衆議院

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第27号 平成21年5月12日(火曜日)

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平成二十一年五月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 小島 敏男君 理事 佐田玄一郎君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 根本  匠君 理事 山本  拓君

   理事 枝野 幸男君 理事 菅  直人君

   理事 富田 茂之君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      伊藤 公介君    岩永 峯一君

      小野寺五典君    尾身 幸次君

      大野 功統君    大前 繁雄君

      岡部 英明君    木村 隆秀君

      岸田 文雄君    小池百合子君

      斉藤斗志二君    坂本 剛二君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      園田 博之君    中馬 弘毅君

      仲村 正治君    長島 忠美君

      西本 勝子君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    原田 令嗣君

      深谷 隆司君    三原 朝彦君

      吉田六左エ門君    渡辺 博道君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      大島  敦君    逢坂 誠二君

      岡田 克也君    川内 博史君

      篠原  孝君    筒井 信隆君

      中川 正春君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    前原 誠司君

      渡部 恒三君    池坊 保子君

      上田  勇君    江田 康幸君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       麻生 太郎君

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   財務大臣         与謝野 馨君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       石破  茂君

   国土交通大臣       金子 一義君

   国務大臣

   (行政改革担当)     甘利  明君

   内閣官房副長官      松本  純君

   財務副大臣        竹下  亘君

   厚生労働副大臣      渡辺 孝男君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  伊藤 公介君     西本 勝子君

  臼井日出男君     井脇ノブ子君

  杉浦 正健君     長島 忠美君

  逢坂 誠二君     岡田 克也君

  仙谷 由人君     小川 淳也君

  前原 誠司君     市村浩一郎君

  渡部 恒三君     篠原  孝君

  池坊 保子君     上田  勇君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     臼井日出男君

  長島 忠美君     原田 令嗣君

  西本 勝子君     伊藤 公介君

  市村浩一郎君     前原 誠司君

  小川 淳也君     仙谷 由人君

  岡田 克也君     逢坂 誠二君

  篠原  孝君     渡部 恒三君

  上田  勇君     池坊 保子君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     岡部 英明君

同日

 辞任         補欠選任

  岡部 英明君     杉浦 正健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十一年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十一年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 平成二十一年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十一年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長金森越哉君、文部科学省高等教育局長徳永保君、厚生労働省医薬食品局長高井康行君、厚生労働省社会・援護局長阿曽沼慎司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 本日は、今後の日本社会についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木恒夫君。

鈴木(恒)委員 自由民主党の鈴木恒夫でございます。

 総理、そして財務大臣、連日予算委員会で質疑を続けていただきまして、お疲れだと思いますが、質疑も大詰めに来てございまして、私もきょう三十分間の時間で、たまたまきのう小沢一郎民主党代表の代表辞任のニュースもございましたので、そのことも踏まえて、今後の日本社会というタイトルでございますので、少し原理原則的な議論をし、総理から胸のうちをお聞きいたしたい、こう思いますので、よろしくお願いいたしたく存じます。

 私は、実は、自由民主党の為公会、麻生派の事務総長として麻生さんの総裁選も戦ってきた者でございます。総理は「とてつもない日本」という本をその総裁選に向けて出版されておりまして、なかなかの名著である、こう思いますが、この中で総理はこういうことを言っていらっしゃる。「そもそも社会というのは常に変化するものなのであり、それに合せて臨機応変に対策を講じていけばよいのである。目の前の変化に怯えて、いたずらに悲観ばかりしているのは、かえって国の舵取りを危うくさせるのではないだろうか。」こう言っていらっしゃる。

 非常に楽観主義的といいますか、前向きの政治姿勢を表明されているのでありますけれども、例えば、私の好きな作家の一人で五木寛之さん、横浜にお住まいでございますけれども、この人はこういうことを言っている。坂の上の雲を目指した時代は終わり、私たちは今地獄に向かう下山の時代に入った、こう言っていらっしゃる。総理は、いたずらに悲観ばかりしているわけにはいかない。しかし、下山の時代に入ったと五木寛之さんが見ていらっしゃる。

 きょうは、今後の日本社会というタイトルでございますから、今後の日本社会がどうあるべきか、根源的な議論をしたいと重ねて申し上げたいと思いますが、それはそれとして、まず総理に、電撃的なニュースでございました昨日の小沢民主党代表の辞任について、辞任そのものではなしに、その辞任が示すものといいますか、政治と金の問題に対する総理の思いも込めて、胸のうちをまずお聞かせいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 おっしゃるように、他党の党首の辞任について私の方からコメントすることはありません。

 ただ、今鈴木委員の御質問のところでいきますと、政治と金の話というのは長く続いておる話でありまして、そのたびにいろいろ各党で集まって修正をしたり、各党でいろいろ規制をされたり、またそれが法律になったりしてきた長い経緯があろうと存じます。

 したがいまして、こういったものは、常に国民の不信感にたえるというためには説明責任も果たさねばなりませんし、また同時に、決められたルールというものをきちんと守るというのが大事、ルールを幾ら変えても守らなければ何の意味もありませんので、そういった意味では、決められたルールをきちんと守っていくという姿勢が最も大事なんだと存じます。

 したがいまして、今言われましたように、これは、いろいろな意味で長い間の懸案でもありましたでしょうし、人間の倫理とかモラルとか道徳とかいうところに根源的にかかわってくる問題だとは存じますが、いずれにしても、いわゆる不信感にたえるような努力というものは政治家個人個人がきちんと果たすべき務めだ、私自身はそう思っております。

鈴木(恒)委員 政治と金の問題は、日本のみならず、お隣の韓国でもアメリカでも、さまざまなその他の国でも絶えず問題になっております。それだけ根深い問題だ。

 しかし、昨日小沢代表が辞任をされるに至った背景を見ると、私は、国民の間に七割前後の、金権政治というものに対する嫌悪感、あえて申し上げますが、これがやはり小沢さんへの辞任すべしという七割近い数字にあらわれているんだろうと思うんですね。金権政治に対する嫌悪感、あえて申し上げます。

 私どもは、御記憶にあると思いますけれども、当選一回のときにリクルート事件に遭遇をいたしました。そのときに、武村正義さんあるいはその他の方々、比較的理想主義的なものを追っかけていたと思われる連中でユートピア政治研究会というものをつくりまして、ここに本を持ってまいりましたが、「永田町下級武士たちの決起」という本を出版いたしました。

 私は、もともと新聞記者だったものですから、この出版の元締めをやらせていただいたんですけれども、この中で我々は、政治と金の問題、一体どのぐらい金がかかっているんだろうかとその数字も初めて提示いたしまして、こんなに金がかかるのかと世の中をびっくりさせたことを思い出します。それが政党助成金の制度につながったり、政治と金のみならず、小選挙区の導入なんかも、政党政治を根づかせるためにということで提案して現実のものとなるわけでありますけれども、やはりこの金権政治に対する嫌悪感を払拭しないことには政治不信は直らない、そう思います。

 そこで、そうしたユートピア政治研究会の活動の中でこういうことを言っている人がいるんですね。政治活動にお金をかけ過ぎているのは事実でしょう、しかし、リクルート事件をきっかけに大きな不信を招いたのは、政治家は、政治活動にお金がかかるのをいいことに、賜った政治資金を私的に流用しているのではないかという疑念を持たれたことです。よく聞いてくださいね。ユートピア政治研究会が大いなる反省のもとに政治資金を公表したのは、いやしくも私たちは公的な資金を私的に流用してはいないことを示したかったからであります、公私の峻別のできる制度をつくらなければいけません、こう言っているんですね。

 同じ方がもう一つこういうことを言っている。ですから、諸悪の根源みたいなものを探っていけば、中央官庁に余りにも権限が集中しているんですよ、それをえさに政治家が活動しているわけでしょう、この構図を変えない限りだめなんですよと言っている人がいるんです。

 総理、この論調についてはどういうふうに御判断されますか。

麻生内閣総理大臣 私の正確な記憶で、もう大分前の話で、それはたしか、さきがけができる前ぐらいに書かれた本だったと思います。一部、ところどころ読ませていただいたんですが、それはたしか鳩山由紀夫先生が書かれた文章、僕の記憶ではそうなんですけれどもね。正確な記憶じゃありませんから、ちょっと間違っているかもしれませんし、もう大分前の話ですからあれですけれども、そういったことを書かれて、このさきがけというのは、その後、離党され、あの選挙になり、そしてその後、小選挙区の導入につながり、いろいろな意味できっかけを与えたという意味においては、そのグループのなされた活動というのは大きかった、私自身はそう思っております。

 したがいまして、今の話は、二十年前と今と、基本的に、言っておられること、考えておられることは同じなんだと思っておりますので、二十年間でどのような感じになられたか、私、その後のつき合いがありませんのでよくわかりませんけれども、そういった気持ちを持ち続けていただいているのではないかと、期待を込めて、希望を込めて今そう思っておりますけれども、いずれもそういった思いを書いておられるというのは正しい行動だった、私はそう思います。

鈴木(恒)委員 総理おっしゃるように、この文章は、鳩山由紀夫さんが自身で書かれた文章であります。民主党の小沢代表のもとで幹事長を務められて、それなりにしんどい思いをされていたとは思いますけれども、しかし、国民にこれだけの金権政治に対する嫌悪感をまいた代表のもとで務めた幹事長。

 私は、これを奇貨として、鳩山さんを初め、もちろん自由民主党もそうしなければなりませんけれども、やはり日本における政党政治のしっかりとした根づかせというものを、この不幸な小沢辞任というものをきっかけに弾みをつけていかなければならないと、改めて自戒も込めて思うわけであります。

 さてそこで、私は総理に冒頭、「とてつもない日本」という本の話をいたしましたが、とてつもない日本であることは間違いないと私も思います。

 例えば、戦後六十年たって、四分の三がもう戦争を知らない世代。戦前に生まれた人は、議員は四人に一人になりました。しかし、考えてみれば、戦後六十数年たって、この国はただの一人の戦死者も出していない。これはとてつもないことだ。やはりこの平和主義の貫徹、危ういときもありましたけれども、とてつもない日本の一つの例だ。

 若者の中にも、今、世界をまたに活躍している若者はいっぱいいる。文化、芸術、スポーツ、その他学術、とてつもない日本が確かに存在する。経済も、第二の経済大国になった。今、百年に一度のピンチに見舞われていますけれども、金融面では少なくともそんなに動揺があるわけではない。とてつもない日本だ。

 しかし、総理に申し上げたいのは、とてつもない日本の裏側で、根底が腐食されかかっていないかということを私はきょうは主に申し上げたい。

 総理に伺いますが、日本は戦死者を一人も出していないが、米軍がイラク戦争で犠牲にした戦死者の数は、イラク戦争で何人か、御存じでしょうか。おおよその数で結構でございます。

麻生内閣総理大臣 わかりません。正確にはわかりません。

鈴木(恒)委員 私から申し上げれば、六年間で四千二百八十七人であります。あれだけ戦争の是非が言われ、米国内でもいろいろな御議論があった。しかし、戦死者は四千二百八十七人。

 総理に伺いますが、きのうも大分議論がありましたけれども、日本の社会の自殺者、一年間にどのくらいと御記憶ございますか。

麻生内閣総理大臣 十一年間連続で三万人を超えているというのが私の記憶です。

鈴木(恒)委員 総理、それは間違いです。十一年間連続三万人で、トータル三十五万人です。十一年間で日本人の自殺者は三十五万人いるんです。イラク戦争で失われた米軍兵士は四千二百人。これは、戦死者が一人もいない、とてつもない日本の姿として尋常なことでしょうか。

麻生内閣総理大臣 総裁選挙に出るときにも、たしかその中の一文で申し上げたと記憶しますが、交通事故による死者が一万人という事態にあって、これは断固減らさないかぬといって五千人台まで今減り、さらにそれを半分に減らそうとしているときに、傍ら、余り多く語られない中で自殺者が三万人いるというのはどう考えてもおかしいのではないか、これは何かがどうかしているということを、立候補したときには話として申し上げた記憶があります。

 しかも、これはあるときから急激に上がってきておりますので、そういった意味では、我々としては、この問題はかなり根深い話なんだと思って真剣に取り組む必要がある、私自身はそう思います。

鈴木(恒)委員 真剣に取り組む必要は政治全体の問題でありますが、私が申し上げたいのは、やれ相談員をふやすとか病院を整備するとかという程度のことでこの自殺者対策は、こんなものはこう薬を張るようなものだ。なぜこういう自殺者が出るか、その根源が問われなければならない。

 私は常々、自分が政治生活、これで二十年目に近いわけでありますけれども、政治のあるべき姿としてこういうことを考えてまいりました。国民が安心して生活できる、文化の薫り高い、国際社会に貢献する品格ある国家、これをやはり、政治家として少しでもそれに近づくように努力しようと自分に言い聞かせてまいりました。国民が安心して生活できる国家でないから、自殺者がこんなに起きるんでしょう。

 と同時に、私は、昨年文部科学大臣をやらせていただきましたときに、教育基本法の改正も終わって、どうでしょうと安倍前総理に申し上げたことがあります。人に優しく自分に強く、こういう教育の基本を高く掲げて、これならだれでも、どんな思想を持っていても、どんな宗教団体も、どんな企業も全く異論ないでしょうと。人に優しく自分に強く。自分に強い、克己心、自分を鍛える力というものがあれば、自殺者がこんなにふえるはずはない。耐え忍ぶ力、へこたれてたまるかという気質、これはやはり教育の問題とも絡むわけであります。

 私は、ぜひ総理に、この十一年間、三万人以上ずっと続いた自殺者の根源的な解決法を、野田大臣が担当かもしれませんけれども、内閣全体で少し根源的な議論をしていただけないかということを申し上げておきます。いかがでしょう。

麻生内閣総理大臣 鈴木先生、これは、政治、教育、家庭のしつけ、学校教育を含めまして、いろいろな分野で複合的につくり上げていかなければならない大事な点だと思っております。

 やはり、何となく、人生一回負けたら終わったという感じでもう一回行けないとか、いろいろな理由が多いんですが、これは二万人台から三万人台にいきなり一九九七年ぐらいからはね上がって、一万人ぐらいふえている。

 あのころ一番起きていたことは何かといえば、これは間違いなく、アジア政治危機に始まった金融危機で、このとき銀行やら何やらが多く倒産したのであって、証券会社で三洋、山一、銀行で北海道拓殖銀行、債券信用銀行、長銀もばたばたいった。あの時期からふえているというので、かなり中高年による、いわゆる不景気から起きている部分というのは私は事実としては出てくると思いますが、その前も二万人台でいたことは確かだと思っておりますので、そういった意味では、もっと根源的なものがあるのではないかという点を考えないかぬということを言っておられるんだと思います。

 私自身も、その点に関しては、人間の持っております弱さとか強さとかいろいろあろうと思います。貧しいから自殺するというんだったら戦後もっと自殺者は多かっただろうと言われた学者の方がいらっしゃいましたが、私もそういう意味では、そういう問題、貧しさだけからくる話ではないのではないかという点も御指摘なんだと思いますが、もっと根源的な問題を考えていかなければ、簡単にこれが解明もしくはこれを減らせるということにならぬのではないかなという感じが率直な実感です。

鈴木(恒)委員 ある大学の私の尊敬する先生がこういうことを言っていらっしゃる、あっと思いましたが。今、すばらしい未来が必ず来ると思っている若者はほとんどいないのではないかと。

 若者の自殺が非常にふえている。一方で、秋葉原事件を初めとして、大量の無動機殺人もふえてきている。つまり、若者にとって、今、この社会は、全く生きる価値のない、生きざまを見つけようもないくらい混迷に見えているんだろう。これはもう、日本社会の劣化現象の最たるものの結果に自殺があるんだろうと思います。

 このほかに、治安の乱れはあり、医療制度の疲弊があり、所得格差の拡大があり、あえて申し上げれば、メディアの問題も私たちは取り上げねばならない。私は新聞記者でしたけれども、とりわけ、やはりテレビと文化、文明というもののありざまを、これは言論の自由もございますから言葉は厳選いたしますけれども、メディア自身の自律というものを、つまり視聴率至上主義というものに対する反省とまでは言いませんが、見直しといいますか見詰め直しといいますか、やはり考えていただかなければならない。いろいろな問題を日本社会の劣化は抱えている。

 私は、日本の文明の根底が腐食し始めているんだ、こういう認識を持たなければいけない、とてつもない日本はいいんだけれども、その根底が崩れている、重ねて申し上げたいと思います。

 そして、これもなかなか言いづらいことでありますけれども、今議論になり始めております政治家の世襲の問題があります。

 私は、今六十八歳で、六十五を過ぎたらもう選挙には出ないと申し上げて、世襲は個人的な主義としていたしません。同じ鈴木君というのを後継にいたしましたが、全く血はつながっておりません。

