衆議院

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第6号 平成20年12月5日(金曜日)

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平成二十年十二月五日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 岩永 峯一君 理事 小島 敏男君

   理事 佐田玄一郎君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 山本  拓君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      伊藤 公介君    飯島 夕雁君

      石田 真敏君    臼井日出男君

      小野寺五典君    尾身 幸次君

      岡本 芳郎君    木原 誠二君

      木村 隆秀君    岸田 文雄君

      小池百合子君    佐藤ゆかり君

      斉藤斗志二君    坂本 剛二君

      清水清一朗君    下村 博文君

      菅原 一秀君    杉浦 正健君

      園田 博之君    冨岡  勉君

      中森ふくよ君    仲村 正治君

      永岡 桂子君    根本  匠君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      林   潤君    平口  洋君

      広津 素子君    深谷 隆司君

      三原 朝彦君    武藤 容治君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      小川 淳也君    川内 博史君

      菅  直人君    小宮山泰子君

      笹木 竜三君    仙谷 由人君

      高山 智司君    武正 公一君

      津村 啓介君    中川 正春君

      西村智奈美君    原口 一博君

      細野 豪志君    馬淵 澄夫君

      松本 剛明君    山井 和則君

      笠  浩史君    渡部 恒三君

      赤羽 一嘉君    上田  勇君

      谷口 隆義君    笠井  亮君

      阿部 知子君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       麻生 太郎君

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国土交通大臣       金子 一義君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   内閣官房副長官      松本  純君

   財務副大臣        竹下  亘君

   経済産業副大臣      高市 早苗君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       吉良 裕臣君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    長谷川榮一君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  北村 隆志君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    山口 広秀君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)    西川 善文君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月五日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     井脇ノブ子君

  尾身 幸次君     中森ふくよ君

  大野 功統君     広津 素子君

  岡本 芳郎君     若宮 健嗣君

  下村 博文君     佐藤ゆかり君

  園田 博之君     清水清一朗君

  中馬 弘毅君     武藤 容治君

  仲村 正治君     冨岡  勉君

  野田  毅君     木原 誠二君

  三原 朝彦君     飯島 夕雁君

  武正 公一君     高山 智司君

  中川 正春君     菅  直人君

  細野 豪志君     小川 淳也君

  馬淵 澄夫君     小宮山泰子君

  山井 和則君     川内 博史君

  笠  浩史君     津村 啓介君

  赤羽 一嘉君     谷口 隆義君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     臼井日出男君

  飯島 夕雁君     林   潤君

  木原 誠二君     野田  毅君

  佐藤ゆかり君     下村 博文君

  清水清一朗君     園田 博之君

  冨岡  勉君     平口  洋君

  中森ふくよ君     尾身 幸次君

  広津 素子君     大野 功統君

  武藤 容治君     永岡 桂子君

  若宮 健嗣君     岡本 芳郎君

  小川 淳也君     西村智奈美君

  川内 博史君     山井 和則君

  菅  直人君     中川 正春君

  小宮山泰子君     馬淵 澄夫君

  高山 智司君     武正 公一君

  津村 啓介君     仙谷 由人君

  谷口 隆義君     赤羽 一嘉君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     中馬 弘毅君

  林   潤君     三原 朝彦君

  平口  洋君     仲村 正治君

  仙谷 由人君     笠  浩史君

  西村智奈美君     細野 豪志君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 決算及び平成二十一年度予算に関する予備的調査要請書(中川正春君外百十二名提出、平成二十年衆予調第六号)

は本委員会に送付された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(金融・経済、年金・医療)


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

衛藤委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、金融・経済、年金・医療についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁山口広秀君、日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長西川善文君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官岡崎浩巳君、総務省情報流通行政局郵政行政部長吉良裕臣君、厚生労働省大臣官房総括審議官森山寛君、厚生労働省職業安定局長太田俊明君、厚生労働省社会・援護局長阿曽沼慎司君、厚生労働省保険局長水田邦雄君、厚生労働省年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁運営部長石井博史君、中小企業庁長官長谷川榮一君、国土交通省鉄道局長北村隆志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。

 持ち時間が非常に限られておりますので、前置きを抜きにして質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、私どもが直面している経験したことのない危機についての総理の御認識を伺いたいと思います。

 アメリカのグリーンスパン、前のFRB議長、日本でいえば日銀のような機関ですが、有名なアラン・グリーンスパン氏が、去る十月二十三日に行いましたアメリカ議会での証言におきまして、我々は現在、百年に一度の信用危機に見舞われていると述べているところであります。

 国際的な金融市場の混乱は、今や実体経済にも大きな影響を及ぼしつつあります。総理の現状に対する御認識をまずお伺いしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今回の金融危機というのは、その後の金融収縮の加速度的な落下の角度を見ましても、これまでに例がないほど異常な金融収縮が急激に世界じゅうに広まった。

 正確には、九月十五日というのが、多分歴史としてはその話が残るんだと思います。それ以前から、サブプライムローン等々前々からずっとうわさされていたものが、九月十五日の多分リーマン・ブラザーズが直接のきっかけになったと思います。その前も、ファニーメイ、いろいろありましたけれども、次々救済してきておりましたけれども、あれがやはり直接のきっかけになったと多分言われるんだと思っております。

 これが、金融の話だけではなくて、確実に実体経済の方に影響が出てくるところが我々としては一番気にならなければならぬところだと思っております。金融収縮イコール普通の実物経済の決済ができないことになりますので、そういうところが一番問題で、これをいかに最小限に食いとめるかというのが我々に与えられた大きな使命でありまして、それに合わせて今いろいろ対策を講じようといたしているところであります。

杉浦委員 まさに総理のおっしゃられるとおりだと思います。

 リーマンの倒産したのが九月十五日であります。それによりまして、アメリカ経済、住宅市場がだめになる、自動車の売り上げが急減する。ヨーロッパも同様でございました。

 その混乱を受けまして我が国にも大波が押し寄せてまいりまして、我が国自動車業界は一斉に生産計画の縮小を行いました。トヨタ自動車のございます我々の地元、マツダのある広島、北九州、日産のある神奈川等々、全域に広がったわけであります。

 生産計画の縮小に伴いまして、トヨタ自動車では夜勤がなくなりました。それから、超過勤務、残業もゼロになりました。余剰人員が生じまして、期間工は半減、派遣社員はどんどんお帰り願うという状況に相なりました。トヨタ自動車は、下半期の決算予想、修正いたしまして、七三%減、一兆円利益が減るということを公表いたしました。

 アイシンとかデンソーとか、トヨタ系列は大体大同小異でございます。一次二次の下請は、それから一月ぐらいかけて受注が二割から三割減少する、大幅な操業短縮で、今四苦八苦いたしておるところでございます。

 国税が、来年度、トヨタが一兆減りまして、四千億、約四割減ることは確実になったわけであります。

 地方自治体にも大きな影響が出ております。愛知県は、来年度、大体三千億ぐらい法人税等で減収があるだろうと。我が岡崎市は三十億、豊田市は百億を超えるだろうと。我が愛知県下の地方自治体、軒並み減収で、首長、議会初め関係者、本当に苦慮いたしておるところでございます。

 これはリーマン・ショック直後の一カ月ぐらいの話でございまして、最近の状況は、もっと深刻に悪化に向かっておるところであります。

 アメリカでは、例えば、新規住宅の着工は対前年比で五〇%減、自動車の売り上げも五〇%減と深刻化しておりまして、自動車ビッグスリーのうち、フォード、クライスラーは破綻状態でありまして、ゼネラル・モーターズもその寸前でございます。アメリカ政府は、オバマさんがどう対応されるか。支援に向かうものと予想されておるところでございます。

 我が国でも同様に悪化しております。

 きょう、ここに新聞を持ってまいりました。二日付の新聞でございます。一面トップ、全紙でありますが、朝日、毎日、読売、三つ持ってきたんですが、「新車販売 前年比二七%減」、三紙ともそうでございます。大変ショックを受けました。十月は、一月前は一三%減でございました。倍以上落下したということでございます。業界の方々は、年末から来年初めにかけてアメリカ並みに落ちるんじゃないかということを非常に心配しておるわけでございます。

 自動車産業は、申し上げるまでもなく、非常にすそ野が広い。鉄鋼もそうですし、繊維もそうです。特に中小企業、下請関係の企業は非常にすそ野が広く、与える影響は極めて大きいわけでございます。この自動車産業がおかしくなりますと、先ほど申しましたように、国税収入にも、地方税収入にも、財政に極めて大きい影響を与えることは間違いございません。

 自民党は迅速に対応いたしました。自動車小委員会、経済産業部会、お手元に資料をお配りしたとおり、提言を取りまとめました。自民党議員がほとんど参加しております自動車議員連盟も、お手元に資料をお配りさせていただいておりますが、提言を取りまとめ、税調に検討方を申し入れ、現在検討中でございます。

 つまり、この自動車の売り上げの低下を食いとめなきゃいけない、緊急事態、ただ売り上げをとめるだけじゃなくて、地球環境に優しい、グリーン税制適用の新車に限って、大体乗用車の半分ぐらいに当たるそうですが、この際、三年の時限措置として自動車取得税、重量税を適用しない、取らないというふうにしようという提案でございます。

 業界の関係者は、これをやっていただけると下落に歯どめがかかるんじゃないかというふうに申しておられるわけでありますが、現在、党税調で検討中でありますけれども、総理の御見解を伺いたいと思います。

麻生内閣総理大臣 これは、環境との関係をいろいろ考えた上での御提言というように理解をしております。

 ちょっと最近の資料をよく知らないんですが、自動車の保有している年数は大体十年、十一年、今の方の持っておられる車は大体、回転、そんなものだと思います。ちょっと一番最近のを知りませんので、そんなものだという前提でお話ししますが、そういうものだとしますと、問題は、その十年、十一年以上たったところが新しいものに買いかえてもらうという必要がどうしても出てくるんだと思います、そこが、どういうぐあいにするかちょっと問題なんですが。

 いずれにしても、今のは、内需拡大という観点以外からも、環境の問題からあわせて考えた方がいいのではないかという多分御提言になりつつあるのかなと思いますけれども、これは税制の話でもありますので、今から年末にかけまして、与党の税調、いろいろお話があるんだと思いますけれども、これは十分な議論がなされたのを拝聴した上で決断をさせていただきたいと存じます。

杉浦委員 税調でも前向きに検討していただけていると伺っております。

 自動車産業は、タクシーとかトラック、バスまで含めますと、雇用が五百一万人という、従業員、労働者の一割を超える雇用を提供しておりますし、工業出荷額の二〇%は自動車関連であります。税金については、正確な資料はありませんけれども、国税、地方税を通じて一割は下らないだろう、二割まではいっていないだろうと言われておりますが、いわば日本の屋台骨を支える今や基幹産業でございます。

 この自動車産業がアメリカのビッグスリーみたいにならないように、我々も全力を尽くしますが、総理におかれても政府の先頭に立って進めていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移ります。

 次に、金融機能強化法についてお伺いいたします。

 先週の党首討論で、総理は、民主党の小沢党首に、審議に協力してほしい、早く上げてほしいということを御要請なさいました。その際、総理は、年末年始の中小零細企業に対する資金手当ては一次補正で大体対応できる、それから、信用保証協会に対する貸付枠とかセーフティーネットの拡充とか業種の拡大等いろいろあるので、まあまあ大丈夫じゃないかということをおっしゃっておられますが、貸し手にも問題があるということを言っておられます。

 その点が、ちょっとはっきりと国民にとってわからない点があったので、若干その点を補充して、担当大臣にお伺いしたいと思います。

 総理のそのときのお話では、この一、二カ月、毎日一千数百億円もの申し込みが信用保証協会にあるんだというお話だったわけですが、あちこちから、まだ貸し渋りがあるという声が、あるいは悲鳴が聞こえてまいります。貸しはがしも一部あるようでございます。そのあたりのことを総理は御指摘になったんでしょうが、この金融機能強化法は、それを解決するための一つの柱として提案されているんじゃないかと私は思うわけでございます。

 クレームの中には、信用保証協会の枠をもらったのに貸してくれないというような苦情もあるんですね。ということは、銀行等金融機関の貸付余力が低下しているんじゃないか。

 つまり、規制がありますね、自己資本比率の。(パネルを示す)自己資本比率については、銀行法等を根拠にして、国内基準行については四%、だから、中小企業等を相手にされる方はこの四%できちっと規定されている。これを下回ると早期是正措置等を発動するということで、皆さんこれを守るのに真剣に努力しているわけでありますが、どうもこの自己資本比率が、もうぎりぎり、あるいはそれ以下に下がっているところがあるんじゃないか。

 つまり、自己資本比率というのは、分母は総資産。貸し付けは総資産に入りますね。自己資本、上は、例えば資本金ですとか所有株式とか証券とかそういうものが入りますが、この自己資本、分子の部分が縮んでいるんじゃないかというのが金融当局の見解でございます。金融危機のせいで株式が下がる等々でこの部分が縮んでいるから、したがって、四%を守るためには総資産をふやすわけにいかない、場合によれば減らさなきゃいけない、貸しはがしも起こるということではないか、それを総理が指摘されたんだろうと思います。

 つまり、信用保証協会の枠を拡大し提供しても、窓口になる金融機関に貸付余力を生じさせなければならない。この金融機能強化法は、この分子の部分に国の資金を注入して分母であります貸し出しをふやさせる、こういうことを柱とする法律として提案されたんだというふうに理解いたしております。後で御答弁願いたいと思います。

 それから、この法案が早期に成立した場合、年末年始の融資に私はいい影響が出ると思うんですが、どのような影響が出るのか、お話しいただきたいと思います。

 それから、こんなクレームがあるんですね。どこへ相談に行ったらいいかわからない。これは簡単です。十月一日に政府関係機関が統合しました。なじみの深かった中小金融公庫とか国民金融公庫、名前がなくなりました、看板が変わりました、支店も整理されました。だから、どこへ行っていいかわからないということが出てくると思います。これは明らかにPRが不足していますね。窓口、どういう施策を講じたのか、セーフティーネット融資とはどんなものか、これをもうちょっとPRすべきじゃないかと思うわけでございます。

 それから、中小企業は、年末だけじゃありません、年度末の融資だとか、あるいは長期運転資金の借りかえだとか、いろいろ不安があるわけでして、このあたりも、もうきちっと対応しておられると思うんですが、こういう時期ですから、日本の経済を支える中小企業にもっと親切丁寧に、徹底して運営を改善するように取り組んでいただきたいと思います。

 担当大臣から簡潔に御答弁をお願いします。

中川国務大臣 今御指摘のように、今、世界的な影響もあって、日本の経済金融状況は非常に厳しい状況になっております。特に、年末を迎えましての地方中小企業の資金繰り対策というのは、非常に御苦労をされていると思います。

 そういう中で、今お示しの表のように、総資産分の、自己資本比率というもの、国内はこの場合四%、こういうふうに言われているわけでありますけれども、これを何としても充実するために、健全な金融機関に対して、公的な審査を経た上で健全な資金を健全な金融機関に注入することによって貸し出し等をよりやりやすくする、これをぜひとも早急に御議論いただき、そしてまた成立をし、お役に立てていただきたいというふうに思っております。

二階国務大臣 御指摘のとおり、中小企業の皆さんが、今、年末資金の対応に追われているところでありますが、政府としましても、こうした国民の皆さんのニーズにしっかり対応していけるようにということで、私たちも、出先を総動員して今PR等にも努めて、多くの中小企業の皆さんの支援策を御利用、御活用いただくようにしていきたいと思っております。

 議員も御承知のとおり、融資の保証承認額は既に一兆円を超えております。これらの実績をもとに、緊急保証制度をできるだけ多くの皆さんに御利用いただけるようにということで、今、議員の皆さん、いろいろな方々からも御要請のあります電子部品製造業あるいはまた理美容の業界、そうしたさまざまな業種の追加要望が殺到いたしております。

 私は、この予算委員会終了後、直ちに緊急の会議を開いて、八十業種程度を追加する考えであります。これによって、なぜそういうことをこの金曜日の夕刻に急いでおるかといいますと、その業種指定を拡大して、来週の半ばごろからの業務が滞りなく行われるように実行し、年末の融資に間に合うようにしたい、こういうことでありますから、議員各位の御協力もぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 以上です。

杉浦委員 私の地元の陳情も受け入れていただきまして、本当にありがたく思っております。

 時間がなくなりました。この金融強化法は、参議院でとまっておりますけれども、小沢党首は先日の党首討論で審議に応ずるとおっしゃっていただいたんですが、何か条件がいろいろついておりまして、どうもはっきりしません、農協を外せというような主張をなさったり。我々は受け入れられません。成立がおくれているのは甚だ遺憾であります。

 万一、この法案の成立がおくれて年を越すようなことがあった場合、中小零細企業の年末の資金繰りに悪影響が出るとすれば、これはもはや民主党という公党によって引き起こされた人災であると言っても過言ではないと思います。小沢党首は、その約束を守って、審議を今国会中に終えて結論を出していただくように、そうされなかったら小沢党首こそ国民に対する背信行為を行ったと言われるわけでありますから、心からお願いして、終わりたいと思います。

衛藤委員長 この際、佐藤ゆかり君から関連質疑の申し出があります。杉浦正健君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 本日は、質疑の時間をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。時間が限られておりますので、本日は、財政規律の問題とそれから社会保障費について、二問お伺いさせていただきたいと思います。

 現下の金融経済情勢は楽観を許さない状況にございます。このような環境下で景気対策と財政規律の両立を図りますには、まさにナローパスの政策運営が求められております。言いかえますと、国民の将来世代に向けて財政赤字のツケを肥大化させない、責任政党として、安易な赤字国債の発行に頼らず、しかしながら、埋蔵金などあらゆる財源を見直して、行政の無駄、国会の無駄を削減して必要な景気対策に財源を捻出するという、今こそ政治主導の決断による危機対応策が求められていると存じます。総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

 他方、雇用情勢は厳しさを増しております。来春の新卒採用の内定取り消しが問題化しております中、有効求人倍率も十月は〇・八倍まで低下しております。年末商戦におけます個人消費の落ち込みに対する懸念が産業界並びに地域経済を直撃しているのが現状であります。

 財政規律のもとでも、セーフティーネットの拡充が喫緊の課題となります中、総理が昨日新たな雇用対策を指示された点は極めて重要と考えるわけでございます。

 実際のところ、一九九七年十一月、橋本内閣で制定されました財政構造改革法では、弾力条項なしに厳格な歳出削減を行いました結果、景気が崩壊し、わずか一年で同法を停止する法律制定に至るなど、痛い教訓もございます。財政規律とはいかがなるものか、定義が解釈により異なりますのでは、必要なセーフティーネット対策もばらまきとの誤解を生じやすいものでございます。

 そこで、弾力財政の一定の幅について、私なりの私案を申し述べさせていただきたいと存じます。

 プライマリーバランスの黒字化も均衡財政の維持には重要な観点でございますが、同時に、一国の経済におきまして、国債発行残高のGDPに対する比率を一定に維持することにより、多少の債務増加も経済成長率の範囲内であるならば、財政均衡が維持可能であるという考え方もございます。

 実際、グラフ一をごらんいただきたいんですが、こちらの棒線グラフの方でございますが、過去十年の国債残高の対GDP比率を見ますと、平成十六、七年度の約三三%をピークに、二十年度は第一次補正後で二四%まで低下、九ポイントも債務残高比率が改善しているのが現状でございます。背景としましては、ここ数年の景気拡大、そして骨太の方針二〇〇六があるわけでございます。

 他方、日銀は、国債買い入れを通じて経済成長のための通貨供給を行っておりますが、日銀の長期国債保有残高、グラフ二の方、折れ線グラフの方をごらんいただきたいと思いますが、こちらも平成十五、六年度から累積二十兆円以上減少しております。そして、ことし十一月末には四十二兆円まで減少して、いわゆる成長通貨の供給の上限とも言われております日銀券発行残高約八十九兆円足元ございますけれども、これを大幅に下回っているのが現状でございます。

 これらの動向は、危機対応としての弾力財政の是非に関しまして二つの可能性を提示するものと私は考えます。

 一つ目は、債務残高のGDP比率が近年低下した分、若干の赤字増加は消化可能であろうと思われる点であります。

 二つ目に、加えまして、日銀が近年国債の保有額を減らした分、日銀の買い入れの増額によって国債の市中消化額を一定の範囲内に維持することも可能でありまして、金利の上昇は招かないというのが二点目でございます。

 これらの議論といいますのは、極端な拡張財政論を抑える目安にもなりますと同時に、現下の経済情勢におきましては、若干の弾力財政を許容する幅を提示する根拠とも考えられますが、総理のお考えをお示しください。

麻生内閣総理大臣 先般取りまとめをさせていただきました生活対策におきましては、いわゆるその財源として赤字国債というものの発行に依存しないことということにいたしまして、財政投融資特別会計の金利変動準備金の活用などというものを基本的に使わせていただくということとしております。

 また、平成二十一年度の予算との関連におきましては、行政支出総点検会議等々の議論を踏まえまして、経済政策の必要性などを考えてゼロベースで精査をし直して、行政支出全般を徹底して見直してまいりたいと思っております。

 あわせて、今、主要国との、国債というか、GDPの比較等々、いろいろ御説があるところは御存じのとおりですが、GDP比で見ますと他国に比べて明らかに高いということはもう御存じのとおりですので、こういったものを考えますと、経済とか社会保障に悪い影響というものを与えないためにも、財政健全化に基本的に着実に取り組んでいかなければならないということだと思っております。

 また、日銀によります、今、二つ目のグラフの長期国債の具体的な買い入れ額というものにつきましては、これは日銀自身においてちょっと考えていただかないかぬところでもありますので、日銀券の発行残高とバランスを踏まえつつ判断する必要があるんだ、それを見ながらそう思っております。

 いずれにいたしましても、状況に応じて果断な対応を機動的かつ弾力的に行うことが重要。明らかに異常な経済情勢になっておりますので、それに対する対応も、これまでとは違った極めて有効的、弾力的なもので対応していかなければならないと思いますので、財政健全化に向けた基本的姿勢には変わりはないということは重ねて申し上げておかねばならぬところだと思っております。

佐藤(ゆ)委員 時間が限られておりますので、今の総理の御答弁で承りました。

 次に、社会保障費について少しだけ最後にお伺いさせていただきたいと存じます。

 雇用対策も重要案件でありますと同時に、各種世論調査では、依然として社会保障に対する不安の声が大きいのも事実でございます。中でも、骨太の方針二〇〇六で決定されました社会保障費二千二百億円の削減につきましては、この間、医療現場の疲弊や地域医療の崩壊につながったとの指摘も多くございまして、今日の医療問題の起因する象徴的要因ともみなす向きもございます。

 こうした中で、二十一年度予算編成の基本方針が、骨太二〇〇六に基づく概算要求基準を維持する形で一昨日閣議決定されたところでございます。

 限定的な弾力財政の適用や、あるいは雇用保険特別会計に対する毎年千六百億円程度の国庫負担金の転用などを一例としますいわゆる特別会計改革、あるいは、行政の無駄、国会の無駄の削減などによります財源捻出などを通じまして、我が国社会の根幹であります社会保障費の確保に向けた真剣な努力を行うべきときではないかと考えますが、総理はいかがお考えでございましょうか。

麻生内閣総理大臣 今御指摘のありました予算編成のいわゆる基本方針におきましては、平成二十一年度予算の概算要求基準というものを維持いたしますとともに、今御指摘のありました社会保障に関しましては、新たな安定財源の確保について検討するということとしたところでございます。

 また、社会保障費の取り扱いにつきましては、この予算編成の方針を踏まえまして、最終的には、これは財源も勘案しなけりゃなりませんので、勘案の上、予算編成過程で検討させていただきたいと存じます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。

 これで私の質問を終わらさせていただきたいと思います。

 なお、このグラフ一の方にミスプリがございました。訂正申し上げます。タイトルの方ですが、国債発行高対GDP比率でございます。訂正させていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて杉浦正健君、佐藤ゆかり君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 総理、どうも御苦労さまでございます。

 先ほどから出ておりますけれども、米国発の大激震が今、世界を震撼させているというような状況でございます。アメリカでは、金融セクターのみならず、ビッグスリーの自動車メーカーの方も政府に救済を求めているというような状況がございます。また、ヨーロッパを見ますと、アイスランドは国家破綻的な状況になっておりますし、ウクライナ、ハンガリーなどもIMFに融資を申し込んでおる。その他の国も、手を挙げたいと言っているような国が多々あるようでございます。

 IMFの融資残高が大体二千億ドル程度でございまして、先日、総理が金融サミットで行かれて、一千億程度の資金拠出ということをおっしゃったわけでありますけれども、これは国際貢献という観点で、私は、日本の存在感を示したものだということで大変評価をいたしております。IMFの融資は非常に厳格でございまして、毀損するということはほとんど考えられないということもございますので、私は、そういう意味で大変よかったと思うわけでございます。

 一方で、このような状況の中で、日本の輸出産業を中心にして、急激にやはり世界不況の影響を受けておるわけでございます。私の選挙区でも、もう既に、自動車の部品を提供しております企業も大変業況が厳しくなっているというような状況でございます。資金調達能力の低い中小企業というのはやはり財政基盤も十分ではありませんので、これは大変心配しておるところでございます。

