衆議院

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第12号 平成19年2月20日(火曜日)

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平成十九年二月二十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      あかま二郎君    新井 悦二君

      井上 喜一君    稲田 朋美君

      臼井日出男君    遠藤 武彦君

      小野寺五典君    大島 理森君

      大塚  拓君    大野 功統君

      岡部 英明君    亀井善太郎君

      河井 克行君    河村 建夫君

      倉田 雅年君    佐藤 剛男君

      佐藤  錬君    笹川  堯君

      清水清一朗君    中馬 弘毅君

      中野  清君    野田  毅君

      馳   浩君    深谷 隆司君

      福田 峰之君    細田 博之君

      増原 義剛君    三ッ林隆志君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      宮下 一郎君    山内 康一君

      山本 公一君   山本ともひろ君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      大串 博志君    岡田 克也君

      川内 博史君    中井  洽君

      原口 一博君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    松木 謙公君

      大口 善徳君    丸谷 佳織君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   総務大臣

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    菅  義偉君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (少子化・男女共同参画担当)           高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (地域活性化担当)    渡辺 喜美君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  須田 和博君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    川崎  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          長   清君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     新井 悦二君

  臼井日出男君     山内 康一君

  小野寺五典君     大塚  拓君

  佐藤 剛男君     亀井善太郎君

  中野  清君     あかま二郎君

  西村 康稔君     清水清一朗君

  増原 義剛君     山本ともひろ君

  佐々木憲昭君     吉井 英勝君

  阿部 知子君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     中野  清君

  新井 悦二君     稲田 朋美君

  大塚  拓君     小野寺五典君

  亀井善太郎君     福田 峰之君

  清水清一朗君     佐藤  錬君

  山内 康一君     岡部 英明君

  山本ともひろ君    増原 義剛君

  吉井 英勝君     佐々木憲昭君

  日森 文尋君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  岡部 英明君     臼井日出男君

  佐藤  錬君     西村 康稔君

  福田 峰之君     佐藤 剛男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算、平成十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、お手元に配付のとおり政府参考人の出席を求めることとし、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。それでは、きょうもしっかりと質疑をしていきたいというふうに思っています。

 きのう、新聞各紙で世論調査の結果が出ております。安倍内閣の支持率が下がってきているということ、これは、ある意味では危機的状況になってきているということも一つありますが、それ以上に私気になったのは、柳澤大臣の発言をめぐったその世論調査の結果を見ていると、やはり、半分以上の人が辞任をすべきだ、こういうことであります。国民の関心というのはこういう形で集結をしてきているということでありますが、これは言いかえれば、大臣の発言そのものが、あの言葉だけではなくて、一つ一つ政治家の言葉として信頼を失ってきている。何を言っても、結局のところ、基本的に大臣というのはああした物の見方をするということでしか今理解をされなくなりつつあるんだということ、ここがこの世論調査にあらわれてきているところだと思うんです。

 発言通告にはなかったんですが、そのことを踏まえてどのように今それを受けとめられておるかということ、やはり私は、改めて出直すという決断というものが大切だと思うんですけれども、どうでしょうか、大臣。

柳澤国務大臣 今、中川委員から、かねてからの発言に端を発しまして、私自身の発言に対する信頼がだんだん減衰をしてきているのではないか、こういう御指摘をいただきましたけれども、発端になりました、先月一月末の松江での私の発言というものがやはり非常に適切を欠いたというものでございましたので、それについて私が反省をし、そしてみずからの与えられた職責を十分に果たす、こういうことの覚悟をして進んできているつもりでございますけれども、その努力がなお十分に国民の皆さんの理解を得るところまで、つまり、一月末のこの発言で傷ついた信頼を回復するところにまでいっていないということを意味するのかもしれない、このように考えまして、今後とも、従来申したように、反省の上に立って、私の与えられた職責のために頑張っていくことを通じて信頼の回復に努めてまいりたい、このように考えております。

中川(正)委員 BSEの質問に入っていきたいというふうに思います。

 きのうのこれも報道なんですが、混在していた牛肉が二十カ月以上のものであったということが米国のサイドからはっきりしたという報道がなされていましたが、これは農林大臣、そういう連絡が入ってきているのかどうかということと、それから同時に、これが発覚をした経過ですね。聞くところによると、動検が一つ一つをチェックしていった中で発覚をしたということではなくて、業者のサイドから通報があって、それを確認した中でこういうことがわかったということだと思うんですが、それでいいのかどうか、答弁を願います。

松岡国務大臣 先生の御質問でございますが、実は、これは本来、厚生労働大臣がお答えいただくことが第一義的だろうと思うんですが、屠畜場の方からの食品衛生ということになりますと本来厚生労働省なんですが、アメリカの場合は、農務長官が出てきますのは、農務省の中に実は食品衛生の方も所管をしておるということで向こうは農務長官が出てくるんですが、本当は、屠畜場に行くまでの家畜としての世界が実は私どもの所管であります。そういうことでございまして、本来、厚生労働大臣からお答えいただくのが第一義だと思いますが、御指摘でございますから。

 動物衛生研究所というところがございまして、そこに川崎分室というのがございますが、それ以前に、五日の日に、倉庫業者がアメリカ農務省発行の輸入証明書のないものが二箱あることに気がついた。そういうことから、その二箱あることについて気がつき、これを動物衛生研究所の川崎分室に届けて確認をした、こういうことでございます。

 そして、いろいろ調査をいたしまして、全体で四百七十三箱あったものですから、ではこれを全部あけて、開梱をいたしまして、こん包を解いて確認をして、問題はなかったと。しかし、二箱につきましては輸出証明書がなかった、しかし特定危険部位等は含まれていなかった、こういう事実でございます。

 それから、アメリカに問いただし、十六日にアメリカから答えが参りまして、誤ってこれは出荷をしてしまった、こういうことでございます。

 それから、先生、今御指摘ございました、二十カ月以上が入っていたかどうかということにつきましては、今アメリカ政府に詳細そのことを求めておるところでございまして、まだ判明をいたしておりません。したがって、二十カ月以上があったと確認ができているという事実はまだございません。

中川(正)委員 報道機関では、二十カ月以上だったんだということが今もう報道されているんです。遅いですよね。それだけ、こちらの攻め方がいかに生ぬるいものかということがこれは証明されているんだろうと思うのですが、その上に立って、改めて厚生大臣にも確認をしておきたいんです。

 国内では全頭検査を実質的にやっているわけですね。基本的に、さっきの説明を聞いていると、これは、日本の検査機関がすべて検査をした中でこれが発覚をしてきたということじゃなくて、これはもう本当にランダムで、国内の体制と比べたら、海外から入ってくるものに対してはそれこそほとんどフリーパス。その中で、それを取り扱っている業者が、みずからのコンプライアンスの中でこれはおかしいということになって、動検へ向いて通報してきた、こういうことの中から発覚をした、こういうことですよね。

 これを見ていると、実質的に、国内の体制、いわゆる全頭検査という体制と海外から入ってくるものとの体制がこれだけの差があるんですよ。だから考えようによっては、今回はたまたま業者が通報してきたからこうして表に出てきて、それで今回の論議になったけれども、それ以外に同じような形で入ってきているものがたくさんあるという可能性は、これは否定できないということだと思うんです。そういう意味から、国内でも全頭検査というのが国民に支持をされてその体制ができ上がっているということだと思うんですよ。

 厚生大臣、どうですか、素直に考えて、海外から入ってくるものについて、海外、特に、危ないという指定をしてある国から入ってくるそういうものに対しては、やはり日本と同じような形の全頭検査を強いるべきだ。それを前提にした形でしか入れないということ、これが原則としては正しいんじゃないですか。どうですか。

柳澤国務大臣 この問題について、具体的な食品安全委員会の答申では、米国におけるBSE検査、屠畜方法等を評価した上で、二点、基準を定めているわけです。一つは、特定危険部位をあらゆる月齢から除去する、それから二つ目は、対日輸出される牛肉等が二十カ月齢以下の牛由来との証明がなされる、この二つの基準があるわけでございます。

 そうでありますと、これは、輸出プログラムが遵守されたと仮定した場合、米国産牛肉等と国内牛肉等とのリスクの差は非常に小さい、こういう結論が得られているわけでありまして、全頭検査の実施は求められていない、それが食品安全委員会の専門家による方々の結論である、こういうことでありまして、そして、昨年七月以降、この方式で一万トンを超える米国産牛肉等が輸入され、輸入者による全箱確認及び行政による輸入時検査が行われているわけですが、これまでのところ、こうしたことで対日輸出基準に違反する事例は認めておらず、米国の対日輸出プログラムが機能していることについては一定の評価ができる、このように考えているところでございます。

 ですから、本事案については、現在はアメリカ農務省が詳細な調査を行っているところでありますが、これをもって全部このスキームの価値というものがチャラになってしまうんだ、無に帰してしまうんだというような受けとめ方はなすには及ばない、このように考えています。

中川(正)委員 いかにもそれは役人的発想なんじゃないですか。日本の国内では全頭検査を実質的にやっているわけですよ。それを国民がよしとして、今、厚生省自体も、全頭検査のための機器を各自治体が購入するのに補助金まで出しているでしょう。それでいいという体制を国内でつくっているわけですよ。それにもかかわらず、海外から入ってくる、特にアメリカから入ってくるものについては、これは仕方ないんだという答弁、そんなもの通じるはずないでしょう。

金子委員長 松岡農水大臣。(中川(正)委員「いや、厚生大臣なんです」と呼ぶ)いやいや、去年の経緯もあるから。

松岡国務大臣 ちょっと関連いたしましてと思って……(中川(正)委員「さっき、あなたの対象じゃない、自分で対象じゃないと言ったじゃない。私、求めていないですよ」と呼ぶ)一義的にはそうでありますが、ちょっと関連するものですから……(中川(正)委員「自分で違うと言ったじゃない」と呼ぶ)いやいや、先ほどの訂正を……(発言する者あり)

金子委員長 松岡農林大臣、先に答えてください。

松岡国務大臣 お答えします。

 第一義的にはそうでありますが、関連いたしますので、一体となってやっておりますから、そういう観点から申し上げます。

 まず訂正させていただきます。私は中川先生に先ほど動物衛生研究所川崎分室と言ったんですが、これは動物検疫所でございまして、ちょっと言い方を間違えた点はお許しをいただきたいと思います。訂正させていただきます。

 今の点でございますが、十三年にBSEが発生いたしまして、十三年十月のたしか十八日だったと思うんですが、日本では全頭検査ということになりました。それから、いろいろ議論がございまして、それで食品安全委員会の方で十七年の五月に一定の結論が出まして、科学的な結論で、二十月齢未満については全頭検査をしない、こういうことに日本としてもなったわけでございます。

 そこで、今先生御指摘の、全頭検査をアメリカに求めるべきではないか、こういう御趣旨でございますが、国内でも全頭検査は今自主的にやられておる、二十月齢未満については義務づけられていない、それを国外に求めるということは、WTOのSPS協定の、必要以上の検疫措置を求めるということにもなりまして、これはそういった取り決めからもちょっと無理がある、このような判断でございます。

柳澤国務大臣 ただいま農水相から御答弁申し上げましたように、制度的には、科学的知見に基づいた枠組みとしては、先ほど来私が申し上げたとおりでございます。日本のものについても同じなんです。

 ただ、我が国産の牛肉についてはそういう全頭検査を事実上行っているということであって、これは、科学的知見に基づいた処理というものを超えるそういう措置として行われているということであります。

中川(正)委員 だとすれば、さっきの答弁からいくと、日本では全頭検査はしなくていいというふうに思っていられるんですか。

柳澤国務大臣 これは、食品安全委員会の科学的知見に基づく検査にのっとる限りは、そういうのが合理的な処理の仕方ということになるわけですけれども、食品については、安全とあるいは国民の安心感ということがやはり重視されるべきだという考え方から、事実上そういうことが継続をしているということでございます。

中川(正)委員 もう一回確認しますけれども、大臣としては、今の状況から見ると全頭検査というのは必要なんだ、国民に対してその安全性というのを確保していくために政治的な決断としては必要なんだ、そういうふうに考えていられるんでしょうか。

柳澤国務大臣 そういう考え方、国民のこの問題をきっかけとしたある種の衝撃、そういうものを前提として、その後ずっと行政がそれにふさわしい対応をしてきている中で今もってそういうことが行われているということは、これが国民に支持されているということは事実だろうと思います。

中川(正)委員 だとすれば、その国民の意思を受けて、海外から入ってくる肉に対しても、アメリカに対しても、日本と同じような実質的な基準というのを設けて対応をすべきだというふうに主張すべきだと思うんですよ、大臣としては。それが一つ。

 それからもう一つは、前々からこれは議論になっているんですが、アメリカでも業者によっては、うちは全頭検査をやって、その上で日本に輸出をしますよ、そういう体制をつくりますよと言っている業者もあるんですよ。柳澤大臣、さっき聞いていましたか、その業者に対してはどんなメッセージを出すんですか、日本として。入れてきなさいよ、こういう話になるんでしょうね。

柳澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、我が国食品安全委員会の答申では、米国におけるBSE検査と屠畜方法を評価した上で先ほど申した二つの基準を決めて、これであればよろしい、こういうことになっておるわけですけれども、今委員の御指摘になられたように、工場によっては、自分は全頭検査をしてもいい、こういうことである。そういうものを拒否する理由は私はないだろう、このように思います。

中川(正)委員 ところが、アメリカ政府はこのクリークストーン社に対して、全頭検査してはだめだ、こういう指導をしているんですよ。これはどう思われますか。

柳澤国務大臣 これは、我々の国内の体制、これは我々の食品安全委員会の答申をスタートとする体制でございますけれども、そういうものが満足されれば、アメリカサイドとしてはそれでよしとするという態度だろうと思います。

 私は、今、アメリカが自分たちの国内の業者に対して全頭検査なんかしてはならないとしているというようなことについて、我々がこれについてとやかく申し上げる筋合いじゃない。いや、自主的にやってくれるということについては、やっていただいて悪いことはない、こう思いますけれども、そういうことについてアメリカ国内でどういう秩序立てができるか、それはあくまでもアメリカサイドの話であって、我々サイドとしては、この食品委員会の立てた基準というものに合致することを確保していくことが大事だろう、このように思います。

中川(正)委員 私は、さっきの大臣の答弁というのは政治家としての答弁じゃないと思うんですよ。日本の国民が安全ということをこれだけ求めている。そんな中で、アメリカから全頭検査をした牛肉を入れようと思えば入ってくるという体制が業者で整うということがあるわけですよ。

 例えば、隣の韓国を見たら、韓国は全頭検査でまだ頑張っているんですよ。全頭検査をしっかりしないことにはうちには入れないよと言って頑張っているんですよ。そういう状況の中で、なぜ連携をしないのか、なぜアメリカの機嫌ばかりとろうという形で、外交交渉がしっかり進んでいかないのかというこの体質に対して、やはり政治家としてはしっかり国民を体して物を言うべきだと思うんですよ。

 そこのところをもう一回聞きますけれども、これは、日本の国民がいかに求めても、いわゆる全頭検査をした牛肉をアメリカから求めても、大臣としては、アメリカの政府がそれをとめるということであれば、それでいいということでいいんですか。大臣はそういう考え方なんですか、政治家として。改めて答えてください。

柳澤国務大臣 こうした事案というのは、それぞれの専門家が専門的な知見に基づいて枠組みを決めるということが基本であります。私はそのように思います。

 その上にどのようなそれぞれの国内措置を事実上とるかということについては、それぞれの国内の国民の意識、世論の動向を踏まえて決定がなされる、こういうことでありまして、現在の日本の状況もそうしたものの上に立って決められている、こういうことであります。

中川(正)委員 どうも、最初の経過から見ていると、これは、日本国内で全頭検査の実質的な体制を整えたという経過そのものが、本来は厚生省がリードをして、食品安全の基準の精査をしながら、それをバックにしながら、厚生省がリードをして基準を決めて全頭検査、これが本筋なんです。

 ところが、この本筋が崩れたというのは、アメリカなんですよ。アメリカからの圧力でその事実関係までねじ曲げられて、安全性の基準が下げられて、それで、結局のところ厚生省はそこから責任逃れをして、各自治体へ向いて、実質的には国民に対して安全を確保してくれ、こういう体制で厚生省は一歩それで下がったわけです。そのまま今の体制が続いているわけでありますが、それに対してぼろぼろとこういうふうに問題が出てきた。それにもかかわらず、いまだ腰が引けてアメリカに対してぴしっとした体制をとっていけないというのは、これはリーダーシップの欠如なんです、政治家として。

 そこのところを、もう一回、本当に国民の気持ちの中に入って、国民と一緒に立ち上がろうというのであれば、大臣、これは深刻な話ですよ。ここでしっかりとした政治家としての決断をやはり見せなきゃいけない。そこのところを指摘しておきたいというふうに思います。

 これはまだまだ続いていきます。さっき言ったように、月齢が二十カ月以上の牛であったことがはっきりしたということが報道されていますから、農林省だけが知らない状況なんでしょうね。そういうことがはっきりしていますから、まだこれは続いていくというふうに思いますので、いいですか、大臣、国民はさっきの大臣のような説明では絶対納得していませんよ。そこのところを改めて指摘しておきたいというふうに思います。

金子委員長 松岡大臣にも聞いてください。経緯があるから。

中川(正)委員 いや、もういいんです。

 次に……(発言する者あり)いや、大臣は自分の範疇の話じゃないとみずからが言っているんですから。

金子委員長 交渉経緯もありますから、松岡大臣にも答弁させてください。(中川(正)委員「聞いてない、聞いてない」と呼ぶ)

松岡国務大臣 これは委員長の御指示ですからお答えさせていただきますが、所管じゃないと言っていません。第一義的ではないということで、一体として対応いたしておりますので申し上げますが、中川先生の、アメリカに押されて日本がアメリカの基準を受け入れたんではないかと。逆であります。これは私ども、食の安全という、まさに国民の食生活それから健康、生命にかかわることでありますから、これは政治的なそういった基準で、やりとりで決めるものじゃない。まさに科学的な基準に基づいて、すべて科学的な根拠、判断に基づいて決めるべきものである。だから小泉総理も、ブッシュ大統領から言われたとき、これは科学的な問題であるとすぱっとはねつけたわけであります。

 そして、アメリカの基準は三十月齢なんです。それを、日本の基準は二十月齢ということで、十カ月も下回った基準を、まさに国民の食の安全の観点に立って、世界のOIEが決めている基準よりもさらに十月齢という低い基準をぴしっとアメリカに逆にこれはのませたわけでありますから、その御指摘は当たらないと思っております。

 それから、SPS協定上も、これは自分の国でやっている以上の上回ったものを相手に要求するということは、WTO協定の上からもこれは通らない、そういうようなやはり問題である、私はこういう認識でございます。

中川(正)委員 例えばこんなことがあるんですよ。さっき、全頭検査で韓国としてはその体制でないと受け入れないということで頑張っていると言いましたけれども、例えば、去年の六月に韓国政府の現地査察が入っているんですよ。それで、その査察を受け入れた業者が、日本への輸出資格を持つ米牛肉処理施設のうち七施設が、カナダ生まれの牛が米国生まれの牛に紛れ込むなどの問題が見つかって、基準に合っていないということが韓国の現地視察の中でもはっきりしてきたというような報道が出ています。

 これは本当に主体性の問題で、いかにしっかりと国民の意思を反映しながらアメリカに対して対峙していくかということ、今これが問われているんですよ、この問題では、BSEでは。そこの問題をさっきのような大臣の答弁で切り返していたら、これは本当の意味で政治不信につながっていくということ、これを改めて指摘しておきたいと思います。韓国と連携したらどうですか、この問題。そういうことを改めて指摘しておきます。

 それから、次に進んでいきたいと思うんですが、前回、三位一体改革でそれぞれ地域の格差が広がったということを指摘させていただきました。今回も同じ資料を手元に配付させていただいたんですけれども、あのときの大臣の答弁ではいろいろ言いわけをしておられました。

 改めて聞きますが、この今の配付資料の中の神奈川県と三重県と高知県、これで、三位一体の結果、十六年、十七年、十八年、この三カ年でどれだけどの市町村が得をして、どの市町村が損をしたかという本当にわかりやすい単純な試算なんですよね。それで見ていくと、神奈川の場合、これは一ページ目ですが、神奈川の場合は、これは一番右の調整結果のパーセンテージがどういうことを意味しているかというと、一〇〇%以上のところ、例えば二〇七の厚木市とか大和、伊勢原、こういうところ、二〇〇台というのは、補助金がカットされた額よりも基本的に税源移譲でその地域に入った、いわゆる税源が上がった額の方が二倍になっている。二四四というのは二倍になっている。あるいは三倍になっているところもありますね。綾瀬なんかは三〇〇・三%ということで、結局、軒並み結果として財政的に豊かになっている、こういうことですよね。

 次のページが三重県で、その後が高知県でありますが、高知県の場合なんかはもうほとんど一〇〇を切っているところばかりでありまして、大川村なんかは五六・六、これは前より半分になったということ、半分カットされたということなんですね。そういう結果が出ている。

 これはなぜそういうことになるかというと、前に指摘させていただいたように、神奈川県あたりは、このシャドー、影になっている市町村というのは、これは全部不交付団体なんですね。だから、税源移譲でふえた分が一〇〇%自分のところの歳入として上がってくるということですね。高知県あたりはほとんどが、ほとんどというか、全部が交付団体ですね。これで、本来はカットされた部分は交付税で補てんをされなきゃいけないんだけれども、その交付税自体が五兆円からの減になっている、いわゆる削減をされているということの中で、そのしわ寄せが交付団体へ向いて、ということは、過疎地域、田舎の方へ向いてそのしわ寄せが行ったという結果、それから、都市部で豊かなところはより豊かになって、貧しいところはより貧しくなって、税源移譲されても担税力がないということが重なって、より財政が厳しい状況になっているというのがこの実質的な結果からも出ている、こういうことなんですね。

 これに対していろいろ前回の答弁では言いわけをされていましたけれども、実質こういう格差が出ているということは、総務大臣、認めますよね。

菅国務大臣 今の委員の資料で、説明によって、税源移譲額だけを見れば都市と地方でばらつきがある、こういうのは私は事実だというふうにそれは思っております。

 ただ、ぜひ御理解をいただきたいんですけれども、交付団体については、交付税の算定において補助金削減額に相当する額を基準財政需要額に算入していますし、税源移譲額を基準財政収入額に算入することによって調整を行ってきている。不交付団体について、例えば東京都でありますけれども、個人住民税の比例税率化や法人事業税の分割基準の見直し、こういう形で調整をとっているところであります。

