衆議院

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第19号 平成21年2月24日(火曜日)

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平成二十一年二月二十四日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 小島 敏男君 理事 佐田玄一郎君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 根本  匠君 理事 山本  拓君

   理事 枝野 幸男君 理事 菅  直人君

   理事 富田 茂之君

      赤池 誠章君    井上 喜一君

      伊藤 公介君    石田 真敏君

      岩永 峯一君    臼井日出男君

      小野寺五典君    尾身 幸次君

      近江屋信広君    大野 功統君

      木村 隆秀君    岸田 文雄君

      小池百合子君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    下村 博文君

      菅原 一秀君    杉浦 正健君

      園田 博之君    中馬 弘毅君

      とかしきなおみ君    仲村 正治君

      長島 忠美君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      広津 素子君    深谷 隆司君

      福岡 資麿君    藤井 勇治君

      藤野真紀子君    三原 朝彦君

      盛山 正仁君    山内 康一君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      渡辺 博道君    大島  敦君

      逢坂 誠二君    川内 博史君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      西村智奈美君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    前原 誠司君

      三谷 光男君    渡部 恒三君

      池坊 保子君    江田 康幸君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   外務大臣         中曽根弘文君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       石破  茂君

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国土交通大臣       金子 一義君

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   国務大臣

   (行政改革担当)     甘利  明君

   国務大臣

   (消費者行政推進担当)  野田 聖子君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   財務副大臣        竹下  亘君

   国土交通副大臣      金子 恭之君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   経済産業大臣政務官    松村 祥史君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化推進室長)          振角 秀行君

   政府参考人

   (国家公務員制度改革推進本部事務局長)      立花  宏君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         栗本まさ子君

   政府参考人

   (内閣府公益認定等委員会事務局長)        原  正之君

   政府参考人

   (内閣府官民人材交流センター審議官)       平山  眞君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   田中 順一君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 村木 裕隆君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       吉良 裕臣君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    川崎  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          鈴木 正徳君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 石田  徹君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    長谷川榮一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         関  克己君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            大口 清一君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  金井 道夫君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   参考人

   (社団法人日本自動車工業会労務委員長)      川口  均君

   参考人

   (弁護士)

   (反貧困ネットワーク代表)

   (年越し派遣村名誉村長) 宇都宮健児君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          横山 邦男君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          佐々木英治君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          藤本 栄助君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     近江屋信広君

  臼井日出男君     藤野真紀子君

  木村 隆秀君     とかしきなおみ君

  下村 博文君     丹羽 秀樹君

  菅原 一秀君     福岡 資麿君

  園田 博之君     藤井 勇治君

  深谷 隆司君     若宮 健嗣君

  吉田六左エ門君    長島 忠美君

  仙谷 由人君     三谷 光男君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     広津 素子君

  とかしきなおみ君   木村 隆秀君

  長島 忠美君     吉田六左エ門君

  丹羽 秀樹君     赤池 誠章君

  福岡 資麿君     菅原 一秀君

  藤井 勇治君     山内 康一君

  藤野真紀子君     盛山 正仁君

  若宮 健嗣君     深谷 隆司君

  三谷 光男君     西村智奈美君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     下村 博文君

  広津 素子君     石田 真敏君

  盛山 正仁君     臼井日出男君

  山内 康一君     園田 博之君

  西村智奈美君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十一年度一般会計予算

 平成二十一年度特別会計予算

 平成二十一年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算、平成二十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 本日は、三案審査のため、参考人として、社団法人日本自動車工業会労務委員長川口均君、弁護士・反貧困ネットワーク代表・年越し派遣村名誉村長宇都宮健児君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。参考人各位には、平成二十一年度総予算について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 それでは、議事の順序について説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位から一人十五分程度で意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず川口均参考人にお願いいたします。

川口参考人 社団法人日本自動車工業会労務委員長の川口でございます。

 本日は、現在置かれている日本の自動車産業の現状と課題につきまして、労務問題を中心にお話をさせていただきたいと思います。

 さて、日本の自動車産業は、製造品出荷額で見ますと、二輪自動車、車体、部品などを含めて、二〇〇七年で約五十四兆二千億円に達し、我が国製造業全体の一七%を占めております。また、世界の中で、世界の四輪自動車生産は二〇〇七年年間で七千三百万台ですが、日本メーカーは、二〇〇八年で、国内は約千百五十万台、海外は約千百万台程度と見込まれ、合計約二千二百万台を生産しております。

 戦後の揺籃期を経て、我が国自動車産業がこのように日本経済及び世界経済の中で重要な一角を占めるに至りましたことは、その過程で国会の先生方初め関係省庁の御理解と適切な御指導をいただいたたまものと、この場をおかりして厚く御礼申し上げます。

 御承知のように、昨年秋、米国の金融危機に端を発した世界経済の大変動と景気後退の影響を、自動車産業は真っ先に受けております。例えば、最大の自動車市場であります米国におきましては、昨年十月以降、前年を三〇%以上下回る減少を記録し、ビッグスリーのみならず、日本メーカーも軒並み販売の大幅な減少に見舞われております。国内におきましても、さまざまな要因により、年間の販売台数は二〇〇五年以降四年連続で減少してまいりましたが、昨年十月以降は、これまた大幅な販売の減少に見舞われております。

 お手元に配付させていただいた資料をごらんいただきたいと存じますが、十月には前年同期比六・六%の減、十一月は同じく一八・二%の減、十二月は同じく一六・七%減となり、その結果、昨年の国内販売台数は前年比五・一%減の五百八万台となりました。この台数は、一九八〇年の五百一万台以来、実に二十八年ぶりの低水準であります。

 この状態はことしに入っても続いており、というよりむしろ悪化しております。一月の販売台数は三十・二万台、前年同月比で一九・一%の減。特に、登録車は二七・九%の大幅減少となっており、二月につきましても、販売店などから聞いておりますところによれば、今までのところ、登録車は一月よりもさらに販売台数が落ち込んでいると伺っております。まさに、需要が蒸発したと言っても過言ではない危機的な状況になっているわけでございます。

 国内生産も、国内市場、海外市場での急激な減少の結果、生産調整を余儀なくされ、お手元資料にありますように、昨年十月は前年同月比六・八%減、十一月は同じく二〇・四%減、十二月は同じく二五・二%減を記録するに至っております。

 これに追い打ちをかけているのが急激な円高で、国内生産の約半分を輸出する自動車メーカーの収益に大打撃を与えております。ほとんどのメーカーが今年度の業績見込みは膨大な赤字となっており、わずかに黒字を見込んでいるメーカーも、今年度の下期は大幅な赤字であります。今年度は上期の黒字がありましたが、それでもこのような状況であり、来年度は今年度よりさらに悪化するのではないかと懸念しております。

 世界の金融危機の収束と景気の底打ちがいつになるのか、その見通しが全く立たない濃霧とも言うべき状況のもとで、日本の自動車メーカーは危急存亡の危機に立たされて、もがき苦しんでいるのが実情でございます。こうしたことから、各社は緊急対策をまとめ、事業の見直し、設備投資の見直し、役員、管理職の賞与、報酬、賃金のカット、会議費や出張旅費の削減から光熱費の節約に至るまで、ありとあらゆる諸経費の節約に取り組んでおります。

 このような聖域なきコスト削減の努力にもかかわらず、需要の落ち込みの速度が想像を超えて激しく、その結果、苦渋の選択として、非正規従業員の雇用調整を行わざるを得なくなっておりますことにつきましては、御理解を賜りますようお願い申し上げます。

 ことしに入りましても、先ほど申しましたように、国内外での需要の落ち込みはさらに激しく、各社は、積み上がる在庫調整のため一層の減産を強いられており、各社の状況によって異なりますが、生産ラインの一時停止を行うほか、労使合意のもとでの休業日の設定や勤務の一直化など、ワークシェアリング的な取り組みを含め、会社存続と従業員の雇用の維持のため、努力を重ねているところでございます。

 繰り返しになりますが、どこが底か、先行きの見通しが全くつかないという、産業始まって以来の危機的な状況が続いております。政府におかれましては、各国政府との協調の上、世界の金融秩序の安定と景気回復のため、ありとあらゆる施策をスピーディーに講じていただきますようお願いしたいと考えます。

 雇用対策としましては、既に各種の対策が打ち出されており、その中でも雇用調整助成金制度の拡充が図られております。会員各社においても、既に申し込みをしたり申請の検討をしたりしているところもございます。

 また、今回の税制改正法案におきましては、低炭素社会実現と内需拡大のため、環境対応車に対する優遇税制が織り込まれております。これを予定どおり四月一日から実施いただきますよう、切にお願い申し上げます。さらに、部品メーカー、ディーラーを含め、資金繰りの円滑化対策につきましても引き続き御支援を賜りますようお願い申し上げます。

 自動車業界としましては、従業員の雇用の維持、確保は企業の最重要経営方針の一つとして位置づけ、最大限の経営努力を図ってまいりますが、景気を一日も早く回復させていただくことが、企業存続と雇用の維持のために不可欠でございます。ぜひともよろしくお願いを申し上げます。

 以上、業界の実情につきまして申し述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、宇都宮健児参考人にお願いいたします。

宇都宮参考人 おはようございます。こういう意見を述べる機会をつくっていただきまして、大変ありがとうございます。感謝申し上げます。

 私の意見陳述の要旨は資料として配付していただいていますので、そちらの方も目を通していただければと思います。

 私は、昨年末からことしの初めにかけての年越し派遣村の活動に参加しております。一応、私、名誉村長ということで、大変名誉な役割を果たさせてもらいました。

 派遣村には五百五人の村民が入村しましたけれども、派遣切りで仕事を失って、社宅を追い出されて野宿を余儀なくされた労働者が多く派遣村に入っております。中には、茨城とか静岡から歩いて派遣村にたどり着いたというような人もいます。それから、失業を苦に自殺を図りましたけれども警察官に保護されて、それで警察官同行で派遣村に入ってきた人もいます。中には、さらに、ネットカフェとか野宿で体調を壊しまして、救急車で搬送された人も出ています。

 こういう五百五人の派遣村の村民に対して、ボランティアとして参加された方は千六百九十二人になります。派遣村村民の三倍近くのボランティアが全国から参加しておりまして、中には遠くから参加された高校生とか大学生もいましたので、私は、こういう人たちの活動を見て、日本も捨てたものじゃないというふうに感じたところです。それから、全国から多くのカンパや食料、衣料なんかの支援物資も寄せられております。

 こういうボランティアの支援、人の温かさに触れて、一回は自殺を考えましたけれども、もう一回生きてみようというふうに考えた村民もたくさんいました。それから、これから生活を再建できたら、自分も困った人を助けるボランティア活動に参加したいというような村民もたくさんいました。そういう活動に参加して、私自身も本当にやりがいを感じましたし、派遣村には、日本の中で今失われかけている思いやりとか助け合いとか人々の連帯が存在していたと思っております。

 それで、御承知のように、派遣村の入村者が予想を超えてふえましたので、一月二日からは厚労省の講堂を開放していただきました。それから、一月五日からは都内の公共施設の四カ所を利用できるようになりまして、そこで就労相談とか生活保護の相談、それから緊急小口貸し付けの相談などが行われております。

 それで、最終的には、派遣村の村民三百人近くに対して、短期間のうちに生活保護の開始決定がなされております。この生活保護に関しましては、野宿者のように住民票がない、あるいは六十五歳以下の稼働年齢にある人は、申請をしても申請すらなかなか受け付けてもらえないで追い返される、こういうのを私たちは水際作戦と呼んでいますけれども、水際作戦が行われることが多かったんですけれども、短期間のうちに生活保護の開始決定がなされております。この開始決定によりまして、アパートを借りて住まいを確保して、今、ハローワーク等に通いながら、生活の自立への闘いを進めております。

 また、派遣村の村民に対しましては、社会福祉協議会から一万円から五万円の緊急小口資金の貸し付けも行われております。生活保護申請者に対しては一万円、それから生活保護の申請をしていない村民に対しては五万円の貸し付けが行われたわけですけれども、大体、村に入ってくるときに、村民の多くの手持ち資金が数百円、数十円、あるいは三日間何も食事をしていないというような方が多かったので、ハローワークに通うにも交通費がないわけですね。この一万円から五万円の貸し付けというのは大変感謝されております。

 ところが、こういう制度についても、実は知らなかった方が多いんですね。生活福祉資金貸し付けの一部なんですけれども、こういうセーフティーネット貸し付けの制度については、広く広報して、利用しやすい制度にする必要があるかと思います。

 それから、こういう取り組みができたのも、国や東京都、それから関係諸機関、あるいは国会議員の先生方の働きかけのおかげだと思っております。改めて深く感謝申し上げる次第です。

 次に、派遣村の取り組みからわかってきたことですけれども、やはり、派遣村に集まった方は、派遣切りをされて、寮とか社宅を追い出されて、いきなり野宿をせざるを得ない、そういう方がたくさんいました。この派遣村の実態を見て、我が国の労働者派遣制度の問題点が浮き彫りになったんじゃないかと思います。

 もともと、労働者派遣制度の導入というのは、当初は、多様な働き方を求める労働者のニーズにこたえるというような、そういう美名のもとに導入された制度でありましたけれども、派遣労働者の方の権利は全く保護されていない。実態はどうだったかということは、企業の利益の追求のために、労働コストの削減と手軽な雇用調整弁として簡単に労働者を首切る、そういう制度であったのではないか、極めて残酷な、冷酷な制度であると痛感しております。そして、こういう派遣切り被害の実態と派遣労働者の権利保護を考えた場合は、労働者派遣法の抜本的な改正が今考えられるべきだと考えております。

 基本的には、雇用というのは直接雇用それから期限の定めのない雇用を大原則とすべきであって、有期雇用を含む非正規雇用というのは、合理的理由のあるごく例外的な場合にのみ許されるべきだと考えております。戦後、職業安定法というのは、こういう人材派遣業、人材派遣してピンはねする、そういう商売を禁止するという原則に立った運用がなされておりましたけれども、労働者派遣法の導入でこの例外が崩れていったわけです。

 それで、労働者派遣法の内容としては、以下の点を検討すべきだろうと考えております。一つは、派遣対象業種を専門的なもの、臨時的なもの、一時的なものに限定して、専門的とは言えない製造業派遣は禁止する。それから、非人間的な労働形態である日雇い派遣は直ちに禁止する。それから、常に失業の不安を抱え、不安定な雇用となる登録型派遣を禁止する。違法派遣、期間経過後の派遣、偽装請負については、派遣先が直接雇用したものとみなす、みなし規定を設ける。派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇の原則を法律で規定する。派遣元会社が取得するマージン率の上限規制を行う。グループ会社内での労働者派遣、専ら派遣を禁止する。派遣労働者の組合が派遣先会社と団体交渉をできる規定を設ける。派遣契約打ち切りの際の住宅確保や生活保障、再就職支援などについては、派遣元会社と派遣先会社に共同責任を負わせる。こういう規定が検討されるべきだろうというふうに考えております。

 それから、年越し派遣村は、派遣切り被害の実態と同時に、日本の社会にないと思われてきた貧困を目に見える形で日本社会に突きつけたことで、大きな衝撃を与えたと思っております。どちらかといえば、日本の社会はこれまで一億総中流で、そういう社会が定着したというふうに思われてきたと思いますけれども、我々は、数年前にこの貧困の問題に目をつけまして反貧困ネットワークを立ち上げて、貧困当事者の支援、あるいは支援グループとのネットワークをつくって実践を積み重ねてまいりましたけれども、どんどん日本に貧困が広がっている。

 貧困というのは、人間らしい生活がない状態、できない状態のことを貧困と我々は言っているわけです。これまで政治の世界ではよく格差の問題が議論されてきたかと思いますけれども、格差の議論をしていきますと、どうしても、格差はあっていいのか悪いのか、そういう議論になりがちだと思います。日本社会全体が底上げをする中で、富裕層がさらに富裕になっていけば格差は開くことがありますけれども、そういう場合の格差の拡大というのはいいのかどうかという議論になると思いますけれども、そもそも貧困というのはそういう状態が社会的に是認、容認できない状態だと思いますので、この貧困の実態にもう少し目を向けていただけたらと思います。

 欧米先進国は、貧困の実態調査を政府が行っております。また、政党も、貧困をどう克服するかということを大きな政治課題にしておりますので、そういう面でもぜひ国会議員の先生方は、こういう貧困問題についての検証、検討、それから貧困の削減をどうすべきかということを検討していただけたらと思います。

 御承知のように、日本はもう既にアメリカに次ぐ貧困大国になっています。OECDの調査によりますと、その国の平均的な世帯所得の半分以下でしかない人の比率を示す相対的貧困率は、二〇〇六年の七月二十日に発表した報告書によりますと、日本は、十七カ国中アメリカに次いで二番目に高くなっております。

 それで、こういう貧困問題を解決するためには、私としては、当面、ワーキングプア対策の強化と、生活保護制度を初めとするセーフティーネットの強化が求められていると思っております。

 ワーキングプア対策の強化としては、最低賃金の大幅引き上げ、それから、非正規労働者と正規労働者の均等待遇、労働者派遣法の抜本改正、これは先ほどお話ししたとおりです、それから雇用保険制度の改善、効率的な職業訓練、職業教育制度の確立、こういうことが求められているかと思います。

 それから、セーフティーネットの強化、これは生活保護制度の充実等が求められていると思います。結局、派遣切りされた労働者で寮とか社宅を追い出されて野宿を余儀なくされている人を救ったのは何なのか。生活保護制度しかないんですね、今、日本の国には。この生活保護制度がなかなか利用しづらい制度になっています。先ほどお話ししました水際作戦が行われているわけです。象徴的なのは、二〇〇七年、福岡の北九州市で、おにぎりが食べたいと言って餓死した人がいます。こういう餓死者が出るような運用がなされているということですね。したがって、こういう生活保護制度をもっと利用しやすく、さらにそこをステップにして自立しやすいような制度に変えていく必要があるかと思います。

 当然のことですが、この間政府が進めてきた生活保護に関する老齢加算や母子加算の削減、廃止は撤回すべきですし、それから、二〇〇六年の骨太方針で決められている社会保障費年二千二百億円の削減方針も撤回する必要があると考えております。

 それから、セーフティーネット貸し付けの充実については、先ほどお話ししましたけれども、生活福祉資金貸し付けの中の緊急小口資金貸し付け、これは非常に感謝されております。こういう制度を充実していくということが重要かと思っています。

 特に、二〇〇六年には貸金業法の改正が行われまして、厳しく高利を規制するようになりましたので、政府は今、多重債務者対策本部をつくって多重債務者の救済をやっていますけれども、そこでもセーフティーネット貸し付けの充実ということがうたわれております。

 こういう観点から、社会福祉協議会が進めている生活福祉資金貸付制度とか、自治体による母子寡婦福祉貸付金制度とか、労働金庫による自治体提携社会福祉資金貸付制度などを充実する必要があるかと思っております。

 それと、こういう制度があるんですけれども、実際はほとんど知らないんですね、派遣切りされた人が。こういう制度があることすら知らない人が多かったので、もっと広報を徹底する必要があるかと思っています。

 それから、公営低家賃住宅の大量供給が必要かと思っております。特に、住む家がないわけですね。いきなり野宿になってしまう。住む家としたら、当初貯金がある間はネットカフェで寝泊まりするしかない。住宅の貧困というのは深刻な状態にあるかと思っております。

 私は、ほかの事件でも担当していますけれども、最近、低所得者層を食い物にする、敷金、礼金なしをうたい文句にした悪質なゼロゼロ物件業者や、それから、家賃保証会社による追い出し屋被害が多発するようになっています。これは、国の住宅政策の貧困のあらわれだろうと思っております。だから、ハウジングプア対策を強化する必要があるかと思っております。

 それから、高等教育の無償化が必要だろうと思っています。貧困家庭で育つ子供がまた貧困になっております。今、日本は義務教育までは無償化されていますけれども、中学を卒業して働けるところというのは限られているわけですね。そういう人たちが高校とか大学に行こうと思ってもなかなか行けない状態になりつつあります。貧しい家庭に育った子供が大学に行きたいと思ったら行けるような制度をつくっていかないと、貧困が連鎖することになりますね。この辺も十分考えていただけたらと思います。

 それから、当面の派遣切り対策の強化の問題ですけれども、労働者派遣法の抜本改正を待っていては、現在進行している派遣切りの問題に対応することはできません。厚労省が発表したところによりますと、三月末までに十二万四千八百人の非正規労働者が職を失う、その三分の二が製造業で働く派遣労働者であると言われています。また、業界団体の試算では、製造業で働く派遣や請負労働者の失業は、三月末までに四十万人に達すると言われております。こういう派遣切り対策を早急に実施する必要があるかと思っております。

 まず、違法、不当な派遣切りはやめさせるよう、政府は企業を強く指導する必要があるかと思います。仮にそういう違法、不当な派遣切りが強行された場合は、派遣元企業だけでなく、派遣先企業にも連帯責任を負わせる、こういうことを含めて企業を指導する必要があるかと思います。

 それから、派遣切りに伴って、労働者が居住していた社員寮などの住居から退去させることのないように、企業に対して厳しく指導する必要があるかと思っております。

 それから、派遣切りを行っている企業に社会的責任を果たさせる必要があるかと思っております。大量の派遣切りを進めるトヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業者十六社の二〇〇八年九月末の内部留保合計額は、景気回復前の二〇〇二年三月末から倍増し、約三十三兆六千億円に上っているということです。このような企業に社会的責任を果たさせる必要があるかと思います。

 まずは、派遣切りを行う前に、企業としては経営努力をすべきかと思います。役員報酬、給与の額の減額、返上、内部留保の放出、他企業への就職あっせんなどを行うことはもちろん、非正規労働者生活・就労支援基金を設立すべきだと思っております。

 それから、全国にシェルターをぜひ増開設していただきたいと思います。そこで、就労とか生活、住宅、緊急貸し付け、借金の問題等について、責任を持って処理できる諸機関が相談できるような体制をつくる必要があるかと思っております。

 なお、定額給付金に関しましては、富裕層も含む全国民に給付する方針を改めて、このような派遣切り対策や生活困窮者、貧困者の生活支援、セーフティーネットの強化等に重点的に充てるなど、その活用方法の再検討をしていただければと思います。

 二〇〇六年の骨太方針で、今、毎年二千二百億円の社会保障費を削減する方針が立てられているわけですけれども、二兆円というのはこの二千二百億円の九年分に当たります。こういうこともぜひ検討していただければと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。

根本委員 自由民主党の根本匠であります。

 宇都宮参考人、川口参考人、ただいまは大変貴重な御意見を陳述いただきまして、ありがとうございました。

 特に派遣切りの問題を中心に、この問題を考えていきますと、日本のワーキングプア、新たな貧困の問題や、あるいは産業競争力の問題、教育の問題、住宅の問題、社会的な制度、システム問題含めて、極めて広範なテーマが出てまいります。

 私は、きょう時間もありませんので、ポイントを絞って御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、宇都宮参考人にお聞かせいただきたいと思います。

 この派遣切りの問題、ただいま宇都宮参考人から、さまざまな多面的な角度からのお話がありました。この派遣切りの問題で、要は一番の問題は何か、私は住まいの問題だと思うんですね。切られた途端に家を失う。衣食住、住が一番大事ですから。切られた途端に家を失うということは、今まで余り、こんなに顕在的に問題化しなかったのだろうと思います。雇用促進住宅というのはありました。雇用促進住宅というのは、雇用促進のための政策でしたから、これは各地にありましたが、今回のように切られた途端に家を失うということは、私は余り想定していなかったんだと思うんですね。

 私はそう思いますが、今回の問題を通じて一番大きな問題は何か、この感想を含めて、簡潔にお伺いしたいと思います。

宇都宮参考人 お答えします。

 私も、先生のおっしゃるとおりだと思います。今の派遣切りをされた労働者は、寮とか社宅を追い出されると、いきなり野宿になっちゃうわけです。そうすると、再就職ができないわけです。住民票がない、住まいがないと、ハローワークに通ってもなかなか面接までこぎつけられないんですね。まずは安心した住まいを確保する、こういうことが極めて重要かと思っております。

 また、なぜ野宿に行くかというと、余りにも低賃金で働かされている、その後の生活、アパートを借りるにもお金がない、雇用保険も十分適用されていない、こういう状況があるかと思いますので、ぜひ、住まいの問題を解決するということを重点的にお願いできたらと思っております。

根本委員 私も本当にそう思います。住まいの対策では、我々は、解雇、雇いどめにより住居を喪失した非正規労働者に対する支援、これはもう既に幾つかやりました。

 対象者に対する相談支援としては、一つは相談体制の整備、全国のハローワーク百九十カ所。就職安定資金融資、ハローワークを窓口として労働金庫が貸し付けをする、これは最大百八十六万円。雇用促進住宅への入居、これは十二月十五日からやっております。

 さらに、事業主に対する働きかけとしては、住宅の継続使用の要請、これは社員寮への入居継続を可能とするように、事業主に対する要請、あるいは経済団体に対する要請も行いました。そして、住宅の継続貸与事業主への助成、これは第二次補正予算により、派遣労働者一人につき一カ月当たり上限四万から六万、最長六カ月。これは実は第二次補正予算に盛り込んでいますから、私は早くこの第二次補正予算を、こんなに厳しい状況なんですから、早く成立させて、財源特例法というのが今参議院でいまだに決せられておりませんから、私も早くこれをやってもらいたいと思います。

 次に移ります。

 川口参考人にお伺いしたいと思います。これは、川口参考人には、企業の社会的責任の観点からお伺いしたいと思います。

 現在、大変経済情勢が厳しい。厳しいので、企業が厳しい経営判断を迫られている。これは、ただいまのお話にもありました。私も理解をいたしますが、しかし、一方で、労働者の雇用と生活を守る、これも私は社会的な責任であると考えます。

 今年度末までに派遣労働者を含めて十二万五千人の非正規労働者が雇いどめされる、これは厚生労働省の調査であります。この派遣切りの原因、これは、平成十五年に派遣法改正をやりました、製造業への派遣が解禁されたことにある、だから製造業への派遣を禁止すべき、こういう声もあるんですね。

 ただ、あの当時を考えますと、ジョブレスリカバリーと言われました。製造業への派遣の解禁は、厳しい雇用状況の中で、雇用の場の確保を目的として行われたんですね。今、約四十六万人の方が製造派遣で働いておられる。私は、これはいろいろな議論があると思いますが、雇用の確保について一定の役割を果たした、こう考えております。

 ただ、しかしながら、経営上の苦渋の選択だとは思いますが、余りにも安易に非正規労働者を雇いどめしてはいないか、縮み志向になってはいないか。過去を見ても、企業がここまでの規模で労働者の解雇や雇いどめを行ったことは私はないと思います。

 この点で、今までの経営者は、日本型経営、従業員の雇用を守るという意識があったんだと思うんですね。ところが、近年、こういう意識が薄れて、派遣労働者を、余りいい言葉ではありませんが、人間としてではなく物のように扱って、雇用の調整弁として考えているのではないか。これは私もそう思わざるを得ません。

 少なくとも、近年の我が国の自動車産業の発展を支えてきた、これは、このような派遣労働者などの非正規労働者だと私は思います。

 そこで、正規雇用と非正規雇用の問題について川口参考人にお尋ねをしたいと思います。

 派遣労働者を初めとする非正規雇用について、CSR、企業の社会的責任という観点から、どのように位置づけをされておられるのか。あるいは、非正規社員の正規社員への登用などについてどうお考えか。

 私は、派遣業の問題を考えるときに、派遣業というのはそもそも専門職で導入されました。そして、いい面は、多様な働き方をみずからの希望、意思で選択できる、私は、これはいい面だと思うんですね。ただ、正規社員になりたくても非正規社員で派遣になっている、これは特に私の地元でもよく聞きます。若い方々が、派遣で例えば製造業の現場にいる、将来の希望がない、将来の確実性がない、ですから結婚や子供を産むことについてもちゅうちょする、こんな現象があらわれておりますので、派遣社員、非正規雇用の位置づけ、そして非正規社員の正規社員への登用などについてどうお考えか、川口参考人にお尋ねをしたいと思います。

川口参考人 ただいま御質問にございました非正規雇用の方の位置づけという観点ですけれども、近年の日本の自動車産業の発展の中で、特に日本での物づくりというのが世界全体の中で強い競争力を持ってまいりました。ただ、その生産の拡大の中で、やはり非正規従業員の方も含めた役割というのは非常に大きかったと認識しております。特に、やはり、世界を相手に商売をしていく中で、市場がいろいろ振れてまいります。そうした市場の変動に対してタイムリーに対応していくために、非正規の従業員の方というのが生産上の弾力性を保つという観点においても非常に有効な役割を果たしてきたものだと考えます。それが一つ。

 それから、先生の御質問の二つ目でございますけれども、非正規従業員と正規との関係。

 自動車産業におきまして、過去五年間の中で、約一万人の非正規の方々、これは期間従業員の方もいれば派遣の方もございますけれども、合わせて一万人を正規従業員に登用しております。

 これまで平常時に進めてまいりましたのは、こういった非正規の方の中で、もちろん多様な働き方で、どこの企業に縛られないでという観点の考え方の方もいるんですけれども、やはり、今働いている職場で長く勤めたいというお考えがあって、かつ、会社側の方も優秀だと認めた方について、積極的に登用を図るという観点はございました。ただ、その観点が今、未曾有の世界経済の危機の中で、緊急事態の中で、一時的な中断を余儀なくされているという事情だとお考えいただければ幸甚です。

 以上です。

根本委員 それでは次に、製造業派遣の考え方についてお尋ねをしたいと思います。

 昨今、派遣労働者、期間従業員の契約非更改、こういう問題がマスコミで大きく取り上げられております。あるいは、製造業派遣をそもそも禁止すべきだ、こういう意見もあるんですね。宇都宮参考人からも御指摘がありました。国会でもさまざまな議論が行われております。

 自動車産業の立場から見た製造業派遣についてどうお考えか、お尋ねをしたいと思います。

川口参考人 製造業派遣が一律に禁止されますと、生産計画の絞り込みですとか生産の海外移管など、むしろ生産体制そのものが縮小傾向に向かう懸念があると考えます。そのことが結果として企業の体力を奪いますし、海外競合メーカーとの国際競争力を失うことになると考えております。生産の海外移管により国内産業の空洞化が進めば、従業員の雇用への影響は必至であります。

 また、派遣社員の方々の就労形態の中でも、やはり短期間で収入を得ることですとか、さまざまな職場を経験してキャリアアップを図るなど、多様化する労働者の就労ニーズというものに対応している部分もあるということから、規制が派遣労働を希望する人の就労機会を奪うことにもなります。

 派遣法は、固定的な就業形態では創出できなかった新たな雇用を生み出し、失業率の改善に貢献した経緯もあり、製造業の派遣が制限されれば、雇用機会は減少し、失業率の悪化につながることも考えられます。

 派遣労働者の雇用問題を解決するためには、法律で一律に禁止するというよりは、雇用保険の加入拡充ですとか、失業時の住宅補助それから再就職あっせんなどの、昨今言われますセーフティーネットの一層の整備など、派遣という就労形態のもとでも安心して働ける環境づくりをぜひ政府にお願いすることで改善する部分も大きいのではないか、そうした多面的な対応をぜひ御検討願いたいと存じます。

根本委員 私は、この問題については、一律に禁止すべきであるという問題ではないと思うんですね。ただいまもいろいろお話がありました。それから、宇都宮参考人からもいろいろな御指摘がありました。私は、大事なのは、政策というのは、一体何が問題で、どのような手を打てば問題が解決するのか、総合的、多面的に全体を検討して具体的に詰める、これが大事だと思います。

 特に、この問題を考えるときに必要なのは、一つは、派遣労働者の立場。能力開発をしっかりしてあげる、あるいは住宅を確保する、セーフティーネットもしっかり確保する、しかし、その中で多様な選択もできるようにする、この派遣労働者の立場。この立場に立って考える、これが一つ。それからもう一点は、長期的な雇用の安定をどう考えるか、これも大事な要素だと思います。それから三つ目は、日本経済の国際競争力や長期的な経済成長をどう考えるか。こういうことを総合的に、冷静に、真摯に議論をしていく必要があると私は思います。

 これについては具体的な細かい点で私もいろいろ議論をしたい点がありますが、きょうは参考人質疑ということですから、これはこの程度でとどめさせていただきたいと思います。

 それから最後に、時間があればお答えをいただきたいと思いますが、今、二〇〇九年春闘たけなわですね。今、目の前にある百年に一度の経済危機、この経済危機に対して、私は、政労使が連帯して、社会全体でこれに対応する必要があると思います。

 日本経団連が昨年末に発表した二〇〇九年春闘の経営側方針、これを私は読ませていただきましたが、非常にいいことが書いてあるんですね。ちょっと読みますと、「職場における一体感の醸成を図ることは、従業員の職業生活の豊かさにつながるだけではなく、チームワークを発揮して質の高い業務を遂行していくためにも重要であり、会社を挙げて取り組む課題である。」こう書いてあるんですね。要は、非正規労働者を含めた職場の一体感の醸成が重要であるという認識を示しておられます。

 私は、日本的な経営のよさは、労使が問題意識を共有して、チームワークを発揮して一体となって課題に取り組む点にあると思います。企業は今こそ、安易な解雇、雇いどめや派遣切りを行うのではなくて、雇用全体を見渡して、人材力、人間力を活用した経営のあり方について考えていくべきではないか、新たな日本型経営という形を模索すべきではないかと思いますが、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。

川口参考人 先ほど申しましたとおり、派遣の方で契約を更新できなかったというところにつきましては、各職場で一緒に働いてきた仲間を失っていくという、職場の中の感覚としては非常につらいものがありました。そういうところはありますけれども、この百年に一度の経済状況の悪化、その中での経営危機の中で、やはり企業としては対応せざるを得なかったという面があるかと思います。

 先生がおっしゃるとおり、今、春闘たけなわではございますけれども、春闘の中で議論されていますのが、やはり同じように、労使が一体となって、できれば政府も一緒に入った形で、現在の経済危機をどうやって乗り切っていくかということを、まさに議論が始まったところであると存じます。

 職場の一体感、それから労使協力関係、こういったものは日本の産業にとって非常に、他国に比べて、ない強さであった面があります。したがいまして、そうした点を十分これからも認識して今の難局を乗り切っていきたいと考える所存であります。

 ありがとうございます。

根本委員 私も、最近の問題意識は、経済でダム論という話がありますが、要は、ダムに水がたまっていって、そしてあふれて、経済の隅々までその効果が行き渡る、その側面が、この十年来でいろいろなところで分断されている面があるんじゃないかと最近思っているんですね。

 例えば、かつては系列という話がありました。大企業と系列の中小企業。ですから、発注者、大企業がよくなると系列の中小企業もよくなる。これは、ある意味で系列のよさだったと私は思うんですね。実は、それが分断されると経済がうまく回らないということがある。

 あるいは、景気回復して企業がよくなって、従業員の所得がふえて消費がよくなる、こういうメカニズムが働いた。ところが、これが正規、非正規という形態で、実はそこが断ち切られた部分もあるのではないか。私は、これは日本の社会システムとして、そういう側面が今出てきているのではないか。

 その意味では、今最後に参考人がお話しされたように、やはり日本の強みというのは協調性であり一体感でありますから、その辺の日本の強みというものを生かしながら、私は、やはり社会システムに問題があればそれを是正し改革していく、これが必要だと思います。

 いずれにしても、今、世界同時不況、とにかく大事なのは、我々も責任を持って内需拡大そして景気回復、経済対策に取り組むということなんですね。ですから、私は先ほども申し上げましたが、第二次補正予算がいまだに動いていない、これは大問題でありますし、この本年度予算も早期に仕上げる、これが何よりもの日本経済を復活させるかぎだと思いますので、我々も非正規社員の雇用の問題も含めて政策総動員で頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて根本匠君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、川口参考人また宇都宮参考人におかれましては、今の派遣の問題、またこれからの経済、雇用の問題、貧困の問題等々、大変貴重な御意見をお伺いさせていただきました。この国会での質疑に反映をさせていきたい、そのような思いで質問をさせていただきます。

 まずは川口参考人にお話をお聞きさせていただきたいと思いますが、ことしの自動車業界の見通しというのは大変厳しいと先ほどおっしゃられたわけでございますが、現在のこの日本経済の苦境というのは、もともとアメリカの金融不安に端を発したものであるわけでございます。この金融不安のショックをまともに受けた海外の経済が一気に冷え込んだ、これで日本の自動車産業は輸出に大きく依存していたためにショックを受けたことになるわけでございますけれども、このような中で、いわば派遣切りと言われる雇用問題がクローズアップされてきたのも、輸出産業での雇用調整が大きな要因でもあるわけでございます。

 そこで、製造業の派遣について参考人にお伺いしたいと思うんですが、現在、製造業への派遣労働が大きな問題となっております。海外経済の悪化の影響を受けた国内の製造業、自動車産業を含めた製造業が派遣労働者を削減して、多くの派遣労働者が失業したり住むところを失ったりということで、この派遣労働者の問題、大変大きな問題。

 この背景には、製造業への派遣が解禁となって、自動車業界などで多くの派遣労働者が使われるようになっていたということがありますけれども、まず、製造業にとって、自動車業界にとってでも構いませんが、派遣労働者を使う理由がどのような理由であったのか、それについてお答えをいただきたい。

 また、派遣労働者の削減、これを派遣切りと呼ぶ人もおるわけでございますけれども、今回職を失った派遣労働者が多く出たことで、そもそも製造業への派遣を認めたことが誤りで、製造業への派遣を禁止すべきだという意見も出ているわけでございます。この製造業への派遣を禁止すべきという意見について、自動車業界の考え、その影響をお答えいただきたいと思います。