 そんな状況の中で、昨年の十一月でございましたけれども、原油価格が上がるとか、また物価が上がるといったことで、私ども公明党は、一貫して中小企業の資金繰り対策ということを申し入れておったわけでございます。また、新しい保証制度を創出してもらいたいというようなことを申し上げておりましたが、今般、緊急対策ということで、二階大臣のリーダーシップのもとで、セーフティーネットの緊急対策が講じられるということになったわけでございます。

 これは、今までの責任共有制度ではなくて一〇〇%保証する、赤字があってもやろうということで、喜ばれておるわけでありますが、まず初めに二階大臣の方から、簡単で結構でございますので、今のその状況を御報告いただきたいと思います。

二階国務大臣 簡潔に申し上げます。

 現在は、信用保証の問題につきましては、六百十八業種二百六十万社を対象にして緊急保証制度を実施し、今順調に進めております。昨日の時点で申し上げますと、四万七千件、一兆一千六百億円の承諾実績を上げておるところであります。

 ただし、今日まで経済産業省やあるいは金融担当大臣のところへ寄せられる各地からの要請の中には、このことで資金繰りで一息つけた、あるいは倒産を免れることができたという、喜んでいただいている声をお聞かせいただく一方で、自分の業種も決して資金繰りは楽ではない、我々の業種もこれに加えてもらいたい、こういう大変強い御要請があります。公明党の議員団からも、そうしたことについて再々御要請をちょうだいしておるところであります。

 こうした借り手の皆さんの声といいますか、国民の皆さんの声におこたえして、少しでも中小企業の皆さんのお役に立つようにということで、本日中に新たに八十業種程度を追加発表し、来週半ばにはこれが実際に利用していただけるようにしたいと思っております。そして、でき得れば年末に間に合うようにしたい、これが私どもの考えであります。

 どうぞよろしくお願いします。

谷口(隆)委員 ありがとうございます。機動的にぜひやっていただきたいと思います。

 それで、民間の金融機関が融資しておって、そこで今般の状況になったときに、旧来の民間金融機関の融資、プロパーの融資を保証に変えろといったようなことがよく起こるんですね。旧債を振りかえるといったようなこと、これはあってはならないことだと思いますが、このことと、この年末越えの資金状況について、中川大臣に御報告をお願い申し上げたいと思います。

中川国務大臣 こういう世界の状況でございますから、いろいろな手法をとっていかなければならない。総理も答弁されておりますように、生活者、地方、中小企業、日本じゅうが今、特に年末に向けまして、また日々世界の状況が悪くなってきている中で、とるべきところを全力を挙げてやっていかなければならないと思っております。

 その中で、やはり、日本の中小企業あるいは地方を支えております民間企業、そして民間に対する金融機関というものがもっともっと元気を出していただきたい。そのために金融機能強化法をお願いしているわけでございます。

 また、今経産大臣からもお話ありましたように、それを補完するような関係で、政府特別保証でありますとかその他あらゆる手段で資金を供給して、何としても、日本の経済を支えている地域、中小企業を守るために、政府を挙げて全力で、あらゆる手段で取り組んでいきたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 あと、麻生総理に。

 百年に一回の大津波とグリーンスパン氏が言っておるわけでありますけれども、このような状況の中で、財政基盤の弱い中小企業を守っていかなければなりません。総理からしっかりとした決意と申しますか、お願いを申し上げたいと思います。中小企業に対する、中小企業を守っていくという意味でのお言葉をいただきたいと思っております。

麻生内閣総理大臣 十月三十日に発表させていただきました中にも、基本的には、生活対策という点と中小・小規模企業対策、それと地方と、三つ掲げたと思いますが、その中の中小・小規模企業の資金繰りというものが物すごく大事なのではないかということで、先ほど二階大臣からの答弁がありましたように、いわゆる資金繰りの問題につきまして、三兆と六兆、合計九兆円の対策をさせていただいて、おかげさんで今、営業日数二十三日か四日ぐらいだと思いますが、四万件を超える御要望があり、それに約一兆円という形でこたえておられますので、少なくともこの年末、一月ぐらいまでは間違いなくその対応が十分にできるものだと、資金の余裕から見てそのような感じがいたします。

 ただ問題は、これは貸し手の方にも関係いたしますので、先ほど佐藤先生から御指摘があっておりましたように、自己資本比率の関係から、規模の小さな銀行等々、金融機関から貸し出しを受けているいわゆる借り手の方に対して、そういった資金が入ってきたんであれば、千万円入ってきたら、これまで貸してあった八百万円返してというような話になりますと、途端に余裕は二百しかないということになりますので、それは全く話が違ったことになりかねない。そこのところは十分に注意しなくちゃいかぬところで、先ほど中川大臣ともども、この問題について、両大臣そろってこの問題に関する認識を一にして対応していただくということが肝要だということで、その点につきましては、過日お話をさせていただいたところでもあります。

谷口(隆)委員 ぜひ細かく配慮していただいて、今もう大変、急激なものですから、全く準備をやっておらなかったわけでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、今、定額給付金のことを私質問させていただきたいんですが、いろいろな御意見がございます。私は今も与党の税制協議会のメンバーの一人でありますけれども、税制におきましても、給付つき税額控除というのがあるんですね。もう既に、アメリカも、イギリスも、フランスも、ドイツも、韓国は今試行中でございますけれども、このような給付つき税額控除、この先鞭をつけたものだと私は考えておるわけであります。

 時事の配信で、十一月二十五日に、OECDの経済局シニアエコノミスト、ランダル・ジョーンズ氏という方が、加盟三十カ国の経済見通しに関するテレビ記者会見で、日本の定額給付金について恐らく即効性がある最も有効な措置だとの見方を示した、ジョーンズ氏は、多くの国が利下げを行い、信用収縮が起きている中では金融政策がインパクトを与えることは困難だと指摘し、危機を脱出する上で財政刺激策が最も適切な方法だと言明し、財政刺激策は目標が明確で一時的かつ時宜を得た措置であるべきだと訴えた上で、家計部門への直接給付が最も効果を発揮するとの見解を表明した、このように言っておられるわけでございます。

 今回のこの定額給付金にいろいろな御意見があるのは承知しておりますけれども、総理、今申し上げたようなこともあるわけで、総理の見解をお述べいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 OECDの上級エコノミスト、ランダル・ジョーンズの話となれば、それなりの説得力のある見解なんだと存じますが、基本的に、金融政策がインパクトを与えるということに関しましては、我々は、過去十年ぐらいまでの間ずっと低金利政策をやって、それは金融政策としてやりましたけれども、それが経済に大きなインパクトを与えることはなかった。なぜなら、金利がゼロでも企業が金を借りに来てそれを設備投資に回すということはないという前提で、経済学の本というものはこれまで過去書かれたことがありません。

 しかし、今まさにそういう状態が日本で初めて起きたというのは、もう谷口先生御存じのとおり。これが、世界じゅう、そういった経験を日本はやりましたけれども、今まさに、多分ヨーロッパ、アメリカで似たようなことが今から起こりつつあるということで、我々の経験というものが大いに参考になるという話を申し上げたところでもあります。

 いずれにいたしましても、こういったようなものが、きちんと私どもとしては、景気後退下で、生活者と言われる、低所得層と言われる、いろいろな表現があるんだと思いますが、そういったところにきめ細かな対処をするためには、家計というものへの緊急支援としては、実施するに当たってはこれは適切なものだと私自身はそう思っております。

 あわせて、家計に広く給付することによりまして消費というものを促進する効果も、経済効果もあろうと思っておりますので、生活対策における重要な法案の一つだと私どもはそう思っております。

谷口(隆)委員 ありがとうございます。

 やはり、百年に一回というわけでありまして、今までかつて経験したことのないような大きな大津波が押し寄せておるといったような状態の中で、一体何ができるのかということをこれはもう一生懸命模索しながら、総理も決断をしていただいて、今回、定額給付金二兆円ということをしていただいたわけでありますけれども、経済の専門家もこのようにおっしゃっておられるわけでございますので、ぜひ、効果のあるものだということで。

 景気というのは気の問題もありまして、初めからいろいろなことを言われますとなかなか経済効果を発揮しないというところもございます。ぜひ、そういうことで総理も頑張っていただきたいというように思う次第であります。

 それと、次に、ちょっとこれはあれなんですけれども、円建て米国債というのがありまして、円建ての米国債ですね、今回の大津波、百年に一回の大津波、金融危機は、ドル建ての金融商品が破綻をし、バブル崩壊ということになってこの大きな事態になっているわけであります。

 ですから、今の為替の状況を見ますと、円が独歩高といいますか、ドルはその他の、円以外の通貨にはある程度高いようでありますけれども、ドル安、ユーロ安、その他の通貨安、こういうことで、致命傷を負っていないのは日本だけだ、このように言われております。先日の十一月十五日のサミットでも、総理は存在感を発揮されたと僕は先ほども申し上げましたけれども。

 それで、来年は、米国はやはり一兆五千億ドル程度の財政赤字になるだろう、こういうように言われております。円貨ベースで大体百四十兆から百五十兆円、米国債も発行されるのではないかというような状況の中で、総理は、短期的にはやはりドルを支えなければならない、こういうようにおっしゃっておられます。私は、それは正しいことだと思っておるわけでありますが、しかし、やはり中期的には、ドルの信認の問題に至る場合もあるかもわかりません。

 大変重要な段階になっておるわけでありますが、一九七八年に、マルク建て、スイス・フラン建て、この二つの通貨建ての米国債を発行した経験があるわけでございます。これはカーター・ボンドというんですが、このような米国債が発行された経緯がございます。

 今回、仮に円貨建て米国債が発行されますと、円で償還するということになりますから、円高が進んでまいりますと、ドルベースの償還額がふえてくるということになりますので、米国サイドではドル安のリスクを負うということになってまいります。私どもも、米国の資金調達をしっかりとサポートしていくということも重要でございます。

 そんなことで、私は、ぜひ総理の方から、円建て米国債を発行してくれないかというような御提案をされたらどうかということを思っておるわけでございますが、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 昔の例、歴史を引かれましたけれども、これはなかなか、ちょっと難しい話なんですが、あのころと今と一番違うのは、おかげさまで、この騒ぎになりました後、米国債発行の金利というものは、ことしの年初は四・五、六%だったと思いますが、きのうあたりは二・何%まで下がってきていると思っておりますので、当面、今言われたようなことをしなくても、混乱が、くしゃくしゃになるということはないのではないか、今の段階ではそう思っております、今の段階では。

 ただし、これは今後どういうようなことが起きてくるか、ちょっと予想をまだいたしかねるところがいっぱいありますので、ぜひ、そういった意味では、これは緊密に連絡を、アメリカとの関係はきちんとよく連絡をとった上でこの問題を私どもとしては考えていかねばならぬと思っております。

谷口(隆)委員 ぜひお考えいただきたいと思います。

 それで、最後に、アジアの資金ネットワーク、チェンマイ・イニシアチブ。この十二月の中旬に、ASEANプラス3の会合が、バンコクがいろいろな問題があって先送りされたと聞いておりますが、私は、この中で日本の存在感を示していただきたい。それで、これからは、アジアに向けて、やはり我が国の景気対策の一環としてもやっていただければというように思っておるわけでございますが、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 これは、今御指摘がありましたように、バンコクのあの騒ぎで今延期ということになっておりまして、これがいつまでか、ちょっと、なかなか明確なところではないので、私どもとしては、正直、今そんなに先延ばしできるような状態かということで、いろいろな話をしておるところであります。

 いずれにしましても、チェンマイ・イニシアチブ、余り一般には使われない言葉なんですが、こういったようなものは、九七年の例のアジア通貨危機に端を発して、アジアの中にもお互いに金を融通し合うというようなものをつくろうという形で、バーチャルなもので一応つくった形で、二国間でいろいろやらせていただいておるのは御存じのとおりなんですが、これをみんなでマルチ化しようという話に今進んでおりますので、これを作業を加速させる必要があるのではないか、私どもも同じように考えております。

谷口(隆)委員 では、これで終わらせていただきます。

衛藤委員長 これにて谷口隆義君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅直人君。

菅(直)委員 十月の七日の予算委員会に続いて、麻生総理に御質問をさせていただきます。

 実は、総理誕生の直後の十月の七日の質疑の中で、私は、このままいくと総理は、解散も総選挙もしないまま、また次の人に移るのではないか、若干心配だと申し上げました。さらに、麻生総理も国民の信を問わないまま居座ろうとすれば求心力は急激になくなるだろう、このようにも申し上げました。そして、その後の展開は、私がそこで申し上げたとおりの展開になりつつあります。

 内閣支持率、いろいろな報道機関がありますが、先日の小沢党首との党首討論以降、急激に低下をし、三〇%前後。また、総理にふさわしい人という問いでは、常に麻生総理が小沢党首の倍以上の支持があったと言われていましたが、これ以降は、同じか、あるいは小沢代表の方が逆転をしている、そういうデータが出ております。

 私は、第二次補正も出さないで総選挙を先送りされたのはやはり間違っていたのではないか、こう思いますが、総理御自身はどうお考えですか。

麻生内閣総理大臣 支持率が低下しているということにつきましては、これはどこかで答弁を申し上げたと思いますが、国民の批判に謙虚に耳を傾けなければならないと考えております。

 今、二次補正との関連があるかどうかということに関しましては、いかがなものか判断が分かれるところだと存じます。

 いずれにしても、きっちりした仕事をした上で、改めて国民の批判にこたえていきたいものだと思っております。

菅(直)委員 今、麻生総理が誕生してから、きょうが七十三日目に当たります。

 このパネルを見ていただきたいと思いますが、九月の一日に福田総理が辞任をされました。そして、先ほど来話も出ておりますように、まさに百年に一度という金融危機が、リーマン・ブラザーズの破綻というところから、そのショックが世界に広がりました。そして、その直後の九月の二十四日に麻生政権が誕生しました。

 この七十三日間の間に、麻生政権が一体何をやってきたのか。少なくとも、金融、経済に関する法案や予算でいいますと、ここにありますように、九月の二十九日に第一次補正予算を提出、十月の十六日に成立。そして、十月の二十四日に金融機能強化法案を提出。それ以外に国会に金融とか経済に関する法案や予算を出された大きな課題があったでしょうか。もしあったら教えてください。

麻生内閣総理大臣 この間はちょうど海外の関係にいた時期なんだと思いますが、いずれにしても、この間に法案を国会に提出したことはないと記憶します。

菅(直)委員 この国会で、あと二十日程度の会期が残されております。その間にも出される予定がないと言われて、一月の上旬まで第二次補正も出さないと先日の党首討論で言われました。

 一月一日は、私の計算が間違っていなければ、麻生政権誕生からちょうど百日目に当たります。普通ならハネムーンと言われる時期がこの百日間です。結局、百日間、福田政権のもとで立案された第一次補正と、三月の段階で失効した強化法、それを改めて出す。まあ、要らないものをくっつけられたから若干難航しておりますが、そういうこと以外は、百日間、この百年に一度と言われる金融危機の中で国会に何も出さないで済む、私はとてもそんなことは考えられません。まさに麻生政権の存在そのものが政治空白ではないですか。いかがですか。

麻生内閣総理大臣 見解を全く異にしているんだと思っております。

 まず、我々としては、今御指摘のありました点に関して言わせていただければ、少なくとも年末の金融というものが最大の問題。これは雇用に直結いたしますので、そういった意味ではこの金融対策、資金繰り対策というものが最重要ということで、一次補正というのを出させていただいておりますのは御存じのとおりです。それが順調に作用しておるというのも御存じのとおりです。幸いにして原油も下がった等々のこともありまして、別の意味での、その意味での心配はかなり減ったことは事実だと思っております。

 そういった状況の中に、あわせて、我々は、少なくともこの段階において、一次補正に続きまして二次補正、そして最後に本予算と、これは三段ロケットみたいなものであって、これを間断なくやっていく必要があると思っております。

 しかし、御存じのように、先ほど御指摘のありましたように、世の中は極めて景気が悪くなって、法人税関係は明らかにマイナスということになってくるのであれば、それの減額補正もやらなければならぬ等々、多くの作業を我々は与党として、政府として控えておりますのは御存じのとおり。

 したがって、我々はそれに合わせてきちんとやっていくということを考えたときに、二次補正、そして本予算というものを間断なく、一月のなるべく早い時期にスタートをさせていただいて、この二つの、補正と本予算というものをきちんと上げていくというのが最も景気対策、また百年に一度の対応になり得る、私どもはそう思っております。

菅(直)委員 国民の皆さんは、私がもう説明するまでもなく、なぜ総理が第二次補正を出さないのかということを知っておられるわけです。つまりは、国会での審議がとてももたない、あの定額給付金などがもたない、行き詰まる、選挙に追い込まれる、それが怖いから出さないということでありまして、そういう意味で、今申し上げましたように、福田政権辞任から数えると、九月いっぱい、十月いっぱい、十一月いっぱい、もう三カ月たっています。その三カ月の間でやられたことは、まさに福田政権下で立案された一次補正、金融強化法だけで、さらに一カ月余りを空白にしようとしている。

 そこで、もう一度総理に今の答弁を踏まえて伺います。

 総理は、年末の金融に関しては一次補正で大丈夫だという趣旨のことを今言われました。金融も大変です。私はそれでも十分だとは思いません。しかし、雇用はもっと待ったなしの状況が生まれているんじゃないですか。つまりは、雇用の急激な悪化というものの中で、この年末を控えて、一月までそれに対する対策、せっかく十月三十日に総理が発表されたあの生活対策の中には金融ばかりではなくて雇用対策も入っているわけですが、それを一月までわざわざ先延ばしをして、本当に一次補正だけで大丈夫だと国民の皆さんの前でもう一回言えるのかどうか、言えるなら言ってみてください。

麻生内閣総理大臣 金融機能強化法という法案が今まだ御審議をいただいている最中で、いまだに採決に至っておらないのは御存じのとおりです。

 これは明らかに、お金を借りる側の立場の中小企業、小規模企業の借り手の話としては、先ほど二階通産大臣から答弁があったとおりだと存じますが、これは同時に貸し手の話もありますので、貸し手側の話は、先ほど佐藤議員から御質問があったり、その他いろいろ御質問があっておったのを聞かれておられたと存じます。

 したがって、貸し手側のものをきちんとしていただかないと、第二地銀等々が貸し渋り、貸しはがしにつながっていくことが御心配の雇用の問題にもつながっていくのであって、我々としては、この貸し手側の話をきちんとしていただくためには、早急に金融機能強化法という貸し手側の話もぜひあわせて成立をさせていただきたい。否決なら否決で結構ですから、結論を出していただきたい、私どもはそう思っておりますので、ぜひ採決というものを早急に望んでおりますのは、我々、前々から、ここは衆議院ですけれども、参議院で御党にお願いをさせていただいたまま今日まで来ておるのは御存じのとおりです。

 したがって、こういったものは、貸し手側、借り手側、両方の問題が結果として企業の倒産、それが結果として雇用というものにつながってまいりますので、貸し手、借り手、両方の問題として我々としては対策というものを考えておるというように御理解いただければと存じます。

菅(直)委員 金融強化法についてはちゃんと私がこの後お答えをしますから。

 その前に、では、こういう言い方をしましょう。総理、いいですか。(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。

衛藤委員長 静粛にお願いいたします。

菅(直)委員 では、この法案が成立すれば、もうそれで雇用の問題はことしの末は大丈夫だ、一次補正とこれが通れば、もう二次補正については一月回しでもこの年末は雇用の危機は訪れないんだ、そう言えるんですか。まず、それを答えてください。

麻生内閣総理大臣 自分で経営をされたことがないからそういうことを言われるのかなと思いながら今聞いていましたけれども、自分で会社の経営をしたらそんな安易なことは言わないと私は思います。

 私は基本的には、自分で経営をやっているんだから、その意味では自分の責任でいろいろ努力をする、しかし、自分の努力を超えたような今回のような金融危機が訪れたときにおいては、少なくとも政府がいろいろな形で支援せざるを得ないというのが、今そういうものなんだと思っております。したがって、我々は、貸し手側、借り手側、両方に当たっての対策をさせていただいている。

 雇用の基本は、雇用の一番のもとは、その企業が倒産しなけりゃ、全然もちませんから、だから、その点が大事なんだと申し上げております。したがって、倒産件数が一件も出ないな、そういったようなことを言うつもりは全くありません。

 また、雇用というものに関しましては、世界じゅうが厳しい状況の中にあって、我々としてもいろいろな形で雇用に対していろいろな対策を今やりつつあります。税制の面におきましても、また、個別の企業というものに個別にいくなどという、いまだかつて例がないようなことをやってきておると思っておりますので、それですべてが片づいて、もう一人も、雇用が安定しますなんて、それほど尊大なつもりは我々はありません。

菅(直)委員 国民の皆さんによく聞いていただきたいと思いますが、まず金融機能強化法については、テレビの場面でありましたが、私とたしか石原伸晃幹事長代理ですか、その場で、三月に切れたこの法案を復活させた方がいいんじゃないですかと言ったんです、私が。そうしたら、そのものだけならまだよかったんですが、新銀行東京などについて、責任も問わないで金を投入できるんだと言われますから、それはちょっとおかしいんじゃないですか、ちゃんと都知事を呼ばれたらどうですかと言ったら、都知事が出てこないということになって、若干延びております。

 しかし、私が聞いているところでは、与野党間の国対委員長で、郵政に関する株の凍結法案について一カ月間引き延ばしてきた与党が今回採決に応じていただけるそうですから、そうした強化法に関しても、課題は課題としてちゃんと国会で取り上げるのは当たり前ですから、それをきちんと処理することは、代表も言われましたが、私からもお約束をいたします。

 そこで、もう一度だけ、次の問題につながりますので申し上げます。

 今、総理が十一月の二十八日に党首討論をやられて以降だけでも、同じ日に、厚生労働省ですか、非正規労働者のリストラが今年度内に三万人を超える見通しだと。私は、これは小さな見通しではないか、本当はもっと大きくなるんじゃないかと。内定取り消しがその時点で三百三十一名。十月の有効求人倍率が四年五カ月ぶりの低水準〇・八まで下がっている。十一月になりますと、新車の販売、前年度比二七%減。そして、この数日、連日のように、いすゞ、トヨタ、ホンダなど自動車産業の大量の派遣切りや、あるいは期限の決まった社員の契約をとめるという形になっている。さらには、キヤノン子会社の雇いどめも、たしかきのうかきょう発表されました。

 総理は、たしか十二月二日でしたか、キヤノンの会長ですかね、御手洗経団連会長とお会いになって、雇用安定についての協力を求められたと報道されております。その席で、今回のキヤノン子会社の派遣切り千百十七名の話は出ましたか。

麻生内閣総理大臣 十二月一日だと記憶しますが、今のお話のときに、御手洗経団連会長、商工会議所会頭、並びに、今、非正規社員を全員正規社員にしたロフトという渋谷にあります雑貨を主にした西武系の会社、またモロゾフなどなど、いろいろな、現場で今雇用というものにきちんと対応して努力をしておられる会社と一緒にお目にかかる機会を得て、そのときに、少なくとも企業で決まった話の内定取り消しというのはいかがなものか、賃上げとは言わぬが、少なくとも雇用の安定というものに関してはぜひやっていただきたい等々のお願いをさせていただいたのは事実です。

 しかし、現実問題としてその段階で、昨日でしたか本日でしたかの大分工場に関してのお話が御手洗会長の方からあったかについては、その現場ではありませんでした。

菅(直)委員 つまりは、こういう製造業における派遣切りあるいは契約切れ、あるいは場合によったら契約途中もあると言われていますが、こういうことがどんどん発生しているんですよ。

 それは、確かに金融も関係します。しかし、国内の金融は、総理も言われるとおり、アメリカなどに比べれば比較的健全性を保っている中で、結局は、アメリカ経済の内需が下がる、あるいは国内の内需も下がっていく。そういう中で、大きな会社本体はつぶれるところまではもちろんいかない、まだまだ大丈夫だけれども、現実に雇用の方の大量失業、大量解雇が始まっているじゃないですか。

 それが始まっているにもかかわらず、いや、金融強化法をやってもらわないから、それが原因だなんて言われたって、金融強化法をやってもそれでは不十分じゃないですかと私たちは言っているんですよ。第二次補正をやらなければ不十分じゃないですかと言っているんですよ。

 それを、先ほどは言を左右にして、党首討論のときちゃんと答えられたじゃないですか、一次補正で大丈夫だと。それから一週間ほどしかたっていないのに、やはりこのままじゃ危ないんじゃないかという声が、私も含めてみんなが思っているわけですが、それを、雇用対策の法案一本出さないで一月まで先延ばしする。私は、これは政治的空白じゃないと思うんですよ。妨害じゃないですか、サボタージュじゃないですか。

 少なくとも私たち民主党は、いいですか、与党の皆さんよく聞いてくださいよ、与党の皆さんも。(発言する者あり)ちょっと静かに。静かに。

衛藤委員長 皆さん、静粛にお願いいたします。

菅(直)委員 これは国民の皆さんによく聞いていただきたいんですが、なぜ、妨害だ、サボタージュだと私が言うかというと、残念ながら、予算を国会に出すことができるのは内閣だけなんですよ。内閣だけなんですよ。私たちは法案は国会に出せます、ですから国会へ出します、雇用対策について後ほど述べますが。しかし、雇用対策のための予算は、残念ながら野党には出せません。出せるのは内閣だけなんです。その内閣が一月まで一本の二次補正も出さないというのは、まさに政策実現を妨害しているんじゃないですか。いかがですか、総理。

