衆議院

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第1号 平成22年8月2日(月曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成二十二年七月三十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 鹿野 道彦君

   理事 岡島 一正君 理事 城井  崇君

   理事 伴野  豊君 理事 樋高  剛君

   理事 松原  仁君 理事 山口  壯君

   理事 加藤 紘一君 理事 町村 信孝君

   理事 富田 茂之君

      糸川 正晃君    打越あかし君

      小野塚勝俊君    緒方林太郎君

      岡本 充功君    奥野総一郎君

      梶原 康弘君    川島智太郎君

      沓掛 哲男君    黒田  雄君

      小泉 俊明君    古賀 一成君

      鈴木 克昌君    津島 恭一君

      豊田潤多郎君    中林美恵子君

      長島 一由君    畑  浩治君

      松木けんこう君    三谷 光男君

      森本 和義君    山田 良司君

      吉田 公一君    若泉 征三君

      渡部 恒三君    小里 泰弘君

      金子 一義君    小池百合子君

      下村 博文君    菅  義偉君

      田村 憲久君    谷川 弥一君

      谷畑  孝君    野田  毅君

      山本 幸三君    大口 善徳君

      笠井  亮君    阿部 知子君

      山内 康一君    下地 幹郎君

平成二十二年八月二日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鹿野 道彦君

   理事 岡島 一正君 理事 城井  崇君

   理事 伴野  豊君 理事 樋高  剛君

   理事 松原  仁君 理事 山口  壯君

   理事 加藤 紘一君 理事 町村 信孝君

   理事 富田 茂之君

      石田 三示君    打越あかし君

      小野塚勝俊君    緒方林太郎君

      岡本 英子君    岡本 充功君

      奥野総一郎君    梶原 康弘君

      勝又恒一郎君    金森  正君

      川島智太郎君    沓掛 哲男君

      黒田  雄君    小泉 俊明君

      古賀 一成君    城島 光力君

      鈴木 克昌君    高橋 昭一君

      高橋 英行君    津島 恭一君

      豊田潤多郎君    中林美恵子君

      長島 一由君    畑  浩治君

      松木けんこう君    松野 頼久君

      三谷 光男君    森本 和義君

      山田 良司君    吉田 公一君

      若泉 征三君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      石破  茂君    小里 泰弘君

      金子 一義君    小池百合子君

      小泉進次郎君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    菅  義偉君

      田村 憲久君    谷垣 禎一君

      谷川 弥一君    谷畑  孝君

      野田  毅君    山本 幸三君

      大口 善徳君    笠井  亮君

      阿部 知子君    山内 康一君

      下地 幹郎君    田中 康夫君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   原口 一博君

   法務大臣         千葉 景子君

   外務大臣         岡田 克也君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   川端 達夫君

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   農林水産大臣       山田 正彦君

   経済産業大臣       直嶋 正行君

   国土交通大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 前原 誠司君

   環境大臣         小沢 鋭仁君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       中井  洽君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (経済財政政策担当)   荒井  聰君

   国務大臣

   (「新しい公共」担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   外務副大臣        武正 公一君

   財務副大臣        池田 元久君

   財務副大臣        峰崎 直樹君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   防衛副大臣        榛葉賀津也君

   総務大臣政務官      長谷川憲正君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   防衛大臣政務官      楠田 大蔵君

   防衛大臣政務官      長島 昭久君

   会計検査院事務総局第五局長            真島 審一君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  勝則君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       福岡  徹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          藤本 栄助君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月三十日

 辞任         補欠選任

  阿部 知子君     服部 良一君

同日

 辞任         補欠選任

  服部 良一君     阿部 知子君

八月二日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     石田 三示君

  打越あかし君     勝又恒一郎君

  小野塚勝俊君     高橋 英行君

  鈴木 克昌君     城島 光力君

  松木けんこう君    松野 頼久君

  渡部 恒三君     岡本 英子君

  小里 泰弘君     石破  茂君

  谷川 弥一君     小泉進次郎君

  谷畑  孝君     谷垣 禎一君

  下地 幹郎君     田中 康夫君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     金森  正君

  岡本 英子君     渡部 恒三君

  勝又恒一郎君     打越あかし君

  城島 光力君     鈴木 克昌君

  高橋 英行君     小野塚勝俊君

  松野 頼久君     高橋 昭一君

  石破  茂君     あべ 俊子君

  小泉進次郎君     谷川 弥一君

  谷垣 禎一君     赤澤 亮正君

  田中 康夫君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     糸川 正晃君

  高橋 昭一君     松木けんこう君

  あべ 俊子君     小里 泰弘君

  赤澤 亮正君     柴山 昌彦君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     谷畑  孝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

鹿野委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

鹿野委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房内閣審議官原勝則君、法務省刑事局長西川克行君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長真島審一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鹿野委員長 次に、お諮りいたします。

 最高裁判所事務総局植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鹿野委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 おはようございます。

 臨時国会初めての予算委員会の質問ということでありますが、同時に、菅政権が発足して初めての質問ということでございます。この予算委員会を通して、菅総理の政治姿勢が明らかにされることを期待いたしております。

 冒頭、臨時国会が始まりますが、国民に総理の考えを伝える非常に重要な機会であると思いますが、総理がどういう基本姿勢で国政に臨むのかをまずお伺いいたしたいと思います。

菅内閣総理大臣 私が総理に就任して初めての予算委員会、きょう、あす衆議院、そしてその次に二日間参議院ということで、ぜひとも国民の皆さんに、私の考え方、そして菅政権がどのような形で日本を引っ張っていこうとしているのか、ぜひ議論の中で明らかにさせていただきたいと思っております。

 そういった意味で、松原議員の方からそうした機会を与えていただいたことをまずお礼を申し上げます。

 まず、昨年の九月の政権交代、国民の生活が第一という基本的な考え方を立て、また、今回の参議院選挙では、それに加えて、元気な日本を復活する、この二つの大きな目標を持って取り組んでまいりたい、このように考えております。

 それを実現する上で、経済と財政と社会保障、私はこれを改めて、経済成長改革、そして財政健全化改革、そして社会保障改革、このように三つの改革を同時並行的に一体として進めていく、このことを具体的に議論の中で明らかにしてまいりたい、このように考えております。

 その第一は、既に本格化している予算編成の中で、この三つの改革を具体化する予算を組もうということであります。特に、雇用と成長、つまり、雇用拡大を通して経済成長を図り、そしてデフレから脱却していく、この道筋を具体的に予算を通して実現をするということを、具体的に予算編成を通して、これは与党の皆さんとも、場合によったら野党の皆さんの意見も入れてぜひ実現したい、このように思っております。

 また、社会保障については、これは必要な財源の問題と一体で議論をする必要があるであろう、このように考えております。

 さらには、政治主導の考え方について、この約一年間の政権交代の中で相当程度進んでいると思いますけれども、いろいろ御議論がありますので、その中で、例えば、改めて民主党として政策調査会を復活し、政策調査会長玄葉会長に内閣の一員になっていただいたことの意味、これは極めて大きな意味を持っている。私が長年温めていた構想でもありますけれども、そのこともこの場でぜひ説明する機会があればと思っております。

 また、国家戦略室についても、私自身に対する直接的な提言、シンクタンク機能として、これまで間接的であったものを直接総理の直轄にすることによって、縦割りの弊害で例えば役所に都合のいい情報しか上がってこないような形を改めて、政治主導あるいは官邸主導の政治を実現する、こういった改革も進めていることも、またいろいろな議論を通して改めて明らかにしてまいりたい。

 こういったことで、ぜひとも実り多い予算委員会になることを私からもお願いして、冒頭の答弁とさせていただきます。

松原委員 基本姿勢ということで今総理からお話がありましたが、ぜひ、ぶれることなく、毅然として、所期の目的を達成するために頑張っていただきたいと思います。

 続きまして、官房長官にお伺いいたしますが、先般、参議院議員山谷えり子君提出の、外国人への地方参政権付与に関する質問に対する答弁書というものが、内閣において、これは前の内閣になるかもしれませんが、出されました。この内容について、最高裁の主文の判決をずっと引用しまして、それに対し、「政府も同様に考えているところである。」このように答弁をしておりますが、このことでよろしいかどうか、確認を申し上げるところであります。

仙谷国務大臣 憲法九十三条第二項の解釈につきまして、平成二十二年六月四日付当該質問主意書の答弁書において、御指摘のとおり答弁を行っております。

松原委員 この内容は、質問に対する答弁書ということで、内容は全部読みませんが、「憲法一五条一項にいう公務員を選定罷免する権利の保障」、中は飛ばしますが、「保障した憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。」

 次に、九十三条二項については、「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定」、「「右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」と判示されており、政府も同様に考えているところである。」

 こういう文章でございまして、今、官房長官からこのことに対してそのとおりであるというふうなお話がありましたことをもって、私もそのとおりであるという認識でこれから考えていきたいと思っております。

 少なくとも、この問題に関しては、軽々に扱う問題でないのみならず、この政府判断をもって、私は憲法上の疑義が言われたものだというふうに認識をしているということを申し上げたところであります。

 二つ目にお伺いしたいわけでありますが、韓国併合百年で首相談話が発表されるかという記事がソウル共同通信でなされました。十六日付の韓国紙、朝鮮日報は、日本による朝鮮半島の植民地支配が始まった日韓併合からことし八月で百年となるのを受け、日本政府がこれに合わせて首相名の談話文を発表することを検討中だと報じたということでありますが、このことの事実、このことに関してそういう用意があるのかどうかをお伺いいたしたいと思います。

仙谷国務大臣 お答えいたします。

 今、松原議員がおっしゃったことを含め、談話を行うかどうかも含めて慎重に検討しているところでございます。

松原委員 談話を行うかどうかを含めて慎重に検討していると。つまり、その可能性というものはあるということになりますでしょうか。もう一回だけお伺いいたします。

仙谷国務大臣 お答えいたします。

 慎重に検討しているということに尽きます。

松原委員 この談話は、内容についてももちろん検討段階ということで、するかどうかも含めての検討でありますから、この場で議論することはできないと思いますが、少なくとも、さまざまな談話によって、そのことが日本の外交に大きな問題を出したこともありますので、こういったものの扱いに関しては極めて慎重に、そして、少なくとも与党内において議論を、合意をするというふうなことも含め、そういった手続を、私は強く与党の議員として要請しておきたいと思います。

 次に、デフレ問題、マクロ経済問題に対して御質問をいたしたいと思います。

 このデフレ脱却ということは、今の日本の経済において極めて重要な課題というふうに言われております。

 総理にも既にこの紙が渡っているかもしれませんが、民主党内で、百五十人の議員から成るデフレ脱却議員連盟がたびたびの会合を行いまして、デフレ脱却・経済成長プログラムというものを明らかにしているわけであります。菅総理も既にお読みになっておられると思いますが、まず御感想をお伺いいたします。

菅内閣総理大臣 私が昨年、経済財政担当大臣を拝命して、特にこのデフレ状態に対して、一般に言われるデフレ宣言という形で表明されましたが、デフレ状態にあることを表明いたしました。

 何とか、長年続いているこのデフレ状況を脱却しなければ、これは日本の経済にとっても、あるいは財政再建にとっても、まさにここからスタートをすることが重要だ、このように認識をいたしておりまして、そういう点では、このデフレ議連が提示をされている考え方、基本的には私自身と共通の考え方での御意見だ、このように受けとめております。

松原委員 我々がこの数カ月をかけて、そして先般もまた総会を開いて提出をした内容でございまして、これは資料を皆様の机の上にも配付されておると思いますので、ごらんをいただきたいと思います。

 この中で、率直に言って、参議院選挙のことも若干触れているわけでありますが、やはりデフレ脱却の具体的政策がアクションプログラムとしてはまずあるべきだろう、そうした中で財政規律という議論に入っていくんだろうというのがこの百五十人のメンバーの総意であるということも、このプログラムの一ページ目に、真ん中あたりに書いてあります。総理も、御一読をいただいたということでありますから、お読みいただいていると思います。

 二ページ目に、ここに書いてありますが、真ん中のあたりに、2の「金融政策:インフレターゲット政策の実施」の中ごろに書いてありますが、低過ぎる物価目標は株安、円高、デフレからの脱却や財政再建につながらないため、その中心値は消費者物価指数で年率二から三%にするべきだということも我々のデフレ脱却議連では提言をさせていただいているところであります。

 また、その下の方に書いてありますが、当議員連盟に、連合の古賀会長にもことしの四月六日、お越しをいただきまして、その場で彼も指摘をしたわけでありますが、雇用の最大化を日銀の政策目標に入れるべきだということを古賀さんも連合会長として指摘をしておられます。ということでありますので、これもぜひ御認識をいただきたいと思います。

 FRBにおいては、そういった雇用の最大化ということが、これはFRBの規約の中に入っておりますが、日銀においてはそれがどこにどう読めるのか、後で参考人に御質問したいと思っております。

 次のページに参りまして、ここに書いてありますのは、「達成すべき物価水準などの政策目標については政府が設定をおこなうこととする」、日銀の持つ自主性の範囲内でそれを行うというのが我々の解釈であります。これは後ほど、バーナンキさんが日本にいらっしゃったときの彼の講話の中から、何をもって金融機関の独自性とするかということで質疑をしてまいりたいと思います。

 そして、最後のページに書いてありますが、各種資産の買い取り等により、FRBのバランスは、これはリーマン・ショックの後でありますが、わずか数カ月で、十二月には危機前の二倍に急激に膨れ上がったと。ちなみに、同期間での日銀はほぼ横ばい、ECB、ヨーロッパ中央銀行は一・五倍、BOE、これはバンク・オブ・イングランドでありますが、三倍ということでありまして、このバランスシートの拡大が景気の悪化を大きく阻止したということも、これもまた我々は一つの事実として考えるべきだということをこのペーパーの中で主張しているところであります。

 これは既に菅総理もお読みになって、基本的には同じ考えであるというふうなお話でありましたから、ぜひともこういった方向でこれからデフレ脱却についての議論を進めていただきたいと思います。

 そうした中でお伺いをするわけでありますが、かつてFRBのバーナンキ議長が訪日をなさいました。そのときの、訪日をして、どういう目的であったか簡単に、白川さんにお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行では、年に一回、金融研究所が主催しまして、国際的なコンファランスを開催しております。これは、内外の学者それから政策当局者をお呼びしまして、時々の重要な問題を議論するということでございます。

 今回は将来の中央銀行というテーマで議論を行いまして、冒頭、私とバーナンキ議長がそれぞれ話をするということでございました。バーナンキ議長は中央銀行の独立性というテーマを話し、私の方は、タイトルのとおり、将来の中央銀行のあり方ということを議論いたしました。

松原委員 この中央銀行の独自性ということが極めて重要だと私は思っております。先ほど申し上げたように、目標と手段というのは異なるというのが基本的な我々の認識であります。

 バーナンキさんのこの論文、和訳を少し読み上げます。皆様のお手元に配付をしていると思いますので、ごらんをいただきたいと思います。

 第一パラグラフで、「金融政策の目標は政治当局によって設定されるが、その目標を追求する方法においては政治的支配から独立であるべきである、というコンセンサスが幅広く形成されています。」こういう文章になっております。

 そして、その次のパラグラフをごらんいただきたいと思いますが、目標の独立性と手段の独立性を区別して考えることが重要ですとバーナンキさんも指摘しております。これは、もう世界でこれが一つの当然の発想になっているというふうに申し上げて差し支えないと思います。

 そしてその次に、第三パラグラフでありますが、「中央銀行が無条件の独立性を持つことを支持しているわけでは全くありません。第一に、中央銀行の政策の独立性が民主的な正統性をもつために中央銀行は、自らの行動について説明責任を持たなければなりません。既に述べたように、政策の目標は政府によって設定されるべきであり、中央銀行自身が決めるものではありません。」というふうに、明確に言っているわけであります。

 そして、最後のページになりますが、これは和訳の五番目のパラグラフでありますが、「インフレ目標は、こうした原則を体現する枠組みとして広く採用されています。」インフレターゲティングは広く採用されておりますと。「これは、政府がインフレの数値目標を設定し、その目標の達成は中央銀行の責任とするものです。」こういうふうに書いてあります。

 これは、バーナンキさんの日本における講演のウエブサイトから我々が引っ張ってきて、日本語訳は、これは私の方でつくったわけでありますが、こういった内容になっているわけであります。

 そこで、お伺いいたしますが、菅総理、金融政策、日銀の独立性に関して、当然、この第二パラグラフにあります、目標の独立性と手段の独立性が違う、そして、目標の独立性は、ここにあるように、国民によって負託を得た政府がこれを決めるという国際的な議論に関しては菅総理も同意をされると思いますが、御答弁いただきたい。

菅内閣総理大臣 日銀と政府の関係については、この間もいろいろ議論もありましたし、また、私自身も白川総裁とも何度か意見交換をいたしました。

 基本的に、例えば、インフレターゲットというものの設定を政府が行って、そしてその実行を日銀に、その手段はお任せする、確かにそういう考え方もあります。また、現実にも政府と日銀の間でかなり議論をしておりますから、ほぼ同一の目標を考えて私はこの間行動していると思っております。

 ただ、法律上の考え方からしたときに、国によって、今松原議員が言われたように、政府が目標を立て、その実行を中央銀行が担うという国と、ある程度目標そのものも中央銀行が担うという考え方がありますし、また、日本の日銀法の私の理解では、それは、基本的には日銀がある程度の自主性を認められているけれども、政府とは緊密に、議論を含めてした上でできるだけ協調してやっていくということになっていると理解していまして、また現実に相当協調してやっていただいている、そう認識をしております。

松原委員 白川総裁に質問いたしますが、今大変不景気でありまして、私の地元でも、いまだに自殺者というのは、当然、全国的にも多く発生している。この不況に対して日銀というのは責任があるかないか、率直な印象をお答えください。

白川参考人 お答えいたします。

 現在の日本の景気の状況でございますけれども、一昨年秋、リーマン・ショックが起きまして、世界的に経済が大きく落ち込みました。その結果、日本の経済も大きく落ち込みましたけれども、現在は、昨年春を底に、方向としては持ち直しに転じ、しかし経済活動の水準としてはまだ低いというふうに思っております。

 経済の活動のすべてが中央銀行によってコントロールできるというわけではございませんけれども、中央銀行として、金融政策、それから最後の貸し手として金融システムの安定に対して責任を負うという立場から、全力を傾けております。

 一点、先ほどのリーマン・ショックでございますけれども、この落ち込みを考えてみますと、アメリカでなぜあれだけの落ち込みになったのかといいますと、これが金融システム……(松原委員「そんなこと聞いていない」と呼ぶ)そういう意味で、中央銀行として金融システムの安定を特に重視しております。

松原委員 聞かれたことだけに答えてください。時間がありません。

 日銀としてこの不況の責任の一端を感じているかと聞いているんです。イエスかノーで答えてください。

白川参考人 一言で、イエス、ノーというふうにお答えするには余りにも複雑な難しい問いだと思います。

 日本銀行としては、現在の景気の状況をできるだけ早く回復し、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的経済成長に復帰すべく最大限の努力をこれからも傾けていきたいと思っています。

松原委員 私は、ちょっと無責任な答弁だと思っておりまして、やはりこの責任の一端は明らかに日銀の金融政策にある、その反省を持ってこれから、今、菅総理もいろいろな政策の目標また手段ということをおっしゃいましたが、やるということでなかったら、日銀はこの不景気と無関係だという認識で、この大変に厳しい中で多くの人が苦悩し、中には自殺者も発生しているということに関して責任の一端を感じるぐらいのことでなかったら、私は、これは極めて無責任のそしりは免れ得ないと思っております。

 時間がありませんから先に進みますが、そうした中で、例えば手段に関して、その手段を国の方が決めるといって、アメリカなんかの場合はそうでありますが、二・五%のインフレターゲティングをするというふうに決まった場合は、その手段に対して日銀は、その手段、目標に対しての手法として行動すると。政府がそういう、今、菅総理はそこまで政府として主導すると明言はなさらなかったわけでありますが、政府が、国民から負託を得た政権として、こういうふうな方針でやるんだ、二・五%でやるんだ、もしくはバランスシートを二倍にするんだ、こういうふうな指示をした場合、日銀はその目的に対して従うという意思があるかどうかだけ確認いたします。

白川参考人 お答えいたします。

 私どもは、日本銀行法の法律解釈を行うという立場にはございませんけれども、日本銀行法では、金融政策の目的を、第二条で「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というふうに明確に規定をしております。その意味で、FRBと全く同じように、目的については、国会で決めた日本銀行法に基づきこれは定められております。

 その上で、日銀法の第三条は、この目的を具体的にどのように達成するかということでございますけれども、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」という形で、日本銀行政策委員会の自主的な判断と責任にゆだねるというふうに理解しております。

 日本銀行は、物価の安定ということにつきまして、消費者物価の前年比で二%以下のプラス、中心値で一%ということを、その物価上昇率を念頭に置いた上で、二つの柱に基づいて金融政策の点検を行っております。そういう形でしっかりと責任を果たしてまいりたいと思っています。

松原委員 ぜひ菅総理にもお願いしたいわけでありますが、この間、二十年間、昨今はということをおっしゃいましたが、全体として、極めて日本だけがデフレ脱却からおくれていたのは事実でありまして、そういったことを含めて、ぜひ政府が日銀に対してリーダーシップをとっていただきたいと思いますが、簡単にお答えください。

菅内閣総理大臣 日銀法の考え方は、今総裁からもお話があったように、基本的にはその四条も含めて、政府との間での「連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と。また、財務大臣あるいは経済財政担当大臣も政策決定会議には出席が可能であります。そういうことも含め、あるいは日常的なコミュニケーションも含めて、基本的には政府の方向性に対して日銀にも協力をいただく、そのことは大変重要だ、そう考えております。

松原委員 なお、この日銀法の中で、雇用の最大化をどこで読むかといえば、二条で、物価の安定を図ることを通じて国民生活の健全な発展に資する云々というところで読めないこともないと思いますが、労働界の古賀さんなんかもこういう指摘をしておりまして、この点に関して、雇用の最大化はやはり日銀法の中で盛り込むということも検討するべきだと思いますが、なかなか、どこまで踏み込んだ発言をしていただけるかわかりませんが、総理、お答えいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 今、松原議員御本人言われたように、この日銀法が「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とされておりますので、物価の安定により国民経済の健全な発展に資するということは、ひいては雇用の安定にも資するものと考えられますので、そうした理解で協力といいましょうか、協調をお願いしていきたいと思っています。

松原委員 仮にそうなると、今失業率が五・数%まで上がっているという状況は、日銀は日銀のやるべきことをやっていないということに私はなると思いますが、菅さん、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 日銀は日銀として、金融政策を通してまさにこの目的のために御努力をいただいているわけで、失業率が五%をなかなか切らない状況にあって雇用状態の改善がおくれていることは、当然ながら他の政策も含めて全力を挙げなければならない。そういう一環としては、日銀にも、そのやれる範囲で御努力をいただきたい、こう思っています。

松原委員 これは恐らくアメリカでしたら、連邦準備法の中に雇用最大化というのは入っていますから、したがって、説明責任を負うと思うんですよ。もし、その第二条を拡大して雇用の最大化が読めるとするならば、白川さんは、そう政府に対して説明をする責任が、アメリカだったら持つと思うんですよ。その説明を白川さんはしていますか、していませんか。簡単に答えてください。

白川参考人 日本銀行として、金融政策の説明責任というのは大変に重いものというふうに受けとめております。この国会の場での発言もそうですけれども、国会に対し、金融政策の報告書というのを半期に一回出しております。それから、毎月々、決定会合で、経済、これは雇用情勢も含めて経済の状況を判断しておりまして、そこにおいて、我々自身の判断とそれから金融政策についての考え方、これはしっかり説明しております。

 説明責任をしっかり果たしていきたいと思っております。

松原委員 私、余り白川さんに質問しないのは、答弁が、この五%を超えたというのを、雇用の最大化云々というFRB的な発想を二条に盛り込むならば、それは果たしていないじゃないか、そのことに関して説明責任をしたのかと言ったんです。そのことだけ答えていただきたいんですよ。それをする必要が、FRBとは違うからありませんというんだったら、そう答えていただければいいので、もう時間がありませんからこれ以上言いません。

 次は、最後の質問に入りますが、朝鮮半島の有事ということが言われておりまして、東亜日報もしくは共同通信でこういう記事があります。

 既に皆様にはお配りをしておりますが、東亜日報は、ロシアが三日と四日、沿海州ハサン地区で、大規模な北朝鮮難民の流入に備えた訓練を実施した、訓練は、一部ロシア兵士が難民の役をし、別の兵士が収容施設の設置や食糧、医療支援を担当する方法で行われた、ロシアの北朝鮮難民対応訓練は〇三年八月に続き二度目、ロシアが、北朝鮮情勢に不安要因があると判断し、急変が発生する可能性を念頭に置いてこれを行った、このように言われております。ボストーク二〇一〇の一環であります。

 共同通信の方は、北朝鮮難民とは挙げておりませんが、近隣国からの難民流入を想定しての訓練と言っております。

 このことについて、政府としてどういうふうな御認識か、お答えいただきたいと思います。

岡田国務大臣 ロシア政府がボストーク二〇一〇を行ったことは事実であります。ただ、その発表の内容に北朝鮮難民とか難民ということが含まれているわけではございません。むしろ日本政府としては、このボストーク二〇一〇の中で、択捉島においてその一部が行われたということに対して、我が国の法的立場からそれは認めがたいということで、抗議と、そして中止を求めたところであります。

松原委員 要するに、こういうことに関して外務省では、こういった北朝鮮からの流入想定とかさまざまなことが既にマスメディアの世界で流れているのに対して、このことについて協議はいたしましたか。

岡田国務大臣 委員も御案内のように、北朝鮮の状況というのはかなり厳しいものがあるというふうには認識をしております。それに対し、政府としては、あらゆる事態に備えてしっかりとした対応を考えているところでございます。

 具体的なその中身については、具体的にお話をすることは控えさせていただきたいというふうに考えております。

松原委員 中身は平場で言うようなことではないと思いますが、きちっとそれに対しては対応を考えている、こういう認識でまいりたいと思いますが、その場合に、いわゆる邦人保護、もしくは同盟国である米国の韓国におられる方々の保護、こういった問題、特に邦人でありますが、このことに関してはどのようにお考えか、総理にお伺いいたします。

岡田国務大臣 そういった問題も含めて、しっかりとした対応が必要であるというふうに認識をしております。従来、細川政権の折にも同様の朝鮮半島の危機的状況というのがあって、いろいろ議論したということがあるわけでありますけれども、邦人の保護というのは日本国政府が果たすべき最も重要な役割でありますので、そういった事態ということが生じた場合には、政府として全力で対応できる、そのためのさまざまな議論、準備を行っているところでございます。

 具体的なことについては、これ以上申し上げることはございません。

松原委員 当然、こういった事態になれば、それは極めて、総理のリーダーシップのもと全省庁一致して行動する局面も来るかと思いますが、総理の御決意もお伺いいたしたいと思います。

菅内閣総理大臣 外国において緊急事態が発生した場合にいかに邦人保護を行うのか、これが特に朝鮮半島の場合はより大きな、人数も含めて、出来事になると思われますので、そういう場合には、もちろん民間の飛行機や船等の手配も含めて全力を挙げて対応しなければならない、そのように考えております。

松原委員 その場合、同盟国のアメリカの方々についても、ぜひ私としてはきちっとした対応方を検討していただきたいと思いますが、このことでは答弁できますか、できませんか。いかがですか。

岡田国務大臣 緊急事態が発生した場合に、邦人の保護というのは政府が果たすべき最も重要な役割でありますが、同時に、それは日本だけではなくて、同様な状況にあるということになれば、同盟国アメリカも含めてしっかりとした対応が日本政府に求められる、また、日本政府としてはアメリカのその能力に期待をするところもある、こういうことだと思います。

松原委員 最後の質問といたしますが、総理が就任して硫黄島の遺骨収集ということを一つ掲げられたことを私は評価いたしておりまして、従来のペースでいきますと三百年ぐらいかかると言われておりましたが、これは早急に、戦後、英霊の方々、亡くなられた方々に敬意を表するということも含め、早期にこの問題の解決に取り組まれる姿勢は評価しておりますが、その決意、そしてアクションプログラム、その辺をお答えいただければと思います。総理、お願いいたします。

菅内閣総理大臣 硫黄島の遺骨収集について、松原議員もこれまでも非常に熱心に取り組んでこられていることを、まず敬意をあらわしたいと思います。

 私も、四年ほど前に現地に赴きまして、その前後、予算委員会でも取り上げさせていただきました。そして今、総理大臣補佐官の阿久津補佐官に指示をして、先日アメリカの資料館等にも行っていただいて、まだ二万数千の戦死者の中で四割しか遺骨収集が終わっていないという中で、多くの遺骨が島の中に残っている、存在しているということの確信を得ました。

 これから、さらに具体的に、現地は御承知のように自衛隊も常駐しておられますので、そういう防衛省、もちろん厚労省、そういったところに協力をお願いし、これは政府一丸となってしっかり取り組んでいきたい。

 これは硫黄島のことではありますけれども、できればそれを通して他の地域についてももっと力を入れるように私なりに指導力を発揮していきたい、このように考えております。

松原委員 終わりますが、ぜひとも国益を重んじながら、そして一人一人の市民生活を豊かにするということで、菅政権、頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

鹿野委員長 この際、城島光力君から関連質疑の申し出があります。松原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。城島光力君。

城島委員 おはようございます。民主党の城島光力でございます。

 私の方は、中心的には、来年度の予算編成がスタートしたわけでありますので、その予算編成、とりわけ概算要求基準、そういったことを中心として質疑をさせていただきたいと思います。

 今回の概算要求基準について、政府で決定する前に、実は民主党としての要望書を出させていただきました。すなわち、党として、今回、政策調査会復活というふうになりました。私は、復活というよりは、新しい与党としての政調ということを何とかつくり上げていきたいなという思いの中で、この与党の中の政調ということをまとめた中で要望書を出させていただいたというふうに思います。

 すなわち、新しい与党の政調というのは、基本的には政策決定は政府にあるんだ、我々与党側は、特にそれを支える民主党、議員のさまざまな英知ですとか、あるいは地元からの要望も含めてでありますが、そういったものをしっかりとまとめ上げる、それでそれを提言する。もちろん、その過程の中で政府との意思疎通等をしっかり図りながら提言をしていく。しかし、その決定はあくまでも政府にある。そういう意味で、政策決定の一元化ということの大原則を守った中で政調というのをスタートさせていただいているわけであります。

 特に、その中で重要なのは、玄葉政調会長が閣内に入られているということで、与党と内閣の一体化をさらにそこで図っていくということでありますので、ぜひ、そういったことも含めて、新しい与党の政調のあり方をさらに磨きをかけていかないかぬなというふうに思っています。

 その中で、今回、政調を中心に、党としての来年度の予算編成、とりわけ概算要求組み替え基準について提起をさせていただきました。かなりの部分が今回の政府の中に入っているわけでありますが、数点、我々の要望と若干違うところがございますし、そういったことを含めて質疑をさせていただきたいのであります。

 まず最初に、その要望書の中にも提起をさせていただきました。先ほど松原委員からも、第一点目だったと思いますが、同じような趣旨で質問があったと思います。すなわち、本来、予算編成であれば、まず、やはり菅内閣として、とりわけ総理として、どういう国家像を目指すのか、あるいは社会を目指していくのか、そのもとに予算編成が行われる、流れとしてはそういうことだと思うんです。

 恐らくそういうことだと思うんですが、やはりどうしても、メディアを通した方向というか状況は、例えば歳出の大枠七十一兆円以内だ、あるいは新たな赤字国債、公債の発行は四十四兆円以下だ、こういったどうしても数字が先に流れていくような感じが強いわけであります。そういう受けとめ方が我々もあるわけなので、今申し上げたように、本来的には、まず、どういう社会を目指していくのかということに基づいた予算編成、まさに羅針盤がここに必要だと思うんですね。

 そういう点で、もう一度、菅内閣、そして総理として、予算編成に当たっての目指すべき方向性ということについて明確な御答弁をいただきたいというふうに思います。

菅内閣総理大臣 冒頭の松原委員の御質問にもお答えしましたが、私は、国民の生活が第一という基本的な考え方、また、参議院で国民の皆さんに訴えました、元気な日本を復活させるというこの二つの考え方を柱に予算編成に当たりたいと思っております。

 また、私が政権を担当する前から、ほぼそういう方向に沿って大きな二つのことが議論され、閣議決定をされております。御承知のように、その一つは新成長戦略でありまして、まさに、経済的な面でも元気な日本を復活させる二十一項目の具体的な政策課題がその中に盛り込んでおられます。そして、もう一つは財政運営戦略、その中には中期財政フレームも入っておりまして、これも六月段階で閣議決定をいたしております。

 今、城島委員の方から幾つかの数字が言われましたが、これはこの基本的な新成長戦略及び財政運営戦略の中で盛り込まれた考え方、閣議決定された考え方でありまして、それを一つの基準として、冒頭申し上げた目的に資するように、これから具体的な予算編成に当たっていきたい。

 先ほども申し上げましたが、雇用の拡大を通して経済を拡大し、それによってデフレ脱却、成長の路線に導いていく、同時に、社会保障についてもその中でより充実をさせていく、またそれが成長にも資する分野も数多くあるのではないか、このような考え方で実現を目指していきたい、こう思っております。

城島委員 そういう方向の中で、とりわけ歳出の大枠七十一兆とか赤字公債四十四兆円以下、この予算の数字ですけれども、この性格をどうとらえるかというのが一つあると思うんですね。

 すなわち、何となく、一方では緊縮予算だ、これ以上上げないというところからくるイメージ、もう一つは、この予算の数字そのものが、まさに百年に一度と言われるリーマン・ショック以降の大型予算の基本的には継続だということからすると、今総理がおっしゃったようなデフレ脱却あるいは経済成長、これを目指すある面と大型予算、両方のイメージがダブっているというか、それぞれあるんです。

 内閣としては、この見方からすると、どちらの性格を持った予算ということだととらえているんでしょうか。

野田国務大臣 城島委員におかれましては、党の政調会長代理として、今回の概算要求組み替え基準策定に当たり、党の御提言をまとめていただきました。そのお骨折りに心から感謝申し上げたいと思います。

 七十一兆円あるいは四十四兆円という数字が、どちらかというと緊縮財政のイメージをつくっているのではないかという御懸念があると思うんですが、平成二十二年度の当初予算は九十二兆円、過去最大の規模であります。この過去最大の規模の予算から国債費を除いた七十一兆円、この七十一兆円を向こう三年間、中期財政フレームの中で、これ以上は超えないようにという閣議決定をしています。その枠の中でつくった話であるということと、四十四兆円も、今年度の国債発行が約四十四・三兆円です。それを上回らないようにという数字で出てきています。これは、先ほど総理の御説明にもありましたとおり、財政再建と経済成長の両立を図るという中で出てきている数字であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

城島委員 そういう予算の中で、もう一点だけ、党から要請というか要望を出しておりました各省庁に対する配分、これは少しめり張りをきかせた組み替え基準にすべきじゃないかということを提起しておりましたが、今回、一律、要するに九〇%、すなわち一〇%削減ということになったわけでありますが、この我々のめり張りをきかせたことをやるべきだということに対しての今回の方針について、財務大臣の御見解をいただきたいと思うんです。

野田国務大臣 お答えをいたします。

 歳出の大枠を七十一兆円と決めさせていただきました。その中で、地方交付税交付金は除きます。そして、年金、医療等の社会保障も除く。予備費も除いて、残りの二十四兆円について、これは聖域なく各省大臣によって大胆な見直しをしていただきながら一割削減で九割要求をしていただく。その一割削減分については、これは予算の要望ができるということで特別枠をつくっていくということになっています。

 この一割削減だけちょっと言葉が先行していますけれども、一割削減というのは府省横断で大胆な組み替えをするための土台づくりであって、これは手段であります。最終的な予算の仕上がりは、この特別枠の配分などを通じて一様ではなくなる、むしろめり張りがつく。めり張りをつけていくためのプロセスであるというふうに御理解をいただきたいと思います。

