衆議院

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第2号 平成19年10月9日(火曜日)

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平成十九年十月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 伊藤 達也君 理事 遠藤 利明君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 中山 成彬君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      岩永 峯一君    臼井日出男君

      大島 理森君    大野 功統君

      金子 一義君    亀岡 偉民君

      河村 建夫君    倉田 雅年君

      小池百合子君    小坂 憲次君

      佐藤 剛男君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    菅原 一秀君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      谷垣 禎一君    谷畑  孝君

      中馬 弘毅君    中谷  元君

      西本 勝子君    野田  毅君

      深谷 隆司君    細田 博之君

      増原 義剛君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    笹木 竜三君

      武正 公一君    中川 正春君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      原口 一博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松本 剛明君

      山井 和則君    笠  浩史君

      赤羽 一嘉君    赤松 正雄君

      上田  勇君    江田 康幸君

      斉藤 鉄夫君    笠井  亮君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)

   (地方再生担当)     増田 寛也君

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   外務大臣         高村 正彦君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         鴨下 一郎君

   防衛大臣         石破  茂君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)

   (食品安全担当)     泉  信也君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (規制改革担当)

   (国民生活担当)

   (科学技術政策担当)   岸田 文雄君

   国務大臣

   (金融担当)

   (行政改革担当)     渡辺 喜美君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   上川 陽子君

   内閣官房副長官      大野 松茂君

   内閣府副大臣       木村  勉君

   総務副大臣        佐藤  勉君

   総務副大臣        谷口 隆義君

   外務副大臣        小野寺五典君

   財務副大臣        森山  裕君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      松浪健四郎君

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   経済産業副大臣      新藤 義孝君

   経済産業副大臣      中野 正志君

   国土交通副大臣      松島みどり君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   防衛大臣政務官      寺田  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   会計検査院長       大塚 宗春君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  西山 正徳君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二十七日

 辞任         補欠選任

  石井 啓一君     江田 康幸君

十月九日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     西本 勝子君

  尾身 幸次君     亀岡 偉民君

  大島 理森君     谷垣 禎一君

  増原 義剛君     中谷  元君

  渡部 恒三君     西村智奈美君

  赤松 正雄君     上田  勇君

  江田 康幸君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     谷畑  孝君

  谷垣 禎一君     大島 理森君

  中谷  元君     増原 義剛君

  西本 勝子君     臼井日出男君

  西村智奈美君     長妻  昭君

  上田  勇君     赤松 正雄君

  斉藤 鉄夫君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  谷畑  孝君     尾身 幸次君

  長妻  昭君     渡部 恒三君

  赤羽 一嘉君     江田 康幸君

同日

 理事石井啓一君九月二十七日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

逢沢委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に富田茂之君を指名いたします。

     ――――◇―――――

逢沢委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長外口崇君、厚生労働省健康局長西山正徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷垣禎一君。

谷垣委員 おはようございます。自由民主党の谷垣禎一です。

 きょうから予算委員会の論戦が始まるわけですが、まず冒頭に、私はおわびしたいと思っております。

 国会が召集されましてから一月ほどたつわけでございまして、内外、非常にいろいろなことがこの間にもございました。安倍総理の突然の辞任ということがございまして、その後のきちっとした政権の体制をつくっていくためにやむを得ざることとはいえ、この間、国会での議論ができませんでした。このことは深く国民におわびをしなければならないと思っております。

 そして、御就任されました福田総理に、御就任のお祝いを心から申し上げたいと思っております。

 私、この夏に、総理の選挙区でございます群馬県多野郡、今は町村合併して神流町というところに、休暇をとって民宿に泊まりました。その民宿に泊まりますと、かもいのところに総理の揮毫がかかっておりまして、光りて輝かさずというんでしょうか。しかし、総理の揮毫だけではなく、御父君赳夫先生の色紙もございまして、察するに、長い間福田党として福田総理をお支えになった、そういう民宿だったと思うんです。大変親切にしていただきましたけれども、今ごろきっと喜んでおられるだろうと思うんですね。

 それと同時に、神流町、昔は中里村と言っていたと思いますが、大変な山村僻地でございます。このごろ限界集落という言葉もございますが、恐らく、あのあたりには限界集落に数えられるものもあるのではないかと。過疎化と高齢化に悩んでおられる、そういう地域でございました。

 私が民宿の御主人に、こういうところに泊まりに来るのは一体どういう方かと聞きました。釣りの人かと聞いたら、いや、昔はそういう人もたくさんいたんです、でも、今は道路がよくなってくると、みんな車で日帰りで、民宿に泊まる人なんてほとんどいませんという御返事でした。

 総理が、老人には安心を、そして若い方には希望をというようなことを標語にされて所信表明も行われましたけれども、恐らく、ああいう過疎と高齢化に悩む御自分の選挙区に対するまなざし、そうやって今まで政治姿勢を築いてこられた、そういうことが背景にあるのかなと思ったりもしたわけでございます。

 ただ、お祝い申し上げましたけれども、総理がこれから臨まれる環境というのは、決して容易なものではございません。極めて厳しいものでございます。

 それは、内外ともに取り囲む情勢が厳しいということもございますが、まずやはりこの間の参議院選挙の敗北というものが非常に重い、大きなものとして眼前にあるということは、これは間違いないだろうと思います。私どもも多くの同志をこの選挙で失いまして、今や、福田総理を支える与党は参議院では多数ではない、少数になってしまった。いわゆる衆参のねじれという現象があるわけでございます。

 これをこのままにしておきますと、政府・与党の政策は衆議院では通るけれども参議院では通らない、また逆に、野党の皆さんの政策は参議院では通るけれども衆議院では通らない。こんなふうなことになりますと、現状が一歩も動かない、こういうことにもなりかねません。それでは、政治が国民に対する責任を果たしていくということはできないんだろうと思います。

 したがいまして、総理も所信表明でおっしゃいましたように、誠実に野党の皆さんとも対話をする、それを積み重ねていくということがまず第一に必要なんだろうと思います。

 世界の政治史を見てみますと、こういういわゆるねじれと言われるような現象は、今までいろいろな先進国の政治でも経験をしてきまして、それぞれ知恵を発揮してそういうところを乗り越えてきたということがございます。ですから、世界の国々でできていることを我々日本でできないはずはない、簡単に申し上げれば、私はそういうふうにも思っているんです。

 しかし、日本には日本の特殊な事情もあるのではないかと思います。特殊と申し上げていいかどうかわかりませんが、大統領制の国であれば、議会がどういう形で、法案を通そうと通すまいと、大統領は任期の間は大統領である、そういう状態は続きます。しかし、議院内閣制のもとでは、政権、内閣総理大臣の地位というのは議会の信任にかかわっておりますから、こういうねじれの現象が直ちに政局への傾斜を生んでくるということは、これはなかなか避け得ない面があるわけでございます。

 政局というものを中に含みながら政治が動いていくというのは日本の憲法構造である、これはやむを得ないところでありますけれども、同時に、国民生活に対する目配りを失って政局に対する思惑だけで行動するというようなことは、やはりあってはならないことだろうと思います。

 そしてもう一つの問題は、仮に議院内閣制の国であっても、ねじれが生じた場合、そして政局的な現象が起きてきた場合でも、普通であれば、解散をすることによって国民の信を問うて、そうして、国民の信はここにあり、そういう形でもう一回政権をつくり直してやっていくということができるわけでありますが、我が国のこの二院制のもとにおいては、参議院は解散がございません。現在の参議院の状況を見ますと、六年間は恐らくこの状況が続くであろうと思います。したがいまして、解散で民意を問うたからといってすべての問題が解消するということは、これは望みにくいわけであります。

 したがって、衆議院は一院でございますが、第一院と憲法上の規定というものがございますが、二院に全部第一院が合わせれば問題は解決するのかもしれませんが、それでは憲法構造上問題があるということになって、運用は非常に難しい、こういうことではないかと思います。

 もちろん、日本の憲法もそういうことを想定して幾つか規定は置いていることは事実でございます。予算につきましては、衆議院が可決して三十日内に参議院が可決をしなければ衆議院の議決が国会の議決になるという規定がございます。法律におきましても、衆議院で通ったものが参議院で否決をされた場合には、衆議院でもう一回三分の二の多数で議決をすればそれが法律になる、こういう規定もあるわけでございまして、憲法は、そういう規定を活用して何とか道を打開せよ、こういうことなんでしょう。しかし、なかなかそれはそう簡単な話でもないと私は思うわけでございます。

 こういう日本の言ってみれば憲法に内在している問題が、この間の参議院選挙によって顕在化してきた。ここをどう乗り越えて、与党も野党も国民の生活をきちっとしていくというその負託にこたえられるのか、これは、我々の知恵の出しどころではないかと思っております。

 私どもも、野党の皆さんに誠実にいろいろな政策面での協議を呼びかけていくという努力をこれから徹底してやらなければなりませんし、まだそれがどういう形になるかは、私どもも先の展望が十分に開けているわけではありません。また、野党の皆さんも、こういう状況のもとでどう国民生活に責任を負っていくかということに対して、十分に絵が描けておられるわけではないんだろうと思います。野党の皆さんも、これからいろいろな試行錯誤をしていかなければならないな、このように思っておられるんだろうと思います。いろいろ誤りもあろうかと思いますけれども、こういう試行錯誤を繰り返して何とか道を見つけて国民の負託にこたえていかなければならない、こういう状況である、このように思います。

 そして、こういう形で与野党の、総理のお立場からすれば野党の皆さんにも誠実に対話を呼びかけるということだろうと思いますが、その前提として、この間の参議院選挙、私どもは大きく批判を受けたわけでございます。この批判をどういうものとして受けとめて、どういう反省に立ってこれからの道筋を描いていくかということがなければ、この対話もなかなかうまく成り立たないのではないかな、このように思います。

 そこで、まず最初に福田総理に、こういう参議院選挙の結果をどのように受けとめられて、何を反省点としてこの国会に臨んでいかれるのか、その御決意をお伺いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 ただいま委員から御高見承りました。

 私は、御指摘の点、まさにそのとおりだというふうに思っておりますが、先般の参議院選挙で与党は大敗をした、特に自民党が大きく敗北をし、その結果、与党全体として過半数を割ってしまった、こういう事態、これは全く新しい局面であり、また、そのことについて我々として大いに反省すべきところは反省していかなければいけない、このように思っております。

 その反省すべきところは何なのか、この点でございますけれども、私はやはり、国民の気持ちに沿わなかったという点、国民の気持ちから離れてしまった、そういうことはまず指摘されなければいけないと思います。

 その点につきましては、いろいろなことがございました。政治家また閣僚の問題もありました。いろいろなことがありまして、そのことによって国民の信用を失い、その上、年金のような極めて大きな問題において大きく信用を失墜した、こういう事態を招いてしまったということでございます。

 特に年金につきましては、これは、国家を国民が信用してお金を預ける、そして老後に備える、こういう制度でございます。長い期間お金を預けて、そしてそれを本当に必要なときに国家から支給を受ける、こういう仕組みが、これがうまく機能していないじゃないかということ。お金を長く預けるというのは、やはり、国家が信用されないとそれは成立しない制度であります。銀行だろうが、金融機関みんな、そういう信用のもとに仕事をしていられるわけでございまして、そういう信用を、国家としての信用を失ってしまったということ。これはもう、単に一政党とか政府の信用とかそういうふうなことでない、国家の権威を失墜したというぐらい大きな問題だというふうに私は受けとめております。

 ですから、このような問題に対して全力で威信回復のために努力するのは当然でございますけれども、そういう問題も含めて、私は、与党に対する信任、特に自民党に対する信任を失い、そして選挙で大敗を喫した、これはもう本当に、むべなるかな、こういうふうに思っておるところでございまして、そういうような反省に立ってこれからの政治を進めていかなければいけないというように思っております。

 それともう一つは、やはり国民の目線に立った政治をしてきたのかどうかということが問われるのではないかと思います。

 今までいろいろな改革がございました。私は、こういう内外の厳しい状況の中で、改革そのものは必要だと思います。この改革をしなければ日本は立ちおくれてしまう、そして、立ちおくれるだけでなくて孤立してしまうという状況が容易に予想されるという状況の中で、改革は進めていかなければいかない。ですから、小泉改革、安倍改革とずっと続けてまいったわけでありまして、私もその改革の方向性はきっちりと守っていかなければいけない。

 ましてや、今、国家の財政は必ずしもいいわけじゃありません。むしろ悪い。先進国の中で最悪の状況ということ。こういうことを考えますと、相当な覚悟を持ってこの改革を進めていくということがなければ国家の存立も危うくなる、このように思っております。

 ですから、このことは真剣に取り組むけれども、しかし、そのことによって生じた問題、そして、過去数年間において内外情勢の変化に伴って自然に発生するようないろいろな問題に対しては、これは一つ一つ対応していかなければいけない。その対応を怠っていたところがあったかもしれない。そのことについてはこれからしっかりと対応し、そして、国民の生活の安定とか国民の幸せとかいったようなことを、我々がそのことを大事に考えていくということをもう一回やり直さなければいけない。そんなふうに私は今思っているところでございます。

 ですから、いろいろやることはあると思います。そのことを一つ一つ解決していくということが今私どもに課せられた大きな課題であると思います。国民あっての我が国であり、政府であり、そして国民の幸せあっての国家である、こういうように考えて、国民目線で政治を進めるというその視点を、私ども、大きく強く感じながらこれからの政治を進めてまいりたい、このように思っております。

 ただ、今の情勢というのは、国会の中においてはなかなか厳しい情勢でございまして、国民の生活のため、そして国家の利益のためにやるんだという、そういう一点においては、野党の方々も皆様方、同意してくださると思います。ですから、我々は、極力、その目的にかなうことをこれから進めていくということにおいて、野党の皆様方にも同意を得ながらこの国会を進めていただくようにお願いをしたい。野党の皆様方にも、そういう観点からお考えいただいて、一緒になっていい日本をつくるという気持ちになっていただきたい。我々はそういうふうな気持ちでおりますから、ぜひ御協力をいただきたい、そういうふうに思っておるところでございます。

 いずれにしても、我々は、そういう反省の上に立ち、そして、国民の皆様に大変御迷惑をかけておる、そういうことを常に念頭に置きながら、これから懸命に努力をしてまいりたい、このように思っておるところでございます。

谷垣委員 今総理から、反省点として、国民の気持ちから離れた、そのことによって国家の権威を失墜するようなこともあった、それからまた、いわゆる改革の光と影というんでしょうか、改革は必要だけれども、影の部分のようなところについても一つ一つ丁寧な対応が必要だというお話がございまして、私も全くそのとおりだと思います。

 改革という言葉にちょっとみんな疲れちゃったところがないわけでもないと思うんですが、やはり私も改革は必要だろうと思います。

 それは、結局、あるとき適切であると思われた政策でありましても、このようにグローバル化も進んでいる、あるいは少子高齢化、人口減少も進んでいく、こういう状況の中で、必ずしもかつての政策が所期の効果を発揮しない、こういうようなことはよくあるわけでありまして、これだけの財政の厳しいときでもありますから、もう少しやはり資源の効率的な配分というものを考えていかないと、日本自体が世界の中で孤立することにもなりかねないし、また、それをほっておくと変な既得権みたいなものも生じてしまう。そういう既得権みたいなものを打破して無駄を排除していくということは、これからも引き続き求められることだろうと思います。

 しかし、そうやって無駄を省き省きと、こうやっていきますと、確かに所得再分配機能みたいなものも少し働かなくなるかなとか、いろいろな問題点が生じてきている、それに対して一つ一つ丁寧に対応していかなければならない、そのとおりだろうと思います。

 総理が御自分のキャッチフレーズとして自立と共生という言葉を使われたのも、やはり、改革を進めることで自立を促していかなければならないけれども、同時にそれは、ばらばらの個人がばらばらでその人生に向き合っているようじゃいい国にならない、共生という考えも必要だ、こういうことだろうと思います。

 私も実はきずなという言葉をよく使っておりまして、こういう影の部分に光を当てていくためには、やはり家庭のきずなというものがしっかりしないとみんな人間がうまく安心して生きていけないだろう。それから、それに加えて、地域社会のきずなというものもなければだめだろう。そういうものをどうやってこれから、競争や改革を進めながらも、そういう家庭のきずなや地域社会のきずなをどうつくっていくかというのは我々の課題なんだろうと思いますし、家庭のきずなと地域社会のきずなだけでも足らないところがありまして、やはり国と国民の信頼のきずなというものがもう一つその上になければいけないんだろうと思っております。

 きょうは、私は、政治と金の問題については後で細田博之さんにやっていただきますので私は多くは触れませんが、国と国民の信頼のきずなをきちっともう一回つくっていく上でも、この政治と金の問題の解決は極めて重要だと思っております。与党としても、一つの考え方、民間でできることぐらい我々はやらなきゃいけないじゃないかという考え方を基礎にして案を持っているわけでございますが、これは政治家の自己規律の問題でございまして、与党、野党の対立するという性格の問題では私はないと思います。

 したがいまして、それぞれ皆、案をお持ちでございますから、ぜひこういうものをきちっと討議して形あるものにしていかなければならない、こんなふうに思っているわけでございます。

 次に、歳入歳出一体改革と申しますか、財政の問題についてお伺いをしたいと思います。

 いろいろ改革を積み重ねなければならない要因の一つに、やはり財政の状況が非常に悪いということがあるわけですね。

 財政の危機的状況という言葉はもう何度も繰り返されているわけでありますが、ことしの平成十九年度の予算規模で見ますと、歳出は約八十三兆弱ですね。それから、税収はそれに対して五十三・四兆か五兆か、そのぐらいのものでしょう。したがって、その足らず前は借金をしている。つまり、国債を発行して、これが二十五・四兆ぐらいになるわけですね。要するに、一年間の予算の三割は借金で賄っているという状況でございます。

 この間、これを改善しようという努力を随分積み重ねてきまして、平成十六年、このときは三十六・六兆発行しておりましたから、その平成十六年に比べると十一兆強、国債を発行する額も減らしてくることができたわけでありますが、まだ三割というのは極めて大きな量でございます。

 それから、今までずっと発行してきましたから、残高も相当なものに上っている。これは国、地方を合わせますと、長期債務残高はGDPの一五〇%近くになんなんとしておりまして、本年度末で七百七十三兆と、先進国の中では一番芳しくない状況にある。これはもうさんざん言われたことでございます。

 私は、世界経済の状況を見ますと、いろいろ懸念する材料というのはたくさんあるんですね。たくさんありますが、恐らくアメリカの経常収支、それから財政収支、いわゆる双子の赤字の問題と、それから、中国がこの十数年、毎年一〇%を超えるような成長を続けて、今は北京なんかに参りますと、これは一九九〇年代の六本木あたりのような感じじゃないかなと思うこともあるわけですね。これがやはり安定した形になっていくかどうかという問題。それに加えまして、日本がこの財政赤字をどうコントロールしていくのかということが恐らく、ヨーロッパにももちろん問題はございますけれども、世界経済、特にアジア太平洋地域で見ますと、主要な問題はこういうことになるんじゃないかと私自身は思っているわけです。

 そして、進行する少子高齢化、あるいは、そういう中でこのままほっていきますと、負担は後の世代に先送り、受益と負担の不均衡は拡大の一途をたどるということになるわけでございます。従来、それを打開しようとしていろいろな改革を積み重ねてきたことは、これはもう間違いないところでございまして、財投を改革するとか特会を改革するとか、あるいは独法を改革するとか、それから公務員定数を削減する、あるいは入札の方法ももっと合理化できないか、いろいろなことをやってきたわけでございます。

 今、何を目標にしてやっているかといいますと、これは小泉政権が発足してきたときからの継続でございますが、二〇一一年にいわゆるプライマリーバランスを黒字化しよう、つまり、その年にいただいた税金でその年の政策を打っていこう、その限りにおいてツケを後の世代に先送りしないようにしようじゃないかという目標でやってきたわけですね。

 それで、二〇〇六年のいわゆる骨太の方針ではその大きな方向を示しまして、大体、今からある程度成長もしていくだろう、それでまたその成長を推し進めなければいけない、しかし、社会保障等々の費用の増大もあるだろう、そうすると、二〇一一年にプライマリーバランスを回復するためには、対応する必要額、十六・五兆、やはり何らかの形で埋めなきゃいけない。そのうちの主な部分は、できるだけやはり無駄を排除することで片づけていこうじゃないか。十六・五兆のうち、十一・四兆から最大十四・三兆まで、何とか歳出削減でできないかという計画を立てて、それだけやってもなかなかうまくいかないところは、まあ、いろいろ税制改革や何かにもまたお願いをしなければならないというのがあらあらの方向でございます。

 先般、総理の所信表明演説でも、この二〇一一年、プライマリーバランスの回復ということを堅持するとおっしゃったわけであります。

 しかし、削る削るという一方で、なかなかまた必要なものもあるわけですね。基礎年金を、今三分の一税金で賄っておりますけれども、安定させるためには二分の一まで税金で持っていく必要があるんじゃないか、これは三年前の年金法改正の中で書き込まれていることでございます。

 それから、今般の福田内閣の発足に伴いまして、公明党との政権合意の中でも、高齢者医療制度の負担増みたいなものをやはり凍結していく必要があるんじゃないか、あるいは母子家庭に対する児童扶養手当のようなものも凍結する必要があるんじゃないか。これは今まで、改革の基本的な方向性は必要ではあるけれども、少しスピードが速くて、息が切れてきたところがあるなという認識がやはり広くあるんだろうと思いますね。そうしますと、なかなか歳出カットでやるやるといっても、これは簡単ではないんだろうと思います。

 それで、どういうふうにして無駄を見つけ出して無駄な歳出を削っていくかというのは、これは内閣を挙げて取り組んでいただかなければなりませんが、しかし、主として、やはり財務大臣、額賀さんが知恵を発揮して、目ききの目をもって、どこに一体削れるところがあるのかというところで、大いに頑張っていただかなければならないんだろうというふうに思います。

 私は、これはなかなか、今申し上げたことは、どこに無駄があるか探してくることはそう簡単ではないよ、よっぽど目ききの目でもってよく精査しないといかないよということを申し上げたんですが、私はやはり、これは広くいろいろな知恵を参考にするというのも大事なことなんだと思うんですね。

 そこで、民主党のマニフェストを拝見しますと、民主党の方も、私どもの方も十一・何兆から十四・何兆まで何とか無駄を削減しようということでやっているわけですが、民主党さんも、いろいろな政策をやっていくために、十五・三兆、無駄を排除して、無駄を見つけて、そこで新たな政策経費の余地を見出していくということなんです。私はこういうことができれば非常にいいなと思うんですが、見てみると、なかなか簡単じゃないんじゃないかなという気もするんです。

 額賀財務大臣に、この表をごらんになってそのあたりどうお感じになるか、そして、どこに額賀さんとしては無駄を見出してプライマリーバランスを回復していく道筋をつけようとしているのか、その御所見を承れればと思います。

額賀国務大臣 谷垣元財務大臣、私が言うべきことをほとんど言ってくれまして、答弁の時間が削減されたと思っておりますけれども。

 今、私も、確かに小泉改革の実行によって経済がようやく明るさを取り戻してきた、企業においても収益もよくなってきた、失業率なんかも最悪五%から三%台半ばになってきている。大いに好転をしつつあるけれども、しかし、これは外部要件に支えられた点もたくさんあります。それは、輸出がよかったとか、円もどちらかというと高い方ではなかった、あるいは金利も低金利であった。だから、まだ本格的な経済環境にはなっていない。しかも、なおかつ、先ほど来言われているように、都市と地方の問題だとかあるいは雇用の問題だとか、さまざまな問題を抱えているわけですね。

 そういう中で、やはり経済政策といたしましては、きっちりと成長路線というものは堅持して持続させていかなければならない。と同時に、やはり谷垣元大臣が言うように、七百七十三兆円、地方と国を合わせての債務を抱えておるわけであります。こういう国は先進国ではないわけでございますので、これをきっちりと、再建構想というか国家財政再建の道しるべというものを、道筋というものをつくっていかなければ、これは市場にも影響していくことにもなりますし、政府としては、どんなときでも国家財政再建の旗は保ち続けていかなければならない、そして国民の理解を得てそれを目指していかなければならないというのが前提条件であると思っております。

 そういう中で、先ほどの参議院の選挙で我々が一番感じているのは、将来について、経済とか雇用だとか社会保障について不安を持っていることに対して、どういうふうに我々はこたえていかなければならないのかということだと思っております。

 社会保障の面は、特にこれは少子高齢化社会でございますから、生産年齢人口は減っていく、幸いなことに高齢者はふえていって、幸せでなければならない、そうすると、我々の負担がどんどんふえていく、給付もふえていくということになるわけでございます。

 ちなみに、社会保障の経費は、今、自己負担抜きで全体で九十兆円要りますけれども、恐らくこれは二五年ごろは百四十兆円になるということでございますから、どんどんどんどん、この負担を我々はどういうふうに安定した形でやっていくか、しかも、なおかつ、経済成長も持続していかなければならない、それをきちっと責任を持って果たしていかなければならないということでございますから、総理の所信にもありますように、二〇一一年のプライマリーバランスはきちっとこれは確実に実行する、実現をするという方向は維持していかなければならないというふうに思っておるわけでございます。

 もちろん、プライマリーバランスというのは最小限の目標でございます。これは、金利と成長率が一定の場合、固定化されているだけでございますから、本当は金利払いだけふえていくことになるわけでございますので、そこは、次の段階として我々はきちっと目標を定めていく必要があるというふうに思っております。

 そこで、歳出削減についてどういうふうにするのかということに関連をして、民主党のこの参議院の選挙のマニフェストで書かれた政策提言でございますけれども、この詳細について、具体的にどういう経費分野について幾ら下げるとか、どういうふうに削減をしていくかということについて詳細に書いてありませんから、よくコメントできないところがあります。

 しかし、例えば補助金のカット等がありますけれども、補助金は今大体全部入れて十九兆円です。これは十年前と大体同じです。なぜ同じかというと、公共事業だとか教育だとかそういうものはどんどん減らしているんだけれども、社会保障とかそういうものがどんどんふえているから、補助金としては、中身は変わっているけれども、数字全体としては変わっていない。例えば、十九兆円のうち社会保障関係が十二・二兆円ぐらいですよ。あと教育関係が二兆幾らですから、十九兆円のうち十四兆は社会、教育関係なんですよ。

 そうすると、六・四兆も削減をしていくということになると、社会保障とかそういう分野についてはどうなるのかなと。これは、我々も若干、よく民主党の皆さん方からお話を聞いて、取り入れられることがあれば、我々も、国家国民のためにプラスになることであれば採用させていただいて、おこたえをしていきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、こういう、本予算は別にして、関連法案は参議院で民主党の御理解も得なければなりませんから、民主党の意見もよくよく尊重し、吸収した上で、国民の期待にこたえられることがあるならば、これは民主党とも協力して考えていくことができる。しかし、今の時点では、中身が詳細に、きちっと我々も掌握しているわけではありませんから、果たしてこれでできるのかなという思いが若干あります。

谷垣委員 今財務大臣が、快刀乱麻を断つごとく、この案がなかなか難しいよというのをおっしゃってくださるかと思ったんですが、額賀さん、ジェントルマンですから、自民党同士で議論してそこまでやっちゃいかぬなというので、寸どめにされたんじゃないかと理解をいたします。

 いずれにせよ、かなり難しい計画を民主党がお持ちであるというふうに私も思います。

 これは、参議院で生殺与奪の権を握るようにおなりになったんですから、本当は小沢さんと議論させていただきたいなと思うんですが、なかなか今の仕組みではそうはいきませんので、このぐらいにさせていただきますが、一つ申し上げたいことは、先日、日経新聞を読んでおりましたら、今度は参議院の方で、民主党は、法案のあらし作戦とおっしゃって次々と法案をお出しになるんだそうですね。

 その中で農業関係、いろいろ、戸別補償しなきゃいかぬということを民主党は言っておられますが、その法案をお出しになる財源はどうするんだと。民主党も明日の内閣をつくっておられて、明日の内閣の農水大臣が非常に苦労されたら、小沢党首が、そんな細かいことを一々問題にするなとおっしゃったという記事が出ておりました。まあ、一兆ぐらいの金はぽんと総理になれば出すよということかもしれませんが、出す先は結局赤字国債を発行してというのじゃ、私はやはり財政規律はもたないと思うんですね。

 きょうは自民党の額賀大臣と議論しておりますので、このぐらいにこれはさせていただきたいと思います。

 そこでもう一つ、改革路線という関係で申し上げたいのは、郵政民営化というのをずっと議論してまいりまして、この間の十月一日からこれはスタートしたわけですね。これは百三十年間にわたって国民が育ててきた制度でございます。したがって、これは民営化して、やはり国民の利益にかなうような姿に育っていってもらわなければいけないんだろうと思います。

 スタートしたばかりの段階で、まだいろいろ先を占うのはちょっと早いかもしれませんが、私は総務大臣によくそれは見ていっていただきたいと思いますし、三点、今の段階でお伺いしたいと思うんです。

 その第一点は、やはりこれが民営化して、健全な民間企業として育っていってもらわなきゃいけないわけですね。それで、承継計画の損益見通しを見ますと、各承継会社とも黒字を維持するということになっております。その辺、政府はどういうふうに見ておられるのかというのが第一点です。

 それから二点目は、郵便局というのは全国で今まで、二万四千ですか、ネットワークを持っていて、やはり田舎の方、過疎地に行っても郵便局がある、そして地域に密着しているというのを一つの特色として国民に貢献してきたということがあろうかと思います。

 今、田舎の方へ行きますと、農協等がどんどん合併化して店舗の数も少なくなっているわけですね。そうすると、田舎へ行っても郵便局があるということは、金融過疎という言葉があるかどうかわかりませんが、田舎のお年寄りが、例えば年金の受け取り先をどこにするんだというので、遠くまで出かけていかなくて済むというような役割を果たしてきた。今後とも、こういう地域に対する貢献というのはできるのかできないのかというのが二番目でございます。

 それから三番目は、今、郵貯、簡保で多分二百兆ぐらい国債を保有していると思いますね。大量に国債を発行している、それが安定的に消化をされていって国債マーケットを混乱させないという意味では、郵貯、簡保の果たしている役割は極めて大きいものがございます。

 今後、この郵貯、簡保は、仕事の範囲がだんだん広がっていくということになりますと、国債というものも、もう少し運用先を多様化させていくということが当然生じてくるんだろうと思います。ところが、ここが余りスピードが速過ぎると、国債マーケットを混乱させる要因にもなりかねないという面もなきにしもあらず。そうなると、国債価格が低くなって、会社のバランスシートもおかしくなってくるということがないとは言えないと思います。そのあたりをどう見ておられるか。

 この三点、総務大臣にお伺いしたいと存じます。

増田国務大臣 今、郵政民営化のお尋ねが三点ございました。

 これは大変大きな事業でございます。十月一日にスタートをしたということでございますが、これが国民にとりましても成功したと言えるようなものに絶対しなければいけないものでございますが、その中で、御質問の三点でございます。

 一つ、承継計画でございますけれども、いずれも黒字を維持する、このような各社の承継計画になっているわけでございまして、これは私どもも、端的に言いますと合理的な見通しである、このように判断をしておりますが、これには前提がございまして、実施計画の認可の際にも私から会社の方には申し上げたわけでございますが、今後も経営の合理化、効率化をするということ、それから営業努力にもきちんと努めなさいというようなことを申し渡しをしてございます。

 こうしたことを今後、いろいろな経営の自由度が獲得できた各会社でございますので、しっかりと行っていただきまして、そして経営の健全性を確保していただく、これが大変重要かというふうに思っております。私どもも、こうしたことをきちっと見ていきたいというふうに思っております。

 それから二点目の、郵便局ネットワークの関係でございます。

 今お話がございましたとおり、全国で二万四千の郵便局ネットワークを持っておりまして、これがまた、地域の金融サービス初めさまざまな拠点としても使われているということでございます。

 このネットワークにつきましては、法律でこうしたネットワークの水準を維持する、こういう義務づけが会社の方になされているということ、それからまた、今後は、経営判断によりまして、こうしたそれぞれの地域の郵便局を活用して多様な業務をそこで展開できる、こういう法律のたてつけになっているわけでございまして、そうしたこの法律の規定も生かして、今後も会社として郵便局ネットワークの水準を維持していくもの、このように考えております。

 それから最後に、国債市場への影響がございました。この国債市場に場合によったら悪い影響を及ぼすのではないか、こういうことでの御心配も含めての御質問かと思いますが、御案内のとおり、旧契約でございますけれども、これは金融二社の運用資産の大部分を占めております。この旧契約につきましては、引き続き、これは政府保証がついておりますので、国債等の安全な資産で運用ということになっておりますから、極端な資産構成の変化というのは生じにくい形に今なっております。

 そして、こうしたことについての、市場に対してやはり今の金融二社の業務あるいは資産の状況についてきちんとディスクローズをする、そして市場としてこうした国債についての予見可能性を持つということが大変重要でございますので、法律でもそうしたことを会社の方に義務づけしてございます。さらに、旧契約分について、今度新たに独法化されました貯金それから簡保の管理機構が、資産の運用見通しについて報告を受け、その内容をさらに公表することになっておりますので、今後、市場に対して継続的な情報提供を確保していきたい。

 いずれにいたしましても、大変大きな今回の改革でございまして、これはいずれも国民の利便のためにということの改革でございますので、その改革の目的が十全に、十分に発揮できるように私どもも全力を挙げていきたい、このように考えております。

谷垣委員 本当にこれを国民の利益になるような結論を出していかなければなりませんので、今後ともよく見ていっていただきたいと思います。

 では次に、地域の再生といいますか、そういう問題を若干議論させていただきたいと思います。

 参議院選の民意は、やはり地域格差というものにどういうまなざしを注ぐかということを求めていたと思うんですね。先ほども限界集落という言葉を使いましたけれども、国交省の調べでは、過疎化、高齢化が進んでいずれ消滅の可能性がある集落が二千六百四十一あるということでございます。もうちょっといい名前はないかなと思うんですが、限界集落と。まあしかし、なかなか厳しいところに来ている。昭和四十年代にも随分、高度成長に伴って山村が維持できなくなったということがございましたけれども、今もまたそういうようなことが起きつつあるんだろうと思うんですね。

 それで、そういうことを初めとして、どうやって地域再生をしていくか。これは、今般、政府におかれても、地域活性化統合本部というのをおつくりになって、早速にも地方活性化モデルプロジェクトをつくろうというふうに進めておられると伺っておりますが、私は、こういう地域再生を考えるときに、基本は、やはりばらまきみたいな話はなかなかもうできないんであって、まず第一に、地域の本当のニーズはどこにあるのかということをよく見きわめる必要がある。

 それから二番目の問題としては、その上で、地域が自主的に、自律してみずから考えていくという地域の自主性を重んじなきゃいけない。その上で、地域だけではなかなか障害があって片づけられないような問題を、やはり国がその風穴をあけていくということをやる、こういうことじゃないかと思うんですね。

 それで、総務大臣に、地方再生に向けた今後の取り組みの基本姿勢と申しますか、そういうものをお答えいただきたいと思います。

増田国務大臣 地域再生の問題でございますが、私も岩手の知事を長らくしておりました。そしてまた、総務大臣になりましてから、島根そして長野と、いわば今議員からお話ございました限界集落などをぐるっと歩いてまいりました。地域の疲弊が大変深刻な問題を生じさせている、こういうことを改めて肌で感じた次第でございます。

 総理の方からも、こうした問題を解決するに、地方というものが決して一様ではないだろう、その中に抱えている問題も非常に多岐にわたって、それぞれの処方せんはそれぞれ別々にあるはずだ、こういうことで、それぞれの地域の声に丁寧に耳を傾けるように、そして一つ一つ処方せんをそれぞれつくるように、こういう指示も受けているところでございます。

 今議員の方からお話がございました、内閣の中でも、こうした地域の問題、取り組みを行う本部が今四つほどございますけれども、そうした本部を今後は一元化して、そして地域活性化統合本部として全体を目配りして、省庁横断的に内閣を総じた対策を講じていこうということで、実は本日夕方、この第一回目の会合を開くことにしてございます。

 そして、その中で、今各地域の置かれている問題、限界集落のような地域の足の確保の問題でありますとか、医療体制を維持することが大変難しい問題ですとか、これはもう国交省あるいは厚生労働省のみならず、全体でやはり考えていかなければならない問題でございますので、今議員からお話がございましたが、その中でも、地域にやはりきちんとした人材がいて、いろいろな知恵や工夫の発揮できるような試みが行われているわけですね。そうしたことが必ず地域地域で何かしらの動きがございますので、そうしたものを一番身近な自治体である市町村やあるいは県、そしてさらには国がしっかりと支えていくような、そういう進め方。

 やはり、上の方からいろいろ絵をかいたり、やり方を押しつけるということではなく、地域の皆さん方が地域で一番知恵を出す、それは住民の皆さん方が一番地域の状況を御存じですから、そうした皆さん方の発想を起点にしながら、それを我々がしっかりと後押しをしていくような、こういう方策を取りまとめていきたい。

