衆議院

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第2号 平成22年10月12日(火曜日)

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平成二十二年十月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 岡島 一正君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 小林 興起君

   理事 武正 公一君 理事 中川 正春君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    石田 三示君

      石田 芳弘君    糸川 正晃君

      打越あかし君    金森  正君

      金子 健一君    川島智太郎君

      黒田  雄君    城島 光力君

      高野  守君    高邑  勉君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      玉城デニー君    津島 恭一君

      豊田潤多郎君    長島 一由君

      野田 国義君    早川久美子君

      福田 昭夫君    松岡 広隆君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      森本 哲生君    山口  壯君

      山田 良司君    湯原 俊二君

      横粂 勝仁君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    石破  茂君

      石原 伸晃君    小里 泰弘君

      金子 一義君    金田 勝年君

      小泉進次郎君    河野 太郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    平  将明君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    遠山 清彦君

      笠井  亮君    阿部 知子君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   法務大臣         柳田  稔君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       大畠 章宏君

   国土交通大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 馬淵 澄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   岡崎トミ子君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   海江田万里君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (「新しい公共」担当)  玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)

   (公務員制度改革担当)  蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   外務副大臣        伴野  豊君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   最高裁判所事務総局刑事局長            植村  稔君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     大森 雅夫君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     横粂 勝仁君

  打越あかし君     野田 国義君

  早川久美子君     城島 光力君

  水野 智彦君     石田 三示君

  小里 泰弘君     石原 伸晃君

  小泉進次郎君     赤澤 亮正君

  齋藤  健君     平  将明君

  馳   浩君     石破  茂君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     水野 智彦君

  城島 光力君     早川久美子君

  野田 国義君     松岡 広隆君

  横粂 勝仁君     糸川 正晃君

  赤澤 亮正君     小泉進次郎君

  石破  茂君     馳   浩君

  石原 伸晃君     河野 太郎君

  平  将明君     齋藤  健君

同日

 辞任         補欠選任

  松岡 広隆君     打越あかし君

  河野 太郎君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長西川克行君、厚生労働省年金局長榮畑潤君、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官大森雅夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 次に、お諮りいたします。

 最高裁判所事務総局植村刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを了承するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島光力君。

城島委員 おはようございます。

 いわゆるねじれ国会と言われる臨時国会の本格的な論戦が開始されたわけでありますが、よく言われますように、今回の参議院選挙の結果は、よく与野党で話し合いをしなさいという国民の声だというふうによく言われますし、私もそのとおりだと思います。したがって、この国会は、しっかりと論議を深めていく熟議の国会にしろという思いというのは、恐らく国民の皆さん、皆さん、そういうことだと思います。

 と同時に、ということは、私は、まさに本物の政治家、本物の政党、そして本物の政府、これは国民の目線から見たときに仕分けをされる時代に入ったんじゃないかと思うんですね。すなわち、本物はどうなのか。単なるパフォーマンス等じゃなくて、本当に国民のため、口ではなくて。国民の生活のため、その一心の中で頑張っている議員なのか、政党なのか、政府なのか、こういったことが厳しくある面では国民の皆さんから見られる。そういう面では、仕分けされる。

 私は、よくそういうとき、あぶり出しの時代に入ったと言っているんですね。本物だけが残る、そういうある面ではいい時代、同時に、やはり厳しく我々の姿勢が見られている時代というふうに思います。

 そういう点で、ぜひ、我々もそうでありますし、各政党そうであると思いますし、政府におかれましても、やはり本当に国民の生活第一だ、国民のため、この一心で、どんな困難なことがあろうと、特に総理を初め、厳しい状況にあっても顔色一つ変えないという覚悟と、そして、それに向かっていく迫力を持った、そういう政権であってほしいというふうにまず申し上げたいと思います。

 そういう思いの中で、少し論議をさせていただきたいと思います。

 きょうは、去る八日に閣議決定されました円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策、いわゆる補正予算を中心に論議をさせていただきたいと思っておりますが、この円高・デフレ対応という中で、とりわけ今喫緊の課題は円高対策だと思うんですね。それで、論議のスタートに野田財務大臣に、先日ワシントンで開かれましたG7、主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議ということの中身について、ぜひ御報告をいただきたいと思います。

 報道によりますと、世界経済の安定のために為替問題に一致して当たるということを確認したというような報道がされています。そういう中でも、私は、我が国の円は、やはり半年に十円というのは異常だろうと思いますね、十円も上がるというのは。急激な円高ということに対して、各国のそのことについて理解が得られたかどうかを含めて報告をいただきたいというふうに思います。

野田国務大臣 城島委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 G7等の国際会議における為替の議論を中心に御報告をしたいと思いますけれども、八日、九日とワシントンDCにおいてG7の会議、あるいはIMFC、世銀、こういう一連の国際会議がございました。特にG7におきましては、まず、白川総裁の方から、我が国の経済情勢あるいは日銀が行っている金融政策の取り組みの御説明をした後に、私の方から、特に為替について、九月十五日に為替介入に踏み切った経緯について御説明をさせていただきました。

 委員御指摘のとおり、円高というのは我が国の経済に大変深刻な影響があるということで、決して日本の経済パフォーマンスを反映しているものではないという、その厳しい状況を御説明した後に、今回の措置というのは、為替の過度な変動は経済や金融の安定に悪影響を及ぼす看過できない問題になっており、特に我が国の場合は、デフレが続き、厳しい経済情勢でございます。そういう中での過度な変動を抑制する観点から介入をしたことを報告し、加えて、大規模かつ長期にわたり一定の水準を目指すというような介入ではないという説明をさせていただきました。

 そのことに関して議論が深まったということではございませんけれども、G7の中では、為替のこれまでの国際会議における確認を改めてしました。今申し上げたとおり、為替の過度な変動や無秩序な動きというのは経済や金融の安定に悪影響を及ぼすということであるとか、やはり相場というのはファンダメンタルズを反映したものでなければいけないなということであるとか、あるいは、引き続き国際社会がマーケットの動向を注視し適切な対応をする、こういう一連の、トロントであるとかイスタンブールにおける国際会議における確認をもう一回再確認をしたということでございました。

城島委員 今、そういう中で通貨戦争というような表現でとらえられるような、そういう状況があるわけでありますが、まさに、中国とかブラジルといった、いわゆる新興国を巻き込んだ議論というのは、私は、来月、ソウルでG20が開かれますが、この首脳会議の中で、ぜひこういったことを含めた実りある論議が展開されてほしいなというふうに思っています。不均衡是正とか摩擦の回避といったために、多国間の協調あるいは仕組みづくりというところにぜひ踏み込んでいかないと、なかなかこの円高というのは是正が難しい部分があるというふうに思っています。

 そういう中で、今言ったような国際的な協調とか、あるいは国内においても、長期戦略、成長戦略はまさにその基本だと思いますけれども、それが円高是正の基本であるということは当然なんですけれども、あえて、今のこの急激な円高については、プラスして、このG20の中でもそうでありますが、財務大臣にお願いしたいのは、急激な変動ということはやはり避けるということの国際的合意はぜひとっていただきたいなというふうに思います。

 それと同時に、前、ちょっと論議になったと思いますけれども、いわゆる投機マネー、ヘッジファンドを含めたこの投機マネーの国際的な規制とかあるいは監視機能といったものを、ぜひ日本がリーダーシップをとってそういう方向になるように進めていっていただきたいものだなと思うんですね。

 監視等では、私は、事後報告をきちんとさせることというのは非常に有効じゃないかと思っているんです。こういったことを含めて、ぜひG20あたりではこういった論議が出るように日本のリーダーシップを期待したいと思いますが、財務大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 お答えいたします。

 G7でもあるいはIMFでも、今委員の御指摘のような、今、通貨安競争的な状況、その分析の議論が行われました。どういう国際的な枠組みの中で議論をしていったらいいのか、解決していったらいいのか、まだ結論は出ていませんけれども、その議論は、御指摘のように、二週間後にG20の財務大臣・中央銀行総裁会議がございます、その場でも大きく議論されることになるだろうと思います。

 ただいまいただいた委員の御指摘も踏まえて、国際社会の中でも日本の立場を発信し、為替問題の解決に資するように頑張っていきたいと思います。

城島委員 今の日本の瞬間的な最大の課題は、この円高対策だと思います。各国ともにいろいろな利害があると思いますが、日本も日本の利害があるわけで、しかも、急激なというところは、これは国際的にも認めていただいても当然じゃないかというふうに思いますので、ぜひ財務大臣には頑張っていただいて、日本の状況をきちっと各国に理解していただく、そのことによって適正な円の相場に持っていけるように頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、今回の総合経済対策について少し質疑をさせていただきますが、この経済対策を政府が決定する前に、民主党も、政策調査会のもとで直嶋前経産大臣を座長とする成長戦略・経済対策のプロジェクトチームというものを設置いたしまして、特に緊急経済対策、補正予算に向けての全議員のかなり徹底した論議の積み重ねをしてまいりました。あわせて、与党であります国民新党さん、さらには社民党を初めとした野党各党の意見というものを、政府側にいただいたものを我々も参考にしながら、民主党としての今回の経済対策についての見解というものを政府に提案させていただいたところでありました。率直に言いますと、我々の意図するところはほとんど酌んでいただいたかな、そういう内容だというふうに思います。

 我々は、基本的な考え方においては、厳しい国民生活を踏まえ、可及的速やかに経済対策、補正予算の編成を進めること、さらに、対策にとどまることなく将来を見据えた戦略の一環とすること、その観点から、新成長戦略の前倒し実施に取り組むこと、こういったことをポイントとさせていただきました。

 特に、我々民主党としては、雇用とか地域の活性化ということにつながるものとしての社会資本整備やあるいは中小企業対策といったところが重要じゃないか。こういうところに我々としてはおよそ三兆円程度。それから、将来の成長につながるということでの新成長戦略の推進。さらには、今、円高対策を申し上げましたが、逆に円高のメリットというものもあるわけなので、それをしっかりと活用するということに投入するものとして〇・四兆円程度。それから、やはり何といっても生活、暮らしの安心が大事だということで、子育て、医療、介護、福祉、こういったところに一・一兆円程度。そして、人材育成、雇用といった、この安定のために〇・三兆円程度。以上、約四・八兆円以上が必要ではないかというのが民主党の提案でございました。

 加えて、そこには、我々とすれば、制度とか規制改革、こういったことでの経済活性化策として、約十五項目にわたる具体的な提案もしたわけであります。

 ここで特に申し上げたいのは、検討する過程において、民主党の視点としてでありますが、総理も所信表明演説の中で述べられておりました。すなわち、強者の論理ではなく、弱者に寄り添い、こうした課題にもこたえなければならないという視点を我々もしっかりと踏まえたつもりでありまして、民主党として、やはり弱い立場にある人たち、あるいは命を守る、こういったことをしっかりと踏まえた提言をさせていただいたというふうに思っております。その内容についてはかなり、最初に申し上げましたように、受けとめていただいた政府案ではないかと思います。

 そこで、まず総理にお尋ねしたいわけでありますが、所信表明で菅総理が、先送りしてきた重要政策課題に今こそ着手し、次の世代に残さないで解決する、このことが有言実行に込めた決意であるというふうに述べられました。総理はかねてから、バブル崩壊以降二十年間の閉塞感を打破することが民主党政権の課題ということを繰り返し述べられてきていますが、この発言と、所信表明でおっしゃった、先送りしてきた重要課題に着手、この関係、まさにこれが菅内閣のある面でいうと重要な点だと思いますので、この点について御見解を承りたいというふうに思います。

菅内閣総理大臣 代表選の後、内閣と党を大きく改造いたしまして、そういうものを踏まえての本格的な国会ということになりまして、私の所信表明について城島委員の方から御質問いただきました。

 まず、少しだけ時間をいただいて国民の皆さんに、この内閣がどういう内閣であるかということを一言申し上げさせていただこうと思います。

 私は、九月の代表選で代表に再選され、党と内閣の人事を大きく変えました。その中で、これまで政務三役、つまり、大臣、副大臣、政務官になっていただいた皆さんのかなりの皆さんに党の役職についていただき、逆に、これまでは党の役職につかれていた皆さんの中でかなりの皆さんを政務三役になっていただきました。

 そのことも含めて私は、これまで、ややもすれば党と内閣がコミュニケーション不足とかいろいろな面で不十分さがあったと思いますが、まさに一体的な体制ができた。本当の意味でも、議院内閣、つまりは、国会で多数を握った政権党が内閣全体に責任を持つ体制ができた。従来の自民党内閣の場合は、内閣は大臣以外は主に官僚、党の方でどちらかといえば政策調整をされていたわけですけれども、我々の内閣では、党と内閣が一体になってそういうことを実行できる体制ができた。

 その意味で私は、この政権の本格的稼働が始まったということをぜひ国民の皆さんに御理解をいただきたいと思うんです。

 その本格稼働の最初の所信表明として私が申し上げたのが、今、城島さんから御指摘をいただきましたように、目の前のことももちろん重要なんです、しかし同時に、この二十年間の日本の閉塞状況、経済においても社会保障においても財政においても、あるいは地方分権においても地方主権においても、さらには外交においても、そういう閉塞状態を生み出してきた、これまでのやるべき課題を先送りしてきた二十年間に対して、思い切ってここは、だれの責任であったかということをお互いに問い合うのではなくて、ある意味では与野党を超えてその問題に取り組もうではないかということを、私、本会議で所信表明で申し上げました。