城島委員 そこは、今回の我々の要望の中にもそうですが、大胆な予算の組み替え、これはまさに政治主導じゃなきゃできないわけですね。今までは、結果を見ると、各省庁の予算配分というのは、比率でいうとほとんど変わらないというのがずっと続いている。硬直化した予算編成というのが行われてきているというふうに思うんです。やはり、時代と今の状況変化に的確に対応するために抜本的な組み替えをやるというのが我々の趣旨でありますから、ぜひそこは何としても達成していただきたいと思うんです。

 もう一つ、今回の予算編成では、何といっても大事なのは、今回の参議院選挙でも、私は、国民の皆さんの強い要望は、民主党よ、まだまだ無駄の削減手ぬるいぞということにあったと思うんです。今回の予算編成の過程において、やはり無駄の根絶ということに徹底して、内閣挙げて、場合によっては我々党も挙げてですけれども、取り組んでいただきたいというふうに思うんです。

 まず、その辺の御決意を聞かせていただきたいと思います。

野田国務大臣 無駄をなくしていくということは、まさに改革の一丁目の一番地だというふうに理解をしています。

 その上で、概算要求の組み替えの段階でも、まず、各閣僚においてまさに自主的に優先順位を決めてそういう見直しを大胆にしていただく、これが一段階です。その上で、特別枠一兆円を相当程度超える規模、そこでまた大胆な見直しをしながら生きたお金の使い方をしていく。そういう過程を経ながら、一方で予算編成過程においても、後で行政刷新大臣にもお聞きいただければと思いますが、十月からは特別会計の仕分けも行うということでございます。

 こういう特別会計の仕分けとも連携をしながら、さらなる無駄遣いの徹底した改めをしていきたいというふうに考えています。

城島委員 そういう中でいうと、各省庁を預かられる各大臣の皆さんは、ぜひ、各役所の代表ということじゃなくて、まさにそういう国民の声を受けた、国民の代表という観点に立って、徹底した無駄の削除、さらには、無駄というだけではなかなか難しいでしょうから、優先順位、これがまた大事だと思うんですね。確かにこの仕事は大事だ、だけれども今本当にやるべきなのか、もうちょっと後でもいいんじゃないかということもあると思うんです。

 無駄という観点だけではなかなか切り込みが難しいという部分もあるかもしれませんが、優先順位、この二点を、まさに国民の代表という観点でやってほしいと思うんですね。

 先ほど野田大臣おっしゃったように、国家財政が極めて厳しいというのは、これはもう国民の皆さんもほとんど理解をしているところだと思います。

 これを、私も二十五年間サラリーマンをやっていましたが、民間企業に置きかえると、とてもじゃないけれども、とにかく、決算でなかなか黒字が出ないどころじゃなくて赤字だ。そうすると、必然的に民間企業では、有無を言わさず経費を、いい悪い抜きにして、優先順位をつけてカットしていって何とか利益を上げるというしかないわけですね。私は今、国家というのはそういう状況に来ている。

 ここは、それこそぬれタオルを絞って、いや、もう乾いてしまっているという思いの大臣も結構いらっしゃると思いますが、やはりこれを本当に、民間企業、一国民の状況あるいは家庭の状況に置きかえると、それでもやらざるを得ないという観点に立って、とりわけ二兆円の特別枠に向けての無駄の削除、さらには優先順位づけを徹底してほしいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 私がある時点で、それこそ鼻血も出ないほどに無駄の削減を行ってということを申し上げて、それから後のいろいろな発言で、何かそれを撤回したのではないかという誤解をいただいたところもありました。しかし、決してそのことをあきらめたわけでは全くありません。

 今、城島委員からもお話がありましたように、今回の予算編成に当たっても、そういう形をいかに進めるかということで党の方の要望もいただきましたし、また行政刷新の担当大臣を中心にこれからいよいよ特別会計にも切り込んでいただくことになっております。

 一つ加えますと、今年度の予算においても、従来の政権ではとてもできなかったほどの大きな、ある意味での分野別の予算の組み替えを行ったことはもうよく御承知だと思います。

 つまりは、そういうことをスタートしているこの政権交代を経た政権として、いよいよ本格的に、そうした無駄、あるいは優先度の低いもののカットを含めた予算編成につなげていきたいと考えております。

城島委員 今回の予算編成では、やはり国民の皆さんが注視しているのは、どういう方向に行くのかということと、なるほど、予算について徹底した見直し、そして組み替えができて、無駄の削減に相当一丸となって取り組んだなというような予算になるかどうかは、私は国民の皆さんの尺度だと思っています。

 そういう点で、もう一つ、今ホームページで行政の事業レビューシートというのを各省庁が出されていますね。私もずっと、片っ端からホームページを開いて、徹底して私なりにもチェックをしているんですが、問題は、これから事業仕分け、蓮舫大臣中心にまた特別会計あるいは今までの事業仕分けのレビューということを徹底してやるということでありますが、やはり特に、特別会計だけじゃなくて、この資金というか予算というか税金というんでしょうか、まずその流れを見ると、いっぱいあるのは、まず省庁からの予算がどこに行っているかというと、ほとんど独法ですよね。さらには公益法人。こういう、ある面では組織とか団体を経由して、最後に必要な民間企業とか人、いわゆる国民あるいは家庭、こういうところに行っている。まさに予算が、資金が流れる、これはほとんどそうですけれども、独法とか公益法人はまさに天下りの温床になっている。

 考えてみますと、場合によってはわざわざそういうところを経由する。そうすると、そこに当然、いわゆる中抜き、本当にそれが必要でないところにあれば、天下りの人件費も含めてですが、表現は悪いけれども、ピンはねみたいなことになりますが、中抜きされてしまう。それだったら、もっと直接、必要あらば、本当に必要な民間企業であり家庭であり人に資金がストレートに流れるようにしていく。恐らく、私は、民主党の戸別農家の所得補償政策だって、あるいは子ども手当だって、あるいは高校の授業料無償化にしたって、そういう思想があるんだと思うんです。だから、これは徹底してやっていかないかぬと思うんですね。

 だから、この事業仕分けの中で、特別会計の問題もそうですが、この流れ、独法を含めて公益法人の徹底した見直しというのは、どうでしょうか、蓮舫大臣、ここもやっていただけるんでしょうか。

蓮舫国務大臣 まさに城島委員が御指摘のように、去年の政権交代以降、事業仕分けを第一弾、第二弾と続けて行ってまいりました。国の事業、独立行政法人、公益法人と続けて、情報公開、国民の皆様方に見える形で、税金が適切に使われているのかどうなのか、納めた税金が納得できる使われ方をしているのかどうなのかは、行政刷新会議を中心に行ってまいりました。

 その結果、各府省にお願いをしたのは、すべてを仕分けの対象にするのではなくて、内在化ではないですけれども、各府省庁みずからも、自分たちの扱っている事業、税金を使った仕事というのが適切なのかどうなのか、一つの流れという形、フローしてどういう形で流れているのか。本来お金が行くべき人に直接流れるのが一番効率的なんですけれども、残念ながら、ここは仕分けをして、あるいは事業レビューで見てみますと、間に独法が挟まっている、公益法人が挟まっている。いわゆる人件費だけが中抜きをされて、本体の事業費が随分縮小されているケースもございました。

 これは徹底して見直しを行っていくのは当然でありまして、ぜひ、まず各府省庁において、概算要求の段階では、この部分は反映した予算を組んでいただきたい。行政刷新会議、私としましても、その状況というのはすべて把握をして、反映されているかどうかというのは見てまいりたいと思っています。

城島委員 要するに、やはりそうやって税金がある面でいうと本当に無駄に使われている一つのところは、事業だけじゃなくて、お金、資金の流れそのものにもあると思うんですね。これは、ある面でいうと日本の社会構造そのものになっている。これを抜本的に変えるということは大仕事だけれども、これはまさにこの内閣でそれをしっかりと、岩盤みたいな構造ですけれども風穴をあけて壊していくことが、本当の意味の国民主権のまさに政治体制あるいは社会体制をつくる大きな第一歩だと思います。

 そういう点で、ぜひこの部分についても、部分というか、これがまさに大きな仕事だということで取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、特別会計なんですけれども、あえて言えば、一般会計は大幅な赤字だ、特別会計は何となく潤沢な資金だ、こんなイメージが我々にはあります。だからこの際、一般会計、特別会計、これは本当に必要な特別会計というか、分けてやるべきところはもちろんあると思いますが、やはり全体を見て、一般会計、特別会計、分け隔てなく、トータルの会計ということでの見直しということが必要ではないかと思いますが、これは財務大臣でしょうか。ぜひ、一般会計、特別会計、この区分けという垣根を越えて、トータルの予算という、特別会計も含めた見直しということをぜひやってほしいというふうに思うんです。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおりだと受けとめております。

 かつて特別会計、ピークのときは三十一ありました、今十八までになりましたけれども。勘定ごとによく精査していくと、相当に聖域なく見直しをしなければいけないと思います。今回の概算要求組み替え基準の中でも、特別会計にメスを入れた形の要求を各大臣には出していただきたいと思いますし、予算編成の段階では、先ほど御答弁があった行政刷新担当大臣としっかり連携をしながら、改革を推進していきたいと考えております。

城島委員 もう一つ、総理が触れられていた消費税を含む税制改革ということでございますが、これについての総理の現時点でのお考えを、あえてちょっとこの段階で聞かせていただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 実は、昨年暮れの政府税調においても、所得税、法人税、消費税を含めた議論はしようということで、政府税調では既に専門家会議も開いてその作業に入っていただいて、今日も続いております。ただ、参議院の選挙のときに私が消費税について触れたことが大変唐突に受けとめられて、そういった点では本当に申しわけなかったと思っております。

 そういった中で、改めて、政府税調に加えて今回、党の政策調査会も誕生しましたので、その中で御議論をいただく。もちろん、先ほど申し上げた財政運営戦略の中で、例えば二〇一五年のプライマリーバランスの赤字の半減、あるいは二〇二〇年におけるプライマリーバランスの黒字化という大きな方向は、これは既に閣議でも決定しておりますので、そういう健全化の目標とも関連をすると同時に、社会保障のあり方とも極めて深い関連があると思いますので、そういった点についても党の方でしっかりとした議論をあわせてお願いしたい。

 そういう中から、これは、これからの質疑の中で、野党の皆さんの方からどういった御提案があるかということもお聞きしながら、もし、そういう中で、党を超えて議論をするような場について何らかの合意形成ができるのであれば、それはそれとして検討いただきたいということも、党の政調会長の方にお願いをしているところであります。

城島委員 そういった問題も含めて、繰り返しになります。

 今回の予算編成で、国民の皆さんが一番関心を持ち、この予算が本当に国民の皆さんから見ていい予算かというふうに判断されるのは、まさに本当に無駄の根絶、ここにどれだけ切り込めたか、そのことが、私はやはり今回の予算編成の最大の責任だというふうに思います。そのために抜本的な組み替えをやり、無駄の根絶というものに向かって、まさにこの菅内閣、全員が一致してその方向に進んでいっていただきたい。それぞれの省庁いろいろな思いがあると思いますが、そこを強く要請をしておきたいというふうに思います。

 最後に私の方から一点。私は、この前まで衆議院の拉致問題特別委員会の委員長をやっておりました。ということも含めて拉致問題について質問をさせていただきたいんですが、まず、先日、金賢姫元工作員、来日をしたわけであります。先日、私も、地元でありますので、横田御夫妻、特に横田早紀江さんとその後お話をさせていただきました。その間の三時間余りにわたる面会の御様子も聞かせていただきましたし、最後は元気づけられたという言葉もいただきました。

 この辺についてはいろいろ評価もあるようですけれども、少なくとも拉致被害者の家族の皆さんに対しては、勇気づけられたという言葉もあるように、そういう評価はあるというふうに思います。

 この辺について、御努力されたと思いますが、中井拉致担当大臣、ぜひ、そういう経過も含めて御答弁いただければと思います。

中井国務大臣 城島議員が衆議院の拉致特の特別委員会の委員長としてしばしば御連絡をいただき、また、いろいろな意味でお教えをいただいてきたこと、この機会に心から感謝を申し上げます。

 ことし、ファン・ジャンヨプ氏を呼び、また、今回金氏をお招きできたことは、拉致問題担当といたしまして、また鳩山、菅両内閣といたしましても、問題解決にとって大きな前進になる、このように確信をしてお招きをしたわけでございます。

 いろいろなことは言われておりますが、飯塚また横田両御家族を初め家族会の皆さん等、大変大きな喜びを私にも示されております。この両家族の方々を中心にまた元気で活動を続けていただける、私どもも、寄せられました情報を調査、分析、追跡、これを急ぎまして拉致問題解決の突破口にしていきたい、このように考えております。

 これからも、議員初め皆さんの御協力をお願いいたします。

城島委員 この拉致問題は、第一回の小泉訪朝、二〇〇二年以降、基本的にいわゆる全くの進展がないという状況が続いております。長い期間の空白期間があるわけでありまして、これはもう一日一日のまさに勝負だ、国そのものの大きな仕事だというふうに思っております。これはぜひ強い決意で、総理、臨んでほしいというふうに思っています。

 この拉致問題の解決に向けての菅総理の御決意を承りたいと思います。

菅内閣総理大臣 今回の金賢姫元死刑囚をお招きしたということは、いろいろ議論はありますが、私は、中井大臣が言われたように、被害者家族の皆さんにとっても、また、いろいろな情報を集める上でも大変大きな意味があったと、このように思っております。

 加えて、私も総理に就任したすぐ直後に、六月の十日に拉致被害者の家族の皆さんにもお会いをいたしました。

 今、城島委員からも言われますように、大変長い経緯があって、そういった意味では、本当に一日も、一刻も早い被害者の皆さんの帰国を実現するために政府としてやれることは何でもやる、そういう覚悟で臨んでまいりたい、このように考えております。

城島委員 ぜひこの拉致問題の解決に向けて陣頭指揮、総理、とっていただきたいと思います。

 また、予算についても、先ほど申し上げたような国民の要望、期待にこたえる予算をぜひ組み上げてほしいと思います。

 終わります。

鹿野委員長 この際、伴野豊君から関連質疑の申し出があります。松原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 菅総理並びに菅内閣の大臣の皆様方、改めまして御就任おめでとうございます。

 奥様の伸子夫人の言葉をかりれば、この大変な時期、だれが総理になっても、あるいはだれが大臣になっても大変なときに御就任いただいたということで、おめでとうと言うよりも御愁傷さまと言ってあげたいとこの本にも書いてございます。ごらんになられたかどうかわかりませんが、私も早速書店をいろいろ探して、なかなか売れているようでございまして、なかなか見つかりませんでしたけれども、中をいろいろ読ませていただきますと、なれ初めのところのUターン禁止のくだりとか、子供は時間をかけて待つしかないとか、あるいは高速道路無料化、今、社会実験もいろいろしていただいていますが、一度仕切り直しをした方がいいのではないかという御意見等々、非常に勉強にもなりました。

 一方で、私の妻には文才がなくてよかったななんということも思いつつも、これは菅総理に対する奥様の完全なラブレターだな、そんなふうに読ませていただいて、そういった中で、総理大臣の仕事に集中していただきますことを、ぜひとも、この大変な時期でございます、もう一日一日が勝負かと思いますので、そういった意味でも、心から敬意を表させていただきたいと思います。

 しかしながら、御自身もいろいろなところで十分反省の弁を述べておられますが、やはり消費税の発言、これはちょっといろいろステップを吹っ飛ばし過ぎたのかな、ちょっと気負い過ぎられたのかな、肩に力が入られてしまったのかなというふうに正直言って私も思いました。やはりどんな優秀な方でも、一人では何もできません。トップリーダーたる者、その目的を達成するためには、あらゆる人脈、知恵、経験をフル活用して、そしてそこに説明をし、同意をいただきながら進めていただきたい。日本国の総理ならばなおさらでありますし、さまざまな方の英知を結集していただいて、将来を見据えていただければと御期待も添えて申し上げさせていただきたいと思います。

 我が国の今の財政状況、見れば見るほど考えさせられますし、またギリシャの状況や国際会議での空気などをごらんになられたんだと思いますが、そしてそのお気持ちになられたんだと思いますけれども、党内議論、手続もさることながら、国民の皆様方から見ても、ちょっと順番が今回違うんじゃないかというところがあったのではないかと思います。ぜひ、そういったところを、きょうテレビを通じて、国民の皆様方にその手順もあわせてしっかりと御説明いただきたい、そんな思いで質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いしたいかと思います。

 その手順といいますのは、やはり国会議員あるいは公職者がまずその身を削れというところが最初のステップだと思います。それから、先ほど松原議員あるいは城島議員が予算編成等に触れましたが、行財政の無駄を徹底的に省いていただき、大胆にめり張りをつけていただく、さらには将来ビジョン、今後どうしたい、具体的な仕組みとあわせ持って、その上で、どうしてもこれ以上、菅総理の発言をおかりすれば、鼻血が出ないところまでやった中で、どうしてもこういったすばらしい国にしたいんだ、こういった社会保障にしたいんだ、こういった世の中にしたいんだというところで、最後の最後のぎりぎりの苦渋の決断として足らず前をお願いするのが手段であり、場合によってはそのときには選挙で問うということになろうかと私は思います。

 その上で、改めて質問させていただきたいんですが、先週、早速国会議員の定数削減について記者会見でしっかり述べられました。私はすばらしいことだと思います。ぜひ一刻も早く、どうも今タイムスケジュールをお聞きしますと、党内の議論が八月中だというのでは私はちょっと遅いような気がいたします。これはマニフェストにも書いていただいているわけでございますが、党内にはいろいろな御意見はあるかと思いますが、そこはできるだけ早く、そして与党の皆さん方も、これについては、マニフェストについても、数は若干違いますけれども、随分お書きになっていらっしゃいますので、私は、野党の皆さん方に早速呼びかけていただいて、一刻も早く、この国会議員の定数削減というところを国民の皆様方にお示しすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 消費税の私の唐突な議論が、いろいろな意味で国民の皆さんにそうした不安を与えたということは、改めておわびを申し上げたいと思います。

 もちろん、財政再建そのものは、これはどなたが総理になっても、どの党が政権を担当されても避けて通れない問題ですから、今、伴野議員からもありましたように、徹底した無駄の削減あるいは定数是正も含めたそういうことを行う中で、同時並行的に財政再建のあり方についても議論が必要だ、このように思っております。

 その中で、定数削減について、先日、党の方針でもあります衆議院での八十の削減、参議院での四十議席の削減を、枝野幹事長と輿石参議院議員会長に、私の方から、八月中に党内の考えを取りまとめ、十二月までに与野党の合意が得られるように努力してほしいと指示をいたしました。

 もう既に、テレビの討論などではそうした議論が始まっておりますけれども、ぜひ、きょう八月にもう入りましたので、野党の皆さんにも、選挙のときにはかなり積極的な提案も出されている党もたくさんありますので、そういった中で、まず国会議員がみずから身を正すというか身を切るという姿勢の中で、できるだけ年内には実行できるようなテンポで議論を進めていただきたい、このように考えております。

伴野委員 党内は多分早くまとまると思いますので、野党の方に積極的に声をかけていただいて、一日も早く成案を得られるようにお願いしたいかと思います。

 さて、先ほど城島先輩の方からもいろいろ、今回の予算の概算要求組み替えの基準についてのお話もございました。さまざまな、これは報道ベースでございますけれども、評価する意見もある一方で、無駄遣いの根絶、不要不急な事業の大胆な見直しを行うと思うんですけれども、これがまだまだ財務省主導ではないのか、場合によっては主計局長なり主計官が走り回って結局はというようなお話も出てみたりとか、あるいは、一律一割カット、先ほどもございましたけれども、最初の手だてだということでございますが、最終的に結果として私は大胆なめり張りをつけていただきたいと思いますし、また、総理の顔がどこで見えるのか。その一兆円枠の元気な対策のところだけではなくて、私は、いろいろなところに目配りをしていただいて、査定大臣である大臣同士、やはり、いろいろ省を背負っての御意見があると思います。しかし一方で、ぎりぎりの段階では総理にお出ましいただいて決着をつけていただき、さらには野党の皆さん方の御意見や国会での意見や国民の皆さん方を十分お聞きいただいて、最終的に国民の負託に沿う予算の概算要求にしていただきたいな、そう思うわけでございますが、御決意も改めましてお聞きしたいと思います。

菅内閣総理大臣 私は、従来の政権下、つまり政権交代前の政権下での予算編成が、どの点が問題だったかというところをまず押さえておかなければならないと思います。

 そういう意味では、従来は財務省主導であったということ以上に、各省庁が、自分のところの予算は去年に比べて基本的にはふやすことはあっても一切減らさないんだ、それを前提にしていた。それが同時に、与党のいわゆる族議員と言われるような人とリンクをして、そういう中でこの何十年間の予算の編成を見ても、そういった公共事業の配分などの比率は全く変わらないということから見ても、そういった硬直化が非常にあったことが私は最大の問題だ、このように思っております。

 そういった意味では、今年度の予算の中で、既に二十二年度予算編成においては公共事業を一八%削減し、社会保障を一〇%増大、文教科学予算を五%伸ばすなど、まさに従来の政権ではできなかった政治主導の予算編成が今年度において既に行われているわけでありまして、それを一歩進める予算編成でなければならない、このように思っております。

 そういった意味で、今回のいわゆる組み替え基準というものについても、先ほど財務大臣の方からも説明がありましたけれども、決して、何か従来のように予算を各省庁とも一律に単純に削減するということでは全くなくて、まずは社会保障とかそういう分野についてはきっちりその例外としておりますし、また、一律に最初の概算要求は下げていただいたところについても改めてそれをトータルしたものを、今度は省庁を超えて、この役所は減してもらったけれども、こっちの役所は逆にさらに追加をするという特別枠もつくっていただいておりますので、まさにそういう中での政治主導での予算編成の私は第一歩だ、こう考えております。

 そういう中で、総理大臣としてきちっと判断しなければならないところは、まさに冒頭申し上げましたように、経済と財政と社会保障、特に雇用の拡大と成長に資するという、そういう観点を念頭に置いて、判断しなければいけないときには私として判断をさせていただきたい、このように思っています。

伴野委員 メディアがこれだけ発達した時代でございますので、私は、国民の皆さん方に訴える意味でわかりやすく見せるということも否定いたしませんが、やはり最終的に結果として政治主導になるように、そしてまた、いいことであれば私はトップダウンでも構わないと思っておりますので、どうぞめり張りのある、よろしくお願いしたいかと思います。

 先ほど……(発言する者あり)ちょっと静かにしていただけますか。基本姿勢のところでも、国民生活第一というところは変わらないというところでございました。

 たしか昨年、二〇〇九年、のど元過ぎればじゃないですけれども、ちょっともう今、メディアも取り上げていただいていないので話題が下火になってしまっているのかもしれませんが、二〇〇九年のときはパンデミックということで、あれほど新型インフルエンザのお話が話題になりました。どうなっちゃうんだろう。

 確かに、積極的に対策をしていただくということは必要なんですが、場合によっては、日本としては在庫を使い切ってしまう、あるいは足らなくなるというようなところまで大変なことにならなくてよかったと思うんですが、今、医療機関ではそれを逆に抱えていて、それが問題になっているという話も伺ったんです。

 長妻大臣、今後のパンデミック対策の流通のあり方というのも、多分、今後十分必要になってくると思うんですが、今どうなっているんですか。教えてください。

長妻国務大臣 伴野委員にお答えをいたします。

 新型インフルエンザでありますが、お答えの前に、まず関係各方面、そして国民の皆様方の大変力強い御支援をいただいてこの新型インフルエンザ対策を実行できたということに、まず深く感謝を申し上げるわけでございます。

 今後は、強毒性の鳥インフルエンザ、この対策についても怠りなきようにしなきゃいけない。そして、さきの新型インフルエンザワクチンについては、在庫問題というのが今いろいろ御指摘をいただいておりまして、数多くの医療機関で過剰在庫が発生をしたということであります。

 これに関しては、鋭意調整をいたしまして、調整の結果、製造販売業者、そして販売会社及び卸売の販売業者の御負担によって基本的には買い戻していただくというようなことに御理解をいただきましたので、今後、具体的な実施時期、手順等について調整をして、速やかに買い戻しをしていきたいというふうに考えているところであります。

伴野委員 人の命にかかわることでございます。菅総理の姿勢でもある国民生活第一、命を大切にということだと思いますので、一生懸命やった方が後でその対応によってばかを見ないような仕組みにぜひしていただくことが、そういった緊急のときの対応に積極的にかかわっていただけると思いますので、いま一度全体を見直ししていただいて、次に、そういうことが起こらないのが一番望ましいんですが、不測の事態が起きても対応していただけるよう、仕組みを徹底点検していただければと思います。

 長妻大臣といえば、私も地元へ帰ると、おじいちゃま、おばあちゃまたちから、本当に消えていた年金が見つかった、ありがとうという、先般も申し上げましたが、今回、ワンストップサービスなんかもしていただいて、雇用に不安を抱えていらっしゃる方々、生活に不安を抱えていらっしゃる方々の対応ということで、お褒めいただくことも多いんです。

 一方で、少し時間をいただかなければと申し上げているんですが、国民の皆さん方は、やはりその生活、特に社会保障、年金、医療、介護、私どもへの期待が大きかっただけに、この絵姿がどうなるんだと。中間取りまとめ、いろいろ出てきておりますが、やはり抜本的な絵姿を早く出していただいて、それがどうしても財源との見合いになってくるとは思います。

 だから、そういった議論をするためにも、私は、一刻も早く、そういった国民生活にかかわる社会保障の部分の将来像、絵姿を具体的に、本当に大変だと思います、お時間がない中でおやりいただいていると思いますが、これをやはり一日も早く出していただくことが安全、安心につながる、国民生活第一の姿勢を示すことになると思いますので、今の中間取りまとめの方向性もあわせ持って、ここのあたり、総理から強い決意と、将来ビジョン、今わかっている範囲で結構ですから、お示しいただければと思います。

菅内閣総理大臣 冒頭にも申し上げましたように、私の政権のもとでは、経済成長改革、財政健全化改革と並んで社会保障改革の三大改革を一体的に進めてまいりたい、こう思っております。

 そういう中で、まずは雇用の拡大による経済成長、デフレの脱却を目指してまいります。

 同時に、社会保障の問題としては、これまで年金、医療、介護について、まず年金制度については、国民的な合意形成を図り、平成二十五年の法案提出を目指すという方向で、原則を先日発表させていただきました。また、医療、介護については、新たな高齢者医療制度や地域包括ケアシステムを構築するなどの取り組みを現在進めているところであります。

 いずれにしても、この社会保障をどうするか、それに必要な財源をどのようにして得ていくのか、こういった議論をいたさなければなりません。今、伴野さんがおっしゃるように、こういった問題、もちろん内閣として、党として議論することは当然でありますけれども、年金のような問題は、場合によっては超党派の議論ということもあっていいのではないか、このことも従来から申し上げているところであります。

伴野委員 この委員の中にも、政権を担われた方々もたくさんいらっしゃいますので、政権がどれだけ大変だということも多分御経験の上の方々ばかりでございますので、私はこの際、旧政権を担われた方にも、尊敬の念も込めていろいろ呼びかけていって、国民のために成案を得るためならいろいろ党派を超えてやるべき時期ではないか、場合によってはイシュー、問題を掲げて、この三つに関してはこの一年で一緒に仕上げましょうという呼びかけを大胆にしていただいてもいいのではないかと私は思いますので、公平公正で、かつ持続可能な、国民に本当にこの仕組みをつくってくれてありがとうと言っていただける仕組みを、菅総理、一緒につくろうじゃありませんか。どうぞよろしくお願いしたいかと思います。

 その上で、もう一点、やはりちょっと気になることもお聞きしていきたいと思います。

 私は、菅総理に仰せつかっておるつもりでおりますが、党の国際局長も仰せつかっておりまして、諸外国の方と今いろいろお話ししますと、やはり外交、安全保障、日米同盟の今後、あるいは沖縄のこと、いろいろお問い合わせいただいたり、私自身も非常に心配をしているところもございます。今後、八月までに日米両国の専門家による検討、いろいろ報道ベースもございますが、十一月のAPECのオバマ大統領の訪日というのは外交的には非常にピークを迎えるのではないかということも考えております。

 そういった日程が進む中で、私はもう一刻も猶予はないと思っておりますが、日米同盟の信頼を高めつつも沖縄の負担をどう軽減させていくか、非常に重要な難しいかじ取り、前原大臣も現地へ飛んでいただいて、いろいろ御協議もあるいは御要請もいただいているようでございます。

 そうした中で、沖縄の米海兵隊のグアム移転について、アメリカの政府は、二十八日、これは日本時間の七月二十八日でございますが、環境影響評価最終案を公表して、日米両政府で合意した二〇一四年の移転完了期限を断念する方針を示したというようなことが報道ベースでもございましたが、この事実関係はどうであるかというようなことと、やはり沖縄の負担軽減というのは私はもう喫緊の課題であろうかと思います。沖縄で実施されている訓練の本土への移転が有効であると考えておりますけれども、これについての対応いかん。あるいは、過去、嘉手納から航空機の訓練移転等が実施されていると承知しておりますが、その実施状況。さらには、その嘉手納飛行場の訓練移転について、訓練移転期間中に外来機が飛来して訓練しておりまして、負担軽減がなされていないという指摘もありますが、これはどういうことなのか、見解も伺いたいと思いますし、沖縄の負担軽減に向けて具体的な取り組みは今どうなっているのか。

 先ほど申し上げましたように、もう刻々とスケジュールが来ております。ぜひとも、硬直状態を打破していただくよう御対応いただいているとは思いますが、現状につきまして防衛大臣から教えていただければと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 さまざまな課題を一気に御質問いただきましたが、まず、二〇一四年を断念しておるのではないか、こういう話でありますが、現在のところ、米政府として、二〇一四年の完了、この目標を断念したということは承知をいたしておりません。

 また、環境影響評価の最終案があって、これについて、その調書の中から二〇二〇年というような案も出ておることは承知をいたしております。それを根拠に報道関係が、二〇一四年を断念したのではないか、このように言われておりますけれども、これについては、もう既に御存じだと思いますが、そういう経過もあるけれども、しかしこれは米政府としての提案ではないというふうにも述べておるわけでありまして、我々は、いずれにしても、二〇〇六年五月のロードマップ合意の二〇一四年というものを一つの大きな目標として鋭意努力をしているというのが実情であります。

伴野委員 沖縄への負担、これはもう長年にわたって非常につらい思いをしていただいているわけでございますし、これは旧鳩山政権のときにも、知事さんに呼びかけていただいて、いろいろお話を伺っても、難しい、それぞれの事情もある。ただ一方で、あの席上いらっしゃっていなかった知事さんも若干いらっしゃったというようなこともあり、私は、国を挙げて沖縄への負担軽減というのは考えるべきだと思っております。

 また一方で、長年基地を押しつけてきたという発想からもうそろそろ根本的に脱却をしていただいて、例えば、私はダブルスタンダードでも構わないと思いますが、日本が得意とする医療とかあるいは環境とか情報通信、観光の部分について沖縄を特化して、日本のナンバーワンというものをすべてそこに集めて、例えばですよ、これはネーミングは何でもいいんですが、沖縄スマートアイランド構想なんということで少しぶち上げてみるのも私は積極的な菅総理におかれては必要なのではないかと思います。

 お考えがあればお聞かせいただけると思いますけれども、今の沖縄に対する決意だけ述べていただいた方が、これから少しでも沖縄に柔軟な姿勢をとっていただくためにも必要ではないかと思います。短くで結構です、沖縄の皆さんに。

菅内閣総理大臣 普天間の問題を含め、私もこういう立場になりましてから、かなり直接に各関係の省庁の担当者を呼んで、あるいは閣僚会議を開いて、いろいろな現状把握に努めているところであります。

 そういった意味で、今防衛大臣からもお話がありましたグアムへの兵員等の移転、このことは、そのとおり実行されることによって沖縄の相当の負担軽減にもつながることでありますので、何とかそうした軽減につなぐことについて計画がおくれることがないように、我々としてできることはやっていきたい、こう考えております。

 加えて、今お話がありましたように、沖縄においてのいろいろな政策について、例えばあそこに非常に高度の新しい大学院をつくるといったことも進んでいたり、あるいはもともと長寿の国でもありますので、そういったことの特性も生かした形で、どのような形でそうした沖縄という地域がより沖縄に住む人たちにとっても働く場が多く、そして豊かになれるような、そういう点についてはあわせて積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。

伴野委員 私が申し上げるまでもなく、政治はすべて結果だと思っております。国民の代表として御夫人が「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」と、ぜひ御自身を振り返るためにも読んでいただきたいとは思いますけれども、国民が注視をしております。我々、総理に限らず、大臣、政治家、あしたしかばねになっても、あした死を迎えてしまってもいいようにきょう全力を尽くすということが今私ども民主党に求められていることではないかと思います。政権も政治家も長さではないと思います。一カ月後、二カ月後、一年後何かをやるのではなく、きょう、あす何をやるかが求められているところじゃないかと思います。そして、そのやったことに対して、私は歴史が評価するんだと思います。私ども政治家は、総理初め、歴史と勝負しなければならないと思います。国民が期待していただいているうちに結果を出そうじゃありませんか。総理、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鹿野委員長 この際、山口壯君から関連質疑の申し出があります。松原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 菅総理、きょうは、私たちの民主党のマニフェストについてどういう覚悟で取り組んでおられるのか、そして、それを踏まえて菅総理がどのような新しい国づくりを目指しておられるか、すなわち国家観というものについても伺いたいと思います。

 私たち民主党は、二〇〇九年の総選挙で、国民の生活が第一のマニフェストを掲げて戦い、多くの賛同をいただいたのは、今の日本の閉塞状況について、これを打ち破ってほしいという国民の願いがあるからだと思います。

 マニフェストでは、まず、無駄遣いをなくす。それと同時に、子育ての心配をなくしてみんなに教育のチャンスをつくる。そして、年金、医療、介護の不安をなくす。また、地域主権の確立。そして、人を大事にする新しい経済を実現するとしています。私たちはその出発点を変えていません。ですね、総理。まずこの点を伺わせていただけますか。

菅内閣総理大臣 冒頭の質問にもお答えしましたように、まさに民主党の政権、そして私の政権においても、国民の生活が第一というこの基本的な考え方、それに加えて、元気な日本を復活させる、この二つのスローガンというか方向に向かって具体的な政策、予算編成等を進めていきたい。全く当初の国民の生活が第一という考え方は変わっておりません。

山口(壯)委員 私たちは、この二〇〇九年の総選挙のマニフェストというのを事あるごとに参照して、そして総選挙で約束したことをできるだけ実現しようと努めているわけです。

 順番に見ていきたいと思うんですけれども、初めに無駄遣いの根絶というのがあります。昨年の総選挙のマニフェストでは、無駄遣いをなくすための政策として、例えば「特別会計、独立行政法人、公益法人の仕事を徹底的に見直します。」とあるわけです。これは、私はきょうは事前の質問通告はしていませんけれども、蓮舫大臣にもお伺いしたいと思うんです。

 昨年秋からのいわゆる事業仕分け作業で一部行ったのは事実ですけれども、まだ道半ばです。例えば特別会計について、これは蓮舫大臣、質問の事前通告はしていないわけですけれども、今後どのように見直すつもりか、答えていただけますか。

蓮舫国務大臣 特別会計の見直し、昨年の総選挙のマニフェストでも私たちは掲げさせていただきまして、この秋、十月にも行ってまいりたい。そのときには、これまでのように行政刷新会議だけではなくて、党の政調、玄葉会長にもお願いをして、まさに山口委員が党の政調で、この特別会計、プロジェクトチームを立ち上げたときには座長になってくださるという報告も伺っておりますので、政府・与党一体となって取り組んでまいりたいと思っています。

