億円以下の小さな工事を東京に本社のあるスーパーゼネコンがどんどんとっているじゃないですか。そして、地場の中小零細の企業は、哀れ、下請で細々とやる。どんどんやめていますよ。私なんかの地元でも建設会社はどんどんやめている、やっていけないから。ばらで競争、競争というだけをやらせた場合には、力が強いのが勝つに決まっている。北海道で損しても、九州で得すれば、社としてはバランスがとれる。ところが、北海道の業者はそれができますか。そういう現実の中で、今のような行け行けどんどんをやっている。

 もう国交省まで、冬柴大臣、怨嗟の的ですよ。そうでしょう。ふるさとをつくるために、ノウハウの違う、大きいところも小さいところも集まって、一人の者が仕事を独占しないように、みんなで話し合いをして分担して郷土づくりするのが、どこが悪いんですか。それで、役人がアドバイスをすると官製談合というおどろおどろしい名前をつけちゃって、けしからぬ、けしからぬ。

 では、どうしたら、私が言いましたように、小さいところもそれなりに郷土づくりに参加をしていける。金が全部東京の金庫に入って、東京だけが、銀座でこじきをしておっても糖尿病だという、東京だけ結構なところにならないで、地方がそれなりに生きていける状況にしていくのには、今のようなことをやっていていいんですか。

 総理、今、国民新党で、談合と言われるそういうものにかわる透明な公正な発注、受注の仕組みというのはつくれないものか、研究して、勉強しているところですよ。だけれども、資料なんか見ますから、総理、国交省あるいは総務省、法務省に、そういうことで国民新党が協力を求めたら、するかどうか、ちょっと答えてください。総理の立場から、国民新党に協力してやれと言えるかどうかということを、言えなければいいよ、それで。(発言する者あり)そんなことないよ。

 だから、我々は、このままでは日本は一部の力の強い者によって全部支配をされちゃう。それを理屈で言っているときじゃない。それにかわる新しい何かの仕組みをつくらないと、毎日毎日倒れていっているんですよ、中小企業。だから、その仕組みを我々がつくると言っているんだから、野党だって協力してやれと言ってくれれば、一生懸命やってくれる。でないと、自民党が怖くてやってくれないかもしれないだろう。

 どうですか。答えなければいいよ、答えなくても。

安倍内閣総理大臣 私の尊敬する大先輩の御質問ですから、ぜひお答えをしたいと思います。

 官製談合の問題、こうした談合は根絶させなければならないと思っています。そのために、もし亀井先生、また国民新党でいい案があるのであれば、ぜひ提案をしていただきたいと思います。

亀井(静)委員 ありがとうございました。我々も一生懸命取り組みますから、ぜひ政府の皆さん方も協力をしてください。資料を隠したりなんかしないで、しっかりと協力してください。

 今、国交省の佐藤君が本当に苦労していますよ。怨嗟の声が国交省に行っちゃっているんだ。自民党から出たので本人はその点悪いんだけれども、かわいそうじゃないですか。

 だから、そういうことはもういいけれども、ここで、総理、力が弱い者が一生懸命生きていこうとした場合、やはり、せめて手がかりぐらいは政府の責任においてきっちりつくっていく、自己責任だとかなんとか言わないでということを私はぜひお願いしたいと思う。これは答弁は結構です。

 私は、こうした日本をきっちりとしていくには、総理を初め、政党、必死になって頑張らにゃいかぬと思うんだけれども、それだけではなかなかうまくいかない。国民全体の協力と努力が必要ですね。宗教団体、精神修養団体、いろいろありますね。こういうところの、やはり何を考えているかというところをしっかりと政治が酌み取っていくということは、私は今ほど大事なときはないと思う。

 いろいろ宗教団体ありますよね。既成宗教と新宗教では、辯天宗とか、あるいは妙智会、あるいは立正佼成会、創価学会、いろいろあります。神道系なんかまた本当にたくさんありますよね。真光、天理教、金光教、あるいは天照皇大神宮教、大本、また、八大龍王神八江聖団というのが北海道にあります。これまた宗教団体じゃないけれども、精神修養団体、あなたも指導を受けていると思うんだけれども、実践倫理宏正会、すばらしい活動をしていますよね、私も指導を受けているけれども。あるいは一燈園なんというのがありますね。

