衆議院

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第1号 平成20年1月25日(金曜日)

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本国会召集日(平成二十年一月十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 伊藤 達也君 理事 遠藤 利明君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 中山 成彬君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      岩永 峯一君    臼井日出男君

      尾身 幸次君    大島 理森君

      大野 功統君    金子 一義君

      河村 建夫君    倉田 雅年君

      小池百合子君    小坂 憲次君

      佐藤 剛男君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    菅原 一秀君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      中馬 弘毅君    長勢 甚遠君

      野田  毅君    深谷 隆司君

      増原 義剛君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    笹木 竜三君

      武正 公一君    中川 正春君

      原口 一博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松本 剛明君

      山井 和則君    笠  浩史君

      渡部 恒三君    赤松 正雄君

      江田 康幸君    笠井  亮君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

平成二十年一月二十五日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 伊藤 達也君 理事 遠藤 利明君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 中山 成彬君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      あかま二郎君    赤池 誠章君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      岩永 峯一君    臼井日出男君

      江藤  拓君    越智 隆雄君

      大野 功統君    金子 一義君

      亀岡 偉民君    倉田 雅年君

      小池百合子君    小坂 憲次君

      佐藤 剛男君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    菅原 一秀君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      中馬 弘毅君    長勢 甚遠君

      西本 勝子君    野田  毅君

      深谷 隆司君    増原 義剛君

      松本 洋平君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    笹木 竜三君

      武正 公一君    中川 正春君

      原口 一博君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松本 剛明君

      山井 和則君    笠  浩史君

      渡部 恒三君    赤松 正雄君

      上田  勇君    江田 康幸君

      笠井  亮君    佐々木憲昭君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   増田 寛也君

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   外務大臣         高村 正彦君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         鴨下 一郎君

   防衛大臣         石破  茂君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)

   (食品安全担当)     泉  信也君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (規制改革担当)

   (国民生活担当)

   (科学技術政策担当)   岸田 文雄君

   国務大臣

   (金融担当)

   (行政改革担当)     渡辺 喜美君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   上川 陽子君

   内閣官房副長官      大野 松茂君

   内閣府副大臣       木村  勉君

   財務副大臣        森山  裕君

   文部科学副大臣      松浪健四郎君

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   国土交通副大臣      平井たくや君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十五日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     西本 勝子君

  尾身 幸次君     あかま二郎君

  河村 建夫君     松本 洋平君

  坂本 剛二君     赤池 誠章君

  江田 康幸君     上田  勇君

  笠井  亮君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     亀岡 偉民君

  赤池 誠章君     越智 隆雄君

  西本 勝子君     臼井日出男君

  松本 洋平君     江藤  拓君

  上田  勇君     江田 康幸君

  佐々木憲昭君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     河村 建夫君

  越智 隆雄君     坂本 剛二君

  亀岡 偉民君     尾身 幸次君

    ―――――――――――――

一月十八日

 平成十九年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

 平成十九年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)

 予算の実施状況に関する件(経済・金融問題)


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     ――――◇―――――

逢沢委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

逢沢委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、経済・金融問題についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。

 通常国会冒頭の予算委員会のトップバッターとして立ちますことを大変光栄に存じておりますが、これも、最初に集中審議という形になったことでありまして、まさに今回の世界同時株安が日本経済に与える影響が甚大であるという認識のもとで開かれたものと思いますので、その点についてしっかり議論をさせていただきたいと思います。

 また、きょうは私の尊敬する日本銀行の福井総裁がおいででありますので、いろいろ政策については私も批判する立場が強いわけでありますが、総裁もいよいよ任期があと二カ月ということになってまいりましたので、ある意味で、福井総裁の金融政策運営、過去五年間の総括のようなことも少し議論を深めてまいりたいなというふうに思っているわけであります。

 まず、最初に財務大臣と経済財政担当大臣にお伺いいたしますけれども、今回の世界同時株安、一月二十二日、アメリカでは二十一日でありますが、株が暴落いたしました。これが世界的にも、中国、インドにも波及をいたしているわけでありますが、日本の株価も七百五十二円暴落したわけであります。日本の株価は年初来じりじりと下げていたわけでありますが、二十二日にニューヨーク株の暴落を受けまして暴落をしたわけであります。その後、ちょっと戻っておりますが、十分に戻り切れてない状況であります。

 この世界同時株安というものについて、どのように認識しておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。

額賀国務大臣 株価はさまざまな経済要因から動いているものと思っておりますけれども、基本的には、米国のサブプライム問題から端を発した金融不安、あるいはまた、そういう金融不安が米国を初めとする先進各国あるいは新興国の実体経済にどういう影響を及ぼしていくのか、そういう中で、特に世界経済の中で比重の大きい米国において実体経済の下振れリスクの懸念もありまして、世界的な株安が進行してきたということはよく承知をしておるところであります。

 その中で、ブッシュ大統領もいち早く経済対策を講じ、今、議会と折衝をしているということを聞いておりますし、同時に、FRBにおいても、先般、〇・七五%の大幅な金利を下げて対策を早急に打っているということでございますので、これが米国経済や世界の経済によい影響を与えることを期待したいというふうに思っております。

 特に、我が国においては、若干、住宅建設の着工件数の減少などによりまして、一部弱い部門も指摘されたわけでございますけれども、企業部門においては底がたい動きをしておりますし、大局から見れば景気回復は続いていくものと見ております。

 と同時に、我が国の金融市場では、金融機関においては、サブプライム問題の影響が少ない、限定されているということもありまして、そんなに深刻な影響を与えていないということでございます。

 引き続いて、私どもは、金融市場、世界の経済動向、こういうものをしっかりと注視しながら見守っていきたいというふうに思っております。

大田国務大臣 最近の株安につきましては、今財務大臣から答弁ありましたように、アメリカのサブプライム住宅ローン問題に端を発する金融機関の損失拡大、それからアメリカ経済の減速懸念を反映したものと受けとめております。

 これも財務大臣から答弁ありましたように、日本に関しては、サブプライム住宅ローン問題の直接的な影響は限定的ですけれども、やはり株価がこれだけ下落するということは、企業のマインド、消費者マインドに悪影響を与えることが懸念されます。それから、今はまだ明示的にあらわれておりませんが、株という資産の価格が下がることによって、消費にマイナスの影響を与えることも懸念されます。それから、アメリカの株安がドル安につながり、それは円高ということですので、これが企業収益に与える影響も十分注意して見ていきたいと思います。

 特に、年末からことしにかけての株価の下落は、アメリカの実体経済、アメリカの経済の下振れリスクが高まったことを反映していると見られますので、このアメリカの経済が、特にその消費がこれからどういう状態になっていくのか、そうなった場合にそれが日本にどう波及してくるのかは十分に注意して見てまいりたいと思っております。

山本(幸)委員 私は、ちょっと危機感が足りないんじゃないかなという感じがしてならないんですね。

 それは、今両大臣とも、これはサブプライムローンに端を発した話だけれども、アメリカ経済の下振れリスクが高まったことによるんじゃないかということですが、私の解釈は、アメリカ経済は後退局面に入ったということがはっきりした、リスクじゃないんだ、下振れリスクがあるということじゃない、もうリスクそのものが顕在化したということがはっきりしたということを示したんじゃないかと思うんですね。

 そのことは、これは日本経済に甚大な影響を与えるはずなんです。なぜならば、日本経済というのは、今も景気回復は続くという認識を示されたんですが、私は個人的には、もう景気は後退局面に入っていると思っているんですね。それは後でゆっくり議論したいと思いますが。

 日本経済がいいと言っているのは、輸出がいいだけですよ。輸出と輸出関連の生産、設備投資がいいだけで、ほかの内需はよくありませんよ。これは地方に行ったらよくわかりますよね。皆さん各議員は、地方に戻って地方の中小企業、零細企業の状況を聞いていれば、極めて深刻な状況にあると私は認識している。

 そのもとである輸出先の大きなアメリカ経済がもう後退しちゃうんですよ。一時期、デカップリング理論というのがありまして、アメリカがだめなら中国、インドがあるわというような話がありましたが、中国だってアメリカに輸出してもうけているわけで、だから中国株もインド株も暴落したわけですよね。

 したがって、景気回復が続くという前提の輸出のところが極めて心配になってきた。それはもう将来のリスクじゃなくて顕在化した事実だというように私は認識しているので、ここはもう少し政府としても危機感を持って当たるべきじゃないかなという認識に立っているんです。

 そこで、ではどうしたらいいかということについて少しお伺いいたしますけれども、そういう世界同時株安を受けて日本経済に暗雲が立ち込めてきたということを受けて、では、財政、税制面で何かできるのかということがまずあるわけでありますが、この点については、財務大臣、いかがですか。

額賀国務大臣 今、山本先生の御指摘については、共有できる部分もたくさんあるわけでございますけれども、財政、税制面で何ができるのかということでございます。

 最近の原油高とかそれから緊急対策において、今補正予算について国会に提案をさせていただいておりますし、また、二十年度の予算についても国会に提出をさせていただきまして、我々は、できるだけこの両案が成立できるように、従来とは違って法案提出も一週間以上早目に出させていただいたりしておるわけでありますから、最大の対策は、この十九年度の補正予算、そして二十年度の予算を年度内に成立させていただくことではないかというふうに思っております。

 あるいは、国民の皆さん方、あるいはアジアの国々の皆さん、世界の皆さん方も、日本の国会でこういう重大な、景気や経済に影響を及ぼす予算が粛々と審議をされて成立されていくかどうかということは、重要なポイントであるというふうに思っております。

 それから同時に、株式市場においても最近は外国人の投資家が多くを占めるようになってきております。皆さん方が注目しておるのは、日本のそういう政治の動き、あるいはまた経済面において財政再建というものがどういうふうに展開をしていくのか。それは予算の中できっちりと我々も財政再建というものは重要な課題であるというふうに位置づけておるわけでありますから、そういう意味で、歳出改革を行い、財政再建がしっかりとなされていくのかどうか、そういうことがやはり国会の中できちっと審議をされて、成立をさせていただくことが、私は大きなメッセージになるだろうというふうに思っております。

 と同時に、さまざまな、確かに金融の問題だとか経済の問題だとかありますけれども、この二月の上旬にはG7の財務大臣・中央銀行総裁会議があります。そういう中でしっかりと議論をして、国際的な協調、そういったものがメッセージとして発信できることが、私は世界に対するいいメッセージになるのではないかというふうに思っております。

山本(幸)委員 おっしゃるとおり、財政、税制の面からいえば、とにかく今出ている補正予算、本予算、関連法案を早急に成立させることが最大の対策になるわけですね。これを本気で我々もやらなきゃいかぬし、特にこの世界同時株安の状況を考えれば、もう一日も早く成立させなければいけないな、そして実施させなければいけないなというふうに思っております。

 その中で、今懸念されているのは、関連法案が年度内に成立しないおそれがある、特に税法ですが。その場合、例えば道路特定財源の問題もございます。

 財務大臣にお伺いしたいのは、では、道路特定財源が年度内に成立しなかったらどういうことになるのかということ、それから、税法には海外関係の国際課税の話がありまして、オフショア勘定で、つまり、外国の投資家が日本に投資する際の利子課税の特例の規定もあるわけですが、これが年度内に成立しなかったら、一斉に外国人がその前に引き揚げちゃうというおそれもあるわけですね。そういうことについて、もし年度内に税法が成立しなかったらどういうことになるのか、少し御説明をお願いします。

額賀国務大臣 これは山本委員御指摘のとおり、さまざまな税法も出させていただいておりますけれども、特に道路特定財源というのは、私は国民の皆さん方も大きな関心を持っているテーマであるというふうに思っております。

 その中で、この道路特定財源がもし成立できないというようなことになった場合はどういうふうになるかということでございますけれども、仮に年度内にこの法案が成立しなければ、歳入面で大きな穴をあけるということになると同時に、国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼすということであります。例えば、国、地方とも、これは合わせて二・六兆円の歳入減となりますし、道路整備に大きな影響を及ぼすことになるわけでございます。

 道路というのは、何も東京等都市部だけではなくて地方においても、これは強い要望があって我々は中期計画の中でこのガソリン税の暫定税率を維持していくことについてお願いをしたわけでございますから、これは、そういう道路をきちっとつくっていく上に当たって、恐らく新規事業はなくなってしまうとか、あるいはまた、今まで継続していたものを中断しなければならなくなるとか、さまざまな影響を及ぼすことになると思います。

 と同時に、暫定税率がもし成立しないようなことが起これば、末端のガソリン販売で混乱を来すおそれがある。これは、仕入れを手控えたり、あるいはまた買い控えをしたりとか、あるいはまた買いに殺到したりとか、そういう混乱を国民の間に起こしていいのかということがあります。

 あるいはまた、世界的に環境問題が今注視されている中で、国際的には、やはりこの化石燃料、燃料に対する課税というものがどうなっていくかということは環境問題に大きな影響を及ぼすという認識をしておりますので、その点についても我々はよく注意をしていかなければならないというふうに思っております。

 それから、山本委員御指摘のいわゆるオフショア勘定の非課税につきましては、これがもし成立しなければ非課税措置が失効してしまうわけでございまして、外国から引っ張ってきている二十数兆円の資金が滞ってしまうおそれがあるし、そうすると、企業の資金調達や投資等々について重大な影響力を及ぼすし、日本企業の競争力が損なわれていく、そういうふうに思っております。

 それから、マイホームなどの土地の売買を行った場合の登記にかかわる税負担が大きく増大していくことになりますし、その意味におきましては、国民生活とか経済活動に重大な影響を及ぼしていくことになります。

 その意味では、やはり国民の皆さん方に、ぜひ、生活の混乱を来さないということ、それから経済活動に混乱を起こすことがないようにするということ、そして、この景気を持続的に成長させていくための一つの基本的な基盤が道路であるということ、そういうことによく注目をしていただきまして、賛同を得られる、理解を得られるようにお願いをしたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 おっしゃるように、これは、年度内に予算そして関連法案が成立しないと、単に道路だけじゃなくて、国民生活、福祉あるいは生活等に重大な影響を与えるわけですね。これはぜひ野党の皆さん方も御理解を賜りたいなというふうに思っているわけであります。

 それでは次に、これから金融政策の面にちょっと重点を移していきたいと思いますが、日本銀行が、二十二日の政策審議会で、金利水準の、現行水準を維持するということを決めました。決めてすぐ後、アメリカのFRBは緊急理事会を開いて、〇・七五%政策金利を大幅に引き下げるという決定をいたしました。日本銀行の皆さん方も驚いたんじゃないかと思いますけれども。カナダの中銀も〇・二五%引き下げました。ECBは、インフレの懸念があるということでちょっと慎重姿勢をとっておりますが、しかし、EUの首脳は集まって、これは大変だというような意思疎通をしているわけですね。イギリスは下げるかもしれないというふうに言われております。

 こういうことを踏まえると、私は、この緊急事態、これだけの株の暴落が起こったというような状況、しかもアメリカ経済がもう減速がはっきりしてきた、そのことの日本経済に与える影響、そういうことを考えると、日銀も協調して利下げをすべきだったんじゃないかなという意見を持っているわけであります。

 この点について、どうして日銀は、例えばFRBが下げたらすぐにやるとかいうようなことに踏み切らなかったのか、その点、日銀総裁、よろしくお願いします。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 このところ、米国経済を中心に経済全般につきまして不確実性が強まっている、それからグローバルな金融資本市場におきまして不安定性が高まっている、こういう状況にあることは各国中央銀行共通の認識でございます。

 したがいまして、それぞれの国の中央銀行にとりまして、金融政策の運営を一層適切に行わなきゃいけない、こういう意識もしっかりと共有しているところでございます。

 今委員の方から、協調して利下げという言葉をお使いになられましたので、経済のグローバル化が進展する中での、各国中央銀行がどういう形で具体的に協調して行動するかということを簡単に御説明申し上げたいと思います。

 経済のグローバル化が進展する中では、国内の経済、物価情勢をそれぞれの国の中央銀行が判断いたします場合に、海外の経済や金融市場の動向の影響がますます重要となってきておりますので、そこを無視して判断することはできない。それから同時に、それぞれの国の中央銀行が金融政策上の行動をいたしました場合に、これは金融市場や金融機関行動を通じて効果を発揮するものでありますので、各国の金融政策がグローバルな金融市場を通じてお互いに他の国にも影響を与えるということが生じます。

 したがいまして、各国の中央銀行は、それぞれの経済、金融の情勢や政策運営の考え方について、あるいはグローバルな環境の変化について、常に密接な意見交換を行って認識の共有を図っているということでございます。

 そして、その上で、つまり、海外の情勢、それぞれの国の共通する事情あるいは異なる事情というのを十分踏まえました上で、各国の中央銀行は、自国の経済、物価情勢をフォワードルッキングに見通して、その安定のために最も適切と思える政策を行っていく、これが世界の中央銀行の共通認識でございます。

 昨年の夏以降、市場に対して流動性を供給する、厚目の流動性を供給するということで協調行動をしてまいりましたけれども、この場合にも、認識は共有、ただし、実際の流動性の供給の仕方は、それぞれの国の経済及び特に金融市場の動向、それから中央銀行がそれぞれ持っております道具立ての相違というふうなことが十分勘案されて、それぞれ独自の性格を持った流動性供給を行ってきて、結果として成果を上げている、こういうことでございます。

 金利政策につきましても全く同様でありまして、それぞれの国の経済、物価の先行き見通しがどうかということを、仮に危機感が募る中でありましても、そこは冷静に見きわめて、的確な政策を選択するということでございます。

 日本の場合には、当面、経済は減速し、消費者物価指数は上昇率を高める、こういうことでございますけれども、私どもの先行き見通しは、来年度に向けましては物価安定のもとで緩やかな拡大を続ける蓋然性が高いと判断しておりまして、そうした分析及び判断に基づいて、当面は、現在の緩和的な金融環境を提供することによって、先行き安定した経済の姿を引き続き実現していけると強い確信のもとに金融政策を行っているということでございます。

山本(幸)委員 私がなぜ協調して思い切った金融緩和、金利引き下げに踏み切らなければならないかと言うのは、それは、金融政策と資産価格の暴落との関係についての一つの理論に基づいているわけですね。

 これは、かつてアメリカの連邦準備理事会、FRBが、日本のデフレ政策の失敗を研究いたしまして、そして論文を出したんですよね。

 その結論は、金融政策というものは、資産価格の暴騰に対しては何もやってはいかぬ、これをつぶそうとしてやり過ぎると、必ず失敗して日本のようなデフレに突入してしまうよ、逆に資産価格が暴落したときには、間髪置かず、思い切った流動性の供給、金融緩和を徹底してやるべきだ、それが日本のようなデフレに陥らない最善の策ですよという報告を出しまして、これはもう経済学会で確立した理論になっていると私は思うんですね。

 それに対して、従来から日本銀行は、どうも反対のことをやっているんじゃないかというのが私の議論なんですね。今までの日銀の政策委員会の議論を見ますと、まだありもしないバブルがあるかもしれないというような話をして、しきりに金利は引き上げるべきだ、引き上げるべきだという議論を続けてきた。これはまさに失敗を繰り返すような話ですし、そして、これだけの資産価格が暴落したときに何の手も打たないというのは、これはやはり金融政策の運営方針としておかしいんじゃないかというのが私の議論であります。

 今、ダボス会議が行われておりまして、総理も今夕から出発されるわけでありますが、その席で、アメリカのコロンビア大学の、ノーベル賞をもらったジョセフ・スティグリッツ教授がこんなことを言っていますね。この世界株安の状況を見て、誤った経済政策を目の当たりにした、中央銀行がインフレ退治に集中する余り米住宅バブルの崩壊を予見できなかったという話をしておりまして、そして、こういう場合には協調的な対応や指導力が必要なんだという、経営者の電子投票の結果が出ていますが、約四割強がみんなそう言っている。

 それは、どうして協調的にやらなきゃいけないかというと、お金というのは世界じゅうを瞬時に動いているわけですよね。これが、当局の間でしっかりした認識の共有と協調がなされないと、そこをついてもうけるんですよ。対応がおくれたところは、ああ、それではそのときは、その国の株下がるなと思ったときにはもう先に売っちゃって、もうける機会を与えるわけですね。これがまさに投機資金の面目躍如たるところで、そういうことが起こっているわけですよ。だから国際協調が非常に重要だと。

 福井総裁は、一生懸命、協調している、協調していると言っているんですが、従来からそういう方向で動いてきたと私には到底思えない。海外のエコノミストと話をしても、世界の常識は日銀には通じないんだと言っているわけですよね。そのことはもう少し詳しくやりたいと思いますが。

 そういう意味で、私はまさに資産価格暴落と金融政策というのはそういうふうにあるべきだと思うものですから、これはまだ遅くない、G8ですか、財務大臣・中央銀行総裁会議が二月の九日に東京で開かれるということでありますが、それまでの間にやらないと意味がない。もう大体、市場は日銀の金利下げを織り込み出していますからね、夏ぐらいにはもうある、追い込まれると。嫌だ嫌だと言っても、追い込まれる。そのときにやったって意味がないんですよ。もう市場は何も評価もしない。そうじゃない、先見性の明を持って決断して断固やるところに市場は評価するわけでありまして、そのタイミングはもうわずかしかない。私は、福井総裁、おやめになる前にそれだけの決断をしていただけるものと期待しておりますけれども。

 この点について、渡辺大臣、金融担当大臣として、世界株安が金融機関に与える影響を踏まえて、そして金融政策としてはどういうことをやるべきだというふうにお考えか、お伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 日本銀行においては、政府と一体となって適切な金融政策を行っていただいているものと思っております。

 私の所管は、いろいろな金利変動が、一般的に申し上げますと、金融機関の保有資産の価格変動を通じて金融機関の経営の健全性にさまざまな影響を与えることがございますので、そういった観点から金利の動向については着目をいたしております。