 また、自動車業界は製造業への派遣を必要と考えているのかもしれませんけれども、いわゆる派遣切りが大きな問題となっているのも事実であります。自動車業界として、派遣労働者問題にどう対応するのか。

 この三点についてお伺いをさせていただきます。

川口参考人 御質問ありがとうございます。

 製造派遣の果たしてきた役割というものは大変大きかったと認識しております。

 日本の製造業における雇用のあり方の中で、製造派遣とかといった非正規労働というのは、もともとが終身雇用体系に根差した日本の雇用のままですと、雇用の弾力性という観点は非常に難しい。ところが、我々自動車というような最終製品を取り扱う産業ですと、市場というものにどうしても影響を受けてしまう。そして、市場の影響を受けながら、生産を非常にフレキシブルなラインで対応したりとか、生産の平準化といった努力は別の形ではやっておりますけれども、それに加えて、やはり大きな変動の中で、こういった非正規労働の持っていた生産全体に弾力性を与えた役割は非常に大きくて、それが日本のもともと持っている技術力の高さ、それから物づくりの優秀さ、こういったものをベースに、さらにそこに弾力性を与えるということで、トータルなパッケージとしての役割を果たしていた意味は大変大きかったと認識しております。

 これを禁止すべきかということになりますけれども、これを禁止してしまいますと、日本の物づくりの中での重要な役割が一つ大きくなくなってきまして、柔軟性、弾力性が奪われてくる懸念になります。そうなりますと、日本企業の競争力がなくなっていくか、あるいは、日本で物をつくるのをもうやめてしまって海外でつくっていくという日本空洞化の問題になってきて、結局は日本経済にとって何もいいことはなくなっていくという懸念につながると存じます。

 したがいまして、先ほどの議論にもありましたけれども、単純な禁止ということではなくて、むしろ、製造派遣なり非正規労働の意味を再認識しながら、それを日本の経済社会の中でどういう形でもう一度取り込んでいくか。特に、政府も含めたセーフティーネットのあり方とか多面的な対応を検討しながら、ぜひ継続の方向でお願いしたいと存じます。

 また、今回の派遣切りと言われた問題ですけれども、契約を残念ながら更新できなかったということは、当然、働く仲間を失う意味で非常に残念に思っております。

 自工会傘下でも、多くの企業で、そういった非正規の方々で正規の従業員であることを望む方に対しては登用の制度をつくって迎え入れることを続けていましたし、先ほど申しましたとおり、一時的に、今、世界の恐慌の中で緊急避難状況にある、それから、自動車会社で派遣がとまったからといって、ほかの会社あるいはほかの産業に今は行けない状況になっている、季節的な問題でもない、この特殊な状況ということがあるのが背景になっておりますので、その状況が変わって、また今の危機、緊急状況が戻った折には、もう一度非正規の方を再雇用していくという状況が来ることを切望しております。

 以上です。

江田(康)委員 日本経済の中で、自動車産業界というのは大きな位置を占めているわけであります。それを支えてきたのもまた、派遣業を初めとする一つのそういう皆さん方である。大変に、そこにかかわる人の重要性、この大きな責任を企業は担っていると思うわけでありますが、最近では、雇用の問題は派遣労働者だけではなくて正社員にも及ぶようにもなっているわけで、企業が雇用を削減するとき、安易に切っているのではないか、そういうような声もあるわけであります。

 極力雇用を維持するように努めて、削減する人を最小限にとどめることが企業の社会的責任だと私は思うのでありますが、世界的な企業である自動車産業の皆さん方に、現在の雇用問題に関して自動車業界が果たすべき企業の社会的責任についてどのように思われているか、簡潔に御説明をお願いします。

川口参考人 企業にとりまして、まさに企業は人なりということでございまして、これまでも、従業員の雇用の維持、確保というのは、企業としては最重要経営課題として取り組んできておるつもりでございます。

 そのために、今、正規の従業員のところでぜひ雇用を継続していけるだけの、政府からの、今拡充していただいた雇用調整助成金、こういったものを今後も我々としては有効に使わせていただきながら、政府と一体になって雇用維持に努めてまいりたいと存じます。

 以上です。

江田(康)委員 それでは、次に宇都宮参考人にお伺いをさせていただきます。

 先生からは、労働者派遣法の抜本改正について、また貧困問題の解決について、るる御説明がございました。大変貴重な御意見だと思っております。

 労働者派遣法の抜本改正につきまして幾つか御質問をさせていただきたいんですが、まず、製造業の派遣を禁止した場合、現在働いている約四十六万人もの方に影響が出ることは、一つには確実だろうと思うわけです。現下の厳しい雇用失業情勢の中で、たとえ経過措置をとったとしても、これだけの労働者を、参考人の宇都宮先生が御主張する、直接雇用で、かつ期間の定めのない雇用につかせるというのは、ある意味ではかなり困難性が伴うと思うわけですね。それで、これらの派遣労働者について、失業させないための方策についてともに考えていかなければならないと思うんですが、それについてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。

 それと、続けて、登録型派遣についても、同様に、ここで働く約二百八十万もの雇用をどうするかという問題があります。また、短期間で、かつ仕事を選べる派遣の方が直接雇用よりも望ましいと答えられる方が、アンケートといいますか総合実態調査でも約五割ほどはいらっしゃる、こういうような状況の中で、こうした労働者のニーズも無視はできない。そういう中で派遣労働という働き方自体をどう考えていくか、このことについて、さらに先生の詳しい御見解をお伺いさせていただきます。

 そして最後に、三点まとめてお伺いいたしますが、派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇の点でございます。これについて、私もそれができればそれが一番いいと思うわけでございます。しかし、例えば、我が国はヨーロッパのように職種別賃金が普及しているわけではありません。これは、派遣先ごとに、派遣先労働者の賃金が異なっております。このような中で均等待遇を一律にやってしまうと、派遣先が大企業から今度は中小企業に移った場合においては、かえって派遣労働者の賃金が下がるというようなことがあり、いろいろなケースが生じてしまうのではないかという懸念もございます。

 この三点について、均等待遇の件について、先生はこういうことに対してもどうお考えになられるか、それを参考としてお伺いさせていただきたい。

宇都宮参考人 まず、当面の製造業派遣労働者の派遣切り等の対応については、先ほど冒頭で意見陳述させてもらいましたけれども、違法な派遣切りは、これは違法ですから当然やめさせなきゃいけないですね。

 それから、現在の労働者派遣法でも、三年続けて派遣として働いている場合は正社員の直接雇用の義務が発生しますので、そういう点についてもきちっと行政の方は指導すべきかと思います。

 それから、派遣切りを行う先にまず企業の社会的責任を果たすべきだ、経営努力をすべきだというのは、先ほどお話ししたとおりです。その結果、仮に派遣切り、職を失う方が出たとしても、全国でシェルターをつくって早く再就職できるような支援をやるということは必要かと思います。

 それから、登録型派遣についてなんですけれども、実は、私は弁護士で、私の所属する日本弁護士連合会、日弁連は、昨年の十月に人権大会でこのワーキングプアの問題を取り上げました。それで、世界各国の派遣、非正規労働者の実態調査もやりまして、私はアメリカとドイツの調査に参加したんですけれども、当然、グローバリズムとか国際競争の問題というのはヨーロッパにも及んでいるわけですね。

 それで、ドイツの場合はどうなのか。そういうような状況の中で、ドイツは登録型派遣は認めていないんです。登録型派遣というのは、派遣先で仕事があったときに派遣会社と雇用契約が発生して、仕事がなくなればもう首を切られるわけで、常に不安定な状況で働かされています。ドイツは常用型派遣が基本であって、派遣先の仕事がなくなったとしても派遣会社から給料が出るわけですね。こういうことが図られている。

 ちなみに、EUの方は、EUであってもグローバリズムの中で国際競争にさらされていますから、当然、労働市場の柔軟化、フレキシブルというのは検討されているわけですけれども、私が印象に残っているのは、ドイツ等で聞いたのは、フレキシブルだけではだめなんだ、そこのセキュリティー、働く人の安全というのを同時に政府は考えていかなきゃいけないんだと。だから、そこでは、セキュリティーとフレキシブルを合わせたフレキシキュリティー、それが合い言葉になって、そういうところでドイツは登録型派遣を認めていない。

 それから、先ほどお話ししましたけれども、同一労働同一賃金というのが打ち出されているんですが、日本の企業形態というのは非常に難しいことがあるかと思いますけれども、我々がいろいろ調査したら、派遣労働者は正社員の半分近くの給料しかもらえていないんですね。現場では全く同じ仕事をしている。しかも、そういう低賃金で昇給もないわけです。全く昇給もない。それで、不必要になったら、もうあんた要らないよと。

 我々は、派遣労働者のヒアリングをたくさんやったんですけれども、ある五十歳の派遣労働者で、この人は大学を卒業しているんですけれども、働いていた派遣会社を首になって、路上生活をやるようになって、支援グループに救済されるんです。

 この人は、一日十二時間、週に六日間、プライベートな時間も持てないまま身を粉にして八年間働いてきましたが、昇給もなく、貯金もできませんでした、私には婚姻歴がありませんけれども、これでは家庭を持つことはできません、派遣社員も正社員と同じように会社のために働いているのですから、もう少し人間的に扱ってほしいと思います、忍耐や努力が報われる社会であってほしいと思います、こう述べています。

 少なくとも同じ仕事をしているのに給料が半分だというのは、これは許されないです。その是正の仕方は日本的な是正の仕方があると思いますけれども、そういう均等待遇についても国の方は真剣に考える必要があるかと思っております。

江田(康)委員 大変参考になりました。

 製造業における派遣の禁止の件、また登録型派遣の禁止の問題、また同一労働同一賃金であるべきだ、この点につきましても、確かに、どのような改正また内容としていくべきか、こういうような点においても、日本型の点につきましても考慮してまいらなければならないということも考えていきたいと思っております。

 これまでも、政府・与党としましても、先生が御指摘なされた貧困問題の解決の種々の点はございますけれども、例えば、最低賃金制度は生活保護との整合性に配慮するように、その明確化をすることを内容とする法改正も行ってきたところでもございました。

 また、訓練期間中の生活保障等につきましても、これは我が公明党の方からの強い主張もさせていただいて、一次補正予算において訓練期間中の生活保障給付制度が創設されて、さきの二次補正でこれを拡充しております。雇用保険の受給資格がなく、離職を余儀なくされた非正規労働者の方々が職業訓練を受講される場合に、月額最大十二万円の生活資金を貸し付ける、そして、訓練修了後には、就職された方には全額返還免除することも補充させていただいたところでございます。

 きょう、労働者派遣法の点、また貧困問題の解決について、参考人の先生方からお話をお伺いしました。今後の国会の協議に十分に反映をさせていきたい、そのように思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、川口参考人、宇都宮参考人、本当にありがとうございます。

 それでは、私の方から何点かお話を伺わせていただきますが、まず最初に宇都宮参考人にお伺いしたいんです。

 宇都宮参考人から、格差問題を議論するよりもまず貧困への対応だという話がございました。私も全く同感でございますけれども、この貧困という問題がなぜ日本でここまで顕在化するようになったのか、発生するようになったのか。これまでの政策あるいは日本の社会のあり方に対する考え方で、どういう点が問題でこの貧困問題が出てきたのかという点について、御見解をお伺いします。

宇都宮参考人 先ほど、冒頭にちょっと意見を述べさせてもらいましたけれども、日本の貧困を進めてきた大きな要因としては、一つはワーキングプアの発生というのがあります。これは、非正規労働者が今三人に一人ぐらいになって、その非正規労働者の賃金そのものが正規労働者の五割ぐらいになっている。それから、年収二百万未満の方が一千万人を超えていますね。こういう状況で、なかなか結婚したくても結婚ができない、子供を産みたくても子供が産めない、こういう人たちが大量に生み出されてきているということ。それが一つ。

 それから、では、そういう人たちを支えるセーフティーネットはどうだったのかということを考えますと、非常に貧弱なセーフティーネット。最後のセーフティーネットは生活保護しかないわけですけれども、本当は雇用を失った場合は雇用保険とかいろいろなセーフティーネットが張りめぐらされているべきなんですけれども、日本は途中がないわけです。いきなり野宿になっちゃう。そこで、あるセーフティーネットとしては生活保護しかない。ところが、生活保護というのが極めて貧弱なんですね。

 現在、百万世帯を超えていると思いますけれども、我々の調査では、生活保護水準以下で生活している人が大量にいる。生活保護水準以下の方で生活保護を受けている人の割合を捕捉率というらしいんですけれども、日本の政府は貧困調査をやっていませんので、捕捉率をはかっていないんですね。ところが、生活保護問題を研究している学者さんの話だと、捕捉率は大体、高く見て二〇%、低く見たら一六%ぐらいらしいですね。ヨーロッパ先進国というのは全部貧困調査をやっていますから、捕捉率は大体七割から八割なんです。そうすると、仮に二割を捕捉しているとしても、あと四百万世帯ぐらいの人が生活保護水準以下で生活している、だけれども生活保護を受けていないわけですね。

 こういうようなセーフティーネットのもろさ。こういうものを実は補足してきたのが、家族とか企業福祉あるいは地域共同体の支え合い、こういうところが実は貧困なセーフティーネットを支えてきたと思いますけれども、家族が崩壊する、地域共同体が崩壊する、企業も福利厚生を削減していく、こういうことで貧困が表面化してきたということが言えるんじゃないかと思っております。

逢坂委員 宇都宮参考人、ありがとうございます。また時間があれば、最後の方にもう一度お伺いさせていただきたいと思います。

 次に、川口参考人にお伺いします。

 厳しい業界の状況をるる御説明いただきました。しかも、需要が蒸発したという言葉でありますけれども、まさに今の状況を端的にあらわす、非常に鋭い言葉だなというふうに受けとめさせていただいたところでございます。

 そこで、まず最初に、宇都宮参考人から定額給付金について言及があったわけでございますけれども、今の定額給付金は富裕層の方にも払われる仕組みになっているわけでございますけれども、この点について川口参考人はどう思われますでしょうか。現在のようなこういう厳しい雇用の状況がある中で富裕層にも払われる。困っている方がたくさんいるというような状況の中で、これはどう思われますでしょうか。

川口参考人 ただいま御質問の定額給付金の効果や是非につきましては、自動車工業会労務委員長の立場でございます私としましては、格別の知識を有しておりませんので、お答えは控えさせていただきたいと存じます。

 ただし、一般論になりますけれども、政府におかれましては、この未曾有の経済危機から脱却するために、考えられるすべての政策をスピーディーに実行に移していただきたいというのが私どもの要望でございます。

逢坂委員 次に、実は宇都宮参考人からも若干指摘があった点でございますけれども、日本の大企業が、この十年余り、会社の内部留保をどんどんふやしている、それから株主配当の割合も高くなってきている、その一方で、労働者への賃金は必ずしも高くなっていない、どちらかといえば抑制傾向にある。これが今の大企業の現実かというふうに思うわけでございます。

 このときに、今のような雇用情勢、厳しい状況が生まれたというときに、もっと内部留保を崩すべきではないかとか、あるいは、これまでの株主配当のあり方が間違っていたのではないか、要するに、ステークホルダーの三者ですね、経営者と株主と労働者、この配分が少し違っていたのではないかという指摘が日本の今の社会にあるわけですが、この点について川口参考人はどう思われますでしょうか。

川口参考人 今御質問のあった内部留保の観点ですけれども、企業にとりまして内部留保はバランスシートの中で資金の源泉に当たるところでございますから、これまでの利益の剰余金の中でその内部留保が、借入金その他の、ほかの資金の源泉と同様に、バランスシートの借方といいますか、どういう形でそれを使っているか。その使っている項目の中には、固定資産ですとか在庫ですとか、さまざまな形で企業活動の結果としての資産になっていると思います。

 したがいまして、もし内部留保を取り崩すということになりますと、現在未曾有の経営危機の中で大幅な赤字を出している状況ですけれども、それをさらに赤字にするという形になりますし、そのことは、何らかのほかの資金の源泉がない限り経営全体が立ち行かないという形になります。その中で、今、多くの企業、自動車工業会傘下の企業あるいは自動車関連の諸企業において大変資金繰りに困窮する状況にありまして、内部留保を崩していくことは経営そのものが立ち行かないという形になりますので、そういった面では、現実の中では大変難しい状況にあるかと思います。

 それから、株主配分につきましては、これは各社ごとに株主配分の考え方、配当のあり方等に違いはあるかと思いますけれども、この経営危機の中で、多くの企業の中で既に減配ですとかあるいは無配を決めている次第で、株主、従業員それから経営者そのもの、みんな一体となって、やはり現在のこの状況の中で痛みを分けているという状況にあるのではないかと存じます。

逢坂委員 今、内部留保それから株主配当について説明がありました。

 私も、現時点では川口参考人のおっしゃるような状況だというふうにもわかるわけでありますけれども、これまでの会社経営のあり方ですね、これまで、要するに、ステークホルダー三者が本当に均等にいわゆる利益を共有できていたのかという点についてはいかがでしょうか。現時点の認識というのは理解をするところがあるんですが、これまでの会社経営の方針としてはどうお考えになられますでしょうか。

川口参考人 これまでも、これからもでありますけれども、企業にとって、先ほど先生がおっしゃられたように、株主とともに従業員というのも重要なステークホルダーでありまして、従業員の雇用を確保していくということは、企業にとっての社会的責任の観点からも非常に重要なテーマであります。

 そのことに関しまして、これまでそこが、従業員に対する対応がおろそかになったことはないと思いますし、日本の自動車産業を支えてきた力の源泉が優秀な従業員の存在にあったことは間違いないと考えておりますので、それをもって答えとさせていただきます。

逢坂委員 それでは次に、また続けて川口参考人にお伺いしますけれども、派遣というような雇用の体系などができたことによって製造業に非常にいわゆる柔軟性、弾力性が出てきたという発言がございました。それは事実なんだろうなというふうには思うわけでありますけれども、それは、経営する側から見れば確かに柔軟性、弾力性が出たということではありますけれども、雇用される側から見ると、不安定度が増したというふうにも言えなくもないのかなというふうに思います。その意味において、川口参考人からも、だからこそ、セーフティーネットというものを政府でちゃんとやる、安心できる対策をやることが大事だという話があったわけです。私も全くそうだと思うんです。

 さすれば、では、そのセーフティーネットという点において、企業、会社はどういう役割を果たすべきかという点についてはいかがでしょうか。

川口参考人 企業としましては、昨今の急激な、急速な経済危機の状況の中で、今回の派遣ですとか非正規のところで契約を更新できない状況に追いやられましたけれども、その過程の中で、企業側としましても、いろいろ人道的な観点も含めて対応してきておりまして、寮、社宅での宿泊の延長とか、それから従業員食堂での食事の継続とか、あるいは傘下企業の中では、再就職あっせんのための相談窓口のようなものを設けながら、企業としてもできる限りの対応を、今回の急激、急速な環境変化とそれに伴う派遣なり非正規契約の継続がとまったことに対応して、できたことは、そういう形で最大限の努力を払ってきたと存じ上げております。

逢坂委員 これから話す話は私個人の考え方でありますけれども、確かに派遣労働などの方々は、いわゆる正社員、しかも契約期間のない正社員に比べるとリスクが高いというふうに一般的には思うわけです。それから、先ほど宇都宮参考人からも指摘がありましたとおり、非常に賃金が安いというような現実もあるわけですね。でも、リスクが高くて、企業にとってはその方たちの存在がもし必要だとするのであれば、そのリスクをどこかでヘッジしてあげるということが必要なのではないか。具体的には、やはり派遣労働の場合には、賃金を高くするとかそういう対応というのが、賃金は高いけれども雇用の状況は若干不安定度が増すというようなことも、これは私個人の考え方でありますけれども、そんなこともあるのかなというふうには思います。

 さてそこで、日本にはこれまで年功序列型の終身雇用制度というものがあったわけでありますけれども、川口参考人のこれまでの話からしますと、年功序列型の終身雇用制度であるならば、製造業の世界においては、いわゆる柔軟性、弾力性というのは必ずしも担保できないというような意味にもとれるかなとも思うんですが、そういう観点から考えてみますと、製造業、特に今川口参考人がかかわりになっている自動車工業会において、どういう労働のあり方、雇用のあり方が理想だというふうにお考えになっているのか。もし御見解があれば、お伺いします。

川口参考人 日本の独特でもありました年功序列、終身雇用、この二つは必ずしも同時に語るべきものではないかとも存じますけれども、年功序列につきましては、やはり今多くの企業で見直しの過程にあると考えておりまして、基本的には、年齢とかだけではなくて、個々人の能力に応じながら配分をしていくとか対応を変えていくという考え方に今変わってきつつある。

 終身雇用の課題につきましては、やはり、日本の雇用の安定性、今は状況が全く逆転していて、雇用を確保することそのものが大変厳しい状況になっていますけれども、一昨年まで景気が非常に好調だった中では、雇用をどうやってふやしていけるかというような環境があったりしまして、そういう意味では、そんな中で、終身雇用的な体系があるからこそ企業としては安定的な雇用を維持できるというメリットもございます。そういうような形で、終身雇用の体系ということそのものがすべて問題ということではなくて、やはりその中の長所も多くあったのではないか。

 ただ一方で、終身雇用であるがゆえに、弾力性の観点はどうしても失われてしまいます。一方で市場というものがあって、市場は弾力的に動いてしまう。それに対応していくためには、企業としては生産上の弾力性を維持しなければならない。そのためには、非正規労働というものが非常に大きな、重要な役割を果たしてきたのではないか。

 正規、非正規で同一労働であれば同一賃金であるという点に関しては、企業側としては、特にそれは、全くおっしゃるとおりだと考えます。

 ただ、実際の賃金の決定要素の中には、役割ですとか、それから熟練度ですとか、さまざまな賃金の決定要素があって、合理的な要素の中で決めていけば、基礎的な部分は同じで、そういった合理的な諸要素であとは差ができる、こういう形で賃金の問題についても考えておる次第でございます。

逢坂委員 それでは、宇都宮参考人に改めてまたお伺いします。

 一つは、先ほど根本委員、江田委員からも、現在の政府がとっている対応、対策というものについての説明がございましたけれども、宇都宮参考人からもさまざまな御提案がございました。それらの観点からしますと、今の政府がとろうとしている対応、対策は十分なのかという点が一つ。

 それからもう一つが、セーフティーネットという言葉が随分いろいろなところで出てきますが、人によっては、セーフティーネットを張り過ぎるというのはモラルハザードにつながるんだ、自己責任というものもあるだろう、だからセーフティーネットはほどほどにすべきだというような声も一部にあるというふうに思われますけれども、この点についてどう思うか。

 二点、お伺いさせてください。

宇都宮参考人 先週の日曜日、名古屋で愛知派遣切り抗議大集会という集会がありまして、私は実行委員長でしたので、愛知に、名古屋に行ってきたんです。

 名古屋では、派遣切りに遭った人たちが、住居を失った人が大量に出てきています。そして、名古屋の駅の近くの中村区には、毎日百人近くの住居を失った人が相談に来られているようですね。それらに対してもう役所の方も手いっぱいなんです。だから、いろいろ手は打たれているようですけれども、現実的には十分な対応がなされていない。

 私たちは、派遣村のような活動を全国で広めてもらいたい。特に、シェルターをつくって、そこに総合相談、生活相談、就労相談、あるいは緊急小口資金の貸し付け相談とか、そういうものをやっていただきたいという要請はしているんですけれども、それはまだ今のところ全くなされていないですね。

 だから我々は、政府とか、国、自治体に要求するだけじゃなくて、民間レベルでやるべきことはやろうと。特に、年度末に派遣切りが相当出ますので、我々はやることはどんどんやっていく。だけれども、現実的には、そういうフォローというのが極めてなされていないのが現状ではないかと思います。

 それからもう一つ、モラルハザードの問題は、やはり現場の派遣切りに遭った労働者とかそういう方と接していない方が言われているんじゃないかと思うんです。まず、そういう生活保護をもらうことについても、一般的には非常に逡巡されている方が多いんですね。早く仕事を見つけたいという方が多くて、生活保護とかセーフティーネットだけで生活していこうというのはごくわずかだろうと思います。

 問題は、仕事を見つけるにも、住居がないとハローワークに通っても仕事が見つからないわけです。会社の面接にどうして行きますか。それで、実は今のところは、生活保護を受給することによってアパートに移って、住所も確保して、そこで仕事を見つけて生活保護を離脱するというような形になっているわけです。

 だから、セーフティーネットの組み方としては、利用しやすくて自立しやすい、離脱しやすい、そういう制度にすべきだと思いますけれども、現実の生活保護の運用としては、これまでは、稼働年齢の人はまず受け付けていない、住所がない人は受け付けていない。結局は、高齢者とか母子家庭とか障害者、もう病気になった人しかだめなんです。病気になった人については、ずっと生活保護を受け続けさせないとだめなんですね。働けるうちに早くセーフティーネットで助けてあげて、新しいところ、就職先を見つけるということが、国家経済からいってもコストの面からいっても合理的だと思っております。

逢坂委員 終わります。どうもありがとうございます。

衛藤委員長 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、両参考人、お忙しい中お越しいただきまして、それぞれの御意見を拝聴いたしました。

 まず、宇都宮参考人に伺います。

 私も、この年末年始、年越し派遣村に伺いまして、深刻な事態の中で大変に皆さん頑張って、村民も、そしてボランティアの皆さんもということで、本当に大変な中を奮闘されたと思います。名誉村長として活躍されたということで、心から敬意を表したいと思います。

 そこで、まず伺いたいのは、今日のような大量の派遣切り、非正規切りをつくり出した問題として、参考人も触れられました企業の社会的責任ということでありますけれども、今ここでも議論がありましたが、この社会的責任という問題の核心点というのはどこにあるというふうにお考えか、改めて伺いたいと思います。

宇都宮参考人 先ほど、自動車業界を初めとして大変な内部留保をふやしているというお話をしましたけれども、こういう内部留保がどうしてふえたのかというと、まさに今首を切られている派遣労働者が残業を繰り返して、それで働いた結果、企業が業績を上げてきたわけですね。ところが、こういう不況になると、もう要らないよということで、首を切られた人はいきなり寮とか社宅を追い出されて野宿を余儀なくされる。そういう状況を続けますと、生存の危機に陥る人も多いわけですね。みずから自殺を試みる、そういう方も発生しています。そういう人たちのおかげで企業が利益を上げているのに、私は関係ないということでいられるのかどうか。

 それから、私は、先ほどお話しした日弁連の人権大会を行う過程で、多くの派遣労働者のヒアリングをやりましたけれども、何年働いておっても給料は上がらないわけです。ボーナスもないわけです。そして、都合が悪くなれば、いきなり首を切られる。こういうことでは、結婚もできない、子供も産めない、将来に希望が持てない、こういう若い労働者にたくさん、意見を聞くこと、ヒアリングをしました。

 私は、それを聞いて、怒りを通り越して非常に悲しくなりました。経営者のモラルはどこに行ったんだと。自分のところで働いている労働者が、人間らしい生活ができて、そして幸せな家庭を築ける、子供もつくれる、そういうことを誇りに思うべきだと私は思うんですけれども、そういう誇りとかプライドはどこに行ったんだということで、非常に悲しくなりました。

 しかも、こういう派遣労働者が働いているのは、中小零細企業じゃないんですね。日本の名立たる一流企業、中には経団連の役員も兼ねている方、そういう会社で人間を物のように使い捨てている。こういうような経営者のモラルの荒廃、そういうのをすごく感じまして、そこが一番問題だと思っております。

笠井委員 そうした企業に、特に大企業に社会的責任を果たさせるというために、政治の役割ということで先ほども幾つか課題をおっしゃいましたけれども、特に国会がどういう仕事をすべきだというふうにお考えか、端的に伺いたいと思うんですが、いかがですか。

宇都宮参考人 きょうも自動車業界の方が出てこられていますが、私も前の国会の審議は余りわかっていないんですけれども、ここに経団連の役員は来られているんですか、御手洗さんとか、その他トヨタの経営者。やはり経営者自身を呼んでもらいたいですね。

 それから、そういう経営者が派遣切りをやっていますけれども、中には違法、不当な派遣切りも行われている。こういうことをやはり強く国は指導すべきであると思うんですね。

 それから、寮とか社宅を追い出されるケースが非常に目立っているわけですけれども、実は寮費とか社宅費を労働者は払っているケースが多いんです。実際は通常のアパートとかの家賃と同じぐらい払っていますから、これは借地借家法が適用されるケースが多いんじゃないかと私は思います。いきなり解雇して寮とか社宅を追い出して住まいを奪うというのは、大変非人間的な行為じゃないかと思いますので、こういう点もちゃんと企業の経営者を指導すれば、まだ救われる、野宿しなくてもいい、次の仕事に、新しい仕事に向かって活動できる、あるいは、やめなくてもいい人がたくさんいるんじゃないかと思いますので、そういう経営者のトップをここで呼んで、厳しく指導していただきたいと思っております。

笠井委員 ぜひ、受けとめて、そういう形で実現したいと私も思っております。

 次に、川口参考人に質問いたします。

 先ほども、雇用を守る企業の社会的責任ということで、今宇都宮参考人にも伺いましたが、川口参考人は、企業は人なり、雇用確保は最重要経営課題ということを言われましたけれども、そうおっしゃる一方で、参考人が、先ほどあったように、苦渋の選択として非正規従業員の雇用調整を行わざるを得なくなっているということを言われました。そして、お答えの中で、この非正規の方々というのはタイムリーに対応する、弾力性ということも言われました、そういう性格なんだと。

 そこで伺いますけれども、この非正規の従業員、労働者や期間工の方々は、要するに、苦しくなったときには雇用調整としていつでも切れるという調整弁、そういう位置づけで雇っていらっしゃるんでしょうか、使っていらっしゃるんでしょうか。いかがですか。

川口参考人 先ほども申しましたけれども、非正規の方であろうと、同じ職場で働くメンバー、これは製造の現場を訪れましても、全く一緒に働く仲間であるわけですけれども、現在の百年に一度とか言われます未曾有の経営危機、経済危機の中にあって、大幅な減産が発生しました。そうした減産の中で、もう今二月、今月なんかは、自動車の生産現場というのは半分ぐらい休業している状況にございます。それほど現在の生産の減少というのは激しい状況にあるかと思います。

 そうした中で、我々企業側としては、十分な雇用の維持という形がとれない状況になりまして、先ほどの御引用いただいた言葉どおり、大変残念ながら、苦渋の選択として、契約を更新できない状況になりました。

 ただ、もちろん、そこに至る過程の中では、ありとあらゆる対応、コスト削減の努力を重ねてきた後にそういった対応をとらざるを得なかったという状況があることもぜひ御理解いただきたいと存じます。

 以上です。

笠井委員 全く同じ職場で全く一緒に働きながら、こういう状況になったら真っ先に切られる。まさにそういう点では調整弁ということになると思うんですね。これでは社会的責任を果たせるのかということだと思います。

 そこで、昨年の秋以降、自動車業界が先頭を切って、急速で大量の非正規切りを進めてこられたわけです。しかし、依然として自動車業界全体の人員削減計画の全容がはっきりしておりません。そこで、日本自動車工業会の会員企業、十四社あると思うんですけれども、そのグループ会社も含む削減計画は現時点でどうなっているのか、その全容を明らかにしていただきたいんですが、いかがですか。

川口参考人 昨秋から現在に至り、かつ、今年度末でございます三月末に向けまして、自工会の傘下各社でのトータルな非正規の非更新に当たる方が、全体で三万人ぐらいと自覚しております。それが数字上の実態でございます。

笠井委員 時間の関係もありますが、この場で、会員企業、個社ごとの数字も出していただけますか。後で結構です。

川口参考人 先ほど申しました三万人の数字というのも、我々……(笠井委員「内訳」と呼ぶ)内訳の話ですけれども、自工会自身としては統計を出しているわけでございませんで、私が申しましたのは、新聞報道等で報じられた内容を集計した内容の合計というふうに御理解ください。

笠井委員 一方で、先ほど生産台数、販売台数はしっかりつかんで全体の数字を述べられているわけですから、それは個々の積み上げがあるはずなので、これは自工会としてつかんでいないのだったらぜひつかんでいただきたいし、そこでおっしゃれないのだったら個々の企業をお呼びするしかないということになると思います。

 次に、法令遵守、コンプライアンスの問題ですが、派遣期間が三年を超える場合には、派遣先の企業が労働者に直接雇用を申し込まなければならない、労働者派遣法ではそう定められております。ところが、この法律を逃れようということで製造業の大企業が編み出したのが、派遣期間をごまかす偽装請負でありますが、我々はマツダやいすゞの実態をつかんで国会でも実際に取り上げましたけれども、自動車業界全体でもそういうことが起こっている、横行していると言われております。

 そこで、日本自動車工業会の会員企業の中で、実際に偽装請負を行っていた企業というのはどこだというふうにつかんでいらっしゃるのか、伺いたいと思います。

川口参考人 自工会としましては、各社、個社ごとの状況につきましては必ずしも把握しておりませんので、お答えできません。

笠井委員 各社ごとにつかんでいないと、よそごとのような話なんですけれども、国の制度に、労働者派遣事業適正運営協力員というものがあります。ここに名簿がありますけれども、全国で九百三十二名ということで選任、委嘱されて活動していて、東京労働局においては、日本自動車工業会から、参与で労務室長の奥村政一さんという方が入っておられます。

 この協力員というのは、行政機関が行う違法行為の防止、摘発を補完するものとして、労働者派遣事業の運用の実態をめぐって、法違反の疑いがある事案を把握したときには職業安定行政機関に連絡するという役割を担っておられるわけで、工業会として知らぬ存ぜぬでは済まされないと思うんですね。

 自動車業界内の法違反の実態について、コンプライアンスの立場からも、法令遵守の立場からも当然つかんで報告すべきじゃないかと思うんです。ぜひ資料を出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

川口参考人 今御指摘のあった個社ごとの状況については必ずしも把握しておりませんけれども、御指摘の点につきまして、自動車工業会に持ち帰って、傘下各社と確認を進めてまいりたいと存じます。

笠井委員 偽装請負で働いていた期間も、実際に同じ職場で同じような仕事をしているということであれば派遣期間とみなされるということで、それが合算して三年以上なら、直接雇用の義務が生じて対象となります。そういう場合は、既に違法派遣になっているわけですから、当然、直接雇用になっているべきであるというふうに思うんですが、それはそういうことでよろしいですね。

川口参考人 今御指摘の点は、いわゆる二〇〇九年問題とも関連するかと存じますけれども、法令の遵守、コンプライアンスの観点は企業としては当然のことですし、コンプライアンスに対する違反があるということは考えがたいことかと存じます。

 そういう意味では、三年継続した後の雇用の点に関しましても、当然、コンプライアンスの観点で対応するべく準備をしておりましたけれども、昨今の経営環境の大幅な変化の中で、その状況が百八十度変わってしまったという状況であると認識しております。

笠井委員 経営環境の悪化ということにかかわらず、法令なんですからこれに違反したらだめなわけで、既に五年、六年と働いているケースがあって、それを直接雇用を申し入れていない、そういう事態がもう起こっているわけですから、そこはしっかりと対応しなきゃいけない問題だと思います。

 しかも、そもそも、今進められている非正規などの大量解雇が先ほどおっしゃったような苦渋の選択なのかという問題なんですけれども、万策尽きてやむを得ないかという点で若干聞きたいと思うんです。

 参考人は、聖域なきコスト削減をやった上だというふうに言われました。そこで挙げられた、役員、管理職の賞与、報酬、賃金のカットというふうに言われましたけれども、実際に国民から見たら、どれだけ自動車業界でそういう努力をされているのか見えません。例えば御社の社長も、どういう形で今給与をもらっていらっしゃって、どういうところに住んで、どういうことをされているかということも含めて、いろいろなことを言われておりますけれども、そういう問題があります。株主配当だって、先ほどありましたが、維持したりふやしているということが現実にあるわけですけれども、そのこともきちっとやらずに、あるいは国民にきちっと示さない上に、万策尽きた苦渋の選択ということが言えるでしょうか。

川口参考人 ただいま御指摘の点に関しまして、やはり個別の各社できちっとした対応をとって対応することでございますし、自工会の立場で各社に対して個別に指示をするということは当然行っておりません。ただ、一般的な意味合いにおきまして、今回の状況の中で、役員も含めまして、速やかに賞与ですとか報酬のカットは率先して行い、そういった点につきましては今回の経営危機の中で一番の対応をしたかと存じます。

 さらに、先ほどの派遣労働者あるいは非正規労働者に対する対応につきましても、苦渋の選択と申しましたもののあらわれとしましても、実際に更新をしなくなった後も、派遣会社、派遣元の方とお話をしまして、寮ですとか社宅ですとかでの滞在期間の延長とか、それから食堂での食事、こういった面、さらに加えて、傘下の個社の中には相談窓口みたいなものを設けて、再就職のあっせんですとか雇用保険の対応の仕方、こういったものの指導を行っておりまして、できる限りの対応をしてきていると認識しております。

笠井委員 今のお話を伺っても、万策尽きたということがなかなか納得できないという問題だと思います。

 最後になりますが、内部留保の問題、もう一つそこもあると思うんです。先ほど宇都宮参考人からは、とにかくこの内部留保も、非正規の方々が残業もしながら、物のように使われながらためたものではないかというお話がありました。実際に、自動車関連を含む製造業で見ても、この十年間で内部留保が三十二兆円ふえて百二十兆円になっております。