 いずれにしろ、こうした調整をしながら、財政力格差の懸念が生じないように、今、全力で取り組んでいるところであります。

中川(正)委員 さっきの二つの点、住民税を比例税率化したということと、それから法人税のいわゆる配分基準の見直しをしたということ、これはやったんですよ。やってもこういう結果なんです。だから、そこのところは限界があるということと、このままそれをやり続けてもさらに格差は広がるということ、これははっきりしているんです。その上に立ってどういう調整をしていくかということだと思うんですね。

 今出てきている話は、面積と人口に基準を合わせた形で新しい交付税をつくっていこう、こういう議論が出ているんですが、そのことで進めても、恐らく格差はさらに拡大をするんだろうということですね。いわゆる担税力のないところは、やはりどれだけ人口で基準をつくってもらっても、それは人口がなければそれだけのものは上がってこない、こういうことだと思うんです。このまま進んでいくと、いわゆる過疎地域についてはそれなりの覚悟をしなきゃいけないということだと思うんです。

 選択肢として三つぐらいあると思うんですが、一つは、もう過疎地域に対しては、財政調整資金みたいな形で特別の付加をしていくような、完全に違った基準のものをその地域ごとに見ていくという選択肢が一つ。

 もう一つは、こういう地域に対しては、一人前の町村、いわゆる一人前の基礎自治体としての機能はこれはもう負わせない、負わすことができないと最初から判断をしてしまって、もう一つ上位の、今でいえば、県が直轄でこの地域の行政サービスを受け持っていくという選択がもう一つあるんだというふうに思うんですね。

 もう一つ、最後には、そのままの状況で格差を広げて基礎自治体そのものを壊してしまうということ、今のこのままでいけばそういうプロセスになっていくんだろう、こういうことだと思うんです。

 そういう前提からいくと、どういう方向性とどういう基準で今総務省というのはこれを組み立て直そうとしているのか、そこのところをはっきりさせてください。

菅国務大臣 基本的に、過疎地等においても一定水準の行政サービスができるように、私どもは、現時点において過疎債等で対応をさせていただいておるところであります。それと同時に、やはり税源そのものの偏在の少ない、例えば地方消費税、そうしたものを税源とするなど、そうした方向で取り組んでいきたいというふうに思っています。

 ただ、いずれにしろ、地方税、交付税の一般財源総額を確保することによって、そうした税収の低いところでも安定した生活ができるように取り組んでいるところであります。

 最終的にはやはり、偏在性の少ない消費税というものを私どもは推進していきたい、こう思っています。

中川(正)委員 消費税、これに頼っていくということでありますが、実は、現状のこの格差を消費税でひっくり返すことはできないんですよ。消費税は、偏在性が少ないと言われているだけで、小さいと言われているだけで、基本的にはこの格差をひっくり返すところまでいかないんですね。

 そこのところを、今の答弁を聞いていると、施策として基本的な方向が決まっていない。決まっていないままになし崩し的に、三位一体だとかと言って地方財源に切りかえていくといういわゆる総論、マクロの政策だけでいっているから、ミクロにこれだけの矛盾が出てきて、これだけの格差が広がってくるということ、こういうことだと思うんです。それを改めて指摘をしておきたいというふうに思います。何かありますか。

菅国務大臣 私ども、偏在の少ない地方消費税ですべてだとは思っておりません。やはり、調整機能としての地方交付税の総額を確保しながら、そうした過疎地においても生活できるようなそういう仕組みにしたいと思いますし、特に十九年度におきますと、昨年と比べて約五千億円、交付税、地方税の総額を上回ることを確保させていただいていますし、かねての懸案でありました五%以上の利率の借入金、これについて、補償金なしで繰り上げ償還できるような仕組みも今回つくらせていただきました。それについても、条件不利地域というんですか、財政力の低いところについて優先的に行う、そういう配慮もさせていただいています。

中川(正)委員 前回も時間配分を間違えてもう一つの大事なところに進めなかったんですが、本当はこれはもっと突っ込んでいきたいんですけれども、次の回に譲っていきたいというふうに思っています。

 そこで、教育の問題もこれあり、あるいはPFIもあったんですけれども、ちょっとそれは後に回させていただいて、北朝鮮のいわゆる六カ国協議の議論に移っていきたいというふうに思います。

 今回の結果、日本は、重油五万トン、それから、最終的には百万トンの支援には参加をしないという前提の中で拉致問題に進展を求めていく、事が進展すれば、そういう条件をつけたということでありますが、このことは北朝鮮にとってはどういうことを意味するのかというのが私はもうひとつわからないんですよ。

 というのは、北朝鮮にとっては、日本の拉致問題が進展しようがしまいが、核の問題を中心にして、ここで合意されたいわゆる入り口の凍結ということ、あるいは申告ということをプロセスとしてやっていけば、日本がどういうようなスタンスをとる、それにかかわらず五万トンという油は入ってくるわけですし、百万トンという油は入ってくるんだ、こういうことですよね。そういうことですね、外務大臣。

麻生国務大臣 全部を読まれたんだという前提でしゃべらせていただきますけれども、基本的には、作業部会を五つ立てるということになっております。日朝問題がその作業部会に入っております。その作業部会の答えというものが、日本の場合は、日朝問題で進展がない限りは、うちは少なくともエネルギーの支援等々には参加しないということはもう明確に申し上げてきたところでもあります。

 少なくとも、この日朝の作業部会ははなから立たなかったわけですから、その問題はないということになっておりましたのが日朝の作業部会が立ち上がったということは、間違いなくこの点において交渉は開始されるということを意味しているというのがまず第一だと思いますが。

中川(正)委員 しかし、この合意書を見ていると、それぞれの作業部会は独立して懸案の処理をしていくわけですね。それで、日本の拉致問題が進展しなければ例えば最初の五万トンというのが出されないということになるのかというと、実際には、この五万トンは韓国が受け持っていて、韓国の判断の中で供給をしていくということになっていくという報道もありますけれども、拉致がどういう形で進展するかということとは関係なくこの五万トンというのは、別の基準で、別の基準というのは、核という基準の中で動いていくということなんですね。

 それとも、拉致が進展しないから、この五万トンも待ってくれるということなんですか。どっちなんですか。

麻生国務大臣 五万トンの話というのは、いわゆる核にその主役を置いておりますので、まずは最初の段階として、核の話を、IAEAの話、寧辺の話、その他の話、全部含めてパッケージになっておりますけれども、まずは、このスタートをさせるに当たって、五万トンは緊急として出します。

 ただし、その後部会を立てまして、いわゆる核の問題等々、米朝を含めてやってまいりますが、その部会の進展にあわせて残りの九十五万トンをどのような形で出していくかというのは今からの話。

 取り急ぎ五万トンに関してだけは、今申し上げたような形でこの作業部会を立ち上げるというところまで来ておりますので、その段階までに五万トンは出す。三十日以内だか六十日以内、ちょっとその数字を忘れましたけれども、三十日以内か六十日以内に出すということだと御理解いただければと存じます。

中川(正)委員 そうするとはっきりしているのは、拉致の進展にかかわらず五万トンは出すということですね。

 そうすると、あとの九十五万トンでありますが、これは、それぞれの部会が走り始める、その中で日朝国交正常化が話し合われる、もちろん拉致ということも話し合われる、これは大事なことだというふうに思うんですが、これの進展がこの九十五万トンというその支援と連動しているのか、していないのかということですね。

 私は、この条文を読む限り、いわゆる報告書を読む限り、どこにも関連をしているという文言が読めないんですけれども、そういうことですね。

麻生国務大臣 五者の連絡協定、連絡というのは今回極めて密だったように思いますが、その中において日本としては、九十五万トンに関しては、少なくとも拉致の関連が進展しない限りうちは出すつもりはないということに関しては、他の四カ国は理解をしたというところまでは御存じのところだと存じますが、少なくとも、これが最終的な妥結をするに当たっては、この問題に関しては、日本の問題が進展しないと他国はそれをしょう分がすごく多くなりますので、百万トンというのは結構な金ですから、その金を負うに当たっては日本にはぜひという話だから、我々はということを申し上げ、他国は、日本に金を出してもらうためには、日朝関係の進展がなければ自分たちの払い分が多くなりますので、ぜひやってくれということを、アメリカも韓国も中国も北朝鮮に対してそのことを猛烈な勢いで言っていくということになるという意味で、非常に大きなものになると思っております。

中川(正)委員 いや、そうじゃないでしょう。それぞれの負担割合については、直接的に影響するのは、韓国、中国、それからアメリカなんですね。ロシアはもうこれには参加せずに、借金、いわゆる債務を帳消しにするということで参加をしていくんだ、こう言っていますから。基本的には、負担するかしないかということに影響してくるのはこちらのサイドでありまして、北朝鮮にとっては、日本がそれをシェアするしないにかかわらず九十五万トンは、この核ということを中心にして交渉が進んでいけば入ってくるということなんですよ。そういうことでしょう。違うんですか。

 それとも、この日本の拉致問題が途中で頓挫した、そのときにはこの九十五万トンの支援というのも、それぞれの国が調整しながら、日本の問題が解決するまでこれは支援することはしないよ、そういうカードに使うというところまで合意ができているんですか。そこはどっちなんですか。

麻生国務大臣 中川先生、これは交渉している真っ最中ですから、手のうちを全部見せるわけはないでしょうが。そんなことはなかなか申し上げられるような状況にはありません。それはもう御存じだと思いますが。

中川(正)委員 いや、これは、交渉している最中とか最中でないとかという話じゃなくて、基本的な話なんですよ。ここのところが、結局は日本が孤立をしてしまったのか、それとも六者協議の中に拉致問題が組み込まれたのかどうかということを判断する基準じゃないですか。拉致問題が六カ国協議の中でしっかりと位置づけができたというそのあかしというのはここにあるんです。

 それは、結果的には、恐らくさっきの答弁からいくと、達成できなかった、日本は日本でやってくださいよという形になったと判断せざるを得ないんです、この報告書を見ている限り。そういうことですね。

麻生国務大臣 先ほども申し上げましたように、ここに書いてあるメカニズムのあれでいきますれば、これは、「原則として、ある作業部会における作業の進捗は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない。五つの作業部会で策定された諸計画は、全体として、かつ、調整された方法で実施される。」これが正確な文章であります。すなわち、五つの作業部会の中によって進捗するものもあれば進捗しないものもあろうというのは、もう御存じのとおりです。

 しかし、我々にとって大事なことは、日本一国でこの拉致の問題が解決できないのはこれまでの経緯ではっきりしていますから、少なくとも他の五カ国を含め、国連まで巻き込んで拉致という問題をここまで盛り上げてきておりますので、今回、北朝鮮の最も急いでおりますエネルギーの問題に関して、我々としてはエネルギーを使って、北朝鮮に対して、この問題を解決しない限りエネルギーの問題やら何やらみんな影響しますよという、対話と圧力の部分の圧力の部分がこれだと御理解いただければと存じます。

中川(正)委員 実質的には孤立をしたということだと解釈せざるを得ないと思うんですね。

 その中でもう一つ頼りにしていくのは、米朝の国交正常化の中で、特に金融解除、それからテロ支援国家としての指定解除、こういう話の中で拉致というものをどのように定義をしていくかということ、これを頼らざるを得ないということなんですよ。これは非常に交渉経過としてはこちらのカード自体が余りにも貧弱で、これからの進展をどう組み立てていくかという展望が出せないという結果に結局この六者協議が終わってしまったと断ぜざるを得ないというふうに思うんです。

 その上で、米朝国交正常化も進んでくるわけでありますが、韓国では今いろいろな議論が出ています。私の国会議員の友人たちも、このままいけば、いわゆる米朝の国交正常化というのが本格的に進んでいくということになればということは、それは予見できるんですよね。これまでのアメリカの基本姿勢がここで変わってきている。いわゆる、中国を中心にしたこの地域の安全保障というのを集団的に構築していこうという形に変わってきている。アメリカ一国が対峙するというんじゃなくて、集団的な安全保障体制へ向いて変わってきたということを韓国自身が予見している。

 その基本になるのは、米朝が国交を正常化するということ。正常化するということは、今の戦争状態が休戦になっているということ、この戦争状態が解除されるということになる。そうなると、今もう具体的に始まってきているように、アメリカが韓国に軍隊を駐留させるということの大義が崩れてくる。

 アメリカの本音は、そうした中で集団安全保障体制が構築できるとすれば、韓国から引き揚げていく、それから台湾の情勢も、中国との関連の中で緊張緩和が進んでいますから、これも見直していく、日本の体制も見直していくというそうした大きなトランスフォーメーション、今の次元じゃなくて、もう一つ大きな形でアジア全体の安全保障の構築をし直していくというような流れにつながっていくんじゃないかという議論が韓国の中で既にあるんですね。そういう意味で、逆に、このまま進んでいけば大変なことになるんじゃないかという話もあって、スピードを緩めようというような議論まで進んでいるということを聞いています。

 日本として、ここのところをどう受け取っていくかということは、今大事な観点だと思うんですよ。

 防衛大臣、こういう動きを踏まえて、大臣としては、これからのアジアの安全保障の構築、これを、今までのように日米を基軸としたそれこそ冷戦構造の中でのとらえ方から大きく転換をしていかなきゃいけないそのきっかけというのは、この北朝鮮の六カ国協議をどう発展させていくかというそういう流れがあるんだと思うんですが、これをどう受け取っておられるかということですね。

久間国務大臣 やはり、朝鮮半島の核というのは我々にとってはとにかく一番ゆゆしきことでございますから、これの核廃棄に向けて六カ国が協議しながらやっていくということについては、非常に前進であります。

 ただ、過去の例でも、米朝関係でそういう方向に向かった、そういうようなことを考えておりましたときにそれを裏切られた経緯もございますから、今度の場合も、第一歩を踏み出したのはいいですけれども、これから先どういう形で検証をきちっとしていくか、これが非常に大事なことじゃないかと思います。

 ただ、今、中川先生がおっしゃられましたようなそういうようなことだって、これから先の二十一世紀の間では進まないとは言えないわけでございますから、私たちも、そういうような動きがあった場合にはどういう戦略を描くのか、そういうことを考えながらこれから先対応していきたい。そこはまた非常に柔軟に考えなきゃなりませんが、ただ、言えることは、その中にあって一番大事なのは、日米の基軸は、これまで同様、あるいはこれまで以上にきちっとしておく必要がやはりあろうかと思っております。

中川(正)委員 アメリカの中でも、この議論というのは、いわゆる二つの対峙した議論としてあるんだと思うんですよ。アメリカの一国主義的な形で存在感をしっかり示しながら、アジアに対しても、あるいは中東に対しても持っていくんだと。

 しかし、もう一方で中東とこっちの方と違うのは、それが崩れていって違った形で集団安全保障に持っていくという流れが今できてくるとすれば、それが中東と違うのは、中東の場合はイスラエルの存在だと思うんです。

 今、アメリカはイランと非常に厳しい状態になっているというか、イラク前夜みたいな形で非常に挑発しながら、イランへのいわゆる武力行使も辞さないというようなスタンスをとり始めていますよね。これはなぜかといったら、結局、イスラエルの存在というのが周辺諸国の中で否定されている、特にイランが中心になってイスラエルをつぶそうとしている、そういう厳しい局面を前提にしながらの中東の平和構築、だからこれは難しいところがある。

 ところが、この東アジアについては、中国を中心にした形の集団安全保障体制というのはもう組めるじゃないかという見切りをアメリカはしているんじゃないかと、私は、これまでの一つ一つの政策の検証をしていくと見えるんです。

 ある意味で、私は、久間大臣がアメリカのイラクに対するスタンスは間違っていたということをコメントされたというのは、これは一つの見識だと思うんです。日本もそれぐらいのことを言いながら、逆に、アジアについての集団安全保障体制というのを、日本が基本になって、もちろんアメリカとの関係も前提にして、これは大事なんです、しかしアメリカだけじゃなくて、アジアの集団安全保障というのを日本が中心になって提唱をしていくぐらいの主体性を持っていかなきゃいけない。そんな時代になってきたから、そのことを頭に置いて久間さんはアメリカのことも言うべきことはちゃんと言ったんだ、こういうふうに私は受け取っていたんですよ。

 そういう前提に立ってもう一度この北朝鮮の情勢を見たときに、日本が今何をしていかなければならないかということ、これを防衛省の立場からどのように構想していられるか、最後、それだけ聞いておきます。

久間国務大臣 国家間の関係というのは絶えず変化することはあり得るわけでありますから。例えば米中関係だって、日本が取り残された格好で米と中が頭越しにニクソン時代にやられました。あるいはまたリビアについても、突然アメリカはばっと、リビアの方もまた妥協して、手を結びました。だから、どういうことがあってもいいように、絶えず長期戦略については、これから先、うちの方でも長期戦略室を設けて、いろいろな角度からいろいろな勉強をし始める必要があるんじゃないかな、そういうふうに思っておりますが、今の時点で、中川先生がおっしゃるようなことに急になることはちょっと考えられないんじゃないかと思います。

 それで、私がアメリカを批判したと言われますけれども、そうじゃなくて、私があのとき言いたかったのは、核兵器があるというふうに言われておったけれども、私はないんじゃないかとその当時思っていたということを言ったのであって、開戦そのものについては、総合的に判断してその国がやったわけでありまして、小泉総理もそれを支持する。総合的に判断して、そのあれを今でも政府の方針としては踏襲しておるわけですから、私は、そのときのやり方あるいはそういうことの背景、それについてそうかなというふうに思ったということをあのとき感想として述べたわけであります。

 だから、私の議事録もやっと手に入りましたので、見ていただくと、そういう趣旨から言っております。

中川(正)委員 以上です。ありがとうございます。

金子委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 次に、中井洽君。

中井委員 民主党の中井です。

 与えられました時間で、何人かのお願いしました大臣や郵政公社の生田総裁に、二、三問ずつ質問をしてまいります。

 最初に、やはり柳澤さんにお尋ねせざるを得ません。

 謝ってもらうのは、もう十分聞いております。そうじゃなくて、僕はあなたの答弁をずっと聞いておったり、いろいろな考えが発表されるのを読んだりしておりまして、自民党の中でも有数の頭のいい方だとずっと尊敬してきたんですね。どうしてあんな情けない発言をしたんだ、これがさっぱりわからない。いろいろ聞いたけれども、みんな首をひねる。

 もう落ちつかれたでしょうから、どうしてあんなことを言われたのか。例えば、あなたを任命した安倍総理御夫妻はお子さんがいらっしゃらないですよね。そういうことにも思いが至らなかったというのは、ちょっと考えられないですね。率直に、どうしてあんな発言になったかということだけお聞かせください。

柳澤国務大臣 私は、選挙の応援演説に行ったんですけれども、表題を見ますと、垂れ幕に何か社会保障とかいろいろ書いてあるわけですね。社会保障のことに何にも触れないで帰るわけにも、これはもう羊頭狗肉で避けなきゃならないだろう、こう思いましたので、少しばかり社会保障の話をした。年金の話は当然します。

 そうすると、つい最近人口推計を発表したばかりでしたから、人口推計の話に勢い触れていった。そういう中で、女性と人口との関係を説明するに当たってあのような実に不適切な発言に及んでしまった、こういう次第でありまして、その不適切な発言において、女性の方あるいは国民の皆さん、この方々の心に大変傷をつけるようなことになったということで、本当に反省をしているというのが中井先生に対するお答えですし、また、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

中井委員 予算委員会で従来から言われていたことを言われただけであります。これ以上申し上げませんが、早くおやめになるのが一番いいだろう、こう思っているということをあえて付言いたしておきます。

 生田総裁、お忙しいところ、ありがとうございます。おととしの夏のことを懐かしく思い出しております。

 新しい会社の首脳陣ともども体制づくりに邁進をされている毎日だと思いますが、ことしになって、二十数万の職員の配置先の希望をおとりになって、そしてまたその希望の中で調整をされている、こう聞いておりますが、二十数万の方が四つの会社に移るというのはかつてないことでありますから、大変な作業だと思います。順調にいっていらっしゃるのかどうか、このことについてまずお尋ねをします。

 同時に、去年の実施計画の骨格というのを見させてもらいますと、発足時、会社民営・分社化後は二十五万三千人の体制でいくんだと書いてございます。しかし、昨年の十二月末の職員数は二十三万四千人、もう既に一万九千人割り込んでいる。その上に、この三月に一万二千四百人退職予定者がいらっしゃる。春には八千人余りの新規採用をお採りになるということでありますが、この計算でいったら、昨年の骨格のペースよりも一万数千人、数が少ないということになる。心配をしています。この一万数千人減らすことによって、郵便事業の赤字体質というものが脱却ができるとお考えになっているのか。

 あるいは、ことしの年賀状なんかはなかなかうまく配れなかったという話が頻々と入っています。足りない分をアルバイトの方々で今までやってきた、これはよく承知をしていますが、日本人、特に地方は大変なことで、公社、国ということやない、民間会社だとなった途端にアルバイトが集まらない、こういう現象に悩まされている。それが結局ことしの正月の郵便の遅配や誤配やいろいろなトラブルにつながったと聞いておりますが、この点を含めてお答えをください。

生田参考人 お答え申し上げます。

 まず、民営化に伴う持ち株会社の下に四つの事業会社ができるということについての要員の割り振りでございますけれども、下作業は全部公社で中心にやってまいりまして、それを日本郵政株式会社に渡しまして、日本郵政株式会社の方で最終的調整をいたしまして、一月の中旬にすべて本人に通知をした。

 どういう基準でやっているかといいますと、率直に言いまして、ほとんど全員が、今やっている仕事、その仕事がどの会社の仕事になるかということを考えまして、その今やっている仕事をそのまま尊重する格好でその会社に行くということを原則にいたしましたから、ほとんどの人間は、ああ、そうかという状態が今あるわけでありますけれども、多少、苦情申し立てといいますか、ほかの方がいいという者ももちろんおります、特に共通部門などは。それを現在受け取りまして、その内容につきまして、公社でも見ますし、それから日本郵政株式会社の方で主体的に見まして、業務には支障がないように応分の間に調整してしまおう、こういうところでございます。