山口(壯)委員 この点、若干内心じくじたるものがあるというのは、この秋に我々特別会計の見直しをやるとして、ただ、夏の概算要求の時点では、総選挙のマニフェストで言っていた、特別会計も含めて総予算二百七兆円を全面組み替えするということがこの夏の時点では間に合わないということなんですね。しかし、秋の見直し結果というものを、年末の予算編成では、間に合うものについて反映させるべきだと思うわけですけれども、蓮舫大臣、いかがでしょうか。

蓮舫国務大臣 まさに委員御指摘のとおりに、我々が事業仕分け等を通じて不要不急の事業だと思われたものは思い切って廃止をしていく、あるいは内部にたまっているものは国庫に返納していただく。今まさにその途中経過を歩いているところでございまして、しかも、昨年のお約束のときには単年度ですべての財源を生み出すということではございませんので、四年間かけてしっかりと内容を出していきたい。その途中経過にいる。特別会計のプロジェクトチーム、党と一体となって行っていく、洗い出しもぜひしっかり行わせていただきたいと思っています。

山口(壯)委員 もちろん、今蓮舫さん言われたように、次の年度の予算についてはさらに深掘りができるというふうに思います。

 先ほど他の委員からも聞かせていただいたことですけれども、独立行政法人あるいは公益法人の仕事の見直しの方はどういうふうにとらえておられるでしょうか。蓮舫大臣、いかがですか。

蓮舫国務大臣 独立行政法人に関しましては、ことしの四月に事業仕分けを行いまして、まず、民間企業並みの算定基準になっていない引当金というものが相当数見られました。この部分は、今、各府省庁にお願いをしまして、厳しい引当金の計算をもう一度していただきまして、過剰に内部留保となっているものはぜひ国庫返納していただきたいというお願いはさせていただいているところであります。

 また、独法におきましては、それぞれの個別の事業を仕分けでも見てまいりましたけれども、本当に国が行う必要があるのか、独法が行う必要があるのか、あるいは民間で行い得るものではないのか、この視点をぜひ、すべて横ぐしという形で、各所管省庁の持っておられる独法の事業はゼロベースで今見直しをしていただいております。

 あるいは、公益法人におきましても、同じように過剰にたまっているものはぜひお返しをしていただきたいという要請と同時に、例えば権限付与におきましても、権限を付与したときにはその権限を行い得る事業能力を持っている公益法人は一つだったかもしれませんが、それから時代がたって、民間でも十分に対応ができるようなところはそこは民間に開放するべきではないか、こういう視点でまさにゼロベースで見直しを行っているところでございます。

山口(壯)委員 その見直しの結果というものがある程度来年度予算に反映される、こういうことでしょうか。これはむしろ野田大臣にお聞きした方がいいんでしょうか。今、独立行政法人あるいは公益法人の見直しをある程度やったと。そういうことを来年度の予算にもある程度反映していきたいなというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

野田国務大臣 反映できるものは、すべて二十三年度編成に生かしていきたいと思います。

山口(壯)委員 先ほど蓮舫大臣の方から、行政刷新担当大臣として、独立行政法人の見直しということも言われました。私は今、民間に任せられるものは民間にと同時に、例えばJICAとかあるいは国際交流基金とか、むしろこれは国がもっともっと自分の戦略的なツールとして使った方がいいんじゃないかという気もしますから、ぜひゼロベースで忌憚ない見直しをやっていただきたいと思います。

 次は、天下りの根絶というものがここに書いていますね。天下りの根絶については、年間二千五百人と言われる公務員の天下りあっせんを実質的に禁止というところまでは既に我々はやりました。あとは、いわゆるあっせんによらない隠れた天下りが残っていると言われていますけれども、総理、この点も我々はやっていくというふうに思ってよろしいんでしょうか。

原口国務大臣 総理がお答えになる前に、事実だけ。

 三カ月前に私、指示を出しまして、いわゆるあっせんによらない天下りと言われる疑いがあるもの、一つは人質型天下り、検査する機関が検査される側に再就職をしているもの、あるいは持参金型天下りといって、補助金や交付金を持って、そこに再就職を受け入れると、そこの予算がふえるもの、それから創業型天下り、こういったものについての調査がほぼ完了いたしました。

 今、山口委員がおっしゃるように、根絶に向けてしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えています。

山口(壯)委員 今、天下りの話を原口大臣から聞きました。あと、総理、我々は国家公務員の総人件費を二割削減ということもうたっています。あるいは、先ほどもお答えになられました、衆議院と参議院のいわゆる定数の削減ということも言われました。

 この辺について、天下りの話、あるいは国家公務員の総人件費の削減の話、あるいはこの定数削減の話、総理、これを再度、おれたちはやるんだということであれば、はっきりとおっしゃっていただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 それぞれの分野で取り組みを進めておりますけれども、例えば総人件費の問題では、特にいわゆる地方の出先機関の採用、新採用を大幅に削減する中で、企業の場合でも、重要でない部門の人を削減するところから、新卒、新入社員の削減をするところから始めますが、そういう形の作業が既にその面ではスタートをいたしております。

 また、天下りについては、この間たくさんの議論があります。確かに現役出向というものについても議論がありますが、私は、財務大臣当時も、ある意味で外国の例もそうですが、民間に出てまた場合によっては役所に戻ってくる、それはその都度退職金をもらうといったようなことはもちろんやらせるわけにはいきませんけれども、そういった民と官が、ある意味でリボルビングドアといった行ったり来たりするようなことは、私は両方の分野において好ましいと思いますし、そういうことも活用しながら、いわゆる従来のように、何回も退職金をもらうといったような形を含めた天下りは、これは根絶していかなければならない、このように思っております。

山口(壯)委員 そういう意味では、このページについては我々は予定どおりきちっとかなりやっているというふうに思います。

 さらにその次のページでは、子育て、教育というものがあって、一番議論になっているのは子ども手当だと思いますけれども、我々は、中学生以下の子供一人当たり月額一万三千円の支給というのを開始したわけです。そして、この初年度で半額支給というのは、もともとのマニフェストでもそのとおり、予定どおりだったわけです。

 満額の二万六千円までいくかどうかということについて、総理、これはどういうふうに国民の皆さんに説明されますか。

菅内閣総理大臣 今、山口議員から言われましたように、初年度として月一万三千円の子ども手当を創設して、いろいろこれも御意見はありますが、少なくとも該当された方からはかなり喜んでいただいているという認識を持っております。

 また、二十三年度以降の手当について、現行の一万三千円からの上積みを目指していきたい。その場合に、その上積みを、いわゆる現金の給付で行うのか、あるいは、保育サービスの充実など、いわゆる現物給付を含めて行うのか、これらについてはよく検討を今していくということでお願いをしております。

山口(壯)委員 この子ども手当というのは、私は、もともとの目的は少子化防止ということですけれども、実はデフレの脱却についても非常に関係があると本当は思うんです。

 というのは、先ほど、いろいろな意味で効果があるということも触れられましたけれども、今のデフレというのが賃金デフレということで、例えば、中国の賃金も安い、日本の賃金も下どまっている、だから個々の家計の可処分所得が低くおさまっていて、これが消費の低迷につながっている。したがって、利子率をいじるだけではこういうことというのはなかなか解決しない。個々の家計の方に直接手を差し伸べていく、そういうことが今のデフレの脱却には非常にきくわけですね。

 だから、そういう意味では、子ども手当、あるいは高校無償化、あるいは農家の戸別所得補償、これはきちっと私はきいてくると思います。その高校無償化というものもこの点でスタートしました。

 それから、希望者全員が受けられる奨学金制度というものもここに書いてあるわけですけれども、今年度予算でまずは貸与者を三万五千人ふやしたわけですね。

 そして、さらにここに書いてあるのは、生活保護の母子加算復活、そして父子家庭にも児童扶養手当ということに触れてあるわけですけれども、生活保護の母子加算というのは去年の十二月に実現しました。そしてまた、今まで給付されていなかった父子家庭への児童扶養手当は、八月分から支給開始されるわけです。実際には、八、九、十、十一と、十二月にこれを受け取れますから、そういう意味では効果は、もう少しかかりますけれども、確実に家計の可処分所得にしっかり手を突っ込んでいくことになると思うんです。

 そういうことを踏まえると、私たちは確実に、どうもいろいろマニフェストというのを実行しているのではないかというふうに思うんです。

 年金、医療、介護の不安をなくすということについては、まず年金について、初めの二年間で消えた年金問題について集中的に取り組むとしていたわけで、今その段階なわけですね。そして、その後の、年金制度を一元化して、そして月額七万円の最低保障年金を実現するということについては、長妻大臣、事前の質問通告はしていませんけれども、今どういうふうな検討状況でしょうか。

長妻国務大臣 消えた年金問題については、既に七百万人以上の方の記録が戻ったということで、今も毎月三万人程度の方の記録を戻すということで鋭意取り組んでおります。

 今お尋ねになりましたのはこの制度の問題でございますけれども、これについても、最低保障年金そして一元化ということで、年金の原則の七原則というのを発表して、広く国民の皆さんから議論をいただこうということで、第一回目、厚生労働省の講堂で、一般の方に来ていただいて議論も始めております。これについては、必要があれば超党派の議論も含めて、法案を平成二十五年に提出するというスケジュールで詳細設計に今後入る。ただ、その前提として、原則について広く意見をいただくというような段階に今なっております。

山口(壯)委員 それから、社会保障費二千二百億円削減、これは、前の政権の方で行われたものを我々は廃止するということをマニフェストにうたって、この点は、菅総理、今年度予算で我々は実現したわけですね。約束を果たしたわけです。そして、来年度予算においても守られる、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。

菅内閣総理大臣 おっしゃるとおりで、今回、よく一割削減という表現をされますけれども、この自然増の部分については、それはそのまま認めていくという基本的な方針に立っております。

山口(壯)委員 長妻大臣、後期高齢者医療制度の廃止、先ほども少しあったわけですけれども、これについて今どういうふうになっていますでしょうか。

長妻国務大臣 後期高齢者医療制度につきましては、これは、七十五歳以上の方だけを年齢で区切って別の保険にする、病院にかかりやすい方を一固まりにして保険が本当に成り立つのか、こういう問題意識のもと、その年齢区分を廃止するということで、保険は一つにするということであります。

 これは二段階で考えておりまして、まずは、七十五歳以上の方だけに着目した診療報酬体系というのも同時に入りました。これは、七十五以上の人だけ入院が長引くとほかの年齢よりも病院に入る収入が少なくなる、これは何で七十五以上なんだということで、そういう年齢に着目した年齢差別の診療報酬体系十七項目は、ことしの四月一日に全部廃止をいたしました。

 そして、制度については、今、中間取りまとめ案というのを出しておりまして、国民の皆さんから広く御意見をいただいて、中間取りまとめということを出し、そして年内に最終取りまとめを出して、来年、国会に法案を提出しようと考えております。

 その間に、二回の大規模アンケートや公聴会を含めて広く国民の皆さんの御意見をいただこう、そして平成二十五年に後期高齢者医療制度を廃止して新しい制度を同時にスタートする、こういうスケジュールで取り組んでおります。

山口(壯)委員 具体的に順番にやっているということだと思います。

 そしてまた、我々がマニフェストで約束していた医師不足の解消、あるいは新型インフルエンザ、あるいは肝炎の対策ということも、例えば肝炎医療費の自己負担限度額を一万円に引き下げる等、着実に実行していると思うんです。そして、介護に当たる人材の確保のためのヘルパーさんの給料の引き上げも、約束した額には及びませんでしたけれども、やっている。こういうことですね。

 あるいは、その次のページの地域主権ということについても、我々は進んでいると思います。

 ただ、大きな方向としては、中央政府は外交とか安全保障に限って、地方でできることは地方に全部任せていく、こういうことは四年あるいはもっとかかると思うんです。だけれども、その方向でやるということでよろしいわけですね、菅総理。

菅内閣総理大臣 おっしゃるとおり、〇九年のマニフェストについて、その実現をできる限り誠実に行っていく。もちろん、当初の予定どおりではないもの等ありますけれども、そういったものについては丁寧に国民の皆さんに説明する、そういう考え方で臨んでいきたいと思っております。

山口(壯)委員 これは原口大臣の所管だと思いますけれども、国直轄の公共事業における地方の負担金の全廃に向けて、二〇一〇年度に、我々は、道路、河川などに関する、維持管理にかかわる負担金を廃止しました。

 あるいは、ガソリン税については、暫定税率廃止は若干調子が悪いですかね。高速道路無料化についても一〇〇%は難しいかもしれませんけれども、前原大臣、これも事前通告を全くしていないんですけれども、この高速道路の無料化について、一〇〇%は難しいかもしれませんけれども、どういうふうにお考えか、お聞かせいただけますか。

前原国務大臣 マニフェストには、社会実験を行いながら段階的に原則無料化をしていくということであります。

 この原則という意味は、首都高速道路や阪神高速道路は当初から除外をしておりますが、それは、通行量の多いところを無料化すると、むしろ混雑をして、物流コストの低減や渋滞緩和というものに逆行するということであります。

 そういう意味では、他の道路においても混雑状況、交通量を勘案するということと同時に、今二割の路線で社会実験をしておりますけれども、交通量が飛躍的にふえておりますけれども、この土日などにおいては特に出口で渋滞が発生をしているということで、社会実験でございますので、地域の方々のメリット、デメリットというものをいろいろとお話を伺いながら、段階的にどこまで広げていくかということを、真摯にお話を伺いながら社会実験を通じて最終形を決めていくということでございまして、マニフェストに書いてあることについては、着実に実行しているということでございます。

山口(壯)委員 さらに、農業の戸別所得補償制度については、今年度から水田農家を対象にモデル事業を開始したわけです。

 こう見てくると、総理、この衆議院選のマニフェストの進捗状況は悪くはありません。そして、私たち民主党は、この昨年の総選挙のときのマニフェストの約束をかなりきっちり守っています。そして、今後とも頑張る、そのことに変更はない。まずは無駄をなくして、事業仕分けなどによる無駄の根絶、あるいは議員定数の削減、そして公務員の制度改革が先、そういうことですね、菅総理。

 ただ、さきの七月の参議院選挙では、直前に総理が若干唐突に消費税一〇%の話を持ち出されたので、我々が、まずは無駄をなくすんだ、議員定数の削減をまずやるんだ、公務員制度改革が先なんだという点がまるで変更されたかのように受けとめられてしまったというふうに思うんです。そして大きな誤解を招いたと思うんです。

 しかし、我々はこのマニフェストの根幹は変更していない、そのような変更はないということで、総理、よろしいわけですね。

菅内閣総理大臣 御指摘をいただいたように、参議院の選挙では、私が唐突とも受けとめられる形で消費税に触れたことが、大変国民の皆さんにも、今お話があったように、本来、まずは無駄の削減を徹底的にやるということと含めて財政再建も考えなければならない、そういう趣旨を含めて申し上げたつもりでしたが、何かすぐにも消費税を上げるかのように受けとめられたことは、私自身、大変そういう誤解を招いたことについて申しわけない、こう思っております。

 今、それぞれの項目について山口委員の方から御指摘がありましたが、相当程度前進をしているということは、私もそのとおりだと思います。これから、もともと四年間かけて実現をするという形で〇九年のマニフェストは提案をさせていただいておりますので、それを誠実に実現するために全力を挙げたい。もちろん、中には、どうしても難しいものがあった場合には、その理由をしっかりと国民の皆さんに説明して御理解をいただけるようにしていきたい、こう考えております。

山口(壯)委員 菅総理の肝いりで中期財政フレームも発表されました。そして新成長戦略が発表されたわけですね。

 それで、総理がこの後、五年後、十年後にどういう国家でありたいと願っておられるか。そういうことも、短くて結構ですけれども、お聞かせいただけますか。

菅内閣総理大臣 これも冒頭の御質問にもお答えしましたが、基本的には、まさに〇九年のマニフェストにもありました国民の生活が第一、そしてこの参議院の選挙でも申し上げました元気な日本を復活させる、こういう方向を目指してあらゆる政策努力をしていきたいと考えております。

 その中で、三つの大改革を具体化していきたい。それは、経済の成長と財政再建と社会保障ということで、今そこに提示をされた新成長戦略は、まさにそれらを牽引していく先頭の機関車と位置づけて、これに沿った形での予算編成をぜひお願いしたいと思っております。

山口(壯)委員 今、今後の国のイメージとして、どういうふうに新しい富を生み出すかということに言及されました。

 この二十一のプロジェクトを見た場合に、世界の人、物、金が日本に来たくなるような、そういう国にしたいという願いが込められていると思います。

 世界経済の流れは、好むと好まざるとにかかわらず、グローバル化あるいは知識集約産業化ということが進んでいると思うんですね。しかし、我々日本は残念ながら乗りおくれていると思うんです。日本の中だけで頑張ってもこの衰退から抜け出せないと思うので、我々が、この日本が繁栄していくためには、日本の税金だけで雇用を生み出そうとするのではなくて、むしろ、グローバル化が進む経済の中で、世界からお金、会社、あるいは人材を呼び込んで日本で富を生み出してもらう、こういう発想が必要だと思うんです。そういう意味で、キーワードは開国です。そして、こういう日本にしていくのが我々政治家の役割だと思うんです。

 それで、我々の、日本人の排他性が邪魔になっていないかどうか、あるいは精神的に鎖国状態に陥っていないかどうか、そういうことも振り返りながらやっていきたいと思うんですけれども、我々は、さまざまな規制がまだあるために、いい企業が日本に投資するには難しいかなということもあるんだと思います。そういう意味で、知識集約型で立派な製品をつくるという企業を日本に呼び込めるかどうかというのが大事だと思います。

 そしてまた、内需ということがよく言われるんですけれども、我々一億の日本だけを見るんじゃなくて、十一億のインド、十三億の中国、二十四億、そしてASEANの六億を足して三十億、日本の一億と足したら三十一億の内需をつくっていくというような発想ということであれば、これは、我々が言っている東アジア共同体ということも非常に大事だと思うんです。そんなの無理だと言っていたら、日本がやらなきゃ中国がやるだけのことですから、そういう意味で我々はきちっとやっていかなきゃいけないと思います。

 こういうふうに見るとき、この二十一のプロジェクトというのは非常によく考えられていると思いますけれども、国をもっとオープンにしていくんだというところをもっともっと私は出すべきじゃないかと思うんです。

 そして、この中にある環境未来都市あるいはパッケージ型のインフラ海外展開ということに関係するんだと思いますけれども、私も、去年からことしにかけて、いわば特命係長よろしく国家戦略室のお手伝いをさせてもらっていたわけですけれども、その中で、東アジア共同体構想につながる具体的プロジェクトとして、連雲港という、青島と上海の間にあるところにエコタウンあるいは物流のセンターということでずっと進めていました。

 そういうものを具体的にやるということが大事だと思うんですね。私も南京の省長さんまで会いに行って、あのところを保税区域にしてください、そうしたらファンドを組んでどんどん来てくれますからということで、今現実にそれが進んでいます。

 そういう意味で、よく中国の活力を取り込むといいますけれども、こういう具体的プロジェクトなしにしてはできないと思うんです。そういう意味では国家戦略室の存在というのはとても大事ですね。

 我々はよく政治主導ということを言いますけれども、政治主導の中身というのは、要するに官僚をうまく使いこなす、これが政治家の役割であり、それが政治主導の中身だと思うんですね。

 そういう意味では、国家戦略室あるいは局というものが非常に大事だと思うんですけれども、その担当大臣でもあった菅総理はどういうふうに思われますでしょうか。あわせて、政治主導改革法案の今後についてもお聞かせいただけますか。

菅内閣総理大臣 今、アジアの成長にいかに日本が連動していくのか。歴史的にすごい発展を今やアジアが遂げていますから、その中にある先進国として、私は非常に大きなチャンスがあると。今いろいろお話をされた、まさにそういうことで努力をしていきたいと思っております。

 その中で国家戦略室の役割についてお尋ねがありました。一部の報道で何か格下げといったような報道がありましたが、全くこれは逆だと私は認識をしております。

 つまり、本来総理の直属という形でこのマニフェストには出ているんですが、従来、私が担当していたときは、人もゼロから始めたものですから、直属といっても、まだ総理が直接関与されるところは非常に少なかったわけであります。やっと、その後の仙谷さんが担当大臣をし、今荒井さんが担当大臣をする中で、スタッフも、まさに政治任用の中で民間からも来ていただいて、三十名前後のスタッフになっております。

 ポイントは、まさに直属ということだと思うんです。つまり、総理のところに上がっていく情報というのは、ややもすれば役所ごとに上がっていきます。役所は、御存じのように、自分の役所がやりたいことを総理に伝えるけれども、都合の悪い話は上がってきません。そういった点で、まさにこれこそ総理が考えることに必要だということを直接伝えていただく。

 そういう中から、今言われたような政治主導、最終的には、総理の判断というものにそれが反映されてくることによる政治主導がよりはっきりと実現できるもの、こう考えております。

山口(壯)委員 最後の質問になりますけれども、税制に関して、グローバル化した今の経済あるいはボーダーレス化した世界では、いい企業を呼び込むために税制改革というものをてこにした誘致活動競争が行われているわけですね。企業としたら、来るなら、例えば法人税が安い方がいいに決まっているわけです。

 例えば、税率下げれば税収ふえるという言い方もありますけれども、たまたまきょうの日経新聞の「経済教室」に慶応大学の土居さんが書かれておられますけれども、法人税の逆説ということで、コペンハーゲン大学のピーター・ソーレンセンさんという人が、要するに法人税を下げたら結局税収が上がった、こういうことがよく検証されているということが、これはごく最近、〇七年に発表されたそうなんです。

 そういう意味で、我々は、抜本的な税のあり方というものを考える場合に、むしろ逆説的に、法人税を下げて経済がよくなれば税収も上がるというようなことも加味した上で、いろいろこれからの議論というものをやっていく必要があると思いますけれども、最後に、この点、総理、お答えいただけますか。

菅内閣総理大臣 既に、法人税を含む税制のあり方については、政府税調での専門家委員会でも議論をしていただいております。また、新成長戦略の中でも、法人税については、今、山口議員が言われたような面も考慮しながら、しかし、課税ベースのあり方もあわせて考慮しながら、そういった、やや他の国に比べて水準が高いということも念頭に置いて改革をすべきだ、そういう方向性での議論が進んでいる、こう承知しております。

山口(壯)委員 済みませんでした、あとアフガンと防衛白書もお聞きしたいと思いましたけれども、時間がないのでここで終わります。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

鹿野委員長 この際、お諮りいたします。

 参考人として日本郵政株式会社専務執行役藤本栄助君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として総務省情報流通行政局郵政行政部長福岡徹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鹿野委員長 この際、松野頼久君から関連質疑の申し出があります。松原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松野君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、当委員会におきましてこうして質疑の時間をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 きょうは、郵政問題を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 前国会におきまして、私ども、郵政改革法案を出させていただきました。残念ながら、廃案となってしまいました。その郵政改革法案を出すに当たり、前経営陣、いわゆる郵政民営化が行われてから今日までの、今の郵政の現状というのを少しおさらいしたいと思います。

 例えば、平成十六年度末から比べて、郵便貯金というのは、二百十九兆円あったものが百七十六兆円に、要は四十二・九兆円減少しております。そして、簡易保険に関して、百七十八・四兆あったものが、これも百二十四・四兆、五十四兆円。郵貯と簡保を合わせて九十七兆円減少しているんですね。そして、郵政が持っていた資産、社宅だとか土地だとかかんぽの宿だとか、こういう施設に関しましても、平成十七年から、約四百八十三施設、最後の七十九物件、これは結局、鳩山総務大臣のときに売却を中止いたしましたけれども、約四百物件売却をしているんです。

 本来であれば、民営化をすれば企業の経営がよくなる、そのはずなんですけれども、実際に、郵貯、簡保の資金は減少する、そして資産である不動産を含めた資産の売却は行われる。明らかに、民営化をすることによって郵政事業が後退をしているわけです。

 そして、私は、野党の時代からずっと、この土地の売却、そしてまたかんぽの宿の売却に関して非常に不透明なものがあるのではないかということを指摘させていただいておりました。きょうは、その観点から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、原口総務大臣、ことしの五月に、前経営陣に対する経営の内容について、ガバナンス検証委員会というものをつくられて、そして検証結果を公表されました。その検証、たくさんあるんでしょうけれども、大枠で幾つか、こういうものを検証したというのがあったらお答えをいただきたいと思います。

原口国務大臣 お答えいたします。

 松野委員がおっしゃるように、民営化によって企業価値が高まり、税金を一円も入れずして国民共有の財産であるネットワークが維持される、これが目標であったはずですが、逆にネットワーク価値は弱まり、そして郵政事業における持続可能性というのが侵されている、こういう認識をしています。

 今御質問の検証委員会、五月十七日に公表しましたけれども、一言で言うと、民営化ということは名ばかりで、実は私物化であったのではないか、ガバナンス、統治というものが崩壊をしていたのではないか、そういう危惧を持っています。

 具体的に言いますと、収益性を軽視し、迅速性を重視した事業選択、執行陣の不適切な運営によって取締役会が形骸化して、取締役会による執行陣への十分な監督機能を発揮できなかった等が明らかになっています。

 個別事案として、次の三つを申し上げます。

 一つは、委員も追及をされておられましたが、かんぽの宿の譲渡については、鑑定評価がたったの一週間で、三百・七億円、七十施設から、九十七・六億円、約六八%も減少し、当該期間に鑑定した業者が二度も内示を日本郵政に提示している、こういう問題です。

 それから、JPエクスプレス社の関係では、当初の基本合意の締結に至る過程では、郵便事業会社が不在のまま日本郵政主導で決定し、また、実際に業務を担当する郵便事業首脳陣が当該計画に反対をする中、強引に日本郵政が手続を進めて、今、一千億近い赤字が出ているわけです。

 また、博報堂の関係では、責任代理店選定のためのアドバイザーとして博報堂出身者が関与し、事務方幹部が博報堂から相当数の回数の飲食等の接待を受けていた疑惑等の事実が判明しております。

 つまり、ガバナンスが崩壊しているわけです。私は、この職になりまして、日本郵政に対して、ガバナンスの評価と改善点の検討を依頼したところでございます。

松野(頼)委員 最初におっしゃっていただいた、まず、かんぽの宿の売却問題から少しお伺いをしたいと思います。

 この検証委員会の報告書で、総務省が出されている中で、セラーアドバイザー、いわゆるアドバイザーから、「再三、処分の「中止・延期」等を選択肢として提言されており、また、処分方法についてのアドバイザーであった日本政策投資銀行から「処分価値の増大」等の観点から個別売却を助言するなどされていたにもかかわらず、早期・一括処分が行われた。」

 要は、専門家は、バルクで売るのではなくて個別に売った方が高く売れますよというアドバイスをしていたにもかかわらず、当時の経営陣は早期売却を行ったということでございます。

 ちょっと個別に幾つか聞いてまいりたいと思います。

 例えば西日本所在の三十一施設、これが十八年度鑑定では百三十六億三千万というふうに不動産鑑定が行われておりました。そして、それが十九年の八月二十四日、一次内示のときには七十五億五千万円、そして、これはたった四日しかたっていないんですけれども、不思議なことに、七十五億だったものが六十億四千万円に、鑑定評価がたった四日で変わっているんですね。そしてまた、その三日後、最終的には、鑑定評価結果として三十九億八千万円。要は、一週間で七十五億円から三十九億円へと不動産鑑定評価が変わっているんです。

 ほかの物件も同じです。東日本所在の三十一施設、当初九十九億円だった鑑定評価が、これも十九年八月二十四日、八十六億八千万円に変わり、その六日後、四十九億五千万円に変わり、その一日後、四十一億九千万円へと不動産鑑定評価が変わっているんです。

 これは非常に不思議な話なんですね。日本郵政側が果たして一円でも高く売ろうかという意思が全く感じられないどころか、逆に、安くしよう安くしようというようなことをしたのではないかという疑念を持たれているわけです。

 日本郵政にきょうは来ていただいておりますけれども、鑑定士側に価格に対して何か指示をしたことはありますか。

    〔委員長退席、伴野委員長代理着席〕

藤本参考人 お答えいたします。

 鑑定評価書の提出に当たりまして、鑑定評価の内容につきまして事前に提出をするという契約内容になってございました。鑑定業者と適正な時価ということをめぐりまして一定のやりとりがあったというふうに聞いてございます。

 公社は全国各地に多数の不動産を有しておりまして、減損処理が十七年に始まったばかりで、当初、鑑定評価業者のばらつきがございましたので、事前提出のそれを避けるという趣旨のものであったというふうに聞いてございます。

 その結果、先生、今お話がございましたように、前年度の評価額、これは東西合わせてでございますが、三百億七千万に対しまして、当初内示されたものが二百二十一億九千万、最終内示が九十七億六千万円というふうになってございます。

松野(頼)委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、この鑑定士に対して、日本郵政側から、その鑑定をもっと下げてくれとかいう指示を出したことはあるかないかということを聞いているんです。

藤本参考人 お答えいたします。

 指示という言葉が適切であるかどうか私は判断できませんが、これで売却可能な価格であるのかどうかということで議論がなされたというふうに聞いてございます。

松野(頼)委員 これは、総務大臣、いかがでしょうか。

原口国務大臣 不動産鑑定というのは事実に即して適正に行われるものでございます。

 今、日本郵政が、これで売却可能なのかというようなことを言ったということでございますが、鑑定士からの発言も、事業の継続が前提なのでもっと収益性を重視すべきではないか、まだ高いのでもう少しシビアに見てほしい、億を超える施設は売れないので見直してほしい、本当に売れる価格なのか収益性を重視すべきと、今、日本郵政、この方は旧経営陣のお一人だと思いますけれども、お話しになりました。とんでもない話だと思います。鑑定がこういう形でゆがめられるとしたら、鑑定評価の意味そのもの、意義そのものが疑われる、そういう事案ではないかと推量をしています。

    〔伴野委員長代理退席、委員長着席〕

松野(頼)委員 これは資料をお配りしてありますけれども、不動産鑑定評価に関する法律というのがございます。不動産鑑定というのは、不動産の客観的価値に作用する諸要件に関して調査もしくは分析を行い、不動産の利用、取引もしくは投資に関する相談に応じる。要は、不動産鑑定士というのは国家試験でなぜ与えているかというと、第三者が客観的な価値を割り出すために、国家試験を持った不動産鑑定士さんが客観的な価値を出すわけです。

 施主が安くしてくれとか施主の働きかけに応じて鑑定の価格が変わることというのはあるんでしょうか。国土交通省、お答えいただければと思います。

前原国務大臣 一般論でまずお答えをいたしますが、不動産鑑定評価に当たりまして、依頼者側から評価額に関する額が示されて、それによりまして不動産鑑定士が評価額を変更するということは、不動産の鑑定評価に関する法律に言う不当な鑑定評価として、懲戒処分に該当するおそれがございます。

松野(頼)委員 そういうことなんですよ。

 特に、この物件、八月三十日には先ほども申しましたけれども四十九億だったものが、たった一日で四十一億に落ちているんですね。もっと言うと、七日間で八十六億のものが四十一億に落ちているんですよ。その間にどういう働きかけがあったのかということ。要は、日本郵政は働きかけたわけですね。もう一回答弁してください。

藤本参考人 お答えをいたします。

 若干繰り返しになりますが、何が正しい、適正な鑑定評価額であるかということについてお話を申し上げたというふうに聞いております。

松野(頼)委員 ちょっと今の答弁よくわからないので、もう一回答弁してください。

藤本参考人 冒頭申し上げましたが、契約上、事前にドラフトを提出する条項となってございました。それは、時価についてのばらつきを避けるとか、そういったことを避けるためにやられた措置でございまして、一定のやりとりをするということは、本件におきましては前提とされておったというふうに思っておるわけでございます。

 それで、具体的に逐一承知しているわけではございませんが、鑑定評価額が適正であるのかどうか、仮に評価額が実際に売却できる価格より高いというふうになった場合には、これは仮定の話でございますが、それ以降、要するに民営化以降、売却をしたときに損が出る、そういったことを経理上避けるというのがもともとの鑑定評価あるいは減損の趣旨であったろうか、そういうふうに理解をしてございます。

松野(頼)委員 要は、不動産鑑定という鑑定士が出す鑑定評価というのは客観的で一つでなければいけないんですよ。それを、鑑定評価では幾らだけれども施主が幾らで売却するというのは、それは自由です。ただ、鑑定評価がどんどんどんどん一日ずつずれていって安くなっていくというのは、これは明らかに不動産鑑定士法違反だと僕は思います。

 委員長、この鑑定をした不動産鑑定士は法律に違反している疑いがございますので、当委員会にぜひ参考人として呼んでいただきたい、このことをお願いいたします。

鹿野委員長 理事会で協議をいたします。

松野(頼)委員 そして、先ほど大臣が若干おっしゃいました。そのことに対して、会計検査院もこの土地及びかんぽの宿の売却に関して指摘をされていますね。会計検査院はどのような指摘を行ったのか、御答弁いただけますでしょうか。

真島会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 昨年四月、参議院決算委員会におきまして、簡易生命保険の加入者福祉施設等の譲渡等について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請することが決定されまして、要請を受諾しました会計検査院は、本年三月、会計検査の結果について参議院議長に対して報告しております。

 お尋ねのありましたかんぽの宿七十施設と社宅九施設の売却に係る契約は、社員の雇用維持を条件としたことから、かんぽの宿等の事業に関して有する権利義務を承継する会社を日本郵政株式会社から分割して新設し、その株式を譲渡する株式譲渡契約の形をとったもので、当該契約は二十年十二月にオリックス不動産株式会社と締結され、二十一年二月に解約されております。

 本件株式譲渡契約について検査いたしましたところ、契約のプロセスは、実施基準、マニュアルなどが定められないまま進められていたことから、譲渡価格の公正性等が確保されたとは必ずしも言えない状況となっておりました。この旨報告しております。

松野(頼)委員 要は、会計検査院も価格の公正性が確保されたとは言いがたいというふうに答弁をされているんですね。

 そしてまた、きょうは財務省に来ていただいておりますけれども、極端に安い市場価格で売買が行われた場合の課税はどうなるんでしょうか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 松野先生御指摘の件でありますけれども、個別の各論は少しおいておきまして、一般論でお答えいたしますと、いわゆる時価と実際の取引価格との間に差があった場合には、これは一般的に買い手側に売り主から寄附行為があったというふうにみなされてしかるべきだと思います。

 したがいまして、本来の価格と売買のあった価格との差額につきましては、これは、率直に申し上げまして当該事業年度の益金に計上すべきでありまして、当然に法人税の課税対象になる、このように承知をいたしてございます。

松野(頼)委員 要は税法上も受贈益課税の対象になるんですね。

 要は、これは固定資産税評価額が八百五十六億なんです。日本郵政が売却しようとした金額というのは百九億。固定資産税評価額の八分の一で売却をしようとした。そして、不動産鑑定に対してもどんどん安くするかのような指示を出しているということでございます。この件は、また後でしっかり取り扱ってまいりたいというふうに思っております。

 そして、先ほど大臣は、広告代理店選定に対して非常に重要な発言をされました。ガバナンス検証委員会の中でも指摘をされているように、C次長と広告代理店との間のメールを復元したところによると、技術的に復元できた平成二十一年一月から九月までの間だけでも同次長は同関係者から相当の回数の飲食等の接待を受けており、A専務においても、時に同次長とともに接待を受けていたものと思われる、このようにガバナンス検証委員会で検証されているんです。

 ぜひ、この件について、私は再三、日本郵政に対して、この指摘をされているメールを出していただきたいということを申し上げたんですけれども、個人情報の観点だの何だのということで出していただけませんでした。

 これは非常に、もしこの事実が事実であれば贈収賄にかかわるような問題でございますので、委員長、このメールの提出をぜひ理事会の中で諮っていただきたい。では、先に大臣、どうぞ。

原口国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のメールには個人情報が含まれているということで、日本郵政が言うには、関係法令にのっとり、請求がされれば開示するというふうに聞いております。