 代表質問をいろいろな党からいただきましたけれども、真正面から、この私が提起した五課題について、いやこれはおかしいとか、いやいいとか、もっとこうしろとか、そういう議論は残念ながら十分にいただいておりません。

 そういった意味では、この予算委員会でぜひ野党の皆さんにも、この問題提起が間違っていると言うんだったらば、この二十年間の低迷そのままでこれから先行っていいのか、そうでないならば、少なくともその問題に真正面から論争の場に参加をしてもらいたい、このように私は思っております。

 その中で、最初の話で申し上げますと、私が申し上げた五項目、第一は経済成長、まさに二十年間経済成長がとまっております。第二は財政健全化、そして少子高齢化のその中で社会保障、この三つの課題を、好循環になるような仕組みで一体的に改革を進めていく。さらには、地方主権の国づくりに変えていく。そして、国民が主体的にかかわる外交というものをやっていく。私は、この五項目が私の考えた中ではこれまでの二十年間の低迷から脱却する大きな政策課題だと、こう認識して問題提起をさせていただきました。

 そういった意味では、もちろん与党の皆さんとも一緒に進めていきたいと思いますが、野党の皆さんにも、批判は批判で大いにやっていただいて結構でありますから、ぜひこういう大きな課題についての議論を心からお願いをしておきたい、このように申し上げておきたいと思います。

 よろしくお願いします。

城島委員 ぜひ、そういう論議を展開していく熟議の国会にしていきたいなと私も思います。

 それで総理は、及び所信表明で、第一段階で急激な円高・デフレ対応、デフレ状況に対応する、第二段階でデフレ脱却、景気回復軌道に乗せる、こういうふうにおっしゃっています。そして、来年度予算編成、税制改正を目指す第三段階で、需要創造、さらに雇用創出を強化することで日本経済を本格的な成長軌道に乗せる、こういうふうにおっしゃっているわけであります。

 そのとおりだというふうに思いますが、これ、なかなか具体的にイメージしにくい点があります。ぜひ、この中身については、もう少し国民の皆さんに対しても丁寧に、具体的にはどのような政策を講じることによってこういう効果が生み出していけるのか、そして経済成長に結びついていくのか、この辺を少し丁寧に御説明いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 第一段階、第二段階、第三段階という、そういう考え方を提起したというのは、今、城島委員のおっしゃるとおりであります。

 中身と時間軸というものを考えました。

 時間軸という点でまず申し上げますと、まずやったことは、現在の予算の中に含まれている中から、まずステップ第一の、すぐやらなければいけないこと、やれることを、予備費九千二百億円を使って既に実行を始めているのが第一段階、第一ステップであります。

 そして、それに引き続いて、この国会に提出を予定している補正予算、先ほど、党との間でのすり合わせで経済対策という形では閣議決定させていただきましたが、おおよそ五兆一千億程度の補正予算がまさにそれに続く第二ステップ。そしてこれは、単に目先の景気対策という考え方ではなくて、景気対策にももちろん資するけれども、それが次の成長路線につながっていく、このことを考えながら、時間軸としては第二段階、少なくともこの国会で成立をさせていただいて、来年一月からはそれが実行できるようにぜひお願いしたい。これが第二段階であります。

 そして第三段階は、既に概算要求が出されて、いよいよ、元気な日本復活特別枠の問題など、来年度の予算をそれに引き続いて編成しなければならない。まさに、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップが切れ目なくつながると同時に、その第三段階においては、デフレを脱却して、そして成長軌道に乗せていく。そういう、短期、中期、多少長期の展望に向かってのステップワン、ステップツー、ステップスリーという考え方に立っております。

 そういう中では、この第二ステップの今回の補正予算を中心とした課題では、当然ながら、今の例えば雇用状況に対して、やはり雇用に軸を置いて、これは単に、何か雇用がないから失業対策のための雇用を創造するというのではなくて、もっと積極的に、例えば学校を出たばかりの人たちが、大企業への就職がなかなか難しくても、中小企業では求人倍率は四倍にも達している、そういう人たちが自分に合った企業で働くことができるようにといった、決して短期の失業対策という発想ではなくて、中期、長期にわたって経済の活性化あるいは社会の安定につながるような、そういう課題をこのステップツー、二段階目でも盛り込んだ、こういう位置づけに基本的になっております。

 第三段階の問題は、また今後の議論があると思いますが、これも、成長と雇用を、ある意味では裏表といいましょうか、一体に進めていくという考え方から、本格的な予算編成、十二月に向かって進めていただいている、こういう状況であることを申し上げておきたいと思います。

城島委員 そういうことを実現するためにも、実は私は、国家戦略室というのは物すごく大事だと思うんですね。

 そこで国家戦略担当大臣に、まあ、この国家戦略室の話というのはちょっと紆余曲折があったということだと思いますが、結局、国家戦略室はどのような状況になっていくのか、ここをちょっとはっきりとさせていく必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 城島委員の御質問でありますけれども、確かに、シンクタンク機能に特化すべきではないか、こういう議論が国家戦略室についてはありましたけれども、ただいまは、総理から指示がございまして、大きく分けると二つございます。一つは、総理の知恵袋、シンクタンク機能になってくれということが一つ。もう一つは、重要政策の企画立案と総合調整をしてほしいと。

 重要政策とは何かということになりますけれども、一つは予算編成。これは、官房長官と財務大臣と力を合わせて企画立案、総合調整をしてほしい、あるいは税、財政、経済、特に中長期の部分について責任を担ってほしいということであります。

 それ以外にも、いわゆる戦略課題、例えば新成長戦略の実現。より具体的に言えば、今、官房長官、総理と最終調整中でありますけれども、例えばEPA、FTA、TPP、そういったことに対する対応をどうするか、あるいは地球温暖化の問題、子ども・子育て新システムの問題、それもそれぞれ新成長戦略にかかわることでありまして、そういった重要戦略課題についての総合調整を担っていくということでございますので、大きく分けるとこの二つ。

 しっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

城島委員 そういうことで、先ほど総理がおっしゃったこの成長戦略が回転していくように、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、今回の経済対策の中で、マスコミなんかの論調も、やはり基本は雇用じゃないかと。ただ、雇用に対する取り組みがもう一つ具体策が見えないとか、あるいは経済の歯車を回すのは雇用だけれども、その前に、雇用というのは経済活性化の結果じゃないかというような反論とか、いろいろあるわけであります。こういうことについて、雇用優先の理由を総理にお聞きしたいのでありますが、私の考えから先に申し上げますと、雇用が大事だというのは、私はそのとおりだと思います。これも総理の所信表明演説の中で、これからはやはり消費者サイドに立ったところを重視していくということが述べられました。これも私は、まさに正鵠を射たことだと思います。

 すなわち、今のデフレは、失われた十年が結局二十年になってしまっている、しかもデフレはずっと続いている。この根本的な原因は、国民の静かなる政治に対する反抗だと私は思っています。すなわち、例えばこの十年間をとらえても、二〇〇二年からあのイザナギ景気を超える好景気だ、こう言われました。景気が拡張しました。では、景気が拡張し、利益を調べてみると、少なくとも付加価値に占める利益率は、バブルを上回る利益率を大企業は上げています。そういう景気拡張期に、正社員が約四百万人減る、平均賃金が十年間下がりっ放し、家計の収入も下がりっ放し、こういう国は世界で日本だけです。

 景気が拡張しているにもかかわらず、まさに、今までの政治の中で、景気刺激策があっても、その所得を公平に国民に再分配するという、その再分配機能という極めて重要な政治の機能が全く劣化していた。あるいは、私に言わせると、働いていなかった、あるいはそれを放棄してしまった。これでは、これは一円でも安い物を買おうとか一円でも安く生活をしようとか、そういう国民の生活態度が変わるのは当たり前ですね。そういう状況では、国内の一番景気を引っ張っていくべき国内消費、GDPに占める六割ぐらいの国内消費が盛り上がるはずがありませんよね。

 この間どういう政策をとられたかというと、もう枚挙にいとまがありませんよ。例えば小渕内閣のときに、法人税を下げよう、高額所得者の最高税率を引き下げた。同じように、でも国民の定率減税もやった。だけれども、小泉政権になって、この国民への定率減税だけは廃止になって増税になった。あるいは金融税制も、どういう税制だったか。これは基本的には、大企業とか高額所得者とか、そういう人たちの所得が上がれば中小企業の利益はおのずからふえる、そうすればおのずから国民の所得もふえるだろうという、まさにこの新自由主義の考え方がずっととられてきた。その結果、見るも無残な状況ですよね。

 代表例を挙げると、今言ったように所得が、景気がよくなったにもかかわらず、正社員は減る、非正規社員が五百万人ふえるということを、繰り返しません。自殺者はどうですか、皆さん。九八年から相変わらず三万人を超すという、これが今の日本の状況ですから、デフレが直るはずがないと私は思いますよ。ここを何とかする、真っ当な再配分をしていく、家計を潤していく、こういうところにやらない限り、幾らいろいろな施策をやっても、国民のこの政策や政治に対する反抗、反乱はおさまらないと私は思うんです。そういう意味の一番重要なのが、やはり安定した雇用じゃないでしょうか。私はそう思っている。

 そういう観点から、総理もおっしゃいましたが、雇用優先ということについてぜひお伺いしたいなというふうに思います。

菅内閣総理大臣 城島議員の方から、本当に私自身が思っている、感じていることの多くを言っていただきました。

 私は、新成長戦略を昨年の暮れにまず骨格をつくる段階から、なぜ二十年間日本の経済成長がとまったのか、過去のいろいろな政策の提案を調べてみました。基本的にみんないいことが書いてあるんです。しかし、結果としては一向にそれがプラスにつながっていません。

 そこで私は、第一の道、第二の道、第三の道という形で分析をして、もう細かくは言いませんが、第一の道は、旧来型の公共事業を中心にしたものが一九八〇年代から効果を失ってきた。第二の道が、今、城島さんも言われたように、デフレ下においてデフレ政策を強力に進めたのが小泉政権です。

 つまりは、需要が不足しているときに供給側が幾らコスト削減をしても、需要がないんですから、供給側がコスト削減すれば値下げ競争になるんですね。ですから、結果としては、まさに労働市場も値下げ競争的な形にどんどん追い込まれて、非正規雇用がどんどんふえて、企業の単位でいえば、それはコスト削減に成功した企業は単一企業としては利益を上げたかもしれないけれども、じゃ全体のマクロ的に需要がふえたかというと、ふえていない。まして働く人たちの給与もふえていない。この第二の道の大間違いをいまだにしっかりと認識をしていないところがあるところが、この政策の転換を十分にできていないと私は思うんです。

 そこで、雇用のことについて言っていただきましたが、先ほども申し上げましたが、雇用について、失業対策的にとにかく税金をつぎ込んで、役に立つか立たないかわからないことでもいいからやろうというのでは全くありません。つまり、今のデフレという状況をよく分析してみると、お金は個人も必ずしも持っていないわけじゃない、まして企業は二百兆とも言える内部留保を抱えている。しかし、個人も企業も、お金を使うよりもお金を持ったままにしている方が安心だという、そういう流動性の選好があるためにお金が回らない。

 そこでどうすればいいかといえば、そのお金を回すために、それは国債でお金を借りて使うか、あるいは税金のお金をより有効に使うかということになるわけですが、その使い方として、今やじでばらまきという言葉が出ましたが、まさにばらまきではない形の使い方の一番のポイントが雇用を生み出す分野、もっと別な言い方をすると、潜在的には需要がたくさんあるにもかかわらず、そこにお金が回っていないためにその需要が顕在化していない、例えば介護の分野なんかは、ある程度の給与を払えば、そこで働きたい人もいるし、働けばそこにサービスが発生する、経済成長にもつながる、給料をもらえば何がしかの税金も払ってくれる。あるいは、子供たちの問題でも保育園とかそういうものが不十分だ。そういうものにお金が回っていけば、そこに雇用が発生し、そして需要が発生し、生産が発生するわけです。

 そういう意味では、私は、キーになるのは、いわゆる従来型の失業対策とは全く別の意味で雇用をふやす分野にお金を回すことが、サービスも含めて生産をふやし、そして、場合によっては財政再建の種をふやすことになり、さらには、介護とか医療という分野が充実すれば社会保障の充実にもつながってくる。こういう意味で、経済の成長と財政の健全化とそして社会保障というものを連動して一体的にやっていこう、こういう考え方に立って、この二十年間の大きな停滞から脱却する、こういう考え方を新成長戦略で与党の皆さんと一緒につくり上げてきているということを国民の皆さんにもお伝えしたいと思います。

城島委員 そういう面で一言言うと、サプライサイドからある面でいうとやはり需要、家計というところにシフトしていく、それはもちろんバランスが大事でありますけれども、そういう政策というのは極めて重要だと思いますし、先ほどから申し上げているように、やはり政治の一つの大きな機能は所得の公正公平な再配分をどうしていくか、ここについて今まで全くされてきていなかった。ここに対して、やはりこれからその部分についてもしっかりとやっていかなきゃいかぬというふうに思います。