 こういう宗教団体や精神修養団体がやはり一緒になって立ち上がっていかなければ、この日本、なかなか私は救われないと思う。そうした団体の意見をどう酌み上げていくか。

 創価学会が、公明党を通じて政権に対して自分たちの考え方を反映してもらおうというのは、当たり前だと私は思いますよ。ただ、問題は、それを政府・自民党がどう受けとめていくかということなんです。残念ながら、今見ておりますと、創価学会と公明党、自民党、政府の関係、ちょっと国民もおかしいなと思っているんじゃないですか。

 だって、そうでしょう。創価学会員は、平和を願い、庶民の生活を守ってほしいと。冬柴さんがいらっしゃるので私言いにくいんだけれども、公明党は、イラク戦争を支持しているじゃありませんか。また、庶民への負担増を、あっという間に自民党に同調して、支持しているじゃありませんか。

 逆に、自民党は、教育基本法については、あらゆる宗教団体、圧倒的な声を無視しちゃって、創価学会のおっしゃるとおりの教育基本法を強行採決までやってつくったじゃありませんか。――ちょっと待ってください。あなたに質問したんじゃない。

 そういう中で、いいですか、しかも自民党は、私のかつての住みかですけれども、選挙で公明党、創価学会に丸抱えになるからといって、今どうですか、本当にひどい状況じゃないですか。だって、自民党への復党問題まで公明党が堂々と横やりを入れているじゃないですか。こんなことは普通あることですか。(発言する者あり)ちゃんとこれは堂々と公明党が出しているじゃない、何言っているの。復党について反対しているでしょう。

 それと、いいですか、総理、選挙協力と称して、自民党が候補者を出しているところに、出していないところなら別ですよ、出している比例区に公明党、公明党と言う。言っているじゃありませんか。今度の選挙でまたやるんですか、それを。我々野党は選挙協力しますよ。しかし、自分の党が候補者を出しているところに、よその党を応援してくれなんて、そんな破廉恥なことはようやりませんよ、我々は。だけれども、自民党はそれをやるじゃないですか。そういうことは政党としてあっていいことですか。政党政治の堕落じゃないんですか、これは。だって、候補者を立てているんですよ、自民党が。おるのに、ここは公明党をというようなことを、こんなことを政党がやっていいんですか、選挙協力だといって。

 私は、これはまさに政党政治の自滅だと思う。こうなったら、総裁は怒るかもしらぬけれども、いっそ、もう公明党に自民党は吸収合併されたらいいんだ。その方が国民からわかりやすいよ。(発言する者あり)失礼だって、本当にそうだからしようがない。おかしいじゃない、今あったら。だって、自民党の候補者がおるところを、公明党をやるやれとかどうだとか、前小泉総理が解禁したんですよ。それをやったっていいということを解禁したんですね。

 だから、私はここで総理にお聞きする。今度の参議院選挙で自由民主党は公明党との間でそういう選挙協力をおやりになるんですか。答えてください。

安倍内閣総理大臣 どういう選挙戦略を行うかは、これは自由民主党の問題であって、本来ここでお答えすることではない、こう思いますが、当然、我々は、次の選挙においては、自民党としての選挙公約を掲げて戦っていきたい。そして、当然また、自民党、公明党で与党を組んでおりますから、与党の公約を掲げていく、与党の公約と自民党のマニフェスト、これを同時に国民の皆様に訴えてまいりたい。友党関係にありますから、選挙の際は協力関係を構築していくのは当然のことではないかと思います。(冬柴国務大臣「委員長、委員長」と呼ぶ)

亀井(静)委員 あなたに聞いているわけじゃない。

 今、総理からの答弁、本当にその答弁でいいと思われますか。日本は政党政治でやっているんですよ。だから、私の質問時間だって五十分でしょう。質問時間だってほとんど小党にはないんです。党を中心に運営をされているわけでしょう。

 その政党政治下における選挙において、何度も私は申し上げるけれども、候補者を立てていないところで協力し合うのは、何ということはない、政策を中心にやる。立てているところで他党の候補者をやってくれというようなことを言うのは、選挙民を愚弄しているじゃありませんか。違いますか。もう一度答えてね。