麻生内閣総理大臣 サボタージュというのは、国民から見たら、自民党がサボタージュと参議院の民主党のサボタージュとどっちかなと私は正直には思っておりますのが正直なところです。

 今御意見のありましたところにつきましては、我々としては、先ほど申し上げましたとおり、金融機能強化法だけで申し上げているのではなくて、雇用対策につきましては、十月十六日に成立いたしました一次補正の内容をよく御存じのとおりだと存じますが、この中で、フリーターなどに対する正規雇用に対する支援とか、また事業活動に悪影響が出ている中小企業の雇用維持というのがずらっと書いてあるのは御存じのとおり。何もしなかったと言われるように話を持っていかれると、少し反論があるところであります。

 いずれにいたしましても、今回、急激な景気の落ち込みというものは過去に例がないほど、いわゆるコンドラチェフ、景気曲線とは違った意味で、猛烈な勢いで急激に売り上げが落ちておる。これはトヨタに限らず家電を含めて皆そういった状況になってきておりますので、我々としてはそれに対する対策を考えていかねばならぬ。しかし、一番の問題は、それを雇っておられる企業が倒産したら即雇用が不安になりますので、そこのところが一番なんだということを申し上げておるんであって、そのためには、いわゆる金融機能強化法は非常に大事な法案だと申し上げているのであって、これですべてだなんて申し上げたことは全くありません。

菅(直)委員 もう一度申し上げますが、私がサボタージュと言ったのは、予算を出せるのは内閣だけなんです。自民党だって出せないんですよ。政党は国会に法案は出せますが、内閣以外には予算は出せないんです。そして、今総理は、一次補正で雇用対策もやった。確かに九十九億円の雇用対策が行われたことは知っていますよ、私たちも賛成したんですから。不十分だとは思ったけれども、やらないよりはやはりやった方がいいだろうということで賛成したから、十月十六日にちゃんと成立したんじゃないですか。

 そして、十月の三十日に総理みずからが発表された生活対策の中で盛り込まれた中身は、私が知る限り九十九億円なんていうけたじゃなかったんじゃないですか。どのぐらいのけたになるんです、これ。舛添さんでもいいから答えてください。この雇用セーフティー強化対策を全部やった場合の大体の見積もり。

舛添国務大臣 今、きょうの夕方、与党とも協議をして、抜本的な雇用対策、とりわけ派遣労働者の雇いどめ、解雇、中途解除、こういうものについてやろうとしております。ほぼ一兆円の規模であろうかというふうに思います。

 しかし、いずれにしましても、何もやっていないわけではございませんで、政府・与党一体となって、昨今の厳しい雇用情勢については全力で取り組んでおることを申し上げておきたいと思います。

菅(直)委員 一兆円の費用をかけてやろうという、そういう大型の雇用対策をわざわざ十月三十日に発表して、だから私たちの小沢代表も、ぜひ出してください、いたずらに引き延ばしはしません。ただ、あの定額給付金のように私たちが賛成できないものまで賛成しろといったって、それは無理ですから。

 私が思うには、少なくとも、すべての野党が反対している定額給付金を外して、そして、この雇用のセーフティー強化対策、これだけは私たちと共通の部分もかなり、率直に言って入っています。共通でない部分については、我々も、修正なり組み替え動議を出すなり、あるいは話し合いますから、どうですか、定額給付金は白紙撤回、そして、この雇用セーフティーネットの強化対策については、私たちの提案を含めて、改めて、今からでもまだ二十日間あるんですから、出したらどうですか。それを出さない理由がどこにあるんですか。

麻生内閣総理大臣 お言葉を返すようで恐縮ですが、二次補正の話を我々はするということを申し上げたときに、今の話ですけれども、たしか、二次補正をさせていただくのに国会を延長したいと言ったときには、延長には賛成されなかったんじゃなかったでしたっけ。(発言する者あり)えっ、違いましたかね。そういった状況では、少なくとも、金融機能強化法はやらない、もしくは審議をということで採決に応じないわけでしょう。何となく、採決に応じない話をされておいて、こちらと言われても、ちょっと、何となく論旨が一貫しないような気がするんですけれども、私どもとしては。

 いずれにしても、私どもとしては、一次補正に続きまして二次補正を一月早々に出させていただいて、二次補正、そして本予算とやらせていただきますので、そのときの審議にはぜひ協力するというお話を、過日、みんなの、国民の前で言っていただいておりますので、ぜひ、その点につきましては、審議というものをぜひ即刻応じていただいて、速やかに採決していただきますように、我々も心から期待をしております。

菅(直)委員 国民の皆さんには御理解をいただいていると思いますが、今の総理の答弁は、国対委員長同士のやりとりとか、そういう中でそういう議論があることは私もよく知っていますが、国民的な皆さんからしたら、一体何を国会はやっているんだと。私たち自身、十月三十日に総理が……(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。

衛藤委員長 静粛に。静粛にお願いいたします。

菅(直)委員 十月三十日に総理が経済対策を発表されたときに、直後にまだ一カ月間会期が残っていましたから、前の会期ですよ、十一月三十日まで一カ月間残っていましたから、ぜひ二次補正をじゃ急いで出してくださいと、その時点から言っているじゃないですか。それに対して、総理は、いや、考えているよ、何とかしている。あの党首会談の席でさえ、今やらせていますからと言われたんですよ、たしか二十五日でしたか。

 そういう意味で、それを、会期延長に反対だったから二次補正も出すのを反対しただろう、何を言っているんですか。十月の三十日から二次補正を出せと言っているじゃないですか。

 そこで、中身の話に入ります。

 民主党は、こういった急激な雇用情勢の悪化の中で、実は、数日前、我が党の中に緊急雇用対策本部というものをつくりまして、不肖私が本部長ということになりました。また、その中で、政策的には、我が党にはNC、次の内閣がありますので、そこで幾つかの課題を今法案化するために急いで作業を進めているところです。

 まずは、契約途中の解約というものがかなり横行しています。場合によったら、解約だと言われて、あれ、期限はないかあるかわからないけれども、仕方ないのかなと思って、いわば派遣切りに仕方ないとあきらめておられる方もありますが、少なくとも、契約期間を前倒しして解約するには、相当の理由がない限りはオーケーされません。これが労働のいろいろな判例です。例えば、その会社がつぶれそうだとか、もう売るものが何もないとか、あるいは、同じやめていただくにしても影響の比較的少ない人。

 かつては、派遣がこれほど製造業に広がる前は、やはり景気が悪いときはありました。どういうふうにしたか。いいこと、悪いことではありませんが、少なくとも、派遣が少ない時代は、五十代を超えたような方に、退職金を一・五倍にしますからあるいは二倍にしますから少し早目に退職に応じていただけませんかといったような、つまりは、プラスをある部分では提供するから早目に退職いただいて、それによって人員縮小するといったことは確かによくやられました。

 しかし、一九九九年の派遣法の改正からどんどんどんどん製造業にふえて、そういう中で今行われていることは、そういう丁寧なやり方どころか、契約期間が来たら、はい、もう終わりですよ、中には契約期間が来ないでも終わりですよ。何千、何万という人がこれから十二月末にあるいは年度末に雇用を失うということはもう必至の情勢じゃないですか。

 私たちは、そういう意味で、まず、契約途中の解約というものはやらせない、やった場合は法的な措置もとる。内定取り消しについても、これは事実上の労働契約ですから、これをさせることがないような法的整備も必要であればやる。派遣労働者は、場合によったら雇用がなくなると住まいまでなくなりますから、雇用と住まい、生活支援というものを考えていく。そのためには、雇用保険制度、急増する雇いどめを回避するために、雇用調整助成金などを使って、従来よりも要件を緩和して非正規労働者の休業などをかなり大幅に対象にできるようにしていく。さらに、失業した方に職業訓練をする間の生活保障といったものも特別に考えていく。

 特に、私、いろいろ調べていて、政府が予定している、地域雇用の創出という項目がこの十月三十日のにありますよね。ただ、これを見ていると、新規の雇用を生み出すような、新しい会社をつくったようなところを想定されているようですが、古い話で若い方は余り御存じないかもしれませんが、かつては失業対策事業というのがありました。昭和二十四年から平成十六年ぐらいまであったでしょうかね。そういう同じものを、自治体そのものが雇い入れていいかどうかというのは別として、少なくとも、自治体が関係している介護とか、あるいはリサイクルとか、廃棄物処理とか、そういういろいろな職場があるところに、ある意味では新しい型の失業対策という形で仕事を紹介する。

 私、昨日ですが、ネットカフェというところに行って派遣の方から話を聞きましたが、その方の話は、定額給付金よりも仕事が欲しいんだと。そういうふうに言われたときに、仕事がなくなった後の手当も重要だけれども、仕事そのものを提供するというシステムがなかなか見つからない。そういう意味で、私は、新しい型の、新しい形の失業対策事業といったようなものを考えていく、こういうことをぜひ、これから私たちも法案としてそれを盛り込んだものを出そうと思っていますが、ぜひ実行すべきだと思いますが、総理、いかがですか。

舛添国務大臣 菅委員がおっしゃったことは大筋において私も賛成でございまして、政府としてもそういう対策をとっていきたいと思います。

 まず、中途解除なんということは、これは法的には違法じゃございませんですけれども、決して好ましいものではありませんので、十一月二十八日に各都道府県の労働局長に対して通達を発して、厳しく徹底的に指導しなさい、派遣元、派遣先に対しては再就職先の確保も含めてきちんとやるように。それから、今おっしゃった、職を求める方々に対するハローワークを含めてのさまざまな手当て、それから、訓練中、生活していかないといけないですから、これに生活手当を支給する、それも、条件も緩和する。

 さまざまな形で、今委員がおっしゃったようなことについて、今夕、大体大筋を決めることができると思いますが、その方向できちんとした施策をとってまいりたいと思っております。

麻生内閣総理大臣 失業対策の話が出ましたけれども、これはもともと炭鉱地帯で始まりましたので、ようわかっております。これの問題点もようわかっておるところです。これをやめるときも、いろいろ問題がありましたので、長い時間をかけていただいて、最終的にやめることになった経緯も、どっぷりつかっておりましたので、いいところ、悪いところ、よくわかっているつもりであります。

 したがいまして、今の御提案というものをまだ見ていないのに何とも申し上げようがありませんので、御提案をいただきましたら、これは政党間協議なり政策協議なり、いろいろな形でさせていただくいい機会だと思いますので、ぜひ建設的な案を、私どもの方としてもさせていただきたいと思っております。

菅(直)委員 麻生総理は、炭鉱地帯、また、そういう仕事もされたおうちですから詳しいというのはよくわかりますし、私も、生まれ故郷は山口県の宇部というところで、やはり炭鉱地帯でありまして、比較的若い時代に出ましたから詳しいことはそれほどは知りませんが、同じ炭鉱の町に育ちました。

 そして、いろいろな問題があることも知っているから、私は、新しい形の失業対策を考えたらいかがですかと。それこそ介護といったような分野は、ニーズはあるんですが、それに対して介護報酬が非常に少ない、あるいは、介護士の教育機関も、卒業しても余りにも給料が安いものだから、そこに入る人が減っているなんという報道も出ています。

 そういうものを、入ってもらって職業訓練をして、そしてそういうところに行ってもらって、同時に、それこそ福祉の充実、我々も賛成しているわけですから、介護報酬をもうちょっと見直していくという中で、まさに内需の拡大、内側の雇用を、日本の中の雇用を拡大するということじゃないですか。

 私は、余りにも同じ繰り返しになりますからこの辺にとどめますが、その中身は、十月三十日、麻生総理御本人が出されたこの生活対策の中に入っているにもかかわらず、なぜ、今までたって一カ月余り、さらに一カ月余り待たなければいけないのかということを、我が党党首も含めて何度も言っているんです。

 そして、私たちのせいにされますが、少なくとも、二次補正を出されるときに定額給付金を一緒に抱き合わせで出して法案が簡単に通るかと言われれば、私は国対委員長じゃありませんけれども、そう簡単には通らないでしょうね。しかし、雇用のところに集中したものであれば、そこに限定した補正予算であれば、十分話し合って、それだけやっていくということは、私は、こういうときですから、本当ならその後には選挙ということを言いたいところですが、きょうはあえて言いません。

 十二月の末のことを考えたら、下手をすれば寒空の中に、派遣切りで、それこそネットカフェに払うお金もない人がそういうところにほうり出される、そういう危険がまさに迫っているわけですから、そういう時間的な、まさにスピーディーなやり方でやったらどうですかと言うのに、いや、一月までは出せません。自己矛盾をしているということを申し上げて、次の問題に移ります。

 もう余り残された時間がありませんので、基礎年金の国庫負担の引き上げについて、総理は、総理になられた直後に、来年の四月から実施する、こういうふうに明言をされました。しかし、何か昨日、きょうの報道によると、いや、来年度と言ったと。

 年末と言ったり年度末と言ったり、よく言いかえることが総理は多いですけれども、総理は、四月から実施すると言っていたのを変えるんですか。つまり、四月からやると言ったのを変えるんですか、それとも、それはそのとおり実施するんですか。いかがですか。

麻生内閣総理大臣 ちょっと文章をよく読んでいただきたいのが一つなんですが、基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げは、政府・与党の国民に対する約束であり、来年四月から実施することが基本と書いてあります。これは御存じのとおりです。したがって、これが基本だと申し上げたら、いきなり何か来年度中にというので、私は四月にやらないなんと言ったことは一言もないと思いますが。よく読んでみてください。

 したがって、私どもとしてはこれは基本ですからということを申し上げたら、一挙にそういうことになった。まあ、ようある話ですけれどもね。書きかえられるのはよくある話ですが、僕は四月にやらないなんと言ったことは一つもないですよ。

菅(直)委員 どっちなんですか。財務大臣も厚生労働大臣もいろいろなことを言われていますが。

 では、総理、やるとしたら財源は何ですか。

麻生内閣総理大臣 これは基本的には平成十六年度の年金改正法に書いてありますとおり、安定財源のあり方も含めと書いてありますので、年末までに予算編成等々の過程で税制等々を考えた上で結論を出します。

菅(直)委員 いつまでですか。

麻生内閣総理大臣 平成二十一年度の予算編成に当たってということであります。

菅(直)委員 それは、二十一年度からやる可能性があるという以上は、二十一年度の予算編成は当たり前の話であって。中川財務大臣、これでいいんですね。

中川国務大臣 二十一年度予算を四月から遅滞なく進めるために、年末までにこの方向性を決めたいと考えております。

菅(直)委員 厚生労働大臣、これをやるんですか。

舛添国務大臣 二十一年度において三分の一を二分の一に引き上げるということは、きちんと法律で決まったことであります。しかし、やはりこの四月一日からきちんとやるのが基本であろうということで、私は、昨日、財務大臣と折衝したときにも、安定した財源を確保し、そのことを実現していただきたいと。

 そういうことで、今政府の中で、年末までの予算編成過程において検討中ということでございます。

菅(直)委員 では、もう一度総理にお尋ねします。

 基本と言われました。いろいろな答弁が出ているんですが、確かに基本という言葉がついている答弁もあります。基本というのは、普通は大体、やるということですよね、普通は。やるということですから、そんなに、十年先のことを言っているんじゃないんですよ。四月の一日から実施をする、少なくとも総理はそういうお考えなんですか、どうなんですか。

麻生内閣総理大臣 これはずっと同じことを、ぶれている、ぶれているという話にされたいのかもしれませんが、私は基本的にはずっと同じことを申し上げているのであって、四月からということを申し上げ、そして昨日でしたか、何とかの話の、記者の話でしたけれども、これは基本としてと書いてあるから、平成二十一年度内ということになっているというのが基本と言っただけの話ですよ。

 しかし、現実問題として、今、中川財務大臣からの答弁がありましたように、この年末に平成二十一年度の予算原案をつくる段階において、四月実施という方向でという話を、舛添大臣からも話がありましたとおり、私どもとしてはその方向でやりたいと思っております。

菅(直)委員 私の持ち時間はそろそろ終わりですので、まだまだ申し上げたいことはありますが、これで終わりにしますが、実は、これはもう蛇足になりますけれども、余りにも総理の言われることがその都度変わっていくんですね。例えば道路特定財源の問題も、地方が自由に使えると言いながら、今度自民党内で決められたのは公共事業に限るとか、あるいは郵政の株のことについても、凍結に賛成されるようなことを言いながら、今度は法案には反対されるという趣旨のことが自民党からは聞こえてきていますし、とにかく、総理が言われることがきょうとあしたとあさってと変わっていたのでは、国民は、とてもではないけれども、この総理のもとでは日本を任せられない。

 私自身もそのように強く思っておりますので、私は、総理にそういう国民の声をきちんと受けとめて身の処し方を考えられることを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

衛藤委員長 この際、仙谷由人君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 きょうは金融・経済の論議ということでございますので、まずは端的に麻生総理大臣にお伺いをいたします。

 全治三年という言葉がひとり歩きをしておるわけでありますが、総理は、現在の日本の経済、財政、金融、この点についての病状、現在というよりも、全治三年と言い出したときの病状をどういうふうにお考えなんですか。

麻生内閣総理大臣 これは少なくとも、グリーンスパンという元FRBの議長の言葉をかりるまでもなく、百年に一度と言われるような異常な金融危機に端を発した経済的な大問題だと思っております。これが一九二〇年代の大恐慌のようにならないようにするためにどうするかというのが最大の問題であって、そのために、過日、ワシントンでの緊急首脳サミットが開かれた。もう御存じのとおりです。

 そういったような状態を考える場合においては、我々は、少なくとも今回の状況には、他の先進国の中に比べて、比較的その傷は浅いと思っております。これは比較の問題でありますが、他の先進国に比べれば傷は浅いと思っております。同時に、これに対する対策を、第一次補正等々最初に打ち出したのも日本と思っておりますので、ぜひ我々としては、先進国の中でこの不況と言われるものから最初に脱出できる国になりたい。

 私は、基本的に、全治三年、そのためには三年で我々はこれを脱皮せねばならぬ、そう思って、そのために、異常な事態でもありますので、我々としてはそれに対する対策もいろいろなことを考えて対応していかねばならぬという決意を新たにしておるところであります。

 いずれにしても、今の問題は、地方とか金融とか中小企業とかいろいろなことを申し上げましたけれども、私どもは、こういったものをやったとき、ただその場だけの一時しのぎでということではなくて、持続可能な経済成長にしていくためにはどうするかなどなど、いろいろなことも考えて、この全治三年の間にきちんとしたものをつくり上げていかねばならぬと思っております。

仙谷委員 病状を聞いているんですよ。どこにがんがあるのかないのか、糖尿病なのか、あるいは高脂血症なのか。つまり、原因がわからないと処方せんが出せないじゃないですか。単なる、グリーンスパンがどうのこうのなんて、そういう話じゃないんですよ。

 そして、多分、麻生総理が全治三年と言い出したときは、まだリーマン・ショックはなかった。そして、ことしの当初でも、自民党の皆さん方は、このサブプライムローン破綻に端を発する世界同時不況がこれほどまでにスピード速く深刻になるというのは理解していなかったんじゃないですか。

 つまり、総裁選挙において、そのことにちゃんと触れて、危機感を持って我々の経済政策を提示された総裁候補はいなかった。ことしの一月の日銀の総裁、副総裁同意人事でも、国際金融の動向について皆さん方はほとんど問題意識なく、どこかがつくった原案をノーチェックで通そうとしていた。私は、今度の総裁選挙を拝見しておりまして、何て危機感の薄い、緩い人たちの集まりなんだろう、こう思っていたんですよ。

 では、総理、聞き方を変えましょう。アメリカの病気はどこにあると思いますか。どういう病気だと思いますか。

麻生内閣総理大臣 金融派生商品という言葉は御存じのところだと思いますが、こういう金融工学と言われるような新しい金融技術によって新しい金融商品をつくり出し、その商品の品質管理もきちんとできていない間に世界じゅうにこの金融派生商品が売られた。結果として、それを買ったところには多大な被害が出た。私は、この影響というものが、金融に対する信用を失う、いわゆるクレジットクランチと言われる信用収縮というのが起きておるというのがこれの一番の根幹だと思っております。

 したがって、我々は、これに対するきちんとした処方せんを考えない限りはまた同じようなことが起こり得ると。したがって、過日のワシントンにおけます金融関係のサミットにおいては、日本から提案をさせてもらって、少なくともこの種の問題は一国で管理することはなかなか難しいのではないかと。少なくとも、一国で管理できないから、なぜなら国際商品ですから、したがって他国に売られた場合は全然それに対する対策ができない、それができるようなシステムをつくるべき。

 また、格付会社というものがえらく立派なものだと我々は思っておりましたし、多くの世界の人々も、この格付会社というものの信頼というのは極めて高かったと思いますが、残念ながらその格付会社も、あけてみればそうそう信頼できるものではなかったなどなど、数え上げれば切りなく出てきますが、金融というものに関して、物すごい勢いで、金融技術の進歩に対応してそれを管理、監督、監視するシステムができていなかったというのが、今回これだけ急激に信用収縮が起きた一番の根幹はそこだったと思っております。

仙谷委員 末端の現象だけ説明になっても、対処の方法は全く出てこないと思います。

 アメリカの経済の問題ははっきりしているじゃないですか。ほとんどの人が指摘している。過剰消費、経常収支の赤字、財政の赤字。財政の赤字は、軍事費に足をとられて、イラク戦争以降、一兆ドル、百兆円も使っちゃった。どうするんですか。それで、お金を呼び込むために、貸してはならない人に貸すサブプライムローンをつくった。サブプライムローンというのは、貸してはならない人に貸すための商品ですからね、言っておきますけれども。レバレッジをかけて、もうかるよ、もうかるよと。日本の個人も金融も相当これから被害が出てくると思いますけれども、そういう、もともとは過剰消費、経常収支の赤字、ここに端を発しているんじゃないですか。これが調整の過程に今入ってきているんですよ。そうでしょう。だから、日本からの輸出、アジアからの輸出が急激に落ち込むんですよ。

 日本はどうなんですか、御説明できないようだから私の方から言いますが。日本の病気について全然説明できない。日本の病気は、いいですか、外需依存、余りの外需依存、そして財政赤字。この十年間、とりわけ家計を徹底的に痛めつけることを少なくとも放置する政策をとってきた、このことが、内需拡大と口で百遍叫んでも内需は伸びないということじゃないですか。

 お渡ししてある資料の一ページ目をごらんください。わかりますか。日本のGDPの主要項目別、名目と書いてありますでしょう。こういうの、カラーになっていませんけれども。多分、表紙の次についていませんか。

 これをごらんいただけると、はっきりしているじゃないですか。日本の成長は、辛うじて設備投資が、二〇〇二年から二〇〇八年の第三クオーターまで、つまりことしの九月まで、輸出に引っ張られて二割程度は伸びたけれども、あとはほとんど、この六年間でも微増にしか成長していないということははっきりしているじゃないですか。住宅投資は、例の問題があって、建築基準法の問題があってこう落ちている。はっきり出ているじゃないですか。

 名目GDPで見ると、サービス消費と物の消費、それから消費そのもの、名目GDPの伸び方とサービス消費と物の消費、こういう状況じゃないですか。

 一九八六年の前川レポート以来、内需拡大と言い続けて二十年ですよ。何でこんな外需依存の経済構造が改まろうとしなかったんですか。これは政治の問題、政策の問題じゃないんですか。どうです。

中川国務大臣 仙谷委員の認識と私の認識は、多分、現時点において同じだと思います。

 アメリカのガルブレイスの、最悪のときというのは最悪のときになってみなければわからない、こういう言葉がありますけれども、今果たして欧米世界が最悪なのかどうか、これはまた歴史が判断することだろうと思います。

 はっきり言って、今の状況が非常に厳しいことは、総理も私も仙谷委員も認識は共通だと思います。しかし、何もしていなかったからということだけで物事を解決するのは、ある意味では簡単なことだろうと思います。

 私は麻生総理と、内閣に入る前に一年間、ほぼ一年以上、この問題について、サブプライムローン問題あるいはCDS、CDOの問題等々いろいろと、過剰なアメリカの消費あるいは外需依存について、ずっとある意味では一緒に勉強をさせていただきました。だからこそ我々も、多分仙谷委員も、この危機認識を早くからお持ちになっていたんだろうと思います。

 要は、今までのことを反省するにも、まだまだ途中経過ですから難しいとは思いますけれども、今何をすることが最善なのかということを、この院を通じて、必死になって各党通じて話し合うことが、私は一番大事なことではないかというふうに考えております。

仙谷委員 次は麻生総理大臣にお答えいただきたいんです。

 つまり、ここからなんですよ。内需拡大策を八七年以降やらなかったわけじゃないんですよね。とりわけバブル崩壊以降はじゃぶじゃぶのことをやった。この方向が間違っていたということを早く気がついて政策転換をしないと、この国はとんでもないことになるという、この教訓じゃないですか。自民党が政策転換できないんだったら、政権をかわらないとこれはできないんですよ。はっきりしているでしょう。