 そこで、雇用の中でもいろいろありますけれども、今、私は、社会的な大きな問題になっているのは、若者の失業だと思っています。とりわけ新卒者の就業状況が非常に悪い、就職内定率も年々悪くなっていっているというのが報道されています。

 新卒者あるいは若者の雇用状況が悪いのは、やはり親御さんも心配をする、そしてまた、おじいちゃん、おばあちゃんも自分のお孫さんがどうなるかと不安である。こういう意味で、若者、とりわけ新卒者の就業困難というのは、全体的な大変大きな不安と問題になっているんじゃないかと思うんです。したがって、新卒者の雇用についてやはり何らかの、さらに突っ込んだ手当てが必要だと思うんですね。

 これについて、今、新卒者の就職についてどういうような手だてを考えられているのか、ぜひ。厚労大臣。

細川国務大臣 高校生やあるいは大学生が学業に励んで、そして、いざ卒業するときに望んでいた就職ができない、これは大変深刻な問題だと思いますし、こういう若者が学窓からスムーズに社会に出ていけないということは、これはまた国家の損失でもあるのではないかというふうに思います。

 新卒者の就職状況が非常に悪い、この十年の間でも本当に一番悪くなってきている。七万五千人の方が卒業しても就職できない。これは、去年に比べて三万一千人ぐらい上回る、そういう状況でございます。したがって、私どもとしては、何としてもこういう新卒者の就職を応援して、そして、しっかり社会で働いていただけるような、そういうことを考えて今取り組んでいるところでございます。

 そこで、先ほどから出ております三段構えの経済対策、その一つとしての、まず予備費で対応いたしましたことは、卒業していない方がハローワークなどで、就職を親身になって助ける、一人一人にサポートして就職まで付き添う、そういう役割のジョブサポーター、これを倍増するということにいたしました。

 そしてまた、新卒業の応援のハローワーク、ハローワークへ行けばワンストップで全部いろいろな相談に応じて就職ができる、そういう応援の新卒応援ハローワークも設置をいたしました。

 そして、全国的に悪い、そして地方は地方でいろいろなところの事情もございますので、各都道府県に新卒者就職応援本部というものも設置をいたしまして、地域に応じた就職の応援というのをいたしております。

 また、これは非常に重要な施策でありますけれども、既卒者を三年間の間に新卒扱いで就職をさせていただいたその企業に支援金を支給する、あるいはトライアルで雇用していただいて、そこでマッチングをして、そこに採用していただいた方にはこれまたその企業に支援金を支給する、こういう制度をとったところでございます。

 また、先週あれしました新しい経済対策でもさらにこの応援を拡充していく、そういうことを今やっているところでございます。

 私もせんだって、東京の新卒の応援ハローワークに行ってまいりましたけれども、そこでは本当に就職できない若者がたくさんおいでて、熱心にいろいろと勉強もされておりました。そういう姿を見まして、しっかりとこの新卒者の応援をしてまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

城島委員 こういうとき、総理、僕は思うんですけれども、さっきと同じなんですけれども、この間上げた利益がかなり、企業の中には手元資金としても六十兆円あるんですね、バランスシートを見ると。それから、内部留保でいうと二百兆円と言われている。もう繰り返しませんが、先ほど言ったような状況で、正社員を減らし、非正社員をふやしてきた。このとき、やはり企業は、特に大手企業は、社会的責任としても積極的にこの門戸を広げる。若者がいよいよこれから高校や大学を出て社会に飛び込もうという希望に燃えていこうとするときに狭められているというのは、これはやはりないと思いますよ。

 だから、これは本当に、経団連を含めて、強く、少なくとも長期的に見たときの採用から考えると、このままでいいのかと。こういう若者をほっておいて、その責任あるいはそういった役割の一端をとりわけ大手企業は負ってほしいと強く要請してもおかしくないと思うんですが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 おっしゃるとおりだと思っています。この雇用対策に関するいわゆる雇用対話の場あるいは新成長戦略に関する議論の場にも、労働界、経済界からもそれぞれ担当の方に来ていただいて、あるいは責任者の方に来ていただいております。特に経済界については、一つは、国内に対しての投資をもっと積極的にやってもらえないか、あるいはその場合には、場合によっては支援をするといったことの国内立地についても強く要請をいたしております。言うまでもなく、海外にどんどん事業所が出ていけば雇用が失われることになりますので、そういう点からも、経済界には要請をいたしております。

 同時に、今、城島さんが言われたように、新卒者の問題というのは、ある意味では社会全体が、学校を出たばかりのところで仕事がないというのは、本当に社会で自分のいる場所がない、自分はもう社会にとって要らない人間じゃないかとさえ、そういう非常に大きな挫折感を最初から生み出すわけですから、それは国全体にとっても大きなマイナスになるわけであります。そういう意味では、企業の社会的責任も含めて、ぜひ、特に力のある企業には、そういう点も勘案して、将来の積極的な、二百兆ものお金を投資していくための、人材にも投資をしていただきたい。そのことは、これまでも申し上げてきましたし、これからは一層強くそういう関係者にも要請をしていきたいと改めて感じております。

城島委員 そういうことを含めてなんですけれども、緊急人材育成・就職支援基金事業、こういったことの創設がうたわれています。

 ここは、私、要請だけしておきますが、例えば労働者派遣法、継続案件になっています。今、日本の雇用のもう一つの最大の問題は、結局、雇用、働くことに対してのいざとなったときの保障はすべて社会保険です、雇用保険も。あるいは年金にしても、すべていわゆる社会保険という形になっています。一番ある面で生活が困ったときに生活保障です。間が抜けているわけですね。社会保険に入るのは、この前は、雇用保険の加入要件をずっと短くというか、かなり入れるようにしましたけれども、今までの日本のセーフティーネットの基本が正社員中心になっている。したがって、そこから落ちこぼれた人たちは網がないわけですね。ここが、二年前の派遣村ができたり、あるいは派遣を雇いどめになるとすぐ住む家もなくしてしまうというような状況になっている。そういうところに対するセーフティーネットを張るということが、もう一つ極めて重要。

 その一環として、この緊急人材育成・就職支援事業というのは、私は、実は現職時代、この原型をつくらせていただいたのはそういう意味なんです。ここのすっぽりあいているところに網をかけるということのない中で、労働の流動化とか、あるいは一気に労働の規制緩和をやったがゆえに悲劇が起こっているんです。私は、こういう状況のまま今の労働者派遣法が成立すれば社会不安になりますと、そのとき言ったことをよく覚えています。だから、手順が逆なんです、こういうセーフティーネットを張った中でやるならまだしも。そういう面で、これはぜひともやっていただきたいと思います。

 時間になっていますね。駆け足になりますが、農水大臣にちょっとお尋ねしたいわけであります。

 私は、今回のこの民主党の戸別所得補償制度というのは、歴史的な第一歩だというふうに思っています。これはまさに、一九八六年からだったでしょうか、ガットのウルグアイ・ラウンドが長く九四年までかかったと思います。その中で、はしょりますけれども、結局欧米各国は、このウルグアイ・ラウンドを契機に、今でいえば、日本でいえば、この所得補償政策に大転換していったわけですね。世の中の流れが、やはりそういう流れだった。日本の場合は、相変わらず消費者負担といういわゆる関税を中心として農業を守っていこう、あるいは育てていこう、大規模化していこう、こういうことでした。

 私は、あえて言えば、中国の今回の問題で、レアアースじゃありませんが、食料もいつそうなるかわからない状況であれば、日本の農業をこの世界の流れの中でどういうふうに守り、さらに育てていくか、第六次産業化していくかというときには、やはり基本はこのことだと思います。

 そういうことを含めて、やはり今後の農業、戸別補償政策についても、農水大臣の決意をちょっと伺っておきたいなと思います。

鹿野国務大臣 今、城島委員がおっしゃいますとおりに、国際社会におきましては、農業政策については価格政策から所得政策へ、こういう流れであることは、おっしゃるとおりであります。

 そういう中で、農業というものがどういう役割を果たしているか。常に国民に対して食料の安定供給をしてくれる、そしてまた多面的機能の維持のために大きな役割を果たしている。そういうことに対してきちっと評価をしていく必要がある。それに対して、再生産につながるようにしていく、こういうことを考えたときには、やはり所得政策を導入するきりないんじゃないか。こういうことで、民主党政権として、二十二年度から、まず米をモデル事業として先行して、こういうことでありまして、今度はいよいよ畑作物も対象にするという考え方で、この戸別所得補償制度というものを農業者の方々の意欲につながる制度にこれからしていきたい、こういう考え方に立っておるところであります。

城島委員 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、蓮舫大臣にお伺いします。

 今回、今月から事業仕分け第三弾ということでありますが、特別会計の仕分け及び再仕分けについて、意義とそれから決意、これをお伺いしたいと思います。

蓮舫国務大臣 城島委員にお答えをいたします。

 事業仕分けは、事業の理念とか目的を否定するものではなくて、その目的に到達するための手段として国民の皆様方からお預かりした税金が正しく使われているかどうか、それを問わせていただくものであります。

 その意味で、今まで第一弾、第二弾を行ってまいりましたが、第三弾は前半、後半に分けて行いたいと思っております。前半部分は十月の後半に特別会計を対象に、後半部分は十一月の中旬に再仕分けを対象に事業仕分けを行ってまいります。

 特別会計は、国民の皆様方から、お金の流れ、資金の流れが不透明であるとか、あるいは区分経理をしていることによって既得権益化している、無駄の温床になっているのではないかという不信の声がございますので、十八会計五十一勘定すべてを、まずは特別会計の情報公開化、オープンにすることによって皆様方にすべてを見ていただいて、制度そのものの是非も含めてゼロベースで制度仕分けを行ってまいります。

 再仕分けは、これまでの仕分けの評価が、あるいは各省庁が国丸ごと仕分け、行政事業レビューを行っているんですが、その評価が本当に二十三年度予算案に反映されているのかどうなのかを明らかにしていきたい。その部分では、事業仕分け第三弾を通じて、予算編成過程の透明化並びに徹底的な無駄の削除、税金の浪費は許さないという姿勢で臨んでいきたいと思っています。

城島委員 これは本当に、それこそ国民目線でしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 それから、環境大臣、名古屋でいよいよ始まりました。非常に難しいテーマもいっぱいあるわけでありますが、日本政府を代表してCOP10の議長をやられます。決意をぜひ承ります。

松本国務大臣 COP10の話題に触れていただいて、どうもありがとうございます。

 人は自然の恵みによって生きています。むしろ、生かされていると言っても過言ではないと思います。そういう意味で、生物多様性という問題は、その保全あるいは持続可能な利用によって人類に大きな影響を及ぼすということで、名古屋で行われますCOP10、しっかり努力をしていきたいと思っております。

 確かに相違点はいろいろありますけれども、人類の存立の基盤である地球、自然を大事にするという共通項をしっかりベースに置けば必ず合意点が見つかるというふうに思っておりますので、二〇一〇年、ポスト二〇一〇年目標についても最大限まとめるよう努力をいたしますし、ある意味では子供や孫たちにしっかりかけがえのない地球を残していくために議長国として努力をしていくことを皆さんに御報告したいと思います。

 ありがとうございました。

城島委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 最後に、所信表明で総理も述べられましたが、やはりもう一つ、どうしても皆さんの関心が高いのは、北朝鮮拉致問題だと思います。北朝鮮の体制も大きく揺らいでおりますが、やはり拉致被害者の家族の皆さん、特に私の地元、横田御夫妻がいらっしゃいますが、一日も早い解決をというのは切なる願いでありまして、御夫妻あるいは御家族の皆さん、一日一日年を召されていく姿を見ておりますと、これは本当に、一日も早い解決、前進に向けたあらゆる施策が必要だと思います。

 中井委員長も随分努力をされました。ぜひ担当大臣、引き続いてこの問題の一日も早い解決に全力を挙げてほしいというふうに思いますが。

柳田国務大臣 拉致担当大臣に就任したときに、菅総理から大変強い指示をいただきました。

 その指示に基づきまして、就任まだ三週間でございますけれども、飯塚会長とは三回お会いしましたし、横田さん夫婦には四回お会いしましたし、いろいろな方にお会いして、お話を聞きました。

 十月二日、川崎に行きまして、横田めぐみさんに関する集会にも出席しました。城島委員は毎年出席されているということで、今までの御努力に大変敬意を表する次第でありますけれども、その際、横田さんの子供三人の写真を見ながら、いろいろな話も聞かせてもらいました。夜には、拉致家族十九名の会にも出席をしました。そのときには、拉致議連の平沼会長にも出席をしていただいて、いろいろな意見も伺いました。意見の中には、大変厳しいものもありました。そういう厳しい意見を聞きながら、改めて責任の重さを痛感したところであります。