金子委員長 冬柴国土交通大臣。

亀井(静)委員 私、指名していないよ。まあ、いいよ。どうぞどうぞ。

冬柴国務大臣 先ほどから、公明党、公明党と、いろいろな言葉が出ておりますので、私も公明党員でございますから、お答えをしなきゃならないと思います。

 選挙協力、これは政党間でよく話し合って、そして我々も応援すべきだと思う人は応援します、しています。そして、我々に応援をしてあげようという人には我々も感謝します。そういうことで自公連立が成っているんじゃないですか。我々は、政党だけではなしに、私どもを支援していただく方にもよく相談をし、そしてその人たちの意思を集約して政治決断をしているわけでありまして、そういうふうに言われることはないと私は思います。

 それから、先ほど来、公明党が何か国家を壟断しているような趣旨の話までされましたけれども、とんでもない話ですよ。私も亀井先生は大変尊敬する政治家の一人ですけれども、なぜそういう、その立場になったら言われるのか、本当に私には解せません。本当に私は誠心誠意、亀井先生ともおつき合いしていて、そういう、私どもが無理難題を自民党に押しつけ、そして自民党が、あたかも選挙で応援してもらいたいからそれをのんでやっているような趣旨としかとれないような発言をされることは全く心外でございまして、私は、公明党は断じて、庶民のため、そして平和のため、一生懸命やっています。

 そして、イラク戦争を是認したではないかと。私は、イラクの人道復興支援のために一生懸命自衛隊にやっていただいたわけでありまして、平和の問題であります。私どもは、十分に党員、支持者の方にも納得をしていただいて、我々は政治決断をしているわけでございまして、国連の安全保障理事会決議に基づいて、国家として自主的、主体的、積極的に行ったものに対して、あたかも派兵をしている、戦争に行かせるような趣旨の発言は、私は受け入れることはできません。一部政党がそのように言われることは、私はもう反論もしませんけれども、亀井先生からそういうことを言われるというのはまことに心外でございます。

 いろいろ言いたいけれども、これぐらいにしておきます。

亀井(静)委員 別に、私は冬柴大臣に答弁を求めたわけじゃありませんが、大臣、そうおっしゃるけれども、選挙協力の実態が、今申し上げましたようにバーターでなされているということは国民周知の事実じゃありませんか。これは違う違うと言われても、これは周知の事実。

 それと、具体的に言いますと、大分県で復党問題について公明党が堂々と、それについてだめだと言ったのは事実でしょう。違いますか。だから、冬柴大臣、そう無理な答弁をされないで、ひとつ、やはり公明党としては、創価学会員の切なる平和への願いとか庶民の生活を守るとか、そういう立場に立って、やはり自民党に対しても、だめなものはだめだということを、また、やるべきことをやれということを言ってやってもらう、私はそういう期待感があるけれども、最近の状況を見たらそうじゃないから、あえてこういうところで申し上げている。いいですか。

 それで、これは、とにかく次の参議院選挙で明らかになることなんです、全国的に。だから、国民は注視をしていますから、総理、いいですか、政党政治の上に乗っかっている議会制民主主義である以上は、そうした政党のあれを無視した、当選するために便宜がいいというだけでの、そんな国民を愚弄したことをおやりになった、その数の上で政治をやろうと思われましても、これは絶対大敗北を喫しますよ。申し上げる。

 もう時間がありませんので、次に移ります。

 総理、池田大作名誉会長に、あなたは去年の九月ごろ、お会いになりましたか。

 お会いになったっていいんですよ。池田名誉会長は世界の第一級の人たちとどんどん会っておられますね。そういう人物と一国の指導者がお会いになるというのは当たり前の話です。これは、池田大作会長だけじゃなくて、ほかの宗教団体のトップだって同じことです。私は、それはいかぬと言っているんじゃないんですよ。そうじゃなくて、お会いになっているということを読売も書き、毎日も書き、日本経済新聞も書いているでしょう、具体的に。それで、予算委員会で総理は、いや、会ったことはないということを執拗に否定をしておられる。国民は、総理が何かうそを言っておられるんじゃないか、隠しておられるんじゃないか、そういう大新聞が全部報道しているんですから、今そう思っているんですよ。