 御案内のように、日本の株式市場は、売買のシェアが外人さんが非常に多くなっているんですね。大体、今でいきますと六割以上が外人さん。この投資家の方々は、円ベースで物を見ているわけではございません。ドルベースで物を見ていることが非常に多うございます。

 そういう観点から、ドルベースの日経平均というものをとってみますと、日本銀行が量的緩和解除を行いましたのが〇六年の三月でございます。そこからしばらくは株価は上昇していったのでございますけれども、〇六年の五月十日ぐらいに大幅な下落が始まりました。そのころ何が起こっていたかというと、金融引き締め観測が出てきたんですね。そこからずっと下落が続きまして、七月十四日にいわゆるゼロ金利解除というのが起こりました。このあたりになりますと、ダウ平均株価とドルベースの日経平均は明らかに乖離を始めるわけでございます。

 こうしたことから見ますと、日本銀行においては適切に金融政策は行っていただいているものと思いますが、どういう影響があったのかなという懸念を持っているところでございます。

山本(幸)委員 政府の一員としては奥歯に物の挟まったような言い方しかできないのかもしれませんが、渡辺大臣は、個人的には金利は引き下げるべきだ、金融政策じゃないんだというふうに思っておられるんだと推測いたしております。

 おっしゃるように、政府から日銀は独立という建前で動いていますので、それはそういうことだと思いますが、国会から独立なんてないんですからね、日本銀行は。国会としては厳しく追及いたしますので、よろしくお願いします。

 では、どうして日本銀行は金利引き下げというようなことに踏み切らないのかというところのもともとの原因というかベースですけれども、それは、経済、景気見通しというのは、いや、まだ日本経済は回復しているんだ、したがって、そんなことをやる必要はないんだというところがベースにあるように思うんですね、これは政府、内閣府についてもそうですが。ここが、私と内閣府と日銀と、根本的に違う。

 私は、日本経済はもう既に後退局面に入っていると見ている。しかし、何回そう言っても、内閣府も、リスクはあるけれども、いや、まだ回復していますと。日本銀行も、いや、まだ回復して、生産、所得、支出の好循環が続いているんですよと言っているんですね。

 では、どっちが正しいんだということについて少し議論をしたいと思います。

 まず、政府も日銀も、これまで経済見通しをことごとく誤ってきた。特にこのところ、常に楽観的過ぎた。でも、実際は、ぐっと下振れした水準に事実として過ぎてきたわけですね。

 そこで、まず大田大臣にお伺いします。

 昨年、経済見通しを改定いたしました。二〇〇七年度、今年度について、実質成長を二・〇%、名目で二・二%、もう今年度中にデフレは明らかに脱却していたはずなんですね。しかし、そうじゃない。その結果、十二月の見通しで、実質二・〇を一・三%に引き下げました。名目を二・二%から〇・八%に引き下げました。これは情けない話ですよ。

 どういう理由でそういうふうになったんですか。

大田国務大臣 平成十九年度の経済見通しにつきましては、御指摘のように、実質GDP成長率を二・〇%から一・三%に、名目につきましては、二・二%から〇・八%に引き下げております。

 その理由につきまして、最大の要因は、建築基準法が厳格化されたということの要因です。このこと自体はもちろん必要なんですけれども、準備不足もありまして、住宅投資が大きく落ち込んでおります。実質成長率が〇・七%ポイント引き下げられたうちの〇・六%ポイントについては、この改正建築基準法導入の混乱によるものと見ております。

 見通しが常に甘かったという御指摘を受けましたけれども、実質成長率につきましては、平成十八年度も、当初一・九と見込んでおりましたのが、実績は二・三%でした。つまり、上がったということですね。それから、平成十九年度につきましては、改正建築基準法の影響がなければ二・〇%が一・九%だったということで、おおむね達成しているんだと思います。

 恐らく、御指摘の点は、名目成長率が下がっていて、GDPデフレーターが依然としてマイナスにあるということだろうと思います。名目成長率につきましては、改正建築基準法の影響に加えて、原油価格が想定以上に上昇したということがございます。輸入価格が上昇するということは、GDPデフレーターを算定するときはマイナスに引いていく要因になりますので、輸入価格が上がったということが大きい要因になっております。

 それから、もう一つ難しい問題は、賃金が伸び悩んでいるということでございます。賃金が伸び悩んでいてやはり消費に弱さがあるということが、名目成長率の下落の要因になっております。これにつきましては、例えば、最低賃金を引き上げるという法改正をする、あるいは来年度から職業訓練を本格的にさらに充実させていくといったようなこととあわせて、やはり景気回復を長く持続させることが必要だと考えておりますので、十分に注意しながら経済運営を行ってまいりたいと思います。

山本(幸)委員 その理由は建築基準法改正だというんですが、私は、確かに建築基準法改正の影響はあったかもしれないし、これは大失態ですよね、行政としては。私はそこのところの責任はしっかりしなきゃいかぬと思っていますが。ただ、住宅の販売を見ますと、もう既に去年の初めから下がり出しているんですよね。それに追い打ちをかけたのが建築基準法改正であって、単にこれだけで、住宅が下がったから説明できますというのは、私はちょっとそこは甘いんじゃないかなという気がしているんですね。

 それから、おっしゃったように、名目がいつまでも実質を上回らないというところが最大の問題でありまして、まさにデフレが依然として続いているということなんですが、これを何とかしなければ、もう話にならない。賃金もそれは上がりませんよ、あるいは税収も上がりませんよね。そこに最大の問題がある。

 日本銀行にお伺いします。

 日本銀行も改定をいたしましたが、実は日本銀行は、はっきりしているのは、もう常に下振れ改定ばかりやってきたわけですね。

 展望レポートというのがありますが、二〇〇七年、昨年の四月、二〇〇七年度の成長率について、実質は二・一と見ていたのが、十月には一・八に落ちた。どうもことしの一月の見直しではもっと下がると言っていますね。それから、名目も二・一から二・一になって、これまた下がりますよというように、常に下振れ改定をしている。

 一月に見直した中間評価というのがあるんですが、これは何を言っているのかよくわからない。それによると、一・八から下がっていることは確かなんだけれども、住宅投資の減少が長引いていることなどから幾分下振れ、潜在成長率をやや下回る水準だと。それから名目についても、住宅投資が次第に回復に向かい、見通しにおおむね沿って、潜在成長率を、失礼しました、これは二〇〇八年の、二・一、二・一というのは二〇〇八年ですね。

 ちょっとそこで総裁にお伺いしますが、この潜在成長率をやや下回る水準というのは何%ですか。

福井参考人 間もなく終わります二〇〇七年度の経済につきまして、先般の中間評価で若干の下方修正をいたしました。その理由は、今大田大臣から御説明がありましたとおり、住宅投資の減少が長引いているということがほとんどの理由でございます。そして、潜在成長率をやや下回る水準になるだろうというふうに見たわけでありますが、私どもは、潜在成長率というのは一・五から二の間ぐらいというふうに見ております。したがいまして、それをやや下回る水準というのは、やはり一%台前半というところを意識しているというふうに御理解いただければと思います。

山本(幸)委員 一・五以下であるということははっきりいたしましたが、それじゃ、政府の一・三とどっちが上ですか。

福井参考人 私ども、厳密な数字の詰めは四月、十月の展望レポートのときに行って、そのときは、政策委員会のメンバーの多数の考えるところという形で、幅を持って数字を出しております。一月と七月の中間レビューのときには必ずしもそういう数字の詰めは行っておりませんが、おおむね政府の数字の近傍にあるというふうにお考えいただいて間違いないというふうに思います。

山本(幸)委員 では、政府との近傍だと一・三というふうにちょっと理解しておきますよ。

 そこで、じゃ、一・三というのはどういう数字なんだということなんですよ。私は、政府の言っている一・三というのは非常に問題がある数字だと。どうしてかというと、経済成長率には、げたというのがありまして、一―三月の数字が高いと、その年度ゼロ%でもどれだけ成長率が出てくるという数字があるんですね。これをげたというんですが。今年度の、二〇〇七年度のげたというのは一・四ですよ。つまり、本来、その年度にゼロ%成長でも一・四%成長しなきゃいけないのに、政府も日銀も一・三と言っているんですよ。

 これはマイナス成長じゃないですか、実体は。そうじゃないんですか、大田大臣。

大田国務大臣 当初の予定よりも住宅建設の大きい落ち込みがございましたので、後半に成長率が下落してきているというのは事実でございます。

山本(幸)委員 日銀も、実質はマイナス成長だとお認めになりますか。

福井参考人 日本銀行が景気を見ておりますときに一番大事な点は、生産、所得、支出、これの前向きの循環がきちんと働き続けているかということでございます。成長率は、時々、特殊な要因もまざってアップダウンいたします。そのことも重視いたしますが、基本は、そのベースにある経済のリズムがきちんと前向きに動いているか。

 現在は、瞬間風速は確かにおっしゃるとおりかなり低くなっておりますけれども、基調的に、生産、所得、支出の前向きの循環メカニズムは途切れていない。したがいまして、私どもは、二〇〇八年度にかけまして、ショックがこれ以上強まって、日本経済が受けとめられないぐらいの強いショックが来るということでない限りは、二〇〇八年度は改めて潜在成長能力を上回るところにゆっくりと戻っていく可能性が高い、こういうふうに見ております。

 以前、ゼロ成長、マイナス成長のときは、明らかに生産、所得、支出の循環メカニズムはネガティブでございました。落ち込む方向で経済が動いていた。ここの基本的な経済の動きの姿ということをとらえる努力をいたしております。

山本(幸)委員 さあそこで、非常に核心に入っていきますけれども。私は、日本経済の実勢はマイナス成長の状況にあるのに、それで危機感を持たないでいいのかと言っているんです。しかも、いいと言われた前提であったアメリカ経済がはっきりとおかしくなってきたんですよ。それでも危機感を持たないのは何でだと。

 今、総裁は、いや、それでも、実勢はマイナスでも、私は十―十二はマイナスになると思いますよ、実勢はマイナスでも生産、所得、支出のバランスがいいからいいんだというふうにおっしゃいましたね。

 ちょっと時間の関係があるので、私の方から読ませていただいて、確認いたしますけれども、日銀総裁は、二十二日の政策決定会合の後の記者会見で、こういうことを言っておられますね。国内の民間需要は一言で言えば増加しているんだ、そして、この経済のバランスが目先崩れるリスクは少ない、それから、まとめるとということで、今おっしゃったように、日本経済は生産、所得、支出の好循環のメカニズムが基本的に維持される中で、先行き、物価安定のもとでの息の長い成長を続けていく蓋然性が引き続き高いと判断している。

 そういう理解を今も持っておられるということでいいですね、ちょっと確認したいんです。

福井参考人 私が申し上げましたのは、海外経済、国際金融市場の不安定性、これがもたらすリスク、それから原油価格、商品価格、食料品価格等の高騰ないし高どまりがもたらすリスク、こういったものは十分念頭に置きます。その上で、蓋然性がなお高いのは、今おっしゃいましたとおり、生産、所得、支出の前向きな循環メカニズムがきちんと働いて、日本経済のそういう意味でのレジリエンシーといいますか粘り強さというものは、かつてに比べれば、かなり高まっているということを申し上げたわけでございます。

山本(幸)委員 そこで、話を進めますが、確かに生産はいい。これは、輸出がいいですから、生産の数字はいいんですよ、生産、設備。それは、輸出関連がいいんだ、特に。だけれども、中小企業、零細企業の内需のところはそれほどよくない。それから、所得、本当にいいんですか。ユニット・レーバー・コストは下がっていますよ、一人当たりの賃金というのは下がっていますよ。だけれども、いいんだと。それは、雇用者がふえているからいいんだと言っているんですよね。全体として数字を出せば、雇用者がふえた分だけふえる、そういう考えでいいのかというのが私の議論。

 それは、パートがふえれば雇用者はふえますよ。パートをどんどんふやしていって雇用者がふえて、それを掛けた数字が全体として高いからいいんだ。それは、総理が言っておられる生活者、消費者の立場に立った議論じゃないんですよ。一人当たりの賃金がしっかり上がるという状況ができなければ、日本経済は強くならない。本当の生活者、消費者のためにはならないんですよ。

 一般の人は、むしろ苦しくなったと思っているんですよ。だけれども、日銀総裁は、パートや非正規雇用者がふえて数字が上がっているからいいんだ、そういうふうにおっしゃるんですか。

福井参考人 日本経済の隅々まで冷静に分析しております我々の立場から、山本先生がおっしゃるほど、日本経済すべてよしというふうなことを申し上げたことは一度もございません。

 全体として前向きの好循環を働き続けているけれども、これを維持していくために、政策的な工夫、努力は今後とも非常に大切だということを申し上げておりますし、弱点の一つである家計への循環メカニズムということになりますと、雇用がふえて、全体としての雇用者所得が増加していることによって消費の底がたさは支えていますけれども、一人当たり名目賃金の弱さというものはしっかり存在している。中小企業の業況ともこれは深く絡んだ問題だということは、強く認識いたしております。

 これが経済の前向きの循環メカニズムにダメージを及ぼすようなものになるかどうかというふうなことも含めて、私どもは非常に注意深くここは見守ってきておりますし、今後もそこは重要な視点だというふうに思っています。

山本(幸)委員 まさに、私が言っているように、まず所得の面の循環メカニズムが働いていないということを今言ったんじゃないですか。それは、中小企業、零細企業、よくありませんよ。日銀短観でさえ、昨年の暮れのものは、もう中小企業の業況指数はどんどん下がってきたんですね。

 日銀短観に載るのは資本金二千万以上の、地方の我々から見れば大企業ですよ。しかし、それに載らない田舎の中小零細企業の人たちの数字というのは、日銀はつかんでいないんですよね。しかし、それは、実態を見ると、中小企業庁はとっていますよ。それを見ると、おととしの十二月をピークに、去年一年間ずっと下がり続けているんですよ。

 つまり、生活者、消費者というのは、そこのところなんです。そこの人たちは、もう去年の初めから景気が悪くなっていて、賃金も下がっている、そういう気持ちでいるんですよ。全然所得の好循環なんかありませんよ、私に言わせれば。

 それからもう一つ、次。では、支出、消費。消費がいいというんですが、どこの消費がいいんだと。消費、いろいろありますよ。家計消費状況調査、支出総額、十一月、マイナス〇・六%、四カ月ぶりに減少。家電販売、消費者態度指数の推移、暴落していますよ。乗用車販売、落ちています。スーパー、百貨店売り上げ、落ちています。景気ウオッチャー調査、激減していますよ。個人の資金需要、住宅ローン、これもマイナス。消費者心理、四年半ぶり低水準。消費、支出の好循環、どこがいいんですか。

福井参考人 国内需要の項目であります設備投資と比べますと、個人消費に力強さが欠けている。だけれども、これが落ち込んでいるといいますか底がたいという状況で推移しておりまして、これは雇用の増加、雇用者所得の増加がこれを裏打ちしているということでございます。

 名目賃金の弱さということが個人消費をいま一段押し上げる力を欠いている、その点は注意深く見ている。それが各種の販売統計あるいは消費者マインドにも幾らか影響している。特に最近は、原油価格の高騰、身の回り品の価格の高騰というのが消費者マインドにかなりのダメージを与えている、このことも私どもは認識をいたしております。

山本(幸)委員 私の質問に答えてくださいよ。私は、これとこれとこれとが悪いよと。消費の数字でいいところなんかないんだ。どこがいいんですか。どこが底がたいんですか。証明してください。

福井参考人 私どもは、消費がどんどん落ち込んでいるというふうには思っておりません。緩やかな増加ないし底がたいというふうなことで、GDP全体を大きく消費が足を引っ張っているというふうには判断いたしておりません。

山本(幸)委員 全然答えてないじゃないですか。私は全部、この消費のどれとどれが悪いと言っているんですよ、どこが底がたいんですかと。それを示さなきゃ答えにならないですよ。どうぞ。

福井参考人 最近時点の百貨店売り上げとかあるいはスーパーの売り上げ等々、比較的、いい数字とは申しませんけれども、そんなに極端に悪い数字が出ているわけではありません。それから、GDPに対する個人消費の寄与も決してマイナスというふうにはなっておりません。

山本(幸)委員 百貨店売り上げ、下がっているのに、それほど大したことはない。要するに、何か希望的観測じゃないですか、それは。私は納得できないですね。つまり、GDPベースのものは少し問題があるんですよ。そうではなくて、生活者、消費者の実態のところは悪くなっているんです、消費も。だから、私は、日銀が言っている生産、所得、支出の好循環というのはないんだと。ない。間違っています。

 したがって、金融政策は、こういう状況になったら引き下げるなり変えなきゃおかしいというのが私の主張であります。

 もう時間がなくなってまいりましたので、最後に総理に、そういうことを踏まえてお伺いしたいんですが、次期日銀総裁の人事というのがそろそろございますが、こういうことをぜひ重視してもらいたいと思うんですね。GDPベースの数字だけ見て、机上の数字だけ見て日本銀行総裁が政策決定をされては困るんですね。生活者、消費者の立場に立った判断をしてくれる人じゃないと私は困ると思います。

 そういう意味で、ぜひ次期総裁は、要するに、私は日銀理論と言っているんだけれども、日銀理論にとらわれないような、しかもリーダーシップを持って、生活者、消費者のためを思って、しかも、日本経済のことを思ったら、名目成長率を上げなきゃだめですよ。それができる人にぜひやってもらわなきゃならないと考えていますけれども、総理、いかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 これから日銀総裁を決める、そういう段階でございますから、余り示唆的なことを申し上げるわけにいかない、今この段階で。それはもうお許しいただきたい。ただ、今こういうような、世界同時株安とかいったような大きな問題が生じてきているということで、その中における日銀の役割というのは非常に大きいだろうというふうに私は思います。ですから、その役割にかなう人物でなければいけないだろうというように思いますので、そういうことを考えながら慎重に決めるということになります。

 非常に原則的に申し上げれば、すぐれた識見と、そして経験を有する方ということで、いい日銀総裁が誕生することを私も期待いたしております。

山本(幸)委員 ぜひ立派な方を選んでいただきたいと思いまして、それで質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田委員 どうもおはようございます。公明党の上田勇でございます。

 きょうは、ことしの予算委員会の初日に質問の機会をいただきまして、大変光栄に思っております。補正予算そして本予算の審議が始まる前にこうした集中審議が開催されるというのは、これまで余り前例のなかったことではないかというふうに思いますが、それは、私は、そうしたことにもかかわらず、やはりこの通常国会で最優先の議題というのは、この予算案の、十九年度補正予算そして二十年度の予算案の審議である、そのことには変わりがないんだというふうに思っております。十分な審議を尽くした上で年度内に成立をさせていくということが重要な課題だというふうに考えております。

 この予算案の中には、国民生活や、また経済活動に直接かかわってくるようなさまざまな施策を実行していくための経費が計上されているわけでありますし、また、私も、これまで取り組んできたさまざまな施策、中小企業施策や子育て支援のための施策なども盛り込ませていただいているところでありますので、ぜひともその早期成立が重要だというふうに考えているところでございます。これは、総理も、また財務大臣も関係閣僚の皆さんも同じ思いなのではないかというふうに思っております。そういう前提を申し上げさせていただいた上で、きょうの質疑に入らせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、先ほど山本委員からも質問がありましたけれども、最近の株式市場の低迷につきまして御質問させていただきます。

 昨年末以来、世界的に株式市場の下落が続いておりまして、その結果、世界経済の減速懸念が広がっております。我が国では特にその下げ幅が大きくて、日経平均の株価、きのうは若干戻したようでありますけれども、それでも一万三千円台にまで下落をしておりまして、日本経済の先行きに対する懸念も強まっております。

 政府の経済認識というのは、実体経済は堅調であるという認識ではありますけれども、ただ、原油を初めとする原材料の高騰あるいは世界経済の減速、そうしたことによってリスクは高まっているという認識ではないかというふうに思います。

 そうした中で、株式市場の低迷がこれから引き続き継続していくということになると、企業や家計の資産価値が減少してまいります。それによって実体経済にも非常に悪い影響が及ぶ可能性が高いというふうに懸念されるわけであります。

 アメリカにおいても、財政、金融両面からの景気対策を既に発表し、実施に移されているものもありますけれども、我が国としても、金融の一層の緩和あるいはさまざまな施策が必要なのではないか、そうした意見が高まっているというのもあります。総理も、非常に関心を持って、注視をしているという言い方もしていただいておりますし、国際協調の必要性といったことも示唆されているわけであります。

 そこで、まず総理に、現在の株式市場の動向、それからその影響に関する認識、また、必要な対策について御見解を伺いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

福田内閣総理大臣 御指摘のとおり、アメリカのサブプライム問題を背景として、株式市場が国際的、世界的に大きく値下げの状況になったということでございまして、これは私どもも決して安心しているというわけじゃありません。

 我が国の場合には、幸いにしてサブプライムの直接的影響というのは限定的でございまして、欧米に比べればはるかに影響は少ない、そういう有利な点もございますけれども、といって、こういうような状況が我が国経済にもどういう影響を与えてくるかということについては、十分今後も注視していかなければいけないと思っております。

 我が国の場合には、一つ問題があります。というのは、これはやはり、予算が順調に審議されて、四月一日から予算が執行できるかどうか、そういうことに対する懸念というものも株式市場というのは織り込む可能性もあるものですから、そういう問題にならぬようにしていかなければいけないということでございますので、ぜひ、こういうことについては、与野党ともに同じ認識の上に審議を早めて、そして順調に四月一日執行ということができるように御協力を願いたいというように政府としては考えているところでございます。

 私どもとしても、できるだけのこの予算案に対する説明というものはしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 同じ趣旨について、金融政策を担当する立場から、福井日銀総裁に御見解を伺います。