 とにかく、一にも二にも、拉致被害者の皆さんに一日も早く帰っていただくことだ、そう心から決めております。城島委員の御協力もどうぞよろしくお願いいたします。

城島委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

中井委員長 この際、山口壯君から関連質疑の申し出があります。城島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 菅総理、きょう、私の質問のキーワードは、国を開くです。これからの中長期的な日本の経済のあり方を考えるとき、世界の人、物、金をどうやって日本に呼び込めるか、そして、そのためには、日本が本当の意味で国を開いて魅力的な国になれるかどうかがかぎです。そのような日本にしていくのが政治の役割だと思います。

 今後、日本が繁栄していくためには、八十兆とか九十兆とかという税金とか国債で雇用を生み出そうとするのではなくて、むしろ、グローバル化が進む世界経済の中で、世界じゅうからお金、会社、人材を呼び込んで日本で富を創出してもらう、そういう発想も非常に大事になってくると思うんです。

 今週「桜田門外ノ変」という映画が封切りされるようですけれども、そのポスターのサブタイトルは「開国か、攘夷か。」ということです。これは、言い方をかえれば、開国か鎖国か、こういうことにもなるかもしれません。あれから百五十年たった今、我々は歴史を見る目がありますから、どっちが正しかったかというのは、どちらかというと自明の理であるとは思いますけれども、当時は命がけで開国か鎖国かということを争ったわけです。

 もしあのとき鎖国が続いて開国がおくれていたならば、日本はひょっとしたら植民地になっていたかもしれない、その後の日本の発展はなかったかもしれません。日本は開国して、福沢諭吉の言う独立自尊の精神も発揮して頑張ったわけですね。今、日本は、再度勇気を持って国を開いていくということが求められているんではないでしょうか。

 世界経済の流れは、好むと好まざるとにかかわらず、グローバル化の道を進んでいます。そして、知識集約型の経済化の道も進んでいます。しかし、日本は残念ながらこの流れに乗りおくれてしまっているんではないかというふうに私は危惧しています。

 我々は、グローバル化イコール悪であるという認識に若干とらわれてしまったんじゃないかなということを、今から思うと少し反省するところもあります。しかし、世界は間違いなくグローバル化しているわけですから、これを現実として受けとめて、そして、今国全体が精神的な鎖国に陥ってしまっていないかどうか、それを我々はしっかり振り返るべきじゃないかと思うんです。その意味で、私は、キーワードは国を開くあるいは開国だということが、これからの日本の中長期的なビジョン、戦略の大きな柱だと思います。

 表面的にはもちろん日本は開国しているわけですね。一見開国はしています。しかし、世界の企業あるいは資本にとって、日本が本当に政策、制度的に魅力のある国であるかどうか、これを我々は今厳しく振り返らなければいけないと思うんです。さまざまな規制があるために、世界から日本に優良外国企業あるいは資本が来ることをちゅうちょしていないかどうか、その辺も見なければいけません。

 私たち日本人の排他性が邪魔になっていないかどうかも振り返ってみるべきです。最近の内向き志向あるいは縮み志向、そういうことも大変気になります。それらも精神的鎖国の一例でしょう。その意味で、我々が国を開くためには、何よりも実は我々一人一人のマインドあるいは心をチェンジしていかなければいけないんじゃないでしょうか。

 菅総理が所信表明の中で、外交について、「国民一人一人が自分の問題としてとらえ、」と言われたとき、私はあの言葉で、かの米国のケネディ大統領の言葉を思い出しました。国が何をあなたにするか、それを問うんじゃなくて、あなたが国のために何をできるか、それを問うてくれと、あのとき力強く言いましたね。そしてアメリカは、発展、繁栄、そして世界の平和のため頑張っていこうということがあそこから始まっていきました。多分、菅総理はそういうつもりでおっしゃったんじゃないかと私は思って受けとめています。我々の心をチェンジしていく、そしてそのことによって国を開き、世界の人、物、金が来るように、そして日本のみならず世界の繁栄が可能になるように、そういう願いも込められていたんじゃないかなと私は思っています。

 菅総理、先ほど私が、総理の所信表明演説の中で言われた、「国民一人一人が自分の問題としてとらえ、」とおっしゃったことの心について一言説明願えますか。そしてまた、あわせて、国を開くということの意味についても説明いただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 私の外交というのは、国民の一人一人がある意味で自分のこととして、自分たちのこととしてとらえた中で、本当の意味の強い外交が可能になるということを申し上げました。今ケネディ大統領の就任あいさつ、私も高校時代に、余り英語は得意じゃありませんでしたが、そこだけは覚えたことを今でも思い出しております。

 まさに、アメリカの外交を見ておりますと、いろいろな問題点はありますけれども、最後のところで国民のいわば合意というか、そういうものをしっかりまとめ上げて行動する。私が時折取り上げます、もう亡くなられた永井陽之助先生の「平和の代償」というのは、ちょうどキューバ危機の当時のアメリカ国内の情勢を踏まえた論文でありましたけれども、やはりあれだけの危機をある意味越えていけるのは、いざというときに国民がそのときの、もちろんリーダーがしっかりしていなきゃいけませんが、リーダーに対して信頼を寄せているということを背景にして、当時独裁国であったソ連に対して立ち向かったという中で、ああいったある意味での外交的な大きな勝利を得て、その後のデタントになっていったと思っております。そういう意味では、私が申し上げたことを大変前向きに受けとめていただいたというふうに思っております。

 その中で、国を開くということ、これは鳩山前総理も国を開くということを大変強調されておりました。私も改めて政権を担うことになって、あるいはその直前に財務大臣としていろいろな国際会議に出る機会がふえた中で、本当に日本という国が、国の中だけで見ていれば、まだまだそうはいっても他の国よりは豊かだとか、あるいはいろいろな活力があるとかという感じはしないわけでもありませんけれども、国際社会の中に行ってみると、本当にいろいろな面で立ちおくれている。

 例えばお隣の国の韓国も、先日、私はASEMに行って韓国の李明博大統領と会って、あすはどうしますと言われたから、いや、実はあした私は帰りますと言ったら、いや、私はEUとのEPAの調印式がありますとうれしそうに言われて、こっちはちょっと日本が立ちおくれたなという感じも、そういう機会にも感じたわけであります。

 しかし同時に、国を開くには大変なある意味での痛みといいましょうか、いろいろな問題も同時に発生するわけでありますから、そういった意味では、そのことも十二分にきちっと配慮する、あるいは対応を用意する。そういう中で、同時に、まさに尊王攘夷から尊王開国へ、尊王の、内向きな今の日本から思い切って外に打って出る、あるいは外からもエネルギーをどんどん導入する、そうしても日本の社会が安定に農業問題を含めてきちっと対応できる、その体制をつくれるかどうか。

 私は、五つの重要政策課題という形で問題提起した中で、ある意味で、経済の成長という中にはその一番大きな難しい問題が含まれている、そういう気持ちで問題提起をしたわけでありまして、そういう点では山口委員の思いと極めて共通しているのではないかと思っております。

山口(壯)委員 通告した順番とは違いますけれども、玄葉国家戦略担当大臣あるいは海江田経済財政担当にお聞きしますが、国を開くために、政府はどのような施策を、あるいはどういうタイムスケジュールでお考えになっておられるか。さきの新成長戦略もありましたし、この間の緊急総合経済対策もありました。その辺から、どのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただけますか。

玄葉国務大臣 山口委員にお答えをいたしますけれども、まず、総論として申し上げると、アジアにおける人、物、金、この流れを倍増させなきゃいけないんじゃないか、そう思っております。

 その中で、特に、先ほど総理から言及がありました包括的経済連携、これは山口筆頭政調副会長が党の中では責任者で今議論を進めていただいておりますけれども、これについて、ことしの秋までに基本方針を策定せよ、こういう指示をいただいているわけであります。同時に、二〇二〇年までにアジア太平洋地域で自由貿易圏をつくる、これはFTAAPというふうに言いますけれども、そういう基本的な方向を考えています。

 大切なことはこれからで、二〇二〇年にアジア太平洋地域で自由貿易圏をつくる、これはほとんどの方が賛成してくれる。問題は、それに至る道筋でありまして、バイ、つまりは二国間、マルチ、三カ国以上、どういう組み合わせでやっていくのか、あるいは時間軸、スピードの関係をどうするのか、あるいは日本の農業との両立をどう考えるのか、そういったことをすべて総合的に判断しながら物事を進めていかなくてはいけない。

 ただ、いずれにしても、この包括的な経済連携について、極めて重要な戦略課題であるというふうに認識をして、総合調整をしている最中でございます。

 さらに、個別的に若干申し上げますと、これは私の直接の担当ではありませんけれども、例えば物の流れについて、港湾、これは選択と集中をしておりまして、国際コンテナ戦略港湾、これを選定しています。この港湾にも、例えば公設民営、こういった民間の視点を取り入れていく。あるいは人の流れ、これも、一定の職能を有する方々についてはもっと出入国管理上の優遇制度を設けていくであるとか、あるいはオープンスカイというものを徹底していく。あるいはお金の流れという意味では、特に外資が最近本社機能を海外に移す、こういうことの動きが出ておりまして、改めてそれらに対して優遇措置を講ずることでしっかり国内にとどまってもらう。

 そういったことも含めて、総合的に国を開くということの戦略を講じて着実に実現をしてまいりたい、そう考えております。

海江田国務大臣 山口委員から緊急総合経済対策についてお触れいただきましたので、その観点から、国を開くという政策がどのように具体化されているかということについてお話をさせていただきます。

 幾つか中に盛り込んでおりますが、少し具体的に申し上げますと、日本の言語の問題、アジアの言語との差異の問題と申しますか、日本に観光客がアジアからたくさんいらっしゃっておりますが、観光地での案内表示がまだまだ十分でない。あるいは首都圏などでも、最近では英語、ハングル、そして漢字というものの表示が随分できてきましたけれども、例えば漢字につきましても、台湾や香港から来られる方は繁体字という日本の旧字に近い字でございますが、中国からお見えになる方は簡体字という形で、私も若干、これは山口委員もそうですが、中国語を理解できるわけですが、昔、私たちが外国に行って、日本語のメニューだとか案内板で随分おかしな日本語があるなというのがありましたけれども、今の日本の国内の状況もそういう状況ですから、特に言語バリアフリー化というものに力を入れるということは、今度の緊急経済対策に盛ってございます。

 それからもう一つは、日本の医療の高度な先端技術を求めてやってくるアジアのお客様もたくさんいらっしゃるわけですから、ところが、現在ですと、例えば中国からの観光ビザはわずか十五日、それからもう一つ、短期滞在ビザというのがあるわけですが、これは九十日でございますが、実際使い勝手が大変悪いということもございますので、これについては、例えば、仮称でございますが、医療滞在ビザのようなものをつくっていきたいというふうに考えております。

 もう一つだけお話をさせていただきますと、家電製品で消費電力等の標準化、国際化がアジアの中でまだできておりませんから、やはりそういうものを標準化していく。エアコンでありますとか冷蔵庫でありますとか、そういうものを標準化していって日本を開いていくということを考えております。

 なお、緊急経済対策は、これはあくまでもスピードが第一でございまして、これから補正予算、今財務大臣、財務省で補正予算への取りまとめをやっているところでございますが、できるだけ早くこれをこの国会で上げていただいて、そして次の、今、玄葉大臣からお話がありました、もう少し中長期的な立場に立ったアジアとの関係というものにこれからも力を入れていきたい、かように考えております。

 どうもありがとうございました。

山口(壯)委員 ありがとうございました。

 今、どういう国を目指そうとしているかということを、菅総理のお言葉、玄葉大臣あるいは海江田大臣からお聞かせいただいたわけです。馬淵大臣あるいは自見大臣にも聞こうと思ったんですが、今大分お答えいただいたので、そこは飛ばさせてください。

 そして、この経済連携戦略については、今、玄葉大臣の方から、包括的経済連携についてことしの秋までに基本方針を策定する、こういうことも言及がありました。この国を開くという大戦略の成否は、大前提として日本が魅力的な国になるということですから、先ほど両大臣が言われた具体的なことについて、ぜひ実現していくように我々も協力したいと思います。

 そして、今のいわゆる包括的経済連携という言葉ですけれども、よく新聞にEPAとかFTAとか、一般の方々にとってわかりにくい言葉がたくさん出てくると思うんです。そういう意味では、これからそういうことが、十一月にAPECという例の大きな会議が菅総理を議長にして横浜であるわけですから、新聞でたくさん出てくると思いますので、EPAとは何なのかとか、あるいはFTAとは何なのか、多くの視聴者の方にわかっていただけるように簡単に説明していただけますでしょうか。それは、前原大臣、お願いしていいですか。

前原国務大臣 FTAというのは自由貿易協定で、EPAというのは経済連携協定というものでありますが、FTAの方がどちらかというと狭い概念であります。関税の撤廃とか、あるいはサービスの取引をより容易にするためにFTAを結ぶということでありますが、それにプラスをして、例えば投資環境でございますとか、企業が経済活動しやすいような状況を整える、あるいは知的所有権、こういったものの整備も含めたさまざまな取り決めを包括的に結ぶというのがEPAで、FTAの方が包含された概念である、EPAの方がより広いものであるというふうにお考えをいただければ結構かと思います。