 私は日本郵政株式会社法を所管する大臣でございますので、例えば報告徴求等をもって関係法令にはかって今後開示できるよう日本郵政に求めてまいりたいと考えております。

松野(頼)委員 ぜひ、当委員会としてもこのメールの提出を理事会でお諮りいただきたいと思います。

鹿野委員長 理事会で協議をいたします。

松野(頼)委員 要は、郵政民営化、今回法律が、郵政改革法案、私どもの法案、また今国会で出していただくのか通せるのかわかりません。しかし、過去の民営化を検証すると、明らかに事業が後退しているんですね。要は、郵便貯金は減少する、簡易保険は減少する、そして資産は売却をされる。一般の民間企業であれば明らかに事業が後退をしているということであります。

 さらに、簡易郵便局、当初はネットワークを守ると言いながら、約四百数十局、一時閉局ということで閉局をしております。要は、利用者の利便性も下がっているという状況です。

 私たちは、どうか郵政改革法案、三事業一体的な民営化として、要は、税金を投入しないで、ネットワークを守りながら経営を向上させていくこの法律をぜひ通していただきたいのと同時に、最後に、大臣、今の案件に関して何かございましたら御答弁いただきたいと思います。

原口国務大臣 松野委員御案内のとおり、郵政は十年間で四回組織が変わっています。そして、その統治の中身が、今委員がお話しのように、国民共有の財産である郵政事業というその認識がなかったというのを前経営陣みずからが認め、これは自公政権時代の大臣でございましたが、ラフレさいたまなど、かんぽの宿関連についてはできレースではないか、自公政権のときの大臣ですらそういう発言を国会でされているところでございます。

 私たちは、税金によらずして郵政のネットワークを守るためにどうすればいいか、分社化ありきの民営化によってここまで疲弊をしてしまったネットワークを立て直すためにはどうすればいいか。これを公社や国営に戻す気は全くありません。しかし同時に、税金をもって郵便事業を支えるとしたら、消費税にして何%ここに入れなきゃいけないのか、それは国民の皆さんに選択肢としてお示しをしていないわけでございます。

 ですから、三事業一体として、民間のよさを生かしながら改革を進めていけるように法案をぜひ通していただきたい、こう考えています。

松野(頼)委員 この民営化の検証というのはさらに議会でもさせていただきたいと思います。

 きょうはお時間をいただきましてありがとうございました。終わります。

鹿野委員長 この際、岡島一正君から関連質疑の申し出があります。松原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡島君。

岡島委員 民主党の岡島一正であります。

 きょうは、参議院選直後の最初の予算委員会でありますので、まずは、参議院選挙の総括について一点お伺いいたしたいと思います。

 参議院選挙といいますと、議員定数の不均衡といいますか、鳥取と神奈川では議員定数が最大五・〇一倍の差があるということの格差が生まれました。そして、この選挙、今回の参議院選挙でも、既に全国で十五件の選挙無効の訴訟が起こされるという見立てもあります。

 三年前の参議院選挙では、今回の一票の格差でもある五倍にかなり近い四・八六倍という格差がありました。そうした中でも、前回は民主党は六十議席を確保したわけですね。しかし、今回は四十四議席にとどまりました。この選挙の結果は重く受けとめなければならないと思っています。それは、きちんと政党としてまたさらに総括をしなきゃならないと思います。

 しかし一方、きょうは、ここでは、この国会においては定数の不均衡の問題、このことを直視したいと思います。

 民主党は、得票数では最多でありました。しかし、残念ながら、改選議席数は得票数で第二位の自民党に負けました。七議席少なかったという実態が起きました。この結果は、一議席を得るために必要な得票数が比較的少なくて済む選挙区、いわば一人区ですね、一人区での勝敗がそこにあらわれた、つまり、一票の格差の問題がそこには起因しているんじゃないかと私は思うわけであります。

 その象徴的な選挙区で残念ながら次点となったのが、千葉法務大臣でありました。そうした意味において、千葉法務大臣は、たしか神奈川県選挙区では、六十九万票ですか、すごい票をおとりになりましたが、次点でした。一方、鳥取では、十五万票ですね、自民党の候補者の方が当選をいたしました。

 そうした中で、千葉法務大臣は、一票の重み、これだけの格差がある、この点について、現行の参議院、また衆議院でもそういった数字が昨今出ておりますけれども、この参議院選挙においての一票の重みの違い、これを法のもとの平等という観点から千葉法務大臣はどのようにお考えでしょうか、お願いします。

千葉国務大臣 私が申し上げるべき問題かどうかはございますけれども、これまでも、参議院選、参議院における一票の格差ということについては、参議院等を通じまして議論、検討がなされてきたものと思っております。最終的には裁判所、最高裁などで判断がされるものかと思いますが、これからもやはりこの格差の問題については、選挙制度のあり方、あるいは参議院のあり方を含めて国会で御議論をされていくものだというふうに考えております。

岡島委員 ありがとうございました。

 菅総理も、この定数の格差の問題については、議員の定数の削減とあわせて、定数不均衡の是正といったことにも言及されていると思います。

 そうした中で、例えば定数を削減するとなったときに、二つの県で一人を選ぶというようなことをすれば、一応、形上、一票の重みは変わってくるだろうと思います。しかし、それをやると、全国四十七都道府県、各県のそれぞれの有権者の選択肢が狭まるということになります。日本は今、県単位での特殊性、地域性を持って構成されている国ですから、そういった意味で、有権者の選択肢を狭めるというのはなかなか難しいと私は思います。

 というわけで、私が大事だと思うのは、問題は、都市部での定数を逆にふやしたらどうだろうと思うんです。つまり、一票の重みが軽いと言われている地域ですね、それは一県一は確保する、その上で、不均衡は都市部の議員定数をふやせば直るじゃないかと思うんです。

 ただ、そこでとても大切なことは、議員にかかわる歳費や、あるいは議員がふえることにかかわる予算がふえること、秘書給与とか各種予算ですね、そういったものを減らすことができるのか、あるいは変わらないでいられるのか。そこにきちんと視点を置けば、逆に議員の無駄遣いというか、議員こそ身を削る、そこに予算を膨張させないで定数をふやせれば一番いいんじゃないか、そういうふうに私は考えているわけであります。きょうは、その点については考えだけにとどめておきたいと思います。

 続いて、菅総理にお伺いしますが、そもそも今回の、衆議院選挙のマニフェストが昨年ありました。これが私は日本をつくり直すための抜本改革のメニューだっただろうと思っているんです。菅総理は今回、特別枠を設けて元気な日本を復活させるというふうにおっしゃっておられますけれども、特別会計を含めると約二百十兆円を超える歳出純計を民主党の書かれたメニューに従ってゼロベースで抜本改革する、組み直すことが、それこそが我々の元気な日本を取り戻すメニューだったんじゃないでしょうか。

 さきの民主党の両院議員総会で、菅代表が、政権交代の、たしか初志貫徹とおっしゃったと私は思っています。この言葉は、くしくも、私が四年間の浪人中に民主党とともに訴え続けてきた、特別会計を含めた予算二百十兆円を組み替えるんだ、そうした政権をつくるんだといった思いと同じような菅総理の決意表明だったと受けとめました。

 ところが、概算要求では、一兆円を相当程度超えるという表現をされる、つまり、組み替えの上限が最大で二・三兆円ですか、そしてその使い道は政策コンテストをやるとなっています。民主党政権下で一から予算をつくり直す、組み替える、これが我々のここ数年の国民に訴えたことでした。二百十兆円もの歳出純計の淘汰があるわけです。ところが、今回は最大限二・三兆円にとどまるわけですね。ということは、我々が訴えてきた総予算組み替え、そのスケジュールがどうなっているのか、ぜひ国民にわかるように御説明ください。総理、お願いいたします。

野田国務大臣 岡島委員にお答えをしたいと思います。

 組み替えの枠が二・三兆ということではありません。というのは、七十一兆の歳出の大枠の中でまずやってもらうのは、各省大臣に、各閣僚に、その省庁の範囲内で予算の組み替えをしてもらうんです。これが大前提で、第一段階。そこで浮いたお金を特別枠として府省横断的に配分をする、それが一兆円を相当程度超える額ということでございまして、第一段階は各省でやっていただく、各省大臣のリーダーシップで。特別枠については総理主導で配分をしていく。二兆ちょっとということではないということは御理解ください。

岡島委員 今回の場合、七十一兆円のうち、社会保障のお金とかあるいは地方交付税交付金とか、そういったものは、ある意味での聖域といいますか、手をつけられないというか、これは義務的経費として出ていく。残ったところの二十三兆円余りですか、政策経費について各省庁で一割削減しようということですよね。そうすると、二・三兆円なり二・四兆円が出るだろうと。そうすると、全体の、我々がやってきたのは、特別会計の組み替えも含めた二百十兆円をやるといったことがもともとのテーマだったと思うんですね。

 だから、現状で一気にできるとは思いませんが、そういった意味で、特別会計を含めたスケジュールといったものが国民にもわかった方が、まず手始めにこれをやるという意味がよりわかるのではないかという意味で私は質問したわけであります。野田さん、もし何か一言あれば。

野田国務大臣 今回の予算編成、というか要求段階からでありますけれども、特別会計のこともしっかりと踏まえながら要求を出していただくということは、これは原則です。

 五月二十一日に、閣僚懇で当時の枝野行政刷新担当大臣が発言をされていますけれども、各閣僚におかれては、今後、特別会計の事務事業の徹底的な見直しや、資金、資産の有効活用等について概算要求段階から総点検を行い、概算要求に反映していただきたい、これが基本ですので、今回の予算編成でも当然生かせるものは生かしていきますが、本格的には十月の特別会計の事業仕分けから間に合うものはしっかり反映していきたいというふうに思います。

岡島委員 今回、そうしたプロセスを御説明いただけるというのが特徴だと私は思っています。

 一割カットして生まれた特別枠、一兆円を相当程度超える規模と言われていますが、この特別枠の特徴なんですけれども、自民党時代も、調べてみますと、特別枠というのはありましたね。森内閣、日本新生特別枠ですか、IT推進、環境分野、七千億円。安倍内閣、重点施策推進要望等々あるわけですね。

 では、今回、民主党がやるこの特別枠は自民党時代とどう違うんだろう。自民党時代は、ちょっと振り返ると、省庁がやりやすい仕事、国民に受けそうな仕事、そういったものを選んで特別枠にしていたように私は思います。だから、そういった意味で、今回の民主党の特別枠の特徴を御説明いただければと思います。

野田国務大臣 従来型の要求というのは、それこそ各省ごとに細かい経費別に薄切りスライスするようなやり方だったというふうに思います。

 今回は、既存予算を見直すことで財源を捻出するということと、そこから出てきた特別枠を各府省横断的に配分していくということで、かなりめり張りのきいた配分になっていくだろうということと、今いろいろな事例がありましたけれども、多分一番近いのは、平成二十一年度の重要課題推進枠という予算が、その特別枠が多分近いだろう。これは三千三百億円ですから、私どもは一兆円を相当程度超える額という意味では、量的にもかなり違うということは御理解いただきたいと思います。

岡島委員 そうしたことを、特に国民に、我々はやはり自民党政権と違うと言うのであれば、それをわかるようにしようというのが、いつも政治活動のやられる地域でもありますので、大臣を初め皆さんにもそういう説明をぜひ詳しく、特に野田さんは、見える予算過程というか、留意していらっしゃいますので、お願いしたいと思います。

 そういった意味で、では、政策コンテストでその特別枠を選ぶということですが、この政策コンテストの選ぶ基準、これは一体何を基準にして決めるんだろうかというふうに私たち今ちょっと思っています。

 私たち民主党にとっては、やはり〇九年の衆議院選挙のマニフェスト、これこそが国民に訴えた政策の座標軸であることは間違いないと思います。それによって、そのマニフェストを詰めることで、できること、できないこと、修正すること、徹底的にそれを座標軸にするということは絶対間違いないと僕は思っているんですね。

 そういった意味で、この政策コンテストであるならば、衆議院選挙で掲げた〇九年マニフェストを一つのメジャーとして、それを基準として選ぶべきだと私は考えていますが、その点について、国民に約束したマニフェストこそその処方せんということでお考えかどうか、できれば菅総理にお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 先ほど来申し上げていますように、〇九年の、国民の生活が第一という考え方、加えて、この参議院選挙で、元気な日本を復活させるという、この考え方に沿ってあらゆる政策を動員していきたい。予算編成においてもその基本的考え方はもちろん踏襲されなければならないと思っております。

 そういう中で、この特別枠そのものについては、今、野田大臣からも説明がありましたように、ある意味で、各省庁の中から捻出されたものを、特に政治主導といいましょうか、そういうもので決めていく。最後の場面は、あるいは私に決めろということになるかもしれません。そういうときに、先ほど来申し上げていますように、マニフェストそのものにかかわる問題と、それから、その大きな方向として、雇用の拡大と経済成長につながる分野、これは重なる部分も多いと思いますが、そういうところにやはり重点的な配分が必要ではないか、そのような考え方を基本的には持っております。

岡島委員 〇九年マニフェストというのは一つの国民への約束でした。それが座標軸として、政策がらせん状に展開するということが国民にわかりやすいと私は思っています。

 いずれにしましても、そうした問題の中で、やはり日本の予算をどうするか、財政をどうするかというときに、これは特別会計に行き着くと思っています。それは野田大臣も各省庁の大臣の皆さんも、皆さん取り組んでいらっしゃるとは思いますが、ただ、自分がやりたいと思ったことと、実際やろうとしたらなかなかできないこと、難しいことはあるでしょう。しかし、問題は、言ったことが変わったとき、変わるときにはその難しさが国民にも理解されないと、政策の変更なり、それは国民の支持につながらなくなります、不支持につながります。ですから、ぜひ説明が必要だということが幾つかあります。

 その中で、僕は落選をしていました、二〇〇五年の選挙でした。四年間の落選中で、勇気づけられたことが二つありました。その一つは、たしか二〇〇五年の八月ぐらいでしたか、選挙直前、前後ですね、野田さんが座長で、民主党に特別会計のプロジェクトチームができたと思いますね。また、前原さんもその後、九月だったかな、代表になられて、特別会計を徹底的にやるというお話がありました。そんな中で、そういう時代に特別会計こそだと私も気負って訴えたわけです。

 その問題について、例えば昨今でも、野田大臣が副大臣当時、これはたしか雑誌「通販生活」ですね、二〇一〇年。これはたまたま今書店で売っていたんですよ。そうしたら、野田さんの発言に、引用していいですか、「特別会計だけでなく勘定まで含めた総ざらいもします。当然、こうした改革は各省庁の協力なくして進みません。なかには強く抵抗する省庁もあるかもしれませんが、まずは財務省が率先垂範することで協力を仰ぐ覚悟はしています。 スケジュールとしては、概算要求が出る前、遅くとも六月くらいまでに、改革の方向性などが見えるようにしたいと思っています。」

 これは実際、四月下旬から置かれていますから、野田さん、この春にお答えだったと思うんですね。この春は、ちょうど私、二月五日の予算委員会で、当時の鳩山総理に、特別会計こそでしょうと言ったら、鳩山総理は、二十三年度予算でこそ、一からつくる我々の予算でこそ、特別会計に切り込んでいくとはっきりおっしゃいました。そして、当時の副大臣野田さんも、そのもとでの、内閣の一員としてのベクトルでこういった発言をされていると私は理解しています。

 であるならば、六月までに特別会計改革の方向性が見える、努力したいという決意を持っておられた。その結果が今回の概算要求にどのように反映しているのか、あるいは難しかったのか、それを含めて御説明ください。

野田国務大臣 「通販生活」までカバーをしていただきまして本当に恐縮でございますが、そこで私が取材を受けたのは四月です。六月ぐらいまでに特会の改革の方向性と確かに言及をしていますが、その念頭にあったのは、さっきもちょっと御紹介いたしましたけれども、当時、行政刷新会議の担当大臣から、特別会計の改革の主要事項とか基本方針とか視点が出るということを聞いておりました。それをあの方向性という言葉で私はあらわしていまして、事実、それは五月に出ていますし、閣僚懇でも発言をされています。

 この手順を踏まえて、さっき申し上げたとおり、概算要求の段階からもこの改革の視点で予算要求してくださいという閣僚懇での発言があるので、したがって、そういう手順で進んできていると御理解をいただきたいと思いますし、本格的には十月の特会の事業仕分けの見直しと連動しながら始まるというふうに御理解いただきたいと思います。

岡島委員 そういうスケジュールだったということはわかりました。

 ただ、そうすると、今回の概算要求には必ずしも、我々、あるいはもっと国民の視点から見て、特別会計の改革が進んだということがまだなかなか見えにくい状況です。だから、それについては説明なり行動なりで理解してもらうしかないと僕は思いますね。

 もし今、十月に、これから仕分けも始まって、特別会計の方向性を示していけるだろうというお話がありましたが、特別会計は、それこそ谷垣さんがやったんですかね、あのとき。三十一から十七に減らして、特会法をつくってきました。

 そして、特別会計改革というのは法改正を伴うわけですね、法律改正を。そういうことを考えたときに、法改正を伴うような案件については、きちんとした改正スケジュールが必要だと思うんです。十月の仕分け、そして法改正、どのようなスケジュールをお考えになっているか、教えていただければと思います。

野田国務大臣 仕分けの結果いかんにもよると思いますけれども、二十三年度の予算編成、これは当然年内編成を目標にしますが、その年内編成に間に合うようなものは取り入れていきたいと思います。

 そうじゃなくて、制度を精緻に設計しなければ、改めて特別会計をやらなきゃいけないとか、あるいは予算書の見直しだとか、電算システムの改善とか、いろいろな時間がかかるような作業が出てくるものもあると思います。それについては特会法の改正を念頭に入れたスケジュール感でいかなければいけませんが、この点については蓮舫大臣と連携をしながら進めていきたいと思います。

岡島委員 そうしたスケジュールなども含めてまた御説明していただきながら、一緒に協力していきたいとは思っています。

 私、さっき落選中の話をしましたけれども、僕は結構、前原さんの言った、たしか前原さんは、特別会計を二つにするとおっしゃったんですよね、代表のときに。当時の新聞がありますけれども、たしかあのときに前原さんが、国債整理基金特別会計を改めて財政再建特別会計と地方交付税特別会計の二つだけにするというふうに、代表としてのお気持ちはそのときおっしゃった。それは事実です。だから、今、国土交通大臣になられて、まだまだ国土交通も切り詰めて大変だと思いますよ。だけれども、ある意味での特別会計、社会資本整備特別会計があるわけですから、そういったところへの切り込みを、我々は本当に落選中に皆さんの、そういう若きリーダーの言葉に激励されて頑張ったんですから、ぜひ進めていただきたい。それはよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、もう一点は、最後に、社会保障改革についてお伺いしたいと思うんです。

 社会保障費が年々一兆円ふえるから云々でお金がないんだという話、あるいはつくらなきゃいけないという話があります。

 そこで、長妻大臣は、最近、百十一歳のおじい様が大分前に亡くなられていたという話が出てきましたね。年金が支給されっ放しだったというのがありました。あれも、年金支給の手続とか、もろもろシステムに、検証システムを含めて問題があったんだろうと思うんです。会計検査院には、毎年、年金の不適正といった問題がかなり指摘もされています。

 そういった意味で、社会保障費の中にそういった問題があるという事実を踏まえた上で、長妻大臣は、社会保険庁への切り込みなどを含めて、これまで、年金の目的外使用などに切り込んでいくといって戦ってきたわけですね。そういった中でどれほど無駄遣いをとめられたのか、そして、これからの新しい社会保障の仕組み、医療の仕組み、この一年間、どこまでできたのか。今の進捗状況を含めて、ぜひ長妻大臣に一言教えていただきたいと思います。

長妻国務大臣 まず、今お尋ねの自然増ということでありますけれども、これは、いろいろな改革をしたとしても、高齢化が進展をして高齢者の方がふえるということで、年金の支払いから、医療費の支払いから、ふえていく。これを機械的に増加をカットすると、かつての、前の政権のように医療崩壊などが起こるということで、我々は、まず、診療報酬を十年ぶりにアップするということで、外科あるいは産婦人科、小児科など今まで疲弊しているところに的確に配分をして、医療崩壊を一定程度食いとめたというふうに自負をしております。

 そしてもう一つ、今の無駄的なお話ですけれども、当然、自然増も我々は野方図にそれを放置しているわけではありませんで、かなりその適正化、例えば不正とか過剰医療、これについても、レセプト点検あるいは保険医療機関への指導監督の強化など、政権交代後さらに強化をして、給付費ベースで、これまでのものも含めると二千五百億円程度適正化をして、国費ベースでは約七百四十億円適正化をしても、まだ自然増ということでお金が必要になるということであります。

 今後は、年金も、先ほど申し上げましたように制度の改革に着手をいたしました。後期高齢者医療制度も廃止をいたします。そして、少子高齢化を克服する日本モデルということで、将来の社会保障の姿、ビジョン、これも国民の皆さんと今後共有をしていきたいというふうに思います。必要な社会保障のお金は、必要最小限のお金はきちっとやはり確保していく、こういう姿勢で取り組んでいきたいと思います。

岡島委員 ぜひそうした視点で、私は、やはり政治家は有言実行であり言行一致だと思います。難しさがあるだろうと思います。政権に入っていない我々にはわからないこともあるでしょう。しかし、行動で示さなきゃならないということも一理であります。真理であります。ぜひよろしくお願いしたいと思っております。

 私は、昨年の選挙で、とにかく無駄遣いをとめると、菅先生にも何度も応援に来ていただきました。官僚主導から政治主導へ、無駄遣いをとめる、予算を総組み替えする、そういったお言葉の中で僕らも戦ってきました。そして今、僕はこの委員会に立っています。これは、国民の支持がそこにあったからだというあかしそのものであります。そういった意味で、我々の原点を必ず忘れずに、無駄遣いをとめる、そのことを、きちんと向き合って、私も改革に参画できるよう頑張っていきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

鹿野委員長 これにて松原君、城島君、伴野君、山口君、松野君、岡島君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鹿野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田中康夫君。

田中(康)委員 衆議院における新しい与党統一会派、国民新党・新党日本の一員であります新党日本の田中康夫です。

 私たちのこの日本は、いわゆる先進国で唯一、賃金も物価も下落し続けるデフレ国家でございます。また、四十数年後の今世紀半ばには人口が九千万人を割り込む、歴史上に類を見ない超少子超高齢社会の日本でございます。

 にもかかわらず、残念ながら、哲学や覚悟を持ち合わせぬ、リーダーシップ欠落の日本というものは、雇用も全国的に低迷し、地域経済は都市部においても壊滅的状況であります。

 こちらに「フェア・オープン・シンプル(=公正・透明・簡素)な徴税・税額・税制を議論しよう!」とフリップに記しました。そして「「社会的公正」と「経済的自由」を同時に達成し、“世を経め、民を救う”」、すなわち富国強兵ならぬ経世済民の「成熟したパステルカラーの一億総中流“切磋琢磨”社会を実現!」すると記しております。

 これは、私たちの国の人口構造が、いわゆるすそ野の広い富士山形から逆ピラミッド形へと転換する中で、既に私たちの年金制度、あるいは生活保護というものは破綻状態に陥っております。こうしたものの抜本的統廃合を図る一方で、生まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りに至るまで、すべての個人に無条件で分け隔てなく月額五万円の基本所得を支給するという、これはベーシック・インカムというものでございますが、この導入を掲げて私どもは昨年の総選挙を戦っております。そして、我が会派の国民新党・新党日本を六月八日に結成いたしました際にしたためた合意文書の内容でもございます。

 このベーシック・インカムと生活保護に関しましては、去る二月二十六日にこの予算委員会の場でも御質問させていただいております。

 この精神というものは、まさにこの瞬間も全国津々浦々で真っ当に働き、学び、暮らしていらっしゃる方々の悲しみや憂いというものを喜びや希望へと転換し、混迷するこの日本の社会にダイナミズム、躍動感を取り戻す、大平正芳さん以来の保守ルネッサンスの矜持や覚悟ではなかろうかと思います。

 ところで、本日は、増税で経済成長は愚論であるという観点に立ちまして、真っ当な税制と消費税のあり方に関して、さらには真っ当な国債発行のあり方に関して、第九十四代内閣総理大臣の菅直人さんに御質問させていただきます。

 イギリスのジョージ・オズボーン財務大臣は、くしくも日本の参議院議員選挙公示日の二日前の六月二十二日、日本の消費税に当たる付加価値税の標準課税を一七・五%から二〇%へと引き上げる、このように表明をいたしました。菅さんは、しばしば政治のお手本としてイギリスを例に挙げておられますが、このイギリスの財務大臣の演説をどのように受けとめられたか、まずはお聞かせください。

菅内閣総理大臣 田中委員の方から、ベーシック・インカムについては前回の委員会で話をされたということで、私も興味深くその考え方も拝聴をいたしました。

 今、イギリスの税制についてのお話がありました。今イギリスもヨーロッパの多くの国も、いわゆる成長のための、つまりはリーマン・ショック以降の景気対策と、それに要した財政の赤字をいかに解消していくかという財政再建の、まさに二つの道の両立を図ろうとしております。

 私がG8で我が国の方向性を述べたのも、まさにその二つをいかにして両立するかということでありまして、その考え方は多くの国においても共感され、同意されたと理解をいたしております。

 その中で、イギリスの場合は、私の理解が間違っていなければ、付加価値税の税率は財務大臣が専権的に決めることができるということになっていて、たしか法律改正は行われていないと思います。そういった中で、イギリスはイギリスとして、ある判断をされて、そうした付加価値税の二・五%増額に踏み切られたんであろう、このように考えております。

田中(康)委員 先ほど、先進国の中で唯一、日本は賃金も物価も下落しているデフレ国家であると申し上げました。政府自身がまとめた内容におきますと、いわゆる月額の給与所得、現金給与所得というものは、昨年度三・三%も下がっているわけでございます。

 ヨーロッパの他の国は、リーマン・ショック以降、適切果敢な経済対策、まさにアウトカム、成果が出る形の、ばらまきではないことを行う中で、ある意味でのインフレ局面にございます。インフレにあるということは、これは物価が上昇いたしますので国民生活が苦渋に満ちてくる。であるならば、この部分に関しまして、税という中で社会保障をどのようにとるべきかという議論だと私は思っております。

 翻って、日本は、今申し上げたようにデフレでございます。デフレの中において、努力をせずに税金だけを上げれば消費は縮まるわけでございまして、まさに今のデフレスパイラル以上の状況になるかと思います。

 こうした点から、ある意味では、私どもの会派の亀井静香も、あるいは小沢一郎さんも、さらには自由民主党の菅義偉さんも、あるいはみんなの党の渡辺喜美さんも、増税で経済成長は愚論であるということを述べているわけでございまして、この私たちの、期せずして、イデオロギーを超えて、立場を超えて一致している点というのは、まさに国民の視点に立った点でございまして、翼賛とは対極でございます。

 今、こちらに、イギリスにおける付加価値税のフリップを出しました。日本では、一七・五%から二〇%にも消費税が上がるので、日本も増税バスに乗りおくれるななどと、欧米というものにある意味での複雑な劣等感を抱く文化人の方々はおっしゃっておりますが、こちらをごらんいただくとわかるように、イギリスのこのバリュー・アデッド・タックス、VATは、一七・五と言っておりますが、非課税が医療や教育、あるいは土地や建物の譲渡や賃貸も非課税でございます。税率以前に非課税だということです。

 そして、ゼロ税率でありますものが、今、菅さんも御指摘にあったように、食料品や医薬品、あるいは公共交通、そして上下水道、あるいは書籍や新聞や雑誌やCDというもの、そして、非常にきめ細かいのは、例えば障害者用の機器であったり住宅建築という、まさに非常にすそ野の広い経済効果をもたらすものもゼロ税率でございます。

 次に、日本と同じ、くしくも五%の軽減税率というものがございますが、こちらが電気やガス、あるいは、大変にすばらしいと思うのは、まさに子供の安全のためのチャイルドシートであったり、あるいは男女が分け隔てなく暮らしていく上での生理用品、こうしたものも軽減税率五パーでございまして、そして、一七・五以上の割り増し税率は、これは該当がございません。

 ですので、こうした非課税、ゼロ税率、軽減税率というもの以外の部分が一七・五ということでございますから、やはり、私は、フェアでオープンでシンプルであるだけでなく、こうした納税者の視点に立ったきめ細かさというものが大事であろうというふうに思っております。

 続いて、日本が三%の消費税を導入しましたのは、まだ私が大学も卒業しない、高校時代の一九八九年でございます。でも、このときに、たしか、税金というものは入り口で取るか、出口で取るか、しかし、入り口ではなかなか捕捉し切れない、だから、お支払いいただく出口のところで消費税を取ろうということであったと思います。そして、その中で、入り口においても、いわゆるクロヨンと呼ばれる不公平な徴税の形を改めていこうという議論が、私はまだ高校生であったか中学生でございますが、あったように感じた覚えがございます。

 でも、今もまさにクロヨン、給与所得者は九割捕捉されるけれども、自営業者は六割、農業者に至っては四割といったような形。私は、これは、今の第一番目の付加価値税としての消費税というものを、日本が仮に税の議論をする場合に大前提として行うべきじゃないか。

 同時に、二点目として、給与所得者にも確定申告というものを導入すべきではないか。営業マンの方が、靴やワイシャツも経費にならないという形で、給与から税金が天引きされておりますが、一たん得た収入の中から納税をするということになれば、税への意識が高まるだけでなく、このことが、政治や社会に関心を持ち、ひいては投票率も高まる、私はこのように思っております。

 そして、三番目として納税者番号というもの、これはプライバシーをより守る上において、脱税や二重課税を排除するために必要であろうと思いますが、この点に関しまして、改めて、財務大臣も経験された菅さんの御意見をお聞かせいただけますか。

菅内閣総理大臣 質問にいろいろな中身が入っておられましたので、どの部分から答えていいかと思いますが、まず、増税というものについて、私が消費税に触れたものですから、そういうことをすぐにでも行われるのか、そういうふうに理解をされて、国民の皆さんにも、もちろん仲間の皆さんにも大変御迷惑をかけたと思っております。

 その中で、少しだけ申し上げますと、私の理解では、まさに今のような経済情勢の中でまだ緊縮財政をとるのは少し早いだろう、そういう意味で経済を刺激するような予算が必要であろう。その場合に、デフレの議論はまたいろいろな機会にあると思いますが、なぜデフレがこう長く続いているのか。お金がないからというよりも、個人も企業もお金はある程度持っているけれども、それを物にかえて、つまり、物を買うよりもお金のままで持っていることの方を選択する、それを流動性選好という言い方をされる方もありますが、そういうことが日本におけるデフレの、この十年間続いている大きな原因の一つであろう、こういうふうに認識をしております。

 その中で、では、お金をどうすれば使っていただけるのか。その一つが、国債でそういうお金を国がお借りして、そしてある意味で個人や企業にかわって使うというやり方があるわけで、それをこの間かなりの中でやってきたわけです。ただ、これについても議論がありますが、GDPの一八〇%程度に債務残高がなる中で、果たしてこれがどこまで持続可能なのかということが今問われていると思っております。

 そういうことも含めての議論の中でのいろいろな意見でありますので、それはまた機会があれば大いに議論をさせていただきたいと思います。

 後の方で納税者番号といいましょうか番号制についてお触れいただきましたけれども、これは、私が今の立場になる前に責任者を務めて、社会保障等を含む番号制についての検討を始め、ある程度の選択肢を国民の皆さんに現在提示いたしている状況にあります。

田中(康)委員 僣越ですが、私が申し上げているのは、菅さんが午前中におっしゃった、税率の引き上げというその数字を皆で議論しようというようなことなのではございません。先ほどのボードにもあったように、私たちは、フェアでオープンでシンプル、まさに公正で簡潔で透明性がある、御納得いただける制度のあり方というのを議論した上でなければいけないのに、何か労使のベア交渉のような話になっているということは、これは大変政治の矮小化なのではないかと私は思っております。

 もう二点です。

 やはり日本の消費税というのは欠陥税制でございまして、消費税と呼び得ないわけでございます。

 なぜならば、これは、インボイスと呼ばれる、例えば、工場が素材を、原料を買った、そのときにも消費税を払います。その中小の零細な会社が部品をつくって、そして最終メーカーであります大手の企業に納めるときには、自分たちがかかった経費、利潤にプラスして、本来、素材を買ったとき、原料を買ったときの消費税を上乗せするのが当たり前なのでございますが、これが力関係の中でできない。私も物書きの端くれでございましたが、逆に私も消費税を納めるわけなのでございますが、物を書いたときに、出版社によっては消費税分を下さらないというところがあると、結果として、これは中間業者である者の負担になるわけでございます。

 ですから、インボイスというものは、零細な、中小の真っ当な方々にとっての福音でこそあるわけでございまして、このことを日本が入れる。これはヨーロッパの国々も、間接税は本来前近代的だと言われていたものが、インボイスと呼ばれる、きちんと幾らで仕入れて幾らの消費税をプラスして買ったかということの、日本の帳簿式ではなくてインボイス式にするということが、私は税に対しての理解が深まることであろうというふうに思っております。

 そして、もう一点、五点目といたしまして、私は企業の外形標準化というものが必要ではなかろうかと思います。

 皆様御存じのように、十三兆円もの公的資金を入れた金融機関というもの、無論、その中の九兆円強は返済はされておりますが、残念ながら、いわゆる都市銀行と呼ばれるものは、過去十五年間、法人税を一円たりとも払っていないわけでございますね、巨額の利潤が得られ、多くの収入を得ている役員の方がいらっしゃるにもかかわらず。そして、日本の多くの上場している会社の中で約三割の会社しか黒字でないので法人税を払っていない。だから、真っ当に働いているところの方に非常に過重な負担がかかる。

 でも、税というものは、個人であれ企業であれ、やはり広く薄く、日本の国民でありますから、皆で負担をするということが必要ではなかろうかと思います。

 私も、実は知事のときに、いわゆるパソコンのプリンターとか、こういうものを手広く手がけている県内で随一の、約七万七千人も従業員の方を雇っていらっしゃり、一兆円以上の売り上げを上げていらっしゃる会社が、MアンドAをしてある部門が赤字になる。ということになると、これは法人税がゼロでございます。六年間赤字、欠損が認められますので、法人県民税だけが年間わずか八十万円という形でございました。

 やはり、こうしたところも議論をした上で、法人事業税をどうするのかという議論にならなくてはいけない、これがフェア・オープン・シンプルということを私が繰り返し申し上げている点でございます。

 先ほど、菅さんが国債のお話をなさいました。国債に関しまして、私は、今だからこそいわゆる無利子非課税国債というものを発行するべきであるということを感じております。

 これは、森喜朗さんの内閣のときにも議論になったことだと思います。私どもの亀井静香も同様のことを述べております。なので色眼鏡でごらんになる方がいらっしゃるかもしれませんが、実はこれは読売新聞の主筆でいらっしゃる渡辺恒雄さんもこのようにおっしゃっているわけです。たんす預金や当座預金等、合わせて百五十兆円もの利子がつかない預金が日本に眠っている、この三分の一の五十兆円でも無利子非課税国債で吸い上げたら相当の景気対策ができる、利子がつかない国債なら残高がふえても有害ではないと。

 あるいは、こうしたことに御協力いただける方々には、私は、例えば褒章の制度というものをよい意味で適用するということも、国民として、私どもの国家国民のために尽くそうという気持ちがあらわれるんではないかと思うんです。

 そして同時に、例えば社会保険料というものも、組合であったり、自治体によって非常に裁量行政でばらつきがあるわけで、今の税も、先ほど言ったように、消費税が消費税ではない、欠陥税制であるという点が不信感を呼んでおります。

 こうした中で、目的税化をしていく。例えば堤防に、日本は残念ながら中が砂利だけでございます。ですから液状化現象をしているんですね。他の諸国では皆、堤防の中に縦に鋼矢板と呼ばれる板を入れております。ですから、コンクリの中に浸潤してきても堤防が崩れない。私は、これこそ地域密着の公共事業であり、製鉄メーカーの方だけでなくて、地域の経済の疲弊を直すことでございます。