 次の問題が全般の要員計画でありますが、さっきおっしゃったアクションプラン・フェーズ2で、二十五万三千人という数字は確かにあります。これは、一昨年、二〇〇五年の三月ごろに、将来二年をにらんで、さらに民営化もにらんで、最終的に幾らになるかということで出した数字でございまして、それから今二年ちょうどたっております。

 現状はどうかといいますと、ことし、非常に高齢勧奨退職というのが多いんですよ。これは、昨年は四千三百人、一昨年は三千六百人、大体三、四千人で来ていたんですけれども、ことしはそれが実に一万人になっておりまして、これは、非常に民営化によりまして業務が厳しくなるというようなことと、公社の間の退職奨励制度に乗っかって、そのまま、そのうちにやめておきたいという方が多かったと思います。それに自然退職二千人で一万二千人ということで、今、単純に足し引きしますと、なるほど一万人足りないというのが現状であります。

 これは、業務をきちっとやっていくためには大変だということは経営として極めて深刻にとらえておりまして、本社及び各支社にマンパワー確保対策本部というのをつくって、現在、真剣に取り組み中だ。

 真っ先にやっているのは、ことし特にやらなくてもいいようなイベントは、ことしは一年だけ休むというふうなこともやっておりますし、民営化の研修は思い切りやりますけれども、毎年やっていたごく一般的な研修は休むというふうなことで業量を減すと同時に、今回退職する方で非常によくやってくださる方には非常勤で勤務依頼して、もうしばらく働いていただけませんかというふうなことでやっておりまして、これが約三千六百人ぐらい復帰してくれるはずであります。それ以外に、出産、育児等による退職者の再雇用とか、それから非常勤職員の単価を上げる、要するに、マーケットが上がっていますからマーケットに合わすというふうなことで、いろいろな策を投じまして、JPU、全郵政とも密接に打ち合わせながら乗り切っていく覚悟で、また対策もとっている最中であります。

 郵便の赤字構造になるかどうかというのは、このマンパワーの問題とは離れまして策を深めていくつもりでございますし、年賀状については、いろいろな理由もあったわけですが、さらに改善するように努力していきたいと考えております。

中井委員 いろいろな議論がありましたが、民営賛成、反対、それぞれにこの議論をやって、共通して心配したのは、日本独自のこの郵便のシステム、これを守り抜く。民営化ならよりよく守れると政府は言い切ったわけであります。特に竹中さんはそう言い続けたわけであります。それをおかしな形にならないように、ぜひ頑張って配慮をしてやっていただきたい、このように思います。

 もう一つ、特に参議院で、附帯決議も含めて、職員全体が民間になっても福利厚生を含めて、給与面を含めて不利にならないようにすべきだ、こういう決議案もなされております。

 現在、いろいろな福利厚生施設がどんどん切り捨てられる、なくなっていっているというのも事実であります。もちろん、国民から預かったお金、そういったものを使って赤字を垂れ流すようなものはやめていけばいい、しかし、職員全体で民間会社としてやらなきゃならない福利厚生施設というものもあるんだろう、そこら辺の話し合いがうまくいっているのかどうかということが一つ。

 それから、例えて言えば、郵政福祉というような財団法人、公益法人がある。この公益法人が、郵政独特でありまして、千五百余りの局舎を持っている、あるいは千二百余りの局舎の土地を持って公社と契約を結んでいる。これらをどうするかという話し合いも一切まだ進んでいない、こう聞いております。大変、よそからでありますが、心配をいたしております。

 これらのことについて、基本的にどういう形でおやりになるのか。公社でやることじゃない、民間会社だとおっしゃるのか、あるいは総務省の担当だとおっしゃるのか、これはわかりません。わかりませんが、生田さんにあえてお尋ねをいたします。

生田参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論の方から御質問でしたから一般論からお答えします。

 私ども、民営化につきまして、準備について四原則をつくっているんですけれども、その一つに、法律、それから国会の附帯決議、それから総理や竹中当時の大臣等の答弁内容をしっかり遵守していくというのを大原則にしておりますので、附帯決議にあります福利厚生、就労条件というものは絶対に守るべきものという強い認識で取り進めております。

 御質問のあった郵政福祉、これは監督官庁は総務省であるわけでありますけれども、公社役職員の福利厚生面から、その健全な運営、正常な運営というものは大変重要だというふうに考えておりますので、今後とも、公社役職員の福祉増進に役立つ、役立たせるという観点から必要な対応を必ずしていくつもりでおります。郵政福祉の退職給付事業等につきましては、民営・分社化後も存続する、日本郵政がきちっと引き継いでいくというふうに私は認識しております。

 それから、二番目の御指摘でありました局舎の件でありますけれども、郵政福祉からは約千五百局の郵便局舎を借り入れておりますが、そのうち約半分の八百七十局が集配局なんですが、これは集配再編によりまして無集配局になります。

 というふうなことで、実は、局舎そのものは、集配用でしたから非常に大きい、それ用にできているというふうなことで、逆に、持っていてもらうのが大変になりますので、公社といたしましては、一たんそれを全部買い取らせてもらうということで、不利益が長期に及ばないように配慮いたしまして、現在、一たん買い取って、そして、必要な面積が大幅に小さくなるというふうなことも勘案いたしまして、これまでの局舎の建設をお願いしたところから買い取らせていただく交渉を、現在、円満に誠意を持って取り進め中ということでございます。

 これは交渉の内容ですから余り具体的な条件は申し上げられないと思うんですが、マーケットも考え、決して不適切にならないように、それから不利益が生じないように、そういった点を十二分に配慮しながら、現在、話し合いの詰めの段階でございます。

中井委員 時間の関係で質問はここまでにいたします。あと八カ月足らずでございます。法律、国会での附帯決議、その後の小泉さんと竹中さんというのは余り守らぬでも僕はいいような気がしますが、ぜひ、立派な民間会社、世界に誇れる民間会社をおつくりいただくために頑張っていただくようお願いいたします。お帰りいただいて結構です。

 柳澤厚労大臣にお尋ねをいたします。

 過日、いわゆる中国残留邦人集団訴訟判決等が出まして、神戸では国側敗訴、東京は国側勝訴という中で、安倍総理が代表の方と会われて、特別の方策、支援を、こういう決意を表明されました。まことに結構だ、私はこう思っております。

 これを受けて、厚労大臣も残留邦人の方々に会われて、夏ぐらいまでに対策をつくられる、こう聞いております。この夏というのが選挙向きだと僕らはすぐ思うものですから、余り選挙にこういうことを利用せずに、まともにやってほしい。

 どういう発想で、どういう方向でおやりになろうとしているのか。ことしの予算案にも、少し、新しい仕組みの中で予算措置がなされているんですね。そうすると、新しくやるまで停止するのかというようなことを含めて、方向をお聞かせください。

柳澤国務大臣 今、中井委員が御指摘になられましたように、一月三十日、東京の地裁の判決が出まして、そこでは国が勝訴した形になっての判決でございました。

 しかし、そうした裁判の結果だとか法律問題とは別にして、中国残留邦人の方々の支援について実情を見て考え直したらどうか、こういう御指示を総理からいただいたというところでございます。夏ごろまでにということを私ども心づもりをしておりますが、これはいずれ予算化を伴うものでございますので、その関連でどうしたって夏ごろまでということになりますねという話でございますので、そうした意味合いでぜひ御理解賜っておきたい、このように思います。

 総理も原告団の方にお会いになりまして、その後、私、その流れで原告団の方にお会いしました。それと同時に、もう一度、原告、裁判をやっている人以外で、いろいろと、残留邦人の方々の代表者と目すべき方々のグループの方とお会いをして、まず第一に実情を聞きなさいということで総理からも御指示いただいていましたので、実情をちょっと時間を超過して聞いたわけでございます。すべて、まあこんなところでそんな個人的感想を言うべきじゃないかもしれませんが、非常に立派な方でございまして、私も感銘をいたしました。

 その方々がいろいろ口々に言われたことの中、幾つもございますけれども、一つは、生活保護でやっていることについての、何となく社会福祉事務所の方々との間でいろいろ、制度を運用する側からすると当然のことを問いかけているんですが、それはとても自分たちにとっては厳しいことであるというようなこともございましたし、その他いろいろと、一度里帰りみたいなことをしますと、その間生活保護がとまってしまうとか、いろいろ細かいこともございました。

 それやこれや、ほかにもございますが、ここでつまびらかには申しませんが、いずれにしても、当初、あの残留邦人の方々が、祖国へ帰った、とにかくたどり着いて帰ったら今までの苦労がいわば報われる形で、帰ってよかったと思うような、そういう生活をしたいんだということが気持ちの訴えでございましたが、そういうことをお訴えになられました。それを受けて、私どもとしては考えてまいりたい。

 ただ、考えてまいるときに、一つは、総理もちょっとサジェストされたんですが、厚生省の内部で考えるんじゃなくて、第三者の有識者の意見もこの際聞いてみたらどうか。それからもう一つ、与党PTというのがありまして、これがかなり作業が進んでおりまして、それは、最近は、白紙に戻して、もう一回新規まき直しで議論されるということになったようですが、せっかく一生懸命やっていらっしゃる方もいて、その人たちが残留邦人の方と連絡もとっておられて、一つの意見の窓口にもなっておりますので、それらの審議、論議の状態もインフォーム、通告をされながらまとめてまいりたい。

 もちろん、その前提には、より残留邦人そのものの、それらの方々の意見をさらに聞き取りたい、こんなふうに思っているところです。

中井委員 幾つか申し上げますので、参考までにお聞きをいただきたいと思いますが、僕は、満州の残留孤児の方々が引き揚げてこられた、この後の厚労省援護局、いろいろなことをおやりになったことは承知していますが、全く冷たかった。ここの失敗であった、こういうのを率直に認めて新しい施策を打ってほしい、こう思います。

 私自身も、昭和二十一年の九月、一家そろって満州から引き揚げてまいりました。一年間中国に、満州におったわけであります。私ども引揚者の大半は、やはり国に捨てられたと思っています。この方々は、日本へようやく帰ってきて、また捨てられている、こうお感じになっている。

 満州という国は、いろいろまだ研究も進んでおりませんが、あの満州国の予算というのはほとんど日本の予算でやってきたわけですね。そういうことが一つ。

 それから、奥地へ行かれた方、開拓で行かれた方は、本当に日本国内でも非常に苦しい環境を打ち破るために行かれた。まだ私のように新京におった者はよかったんです。大連、奉天、まだよかったんですね。それから台湾、これもよかったんです。だが、奥地は大変だった。

 そして、苦労して、引き揚げという過程の中で、本当に死ぬ思いで子供を捨てる。別れる。中国人が欲しい欲しいと言ったもんだから渡す。だけれども、国へ無事たどり着いて、日本へ帰ってきて、自分の子供、もう二人おったんだけれども、中国人に渡したとは言えないので、みんな田舎で葬式をしておるんですね、死んだということで。だから、国交回復したって自分は捜しに行けなかった。孤児の方が日本へ親を捜して訪ねに来られても名乗れなかったという事情もあります。

 あるいはまた、毛沢東の文化大革命のときに、中国の養い親あるいは夫たちは、日本人だと言うたら迫害されるというので、いろいろな写真からお守りから、親が渡したものを全部焼いちゃったんです。だから、日本の縁戚というのがなかなかわかりにくいとか、いろいろな事情があります。

 そして、あの満州孤児や残留邦人の方々の中に軍人や軍人の家族というのはいらっしゃらない。軍人の家族は、昭和十九年にはみんな本土へ引き揚げておるんですよ。民間人だけは置いてきぼりにされた。シベリアに抑留された軍人軍属の方もおられます。しかし、家族の方々は先に国内へ戻っておられる。だから、民間人は捨てられたんだとみんな思っていますよ。やはり、これをきちっと国として、いや、そんなことはないんだという温かい配慮をする。

 いや、働かぬのが悪いんだ、生活保護で喜んでいるじゃないかとかいう誹謗中傷も聞こえますが、僕は、そんなことはない、やはり、日本人だ、よく帰ってきたということでやっていただきたい。これは、党派とかそんなことは抜きに、引揚者の一人として申し上げておきます。よろしく。

 柳澤さん、それだけですから、帰ってください。本当はずっと座っていてもらわないかぬのですが。

 もう一つ、次に、久間さんにお尋ねをいたします。

 僕は一度面と向かって申し上げたことがあるけれども、あなたも本当に頭のいい方なんですよね。それで、柳澤さんとはまた違う頭のよさだ。これは敬服してきました。過般からあなたがおっしゃっていることは、僕は、そのとおりだ、何で訂正したりするんだと。何で訂正したりするんだ。

 それは、僕は、あの開戦のころは、やはり核兵器を持っておるんだと思っていました、イラクが。だけれども、持っていなかった。あなたはそれを、持っていなかったと思っていた、こう言うんですから立派なもので、情報も確かなものだ。

 その後、イギリスも、ブレアさんなんかは、テロとの関係もアルカイダとの関係も、イラクはどうも違う、情報が違う情報だった、悪意はなかったけれどもという形で、大量破壊兵器とテロということと、二つの面で率直に謝っておられる。アメリカも、もう既にそういう形で謝っておられる。戦争をあの当時支持した、しないということじゃなしに、そういったことについて国民にきちっと謝った方がいい、私はこう思うんですね。

 だから、あなたはあの閣議決定を知らなくて、あれをきちっと閣僚として守ります、こうおっしゃっているけれども、僕はそれは違うと思うんですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 あの当時の感想はまた感想として述べたのは事実でございます。

 そして、その背景としては、開戦までに、原口先生も一緒ですけれども、イラクへ私は二回も行っておりまして、その当時のいろいろな話の中から、生物化学兵器については隠せるけれども、核兵器については、我々、国内でおって、実験その他なかなか隠せないですよというようなことを盛んに聞いておりましたので、私はないんじゃないかなと思っておった、そういうことを言ったわけであります。

 ただ、その後、私たちもまた言っておりますけれども、フセインそのものがあれだけ挙証責任を求められたときに、肩を怒らせて、さもあるかのような格好をするんじゃなくて、もっと積極的にやったらいいのにな、そういう思いもありました。

 そういうのがあって、たび重なる国連決議がされて、結局アメリカが開戦に踏み切ったわけでありまして、そういう意味で日本国政府がアメリカの武力行使について支持すると総合的に判断した。それは政府としてやっているわけでございますから、そしてその結果、その後についても、それはそれとして現在も踏襲している、そういうことでございますから、政府の一員として、私はそれを前提としながら、イラクの復興が一日も早くなされるという、あるいはまた平和の安定が一日も早くもたらされる、それについてどれだけのことをこれからしていけばいいのか、そういうような角度から、政府の一員として対処したいと思っているわけであります。

中井委員 その後の小泉さんや安倍さんの御答弁を聞いていますと、一切、そういったアメリカからの情報をうのみにして支援したということはおっしゃらずに、今お話のありましたたび重なる国連決議に対して対応しなかった、また同時に、クルド族の大量虐殺がある、こういったことを言われているわけであります。

 しかし、あなたのおっしゃる知らなかった閣議決定を見ましたら、大量虐殺なんてどこにも出てこない。大量破壊兵器だ、これだけであります。それを主に論理を組み立てて、同盟国アメリカの戦を応援するんだ、こういうことを言っていらっしゃる。僕は、ちょっとおかしいんじゃないか、素直にここのところはもう認めた方がいい。

 同時に、あなたは、その当時そういうふうに、持っていないんじゃないかと思われたと言われるが、私どもはあの当時、これに加担して大変なことになる、アメリカは大変なところに行く、ベトナム戦争よりひどい目に遭うよとやはり思いましたよ。現実、そうなってきた。陸自が撤退をいたしまして、私は、空自も撤退をすればいいと思いますが、こういったことを含めて、みんな、あの戦争に日本が加担をする理由はもうないんじゃないか、こう考えています。国民はそう感じています。

 あなたは、その後、国連のいろいろな要請によって復旧活動やらに派遣しているんだ、こうおっしゃるが、開戦の日につくられた閣議決定を見ますと、もうそこに復旧復興支援や人道支援と書いてある。支援のための所要の措置を講じてまいりますと書かれているんですね。だから、イラクの戦争でアメリカがフセイン政権を打倒した後、復興で国連から頼まれたわけじゃなしに、初めから日本はその面で出ると決めての閣議決定なんですね。

 そこのところの認識も含めて、私の今の思いにどう感じられるか、お答えください。

久間国務大臣 今の閣議決定の読み方、そういう読み方をされるかもしれませんが、逆に言えば、イラクの復興とか後の平和維持活動、こういったためにやりますよ、戦争への加担をするわけじゃありませんよ、そういうような読み方もできるわけでありますから、だから、戦争そのものを日本が支援しているわけじゃない、そこのところはひとつ御理解していただきたいと思うんです。

 やはり、イラク特措法をつくるときも、私たちはそういう観点から、これは民主党の皆さん方として、最終的には法案は賛成を得られませんでしたけれども、しかしながら、あの法律案をつくるときには、戦争そのものを支援するという立場でない、そういうような立場で、私は法案作成に携わりましたので、そこのところは、戦争そのものを支援するための法律ではないという認識を今でも持っております。

中井委員 お言葉でありますが、この閣議決定は、「イラクに対する武力行使を支持します。」とはっきり書かれている。復旧復興支援や人道支援のために所要の措置を講じてまいります。別にそれが武力行使の支持と一体でということではないし、あなたのおっしゃるように、戦争支援ということで言っているわけではないというのはわかります。しかし、武力行使というものを支持しておる。

 今のバグダッドにおける武力行使、きょうも何か、先ほど、テロで五十数人、アメリカ兵含めて、自爆テロで亡くなったと言われています。これらの泥沼のような状況。麻生外務大臣は、後のやり方が悪いと批判をされておるようでありますが、あなたはそれも支援し続けますか。

久間国務大臣 私がなぜそういうことを強調するかといいますと、テロ特措法をつくりましたときは、アフガンのときは、テロとの闘いの戦闘行為そのもののためにインド洋で補給活動をする、そういう性格の法律でありました。しかしながら、イラク特措法の場合は、終わった後の人道支援と復興支援、これに対する支援でございますから、その範疇であれば、これから先、国連からの要請等があって、それがそのまま続くならば、私たちはやはり支援をすべきじゃないかなと今でも思っております。

中井委員 あと二つ。自分で麻生外務大臣の名前を出してしまいましたので、久間さんにお尋ねをいたします。

 ちょうど一週間ぐらい前ですかね、僕が家で珍しくテレビを見ていましたら、麻生さんがテレビに出ていらっしゃって、久間さんのことを聞かれて、あの人は配慮が足りないんですかね、こう言われて、いや、非常に配慮の行き届いた人だ、しかし久間さんはインターナショナルではないんです、こう断定したんですね。びっくりしましたね。麻生さんのインターナショナルじゃないというのは英語をしゃべれないという意味かなと思うんですが、久間さんも英語ぐらいはしゃべれるんだろうと思いますが、これについて、久間さん、どうお思いですか。

久間国務大臣 ドメスティックだというふうに自分自身は思っておりまして、私は、国内の状況についてはいろいろとわかっているつもりでございますけれども、外国の状況については、私たちが予見できない、あるいはまた知見できない、そういうことに基づいて外国がいろいろな政策を判断するわけでございますから、それについて論評する立場にないというふうにいつも私は思っているところであります。

中井委員 これは少し、政治家としてあえて申し上げたい。防衛大臣ですから、外国のことはわからない、事情をちょっとというのは、そういうニュアンスの御発言は違うだろう。揚げ足とるつもりはありません、何も麻生さんをかばうつもりも。いいじゃないですか。

 きょう、チェイニーさんが来られて、あなたはお会いになれないという冷やかしもいっぱい載っておりますが、国内のことだけわかっていれば防衛大臣というのは務まるのか。違うでしょう。いや、もう僕は答弁要りません、時間がありませんから。そのことをあえて忠告いたしておきまして、麻生さんから二度とインターナショナルじゃないと言われないように勉強をしていただきたいと思います。

 もう一件。このイラクの特措法に関して、自衛隊の諸君が、今も空自が現地で活動をされております。私は、法案は反対でありましたが、行かれた自衛隊の方が立派に仕事をやっておられることを大変うれしく思います。同時に、自衛隊の諸君が、いろいろな日常活動で、国内の災害対策を含めて、より精度の高い訓練のもとに自己犠牲で頑張っておられることも承知をし、私も、できる限り地元の自衛隊の行事等へ行って、お礼と激励を申し上げております。

 また、今回の防衛庁の省昇格につきまして、私も二十数年言ってきたこと、思ってきたことでありますから、民主党内にありまして一生懸命賛成で頑張って、うれしく思っております。

 そういう男でありますが、あえて一つお考えをいただきたいことがある。このイラク特措法の名のもとに行かれた陸自の方、空自の方、危険手当という形でかなり高額なお金が出ている。海外へ行かれるわけですから、少々のことはいい。しかし、これは世界に例を見ない金額じゃないか。二万四千円あるいは二万一千円、三月間行かれたら百八十万じゃないですか。

 自衛隊の方は給料をもらっていらっしゃる。これは世界一給料が高いと言われています。それは、徴兵制じゃありませんし、また、自衛隊が発足以来、なかなか募集がうまくいかないということもあって、待遇面を少しずつ直してこられた。防衛費の三分の一ぐらいは人件費だと言われています。そういう高い給料の自衛隊の方が任務で海外へ行くときにより高い手当をもらうというのは、私は、少しやり方が違う、これは傭兵をするみたいなものだ。例えば、民間会社が今海外へ出られて、危険なところ、危ないと言われる地域へ長期出張しても、大体海外手当は月十万円か十五万円ですよ。昔と違ってきました。今そんな高いお金をもらっているのは、外務省の外交官だけですよ。これは僕は直すべきだ。

 僕は、陸自が行っている間、言いませんでした。撤退したから言います。こういうやり方は、自衛隊員のプライドというものをなくすものだ。私どもは、本当に率直に、命がけでのお仕事御苦労さんと言えなくなる。ここのところをぜひお考えください。与党の皆さんも、これは考えるべきだ。僕は、このことは大変残念なことだと思っています。

 久間さん、答弁ください。

    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕

久間国務大臣 自衛隊員の給料が高いか安いか、外国と比べてどうかという話でございますけれども、これはやはり国内におけるほかの職種との関係で評価すべきでありまして、よその国と一律に比較するというのはどうかと思いますので、その辺はまた御理解賜りたいと思います。