福井参考人 株価の下落でございますけれども、このところ、米国の経済につきまして、ダウンサイドリスクが強まっている、それから、同じく米国のサブプライム問題に端を発しました国際的な金融資本市場の不安定性が続いているというふうなことで、株価も世界的に振れの大きな展開になっているということだと理解しております。

 アメリカ、欧州の金融機関の損失の拡大あるいは米国実体経済への先行きの懸念の深まりというふうなことが背景にありますと、どうしても投資家のリスク回避の動きが強まってまいります。現にそういうことが起こっているということが最近の株価下落の大きな背景だというふうに思っています。

 日本につきましては、最近、円高が少し進行したということも追加的な株価下落要因というふうに理解をいたしております。

 株価は市場参加者による企業業績の見通しをもとに基本的には形成されますけれども、経済の先行きについてさまざまな情報を含んでいるということでありますので、金融政策を運営してまいります立場からは、できる限り多くの情報をその中から読み取りながら、先行きの政策判断を間違えないようにしていきたいというふうに思っております。

 なかんずく、今委員が御指摘なさいましたとおり、株価の下落は企業や消費者のマインドを直撃するところがあります。そのほかに、資産価格の下落を通じて、例えば、個人の消費支出に抑制的な影響を及ぼすというふうなことが十分考えられるわけでありますので、それらの影響も含め、日本経済の将来のパスに本当にどの程度悪い影響があるのかきちんと見きわめながら、慎重に先行きの政策運営の判断を重ねていきたい、こういうふうに思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 慎重に状況を見きわめてということは私も否定はしませんけれども、ただやはり、先ほどの質問にもありましたけれども、このリスクというのは、我々が今まで想定していたよりもさらに高まっているのではないかということは、十分意識をしなければいけないだろうというふうに思います。今後の市場の動向について十分注意を払って、特に金融政策においては、これはやはりタイミングが重要でありますので、後手に回ることがないように機動的に対応していただくことを強く要望させていただきます。

 総裁、これで終わりでございますので、御退席していただいて結構でございます。

 次に、先ほど総理の答弁にもあったんですけれども、サブプライムの影響の問題についてでございます。

 金融担当大臣にお伺いいたしますが、日本の金融機関のサブプライム関連商品の保有額というのは全体で一兆五千億程度というような報告も受けておりまして、これはアメリカやヨーロッパの金融機関に比べるとかなり少ない、直接的な影響は限定的ではないかと承知しております。とはいっても、世界のマーケットを通じて間接的な影響というのは、これはかなり警戒をしていかなければいけないことだろうというふうに思います。

 そこで、サブプライム問題の我が国の金融システムへの影響について、大臣、どのように認識をされているのか、また、今後とも影響の拡大については十分注意をしていただき、そして必要がある場合には機動的な対策が必要だろうというふうに思いますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。

渡辺国務大臣 御指摘のように、我が国で預金取扱金融機関が保有しておりますサブプライム関連商品の保有高、エクスポージャーは大体一・四兆円でございます。一方、本業のもうけ、業務純益がどれくらいあるかといいますと、六・七兆円あるんですね。ティア1資本、資本の中核的なところでいきますと約四十九兆円ございます。したがって、仮に、万々が一保有額すべてがゼロになっちゃったとしても、まあそんなことはあり得ないことでございますけれども、だとしても全く心配はないということでございます。

 ただ、そうはいえ、上田委員御指摘のように、いろいろなルートでいろいろな影響が及んでくるではないか、そういう懸念ももちろんございます。したがって、我々としては、絶えず金融機関とのコミュニケーションを図りながら、一体どれぐらい影響を受けているのかということをいろいろな機会を通じてヒアリングを行っているところでございます。

 現時点において、日本の金融システムが大ダメージを受けるというような状況には全くなってございません。

上田委員 ありがとうございます。

 報道等では、このサブプライム問題の我が国の金融システムに対する影響が多少過大に報じられている面があるんじゃないかというふうに思います。そういう意味で、今大臣から、影響は限定的である、しかし、今後、さまざまな間接的な影響については行政としてもしっかりと注視しながら必要な対応をしていくということでございました。これが重要なことだろうというふうに思います。

 もう一つ、この株価の下落で私が気がかりな点が、年金積立金の運用への影響であります。平成十五年度以降は株式市場が比較的堅調な動きでありましたので、それに支えられる形で想定をかなり上回る運用益を上げてきまして、十八年度末には累積の運用益が十三兆を超えたというふうに承知いたしております。しかし、ここに来てこれだけ株価が低迷いたしますと、その運用益が非常に心配になってきているわけであります。

 そこで厚生労働大臣に伺いますが、この年金積立金にどの程度の影響があるというふうに認識をされているのか。それからまた、年金給付に充てられる貴重な財産でありますので、これは、いろいろな市場の動向の中にあっても、できる限り損失は抑えて運用益を上げていくという努力が必要だろうというふうに思います。そういう意味で、今後の取り組みについても御見解を伺いたいというふうに思います。

舛添国務大臣 お答えいたします。

 今委員おっしゃったように、平成十八年度末までの累積収益は十三兆円でございますけれども、十九年度につきましては、第一・四半期は約二・四兆円のプラス。これは堅調でした。第二・四半期は、やはりこのサブプライムローン問題を契機とした市場動向の影響を受けまして、約一・六兆円のマイナス。したがいまして、四月からの累積で、〇・七兆円のプラス、七千億円のプラスとなっています。したがいまして、まだ第三・四半期の数字は出ていませんけれども、この不安定な市場動向を反映して、非常に私も懸念を持ってこれを見ております。

 そこで、その運用手法、これは安全ということと効率的、このことをしっかりやらないといけないので国内債券を中心に運用しておりますけれども、平成十三年以降は、いわゆるパッシブ運用、これは市場全体の動きに連動する運用をしてコストを下げていく、それから、経済、金融の専門家から成る年金積立金管理運用独立行政法人の中の運用委員会の御意見もいただいて、先ほど申しましたように、安全、効率的、そしてなるべく収益を上げる、大事な年金の基金ですから、これを守っていく。今後とも引き続き努力をしてまいりたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 年金の運用について、今はインデックスの形で運用しているわけでありますので、市場が下落するとやはりどうしても運用益が下がってきてしまうという問題があります。これは、安全性を考えるとある程度やむを得ない部分もありますし、今度、では上がったときに、逆の張り方をしたら機会を損失するというような面もあるので、よく検討した結果の運用なんだというふうに思いますが、ただ、長期的にこれから下落傾向が続くということが想定されるときに、もう少しやはり金融技術というのをよく御検討いただいて、専門家にもまた入ってもらってできる限り損失を回避していく、そして、年金というのは国民共通の資産でありますので、それを全力をもって守っていただきたいということをぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、中小企業施策について、福田総理にちょっと御見解を伺いたいというふうに思うんですが、総理は、施政方針演説の中で五つの基本方針を述べられて、その一つに、活力ある経済社会の構築ということを挙げられ、その中でも、我が国の経済の活力を支えるのは中小企業の底力ですというふうに述べられております。私も全く同感でございます。

 しかし、現実には、中小企業の経営を取り巻く環境というのは大変厳しいのが現状でありまして、原料高などによりますコスト増がなかなか転嫁できない、あるいは、技術開発また設備投資を行って効率化を図ろうとしてもなかなか資金調達も容易ではない、それが現実だというふうに思います。

 二十年度の予算案の中では、中小企業関係予算が、他の歳出項目がずっと抑制的になっている中で、二年連続の増額で一千六百七十六億円が計上されております。その内訳の中には、私が昨年当委員会で取り上げさせていただきました下請取引の適正化のための事業や、また、多くの議員も主張してきました、やはり中小企業の生命線というのは資金調達がいかに円滑にできるかということにありますので、そうした中小企業金融についての施策も重点事項として盛り込まれております。また、税制改正においても、長年関係団体の非常に要望の強かった事業承継税制の大幅な拡充や、あるいは研究開発、人材育成のための税制上の措置なども盛り込まれております。

 これらは、福田内閣そして与党として、中小企業の施策、支援を重視しているという姿勢のあらわれだというふうに私は評価をしているところでございます。

 そこで、改めて福田総理にお伺いをいたしますけれども、総理がこれからの日本の経済社会に描かれているビジョンの中で、中小企業に期待される役割、また、そうした中小企業を活性化していくことの必要性、あるいはその施策についての御見解を伺いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

福田内閣総理大臣 日本の中小企業は日本の産業の本当に大きな部分を占めているわけでありまして、中小企業は経済の、その底力を発揮するかしないかで、日本の経済全体が活気あるものになるかどうかということが決まるんだというふうに思っております。

 ですから、中小企業のいろいろな問題点はあると思います、そういうものをいかに克服していくかということがあります。中小企業、一つ一つの企業の、例えば経営上の問題、生産性の問題とか、いろいろあると思いますね。そういうものをいかにして引き出していくかということに力点を置いて政策を進める、そういう取り組み方が私は必要なのではなかろうかと思いまして、いろいろな関係を大事にし、そしてその関係を幅広いものにする、縦の関係だけでない、横の広がりもつけられるような、そういう弾力性があり、そしてかつ力強い、そういう中小企業になってほしい。

 もちろん、生産性を向上するために、割合と活用していないITを徹底的に活用するといったようなこともございますけれども、また、そういう指導をする、そういうノウハウを持っている人を地域に送って、そしてその知恵をかりるとかいったようなことも必要なんじゃなかろうかなというように思いまして、例えば、今、大企業を定年で退職する、まだ十分に働ける、そしてまた、そういう意欲を持っている方はたくさんいらっしゃいますので、そういう方に一肌脱いでもらおうじゃないかと。

 そういう方に各地区に行っていただいて、もしくは連絡をとっていただいて、そしてそこを中心にしてその地域の中小企業にいろいろ持っておられるノウハウを提供し、また、経営上の指導をするといったようなことをしてもらうような拠点づくりをことし進めていこうと考えております。そういう拠点を二百ないし三百カ所つくりたいということで、積極的な中小企業の活性化につなげていければいいなというふうに思っております。

 その他、中小企業の事業承継、これも大変大事でございますので、これの税制の抜本的な改革もしたいと思っておりますし、また、当然のことながら、金融の円滑化ということもございます。今、原油高ということで、コストアップで苦しんでいらっしゃる方も多いんだろうというふうに思いますが、そういうことについてどういう金融対応ができるかということについては、昨年の十二月二十五日、これは公明党も一緒になって対策を考えていただいて、それを実行する。中小企業に対する円滑な金融というようなこと、これも大変重視しております。また、縦系列では、下請適正取引の推進、こういうこともございます。

 さまざまな観点から、中小企業がいかにしたら活性化するかといったような取り組みをしてまいりたいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 総理は、御就任以来、日本の経済の安定的な成長を図っていくということを非常に重視され、経済政策に力を入れておられます。これは本当に重要なことだと私も思っております。そして、そうしたこれからの日本の経済の姿の中で、この日本の経済をこれまでも支えてきましたし、これからもいろいろなイノベーションまたいろいろな成長の源泉になってくるのが中小企業の中にあるんだというふうに私は考えておりまして、総理も同じお考えを共有していただいているということは、中小企業の経営者の人たちにも大変力強いメッセージだというふうに思います。

 これから、今総理もおっしゃいました、いろいろと生産性向上のための課題もあります、そうしたことについてもきめ細かな支援をしながら、その中からこれから日本の経済が大きく発展をしていくための種を、また芽を育てていかなければいけないというふうに思いますので、引き続き政府挙げての取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 それで、ちょっと次の話題に移らせていただきますけれども、もう時間もなくなってまいりまして、ドクターヘリの問題についてちょっと取り上げさせていただきたいというふうに思います。

 今お配りをさせていただいております資料がありますが、これは一月二十三日付の朝日新聞の記事でございます。愛知県の用水池でおぼれ、心肺停止で意識不明になっていた三歳の男の子がおりまして、それが、駆けつけた消防隊員がすぐにドクターヘリを要請して、その子が、発見から約一時間四十五分で静岡県にありますこども病院に運ばれ、治療を受けた。同病院では、脳の中がはれて脳障害を引き起こさないように、体温を低く保った脳低温療法で治療。四日後には意識を取り戻して、後遺症もなかったということでございます。

 非常に短い時間でこういう高度な医療を受けることができた、命を救うことができた非常にいい事例だというふうに思います。ドクターヘリがまさに救命救急医療に大きな力を発揮したということで、大変うれしく思っております。

 御承知のとおり、私たち公明党は、このドクターヘリの有効性を強く訴えまして、その配備を推進してまいりました。国会でも多くの議員がこの問題を取り上げ、要請をしてきたところでございます。ただ、残念ながら、まだ配備されているのは全国で十二機という程度でございまして、今回のこの事例からもはっきりしているように、救命救急医療の極めて重要なツールだというふうに考えられますので、今後、やはり各都道府県への配備も含めてその整備充実を図っていただきたいというふうに思いますが、舛添厚生労働大臣の御見解を伺います。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃったように、非常にいい例で、ドクターヘリがいかに有効かということだと思います。

 まさに、愛知県、静岡県、この両県には既に配備しております。そして、この一月二十八日に福島県に入りまして、全国で十三機です。平成二十年度はあと三カ所に導入したいと思いますが、こういう有効性にかんがみて、さらに今後努力をして、各都道府県に整備をすることを一日も早くなし遂げたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 最後に、年金記録問題、これは国民の大変大きな関心事でありますので、一点だけ舛添大臣に伺いたいというふうに思います。

 この未統合記録の問題の解決を図るために、昨年の十二月から約六十万件超のねんきん特別便が送付されました。

 この人たちは、統合できていない記録のある可能性が高い人たち、すなわち、訂正をすれば受取額がふえる可能性が非常に高い人たちなわけであります。にもかかわらず、回答が来たのは送った件数の三分の一強だというふうに伺っておりますし、さらに、回答のあったうち記録訂正の申し出があったのは十数%だというふうに伺っております。

 もちろん、こうした未統合の記録の中には、短期間のものも多いでしょうし、かなり年数がたっていてなかなか思い出せないというものも多いんだろうというふうには思います。しかし、この数字というのはちょっと余りにも低過ぎるんじゃないのかなというのが正直な実感であります。

 このねんきん特別便、未統合の年金記録を統合していく、その趣旨がよく伝わっていないのではないか。あるいは、今送られている人たちというのはそういう可能性が非常に高い人たちなんですよという、その趣旨がよく伝わっていないのではないのかというふうに思われます。また、書類の内容がもう一つよく、特に高齢者の場合なんかはわかりにくいという面もあるのではないかというふうに思います。

 事前に書類の様式を拝見したときにも、そんな意見もいろいろ議員の中からも出ましたけれども、やはり個人情報を守らなきゃいけないとかさまざまなこともありまして、こういう形になったわけでありますけれども、いずれにしましても、大変国民の関心の高い事柄でありますし、今、舛添大臣としても、非常に力を入れて、この問題を何とか解決するということで取り組まれている課題でありますので、ぜひ国民が納得していただく形で実施をしていただきたいというふうに思います。

 大臣に、必要な改善、ぜひ全力を挙げて取り組んでいただきたいとお願いを申し上げます。

舛添国務大臣 今委員おっしゃいましたように、個人情報の保護とか、それからいわゆる成り済まし、不正、こういうことの防止も考え、そしていろいろな方にも目を通して、ああいう形の案を出しました。

 しかし、国民の皆さん方の回答状況を克明に検討する、そういう中で、やはりわかりにくい面がある、そしてもっと懇切丁寧にということでございますので、実は、先般、私のもとに直属の有識者の方々のアドバイザー、特に、社会保険庁の行政に対して最も手厳しい批評をなさっている方に委員になっていただいて、その方に今チェックをしていただいております。

 そして、できるだけ早い機会にこのねんきん特別便の改善策を実行に移す。そしてまた、窓口の対応についても、少しきめの細かさ、懇切丁寧さが足りない、そういう面について早急に改善策を取りまとめ、少しでもいい形のねんきん特別便の改善ということに全力を挙げてまいります。

 今後とも、一人一人の年金の記録をきちんと再確定して、そして皆様方にお支払いできていない年金をお支払いする、そのために全力を挙げて取り組みます。

上田委員 以上で終わらせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

逢沢委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 きょうは、本格的な予算審議に入る前に、現下の同時株安あるいは経済の動向に対してしっかりとした政府の考え方、これを引き出さないと、今のような中途半端な、あるいは何を考えているかわからない、そういうことで推移をしている経済対策に対して、日本売り、ほかの一般的な株の下落以上に日本が今売られているというこの状況をしっかり反転していく、そういう思いを込めてこの委員会が開かれているんだというふうに私も思っておりまして、それだけに、しっかりとした総理の答弁、これを期待いたしますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 まず、先ほどから議論が出ておりましたが、アメリカのサブプライムローンを発端にして、これが崩れたということで世界の同時株安、それが日本にとっても私は非常に深刻なこれから一年、二年の経済運営を強いられていくんだろう、そんな状況にあります。

 ところが、先般、総理の所信表明演説でこの問題について触れたくだりがあるんですが、ここでは、注意深く推移を見守りながら適切に処理する、これで終わっているんですよね。このメッセージが恐らくマーケットに対して、非常に不可解なといいますか、日本が何を考えているかわからないというような、そういう形で受け取られているんだろうと思いますし、もう一つ言えば、今の状況、これをどういうふうに認識しているのかということ、これから出発をすべきなんだろうというふうに思うんです。

 そういう意味で、総理自身の現状に対する認識、それから特に、今アメリカで何が起こっているかということ、これをどのように危機感を持って認識されておるのかということ、これをまず確かめていきたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 今の株安の現状に対してどういう認識をしているか、こういうことだろうと思いますけれども、申し上げるまでもなく、今回の株安の直接原因はアメリカのサブプライム問題というふうに端を発しているわけでございまして、それが欧州に飛び火する、そしてまた日本にも影響し、またアジアにも影響する、こういうふうなことになったわけでありまして、そういうふうな状況というのは、私は見ておりまして、そう楽観するような状況じゃもちろんありませんよ。私どもも、そういうような状況が、これが世界の経済に決していい影響を与えるというようには思っておりません。

 ですから、これに対応してどういうふうにするかということになりますけれども、もちろん、この問題について発信元の米国がどういう対応をするかということが一番大事だと思います。

 もう一つ申し上げれば、この問題は、例えば日本だってサブプライムに直接影響を受けるところがあったわけでございますけれども、ヨーロッパも随分影響を受けているということを考えれば、やはりそういうような世界の主要な国々がこの問題にどう対応するかということも一つ大きなかぎだろうというふうに思います。

 ですから、今もう既にそういうふうな話し合いというのは始まっておるようでございますけれども、刻々の変化に対応するというような動きをしているというふうに思いますけれども、今の状況においては、アメリカの景気対策等もございますので、そういうものをよく見きわめながら、今後どういうふうな動きがあるか、それに対してどういう対応をするかということは適宜適切に考えていかなければいけない、そしてまた、対応策を実施するという必要があれば果断にしていかなければいけないということは当然あるわけであります。我が国もそういう観点から十分注視する。

 そしてもう一つ、我が国の経済が決してこのことに影響を受けないように、しっかりと経済運営をしていくということももちろん大事でございますけれども、例えばこの状況が長引くとかいったようなことがあると、これが実体経済に与える影響というものが当然あるだろうというふうに思いますので、そういうことについては、また今後、状況を見ながら政策判断をしていくということになります。

 株安ということについて申し上げれば、ここにお配りになっているこの表でいけば、日本が一番下がっているというようなことを言いたいんだろうというふうに思いますけれども、これは一月からの比較ですね、昨年の。サブプライムが発生したのは大体八月ぐらいだと思いますけれども、八月くらいからの比較で見れば、大体米国とはパラレルな状況になっている。特に円高とかいうようなことを配慮しますと、パラレルな状況になって、日本が特別に売り込まれているとか、そういうふうなことではないんだということは、一つ申し上げておかなければいけないんじゃないかなというように思っております。

 我が国としては、中長期的には経済成長を着実に高めていくというような政策をとり、そして短期的には市場の動きをよく見きわめて判断していく、こういうことになろうかと思います。

中川(正)委員 これから順番に聞いていこうかなというところを早取りしてまとめて答弁をいただいたような、そんな雰囲気でありましたが、私は、アメリカの経済を見るのに、二つのことをしっかりポイントとして考えていかなきゃいけないと思うんです。

 一つは、いわゆるバブルの崩壊、株価対策。これは、今回出たアメリカの施策に対しても、それぞれの専門家からは、ツーリトル・ツーレート、日本がちょうどバブルが崩壊してその対策を打ち出したときと同じような評価が出てきているということですね。これが、まだ恐らくあと〇・七五%金利を引き下げていくであろうとか、あるいはそれぞれ不良債権の処理の中に公的資金を入れるという局面が出てくるんじゃないかとかというような、そういうたぐいの観測、あるいは我々が協力できる部分というのを考えていかなきゃいけないんだろう、これが一つ。

 それから、もう一つは、さはさりながら、このままアメリカが推移したときに実体経済としてどうなのかということの判断が必要なんだろうと思うんです。

 先ほどの議論の中では、表現としては、ダウンサイドリスクが今あるというところでとまっているんですよね。ところが、これは、とまっているのは日本でこれを論じるときにとまっているだけの話であって、アメリカでは既にリセッションだと。基本的には不況の局面に入ってきている。

 それの根拠になるのが、例えば、本当に劣悪なというか、そうしたローンだけじゃなくて、一般のファニーメイとかフレディーマックというような健全なローン、かたいローンも既に崩れ始めてきて、いわゆるクレジットクランチみたいな、そういう現象が起こってきているじゃないかということであるとか、あるいは、こうしたものを保証していく、いわゆる保険制度の中にあるクレジット・デフォルト・スワップ、CDSとか、それからよく言われるモノライン、この辺が、その残高が四十五兆ドルのこの保証制度そのものが崩壊し始めてきているという、その危機感ですね。