 私は、政権交代をした後の昨年、例えばトンネルや橋梁、橋というものも、つくるときには村道も六割五分が国の税金でございます。維持修繕は全額地元費でございますので、維持修繕が滞っている。アメリカの橋というように壊れていってしまう。ならば、三カ月ですべてのトンネルと橋を点検して、危ないものは前倒しで、一・九兆円の中から例えば八千億円でもそこに投入をする。これは地域の経済を元気にいたします。

 あるいは、福祉の、デイサービス等の現場で働いている方に、時給三十円上げる。三十円の三分の一、三分の一は市町村と都道府県かもしれませんが、それこそは国が次年度で補てんをするから、一月一日から三十円上げようということも、景気は経済の気でございます。まさにこの点が元気にしていくことでなかろうかと私は思っております。

 あるいは、日本の国土は七割が森林でございます。森林の水源地を今諸外国が買うというような形は、これこそ日本の安全保障のゆゆしき問題でございまして、こうした森林整備を行うことに無利子非課税国債を行う。

 そしてもう一点、こちらに記しましたのは、日本では、通常、百万円の事業を十カ所やって一千万円だ。今、シーリングになっております。すると、民間の企業は、粗製乱造でなく一カ所を八十万円でやって十カ所、アウトカムは十カ所、成果は同じにする。ところが、残念ながら国土交通省の仕事は厚生労働省はやりません。都道府県においても、土木部の仕事を商工部がやるわけがございません。随意契約の談合のようなものでございますので、百万円の仕事が八カ所しかできない。

 例えば、森林整備は一ヘクタール三十三万円と言われております。そのうち三分の二の二十二万円は人件費でございますので、これこそ労働集約的産業でございます。これを、一ヘクタールを逆に三十二万円でやりなさい、やった場合にはさらに翌年度インセンティブを上げる、できなかった場合には逆にその事業主体が戻しなさいという形にしないと、森林整備予算を単にふやしても、それは森林組合の既得権益化をしていくことでございます。

 私どもの会派は、こうした点に関しましても、今週末、概算要求の取りまとめに関する提案を、亀井静香また下地幹郎とともに今お願いしておりますが、仙谷由人官房長官の方に具体的に、無利子国債の中でこういったことをやろう。あるいは、AEDを二十四時間のガソリンスタンドやコンビニやファミレスに設ければ、これこそ、商店街にとっては二十四時間やっているのかと言われたところが、駅も夜は閉まります、二十四時間あるところにAEDを今年中に全部設置する。やはり短期間に目に見える形でスピーディーな成果をもたらすことが、国民が政治への信頼を回復してくださり、御協力をいただけることではないか、このように私たちの会派は思っております。

 こうした中で、次年度に関しての予算も、皆様とともに御協力をして、よりよい形にすることができればというふうに思います。

 以上の点を申し上げ、私の質問の時間が来ましたので、終わりにさせていただきます。どうもありがとうございます。

鹿野委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷垣禎一君。

谷垣委員 参議院選挙が終わりまして、本来でしたら選挙の前にこういう機会があるべきでしたけれども、また菅さんと議論をする機会ができました。

 それで、きょうの本筋に入る前に一つお願いしておきたいことがあるんですが、毎年、このシーズンになりますと豪雨が起きます。先日も大変豪雨が起きまして、お亡くなりになった方もいらっしゃいますし、被害を受けた方がいらっしゃいました。心から御冥福をお祈りし、また被害者にはお見舞いを申し上げたいと思いますが、菅さんも岐阜にいらしたわけですね。私、つくづく感じたんですが、このごろピンポイント的に集中豪雨等がある。そうすると、昔の豪雨等々に比べますと、昔の豪雨等のいわゆる激甚災の扱いなんかではなかなか救えないことがあり得るんですね。そういったことを少し見直していく必要があるんじゃないかというようなことも感じました。

 ですから、このたびの被害に対してきちっとした対応をとっていただきますと同時に、こういう気象条件の変更に伴って、そのあたりも御検討いただくということをぜひやっていただきたい。これは、まず御要望でございます。何かありましたら、どうぞ。

中井国務大臣 防災担当でございますので、お答えを申し上げます。

 今御指摘がございましたように、百ミリを超えるような局地的な雨が短期間に日本国内を襲う、こういう中で、残念ながら人命が損なわれ、被害が出ているわけでございます。しかし、御指摘の激甚にいたしましても、一つ一つの地方公共団体あるいは県等を考えますと、なかなか、指定に達する被害金額になるかどうかというのは、おっしゃるとおりでございます。

 また、損なわれました人命につきましても、例えば、今の被災者生活再建支援制度等を考えますと、広島の庄原市だけがわずか適用ぎりぎりというところでございます。

 過日から総理の御指示がございまして、まずこの被災者生活再建支援法等の基準見直しということで取り組んでまいりまして、昨日夜、ようやく財務当局等と調整が終わりまして、あした、総理の御了解のもとに記者団に発表しようと。

 激甚の方につきましては、まだ全国から被害額が集まっておりません。集まった中で相談をして、総理の御指示を待って、従来と違う発想が何かとれるのか、御指摘の点を踏まえて対応していきたいと考えております。

谷垣委員 よろしく対応をお願いいたします。

 それで、本題に入りますが、今回、こういう参議院選挙の結果、参議院では野党の方が数の上では多くなった、変化がございました。今回のこの選挙結果、総理はどういうふうに受けとめられ、国民の判断は那辺にあったか、このあたりどう考えておられるでしょうか、御所見を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 まず、さきの国会では、予算委員会が開かれない、これはいろいろ我々にとっても反省もありますが、そういう中で、総理になって初めて、野党第一党、自由民主党の谷垣総裁と議論ができることを私も大変、ある意味で楽しみにしておりました。

 また、この間で、ねじれ、いわゆる参議院の野党の方が多くなってねじれ国会になりまして、私もいろいろな場面を経験いたしておりますが、これはもちろん、与党としても丁寧な、しっかりした議論が必要ではありますが、同時に、野党の皆さんにも、このねじれ国会が、結果として国民の皆さんに必要な政策が実行されるような、そういう合意を得る場になるような、そういう議論が、もちろん私たちの努力がまず第一だと認識しておりますが、野党の皆さんにもそういう形で臨んでいただければありがたいということを冒頭にお願いを申し上げておきたいと思います。

 今回の参議院の選挙の結果をどのように受けとめるかという御質問であります。

 まず一つは、私自身の消費税に関する発言がやや唐突な感じで受けとめられて、そして、場合によってはすぐにでも消費税を上げるのではないかというふうに理解をされたこと、これが大きな影響を与えた、このように思っております。

 しかし、これも既に申し上げましたが、現在の日本の財政状況の大変さは、これはどなたが総理をされようが、どの党が政権を担当されようが、逃げているわけにはいかない課題でありますから、私としては、この財政再建の問題はこれからもしっかり取り組んでいかなければならない。

 ただ、消費税に関しては、既に政府税調の専門家の皆さんには議論をいただいていたわけですが、党の政調がしっかり動き出しましたので、そちらでも議論をいただこうと。こういう中で、これからの与野党の議論を通して、どういう形でそれを進めることができるか、ぜひ建設的な議論をお願いしたいし、私の方も努力をしたい、こう思っております。

谷垣委員 この結果を受けて、丁寧な国会運営をしていきたいと。私は、それは了といたします。それは心がけていただかなきゃなりません、もう少し、後でこの論点も深めたいと思いますが。

 今、結果に影響したものとして消費税をお挙げになりました。今、菅さんのお話を聞いておりますと、消費税そのものに対する批判よりも、取り上げ方が唐突であって国民の批判をいただいたというふうに菅さんは受けとめておられる。私も、消費税自体が正面から批判の対象となったとは思っておりません。むしろ、これは菅さんに大変失礼ですが、大変その取り上げ方にぶれがあった、このことが大きな影響を受けたと思います。

 しかし、問題は、私はこれだけではなかったと思うんですね。もっといろいろな、多面的な原因が今度の選挙結果には影響していると思います。

 それで、菅さんが選挙の最中に演説をされて、私はおやと思ったことがあったんですが、普天間の問題と、それから政治と金の問題はクリアした、こういう発言をされたことがありました。これはどういうお考えだったんでしょうか。

菅内閣総理大臣 消費税について、今、谷垣委員の方から、それ自体が否定されたのではなくて、私の取り上げ方がまずかったからだということを言われました。その面も反省をしております。

 いろいろ内容的な議論も、先ほど申し上げましたように、政府税調では議論が既に始まっておりますし、党の方もお願いをしている中で、そういった意味では、まだ議論の最中である中で、私がいろいろ発言をしたことがより国民の皆さんに混乱を与えたのかな、そのこともおわびを申し上げなきゃいけない、こう思っております。

 その上で、今、普天間の問題と、政治と金の問題について、クリアという言葉を確かに使ったかもしれません。そのことの真意ということでありますが、普天間の問題は、もちろん日米の合意というものを踏まえて、そして沖縄の負担軽減についてはより大きく努力する、そういう立場で政権運営をしたいということはさきの本会議でも申し上げたとおりであります。

 ただ、だからといって、この問題が解決したというふうに思っているわけではありません。そういった意味では、日米合意という形で前政権の中で一つの節目ができ、私も当時、副総理としてそのことに同意をいたしましたので、そういう意味でクリアという言葉が適切であったかどうかは別として、一定の、一つの段階を踏んだ、そういう意味で申し上げたつもりであります。

 また、政治と金の問題も、鳩山前総理と小沢前幹事長がその職を辞するという形で、政治家としては最も重い、いわばけじめをつけられたので、これも同じ意味で、一つのけじめがついたという意味で、それもクリアという言葉が適切かどうかは別として、私が申し上げたのは、そういう意味を込めてクリアという言葉を使わせていただいたということであります。

谷垣委員 普天間の問題は、後ほど我が党石破政調会長が伺いますし、私も後ほど時間があればもう少し伺いたいと思うんですが、これも大変国民が心配していて、どうなるのかなというときに、クリアしたと言われたら、思わずみんな、何なんだと思ったんだと思うんです。

 それから、政治と金の問題も、確かにお二人おやめになったことはおやめになった。だけれども、証人喚問の問題、あるいは、鳩山さんも裁判が片づいたらいろいろな資料をきちっと国会にも出すとおっしゃっていた、それもできていない。そういったことがやはり国民の胸の中にわだかまっているんだと私は思いますよ。

 菅さんの本を読みましても、「大臣」という本を私もきのうちょっと読ませていただきましたが、それを拝見しますと、総理大臣は国会議員でもあるんだ、そして同時に与党の党首でもある、だから、国会のことは国会にと言わないで、きちっと指導力を発揮せよという御趣旨のことが書いてありますね。

 だから、私はやはり菅さんは、この問題、もう一回御両人それから関係者に、証人喚問に応じて国会で説明責任を果たすように指導力を発揮すべきではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 私の本をお読みいただいてありがとうございます。

 一般論としては、本でも書いたように、総理大臣も国会議員でありますし、国会に籍を置いておりますから、そういったことに責任の少なくとも大きなものを担っていることは間違いないと思っております。

 と同時に、やはり国会運営ということについては、もちろん内閣としていろいろとお願いをしたり申し上げることもありますけれども、まずは委員長初め委員会の理事会等で御議論をいただくのが第一義的な立場であろうと思っておりますので、そういった問題については、ぜひ国会のそういった場で御議論をいただきたい、このように思っております。

谷垣委員 まず国会の場で議論とおっしゃいました。しかし、その前に私は、この問題で国民あるいは国会が納得するようにリーダーシップを発揮するお考えがあるのかどうか、このことをお答えいただきたいと思って質問したんです。もう一回お答えいただけませんでしょうか。

菅内閣総理大臣 今申し上げましたように、総理大臣という立場も国会議員の一員でありますから、そういった意味での責任の、ある意味での大きなものはあることはよくわかっておりますが、しかし、国会運営に関することは、一義的にはまず国会の中で御議論いただくのが本来の国会運営の慣例だろう、このように思っております。

谷垣委員 政治と金の問題は、我が党の議員がまた後から質問させていただきます。

 それで今、菅さんがお答えになったことは、この「大臣」という書物の中で指摘しておられるのは、そうやって今まで逃げてきたと。要するに、国会のことはまず国会と言って逃げてきた、そういう御批判の上に、先ほどのようなリーダーシップを発揮すべきだというお考えを展開しておられるんですね。ややそこに、かつてのお考えと現在立っておられるお考えと違う、こういうことを申し上げなければならないと存じます。

 それで、国会運営ですけれども、私は、今回の参議院のこのような国民の審判の背景には、余りにも乱暴な国会運営というのがやはり国民の批判に遭ったということは否めないと思うんですね。一方的な強行採決もありました。要するに、数の力で強引にやっていく。

 それから、特に最終日においては、これは衆議院ではありませんが、参議院の方では、問責決議案あるいは議長に対する不信任案、これも上程しない、本会議も開かないで終えてしまったということは、私は、憲政のあり方において極めて大きな問題を生じたと思っております。

 そしてまた、この選挙に予算委員会も開かずに入られたということも、国会運営のあり方として私は禍根を残したと思っております。

 それで、国会運営については、先ほど菅さんも丁寧な国会運営をしていくと。事実、これは参議院では与野党逆転が起こっているわけですから、丁寧な話し合いをしていかなければ国民のための政策もできていかない、私は、それはそのとおりだと思います。

 ただ、ここで一つ指摘しておきたいことは、去年の衆議院選挙の後、政権交代をしたということで、菅さん初め民主党の皆さんにも、それは高揚感があったんだと思います。それで、そのとき、マニフェストは国民との契約だ、こういうことをおっしゃって、そして、前原さんそこにいらっしゃいますが、八ツ場ダム等は中止ということをおっしゃったわけですね。

 これは確かにマニフェストには書いてあったし、選挙にお勝ちになったことは間違いない。しかし、果たして手続、プロセスというのはそんな単純なものだろうか、やはりマニフェストにいかに書いてある目玉政策であっても、その後どうやって国民との合意をつくっていくかというプロセスを無視しては進まないんじゃないかと私は思います。

 なぜこのことを申し上げるかといいますと、要するに、今ある意味で議論が行われておりますこと、あるいは菅さんが先ほど私におっしゃったこと、国民生活に大事なことならきちっと協議に応じてもらいたいとおっしゃった、丁寧な国会運営をするともおっしゃった。マニフェストは国民との契約である、だからこれは侵すべからざるものだ、こういう、つまり選挙の時点で決まったという考え方と、国会はプロセスである、その中で合意形成をして国民のための政策をつくっていく、ここに少し開きがありはしないか、私はこのように思っております。

 ですから、もう一回お問いかけをしたいのは、丁寧とおっしゃいましたけれども、今後の国会運営の、総理大臣として、与党の党首としての基本的なお考えはどうなのか。そして、今申し上げたような意味でのマニフェストの取り扱い、位置づけをどう考えておられるのか、これを伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 さきの国会の、特に終盤におけるいろいろな出来事について、私自身の感じ方を含めて、やや不十分な点というのか、反省すべき点があったのではないかと私も思っておりまして、それも踏まえて今後の運営については丁寧に進めていきたいし、そういうふうに指示していきたいと思っております。

 それから、マニフェストと国会との関係というのは、これは、今御質問を聞きながら、私も頭の中で考えておりました。一方は選挙で有権者に対する約束で、それで、選挙でもし多数をいただいたときは、有権者と約束をしたわけですから、実行するということが当然ある意味で義務、政治家の、政党の義務となることが一方であるわけです。一方で、特に今回のような、参議院において野党の皆さんが多数を得られた場合には、これは、たとえ与党が約束をしても、単独では実行ができないわけでありますから、そういう意味では、当然のこととして、参議院を含む国会で議論をする中で、与野党の合意を形成していかなければ実行できないということも、もちろんこれは事実であります。

 そういうことを考えて、例えば、マニフェストに盛り込んだ中身で、そしてそれが選挙で有権者から支持された場合においても丁寧な議論が必要だという意味では、今、谷垣議員が言われたことは、その点ではそのとおりだと。ただ、どちらが優先とか優先でないという言葉がいいかどうかは別として、そこは有権者に対する約束もかなり大きなウエートで政党としてやはり実行する責任があるだろう、こう思っております。

谷垣委員 今のマニフェストと国会での合意形成の位置づけというのは、ちょっと今、総理のお話を聞いていても十分私は得心できなかったんですが、これは、しかし今後どういうふうにいろんな物事を運んでいかれるのか、与党の中でも、あるいは政権の中でも真剣に御議論をいただかなければいけないと思います。

 そして、もう一つ、それとの関係で伺いたいのは、衆院選、昨年の八月のときのマニフェスト、それから今度の参議院選挙のマニフェスト、これはどういう関係に立つとお考えなんでしょうか。つまり、今回は過半数を失われた、今回のマニフェストよりも去年の、勝った八月のマニフェストが正当性のあるものとお考えなのか、そのあたりどう整理しておられるのか、伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 昨年八月の選挙でのマニフェストについては、この間もその実現のために相当努力をし、現実に実現に向かって動き出したものも数多くあります。中には必ずしも予定どおりではないものもあります。しかし、これからも昨年の衆議院の選挙におけるマニフェストについては、全力を挙げてその実現のために努力をしていきたい。その中で、どうしても財政上の問題とかで難しい場合には、丁寧に国民の皆さんに、こういう理由でできないということも申し上げなければならないと思っております。

 そして、今回の参議院選挙では、基本的には昨年のマニフェストと矛盾しない形で、特に重点を置くという位置づけで、幾つかのテーマをマニフェストに掲げさせていただきました。例えば、「強い経済、強い財政、強い社会保障。」こういった考え方は、今、少し言い方をかえて、いわゆる経済成長改革、そして財政健全化改革、そして社会保障改革、その三改革を実行していく、実現していく。これはこれとして、あわせて全力を挙げて努力したい。こういう位置づけになっております。

谷垣委員 今、私は、マニフェストと国会における合意形成、与野党の間でどうやっていくかというのに柔軟にお考えにならなければいけないのではないかということを申し上げたわけであります。

 そうしましたときに、今、衆議院と参議院のマニフェストがどういう関係に立つかとお聞きしましたのは、やはり我々もその協議をしていこうというときに、我々のこの公約に基づいてやはり御議論をさせていただくわけですが、何が民主党の、あるいは菅さんが選挙で約束されたことなのかというのがはっきりわかりませんと、何を相手に議論したらいいのかわからない。だから、この二つのマニフェストは何かということを伺ったわけでありますが、今後これ、具体的な議論になりますと常にこういう問題が出てくると思いますので、十分御整理をお願いしたいと思います。

 そして、今、強引な国会運営、それから政治と金の問題をクリアした、こういうのがやはり選挙結果に響いたであろうと申し上げたわけですが、もう一つ申し上げなければいけないのは、履き違えた政治主導というのがあったんじゃないかと思います。

 例えば、箇所づけの事前漏えいの問題であるとか、陳情窓口を与党の幹事長室へ一元化する、これはやはり、地方を歩いていますと随分不満の声がありました。権力の濫用は目に余るものがある、こういう声が大変聞こえてきたわけであります。

 それから、政治主導と言うけれども、政治主導の目玉であった国家戦略局構想も選挙が終わったら断念されたわけでありますが、あるいは政治主導の中で、厚労省では、政務三役肝いりの若手改革PTから政務三役のおごりが指摘される。こういう政治主導の行き過ぎというのが私は選挙結果に大きな影響があったと思います。

 以上、幾つか挙げてまいりましたけれども、私何より申し上げたいのは、去年、民主党が政権交代でついた、その正統性を大きく国民が疑ったのではないかということを指摘したいと思うんです。

 それで、昨年信を受けた民主党のマニフェストの構造でございますが、これが履行が難しくなってきた。履行不能となったことは明確でございます。暫定税率は維持する、子ども手当は半額、高速道路料金も原則無料化である。それから国家公務員制度改革については、我が党は平成十八年度から二十二年度の五年間で五・七%の削減、約一万九千人の純減計画を進め、実績一万七千人ほど削減してまいりましたが、その後の二十三年度以降の計画について民主党政権はどうするのか、音さたが全くないわけであります。これで総人件費の二割削減など本当にできるのか。

 そして、何よりもこういう民主党の政策のマニフェストで約束された政策の裏づけは、無駄を排除することによって九・一兆円を捻出する、こういったことを軸とした財源確保策にあったわけであります。そして、全体で言えば十六・一兆ですか、それだけの無駄を削減すると。

 午前中からの議論を聞いておりますと、これから予算の組み替え等でさらにやっていくんだという御答弁もございましたけれども、これが、少なくとも今まで見ておりますと、マニフェストのいわゆる工程表、ございますが、その工程表から見てもちっとも実現ができていない。それゆえに、かつては否定した消費税の議論が出てきたのではないか。これで一体マニフェストが実行可能であるのか。

 つまり、去年、民主党のマニフェストに期待して一票を投じたけれども、これは全く砂上の楼閣、欺瞞だったのではないかということを多くの国民が感じた。このことが今回の参議院結果にあらわれているのではないか。

 ですから、私は先ほど何度も引用しております菅さんのあの「大臣」という御本を読みますと、政策的に行き詰まったりスキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらい回しをするのじゃなくて、与党は次の総理候補を決めた上で衆議院を解散すべきだと明記しておられるわけですね。

 だから、菅さんの所信表明で私が代表質問しましたときも、信をお問いになるべきではないか、こういうふうに申し上げたら、参議院選挙で信を問う、野党も参議院選挙で信を問うてくれ、こういう御答弁でございました。

 こうなりますと、こういった欺瞞を解消する方法はただ一つ、解散・総選挙で信を問い直すのみだと私は思いますが、総理はいかがお考えでしょうか。御感想があれば伺います。

菅内閣総理大臣 かなりいろいろと御質問いただきましたので、少し順を追ってお答えしたいと思います。

 まず、消費税についての私の発言を含めて、民主党としての考え方をはっきりしてくれないと協議もしにくいということを言われました。

 実は、参議院におけるマニフェストの中で盛り込んだことのうち、かなりの部分は閣議決定をいたしております。特に二つの閣議決定がありまして、一つは新成長戦略、そしてもう一つは財政運営戦略であります。その中には、いわゆる中期財政フレームも入っております。

 そこで……(発言する者あり)少し静かに。例えば中期財政フレームの中には、二〇一五年までにプライマリーバランスの赤字幅を半分にする、二〇二〇年度までには黒字化する、これは自由民主党が出されているものと内容的には一致をしておりますけれども、私たちもこれは閣議で決定しておりますので、こういうところからきちっと議論をしていくということは、全く現在でも問題ありません。

 ただ、先ほど申し上げたのは、私が消費税について、多少、参議院選挙の中で演説などで申し上げたことが、いろいろきちっとした議論が十分でない部分については、党の中でもこれから議論するということでありまして、そういう点では、多分、自由民主党におかれても消費税一〇%を言われておりますが、そのときに並行してどういう軽減制度を盛り込まれるか等はこれから御議論されるのではないか、こういう意味で、ぜひ、はっきりしているところはきちっとはっきりしておりますので、遠慮をされないで議論をしていただきたい、このように思っております。

 それから、政治主導という問題について幾つかお話をされましたが、特に国家戦略室について、きょう午前中の質疑でも申し上げましたが、私が見るところ、報道の方で何か格下げといったようなことを報道しているのは、少なくとも私が意図していることとは全く違います。

 つまり、国家戦略室は、もともと総理の直属で位置するものと想定されていたんですけれども、スタートの段階ではスタッフがゼロでありましたし、私が担当大臣ということで、私のもとで運営し、その次の段階でもそういう形でした。

 そして、今回改めて、総理の直属の、総理に対する政策提言をする。これは、多分谷垣総裁もいろいろな機会に御存じでしょうが、役所からのいろいろなレクチャーというのは、どうしてもその役所がやりたいことを中心に、それに必要なことは説明しますが、それと矛盾することはなかなか情報が上がってきません。そういった意味では、最終的な政治主導というのは総理大臣が判断することも多いわけですから、その判断のときに、役所別の情報だけではなくて、直属のシンクタンクとして政策提言をしてくれる、そういう存在があった方がいい。イギリスのポリシーユニットもそういう性格でありますが、そういう位置づけにしていく。

 ですから、私は、ある意味では政治主導のより重要な役目をこの新たな形の戦略室にお願いする、そういうつもりでの提案をしているところであります。

 それに加えて、先ほど、マニフェストについて、実行不可能ではないかということを言われましたけれども、これは、きょう朝の質疑を繰り返す、すべてを繰り返すわけではありませんけれども、例えば子ども手当については、まず月一万三千円は実行されました。これについては、今後はそれに上乗せをしていく、上乗せの中身については、現金給付なのか、それとも保育所をふやしていくといったような実物給付なのか、それは検討していく、こういう位置づけであります。

 また、農業の戸別的所得補償も、初年度は水田中心ではありますけれども、スタートを切っておりまして、これからの二年目に向けて今議論が始まっているところであります。

 高速道路の無料化についても、実験的取り組みではありますけれども、まさにその実験的取り組みの中から、今後に向かってどういう形でそれを推し進めるかということに、第二段階に入っていくわけであります。

 そういった意味で、確かに、暫定税率については実質的に存続をお願いしましたが、これも環境税等の議論をこれからやっていくことになっておりますので、そういう中で、今申し上げましたように、私の見た目では、マニフェストに盛り込んだことの七割方は少なくとも前に進んでいるということを、今申し上げたことを聞いていただければ国民の皆さんにも御理解をいただけると思っております。

 そして最後に、確かに、参議院における選挙においても一つの国民の民意であり、信を問うことになると思いましたので、そういうことを申し上げました。その中で、私も私なりにいろいろ考えましたけれども、やはり、昨年の政権交代というものの国民の皆さんのある意味での期待を含めてそういうことを考えますと、確かに私自身のいろいろな不十分さはありましたけれども、やはりこの形で政権運営をさせていただいた上で、その上で改めてしかるべきときに、それが任期満了であるかないかは別として、その段階で解散なり総選挙で、その場合には政権そのものを選択していただく選挙になろう、このように考えているところです。

谷垣委員 総理、いろいろおっしゃいましたけれども、消費税の問題あるいは中期財政フレーム、これについては後ほどもう少し議論させていただきます。

 それで、国家戦略局の問題は、自分直属のもとに、各省横断的ではない情報、知恵も収集するために直属のシンクタンク的なものを設けるんだ、それ自体は結構だと思いますよ。しかし、私は政権の中にいた人間ではないから、あるいは皆さんの理解と違うのかもしれませんが、国家戦略局というのは、要するに、予算編成機能そのものを、予算編成の基本方針そのほか、予算編成の機能を官邸に、総理直属に持ってくる、そのことにポイントがあったんじゃないでしょうか。そういう点からすると、私は大きく後退したと思います。

 それで、マニフェストについては、今いろいろ御弁解がございましたけれども、来年度の満額子ども手当についても、二万六千円は支給を断念したということでありますし、高速道路料金の原則無料化も、新たな上限料金制度で実質値上げである、それから都市部は無料化しない方針に転換した、あるいは暫定税率の廃止も先ほどおっしゃった、こういうことでありますから、非常に大きなデッドロックに乗り上げていることは間違いありません。

 それで、総理がいろいろな、もう既に閣議決定されたようなことでこういうことは実際できているんだ、だから議論してくれとおっしゃいました。私どもも、ここで一つ申し上げておきたいことは、私どもも野党でありますが、思い返していただきますと、日銀総裁がしばらく空席であったことがありました。私どもは、ああいう乱暴な、むちゃなことは国民に支持されるとは思っておりません。自民党はああいうことは決していたさないということをここでも明言しておきたいと思います。要するに、こういう点では国民生活をないがしろにする党利党略には決して陥らないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 そして、その上で、政府・与党から真摯な御提案があれば、我々も真摯に議論をさせていただきます。皆さんの公約と我々の公約、どちらがふさわしいか、国会で堂々と議論をさせていただきたいと思います。

 とはいえ、かけ声だけでこういう議論が進んでいくわけではありません。私は、菅さんがさっきちょっとおっしゃいましたけれども、消費税等々の問題、これは消費税に限らずいろいろな問題で、内政や外交、まずは、消費税については後ほど伺いますが、政府・与党として基本的な考え方をまとめて、具体案を示していただく必要があるのではないかということを強く申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、実はこの観点で申し上げたいことは、政治的な意思決定のプロセスというのを今まで、それは試行錯誤されてきたんだと思います。政策調査会ですか、玄葉さんおやりになって、今入閣をしておられる。一時は、政策決定を一元化していくということで、それは廃止されたわけですね。

 それで、何というんでしょうか、与党の中でどういうところでその政策決定のプロセスが行われていくんだ、あるいは政府の中でですね、そういった問題が、まだこれは運用の途中ということなんでしょうか、必ずしも我々にとってはっきりしないところがあります。どこでどのような権限を持って、どこまで議論が進んできて、その方と話をすればどこまでが与党・政府の中で整理ができたことなのか、このプロセスを少しはっきり示していただくことが、国会の中で建設的な議論をしていく上で必要なのではないかと私は思っております。

 この点について、いささかそういった御配慮は今まで乏しかったのではないか。それはやや、さっき申し上げたプロセスの軽視ということもあったんじゃないかということを含めまして、この辺、先ほどから与野党の話し合いと言っておられますが、どういう仕組みをつくっておられるかは政府・与党の真剣度を占うバロメーターにもなろうかと思います。この辺のお考え方を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 まず、順序を追って答弁申し上げたいと思いますが、もともと、国家戦略室について、確かに財政の考え方などを取りまとめるということで、私が最初のときに、例えば複数年度予算についての議論などをいたしました。

 ただ、予算編成そのものをもしやるとすれば、その後、これは谷垣さんもそうですが、財務大臣をやってみて、やはり主計局はいろいろ合わせると三百五十人ぐらいのスタッフがいて、それぞれの役所と常日ごろからいろいろなことをやっているわけで、もしそれまでやるとすれば、その主計局部隊を全部官邸に持ってくるというようなことになるわけで、もともとそこまでは想定いたしておりません。もともとですよ。

 つまりは、ゼロから民間人と各省からの人をポリティカルに集めましたけれども、いわゆる個々の役所といろいろな具体的なところまで練り上げるという形での国家戦略室ということは、もともとの、昨年の選挙の中でもそこまでを前提として考えられたものではありません。ですから、そこは、私もそういう立場で最初の戦略室長の担当をさせていただきましたので、そこは間違いがないところです。

 それから、国民のためにということで、先ほど一つの事例を挙げられました。私も、いろいろな場面を思い出しておりますが、一九九八年の、橋本さんが参議院で負けられた後、小渕政権のもとで、いわゆる長銀、日債銀の破綻が迫って、当時の民主党が一時国有化を含む金融再生法を提出し、小渕総理が丸のみをされることで成立したことがありました。

 当時、私、民主党の代表をやっておりまして、この問題では、まさに今、谷垣総裁御自身も言われましたが、党利党略といったことが、政党ですから、いつも全く考えないかといえば、それはそこまでは言えませんけれども、特にあの時点における金融問題は日本発の世界の金融恐慌を招きかねないということで、そういうことを超えて私なりに取り組んだつもりでありまして、そういった意味でも、ぜひこれは、それぞれの立場で国民の立場を最優先して議論をしていくということを私も努めたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 それから、確かに、この一年間、いろいろな意味での試行錯誤もありましたので、谷垣総裁の方から、どういう対応をしていいかわかりにくかったということをおっしゃるのは、それはよく理解できます。しかし、おかげでかなり整理がされてまいりました。まずは、政策調査会。実は昨年、内閣ができる直前に政策調査会がなくなりまして、ある意味では内閣一本で、一元化という位置づけになったんですが、やはり四百人を超える国会議員の中で、内閣に入った人間だけが政策議論に携わるという形では十分でないということで、その後いろいろな仕組みが生まれておりました。それを含めて、これは今回私が民主党代表選に出るときの党内の公約ですが、政調会の復活を公約し、そして現実に政調会が、今復活の準備が相当進んでまいりました。

 そういった意味では、これからは閣内の調整全般は官房長官にお願いし、党と内閣の間の政策調整あるいは政策議論を内閣に伝えてもらう一つのかなめ役は、内閣にも入っていただいた玄葉政調会長、特命大臣にお願いし、その上に総理大臣という立場で、最終判断をしなければならないときには私が判断をさせていただく、そういう形になっておりますので、そのことを前提で御議論をいただければありがたい、このように思っています。

谷垣委員 仕組みは工夫し、これからわかりやすいようにもするという御趣旨ですが、こういうことを申し上げますのは、我々野党として与党の運営を見ているという点だけで申し上げているんではありません。いろんな地方を歩きましても、あるいは産業界の方にお会いしたり中小企業の方にお会いしましても、今度どうも、与党はこういうことを考えているらしいんだけれども、どこでどう決まっていくのかよくわからないし、自分たちも決める前にはいろいろ意見を言いたいんだけれども、どこにどう言っていいのかわからない、こういう声があちこちで聞こえるんですね。我々が政権におりましたときは、官邸病という言葉がございまして、大変失礼ですが、やはり官邸にいますと、なかなか嫌な情報が入ってこない、耳ざわりのいい情報しか入ってこなくなる、我々そういうことを随分先輩から聞きました。

 ですから、ここで申し上げるのは、ある意味では菅さんに対してアドバイスと言うと失礼ですけれども、ぜひとも、どういう声を耳の中に入れるのか、そのためには体制の整備も必要だ、プロセスを重視することが必要だ、このことは私強く申し上げたいと思っているわけであります。

 プロセス論は、今後いろいろなときにまた議論になると思いますから、きょうはこのぐらいにしまして、次に、経済財政運営について議論をさせていただきたいと思います。

 まず、来年度予算編成ですが、菅さん、六月の財政運営戦略でも、あるいは、この間組み替え基準をお出しになりました。概算要求、シーリングというようなものと言葉は違っておりますが、そういうのをお出しになった。

 その中で、二十三年度の新規国債発行額は、二十二年度の当初予算の発行額約四十四兆円、四十四・三兆ですか、これを上回らないようにするという方針を掲げておられますね。それから、政策経費についても七十一兆、こういうことを言っておられるわけです。四十四兆という数字は、我々の政権の最後のときの当初予算とそれから第一次の補正を合わせた国債発行額で、まあこれはリーマン・ショックが起こったときの対応ということも含まれておりましたから、決して厳しい目標ではない、このように思っておりますが、この数字、四十四・三兆あるいは七十一兆、これはきちっと予算編成の上で守られるわけですね。そのことを確認したいと思います。

菅内閣総理大臣 この四十四兆の国債、表現としては、それを超えないように全力を挙げるという表現になっております。七十一兆も、今、谷垣さん御自身がおっしゃったように、もちろんこれに国債費が乗るわけですから、決していわゆる緊縮予算ということではなくて、ある意味では、まだまだ、まあ二兎を追うということを申し上げましたけれども、つまりは成長と財政健全化の二兎を追う中でのぎりぎりの選択だ、このように思っております。

 あえて申し上げると、四十四兆三千億の数字は確かに麻生内閣の一次補正のときの国債発行ではありますけれども、その後、九兆円の歳入が減りましたので、税収が減りましたので、結果として、もちろん内閣はかわっておりましたが、その減った分だけ増額をして五十三兆の国債になったわけでありまして、そういう点では、今回、税収の見通しもなかなか厳しいんですけれども、この中でもかなり大変な予算編成になろう、このように覚悟をいたしております。

谷垣委員 菅さん、そうおっしゃると私も言いたくなることがありまして、今、確かに税収も落ちた、だからふえたとおっしゃったけれども、もともと民主党の財政の考え方の中には、先ほどのマニフェストの中で、財源は組み替えによって出てくるから、マニフェストで言った施策そのものは、特別の財源はなくても出てくるんだ、こういうことが前提になったはずであります。だから、確かにその税収の減ということは私どももそれは理解をいたしますけれども、今の点は、ちょっとそういうことも含んだ議論だということは申し上げておかなきゃなりませんね。