 私は、個人的にですよ、世襲がいけないというのではありません。しかし、やはり国民の間に、こんなにふえていいのかねという批判があることだけは事実としてあるんでしょう。

 総理のように、二十数年間途絶えていて政界に出てきたから、これで世襲と言えるのかと。確かにそういう議論もあると思いますけれども、お嬢ちゃん、お坊ちゃん育ちの、要するに大衆政治家という言葉がこの国ではなくなりましたが、そういう育ち方をしてきた、私はやはり、民衆の心がわかる、そういう政治家がいなければいけない。

 そこで、世襲は、例えばアメリカなんかを見ますと、上院議員百人のうち五人です。下院四百三十五人中二十三人。五%程度。しかし、日本はけた外れて多い。私は、世襲がいけないというのではありません。ぜひここは理解してください。

 ただ、さっき申し上げたユートピア政治研究会で我々が小選挙区制度を導入、提言したときの動機は、この小選挙区制度を導入することによって日本に二大政党政治を根づかせる、それによって候補者の選定も、例えば三百ある小選挙区の支部で党員投票で選ぶ、これを義務づける。そこに麻生二世が出てきてもいい、鈴木二世が立候補してもいい。しかし、結果は党員投票で合理的に決める、ドイツ、イギリスと同じように。こういうシステムを根づかせるべきだと私は思いますが、総理、いかがでございましょうか。

麻生内閣総理大臣 世襲の定義が今言われたようによくわからぬので、二世と言ってみたりするけれども、では、おまえ、鳩山は三世か、四世かという話になりますので。なかなかこの定義が難しいので、定義のはっきりしていない話にうかつに言うのは極めて危険なんですが、少なくとも、私は、政治家の親族だということだけで何となく当然のごとくその地域の後任が譲り受けられるというのは、どう考えたって問題なんじゃないのかというのは当然だと思いますね。

 傍ら、神奈川県何々区の党員なり役員によって選定されて、その人がきちんとした形で選ばれてくるということになれば、それは二世、三世の被選挙権というのを奪うということになりかねませんから、これは法律的にはなかなか難しいんだと思いますので、そういった意味では、今言われたような制度をきちんとつくり上げておいてやるというのは当然で、多分、多くの選挙区ではそうしておられると思います。

 私の知っている範囲では、かなりいろいろ、二世、三世が出ようとして出られなかったところも幾つもありますので、そういった意味では知っておられると思いますので、きちんとした形をルール化しておくという方が、明確にして、開示しているというのが大事なんじゃないかという感じがしています。

 これは、各党でいろいろなさるんだと思いますので、各党においていろいろ検討されてしかるべきだと存じます。

鈴木(恒)委員 党において世襲の問題の議論が始まるようでございますから、総理には、ぜひ、やはり合理的な候補者選定制度というものを党として決めていただくべく、リーダーシップを発揮していただきたい。

 与謝野大臣に一言伺います。

 私は、日本の社会の劣化現象の一つに、金満思想といいますか拝金思想、やはり金がすべてだと。かつて、ホリエモン、堀江貴文君が、金で買えないものなんかあるはずがない、こう言いましたが、彼は今非常に残念がっているでしょう。裁判が金では買えないことがわかったでしょう。

 金がすべてだと言わんばかりのこの風潮について、お金を、国の財政を預かっていらっしゃる与謝野大臣から一言いただいて、最後に総理にもう一回、一つお尋ねしたいことがございます。

 与謝野大臣、率直な思想を。

与謝野国務大臣 人間は、物質のみで生きるわけではなくて、やはり気持ち、精神、愛、物質ではないものに多く依存して生きている、私はそう思っております。

 したがいまして、金があればすべて買えるなどという思想は大変傲慢な思想で、多分、金で買えないものはこの世ではごまんとあるのではないかと思っております。

鈴木(恒)委員 私は、与謝野大臣おっしゃるように、それを日本の美風と言っておりました。日本の美風の蘇生と新生と言いましたが、途中で終わってしまったものですから、中途半端になっておりますが。

 総理、お願いがございまして、私は、環境問題でも議員生活の三割ぐらいを注いでまいりました。環境教育、つまり、手のひらに命を見詰める、この瞬間を体験させる、それがやはり殺人も自殺も避ける大きな教育の観点の一つだと思っております。残念ながら、教育問題、教育政策は、森内閣で関係閣僚会議があった以降、閣僚会議さえありません。

 総理は、文教から政治家をスタートされました。将来の問題としてぜひ教育を、今こそ私は米百俵の時代だと思っておるものですから、この経済の問題が一山越えましたらば、根源的な議論をする場を、閣僚懇でも結構でございます、何でも結構です、内閣にぜひつくっていただいて、長期的な日本の劣化を食いとめる方法として教育に取り組んでいただきたいと最後に要望も込めて、御答弁いただいて、質問を終わります。

麻生内閣総理大臣 教育問題は、政治家はもちろん、各党においてもほぼ全員この問題に関しては関心がおあり、かつ国民もおありなんだと存じます。

 きのう、シンガポールの大統領が来て、同行者として教育大臣が来ておりました。隣に座っていたのでいろいろ話をしておりましたが、同じような問題を抱えているんだと思いましたが、教育問題だけは、十人に聞いたら大体答えは十二ぐらい出てくると。だから、これは皆それぞれ一家言あるところだと思いますので、なかなかまとめるのは難しい。

 ただ、日本において、この教育問題というのは、何となく、日教組対反日教組とか左翼対右翼とか、いろいろイデオロギーに左右された時代というので、かなり屈折した部分、ねじ曲がってしまった部分というのがあろうと存じますが、しかし、今改めて教育というものをきちんとやらなければならぬ。

 我々としては、再生懇をスタートさせ、安心社会のための実現会議というのを今いろいろ企画、検討させていただいておりますけれども、今言われました教育問題というのは、国として、内閣として、また国民一人一人として、最も大事にすべき課題、これは教育に尽きる、私はそれは全く賛成です。

鈴木(恒)委員 終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて鈴木恒夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 麻生総理また与謝野大臣には、連日の予算委員会での御審議、大変御苦労さまでございます。

 質問に入らせていただく前に、先ほど鈴木委員からもお話がありましたけれども、昨日、民主党の小沢代表の辞意表明がございました。補正予算の審議中であって、党首討論も予定されていたというふうに我々は聞いていたのですが、そんな中でありましたので、大変唐突な感を受けました。

 記者会見を私もテレビで見させていただきましたけれども、問題となっている公共事業の受注をめぐる政治と金の問題について全く言及をされず、説明責任は全く果たされていなかったというような印象を受けたところでございます。極めて残念であったということをまず申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、時間も限られておりますので質問に入らせていただきますが、まず外交問題についてお伺いをいたします。

 総理には、連休中も中国、ヨーロッパを訪問されて、精力的に外交に御努力をいただいてきたこと、大変御苦労さまでございました。

 総理は、ドイツで行ったスピーチの中で、世界が直面している四つの挑戦の一つに核軍縮と大量破壊兵器の不拡散を挙げまして、核軍縮を進め、不拡散体制を強化することが重要です、こういうふうに発言をされておられます。今まさに、米国のオバマ大統領も核軍縮について前向きな姿勢を示す、国際的な機運も高まっている中で、極めて重要な意義のある総理の御発言だったというふうに考えております。また、総理は訪中の際に温家宝総理にも協力を呼びかけられて、一応は賛同が得られたものだというふうに伺っております。

 総理も述べられているように、我が国は唯一の被爆国であり、過去、長年にわたり国連での核廃絶決議を提案するなど、主導的な役割を担ってまいりました。今後の新たな国際社会の秩序への転換が今求められているときであり、安全保障体制の枠組みも新たな局面を迎えているというふうに考えております。そうした中で、我が国がリーダーシップを発揮するべきときであるというふうに、私も総理のスピーチを伺いまして感じたところでございます。

 そこで、改めて麻生総理に、核軍縮、不拡散の前進に向けての御決意、それから、これからの取り組みについてお伺いをしたいというふうに思います。

麻生内閣総理大臣 五月の五日に、ドイツの昔のベルリン大学、今のフンボルト大学という大学で、今、上田先生の御指摘のありましたスピーチをさせていただいております。

 その前の日、プラハというところで日欧会議というのをやらせていただいたんですが、そのプラハにおいて、先月、バラク・オバマ大統領が核軍縮の話をしております。少なくとも、核を使用した唯一の国としての話というのがああいった席で語られたというのを私は過去六十数年間聞いたことがなかったので、たまたま夜中だったんですが、あれは物すごく印象的な演説だったので、非常に記憶に新しいところでもありました。したがって、こういう演説を少なくとも被爆国ではなくて使用国側が言う、核軍縮を核を持っていない方じゃなくて核を持っている方が言うというのはすごく大事なところだ、私はそう思っております。

 したがいまして、私は中国に対しても同じように、いろいろな問題はあるけれども、中国が過去二十一年間、少なくとも軍備というものの歳出が二十一年間連続で二けたで伸びている。しかも、その内容は極めて不透明なものが多いのではないかと。それがあると、少なくとも隣国としてはそれに対して不信感を持つ、中でも核の近代化というものに関してもいろいろということになってくるとさらに不信感が募るというようなことは、今の時代の流れとしてはアメリカですらという話になってきているので、米ロで核軍縮の話をする時代に、少なくとも米中でもこの話はする値打ちがあるのではないかというのが我々から見た意見だというような話もさせていただきました。

 こういった話はなかなか今まで言わないことになっていたんだと思いますが、私は、こういった話がきちんとできるようになったのは、日中関係が今までよりかなり近くなってきているから言えるのであって、話がきちんとしたところで合っていないとなかなかほかの話はしにくいものなんだというのが、普通の人間のつき合いでもそうだと思いますので、今、中国との間でそういったことを言わせていただきました。

 いずれにしても、これまで日本としては、核軍縮に関しては国連で最もこの問題に関して一生懸命やってきた国でありますし、これまで反対の仲間をふやしてきております。加えて、今ここに核の不拡散、拡散という話ができました。少なくとも、核というものがテロリストの手に渡るなどという危険はさらに話を複雑化させますし、思わぬところから被害がということにもなりかねないというのは、これは明らかに安心できない社会であろうと思いますので、そういう意味では、この核軍縮の話につきましては、被爆国だからというだけではなくて、今後、人類が抱えております問題として真剣にもっと考えて取り組んでいくべき問題だと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 核軍縮、これは基本的には多くの国々が賛同はするものの、やはり具体的な論議になっていくとなかなか容易にはいかない問題だというふうには考えております。

 我が国として同盟関係にありますアメリカの協力がまず必要でありますし、同時に、総理も今回訪中をされて中国への協力も呼びかけられた。また、今はちょうどプーチン首相もお見えになっていますので、また協力も呼びかけていただけるものだというふうに思っておりますが、そういう粘り強い努力が必要であり、総理のここでのリーダーシップをぜひ発揮していただいて、今せっかくここまで世界的な機運が盛り上がっているときでありますので、前進に向けての一層の御努力をお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、政府として、この核軍縮に向けて、世界的核軍縮のための十一の条件というものを発表いたしまして、具体的な提言を行っております。

 その中で、明年の早い時期に、我が国が世界的な核軍縮についての国際会議を主催することを提案しております。この国際会議は、今後の核軍縮や不拡散への世界的な取り組みを加速させるという意味で、非常に大きな意義を持つ会議になるのではないかというふうに考えております。それだけに、やはり国際的な関心も高い。だから、実務者レベルではなくて、閣僚級のハイレベルの会議にしなければならないというふうに思います。

 また、NPTに加盟していない核保有国でありますインド、パキスタン、またイスラエル、さらには核開発の意図を持っているイランのような国々にも、できるだけこの国際会議に参加を呼びかけることが我が国として必要だというふうに考えますけれども、そのあたりの御見解を伺いたいというふうに思います。

麻生内閣総理大臣 御指摘のありました、来年、二〇一〇年に企画をしております二〇一〇年核軍縮会議の詳細については目下検討中でありますので、細目を今この段階で申し上げられる段階にはありませんが、少なくとも、核軍縮というものをアメリカが言い始めた今の段階では、世界が一致してやるいい機運、タイミングとしてはいい、私どもはそう思っておりますので、この核軍縮会議というのをぜひ成功に導きたいものだと思っております。

 今、この種の大きな会議というのは、これまで小さいのは幾つかありますけれども、こういった大きなのはやったことが過去ありませんので、そういった意味では、きちんとした形で、関係国とも連携をとりながら成功に導いていきたいと思っております。

 細かくいろいろ詳細はありますけれども、まだそういったものがきちんと詰まっているわけではございませんので、もう少し詰まりましたら、改めてまた御説明させていただければと存じます。

上田委員 ありがとうございます。

 総理が御提言をされて、我が国の姿勢を世界に示していく絶好の機会になるというふうに思いますので、ぜひその成功に向けて、私たちもできる限りの協力をさせていただきたいというふうに思っておりますし、また、政府一丸となって取り組んでいただければというふうにお願いを申し上げます。

 次に、全く話題はかわって、新型インフルエンザの問題についてお伺いをいたします。

 ここ数週間にわたりまして、報道でも何か最も注目を集めてきたのがこの新型インフルエンザをめぐる問題でございます。国民の安全、健康にかかわる重大な問題であることは間違いがありません。

 政府でも、いち早く対策本部を立ち上げまして、水際での検疫体制を強化し、また、感染防止、感染拡大の防止、あるいはワクチンの開発、生産、厚生労働省を中心として対策に万全の対応をしていただいているというふうに承知をいたしております。

 一方で、これまで新型と言われていたのは、鳥インフルエンザのことを新型と言っておりましたけれども、さらにまた新型が出てきたことで鳥インフルエンザに関する関心が少し弱まっておりますが、ただ、この鳥インフルエンザも東南アジア、中国では相当拡大をしており、こちらの方が強毒性であるとも言われておりまして、引き続き警戒が必要だというふうに考えております。

 今度の補正予算の中には、インフルエンザワクチンの生産・開発体制の強化に関する費用として一千二百七十九億円が計上されております。当然これは、予算編成の段階で想定していたのは鳥インフルエンザが想定されていたんだというふうに思いますけれども、新型インフルエンザの脅威が増大する中で、そのワクチンの開発、生産を進めることにも使えるのではないかというふうに考えております。そういう意味では、結果的ということになるのかもしれませんが、極めて時宜にかなった対応をしてきたと評価できるのではないかというふうに思っております。

 そこで、厚生労働大臣に、インフルエンザワクチンの生産・開発体制の強化、この事業の目的及び内容について、また新型ワクチンの開発、生産への対応も含めてお考えを伺いたいというふうに思います。

舛添国務大臣 まず、今年度の本予算で六十六億三千九百万、これはプレパンデミックワクチンの備蓄経費でとってありますが、当然これも新型インフルエンザのワクチンの買い上げに使えます。そして、今審議していただいています補正、今委員からありましたように、千二百七十九億円計上している。

 この主たるものは、ワクチンのつくり方で、卵、有精卵を使うやり方があります。これが今の方法なんですけれども、やはり一年半から二年、製造にかかります。これを半年に短縮するのに、細胞培養法というのがありますので、これはまだ今一生懸命開発していますので、これを促進する。そうすると早くつくることができます。

 それから、打つのではなくて、口から、ないし鼻に、経鼻とか経口、こういう形でやるととりやすい。それから、アジュバントといって、これは抗原量を削減する。さまざまありますし、それから、第三世代ワクチンといって、いろいろなウイルスに効くワクチン、こういうものの研究開発をやりますけれども、当然この予算を新しい今回のインフルエンザワクチンでの鶏卵培養法にも使えるわけですから、新しい細胞培養法ができるまでの間は、鶏卵の、有精卵での培養法にもできるということでありますので、この千二百七十九億円を活用しまして、遺漏なきようにしたいと思います。

 それから、六月初めぐらいには新しいワクチンの製造ができると思いますのは、先般、CDCから届きました新型ワクチンの株は、今各地で疑わしい事例がある、その検体と比べるためにあるので、これは新しいワクチンを製造するために必ずしも適合的ではない。それで、今、CDCからもっといいワクチンの株をもらってきつつあります。大体五月末から六月の初めぐらいに届くと思っていますので、そこで、季節性のワクチンとこの新型ワクチン、どれぐらいの配合比率でつくるか。これは、今の新型ワクチンの毒性を見る、病原性の高さ低さを見る、それから感染の拡大を見る、そういうことを総合的に判断して、ぎりぎりの段階で決めたいというふうに思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣からも御答弁ありましたけれども、今、季節性のインフルエンザもある、鳥インフルエンザもある、新型のインフルエンザもある。今、報道はどうも新型にばかり集中しておりますけれども、すべてにわたったバランスのある対応が必要なんだろうというふうに思っておりますので、非常に国民の健康、安全に係る重大な懸念でありますので、ぜひ万全の対応で進めていっていただきたい。そしてまた、今度の補正予算で実施される事業、それも効果的に効率的に実施をしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 続いて、補正予算の内容について何点かお伺いをさせていただきますが、まず、この補正予算の今回の構成についてちょっとお伺いをいたします。