 そんな中で、これをどのように支えていくかということを考えていっても、やはり実質経済に対して相当のダメージになるだろう。過去の日本が経験したように、長いスパンを持った、例えば十年のスパンを持ったリセッションという形で不況が続いていくんだろうということ、こういう目安というのはもう既についているんですね。

 そのことがはっきりしているにもかかわらず、さっきの総理の話では、何となく見守っていく、注意をしていく、これで終わっているということ、ここが、今回、この予算委員会の議論の中で、それではだめなんだ、具体的に総理がメッセージを発して、そして具体的な政策をのせないとだめなんだということ、ここだというふうに思うんです。

 そんな中で、もう一つはっきりさせていきたいのは、さっき総理がちょっと早とちりをされて先に、恐らく一番気になっているところなんだろうと思うんですが、触れられた部分ですね、ここです。これは、去年の一月から一年間にわたって株価の推移がどうなっているかということをあらわした表であります。

 よく日本売りと言われる部分なんですが、一年間を通じて、それぞれ、アメリカ、ドイツ、イギリス、これは上がり下がりしながら、大体今の局面でも一四・二%、八・五%、一二%、一〇%前半、一〇%前後の下げですよね。同時下げといっても、これぐらいのところで推移をしているんです。ところが、日本だけがその倍近く、二四・五%、こういう形で下がっているということ。

 特に、一番そこが気になるところなんだろうと思うんですが、福田総理にかわったというのは二〇〇七年の九月ですね、ここからの局面の下がりぐあいというのが極端なんですよ。という形で下がり続けている。これは、さっき総理がみずから指摘されたように、サブプライムだけのことじゃない、日本独自の要因があってここまで日本売りが進んでいるということだと思うんです。

 ここを総理はどう分析されているか、なぜこんな形で日本売りが進んできているのかということ、ここをまず説明していただきたいというふうに思います。これは総理です、総理にです。政策責任者として、まずは総理ですよ。

額賀国務大臣 中川委員にお答えをいたします。

 これは、福田総理が就任したころは、サブプライム問題が現実的にいろいろとリスクの再評価が行われていて、実体経済にどういう影響を及ぼすかという議論がされ始めたころでございまして、しかも、なおかつアメリカでは金利の引き下げを相次いで行っていたところでございます。

 それで、今も、去年の十月ですか、ワシントンでG7が行われたわけでありますが、このサブプライム問題について、私どもは、リスクの再評価の過程で、どういうふうな広がりを持っていくのか、あるいはこの再発を防いでいくために我々はどういうふうに今後対応していくのかということを率直に議論したわけでございます。

 それは、一つは証券化商品の価格設定の問題、あるいは銀行のリスク管理の問題、格付の問題、そうしたいろいろな問題をピックアップいたしまして、これをG7のもとにある金融安定化委員会で今調査分析をして、この二月に東京で行われるG7で、その調査分析に基づいて議論をし、そして金融市場の安定化、世界経済の安定化に向けて新しいメッセージを発しようというふうに思っております。

 したがって、これは日本売りとかそういうことではなくて、世界が協調して対応していかなければならないという問題であります。

 もし、中川先生のおっしゃるように、我々が何を考えていかなければならないかというと、まず一つは、日本の成長を持続的にきちっと安定したものにしていかなければならないということでございます。それは、言ってみれば技術革新であり、人口減少の中で労働力の量と質をどう確保していくかということであり、そういう政策をきっちりとやっていくことが大事なことであります。

 それから、市場において外人の投資家が多いわけでございますから、日本の財政がきちっと健全化を目指してしっかりと足取りを踏んでいるのかどうかということが大事なことであります。そのためには、やはり我々政治が責任を持っていかなければならない。この国会の場で一つ一つ、十九年度の補正だとか来年度の予算だとかきっちりと成立をさせて、世界にメッセージを発していくことが大事なんです。これは与野党の責任でありますから、ぜひ御協力をいただきたい。

中川(正)委員 私も後でまたしっかり取り上げようと思うんですが、予算の関係については、これはこれまでどおりではいけませんよ。これまでどおりというのは、ぽんと出しておいて、中身は全然議論しないで強行採決でどんと押し込んで、それで進めていくというような、そんなやり方はもう通じませんよ。こんな時期だけに、しっかりそこのところを話し合いができていけるようなそんな枠組みをつくって、国民に安心を持ってもらうというような、それをするためにはどうしたらいいかというのを午後の部でゆっくりやりたいというふうに思います。

 その上で指摘をしておきたいんですが、日本売りというのは、その辺の、現象的にあらわれてくることだけでこれが進んでいるんだということではないというふうに私は思っています。

 一つは、基本的に、日本の経済の構造、ファンダメンタルなところで、その構造が克服できないがために今こうした現象が起きているんだということなんです。

 先ほどからこれはもうしっかり指摘はされていますけれども、日本の経済を引っ張っているのは昔も今も、昔からその構造を変えよう変えようとしてきたのは、結局は輸出依存型なんですよね。さっきの話にも出ていたように、生産というのはしっかりしているよ、それでもって輸出はやっているよ、それで全体のGDPというのは何とか形を持っているけれども、その中身、これについては非常にもろいものがある。いわゆる輸出型から内需をしっかりしていくような経済構造に変えていこうということ、これが基本であったというふうに思うんですよ。それに今回も完全に失敗をしている。

 だから、円レートが、たまたま金利の関係で、金利そのものも、実は、政府の失策によってこれだけ日本が借金を背負った、それがために日銀は手足を縛られて、うっかりと名目成長率以上に金利を上げることができないんですよ。金利が底をはっている。そんな中で、それがたまたま円キャリーという形で外へ向いて資金が流出をしていった、それがたまたま円が円安で推移する形になってきた。だから、結局のところ、それが貿易ということを進めて、それで海外に対して物が売れるようになった。

 その経済構造に支えられて今やっと来ているんですが、ここでこの同時株安が起こったということの中から、円キャリーが戻ってきている、円高に推移してきた。その円高の推移をそれぞれの投資家が見て、日本の経済の構造は輸出依存型だから、これから将来に対して不安が出てくるだろうということで控えてくる。これがことしの初めからずっと始まり続けてきたということ、これが一つある。

 それからもう一つは、これはさっきも指摘があったように、そうした構造の中に、建築確認申請の手続が混乱をして、そしておくれたということ、これが輪をかけて日本の経済を、今、それこそダウンサイズですよ、ここは。アメリカじゃない、日本そのものが実体経済が落ちかけているということ、こういうことになってきている。

 さらに、本当はここでしっかりとした政策が出てこなきゃいけない。いわゆる内需に対してのしっかりとした政策が出てこなきゃいけないということにもかかわらず、総理から話が出てくるのは、注意深く見守りながら、さっきもお話が出ましたが、適切に処理をするという、この話しか出てきていないということ、この構造なんですよ。ここが日本の問われている部分だというふうに思うんです。

 総理、そういう意味で、この内需というものについて、どのようにこれをしっかりと底上げしていくか、それで内需に活力があるような体系に出ていくか、ここはしっかりとした政策を打ち出すべきだというふうに思うんです。どうですか。

額賀国務大臣 中川委員の御指摘については、共有できる部分もあるわけであります。GDPの比率からいえば、やはり製造業というのは二〇%前後だと思います。あとはやはりサービス部門でございますから、このサービス部門の競争力をどうつけていくかということが大きな課題であることは、間違いがないことであります。

 そういう問題意識を持って二十年度の予算編成もさせていただいているわけでございまして、その旗印は、一つは、成長力を高めていくということ。と同時に、海外市場に対するメッセージとしては、財政再建、健全化を堅持するということ。と同時に、地方の活性化がなければ日本全体の活性を生むことができない。

 そういうことが具体的に政策テーマとして予算づけをされているわけでございますので、しかも、経済活性化対策としては、そういう研究開発税制だとか、中小企業の基盤税制だとか、情報産業だとか、あるいはまたベンチャービジネスを活性化させるために寄附金税制的な導入を図ったりとか、さまざまな経済政策がちりばめられた予算でございますから、ぜひ内需拡大に結びつけていくように、議論をし、成立をさせていただきたい。よろしくお願いしたいと思っております。

中川(正)委員 総理、ここで総理みずからが語らないと、政府のリーダーシップが一番これは必要なところなんですよ。そこで黙ってしまっては、何にもならない。

 その前に、さっきの大臣の答弁からいくと、間違っていますよ。さっきのお述べになった一つ一つの施策というのは、サプライサイドなんですよ。生産をいかに効率化していくか、生産をいかに元気にしていくか。今問われているのは、生産じゃないんですよ。ディマンドの方なんですよ。だから、そこのところがいまだ頭の切りかえができていない。内需拡大というのは、国民一人一人が、だから私たちも、生活が大事だ、この生活感が広がっていく、そこから国民一人一人が元気が出てきて、消費が上向いていく。その前に所得というのがあって、労働分配率というのをしっかり国民一人一人に分かち合っていくという、その底支えがあって初めて日本が元気になってくるということじゃないですか。

 それにもかかわらず、さっきの話というのは、全く逆の方向へ行っているんですよ。もしそれが、その中に予算というのがあって、予算がその方針で立てられているとすれば、これは間違っていますよ、経済政策としては。そこのところを指摘しておきたいと思います。

 もういいんです、大臣は。総理です。総理、そこについてしっかり答えてください。

額賀国務大臣 一言だけお話をさせていただきたいと思いますが、これは、我々は、生産者であると同時に消費者であります。でありまするから、やはりきちっと経済を活性化させて、そしてそれが次の投資に結びつき、そして内需を拡大するためには、それが家計部門にどういうふうに影響をしていくかということは当然のことでございまして、その環境づくりを我々はもちろん考えているわけでございまして、そして、最低賃金制のことについても先般法律を出させていただきましたし、また、経済界とのいろいろな意見交換をする場合でも、企業の皆さん方が収益が安定しているところはやはり賃金に結びついていってほしい、これは労使間で本当は決めていくことでありますけれども、願望としてはそういう考え方を持っているということを我々は議論してきたし、また考え方をお伝えしている、そういう考え方を持っているということでございます。

中川(正)委員 総理がなかなか立ち上がろうとされないので、ここのところは本当にどうなっているのかという思いがしますけれども。何か大臣、誤解をされているんじゃないかというふうに思うんですが、経済政策。

 では、具体的に聞いていきたいというふうに思うんですが、今、ちょうど春闘の真っ盛りですよ。先ほど大田大臣の方からも、個人消費に結びつくような形のいわゆる内需というのがいかに大事か、経済政策の中ではっきりとうたっていられる。であるとすれば、やはりここも総理からメッセージが発せられていいんだろうと思うんです、今の春闘に対して。今、これは絶好の機会なんですよ、景気対策については。これが一つ。

 それからもう一つは、各国の政策。今回、基本的な、ファンダメンタルズといいますか、経済を支える施策として出てきているのは減税ですよ。これは、アメリカでも思い切った形で、今の時点で、個人個人に、個人個人にですよ、税を戻す、戻し税さえやり始めておりますよね。これが方向性なんです。一人一人の所得というのを確保しながら、一人一人が元気を出していく、いわゆるディマンドサイドを誘発する、そういう政策に持っていかなきゃいけないということなんですね。

 それが、基本的には、後ほどまとめて、ことしの予算に対してトータルで、我々が政権をとったらこうした形で予算の転換をしていきますよ、その予算の転換の基本姿勢というのは、さっき言ったように、国民個人個人が、生活が大事、生活自身を安定させることによってしっかりとした活力が出てくるような、そういう方向性を持ったトータルな予算案、これを法律でもって出していきたいというふうに思うんです。

 その中に、子ども手当というのがありますし、それから、農業でいえば直接所得補償というのがありますし、年金、これについても、今のような不安な状況で推移をしていくんじゃなくて、一元化をして安定させていきましょう。これ全部、基本的な部分で、内需に結びついていくところ、本当に国民が安心して元気を出していくところへ向いて方向づけがされているというふうに考えているんです。

 そんなことを前提にしながら、改めて総理、聞きますけれども、どんなメッセージを出すんですか。これはもう時間が来ましたから最後の質問になりますが、どんなメッセージを出すんですか。

福田内閣総理大臣 この問題についてお話しすると長くなりますから一言で申し上げますけれども、内需の振興ということでしょう。

 今の日本の経済というのは外需に支えられている部分が多いですよ。外需は、今後まだもっともっとふえるでしょう。外需依存とは言わぬけれども、外需を大事にしていかなければいけない、そういう経済体質はあると思います。

 日本は人口が減っているんですね。そして、高齢化も進んでいるわけですよ。団塊の世代が今大量退職する。所得が急に減る、そういう層がふえているわけです。ですから、一人当たりの所得が減ってしまうというようなことがあるということは、ある意味においてはやむを得ないところであるかもしれない。しかし、それであると、やはり社会の活力が失われてしまう、そういうことがあるでしょう。ですから、これは大事なことだと私は思いますよ。

 ですから、私の施政方針演説を見てくださいよ。そこにびっしり書いてありますから、あなたが希望することは。どうぞよろしくお願いいたします。

中川(正)委員 午後の部で、まだ残っていますので、引き続き、具体的な予算ということを中心にして議論を進めていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中川正春君。

中川(正)委員 それでは、午前中に引き続いて議論を続けていきたいというふうに思います。

 ここで、具体的な予算の審議について、きょうは本当にその入り口の部分でありますが、どんな枠組みで考えていこうとしているのか、お互い、意思のすり合わせといいますか、そういうところをやっておかなきゃいけないのかなというふうに思うんです。

 先ほど総理からも、あるいは大臣からもコメントがあったように、国民生活がかかっていますから、私たちも、しっかりとした議論に基づいて粛々とやっていくということ、その中で、お互い、落としどころといいますか、そんなことも頭に置いてやっていかなきゃいけないんだろうというふうに思うんです、現実問題として。

 ところが、これまで予算、それから予算に関連する法案という議論をしていくときに、与党の方からは、本当に時間的に限られた中で、しかも、一括して、全部そろえて、反対か賛成かどっちか判断しろ、こういう枠組みの中で議論をしてきた。去年もそうだし、おととしも、最近特にそういう傾向が目立ってきているんですが、最終的には、強行採決ということで、一切の修正なし、議論の余地なしというふうな形で畳み込んできて予算が成立をしていった、こういう経過がありました。

 ところが、懸念されておるのは、参議院の様子がひっくり返った、私たち、参議院で、いわば参議院与党という形になった中で、そんな従来型の議論の枠組み、あるいは土俵のつくり方ということではなかなか解決をしていかないだろう、あるいは、お互い、ここまで来たわけだから、新たな舞台設定といいますか国会の回しというか、そんなものを設定しなければ、恐らくデッドロックになっていくだろうということ。

 こんなことが予測されるから、さっきから皆さんが、予算を早く、予算を早く、こう言っておられるんだろうということなんですが、これは、ある意味では問題の本質をそらしているということでありまして、問題の本質は中身なんですよね。中身がどれだけ、こうした状況になった中で、充実した議論によって、国民にとって一番ふさわしい、そしてまた今の経済状況にとって一番ふさわしい、もっと言えば、これからの日本の将来に対してしっかりとした責任を持っていけるような、そんな中身にしていけるかという、それをお互いが前向きに議論していくということだと思うんです。

 というふうに私は思っているんですが、その上に立って、改めて総理に確かめておきたいんですけれども、総理は、これまでと違ったこうした国会の状況に対して、どのような舞台、どのような枠組みで予算あるいは予算関連法案を議論していくべきだとお考えなのか、そこを入り口の問題として確認しておきたいと思います。

福田内閣総理大臣 どのような枠組みでというお話でございましたけれども、ちょっとどういうふうに申し上げたらいいか判断に迷うところなんでありますけれども、いずれにしても、状況が、衆参で立場が違う、こういうふうなことがある、これは決定的なことですよね。

 ですから、当然、我々がそういう状況を考えながら対応するというのは、現実、政治家として、また政治を進める立場からいって、これはもう、そうするのは当然のことでございますので、私どもも、そういう状況を考えながら、我々の主張は説明申し上げるけれども、しかし、また野党の皆さんの御意見も伺おう。また、この国会の中でも結構でございますけれども、外にそういうような協議をする場を設けるとかいうことは考えていいんじゃないか。話し合わなければ物事は解決できませんから。お互いに違う場所で勝手なことを言っているというようなことではいけないと思いますので、私どもは、話し合いをするということは一番基本的なことだろうというように思います。そして、その中からよりよいものを見つけ出す努力をするということが一番大事だというふうに思っております。

 先ほど、問題の本質は中身にある、こういうふうにおっしゃいましたね。まさにそのとおりなんですよ、中身なんですよ。だから中身についてお話をしましょう、こういうことでございまして、ぜひそういうことについて御同意いただきたいと思います。

 では、その中身は何なのか。これは、やはり国民生活ということを中心にして議論しなければいけないんだろうというように思います。それも、立場によっていろいろな考え方はありますから、そこのところを話し合いによってどう一致点を見出していくかということになるのではないかと思いますので、そういう努力を私どもはしたいと思っておりますから、どうかよろしくお願いしたいと思います。

中川(正)委員 総理から今回だけじゃなくてたびたびそういう発言が出ていたということ、私もこれは認識をしています。

 実は、予算委員会とそれからもう一つ、関連法案というのは、私が今野党のサイドの筆頭理事をしているんですが、財務金融委員会に今かけられているということなんですね。私も、そういう意味で話し合いが大事だ、一つ一つ丁寧にやっていくということが基本だというふうに思っております。

 だから、そういうふうな法案のおろし方、もっと言えば、話し合いというのは、裏でこそこそやるとかあるいは国会以外のところで何やかんややるというような話じゃなくて、本来は、この国会の席で、この委員会で、それぞれの本会議で、オープンな中で国民と一緒に、国民も参加をしていただいて議論をしていくということ、これが私は基本なんだろうというふうに思うんです。

 それだけに、恐らく、総理がそういう話し合いということの意図をお持ちであるから、今回、それぞれの委員会におりてくる法案のおろし方も以前とは違ってくるんだろうという期待を実は私はしておりました。それが一つの与党のメッセージかなと。

 これまではどんなおろし方かといったら、特に租税特別措置法なんかが典型的なんですけれども、これ、リストがありますが、全部で三百以上ある租税特別措置法の中で、その半分ぐらいが今回期限切れということで、それを延長するのかどうかという判断を迫られるわけですね。一つ一つしっかりとした議論を本当はしていかなきゃならなかったんだけれども、過去はどうだったかというと、百五十本とか二百本とかというのが一くくりになって、例えば、私たちはこれは賛成だけれどもこれは反対だ、こういう中身があるんですね、それぞれの意思が。物によって違ってくる。にもかかわらず、全部一本にして、トータルで反対か賛成か、その意思表示をしろと。これだったんですよ。

 かつ、これだけのものを議論するのに、それこそ一日与野党合わせて二時間ぐらい、二日間かけて、それですぐ、時期が迫っているからもう採決だということですね。その採決も、ほとんどが強行採決というような形でこれまで議論があったということです。

 そこに対して、恐らく今回はそんなことはやらないんだろうと。一つ一つ丁寧に、私たちの意思も確認をしながら、通していくものは、国民生活に密着して、ここはやらなきゃいけないというところは、我々も是々非々、賛成して持っていく、通していく。ここはというところはしっかり時間をかけて議論をしようじゃないか。そこから、話し合いの道筋の中で共通点が生まれてきたらそういう組み立てをしていく。だめであったらそのままの形で採決をしていくということ。こんなところなんだろうなと思いながら、実は期待をしておったんですが、残念なことに、今回おろされた法案のあり方というのはそんな形にはなっていません。いわゆる従来型です。

 ということは、皆さんのメッセージというのは、これまでと同じで、短時間の中で賛成か反対か決めろ、それで採決をやりますよということ、こういう意思なんだということ、そんなふうに受け取らざるを得ないという状況なんです。だから、これは、さっき総理が言われた話と、現場で具体的に流れている話、現場の意図と全く違うんですよ。

 そこについて、総理、ここは総理の指導力というのが問われると思うんです。本当に総理がそういう気持ちの中で話し合いをということであれば、これはやはりそのような形で与党の国対を説得すべきだと思うんです。どうですか。

額賀国務大臣 中川委員おっしゃるとおり、今度の国会、粛々と審議をして、そして落としどころも考えていく、そういう議論については、私どもも丁寧に議論をして、最終的にきちっと国会の意思を表明していただきたい。しかも、なおかつ予算でございますから、年度内にぜひ成立せしめるようにしっかりと議論を展開してまいりたいというふうに思っております。

 租税特別措置についての言及でございますけれども、我々は、いつも租税特別法のその政策目的、そしてまたその経緯、効果、そういったことについては見直しを続けてまいったわけでございます。その上で、ちゃんと共通の目的あるいはまた理念、あるいはまた税の関連性、そういったことを考えながら一括上程をさせていただいているわけでございますので、その上でしっかりと議論をさせていただくことをお願いしたいと思います。

中川(正)委員 総理、ちゃんと前へ出てきて答えてくださいよ。これまで、午前中もそうですが、やはり総理がしっかりメッセージを出さないと、この国の経済がかかっているんですよ。さっきの大臣の答弁というのは、全く話をそらしているだけで、話の本筋になっていないんですよ。

福田内閣総理大臣 今、財務大臣もお答えしていますけれども、私は矛盾したことを考えているつもりはございませんで、この法案の、特に税制改正法案の出し方に問題がある、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるようですけれども、これは別に、今回特別に特別な方法をやっているわけではないんであって、これまでもそういうやり方はしてきているわけですよ。そして、それはまたそれで利便性もあるんですよね。ほかの税制との関連とか、一覧することによっていろいろなことがわかってくるところもあるんだろうと思いますよ。そういうふうなことを考えれば、私はこういう方法もあってもいいだろうというように思います。