 それで、それは四十四・三兆あるいは七十一兆を守るんだという御答弁ですが、ついては、その達成に当たっては、ぜひとも王道を歩んでいただきたいと思うんです。つまり、奇策を弄するというようなことはやめていただきたい。

 何を申し上げたいかと申しますと、埋蔵金とかいろいろな議論がございました。随分はたき出して私どもも使ってまいりましたし、この民主党政権でつくられた予算でも、かなり埋蔵金は利用されましたね。それで結局、かなり埋蔵金も、もうこれは、なかなかたたいても出てこない。これは野田さん、よく今お苦しみだと思いますが、来ているわけです。

 そういう中で、例えば二十兆円にも及ぶ外為積立金というようなものが話題に上りますが、これは今、財政投融資の預託原資に使っているわけですから、これを取り崩せばそっちは減ってしまう。だから結局、同額の財投債発行が必要になってくるということになってしまうと思いますね。

 それから、国の借金という点では変わらないということですが、国債整理基金、これの十二・五兆も、償還財源の先食いという意味で、同じような意味合いを持っております、これを使いますとね。

 それから、年金積立金に手をつけるなんというのは、これはやはり論外の部類だろうと私は思います。

 これは、政府においても十分意識されておりますね。四月の国家戦略室が公表した論点整理でも、こういう国の会計間の資金移転や、それから赤字のつけかえ、こうした措置に依存した財政運営は厳に慎むべきだ、こういうふうに言っておられます。それから、六月の財政運営戦略でも、財政健全化への取り組みは正直であることを第一とする、こう言って、安易な資金移転等の手段は厳に慎むということをきちんと書いておられますので、まさかこういう操作のようなことは、予算編成過程のオープン化を今掲げておられる中でなさるはずはないと思いますが、そういう道は、邪道はとらないということをここで明言していただきたいと思います。

野田国務大臣 谷垣議員にお答えいたします。

 税外収入は、二十二年度は十兆六千億円とれました。これは、七つか八つの特別会計の埋蔵金を含めてでありますけれども、これは過去最大の規模です。平成二十一年度は九・二兆円、その前は四・二兆、その前は四兆、その意味ではかなり税外収入に頼った今財政構造になっていますが、自然体でいけば、二十三年度はそんなに埋蔵金が見つかるかというと、厳しいというふうに思っています。

 その中で、いろいろ事例を挙げられましたけれども、外為も、あるいは国債整理基金も、これはマーケットがあるものですから、私はタブー視することはないと思いますけれども、慎重な議論をしていくべきことだろうというふうに思います。

谷垣委員 総理はいかがでしょう、この点。

菅内閣総理大臣 基本的には今財務大臣が言われたとおりなんですが、この分野でいろいろの議論があることは御承知だと思うんです。つまりは、政治家においては、党においては、まだまだ埋蔵金はもっともっとあるんだという議論をかなり有力な方も展開されております。ですから、そういうことも、この間、こういう予算委員会を含めて議論を大いにする中で、慎重な対応をしていきたいと思っております。

 と同時に、これはせっかくの機会ですから多少申し上げたいのは、自由民主党として、私たちがこういう考え方を持っているわけですが、こういう骨格の考え方についてどういう御意見をお持ちなのか、今の場であるかどうかは別として、いやいやこれではちょっと国債を出し過ぎなのか、いやいや七十一兆が大き過ぎるのか小さ過ぎるのか、いやいやここはもっとこうすべきなのか。私も大きな骨格を本当に考えました。そういう中では、多分、同じような御苦労をこれまで与党としてされてきたんだと思うんです。ですから、私は、財政の悪化をぎりぎり抑えながら、しかし、景気の刺激的な姿勢は崩さないぎりぎりの線がこういう骨格だということで、閣議でここまで決めてきたわけですけれども、そういうトータルのことに対しても、できれば御議論いただければありがたいと思っております。

谷垣委員 今、菅さんのお話を聞いていますと、どうも緩いなと率直に申し上げざるを得ないです。

 それで、先ほど野田大臣、幾つかの、外為特会や何かをおっしゃいましたけれども、年金はどうなんですか。どうぞお答えください。

野田国務大臣 年金制度の信頼の根幹にかかわることになるというふうに思いますので、安易にそこをさわるということは慎むべきだと思います。

谷垣委員 要するに、今、菅さんの御議論はやや緩いなと私は申し上げざるを得ないんですけれども、なぜこのことを伺ったかといいますと、やはり、これから実際、財政運営、あるいは法案をどう通していくかということを考えますと、特例公債法等をどうしていくのかという議論、我々も真剣に向かい合わざるを得ないんです。そういう特例公債法を果たして我々は賛成するのか反対するのか。こういうところがぐずぐずであったら、私たちは、賛成しようにも賛成できないということがこれはあるんですよ。だから、十分慎重なと野田さんはおっしゃった、きわめて慎重にやっていただきたいと思います。私どもは、まずそういう三月末の対応もにらみながら、果たして政府がこれについてどういう対応をとられるか、判断をしております。このことだけは申し上げておきたい、こういうふうに思います。

 それで、次に税制抜本改革と申しますか、財政健全化について私は申し上げたいと思います。

 先ほど総理も、自分の発言が若干唐突に受け取られたということをおっしゃった。我が党は、今まで消費税で大やけどを何度もしてきております。総理大臣がそれで腹を切ったということも何度もございました。だから、選挙のときに消費税を言っていくというのは正直言って怖いな、そういう気持ちを我々ずっと持っておりまして、ですから、言うからには相当な覚悟がなければ言えないな、こういうのが我々の思いでございます。今回は、当面一〇%ということも公約に掲げて選挙をさせていただいたわけですね。

 残念に思いますのは、菅さんもお取り上げになって、我々の一〇%を参考にするとおっしゃった。ところが、随分その間に、菅さんの御発言は正直申し上げてぶれたと私は思います。所得の低い方の軽減措置に関してもぶれました。それで迷走したあげく、この問題みんな懲りちゃって、取り上げられなくなったということになったらこれは大変不幸なことだと思っております。

 菅さん、このあたりについてはどうお考えなんでしょうか。

菅内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、今確かにおっしゃるとおり、私がやや唐突に受けとめられるような形で消費税に触れたことについて、そのこと自体は申しわけなく思っております。

 また、その演説の中で、本来なら政府税調や党の方でも今後議論いただくべき中身について、やや、軽減するための、いわゆる所得の低い人たちに対する対応について、例示という意味で申し上げたんですが、その例示が幾つかの例示になったものですから、それをぶれたというふうに御指摘いただいたことも、これも私の不十分さだと思っております。

 ただ、原則的なところで申し上げれば、先ほど来申し上げていますように、あるいは一緒かもしれませんけれども、やはり今の日本の置かれた状況は、この数十年の国債の発行の中で八百兆を超える債務残高があり、それがGDP比で一八〇%を超え、たとえ今回の予算の規模であっても、それは減るのではなくてまだふえていく。そういう中で、このことをどうやれば財政健全化の道に進めるか。

 これはあるいは谷垣総裁ももう御存じであったかもしれませんが、実は、今の立場になる前から、財務大臣として、自由民主党が出された財政健全化責任法ですか、それに対して、場合によっては同様な中身について法案を出して国会で議論したらどうだろうと私自身努力したこともあります。それは結果としては法案は出ませんでしたけれども、今回、先ほど申し上げた閣議決定した、あるいはマニフェストにも掲げましたが、閣議決定した財政運営戦略の中には、二〇一五年、二〇二〇年のいわゆるプライマリーバランスの目標は、自民党がその法案で掲げられたものと全く同じ中身になっております。

 そういった意味で、ぜひ、こういったところをどうやったら実現できるかということについても、与野党の中でそれぞれ議論があり、場合によってはこの国会の場で議論を闘わせることで一つの方向性が出てくればありがたい、このように思っております。

谷垣委員 先ほどから総理も時々おっしゃっているわけですが、我が国の財政が極めて危機的な状況にある、これは言うまでもないと思います。

 世界を見渡しますと、リーマン・ショックによる金融危機は峠を越えつつあると言っていいんでしょうか。ですから、世界じゅう、危機対応のための大規模な財政出動後の財政をどうしていくか、出口戦略といいますか、そういう方に関心を移しつつあるという状況だろうと思います。つまり、国債の信用リスク等が次の段階の問題となってきているわけですね。

 それで、菅さんおっしゃいますように、先ほど菅さんのお言葉を聞いていますと、要するに、緊縮というわけにもいかないし、かといって財政規律を無視するわけにもいかない、二兎を追わなきゃいかぬという言葉も、こういう今の現状を踏まえてそれは相当のたうち回っておられる、そういう言葉だろうと私は受けとめます。

 ただ、ギリシャを見ればわかるとおり、リスクは、危機、クライシスに転化するおそれというのは常に持っているというふうに考えておかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 そこで、持続可能な財政運営のために、あえてこんなことを伺うのはなんですが、財政規律、これは一体、菅さん、どうお考えでしょうか。何が財政規律か。

菅内閣総理大臣 まず、財政規律ということを考えるときに、今、我が党、我が政権でまずやらなければならないことは、無駄の削減、つまりは税金の使い方を徹底して見直していく、そのことがまず最初にやらなければいけない財政規律の第一歩だと考えております。

谷垣委員 ことしの予算編成に関してはそうかもしれません。ただ、財政規律というのは何かと考えますと、私は、答えは幾つかあると思うんです。

 先ほどから菅さんがおっしゃっておられる中期財政フレームの、閣議決定はしていないけれども、試算がありますね。あれを拝見しても、あの計算の中で、二〇二〇年ですか、プライマリーバランスを回復していくんだと書いてありますね。つまり、その年いただいた税金でその年の政策経費を賄っていく。つまり、その年のもらったもので三度の飯を食っていこうというのは一つの財政規律の考え方だと思いますね。

 それから、もう一つ考え得るとしては、結局これだけ借金がたまっているわけですから、その借金が日本経済の力量に比してどんどんどんどん膨らんでいく、いわゆる発散するような状況になったらたまらないねと。何とかそれを抑え込むのが財政規律だという考え方もあるだろうと思います。

 これはどういう考え方をとるかによっていろいろ違いますが、しかし、端的に言えば、財政法はどう書いてあるか。これは実は、私はあえて申しますと、天につばをするような気持ちで申し上げております。財政法は、建設国債はいいんだと、それは後になって残るから。しかし、特例公債を発行してはいけないとは書いていないんですが、少なくとも財政法ではできるようになっていないんですね。だから、特例公債法というのを毎年つくっているんです。

 私は、これは自民党時代の反省も含めて申し上げますと、要するに、そういう特例公債に頼らずにやっていくことができていない、このことは私どもも大いに反省をしなければならないと思っております。しかし、菅さんは今、政権をしょっておられます。政権をしょっておられるというのは大変大変なことだなと思いますよ、こういうことも一切しょって、今の財政の危機に当たらなきゃならないわけですから。そういうふうに考えますと、やはり一番の問題は、反省すべき点は反省するけれども、この出血がとまらない限り、なかなか財政の健全化の道は開けないんです。

 では何がこの出血の原因なのかと考えますと、これは皆さんも苦労しておられるでしょう、自民党政権時代もいろいろ苦労しました。骨太の二〇〇六なんかをつくりまして、五年間で十数兆削減しようということもやってまいりました。ある意味では、毎年社会保障の経費を自然増から二千二百億は削れ、そのことが随分やはり痛みになってあらわれて、我々が下野した原因の一つもそこにあるかもしれないと思っております。

 要するに、何を申し上げたいかというと、公共事業なんかは、前原さんは御苦労でありますが、毎年三%削って、最盛期の半分まで我々の時代に来て、それを去年、一八・数%、さらに削られたわけですよね。いろいろなところをやってきましたけれども、無駄も結構です、やらなきゃいけない。だけれども、社会保障はどうしたって伸びていくんです。ことしだって一兆数千億伸びるんでしょう。その財源に正面から立ち向かわない限り、この構造に薬をつける、出血をとめることはできないんですね。

 これは、我々もそういうことを考えて、のたうち回ってやってきた。その一つの方針の表明が、平成二十一年度の税制改正の附則におきまして、消費税を含む税制抜本改革を行うように明記した。基本的にこの流れは、民主党政権になっても私は大きく否定することは不可能だと思っております。やはりその中で、のたうち回っていただくと言っては失礼ですが、御苦労をいただかざるを得ないのが状況じゃないでしょうか。

 そこで、消費税の制度設計ですが、先ほど申し上げましたように、我が党はあえて消費税率引き上げ当面一〇%ということを申し上げまして、ここのパネルに書いてございますが、これを打ち出して選挙戦を戦ったわけです。当然、国民に負担をお願いする以上、しっかりした制度設計、少なくとも基本設計はきちっとしたものがなきゃならない。

 そこで、菅総理、予算総則では、消費税の使途を高齢者三経費、介護、医療、年金に充てている。これは御存じだと思いますが、これはいつから、どういう経緯でそうなったのか、当時関係した政党はどうだったのか、このあたりは御存じでしょうか。

菅内閣総理大臣 予算総則において、消費税を基本的には高齢者の年金、医療、介護に充てようということで、平成十一年度からそういう考え方が盛り込まれた。当時は、実際にかかる費用と消費税の国に入る分が、若干社会保障の方が大きかったけれども、せいぜい差額は一兆から二兆弱だったのが、現在はその差額は十兆近くになっているわけでありまして、そういう点では、社会保障のあり方と消費税を含む税制あるいは財源の問題は一体的な議論が必要だ、それは私どももそのように思っております。

谷垣委員 総理おっしゃったように、これは平成十一年ですね。当時、これがきっかけでいわゆる当時の自民党と自由党の自自連立ができる伏線に、これはたしか連立の合意にこのことが含まれていたんだと思いますが、当時これを主導された自由党の党首は小沢一郎先生でした。

 それで、こういうふうになったことは、この三経費に充てるということにした理由は何だったのかということでありますが、これは結局、消費税というようなものをいただく以上、一円も無駄遣いには充てられない、これは社会保障経費にしっかり充てていくんだという考え方がここにあらわれていたんだと思うんですね。

 そこで、今、ここはちょっと慎重に申し上げなきゃならないんですが、消費税の前に無駄を省くことが必要だという議論がございます。私は、無駄は、やはり政治をやっていますと、幾ら最初はいい政策でも無駄になってくることは幾らもありますから、常に無駄は省かなければいけないと思います。だけれども、現実にこういうふうに社会保障経費がこれだけ負担が大きくなって、しかも、菅総理も団塊の世代ですよね、団塊の世代はこれからどんどん年金生活者になっていく、そういう時期を迎えているわけです。それから、国債発行リスクというのも、先ほど言ったように非常に今懸念をされているときであります。無駄の削減は必ずやらなきゃなりませんし、それから、同時に景気をよくする手だてをやらなければならないことも当然であります。しかし、これをいつまでもほっておく状況にはない、このように私は考えているわけです。

 自民党案は、そういうこともありまして、社会保障目的税にしていくんだということを明確に位置づけて、一番これから負担の大きいところに充てていくんだ、その意味で無駄遣いはしないんだということを示す意味がございました。

 それから、積算根拠も、その一〇%を考えますには、年金、医療、介護の社会保障の機能強化あるいは少子化対策で約七兆円が必要だろう。それから、社会保障の自然増は毎年、ことしは一兆三千億と言いますが、少なくとも今まで一兆円と言ってきた、そういうものも考えなきゃいかぬだろう。それから、先ほど菅さんおっしゃったことでありますが、消費税では賄い切れていない高齢者三経費というものが、これは菅さんの御計算では多分九・何兆になると思いますが、年金の基礎年金を二分の一にするというのも入っておりまして、我々はそれは機能強化に含めて考えておりますが、一応七兆円ぐらいやはりあるだろう。そういうふうに考えますと、何とか、あとは無駄を省くことによって税率一〇%でいけるのではないか、こういう積算のもとに成り立って、社会保障税ということも言ったわけであります。

 そこで、菅さん、消費税と言っておられるとき、一体使途をどういうふうにお考えになっているのか。それから、さらに言えば、いつ、どういうふうにとお考えになっているのか。

 特に伺いたいのは、九月に御党の代表選挙があります、御党の代表選挙ですから私が申し上げる必要もありませんが、そこでは消費税はおっしゃらない、こういうようなことが報道されておりますが、菅さん、これをおやりになる気があるのかどうか。そのことを伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 私は、今おっしゃったその消費税と社会保障の関係、これも後で申し上げますが、そのことだけでなくて、新成長戦略を含む経済成長という問題、それから、これは絡みますけれども財政再建という問題と社会保障、私はこの三つの要素を一体的に取り組んでいくことがよりいい方向を生み出せると思っております。

 そこで、あえて、先ほどのことは後ほど申し上げますが、もう一つの要素があるわけです。これはかなり議論のあるところです。つまりは、今のような日本が、デフレ状況にあり成長がとまっているものを、何とかデフレ脱却して成長に結びつけていくためには新たな分野にある程度の財政を投入する必要があるのではないか。私たちはそのキーを雇用というふうに見ているわけです。

 もちろん、雇用の中には介護とか保育の分野もありますし、場合によってはいわゆる環境分野もありますし、そういう意味で、雇用を拡大し、経済を拡大する中でデフレの脱却を目指すと同時に、場合によってはそこで働く皆さんが税金を払っていただけますから、ある程度財政にも寄与する。中身によっては社会保障の充実にも寄与する。この問題と、今、谷垣総裁が言われた消費税と社会保障の問題というのは、一部ダブっておりますけれども、一部、若干視点が違うところもあるわけです。

 そういった意味で、私は、まずはマニフェストについていろいろ議論がありますが、ことしのマニフェストに使った費用は組み替えによって生み出したものでありまして、一部に言われているように、何かそういうものに使うお金が足らなくなったから消費税を上げようと思っているんじゃないかというのは、全く考えてはおりません。そうではなくて、今までの財政の組み替えによって、より効果的な、経済成長に効果的なものに組み替えようというのが基本的な考え方です。

 その上で、先ほど言われたことを申し上げますと、御承知のように私もG8に出かけまして、その中では……(発言する者あり)少し静かにしてもらえませんか。その中では、G20の中では、二〇一三年までにプライマリーバランスを半減、今の半分にし、二〇一六年までに黒字化するということを全体の中で提案がありまして、我が国としてはそこはかなり厳しい目標であると同時に、既に、先ほど申し上げた財政運営戦略を閣議決定して、新成長戦略ではこういう形でやろうとしているんだということを申し上げていましたので、では、日本はそういう形でやることは大いに頑張れ、ウエルカムということを言っていただいているわけです。

 しかし、特に谷垣総裁はおわかりのように、だからといって、日本がそれでウエルカムと言われたから万々歳ということではありませんし、また、二〇一五年という半減の目標も、これは自民党も出されていますが、それで十分かと言われれば、必ずしもそれで十分とは言えない、まだ厳しい水準といいましょうか、そういう水準だと思っております。

 そういう意味で、私は、先ほどの問題に戻れば、消費税について議論する場合には、今総裁がお話をされた社会保障との関連で議論をしていく。従来、民主党の中でもそういう議論もありますので、そのことが基本になるだろうと思っております。

 その上で、代表選等についての御質問については、ちょっとこの場でお答えすることは適当でないかと思いますが、私が申し上げたのは、先ほど来申し上げていますように、今度の参議院選挙で、やや具体化している議論が、一方で、政府税調なり党でやっていただくことになっているにもかかわらず、私が多少先走っていろいろ言ったことがいろいろな意味で混乱を招いたという反省もありまして、党の方での議論を現在お願いしているという意味で、今、目の前といいましょうか間近に迫った代表選で、私の方から具体的にこういう数字、こういう形ということを今申し上げるということは控えたい、そういう趣旨で申し上げたところであります。

谷垣委員 今の菅さんのお話は、全額社会保障、まあ社会保障といってもいろいろな分野がありますけれども、足らず前に充ててしまえばなかなか、今まで赤字国債を発行してやっていた分に充ててしまえば成長にはつながらないなという……(菅内閣総理大臣「いや、そう言っているんじゃないから」と呼ぶ)いや、だから、成長分野に使いたいということでしょう。(菅内閣総理大臣「いやいや、逆ですよ」と呼ぶ)いやいや、雇用に使いたいといいますか、雇用を成長させるための材料として使いたいし、そのための財源として使いたいということじゃないんですか。では、もう一回言ってください。

菅内閣総理大臣 いや、ですから、そこは分けようと言っているんです。つまり、それは従来の予算の中での組み替えでいきたい、そして社会保障と消費税の関係は一体で議論したいと。

 ですから、社会保障以外に消費税を使うということを軸にしての提案ということでは全くないということです。

谷垣委員 制度の細かなところはもう少し議論が詰まってから議論させていただいた方がいいと思いますが、今伺ったのは、社会保障にももちろん財源には充てるんだけれども、そのほかにも、やはり日本経済を元気にしていくためには使う余地があるかもしれないとおっしゃっている。(菅内閣総理大臣「違います、違います」と呼ぶ)違いますか。組み替え。組み替えでそれは出してくる。そうですか。

 つまり、では、消費税は、私は先ほど社会保障目的税にするということを申し上げましたけれども、そこまで限定させないという趣旨ですね。

菅内閣総理大臣 もとに戻って話を申し上げれば、まさにそういう議論を、政府税調と党の方で今議論を、党の方は今から本格的に始まりますので、始まるということであります。

 そういう中で、私が考えていることをあえて申し上げれば、やはりこの問題と、消費税の問題と社会保障の問題は一体で議論が必要であろう、これを申し上げたんです。

谷垣委員 この問題は、これからも議論の機会がいろいろあると思いますから、細部は今後も続けさせていただきます。

 それで、今、代表選でのことはおっしゃらないとおっしゃいましたね。(発言する者あり)いやいや、消費税をどうするかについてはおっしゃらないとおっしゃった。私、なぜこういうことを伺ったかといいますと、選挙のときに問題提起をされて、そしてこれからどうおやりになるのか、態度が余りはっきり見えてこないんですね。

 それで、私はあえて申し上げたいのは、最初、参議院選挙の結果どうかという受けとめ方をお伺いしましたときに、政治と金の問題とか、あるいは乱暴な国会運営とか申しました。私、そういうふうに個別に申し上げました私の気持ちの底にありますのは、大変失礼だけれども、政治の言葉が軽いんじゃないかという思いがありまして、やはり、どんと有権者の胸に響く発言と行動が欲しいな、こう思っているわけです。

 それで、選挙のときにあのようなことをおっしゃって、そうして、もう代表選ではおっしゃらない、こういうことになると、やはり、菅さんの言葉は残念ながら軽いな、こういうふうに申し上げざるを得ない、こういうふうに思うんですが、何かおありですか。

菅内閣総理大臣 私は、参議院選挙の前に私なりに考えました。先ほどどなたかも言われていましたけれども、やはり政治家が最終的にどういう政治家であったかということを評価なり批判されるのは、歴史がその行動なり発言を見てであろうと思っております。

 そういう意味で、私も、財政が大変厳しい中で、財務大臣時代のG7の折にも、直接の会議や電話会議で、あのギリシャの状況に対してマーケットが開くまでに決めなければならないという場面もありまして、合わせて七千五百億ユーロの支援の枠組みを決めたその会議の、これは電話会議でありますが、そこにもおりました。その中には、IMFを通して日本から一千億ドルの枠の提供も含まれているわけです。そういったこともあって、多少私が前のめりにこういうことを発言する、私なりの反省からすればそういうことも一つの原因になっております。

 ただ、今申し上げましたように、そういった事柄は何一つ変わっているわけではありませんし、IMFの議論も私は聞いておりましたので、その後、IMFが日本の財政状況について大変厳しいレポートも出しているわけです。ですから、冒頭ですか、申し上げましたように、財政再建という問題で私は一歩も引くつもりはありません。

 ただ、消費税の中身のあり方などについては、私が必ずしも十分ではない中で発言したことが若干の混乱を招きましたので、それは党なり政府税調の議論を、どこまでの税率でとか、どうするこうするということのいろいろな案は当然あり得るわけですから、それはそれとして議論はお願いしたい。財政再建については一歩たりとも引くつもりはありません。

谷垣委員 財政再建については一歩も引くつもりはない、その言葉は結構です。ただ、私は、菅さんの全身から、おれが説得する、こういう気迫が欲しいなと感想として申し上げます。

 それで、一つ申し上げますが、平成二十一年度の税制改正法附則の百四条の問題を伺いたいと思います。

 ここには、政府は、「消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずる」こういうふうにされているわけですね。この法律が要請していることは、政府が責任を持って二十三年度までに国会に具体的な税制改革案を提示することでありまして、我が党としてもそれを待ちたいと思っております。財政事情が緊迫化する中で、この条項の修正によるスケジュール変更というのは当然認められない、こういうことだろうと思います。

 当初、総理は、これについて、税制改革案を二十二年度中にまとめて、消費税の引き上げの前には国民に信を問う、こういうことをおっしゃっていたと思いますが、そうされればこの附則のスケジュールで十分間に合うはずでありました。ところが、最近では、いつまでにそういう法案をまとめられるのかが少し怪しくなってきておりまして、法案提出が二十三年度までになされなければ、これはこの法律違反、こういうことになるわけであります。

 法律に従って二十三年度までに具体的な税制改革法案を提出するということでよろしいのかどうか、それからまた、増税前に国民に信を問うということを言っておられたわけですから、そうするとその前に解散をなさるのか、これでよろしいのかというふうに伺います。

菅内閣総理大臣 先ほど来申し上げていることともダブりますけれども、確かに、この選挙の前の段階で私が、自民党の提案の一〇%を参考にしてということを含めて、二十三年度までにそういった案をまとめたいということをその段階で申し上げたことはそのとおりであります。

 しかし、今回の選挙の結果を踏まえて、また党内の議論も含めて、この議論は、先ほど来申し上げていますように、かなり具体的な問題も含みますので、政府税調に加えて党の方で御議論をいただいていこう、いつまでに結論を出すという期限を切ることは改めたいということで、二十三年度の期限ということは改めることにいたしました。

 その上で、百四条の問題は、これはもちろん政府としての義務ということでもありますけれども、この法案そのものはたしか自民党政権時代にできた法案だと思いますから、まさに国会を含めて、この法案のとおりに推し進めるとすればどういうやり方があり得るのか、あるいは、この法案どおりに進められないとすれば、それはそれとして、二十三年度の末ということは、暦でいえば二十四年の三月末でありますので、その適当な時期に何らかの対応をしなければならないだろうと思っております。

 そういった意味で、期限を切っての議論ではないということを含めて、いつまでに解散云々ということは、現在、全く考えておりません。

谷垣委員 解散の時期は今全く考えていないということでありましたけれども、要するに、消費税を含む抜本税制改革の前に信を問う、これはたびたび繰り返してこられたことではないかと思いますが、それはそれでよろしいですか。

菅内閣総理大臣 私は、そういう大きな、例えば消費税を大きく引き上げるとか、あるいは別の税金でもそうかもしれませんが、大きな税制改正を行うときには、やはり国民の皆さんに判断をいただく、そういうことが必要だろう、その考え方は変わっておりません。

谷垣委員 先ほど来、私も、真摯な御提案があれば我々も真摯に受けとめる、それで、またそういう議論をしなきゃならない局面というのはあると思うんですね。

 それで、財政についていいますと、私自身が以前に、これは鳩山総理でしたけれども御提案申し上げた財政健全化責任法というのを出しまして、その中で円卓会議、超党派でもって社会保障の財源や税を議論したらどうだということを御提案申し上げました。これは審議もされずに廃案になってしまったわけですが、秋の臨時国会には私どもまたこれを提案したい、提案しなきゃならぬと考えているところでございます。

 そこで、ここで掲げられている財政健全化目標、先ほど菅さんもおっしゃいましたけれども、政権与党が掲げておられるものと中身は基本的に同じであります。与野党協議会の設置はこの法案の中に明記されております。それで、何かつけ足したいという点があれば、補正というか修正で補うこともこれはやぶさかではございませんが、我が党の法案を審議していただければ、当然、今回そういう場が成立するというふうに考えますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 私、財務大臣の時代にその法案を拝見いたしまして、そういうものを含めて、実は、その段階では、成長戦略も若干含めた考え方を政府としても出せないかということを少し検討したことがあります。先ほど申し上げたように、その中身については、多くはもう閣議決定の方で対応しておりますが、今、谷垣総裁からのお話は、私たちにとっても大変重要な提案だとお聞きをいたしました。

 先ほど来、繰り返しになりますが、それを受けとめる内閣及び党の関係は、今それぞれの部署でこの問題の検討に入っておりますので、自民党の方からそういった法案が出されたときには、真摯に受けとめて、その提案についても、私たちとしても、その提案に了解ができるかどうか、前向きに検討するように指示をしたい、このように思っております。

谷垣委員 私の時間がもう終わりましたのでこれで終わりますが、るる申し上げてまいりましたように、政権のやはり言葉の軽さというものを私は感じております。どうぞそこを十分認識されて、言葉に伴う責任、このことを意識して、先ほどおっしゃったような税制の問題、財政の再建、こういうものに全力で当たっていただかなきゃならぬと思います。

 私は、既に去年政権をとられたときのマニフェストが破綻しているという認識に立っておりますので、それは信を問うて出直す以外、仕方がないと考えておりますが、そのことを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

鹿野委員長 この際、石破茂君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石破茂君。

石破委員 さきの参議院の選挙において示された民意とは何であったか。

 一つは、民主党の暴走をとめなければならない、おどかしであり、ばらまきであり、ほおかむりであり、先送りであり、そういうような民主党政治の暴走をとめたい、そういうような国民の意思があった。

 もう一つは、我が自民党が勝利したというよりも、我々自民党は、国民から最後の機会をいただいたのだというふうに私は思っております。

 我々自民党は、いたずらに政府を攻撃するだけではなくて、責任野党として、野党の立場ではあるけれども、議員立法、法案修正あるいは予算修正、そういうような手段によって公約の実現を図る、そして政策を錬磨する、そういうのが我々に与えられた役割である、そのように考えております。

 総理に申し上げておきます。私とあなたは立場を異にしますが、野党の私が言うのも変だけれども、心から御苦労さまですということは申し上げておきます。

 私は何人かの総理にお仕えをしました。内閣総理大臣というものがいかに激職であるか、命を削るようなそういう激職であるということもよく承知をしております。心身ともに大変な負担がかかっているということもよくわかっております。

 その上で、あえて申し上げます。総理、しっかりしてください。毅然とした態度で臨んでください。

 今、谷垣総裁との議論を聞いていても、消費税に関する問題、あなたは日本国の最高責任者なんです。私どもが公約を発表した二時間後だったと思う。六月二十日ではなかったかと記憶をしている。自民党の一〇%、これを参考にするというふうにおっしゃった。あれは一体何だったんだ。これはもう撤回されたのか、されていないのか。

 その後、消費税を出したことが問題なのではない。確かに唐突だったかもしれないが、財政再建は必要である、経済成長のために消費税を上げる、あるいは法人税を下げる、課税の範囲を広げる、そのような税制改革が必要である、そのようにきちんと語られなかったことが問題なのではないですか。信念を持ってきちんと語られるべきです。

 そして、代表選挙のときに、小沢代表はしばらく静かにしてもらいたい、それが党のためで、国家のためである、そうおっしゃって多くの支持を得たのではありませんか。その考えは一体どうなったんですか。

 総理は、毅然として、国家の指導者として、こうあるべきだということを国民に語っていただきたい。重圧がかかることもわかります。御苦労があることもわかります。しかしながら、そうであれば、国家の最高指導者なぞになるべきではない。そのことはきちんと語っていただきたい。総理、毅然として臨んでいただきたい、そのことをまず申し上げておきます。

 総理、間もなく八月十五日が参ります。私は三年前、やはり同じこの場で、多分総理も予算委員としてその場にいらっしゃったと思います。猪瀬直樹さんが書かれた「昭和十六年夏の敗戦」、こういう本の紹介をいたしました。ぜひ読んでくださいというふうに当時の安倍総理に申し上げました。これは相当前、たしか一九八三年、昭和五十八年の猪瀬さんの著作であったというふうに記憶をいたしております。最近、こういう形で文庫版で出版をされました。

 私は、若い方々に何を読んだらいいですかと聞かれることが時々あります。ぜひこの本を読んでくださいというふうにいつも申し上げるようにしております。昭和二十年夏の敗戦ではありません。なぜ「昭和十六年夏の敗戦」、このような題になっているか、そのことをそのときもるる申し上げました。

 昭和十六年、開戦の年です。当時の帝国政府は、今の首相官邸の裏あたりに、総力戦研究所、そういう研究所を立ち上げました。軍や、あらゆる官庁や、あるいはマスコミや、主に三十代のえりすぐりの俊才を集めて、もし日米が戦えばどうなるか、今でいうシミュレーションをやりました。そして、昭和十六年の夏、近衛総理や東条陸相や、居並ぶ閣僚の前でその結果が発表されました。

 詳細は申しませんが、そこのシミュレーションの結果はほとんど実際と同じことでした。ソ連の参戦あるいは原子爆弾の投下、それ以外はほとんどがそこのシミュレーションのとおりになったのです。日米戦わば必敗です、この戦争は何があっても避けねばならない、そういう結論が出ておりました。いろいろな資料で明らかであって、それはきちんと検証すればわかることです。

 何が言いたいか。それは、文民統制、それがいかに重要であるかということを私は申し上げたいんです。私は、軍事と安全保障、そして外交は車の両輪である、そのように考えております。軍事や安全保障を知らずして平和を語ることが絶対にあってはならない、それは私の信念です。

 総理に伺います。

 総理にとって、文民統制とはどのような概念ですか。そしてまた、文民統制が有効に成立するためにはどのような条件が必要だと考えておられますか。

菅内閣総理大臣 私の考える文民統制、基本的には、国民が軍事についても最終的には判断する、しかし、現実の社会でいえば、軍事組織に属さない政治家が民主的な手続の中で判断をする、それが文民統制だと考えております。

石破委員 文民統制が有効に成立するための条件は何ですか。

菅内閣総理大臣 何か口頭試問を受けているような感じもいたしますが、私なりの一つの考え方で言えば、やはり一つは、民主主義が成立をし、いろいろな発言の自由が保障されている。また、手続としては、一般的に言えば、議会制度とかそういうものがきちんと機能している、そういうことだと思います。

石破委員 文民統制が有効に成立する要件、なぜ、軍事の素人たる政治家、究極的には内閣総理大臣、それが文民統制の主体なのか。それは、政治家だけが国民に対して直接責任を負い得るからです。そういう意味では、総理の御認識は正しいのです。しかしながら、責任さえ負えばいいんだろう、どんな結果が起こってもそれは知らぬ、そのようなことであってはならない。

 そして、文民統制には二種類あって、一つはクーデター、そういうものを防ぐために。つまり、その国において軍隊ほど強い組織はどこにもない、存在しない。警察が束になってかかっても、海上保安庁が束になってかかってもかなわない、そういうような強大な組織である。そのようなものであるがゆえに、それが暴走することがあってはならない。いわゆる軍事組織から国民の安全を守る、そういう意味の文民統制が一つあります。

 これに偏り過ぎては今はいけないのであって、この、軍事組織と言って悪ければ、実力組織を使ってどうやって国益を実現するか。軍事による国益の確保、軍による安全、これを確保しなければならない。二つの意味があることは御存じのとおりです。

 これが有効に機能するためには、一つは、最高指揮官たる総理大臣が安全保障についての正確な知識を持つこと、もう一つは、専門家である制服、ユニホーム、そこの意見を虚心坦懐に聞くことです。この二つがなければ有効な文民統制は決して機能し得ない、私はそう思っています。

 普天間問題をこれからお尋ねしますが、何でこんなに迷走したのか。前総理が、統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長あるいは情報本部長、それぞれすべて、すぐれた見識を持った立派な自衛官であります、何度直接話を聞いたのか、この現在の状況について。なぜ沖縄に海兵隊が必要なのかという状況について何度意見を聴取したか。総理の日誌を見る限り、一度もそういうような例はありませんでした。