 それと、手当の話でございますけれども、これは、一番高いのは二万四千円、それから、安いのは四百円であります。例えばインド洋の場合だったら四千円という……(中井委員「いやいや、イラクのことを言っていますから、ほかのことを言っちゃだめです」と呼ぶ)いや、イラクでもそうです。

 それで、この二万四千円のことも高いとおっしゃられますけれども、これまでカンボジアに行ったり、あるいはその他の国に出かけていった、そういったこととバランスをとりましても、それほど大きく違いはないわけでありまして、あの当時、たしか二万二千円だったか、やはり二万四千円に近かったと思いますけれども、そういうこととの比較で言えるわけでございますから、非常に危険なところに危険な期間行く、そういうことになりますと、そういうような危険手当というのはやはり必要なんじゃないでしょうか。

中井委員 今の答弁、違います。イラク四百円なんてどこもありません、そんなの。イラク領域は二万四千円から二万円。それから、イラクに所在する空港の区域、一万六千円、一万二千円。インド洋沿岸水域、四百円、それはありましょう。だけれども、イラクはそんな安いお金はないですよ。トータルで幾らになったんですか。七十二億八千万、これがイラクの特別協力支援活動手当であります。そういったことを、総額でいけばもっとあるのかな、百二十九億になっています。これは何か一晩かかって出してくれた資料であります。

 僕は、そこのところはお考えをいただきたい。給料高いのを下げよと一回も言っていません。給料高い理由を僕は言いました。手当のことを言っておるんです。手当を出すのは悪いと言っていません。こんなむちゃな高い手当はないだろうと言っております。

 そして、例えば、そこまでおっしゃるなら、アメリカは既にもう三千人の兵士が死亡しました。アメリカの兵士、死亡したら幾らもらうんですか。一万二千四百二十ドル、これだけです。今、十万ドルに引き上げようかという話が出ているようであります。しかし、日本の自衛隊の兵隊さんがもしイラクで亡くなったとしたら、こんなことあってはなりませんが、そうしたら億でしょう。全然違うじゃないかということを申し上げている。

 給料以外に一日二万四千円ですよ。そこまで出さなきゃいけないんですか。そうじゃないと自衛隊は行ってくれないんですか。

久間国務大臣 先ほど先生はそうおっしゃられましたけれども、四百円というのは、イラクにおける港湾区域以外の港湾では四百円となっております。(中井委員「イラクの」と呼ぶ)いや、イラクの区域内における……(中井委員「イラク外」と呼ぶ)いやいや、それは政令で、法律に基づいて政令が定められて、それで別表がついているわけでありますから。先生の方にもたしか資料はお届けしているだろうと思いますけれども……(中井委員「これは一日四時間航海ですよ」と呼ぶ)イエス。そうです。だから、インド洋……(中井委員「そこで働くんじゃない」と呼ぶ)だから、ピンからキリまでというのはそういう意味でありまして……(中井委員「インド洋沿岸」と呼ぶ)いやいや、インド洋沿岸もそうですけれども、イラク……(中井委員「港湾以外の港湾で千四百円」と呼ぶ)いや、千四百円と四百円と両方ダブっているということですよ。(中井委員「それはインド洋」と呼ぶ)

斉藤(斗)委員長代理 答弁中でございますので、どうぞ答弁を続けてください。

久間国務大臣 また役所の方で説明に上がらせますので。

 いずれにしても、海上輸送の間でございますけれども、その期間中は、輸送で行く間じゅうは四百円でありまして、だから、そういうことで、ピンからキリ……(中井委員「イラクに行ってからの話をしておるので」と呼ぶ)いや、イラクの領海に入っているわけですよ。それで、海上の場合は、今言うように、そういうような……(中井委員「その二万四千円が高いと思わないのか、あなた」と呼ぶ)

 二万四千円は、先ほど言いましたように、カンボジアに行ったときもそれぐらいの金額でございますし、国際協力業務で行っている場合、そういうようなものはあるわけでありますから……。

中井委員 それは行ってもらわぬ方がいいな、そんな高いぐらい。民間人が行けない危ないところだから自衛隊に命がけで行っていただくんだというので、みんな感謝しておるんじゃないですか。それを、二万四千円のお金を払っていると、国民が聞いたら嫌になりますよ。だって、自衛隊の方は任務がそれでしょう。今度は防衛省の中で本来任務に入るんでしょう。本来任務をやるのにそんな高い手当が出るんですか。そういうことになるじゃないですか。

久間国務大臣 先ほどの数字を訂正させていただきますが、カンボジアの場合は二万円でありました。

 だから、今までは本来任務じゃありませんでしたけれども、カンボジア等に行く、ああいうやはり危険なところに行くのには二万円出して、それは国会で予算も審議をしていただいて、法案等においても、またその説明をした上で了解を得ているわけでございます。政令で確かに定めることになっておりますけれども、それはここでの審議を経て、法律に基づいて手当てをしているわけでございますから、それはやはり理解していただきたいと思います。

中井委員 それぞれの法律に賛否、私どもありましたが、私はあえて先ほど、イラクの陸自が引き揚げたから申し上げている、こう言っています。行って頑張っておられる最中にそんなことを言うつもりはなかった。でも、帰ってこられたから、まあ空自はまだおられるけれども、また今度法律を延長されるというから、そういう意味で申し上げております。せっかく頭がいいと褒めたのに、何のことかわけがわからない。

 時間をとり過ぎて、文科大臣やらお待たせし過ぎて申しわけないので、これぐらいにいたします。

 拉致のことで二点だけお尋ねします。もう二点しかお尋ねする時間がありません。

 過日の原口議員の議論を聞いておりますと、総理は、今回の六カ国協議の合意を受けて、日朝協議、日朝の協議の中で拉致の前進がなければ援助には加わらない、こう言われました。麻生大臣は、日朝間の前進がなければ重油支援には加わらない、こう言われました。今までは、総理は、拉致の解決、こう言われてまいりました。この解決と前進、拉致と日朝間の前進という言葉の違い、官房長官と麻生さんにお尋ねをいたします。

 今回、五万トンの重油を出す。日朝作業部会はつくられた。だけれども、作業部会はつくられたけれども重油は出さない、こう頑張ったのは、日本は珍しいことだと私も思っています。しかし、この作業部会が本当にうまくいくのか。六カ国協議の中で一時間、日朝の話し合いがあったようでありますが、その中で日本が拉致のことを言ったら、相手の代表は自分は拉致の担当者じゃないと言ったという話が聞こえています。この先、日朝協議の中で拉致の担当者が出てくるのかこないのか、ここのところを見なきゃなりません。

 この協定書には、平壌宣言に基づいてと書いてあります。平壌宣言には拉致のことなんか一つも書いてありません。平壌宣言を締結したときには、あれで拉致は解決したということになって、帰された人たちも日本へ一カ月来るということだけで来られたわけであります。したがって、あの文章をざっと読むだけでいけば、日本は大変難しい交渉になる、こう思っています。

 私どもは、拉致の解決である。官房長官も胸に青いバッジ、私も青いバッジをつけています。私は、党の拉致対策本部長、超党派の議員連盟の会長代理をやっております。きょうは夕刻から超党派の議員連盟の会合が開かれますが、こういう思いで、言いたいことは山ほどありますが、この点についてお答えをいただきます。

塩崎国務大臣 まず第一に、今回の六者協議の成果につきましては……(中井委員「そんなことはどうでもいいから、僕の聞いたことだけ答えてくれ」と呼ぶ)そうですか。とりあえず北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動に出たということは、大変評価をすべきことだと思っております。

 今の拉致問題について、先生には、いつも御心配をいただいて御協力いただいていることを改めて感謝申し上げたいと思います。

 北朝鮮が核放棄に向けて具体的な措置をとることに対応しまして、北朝鮮に対してエネルギー供与等が行われることが確認をされたわけでありますけれども、我が国は、今先生御指摘のように、拉致問題の進展が見られない日朝関係の現状においてはエネルギー供与には参加しないという立場をとったわけでございます。

 その解決と進展とはどういう違いがあるんだ、こういう御質問かと思いますが、特に今回の場合には、エネルギー供与あるいは支援についての関係において申し上げていることであって、我々としては、当然のことながら、拉致問題の解決なくして国交の正常化なしという方針は全く変わらないわけであります。ただ、このエネルギー等の支援、供与の問題に関して、拉致問題の進展が見られない限りは参加をしないということを申し上げたところでございます。

 今、平壌宣言に触れられてというお話がありましたが、これは、おととし九月の共同声明がございますが、今回の共同声明の実施のための初期段階の措置というタイトルにわかりますように、今回決めた枠組みは、おととしの九月の共同声明の中身を実施するということであります。そこには、平壌宣言と同じ表現でもって、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎としてという、この懸案事項の中に当然拉致の問題が入っているというのが私どもの理解でございます。

    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 日本としては、拉致問題を含む日朝関係に進展が見られれば、エネルギー分野、経済分野についての積極的な措置をとる用意がありますということを申し上げております。

 具体的に何をもって拉致問題が進展したんだということについては、これは北朝鮮側が実際にどういう対応をしてくるかによって変わってきますので、今、十三件十七人とかいろいろなあれがありますけれども、これ全部だというと、ここも拉致だあれも拉致だといろいろ言われておりますけれども、実際問題、本当に拉致かどうかというものの一応証明が成り立っておるのは十三件十七人と私ちょっと記憶します、ちょっと数字は違うかもしれませんが。そういうところまでなのかというところは、ちょっと正直申し上げて、これは向こう側の対応等々をきっちり見た上でこちら側で判断するということなんだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、日朝国交正常化のための作業部会というのは正式に立ち上げることになりましたから、その上にもって具体的な話をこれから先、逐次進めさせていただく、その上での結論だと存じます。

中井委員 進展と解決という言葉を使い分けられる。交渉ですから、それはいろいろあると思います。そこのところに僕らは非常な不満を持っている。

 もう一つは、やはり、日朝作業部会、先ほどからお話がありましたように、この部会がうまくいかなくても六カ国の仕組みというのは進んでいく可能性もある。そういう中で、北朝鮮は平壌宣言のときにもう終わったとしているわけですから、平壌宣言に基づいてという言葉が入っている作業部会に拉致の担当者をよこさない可能性もあるだろうと申し上げているわけです。そのときにはもう全然進展なしだと。あなたらは、会合を開いたということで進展ありとして次のステップへ行かれようとするんじゃないか、このことを心配しているんです。

 だから、突っ張るところは突っ張ればいいと僕は思っています。核の問題とどうだという話があります。国会議員でありますから、国家、国益はお互いわかります。

 しかし、心配していますのは、今お話のありました、おととしの九月の六カ国の協議、これが、二年でようやく最初の小さな小さな一歩が始まったわけであります。北朝鮮の今までのやり方でいくと、これから、重油九十五万トン、日にちは切ってあるというけれども、僕は何年かかるかわからないと思っています。

 久間さん、もう一つ。北朝鮮が持っている六発か七発の核兵器、小型化するのに、あと何年ぐらいで可能だと思いますか。

久間国務大臣 まだその存在がはっきりしていないのと同時に、それと、核兵器を小型化するのにその技術がどれぐらいあるのかによっても違ってきますので断言することはできませんが、短期間にすぐというわけにはいかぬだろうというような認識をしております。

中井委員 イラクの核がないというのを知っておった方が、隣の核があるかどうかわからぬ、それが防衛大臣というのも情けないことでございますが、大体、科学技術が発達した国なら一年か二年、北朝鮮なら二年か三年と僕は聞いております。この間、時間稼ぎされる。あの六カ国協議の結果を見て、北朝鮮は、自分のところは核保有国だと認められたと高笑いしているんじゃないか。そういう国を相手に交渉するのであります。

 私どもは、拉致解決のために超党派でいろいろなお手伝いをいたしますが、政府が中途半端な折れ方をしないように、安倍さんが、拉致の解決なしに北に援助を出さない、国交回復しない、こういった基本姿勢を貫くように、官房長官以下、頑張っていただくことを強く申し上げておきます。

 伊吹文科大臣には、久しぶりに教育問題をやりたかったのでありますが、久間さんとの議論で時間をとりました。申しわけありません。お許しください。

 終わります。

金子委員長 これにて中井君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口でございます。

 内閣の方に、通告に従って数点伺っていきたいと思います。できるだけ建設的に、ここは問題解決の場であると思いますので、答弁も御簡潔にお願い申し上げます。殊さら足を引っ張ったり、重箱の隅をつつくような質問はしません。

 まず、官房長官に伺いたいんですが、安倍内閣の支持率が低下しています。ずっと低下している。不支持が支持率を逆転していますが、これをどう分析されているのか、まず伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 記者会見などでも申し上げておりますけれども、支持率、いろいろなマスコミが出しておられますけれども、我々としては、真摯に受けとめていかなければいけないと思っております。

 ただ、我々としては、内閣挙げて、昨年の内閣発足以来、さまざまな政策、そしてまた法律を臨時国会でも通し、そしてまた補正予算、予算、そしてこの国会に向けて法律を数々出すということ、あるいはいわゆる格差問題に対しても、成長力底上げ戦略等々、さまざまな政策を打ってきているわけであります。

 したがって、国民の皆様方にまだ十分御理解をいただけていないということを肝に銘じて、引き続いて一つ一つの政策課題に答えを出すべく頑張っていきたい、このように心得ているところでございます。

原口委員 ありがとうございます。

 つまり、政策がうまく理解されていないというところに不支持の理由をお求めなのかもわかりません。

 そこで、官房長官、ぜひ私、きょう、冒頭強調しておきたいのは、情報公開と説明責任です。

 与党、野党の立場は違いますが、二〇〇〇年に入ってから特にそうですけれども、政府の中でも、不都合なことがあっても隠さない。官房長官は、ここにいらっしゃる枝野筆頭や石原さんたちと政策新人類と呼ばれて、金融のところを乗り切ってこられましたね。やはり金融の、不良債権の処理は、正確に責任を明確にする、一気にやる、公的資金の投入は最小限にする、そういう原則の中で、責任をきっちり追及しながらやってきたからここまで来たんだと思います。

 改革を考える上で一番大事なことは、不都合なことにふたをしない。ちょうど五年前でしたか、あの外務省の不祥事があったときにも、ここにいらっしゃる杉浦先生初め与党の理事が随分頑張っていただいて、不都合な資料である、私たち野党側からするとそれは有利な資料であるということについても、国会議員が何を政府に働きかけたかといったことまで行政文書を開示していただきました。それが、ある意味では小泉内閣の説明責任と支持率の高さというのにつながっていたのかもわかりません。

 そういう行政の透明性を高め、国民の信頼を得るために、一層の行政の情報公開、説明責任を果たすべきだ、この改革姿勢は、私たちは共有しておかなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 基本的に、今の原口先生のお考えに私も賛成でございます。

 一次情報に接することができないと政策立案もできないということをしばしば私ども感じてきたわけでありまして、一部、安全保障や外交問題でなかなか難しい問題があろうかと思いますけれども、必要な情報は、都合が悪かろうともやはり情報公開というのはやっていかなきゃいけないというのがこの平成十三年にできた情報公開法ではないかというふうに思っております。

原口委員 ありがとうございます。透明性、説明責任についての姿勢は私どもと同じだというふうに確認をさせていただきました。

 そこで、委員長に理事会でお願いをした資料、沖縄科学技術大学院大学の施設整備関連工事ということで、これは皆様のお手元に私が配付している資料の中の一枚紙の方でございます。このことについて少し伺っていきたいというふうに思います。

 この沖縄科学技術大学院大学、これの入札でございますが、この一番上の旧白雲荘改修工事、この改修工事の入札に参加する希望、こういったものを掲示された。これは事務方で結構でございます。これはいつですか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年の十一月十六日に掲げてございます。

原口委員 続いて伺いますが、そうすると、それを受けて各民間会社は、それに対する希望を、いわゆる入札をやっていこう、そういうふうにすると思いますが、これの交付期間、つまり技術資料作成要領の交付、これの期間はいつからいつまでですか。

清水政府参考人 十一月十六日に公告いたしまして、技術資料の提出期限は十一月二十四日でございます。

原口委員 正確に答えてください。いつからいつまでですか。

清水政府参考人 十一月十六日から十一月二十四日の期間でございます。

原口委員 もう一回確認しますが、掲示をしたのが十一月十六日、そして、それに対して技術資料を提示しろといったのがその日から一週間。こんなやり方がありますか。

 私、五年前、外務省の不祥事をやったとき、北海道の一部の入札に大変不透明なところがあって、それを指摘しました。そのときだって三日後ですよ。どういう企業がこうやって応札できますか。どんな企業に、これを告知する、その期間が、猶予がありますか。非常に疑問であります。

 次に、伺います。

 沖縄科学技術大学院大学、皆さんのお手元の、私の配付した資料の一番後ろですが、それの(1)、これの予定価格は幾らですか、教えてください。そして、あわせて伺いますが、何社が応札、応じましたか。

清水政府参考人 御指摘の(1)の旧白雲荘改修工事でございますが、予定価格は三億二百十八万円でございます。また、入札参加社数は十一社でございます。

原口委員 私がいただいた資料では、三億二百十九万円というふうになっています。落札率が七九・九%。その後、皆さんのお手元の資料でいうと、改修工事その2、その3、これが随意契約になっています。額が、決定金額六千百六十七万円、その2ですね。その3、五千六百三十八万五千円。私たちの地元でも公共工事が大変減っていて、一千万、二千万の入札をとるのに皆さん大変な苦労、努力をされています。合わせて一億円を超えるこういう随意契約。

 官房長官、随意契約は減らす、マラケシュ条約にも予決令にも、随契というやり方はよくないんだということでずっと議論をしてきました。小泉内閣においても、公共工事の透明化、入札の透明化ということを言われてきました。随契をするときには、ごくごく一部の例外、いわゆる特許とか知的財産を持っていたり、ほかに応札するような企業がなかったり、そういうときに随契ができるというふうに私は理解をしている。非常に例外的な措置であるというふうに理解をしています。

 お尋ねしますが、今回の随意契約の理由、これは理由書を添付しなければいけない、このように会計法にはなっていると思いますが、理由は何ですか。

清水政府参考人 随意契約でございますが、競争入札が基本的には原則でございますが、予決令によりますと、競争に付することが、随意契約によることが適切と認められる場合もあるということにされてございます。(発言する者あり)

金子委員長 もう一遍、清水沖縄振興局長。

清水政府参考人 会計法の二十九条の三でございますが、契約の性質、目的について、目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合には随意契約によるということでございます。

 本件につきましては、旧白雲荘についての外構工事と内装工事、二つの随意契約でございますが、先ほど御指摘のございました旧白雲荘本体の改修工事、これは事務棟等にするための改修工事でございましたが、旧白雲荘改修工事本体につきましては公募型指名競争入札を経て決定されたところでございますが、それと施工場所、施工期間が重複しており、工事内容についても密接に関連しているところでございますので、機構において、競争入札に付するよりも随意契約によることが適切であると認められたと報告を受けているところでございます。

原口委員 官房長官、こういう予算の執行の仕方があるでしょうか。

 皆さんのお手元の資料で、今、期間が近いというお話でしたね。それは、御案内のとおり、いわゆる競争入札、公募型指名競争入札をして、今の旧白雲荘改修工事、これは平成十七年十二月十九日でございます。そして、私が今指摘をさせていただいている二つの工事は、十八年の一月十九日、つまり、一カ月後にこれは出ているんですよ。そして、その3、今、内装工事、外装、そんな話をされましたが、それは二月の一日に出ている。こんな契約の仕方がありますか。ということは、もう十二月の十九日にはこの(2)と(3)は計画されていたはずじゃないですか。これがもっと、半年も後に出ているのであれば、そして、そのときに工事が続いていて、新たな重機をよそから持ってくるのもお金がかかりますよ、それは私も建設業をよく知っています、父も設計士ですから。だけれども、こんなやり方がありますか。

 本来だったら、これもこのときに競争入札をかけておかなきゃいけない話じゃないんですか。違いますか。あなた方が言っている競争の不利になるなどというのは、何をもって不利なんですか。国民が不利になるじゃないですか、こんな税金の使い方やっていたら。明確に答えてください。

清水政府参考人 二件の工事でございますが、まず、旧白雲荘の改修工事との関連におきまして、施工場所が重複しており、外構工事や内装工事という工事内容も密接に関連しているために、同じ施工業者に発注する方が施工の品質が確保できる。それから、新年度からの供用開始に向けて、完成時期が三月末ということで同じでございまして、現在使用中の仮設物、安全設備等の継続使用が可能であることから、共通仮設経費の軽減等、同じ施工業者に発注することが有利であるということが確認できたというふうに報告を受けてございます。

原口委員 いや、お答えになってないですよ。競争入札に付することできるじゃないですか、十二月十九日だって、そんなに一体であれば。一体だったら一体として発注すればいい話じゃないですか。入札させればいい話です。それを何で一億円も超えるような随契をやるんですか。しかも、掲示日の、その日から数えて一週間。そんなことできますか。

 皆さん、建設会社の現状を御存じないでしょう。一生懸命頑張っていますよ。地方の建設業、本当に血のにじむような思いをしている。その中で、あなた、こんな発注の仕方が許されますか。何で一体として発注しないんですか。あなた今、一体だと、そして別々のところに発注したら不利になるとおっしゃいましたよね。だったら、何で一括して競争入札に付さないのか、その理由を教えてください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 随意契約を行いました内装工事、外構工事につきましては、旧白雲荘改修工事の発注時点では設計が固まっていなかったところでございますが、一方で、新年度からの供用開始に向けて必要な工事であるということで追加工事としたというふうに報告を受けてございます。

原口委員 いや、意味がわかりません。だって、これ、急についた予算じゃないでしょう。そんな六千万も五千六百万も予算が急について、設計が整ってなければ、こうやって分割して発注して、一部については競争入札して、あと随契できるんですか。こんなことが許されますか。

 本当に設計が固まってなかったんですか。だったら、その詳細な、皆さんの、予算をいつ立てて、そして設計業務をいつ発注されて、そしてだれがお受けになったのか、それを詳細に教えてください。どうぞ。