 私たち、それを全部使えと言っているんじゃないんですね。その一%を活用すれば、三月までに切られるとされている四十万人を直接雇用できるじゃないかということを言っているわけでありまして、留保のうち六十六兆円が投資有価証券ということになっています。だから、直ちにそれが、一%使ったら経営が立ち行かなくなるのか、そんなことは全然ないわけで、その点は大いにきちっとやるべきだ、それが責任だというふうに思うんです。

 一点だけ質問したいんですけれども、この問題を私、国会で質問しましたら、河村官房長官が、雇用を守る企業の社会的責任があるということで、内部留保の活用について業界に対しても働きかけたいと答弁しました。首相もそういうことを言いました。実際に政府から内部留保の活用について働きかけがあったでしょうか。伺いたいと思います。

川口参考人 今の点、こちらの記憶にございませんので、後ほど確認させていただきたいと存じます。

笠井委員 ぜひ確認していただきたいと思います。

 私は、景気回復のためにも、雇用を守る企業の社会的責任をやはり日本自動車工業会としてもしっかりと真剣に議論して果たしていただきたいということを切に申し上げて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて笠井亮君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、二人の貴重な参考人の御出席を、まず冒頭、御礼申し上げます。

 今も笠井委員の方から企業の社会的責任ということでお尋ねがございましたが、私もその点については後ほどお伺いをいたしたいと存じますけれども、まず、それに先立ちまして、私ども、ここ立法府におりまして、やはり政治の責任ということをまず第一に、これは主に宇都宮さんにお尋ね申したいと思います。

 きょう宇都宮参考人は、例えば厚生労働省の講堂の開放も含めて、また私ども議員の何人かが派遣村に出向いたことも含めて、お礼という形でおっしゃってくださいましたが、本来であれば、私などはぞっとするのは、もしあの派遣村がなかったら、年末、路頭に迷い凍死される方も出たであろう、本当はそれに先立って政治がなすべきことをなしていなかった。そうした大きな問題がまず私どもの側にもあろうかと、私の側からは思うわけです。

 今回、宇都宮さんは派遣村の名誉村長と、名誉が大変あるということでありますが、政治的な私どもの立場から見れば不名誉な政治であったという、ひっくり返しになりますが、実は、私が宇都宮さんにいろいろ教えていただくようになりましたのは、サラ金問題がきっかけでありました。

 サラ金が日本で二千万、多重債務が二百万人、そして、その中から多くの自殺者が出ておるという指摘で、私の友達の弁護士が、日本の自殺者のうち一体何人が経済苦で自殺しているのか、阿部さん議員になったんだから調べてちょうだいと。まだ私が議員になって間もないころでありました。私も、それは本当に、日本が三万人以上に及ぶ自殺者というのは大変なことであるし、その内訳を調べねばならないということで、各部署にもお願いしていろいろなデータも出していただくようになりました。

 確かに、日本の社会では働く盛りのサラリーマンがあっという間に、本当にあっという間にサラ金地獄、あるいは、普通であれば御高齢者の自殺が多い等々は病苦等々ありますが、そのほかの要因で本当に自殺という道を選んでおられる。私は、二〇〇〇年以降ずっと自殺者数が三万を下らない、このあたりから日本の社会の変質というのは大きくクローズアップされただろうと思うわけです。宇都宮さんは、そのサラ金問題から今日の反貧困と。

 せんだって公述人で来ていただきました湯浅さんは滑り台社会だと言いましたが、別に、派遣村に至るまでの方々は、これは失礼な言い方ですが、とても怠けていて、本当にはしにも棒にもかからなくてそうなっているのではない、むしろ、社会の構造の中でどこにも歯どめがない貧困が生じているという事態として、やはり政治の責任なんだろうと思うのです。

 先ほど宇都宮さんから具体的に幾つかの御指摘がありましたが、先生がサラ金問題にかかわられ今日の派遣村の取り組みに至るまで、まず、先生が述べられたことの繰り返しかもしれませんが、政治的には何をトータルでなしていくべきか。貧困率の捕捉、生活保護の捕捉の問題もおっしゃいましたが、私は、今時代は大きな転換点で、その中で政治が最低限これをすべきだというようなことがあると思うので、もう一度この点についてお願いいたします。

宇都宮参考人 阿部先生御指摘のとおり、私は三十年近くサラ金問題、多重債務問題に取り組んできたんですけれども、今から思うと、多重債務問題自体が日本の貧困問題の現象形態だと思っております。

 やはり、多重債務者に陥る人、それからサラ金とかクレジット、高利のお金を利用する人は、低所得者が多いですね。日弁連の実態調査でも、大体破産者の八割ぐらいが月収二十万未満なんですね。それから、やはり破産の原因として、経済苦、生活苦が圧倒的に多いわけです。そういう人たちに対するセーフティーネットがしかれていませんので、高利のお金に頼るしかないんですね。

 私は、二〇〇〇年に日弁連の調査団としてドイツ、フランスの消費者金融の実態調査をやったことがあるんですけれども、ドイツ、フランスには日本のようなサラ金とかやみ金は全くないわけです。銀行が消費者金融をやっていますし、銀行が中小企業金融をやっています。それを利用できない人に対して、かなり手厚いセーフティーネットがしかれております。だから、日本みたいな多重債務問題はヨーロッパにはない。同じ資本主義的な経済形態をとってもそういう国があるんだということでびっくりしましたし、私自身も、何とか日本がそういう社会になればということで活動をしてきたわけです。

 それで、やはり政治の問題としては、そういう背景にある貧困の問題に十分焦点を当ててこなかったんじゃないかと思います。社会の風潮としても、やはり日本は一億総中流ということで、貧困は見えなくなってしまった。それから、ここ数年は格差の問題が議論されていますけれども、格差で議論していくと、あっていいのか悪いのかという議論になってしまう。ところが、貧困の実態は、この前NHKの正月の番組で竹中さんですら貧困はあっては悪いということを言っていましたので、人間らしい生活のできない生活者がふえていくことは、これは社会的に絶対容認できないですね。

 それで、ヨーロッパでは、随分この貧困の問題に政府も実態調査をやっていますし、そこの削減をどうするかということが大きな政治課題になっています。国連もそういうような計画を立てていますね。例えばイギリスの場合、ブレア政権の時代に、子供の貧困の実態調査をやっています。子供の貧困率がすごくふえているわけですね。それで、二〇一〇年までにイギリスは子供の貧困を半減するという計画を立てて、そのための、教育、社会保障、さまざまな総合的な対策をとってきているわけですね。

 日本でこういうようなことが真っ正面から政治課題になって、そして、政府としていかに貧困を削減するかということをやられたことがあるかというと、全くないわけですね。そして、気がつけば世界第二位の貧困大国になっちゃったということなので、私は、労働者派遣法の改正についても、そういう視点、働いている人の権利を保護する、そういう人たちが貧困に陥らないようにどうすればいいのかという議論が全く欠けていたんじゃないかと思っております。

 表面的な、多様な働き方を望む労働者のニーズにこたえるというような議論がなされましたけれども、では生身で働いている労働者はどんな状態なんだということがもっとしっかり議論されなきゃいけなかったと思いますし、法律ができた後のフォローが全くなされていないですね。

 今回は、派遣切りということで、集中的に派遣労働者の実態があらわれましたけれども、実は、我々、数年前から、こういうような派遣切りされて野宿になった人の相談を受けているわけです。だから、そういうことについても、もっと政治がそういう人たちに寄り添って実態調査を深めていれば、今日の事態はもう少し防げたんじゃないかと思っております。

阿部(知)委員 貴重な御指摘、ありがとうございます。

 貧困を政治の正面の課題にせよということで、御指摘のあった住宅や働き方や医療や教育ということを、これからも国会の中できちんと責任を持って論じていきたいと思います。

 引き続いて、川口参考人にお願いいたします。

 参考人はヨーロッパでの職歴というかお仕事も長いように資料から拝見いたしましたが、私は、先ほどの笠井委員のお尋ねの企業の社会的責任ということを具体的責任と言いかえて少し御質疑をしたいと思うのです。本来であれば、例えば経団連のしかるべきCEO等々に匹敵する方がこの場へ来られて日本のこれからの産業のあり方等も論じ、その見通しの中で、やはりきょうの川口参考人のいろいろな苦渋の言葉、もう絶望的な企業の状況等々ありましたから、そういうことも含めて、どこに活路を見出すかを論じた上で、その中で労務管理、いわゆる雇用情勢の問題も論じるべきと思いますが、きょうは川口参考人の御出席ですので、その点に絞ってお伺いをしたいと思います。

 私が社会的責任を具体的責任と言いかえたのは、先ほど宇都宮参考人がおっしゃったように、例えば派遣法はできたけれども、それが具体的にどういうふうに労働現場や個人、大事な労働者をひずませてきたかということに、この際やはり企業にもきちんとした視点を持っていただきたいと私もまた思うものであります。

 例えば、派遣先に当たられると思いますが、多くの自動車業界は、先ほどの偽装請負等々、あるいは有期雇用の年限が終わった後の正社員化という問題と同時に、このたびの解雇ということだけをとったとしても、まだ契約期間の中にあるにもかかわらず違法解雇、こういうことも行われているのではないか、そういう実態については、これは労務管理の基本の基本ですから、どのように把握しておられるか。

 私が受けた印象は、残念ながら、ちょっとお話の中では、その労務管理の中に非正規の、派遣の皆さんの姿が見えない。でも、確かにそこにいて働いておられて、そして契約途中で首を切られたり、それからもう一点、派遣先は、解雇せざるを得ないときに、例えば同じ企業グループ内で他の部署を紹介する等々をしなければいけない指針もあるかと思うのですね。解雇に当たって、こうした期間内の解雇や、あるいは実際どのくらい他の工場あるいは企業グループ内の部署への転換が図られてきたのか、その実態はいかにというところはいかがでしょうか。

川口参考人 ただいま御指摘の点ですけれども、まず、基本的に、非正規の方々の中で希望者、あくまでも希望される方ですけれども、希望される方で会社としてもぜひ正規に登用したいという方は、実績としましても、過去五年、先ほど申しましたけれども一万人に上る登用を図ってきております。その辺ももう一度御認識いただければ幸いでございます。

 自動車産業の中で、基本的に、コンプライアンス違反がある、途中で首を切るといったことは私自身は認識しておりませんけれども、コンプライアンスの遵守ということは企業としての当然の責任であると思います。もちろん、契約の途中であった場合でも、派遣の場合ですと、その一月前にノーティスを出す、こういった点に関しましては最低限の努力をやってきていると思います。

 配置転換に関する御指摘もあったかと思いますけれども、そこの部分につきましては、まさにグループ企業、あるいは生産工場であれば別の職場移転とかを頻繁にやっております。それから、夜勤とか昼勤とかシフトがありますけれども、そういったシフト対応といったことも対応しております。そうしたところは、基本的に正規従業員を中心に、できるだけ雇用を維持するという観点で対応してきている内容かと存じます。

 以上でございます。

阿部(知)委員 まず、コンプライアンス違反はないということは、ちょっとやはり認識が違っておられるのではないか。

 例えば、具体的ですが、藤沢というところでI自動車というのがありまして、十一月の末に、十二月末で九百六十人首を切るぞという通告がありました。ところが、ここは、十月までは増産に次ぐ増産で、休日も派遣の人は出ておられたわけです。それから、本当は三月までの契約でありました。それが十二月で途中解約になりました。小さな労働組合ですけれども、労働組合が一生懸命交渉をされて、とりあえず三月末までは期間工については継続がなされました。しかし、これも何回かの団体交渉の結果で、私どもから見れば、団交がなければ、当然このコンプライアンス違反は違反としてあっただろうと思うわけです。

 これはたまたま私が身近で経験した例なので、契約期間中の解雇というのはほかでも挙げられておりますし、それは一カ月前に言ったからいいというのではないんだ。それから、増産に次ぐ増産で、そのわずか翌月には解雇ということは、私は、その間あらゆる、例えば経営者側の賃金カットとかいろいろなことをしたんだ、やれる努力は全部したからではないと思うんです。派遣切りという言葉が使われるのは、余りにも急速だからなんだと思うんです。そこに余りの不公正、不公平があるからこそ、今日、社会的に問題になったのではないか。

 きょう、川口参考人は資料等々を御準備じゃないと思いますから、ぜひ関連の傘下でそうした契約期間内のいろいろな解雇が、解約があったという事実をお調べいただきたいし、もう一つきょうはぜひお願いがありますが、この私の地元のI自動車では、ある意味では私は偉いと思いましたが、派遣の皆さんの団交もお受けになったわけです。派遣だからといって、はなから派遣先が団交を拒否する場合もおありです。宇都宮参考人のお話の中に、派遣先の方もきちんと、雇用責任ではないです、でも、ある意味での社会責任を負って、この派遣の皆さんともしかるべく団体交渉の場に臨んでくれという御意見がありました。これは、労務管理上、私は非常に重要だと思います。この点について、お考えを最後にお伺いしたいと思います。

川口参考人 個社の状況に関しましては、自工会としては把握しておりませんので、今の先生の御指摘にはお答えしかねると存じます。

阿部(知)委員 何のための労務管理であるか、誠意を持ってやはり臨まれて、社会の責任を果たしていただきたいと思います。

 終わります。

衛藤委員長 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川でございます。

 本日は、参考人の皆様、大変貴重な御意見をありがとうございました。私は最後の質疑者でございます。二十分の時間の中で質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほど、川口参考人のお言葉の中に、製造業の派遣をやめると、結果的に、業界の物づくりができなくなって、製造業全体ができなくなって、国外での物づくりに変わっていってしまう、国外に出ていってしまう、安い物づくりというのはやはり外に求めるというような発言がございまして、そうなると、それは暗に、安い労働者を国内で必要としているんだ、その人たちというのが非正規労働者であったりということになってくるのかなと思いますけれども、これからの経済が、日本の経済というのも回復してくる。あらゆる経済対策を打つことによって経済が回復してくると思いますけれども、そのときに、この非正規労働者の方たちをまた再雇用されるというふうにもおっしゃっておられました。

 そのときに、今、これだけ社会問題になってきていますね、派遣労働者の雇いどめであったり派遣切りというものも含めて。では、業界としてどのような雇用の仕方、契約の仕方に変えていくのが望ましいか、それをどのようにお考えなのか、川口参考人にお伺いしたいというふうに思います。

川口参考人 先ほどから若干繰り返しになる点もあるかもしれませんけれども、非正規の労働というものが自動車産業に果たしてきた役割はやはり大きい、そういう点はあると存じます。それは、市場の変動というものは常にある、その中でいかに柔軟に生産面で対応していくかというのは、これはもう、国際競争の中にさらされた日本の自動車産業の縮図ではないのかなと存じます。

 そうした中で、そういった生産の弾力性、柔軟性を確保するために非正規の従業員の労働サービスというものを十分に適用していくということは、日本の自動車産業が競争力を維持していく上で非常に重要である。したがいまして、また今後の景気回復の局面でやはりその同じメリットを生かしていくという観点において、非正規の再雇用、非正規労働の提供というものを今後とも利用していければ、有効な日本の競争力維持につながると考えます。

糸川委員 ただ、これだけ社会問題化してきておりますから、今までと同等の、同じような非正規雇用者の採用、こういうのでは正直難しいのかな、私たちも、今これを検討して、派遣のあり方というのをこれから考えていかなきゃいけないというふうに思っています。

 きょう宇都宮参考人からいただきました資料では、やはりそういう派遣労働者というのがあるということ、そして、派遣切りを行っている企業が社会的責任を果たす必要があると。そういう中で、例えば、非正規労働者の生活・就労支援基金というものもあったらどうだろうかというようなことも考えていらっしゃると思いますけれども、この基金というのはどういうようなものを想定していらっしゃるのか、詳しく教えていただけますでしょうか。

宇都宮参考人 先ほどお話ししましたように、派遣村の村民に対しては、結局は、最後のセーフティーネットの生活保護の活用、それからあと生活福祉資金の一部である緊急小口資金貸し付け、こういうものを利用して、住まいを確保して今再就職活動をやっている。一部、仕事が見つかった方もいますけれども、これは全部税金なんですね。

 だけれども、先ほどお話ししましたように、この間、こういう経済不況になる前は、自動車業界を初めとして大変な利益を上げてきました。それは、そこで働いていた派遣労働者の労働の結果でもあるわけですね。ところが、こういう不況になると、まさに雇用の調整弁として首を切ってしまう。それに対する企業としての責任は、経済的な負担は全くなされていないんですね。

 だから、そういうことでいいのかということで、むしろ、生活保護とかそういう緊急小口資金、税金だけじゃなくて、もう少し、個別企業だけじゃなくて企業全体としての、派遣労働者を使っている企業に給付金を出させて基金を使ったらどうか。場合によれば、そこに政府のお金も一部入れるということも考えられると思いますけれども、それを運用して、最後のセーフティーネットにかわり得るような、生活・就労支援基金みたいな制度をつくり上げれば、企業としての社会的責任を果たせといっても、果たし方、形を見つけてあげないとなかなかやりようがないのかなと思いますので、そういう提案をさせていただいたということです。

糸川委員 ありがとうございます。

 今回、宇都宮参考人は派遣村の村長として非常に御尽力をされたわけでございます。今、NPO法人とかいろいろなところでこの支援活動というのを継続してやっているわけでございますが、ボランティアに対する支援ということに対して、日本の政府、行政が本当に充実してネットワークをしっかりとできているかというと私は疑問があるところでありますけれども、現場にいらっしゃる先生がどのように受けとめていらっしゃって、そして、これからこういう支援活動に対して、行政はどういうふうにボランティアの方たち、そしてNPO法人に対して接すべきだというふうにお考えでしょうか。

宇都宮参考人 今回の非常事態に対して比較的スムーズに対応できているのは、ボランティアグループとか、あるいは派遣村の場合は労働組合の皆さん方と一緒にやったんですけれども、そういう民間のレベルというのは、いろいろな法律の拘束もありませんのですぐ対応できるんですね。

 ただ、実際は、財政的には非常に、それこそ貧困な団体が多くて、個人の自己犠牲によってこういう活動がなされています。派遣村は一月の十二日で終わったのかというと、実はその後もずっと続いていまして、二月の初めごろに都内の旅館からやっと、大体ほとんどの村民が、生活保護等、あるいは仕事を得て自立できているんですね。そこまでずっとバックアップしたというのは、参加した、実行委員会を形成している労働組合とかあるいはボランティアグループなんですけれども、全く手弁当なんですね。それから、村長をやっている湯浅誠さんは、もやいという野宿者支援のNPO法人をつくっているんですけれども、ここ自体がもう破綻の危機に瀕しているわけですね。

 そういうような、財政的には非常に厳しい状況下で非常に自己犠牲的な活動をやっている団体がたくさんあるんですけれども、私は、そういう団体が、派遣村の活動を通じて、日本全国に民間レベルでのこういう派遣村を何百カ所もつくれるぐらいの力を持たないとだめだなと。全部政府とか自治体に任せていくだけではだめで、やはり民間レベルも力をつけなきゃいけない。そのためのやはり人的な支援とか財政的な問題を、もう少しそういう民間レベルのボランティア活動を活性化するために政府として配慮するような対策があってもいいのではないか、そういうふうにつくづく感じております。

糸川委員 非常にボランティアというのは貧困で、自己犠牲によって成り立っているということも理解しているわけですが、川口参考人、やはりこういうボランティアの方たちが、企業が行った派遣切りによって本当に貧困層の方々が苦労されていらっしゃるのをボランティアの方たちが支援し、そして政府もこれから支援をしていかなきゃいけないということを言っているわけですが、宇都宮参考人がおっしゃられているような、例えば非正規労働者の生活・就労支援基金みたいなものをこれから企業に求めていく中で、きょう、参考人は日産自動車というところでいらっしゃっているということではないのかもしれませんけれども、例えば企業としてそういう協力ができるのかどうか、製造業全体としてそういうことも、そしてまた会社として社会的責任を負っていく中でそういうことが可能かどうか、お答えいただけますでしょうか。

川口参考人 今のお話はきょう初めてお聞きする話なので、今まだ、その新しい話を出す前に、現在のセーフティーネットと言われる諸々の課題、雇用保険の拡充ですとか住居の問題とか、そういったところをもう一回きちっと洗い直して、どこがうまくいってどこがうまくいっていないのか、やはりそこのところをもう一度検証した上で対応を考えていただくということの方が先ではないのかと存じ上げます。

糸川委員 きょう初めて聞いたのかもしれませんから、ぜひ、こういうのは団体の中でもまた御検討いただきたいなと思いますし、せっかくこういう機会に参考人としていらっしゃったわけですから、またそういうことも情報として持って帰っていただければというふうに思います。

 今、どうしても最低賃金の問題というのがこれからまた議論になってくると思うんですけれども、我が国は時給が七百三円だということですね。厚生労働省の海外情勢報告によりますと、先進国の中では最低水準にあるということでございます。

 働く貧困層、ワーキングプア、こういう人たちをなくすためにやはり最低賃金を引き上げる必要があるのではないかということが言われていますけれども、この引き上げがもたらす効果、影響というんでしょうか、よい面も悪い面もあると思いますが、このことについて、お二人の参考人からそれぞれ御意見をいただきたいというふうに思います。

宇都宮参考人 先ほど冒頭に、最低賃金の大幅引き上げが必要だというふうに意見を述べさせてもらいました。

 先生おっしゃるとおり、日本は先進国でも最低ですね。この今の最低賃金で、フル稼働しても生活保護水準以下の収入しか得られないというような都府県がたくさんあるわけです。少なくとも、働けばそれこそ貧困から脱却できる、人間らしい生活ができるというところまで最低賃金を引き上げるべきだと思いますね。そういうところから手がけていかないと、なかなかワーキングプアの問題は解決しない。だから、労働者派遣法の問題とかいろいろありますけれども、最低賃金の引き上げというのは、まず最初にやるべきことの一つじゃないかと思います。

 これまで、こういうことが問題になって少しずつ上がってきていますけれども、まだまだ生活保護水準以下というのは、これだとなかなかワーキングプアの問題は解決しないと思いますので、ぜひ国会においてもよろしくお願いしたいと思います。

川口参考人 自工会の立場として最低賃金を云々するということは難しいと思いますけれども、ただ、最低賃金の内容というのは、その時々の状況とか雇用の情勢、あるいは全体の産業の状態等を総合的に勘案し、かつ、BRICsとか新興国の台頭とか、そういった国際的な観点での賃金のあり方等を総合的に判断していただいて御決定いただければと存じ上げます。

糸川委員 ぜひ、川口参考人、会社の、企業の中でも重要な地位につかれていらっしゃるわけでございますから、こういう賃金の問題、そういうこともしっかりと御検討いただきたいなというふうに思います。

 私もそうでしたけれども、社会に出て、だんだん所得が上がっていくということに対しては喜びもあるし、自分のモチベーションも高まっていくし、そういう環境というのをやはり社会的責任の中でしっかりと果たしていただければなと思うわけです。苦しいのはわかりますけれども、苦しいからといって賃金をカットする、もしくは据え置くとか、そういうことだけじゃなくて、やはり正社員の方たちに対しても、そして非正規の方たちにも手を差し伸べていただけたらいいなというふうに思うわけです。

 川口参考人に、ちょっとこれは個人的な質問になってしまうかもしれませんけれども、日産が操業停止工場の正社員に副業容認を検討しているということが出ておりまして、これは川口さんがおっしゃられたのかどうかなんですけれども、従業員の健康管理等を含めて慎重に検討して結論を出していきたいというようなこともおっしゃっていますが、この正社員の副業ということに対してどのような御認識を持っていらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

川口参考人 本日は、自工会の立場で参っておりますので、日産そのものの考え方についてはあえて触れたくないんですけれども、一般論としましては、現在大幅な休業状況にある、そういった中で、従業員の方から副業の申し出があった場合、どういうふうに対応するか。原則的には禁じております。原則的には禁じておりますが、今の特別な環境の中で、そういう面を対応していくかどうか、今先生がおっしゃったとおり、健康管理の問題とかも含めて総合的に判断していく必要があると思いますし、自工会の中では、その判断は個社の判断にゆだねるという形になるかと存じます。

糸川委員 済みません、きょうは自工会の方からいらっしゃっているということで、非常にお答えしづらかったかもしれませんけれども。

 これも、もう余り時間がありませんので、最後に宇都宮参考人と川口参考人にお伺いしたいんですけれども、やはり非正規労働者そして正規労働者あわせまして、こういう今の経済情勢になって、これからに対して非常に不安を抱えていらっしゃる方というのは多いと思うんですね。こういう方々に対してカウンセリング等というのも必要になってくると思うんですけれども、例えば社会的取り組みの中で政府はこういうことをしてくれたらいいのになとか、そういうカウンセリングについての要望がありましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

宇都宮参考人 これは派遣村実行委員会の方からも要望していますが、やはり、仕事を失って生活資金もままならない、中には住居も失っている人がいるわけですけれども、そういう人にいろいろな相談窓口というのは、あっちに行け、こっちに行けというのは、とても相談できないんですね、交通費すらない人もいますから。

 一カ所に相談窓口をつくって、そこに、行政の方から、就労それから生活相談、それから貸し付けの相談、それから借金を抱えている人もいますから、そういう相談、一カ所でワンストップサービスができるような相談窓口を、ぜひ政府が行政の方にも、自治体にも働きかけてつくっていただけたらと思います。なかなかこれがまだできていない。名古屋ですらできていないんです。よろしくお願いします。

川口参考人 今、宇都宮先生がおっしゃったような内容だとしましたら、それはやはりいわゆるパブリックサービス的な、公としての観点でのサービスになりますので、企業の方としては、そこの中でどういう形でサポートできるか、そういう形での参考意見を述べさせていただくような形で参加という形になるかと存じます。

糸川委員 ありがとうございました。

 大変貴重な御意見をありがとうございました。終わります。

衛藤委員長 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人川口均君、参考人宇都宮健児君におかれましては、御多用中のところ、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房郵政民営化推進室長振角秀行君、国家公務員制度改革推進本部事務局長立花宏君、内閣府食品安全委員会事務局長栗本まさ子君、内閣府公益認定等委員会事務局長原正之君、内閣府官民人材交流センター審議官平山眞君、金融庁総務企画局長内藤純一君、総務省大臣官房長田中順一君、総務省人事・恩給局長村木裕隆君、総務省情報流通行政局郵政行政部長吉良裕臣君、総務省統計局長川崎茂君、外務省大臣官房審議官羽田浩二君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、文部科学省生涯学習政策局長清水潔君、厚生労働省医政局長外口崇君、厚生労働省社会・援護局長阿曽沼慎司君、厚生労働省保険局長水田邦雄君、農林水産省総合食料局長町田勝弘君、経済産業省産業技術環境局長鈴木正徳君、経済産業省製造産業局長細野哲弘君、資源エネルギー庁長官石田徹君、中小企業庁長官長谷川榮一君、国土交通省大臣官房技術審議官関克己君、国土交通省総合政策局長大口清一君、国土交通省道路局長金井道夫君、環境省地球環境局長寺田達志君、防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 次に、お諮りいたします。

 最高裁判所事務総局小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。

川内委員 川内でございます。一時間半、閣僚の皆様方、お忙しいところ恐縮でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、質問要旨にはかんぽの宿から書いてございますが、ちょっと順番を入れかえさせていただいて、生活保護の母子加算について最初に質問をさせていただきたいと思います。

 生活保護の母子加算はこの四月一日から廃止をされるという予定になっているそうでございますが、これは、今本当に、全国の母子家庭、百二十万世帯というふうに言われているそうでございますが、この百年に一度の大変厳しい経済状況の中で、なおさら厳しい状況に置かれているというふうに思いますが、なぜ廃止をされるのかということについて、まず御説明をいただきたいと存じます。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 生活保護の母子加算につきましては、母子加算を含めた生活扶助の基準額が、一般の母子世帯の平均的な消費水準と比べますと、生活保護を受けておられる母子世帯の方が高いということでございまして、そういう意味で、一般の母子世帯との公平性の観点を踏まえまして、一律機械的な給付を見直す、世帯の自立に向けた新しい給付に転換する、そういう考え方で廃止をするということでございます。

川内委員 一般的な母子世帯と比べて扶助額が多かったのだという御説明でございましたが、それでは、一般的な母子世帯というものをどのようにして算定されたのかということを教えてください。

阿曽沼政府参考人 総務省が実施しております全国消費実態調査に基づきまして、母一人子一人の消費支出額でその消費水準を比べまして、細かく申し上げますと、五段階の低い方から高い方までございますが、その真ん中の第三・五分位の世帯の消費水準と生活扶助の基準額とを比べたということでございます。

川内委員 総務省が行っている全国消費実態調査において、母子世帯、母一人子一人の世帯を五段階に分けて、その真ん中の消費実態を一般的な母子世帯としたのだという御説明でございました。

 それでは、この全国消費実態調査における母一人子一人の母子世帯のサンプル数は幾つですかということを、総務省統計局から御答弁いただきたいと思います。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十一年に私ども総務省統計局が行いました全国消費実態調査の中では、約六万世帯が対象でございますが、その中の母子世帯は四百九十八世帯でございます。

川内委員 母一人子一人の母子世帯は、サンプル数四百九十八世帯しかないんですね。百二十万世帯ですよ、全体では。それを、四百九十八世帯を五つに分けて、その真ん中をとりました、それが一般的な母子世帯の消費実態ですということで比べたというのが厚生労働省の説明です。

 それでは、もう一回総務省統計局にお尋ねをいたしますが、四百九十八世帯を五分位、五つのクラスに分けるというのは、統計的に有意でしょうか、統計的に意味があるんでしょうか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの行っております全国消費実態調査は、非常に精密な標本設計に基づいて全国の世帯の縮図になるような統計をつくるというものでございますので、その中での四百九十八世帯というと少なく見えるかもしれませんけれども、かなり代表性の高い標本であるというふうに考えております。

 これをどのようにお使いになってその結果を出されるかということにもよるのですが、これが統計的に有意であるかどうかというのは、どのような仮説を立てられまして、またどういう水準で仮説を検証していくかということで変わるものでございます。したがいまして、今回の結果につきまして統計上有意であるかどうかということを私どもの方で直ちに判断することは困難ではございますが、この件につきましては、厚生労働省において適切に判断されたものであるというふうに考えております。

川内委員 いや、総務省さん、統計をつかさどる統計局として、私はその答弁はちょっと責任を回避した答弁ではないかというふうに思います。

 それでは、六十歳以上の単身者の世帯を、サンプル数は幾つとっていますか、全国消費実態調査で。

川崎政府参考人 恐縮でございますが、お尋ねを事前にいただいておりませんでしたので、手元にちょっと数字が用意してございませんので、直ちに手元にある資料を調べさせていただきます。

川内委員 委員長、これは大変大事な数字なんですよ。

 では、単身高齢者の世帯を、統計局としては幾つの分位に分けて公表していますか。(発言する者あり)

 教えてやれよという声があったので。私が統計局からいただいた資料では、六十歳以上の単身者の世帯については、四つの分位に分けて統計をしています。四つの分位、四つのクラスに分けているということですね。ということは、四つのクラスに分けるのがぎりぎり統計的に有意であるということを統計局は六十歳以上の世帯については判断しているということなんですよ。

 では、母子世帯を五つの分位に分けて、それで比べることが統計的に有意なのか、それが意味があるのかというと、私は、統計局はしっかり答えなきゃいかぬ。まあ、はっきりわかりませんと言ったわけですね。先ほども、有意ですとは言い切れないわけですね。

 わかりましたか、数字。今、ちょっと私がしゃべってつないでいましたけれども。単身、六十歳以上の高齢者の世帯。だって、すぐ出るじゃないですか、数ぐらい。

衛藤委員長 川内君、後ほど答弁させますから。

川内委員 いや、委員長、生活保護の母子世帯については、これは委員長も大変御関心が深い問題であるというふうに思います。

 テレビで、私も母子加算額、生活保護の御家庭の問題に大変心を痛めています、これについては高木さんからもお話がありました、高木さんというのは公明党の高木先生ですが、何とか考えなければいかぬと思っていると。さらに続けて、御関係の皆さんだけではなく、私ども国会議員も、多くの国会議員がそのように心を痛めている、そう思っていますから、これについてここで発言する以上、必ずやりますと。必ずやります、こう予算委員長は、予算委員長としてお出になられたテレビ番組で、生活保護の母子加算については、これは廃止してはならないんだと。私は、まことに正しいお考えであるというふうに思います。

 さらに大臣、これは、生活保護の母子加算を廃止する、あるいはそのままにしておくというのは、大臣告示、舛添大臣の一存で決められることでございます。一存で決められるんです、大臣告示ですから。今すぐにでもできることなんです、そのままにするよと。(発言する者あり)まあ、一存では決められない、それはそのとおり。

 だけれども、権限としては、大臣告示だから厚生労働大臣が発出するわけでございまして、この委員会の委員の皆さん、そして委員長、生活保護の母子加算を廃止すべきではないということについては、みんな意見は一致すると思いますよ。だれも、いや、切っていいんだと言う人はいませんよ。

 そもそも、この生活保護の母子加算を廃止するという検討会では、廃止していいという意見は少数意見だったんですからね。それを、厚生労働省の事務方が廃止するということに決めたわけですね。大臣、これは、生活保護の母子加算についてはきちんと復活をすると。予算は大丈夫ですから。ありますよ。

舛添国務大臣 一つの政策をどういうふうに決めるかというときに、さまざまな配慮が必要で、最終的に私がその告示を発出するにしろ、これは社会保障審議会の中で生活保護制度の在り方に関する専門委員会、こういうところで専門家によく検討していただく。

 そのとき、今総務省にお尋ねになったデータなんかがあると思いますけれども、もともと母子加算というのは、戦後すぐ、日本が貧しかったときに、生活保護自体の水準が非常に低かった、とてもじゃないけれども母子家庭はやっていけないということで、そもそも加算された。

 しかし、不断に見直していかないといけないし、社会保障制度というのは、常にあらゆる制度についてモラルハザードが起こってくる。例えば、生活保護のあり方を見たときに、今、年金の問題もいろいろ大きな問題がありますが、年金をもらうよりは生活保護の方がいいじゃないか、あっちの方がいいじゃないかという方がいるとか、いろいろな問題がありますね。

 そういう中で、だんだん生活保護の水準も上がっていきました。そうすると、今のデータなんかを使いますと、母子家庭への加算を加えたときに、普通の母子家庭と比べたときにちょっと多過ぎるのじゃないかという意見が出て、今のように、三年かけて、十七年、十八年、十九年で少しずつなくしていくというのが一つ。

 それから、ハローワークでいろいろなことを今やっていますが、今、雇用の問題が大変大きいですけれども、やはり就業の支援、仕事を持ってもらう。働ける能力があれば、母子家庭であってもお母さんがいろいろな仕事をしていただく、そしてお金も稼いでいただく、そういうことの御支援を申し上げるということで、そちらを一生懸命やってくれる方々にはきちんと助成をしますということです。

 それから、高校生以上の子供のときには、学校に行くための授業料を払わないといけないですから、その補助も含めているわけでありまして、それは、先ほどですけれども例えば就労支援月額一万円加えます、それから、職業訓練をやっていただく方、つまり働く意欲はあるんだ、こういうお母さんには五千円差し上げるということでありますし、今言った高等学校就学費用ということで、一世帯当たり一万五千円。

 だから、そういう全体のパッケージで、仕事につくことをお勧めしながら、そして片一方でお助けすることは助ける、しかし全体の公平も考えるということで、一つの政策のパッケージです。

 ただ、今これだけ経済が悪くなったときに、今の制度以外で、例えば緊急的にそういう方を救うという手もあります。ですから、これはそれぞれの政策のパッケージなので、御意見は今しっかり承った上で、これはまた専門の委員会とも検討していただくとともに、母子加算自体の本来の問題もありますが、今緊急に救わないといけない人たちは、例えばほかの手で救えることがないかなというふうに思っていまして、問題意識は共有しておりますが、きょう私がすぐ、廃止、はい、もう大臣がこう決めたというのは、ちょっとお待ちいただきたいと思います。

川内委員 統計局、出ましたか。いや、今大臣がおっしゃられた検討会で検討したのだということに、疑義がありますということを私は申し上げているわけですね、疑義がありますと。

 なぜかなら、では、まず答えられることを答えていただきますが、検討会で、委員全体が何人だったのか、その中で母子加算を廃止してよいと明確に発言した人は何人だったのか、そのことからまず言ってください。それで、サンプル数が少ないねということは指摘されていたということも言ってください。

阿曽沼政府参考人 審議会に設けられた検討会でございますので、今わかる範囲で申し上げますけれども、全体としては、一般の母子家庭の消費水準との比較の観点からは、現行の母子加算は必ずしも妥当であるとは言えないという言い方がございました。それにつきまして、しかし、母子家庭は一般的に所得が低いことや、一の……(川内委員「いや、検討会の結果を聞いているんじゃなくて、賛成意見を言った人は全体の委員の中の何人ですかと私は質問をしているんです」と呼ぶ)

 検討会で実際にどういう御発言があって、何割の方が賛成して何割の方が反対かというようなデータは、今持ち合わせておりません、残念ながら。

川内委員 いや、きのう質問レクの中でちゃんとそういう議論しているじゃないですか。何でそんなごまかすの。予算委員長が、天下の予算委員長が大変な問題にしている問題ですよ。それについて、委員長、こんないいかげんな答弁を許すんですか。担当局長が、持ち合わせていませんからわかりませんとは、何ですか、それ。