 今回の補正予算は、四月に内閣で決定をいたしました経済危機対策を具体化するためのものでございます。二〇一〇年度後半まで視野に入れた、第一に景気の底割れ回避を最優先する局面、第二に底入れ、反転を確実にする局面、第三に新たな成長軌道に乗せていく局面と、経済局面に応じて対応していくという内容が含まれております。そのため、多年度を視野に入れた包括的な施策を計上しておりまして、それらを計画的に執行していくために、国や地方公共団体また関係機関に基金を積んで、それを毎年取り崩すことによって支出をしていくというものもたくさん含まれております。

 私は、こうした考え方は大変理にかなっているものではないかというふうには思っております。三年間の景気回復期間を通じた見通しが立てやすいし、また、計画的、効率的な事業の実施が可能になってくるというふうに考えております。

 ただ、こうした内容について、一部では、緊急性が必ずしも高くないものまで含めて膨らませているのではないか、あるいはまた、将来にはこれは無駄な支出につながるのではないかというふうな批判もございます。

 そこで、改めて今度の予算、多年度にわたる財政支出を計上しているその意義について、総理にお考え方を伺いたいと思います。

与謝野国務大臣 我が国経済は、経済の底割れという短期的な危機だけではなく、今回の金融経済危機による世界経済の大調整が避けられない中で、輸出主導型の経済成長構造が崩れているといった状況に直面をしております。こうした危機的な状況を克服するために、ワイズスペンディングという観点から、経済の下支えに加え、将来の成長力を高めるための施策に優先的かつ集中的に投資していく必要がございます。

 このため、今回の補正予算の策定においては、総理みずからが主宰する有識者会議での各界各層からの御意見も踏まえ、我が国の中長期的な経済発展に資する、一つは低炭素革命、二つ目は健康長寿・子育て、三番目は底力発揮・二十一世紀型インフラ整備の分野に集中的に投資することにしたわけでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 大臣には二問まとめて御答弁をいただいたというふうに理解しております。

 それで、今ちょっと提起をさせていただいた、今回、基金を積んで多年度にわたる支出が計上されているということでありますけれども、これは三年間が景気回復期間と位置づけているわけでありますから、その間の計画的な事業の実施が必要でありますから、多年度で行う必要があるということは当然のことであるというふうに思います。

 ただ、基金を積んで多年度にわたる支出ということになりますと、経済情勢もその間変わることもありますし、また、その他の条件が変化をするということも考えられます。事業の実施に伴いまして、当初予定していなかったようなことが起こることもあるし、また、なかなか事業の実施がうまくいかないというようなこともあるかもしれません。

 毎年度ごとに、そういった基金については、予算の執行状況や、またどういうふうに使われてきたのか、適正な執行が行われているのかどうか、そういったことをやはりチェックをしていただいて、効果的、効率的にその予算が使われるようにしっかりとチェック体制をとっていただきたいというふうに思っておりますが、財務大臣、いかがでございますでしょうか。

与謝野国務大臣 基金の中には、相当地方にやっていただく基金もございます。これもやはり、地方自治体も、また総務省も、目的どおり効率よくお金が使われているかどうかということをいつも見ていなければなりません。

 また、国の方でお預かりするいろいろな基金もございます。例えば研究開発に関する基金とか、こういうものは単年度で終わる仕事の方が少ないということで、そういう意味で、総理から多年度にわたる予算を考えろという御指示が最初あった。

 しかし、今回国会で御審議をいただき、最終的には御承認をいただきたいこの予算も、多年度の支出にわたるわけですから、やはり国会に御報告することは当然のことでもありますし、各歳出を管理する役所も、きちんとこの基金が目的どおり効率よく使われるということを常に見ていなければならないという責任がある、私はそのように思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 財務省では、毎年、予算の執行状況の調査も行っておりますし、また総務省においては、行政評価等で適正な実施が行われているという評価も行っております。それに加えて各省庁でも、今回非常に大規模な予算でもありますので、それが、とかく一回支出してしまうとその後はなかなかチェックというのがうまくいかない部分もあるかもしれません。そういう意味では、ぜひ万全の対応をしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 最後になりますけれども、補正予算に計上しております具体的な事業の内容について、国土交通大臣にお伺いしたいというふうに思います。

 補正予算には、都市鉄道等の整備、また鉄道駅のバリアフリー化、ホームドアシステム、ホームにあります自動開閉のさくというんですかね、自動開閉するものがありますけれども、そういった事業も計上されております。これらの事業は、我が国の大都市における生活の利便性を向上していくという意味でも非常に重要なものでありますし、また、安全を向上していくという非常に重要な意味もあるというふうに思っております。ひいては、我が国の都市における経済活動の活性化にもつながるものだというふうに考えております。

 都市鉄道等の整備については、私の地元にかかわる事業も含まれておりまして、相鉄線のJR線や東急線への相互乗り入れの事業でありますけれども、この事業を推進する予算も含まれておりまして、事業促進への期待も高まっております。

 また、バリアフリー化は現在計画を立てて進めているんですけれども、この補正予算を活用して一気にその計画を達成しようということであります。これは今のまさに高齢社会の中において非常に重要な事業だというふうに思っております。

 さらには、ホームドアの設置というのは、今地下鉄の一部の駅では、丸ノ内線なんかの駅ではこれが設置をされており、事故防止のために大変役立っているというふうにも聞いております。先般、このホームドアについては金子大臣にも設置の促進を要請させていただいたところでありますが、これからJR線や私鉄の駅への設置も望まれております。これは、やはり通勤時、通学時、どうしても事故が起きやすいときでありますし、また、ちょっと先ほどのお話にもなりますが、自殺防止とかそういったことにも役立つものだというふうに考えております。

 そういう意味では、今申し上げました事業、大変意義のある事業だというふうに考えておりますので、ぜひ推進をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、これらの事業の計画、内容につきまして、金子国土交通大臣にお伺いをいたします。

金子国務大臣 現在あります都市鉄道、既存の都市鉄道の鉄道網をちょっとつなぐ、あるいは相互乗り入れするだけで、随分住民の利便性向上に役に立つということで取り進めさせていただいております。

 首都圏では、上田委員が先頭に立って随分進めておいでになられました事業で、相鉄線とJR線の相互乗り入れ、あるいは相鉄線と東急の相互乗り入れ、短絡線の設置を進めさせていただくという事業に今取り組んでおります。

 短絡線を結ぶことによりまして、二俣川と目黒駅間が五十四分が十六分間短縮になる、これは相鉄と東急線の乗り入れです。それから、相鉄線とJRの直通線、これは大和駅と新横浜駅付近までで四十二分が二十三分間、半分以上短縮になるというふうな効果が、短絡線と、相互乗り入れをすることによってできると思っておりまして、相鉄線、JRについては二十六年度完成、もう一方については、少し時間がかかりますが、三十年度の完成に向けて、補正予算に計上、組ませていただいております。

 先ほどお話ししましたバリアフリーについては、エレベーターについては二十二年度までに、今目標にしているものについてほぼ、七〇%でありますけれども、完了させたい。もう一つの御指摘のホームドア、視覚障害者、あるいは混雑時、ラッシュ時、通学時の事故等に備えるために、四百三十二の駅を目標にして順次整備をしていくという計画を、今、この補正予算も含めて進めさせていただいております。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣から御答弁のあったそれぞれの事業、都市の機能を向上していくという意味で非常に重要な事業だというふうに考えております。先ほど質問をされました鈴木先生の地元にもかかわってくる、ちょうど両方のところをまたぐ事業でございますので、またぜひこれからの早期完成に向けての御努力をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょうは、時間をいただきまして、幾つかの当面の政治課題、そして将来の日本社会のあり方について議論させていただきたいと思います。

 まず、先ほど自民党の鈴木議員の方からも議論が出ておりましたいわゆる世襲の問題について、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。

 定義がはっきりしないというふうに総理はおっしゃられると思いますので、民主党が決めている世襲の定義は、同じ選挙区で配偶者または三親等以内の親族が前任者に引き続いて連続して立候補することを認めない、これが民主党の考え方であります。

 これは、自民党の中にも同じような考え方を述べられる方もかなりいらっしゃるやに聞きますけれども、総理、現在日本の政治のリーダーに立っておられる総理として、そういう考え方に立つべきとお考えなのか、あるいはそうでないのか、そして、それはなぜなのか、簡潔にお話しいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 先ほど鈴木先生からの御質問にも似たような御質問があったと記憶しますが、政治家の、政治家というのは多分、国会議員に限っておられるのだと思いますので、県会とかあるいはほかは知りませんが、国会議員の世襲の問題につきましては、今の定義でいくと、麻生太郎は世襲ではないということになるわけですね。だからいいなんと言うつもりはありません、それほど安易な話だとは思いませんので。

 ただ、二世というのだったら、私は五世ぐらいになるだろうと思います、いろいろな意味で、おたくの鳩山さんも四世ぐらいになられると思いますので、いろいろいらっしゃるんだと存じます。

 政治家の親族だからといって、安易に、地元で当然のごとく立候補なり公認が与えられるというのは、私としては、ちょっと問題なんじゃないのかなというのは、率直にそう思っております。先ほど鈴木議員の中にも御意見がありましたように、三重一区なら三重一区において、その三重一区の支部内できちんとした討議を経て何とかというんならともかくもということだと思いますので、私は、それは基本的に賛成であります。

 また、注意しておかないかぬのは、有為な人材であったけれども、それがたまたまおやじが政治家、だから政治家になれないということになりますと、これまた逆に問題になろうと思います。こういったことは、法律上、被選挙権の話になりますと、これは憲法上という話にもなるんだと思います。そういったところでこれは慎重な検討が必要なんだと思いますが、いろいろな意味で、各党でいろいろな議論がなされている、みずからルールをつくるというのはいいことだ、私は基本的にそう思っております。

 今、自民党の中でもいろいろ議論がされていると聞いておりますので、大事なことは、有能でかつやる気のある人、そういった人が広く選ばれてくるシステムをいかにつくり上げるか、民主党より自民党の方がいいのか、自民党より民主党の方がいいのかという話にもなろうと思いますので、そういう選び方の制度というものをきちんとつくり上げていくというのが各党にとりましても大事なことだと思っております。

岡田委員 今、総理が言われた中で、たまたま近い親族に政治家がいた場合に、有力な、能力のある人が出られなくなるじゃないかと。ここは、私はこう考えるんです。本当にその方が有能であれば、もちろん、今でも有能な二世議員、三世議員、たくさんおられるわけですけれども、本当に有能であれば違う選挙区から出ればいい、それだけのことだというふうに思うわけですね。

 そして、一定のルールに基づいてという総理のお考えのようですけれども、私は、今の小選挙区制度のもとで、基本的に一つの党から一人しか出られない。それはそういう制度を我々が選んだわけですね。

 そして、日本のメンタリティーとしても、そういう人をつい選びがちな、そういうメンタリティーも現にあると思います。それは悪いことではないんですけれども、そういうメンタリティーはある。だから、いろいろな条件に恵まれて、地盤、看板、かばん、そしてそういうメンタリティーもあって、二世が選ばれやすいという風土があることは間違いありません。

 しかし、そのことを放置すると一体どうなるか。余りにも同じような経歴の人間ばかりが集まってしまった、その結果として、日本の民主主義が弱くなるんじゃないか。それは、党とかあるいはその候補者とかそういう次元を超えて、日本の民主主義そのものが非常に同質的になって、狭くなって、脆弱になるんじゃないか、それこそが私はこの問題の本質だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 一番根源的なところだと思いますので、同様な、似たようなのばかり集めるとやはり会社もだめとよく言われるのと同じように、ちょっとまた具体的なことを言い過ぎると多々問題になりますのでこの程度でやめておきますが、そういった意味では、基本的に、同様な人ではなくて、いろいろな違った、思想信条はともかくとして、その他の部分に関してはいろいろな経歴の人を多く集めた方が、より柔軟性、より強さが出てくると思っております。それは、各党においてもそういった人を集める努力は大いにされるべきだと思いますし、余りにも似たようなのばかり集めないようにする努力というのはすごく大事なところだと、私も基本的な考え方に賛成であります。

岡田委員 そこで、総理お考えの、我が党のように公認そのものを同じ選挙区からは認めないという考え方に立つのか、あるいは、ちょっと先ほど総理が言われた、一定のルールで、公募して手続を経て、支部で、公募手続の中で決めればいいというふうにお考えなのか、どっちなんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは目下、それこそ党改革委員会か、あそこで検討している最中だと思います。これは岡田さん、選挙ですから、勝てそうな候補者をやはりどうしたって各選挙区では考えてくると思いますので、その意味では、優秀だけれどもたまたま世襲だからというのに当てはまるからというので立候補させない、その人が無所属で出る、片っ方の人が公認になったけれどもこっちが落ちちゃうというふうな形を考えるとき、やはり当選する確率の高い方にどうしても行こうとするのは、僕は、選挙をやりますと、どうしてもそういうことになってくるんだと思っております。

 したがいまして、どういったようなルールにするのがいいのかというのは目下検討中で、ちょっと今の段階でそれに細目詳しいわけではありません。

岡田委員 私も申し上げましたように、ですから、二世、三世候補というのは強い候補なんですね、基本的には。ですから、政党としては出したくなる、そういう誘惑は当然あります。我々もそういうふうに今までも考えてきました。しかし、そのことに甘えてしまうと、中長期的に見ると、やはり政党そのものにも問題が出てくる、ここが一番大事なところだと思うんです。

 そこで、麻生総理、先ほどルールの話をされましたが、実は自民党にはもうルールはあるんですね。例えば、二〇〇四年六月に、これは自民党ですけれども、党改革検証・推進委員会、当時の幹事長であった安倍さんが委員長をやられました。ここで決めたことは、空白区及び補欠選挙における候補者選考は公募を原則とする、そういうルールが既におありなんですけれども、そのことは御存じでしたか。そして、このルール以上に何かお考えなんですか。

麻生内閣総理大臣 幹事長代理のときじゃなかったですか、されたと思いますので。その当時何をしていましたか、総務大臣だったか、政調会長だったかしていたと記憶しますけれども、何回か御相談をさせていただいたので、その内容について細目詳しいわけではありませんけれども、公募というのはいい方法なんじゃないかと私の方が言ったと思うぐらい、広く集めて公募したらいいじゃないかという話はした記憶があります。その後、それがどれぐらい細目が詰まったかの内容まで正確に全部知っているわけではありませんけれども、事のいきさつを知っております。

 したがって、公募という方式というのは、公認の今現職の人ですら、こういった公募でやるというのは決して悪い方法ではない。現職優先というのではなくて、現職であろうとも公募して、もっとほかのいいのが出てくるという確率があるのであれば、その人たちが出る確率を与えないと、中選挙区と違って、小選挙区になりますと、なかなか新しい人が出にくくなるという問題があろうと思いますので、公募というのは、岡田さん、いい方法だ、私は基本的にそう思っております。

岡田委員 私は、いい方法かどうかを聞いたのではなくて、既に自民党にこういうルールがありますねということを確認したわけです。(麻生内閣総理大臣「はい、ございます」と呼ぶ)あるというふうに総理もおっしゃっておられるわけです。

 そこで、私は、個別のことに触れるのはいかがかと思うんですけれども、小泉総理の後継者の選び方について、二〇〇八年九月二十七日に、地元の後援会、横須賀の後援会で、次男をよろしくと。親ばかぶりを御容赦いただき、私が賜った御厚情を次男にもいただけますとありがたく存じます、こういうふうに言われたということであります。この後援会で突然、九月二十七日、小泉さんが次は出ないということは二十五日に大体明らかになったと思いますが、そのわずか二日後に地元の後援会でいわばみずからの次男を後継指名した。

 そのことと、先ほどの、原則公募で選ぶんだということとの関係はどうなっているんですか。

麻生内閣総理大臣 神奈川何区だっけ。横須賀ですけれども、神奈川十何区の経緯をちょっと、岡田先生、よく詳しく知りませんので何とも申し上げようがありませんが、少なくともその選び方に関しましては、神奈川十何区の自由民主党の支部で、後援会ではなくて神奈川十何区支部において、党支部大会なり党支部の幹事会なりを開いた上できちんと手続を踏まれるという手続が抜けているのかなという感じがいたします。

 いずれにしても、やめられた後、神奈川十何区では今現職が出ません、したがってその後の公募を募りますという形で開いて、その上で、十何区で支部大会を開かれるなり支部の幹事会でそれを決定されるという手続をされた方がより明確になったのではないかという感じがいたします。