 菅総理、就任以来、相当の日がたっています。防衛大臣を通じてではなくて、自衛隊の最高指揮官として、今まで何回制服組から意見を聞かれましたか。

菅内閣総理大臣 まず、普天間の問題については、私として、政権の、こういう総理という立場になったときに、最も今取り組まなければならない、最重要課題の最上位に近い一つだという認識を持ちました。

 そこで、まずは、これまでの経緯を直接にも聞こうということで、もちろん、防衛大臣、外務大臣はもとよりですが、そのもとのいわゆる防衛省、外務省のスタッフから何度か話を聞き、また、官房の方からもいろいろな形でそういう皆さんとの状況把握に努めました。また、沖縄の関係者についても、まだまだごく限られた中ではありますが、お話を聞きました。

 自衛隊の幹部との会話というのはいろいろな、例えば、大綱の問題とかそういう会議の席では同席をいたしておりますけれども、個別の沖縄のことについて話を聞くという機会はまだ設けておりません。

 しかし、順番に、そういう話をする中で、今の石破議員のお話もありますので、機会を見つけて話を聞きたいと思っております。

石破委員 一度も今まで聞いておられないことはよくわかりました。

 総理、自衛隊の最高指揮官として、直接意見を聞く、そういう機会はもっと設けるべきです。きちんとそれを聞いていれば、普天間問題はこんなに迷走したはずがありません。彼らは、命をかけてこの国の平和と安全を守っている。御存じのとおり、日米同盟というのは日米だけのものではありません。極東の平和と安定、それも目的とされているのであって、日本だけの勝手な都合で、ああだのこうだの言っていいはずがない。命をかけて日米同盟を実際に遂行している、米軍の能力がどうであり、あるいは、ほかの国の能力がどうであり、そのことを命をかけて一番知っているのは自衛官じゃないですか。彼らから直接意見を聞かないからこんなことが起こるんです。そのことは絶対に必要なことであって、この国において、それが行われない、それは極めておかしなことだと私は思っております。それを判断する能力を総理が持つかどうか。

 それとあわせて……(発言する者あり)今、民主党の方々がいろいろと、それは違うというふうにやじを言っておられる。私は、その考えそのものが根本的に間違っておるのであり、ほかの国々と大きく異なるところです。そこを、この国の誤ったあり方、これは菅総理のときにきちんと正していただきたい。

 総理がおっしゃるように、直接聞くべき、聞く機会を設ける、そのことはぜひお願いをしておきたい。もう一度お答えください。

菅内閣総理大臣 そういう機会はできるだけ早い段階で設けたいと思います。

石破委員 それでは、日米と普天間についてお伺いをいたします。

 この八月末、日米合意、ここには、八月末までに、いかなることがあっても工法、位置、これを定める、このように記されております。その方針に変わりはありませんか。

菅内閣総理大臣 五月の二十八日、日米で合意された中身に石破さんが今言われたことが含まれていることはよく承知をいたしております。

 その中で、もう一言申し上げれば、専門者による一つの、何らかの議論を八月末までに終結、終了させるとなっておりまして、その内容が、一つ終わったということが、即そこで決まったことを具体的に工事という形で実行に移すということではない。やはり沖縄の皆さんの理解を得るということを含めて、幾つかのプロセスがさらに必要になるであろう、このように認識をいたしております。

石破委員 さきの国会で、鳩山内閣でしたが、このグアム協定の持つ意味合いについてお尋ねをいたしました。これは狭義の条約である、そのように私は申し上げました。恐らくそうだと思います。

 日本国憲法によって、我が国家は条約遵守義務を有しています。そして、期限、場所、それも条約の内容に含まれておるはずでございます。

 さて、この日米合意、どう書いてあるか。今総理からお話がありましたが、普天間飛行場のできる限り速やかな返還を実現するために、閣僚は、代替の施設の位置、配置及び工法に関する専門家による検討を速やかに、いかなる場合でも二〇一〇年八月末までに完了させ、検証及び確認を次回のSCCまでに完了させることを決定した、このように書いてあります。間違いない。

 八月末、いかなる場合があってもここで決めるということで間違いないですか。

岡田国務大臣 私は当事者でありますので、御説明したいと思います。

 今委員が読み上げられたとおりでありますが、閣僚は、代替の施設の位置、配置及び工法に関する専門家による検討を速やかに、いかなる場合でも二〇一〇年八月末日までに完了させるということであります。完了させるということの内容については、一定の幅はあるというふうに考えております。

石破委員 幅って何ですか。複数案の提示もあり得るということですか。

 そしてまた、これは岡田さんだったと思いますが、それは専門家の決定であって政府の意思とは異なる、そういうことがあり得るのですか。そしてまた、完了したその内容を公表しないということがあり得るのですか。

岡田国務大臣 これはこの日米合意に書いてある限りのことで、それ以上のことは特に確認をしたり決めたりしていないわけであります。

 ここに書いてあるのは、専門家による検討を二〇一〇年八月末日までに完了させるということであります。そして、その結果について検証及び確認を、次回のSCC、つまり閣僚委員会までに完了させると。ですから、完了というのは次回のSCCにかかっているということであります。

石破委員 公表しないことはあり得ますか。

岡田国務大臣 この日米協議委員会の合意には、そのことについては特に語っておりません。

石破委員 つまり、公表もしない、それは政府の決定でもない、複数案もあり得る。

 では、これは一体何なんですか。

岡田国務大臣 公表しないと私は言っておりません。ここにはそういったことについては語っていないと。まさしくこれは両国政府間でこれから協議をしていくことだというふうに思います。

 繰り返しになりますが、専門家による検討を八月末日までに行うということでございます。

石破委員 岡田さんの立場はよくわかりますが、それは、結局、沖縄県民に対する背信ではないですか、そしてまた先送りではないですか。公表もしない、沖縄県民に対してそれで責任が果たせたと思っていますか。

岡田国務大臣 何度も繰り返しますが、公表しないということを私は一度もこの場で申し上げておりません。その取り扱いについてはまだ決めていないということであります。

 そして、委員いろいろおっしゃいますけれども、では、この八月末日までにこれしかありませんというような決め方をすることが果たして沖縄の皆さんの御理解を得ることにつながるのかということも、当然考えていかなければなりません。

 あくまでも八月末は、専門家によって検討が行われるということでございます。

石破委員 これを沖縄の人々がどういう思いで見ているか、合衆国がどういう思いで見ているか、そのことをよく認識した上で発言をしておられるのだろうと思います。

 それでは、質問をかえましょう。

 いずれにせよ、普天間の代替施設はこのロードマップに記されているとおり、辺野古周辺。では、工法とか位置とかはとりあえずおきましょう、辺野古周辺に建設をする、その明確な意思をもう一度、総理、示してください。

岡田国務大臣 今委員のおっしゃったことは、この協議委員会の合意の中に含まれていることでございます。

石破委員 総理のお考えを承ります。辺野古の地域に代替施設を建設する、それは日本国政府の、菅内閣の確固たる意思である。間違いないか。

菅内閣総理大臣 五月二十八日の日米合意をしっかりと実行に移していくというのは、菅内閣の意思です。

石破委員 それは、先ほどの消費税の議論もそうなのですが、民主党の意思でもあるということで理解をさせていただきたい。

 何でこんなことを言うかといいますと、この日米合意以来、民主党のいろいろな方とテレビの対談に出た、討論に出た。かなり当選回数が上の方で、国会においても枢要な地位を占め、民主党の中でもこの問題の責任者を務めておられる方だ。こんな合意はできっこない、グアムである、テニアンである、そういうことを公共の電波で堂々と発言をされた。そのことをだれもとがめなかった。民主党の中でこれが問題になったという話を寡聞にして知らない。

 そして、私は非常に奇異に思うのだが、さきの参議院選挙において、御党は沖縄に候補者を立てなかった。京都においては現職衆議院議員をくらがえさせてまで支持をふやそうとした。民主党の支持をふやしてください、どうぞ皆さん、民主党に投票してください。それなりの効果があったんでしょう。京都においては現職の衆議院議員をやめさせてまで候補者を立てたが、沖縄においては与党の選択肢というものを全く提示しなかった。(発言する者あり)本人の意思、そうですか、それなら本人の意思かもしれません。ただ、党が全く関与しなくても自分が勝手に決められる。すごい党ですね。

 いいですか。私は非常に奇異に感じたんですよ。国政選挙において与党の選択肢、すなわち、総理が今、確固たる意思だとおっしゃった、絶対にやるとおっしゃった。だとすれば、何でそれが提示されないんだ。私は非常に奇異に感じましたね。多くの人がそうだったと思いますよ。

 いいですか。これは玄葉さんに聞いた方がいいのかな、民主党の政務調査会というのは一体何なんだろうかということです。これは、私は玄葉さんを心から信頼しているけれども、自民党の意思決定プロセス、それは、政調会で物事を決め、そしてそれを総務会に上げ、そして党の意思というものは決まっていった。いろいろな弊害はあったかもしれないが、党の意思というのはこういうものだということで、後から、これが国民の声である、偉い人がやってきてごろっと百八十度ひっくり返る、そのようなことは少なくともなかった。そうでしょう。だって、小沢さんがこれは国民の意思であると言って、道路の政策ががらっとひっくり返った。私たちはだれを相手に話をしたらいいんだろうかということなのです。

 私は自民党の政調会長として、党の中できちんと議論をし、党の方針を決めた。これはぜひ玄葉さんと、党の責任者であり国務大臣である玄葉さんと、党対党できちんと議論をしたい。消費税でもそうです。この普天間の問題もそうです。

 民主党における政調というのは、これは提言機関ですか、意思決定機関ですか。ぜひ見解を述べていただきたい。

玄葉国務大臣 石破政調会長と同様、私たちも、日本の政治のあるべき政策決定プロセスを追求しています。

 つまり、私たちから見たときに、自民党政権時代の政策決定プロセス、メリットもデメリットもあったと思います。私たちから見たときのデメリットは大きく分けて三つあって、一つは、部会、政調会、総務会で決まらなければ意思決定ができないというスピード感のなさ、二つ目は、責任の所在が政府にあるのか与党にあるのかわからない、三つ目は、やや言葉は過ぎるかもしれませんけれども、いわゆる利害関係といいますか、族議員がばっこしやすい、こういう問題があるので、私たちとしては、一元化しよう、政策決定を政府に一元化しようということにしたわけです。それで、鳩山内閣が発足をしたときに一元化をした。

 しかし、残念ながら、一元化したはいいんだけれども、これを変えるつもりはありませんけれども、与党の中で、どうしても闊達な議論の場、これが失われつつあるのではないか、あるいは中長期テーマでの知見の蓄積がなくなってしまうのではないか、こういうことで、政策調査会というものをまさに新しくつくろうではないか。一元化という原則のもとで政策調査会をつくろう。

 そうなると、あくまで決定は政府です。政策調査会は提言機能です。ただし、私が政策調査会長として閣僚に入っているというわけでありますから、その提言が余りにも受け入れられないということであれば、時と場合によっては閣議で私がサインをしないということで、政府・与党の政策決定プロセスの一元化というのは担保されるんじゃないか、そのように考えております。

石破委員 私は、これは多分、玄葉さんと一緒だと思うんですが、我が国に残された時間というのは物すごく少ないと思っているのですよ。財政にしても、あるいは安全保障にしても、我が国は既に危機管理のモードに入っている、私はそういう認識なんですね。

 自民党の意思決定が遅い、それは改めています。今は、昼夜兼行で議論をし、どうやって意思決定を早めるか、それは、野党の立場ではありますが、やっています。

 政策選択肢の幅も物すごく狭い、時間は物すごく少ない。ぜひ、玄葉さんと話をすれば民主党の意思は微動だもしない、そのことを確認したいのですが、どうですか。

玄葉国務大臣 自民党も恐らく議論百出だと思うんですね、さまざまな問題について。民主党も当然そうでありまして、すべてについて意見が一致するということはありません。ただ、最終的に、私が閣内に入っているわけですから、私の責任でしっかり党内の意思決定をするということでございます。

石破委員 そこは、もう政権をとられて一年になるのですよ。本当に時間は短いんです。政策選択肢の幅はすごく狭いんです。何度も同じことを言いますが、ぜひそのことをきちんとする、そのことはあるべきだと私は思っています。

 政治主導を間違えてはいけません。政府が決めたけれども後からひっくり返りましたということでは、だれを相手に話をしていいのかということに必ずなるんです。

 ぜひ、党内のガバナンス、このことは、総理は「大臣」という本の中で、総理大臣も、行政の立場だから知らないよということは言ってはいかぬのだ、総理大臣も国会議員であると同時に与党の党首でもあるということを言っておられる。私はそれは大いに共感する。政府の立場だから答えられません、そのような答弁は、我々は、仮に政権に戻ることがあっても絶対に言ってはならないと思っている。

 総理、もう一度、考えを述べてください。

菅内閣総理大臣 政策調査会というものがもちろん野党の時代にあって、野党の時代の我が党のいわゆるネクストキャビネットでは、政策調査会長がネクストキャビネットの官房長官役として政調全体を実質的に取りまとめておりました。つまり、野党でありますから、二元化することはもちろんないわけですが、いわゆるネクストキャビネットイコール政調であり、そしてそういう役割分担でした。

 私は、従来から、野党時代の民主党の形を政権与党の中でも踏襲した形がとれないかということを考えてまいりました。昨年六月にイギリスの議会を見たときにも、イギリスの場合は、日本で言ういわゆる幹事長とか政調会長というのにぴったり合う仕事はありませんが、院内総務という役割があって、そのメンバーは閣内のメンバーでありました。

 そういう幾つかのことを参考にしながら、今回、六月の代表選の折に私が民主党に改めて政調会の復活をしたいということを申し上げ、そして現在、その手続が進んで、玄葉政調会長に入閣をしていただきました。

 そういう意味で、それまでは確かに、今も含めて、この一年間いろいろな試行錯誤があったことは決して否定しませんが、これからは、まさに今、玄葉政調会長兼特命大臣が言われたように、党と政府の関係の調整は玄葉政調会長を中心にお願いをいたしますが、最終的には閣議で決定したことが党の決定でもある。そういう意味で一元化の原則は変わっておりません。

 先ほど、五月二十八日は、その前の段階ではありますが、そういうことを厳密に言うのがどうかはわかりませんが、その時点では内閣の決定が唯一民主党の決定でもあるという位置づけでありますので、五月二十八日の日米合意を確認した閣議決定によって民主党はそれを確認した、このように私は理解するというよりも、そういう位置づけであります。

石破委員 辺野古に建設するというのは確固たる意思であるということはよくわかりました。そして、それは民主党の意思でもあるということはよくわかりました。

 この普天間移設問題で、抑止力の維持を当然の前提として、なぜ辺野古になったのかといえば、それは、ここしかないということではなくて、あまたある自治体の中で、苦渋の、本当に苦渋という言葉が貧しく聞こえるぐらいに、本当に血の出るような、命をかけた人も職を賭した人も何人もいました。受け入れてもいいという意思を表示していただいたのが当時の名護市しかなかったから、これが一番の理由です。そして、この普天間基地問題の中で一番急ぐのは、世界一危険な基地とも言われる普天間基地を一日も早く移設させる、それが一番重要なのです。

 最近、ヘリがよく落ちますよね。回転翼機というのは、固定翼機とはまた違った操縦の難しさがあるものです。情勢緊迫時にはその危険性が増すということも、それは常識であります。

 私たちは、前総理から、あなた方は十三年間くい一本打てないじゃないかというふうに嘲笑されました。谷垣総裁と私が、何で去年の十二月の末に官邸に行って、当時の鳩山総理、平野官房長官にお目にかかって、名護の市長選挙の前にこれを決めてくださいと。名護の市民の意思にこれをゆだねるのは、あえて言えば筋違いの問題なのですと。これをやってしまって、移設反対、こういう意思が示されたらば、もうもとへ戻ることがとても難しくなる。どこに基地を置くかということは一にかかって政府の責任なのであって、それはあらゆる非難をかぶるべきものである、それが責任ある政府というものである、そういうふうに申し上げました。

 だけれども、その後も、あなた方は十三年間くい一本打てなかったじゃないか、そういうふうに言われた。環境影響評価をやっている間に建設のためのくいなんか打っていいはずがない。常識です。そんなことをやっていいはずがないのです。

 この問題は、佐藤栄作総理の沖縄返還、それを間近で見ていた橋本龍太郎総理、そこから話は始まっている。橋本さんは、当時の大田知事と二十数回にわたって会談をした。沖縄がおれの死に場所である、そう言ったのは梶山静六官房長官であった。小渕総理は、まさしく命をかけてこの沖縄の問題に取り組んだ。沖縄サミットも実現をさせた。野中官房長官もそうだ。そして、多くの沖縄の人たちが、職を賭し、命をかけて、本当にガラス細工のように、実現一歩手前まで来ていた。それを、十三年間くい一本打てなかったじゃないかと、沖縄への思いだけで、制服自衛官の意見も聞かずに、国外だ、最低でも県外だ、その結果がこれじゃないですか。

 この修復のために、私たちは、野党の立場であっても、去年の暮れに決断をしていただいていれば、全力を挙げてこれを支援した。だけれども、今の状態になった。これは、一にかかって民主党政府の責任です。間違いない。我々としては……(発言する者あり)何が都合がいいだ。そうではないか、間違いなく。こういうことを言って問題をずらす。

 いいですか。総理、これは、党内をきちんと統制してください。これは民主党政府の責任である、そこを認めることがまず第一です。

 そして、いかに沖縄との信頼回復を図るか。それは、あなたが、もちろん、福山副長官も仙谷長官も、あるいは前原大臣も立派な人々ですよ、ですけれども、最高責任者たる総理が、橋本さんが何度も何度も大田知事と会談をしたように、あなたが沖縄に出向き、今までの経緯についてわびて、そして、どんなに罵倒されても、これをやるんだということを言う以外にないんじゃないですか。

 そして、名護の市長さん、移設反対を掲げて戦った、当選された。御党は推薦されましたね。まず、稲嶺名護市長、これと会談をすべきじゃないですか。説得すべきじゃないですか。

 この問題から逃げるようなことがあれば、本当に歴史に汚点を残しますよ。仮に総理がそのような決断をなされば、我々は、野党の立場であっても、それは全力で応援します。これを先延ばしすることは、日本の国益のみならず、先ほど申し上げたように、日米安全保障条約第六条、極東の平和と安定、これを大きく脅かすことになる。我が国の存立のみならず、この地域の安定を脅かす、私はそう思っています。

 総理がみずから沖縄に出向き、罵倒されようが、踏まれようが、けられようがこれをやる、その決意があれば、我々は国益のために全力でそれを支える、私はそう考えています。

 総理の御見解を承ります。

菅内閣総理大臣 六月の八日に私は正式に総理に就任をして、先ほども申し上げましたが、最も重要な課題で、かつ、ある意味で最も難しい課題がこの普天間移設の問題だ、そういう認識を持って、この間、選挙等もありましたけれども、かなりの時間、直接にいろいろな状況把握に努めてまいりました。

 また、沖縄の皆さんとは、六月の二十三日でありましたが、いわゆる沖縄の慰霊の日に出かけまして、かなり厳しい空気の中ではありましたけれども、慰霊祭に出た後、仲井眞知事ともお目にかかって話をすることができました。

 そういった意味で、今のお話のように、私としても、いろいろな機会をつくって、それがより効果的であるならば、何度と決めることなく足を運ぶ用意は十分にあります。

 また、その中で、率直に申し上げて、我が党の沖縄の皆さんとのいろいろな議論もまだまだ十分にこなれているとは言えない状況でありまして、これは、党の方でも今関係者とお話をしながら、党の立場からも、この五月二十八日の合意を実行できると同時に、沖縄の皆さんの理解も得られるにはどうすべきかということを検討、あるいはいろいろと努力をしていただいているところです。

 もちろん、御承知のように、G8の席では、オバマ大統領とも直接お目にかかりまして、このことについても私の方から、合意についてはしっかりそれを踏まえて行動する、同時に、沖縄の負担の軽減については御協力をお願いしたいという趣旨のことを申し上げ、オバマ大統領からも、それについては協力をするという趣旨のお話をいただいております。

 まだまだスタートしたばかりだと思っておりますが、これからこの問題について、あらゆる方面から、私自身を含めてしっかりと取り組んでいきたい、このように思っております。

石破委員 いいですか。これからこういうような山場が来ますよ。八月末の工法の決定。形状の決定。これは今話がありました、とても納得できないが、今のお話だと。九月の十二日、名護の市議会議員選挙が来ます。十一月十三日、オバマ大統領の訪日が予定をされています。十一月の二十八日、沖縄の知事選挙があります。これはどれも動かしがたいものです。

 今、私は尋ねましたね、稲嶺市長に会う用意があるか。そういうことは急いでやらなければ取り返しがつかなくなる。もう答弁は要りません。私はそういう認識を持っており、それに向けて全力で努力をしていく、それが政府の責任であります。

 抑止力について伺います。

 つまり、学べば学ぶほど沖縄の海兵隊の持つ抑止力の意味がわかった。私は本当に仰天、天を仰ぎましたね。これが日本国総理の発言なのかと。菅総理は副総理でいらっしゃいました。外交と安全保障はあなたは担当しなくていい、そういうふうに鳩山さんから言われていた。その旨は本会議で承りました。そうだったのでしょう。

 あなたはかつての論文の中で、二〇〇二年だったと思いますよ、救国的外交私論、私案だったかな、そういうものをお書きになりました。御自身でお書きになったのだから、当然、内容はよく覚えておられるはずです。

 この年はどういう年か。もう九・一一は起こっていた。能登半島沖の不審船事案もあった。南西海域の不審船事案もあった。北朝鮮はミサイルを既に飛ばしていた。そういう時代に総理はどういう見解を述べておられたかというと、沖縄の海兵隊は主に新兵の訓練場なので、サイパンやハワイに行っても全体の抑止力には影響がないというふうに二〇〇二年の時点で述べておられた。私は、これは調べました、間違いないです。かなり驚いた、こういう考え方があるのかと。その後、過去の発言はあったことは否定をしないが、沖縄の海兵隊の抑止力、それは重要であると考えている、そういう旨の答弁がありました。

 総理に伺います。沖縄においてアメリカ海兵隊が果たしている抑止力、これはどういうものだと認識をしておられますか。これは、ほかの人は答えなくていいです。

 つまり、負担の軽減は目に見えるんです。土地が占有されている、騒音がある、あるいはいろいろな事件が起こる、目に見えることです。だから、負担の軽減というのは易しい、易しいと言うかな、言い方を間違えました。負担の軽減というのは目に見えるものです。しかし、抑止力というのは目に見えない。

 沖縄における海兵隊の果たしている抑止力、これについての総理の認識を伺います。

菅内閣総理大臣 まず、私の発言については、石破議員みずから、その後の私の発言も含めて話をしていただきましたので余りくどくど申しませんが、いろいろな時代に、例えばソ連が崩壊した時代、あるいはいろいろな時代において私がそういった発言をしたことは、幾つかあったことは事実であります。

 その中で、近年の状況は、北朝鮮をめぐる状況はある意味では過去の時代以上に厳しい状況にあるという認識も含めて、総理として就任するに当たって、アメリカの海兵隊の、沖縄に基地を含めて存在することについて、それは今の日本の安全にとって必要であるばかりでなく、アジアのこの地域における安定にとっても必要な存在だ、そういう認識のもとで対応していくことを申し上げたところです。

 沖縄における海兵隊の抑止力の意味をということでありますが、最も国会の中でも専門家である石破さんにどのような表現が、私が申し上げることがいいのかわかりませんが、一般的に言えば、私が多少、かつて議論したのは、核抑止という議論はよくやりました。まさに日本は核兵器を持たないわけでありますから、どこかが核でおどしをかけてくる、もちろん攻撃をかけてきたときには、他の同盟国がそのおどしに対して、もしそうしたことがあった場合は反撃するぞという形でそれを抑止していく、そういう存在だという認識を持っております。

 個々の海兵隊、あるいは第七艦隊、さらには第五空軍など、それぞれの機能がありますから、それぞれにはそれぞれの、いわばある種の担当する事態は違いますけれども、私の理解で言えば、海兵隊というのは、一般的に言えば、何か事があったときに現地に出かけていって戦う部隊である、そういうふうに認識をいたしております。そういった意味で、そのことの存在がこの地域における安全保障にとっての抑止的効果を上げている、このような認識を持っております。

石破委員 要は、米軍の時間と距離の壁をどう乗り越えていくかという問題なのですよ。

 これは前の国会でもお示しをした図です。つまり、三十五ノットで航行可能な高速輸送艦が一日で到達可能な範囲は何ですか、どこですかということを前の国会でお示ししました。議論もしました。どこでもいいというものではありません。

 日本は海兵隊を持っていませんからぴんときませんが、海兵隊の任務というのは、緊急時に真っ先に駆けつけて自国民を救出する、これがまず第一の任務です。自国民救出。海兵隊はアメリカの専売特許じゃありませんよ。島国国家あるいは海岸線の長い国家、イギリスであれ、フランスであれ、ロシアであれ、中国であれ、韓国であれ、海兵隊という部隊は持っていますよ。そういう国で持っていないのは日本ぐらいのものだ。真っ先に駆けつけて自国民を救出する、これが第一。

 もう一つは、海軍であれ、空軍であれ、陸軍であれ、すぐに動くというわけにはならない。補給地をきちんと確保する、あるいは基盤を確保する、そのために自己完結的な海兵隊が必要だ、それが海兵隊の抑止力です。一日あるいは数時間のおくれが決定的に状況を悪くしかねない。だから、時間と距離の壁をいかに乗り越えるか、地政学的な意味が大事だというのはそういう意味です。

 仮に台湾。総理は、その論文の中で、中国は台湾の国連加盟を容認すべきだと大変ユニークな論を述べておられますが、この台湾、そこにどこかの国が攻撃をしかけたと仮にしましょう。沖縄、佐世保からの船が来ることを待つことなく、空中給油を受けながらヘリが到達できる、岩国からの飛行機も数時間で到達する、そして、嘉手納の戦闘機部隊が制空権を握る。だから、そのような台湾に、どこだかは知らないが、手をかけるということが抑止をされている。

 抑止力を維持するために必要なことは、何でもかんでも、作戦だから言えませんとか、他国のことだから知りませんとか、そういう話ではない。

 アメリカは幾つも作戦計画を立てている。朝鮮有事、台湾有事、五〇三〇を初めとして、いろいろな作戦計画を立てている。これは別に、私は専門家、オタクとかマニアとか言う人もいますが、でなくても、公刊資料で全部出ているものですよ。公聴会の議論をきちんとチェックすればわかることです。

 作戦計画の内容をきちんと相手に知らしむること、そして、相手がそれを理解する能力を持つこと、合理的な判断ができる、そういう力を持つこと、それによって初めて抑止力は成り立つんです。

 だから、何のために沖縄に海兵隊が必要であるのかということは、きちんと国会で述べる責任が政府にはあります。我々の反省も込めて言えば、それをきちんとしない限り、この移設問題は、あえて言葉を選ばず言えば、迷惑施設の移転問題でしかあり得ない。同盟国から見れば、大いに奇異に映るのはそこです。この議論はぜひ政府としてきちんとやっていただきたい。そして、稲嶺市長と会談することも含めて、総理みずからこの問題の対処に当たっていただきたい、そのことを申し上げておきます。

 基盤的防衛力整備について伺います。

 総理の諮問機関である懇談会、そこにおいて、基盤的防衛力整備構想を転換する、そういう提言がなされました。

 私は、小泉内閣で防衛庁長官に就任したときに、この昭和の五十年代の初めに決められた基本的な物の考え方、基盤的防衛力整備構想というのは、総理、我が国の防衛力はどういう方針によって整備をするかというと、特定の脅威に対処するのではなくて、のっけからそうですよ、特定の脅威に対処することではなくて、我が国が力の空白となって周辺地域に不安定な状況をもたらさないように、独立国として必要最小限の防衛力を整備する、これが基盤的防衛力整備構想です。御存じでしょう。この考え方は改めねばならない、私は防衛庁長官のときからそう思ってきました。

 ですから、その後の大綱、これは大野長官のときに実現をしましたが、実効力ある防衛力、機動的な、弾力的な、そういうものに変わりました。しかしながら、基盤的防衛力整備構想そのものは変わっていないんです。

 中井大臣とか、あるいは直嶋大臣とか、御存じだと思います。これはおかしいということに一番最初に気がついたのは、当時の民社党です。昭和五十年代の通常国会において、常任顧問だった春日一幸さん、この考え方は改めるべきではないか、そのように発言した。本会議の議事録に残っています。中井大臣、御存じでしょう。残っていますよ。だけれども、まだ世界情勢はそれを変える必要はない、そういうような答弁で、変わることはありませんでした。

 総理、この考え方は改めるべきではないですか。つまり、情勢はどのようなものであり、どのようなものを、どこに、何のために、どれだけ置くかということが明確にならなければ、抑止力は機能し得ない。総理、この基盤的防衛力整備構想は根本から改めるべきだと思いますが、御見解を承ります。

菅内閣総理大臣 この質問をいただくということで、石破さんがボイスに書かれた文章も読ませていただきました。

 この基盤的防衛力構想というものの考え方について、この言葉だけではどういう中身か必ずしも理解が十分できませんでしたが、今の御説明とその文章の中を読んでみて、私なりにある程度の理解をすることができました。

 確かに、例えば、ソ連という国が崩壊して、北の地域にあった原子力潜水艦が退役をしたような場合に、それを想定した配置を変えるといったように、状況が変わった中で防衛力のあり方もそれに対応して変化をするというのは、一般的に言えば当然考えなければならないことだと思っております。

 ただ、その上で、この間こういう考え方がとられてきたその考え方の背景について、もう少し私なりに、逆の立場の人ももしおられるならばその意見もお聞きした上で、この空白のところを埋める、それが結果として、必ずしも必要でない装備にお金を向けていて、より必要なものに向けられていない、そういう弊害なども多少御指摘もあるようでありますから、そういうことも含めて検討して、私なりにも勉強をさせていただきたい、このように思っております。

石破委員 この懇談会のスタートのときに前総理は、一人の命も失わない防衛政策をつくってくださいというふうにおっしゃったそうですよ。それは理想です。ですけれども、事に臨んでは危険を顧みない、それが軍というものです。自衛官というものです。

 私は、安全保障において必要なのは徹底したリアリズム、理想論や観念論ではなくて徹底したリアリズムだと思っている。総理はそういう考え方をお持ちの方である、私はそのように信じております。ぜひ総理のときにこれは転換をしていただきたい。

 防衛大臣、具体論を伺いましょう。

 FX、この機種選定は今のうちに決めないともう間に合わないですよね。概算要求の締め切りがやってきます。

 FXはF4の後継機です。F4、ベトナム戦争のときに活躍した戦闘機です。大臣御存じでしょう。もう採用以来四十年近くがたっている。ことし二十機がリタイアしている。何が起こっているか。それは、領空侵犯対処、これは最近ふえていますよね、これの任務が、飛行機が減ってきた、したがって、F2、F15、これに代替をさせている。何が起こるか。領空侵犯対処にF2やF15が上がるから、本来の訓練ができない。F4のパイロットも訓練ができない。これから先どんどん退役しますよ。何でこんなことになったか。これは、我々の反省も込めて言えば、F22、これにこだわったというところは私は否定できないと思っている。

 我が国の領空侵犯に対処する飛行機に求められる性能というのは何なんだろうか。見えない性能なんだろうか。それとも相手を早く見つける性能なんだろうか。私は、ここで個々の機種を挙げて議論するつもりは全くないんです。本来は、こういう議論は国会できちんと行われないと。おもちゃを買うわけじゃないですからね。今総理がおっしゃったように、戦闘機一機百億円するんですよ。イージス艦一隻千二百億円するんですよ。国民の税金ですよ。このF4が老朽化することによって我が国の防空に穴があこうとしている。

 FXというのは可能な限り早く選定する責任が政府にあると私は思いますが、大臣、どうですか。

北澤国務大臣 今、石破委員の御意見を聞いておりまして、全く私どもと問題意識は一致しております。

 防衛省においても再三にわたって議論をさせていただいておりまして、この問題は極めて重要なことであるということと、それから、先ほどお話のありました22の問題については、確かに私どもはそれは当時関係はしておりませんでしたけれども、防衛省の中でもそれにこだわったという反省は十分にありまして、今そのほかの機種について、個別の機種を申し上げるわけにはいきませんが、極めて現実的な議論をいたしております。

石破委員 急いでください。

 そして、我が党は、さきの国会で、一つは先ほど申し上げた邦人救出のための法律、すなわち、今防衛大臣は外務大臣と協議して、その地域の輸送の安全が確保されれば、艦船、航空機、これの派遣をすることができるとなっていますね。危険だから逃げてくるんでしょうが、危険だからそこへ救出へ行かねばならぬでしょうが。私は安全というのは相対的なものだと思っているんですよ。今、仮に銃弾が少しでも飛び交っている、自衛隊が行けないとすればどこが行くか。アメリカの海兵隊が行くんですよ、同盟国ですからね。余った席があったら乗っけてくれる、こういう話ですよ。本当にそれでいいのか。邦人輸送ではなくて、救出のための法案を出した。

 もう一つはインド洋、これは下げられましたけれども。あるいはイラン、その都度その都度、特措法で対応していてはだめだと。私は、国会の事前承認をかけるべきだと思っています。国会はそれに責任を負うべきだと思っています。一般法をつくること、邦人救出のための法案をつくること、つまり、日本が本来やるべきこと、そして憲法九条に抵触しないこと、やれることはたくさんありやしませんか。それをアメリカに、沖縄に押しつけている部分がありやしませんか。

 そして、日米地位協定、その改定は容易なことではありませんよ。なぜならば、地位協定というのは安全保障条約が根っこですからね。日米安全保障条約というのは非対称的双務条約、すなわち、アメリカは日本防衛の義務を負う、日本は基地提供の義務を負う、こういうお互いに義務を負っているがその中身が違うという世界でまことに珍しい条約であって、根本がそうですから、地位協定だけを変えるというのは極めて難しい。ほかの国との整合性もとらなきゃいけない。だから、苦心惨たんして運用の改善をやってきました。

 総理、これは総理に伺います。

 例えば、今の米軍基地、これを日米地位協定二条の4の(b)、つまり自衛隊の管理のもとに置く、そして米軍はゲストとしてそこに駐留する、そういう考え方も私はあり得るし、真剣に考えるべきだと思っていますが、総理の見解を承ります。

菅内閣総理大臣 私自身、そういう地位協定の今言われたような中身について、きちっとした知見をまだ持っておりません。ただ、私の地元の例でいいますと、府中に航空自衛隊の本部があることは御存じだと思いますが、これが福生の米軍の基地の中に今度移ることになっておりまして、その基地管理をめぐって、多少そういう関係者のお話を聞きますと、今、石破さんが言われたように、本来なら自衛隊が管理権を持つ中でということが望ましいんだけれども、実際には米軍の管理の中にあるその一画を自衛隊が借りることになるというようなことをお聞きいたしたことがあります。

 そういうことを含めて、今の御指摘のような問題について、あるべき姿についてもきちっと議論をしていきたい、こう思っております。

石破委員 それでは、残った時間、第一次産業あるいは地方の問題について伺います。

 私は、農林水産大臣の当時、当時の菅委員といろいろな議論をさせていただきました。総理が、農業、農村について、あるいは林業について並々ならぬ思いをお持ちであるということはよく承知をしております。ただ、思いだけでは困るのであって、予算がどうなっているかという話ですね。

 では、今年度予算はどうか。対前年度比です。治山予算は対前年度比六九・四%、森林整備費七三・一%、水産基盤整備六八・六%、海岸事業に至っては前年度比二七・一%ということです。

 これは一体何なんだろうか。農業農村整備予算、これをばさっと削って、一市町村当たり約二億円、平均してならせばそれだけ削られている。だから、地方は今大きく疲弊をしているんですよ。戸別所得補償のためにこういうお金を切るというのは本末転倒じゃないですか。本来は、この基盤整備こそ大事なんじゃないですか。