 また、時間がない、そしてまた短時間でもって何やら強圧的に決めるようなやり方をするといったような趣旨のことをおっしゃられましたけれども、そんなことはないですよ。まだ時間はたっぷりあるんですよ。二カ月近く衆参で議論できるわけですから、その間に決めていただければいいわけですから、ひとつどうぞよろしくお願いしたいと思います。

中川(正)委員 もっと言えば、これは、さっき申し上げたように、百を超える法案、一つ一つあるんですが、例えば中身でいけば、所得税で七つぐらいあるんですか。上場株式の配当等に係る源泉徴収、これは売買に係るものをもとの二〇%に戻すか、今の一〇%のままにしておくか、配当についてもそうするかどうか、こういう内容であるとか、あるいは、地震防災対策用の資産、こういうものを特別償却するための法律とか、本当にそれぞれの企業活動なり、あるいは国民のそれぞれの生活に密着した中で、本当にこういう税でやる手段が効果があるのかどうか、あるいは、補助金という形で政策誘導するのが効果があるのかどうか、あるいは、法規制の中でそれを政策誘導するのが効果があるのかどうか。

 こういう時代ですから、この租特だけで、財務省の試算でいくと、トータルで三兆五千億の予算、減税分ですね。三兆五千億の予算がこれにかかっている。これは、やる、やらないで、それだけのいわば税を使っているんだということですね。それが、だから、本当に、さっき申し上げたような効果があるのかどうか。あるいは、もっと言えば、法律もつくった、そして補助金も出している、さらに税金もまけているという、こんな形で幾つもダブった形の税の使い方をしている部分もある。こんなものが絶えずこれまでいろいろな方面から指摘をされて、どうも租特というのはやり過ぎだぞ、もっと精査をしながら、ここで税の本質といいますか、本来の機能というのを高めていく、そんなところがあるんじゃないか、そこのところをしっかり議論した上で、こういうことだと思うんですよ。

 そのときに、一番私たちが求めなければならないのは政策評価なんですよ。これは、それぞれの省庁が関連団体に言われて、こんな租特入れてくれ、あんな租特入れてくれといって引っ張ってくる。それをいろいろな形で精査しながら、恐らく、今回はこれ、こういう形で上げてきているんだろうけれども、それの基本になっている政策評価というのを、それぞれの省庁なり、あるいは財務省でどの程度のものをやっているのかということ、これは気になったものですから、私たちも、実は去年の秋から、これの聞き取りをずっと始めました。

 ところが、各省庁、そして財務省というのはもっとだらしがないんですが、各省庁、政策評価、しっかり出してきていないんですよ。我々にそれが一つ一つ届いてきていないんですよ。それを持って初めて我々は、評価ができるんだ、これは継続するかしないかというのはできるんだと思うし、与党の皆さんも同じだと思うんですよ。そういう基準がない中で、ただ、これは役に立っているから延長してくれ、こう言われただけで手を挙げて賛成だと言ってきたとしたら、それは大変な国民に対しての背信行為だと思うんです。そこのところを私たちは今回の議論ではしっかり表に出して、国民にも説明をしなきゃいけないというふうに思っているんです。

 それで、去年の秋から、与党の方にもあるいは政府の方にも、その政策評価を表に出してきなさい、それを土台にして、この中で賛成できるものは我々も賛成をしていく、そんな議論をしていくからと。

 もう一つ言えば、総理、さっき答弁が出ましたけれども、参議院の状況が違うんですよ、ふだんと。違うんだから、国民生活に支障を来さないようにというような形で持っていくとすれば、私たちも、その中で精査をして、進めていくものはどんどん進めていくというスタンスをとっているわけですから、だから分けましょうよ、そんな中で一つ一つ議論をしていきましょうよ、政策評価も出しなさい、ここだと思うんですよ。

 そういう流れができてきていない。あるいは、本当に政策評価をやっているのかどうか、これは、我々も秋からずっと一つ一つ確かめているんですが、ひょっとしたらとんでもない安易な形でこの租特というのが決まっているという可能性もある。そうだとしたら、もう一回これはゼロに戻って考え直さなきゃいけないというところまで行くんだと思うんです。そこのところが、私は総理のリーダーシップを発揮するところだろうというふうに思います。

 もう一回聞きます。政策評価、これは、この議論が始まるまでにちゃんと出してこれますね。それと同時に、この議論の背景になっているそれぞれの租特、これは、特に証券税制、それから、この後議論もしますが道路の特定財源、こんなふうな、一つ一つ取り上げていくと与党と野党の考え方が違っているようなところを特に別個にして、その他大勢くくって、それぞれ議論をしていくというような工夫、こんなことが当然なされるべきだろうと思うんです。

 そのリーダーシップを発揮していただくということ、そしてそういう枠組みをつくるということ、ここをもう一度、答弁をお願いしたいと思います。

額賀国務大臣 中川委員の御指摘でございますけれども、我々も、租税特別措置については、そのたびに見直しをし、あるいは廃止をしたり縮減をしたり、そういうことをやってきているわけでございます。そのたびに、要望官庁からは要望書を受け、そして政策効果を聞きながら、きちっと対応をさせていただいているところでございます。

 おっしゃるように、どんどんどんどん租特がふえていくことは正しいとは思いませんけれども、それは、時代の要請に応じて、国民の要望や、あるいはまた経済活性化のために必要なことはやる。(中川(正)委員「我々に出すのかどうか、答えてください」と呼ぶ)

 それについては、我々も民主党側の要求については承知をしておりますけれども、財務金融委員会でもテーマになっていると聞いておりますので、国会の場でしっかりと議論されていることを私どもは注視しております。

中川(正)委員 総理、答えてくださいよ。私はあなたに聞いているんですよ。

福田内閣総理大臣 別に嫌と言っているわけじゃないんですけれどもね。担当大臣がいるんですから、担当大臣が答えるような問題だと私は思いますよ、まず申し上げておきますけれども。

 それから、先ほど、一つ一つ税制の評価をしたい、こういうふうなお話がありましたけれども、今の状況の中で、もし御疑問があればその問題についてここで議論されるというのは十分できるわけですから、一つ一つ取り上げて議論してみてください、それは。

 それからもう一つ、政策評価というお話がございましたけれども、今財務大臣が答弁したとおりなんですよ。もし必要とするような資料があれば、委員会で決めてください。何を出してほしいかということを決めていただいて、そして、それに私の方から従うようにということはしっかりと申し上げます。

中川(正)委員 秋口からそれを要求しているんですよ。出てこないんですよ。だから言っているんですよ。そこのところを、リーダーシップを発揮してもらう。

 そして、本当に話し合いの中でお互いが前向きの議論をしていくということであれば、国会で舞台をつくるのは与党ですから、だから、皆さんの責任でもってその辺の舞台をつくらないといけない、その辺の情報開示をしないといけないんです。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。リーダーシップを、総理、発揮してください。(発言する者あり)

逢沢委員長 静粛にお願いします。

中川(正)委員 次に進んでいかなきゃいけないのは、そんな中で、どうしても争点になって、折り合っていくことが難しい話がありますよね。道路特定財源がまさに今そういう形で、国民も注目をしているというところだと思うんです。

 私は、この議論を聞いていて、土俵の違うところをいかに話し合っていくかということなのかなと思っているんです。

 与党の方の土俵というのは、今の特定財源、ガソリン税を中心に、この税を道路だけにしか使わない、かつ、何かつじつま合わせみたいな形で、十年間五十九兆円、どうしても必要だから一円たりともこれはまけるわけにいかないんだというふうなかたくなな話で、結局、資源の再配分、これだけ時代が変わってきた中で、それを固定化して、すべてが道路なんだ、こういう形がこれからあと十年続く、そういう設定の中でこれは議論が続いている。

 もう一つ、私たちの土俵というのは、まず何で始まっているかといったら、ここのところの一般財源化なんですよ。これは道路だけということじゃないでしょう、トータルで一般財源化をしましょうと。

 その中で、さらに、この後私たちの予算案というのを出しますが、その中で言っているのは、この道路の関係あるいは公共事業の関係だけじゃなくて、これまでの補助金、これはどうも間違っていたぞ、出し方が。それぞれの地方自治体の分権あるいは国と地方との関係を整理していく中で、この財源の再配分というのは、個々の、個別の箇所づけを国がやって、これに使わないと補助金を出さないよ、こういう形じゃなくて、すべてを丸い形で、統括して地方に渡す。その優先順位と基準というのは、これは地方がその中からつくり上げてくるということ、この前提があって初めて本来の意味でいう地方分権ということになるんだ。

 国は、そんな中で、例えば道路でいえば、高速道路あるいは直轄道路というのは、地方から負担金を強いるというか、金を出せよというんじゃなくて、トータルで国の仕事は一〇〇%国が責任を持ってやっていく、その区分をはっきりさせていくというような流れをつくっていくんだという意味合いで統括化して、それで特に貧しいところにはより厚くという財政調整も兼ねた形で資金を流す、その財源にこの道路特定財源もトータルで使っていくということ。

 だから、地方によってそれぞれの事情が違うわけです。うちは道路が必要だというところもあるかもしれない。しかし、いや、うちは道路よりもやはり福祉なんだ、教育なんだというところもあるんですよ。それは、それぞれの価値観の中で、それぞれの政治の中で、地方自治体の中で整理をしていって、その枠組みが使えるということ、これを実現して初めて新しい国の形というのができるんだということ、これを前提にした私たちは議論をしているんです。

 そんな中で、一般財源化するということであるとすれば、暫定税率という形でこれまで増税をずっと続けてきた。これは増税なんです。増税を続けてきたということ。だから、その増税を続けてきた分については、道路だという名目で続けてきたわけだけれども、一般財源化していくということであるとすれば、ここの部分はそうした意味では減税をしていく、なくしていってもいいだろう、いくことが正しいんだろうということの中から減税という議論になっていくわけですね。

 だから、トータルな財源確保というのは、私たちは、そうした意味の中で、特殊法人や独立行政法人、これを全廃していく中で、その中に隠れている、いわゆる特別会計の中に隠れている金をそこからしっかりと掘り出してくるということ。あるいは、こうした形で、補助金というのは箇所づけしないという前提になれば、地方支分部局、国の支店ですよね、これが一切なくなってくる、それよりも地方自治体に力をつけていくという流れをつくっていかなきゃいけないとか、あるいは、それぞれ、これまでの議論の中で、租特、さっき話を出しましたが、これをしっかり精査していくことによって、そこから相当の財源が生まれてくるということ。こんなことを全部トータルにしながら、我々の財源議論というのをやっているわけです。だから、そこは道路についての減税をしても大丈夫だ、それぞれの自治体に対してはしっかりと財源は確保していける、こういう主張をしているわけです。

 この二つ、確実にこれはその前提が違うし、土俵が違うんですね。そのものをこれからしっかりと議論して、どこかで着地点を見つけていかなければならないということだと思うんです。

 これをこれからどのように議論していくか。これも総理の話の中で、話し合いで何らかの形でその着地点を見つけていく努力、これは私も賛成なんですが、総理はこれをどのような議論の枠組みでこれから進めていくべきだというふうに考えておられるのか、そこのところを、さっきの租特の入り口と一緒ですが、これについて答えをいただきたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 いろいろなことをおっしゃられましたけれども、中川委員はなかなか進んでいますよね、お考えが。随分先のお話をされていました。分権、そしてその先の道州制も見据えて、こういうことであったかと思います。私どもも全くその方向は同じだと思っていますよ。

 ただ、議論は、ただいまここで議論をしていますのは来年度のことでございます。非常に現実的なことを議論させていただかなければいけないと思っておりますので、そういうような将来を見据えながらも、まずはこの来年度、しっかりと議論をさせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

中川(正)委員 では、かわります。

逢沢委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。中川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 きょうは、現下の景気後退、株価の下落、そういった問題に対する集中審議ということで、少しでもこの議論が、日本に期待を持たせる、そしてまた、株価が上がる、また、日本への投資がふえる、そういった具体的な議論をしていかなくてはいけないと私は思っております。

 その中で、経済産業省にかかわるテーマも取り上げます。ただ、ダボスに行っておられます。大事な会議で、特に石油の関係で議論されているということで、我が党も、それはぜひ行ってください、国益には大変重要なことなのでぜひ行ってくださいということを申し上げましたので、その分、経済産業省の担当の分野の質問については、総理もしくは官房長官、しっかり成りかわってお答えをいただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、午前中の質疑の中でもありましたけれども、今の日本の経済のいわゆる下方修正、成長の下方修正の要因は主に三つある。これは、この間の本会議でも大田大臣から、サブプライムの問題、それから原油高、そして改正建築基準法、この問題が言われました。そして、先ほど数字をおっしゃいましたね。〇・七%のうち〇・六%は建築確認が寄与している、マイナスの寄与をしているということであります。

 総理にお伺いをしたいと思います。

 この改正建築基準法というのは六月の二十日に施行されたんですよ。六月の二十日に施行されて、そしてその以降どうなっているかということを、ちょっとお配りしているグラフをごらんいただきたいと思います。

 左側が全体の建築確認交付件数の月間減少の推移ということで、七月が三九・四%、八月が二四・五%、九月が二七・五%、そして十月が一一・一%、十一月がマイナス九・六%ということで、かなり落ち込んでいます。

 この一つの原因は何かというと、建築基準法の改正。これは耐震偽装に端を発しているので、改正そのものを否定するつもりはありません。我々がこれについてはおかしいということを言ってきたわけですから、この改正をすること自体に我々は否定をするつもりは全くありませんけれども、こんなに落ち込んで、先ほど大田大臣から、現下のいわゆる成長率の下方修正の大宗の要因というものはこれであるという話が出ているわけですね。しかも、八月十日になってようやく構造関係告示の運用に関する技術的助言が通知をされているということで、約二カ月のブランクでようやく技術的な助言が出てきているということであります。現場は完全に混乱をしてストップしているということであります。

 総理に伺いたいのは、要は、これ、予見をしていなかったのか。これだけこの改正建築基準法において確認交付件数が減少して、先ほどの大田大臣の答弁のように、マイナス、いわゆる下方修正の大宗〇・六%分はこの建築基準法の改正によって起きているということは、これは結果として極めて甚大なミスだと私は思いますよ。

 まず、これを予見していたのかどうなのか、総理、お答えください。

福田内閣総理大臣 一言で申し上げるんですか、イエスかノーか。

 私は、担当していたわけではありませんので、当時、そういうものの予見は全くしていませんでした、一政治家として。

前原委員 そのときは総理でなくても、今、内閣の責任者なんですから。ですから、今の立場で、それが内閣として予見をしていたのかどうか。別に個人として聞いているわけじゃないんです。

 冬柴大臣、お答えください。

冬柴国務大臣 非常に大きな改正でございますので、民主党の方も、これは姉歯事件で、震度五強で崩壊するようなマンションがこの国でつくられたり売られたりすることは許されない、これはみんなの思いだと思います。したがって、我々の案よりも民主党さんの案の方がもっと厳しい案だったわけでございます。

 ただ、これについて予見があったかどうかという話でございますけれども、残念ながら、我々としては細心の注意を払って周知徹底を図りましたけれども、六月二十日時点ではこんなにも落ち込むということは予見することはできなかった。それは、我々の努力にもかかわらず関係者が習熟することがなかった、それからまた、審査する方も過剰な反応をしたということが我々の予見を超えたところでありました。

前原委員 民主党の方が内容が厳しいかどうかということを今おっしゃるのは、私はいかがかと思うんです。

 つまりは、六月二十日に出た法律の運用改善の助言が八月の十日に出てきているということがまず一つの、要は、十分な準備でやっていないから二カ月近くもおくれて技術的な提言が出ているんじゃないですか。

 これは、うがった見方をすると、参議院選挙の前だから、とにかく法律は出しました、耐震偽装のことについては政府・与党はちゃんとやりましたというエクスキューズにしか見えないですよ。それで結果的には、大混乱、ストップをして、そして先ほど見ていただいたような落ち込みを示しているということであります。

 それからもう一つは、姉歯問題の大きな問題になったのは何だったかといいますと、大臣認定構造計算プログラム、姉歯氏はこれを偽装したわけですよ。これについて変えなきゃいけないということであって、これは法律にも書かれていますよね、改正建築基準法の二十条に、このプログラムも改定しますと。まだできていないじゃないですか。

 つまりは、六月二十日に法改正をしました。そして、八月十日に告示を、技術的助言をようやくやりました。そして、六月二十日の法律に書かれているいわゆるプログラムについてはまだできていません。何が準備周到なんですか。準備が周到でないからこういう混乱が起きているんじゃないですか。これは人災じゃないですか。これは官製不況じゃないですか。

冬柴国務大臣 大臣の構造計算プログラムがまだできていないという事実でありますが、私は一月二十一日に異例ではありますが仮認定をいたしまして、現在、これを関係者によって試行いたしております。そしてまた、各地方におきましてもそれに基づく研修を重ねておりまして、できれば一カ月以内ぐらいに本認定ができればというふうに思っております。

 なぜこうなったのか。これについては、これは社会資本整備審議会等により審査をしていただきまして法案の内容を決めていただいたわけでございますけれども、これに期待するもの、すなわち、建築確認をするための処方について、それと違う数字を入れればこれがすぐにとまるというような精巧なものでございまして、姉歯のように、あるいは藤建というのが百六十二もごまかしておりましたけれども、そういうものは一切受け付けないというようなものでございます。

 多くのソフトメーカーが取り組みまして、もう本当に昼夜分かたずやっていただいたんですが、なかなか難しくてできませんでした。しかしながら、一社だけが、NTTデータのものが、ずっと今まで十二月からこの検査をやっているわけですが、これが一番進んでいるのではないかということで仮認定をさせていただいたわけでございます。

 その意味では、確かに六月二十日時点でできなかったということは申しわけないと思います。ただ、法律を一年で施行したわけですね。したがいまして、このときは、一日も早く、そうでないともう売れないというような状態であったものですから、一カ年ということでしたけれども、六本の政省令を、それぞれに一カ月ずつパブリックコメントするわけですけれども、そういうような準備に追われたわけでございます。

 そして、コンピューターメーカーも、当初からやっていただきましたけれども、なかなかそれができなかったというのが事実でございます。

前原委員 帝国データバンクの調査で、二〇〇七年の倒産件数は、一万件を超えて一万九百五十九件。そのうち、住宅着工のおくれで、建設業者の倒産は二千九百三十九件。つまりは、約三割。しかも、前年比三百三十三件プラス。この中でこれは倒産しているわけですよ。申しわけなかったでは済まないんです、これは。倒産をしていて、ひょっとしたらみずから命を絶たれている方もおられるかもしれない。

 そういう問題を、さっき申し上げたように、六月二十日の法改正はやりました。そして、その技術的助言は八月十日までおくれました。法律に書いてある構造計算プログラムについては、一月二十一日に、しかも、これは仮認定でしょう、NTTデータだけで。これからバグ出しもやるわけでしょう。これが本当にうまく機能するのかどうなのかということを今からやって、まだ使えないわけですよ。

 総理、完全に、政治が結果責任をとらなきゃいけないとすると、これは人災である官製不況じゃないですか。まず、現状把握をした上で率直に国民に対して謝罪をする、そこから善後策をとる、本来、これが政治の責任ある姿じゃないですか。

 総理、まずしっかりとこの過ちを認めて国民に謝罪をして、そしてどのような対応をとるのか、そのことについて明確にみずからの口でお答えください。

福田内閣総理大臣 確かに、そういう行政上の予見が足りなくて産業界に大変御迷惑をかけた。しかし、建築だけじゃないんですね。例えば家をつくれば、家電製品とかそういうような需要もあるわけでありまして、その波及というのは非常に大きなものがあると思います。ですから、そういう意味においても、今回は本当に皆さんに御迷惑をおかけした問題だと思って、重くこの問題については受けとめております。

 ただ、今は、こういう現場の混乱とかそういったようなことをいかにして修復していくかということに全力を挙げるということが必要なんだろうというふうに思います。とりあえずはそのことに傾注させていただきたいと思います。

前原委員 謝罪をされました。政府の責任を認められました。私も、批判をするだけではなくて、では、どうしたらいいか、これをともに今から考えていきたいと思います。

 右のグラフを見ていただきたいんです。この一号から三号建築物の建築確認の交付件数というのは、やはりまだ減っているわけですよ。これは右側のグラフです。

 逆に言えば、左は、四号という、つまりは、木造二階建てのいわゆる耐震偽装の構造設計のらち外のものまでとまっちゃって、だから、一号から三号だけとまったんだったらまだいわゆる耐震偽装にかかわる問題だとわかりますけれども、耐震偽装と関係のないところの四号までとまっちゃって、結果的には住宅着工件数が落ちているわけですよ。ということは、この四号についても、実は耐震偽装の問題ではなかったのに、この法案では提出書類、認定書の添付などの事務量が格段にふえて、後で別の質問をしますけれども、つまり、別のところまで影響が及んでいるんじゃないか。

 ここは耐震偽装と関係のないところなので、国土交通大臣、直せるんじゃないですか。四号のところについては、以前のような形にして簡素化を図る、二十一日以内に建築確認の申請をおろすというような運用の改善をされるべきだと思いますが、いかがですか。

冬柴国務大臣 ちょっと今の、左側を四号と言われましたけれども、それは全体でしょう。(前原委員「一から四です」と呼ぶ)ええ、全体でしょう。四だけを取り出せば、四というのは普通の戸建て住宅です、ほぼ前年並みに戻っていますよ、数字を挙げてもいいですけれども。(前原委員「当たり前じゃないですか、関係ない」と呼ぶ)いや、当たり前って、それを落ちているとあなたがおっしゃるから。そうではなしに、確かに右側の一―三号というのは構造物ですから落ちていますが、一般的な平家の戸建て住宅はほとんどもとへ戻っております。