 だから、私は、お会いになられたことは、もうお会いになられていいんです、何も悪いと言っているわけじゃない。しかし、こういう状況だと、創価学会と一国の総理との間に何かやましい関係があるんじゃないか、隠さにゃいかぬ関係があるんじゃないか、そういう疑心が生まれる危険性があると言っているんですよ。だから、私は、お会いになられたら、率直にお会いになられたということをおっしゃったらいいと思いますよ。どうですか。

安倍内閣総理大臣 私が敬愛する亀井先生とは思えないお言葉だと思います。

 まず、自民党と公明党との関係でありますが、いわゆる復党問題について、公明党からまた我々が言われて判断をするということはないし、事実、私は全く復党の問題について公明党の方々から何か意見を言われたことはないということは、まずはっきり申し上げておきたい。今後もそれはない、公明党の皆様から意見を言われるということも恐らくないでしょうし、その意見によって私が判断するということもないわけでございます。

 また、自民党と公明党は、両党連立政権を組むに際しまして政策協定を結んでいます。いわば、政策をしっかりとお互いに示しながら、協定を結んで、国民の目の前で、わかりやすい連立政権を組んでいるということは申し上げておかなければならない。

 そしてまた、選挙においては、これはやはり選挙において友党であり政権をつくっている連立の政党同士が協力するということは当然のことであろう、そしてその中でも、国民からあらぬ疑いを持たれたり非難を受けることのないように節度ある選挙協力を行ってまいらなければならないと思います。

 もちろん、連立政権を組んだ当初は、これは当初ですから、いろいろありますよ、それは政治の世界ですから。それはもう亀井先生も御承知のとおりだろうと思いますよ、亀井先生も自民党におられたから。しかし、だんだんこれは成熟をしてきて、成熟期に入ってきている、私はこのように思います。

 そしてまた、政策においては、自民党は単独の政権ではありません。それは参議院において我々は過半数を割っておりますから、それが民意といえば民意なわけでありますから、そこで我々は連立政権をつくっているわけであります。自民党の意見は一〇〇%通らない、もちろん公明党もそうです。その中で、お互いに政策において協議をしながら、時には激しい議論をしながら、政策をつくっていくわけでございます。

 ですから、これは教育基本法においても自民党と公明党で長い間相当の議論を繰り広げました。大島先生が大変な御苦労をされてやっとでき上がったものでありまして、もちろん自民党が一〇〇%これだったらという最初の望みどおりにはいきませんが、それはやはり、国民が民意として今の連立政権ということになっているわけでありますから、その中でできたベストではないか、私はこう思っているところでございます。

 そこで、池田名誉会長と私がお目にかかったかどうか。これは、もう既に委員会で申し上げておりますように、お目にかかったことはございません。

亀井(静)委員 時間がないのでなんですが、総理、では、なぜ、教育基本法なんというものはもう本当にできて以来初めての改正でしょう、そういうものを、ほとんどの宗教団体が賛意を表していない、反対をしている、野党が反対をしている状況の中で、しかも、自民党が長い間党内で練りに練ってきた案、それとも違う、連立を組んでいる公明党が言っていることにああいう形で妥協というかして、強行採決までして、何でおやりになったんですか。それは、時間をかけておやりになればよかったことでしょう。これ以上のことは水かけ論だから言いません。

 それともう一つ。今、復党問題について、そんなことはない、それは自民党の方から言ったわけじゃなくて、公明党の方からそれは復党させてもらっては困るということを言ったんでしょう。正式でしょう、これは。新聞にもたくさん出ていますよ。大分県連がやったんでしょう。大分県連、やらなかったんですか。やっているでしょう。

 それと、今、総理が会ったことはないとおっしゃったんだけれども、それでは、官房長官……(発言する者あり)うるさいね。いいですか、一国の総理がうそを言っているのかもしれない、そういう状況に立たされているときに、それは読売であろうが毎日であろうが日経であろうが、あんなにでかく報道されちゃっておる、それについて、間違いであるのなら記事の訂正あるいは法的措置をやられたんですか。どうぞ、官房長官。