清水政府参考人 内装工事の詳細なパーティション注文等について、さらに確定するのがおくれたというふうに聞いてございます。

原口委員 本当に不誠実そのものですよ。あなた、前の質問に何とお答えになりましたか。設計そのものがおくれたからこうやらざるを得なかったとおっしゃったんですよ。今、パーティションだったら、それは、パーティションの発注、部品の納入、そこがおくれたというだけじゃないですか。それで、あなた、一億円以上も、あるいは内装と外装を分けて随契などというのはありますか。

 官房長官、こういう予算の使い方はだめなんですよ。安倍内閣として、私は、これは競争入札を回避する目的でやられたのか、そこまで疑わざるを得ない変な発注の仕方だなと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 随契というのは、もうなるべくやめようということで、今減らしつつあるのは御案内のとおりであります。

 法令にのっとって発注がなされなければならないということで、そのとおりやっていることを証明しないといけないと思いますが、この具体例につきまして、私もきょう初めて今拝聴いたしましたので、中身についてよくわからないので、どういうことなのかもう少しきちっとした説明をすべきではないかと、私も聞いておった限りでは思いました。

 いずれにしても、法令にのっとってやること、そしてまた競争入札でやることによって国民負担をできる限り減らしていくというこの方針は、全く変わらないものだと思います。

原口委員 官房長官がお話しになったように、今の説明では私ども納得できないんですよ。

 いつ設計を出しましたか。そして、パーティションは、なぜそうやっておくれたんですか。これは一カ月しか違わないじゃないですか。この公共入札を少し後ろにやって、そして随契の前に出せば、こんなふうに分離する必要ないんじゃないですか。詳細を教えてください。

 ここにいらっしゃる委員さんみんな、おかしいよなと思っていらっしゃるんじゃないですか。皆さんを納得させられるように御説明をお願いいたします。

清水政府参考人 この独立行政法人の機構が九月に発足後、設計を出したところでございます。機構発足後のいろいろな手続をしていたというふうに承知してございます。詳細については、ちょっと手元にございません。

原口委員 官房長官、私、これはきのう、詳細を出してくださいねということを申し上げているんですよ。

 そして、きのう要求した資料も、これはどうでしょうか、私が質問する、ここに座る時間の二十分前に入ってきたんですよ。それが皆さんのお手元にあるもので、要するに予定価格と落札率を書いたものですよ、手書きで。

 この落札率も、皆さんのお手元の資料でいうと、変なことがいっぱい起きているんです。例えば3の沖縄科学技術大学院大学、これは施設整備工事、落札率六九・八%。沖縄科学技術、これは4ですね、もう一々名称は長いので言いませんが、落札率六六・四%。5、沖縄科学技術大学院大学造成工事、これは物すごい額ですよね、それが落札率六二%。落札率八〇を切ると検査が入らなきゃならないんですよ。変なことばかりじゃないですか。

 私は、きのうのうちに、この予算委員会の中で事実関係をめぐってああでもないこうでもないというのをやりとりするのは時間の無駄だし、国民の皆さんに申しわけない、だから早く出しなさいと言っているのに、変じゃないですか。これは検査は入っているでしょう、八〇%を切っているもの。いかがですか。

清水政府参考人 入札におきまして、最低入札価格が調査基準価格を下回りましたものにつきましては、御指摘のとおり、低入札価格調査を行ったと報告を受けております。

原口委員 その調査の結果を教えてください。

清水政府参考人 白雲荘の改修工事でございますが、低入札価格調査を行いまして、入札会社につきまして幾つかの観点から調査を行いますが、他物件とまとめて資機材等を購入するため全体的なコストダウンが可能である、下請業者等との協力態勢をとることが可能であり労務者の確保に問題がない、経営状況等に問題がないといった点が確認されたことから契約を行ったものと報告を受けてございます。

原口委員 私は、今の報告も書面でいただきたいと思います。

 随意契約をした理由、これは今までの御答弁ではわからない。これは、担当大臣は高市さんですよね。あなたとは政経塾で一緒に机を並べました。日本は、やはり国家経営という観点でやらないと日本はつぶれてしまう、政治を正さなきゃ日本はよくならないというのが私たちの教えでした。これ、正してくださいよ。こんな随契をやっていて、おかしいと思いませんか。

高市国務大臣 この発注者は、独立行政法人の沖縄科学技術研究基盤整備機構でございます。

 内閣府とこの機構の関係ですけれども、やはり独立行政法人制度というのは、国から法人への事前関与を極力排除する、ただ、事後のチェックは行うということでございます。ですから、この発注時には内閣府としてかかわれない、発注作業にかかわれるという状態じゃなかったんですけれども、やはり納税者を代表する国会議員の皆様の前で、もしもその税金の使い道が不十分であったり、それから、事後にチェックした結果、おかしい、例えば法令に適応していないというような点があったら、ここはしっかりと物を言っていくというのは、これはまた内閣府の仕事であると思っております。

 それで、私の方から原口委員にお願いをしたいんですが、何も資料を隠すつもりもないですし、お出しできるものは全部出します。ただし、内閣府としては、発注者であるこの独法から聞き取りをしながら作業をしていかなければなりませんので、もしよろしければ私あてに、今の時点で、今までにお出しした資料、どれとどれが原口委員のお手元に渡っているか、私、すべては今手元にはございませんけれども、もしその一枚だけであったとしたら、それをごらんになって、ここがおかしい、追加的にこういう資料が必要だということをいただければ、しっかりとお出しをいたします。

 今私が判断できるのは、この独法の、独立行政法人規程なんですね。この沖縄の機構なんですけれども、その会計規程、それから契約事務取扱規則、それとまた国の方の会計法、そして予算決算及び会計令というものに従って見ていきますと、随意契約にできる場合の条件といったものが書いてあって、機構の方の規則では、随意契約によることができる場合は競争に付することが不利と認められるとき、恐らくそれは、コストが上がるとか工期がおくれるとかそういうことなんだろうと思いますが、この独法の方の規則三十一条に従って、当時、独法で判断をされたことだと思います。

 ただ、それによって、もしも価格がはね上がっていた、税金が無駄に使われたというようなことになっていたのであれば、これはやはり国にも責任があると思いますので、御不審な点をもう一度ペーパーでいただけたら大変助かります。

原口委員 今、三十分ぐらいかけて質疑をしているんですよ。よく聞いておいてね、本当に。では、最初からもう一回質疑をし直せというわけですか、あなたは。

 私は、今まで局長と、十二月十九日、一月十九日、十八年二月一日、これは一括して競争入札に付して何らおかしくない、一体であるという工事だと言っているじゃないですか。一体だったら一体として出せばいい話で、それが、これだけ大きな金額が随意契約になっているのはおかしい、そして、設計がおくれたというんだったら、その設計をいつ発注して、そして、それがどうおくれたからこうなったのか、それを説明してくださいと言っているんです。いいですか。

高市国務大臣 わかりました。今回の、きょうの御質疑の中での答弁で不十分な点ということに限ってよろしいんでしたら、できるだけ早くということで、聞き取りを行いまして資料を作成いたします。(発言する者あり)いや、知っていて答えないとか……(発言する者あり)

金子委員長 静粛に頼みます。

高市国務大臣 役所の中に資料があって、それをわざと出さないとか、そういったことではございません、行政文書は公開しなければなりませんから。

原口委員 私は、高市大臣に同志として言いたいのは、だって、何のために私がこの3、4、5を言ったか。これは、落札価格がおかしいから検査にも入っているわけです。あなたがおっしゃるように、事後チェックを内閣府はやっているんです。内閣府がやっているということは、このことについて知っているんですよ。

 あなたは、さも、一々、これは独法がやったことだから内閣府から聞き取り調査をしてちょっと時間をかけないと僕の質問にも答えられないというふうに彼らが答えているのかもわからない、あなたに大臣レクをしているのかもわからない。違うんですよ、これはもう手元に資料があるはずなんです。いや、逆に、なければおかしな話でしょう。これは何年ですか。平成十七年ですよ、十八年ですよ、もう済んでいるんですよ。だから、それを資料で出しなさいと言っているんです。事務局、どうぞ。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 低入札価格調査につきましては、独立行政法人の機構の方で行ったものでございます。また、大臣からお答え申し上げた、必要な資料にして手元に今詳細がないものについては、改めて御報告申し上げたいと思います。

原口委員 その詳細を持ってきてほしいんですよ。そのことをずっと言っているわけですよ。何社で入札しましたか、そして、なぜこんな随契になったんですかと。普通見ない随契だから言っているんです。それで、今手元に資料がないから、後でお答えしますと。では、いつやるんですか。そんな、予算委員会の審議、延々とやれるわけがないでしょう。

 ちょっと理事、納得のいくような御配慮をお願いいたします。

金子委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

金子委員長 では、速記を起こしてください。

 資料請求についての答弁、高市沖縄担当大臣。

高市国務大臣 昨日、原口委員のところに質問の御意向を伺いに参った職員の方で正確にどういう資料が求められているということをきちっと把握できなかったことにつきまして、まずおわびを申し上げます。

 そして、実際、先ほど来の御質問の中で必要かと思われる書類は、今内閣府の中にはございません。大変申しわけございませんが、本日五時までに、まず、低価格調査をした調査書類は機構で持っているはずでございますし、あと、設計がおくれたことで随意契約となってしまった理由、これがわかる書類というものを沖縄の方で探してもらってファクスを入れていただきますので、何とか五時までお時間をいただきたいと思います。

原口委員 何でこういうふうに言っているかというと、その際、さっき、パーティションの発注がおくれましたと言いましたね。それから、内装設計がおくれましたと言ったんですよ。私も設計士の息子ですから、内装設計をこんな大きなところで別々に出すなどということは普通ないんですよ。しかも、パーティションがおくれたことまで御存じであれば、あのかばんの中にその基礎資料がなきゃおかしいし、その原資料をちゃんと出してくださいと。

 今大臣が謝罪の上、善処をお約束されましたので、私の意図は局長に伝わったと思いますので、単なる契約書を出してきたり、あるいは随契になった理由書、それはもうもらっていますから、そういうことを出してきたのでは全然解明にならないということを言っておきたいんですが、いかがですか。

清水政府参考人 御指摘の点について、十分調べて御答弁申し上げたいと存じます。

原口委員 いいですか。いわゆる調査書、これを出すように今大臣はおっしゃいましたね。それからもう一つは、設計、それの時系列でわかるもの、パーティションがおくれたというのが時系列でわかるもの。そして、なぜこのような随契をやったのか。そのことが単なる予決令と、皆さんが出してきたのは予決令と会計法の条文を出して、そのまま、はい、これですと出してきたんですよ。そんなむちゃくちゃなことはないので、明確な資料を出していただくようにお願いいたします。

金子委員長 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十七分開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岩國哲人君。

岩國委員 岩國哲人でございます。民主党を代表いたしまして、今年度予算につきまして、各大臣に質問させていただきます。

 まず、先週質問いたしましたときに、柳澤大臣に、なぜ島根県でと、失礼だったとは思いますけれども、島根県のいろいろな方からこれだけは私たち納得いかないという声を私はそのままお伝えいたしました。きょう配付いたしました資料の8にその一例として、大臣発言、これは島根県民に対する侮辱ではないか、これはまだ若い女性の、赤ちゃんをお産みになったばかりの女性の方のお声ですけれども、これはほんの一例ですけれども、こういう気持ちが非常に強いということを十分に認識していただいて、今後のお考えというものがおありであれば聞かせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今とっさに岩國委員の方から御指摘を受けまして、さっと目を通させていただいておりますけれども、やはり私の発言がこうした若い女性をも大変傷つけてしまっているということを目の当たりにいたしまして、深い反省をさらに募らせているところでございます。

 この反省の上に立って、職務に万全を期してまいりたい、このように考えております。

岩國委員 大臣、毎日のようにこうして謝罪のお言葉を繰り返していただいてはおりますけれども、お言葉だけではなくて、これからの仕事の面で、あるいは身のあり方を含めまして、今後どういうふうに、こうした島根県民だけじゃありませんけれども、全国の女性に対しても、しっかりと、それが御自身の本意ではなかったんだということを明らかにしていただきたい、そのように思います。

 この投書の一語一語を読みましても、特に最初の、産む機械、これはミスプリではないかと、私は、この発想といいますか、この女性の見方、鋭いなと思いました。

 女性にしか与えられていないチャンスであります、男性には与えられていないチャンス、そういう産む機会、機会であれば、みんな女性は喜んだことだろうと思います。それが字が違っておったがゆえに、大臣ももちろんそのつもりで御発言されたでありましょうから、それだけに怒りが非常に高いということを申し上げておきます。

 次に、予算につきまして、安倍総理の施政方針演説、これを私は二度三度と繰り返して読みました。その中に「子供たちの世代が自信と誇りを持つ」、そういう国を目指したい、あるいは、勝ち組と負け組を固定化せず、こういう言葉もありました。

 以下申し上げる言葉、総理自身の言葉で語られたものが、この今回の予算のどういったところにめり張りが、そして国民にわかりやすくそれがあらわれているのか。

 言葉だけが躍っておって、全然、予算書の中を探せど探せどそれが出てこないでは話にならないわけです。それでは、総理自身の公約が破棄されていることにもなります。一週間後に、総理のおっしゃった言葉が無駄になっていることになります。総理の施政方針演説の一週間後に出された予算書ですから、総理のマニフェストが一週間でマニフェスト違反になってもいけないわけです。その言葉の一つ一つがどのようにこの予算書にあらわれておるのか。

 先ほど申し上げました「子供たちの世代が自信と誇りを持つ」、勝ち組と負け組を固定化せず、立派なことをおっしゃっています。地方の活力なくして国の活力はない、「地方分権を徹底して進めます。」「交付税、補助金、税源配分の見直しの一体的な検討を進める」、そして、「地方公共団体間の財政力の格差の縮小を目指します。」この格差の縮小がこの予算書からどういうふうに実現に向かっていくのか。そして、「具体的な成果指標を明らかにして取り組む地方自治体を地方交付税で支援します。」「雇用に前向きに取り組む企業を支援します。」こういった言葉がずらっと並んでおります。大変立派な施政方針であります。

 問題は、皆さんが、この内閣がおつくりになった予算書のどこにそれがあって、そしてそれがどのような効果を発揮していくのか。それをお伺いしたいと思います。

 その前に、配付いたしました資料をごらんいただけますでしょうか。

 先週も質問いたしましたけれども、子供が生まれて、そして十八歳の高校卒、あるいは二十二歳、大学を卒業するまでにどれぐらいのコストがかかると思われますでしょうか。この質問を私は文部大臣にまずしたいと思います。

 教育を大切にし、そして、少子高齢化の中で、一人一人の大切な子供を、学力を伴い、社会で活躍できる人材として育てるために、教育基本法も必要でしょう、いろいろな制度も必要でしょう、立派な先生も必要でしょう。しかし、自治体やあるいは両親が負担するコストという面から見たら、これはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。

 この資料の1のように、それぞれの県で、特に島根県はその比率が高いんですけれども、他県の大学への進学が非常に多い。これは去年、おととしだけではありません。ずっと続いているんです、我々のころからも。

 そして、進学だけではありません。資料の2、高校を卒業して就職するときにまた出ていく、その比率が一番最後のところに書いてありますけれども、こういう高い比率で他県にまた就職する。

 進学もよその県へ、そして就職もよその県に、そしてその結果として、残っている十八歳というのはそれぞれの県において非常に少ないわけです。逆に言えば、それだけのコストがかかった人材というものを、実社会で、あるいは教育という名のもとにそれぞれの地方から奪われていく。

 その奪われていく一人当たりのコストは幾らだというふうに思っておられるか、伊吹大臣、お願いいたします。

伊吹国務大臣 今先生が御質問になりましたことは、一人の子供が生まれてから大学を出るまで、養育費も含めてということになるとかなり広範囲な話になりますが、教育の分野に限定してお答えをすれば、公立を選択するか私立を選択するかでいろいろ違いますが、まず、個人的な負担がどの程度かかるか、公的な負担がどの程度かかるか、二つお答えしないといけないと思います。

 まず、公的な負担からいたしますと、公立の小学校、中学校、高等学校を出て国立の大学を出るまでの公的な財政支出は、千六百八十万円かかります。そのうち、高校まで、先生がおっしゃった県費がかかる部分まででやりますと、全国平均で千百五十七万円。ただし、島根県の場合は千四百七十九万円かかっています。これはなぜかというと、過疎が進んでおりますから小人数学級がたくさんありますので、それで割り戻すとたくさんのお金がかかるということです。

 それから、親御さんがどの程度私的に持ち出すかというお金が別にございます。これは、先ほどの例で言うと、小学校、中学校、高等学校が公立であり大学が国立である場合は、七百七十一万円の持ち出し。この多くは、塾の費用とか放課後のいろいろなお金とか給食費とか、そういうものでございます。

岩國委員 文科大臣からは、そういった教育に直接関連したコスト、費用というものをお答えいただきましたけれども、朝昼晩と、着物は着せて、それから食事も食べさせなきゃいけない、風邪を引けば病院にも連れていく。一般的な、教育以外の、一人の人間として育っていくためのコストというのはこの中には含まれておらないわけですね。それは当然、両親のあるいは自治体の負担となっております。

 少子高齢化御担当の高市大臣の方にお伺いしたいと思いますけれども、こうした学校教育の関連を除いたそれ以外の費用、つまり、生育、そして先ほどの教育と合わせてのコストということになりますけれども、一人の赤ちゃんが生まれてから十八歳になるまでに両親は幾らお金を負担することになりますか、お答えください。

高市国務大臣 大変申しわけございませんが、御通告をいただいてなく、今、数字を持ち合わせておりません。

岩國委員 これは、質問通告の中にも「生育・教育コスト」というのは書いてあります。そしてまた、御担当の大臣であれば、当然こういうことに対して関心を持たれなければ、赤ちゃんをもっとふやしなさい、産みなさい、しかしコストはあんたたちが持つのよと、それぞれの家庭の負担というものも考えないでこういう施策というのをお進めになっていらっしゃるということがわかっただけでも、私は一つ勉強ができました。

 それからまた、質問通告の中にも「生育・教育コスト」というのが書いてあれば、生育、教育コストの中にどれだけのものがあるか、私が質問するという以上は、担当の大臣であれば当然御自身も関心を持っていただきたいし、あるいはそういった、御自分あるいはお友達がどれだけ子供、子育てのコストというものを負担しておられるのか、一般人としても関心を持っていただきたいと私は思うんです。

 私が、いろいろな資料、政府からいただいたものではありませんけれども、その他のものを見ますと、子供を育ててそして大学教育を終えるまでには、私立、公立、いろいろと差はありますけれども、トータルで生育、教育コストは二千万円から二千二百万円。一人の子供を育てるために、地域差ももちろん少しはありますけれども、少なく見積もって二千万円というお金がかかるわけです。お金のことを考えて産むとか産まないというわけではありませんけれども、それだけ家庭の負担がある、そして自治体にも負担がある。

 その二千万円のお金がかかった若い人たちが、それぞれの地方の県から、東北地方、山陰、四国、九州、特にこういったところは多いわけですけれども、すべて県を離れていく、進学で、就職で。そして、それだけの若い人材が、よその県で今度は税金を払って、税金を払わなくなるころになるとまたふるさとへ帰ってくる人もある。

 要するに、二千万円のコストが、これは決してビジネスで考えているわけではありませんけれども、地方自治体のバランスシートから考えれば、損益計算書から考えれば、繰り返すようですけれども、これは税金を払ってもらうために子供を産んでいるわけではありません、しかし、結果として、地方自治体にあるいは地方に住む住民にこれだけの負担がかかった、それが税源として、財源として、東京で税金を納め、東京の消費力になって、そこで税収となってあらわれていく。

 そこで、総務省にお伺いしますけれども、こういう地方のどこかの県でも結構です、島根県を例にとっていただいても結構です、島根県からこれだけの若い人が出ていく、この人たちが四十年間、平均賃金として払うであろう税金は幾らなのか。仮の話ですよ、千人の若者が毎年島根県から東京都へ移って、東京都で納める税金は幾らなのか、島根県が失った税源、財源は幾らなのか、四十年間の消費購買力は幾らなのか。大臣、お答えください。

菅国務大臣 仮に千人の若者が県外へ流出をした、生涯どの程度の税源が失われたかということで、私どもも先生に御通告いただいていろいろ精査したんですけれども、さまざまな前提が必要であること、あるいは、税の種類がさまざまであり、必ずしも人口だけでは計算できない、そういうことで、結果は一概にはお答えをできないということで御理解をいただきたいと思います。

岩國委員 いや、一概にお答えいただかなくても、前提を置き、そして仮定を置いてでもいいですから、どれぐらいのオーダーになるものなのか、そういうものを我々も頭に入れて、今度の地域活性化のパッケージ、渡辺大臣の方で主宰しておられますけれども、そのパッケージからいって、国と地方の自治体とのギブ・アンド・テークの関係はどれぐらいになっているのか。これだけのパッケージで少々のお金を使っても、全く地方自治体の方は持ち出しが多過ぎると私は思います。

 そういうことを精査とまではいかなくても、シミュレーションぐらいやってみて、それを頭の中に置きながら、どれだけの支援というのをやればいいのか。三位一体とか地方分権とか財源の地方への譲渡ということを言ってみても、言葉や形容詞ばかりが躍っているだけで、具体的に地方に本当にそれだけの財源がきちっと返されているのかどうか、そういうことはさっぱりこの予算の中からは読み取れないし、そして、いわゆる識者と言われる方たちもこの問題はいつまでも取り上げていない。

 国の形を考えるときに、そして安倍総理の施政方針の中にあるように、地方の活力なくして国の活力はない。国の活力はないとまで言い切っておられるその地方の活力、活力のもとは何か、人と金でしょう。人がどんどん地方から出ていって、どこに地方の活力があるんですか。

 もう一つ、今度は金の面でもお伺いいたします。

 地方の人が預けたお金が地元へ還流している還流率は幾らなのか。山本金融大臣、こういったお金の流れについては、世界のことだけじゃなくて、当然国内のことは十分に分析していらっしゃるだろうと思いますけれども、人は出ていく、それから金も出ていく、それでは、今発言がありましたように、元も子もないようなことになっているんですよ。金もよそで使われて、そしてよその財源や活力となって使われる、地元に残されるお金が少ない。それはもちろん、地方の活力は少ないから地元のお金を地元で使う力がないんだ、これも経済原理としては正しい表現です。しかし、それは鶏が先か卵が先かの問題にもなるわけです。