 つまり、内需拡大を公共事業拡大というふうにやっちゃって、財政の赤字をこんなに、GDP比一五〇%、一六〇%まで伸ばした上に、ハードなものばかりができたかもわかりませんけれども、ここでソフト、人間がこれを運営するシステムのところにほとんど乏しい投資しか行われなかったというのが最大の問題じゃないですか。方角を……(発言する者あり)失業も同じだ。全然わかっていないんだ、あなたは。あなたが一番経済政策間違えたんだよ、大蔵大臣で、言っておきますけれども。

 方向を間違えていた。つまり、経済のソフト化にお金を使わなければならない、経済のサービス化にお金を使わなければならない、経済の知識産業化に、知識経済化にお金を使うべきだ、高付加価値化に投資をすべきだということが、ほとんど、自民党の政治では、いや、道路だ、橋だ、ダムだ。そうでしょう。地域だ、地方だ、言うのはいいけれども、地方の教育はどうなっているんですか、地方の医療がどうなっているんですか。人間に対する施策が全くぼろぼろになっているというのが今の事態じゃないですか。政策の方向性が全く間違っているんですよ。どうですか。

麻生内閣総理大臣 いろいろ御意見があるんだと思いますが、少なくとも日本の中において、この十五年ぐらいを振り返ってみますと、バブルが、これは株のバブルと土地のバブルと少し違うんですが、いわゆる土地のバブルがはじけましたのは九二年。価格というものがこれを境に暴落をしております、九二年から。これが一番わかりやすいところだと思います。八九年の十二月の二十八日にいわゆる三万九千九百八十幾らつけましたあの株というものはそこで終わっておりますが、その後、土地はまだ上がっておりました。したがって、それまではそこそこバブルが続いていたんだと思っております。

 しかし、九二年を境にこれがはじけた。土地の融資に対する規制、いわゆる総量規制という名の法律を入れてということであります。それによって土地の値段が暴落した。それは市街化地域でいきますと約二割になっておりますから、そこが、土地本位制みたいな日本にとりまして最もきつかったときがこのときだったと思っております。

 これは、もうしばらくすると歴史家の言うところなんだと思いますが、私は、この政策が、今までの政策の中でどれが間違っていたかといえば、あれが一番大きかったかなと、私自身は、今、十数年たっての正直な実感であります。

 その上で、仙谷先生言われますように、内需の拡大ということに関しては、これは今言われましたように、公共工事に偏り過ぎたではないかと。内需拡大はもっと別のところでもできたのではないか、例えば住宅、個人住宅などなど、個人住宅というものをもっとやればよかったのではないか、いろいろな、後から考えてみると反省すべきところは多々あろうと存じますけれども、外需が意外と、中国の伸び、アメリカの伸び等々がありましたから、その外需というものに、特に二〇〇〇年以降は多くその外需というものに乗っかったというところは事実だと思っております。

 いずれにいたしましても、その外需というものが、中国もしんどくなる、アメリカに輸出しておりましたので。したがって、アメリカに輸出しておりました中国、また、ヨーロッパなどなどがいずれもきつくなってきますので、それに合わせて中国もきつくなる、それに輸出しておりました日本もということになって、世界全体になってきておるのではないか。

 したがって、各国、内需拡大ということに精を出せという話は私は政策として正しいと思っておりますし、我々として、今回も住宅ローン減税等々は、過去最大の住宅ローン減税をしたいとか、また、いろいろな意味で、省エネとかまた将来につながる新しいエネルギーに対する設備投資というものに関しましては、即時償却、一発償却というものを認めろとか、いろいろな形で今新しい税制というものの改革をして内需拡大というものに向かっていくような形にしたいと思って、これを努力していきたいと思っております。

仙谷委員 どうもかみ合いません。

 それでは、先に進めさせていただきます。

 三枚目から。一人当たり人件費、企業規模別従業員の数、利益。それから次に、日本の現金給与額、全産業、実質。それから、給与階級別分布、これは国税庁の資料でありますが。それから、世帯の所得の中央値の年次推移。

 これをずっとごらんいただくと、特に世帯の所得の中央値の年次推移というのをごらんいただくと、この平成八年から平成十九年の中央値の変化をごらんいただくとよくおわかりいただけると思うんですが、いいですか、約百万円中央値が落ちているんですね、真ん中の人が。ちょっとひどいんじゃありませんかということになると思います。

 それから、その手前の、給与階級別分布というのをごらんください。実に、平成十九年には、所得が三百万以下、給与が三百万以下の人が、日本の勤労者のうち三八・六%までいってしまった、こういうグラフであります。多分、平成十年は三二%ぐらいでございましたでしょう。

 こういう、つまり、中間層にくさびを打ち込んで、いわゆる下流社会というのがありましたけれども、どんどん低所得者をつくり出しているというのがこの間の政策であったということがおわかりいただけるでしょう。

 それは、二枚目、三枚目の、人件費から見るか、現金給与総額から見るか、いずれにしましても、指数で見ましても絶対値で見ましても、このぐらいいわゆる普通の人々の手取り、名目の手取りの給与が減らされてきた、家計部門はここまでたたかれてきたということなんですね。

 これは、当然のことながら給与の話であります。この上に利子所得が全くつかない、お年寄りは全く困ってしまうというのが、この間の自民党の、あるいは自公連立与党の政策であります。

 ところが、ここへ来て、二兆円の定額給付金のばらまきというとんでもない政策が出てきました。私は、この話を聞きましたときに、小泉純一郎さんを直ちに思い出しました。忘れもしません。小泉さんが、二〇〇一年の五月七日、総理大臣になられて初めて所信表明演説をしたときに、皆さん方も覚えていらっしゃるでしょう、いわゆる、小林虎三郎の米百俵の精神について説かれたわけです。つまり、ちまちましたものをもらう、そんなことを考えないで痛みに耐えろという演説をした。所信表明をやった。

 麻生さん、総理大臣もそのとき政調会長だったからよく覚えていらっしゃいますよね。私は、小泉さんのこの所信表明演説の間違いは、小林虎三郎は、いいですか、米百俵をみんなに分配しないかわりに、当時としては極めてまれな国漢学校をつくったというところが彼のやったことです。つまり、今流に言えば、二兆円を一万二千円ずつばらまくんではなくて、私が先ほどから申し上げておりますように、知識経済化に対応できる経済に、それを担う人づくりに、人材養成にお金をかけるんならともかく、一万二千円ずつまいてどうするんだ、こういうことを麻生さんに言いたい。これは、与謝野さんも体を張ってもう一遍とめることにしていただきたいんだけれども、麻生さんもこれを撤回されたらどうかと私は思います。

 ちなみに、ちょっと長くなるけれども、当時小泉純一郎さんが読まなかった部分、山本有三の戯曲の中に出てくる部分を読ませていただきます。

 山本有三によると、小林虎三郎が、何ぞというとすぐ百俵、百俵と藩士がわめき立てるが、百俵の米って一体どれだけあると思っているのだ。そればかりの米を家中の者に分けてみたところで、たかが知れておる。考えてみるがいい。当藩の者は、軒別にすると千七百軒余りある、頭数にすると八千五百人に上るのだ。かように多数の者に分けたら、一軒のもらい分はわずか二升そこそこだ。一人当たりにしたら四合か五合しか渡らないではないか。それぐらいの米は一日か二日で食いつぶしてしまう。一日か二日で食いつぶして後に何が残るんだ。これを山本有三は小林虎三郎に言わせているんですね。

 この種のことを、当時の、小林虎三郎、長岡藩の要するに総理・総裁ですよ、その人が言ったことを言わせた。その一万二千円を辛抱してくださいと、あなたが言わなきゃいかぬのじゃないですか。そのかわりこれをやりますと言わなきゃいかぬのじゃないですか。

 これは今、都道府県知事や市町村、まあ都道府県は直接ではないかもわかりませんが、首長さんに個人的にお会いになって聞かれましたか、これはいいかと、この一万二千円。絶対に、人数分私に下さいと言いますよね。札幌市は二百五十億円になるんですって。いろいろなことができる。朝日新聞にも、宮古がどうの八街がどうのと、いろいろなことで困っている地方自治体があります。十億円のお金になります、あるいは百億円のお金になります、今やらなきゃいけないことはこんなにあるんですよと。

 こうしなければ、政治じゃないんじゃないんですか。いかがですか。もう一遍再考しませんか、これ。

麻生内閣総理大臣 佐久間象山の弟子に、二トラと言われた一人が吉田寅次郎、後の吉田松陰、もう一人が小林虎三郎、その話ですね、今の話は。全然おまえ知らないだろうと言われたので、ちょっと知っているということをちゃんと確認しておかぬとね。おまえ、漫画ばっかり読んでるんじゃねえかなんて言われても困りますので、きちんと話をしておかぬといかぬと思って、その話は決して知らないわけではないということを前提にして話をさせていただきます。

 そして、つくったのが長岡中学。今の長岡ですけれども、ここから出た人が、山本五十六、武見太郎、いろいろ有名な人がこの学校から出られたということもよく知っているつもりであります。

 おっしゃる点は、仙谷先生、決して私自身は、それは全く間違っているなんて言うつもりはありません。ただ、今置かれている状況を我々は考えたときに、先ほどOECDの話もさせていただきましたように、今即効性がある最も有効な措置だと、OECDのいわゆるシニアエコノミスト、結構有名な人なんですが、この人の言った文章というのが、先ほど読ませていただいた文章です。そういう見解もあります。

 したがって、私どもは、一つの考え方だとして、十分に拝聴に値する御意見だと思って、私どももそれを丸々否定するつもりは全くありません。ただ、今、目先のところは申し上げたとおりでありまして、私どもとしては、この話は基本的に、地方に与える消費の即効薬としては、今年度限りという、最も今非常事態になっておりますので、私は、これは毎年続けるつもりはないのであって、今、目先の話としてこの話を申し上げさせていただきました。

 私としては、少なくとも、定額減税という御説もありましたけれども、それ以下の税額を払っていない方より低い方々のことを考えて全世帯に行くべきではないかということを申し上げたら、今度はいきなり、何だ、金持ち優遇じゃないかと、いつの間にか話がそっちにすりかわっておりますけれども、私が申し上げたのはそういうことでありまして、もらった方々で、五百万の方でも、私は要らないと言う方もいらっしゃるでしょうし、五千万でも、おら、もらいてえと言う方もいらっしゃるでしょう。これはいろいろだと、私はそう思っております。

 それを全部きちっと検査をする、査定をするというのはいかがなものかという感じがありましたので今回の方法をとらせていただいたというのがその背景と御理解いただければと存じます。

仙谷委員 今のは、この問題についての政策と政治の放棄をあなたが自白しているんですよ。

 舛添さん、もし、あなたが総理大臣だったら、二兆円使える埋蔵金が出てきたらどうしますか。今の時代、日本が置かれている状況、今、毎日報道されて、毎日若いお母さん方もお父さんも極めて不安に駆られて心配をしている、これで子育てできるんだろうか、周産期医療はどうなるんだろうか、お年寄りは、我々は安心して医療を受けられるんだろうか、このままではどのぐらいかかるかわからないから財布のひもを締めようと、こういうことに今なっているんじゃないですか。

 今、私は、政策の優先課題は、医療が最も緊急性が高いと思います。特に周産期医療を、今の悲惨な状況をなくすためには、相当抜本的に、人材養成、資金を投入する、システムをつくる、あらゆることが必要だと思っておりますけれども、舛添さん、この二兆円の埋蔵金があったら、あなたが厚生労働大臣じゃなくて総理大臣だったらどうしますか。

舛添国務大臣 今、医療の問題、委員がおっしゃいました。私もこの問題は非常に深刻だというふうに考えておりますので、お金が全くない例えば若者のフリーターの御夫婦がおられて、その方が安心して出産をし、その前、妊娠したら安心して健診を受けられる、今五回まで無料ですけれども、今度十四回無料の措置をとりました。そして、出産育児一時金、これは今三十五万、これをさらに上げる手はずを整えております。そしてまた、周産期医療センター、例えばNICUが足りない。ただ、これをふやしても、それに携わる新生児専門のお医者さん、それから看護師さんが足りません。今鋭意この方向での施策の充実を図っておりますので、例えば医師数について言うと、過去最大、つまり、六百九十三人の来年度の人員増ということで的確に予算もつけた上で実行しておりますので、例えばこういうこと、これはきちんと現政権においてやっていることでございます。

仙谷委員 資料として皆さん方にお渡ししたものの、ちょっと時間の関係がございますので説明は省きますが、七枚目からでしょうか、「安全なお産を実現するための「二兆円」」というのがございます。二兆円かければ完璧に五年間で日本のお産は安全なものにできる。二階大臣の倫理発言もございましたけれども、この最後のページに、今どういう現場に医師が置かれているかということ、あるいは看護師さんもどういう現場に置かれているかということ、そして超低体重児がこんなにふえているのはなぜか。この事態をもとにして、非常識であるとか、救急車が入ってきたら受けないのは人道問題だ、医者の倫理が低いからだみたいな話は、これは通用しないんですよ。

 二年前の福島県立大野病院の事件というのがあってから、あの事件は一人医長体制のもとで発生したのに、これは無罪になりましたけれども、しかし、その後、奈良で二件、先般から墨東病院、杏林病院、そしてこの間は札幌、次から次にこういう悲惨な事故が起こっておるじゃありませんか。

 これはどこか、システムとかシステムを担う人材の不足なのか質なのか、ここに問題があるんですよ。そういうふうに考えない限り、医者が寝ずに働いていても、もっと寝ずに働けと。ふらふらになって事故を起こしますよ。そういうことを、ちゃんと現場のことを知った上でこの対策、対応をとっていただきたいと思うんです。

 民主党は、周産期医療のみならず、今度の選挙で、医療崩壊に打ちかつ予算案というのをつくっておりました。総額一兆九千億。後期高齢者の廃止、これに八千五百億かける。医師不足の解消、八千億かける。勤務医の就業環境の改善、五百九十億かける。がん対策の拡充、ここに飛躍的に、百億、二百億の話じゃなくて、一千四百億かける。新型インフルエンザへの対応、九百六十億円かける。一兆九千億です。どうですか、二兆円全部それに使ったらと私どもは思うぐらいであります。我々がもし政権をとったら、こんな埋蔵金があれば医療に優先的に使います。

 安心して働けるように、安心して消費できるようにするためには医療です。労働力の再生産という考え方から見ても、一人一人の労働力の再生産にとって必要不可欠なのは医療です。世代的に良質な労働力を再生産していくのは教育です。

 どうです、舛添さん。厚生労働大臣のお考えを聞かせてください。

舛添国務大臣 医師をふやせばお金がかかる、医療というのは財政にとって重荷になる、そういう考え方でずっと来た結果がさまざまなひずみを生んでおりますから、今委員がおっしゃったように、医療というのは人間の価値を高めるものである、そういう観点が必要でございますし、また、教育というのも、国家百年の大計で、長期的な人的な資源の価値を高めるということでございますので、そういう基本的な哲学においては、私は委員と共通するものを持っていると思います。したがって、厚生労働大臣として、その方向で日夜努力をしているつもりでございます。

仙谷委員 三千五百億円でなくても、三百億円年間にかければ今の周産期の医療の極めて惨たんたる状態は直せるというふうに言う専門家の方がいらっしゃいます。よくその点はお考えをいただきたいと思います。

 そして、舛添さんのお答えとの関係でいいますと、やはり医療をサービス産業として考える、ちゃんと位置づけるということが必要だと思うんですね。今の時代はそうです。ヨーロッパ、アメリカ、すべてが医療をちゃんとしたサービス産業として位置づけて、その関連企業、製薬もそうでありますが、医療機器その他関連企業がそれと一緒に成長していく、そのことによって国民の安心もちゃんと確保できる。こういうサイクルをつくっていかないで、医療は金がかかるから金を減らせばいいんだということになると、安かろう悪かろう医療になる、こういうことだと思います。

 そこまで医療の話をお聞きしまして、次に、定額給付金の法律的な問題にちょっと返ります。

 総理、この定額給付金の事業というのは、だれの事業なんですか。つまり、国の事業なのか、自治体の事業なのかということです。だれの事業なんですか。

鳩山国務大臣 定額給付金の事業についてですが、地方公共団体の事業は、自治事務と法定受託事務に分けておるわけでございます。

 では、自治事務とは何かというと、明確な定義があるわけではなくて、法定受託事務以外のものが自治事務ということになります。自治事務というのは、地方が自由に決定して行うことを自治事務というのではなくて、法定受託事務以外のことを自治事務ということでございます。

 国が大枠を決めて、そして今実施本部をつくってできるだけシンプルな形にしようと全力を尽くしているところでございますが、国が補助金という形でお金をお出しして、地方が自治事務としてこれを配る、こういうことでございます。

仙谷委員 自治体が自主的に考え出した事業ではなくて、中央政府が勝手に、これは自治事務だからおまえやれと。こんな分権というのがあるんですか。全く論理矛盾するじゃないですか。国が、中央政府が自治体にこれをやれ、この事務をやれと言うのに、何でこれが自治事務になるんですか。そしてまた、自治事務であれば、自主的に選び取れなければ困りますよね、事務処理のやり方も事務事業自体も。何で国の経済政策として、公明党との取引の結果こういうものをやらざるを得なくなってやるのに、何でこれが自治体の自治事務なんですか。こんな論理矛盾した話はない。

 そして、そういうふうに国が自治事務を定めることができるとどこに書いてあるんですか。法定受託事務をこういう場合には定めることができるとは地方自治法上書いてあるけれども、国が自治事務を、これは自治事務だなんと、鳩山大臣のようにここで答弁できるような根拠の法律、どこに書いてあるんですか。教えてください。

鳩山国務大臣 ですから、最初に申し上げましたように、例えば生活保護のようなもの、あるいは児童扶養手当とか、ナショナルミニマムというか、あるいは選挙の事務とか、これは全国統一で全部同じようにやってもらわなくちゃならないというものを法律上法定受託事務としているわけでございまして、これは今後、地方分権一括法によって、できるだけ法定受託事務を減らしていこうということでございます。

 それで、自治事務というのは、地方が自発的意思に基づいて行うことを自治事務と言っているのではなくて、地方の事務の中で法定受託事務以外はすべて自治事務、こういうことになっております。

仙谷委員 だけれども、国の事務を、国の事業をお手伝いするのが自治事務なんてどこにも書いていないですよ。それはおかしいんですよ。

 ちなみに、自治事務の事業総体そのものを国の資金で賄う。事務経費も国が出すんですね。例えば振り込み料から、これにかかる人件費から、これは全部国が持つんですね、今度。

 では、二兆円のほかにどのぐらいかかるんですか、どういう見積もりですか。教えてください。

鳩山国務大臣 これは、かかる事務経費は全部国が負担をする、十分の十補助というか負担をいたします。これは今、実施本部をつくって、できる限りシンプルな形を目指しておりますので、今ここで金額を明確には申し上げることはできませんが、地域振興券のときのことを参考にして、できるだけ低い金額で済ますことができるように、シンプル、シンプル、またシンプル、こう考えております。

仙谷委員 法定受託事務の場合も、あるいは自治事務として処理をする何とか事業要項がつくられる場合も、五%というのが標準だというふうに言っていますよね。そうすると一千億円だ。

 私は、この事務を、本当に皆さん方がこんなことを地方自治体に押しつけてやらせるとすれば、五%では済まない。特に、銀行への振り込みでやろうなんということになってくると、一件一件六百三十円かかるんですよ、言っておきますけれども。これも全部持つんですね。六百三十円掛ける人口分、掛けてごらんなさいよ、幾らになるか。はっきりしているじゃないですか。こういうことを全部持つんですね。

 大体どのぐらいかかるんですか。一千億円以上かかるのか、一千億円以下で終わるのか。

鳩山国務大臣 現在、実施本部で、できるだけシンプルな形で、できるだけ金がかからないで、市町村が少しでも楽に事務処理ができるように工夫をしているところでございまして、仙谷先生がおっしゃった金額よりははるかに安く終わると思います。

仙谷委員 政策の方向性も全く間違っているし、この定額給付金の制度というのは法律上もかなりのOBボールだと私は思うんですよ。やめた方がいい。

 そして、ましてや市町村の現場には大変な迷惑をかけます。これは、鳩山大臣はいろいろな苦情を聞いてわかっているんだと思うんです。市長会の会長以下、本音を聞いてごらんなさいよ。もしくれるのならばまとめて使わせてほしいと、それは百対ゼロぐらいの結果になります。

 よくお考えになって、こういうでたらめなばらまきだけは、日本の財政のためにも、行政の規律のためにも、そして経済政策を整合性あるようにするためにも、そして医療のためにも、ぜひおやめいただきたい。このことを申し上げて、質問を終わります。

衛藤委員長 この際、笹木竜三君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。笹木竜三君。

笹木委員 民主党の笹木竜三です。

 質問を始めます。よろしくお願いします。

 先ほどからお話がありますが、最近、新しいKY、いろいろありますが、国民の気持ちがわからないというKYもあると、きょうの新聞、テレビでも報道されています。

 その中で今決定的に大きいのが、さっきからお話がありますが、この定額給付金。総理、これは十月三十日に記者会見で発表されたわけですが、どういうねらいでどういうことを目指してこのことを発表されたのか、もう一度ここで御説明をいただきたいと思います。総理にお願いします。

衛藤委員長 まず最初に、財務大臣中川昭一君。(笹木委員「細かいことは聞きませんので、今質問したとおりお答えいただけたらと思うんです」と呼ぶ)

 では、内閣総理大臣麻生太郎君。

麻生内閣総理大臣 失礼しました。

 定額給付金につきましては、この景気後退下での生活不安というものに対してきめ細かく対処するために、家計への緊急支援ということで実施したいと考えております。これは基本的な考え方です。そして、あわせて、家計に広く給付することによって、少なくとも消費者をふやす経済効果というものもあろうと思いますので、生活対策におけます重要な施策の一つであり得る、私自身はそう思っております。

 一貫して全世帯に実施するということを申し上げておりますが、少なくとも、総務省に対して、地方公共団体に示したたたき台というものにおきましても、所得を基準とする給付の差異を設けないことが基本ということにいたしておると考えております。

笹木委員 細かいことをお聞きしているわけじゃないんで、総理あるいは各大臣にお聞きするときには、ぜひ率直にお答えをいただきたいんです。

 決定的にこの定額給付金がなぜこんなに不人気で、普通なら一万二千円とか二万円上げるよというのは、それはそんなに悪い話じゃないんですが、今現在、七割、あるいは調査によっては八割の国民でも、こんなもの要らないと言っていますね。どうしてだと思われますか。

 発言が二転三転している、このことも非常に大きいと思うんですが、何人か、親しい友人がこんなふうに言っていました。

 まさに今、幕末と同じだ。もう宣言が、あるいは責任者のいろいろな発言が二転三転する。司令塔が全く存在していない。こういう言葉も言いました。勝海舟の言葉らしいんですが、一雄興って一雄倒れる。責任者、将軍もそうですが、そのときの責任者、大老とか老中が次々かわる。しかし、何にも決められない。ただ時間だけが過ぎている。その状況と今似ている。そういう意見もありました。

 この定額給付金、最初は、全世帯にお配りをすると総理は言われました。どうしてこれは全世帯にお配りすることが大事だと思われたわけですか。

麻生内閣総理大臣 私は、このことに関して最初に申し上げたのは、定額減税という御意見もありました。しかし、定額減税だと、税金を納めていない方々、いわゆるもっと低所得のところにはこの給付金が行かない、このお金が行かない。したがって、もっと低所得のことを考えたら、いわゆる全世帯に行くのが望ましいのではないか。私は、その所得以下のところをもってそう申し上げたんですが、いつの間にか全世帯イコールということに話がすりかえられたと思っておりますが、もともとは、この話をさせていただいたのが最初だったと記憶をいたします。これは、事実、そのとおりだったと思います。上のところはいろいろ技術的な問題があると言われましたので、それはあなた、何千万ももらっている人がさらにというのはいかがなものですかという話を申し上げたと記憶をしております。

 ただ、世論調査を今使われましたけれども、じゃ、来たらもらいますかというと、八八%の方がもらうと言っておられる。要らないと言っておられる方ともらうと言う方が明らかに重なっているのはちょっとおかしいなという感じが正直実感ですが、こういったときは、自分は貧しくても、もしくは、自分はそこそこ金があるから要らないと言うのが、僕は姿勢としては正しいのではないかと思っておりますけれども、麻生さん、そんなことはないよ、今の人はと。いろいろな御意見があります。

 私は、これは、やってみなきゃわからぬと思っておりますが、いずれにしても、今の状態というものを考えますと、ぶれておるという御意見で、いろいろぶれたようにとられているのかもしれませんが、言っていることは、ずっと同じことを申し上げていると思っております。

鳩山国務大臣 定額減税でなくて定額給付金にしたということについては、税金を払っておられない方には何の益もないからという総理大臣の御説明のとおりでございます。

 ただ、もう一つございましたのは、所得制限ということになりますと、税務情報というのは、国税の情報であっても地方税の情報であっても、これは他に転用できない。所得制限をつけたいろいろな、例えば児童扶養手当とかそうしたものは法律に全部書いてあって、税務情報を横で引っ張ってきて使ってもいいということが法律に書いてあるからできるわけで、一般的には税務情報というのは使えないわけですね。