 それで、前年度と比較していられるんですが、前年は百二十九万戸と今までで過去最高の着工件数だったんですよ。それと比較されてこれが随分落ちていると。したがって、これは確かに落ちていますけれども、それも、その点はいかがかなという感じはいたします。

 ただし、これを一過性のものにしようということで、私どもは全力を挙げます。

前原委員 総理は謝られたんです。担当大臣は謝らずに、それで言いわけをして、いや、前年は多かったからその変化はどうのと。

 まず担当大臣として謝るべきでしょう。自分に責任があるんでしょう。まず謝るのが先じゃないですか。

冬柴国務大臣 もう数字はきっちり出ております。それで、私は担当者として、これは重く受けとめ、また、そういう意味で、国民に御迷惑をかけたことについては心からおわびを申し上げます。

 ただし、本当に、これは姉歯のような事件がこの国で二度と起こってはならないという、その思いは共通していると思うんですよ。したがいまして、こういうことを起こさないために我々は今必死になって昼夜分かたずこれをやっているわけでございまして、それに対する政策というのはあらゆることをやりました。中小企業に対する融資についてもやっておりますよ。それで、東京リサーチなんかのあれでは、今倒産件数を挙げられましたけれども、我々の方が政府系融資あるいは保証融資の道を開いた部分については、前年度と比べて倒産件数は減っていますよ。

 そういうこともありますので、我々、それは申しわけはしません。確かにこういうふうに落ちたことはおわびするということを申し上げているわけです。しかし、それを回復するために全力を尽くす、それが我々の責任であるというふうに思っております。

前原委員 おわびをしてただしと言ったら、全然おわびをしたように聞こえないですよ。

 先ほど申し上げたのは、四号についても書類添付という事務量がふえたんです。それがまず一つ。いいですね。それから二つ目は、現場の方々、一級建築士の方々と意見交換されましたか。では、話をされたんだったら、皆さん方、どれぐらい事務量がふえているとおっしゃっていますか。大臣、お答えください。

冬柴国務大臣 早い時期から、私の選挙区はもとより東京の方々にも集まっていただき、また私の大臣室にも、一級建築士の方、申請側あるいは確認側両方来ていただいて、いろいろな話も伺っております。

 確かに、添付書類等が一時ふえた時期もあります。しかし、それは、大臣認定した建築資材を使っても、その書類まで全部つけろというようなことを当初やっているんですね。それは余りにも、そういうところがおくれた理由にもなるので、それはやめてほしいということは早くにやっております。

前原委員 大田大臣に伺いますが、大田大臣は、新聞のインタビューだったと思いますけれども、周知徹底されてくれば、このやり方が習熟されればいわゆる住宅着工件数は戻るという趣旨の話をされていたと思いますけれども、戻りますか、時間がたてば。どのぐらいで戻りますか。

大田国務大臣 今回の住宅投資の落ち込みは、景気の問題といいますか、需要がなくて落ち込んだわけではありませんので、制度変更による混乱ですので、理屈の上でいいますと、その分は先送りされるということになります。

 ただ、落ち込みが非常に大きかっただけに、先ほど先生がお挙げになった倒産も一部出ていると聞きますし、それから関連資材の生産、あらゆるところに影響は及んでおりますので、完全に戻るかどうか、今の時点では完全に戻るとは確実には申し上げられません。

 私どもの見通しでは、平成二十年度には、ことし〇・六%落ちた分の〇・四%押し上げ要因になると見ております。

前原委員 制度要因で落ちた、だから戻るんだというふうにおっしゃいましたけれども、この建築確認、新建築基準法、改正したもので手続が変わったんです。

 先ほど申し上げましたように、耐震偽装にかかわらない四号、つまりは木造二階建て、一号から三号以外のものについても、要は添付書類等がふえて事務量が増加されているということと同時に、私が政府に対して質問主意書を出して、その答え、これは政府、閣議決定で答えが返ってきています。読みますよ。「建築確認の申請書の記載事項及び添付図書が拡充されたことに伴い、一級建築士の業務量及び費用面での負担はその限りにおいて増加しているものと考えられる」と。つまりは、この今の仕組みをそのまま運用改善をせずにいくと、もとに戻らないんです。わかりますか。

 私が聞いている範囲では、事務量は大体二倍になっていますよ。一・五倍から二倍。届け出をするまでにも、今までより資料を用意しなきゃいけない。そして、申請をしてから、今まで二十一日以内に要は認可がおりていたのが、許可がおりていたのが、最大七十日ですよ。というようなことを考えたときに、運用を改善しなかったらもとに戻らないんです。同じ制度で、そして何かの制度的な問題があって落ち込んで、そしてそれが取っ払われたら戻るという話じゃなくて、制度変更をしたわけですから、そういう意味では、このまま放置をしていては戻らないんです。

 それと同時に、一級建築士については、今度は構造設計一級建築士という資格をつくる。これは、全員その資格を取るかどうかわからないですよ。となると、いかに人数をふやしていくということを早急にやったとしても、今度はまたそういったところでの、入り口でのいわゆる律速要因になる可能性がある。つまり、ここの改善をどうするかというところをやらないと、そんな楽観的な、また戻りますという話にはならない。だから、国土交通大臣、そこを建設的に議論し合いたいわけです。

 そこで、ちょっと提案をしたいと思うわけでありますけれども、先ほどおっしゃったように、耐震偽装なんというのは絶対もう認めちゃいかぬということ。だけれども、先ほど申し上げたように、二つのことを申し上げたいと思いますが、四号については少し簡素化する、もとに戻すということがまず一つの提案。

 もう一つは、マックス七十日という審査期間において、適判と言われる適合判断、これが行われるわけですね。この分余計時間がかかるということでありますけれども、これを充実させて七十日をできるだけ短縮する。そして、先ほど大臣がおっしゃった、NTTデータだけが今仮認可されていますけれども、早くに大臣認定構造計算プログラムを取り入れるとしますよね。そうすると、マックス三十五日。

 六月二十日から今まで、半年以上の失敗をもとにして、これを短縮するための努力、そして、耐震にはかかわらない四号についての簡素化というのはできるでしょう。これは、どうですか、取り組まれませんか。これをやると言ったら、この世界においてはかなり私は律速段階が解けると思いますけれども。

冬柴国務大臣 四号については、ほとんどもとに戻っていますよ。数字がありますから、調べてください。

 それから、書類が多くなったという点につきましては、これは答弁書に書いてあると思うんですが、あなたからの質問主意書に対する答弁書ですが。事務量、費用の面で負担はその限りにおいては増加しているものと考えられるが、当該拡充された建築確認の申請書の記載事項及び添付書類の大部分は従来から建築主事等が必要に応じてその記載または提出を求めてきたものであり、これは年間の建築確認の件数には必ずしも影響を及ぼすものではないと考えていますとなっております。

 それから、ちなみに、いろいろとどんどん落ち込んで回復しないんじゃないかということをおっしゃいましたけれども、改正法施行後、減少が続いていた住宅着工は、十月以降は増加に転じております。九月は六万三千十八戸でしたが、十月は七万六千九百二十戸、十一月は八万四千二百五十二戸でございまして、十一月の着工は、十二月もふえていますが、対前々月比で三三・七%増加しています。

 それから、確認も、十一月も引き続いて伸びております。十月が一万四千九百八十七であったものが、十一月は一万五千六百十六と伸びているわけでございまして、何とかこれを早く取り戻したいというのが願いです。

前原委員 ということは、対策は要らぬということですね、新たな対策はしないと。国土交通大臣、対策はしないと。わかりました。

 では、対策はしないということで……(発言する者あり)やってきていないんです。それは現場を知らない人たちの議論で、ちゃんと本当に現場の人たちの意見を聞いたら、そんな答えには絶対にならない。ですから、これは答えが出ますよ、時間がたてば。今おっしゃったことは議事録に残るんですから、そのときにちゃんと責任問題として、もし戻ったら当たり前、戻らなかったら、それは今おっしゃったことの対応策というものがとれなかったということの政治責任ですよ。そのことだけは私は申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)対策をやらない無策を言っているんだよ、だから変えなきゃいけないと。

 きょうの議論というのは、いかに困っている国民の生活を改善させるかということを、お互い知恵を出そうということでしょう。対策は要らないと言っているんだから、それで対策をとらなくてもとに戻らなかったら、責任をとるのは当たり前でしょう。やじを飛ばされるような話は全くない。

 次の話に行きます。

 今度は、少しマクロの話をしたいと思います。

 総理、先ほどのサブプライムの話とか、あるいは原油高、あるいは今お話しの建築基準の問題等のいろいろな要因があるとはいえ、私は、やはり日本に対しての失望感というか、日本に対する相対的な距離感というのが各世界から出てきているんじゃないかというふうに思うわけです。それを取り戻すにはどうしていったらいいのかということについて少し議論させていただきたいと思います。

 これから人口減少社会になっていきます。現在の人口が一億二千七百万。推計でありますけれども、二〇五五年には九千万人を割るんですね。そして、老齢人口率は、今二〇・八%が約倍、四〇・五%になります。生産年齢人口率、十五歳から六十四歳、今六六・一%が五一・一%になる。こういうようなところでほっておいたら、どんどんどんどん人口減少、そして少子高齢化。これは日本が、もうこのままいってもいいじゃないか、しようがないなということなのか、あるいは、もう一度踏ん張って、こういう状況ではあるけれども成長というものをしっかりと担保していこうということになるのかの大きな分かれ目だと私は思います。

 そこで、この間の経済財政諮問会議でまとめられたもので申し上げますと、私は、幾つかのことを少しお話をさせていただきたいと思うわけです。

 成長、それから改革。さまざまな改革があるけれども、行政の改革もあるし、それから規制の改革もある。それから開放、マーケットをオープンにしていくということ。やはりこれが基本だと私は思うんですね。成長を維持する。だから、格差問題だって、解決をしようと思ったら成長が維持されないと再配分できませんから、格差の問題も結局はなくならない。いかに成長を維持するかということが極めて大事であります。

 そこで、オープンにということは書いてあります、この間閣議決定された文書に。私がオープンと言う場合に、後で投資の話もいたしますけれども、やはり日本というのは、自由貿易というものの恩恵を受けて、そして世界をマーケットに技術力で生きていくんだということになれば、日本こそがFTA、自由貿易協定やEPA、経済協力協定などを積極的にやっていかなきゃいけない国だと私は思うんです。しかし、それが後手後手に回っている。

 そしてまた、それができていないところの一つの大きな理由は、農業じゃないですか、農業。だけれども、このまとめられた文章を見ますと、一月十八日の閣議決定、「日本経済の進路と戦略 開かれた国、全員参加の成長、環境との共生」、これを読ませていただくと、農業の構造改革に対する話が載ってない。

 つまりは、農業も大事ですよ。食料自給率を上げていく。今、カロリーベースで四割を割った。今、従事者年齢が恐らく平均五十九歳ぐらいだと思います。これは、五年たったら恐らく食料自給率は三割を割り込みますよ、今のままだったら。これは、食料という世界においても喫緊の課題であると同時に、先ほど申し上げましたが、農業がのどに刺さった魚の骨で、EPA、FTAがなかなかうまく進んでいないというところもある。となると、やはりこれは、トータルとして農業の構造改革をどう進めていくかということが主要なテーマにならなきゃいけないのに、書いてない。

 大田大臣、何で書いてないんですか。

大田国務大臣 強い農業を育てていくということは、先生御指摘のように、大変重要な課題だと思っております。これに関しましては、なるべく農地を大規模にしていく、集約していくということが重要で、昨年の秋にその方向に沿った農地改革の案がまとめられ、今、それに沿って改革を進めることになっております。これについては、今先生が挙げてくださった「進路と戦略」の別のところに書いてございます。

 それで、これから取り組む成長戦略に関しましては、先生御指摘のEPAについて書いてございますし、それから農業については、例えば商業、工業と連携して新たな発想を持ち込むというところに書いてございます。

前原委員 いや、そこは、書いてあるのは読んだんです。でも、一行ちょろっと書いてあるだけ。だから、私は、核心だと言っているわけです、農業は。

 それで、今、大田大臣がおっしゃったことで、つけ加えて申し上げると、より具体的に申し上げると、農地法の改正なんです。農地の転用をどうやって進めていくかということと、あとは、せっかく特区で、構造改革特区で農業の株式会社参入を認めたんです。それを今、全体に広げようとしているけれども、上場企業はまだ入れない。

 これから、先ほど申し上げた三九%のカロリーベースでの自給率、そして平均年齢が、従事者年齢が五十九歳、ほっておけばこれはじり貧になっていきますよ。そこに対する所得補償もやっていかなきゃいけない。お互い競い合って、どちらがいいかということは、それは国民の皆さん方に示していかなきゃいけない。それだけでもだめなんですよ。

 つまりは、農業に上場企業が株式会社参入できるような、つまり、農業の産業化というものとあわせて農地法の改正、農地転用、あるいは農業委員会のあり方、こういった改革もパッケージでやらない限りは、農業というものは絶対立ち直りませんよ。だから、そういうものについての考え方をしっかり、例えば規制改革会議の中でもそういった意見が出ているということは聞いていますけれども、それが本当に政策の俎上にのるのかどうなのか。総理大臣、これは政治的な決定です、意思ですから、それについてどう考えられるか。

福田内閣総理大臣 日本を開かれた国にする、人、物、金、情報というふうによく言いますけれども。開かれた国にする、どういう分野で。そういう中で、当然そういうことはやっていきますけれども、しかし、農業がネックになっているんじゃないかというこの御意見、私は、すべてじゃないけれども、賛成いたします。農業がネックでできないというわけでもないところもありますから、それはそれでよく見きわめてやっていかなければいけないというように思います。

 農業は、確かにこれは、そういう農産物の価格比較とか、それから今の農家の実態とかいったようなさまざまな問題、それから、もう一つ加えれば、農村地域の地域社会の問題というようなことがありますので、そういう複雑な方程式をどうやって解いていくか、こういうことになります。

 私もそれは問題意識は持っておるわけでありまして、意欲ある担い手を支援するとか、農地の集積、有効利用を進める、いろいろあります。ありますけれども、では決め手になるかどうかといったらば、我が国の農業のコストと海外のコストの差が非常に大きいということがあって、そう簡単ではないだろうというように思います。

 ただ、では補助をすればいいんだということでもない。将来、農業の合理化とか競争力がつくとかいったような観点でそれがなされるのであればいいんだけれども、しかし、それはなかなか難しいことでありますので、この辺もこれからよく考えていかなければいけないと思います。御党でも出されていらっしゃいますけれども、一過性の補助というようなことになってはいけないと私は思っております。

前原委員 何かいろいろおっしゃったけれども、今までの農業を規定していた農業委員会やあるいは農地法、そういったもの、あるいは特区で認めてきた株式会社参入というものを広げていくか、要は、これこそが改革です、今までのと違う形に農業を展開していくという。その意思がおありかどうかということを聞いているわけです。

福田内閣総理大臣 今私が申し上げたんだけれども、やはりコミュニティーという問題もありまして、そう一遍に変えられるものではないだろうというように思います。ですから、そこは、私どもは、その第一歩として農商工連携というものを取り上げたわけです。

 農商工連携というのは、農業に商工業のノウハウ、そういうものを注入していくということで、両方が協力し合っていい産業に仕立て上げていくということ。しかし、これだってなかなか大変だったんですよ。要するに縦割りですから、商工業と農業、こういう縦割りの、これを横に結びつけることもなかなか大変なんですよ。でも、それをやっていかなければやはり農業自身がだめになるだろう、そういう意識で、それがまた将来の農業の活性化につながっていくんだろう、そういうことになればいい、こういうふうに思っているんです。

前原委員 私は、スピードというかテンポというか、先ほど申し上げたように、やはり極めて遅いというか、意思が感じられない。

 何を言いたいかというと、日本の人口は減っていきますけれども、世界の人口は年間七、八千万ふえているわけですよ。そして、これからどんどんどんどん食料需給も逼迫していきますよ。しかも、その日本にあって、食料自給率がどんどん下がっていく。そして、従事者の平均年齢は高い。新たな若い人たちが、農業をビジネスとして、あるいは生涯の仕事として入るような環境にない。それを、今難しいからといって先送りしていったら、本当の改革にならないどころか、高いお金を出したってどこの出物かわからないようなものしか食べられないようになりますよ。今までが、まさに自民党農政の失敗じゃないですか。だから今のようなじり貧の状況になっている。私は、もっとスピード感を持ってやらなきゃいけないということを申し上げておきたいと私は思います。

 さて次に、先ほど人口構成の話をしましたけれども、話をしたいのは道路特定財源の話です。つまりは、税金の使い道をいかに変えるかという話を少し総理とさせていただきたいと思います。

 先ほどの少子高齢化が進んでいくということと同時に、これは公財政教育支出の割合。総理、こちらの資料を見ていただいたらと。

 OECD三十カ国の平均が、カナダとルクセンブルクについては、ノーアンサーということで、ありません。だから二十八カ国でありますけれども、GDPに占める公財政教育支出の割合というのは平均が五なんですね。日本は、ギリシャの次に、下から数えて二番目、極めて低い水準であるということですね。

 これから人口減少、少子高齢化の中で成長力を維持していこうと思ったら、イノベーションというものをどのように高めていくかということが大事ですよね。技術革新、イノベーション能力。そうすると、人への投資、研究開発というもの、あるいは公教育に対する支出というものが、これでいいんですかね。こんなにOECD平均でよくないというのはいかがなものか。

 例えば、別の話を、資料を言わせていただきたいと思いますけれども、同じOECDが学習到達度調査というのをやっていて、これは資料にはありません。

 数学は、日本は二〇〇〇年が一位だったんです。それが、二〇〇三年には六位になって、二〇〇六年には十位に落ちていった。どんどんどんどん落ちていっている。それから読解力も、二〇〇〇年が八位、二〇〇三年が十四位、そして二〇〇六年が十五位。科学は、二〇〇〇年が二位、二〇〇三年が一位、そして二〇〇六年が五位。こういうことで、若干の違いはあっても落ちぎみの傾向になってきている。

 人が一番大事な資源じゃないですか、日本は。ということになると、公教育に対する支出は、このOECDより下で、下から二番目というのは余りにも情けない。それに対して、公共投資の支出はOECD諸国でナンバーワンですよ。公共事業費の対GDP比支出はOECD諸国の中で一番。つまりは、公共事業の対GDP比は一番で、教育に対しては下から二番目。

 私は、これからの人口動態、あるいは日本が競争力で勝っていくためには、税金の使い道を変えるということが大きな要因だと思いますよ。その意味でも、これだけ莫大な借金もあって、五・六兆円という道路特定財源を、これから十年間もそれを維持するというのは、いいんですか。こういった日本のあり方ということを考えたときに、果たしていい税金の使い道だと思われますか。

福田内閣総理大臣 では、私からまずお答えをして、あと、財務大臣にお願いいたします。

 今、表を見せていただきましたけれども、確かに日本はその表で見る限り少ないです。でも、子供も少ないんですよね、子供の割合も、比率も。ということもございますし、また国民負担率も、日本は四〇%、それから北欧、ここにあります四カ国は、アイスランド、デンマーク、スウェーデン、ここら辺は負担率七〇%でしょう。ですから、それは国民の考え方もあるわけですよ。そこまで負担してやろう、そういう志があるのであればそういうふうにすればいいわけですけれども、それはこれからまたよく御議論申し上げなきゃいかぬところだと思います。

 それで、もう一つは、お金がふえれば教育はよくなるか。相関すればいいんです、しないこともあり得るわけですから。その辺も、ただ単にお金だけで比較するというのは余り適当ではないんじゃないかなと思っております。

 二十年度予算でも、限られた財源の中で、先生が子供たちと向き合える時間を極力ふやすというような方向でいろいろ工夫をしているところでございます。教育というのは、あすの日本を担う人材を育てるところですから、これは本当に大事だと思っています。その点は同じ考え方だと思います。

前原委員 総理、かなりちょっと看過できない発言をされましたよ、今。つまりは、お金を使って効果があるとは限らないという話ですよね。そうしたら、今の予算委員会、今これは集中審議ですけれども、来週から補正予算、そして本予算が始まりますよね。限られた予算の中でいかに効果を上げようかと思って予算をつけているんじゃないですか。その予算の多寡というものが効果があるかどうかわからないと総理が大前提に言ったら、予算案の議論をする前提が崩れるじゃないですか。どうぞ。

福田内閣総理大臣 教育費が少ない少ないとおっしゃるから、あえてそういうふうに申し上げたわけでありまして、それは、お金を余計出せばそれだけ効果が上がるというのであれば、こんなすばらしいことはないと思いますよ。そういうふうにしてもいいと思いますけれども、ただ、出し方もありますから、そこら辺はよく考えた上で出すということをまず考えるべきじゃないでしょうか。

前原委員 莫大な借金がある。そして、先ほど表で見ていただいたように、少子高齢化が進んでいって、二〇五五年の推計値は、六十五歳以上の方が四〇%を超えるんですよ、五人に二人。働く人口、十五歳から働けるかどうかわかりません、十五歳から六十四歳までが五一%ぐらいに落ちるんですよ。そういった超高齢化社会を迎える日本にあって、しかも、教育、イノベーションが大事、そして研究開発、人への投資が大事、税金の使い道を大きく変えていかなきゃいけないところで、これから十年間も道路だけにお金を使い続けましょうというのがまともな使い方とは全く私は思いませんよ。そのことを申し上げているんですよ。しかも、公共事業の比率はOECD諸国でナンバーワン。

 総理、年間の道路の維持費というのは幾らかかっているか御存じですか。これは、私、調べてもらいました。ただ、農道と林道は農林水産省から答えをもらっていないのでそれは除去してありますけれども、高速道路とか国道とか地方道を含めて二兆円以上かかるんですよ。新たな道路をつくれば、また維持費がかかるんですよ。つくって終わりじゃないんです。