 十一月中にはそうした地域再生のためのプログラムを取りまとめをして、そしてそれを直ちに実行していきたい、このように考えております。

谷垣委員 やはり、それぞれ地域のニーズも異なる、それから地域自体に考えてもらわなきゃいかぬ、私、そのとおりだと思いますが、しかし、共通の問題として幾つかポイントがあるんじゃないかなと思うんです。

 きょうは、また細田さんに詳しく、一番過疎県の代表として質問されるとおっしゃっておられますから、私はポイントだけ申し上げたいと思うんですが、まず、このごろインフラ整備というのはどちらかというと逆風の中にあるわけですね。何か、そういうことはいかぬことだのような議論もございます。

 しかし、過疎地、過密地、双方でやはり問題を抱えているので、大都会では過密に伴うさまざまな不満がございますが、地方へ行きますと、人口減少や活力減退だ、あるいは将来の不安だというようなことを言っている。

 それで、地方の中でも、地方の中心都市と、また、先ほど限界集落と言われるようなところではやはり同じような問題があって、やはり基本的なインフラというものを整備して、例えば災害に強い地域をつくるということも必要でしょうし、それから、地方では、やはり大都会と違って公共交通網というのは持ちにくいところがありますから、どうしても道路がある程度発達して、自分たちでそこを運転していかなきゃならぬというようなことも起きてくると思います。このあたりは、決してばらまきではないけれども、やはり地方で頑張れというためには必要な条件なんじゃないかと思うんですね。

 こういう地方のインフラ整備の必要性につきまして、総理、御所見があれば伺いたいと存じます。

福田内閣総理大臣 私は、仕事は東京、そして選挙区は、先生から言わせれば田舎ですよ、でも、中堅都市として頑張っているところでございますけれども。しかし、そこからまた一時間足らずで、先ほど委員が行かれた旧中里村、神流町というのがございまして、ここはまた一段と人口の少ないところだというところで、こういう三点を常時見ておりまして、果たしてこの形でいいのかなということは、常々反すうしながら今でもおるわけでございます。

 東京に来れば何でも一流のものがそろっている、そして便利だ、交通網も整備されている。しかし、地方に行きますと必ずしもそういうわけではない。そしてまた、東京には病院もある。学校だけではない、病院もある、いい病院がある。地方に行きますと病院のないところもある、こういうところでございまして、そして、もう一つ申し上げれば、地方には、それも神流町には若い人がだんだん少なくなってくる、こういう人口移動の問題もあるんですね。みんな若い人は一流のものがいい、当然ですよ、それは。私もそういうことにあこがれて若いころは過ごしたわけでございますけれども。

 そういうふうなことを見ておりまして、果たしてどこまで手当てしていけるものかどうか。しかし、病院がないというのは、それでほうっておいていいのかどうか、そんなことは常々考えているところでございます。しかし、その病院も、間に合わせの病院ということでない病院ができないかどうかというふうなことも考えています。

 ですから、そういうことを考えておりますと、道路と同じようなもので、どこでも道路が通っていなきゃいかぬ、こういうふうな議論になってしまうんです。

 しかしそれは、お金に限りがありますから、どこまでやるかという問題になりますが、そういうところは、やはりその地域の住民の意向とか、また全体を見まして、国土の全体的な発展とか発展状況、どうすべきか、地方が疲弊すれば農業も林業もだめになってくるということがありますから、そういうことも総合的に考えてこれからの政策を考えていくということは必要だと思います。

 しかし、病院がないというのは、私はこれは問題だと思いますね。それから、若い子供たちが行く学校がない。学校が、非常に生徒の数も少ない。これもやはり問題があるんではないかなというようなことは常々考えているところでございまして、これはという今のところ解決の解答を考えているわけではありませんけれども、そういうものはこれからいろいろと模索してみたいというふうに思っているところでございます。

谷垣委員 やはり、頑張れというためには、今総理のおっしゃった学校、病院とかそういうものを含めて、基礎的な条件をどうしていくかということ、これは大変財源も厳しいわけですけれども、何か知恵を出していかなきゃいかぬと思います。

 それからもう一つは、私は、財政力の偏在という問題をやはりきちっと議論しなければいけないんだと思っているんです。特に最近、法人二税、これは景気回復に伴いまして大変格差が生じているといいますか、財政力のあるところとないところ、差が生じているという議論が強くなってきております。これは翻ってみますと、三位一体で、国税から地方税、所得税から地方住民税へ、やったことというのも、財政力の格差を際立たせる面がやはりあったんだろうと思うんですね。

 それで、実は、この間の安倍内閣のときに、財務大臣、当時は尾身さんでいらした、それから総務大臣は菅さんでいらしたけれども、お二人の連名のペーパーが経済財政諮問会議に出ていて、これを何とか考えなきゃいかぬというお二人の共通の問題意識があったわけですね。私が財務大臣をやっていたときは、竹中さん、麻生さんの間で共通のペーパーなんか出すなんて考えもつかなかったことでございますので、大分状況認識は進んできたんだなと思うんですが、なかなか現実には解決の難しい問題になっているわけですね。

 そこで、こういう地域再生、財政力の問題をどうしていくおつもりか、総務大臣に御見解を伺いたいと存じます。

増田国務大臣 財政力の格差の問題でございますが、これが今、ひいては医療の問題ですとか教育の問題に非常な懸念が生じるような、こういう事態で、やはりこの問題は、一つは地方交付税の問題、そしてもう一つはいわゆる税の偏在是正の問題、この二つで格差を是正していく必要があろうかというふうに思います。

 地方交付税でございますが、十六年から十八年の間に大分減っております。地方交付税それから臨時財政対策債、地方交付税見合いでございます、これを合わせまして今、三年間で五・一兆ほど減りまして、非常に各自治体が財政運営に窮しているということがございます。こうした地方交付税を含めた必要な一般財源総額は、やはりきちんと総額確保ということが一つ大変重要な視点だろうと思います。

 それからもう一つは、税に限っての問題でございますが、やはり法人税、特に地方の場合、法人二税でございますが、これは大分景気に左右されまして、景気がいいときは大分税収も入るのでございますが、お話にございましたとおり、どうしても都市部にこれが偏る、こういう性格の税でございます。したがいまして、地方税としては、私どもはやはり、そうした振れる税よりは安定的な、サービスを提供する自治体の財源でございますので、安定的な税が望ましいであろうということがございます。

 ぜひ地方消費税を充実させたいというのが地方団体多くの考え方でございまして、私ども総務省もそういう考え方に立っているわけですが、そうした地方消費税の充実とあわせて法人二税についても、やはり国、地方の配分のあり方をここでいま一度見直しをして、そして地方税の偏在の是正に努めていきたい。

 直近の数字でも、法人二税について、一番一人当たりの税収の多いところと少ないところ、この差が六倍を超える、偏在性が。地方消費税ですとこれが一・九倍ということでございますので、特にこの地方法人二税の配分などについても見直しをして、そして、地方交付税も含め、地方の安定的な税財源を確保していく、こういうことに努力をしていきたいと考えております。

谷垣委員 これは大変難しい問題でもございます。それから、地方消費税についても触れられましたが、この消費税というのはみんなが虎視たんたんとねらっているというところもございまして、なかなかさばきが難しいところもあろうかと思います。

 我々、党の中にも地域活性化特命委員会というのをつくりまして、この財政力の調整の問題、党の方でもよく議論をしたいと思っておりますので、大臣もまたこの点ではぜひよい解を見つけ出すよう御努力をいただきたいと思います。

 そのほか、やはり地域再生に関しては、地方の雇用をどうつくっていくかとか、重要な問題がたくさんございますが、あとは細田さんにお譲りをしたいと思います。

 それで、いろいろ私も用意しておりましたが、時間の配分が足りなくて、大幅に飛ばしまして、次に、どうしても年金、社会保険庁のことをちょっと舛添大臣に伺っておかなきゃいけません。

 社会保険庁、いろいろな不祥事があり、また、社会保険料を集めたけれども横領していたというような事実も最近発覚されている。どうしてもこれは問題の所在をはっきりさせて、国民の安心に持っていかなきゃいけないわけですが、差し当たっては、安倍内閣でつくった、七月ですか、政策パッケージ、これをしっかりやっていくということが一番大事だと思います。これ、きちっとできるのかどうか、舛添大臣、お答えください。

舛添国務大臣 谷垣委員にお答えいたします。

 私、就任いたして六週間、この年金問題、全力を挙げて取り組んでまいりました。

 まず、なぜこういう問題が起こったのかという現状をしっかり分析する必要がある。それから、徹底的にうみは出すよということで、不祥事を起こしたのが社会保険庁の職員であれ市町村の職員であれ、徹底的にこれは追及するということで、うみを出し切らないとこれはだめだと思います。そういうことで、昨日も、福岡県警、これは北九州の横領案件について逮捕いたしました。こういうことで、けじめをつけてやっていく。その上で、同時に、今先生おっしゃいました、この七月五日に決定したことをきちんとやるということで、私もなるべく現場も視察しながら見てまいります。

 それで、基本的には、国民一人一人の年金記録、それはもうどこにあろうと完全にチェックしていく、こういう思いでやっております。

 まず、名寄せ五千万件の問題がございますけれども、これは、システムエンジニア、日本の最高級の連中を動員しまして、今、プログラムを組んでいます。それで、十月にはテストランをやれるかなと。今月中にテストランをやって、それでプログラムをきちんと組んで、コンピューターの中にあるものは十二月から一斉にやり始める、そういう形でこの問題を片づけます。

 それから、それ以外の方々については、来年の十月まで適宜お問い合わせをして照合していく、そういうことをやっていますし、それから、いわゆる紙の台帳を昔やっていて、もういろいろシステムが変わったものですから、そのたびに変更が起こる。その台帳をコンピューターに移しかえるときに、人間がやることですから、ミスが起こっている可能性がある。だから、一つ一つそれをチェックしていく。

 その過程で、私は、国民の皆さん方に適宜、少なくとも月に一遍は、今ここまで進みました、やってみてこういう不備がございますから、これはこう対応しますということをお知らせ申し上げて、そして、これは国会の先生方にもお願いを申し上げたいと思いますが、これは全国民的な課題ですから、どうしてもここでマンパワーが足りない、倍にふやせばきちんとできるということならば、これは政府も全力を挙げてやりたいと思いますし、立法府の皆さん方にもぜひ御協力願いたいと思います。

 それから、私も現場を見てきましたけれども、五百二十四万件、これは、今どういう形でチェックしようとしているかというと、氏名と生年月日と男女の性別、この三つのうちの一つでも欠けているものがあるわけですね。それは、例えば、事業所がぱあんと一括してやってくる。事業所の番号と名前はわかる。そのもとにある、連中は番号だけ記して、これはまあサボっているわけですけれども、そこに名前や生年月日は書いていない。だけれども、やれば、千件サンプル調査をやって、それは完璧にできました。現場を見てきました。

 そういう過程で、今、では、九月やってみて、どれだけマンパワーが要るか。したがって、今、例えば四十人体制でやっている、倍要るなら八十人、こういうことを細かくチェックしながら、そして国民の皆さんにも公表しながら進めていきたいというふうに思っています。

 そういうことで、これは全力を挙げて、お約束どおり、政府・与党の決定した七月五日の決定を守っていって、確実に皆さん方に安心を与える。私はやはり、この年金問題について我々がどれだけやるか、これをしっかりやることが、政府、国民、そして私たち政治家、そして政治全体に対する信頼を回復する道であると思いますので、本当に命がけで頑張ってやりたいと思います。

谷垣委員 この問題、いろいろ心配する人がいまして、舛添さん一生懸命やっているんだけれども、なかなかあそこの役所も難しい役所だから、本当に全部わかっているのかというようなことを言って心配する人がたくさんいるんですね。ぜひ、目をよく光らせて、褒めるところは褒めなきゃいけませんが、やはり突っ込むところはきちっと突っ込んでいただいて、国民の安心を確保していただきたい、このように思います。

 それからもう一つ、年金の制度論についても若干触れておきたいと思います。

 平成十六年に年金改正をやりまして、かなり思い切ったことを当時としてやったんだと思うんですね。従来は五年ごとに給付と負担を見直すということをやっていましたけれども、長期的な、長い目で見て給付と負担の均衡を図っていこうという体制に変えたわけです。

 それで、いろいろなことをやりましたが、残る問題が、やはり基礎年金を安定させるためには、今三分の一税金を入れているわけですが、この税金を入れる額をもっとふやして、二分の一まで持っていかなきゃならない。このことによって年金を安定させますよというのが平成十六年度なんですね。これは、平成二十一年度までにきちっとやらなきゃいかぬと法律に書いてあるわけです。

 実は、今、参議院がこういう状況になりまして、これがきちっとできるかどうかというのが、私は極めて大きな問題だと思うんです。

 それで、実は、民主党のお考えと自民党や与党の考え方、世間では極めて違うように言われておりますが、私は案外似ているところがあると思うんです。我々も、基礎年金を安定させるためには、社会保険方式と言っておりますが、保険料だけではなかなかうまくいかないね、だから半分まで税を入れようじゃないかと。民主党さんの方は、基礎年金、これは不払いや何かたくさんあるから、もういっそのこと全部税でやった方がかえって公平なんだという議論を立てておられるわけですね。

 社会保険方式と税方式は哲学からいえば百八十度ぐらい違うんですが、与党の案も、社会保険方式だけではなかなかいかないよ、税も入れるんだと言っている。それから民主党さんの方も、税を入れると言っているけれども、消費税、今の消費税を全部そこに入れるということになると、本当は二十二兆、全体で要るんですけれども、十三兆しかないので、やはりお金持ちの方には遠慮してもらおうとか、不払いの方にも全額は出せませんよというようなことをいろいろ考えておられる。

 そうすると、社会保険方式、税方式というのはえらく違うし、その哲学の違いはいろいろなところに響いてきますからよく考えなきゃいけないんだけれども、どっちも、ある程度税を突っ込まなきゃだめだよ、それで、税を入れる場所が、まだ考え方が違うということなんですね。だから私は、これはいろいろ議論すれば接点があり得るんじゃないかと思っているわけです。

 まして年金は、政権がかわったらころころ制度を変えるというわけにはなかなかいかないわけでございます。よくこれはやはり与野党で協議をして、長い間国民が安心して老後を過ごせるんだというふうに持っていかなきゃいかぬのだと思うんですね。私は、きょうの機会に、また野党の皆さんにもそういうことを呼びかけたいと思っているわけです。

 このあたりの厚生労働大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

舛添国務大臣 先生おっしゃいましたように、私も、政治家になる前、学者の時代に、いろいろな段階で年金の財源論を書きまして、ある段階では、やはりこれは税方式の方がすぐれているんじゃないか、こういうことを書いたこともございます。

 それから、哲学的に、もちろん社会保険料でやるのと税とは違いますけれども、ただ、今おっしゃいましたように、二十一年に基礎年金の部分、半分は、三分の一から二分の一まで国庫の負担にしようというわけですから、非常に我が国の制度というのは、純粋に保険料、純粋に税というよりも、ある意味で中間的な形である。それから、民主党の皆さん方がおっしゃっていることも、何もかも税でやるということじゃなくて、きちんと比例の部分は比例の部分で、所得の比例の部分はやった上で、それだと、では貧しい人はどうするんですか、そういうところを支え合う。スウェーデンがそういうことをやっていますけれども、私は、これはきちんと議論をするべきであると思います。

 まず、二分の一にするのに財源をどうするか、これは容易な話ではないと思います。社会保障、これは、財務大臣おやりになったわけですから、財源カット、カットで来ましたけれども、本当に二千二百億円のシーリングを課すということで国民の満足いく社会保障ができるんだろうか。市場経済原理だけではいきませんから、そういうことをそろそろ議論するときに来ていると思います。

 私は、与野党含めて税制の論議をきちんとやるべきであるというふうに思っています。その税制論議をやらないで、この税制論議を煮詰めないで、私は、二十一年に二分の一の国庫負担というのは不可能だと思っていますので、これはきちんとやっていきたいというふうに思っています。

 それから、もちろん、民主党さんの案のように税金で、我々は二分の一ですけれども、全部やるということになると、では、これまで社会保険料を払ってきた人の不満に対してどうするのかとか、これは、今まで賦課方式を基本としてやってきたこのシステムを変えるということになれば、単純に計算すれば三十年、四十年のタイムスパンが要る話になる。しかし、これを議論して何とか接点を見出せないか。

 私も、実を言うと、両方、純粋に社会保険料、純粋に税方式ということではないので、かなりこれは国会の場で議論をして、一番国民にとって負担が少なくて、そして一番国民にとって安心できる、これならばできますよ、こういうことをぜひ与野党の間で模索していただきたいし、その議論に政府としてもきちんとかかわっていきたい。何よりも安心できる、先ほど御質問があった年金の記録問題の解決、社会保険庁を解体してしっかり立て直す、こういう問題とともに、長期的にいかにして国民に安心を与える年金制度をつくるか、これは党派を超えての課題だと思いますので、しっかりとやりたいというふうに思います。

谷垣委員 確かに財源の問題が一番頭の痛い問題でございまして、私は、個人的にはやはり消費税でこれをやるしかない、安定した財源である。それから、その場合に、消費税は社会保障目的税ということを明確にしてやるべきじゃないかと思っておりますが、このあたりの議論はまたこれからやらせていただきたいと思います。

 もっといろいろ、中小企業とか農村の問題とか環境の問題も質問したかったんですが、時間の関係で、あと外交、安保の問題へちょっと移らせていただきます。

 総理の所信表明にも、外交の基本は日米同盟と国際協調だと。それを踏まえて、アジア重視の外交をやっていこうと総理はおっしゃいました。私は、基本的にそのとおりだと思っております。今、非常にアジアは成長センターの役割も果たしておりますが、後にちょっと御質問しますが、いわゆる北朝鮮の六者協議の問題であるとか、あるいはミャンマーでもいろいろ問題が今起こっているというように、成長しているものをどう安定につなげていくかということで日本が果たし得る役割も極めて大きいんじゃないかと思っておりまして、総理の外交面におけるリーダーシップも心から期待をしているところでございます。

 そこで、六者協議ですが、先般、共同文書が合意をされたわけですね。その中で、既存の核施設を無能力化するとか、あるいは本年末までに寧辺の核関連施設の無能力化を完了する、あるいは本年末までにすべての核計画の完全かつ正確な申告を行うことというようなことで、核の問題についてはかなりの進展が見られたということではないかと思いますが、拉致の問題については進展が見られていないということだろうと思います。

 先般、南北の首脳会談が行われました折にも、北朝鮮の方からは日本のこれからの出方を注目するというようなことがあったそうでございますが、この問題の解決に向けて今後どう取り組んでいかれるのか、総理に基本的なお考えを伺いたいと存じます。

福田内閣総理大臣 私はかねがね考えておりましたのは、第二次大戦は終了した、しかし、六十年以上たっていまだにこの地域においては解決していない大きな問題がある。その一つは北朝鮮だ。その他に北方領土の問題もございますし、日中間についてもいろいろ取り決めをしていかなければいけない大きな課題があると思っております。ですから、そういう問題を解決して初めて本当に第二次大戦の始末が終わったんだ、こういうことになるんだと思います。

 ですから、そのことは一つございますけれども、同時に、やはり北朝鮮の核の問題ということについては非常に大きい問題であり、この地域の平和と安定という観点から考えますと、これはもうできるだけ早くそういう状況から脱したい、こういうふうな思いがありました。ですから、私が小泉内閣官房長官をしておりましたときに、小泉総理のリーダーシップでもって交渉する、そして拉致の問題も、何はともあれ十二人の方が帰ってこられた、こういうふうなことがあります。

 ただ、この拉致の問題についてはまだ未解決だという認識を持っているわけでありますから、この問題を解決すると同時に、御指摘の核の問題、これはもう本当に現在、将来の問題でございますので、この問題を何とかして解決する、そのために六者協議ということをやっておりまして、先般この六者協議で一つの共同文書が出た、こういうふうなことで、これは大変な進歩だというふうに思っております。

 問題は、これからそれを着実にどう進めていくか、そして、その趣旨が貫徹できるかどうかということでございますので、我が国もそのことについて最大限努力してまいるということでございます。と同時に、我が国の場合には拉致問題ということがございますので、このことについてしっかりと交渉していくということは必要なんだろうと思います。

 そして、いろいろな問題を解決した上で、平壌宣言にありますように、この地域の平和、安定の諸条件を整えて、そして北朝鮮の今後の発展もあるでしょう、当然ながら。しかし、そういうことによって我が国もこの地域の繁栄、発展のために貢献できる、そういう道が生まれるんじゃないか、こう思っておりまして、鋭意努力してまいりたいと思っているところでございます。

谷垣委員 総理のおっしゃるように、日朝国交正常化というものがないとなかなか戦争が終わったということにはならない。しかし、そのためには拉致問題の解決がどうしても必要だということだろうと思いますから、今後また御努力を心からお願いしたいと存じます。

 それからもう一つ、ミャンマーの情勢について高村大臣に伺いたいんですが、九月二十七日に長井健司さんが亡くなられました。まことに残念なことで、心から御冥福をお祈りしたいと思うんです。

 それで、民主化の問題等々でミャンマーにいろいろな批判があったことも事実でございますが、他方で考えますと、長い間、我が国とミャンマーというのは極めて友好的な関係にあって、私も五年ほど前ミャンマーに行ったことがありますが、ミャンマーの方々が日本に対して極めて温かい気持ちを持っておられる。また、何となく琴線が通ずるようなところもあるわけですね。その国でこういう事件が起きたことは、私はまことに残念だと思っているわけです。

 今後、今起きていることをどういう問題としてとらえ、ミャンマーに対してどのように日本として外交関係をしていかれるのか、高村大臣のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

高村国務大臣 ミャンマーの人は、非常に親日的な人が多い。日本人も、ミャンマーが、あるいはビルマが好きだという人がたくさんいるわけでありますが、そういう中で、どうしても民主化プロセスを進めてもらわなければいけない、こういうふうに思っております。

 日本は、アウン・サン・スー・チーさんが拘束されて以来、今までしていた経済協力も人道支援等にうんと絞ってやってきたわけでありますが、今度の長井さんが亡くなったこと、あるいはその他、極めて強圧的なデモ鎮圧、実力行使に出た、こういうことも踏まえてさらに絞り込むということをしたい、こう思っております。

 ただ、人道支援を全部やめてしまえという意見もあるわけでありますが、ただでさえ苦しんでいる民衆をさらに苦しめるような、例えばポリオのワクチンまでとめてしまえというようなことはできないんだろう、こういうふうに思っております。

 例えば人材開発センターのようなものも、それは結局、民衆の役には立つんですけれども、当面、政府を助けるというような意味もありますので、こういうものはとめていかなければいけないのではないか、こういうふうに思っております。

 日本政府自身として、ミャンマーに対して民主化プロセスを進めるように求めていくと同時に、やはり国連だとか国連の安保理あるいはASEAN、そういうものと緊密に連絡をとりながら、ガンバリ特使もミャンマーに行って、そして国際社会のバックがあるからいろいろなことが言えるわけでありますから、この民主化プロセスを進めるように我々も一生懸命頑張っていきたい、こういうふうに思っております。

谷垣委員 ありがとうございました。

 ぜひあの国を、少しASEANの中でもやや蚊帳の外に出ているというところがありますので、ぜひともいろいろな手段であそこの民主化を進めていただいて、そしてこの協調の中に引き込んでくるというようなことを長い目でお考えいただければと思っているわけでございます。

 最後に、テロ特措法の問題についてお伺いをいたしたいと思います。

 私の時間はもう半で切れますので、その後は専門家である中谷さんにバトンタッチしながら、まず最初の部分だけ、私、伺わせていただきます。

 この問題は、平成十三年、二〇〇一年の九月十一日に、ニューヨークの世界貿易センターにテロリストに乗っ取られた飛行機が突っ込んで、そして大勢の、三千人ほどの方が亡くなり、日本人も二十四名ですか、亡くなったと思いますが、大きな犠牲を生み、そうして、あのワールド・トレード・センターが一瞬にして崩壊をしたということがございました。

 いわゆる米国同時多発テロでございますが、それを機に、やはりこういうテロを許してはいかぬ、テロとの闘いが必要だということになりまして、我が国も海上自衛隊をインド洋に派遣して、海上阻止活動を行っている艦船に燃料を供給するというようなことを行ってきたわけで、国際的なテロとの闘いの一環の中で日本も仕事をしてきたということではないかと思います。

 しかし、これを基礎づけるテロ特措法が、六年たちまして、十一月一日には切れてしまう。テロとの闘い、四十カ国が参加しているわけですから、法律が切れたということでそのままにしてしまいますと、日本はテロとの闘いから逃げ出したのかと言われかねないこともあろうと思います。

 それから、我が国は原油の九〇%を中東地域に頼っているわけですから、結果として、あの地域にテロリストが跳梁ばっこしないということが日本の国益にも大きくつながっているということがあろうかと思います。

 また、あの地域の日本の活動というものが、アヘン、ケシですか、九三%がアフガニスタンでつくられているということがありまして、国際的なテロ資金を抑えていくという意味でも大きな意味があるのではないかな、このように思っているわけですが、私どもとしましては、十一月に切れてしまうということでは、これはどうしようもないということで、給油や給水に絞った形での新しい法律を今準備して、野党にもお呼びかけして、何とかこれで給油活動を続けていきたい、このように考えているわけです。

 そこで、まず、この我々の行動に対する見方はいろいろあるんだと思います。アメリカの戦争を支援しているんだというような議論もあります。しかしこれは、私は、テロとの闘い、アメリカの戦争を支援しているんだというようなものとは違うと思うんですね。

 まず、これは外務大臣でしょうか、官房長官でしょうか、テロとの闘いということはどういうことなんだということをお伺いしたいと存じます。

町村国務大臣 テロとの闘いの重要性につきましては、もう既に今委員からすべて御質問の中でお答えをいただいたと思っておりますから、私からつけ加えるべき何物もないわけでございますが、国際的な問題、例えば環境問題であるとかエイズの問題であるとかいろいろな問題と並んで、国際社会が一致して取り組むべき課題の大きな一つとして、このテロとの闘いがあるというふうに位置づけられているというふうに私ども考えております。

 しかるがゆえに、今、海上自衛隊の皆さん方にインド洋で頑張っていただいている。これは国際的な要請であると同時に、今委員御指摘のように、インド洋を通じ、特にシーレーンということを考えたときに、まさに我が国の国益にも資するということにもなります。

 そして、このテロとの闘いは決して人ごとではなくて、今委員御指摘のように、二十四人の日本人があの世界貿易センタービルの中で亡くなったということからしても、これはみずからの問題であるというふうにとらえなければいけない話なんだろう、こう思っております。

 確かに、このアフガニスタン、なかなか難しい地域でありまして、ここをテロの温床にしないようにする努力、日本もこれまでさまざまやってまいりました。お金のことだけを言うならば、十二億ドル、一千四百四十億円以上の民生安定事業、あるいはDDRと称しまして、武装解除ですね、こうした運動等々、あるいはインフラの整備などをやってきたわけでありますが、これをやっているからといって、この海上阻止活動をやらなくていいんだということにはならないわけでありますね。どちらもやらなければいけない、そういう課題だろうと思っております。

 なぜかといえば、ちょうど一九九〇年の湾岸戦争の折、我が国はお金をたくさん出しました。実に百三十億ドル、当時の邦貨換算にして一兆七千億円以上のお金を出した。にもかかわらず、それについての評価はゼロに近かったということでありまして、そうした反省を踏まえながら、その後、PKOの法律を通し、あるいはイラン、あるいはイラク、こうした活動をやってきているわけでございます。

 そうしたことが両方相まって、日本のテロとの闘いというものが、十分であるかどうかは別にして、日本も国際社会の一員として当然の活動をしているんだなという評価が出るわけでございまして、そういう意味で、今委員が御指摘のとおり、このテロとの闘い、ここで日本が真っ先駆けて脱落するわけにはいかない、このように考えております。

谷垣委員 それで、今、日本がインド洋でやっていることはどういうことなのかということなんですね。人によると、戦争をしているアメリカに油を注ぐというのは武力行使そのものだなんという乱暴なことを言う人もいるわけですね。

 一体このインド洋上における海上阻止活動というのは何なので、そして日本が給油しているというのは一体どういうことなのか。これは防衛大臣に伺いたいと存じます。

石破国務大臣 お答えを申し上げます。

 どこで何をやっているんだというお話でございますが、お手元に紙をお配りしております、理事会のお許しをいただきましたこの図でございますが、インド洋というのはここ、どれぐらい広いかというと、日本をそのまま入れてみますと、これがすっぽり入る、これぐらい広い海域でございます。委員御指摘のように、テロリスト、麻薬、資金、武器、そういうものが世界じゅうに拡散しないようにということで、現在、五カ国、十五隻の船がこの広い海に展開をしておるわけでございます。

 そうしますと、油が切れたから一々港に戻るということをやっておりますと、大変に作業は非効率ということになります。皆様、車を運転されるでしょうけれども、ガソリンが切れたから一々おうちに戻ってガソリンをつぎましょうなんて、そんなことをやっていたらとてもやっていられないということで、仮にそのときに洋上に補給ステーションが浮いているとするならば、非常に作業が効率的である。

 どの国も軍艦があり余っているわけではございません。どこもぎりぎりで繰り回しながら、武器が、テロリストが、麻薬が、資金が拡散しないように、流入しないように、このように見張っておるわけでございます。

 その船に対して補給をしているというのが我々の補給艦でございますが、これも時々、ただのガソリンスタンドというようなやゆをされることがありますが、この技術がどれだけ大変なものかということであります。走りながら補給するということがどれだけ大変か。そして、同じスピード、同じ速度、同じ間隔を保って、長い場合は六時間やるわけでございます。テロの危険というものも常にあるわけで、その警戒を怠らずに六時間補給するという高度な技術を持った補給艦は世界じゅうにそんなにあるわけではございません。

 そして、行かれた委員もいらっしゃいますが、現場の環境がどれだけ過酷かということでございます。温度は軽く四十度を超える。百葉箱ではかって四十二度とかいう話ですから、体感温度は軽く五十度を超える。甲板の暑さは七十度を超える。不快指数は一〇〇、これを超える中で、それだけの緊張を強いられながら高度な補給の技術をこなす。それは、我が国は恐らく世界で最高レベルのものを持っております。

 それがここの地域においてそのようないろいろな各国の船の活動を支える極めて重要な基盤になっておるということであって、それは、先ほど官房長官からお答えがありましたように、我が国の国益、そして世界に果たすべき責任、その両方を満たすものである、私どもはこのように考えておるところでございます。

 以上であります。

谷垣委員 今防衛大臣がおっしゃったことは、要するに、武力行使をしているわけでは毛頭ない、これは一種の警察活動なんであって、テロリストが不穏な動きをするのをやはりきちっと、これは国際法上も認められた行動をしているんだ、その海上阻止活動に従事している船に燃料を提供しているんだ、こういうことだと思うんですね。

 もう時間が来ましたから中谷さんにかわりますが、私、最後に申し上げたいのは、民主党の小沢さんが、これは安保理なり国連決議がない以上は憲法違反でできないんだ、それから、安保理決議があればアフガニスタンの治安維持活動にも参加するんだということをおっしゃっているんですね。私は、これがよくわからないんです。

 よくわからないというのは、今申し上げたように、武力行使でも何でもない活動に従事しているわけです、油を供給する。それから、アフガニスタンの治安活動へ行きますと、恐らくこれは武力行使の一体性という疑問も全くないわけではないかもしれないとか、いろいろな考慮のもとに、日本はこの海上の給油活動ということによってテロとの闘いに参加し、国際貢献ができる、こういうふうに我々は組み立てて議論をしているわけです。

 それから、安保理の決議も、一三六八という決議がございまして、加盟国にテロとの闘いを呼びかけているわけですね。ですから、国連加盟国としては、やはりその呼びかけにこたえる、これは当たり前のことで、これを今まで合法的にずっと継続してきた。それが、安保理決議がなければあたかも憲法違反であり国際法違反であるかのような御議論は全く特異な見解であって、私は理解ができないわけであります。

 このあたりはまた中谷さんが解明してくださると思いますので、これだけ申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 この際、中谷元君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 私は、党の安全保障調査会長をしておりまして、ただいまの議論に続きまして質問をさせていただきます。

 今、テロ対策は戦争か、もしくは警察活動か海上阻止活動かという質問がございましたが、これをさらに細かく質問してまいりたいと思います。

 九・一一から六年たちますが、福田総理は、当時官房長官をされていまして、このテロ対策支援法の成立のために大変な御尽力をされていました。

 とにかく三千人の人々が亡くなった。日本人も二十四人、ニューヨークの貿易センタービルで亡くなっているわけでありまして、全く罪もない市民、人々を殺傷するということは絶対に許されません。

 そこで、テロというのは何かというと、国家ではないですね。国家というのは、やはり、守るべきもの、例えば領土とか主権とか人々、国民の命を持っていますが、テロというのは何も持っていないんですね。国際社会においても、国家というのは、主権があって、いろいろな外交、約束事をして、その守るべきものを守るために交渉ができます。ところが、テロというのは、失うものがないわけですから、もう捨て身の、命がけの攻撃をしかけてくる。だから、人類社会、国際社会がこのテロリストを放置してはならないという思いでいろいろな活動をしているわけでありまして、基本的には、私は戦争ではないというふうに思っております。

 そこで、福田総理大臣は、当時、この法案を取りまとめる官房長官として仕事をされていました。私も防衛庁長官としてお仕えをしたわけでありますが、私、実に、そのとき福田総理の処理の対応を見て、迅速であって冷静であった、そして政治家としても物すごい決断力と実行力を持った、硬軟両方、二つの球を投げられる政治家だなと頼もしく思っておりました。

 もう一つは、原理原則を大事にするんですね。外交においても、憲法においても、その精神をしっかり守っておられまして、この法案をつくるときに、憲法の精神、国会でいわゆる憲法九条に基づいて六十年間議論をされていましたが、何となく与野党で合意をされたような憲法の精神、解釈でこの法律をつくられたと思います。

 その基本精神は、武力の威嚇、武力行使はこれをしない、それから集団的自衛権、これも行使をしません、武力行使との一体化もしない。そうすると、おのずから、戦闘が行われていない地域、戦闘がこれから行われるようなことがない地域で武力行使にならない後方支援活動をするという枠組みをつくって、それに基づいて燃料補給、水の補給などの後方支援活動をして、範囲も、ペルシャ湾、インド洋という、戦闘地域に入らない地域をわざわざ指定して、武器の使用も武力行使にならない範囲ということで法律をつくったと私は理解をしております。

 しかし、小沢一郎民主党党首は、これを憲法違反だと言っています。きょうも当時の民主党の皆さんも出席をされておりますが、今もそのメンバーの方々は多いと思いますが、当時の方々もおられますが、この国会の議論で、この法律に対して事前承認か事後承認かという議論の違いがあって、最終的に、事前承認というなら賛成するよと言ってくれました。憲法違反であるという議論はありませんでした。

 それから、この法律が通った後、国会承認にかかりましたが、そのときは、旧民主党、公明党、保守党、21世紀クラブの皆さんも賛成をしてくれました。参議院でも民主党は賛成。賛成百九十一対反対四十一で国会で認めていただきましたが、どうして今になってこれが憲法違反だと言えるのでしょうか。

 この考え方について、福田総理の憲法に対する考え方と当時の状況についてのお考えを伺いたいと思います。

福田内閣総理大臣 今、委員からお話がございまして、当時を思い起こしまして、大変懐かしく思っております。

 私は官房長官をしておりましたけれども、委員は防衛庁長官として国会における答弁に大変御活躍をいただいたということでございまして、あの当時を思い起こしまして、九・一一のテロそのものが非常に衝撃的だったということもございますけれども、それに対して、国際社会が、主な国がほとんど立ち上がった。そして、これに対して、その防止のためにどうするべきかというようなことでもって行動を始めたわけですね。ですから、我が国だって、あれをただ指をくわえて見ているというわけにいかないでしょう。そういう思いは、一九九〇年の湾岸戦争のときに私どもは強く感じたわけでございますけれども。

 繰り返す必要もありませんけれども、結局、湾岸戦争が起こって、イラクがクウェートに侵攻したんですね。国際社会はほとんど一致して行動した。しかし、我が国は何もすることがなかった。医務官を派遣しようと思っても、前線には行けないということでもって、結局、それすらあきらめざるを得なかった。結局、戦争が終わって、掃海艇を派遣した。

 それはそれなりに評価されましたけれども、しかし、その間に我々の味わった無力感というものは非常に大きかった。これは民主党の皆様方も同じだったと思いますよ。ですから、この法案が出てきたときに賛成をしてくだすった、基本的には。一つ、今委員の言われたところでもって、完全賛成ということにならなかった、これは非常に残念だったんですけれども、しかし、思いはほとんど同じだったと思いますよ。そういうことを考えて、この法案がどういうものであったかということを考えなければいけないと思います。

 法案のすべてを申し上げるわけじゃありません。憲法との関係で御質問がありましたので、その点お答え申し上げますけれども、そもそもこの行動そのものが武力行使に当たらないということはまず第一ですね。そしてまた、非戦闘地域に限られて行動するということも条件としてございました。そしてもう一つは、武力行使をしないという、憲法九条の、それに当たらない、そういう憲法上の解釈も当てはまるということで、私どもは、これは、憲法に抵触することではない、国際平和協力を我が国は一生懸命やってきました。