 APECというのは、二十一カ国で構成されている。先ほど玄葉大臣からお話がありましたように、一九九四年にインドネシアで行われたボゴール合意ということによって、先進国、十三カ国・地域でありますけれども、これは二〇一〇年までに、そして八カ国の途上国・地域を含めた全二十一カ国で二〇二〇年までに、この二十一カ国・地域の域内での自由貿易を目指していくというのがボゴール合意で、APECが今目指しているものでございます。

山口(壯)委員 あと、よくわからない言葉が出てくるのが、TPPという言葉ですね。その概念だけちょっと教えていただけますか。

前原国務大臣 TPPというのは、トランス・パシフィック・パートナーシップというものの略でございまして、漢字に直しますと、環太平洋連携協定というものでございます。現在九カ国、この間まで八カ国でありましたけれども、マレーシアが十月四日から九日の第三回の交渉会合に参加をいたしましたので、今のところ九カ国が参加をしております。

 ほかの国を申し上げますと、アメリカ、豪州、オーストラリアですね、ペルー、ベトナム、チリ、ニュージーランド、シンガポール、そして先ほど加えたマレーシアというものが、九カ国が、物の取引についてはほぼ関税をなくしていこうということで今議論を進めているところでございまして、かなりハードルの高い地域間の自由貿易の取り組みだというふうに御理解をいただければ結構かと思います。

山口(壯)委員 私は、まだ結論を先取りせずにきょうは議論をさせていただきたいと思うので、このTPPというのは私もよくわかりませんでしたけれども、去年、オバマ大統領が東京に来てサントリーホールで演説をされたときに触れられて、そしてその後、議会で十二月にこの交渉開始を通知するということで、急速に来ているみたいです。これは見方によるんでしょうけれども、おくれればおくれるほど、日本の立場を反映させることは困難になるとか、あるいは世界そのものが新しい貿易なりいろいろなお金の流れの仕組みをつくる、それに参画するということになるんじゃないかとか、いろいろな議論があるんですけれども、今前原大臣も言われたとおり、注意深く我々は少し議論を詰めていきたいと思っています。

 菅総理の成長戦略の大きな柱が、アジアとのリンクですね。そして、これは、今までの日本国内の一億だけを内需としてとらえるのではなくて、例えば、インドが十一億とか、あるいはASEANの六億を足して十七億、中国の十三億を足したら三十億とか、こういうものとどういうふうにリンクして日本の内需として取り込めるのか、こういう大戦略です。

 そういう意味でちょっと状況を考えると、例えば日本がどういうところに輸出しているのか。今、日本の輸出先で一番大きな国はどこになりますでしょうか。

野田国務大臣 山口委員の御質問へのお答えは、輸出先でよろしいですか。輸入先は結構ですか。(山口(壯)委員「はい」と呼ぶ)

 財務省貿易統計によりますと、二〇〇九年における日本の貿易相手国、一位の輸出先は中国でございまして、額は十兆二千三百五十六億円です。ちなみに、輸入先も中国でございまして、これは二〇〇二年から続いています。

 以上です。

山口(壯)委員 昔は輸出も輸入も全部アメリカがトップだったわけですけれども、今、中国がそれにかわっている、こういうことですね。

 中国ががんがん経済的にも、あるいはほかの面でも大きくなっているというのは、今我々の頭の中に非常に大事なポイントとして占めているわけですけれども、例えばGDP全体をとってみても、昔はというかこの間までは、一位がアメリカで、二位が日本で、要するに世界第二位の経済大国というふうに我々は胸張って言っていたんですね。三位に中国が上がってきている。

 今現在、中国はひょっとして抜いてしまっているんじゃないでしょうか。どうでしょうか、この点。これは前原大臣ですか、お願いします。

前原国務大臣 まだ公式の数値は公表はされておりませんけれども、ただ、IMFが最近、直近、十月六日に公表した最新の経済見通しによりますと、二〇一〇年のGDPにおきましては、日本が五兆三千九百九億ドル、そして中国が五兆七千四百五十一億ドルということでございますので、これによりますと、日本が世界第三位になって、中国が第二位に浮上しているということでございます。

山口(壯)委員 若干、心情的にはつらいものもあるんですけれども、現実は現実として受けとめなければしようがないですね。

 そんな中で、中国との関係もおろそかにできなくなってしまっている。総理、ここはもう今の文脈からいったら、簡単でいいんですけれども、こういう大きくなっている中国、しかし、この間の尖閣に関する振る舞いでは、私にとっては、これまたいかぬなという気持ちも非常にありました。総理はどういうふうにとらえられたでしょうか。

菅内閣総理大臣 中国が経済的に大変、新興国の代表のような形で大きくなりつつあるということは、もちろんしっかり認識しなければいけないと同時に、やはりそれだけに、国際社会においても国際的なルールをしっかり踏まえて行動してほしい、あるいは、大きな国としては大きな国としての国際的な責任も大きなものになるわけでありますから、そういうこともしっかり踏まえて行動してほしい。私もG20あるいは幾つかの会合に出て、そういう思いは欧米各国だけではなくて、アジアの国々もそういうふうに思っておられる国が多いという感じがします。

 そういう意味で、日中関係というのは、経済的な点での発展はこれからも大いに進めていきながら、まさに戦略的互恵関係という形で、そのことがある意味、アジアの平和や安定にも、他国に対しても、そういうことにつながるような関係として発展していくことを双方が努力しなければならない、このように認識をいたしております。

山口(壯)委員 正直、決してつき合うのが易しい相手ではないですけれども、ここは知恵を出してつき合っていきましょう。

 私も、総理がパイプが少ないということが若干聞こえたものですから、不肖山口、昔北京の大使館に勤めたこともあって、昔のなじみが大分偉くなっているものですから、会いに行ってきました。相手が何を考えているかということを正確に把握することによって正確な判断も可能になるので、やってきた次第です。

 みんなで、いろいろなパイプがありますから、そういうものをしっかり活用しながら、うまくつき合っていきましょう。

 中国から見た輸入のシェアということがまた関係あるんですけれども、中国がどういう国からたくさん輸入をしているのか、そこについていかがでしょうか。これは前原大臣に聞いた方がいいんでしょうか。中国がどういう輸入シェア、どこの国から一番輸入しているのか、お答えいただけますか。

前原国務大臣 二〇〇九年の中国の輸入額でございますが、一位が日本でございまして、千三百九億ドル、シェアは一三%。二位が韓国、千二十六億ドル、シェアは一〇・二%。三位がアメリカ、四位がドイツでございます。

山口(壯)委員 そうですね。今のところ日本がまだ、中国から見た場合の輸入先としては一番多いんですね。ところが、これが先ほど議論のあったEPAとかFTAとか、FTAを例えば中国と韓国が結んだら、まだ結んでいないと思うんですけれども、結んだら、大分韓国にとって、中国にばんばん輸出しやすくなるわけですね、関税が低くなるんですから。

 今ちなみに、中国と韓国との間のFTAなりの交渉状況はいかがでしょうか。

前原国務大臣 中国と韓国のFTAにつきましては、本年五月に共同研究が終了をいたしまして、現在、本交渉開始に向けた事前協議が行われております。

山口(壯)委員 そうですね。要するに、例えば中国と台湾というのがその前に結んだんですね、協定みたいなものを。ということは、韓国にしてみたら、自分のところの製品が中国に行きにくくなった。台湾と競争しているわけですから、台湾のものがばんばん中国に入る。したがって、韓国としたら、どうしても中国と交渉を結ばないと追いつけないということがあると思うんです。

 ちなみに、では韓国にちょっと視点を合わせてみると、EUとかアメリカとの間で韓国は、FTAは今どういう交渉状況になっているんでしょうか。

前原国務大臣 韓国は、アメリカとは二〇〇七年六月に、EUとは今月の六日にFTAを署名いたしましたが、まだ未発効となっております。

 なお、韓米のFTAでございますけれども、牛肉の問題が大きな国内問題になったというのは議員も御承知のとおりでございますけれども、アメリカ側が本FTAにおいては自動車と牛肉の扱いについて再協議を求めている、こういう状況でございます。

山口(壯)委員 要するに、韓国としたら、アメリカ、EU、中国といった大どころとFTAをもうほとんど目前まで来ているわけですね。そこまでいくと、韓国にとっては、本当に鬼に金棒というか怖いものなしというか、物すごい状況になると思うんです。

 ところが、今おっしゃったとおり、農水部門で韓国もいろいろ悩みがあった、あるいはあると思うんですね。韓国が自由貿易の推進あるいは国内農業保護を両立させるためにどういう方策をとっているのか、韓国はどういうふうに頑張っているのか、その辺についてはいかがでしょうか。

前原国務大臣 現状においてでありますけれども、日本は、FTAは十一の国と結んでいますが、貿易に占めるFTA比率というのは一六・五%であります。それに対して、お尋ねの韓国は、FTAの数は七つなんですが、しかし、貿易額に占めるFTA比率というのは三六%ということでございます。

 では、今お尋ねの、韓国はどれぐらいの農業への支援を行っているかということでございますけれども、かなりの支援を行っております。

 これは、例えば韓米FTAだと、韓国側の試算では、農業への影響というのは七百二十五億円ということ、それから韓・EU・FTAでありますと、一年目ですね、先ほどの七百二十五億も一年目でございますが、百六十九億から二百二十二億、単年で被害が生じるのではないかということで、そういう意味では、二〇〇四年から二〇一三年で、日本円で申し上げますと合計で八兆三千三百億円の農業農村総合対策を行っております。

 韓米FTA施行時の国内補完対策といたしましては、二〇〇八年から二〇一七年で一兆四千二百八十億円の対策をとるということになっております。

中井委員長 それは、前原さん、ウォンじゃないですか。

前原国務大臣 円でございます。

 ウォンですと、先ほどの七百二十五億円は一兆三百六十一億ウォンになります。そして、農業農村総合対策は百十九兆ウォンになります。ですから、今申し上げたのは円でございます。

中井委員長 円、はい。

山口(壯)委員 韓国は相当の努力というか、農業に対する必死の思いで、しかも国を開いている、こういうことが今かいま見られると思うんです。そういう意味では、鹿野道彦農水大臣、日本の農業も頑張って今からやっていくわけですけれども、その点についての基本的な心構えをお聞かせいただけますでしょうか。

鹿野国務大臣 今いろいろ山口委員が御質問されました。外務官僚として活躍された山口委員が、国を開く、こういうようなことの重要性を述べられたと思いますけれども、そういう意味で、我が国もEPAを御承知のとおりに推進してきて、十一の国ともう結んでいる、こういう状況でありますから、これからも進めていかなきゃなりません。

 そして、おっしゃるとおりに、国を開くということも非常に重要だと思います。しかし、決して水を差すというわけじゃありませんけれども、国を開く、開きっ放しというのは、これまた大きな問題を起こすということにもなるわけです。ですから、世界各国が外交力を駆使して懸命にその外交を、今交渉をやっているわけですよね。

 ですから、そういう意味で、昨日も、御承知のとおりに、MOP5、すなわち生物多様性の条約について、例えば遺伝子組み換えについて、国境を越えた場合にいろいろな損害を与えたらば、それに対する責任と救済をどうするかということがようやく合意に至ったわけでありますけれども、環境をいかにして守っていくかというようなことにおいても、今世界じゅう大きな関心事になっておる。我が国においても、連綿と続いたこの自然を、歴史を、伝統を、文化をどうやってこれから維持していくかというようなことも、地域社会をこれから改めて元気づけていく上においても非常に重要なことなんですね。

 ですから、ただ単に損得の数字の上だけでこれがすべて解決されるという問題ではない。それだけに各国が苦労しているんじゃないか。

 そういう意味で、私自身、この農業の問題に関して申し上げれば、農村と農業の振興と、そしてこのEPAの推進というのを両立させていくにはどうしたらいいかというようなことを、非常に重要な意識を持って取り組んでいかなきゃならない、こう思っております。

山口(壯)委員 開きっ放しにせずに、セーフティーネットも考えながらやっていくという農水大臣の御答弁だったと思います。難しいところですけれども、ぜひよろしくお願いします。

 その中で、この十一月のAPECの首脳会議があるわけです。

 菅総理、先ほど韓国をめぐる動きを見たわけですけれども、急テンポで物事は進んでいるわけですね。そういう中で、経済連携の流れが進む中で十一月に横浜でAPECという大きな会議が開かれて、首脳会議が開かれる中で、菅総理が議長を務められるということです。このAPEC首脳会議に議長国として臨まれるに当たっての基本的な心構えをお聞かせいただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 先ほど、外務大臣の方からでしたか、APECのスタートを含めて、この地域の経済的な特に自由化の推進ということが一つの大きな柱であるということは、山口委員はもちろん御承知のことでありますが、そういう中でのこの十一月におけるAPECであります。

 私は、今の御議論を聞きながら、もちろん議長として全体のことを考えるのは当然でありますけれども、我が国自身がそれに対してどこまで対応できるのか。今、鹿野大臣の方からも、私、組閣をする前に少し御相談をいたしました。やはり、そういう国内の問題をしっかりと取り組んでくることが、率直に申し上げて、この間、この五年、十年の間、私は必ずしも十分ではなかったのではないだろうかと。そういう問題、先ほども最初の御質問に答えたように、いろいろなものが先送りされてきた中の大きな一つの課題ではなかっただろうかと。そういう点で、国内の対応についてもまずしっかりとした議論が必要だ、このように思っております。