 しかも、まだ基準日は決めておりませんが、例えば来年、平成二十一年の一月一日とか二月一日を基準日としますと、その年の所得というのは平成二十一年一月から十二月までの所得ということになりますね。これが、例えば住民税段階で申し上げるならば、確定するのは平成二十二年の五月ごろでございますので、そういうことを考えますと、所得によって差をつけるというのは大変困難であって、総理が十月三十日におっしゃった、全世帯に全部行く、このシンプルな形が最も望ましいと判断をされたと思います。

笹木委員 いや、総務大臣、別に今聞いていないことに長々と答えられたんですが。

 与謝野経済財政担当大臣にお聞きしたいんです。与謝野大臣は、これは、ばらまきになる、高額所得者にも渡すというのはおかしいと最初から一貫して言われていました。今こういう状態になったことについて、どういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

与謝野国務大臣 技術的に可能であれば、高い所得階層の方にお配りする必要はないと思いましたけれども、鳩山大臣にいろいろ技術的なことをお伺いしますと、事実上、所得制限をしますと、所得の実態を把握しないと給付ができないということになりますと、膨大な事務にもなりますし、また、税法上の情報というものを自治体がいただかなければならないということにもなって、事務遂行上非常に多くの困難が伴う。こういうことで、それでは、事務的あるいは技術的に実行することが困難であれば、所得制限を設けないということもやむを得ない、こういう結論に達したわけでございます。

笹木委員 今御説明を聞いて、納得ができているようには聞こえないんですが。

 麻生総理大臣にもう一回確認したいんです。総理大臣は、いろいろな閣僚の発言も聞いた後で、まあ所得制限も容認せざるを得ないかな、ばらまきと言われるからというような発言も何度か言っている。その後、今、いろいろ技術的な御説明がありました。そういうこともあって、最終的に所得での制限はあきらめるのか、そういう話になっているわけですね。

 要は、十月三十日の段階ではこういうことは全く考えないで発言をされたということですか。一時は所得制限を容認したいと発言をされて、結果的に、今また、やはりそれはやらないという話になったわけですが、十月三十日、全世帯に給付をしたい、これだけ混乱するということを全く考えないで、具体的なことはお考えにならないであの十月三十日に発言をされたということなんですね。

麻生内閣総理大臣 基本的に私の申し上げているのは、経済効果を考えたときに、低所得のところに、少なくともこの年末やら年度末、いわゆる今厳しいと言われるこの時期に一定の金が行くというのは景気対策上として使えるのではないかという件に関しましては、私は賛成しております、これはもうずっと。その効果は、一定の効果はあるだろうと思っております。

 しかし、問題は、それが高所得者に対しても行くという話をされたので、それは普通、高所得者の人はとらないんじゃないのと言ったら、いや絶対とりますよと言うから、八八%がとるというのは私の勘は間違っていたということなんだと思いますが、普通、低所得者に向かってやるんだから、年間三千万だ何千万だという人はとらないんじゃないのという話をした認識が私の正直な認識です。

 しかし、現実問題として今出てきておりますのは、それをやる場合には、いわゆる給与所得者の場合はある程度簡単にできるのかもしれませんが、給与所得以外の方々を考えますと、そういったことは物理的に、先ほど鳩山大臣が言われたとおり、なかなか難しいという話をされましたので、それなら、少なくとも人間の善意というものを考えなくちゃいかぬのであって、先ほどの話じゃありませんけれども、しかるべき人は要らないというようにすることをやる以外に、あれは全部やるということになるとえらい騒ぎになるということでもありましたので、それなら、基本的には、辞退する、返納する、どこかに寄附する、いろいろな形があるんだと思いますが、そういった形で何らかの形で使っていただくというのが一つの答えかと思っております。

笹木委員 それで今、実務的にどうなるかと総務省に確認すると、こういうことなんですよね。基本的には所得を基準とした制限は設けない方向だが、所得による制限を希望する市町村、それは、住民に対して受給の辞退を呼びかけることができる。これは、自治体の首長、市町村長とかいろいろな方々にこのことについて話を聞きましたが、冗談じゃない、そんなこと、国が言わないのに、おれが呼びかけられるわけないだろうと。全部地方に押しつけるわけでしょう、市町村に、面倒なことは。こんな結果になっているんですね。

 この定額給付について、国民の典型的な意見はこういう御意見ですね。さっき、与えられたら受けるだろうと言われましたが、総理大臣のポケットマネーじゃないんですよ、国民に対して与えるこの給付金というのは。税金なんですよ、全部。ですから、もし来たときには拒否するという方は少ないけれども、ほとんどの方がどう言っているか、不支持の理由は何か。消費税と抱き合わせの定額給付金は要らない、どうせ税金だろう、無駄遣いだろう、こういう反応が国民の反応なんですね、総理。

 もう一つ、自治体の首長、あと地方の経営者はこういうふうに言いました。

 地方の経営者は、殺すつもりか、第二次の補正予算も出さない、このばらまきだけやる、全く、おれら殺されるよ、こう言いました。

 自治体の首長は、さっきの、面倒なことは全部おれらに押しつけるのか、どうせならこうしてほしいと言いましたね。例えば人口八十万人ぐらいのところ、百二十億円ですよ、計算したら、それを、先ほどからいろいろな委員が言っていますが、自治体の自由に使える金にしてほしいと。道路特定財源の一般財源化、一兆円を自由にしたいとかと言っているけれども、早くも何か骨抜きになってきている。じゃ、このばらまきを、二兆円分を、それぞれの人口比に応じて各自治体に配ってくれ、今言った、例えば八十万、そこの住民だったら百二十億円。いろいろなことを言われますよ、自治体の首長は。

 例えば、新しい産業を興したい、徹底的に研究者と民間の交流をやって環境産業を興す、そのことを、単年度じゃなくて、できれば二年、三年、四年計画で実行していく、そういう資金に使いたい。あるいは、いろいろなものを、物づくりが得意な地方はいっぱいありますね。でも、それを外に売っていく、あるいはマーケティング、そういうことについては非常に不得意な自治体が多い。そういう人を雇うのをこのお金を使ってやりたい。あるいは介護の現場、本当に今大変ですから、これも三年計画で介護の方が喜んで働けるようなそういう条件をつくる、それにこのお金を使いたい。

 要は、迷惑なことを押しつけるんじゃなくて、自治体がやりたいことを任せてくれ、もうこの言葉に尽きるんですよ。

 ぜひ総理にもう一回確認してほしいんです。これは間違いなく歴史に残る愚策だと思います。天下の愚策。先ほどから話があるように、やはりおかしい。細かい詰めを考えないでやってしまった。それなら改めたらいいじゃないですか。この二兆円を、地方がもっと先に向けて、夢のあること、いろいろなことをやっていく、例えば成功例に対して規制緩和を優先的にやっていく、そういう地方と国のあり方をぜひつくりたいんですね。

 総理、どうしてもこれはやめないですか、この定額給付金。総理に確認したいんです。

麻生内閣総理大臣 これはまず、いろいろな地方がいろいろな仕事を自分で自発的にやっていきたい、いいことですよ。これにまさるいいことはありませんね。そういう意欲のない首長さんよりよっぽどええ。何言っても全部政府でという話をする首長さんもおられますけれども、全部自分でやりたいという首長さんは、その方に権限と財政というものの支援をして、あと、きちんと責任はもちろん自分でとるという方の方がよほど地方の首長さんとしてあるべき姿だと思いますし、今後ともその方向が正しい、私自身はそう思っております。

 おかげさまで、このところラスパイレス指数を見ましても随分下がってきておりますのは、各地で見られるとおりです。そういった意味では努力しておられるんだと思います。僕は、そういうところが必ずそう言われるんだと思います。

 しかし、一点、今、これは毎年二兆円じゃないということはあらかじめお断りしておきます。これは今年度限りと書いてありますので、今年度の緊急の対策としてやらせていただいておりますので、したがって、それを毎年というような、先ほど医療の話が出ましたけれども、ですから、毎年二兆円というわけではありませんので、ぜひ、そういうところとは少し違うという点が一点。

 それから、地方交付税のことに関しましては、私はずっと申し上げておりますように、地方に対しては別にいろいろな対策をするということを年末までにきちんと出させていただきたいと存じます。

笹木委員 何もこちらはこれから二兆円が毎年なんて言っていません。二兆円を今自治体単位で給付して、それをどう使うかは、自治体は単年度だけじゃなくて、複数年でやってもいい、そういう計画を今つくればいいじゃないか、そういうお話をしているんですよ。

 天下の愚策でも歴史に残る愚策でも絶対にやめない、この後どんなに混乱が起こっても、不人気でも続けられる、そういうことですね。(麻生内閣総理大臣「今回の場合ですか」と呼ぶ)そうです。総理に聞いているんです。

麻生内閣総理大臣 担当者に聞いていただかないで私が言うのもいかがなものかと思いますが、少なくとも、これは基本として、今、大混乱が起きる天下の愚策ということにならないように努力したいと存じます。

衛藤委員長 総務大臣鳩山邦夫君。

笹木委員 ちょっと時間が少ないので。

 では、次の……(発言する者あり)いやいや、聞いておりません。時間が限られているので。後でまたお聞きすること、ありますから。

衛藤委員長 委員長の指示に従って。

鳩山国務大臣 混乱が全く起きないようにシンプルな形を考えていきたい、そういうことでございますから、混乱は起きません。

笹木委員 次の点に移りたいんですが、これは平成十二年と平成十八年の所得階級別の世帯数の推移です。

 よく、格差が広がったというふうに言われます。これを見てもそのとおりですね。百万円未満の方が、この十二年から十八年の間に三七・九%ふえている。百万円以上二百万円未満の方が一五・七%ふえている。三百万円未満も一〇%以上ふえている。三百万円以上は減っている。よく、格差が広がったと言われます。

 ここで、これも総理大臣に確認をしたいんですね。

 総理大臣、よく、人ごとみたいに言われますね。三位一体改革は、それは自主財源もつくったんだけれども、地方交付税をカットし過ぎたこと、これは総理大臣になってから何度か言われています。あるいは補助金削減、これがきき過ぎて、今地方は非常に傷んでいる、地域間格差にも非常につながった、こういうふうに言われています。

 総理大臣、しかし、この交付税のカットをしたとき、あるいは補助金をカットしたとき、最初はひもつき補助金をなくすと言っていたんですが、結局、その目標とは裏腹に、単に額を減らしただけですね、ほとんど。そういう悪政をやったときの、決定をやったときの総務大臣ですよね、責任者ですよね。どうして今、こういうふうに他人事のように言えるんですか。大変だった、交付税カットが大変だった、補助金削減が大変だった、これで地方の疲弊が非常に進んだと。これは評論家として言っているんじゃないんですね。御自身の反省として言われているんですね。

麻生内閣総理大臣 笹木先生、ちょっと御記憶を新たにしていただきたいんですが、あのとき、あの法案に、三兆円の税源移譲、三兆円のいわゆる補助金のカットという、国税を地方税に三兆円移すという話でこの話がスタートした。そして、その案は全市町村が出された案で、国としてはその案を出し切らなかった。そのときに、総務大臣でしたので、全国の市町村長もしくは県知事に案を出せと。出した案に基づいてあの案をつくり出して実行をさせていただいたのが、あのときの背景ですよ。

 したがって、あれができたときには、多くの方々が賛成をされたのが、ちょっと一方的に言われていますけれども、私自身は、この案はいいとみんなが賛成されて、正直、私自身もそんなに地方自治に物すごい詳しいわけじゃありませんけれども、三兆円の税源移譲が、国税から地方税に移るのは始まって以来のことですから、僕はこれはすばらしいことだと率直に思いました。

 ただ、それ以降、あの時期は景気が少しよくなりましたので、御存じのように、地方税がふえますと交付税は減りますので、そういったものを含めまして交付税というものが減っていったというのは事実ですから、そういった意味に関しては、交付税が結果的に減る形になったことに関しては、自分自身の反省も含めてと申し上げているので、他人事のように言われると言われますが、いろいろなところでその点を、自分自身の反省も含めてということを申し上げていると記憶します。

笹木委員 議事録にもありますが、麻生総理大臣が総務大臣だったときには、地方での財源は減らないようにすると何度も発言していますね、あのとき。減ったじゃないですか。そのことを言っているんですよ。そのことを反省を込めて言っておられるのかと聞いたわけです。ただ、ほとんど自治体の方も、言ってみれば、悪く言えば、だまされて賛成した、そのことを言いわけにしている。

 これを見ていただきたいんですね。これは国民健康保険です。国保加入者における所得階級別世帯数の分布、これを見ても、今言った、非常に格差が広がっている。はっきり出ていますよね。百万円未満の方が今五〇%以上いる。年金での生活をしている退職世帯、これでも四割近く。一般世帯、これは五五%を超えている。もうこういう状態なんですよね、国民健康保険に加入しておられる方が。

 次の資料ですが、この国民健康保険、後でまた他の議員が詳しくやると思いますが、国民健康保険を払えなくなっている方がどんどんふえているということです。一般的に、こう言うと、いや、払えるけれども怠けているんだろうと。しかし、いろいろ調査しますと、所得ゼロの方、要は毎年の掛金を払えない方に、強制的に、要は健康保険が使えないということですね、病院で一〇〇%窓口で払わないといけないという、これを強制的にやられている方が四割いるんですね、所得ゼロでも。それで、こういう状態になっている。

 これは、各国ごとのジニ係数、要は格差について大きい国、小さい国を出した表ですが、これを見てください。同水準の国で抜けているのはイギリスだけです。何か計算の細かい仕方が違うのでイギリスだけ抜けているようですが。ここで、税とか社会保障後、いわゆる可処分所得ですね、その状態で、何と日本は、アメリカ、イタリアに次ぐ格差が大きい国、このOECD加盟国のグループの中で。こういう状態になっているんですね。

 ぜひここで最後に確認したいんですが、舛添厚労大臣、二月のこの予算委員会でもお話ししました、資格証に切りかえられている、要は国民健康保険を取り上げられている方、しかし、これだけ今大変な状態なんですよ。よく、セーフティーネットと言いますが、例えばその子供であれば、あるいは若い方であっても、そういう状態であっても、単に命綱ということじゃなくて、できれば飛躍するためのジャンプ台を持たないといけないのが政府だと思うんですね。全く事情を調査せずにこの資格証を与えている、この現状をしっかりとさらに把握してほしい、強制的に一律にやるのはやめてほしいと言いましたが、今でも、子供でも、言ってみれば不合理な状態で、特別な事情に当たる場合でも病院に行けないという子供が三万人以上いるわけですね。

 このことについて、ぜひ、舛添大臣、どう対応されるか、後で詳しく話があると思いますが、まさか、民主党が提案している救済法案、反対されることはありませんね。

舛添国務大臣 極めて悪質な滞納者に対してどうするかという問題はございます。しかしながら、一律的に、機械的に、滞納したからすぐ無資格、資格証明書ということではなくて、きめの細かい対応をするように先般も重ねて各自治体に対して指導をしたところでございます。

 そして、今委員が御提案になりました民主党の法案でございますが、これは、法案の中身をよく精査させていただき、与野党の間の議論を見た上でまた適切に対応してまいりたいと思っております。

笹木委員 ちょっとお聞きしたいことが聞けなくなってしまったんですが、もう一点だけ確認をしたいんです。総理大臣は戻ってこられますか。

 では、舛添大臣にお聞きしたいんですが、要は、三つの丸がありますね。標準報酬月額を改ざんした、あるいはさかのぼって改ざんした、脱退前までさかのぼって改ざんした、あれをまず優先的に今調査をやる。そして、その中の、今、二万件、年金を受けている方を優先的に調査をやるというやり方をやりました。しかし、あの方法を決めたときには、まだ社保庁が組織的に厚生年金を改ざんしているという例は一件しか認められていなかったんですね。今、発表されて、二千五百件以上訪問して、調査をして、百四十件以上組織的な関与があったわけですね。これで、この方法を変えないといけないでしょう。

 一つ提案したいんですね。

 健康保険の場合には、社会保険事務所がレセプトも抜き取っている、だから組織的な改ざんを健康保険の記録では調べることができない。

 ハローワークを使ってくださいよ。いろいろな実務をやっている方に聞いても、何の実務的な手間もないと言われます。失業給付をやった時期、これはハローワークに全部記録が残っていますね。

 一方では、社会保険事務所で、言ってみれば全喪、廃業とか倒産、この年月日、これが、倒産もしていない、廃業もしていないけれども、改ざんをしている。それで、年金を払っているサラリーマンにしてみれば、自分は掛金を払っているけれどももらえなくなってしまう、こうなっているわけですね。

 ぜひ、ハローワークに失業給付の時期を出してもらう。倒産した記録があるところだけでいいと思うんですね。その国民でいいと思うんですね、サラリーマンで、この時期がずれている方を優先的に調べさえすれば。何の実務的な困難もありません。実務の方にもいろいろお聞きしました。この方法をすぐつけ加えてください。ここで約束してください。もう時間がないので、一言だけお約束をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 さまざまな御提案に対しては真摯に検討させていただきます。

笹木委員 時間がなくなったので、これで終わります。

衛藤委員長 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口でございます。

 総理並びに関係大臣に、経済それから年金、こういう話をただしていきたいと思います。

 まず、ちょっと順番を変えまして、金融です。さっき金融機能強化法の話がありました。総理、私たちは、ある意味、一九九〇年代のあの金融危機と言われたところで学んだものが幾つかあります。ただ、あそこでやってきたことが本当に正しかったのかという反省もあります。きょうは、その点について少しお話をしたいと思っています。

 私たちのところにこういうものが来ました。例えば、マネーゲームのように債権を転がして金額を上げて、債権者の方が債務者から最終的にがっぽり取ろう。債権を買い取る会社についてはやはり規制が緩いんですよ。中川さんの金融庁のところ、ここは非常に厳しいですね。だけれども、金融サービサー法、これを私たちはつくりました、債権を流動化すると。

 ところが、債務者は単なる取り立ての対象ではないんですよ。まさにこの日本の屋台骨を支えている中小企業、こういう中小企業が、みずから金融機関から合意、同意なしに債権を譲渡されて、そして、それがあるときに、タックスヘイブンのようなところにある会社から債権を取り立てるぞと言われて、生きたまま裸にされているという状況。

 だから、私は、きょう日銀の副総裁も来ていただきましたが、九〇年代、いわゆる銀行がバランスシート上の不安を抱えていたときに、資本注入をしてもなかなかそれが貸し出しに行きませんでしたね。今は、さっき総理がお話しになったように信用上の不安を抱えている。つまり、相手が信頼できない、だからオーバーナイトの金利でさえなかなか厳しい、こういう状況になっていて、やはり金融不安の質が変わっているんだと思います。

 金融不安の質が変わっているときに私たちがやるべきことは、単なる資本注入じゃないんです。金融健全化法というのは、あれは転ばぬ先のつえですから。この間、ビッグスリーの会長さん、社長さんですか、給料が一ドルというふうになったそうですけれども、そういう責任をとった上で公的資金を入れるというんだったらわかる。だけれども、天下りをやっている金融機関に、天下りさんがトップである、放漫経営をやっている金融機関に資本を注入したからといって、私たちが目的とする中小企業にお金が行くかということを議論しなきゃいかぬというふうに考えているわけです。

 だから、健全化法、それは、そういうところに責任をとれれば私たちはここは全面的に反対する話じゃないんです。ところが、責任をとらないで天下りの人たちがまたも同じようなことをやる。金融がじゃぶじゃぶになると、そこで悪さをするんですよ。そこはとめましょうねと言っている。

 日銀副総裁に伺いますが、現在起きている危機というのは流動性の危機ではないか。十二月二日の政策決定会合において、日銀は新たに貸し出しについて日銀がサポートするやり方をお示しになりましたが、それは一体どういうものなのか、政策目的は何なのかというのをまず伺いたいと思います。

山口参考人 お答えいたします。

 まず、先生の御質問であります私どもの今回の措置の内容ということについてお答えする前に、今の金融情勢についてどういう事象が背景にあるかという点でありますが、先生御承知のとおり、この十月から株価は急落いたしました。その結果として、金融機関は自己資本の状況について相当意識するようになっております。その限りにおいては、やはり金融機関も資本制約というのを意識している。したがって、問題の背景にはやはり金融機関の自己資本の状況というのがあるということは、私どもとしては認識する必要があるなと思っております。

 ただ、それだけで問題がすべてかということになりますと、やはり金融機関は貸し出しをするに当たってどういう形で流動性が調達できるかということも非常に強く意識するわけでありまして、そういった点も問題の背後にあるだろうというように認識しております。

 したがいまして、この二つの事柄をやはり我々としては意識しながら対応する必要があるのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、先生御指摘のとおり、この二日の日に、私ども、一つは民間企業債務の適格担保範囲の拡大ということと、それから民間企業債務を活用した新たなオペレーションの実施という二つの措置を決めました。

 まず最初の、社債と企業向け証書貸付債権の担保の適格要件のうち、格付にかかわる要件について、従来、私ども、A格相当以上ということでしてきたわけでありますが、これにつきまして、トリプルB格相当以上に緩和するというようなことを決めました。この措置によって、金融機関が日本銀行から資金を借り入れる際に担保として利用できる企業債務の範囲が金額としては二兆円以上広がる、こういうことになるのではないかというふうに思っております。

 それからもう一点目は、民間企業債務の担保価額の範囲内で、無担保コールレートの誘導目標、現在は〇・三%ということでありますが、これと同水準の金利によって、金額に制限を設けずに、年度末越え資金を供給するオペレーションを導入することにいたしました。これは、社債ですとか、あるいはCPですとか、それから貸付債権といった企業債務を担保として、相対的に有利な金利で、しかも長目の資金を供給する措置ということであります。したがって、金融機関にとりましては、資金調達面及びコストの両面から、その融資活動ですとかあるいはCP、社債市場での取引、こういったものを後押しする効果があるんだろうというように思っておりますし、それをねらった措置ということであります。三兆円程度の資金供給が見込まれる、このように考えているところであります。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

原口委員 総理、お手元の資料、きょう委員長にお許しいただいて配らせていただいていますが、この日銀短観を見ると、実際に、資金繰り判断、これは苦しいというのが急激にふえています。お手元の資料です、ここにございます。それから、貸し出し態度も、これも厳しい、それも急速に悪くなっている。業況判断DIも悪い。

 だから、資本を増強しただけでは、それはある意味では、今、日銀がここまでリスクをとって、そして金融機関にお金を貸せるようにしても、その先が大事なんですよ。サービサーに勝手に売り払われたり、幾らで売られたかわからない。もう今は、総理は経営者でいらしたからよくおわかりでしょうけれども、株を買収するより、まさに、私のところへ来られたように、元本確定するぞと。元本確定して、もうあなたのところは生きたまま切り刻みますよ、あるいは経営陣をそこに入れますよといってやられたら、日本の中小企業は本業どころじゃないんです。だから私は、ぜひ皆さんに、債務者を単なる取り立ての対象とするような金融行政はやめてくれと。

 中川大臣、債務者に無断で勝手に債権を売り渡すということはできませんね、今の金融検査のマニュアルの中で。できないはずですよ。うなずいていただくだけで結構です。できませんよね。総理、できませんよね。そうであるにもかかわらず、現実には優越的な地位でもって売り渡されていると皆さんも御存じでしょう。それを変えるんですよ。そのためにもやはり法改正をしなきゃいけない。私たちはサービサー法の改正も含めて次の内閣で議論しているということをここで指摘をしておきたいと思います。

 さて、郵政です。郵政については、総理、私は喜びましたよ。総理が、アメリカでおっしゃったですか、株の売却は凍結する方がいいんじゃないかと。私たちは、凍結をして、この法案で何も国営に戻そうなんという法案ではありません。

 そこは、総理、御理解いただいていると思いますが、いかがですか。

麻生内閣総理大臣 まず最初に、ちょっと今、前のやつを下に座ったままうなずいちゃったので、議事録の立場もあるでしょうから。基本的には、これは民法上の話、先ほどの債権譲渡の話ですけれども、民法上、これは債務者の同意は必ずしも必要じゃないことは確かです。

 しかし、金融機関が債権譲渡というものを行うに当たって、これは我々の選挙区やら何やら結構この騒ぎは多いですものね、だからこの話をよく知っておられるんだと思いますけれども、債務者の理解と納得を得るための説明に努めることが重要だということなんだと思いますので、これはもうまことに大事な指摘なので、ある日突然なくなっちゃうんですから、これはちょっと冗談じゃないという話になり得るということで、幾つかあった話ですから、よくおわかりのところだと思います。

 今言われましたけれども、国営に戻す気はないということは、これは私も全く同じで、あれだけかけて民営化しておりますので、私は、基本的に、仕事の世界からこの世界に来ましたので、民営化された会社がもうかるような制度にしない限り、もうからない会社の株は売れませんから、もうかるような会社にするようにいろいろなことを考えるのは、今経営しておられる方々の最大の責任はそこにあるんだと思って、だから、株価が安いときに売るやつがいるかと、ただそれだけ言っただけだったんですけれども、いきなり、永久に売らないみたいな話にどんどん、もうとにかくようつくりかえられますので、ことことことこと説明するのもいかがなものかと思いますので、私どもはそう言うんですけれども、原口先生のようにぱっと話して答えが見えている方はいいんですけれども、全然見えていない人にゼロからずうっと説明するというのは、ちょっと正直、ぶら下がりなんかのときにはとてもではないので、これからああいうのはなるべく答えないようにした方がいいなと、きょうここにいるぶら下がりの人たちにはぜひ言っておきたいですな。