 しかし、その延長線として、国際平和協力でない分野における国際平和のための活動、こういうふうな整理をしてこの法案を通していただいた。そういうことを今思い出しているわけでございまして、決して憲法違反に当たるものではないということは、今でも同じように思っております。

中谷委員 ありがとうございました。

 民主党の小沢一郎氏は、きょう発売の月刊誌「世界」で、公開書簡という形でありますが、インド洋でのOEF、自衛隊の燃料給油活動は、国連活動でもない、米軍などの活動に対する後方支援だと位置づけて、アメリカへの集団的自衛権であり、憲法に抵触すると言っています。

 この意見には、現在、インド洋上を含めてテロ撲滅活動に参加している国々は首をかしげているんじゃないでしょうか。多くの国々が、自分のコストとリスクを抱えて、テロをなくそうと真摯に取り組んでいるこの世界の中で、私は、この考え方は恥ずかしいと思います。

 現に、米国のシーファー大使は、小沢一郎氏との面会で、テロとの闘いは日本でも党派を超えて取り組むべき問題であり、政争の具にすべきではない、日本がテロとの闘いから撤退することは国際社会にもマイナスのメッセージを送ることになる、アメリカ軍の活動はアフガニスタンの安定のため国連の安保理事会が行った決議に基づくものだと小沢氏に説明をしました。

 同じく、インド洋の海上阻止活動に参加しているドイツのメルケル首相は、できるだけ多くの国が国際テロの問題に関与すべきだ、日本が国際社会で活動するなら、より重い責任を負わなくてはならないと述べて、この特措法を延長すべきだと考えを示しております。

 このほかにもこの活動に参加しているのは四十カ国ぐらいありますが、そこで、このパネルを見てください。

 小沢さんが国連決議がないと言っておりますが、一三六八、この中に、赤い文字で書いていますが、国際の平和及び安全に対する脅威であるとテロを認定して、これまでの決議の完全な実施を求め、そして、あらゆる必要な手段をとる用意があるというふうにうたっております。

 また、国連決議の一七七六、これもごらんになってください。これにも現に言葉としてOEFという名前を挙げて、その必要性と、そして貢献の評価をうたっております。

 このほかにも、次のフリップですけれども、国連決議の一二六七、一三三三、これでテロを認定いたしておりますが、こういった決議が、世界各国が参加して安保理で決議をされたわけであります。

 小沢氏は、OEFのMIOに対しても、米国だけの一方的な自分自身の孤立主義とか過度の自負心による国連を初め国際社会の調和を乱す行為というふうに非難をしておりますが、本当にこれは正論なんでしょうか。私は、こういった国際社会が決議までして真摯に取り組んでいる活動に対しては主体的、積極的に活動すべきではないかと思います。

 外務大臣にお伺いします。この国連決議との関係、OEF・MIOの価値について御説明をいただきたいと思います。

高村国務大臣 もう委員がおっしゃったとおりなんですが、自衛隊の海上補給活動、これはまさに国際社会の総意を受けてやっていると言っていいんだろうと思うんです。国連決議、安保理決議一三六八、テロを防止し抑止するために国際社会は積極的に努力してほしい、こういう決議に基づいてやっているものでありまして、そして、御指摘があった安保理決議一七七六は、自衛隊の活動を含む活動について評価し、そして継続してほしい、こう言っているわけでありますから、まさに国際社会の総意を受けている活動だ、こういうふうに思っております。

 私も、いろいろな外国の方、アラブの人たちも含めていろいろな外国の方とお会いしますが、この活動に対して評価してくれた方はたくさんいますけれども、けしからぬとかやめた方がいいですよと言った人は、私はいまだ一人も会っておりません。

中谷委員 まさに、やめろと言う国はないわけであって、それをもっても、国連決議に違反しているということはないと思います。

 では、次のフリップをお願いします。

 次は防衛大臣にお伺いしますが、現在、こういった国際的なアフガニスタンに対するテロ撲滅活動を行っておりますが、これには四つの活動がございますね。

 OEFという不朽の自由作戦。これは二十カ国が参加して、タリバンやアルカイダの掃討作戦、軍事的な活動、テロ資金対策、交通保安、出入国管理、税関、治安など、総合的な取り組みをしています。

 二番目はOEFのMIO、海上阻止活動。当時は八カ国でしたが、現在は五カ国ですが、またカナダも復帰しますが、これは海上の盾ということで、海上におけるテロリストや関連物資の拡散や流入を阻止するという活動です。

 三つ目はISAF、国際治安支援部隊。これはアフガニスタン国内の治安を維持することによってアフガニスタン政府の活動を支えていこうということで、現在、三十七カ国、ドイツ、フランスを含めたNATOを中心に三万六千人以上が参加しております。

 それからもう一つはPRT。これは地方復興チームといいますが、軍による民生支援活動。給水をしたり教科書を配ったり、現在、四十カ国以上います。

 防衛大臣も、これらの取り組みについて、世界各国からこのISAFとかほかの活動にも参加してくれないかというお話もあったと思いますし、現在海上活動をしている上において、実際、国民の皆さんが、どうして海上で燃料補給をすることが国際社会に役立っているんだという疑問もお持ちでしょうけれども、この辺のことについて御説明をいただきたいと思います。

石破国務大臣 委員御指摘のとおり、アフガニスタンの陸上において、OEFであり、ISAFであり、PRTであり、多くの国が参加をいたしております。

 これは、例えばISAFなんて三十七カ国ということですね。スイスも参加をしている、韓国も参加をしている。OEF、タリバン掃討。あるいはISAF、治安維持、治安確保。PRT、人道復興支援のようなものですね。それも、すべて陸上において、多くの犠牲者を出しながら、多くの国がテロと闘っているということなのです。アメリカの闘いじゃない、多くの国が参加をしているという現実を我々はきちんと見なければいけないということが一点。

 そして、そのアフガニスタンから、先ほど谷垣委員に対する答弁で申し上げましたが、アヘンの九割はアフガニスタンで生産をされている。それが資金源になっている。間違いない事実です。これは国連できちんと出た数字ですからね。それが流出する、資金が入る、これはとめなければならぬでしょう。武器が入る、武器が出る、とめなければいかぬでしょう。テロリストの出入もそうです。

 それをとめるために、あの広いインド洋においてわずか十五隻の船が活動しておって、それが一々港に入っていたら、本当にそんなことやれますかということです。そこへ洋上で補給艦が浮かんでいる。その補給の技術は極めて高度な技術を要するのであり、委員も行かれたことおありかと思いますが、あの四十度を超える海の上ですから、湿度九〇%、不快指数一〇〇、その中でやるという技術を持った国は極めて少ない。あの地域において、私どもは石油の九九・六%は輸入ですから、そのうちの九割はあの地域に頼っているわけで、一日に三隻ないし四隻の、日本に油を入れ、日本に油を出す、そういうタンカーが通航しているわけですね。

 あの海域が安全であるように哨戒しているアメリカであり、ドイツであり、フランスであり、イギリスであり、そういう国々の海軍の船に補給をしているということは、それが我が国の国益を守ること以外の何物でもあるまい、そして、世界のために我が国が果たすべき責任以外の何物でもあるまい、私どもはそのように考えております。

 以上です。

中谷委員 海上阻止活動の意義についてはよくわかりました。

 では、もう一点、このISAF、国際治安支援部隊、これに参加できるかどうか。

 ちょうど小沢一郎氏は、今月号の民主党の機関紙に、党首が、民主党が政権をとった際には、自衛隊をアフガニスタンのISAFに派遣する、国連決議があれば、たとえテロとの闘いであれ何であれ、自衛隊を海外派遣できると書いております。

 これはこれから議論をしなきゃいけませんが、アフガニスタンのISAF、私も現場に行ったことがありますが、極めて危険な活動であります。毎月死傷者が出ておりまして、これまでにトータル千人以上の方々が亡くなっているでしょう。ドイツも二十人か三十人ぐらいは犠牲になったと言われているわけであります。

 要は、国連決議さえあれば、では武力行使をしてもいいのかという問いかけでありますが、私は、やはり主権国でありますので、国連でいろいろな決議が出て、それに参加するかどうかは我が国が主体的に考えて、我が国には憲法があって武力行使をしないんだと明記をされている、また、これまでの累次の政府答弁においても、国連決議があったといえども武力行使をすることは我が国の憲法においてはできません、これがこれまでの現行憲法による内閣解釈であり、我々国会の与野党の共通認識であったというふうに思いますが、このISAFに参加できるかどうか、これについて防衛大臣と官房長官の今の見解を伺いたいと思います。

石破国務大臣 これは、私ども政府の立場といたしましては、今ISAFに参加をすること、まして武力行使を伴うISAFに参加をするということは憲法上認められないという立場が、今まで政府がとってきた立場でございます。

 私は、小沢代表の論文も読ませていただきました。また、これは当時おられた委員は皆さん御存じのことですが、このテロ特措法というのができたときに、小沢代表は自由党に所属をしておられました。民主党ではございません。そして、その自由党に所属をしておられた小沢代表、そして自由党は、あのときに別の法律を出したはずでございます。

 それから考えが変わったのかどうか私は存じませんが、あのときに自由党が出された法律は、集団的自衛権を認める、こういう法律でございました。民主党代表になられてもその立場を維持しておられるのかどうか、それは私は存じませんが、仮にISAFに参加をするということであれば、憲法上の問題をクリアするとともに、集団的自衛権の行使が必要であるならば、そのための憲法解釈の変更が必要であり、そのための法律が必要であり、自衛隊法の改正が必要であり、武力攻撃事態法の改正が必要であり、そういう一連の法をパッケージとして示さなければこれは議論の意味がほとんどないのだろうと私は思っております。

 国連決議があれば参加をする。だけれども、小沢代表の論文を読んでみますと、国連決議があったからすべて参加をするわけではない、それは、その上で主権国家として判断するのだ。それはそうでしょうね。逆に申し上げれば、国連決議がなければ自衛隊は出さないということが反対解釈としては当然成り立つのだろうということになります。

 だとするならば、これはどういうものなのだろう。国際連合とは何であるかということをきちんと議論した上で、私は瑣末な議論をするつもりは全くございませんで、国連とは何か、あるいは日本国憲法との関係は何か、そして国益とは何か、私ども日本国民は何に自分たちの運命をゆだねるべきなのか、その議論をきちんとした上で有益な結論を得るべきだ、私はかように考えておる次第でございます。

町村国務大臣 小沢代表が、これは本当に、党の見解なのかあるいは個人の見解なのかよくわからないところが何となくみそなのかなと思ったりもいたしますけれども、いずれにしても、ISAFという活動に参加したらどうかという積極的なそういう提言をなさること自体は、私は評価をしていいんだろうと思います。何でもかんでも反対だというよりは、やはり、こういうことが可能なのではないかという問題提起、これは私は率直に評価をして受けとめるべきだ、こう思っております。

 しかし、その上で、なおかつ、今石破大臣がおっしゃったように、幾ら安保理決議があったとしても、憲法九条によって禁じられている武力行使に当たる行為は我が国の行為としてこれを許さない、これが伝統的な日本の憲法解釈でございましょう。しかし、それでいいのかどうかということについて別途議論があることは、それは事実であります。安倍内閣のもとで、集団的な自衛権についてどういうことが可能であるのかないのかという議論を今行いつつあるというわけでございます。引き続き福田内閣のもとでもその議論は今続けられていると理解をしております。

 そういう意味で、そこは議論が分かれるんでしょうが、しかし、少なくとも今の、これまでの憲法解釈、これをもまるで小沢さんが改めようというのならば、それはそれでまた一つの御議論かもしれませんが、そうでない以上は、私どもは、この憲法の議論から見て、直ちにISAFに参加することがたとえ結果的に武力行使を含むものであってもいいんだという議論に私どもとしてはくみするわけにはいかない、こう考えているわけでございます。

 特に、今議員から御指摘のように、ISAFで活動する、これは主として地上の活動ということになりましょう。アフガニスタンの国内で犠牲者は約三百人を超え、ドイツだけでも二十六人、その他多くの国の方々が亡くなっているという実態を見ても、これは、どの場所がどうと具体的に検討したわけじゃございませんが、総じて言えば大変危険な地域であり、平たく言えば戦闘地域だというようなことも言えるのではないだろうか。別に、個々の、この場所がこうだということを検討したわけじゃありませんよ。ありませんが、それだけの犠牲者が出ているということを考えたときに、私どもとして、直ちに、ISAFにどんどん参加をしましょう、地上軍、陸上自衛隊を送ってどんどんこれに協力をしましょうということにはやはりならないのではないのかな、こう思っております。

中谷委員 政府から現在のお考え方を聞きましたが、私は、自衛隊の隊員の命を預かる防衛大臣、また官房長官として当然のことを言われたと思います。

 要は、この話は、国民の皆さんがどう考えるのか。このテロや国際紛争に対して、国連決議があったら、日本人の血を流してまでも、命をかけてまでこれを阻止するということに、日本国民がみんなそれにそうだと言えば、これは自衛隊も命令を受けて、政府が派遣するかもしれません。しかし、全然そこまでいっていないんですよ。今のPKO活動、イラクの活動においても、警護任務もできません、警戒任務もできません、こういう状態。それから、自衛隊の訓練も、専守防衛ですから、海外で警護をしたり警戒する任務を与えられていないんですね。

 だから、こういう状態の中で出せという議論がおかしいわけであって、やはりこういう議論をするなら堂々と憲法の改正を議論してくださいよ。憲法の改正をして、じゃ、国際貢献をする、そういうふうに持っていかないと、現行憲法を解釈でねじ曲げていくと、根拠はなくなっていくわけでございます。

 したがって、私が申し上げたいのは、憲法の改正をしっかりしてもらう……(発言する者あり)

逢沢委員長 静粛に願います。

中谷委員 その上においてISAFのことを考えていくと思いますが、野党からこういう御意見があるということは……(発言する者あり)

逢沢委員長 静粛に願います。

中谷委員 この問題について議論をしなきゃいけないということですね。ですから、お互い責任ある政党として政党間協議をしっかりして、このテロ対策においてもISAFにおいても政党間で議論をすべきでありますが、この点について政府はいかようにお考えでございますでしょうか。

 政党間協議を安全保障においてする必要があるんじゃないかと私は思いますが、政府としてはどうお考えでしょうか。(発言する者あり)

逢沢委員長 中谷委員に申し上げます。

 明瞭に大きな声で、政府に対して再度質問してください。

中谷委員 この問題は憲法にもかかわる大事な問題であるということは私も認識しております。野党も認識していると思いますので、ぜひ安全保障の問題で政党間でお話し合いをしていただきますようにお願いするということについて、政府はどうお考えでしょうか。

町村国務大臣 もとよりこれは、日本の国の憲法という最も重要な法律にかかわる話でございますから、これは国会の中で政府対与党、野党の皆さんとの議論も大切ですし、今議員がお話しのような政党間協議、大いに議論をするということは大変重要なことだろうと思います。そのために憲法調査会というものができているわけでありまして、それは決して政府対議員という議論だけではなくて、議員間の議論が非常に活発に行われているわけでありますから、どうぞひとつ、憲法調査会等の場でこうした問題を、理念的なことではなくて、具体のこういうテーマに即して大いに議論していただくことはまことに有益なことだと考えます。(発言する者あり)

中谷委員 静粛に願います。冷静に議論をしたいと思います。

 では、次の問題提起をいたします。

 この写真を見てください。

逢沢委員長 中谷委員に申し上げます。

 政府に対しての質問、また自説については、そのような形でどうぞ御発言をいただきたいと思います。

中谷委員 はい。

 では、政府に質問します。

 この写真を見てください。これは、二〇〇四年の四月二十四日、日本郵船のTAKASUZUというタンカーが、ペルシャ湾で石油の積み出しをしているためにターミナルに停泊をしていた。そのとき、アルカイダが、犯行声明がありましたけれども、海上テロがありまして、三隻の不審なボートが近づいてきた。そのときに、銃撃戦となって、アメリカの多国籍軍二名の兵士と沿岸警備隊員一名が死亡しました。これはその拡大写真でありますが、爆発の被弾を受けているわけですね。

 現在、日本のタンカーだけで五十隻ぐらい、この海域、ペルシャ湾内にいます。現状としては、テロに対して多国籍軍が警戒をしていまして、これに対して警戒をしていないとペルシャ湾を安全に運航できない。結果的に、テロをとめようとした米海軍の犠牲者が、日本の石油の積み出しを維持するというためにこの海域の安全を守っている形というものがあります。これは石油の浄化をする装置ですけれども、これも壊れております。

 そこで、地図のフリップを見せていただきたいと思いますが、現在、日本の生命線である原油の輸入量は年間二億五千万キロリットル、一日六十七万キロリットルで、この約九割が中東からの輸入であります。九割が来ているんですね、中東から。原油の十万トンタンカーに換算すると、五時間に一隻、日本の港に入港している換算で、このタンカーを並べますと、点々点々とかいていますけれども、これが輸入のラインですけれども、何と何と常時九十隻がこのラインにいるんですね。九十隻がこのラインで毎日毎日、夜も昼も、日本の港に入ったり向こうへ行ったりしているわけであります。

 やはり日本の生活のためにもこの海域のシーレーンというラインを守らなきゃいけませんが、では、これはだれが守るのか。よくシーレーンの議論で、米国も守ってくれる一員だという答弁がありますが、実際、自分の国の船ですから、やはり日本が主体的にテロとか海賊から守らなければいけません。そういう意味においては、このOEFというテロ阻止作戦全般が日本の国民に非常に重大な影響、関与をしているという気がします。

 総理にお伺いしますが、総理は以前、石油会社に御勤務されていまして、日本の石油の輸入の確保については人一倍見識が深いとお伺いをしております。国際貢献も含めまして、現在のこのシーレーン、軍事用語ではSLOCと言っていますけれども、シーライン・オブ・コミュニケーション、これを守るためにはどうしたらいいのか、総理のお考えを伺いたいと思います。

福田内閣総理大臣 御指摘のとおりでございまして、このシーライン、日本の生命線だというふうに思っております。

 そういう生命線にテログループが暗躍するというようなことになっては、これは安心して航海できないということ、すなわち日本の血液の補給がとまってしまうということになりますので、これは何としても阻止をする。これは、ですから、諸外国に協力するという観点もございますけれども、同時に、我が国の安全を守るということが大事なんだと思います。

 幸いにして、我が国でこの種のテロが発生しているわけではありませんけれども、それは世界各地で起こっておりますね。ロンドンでもスペインでも、そしてまた、ほかの諸都市でも起こっている。しかし、アメリカでは起こっていない。それは、アメリカは厳重なる警戒をしているということによって起こらないんだというように私は思っております。

 我が国もかなり厳しい対応をしておりますので、今まで起こっておりません。しかし、それを緩めたときにどうなるかということもあわせ考えなければいけないということも考えますと、やはりこういうことは一国で守れることではありませんから、ほかの国と協力してやるというこの姿勢というのはとても大事であるということを指摘させていただきたいと思っております。

中谷委員 最後に、この法律の延長、継続等につきましては国民の理解、協力が必要でございますが、現在、この法律に基づいて供給された原油燃料が別の目的で、法律に基づく目的じゃないところに使われているんじゃないかという疑念が持たれていますけれども、この点につきまして、現時点で、防衛省は、国民の皆様方にこの点についてのきちんとした御説明をお願いしたいと思いますが、防衛大臣からよろしくお願いいたします。

石破国務大臣 お答えを申し上げます。

 これは、テロ特措法の目的外には使わないということを各国と交換公文を交わしているということ、そして、交換公文さえ交わせば大丈夫かといえば、そんなことはなくて、補給をいたします際は、バーレーンにおきまして調整をきちんとやる。すなわち、空になったのでレギュラー満タンとかそういう話では全然なくて、一体どのような作戦に従事をし、そしてどれぐらいの量が必要なのかということをきちんと調整した上で補給を行っておるということでございます。

 そして、目的外に使われたということがないのかどうか。民間団体からの御指摘もございました。合衆国に問い合わせて、それはないという確認を得ているところでございますが、そのことはきちんと、何によって裏づけられるのかということを精査しなければなりません。向こうがそう言っているからそうですということでは私は全然不十分だと考えておりまして、いかなる資料に基づいて、それが転用されていないのか。

 委員の皆様方御案内のとおりでございますが、絶対に出せないものというのは当然ございます、軍事のお話ですから。しかしながら、出せないものはなぜ出せないか、理由も付して、私といたしましては、可能な限りの情報開示をしたい、そのように思っております。

 なお、お許しをいただきまして一言申し上げておきますが、平成十五年五月の十六日、衆議院安全保障委員会で、私、当時防衛庁長官でございましたが、その答弁の中で、同年二月二十五日の海自補給艦からアメリカ補給艦への給油量を二十万ガロンと申し上げました。この数字につきましては、八十万ガロン、役所の方で訂正をいたしておりますが、これは、当時の防衛庁長官、今の防衛大臣の私として、改めまして八十万ガロンというふうに訂正をさせていただきたい。

 何でこういうことになったのかということは、きちんと詰めていかねばなりません。時の長官あるいは官房長官が二十万ガロンというふうに答えているわけで、何で八十万ガロンが二十万ガロンになってしまったのかということでございます。

 今そういうような数字を全部調べておるところでございますが、これは現地から海幕、海上幕僚監部にEメールあるいは伝票を添付いたしましてデータが参ります。どれぐらい補給をしたかというデータが海上幕僚監部に参ります。そこで集計をするわけでございますが、その際に、担当者がアメリカ補給艦への給油量を同じ日に給油をいたしましたほかの船への給油量と取り違えて数字を入力した、これによってミスが起こったということが判明をいたしました。

 このため、今回の間違いを踏まえまして、過去に海自補給艦が行いました給油の実績につきまして、各船ごとの給油量について同様の間違いがないかすべて改めて確認をいたしたところでございますが、いずれにしても、このような間違いがあっていいとは全く思いません。このような間違いをいたしましたことは本当に深くおわびを申し上げなければなりません。申しわけございません。

 二度とこのようなことが起こらないように徹底をしてまいりますし、同時に、事務的な誤りから生じたものでございますが、このような数値、誤ったデータに基づく答弁をしたということにつきましては、まことにあり得べからざることであります。あってはならないことでございます。何でこのような誤りが生じたかということにつきましては、さらに厳正に調査をし、これは服務上の問題として考えなければならないことでございます。もしそのような問題が判明をしました場合には、結果を踏まえまして、適正かつ厳正に対処をする方針でございます。

 以上であります。

中谷委員 この点につきましては、今後ともよく説明をいただきたいと思います。

 きょう、私が申し上げたいのは、この時点でインド洋における燃料補給等の対テロ支援策をやめるとなると、九仞の功を一簣に欠くということわざがあります。つまり、九仞の功というのは山の高さで、一簣というのはかごに担いだ土の一盛りなんですが、一盛りでもこの土が足らないと山は完成しないよという言葉なんです。

 世界各国が本当に懸命に努力をしていますが、ここまで一生懸命積み上げています、海上自衛隊も外務省も政府も。ここでやめてしまうと今までの努力が水の泡になって、日本はテロ対策には消極的だという烙印を押されるわけでありますので、政府の方も、今後ともこういった点をよく国民に理解していただく形でこの活動を継続していただきたいと心から祈念いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 この際、中山成彬君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中山成彬君。

中山(成)委員 自由民主党の中山成彬でございます。質問を続けさせていただきます。

 先週の私ども清和政策研究会の総会に、小泉元総理がそれこそ六年ぶりに来ていただきまして、お話をいただきました。人生には上り坂と下り坂のほかに、まさかという坂があるんだと、いつものような小泉節を聞かせていただいたところでございます。

 そういう意味で、福田総理、一カ月前、まさかこういうことになるとは思ってもいなかったと思いますけれども、あの厳しい過激な選挙戦を戦われて今ここに座っておられますが、福田内閣の支持率もほどほどといいますか、見ていますと、ずっと前からここに座っておられたような感じもしまして、やはり国民が求めていたものはこういう安定感といいますか信頼感だったのかな、そういうような思いがしているところでございます。

 私は福田選対の事務局長を務めさせていただきました。余り票が出なかったので申しわけなかったと思っておりますが、しかし、選挙戦を戦うに当たって、一体今何が問題なんだということ、これは、福田候補にできるだけ地方に行っていただこうということで、多摩ニュータウン、今あそこはオールドタウンになっている、ああいうところを見ていただいたり、あるいは、福島県のいわき市に行きまして、シャッター通りを見てもらったり、あるいは町おこしの例としてのハワイアンセンターを見ていただいたり、あるいは限界集落を見ていただいたり、鳥獣被害を受けている農村地帯、そういったところも見ていただいたんですけれども、選対本部として一番神経を使ったのが、派閥という、派閥の連合だとかなんとかそういう言葉がマスコミのみならず相手陣営からも聞こえてくるものですから、この派閥色を消すために腐心したわけでございます。

 もちろん、選挙戦を見てみますと、派閥、派閥じゃなくて、派閥を超えたいろいろな集まり、特に若い人たちが福田候補の話を聞きたいということでいろいろ集まられた、そういうところに時間を随分とっていただいた、こう思っております。

 実際問題、私どもが積み上げましたら、大体、議員の票だけでも三百十票近く、トータルしますと三百八十票ぐらいいくのかなと思いましたけれども、実際は三百三十。そういう意味では派閥の締めつけとかそういうのは全くない、こんな感じがしたわけでございます。

 実際、派閥の実態は変わってきているんですね。今、派閥というのは研修の場、政策を勉強する場、親睦の場あるいは選挙の応援に行くとか、そういった形になっている。親分がポストと金で締めつける、そういうものじゃなくなっているんですね。

 先週、私ども集まりまして、町村会長が官房長官になったということもございますが、町村会長にやめていただいて、今度は集団的に代表世話人を三名置きまして、これからはもう町村派と言わない、清和政策研究会、略して清和研と言うんだ、こういうふうなことを決めたわけでございます。

 かつて福田総理のお父様、福田赳夫総理が、もう三十年以上も前になりますね、総理になられたときに、派閥解消を唱えられました。そして、派閥の事務所ももうやめようということを言われたんですね、覚えていますが。しかし、なかなか派閥はなくならず、その後も続きました。

 しかし、実際問題として、今話をしましたように、派閥の実態は変わってきているんです。もう派閥の運営も、我々が会費を出して、あるいはパーティー券を売って運営しているわけで、そういう意味で、ぜひ総理、各派の会長さんたちに、もう派閥、何々派というのを言うのはやめよう、こういうことを提唱していただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。

福田内閣総理大臣 我が自民党のことでございまして、この総裁選挙でもって国会等に御迷惑をかけたということは本当に反省をいたしておりますが、御質問でございますので、我が党のことについて申し上げるのは大変恐縮でございますけれども、若干説明させていただきます。

 委員のおっしゃるとおり、派閥選挙というものは、これはもう私は影を本当に潜めたというふうに思っております。私も、この総裁選挙が始まるときに、派閥談合だとかいうようなことを指摘される方もいらした、自民党の中でもそういうことを言われる方はいらしたんです、メディアもそれはもう一生懸命それを使ったわけですけれども。そういうふうなことがありましたけれども、そのときに、私ははっきりと、もうこの派閥という選挙はあり得ない、こういうことはいち早く申し上げました。

 私は、派閥的な活動の限界というものはもう既に感じております。私の前任の安倍総理だって派閥の会長でなったわけじゃないし、私も派閥の会長どころじゃない、ほとんど何の役目にもついていないような立場で出てきたわけでありまして、そしてまた、最初に私に声をかけてくださった方々は、皆さん、派閥関係なく声をかけてくださったというようなこともございました。また、いろいろな方々のそういう御推挙があったということによって結論を出したわけでございますけれども。

 もう既に、前から、自民党には昔のような派閥はないんだ。派閥と言うのであれば派閥でもいいですけれども、名前をつけるのは自由ですから。ですけれども、実態はすっかり変わっているんだということはもう十年も前に申し上げておって、いまだに派閥というふうに言われるのは、私は正直言って心外でございます。政策研究グループ、こういうふうな形で呼んでいただきたいというふうに思っておるところでございまして、国会議員からして、派閥という言葉は忘れた方がいいというように思います。これは我が自民党だけじゃないと思いますよ。ほかの政党にもそういう部分はあるかもしれぬ。

 そういうことで、古い政治ということを思い出す派閥というものは、これはもう積極的に使わないようにするのがいいのではないかというふうに思っております。

中山(成)委員 これは党改革、政治改革の第一歩だと思いますので、各会派の代表の方々によろしくお願い申し上げたいし、またマスコミの方も、ぜひ政治改革の一環として、これから何々派というふうなことは使わないように、御協力をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 ところで、総裁選挙のときも一番問題になりましたのが、地方格差といいますか、地方が疲弊しているということでございまして、福田候補にもあちこち行っていただきました。

 そしてまた、党の方でも、自民党でも、ずっとこの問題、地方の活性化については議論をして取り組んでまいったところでございまして、地域再生調査会とか、あるいは真の地方財政の確立と地方の活性化を図る議員連盟、こういったところで、中心市街地活性化、あるいは地域再生、そしてふるさと創生、あるいはバイオマスタウン構想とか、さまざまなメニューをつくりました。

 そして、こういった形で「地域活性化ガイドマップ」、これをたくさん印刷しまして、地方の方にも配付したところでございまして、まちづくり交付金、例えば三千億円予算措置しました。やはり問題は何かといいますと、地方がそれをやる場合に、地方の負担するお金がないということでございまして、このことにつきましては、高利の地方債を借りている、これを借りかえることができるようにというふうなことも実現いたしました。先ほど話がありましたような地方法人税二税、これを共有税にして、本当に困っている地方公共団体に配分する考えとか、あるいはふるさと納税とか、そういったものも議論されました。これは、私はこれからの問題だろう、このように思っているところでございます。

 今回、福田総理の強い指示で、内閣の方でも、四つの地域活性化本部が統合化されて、一体として全閣僚が参加する地域活性化統合本部がきょうまさに発足するということでございまして、これは本当に期待をいたしているところでございます。

 しかし、何といいましても、地方が三位一体の改革あるいは交付税の削減で本当に困っている、住民サービスもできないような状態になっているということでございまして、このことについては先ほど総務大臣にお答えいただきましたけれども、総理からもぜひこの地方財源の充実ということについて話を聞かせていただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 御指摘のとおり、地方の問題というのは大変重要な課題であるというように心得ております。

 地方財源、これは地方が独自に財源をつくり出すということができればいいですけれども、その力がないところにはそれなりのことをしていかなければいけない。それが税金なのか、また交付税というふうなことであるのかということになりますけれども、これは全体を見て判断していかなければいけない段階だというふうに思っております。

 そしてまた、地方自治体自身も、みずから生み出す力を持つ努力をすべきだというように思っております。そのために、いろいろな方策があるでしょうけれども、例えば企業立地を促す、企業を引っ張ってくるということも必要だと思います。

 これは、私、調べましたらば、各県とも企業誘致のいろいろな政策手段を持っているんですね。持っていないのが東京都。当然ですよね、そういうことを必要としなくてもみんな来てくれる、こういう恵まれた県。何だかよくわからないんだけれども、群馬県にもそういう誘致施策がないんですよ。それで、今それを検討するようにお願いしておりますけれども、そういうようなこと。

 しかし、企業誘致しても、例えば工場が来る、支店が来るということはあっても、それだけでは十分でない。そこに利益がたまらないような仕組みで、みんな東京の本社に吸い上げられてしまうということであっては、誘致しただけという話になりますから、そういうところをどうするのかということもあります。

 これは、やはり企業にもいろいろ考えてもらわなきゃいかぬですね。企業が、私が申し上げております、自立は企業として必要かもしれぬけれども、やはり共生というようなことを常に考えてやっていただくということも必要なんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、この地方問題というのは大変大事だということで、いろいろな角度から今研究をしているところでございます。そして、なるべく早く具体的な手段を講じてまいりたいというふうに思っております。

中山(成)委員 不況が長引いている間に、日本の企業が人件費の安い中国とかアジアにどんどん出ていきました。前に調べたとき、もう三万社以上が出ていったという話でございました。やはり地域活性化のためには、地方に働く場、雇用の場をつくる、これが一番大事なことだ、そう思うわけでございますが、今、総理からもそういうお話がございました。

 これは、ぜひ企業に対して、経済界に対して、国外に出ていくのもいいけれども、国内の地方に企業を立地してくれ、そういうことを強く要請していただきたいと思うんですね。総理の公約の中にも、地方に企業を立地した場合には税制の優遇をしますよ、こういったことも盛り込んでいただいておりますから、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それについては、この前、経団連の御手洗会長とお話し申し上げたとき、あそこは大分に大きな工場をつくっているんですけれども、もし道路があれば宮崎の方にも工場ができるんだがな、こういうことを言われまして、本当にそのとおりだなと思ったんですね。

 やはり、高速道路、道路の整備、このことが本当に大事でございまして、例えば中国では、一年に七千キロ、高速道路をつくっているんですね。これは、日本の全体の高速道路の延長距離と同じだということでございます。それから、台湾に行きますと、あそこは九州と同じぐらいの面積なんですけれども、南北に二本の高速道路ができています。ことしの初めには新幹線も通りました。経済規模からいって、何で九州はまだ、東の方はまだあと十年近くかかるというんですよ、高速道路ができるのに。何かお金の使い方が間違っているのかな、こんな感じがするわけでございます。

 その道路の整備につきまして、道路特定財源、これが、地方におりますと、何か地方軽視といいますか地方切り捨ての象徴みたいな感じが実はしているわけでございます。道路特定財源、御承知のように、ガソリン税あるいは自動車重量税、道路建設のための税でございますし、しかも、建設を促進するために、今、二倍の暫定税率になっているわけですね。ところが、これが公共事業の、御承知のシーリングによりまして余り出してきている、さあ、だからそれを一般財源化しよう、こういう話でございます。一般財源化の論者からいえば、もう大体道路はでき上がっている、概成しているんだからいいんじゃないか、こういう話でございますが、それならばこれは減税してもらいたい、こう思うわけでございます。

 しかし、この前、地元で宮崎の道路を考える女性の集まりがございましたが、本当に必死な思い。やはり女性の方というのは自分のことよりも子や孫たちのことを考えますから、早く自分たちの代に道路をつくっておかなきゃという思いが非常に強いんだろう、こう感じたわけでございます。

 そもそも、この道路特定財源というのは非常に逆進性が強いと思うんですね。要するに、県民所得の低いところに大量輸送機関がないから、車を使わなきゃいかぬわけですね。だから、ガソリン税をたくさん払っているのはそういう県民所得の低いところでございますから、やはりそういうことを考えますと、この道路特定財源、去年の暮れの閣議決定で一般財源化の方向が打ち出されていますけれども、ぜひ総理、見直してほしいと強く思いますけれども、いかがでございますか。

福田内閣総理大臣 御案内のとおり、この道路特定財源については、昨年の末に閣議決定されたわけですね。そして、具体案というものがまとめられております。ですから、そういうような趣旨に沿ってこれからこの特定道路財源を運用していくことになるんだというふうに思います。そうしなければいけないんだろうというふうに思いますけれども、しかし、この具体策が問題ですよね。どうやって具体化していくのかということがございまして、道路整備の必要性の吟味ということは十分にしなければいけないと思いますが、この厳しい財政事情のもとにおいて、一般財源としてどういうものに使っていくのかということも、これから大いなる議論が必要なんだというふうに思っています。

 そして、あわせて、今御指摘のように、納税者の理解ということがあります。今、財源が極めて厳しいという状況もございますので、納税者の理解というものを求めるためにどうしたらいいかということをよく考えた上で、その使途等についてこれから詰めていきたいというふうに思っているところでございます。

中山(成)委員 ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 ところで、日本経済、ずっと回復基調が続いていると言われていまして、現に大企業等は空前の好決算ということでございますが、しかし、日本全体としてはなかなか景気の浮揚感が乏しいわけでございます。これはなぜか。やはり企業が内部留保と配当を重視しているということもあるのかなと。労働分配率がなかなか高まらない。配当についても、外人投資家がふえていますから、海外に流出する分もあるんだろうと思うわけでございまして、ぜひ福田総理には、経済界に対して、この分配率を高めるように、もっと社員を大事にするように、それから正規雇用もうんとふやすように、このこともあわせてお願いをしていただきたい、このように思います。

 また、長引く不況の霧が晴れてみますと目につきますのは、横文字の会社が多くなったということですよね。これは大変驚くような話でございまして、これはやはり、外資に買収されたりとか、あるいは、再生機構も売り先を探すときに、国内のファンドに売るといろいろ言われるから後腐れがないようにとどんどん外資に売っちゃったとか、そういうところもあったんじゃないか、こう思うわけでございまして、私は非常に残念。また、創業者の無念が日本列島に満ち満ちているような、私はそんな感じもしているところでございます。