 それなのに、維持費は今でも二兆円かかる、これからかかっていくわけですけれども、そういうことを考えたときに、新たな道路をつくったら、またそれの維持費もかかる、維持費も膨らんでいく。そして、少子高齢化が進んでいく。イノベーションにも力を入れていかないと成長戦略は担保できない。それでも十年間五兆六千億という、この日本の財政状況において、本当に道路特定財源を維持することがまともな国の税金の使い道ですか。

額賀国務大臣 先ほど教育のことにも触れましたけれども、数が少なくないわけですから。では、一人当たりの教育費の対比をいたしますと、これは子供の場合ですよ、日本は五九・六%、そしてアメリカは六三・九%、英国は四九・三%、ドイツ四八・一%、フランス四五・三%、平均五三・二%で、日本は平均より多いです、五九%であります。

 それから、道路予算は、ピーク時は、委員御承知のとおり、地方、国を合わせて十五兆円余りありましたよ。今は六・八兆円ぐらいだと思います。しかも、なおかつ今度の国会で我々は、ガソリン税を、道路整備を上回る予算については一般財源化を図って、そして納税者の理解を得る形で使っていこうではないかというふうに考えているわけでございます。と同時に、その上限も五十九兆円ですよ。毎年毎年精査をして、本当に必要な道路なのかどうか、そういうことを国会の場で議論しながら対応していこう、そういうふうに大きな方針はもう転換されているわけでございます。

前原委員 何にもできてないですよ。二〇〇七年度で一般財源化したのは幾らですか、五兆六千億のうち。たった一千八百億ですよ。(発言する者あり)何が大きいんですか。

 先ほど一人当たりとおっしゃったけれども、それは、研究開発費の一人当たりも含めたらまた数字は違ってきますからね。つまりは、人への投資、イノベーションでいかに少子高齢化の中で日本の成長力を担保するかということでしょう。そのことを申し上げているんです。

 では、違う角度からいきますよ、増田大臣がおられるので。

 地方分権推進委員会が中間的な取りまとめを去年出しました。新分権一括法というのは二十二年に出すんですよね、二十二年に。出すんですね。

 まず、総理に伺います。

 この取りまとめに即した形でいわゆる一括法を出されるのか、あるいは、これはあくまでも参考で、このままではないよということなのか、まずそれだけ簡単にお答えください。

福田内閣総理大臣 基本的にはその方向でやります。できれば前倒しをしたいと思っております。

前原委員 この中間的な取りまとめ、今総理はこの方向でいきたいということをおっしゃっていましたけれども、では、道路についてこれはどう書いてあるかというと、「面的な管理の観点から、地域において市町村道と一体として管理することが効率的な都道府県道の管理権限については市町村に移譲すべきである。 さらに、原則として国の関与は廃止すべきとの観点から、都道府県道の認定等の国土交通大臣への協議を廃止すべきである。」と。

 つまりは、道路についても、これは国の今のあり方、つまり、補助金とか直轄の裏負担とか、そういうものについては基本的になくしていくということが書いてあるわけですよ。

 それともう一つ。これは社会資本整備に関する財政負担のところで書いてあるのは、「社会資本整備に関する国と地方の役割分担の見直しを行い、国庫補助事業についての対象事業の限定や直轄事業負担金の廃止・縮減等について地方の自主性・裁量性を拡大する方向で検討すべきである。」と。

 でも、これを実際実現する、そして今総理がおっしゃったように前倒しをするんだったら、十年間このままいきますというのはおかしいじゃないですか、だって、国と地方の財政のあり方を見直すんですから。今のまま十年間これを、額は同じでも、仮に、よしとして、しかし、国と地方の関係を見直していってこの方向性でいくんであれば、国と地方のいわゆる比率は大きく変わってきますよね。

 十年間維持するってどういうことですか。矛盾しますよ、これは分権の考え方と。

福田内閣総理大臣 それは、今はそういう分権に向かっての計画案ができたわけですね。それはそれで尊重してやりますけれども、それと道路がどうこうというのは、それは、そういうような分権が進んだ段階において、その分権の度合い等に応じてそういう計画を見直すことは当然あるんだろうというふうに思いますよ。

 今、もう分権をやるんだということを確定しているわけじゃありません。それは方向性ですからね。ですから、それは何とかしてやっていきたいと思うけれども、だからといって道路の方は、ではもう分権でやるんですみたいなことで今から言えないから、だから現実的に考えて我々はそういう十年間ということを申し上げているわけです。

前原委員 時間が限られてまいりましたので、幾つか総理に確認しておきたいことがあります。

 提言ですけれども、我々は、先ほど申し上げたように、やはり今から、これから先もずっと道路の建設ということはないだろうということで、暫定税率をなくす、本則については一般財源化をすると言っております。

 きょうは緊急経済あるいは金融の対策でありますけれども、例えば環境問題等を考えれば、私も、暫定税率を下げて、それではい終わりというのがいいとは思っていません。他の国から考えると、日本はまだまだガソリンの値段は、それはいっても安い。環境対策もある。きょうは時間がなかったので国家ファンドのところまでいきませんでしたけれども。

 つまりは、これからいわゆる京都議定書で決めたことをしっかりやっていかなきゃいけないということも含めて考えれば、私は、例えば本則に一たん戻して一般財源化をし、そして今のは緊急経済対策として暫定税率はなくす、だけれども、将来的に環境税のような形でどのぐらいの金額かということをお互い考えるというような歩み寄りがあってもいいと思うんですよ。そして、本則については、今、分権の議論のときには構造を見直すということをおっしゃったんですから、それでは、構造を見直して、そして緊急経済対策、減税を今の景気対策として二兆六千億行って、そして環境問題もだということで、そのときにまたお互いが議論し合ってやるというのも私は一つの考えだと思いますよ。

 その上で、何か三カ月延長して、暫定税率を、今月中に議員立法で通しちゃう、そういうような話が出ていますけれども、私はそれより、やはりちゃんと、今申し上げたようなことも、我々も歩み寄りますよ、議論して、そして六十日ルールのようなことをちらつかせて議論するようなことはやめるべきだと思いますが、その考え方はいかがですか。

福田内閣総理大臣 私どもは、あくまでも話し合いでやっていただければ大変いいと思っているんですよ。それがやはり国民のためにもなることだろうというように思います。

 前原委員は大変御理解が深いようでございますので期待もいたしておりますけれども、要するに、今御党の方では、ガソリン国会とかいったようなことで、まさに対決的なそういうような姿勢をお示しになるものですから、そうなると私どもも、与党の方もどうしたらいいかということはいろいろ考えなきゃいけないということになるんだろうと思いますよ。だから、そのようなことを考えないで済むようにしていただきたいなと思っております。

前原委員 これで終わりますけれども、歩み寄りといったら、お互いが歩み寄らなきゃ歩み寄りにならないんですよ。常に、いつも出てきているのは、今お答えにはならなかったけれども、三カ月間の暫定税率を今月中に議員立法で出して通しちゃってと、そういう議論があるんですよ。そういうことは、やりませんか。やらないんだったらやらないと言ってもらったら、それでいいんですよ。ノーですね。そういうことはやらない、ちゃんと話し合いながらやっていく、そういうことでいいですね。

 国民の生活をお互い考えながらやっていく。何も野党だけがそういう対決姿勢でやっているわけではない。それはお互いが責任を持ってやっていくということをしっかり申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

逢沢委員長 これにて中川君、前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 福田総理は、二十一日の本会議の答弁で、消費税の増税について、平成二十一年度までに基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるとされていることを踏まえて、早期実現を図る必要があると述べたと思いますが、これは事実ですね。

福田内閣総理大臣 二十一年度、国庫負担二分の一への引き上げ、こういうことがありますものですから、それに対応するためにはそういうことも必要かなというふうに考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 そのことに関連して、きょうはお聞きしたいと思います。

 まず、数字を確認したいんですけれども、一昨年から昨年にかけまして実施された年金に対する増税ですとか、さらに定率減税の廃止によって、住民税、所得税の大増税が行われました。幾らの増税になったか、国に入った分は幾らか、財務大臣、この数字を示していただきたいと思います。

額賀国務大臣 お答えいたします。

 二〇〇四年度改正における年金課税の見直しは、御承知のとおり、高齢者世代の税負担が同じ収入の現役世代と比べまして相当程度軽くなっていたわけでございますので、現役世代と高齢者世代との税負担の公平を図るという観点から行ったわけでございます。

 数字的に申し上げますと、年金課税の見直しが国、地方合わせて三千八百億円程度、このうち国税分が二千四百億円程度の増収で、定率減税の縮減、廃止が国、地方合わせて三・四兆円程度、このうち国分が二・六兆円であります。

佐々木(憲)委員 合わせて約二兆八千億円程度の国民への増税となったわけですね。

 問題は、基礎年金の国庫負担割合を引き上げるために使う、これが目的ではなかったのか。

 ここに平成十六年度税制改正大綱というものがありますけれども、これを見ても明らかなように、年金課税の適正化とか定率減税の縮減、廃止、こういうものを挙げまして、「平成十七年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の段階的な引き上げに必要な安定した財源を確保する。」こういうふうに書いているわけであります。

 こういう目的でこの増税を行ったということですね、大臣。

額賀国務大臣 これは、先ほど言いましたように、高齢者の負担と現役世代の負担を考えた場合、同じ収入を得ている層を相対的に比較すると、現役世代の方がちょっと負担が大きいのではないかということで変えさせていただいたということです。

佐々木(憲)委員 私が聞いているのは、その上がった税金を何に使うのか。そのことについて、与党税調は平成十六年度の大綱の中で、基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の引き上げのための財源、つまり、三分の一から二分の一に引き上げる、そのために使うんだ、こういう目的のためにやる、こういうふうに書いています。そのことを確認しているわけです。

額賀国務大臣 それは、基礎年金の負担の割合を高めていくために一部使わせていただいたり、あるいはまた財政再建に使わせていただいたりしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 一部と言いますけれども、ここで書いているのは、財政再建のために使うとは書いていません。基礎年金の二分の一への引き上げのために使うんです、だからそのための定率減税の廃止だ、こういうふうに書いているわけです。

 配付資料の一を見ていただきたいんですけれども、最初にこの定率減税の廃止を言ったのは公明党でして、公明新聞をそこにコピーしてお渡ししてありますが、左上の図を見ていただくと、「三段階で国庫負担二分の一へ」、こういう見出しがありまして、そのために、その下に小さな字で解説がありますけれども、定率減税の廃止、年金課税の見直し、これで財源を捻出し、二〇〇四年度から国庫負担を段階的に引き上げて〇八年度から二分の一にする、そういう案を提示しました、政党として真っ先に責任ある具体策を提起した、こういうふうに言っているわけですね。

 所得税の税収の三二%は地方交付税となる、それは承知の上でしょうけれども、増税した分に見合う金額を年金財源に充てる、こういう政策を出した、これは与党税調の全体の認識だと思うんですね。その方向で自民、公明政権は定率減税を廃止した。そのため、結果として国民は大増税で大変な打撃を受けて、怨嗟の声が広がったんですよ。それは御承知のことだと思う。

 そこで聞きたいんですが、厚労大臣、この基礎年金の国庫負担に回された分、これは現在幾らぐらい回っていますか。

舛添国務大臣 お答えいたします。

 平成二十年度予算におきましては、現行の基礎年金国庫負担割合に千分の八を加えることとしております。これによりまして、基礎年金国庫負担割合は、現行の三分の一プラス千分の三十二に千分の八を加えますから、三分の一プラス千分の四十ということでございまして、これに当たる金額について単純に試算いたしますれば、六千八百億円程度と見積もっております。

佐々木(憲)委員 この図を見ていただくとわかりますように、今まで、定率減税の廃止、これに二兆五千六百億円の増税、年金増税で二千四百億円、合わせて二兆八千億円増税になりました。

 しかし、実際に今数字を示していただきましたが、約七千億円、六千七百八十億円、これが回っただけなんですよ。つまり、全体の増税の中で、基礎年金の財源に回しますと言っていながら、四分の一しか回っていない。あと四分の三はどこに消えたんですか。

額賀国務大臣 これは、おっしゃるように、基礎年金の一部に三年間手当てをしてきたことと、あわせて、先ほど言いましたように、我々の大きな財政全般を考えた場合に、やはり借金累積が多いわけでありますから、できるだけ財政の健全化を図る上で使わせていただいたところもあるわけでございます。

佐々木(憲)委員 借金の返済に回すために増税したと。そういう約束はしていないじゃありませんか。今まで言ってきたのは、全部基礎年金の国庫負担を引き上げるために回します、そのように与党税調も言い、自民、公明もそういう宣伝をしてきた。ところが、実際には四分の一しか使わない。あと四分の三を借金を返すためにと。そんな使い方で国民は納得すると思いますか。そういうことをやって、まだ足りない、まだ足りないから今度は消費税の増税だと。

 総理大臣は、この前、本会議場で、二分の一まで引き上げるためには、そのタイミングで消費税の増税を考えなきゃならぬ、こういうことまでお話をされた。これは、二重に国民をだましていることになるんじゃないですか。これは、やり方として、本当に国民は納得できないと私は思います。やはりこういう国民負担を押しつけるやり方というのは正しくない。

 今、日本の大企業がどれだけもうかっているかというと、最近はちょっと景気が悪いとかいいますけれども、しかし、経常利益はバブル時代の倍になっているわけです。税金を払っていますか。税金は逆に減っているわけですよ。何でこうなっているんですか。国民には増税をしながら、大企業の負担、法人税率、四三・三%だったのが今は三〇%に下がっている。これだけじゃないですよ。このほかにも、研究開発減税とかIT投資減税ですとかあるいは減価償却減税ですとか、まあ次から次と大企業には至れり尽くせりの減税をやりながら、何で国民にばかり増税を押しつけるのか。

 私は、これは一つ聞いておきたいんですけれども、最近、政府が出してくるさまざまな消費税増税の数字がありますが、例えば、財政再建のため、あるいは社会保障のためと内閣府などは数字を出していますけれども、何で消費税だけなんですか。法人税を上げたらこのぐらいになります、そういう試算はなぜ出さないんですか。あるなら出してください。どうですか。

額賀国務大臣 これは、委員御承知のとおり、定率減税というのは、平成十一年だったか、日本経済が非常にどん底にいたときに景気対策としてやらせていただいたわけでございまして、景気が一定の安定度を取り戻したときに、もとに戻させていただいたということでございます。

 その上で、おっしゃるように、基礎年金の財源に充てるということも当然議論があったわけでございますけれども、同時に、昨年の与党の考え方では、それは、社会保障を中心とした財政の増大、どんどんふえていく中で、安定した財源を確保していくために消費税を含めて税体系を抜本的に見直す、こう言っているわけでございます。

大田国務大臣 恐らく御質問の点は、諮問会議に民間議員が二〇二五年までの試算の一つとして出した、現在の医療と介護を給付をそのまま維持したら負担はどこまで上がるかという試算だと思われます。そのときは、消費税と所得税を半々で機械的に上げるという前提で出しております。ただ、これはもとより、具体的にどの税を上げたりどの税を下げたりということを申し上げるものではなくて、増税の幅がわかりやすいように機械的に出したものです。

 なぜ法人税を使わないのかという御質問だと思いますが、法人税に関しましては、繰越欠損の存在などもありますので、前提の置き方が非常に難しくなります。実際、モデルの中でも、企業の規模あるいは課税ベースによって非常に複雑なモデルになっておりますので、機械的な計算の場合は使っていないということです。

佐々木(憲)委員 要するに、法人税の試算はしていないと。理由は、難しいとかいろいろな理由を挙げますけれども。

 つまり、大企業に負担になるようなことは一切手を触れないと。所得税にしろ消費税にしろ全部国民負担じゃないですか、国民負担は試算はどんどん出して上げるけれども、何で大企業のこれだけ下がっている法人税に対してまともな試算をしないんですか。

 例えば、全部もとに戻せとは言いませんけれども、三七・五%に少し戻すだけでも四兆円程度の財源は出てくる。そういう特権的な、これ以外にもあるわけだけれども、そういうものをやれば数兆円の財源は出てくるわけですから、当然、住民税、所得税の増税なんというのは必要ない、消費税の増税も必要ない、こういうことをはっきりと私は申し上げておきたい。

 時間が来ましたけれども、すべての負担を国民に回すようなやり方で、これは生活者重視とは言えないということを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

逢沢委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 福田総理は、本日のこの予算委員会が終了して、休む間もなくダボスの国際会議に向かわれるということで、大変にきついスケジュールですので、お体にも留意されて行ってきていただきたいと思います。と同時に、私は、ぜひこのダボスで、福田総理には、日本の世界に向けた信頼あるいはリーダーシップをかけた表明をしてきていただきたいと思います。

 この会議自身は、総理が施政方針演説で、ツバルというオーストラリアのわきにある小さな島国が水没をしてしまうという話を聞かれて、世界じゅうのいわゆる貧困あるいは気象の温暖化対策について本当の意味で今決意を示さなきゃいけないというふうにお話しでありましたが、私は、その場合に、ぜひ総理にお願いがございます。

 実は、今、先ほど来のテーマになっております金融問題、世界同時株安、あるいは足下の、足元の経済、日本も大変に困難が多いという中で、このダボスの国際会議は、その両方を、温暖化問題と経済成長の両立を目指すところにもなってくると思います。

 ちなみに、EUでは、いわゆる、炭素にある意味でお金をかけて、そのことの排出権取引をつくっていく。EUが特に提唱している枠は、二〇二〇年までに一九九〇年と比べて二〇%の二酸化炭素削減をしようという野心的な試みで、それでもなおかつ経済も、環境経済と申しましょうか、そういうものを何とか両立させようというEUの取り組みなんだと私は思います。

 さて、日本はその場においてまず何をメッセージされるか、冒頭、総理にお願いします。

福田内閣総理大臣 御案内のとおり、ダボスでフォーラムが開催されておりますけれども、この会議では、経済人が中心ではありますけれども、政治家もたくさん行かれるようでございます。そこで世界のそういう方々が何を発信するかということは、割合と重要視されているというように思います。ダボスとそれからG8サミット、ここで発信するのが一つの国際世論の基調をつくる、そういうようなことが間々あるようでございますので、私も重視をいたしております。

 そこで、今お話がございましたけれども、経済の問題とかそれから環境の問題とか、また世界の保健衛生、特にことしはTICAD4で、日本でアフリカの方々をお呼びしてやりますので、そういうような面に私はアピールをしていきたい。特に、洞爺湖のサミットがございますから、そういうサミットをにらんで、この会議に出席して発言してこようかな、こう思っております。

 環境の問題については、これはいろいろな取り組みがございますけれども、世界の排出国みんなが参加して話し合いができるようなベースをつくらなければいけない、これが一番大事なことだと思います。

 昨年末のバリ会議でその基調ができたように思いますので、これをいかにしてうまく洞爺湖サミットにつなげていくかということで、その中間のダボスでは、そういうこともございますけれども、日本が環境問題でどういうような貢献ができるのかといったこと、特に、日本が得意といたします技術面の貢献というものは非常に大きいだろうと思いますので、そういうようなことをよく訴えてまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 私は、この会議は大きな考え方、価値観の転換なんだと思うんです。

 何かというと、いわゆる環境というのは経済発展にとってお荷物なのではなく、環境技術、環境を守る技術も含めて、そこに積極的に投資していくことが、長期的に見ても、また非常に近いところを見ても、世界を大きく安定させていくということなんだと思うんです。

 そういう意味で、日本は環境に関する技術は十分に先行した国であります。太陽光発電にしても風力発電にしても、日本の技術は高く評価されております。ですから、これまでのように、環境に配慮すると何か経済が立ちおくれちゃうんじゃないか、企業が負担で倒れちゃうんじゃないか、こういう考え方から、やはり両方得ていく、両方本当に可能になった時代なんだということを日本が率先して示していただく。

 ちなみに、この自然エネルギー、バイオマスでも太陽光発電でも風力でもそうですが、ここの技術はやはり日本がリーダーシップをとれるし、これからまた、セルロースと言われている木材のチップだけでなく藻草等々もみんなバイオエタノールにすることができる、トウモロコシをバイオエタノールに使えば食料危機に陥れちゃう、そうじゃないしんの部分を使おうという発想もあります。

 大胆に、どうか日本がそういう技術開発や時代をリードするんだということをメッセージしてくださいますことを、まず冒頭、お願い申し上げます。

 さて、足下の経済情勢について聞かせていただきます。

 私は、共産党の佐々木憲昭さんがお取り上げくださった消費税の問題を違う角度からまたお尋ねしたいと思います。

 既にこの間、皆さんお気づきのように、いわゆる消費者物価の変動と申しますものは、日銀の短観等々では緩やかな上昇などと言われますが、私ども暮らしを日々これ担っている庶民にとっては、例えばマヨネーズは、前年同月比、これは昨年十一月ですが、一一・七%上昇、キャンデーも八・四%、ポテトチップス六・四%、チーズ四・五%。私から見れば、子供たちが大好きで毎日食べたいものが上がっていっているなと。主婦感覚からしてもお母さん感覚からしても暮らしの感覚からしても、消費者物価は緩やかななんて言われたら、ちょっとやっていられないと思うんです。

 まず、大田経済財政担当大臣に、今後の食料品、飲食品の物価の見通しをお願いします。

大田国務大臣 原油価格や原材料が上がるということで、食料品が、特に購入頻度の高いものが今上がってきております。特に、昨年十一月以来、小麦粉の値上げを受けて、食パンやスパゲッティといった必需的な主食が上がってきておりまして、これが消費がふえて値段が上がるのならいいんですけれども、コストが上がる形で値段が上がってきております。賃金が上がらない中で食料品が上がっていくということは、やはり家計にとってはダメージでもありますし、消費者マインドも悪化するというふうに見ております。