 地方の活力をもっと上げるようにしないから現に預金と貸し出しの比率が、各県別に見れば、地元の子供たちがどんどん出ていく県ほどお金も一緒に若者を追いかけて出ていっておるでしょう。あるいは、お金を追いかけて人間が出ていっているのかもしれません。人とお金が仲よく手と手をつないで一緒に地方の自治体から出ていく、これをお金の面からどのように分析しておられるのか、預貸比率は改善の見込みがあるのか、ますます悪化しているのか、どうぞお答えください。

山本国務大臣 個人金融資産、ざっくり申し上げて一千五百兆ございます。そのうちの七百五十兆が預貯金に回っておりまして、現在の貸出総額はおよそ五百兆ですから、その平均からしますと、全国平均が七百五十分の五百、すなわち六七%ぐらいが預貸比率の平均になるだろう。

 そこで、この預貸比率をつぶさに見てまいりますと、やはり都道府県別にばらつきがございます。その意味では、大都会が預貸比率が大変高くて、東京でありますと一〇九・三%。ところが愛知県、まあ愛知県は業況はいいわけでございますけれども五〇%台、あるいは三重県も五〇%台、滋賀県も五〇%台、あるいは和歌山、奈良に至っては四〇%台、こういうことでございまして、いわば地元で資金を供給する先がない、あるいは、使ってもらえないのか貸し出ししないのかわかりませんけれども、そういう現状に今のところなっております。

 そうして考えていきますと、今後どういうように預貸比率が動いていくかということでございます。それに関しましては、我々も懸命に、資金仲介機能を発揮してもらうべく、間柄重視の地域密着型金融、いわゆるリレーションシップバンキングを促進してお願いをしているわけでございますが、ただ、この現状におきまして、やや大手行においての貸出比率が随分変化をしております。

 どういうことかと申しますと、大企業がいわゆる銀行からの借り入れでなくて自分で資金調達を多様化させていく、社債あるいは株式発行、こういった面が強いものですから、大手行はむしろ中小企業への貸し出しを強化する方向にございます。すなわち、そこになかなか仲介機能がままならないという現状もございます。そこで、また、貸し出しについての担保につきましては、いわゆる金融先進国から比べますと担保の多様性がありません。したがいまして、ここにおきましてもなかなか伸び率が少ないというような現状があることでございます。

 もう少し申し上げますと、地域企業の特徴としましては、過少資本の特徴がございます。中小零細企業であるということでございますが、さらに地域銀行との密着的な関係がいわゆる過少資本と銀行の安定的貸し出し、すなわち資本の供与、疑似資本の供与というような形になっておりまして、人と資本を銀行にすべて依存した体質も今まで見られるわけでございます。

 それが、経営の健全性、ガバナンスと財務の健全性、こういったものを要求してまいりますと、今後、中小零細におきましても直接金融への流れが少し出てくるのではないか。ますます、貸出率については大手も中小もなかなかままならないという現状にあろうというように思っております。

岩國委員 御説明ありがとうございました。

 そこで、金融担当大臣にお伺いしますけれども、こうしたお金の流れというのは、人の流れを変えるということもなかなか難しいけれども、お金の流れを変えるということもこのグローバルな世界では非常に難しいことであります。しかし、人も出ていく、金も出ていく、そういう状況の中で、地方の活力を底上げするということは、もっと具体的な、あるいはもっと革命的な発想というものが日本の場合に私は必要ではないかと思うんですね。

 そこでお伺いしますけれども、今おっしゃいましたこの預貸比率、ますます地方のお金が地方で使われることが少なくなっていく、少ないからまた活力がない、活力がないからまた少なくなる。この悪循環を絵にかいたようなことがこの日本では行われているわけです。

 これをとめるためにはどうするのか。そうしたいわゆる地方と雇用の少ない県においては特別な保証制度を設けるなり、あるいは金利に差を設けるなり、市場原理がまさにコントロールしている世界の中ではこれも難しいことですけれども、しかし、何らかの知恵を出してそういう地元企業、地元密着、地元雇用型の会社には、そういう特別な金利をこれから指導していくなり、貸し出しを奨励するなり、一定枠を設けるなりなにかをしなければ、この預貸比率の悪循環というのはとまらない。金がないから雇用がない、雇用がないから、結局、若者はまた出ていく、出ていくから貸出対象企業も育たないで金も県外へ出る、人と金と両方出ていく、まず、少なくとも金の面から悪循環をとめてみるための何らかの検討が私は必要ではないかと思います。

 何かそういうことについて具体的に検討しておられるのか、いや、全くそんなことは考えてもいないし、やるつもりもないとおっしゃるのか、端的にお答えください。

山本国務大臣 先ほど申し上げましたリレーションシップバンキングの機能強化ということを考えておりますと同時に、特に再生支援協議会、各都道府県にございますが、約二十から三十の例がある中で、例えば栃木県における八十の計画のうち七十数計画が完了いたしました。

 その中におきますスキームといたしましては、ファンドの活用、あるいは地域銀行の情報の活用、あるいは都道府県、市町村の支援、そして何より大事なのがターンアラウンドマネジャーという、有能な人を探し出してそこに適用していく、そういう人の問題、そういったものを今後強化していく必要があろうというように考えております。特に、中小企業基盤整備機構の地域中小企業応援ファンド、これはベンチャーファンドと再生ファンドを含んでおりますけれども、ここに二千億円の枠を設定しております。

 今後、これらを活用していきたいと思っておりますし、さらに売り掛け債権担保、これで数十億、また在庫を担保にした、例えば養豚場で子豚を担保にする、あるいは農家でキャベツを担保にする、あるいは水産加工会社で昆布を担保にするという新しい担保設定の方法、さらには第三者保証の徴求を非徴求にする、つまり第三者保証をとらないというような考え方、こういったことを駆使しながら、特に商工会、商工会議所では経営指導員が九千人でございますが、地域金融における三十万八千五百人のそうした職員の英知を結集することによって、今後、地域の中小零細企業が活性化できるように頑張っていきたいと思っております。

岩國委員 それから、地方の中でも特に離島ですね。隠岐島、佐渡島あるいは五島列島、いろいろな島の問題。

 特に、参議院で青木幹雄先生が指摘された、隠岐島では赤ちゃんを産むときにもヘリコプターを使って出雲市へ飛ばなきゃならない。出雲市の子供たちはコウノトリの話を知っております。赤ちゃんをコウノトリが運んでくる。しかし、出雲では、赤ちゃんはヘリコプターが運んでくる。出雲市の新しい県立中央病院の十一階のところにヘリコプター、これは救急と高齢者用のために我々が県庁と一緒に設定して、それを想定しておったんです。まさかそのヘリコプターを使って出産のためにということは当時は考えてもいなかった。しかし、つくっておいてよかったと思ってはおります。

 そういう、産婦人科がいない離島、この離島に対して、一昨年、離島振興議員連盟で法案を出して、いろいろな税制上の恩典、優遇措置、支援というものをしていただきたいという法案も既に出してはおります。

 この離島に対して、今後、地方という中でもこの離島が持っている特別な役割。これは、日本の国土面積はわずか三十七万平方キロメートルです。しかし、日本はスイスではなくて海を持っておりますから、この海があるがゆえに、約五倍、二百万平方キロメートルの経済水域を持っています。海が日本を五倍にしてくれている。さらに、島があちこちにあって、そこに一生懸命住んでいらっしゃる方がおられるから、その二百万平方キロメートルがさらに倍になって、四百四十七万平方キロメートルの経済水域を日本は持っているんです。三十七万平方キロメートルの日本が四百四十七万平方キロメートルの経済水域を持つ。

 これは、海は資産です、海は力です。この海を守ってくれているのは、日本の自衛隊だけではありません。そういう離島に住んでいらっしゃる方たちが一生懸命そこを離れないようにしておられるからこそ、日本はこれだけの経済水域として誇ることができると思います。

 この離島に対して、どういう振興措置があるのか。税制支援をお願いしたけれども、政府は好意的な反応は示していただけませんでした。この離島に対して、これを担当しておられるのは、離島にも自治体がありますから、総務大臣にお答えいただきたいと思いますけれども、この離島の人口はどの島でも一つ残らず減っているのか、人口減がとまった島がこの中に幾つかあるのか。沖縄、五島列島、佐渡島、隠岐島、いろいろな島がありますけれども、そういうところで、ここは人口減がとまってこれから人口がふえそうだという島が一つでもありますか。お答えください。

菅国務大臣 離島振興は国土交通省の所管でありますけれども、実際、離島にもそれぞれの自治体があって、そこで多くの皆さんが生活をしているわけでありますから、私どもとすれば、過疎債だとか特別交付税あるいは普通交付税、そういう中で、離島の距離だとかそうしたさまざまなことを計算をする中で、そこで生活をすることができるような仕組みを私どもなりにさせていただいております。

 そして、たまたま、委員の近くに海士町ですか、ありますね。あそこはたしか人口がふえ始めてきたということを私聞いた記憶があります。

岩國委員 島根県全体としては人口は減っておりますけれども、出雲市はふえている、そういう局部的なところはあります。海士町も、隠岐島全体の中の一部の地域では人口がふえているというだけであって、私が伺ったのは、隠岐島全体としてどうなのか、佐渡島全体としてどうなのか。お答えはありませんでしたけれども、どこか一つでも人口が少しふえ始めたというところはあるんですか。ないということでしょう。私は、そういうことについてもう少し意識を持っていただきたいと思うんです。

 島というものだけは、島があればいいというだけの話ではなくて、そこに住んでいる人はどうなのか、そこに生まれる赤ちゃんはどうなのか、進学する子供たちはどうなのか、人間としてもう少し見ていただきたい。それを私は要望し、また、こういう統計を国民にわかりやすく、我々議員にもわかりやすく提供していただきたい。

 離島問題を考えるときに、金の流れはどうなのか、人の流れはどうなのか、人口はふえているのか減っているのか、このパッケージによってこれから何年後に人口減少がとまるのか。あるいは、我々は、毎年毎年、十年間、二十年間、こんな予算をつくっていて、いつまでたっても何の効果も出てこないような予算をここでつくっているのか、そういうことを知りたいからこそ私は質問したわけです。

 残念ですけれども、御担当のそうした役所の方に聞きましても、こういうことはまるで考えたことがないという反応しか返ってこないんですね。それでは私はいけないと思うんです。

 総理大臣が、地方の活力なくして国の活力なしと。地方といっても、大きな都市しか目に入らないというのではなくて、小さなところに目を注いでこそ、本当の優しい国であり、私は美しい国だと思うんです。大きいもの、目立つものだけに目を注いでいるような国が美しい国とはとても言えないと思うんです。小さなところ、声も上げられないようなところ、そこに今度の予算ではしっかりと予算がついている、だからこそ日本はそういう美しい心を持った国なんだと。総務大臣も国土交通大臣もそれを実現していただきたい、そのように思います。

 次に、借金について。

 夕張市のことはこの委員会でも問題になっておりますけれども、借金の一人当たり、県別でまずお伺いします。県別で、どこの県が一番たくさんの借金を抱えておるのか、県としての。お願いします。

菅国務大臣 一人当たりの額が一番大きいのは島根県であって、その額は百四十一万円であります。

岩國委員 なぜ島根県が一番借金が多いんですか。その原因はどこですか。もちろんその原因は二番目、三番目にも全部共通するものですけれども、県民一人当たりの残高がこのように多くなったその原因、一つ二つ挙げてみていただけませんか。

 いつまでも知事が、多選で二十年間やっておったからですか。それとも、島根県民が金遣いが荒いからですか。それとも、島根県の若い人がどんどん出ていくからですか。いろいろな理由が考えられるでしょうけれども、大臣の頭の中で、こういう県別の借金の多さをざっとごらんになったときに、ぱっと頭にひらめくその原因の一つ二つは何ですか。

菅国務大臣 私の考えによれば、まず、過疎化が進んでいるだろうというふうに思っています。一人当たりの行政コストが非常に多くかかっている、そして企業がやはりない、そういうふうに思っています。

岩國委員 大臣のおっしゃるとおり、確かに、県土面積の割に人口が少ないところ、それは、それだけの県土をメンテナンスしなければならない。それは、国がやらなければ県がやらなければならない、県がやらなければ市町村がやらなければならない。日本という小さな、大切な国をそれだけ維持管理する、維持管理コストというものは国だけが負担しているのではないわけです。

 だからこそ、こういうところに、無駄遣いするという県民性がなくても、一つの、県土が広い割に人口が少ないという宿命を負わされているところに対しては何らかの対策というものが講じられなければ、いつまでたっても、そういう県に住みついている人間はたくさんの借金がある。借金があるがゆえに、非常に、可処分所得といいますか、そういう県として自由に使えるようなお金がない。地方分権という名のもとに、これから介護とか福祉とか社会保障の責任もどんどん押しつけられたら、財布の中にお金も残っていないのに責任や権限だけが押しつけられる、こういうことになりはしませんか。

 そういうところに対する特別な何かを考えていらっしゃるのか。何も考えないままに、今まで二十年行われたその悪循環をそのままこれからも放置するということなのか。

 また、県だけではなくて、市町村、基礎自治体の責任もこれから大きくなります。

 夕張市、いろいろな原因があったことは今までもこの委員会で説明は聞いておりますけれども、第二、第三の夕張市はどこなのか。イエローカードを出しているところは自治体の数で幾つあるのか。イエローカードの中で、もうレッドカードに近いところはどこなのか。それは非常にセンシティブな問題かもしれません。しかし、国民も住民もそれを知る権利があるわけです。

 総務省としていろいろな警告をし、指導をしておられるのであれば、指導対象の自治体の数は今幾らあるのか、そして、近く夕張市現象が起きそうなところは、もうレッドカードに近いところはどういう市があるのか、お答えください。

菅国務大臣 イエローカードの定義でありますけれども、私、今度の国会で早期是正措置を可能とする法律改正をする、それについてイエローカードという話を前にさせていただきました。今の仕組みでは、最後まで、レッドカードまで何もできないわけでありますから、この法律を改正する。

 そういう観点の中で、今、起債制限が二五%以上の市町村、それは三十団体です。そして、普通会計の実質収支赤字の大きい、地方債の発行に許可を要する市町村、これが九団体。また、経常収支比率が一一〇%以上と著しく高い地方自治体というのは、十団体であります。

 そして、レッドカードに近いところはどうだという指摘でありました。これについては、夕張市のようなところはない、私どもはこれは断言をさせていただきたいと思います。

 夕張市のあのことがあって、私ども総務省で全部実は調査をしました。その結果、一時借り入れなどの不適切な財政処理を行った団体というのは八カ所ありました。しかし、それ以外にも、実はすべて精査した中で、数字上、実質公債費率が非常に高い、三五%を超えているのは、歌志内及び上砂川町ですか、この二つが三五%を超えておるところであります。

 ただ、この二つにも実は特殊の要因がありまして、私ども、不適切な財政というものを調査した中で、この二つについては産炭基金からの不適切な長期借り入れというのがありましたものですから、これについて償還するようにという指導の中で三五%を超えた、こういうことであります。十八年度に一括償還されたからこういうことになっていますけれども、それ以降についてはまた下がるだろう、低いものになるだろうというふうに考えております。

岩國委員 今大臣は、イエローカードという表現が適当なのかどうかは別として、八つの市に対して指導をしていらっしゃる。指導をしていらっしゃるんですね。一応危険な数字に来ているということで指導をしていらっしゃるかどうか。その指導というものは、具体的にほかの六市に対してはどのような指導がされているのか。

 また、この委員会では、そうした自治体の粉飾決算という言葉さえ出てまいりました。この問題の八市の中には、公債費率だけではなくて偽装比率の高いところもあるのかどうか。決算のあり方が適切でない、見方を変えれば粉飾と言われてもやむを得ないようなものがこの自治体の中にあるんですか。お答えください。

菅国務大臣 八つ指導したというのは、不適切な一時借り入れをやっていた団体であります。そこには指導をしております。

 私どもがどのような対応をしているかということでありますけれども、委員御承知のとおり、実質公債費率が二五%を超える団体は単独事業の起債、あるいは三五%の団体は公共事業等の起債も制限される、こういう指導をさせていただいています。

 また、普通会計の決算によって赤字となった団体、あるいは、実際こうした経常収支比率の財政指標が一定水準を超える、先ほど申し上げましたところでありますけれども、都道府県が財政状況の改善に向かうよう適切な助言を行うよう、私ども総務省として、都道府県を通じてそうした指導を行っているところであります。

岩國委員 先ほど、若い人が地方から大都市へ、こういう転出傾向がとまっていない、依然として続いているということを申し上げましたけれども、これに関連して、二つ質問したいと思います。

 一つは、伊吹文科大臣に、こうした進学のためにふるさとを離れなければならない、どうしても離れて勉強したいという青年はもちろんわかります。しかし、地元で勉強したいのに地元で勉強できない、こうした進学のための大学の定員の拡充、地方における拡充、拡大というものは、この十年間にどれだけ進んできたのか。これが一つ。

 そしてもう一つは、高齢者対策の問題に関連して、東京から地方へ、地方から東京へ、六十歳以上の人口が、以前は若い人が住民票を持って移動したんです。今は、六十歳以上のいわゆる高齢者の人たちが、ふるさとへ、あるいは大都市にいる息子さん、娘さんのところへ移動する。この六十歳以上の高齢層の人口移動がこの十年、二十年、多くなってきます、比率において。この傾向をきちんと分析しておられるのかどうか。そして、それはなぜふるさとへ帰るのか、なぜふるさとから東京へ来るのか、この傾向はこれからどちらがより多くなるのか。どの大臣が御担当ですか、高齢担当は。

 まず最初の、大学に関しては伊吹大臣からお願いいたします。

伊吹国務大臣 まず、地方の大学といえども、日本の発展のために貢献している人材はやはりきちっと教育をしている。ただ、その人たちが東京あるいは大都会へ出ていくということによって、今先生がおっしゃった人的バランス、あるいはその人たちが負担する税的バランスというんでしょうか、そういうもので地方が非常に持ち出しになっているという問題意識は、私はそのとおりだと思います。

 しかし同時に、これは菅大臣がお答えになるべきだと思いますが、義務教育の分野で言えば、義務教育国庫負担金を入れておりますね、補助金という形で。あるいは、教科書は無償供与をいたしておりますね。この財源は、率直に言えば、人口が集積をして企業活動が多いところから税という形で取って、地方自治体へ入れているわけです。ですから、義務教育国庫負担金も、かつて二分の一を入れていたわけですね。だから、地方分権という名のもとに、それは三分の一になりました。

 だから、先生が今御質問になっていることは、地方分権を進めるということになると、結果的に、税目を地方にお渡しするけれども、経済活動、人口の少ないところは、税目はもらったけれども空の税目をもらっているということが起こるということなんですね。ですから、そのことをよく前提にひとつこのことは考えなきゃいかぬ。

 それで、大学のことについて申し上げますと、過去十年、他県の大学へ行く人の比率はほとんど変わっておりません。ただし、地方に特色のある大学をやはりつくりたい。そして、できるだけ地方に、できれば、先生がおっしゃっているように残ってもらいたいということで、例えば国立大学について言えば、十九年度で八百四十五億円のお金を計上しまして、新たな教育ニーズに対応して各国立大学がいいプログラムを出していただければ、もちろん島根大学も含めて、重点的にそのお金を渡す。それから、私立大学についても、地域の知の拠点活性化支援事業ということで千百十三億円を用意しております。

 ですから、いろいろなアイデアを出していただいて……(岩國委員「定員が十年間で、島根県、鳥取県で幾らふえたか」と呼ぶ)大学、これは先生、鶏と卵の関係だと思うんですよ、率直に言えば。(岩國委員「だから、先に鶏をつくってください」と呼ぶ)いやいや、それは物の考え方ですから、先生。鶏を先につくるか、卵ができなかったら鶏はかえらないんじゃないんですか。(岩國委員「だって、鶏いなかったら卵産めない。まず定員をふやすことでしょう」と呼ぶ)ですから、いろいろな今申し上げたようなメニューをつくっておりますから、どうぞ、鶏をふやせるようなアイデアを出していただいたら、積極的に地方を支援いたします。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 統計データの方についてでございますけれども、現在、詳細なデータは手元に持ち合わせてございませんけれども、簡単に申し上げますと、高齢者の人口移動は確かに全体として増加しておるという事実はございます。ただ、まだ大都市の方から地方への流出の方がわずかながら多いというのが最近の状況ではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、こういった高齢者の人口移動のデータは重要でございますので、私どもといたしましても、政策ニーズを踏まえまして、必要なデータを提供することができますように、また既存の統計の有効活用も含めまして研究してまいりたいと考えております。

岩國委員 こうした政府の統計全体について言えますけれども、統計の作成が非常に遅い。それから、発表がまた非常に遅い。ですから、国民経済とか県民一人当たりの所得とかいうのも二年か三年前の数字。言ってみたら、東京を出発して名古屋へ行って、大阪の天気予報を気にしているときに東京の天気の情報が後から追っかけてくるような、これでは何の役にも立たぬわけです。

 もっと必要な情報がタイムリーに出てきてこそ政策の切れ味というものがよくなるわけですから。こんな統計をもとにしてやっているんだったら、政策の切れ味は悪いし、お金の効率は悪いし、やっていて、皆さんも納得がいかないでしょう。

 特にこの人口移動ということ、あるいは高齢者対策にしても、高齢者の人は、どこからどこへ、どういう原因で動いておられるのか、それをもっと統計等で、我々にも、国民全体にもわかるようにしていただきたいということをお願いして、次の質問に移ります。

 底上げと、安倍総理も施政方針でこのように地方の大切さをよくおっしゃっていますけれども、底上げあるいは地方の活性化ということを担当しておられる大臣にお伺いいたしますけれども、こういう今までの数字を見ても、ほとんど右肩下がり、地方に関する数字は。

 大学の定員も、伊吹大臣はおっしゃいましたけれども、要するに、卵もなければ鶏もない話なんですよ。どこかから始めなきゃいかぬでしょう。鶏は卵のせいにし、卵は鶏のせいにし、お互いが自分のところじゃないと言っているだけの話なんです。これでは政治がないじゃないですか。どこかから始めなきゃならない。大学の定員をまずふやしてみる。そして、五年、十年、そういう数字を挙げてみるということも私は必要だと思います。