舛添国務大臣 専門委員会の細かい数がわかり次第お知らせするようにします、それはこの場においてなり。

 私のところに来ている報告では、現行の母子加算は必ずしも妥当とは言えないというのが全体の意見ですが、ただ、統計調査における一般母子世帯の客体数、つまりサンプル数の少なさから、一般母子世帯の消費支出額との単純な比較によってこの基準の妥当性を判断することはできないという指摘もあったと。

 何名がやったというのは、これは数がわかり次第お知らせいたします。

川内委員 いや、社会・援護局長、それはひきょうですよ。きのう、ちゃんと私は、委員全体が何人で、母子加算を廃止していいと言っている委員は三人だねということを確認しているじゃないですか。(発言する者あり)いや、確認している。議事録ちゃんと読んでいるんですから、私は。その上で臨んでいる。何でごまかすんですか。

衛藤委員長 簡潔にお答えください。

阿曽沼政府参考人 きのうお伺いをしていないものですからあれなんですが、私が今担当から聞いたところによりますと、大体三人対三人というふうな、半々といいますか、そういうふうなお話でございました。

川内委員 委員全体は何人ですか。

阿曽沼政府参考人 委員の方は十二人おられて、それで賛成と反対が三人三人ということであったというふうに聞いております。

川内委員 いや、私が聞いたのは、委員全体が何人で、明確に母子加算は廃止してよろしいと言った委員は何人ですかということを聞いているわけですよ。

 十二人のうちで三人、明確に廃止してもいいということを発言しているわけで、これはそもそもその基礎となった統計にも疑義があるし、さらに検討会の結論にもおかしな点があるということですよ。

 高齢者の数字、わかりましたか。

川崎政府参考人 平成十一年の全国消費実態調査におきます六十歳以上の単身世帯の対象数でございますが、二千百六十世帯ということでございます。

川内委員 二千百六十世帯を四つの分位に分けて統計しているでしょう、総務省統計局は。

川崎政府参考人 そのとおりでございます。

川内委員 四つの分位に分けるというのは、五つの分位に分けるというのとは全然意味が違うんでしょう。ちょっと教えてくださいよ、我々この委員会の先生方に。私も素人だから。四つに分けるのと五つに分けるのは全然違うんだ、五つに分けると有意性が失われると。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 四つに分けたら有意性があって、五つに分けたら有意性がなくなる、そういう単純なものではないというふうに考えております。

 私どもの統計の結果は利用度の高いものを中心に出しておりまして、そういう中で、高齢者のところはかなりよく使われるということで出しておりましたが、母子世帯の部分につきましては、必ずしも一般的な利用頻度が高いわけではございませんでしたので、私どもの方の集計には出しておりませんで、それを、母子世帯の検討のために厚生労働省の方で独自に特別な集計をなさったということでございます。

 恐縮でございますが、私どもの方で、どのような詳細な集計の分析のやり方をされたかといったことがわかっておりませんので、そういう意味で、先ほど申し上げましたとおり、厚生労働省の方で、専門家もいらっしゃいますので、そちらで検討して適切に判断されたのではないかというふうに考えておるということでございます。

川内委員 それではちょっと聞き方を変えましょうか。

 総務省統計局は、例えば二千六百世帯の六十歳以上の単身世帯を四つの分位に分けて公表しています。しかし、では、母子世帯四百九十八世帯を五つの分位に分けて公表することに総務省統計局として責任を持てますか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 結果の利用というのは、非常に誤差も含みながら御利用いただくということが前提でございます。統計調査の結果は必ず、特に標本調査ですと標本誤差がございますので、その大きさを勘案いただきながら適切に御利用いただくというのが原則であると思いますが、私どもが公表しております結果というのは、基本的には十分使用にたえると思っておりますし、また、それを細分したからといって使えなくなるというものではございませんで、そこの誤差の評価をしていただければ十分使えるという可能性はございます。

川内委員 いや、私が聞いたのは、母子世帯四百九十八世帯を五分位に分けて公表することに、総務省統計局として、統計をつかさどる担当局として、責任を持って公表できますかと聞いているんです。

川崎政府参考人 これはにわかにはお答えしにくい部分でございます。標本誤差を評価した上でないと正確なお答えはできませんが、一般的に考えますと、五百世帯くらいあれば、それを五分位で集計して公表するということは、私どもの統計の中ではあり得ることであるというふうに考えております。

川内委員 全然レクで聞いたことと違うことを言うんですけれども。それは自信が持てない、責任が持てませんということを私ずっと再三にわたって詰めてきたんですけれども、やはりそれはいいことなんですね。

 全国で百二十万世帯ある母子世帯が大変に厳しい状況に置かれている中で、母子加算が切られようとしています。その基礎となるデータとして、全国消費実態調査、四百九十八世帯しかないものを厚生労働省が使い、それを五分位に分けて、真ん中の人たちが一般的な母子世帯だということで判定をし、扶助額の方が多いから切りますという判断をした、その基礎となりましたということについて、別にいいんじゃないですか、そういうこともあるんじゃないですか、そういうことなんですか。私はちょっと信じられないですね。

 委員長、委員長もこれは必ずやりますというふうにおっしゃっていらっしゃる案件なんですね。私は委員長と思いが同じなので、母子世帯の母子加算について、これはこの厳しい状況の中で本当に生命線だというふうに思います。

 ぜひ舛添大臣、残された時間は余りないですけれども、本当に母子世帯の生活実態というものがどうなのかということを、生活保護を受けている母子世帯の生活実態、そうでない母子世帯の生活実態というものをきちんと調査して、少なくとも二千世帯ぐらいはきちんと調査をした上でこうだと言うならまだ納得できますが、四百九十八世帯でこうですよと言われても、それは私が少なくとも今まで受けた、きょう総務省統計局はちょっと言うことが違ったけれども、責任持てませんと言ったんですから。そこは大臣、母子世帯の生活実態について厚生労働省としてきちんともう一回調査すると。

 全国消費実態調査の中における四百九十八世帯のサンプルを使ったものが議論の基礎になるのではなくて、やはりサンプル数が少ないということは指摘にもあるわけですから、二千世帯ぐらい調査をした上で、もう一度大臣告示を発出するかどうか考えるというぐらいは言っていただかないと、この予算委員会の委員長が必ずやりますと言っていることですから、これでは政府予算が通らなくなっちゃいますよ、そうでしょう、委員長。

舛添国務大臣 こういう大変厳しい経済状況であります。国民全体が雇用の問題にさらされている。とりわけ、母子家庭の皆さん方が大変困窮している状況にあることは想像するに余りあるというふうに思っております。

 そういう意味で、例えばハローワークなんかでも、就業意欲の高い母子家庭のお母さん方に対する特別な支援を行っておりますし、マザーズハローワークのようなところもありますので、厚生省の諸機関、今のハローワークを含めて、そういうところからデータをくみ上げながら、どういう形で検討するか、これはまた総務省とも相談しながら、実態を見て、すぐ母子加算、その手もあると思いますが、それ以外のさまざまな施策でそういう方の窮状を救えるような手を検討させていただきたいと思います。

川内委員 委員長、委員長も、これは必ずやりますと委員長として御発言になっていらっしゃることですから、私も一生懸命協力しますので、ぜひ一緒にやりたいというふうに思います。

 一言御発言をお願いします。

衛藤委員長 川内博史君の発言を委員長としても重く受けとめております。

川内委員 それでは、次に、かんぽの宿について聞かせていただきます。

 平成十六年の郵政民営化の基本方針、それから平成十七年四月の法案との違いについて、郵政民営化の基本方針には、かんぽの宿あるいは郵貯施設について「分社化後のあり方を検討する。」とだけ書かれている。しかし、法案になると、日本郵政株式会社法の中で、五年以内の譲渡または廃止というふうに書かれている。これはだれが一体どういう形で検討したんですかということをお聞きしたらば、資料を下さいと申し上げたらば、本予算委員会に資料が提出されて、その資料とは、竹中平蔵郵政民営化担当大臣の御著書「竹中平蔵大臣日誌」なるものが政府からの資料として提出をされたわけでございます。それに、竹中平蔵さんは、郵政民営化準備室にいろいろ言うと情報が漏れるので全然別なところで法案の検討を行った、自分はそれをゲリラ部隊と呼んでいたというふうに書いてあるのでございます。

 「竹中平蔵大臣日誌」の中に出てくる、郵貯、簡保施設の五年以内の譲渡または廃止ということを竹中大臣とともに検討したであろうゲリラ部隊というのは一体何なのかということを教えていただきたいと思います。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 先生御指摘がございました、先日の理事会に抜粋を提出させていただきました竹中元大臣の著書の中で、同氏の私的な内輪のグループと指摘されているということは著書から知っておりますけれども、それ以上のことはちょっと我々承知しておらないというのが実情でございます。

川内委員 そうすると、この前も確認しましたが、郵政民営化準備室は、竹中大臣に指示をされて法案の作成だけをやった、検討したのではなくて、郵政民営化準備室は作成だけをやったということでよろしいですね。

振角政府参考人 引き続きお答えさせていただきたいと思います。

 御指摘のように、出しました資料にも書いてありますけれども、当時の竹中郵政民営化担当大臣は、こういうような旧加入者福祉施設については、本来の仕事、つまりコア業務でないので、資産を処分し撤退すべきということで判断されて、そういう形で指示をおろされたということでございます。それを受けまして、我々は、では処分するまでとりあえず当該施設をどこに承継させるかとか、あるいは譲渡または廃止までの猶予期間としてどの程度が必要か等の検討を行いまして、法制化に努めていったというのが経緯でございます。

川内委員 郵政民営化法案の概要には、かんぽの宿、郵貯施設については、譲渡または廃止と書かれていなくて、「日本郵政株式会社が暫定的(五年間)に保有」、こう書いてあるわけですね。概要を、こういうふうに書きなさい、譲渡、廃止と書いちゃだめよ、暫定的に保有と書きなさいという指示をしたのはだれですか。

振角政府参考人 お答えさせていただきます。

 当時の記録、そこまで細部にヒアリングまでしておりませんので、ここではちょっと今お答えはできません。御了承いただければと思います。

川内委員 それはおかしいですね。だって、さっき郵政民営化の、今は推進室長ですが、準備室では、五年間日本郵政が保有するとかどうするとか細かいところを検討しましたと言ったじゃないですか。では、概要版を、五年間暫定的に保有と、譲渡、廃止と書かずに暫定的に保有と書こうねという検討も郵政民営化準備室でしたんですかと聞いているわけですよ。大事なことですよ、これ。レクと違うことを言うからこんなことになるんだよ。

振角政府参考人 基本的には、法制局と先ほども申し上げましたような細部の点を詰めていったわけでございますけれども、先ほど指摘されたところについてちょっと正確な確認はしていないというのが今の実情でございます。

川内委員 では、この件については正確に聞いていただいて、この郵政民営化法案の概要になぜ譲渡、廃止と書かずに暫定的に保有と書いたのか、事情をまた教えていただきたいというふうに思います。

 続いて、このかんぽの宿について、メリルリンチとのアドバイザリー契約について聞かせていただきたいというふうに思います。

 メリルリンチとのアドバイザリー契約を、その書類をいただいたら、審査の上メリルリンチに決定した、こう書いてあったんですけれども、審査したその責任者というのはだれなんでしょうか。

横山参考人 お答えいたします。

 稟議の最終決裁者は、宿泊事業部を担当する、私とは違う別の担当役員でございます。

 しかしながら、私も、不動産、資産ソリューション部を担当する役員として、その合議の決裁には参加いたしておる次第でございます。

川内委員 一千万円のアドバイザリー契約ということでございますけれども、この一千万円の積算根拠を教えてください。

佐々木参考人 本件のメリルリンチのアドバイザリー業務を遂行するに当たりましては、担当者十一名を前提といたしましてこの業務内容を勘案いたしますると、月一千万円の手数料という形になったということでございます。

川内委員 いや、計算式を教えてくださいと言っているんです。

佐々木参考人 ちょっと細かくなりますが、マネジングディレクターあるいはディレクター、バイスプレジデント、担当ということで時間給に差がございまして、その時間給と、何人がそれに携わったかということ、それから月の実働時間をカウントしまして、それを足し合わせた額でこの額になったということでございます。

川内委員 いや、そうもったいつけずに、マネジングディレクターの時間給が幾らで何人とか、何時間とか、その積算の根拠を教えてくださいと言っているんですよ。

佐々木参考人 ちょっと細かくなりますが、マネジングディレクター格は、時間給二万円で三人、月の実働時間四十時間ということで、実働時間計百二十時間ということでございます。それから、ディレクター格が、時間給一万五千円、人数二人、実働時間が八十時間、実働時間計百六十時間。バイスプレジデント格は、時間給一万二千円、人数一人、月実働時間百時間、実働時間計百時間。担当が、時間給八千円、人数五人、月実働時間百時間で、実働時間の計が五百時間。以上を集計したものでございます。

川内委員 総務大臣、時間給二万円といったら、一日十六万円でございます。その人たち、時間給二万円、時間給一万五千円、時間給一万二千円、十一名と言いましたけれども、マネジングディレクターで月間の時間が百二十時間、その下の人が百六十時間、その下の人が百時間。これは、だれが働こうが、その時間だれかがマネジングディレクターとして勤めていれば、時間給二万円なわけですよね。これは、私、大変な金額だなというふうに思います。総務大臣も何かおっしゃりたいでしょうが、ちょっと後で総括的に御答弁いただきます。

 さらに、成功報酬、今度は、六億円と言われておりましたが、六億円の積算根拠、なぜ六億円の成功報酬が算定され得るのかということについて教えていただきたいと思います。

佐々木参考人 最初、当社の簿価前後では売れるのではないかというふうに想定をいたしまして、世田谷のレクセンターを含む簿価を当時百八十五億と見込んでおりましたことから、通常の不動産の仲介手数料は大体三%だというふうに考えておりまして、その同程度の水準と見込んで、百八十五億掛ける三%で約五・五億円になるんですが、六億円という水準で契約したものでございます。

川内委員 この説明もにわかには、ああそうですかと納得するにはちょっと。不動産売買であれば、不動産売買の手数料と同額を見込んでいましたということであれば、不動産としての評価をし、不動産として売買されればよかったのではないかというふうに思います。

 それでは、資産ソリューション部に、日本郵政公社にザイマックスという会社からお入りになられて、横山専務の下で御活躍をされていらっしゃる伊藤和博さんという方がいらっしゃいますが、この前、西川社長は、三井住友銀行の関係者の紹介で日本郵政に入ったんですよ、日本郵政の役員になったんですよということを教えていただきました。この伊藤和博さんは、三井住友銀行の関係者とは横山専務のことでよろしいんでしょうか。

横山参考人 お答え申し上げます。

 準備企画会社日本郵政になりましてからの話でございますが、当時、いろいろな分野で人材を募ろうということをしておりました中で、不動産分野につきましても何人か候補が挙がりました。そのうちの一人が伊藤でございまして、それ以外も採用したのでございますが、伊藤につきましては、確かに、三井住友銀行の関係者、今、日本郵政におります担当部長クラスからのノミネートの中から挙がってきた人物でございます。

 この人間を準備企画会社時代に人事部長の面接を通じて採用いたしまして、最終的に、十九年の十月一日に取締役会の決議で日本郵政の執行役に選任されたところでございます。

 以上でございます。

 ちなみに、私は、事前にこの伊藤は面識はございませんでした。

川内委員 これを余り長くやってもしようがないので、次に行きます。

 平成十九年の九月三十日までは、かんぽの宿の法的性格は簡易保険加入者福祉施設であるということでよろしいですね。

佐々木参考人 かんぽの宿等は、簡易生命保険法第百一条に定める簡易保険加入者福祉施設として設置されたものでございます。

 今先生御指摘の民営化前、すなわち日本郵政公社当時におきましては簡易生命保険法が効力を有しておりまして、当然、かんぽの宿の法的性格は簡易保険加入者福祉施設というふうに理解しております。

川内委員 郵政公社は、平成十七年からかんぽの宿について、加入者福祉施設について減損会計を始めているということでよろしいですか。

藤本参考人 お答えいたします。

 日本郵政公社におきましては、平成十七年の中間決算から減損会計を導入いたしてございます。

川内委員 十七年から減損会計を始めた、公社時代から始めたわけですが、かんぽの宿、加入者福祉施設事業というものは、平成十九年九月三十日、民営化される前日、郵政公社が閉鎖されるまでの間は、加入者福祉施設事業であり、いわゆるホテル事業ではないということでよろしいですか。

藤本参考人 公社期間中におきましては、簡易保険の加入者福祉施設という性格を持った事業でございました。

川内委員 私が聞いているのは、ホテルではあるが、ホテル事業ではないということでよろしいですね。泊まるわけだから、当然、旅館とかホテルなんですよ、泊まるんだから。ホテルだが、ホテル事業ではないということでよろしいですね。

藤本参考人 ホテルに類似した業態ではございますけれども、あくまでも簡易生命保険法上の位置づけでございます。

川内委員 郵政公社の業務方法書というのがありますよね。これは総務大臣が認可されるものなんですけれども、この業務方法書に、簡易生命保険の福祉施設について規定されているんですね。その利用料、どういう利用料の取り方をします、していいですよということがきちんと規定されているんですね。総務大臣認可です。

 この利用料の項目を読んでください。

佐々木参考人 かんぽの宿の運営を担当しておりますので、私の方から読ませていただきます。

 日本郵政公社においては、かんぽの宿等の利用料につきまして、今先生御指摘の日本郵政公社業務方法書第百五十三条第二項で、利用者が当該施設に要する費用の一部を負担するために支払うべき料金と定義されております。

 この定義は、簡易生命保険法第百一条三項において、簡易保険加入者福祉施設に要する費用は公社の負担とする、ただし、その一部は公社の定めるところにより当該施設の利用者の負担とすることができるというふうな規定を受けてのことだというふうに理解しております。

川内委員 この業務方法書の百五十三条には、今お答えになられたけれども、利用者は利用料の一部を負担することができる、基本的には郵政公社が全部運営しますよ、一部を負担してもらいますよということを書いてあるわけですね。さらには、「なるべく安いものでなければならない」ということも書いてあるわけでございます、第二項に。

 ということは、平成十九年九月三十日までは、加入者福祉施設事業は公社が主体的に運営をするものであって、利用者からはその利用料の一部をもらう。すなわち、赤字が当然だと。

 要するに、赤字という概念さえも実はおかしいんです。赤字、黒字という概念さえもおかしい。単なる簡易保険の営業のコストであるという理解でよろしいですね。

佐々木参考人 日本郵政公社当時におきましては、簡易保険事業の中で、かんぽの宿等は、今先生御指摘のように、簡易保険加入者福祉施設として、簡易保険の加入者に対する現物給付的サービスと位置づけられていたものでございます。したがって、かんぽの宿等の運営に要する費用は、簡易保険事業の運営に要するコストとして観念されていたものと認識しているところでございます。

 ただ、コストである以上、私ども、おのずから、適正な水準であるということが事業運営上求められることは当然でありまして、かんぽの宿等の経営改善のための取り組みを行ってきたということでございます。

川内委員 私が聞いたことに誠実に答えていただきたいんですが、コストを削減する努力はしなければならない、これはいかなる組織でもそうだと思います。コストを削減する努力はしなければならないが、赤字であるという言い方は、そもそも加入者福祉施設事業については当たらないですよねということを私は聞いております。

佐々木参考人 先ほどお答えいたしましたように、加入者福祉事業といたしましては、簡易保険事業の運営に要するコストということでとらえております。(川内委員「だから、赤字という言い方はおかしいですよね、そもそもそういう言い方はしませんよね」と呼ぶ)要する費用と、それからお客様からいただく運営費の一部ということになります。その差というのは、どう表現するかですが、私どもはそこはやはり赤字というふうに認識をしておりましたけれども、もともとはそういう現物給付の一環ということでございますので、表現としてはどうかなという感じはいたします。

川内委員 今、ちょっとおかしいですよ、コストだと言っておいて赤字だと認識していましたというのは。コスト削減の努力はしなければならないが赤字という概念でとらえるのは。だって、費用の一部しか利用者から取りませんと業務方法書で言っているわけでしょう。業務方法書で、総務大臣の認可を受けて、一部しか取りませんよ、しかも、なるべく安く取るんですよと言っておいて、赤字だ赤字だと言うのはおかしいでしょうということを言っているんです。そうですと言わないと。

 ちょっともう、二時までに総務大臣は総務委員会に行かなきゃいけないんだから、ちゃんと答えてくださいよ。

衛藤委員長 答弁は簡潔にお願いします。

藤本参考人 経理を担当している立場から一言お答え申し上げたいと思います。

 事業を営む際には当然収益がございまして、それに対応する費用がございます。企業会計上、収益から費用を引いて、余りが出れば黒字でありますし、余りが出ずにしりが出れば赤字でございます。そういう意味では、簡易保険事業、だれが負担するか、御利用者の負担であるのか、あるいは簡易保険事業において負担するかを問わず、費用は費用でございますので、引いてしりが出れば赤字でございます。

川内委員 では、赤字が出ることが当然、要するに、業務方法書における使用料規定によれば、赤字が出ることを費用としてきちんと郵政公社全体で見ましょうね、それをコストとして考えましょうねという事業であったということでよろしいですね。

佐々木参考人 今の先生の御理解でいいかと思います。

川内委員 それでは、その事業を、平成十七年から減損会計を入れましたと。その減損会計を入れるに当たって不動産鑑定評価というものがなされるわけでございますが、その不動産鑑定評価を依頼するに当たって、ホテル事業として評価してねということは言っていないかもしれないが、減損会計を導入しますと。さらには、不動産鑑定評価の三つの手法である、そもそものコスト、それから近隣の不動産の価値、さらには収益還元法、この三つの手法で評価してね、収益還元法も使ってねということを、日本郵政公社は不動産鑑定評価に当たって依頼していますね。

藤本参考人 お答えいたします。

 不動産の鑑定評価を依頼する場合には、今先生お話がございました三つの手法が標準的な手法でございます。したがいまして、日本郵政公社におきましてもその三つの手法を採用するようにということでお願いをしてございます。それは、一般的な不動産の鑑定評価基準に書かれているとおりでございます。

川内委員 一般的な不動産鑑定評価基準は収益還元法も使うというのはわかりますよ。しかし、御自分たちでおっしゃられたように、そもそも加入者福祉施設事業は、御自分たちも、赤字が出て当然の施設である、事業であると。すなわち、利用料は一部しか負担していただいていません、なるべく安くしますということを業務方法書で言っている。その施設を収益還元法という手法を取り入れて減損会計するということに、今回のめちゃめちゃ安くなるトリックが存在するわけですね。

 総務大臣、もう二時になりますから、今までの質疑を聞いていただいて、これは、不動産鑑定評価の基準、さらには、きょう金融庁にも来ていただいているんですが、企業会計基準、この二つに照らし合わせて、不動産の価格というのは正味売却価格として適正なものでなければならないということが大前提なんです。適正なものでなければならない。しかし、適正さを欠く部分があったのではないかと。なぜかなら、だって、一万円が六千万になったり、千円が四千八百万になったりするわけですよね。それは適正とはとても言えないわけですよ。その部分において、この不動産鑑定評価の基準や企業会計の基準に照らして、果たして公正妥当なものであったのかということは十分に検討されなければならないというふうに思いますが、総務大臣の御所見をいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 このかんぽの宿の問題は、そもそもが不透明な部分が多過ぎる。この間申し上げましたように、オリックスに決まりますと、オリックスと日本郵政の間の最終契約は非常に緩いものになって、オリックスの単独判断で施設を譲渡あるいは廃止できるというふうな規定が後からできるというような、不透明の限りを尽くしているような思いがいたします。

 川内先生御指摘のように、大きな問題は、やはり企業会計というものは使わなくちゃいけないらしいんですが、減損処理というもののあり方がめちゃくちゃだというのが一つあります。

 きょうは、先生の御質問はその点について理論武装できる内容でありました。つまり、日本郵政公社業務方法書第百五十三条第二項というのは、要するに、費用の全部は払わないで一部を負担するというのだから、そもそもがまともな料金は取らないと。ということは、いわゆる収支決算でいえば、最初からマイナスだということが前提になっているわけじゃないですか。それが前提になっていて、マイナスだから、収益を生んでいないから、土地の評価方法、だからこれは不動産として物すごく安いんだと。それをまたごまかす手段として、これは事業譲渡だからという理屈をつくって、そしてたたき売りしようとしている寸前で何とかこれはやめさせることができたわけでありますが。

 非常におかしなところが多いわけで、その一つは、先生御指摘のとおり、減損処理のあり方。減損処理した簿価というのを出して、その簿価で売ろうとした。しかし、一般の企業が採算のとれる事業としてこの土地や建物を使って事業をしようという場合には、減損処理した簿価というのは全く無関係になってくるんではないか、私はこういうふうに思っているわけで、公社時代のことでありますが、そういう非常にいいかげんな考え方で国民の財産を処理していたがために一万円が六千万、千円が四千九百万ということになって、国民に非常な不信を招く結果になっているのではないか、こう思います。

 きょうはいい勉強をさせていただいて、ありがとうございました。

川内委員 ぜひ、この問題については私もさらに、やはりもともとは国民の皆さんの財産だったものですから、しっかりと検証しなければならぬと思っています。

 それでは、次の論点。体細胞クローン牛とかクローン豚というのがあって、ちょうどきょう午前中にこの体細胞クローン牛あるいは体細胞クローン豚の、ちなみに、クローンには受精卵クローンというのももう一つあって、もう受精卵クローンは市場に出回っているんですけれども、余り皆さん知らないんですが、全然表示されていないんですね、これは人工的に遺伝子を操作してつくられたものですよというものが全くわからずに受精卵クローンの場合は出回っているんですけれども。

 今度新たに体細胞クローンというものが、今、食品安全委員会で、ちょうどきょうの午前中、新開発食品専門調査会で検討が行われ、いよいよ答申につながっていくというふうに聞いておりますけれども、きょうの午前中の食品安全委員会の検討の状況というものをまず御報告いただきたいと思います。

栗本政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの件につきましては、昨年の四月に厚生労働省から諮問を受け、食品安全委員会の新開発食品専門調査会にワーキンググループを置いて審議が行われ、本年一月に開催されましたワーキンググループにおいて、現時点における科学的知見に基づき、従来の牛や豚に由来する食品と比較して同等の安全性を有するとする評価結果の案が取りまとめられました。

 このワーキンググループの評価結果の案につきまして、本日開催されました新開発食品専門調査会で審議が行われまして、一部修正の必要な部分はございましたが、本案が了承され、食品安全委員会へ報告することとされました。

 今後は、食品安全委員会での審議が行われ、了承が得られれば、国民からの御意見、情報の募集、意見交換会を行い、必要に応じてさらに審議を重ねた上で、最終的に評価結果が取りまとめられることとなります。

 以上でございます。

川内委員 体細胞クローン牛というのはだれも今まで食べたことが、食べたことのある人はだれもいないんですよ。だれもいないにもかかわらず、自然に生まれた、あるいは育った牛や豚と一緒です、科学的にはそうなのかもしれませんけれども、そういう報告をしますということでございます。

 では、ちょっと科学的な数字をお答えいただきたいんですが、再構築胚、この再構築胚というのは、体細胞クローン牛をつくるために薬品やらあるいは電気的ショックやらを与えて受精させて胚をつくる、それがだんだん分裂していって生体になるわけですけれども、この再構築胚の生存率、受精してから胚ができて実際にちゃんと成長しますよという生存率はどのぐらいですか。

栗本政府参考人 お尋ねの件につきましては、評価結果の案に、体細胞クローン胚、これはお尋ねの再構築胚のことでございますが、これによる産子の出産の割合は一〇%以下との報告があると記述されております。

川内委員 生存率が一割以下なんです。九割以上は死んでしまうんですよ。その体細胞クローン牛を食品として評価して、万々が一、研究者の技術開発の意欲というのはとどまるところを知らないですからどんどんどんどんやるわけですね、では、それが市場に出ますというときに、そのままでいいんだろうかと。

 少なくとも技術開発の研究の成果は否定されるべきものではないし、それは研究者の成果として評価をすべきところもあるでしょう。しかし、実際にお肉を食べますという消費者の側に立てば、自然に生まれ育った牛や豚なのか、それともクローン技術、薬品をかけたりあるいは電気的ショックを与えたりして工業的につくり出された牛や豚なのかということについての区分け、表示はきちんとなされるべきであるというふうに思いますが、官房長官それから消費者行政担当大臣のそれぞれの御所見をお聞きしたいというふうに思います。官房長官も答えてくださいよ。

野田国務大臣 体細胞クローン技術を使って、今事務局長からも説明ありましたけれども、ただいまの専門調査会で結論が出た、それを受けて安全委員会の方でこれから審議をされるわけですけれども、これから審議をされるとともに、またパブコメとかさまざまな国民各界各層の御意見を承りながらということで、引き続き、一カ月以上かかると思いますけれども、これについては議論をしていきたいと思っています。

 表示のあり方については、そういう検討結果を踏まえて、消費者等関係の皆さんの御意見を十分聞いて各省庁が連携すべき問題だというふうに考えております。

河村国務大臣 今、野田担当大臣から御答弁があったところでございますが、あれを聞いておりまして、早く消費者庁というのができていると、ここでこういう問題はもっともっと全体的、統一的にできるかな、こういう思いを抱きながら答弁を聞いておりました。

 私も、野田大臣が答弁されたように、同感でありまして、これは今から本格的に食品安全委員会で議論をされるわけであります。ヨーロッパ等においてもこの問題はかなり、そう簡単なことじゃないということで、流通等についても非常に厳しい目で見ております。日本においても同じ感覚でなければいけない、やはり消費者にかかわる大きな問題だ、このように意識をいたしておりますので、これからこの議論を待って適切な対応をいたしたい、こう思っております。

 当然、本格的になってくれば表示の問題とかいろいろな問題が出てくるだろう、こう思っておりますが、今はまだその段階にございませんので、十分今の議論を踏まえた対応を適切にやらなきゃいかぬ、このように思っております。

川内委員 済みません、表示については、消費者の選択というものを保障するということは大事だねという理解でよろしいですか、お二方、両大臣。

野田国務大臣 消費者にとっては表示というのは大変大切なものでございますが、その前に、安全委員会等またはパブコメ等でさまざまな御意見がまだ出てくると思っております。それをしっかり受けとめてから広く考えていきたいというふうに考えております。

川内委員 僕は大事だと思うんですよ、要するに、食品安全委員会ではほとんど議論されないんですから。なぜかなら、もう専門調査会で議論が済んで、社会保障審議会の例えば生活保護部会で議論されたものが社保審に上がって、それでいいですというのと同じように、食品安全委員会は親委員会ですからほとんど議論されないんですよ。でも、パブコメにかかって、それでいいですかということに最後はなるわけですね。

 だから、そういう意味で、流れができているから、表示については大事ですよねということを私は確認したいというだけの話なんです。

野田国務大臣 食品安全委員会にかかったからもう結論が出ているということではなく、これにつきましては大切なことなので、それ以外にも、やはり消費者団体や多くの消費者に関連する皆さんの意見を聞いていくということが大切だということで御理解いただきたいと思っております。

川内委員 多くの消費者団体の意見を聞いていくということが大事だというのはだれも否定しないですよ。そうですねと。それは、体細胞クローン牛の食品の安全性についてこれからパブコメをとります、いろいろな人たちが意見を言ってくるでしょう。それは体細胞クローン牛の安全性についての意見であって。

 では、今度は、その後、私が一般的に聞いているのは、体細胞クローン牛というのは生存率は一割以下ですと食品安全委員会事務局から御報告があったわけですね。明らかに自然界に存在するものとはまだ違う、偶然にできるものなんですよ。そうすると、やはり自然界に存在するものとそうでないものについては、消費者に対して違いますよということを表示するというのが私は一般的には当然のことだというふうに思うんですが、そういうことが、決める決めないは別にして表示しますと言ってくださいと言っているのではなくて、そういうことは大事だ、それは本当に自分もそう思うということを言ってくださいねということなんです。

野田国務大臣 表示を消費者が知ろうとするときは、流通されたものを選択するかどうかというので大変重要なことだと思います。

 その流通するかどうかという前段階の話で、必ずしも科学的な安全イコール消費者にとっての安心ではないということも踏まえてまだまだ大きな議論が必要ということであり、表示については、それまでの間にいろいろな意見を承る必要があるのではないかと。

 ですから、表示というのは一般論的には消費者にとっては大切だけれども、体細胞クローン牛が専門委員会で科学的に安全だというふうに決められたからといって、国としては、それがすなわち消費者の安心だから流通させますよというところまでは至っていないので、表示については別個そういう議論をしなければならないということだと思います。

川内委員 流通させるかどうかはまだわからないという御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 それでは、これは、要するに、野田大臣、いろいろな法律に牛とか豚とかいう言葉がありますよね。その言葉が、これはそもそも昭和二十年代にできた法律に牛とか豚とか、あるいは別表に書いてあったりするわけですよね。では、その牛とか豚は自然界に存在する牛や豚を指しているわけで、工業的にできた牛や豚が法律上の牛に当たるのかとか、そういう議論も私はあると思うんですね。

 もうこれ以上は言いませんけれども、科学的な、あるいは科学技術の進展に対しての評価というのは私は否定するものではないけれども、消費者の選択の利益というものは確実に保障されていかなければならないということだけ確認させていただけたというふうに思います。

 それでは、最後に、今、公共事業の国発注分直轄事業について、地方負担金をもう払いたくないという知事さんたちが出てきているという問題について、若干取り上げさせていただきたいというふうに思います。

 直轄事業の地方負担金というものについて、三割負担、地方は自動的に何か請求書が回ってきて負担させられるんだということでございますが、一方で、公共事業というのはその地域経済に対して大きな経済効果をもたらすわけでございますけれども、平成十九年度の直轄事業で、さらに、新築あるいは改築の道路事業の発注事業の全国の合計額というものを教えていただきたいと思います。

金井政府参考人 お答えいたします。

 直轄事業の新設、改築に係る道路事業の発注額でございますが、先生御指摘の様式で、国債の工事を全部単年度に集約して膨らまして計上したということで計算をいたしますと、約一兆四千六百億円というふうに認識をいたしております。

川内委員 その一兆四千六百億円の国直轄の道路事業が全国で発注されている。そうすると、その発注された事業が当該都道府県内に本社を置く事業者が受注をした金額、それから県外企業、その事業が発注されている当該の都道府県外の企業が受注した金額をそれぞれお答えいただき、要するに地元企業に発注された割合というのは結局のところどうなっているのかということを教えていただきたいと思います。

金井政府参考人 先ほどの係数で申し上げますと、当該都道府県内に本社がある企業が受注した金額が約四千八百億円、当該都道府県以外に本社がある企業が受注した金額が九千八百億円でございまして、これのみで見ますと約三三%ということでございますが、中小企業への発注ということでございますと、五二%を中小企業に発注いたしております。

川内委員 財務大臣、国の直轄事業というのは、日本全体として見れば、それはGDPに全体として反映するが、しかし、その地域のGDPという意味においては、県外に七割持っていかれるわけですよね、その地域には三割しかGDPには反映しません。

 これは、財務大臣がおっしゃる有効需要をいかにつくり出していくかという意味において、地域の経済を活性化させるという意味において、私は改善する必要が大いにあるのではないかというふうに思っております。

 これは、国交省さんからいただいて、都道府県別に自分で数字を集計してみたんですが、例えば、二階大臣の和歌山県だと、国土交通省の直轄事業ですよ、県内企業受注額が和歌山県だと五十三億円、和歌山県外の企業が受注した金額は二百七十一億円で、一六%しか和歌山県内企業は道路事業における直轄事業は受注していないという結果になります。

 大分は若干いいんです。県内企業受注額は百二十一億で、県外企業受注額が百七十六億、四一%。これは私の手元にありますので、電話をいただければ皆さんにお答えします。

 これらのことをどう改善していくのかということなんですが、国土交通省の直轄事業というのは規格の高い道路が多いわけですね。だから、結局、でかい企業しか受注できませんというものが多いわけです。ところが、平成十八年度の道路行政の業績達成度報告書というものがあって、それを読むと、ルート、工法、規格を見直すことによってコストを大幅に下げることができますと。ルート、工法、規格。要するに、規格を下げる、ルートをいろいろ考える、あるいは工事の方法も考える、そのことによってコストを下げる。コストを下げるということは、地元の企業が受注できる工事になりますよということを意味するわけでございます。

 この達成度報告書について、ちょっと御説明を道路局長にいただきたいと思います。

金井政府参考人 達成度報告書でございますが、いわゆるコスト縮減によりまして事業を効率的に進めるということでございまして、例えば十九年度で見ますと、一五%のコスト縮減を目標にいたしまして、実績一四・一%ということでコスト縮減を達成しております。

 主要な中身は、議員御指摘のとおりでございますが、例えば、若干縦断勾配を犠牲にして、橋を少し低くしてコストを縮減するとか、例えばインターチェンジのときに、今まではトランペットといってぐるぐる巻きにしておりました、それをやめて、直接つけてコスト縮減をするとか、いろいろ計画上の工夫をかなりさせていただいておるというふうに考えております。

川内委員 百年に一度の危機の中で、地域の経済を、特に地方の経済をどう支えていくのかというのは、公共事業というのはGDPに乗せていく上では非常に大事なわけですが、国全体としてマクロで見るのではなくて、ミクロで地域の経済をどう活性化していくかということを考えなければならない。