岡田委員 こういう形で、非常に有力な議員が選挙直前になって、あのときはもう解散近しと言われていたわけですから、近くになって、実は自分は次は出ないんだと。突然そう言われても、では次、手を挙げるチャンスがあるかというと、時間的にもう事実上ない、だから、では親族に、こういうことになるというケースは幾つか自民党の中に見られるわけで、やはり私はこういうことをきちんと対処されていくべきではないかと。

 もちろんそれは政党の判断ですから私はこれ以上言うつもりはありませんけれども、少なくとも民主党は、みずから志があって、そして努力をして、そういう人が国会議員になりたいという思いの中で頑張れば国会議員になるチャンスがある政党である、これが私は民主党だというふうに考えております。自民党がこれからこの問題をどういうふうにお考えになるか、それはこれから麻生総理の、総裁のさばき方を注視していきたいというふうに考えております。

 もう一つ、この世襲の問題、お金の問題というのがあります。

 先ほどのは内規で私たちはやろうとしているんですけれども、これは、我々、内規ではなくて法律改正をしようというふうに考えています。政治資金規正法の改正。それは、国会議員に関係する政治団体が、その政治団体の代表者である国会議員が引退したり、あるいは亡くなった場合に、その代表者を、配偶者ないし三親等以内の親族にそのまま引き継ぐことは禁止をしよう、あるいは、配偶者、三親等内親族にその政治資金を贈与するということも禁止をしよう、こういう法案の提出を考えているわけですけれども、総理、賛成していただけませんか。

麻生内閣総理大臣 今伺った中なので詳細がちょっとわかりませんで、うかつなことは言えませんが、政治団体の代表者というものにある程度制限を加えるということになるんだと思います。

 これは前にも、たしか政調会長のころに議論したことがあるんだと思います。憲法二十条だったか二十一条だかの中に結社の自由というのがあるんだと思いますが、その結社の自由との関係において過度な制限にならないかというところが一番問題なんだと、当時法律の専門家の方から言われたなどと思っております。

 もう一点は、引き継ぐというのは仮になくても、新たな団体をそこに別につくって、別の政治団体ですよ、その新たな団体に対して寄附するということになると、実効性という意味からいったらなかなか上がらないんじゃないのかなというのが当時指摘された。

 たしかいろいろな御意見があのときいっぱい出たんですが、そういった検討すべき課題が多くあるなと、当時いろいろ話をした記憶があります。ちょっと正確な記憶ではありませんけれども、たしか今申し上げたような経緯があったと記憶をいたします。

 したがいまして、この問題に関しましては、いろいろな制限をかけるというのは正しいんであって、いろいろなところでそれが土地に化けちゃったとかマンションに化けちゃったとかいう話をよく聞いておられるのは、御自分の身を考えた上でしゃべっておられるのか、勇気ある発言だ、私自身はそう思って聞いておりますよ、まじめな話。すごく大事なところですから、これは。

 そういった意味では、私どもは、こういったところはすごくきちんとしておかないと、先ほど鈴木議員の質問になった不信を招くということになっていくということだと思いますので、きちんと対応すべき大事なところだと思っております。

岡田委員 この政治資金、いわば相続税、贈与税のかからない資金の移動ということに対して、私は、自民党の中にもさまざまな議論があるんだと思います。

 この予算委員会で、数年前でしたけれども、当選一回の議員だったと思いますけれども、そのことを取り上げられたことがございます。やはりスタートから違うんだ、資金力、そこだけで圧倒的に違うんだ、これは不公平じゃないかという議論をされた自民党の委員がおられました。私は、聞いていて、ああ、自民党の中にもやはりそういう意識があるんだなということを改めて感じました。

 この問題も含めてやはりしっかりと議論して国民の政治不信を取り除いていきたい、そういうふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 最後に、企業・団体献金の禁止の話について。

 これは、いろいろな議論があると思います。私も、企業・団体献金がすべて悪であるというふうには思っておりません。ただ、いろいろなものが紛れ込むということもリスクとしてあるわけで、そういうことも踏まえながら、実は、企業・団体献金を禁止していこうという流れは、既に一九九四年の、当時の細川総理と河野自民党総裁との間の合意でレールが引かれたわけですね。

 あのときに決めたことは、五年間の限定で資金管理団体に限り献金を認めますということを決めたわけです。五年たって、一九九九年に、政治資金規制法再改正をして、そして政治団体への献金を禁止するということで約束を果たされました。しかし、政党支部に対しては、これは献金が認められる、こういうことであります。

 私は、それは一つの考え方として、そういう考え方もあると思いますが、本来の政治献金、企業・団体献金を禁止するという趣旨からいえば、本当は、政党支部、実態は資金管理団体とどうやって線を引くのかという非常に難しいところもあるわけですから、私は、政党支部も含めて規制していくというのが大きな流れに沿った結論ではないか、こういうふうに思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは、基本的には、政治というものを考えました場合に、金がかかるというところだと思います。

 例えばはがき一枚にいたしましても、これを十万人に配れば、掛ける百円だ、百二十円だ、まあ八十円、いろいろな表現がありますけれども、印刷代を含めましたらとかいろいろなことになりますと、それだけですぐ数千万にいく可能性が高いわけですから、そういう面で、年に二回ぐらいの季節のあれをやったってそれぐらいかかるという話で、こう幾らでも話が出てきますので、そういったことを考えると、金がない人じゃなきゃ出られなくなるというのは、これはもっと問題なんだ、私はそう思っております。

 したがって、地元で、みんなで金を出してあの人を、アソウカツヤなりオカダタロウなりを出そうということになったときに、あれをみんなで応援してやろうやということになって集めるときに、僕は、企業としてもそれに関して賛成だ、ああいう人が出てくるのがいいということで考えるときには、労働組合含めて、これは、団体、企業というものは、政治活動の自由というものを考えたときに、やはりそれに参加できるというのは当然のことなんだ、私はそう思っております。これが大前提だと思っております。企業も団体も、民主主義のコストというものに関して、それを何らかの形で払うという意欲なり資格なりというものはきちんとしておくべきなんだと思っております。

 いずれにしても、長い間の議論を経てこの話はここまでずっといろいろ煮詰まってきて、これまで何回となく、私が当選してから後も何回となくこれは改正されたんだと思っておりますので、いろいろ、各党において、もしくは各会派においてこのルールを詰めていくんだと思いますが。

 いずれにしても、岡田先生、これは定められた、決まったルールというものができたら、要は、後はそれをきちんと守ってもらわぬとどうにもならぬのだと思うんですね。

 だから、やはりそういう意味では、守る守らないという話にならぬと一番いかぬのであって、何か起きるたびにいろいろルールを改正するというのが起きますが、あれはルールに違反しているからということになっておりますので、ルールに違反しないというのが大前提で考えないと、幾らやっても下に潜っていくだけの話になっていって妙な形にゆがんでいくのは、きちんとしておかねばならぬ大事なところかなと思っております。

岡田委員 ルールを守らなければならないのは当然であります。

 ただ、先ほど私申し上げましたように、細川政権、そして一九九九年の改正へと、大きな流れは企業・団体献金をやめる、そういう流れの中で累次の改正が行われてきた。にもかかわらず、現実はそうはなっていないということについて、私は、やはりここはぜひ胸襟を開いて、我々も法案を出しますから、ぜひ賛成をしていただきたい、そういうふうに考えております。

 さて、次に、経済の問題について基本的な認識の話をちょっと総理にお伺いしたいと思います。

 去年の十月三十日の総理の記者会見、追加経済対策を発表されました。そのときに、百年に一度の危機だという表現を総理は使われたと思います。より正確に言うと、現在の経済は百年に一度の暴風雨が吹き荒れている、こういうふうに言われたと思うんです。

 これは、私は実は大変違和感を感じた言葉なんですけれども、この百年に一度の危機、経済危機というのは、具体的に何をおっしゃったんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは、たしか一九〇七年に、J・ピアモント・モルガン、今でいうJPモルガンのもとですけれども、このJ・ピアモント・モルガンという人が、当時の信託銀行の貸し付けの失敗から、えらい取りつけ騒ぎが起きてぐちゃぐちゃになったのが、アメリカのあの時代にありました。当時は、まだFRBもできる前の話です。そこで、ピアモント・モルガンが多額の金を出して、いろいろ集めて、結果的に流動性資金が全く動かなくなりましたものですから、そういう危機を救ったのがJPモルガンのもとなんですが。

 そのピアモント・モルガンという人だけに頼っておくのはいかがなものかということで、たしかそれから五年、六年がたった一九一三年にFRBという、連邦準備銀行というのができた経緯。これが多分、一九二九年の始まる前、アメリカで起きた一番大きな騒ぎで、これが百年と、グリーンスパンという人が最初にこの百年に一度という言葉をアメリカで使った人だと思いますが、多分この人もピアモント・モルガンのこの事件をもとにして百年に一度と言ったんだ、私はそう思っております。

 私自身は、たまたま学校で習ったものですから、ああ、ちょうど百年たっているなという記憶がございます。

岡田委員 グリーンスパン元FRB議長が、百年に一回の危機だという表現を使った。グリーンスパンさんは、金融危機についてそういうふうに言ったと思うんですね。確かにアメリカの金融は、おっしゃるように百年に一回の危機だ、そう言っても決して大げさではなかったかもしれません。

 しかし、総理が発言されると、これは金融だけではなくて経済全体、しかも日本の経済が百年に一回の危機に今直面している、今現になっている、そういうふうに私は聞こえたと思うんですけれども、そういう意味も込めてお話しになったんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 九月の十五日のリーマン・ブラザーズに先立って、その他の、住宅金融公社みたいな、半分公社みたいなものが、フレディーマックだ、ファニーメイだというような会社が、いずれも倒産の危機になった。あの時代を経て九月のいわゆるリーマン・ブラザーズにつながっていくんですが、このときの話というのは、私どもにとりましては、金融というものに関しては、これはしんどくなるなと正直思いました。ただ、これほど深くなって、クライスラーが倒産するの、ゼネラル・モーターズがどこかに何とかなるのというようなことまで想像していたわけではありません。

 ただ、そういうところまでいきますと、我々としては結果として、そういう話が出るぞというお話が出ましたものですから、イコール、これは日本の輸出には物すごく大きく響いてくるな、そのときそう思いましたので、うちの方は、金融は九七年に一回手痛い目に遭っておりますので、各銀行の対応は極めて慎重に対応しておられましたので、今回のいわゆるサブプライムローンというものに余りひっかかることなく、今回はくぐり抜けた、欧米に比べて。

 ところが、実物経済の方は輸出の部分が非常に多かった。日本の場合は、GDPに占める比率は一五、六%だとは思いますけれども、それでも非常に大きな部分、自動車、それから家電、精密機械といったような、輸出産業に頼っている部分が多かった部分が、アメリカに輸出できない。アメリカへ輸出がとまったもんだから、中国からの輸出もできないので、中国にも輸出できないという関連、全部関連してきて、結果として日本に大きく響いてくるという可能性をこれほど大きいと思ったわけではありません。これほど大きいとは思っていませんでしたけれども、ああ、これは実物経済の方はしんどくなるなという感じは、正直ございました。

岡田委員 私は、百年に一度の危機という総理の発言に非常に違和感を感じました。大変深刻な状況であるということは間違いありません。しかし、百年に一度の危機というふうに言いっ放しで、一国のリーダーが言われる、これは、私は、国民に大きな不安を抱かせたというふうに思います。

 私は、一国のリーダーであれば、あのとき言うべきせりふは、私が百年に一回の危機にはしない、きちんとした対応を打つ、そういったことを発信すべきだったんではないかと。百年に一回の危機が来る、そして経済対策が言われましたが、実は一周おくれの経済対策。具体的な対策は、そのとき有効な対策は打ち出されなかった。私は、そのことが、国民全体の心理を非常に冷やしたのではないかと。危機に際してのリーダーとしての言葉としては、非常に軽率であった、軽かったというふうに私は考えております。

 次に、今の経済の状況について、今、総理は先取りして言われましたけれども、十―十二月期のGDPの成長ですね。実質マイナス三・二%ということですけれども、その中で、ほとんどが外需であると。内需のマイナスは、実は〇・一。寄与度もマイナスの〇・一。だから、マイナス三・二のほとんどは外需によるものである。マイナスの三・一とか三・〇とかということですね。つまり、十―十二月、がくんと落ち込んだほとんどは、輸出と輸入、外需によって説明されるということであります。

 その認識は、数字の問題ですから共有されていると思いますけれども、では、先ほど総理もおっしゃった、二〇〇七年で輸出の依存度、つまり輸出の実質GDPに占める割合は一五・六%です。しかし、二〇〇一年、小泉政権が始まったころの輸出依存度、つまり輸出の実質GDP比率は一〇・二。ずっと一〇%くらいで来ているわけです、日本は。ところが、この二〇〇一年から二〇〇七年までの六年間で、一〇・二が一五・六にふえた、こういうことだと思うんですね。

 ですから、私、二〇〇五年の総選挙のときのことを思い出すんですけれども、小泉総理は、改革の結果として経済成長をしているんだ、こういうふうに強調されたわけですね。もう一つ言われて、その改革の成果というのは、やがて国民にひとしく均てんされるということも言われたわけですけれども、とにかく、改革の結果、成長している。

 しかし、今振り返ってみれば、当時も私たちは主張したわけですけれども、今振り返って、より明らかになったことは、実は輸出がふえていただけだと。だから、日本経済の構造改革、体質転換というものは、この小泉・安倍時代にほとんど進まなかったと言うべきではないか、単に輸出がふえて潤っていただけじゃないか、こういうふうに私は思うんですが、総理の御認識、いかがですか。

麻生内閣総理大臣 少なくとも、二〇〇一年から小泉内閣が終わるまでの間、約七年だろうと思いますが、岡田さん、あのころの日本というのは、何となく閉塞感みたいなものが漂っていて、その大きな理由として不良資産やら何やらのものがありましたので、これを一掃する、不良債権処理の一掃というようなものに関しては、あの改革というのは極めて大きな効果を有したんだ、私自身はそう思っております。

 その上で、今言われましたように、この六年、七年で見ますと、いわゆる内需のかなり大きな要素を占めます公共事業というものは、国内で見ますと、一番多かった十四兆五千億から、七兆を切りましたので六兆円台まで、七兆円ぐらいまで下がってきております。その意味では、内需というものを、経済、財政再建、いろいろな理由もありましたでしょうが、公共事業は悪というようなイメージも当時かなり吹聴された時代でもあって、公共事業は大幅に減り、特に地方の、投資の部分でも三十二兆が十五、六兆まで下がったと思いますので、地方の公共事業が大幅に減っていったというのはこれは間違いない事実だと思います。その意味からいきますと、内需の中に占めます官公需要は大幅に減ったというのは事実だと思います。

 傍ら、今言われましたように、輸出はその間、自動車、家電というのは、省エネというのが結構いろいろ言われるような時代にもなりましたし、アメリカやら何やらに限らずヨーロッパでも、多くの自動車会社が海外に出ていったりして、そういった部分からいきますと、輸出はかなりな部分でそれを補ったことは事実だと思います。

 したがいまして、今言われましたように、国内の改革に寄与したところもある程度認めていただかないと、丸々それが意味がなかったということにはならないのではないかと思います。

岡田委員 私は、小泉改革そのものを丸ごと否定していることはありません。

 私がいつも言っておりますのは、小泉改革は二つ評価できる点がある。それは今総理もおっしゃったことなんですけれども、一つは不良債権の処理を比較的迅速に進めた、これは大変だったと思います。そしてもう一つは、公共事業、需要喚起策としての公共事業という手段をとらなかった、むしろ減らしてきた。この二つは私は評価できる点だと思います。

 その上で、しかし、改革の結果景気が回復したというけれども、実質的には、それは円安、あるいは金利安を背景に円安があって、その円安に基づいて輸出がふえていっただけではないか。本当の意味での日本産業の構造転換というのはまだ手がついていない。それをきちんとやっていくことが我々の責任である。そのことを確認しておきたいと思います。

 時間も限られておりますので、地球温暖化の問題についてお聞きしたいと思います。

 総理も御存じのように、今、二〇二〇年の温室効果ガスの削減目標、いわゆる中期目標について、政府の方で六つの案をお示しになって、最終的に六月中に一つにすると総理がおっしゃっているわけですけれども、今議論されているところであります。

 私は、この六つの案を見ておりまして、例えば経済界の一部がプラス四%案、これは一九九〇年比ですね、ということを言っておられます。これは私は、具体的な中期目標の数字としてはあり得ない数字だろうというふうに考えるわけです。つまり、京都議定書で定めた数字はマイナス六%であります。それが逆に九〇年からふえてしまう、数字は。二〇二〇年にやるということでありますと、結局、一たん減ってまたふえるということになるわけですね。