 また、金利も、低金利がずっと続いているものですから、円転、円キャリーで、外貨で運用されている。そういう意味では、端的に言いますと、日本人は、自分たちの金、自分たちのためた金が自分たちで使われずによそで使われている。あるいはまた、極端に言いますと、自分たちがこつこつとためた金で自分たちの企業、自分たちの土地が買われている、こういうふうなことも言えるんじゃないかなと思うわけでございます。対内投資を促進するという話がありますけれども、これも、ただ株を買うとか買収するとか、そういうような話じゃなくて、やはり技術と資本を持ち込んだ、そういうふうな対内投資が一番私は大事なんだろう、こう思うんですね。

 そういう意味で、日本人は農耕民族でございまして、一生懸命働くということは得意なんですけれども、金の運用ということになりますとなかなか、今まで余りそれはいいことでないような雰囲気もありました。やっと最近になって、大学でも金融工学の講座ができたりとか、そういうこともできているわけでございます。日本人の千五百兆円という貴重な金融資産が日本人のために使われるように、そういう意味で、資金運用のプロとかそういったものも養成しなきゃいけないし、和製ファンドといいますか日本人によるファンド、こういったものもどんどん立ち上げるべきだ、こう思うんですけれども、これはだれに聞けばいいのか、甘利大臣、お答えいただけますか。

甘利国務大臣 余剰資金と投資先をつないでいくのがファンドの役割でありますが、願わくは、その投資先が投機ではなくて実体経済と結びついている投資であればベストである。しかも、ふだんなかなかその資金が回りづらいところに回してくれる役目をファンドがやってくれればいいと思います。例えば、ベンチャーの育成であるとか事業再生。しかし、それには、なかなか、金融工学とか高度な金融人材というのが必要で、そういう装備ができているファンドでないとそういうリスクはとれないわけであります。日本での和製ファンドも、数はふえていますけれども、まだまだそういう金融工学とか金融人材が充実していないと思います。

 ですから、和製ファンドをしっかり育てていくためにも金融人材の育成ということは大事でありまして、この六月に高度金融人材産学協議会というのを設立いたしました。メーカー、銀行、ノンバンク、大学の関係者が集まって、そういう資金と投資先をつないでいくための人材をどうやってはぐくんでいくか、これを立ち上げて、今、努力をしているところでございます。

中山(成)委員 次に、経済財政諮問会議のあり方についてちょっと質問したいと思っています。

 経済財政政策に関し、有識者の意見を十分に反映させて、総理のリーダーシップを十全に発揮できるようにということで、平成十三年に発足いたしまして、民間議員を四割以上入れるということになっています。

 ことし、思い出しますが、六月の十九日に、「経済財政改革の基本方針二〇〇七 「美しい国」へのシナリオ」、いわゆる骨太方針第七弾が公表されたわけでございます。その後、参議院選挙の大敗を喫したんですけれども、八月の九日に、これがそのまま二十年度予算の全体像として概算要求基準となったわけでございますが、私はこれについて反対をいたしました、参議院選挙大敗の反省がないじゃないかと。

 特に、民間議員の方ですね。民間議員、大企業の成功した会長さん、それから著名な学者先生、みんな東京住まい、こういうことでございまして、地方の視点とかあるいは弱者の視点がないのは問題じゃないか、こういうことを私は発言したわけですけれども、選挙という試練を受けない民間議員と官僚が中心となっていることに私はちょっと疑問を持っているわけでございます。

 この任命権は総理にあるわけですけれども、また、大田大臣、民間議員ということでなかなかお答えにくいと思いますけれども、この経済財政諮問会議の運営についてどう思っていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

大田国務大臣 経済財政諮問会議は、総理のリーダーシップを発揮して経済財政政策を運営する、そのために重要事項を調査審議するということが目的でございます。審議に当たりましては、有識者議員の知見を活用しながら、総理と関係閣僚の合意のもとで進められております。そしてまた、例えば骨太方針のように、政府として最終決定を行う場合には、閣議決定などを通して内閣の責任で行われております。

 先生御指摘のように、全国それぞれの地域の視点あるいは働く者の視点、生活の視点で経済財政政策を議論するというのは、もうそのとおりだと思います。これまでも、中小企業の生産性向上と最低賃金をセットで議論する、あるいは地域の活性化ということを議論してまいりました。そういうことも骨太方針には書かれておりますので、これからこれを実行させていきたいと考えております。

 また、地域経済の立て直しということを大きいテーマに掲げております。増田大臣と連携をとって、地域経済の足腰が本当に強くなるような経済政策をこれから議論してまいりたいと思います。

 私も、国民から見える議論の場として、国民の目線に立って、わかりやすい議論ができるように、よりよい経済財政諮問会議になるように全力を尽くしてまいります。

中山(成)委員 ぜひ、総理におかれましては、この経済財政諮問会議のあり方あるいは来年度の予算編成の方針等については、じっくりお考えをいただきたいなと思っております。

福田内閣総理大臣 一言追加させていただきますけれども、そもそもこの経済財政諮問会議というのは、二〇〇一年にスタートしたわけでございますけれども、大田大臣から言われましたように、総理大臣の諮問機関。それまでの総理大臣というのは自分から物を考えて言うことはなかった、それを、自分の考えで物を言う、そのために諮問会議を開いて、そこでいろいろ政策を考えていく、立案する、そして、それがいいということになれば閣議決定して各省にお流しする、こういうふうなことをしてきたわけなんですね。

 ですから、よく諮問会議は少し横暴なんじゃないかとか言われる。しかし、横暴なのは総理大臣が横暴なんですよ、それは、そのときは。総理大臣が決めるんですから。そういうふうに理解していただきたいというように思います。

 ただ、一つ申し上げますけれども、こういう制度がなぜ必要なのかということ、これは基本的には小沢さんが昔考えられたのではないのかというふうに思いますけれども、省庁再編との関係で一緒に考えられたと思いますけれども、今このような複雑化するそういう時代にあって、そしてまた、いろいろな変革を求められているという時代にあって、やはり省庁横断的に事を決めていかなければいけない。やはり総理大臣のリーダーシップというのはとても大事な時期だということなんじゃないかと思います。そういう必然性から生じた制度であるということでございますので、これが正しく運用されるように私も心がけていきたいというふうに思っております。

中山(成)委員 ぜひそういう方向で、よろしくお願い申し上げます。特に弱者の視点、地方の視点がしっかり入りますように、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 その地方といいますか、次は農業問題について質問したいと思います。

 まず、私ども九州、鹿児島、宮崎、大分、早場米の産地でございますが、ことしは台風四号、五号、フェーン現象が起こりまして、ちょうど実の入るときに温度が上がって、いわゆる乳白米と言われる規格外米、これはふだんはほとんど出ないんですけれども、ことしは七割、八割がそういうことで、三十キロで三千円もしないという非常にひどいことになっています。

 これは農済の制度がございまして、それを補償することになっているんですけれども、ことしの場合は倒伏しているわけじゃなくて、立ち姿は非常によかったものですから、事前の申告をしなかったんですね。収穫してみて、ひどいということになったんです。

 そういう意味で、農済の制度上からはどうしようもないのかと思いますけれども、しかし、想定外のことが起こったということでございますし、農家の方々が本当にもう耕作意欲を失っている。そしてまた、これは耕作をやめちゃいますと、農済制度そのものが壊れてしまいますし、また水害対策とか、そういう多面的な機能を持っている水田でございます。そういったことについて、どういうふうなことを考えていただいているのか。もう大臣のところにも陳情にも行きましたけれども、今どういう状況になっているか、ちょっとお聞きしたいと思いますが。

若林国務大臣 宮崎県を中心としまして、鹿児島、大分の一部などの早場米地帯で、大変今まで経験したことがないような被害が発生しているということは承知いたしております。外見上、全く被害が生じているということもわからない、また倒伏などはもちろんないというような、そういう状況で広範囲に被害が発生した特異な現象でございます。

 農林水産省は、もう現地に調査団を派遣し、いろいろな報告、お話をお聞きしたりしております。また、地元でも、県や農協などの関係機関が対応策を検討いたしているというふうに承知いたしております。

 それで、これは委員がお話がございましたように、被害申告がなかったというような場合には、立ち毛の、収穫前に損害評価ができないということでありますから、圃場ごとにどんな損害が発生したか確定できないということになりまして、共済金の支払いは不可能でございますが、そういう状況について、さはさりながら、生産者の経営の安定ということを考えていきますと何らかの形でこの支援をしなきゃいけない、このように今考えているところでございまして、共済組合あるいは同連合会などの積立金の活用なども含めまして、何らかの対応を早急に決めてまいりたい、このように思うわけでございます。

 なお、こういうような状況が今後繰り返し起こるというようなことがないような再発防止策も、あわせて今検討しているところでございます。

中山(成)委員 ありがとうございます。今、大臣も言われましたように、この積立金が二千億を超えているというような報道もございまして、何とかしてほしいという農家の切実な要望をぜひお聞き届けいただきたいなと思っております。

 今、農村に行きますと、後継者不足、本当にどうしようか、自分の息子に農業を継がせていいものかと。WTOとかあるいはEPAの貿易交渉の行方をずっと見守っていますし、今後の農政はどうなるんだ、こういうことについても本当に必死な思いで今見守っているというのが農家の現状でございます。

 しかし、一方では、これから経済発展に伴いまして途上国の消費も拡大しますし、一方ではまた、バイオエタノールとかそういったものの需要がふえてまいりますと、将来の食料不足というようなことも考えられるわけでございます。また、温暖化が進んでいきますと米も、今、北海道の米がおいしくなっているというような話もございまして、適作地帯が変わっていく。

 そういった中で、今、品目横断的な政策が進められているんですけれども、九州におきましては、四ヘクタールの米作より二十アールのハウス園芸農家の方が経営が安定している、こういうこともあるわけでございまして、特に野菜とか果樹とか花卉とか、こういった個別の農業についてもひとつ目配りをよろしくお願いしたい。ですから、一律の農政じゃなくて、今度、農林大臣の発案で地方に行かれて、御用聞きに行かれるということですけれども、それぞれの地方、地方に行って本当に実態をよく調べていただきたい、こう思っております。

 そういう意味で、耕作放棄地がどんどんふえてまいりますが、一方で、バイオエタノールとかそういったもので、例えばトウモロコシだとか、あるいは大豆だとか麦だとか、あるいは里芋だとか、そういったものが価格が上がりまして、国内でももう一回つくってもペイするような、そういう時代になっているんじゃないかな、こういうことも思うわけです。私は、一方では、農家が高齢化している、どうしても農地を集約化、集積していかないといかぬと思います。

 今、九州の方で、大体五千人近い中国の青年たちが来て、研修目的で手伝ってくれているんですね。しかしこれも、かつて私たち、集団就職の時代がありましたけれども、あれも長くは続きませんでした。中国も経済発展しますとこちらに来なくなるということも考えられますから、今のうちにこの農地集約化、これを本当に進めていかないかぬ。ところが、農家というのはなかなか土地は手放したがりませんから、これを促進する、そういう施策もとっていただきたいなと思っております。

 今回の総理の公約の中にも、すべての農地を活用するための新たな施策を展開する、こういうのが入っているんですよ。そういう意味で、ぜひ若林大臣、温暖化とかあるいは後継者不足、食料不足、貿易交渉、あるいは民主党が戸別補償制度なんてちょっと時代錯誤的な政策も出そうとしていますけれども、いろいろな問題がありますけれども、どういうふうに今後の農政を展開されるつもりか、お聞きしたいと思います。

若林国務大臣 委員が御指摘になりましたように、農業人口は減少をしてまいっておりますし、また、農業者自身の高齢化も進行している。その結果、農村地域で耕作の放棄が進んでいる、荒れ地がふえている、こういう現象になってきております。温暖化の問題もこれから深刻な影響が出てくることも想定されますし、また、世界的な食料需給でいえば、エタノール生産の方に食料原料が回るというようなことから、トウモロコシの価格の上昇などを初めとして、それがいろいろな波及をしてまいりまして、輸入農産物の価格が高騰してきている。農業と食料を取り巻く環境というのは激変しつつあるわけでございます。

 そういうような状況を前提にしながら、今、戦後初めてと言われております大きな意味でこの転換期を乗り切るための農政改革を、農地法の、農地制度の改正を視野に入れながら、大きく農政改革を進めていこうとしているわけでございます。

 委員がお話ございましたけれども、やや誤解がありますのは、実は、国内における消費者に対する農産物の供給が、農業主業者といいますか、農業を主として農業所得で生活を支えているような農業主業者が供給の七、八割、あるいは九割、大部分を供給できるような体制にしていくことによって初めて生産性も上がりますし、安定的な農産物供給ができる、こういうことになるわけですね。

 そのことはかなり進んでおりまして、野菜について言えばもう八割がそういう農業者によって供給されておりますし、フラワー、花についても八七%、酪農は九六%、肥育牛あるいは豚、養豚などは九〇%もそういう農家が、農業者が供給をしているということになっております。麦類や豆類など、芋類もやはり七、八〇%はそういう人たちで供給されているんですが、残念ながら、米につきましては、そういう主業者が供給している部分が四割弱ぐらいということで、六割は兼業の人あるいは農業以外の所得が多い人や高齢者などによって今なお供給されている、こういう状況でございます。

 そういう意味では、耕種部門の水田農業について、米は過剰になっているわけですから、さらに米をつくっていくというわけにはまいらない。そういう状況の中で、米以外の作物を導入しながらいくには、かなりの技術的な能力あるいは意欲のある主業者が中心になって、米の、水田の耕作をしていかなきゃいけない。そういう認識のもとに、いわゆる品目横断的な対策を講じようとしているわけでございます。

 このことに関しまして、小規模の農業者や高齢者をどうするんだという話がございます。当然、担い手だけで農業が、農村が成り立つわけではありませんから、そういう人たちも含めましたいわば地域の組織化、農業の組織化ということを積極的に図りながら、今言った体質改善、体質強化を図っていかなきゃいかぬ、こういう問題意識でございます。

中山(成)委員 よく理解できました。

 ところで、これから貿易交渉、農業交渉が続くわけでございますが、ぜひこのことを御理解いただきたいと思うんです。アメリカとかオーストラリア、ああいったところは、農業というのは産業でありまして、農業生産の現場と生活の現場が離れているわけでございますが、日本の場合には、農業というのは、これは地域社会における必要ななりわいとしてはぐくまれてきた。そして、農村は生活の場であり、文化伝承の基であった、こういうことでございます。

 したがいまして、農業交渉をやっていきますと、その成果というのは、向こうは産業振興になるわけですけれども、日本は地域社会が崩壊につながる可能性がある。そういう意味で、農業というのは他の製造業とは違うんだ、こういう認識が必要じゃないかな、このように思っております。

 なお、ことしの予算要求の中に、来年度から全国の小学生百二十万名を一週間農山漁村に宿泊体験させる、こういう非常に意欲的な予算要求がなされているんですね。これは、子供たちの自然体験のためにもあるいは農山村の活性化のためにも非常にいいことじゃないかと私は思いますので、これは農水、総務、文科省共同して予算要求しているようでございますが、ぜひ実現してほしいな、こう思っております。

 予算といいますと、余り時間もありませんが、一言申し上げたいのは、とにかく増税よりも前に歳出削減だ、こういうことでずっとやってまいりました。しかし、例えば教育現場だとかあるいは医療現場には悲鳴が上がっているところもあるんですよ。そういう意味で、歳出改革だけじゃなくて、歳入改革もこれは避けて通れない、私はそのように思っております。

 そういう意味で、諸外国を見てみますと、例えば欧州におきましては、消費税は一五%から二五%ですよね。それで、法人税は下げる方向にあるわけですよ。やはりこれは、国家戦略として、法人税を下げて国際競争力を高める、一方で福祉を向上させるためには消費税、こういう国家戦略があるんだと思うんです。どうも日本は、この前の参議院選挙のこともありますけれども、税の改革ということで、特に消費税についていま一歩踏み切れないというところもございますが、ここはやはり勇気を持って取り組んでいかなきゃいかぬのじゃないか、私はこのように思っております。

 そしてまた、福田内閣も教育再生が最重要課題、こういうふうに位置づけられておりますから、ぜひお願いをしたいんですけれども、私も学校現場を回りましたら、学校によってはファクスの用紙がないとか、試験をするためのプリント用紙がないとか、こういう話もございます。あるいはまた、今度、教員数を生徒の減少よりもさらに減らすんだ、こういう政府の方針もございます。あるいは、大学でも、国立大学法人の運営費交付金を毎年一%ずつ削っていくんだ、あるいは私学助成も毎年一%ずつ削っていくんだ、こういうような政府の方針があるわけですけれども、この辺のところは、本当に教育が大事だといえば、こういうことを硬直的にやるのはどうかなと思うんです。どうですか、文科大臣。相撲協会の話とかいろいろ大変だということですけれども、ぜひお答えをいただきたいと思います。

渡海国務大臣 相撲協会やら教科書で大変でございますが。

 中山先生おっしゃるように、先生は大臣のときに現場を随分歩かれたと聞いております。教育の現場でこれから一番大事だと考えておりますのは、やはり先生方が子供と向き合う時間を長くとっていただく。そのためには、そういった環境をつくるためのさまざまな支援をしていかなきゃいけない。ボランティアを使うとか、既に非常勤講師というような発想もございますが、そういった方々を採用するとかいったことによって先生が子供の状況を把握していただくということが、やはり学力の向上のためにも、また、最近いじめ等の問題がございますね、子供の変化に先生がしっかりと気づく、こういう面でも大事だと思っておりまして、そのようなことを実は二十年度の概算要求に盛り込んでおりまして、各府省とも連携しながらしっかりと予算獲得に努力をしていきたい、そのように考えておるところでございます。

中山(成)委員 時間になりましたけれども、ぜひ福田内閣、これからも改革は続行していかなければなりませんが、小泉元総理に申し上げたことがございます、改革には信長の峻烈さ、厳しさも必要だけれども、しかし、それが成功するためには、夕方になると外に出て、庶民のかまどの煙が上がっているかどうか、そういうことを心配されたという仁徳天皇のお慈悲の心も大事だと思うんです。

 そういう意味で、温かみのある政治ということを打ち出しておられますから、ぜひそういう気持ちでこれからも政治に取り組んでいただきたい、このことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、細田博之君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。細田博之君。

細田委員 細田でございます。

 国会の質問、質疑について国民の多くの方が御批判がありまして、どうも余りおもしろくないと。何もちょんまげをつけて劇をする必要はないけれども、やりとりがある程度ユーモラスでなきゃいけない、あるいはもっと勉強になるようなことを言ってくれ、そういうようなことも聞くわけでございます。なかなかそう言われても簡単ではございませんが、できるだけこのテレビをごらんの皆さんにわかりやすく、かつ、本当にどうなんだろうかという気持ちになっていただくような質問をできるだけしたいと思います。

 まず、政治と金の問題ですけれども、私はけさの新聞を見てびっくりをいたしました。それは、政治資金で獲得した資産を運用して、家賃収入等相当の収入を得ておったという記事でございます。私自身も未確認でございますから、これ以上この問題を今申し上げようというわけではありません。しかしこれは、法律上、もし事実であればはっきりと違法であるというふうにも言われておるわけでございます。したがって、これはこれできちっとした対応をすべきだと思いますけれども。

 もう一つは、我が党も、政治資金の報告についてきちっとやれという指示を下しまして、みんな一生懸命見直したところ、相当数の修正が出てきました。与党、野党も随分出ておりまして、野党もかなりの数が出ておられますし、そのことで若干責任を問われたような方も伺っておりますけれども、これは、政治家すべてが、みずからの身を正すということできちっとした対応すべきだと思っております。

 そこで、まず福田総理に、冒頭の演説にもございました政治資金の問題について総理がどのようにお考えであるかということをお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 政治家とそのお金の問題というのは、これはもうずっといろいろ指摘を受けているところでございます。時には大きな政治的な問題に発展するということもありますけれども、そういう問題であるがだけに、我々は注意しなければいけないという義務を負っているんだろうというふうに思います。

 ただ、正直申しまして、私も余り大きなことは言えないんですけれども、いろいろと私どももそういうことは悪いということを知らないときもありまして、気がついて、しまったというようなことはあるんですけれども、そういうことはよくあることなんです。

 ですから、そういうことがまず起こらないように注意しなければいけないということなんですが、そうすると、素人の経理担当者に任せるとかいうふうなことじゃもう済まなくなってきているなという感じを私は強く持っております。専門家にゆだねなければいけない。そうすれば当然そのための費用も発生するわけですから、その分政治資金が余計かかる、またそれを集めなければいけないということで、これも今の制度であればやむを得ないのかなというようには思っております。

 しかし、そういう中で、そのことでいろいろ政治が問題ありということを指摘を受けて、そして政治不信というものを増長する、そういうようなことがあるのであれば極めて残念なことであり、そういうことにならぬような仕組みはないのかなということをずっと考えてきたわけでございますけれども、そういういい仕組みをこれから考えていかなければいけない。

 しかし、何かあれば、きちんと一円たりとも説明できるようにしていなければいけないというのは私の大事なところじゃないかと思っておりますので、そういう中でどういう仕組みがいいのかということを今党の方でもお考えいただいている、与党の方でも協議をしていただいている、こういうことでありますので、今後、その具体的な方法について野党の方々とも御協議をいただきたい。そして、みんなが安心できるような、政治家が、いや、これは何かあるんじゃないかみたいなことでおちおちできないようなことでは情けない状況でございますので、そうならぬような仕組みをぜひつくっていただきたい、こう思っております。

細田委員 我が党も、歴史をひもとくと自慢できるようなことじゃないんですね。

 総理の父上のころに角福戦争なんというのがあって、片や大変な資金力を持って、そして歴代の総理を選ぶような力がある。私どもが初当選したころは、今の小沢さんが幹事長でしたね。そして、金丸さんとかみんなで大変な政治を動かす原動力となっていろいろなことを活動しておられて、口もきけないほどの大先輩。今は民主党の代表としていよいよ政権をとろうかというところまで、王手をかけたぞと思っておられる。

 しかし、我々が考えているのは、あの平成五年の政治資金改革、政治改革は、非常に前向きに何歩も進んだと思うんです。今は、上場企業で政治献金している人も五万円以下ですね、非公表の。そして、それ以上はしません。株主がいろいろなことで注文をつけるので、そういうことはありません。昔は、何百万だろうが一千万だろうが、持っていったという例は幾らでもあります。

 しかし、今は、政治資金、直接は五万円、それからパーティーは二十万円、そして、名実ともに入りの方は縮まった。そうして、私も今の前は経理局長をやっておりましたからよくわかっておりますが、経済界からの金は、各党とも同じでございますが、非常に透明な政治団体をもって一括してコントロールしているというふうに大改革を行ったわけです。

 そして、小選挙区制を導入すると同時に、今度は政党交付金の制度、いわゆる政党助成金ですけれども、三百億、これをきちっと使いなさいよということになっているわけです。

 それで、その三百億は、自民党も議員数に応じていただいておりますが、きっちりと、今一円単位でしっかりとこの証拠も集めて各支部ごとにそういうことをやっているわけです。野党の中でも、最初はみんなで配分していたようなところがありますが、だんだん厳しく、今しっかりとした領収書つきで管理しようとしているところも多いようでございますけれども、他方、この問題というのは、もう一つの大きな問題を提起するわけです。つまり、日本共産党は、こんな政府の金は要らない、それで政党交付金をもらっていませんね。それは一つの考え方だと思うんです。

 収入があるとかないとかということのほかに、政治、政党というのは、民主主義の原則からいって、例えば政府であっても、政府は常に中立かどうかわからない。すべてを明らかにして、これは幾ら使ったということを出してあらゆる活動を公表するということよりは、自分の政党なんだから、党員から党費を集めて、それをきちっとした政治活動に使う。選挙違反はもちろんやっちゃいけませんけれども、その他は自由である。これが、私は、政党の活動自由の大原則としてたまたまそういう具体的な例を挙げましたけれども、政党交付金をもらわない政党の考え方ではあるまいか、違っているかもしれませんが、それが基本にあると思います。

 非常に日本の経済も低迷しましたので、その他の党は皆政党交付金、助成金をもらっています。これは税金ですから、もとより、一銭一円に至るまでしっかり管理をしなきゃいけない。だから、私はそのことはまず第一に言わなきゃいけない。

 そして、それに加えて、では、民間からもらったお金とか党員の党費からもらうお金ですね、各党党員を抱えておられますから、そういう浄財についてどこまでやるか。

 一つは、おかしなことに巻き込まれるというか、悪いことをしてはいけないというのが従来からの流れですね。つまり、民間からお金を集めるにしても党員からお金を集めるにしても、何かきっかけがあって、お金はもらったけれども、対価を求められるというようなことがあってはならないということで公表しているわけです。

 ところが、そのときの考え方というのは、支出について、これは集めたものを使う、集めるところで使っているから、出すところは政党活動の自由の中で考えようということでこれまで来ている。これが基本の考え方です。しかし、大きな支出については、これはやはりどういうふうに使ったのかを明確にせよ。

 今、一銭一厘、一円の議論がありますが、そういった長い、政治資金をめぐる収入の問題、支出の問題、国家の関与の問題、そして政府が全部それを見て公表できるかどうかという問題は、政党活動の自由の問題に非常に大きくかかわってくる問題ですので、今、伊吹幹事長を中心に、そして、党改革本部長の武部さんを筆頭にまずは与党間の調整をしておりますが、なぜこの調整を今いろいろやっているのかということについて、時にテレビの御批判等もあって、もう何でもかんでも裸になりゃいいんだ、例えば党費で集めた金だって、全部一銭一厘支出を明らかにしたらいいじゃないかと。

 なぜなら、政治活動という意味では、自民党がどこかから献金を得て議員や党が使う金であるにせよ、あるいはまじめな小口の党員から集めた金であるにせよ、金の使用には変わりないんですから、同じ支出をとらえようとするならば、すべてを世の中に公開しろという議論はあり得るわけです。そういうふうに今世論の動向がどんどんそっちへ行っているんですね。

 しかし、ちょっと待てよということで、私は、すべてそのようにすることが、政治の自由な活動にとってどこまで意味があることで、どこまではやり過ぎで、政府の介入になるのか。

 例えば総務省に全部集めるというと、それは手数も大変だし、全部公表せよですから、何党のもとは政党交付金である金もこういうふうに公表しろとか、党費を集めて支出する、こういう金も、何とか支部ではこういう支出をしておるが、それは詳細を明らかにせよとか、だんだん、政治家の活動はすべて裸になれ、すべてを明らかにせよという議論に近い議論が行われているものだから、それをまじめに今与党間では検討しておる、そして、それは野党にももちろんぶつけます。

 野党は、それはもうすべて集めたお金は、支出のあらゆる面で、政治団体を経由して出すのでも一円単位で公にして、総務省に届け出て、総務省に資料公開を請求すればすべてがわかる。そして、それはまた労働組合とか、労働組合に限らない諸団体でも、政治活動が認められている団体は、全部それは、労働運動は別だ、政治活動の費用、政治活動に使われて、もし選挙などに使われているのなら、それも一銭一厘明らかにせよ、こういうようなことまでを包含する非常に大きな命題なんですね。

 したがいまして、私どもは、これまでの不祥事、これは反省しなきゃいけません。いろいろな意味で説明のつきにくいような答弁があって、この予算委員会でも大きな問題になった。

 マスコミで、民間の方を中心に、私のところは一円でも領収書を持っていくのにと。これはちょっと違うんですね。民間の方が一円の領収書をどんどんためて持っていくのは、これは経費である。私のプロダクションでは私の背広も経費として認めているんだ、だからこの支出は経費として認めてほしいというふうに、節税対策としても民間の会社はやっています。しかし、これは公表はされていません。公認会計士あるいは税務署が、よろしい、これは経費として認めましょうと言ったら終わりで、どこで背広を何着つくったとか、どこで料理を食べたとかということを公表する義務はない。しかし、税務署と公認会計士には言う義務があるというところを分けているんですね。

 しかし、政党の一部には、もちろんそれも、政治家たるものは公の存在なのであるから、すべて裸になって、全部、一銭一厘、集めたものから使ったものまで明らかにせよ、こういう論調が非常に強くなっている。

 ただ、私どもは、今、ちょっと待ってくれよ、それは政治の民主主義という観点から本当にいいことなんだろうか。もちろん証拠は出してもいいんですけれども、もう何でも情報公開で全部が外に出るような方策がいいのであろうかということで先ほどの総理大臣の答弁につながるんですけれども、今よりもはるかによくて、そして政治活動の自由も担保できるような法制度は何なのか、政党の自由を担保できるものは何なのかということを検討したいということで、今週中にも与党連携して一つの案をつくり、野党からも革新的な案が出てきておりますから、それと議論を闘わせることとしたいと思っているわけです。

 国民の皆様方は、なぜこれがいろいろな問題をはらむのかということについてお気づきでない方もおられますから、歴史観と、それから政党活動の自由、そして我々政治家の果たすべき役割をうまくミックスしたような案が必ずあるはずですから、それを今考えておるということを申し上げたいと思います。

 政治活動については以上とさせていただきます。

 さて、それでは二番目……(発言する者あり)先ほど総理に聞きましたからね。今のは、野党の皆さんと国民の皆さんに聞いていただいたと思っております。

 それから、財務大臣、プライマリーバランスが二〇一一年に回復するという見通しですね。基礎年金の二分の一国庫負担で二・五兆円も余計かかるとか、まだ山あり谷ありでしょう、大変ですけれどもね。

 しかし、バブルが崩壊しまして、平成になってからどのぐらい国と地方の借金がふえたかといえば、竹下、海部内閣のころ、その間にもちょっとおられましたけれども、そのころ二百六十兆円なんですよ、国と地方の長期債務の合計は。そして今年度末に七百七十三兆円、五百兆円以上、GDPにも匹敵する長期債務の増加を見てしまったんです。これは、バブル崩壊後、我々も挙げて、景気対策、失業対策、公共事業もやれ、いろいろな支出をしろということで次から次へ出してくる、その他の要素もありますけれども。それで七百七十三兆円になった。世界じゅうありません、GDP比一・四八倍。

 ところが、この七百七十兆円を三%これから消費税を上げようとするとどのぐらいかかるかというのは、財務大臣はお答えにならなくてもいいですが、百年かかります。三%消費税を上げると百年。それから、七百七十兆円の半分にするとしても五十年かかるんですね。半分にする、大体四百兆円にするだけで五十年かかるわけであります。

 そして、私が思いますのは、この長期の国と地方の債務をもう余り減らそうと思わない方がいいんじゃないかというのが論点でして、財務大臣にこれを聞くと、五月に私が財務大臣に聞いたら、いや、これから心配ですから、少しでも財政をよくするようなことを考えなきゃいけないと言われますが、もうプライマリーバランスが均衡するんですから、これ以上それを減らそうなどという、不届きとは言いませんが、不可能な考え方はやめたらどうか。

 まず財務大臣、何かありますか。

額賀国務大臣 今、細田委員から御指摘がありましたけれども、おっしゃるように八百兆円弱の長期債務を抱えておりまして、これはGDPの一・四八倍であります。

 最近、いろいろと借金を返すのに努力をしてきました。税収もふえた。フローの面では大分よくなってきました。一番悪い二〇〇三年か二年ごろは八%ぐらいフローではあったと思いますが、今は恐らく三%弱。この点はEUに入れる条件にもなりつつあるわけでございます。

 何しろ、債務残高の方は圧倒的に多いわけであります。これは、ちょっとでも日本の経済の成長の度合いの歯車が狂ったり、あるいはまた国家に対する信頼が薄らいだりしていきますと、これは、市場に対する、特に金利の問題に影響いたします。そういう意味では、なだらかに日本経済を再建していくためには、国家財政再建という旗もきっちりと掲げておかなければならない。これは、やはり国家国民の使命である。

 しかも、なおかつもう一つは、少子高齢化の中で、我々は使いっ放しで、後はほっぽり投げて次の世代の人たちに借金を残しておくという考え方は、日本人の矜持として我々は許すことができるのかどうかということがあります。

 それから、クリントン大統領は財政再建をするときにこういう言葉を言いましたよ。子供のクレジットで我々が買い物をしていいのか。これはやはり国民の皆さん方も、いろいろサービスはしてほしい、いろいろと整えてもらいたいと思うかもしれませんけれども、やはり、人様、子供たちのクレジットを使って自分たちがいい思いをするのがいいのかどうか、これはしっかりと考えていかなければならない問題である。

 したがって、私どもは、国家財政再建の目標を到達するために、第一目標として、二〇一一年にその基礎収支のバランスを達成しよう、プライマリーバランスを達成しようということでございます。

 これはわかりやすく言うと、一般家計でいえば、子供の教育費だとか、食料だとか、電気代だとか、交通費だとか、そういう生計費は給料の範囲内で行っていくべきである、住宅ローンとかそういう借金は別枠で考えていかなければなりませんよという考え方をまず到達しようじゃないかということであります。

 十九年度予算でいえば、これは、借金の利払いと元本払いでおっしゃるように二十数兆円払っているわけであります。それ以外でやはり自分たちの生計を、きちっと収入に合った形で我々は襟を正していこうということでございます。

 それで、プライマリーバランスをバランスしただけでは、これは債務残高を減らすことにはなりません。だから、プライマリーバランスを到達する、バランスをとるということは本当の目的ではないんだと思います。第一目標であって、本当は、債務残高にプラスにならないように、利払いも含めたその財政収支、それをとんとんにさせて債務残高を減らしていくということが財政の本当の目標であるというふうに思っております。

細田委員 それは、財務大臣としておっしゃることは大体予想はついておったんですが、私は一つ提案があるんですよ。

 これから心配なのは、単純な毎年のプライマリーバランスだけじゃないんですね。つまり、金利が変動して、物価も上がった、金利も上げようというときに、その金利負担がだんだん上がってくる可能性もある。その金利負担はプライマリーバランスの外にあるから、少し前広に増税などして、健全なものをとるためにより改善したい、こういう考え方が財務省の主流の考え方です。しかし、私はそうじゃないと思っているんです。

 先ほど最後に言われた金利負担の増、これは毎年出ます。プライマリーバランスといっても油断はならないんです。毎年毎年赤字が出てきて、それが累積して七百七十三兆だと思っていたら、八百兆になったり八百二十兆になったりする可能性もなきにしもあらずなんですよ。これからの景気次第です。そのときに、国民の皆さんにはっきりと言っていただいて、財務大臣が今言われたのはかなりはっきりしていましたけれども、七百七十三兆は減らしたい、しかしもっと心配なのは、ほかがふえてくることだ。そして、金利負担に耐えかねて、またそれが気がついてみたらふえる。

 プライマリーバランスをゼロにしたところでふえるということがあり得るというので、経済協力基金というのが昔あって、ODAのお金、今でもそういう仕組みですけれども、金利差があって、赤字が結果として出ることがある。まあ、結果として黒字が出ることもあるんです。そして、それを二年後ぐらいに補正していくんですね。

 だから、一つの考え方は、長期の債務というものではなくて、毎年のプライマリーバランスがこれから変化していく、それが金利負担を入れると大きくなる可能性がある、それをいわば自動的に調整できるようなメカニズムを考えた方がいいと私は思うんです。そうしないと、やれ増税しない、やれ増税することになったとかという余計な議論をせずに、ただ、目標は、七百七十三兆円は大幅に改善しない、見通しとしては。しかし、それ以上赤字が積み上がらないような具体策を今や考えなきゃいけない。

 この間は大田大臣にも言ってみました、経済財政諮問会議でも考えてくれと。経済の見通し、骨太方針をつくるときに、何かそういうことに近いことを、GDP比でふやさないと言いましたという答えがよく返ってくるんですけれども、それだけじゃだめなんです。やはり、絶対額をふやさないということをあらかじめ宣言して、そのための方策はとるという宣言をしたらいいと思いますけれども、財務大臣は今多分それをお答えするだけのまだあれがないと思いますので、そういう注文だけつけておきます。

 それはなかなかいい案なんですよ、皆さんも。そうすると、与党、野党でこういうことは約束すべきなんですよ。それはまあまあいいですよ。これがプライマリーバランスの議論であります。

 それで、中小企業対策が余りにも、これは質問じゃないですから、中小企業対策なんか年間千五、六百億円しかないじゃないかとよく与党も野党も文句言うんですけれども、実は違うんです。バブル崩壊したときに三十兆の保証枠を積みましたね。一割事故が起こるだろうと言いましたね。その結果、結局どれぐらい出たかというと、二兆数千億貸し倒れが生じて、二兆数千億はまさに一般会計から補てんされているんですよ、補正予算その他で。だから、中小企業予算は千六百億なんじゃなくて、この数年がかりで二兆数千億出しているんです。

 このぐらい中小企業のためを考えたんだけれども、中小企業に入るんじゃなくて、倒産したところに、金融機関に行っちゃうものだから何か効果がないように見えるけれども、そうじゃないんです。九〇%以上の会社は倒れずに済んで今ようやく息をつけるようになったんだから、これは非常に大きな政策なんです。この金も、二・何兆もさっきの累積赤字の中にもう組み込まれているんですね。