 その中で、あえて、そういうことをちゃんとやるということを踏まえて言えば、アジア太平洋の地域が、現在、特にアジアが世界の成長センターになっている中で、それらの国々が、基本的に自由貿易という方向の中で、よりともに発展していく、そういうルールづくりというか、そういうものに向けて、このAPECの場がそれぞれのすべての国にプラスになるような、そういう方向で議論を進めていければありがたいな、このように思っております。

山口(壯)委員 今、鹿野大臣の答弁を受けて菅総理がお答えになられたわけですけれども、確かに我々は、いろいろなモデルで考える場合に、マクロモデルというのはいろいろな今までの数値を使ってやるわけですから、今までだと、例えば関税をゼロにした場合には、例えば田んぼがほとんどなくなるような結果が出てくるわけですけれども、では戸別所得補償をやった場合にはどうかとかいう、難しいものもいっぱいあるわけですね。

 したがって、精緻な議論でもってきちっとこれから考えていきたいと思います。党内でもいろいろな議論を吸収してやっていきますので、ぜひまた菅総理とも打ち合わせさせてください。

 そして、日本の中小企業の再生という観点からも、実は、この経済連携戦略というのは非常に役に立つと思うんです。新聞でもいろいろ出ていますけれども、関西の方で、いろいろと中小企業がアジアのいわゆる我々よりは少し所得の低い層、それが厚い層になっているわけですから、そこに照準を当てて、参入しやすいようにということもやっているようです。したがって、我々も、政府として、それをやりやすいように持っていくということが日本の経済の底上げにもなると思うんですね。

 日本の雇用の七割を担ってくれているのが中小企業です。その中小企業をどうやって再生していくかという観点では、ある意味で、資金繰りの面のみならず、こういう大きな国家戦略的な観点からの枠組みづくりというのを進めていくのが我々政治の役割だと思っています。これは特に事前通告していませんけれども、菅総理、この点についてはいかがでしょうか。

 では、大畠経済産業大臣からお願いします。

大畠国務大臣 中小企業対策ということでありますから、私の方から答弁をさせていただきたいと思います。

 今、山口議員から御指摘がありましたように、非常に厳しい経済情勢下において中小企業をどう支援するか、そういうことでありますが、今回の補正予算等でもこの件をいろいろ考えまして、全部で五点にわたって対策を進めようとしているところであります。

 一つは資金繰り対策、二つ目には技術開発及び海外展開支援、三点目には新規の事業活動への支援、そして地域商業の活性化、雇用ミスマッチの解消等々でありますけれども、その中でも特に、今、山口議員から御指摘いただきましたけれども、海外展開支援というものをどう行うか、これも大変大事な視点でございます。

 現在、ジェトロ関係では三十八カ所、それから中小企業基盤機構等でも十カ所等でこの相談窓口を開きますが、同時に、地域にあります商工会あるいは商工会議所あるいは地域金融機関等でも、中小企業の海外展開に向けての支援のための窓口を開いております。

 そういう意味で、御指摘がありましたように、大企業、大手企業だけでなく、中小企業も攻めの展開ができるような体制を実現しようと努力をしているところであります。

 以上です。

山口(壯)委員 中小企業の中には、例えば土壌の浄化あるいは水質の浄化、これに関しては世界一の技術を持っているところがたくさんあるんですね。土壌の浄化ということに関しては、例えば枯れ葉剤をまいた土壌もきれいになる、田んぼになるというような技術もあるらしいんです。だから、そういうものもぜひ我々後押しできるように、こういう経済連携戦略というのは非常に中小企業にとっても役に立つと思います。

 それから、この経済連携戦略というのは、所得の平準化戦略にも役立ちます。

 少し中長期的な観点ではありますけれども、今我々はデフレで苦しんでいますけれども、このデフレというのは賃金デフレだと言われているわけですね。例えば、中国の賃金が安い、安いから日本の賃金も下どまっている、だから個々の家計の可処分所得も下どまって消費が低迷している。だから我々は、個々の家計の可処分所得に手を突っ込めるように、例えば子ども手当とかいろいろなこともやっているわけです。

 もう一つは、個別の国を見た場合には、所得平準化戦略という意味でも、この経済連携戦略というのは非常に大事なものですから、ぜひ総理、その観点からも進めていただきたいと思います。

 そして最後に、教育ということにちょっと焦点を合わさせてください。

 国を開くに当たって一番大事なものは、実は本当は教育です。国を開いた際に、どういう人材を我々は育てていくのか。今のテレビのことでいえば、竜馬のような人材をいかに輩出できるかというのが我々の教育に関する目的の一つだと思うんです。今、我々が世界に雄飛できる強い人材を果たして学校教育の中で育てられているだろうか。ここも我々はよく見てみなきゃいけないと思うんです。

 そして、我々、いろいろな意味で道を切り開いていく、今答えがない世界になっている中で、道なきところに道を切り開いていく、そういう人材をつくっていかなきゃいけないと思うんですけれども、総理、この点についていかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 今、竜馬の話が出ましたが、私もNHKのドラマとしてできるだけ見るようにいたしております。

 まさにあの時代に、世界に羽ばたいていこうという、いわゆる明治維新と同時に、まさに世界に羽ばたくという行動をとった私たちの先人のその経験を、今の時代にもう一度どうやれば生かすことができるのか。

 今お話がありましたように、例えば、若者のアメリカなどに対する留学希望者も従来より減っているとか、いろいろな意味で内向き志向が強まっております。これは一つのことですべてが解決するとは思いませんけれども、まさに社会全体がもっと、元気な日本が自分たちが頑張ればできるんだ、そういうことを共有化するいろいろな活動が必要だと思います。

 その中で、一つだけ具体的なことを申し上げますと、今英語教育などで、中学校、高校の英語教師が必ずしも会話が自由にできない方も多いわけで、思い切ってこういう人たちを海外留学していこうという形で、そういった基礎的なレベルも引き上げていくということも検討していいんではないか。これは、あくまで大きな全体の一つの事例でありますけれども、そういったことも現在、外務省あるいは関係省庁で検討いただいているところであります。

山口(壯)委員 きょうは私は、世界の人、物、金をどうやって引っ張れるかという、国を開くということを中心に質問をさせてもらいました。

 今、中国や韓国へ行ったら、PhDを持っている人がやたらに多いんですね。不肖私も持っていますけれども、私なんか日本で少ない方です。だけれども、中国や韓国へ行ったら、名刺交換したらみんなPhDと本当に書いてあるんですよ。

 そういう意味で、我々の教育も、世界に通用するにはどうしたらいいかということを長期的に考えていきましょう。

 そして今、竜馬の話も出ました。国会議員が皆、竜馬になったつもりで、開国に向けて命をかけて取り組もうじゃありませんか。そして、他党の皆さんにも我々のしりをたたいていただいて、開国のやり方が手ぬるいではないかというおしかりをむしろいただきたいと思います。

 新たなる繁栄を目指して、みんなで頑張りましょう。

 質問を終わります。

中井委員長 この際、川内博史君から関連質疑の申し出があります。城島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 きょうは総理と久しぶりに話ができるので楽しみにやってまいりました。よろしくお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 城島先生あるいは山口先生から、内政、外交の全般について、政府側からの御答弁をいただきました。私は、現下国民の皆様が興味、関心を持っていらっしゃる具体的な問題について質問をさせていただこうというふうに思います。建設的な御答弁をいただければというふうに思います。

 質問通告とは若干順番を変えさせていただきますが、建設的な御答弁をいただきたいので、まず建設現場の話から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 補正予算でも、地域に対して地域活性化交付金などで事業を行っていただこうということで、政府の方で今予算編成をしていただいているというふうに聞いておりますけれども、建設現場、今大変なコスト削減の中で、実は労働災害が非常な勢いでふえております。墜落事故あるいは墜落事故による死亡というものがことしに入ってふえているということでございまして、総理も所信表明演説の中で、あらゆる人を自殺や災害から守るというふうに、大変力強く所信を御表明いただいているわけでございます。

 まず厚生労働省から、建設現場における墜落、転落などの労働災害の発生状況、足場からのものが一体どうなっているのかということについて御説明をいただきたいというふうに思います。

小林大臣政務官 今の質問にお答えをいたします。

 建設業における労働災害は、長期的には減少しておりますけれども、平成二十一年においては、一万六千二百六十八人の方々が休業四日以上の死傷災害に遭って、三百七十一名の方々がお亡くなりになっております。

 また、これらの労働災害の発生要因を見ると、墜落、転落によるものが全体の約三分の一を占めておりまして、死亡災害では、約四割、百四十七人の方が墜落、転落によるものとなっております。

 もう一つ、特に墜落、転落による死亡災害、九月七日現在の速報値では九十八人と、前年より二十名増加しております。このうち足場からの墜落、転落については二十四人と、前年より九人増加しているというのが今日の実態でございます。

川内委員 今、政務官から御答弁いただきましたが、去年よりも墜落、転落による死亡事故がふえているということで、これはしっかりと解決をしていかなければならない課題であるというふうに思います。

 まず、その前提として、これらの墜落災害の死亡事故あるいは墜落災害、転落災害には、最近、建設現場では一人親方という人たちが大変ふえています。一人親方を請負で雇って、それで使っていくという手法がふえているわけですが、この一人親方が墜落、転落の統計に含まれているのかということを教えていただきたいと思います。

小林大臣政務官 先ほど御説明したとおり、建設業における墜落、転落による労働災害の発生件数には、いわゆる一人親方と呼ばれる方々も含め、労働者に該当しない方は含まれておりません。一人親方は含まれていない、このことを答弁いたします。

川内委員 一人親方は労働災害には含まれないということでございますが、それでは、建設業を所管している、あるいは建設現場を所管している国土交通省は、一人親方の墜落、転落事故の件数等について、死亡事故等について把握をしていますか。

大森政府参考人 お答えいたします。

 建設現場における災害の発生状況につきましては、国土交通省において網羅的に把握することにはなっておりません。したがいまして、御指摘のいわゆる一人親方の墜落、転落事故の件数についても把握しておりません。

川内委員 一人親方は、国土交通省と厚生労働省のはざまで、現場においての死亡事故、墜落事故が把握をされずに、本当に非常に厳しい労働条件、あるいは下請を物すごくたたいてコストを削っていくという現場の実態の中で、大変厳しい状況に置かれているというふうに思います。

 ところが、国土交通省が発注する工事に適用する共通仕様書には、実は、厚生労働省が定めた手すり先行工法等に関するガイドライン、これを建設現場の足場に採用することというふうに契約で決めています、契約で。この契約を守らないと指名から外されたりとかするわけですけれども、この手すり先行工法による足場を組んだ国土交通省の発注事業による現場では、墜落災害、転落災害は起きていますでしょうか。

大森政府参考人 お答えいたします。

 今年に入ってから、国土交通省が発注した工事において、先生御指摘の手すり先行工法等に関するガイドラインに基づいて足場を設置する工事での墜落死亡事故は発生しておりません。

川内委員 ことしに入って墜落事故、転落事故による死亡はふえているが、手すり先行工法に関するガイドライン、これは法的拘束力はないわけですけれども、国交省が契約の中に明示することによって強制力を持たせた現場においては死亡が発生していない、墜落事故が発生していないということでございます。

 厚生労働省にお尋ねいたしますが、この厚労省のガイドラインに沿って、手すり先行工法による二段手すりや幅木の設置をすれば墜落死亡事故などをなくすことができるということを今の国交省の答弁は指し示している。

 しかし、残念ながら、厚労省が定めた手すり先行工法等に関するガイドラインに法的強制力はないわけでございます。ここは、厚労大臣、労働安全衛生規則をしっかりと改正し、手すり先行工法を義務化すれば、把握をすることのできない一人親方の墜落事故、墜落災害というものも防ぐことができるわけでございまして、ぜひ、労働安全衛生法の省令である労働安全衛生規則にこのガイドラインを定め、昇格をさせていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

細川国務大臣 川内委員の御質問にお答えいたします。

 建設現場で仕事をされている方が墜落、転落をするということがあってはならない、やはり命が一番大事だというふうに思っております。

 そこで、厚生労働省といたしましては、昨年六月でありますけれども、足場に下桟あるいは幅木というものを設置するということで昨年は義務づけまして、それに加えて、先ほどお話がありましたような手すり先行工法も、これもやるべきだというような通達を出しまして、安全確保に取り組んだところでございます。

 各業界の方からも、先ほど川内委員からのお話がありましたように、手すり先行工法を義務づけるべきではないか、こういうような御要請もいただいておりまして、そこで、今厚生労働省の方としては、昨年六月に、この下桟とそれから幅木をやるという工法を義務づけたところでありまして、そして足場先行工法も、通達でこれはやってほしい、こういうことで通達しておりまして、その結果、一年たちましたので、今それを点検、評価いたしているところである。これは専門家を集めましてやっているところでございまして、その結果を待ちまして、どういう措置をするか、先ほど委員が言われましたような義務づけをするかどうかも検討していきたいというふうに思っております。