 そこで非常に有効になるのは、二階大臣が所管されていらっしゃる、中小企業庁が持っている官公需法という法律になるわけです。この官公需法では、中小企業への発注目標、その地域に限定したというところがないのがちょっと残念なんですが、とにかく、中小企業というのは地元企業が圧倒的に多いわけですから、官公需法では中小企業への発注割合というのを目標として決めているわけですね。さらには、二階大臣のお名前で、地方の知事さんたちに対して、自治体が発注する事業についても中小企業に発注してくださいねという目標を要請していらっしゃるというふうに思います。

 まず、平成十九年度の地方自治体における発注目標とその達成度を、二階大臣の方から教えていただきたいと存じます。

長谷川政府参考人 事実関係のお問い合わせでございますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 まず、仕組みといたしまして、官公需の目標を、経済産業大臣から、各省庁及び政府機関、独立行政法人等でございますけれども、そこに、あらかじめ法律に基づきまして協議をいたしまして決めるわけでございます。この中で、閣議決定でその目標を決めた上で、地方自治体に対しましても、経済産業大臣から知事に対してこの閣議決定に係ります契約の方針を速やかに通知いたしまして、自治体におきましても受注の機会の増大を講ずるように要請をいたしております。

 十九年度でございますけれども、地方公共団体の御協力もございまして、中小企業向けの発注というのは全体で十兆六百五十四億円。これは、都道府県と、それから一定程度の、約十万人以上の人口をお持ちの比較的大きい市、事務負担もございまして、そこに注記をしておりますが、この十兆を超えるという実績を上げているというのが現状でございます。

 そして、先ほどお尋ねがございましたように、この政府の決定の中で、なるべく小分けにして中小企業の方が受注をしやすいように、また国の地方支分部局の中ではなるべくその地域で発注するというような方針もあわせて決め、通知をしているところでございます。

川内委員 目標を言いましたっけ。だから、発注目標と実績を答えてくださいと僕は言ったんですけれども。

長谷川政府参考人 お答えを申し上げます。失礼いたしました。(川内委員「割合、割合」と呼ぶ)はい。

 まず、地方公共団体の方に、国としてこの目標と言うのは、これは国の機関じゃございませんので、その目標はございません。

 ただ、官公需総額に占める割合というのは、先ほど申し上げました額で約七七%弱でございます。

川内委員 地方公共団体の場合は、七七%を中小企業、いわゆる地域の企業に発注しているのではないかということが予想されるわけでございます。

 そこで、この官公需法に基づいて各省の発注目標を取りまとめられるお立場にある二階大臣として、平成二十一年度に向けて中小企業への発注割合を、今までの目標や実績をさらに大幅に上回るように、やはり地域の経済を支えるためにそういう目標設定を、今までは大体六月の下旬から七月に閣議決定されるんですが、大幅に前倒しをしてしっかりやるということを、御決意を聞かせていただきたいんです。

二階国務大臣 官公需の早期発注については、先ほども中小企業庁長官からも申し上げたとおり、今月、各省庁に要請をしたところであります。

 中小企業向けの契約目標の比率を過去最高の五一%とする、これは本年度でありますが、地元中小・小規模企業からの受注機会を増大することでありますが、ただいま議員御指摘のように、この件につきましては、さらに積極的に地方に中小企業に受注が多く行き渡るように、受注のチャンスを増大していただくというために、もう少し前倒しで検討をしてみたいというふうに思っております。

 なお、この際、和歌山県の道路の問題でいろいろ御心配をいただき、先般はわざわざ和歌山まで調査に来ていただいて、御苦労のほど、感謝します。そのうち、私も九州の方へもお邪魔します。

川内委員 ありがとうございます。

 私は、道路の整備は必要である、必要だという立場なんですね。しかし、地元の経済にもプラスになるように、しっかりとコストを下げればBバイCも上がるし、そうなると地元の企業が受注できる仕事になりますねということで、みんながよくなれる道路行政というものを提案していきたいというふうに思っておりますので、二階大臣にいろいろまた御指導をいただきながらやりたいというふうに思います。

 そこで、国土交通大臣にお尋ねをいたします。

 新たな費用便益分析マニュアルというものができて、そして新たな交通需要推計もできて、年度末に向けて新たなBバイCの再計算というものが始まっているというふうに思いますが、全部で何事業の再計算をされるのかということをお尋ねいたします。

金子国務大臣 対象になりますのが、高規格道路について百七十三カ所、その他直轄事業について約四百五十カ所を予定しております。

川内委員 その中に、今まで計算したらBバイC一を超えていたけれども、恐らく新たな計算では三割ぐらいBバイCが落ちるでしょうから、一を切るところも出てくるでしょう。そういう場合、私どもは、つくるななんて言わないんですよ。本当に必要であるならば、先ほども申し上げたように、ルート、工法、規格を見直すことによってコストを下げて、そしてBバイCが一を上回るようにして、そうすることによって地元企業も仕事ができますよねという事業にしていくことが百年に一度の経済危機に対応する方法ではないかというふうに考えているわけですけれども、国土交通大臣、再計算して結果が出ますよね、では、その後どうしていくのかということについて、お考えを聞かせていただきたいというふうに思います。

金子国務大臣 大変大事な御指摘をいただきました。

 コスト縮減については、先ほど道路局長から一部御説明させていただきましたように、大きなトランペット型のインターチェンジ、これを平面Y字と言っていますけれども、というふうにするとか、二つの川を一本で渡しておった橋を、これを修正いたしまして、二つの川を別々の橋にすることによって、橋梁を下げて、コストを二三%下げるといったような努力も、コスト削減をやってきております。これは、御指摘のとおり引き続きやっていきたいと思います。

 ただ、全国的な高速道路ですとか幹線国道などのルートというのは、やはり求められるスピード、それと安全性の確保、これはもう委員よく御案内のとおりでありますが、道路の曲線半径など、求められるもの、あるいは必要とされるもの、やはりこういう意味では安全性というものは維持していく必要があると思いますが、一方で、地域内の道路等につきましては、ルートの変更ですとか、幅員を工夫していくというようなことは大事な御指摘であると思っております。

 そういうことを通じて、私の立場で、適正な競争が確保される範囲内で可能な限りの分離分割発注を推進して、中小、中堅の企業が受注できるように進めていきたいと思っております。

川内委員 私の時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、せっかく道路特定財源が一般財源化されて、何にでも使えるお金ですよということになったわけですね。そうすると、この経済危機の中できちんといろいろなことをやりくりして、道路予算についても、きちんとBバイCを計算して、コストを下げるところは下げて、そして予算が生まれてきましたと。そうすると、冒頭申し上げたとおり、それを生活保護の母子加算などにきちんと回していくというような、全体のやりくりをきちんとするためにも、道路のあり方というのは非常に大事な部分であるということで、これからもいろいろ提案を続けてまいりますので、またいろいろ議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野委員 閣僚の皆さん、お疲れさまでございます。川内委員に続きまして質問させていただきたいと思います。

 特に閣僚の皆さんの中でも与謝野大臣、長時間本当にお疲れさまでございます。物理的にもずっと大変なお役だと思いますが、それ以上に、今の日本の経済状況、社会状況を考えたときに、もともと三つに分かれていたはずの大臣をすべて兼ねられているというのは本当に大変だと思います。

 まず、与謝野大臣にお伺いをしたいのは、旧来までは経済財政の政策の担当をされていて、昔でいえば経済企画庁長官も兼ねられている。そういう中で、経済成長を実現しなければならない、そういうお立場にあるわけですね。一方で、今度は財務大臣として財政規律も守っていかなければならない。特にこの二つは、当然、予算をつくるというときには矛盾をする、そういう役割にもなりかねないわけですが、その問題を今の状況においてどういうふうに考えられていて、どうやって、何に優先順位をつけつつ、この難局を乗り越えようとされているのか、まずそのことを御答弁いただきたいと思います。

与謝野国務大臣 経済も財政もうまくやりたいと思っております。

 しかしながら、今の世界経済、日本経済の現状を見ますと、財政規律というのはもちろん大事ですけれども、それにも増して、やはり日本経済が底抜けしないようにどういう政策をとっていくか、これが麻生内閣としての責任であり、我々閣僚は、麻生内閣総理大臣のその使命感にこたえていくということが我々の職責であると思っておりまして、二つの大臣を兼ねていることが、法律上矛盾も生じませんし、また、私自身の中での内部矛盾も生ずるものではないと思っております。

細野委員 麻生総理は盛んにこういうふうに答弁されていますね。当面は景気対策、中期的には財政再建、こう答えられていますね。そうしますと、今の状況の中でいうならば、財政再建よりも景気対策が優先をされる、そういうお考えでよろしいでしょうか。

与謝野国務大臣 経済のことが最優先なんですけれども、財政のことを忘れちゃ困るので、常に財政のことも頭に浮かべながら経済のことをやっていく、ここが多分大事なところじゃないかと思っておりますし、また、中期プログラムというのはそういう意味で書かれているものと私は考えております。

細野委員 経済のことについてもう一つだけお伺いしたいんですが、昔、私、実はこの仕事につく前に経済の予測をしばらくやっていた時期がありまして、そのときに、GDPの四半期統計、これは非常に注目していつも見ておりました。

 そういう中でいうと、去年の十月―十二月の四半期統計というのは、もちろん私も見たことがないし、今この世の中に生きているエコノミストと言われる人たちも、だれも見たことがないような、政治家も見たことがないような、それぐらいすさまじい数字だったわけですね、年率で一二%強マイナスというのは。

 これは、需給ギャップがどれぐらいあるのか、諸説あるんですが、政府が恐らくかなり少な目に見積もった数字でも二十兆円ですね。来年度に入ってくれば、さらに需給ギャップが恐らく拡大をすると思います。この二十兆円強の需給ギャップという数字と、今政府が出してきておられる、一次補正、二次補正、本予算を含めても十二兆円というこの数字は、これはどう考えても景気対策の数字として合わないんですね。

 もう一つ言うならば、去年通った補正予算も含めての十二兆円ですから。八兆円分は補正予算ですよ。来年度に若干それが残るとしても、流れるとしても、どう考えても、この需給ギャップとこの数字というのは合わないんですよ。

 賢明な与謝野大臣ですからもうわかっていらっしゃると思うんですが、補正は組まざるを得ないですね。そのことについて、いろいろとお立場はあるのかもしれないけれども、この経済状況を、もう数字そのものを見れば、だれがどう見たってこれは今の予算じゃ無理なんですよ。いかがですか。

与謝野国務大臣 私どもが予算をつくりますときには、やはり、あるクロスセクションというか断面の数字をとらざるを得ない、これが去年の十二月の政府の経済見通し。その断面での数字に基づいているのが今の予算であるわけです。

 二月十六日に出ましたQEというのは、先生も驚かれたということですが、我々ももっと驚いたわけですし、また、一―三月の様子を聞いてみますと、個別の指標はまだいろいろ悪い方向を示している。

 これでどうするのかというのですが、我々政府、特に閣僚の頭は、現在の国会で今御審議いただいております予算を御承認いただくことで頭がいっぱいでございまして、残念ながら、そのほかに考えが及ばないというのはまことに残念でございまして、やはり、経済界や学界、言論界、そして各党の皆様方に、どうすべきかということは真剣にお考えいただかなければならない段階に来ているということは正直に申し上げたいと思います。

細野委員 仙谷委員から、先日、与野党で国会できちっと協議をしようじゃないか、国会でですよ、議会という場所で衆参で議論をしようじゃないかという発言がありましたが、私も全く同じ意見です。

 そういう意味では、そういう経済対策について、表の場所で、きちっと国会で議論する場所はあるべきだと思います。きょうはこの話はこれ以上突っ込みませんが、その必要性は私は個人的には認めているということは申し上げたいと思います。

 その上で、大臣にもう一つお伺いしたいのがやはり消費税なんですよ。

 中期プログラムを出されまして、大臣を兼務される前の所信の中で、こういうふうに与謝野大臣はおっしゃっていますね。消費税を含む税制抜本改革を経済好転後に速やかに実行することを内容とする中期プログラムを閣議決定しました、経済好転後の速やかな実行のためには、改革の内容の具体化や、法案その他の制度的準備を今から早急に行う必要がありますと。

 この考え方に変更はありませんか。

与謝野国務大臣 いつかはやりますということは永久にやらないということと一緒なので、ここはやはり、この時点からきちんと準備をしてやりますということは言い切るということが政治には必要だと私は思います。

 ただし、急にやろうと言っている話ではなくて、どんなに早くたって三年後ですし、三年後でも、やはり経済が好転しているという条件が整っていないといけませんし、ましてや、政治がどうこの問題を判断するかということによっても決まってくるわけですから、自動的に物事が進んでいくという話とは全く違う。ちゃんと条件もあるし、国会という、あるいは各政党というちゃんとブレーキもついているわけですから、ノンブレーキで進んでいくという話とは違うんだ、これはぜひ御理解をいただきたいと思うんです。

細野委員 先日、私、予算委員会の中で、埋蔵金の問題で大分大臣とやりとりをさせていただいて、私は、まずは埋蔵金を初めとした無駄遣いの構造をなくしてから消費税の議論をすべきだということを申し上げて、そこは少し考え方に距離があるなということを感じました。

 ただ、こういう立場にある私でも、消費税を議論してどういう形にするのかということについては、これはいつかは考えざるを得ないのはよくわかっている話で、そのことについて大臣がいろいろなことをおっしゃっていることに関しては、きょう、ちょっと突っ込んで聞いてみたいなと思ったんですよ。

 まず、大臣にお伺いしたいんですが、条件があるというふうにおっしゃいましたね。この条件です、問題は。

 中期プログラムには二〇一一年からと書いてある。そして、今度出されている所得税法の改正案には、平成二十三年度ですから二〇一一年度ですね、二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講ずる。これは大分違いますね。二〇一一年度までに実行するのと、そのときに法整備をしているのでは、法整備をしたら実現するのはその後ですから、このタイミングは、明らかに中期プログラムと今回出している法案の中では違う文面になっているんですが、これについて、時期はまずどう考えられていますか。

与謝野国務大臣 法律の専門家やなんかが集まって書いた文章ですから、ごちゃごちゃしているんですけれども、書いてあることは全く同じで、特に、総理が三年後に景気が好転した後に消費税をお願いしますということを実際法律にしますと、そういう複雑な文章になってわかりづらい、私自身もわかりづらいと思いますけれども。

 それはどういうことを言っているかということを申し上げますと、うまくいったら二〇一一年からやりましょう、でも、うまくいかない場合でも、二〇一一年までには法律だけはつくっておきましょう、だけれども、実際それでやる、具体的にスタートするのは、それは別の判断ですよと。ただ、法律としての、税法としてのフレームワークはそれまでにつくっておく必要があるでしょう、それを開始するための条件というのはまた別なんじゃないですか、また別にちゃんと決めなきゃいけないでしょうと。

 そういうことが書いてあるので、そんな難しい複雑なことが書いてあったり、何か逃げようとか、何か強引にやろうとか、そういうことが書いてあるわけじゃないんですね。

細野委員 中期プログラムにはこう書いてあるんですね。消費税を含む抜本的税制改革を「二〇一一年度より実施できるよう、」と書いてあるんです。二〇一一年度よりということは、二〇一一年の四月ですね。それは法律を整備する話とは違うんですよ。これは、いろいろ与党内でも議論があってこういう文面になったんでしょうが、明らかに変わっている。

 もう一つ大臣にお伺いしたいのは、では、どういう条件が整えば消費税を上げるのかという問題です。

 麻生総理は潜在成長率というような話をされていますが、ことしがもうすぐ二〇〇九年度になるわけですが、二〇〇九年度から一〇年度、一一年度に潜在成長率みたいなものが大きく上がるなんてことは考えられないですね。今、内閣府が見積もっておられる潜在成長率が約一%ですね。ここ二、三年よかったですが、それでも二%弱ですよ。潜在成長率というのは、そんなに一年や二年で大きく変わるものじゃないんです。

 では、どういう基準で消費税を上げるか上げないかという決断をされるんですか。

与謝野国務大臣 中期プログラム自体には、「今年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提に、」というふうに書いてあって、これは法律に書いてあることと同一だと私は思っております。

 それから、次の質問は非常に重要な質問で、だれがどういう基準で経済が好転したのかということを判断するのか。これはなかなか難しい話で、実はいろいろな意見があって、潜在成長力に言及して法律を書けとか、いろいろな意見があった。

 ただ、経済財政諮問会議の議事録を見ていただきますとわかるんですけれども、経済は循環する、循環するときに、下降局面で税を上げるということは愚の骨頂だ。これは経済の悪化を加速させるだけだ。それから、経済の頂点で税を上げるということも、これもまた避けなきゃいけない。頂点に達したということは、後は下げるということだから。だから、税を考えるときに、日本の経済が最下点に達して上昇局面に移ったときにやはり税を入れるということが経済に最もショックを少なく与えることではないか。

 しかも、段階的にということが書いてありますけれども、これは例えばいろいろな税制を、いきなりフルの税率をどんといくのか、それとも段階的に税率を上げていくのか、そういう考え方が入っていて、やはり税制抜本改革というのは重要だけれども、一つは経済回復が前提ですよと。それから、税の導入時期というのは、なるべく、経済に影響があるとはいえ、ショックを与えるような影響ではいけないし、また経済を下降させるような方法の導入はやはり避けなきゃいけないという一連の思想で中期プログラムも税法も書いてあるんです。

 ただ、書く人が頭のいい人たちだから複雑そうに見えますけれども、中身は単純でございます。

細野委員 大臣、税を上げるタイミングとして、ピークでもだめだ、下降局面ならましてだめだという、同じ意見ですね。

 ただ、そのことを考えるとき、もう一つ難しい問題があるのは、景気の上昇局面、後退局面、景気の底打ち、景気のピークの判断は、政府がやっている判断でいえば約一年おくれますよね。だから、おととしの景気がピークで、下がってきたという判断をしたのは去年の年末じゃなかったでしたか、私の記憶が確かなら。さまざまな経済指標を総合的に判断して、ここが底だ、ここがピークだという、これを打つわけですよね。ということは、一年間判断できないんですよ。一年は明確な判断ができないんですね。

 もう一つ申し上げると、同じ回復局面といっても、これは水準がありますから、底が深ければ深いほど、底から多少上がったところで景気のレベルは非常に低いわけです。景況感がいいという状態にならないわけですね。どのタイミングで上げるのかというのは、これはまた非常に難しいわけです。だから、今大臣がおっしゃったようなお話だと、これは何ら、いつ上げるか決まっていないという話になるんですよ。

 例えば、景気がボトムを打ってから一年になったら上げるということをおっしゃるならおっしゃらないと。私と消費税に対する考え方は若干違うので、その辺について、同じだから誘導しようという話ではないんだけれども、せっかくこういうふうにおっしゃって書かれているんなら、その趣旨を明確に答弁でおっしゃらないと書いた意味がないですから。

 では、大臣は、景気がボトムを打ってから、それが、ことしじゃちょっときついのか、来年なのか、これはわかりませんよ。今の状況ならわからないけれども、それから一年たって、ボトムを打って一年たったときに、ちょうどこれがボトムを打って一年ですというのがわかりますよ、統計上。これまでもそれでやってきたんだから。では、答弁からすると、その時点で上げるというお考えなんですね。いかがですか。

与謝野国務大臣 QEを最終的に確定するのにはそのぐらい時間がかかるわけですけれども、どの数字、底を打ったという話ですか。(細野委員「一致指標でやるじゃないですか」と呼ぶ)ですから、全体を判断していかなきゃいけない話なので、経済の厳密な分析をする方の御意見も大事ですけれども、やはり政治として総合的な判断をして、今消費税を導入しても経済にショックを与えないかどうかという、政治家がやはり総合的な判断をその局面で要求されるんだろうと思うんです。

 それで、見通しが完全に当たるかといったら、それはわかりません。わかりませんけれども、政治がそれについて責任を持って判断するということに私は尽きると。ただ、その指標がほぼ確定するまで待てば、先生おっしゃるように、時間はどんどんたっていって全部後講釈になっちゃうので、そこはやはり先取り的な勇気は少し必要だということは率直に認めます。

細野委員 与謝野大臣は非常にここはこだわっておられて、考え方をお伺いしたいなとぜひ思っていましたので、きょうは話を聞かせていただきました。

 ただ、今の御答弁を聞いていて、ああ、こういう形で将来こうなるんだなというところまでは、これは全く決まっていないということも逆にわかったなという思いでございまして、いろいろな議論がこれからもあるでしょうから、そういう中で私自身も議論に加わっていきたいなというふうに思っております。

 この話をしていると終わりがないので、次の議題に行きたいと思いますが、石破大臣に汚染米の問題を聞きたいと思います。

 きのう、筒井委員と石破大臣の中で、農政についてさまざまな議論がありました。自民党内でもいろいろな議論があるようですが、選択的な減反制度について提案をされた部分、さらには土地の問題、農地の問題について、所有から一歩前に出て利用をやっていくというこの考え方。個人的には、これはなかなか勇気のあることをおっしゃったなと思います。

 その議論もぜひしたいと思うんですが、私は、その議論をする前に、実は、まだ農水省が片づけていない、片づいていない問題があると思っていまして、世間ではもう話題から外れてしまいましたが、その問題の一つが私は汚染米だというふうに思っています。

 農水大臣、手元に資料をお配りしていますので、五枚目を委員の皆さんももしよろしければごらんいただきたいんですが、大臣、よろしいですか。

 これは農林水産省が出してくださったデータでございまして、最近の政府米に関するカビの発見状況という数字です。一番のところで年度ごとのカビの発見件数が書かれてありまして、十七年度の十六件から、十八年度三十六件、そして十九年度四十四件、二十年度が八十九件と、数字が大きく上がってきております。

 問題はその下なんですが、この二十年度の八十九件を月次の数字で見てまいりますと、四月二件、五月一件、六月三件からずっと始まって、数が非常に少ないところにとどまっているんですが、十一月に十二件にはね上がって、十二月に二十九件、そして一月は三十件という件数になっていますね。

 まず大臣にお伺いしたいんですが、十二月、一月と、直近の二カ月、大きくカビ米の件数がふえている、この原因は何ですか。

石破国務大臣 それは、昨年の十二月八日から後は、実需者に引き渡す前にすべての袋をあけて、目で見てカビがあるかないかというのをチェックするようになりました。それまではすべての袋を開いておったわけではございませんので、すべての袋を開くようになったらばふえましたということ、事実だけをお答えすればそういうことでございます。

細野委員 では、農水大臣、十二月が二十九件、一月が三十件ですね。一月からずっと、平均すると三件ぐらいの数字が並んでいますね。ということは、逆に言うと九割方は見過ごされていたと。汚染米は入っていたけれども、全量調査をしてみたら三十件程度になったけれども、その前までは実は汚染米は入っていたんだけれども見過ごされた、そういう話じゃないですか。

石破国務大臣 その可能性が全くなかったとは申しません。それは、全量を開いてみたらそういうことでしたということに相なりますので、意図的に見逃していたとかそういうことではございませんが、その中に、では、ほかにも入っていたのじゃないの、そういうことがあったのじゃないのと言われれば、そういう可能性を否定することはできません。そのとおりです。

細野委員 石破大臣、そうすると、石破大臣が可能性があるとおっしゃった、見過ごされたものはどうなったんですか。

石破国務大臣 それが市場に流通をしておったということではないと思っております。それは、その後事故というのも起こっておりませんし、きちんと全部あけてみたらそういうこともありましたということですけれども、それが見逃されたまま市場に流通し、消費者の手に渡り、そして、いわゆる委員のお言葉をかりれば汚染米なるものが市場に流通をしておった、それを見逃しておったということではない。それ以前もチェックはしておったわけでございます。

 ですから、私が申し上げたのは、その可能性は否定できないということを申し上げました。それが全くなかったかといえば、そうではない。全量を開袋するようになったら数がふえたじゃないのということは、事実としてはそのとおりでございます。では、それまでに全くチェックを行っていなかったのかといえば、チェックは逐次行っておりました。ですから、それが、消費者の口に汚染米がそのまま流通したということをそのまま同義として申し上げているわけではございません。

細野委員 大臣、ごまかされていますね。これは毎月三十件あるわけです。それまでは毎月一件とか三件とか、その程度しか出ていなかった。九割方見過ごされていたということはお認めになりましたね。

 では、それが市場に流通していないという根拠は何ですか。では、残りはどうなったんですか。どうなったかをお答えいただきたい。

石破国務大臣 これは、私もカビの専門家ではございませんので、聞いておられる方がわかりにくいなと思われたらごめんなさい。私が理解している範囲で申し上げます。

 平成二十年の四月から十二月、すなわち開袋を全部やる前のことですね。MA米でカビが発見され、分析が終了したものは二十一件ということになるわけでございます。このうち、アスペルギルス・フラバス種なるものが同定されたのは十六件。

 このアスペルギルス・フラバス種というのは、何だか恐竜の名前みたいですが、そういう種がございまして、これには、アフラトキシンB1というものを産出する株と、そうじゃない株というのがあります。つまり、いい株と悪い株みたいな分け方になりますが、そのうち、アフラトキシンB1という悪いものが検出されたのは一件のみということでございます。

 過去五年間にそのアフラトキシンB1が検出されたケースは四件ございますが、いずれもカビそのものから検出されたので、販売に供する米から検出されたわけではないということでございます。

細野委員 大臣、時間は十分あるんですが、それでもやはりもったいないですから、ちゃんと議論しましょう。

 私が補足しておきますと、今出たアフラトキシンというのは、この地上に存在をする最強の発がん性物質ですよ。フラバス種というのは、それを産出し得るカビですよ。

 さらに加えて言うならば、私も随分カビに詳しくなりました、この半年ぐらいカビの専門家に相当話を聞きましたから。これは、フラバス種からアフラトキシンになるのは、見た目では全くわからないそうです。しかも、煮ても焼いても食えないんじゃなくて、食ってしまった場合には、アフラトキシン自体は全く効果は薄れない、発がん性物質としての効果は全く薄れない、そういう最強の物質なんですよ。それが一件入っていた。それは間違いない事実。

 その前提で、大臣にしっかりまずここは御答弁いただきたいんですよ。国民の皆さんもこれは見ていますよ。要するに、これまでの農水省の検査は正直言ってずさんでした。それは、全量調査するのがいかに大変なことかというのも私わかっていますから、それはすべて悪いとは言わないけれども、この足元で三十件出ている。その中で、その前は見つけられなかった部分は市場に流通をして、そして消費者が食べている可能性を否定できない。これは大臣、きちっと答弁をしないと、単にごまかしているだけということになりますよ。

 まず、そこについて答えてください。発見をできなかった九割方はどうなったんですか。

石破国務大臣 ですから、テレビをごらんの方、仮に録画で、あるいは同時中継でごらんの方におわかりにくいかもしれませんがということをお断りしたのは、そういうことです。

 ですから、委員の方が私よりもはるかにお詳しいと思いますが、アフラトキシン、イコールすべて猛毒で、がんを発生する史上最強の発がん物質である。それは、アフラトキシン自体はそうなのですが、アフラトキシンというものもいろいろな種類があって、B1を産出するものと、しないものとある。ここはよろしいですね。アフラトキシンの中にもいろいろなものがあって、いいアフラトキシン、悪いアフラトキシンとは言いませんが、アフラトキシンB1なるものを産出する株と、そうじゃないのとございますよと。

 そして、同定された十六件のうち、そのB1を検出されたのは一件だけで、これは公表いたしておるものでございます。既にこれは公表しておるものでございます。

 つまり、アフラトキシンB1を産出しても、温度とか湿度、つまり、先ほどおっしゃったように……(細野委員「わかっています」と呼ぶ)いやいや、お尋ねになっているから聞いているので。煮ても焼いても食えないとおっしゃいましたが、温度によって、湿度によって、いろいろな条件が合致をしなければアフラトキシンB1というものは産出しないということになるわけです。どんなときでもそれが発がんとしてがんを生起させるかといえば、そうではない。温度などもすべて合致した、そういう条件を成就しなければそういうことにならないわけでございます。

 今までカビそのものから検出されたものというのが、過去五年でアフラトキシンB1が検出されたケース四件。それは、いずれもカビそのものから検出をされたものであって、販売をする米からそういうものが検出されたことはない。

 したがって、そのように猛毒を発生する、がんを発生させるものを、結果として、ずさんに消費者の口に入るような流通ルートに乗せたということではないという認識を私は持っております。

細野委員 アフラトキシンが入ったか入っていかないかという議論の前の話をしているんです。どういうカビが産出しているかは、これは調べてみないとわからないんですよ。

 ただ、要するに、今調べてみたら三十件出てきたのが、実際にその前は出ていなかったということを考えれば、そのものはどこに入ったかといったら、流通をして、それは食料残渣になった。幸いにしてなったものがあればいいですが、そうでないものについては、これはおなかに入ってしまっていることは間違いないでしょう。私は、それがアフラトキシンだと断定はしていませんよ。

 まず、そのカビそのものが発生をした米が消費者に流通をしてしまったんですということについては、それは積極的に認める必要はないけれども、この数字を見たら、可能性があるということは、大臣、きちっと認めないと議論が出発しませんよ。アフラトキシンの話はしていませんよ。大臣、いいですか。

 九割方の、見過ごされた可能性があるものについては、流通ルートに回って、消費者がそれこそ消費をした可能性を否定できませんね。このことについて聞いているんです。大臣、ここを答えてください。

石破国務大臣 ですから、委員も慎重な方ですから、言葉は本当に気をつけてお使いになっているのはよくわかるのですが、カビが入ったものが流通していた可能性というものは否定できないかと言われれば、それは否定はできません。それはそうです。しかしながら、ではアフラトキシンがどうなのだと言われれば、それは委員が質問の中でおっしゃったとおり、それはまた別のお話でございましょう。

 カビがきちんと発見できないで、すなわち、全量開袋すればこんなにいっぱい出てきたわけですから、では、それ以前はどうだったのと言われれば、それが流通していたことは否定できないということは、先ほど来認めておるとおりでございます。

細野委員 ようやく事実認識がこれで一致をしました。カビが生えていたものが流通をして、そして消費者の口に入っていた可能性を、大臣、お認めになりましたね。そこから問題になるのは、では、そのカビがどんな種類のものだったのかということなんですよ。

 お配りをした資料の、今年度に八十九件出ているカビのうち、先ほど大臣が答弁をされましたが、具体的にどういうカビかということで明らかになったのが二十一件ですね、大臣。二十一件のうち、最も種類が多かったのがアスペルギルス・フラバス種ですね。私、実はもっと割合は少ないと思っていたんですよ。アフラトキシンを産出し得るカビだから、そういうものはめったに入っていなかったのかなと思っていたら、全範囲で調査をしたもの二十一件のうち、十六件はフラバス種なんですよ。

 そして大臣、重要な御答弁をされましたが、そのうちの一件にアフラトキシンが入っていたんですね。二十一件に一件、アフラトキシンが入っていたんですよ。

 政府委員に確認しますが、これを見つけたのはだれですか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、政府が加工食品メーカーに原材料として販売したタイ産米の一部からカビ状の異物百八十グラムが発見されて、このカビ状の異物を分析したところ、カビ毒が検出されたということでございます。

 これは販売した先でということでございますので、発見したのは実需者ということでございます。カビ状異物を発見して連絡をしてきたのは実需者ということでございます。

細野委員 何度も言いますが、アフラトキシンというのは地上に存在をし得る最悪の発がん性物質と言われていて、食品衛生法上は扱ってはならない、絶対入っていてはならないことになっている物質なんです。その物質が去年の年末に発見をされています。しかも、聞こえにくかったですが、それを発見したのは農水省じゃなくて、売り渡しをされたその事業者が発見して、農水省に知らせて、そして判明しているんです。

 もう一つ政府委員に聞きますが、この実需者から連絡があったのが去年の十月の二十三日ですが、農水省がこの実需者に対して、この業者に対して米を販売したのはいつですか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 搬入いたしましたのは、その前日の十月二十二日でございます。

細野委員 大臣、これは重要なんですよ。十月の二十二日までは政府米だったんですよ。それを二十二日に売り渡して、二十三日に事業者が発見しているんですよ。これは、二十二日から二十三日の間にカビが生えたと思いますか、アフラトキシンが発生したと思いますか。違いますよ。政府が持っている中で、もうアフラトキシンは発生していたんですよ。それを政府が事業者に売って、この事業者が善意で言ってくれたからよかったけれども、言ってくれていなかったら市場に流通しているんですよ。

 こういう問題がこれまで起こっているんです。大臣、ちょっと認識を変えられた方がいいと思いますよ。

 この件について、しっかり私はコメントをもらっていないので、どういうふうに農水省として考えられているのか、御答弁いただきたいと思います。

石破国務大臣 ですから、委員がおっしゃるとおり、たまたまその業者さんがこれはカビが生えているよというふうに言ってくれたので、わかりましたということであるわけです。

 ですから、それまでの検査の体制というものに、ずさんさ、完璧を欠く部分があったということは、それは率直に認めざるを得ないところだと思っております。

細野委員 この汚染米の議論を石破大臣と何度もやらせていただいて、私は、石破大臣というのは、これまで防衛省でいろいろ不祥事が中であったり、いろいろ御苦労をされたときも見ていましたが、大臣を私はこの部分では信頼しているんです。すなわち、問題があった場合にはできるだけ情報を公開して、そして再発防止に努めるということについては、私は石破大臣を信頼しているんですね。

 その石破大臣に、一つ納得ができない、ぜひ改めていただきたいことがあります。それは、農水省は、ことし発生しているこの八十九件の汚染米の検査をしないというんですね、これまでしていたのに。

 農水大臣、ことし二十一件発生したもののうちの一件にアフラトキシンが入っているんですよ。実際問題には、月に三十件ぐらいの汚染米が流通をしていると換算すると、年間三百件から四百件ぐらいの汚染米が入っている可能性があることは、これは否定できませんね。二十件に一件アフラトキシンが入っているということは、この数字だけからすれば、年間に十件から二十件ぐらいのアフラトキシンが流通していても、確率的にはおかしくないんですよ。断定はしませんよ、私は断定はしないけれども、その可能性はこの数字からすると否定できない。

 去年だけではないんですよ。平成十八年にもアフラトキシンは二回発見されている。そして、平成十六年にもアフラトキシンが発生をしている。これは、もしかしたら氷山の一角かもしれないでしょう。

 大臣、これはぜひ農水省に言ってもらいたいんですが、八十九件全部調査をしてください。これまでしていたんだから。いろいろ新しくこれからのものを大量に調査しなきゃならないという言いわけは聞きました。ただ、少なくとも、ことしこれだけしっかり発見をされて、これがどういうもので、どういう形で流通していたのかということも含めて、過去について検証なくして未来はないと私は思いますよ。しっかり調べてください。

石破国務大臣 一つは、これから消費者の方々の口に渡るものの中にアフラトキシンが入らない、それは全量開袋でやるわけで、これからそういうことは起こりませんということは、私として断言をさせていただきます。

 では、今までやったものはどうするんだというと、既に分析を発注しているものもございます。それはきちんと分析をし、なぜこのようなことが起こったかということはきちんと検証をしなければいけない。既に発注したものについてまで、もういいや、やめるということはいたしません。既に分析を発注したものにつきましては、最後まで分析を行い、どうしてこういうことが起こったかということが定性的にわかると思っております。

 八十九件全部をやるべきかどうかということにつきましては、これは確率論の問題になりますので、これだけのものをやったとした場合に、どうしてこんなことが起こったかということが検証されるかどうか。それは、すべてやらなければならないということで、委員が知見に基づいてまた御指摘をいただければ私どもも考えますが、今のところ、現在発注しているものを分析するということでよろしいと私自身考えております。

 もう一つは、これはプレスリリースで申し上げておりますが、どの時点できちんと、カビが発生しないように、あるいは、したかどうかということをチェックするかというのは、実際に産地から船で積み出され、それから船で日本までやってきて、日本でおろしてと、いろいろな過程があるわけでございます。どこにおいてどのようなチェックをすれば一番効果的かということをこれから、今検証いたしておるところです。

 委員おっしゃるように、一日で突然カビがわくというようなことはあり得ないのでありまして、どこの時点でやることが一番いいか、そしてどのようにダブルチェック、トリプルチェックをかければカビの発生が防げるかということは、これから先、きちんと検証して、一番いいやり方というものを確立してまいります。

 ですから、何で全部やらないんだということについては、今発注してあるものをきちんと分析することで、今まで何でこんなことが起こったのかということを検証するに十分ではないかというふうに思っておりますが、委員がカビを本当に十分御研究になって、いやいや、それは全部やらなきゃだめなんだということであれば、それはまた検討させていただきたいと存じます。

細野委員 私、この件に関しては、必ずしも、農水省の官僚の皆さんがこれまでやってきたこと、言ってきたことを余り信用していないんですね。大臣の答弁も大事ですが、事務方にも確認をします。

 では、八十九件のうち、既に発注が終わっているのは何件ですか。そのうち、判明をしているものが何件で、今調査を待っているものは何件ですか。そこをしっかり答弁してください。

町田政府参考人 全部お答えできるかあれなんですが、十月までの部分というのは、すべて分析は終わっております。十一月、十二月、本年一月に発見されて分析発注したものは、それぞれ十二件、二十九件、三件、合計四十四件でございます。

 この四十四件のうち、分析を終了していないのが三十三件でございます。これにつきましては、大臣からお話がありましたとおり、すべて分析を行うということでございます。

細野委員 十一件はもう分析が完了していて、三十三件が分析が終わっていない。これについてはきちっと答えを持ってくるということでいいですか。もう一度確認。

町田政府参考人 さようでございます。三十三件について分析を行うということでございます。(発言する者あり)