 それに倣って、これからの地方の底上げ、地方の活性化ということについて、渡辺大臣、これからの地方分権の社会、そして地方を大切にしていこう。そして、地方というのは、さっきから私がるる述べておりますように、人材の供給源であり、消費購買力の供給源であり、あるいは四十年間の税源の供給源であるということを考えた場合に、地方を本当に底上げする改革的、革命的発想というのは、どういうものを頭の中に持っていらっしゃいますか。お答えください。

渡辺国務大臣 突然のお尋ねでございますが、私が担当しております地域活性化は、今までの金太郎あめ型発展モデルからの大転換をしていこうという発想であります。

 すなわち、地方にはそれぞれ、すぐれものの宝物がございます。例えば、島根県の隠岐島、海士町というんでしょうか、ここには特区がございまして、例えば潮風農業特区というのがございます。これは、隠岐島の牛は草を食べているんですが、潮風のミネラルを大変豊富に含んだ草を食べているというんですね。普通、グラスフェッドという牛は草臭いんですが、ここの牛は全然そういう牛ではないと言われています。こういう特区を立ち上げるだけでなくて、何と、建設会社が遊休農地をリース方式で借りて農業を始めている。

 それだけではありません。隠岐島には、「海士デパートメントストアープラン〜「選ばれし島」まるごと届けます〜」という地域再生計画が認定されておりまして、いろいろな海産物、宝物が豊富にありますので、そういったものを、CAS、細胞を壊さない冷凍新技術を使った、何と、定住促進型のこういう生産施設をつくってしまった。だから、先ほどの菅大臣の答弁にあるように人口がふえているわけですね。

 したがって、こういう埋もれた宝物をどうやって掘り起こすか、それが私の担当でございまして、ぜひ、自民党島根県連にでも言っていただければ、私、すぐにすっ飛んでまいりたいと思いますし、それが嫌だというのでありましたら、永田町合同庁舎の三階、あるいは虎ノ門森ビル二十三の六階にお越しをいただければと思います。

岩國委員 私は島根のことを例にして質問させていただきましたけれども、島根に起きていることは、青森でも山梨でも、あるいは鳥取でも、全国至るところにこういうのは共通しているところです。ですから、島根県がたまたまいろいろな格差を背負っているということで私は引き合いに出しましたけれども、ここは島根県議会ではありませんから、どうぞ御答弁いただくときは自由に、青森の例でも山梨の例でも引いていただきたい、そのように思います。

 こうした中で、やはり人と金の流れを大きく逆転させるような発想というものは、隠岐島の牛が何頭ふえたというような話ではとても追いつかないわけです。人と金の流れを逆転させるためのもっと大きな発想というものが、例えば地方自治体に対して、今まで国につき合って一生懸命まじめに、あるいはちょっとまじめさが欠けたところもあったかもしれませんけれども、地方自治体の借金はふえてきています、県も市町村も。そういうところにこうした平成徳政令か地方分権徳政令で、債務残高の三〇%は全部一遍カットしてみる。それぐらいに債務の負担というものを一遍減らして、七掛けに減らし、そして、国も大変ですけれども、国がその借金を肩がわりする。そして、地方の時代のスタート、もう少し負担を軽くして走らせるというような発想、私は、そういうことも、政治でなければできないことだと思うんです。

 市場の原理も財政再建もある程度は無視してでも、地方のこれからの底上げを本当にやるためには、お金の負担を軽くする。だから、地方が生き生きと、いろいろなアイデアがあっても、すぐに実行に移しやすくなる。今は、背中の借金のことを考えるから頭が動かなくなっている自治体がほとんどです。そうではなくて、背中の荷物を軽くしてやる。

 そういう発想から、三割の債務残高の一律カット。乱暴かもしれません。しかし、そういう一つの発想というものが本当の地方の時代の幕あけになるのではないか。人の流れ、金の流れというものを変えるためには、私はそういった発想が必要だと思います。大田大臣、御意見があればおっしゃってください。官房長官にお伺いしたいところですけれども、底上げの会議の関連で。

大田国務大臣 債務のカットは底上げ戦略の中には含まれておりませんので、それは菅大臣がお答えになるのがいいかと思いますが、せっかくですので、底上げで一言申し上げます。

 先生がずっと御指摘になっておられる地域に資金需要をつくる、あるいは雇用機会をつくるということからいいますと、地元の企業の足腰を強くするということが非常に重要なことだと考えます。その観点から、底上げ戦略では、各地域に円卓会議をつくって、中小企業の生産性向上、人材育成に取り組むこととしております。今後とも御指導いただきたいと思います。

菅国務大臣 少し自由に言わせていただくならば、今のこの仕組みそのものを私は変えていかなきゃならないのではないかなというふうに思っています。

 日本は、明治維新以降、中央集権体制という形の中で、まさに欧米列強に追いつくために今の仕組みをつくったわけでありますけれども、これとてまだ百数十年であります。それ以前の地方というのは、やはり活力があって、地方の特徴というのは十分あったというふうに私は思っております。薩摩、長州が海外と戦争するようなぐらいに地方が元気があったわけでありますから、そうしたことを考えたときに、私は、地方分権、道州制というものがそうしたものにつながるのではないかなというふうに思います。

岩國委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

金子委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、きょうは、地域格差の拡大の問題、こうしたことについて質問をしたいと思います。

 今月の四日の毎日新聞で、地域間の所得格差の問題については、「「小泉政権下で拡大」実証」というのが出ておりましたけれども、神野直彦東大教授は、その算出したジニ係数で、地域間格差拡大について「感覚的に論じられてきたものを初めて定量的に示せた」、こういうことを語っておられます。

 その試算の過程で、二〇〇四年の平均所得を地域別に比較すると、東京港区の一人当たり平均所得九百四十七万円、これに対して宮崎県山田町は二百二十六万円と、四・二倍の開きがある。こういうふうに、今日、明らかに地域間格差というものが生まれている、拡大しているということは事実だと思います。

 問題は、この地域格差をどのようにしていくかということでありますが、地方では地域社会の疲弊を象徴的に示しているものが、例えばシャッター通りの問題など見られますが、この点で、小売商業実態調査というのを大体三年に一回やっていらっしゃるのを私も新しいのを見せてもらっていまして、それで、従業員規模百人以上の大型小売店舗は、九一年と二〇〇四年で二・一四倍。大型店は巨大ショッピングセンター等どんどん進出してふえているんですが、一方、九一年には全国で百二十七万店あったのが二〇〇四年には八十二万店へと、四十五万店、三五%、零細商店が減少している。これが現実です。

 そこで働いていた人は二百八十一万人から百八十七万人へ、九十四万人、三三%雇用が失われ、巨大ショッピングセンターでその分が吸収されているわけじゃありませんから、雇用者所得の減少、地方税収の落ち込み、地域における、地方における消費購買力の落ち込み等で、これは、地域経済も地域財政も非常に危機的な状況というのを加速してきているというのが現実の姿だと思います。

 それで、商店街がシャッター通りになるということは、消防団活動もうまく機能しなくなる、そういう地域もふえてきました。通学路から子供を見守っていた商店が消えて、子供の通学途上の被害もふえてきております。地域社会が正常に機能しなくなってきたということは、これは、日本の今の社会にとっても将来を考えても非常に深刻な問題だと思いますが、そこで甘利大臣に伺います。

 商店街を見ると地域格差が具体的な形で見えてきます。今日のこの実態をどう認識しておられるか、伺います。

    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕

甘利国務大臣 先生御指摘のとおり、商店街というのは、地域の例えばお祭りだとか自治会活動だとか、今お話しの防犯の意味も含めて、あるいは消防団の運営も含めて、地域社会を担っていく重要な部分を、単に物を売るとかいうこと以外に担っています。この地域の商店街がシャッター通りということで寂れていくということは、単に物を売る場所が少なくなる、買う場所が少なくなるということだけではなくて、地域コミュニティーの根幹部分を担っている部分が崩壊しかねないという危機感を持っております。

 ですから、中心市街地活性化の仕組みというのは、単に商業的なにぎわいをもたらすということではなくて、地域コミュニティーをしっかりと支えていくその基盤を支えていくという意味合いがあろうと思いまして、そういう意味でも、経済産業省でもこの活性化に相当なエネルギーを投入して取り組んでいるところでございます。

吉井委員 総務省の方で「過疎対策の現況」というのを出しておられるので、この二〇〇五年版を見ましても、商店数の減少は、全国平均に比べてみても、同じ地域といっても、今度は過疎地が非常に上回っているわけですね。一商店当たりの販売額は極端に低くて、経営が成り立たないところへ追い込まれてきているというのも現実の姿だと思います。

 商店数が減少しているというこの事実の上に立って、経済産業省の方では、「新経済成長戦略」という中で、この商店街の役割、今大臣もおっしゃいましたけれども、書いておりますが、商店街は地域経済の担い手であるだけでなく、歴史的経緯、地理的状況を背景に、その町の文化、伝統をはぐくみ、公益、産業等の各種機能を担ってきた社会的資本の集積地であると。私は、地域住民が暮らしていく上での非常に大事な社会インフラだというふうに思うんですが、ここが今非常に大変な事態に。全国どこへ行っても、多くのところでシャッター通りがふえるばかり。

 大体どれぐらいの時期からふえていくかというのは、私も甘利さんと一緒に商工委員をずっとやっていましたから、よく御一緒に見に行ったりもしましたけれども、これは、九〇年代半ばから規制緩和、規制緩和と言い出して、その後半に大店法廃止をやりました。そして二〇〇〇年代のあの構造改革、こうした動きの中で極端に進んでしまったというふうに思うんですが、この点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 確かに、大店法が大店立地法になった、そこらあたりから中心市街地のいわゆる従来型の商店が疲弊を始めるという、その軌を一にしているというふうに思います。

 そこで、当時、私は自民党で、そういう地域の中心市街地が崩壊していくという危機感を持って、この中心市街地の活性化法という枠組みを組みました。その法律によって後押しをして、中心市街地の形成をしっかり図っていこうと。その際には、ステレオタイプのまちづくり、日本じゅうに銀座をつくるのでもなし、日本じゅうに元町をつくるんじゃなくて、その地域の歴史と文化を背景にしたまちづくりができるようにという施策を、八年前ですけれども組みました。

 そこで、なかなか効果が出ないということで、まちづくり三法見直し、これも座長をやれということで見直し案をつくりまして、今、その適用事例が少しずつ出始めているところであります。

吉井委員 やはり、大店法を廃止して中心市街地活性化法だとかいっても、これでは現実にはシャッター通りがとまらないどころか、さらに拡大していってしまったというのが現実であったと思います。

 そういう中で、住民生活を支える上では、私は次に山本大臣に伺っておきたいと思うんですけれども、年金を受給する、その入れたり出したりとか、暮らしを支えていくという点ではやはり地域の金融機関が大事なんですが、農協金融で見ると、店舗は九五年から二〇〇〇年にかけてはそれほど大きな変化はないんですが、二〇〇〇年の二万三千三百四十七店が二〇〇五年で二万一千三百九十九店へと急激に減ってしまっているんですね。ATMも消えていくという問題もありましたが、郵政民営化法案を議論したときも、もうからない地域から金融機関が撤退していくという事態について随分議論が交わされました。

 ちょっと調べてみると、一九九五年度に二万八千二店舗あったのが二〇〇五年には二万三千百六十七店へと、十年間で四千八百三十五店舗も金融機関の店舗が減ってきているんですね。銀行というのはもともと過疎のところにはほとんど進出してきませんから、地銀、第二地銀、信金、信組とか農協等の金融機関がそこを補って、地域の皆さんの金融サービスを守ってきたわけですね。しかし、それがどんどんどんどん後退してしまっている。それが現実です。

 そこで山本大臣に伺いますが、金融サービスというのは、これは国民生活には不可欠なサービスであって、日本全国どこに住んでいても金融サービスは受けられなければならないものだというふうに私は思うんです。地方や過疎地での金融機関の店舗の維持をどのようにきちんとそれを進めていくのかということは、これは今は非常に大事な課題になってきておると思うんですが、この点について伺います。

山本国務大臣 金融機関は、経営の効率性、収益性向上の観点から、例えば、合併により生じた重複店舗の統合やATM等の代替設備の設置による有人店舗の廃止などを進めておりまして、結果として、金融機関の店舗数は減少傾向にあると理解しております。

 他方、有人店舗が減少する状況下でも、各金融機関は、エレクトロニックバンキングの発展、コンビニATMの拡大等を通じまして、顧客利便性の観点から見て、従来と比べて遜色のないサービスを提供するよう努めている面もございます。

 金融庁におきましても、利用者の金融サービスに対するアクセスの確保、向上させる観点から、銀行代理業制度の導入などの取り組みを行ってきたところでございまして、金融機関における顧客の利便性の維持向上が地方を含めて図られることを期待しておるところでございます。

 ちなみに、平成十三年の銀行法の改正で店舗の設置、廃止が届け出事項とされておりますので、店舗について、いわゆる減少に何らか法的措置で規制をしていくということについては、もはや金融庁ではできないということにはなっております。

吉井委員 何か、もはやできないと簡単に言われると何とも頼りない話なんですが、もともと、コンビニATMもおっしゃいましたけれども、コンビニというのは、かなり人が住んでいて、採算がとれるところしかコンビニがそもそも進出しないんです。ですから、過疎化していっているところでは、かつてあったコンビニも撤退することがあっても、コンビニATMというのはそもそも期待できないというのが実態なんです。

 そこで総務大臣の方に伺っておきますが、地方で暮らしていても、生活をサポートする、残った大事な公的インフラの一つが郵政事業だというふうに思います。現在は、郵便貯金が、これは、郵便貯金法であまねく全国でサービスを提供することを義務づけていますね。これが、郵政民営化で郵便局がなくなり、地方の暮らしをサポートするものが抜け落ちることで地域格差というのはますます拡大されることが今心配されています。

 郵便局の数を見てみると、公社発足後、これは二〇〇二年度末でしたが、二万四千七百五十二店舗あったんですが、二〇〇五年度末で二万四千六百三十一局へと、全国で既に百二十一局消えているんです。

 郵政公社というのは、公社法二十条で郵便局の設置が義務づけられ、同施行規則第二条で、その水準については、公社法施行の際に存するネットワーク水準を維持することとしていましたね。公社に公社法を守らせていないという現実があると思うんですが、そこで大臣に伺っておきたいのは、総務省令どおりにきちんと水準を維持させるように指導監督しておられるのか、伺います。

菅国務大臣 現在、この郵便局というのは、過疎地だとか離島、あるいは全国に張りめぐらされた国民の大事な資産であるというふうに私は思っております。

 郵便、郵便貯金及び簡易保険の三事業などのサービスをあまねく提供し、地域間の格差が生じないように重要な役割を果たしている。こうした役割を果たすことは今後とも期待をされており、そのために必要な郵便局ネットワークの水準維持というものを私はしっかりと守っていきたい、こう考えております。

吉井委員 守っていきたいという決意はわかりました。しかし、現実は実際に百二十一局消えてしまっているんですね。なくなった郵便局とともに、閉鎖している郵便局は三百十局あって、合計四百三十一局と物すごい数でどんどん郵便局は消えていっている。これは、郵政公社法二十条が守られていないのが現実じゃありませんか。大臣は期待をしておられても、現実には減っていっている。それで、一時閉鎖は年々拡大しております。郵政民営化に向けてさらに閉鎖局が拡大しようとしているのが現実です。これでは、民間になったら幾ら郵便局を減らすのかわからないという現状が出ているんです。地域社会を支える大事な公的インフラがこんなふうに消えてしまっていいんでしょうか。

 郵便局ネットワークを維持すると言うのなら、閉鎖局をそのままにしないで、民営化会社への移行を認めるべきじゃないと私は思うんですが、これはどういうふうに考えておられますか。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたように、全国にめぐらされているこの郵便局ネットワークは国民の資産であり、民営化後の会社に対しましても、地域住民の需要に適切な対応をすることができるよう設置すること、市町村に一局以上の郵便局を設置すること、地域住民が容易に利用できる位置に設置することを基準として、さらに過疎地については、民営化法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持し郵便局を設置する、このように実は求められておりますので、民営化後におきましても、この設置基準により郵便局の設置を義務づけることによって、地域住民の利便に支障が生じることのないよう郵便局ネットワークの水準が維持される、このように考えています。

吉井委員 維持されることを考えておられるのはよくわかるんですけれども、現実に閉鎖局が三百十局生まれている。そして、既にもうなくしてしまったのが百二十一局ある。これは現実なんですね。こういう、閉鎖局をそのままにして民営化会社へ移っていくということになると、大臣のおっしゃることはわかるんだけれども、現実は、どんどん地域社会の大事な社会的インフラがなくなったまま、しかもそれが拡大するという現実が進んでいくということを言わなきゃいかぬと思うんです。

 それで、民営化に向けての簡易郵便局閉鎖で、地方切り捨てによって、コンビニATMはもとより、もともと農協ATMなんかも後退しているんですが、郵政のATMも大幅になくなってきております。これは、大学、高専、病院からも消えていっているのが現実です。

 もう一つの問題が、郵便業務の統廃合だと私は思うんです。もともと二万四千七百の郵便局の中で集配特定局は三千四百六十五ありますが、そのうち二千二百二十、三分の二が過疎地にありました。簡易郵便局は、全国四千四百四十七の中で二千四十、つまり約半分が過疎地なんですね。だから、その過疎地で集配特定局の業務統廃合がどんどん進んだら、ますます過疎が進むと暮らしが大変だ、サービスは低下する、このことで多くの方たちが心配して反対の声を上げておられるわけです。

 こうした中で、郵政公社の方は、昨年夏、私の質問に答えて、郵便業務の統廃合については納得を得てだと答弁をしました。しかし現実には、地域の納得がないのにどんどん進められている。

 だから、大臣が、やはり地方自治体、地元住民が納得や了解をしていない郵便局の集配業務の統廃合は、公社は強行しちゃならないという立場できちんと指導していくということが当然私は大事だと思うんです。それをやらないことには、全国どこに住んでいても暮らしを支える公的インフラ、ネットワークは必要なのに、これが、簡易郵便局の廃止、ATMの撤去、ゆうゆう窓口は消える、集配業務の統廃合によって、本当に地域経済や社会や過疎地の人々の暮らしを支えてきたこういうネットワークはずたずたになってしまうと思うんです。それは、幾ら美しい国だと言葉だけ言っても、全く逆の道を進んでしまうことになると思うんですね。

 少なくとも私は、集配業務の統廃合については、大臣、これは地域自治体や住民の納得なしに強行することはさせない、そういう強い立場で総務大臣として臨んでもらうことが必要だと思うんですが、どうですか。

金子委員長 総務大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

菅国務大臣 この集配再編は、交通手段の発達や道路の整備状況、そうした時代の変化に合わせて、効率的で競争力の高いネットワークを整備する形で行いました。そして、サービスが変化する場合においては、サービス水準が低下しないように、そういう代替措置が実施されるということで総裁も説明をされたと思いますし、現に、総裁も地元に出向いて説明をしている、そういうことでありました。

 いずれにしろ、この廃止によってサービスが低下しないような形の中で考えるべきだというふうに私は思っています。

吉井委員 代替措置はちゃんとされておりませんので、そのことを申し上げて、終わります。

金子委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、厚生労働大臣に、特に非正規雇用の問題を中心にお話を伺いたいと思っています。

 イザナギ景気を超えて、六十カ月超えたんですかね、景気が上昇傾向にあるという話があって、二〇〇一年と比較しても株主配当が二・八倍、役員の報酬、賞与などは二倍になったという統計があるようですが、しかし一方で、勤労者の賃金というのは、これはもう大臣御存じのとおり、なかなか厳しい状況にあるということで、今や、マスコミもそうなんですが、世間を挙げて、賃上げが実はこの景気を支えていくのではないか、支えるためには賃上げが必要だぞという声が実は一般的になっているんじゃないかと思うんです。

 これは、きょう尾身大臣に聞くわけじゃないからあれですが、底上げ路線、上げ潮路線でいけばいずれそうなる、そのうちよくなるから待っていろという意見もあるようですが、しかし、もう六十カ月ですよ。これまでの景気の循環からいうと、とてもじゃない、二年かそこらでそういう話が出てきたわけですよね。

 その話がきょうは中心じゃないんです。実は、その低賃金に抑え込まれている一つの要因に、非正規雇用の問題があるというふうに私ども思っていまして、これがどんどんどんどんふえて、今や千七百万人に達するかというぐらいの数になっているわけですね。

 きょうは、その非正規雇用の方々が、それでなくても厳しい労働条件、賃金の中で働かされていて、なおかつ、名うてのというか、日本の有数の、この国の経済を牽引するような企業で不法な扱いを受けているということが随分明らかになったと思うんです。その問題について具体的に名前を言うと、キヤノンがそうですし、これは、御手洗さんというのは日本経団連会長ですよ、そこの企業だとか、トヨタだとか、実に、そういう日本を代表する企業の中で不法に非正規の労働者を扱ってきたという事実がぞろぞろ出てきて、これはもうびっくりしました。こんなことで本当にいいのかと。恐らく厚生労働省もそのことを大変心配されて、昨年の九月四日でしょうか、各都道府県の労働局長に、「偽装請負の解消に向けた当面の取組」という文書を出されたようです。

 最初にお伺いしたいんですが、この取り組みを通じて明らかになった偽装請負の実態、それと、厚生労働省がそういう文書を出して、都道府県労働局が受けとめて指導されて、具体的にどういう改善が行われたのか、そのことについてお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 「偽装請負の解消に向けた当面の取組について」という文書ですが、昨年九月四日、職業安定局長及び労働基準局長の連名でもって都道府県の労働局長あて通達をいたしました。

 これを受けまして、全国の労働局では、昨年の九月から十二月までの間に、請負事業に係る千九百十一事業所を対象として監督を行いました。うち、労働者派遣法等に照らして不適切な点のあった事業所に対して文書による指導を行ったところであります。

 このような是正指導を行うに当たりましては、指導の対象となった発注者や請負事業者に対し改善状況の報告も求めておりますので、その結果、行政処分の対象となったごく一部のものを除きまして、適正に改善がなされたか、改善のための具体的な取り組みが行われているもの、このように受けとめております。

日森委員 受けとめていらっしゃるのは結構ですが、しかし、現実にはそれがまだまだ氷山の一角で、依然として横行しているということも、恐らく御存じじゃないかと思うんです。

 労働者派遣法、四年の三月以降、製造業でもいいよという話になったわけですが、実は、当初は派遣法に基づく派遣労働者だったんですね。しかし、最近、一部の企業では、派遣ではなくて請負契約、ともかく請負契約で仕事をやらせようということで偽装請負がたくさん出てきたわけですね。