原口委員 資料一をごらんください。これは、郵政公社時代との業績比較、民営化後一年です。これをごらんいただくと、テレビをごらんの方は、私のホームページにこれを全部アップしていますので、申しわけないですけれども。本当は、NHKの放映があるときは、障害を持った方々もいらっしゃるので、これは何回もお願いしています。こういうものはもっと国民にわかりやすく、場で出せるように私たちも協議していきたいと思いますが、これをごらんください、総理。民営化後一年で上がったものはそうないですね、ここにある表だけ見ると。

 次をごらんください。グループ内の格差です。日本郵政株式会社、これは下がっていますね。郵便事業株式会社、これは下がっています。上がっているのはゆうちょですね。この間、もう一カ月ぐらい前になりますか、総理とここで議論して、やはりゆうちょ、かんぽ、金融の方はいいです。

 それで、三ページをごらんください。郵政グループ各社の社員一人当たりの純利益、これは、郵便事業株式会社はマイナス十九ですよ。そして、郵便局株式会社は一人当たり十八万円なんですね。それに対して、ゆうちょ銀行は千二百六十五万円。これだけ違うわけです。

 私たちが、この株式を一回凍結して、そして事業の一体的な提供をできるようにしたいと言っているのはどこに理由があるか。ぜひ自民党の皆さんも御理解いただきたいのは、今のような分社化ありきの民営化だと、ビジネスモデルとして成り立たないんです。これで持続可能性があるとはとても思えないんです。

 きょうは、日本郵政の社長さんですか、来ていただいていますが、私たちはねんきん特別便というのを出させていただいています。JRの梅田駅で、郵便物が二カ月ですか、今までこんなことがありましたか。西川社長に、なぜこんなことが起きるのか。

 総理、この間、私はゆうちょ銀行の窓口に行って、娘の定額貯金をおろそうとして、私のところに入れようとしたら、あなた、男性であることを証明してくださいと言われたんですよ。それを面と向かって言われると、これは結構難しいことですよ。

 これは安住さんがつくった、郵政民営化のときに僕らが闘っているときの資料ですよ。皆さんは、郵政民営化をすればもっとよくなるということをずうっと、紙芝居になったけれども、あれはなかなか、どこにあるか。あのとおりではなくて、むしろこっちになっている。私は三回行きましたよ、それで。すぐそこにあるから、私は行けます。しかし、何キロも行かれている高齢者の方々が本当にこれでいいんだろうかと。ここにおばあちゃんの絵がありますね。こういう金融の権利はやはり国民の権利なんじゃないか、郵貯法の一条にあった、簡保法の一条にあった。何もメガバンクを幾つもつくる必要はないんですよ。リテールバンクをつくればいいんです。

 西川総裁、二つ伺います。

 なぜJR梅田駅でのこういう問題が発生しているのか。それから、日本郵政の決算、きょう理事会で委員長を初め皆さん御理解いただいて。

 局会社は、インセンティブといういわゆる手数料で成り立つわけです。ところが、その手数料が七月、八月になって急に上がっているんじゃないか。急に上がっているから黒字になっているけれども、そのインセンティブを上げなければこの局会社はマイナスになっているんですよ、上げなければですよ。私は、こういうやり方が本当にあるのかなと思います。上場を目指していらっしゃるのであれば、中期計画をお出しになるべきじゃないですか。

 西川社長に二つお尋ねします。

 一点目は、JR梅田駅で何が起こったのか。これは、自分が払った年金をもらえないで亡くなっている方が今幾らもいらっしゃるんです、後で議論します。二カ月もとめられたら何が起きているか。しかも、これは幾つですか、コンテナ一個分とまっているんですよ。これは公社時代にありましたか、あるいは国営時代にありましたか。そういうときになかったものがなぜ起きているのか。

 そして、上場を目指すんだったらなぜ中期計画を出さないのか。

 二つ、明確にお尋ねいたします。

西川参考人 お答えをいたします。

 今回の事故は、九月二十三日に埼玉の新越谷支店から送られたねんきん特別便約四万五千通を含む約十二万通が含まれたJRコンテナが、新大阪支店に配達されずに、十一月二十七日まで約二カ月間、大阪の貨物専用駅、梅田でございますが、この構内に残留をしていたというものでございます。

 この新越谷支店から新大阪支店への輸送を請け負った業者並びに梅田駅でコンテナを引き取り輸送する業者双方のチェック漏れにより発生したものでございますけれども、そもそも、やはり、郵便物の引き受けそして配達について責任を持っております郵便事業会社において、新越谷支店からの発送それから新大阪支店での到着、この確認を十分しなかったというところに原因のあるものでございます。

 こういう事故が発生したことはまことに遺憾でございまして、お客様には大変御迷惑、御不安をおかけして申しわけなく、深くおわびを申し上げます。

 今回の事故原因を分析いたしまして、早急に再発防止策を検討してまいりたいと存じます。

 それから、中期計画についてでございますが、中期計画は、かなり時間をかけてこれまで検討してまいりました。本来は、この中間期の決算発表時に発表すべく予定をしておったわけでございますけれども、金融情勢が急変してきた、あるいはそれに伴って実体経済も急速に悪化してきたということで、見直しを要する点がたくさん出てまいりました。そういったことから発表を見送りまして、もうしばらく検討を進めたいということで、早く見直しを進めたいと考えているところでございます。

原口委員 総理に伺いますが、私は、こういう決算、一〇〇%国が株を今持っています。国民に対する説明責任も、民営化ということで、やはり随分後ろへ下がったと思うんです。完全な株式会社であれば株主がいますから、その民間の株主に対して説明責任を負います。これは、株が売却されてしまってからでは、今のようなことが起きて、そして分割ありきの民営化で追われているところは、なかなかこれは難しい。

 さっきの手数料の話、きょうの理事会でいただきましたから、私も見て驚きましたよ。倍になっているんですよ、七月、八月。こういう決算のあり方も含めて、私はもう見直しの時期に来ているのではないかと。

 それは国営に戻せという法律ではないですから、総理、ぜひ御協力をいただいて、これはまさに、よくおっしゃるように、与党と野党で今衆参でねじれているわけだから、お互いに知恵を出し合う話じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生内閣総理大臣 これは基本的に、今言われましたように、国営化にするという話ではない。これは前々から伺っておりましたので、私どももよく承知をしているところであります。

 同時に、私どもも、これはもうかるようにするというところが最大の問題なんだと。どうもそっちの方に私は頭が行くんですが、もうかるようにしないと株価が上がらない。株価が上がらないと国の利益も入ってこない。また、もうかるようになってくると基本的に活気も出てきますので、新しいこの郵便事業会社という配達会社みたいなものは、これはやりようによっては結構と思っておった、その当時そう思っていました。

 少なくとも、いろいろな、これだけの全戸を回れるだけの信用と力を持っておる組織網はそうざらにありませんので、ぜひ、そういった意味では、こういったものを利用するなんというのはもう少し考えてもいいんじゃないのという、当時、結構時間切れみたいになりましたけれども、私は今でもそう思っております。

 したがって、いろいろな意見が出されるというのは私はいいことだと思っておりますので、ぜひ、大前提は大前提として、その上でさらにいい案というものは検討してしかるべきものだ、私もそう思います。

原口委員 一定の前向きの御答弁をいただいたと思います。

 つまり、一回売ってしまえば、事業形態を見直すというのはなかなか難しいですよ、一人一人の株主にお願いしなきゃいけないから。だからやっているんだということで御理解をいただきたい。

 さて、八ページをごらんください。これは、この間、舛添大臣の私的機関が出された調査報告書です。

 皆さん、消えた年金の問題がなぜ起きているか。一年以内に解決するんだとおっしゃいましたが、実は、総理、もう今は、その次の次の十ページをごらんください、第三者委員会であっせんされる例も随分減っているんです。なぜか。勤務をしていたということが証明できたにもかかわらず、事業所がちゃんと所得控除をしていたということが証明できなければ、多くの人たちが泣き寝入りしているんです。皆さんも、国民の皆さんからこんなのでいいのかと言われていると思います。ここを私たちは法律を変えたいと思っています。

 それと、今の八ページをごらんください。これは私が勝手につくったものではなくて、矢印をつけていますが、「厚生年金保険料を納めなくても年金がもらえる仕組み」とここに書いてあります。これはどういうことか。

 つまり、私が自分の標準報酬月額が百万円だと社保に出します。これはうそですね。それで、百万円で一銭も入れないで三年間会社を経営したとします。記録は、社保に百万円だと残るわけです。残ります。だけれども、お金は入りません。しかし、では私は将来どうできるかというと、この百万円分の標準報酬月額に基づく年金をもらうわけです。だから、この制度上の矛盾があるということを私はまずきょうここで指摘をしたい。

 それから、舛添大臣が、これをさっき笹木さんが出しました。(パネルを示す)今、この六・九万件というのは何なのかというところです。

 国民の皆さん、これをごらんになればはっきりおわかりになると思います。記録には、オンライン前とオンライン後という記録がありますね。そして、その上で、今何をやっているかというと、標準報酬月額の改ざんの件数を調べているわけです。そして、標準報酬月額をオンライン後改ざんしていた、組織的ではなかったかと言われているけれども、その中の三条件が重なったところ、小さいところを探しているんです、総理。

 これで何が起きるかというと、ここで本当に悪質なことが起きていたかどうかというのはわからないんです。何を言いたいかというと、本来であればサンプル調査しなきゃいけないんです。全体で何が起きていたかということを調査しなきゃいけないにもかかわらず、これは役所の常かもわからない、自分たちに責任が、もともと制度上に問題があるから、しようがないな、こんなお金を払っちゃいかぬからというので改ざんしていた例もあるでしょう。あるいは、私物化して改ざんしていた例もあるでしょう。だけれども、その中の一部しか今調査していないんです。これで何が起きているかというと、消えた年金の全体像がわからず、そして、従業員で勝手に改ざんされた人たちが救われない、第三者委員会で門前払いを食らう、こういうことが起きているわけです。

 ぜひ総理に実態の調査をお願いしたいんです。しっかりと議論をし、年金というのは国民に対する信頼ですから、それを回復するということを、御決意をお話しいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 原口さん、これは簡単には言えないというぐらい長い話ですから、これは正直、今言われた点、これは三つ重なったところがという話のうち、取り急ぎ二万件とか急いで何とかという話は、前々から厚生省もしくは舛添大臣のところでいろいろやってこられたところだと思います。

 これがもっと、こういうやり方もああいうやり方も、これもいろいろ伺ったところでもありますので、これはなるべく早くやらなくてはならぬというのはもう間違いありません。しかし、何十年にわたる、もう四十年ぐらいになるんですか、というぐらいにわたって、かなりずさんなものがいろいろな事情でできてきたものでありますので、これをいかにも来年決着しますとか来年三月までにとか、いろいろ前に御意見がありましたときにも、私ども、正直そんな簡単な話かねという感じが、原口さんも思われたでしょうし、私もそのときそう言った本人ですから、そんな簡単にいきますかという話を申し上げて当時もめたことがありますので、閣内不一致なんて言われたこともあったと記憶します。

 いろいろな意味でこういった問題は簡単にいかない問題だと思いますが、これは誠心誠意、時間をかけてやっていく以外に方法がないので、今言われた御意見を含めて、今後とも真摯に検討しなければいかぬものだと思っております。

原口委員 だから、全体像をまず調査しましょうと。そして、国家プロジェクトで年金の、もう業務センターがパンクしているんですよ。地方から社保の人を集めて、社会保険事務所の人を集めてやっている。だから、一年かかる、二年かかる、三年かかる、その間に人が亡くなるということになっているので、これはぜひ前向きの検討をいただきたい。

 最後です。

 これは、ASフォーム1型ということを使用した施工箇所の点検。総理、ASのAというのは麻生のAだそうですよ。SはSという建設会社。そこがつくった埋設型枠というんですが、これを十一月十四日に鉄道・運輸機構は検査結果というふうに、こうやって出しています。

 このことが何を意味するか。これをごらんください。開業箇所が二つあります。九州新幹線とつくばエクスプレスです。五十一工区にフォームが使用されていて、そのうち三十五工区、百十四カ所で剥離が起きています。なぜこの剥離が起きているのかということです。余りに多い。

 もともと、こういう製品は検査を経ているはずなんです。それから着工検査もしている。しかし、なぜこういうことが起きているのか。その原因調査について、これは政府参考人で結構ですから、どうされているのか、これはなぜこういう調査をしているのか、教えてください。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、九州新幹線につきまして、三十六工区、百二十四カ所で剥離が確認されたという報告を受けておりますけれども、剥離の原因につきましては、製品の欠陥であるとか施工上のふぐあいなどさまざまな要因が考えられまして、何が原因かは現時点では特定できておりません。

 この製品につきましては、現在、株式会社麻生が、第三者の有識者を交えました専門調査委員会を設置し、検証しているところと聞いております。

 以上でございます。

原口委員 では、それを株式会社麻生だけにやらせていいんですか。だって、施工かもわからないじゃないですか。総理が社長をなさっていた会社が不良品を入れたかどうかだってわからないでしょう。なぜ麻生だけにやらせるんですか。

 私は、これを指摘したとき、総理、(写真を示す)こういう新幹線の橋げたに使うんですよ。これが劣化すれば、百年もつものが七十五年にしかならない。アルカリ劣化をする。あるいは、これがどんと落ちれば、新幹線が脱線してしまう。あるいは、上からコンクリートがはがれ落ちてくれば、人が亡くなる。だから調査する必要があるんじゃないですかとやったわけです。

 人が亡くなるおそれはないですかと言ったら、国交省はこれを持ってきたんです。つまり、間のASフォーム1型というのはこうやって重なっているから大丈夫ですよと言うわけです。ところが、現実は違うんです。これは後で総理にお渡ししますが、実際に外にはみ出していて、これが上からおっこってきたら、それはコンクリートですから、人が亡くなるんです。

 私は、国交省として調査をすべきだし、そして施工が悪いのであれば施工業者に対して損害賠償を求めるべきだし、もし麻生で何かが起きていれば、それは麻生の中でしっかりやっていただかなきゃいかぬ、こういう問題であるというふうに思います。

 私はいろいろなことを聞いていますが、きょうはここにとどめます。総理、やはり経営というのはとても大事です。嫌なことでも耳に入れてくれる人を入れないと、結局、いろいろなことをもうなかったことにしようになってしまうので、ぜひここについて真摯な調査をいただきたい。

 総理は麻生の筆頭株主ですよね。(麻生内閣総理大臣「弟が」と呼ぶ)弟さんが社長さんですよね。だから、株主でもいらっしゃると思うから、あるいは利害関係者でもいらっしゃいます、ぜひ明確な調査を約束していただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今御指摘のありましたように、昭和五十四年まで社長をしておりましたので、今関与しておるわけではありませんので、それに対して直接お話しする立場にないというのは確かなんですが、今、一般論として、やはり製品に何らかの欠陥があるというんだった場合は、これはしかるべき対策が行われないとおかしいのであって、当然だと存じます。

原口委員 終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。菅直人君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 質問時間を三十分いただきましてありがとうございます。麻生総理、舛添大臣、年金と医療のことを質問させていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 今も原口議員の質問にありましたように、改ざんされた年金が、その疑いがあるのが百四十四万件、これもまだ氷山の一角で、もっとあるかもしれないと言われている。さらに、消えた年金が五千万件と言われています。

 しかし、改ざんされた年金も、給与明細とか、かなりの証拠がないとなかなか回復されないということなんです。私が質問で取り上げたいのは、それでやっと訂正にこぎつけてからかなり時間がかかるということなんです。

 例えば、私のところに相談に来られた神奈川の八十歳の男性は、四十カ月分の船員保険が見つかった。一年前から社会保険事務所に相談したけれども見つからなかったので、御自分で昔勤めていた地域の社会保険事務所などに行ってやっとそれを見つけた。それで、ことしの夏にやっと記録が訂正された。

 それで喜んだところ、何と、社会保険事務所に、ではいつ払ってもらえますかと、未払い年金がトータル百万円以上なわけですが、そうしたら、わかりませんけれども二年先になるかもしれませんと言われた。この方は御自分も体調が悪いですし、奥様も御病気、そういうこともあって、なぜ一年や二年もかかるのか、生きている間に払ってほしいと。これは当たり前の話だと思うんです、麻生総理もうなずいておられますが。

 そこで、舛添大臣にお伺いしたいんですが、記録訂正がされたら、高齢者の方はこれで年金未払いが戻ってくるんだなと普通思われると思うんです。今、全国で、何カ月あるいは何年ぐらいかかったら年金が受け取れるんですか。

舛添国務大臣 全体的な平均の所要月数を申し上げますと、全体として七カ月程度を要しておりますが、複雑な処理を要するものについては九カ月から十カ月。しかし、センターによっては一年以上お待たせしている例もございますので、迅速に対応できるように、さらに努めてまいりたいと思っております。

山井委員 フリップを出してください。

 これはどういうことになっているかというと、手元の資料にもお配りしておりますが、二ページ目であります。今、何と六十二万件も、記録訂正を受けたけれども未払いの年金がたまっていっているわけですね。それで、一カ月に処理されているのが今二万五千件なんです。それを単純に割りますと、二十四カ月、二年かかるということになってしまうわけです。そうなると、八十歳の方も九十歳の方もおられるわけで、このままでは生きているうちにもらえない。

 麻生総理、私のもとに一枚手紙が来まして、ポイントだけ読み上げさせていただきます。

 七十六歳になる男性です。ことしの三月八日に社会保険事務所に行ったら、たった五分で記録が見つかりました。それで、社会保険事務所の方は、三カ月ぐらいでお支払いできますとおっしゃった、三月に。それで六月初旬に電話したら、約束の三カ月ですが、大変混雑して遅くなっております、もう少し待ってくださいと言われた。それで、いつごろまでですかと言うと、もう三カ月待ってくださいと。それで六カ月たった九月初旬に電話したところ、やはり忙しくて、約束どおりお支払いできませんと。それで社会保険事務所の方がおっしゃったのが、今支払っているのは昨年の十一月から十二月のものです、いつお支払いできるかわかりませんと。

 それで、この方は御病気を患っておられるんですが、手紙に書いておられるのは、私も平均寿命まであと三年ほどです、それに慢性病を抱えており、あすの日がわかりません、せめて生きているうちに年金を払ってほしいと思っていますと。

 こういう方々がどんどんふえていっているんですが、生きているうちに年金を払ってほしい、このことについて、麻生総理、どう思われますか。

麻生内閣総理大臣 当然の感情だと思いますね。当たり前の話なんだと思います。

 こういったのはいろいろ事情があって、どれぐらい細かい事情というのは、人によってこれは物すごく、私も幾つか知らないわけじゃありませんので、物すごく細かくなって、くしゃくしゃになっている例というのは幾つもありますので。

 ですけれども、今のものはかなり、答えはもう出ているということになった上でそれだけというのは、ちょっと現場がわからぬので理解できませんが、基本的に感情としては、だって、わかったんだったら即というのが普通、まあ三カ月、それぐらいのところが常識的かな、私もそう思ったのが、六カ月、その次はさらにわからぬということになると、ちょっと対応としてはいかがなものかと、率直な実感です。

山井委員 では、もうちょっと説明しますので。

 これは、麻生総理も今おっしゃって、なぜなんだろうということなんですが、今申し上げたように、六十二万件、詰まってしまっているんですよ。だから、今のものを今処理しているんじゃなくて、この手紙にあったように、社会保険事務所は昨年十一月、十二月のものを今やっていて、たまってしまっているわけですね。一カ月の処理件数が二万五千件。ところが、未処理のものが六十二万件たまってしまっているということなんですね。

 それで、麻生総理、やはり常識的におかしいと思うんですが、常識的に考えて、記録が見つかったら、非常に難しいものは別ですけれども、大体これは何カ月ぐらいで払うのが常識だと麻生総理は思われますか。

舛添国務大臣 委員のその表は、九月までで平均二万五千ということをおっしゃいます。そこで、それまでは百二、三十人体制でしたので、十月から二百三人にふやしました。そして、処理件数が大体倍の五万から六万、十一月は大体六万三千ぐらいになると思います。それで、この十二月からさらにふやしまして二百八十人、そして一月、二月、三月、この年明けには三百十人までふやしたいというように思っています。

 そこで、今までは追いついていませんでしたけれども、例えば、一月に申請が十万あればこれを十万以上の処理体制でやっていくということで、非常にこの再裁定の作業というのは難しくて、本当にプロじゃないとできない面もあります。しかし、全力を挙げて、この期間を短縮すべく今鋭意やっているところでございます。

山井委員 決意はわかるんですけれども、問題は、やはり御高齢の方、御病気の方はせめてめどを言ってもらいたいわけですね。いつかわからないと言われたら、保険料はもう払っているわけですから、保険料を払って、社会保険庁が記録を消しておいたのに、いざ払う段になったらいつ払うかわかりませんでは、余りにも高齢者に対して失礼だと思うんですが、常識的に何カ月以内ぐらいに払うのが筋だと思われますか、麻生総理は。

麻生内閣総理大臣 山井先生、これは常識的に保険が幾らおりるかという、交通事故の話やらでよくある話なので、ああいったときの話というのも、これもずっと保険料を払っていて、事故したときに間に合わなかったら意味がないじゃないかと。災害保険とか損害保険とか火災保険とか、トラブルがよく起きる話なんですが……(山井委員「年金とは違うと思うんですけれども」と呼ぶ)いや、払った金が、もらえるべき金がおりてこないという点においては同じでしょうが。だって、払ったにもかかわらず、オーケーになったにもかかわらず、しかも来ねえというのはおかしいじゃないかという話なんですから。

 だから、基本としては、火災保険をずっと納めていたにもかかわらず、不慮の火災で、類焼で焼けたというときには、当然のこととして火災保険が常識的には即おりるものだと思っているんだけれども、それがおりない。何だか知らないけれども、いろいろ場合によって違いますけれども、理由があっておりなかったときに、まあ最終的にはおりるんでしょうけれども、それにはどれぐらいが常識的かと言われると、私もその種のトラブルの中に入ってどれぐらいが常識的かと言われるとちょっと答えようがありませんけれども、数カ月というのが普通かな。数カ月ぐらいなんじゃないんですかね、普通。

 私、交通事故で四カ月ぐらいかかったのが一回だけあるので、それ以来、記憶が、その種の話がありませんので、常識というのがちょっと私には欠けているのかもしれません。

山井委員 数カ月とおっしゃいますが、本人には何の罪もないわけですね。一生懸命働いて、それで、社保庁の一方的なミスで、やっと年金が見つかった。長い人は、先ほど原口委員から話がありましたが、第三者委員会で一年ぐらい審査をしている人もいるわけです。やっと見つかっても、それから一年か二年かかる、これではだめだと思うんです。

 それで、次のフリップをお願いいたします。

 この消えた年金問題で一番残酷なケースは、二十五年ルールというのがありますから、二十五年に足りなかったら無年金になっておられるんですね。私たち民主党、消えた年金問題で無年金になっている人がいるんじゃないかということを今までから追及してきて、やっと五月、六月だけ初めて出してもらいました、無年金の方を。そうしますと、五月、六月だけで三十五人、年金が消えていたせいで無年金だったということがわかったわけです。

 それで、これをごらんになってください。二番目の方は九十三歳なんです。十三年分国民年金が欠けていて、そのせいで無年金になって、何と三十三年分、一千三百万円未払いになっていたんですよ。私はこれを見たとき、非常にショックを受けました、本当に三十三年間どれほど苦しい生活をされていたんだろうかと。

 それで、この発表があったときに、一日も早く、特にこの九十三歳の方には払ってください、謝りに行って払ってくださいとお願いしたんですが、舛添大臣、この方、ちゃんと全額もうもらわれましたか、今どうされていますか。

舛添国務大臣 この九十三歳の女性は十一月上旬にお亡くなりになっております。

 年金につきましては、初回の支払い分、五年以内分については十一月に支払い済みでございまして、残りについては、今、十二月の支払いに向けて支給額の処理中でございます。

山井委員 舛添大臣、確認しますが、一銭でも、この方は年金を生きている間にお受け取りになったんですか。

舛添国務大臣 大変残念ながら、お支払いしたのが十一月中旬、お亡くなりになったのが十一月の初旬、間に合いませんでした。

山井委員 これは私たちが、民主党の議員が、とにかくこれ、ちょっと欠けていたんじゃないんですよ。消えた年金のせいで一銭も年金をもらっていなかったんですから、常識的には、見つかった翌日謝りに行って、それこそ耳をそろえて一千万円払って、こちらのミスで申しわけなかった、今からでは遅いかもしれないけれどもお役立てくださいと言うのが筋だと思うんですが、舛添大臣、この方に社会保険事務所は謝罪には行ったんですか。

舛添国務大臣 直接お会いできた方々には、すべて謝罪をしろということで謝罪をしておりますが、お会いできなかったり、もう来ないでくれと拒否された方はお会いしていません。ですから、謝罪ができておりません。