細野委員 今我々の委員の方からもありましたが、大臣、四十四件までやっているわけですね。あと二十七件ですか、二十七件きっちりやればいいじゃないですか。それで、アフラトキシンが出ないなら出ないでいいし、もう食べたものを全部検証するのは無理なんですよ。ただ、この八十九件というのは非常に重要なサンプルですよ。残り二十数件ですから、それもやって、きちっと過去はこういうことで検証し終わりました、結果はこうですと委員会に報告してください。

 その上で、大臣、一つだけ言っておくと、今、四十四件、これも結果を出すと言ったけれども、きのうまでこれも出さないと言っていたんですよ、農水省は。これはもう発注をしましたけれども、答えは持ってきませんと言っていたんですよ。本当ですよ。何度も何度もこの数週間やり続けて、二十一件だけ結果を持ってきたけれども、残りは、穀物検定協会に発注をしているにもかかわらず、結果は出しませんときのうまで言っていたんですよ。ほうっておいたらやりませんよ、大臣。

 いいですか、ここで約束してください。残りの十一月、十二月、一月の七十一件もすべて調べて、どういうカビだったのか、菌だったのか、そのことを皆さんに明らかにする、委員会にも報告をする。お約束いただきたいと思います。

石破国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在発注しているものの分析をきちんと行うということで、今までの原因等々は明らかになるという報告を私は受けております。

 ただ、委員おっしゃいますように、きのうとおっしゃいましたか、きのうまで、それもやらない、あるいは公表しないというふうに言っておったとすれば、私、その話は聞いておりません。そうだとすれば、日々言うことが変わっちゃうということであれば、それは委員が不信感をお持ちになるのも当然のことだろうと思っております。

 私自身、これから先そういうことは起こらないということ、そしてまた、過去何で起こったかということは、今発注しているものを分析すれば足りる。そして、これから先、先ほど申し上げましたように、あらゆる段階でチェックをしていけばよいのだということで、それなりに納得はしておりましたが、委員がおっしゃいますことにも首肯し得る部分がたくさんございますので、もう一度検討して、必ず結果は御報告を申し上げます。

細野委員 私、大臣の言葉は信用しますので、もう一回はっきり答弁してください。

 残り二十七件です。そんなにコストがかかるものでもありません、時間はかかるかもしれないけれども。きっちり全量を過去については検証をして、これからは出ませんというのが一番すっきりするじゃないですか。やっていただけますね。これはしっかり答弁してください。

石破国務大臣 それをやることの意味ということだと思います。私は委員のおっしゃるとおりだと思いますが、事務方の方から、いや、今発注しているものを分析するので十分足る、それをやることの意味、税金を使ってまでやることの意味というものに意味が見出せないという話も聞いておりますので、それがどうなのかということは、きちんと、国会の場で御指摘のあったことですから、私自身、それは大したお金のかかる話でもないだろうということでございますので、それが税金の使い道として正しいということであれば必ず行わせていただきます。

 もし仮に行えないということであるならば、なぜやらないかということはこの場できちんと申し上げる責任がございます。

細野委員 ここできちっと御答弁いただけないのは正直残念ですね。

 大臣、事務方からしっかり話を聞いてください。検査機関は複数あります。ことしはたまたま悪名高き穀物検定協会にやっておられるようですが、ほかにも幾つかあります。全量検査をするということになって、複数の機関に分割発注することを検討しているようです。過去を検証できない理由は全くないです。しかも、残りは二十七件、そんなに時間かかりません。しっかり検査をして、そしてそれを国民の前に明らかにする。大臣はそうやっていただけると約束していただいたと私はとりますから。お願いしたいと思います。

 大臣にもう一つこの問題を聞きたいんですが、私、やはりちょっとこの問題を見ていて考えてしまうのが、カビが発生している米のほとんどが輸入米なんですね。なぜ輸入米なのかというと、それは、米ですから飛行機で運んでくるわけにいかないので船で運んでくるわけですね。船底は湿っているわけですよ。そこで、どんぶらこどんぶらこと海を渡ってくれば当然しけて、船の中、もしくはその後倉庫にあるときにかびる可能性が高いわけです。それを、しかもこれからは全量検査をして、相当コストをかけて流通をさせる。

 WTO上の約束もあり、これは非常に難しい問題があるのかもしれないけれども、一回立ちどまって、このMA米の扱いについては、これは国際協定云々ではなくて、我が国の国民の安全の観点から一回考え直す、体制も含めて。それぐらいは、農水大臣、国民のことを考えたら我が国の政府はやるべきだと思います。いかがですか。

石破国務大臣 分科会でもどなたかにお答えをしましたが、それはミニマムアクセス米が入ってこないのが一番いいに決まっているんです、そんなもの。そしてまた、生産調整に影響を与えないということで、これは政府が保管をし、それは国民の税金で保管をしておるわけですから、ミニマムアクセス米は一切入れないというふうに言えば、それはもうみんなよかったよかった、こういう話になるわけでございますが、そうすると、七七八という高関税を張っているというのをどう考えるんだという議論とこれはセットなのは委員も御案内のとおり。

 それで、危ないから入れないんだということを盾に、ではミニマムアクセス米を入れないということができるか。それはまさしく、おたくの国でちゃんとチェックをすればいいんじゃないのと。あるいは、タイであるとかベトナムであるとか、そういう国において、我が国として申し入れて、きちんと検査してちょうだいよ、危ないものが入ってきちゃ困るんだからというようなやり方があるはずなので、私は、危ないものが入っている、だから入れないということが通るかどうかといえば、七七八を張りながら、危ないのでそれは入れませんということはなかなかストレートには通りにくいお話だというふうに考えております。

 ミニマムアクセス米を入れないためにどういうようなやり方ができるか、それは消費者に危ない米が流通しないための施策というものとはまた別に、かぶる部分もございますが、また別に議論をしていかねばならないのだろう。

 よく御党の議員が御提案になりますところの、輸入機会を提供しているのであって、全部正直に入れることはないではないかというお話があります。そうすると、国家貿易というものをやり、そして生産調整に影響を与えないということと、機会さえ提供すればいいのだということが鼎立し得ることなのかどうかという議論をきちんと詰めていかねばならないことなのだと思っています。

 仮に、それでは国家貿易ではない、民間貿易にするのだというやり方をした場合に、それは、関税を乗り越えて米が入ってくるという可能性は私は否定できないんだと思っております。

 つまり、生産調整に影響を与えないということを担保するためには国家貿易を堅持せざるを得ない。国家貿易で国として、民間から入る道を閉ざして国が買うのだといったときに、民間だったら全量買うのにね、それ以上買うのにねと言われたときに、いやいや、そうではありません、国がやる以上、まさしくミニマムの、それは機会の提供ではあるけれども半ば義務的に買わざるを得ないのだということは、それは賢明な委員であれば御理解をいただけることだと思います。これは、先ほど鼎立という言葉を使いましたが、消費者の安全、それから生産調整、そして高関税、ここをどう考えるか。

 そして、例えば、アメリカに日本の自動車は二・五%の関税で入っているわけでございますね。アメリカの米を日本が買う、タイの米を日本が買う、ベトナムの米を買うというときには、七七八という半ば輸入禁止的な関税をかけておるわけで、輸入禁止と言うからには輸入機会を提供してくれ、それがミニマムアクセスの本質でございます。

 そうすると、我が国の産業構造、貿易構造というのをどのように考えるかということまで議論はさかのぼるのでございまして、委員がおっしゃることは心情的にはよくわかりますし、委員もすべてのことを御存じの上でお尋ねですが、消費者に危険が及ぶかもしれないのでミニマムアクセス米やめというすぱっとした議論にはならないと思っております。

細野委員 大臣、私もこれを未来永劫ストップできるとは思っていませんよ。それはやはり義務があるので、それについて国際的に責任を果たすということは必要でしょう。ただ、農水省のこの間のどたばた劇を見ていて、本当に安全を確保できる体制が我が国にできているのかというと、甚だ心もとないんですよ。

 だとすれば、まず一時的にでもこれはとめるところはとめて、そして体制が整ったところでミニマムアクセス米をどう確保していくのかということを考える。それぐらいは、私は、国民の安全を考えれば、選択肢としては十分検討に値すると思いますよ。この議論はちょっと切りがありませんのでやめますが。

 石破大臣はこれで結構です。ありがとうございました。どうぞお帰りください。

 きょうは、消費者問題担当の野田大臣に来ていただきました。

 今回、消費者庁の問題を担当されていて、私、この問題は大変大事だと思っている。ただし、残念ながら、政府が出してきている消費者庁の体制の中で一番欠けているのは、今私が石破大臣とやりとりをしたこの部分だと思うんですよ。

 輸入米は、厚生労働省が検疫のところで、こういうものが入っていないかとチェックしますね。国内に入ったら農水省が、農政事務所がチェックをする体制になっている。ただ、チェックができずにこのまま来て、そして実際に怪しいものが回ってしまった可能性があるということも、石破大臣自身が今お認めになりました。

 今度、消費者庁を新たに設置されるわけですが、この体制は変わるんですか。

野田国務大臣 お尋ねいただきまして、ありがとうございます。

 消費者庁についてはなかなか発言の機会がないものですから、この場をかりて少し説明をさせていただきたいと思うんです。

 事故米、これは、先般発生した事故米の不正規流通で、いかに農水省とまた食品の安全にかかわっている厚生省とのもたもたがあったか。さっきどたばたがあったというお話がありましたけれども、そもそも、あの事故米が拡大してしまった理由は、通報があったけれども、それを手元で、隠し込んでいたとは言わないけれども、迅速に調査に行かなかった農水省の問題がありました。

 消費者庁になると、通報やいろいろな報告が、消費者庁が一元管理をすることになるので、利害関係が発生しませんから、速やかにその通報に対応することが可能になります。迅速に対応することが可能になります。

 今回も、お米を扱っている人というのは、いわば農水省とお友達関係というと申しわけありませんけれども、いわばそういう仲間内であったから、ためらいがあったのではないか、調査も大変ずさんだったし、調査という調査になっていなかったんじゃないかということで、どんどん拡大した経緯がある。

 これに関しまして、中立公正な消費者庁は、その担当である農林省に措置命令、速やかにやりなさいという指示を発することができるわけですね。それでも当該の役所がもたもたしているようだと、法律の権限のもとでみずからが立入調査ができる、そういう力を持っております。

 そういうことで、今般そういういろいろなトラブルがあったところに関しては、消費者庁という役所があれば速やかに改善できたということは確実であります。

細野委員 大臣、いろいろな通報があったり、きちっとなされたときにどう対応するのかというのは基本で、それすらやっていなかった農水省は論外なんですよ。

 ただ、消費者庁ができたところで、水際は厚生労働省がやり、国内に入ったものの安全は農水省がやり、それこそ検疫体制とそして農政事務所の関係というのは、これは変わらないでしょう。変わるんですか。

野田国務大臣 各省庁縦割りになって、情報の共有がきちっとなされていないというのが今回の問題であったと思いますので、それは、消費者庁が司令塔的役割を果たして、一気呵成に、それぞれにそれぞれの役割に応じて動いていただくという要求、措置命令ができるということであります。

細野委員 やはりここは体制は変わらないんですね。大臣、もうここのやりとりは、別の場所もまたあるんでしょうから、そこでいろいろな議論をしていただくとして、ここが私は、今回の消費者庁の問題を考えたとき一番、やはり危険なものは日本の場合は外から入ってくるケースが多いんですよ。この部分が穴があいているということが最大の問題だと思いますので、そのことを指摘したくて最後に質問させていただきました。

 ありがとうございました。どうぞ、お忙しいと思うので、野田大臣、結構です。

 官房長官、もうすぐ会見に行かれるということで、ちょっと話題をかえて、天下りの問題、特に公益法人の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 資料をつくっておりまして、後ろから三枚目をごらんください。せっかく昔パネルをつくったので持ってきたんですが、これは私の地元の、十人という、規模としては非常に小さい鉄骨業の業者が、十名の中で取得している資格の種類なんですね。資格の種類だけで十八種類。そして、その中に、例えば二番に書いてある日本溶接協会の一番上の資格であれば、溶接管理技術者適格性証明書というのであれば、特別級、一級、二級、こういう資格があって、とにかくこの資格を取るのにコストがかかってかなわぬというふうにこの業界の方は皆さんおっしゃっています。

 私、調べてみました。それぞれの資格を付与している公益法人や団体に役所の方のOBがいないかと調べてみたら、いるんですよ、やはり。国土交通省からの天下り、都道府県からの天下り、厚生労働省からも天下っています、そして経済産業省からも天下っている。こういう構図は、やはり本当に一回変えないかぬと私は思うんですよ。

 まず、総論として、官房長官、どう思われるか。時間もないでしょうから、御答弁いただけますか。

河村国務大臣 いわゆる技術者の資格問題でございます。これがあって、いろいろな団体があって、そこへ天下り、こういうふうになっているんじゃないかという御指摘かと思います。

 ただ、この資格がまず必要であるかどうかということについては、これはまた資格との問題もございましょうし、それから、資格制度のあり方等との問題もあろうかと思います。ただ、さはさりながら、この鉄骨加工、この辺は建物の一番最初のところでありますから、この安全性というのはやはりきちっとやってもらわなきゃいかぬ、そういうことからこれは生まれたんだと思いますね。

 だから、先に資格制度を設けて、そしてその団体をつくっていって、天下りのためにつくったと考えるとこれはちょっと、そこまで考えると、しっぽが体を振るような話になりますが、そういう形で資格制度が生まれていって、そういう団体が必要になってできてきた、このように思います。しかし、安全性の点から考えなきゃいけませんし、そういうものの天下りと言われるものが、予算とか権限とか、それを持って押しつけ的に行っている、これはやはり絶滅しなきゃいかぬ。こういう方向で官民人材交流センターもつくっていったわけでありますから、そういう視点で見る。

 しかし、こういう公益法人的なものの見直し等は、これはふだんもやっていかなきゃなりませんし、どのような形になっているか、これはやはり考えていかなきゃいけない課題だ。そういう面でのいわゆる天下り、いわゆる権限、予算押しつけ的なもの、それ以外の、定期的にずっと行っているじゃないかと前の委員会でも御指摘あった、そういうことについての見直し等は不断にやはりやっていかなきゃいけない課題である、このように認識をしております。

細野委員 今、官房長官は、予算と権限とおっしゃいましたね。こういう公益法人の資格というのは、予算と権限ということでいうと非常にグレーなゾーンなんですよ。

 別に、この資格を持っているからといって、補助金をもらっているわけではないんですね。権限があるかといえば、これは民間の資格なので、別に国家資格と違って強制力があるものではないんです。ただ、現実的には、例えば市町村や都道府県の入札のときに、こういう条件がないと業者として入れないことになっているから、公的な資格ではないけれども、取らないと商売をやっていけないことになっている。それが非常にグレーなゾーンで、しかも、国の手が届かない一方で民間はなかなか意見が言えないというのは、こういうものなんですよ。

 きょうは国土交通大臣に来ていただいていますが、このリストにあった一番上の日本鋼構造協会の資格ですね。一枚資料をめくっていただくと、この鋼構造協会の建築鉄骨製品検査技術者という、この資格の費用が書かれています。

 この資格が必要だというふうに考えるとして、一回目の試験に、上に書いてある区分でいえば、学科試験受験料であるとか実技試験受験料であるとか資格登録料であるとか、これが大体四万七千円ぐらいかかっていますが、これはもしかしたら費用としては必要な部分があって、やむを得ないのかもしれないかなというふうに思います。

 ただ、この資格は、有効期限は五年なんですね。五年で失効してしまうんです。五年ごとに新しい資格を取らなきゃならなくて、そのたびに、下に書いてある三万三千六百円、この二つの、継続講習受講料と継続資格登録料、更新試験受験料と更新資格登録料、それぞれ何を意味するのか極めて微妙ですが、合計をすると三万三千六百円払わないかぬ。

 しかも、例えば静岡県であれば、名古屋まで行かないかぬですね。名古屋まで行かなきゃいけない、東京と名古屋にしか拠点がないので。これは業者にとっては大変な負担なんですよ。こういう同じような資格が十種類、二十種類あるわけだから、そのたびに一々そういうところへ行って資格を取って、更新をして、失効するのに対応するという、これはもう本当に負担が重いんですね。

 国土交通大臣が所管をしている公益法人の中でこういうのが相当あると思います。大臣として、こういうものについてしっかり中を見ていくというおつもりがおありかどうか、お答えをいただきたいと思います。

金子国務大臣 今の先生お尋ねの鉄骨関係でいきますと、この中でも特に溶接の技術というのが、やはり安全性という意味で、品質を確保するという意味で、施工能力という意味では非常に大事だと言われております。

 ただ、先生御指摘のように、中小企業に非常に負担をかけている、それから、これだけ細分化された技術資格というものが妥当なのかどうか。これは、鉄骨に限らず、工事、完成物の安全などの観点から必要な範囲で行っておりますが、同時に、こういう制度の見直しも随時行っているようであります。

 御指摘のように、お預かりして検討させていただきたいと思います。

細野委員 大臣、行っているようでありますというのは、それぞれの公益法人がやっているという御趣旨の答弁だと思うんですが、ほっておけば資格はどんどんふえるんです。実際にどんどんどんどんふえて、新しい技術ができるたびに新しい資格ができる。本当に必要なものはいいですよ。でも、その必要性は、例えばそれぞれの公益法人に判断をさせれば、それはもう資格をふやせばふやすほど業者はたくさん取らなきゃならないわけだから、たくさんお金が入ってくるんだから、どんどん新しいのをつくりますよ。更新だって何度もしますよ。

 そういうところを国土交通省として踏み込んで、本当にどうなのかということについて、特に天下りのいるところもありますからね。そういうところについては国土交通省として、きちっと、中小企業を守る立場からもチェックした方がいいんじゃないですかということを申し上げているんです。どうですか。

金子国務大臣 私も点検をさせていただきたいと思います。

細野委員 さらにひどいのは経済産業省です、二階大臣。

 一番最後のペーパーをごらんください。これは国土交通大臣が勘違いして答えられましたが、この資格は実は経済産業省。日本溶接協会、大臣、こんな団体知らないと思いますね。所管なんです。私も知りませんでした。見たら、この資格、皆さん一覧表を見てください。何と百六種類、資格がある。

 私は専門家じゃありませんから、それぞれどういう資格なのかわかりませんが、可能な範囲で、業界の方複数から、これはどういう資格かというヒアリングをしてまいりましたが、実に細かい。要するに、鉄の厚さが何ミリだとどの資格、これが幾つになるとどの資格と、全部細目が分かれている。

 大臣、百六種類ですよ。これを取らないと仕事ができないといって、本当に、複数の資格を持っている人を何人も抱えて、大変な苦労をしている。

 さらに、こういう団体で私が問題だと思うのは、十二番の認証料金の中の、わかりにくいんですが、サーベイランスというのがあるんですが、これは毎年免許を更新するのにこの手数料を取るんですよ。毎年ですよ。しかも、三年に一回、この資格は失効するので、また取り直さなきゃならないんです。

 現場で働いている人間は日々こういう業務をしているわけだから、資格あるなしにかかわらず、それは技術でいえば熟練するわけですよ。もちろん、安全性の観点から必要最小限の資格は必要ですよ。でも、こんな負担をさせておいて、これは私は民業圧迫以外の何物でもないと思いますよ。大臣、いかがですか。

二階国務大臣 議員御指摘のようなことが事実であるとすれば、私の方としては、十分調査をして、社団法人溶接協会等にも実態をよく聞いてみたいと思います。

細野委員 私もちょっと電話してみたりしたんですが、いや、民間の資格なので自主的に取りに来られるんですと言いますよ、間違いなく。違うんです。それは入札の条件に課されていたり、やらないと生きていけない環境になっている中で、これはもう苦しい中で取っているんですよ、各社。

 官房長官、そろそろ記者会見だと思うので、その前に伺いたいんですが、これは本当にまだまだ氷山の一角です。私が聞いているだけでも、例えば下水道の関係の業者、内装関係の業者、庭をつくっている業者、それぞれのところにいろいろな公益法人があって、いろいろな資格があって、それで国土交通省だ、経済産業省だ、厚生労働省だ、この三つは三大資格試験役所ですよ。必ずそういう団体がかんで、そして民業を圧迫していますよ。やはりこういうものと闘うのが私は行革だと思うんですよ、政府として。

 官房長官は、公益法人の問題で何度も私は議論をしてきましたが、正直言って、いま一つこの部分に対して、本当に何とかしなきゃならないという気迫みたいなものが感じられない。やはり民業圧迫はおかしいですから、しっかり調べて、おかしいものはなくすと、これはしっかり答えていただけませんか。

河村国務大臣 これまでも、そういう御指摘を踏まえながら、国から公益法人に委託したり、そういうような関係、こういう検査、検定、資格付与、こういうことについては、平成十四年に一度、改革実施計画に基づいて、官民の役割とか規制改革推進の観点から必要な見直しをやってきております。事務事業の廃止、あるいは客観的な第三者機関へのチェックの移行等々もやってきております。

 ただ、その中でもまだ改革の対象にならなかったものについてもさらにやるという形でやってきて、その結果をインターネットで発表する等やっておりますが、まさに今御指摘のような点がさらにまだあるという御指摘でございますから、そういうものが民業を圧迫しているということであれば、やはりそういう視点に立って調査もし、見直しをする、こういう姿勢は大事だと思います。

 特に、公益法人は国との関係も非常にあるわけでありますから、そういう視点に立ってやらなきゃいかぬ、このように思います。

細野委員 若干踏み込んだ決意を示していただいたということで、どうぞ記者会見の時間ということですので。

 国土交通大臣と経産大臣はこれで結構です。ありがとうございます。

 それで、文科大臣、済みません。ちょっと漢検で聞こうかと思ったんですが、官房長官に踏み込んで答えていただいたので、きょうはもう結構です。ありがとうございます。

 残された時間は十五分ですので、最後に自然エネルギーの問題について少し聞きたいと思います。

 資料をつけておりますので、一枚目の資料をごらんいただけますでしょうか。

 経産大臣、残ってください。済みません、これで聞くので。失礼しました。

 まず、環境大臣にお伺いをしたいんですが、資料をごらんいただけますか。これは、経済産業省に出していただいた資料なんですが、我が国の非化石燃料の発電がどうなっているのかということについて示した表なんです。

 実は、これまで経済産業省に何度言っても出てくるのは上の資料だけでございまして、非化石燃料の発電分野における国際比較というと必ずこのグラフが出てきた。それを見ると、全計で千八十二億キロワットアワーという数字が出てきておりまして、これだけ見ると、例えばお隣のドイツとか、右側に書いてあるイギリスであるとかアメリカであるとか……(発言する者あり)二枚目ですかね。その上の表の全計のところを見ていただくと、日本は、これは遜色ない数字に確かになっている。

 これは、一つ非常に技術的に難しいのは、水力の中でもいわゆる揚水と言われる小規模な水力については自然エネルギーの範疇に入れることが多い、再生可能エネルギーにも入れることが多いので、日本の場合には、水力全体を入れると、水力発電が多いのでこの数字になってきたんですね。

 ところが、実際に、では再生可能エネルギーはどうなのかというのを、これはいろいろな計算があるんですが、経済産業省がようやく出してくれた資料ですので、数字として現実に見てみますと、これは下の部分なんですね。総発電量がそれぞれ出ていますが、その下の、再生可能エネルギーに水力を含めると日本は一〇・九%と結構高いんだけれども、これは、再生可能エネルギーということでいえば、まやかしの数字です。ダムは、いろいろな意味で、プラスもあるかもしれないけれどもマイナスもありますから。

 実際問題としては、再生可能エネルギーの水力を除いた部分で計算をすれば、日本の場合には発電量が一・八%、ドイツとかイギリスとかアメリカと比較をしても非常に低い水準にとどまっていると私は思いますが、この数字、環境大臣としてはどう思われますでしょうか。

斉藤国務大臣 細野委員の御質問に率直に答えるとすれば、一・八%というのは非常に低い数字というふうに認識しております。

 再生可能エネルギーというのは、まさに読んで字のごとくでございまして、ここに水力を加えるかどうかというのはいろいろな議論がございます。水力を加えて再生可能エネルギーというふうに議論をする場合もございますが、これからは、非常に大型のダムをつくるということの環境に対する影響等を考えますと、いわゆる小水力というものは当然、これは千キロワット以下のものを言いますけれども、小水力は再生可能エネルギーに加えるけれども、大型ダムは外して考える。

 そういう意味では、この一・八%のところを再生可能エネルギーもしくは新エネルギーと考えるというのが普通で、これについてはまだまだ日本は伸びる余地が大いにあると思っております。

細野委員 非常に環境大臣らしい御答弁をいただいたと思います。

 経産大臣にはちょっと厳しいことを聞かざるを得ないんですが、こういう哀れな数字に日本の再生可能エネルギーがとどまっている背景として、私は政策のミスがあったというふうに思っているんです。

 実は、経済産業省も、一般論としては再生可能エネルギーについては推進をしますということを言うんですね。具体的に言いますと、もう一枚めくっていただいて、これは、二〇〇六年五月に経済産業省が出した新・国家エネルギー戦略の中の図表の二十八という資料です。これを見ますと、大臣、二〇一〇年から二〇二〇年まで加速的普及期ということで、新エネルギー自体をすごい勢いでふやしていく加速期になっているんですね。

 これは、皆さん、大臣、加速しているというイメージはすぐつかんでいただけると思うんですが、では、それと現実はどう違うのかというのは、もう一枚めくってください。

 これは、RPS法ですね。実際に自然エネルギーを普及させる定量買い取り制度を日本は導入していますが、その制度に基づいて、どういった形で自然エネルギーを導入していくのかということを目標値として掲げているグラフなんですが、これも経済産業省のデータをもとにつくっています。

 これを見ると、平成十五年から出ていますが、平成二十二年度から増加の角度が急に減少しているのを、大臣、わかりますか。これは平成十九年、おととしの三月にRPS法に基づいて目標値を先延ばしをしたときの数字なんです。それをプロットしたものです。

 何を申し上げたいかというと、経済産業省自身がエネルギー戦略の中で加速的普及期というふうに銘打っている自然エネルギーを、実際の数字に落とし込むときは、この増加角度をわざわざ鈍化をさせて目標値を設定してしまっている。これは明らかに私は政策のミスだと思うんですよ。まず、これは率直にお認めになって、そして過去の政策のミスを改める、そういう決断をされるべきではないかと私は思いますが、経済産業大臣、いかがでしょうか。

二階国務大臣 今議員の御指摘のようなRPS法の実施について、まだまだ速度が足りないということの御指摘であろうと思いますが、我々は、今日のこの状況において、再生可能エネルギーの中でも、いわゆる太陽光発電の導入等について真剣な対応をしようということで、RPS法はRPS法として従来やってきたことですから、これはこれで伸ばしながらも、固定買い取り制度等の検討に入るということでやっておりますので、両々相まって加速的に対応していきたいというふうに思っております。

細野委員 経産大臣がここへ来て前向きになっていらっしゃることは承知をしていますし、経済産業省の中でも大分雰囲気が変わっていることも私もつかんできておりますので、それは結構なんですね。

 ただ、大臣、しつこいようなんですが、こういう加速的普及期という形で目標をつくっておきながら、大方針を立てておきながら、個別の政策になると伸び率を鈍化させた、このおととしの決断は明らかに誤っていませんでしたか。この間違いは検証した方がいいと思いますよ。要するに、当時は電事連も余り積極的ではなくて、目標値としては下げたわけですね。何か振りつけがなされているようですが、大臣、まずここは認めて、間違いを認めた上で新たにどういう制度設計をしていくのかということについて考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

二階国務大臣 けさ、私は電事連の森会長にお越しをいただいて、今日のこの状況において電事連の皆さんにも御協力を願う、国民の皆さんにも御協力を願う。環境問題、環境問題ということは、言うは易しいんですが、実際実行していく上においては、政府はもちろんのことでありますが、各関係企業の皆さんや、あるいは実際家庭で電気を使う立場の消費者の皆さんにも御協力を願わなきゃいけない。しかし、固定買い取り制を実行していくに際して、まず電気事業者の関係の皆さんの協力を得るということは極めて重要な部分でありますから、けさ、少し早目でございましたが、森会長にお越しをいただいて協力を要請しました。

 それによって、電気事業連合会としても、政府がそこまで決断をされるならば我々の方も協力をするということのお約束をいただきましたので、私は、法令改正等も含めて直ちに検討に入るように事務当局に命じたところであります。

細野委員 今までの答弁からすると相当踏み込まれたと思います。それは評価をしたいと思います。

 もう一つだけ、ちょっと気になることがあるので大臣にお伺いしたいんですが、太陽光なんですが、太陽光発電をしっかり日本で事業者としても育てて普及をさせることは、私は大賛成です。やるべきだと思うんですね。

 ただ、気になることが一つありまして、といいますのは、RPS法の目標の中において、太陽光というのは、実際の発電量の二倍カウントできることになっていますでしょう。これは、コストが高くて、普及が望まれる太陽光、これをちょっとげたを履かせて、事業者にたくさん買わせるために二倍カウントにしたんですね。

 ところが、このグラフで示しております、RPS法というのは量が決まっていますから、これだけ買ったら義務を果たしたことになるんですね。ということは、太陽光をたくさん買えば買うほど、実際の発電量の二倍カウントされますから、実際の発電量は少なくて義務が果たせてしまう、そういう矛盾した話になるんですよ。大臣、これはわかっていただけますね。

 ですから、まず、太陽光の二倍カウントをするのであれば、二倍カウントは結構だけれども、そこの部分についての量は上げる、もう少し上げて目標をつくるとしなければ、整合性のとれた政策にならないんですね。まず足元のやれることから私はやるべきだと思いますが、大臣、いかがお考えですか。

二階国務大臣 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、いわゆる議員がおっしゃっておりますRPS法において、平成二十六年度の新エネルギー等の利用目標量を、平成十八年度の実績の三倍近くの百六十億キロワット時と設定しているところであります。

 この目標量を検討したのは平成十九年の三月であります。したがって、総合資源エネルギー調査会の需給部会等におきましても、平成二十年五月に長期エネルギー需給見通しを取りまとめたわけでありますが、この見通しに示された最大導入ケースは、二〇二〇年に一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合が八・二%という水準であり、今後は、この水準を踏まえつつ、RPS法の利用目標量を設定していくことが重要だと考えております。

 そして、固定価格制度を導入するということによって、これは改めて広く多くの関係者の皆さんの御同意や御協力を得なければなりませんので、太陽光発電を活用する新しい電力対応を我々は積極的に考えていかなくてはならない、このように思っております。

細野委員 大事な点なので、最後に大臣、確認をしたいんですが、RPS法上の新たな目標設定をするのは平成二十三年の三月という、これはまた二年後という随分気の長い話になるんですね。そのときまで待ってRPS法をどうするかなんという議論をするのは、私はナンセンスだと思います。

 確認をしますが、では、定額の買い取り制度を導入する、政府の方針としてはそれを決めて、やるなら早い方がいいですね。電事連とあとは消費者の皆さんに理解を得れば、これは通常国会で法律を出す、そういう覚悟でいらっしゃるということでよろしいんですか。

二階国務大臣 まさに消費者の皆さん、そして電力業界の方々の協力が必要でありますが、同時に、国会におきまして、各党の皆さんの御協力を得て、今国会で法律を出させていただいて、直ちに実行に移す。まあ、実行に移すといいましても、いろいろと諸般の準備期間もありますから、直ちにといっても一カ月や二カ月でできるわけではありませんが、可及的速やかに実行に移して、現在の状況にこたえていきたいと思っております。

細野委員 この点については我々も賛成をします。旧来から我々は、固定価格で本当にこれを育てていかないと、マーケットをつくっていかないと、我が国のエネルギーはもたないし、それだけではなくて、世界に売っていくネタとしてももう時期を逸してしまうという思いでやってきましたから、この部分については、私は個人的にも、恐らく民主党としても賛成できると思いますので、ぜひ作業を急いでいただきたいというふうに思います。

 環境省としても、それを後押しするという方針でいいんですね。それだけ最後に確認させてください。

斉藤国務大臣 固定価格買い取り制度については、爆発的に太陽光発電を伸ばす有力な選択肢とこの前も菅委員に対してお答えをしたところでございまして、経済産業省から御相談があれば、一致協力して頑張っていきたいと思っております。

 また、RPS法につきましても、所管は経済産業省でございますが、経済産業大臣が決断されれば環境大臣に相談があるということになっております。先ほどの固定価格買い取り制度を設定すれば、自動的にRPSの値も出てくるわけでございまして、そういう意味で、環境大臣に御相談があれば、促進に向けて一緒に頑張っていきたいと思っております。

細野委員 甘利大臣、済みませんでした。ちょっと聞こうと思ったんですが、天下りのところに質問が行かなかったものですから。

 最後のところに関しては経産大臣と環境大臣から非常にいい御答弁をいただきましたので、若干時間を余していますが、その答弁をいただいたということで、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて細野豪志君の質疑は終了いたしました。

 次に、大島敦君。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 きょう、一時間ほど、さまざまなテーマについて質問をさせていただきます。

 いろいろと、どこから伺うか迷っているんですが、まず、今の我が国の立ち位置について、若干私の私見を述べながら議論を進めたいと思うんですけれども、昨年の大体四月、五月ぐらいから、経済産業省さんにお願いして、中小企業三百選なんという本があるものですから、その中小企業の方にお会いさせていただいたり、あるいは、つくばにある産総研、産業技術総合研究所に訪問させていただいたり、各企業の中央研究所に訪問させていただいて、中小企業ですと物づくりを中心に、産総研ですと太陽光発電を中心に、そして民間の研究所では、自動車会社あるいは電力あるいはガス会社で新エネルギー、特に電気自動車を中心に、ずっといろいろと勉強をさせていただきました。

 なぜかというと、私は、昨年はパラダイムシフトが起きたと思っているんです。パラダイムシフトが起きたと思っていまして、丸紅経済研究所の柴田さんの話を伺うと、一九七〇年代の後半のオイルショックがあって、それからオイルの値段は、大体それまでが二ドルから三ドルぐらいだったのが、一挙に次のステージに移って、大体十ドルから三十ドルぐらいで二〇〇〇年代の前半ぐらいまでは推移をしてきまして、それが昨年、これは金融が非常に不安定だったものですから、その価格については乱高下が激しかったんですけれども、それで次のステージに移ったと思うんです。

 これは原油、エネルギーの値段と穀物の値段も同じトレンドですから、多分、この金融の不安がなければ、もっと明らかに安定した価格推移が見られたかなと思っているんです。ですから、中長期的には、基本的にエネルギーの値段あるいは穀物の値段は上がって、次の時代に入ったという認識でおります。

 そうすると、前の一九七九年のオイルショックのときに、たまたま、ビジネスウイークの記者が書いた本で「テクノクラシー」というのが一九八三年に出たのかな、八四年に読んでいまして、要は、一九七九年の当時、ビジネスウイークの記者が世界じゅう取材していて、スイス人の投資家に取材していると、当時も今と同じような現状で、皆さん、貴金属なりに投資が流れていたんですけれども、妙な投資があったと書いているわけです。

 当時、スイスの投資家は、七九年の時代に富士通とか松下とか日立に投資をしているわけですよ。これは、次の時代を読んで、日本のエレクトロニクス産業が伸びるという前提で彼らは次の手を打っていたのかなということで論を説いていくんですけれども、結局、彼が言っているのは、ソ連は、テクノロジーの進歩についていけなくて、多分崩壊するだろうということを八三年に書いております。ですから、今の、この去年から始まったパラダイムシフトは、次の産業が世界のどこかで生まれつつあるのかなと思っていまして、自分もまだわからないんです。

 昨年の太陽光発電なりあるいは電気自動車、電気自動車は自分で乗ってみました。東京電力さんの中央研究所に行って、iMiEVという三菱の電気自動車、男四人が乗って、私が運転してアクセルを踏むと物すごい勢いで加速力がよくて、これは時代が変わったなと思いました。一九九四年、日本で一番最初のインターネットの博覧会のINTEROPというのが幕張で開かれたときに、私はそれを見て、世界が変わるなと思ったぐらいの実感を覚えたんです。

 ただ、電気自動車は、バッテリーと、もう一つは、エアコンは大丈夫なんです。ただ、電気で暖めるものですから、ヒーターが非常にききが悪いので、アメリカでも、東海岸ではなくて温暖の西海岸で電気自動車の会社がふえているというのは、恐らく暖めなくていいから西海岸の方でできているのかなと。日本でも恐らく、東京から以南だと大丈夫なのかなとは思っておるんですけれども、そういう産業構造が大きく今変わっている時期にあると思うんです。

 これから中長期的には、私は非常に悲観的なものですから、四、五年後、世界経済がよくなったときに、我が国の産業構造を変えることによって、次の成長の先頭を走りたいなと思っているんです。ですから、そのためには相当痛みが伴うのが現状だと思っていまして、そのために、前回あるいは前々回もセーフティーネットのことについて詳しく御議論をさせていただいたところなんです。

 それで、二階経済産業大臣に伺いたいんですけれども、この産業構造の変化というのを、まだ役所の皆さんからのお話を聞いてもぴんとこないものが多いんです。これまで従来どおりのもので、新たなところというのが出てこない。自分も、先ほどの繰り返しになるんですけれども、太陽光発電と電気自動車ぐらいしかないのかな、そういう非常に貧困な発想しかないものですから、さらなる発想があるかどうかについて伺わせていただければいいんですけれども。