 私は、大臣のときに地域マネジメント法人ということを考えた。ばっさり削られた。ですけれども、総理、御存じだと思いますよ。今、市町村合併によって、村役場もなくなった、JAの支所もなくなった、一体だれに頼ったらいいんだ、そういうような集落がたくさんありますよ。これを一体どうするんだ。私は、今必要なのは、まさしく農村の再生であり、山村の再生であり、漁村の再生ではないかというふうに考えています。

 日本の農業は、総理御存じのとおり、生産額、世界第五位ですね。先進国中第二位ですね。農業というのは水と光と土の産業です。総理が御存じのとおりです。これだけ水が豊かで、光あふれて、土が豊かで、この日本で農業が再生できないはずはないんだ。この農業農村整備予算、これは見直す必要があるんじゃないですか。つじつま合わせはやめた方がいいんじゃないですか。

 農道の事業だって、集落間を結ぶ最も重要な事業なんじゃないですか。これを削ってどうするんですか。強い農業づくり交付金。これも、岩手県も入っていると言われましたが、いいですよ、どこだろうと。十一県、ばっさりゼロ内示ですよ。何でゼロなのか、その基準の説明もほとんど行われていない。この考え方は見直すべきではないか、私はそう思っています。

 谷垣総裁からもお話があったけれども、私も広島県庄原市を見てきました。大変なところです。そういうところに、私はナショナルミニマムという言葉を振りかざすつもりはありませんが、どこに住んでも同じような幸せが得られる、そのことのために、完璧はないにしても、政府は努力すべきじゃないですか。そのことについて、総理のお考えを承ります。

    〔委員長退席、伴野委員長代理着席〕

山田国務大臣 お答えしたいと思います、総理の前に。

 この十年間で農業所得が半分に減りました。恒常的な赤字で、限界集落等々、今まさに日本農業を背負っているのは、六十五歳以上の農家が六〇%以上です。

 そんな中で、私どもは、基盤整備の必要性、先ほど申されました庄原市、私も行ってまいりました。十七ヘクタールの田んぼ、圃場が、本当に丸太で、土砂で埋まっております。そういうものの必要性は、そういう必要なものは必ずやらせていただきたい。

 しかし一方、今大事なことは、農業で、EUとかアメリカの農家所得も、三〇%はいわゆる助成金で賄われております。そう考えれば、この恒常的に赤字に陥っている農業所得補償、戸別所得補償、これをやることが、いわゆる限界集落、農家の経済、農業集落を助けていくことだと我々は考えておりまして、決して間違っているとは思っておりません。

 ただ、基盤整備等についても、必要なものはしっかりとやらせていただきたいと考えているところです。

石破委員 大臣の答弁は、途中までは去年まで私が言っていたことと一緒です。私は、農業予算を削ってその分を戸別所得補償に充てる、基盤整備予算を削って充てる、そのことは間違いであるということを申し上げているんです。

 総理、どうですか。いいです、答弁は。このことははっきり申し上げておく。この考え方は明らかに間違いです、そのことはきちんと申し上げておきたいと思う。

 口蹄疫について伺います。

 基金の造成はいつまでになされるのか。このことは、前大臣は、特措法の必要なんかないんだとおっしゃいました。我が党の制止を振り切って外遊に出かけられました。

 私は、つたない経験から申し上げれば、危機管理の要諦というのは三つじゃないかなというふうに思っている。誤っている点があればぜひ御指摘をいただきたいけれども。一つは、まず、権限を持った最高責任者が現地に赴くことですよ。少しでも非があったら責任をほかに転嫁しないことですよ。そして、ありとあらゆる手段を打つことですよ。この三つが危機管理の要諦である、私はそう信じています。

 我が党の浜田国会対策委員長代理が制止をしたのに振り切って、私は前大臣ですから、状況が変わったのは別だけれども、不要とは言わないが不急の用事で十日間外遊をされた。私がいなくても、私よりも優秀かもしれない今大臣をやっておられる副大臣、あるいは政務官がいるから私がいなくても問題ないんだというふうにおっしゃった。その政務官のお一人もデンマークに外遊をされて、自衛隊が出れば不安に思う人がいる、そういうことで、自衛隊の出動もおくれるようなありさまだ。

 口蹄疫がなぜ怖いか。世の中には、治るんだからいいじゃないか、殺さなくても、そういうことを言う人がいましたね。それは大きな認識の間違いですよ。つまり、罹患したお母さんから生まれた子供は死亡率が物すごい高い、このことを忘れているから、あるいは知らないから、かわいそうじゃないかみたいな議論が出る。

 私は、七割の人たちが続けたいと言っておられる、本当にありがたいことだと思う。そして、全国からいろいろな善意が寄せられている。私は、日本の畜産はどうしても再建をしなければいけないし、宮崎にありとあらゆる手だてを施してこの畜産を再生させる、それは国家の義務であると考えている。

 しかるに、この法律に定められた基金、これについてまだ明確なお答えがない。この基金はいつまでに、どのような形でつくるのか、農水大臣、お答えください。

    〔伴野委員長代理退席、委員長着席〕

山田国務大臣 お答えします。

 確かに、実際に口蹄疫で、宮崎の農民も、そして農民に至らず商工関係者も大変な痛手を受けております。宮崎だけではなく、鹿児島も、熊本も、いわゆる搬出制限区域にかかりました。そんな中で、九州全体がかなり厳しい影響を今も受けていることは事実です。

 そんな中、特措法に、基金を設けたい、基金その他の必要な措置をするというふうに、地域振興のためになっておりますので、ぜひ基金の創設をしたいと考えております。

 いつまでにという先ほどの御質問でございましたが、今、私ども農水省だけでは到底できませんし、もちろん、経済産業省、国土交通省、内閣府、全体で、宮崎県側の要望をお聞きした上で、しっかりとその対応を検討させていただきたい、そう考えているところです。

石破委員 総理、これは、今農水大臣がいろいろおっしゃいましたが、可能な限り政府として、総理は全力を尽くすと現地でおっしゃいましたね。可能な限り早くこの基金の創設、今農水大臣は、ほかの役所もいろいろあるとおっしゃった。では、総理がおっしゃってください。一日も早くこの基金を創設する、今ここでお約束ください。

菅内閣総理大臣 私も、就任間もなく現地に参りまして、まず、その時点では、何としても拡大感染を抑える、それの御協力をお願いし、そして、終息した段階では、畜産農家はもとより、地域の振興に対しても全力を挙げるということをお約束してまいりました。

 手だてとしてどういう形が適切なのか、それはそれぞれの役所も含めて、大臣を含めて検討いただかなきゃなりませんが、少なくとも、私が出かけていって申し上げた、できるだけの対応はするという、そのお約束にふさわしい対応をするよう各大臣に指示をしたいと思っております。

石破委員 もう一つだけ、口蹄疫に関して申し上げておきましょう。

 家畜伝染病予防法の改正、これは急がなければなりませんよ。この特措法の期限が切れるまでに、いろいろな内容を定めた家伝法の改正、これも必ず行わねばならない。時間は短いんです。危機管理なんです。国会さえ何とか乗り切ればいいというものではないことは、総理は危機感を持って考えておられるはずです。少なくとも私はそう信じたい。立場は違うけれども、日本国内閣総理大臣として、あなたはその危機感を我々と共有している、そのように信じたいのです。

 官房長官おられなくなりましたから、聞くことができませんが、冒頭言ったように、八月十五日が近くなりました。総理談話、これを出されるつもりはありますか。あるいは、官房長官がいろいろな考えを述べておられる。民主党は、いわゆる韓国の性的被害者の方々、こういう方々に対する法律を準備しておられた。これは相当に疑義のあるものです、この議論はここではしませんが。総理談話、これをお出しになる予定はあるか。民主党は、そういう方々に対するいわゆる基金、そういう基金を内容とするそういう法案を今まで準備しておられた。少なくとも、平成二十年までずっと続けて出しておられたはずだ。

 竹島、これは日本固有の領土である。防衛白書の出版をおくらせたのは、私はそんな悪意のあることだとは思いたくないですよ。きっと、いろいろな事象があったからそのことを書く必要があった、そのとおりでしょう。竹島は日本固有の領土である、この記述も全く変わることはないでしょう、そう信じます。違ったらただでは済みませんよ。

 その総理の談話、これをお出しになる予定はあるか。民主党が出しておられた法案、これとの関連性はあるか。官房長官個人のお考えか、政府としてのお考えか。総理、見解をお述べください。

岡田国務大臣 先ほど官房長官がこの委員会の場でお答えをしたとおりでありまして、今、そういった談話を出すかどうかということについては議論を行っているところであります。

石破委員 総理に聞いているんです。総理、総理談話ですよ、外務大臣談話じゃないんだからね。

菅内閣総理大臣 今、外務大臣からも答弁しましたが、慎重に検討いたしております。

石破委員 竹島は日本の固有の領土である、その認識に間違いはないですね、総理。

菅内閣総理大臣 この問題に対しては、これまでの見解を一切変えてはおりません。

石破委員 総理、立場は違いますが、私は野党のときの総理というのはすごく好きでした。本当に気迫があって満ち満ちていた。私は、政治主導というのはそういうことだと思っている。

 総理は、冒頭申し上げたように、ぜひ気迫を持って、責任感を持って、国民に対して説得するのだ、それが政治家の役割でしょうが。政治家の役割というのは、国家にとってどうしても必要なことがある、だけれども、その賛同がまだ多く得られていない、そのことを説得する、そのために政治家がいるんでしょうが。その最高の責任者であるのが、菅総理、あなたでしょう。ぜひその思いを持って、残された時間は少ない、選択肢の幅は少ない、小さい、ぜひ臨んでいただきたい。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

鹿野委員長 この際、柴山昌彦君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柴山君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 まず、国民の安心の基礎となる法務行政についてお伺いします。

 その前に、総理、今回の参議院選挙において議席を得られなかった千葉法務大臣を、引き続きその職にとどめておられることの理由を端的にお聞かせください。

菅内閣総理大臣 法務大臣として適任な方だと思いましたので、議席は失われましたけれども、憲法的には、民間人の方が大臣を務められることもしばしばありますので、そういう判断として、適任な方ということで、そのまま大臣として職務を遂行していただきたいと私からお願いをいたしました。

柴山委員 適任とおっしゃいましたけれども、今回の金賢姫元死刑囚の入国許可、これについては選挙後の話ですし、また、あした同僚議員から詳しく質問があると思いますが、さまざまな批判があります。そして、例えば、かつて拉致実行犯の辛光洙氏の釈放要望書に署名したり、在日外国人の地方参政権について大臣在任中にこれを支持する集会に祝電を送ったりする等々、法務大臣としての行為、姿勢への評価も今回の選挙結果につながった側面は否定できないはずです。にもかかわらず、総理が内閣の都合で大臣を続投させるのは、まさに民意の軽視そのものではありませんか。

 内閣総務官室に伺いますが、落選した議員が大臣を務めた最長期間はどれだけでしょうか。

原政府参考人 これまで現職大臣が選挙に落選され、その後も大臣として在任された最長期間についてのお尋ねでございますけれども、戦後の新憲法制定以降においては、昭和二十八年四月の第四次吉田内閣における参議院議員選挙後二十七日間というのが最長であると承知しております。

柴山委員 このままでいけば記録更新は間違いないということです。

 さて、この七月二十八日に民主党政権下で初めて執行された死刑についてお伺いします。

 千葉大臣は死刑廃止を推進する議員連盟のメンバーだったんですけれども、考えを変えられたのでしょうか。これも端的にお答えください。

千葉国務大臣 私は、法務大臣を拝命いたしますときに、法務大臣の職務、職責として死刑執行について指揮をするということを十分に承知をして職務を受けさせていただきました。それを法務大臣としての職務として執行させていただいたということでございます。

柴山委員 かつてと考え方を変えられたんでしょうか。

 あなたはかつて、杉浦正健法務大臣が二〇〇五年に就任した際、御自分の信念として死刑執行命令書にサインしないと発言した直後に発言を撤回したことについて、参議院本会議における質疑で、「死刑制度に疑問をお持ちであれば、死刑制度廃止に向けた姿勢を貫くべきではなかったのでしょうか。」と一貫性の欠如を指摘されております。おかしくないでしょうか。

 大臣はちなみに記者会見で、慎重に検討して時間がかかったとおっしゃっていますが、いつ今回の案件が大臣に持ち込まれ、どのぐらいの時間、検討されたのですか、お答えください。

千葉国務大臣 個別の執行につきまして、どのような時点から、そしてどのような時点で決定をしたかということをお答えすることはできません。しかし、さまざまな、再審の事由がないか、あるいは心身の状態はどうか等々を含めて慎重に検討させていただいた結論でございます。

柴山委員 誤解しないでいただきたいのですが、私自身は、今大臣がおっしゃったように、冤罪の防止などを条件として、凶悪な犯罪には極刑をもって臨むのはやむを得ないと考えています。

 問題は、これまでは死刑の執行を拒んでおきながら、選挙で民意の支持を失って、先ほど述べたとおり、職務の継続に疑問を持たれている中で、極めて重い職務である死刑執行のサインに踏み切ったことなのです。

 ちなみに、内閣府のことし二月発表の世論調査では、死刑制度について、やむを得ないとして認める方が八五%という高い割合になったということです。もし大臣が国民の支持を目当てに対応を変えたということであれば、不謹慎であるとの非難を免れません。

 ちなみに、大臣は、今回、死刑にサインするので執行に立ち会いたい、また、東京拘置所の刑場を報道陣に公開したいと述べられたということですが、事実でしょうか。

千葉国務大臣 事実でございます。

柴山委員 実は、刑場の公開は、先ほど述べた死刑制度を廃止する議員連盟に所属していた社民党の保坂展人前衆議院議員が法務委員会などで繰り返し主張してきたことなんです。

 今後、法務省に勉強会を設けるということですが、大臣は、結局、かつて例がない、そして国民にとって衝撃の大きな死刑立ち会いの経験やこういった刑場の公開を通じて、世論を死刑廃止に傾けていく意思なんじゃありませんか。あなたは考え方を変えたかどうか今さまざまな議論がありますけれども、結局のところは、そういった裏の意図が隠されているんじゃありませんか。お答えください。

千葉国務大臣 全くそのような御指摘は私は考えてもおりません。

柴山委員 全くなぜ判こをついたかということについての説明にはなっていない、私はそのように考えております。

 続いて、今その展開が注目されている小沢前幹事長の検察審査会での審査に関連してお伺いします。

 こちらのパネルをごらんください。これは、ことし四月二十七日に起訴相当の議決が出た東京第五検察審査会、これについても書かれております。右上の1の部分です。

 つまり、実際には、ここの点線で書いたとおり、二〇〇四年十月に小沢氏の資金管理団体陸山会が世田谷の土地を購入したにもかかわらず、左に示した購入資金四億円の出どころを隠すために、収支報告書にはそのようには書かないで、別の入金があった翌二〇〇五年の一月七日に、実線のとおりに、購入したと書いた、そういう疑いのある事件です。

 一方、ことし七月八日に議決のあった東京第一検察審査会の事案は、左の2の部分です。お金のできた陸山会から小沢氏に対し提供額四億円を返済したにもかかわらず、それを収支報告書に書かなかったと疑われている問題です。

 おわかりのとおり、これらは一連の取引であるにもかかわらず、たまたま別の事件とされたために、二つの検察審査会で、それぞれ一般市民からくじで選ばれた別の十一名が検察庁の不起訴処分の妥当性を判断し、結論として、いずれも起訴しないのはおかしいと判断したわけであります。

 そこで、裁判所にお伺いしたいんですが、検察審査会における評議の経過、あるいは各審査員の意見は公開されていますか。

植村最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 検察審査会に対しまして申し立てがございますと、検察審査会議というところで審査が行われます。検察審査会議における評議の経過、それから各検察審査員の意見につきましては非公開とされているというふうに承知をいたしております。

柴山委員 なぜ非公開とされているのでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、法律上の根拠でございますが、検察審査会法第二十六条には「検察審査会議は、これを公開しない。」という規定がございますので、この規定に基づいて公開はしていないということでございます。

 なお、この法律の趣旨でございますが、一つは、検察審査会は職権の独立が保障されて、検察審査会議における検察審査員の自由な審査活動を保障する必要は高い。検察審査会議を公開すると、審査員が他から不当な影響を受けるなどのおそれがあるということ。それから、検察審査会の審査が起訴前の手続であるため、被疑者その他の関係人の名誉の保護に配慮する必要があること。さらに、捜査の延長としての面もあるため、捜査の秘密を保護する必要があること等の理由に基づくものと理解をしております。

柴山委員 そのような中で、検察審査会の起訴相当の議決にもかかわらず東京地検がこの1の方の事件で小沢氏を再度不起訴処分としてから、わずか五日後の五月二十六日に、辻惠民主党副幹事長は検察審査会の事務局に電話をして、報道によれば、まさしくこの第五、第一審査会の各事務局長を指定して、審査員の補助をする弁護士の選任方法や標準的な審査期間などについてみずからの議員会館の事務所に説明に来るよう求めたとされています。

 これがもし事実なら、司法手続に政治的影響が及びかねない重大な問題であります。日本弁護士連合会の刑事法制委員長も、こうした接触があれば問題だと表明しています。

 総理、自民党と公明党の弁護士資格のある議員は、連名で、辻副幹事長に対し、こうした接触を図った事実があるのかどうか、配達証明郵便で公開質問状を郵送し、それはことし六月四日に配達されました。これがその配達証明書です。しかし、今もって辻議員からは回答がありません。総理は、この一連の経過について、辻議員あるいは幹事長室から報告を受けていますか。

菅内閣総理大臣 特に聞いておりません。

柴山委員 ちなみに、質問状を出したのは鳩山前総理の辞任表明の後の六月三日であることを申し添えておきたいと思います。

 辻副幹事長は、かつて、日本歯科医師連盟の政治資金問題で、橋本元総理らの不起訴を不服としてみずから検察審査会への申し立てを繰り返しておきながら、今回の事件では一転して、審査会の議決を魔女狩り的手法で葬り去るものだと批判をして、さらに、民主党議員などで結成した審査会制度の見直しなどを議論する議員連盟の事務局長を務めていると報道されています。司法への政治的圧力と批判されかねない動きはぜひ自重していただきたいと思います。

 現に、第五検察審査会の補助員を務められていた弁護士は、さまざまな嫌がらせがあって辞任したと報じられています。再度の議決は、検察審査会の構成員がすべて入れかわる予定の八月を大幅に超えて、民主党代表選挙の後になるという観測もあって、その間、公正なプロセスを確保する必要があると私は信じております。

 ところで、総理にお伺いしたいんですけれども、もう政治家が秘書に金の問題で責任転嫁をすることを認めるのはやめにしませんか。総理は、財務大臣だったことし一月の参議院予算委員会で、収支報告書についてはみずからごらんになっていると森まさこ議員の質問に対して答弁をされました。資金管理団体の代表者である議員本人が収支報告書に確認の上署名することを要するという法改正を、与野党の壁を越えて行ってはいかがですか。

菅内閣総理大臣 考え方としては、私は一つの拝聴すべき考え方だと思います。関係者でぜひ御議論いただきたいと思います。

柴山委員 もっと前向きな御答弁をぜひお願いしたかったところです。

 その上で、ここまで一般の方が不審に思っているこの事件について、国会の場で説明責任を果たすべく、小沢前幹事長や石川知裕議員、あるいは小沢氏の元秘書の高橋嘉信氏や水谷建設の幹部を初め、関係者の証人喚問を行うべきと考えています。

 先ほど総理は、国会のことは国会が決めるという趣旨の御答弁をされましたけれども、実は、民主党の幹部やあるいは閣僚からも、証人喚問に応じるべきだという意見を私は幾つか聞いております。もし総理がリーダーシップをとれば、世論をバックにこれを実現できる可能性は私は高いと考えております。何より、自民党が政権与党のときには、そういった疑惑があったときには証人喚問に応じてきたんですよ。

 総理、どのようにお考えなんですか。

菅内閣総理大臣 いろいろなケース、いろいろな場面があったことは承知をいたしております。

 そういった意味で、この案件についても、委員会あるいは国会の関係者の中で御議論をいただければと思っています。

柴山委員 なぜそうやって逃げるのか。私は大変失望しております。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 荒井国家戦略担当大臣、大臣は、問題となった事務所費の内訳を明らかにすると称して、報道陣に極めて短時間、またコピーも認めずに示した領収書について、七月三十日の記者会見でこのように述べておられます。弁護士事務所からこれとこれは修正を要するのではないかと指摘があったので、指摘に基づき修正したのであって、架空経費問題は説明させていただいたと思っている。

 間違いありませんか。

荒井国務大臣 ただいまの案件でございますが、六月の九日でありましたでしょうか、読売新聞から私の事務所費問題で架空ではないかという指摘がございました。その結果、この件が架空ではないということを立証するために領収書を提示いたしました。この結果、架空ではないということが理解をされたというふうに考えてございます。

 ただし、この領収書の中に不適切なものがあったのではないかという御指摘がございましたので、監査法人やあるいは弁護士事務所に調査を依頼いたしました。その調査結果で十八件、うち十三件はコミックでありましたけれども、十八件、約十万円弱が私費利用との疑いもあるということで、是正をする方がよろしいという勧告を受けましたので、これを勧告どおりに修正を行いました。

柴山委員 それでは説明になっていないですよ。たとえそういった専門家の指摘に基づいて収支報告書を訂正したとしても、不適切と言われた具体的な内容は明らかになっていないじゃないですか。一たん疑惑を持たれた以上、少女漫画代やキャミソール代あるいはクリーニング代など、個別の費目ごとにきちんと領収書をもってどう処理したのか説明すべきです。違いますか。

荒井国務大臣 訂正内容は、領収書の数字の読み間違い、あるいは誤記載、収支報告後保存すべき領収書の紛失、私用で購入した物品の領収書の混入でございます。

 主な原因でありますが、仕事が多忙の中、秘書が支出後ある程度時間をかけてまとめて処理をしたため、誤読が発生したり、私用のものが錯誤により混入したり、領収書の保存状態が悪くなったりという原因でございます。

 今後は、会計帳簿入力作業に対するダブルチェック体制が万全でなかったことも原因でございますので、反省をしてございます。

 問題の点については修正をいたしました。問題は十八件あったと弁護士から報告がございました。その十八件について、約十万円弱でございますが、それを修正いたしました。

柴山委員 私は、今、個別の費目ごとに領収書をもってどう処理したのか説明すべきではありませんかとお聞きしたのに、全く御答弁になっておりません。

 ちなみに、今、民主党の議員から、そんなささいな問題をというようなやじがありましたが、二〇〇七年、菅総理は、我が党の大臣に事務所費問題が生じた際、きちんと領収書をそろえて説明すべきで、それができないならやめるべきだとおっしゃっていたんです。

 総理は、仮に荒井大臣が菅総理が当時おっしゃっていたような説明をしない場合、罷免されるおつもりですか。

菅内閣総理大臣 どの場面でどういう表現をしたか、ちょっと私、はっきり記憶をしておりませんけれども、先ほど荒井大臣の方から、専門家の皆さんの調査も含めてきちんと処理をしたということでありますので、それでいいのではないかと思っております。

柴山委員 過去におっしゃっていたことと全く食い違っております。領収書は一円から公開せよと言っていたのは一体どこの政党なんでしょうか。

 確かに、私も三年前のNHK「日曜討論」に出演した際、一定金額以下の支出についてまですべて領収書を公開するのではなくて、公認会計士などの外部のチェックを行うとともに、領収書については保管義務を課せばよいと発言をさせていただきました。

 しかし、先ほど述べたとおり、既に荒井大臣は不適切な支出があると指摘され、ほかにもないかと疑われているのですから、一層厳格な説明責任が求められるのは当然であります。パフォーマンスだけの政治はぜひやめていただきたいと思います。

 では大臣、御答弁ください。

荒井国務大臣 訂正内容は一件ずつ公開すべきとの御指摘でございますが、法令で求められている以上の公開を行うことは、今後の議員の皆さんの政治資金に関する説明責任にも影響を及ぼすものと思われますので、扱いは理事会で御議論にゆだねたいと思います。

柴山委員 ぜひ御自分で判断をしていただきたいと思います。

 また、同僚の西田昌司参議院議員がことし六月十五日に参議院本会議で、現在総理補佐官の阿久津幸彦議員が落選期間中、勤務の実態がないにもかかわらず、荒井大臣の政策秘書と登録され、選挙区支部長の公費を受けながら政策秘書の公費を二重取りしていたのではないかという問題を取り上げました。

 このときの菅総理からの御答弁はこのようなものでした。阿久津さんについて、荒井議員の秘書としては議員会館に籍を置き、当時国対委員長代理を務めていた荒井議員の補佐を務め、国対の会議に陪席し、他の会議、会合にも代理出席をしていたと聞いておりますというものでした。

 ところで、荒井大臣、当時の大臣の議員会館の部屋番号を覚えておられますよね。

荒井国務大臣 二百二十三番だったでしょうか、第一議員会館のそういう番号だったと思いますが、もう三、四年ぐらい前になりますから、正確には覚えておりません。

柴山委員 三、四年前とおっしゃいましたが、大臣は二〇〇七年に北海道知事選に出馬され、議員辞職をされる前は第一議員会館の二百三十三号室にいらっしゃいました。そして、荒井議員が辞職をされたことによって、同じ北海道ブロックの石川知裕議員が繰り上げ当選となり、あなたのかわりにその部屋に入ったんです。

 しかし、大臣の隣の二百三十二号室にいた山本有二議員に聞くと、部屋が隣同士で、通行証の貸し借りなどのため、お互い秘書が行き来していたにもかかわらず、議員、秘書を含め、だれ一人会館で阿久津氏に会った人はいないということなんです。何人かの近くの部屋の議員にも調べてもらいましたが、会った人物はおりません。おっしゃっていたことと違うのではありませんか。

荒井国務大臣 それは全く違います。

 阿久津さんは、私が国対委員長代理をしておりまして、国対関係は私は初めてでございましたので、阿久津さんは国対関係が長い方でございまして、あえて阿久津さんに政策秘書として国対関係の仕事を手伝ってほしいということで、当時、国対は毎朝会合を持っておりました。その場に毎朝、時にはそうでもない場合もありましたけれども、ほとんど国対の朝の会合の開かれるときには阿久津さんが参加をしていただいて、私に適切な助言などをいただきました。(発言する者あり)委員長代理は出ています。委員長代理のそばで、私に助言をしていただきました。

柴山委員 その他の会議に出席とおっしゃられましたけれども、その他の会議というのは一体どのような会議だったんですか。

荒井国務大臣 私の後援会の会合や、あるいは国のかたち研究会の会合でございます。

柴山委員 かつて、菅総理の秘書を務めた元衆議院議員が政策秘書給与の流用事件で服役をされましたけれども、同氏の手記によれば、総理御自身、実際は見たことがない、名前だけの公設第一秘書を登録していたと書かれています。私は極めて疑問に思います。

 こういった秘書給与の問題については、かつて大問題となりました。あなたのグループによる公金を利用した互助関係があったのではありませんか。

菅内閣総理大臣 柴山議員も、弁護士でもあるんですから、そういう質問をされるときにはよく調査をされた上で質問された方がいいと思います。

 その本が出たときにそういう質問をいただきました、同じような質問をマスコミの方から。私は、すべてそれに対してきちんとお答えをいたしました。そのことをおわかりの上でお聞きになっているのか。それとも、かなり古い本ですから、たしかもう七、八年前の本ですから、当時それを読まれたマスコミの方から聞かれましたので、記者会見ですべてお答えしました。

 この場では、同じことを申し上げてもいいですけれども、少なくとも、そのくらいの調査をされて質問したのかどうか。その上で改めてお聞きになりたければ、ちゃんとお答えをいたします。

柴山委員 当時、菅総理はこのように御説明をされていました。第一秘書は衆院選出馬予定者の応援に行くなどの活動をしていました、このように菅総理はそのときに御説明していたんです。私も調べております。

 ただ、元最高検検事の土本筑波大名誉教授は、それは極めて問題があるのではないか、本来、秘書とはまず所属議員の仕事にしっかりと専念するべきものではないか、同じ政党の候補者の選挙応援に行っていたというのは、もしそれが国がしっかりと情報把握していたら給与は支払わないのではないか、このように述べているんです。

 ぜひ、しっかりと調査をしていただきたいと思います。

 さて、荒井大臣は、国家……(菅内閣総理大臣「よろしいですか」と呼ぶ)どうぞ、菅総理。

菅内閣総理大臣 そういう調査もされた上での質問ならお答えいたしますが、私も当時、弁護士とよく相談をいたしました。当時私は、小さな政党でありましたけれども、東京の責任者を務めておりました。そして、その東京の責任者の政治家として、東京から立候補を予定している候補者のところに秘書を送るのは、これはまさに政治活動である、秘書としての政治活動であるから全く問題がないというのがその当時の私が相談した弁護士の見解であって、そのこともその場で申し上げたつもりであります。

 私の職務に関する仕事を秘書にやらせたことで、何も法律に反したことはありません。

柴山委員 将来、議員になることを志して秘書業務にまじめに取り組んでいるというケースはあると思います。しかし、御自分の選挙活動に本当であれば従事をしながら、このような活動をしている、そういうことはぜひともしっかりと私は見直しをしていただきたいと再度強調させていただいて、次の質問に移らせていただきます。

 荒井大臣は国家戦略の担当ですが、民主党が声高にうたう政治主導の政策決定への取り組み、これについてぜひお伺いしたいと思います。

 先ほど話題になっていましたが、昨年九月に内閣官房に発足し、各省にまたがる政策の総合調整を担うことを想定して局となるはずだった国家戦略室の権限が大幅に縮小され、中長期ビジョンを菅総理に提言する機関にとどまると伝えられています。これでは財務省主導の、各省縦割りの予算編成となるとお感じになりませんか。

菅内閣総理大臣 先ほど来、何人かの方から類似の質問をいただきましたが、柴山委員、全く趣旨が違います。

 つまり、もともとこの国家戦略室は、総理の直属という形を想定してつくられてはおりましたが、当初私が担当大臣をしておりましたけれども、まずスタッフから、一人目から集めることがありまして、そういう中で次第に陣容を整えていき、そしてその当時は、例えば複数年度にわたる予算などについて勉強会をやったりいたしておりました。

 そして、今回改めて、私が総理になったときに、総理直属の機関として、総理に対してシンクタンク機能を果たしていただきたい。この趣旨も申し上げましたが、改めて申し上げますと、総理に対していろいろな役所から説明に来ますけれども、それは、多くの場合は、その役所がこうしたいと思うことに沿った説明であって、それと矛盾する説明は余りありません。そういった意味で、最終的な政治判断を行う総理としては、ある意味での役所ごとの説明以外の立場からのそうした知見もしっかりと得ることが重要であり、そういう役割を果たしていただきたいということで新たな位置づけとしたということで、決して格下げでもなければ機能低下でもありません。

柴山委員 非常に苦しい説明だと思いますし、この点については閣僚にも、あるいは前官房副長官にも大変な異論があるとお聞きしております。ぜひとも、しっかりと党内での議論をまず詰めた上で野党との協議に臨んでいただきたいと思っております。

 続きまして、郵政問題についてお伺いします。

 民営化の方針を受けて二〇〇七年十月に発足した日本郵政グループは、三年間で約九千四百億円の法人税を納付し、旧公社時代の四年間で九千六百億円という国庫納付金と比べれば財政的に貢献していると評価できると思います。

 しかし、民主党政権は、郵政の民営化推進阻止、肥大化を進めようとしています。各地で反対を受け、WTO協定違反の疑いもある貯金、保険限度額の引き上げを初め、分社体制の見直し、全国一律の金融サービス義務づけ、株式売却凍結。

 総理、総理は七月二十二日に国民新党の亀井代表と会談されたとのことですが、連立の維持と、通常国会で廃案になった郵政関係法案を九月召集の臨時国会で成立させるということを確認したということで間違いないんでしょうか。

菅内閣総理大臣 参議院の選挙の前にも両党間で一つの確認をいたしまして、その法案成立に向けて全力を挙げるということを確認して、選挙戦に臨みました。

 選挙の結果は御存じのような結果でありますが、選挙後も連立を維持してくださるということで、両党間で、その法案についても成立に向けて全力を挙げる、そういう趣旨で合意をいたしました。

柴山委員 その国民新党にも問題が生じています。

 パネルをごらんください。これは、全国の郵便局長やその御家族、OBの方々がつくっている、この左から二番目、郵政政策研究会、以前は大樹全国会議と呼ばれていました政治団体が国民新党にどのような献金をしているかというのを示した図であります。

 郵政政策研究会は国民新党に対し、平成二十年、ここにあるように、一千五十万円を寄附するとともに、国民新党の政治資金パーティー券代として百五十万円をみずから支払っています。しかし、郵政政策研究会、以後郵政研と言いますが、本体以外にも北海道から沖縄までに、ここにあるように、全国に十二の地方本部があります。これらがすべてパーティー券百五十万円を買っているんです。

 ちなみに、政治資金規正法は、一つのパーティーに一団体が支出できる上限を罰則つきで百五十万円と定めています。このパネル上の十二組織は、それぞれ地方本部とは呼ばれていますが、政治資金規正法では、名称や独自の届け出いかんにかかわらず、一体的関係があれば支部と扱われて、本体の規制をかぶることになっているはずです。

 原口大臣、このパーティー券購入は政治資金規正法の上限規制違反になるんじゃないんですか。

原口国務大臣 柴山議員にお答えいたします。

 政治資金規正法第二十二条の八第一項、ここでは、政治資金規正法においては、政治資金パーティーについて、今委員がおっしゃったように、一つの政治資金パーティーにつき、同一の者から、百五十万を超えて当該政治資金パーティーの対価の支払いを受けてはならないとされております。

 個別の事案が同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払いか否かについては、個々の事案ごとに具体の事実に即して判断されるべきものと考えております。

 これまでの大臣も同じ答えをしているわけですけれども、総務省としては、個別の事案については、実質調査権を有しておらず、具体的な事実関係を承知する立場にはございません。お答えを差し控えさせていただきます。

 また、具体の事案が政治団体の支部に該当するか否かについても、一義的には当該政治団体において判断されるべきものと思料しています。

柴山委員 御答弁になっていないと思います。

 郵政研の規約には、下部組織として地方本部を置くと書いてありますし、また、地方本部長は旧大樹全国会議の理事を兼務するなど、本体と一体的な運営がなされてきました。また、地方本部の収入は大半が郵政研からの、本体からの政治資金に依存しており、もしこうしたパーティー券の扱いを容認すれば、全国の地方組織を迂回させることによって容易に上限規制を免れることができてしまうこととなり、極めて問題だと思います。

 そもそも郵政研は、国民新党に資金提供をするのみならず、党員となっている方は党費を納めています。そして、国民新党以外をも含めた個別の国会議員の関係団体への寄附、会費などを合わせると合計三億五千万円という巨額の資金を政界に提供しているんです。

 中でも突出して応援をしているのが、資金管理団体や後援会などへの寄附が合わせて四千万円、政党支部党費二億二千三百四十万円という国民新党の長谷川憲正総務政務官であります。

 菅総理、千葉大臣同様、長谷川政務官も今回議席獲得に至らなかったわけですけれども、なぜ引き続き政務官を続投させることとされたんですか。

菅内閣総理大臣 政務官としてその職務にふさわしい、そのように考えたからです。

柴山委員 どのようにふさわしいのかということをお聞きしております。

菅内閣総理大臣 ふさわしいことの判断の中身というのはそれぞれあると思いますが、少なくとも、その職務にふさわしい仕事をこれまでもされておられましたし、これからもされることが期待できるということです。

柴山委員 しかし、国民新党は、あれだけ亀井代表が強烈なアピールをし続けていたのに、今回の参院選では一議席もとれなかったんですよ。巨額の資金提供を受けながら民意の支持を得られなかった政党に振り回される改革逆行内閣を国民は望んでいないということを強調して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鹿野委員長 次回は、明三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


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