山井委員 舛添大臣、確認します。この方には謝罪はしたんですか、九十三歳の方には。

舛添国務大臣 ことしの春から病院に入院されていたということで、御家族、つまり御子息夫婦にきちんと謝罪をしたということでございます。

山井委員 なぜ本人に謝りに行かないんですか。御子息夫妻に謝ったとかじゃなくて、入院されていたということがわかったら、それこそすぐに払わないとだめじゃないですか。入院されていて、一千三百万未払いが社会保険庁のミスでわかった、そうしたら、一日も早く払わないとお亡くなりになるというのが容易に想定できるじゃないですか。

 五月十五日にこれがわかって、お支払いされたのが十一月中旬。なぜ半年間もおくれたんですか。その間も、私たち必死に、早く払ってくれ、年金というのは生きている間でないと意味がないからと言ったわけですよ。

 麻生総理、私は、残念ながらこのケースは象徴的なケースだと思うんですけれども、今の話を聞かれて、九十三歳の方は一千三百万円無年金だった、本人には何の落ち度もない、わかってからも半年間払わずに謝罪も本人にしていない、こういう対応をどう思われますか。

麻生内閣総理大臣 ここはちょっと今初めて伺ったケースなので何ともお答えしようがありませんが、極めてこれは痛ましい話だと思うね、正直。

 何となく、病院に入院されたときの状態が、どういう状態で入院されておられるのか、ちょっとよくわかりませんけれども、家族の人も嫌がったのか、ちょっとそこらのところ、現場にいないので何ともわかりませんが、聞いていてまことに痛ましい話であるなというのが率直な、今どう思われますかと言われれば、そういう感じがします。

山井委員 私は、残念ながら、こういう対応を見ていると、今の政府が年金というものを、また御高齢の方々の老後の生活というものをどう考えているのかということを本当に疑わざるを得ないんですよ。保険料は取るわけですよね、強制徴収なりで。それで、本当に悪質な場合には差し押さえまでやる。ところが、実際には、払ってくれと言ったときには払われないわけです。

 それで、もう一つ。残念ながら、十一番目のケースの方、六十九歳の男性、六十九万円未払い。十八番目の女性、八十一歳、四百四十八万円未払い。二十五番目の女性、八十四歳、四百万円未払い。この方々が年金が見つかった経緯を、舛添大臣、お話しください。

舛添国務大臣 まず、十一番の方からでしたね。十一番の方の場合は、亡くなられた御本人にねんきん特別便が届いたため、その奥様が社会保険事務所に相談に訪れた際に判明した。

 それから、番号十八の場合は、亡くなられた御本人が受給していた遺族年金の未支給年金の手続のため、御遺族が社会保険事務所に訪れた際に判明した。

 それから、次は二十五番でしたね。二十五番の場合には、御本人がその主人の年金に加算されていた加給年金の対象者であったところ、お亡くなりになったので、御主人がその旨の届け出を行うため社保事務所を訪れた際に判明したという報告でございます。

山井委員 ということは、十八番の方と二十五番の方は、亡くなったから年金記録が見つかったということですね、これは死亡届を出したから。

 やはりおかしくないですか。年金というのは、生きているうちに当然もらって老後の糧にするというのが本来の年金なんです。なのに、なぜ死亡届を出さないと年金が見つからないのか、この国は。なぜ死亡届を出さないと年金がもらえないのか。これは四百万、お二人ですけれども、やはり四百万円あったら老後の暮らしはかなり違うと思うんですよ。

 だから、私たち民主党は、今までから長妻さんを先頭に、特別便だけではなくて、紙台帳とコンピューター記録の照合を急いでくれと言っているのはこのためなんですよ。世界じゅう探しても、死亡届を出さないと年金が回復されない国なんかないんじゃないんですか。

 麻生総理にも、ちょっと痛ましい話ばかりで恐縮ですが、死亡届を出さないと二十五年を経る年金権が見つからない、こういう状況をいかが思われますか、麻生総理。

麻生内閣総理大臣 消えた年金、消された年金、いろいろあろうと思いますが、少なくとも今の話を含めて、やはり、死んだらわかったとか死亡したらわかったというのは少々ふざけているね、この話は。ちょっとそれは幾ら何でも、手抜きもしくは意図的に消しているのか何か知りませんけれども、ケースケースいろいろあるんだと思いますので、ちょっとこのケースがどうなっているのかよくわかりませんけれども、少なくとも、死んだらわかったというのは、これはどう考えても普通じゃないねという意味では、かなりおかしいという感じがします。

舛添国務大臣 せっかく表を出していただいたんですけれども、ちょっと社会保険庁の引用なさったデータがお古いのかなと思っていますが、十一、十八、二十五、すべて十一月にお支払いをしていますので、未払い分というのはございません。

 いろいろなところで数字が正しくございませんので、またこれは訂正させていただければと思います。

山井委員 これは五月の時点での未払い分であります。

 麻生総理がおっしゃるように、どう考えてもやはりこれはおかしいと思います。そのためには、これはどうせねばならないのかというと、特別便だけでは不十分だということがこれでわかるんです。やはり死亡届を出さないとわからないというのはおかしいわけで、紙台帳とコンピューター記録の照合を一刻も早くやらないとだめなんです。

 それで、時間に限りがありますので、次の後期高齢者医療制度の話に移ります。

 この後期高齢者医療制度でも、きょうの資料で配付しておりますが、青森県の保険医協会の調査では、何と七十五歳以上で四千人の方が後期高齢者の保険料を滞納されているということがわかりました。七十五歳以上の高齢者の一二%、資料四であります。また、新聞社の調査でも二十万人が滞納していると。全国規模にかえると六十万人ぐらいが滞納されているんではないかということが推測されるわけですね。

 そこで、今、資格証明書というのがありますが、後期高齢者医療保険証の裏には、こういうふうに、特別の事情がないのに保険料を滞納した場合、この証を返還していただくことがあります、また、特別の事情がないのに納期限から一年間経過しても保険料を滞納している場合、この証を返還してもらいますということになっています。つまり、今、推定で数十万人の七十五歳以上の高齢者、これは麻生総理、天引きをされていない所得の低い人が多いんですが、この方々が滞納しているわけです。このまま一年間ですから、来年の春以降になれば資格証明書を発行される方が出てくるわけなんですね。

 先ほど笹木議員の話にもありましたが、お子さんの資格証明書発行、これは資料ですが、残念ながら、無保険の方が三万三千人おられます。悪質なケース以外は発行しないと言っていながらも、三万三千人も子供の無保険が発生しています。同じ論法でいけば、何万人か何十万人かの七十五歳以上の高齢者の無保険の人が発生しかねないんです、このままいけば。特に、七十五歳以上の方というのは御病気がちな方が多いですよね。麻生総理、これはやはり問題だと思われませんか。いかがですか。

舛添国務大臣 まず、この保険料の収納状況でございますけれども、十八の広域連合について直近の数字が出ました。それで、収納率が平均して九一・五六%ということで、九割以上の方がお払いになっています。

 それから、これは委員よく御承知のように、今まで銀行口座から落ちていたのが、そうならなくなったために、自分で払いに行かないといけない。それは実は御案内差し上げたんだけれども、郵便物が来ても、ずっと口座から落ちているからということで、督促状が来て初めて、ああ、こうだったんだという方も相当入っています。ですから、今のトレンドがそのまま続いていくとは思いません。

 しかし、もちろんまだ一年たっていませんから、どなたにも資格証明書は出しておりません。これも、先ほどの笹木委員がおっしゃったお子様の例と同じように、一律に機械的に、ただ一年たったから、滞納したからということではなくて、悪質な場合はそれは別ですけれども、きちんときめの細かい対応をして、自治体に対しても広域連合に対しても指導してまいりたいと思っております。

山井委員 私たちは、この後期高齢者医療制度は廃止すべきだと法案も出しております。その理由は、実は、子供の無保険の問題も高齢者の無保険の場合も、国会で質問するといつも、きめ細かい対応をしてまいります、そういう耳ざわりのいい答弁なんですね。ところが、私たち民主党が、本当にきめ細かい対応をしているんですか、子供の実態調査をしてくださいと言ったら、実際、三万三千人も無保険の子供がいたじゃないですか。実際、ほとんど訪問せずに、文書だけ送って資格証明書を発行しているケースも非常に多かったということがわかったわけですね。

 ですから、舛添大臣の言い分もわかります、きめ細かい対応をしたいと。でも、実際には、数万人単位で、後期高齢者、七十五歳以上の方に資格証明書が発行される可能性があるわけです。この保険証に書いてあるわけです。ですから、それをゼロにするためには、一年間滞納したら資格証明書を発行して無保険になるということを法改正しないとだめなんですね。ことし三月までは、老人保健制度では、七十五歳以上の高齢者には資格証明書を発行しないということになっていたんです。ところが、後期高齢者医療制度で初めて、資格証明書を発行して無保険になるということになったんです。

 私、思うんですが、一番不幸な、戦争を経験して、戦後の廃墟から今の日本の平和な国をつくり上げてくださったのは、やはり七十五歳以上の高齢者の方々だと思うんですね。その方々を敬う敬老の国だからこそ、ことしの三月末までは七十五歳以上の高齢者には資格証明書は発行していなかった。実際、退職者の医療でも、保険料の納付率は九十数%と高かったわけです。にもかかわらず、来年の四月から、このままいったら数%、数万人あるいは十万人を超えるかもしれない方に資格証明書が発行されるかもしれない。

 高齢者が資格証明書を発行されたら全額自己負担になりますが、麻生総理、そういうことになったら、これは医療を受けられなくてお亡くなりになる方も出かねないんです。このことについて、麻生総理、やはり問題だと思われませんか。麻生総理、お答えください。まず麻生総理。

麻生内閣総理大臣 正直、山井さん、この話、私そんなに詳しいわけではありませんので、何となく、どういう言葉を引き出そうと思って質問されているか、ちょっと意図がよくわからぬから、うかつには答えられないところがあるんですが、正直なところ。(山井委員「もう率直に答えてください」と呼ぶ)だけれども、率直なところで、これは、基本的には適用の運用が問題なんだと思うんだね。僕は、今の話だけで聞いて、何となく運用がちょっとどうかなという感じが率直なところ。率直なところを言えと言われれば。

山井委員 今運用の問題とおっしゃいましたが、まさに、運用じゃないんです、制度なんです。

 ことしの三月までは、無条件に七十五歳以上の高齢者の方には保険証が発行されていたんです。その理由は、さまざまな事情があっても、七十五歳以上の方というのは御病気がちだから、全額自己負担になったら、それがきっかけで十分な医療が受けられなくて亡くなられる方がいるかもしれない、社会の功労者である、本当に敬愛すべき御高齢の方々にそんなことがあったら国民皆保険の国日本で恥ずかしいという理念のもと、制度が七十五歳以上の方には資格証明書の発行を禁止していたんです。

 ところが、今回の四月から、後期高齢者医療制度で、七十五歳以上の人にも広域連合の判断で資格証明書を発行してもいいですよ、それどころか、一年間滞納したら資格証明書を発行しなさいよという、運用じゃなくて制度を変えられたんです。

 だから私は、麻生総理に、その制度を変えたのが問題じゃないかということを申し上げているんです。

麻生内閣総理大臣 今の話で、保険料を納めていないという人に対して納付相談というのを、これはみんなどこでもやっているんだけれども、納付相談の機会を設けて、保険料というものを適正に納めるといういわゆる仕組み、被保険者全員が負担するという、保険料によって運営されるという大前提で、これは必要な制度なんだと思っているんですが。

 今の七十五歳の話というのは、これまでいろいろ御意見が分かれたところなので、六十五はまだわかる、何で七十五だと言われると、これはなかなか意見が分かれるところでしたので、この七十五のところはどうするかという話と、もう一点は、たしか天引きの話もそのときあわせて問題になったんだと思いますが、この二つの点については、今後検討しなくちゃいかぬのではないかという話になったというのが私の理解なんですが。

 いずれにしても、こういったものは、納得をいただけるような、これは全員が全員というわけにはいかないんでしょうけれども、納得をいただけるようにいろいろ考えるべきというのが我々の今の考え方で、目下、それを詰めておられるところなんだと理解をいたしております。

山井委員 もう時間が来ましたので終わりますが、最後になりますが、やはり今の社会を築いてくださった、不幸な経験を、戦争を経験された御高齢の方々には、当たり前の話ですが、生きている間に年金全額を支払う、そしてやはり、幾ら経済的に厳しい方でも七十五歳の人からは保険証は取り上げない、そして国民皆保険としてしっかり医療にかかってもらう、そういう原則をしっかりこの国はつくっていくべきだと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて菅君、仙谷君、笹木君、原口君、山井君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 深刻な雇用問題について質問いたします。

 コンピューター大手の日本IBMが正社員一千人の解雇を始めたと報じられております。会社側は今回の解雇について、昨年の税引き前の利益が一千億円から九百五十億円へと五%下がるからと説明をいたしております。同社の人員削減の目標は、ボトム一五、ボトムフィフティーンということで、底一五ということで名づけられて、IBMの従業員一万六千人の一五%を減らすという、整理解雇規模は二千四百人になるものであります。

 この日本IBMで現在何が起こっているか、私も直接現場のことを聞いてみました。

 十月中旬から名指しで退職勧告が始まりました。十一月二十六日から、それに応じなかった労働者に対して、上司が解雇予告を行って、会社の法務担当も参加して個室に呼んで、そして、四十八時間以内に退職勧告に応じよ、さもなくば即日解雇と言い渡されたというわけであります。私はこれではまさに脅迫だというふうに思います。職場では、いつ自分のところに声がかかって呼び出されるかという不安が広がっているということであります。

 労働契約法第十六条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」であるといたしております。

 そこで、舛添厚生労働大臣に一点確認したいことがあるんですけれども、整理解雇については、確立した裁判例で、倒産寸前などよほどの必要性があるか、解雇を回避するための最大限の努力がされているか、人選の妥当性、労働者側との十分な協議は行われているかという、四つの要件が満たされる必要があると。こういうことで間違いありませんね。そのことだけお答えください。端的にお願いします。

舛添国務大臣 端的に答えられないので、ちょっと詳しく答えさせていただきます。

 今の四つの事項が、裁判において、解雇権濫用に該当するかということで四つの事項が考慮されているということはそのとおりでございますけれども、これをすべて満たしていなければならない要件とみなすのか、解雇権濫用の判断をするための要素とみなすのかということについては、これは最高裁の判決があるわけではありませんので、判決の上ではまだ確立はしておりません。

笠井委員 しかし、満たされる必要があるということで、これは法的にはそういうことだということでいいですね、それは。それは違うと言ったら大変ですよ、これは。

舛添国務大臣 裁判所が判決を下すときに、今おっしゃった人員整理の必要性等の四つの事項が考慮されるということは確かでございます。

笠井委員 そこのところをちゃんとはっきり言ってもらいたいんですよ。当然のことなんです、満たされる必要があると。ましてや、四十八時間以内に退職の判断を迫る、大企業のこういう無法、横暴を許してはいけないと私は思うんです。直ちに今回の場合、調査をして、やめさせるべきだと思うんですけれども、どうでしょうか、これ。

舛添国務大臣 個々の企業、個々の事案についてのコメントは差し控えたいと思いますが、一般例として判例を見てみますと、被勧奨者、今の場合は、四十八時間以内にやめろと言われた方の自由な意思決定を妨げるような退職勧奨は違法な権利侵害に当たるとされた判例もございます。

 ただ、委員御承知のように、労働基準監督署が行う場合は、これは罰則を伴う公権力の行使として行えますが、あくまで労働契約法でございますから、契約というのは民法、民事の法でございますので、公権力は民事不介入ということでございますので、もちろん、こうであるべきだという啓発指導は行えますけれども、個別の企業に対して我々が行政権として監督指導を行えるというものではございません。

笠井委員 こんなやり方がいいと思うのかということなんです。不当解雇そのものだと思います。そんなことすらすっきり言えない、はっきり言えない政府の姿勢だから今日のような雇用破壊を生んでいるんだ。私は、このことを強く指摘したいと思います。

 そこで、麻生総理に伺いたいんですけれども、これは主な自動車関連企業十社がこの間明らかにした非正規労働者の人員削減計画であります。トヨタはことしのピークから比べると六千人、日産は千五百人、いすゞ千四百人、マツダは千四百人、こういう形で、これら十社だけで実に一万五千六十人という人数に上っております。

 今、これらを初めとして、名立たる大企業による派遣や期間社員などを大量に解雇する、派遣切り、雇いどめが毎日のように報じられております。新卒者の内定取り消し、下請切りとともに深刻な社会問題だと思うんです。総理はこうした大変な事態をどう感じておられるか、お答えください。

麻生内閣総理大臣 これはたびたび申し上げているとおりなんですが、これはサブプライムローンに端を発しましたいわゆる金融災害というか、グリーンスパンの言葉をかりれば津波という言葉を使っておりましたが、津波のような大騒ぎの話になっておるという大前提に立って、結果として、これの影響を受けて世界じゅう、経済自体が下降局面に突入していることは間違いない。私自身もそう思います。

 しかも、これがいわゆる景気波動の下降局面というようなものではなくて、どおんと来たような感じで下がってきておるという状況で、日本の場合は十年前にほぼ似たような経験をしましたけれども、他の国ではこういったことを過去経験したことがありませんので、一斉にその対応を今慌ててやっておられるように思いますが、結果として、それは日本がやったのと同じように、幾つも、初めての経験ですから、なかなかうまくいかないということも確かだと思っております。

 したがって、その影響が我々の国に必ず出てまいりますので、その意味では、企業は、これはいずれも輸出にかなりなウエートを置いている企業だと思いますが、こういった輸出志向の強いところほど今のような先に対しての対応を焦っているということだと思います。

 いずれにしても、雇用というものは、これは生活の基本でもありますので、この雇用に関しては、少なくとも採用内定取り消しとかいうような話は、これはどう考えてもいかがなものかというような話を企業なり団体に申し上げてきたり、また、いろいろ個別にお目にかかるときにもこの話を積極的にさせていただいているところで、賃上げは無理かもしらぬが、少なくとも雇用というものはきちんと確保していてもらいたいという話をずっと申し上げておるのであって、これは極めて深刻です。

笠井委員 これは単なる数字じゃなくて、一人一人必死で生きて頑張ってきている生身の労働者の方々がおられるわけです。

 私は、この五百人の削減を打ち出した日野自動車の東京の羽村工場で、トヨタ系ですから、トヨタの乗用車をつくっていた二十七歳の派遣労働者の話を直接聞きました。

 エンジンの電気系統の部署で二年半やっていた、そして、無遅刻無欠勤で頑張ってきて、正社員にもしばしば仕事を教えてきたということであったんだけれども、十月末で契約は終わるからということで言われて、雇いどめになるということでありまして、寮を出て、わずかな貯金も、本当に微々たるものはあったんだけれども、底をつく状態になっている、また一から仕事を探すしかないけれども、見つかる当てもないということであります、不安であると。家族や子供がいて、アパート住まいで、貯金も退職金もなくほうり出された友達もいる、まさに理不尽だということを語っておりました。そうだと思うんです。

 そこで、今、総理、経済界、産業界とも会われたというお話があったんですが、去る十二月一日に、産業界との懇談会で総理が要請をされました、この問題。雇用問題を要請されたけれども、その後、派遣切り、これが、減るどころかふえているというのが現実であります。ここにその懇談会の出席者の名簿がございますけれども、私、見まして、日本経団連の会長の御手洗氏が会長を務めるキヤノンの大分の子会社では、その直後に、懇談会の直後に一千百人を切るということでの発表があった。

 私、一般的な要請、お願いじゃだめだと思うんです。しかも、肝心の自動車、電機とか、今総理が言われました、深刻な現実がある、現に大量解雇が問題になっている企業の代表はこの懇談会に入っておりません。私、総理は、そういう企業の代表を直接お呼びになって、一体どうなっているんですかということで直接ただすべきだと思うんですが、その点では、なぜやられないんですか、そういうことは。やっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは、笠井先生、基本的には民間の話ですから、いきなり行政権が介入かのごとき話になるのはなかなか難しいんだと存じます。

 では、今、経団連とか商工会議所ということになっておりますので、これが、商工会議所の会頭が自動車だった場合は、私どもの場合は、その経団連という組織に対して要請ということになるんですが、個別の企業というのに対して行政権の介入というのは、これはなかなか難しい。御存じのとおりであります。

 ただ、基本として……(笠井委員「呼んでいますよね、個別企業を呼んでいますよね」と呼ぶ)呼んでいます。ただ、それはみんなそれぞれ肩書が別のあれでついていますので、ロフトの話やら何やら載っかっているんだと思いますが、モロゾフ、ロフト、そういった例が載っているのだと思いますが……(笠井委員「会社の社長で出ているんですか」と呼ぶ)そうです。そのモロゾフ、ロフトの話は、基本的にうまくやっている例として、その人たちを、非正規を全員正規にしていますから、そこは。だから、こういった例もありますよという例として紹介する意味でそこに呼ばせていただいたというのが例です。

笠井委員 うまくやっているところをよく話を聞くのは当然なんですが、問題があるところもやはりどうなっているかを知らなきゃいけないです、これは、総理。行政権がどうかという問題じゃなくて、そこはやるべきだと私は思うので、ぜひやっていただきたいと思います。

 それでは伺いますけれども、これだけ大量の解雇計画を出していますけれども、今の大企業はこんなに減らさないとつぶされてしまうのか、総理はそういう状況だという認識をお持ちなんでしょうか。こういうふうに減らしているところは大変だ、つぶれちゃう、これだけ減らさないと。端的に。

麻生内閣総理大臣 ちょっと企業の内容を全部詳しく知っているわけではありませんが、いずれも国際競争にさらされている企業だと存じます。したがって、国際競争という世界の中で生きていくというのが最大の問題でして、これが、しかるべき対応をしないと、多分株価に影響が出てくる。株価がイコール会社の資金に影響してくる。いろいろなことを考えているんだと思いますので、利益がどうとか純利益がどうとかというのだけではなかなか言いにくい。配当というものを減らせばそのまま株価にとか、いろいろなことを考えて判断をされておられると思いますので、その経営の内容まで詳しく知っているわけではありませんので、ちょっとこれ以上答えようがございません。

笠井委員 実際には、このパネルにもありますけれども、削減計画を打ち出した自動車関連の十社全体の経常利益なんですけれども、この五年間で、合計しますと、約三兆六千億円から約五兆七百億円へと、一・五倍にふえております。その結果、ため込んだ内部留保も、トヨタ一社だけで十三兆円になっておりますけれども、全体でも十七兆円から二十七兆円という形で、実に十兆円も膨らんでいるわけでありまして、株主への配当も、昨年度だけで約六千億円にも上ります。

 非正規の労働者を低賃金でさんざん物のように使って、そして、こんなに内部留保をふやして、配当もふやしてきておきながら、景気が後退した、世界的にも大変だからということになったら、途端に、真っ先にこの非正規の労働者の方々を生活保障や再就職先のあっせんもせずにただほうり出す。私は、こんな理不尽な大企業の姿勢に待ったをかけて直ちに実態を調べる、総理もお会いになって、そして、それは、まず待ちなさい、待つ必要があるんじゃないですかと中止するように求めるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。お会いになることを含めてお答えいただきたいと思いますが、総理。

麻生内閣総理大臣 話題になっております派遣労働者、いわゆる雇いどめとかいう新しい表現が出ていますけれども、解雇などいろいろな例があるんだと思いますが、これは極めて憂慮すべき事態。

 これは、これだけ急激なのは、昭和三十年代の石炭関係がばたっといった、あのときぐらいですよ。人口が三割から四割減っていった。あの時期、その地域は一斉に壊滅的になりましたので、まさにその中にいましたので、よくわかるところなんですが。

 いずれにしても、そういった急激な変化というのは、今、ここが起きているところなんだ、多分そうなのかなというほど、私は結構今回の話は深刻に思っております。

 したがって、派遣契約とか、いわゆる解雇する際に当たっては、これは関連企業への何とかとか、今そこにデンソーとかいろいろ書いてありましたが、これはいずれも関連企業といえば関連企業なんですが、そういったところに関して就業をあっせんするということをやるべきとか、既にいろいろ話を私どもさせていただいているところであります。

 しかし、そういったところも、今度は逆に切りつつあるというところでもありますので、そういう意味では、就業機会の確保ということに関しまして、今、さらにいろいろ話を徹底していかにゃいかぬところだと思っております。

 あわせて、これは非正規労働者と言われる、いわゆるパートとかいろいろな表現ありますけれども、これの雇用の維持という方も、これは結構、給料はともかく、雇用の維持だということについて、今後、政府・与党として、この対策についてはいろいろ検討していきたいと考えております。

笠井委員 実際に大量に解雇する計画を持っているところとお会いになること、そういうことをやってみようということはいかがですか、その点は。そういう会社の代表と。

麻生内閣総理大臣 これは、個別の企業に会うというのはいかがなものかと、ちょっと正直思っております。

笠井委員 懇談会で、実際、東レとかモロゾフ、ロフトの方にはお会いになっているわけですから、やはり、実際これだけ深刻な問題になっている、おっしゃっているようにそれを共有するのであれば、ぜひお会いになって、どうなんだとおっしゃるべきだと思います。