二階国務大臣 大変難しい御質問をいただいたわけでございますが、しかし、同時に、我々政治を担当する者は常に考えておかなくてはならないわけでありまして、私は、ただいまの御質問、御意見を十分念頭に入れて、今後の対応に取り組んでいきたいと思っております。

 世界同時不況、そして経済社会の状況は不透明感で覆われておる、ここまではだれでも解説をするわけでありますが、我々はこれから先、政治として、国民の皆さんに夢や希望を持っていただけるような将来像、将来の姿をやはり描かなくてはならないと思っております。

 新経済成長戦略というふうな成長の道筋を、私はちょうどたまたま担当したものですから二度にわたってまとめてみましたが、今日このような状況の中で、昨年の九月に閣議決定しました新経済成長戦略改訂版、これを基礎としながら、我々は今後に対応しなくてはならない。

 一つは、御案内の低炭素革命に対してどう対応していくか。このことは、先ほど来御議論いただいております太陽光発電あるいは電気自動車、世界最高水準を行くと自他ともに考えております環境技術等を生かした、そういう低炭素革命、低炭素社会、これを構築していくことがまず一番に大事だと思います。

 次には、効率的な医療、介護サービス、最近はロボット等を活用した介護も極めて順調に進んでおりますが、健康長寿社会ということに対して、あくまでも楽しい、しかも夢のある健康長寿社会でなくてはならないわけであります。何となく悲壮感が漂うような健康長寿社会ではなくて、我々がお互いに助け合って、そしてみんなで励まし合っていくような健康長寿社会の実現が一つ重要な柱としてあると思います。

 そして、オスカーの獲得によって、昨晩から、アニメとか日本の映画について、極めて新聞、テレビを独占しておる、日本として久々の明るい話題を受けたわけでありますが、私は、このコンテンツ産業というのは、今、御承知のとおり十三兆五千億ぐらいにトータルでなります。なりますが、これをもっともっと支援していくことによって、やがて積み上げでは十九兆五千億という説もありますから、二十兆円産業ということは決して夢ではない、こう思うわけであります。私は、極めて重要な産業、これからの成長産業とさえ思っておりますから、農業に対して、これを軽く言うわけではないんですが、農業は御案内のように九兆円ぐらいでございますから、このコンテンツの二十兆というのは極めて大きな位置を占めるわけであります。

 これらの三つの柱は、これからの目指すべき経済社会の将来像ではないか。これを、政党政派を超えて、あるいはまた官も民も一体となって対応していけるような大胆な政策のパッケージを示すことが、我々の今与えられた責任だというふうに思っております。そこに新たな雇用の場を見出していく、これが大事だと思っております。

 私は、先般の税制改正その他におきまして、いろいろな関係者の皆さんが、このことをやってくれれば経済はこのように成長するというふうなお話があるんですが、いや、ちょっと待ってください、雇用の関係が抜けてやしませんかと。つまり、これを実行することによって雇用の面でどういう効果があるということを説明していく、そういう習慣を、私たちは政策をつくっていく場合に考えていかなきゃいけないのではないかと思っておるわけであります。

 今後、また、大島先生のような広い知見に基づいて、いろいろな御意見、どうぞ経済産業省の方へもお寄せいただいて、我々はこれに対してこだわりは持っておりません。イデオロギーも乗り越えて、政党政派を乗り越えて、ここは国民の皆さんに真剣にこたえていくときだと思っております。どうぞよろしくお願いします。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 今、三点挙げられまして、一つが低炭素ということ、もう一つが医療を中心に介護、多分、医療の分野、もう一つがコンテンツ、多分これは、映画、あるいは、日本ですと東京ガールズコレクションという、東南アジアから多くの方が要はその場でショーを見ながら買われるなんということも、非常に若者たちの気持ちをつかんでいるという話もよく聞くものですから、この三つは正しいと思うんです。

 ただ、国のあり方として考えたときに、やはり二〇〇二年以降、この前たびたび説明しましたけれども、外国の方のために働いても余りいいことはなかったなという思いがあるわけです。外国の方のためにたくさんいいものをつくって輸出したけれども国内では余り芳しくなかったなと思っていまして、やはりこれは、内需と言われるんですけれども、自分も輸出産業、鉄鋼業に十四年ほどいましたから、為替変動によって設備投資計画が相当変動を来してリスクがあるなとか、できるだけ物を買わない社会というのも悪くないなとは思うんですよ。

 今、例えば我が国のエネルギーの輸入金額、二〇〇七年は比較的安定した年だと思うんですけれども、大体二十兆ぐらい買っているわけですよ。そのうちの十五兆が石油で大体三兆が天然ガスですから、残りが石炭とかあるいは核燃料物質になっていまして、この二十兆を半分に、十兆にすると、単純にGDPで、これが五百兆ですから、二%部分は寄与できるかなと思っているんです。そういう、物を、エネルギーを買わないという国の目標が私たちは必要だと思うんです。

 要は、加工貿易ですから、原材料を輸入して、一生懸命いいものをつくって輸出するというのも必要かもしれない。でも、そのことによって、一生懸命輸出もするんだけれども、これまでのようにそれほど無理に輸出しなくてもどうにか食べられる社会も我が国としては一つのありようかなと思うんですが、二階大臣、その点について、申しわけないんだけれども手短に御答弁いただければ助かります。

二階国務大臣 やはり、そのために我々は、今襲ってきております洪水のような金融不安の中を乗り越えれば、次には、日本が立ち上がっていくためには、一つは中小企業、一つは農林水産業、ここに重点を置いて、私たちは新たな成長産業としてこれらを位置づけていく。

 これらはいずれも、御案内のとおり地方に位置しております。したがって、地方を元気にさせる。そして中小企業、これはお得意の物づくりを中心とした中小企業。農産物も極めて立派なものが私たちの国には生産できるわけでありますから、これを海外にむしろ打って出るぐらいの気概を持ってやっていく。そして、人手不足を言われておった農林業でありますが、最近は、地方の農業にも大いに参画をしたいという方々も出てきておりますから、このチャンスを生かしてやっていきたい。

 よく農ということをいいますと、例えば農商工連携なんという言葉があります。水産業、林業が抜け落ちておるような感じをお与えして大変残念に思うんですが、農というときには必ず農林水産業一体になって入っておるということも申し上げておきたいと思います。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 そうすると、エネルギーのさまざまな分野があるんです。自分としては、このエネルギーの二十兆円を半分にすることを一つの目標としていいのかなと考えていまして、そのために、各党ともに太陽光発電と言ったり電気自動車と言っていますから、できるだけこれは促進する必要があるのかなと思っているんです。(発言する者あり)確かに、ゼロというのもあるかもしれないですけれども。

 それで、私たちの国の中で一番産業競争力として強いところが現場の力だと思っています。

 舛添さんにちょっと質問させていただきたいんですけれども、派遣業の話をしなくてはいけないなと思うんです。要は、正社員の方と派遣社員の方がいて、日本の物づくり、あるいはサービスでもいいんですが、現場の力の根幹が何かについて舛添さんの御見解を伺えればいいんですけれども、大臣の御見解を。現場の何が日本の産業競争力の源泉なのかというところ。

舛添国務大臣 昨年、静岡で物づくりの技能オリンピックがありました。若い人たちがさまざまな分野ですばらしい能力を発揮している。つまり、そういう人間、特に技術を持った人たち、これが富を生み出している。その他いろいろありますけれども、私は、基本は、我が日本の最も誇っていいのはそこだというふうに思っています。

大島(敦)委員 日本の現場が強いのは、今の舛添大臣の話はたくみの世界だと思うんですよ、たくみじゃなくて、システムとしての現場なんです。

 要は、五Sと言われる、整理、整頓、清掃、しつけ、清潔とか、あるいはTPM、JK、QC活動とか改善運動とか、これは、経営が想定したものをしっかりと現場が実行でき、それを改善提案でさらに突き進めることができるというのが必要なんです。これが現場の力でして、今、この視点が私たちの国の中で大分失われているのかなと思っているんです。

 派遣という働き方は、現場の力がついてこないんです。これは、三分の一の皆さんが現場の力がついてきていないんです。だから私は問題だと思うんです。

 きょうも自動車工業会の方がいらっしゃっていて、彼が、景気の変動によってまたよくなったら雇いたいというお話をされたときに、ちょっとそれは違うのかなと思ったわけです。高い給与を払っているんだったら雇ってもいいと思うんですよ。それは、高度成長期においては、契約社員の皆さんは実は正社員よりも賃金が高かった時代があるんです。過去においては、自動車業界の契約社員でも高かった時代があるんです。そのときには、会社側は恐らく正社員の皆さんには、老後も安定しているからということを言われたと思う。でも今は、不安定な職場に対して、御承知のとおり安い給与で働いていただくから問題だと思うんですよ。

 不安定な職場、あるいは、要は会社の都合で賃金を払って、会社の都合でもしもそれをやめていただくケースがあるとすれば、それについては一定の賃金を払うべきだと思うんです。そこの観点がまず抜けているかなと思うんですけれども、その点について舛添大臣の御答弁をお願いします。

舛添国務大臣 私が、登録型の派遣、つまり、きょうはある自動車会社に行って、あしたはまた別のところに行くというような形についていかがなものかなと申し上げたのは、今まさに委員がおっしゃったように、スキルの蓄積ができない、そして、今言ったいい意味での日本的な経営とかいろいろな改善努力、QCサークル、こういうようなものに対して参加意識がある意味でなくなってくる。ですから、そういう点はやはりきちんと見直さないといけないだろうと。

 それから、もちろん、首切りをするときは三十日前に通告し、きちんとその対価を払うということをやらないといけないと思いますけれども、基本的には委員がおっしゃったことだろうというふうに思っております。

大島(敦)委員 まずは給与の問題と、今の経営、よく皆さん、大企業と中小企業とか言うんですけれども、大企業の経営者の具体的なイメージを思い浮かべてみるといいと思うんです、今の大企業の経営者がどういうバックグラウンドを持っているかということ。年齢的には、きょうの参考人の方は多分五十五歳ぐらい、おおむね五十五歳から始まって六十五歳ぐらいの範囲内におさまるぐらいの方で、日本のバブルがはじけた一九九〇年代には、多分係長とか課長ぐらいだった人なんですよ。きのうの与謝野大臣の御答弁の中で、三つの過剰の話をされておりました。人員の過剰であり、借入金の過剰であり、もう一つが設備の過剰であるということ、この三つの過剰に皆さんは懲りているんです。

 この十五年間、前の一番大きなバブルが一回はじけて、その後二回はじけているんですけれども、そのときに、もう金輪際貸しはがしはされたくないというこのトラウマ。もう一つは、金輪際解雇はしたくない。私の先輩も要は解雇とかあるいは出向に携わっていましたから、相当つらい仕事です。あるいは、私の会社ではないんですけれども、人事部長の方で、同期をみんな、あるいは後輩を、会社の都合でやめていただいて、自分も潔く会社を離れられた方もいるわけです。このトラウマが今の経営者の気持ちなわけです。大きな会社なんだけれども、皆さんサラリーマンなんですよ。

 それで、要は、一九九九年の派遣法、その後の改正が行われて製造業に対する派遣ができたので、非常にうれしいなと、うれしいというのか、会社としてはこれは使えるなと思ったはずなんです、前のそのトラウマがありますから。ですから、それでもう正社員の方はできるだけ絞って、あとは景気変動に対応できるように派遣社員あるいは契約社員の方をふやされたというのが今までの歴史だと思うんですよ。

 ですから、そんなに難しくない話だと思っていまして、まずはここで、これから派遣法制については与野党で議論があると思うんですけれども、それはそちらに譲りまして、では派遣の中で過去どうだったということを一つ舛添大臣に伺いたいんですけれども、要は労働災害なんです。

 労働災害については、製造業に対しての派遣を解禁してから労働災害が相当ふえてきているかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 まずデータですけれども、休業四日以上の死傷者数、これは労働災害の状況で、平成十年に十四万八千二百四十八人だったのが平成十九年には十二万一千三百五十六人と、実は約一八%減少しております。また、死亡者については、平成十年に千八百四十四人だったものが平成十九年には千三百五十七人と、これも二六%減少しています。

 しかし一方、一度に三名以上の労働者が被災する、これも重大災害と呼んでいますが、これは、平成十年に二百一件だったものが平成十九年には二百九十三件となっておりまして、約四六%増加している。つまり、重大災害が一・五倍にふえている、これが特色でございます。(大島(敦)委員「派遣業について」と呼ぶ)

 失礼しました。ちょっとお待ちください。派遣業における労働災害の発生状況でございますけれども、これは、今のは一般でございましたので、休業四日以上の死傷者数は、平成十九年について見てみますと、前年に比べて一・九倍の二千七百三人、それから死亡者数は十八人で、前年に比べて七人がふえている。派遣業においてはこういうふうに増加をしてございます。

大島(敦)委員 済みません、派遣業の労働災害の現状なんですけれども、もう一回確認させていただくと、休業四日以上というのが、重大災害と言われているものについてはずっとふえてきているわけですよ。平成十六年で六百六十七人、平成十七年で二千四百三十七人、十八年で三千六百八十六人、十九年で五千八百八十五人ということで、労働災害が非常にふえてきているということだと思うんです。

 今、物づくりの製造業に対する派遣について、禁止すべき、禁止すべきじゃない、あるいは期間を置いた方がいいという議論がありまして、この労働災害については、地味なテーマなんですけれども、命とか、あるいはその方の御家族に関するテーマだと思うんですよ。ですから、労働災害について、派遣という働き方で本当に労働災害が防止できるかどうか。私はできないと思うんです。

 労働安全衛生というのは、会社の中であるいは現場の中での日ごろの教育訓練がないと身につかないものなのです。自分でも、今、横断歩道を渡るときには、メーカー出身ですから指さし呼称なんてして横断歩道を渡ってしまうぐらいなんですよ。そこまで教育訓練を施したとしても、必ず大きな製鉄所では何年に一回かは死亡事故が起きるし、ヒヤリ・ハットはあるし、あるいは、落下に伴っての四日以上の重大災害というのは防げないケースが多いんです。

 ですから、その点について舛添厚生労働大臣としての御所見を伺わせてください。

舛添国務大臣 先ほど、例えば登録型の派遣の問題の一つは、スキルが蓄積できない、それから、経営、労働環境について参加意識が少ないというようなことがありますし、そういうことでやはり派遣業の労働災害がふえているというふうに思いますので、これは今、派遣元に対し、派遣先に対してきちんとそういうことを指導していただきたい、それから、マニュアルもつくり指導を徹底しているというのが今の状況でありますけれども、問題意識は委員と共通、共有しておりまして、派遣ということからくる問題が深く背景にあるだろうと思っております。

大島(敦)委員 私自身は、派遣業において、物づくりの職場に人を派遣するときの労働安全衛生、安全についての教育は難しいと考えているんです。これは、要は、経営者としてしっかりとした安全に対する教育訓練を受けた方でないとなかなかわからないところなんですよ。ですから、前の派遣の製造業に対する見直しの議論の中で、厚生労働委員会ではこの件については指摘をさせていただいているんです。物づくりに派遣すると労働災害がふえてしまうおそれがあって、なかなかそれは難しいんじゃないですかねと。派遣業の皆さんに安全衛生をとことん身につくまでさせるのはなかなか難しいという議論をさせていただいたんです。

 ですから、今後物づくりに対する派遣を考えるときに、命の問題ですから、そして、けがを負ってしまったら、これは障害年金なりをいただいて結構大変な人生を送るケースも多々あるものですから、その点についての議論もぜひお願いしたいと思うんですけれども、もう一度御所見を伺わせてください。

舛添国務大臣 労働災害というのは極めて深刻で、先ほど冒頭に申し上げましたように、一般的には減っている、しかし、重大な災害がふえているし、特に派遣においてふえている。こういうことをいかに防止するかということを、これは先ほど申し上げましたように、派遣元、派遣先に対して指導しマニュアルをつくるということをやっていますけれども、今後の労働者派遣法の議論においても、委員が御指摘のように、この観点をきちんと入れた上で議論すべきだというふうに考えております。

大島(敦)委員 もう一つは、製造業に対する派遣が認められてから、労働者派遣事業所数が急激に伸びているということがあるかと思うんですよ。平成十一年には一万二千六百五十三だったのが、平成十二年には一万四千四百六十二になって、平成十九年には七万六十六ですから、この数字というのは、七万六十六は一般労働者派遣事業ですから、一般だけの数字なんです。自分も計算してみると、一年に七千、許可しているわけです。これは派遣事業ですから、三百六十五で割ってみると、一日二十件以上許可し続けるわけですよ、これまでの間、毎年毎年、毎日毎日。

 これで本当に許可と言えるのか、御所見を伺わせてください。

舛添国務大臣 今委員御指摘のように、平成十一年度末時点で一万二千六百五十三カ所が、十九年度末時点では七万六十六カ所というふうに大幅に増加をしております。それは、十一年と、特に十五年の改正で製造業への派遣が解禁されたことにあると思います。

 一応、一定の基準があって、その基準についてはきちんと厳格に審査をして認めていくという形で今行っているということでございますけれども、現在、この資格要件、今委員がおっしゃったのはそういうことだと思います、こんなにどんどん認めていいのか、もっと資格要件を厳しくすべきじゃないかということだと思います。これは今与党の中でその点についても議論していただいておりますので、とりあえず、この労働者派遣法の改正案で、こういう議論をぜひ与野党を超えてきちんとやっていきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 もう一度伺いたい。大臣、なぜこれだけ急激にふえたのか。やはり規制改革の流れが非常に色濃かったのかなと思うんですよ。

 一定の要件と言いますけれども、私も伺ってみると、そんなに多くの要件が許可の割にはないと思うんです。多分、ページ数でもA4判で五枚ぐらいの書式を整え、かつ、一千万円があればすぐ許可をするということになっていますから、この一千万円で足りるのかどうか。例えば、一千万円でしたら、一人労働者派遣をするのであれば百万だとして、十人が一千万で、二十人になったら二千万とか、そういうエスカレーションをつけて、今回の事例のようにやむなく派遣切り等があったときにはそれからお金を拠出していくということが必要だと思うんです。企業の中で一番嫌な仕事をアウトソーシングしたわけですよ。大企業で一番嫌な首切りという仕事をアウトソーシングしたんですよ。だから、そこについては、それを受ける側もその気構えを持ってもらわないといけないと思うんです。

 ですから、舛添大臣には、今後の見直しの中で、派遣業のこの点と、あと、過去を振り返ることも多少必要だと思うので、これまでふえたというのは、厚生労働省としては大分、譲るところは譲って、譲り過ぎたのかなとは思うんですけれども、その点についての御所見をお願いいたします。

舛添国務大臣 経済のグローバル化という議論のときにさまざまありました。債務とか設備投資とか人員の三つの過剰というのは相当言われたし、選択と集中ということも言われた。いろいろな意味で改革のいい面はありますけれども、平成十一年そして十五年の改正、このときには、雇用が非常に不安定であって、つまり失業率が高かった。そこでの、何としてでも雇用を創出するという一つの要請がありましたけれども、私は全く委員と同じ意見を持っているのは、雇用調整のシステムとして、そして、それは首切りが嫌なんですね。はっきり言えば、人に首切りをさせる、それが派遣業なわけです。

 したがって、そういう問題に対して、これは相当厳しい要件の審査をやっておりますし、書類審査だけではなくて、都道府県労働局において必ず実地調査をやれということで、これは紙だけ出してもだめで、実地を通じて、これはあなたの派遣業の事務所ですかということで見るということをやっておりますし、すべての許可申請については、厚労省だけではなくて、労働政策審議会の意見も聴取するということで厳格にやっております。

 しかし、大きなところで平成十一年、十五年の改正について振り返って、私も同じような感想を持っていますので、これは、与野党を超えて、派遣法の審議のときに、そういう大島委員のおっしゃったような点も踏まえた上で幅広く議論をし、日本の製造業の活力を取り戻すためにも、そしてもちろん国民一人一人の生活が大事なわけですから、職を失う、住居を失う、菅さんにも相当、正月にテント村の件で御努力いただいて、みんなでこれは頑張って、ああいう方々を一日も早く救おうということでやったわけですから、そういう観点からこの派遣法についてもきちんとみんなで議論していきたいと思っております。

大島(敦)委員 派遣の働き方が一つあって、もう一つが契約社員だと思うんです。契約社員も法改正で三年までは認められておりまして、戦後間もなく労働基準法で、期間の定めのある働き方、これは人身拘束を防止するために一年という縛りを設けたんですけれども、それが今悪用というのかな拡大解釈というのかな、異なる観点で企業が利用しているのかなと私は思うんですけれども、その点についての御所見を伺わせてください。手短にお願いをいたします。

舛添国務大臣 三年ということで、特別な場合には若干延ばすことができますけれども、私は常にこの問題について言っているのは、恒産なければ恒心なしということでありまして、常用雇用、つまり期間のない雇用が基本ですよ、こういう原点をしっかりした上でその議論をすべきだと思っております。

大島(敦)委員 三カ月ぐらい前かな、自分の地元の駅で、日曜日、ちょっとビラを配っていたら、二十代の方に、五人ほどに囲まれたんです。我が党の支持じゃないようなんですけれども、いろいろと議論をさせていただいて、大島さんの理想は何かと聞かれたわけです。二十代ですから、自分は、普通に働けば、普通に九時から六時まで、プラス残業すれば、大体三百五十万ぐらい、正社員として払ってやりたいなという話をしたんです。三百五十万、そんなに多い金額じゃないかもしれない。

 二十代の方、五人ぐらいの方から私が言われたのは、それは理想だと言われたんです。そんなの理想だと言われたんです。今の二十代の皆さんは、学校を卒業してからずっと非正規で働いているから、二百万とか二百五十万が当たり前なんです。今、ここまで労働というのは傷んでいるんですよ。

 ですから、今私がずっと雇用の問題に携わっているのは、先ほど二階大臣ともやりとりをさせていただいた、将来がかかっている日本の産業競争力が相当傷みつつあるということなんです。

 これから恐らく長い景気後退が世界で始まったとして、ロストジェネレーションと言われる三十代前後の方がもう一度生まれようとしているわけですよ。学校を卒業するけれども、要は正社員としての職場がない。そうすると、非正規という働き方になって、そしてなかなか正規には戻れないということになるんです。だから、ここについては、私たちとしては、しっかりとしたセーフティーネットは整えなければいけないなと考えているんです。

 多分、経済産業省さん、厚生労働省さん、あるいは農水省も入るかもしれない、さまざまな働き方の中でしっかりと受けとめなくてはいけない。今、舛添大臣の所管の厚生労働省の公的職業訓練のいすの数は大体三万から五万ぐらいしかないんです。そんなに多くはないんです。これを十万、二十万までふやしていかないと、多分これから数年は対応がとれないなと考えているんです。これが一点。

 もう一つ、きょう国土交通大臣にも来ていただいておりまして、その件について、一言、こういうケースがあるものですから、お伝えしなければいけないなと思っています。

 私もずっと昨年から取材をしておりまして、これは民間でも、あるいは民間じゃないかもしれないんですけれども、要は公共の運輸会社、これは鉄道会社に勤めていらっしゃる方で、昨年、彼は会社をやめたんです、結婚できないから。三十歳前半で、これまでまじめに働いてきたので、駅長さんからも送別会を開いていただくまでちゃんと働いた方が、給与がずっと二百五十万なんです、残業して二百八十万なんです、契約社員で。一年ごとの更新で、これはずっと更新することも可能なんですけれども、派遣法で三年派遣すると正社員として雇わなければいけないという条項がありますから、会社側も気にされて、三年とか四年たつと更新しないケースが多いんですと。あと、正社員になりたくても年齢制限があったりしてなれなかったりもして、こういう方がいるんですよ。

 契約社員ですと、要はアパートに入れないわけです。そうすると、彼は、そういう人を受け入れてくれる、関西の方ですと、大体五万から七万ぐらいで入れてくれるところがある。共同の炊事場で、共同のトイレで、共同のふろがついていて、大体部屋が一部屋あってというところで、それで役所と交渉してようやく住民票をいただいた、そういう方がいらっしゃった。

 本当にこれは彼から直接伺いまして、要は、ガールフレンドが見つかったんだけれども、給与が新入社員よりも低いから結婚できないから、転職をして、転職先が見つかったんだけれどもなかなか大変だと言っているんですよ。

 こういう実態が本当にいいかどうか。これは政治の判断として、こういう働き方を私たちが容認するかどうかという価値観の問題だと思っているんです。それについて国土交通大臣からの御所見をいただきたいんですけれども。

金子国務大臣 今、大島委員から生々しいお話を承りました。

 鉄道関係というお話でございますが、最近、鉄道の関係では、切符のインターネット予約が普及をしてきたというようなことで、駅の窓口業務の効率化を図る、そのために駅の業務に携わる契約社員をふやすというようなことが出てきているというお話も、そして正社員化を求める声があることも認識しております。

 鉄道という公共機関であります。良質な鉄道サービスの提供も重要であります。そういう中で、雇用形態については事業者の経営判断でありますが、労働関係法規はきちんと適切になされるべきものと思います。

 同時に、麻生総理も、正規社員が好ましいということを経済界にいろいろな場で話をされておりますが、私個人としても同じ気持ちであります。

大島(敦)委員 やはり与謝野大臣も正義という話を、当予算委員会の多分一番最初の日だと思うんですけれども、されていたかと記憶をしておりまして、二月の二日には、米国のオバマ大統領も、納税者に援助を求めながら、ウォール街の金融機関は恥ずかしいことに昨年二百億ドルの賞与を払った、米国民はこうしたおごりを許さないだろうということを言っているわけですよ。法的な縛りはないとしても、発言する重みというのは私はあると思っているんです。

 ですから、国土交通大臣にももう一度、多分これは民間企業ですから、でも民間企業は先ほど申し上げましたとおりサラリーマンですから、サラリーマンというのはどうしても株主の方を向きがちなわけですよ。株主の方を向きがちになれば、配当しなくちゃいけないとかいろいろと言われて、これまでは外国人の方の持ち株比率も多かったものですから、いろいろとそちらの方に気を配られるケースが多かったと思うのです。

 私は、サラリーマン経営者の方に言いたいのは、君たちが役員になったのは、それは同僚であり部下に助けてもらって役員になったのかなと思っているわけです。そういう気持ちを大切にしない経営者の方が非常にふえていると思うんです。

 僕は、二階大臣が、昨年末かな、電機会社の経営者の皆さんをお呼びになって、要は雇用の話をされて、それで、二階大臣が終わってエレベーターに向かうところのシーンがテレビに映ったときに、経営者の皆さん、余り関係ないなという顔つきをしていたものですから、若干むっとしたこともあるんです。だれのおかげで私たちの日本の中で商売、経営ができているかとか、そういう気持ちがうせているかなと思うんですよ。

 ですから、金子国土交通大臣にも、確かに先ほど言ったとおり、労働基準法の中の、要は期限の定めのある働き方は認められているんですけれども、こういう二百五十万ぐらいで雇うことが本当に社会的な正義として正しいかどうか。これは、いろいろな働き方がありますから、ただ、ある程度、三十代の男性の方で、しっかりと働ける方がそういう状況に置かれていることが我が国として許されるかどうかというところを伺わせてください。

金子国務大臣 何といっても、雇用というのは企業の社会的な一番大事な役割だと思っております。そういう意味で、先ほど麻生総理の正規雇用が好ましいとおっしゃっているということも御紹介させていただきましたけれども、それが何とか実現できるように努力していきたいと思っております。

大島(敦)委員 よろしくお願いをいたします。

 きょうは、野田大臣に来ていただいておりまして、昨日は、糸川委員から自殺の問題についていろいろと聞かれて御答弁されておりまして、なかなか大変だなと思いました。

 野田大臣の所管は非常に広くて、多分、御本人でもなかなかこういう所管だというのは言えないかなとは思うんですよ。宇宙もやらなければいけないし、消費者も入っているし、公益法人改革もあるし、自分もなかなか、十個ぐらいあって、恐らく自殺の問題と言われてもそれだけの時間をとれないかなと思っているんです。

 それで、野田大臣に一問質問させていただきたいのは、昨日も糸川委員が聞かれておりました目標、どれだけ自殺者を減らすかという目標。これは、参議院の代表質問で尾辻議員も自殺の問題は取り上げられておりました。これから、失業者がふえれば自殺がふえるから、しっかりとそのことはやらなければいけないというお話をされておりました。

 多分、三万人から、今、これは統計の持ち方によって違うので、厚生労働省と警察庁で若干、二、三千人のずれがあるものですから、三万人と置けば二割で六千人、十年間ですと一年間に六百人ずつ自殺者を減らさなければいけないわけです。私は来年度は少なくとも三万人を超えないということは必要だと思うんですが、その点について御答弁をお願いいたします。

野田国務大臣 この十年、三万人を超えているということは昨日も御報告申し上げまして、大変痛ましいことであります。

 自殺というのは、予防可能であるけれども、その自殺の原因、要因というのもいろいろなものがあるわけでして、例えば精神障害、病気による、うつ病等々で代表されるものであったり、または、急速にふえた原因というのは、社会的要因と言われています失業とか倒産によって、きのうもお話し申し上げましたけれども、貸し渋りに遭い中小企業の経営者が亡くなるというケース。または、失業によって職を失い命を絶たれてしまう。とにかく、ありとあらゆる要因というのを、私たちは、ようやく基本法ができまして、この国会で、超党派で一人でも多くの命を支えよう、救おうということで活動しているところであります。

 ですから、その目標を実は大綱の中で掲げておりますし、先日も、舛添大臣の厚生労働省の方でもそういう目標というのが、健康21でしたか、あるということですけれども、にわかに一年間で何百人を減らすということは容易ではありません。そのときの経済状況の浮き沈みによってもそういう対応が変わってくるでありましょうし、そういう中で、でも何も目標なしで取り組むわけにもいかないということで、ぜひとも私たちは、大綱の中では平成二十八年までに自殺率を二〇%以上削減したい、そのために大勢の皆さんの力をかりて、一つずつその要因を精査し、それに必要な対策を講じていきたいということで、しっかり取り組んでいきたいと思います。

 あと、御心配いただいておりましたけれども、私の担当は二十一あります。ただ、自殺に関しましては、一人の大臣が頑張る仕事ではなく、やはりありとあらゆる、各省、そしてもちろんNPOの専門家の方たちを総動員でやらなければならない。その総合調整をさせていただくとともに、大綱に基づいて、官房長官を会長にした対策会議というのがきちっと政府内にできているので、私一人ということでなく、皆さんの力を束ねることができる土台づくりに貢献していきたいと取り組んでいるところであります。御理解ください。

大島(敦)委員 自殺の問題は、景気変動で自殺が減ったりふえたりするという理屈は避けた方がいいと思うんです。

 これは、景気変動によって十年から十二年にかけて自殺者がふえたわけですよ。その後も高位、三万人で下がらないのは、これについては、前回この場で公述人の方、エコノミストの方に来ていただいて、中小企業においてはここ数年はずっと下降局面にあったということとダブっているなと思っていまして、ことしはふえるおそれが多分にあると思っています。

 ですから、官房長官にはぜひ、政府全体として、三万人はふやさない、そういう発想だと対策が全然違ってくるのです。今までとは違う事態なんですよ。多分、来年一年間通して見て、自殺者の数は三万三千とか三万五千とか非常にふえることが想定をされている中で、景気変動ということに理由を求めないで、国としてしっかりと減らすということが私は必要だと思っています。

 そうすると、二十一年度予算、私たちは賛成するか反対するかわからないんですけれども、その中で予備費がありますから、しっかりと自殺対策については予算をつけて、政府の方針として、私たちの国に住んでいる方の命は守るということが決意として必要だと思うんですけれども、申しわけありません、一言で御答弁をお願いいたします。

河村国務大臣 国民の命を守っていくというのも一つの政治の大きな使命でございます。その責任も内閣にあるという意識を持って、今おっしゃったような目標値を持って、それに向けて具体的な対策を立てていくことが大事だと思います。

 予算もふやしておりますが、約百五十八億九千二百万でございますけれども、さらに必要なものについては予算をふやしていく、こういう思いでやってまいりたい、このように思っております。

大島(敦)委員 なかなか御配慮いただきましてありがとうございます。

 最後の質問なんですけれども、年金の話題に触れなければいけないものですから。

 今から五年前の年金の議論の中で、厚生労働委員会で大分やりとりをさせていただきました。昨日ですか公表されましたこちらの方、今回の現況及び見通しによりますと、年金については非常に厳しいかなと自分は思うんです。要は、足元の利回りというのがそんなに多くはないんですけれども、今後の利回りとして四・一とか四・二とか三・九とか、極めて高い利回りを考えていらっしゃるわけですよ。前回よりも高い利回りなわけです。

 私は、一回転職をして保険業に五年ほどいました。保険業においては、例えば日生さんのように四十兆円を超える大きな保険業の運用利率は、経済の成長率とほぼリンクするわけです。小さな会社ですと、それぞれいいところに運用できますから、高い運用も可能かもしれない。ただ、年金のように百兆円を超える資産を、ここに書いてあるとおり四%、四・一、四・二、三・九で運用することが非常に難しいのかなと私は思っているんです。

 ですから、その点につきまして、与謝野大臣もこれは見ていますか。まだ見ていない、年金の。(与謝野国務大臣「見ていない」と呼ぶ)そうすると、舛添大臣から、この点につきまして見直す必要があるかどうかについて伺わせてください。

舛添国務大臣 昨日、この専門家が出した数字というのは、私は非常に厳しいと思っています、六二%が五〇に落ちるわけですから。ただ、五年に一回のある意味でルーチンの検証でありますから、これは平成十六年以降の中位推計で四・一と出ていますので、これから先、五年後、十年後、最終的に三十年後の世界というのはどうなるかというのは、それは経済の変動もいろいろありますから一概には言えないので、むしろ、六二だったのが五〇という数字に落ちたことの非常な深刻さはやはり考える必要がある。

 そして、十六年の改正というのは、要するに、保険料はそんなに上げませんよ、それから五〇%を確保しますよ、積立金を活用します、そして三分の一から二分の一に国庫負担をやりますという四本柱で成り立っているわけなので、そういう意味で、今後どうなるかといったら、経済情勢とか人口動態とかさまざまな問題点があると思いますけれども、私は非常に厳しいという認識のもとで、年金制度全体についても、これは党派を超えてどういう形にすべきかというのを議論すべき時期に来ている、そういう認識を持っております。

大島(敦)委員 舛添大臣、前回、百年安心プランということで前の参議院議員選挙は戦われているわけですよ。ずっと百年安心プランということで、百年間、一回この年金制度をセットすれば大丈夫ですよということでずっと説明をされてきたわけです。ですから、今回この数字を見て変えるというのは結構大変なことだと思うんです。

 これを見ると、申しわけないけれども、先ほどの三・九から四・二の運用利回りのバックボーンになる経済成長が〇・八%とか一・二%とか〇・四%なんです。このくらいの経済成長でこれだけの運用というのは常識的に難しいと僕は思うんです。これはおかしいと思うので、年金については今後も……(舛添国務大臣「違う、違う」と呼ぶ)今の舛添大臣の答弁はすぐ見直すなんということは言っていないんですか。では、もう一度答弁をお願いします。

舛添国務大臣 前提が甘いよと言われて批判を受けているような、これは専門家がやったことですから、そういう検証でも五〇まで落ちているということは極めて厳しいですよということをまず申し上げておきたい。

 さらに、その上で、例えば党派を超えた議員の方々がいろいろな提案をなさる、新聞社も提案をなさる、経済団体も提案なさる、いろいろな年金の案が出ていますから、そういうことについても、これは長期的にみんなで議論をしてみましょうということを申し上げているわけであります。

大島(敦)委員 舛添大臣、政府を預かっていらっしゃるわけですから、議員の単独の、個々人の議員のいろいろなお考えはあるかと思うんですが、新聞社も各社出しているんですけれども、政府答弁としてはなかなかそれは語れないところだと思うんですよ、私としては。

 政府としては、やはり、もしもこれを見直すのであれば相当の覚悟を持って見直さなければいけないなということをつけ加えさせていただくとともに、この年金の議論で、最後に、よく、企業が持っている余剰資金ですか……(発言する者あり)内部留保ですか。これは二〇〇五年の「エコノミスト」で熊野さんという方が記事を書いていて、私は、これを当時見て、なるほどと思ったわけです。このときは、積み上がった八十二兆円の資金余剰という記事が出ていて、要は、私たちの社会を保っていくためには、人口が減ってくるわけですから、しっかりと給与を払ってあげて経済のボリュームを膨らましてあげないと、国の借金だって返せないですし、あるいは年金保険料だって納められないわけです。ですから、先ほど金子大臣、二百五十万で、あるいは三百五十万が今の二十代は、それは大島さん、理想だと言うのが今の世の中なんです。これは私たちの国のあり方がかかっていることなんです。

 ですから、できるだけ賃金については企業であればしっかりと支払うことも必要だなということをつけ加えさせていただいて、私、大島からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

衛藤委員長 これにて大島敦君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 共産党の穀田です。

 〇八年十月から十二月期のGDPは、御承知のとおりに年率換算マイナス一二・七%と、第一次石油危機直後に次ぐ大幅な下落率を記録しました。日本経済を引っ張ってきた輸出がマイナス一三・九%に落ち込んだことが大きいと言われています。私は、はっきり言って、外需頼みの経済構造の脆弱性がはっきりあらわれて、そのことが主要先進国の中でも最悪となったと考えています。