 だから、中小企業対策というのは、そういった意味でも非常に大事で、かつ大規模にやってきておりますので、経済産業大臣、ぜひ心してやっていただきたいと思います。

 それで、次に、私の今言いたい貧乏県の問題があります。

 貧乏県は本当に貧乏になってしまいまして、財政力指数でいうと、びりが我が島根県、それから高知県、鳥取県、秋田県、長崎県、宮崎県、沖縄県、鹿児島県、総務大臣の岩手県、青森県、そしてあとは山形、和歌山、佐賀、大分と、この十四県が財政力指数〇・三以下なんです。それで、政党別に見ますと、この貧乏県の議席というのは、衆議院でいうと、我が自由民主党が三十七議席、野党が九議席で、圧倒的に実は我々自民党の基盤なんです。ところが、地方はやはり非常に今苦しんでいるんです。

 なぜ苦しんでいるかということをまず言うと、非常な合理化をさせました。我が島根県、これは岩手県も同じだと思うので総務大臣も答えてほしいんですが、島根県でどういうことをやったかというと、平成十年の予算は七千三百億、これが今、十九年度で三〇%減の五千百億です。給料カットは、知事、議長は二〇%または二五%にします。一般職の給与が六%減、副知事、部長、課長、それぞれ一五、八、八%減。定員は、五千九十五人いたのを現在四千五百八十四人、そしてそれを二十四年度には四千九十五人にして、二十八年には三千五百九十五人にする。五千人を三千六百人にする、七二%にする合理化を打ち出しているわけです。

 他方、公共事業は、三千四百億以上あった平成十年に比べて、十九年度は千百三十四億円。七〇%減であります、平成十年から比べまして。失礼、七〇%減は地方債発行です。千五百十五億から四百四十四億で七〇%減。公共事業は三千四百億から千百億ですから、三分の一に減っておるわけです。そして、一般施策経費も平成十六年から十八年まで五〇%減。そして、地方法人税格差というのは、東京と最小の長崎を割り算すると六・五倍。

 つまり、私が言いたいのは、地方が大盤振る舞いで金をどんどん使って、給料も高くて、地方を改革しなきゃならないという命題があって市町村合併もしてきた。その努力をしただけじゃなくて、各都道府県は、大きな都道府県でも同じように努力していますよ。この努力の部分というのは評価しなくちゃいけない。

 増田総務大臣、この努力の点をまずいろいろお考えを言ってください、岩手県知事としての経験を入れて。

増田国務大臣 ただいま委員の方から、平成十年そして十九年についての島根県の、いわゆる行革努力も含めて状況のお話がございましたのですが、ちょうど私もことしの四月いっぱいまで岩手の知事をしておりました。やはり島根と同じように行革にも取り組みましたし、それから、それにしても財政が大変厳しいということを実感しておりました。全く同じような状況であるなということで今お話をお聞きしておりました。

 地方の疲弊というのは大変今深刻だと思っておりますが、その中で、やはり財政規律も一方では高める必要もありますし、それからさまざまな行政改革を行う、これも、国民の皆様方に国民的な理解という意味では必ず必要なことであるというふうに思いますが、今特に深刻だなと思いますのは、委員からお話がございました財政力指数が〇・三以下のところ、財政窮乏県ですね、こういったところが特に歳出を削減せざるを得ないということです。それよりもまだ少し力のあると言ったら語弊があるかもしれませんが、財政力指数の大きなところは、まだ数字的にもそれほど大きな削減に至っていない。

 これは恐らく、財政力の窮乏県といいますのは、公共事業のウエートが非常に高いということがあって、公共事業は、一方で今いろいろな状況で削減せざるを得ない状況がございます。それが大きくきいてきているんだろうというふうに思います。

 マクロでいいますと、ピーク時、平成十一年度から平成十七年までの地方団体の一般歳出全体でいいますと、七十九・一兆が平成十一年度の数字ですが、それが平成十七年度には六十七・六兆と、実数で十一・五兆、これは数字でいいますと一四・六%削減、こういうのが全体の数字でございますが、その中で、委員の島根それから私の岩手など十四県ですね、財政力指数〇・三以下の県、ここでは二二・三%削減をしている。平均的には一四・六%の中で二二・三%削減せざるを得ない。

 これは市町村も同じような状況でございまして、市町村も、全市町村合計でいいますと、削減率でいいますと、この十一年から十七年度の間に一〇・五%の削減なんですが、市町村では、一番小さな規模、五千人規模の町村の平均で数字を見てみますと、これは二・五倍近く、二四・九%もこの町村では財政規模を削減せざるを得ないということでございます。これは、今委員からお話がございましたとおり、特に投資的経費の削減というのが大きくきいてきている、このようなことがございます。

 景気対策でずっと平成四年、五年ごろから十年近く景気対策を随分打ってきましたが、ちょうどそのときに地方債を発行した、開始の公債費も非常に財政を圧迫している。しかし、一方で地域の皆さん方の財政需要にはおこたえをしなければいけないという中で結局どうしているかといえば、それは、定員削減を行ったり給与水準の引き下げ、これはもう今地方団体どこでも給与を下げるというのは当たり前のことでございます。そんなことで大きく削減をしているということでございます。

 こうした具体的な数値、もちろん、こうしたことを行っているのは国民から見れば当然のことだろうというお話があるかもしれませんが、特にやはり深刻なのは、財政が非常に切り詰められて、規模が小さいところでぎりぎりの財政運営をしているところがより削減せざるを得ない状況になっている。しかも、これは本来は交付税で補てんをしていくようなことでしょうけれども、そちらも今非常に数字が小さくなっているということがございます。

 私ども、いずれにしても、地方の行革努力、地方が野方図にいろいろお金を使っている、こういうことが国民の中にもし誤解があるとすれば、これは払拭しなければいけませんので、こうした地方の行革努力の成果というものは、今後もきちんと数字にまとめて公表していきたい、そして御理解を賜りたい、このように考えております。

細田委員 総務省に行革努力と聞くと、今までは、ラスパイレス指数が大分下がりましたとか、三千何百の市町村が千八百幾つになりましたとか、そういうのしか言わないんですよ。

 ところが実際は、今例示でも申しましたし、トータルの数字の御紹介があったように、本当にこの小泉改革以降の地方の行政改革、実質的にはお金が絞られるから合理化せざるを得ないんだけれども、そういったことで、今やもうぞうきんを絞るだけ絞って、きれいなところまで来ている。しかも貧乏県は、逆に、減った公共事業のこれがダブルパンチになって、自己資金がないからさらに減らさなきゃならないとか、社会保障の方は高齢化しているところが多いのでどうしても出さなきゃいけない、そういうダブルパンチがありまして困っている。行革である程度進んだけれども、もうタオルを投げて、タオルを投げてというのは何かというと、プロレスやボクシングみたいに、まあ待て、もうこれ以上けんかしちゃいかぬ、勝負あった、行革は達成したぞという気持ちで地方に対する配慮をしないといけないと思うんですね。

 さっき私出る前に、何か記者さんたちが十五人ぐらい群がってというか、たくさん来て、どういう質問をするんですかと言うから、あなたは何人が田舎出の人だと言ったら、十数人のうち七人ぐらいが地方の出身、親がみんな地方にいるんですよ。親が地方にいて、大変だろう。そうですね。あなたは勤めを終えたら国に帰るつもりか。いや、ありません。みんなそうなんですよ。地方は、どんどん後継ぎがいなくなって大変なことになっている。しかも、田舎は公共事業依存型が多いですから、つまり、ほかに産業が余りないわけですよ。したがいまして、非常な厳しい状態になっている。

 先ほど言われました公的資本形成という公共事業も、昭和六十年度には二十一兆円でした。これは中曽根内閣の後期ですね、二十一兆円。それが平成七年度、これは、バブルが崩壊し、公共事業を補正でどんどこつけなきゃいけないというときに四十二兆円に膨らみました。倍増です。その四十二兆円に膨らんだ公的固定資本形成は、平成十九年度見込みで二十・七兆円。既に、昭和六十年代、中曽根さんの時代まで戻ってしまった。それ以下に割り込んでしまっている。

 もちろん、その間、IT産業だとか鉄鋼業だとか素材産業、自動車産業、いいところがあるところは耐えているわけです。あるいは、好景気、イザナギ景気以来であるというふうなことを言っているし、福田総理も自分の選挙区は田舎であると御認識かもしれませんが、全国でいうと中より上なんです。というのは、都会が近いということもありまして、関東一圏は、東北、山陰、四国、九州、窮乏県には北海道も本当は入れていいと思うんだけれども、そういう厳しいところから見ると、まだ就職の機会があり、農村が崩壊していない、そういうことなんですね。

 もう一度、総務大臣、この間、島根の田舎に行って農村崩壊の危機、過疎地域その他の意見交換をしてこられたけれども、思いをちょっと語ってください。

増田国務大臣 今、委員からお話ございましたとおり、九月の末、二十九日でございましたが、島根の方にお邪魔をいたしまして、地域のさまざまな皆様方と率直な意見交換をしてまいりました。岩手でも、限界集落、過疎地域の問題、いろいろ苦労いたしましたけれども、島根も場合によっては岩手以上だなという思いもございましたし、本当に御苦労されておられるなということでございました。

 しかし、地域の皆さん方が、あるいは県、市町村が、それでは国の財政支援だけを待っておられるのかといえば、決してそうではなくて、いろいろな新しい取り組みをぜひ行っていきたいという意見も随分多く寄せられました。

 例えば、医師不足が大変島根は深刻でございます。隠岐の病院長さんが来られましたけれども、院長さんは外科医で、外科手術をするときにどうしても麻酔医が足りないというときに、一生懸命外科医の皆さん方で麻酔の勉強をされて、そして、当面の麻酔については自分たちで対応できるようなそんなことも自分たちの自助努力でしておられて、大変頭の下がる思いでございました。

 それからまた、そうした限界集落的なところを支えていくために、外部のNPOの皆さん方が入ってそうした地域を支えておられる、そうした人たちと組んでいろいろやっておられるという姿を見せていただきました。ただ、そのNPOの皆さん方も地域の皆さん方も、ずっとというわけではないけれども、そうした取り組みが定着するまでの立ち上がり、本当にソフト的な部分について多少公的な支援が得られないものだろうかどうか、こんなお話もございました。

 それから、あわせて、アクセス道路、これはもう弱者の皆さん方にとっても医療なりなんなりの本当に支えになるわけですが、そうしたところの交通の足、道路整備もそうでございまして、その後のバスの運行等も非常に大事だと思いました。

 それから、企業誘致をしようにも情報インフラが整っていないので、せっかく企業にお声をかけても企業が目を向けてくれないといったようなこともございました。

 ですから、施策をばらまきに決してするわけではございませんけれども、何が地域にとりまして重要かということをよく見きわめた上でやはり支えていく必要がある。そしてそれは、何も今までの人口増、右肩上がりの時代を前提にした仕組みというよりは、むしろ、これからの大きな社会構造の変化というものをよく直視した上で、場合によっては省庁横断的な中山間地域対策といったようなものを今後新たに生み出していく必要があるのではないか、そんなことを考えたところでございまして、きょう夕方、第一回目の統合本部等を立ち上げるわけでございますが、その中でよく議論をさせていただきたいと思っております。

 今後も、こうした地方に足を運んで地域の皆様方の御意見をよくお聞きした上で、それぞれの地域に合った処方せんづくりに努めていきたいと思っております。

細田委員 野党席から、どうも自分の選挙運動で行っているんじゃないかという小さな声が聞こえたけれども、そうじゃないんですよ。

 例えば、障害者自立支援でも、あるいは地方への税源移譲にしても、あるいは福祉、医療、年金、そういったいろいろな問題にしても、よかれと思ってやったことでも、どうも影になった部分が幾つも出てくる。そうすると、国会の議論でそれを是正していく。それは与党だってどんどん是正すべきですよ。この結果、思わざるひずみがあった、あるいは、こうならなきゃいいがと思ったけれども、そういうことが現に起こっているというときにはやらなきゃいけないんです。

 それと同じように、地方も、合理化はさっき言ったようにどんどん進めているんですが、稼ぎに追いつく貧乏なしなんですよ。そしてこれは、手当てをしないと地域の大きな問題になり、崩落につながる。少なくとも十四から二十の県においてはそうなっているから。都会選出の人は全然そんなことわからないんですよ。我が党の人でも非常によくわからない、住んでいないんだから。

 でも、そこに住んで、生涯ここで過ごそうとしている人が一生懸命頑張っているということを手を差し伸べながら考えていかなきゃならないということで、例えば道路でも、必要なものはつくる。最優先で高速道路をつくってくれと言うのは、先ほどの中山議員の宮崎県、それから鳥取県、島根県、鳥取県は石破さんの鳥取県、島根県は私の島根県と、山形県なんですね。この四県が施策の一番大事なのは高速道路だと言っているのは、それがあれば何とか経済的に発展するのに、それができないと言って高速道路が第一順位になっているんですけれども、そういうところに温かく手を差し伸べる政治でなければならない。

 我々も、余りにも赤字になったものだから、歳出を削減する方向でばかり一生懸命やってきました。それは私は、効果があったし必要なことであったと思いますよ。昔のままでは、特別会計と同じように、地方が今度はすき焼きを食べることになってしまってはいけないので、もう今や地方もおかゆを食べていますから、そういう実態を確認したいということで申し上げたわけです。

 それで、離島問題について国土交通大臣に。

 余りにも油の値段が上がり、離島航路はもう全部赤字になっちゃった。そして地方住民が、物流でも生活費でも、もう高くてしようがない。これは、離島航路とか航空路というのは道路なんですよ。私はそう思っている。そうでしょう。国道だって、現に佐渡だとか隠岐島とか五島列島とか、国道が敷設されているんですよ、本土から。

 だから、道路だと思って、道路財源ぐらい離島の航路に補助金を考えてください。どうですか。

冬柴国務大臣 二つの問題があると思います。

 我が国には六千八百四十七の離島がありますがゆえに、それを基点として領域及び排他的経済水域が定められます。四百四十七万平方キロの海域というのは、世界第六番目に広い海域を保有するわけでございまして、国土の、領土の十二倍に相当します。私は、それを守ってくださったのは、その離島に不便な中で今まで暮らしてこられたそのような多くの同胞あったがゆえだと思います。したがって、離島振興は非常に大事だと私は思っております。

 今回、ことしの七月の二十日に施行されました海洋基本法の中にも、離島の保全、これは重大な政策であるというふうなことがうたわれておりまして、私も初代の海洋政策担当大臣を拝命いたしておりますので、離島に対して振興を進めなければならないと思っております。これが一つでございます。

 ただ、自主的、自立的にすごい成果を上げている島があるということも御紹介申し上げたいんです。知多半島、愛知県ですけれども、先に日間賀島というところがあります。周囲が五・五キロ、狭い島で、二千百人の住民がおります。そこへ昨年、観光客が二十七万五千人来ているんですよ。それは、そこでとれるフグそれからタコというものを自慢の料理にされて、そして、島民がそのフグの難しいあの調理師免許をお取りになって提供しているがゆえに、大変安くて、そして新鮮でおいしいフグ料理があそこへ行けば食べられるということで、二十七万五千人が行っているんです。

 私は、そのように頑張るそういうようなところを、国土交通省は今後もハード、ソフト両面において、頑張っていただけるように応援していかなければならないと思います。一つ。

 それからもう一つは、道路財源に離島云々ということになりますと、道路財源は、御案内のように、自動車を保有し、そしてこれを使用する人が払っているものでございますから、そこへカーフェリーか何かで自動車で渡る人があればちょっと考えられるかなと思いますけれども、飛行機や船にこの道路財源を費やすということは、納税者がちょっと、問題ではないかと私は思いますが、また、こういう提案でございますので、前向きに考えます。

細田委員 離島問題というのは、道路財源は旧建設省道路局で、離島は離島でまた違うとか、いろいろ役所の内部もあるようですから、もしできないのなら、海に道路をつくってくださいということを申し上げておきたいと思います。百キロ、二百キロで届きますので、海に道路を建設していただきたいと思います。

 それから、国土交通大臣には、観光立国として観光庁、これはぜひ頑張ってほしいということと、幹線道路網整備は、先ほど言いましたように、地元で優先するものが高速道路だというところには、ほかの財源を多少差配してもそこの希望をかなえてやる。高速道路がないさっきの四県からの強い要望にこたえるということは、経済の発展のためにも大事だと思っております。

 それから、過疎法の問題は、さっき総務大臣も答弁の中で言われたので、過疎法については、我々も議員立法その他で大いに頑張ってまいりますけれども、ぜひよろしく御検討のほどを願いたいと思います。

 農林水産業等大変な問題がありますが、先ほど来議論が出ておりましたので、自立できる農林水産業をやってほしいということ。

 特に我が島根県では、集落営農で百五十ヘクタールが一単位というところが出ているんですよ、今。安来市というところでは百五十ヘクタールが一単位。ただし、減反を百ヘクタールしなきゃいけない。二百五十ヘクタールで百ヘクタール減反、それから百五十というところと百と五十、そういうふうな集落営農をやっているんですが、これは、いかにほかの産業がなかなかないから厳しいかということと、高齢化して、自分の田んぼはどうぞ使ってください、所有権までは渡しませんけれども、どうぞこれでやってください、我々はもうやり切れませんからということまで言って集約しているんです。ちょっと産業のあるところは、まだまだ第二種兼業農家がやれるんですよ。

 私、この間、福井県のある市に行って、我々のところは二百五十町歩の集落営農が出たぞ、大変なんだと言ったら、ぽかんとしている。それはなぜぽかんとするかというと、第二種兼業のお嫁さんや奥さんや御主人が働く場があるんですよ。あると、従来どおりの一町歩でもいいし、一ヘクタールでもいいし、五ヘクタール、十ヘクタールあれば若干合理化して米づくりができるとか、そうなんですけれども、田舎は、もうそれができないからといって今どんどんやる。その中でも中山間地はもっと大変になっているということを御理解いただきたいと思います。

 それから、経済産業大臣に柏崎刈羽原子力発電所の関係で、私はこの間、被害状況も見てまいりました。与党も野党も現地を見ていますけれども、柏崎刈羽原子力発電所というのは世界最大の原子力発電所です。八百十数万キロワットというのは、もちろん敦賀周辺には、発電所は別でも、集積すればもっと大きいですけれども、この柏崎刈羽は全体一つの発電所としては最大。全部とまっているわけです。もちろん、地震があって被害もあったから今入念点検をしていますけれども、風評被害その他、なかなか運転できないとか、志賀原子力という石川県もそうですが、何となくこの対応がおくれがちなんですよ。

 私は、そのことについてしっかりと日本全体の環境問題を考えたときに、火力発電所でどんどんタイヤをたけばCO2がその分だけたくさん出る、これはもう明らかでございますので、早く、地震はあったけれども大丈夫、もうIAEAも大丈夫と言っていますから、これを点検して操業を逐次再開できるようにしてほしいのと、柏崎市の地元等からは、電源立地の交付金で早く災害復旧を求めるという声もありますので、甘利大臣から御答弁願います。

甘利国務大臣 最大級の電源でありますし、首都圏に供給をしている大事な供給地点でありますから、一刻も早く復旧させなければならないと思っておりますが、安全確認が大前提でございます。これをしっかり丁寧に今やっているところでございまして、もう間もなく炉の内部の点検に入るわけであります。

 IAEAからは、第一次審査の結果、基本的な安全は確認をされたということでありますが、さらに詳細な点検を行っているところであります。安全が確認されましたら、学識経験者等の意見も踏まえて復旧をさせたいというふうに思っております。

 それから、交付金の話ですね。今、全部がとまって、地元がどういう状況かといいますと、交付金自身は、安全点検のための停止中は交付するわけでありますからこれは問題がございませんが、核燃料税とか、それから、操業を停止しているために法人住民税等が入らない、こういう金額が年間五、六億マイナスになるわけであります。こういうさなかに震災復興、地域振興の要望が上がっているわけであります。

 具体的には、公共施設等の復旧支援について何とかならぬかというお話があります。これは、電源立地交付金の制度趣旨を踏まえてどういう対応ができるか真剣に議論しているわけでありますが、財務大臣にもよろしくおっしゃっていただければと思います。

細田委員 地方の財源を是正するためには、先ほど来も出ていますような、例えば法人二税というものを考え直すとか、交付税の配分のやり方を考え直すとかいう案があるわけです。

 例えば、本社の機構は東京に集中していますので、法人二税、法人住民税と法人事業税というのは東京に過大に集中するわけですね。

 例えば、ビールは全員同じように飲むんですけれども、しかし、サントリーだけが本社が大阪で、キリン、サッポロ、アサヒは東京なんですね。それから自動車会社は、ホンダ、富士、三菱、日野、日産、いすゞは東京が本社ですが、トヨタが愛知、スズキが静岡、マツダは広島、ダイハツは大阪というふうになっているんです。やはり、トヨタのおかげで財政はどうにか黒字になっているのが愛知県、ほかは東京都のひとり勝ちですよ。一兆四千億円のプラス、過剰になって、これをどういうふうに平準化するか。同じようにビールを飲んでいるわけですから。それから、自動車は、先ほども中山議員の発言がありましたけれども、地方ほど何台も持っているんですよ、車は。軽自動車一台、小型二台とか。家族でそれで通勤をして、仕事で必要なんですから。ガソリン代も払っている。しかし、それは本社に利益が計上されて法人二税などが払われているので、この辺の修正といいますか、税金上の調整をしてもらいたい。

 東京都は、基準財政需要が三・一兆なんですけれども、超過財源一・六兆、留保財源一・五兆と、倍以上の超過、留保財源があるんです。これに対して島根県は、基準財政需要が二千三百八十五億ですが、地方交付税が千八百二十一億円、そして、留保財源は百四十億円しかないんです。これだけの格差というのはやはり容認できない、地方の住民から見れば。

 東京が悪いとか、鳩山法務大臣もおられますけれども、そういうことで言っているんじゃないんです。余りにも……(発言する者あり)今は九州、失礼しました。これはお兄さんの方でした……(発言する者あり)お兄さんは北海道だ、失礼しました。そう、北海道でしたね。では、東京の人をちょっと探しましょう。

 東京の人は当選者が多いんですけれども、我が自民党にも多いんです。しかし、やはり東京が少し自制をしてもらわなきゃいけない。ふるさと納税ぐらいならいいだろうなんて言っているようですけれども、そんなものじゃ済まないんですよ、それは。ふるさと納税で納税する地方出身者というのは微々たるもので、そんな六億円の結婚式を挙げるような大金持ちはほとんどいないんですから。

 したがって、是正というのはどうしても必要であるということを申し上げまして、時間が参りましたので以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて谷垣君、中谷君、中山君、細田君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 参議院選挙の結果は、我が公明党にとりましても大変厳しいものでございました。その反省から、立党の原点であります、一、清潔、二、生活、そして三、平和、この立党の原点に立ち返り、これまで決してこれをないがしろにしてきたわけではございませんけれども、これまで以上に頑張っていこう、このように決意をいたしているところでございます。

 連立政権協議におきましては、この三点を特に強調させていただきました。そして、我々の考え方が反映した、このように判断し、十五項目にわたる政権合意となったわけでございます。

 その一番の清潔ということに関しましては、項目の中に、政治資金については、一円以上のすべての支出に領収書添付を義務づけるというところまで進歩いたしました。

 また、二番目の生活ということにつきましては、その政権合意の前文に次のような表現が入りました。「構造改革路線は確固として継続させなければならないが、改革を急ぐ余り、そこから取り残された人たちや地域、弱者に対するセーフティネットが十分でなかったことを率直に反省し、負担増・格差の緩和など国民生活に重きを置いた方向の政策を断行することが必要と考える。」このような表現になり、また、総理の所信表明演説では「ぬくもりのある政治」という表現になっております。

 そして、三番目の平和ということにつきましては、「日米同盟と国連中心主義を踏まえ、積極的な「アジア重視の外交」を展開する。」このような政権合意となりました。

 この政権合意、福田内閣の国民生活に重きを置いたぬくもりのある政治、またアジア重視の外交など、ある意味で、これまでの路線の修正もしくは転換とも考えられます。

 まず最初に、総理に、これまでの路線の評価と、そして内政、外交における政治の基本的な姿勢についてお伺いをいたします。

福田内閣総理大臣 今までの政策実行方向とこれからのそれがどういうような違いがあるのかというような御質問だったと思います。

 基本的な考え方は、今先生が御党のお考えを述べられましたけれども、私どもも、できる限りそういうような方向を目指すということについては同じでございます。

 私ども、前政権また前々政権において改革を進めてきたということ、これは、やはりその改革の必要性がある。

 それはなぜかと申しますと、内外の情勢が極めて速いスピードでもって変化している、そういうものに対応していかなければいけない。そして、反面、財政赤字を抱えているということで、対応するにしても、その財源を常に求めていかなければいけない。しかし、無制限にあるというわけでない。その限られた中でもって、どうやって有効に財源を活用していくか。このことに尽きるんだと思いますけれども、そういう意味で、今までの仕組みとか制度、そういうものを変えていかなければいけないという必要性もある。

 そしてもう一つは、日本の社会が人口減少、そして、人口の中に占めるウエートは高齢者が相当ふえてくる、こういうような状況がございますので、そういう状況を踏まえてどうしていくのか。

 プラス、環境の問題あり、資源の制約もあるかもしれぬといったようなことももろもろ考えて、そして、改革をしていくということは、そういうような状況を考えた上でやらざるを得ない、そういうふうな考え方に基づいておるわけでございます。

 今現在、その状況というのは変わっていません。これからまさにそういう状況がもっと強くなるかもしれないという状況の中で、我々、改革、改革と言いますと、何か革命みたいに受け取られてしまうんですけれども、物事を変えていかないと対応できないのではなかろうか、こういうふうな危惧を持っているから改革を積極的に進める。

 ただ、改革を進めるというのは、結局は、国民の利益、国家の利益、国民の幸せ、そして国家の安泰といったようなことがございますから、そのことができなかったらば、これは改革はうまくいっていないというように考えざるを得ないわけであります。

 そういうことを、うまく調和のとれた、バランスのとれた形で仕上げることができるかということが我々が常々模索をしているところでございまして、我々、そういうような、将来のあるべき姿をきちんと見据えた上で改革は続行していく。

 しかし、そのことによって生じた問題、そしてまた、改革によるものでない要因もあると思います。内外情勢、非常に速い変化がありますから、その中で自然と生じてくる問題もあるかもしれない。それから、国民の志向の問題とかいろいろな要素があると思いますので、そういうことはある一定期間を過ぎると顕在化してくるということもありますから、また、改革のひずみといったものもないわけではないんですね。先ほど来そういうふうな御指摘もありまして、そのことはきちんと把握した上でもって対応していく。

 いろいろな要素はあると思いますけれども、やはり、そういうものを常々見直ししながらよりよい制度にしていく、仕組みにしていくということが我々に求められておる、そういうことを目指してやっていきたい、こう思っております。

 それから、外交については、これは基本的に変わっているわけではありません。考え方の根底にあるものは同じでございます。

 ただ、あえて申し上げるならば、日米関係は、これはあと一年もすると政権交代があるかもしれないということの状況の中で、今から何を考えたらいいのかということもございます。日米関係の安定強化というのは、これは何にも増して大事なことである。そういう中から、やはりアジア外交というものも考えていくことはできるのではないかというように思います。

 アジア外交も極めて大事でございまして、この関係を無視して日米関係は強化されると私は思っていません。アジア関係が安定しているということで日米関係もさらに強化されるというように私は思っておりますので、両方をにらみながら、バランスをとりながらやっていくのが日本のこれからの外交だ、私は、それを目指していきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 構造改革の部分でいえば、構造改革は、長い目で見れば国民生活を守るためでございますけれども、これまで、どちらかといえば、マクロな視点で、全体しか見なかった。しかし、その中で、お一人お一人の、ミクロなところにもしっかりと光を当てていく、そういう構造改革を行っていく、こういうことだと思います。

 それでは、先ほど言いました三つの点、一つ一つの各論に入っていきたいと思います。

 私たち公明党が最も大切にしている三つ、その第一は清潔でございます。政治と金の問題についてお伺いをいたします。

 これは読売新聞の世論調査ですが、福田内閣に優先して取り組んでほしいもの、年金が七一%、そして二番目が政治と金でございまして四九%、五〇%に近い数字になっております。この政治と金の問題について、ぜひ福田内閣で、国民が納得するような、そして政治の信頼を回復するような改革を行ってほしいという強い思いだと私は思います。

 私は、そういう意味で、けさほどからの自民党の皆様の政治と金に関するお話を聞いていて、そういう国民の声にこたえられるのか、背水の陣とおっしゃいますけれども、これでは後ろの水に落ちてしまう、このような危機感を抱いております。

 やはり、今、総理、民間と同じようにとおっしゃいますけれども、ある意味では、政治の信頼を回復して、これからいろいろな諸課題を断行していかなくてはいけない。そのためには政治の信頼が必要だ。そのためには、ある意味で民間以上のことをしなくてはいけない。今、その決断のときではないかと思います。

 私たち、今回の政権合意で、一円以上のすべての支出に領収書添付を義務づける、これは大きな前進でございました。本当に自民党の皆さんに大きな決断をしていただいたと思います。あと一歩でございます。全面公開、私はこれが国民が求めている声だと思いますけれども、総理のお考えをお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 政治家にとって清潔さが求められるということは、これはそのとおりだと思います。清潔であればすべていいんだというわけにはやはりいきませんね。ですから、それは、それだけで判断してもらっては困るということをまず申し上げます。

 それから、一円以上の領収書添付、要するにすべての支出に領収書が必要だ、そういうように考えてよろしいわけですね。すべての支出に領収書、もしくは、しかるべき説明がきちんとできるようにしておくということですね。これはそういうふうにしたらよろしいかと思います。私も、そういうことについて、それをとめる理由はないと思います。

 ただ、一つ、あえて申し上げるならば、それを公開するかどうか、すべて、全部が全部公開するかどうかということについては、私はちょっと心配も実はしております。

 と申しますのは、まず、政治活動の自由がそれで保障されるかどうかということがございます。やはり政治活動というのは、自由な行動というのは、これはある程度認めていただかないと政治活動がなかなかできなくなってしまう。政治活動ができないということになりますと、その部分は結局どうなってしまうか。報告しないということもあるんですね。報告しないためには、その資金が要ります。その資金をどうやって調達するか。結局、ほかに調達する方法がなければ、それは自分のポケットマネーで調達する、こういうことになりますね。もしくは、お金持ちの場合には、その持てる資力でもって調達することができる。要するに、お金持ちであるかないかによって大分状況も変わってくるといったようなことになります。

 自分の資金で調達するというようなことになりますと、それでもって本当に自由な政治活動というふうに言えるかどうかというふうな問題もあるんじゃないかと思いますので、その辺、ちょっとよくお考えいただきたいというふうに思っております。

 政治活動は、本来、自由でなければいけない。ですから、そういう中で、すべて活動資金を説明できるということであるならば、その自由をやはり認めていただくという必要性もあるんじゃないかと思っております。これは工夫が必要だと思います。また、その工夫について、私どもとして案は持っておりまして、御相談させていただいておると思いますけれども、ぜひよろしくお願いをしたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 政治の自由との関係ですけれども、ここは、私は、知恵の出しどころ、工夫があると思います。

 例えば、喫茶店に行っていろいろな生の声を聞いた、その、だれと会ったかというようなこと、また、ある意味では、その喫茶店がどこにあったかということも、もし政治の秘密にかかわるのであれば、それは消して出すということも可能だと思いますが、基本的に、喫茶店でお金を使ったというふうなことは、私は、公開してもいいのではないかと思います。

 いずれにしましても、この問題は、政党、すべての政治家にかかわるルールの問題ですので、政党間協議でしっかりと協議をしていきたいと思いますし、私たち公明党も主張していきたい、このように思っております。

 次に、二番目の平和の問題についてお伺いをさせていただきます。

 安倍前総理のもと、首相の私的な諮問機関として集団的自衛権についての研究会が設けられておりました。公明党は、集団的自衛権の行使については、これは保有をするけれども、憲法の制約上、これを行使することはできないというのが基本的な政府の考え方であり、その政府の解釈は今後とも堅持すべきだ、このように主張してまいりましたけれども、この集団的自衛権についての福田総理のお考えをお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 集団的自衛権につきましては、政府は、従来から、集団的自衛権の行使は憲法上許されないというような解釈をいたしておりまして、今現在もそのとおりでございます。

 そこで、イラク特措法、テロ特措法とかいうような、そういう新しい任務が生じたときに、それを憲法との関係でどういうように考えるかといったようなことでもってこの集団的自衛権は議論されてきているわけですね。ですから、その辺のことについて、我々としては、どこまで今の憲法の解釈上許される国際活動なのかということについてはこれからも十分議論をしていく必要があると思っております。ただ、その扱いについては十分に慎重でなければいけないというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 今の御答弁は、集団的自衛権に関しての政府解釈は今後も堅持していくということでございまして、その点、評価をするものでございます。

 次に、平和の二番目のテーマの、インド洋上での海上自衛隊の給油、給水活動についてお伺いをいたします。

 パネルを用意させていただきました。

 九・一一テロは、日本人二十四名の犠牲を含むものでございました。そして、日本もテロの標的となっております。オサマ・ビンラディンの声明等に明らかでございます。

 そして、二〇〇四年四月二十四日には、日本の大型タンカーTAKASUZUが自爆テロに襲われそうになりました。大きな爆発がございましたけれども、軽微な損傷で済みましたが、その阻止のためにアメリカの方が三人お亡くなりになった。そして、その日本の大型タンカーが守られた。これは、日本の国益にも直結する問題でございます。

 このように考え、そして、現在までに、これはきょうの午前中にもございましたけれども、どのような効果があるか。武器の阻止、そして麻薬の阻止、そしてテロリスト、自由にさせないという効果が現実に上がっているということも明らかでございます。

 したがいまして、世界が連帯して行うこの行動に対して我が国も憲法の範囲内で貢献をするということは、国際社会の中に生きていく一員として当然のことでございますし、また、先ほど申し上げましたように、国益にかなうものであり、また、国際社会からも高い評価を受けている、このように考えます。

 この問題について、私は、この活動を継続すべきだと公明党も強く考えておりますが、きょう午前中にも御答弁になりましたが、もう一度国民の皆様にこの必要性を総理の口から訴えていただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 テロとの闘いというのは、これは一国ではできないことだと思います。やはり、関係国が手を携えて、協力し合って可能になることだと思っております。

 まして、今、人も飛行機で自由に往来できるということもございますし、船も物すごい数の船舶が航行しているということでございます。いつ、どこで、何が起こるかわからないと考えていた方がむしろ安全だと思います。日本は幸いにしてそういう問題がなくて済んでいるわけでありまして、これは本当に幸せだ。それだけに、十分注意を日ごろ行ってやっているんだ、こういうことじゃないかと思います。

 インド洋におけるテロとの闘いというのは、これはアフガニスタンからアルカイダが他国に往来するというようなこと、これを防ぐために行っている活動が大きいのではないかと思いますけれども、そういうあの地域で抑制的な行動をとっている、活動をしているということが、いかにテロの活動を抑え込んでいるかということではないかと思います。

 ですから、もしこの活動をやめれば、またどこにテロ活動が拡散するかわからない。ましてや、我が国にとっては大事な石油の輸送ルートであり、また、いろいろな貨物の船舶も往来している、そういう地域でございますので、この地域が不安になるということは、これは経済活動その他にいろいろな影響を与える可能性があるということでございますし、また、我が国への侵入とかいったようなことも心配しなければいけないというような事態になるわけでございます。

 ですから、この活動は、やはり関係他国といかに協力してやるかということが極めて大事な部分であろうかと思いますので、そういう活動を我が国が継続するということは大変意義があるし、これは、他国のため、国際社会のためであるばかりでなく、日本のためでもあるというとらえ方を私どもはいたしております。ここから日本が手を引いてしまうということは、これは、日本は、それじゃ、いざというときに協力しなくてもいいのか、そういうことを思わせるような活動だ、行動だというふうに思いますので、極めて慎重になるべきだと思っております。ぜひこの活動は継続させていただきたいというのが私どもの考え方であります。

斉藤(鉄)委員 我々公明党も同様な考えでございます。憲法九条を持つ我が日本国として最もふさわしい貢献活動、このように考えております。

 民主党の小沢党首が、海上自衛隊が行う後方支援を、明白な集団的自衛権の行使で憲法違反に当たる、このようにおっしゃっておりますけれども、今回のテロ特措法に基づく海上自衛隊のこの活動が憲法違反に当たるのかどうか、内閣法制局長官にお伺いします。

宮崎政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 現行のテロ特措法に基づきます協力支援活動と憲法との関係についてのお尋ねでございます。

 これは、この法律が成立しました当時の国会におきましても重々御審議されたとおりでございますが、この法律に規定された補給などの活動につきましては、それ自体、武力の行使に当たるものではございません。

 加えて、その活動の地域がいわゆる非戦闘地域、すなわち、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に限定されていることなどの法律上の枠組みが設定され、他国の武力の行使との一体化の問題が生じないように規定されてもおりますので、憲法九条が禁じる武力の行使に当たることはなく、集団的自衛権の問題を含めまして、憲法九条に違反することはないと整理されてきていると承知しております。

斉藤(鉄)委員 民主党の皆様も、このテロ特措法、本法を議論するときに、確かに事前承認がなくて反対するけれども、法律の趣旨には賛成をしていらっしゃったと思います。だからこそ、その後の事後承認のときにも賛成をいただいたわけでございまして、憲法違反には当たらない、このようにたくさんの民主党の議員の方も考えていらっしゃるのではないかと思います。