 請負契約になぜ企業がこだわって偽装請負までしてきたのかということについては、その調査の中で明らかになりましたか。厚生労働省は、どんな理由でそういう事実が起きているかということについて確認をされていますか。

高橋(満)政府参考人 お答え申し上げます。

 請負事業がどういう理由で活用されているかということでございますが、私ども、アンケート調査を実施して、その結果を見てまいりますと、一つは、一時的、季節的な業務量の増大への対処という理由、またさらには、経費の節減、削減といったような理由から、大企業を中心に幅広く活用をされておる、こういうふうに理解をいたしております。

日森委員 厚生労働省の労働力需給制度についてのアンケートというものだと思うんですが、そうすると、このアンケートに答えた三二%の企業が、コストが安いと正直にお答えになっているわけですよ。安い労働力を請負という格好で使い回していこうと、正直に答えているわけですよね。

 問題なのは、あの御手洗さんが、経済財政諮問会議の第二十二回会議、これはもう有名な話になっていますから余り重複は避けたいと思いますが、日本の労働市場が職務給に変わりつつあるんだと。そうでしょうかね。これは問題があって、失敗もあって、必ずしもそういう方向に全部行っていると私は思いませんが。しかし、職務給に変わらないうちに、年功序列型の給料で、今の派遣法のように三年たったら正社員にしろと硬直的にすると、日本のコストは硬直的になっちゃうんだ、空洞化に結びつく、もう少しおれたちに任せてほしい、市場に任せてほしい、派遣法を見直してもらいたいということを発言していました。

 安倍総理大臣は十五日の参議院の厚生労働委員会で、うちの福島党首が質問したんですが、この答弁で、実にいい答弁をされているんですよ。「派遣からあるいはまたパートの方が正規の、正規雇用に進みたければそれが可能な社会をつくっていくべく我々も努力をしていきたい、」というふうに述べました。

 この安倍総理の、参議院で十五日に発言した、「正規雇用に進みたければそれが可能な社会をつくっていくべく我々も努力していきたい、」というのは、これは政府の方針、基本的な考え方というふうに確認しておいてよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 安倍総理の答弁というのは、私ども安倍内閣が進めているまさに一貫した政策的な態度である、このようにぜひ御理解を賜りたいと思います。私自身も、正規雇用を望む非正規労働者に対して、できる限り正規雇用の機会の拡大を図っていくことが重要だと考えております。

 現実、具体的に、パート労働につきましては、パートタイム労働法の改正案を今国会に提出いたしますけれども、その場合にも、正社員として働くことを希望する者には正社員への転換を推進するということを、いろいろな手法を通じてですけれども、義務づけようというような方向で検討を進めているところでございます。

 また、労働者派遣につきましても、現行制度において、一定の条件のもとで派遣先に派遣労働者に対する雇用契約の申し込み義務というものを課す仕組みを設けておりまして、派遣先での直接雇用の機会を与えてもらうように計らっているところでございまして、現時点でこれを撤廃するという考え方は持っておりません。

日森委員 改めて確認しますが、御手洗さんの御意見について厚生労働大臣は否定をされたわけですね。

 もう一度確認だけしておきたいんですが、とすると、派遣労働者に対する雇用契約申し込み義務の見直しというのが第三次答申に盛り込まれているわけですね。平成十九年度中に検討というふうに書かれていて、「「規制改革・民間開放の推進に関する第三次答申」に関する対処方針について」というのが閣議決定されているんです。

 この見直しは行わない、この閣議決定は違うんだ、十九年度中に検討などしませんというふうに、今後もしませんというふうに理解してよろしいんでしょうか。

高橋(満)政府参考人 お答えいたします。

 規制改革三カ年計画並びに昨年末の答申におきまして、確かに雇い入れ申し込み義務についての大きな課題ということが提示をされておりまして、このことについて、やはり幅広くいろいろ検討はしていこうということは閣議決定という形でされておるわけでございます。

 したがいまして、このことの持つ機能なり問題点は十分いろいろ幅広く検討をしていく。ただ、今大臣からお答え申し上げましたように、現時点で、私どもはこれを撤廃するという考えは持っていないということでございます。

日森委員 現時点では持っていないけれども、幅広く検討する中で見直しもあり得るというふうに今答弁されたんでしょうか。

 大臣はどうなの。見直す必要はない、見直すことは考えていないと。現在なんですよ。

柳澤国務大臣 これは、先ほど御答弁申し上げましたように、現時点では考えておらないということを申し上げた、これは後で議事録を見ていただきたいんですが、そのつもりでおりますが、今職安局長が答弁したように、いろいろな問題点がありますので、これを幅広く検討するということになっておりますので、検討は行うということまでを差しどめる、そういう枠組みにはなっておりませんということでございます。

日森委員 だから、検討するということは、この御手洗さんの主張に沿って見直しをすることもあり得るという意味ですか。そういう方向というのは世界に逆行するでしょう。ヨーロッパなど、そんなことやっていませんよ。そういうことも含めてそうおっしゃったんですか。

柳澤国務大臣 これは、先行する閣議決定に私どもも簡単にこの場で全く反する、逆行した御答弁は申し上げかねるわけでございまして、その意味で、幅広く検討するということについては、検討するという立場を申し上げているわけであります。

 しかし、私どもとしては、今、派遣労働において、また請負労働において行われていることの問題点というのは、極めて真っ正面から受けとめて何とかしなければいけない。そして、それは安倍内閣の基本的な方針であるところの、できるだけ、そういう形での労働をされる方においても本人たちが希望すれば正規の労働の方に転換をしていただく、移行していただく、こういうことに努めていきたいというのが基本的な方向であるということでございます。

日森委員 要望だけしておきたいと思うんですが、これはもう雇用契約義務というのはしっかりと確立するという方向で検討していただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。

 それから、キヤノンの問題ですね、御手洗さんが出てきましたので。もうちょっと触れたかったんですが、時間が余りありません。二点だけ触れたいと思います。

 キヤノンは、偽装請負の問題が随分報道されました。その中で、若い人たちが労働組合などをつくって、正規雇用を求めて今運動をやっているんですが、実は、団体交渉も認めないとか、応じないとかいう大変不誠実な対応をしているんですね。その問題については個別の会社のことですから見解は求めませんが、それで、キヤノンが偽装請負のもとで請負労働者を酷使してきたという事実が私たちはあると思っていますが、一方で、正社員採用セミナーというのを開催しているんですよ。そこで求人広告を出しているんです、求人広告。何と書いてあるかというと、派遣社員などで現在キヤノンに勤務中の方は、この求人広告ですね、採用セミナーに参加を御遠慮くださいと書いてあって、初めから今キヤノンで働いている人は排除するような広告を出している。

 今、実際、もう十年も請負と派遣をごろごろごろごろ一年ごとに変えられたりして使われてきた労働者、しかも、今頑張っている人たちは、キヤノンに対して正社員化を要求している方々は、若い人たちは、本当に難しい仕事、本当に二、三年たたないと技術を習得できないような大変難しい仕事をいわばずっとやってきて、正職員も知らない、自分たちしかできないような仕事をたくさんやっているんですよ。そういう人々を排除してやろうとしている。

 もう一方では、新規採用というようなことを、新聞報道で出ていましたが、実は、しばらく前は、そういう派遣や請負の方々を正規労働者にするように努力するみたいな話をしていたキヤノンが、手のひらを返したように、新規採用なんだというふうに言い始めているんですよ。

 これは、一つは、求人広告についてどういう感想を持っているか聞きたいのと、それからもう一つは、そう言って、今の偽装請負で酷使されてきた人々を正社員にしないで、適正な派遣とか完全な請負とかいうことで安い労働力を使い回していこうというその人が、政府の経済財政諮問会議の委員ですよ。

 安倍さんは何と言っているか。さっきも言いました、派遣からあるいはまたパートの方が正規雇用に進みたければそれが可能な社会をつくっていくべく努力をしたいんだと安倍さんが言っているんだけれども、反対のことをやる人が経済財政諮問会議の委員としていろいろなことを言っているわけですよ。今の請負は使い勝手が悪いから変えろとか、期限は、雇用契約の義務なんというのは取っ外してくれ、こう言っているわけでしょう。これは恥ずかしくないですか。こんな人が経済財政諮問会議の委員なんかできるんですか。これは感想ですよ。安倍さんが何と言うか知らないけれども、厚生労働大臣はどういう感想を持っているか。

 この二点を、ちょっとお聞きをしたいと思います。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 まず、キヤノンの広告のことに委員はお触れになられましたけれども、私どもは個別の事案についてコメントをすることは差し控えさせていただきたい、このように思っております。

 ただ、一般論を申し上げますと、職安法の四十二条には、労働者の募集を行う者は、労働者の適切な職業選択に資するため、的確な表示に努めなければならない、こういうような条文もあるわけでございますので、そうしたことに照らしまして、虚偽の広告あるいは当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせる表現など、法に違反する行為等があった場合には、事実関係を確認の上、法の条項に照らして、是正指導を行い、改善をさせなければならない、このように考えているということでございます。

 それからまた、経済財政諮問会議のメンバーについての御言及があったわけでございますけれども、これも、私は臨時議員として労働法制等の審議が行われる場には出ておるわけでございまして、そのときにはしっかりと私どもの考え方を申し上げ、そこは議論を闘わせる場ですから、議論を闘わせていただいておる、こういうことでございます。

杉浦委員長代理 日森文尋君、時間が終了しております。

日森委員 時間になりましたが、安倍さんの発言は政府の方針だということを確認して、そういう立場でしっかりやっていただきたいと思います。

 終わります。

杉浦委員長代理 これにて日森君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、昨年も質問させていただいたわけでございますが、ライフラインで、特に水道のことにつきまして質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 世界の大震災の約二割が日本で起きているわけでございまして、これは以前、川崎厚生労働大臣に私が質問させていただいたんですが、昨年の予算委員会では、水道ビジョンが目標としている基幹管路の耐震化率を平成二十五年までに一〇〇%にするんだ、こういうことにしっかり取り組んでもらいたい、こういうことを私が申したわけでございますが、基幹管路の耐震化の現状、またさらに進んだと思いますので、この数字も、そして管路の耐震化を今後進めていくための予算確保の状況というのはいかがなものか、お聞かせいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 糸川委員は、かねてこの問題に非常に御関心で、熱心にお取り組みということで、まずその点に心から敬意を表します。

 私も非常に幅の広い厚生労働省の所管事務を扱うんですが、水道の問題を初めて話題にするということで、大変印象に残る機会になりました。

 ところで、平成十六年度に全国の水道事業者を対象に調査した結果によりますと、現在、耐震化率一〇〇%を平成二十五年度までに達成というように先生から督励を受けていたということですけれども、現在の耐震化率は一三・九%ということでございまして、ビジョンの策定時より若干の増加を見てはおりますものの、耐震化は十分ではないという状況でございます。

 厚生労働省といたしまして、十九年度予算案における水道施設整備費はどうなっているかと申しますと、これは、一般の公共事業費の削減の中で、対前年度七・四%減の千七十四億円というふうになっている状況でございます。

 ただし、そういう中で、耐震性が低い石綿セメント管について現行の補助条件の一部を緩和するなど、水道管路の耐震化等を行うライフライン機能強化等事業費につきましては、対前年度八・一%増の七十四億円を確保したところでございまして、今後、地震等の災害に強い水道の整備を重点的に推進していきたい、このように考えております。

糸川委員 大臣、石綿管のことはまた後ほどお聞きしたいと思いますが、水のことで考えますと、最近ペットボトルというものがどんどん普及されてまいりまして、日本は、水道というものも高普及率を達成しております、九七%ぐらいでしょうか。非常に質のいい水をいつでも使うことができるようになっている。特に、その質というものは世界のトップ水準にある。この直接飲める水というものも、世界では数少ないわけでございます。これが日本の水道文化だというふうに私は認識をしておるわけでございます。

 しかし、水道水の水を最近は飲まない、こういう方が多くて、ペットボトルの水の売り上げが急速にふえている、こういうふうにも聞いております。このことについて、大臣の所感、感想、これをお聞かせいただきたいなと。

 また、こういう危機感を持った水道事業体の方々が、一生懸命対策をしようということで、例えば私の福井市でも、原水をペットボトルに詰めまして販売をし始めたりと、各市町村で一生懸命そういう取り組みをしているところもあるわけでございます。そういうキャンペーンを一生懸命工夫しながらやっているというところもあるわけですから、国としても、水道水はおいしいんだ、こういうようなことで、何らかの形で、もう今は昔と違って質がどんどん高くなっているということを国民の皆さんに理解していただけるように、何か、大臣、取り組むことはできませんでしょうか。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 この間、私も両面の、自分の情報というか、そういうものを耳にし、また、そうしたことで自分たちの生活態度も決めた面も正直言ってございました。

 平成二年ごろをピークとしまして、水道水をそのまま飲まないという人がふえた。その背景にはカビ臭いというような話があったということで、一挙に舶来のものを含めてペットボトルの水が市民の間に普及したということがあったようですが、しかし、そういうことがあって間もなく、水道局が本気になって、それと競争すべく、負けない水をつくり始めているんだという話、そして、それができたんだという話を耳にしたわけでありまして、まさに高度浄水処理の導入によって水道水の味はかなり改善されておりまして、安全性のみならず、おいしさの点でも大変な向上を果たした、こういうことでございます。

 したがって、国としても、水道事業が国民の評価を受けるように引き続き努力をしていかなくちゃいかぬ、このように考えているところであります。

糸川委員 ぜひそういうことにはどんどん取り組んでいただきたいと思うんですが、やはり味がおかしいとかにおいが臭いとかということで、私も今世界のトップ水準だというふうにお話ししましたが、今ここに資料もございます。

 先日、水道管取りかえの現場にちょっと行ってまいりまして、これは鋳鉄管ですね。鋳鉄管の中に、このさびこぶ、相当汚いのが入っています。こういうところを通ってくると、どうしてもにおいが、どんな高度処理をしていても、やはりにおいがついてしまったり味がおかしかったりというようなことになるわけでございます。

 また、こういうものはもちろん早急に取りかえなきゃいかぬ、こういうことは実感しておるわけでございますが、こうした老朽管というもの、これは、さびの防止が不十分なばかりではなくて、管の材質が弱い、地震にも弱い。先ほど、耐震性を持たせなきゃいかぬということですから、計画的にそれは取りかえていくんだ、こういう説明もその現場で受けたわけでございます。

 全国では、このような老朽管のほかに、先ほど大臣がおっしゃられました石綿セメント管、こういうものも約二万キロ残存しておるわけでございますが、一刻も早い取りかえが必要だというふうに考えておりますが、大臣、そこはどのように認識されておられますでしょうか。

柳澤国務大臣 申すまでもなく、水道は国民生活に欠くことのできないものでありまして、災害時におきましても、断水等を生じることなく水道水を供給できる体制をきっちり整備しておくということは、極めて重要な課題であると認識をいたしております。

 このため、厚生労働省におきましては、漏水率が高く耐震性が低い老朽管、それからまた、今委員御指摘の石綿セメント管につきましては、早急な布設がえをするために、その管の更新に対して国庫補助制度を設けているところでございます。それから、さらに、平成十九年度予算におきましては、石綿管の解消に向けまして、石綿管更新事業の補助要件の一部緩和を盛り込んだところでございます。

 いずれにいたしましても、水道の円滑な供給のため、ただいま委員の御指摘になられたような老朽管、石綿管等の更新には拍車をかけていかなければならない、このように考えております。

糸川委員 大臣がそういう認識をされていらっしゃるのであれば、これは健康局長にお聞きしたいんですが、今、全国でこのような老朽管、それから石綿管の残存状況、これはどのようになっているのか、また、どのくらいのペースで更新していかれるおつもりなのか、また、いつごろ解消される見込みなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

外口政府参考人 上水道事業及び水道用水供給事業におきます水道用の管路は、導水管、送水管、配水管で約五十九万キロメーターでございますが、このうち石綿セメント管については、平成七年度末は約四万七千五百キロメーターでございました。これが、平成十六年度末現在の残存延長は約一万六千六百キロメーターでございます。

 一方、さびこぶの発生が問題であると御指摘のありました老朽管につきましては、例えば、埋設後二十年以上経過した鋳鉄管で見ますと、平成七年度末には約二万六千二百キロメーターでありましたが、平成十六年度末現在の残存延長は約二万二千百キロメーターであります。

 石綿セメント管につきましては、特に耐震性が劣ることから、従前より、早期に布設がえを完了することを目標とするよう水道事業者を指導して、石綿セメント管更新のための国庫補助を設けて取り組んでいるところであります。

 また、埋設後二十年が経過いたしました鋳鉄管については、これは法定耐用年数の四十年に達していないものもありまして、耐用年数前の管について、必ずしも更新する必要のないものもございますが、御指摘のとおり、さびこぶの発生、漏水等の問題もあり、早急に解消するよう、国庫補助制度を設け取り組んでいるところであります。

 今後とも、国庫補助の活用等により、埋設後二十年が経過した鋳鉄管や石綿セメント管の優先的な更新、布設がえがより一層促進されるよう、各水道事業者への指導を徹底してまいりたいと考えております。

 それで、いつごろ解消されるかということでございますけれども、厚生労働省といたしましても、この更新事業に対する予算の重点配分等によりまして、水道ビジョンが目標とする平成二十五年度までには、可能な限り布設がえが進むよう最大限努力してまいりたいと考えております。

糸川委員 可能な限り布設がえとおっしゃるんですが、可能なではなくて、必ずやっていただきたいな。どんどん進めていっていただきたい。せっかく財務大臣もいらっしゃいますから、いや、質問ではないです。ぜひ厚生労働大臣も、この場で大臣も聞いていらっしゃいますから、どんどん予算をつけてもらえるように努力をしていただいて、必要なんだ、ライフラインなんだということで認識をしていただきたいなというふうに存じます。

 今、この老朽管の話をいたしまして、これは震災時に特に被害を受けやすいわけでございます。また平常時におきましても、亀裂が入って漏水や水道水の濁りの原因となるわけでございます。ですから、更新のペースをどんどん速めていただきたいなというふうに考えます。

 また、この管路の更新ばかりではなくて、例えば浄水場それから配水場ですとかそういった施設、これもこれから一斉に更新時期を迎えるわけでございまして、私がいただきました水道ビジョンの資料によりますと、平成三十年代に更新のピークが到来し、その必要投資額というものは現在の約一・五倍になるということを聞いておりますので、大臣、ここをぜひ、更新に対する指導というものでしょうか、これを徹底していただきたいなというふうに思っております。

 もう余り時間がないものですから、どうしてもこれは聞いておきたいなと思うんですが、この石綿管のほかに、今、鉛管の問題もございまして、道路に埋設されている水道管から建物へ水道を引き込む給水管、これは以前に鉛製の給水管というものが使われておりました。これは、水道水質基準では鉛の水質基準は〇・〇一ミリグラム・パー・リットル以下であるというふうに定められておりますけれども、まずその根拠について御説明いただけますでしょうか。

外口政府参考人 鉛につきましては、これは蓄積性がございますので、摂取量が多い場合、中枢神経系に対する影響等が懸念されております。我が国では、WHOのガイドライン値や乳幼児への影響を厳格に考慮いたしまして、平成十五年に、鉛の水質基準については現在の〇・〇一ミリグラム・パー・リッター以下とされたところでございます。

糸川委員 おっしゃるとおりでございまして、特に脳障害が起きたりとか、人への害というものが非常に懸念されている。実態としてどうなっているかということよりも、懸念されているということで基準を厳しくしたというようなことでございます。

 そうしますと、鉛製の給水管からほかの材質の給水管に取りかえるべきだというふうに思っておるわけでございますが、給水管は、道路への埋設部分も含めて、これは個人財産であるわけでございます。そういうところには手がつけられていない水道事業体も多く存在するわけでございます。

 水道事業体が持っている鉛製のものというのはどんどん取りかえようという努力があるわけですが、個人のものはなかなか取りかえられない、こういう現実があるわけでございます。また、漏水していても水道メーターの手前で料金に影響がないとか、個人の責任としていると放置されがちだというのが現状であるわけでございます。

 これは、ただ、高等裁判所の確定判決で、道路下の給水管は、個人財産であっても、水道事業者に管理責任があるとする、こういうような判例もあるわけでございます。

 こうしたことから、鉛製の給水管の取りかえ、これを水道業者が行うための技術的な助言ですとか指導について、大臣の取り組みはどのようにしていくおつもりなのか。これは個人の財産ですから非常に難しいところでありますが、大臣、どのように取り組まれるおつもりなのか。今害があるというふうに言っているのを踏まえて、お答えいただきたいなと思います。

柳澤国務大臣 鉛製給水管、鉛の給水管というのは、要するに家庭内に入るところのメーターのところまでと、それから、メーターから実際の、蛇口と我々が言う、あそこまでに使われているケースがある、こういうことで、これをどうするか、こういう問題なのでございますが、いずれにせよ、それは個人財産という位置づけだ、こういうことであるわけですね。

 それをどうするかということでございますが、平成十六年度に、社団法人日本水道協会に専門家による委員会が設置されまして、この鉛製の給水管の布設がえを進めるための方策の検討が行われまして、報告書ができ上がったということなんだそうです。

 したがいまして、厚生労働省といたしましては、この検討結果を水道事業体に示しまして、水道メーターから公道側に設置されている鉛管については公共事業体が起債措置を活用して布設がえを行う、それから、水道メーターから宅地側に設置されているものについては、布設がえに対しての住民の理解を求める広報をまずいたしまして、しかる後に、水道事業体が助成金や融資制度による支援措置を導入することによってこの布設がえを進める、こういうスキームがこの検討の結果でき上がったということでございます。

 したがいまして、このような枠組みを活用しまして鉛製給水管の布設がえが促進されますよう、我々としても助言、指導を行ってまいりたい、このように考えております。

糸川委員 布設がえ、これは個人の財産だということでございますが、先ほど、WHOも懸念をして基準を強化しているわけですから、個人の財産だからといってずっとほったらかしにしておきますとアスベストのような問題も起きてくる可能性もありますから、ぜひ大臣、リーダーシップを発揮していただいて取り組んでいただきたいなと思います。

 また、あわせまして、耐震化、この問題もしっかりと取り組んでいただきたいなということを申しまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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