 さて、二月二日、NHKスペシャルは「アメリカ発 世界自動車危機」を放映しました。それによりますと、長年のビジネスモデルを延命させるためにつくり出された架空の消費があった、売り上げを伸ばすため自動車ローンの審査が極限まで甘くされ、ウォール街が推し進めた証券化ビジネスと手を結んだ車販売のシステムが広がった、このように報じていました。

 つまり、住宅のサブプライムローンの自動車版。サブプライム層、簡単に言えば、高級車を買えない層とでもいうんでしょうか、この際は。甘い審査でローンを組ませて買わせるやり方でGM車を販売していた。そのローン債権を証券化して、ウォール街を通じて世界に債権をばらまいていた。住宅のサブプライムローンと全く同じやり方であります。

 そこで、GMだけでなく、アメリカでは日本の自動車産業も同じような販売方法を行っていたのではないかと思うのが普通です。アメリカの架空の消費に依存していた日本企業はどうしていたかということは問題だと思うんですね。トヨタ、ホンダ、日産などはアメリカでの販売を伸ばしてきましたが、販売の手法として、GMと同じように、自動車ローンを証券化する等デリバティブ金融商品を利用して、生産の現地化、自動車販売を進めていたのではないか。

 この実態をどう把握しているか、二階経済産業大臣にお聞きしたいと思います。

二階国務大臣 アメリカでの日本車のいわゆる自動車販売の実態をつぶさに承知しているわけではありませんが、我々が今まで好調な当時聞いておりましたことは、日本車を申し込んでもなかなかそれを購入することは難しい、順番待ちになっておる、こういうことをよく聞いておったわけであります。

 そんな状況からして、今議員が御指摘のようなことを日本の自動車各社もアメリカでやっておったとは想像しがたいわけでありますが、せっかくの御指摘でありますから、我々の及ぶ範囲で調査をしておきたいと思います。

穀田委員 それは、調査はしていただくのは結構なんですが、若干認識が甘いと私は思うんですね。

 というのは、トヨタの年次報二〇〇七で、事業等のリスクを説明する中に文章がちゃんとありまして、「トヨタは、デリバティブ金融商品を利用し、生産の現地化を進めることにより、」ということをきちんと明記してやっているんですよ。その中で「金融サービス事業へのネガティブな影響は、トヨタの財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性」がある、ここまで書いていて、やはりやっているということで、調べてもらうのはいいんですけれども、そういう形でやっているということははっきりしているわけです。

 結局、アメリカでのローン、リース損失についても、二〇〇八年四月から〇九年三月の見通しで、トヨタが九百から一千億円、ホンダが四百九十億円、日産自動車が六百二十七億円と見ています。GMよりは軽いとはいえ、そして程度の差はあるけれども、自動車ローンの証券化など同じような販売手法をとっているということを私はこの際はっきり指摘しておきたいと思うんです。

 金融破綻で、アメリカの消費がデリバティブ金融商品を利用することで生み出された過剰なものであったということがはっきりしています。その過剰な消費はどうやってつくられてきたかということを、そういうやり方があったんだということを私は今言ったわけですね。実体経済への波及が一番顕著な形であらわれているのが実は自動車産業なんです。

 そこで、もう一度、二階大臣に聞きたいんですけれども、自動車産業自身がこんなやり方をしていたら、物づくりの根本を放棄して、金融に頼った販売で過剰の消費、架空の消費をつくり出した結果ではなかったかというふうに思うんですが、その辺の見解だけ、どう考えているかをお聞きしておきたいと思います。

二階国務大臣 日本の自動車産業が、今日のサブプライムローンに代表されるような経済悪化の引き金を引いたとは思ってはおりませんが、今のような御意見に対しても、十分慎重に対応していきたい。

 なお、融資の面におきまして、私どもは、中小企業に力点を置いて対応してまいりましたが、中堅企業、また大企業にもだんだんとそういうことに対する対応の必要性が生じてまいりましたので、皆さんの御了解を得た上で、海外に進出している日本企業、日本の大手企業に対しても、必要に応じて融資の道を開くということなどをやって、直ちに倒産とか雇用を、いわゆる解雇するというようなことのないような対応を考えておるところでありますが、今のようなことは一応調査をしてみたいと思っております。

穀田委員 それは、把握して調査をしてでいいんですけれども、私は、中小企業に対して経産大臣が、ほんまにこれは何とかせなあかんという思いはよくわかります。

 ただ、この問題を私が言っているのは、なぜこんなことを言っているかというと、やはりトヨタなど日本の企業も、アメリカのそういう、言われている架空の消費を生み出す一翼を担って、そして、架空の消費などによって生まれた過剰消費を頼りにした経営をやってきたということを言っているわけですよ。そういう仕組みはなかったのかと。だから、それが今、アメリカの中で破綻をし、崩壊をした。そういう点では、日本の企業も、アメリカの企業が経営責任を問われているのと同様に、日本のそういう大手の自動車産業も経営の失敗と言わざるを得ない、こういう問題があるよということを言っているわけです。

 この間、今度の国会で、私どもは一貫して派遣切りなんかの問題を追及してきました。経営者は、派遣切りだとか発注切りなど、労働者や下請中小企業に犠牲を押しつけているということなわけですね。だから、そういう意味でいいますと、そういう事態を正しく知らなければ、政府がトヨタなど輸出の大企業の経営者の経営責任を追及することもできないわけです。だから、私はあえて、こういった実態がある、それは経営責任だということを、アメリカでいえばそう言われているんだから、しっかりせなあきませんよということを言っておきたいと思います。

 もういいです。それはもう、そういうことで。

二階国務大臣 穀田議員の御主張は御主張としてわかりますが、我々は、それを一概に、それはそうでございますと言うわけにもまいりません。ですから、よく調べた上で、また御相談しましょう。

穀田委員 ですから、そういう点を私は、現実は、トヨタの文書からも、現実からもある。トヨタだけがそういうことを免れているわけじゃない。もしやっているとすれば、まさに経営責任が問われるということについては、もしやっていたということを大臣が認識されれば、これは今後経営責任をはっきりさせなくちゃならぬということだけ言っておきたいと思います。もう大臣、結構です。

 次に、その意味では、私は、内需を拡大するには、仕事そのものがないという事態を打開することが緊急の課題となっていると思います。住民の命、安全、暮らしに密着した社会資本整備の維持補修など、小規模公共事業への思い切った予算の投入が必要だと私は考えています。そういう立場から、まず、社会資本整備で今、そして今後大きな問題となる老朽化、荒廃の問題について確認したいと思います。

 多くの社会資本が高度成長期に整備されてから四十年、五十年経過し、老朽化などが進み、その対策が重要な問題になっています。国民の安全、安心にとって、ゆるがせにできない問題であります。

 そこで、社会資本の老朽化の現状について聞きます。国土交通省は、道路の橋の状況について調査していますが、その結果はどうであって、何をせねばならないと判断しているのか、金子国土交通大臣にお聞きします。

金子国務大臣 御指摘のとおり、非常に社会資本、特に高度成長期のときに整備されました道路、河川、港湾等々について、社会資本全体の老朽化が急速に進行する状況を認識しております。

 特に、国土交通省が実施した調査では、去年の四月でありますが、地方公共団体が管理する橋梁のうち、老朽化、古い基準による設計等の理由によって通行規制している橋梁が一千橋ある。さらに、全国の地方公共団体が管理する橋の長さが十五メーター以上の橋梁十三万の橋のうち、過去五年以内に定期的点検が実施されているものが四割にとどまっております。特に、市町村が管理する橋梁におきましては、その点検の実施が二割にすぎないということ。これは早急に進めていかなければいけない、計画的な補修等々をしていくということが重要と認識しておりまして、地方公共団体におけるこれらの取り組みが一層進むよう支援してまいりたいと思っております。

穀田委員 驚くべき実態なんですね。

 今皆さんにお配りしている資料の一がそれであります。大体、安全かどうかも点検されていない橋が全国で半分以上ある。そして、地方の管理、とりわけ市町村管理の橋は、八四%も五年間一度も点検されていない実態なんですね。

 さらに、私は橋だけじゃなくてほかのことを調べてみますと、国交省が昨年行った河川堤防管理の実態調査によりますと、全域の見回りの有無の項では、都道府県管理の三〇%に上る六千二百九十三の河川が全く実施していないと。つまり、県や市町村管理河川は定期点検も余りやられていないという現実なんです。その上に、下水道や上水では管渠が壊れ、道路が陥没して車が被害に遭うとか、周辺住民が水道を利用できなくなったという報道が最近多くなっていることは、御承知のとおりです。

 国土交通省は、こういう実態を踏まえて、各地方自治体に対して、社会資本の老朽化に対応するための長寿命化計画の策定を推進しているのではなかったですか。その策定状況はどうなっていますか。

金井政府参考人 橋梁を事例に御説明を申し上げます。

 先生御指摘の長寿命化修繕計画でございますが、現時点で三十一の都道府県、それから四十七の市町村で長寿命化修繕計画の策定に取り組んでおりますが、全体で見ますと、計画策定済みのものはまだ約一一%ということでございまして、私どもとしては、平成二十四年度までに橋梁のおおむねすべてにおいて長寿命化修繕計画を策定できるように、新たな中期計画の目標としているところでございます。

穀田委員 この長寿命化も、計画策定はたった一一%と、極めておくれている。市町村における社会資本のこういう問題では、市町村が特におくれているということは極めて深刻と言わなければなりません。

 そこで、社会資本、特に市町村が管理する道路、橋、堤防、下水道、公営住宅など、住民の命と安全、暮らしに身近なものが、結局、点検されずにずっと放置されている事態にある。問題は、こういう身近な社会資本整備、とりわけ維持補修など管理を最優先すべきではないかと思うんですけれども、国土交通大臣、簡潔に。

金子国務大臣 御指摘のことは本当に大事なテーマであると思っております。

 地方公共団体のこれを促進するためにも、財政的な面、技術的な部分というのが地方団体はどうしても不足する部分でもありますので、そういう技術者を養成するということをあわせて進めていきたいと思っております。

 ちなみに、費用の面、財政的には、平成十九年度に、こういう老朽化に対する修繕計画の策定費用に対して国が補助する制度を新たに創設いたしました。今御審議いただいております第二次補正予算では、今度は点検の費用に対しても国庫補助が行えるように制度を拡充したところであります。

穀田委員 それは知っています。ただ、点検の費用も二十万円ですので、そんなに胸張ってやってまっせなんというような話にはならぬということだけは言っておきたいと思うんです。

 だから、先ほど大事な点だとありましたから、維持補修が重要であることは論をまちません。問題は、そこで、道路を一つ例にとってみたいと思うんですけれども、当然、道路が延伸したり新設したりするということは、さらに維持補修の対象がふえて、費用がふえるのはある意味では当たり前なんですね。

 そこで、大臣、もう一度、道路の維持補修、修繕費の推移について答弁を求めたいと思います。

金井政府参考人 お答えいたします。

 道路の維持修繕費ということでございますと、約十年間、二〇〇六年度と一九九五年度を比較いたしますと、直轄国道については、コスト縮減に取り組みまして約九割に減っております。一方、地方公共団体がする道路につきましては、道路の種別によって若干差がございますが、六〇%台、七〇%台に減少しているところもかなり見られます。

穀田委員 そこで、私ども調べましてつくって、皆さんにお渡ししている資料が二枚目です。だから、今ありましたように、九五年から比較しますと、押しなべて維持補修費が減っていることがわかります。例えば、一般国道でいっても、五千五百十七億円から四千七百五十億円、市町村でいいますと、六千四百八十億円から四千五百二十億円、その減りが市町村道では大きいものを示しているということは、この資料でおわかりかと思うんです。

 私が今まで何をずっと言ってきたかということを言いますと、結局、社会資本の老朽化が重大問題であるにもかかわらず、一つは現状の点検もできていない、二つ目に老朽化の対策も、長寿命化と言っているんだけれども十分練られていない、三つ目に、道路などの例に見られるけれども、費用も、本来はふえなければならないのが減ってさえいる、それら全体を特徴的に見ると、特に市区町村にひずみが大であることが明瞭だ、これが、私が言いたい、ずっと言ってきた結論なわけですね。

 そこで、インフラの老朽化すら点検されていないというのは、特にこれは何とかせなあかんと私は思っています。だから、もっと深刻に受けとめる必要がある。したがって、ただ予算があるかないかだけの議論ではだめで、なぜなら、住民の命が直接脅かされるわけだから、そういう危険が存在するのに、予算がなかったからできませんでしたということでは済まされない。事故でも起きれば、行政の不作為が問われ、損害賠償責任が発生する。

 そういう意味では、地方自治体の大変な実態だけに、鳩山総務大臣に聞きたいと思うんです。そういう深刻な実態があるのに、市町村はなぜ点検もしないのか、そこに回す予算を削らざるを得ないという原因が何かあるんじゃないのか、その辺についての見解をお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 直轄国道とか補助国道とか主要地方道とか、そうしたものは全部仕組みができていますね。それは、それなりの国と都道府県の役割分担というものがあるわけですね、直轄国道については、地元負担について大分評判が悪い部分もありますが。

 ところが、先生が先ほどから問題にされておられる市区町村では、道路や橋の点検もできない、その修繕もできない。補助金が出るというのは災害防除というときだけ、つまり、例えば橋が腐りかけていて、このままほっておいたら橋がおっこっちゃうだとか、道路がひどく損壊するというとき以外は補助金が全く出ない。ということは、単独事業なんですね。

 結局、また三位一体の議論になりますけれども、地方交付税がうんと削られてきた中で、一番減ってきているのがいわゆる地方単独事業なんです。つまり、先生が話題にされておられる市町村の道路や橋の問題というのは基本的に地方単独事業なものですから、それで、ひどくこれがおくれているし点検すらできない、こういうことになっていると思います。

 そこで、ただ、今回、総理は一兆円という地方交付税の積み増しをやった。このうち五千億は雇用だ、その残りの五千億のうちの千五百億が元気回復というテーマになっている。千五百億円のうち、大体、県が二百億、市が三百億。これは、補助金というのではなくて地方交付税ですから、単独でこうした橋や道路の問題に使うことができる。これで少しはしのげるのではないか、こういうふうに思っております。

 基本的に、地方単独事業が大幅に減ることと先生の問題意識の事柄とはイコールだと思います。

穀田委員 そのとおりなんですよ。

 では、今大臣は三位一体に言及しましたけれども、そうすると、問題は、三位一体改革でやられたところで、この間も大臣は言ってはりましたね、急激にやり過ぎた、失敗の部分がある、地方をここまで苦しめているのは正しくない部分があったからだとたしか述べましたね。

 そうすると、国庫補助の負担金の問題で、今維持補修が重大な状況になっているのに、簡単に言えばその予算が削減されているということになるわけで、そうすると、この問題を通じて言えば、間違いだったということはこの部分にも当てはまるということですな。簡単に。

鳩山国務大臣 私は、間違いだったと言っているよりは、三位一体改革で地方交付税の減が余りに急激だったために、それは弱い方弱い方に一番しわ寄せが行っているんだ、それがまさにこのグラフなのじゃないんですか。都道府県の方はまだいい、政令市はいい、しかし市町村では、これは単独事業だから全然できなくて、点検もできない、修繕もできない。これはやはり、地方交付税が減るととにかく市町村に一番響く、こう考えていいような気がするんです。

穀田委員 なぜ私は三位一体やその他構造改革の問題について言及したかといいますと、麻生さんが当時、二〇〇三年の時代に総務大臣でした。そのときの方針にこの問題が書いてあるわけですよ。それはどう書いているかというと、国庫補助負担金等の整理合理化方針という中にあって、住民に身近な生活基盤の整備に係る負担金、今のあれですね、対象の縮減、採択基準の引き上げを図り、地方単独の事業にゆだねていくと。これは書いている方針なわけですよ。これが、現実に起こっている地方自治体での先ほどの事態を招いているわけですね。だから、ここが間違っているのじゃないかと私は言っているわけですよ。

 だから、三位一体という問題はいろいろあるでしょうけれども、間違った部分、負の部分というのはここにもあらわれているということを私は言いたい。だから、大臣が間違っている部分があると言うんだったら、これもそうなんだなということを言っているだけなんです。そのとおりでよろしいか。

鳩山国務大臣 しかし、やはり人間は将来を見るべきでして、そういった意味で、あの総理の決断による一兆円の別枠というのが、県二百億、市町村三百億、こうしたものに充てられるわけでございますから、これは大きな効果を生むと思っております。

穀田委員 それは歴史にしっかりゆだねて、私が、そうじゃなかったということを言ったということ等、お互いに記録しておきましょう。

 最後に、私、今インフラの維持補修だとか長寿命化というのが大事だということをずっと述べてきましたけれども、問題は、これをどこでやるのかということなんですね。私は、どちらかといえば中小企業が得意の分野だと考えています。

 そこで、公共工事を規模別で見た場合、雇用の関係を調査した内容があると聞いています。総工事費評価額百万円当たりの労働者数調査というのがあります。この概要と特徴を、もう最後ですから、簡潔に、事務方でいいですから述べてください。

大口政府参考人 簡潔に述べさせていただきます。

 御指摘の、平成十一年度公共工事着工統計調査年報における総工事費評価額百万円当たりの労働者数は、総工事費評価額規模別に見ると、規模が上がるにつれまして、いわゆる労働者の数は減るという相関関係がございます。

穀田委員 それを表にしたのが三枚目の資料です、一九九九年度の総工事費評価額百万円当たりの労働者数。

 これは残念なことに、この調査以後、この方式の調査をやっていないんですね。でも、これにわかりますように、百万から五百万の規模、これが百万当たり二十一・一人というふうに、規模が小さければ、やはり労働者、その雇用の数字が上がるという現実を示しているわけなんですね。

 ですから、私は、小規模事業、工事というのは、雇用対策の面から見ても大きい役割を果たすことは明確だと考えています。したがって、維持補修など身近な小規模工事というのは地域の中小企業が受注し、仕事起こしになる。地域の雇用にもなるし、ふえる。したがって、小規模事業への手厚い支援こそ、雇用対策、地域経済活性化に役立つことは明らかだと思うんです。

 今こそ住民の命、安全、暮らしに密着した社会資本整備の維持補修など、小規模公共事業への思い切った投入へ転換することで、内需の拡大、雇用、地域経済活性化を図るべきだということを述べて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、委員長初め与謝野大臣も、本当に長時間、そして各委員の皆様も、午前、午後にわたっての御審議、お疲れのことと思います。きょうは私が最後でありますので、もうしばらくのお時間をちょうだいしたいと思います。

 私は、きょうはゴルフの話から入りたいと思います。

 皆さんのお手元に、私の地元というか、神奈川県の座間にございます座間キャンプの地図が置いてございます。この米軍の座間キャンプというところは、皆さんもこの図を見ていただければおわかりのように、大変に人口密集地の中にございまして、そして、ここのゴルフ場で、ゴルフボールが外に飛んでくるという事案が頻発をしております。(発言する者あり)

 実は、去年の五月にも、今、そうだと言った笠井さんが外務委員会でお取り上げくださいまして、そのときもやはり、子供が顔面にけがをし、本当にもうすれすれのところでという事態で、大変に深刻な状況でありました。その後も十月にもございましたのですが、今回もまた、お手元の相武台中学というところで、野球の練習をしている少年の鼻先をかすめてゴルフボールが飛びました。

 これは、PTAの皆さんも大変に懸念されて、そして、飛んできたゴルフボールの後を三人の日本人のプレーヤーの方が米軍基地から出てこられて、子供さんがけがされたかどうかを気にされたんだと思いますけれども。そもそも、この米軍基地の中で日本の皆さんが、それも恐らく少なからぬ数プレーしているのではないかということに、地元もまた大変にびっくりしたわけです。

 そこで、ここの近くの市民団体の方が、双眼鏡でのぞいて、何人くらいの方がどのようにプレーしておられるのかと見たところが、大体利用者の九割近くが日本人とおぼしき、近くへ行って確認したわけじゃないからわからないですよ、そういう方であったと。地元としたら、これは、こんな地域ですし、米軍基地があるために町の発展も妨げられていますし、そんなに日本人が多いのであれば、何か米軍のキャンプのためのものでないんじゃないかというふうなことで、返還もしてほしいという声もまた強くなっているわけです。

 普通、民間のゴルフ場であれば、ゴルフボールが外に飛んできてけがを起こすような事態は、即刻営業停止であります。ところが、米軍のキャンプであるがゆえに、去年も同じことがあった、ことしもまた改善されない、続いているわけです。

 きょうは中曽根外務大臣にお願いがございますが、まず、この利用実態、そんなに日本人が多いのかどうか、これを事実としてお調べいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。一点です。

羽田政府参考人 お答えいたします。

 米軍施設・区域内のゴルフ場は、在日米軍関係者の福利厚生施設として利用されていますけれども、従来、米軍との友好親善の意味合いから、米軍の使用に支障のない範囲に限り、日本人の使用を認めているものと承知しております。米軍がこういう文脈において日本人によるゴルフ場の使用を認めても、日米地位協定上問題があるとは考えておりません。

 在日米軍関係者以外の者による米軍ゴルフ場の利用については、このような趣旨を踏まえつつ、節度を保っていくべきものと考えておりますけれども、米側は、こういう観点から、米軍のゴルフ場の適切な利用を確保するためのガイドラインを作成し、実施しているものと承知しております。

阿部(知)委員 申しわけありませんが、私の貴重な時間を浪費しないでください。九割が日本人だったと市民が観察しているからどうだと。節度を超えたの何のは、もういいですよ。何割というのかはわかりませんが、去年の暮れも観察してもそうだった、ことしもそうだ、そしてボールは飛んでくる、子供はけがをしそうになる。これでは納得ができないわけですよ。

 私は、そういう観点で今中曽根外務大臣に、これはきのう投げてあるわけですから、今初めて言ったわけではないですよ。きちんとまず調べてください。イエスかノーかの一言で結構です。お願いします、大臣。

中曽根国務大臣 在日米軍関係者以外の人が利用しているかどうか。これは、ゴルフ場が米軍の施設・区域内に設置をされている、そういう趣旨も踏まえながら、まず節度を保ってやっていくべきものと考えますけれども、米側は、まさにかかる観点から、米軍ゴルフ場の適切な利用を確保するためのまずガイドラインを作成いたしまして、実施しているものと承知をしています。それによって、在日米軍と地域社会の友好親善の観点から、日本人等による使用も認められていると承知しています。

 外務省としては、安全等についてはかねてから申し入れを行い、またゴルフ場も改善を行っておりますけれども、引き続いて申し入れを行っております。

 調べられるかどうかという御質問ですが、米軍基地内で働いている日本人従業員も使っているということであると思いますので、外部の日本人ということなのか、内部も含めてなのか、そういう点もあろうかとは思います。ちょっと、調べられるかどうか、今、私自身、急なので、ここではお答えできません。

阿部(知)委員 急なのでなんというのはやめていただきたいんです、きのう質問通告をしてあるんですから。大臣、それは余りにも私の質問権への侵害ですよ。何も今急に言ったわけではないのです。

 そして、お手元の資料を見ていただくと、どんな人たちがプレーしているか。これは米軍がホームページに出した料金表ですよ。上から見ていただくと、軍人さんの階級によっての料金の違い、その他の招待客というのは、日本人であれ米軍関係者であれ、あるでしょう。日本人従業員、座間の自衛隊員、あとは名誉常連顧客とか、こういうのもあるわけですよ。

 こんなこと、聞いていただければ、九割がもし日本人で、それが、本当に重要な、地域の、町の繁栄にとっては非常に重要なところにあるんですよ。そして、実はここはゴルフの利用税を払わなくていいわけですね。もし日本人の一部がそこで利用税も払わずに九割やっていたら、大きな問題ですよ。そういうこともあるからこそ、市民団体が指摘されているんですから、これは日米友好のためにもならないですよ、逆に言えば。市民感情は逆なでですね。ボールは飛んでくる、見たら日本人だ、何やってるんだということになります。

 続いて、浜田防衛大臣にお調べいただきたいことがあります。

 二枚目の資料を見ていただきますと、これは、あの守屋さんのゴルフ好きのときに問題になり、防衛省の方でお調べいただいて、米軍関連の基地の中にあるゴルフ場をどのくらい自衛隊の方が御利用であったかという実数ですね。

 これは十四年から十八年までしか出ておりませんけれども、各キャンプ、例えば座間では、防衛省の皆さんは約百人くらいプレーしておられる。延べ回数でいえば、下に書いてございますが、四百回以上ということで、よもやですよ、あれだけ守屋さんの事件がありましたし、そして当然見直すべきは見直すべきだということになっておるので、今もって続いているとは思いたくございません。

 でも、実はこれは大臣にも見ていただきたいですが、座間のプレーは、自衛隊員は、座間にお勤めの場合は三千円。では、ほかの自衛隊員は行っていないんだろうか、これもまた疑念の点でございます。実は、私はこういう根掘り葉掘りのことは伺いたくはないです。だけれども、もしこれで子供に事故が起きて、それが自衛隊員の打った球であったりした場合に、やはり本当に国民の感情はおさまらないですよ。

 そういうことがあり得るので、防衛大臣にも、現状をきちんと防衛省として把握していただきたい。少なくとも適宜適切、数が何回までが適宜かわかりません、おつき合いもおありでしょう。しかし、余りに過大であれば、それは度を過ぎたと申しますから、浜田大臣、いかがでしょうか。お願いします。

浜田国務大臣 そういう先生の御指摘もよく私も理解するところでありますので、実態を調べながら今後とも対応していきたいというふうに思います。

阿部(知)委員 この件は私が今回初めてじゃなくて、さっきの笠井さんもお取り上げだし、民主党の浅尾さんもお取り上げだし、武正さんも主意書で出しているんですね。繰り返せば誠意がないということになりますから、重ねて中曽根大臣と浜田防衛大臣にはお願いを申し上げたいと思います。

 引き続いて、私はきょう、我が国で今いわゆる少子化問題が大変に大きな課題となっておりますが、子供たちの分娩というか、赤ちゃんの生まれることに関する質問に移らせていただこうと思います。

 最初の一問は舛添大臣にお伺いしたいですが、まず、大臣は、厚生労働大臣に御就任になってから、せめて出産くらいはお金の不安なく産むということを保障したいというお取り組みをされていることはよく存じております。

 このたびの予算の中でも、例えば健診にかかわる十四回の費用や、あるいは健康保険から給付される一時金を合わせて四十二万まで引き上げようということで御尽力であります。

 私は、そもそも、そうであれば、出産は健康保険適用にしてくれて、特に、何回も何回も健診にかからなきゃいけない、十四回以上のお母さんだっているんですから、そこまでも安心させてほしいなと思いますが、きょうはその時間がないのでさておいて、こうやって大臣がせっかく引き上げていただいても、その余波が及ばないというか、手の届かない部分があるので、きょうはそこをお話し申し上げたいと思います。

 まず、三枚目の資料には、昨年来といいますか、ことしに入って、まず一月にはお産に伴う医療事故等々の補償のための三万円の上乗せや、ことしに入って四万円の健康保険料の給付の引き上げの内訳が書いてございます。一部は国庫補助ですが、一部は健康保険から出るわけです。

 はてさて、現在において、無保険の問題、特にお母さんたちが健康保険に入っておられなかったら一体どうなっちゃうんだろうか。

 今、大臣、御存じでしょうか、病院は未収金というのに悩んでおります。大体、この未収金、統計上どのくらいあるか。急で、これは予告してございません、もし御存じだったら御答弁いただきたいのと、こうやって保険から給付するといったって、入っていなければ何もないわけです。そのことについて大臣はどんなふうにお考えか、二点お願いします。

舛添国務大臣 未収金は、ちょっと突然のお話なので、今データがございません。

 要するに、セーフティーネットがさまざま張りめぐらされている中で、その網にかからない人をどうするかということがあると思いますので、それは生活保護それから助産施設、そういう形での対応ができるというふうに思っております。

阿部(知)委員 ところが、なかなかできないんですね。大臣がおっしゃったように、生活保護も一つの方法ですけれども、やはりこれだけ少子化で、生まれるというところが大事な中で、大体、調査できる限りでも、出産にかかわってお金が払えない、全額じゃなくても一部払えない、あるいは全額払えないというのは恐らく六千件以上、病院の未収状態があって、集計十七億円となっております。

 実は、これは厚労省にもお尋ねしましたが、そのうち、では、今度の施策をしたら、健康保険から払われて、それで病院の未収金が減るのかというと、データもないし、残念ながら調べてもおられないわけです。

 大臣は今私の質問に先んじて御答弁いただきましたが、その次のページには、助産施設における入所者数推移というグラフがあります。

 私がこの間、助産師さんのことばかり取り上げているので、これは助産師さんが取り上げる分娩と思われるかもしれませんが、実は助産施設というのはそうではなくて、児童福祉法にのっとって、戦後まだ日本が貧しかったころに、お産のチケットが出るんですよ、お産券。こういうチケットを持ってお産をされる方、一つは生活保護。でも、生活保護の方だけじゃないんですね。無保険、あるいは保険は資格証明書かもしれません、入っておられても、所得税にして八千円ちょっと以下くらいの方にはこのチケットが出るのですが、この数がまた、平成十八年度では六千五百五十一人。

 これは、どんどん貧困化が進んでおりますから、ふえていて、逆に昨年はちょっと減っているんですね。これが非常に私は深刻だと思うんです。逆に言えば、このお産チケットのことを、例えば生活保護の場合は大体手続がわかりますから、もっとお産をしようという、そして健康保険も持っていないという方に理解して周知していただければ、せめて産むところだけが保障されると思うんです。ところが、これも御存じない。

 そしてもう一つ、大臣、ここでぜひお願いがあるんですけれども、このお産チケットを持ってこられて病院で分娩されますと、大体病院にとっては、収入、平均二十万円くらいが手に入ります。ですけれども、お産の実勢価格は、大臣がこのたび四十二万円に引き上げてくださったように、この二倍くらい、実勢価格。こうしたことを良心的に引き受けているところほど経済的に負担になってくるのです。このお産チケットのいわば措置費、ここの見直しもぜひ検討していただきたい。とにかく生まれるということを私は保障していただきたいので、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 少子化が進んでいるところで、この少子化対策の大きな柱はまさに産んでいただくということですから、この制度をさらに周知徹底させる。

 それで、今の四ページ目の、この委員の資料にございますように、やはりこれは、減っているのは助産施設自身が減っている。それはやはり産科医の不足ということもあるので、医師不足の対応をもきちんとやっていきたいと思っております。

阿部(知)委員 産科医の不足とともに、経営的な問題もあるんです。さっき言った、実勢価格の半値でやらねばならない。しかし、みんな頑張っているんです。頑張っているところを支えていただいてこそ政治ですから、確かに医師不足もございますけれども、これはいい制度ですから、大臣の力でもっと充実させていただければと思います。

 与謝野大臣もおられますので、きょうは私は最後に、産科医療補償制度。これは実は私がこの委員会で取り上げさせていただくのはもう三度目になって、何度もしつこいなと思われているかもしれませんが、私は、この制度が本当に充実してほしいので、そういう観点から幾つか伺います。

 まず、舛添大臣には、資料の五ページ目、ここには男性のお医者様と、それから赤ちゃんを身ごもられた若いお母さんの写真が並んでおります。これは厚生労働省が女性週刊誌にお出しになった広告で、「産科医療補償制度がはじまります。」というふうに銘打ってあります。この文章を見る限り、「妊婦の皆様が安心して産科医療を受けられるように、分娩機関が加入する」「この制度に加入している分娩機関でお産すると、万一の時に補償の対象となります。」と書いてあるんですね。これだけを読むと、大臣、あたかもお産される御本人の万一、すなわち、お産は命がけなんですよ、そういうときも補償の対象になると思いたいし、思えてしまいます。

 そして、大臣、この制度について、昨年の暮れの段階で百七十八人の妊産婦さんにアンケートをとりました。一体どのくらいの方が、例えばお産で一時金が三十八万円に三万円ふえる、それは、自分に来るんじゃなくて、そのまま素通りして補償制度に使われちゃうということをどのくらいの方が知っていたと思われるでしょうか。お母さんたちにはどう周知されているでしょうか。大臣、お願いします。

舛添国務大臣 今細かいアンケートのデータはありませんけれども、やはり新しい制度をやるというときに、我々はもっとこれは周知徹底する。この広告もそのためであるわけですけれども、福島県立大野病院のああいう例もありましたので、とにかく訴訟リスクがあることが産科医になるのが嫌だということの大きな理由であったものですから、こういう制度を、とにかく小さく産んで大きく育てたいということでまず一歩を踏ませていただきました。いろいろな御批判もあると思いますので、それから、まだ周知徹底も足りないと思いますが、今後努力をして、皆さん方が安心できるいい制度に育てていきたいと思っております。

阿部(知)委員 まず、この制度自身を知っていると答えた方は、既におなかに赤ちゃんがおられるお母さんでも半数です。それから、脳性麻痺の子供に対してのみのものであるというのを知っておられた方が三分の一です。

 知らないで、でも、一時金は自分の手元に残らずに、そのままこの保険制度に行くわけです。普通であれば、私はあり得ないと思います。そこが、本当に小さく産んで大きくなるのかどうかです。お医者様の側を守ることも大事ですけれども、私は、当事者であるお母さんたちに正しいメッセージがきちんと伝わらなければ、産んだって育ちません。むしろ、疑義ばかりが膨れていくのではないかと思います。

 その部分について、きょうはもう一つお願いいたします。その次のページ、産科医療補償制度と車の自賠責保険というのを比較させていただきました。

 自賠責保険も、車が人身事故等々を起こした場合に何の保障もなければ困りますから、これは自賠責法という法律に基づいて強制的に加入しているわけです。

 同時に、それだけの強制力を持つだけあって、きちんと根拠法があり、その保険料の算定は損害保険料率算出機構というところがこれを行い、そしてもう一つ、保険料をこれくらいに定めますよということを今度は審議会にかけてその妥当性を問う。いわば二重、三重の仕掛けがここにはきちんと組まれておるのであります。

 私は、あえて言えば、保険という商品はそれくらいにしておかないと。だって、これはお母さんは御存じなくて自分の保険料をお払いだと。何のためかもわからない、自分に来るかと思ったら来ない、保険料はどこで算定しているやらもグレーゾーンだと。実は、保険料の算定は日本医療機能評価機構というところがやっておられますが、ここには、大臣も御承知おきのように、天下り、わたりの問題も指摘されているのであります。

 私は、この制度を本当に大きく育てたければ、まず法律をつくることだと。無過失補償に拡大していくためにも、きちんと根拠法をつくる。そして、保険料がオープンに見えて、算定根拠も見えて、納得していただけるようにしないと、三万円は高いですよ、いかに何でも。

 与謝野大臣、これまで私はお二方の金融大臣並びに副大臣にお伺いして、もうこの法律自身は金融庁がお認めですから、今さら否やで大臣のお立場で何か違うコメントができるわけではないということは承知しながら、しかし、こうしたものが保険商品としてある意味で強制力を持って存在し、しかしこれは、さっき舛添さんがおっしゃったように、小さく産んでも大きく育てていかなきゃいけないために、透明性の担保とか、あるいはもっと金融庁がきちんとこれを見ていただけるような何らかのスタンスが必要だと私は思うんです。今までだと、伺っても、厚生労働省がやっていて、厚労省は医療機能評価機構に丸投げして、そこに天下りしてと。本当にこれでは国民は納得できないんですよ。大臣、いかがですか。

与謝野国務大臣 三年ぐらい前のある日、猪口邦子さんが来られて、少子化対策をやりたいんだけれども何かアイデアはないかというので、私は、自賠責保険と原子力保険、この保険のあり方について御説明をして、産婦人科に対してそういう保険はつくれないのか、そういう研究をされたらいかがですかということをお勧め申し上げました。

 そのとき私の頭にあったのは、やはり法律に基づいた強制加入の保険が必要だということを前提にお話ししていて、これは保険料は、お医者様それから子供を産むお母様、両方が負担して、そして一定の保険制度をつくる。

 それで、原子力損害賠償責任法という法律は、保険でカバーする分野と、それから、保険でカバーできない分は補償契約というので国が補償する、そういう二段構えになっているので、そういう二段構えの法律をつくったらいかがですかということをお勧めしたんですけれども、でき上がったのは、それなりにいい保険のやり方ですけれども、まだまだ十分完成度を高めていく余地があると思いますし、先生御指摘になられましたように、いつだかの質問で、百万人掛ける三万円は三百億だ、そういうお金の使い道というのはきちんと見ていく必要がある。これは料率の面からも使い道の面からも両方ですけれども、そういうことをきちんと心にとめてこの保険を見ていきたいと思っております。

阿部(知)委員 せっかく与謝野大臣がおっしゃってくださったので、実は、三百億のうち約五十二億は、この保険を維持するための管理費に使われてしまうわけです。これを保険料の流用と言われても、私は指摘は当たっていると思います。その部分は、例えば国が出すならまだ違いますけれども。そのうち約四十億ちょっとが民間損保会社、日本医療機能評価機構が十一億を使うわけです。舛添大臣、保険料はこういうふうに使っていいんでしょうか。健康保険料です。

 それから、もう一つ問題があります。実は、脳性麻痺だけじゃなくて、お産のときにはいろいろな障害が、知的障害も生まれるかもしれない、あるいは、お産のとき感染してなるかもしれない。そういうのを全部これは排除なんです。対象じゃないんです。お母さんの中にも子供の中にも分断を生みます。

 本当に大きく育てたかったら、私は、きょうは時間ですからまた厚生労働委員会でお聞きしますが、大臣には本当にしっかりとこのグレーな部分を透明化して、定着するようにお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

衛藤委員長 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時一分散会


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