 総理にお願いがございます。

 自衛隊を海外に派遣するというこの事柄の大きさ、性質上、私は、国民の多くが賛成して行っていただいているという状況をつくることがどうしても不可欠だと思います。二院あるうちの一院が反対をしているという状況で送り出すべきではない、これが私の、個人ですけれども、考え方でございます。

 したがいまして、我々公明党も民主党の議員の皆さんに一生懸命説得に当たりますけれども、ぜひ総理も民主党の皆さんに説得をして、二院ともに賛成して、我々国民の総意としてこの国際貢献をやっていただきたいというふうに送り出すことが必要だと思います。そのためには、国民の皆様に理解していただく必要がございます。

 今回、新法の提案が予定されておりますが、その新法が閣議決定された折には、どうか総理、みずからのお言葉で国民の皆様に、この法律の必要性、この活動がどれほど日本にとって大切なことなのかというのをわかりやすく説明していただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 いろいろな世論調査など、最近のものを見ていまして思いますのは、この活動を理解してくだすっている方がだんだんふえてきているような感じがいたします。圧倒的に多いのは、やはりまだよくわからないという国民が多いということだと思いますので、その辺、この国会論戦等を通じまして、また、いろいろな機会をとらえまして、よく説明することが必要だというように思います。

 野党の方々にもぜひ御協力をいただきたい。心からお願い申し上げる次第でございます。

斉藤(鉄)委員 どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、最初に申し上げました三つの大きなテーマの三番目、生活についてお伺いをいたします。

 まず最初に、救急医療についてでございます。

 ことし、八月末に奈良県で、妊婦の方が病院をたらい回しにされたあげく死産をされたという大変悲しい事態がございました。また、こういう事件が、今、全国で起きております。

 こういう事件を受けて、ある私の知り合いのお医者さんから、次のようなお手紙をいただきました。非常にわかりやすく書いてあるので、ちょっと御紹介をさせていただきたいと思います。

 そのお手紙の中身なんですが、「ここに、二百床の病院を想定しますと、深夜救急患者が来院を希望した際、空床があったとしても、その時点で既にその空床は翌日の入院予約患者用の病床として確保されています。」「救急車を受け入れるということは、翌日の入院患者数が二百床を超え、保健所等の行政指導案件となる事態が発生します。」「約三十年前に医師になった当時は社会に余裕もあり、」「上記のような事態が発生して数日間病床数を超えたとしてもあまり問題にはされず、救急患者の受け入れは比較的問題なく行われていた次第です。」「ところが、近年は僅か一日でも、また僅か一床でも病床数上限を超えた日があると、厳しくこれを指摘して、違法入院であることを理由に叱責し、医療費の返還を命じるのが事実です。従って、現在では、病床数を超えて患者を入院させる病院はまずありません。」医者として「入院させたいと思っていても、」「救急患者の搬入を拒まざるを得ない状況になっています。」「以上のような困った事態は」「全国に共通した課題であり、病院不足の状況が劣悪な市町村では特に深刻な事態を招いています。」こういうお手紙をいただきまして、私も本当に胸の痛む思いでございました。

 まずは、目の前に苦しんでいる方が、患者さんがいらっしゃる、そういう患者さんは柔軟に受け入れる、そういう柔軟さがあってもいいと思いますが、総理、今のお話を聞いていかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 御指摘の点、病床数との関係で受け入れなかったと。入院患者数が病床数を五%以上上回った場合、報酬の一部を減算する仕組みがある、こういうふうなことの結果、受け入れなかったのではないか、こういう御質問だと思いますけれども、実際は、五%といっても、一カ月間の平均ということになっているのです。それからもう一つは、やむを得ない場合には例外的措置も設けてよろしい、こういうことになっておりまして、ですから、そういうルールを適用すれば、これは絶対だめです、そういう話にはならないのですね。

 そういうことで、柔軟な取り扱いはいたしておりますので、こういう趣旨が徹底するようにしなければいけないかなというふうには思います。保健所からペナルティーを科すとかそういうふうな話も実はございませんので、その辺は、そういうことでないということを周知徹底する必要があるのかなというふうに今思っているところでございます。

斉藤(鉄)委員 現場のお医者さんにこういうお手紙をいただいて、現実にこういうことが起こっているわけでございますので、ぜひ、こういう柔軟なシステムをつくるべく、政府としても指導力を発揮していただきたい、このように思います。

 今回の問題は、救急車の中で救急隊員の方が一つ一つ自分で電話をかける、各病院に十幾つもかけて回る。どう考えても前近代的なシステムとしか思えません。救急隊の方はもっと救急医療、そして搬送に専念する、そして、どこに行くべきかは、ちょっと別な、センター的な機能があってそれを決めるということがあってしかるべきと思いますけれども、今後策定する都道府県の医療計画にこういうセンター的な機能等考えるべきではないかと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 今おっしゃった救急医療体制の不備につきましては、奈良県の例、これは大阪に最終的には搬送されましたので、奈良の荒井知事、大阪の太田府知事とも協議をいたしましたし、それから、知事会と厚生労働大臣との定期的な協議の場も設けました。

 それから、先般、千葉県に行きまして、君津の消防署を視察し、鴨川で亀田の総合病院を見てまいりました。例えば消防について言うと、非常にIT化が、つまりGPSがどこまでちゃんと緊急電話のときに通じるか、こういうことも含めて、改善しないといけないところがたくさんあると思います。

 そのほか、今おっしゃった点については、緊急の情報センターはあと四県を残してほとんどのところで設置をしてありますので、そういうこともやりたいし、今おっしゃいました都道府県の策定、今の対策をちゃんと明記しよう、これはもう既に指示をして行っております。

 そもそも、この産婦人科医の不足、小児科医の不足、こういう問題を含めて、いろいろ根が深い問題があります。福島県の大野病院で産婦人科医が医療ミスで逮捕されるという事件がありまして、これ以来、民主党の仲間の先生方とともにこの問題をずっと扱ってきましたけれども、例えば、要するにノーフォールトというか、無過失補償制度をつくる。というのは、あの事件以来、産婦人科と小児科の数ががあっと減っているんです。つまり、特に帝王切開なんて非常に危険ですから、それで一生懸命やったのに助からなかった、そうすると逮捕される、それは嫌だということで減ってきています。

 ですから、小児科、産科の先生方の診療報酬を含めて待遇改善ということをやるとともに、そういう無過失補償制度の導入、それからADR、裁判外の調停制度、こういうことも含めて総合的にこの問題はやっていかないと、基本的に国民の生命にかかわることでございますので、政府としても全力を挙げてやっていきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 この問題について総理に最後にお伺いいたしますが、やはり根底には医師不足というものがあろうかと思います。この医師不足について、政府も今懸命に努力を続けておりますが、今後どのように解決していかれるのか、総理のお考えをお伺いします。

福田内閣総理大臣 医師確保対策ということにつきまして、ことしの五月末に、緊急医師確保対策というのを取りまとめております。これに基づきまして、病院の勤務医の過重労働の改善、そしてまた、産科等の診療報酬の見直しといったようなことを具体的にやっていこうということでございますけれども、その結果、産科、小児科を中心とした医師不足問題について、実効性のある対策になるようにと考えておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 この問題は、国民の命に直結する大変重要な、国民生活の中でも特に重要な問題だと思いますので、力を入れて取り組んでいただきたいと思います。

 次に、国民生活にかかわることで、二番目のテーマですが、高齢者の医療費の問題でございます。

 この高齢者の医療費負担について、来年四月から、一つは、七十歳から七十四歳の方の窓口負担が一割から二割に上がるということがございます。もう一つ、後期高齢者医療制度がスタートになりまして、いわゆる家族の方が被用者保険に入っていらっしゃる方、その扶養家族になっている場合の七十五歳以上のお年寄りが、今までは保険料を払う必要がなかったわけでございますが、今後、保険料を払う必要が出てくる。こういう高齢者の方の医療費負担増問題があるわけでございます。

 近年、改革を進めてまいりました。そういう中で、いわゆる世代間の公平さという観点から、高齢者の方にかなりの急激な負担増をお願いした。介護等々でございます。そういう中で、この高齢者の負担増をいま一度見直してみようではないか。いろいろな分野でそれぞれ負担増をお願いして、よく精査してみると、ある方にいろいろな分野の負担増が集中してあらわれて、大きな負担増になっているというふうな例も見受けられます。

 こういうことを精査するために、この高齢者医療費の負担増について、もう一度立ちどまって考えてみようというのが政権合意の中に入ったわけでございますが、総理、このことについてのお考えをお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 今般の連立政権合意によりまして、この際、早急にこの問題について結論を得て措置するということでございまして、そこで、与党内にプロジェクトチームが設置されまして、ここでもって精力的に今後協議がされていく、このように承知いたしております。

 こういう与党協議を踏まえながら、高齢者の医療制度とか児童扶養手当制度とか、高齢者とか母子家庭の生活に直結するものであるということでございますから、こうした方々が置かれている状況に十分配慮しながら、国民の目線に立って、きめ細かな対応を図っていきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 もう一点、児童扶養手当についてでございます。

 これは、五年前、これから母子家庭の就業支援、自立支援をしっかりやっていこう、それで、その成果があらわれたら、いわゆる児童扶養手当、母子家庭の児童扶養手当について減額をしていく、このようになっておりまして、この自立支援、就業支援の結果を見ようということになっておりましたが、結果といたしまして、なかなか今の厳しい状況の中で進んでいないということも明らかになってきております。

 したがいまして、この児童扶養手当の減額について来年四月からどうするかということを政府・与党として決めなくてはいけないわけですが、これについても少し考えてみようというのが連立政権合意でございます。この点についての総理のお考えをお伺いいたします。

舛添国務大臣 斉藤先生おっしゃるとおり、これは、一生懸命就労支援をやったんですけれども、なかなか成果があらわれてきていない。これはぜひ、その与党のプロジェクトチームでしっかりと御検討いただきたいと思います。

 ただ、例えば三歳未満の児童を育てているような場合は、三歳までの期間は五年の受給期間に含めないので、事実上、八歳未満の方の場合はこれを外す。それから、障害者ですね。これを持たれるというような方については、やはり考慮する必要があると思いますので、与党のプロジェクトチームの皆さん方の検討結果を受けまして、政府としても柔軟に対応してまいりたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 この高齢者医療、また児童扶養手当、これは総理のおっしゃるぬくもりのある政治の一つの大きなあらわれになるところではないかと思いますので、ぜひ御検討をいただきたい、このように思います。

 次に、年金についてお伺いいたします。生活についての三点目でございます。

 まず最初に、総理に、今、いわゆる社会保険方式と税方式についての議論がございます。民主党さんは基礎年金については全額税方式、我々与党は半分税、半分保険という考え方、いわば税と社会保険の結合でございますけれども、私は、いわゆる社会保険方式が持っておりますメリットでございます自助自立、また、払ったんだからきちんともらうんだという権利性が非常に強い、また、そのときの財政事情に左右されにくい、安定した年金がもらえる、こういうメリットを無視すべきではない、このように思いますが、基本的考え方として、総理、どのような考えをお持ちか、お伺いいたします。

福田内閣総理大臣 我が国の公的年金制度につきましては、やはり、委員御指摘のとおり、みずからの老後にみずから備える、自立自助ですね、そういう考え方で、我が国の経済社会と整合性がある、こういうふうな判断をしておりまして、拠出に基づき給付を行う社会保険方式となっておりまして、これを今後も維持していくということが基本的な考え方でございます。

 ただ、このことにつきましては、年金制度の将来像というものを考えた場合に、いろいろな意見があるということも事実でございます。

 そういうような長きにわたっての制度でございますから、やはり、国民が長い期間信頼し続けられるようなものであるということが必要でございまして、そういう年金制度とはどういうものなのかということについては、これから十分な議論をしていく必要もあろうかと考えております。

斉藤(鉄)委員 税と社会保険、それぞれのメリットを考えながら長期的に考えていく、しかし、基本的には現在の方式を続けていくということではないかと思います。

 ちょっと、これは国民年金でどれだけもらわれているかという図でございます。

 私も、いろいろ皆さんの意見をお伺いする中で、一番よく出てくるのが、国民年金の年金が少な過ぎる、ある意味では生活保護よりも低い、これはおかしいのではないかという御指摘をよく受けます。

 この円グラフ、これは年間でございます。左側の七十二万から八十四万円、この約半分に近い方々は、フルで、満額もらわれている。それ以上の方は、いわゆる付加年金等が入っていらっしゃる方でございます。ところが、右側、四十八万円以下、ということは、月額四万円以下の国民年金の方が約二五%、四分の一を占めている。これは生活保護レベルよりもはるかに低い数字でございます。

 この低年金、無年金に対して何らかの手を打たなくてはならないのではないか。ぜひこれは、与党としても、また福田政権としても考えていかなくてはならない問題だと思っております。

 その一つの方法として、例えばこの低年金を、できるだけふやすために、年金をふやすために、納付期間を上げるという意味で、二年間しかさかのぼれない納付を、そのさかのぼりを五年さかのぼることができるようにするとか、いろいろなことを考えなくてはいけないのではないか。低所得者層の方には、例えば国庫負担割合を少し上げるということも一つの方法かと思います。

 また、私たち公明党マニフェストに掲げて言っておりますのは、国民年金の二階ではなくて三階部分、基礎年金が一階部分、三階部分と言われております国民年金基金がございます、この充実。

 例えば、今、この国民年金基金、入ろうと思いますと、二十歳の方でも一口一万円ぐらいするんです。これではなかなか入りにくい。それを小口化するとか、現実には、国民年金の方が、将来国民年金だけでは少ないかなということで国民年金基金に入られる、余裕が出てきた四十代、五十代から。ところが、六十になると打ちどめ、もう払えなくなってしまいますが、その一階部分の基礎年金の保険料については、最低の年数である二十五年でありますとかフルであります四十年になるまでは、六十五や七十まで一階部分は保険料を納め続けることができますけれども、一階部分で納めているんだったら三階部分も納めることができるようにする、そうすることによってこの国民年金の方の将来の給付がふえるというふうな提案もさせていただいております。

 厚生労働大臣、こういう無年金、低年金対策、徹底してやらなくてはいけないと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 先生の最初の部分ですけれども、二年を五年に、これは、かつて議員立法で、二年のままでさらに三年ということが提案なされたこともあります。これは、延ばすことによって払う人がふえるという面もあるんですが、では、能力があるのに二年間さぼっていて、あと三年というのがまた問題があるかなということなので、こういうことを勘案しながら、おっしゃる点はさらに検討を続けていきたいと思います。

 それから、今の二階建て、三階建ての部分ですけれども、二階建ては、やはり国民年金の場合、いろいろな事情がありますから難しい。しかし、基金の三階建ての部分については、おっしゃるように、まず六十歳以上、これをやれるように今検討を進めています。それは、先ほどおっしゃったように、六十を過ぎても基礎の部分はやれるわけですから、当然ここは、やっていい。

 それから、今たしか、小口化するという話は、今おっしゃったように、月三万円だと九千円の掛金になります。ところが、やはり月九千円払うというのは大変なので、月二万円いただくために六千円ということなら可能なので、これも検討を指示して、現実にそういう方向で動けるようにやっていきたいと思いますので、今おっしゃったこの国民年金の方々の低年金、無年金、これを何とか改善するための方策というのを、皆さんのお知恵もかりながら、今のような方向で全力を挙げてやっていきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 最後に、増田総務大臣、先日は、島根県邑南町、飯南町、御苦労さまでございました。

 邑南町は、その中の行っていただいた地域は旧羽須美村というところで、本当の限界集落がたくさんのところですが、あの村は広島市と子供の交流をやっておりまして、地域の活性化に非常に役立っております。

 先ほども質問がございましたけれども、こういう地域の活性化、そして教育という観点から、子供たちの山村留学、これを国としても財政的にも支援をして進めることがいろいろな意味で効果がある、また、地域の活性化に結びつくと思っておりますが、最後に御答弁をお願いいたします。

増田国務大臣 今、子供たちのいわゆる農山漁村交流のことについてのお話がございましたのですが、文部科学省さん、それから農林水産省さんに御協力をいただいて、私ども総務省と三省協力をいたしまして、特に子供の農山漁村における自然体験をふやすような、そういうプロジェクトを進めていきたい、今このようなことを計画しているところでございまして、行く行く、全国一学年百二十万人の小学生に、一週間程度こうした宿泊体験活動を行わせることを目指していきたい。今後五年間で順次、まずモデル的に取り組みを深めていきまして、将来的には、今申し上げましたように、一学年百二十万人の小学生にこうしたことを経験させたい、今このようなことを考えております。

 これについての教育効果やあるいは地域活性化についての効果は大変大きなものがございますし、未来の子供たちへの大変な財産になると思っておりますので、私ども三省しっかりと協力連携をいたしまして、ぜひこれを成功させたい、このように考えております。

斉藤(鉄)委員 同僚議員に譲ります。

逢沢委員長 この際、上田勇君から関連質疑の申し出があります。斉藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 福田総理、御就任おめでとうございます。大変難しい局面の中での出発ということになりましたけれども、困難を切り開き、課題を解決していくためにも、ぜひ福田総理の力強いリーダーシップを大いに期待するところでございます。

 総理はたびたび、今の国会情勢の中で政策を実行していくためには、与党だけではなくて野党の皆様の賛同も必要でありますので、前向きに、またじっくりと協議をしていく、話し合いをしていくということをおっしゃっております。これは本当に、今の事態の中では非常に重要なことだというふうに思っておりますので、ぜひまた総理にしっかりと取り組んでいただきたいというふうにお願いを申し上げる次第でございます。

 また、それだけじゃなくて、どうしても、政策を実行していくためには、やはりこれは国民世論の理解と御協力が必要なわけでありますので、特にこれから取り組んでいく政策の中には、行政サービスが低下するもの、あるいはその負担をお願いしなければいけないもの、そうしたものもあるわけでありますので、ぜひ丁寧に政策を国民世論に説明し、その中で理解を得ながら進めていっていただきたいというふうにお願いを申し上げる次第でございます。

 きょうは、非常に限られた時間の中で幾つかの分野について質問させていただきますので、一つ一つの議論が少し細切れになってしまう嫌いがあるかもしれませんけれども、ひとつ御了解いただきたいというふうに思います。

 まず最初に、北朝鮮の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今日の我が国の平和と安全にとって最大の脅威は、北朝鮮をめぐる問題であります。内閣の外交政策の中でも、まず最優先の課題として取り組んでいっていただきたいというふうに考えております。

 この北朝鮮をめぐる情勢につきましては、昨今、九月末には六者協議、六者会合が開かれ、第二段階の措置について合意がされました。そのように進展はあるものの、なかなか、この先、依然として不確実、不透明な状況だということには変わりがないというふうに思います。そうした中で、特に核の全廃、弾道ミサイル、拉致問題など我が国の国益がこの協議の中に十分反映されているのだろうか、そうした懸念も持っているわけでございます。

 総理はここまで、この拉致問題を含めます北朝鮮問題の解決に非常に強い意欲とそしてまた自信を表明されており、このことは大変心強く思っているところでございます。

 そこで、この拉致問題を含めます北朝鮮問題に関する見通しと、また、今後の方針、対話と圧力というのが基本だというふうに思うんですけれども、その方針の具体的な方向と、また、その解決に向けての総理の御決意をお伺いしたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 日朝交渉をすることによりまして過去の不幸な関係を清算するということをしたいのでありますけれども、拉致、核、ミサイルといったような諸懸案もございまして、これを包括的に解決するというのが平壌宣言の趣旨でございます。そして、その上で日朝国交の正常化を実現するということで、この考え方、方針というものは一貫して堅持してきておるわけでございます。

 その中で、拉致問題につきましては、六者会合の成果文書がこの間発表されました。その中で、日朝双方が具体的な行動を実施していく、そういう日朝関係というものが求められているということでありますので、今後とも、六者会合などの場を通じまして、米国、韓国を初めとする関係国とも緊密に連絡、協議を行いながら、真剣にこの日朝協議に取り組んでいきたいというように考えております。

 また、北朝鮮側に対して、拉致問題の解決に向けた具体的な行動を求めていきたいというのが今の考え方であります。

上田委員 ありがとうございます。

 具体的な対応というのは、これからいろいろと政府の中で御協議をいただき、また適切に対応していただけるものだというふうに思います。国民の最大の関心事でもありますので、ぜひ内閣を挙げて、この問題、早期に解決できるように、全力を挙げて取り組んでいただくことを御要望申し上げる次第でございます。

 次に、総理の行財政改革に関する御見解、お伺いしたいというふうに思います。

 我が国の財政事情、いかに厳しい状況にあるかというのはもうこれまでも論議の中でいろいろと明らかになってきているわけでありまして、幸い、今のところ、この財政事情が、国が発行する公債の償還に支障が生じるとか、また、経済活動にいろいろな障害が発生するというような事態には至っておりませんけれども、しかし、こうした事態を放置しておくと、これはやはり将来にこうした不安をツケ回すということになりかねないわけでありますので、この財政の健全化というのは今最優先の課題の一つだというふうに考えております。

 総理もこれまで歳出歳入一体改革を強力に進めていくという御決意を示されていること、これは私たちとしても強く支持をするところでございます。これから具体的には本格的な論議が開始をされるんだというふうに思いますけれども、その歳出歳入改革、これを論議するときに、まず一番最初に取り組まなければいけないのは、今の政府のいろいろな支出、それを徹底的に見直して、そして無駄を排除して歳出削減を図っていく、そうした行財政改革をまず徹底して行っていく、これが一番最初に取り組まなければいけない課題だというふうに思っております。

 もちろん、行革だけで、財政の健全化、これがすべて解決するというふうには思っておりませんけれども、ただ、この問題にまず最初に取り組んで成果を出していかなければ、その後の議論というのはなかなか進まないことになるというふうに思っております。その行財政改革についての総理の基本的なお考え方、まずお伺いしたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 行政において無駄があるということが、そういうことがある限りは、やはり政治に対する信頼、行政に対する信頼というのはわいてこないと思いますね。これは、そういうために最大限の努力をしているつもりなんだけれども、まだまだ足りないというのが現状だと思います。

 これはやはり、これからもしっかりと対応する。そういう中には本当の無駄もあるかもしれない、しかし、政策の優先順位とか、そういうようなところで問題があるものもあるかもしれない、そういうことをやはりしっかりと見直していくという、その姿勢というのはこれからも問われる。これは、こういう立場にあれば、今がよければいいという話じゃない、ずっと続けていかなければいけない基本的な姿勢であるというように考えております。これはしっかりやらせていただきたいと思います。

 その上で、いろいろな政策を実行していくということであります。この政策実行の面においても、やはり無駄をいかにしてなくすかということ、これを同時並行で考えていくということも問われるわけでありますけれども、精いっぱいやらせていただきたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 今、総理の御決意のほどはよくわかりました。ぜひ本当に、行政の無駄、いろいろなところで、報道とかでも指摘をされます。そうしたことがあるとなかなか本格的な財政の議論というのが進まないわけでありますので、まずはそこを徹底的に、行財政改革、しっかりと取り組んでいただきたいというふうにお願いをいたします。

 今、総理からも御答弁あったんですけれども、内閣としても歳出削減にこれまでもさまざまな努力を行ってきているということは私も理解をいたしております。

 細かいいろいろな無駄を排除するという意味においては、平成十六年度から行政効率化推進計画というのを毎年策定いたしまして、官庁が使う車の台数を減らすとか、公共調達の効率化であるとか、旅費を節約していくとか、そういう本当に身近な細かいところの節約にも取り組んできておりまして、これは、平成十六年、当時、公明党からの提案も踏まえて設置をされました関係省庁連絡会議の中においていろいろな議論が進められてきて、本年度予算でも六百六億円の削減効果が報告をされております。

 また、こうした細かい話とは対極にあって、行政改革推進本部に設置をされた行政減量・効率化有識者会議におきましては、これは民間の有識者の方々に来ていただいて、まさに、独立行政法人の見直しであるとか総人件費を抑制していくとか、そうした我が国の行政機構の大枠の改革についての議論がなされております。

 こうした二つの取り組み、いずれも重要なことであって、これからもしっかりと進めていただかなければいけないんですが、この論議の中で、私はちょっと真ん中の視点が抜けているんじゃないのかなという感じがいたしております。それは、今それぞれの役所でいろいろな事務や事業が行われております。いろいろな補助金や助成金が支給をされている。それらを漏れなく取り上げて、その必要性とか優先度あるいは効果、またその執行に当たっての効率性とか、そういったものを一つ一つ洗い直していかなければいけないんだろうというふうに思います。

 これは今は予算編成の過程で査定という形で行われているんですけれども、これが財務省あるいは官僚任せで本当にいいのだろうか、本当に効果が十分上がるんだろうかということを疑問に思っておりまして、内閣そしてまた閣僚にも、しっかりと責任を持って取り組んでいかなければいけない、また、国会からもいろいろな意見も聞いてほしいというふうに思いますし、外部の有識者もここに入ってもらって、そういう査定に参加をしてもらうということが必要なんではないかというふうに思います。

 これが我々ずっと主張してきているいわゆる事業仕分けという考え方なんだというふうに思っておりますので、どうか、非常に細かいところでの積み上げ、これも重要であります、そしてまた大きな枠組みでの議論も重要である。しかし、今行われている、現に行われているいろいろな事業、これもやはり洗い出していくということも重要でありますので、そうしたメカニズムをぜひつくって取り組んでいただきたいというふうに思っておりますけれども、渡辺行革担当大臣、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

渡辺国務大臣 上田先生初め公明党の皆さんが行革に真剣に取り組んでいただいておりますことは、私にとっても大変に心強い話でございます。

 ついせんだって公明党の皆さんから、今御提案のような、事務事業の仕分けを初めとしたいろいろな御提案をいただいております。とりわけ、独立行政法人の改革に当たって、この手法は大変有効なものと思います。

 八月十日に閣議決定をいたしまして、八月の末、それから九月と、二回ほど各府省から回答をいただきましたが、残念ながら大変不十分でございまして、一層、これは一つ一つの事業仕分けを初めとした、いろいろな指摘をしていく必要があると考えております。

 行政減量・効率化会議においてもしっかり議論をしていただいております。それに加えて、この際、国民の皆さんのお声も伺ったらどうかということに相なりまして、パブリックコメントをいただくことになったわけでございます。

 しっかりと進めてまいりたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします。

上田委員 大変力強い御答弁をいただきましてありがとうございます。

 いろいろな大きさ、いろいろな角度、いろいろな視点からやはり取り組んでいかなければ本当にぎりぎりまでの合理化というのはできないんだというふうに思っておりますので、ぜひ渡辺大臣に、また引き続きリーダーシップを発揮していただいて、頑張っていただくことを大いに期待するものでございます。

 次に、ちょっと話題はかわりますが、中小企業施策について御質問したいというふうに思います。

 福田総理は、所信表明演説の中で、「我が国の経済成長の原動力である中小企業の多くが、景気回復の恩恵を受けられずにいます。」と述べまして、これから実施をする中小企業施策の代表例の一つといたしまして、下請取引の適正化という項目を挙げております。

 私も全く同じ思いでございまして、中小企業の皆さん、地元でいろいろとお話を伺うと、確かに仕事は忙しくなってきた、これは景気が回復していることなんだろう、しかし、結局は納入価格がずっと低く抑えられているので、これでは利益が上がらない、経営はむしろ苦しくなっているというようなお話を伺うわけでございます。昨今、原油価格を初めといたします原材料価格が上がってきているので、それに拍車がかかっているというのが今の現実であります。

 もちろん、そういう下請の中小企業においてもコストを抑制するための努力、これは必要なんですけれども、その可能な努力を超えたような、そういう削減、コスト抑制を要求されたら、これはもう経営が成り立たないわけでございます。大企業が今のところ順調に利益を伸ばしている中で、中小企業の利益が伸び悩んでいるということはいろいろな調査でも明らかになっているわけでありまして、ぜひ中小企業、これはもう我が国の産業基盤を支えているわけでありますので、そこが元気になるような施策をお願いしたいというふうに思っております。

 そういう意味で、大企業が下請企業に対して適正な価格を提供する、そのことは、長期的には我が国の産業基盤を強くするものでありますし、また、マクロの観点からも日本経済全般の底上げにも役立つものでありますので、めぐりめぐっては大企業にとっても利益になるものだというふうに私は思っております。

 そこで、まず総理に、現状認識と、今後そうした大企業と中小企業間の取引のあるべき姿についてのお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 おっしゃるように、この数年の景気の回復という中において、確かに大企業の収益というのは非常にふえております。反面、中小企業の収益はそれほど伸びがないというのが現実だと思います。このギャップが年々拡大しているという方向で、このままでよろしいかどうかということで、私どもも危機感は持っております。

 ですから、こういう状況をどのようにして改善していくか、ギャップを埋める方法があるのかないのかということでありますが、まず、大企業にもその辺はいろいろな配慮をしていただく必要があるかもしれぬ。特に、系列関係だとかそういうようなことでもって大企業のみにその利益が集中するような商取引とか、そういうような状況というのは改善してもらう必要があるかもしれぬというふうに私は思っております。

 それと同時に、中小企業自身が力強い産業となるためにどういうことをしたらいいのか。中小企業の生産性は比較的低いということも言われておるわけでございますから、これをどうやって改善することができるのか、また、創意工夫も必要でしょうし、いろいろな観点から、政府としてもそういう中小企業を支えていく方策は考えていきたいというように思っております。取引の適正化、こういうこともあるかもしれませんし、安心して中小企業が事業を継承できるように承継税制を考えるとかいったようなことも、あわせて考えていきたいというふうに思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 総理が、この所信表明の中で、下請取引の適正化ということを言及していただいたこと、これは、多くの中小企業者の方が、本当にそのとおりなんだというふうに感じていることじゃないかというふうに思っておりまして、ぜひまた力を入れて取り組んでいただければというふうにお願いをいたします。

 この問題に関して、これまでずっと、甘利経済産業大臣、非常に力を入れて取り組んでこられまして、お伺いをしたいというふうに思います。

 ことしの二月、成長力底上げ戦略、これも甘利大臣が中心となって取りまとめられましたけれども、その中でも、中小企業底上げ戦略にこの下請適正取引の推進ということを掲げておられます。そこで、これまで、まだ期間は短いわけでありますけれども、具体的にどういうような施策を進めてこられたのか、これは主なもので結構でございますが、そうした具体的な内容を御紹介いただきますとともに、どういうような効果が上がってきたのか、その辺の評価も含めて教えていただければというふうに思います。

甘利国務大臣 総理から答弁がありましたように、中小企業自身が、その生産性向上のためにIT化を図る等々の支援、あるいは事業承継にかかわる今後の支援、大事な課題としてこれからも取り組んでまいります。

 大企業と中小企業の関係、下請取引の適正化に関しましては、三月に私自身が経団連の会合と日商の会合を訪問しまして、その場で、数百社の企業に対して、適正な取引関係の構築に努めてほしいという要請をいたしました。

 法律違反は公取が出ていって厳しく取り締まる、当然のことでありますけれども、まず、みずからあらまほしき姿を構築してほしいということで、業種別のガイドラインをつくったわけでありまして、そのガイドラインに従って、あらまほしき元請、下請の関係のいい事例集、ベストプラクティスを提出してもらって、それに倣って、まだ実行していない業界がいい事例を積み上げていくということが大事だというふうに思っております。

 また、買いたたき防止に関するガイドブックを作成しまして、公取と協力をしまして、このガイドブックを親事業者八万社に配付するということ等もやっております。また、公取と協力をいたしまして、親事業者が二万社ぐらいありますけれども、その二万社に対しましても、下請代金法の遵守の要請を文書で発出させていただいたところであります。

 具体的な効果について、今次第にいい関係が構築されつつあるという報告も聞いておりますが、まだ事半ばでございますので、しっかりとしたこうした施策の推進をしていきたいというふうに思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、引き続きこの問題、力を入れて取り組んでいっていただきたいというふうに思います。

 それで、多くの場合は、どうしても中小企業は親会社との関係では非常に弱い立場にありまして、随分安いなと思っても、なかなかそれを交渉して引き上げるということが難しいのが現実だというふうに思います。

 もちろん、今大臣からもお話があったとおり、いろいろなガイドラインが制定をされ、それも、いろいろな機関で指導もしていただいておりますし、また、下請法などの法律に違反する場合には公取に今積極的に対応してもらっています。ただ、ではこの決められた価格が本当に不当に安いものなのかどうか、それを実際に判断するとなると、なかなか法律的に判断するのは難しいという面も結構多いんじゃないかというふうに思います。

 そこで、ちょっと御提案なんですけれども、そうした下請関係、下請取引を行っているような中小企業が、これは随分買いたたかれているんじゃないか、低い価格なんじゃないかといったときに、相談できるような窓口をつくっていただけるといいんではないか。そしてまた、その窓口では、その取引、何か駆け込まれたときには、調査を行い、場合によってはいろいろな仲介や調停みたいなことも行って適正化を図っていくというような、そういう機能もあわせ持つというような準司法的な性格を持ったものであれば、なお中小企業の役に立つんではないかというふうに思います。

 そうした機構をぜひ検討していただきたいというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。

甘利国務大臣 上田委員には、今日まで経済産業委員長として大所高所から下請取引の適正化についていろいろとアドバイスもいただいてきておるところでございます。そうしたことを踏まえまして、御提言にありますような相談の窓口、あるいはあっせんをするある種第三者機関といいますか、そういうものの設置について真剣に検討をしてきたところでございます。

 二十年度要求として、下請適正取引推進センター、これは仮称でありますが、この整備構想を考えております。元請、下請の関係は、いい、自主的な関係を構築するというのがベストであって、なるべく公取が踏み込まなきゃならないなんということになる前に処理がなされるのがいいと思います。

 そうしたことでは、ガイドラインと公取の行政指導との中間的な存在として、相談の受け付けや紛争のあっせん、調停を行うこうした機関の設置をすることによって適正な関係が推進されることと期待をいたしております。

上田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、中小企業の方からも使いやすいような、そういういろいろなさまざまな工夫もまた、機構を御検討していただく中でよろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、今度は、子育て支援策の一環であります放課後児童対策について、舛添厚生労働大臣に一問お伺いしたいというふうに思います。

 保育所については、まだまだ定員が不足してはいるんですけれども、政府として待機児童ゼロ作戦を進めてきまして、かなり着実に整備が進んできました。一方、この保育所を出ますと、小学校の低学年の児童が、学校が終わった後行くところがないというのが、今各所でそういう事態が生じております。

 保育所に通っている子供さんが、毎年五十万人程度小学校に入学するんですね。そうすると、低学年、一年生から三年生までになると、定員としては百五十万ぐらい必要なんですけれども、実際にある定員は今のその半分以下なわけであります。

 さらに、多くのそうした放課後児童クラブというのは、施設も随分劣悪ですし、指導者にも問題がある場合もございます。成長の過程の非常に重要な時期でありますので、ここの対策というのは本当に重要だというふうに思っております。

 なお、女性の方も、保育所に子供を預けて仕事を続けてきた、しかし、小学校に上がった途端に、今度は預かってもらうところがないので仕事をやめざるを得ないというような事態も聞いておりますので、ぜひこうした放課後児童対策、早急に拡充をしていただく必要があるというふうに思いますけれども、今後の方針を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 今、上田先生がおっしゃったとおりで、これは、仕事と子育てを両立するという女性の立場から見ても、また子供が放課後どうするかということから見ても、非常に重要な問題でありまして、保育所は大体二百万人、今おっしゃったように、放課後児童クラブというのは七十五万人なんですね。

 ですから、これは、今全国に小学区が二万三千ございますけれども、大体四分の三ぐらいまでは拡充できました。これは早急に全小学区、つまり二万三千にすべて、放課後子どもプランということをもとにして児童クラブを、今おっしゃいましたようないろいろな点を改善しながら設置していきたいと思っています。

 今年度、百六十億ぐらいの予算で今これを行っていますけれども、来年度はこれを百八十から九十億お願いしたいと思っていますので、どうか予算の面でも御支援賜りますように、一生懸命やりたいと思います。

上田委員 時間なので、これで終わります。ありがとうございました。

逢沢委員長 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。斉藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 総理、まず、今回の参議院選挙の大変厳しい結果を受けまして野党の方々は、国民の民意は衆議院解散・総選挙にある、このように声高に叫ばれている方も少なくないわけでありますが、私は、難しい政治状況であるからこそ、今こそ立法府で、国民の直面している問題、また、国が直面する諸課題について徹底した議論を行って、いい知恵を出してほしいというのが国民の皆様方の民意である、そういうふうな思いできょうも、限られた時間でございますが、質問させていただきたいと思います。

 しかし、その仕事をする際、この一連の構造改革の中で、やはりマクロとして国の方向性を定めてきたのは私も大きな間違いはなかったと思いますが、国民一人一人の国民生活の場に立ったところで、わかりやすく言うと、国民の痛みに対して鈍感過ぎた、国民の痛みをもっと受けとめてしっかりとした政治をしていただきたい、それが私の理解するところ、福田総理の所信表明にある、ぬくもりのある政治だというふうに思っております。