 原油価格は、投機マネーが入った面もございますので、やや緩やかになる可能性はありますが、資材価格の上昇はしばらく続く可能性がありますので、食料品その他への転嫁、値上がりがやや続く可能性があると見ております。

阿部(知)委員 そのややをどこまでややと言うかだと思うのですが、パスタは、例えば三月に、値上げ幅、きょう出ておりましたが、一袋百九十五円が二百三十円。ああ、高いなと。この上がり幅は約二〇%近いです。あと、でん粉類を原材料とします春雨も百三十円が百五十円。こういうものが積み重なれば、当然、毎日食べてそこは落とすことができないものが高くなっているということで、私は、やはり暮らしには深刻だと思います。

 そこで、きょうは、総理も含めて社民党の提案ということで受けていただきたいですが、私どもは、この消費税問題は、従前から、いわゆる払戻金というものを不可欠な食料品等々にかかった額相当でお返しするという仕組みを提案しています。

 これは、例えば総務省の家計調査等々によりますと、年間の食料品にかかる費用、いろいろな世帯の別がありますが、約八十万円内外として、本当は七十一万円くらいからなんですが、これに五%を掛けて、そういたしますと三万五千何がし。これを切り上げまして、四百万円以下の収入の方には四万円の払い戻し、そしてそのもう一つ上、年収四百万から一千万では二万円を払い戻す。これは、もともと生活必需品には幾ら消費税といったってかけるべきではないだろうというところからくるものであります。今、政府の方は上げる話ばかりですが、実は、ひずみということにきちんと着目し、なおかつ、私がきょうこれを取り上げたのは、経済対策としても、一・二兆規模ですが、一番生活の本当の最前線のところで手当てしていただきたいと。

 済みません、質問時間が切れてしまったので、御答弁だけ一言お願いいたします。短くで結構です。財務大臣かな。ごめんなさい。

額賀国務大臣 阿部先生の払戻金制度の提案でございますけれども、いろいろな意味で、非課税だとかそういう軽減税率がありますけれども、それはヨーロッパではいろいろな複数の制度がありますが、非常に税率が高いですよね。私どもは、低所得者層とか、これはどういうふうにしていくかということは視野にないわけではありませんけれども、全般的に消費税というのは公平な形で課税されているというふうに思っておりますので、特別に今そういう制度を取り入れる考えはありません。議論はしたいとは思います。

阿部(知)委員 認識の差と受けとめて、引き続いて議論をさせていただきます。ありがとうございます。

逢沢委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。本日最後の質疑者でございます。

 総理、年末に一万五千三百円、これは日経平均の株価でございます。きょうはまだ大引け前でございますけれども、約五百円上げているそうでございまして、今現在一万三千六百円ぐらいでしょうか、ただ、約二千円近く下落をしております。総理が就任したときから考えますと、総理就任時、一万六千四百円程度でございましたので、約三千円ぐらいでしょうか、下落をしておるわけでございます。これは二年四カ月前の水準ということでございます。

 総理は、先日の施政方針演説で、最近の原油高それから株価の低迷に伴う景気への影響、これを注意深く見守りながら適切に対応してまいります、このようにおっしゃられました。この適切な対応というのを実行するタイミング、これの総理の御認識と、それから適切な対応、この具体案というのはもちろんお持ちでおっしゃられたと思うんですが、この具体案、一体何なのか、これは国民の皆様も期待されていると思いますので、お答えいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 まず原油問題ですけれども、原油高騰によりまして、特に冬場に寒冷地における灯油の値段が上がるとか、それから水産業とか、農業もそうですけれども、そういうところが影響を受けている。そういうことについてはきめ細かく対応するということは、十二月の二十五日にパッケージで政策を打ち出しました。そして今実行しているところでございますので、きめ細かくというのはそういうことも含めて申し上げているわけであります。

 そして、その後、株価が急激に下がったということであります。

 株価というのは、相場ですから、それは上がったり下がったりというのはいつもあることなんですけれども、しかし、急激に最近下がっているということについては、私どもも軽く見てはいけないというように思っております。特に、これは国際的な渦の中で起こっていることだ。そういうような現象を見ておりまして、これは日本だけで対応し切れるものかどうかということもあわせ考えなければいけない。

 適切なる対応をどうするかというお話でございますけれども、まずタイミング、これは、そういうことが必要なときにやるということです。また、その政策の中身、対応の中身も、それはそのときの状況に応じてやる。そしてまた、今申しましたように、各国と協調してやるということが一番効果が上がるんだろうというふうに思いますので、そういう各国との協調の中で対応策も考えていくということでございます。

 いろいろなケースは、当然、頭の中には置いてあるところでございます。

糸川委員 いろいろ考えられているということでございますけれども、これだけ株価が乱高下いたしますと、やはり国民の皆様は総理の政策に対していろいろな期待をするというふうに思います。

 今月の政府の景気判断、これでは、一部に弱さが見られるものの引き続き景気回復局面であるということを発表されていらっしゃると思います。ただ、これだけ原油が高くなり、そして物価上昇も見られ始めているということもありますので、国民の生活も非常に厳しくなってきているんじゃないかなということは考えられます。

 そこで、もうほとんど時間がございませんので、今、どういう対応をこれからしていったら景気回復にしっかりと取り組むことができるのかというところで、一つ、我々国民新党といたしましては、例えば定率減税、これを復活させたらどうなのかということを言っております。

 例えば、今話題になっております揮発油税の暫定税率部分、これは一・四兆円、それから自動車重量税分、これが〇・三兆円、合計一・七兆円規模でございます。定率減税、これは当時およそ三・二兆円規模と言われていたわけでございます。一年前の、存在しておりましたときの定率減税の縮減でもおよそ一・六兆円ということで、ほぼ同程度になるわけでございます。

 ですから、定率減税の方が広く国民の皆様の可処分所得が増加するということが考えられるということになりますので、広く効果が行き渡って、伸び悩む消費、これにも好影響を与えるんじゃないかということを考えております。財務省の試算でございますが、夫婦子供二人の年収が七百万円の人で年額八・二万円ということで、可処分所得が増加するということでございます。

 米国も、サブプライムローン問題が深刻化する中で、先日減税策、これは対GDP比一%規模、これを打ち出されております。ですから、直接的な株価対策ということではなくて定率減税によって消費を促して景気の下支えをするんだ、そこで結果として株価対策にもなるんだというようなところで、我が国も早急に景気対策としてこの定率減税の復活を行うことが必要じゃないかなというふうに思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

額賀国務大臣 糸川先生の御提言でございますけれども、定率減税は、先ほども言いましたけれども、平成十一年に景気対策として採用されたわけでございますけれども、その後、やはり我々は構造改革にチャレンジをして、三つの過剰と言われた設備とか雇用とか債務についてきちっとして、そして企業の経済活動が活発化になって、今日の底がたい動きになっている、成長を回復してきた。今、その時点で、二〇〇六年、七年で、二年間でこれは廃止されたわけでございます。

 アメリカで戻し減税みたいな対応でこのサブプライム問題に対処しておりますけれども、アメリカは緊急対策としてそういう策を講じたと思いますけれども、ほかの国で、先進国で今減税策をとるというのは余り聞きません。

 それから、我々も、財政とか、あるいはまたそれが本当に景気対策に最適の方法なのかということになると、これはよくよく議論をしていかなければならないというふうに思っております。

糸川委員 もうほとんど時間がございませんので質問いたしませんけれども、総理、やはりこれだけ景気に不透明感も出てきているわけですから、先ほどおっしゃられているところではまだまだ甘いんじゃないのかな。これだけ株価も乱高下、五百円上がったらそれは一喜一憂するのかもしれませんけれども、ちょっと上がり過ぎ、下がり過ぎということが繰り返されているわけです。ですから、やはり我が国も早急に何らかのしっかりとした、安定できるような対策というのを打っていただきたいというふうに思っています。

 最後、本当は総理に答弁を求めたかったんですけれども、これで私の質問は終わります。ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

     ――――◇―――――

逢沢委員長 次に、平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算、平成二十年度政府関係機関予算、平成十九年度一般会計補正予算(第1号)、平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上の各案を一括して議題とし、審査に入ります。

 まず、各案の趣旨について政府の説明を聴取いたします。額賀財務大臣。

    ―――――――――――――

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

 平成十九年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

額賀国務大臣 平成二十年度予算及び平成十九年度補正予算の大要につきましては、既に本会議において申し述べたところでございますけれども、予算委員会での御審議をお願いするに当たり、その概要を御説明申し上げます。

 最初に、平成二十年度予算について申し上げます。

 平成二十年度予算編成に当たっては、これまでの財政健全化の努力を緩めることなく、社会保障や公共事業など各分野において、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六で定められた歳出改革をその二年目においても着実に実現し、歳出改革路線を堅持しております。

 また、今回の予算編成においては、無駄の排除のため徹底した取り組みを行っております。随意契約の見直しや、会計検査院の指摘事項の反映を徹底強化するとともに、予算執行調査の結果を前年度以上に反映させております。

 一方で、成長力の強化、地域の活性化、国民の安全、安心といった課題に十分に配慮して予算の重点化を行い、いわば改革と成長、安心の予算としております。

 一般会計について、歳出面では、一般歳出について四十七兆二千八百四十五億円と、前年度当初予算に比べ三千六十一億円の増となり、前年度当初予算に比べ、伸びを抑制しております。

 地方財政については、地方再生に必要な財源を確保するため、地方税の偏在是正効果を活用し、地方再生対策費四千億円を創設するとともに、地方団体に交付する地方交付税交付金の総額を三年ぶりに増額しております。同時に、特別枠を除いた地方歳出総額を七年連続のマイナスとするなど、歳出改革路線を堅持しております。この結果、地方交付税交付金等について、前年度当初予算と比べ、六千八百二十億円増加の十五兆六千百三十六億円としております。

 これらに国債費二十兆千六百三十二億円を合わせた一般会計総額は、前年度当初予算と比べ、千五百二十五億円増加の八十三兆六百十三億円となっております。

 歳入面については、租税等の収入は前年度当初予算と比べ、八百七十億円増加の五十三兆五千五百四十億円を見込み、その他収入は四兆千五百九十三億円を見込んでおります。

 このように税収の伸びが小幅にとどまる中、歳出歳入両面において最大限の努力を行い、新規国債発行額については、二十五兆三千四百八十億円にとどめて四年連続の減額を実現しております。また、資産・債務改革、特別会計改革等を踏まえ、財政投融資特別会計の準備金のうち九・八兆円を国債の償還に充てることにより、国債残高を圧縮しており、こうした取り組みにより、内外に我が国が財政健全化を進めていく姿勢を示すものとなっております。

 なお、特例公債の発行については、別途、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案を提出し、国会での御審議をお願いしております。

 次に、一般歳出の主要な経費につきまして、順次御説明をいたします。

 社会保障関係費については、医師確保対策など国民生活の安全、安心に配慮した重点化を図る一方、社会保障制度の改革努力を継続し歳出の抑制を図る観点から、めり張りのきいた診療報酬、薬価等の改定、後発医薬品の使用促進、被用者保険による政管健保への支援措置等の取り組みを行うこととし、二十一兆七千八百二十四億円を計上しております。

 文教及び科学振興費については、文教分野において、信頼できる公教育の確立に資する施策等に重点的に対応するとともに、イノベーションを通じた経済成長の源となる科学技術分野において、選択と集中の徹底を図りつつ増額することとし、五兆三千百二十二億円を計上しております。

 恩給関係費については、八千五百二十二億円を計上しております。

 防衛関係費につきましては、防衛力の近代化等を図る一方、装備品調達の一層のコスト縮減、透明化を行うとともに、在日米軍駐留経費負担や人件費等、経費を聖域なく見直すこととし、四兆七千七百九十六億円を計上しております。

 公共事業関係費については、全体として抑制する中で、コスト構造改革や入札契約制度改革等を徹底しつつ、地域の自立、活性化のための自主的、戦略的取り組みを支援する事業や、国民の安全、安心の確保に直結する事業への重点化を行うこととし、六兆七千三百五十二億円を計上しております。

 経済協力費につきましては、予算の厳選、重点化等を行い、改革を継続する中で、全体のODA事業量を適切に確保することとし、六千六百六十億円を計上しております。

 中小企業対策費については、中小企業の活力を高め、地域、経済の活性化を図る観点から、中小企業金融の基盤強化、下請適正取引の推進、事業承継支援、中小企業者と農林水産業者との連携に関する施策等に重点化を行うこととし、千七百六十一億円を計上しております。

 エネルギー対策費については、特別会計改革の一環として特別会計の歳出総額を抑制するとともに、安定供給確保や地球温暖化対策への対応等に重点化を行うこととし、八千六百五十五億円を計上しております。

 農林水産関係予算については、意欲ある担い手への支援という農政改革の基本を維持するとともに、食の安全、安心等、現下の諸課題への対応を図ることとし、公共事業関係費のうちの農林水産関係部分を含め、全体で二兆六千三百七十億円を計上しております。

 国家公務員の人件費については、行政機関で平成十九年度のおおむね二倍となる四千百二十二人の定員純減を行うこととするほか、給与構造改革等を的確に予算へ反映させております。

 特別会計については、行政改革推進法及び特別会計に関する法律に基づき、特別会計の統廃合等を着実に実施することとし、特別会計の数を二十一と、前年度に比べ七減少させるとともに、特別会計歳出を効率化、合理化の観点から徹底的に見直しております。

 また、道路特定財源については、厳しい財政事情、道路整備の必要性、環境面への影響に配慮して、現行の税率を維持した上で、地方への支援を充実しつつ、真に必要な道路の計画的な整備を進めるとともに、高速道路料金の効果的な引き下げなどにより既存高速道路ネットワークの有効活用を推進することとしております。同時に、これまでの特定財源の仕組みを見直し、平成二十年度予算においても、納税者の理解の得られる範囲内で、前年度予算を上回る額の一般財源を確保しております。

 政府関係機関の予算につきましても、資金の重点的、効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしております。

 財政投融資については、社会経済情勢に即応し、真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の重点化、効率化等を図った結果、平成二十年度財政投融資計画の規模は、対前年度二・一%減の十三兆八千六百八十九億円となっております。

 以上、平成二十年度予算の概要を御説明申し上げましたが、後ほど、森山副大臣より補足説明をいたします。

 続いて、平成十九年度補正予算について申し上げます。

 最初に、一般会計予算の補正について申し上げます。

 歳出面においては、財政規律を緩めないとの方針のもと、国民生活の安全、安心、原油価格高騰への対応等に配慮しつつ、災害対策費を初めとして、必要性、緊急性の高い経費を計上するとともに、義務的経費の追加を行っております。また、地方交付税交付金の税収減見合いの減額及びその補てんを行うとともに、既定経費の節減等を行っております。

 歳入面においては、租税等の収入について、当初予算に比べ、九千百六十億円の減収を見込むとともに、税外収入の増加を見込んでおります。

 これらの結果、補正予算についても、財政健全化の例外とすることなく、公債の増発は行わないこととし、平成十九年度補正後予算の総額は、当初予算に対して八千九百五十四億円増加し、八十三兆八千四十二億円となります。

 特別会計については、国債整理基金特別会計、道路整備特別会計など十七特別会計につき、所要の補正を行うこととしております。

 政府関係機関については、中小企業金融公庫につき、所要の補正を行うこととしております。

 以上、平成十九年度補正予算につきまして、その内容を御説明いたしました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 なお、本日、本委員会に、「平成二十年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算等」及びこれに関連する「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」を提出いたしました。よろしくお目通しのほどお願い申し上げます。

 以上です。

逢沢委員長 これにて財務大臣の説明は終わりました。

 財務大臣以外の大臣は御退席いただいて結構です。

 引き続き、補足説明を聴取いたします。森山財務副大臣。

森山副大臣 平成二十年度予算につきましては、ただいま財務大臣からの説明のとおりでありますが、若干の点について補足説明をいたします。

 初めに、一般会計歳出について補足説明をいたします。

 社会保障関係費については、基礎年金国庫負担割合を引き上げる一方、医療保険について、診療報酬、薬価等、全体で〇・八二%の引き下げを行うとともに、医療保険者間の相互扶助の観点から、健保組合等が政管健保に対し支援を行うための措置及び政管健保等に対する国庫補助の見直し等の取り組みを行うこととし、二十一兆七千八百二十四億円を計上しております。

 文教関係費については、教育資源の有効活用や開かれた学校づくり等、信頼できる公教育の確立に資する施策等への重点化を図ることとし、三兆九千四百九十四億円を計上しております。

 科学技術振興費については、選択と集中の徹底を行いつつ、若手人材育成や国家基幹技術を重点的に推進することとし、一兆三千六百二十八億円を計上しております。

 防衛関係費については、装備品調達のコスト縮減や契約の見直しに取り組むなど、防衛上の諸課題に対応しつつ予算のめり張りづけを徹底し、四兆七千七百九十六億円を計上しております。

 公共事業関係費については、治山治水対策事業費九千三百八十九億円、道路整備事業費一兆四千八百三十五億円、港湾空港鉄道等整備事業費四千九百六十五億円、住宅都市環境整備事業費一兆六千百一億円、下水道水道廃棄物処理等施設整備費九千二百六十七億円、農業農村整備事業費六千六百七十七億円、森林水産基盤整備事業費二千九百六十六億円、調整費等二千四百二十五億円及び災害復旧等事業費七百二十七億円を計上しております。

 経済協力費のうち主なものとしては、経済開発等援助費千五百八十八億円、独立行政法人国際協力機構運営費交付金千五百三十八億円、国際分担金・拠出金等千四百四億円及び国際協力銀行等出資金千四百九十五億円を計上しております。

 中小企業対策費については、中小企業者と農林水産業者との連携促進による新事業創出など、中小企業の自助努力を支援する施策を重点的に行うこととし、千七百六十一億円を計上しております。

 エネルギー対策費のうち主なものとしては、独立行政法人日本原子力研究開発機構運営費交付金等八百十三億円及び一般会計からエネルギー対策特別会計への繰り入れ七千七百五十七億円を計上しております。

 農林水産関係予算のうち主なものとしては、食料の安定供給の確保に直接的に資する諸施策を実施するため、食料安定供給関係費八千五百八十二億円を計上しております。

 地方交付税交付金等については、地方交付税交付金として十五兆一千四百一億円、地方特例交付金として四千七百三十五億円、合計十五兆六千百三十六億円を計上しております。

 次に、一般会計歳入面について補足説明をいたします。

 租税等の収入の構成を見ますと、所得税の割合は三〇・四%、法人税の割合は三一・二%、消費税の割合は一九・九%になるものと見込まれます。

 なお、平成二十年度の租税等を基礎として国民所得に対する租税負担率を推計いたしますと、国税におきましては一四・三%程度になるものと見込まれます。また、国税、地方税を合わせた負担率は二五・一%程度になるものと見込まれます。

 また、その他収入の主な内訳は、外国為替資金特別会計受入金一兆八千億円、日本銀行納付金七千二百十億円、日本中央競馬会納付金二千五百四十四億円及び国有財産売り払い収入二千二百二十八億円であります。

 特別会計予算については、事務事業の徹底した見直しを行うこととしており、特別会計歳出のうち、特別会計間の重複計上額等のほか、国債償還費等、社会保障給付、地方交付税交付金等を控除した、事務事業を行う部分の歳出を十一兆二千百三億円とし、前年度と比して三千四百四十一億円の削減を実現するなど徹底した歳出削減を行っております。また、外国為替資金特別会計等五特別会計から一兆九千八十四億円を一般会計へ繰り入れることとし、着実に成果を上げているところであります。

 平成二十年度財政投融資計画については、社会経済情勢に即応し、真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の重点化、効率化等を図ることとし、十三兆八千六百八十九億円となっております。

 さらに、主な分野について申し上げますと、公庫等については、政策金融改革の趣旨を踏まえ事業規模を縮減しつつ、必要な資金需要には適切に対応することとしております。また、教育・福祉・医療関連機関については、奨学金の貸与等に必要な資金を確保しております。

 財政投融資の原資としては、財政融資について財政融資資金九兆三千八百八十億円を計上し、産業投資について千四十億円を計上するとともに、政府保証について四兆三千七百六十九億円を予定しております。

 財政融資資金による新たな貸し付け及び既往の貸し付けの継続に必要な財源として、財政投融資特別会計国債八兆四千億円の発行を予定いたしております。

 平成二十年度予算を前提として推計いたしますと、平成二十年度に償還期限が到来をする国債について、日本銀行がその一部を保有しており、このうち借りかえによらない部分について民間からその償還財源を調達する必要があること等から、平成二十年度の財政資金対民間収支は、十二兆四千二百二十億円の受取超過となります。

 以上、平成二十年度予算についての補足説明をいたしました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同をいただきますようにお願いを申し上げます。

逢沢委員長 次に、木村内閣府副大臣。

木村(勉)副大臣 予算の参考資料として、お手元にお配りしてあります「平成二十年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について御説明をいたします。

 これは、去る一月十八日に閣議決定したものであります。

 平成二十年度の経済財政運営につきましては、政府は、希望と安心の国の実現を目指し、一、成長力の強化、二、地方の自立と再生、三、安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築の三つを一体のものとして推進してまいります。

 また、民間需要主導の持続的成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、基本方針二〇〇七に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行ってまいることとしております。

 こうした経済財政運営のもとで、平成二十年度の経済見通しにつきましては、十九年度に引き続き企業部門の底がたさが持続するとともに、家計部門が緩やかに改善し、物価の安定のもとでの民間需要中心の経済成長になり、実質経済成長率二・〇%程度、名目経済成長率二・一%程度になると見込まれます。

 以上で、「平成二十年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」についての説明を終わらせていただきます。

逢沢委員長 以上をもちまして補足説明は終わりました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま説明を聴取いたしました各案の審査中、日本銀行及び独立行政法人等の役職員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十三分散会


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