 ですから、私は、こういったプラスの数字、あるいはプラス・マイナス・ゼロに近いような提案というのは案にならないんだというふうに思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 この温室効果ガスという話なんですが、これは今、御存じのように、六つの案を示して、目下、パブリックコメントにかけております。いろいろな御意見をたくさんいただいておるというように理解をしております。

 私どもは基本的に、今の一から六までの間のどこになるかということを考えるときに、前回の京都の最大の失敗は、アメリカとか中国とかいういわゆる排出大国というか、そういった排出の量の多い国々がこれに参加していなくて、世界の約三割、三割五分程度しかこれに参加し得ないものになったというのが最大の失敗。アメリカの参加しない国際連盟がだめになったのと同じような形になった、私にはそう思えます。

 私は、今回の中期目標は、これは間違いなく、地球温暖化というものに対抗することにきちんと貢献するというのが一番。そして、アメリカ、中国、最近ではインド、ロシアなどいろいろありましょうけれども、すべての主要排出国、主要経済国が参加するような国際的な枠組みにしなけりゃならぬ、これが二つ目。そして、単なる、これだけといっても、現実がついていかないような数字を掲げても、ほかの国が入ってこないとか現実にできないということになるのを避けたいと思いますので、経済面でもこれは実行可能でないといかぬ。

 今度のパブリックコメントをかけましても、いわゆる御家庭の方々から個別のものも随分来ていますが、その中を見てみると、うちの家庭にかかるコストはどれくらい上がるんですかという御質問というのは結構多いと思っております。そういった意味では、国民生活全般にわたってきちんとしたものを、説得力を持たなきゃいかぬなどなど、いろいろなことを考えて最終的に決めにゃいかぬと思っておりますので、現時点でこれをどうというのを今の段階で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、六月ぐらいまでには私どもとしてきちんとしたものをお示ししたいものだと考えております。

岡田委員 六つの案それぞれ、その案を採用した場合にどういう負担がかかるかということも述べられております。国民に当然負担がかかる話、私はそのことをしっかり述べるということは大事だと思います。

 しかし、私は、あの六つの案、例えば一番厳しい案はマイナス二五%、これは民主党が国会に法案として出しているものと同じ数字なんですけれども……(麻生内閣総理大臣「六番」と呼ぶ)はい、六番ですね、マイナス二五%、一九九〇年比。これなどを見ていて感じるのは、大きな負担がかかるということは書いてあるんですけれども、しかし、これは日本だけではどうしようもない問題ではありますけれども、では温暖化対策を講じなかったときにどういうマイナスが人類全体にとってあるのかということについて、しっかり述べていないし、カウントもしていないわけですね。例えば、水位が上がる、気候が不安定になる、水の問題、食料の問題、さまざまな問題があるからこそ温暖化問題に真剣に取り組まなきゃいけないということになっているわけですけれども、そういうことが結局カウントされていない。

 あるいは、総理御自身もグリーン・ニューディールということを言われているわけです。こういう需要不足の時代にあっては、温暖化対策をとることでそこに雇用も発生するし、新たな産業も発生する、そういうことのメリットもきちんと入っていない。そして、マイナスだけ強調する。これは私は一種の世論誘導だと思うんですね。だから、そういうことも含めてきちんと説明して、その上でどれがいいかということを求めるべきだと思いますが、いかがですか。

麻生内閣総理大臣 この中期目標検討委員会というところでは、世界全体で排出削減が、仮に今岡田さん言われたように実施されない場合には、洪水による被害というようなものが起きたり温暖化による影響というものの被害コストが増大するといった側面については同時に分析を行っているところなんですが、その分析結果も示しつつ国民の意見を伺っている、あのパブコメを見ていただくと結構出ていると思うんですが。影響被害というものは極めて、今言われたように長期的な課題でもありますので、被害コストを全部網羅して詳細というのはちょっとなかなか困難なんですが、いずれにしても、日本については、これは個々の選択というものに応じた被害コストを出すということもちょっとなかなか個別にやるのは、百年ぐらいの話を計算しなきゃならぬというので結構難しいところがあろうと思います。

 いずれにしても、洪水による被害とかそういったいろいろな問題が起きてくるという点は、我々が言っているのと同時に、いろいろな雑誌や新聞等々でこの種の話は既に十分意識をされてきつつある問題なんだ、私自身はそう思っております。

岡田委員 総理、やはりここは、過去の失敗というものをきちんと反省をして、その反省に基づいて次のことを考えるべきだというふうに思うんですね。

 反省というのは、要するに、二〇〇七年度の日本のこの排出量というのは九%増ですね。ですから、六%減らさなきゃいけないときに九%もふえちゃっているんです。もう京都議定書の期間に入っているわけですよ。だから、この経済危機の中で一時的にはその排出量は落ちるかもしれませんけれども、しかし、本来減らさなきゃいけないのがむしろふえちゃっている。この十年間、一体何をしてきたのかと。

 例えば、石炭火力発電所はどんどんふえました。それは、原子力が落ちて稼働率が上がっているという部分もありますけれども、しかし、量的にもふえているんです。電力会社からすれば、あるいは民間の企業からいえば、石炭は安いし安定的です、地域的に偏在していませんから。だから、ほっておいたらどんどんふえるのは当たり前です。しかし、そこにやはり地球温暖化という視点を持って、政府が何らかの歯どめをかけなきゃいけなかった。それを放置していた結果としてどんどんふえてしまった。

 ですから、そこのところをしっかりと踏まえて、これから、科学の要請に基づいてこれだけは必要だという数字はあるわけですから、その数字と整合性のある目標をつくっていただきたい、選んでいただきたい。そのことを申し上げておきたいと思います。

 限られた時間ですが、核の問題について、先ほども議論が出ておりましたが、少し申し上げたいと思います。

 総理は、オバマ大統領のプラハでの演説について、これまでのアメリカ大統領の演説で最も印象的で極めて重要だというふうに答弁されました。一国のリーダーとしてそういう認識を持っていただいたことは、私、大変うれしく思っております。

 ただ、この核の問題について、では日本はどうするのかという問題があります。もちろん総理は、国連の中で決議を毎年毎年やってきた、それはそのとおりです。しかし、例えば、アメリカが核の先制使用も辞さずとブッシュ政権の時代は言っていました。今もそれを明確には否定していないと思いますけれども、そういったことに対して日本政府は、私はむしろ核の先制使用はやめるべきだと言うべきだと考えますけれども、今までの国会での外務大臣の答弁などを見ておりましても、いや、核の先制使用を否定すると核の抑止が弱くなるから、それは望ましくないという答弁もされています。

 ここのところはどうなんでしょうか。核をなくしていくんだ、減らしていくんだという基本的考え方に立てば、やはり核の先制使用は少なくともやめる、そういった考え方を世界の中で共通の考え方として持つ、その先頭に日本は立つべきじゃありませんか。

麻生内閣総理大臣 これは基本的にはおっしゃるとおりなんですが、現実の今、国際社会の中においては、いまだに核戦力というのを含む大規模な軍事力というものが存在しているという大前提をちょっとまず忘れず、我々は直視せにゃいかぬところだと思っております。

 その上で、核兵器だけを他の兵器と切り離して取り扱おうとしてもこれはちょっと現実的ではありませんので、抑止のバランスを崩すことになりかねませんので、一国の安全保障を考えたときにおいては、これは結構大事なところだと思っております。

 もう一点は、当事国の意図、考え方というものに関しては、これは岡田さん、何の保証もない先制不使用というのは、これは検証の方策が全然ありませんから、言うだけ。うちも先制不使用ですとみんな言うだけで、その方策がありませんので、先制不使用という言葉だけに頼るというのは、安全保障上はこれは十分を期するということにはならないということになろうと思います。

 これを持っておりますのは、アメリカ以外の国、NPT等々に参加していない国というのは幾つかあるので、こういったものも含めて考えにゃいかぬというところが最も難しいところだと思いますが、基本的な流れとしてはそのとおりだと存じます。

岡田委員 もう終わりますけれども、やはり核兵器というのは特別だからこそ、オバマ大統領もプラハでわざわざ演説をし、そして世界も議論しているわけです。

 例えば、ほかの大量破壊兵器、生物化学兵器については、禁止をするということはもう確立しているわけです。残された核兵器について、少なくとも先制使用は認めない、あるいは、核を持っていない国に対して核兵器を使用することは即違法である、そういう規範をきちんと確立する。日本がリーダーとしてその先頭に立つ。そのぐらいのことがなければ、単にアメリカの大統領がオバマ大統領にかわって、核軍縮あるいは核不拡散に熱心な大統領が出てきたからそれに対して調子を合わせているだけではないかというふうに見られかねない。

 やはり、核の傘にあるといっても、今申し上げたようなことはきちんとできることだというふうに私は申し上げておきたいと思います。

 また引き続き議論したいと思います。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて岡田克也君の質疑は終了いたしました。

 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 フラッシュの数も全然違いますけれども、質問時間も半分でございますけれども、内容はずっと濃い、ずっと濃いなんと言うと失礼かもしれませんが、質問させていただきます。久しぶりの予算委員会でございます。

 皆さんに資料をお配りしておりますので、まず資料を見ていただきたいと思います。

 日本社会のあり方がいろいろ問われているんだろうと思いますけれども、政治資金の制度とかいうのもそうなんですが、金属疲労、制度疲労を起こしているんじゃないかと思います。それで、そういうことの鏡がいろいろなところにあらわれてきていると思います。

 まず一ページ、ごらんいただきたいと思います。今の麻生内閣の閣僚の出身高校。大学はいろいろあって偏っているので、もうこんなの言ったって始まらないので。なぜかというと、やはりその人の人生観、価値観というのは、普通の場合は中学とか高校のころにでき上がるんじゃないかと私は思います。そのときにどういうところで過ごしたかというのを、結構時間がかかっているんです、よく見ていただきたいんですが。これを見ますと、二世、三世というのは、いろいろあるので余り言いません。どこにある高校を卒業されたかというと、東京なり東京近県が七名とか十一名で、非常に多いんですね。下の解説も見ていただきたいんです。文教族というのは余計な話ですけれども、お友達内閣とか言われているので、一応やりました。

 それで次、麻生総理の岳父というか義理のお父さんである鈴木善幸内閣、それから、おじいさんである吉田茂内閣をちょっと見比べていただきたいんです。

 まず鈴木善幸内閣、二十一名のうち東京近県とかいうのはたった四名でした。二世、三世は三名。ただ、ここがおもしろいんです。このときの閣僚の方の御子息で国会議員になっている方が十一名もおられるんです。石破二朗さんと中曽根康弘さんは御子息が今閣僚入りしている。中山太郎さんは今も延々とやっておられる。多分これは悪いことじゃないと思います。

 次に吉田茂内閣を見ていただきたいんです。私はこれを見るとほれぼれするんですが、いろいろ昔の本に書かれているせいかもしれませんけれども、何というんですか、非常に重厚な布陣だと思います。それから、気骨のある人たちの集まりじゃないかと。まずは吉田茂さんですけれども、これは言うまでもないです。石橋湛山、小日本主義を唱えて戦争に反対された。和田博雄さん、農林水産省の局長ですよ。企画院グループ事件というので捕まったりしています。それから、反軍演説をされた斎藤隆夫さん。それで、この人たちの東京近県云々というのは、ちょっとこれは間違いがあるかもしれません。吉田茂さんは、何か、耕余義塾という聞いたことのないところに行っていられるんですね、私塾で全寮制の。そして世襲はこれだけ、一名。

 それで、一ページの一番上を見ていただきたい。これは、興味があるのなら後でゆっくりごらんいただきたいと思います。どういうふうになってきているかというと、見てください、東京近県が二名、四名、七名とだんだんふえている。世襲の方が一名、三名、十一名とふえている。やはりこれは問題じゃないかと私は思うんですよ。

 先ほど総理が、この表を見ていただいたせいで言われたのかどうか知りませんけれども、余り偏った人材ばかりでやっているとその会社はよくない、会社というか、それはよくないんじゃないか、いろいろな人が入っていた方がいいんじゃないかと。基本的な価値観において非常に似た人ばかりが集まっているというのはよくないという気がするんですけれども、この点についていかがでしょうか。

麻生内閣総理大臣 基本的価値観はやはり一緒にしておいていただかぬといかぬところだと思うんです。

 これは、いろいろ調査されておもしろいなと思って見たんですが、吉田茂のこの耕余何とかというのは、これは学校に当時は余り行かなくてよかった時代だったらしくて、これは本人が言っていましたので、行きたくなかったから行かなかったと。だから、大学を出たのは二十七、八で出ていましょう。吉田茂はたしか東京大学を出ているんですけれども、あのころは別に入学試験があったわけじゃなくて、高等学校を出ておくと大体大学に入れたという時代だったそうですから、おれでも入れた、これは本人が言っていましたので間違いないと思っております。

 それで、この時代は、先生、もう一つは、これは敗戦直後のことでもありますので、このころはほとんど、いわゆる、かなり復員しておられたりいろいろな方々のおられた時代ですから、ちょっと正直この時代のは、多く日本じゅうに散っていたという時代でもありましたでしょうし、私はそれが直ちに今みたいになるとは思いませんけれども、いずれにしても、形としては、多く学校やら何やらは地方からというのは、非常に大きな、要素としてはすごく大事だと思っております。

 ちなみに、岩手県出身でも小石川高校出身ですから、おたくは。おたくはなんて言っちゃいかぬね、おたくの党首は。ですから、小石川高校ということは東京。鳩山先生も同じくたしか東京、今はたしか北海道だと思いますが。

 だから、そういったので、高校がここだから国会議員に出るべきじゃないとか、高校がここだから大臣にしてはいかぬとかいうような話にまた飛躍していくというのは、ちょっと私はするべき話とは思いませんが、やはり基本的には、地方とか海外とかいうのを若いときに経験しておくというのは、篠原さん、僕はこれはすごく大事な経験だ、私自身はそう思っておりますので、今この話を見て、大学以外に高校まで調べておられたので、私は、いろいろな方、今私の内閣の方々の出身校を見てへえと思った方もおられますので、参考になりましたけれども、ぜひ人を広く地方やら何やらから集めるべきだという御意見は正しいと思います。

篠原委員 私は、東京で生まれ育ったからだめだとかいうけちなことを言うつもりもありませんし、世襲だからだめだということを言うつもりもありませんけれども、現象として、非常に一握りの人たちのグループばかりになっちゃっている。政界が一つなんです。

 この次にぎょっとするのがあります。名誉に関することなので、ちょっと某省というのにしておきました。四ページを見てください。四ページの、一九八三年の、私の知る限りですけれども、1種事務官の出身高校・大学の偏り、これを見てください。

 栄光学園、幾ら栄光を背負っているとはいえ、これは五人ですよ、四分の一。下に解説を書きました。忘れちゃいましたけれども、これは間違っていたら恐縮なんですが、千葉係長、埼玉課長、神奈川部長とか言われたことがありますね。その神奈川部長のできのいい息子さんたちがこういう中高一貫校に行って、名門大学に行って、そして中央官庁に来ると。

 見てください、私立、国立の中高一貫校が十五人、七五%。中高一貫校というのは日本では特殊で、中学では五%未満です。これは異様だと思うんです。まともなんて言っちゃいけない、普通のです、普通の公立高校を出て、田舎でぼうっと育って、ぼうっとなんて育っていない、一生懸命勉強したかと思う、松江北高のこの方以外はちょっと違うお育ちの方なんですね。これじゃ、私は、一つの省庁にこれだけの人たちばかりが固まっていたのではワンパターンの発想しか出てこないと思うんですね。

 甘利行政改革担当大臣、公務員制度改革について非常にいろいろ悩んでおられると思いますけれども、甘利さんは厚木高校という普通の高校ですよね。それで、こういう人についてどう思われるんでしょうか。これはもう僕は根本から直していかなくちゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 厚木高校は、普通の高校というか、県下の名門校だと思っております。

 田舎でぼうっと育った人、余りぼうっとした人が入ってもらっても困るのでありますが、公務員制度改革は、いろいろな才能の人を見出して公務員に採用し育てていこうという改革ですから、いわゆる1種、2種、3種をやめて、総合職、一般職、専門職、それも1種、2種、3種の看板のかけかえじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、能力の特性を示して、それでいろいろな学校の人に応募してもらう。それから、幹部候補育成課程というのがありますから、そこに、我こそはと思う人は手を挙げて、そしてその上司がそういう能力を育てるにふさわしいと思えば育成課程に入りますから、そこでさらに能力を磨いていく。

 ですから、今度の公務員制度改革、今、国会に提案をさせていただいております仕組みは、現在よりもより多様な能力を持った人を育てていく、あるいは多様な能力をはぐくんでいく、あるいはそれを見出していく評価制度にしていくということで、先生の御懸念にはこたえていくことができるのではないかと思っております。

篠原委員 もう具体的なことをやっていかないと私はだめだと思うんです。禁止するというんじゃなくて、きのうかおととい、舛添厚生労働大臣が、医者に地方に勤務するインセンティブを与えるんだと、これはいい考え方だと思いますよ。