 トヨタにせよ、期間社員を大々的に導入したのは二〇〇三年です。そして、その中で五年間、利益も内部留保もふやしてまいりました。まさに、非正規社員の汗と涙で積み増してきたお金をトヨタは持っているということであります。全体もそういうことがある。それを、景気が悪くなったからといって、一円たりとも労働者に回さず、切っちゃう、こういうことになったら、これこそ、こんな理不尽許していいのかということになると思うのです。

 自動車部品をつくっている東京・大田区の中小企業団体へ行きましたら、下請は、単価切り下げどころか、仕事がないと悲鳴を上げていて、大手は、減益した、利益が減ったといってももうけている、赤字になって倒産の危機にあるけれども、それでも頑張っている我々とはわけが違うと、その怒りを強く言っておりました。

 まさに、安定した雇用確保こそ最大の景気対策です。政府は、大企業に雇用を守る社会的責任を果たさせるように、毅然とした態度で臨むべきだということを強く申し上げたいと思います。

 委員長、当委員会としても、トヨタ、日産、マツダ、いすゞなどの企業の代表を参考人として招いて、雇用を守る社会的責任を果たさせるように質疑を行うべきだと思います。理事会で協議をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

衛藤委員長 後刻理事会で協議をいたします。

笠井委員 こういう中で、現実に仕事を失うという人たちに対して、政府・与党は新雇用対策ということでまとめられるというお話がありましたが、金額の規模も言われておりますけれども、現に失業してしまった非正規の労働者の方々を、全員一人残らず路頭に迷わないように支援する、そういう立場に立って対策をされるのかどうか。つまり、そういう方々は、二〇〇九年を僕たちも迎えたい、ホームレスにはなりたくないと、もう悲痛な声を上げているんですね。全員一人残らず、とにかく年を越せるようにということで全力を挙げるんだと。そのためには、いろいろな対策があると思います、雇用保険の給付の改善という問題でもいろいろ手があると。

 そういうことを含めて、もう全員とにかく年越しできるようにということで、総理、そういう決意で対策をやるのかどうか伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 職を新たに失われたという非正規雇用者、いろいろな表現がありますけれども、とにかく一刻も早くこれは雇用の安定というものが図られることが重要だ、私もそう認識をしております。

 したがいまして、既に成立をいたしております一次補正の中から、日雇い派遣労働者の安定就職支援、もう一つが、フリーターなどの常用就職化の支援などなど、これは順次実施に移しているところなんですが、これらに全力で取り組んでまいる所存であります。

 加えて、今、非正規雇用者に対する失業給付につきましては、これはセーフティーネットの機能を強化するという観点から見直しを目下進めているところでありまして、いずれにせよ、雇用対策の具体化の内容について早急に取りまとめてまいりたいと考えております。

笠井委員 資料の三の方にあるんですけれども、非正規の方々で雇用保険に入っていない方は最大で一千六万人という数字があるんですね。大変深刻です。そういう問題に全力を挙げて、とにかく全員が年を越せるようにということが必要だと思います。

 そして、今回の事態を引き起こした大もとには、やはり労働法制の規制緩和と派遣労働の野方図な拡大があります。まさにそういう点では政治災害ですので、政治が責任を持って解決すべきだ、労働者派遣法は抜本改正すべきだということを求めて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂委員 社会民主党の保坂展人です。

 総理、私のところに先日、ある方から「ミナミの帝王」という、これは「ハケンの真実」というシリーズが今始まっているんですが、これをぜひ読んでくれと漫画が届けられました。読んでみて驚いたのは、派遣労働者が、長く働いているから直接雇用を求めて立ち上がると、彼らは偽装請負、こういう形だったということが判明し、その企業のリーダーは財界のトップだった、こういう話なんですね。

 ところが、これは漫画ではなくて本当の話ですが、昨日、キヤノンの大分工場で千百人の方がばっさり、いわば中途で契約を解除された。そのうち、二人の方と会いました。契約は残っている、しかし、十二月十日で、仕事だけではなくて、寮も出なければいけない、我々はどうしたらいいんだろうかと。

 そこで、ちょっとパネルを出しますが、なお驚いたのは、こうやって千百人の方が切られる一方で、求人誌には、大分キヤノン、これは、期間工からスタートして、そしてキャリアを積んで正社員登用への道があると募集もかけているんですね。しかも、熟練した労働者でずっとデジカメをつくってこられた方たち、もう十二月十日でおやめください、こう言われた人たちは、こういう情報を聞いていない。この二人はそうでした。それで、聞いていた人がここを受けてみると不採用になると。これは人の道に反する行為じゃないかと私は思いますね。

 十二月一日、先ほども出ていましたけれども、麻生総理は、キヤノンの会長でもあり、また経団連会長でもある御手洗さんと官邸で会って、雇用の安定を要請した、これはぜひやってくださいよと。こういうことですね。

 こういう事態を見て、総理、どう受けとめますか。もう一度、雇用の安定をしっかりやれ、まず自分の会社からしっかりやれということを求めたらどうですか。

麻生内閣総理大臣 個別の企業につきまして、先ほど申し上げましたように、経団連会長もしくは商工会議所の会頭としてぜひお願いをさせていただいたところ。残りの三社の企業につきましては、非正規を正規にしてきちんとやっている企業やら何やら、成功例としてこういった例があるという話を聞いていただくために呼ばせていただいたのであります。

 そういった意味で、個別の企業につきましてのお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げさせていただければ、雇用というものはいわゆる生活の糧ということになりまして、したがって、職を失う人の身になって考えていく必要があると思っております。

 こういった認識に立ちまして、先般も経済界の方々に雇用の安定に向けたお願いをさせていただいたんですが、その翌日、翌々日にあれを発表せねばならぬところに呼び出されて、多分結構しんどかったろうなと思わないでもありませんけれども、雇用の安定だけはお願いしますので、賃上げまでは言いませんけれどもねというお話をさせていただいたんですが。

 私どもとしては、今後とも、こういった努力をしても効果としてはいかがなものかという結果が出ていますけれども、できる限り努力をしていかねばならぬと思っております。

保坂委員 私は、深刻だと思いますのは、経済界、経団連の会長といえば、昔は、財界総理と言われますよね。まさに、オール企業、日本の企業すべてを代表して、特にこのキヤノンは、剰余金は直近のデータで二兆九千億もあるわけですから、ほとんど借金もない。こういう企業が、率先して派遣切り、請負労働者切りをやる、一方ではこうやって求人もする。我々に続けなどという、そういうことになったら大変じゃないですか。

 そして、今、百年に一度の雇用の崩壊とおっしゃいました。百年に一度ですから、大量の人が、こういう形で、非正規で働いていると寮にいらっしゃるんですよ、寮を即出なければいけない。契約の期限は残っているんですね、例えば来春まであったり。少なくとも企業は、雨露をしのぐ寮、アパート、そういうところはきちっと保障するぐらいのことはやってしかるべきじゃないですか。総理、どう思いますか。

麻生内閣総理大臣 個別の企業の話になりますと、お答えは差し控えさせていただきます。たびたび申し上げているとおりです。

 しかし、今も言われましたように、その状況というのはちょっと詳しく知りませんので、寮というものが最初からどういう契約にあったかさっぱりわかりませんから、うかつなことは言えませんが、直ちに、きょうやめてもらう、はい、あした出なさいというのは、余り常識的ではないなという感じがいたします。

保坂委員 では、舛添大臣に一点だけ伺います。

 きのう、私ども社民党で、解雇を通告されていて、十日には寮も出なければいけないというお二人に会いました。そして、ハローワークでの求人票を見せてもらったんですが、これを見て大変驚いたのは、ちょっと拡大をして赤い文字で書いておりますが、正社員以外は労働組合の加入対象となりませんと書いてあるんですね。求人票に書いてあるんですよ。

 これは、憲法で保障された団結権、あるいは、不当労働行為を助長するとも誤解されかねない表記で、これは直ちに対応しろというふうに言いましたが、どうなりましたか。

舛添国務大臣 今委員が御指摘の、この労働組合加入対象となりませんという記述は、不適切なものでございます。

 直ちに大分労働局に対して指示をし、現在公開されている求人票からこの記載を削除しております。

保坂委員 この大分労働局は、こうやって千人削減するということを十月段階でもう把握していたそうです。そして、直接雇用に切りかえるようにという指導もしていたそうですが、必ずしも、全くそうなっていない。きちっとやってほしいというふうに思います。

 次に、住宅問題。

 先ほど、麻生総理は石炭のことをおっしゃいました。まさに石炭産業が急激にエネルギー転換で石油にシフトしていく、そのときにできたのがごらんの雇用促進住宅。つい最近まで、一兆円以上かけて、雇用保険をいわば財源として、全国に千五百カ所、十四万戸つくられてきました。

 実は、ここに挙げたのは、愛知県豊田市、まさに自動車産業の本拠地、こちらの雇用促進住宅で、上二つはもう既に廃止が決まっております。上は、五十戸あって、もう、一人しかいらっしゃらない。家賃は一万五千円から一万九千円。真ん中の段は、二百十部屋があって百二十七、半分ぐらいが入居されている。家賃は一万七千円から約二万円。そして一番下は、十年前にできた住宅です。四万三千円から五万二千円、このくらいの家賃で、これはほぼ満室になっている。

 これは、小泉内閣時代に閣議決定で、雇用促進住宅はつくり過ぎだから民間売却決定をしましたが、百年に一度の危機なんです。まさに東海地域では、住みか、家が、寮を追い出されるという形で、大変これから年末、深刻です。この雇用促進住宅をしっかり使ったらいいじゃないですか。福岡での経験もある総理、どう考えますか。

舛添国務大臣 既に廃止を決定したものについては、もうその方向ですから動かせません。そうでないものについて、昨日お答えいたしましたように、今のような観点も含めて、今鋭意検討しているところでございます。

保坂委員 私は、ちょうど三年前に、この雇用促進住宅に国家公務員、地方公務員が随分住んでいるじゃないかということを指摘しました。当時、五百四十三人ですかね、住んでいた。これはまさか続いていないでしょうね。局長でいいですから、お願いします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、公務員が相当数住んでいたところでございますけれども、その後、漸次減らしてまいりまして、今、国家公務員が二名、地方公務員が七十一名まで減ったところでございますが、今、さらに退去するように要請をしておるところでございます。

保坂委員 総理、どうですか。百年に一度の雇用危機で、企業の空前の利益も保障してきた労働者たちが出ていきなさいと言われて、どこに行ったらいいんでしょうかというそのときに、きっとこれは廃止対象なんでしょう、しかし、緊急の、地震や津波にも近い、人災ですけれども、そういう経済のクラッシュのときに、あらゆる可能性、検討していいんじゃないですか。そういうことはできないんですか、総理。

麻生内閣総理大臣 ちょっと、これは私の担当じゃないんじゃないかなと思って聞いていたのでありますけれども、少なくとも……(発言する者あり)がちゃがちゃ言わない、うるせえから。ねえ、もう少し静かにしてください。お願いしますよ。(保坂委員「早く答えてよ」と呼ぶ)そんな焦らなくて大丈夫ですから。

 基本的には、今申し上げたように、百年に一度のというのは、まず、ちょっと混線しないように、雇用の危機じゃなくて経済の危機ですから。それが結果……(保坂委員「雇用の危機じゃないですか」と呼ぶ)百年の危機とあなたが言ったと言うから私は申し上げているんだ。百年に一度の経済危機だと申し上げ……(保坂委員「経済の危機は雇用の危機じゃないですか」と呼ぶ)

衛藤委員長 着席のまま発言しないように。委員長の指名を受けてやってください。

麻生内閣総理大臣 立ち上がって言われますか。立ち上がって言われるんなら、どうぞ。(保坂委員「どうぞ」と呼ぶ)

 百年に一度とあなたが言われたじゃないかと言うから、私は、百年に一度の危機と言ったのは経済の問題ですと申し上げただけです。雇用の危機じゃないなんと言っていないです。だから、勝手にまたつくらぬでください。

 だから、百年に一度の経済危機の影響によって、今雇用の危機というものが起きてきておるというように私自身は理解しております。それに伴って今どのような対応をするかということに関しては、いろいろな案を出していただく、結構なことだと思いますね。ただ、その中に当たっては、いろいろ個別の例が違いますので、一概にはなかなか言えないんだと思っておりますので、私どもとしては、きちんとした調査の上で答弁をさせていただかないかぬものだと思っております。

保坂委員 舛添大臣、きょう厚生労働省で審議会が開かれて、私ども社民党でも雇用保険の緊急改革プランを出しました。一定の非正規の労働者に対してしっかり改善するという方向も示されているようですが、私は、この雇用保険の積立金、五兆円ありますけれども、これは決して多いと思っていませんよ。以前も五兆円あったことはあるんです。しかし、もうそれは、ほとんどなくなりかけた。今言われているように、百年に一度の経済危機は当然雇用の危機を生み出すので、この雇用保険に対する国庫負担の問題、これは削減すべきじゃないと私は思います。

 それから、五兆円の中の一兆円、これを財源に充てようという案もあるみたいですが、これは慎重にやってもらいたい。その認識、いかがですか。

舛添国務大臣 労働者の働く権利、そして雇用の確保に国が責任を持つ、だからこそ労働省があり、国庫の負担金があるわけでありますから、容易にこれに手をつけることは私は賛成ではございません。

 積立金についても、雇用の二事業についてはこれを活用して能力開発などに使いますけれども、今積立金がある、これも容易に手をつければいいじゃないか、この意見には私はくみいたしません。

保坂委員 これは舛添さんが正しいと思いますね。

 本当に、最後残り少ないんですが、国交大臣、道路特定財源の一般財源化は、これは福田内閣の国民に対する公約ですよね。ところが、国交省は概算要求で一〇%割り増しなんですよ、道路予算で。今回、地方への従来の七千億に加えて三千億がプラスされて、一兆円のいわば交付金、こういうことで、どこに道路特定財源の一般財源化の財源があるんですか。幾らあるんですか。端的にお願いします。

衛藤委員長 端的に。時間がありませんから。

金子国務大臣 政府・与党で今取りまとめをさせていただいているところであります。予算の最終決着を通じて決定させていただきたいと思います。

保坂委員 終わります。

衛藤委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 総理、先ほどから、この経済危機は百年に一度であるというふうにおっしゃられておりますが、まさにその言葉をあらわすかのように、今、中小企業における年末、年度末ですとか、資金繰りの問題というのを最近、新聞報道でよく目にするわけでございます。この資金繰りの問題というのは、中小企業の経営者の方々にとってはまさに死活問題であるわけでございます。

 そんな中、十二月二日に日銀が資金繰り対策というのを打ち出しました。政府も、さきの緊急総合対策で九兆円の対策、緊急保証制度枠が六兆円、それからセーフティーネットの貸し付けが三兆円、一次補正予算というのが出されまして、これは通過いたしました。

 さらに、二次補正で緊急保証制度枠を二十兆円、それからセーフティーネットの貸し付けを十兆円、合計三十兆円、こういう拡大をしていくんだということも聞きましたが、経済の麻生さんだというふうに伺っておりましたけれども、残念ながら、総理の言葉と裏腹に、二次補正、これは年明けに先送りをされるようでございます。

 そこで、中小企業の方にとっては、これは非常に期待が大きかったのではないかなというふうに思います。その分、麻生内閣に対しての失望というものも大きかったのではないかなというふうに思っております。

 この年末の資金繰りに不安を持っていらっしゃる多くの方が、きょうはテレビもごらんになっていらっしゃるというふうに思いますし、きょうは何度も質問されておりますけれども、二次補正、これを緊急に出さない理由、そして、中小企業の資金繰りというのは緊急の政策とならないのかどうか、この点についてお答えいただきたいというふうに思っております。

麻生内閣総理大臣 時間の関係であれなんで、本当はこれは担当しておられる二階大臣の方がしかるべきところなんだと存じますが、その上で、あえて御指名をいただきましたので話をさせていただきます。一番苦労されておられる御当人から答えるのが一番適切だと、私自身はそう思っておりますけれども。

 いずれにしても、今お話のありました点に関しまして、営業を開始してから営業日数二十三日で見た場合においては、少なくとも四万一千件以上の方々から来て、約一兆円を超える融資等々の枠の要請があっております。したがいまして、このスピードで仮にいったとしても、少なくとも年末に借り手側の中小零細企業、小規模企業の資金繰りがきつくなるということは、この枠の消化の仕方を見ている分に関しましては、まだ枠が余裕がありますので、その意味では私はないであろうと思っております。

 問題は、これは金が千万なら千万つきますと、ちょっと名前を言っちゃいかぬね、特定の何とか銀行が来て、糸川さん、千万来たろう、だから今まで貸してあった八百万円返してくれということになると、千万円借りられても、資金繰りとしては二百万円ということにしかならないことになります。そういったところが経営者側としては一番きついということになります。

 したがって、この点は貸し手側の金融機能というものが大事だというのは先ほどから話が出ているところで、金融機能強化法という法案とこれが密接に関係しているのはもうよく御存じのとおりです。ぜひこれが早目に通らないといかぬと申し上げているのは、これです。貸し手と借り手と両方、話をしていただかないかぬところなんだと思っております。

 加えて、会社というのは年度末というのがもう一つありますので、この三月末に当たりましては、経営は、ほかの会社、ほかの国のあれを見ていますと、これはかなり輸出なんかに頼っていた企業ほど影響はでかい、私はそう思っております。したがって、そういったところの会社の年度末の決算対策は物すごい難しいだろうなという気がしますので、私どもは、これはぜひ二次補正で枠をあらかじめふやしておかないと、借り手側の企業にしても極めて先行きが心配になるというように思っている、私自身はそう思っております。

 しかし、これが補正という形で、年度末までにきちんと対応できるということが一月の補正できちんとできれば、それはそれなりの対応ができるというのはわかりますので、そういった意味では、企業の方々が、今すぐ、この年末に大変だということを中小・小規模企業の方が言っておられるということは、私自身に入ってくる話はかなりこの数週間で減っております。むしろ、中規模ぐらいの企業の方が資金繰りはきつくなっている、私はそう思っております。

衛藤委員長 経済産業大臣二階俊博君。

糸川委員 いいです、いいです、もう時間がないですから。

二階国務大臣 では、簡単に。

 先ほど来、総理自身から御答弁のあったとおりでありますが、この年末を控えて、中小企業に対する資金繰りは万全かというお尋ねをたびたびいただいております。緊急保証六兆円とセーフティーネット三兆円、九兆円で十分対応できるというふうに我々は判断をいたしておりますが、同時に、今ちまたから、我々の業界にも適用されないかというお声がありますから、当委員会終了後直ちに協議をして、きょうじゅうに八十業種程度拡大して年末融資に万全を期す、こういうことでございますので、御了解をいただきたいと思います。

糸川委員 総理、今、中小企業の話をされましたけれども、その中小企業の倒産件数、これはもう今非常にふえているわけでございます。

 例えば今の負債総額、企業の倒産というのは、ことし十月までで一万三千件、負債総額は約十一兆。これは、昨年の一月から十月というふうに比較をしましても、千二百二十六件、負債額で六兆二千八百九十一億円の増加と、非常に悪化してきているということが現状としてあるわけです。上場企業も三十一社倒産しているわけですね。

 そういう中で、今、大事だというふうにおっしゃられる金融機能強化法というのを策定されて、公的資本注入の仕組み、こういうものを整備されたり、対策を打ち出されているわけでございます。ただ、この金融機能強化法というのは、金融機関の経営責任、これが明確化の担保がされていない。資本注入をされても、どこまで実際、中小企業に資金が回るのかということも不明確だというふうに思っております。

 例えば、金融機関というのは血税で責任も問われないで資本を注入される、そして生き延びる、自分の会社は、中小企業の会社は貸し渋り、貸しはがしに遭ってしまう、そういうことでは気持ちにやはり整理がつかないのではないかなというふうに思っておりますけれども、この点、総理、どのようにお考えになるでしょうか。

中川国務大臣 まず、政府から金融機関の方に資本注入をする場合には審査がございます。もう時間がないので詳しいことは省略いたしますけれども、一定の審査、そしてまた第三者の御意見も聞くということでございます。

 これが、ずさんな経営であったり、あるいはまた、いわゆる自己資本比率が余りにも低いということについては、これはもう慎重に対応していかなければなりません。と同時に、これはきちっと、特に中小企業、地域経済に資金が有効に回るかどうかということは、その後もきちっとフォローアップをしていきたいというふうに考えております。

糸川委員 先ほど総理おっしゃられましたけれども、この金融機能強化法というのは貸し手側の、つまりサプライサイドの対策だ。日銀の資金供給というのも、これも同じでございますけれども、これもあくまでも貸し手側の対策なわけです。金融機関が入ってきた資金をどうするかというのは経営方針として決めていくことになるというふうに思っておりますが、このような緊急事態においては借り手側、ディマンドサイドの対策、ここも必要ではないかなというふうに思っております。ディマンドサイド、受け手側ですよね。

 緊急保証制度については借り手側の対策であるというふうに言われれば、確かにそうであるのかなというふうにも思いますけれども、そもそも信用のある中小企業というのは、この緊急保証制度というのを利用しなくてもお金は借りられるわけです。結局のところ、受けられるか受けられないかという微妙なところ、グレーなところ、こういうところへの融資が増加するわけですよね。

 しかし、本当に資金が欲しいというふうに考えている中小企業というのはもっとほかにあって、緊急保証制度の十一月二十八日現在の利用実績、これを見ますと、相談件数六万一千件ですか、そのうち三万三千件が承諾ということになっております。相談したけれども申請しなかった例とか、相談せずに申請した場合というのがあると思いますので、これはあくまでも大まかな数字だと申し上げますが、これはどこからもお金を借りられない、本当にその資金が必要なのはこの差、要は、相談したけれども実際承諾された件数との差、これが約二万八千件あるわけですね。これにあらわれているんではないかなというふうに思っております。こうした方々を、中小企業を救済するということが必要ではないかなというふうに思います。

 そこで、我が党は支払いを猶予するモラトリアム制度、これを時限つきで導入すれば、借り手側の立場に立った有効な解決方法になり得るのではないかなというふうに思っております。事実、モラトリアム制度というのは我が国においても、一九二三年の関東大震災後、それから一九二七年の昭和金融恐慌の際に導入された事例、これがあるわけでございます。日本銀行の貨幣博物館の資料、ここでもモラトリアム導入を契機に金融恐慌はようやく鎮静化したというような記載もあるわけでございます。話は大きいかもしれませんが、とある地方の銀行のリスク統括部門の資料、ここには、大震災の際のモラトリアム導入というのが銀行の存続につながるというような旨の記載もありました。

 麻生総理は、百年に一度の暴風雨というんでしょうか、経済危機だというふうにおっしゃっていらっしゃるのであれば、この制度の導入というのも検討されてはいかがかなというふうに思っているのですが、総理、いかがでしょうか。

中川国務大臣 先ほどから総理が百年に一度というふうにおっしゃっているのは、百年に一度の世界的な経済、金融の危機にあるということでございますが、日本は現時点で、欧米に比べて、まだまだ堅実であるという認識を我々持っております。

 今御指摘のように、戦前、日本におきましても大震災あるいは昭和恐慌等でモラトリアムというものを行いましたけれども、今回は、結論から申し上げると、いわゆるそういう支払い猶予的なものは現時点では考えておりません。あくまでも二階大臣のところの信用保証、特別保証等、地元に密着した金融機関と中小企業との三者一体といいましょうか、地域ぐるみでの経済対策というもので何とかこの年末を初め乗り切っていきたいということでございまして、年末に向けて特にモラトリアムというものを現時点では考えておりません。

麻生内閣総理大臣 一九二〇年代の話をされましたが、経産大臣のところでこれと同じようなことを、二〇〇一年から二年にかけて例の、経産省でやりました、あのとき。あのとき、二十兆の枠にして、それから三十兆にふやして、そして、それをさらにというときになって、いわゆる一般用語で言えば、モラトリアムなんというとえらい、何となくわけがわからなくなりますが、手形のジャンプを認めたわけです。手形のジャンプの方が通じないかな。手形のジャンプを認めたわけです、あのとき。一般的にはこっちの方が通じる言葉なんですが、結果として、月々二十万円返すのを、少なくとも十五万でいいと。そのかわり五万円の分だけ後にずっと減らしていったものですから、企業としては資金繰りが助かったというのをやって、結果として、政府の枠は三十兆だったんですけれども、返す期間の猶予というのをやってあの場をしのいだということもございますので、一九二〇年以降、今の政府は何もしたことがないかと言われると、そういうことはありません。ただ、今これをやらなきゃならないほどしんどいことはないというのが中川財務大臣の答弁であります。

糸川委員 総理、経済が悪くなったときというのは、供給サイドそれから需要サイド、両方の対策が必要なわけですから、二次補正も含めて、しっかりと対策を早く打っていただきたいというふうに思っております。

 終わります。

衛藤委員長 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

     ――――◇―――――

衛藤委員長 この際、御報告いたします。

 去る十一月十八日、議長より本委員会に送付されました、議員中川正春君外百十二名からの決算及び平成二十一年度予算に関する予備的調査の要請につきましては、理事間の協議により、衆議院規則第五十六条の三第三項によって、去る十一月二十一日、調査局長に対し、予備的調査を命じましたので、御報告いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十二分散会


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