川内委員 義務づけをするかどうかではなくて、義務づけをする方向で検討をしていただきたい、これは要請をしておきたいと思います。人の安全にかかわる問題でございますから、手すり先行工法を義務づけた現場では墜落災害による死亡事故は発生していないということが国土交通省の現場ではっきりしているわけですから、ぜひ、通達や通知では強制力がない、しっかりと強制力を持たせる規則にする方向で検討していただきたいというふうに思います。

 さらに国土交通大臣にお尋ねいたしますが、建設業の一人親方は、これまでの議論の中で明らかなとおり、事故件数も把握されず、各種労働安全衛生法上の保険等も適用されず、大変厳しい状況で働いていらっしゃいます。この一人親方の現状を早急に把握し、働く環境を向上させていかなければならないというふうに思いますが、業を所管する大臣としてどのように対応をされるおつもりかということをお聞かせいただきたいと思います。

馬淵国務大臣 お答えさせていただきます。

 今、委員の御指摘のように、一人親方、厳しい経済環境の中で従業者を雇用することができなくなる、そして一人親方になられた方、あるいは逆に、会社が倒産、解雇になって、一人親方として請負の関係で建設業に従事される方、こういった方々が大変厳しい状況におられるということを十分認識しております。

 一方で、私どもは、建設産業の就労状況のアンケート調査というのを定期的に行っております。状況といたしましては、現在、平成十四年、平成十七年、二十年と三年おきにアンケート調査を行っておりまして、一人親方が微増の傾向にあるということも十分把握しながら、今後、私どもといたしましては、こうした労働環境の改善を図るために、まずはダンピング防止策ということを行わねばならないと思っております。

 さらには、元請さらには下請というものの関係の適正化に取り組むということでございまして、ダンピング防止策に関しましては、国は低入札価格調査基準価格の見直し、また地方公共団体に対しては同様の見直しを要請する、こういった措置を行っております。さらに、元下関係におきましては、建設業法令遵守のガイドライン、これを二十年九月に追加しておりますし、さらに推進月間を創設しまして、これは毎年の十一月といたしました。

 いずれにしましても、厳しい環境の中で、こうした一人親方と呼ばれる方々が建設業に安心して従事される環境への取り組みというものをしっかりとつくってまいりたいというふうに思っております。

 なお、今後、こうした一人親方の立場の関係につきましては、厚生労働省、これは労働安全衛生法の所管になります。労働者として今まで所管をされていたので、そこの枠外におられた。私どもは建設業法で所管をしております。建設業法の中ではこうした一人親方の方々というのも、これも枠外になってしまう。ちょうど間に落ちた形になってしまっておりますので、厚労省と連携をしながら今後の対策というものを考えてまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

川内委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、法務省にお伺いします。

 きのう、前田主任検事が起訴されて、次長検事が記者会見をされました。

 まず、村木厚子さん、現在は内閣府の政策統括官になられたわけでありますが、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長であった昨年六月十四日に逮捕をされた。大変な衝撃を私どもも受けたわけでありますが、この村木厚子さんの事件は、検察当局による冤罪事件であった、冤罪事件であるということを法務省としてお認めになられるか、そして、冤罪事件であるということをお認めになられるとするならば、村木厚子さんに直接謝罪をされるのかということを教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、冤罪についてでございますが、冤罪についてはさまざまな意味で用いられる、こういうふうに承知をしております。

 村木さんの事件については、最高検で検証中ということもありますので、現段階の認識を申し上げますと、検察当局においては、村木さんの無罪判決を検討した結果、判決結果を受け入れるべきだと判断して上訴権を放棄したものであって、この点にかんがみますと、結果として無実の人を起訴したという、あってはならないことであったというふうに認識をしているということでございます。

 次に、これが冤罪に当たるかどうかということでございますが、現段階までの調査によりますと、無実であると知りながら起訴ということならば、検察当局においては現段階ではそのようなことはなかったと考えているものと承知をしております。

 ただ他方、冤罪の意義の中で、結果として無実の人を起訴した場合も含まれるということであれば、村木さんの事件はこれに当たるものというふうに考えております。

川内委員 今の説明がちょっとよくわからなかったんですけれども、法務大臣、これは冤罪である、謝罪をしなければならないというふうに素直に私どもは思うんですけれども、法務大臣としての御見解をお聞かせいただけますか。

柳田国務大臣 冤罪についての判断は、今局長が申し上げたとおりでございます。

 おわびにつきましては、最高検の次長が記者会見の席上でおわびしたというふうに記憶をいたしておりますが、まだそれ以上にという御意見だと思います。それは検察の方で検討されるかと思いますが、逮捕時、私は参議院の厚生労働委員会におりました。そして、今この立場でありますので、個人的にお電話は差し上げました。

 以上です。

川内委員 ここに、私はしっかりと、全く村木さんの事件、事件というか、村木さんを逮捕監禁したことは特別公務員の職権濫用罪にも当たるのではないかというふうに思いますが、官房長官うなずいていらっしゃいますけれども、そう思われませんか。

仙谷国務大臣 川内委員が御指摘された犯罪が直ちに成立するかどうか、他の事情も調べてみないとわかりませんが、先ほど来の川内委員の冤罪であるかどうかということでありますが、今、最高検が徹底的に今回の事件捜査そのものを、前田検事を逮捕、勾留、起訴したという事態の中で徹底的に調べていらっしゃるわけでありますから、この事実が判明してくればよりより、川内委員がおっしゃる冤罪であったかどうかということについても、もう少し評価のできる事実が出てくるんだろうと私は思っております。

 ただ、私は、自分の四十数年の法律家としての経験からいいますと、現時点でも極めて冤罪のにおいの濃い事件だった、こういうことは言えると思います。

川内委員 私がなぜ冤罪であるか否かということをこだわるかというと、昨日の次長検事の記者会見で、次長検事は、フロッピーディスクの改ざんは確かにあったが、他の証拠で有罪にできると思っていたのだという会見をしていらっしゃるのですね。

 ということは、村木さん、今刑事局長が冒頭で答弁されましたけれども、裁判では無罪になったが、もしかしたら事件にかかわっていたのかもしれないということはまだ疑いがあるのだということを法務省として考えて、あるいは検察として考えていらっしゃるのではないか。そうすると、そういうことを考えていらっしゃる方々が、最高検が検証チームをつくります、ちゃんと調べますよといっても、これは国民の皆様方になかなか御理解がいただけないのではないかという視点で質問をさせていただいているわけでございます。

 そこで、法務省にお尋ねいたしますが、昨年六月、村木さんを逮捕するに当たり、大阪地検は大阪高検や最高検と協議をしたのかどうか。したとすれば、どのような協議をしたのか。御説明をいただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪地検は、逮捕に当たりまして、大阪高検、それと最高検とも協議を行っております。その上で村木さんを逮捕したものと承知をしております。

 この協議のやり方でございますが、地検、高検、最高検が一堂に会するというような会議は行われておりません。大阪地検が大阪高検と協議をし、大阪高検が最高検と協議をしている。それぞれ捜査の方針等について上級庁の了承を得たということでございまして、最高検では当時の検事総長まで報告がなされて了承されたものというふうに承知をしております。

 その協議の中身について、詳細は捜査の中身ということになりますが、地検が上級庁と処分について協議する場合は、事実認定上、法律上の問題点、それから捜査方針等について協議を行っているもの、こういうふうに承知をしております。

川内委員 その協議に提出された協議資料と、協議の内容の結果についての記録、会議録というのが作成されていると思いますが、予算委員会に御提出をいただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

西川政府参考人 まず、議事録でございますが、このような報告、協議では、一般的に議事録は作成しておりません。

 それから、事案に応じて協議のための資料が作成される場合がありまして、御指摘の事件においても、協議等のための資料が作成されているものと承知をしております。ただ、これは御案内のとおり、いわゆる訴訟に関する書類ということになります。刑事訴訟法四十七条に基づきまして、原則、公にすることが許されないとされていることでございますので、現段階においては、提出するのは難しいというふうに考えております。

川内委員 現段階ではというふうに限定がつきましたので、改めて法務大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどから繰り返し申し上げているとおり、昨日の次長検事の会見では、村木さんの完全な冤罪であるという趣旨の発言は検察からはなかった。他方で、第三者検証委員会をつくるというふうに法務大臣はおっしゃっていらっしゃいます。

 第三者検証委員会ができるとすれば、いずれはさまざまな資料が国民の皆様の前に明らかにされるのであろうというふうに思います。であるとするならば、これらの今私が申し上げた資料について、公の利益に合致するとすれば、その捜査資料を明らかにすることはできるはずでございますから、法務大臣としての刑事訴訟法四十七条に基づく権限の行使を求めたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

柳田国務大臣 捜査資料の公開については、局長が答弁したとおりでございます。

 ただ、最高検の方で、今、御批判はありますけれども、検証も行われております。その検証の中には、二度とこういう事態を引き起こしてはならないという方策も出るだろうと思っておりまして、この際に、この検証の目的を実現するために必要な範囲で公開されるだろうと私は思っております。

 なお、私のもとに第三者委員会をつくることは既に公にいたしました。人選、中身については今検討中でございますけれども、川内委員の趣旨を十分理解して考えてみたいと思います。

川内委員 いずれにせよ、検察の方々は、いつも私も刑事局長にも申し上げていますけれども、非常に優秀な方たちが集まって、社会の正義あるいは治安を守るために頑張っていただいているというふうに思います。しかし、それが組織としてある一つの事件をつくり上げてしまうことがあるのだということが、今回、国民の皆様に検察に対する信頼を失わせてしまうことにつながっているわけで、みんなでもう一度検察のあり方を考えていく、その信頼を取り戻していくということが必要だというふうに思いますし、私どもも、そのためのさまざまな提案あるいは意見というものを申し上げてまいりたいというふうに思います。

 そこで、もう一つ、最近、国民の皆様方の間で、ああ、そういう組織があったのかということで話題になっている検察審査会のことについてお尋ねをさせていただきたいと思います。特に、検察審査会の情報公開について聞かせていただきます。

 十月四日、東京第五検察審査会は、私どもの元幹事長である小沢一郎さんに、二度目の起訴すべきであるという議決を行いました。九月十四日の民主党代表選の日に議決がなされ、二十日後の十月四日に議決書が作成されたこと、審査員が十一名で平均年齢が三十・九歳と非常に若いこと等々、いろいろな疑問や議論がメディア等を通じて行われております。

 また、当予算委員会におきましても、野党の先生方からは小沢一郎さんに対する証人喚問が求められているわけでございますが、まず、この検察審査会での議決というものが一体いかなる過程を経て行われたのかということは、私は、公訴権を独占している検察に対して民意を反映させて公訴を提起できるようにするのだという検察審査会の考え方そのものは大変すばらしいことだというふうに思います。しかし、民主主義の原理原則は情報公開であるということも一方で言われる。民意を反映させるのであれば、情報がしっかりと公開をされ、ああ、なるほど、そういう過程で議決がされたのだねということがだれの目にもわかるようにしていくことが大切であろうというふうに思います。

 そこで、まず事実関係をお尋ねいたしますが、第五検察審査会の議決の要旨には、起訴事実の要旨、要するに、検察が、特捜部が小沢一郎さんを不起訴にした、その起訴事実の要旨と、さらにこの検察審査会が起訴すべきであるとしている犯罪事実とは一致していないということを、これは事実関係として明らかにしていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、御指摘の事件について、東京第五検察審査会が起訴議決をした議決書の要旨における被疑事実の要旨、それから起訴すべきという犯罪事実、これについて比較をいたしますと、若干の金額の違いを除けば、犯罪事実には、虚偽記入の内容として、被疑事実の要旨には記載がない、陸山会が平成十六年十月に被疑者から四億円の借り入れをしたにもかかわらず、その旨を平成十六年分の収支報告書に記載しなかったという旨の事実が記載されていると承知をしております。

 この部分が違うということだと思います。

川内委員 私が聞きたかったのは、被疑事実の要旨に書かれていることと犯罪事実として検察審査会が指摘していることとは一致しないということを確認したかったんですけれども、それでいいわけですよね。ちょっと、それでいいですということを。

中井委員長 西川さん、ちょっとあなた、語尾が聞こえにくいよ。きちっと発言して。

西川政府参考人 はい、わかりました。

 今委員がおっしゃられたとおりでございます。違いは、先ほど申し上げたとおりでございます。

川内委員 もちろん、審査員の皆さんの個人情報というものは厳に保護されなければならない、これは裁判員裁判でもそうでございますけれども、しかし、裁判員裁判の制度の導入と軌を一にしてこの検察審査会の制度というものは、要するに強制起訴の改正というものは導入をされた。裁判員裁判は何度も試行を繰り返し、そして導入をされた。しかし、この検察審査会の強制起訴の制度というものは、裁判員裁判の制度の陰に隠れて、裁判員裁判の裁判員の皆さんは必要に応じて記者会見をすることもあるし、もちろん裁判自体は公開の場で行われるという大きな違いがあるわけでございます。