 ですから、例えば公務員試験、たとえ成績が悪くてちょっと変わっていても、九州で生まれて育って、それで九州の高校に行って、九州大学に行ったと。九州大学の卒業生から十人は合格させる、その中から各省二年に一回ぐらい採用するとか、そういうポジティブなことをしたらいいんだろうと思います。八幡高校がそこのところに入って、舛添さんは頑張って東大に行かれたりしていますから、そこからでもはい上がってこられるんでしょうけれども、そうじゃない人を採用するということをやったらいいと思います。

 そういう点では、農林水産省はさすがですよ。私のいた役所だからさすがと言うわけじゃない。行政は大したことしていないんですけれども、人事制度についてはちゃんとしたことをしているんですよ。

 何かというと、二年目の秋に一カ月、お金を払って農山漁村派遣研修というのをやっているんです。ばかなやつは、一カ月はバイト料をもらわなくちゃいけないなどと言うが、ありがた迷惑なんです、農家や漁家にすれば。しかし、行っているんです。それから、三年目、四年目、全部じゃないんですけれども、市町村、ど田舎の、ど田舎なんて言ったら失礼ですけれども、例えば私の木島平村に、女性のキャリア官僚がことしの四月から行きました。そういうのが何人かいるんです。要するに、地方の感覚を肌で感じてこいというんです。これは非常にいいことだと思うんです。

 もう一つぜひいいことをやっていただきたいんですが、それだったら、農林水産省の採用は、全国区七人、地方区七人、北海道一名、東北一名、九州一名来い、その中から採用するというような形で最初から採用すればいいと思うんですが、いろいろ改革、闘う農林水産大臣の石破さん、いかがでしょうか。

石破国務大臣 行政は大したことないと言われると、何となく悲しい思いがしないわけではありません。

 何せ北海道から九州、沖縄まで広いのでありまして、現地の感覚というものがよくわかった人を採用するというのは大事なことだというふうには思っておりますが、クオータ制みたいに、どこで何人、どこで何人というふうにかちっと決めてしまうのはいかがなものだろうか。

 採用のときに、本当に農業が好きで、東京出身の人でも農業が大好きな人はたくさんいます。とにかく本当に農業が好きで、子供のころ農村にも行ってと。例えば、きょう土屋委員がいらっしゃいますけれども、武蔵野市では、子供たちに必ず田植えや稲刈りをやらせる。東京に育っても農を愛する人はいますので、大事なのは、本当に農業に対して愛情があって、愛着があって、どれだけ農業を一生懸命やろうかな、農政を一生懸命やろうかな、それを基準に採りたい。そこは、委員のおっしゃることとオーバーラップするところがたくさんあるだろうと思っております。

篠原委員 素直にうんと言っていただければいいんですけれども、石破さんは何かと議論がお好きですから。

 それじゃ、六ページを見てください。医療関係の地域間格差、これをちょっと見ていただきたいんです。

 一番上の人口十万人当たりの医師数、よく見てください。これで上位の、いっぱいいるのは京都、徳島とあるんです。東京はいっぱい大学があるから当然ですけれども、なぜ京都、徳島、鳥取が上位五位に入っているかわかりますね。京都には京都大学と京都府立医大があるんです。徳島は人口が少ないのに百人の定員のがある。鳥取も同じなんです。要するに、大学を置くことなんですよ。下位五都道府県というのは人口急増地帯で病院が追いつかないわけですね。ということなんですよ。

 そういうところから考えると、医師不足なんというのも解決策があると思うんですよ。どういうことかというと、そこの田舎に住んでいたりすれば、石破さんがちょっとおっしゃいましたけれども、住んで六年もいて、何年もいたりしたら、徳島にいてもいい、鳥取にいてもいいと。だから、鳥取は得しているんですよ。そういうふうに思うんです。だから、そこに大学を移せばいい。東京大学医学部は何も東京にある必要はないんですよ。長野県の陸の孤島で、医者がいなくて困っている栄村というところにどんとつくったっていいんですよ。それに全部で幾らかかるかといったら、新設医学部は三百億円でできるんだそうですよ。十四兆の補正予算で何個できるんですか。一つぐらいそういうところをつくったっていいような気がするんですけれども。

 こういうことについて、文部科学大臣と厚生労働大臣の御見解を伺いたいと思います。今から補正予算をさらに修正して出してもらってもいいんですけれども。

塩谷国務大臣 いろいろ大変興味深い資料をありがとうございます。

 大学医学部についてですが、一応現在は、無医大県解消ということで、各県に医大が存在しているわけでございます。特に、現在では、入学者の地域枠を設定したり、あるいは、教育プログラムの充実ということで地域医療を担う意欲や使命を養ったりということで努力をしているわけでございますが、必ずしも、いわゆる大学があるからそこへ定着するということがなかなか現実問題としてなされていない。これは大学全般のことにも言えるわけでございまして、首都圏の大学とそれ以外の大学を比べても、国公立においては六十数%が地方ですから、そういうことで、必ずしも大学だけでそこにい続けるかということはまた別問題としても、具体的には今後検討するべき課題だと考えております。

篠原委員 では、厚生労働大臣に答えていただく前に、今ちょうどいい答弁をいただきましたので。

 今やはりだめとおっしゃったのは、確かにそうなんですね。今、東京の受験というのを見ていると、医学部は別格で、東京の中高一貫校の人たちが信州大学の医学部とか弘前大学の医学部へ行っているんです。その人たちは、やはり高校まで都会で育ったりしているから、田舎の方に合わなくてまた東京に戻ってきちゃうんです。それだったら田舎でということで、さっき枠を設けるのは問題だと石破さんはおっしゃいましたけれども、信州大学医学部の定員は、長野県でちゃんとやる人を一〇%、十人とるとかやっているんです。そういうことを医学部だけじゃなくてやったらいいんですよ。

 そういう点では、我が県には若月俊一さんという農村医学の大家がおられたんです。佐久総合病院、私のところには北信総合病院という厚生連の病院があります。そういったところ、アメリカのまねを結構しますけれども、メディカルスクールはまねしていないんですね。ロースクールはまねしてがたがたですけれども。メディカルスクール、大学四年卒業した人たちが、それから技術として医術を学んで、そして長野県の無医村で働きたいと。まさに意欲ですよ。

 こういう医専のようなダブルトラックの制度をつくってもいいと思うんですが、パワーあふれる厚生労働大臣、隣の方に言ってすぐ実現してください。いかがでしょう。

舛添国務大臣 日本の医療、とりわけ地域医療を再構築する、どうするか。さまざまな施策があって、十八歳で大学に入学したときから、今度卒業後の研修もあります。ですから、この前言いましたように、それぞれの県が奨学金を出すようなインセンティブを与えて、地域枠を設けてやっていく。

 それとともに、もう一つは地域研修。田舎で勉強して東京に出てくる、それで、年ごろですから、そこで東京の女性と結婚する、東京に定着しちゃうというケースもあるので、やはり総合的にやらないといけないので、文科大臣とともに研修制度の見直しもやっています。

 そして、定員は、ことし六百九十三人ふやしました。

 やはりそういう総合的な政策をやるので、クオータというよりむしろインセンティブをさまざまな形で与えた方がいいかなというふうに思っていますので、今改革中ということを申し上げておきたいと思います。

篠原委員 それから、今の六ページの表のもう一つ下、ここが、時間がなくなりましたけれども、ちょっと長引いてもいいですね。ちょっと質問させていただきます。

衛藤委員長 時間は厳守をお願いします。

篠原委員 はい。

 一人当たりの老人医療費を見てください。済みませんね、長野の自慢話ばかりして。これは五年前もやったことがあるんですけれども、医療費が七十一万六千円と一番少ないんですよ。それで、一番高いのはどこか。よく見てください、福岡県です。厚生労働大臣の地元、総理大臣の地元。選挙区は、鳩山さんも選挙区です。

 何かこれをよく見ていると、総理の失言をあげつらうのは僕は嫌いなんですけれども、経済財政諮問会議で、何もしないでたらふく飲んで食べている福岡県人の金を何でまじめにしている長野県人の私が払うんだみたいな感じになるんです。

 この差は一体何だと思われますか。大分違うんです。厚生労働大臣、いかがでしょう。

舛添国務大臣 私も、長野の現地視察もしております。

 一つは、やはり保健師さん、この人たちが予防を一生懸命やってくださる。保健師の数が多いんです。高齢者の就業率が長野は高い。ひとり暮らしの高齢者が少なくて、また、みんな地域、家族で見てくれる。それから、何といっても、入院している日にちが少ないんです。

 それで、では逆に、福岡は全部それが逆かというと、そうでもなくて、逆相関じゃなくて、今の長野と逆は、例えば保健師の数は福岡県は全体で四十位です。これは少ない。これはそのとおりなんです。それから、平均在院日数が九位なんですね。長野は一番少ない。だから、福岡県人は病院にずっといるということ。なぜそこにいるのか、どうなのか。

 私は、一つヒントは、産炭地でありましたので、その後遺症かなと思いましたけれども、老人医療費には、例えば生活保護の人は入っていません。だから、これは麻生総理も私もよく研究をさせていただいて、我々の地元がなぜそうであるのか、今後研究したいと思っております。

篠原委員 時間がなくなりましたので、最後にこれだけ言わせていただきます。

 下を見てください。今ちらっとおっしゃいました。いろいろなものが備わっているというんですけれども、一番の結論は下に書いてある。全員が長野県人とした場合どうかというと、千三百二十二万人いて、三十六万差があるんですよ。五兆円の差なんです。それで、もっとあるんですよ。全医療費、これは若い人が多い埼玉とか神奈川が一番低くなっちゃうんですが、長野県は九位、上から九番目で、福岡県は三十七位なんですよ。それだと二十兆円の差になるんですよ。

 一つの原因として、長野県人の、さっきちらっと舛添さんはおっしゃったんです。六十五歳以上の就業率が断トツトップなんですよ、まじめに働いているということなんですよ。では、何で働いているかというと、農業なんです。農業をちゃんとやれるようにバックアップしてやると、五兆円、二十兆円。

 そして、次のところを見てください。七ページ。農業者戸別所得補償というのは、ですから私は政界に入ってからずっと言い続けている。党首はくるくるかわりますけれども、この政策は全く変わっていません。ずっと言い続けている。そして、とうとう自民党も採用してくれているというのは、これはいいことですから、こういう政策をどんどんやっていっていただきたいと思います。大連立とかなんとかといいますけれども、政策のいいものは、お互いに切磋琢磨してやっていけばいいんです。

 それからもう一つ、大連立とかいうけちなことも考えなくていいんです。共和党とか民主党は常に政権交代していますが、オバマ大統領は共和党から閣僚も選んでいますよ。民主党のうるさい馬淵国土交通大臣とか長妻厚生労働大臣とかにしてもいいんならいいだろう、そういう大胆な発想で政策を展開していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて篠原孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。二十分いただきまして、議論させていただきます。

 総理、昨年十二月の一日というのは、私にとりましてはとても感慨深い日でありました。と申しますのも、明治二十九年来、この日本をある意味で規定してきた民法三十四条というのが削除されました。

 何が変わったか。今、天下りの問題とか議論されていますけれども、結局、この民法三十四条こそがこの天下りを規定してきた法律だと言えていたんですね。結局、主務官庁はという名のもとで、自分たちに都合のいい公益法人はどんどんつくり出せるという仕組みをこの民法三十四条が規定してきたわけですね。国家公益独占主義と私は呼んでおりますが、その根拠法が削除されたのが去年の十二月一日だったんです。そして、とてもいいことだ、いよいよ日本も変わるな、私はこういう思いでおりました。そして、新公益法人制度がスタートしたんです。

 ところが、過去の旧弊を改めなければならないこの新公益法人制度が、きょう議論したいのは、どうやらまた同じことを繰り返す、もとのもくあみというようなことになってしまうんじゃないか、そういうおそれがある、そういう思いできょうは具体的に議論をさせていただきたいと思っております。

 まず、総理、公益法人というのは、これは官の組織なんでしょうか、民の組織なんでしょうか。これは財務大臣、舛添大臣にもお聞きしたいと思います。官なんでしょうか、民なんでしょうか。一言でお願いします。

麻生内閣総理大臣 基本的には民の組織なんだと思っています。多分、官と民の間でいう公という組織、パブリックセクターだと思います。

市村委員 本当は財務大臣にも舛添大臣にもお聞きしたかったんですが、民だと。そう、民なんです。なぜなら、もともと民法三十四条に規定されていたわけですから。ところが、官の組織に堕していたということから、行政改革特別委員会で議論をし、新公益法人制度ができているんですね。

 さて、ではその新公益法人制度で、例えば新しい第三者委員会をつくって、そこで公益性の判断をするというふうになりました。これも一つのアイデアと思いましたし、いいと思います。これはこれでまだ問題はありますが、きょうの議題じゃありません。

 そこで、新しく公益認定等委員会をつくりました、そこで当然公益とは何ぞやというところからしっかりと議論されるだろう、そして今日における公益とは何だということがしっかり議論された上で、新時代にふさわしい公益法人が誕生するんだろうなという期待を持っておったわけでありますが、ところが、生まれてくるもの、生まれてきたもの、後でやりますけれども、何でこういうものが生まれてくるのかというのが生まれてくるんですね。

 そこで、また総理にお聞きしたいんですが、いわゆる天下りというものがあります。政府の見解では天下りは、例えばいわゆる押しつけ的なあっせんによるものだということだと思っていますが、我々民主党はそうは思っていません。やはり元官僚だった方が自分と関係あるところに行くのはいかがなものかというところの天下りでございますが、その意味で、新しい公益法人制度においてこの天下りというのは是正されたんでしょうか。つまり、天下りというものを擁する団体は公益性があるかどうかということで議論されなくちゃいけないと僕は思いますが、そういう議論はされておるんでしょうか。総理、それをちょっとお答えいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 公務員出身者がいるということやら国家からの支出があるというようなことは、これは法令で定められた公益認定基準というものにはたしか含まれていないんじゃないんですかね、私の記憶ですけれども。

 それで、新公益法人制度という新しい制度ができていますけれども、主務官庁によって、例えば文部省なら文部省によって設立の許認可とかまた指導監督、そういったようなものなどは廃止ということにするなど、公益法人の認定に関してはいわゆる旧主務官庁の関与というものが排除されているというのが基本なんだ、私はそう思っています。これによって、公益法人の設立、監督に関するいわゆる許認可というような、対象法人への許認可があるがゆえに対象法人に再就職するという構図はなくなっているということになります、権限がないんだから。

 また、各省とそれから公益法人の関係については、我々としては、これはよく言われておりますように、随意契約というものを徹底して見直す、いわゆるできるだけ競争入札。それから、公益法人に対する無駄な支出は削減する、廃絶する、当然のことだと思いますが。そしてまた、官民人材交流センターというものに一元化するなど行ってきたところでして、いわゆる公益法人に対する支出をチェックして無駄を排除する仕組みとか、また公務員の退職した人の管理というものに関する新たな仕組みというものも既に整備されているところだと思っております。

 これが、各省庁と新制度によってできた公益法人とのいわゆる公務員の押しつけとかそれから恣意的な関係というものがなくなる、法律的には形はありませんので、そういったことになります。この認定の基準というものを考えるという場合は、今関係が基本的にありませんので、特に考えているわけではないというのがお答えなんだと存じます。

市村委員 総理、この制度というのは、まさに日本をこれから救う大切な制度だと僕は思っているんです。

 というのも、結局、官僚、官の世界、いわゆる役所の世界と民間の営利企業の世界だけでやってきたことが今、日本の社会の仕組みとして問題なんです。きょう資料も渡していますが、そこには、今、公ということもおっしゃっていただきましたけれども、民間の公というのはあるんですね。それを担うのがNPOであって、その一つの形態が公益法人なんです。だから、そういう社会をつくっていかないと、これからの日本が大変元気になることはできないと私は思っております。

 例えば、介護のサービスは民間に任せるということに小泉政権のときになりましたけれども、結局どうなりましたか。株式会社に任せてどうなりましたか。破綻したじゃないですか。

 郵政民営化を見直すと総理はおっしゃっていますけれども、郵政民営化だって、民営化は私も賛成ですけれども、株式会社にしなくていいんですよ。NPOでいいんですよ。要するに、民間の公を担う存在としてのところで郵政事業をどう考えていくかという議論をしていれば、もっと深みのあった議論ができていたんですね。結局、民営化というのはイコール株式会社だというから、株式会社は当然株主のためにやらなくちゃいけないに決まっているわけですね。だからおかしくなるんですよ。

 ということは、やはり民間の公というもののセクターをどうつくっていくかというのが、これからの日本の帰趨にかかわると私は思っています。その意味で、この公益法人改革というのは非常に重要な改革であると私は思っているんですね。