 きょうは限られた三十分でありますが、きょう質問させていただくことは、実は、地元で大変厳しい、また悲痛な叫びを受けてきた、すべて地元の皆さんの声でございます。国民の皆さんの声を伝えるのが私たち国会議員の職務という思いで、何点か具体的に質問させていただきたいと思います。時間も限られておりますので、適切な、また端的な御答弁をよろしくお願いいたします。

 まず一つは、教育費用の負担軽減でございます。

 これは本会議の総理の御答弁にもございました。「家庭の経済状況により修学の機会が奪われないよう、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であると考えております。」まさに、ここの教育の機会均等を図っていくということが、私は格差の固定を回避する大変大事な視点であるというふうに、そう考えております。

 また、少子高齢社会におきまして、安心して子供を産み、安心して子供を育てていく、まさに、子育て支援が大切な中で、教育費用の負担というのは家計における大変な圧迫になっている。ですから、教育費用の負担軽減を進めていくというのは私は最重要の課題である、政治的な課題である、そのように考えております。

 私ども公明党が連立政権に参画をして以後、とにかく教育費用負担軽減のために奨学金制度を充実させていこうと。当時は、成績のよい学生にしか奨学金というのは出ておりませんでした。しかし、学校の成績が多少悪くても、まじめに学校に行きたい、そういった子供が、将来学校を卒業してからその能力が開花をする、使命が大きく花を開く、こういったことはたくさんあるわけでございまして、学校の成績を要件にするのではなく、まじめに勉強したい、こういったことで成績要件を実質的にとっていただきたい。

 きぼうプラン21という新しい奨学金制度を創設させていただきまして、今パネルがありますが、平成十年度では奨学金の貸与人員は四十九万九千人、五十万人足らずでありましたが、本年度は百十四万人、この十年間、二・数倍になっております。事業費では、平成十年度では二千六百五十五億円、それが今年度では八千五百億円を超えるという、三倍を超えるだけの事業費に膨れ上がっている。これは大変私は評価するべきな話だと思っております。

 公明党は、さきの代表質問、太田代表がこの問題も取り上げまして、まだまだ奨学金は拡充したいということで、来年度から月額貸与限度額の十万円を十二万円に引き上げることを提案させていただいております。総理からは、「政府としては、事業の健全性を確保しつつ、奨学金制度を拡充するための措置を平成二十年度より講じてまいります。」これは、これから予算編成もありますし、具体的な答弁の中で精いっぱいのはっきりした答弁だったと思います。

 この点、この場をおかりいたしまして改めて文部科学大臣に、明年、文部科学省として十万円を十二万円に引き上げる、これはやるというしっかりした決意で取り組まれるのかどうか、端的にお答え願いたいと思います。

渡海国務大臣 奨学金事業を充実していくことは、やはり、教育の機会均等という意味から大変大事な事業であるというふうに認識をいたしております。

 今、先生が言及された、十万円を十二万円、これは選択制でございますが、上げるということにつきましては、平成二十年度の概算要求においても奨学金事業の充実を図る方針というのが出ておりまして、この方針に従って概算要求の中で要求をしていきたいというふうに思っております。

 事業の健全性というものを確保するということも大事ではございますけれども、学生のニーズに配慮した奨学金の事業の充実ということに我々は頑張っていきたいというふうに考えております。

赤羽委員 ただし、お子さんを大学に通わせる、大学に入る、こういった年ごろのお子さんを持たれている家庭で今一番の問題は、入学時の支払いが大変だということなんですね。初年度納入金、実は、総理と文科大臣の母校である早稲田大学をちょっと調べてみましたが、初年度で文科系は百二十万円、理科系は百七十万円です。私の母校の慶応義塾大学も一応調べましたが、同じような水準で、文科系が百十五万円、理科系が百七十万円、医学部は三百七十万円なんです。

 この初年度の納入金の対策というのは、実は、これも我々公明党が随分長年かけて要望して、入学増額貸与制度という、三十万円をこれは五万人に貸し出す制度があるんですが、甚だ不十分な制度であると言わざるを得ないわけであります。

 では、大半の経済的に大変な方はどうなさっているかというと、国民金融公庫の教育資金貸付制度を利用しているわけでございます。これは、十八年度の貸付実績は十五万件で、二千百億円を超えている貸付実績がございます。ただし、この前、実は地元で言われたんですが、四人お子さんがいる、それで毎回毎回教育貸し付けローンを借りている、当然融資限度額というのがありますから、三人目ぐらいから融資を受けられない。国金で受けられないものは民間で受けられるわけがないと。四人とも合格をしたんですが、一人はやはりあきらめざるを得なかった、こういった状況があるわけです。

 そして、この国民金融公庫の教育貸付制度は、実は政府系金融機関の統合によって、その対象、所得制限、今までは九百九十万でしたが、二百万円縮小する。恐らく、一割以上全体の規模も縮小されるということなんです。これではなかなか解決をしないわけであります。

 ですから、きょうは御答弁はいいんですけれども、財務大臣には、この論議のときには、「民間金融機関からも新公庫からも貸付けを受けられない層が生じてしまうことのないよう、十分慎重に検討すること。」というのが附帯決議であったはずでございますので、ぜひ詳細にわたってフォローしていただきたいというのがお願いの一つでございます。

 そして、文科大臣に提案なんですが、来年度十万円から月額二万円のアップ、これを実現するならば、毎月二万円ということは、年間で二十四万円、四年間で九十六万円なんですね。ですから、人によっては毎月十二万円もらう方もいてもいいかもしれないが、人によっては、毎月の月額は十万円にして、その九十六万円のアップ分は入学時にもらえるような選択制にしていただける知恵をぜひ出していただけないか。これをすると、もう予算措置はできているわけですから、テクニカルの問題であると思います。九十六万円、百万円近いものが入学時にもらえるとなると、今国民の皆さんが抱えている問題というのは大きく前進すると思いますが、検討していただけるかどうか、御答弁いただきたいと思います。

渡海国務大臣 入学時の費用が大変だというのはよく聞いております。

 私が大学へ入りましたのは昭和四十一年でございます。当時、先ほど総理の母校というお話もありましたが、入学試験はバリケードの中でしたね。これは、当時十八万五千円だった初年度の納付金が三十一万五千円に上がったということで第一次早稲田闘争が起こった。卒業年次のときには第二次早稲田闘争でございました。それはともかくとして、やはり、入学時に大変な費用があるという声はよく聞く話でございます。

 そういうことも含めて、先ほどお話がございました従来からやっている枠も、来年度の要求の枠では、五万人であったものを一万増して六万人要求をさせていただいておりますし、また、事業費でも三十億増の要求を出させていただいておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この機会均等を確保するという観点は非常に重要でございますから、学生のニーズを踏まえ、この事業の健全性も考えながら、先生から御指摘がありましたそういった入学の際の費用の問題についても、これからよく研究をさせていただきたいというふうに思います。

赤羽委員 次に論じたいのは、民間セクターの奨学金制度についてでございます。

 実は、私は、大学のときは慶応義塾大学の奨学金と旭硝子の奨学金をもらっておりまして、その二つの奨学金のおかげで卒業できたようなところもございます。

 この民間セクターの奨学金、奨学金というとアメリカが充実している、こういう話が出ております。(パネルを示す)ちょっとこれを調べておりましたら、アメリカの制度、日本の制度、これですね、ざっと言いますと、日本の制度、民間団体は全体の約七%しかないんですね。アメリカは、ざっと言うと四分の一、二五%が民間団体であります。そして、大学生一人で、アメリカの場合、民間団体の奨学金も受けている、連邦政府からも受けている、ローンも受けている。さまざまな奨学金を受けていて、いろいろなデータがありますが、年間一人約三万ドル受けているというようなケースも珍しくないわけです。ですから、まさに奨学金だけで大学を卒業できる。こういったことをやはり私は目指すべきだと。

 今、この景気回復の中で大企業の景気は回復した、しかし、その所得再配分がなかなか進んでいないんじゃないかという批判もございます。私はぜひ総理にお願いしたいのは、経団連や日本商工会議所の方々に、大手の企業でも奨学金を持っていない方が多いんですよ。ですから、所得再配分の一環とは言いませんが、企業のモラルとして、それぞれ独自のスカラシップを創設するべきだという御提案を政府としてしていただきたい。これは私かねがね申し上げていることなのですが、ぜひ福田総理のときに実現をしていただきたいと思いますが、いかがでございますでしょうか。

福田内閣総理大臣 我が国は寄附の文化がないんですね。これは奨学金制度だけではありません。アメリカなどは文化とかいろいろな分野に寄附を行って、そしてその事業の活性化につなげているというところがございまして、これは経済界だけの問題ではないかもしれぬ。税制とかいろいろな問題があるのかもしれませんけれども、やはり、そういうふうなマインドになっていないというところが一つ問題だろうというふうに思います。

 やはり、社会に還元する、奉仕するというそういう気持ちが大事なんだろうと思いますので、そういうことも含めて、あらゆる機会に経済界などにも働きかけをさせていただきたいと思っております。

赤羽委員 続きまして、予定より一つ繰り下げて、中小企業の金融支援について、総理、何回も御答弁いただいておりますので、そのことについてちょっと触れたいと思いますが、実は、ことしの十月一日から信用保証制度の責任共有制度が始まりました。

 これまで、信用保証協会による一〇〇%融資、一〇〇%保証ですね、これは、担保能力が乏しい中小企業の運転資金、また設備投資の資金に何とか資金を供給したいということで、政治の力で信用保証が一〇〇%保証する、こういったことが続いてきたわけでございますが、これをこの十月一日から、一〇〇%のうち二割を金融機関が責任を共有していこう、こういった制度が始まるわけでございます。

 もちろん、この制度変更は、金融機関にも責任の一端を持たせることによって、融資先の中小企業の経営に対してもっとコミットするというか経営改善を責任を持ってやっていく、こういった方向性があるということも承知をしておりますし、また、今、毎年約千七百億円程度の赤字が出ているこの信用保険制度を持続可能とするものの措置として、その筋としては理解できるんですが、中小企業を取り巻く環境がこの制度変更を受け入れられる状況にあるのかないのかというのは甚だ疑問なんですね。

 一つは、日銀短観を見ても、総理の御答弁も先ほどございました、中小企業、景況感はまだまだ厳しい、第一点でございます。また一方、地域の中小企業の貸し手となる第二地銀ですとか信金、信組の不良債権の本格的な処理はこれからであります。

 こういった状況の中でそれら金融機関が本当にリスクをとって積極的な融資に踏み切るかどうか。これは、私は大変難しい状況にあるのではないかと。現実に、この制度が始まったことによって、私のもとにも、もう既に貸し渋りが始まった、こんな例があったという実例のメールですとかファクスが随分来ております。

 この中で、大変心配をしながら私たち公明党経済産業部会としても、経済産業大臣に、何とかこれを本当に失敗しない制度にしてほしいということで、地方経済局、各地の商工会議所に相談窓口を置いてもらいたい、これは実は受け入れていただいてもう決定をしたところでございますし、また、小口零細の場合は対象除外とする、こういったことも措置をとっていただいたわけでございます。

 しかしながら、これまで貸し渋りとか貸しはがしの歴史を考えますと、監督庁の金融庁の大変厳しい管理のもとで貸し渋り、貸しはがしが行われる、そこで我々が何か意見を言おうとすると、これは民間と民間の間の話だということで、結局何もできなかったということが多かったのではないか。これをまた繰り返してしまうのではないかということで私大変心配をしております。

 経済産業大臣にまずお聞きしたいのは、相談窓口をつけていただいた、これはよかったと思いますが、相談を受けた場合、どのように対応するのか、どのようなスキームを持つのか、また、私は、実態が余りにひどいケースが出てきたら、この責任共有制度を一度見直しをするということまでやはり腹を決めてよくフォローをしていただき、また御報告もいただきたいと思いますが、甘利大臣の御見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 先般、赤羽先生、公明党部会長からお申し入れをいただきまして、全国の信用保証協会それから経済産業局等に相談窓口を設置させていただいたわけであります。

 もともと、この責任共有制度の趣旨はおっしゃったような趣旨で、金融機関に本来の機能を果たしてもらう、貸したら貸しっ放しじゃなくて、自分のリスクとして貸した先の経営をしっかり見て、応援していって、立派な企業にしていくという本来の機能を果たしてくれということなのであります。

 ただし、十月一日から、周知期間は大分とったにせよ、まだかなり戸惑いがあるでしょうから、おっしゃるような貸し渋りに遭われた場合には言ってきてください、我が方からどういう状況なのか金融機関にいろいろな手だてで確認をしたいと思いますし、趣旨の徹底をそういう場面でもしっかりしていきたいというふうに思っております。また、この制度がどういうふうに影響していくか、その施行後の状況もしっかり把握をして、重大な問題があればきちんとそれに対応できるようにしていきたいと思います。

 いずれにしても、この趣旨をしっかりと中小企業者並びに金融機関に徹底していきたいというふうに思っております。

赤羽委員 ぜひ、相談ごとに個別の事案に対しても金融庁と連携をよくとっていただいて、金融庁は金融庁でやる、経済産業省、中小企業庁はこうだということがぎくしゃくしないように、ぜひお願いしたいと思います。

 次に、いわゆる今の都市再生機構の賃貸住宅の問題について移りたいと思います。

 本年六月二十二日に閣議決定がございました。これは、規制改革推進のための三カ年計画でございます。七十七万戸ある都市再生機構賃貸住宅が過大であるとして、その削減目標を明確にすることと、かなり厳しい。これは、ある意味では、行政改革という意味ではよくわかりますが、私は、この問題で、一部の週刊誌では売却して廃止する団地の名前が掲載されたり、また、都心部の住宅は民間に売却、郊外の住宅は地方公共団体に売却して公営住宅化する、こういったようなことがまことしやかに伝わっておりまして、居住者の皆さんは大変不安を抱えておりますし、この件では、国土交通大臣、冬柴大臣のもとに何回も要望活動に行かれているというふうにお聞きをしております。

 行政改革ということは間違いないと思います、大事な視点だと思いますが、これは、団地の居住者を無理やり追い出すようなことはまさに言語道断でありますし、また、都市再生機構の居住者というのは、多くは高齢化しているということも考えますと、今後、万が一の移転とか集約とかする場合に、私は、居住者の皆さんの不安解消のための前広で丁寧な説明、それとやはり、家賃補助などの支援策が必要と考えております。

 国土交通省としても具体的な対策がとられるというふうに聞いておりますが、その点について簡潔にお答えをいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 御指摘のとおり、規制改革推進のための三カ年計画がつくられなければならないことになっておりまして、今、削減目標を明確にしようとしているところでございますが、現在の居住者を一方的に追い出すなど、居住の安定を脅かすようなことは毛頭考えておりませんので、その点は安心いただいて結構だと私は思います。

 また、これができたときには若かった人も今は非常に高齢化しておりまして、また、低所得層が多くなっております。そういう現状を考え、また、都市再生機構法成立のときに衆参でつけていただきました附帯決議、あるいは住宅セーフティーネット法を成立させるときにつけていただいた附帯決議等を遵守する、それにのっとって行っていきたいというふうに考えております。

 それで、今、個別の団地ごとに建てかえとか改善、規模縮小等、団地の再編の方針について検討を行っているところでございますけれども、そのいずれにいたしましても、建てかえあるいは改善等に伴う低所得の既存入居者の家賃負担が増加をするということは、これを進める上で非常に難しいわけでありまして、我々はそれを抑制するために、今家賃補助とおっしゃいましたけれども、これはもう独立していますので、国がどうということじゃなしに、これに出資をするとか、いろいろすることで事実上そのようなことが維持できるように一生懸命頑張ろうとしておるところでございます。

 また、建てかえをいたしますと空閑地ができます。そういうところに高齢者たちのための福祉拠点というようなものも、厚生労働省と連携をしながら、安心住空間創出プロジェクトというようなことでやっていこうとしているところでございます。

 いずれにいたしましても、居住者の居住の安定を確保した上での再編であるべきでありまして、そういうことで取り組んでまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。

赤羽委員 私たち公明党も、公団居住者の悲痛な叫びをしっかり受けとめて予算獲得に全力を挙げさせていただきますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、被災者生活再建支援法について御質問させていただきたいと思います。

 この被災者生活再建支援法は、平成十六年に抜本改正が行われました。今までは生活関係費、なべかまを買う、上限百万円という制度でしたが、平成十六年には、それに加えて居住関係の経費も出そう、上限二百万円の制度ができました。法改正時には、四年後の見直しという附帯決議が付されまして、来年がその四年目になるわけでございます。

 政府においても検討会が設置され、種々検討が進められておるというふうに聞いておりますし、この中で、居住関係経費、上限二百万円のこの経費が、平均支給率が二八・三%、わずか五十六万円しか出ていない、こういったことが明らかになったわけでございます。

 まず、居住関係経費の支給が約三割に満たないこの低い原因についてどうなのか、また、この四年間の見直し、検討会ではどのような問題が指摘されているのか、防災担当大臣から簡潔にお答えをいただきたいと思います。

泉国務大臣 赤羽委員には、この支援制度の充実に向けては発足当初から大変貴重な御意見をいただいておりましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。

 お話にございましたように、政府では、附帯決議に基づきまして、この三月から検討会を設けて検討を続けてまいりました。七月三十日に中間報告をいただいたところでございますが、問題は、居住関係経費の使途が解体撤去費あるいは住宅ローンの利子などに限定されておる、また、実際に要する費用を積み上げた額しか支給されない、こういうことでございます。

 このことが、御指摘の二八・三%、こういう低い率にしかならなかったということでございまして、中間報告で私どもが承っておりますのは、とにかく被災者から見てわかりやすく、そしてまた生活再建の意欲を高めるようなそういう仕組みにすべきではないか、また、非常態勢の中、自治体も大変忙しい、過度な負担をかけないようにした制度にすべきである、結果として地域の再生につながるような事柄に改正すべきではないかという御意見をいただいておるところでございます。

赤羽委員 私たち与党のプロジェクトチームでも今のような御報告をいただきまして、とにかくわかりやすい制度、使いやすい制度、一日も早く復旧復興が速やかに行われる制度にしたい、このようなことでこういう現行制度の変更をいたしました。

 現行制度は、生活関係経費、先ほど言いました、家財購入費、三十品目に限定されております。引っ越し代なんかも含めて全壊は最大百万円。大規模半壊は支給対象となっておりません。ここについて私たちは、もう使途の限定はつけない。全壊の罹災証明がある方には百万円、大規模半壊の罹災証明がある方には五十万円、定額で渡し切りにする。今までは、なべかまを買うのにその領収書を要求されたとか、この品目は当たらないとか、もう大変な事務量でした。こういったことを全部単純化しようというのが一点でございます。

 居住関係経費につきましては、今の、これは根本的な間違いなんですが、全壊の人は家を建て直す、大規模半壊は補修だという、頭からそう決めて現行制度がなっておりますが、私、阪神大震災の経験から、全壊でも補修で再建する場合もありますし、大規模半壊でも家を建て直す場合があります。これは、人それぞれ、経済の状況、年齢の状況それぞれによって違うんです。

 ですから私たちは、その再建の仕方で、全壊であれ大規模半壊であれ、家を建て直すまたは購入する方には二百万円お渡しする、補修で再建される方は百万円お渡しする。もう家は再建しない、賃貸住宅に移る、この方たちには五十万円渡し切りにするということでございます。わかりやすくする。

 そして、例えば賃貸マンションで全壊になった、避難所に移った、全壊の罹災証明がある、どこかへ移らなければいけない。罹災証明が出た瞬間に、生活関係経費百万円と居住賃借の方の五十万円、百五十万円が出るわけです。そうすると、今、避難所に何カ月もいて、仮設住宅に移って、こういう大変な長い期間のプロセスを経なくていい。百五十万円あれば、県外であろうとどこでもマンションに移り住むことができる。

 こういった意味で、支援そのもののコストもセーブされるし、被災者一人一人の復旧も、一日も早く復旧復興が実現できる。私たちはこう考えております。また、年齢要件ですとか年収要件も大幅にシンプルにしてある制度でございます。

 そして、この出資元、六百億円の出資を出している全国知事会の要望は、与党案はすべて受け入れております。五百万円がいいんじゃないかとかいろいろな意見がございますが、出資元の全国知事会、金額を五百万円にしてくれという要望は出ておりません。もちろん、金額が多ければ多いにこしたことはありませんが、今のスキームの中で最高三百万円出せるというものを出しやすくする、三百万円出たことによってどれだけその被災地また被災者の復旧復興が進むのか、これをまず見るのが今回の大きな改正の目玉であるというふうに私は整理をしております。

 私たちの与党案について、大臣、御見解、御所見をいただければと思います。

泉国務大臣 今御指摘ございましたように、とにかく使いやすい、あるいは被災者が元気が出るような、そういう被災者の背中を押してあげるような制度をつくっていくべきであるという御趣旨でございまして、年齢等も非常に厄介である、年収も非常に難しい制限があるという中でございまして、与党でまとめられました案について考えてみますと、定額制を取り入れていただいておる点や、住宅の再建の方法に着目した支給方法に改めていただいている点など、被災現場の要望にこたえ、使い勝手のよいものになっているのではないかと考えております。

 政府といたしましては、国会の御議論を踏まえまして対処してまいりたいと考えております。

赤羽委員 時間が来ましたのでもう終了いたしますが、最後に、本当は福田総理に一日も早い訪中の実現というものを強く要望したかったわけでございますが、要望にとどめて私の質問とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 これにて斉藤君、上田君、赤羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。端的にお答えを願えればと思います。

 まず、福田総理、全国の社会保障の現場をぜひ今後ごらんいただきたいとお願い申し上げます。

 年金、医療、介護、障害者福祉、今、経費削減のあおりを受けて、全国の社会保障の現場から悲鳴が上がっております。その一方で、税金浪費の温床である天下りは法律で正式に合法化されました。社会保障は削っても天下りは削らない。政府・与党はどこまで国民をばかにするんですか。私は、まず総理に、年金を削る前に天下りを削れ、社会保障を削る前に税金の無駄遣いを削れ、こういうふうに申し上げたいわけであります。

 現在の日本の制度は、年金はもとより、すべてが役所や業界など提供者側に都合のよいものとなっております。それを逆に生活者の立場から、公正、安全、安心、透明性を重点に、全面的に制度をつくり直していく必要があると思います。未来を予想する最善の方法は未来をつくり出すことだという言葉があります。未来をあれこれ予想する前に、私たちであるべき未来をつくり出すことが重要だと私は考えております。

 今私が申し上げました生活者主権の改革、生活者の立場からの制度の全面見直し、これについて総理の御所見をまずお伺いします。

福田内閣総理大臣 もちろん、無駄を省くことは大事でございます。財政面における制約がございますから、それをいかに有効に使っていくかということになりますけれども、その無駄を省くというが余りに、社会保障でもって必要なところまで削ってしまうということがあれば、これは問題だというように思っております。ですから、そういうことのないようにきめ細かい対応をしていくというのはこれから大変大事になってくるだろうというふうに考えております。

長妻委員 生活者主権の改革についてちょっと言及がなかったのは残念でございますけれども、それでは質問に入ります。

 まずは年金問題でございますけれども、今、消えた年金問題が大きな、社会的にも皆さん不安に思っておられる状況になっておりますけれども、この消えた年金問題ではなくて、今の厚生年金や国民年金、既に受給資格が発生した方、申請すればもらえるにもかかわらずなぜか申請されていない申請漏れの方、これがかなり多くいらっしゃるんじゃないかというふうに考えておりまして、ぜひその人数を計算して表に公表していただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

舛添国務大臣 長妻委員の御質問でございますけれども、受給資格があるのに未申請のものがどれぐらいあるか。これは実は私も何とかできないかなと思って見たんですけれども、御承知のように、今のいわゆるレガシーシステムというか、これからではどうしても出てこないということなんですね。ですから、そういう意味で、コンピューターのシステムを新たにしようとしていますけれども、今、残念ながら、これは私も何とか捜し出せないかということでしたんですけれども、今のシステムでは不可能だということでございます。

長妻委員 ちょっと舛添大臣にはがっかりいたしました、今の答弁は。

 例えば企業年金連合会、年金の厚生年金基金分の請求漏れの件数、これは我々の強い要請で出してまいりました。そして、きちっと措置をするということになりました。

 そして、実は、社会保険庁からいただいた資料では、平成十五年までの五年間で、申請漏れで九万三千七十五人の方が、推計千百五十五億円が時効で消滅して、もらえなくなってしまったと。つまり、消えた年金問題では時効撤廃になりましたけれども、申請漏れというのは、政府の立場では申請を忘れている人だということで、時効は進むんですね。ふえたとしても、さかのぼって五年より以前のふえた金額はもらえないで、一千百五十五億円も消滅している、五年間で。こういう事実がございます。(発言する者あり)

 申請しろよと今お話が与党からありました。まさにその態度が申請主義のあしき発想なんですね。つまり、我々が相談を受けると、社会保険庁や自治体に行くと、あなたはまだ受給資格はないですよ、年齢に達していないですよというふうに間違った説明を受けて、それを真に受けて申請されない方も多くいると聞いております。そういう意味では、何人、これは百歩譲って、非常にお金があって、申請しないでも十分暮らしていけるから申請しないという方がいると社保庁は言っていますけれども、私はごくごくわずかだと思います。(発言する者あり)

 今、現場が悪いというお話がありましたけれども、ですから、私は数字を出してくださいと言っているんですよ。その数字を、かつては、平成十五年度までの五年間の数字は出したじゃないですか。ですから、最新の数字を、受給漏れの方、つまり、政府側から見ると未払いということですね、未払いの人数をぜひ出していただきたい。

 私は現場のコンピューターの担当の方に聞くと、それは一定の条件をつくれば出せますと言っているんです。ぜひ、舛添大臣、現場からきちっと見て出すということを言ってください。これは大変な数になったらどうするんですか。

舛添国務大臣 今おっしゃったように、二十五年、こういう期間が確実にいっているのに、いろいろな理由で申請されない。その他、海外にいるとか、いろいろな細かいケースがありますけれども、今おっしゃった基本的な件については、これは何とか出せないかということで指示いたしまして、今、御承知のようにレガシーシステムですから、プログラムに修正を加えないといけない、それで、今、修正作業を指示したところであります。それで、ほぼ一カ月ぐらいの修正が加われば、今申し上げた、受給期間が来ているにもかかわらず、本人が受給しないで、申請していない、このケースについては数字が出る。そういうことで、約一月の作業ということを想定して、今、作業をやらせています。

長妻委員 最新の数字は、社会保険庁からいただくと、平成十六年度の新規裁定者というのは、受給の申請をされた方が百六十八万人おられる。大体、毎年一・二%の方が申請漏れで過去五年以前のものが消滅してしまうということなので、毎年約二万人、毎年三百億円近くの受給できるお金が時効で消滅している可能性があるんです。

 これはぜひ、申請しない人が悪いというやじが飛びましたけれども、本当にそれだけの原因なのかどうか、ほかに不備があるのかどうか、数字をきちっと出して検証をしていただくということもあわせてお願いします。

 一カ月以内ということですね、舛添大臣。今うなずかれたので、舛添大臣の御報告を一カ月後に承りたいと思います。

 そして、もう一点は、消えた年金問題でございますけれども、私は今、残念ながら、今の日本国政府は非常に冷たい政府だ、国民の義務として厚生年金や国民年金の保険料を払っておられるのに、その保険料をきちっと管理してくれない、右手に領収書をしっかり握り締めていないと、どこかに消えてしまうおそれがある政府だと。

 こういう非常に冷たい政府、こういう今の現状の冷たい政府の中では、私は国民の皆様に申し上げたいのは、ぜひ自己防衛をしていただきたい。我々が政権交代をすれば、こんな冷たいことはしません。年金通帳という通帳を発行して、きちっと過去の履歴が残るような、当然そういう措置をとります。しかし、今の中では、国民の皆様方にぜひ窓口等に行っていただいて、まだ多くの方が御自身の納付の履歴を確認されておられないんですね。

 社会保険庁のデータによると、昨年八月からことしの六月まで、社会保険事務所の窓口に四百万人もの方が、自分の記録は大丈夫かと相談に来られました。そのうち八人に一人が訂正しているんです。つまり、初めに見せられた記録は八人に一人以上は間違っているということで、その方々がもし社保庁へ行かなければ、それは訂正されない可能性もあるわけでございまして、非常に大きい広がりのある問題で、いまだ多くの方がチェックされていない。

 被害者には三パターンぐらいありますけれども、まず一つは、政府が認定した被害者。消えたと認定した方は、過去五年以前もきちっと、時効は適用されないで、救済をされるあるいは補償をされる可能性がある。二番目は、御本人は払ったというふうに主張しているけれども、証拠がないから門前払いされておられる方。三番目は、御自身も気づかずに、年金を今受給している、まさか、記録漏れがある、記録が消えた、こういうことがあるとはつゆ知らず、少ない金額をもらっておられる方。その方々に対する政府の対策というのは、今ないんですね。

 そこが我々は非常に問題だと思っておるわけでございまして、ぜひ国民の皆様方は、記録がないと言われても、いろいろな名前を、旧姓で検索してくれとか、違う読み方で検索してくれとか、相談員に厳しく指導をしていただきたい。そして、それでもない場合は、紙台帳を捜してきてください、こういうこともお願いをして、記録回復、自己防衛をまずはしていただく。残念ながら今の冷たい政府の中でありますので、それをお願いしたいわけであります。

 そして、その解決に向けた一つのステップとしては、五千万件の未統合の記録の中身をチェックするということでございます。総務大臣にお伺いしたいんですけれども、なぜか五千万件のサンプル調査、七千八百四十件の調査は、今度は総務省がしているということでございますけれども、これは、紙台帳との照合、つまり、紙台帳と五千万件のコンピューターの記録、入力ミスがどれだけあるのか、こういうものもサンプル調査の項目に含まれておられますか。

増田国務大臣 今お尋ねございましたサンプル調査でありますけれども、これにつきましては、私どもで持っております検証委員会、ここでこの調査を行っています。

 この検証委員会といいますのは、御案内のとおり、今回の事例がどういう原因などで発生をしたのか、こういうことを今鋭意調べているものでございまして、その内容については、具体的に、その事実の詳細については、委員長さんが毎回毎回その調査の内容についてブリーフィングしておりますけれども、つまびらかにはまだ、具体的な詳細を明らかにするといいますのは、その後の事項の調査に差しさわりがあるということでやっておりません。

 これはなぜかといいますと、結局、こうした原因を調査するということにつきましては、検証委員会がどういう問題意識を持って立証しようとしているのか、これは当然、社保庁でいろいろ問題がございました、そのことを踏まえて検証委員会で今調査をしている。これは検事初めいろいろな弁護士の方初めやっているわけですが、事実を隠されてしまっても困りますし、不当な行為を容認することになってもいかぬということでありますので、その調査の概要については毎回毎回公表してございますけれども、今申し上げましたような、調査事項の細部については公表しない、こういう取り扱いにしておるところでございます。

長妻委員 いや、これは非常に不可解なんですね。

 今までは社保庁がサンプル調査をしていた。今度は総務省に移った。そして、そのサンプル調査の七千八百四十件、既に紙データとして、コンピューターの中にある五千万件のうち七千八百四十件を総務省は入手して、それを今一個ずつサンプル調査している。

 我々は、ここで提言しているわけですね。つまり、総務省に漏れ聞くと、このサンプル調査は基本的には、国民年金と厚生年金の別とか年齢別とか加入期間別とか年代別などの基礎的な分析を行うだけだと聞いているんです。しかし、一番重要なのは、紙台帳と対応して、どれだけ五千万件のデータに入力ミスがあるのか、あるいは入力漏れがあるのか、どこの部分があるのか。つまり、五千万件の統合が今言われていますけれども、統合すればいいというものじゃありません。五千万件の中で、幾ら納付したのかという納付月数などの記録で入力ミスがあれば、ありていに言えば、落としたお財布を捜して見つかったけれども中が空っぽだ、これと同じようなこともあるわけです。政府も、既に統合された記録の中で、納付金額に関する入力ミスがあるということを認めているわけですね。

 ですから、我々は提言しているんです。ぜひこのサンプル調査では、対応する紙台帳を捜して、入力のミスがどれだけあるのか、そして、一件当たりの納付した保険料の平均金額が幾らあるのか。この平均金額がわかると、五千万件の全体の金額あるいは全体の受給金額の推計ができるわけでございますので、そういう提言をしているんですから、ぜひそれを受け入れる。そして、どういうものをサンプル調査するか。社保庁でさえ、国民年金の特殊台帳のサンプル調査のときは、どういう調査をしますというのは事前に公表していました。しかし、総務省に行くと、事前にも何をサンプル調査するか、我々アドバイスできないじゃないですか。広く国民の皆さんからアドバイスを受けた方がいいと思うんですね。ぜひ公表していただきたい。どうですか、総務大臣。

舛添国務大臣 その前に、先ほど長妻先生が前の方でおっしゃったこと、つまり、社会保険庁に対する不信感がここまで国民の間に広がっている、これは私も全く同じ認識を持っています。ずっとこれは党の中で長妻議員と同じように追及してきたことでありまして、例えば、本当に不信感がある。この前私が提言したのは……(長妻委員「聞いてないよ」と呼ぶ)いやいや、社保庁の……(発言する者あり)いや、ですから、そのサンプル調査の前に、簡潔に申し上げたいと思います。

逢沢委員長 舛添大臣、簡潔に御答弁ください。

 静粛に願います。

舛添国務大臣 紙台帳とコンピューターの入力、これが紙台帳からミスしているのではないかということについては、一つ一つ、紙台帳を見ながらコンピューターの画面とチェックすることを今やらせるようにしております。

増田国務大臣 今こちらの方で行っておりますサンプル調査についての公表のお話ございましたのですが、もう一度この目的を申し上げますと、このサンプル調査については、問題の発生の経緯とか原因等を調査する視点から、この未統合の原因となっている氏名、そして生年月日の正確性など必要な事項について調査をしている、こういうことであります。そして、それについては、先ほど申し上げましたとおり、大変問題を起こしている組織であります。

 ですから、この委員会が、座長が検証委員会開催後に原則として記者会見をしてその内容を明らかにする、そしてさらに、ここで収集した資料等について明らかにするということは、どのような手法でこの検証委員会が有する問題意識を立証しようとしているか、そのことが明らかになってしまう、そしてそれは正確な事実の把握を困難にするおそれがある、このように考えておりますので、この点については公表しない、こういう取り扱いにしているものでございまして、この点についてはぜひ御理解をいただきたい。近々にこの取りまとめ結果をまとめることとしてございますので、ぜひ御理解をいただきたい、このように考えております。

長妻委員 我々のアドバイスをはねつけるというか、中身を全然公表されないということであります。福田総理、これはサンプル調査ですから、七千八百四十件でございますから、一件当たりの平均の保険料が幾らぐらいなのか、あるいは対応する紙台帳と入力ミスが何カ所ぐらいあるのか、そのぐらいはぜひやっていただきたいんですね、そのぐらいは。

 福田総理、これは本当は総理まで行く話じゃないんですよ。何でそんな事務的なことをきちっとやらないんですか。ぜひ総理、お願いします。

福田内閣総理大臣 いずれにしても、年金の今回議論されている問題につきましては、これは今までの関係省庁の対応の仕方のまずさというのはあったと思う。その根源は、先ほど議員がおっしゃられるように、やはり国民視点の欠如というものが根底にあったというように思っております。

 そういう観点から、信頼を回復するためのいろいろな手続を今鋭意やっておりますけれども、委員の御要求等について、でき得る限り対応させていきたいと思っております。

長妻委員 そして、我々が考えておりますのは、その五千万件、今政府は、コンピューターの中で照合して、それらしい人に通知を出す、これを三月までにやるということを言われております。これを、別にやるなとは言いませんけれども、根本解決にはつながりません。我々は、五千万件に対応する紙台帳、自治体にあるもの、社保庁にあるもの、すべて引っ張り出して、そこでコンピューターの中のデータを正しくしていく。五千万件以外の三億件のデータに関しても、紙台帳をすべて引っ張り出してデータを正しくしていく、これが一番重要であるというふうに何度も申し上げております。

 そのためには、例えば、仮にそれを一年間で作業するには人、物、金がどれだけかかるのか、これをぜひ教えていただきたいと質問主意書等でも申し上げているんですが、それは言えないということでずっと押し切られているところでありますけれども。今漏れ聞きますと、紙台帳は自治体も合わせて八億四千万枚あるということでありますけれども、これは事実ですか。そして、照合を一年ですると、人、物、金、どれだけかかりますですか。

舛添国務大臣 いわゆるマイクロフィルムも含めて紙記録ということですね。これは、今おっしゃられたように、約八億五千万件が今わかっているところです。それで、その他、社会保険事務センターにまだあるかもしれないということで、今これは一生懸命捜しています。

 それで、おっしゃるように、人、物、金、これを出さないと、仕事をするときに、三月末ということはできないので、私は今、具体的な手順としては、十月、今月、テストランをやります、コンピューターの新しいプログラムの。それで、十二月から実際に動かしてみて、そしてやってみる。