塩崎国務大臣 ただいまの面会をしたかどうかという報道は内閣としての問題ではないと思っておりますので、内閣として動いているわけではございません。

亀井(静)委員 内閣で動いていないという。あなた官房長官でしょう。だって、総理たる安倍晋三の行動について国民から疑念を持たれているときには、それを晴らしていくのが官房長官の立場じゃないんですか。そんなことをする必要はないんですか。では、官房長官は何をやるんですか。総理の汚名を晴らしていくとか、それは官房長官が適切にやっていくべきことでしょう。やらなくていいんですか。だって、総理のときにお会いになったんでしょう。

 もう一度、答弁。官房長官。

塩崎国務大臣 新聞に取り上げられている件は、安倍総理が総理になる前の話でございます。

亀井(静)委員 総理になる前とかなんとかおっしゃるけれども、国民はまさに、なられるのは決まっているわけだから、一体として見ているんですよ。そういう場合に、総理におなりになる、私はいつ会われたかわからぬから言っているんですよ、なって会われたのか、その前か、わからないから。そういうこと全体の国民の疑念に対して、きちっと措置をするのが官房長官の仕事じゃないの。それを全然ほっておいていいの。もう一度。

安倍内閣総理大臣 まず、亀井先生が汚名という表現を使われましたが、これはやはりおかしいのではないですか。私は、それは全然、別に汚名だとか侮辱されたという感覚は全くございません。

 そして、そこで、新聞報道について、私は、この報道は誤りだ、明らかに違うことというのは随分ありますよ、それは。それは亀井先生だってそうでしょう。新聞報道とか週刊誌が本当だったら、亀井さんは今ごろ大変なことになっていますよ。それは違うんですよ。だから、私も一々そんなことで法的手段に訴えたり、そういうことはいたしません。

亀井(静)委員 総理、そう興奮しちゃだめですよ、一国の総理が。

 私が汚名と言っているのは、いいですか、池田大作名誉会長とお会いになったことが恥ずかしいことだ、いかぬことだと言っているんじゃないですよ、最初から言っているように。それはいいことだと言っているんです。ただ、そういうことを、新聞はお会いになったということを言って、書いているのに、自分は会っていないというようなことをおっしゃるのは、うそつきと思われる汚名なんですよ。これほど恥ずかしいことはないよ、そんな、疑われるということは。恥ずかしいことで、総理がそういうことを隠しているということを国民から思われることは汚名ですよ。

 そのあたりのことは、あなたはきっちりする気はないんですか。今後ともそういうことでおやりになるんですか。

安倍内閣総理大臣 私が否定したのは、その報道があって後ですね。ですから、その報道を私が否定したわけですよ。その私が否定したことを別にうそつきだという報道はなされていません。ですから、一々それに私が法的な対応をとるということでは全くないと思います。

亀井(静)委員 総理、あなたは私との間では、もう時間もないから、これはしのげるかもしらぬけれども、国民全体が、なぜそういうことを隠しているんだろうかという疑心はずっと引き続いていく。だって、そうでしょう。一社じゃないでしょう、多くの新聞が克明に書いているんでしょう。では、それなら法的措置をとればいいんです、記事訂正を申し入れすればいいんですよ。

 私なんかだって、ありもしないことを言われたら、私は法的措置をどんどんとっていますよ。それで私は賠償金も取ったし。それが、政治家は、自分の、個人の気が済む済まぬの話じゃなくて、国民との関係においてはそういうことを明確にしていくのが政治倫理でしょうが。そうでしょう。

安倍内閣総理大臣 私は委員会でも申し上げているんですから、これ以上のものはありません。それと、総理たる私が一々マスコミ等を訴訟する、いかがなものかと思います。

 ですから、それは多くの週刊誌に勝手なことを書かれていますよ、事実と全く違うことを。しかし私は、今権力の頂点にいる、行政のトップとしてですね、そういう訴訟を一々するべきでない、このように考えています。

亀井(静)委員 もう時間がないので終わりにしますけれども、政治と宗教との関係というのは、やはりお互いに神経を使いながら進んでいかなきゃいかぬ問題ですよ。総理もその点、よくおわかりでしょう。

 そういう観点からも、やはり、一国会議員なら別として、総理たるものはそのあたりのことをきっちり配慮していって、一点の疑念も国民から持たれないようなことを私はやっていってもらいたい、このようにお願いします。

 はい、時間がありません。

金子委員長 これにて亀井君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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