 そこで、具体的に言いたいんですが、今度、公益社団法人という制度があります。この公益社団法人というものは、そのもの自体が本当は矛盾しているんですね。きょうの議題じゃありませんが、総理お得意の英語で言うと、社団はアソシエーションです。アソシエーションというのは、すべからく共益なんです、共益団体です。だから、公益社団というのは本来あり得ないんです、カテゴリーとしては。しかし、きょうはその議論はしません。

 あり得ないんだけれども、その公益社団法人というカテゴリーがありますが、この第一号認定になった団体が、全国老人福祉施設協議会というところが第一号認定になっているんです。

 私は、初めてこういう組織があることを知りました。というのも、第一号認定だから、どういうところが第一号認定になったんですかということを聞いたら、ここなんですね。しかも、もともと社団法人だから、社団法人ということはもともと公益法人ですから、では、ここにおけるさまざまな詳しい資料、例えば、かつての社団法人のときの役員報酬は幾らだったか出してほしいと。公益法人は当たり前なんです。

 そこで、舛添大臣、この公益法人はもともと厚生労働省の許可の法人でありましたが、私は、厚生労働省の方に細かい資料を出してほしいと。出せないと言うんですね。公益法人ですよ。そのときも説明したんですが、ここに、アメリカのいわゆるNPO、公益法人の毎年提出しなくちゃいけない書類があります。この肝は何かというと、必ず役員報酬を書くんですね。その役員の氏名、住所、それから役職、そして報酬、これを全部明らかにしなくちゃいけないんです。いや、逆に、明らかにするからこそ、税金がまかるような寄附優遇も与えましょうというのがお約束なんですね。

 公益法人はすべからくこういう存在なんです。当然、役員の報酬はプライバシーじゃないんです、そもそも公益法人自体が公の機関ですから。その公の機関の役員は公なんです。その人の報酬は当然公にされなくちゃいけないんです。だからこそ寄附優遇があるんですよ。

 舛添大臣、何で資料を出してくれないんですか。一言でお答えください。

舛添国務大臣 これは、ルールをそう決めるしかないんです。今は、旧社団法人ですから、監督官庁は厚生労働省になります。指導監督をするんですけれども、定款とか役員報酬規程、これまでは確認しなさいと。しかし、個々の役員が幾ら幾ら月に報酬をもらっているかということを確認しろということの規定がない。だから、確認しろということの規定をつくればそれはできます。

 ただ、今おっしゃったように、役員報酬規程がありますから、それで単純に割り出しますと、最高でもらう人は年額約七百七十六万円という数字ははじき出せます。

 以上です。

市村委員 規定をつくる以前の問題として、常識として、公益法人というのは公の存在だということが認識されていないのが問題だと私は思います。

 そこで、与謝野大臣、きのう国税庁の方と、この団体について、いわゆる公益社団法人に認められる団体について議論している中で、国税庁の方は、これは共益団体とおっしゃっていたんですね。けれども、これは公益団体に認められているんです。しかも、これは昔で言う特増ですね。つまり、寄附優遇をもらう存在なんです。

 共益法人が公益に認められるというのは、私は後でゆっくりとまた本当は議論したいんですけれども、与謝野大臣はどう思われますか。共益と国税庁も言っているものが公益に認められているんですけれども、どう思われますでしょうか。

与謝野国務大臣 一般論として申し上げれば、特定公益増進法人に寄附した者は、一定の減税となります。ただし、お尋ねの減税の程度については、寄附をした者の所得の状況等により異なることから、一概に申し上げることはできない。と同時に、もう一つはっきりさせておかなければならないのは、公益法人で公益上の業務をやっていることが、すなわち減税の必要十分条件ではないということでございます。

市村委員 多分大臣がお読みになったのは、また別の質問のところでのお話だったような気がします。ちょっと、多分、事前に言っていなかったことを今お聞きしたので、そういう話になったのだと思いますが。

 いずれにしても、これは実は共益性が高い法人なんです。ただ、これもちゃんと議論すれば公益法人と認めるべきだと私は思っています、基本的には。ただ、議論が足りないんですよ。何のために第三者機関の公益認定等委員会というのをわざわざ設けたのか。当然、公益性はどこにあるのかということを今日的な意味でちゃんと議論した上で、公益性判断をしてくれるという期待があるから。期待があるわけですよ、それを完璧に裏切ってくれているんですね。

 これは第一号ですよ。第一号認定ということは、これはひな形なんです。モデルなんです。これを見て、これが認められるんだったらうちも大丈夫だになるんですよ。

 ということは、かつての、旧制度を何のために改めたのかという疑問になるわけですよ。何のために改めたんですか。総理大臣、教えてください。何のために公益法人制度を改めたんですか。もとのもくあみですよ、このまま、こんなことをよく議論しないまま認めていくんだったら。

麻生内閣総理大臣 今回の公益法人制度改革というのは、基本としては、いわゆる官と民の間、民による公益の増進、これが基本というのはもう御存じのとおりなので、これを目指すことを目的とした抜本的な改革というように私は理解しておりますので、何のためかといえば、いわゆる官と民との間にある公という概念というものをきちんとして、それで民によっていわゆる公益の増進ということが基本なんだと理解しております。

市村委員 だから、まさにそうであってほしいというから公益法人制度改革をやったのに、かつ、やはり官の組織に堕してしまった旧公益法人を、新公益法人においては本来の意味でのNPOに、民間の公を担う組織にしようということでやったはずなのに、よく議論もせずに結局認めてしまっているということはいかがなものかということを思います。

 かつ、私は本当に、やはり旧公益法人というのは、ある意味で、官僚も利用していましたけれども、政治家も利用した。いろいろな意味で、KSD問題だったかな、要するに、政治家が旧公益法人を悪用して、資金のしり抜けに使ったということもありますね。だから、そういうことも改めていかないといかぬということだったと私は思っています。

 最後に申し上げますが、私もこの第一号認定された組織についてよく知りませんでした。しかし、いろいろ調べていくと、会長さんが今、現職の国会議員であり、かつ政務官をされているんですね。これは、何かお手盛りに聞こえるんですよ。

 結局、政治家が関与して、政務官が関与した組織が第一号認定、しかも共益に近い組織がよくも議論をせずに公益に認められる、しかも寄附優遇まで入る、これはおかしいと私は思いますよ。

 だから、これはまた改めてやりますが、本当に日本を救う制度ですから、ぜひともこれがしっかりなるように、総理大臣、これは最後の認定権者は総理大臣ですから、ぜひとも総理がしっかりと指導していただきたいと思いますので、それを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは端的に、生存権の重要な要素であり、生活を営む上で基本的な要件である住まいと社会的弱者に関連して、何点か総理にただします。

 政府の経済危機対策では、今回の経済危機が非正規労働者等の社会的弱者にしわ寄せされる形であらわれていると述べています。政府が言うところの社会的弱者たる非正規労働者は、職を失えば住まいを失うという事態に直面しました。若い人ばかりではありません。お年寄りも低所得者を中心に、行き場がない、住まいがないという大問題が生じています。

 総理は、ハウジングプアという言葉、概念を御存じでありましょうか。

麻生内閣総理大臣 知っているかという単純な御質問。知っています。

穀田委員 これは新しい言葉でありまして、私は、こういう事態がどこまで広がっているのか、そして何ゆえにこのような言葉が生まれたのかということについて分析し、対処するのが今の国民の住まいの状況からして極めて大切だと考えています。先ほど述べた政府の経済危機対策の中で触れていますが、私はその前提条件があると思うんです。

 昨年の経済危機以前から、政府の社会経済政策、経済構造のゆがみによって、国民の生活はこれまでと違う深刻な状況に置かれていたというのがあるんだと思うんです。実は御承知かと思うんです、大企業は昨年までは好景気を謳歌して、史上最高の空前の大もうけをしてまいりました。一方、中小企業や労働者、そして多くの国民にはその恩恵は回りませんでした。貧困と格差が拡大していた。働けど暮らしは楽にならないワーキングプア、年収二百万円以下の方々が一千万人を超えるまでになっていたわけであります。

 そこに今回の経済危機が襲いかかった。非正規、派遣切りが横行し、職を失った途端に住居も失うなど、先ほど述べたハウジングプアという言葉も使われるようになったわけであります。まさに生存権が奪われるという事態が一層進行したのが今日の現状ではないかと考えます。

 したがって、今政治に必要なのは、生存権を脅かされている事態を解消する対策が求められているのではないかと考えますが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

麻生内閣総理大臣 基本的には、今、国民の生活の基本ともいうべき住居、住まいというものに関して、これを確保するというのは、その質も問われることながら、今なくなってしまうというような形は、これは重要な課題なんだと十分に私自身も認識をいたしております。

 したがって、今回、従来になく急激に起きたこともありますが、また、企業もこれだけ一斉に世界じゅう同時に不況というのを過去六十何年間やったこともありませんので、企業側もかなり焦ったことも事実として皆さん認めておられます。いずれにしても、少なくとも企業は、自社のコストの削減のために、いわゆる非正規労働者と言われる、雇いとかいろいろな表現がありますが、そういった非正規労働者に対して極めて厳しい態度。

 従来は、昔から派遣元というのがそういうのをきちんと受けてやっていたものだったんです。炭鉱会社は、皆、派遣元から派遣されてきた人がいっぱいおりましたから、我々はよくそういった世界を知っている方だと思いますが、そういうところは、派遣元がきちんと次の仕事までずっと面倒を見ていたものだったんです。

 今回は、その派遣元が基盤として極めて弱かったということもあって、派遣元も極めてそこらのところは対応としてはということだったと思いますので、昨年末から雇用促進住宅ということで、これは舛添厚生労働大臣のところで公営住宅をいわゆる提供させていただいて、今、取り壊すことになっていた、住宅公団が持っておりましたものを貸し付けたり、また住宅資金というものの貸し付けを急にやらせていただき、そして今回の補正予算におきましても、いわゆる再就職というのができるようにするために、緊急人材育成・就職支援基金、これは仮称ですけれども、こういったものをつくって、少なくとも、七千億円の金を積んで、今の時代なかなか、新しい仕事につくに当たっても職業訓練をある程度しておかないとできない、しかもその職業訓練にはある程度時間がかかりますので、その間の経費もというようなところまでは一応してあるというように、それなりの努力はしておるというように御理解をいただければ幸いであります。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 それは、現実を余り見ていない。私は、施策のいろいろなものを述べても、どこが責任を持っているのかということについて言っても、それでは行き場がないという現実を見ているとは思えないんですね。だから、そういう認識がないからこそ、結局、一年限りのばらまきになってきたりするというのが現実だと思うんです。

 生存権というのは、御承知のとおり、すべて国民は健康で文化的な生活を営む権利を有する、政府はそれを保障する義務があります。ことしの正月の派遣村の取り組みで、生存権を脅かす事態があるというのを多くの方々が認識しました。

 それだけじゃないんですね。住まいに関連して、もう一つ痛ましい象徴的な出来事が、例の、三月に起こった老人施設「たまゆら」の火災でありました。亡くなられた十名の方々に改めて私は哀悼の意を表したいと思うんですが、劣悪な施設で、都内に施設がないからといって他県に生活保護受給者を住まわせていた、これが実態です。

 そこで、厚生労働省に確認するが、「たまゆら」のような無届け施設であったり、民間の賃貸住宅など、法的位置づけのない施設、共同住宅などに生活保護受給者がどれだけいるのかということについて述べていただきたい。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘の社会福祉各法に位置づけのない施設あるいは共同住宅に入居している生活保護者についてでございますけれども、本年一月一日現在の状況でございますが、全国的な実態把握を行いましたところ、中間的に集計した時点では、一万四千二百六十八名でございます。

穀田委員 法的位置づけがないということは、中には劣悪な施設もあると考えられる、それは当然であります。そこに一万四千人以上の方々がいる。

 これは述べられなかったんですけれども、報道によりますと、それぞれの県内では入れないから他の、都道府県外の施設に余儀なくされている方がおられる。これは、数字でいいますと六百十七名、うち東京が五百十七名という現実があります。

 先日、NHKで「追跡!AtoZ 無届け老人ホームの闇」というのが放映されました。そこでは、低所得で介護が必要な高齢者たちを集め、生活保護費や介護保険報酬をねらう貧困ビジネスが拡大していることを報じていました。都内の高齢者の受け皿が不足する中、行き場のない人を劣悪な環境に置いて金銭を搾取しているのだ、こう述べていました。一部屋に七人がタコつぼ状態、食費は一日三百円程度、生活保護費は、入所費や食費だとして全額施設側が管理し、受給者にはほとんど渡らない。取材した記者に入所者が、ここは地獄ですよと痛切な叫びを上げていました。

 住まいがない、行き場がない、そういう方々への行政の対応が不十分なところで、低所得者を食い物にする、いわゆる貧困ビジネスがばっこしている、こういう事態を放置していいのか。そういう点での政治の責任をどう考えるか。端的に総理にお答えいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今御指摘のあった、これは特に大都市部によく言われるところなんです。低所得者で、かつ高齢者が多いんですが、住まいが十分ではないということで、無届けの施設など、今「たまゆら」の例がありました、あれはたしか群馬県だったと記憶しますが、こういったことを余儀なくされているという指摘は私も承知をいたしております。

 こうしたいわゆる基本的な話、住まいというような話になりますと、極めて重要な問題だとも認識をいたしておりますので、先ほど局長の方から申しておりましたが、今回の補正予算におきましても、介護基盤の緊急整備などのための基金というものを二千五百億設けて、介護施設の整備というものを促進するという必要性を考えております。

 加えて、今国会で審議をお願いいたしておりますが、高齢者居住安定確保法に基づいて、住宅行政と福祉行政というものを連携させて、公営住宅の建てかえに合わせた、いわゆるデイサービスセンターの整備などの促進を図りたいとも考えているところでして、いろいろな意味で、これは厚生労働行政だけでなかなかうまくいかないところ、地方行政とあわせていろいろ考えていかなきゃならぬと思っておりますが、いずれにいたしましても、低所得の高齢者の住まいの確保というものは非常に大きな問題だと思っております。

穀田委員 大きな問題だという認識はいいと思うんです。

 しかし、全国でいいますと、例えば特別養護老人ホームの待機者は三十八万人今いるわけですよ。地方自治体が手を挙げてやると言わなければできないんですよ。そういう現実がある。そういう中で、つまり、そういう行き場がない生活保護受給者や低所得者というのは、結果として無届け施設へ行くしかないという現実があるということなんですね。

 だから、貧困ビジネスということでいいますと、住まいに関連して言えば、単にそういう問題だけじゃなくて、ゼロゼロ物件だとか追い出し屋もあるわけですね。それは御承知かと。追い出し屋は、民間賃貸住宅の入居者が収入の道を断たれて家賃の支払いがおくれたりすると、もう追い出しにかかる。無断で家のかぎを交換したり、法外な違約金を請求したりするということで、賃貸業者だとか管理業者だとか、さらには家賃保証会社の一部に違法な悪質行為がふえているわけですね。こういう貧困ビジネスがはびこる背景が問題だと私は思うんです。

 そこで、今お話あって、先ほど住宅と福祉と言っていましたが、それは一定の改善はされるけれども、では、肝心の低所得者の高齢者はそこに入れるのか。入れないんですよ。政府の特別養護老人ホームの整備が抑制されてきた、そして療養病床廃止で行き場を失っている現実があるんですね。それは社会保障費抑制が原因なんです。

 公営住宅はどうか。それは、政府は新規の供給を抑制してきました。低所得者層がどんどんふえるのに入居ができない。さらには、入居要件を厳しくして入り口を狭くするものだから、結局、追い出したりしてきたじゃないか。こういう方々は一体どこへ行けというのか。人ごとじゃないんですよ。

 要するに、公が打つべき手を打っていないところに貧困ビジネスがはびこるわけです。総理は、そういう意味で、今述べた、例えば特別養護老人ホームを初めとした施設をつくる上での社会保障抑制政策、さらには新規供給を抑制してきた公営住宅に関する施策、そういう抑制政策を反省していますか。

麻生内閣総理大臣 これは二千二百億円の話に多分直結してくる話じゃなくて……(穀田委員「この間の」と呼ぶ)この間の。

 全体として、今言われるように、低所得の高齢者が急激にこういった形になっていった背景というのは、多分景気の悪化が一番だとは思いますけれども、いずれにしても、今、少子高齢化が進んでいく中にあって、今言われたような問題を、先ほどの一番最初の鈴木恒夫先生の話とも重なりますけれども、きちんとした対応というものを考えていくというのは、今までとは全然違ったジャンルで出てきたのかなという感じは前からありましたので、そういった意味では、この対応は急がせなければならないと思っております。

穀田委員 こちらは行き場がないと言っているわけですね。こういう人たちをどうするのか。そういう対策がないというところが今度の中身なんですよ。私は、今回の補正予算というのは、社会保障の切り捨て、抑制路線はそのままだ、今回の経済対策、今述べた貧困の拡大に対する対策や低所得者に対する支援が欠如しているということを言いたいと思うんです。