 その上で、ああ、一月やってみたけれどもこれじゃ足りないな、そういうことでこれを、しかし確実にそのプロセスを公表しながら、今まだちょうどプログラムを組んでいる段階ですので、確実に公表しながら、そして、例えば十二月、これだけのマンパワーで、これだけのお金をかけて、これだけの、例えば一千万件処理ができた、したがってあとどれだけ要るのか、こういうことはきちんと出していきたいと思います。これは、出さないと言っているのじゃなくて、若干時間を賜りたいということです。

 それから、先ほどおっしゃった紙台帳を何とか捜し出して、そしてこれは、コンピューターの中の五千万件をやるのは比較的早くやれると思います、プログラムを組めれば。だけれども、紙台帳との突き合わせ、これは、長妻さんがおっしゃるように、何%ミスがあるのか、そこがよくわからないので、しかし、これはやるということで今、マンパワーがかかってもやる、そういう方針で行いたいと思います。

長妻委員 ぜひ、一番肝心なところがなかなか期限も出ないということで、さらに、八億五千万枚以外にも社会保険業務センターにあるかもしれないということでありまして、まだ全部捜していないということで、ぜひ早急に捜していただきたい。

 そして、第三者委員会ということで、今、多くの方が御自身の記録の回復に訪れ、受け付けが一万五千九百七十六人のうち、まだたった一・五%の二百三十八人しか救済がなされておられない、あとの方はまだ審議すら始まっておられないということで、非常に見積もりが甘いんですね。被害者の数というのは大変多いんです、皆様が考えておられるよりも。

 ぜひ第三者委員会の人員を増強すると同時に、重要なのは、被害者データベースをつくって、どの事務所で納めたときに消えた、漏れた可能性が高いのか、あるいはどの時期なのか、どういう納め方なのか、これを、データベースを早目につくって、もうあるんですよ、社保庁の中には。公表しない、しないと頑張っていなくて、名前は消しても結構でございますから、それを公表してデータベース化するということが迅速に作業を進める道だと思うんですけれども。

 この第三者委員会、担当は増田大臣ですから、御答弁いただきます。

増田国務大臣 この第三者委員会でございますが、今委員お話しのとおり、大体一万六千件申し立て件数がある、こういう状況でございまして、大変事例が多くなっております。したがいまして、先例となるあっせん事案を積み上げるなどして、審議の迅速化を図る。

 それからやはり、委員お話しになったとおり、体制も増強せにゃいかぬというふうに思っております。地方委員会でも、今、人を見つけて体制の増強を図っておりますが、中央委員会、地方委員会を含めて、委員の増員、それから事務局体制の拡充によってこの審議体制の大幅な強化を図っていきたい、そしてやはり公平な審議とそれから迅速性、こういったことを確立させていきたい、このように考えております。

長妻委員 やはり、私も本会議場でも申し上げましたけれども、国家プロジェクトとして、国家の危機なんです。年金の信頼というのは国家の危機に直結するんです。国を信用しない国民の皆さんがいっぱいいる国というのは不幸な国ですよ。

 ぜひ、年金、今は国家の危機であるということをお考えになって、今度、福田総理をトップに閣僚会議を開催すると言われておりますけれども、実行部隊を、ぜひ全省庁から人材を集めて集中して部隊をつくって、そして守秘義務をきちっとかけて民間からも部隊をつくって、政治家のリーダーシップで、社保庁一庁あるいは総務省一省の問題じゃありません、全精力をかけて国家的なプロジェクトとしてきちっと取り組む。紙台帳との照合も八億件以上あるわけでございますから、ぜひ最後にその意気込みを福田総理にお願いします。

福田内閣総理大臣 国家の危機とおっしゃいましたけれども、ある意味でそういうことは言えると思います。そういう問題を今手がけておるわけでありますから、これは政府としても全力を挙げてやる。すなわち、関係省庁集まりまして、私が中心になってこの問題解決に当たっていこうということを、きょう、閣議の後の閣僚懇談会で決めたところでございます。

長妻委員 ぜひ国家プロジェクトとして、もう議論は結構でございますから、実行部隊をつくって実行を着々としていただきたい。

 そしてもう一つは、年金の信頼回復のもう一つ、年金の流用を全面禁止するということです。払い込んだ年金の保険料はすべて年金の支給に回る、ほかにはびた一文使わない、こういう国家的原則を立てていただきたい。

 福田総理は、さきの代表質問では、ちょっとそれは難しいというような御答弁がございましたけれども、ここにフリップがありますけれども、与党の公約として、公明党も含めて与党年金制度改革協議会というのがあって、何十時間も議論された。そして、その結果を平成十六年二月二十五日のこの衆議院予算委員会で、座長が、自民党の座長でありますけれども、発言をされた。「我々は、」「国民の皆様の大事な年金の保険料は年金の給付以外には絶対使わない、こういう誓いに達したわけでございます。」と。

 私は、この話を聞いたときに、ああ、やっと与党も流用をやめるのかというふうに、なるほどと思った記憶がありますが、全然とまっていないじゃないですか、その後も。

 これ、福田総理、自民党の総裁として、与党の公約というのはほごなんですか。

舛添国務大臣 正確を期しますために、ちょっと読みます。

 平成十六年二月二十五日の予算委員会で、そこにおられる大野功統議員の質問がありまして、その冒頭、今の御質問は、これは、「まず、グリーンピアとか、あるいは福祉施設とか、年金財源を使っていろいろな施設をつくりました。」と発言されておるわけですけれども、この年金福祉施設、グリーンピアなんかを念頭に置いて当時の答弁者の坂口大臣も流用をやめるということをおっしゃったわけでありまして、三月十日にまとめられました与党年金制度改革協議会の合意では、「今後は福祉施設の整備費及び委託費には投入しない。」そういうふうに整理されて、それが与党の正式合意だと思います。

 そこで、年金流用に……(発言する者あり)いや、では、まずそこまで御説明を申し上げます。

長妻委員 これ、私も議事録は手元にあって、国民の皆様もインターネット等で議事録は入手できますけれども、確かにグリーンピアはけしからぬと言っております。いろいろなことを言っておりますが、最後は、「年金の給付以外にはびた一文使っちゃいけない、こういう反省が出ております。」という言葉を言って、これを言っておられるわけですね。

 ですから、このときはNHKの生中継も予算委員会に入っていたわけで、全国民の皆様に公約を出された。しかし、それがほごに……(発言する者あり)今、公約じゃないという話がありましたけれども、予算委員会では、そういういいかげんな発言、いいんですか。

 だって、こういう発言を責任者がされて、しかも、この流用禁止でございますけれども、政府は、さきの厚生労働委員会で強行採決したものもあるんですね、新たに流用できるということで。年金教育・広報、年金相談その他の援助、利便の向上に資する情報提供、年金事務費には年金保険料を使える、こういう法律を強行採決で通してしまった。

 政府の中には、何か八十円切手、お知らせの切手を買うぐらい、そのぐらいはいいだろうというお話をされる方もいますけれども、切手だけじゃないんですよ。今、年金福祉施設が禁止になって、その中では天下り団体の方がこれまで働いておられた、仕事がなくなって彼らが困っている、では、次は飯の種を探さなきゃいかぬということで年金教育、年金広報の条文を潜り込ませたとすれば、とんでもない話でありまして、全国にまた天下り団体が、年金教育センターとか年金PRセンターとか、そういう建物を建てて、中でまた業務を委託するということになりかねないと私は思う。

 これは、福田総理も御存じのように、橋本内閣より前は、つまり年金制度が、厚生年金は昭和十七年、国民年金は昭和三十六年に年金制度ができた当初から、事務費は必要最小限税金でやりますというルールがずっと続いていた。しかし、橋本内閣のときにそのルールが変わったんです、行革ということで税金を節約するために保険料を使おうと。

 ですから、ルールをもとに戻して、こういう教育、広報をやめる、こういう御決断をぜひしていただきたいと思うんですが、再度、福田総理に端的にお尋ねします。

福田内閣総理大臣 かつての、平成十六年、この委員会における議論が今問題になっておりますけれども、私の承知しておりますのは、やはりそのときは、グリーンピアとかそういうような、本来年金業務と関係のないようなこと、それが大きな話題になっていたということで、そのことが頭にあって、グリーンピア等々、ほかのことにも言及されたと思いますけれども。

 しかし、本来、年金業務を実施する上において必要なものは年金の中から支出するということは、これは特におかしいことではないと思います。それが拡張解釈されて、そして、またグリーンピアみたいなことをするのであれば、これは問題ですよ。そういうことがないということを前提にして、私は、そういうものはごく自然のことであり、認めるべきである。もし、そういうものを、事務的な費用を年金から出してはいけない、そうなれば税負担ということになるわけですから、同じことなんですよ。

 結局、無駄遣いをさせない、そういうことを徹底させるということにおいて、そういうことまで縛りをかけるということはないのではないかというふうに私は思っております。

長妻委員 まず、年金保険料を使うということに対して、国民的コンセンサスが得られていないんですね。合意のもとでもともと使われているわけではないと考えております。

 そして、もう一つ問題なのは、特別会計なんです、保険料が支出するもとというのが。それで、日本のあしき特別会計システムということが今も歴然と残っていて、省庁の自主財源というような発想で、特別会計は青天井だ、保険料は幾らでも入ってくる、つかみ金としてどんどん使ってしまう、こういうようなシステムが今なお直っていない、そのまま保険料を使う。これは、一たんここで、国の基本的方針として、一円ももう流用しないという方針を打ち立てていただくということが重要だと思います。

 今年度で申し上げますと、平成十九年度、二千三十九億円の保険料が流用されておりますけれども、そのうちの一千百五十九億円、半分以上が保険料でコンピューターの経費を賄っているんですね。確かに、コンピューターの経費は必要です。しかし、この金額が果たして妥当なのかどうか。実は、このコンピューターの担当をしている会社に、高給もらった天下りがどんどん天下っています。しかも、そのコンピューター会社の関連会社が出版した本を監修したという名目で、社保庁の職員にコンピューター会社の関連会社から一千四百万円の現金が毎年渡っていました。こういう関係の中で経費が水膨れしてしまった。

 それは、やはり特別会計だから幾らでも財源がある、チェックがききにくいという発想で、コンピューター経費すら膨張してしまうということで、今度、教育とか広報を認めたら、取り返しのつかないことになりかねないんじゃないかということを私は申し上げているところでありまして、福田総理に代表質問からもうこれで二回目の質問でございますので、答弁は同じだと思いますけれども、ぜひ、質疑の中でお考えが変われば、即我々の発想を丸のみしていただきたい。話し合い、話し合いというんであれば、ぜひこれをのんでいただきたいんですね。

 どうぞ、福田総理。

福田内閣総理大臣 今、特別会計だからというお話がございましたけれども、特別会計、ほかにもたくさんあるわけでございまして、年金だけよければいいというものではない。しかし、今このように大きな問題になっているから年金は特に、こういうふうな意味であればわからないわけではありませんけれども、しかし、ほかのことについても同じような目でもってこれからしっかりとやっていくということが大事なのではないかというように私は思っております。

長妻委員 それでは次に、質問を変えまして、会計検査院の問題をお話し申し上げたいと思います。

 資料にもお配りをしておりますけれども、会計検査院長、きょうお出ましいただいておりますけれども、まず、平成十六年度までの十年間で会計検査院が決算報告書に記載した不当事項金額は全部で幾らだったのか、そのうち幾らがいまだに未返還なのかということをお答えいただきたいと思います。

大塚会計検査院長 不当事項として指摘しました金額は千四百八十四億円で、そのうち未返還の分は九十四億円で、約六%強になります。

長妻委員 いまだ九十四億円もの金が返されていないということで、これ、院長、九十四億円が返されていないというのは、いつ御存じになって、再度督促をきちっとするんですか。そして、会計検査院の責任というのはないんですか。

大塚会計検査院長 会計検査院といたしましては、決算検査報告に掲記しました不当事項につきましてはできる限り速やかに是正の措置を講じていただく必要があると考えておりまして、しかしながら、中には、返還義務のある債務者が、資力が十分でないといったようなことのために、是正措置の完了までやむを得ず長期間を有しているという場合もあるというふうに聞いております。

 検査院といたしましては……(長妻委員「院長、いつ知ったんですか、九十四億を」と呼ぶ)これは、一応毎年、毎年度報告を求めておりますので、その報告を毎年聞いておりますが、こういう形で十年間について全体的な資料として知ったのは、つい最近のことであります。(長妻委員「督促は。督促するのか答えてください」と呼ぶ)検査院といたしましては、毎年各省庁に対して是正の状況の報告を求めるという形でこれに対応しております。

長妻委員 何かすごく優しい検査院というような今答弁がありましたけれども、九十四億円の金が返ってきていないんですね、不当と指摘したにもかかわらず。

 ぜひこれ、院長が答弁されたように、全部が全部、貸付金のような形で焦げついて返ってきていないというのはありますけれども、一部でありまして、返せるのに返していないようなものも私はあると思いますので、きちっとやはりこれは返すようにやっていただかなければいけないというふうに思います。

 例えば、問題になりました山形県の置賜農業共済組合、これは組合長が遠藤前農水大臣でしたけれども、朝日新聞に初めて報道が出るまで、会計検査院が三年前に指摘したにもかかわらず、全然金を返さなかった。新聞に出て、慌てて返したというイメージがあります。これは会計検査院、甘過ぎるんじゃないか。しかも、三年前に会計検査院は指摘をしておきながら、一切公表していなかった。

 今、私は、会計検査院のOB等の方々複数から、会計検査院は相手省庁の了解がないと公表できないんだ、こういうお話をいただいておりまして、私も、いろいろな一連の行動を見ていると、その話は正しいんじゃないかと疑ってしまいます。

 もう一点、お配りした資料で、会計検査院が指摘、指導をした、そして照会文書を出したもののうち、五年間で百二十六件が、指摘、指導して、照会文書を出して、そして、相手省庁もそれは確かに不適切な会計処理ですと認めた。しかし、一切会計検査院は表に公表しないのが百二十六件ある。省庁に聞いても、会計検査院が公表するなと言うから公表できませんというのが百二十六件あるんですけれども、これはぜひ公表していただきたいんです、院長。相手省庁も認めているわけですから。なぜこれを公表しないんですか。

大塚会計検査院長 お尋ねの件は照会文書の件だと思いますけれども、この照会文書というものの性質は、会計検査実務の過程において、検査を受ける者の説明を徴するために発する質問でありまして、会計検査院としての正式な見解や意見の表明ではございません。

 したがいまして、会計検査院では、照会文書が公表された場合には、外部からの圧力、干渉等を招来し、会計検査院の意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあること、現在及び将来における同種または類似の検査を厳正、公正に実施することに支障が生じるおそれがあることなどから、これらの情報を外部に公表しないこととしております。

 したがいまして、府省側が不適正と認めているか否かにかかわらず、照会文書を公表することは差し控えさせていただいております。

長妻委員 何か不可解ですね。

 置賜に関しては文書すら出していない、口頭指摘だった、それでも表に出さなかった。

 これは実際に、例えば農水省では十五件指摘、指導を受けて、照会文書も十五件受けている。その十五件すべてが、確かに不適切な会計処理だったということで、是正をするということになっております。平成十八年次は補助事業の実施及び経理二件、生産局畜産振興課、林野庁整備課です。あるいは、会計経理の適否が問題だということで四件、四地方農政局等々、これは一覧表であるわけでございまして、もう不適切だと認めているのに、何で表に出されないんですか。そこがちょっと私はわからない。

 そして、防衛省でも、表に出なかった指摘、指導がございました。平成十七年次は施設庁、平成十六年次は契約本部、平成十五年次も契約本部、平成十五年次は施設庁、平成十四年次は施設庁。もしその資料、その指摘、指導が表に出ていれば例の談合事件が未然に防げたんじゃないのかという懸念も私は持ってしまうわけであります。

 何で公表されないのかということでありますけれども、これは、院長、どうしても公表されないんですか。では、相手省庁が自発的に公表する分には、院長、よろしいんでございますか。

大塚会計検査院長 基本的には、私どもが発しております照会文書の性格によりまして、先ほど来何度も申し上げておりますように、照会文書が公表されますと、外部からの圧力、干渉等を招来いたしまして、会計検査院の意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあること、現在及び将来における同種または類似の検査を厳正、公正に実施することに支障が生じるおそれがあることと考えておりまして、照会文書についての公表は差し控えさせていただきたい、このように考えております。

長妻委員 質問に答えてください。

 百二十六件の指摘、指導は、省庁は不適切と認めました。省庁に聞きましたら、会計検査院が公表するなと言われているから公表できませんというお答えが返ってきました。会計検査院が公表すると言えば、されるそうであります。

 それは、会計検査院、公表も抑えておられるんですか、各省庁が自発的に公表しようとしていることに関しても。

大塚会計検査院長 繰り返しになって恐縮なんですけれども、会計検査院といたしましては、照会文書の性質上、これは公表は差し控えさせていただきたい。(長妻委員「不適切な処理は」と呼ぶ)不適切な処理……

逢沢委員長 委員長の指名を受けて御発言ください。

大塚会計検査院長 いずれにしても、これは、照会文書という性質のものについては公表を差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

長妻委員 いや、院長、ちょっと聞いていていただきたいんですけれども、省庁が自発的に公表するという不適切な処理、当然、照会文書は公表しないですよ、そのものは。これが不適切な処理だというものを省庁が自発的に公表するのもだめですか。

大塚会計検査院長 例えば、違法、不当な行為の有無に関する事実関係についての検査中の情報が公になった場合、実際には違法、不当な行為を行っていなかった者が結果的に不利益をこうむるような場合、そういったような場合について、不利益なものが生じるというふうに考えております。

長妻委員 私も無理難題を言っているつもりはないんですね。つまり、検査の途中であれば、それは、公表するのはいろいろ考え方があるでしょう。しかし、一たん検査が終わっているわけですね、これ。ですから、それはぜひ。

 そうしたら、院長、今、検査対象団体に会計検査院からの天下りというのは、これまで何人、何法人、そして在籍は何人ですか。

大塚会計検査院長 会計検査院は、OBの再就職状況につきましては、平成十一年の中央省庁等改革の推進に関する方針及び平成十三年の公務員制度改革大綱の趣旨を受けまして、毎年一回、十二月に再就職状況の公表を行っているところでありまして、調査した限りでは、公表された職員のうち、検査の対象となる団体に再就職した者は十九名でございます。

長妻委員 官房長官にお伺いしますけれども、これは政府から聞くと、受け入れ側はちょっと違う数字が出ているようなんですけれども、官房長官、何人でございますか。何人、何法人、今在籍中は何人でございますか。

町村国務大臣 どの範囲といいましょうか、どの時期からをとるかということによって違うと思うんですが、平成十一年八月以降の退職者について、検査の対象となる団体に再就職した者は十九名であるというふうに理解をいたしております。

長妻委員 そうしましたら、これは会計検査院に聞きたいんですが、検査対象団体に天下った方のうち、現役時代にまさにその検査対象団体に立入検査をした、その御本人がその団体に天下っている、こういうケースはありますか、院長。

大塚会計検査院長 平成十四年七月一日に新東京国際空港公団に再就職した者は、平成四年四月から六年十二月までに上席調査官運輸担当付に在籍しており、この間、新東京国際空港公団に実地検査を行っておりました。一人でございます。

長妻委員 本当に一人なんでしょうか。

 それでは、例えば、天下った会計検査院のOBが、会計検査が入るときの現況説明、一番初めの説明などに立ち会った、ですから、先輩が立ち会うわけですね、後輩が会計検査に入るときに。そういう例というのはありますか。

大塚会計検査院長 今、手元にはございませんけれども、全く皆無であるというわけではないと思います。

長妻委員 私が聞いているのは、日本中央競馬会に天下った検査院のOBは、会計検査の検査が入るときは立ち会うときもある、初日の現況説明に立ち会う、おおむね三月、七月に立ち入りがある、最近は早まっている、毎年三カ所ほど競馬場にも実地検査に行く、自分も検査員と一緒に競馬場の実地検査についていったこともある、こういうことを言われているんですが、これは事実じゃないんですか、どうですか。

大塚会計検査院長 今、事務方に確認したところ、検査の初日に、検査に先立ちまして、相手方から業務の実施状況についての概況説明を聴取することになっております。その際に、JRAの顧問が陪席したことが過去にあったというふうに聞いておりますが、本院といたしましては、内閣に対して独立の地位を有する機関でありまして、会計検査という職責を果たすべく厳格、公正な立場を守らなければならないということで、厳格に行っております。

長妻委員 これ、疑いたくはないんですけれども、私は疑ってしまうんです。つまり、会計検査院は独自の天下り団体を持っておられないので、やはりほかの省庁の検査対象団体などに受け入れてもらうということが日常的に行われていると聞いておりますけれども、そうすると、受け入れるかわりに何らかの、省庁から検査院に、例えば公表はこの検査については差し控えてくれというようなことがあるとすれば、これは大きな問題だと私は思いますので、この際、どうでしょうか、一切、検査対象には、せめて検査対象には天下りはもうしないと。そして、受け入れ側、全省庁の大臣おられますけれども、皆様も、皆様の省庁の所管の検査対象団体には会計検査院のOBは受け入れないと。

 これをやっていただかないと、税金の無駄遣いを摘発する組織ですから、本当に国民の皆さん、税金を払って、一年間二百億円払ってこの組織を運営しているわけですから、ぜひそのぐらいはやっていただきたいと思うんですが、まず、院長と総理と。

大塚会計検査院長 会計検査院の職員の再就職につきましては、再就職先の要請によって行っているものでありまして、その際には、職員が長年培った検査に関する知識と経験を生かし得るように考えております。そして、そのような本院の職員の能力の活用というものが当該再就職先の会計経理の適正化、内部監査の充実に寄与するものであると考えております。

 会計検査院といたしましては、再就職に当たりましては、疑惑を抱かれないように、要請内容や職員の経験と能力などを慎重に検討したり、職務に会計検査等の対応業務が含まれていたり再就職先としてふさわしくなかったりする場合には自粛するとともに、退職者から会計検査に関する働きかけがあった場合には厳正に対処するなど、必要な措置を講じることとしたいと思っております。

長妻委員 それでは、ぜひ総理、ここで、要請があるから受け入れるんだ、要請があるから人を出すんだという話を検査院はされましたので、もう要請はしないと御発言いただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 会計検査院というのは、内閣から独立した、そういう地位にある機関でございます。ですから、職員の再就職についても、そういうような趣旨を踏まえて適切に行われるということが大事でございます。その際、御批判を受けるような検査対象への固定的な天下りとか、疑惑を抱かせるような、そういうようなことは避けていただかなければいけないというように私は思っております。

長妻委員 ちょっと今の答弁が不明確だったんですが、そうすると、一切受け入れない、要請もしない、こういうことでよろしいんですね。

福田内閣総理大臣 やはり、貴重な人材ですから、適材適所ということ、その中には、私は、ただいま申し上げたような意味も込めて申し上げたいと思っております。

長妻委員 ちょっと、私もここで引き下がるわけにはいかないんです。国会の中では事実に基づいたこと以外は踏み込んだ発言はできませんけれども、本当にいろいろな事例で疑惑を疑われるようなことが多くあると私は感じておりますので、ぜひ総理、ここで一切やめると。だって、要請しなければいいわけですから。では、もう要請は一切しないと。ぜひお願いします。

町村国務大臣 それぞれの団体の必要性、うちの団体はこういう会計処理がどうもうまくない、ひとつ専門家の方に来てもらってしっかりやろうということで検査院の人を受け入れるということは、その団体の健全な発展にとって私はいいことだと思いますよ。そういう意味で、今総理が申し上げたような答弁に当然なるんだろうと思います。

長妻委員 これは、先ほどの旧新東京国際空港公団に天下った会計検査院のOBは、現役時代、そこに実地検査、立入検査をしていた人がそのまま天下った。成田国際空港株式会社です、今の。これは御記憶のある方はいらっしゃると思いますけれども、談合の事件が発生をした団体ですよ。ですから、OBが天下って会計がきちっとなるようなお話が今ありましたけれども、むしろ事件が起こっていることもあるんですね。甘くなっているんじゃないかという疑念を私は持っているんです、逆に。検査対象団体はせめてこれは言っていただきたいと思うんですが、いかがですか。

町村国務大臣 一般の公務員でも、たしか退職前二年間か何か、自分が所管したところには行かないというルールがあるわけですから、検査院の場合も直接担当したところには行かないというぐらいの、そのくらいの良識というかはあってもいいんだろうな、こう思いますが。それは、現在いる十八名のうちそういう人が一名いたということですから、その辺は、今後、要請があったとしても自分が担当したところには行かないといったような良識は、検査院の方でも働かせてもらいたいと思います。

長妻委員 今、十八名、十九名というお話がありましたけれども、私どもが各省庁から、省庁所管の検査対象団体に何人会計検査院のOBを受け入れているかとヒアリングをしましたところ、それを足し算しましたら、延べ四十七人、十五法人ございました。在籍中が十三人ということを我々は確認をしております。ぜひ、これはやめていただきたいということを強く申し上げて、次の質問に行きます。

 これも天下りの問題でございますけれども、私は、政府は天下り根絶といいながら、今までこそこそやっていた天下りを今度は合法化した。税金の無駄遣いの温床の天下りを合法化して、しかし社会保障は削る。これは、国民の皆さんからすると、順番が逆じゃないのか、天下りをやめてからほかの経費を削減しろ、こういうふうに思っておられる方がいらっしゃるかもしれません。

 今、国からの天下りが、二万八千人が四千五百団体に天下って、その団体に半年で六兆円の税金が流れ込んでいる。天下り団体を養うために必要性の低い仕事をでっち上げて金を流しているケースも私は多いと思います。

 そして、この政府が言っておられる官民人材交流センター、ここで合法化するわけであります、天下りのあっせんを。我々は天下りバンクというふうに呼んでおりますけれども。

 びっくりするのは、今までは、政府の公式見解は、天下りのあっせんに関しては、すべてが企業や団体側から、受け入れ側からの要請でやっているんです、こういうふうな文書をいただいているんですね。答弁もあります。役所側から天下りを受け入れてくれという要請をしたことは一度もない、あっせんで、そういう御答弁が政府公式見解であるんです。

 びっくりしますのは、これは閣議決定の文章です。官民人材交流センターの役割という閣議決定の文章でございますけれども、こう書いてあるんです。「再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業・キャリアコンサルティングの実施等により、センターの再就職支援機能の重点的強化を図る。」

 今までは、政府は、役所の側から受け入れてくれということは一度もしていない、あっせんについてゼロだと。ところが今度は、合法的にしただけじゃなくて、政府が積極的な求人開拓営業をすると。こんなことを許されてよろしいんですか。受け入れ側は、これは冷静な判断で断れますかね。これこそ押しつけ的天下り促進法案じゃないですか。押しつけ的天下りをやめると言って、さらに押しつけじゃないですか。これはどうですか。

渡辺国務大臣 さきの国会で成立させていただきました国家公務員法の趣旨をもう一度御理解いただきたいと思うんですね。

 天下りというものは、今やっている、各省が人事の一環としてはめ込んでいくやり方なんですよ。本人が嫌でも、これは人事だからといって受け皿にはめ込んでいってしまう。そうすると、そこでは、もう先輩が行っているわけですから、玉突き状態になるわけじゃありませんか。

 ですから、我々は、そういう天下りを根絶しようということで各省のあっせんを全面禁止したんですよ。(長妻委員「あっせんじゃないですか」と呼ぶ)ここがポイントなんです。いいですか、ここがポイント。ですから、こちらの方は人事の一環はやめちゃうわけですから……(長妻委員「あっせんでしょう」と呼ぶ)人事の一環をやめて再就職の支援をするわけですよ。(長妻委員「あっせんじゃないですか」と呼ぶ)では、再就職の支援をしていけないんですか。役人は死ぬまで役人をやっていなきゃいけないんですか。役人というのは再就職をしてはいけないんですか。我々はそうは思いません。役人の経験とか知識を生かして……(発言する者あり)

逢沢委員長 静粛に願います。

渡辺国務大臣 経験、知識を生かして再就職をする、それも市場価格で再就職をする……(発言する者あり)いいですか。その権限とか予算とかそういうことを一切きれいにして知見活用型の再就職をすることまで否定されては、それは余りにも酷ではありませんか。

 ですから、我々は、市場価格で再就職をするためのガラス箱としてこれをつくりましょうということを提案しているわけでございます。

長妻委員 我々民主党は、政府による天下りあっせんは全面的に禁止する、そして、再就職は禁止していません。御自身で就職情報誌とかハローワークで探す分には、一般の方と同じように探す分にはいい。しかし、その天下った先で出身省庁に口ききなどしたら、これは厳罰を処する。

 先進国を私は調べてみました。どこにも政府が公務員の再就職をあっせんする国はありません。どこにもありません。

 今、市場価格でと言いました。経験を民間に生かすと言いました。そうであれば、民間の方から引く手あまたで採りに来ますよ、くれくれくれと。あっせんしなくてもヘッドハンティングで来ますよ。先進国、そういう国はありました。自分で探したら、能力ある官僚にいっぱい集まってきますよ、こんな組織なくても。

 私は、これは非常に官尊民卑の発想が大変まだ残っていると思うんですね。つまり、官僚様は、再就職するときに就職情報誌とかハローワークとか、そういう一般と同じじゃなくて、スペシャル版の、税金をかけた再就職の天下りバンクというのをつくって、キャリアコンサルティングの実施など、手厚く再就職をする。こういう金があれば、ハローワーク改革してください。

 ハローワークにこういうキャリアコンサルティングの実施とか、手厚く、ハローワークで一般の方が就職が見つかるようにする。私は今、逆に、ハローワーク改革の絶好のチャンスだというふうに思っています。この際、天下りあっせん、仲介、全面禁止すれば、公務員もハローワークのお客さんになる、そしてここに使う税金をハローワーク改革に注ぎ込む、こういうことが私は不可欠であるというふうに考えているんです。

 そして渡辺大臣は、国会で、六月六日の委員会でこういう御答弁をされておられます。私としては、いわゆる押しつけ的あっせんの件数は、確認された限りで、三年間、千九百六十八人と受けとめておりますと。その千九百六十八人、三年間というのは、天下りをあっせんしたすべての数なんですね。そうすると、渡辺大臣は、天下りのあっせん自身をイコールいわゆる押しつけ的あっせんの件数というふうに御答弁された。

 ということは、きのうもきょうもあしたも、天下りのあっせん、今も省庁はあっせんしていると思いますけれども、そうであれば、すぐやめてください、きょうから。全部が、あっせんが押しつけ的あっせんの件数であると御答弁しているのであれば、もう即刻やめていただきたいんです。押しつけ的天下り根絶と言いながら、何で今続けておられるんですか。

渡辺国務大臣 先ほども申し上げましたように、天下りあっせんというのは各省がやっているわけですね。だから、これは国民の方から見ると押しつけに見えちゃうんですよ。幾ら……(長妻委員「それを変えたくて」と呼ぶ)いいですか。ちょっと聞いてくださいよ。

 要するに、各省が予算とか権限をしょってあっせんをすれば、それは国民から見れば、どうもあれはうさん臭いよな、こういうぐあいに見えるんです。だから、この各省あっせんを全面的に禁止しちゃうんですよ。ここがみそなんですよ。

 これは再就職の支援なんです。人事の一環じゃないんですよ。だから、市場価格なんですよ。だから、市場価格のつかない人もいますよ、ずっと公務員を長いことやった人は。でも、そういう人にはちゃんとキャリアコンサルティングもやりましょう、能力開発もやりましょう、そういう制度なんです。

 ぜひ、この、全く違う制度を導入するんだというところをぜひ御理解いただきたいと思います。

長妻委員 まあ、ちょっと理解できません。

 今、民間企業云々というお話がありましたけれども、民間企業はこういう、税金でスペシャル版の再就職機関があるんですか、民間企業は。税金であるんですか、税金で。すべての企業があるんですか、そんな恵まれた再就職のあっせん機関というのが。それは一部の大企業にはあるかもしれないけれども、そういう発想じゃ困るんですよ。

 これは与党の皆さんにもお聞き願いたいんですけれども、そうであれば、例えば、これは官房長官がトップの組織なんですよね、この天下りバンク、人材交流センター。そうしたときに、政府が、あなたのところに天下りの人を受け入れてください、求人開拓営業を補助金を受けている財団法人にする。あるいは、国から、国と随意契約している企業に、そういう開拓営業、うちの役所の天下りを受け入れてくださいというふうに開拓営業を企業にする。本当に断り切れると思いますか。これは断り切れるんですか、そういうふうに売り込みをかけられたときに。これは福田総理にぜひお答えいただきたい。これは見直していただきたい。

 福田総理は、私もサラリーマンでした、総理も長年サラリーマンをやられていた、一般の感覚があると思いますよ、やはり。契約を結んでいる企業や補助金をもらっている財団法人に政府からちょっと天下りを受け入れてくれと言ったときに、本当に断り切れるのか、押しつけにならないのか。私は、売り込むこと自体が押しつけになると思うんですね。

 ぜひ、これはやめてください、本当に、全面的に。どうですか、福田総理。

福田内閣総理大臣 これは、国民に奉仕する立場の公務員、そういう方々の一生の問題なんですよね。今まで、役所をやめて、そして公団に行って、そしてさらにいろいろな財団に行くとか、二つ三つ、ずっとそういうものを続けて一生を過ごすことができるというような状況があったわけですね。しかし、もう五年ぐらい前からそういうことはなかなかうまくできなくなった、公務員の方から見てうまくできなくなったような、そういう状況があるわけですよ。ですから、これは、その結果、公務員のモラルが下がるのかどうなのか、そういうこともあわせて考えていかないといけないのではないか。

 そういうことも含めて、今、公務員制度改革について、来年春に懇談会でもって意見をまとめようということでやっているようでございますから、そこの考え方も見て、そういう最終結論を出してもいいんじゃないかというように思います。

 そして、この人材交流センターにつきましても、その弊害があるのか、もしくは、何か障害……(長妻委員「断り切れない」と呼ぶ)断り切れるかどうかというようなことについても検討してもらったらどうなんでしょうか。

 ただ、全体を……(長妻委員「閣議決定ですよ」と呼ぶ)閣議決定だって、必要なときには閣議決定を直すことはできるんですから、それはそのときの状況で判断すればいいというように私は思います。

 いずれにしても、公務員の一生のことであり、そして、入り口に立った公務員が将来について不安を覚えて、最近はよく言われているんですけれども、いい人が来ないという各省庁の状況なども踏まえた上で判断すべき問題だというふうに思っております。

長妻委員 今、閣議決定を見直すようなお話がございましたけれども、そうであれば、この官民人材交流センターそのものを、天下りバンクそのものをやめて、政府が天下りのあっせんをしている先進国はありません、もう日本も一切しない、こういうことをぜひ閣議決定で決定していただきたい。

 最後に、我々は、税金とか年金保険料の無駄遣いを生み出すシステムが国のど真ん中にある、これにメスを入れれば財源が出てくる、こういうことを申し上げると、自民党は、いや、そんなのは出ない、出ない、出ない。政府は、では、私が政府に、無駄遣いを幾ら削減するんですかと聞くと、それは金額としては言えないと。自分のところでは出さないで、我が党が無駄遣いを削減すると言うと、できない、そんなものはできっこない、できっこない。

 日本には、HAT―KZ、ハットカズシステムということで、ひもつき補助金システム、天下りあっせん仲介システム、特別会計システム、官製談合システム、随意契約システム、こういうのがあるんですね。天下りも三類型あって、持参金型天下り、人質型天下り、創業型天下り。きょうは人質型天下りの話をしたわけです。つまり、検査対象団体に検査院のOBを受け入れると、その受け入れた団体にとってはOBを人質にとった形になって、手心が加わるんじゃないかという下心で受け入れる天下りのことで、これはある天下り団体の方が私に言っていたんですよ。長妻さん、こういうのは人質型というんですよと。私がつくった言葉じゃありません。

 こういう現実を見ていただいて、どれだけ日本の国のど真ん中に無駄遣いがあるのか、巨額の税金浪費を生み出す、先進国では見られないシステムがあるのか、これをよく実感していただいて、教科書だけ読んでいては、役人の説明を聞いているだけでは、日本は無駄遣いのない国になっちゃいます。ぜひ総理、これにもう切り込むと、なくなるように、これを、システムを、ぜひメスを入れるということを、総理、最後に御決断をお伺いして、私の質問といたします。

福田内閣総理大臣 やはり、国民の信頼を得るということは大変大事でございます。そういう観点から考えましても、委員の御指摘のように、不断の努力をして無駄を省いていくということをすべきだと思っております。そういう努力をしてまいります。(発言する者あり)

長妻委員 今、自民党席から、この創業型天下りは何だという声が飛びましたので。

 これは、官僚のOBの方が、自分たち、仲間と一緒に株式会社を設立する、出資もOBがする、それは悪いことじゃないと思いますけれども、それは出身省庁と握って、設立前に出身省庁からの受注が約束されている天下り団体、天下り株式会社設立のことであります。そして、持参金型天下りは、役職者が来ると、それに伴って天下り団体に補助金や委託費がついてくる、このことでございますので、ぜひ総理もメスを入れていただきたい。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 次回は、明十日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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