 うちの笠井議員が言いましたけれども、一メートル八千万円もかかるような東京外郭環状道路、高速道路のために、研究開発費だとか、さらに自動車産業、そして電機産業を支援する、エコカーやエコ家電に対しては大盤振る舞いする。だけれども、これは三月九日に日本経団連が要請した中身をそのままやっているという現実なんですね。

 ところが、私は思うんです。この間の「AtoZ」を見て、最後にどう言ったか。それは、「無届け老人ホームの闇」で、こんな国にいつからなったんでしょうねと言っているんですよ。私は、きょうのテーマが今後の日本社会についてだけれども、今日のこういう社会保障抑制路線がどれほど重大な事態を多くの方々にもたらしているかということを深く胸に刻む必要がある、そういう現実をしっかり見て、そういう方々をなくすということ、人間らしく生きることのできる、そういうことがきょうのテーマだと思うんです。

 私は、その意味で、ハウジングプアなどという言葉が死語になる、そういう当たり前の社会をつくるために決意を申し上げて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 私にいただきました時間が十分でありますので、今後の日本社会、ワンポイントでやらせていただきます。

 私は、今後の日本というか、むしろこれからの日本という国の形は、先ほど篠原委員もお取り上げになりましたが、例えば関東圏への過度の集中、東京や神奈川、千葉、埼玉等々に人口が集中し、一方で地方に過疎化が起こっている、これをもう一度日本全体で、住みやすく暮らしやすく、そして分権化していくということがポイントだと思います。

 その場合に一番肝になるのは、命の安全保障、すなわち、そこに子供が生まれ、育ち、やがて老い、亡くなっていくということを支える医療が根幹に必要であろうと思います。そういう点において、きょうは、鳩山総務大臣を中心に御質疑をお願いいたします。

 この間、日本病院団体協議会というところの調査では、いわゆる病院関係の経常収支というか、赤字、黒字を調査いたしましたところ、普通の病院、民間病院も含めた全体では赤字病院が七割であるが、自治体病院だけだとアンケート調査では何と九割に及ぶと。

 すなわち、赤字という状態を抱えて、存続できるか否か、極めて現状が厳しいということで、総務省でも公立病院改革ガイドライン等々なさっておられますが、まず、総務大臣には、現状でこの地域の命のとりでである公立病院等々が厳しい状況に追い込まれていることの背景、原因についてはどうお考えかということをお願いします。

鳩山国務大臣 日本の社会とか文明はしっとりとしたウエットな共同体社会だというのが特徴だ、それに対して昨今の政治、行政が、ややかさかさ、ドライに走っていたのではないか、そういう反省の中で、公立病院の問題等は人の命にかかわることでございますから真剣に取り組まなくてはいけないと思っておりますが、やはり、原因ということであれば、それは医師不足の深刻化と診療報酬のマイナス改定が大きかったと思いますし、職員数等はもっと削減する必要があった、そういうことがあると思います。

 でも、何よりも考えなくてはいけないのは、不採算部門でも、その地域の唯一の病院あるいはその地域の公立病院としての信用ということを考えれば、不採算であってもやらなければいけないということの結果、赤字のところがふえた、しかし、これは、かんぽの宿が赤字かどうかという議論と同じように、これは赤字といってもやむを得ずこうなっているという要素は考えなくてはいけない、こう思います。

阿部(知)委員 今の大臣の答弁は、これからの日本社会のために、そこに人が生きるというのは基本的生存権ですので、とても重要な御答弁をいただいたと思います。

 私の方で分析いたしますと、まず、自治体病院も含めて、病院会計が厳しくなってきたところには、二〇〇〇年に入ってから、例えば、御高齢者の一割負担、サラリーマンの三割負担等、患者さんにとって負担増になりましたから病院の受診機会が減る、それから大臣がおっしゃった診療報酬減、そして研修医制度。あわせて、お手元にございます二枚目でありますが、これは、地方交付税という形で、病院に対して、病院が行います各種の建てかえ等の病院事業関係地方交付税も、ごらんになっていただければわかりますように、〇〇年度からどんどんどんどん下がるわ下がるわ、特に〇三年からは大変な額に下がっております。そしてまた、一床当たり、一ベッド当たりの交付税額も下がる。

 診療報酬も引き下げられる。患者さんの来られる数も少なくなる。医師はいなくなる。プラス、交付税は減る。これだけ四重苦になれば、病院も本当にそれで運営していけるのかということであります。

 特に、一ページ目に戻していただきますと、では、日本全体の病院の中ではたかだか一割ですが、数においては一割の公立病院が担う機能を見ていただきますと、例えば小児救急医療の拠点病院あるいは基幹災害医療センター、それから今問題になっておりますインフルエンザ等の感染症の感染症指定医療機関等、見ていただければわかりますように、非常に重要な役割を公立病院は一貫して担ってきた。そこに四重苦が押しかけたということでございます。

 今、総務大臣は、二ページ目に戻りますと、確かに、例えば今年度の交付税措置におきましては、これまでの、政策的誤りだと私は思いますが、これを取り戻すべく、例えば病院事業関係地方交付税についても増額でございますし、自治体関係の一床一床のベッド当たりの交付税も増額されておりますが、これは、一年では済みません。一年あってまた消えてしまうようでは存続できませんから、ここをもっと来年度以降についても、大臣として、さらに先ほどの診療報酬も戻さなきゃいけないと私は思いますが、せめてここの点について堅持していただくという点についてはどうでしょう。

鳩山国務大臣 このグラフは非常にわかりやすいわけで、ことしになって急にはね上がっているわけでございまして、これは、もともと、病院債を発行した元利償還、これが減ってきたので減っちゃったという部分があるんでしょうけれども、本当は、元利償還が減ったなら、他の部分で地方交付税措置をして、公立病院がもっと豊かにやっていくようにすべきだったんですが、これをどんどん下げてきた。だから、これがかさかさした政治だと。

 これは、麻生政治というのは、このはね上がっている、単価もはね上がっているわけですが、これが麻生政治でございますから、選挙後も麻生政治を続けると、これはもうページからはみ出すぐらい上がるだろう、こう思います。

阿部(知)委員 私ども野党が政権をとらせていただいたとしても、やはり温かで思いやりある社会をつくりたいと思いますので、これ以上の、先ほどの診療報酬もきちんと手当ていたしますし、必要なことはやっていきたいと思います。

 そこで、ちょっと財務大臣にお伺いいたします。これは予告外ですけれども、この前の委員会で聞かせていただきましたが、官庁営繕費というのは何だと私が伺って、財務省の方から御説明に来てくださいました。資料の三ページをお開きいただきたいと思います。官庁営繕費は、各種官庁をグリーン化する、太陽光パネルを上に載せたり、断熱効果を高めようということだそうであります。そうしたことに百五十億、耐震化に五十億、締めて、合わせて二百億の補正が組まれておりました。

 私は、これの説明を伺いましたけれども、一体これで百五十億かかるのかと聞いたら、いや、これから公募するんだということでありました。すなわち、今、二百億という予算は、つかみ金と言っては恐縮ですが、既にある、ここの太陽光パネル設置、これでも二十二カ所くらいだと思います、建てかえが四カ所。これですぐさま、本当に、経済危機対策の効果はどうなんだと私はきのう伺いました。何度説明を受けてもぴんとこないというか、私ならこうするぞということがありますので、ちょっと、今の公立病院改革というか、公立病院への援助としてお考えいただきたいんです。

 私は、こういう官庁に、例えば気仙沼地方合同庁舎、いいかもしれません、太陽光パネルを載せていただいて。それから、気仙沼ばかり言ってはいけませんので、長野の大町地方合同庁舎もいいかもしれません。でも、私だったらまず病院に載せます。理由は、病院は、例えば三百床の病院であれば、一月に電気代が三百万くらいかかります。そして、夏になれば六百万かかります。多くの人が利用します。恐らく、この官庁よりも多くの人が利用され、そして国民に見えて、病院の運営が目に見えて楽になります。

 私がここでつかみ金だと言うのは、やはり一番国民が、痛い、かゆい、苦しい、きつい、そして命を支えてほしいと。御病気のときは、おわかりでしょう、苦しいんです。エアコン一つ、大事なんです。窓もとても、それは効率がいい方がいいんです。なぜそうやって国民の一番、本当に身にしみるところから対策をなさらないのか。

 麻生総理に伺います。

 私は、官庁がグリーン化して悪いことはないと思います。しかし、まず国民から見て、官庁営繕費、官庁が太陽光を載せる、いいことですけれども、もっと身近に、さっき言った、病院が運営が苦しい、ここで今、命の拠点を大事にしてくれとお願いしているわけです。そうした観点から、こうした対象を見直す、いかがでしょうか。

衛藤委員長 まず、財務大臣、先にお答えしてください。

与謝野国務大臣 庁舎に太陽光を設置するというのは、それ自体、低炭素社会をつくるということと、もう一つは、太陽光パネルの需要を発生することによって、間接的に雇用を発生するという意味でございます。

 それから、国立病院や公立病院を含めたところももう少しきちんとやれと。先生の仰せのとおりだと私は思いますが、実際は、例えば病院の耐震化については、今般の補正予算については、災害時の医療を担う災害拠点病院等の耐震化の一層の推進を含め、都道府県に基金を設置することとしたほか、国立病院における耐震化の推進のため総額一千七百億円の予算を計上したところでございます。

 それから、病院のグリーン化についても、平成二十一年度の当初予算について補助の対象にしておりまして、バランスをとって病院関係にもきちんとやったつもりでございますが、阿部先生の御主張であれば、今後、こういう方面はさらに一生懸命やらせていただきたいと思っております。

麻生内閣総理大臣 今の、病院のグリーン化、太陽光の話でしたけれども、今与謝野大臣からお話がありましたが、これも二十一年度の予算で、たしか九十九億だったか百億だったかをこれに積ませていただいておりますので、今、そういったことも配慮しながらやらせていただかなければならぬと思っております。

阿部(知)委員 国民に優しい政治、思いやりのある政治ということを求めて、私どもも頑張っていきます。

 ありがとうございます。

衛藤委員長 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、総理に質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 財政の健全化という観点から、きょうは社会保障の姿についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、財政運営、こういうものに責任を持つということは、もちろんこれは政治の使命でございます。ただ、目下の最大の課題というのは、毎年一兆円前後自然増が見込まれる社会保障関係予算、これをどう取り扱っていくかということではないかなというふうに思うわけです。

 麻生総理は、一月の施政方針演説の中で、中福祉を目指すならば中負担が必要だということを述べていらっしゃいます。総理が描く中福祉の姿、つまり、政権の想定する社会保障の具体的なイメージ、施策の内容、費用規模、こういうものを立法府、もちろん国民全体が共有して認識するということがあって初めて、目指すべき社会保障の姿というものが何となくわかってきて、そして議論をスタートできるのではないかなというふうに思っているわけです。

 そこで、まず、総理の定義されている中福祉というのはどのような姿を想定されているのか。そして、中福祉を目指す場合、我が国の社会保障というのは、現在よりもよくなるのか、悪くなるのか。そもそも、今のこの現状認識というのは、どのように総理が持っていらっしゃるのか、とらえていらっしゃるのか。御見解を賜りたいと思います。

麻生内閣総理大臣 日本の社会保障自体を言わせていただければ、これはよく言われます、高福祉・高負担と言われております北欧、北ヨーロッパに比べて、日本の場合は給付とかまた負担の水準は高くない。他方、国民をカバーするような医療制度を持っておりませんアメリカに対して、皆保険とか、また皆年金とか介護保険とか、いろいろなものができております日本というのは、これはアメリカに比べては明らかにレベルは高い。そういった意味では、私ども、その間をとって、高負担・高福祉、低負担・低福祉の間ぐらいだと思って、中福祉・中負担ということを申し上げた、そもそものスタートであります。

 しかし、今の現状を見ますと、現実問題として、これをつくり上げましたころに比べて少子高齢化が進んだ結果、負担する人の方の数が減って負担される側の方がふえてくる、高齢者と勤労者の人口比が、一対八ぐらいだったものが一対三ぐらいまでになってくる、さらに進んで一対二・幾つなんということになってくると、これはいよいよもたなくなってくる。加えて、そこに介護人が不足した、医者が不足した、地域間格差が出たというような、中福祉というにしてはちょっとほころびが出てきているというのがこの数年間、反省をして、現実問題を見た場合、そうなってきているのではないかという大前提。

 その上で、では、それに見合うようなものをやるためにはどうするかといった場合は、今、五%というのを消費税で言っているのは、中福祉・低負担、そういうことになっておりますので、やはりこれを中負担をお願いすることが必要なのではないか。

 そこで、昨年末に策定した中期プログラムの中で、社会保障というものの安定財源については消費税を財源として確保する、また、安定財源の確保というものと並行して、社会保障の機能の強化というのを図るのは当然ですが、効率化も進めるということとしておりまして、今、工程表としてお示ししたところでもあります。

 こうしたことがきちんとでき上がりますと、持続可能で堅固な中福祉・中負担というような社会保障制度というものが基本としてでき上がるのではないか、そういったものを構築していきたいと考えております。

糸川委員 では、総理、今、消費税で正直、目的税化していくということを暗に言われたと思うんですが、そうすると、その中負担というのは、今よりも負担はふえるよということの認識でよろしいんでしょうか。中福祉を求めるんだったら中負担になるということは、当然、それは今の水準よりももう少し負担は増すんだ、これは消費税という観点から増すんだということの認識でよろしいんでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これをお願いするに当たっては、消費税というような、広く薄くというような間接税というものをいただくに当たっては、これは景気というものと非常に敏感、密接につながっております。

 したがって、きちんとした景気対策をやって、ある程度景気というものが戻ってきたという感じになった上でないと、さらなる不況ということに拍車がかかって、結果として日本経済全体がしんどいことになるというのではまたもとに戻るということになりますので、我々としては、きちんとしたものができた上で、何%いただけるかは別にいたしまして、消費税からいただいたものを足りないと言われております社会保障費関係に充てるということを基本として考えておるということでございます。

糸川委員 きのうも与謝野大臣に質問させていただいたんですけれども、この問題ではなくて、景気回復という観点で。景気回復をしたら消費税なんだということで、では、景気回復の指標は何なんですかという質問をさせていただいたんですが、同じ質問の中で、総理、消費税をお願いしていくんだとおっしゃるならば、その景気回復というのは、三年後に、二〇一一年に例えば景気回復していればとか、全治三年だというようなこともおっしゃられておりましたから、そういう中で、景気回復というのはどの時点を、例えば景気が悪くなった昨年の秋ぐらいの水準に戻ったらということなのか、それよりももっとよくなったときというんでしょうか。

 これは、与謝野大臣ではなくて、ぜひ総理にお答えいただきたいと思うんですね。きのう与謝野大臣には質問しておりますので、総理に、どういう景気の指標、GDPとかそういうことといっても、その目標値というのはどこにあるのか、お示しいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 これは、糸川先生、例えばGDP名目成長率何%とか、例えば鉱工業生産指数が何%上がったから景気がいいという話になるかというと、景気という気の部分というのは、かなり気分によって影響いたします。財布に二万円あったら、二万円しかないと思うか、二万円もあると思うか、同じ二万円でも全くそのときの気分で違いますので、そういった意味では、今、どの数字をもっていつからというのは、これはなかなか言いがたいところだと思っておりますので、いろいろな指標を見た上で、その上で最終的には政治判断が必要になってくるだろうと思っております。

糸川委員 だからこそ、例えば景気というのを政府が判断するのはもちろんそうなのかもしれませんけれども、今、格差が広がっている、低所得者もどんどんふえてきているという中で、一部の人たちは景気がよくなったという実感があったとしても、なかなか低所得者の方々、ワーキングプアと言われている人たちからすると、景気の回復というのを実感できるところにいつなるのかということもわかりませんから、その認識のずれというのがないようにしていただかないと、私たちは、それは景気回復したんじゃないのと。それはそのときになったら、多分またGDP比とかそういうデータを使われると思うんですよ。だから、今そういう質問をしたわけで、そういうずれのないようにしていただきたい。

 もうこれは時間がありませんので質問しませんけれども、インターネットの調査によれば、国民の実感では、現在の日本というのは低福祉・高負担というような回答が多いんですよ。最も多いんですね。これは個人的には、低福祉感・高負担感というふうに気分のところで感じているんではないかなというふうに思うんですけれども。年金記録問題とか、こういうものもあります、社会保障制度に対する不信感とか、さらにはそこから広がる行政の組織、官僚機構に対する不信感というのが負担感を増大させてしまっているんではないかなと思っています。ぜひ国民の感覚とずれないでいただきたいなというふうに思っておりますので、そのことだけお話をして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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