 ここで法務省にお尋ねいたしますが、私は、検察審査会の発言者の氏名は伏せた上で、会議録は公開をすべきであるというふうに思います。

 検察審査会法では、二十六条で検察審査会議は公開しない、こう書いてございます。しかし、二十八条一項では、会議録をつくらなければならないと規定しています。

 会議録をつくるということは、その会議録を読むことを前提としているわけでございますから、まず事実確認をさせていただきますが、会議は公開しないと法律に書いてある、会議録も公開しないというふうに法律に書いてありますかということを確認させてください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 会議録を公開しないと定めた規定はございません。

川内委員 会議録を公開しないという規定がない以上、会議録は一定の条件のもとで公開するというのは、法律を改正しなくても現行法のままで法律上可能であるというふうに思いますけれども、法務大臣に御見解を求めたい。

 検察審査会法の有権解釈権は法務大臣にございますので、法務大臣が、個人情報を厳に保護した上で、この会議録については公開するよというふうにおっしゃっていただければ、検察審査会議でどのような議論が行われたのかということについて検証をすることが可能になります。いかがでしょうか。

柳田国務大臣 そもそも、検察審査会議が非公開とされている趣旨は、一つ、検察審査会の審査が起訴前の手続であるため、被疑者その他の関係人の名誉の保護にとりわけ意を用いる必要があること、一つ、捜査の延長としての側面もあるため、捜査の秘密を保護する必要があること、一つ、審査を公開すると自由な討論が妨げられ、あるいは他から不当な影響を受けるおそれがあること等という理由に基づいております。

 審査会議自体を非公開としても、会議録が公開されると、今述べたような審査会議の非公開の趣旨が損なわれることから、会議録の公開は検察審査会法第二十六条の趣旨から許されないというふうに解しております。

 ただ、川内委員の御発言もいろいろと考えさせるところがありますので、個人的にはしっかりと考えていきたい、そう思っております。

川内委員 今の答弁は、めちゃめちゃいいですよ。そこで終わっちゃったら、法務大臣の政府見解として会議録を公開しないことが定まっちゃいます。しかし、考えますとおっしゃっていただいたので、しっかり考えていただいて。

 なぜ私がこんなことを申し上げるかというと、検察審査会法には、三十九条の二で、審査補助員となった弁護士が審査員の「自主的な判断を妨げるような言動をしてはならない。」と書いてあるんですね。では、条文に「してはならない。」と書いてあるけれども、どう担保されていますか。刑事局長、教えてください。審査補助員が……

中井委員長 その前に、先ほど法務大臣は個人的にと言われたけれども、こういう予算委員会の場は、個人的な発言というのはないと思いますから、もう一度、法務大臣としてどういうおつもりか御答弁いただきます。

 柳田法務大臣。

柳田国務大臣 法務大臣としては、公開はできないというふうに考えております。一国会議員として……

中井委員長 もうそれ以上は。

柳田国務大臣 大きなテーマであるというふうに考えておりましたので、先ほどのような答弁をさせてもらった次第であります。

川内委員 法務大臣、検察審査会法には、三十九条の二で、審査補助員となった弁護士が審査員の「自主的な判断を妨げるような言動をしてはならない。」こう書いてあります。この「言動をしてはならない。」というのは法律上どう担保されていますかということを、刑事局長、教えていただけますか。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、検察審査員につきましては、独立して判断を行うということになっておりますので、検察審査員の議論について介入することはできないということになっております。

 これは補助員がどうなのかということでございますけれども、補助員の人は弁護士さんでございますので、その趣旨を十分わきまえて、当然その審査補助員の役割を果たしていただく、そういうことになっておりますということでございます。

川内委員 妨げてはならないと書いてあるけれども、まあ多分、弁護士さんだからそうしてくれるでしょう、大丈夫ですわ、こういう答弁だったわけですけれども、それは実は、この検察審査会法の改正のときのパブリックコメントでこういうコメントを寄せていらっしゃる方がいらっしゃるんですね。

 私がかつて裁判所書記官として浦和地方裁判所に勤務していた当時の体験であるが、選任された委員の中には、さまざまな職業の人がいて、検察官の不起訴処分の当不当を判断する常識を持ち合わせていない人もまじっていたことは事実であると。そして、検察審査会の事務局長は地方裁判所の事務局長など、裁判所職員が兼務しているから、審査会の運営は事務局長がリードして委員の意見を一定の方向に導くことがなかったとは言えない、こういうパブリックコメントが来ているんですね。

 私は、こういうパブリックコメントを読んで、では、どうやってそういう国民の皆さんの意見というものをミスリードしない仕組みをつくるのであろうかということを問題意識として持ち、お尋ねをしているわけでございます。

 先ほどは法務大臣に名前を伏せて会議録を公開してくださいというふうに申し上げました。そうしたら、まあ法務大臣としてはなかなか難しいねという御答弁であったわけでございますけれども、それでは、審査補助員あるいは事務局長の発言だけでもいいですから公開をしていただけませんでしょうか。

柳田国務大臣 同様の趣旨で公開は難しいと考えます。

川内委員 なかなか難しいようですけれども、ここで委員長に求めたいと思いますが、先ほど私が要求をさせていただきました村木さんの事件に関して、逮捕時、大阪地検、大阪高検あるいは最高検が協議をした際の協議資料の提出を本委員会に求めさせていただきたい。

 もう一点。法務大臣としては、いや、政府としては出せないということでございますが、検察審査会の議事録について個人情報を保護した上で本委員会に提出を求めたい。委員長のお取り計らいをいただきたいと存じます。

中井委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

川内委員 村木さんの事件もそうでありますけれども、足利事件、私の地元の鹿児島の志布志事件あるいは富山事件など、現在でも冤罪事件は絶えないわけでございまして、最近では、大阪地検特捜部副部長の職にあった人が、みずから逮捕されて取り調べを受ける立場になると取り調べの全過程を可視化してくれというふうに求めるという事態も起こっております。

 法務大臣と総理大臣にお伺いいたしますが、昨年の民主党総選挙マニフェストにも掲げた取り調べの録音、録画、全過程の可視化法案、多くの野党の皆さんにもこれは実現をすべきであるということで御賛同をいただけるというふうに思いますが、まず裁判員裁判の対象事件、それから地検特捜部の案件から、そして検察段階だけでも結構でございますので、全過程の可視化を実施するということをお約束いただきたい、前向きにお取り組みをいただきたいというふうに思いますが、せんだっての衆議院本会議では、総理は、前向きに取り組むということを御発言されていらっしゃいます。

 いつまでに菅内閣として法案を提出する、したいというふうに、時期を明示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳田国務大臣 まず、裁判員裁判の可視化についてでございますけれども、今、法務省としては、全般的な検討を進めておるのは御存じのとおりであります。その中でも川内委員は裁判員制度、裁判員裁判ということでございますけれども、この件は国家公安委員会委員長とも協議をしなければなりませんので、この辺の結果も踏まえて可視化についての具体的なあり方の検討をする必要があるだろう。そういうことで、現段階で即答するのは難しいのかな、そう思っております。

 それと、特捜の可視化についてでありますけれども、先ほども触れましたように、最高検の方で既に検証が始まっております。多分、二度と起こさないような方策についてもいろいろと検証が行われるであろうと私は思っていまして、最高検の検証も見守りたい。同時に、大臣のもとにつくりました検討会議、ここでもいろいろな御意見もあろうし、国会の御意見もあろうし、先ほど申しました最高検の検証の答えもあろうし、そういうものを踏まえて、検察のあり方、今、川内委員がおっしゃったことも含めて議論をされるものだと私は思っております。

 ということで、今すぐに時期を言えと言われても、大変難しいかなと思っております。

菅内閣総理大臣 今、法務大臣の方からも答弁がありましたが、私も本会議で、被疑者取り調べを録音、録画の方法により可視化することについては、その実現に向けて取り組むこととし、法務省などの関係省庁において調査検討を進めているところであります。今後も引き続き、御指摘の点も含めて、幅広い観点から着実に検討を進めていくことといたしております。

 時期等については、法務大臣のお話のように、特に時期まで指示しているわけではなくて、それも含めて検討を進めているということであります。

川内委員 総理大臣、調査検討を進めると。もちろん調査検討は大事です。きちんといろいろなことを調べた上で法制化をしていく、それはもう本当に大事なことだと思います。

 しかし、それを、ではいつごろまでにやって、大体いつごろまでには法案を出したいよということは、内閣の方針として取り組むというのであれば、工程表もしっかりつけていただくということが大事であろう。現状、法務省から出されている工程表には、法案化の、法案提出の時期が明示されておりません。だから、目途を示していただきたい。例えば、来年の通常国会なのか、それとも再来年の通常国会ぐらいまでかかるのか。その辺を、大体いつごろを目標にするよということを教えていただきたいんですけれども、総理大臣、いかがですか、菅内閣の取り組みとして。

柳田国務大臣 全面可視化というのについてはそれなりの時間がかかろうかと。ただ、川内委員がおっしゃったように、特捜の捜査の可視化とか裁判員裁判についてはどうにかならないかということだったのでお答えをしたわけでありますけれども、特捜の捜査については先ほど申したとおりであります。大臣のもとにつくられる検討会議で大いに検討されるだろう、私はそう思っていますので、その結果を見てから判断をさせてもらえればと思っております。

川内委員 では、その判断を待ちたいというふうに思います。

 次に、ちょっともう時間がないわけでございますが、尖閣諸島沖の中国船衝突事件に対する外務省の対応についてお聞きいたします。

 九月七日の事件当日でありますが、総理官邸において、官房長官、官房副長官、アジア大洋州局長、海上保安庁長官が集まって、二度にわたって会議を行ったと聞いております。外務省は、海上保安庁の逮捕の方針に対してその場で何ら発言をしなかったというふうに聞いておりますが、事実かどうか、御説明をいただきたいと思います。

伴野副大臣 事実関係でございますので、川内委員からの御質問に対しまして、私からお答えさせていただきたいと思います。

 当該会議におきましては、海上保安庁から官邸幹部に対する現状報告を聴取したものと承知しております。アジア大洋州局長からは、同日、七日でございますが、午後以降、外交ルートで中国側に対し、抗議と遺憾の意を伝えるとともに、再発防止のための中国漁船への指導監督の徹底を申し入れている旨説明したものと承知しております。

 以上です。

川内委員 それでは、逮捕の方針に関しては意見を述べなかったということでいいんですか、伴野さん。

伴野副大臣 繰り返し謹んでお答えさせていただきたいと思いますが、あくまでも、中国側に対し、抗議と遺憾の意を伝えるとともに、再発防止のための中国漁船への指導監督の徹底を申し入れている旨説明したと承知しております。

中井委員長 伴野さん、質問は、その協議の会合で外務省は逮捕ということに対して何も言わなかったのかということですから、そこに絞って答えてください。

伴野副大臣 その件につきましては、私は承知しておりません。

川内委員 次に、官房長官は想定を超えたというような会見をされていたやに、私どもは新聞報道だけですけれども、中国側の反応が自分たちの想定を超えていたというような会見をされていたやに記憶しておりますけれども、外務省としては、逮捕した場合にどのようになるか、どのように中国側が反応するかというようなことについて議論をしたのかしなかったのか、そして、そのことを外務省からどこにどういうふうに伝えたのかということを、事実関係を教えていただきたいと思います。

伴野副大臣 改めて、川内委員に事実関係をお答えさせていただきたいと思います。

 外務省内では、事件発生、七日でございますが、中国外交部が事件に関する重大な関心を表明いたしましたので、中国側がさらなる反応を行う権利を留保するとの立場を示したこと等、それも踏まえ、船長逮捕後の中国側のあり得べき反応につきさまざまな観点から議論、分析を行ったものと承知しております。

 ただし、部内での議論であることもあり、詳細につき言及することはこの場では差し控えさせていただきたいと存じます。

 以上です。

仙谷国務大臣 私が記者会見で述べたことを、野党の方々を中心に、要するに、想定を超えたとか、当時、中国側の反応についてのこちらの判断が誤ったのではないか、こういう御議論があります。

 これは、記者会見の記録をちゃんと正しく読んでいただいて発言をしていただかないと、言葉の切れ端だけをとって非難の材料にするというのは甚だフェアじゃない、そしてまた、こういう外交問題あるいは微妙な問題に関しては、余りそういう批判の仕方というのは、いろいろな観点を考えても、よくないのではないかと思います。

 私が申し上げましたのは、中国側に、日本の司法手続、独立した司法権のもとでの司法手続、これについての御理解が余りないんだなということについての判断が、もう少し日本の司法手続と、司法手続に入った場合にどのように手続が進むのかということについて、御理解されておるのではないかということについての私の判断が少々そこまでなかったのかな、こういう趣旨のことを申し上げたということであります。

川内委員 官房長官、失礼をばいたしました。ちゃんと会見録を読ませていただきたいというふうに思います。

 私の質疑もあと五分でございまして、財源問題についてさまざまにお聞きをいたしたかったのでございますけれども、ちょっとそこまでいきませんし、また、私は、普天間問題に関して、グアム、テニアン移設を仲間の国会議員とともどもに官邸にも申し上げ、五月二十八日の閣議決定文書の中には、国外への分散をさらに進めるということも政府の方針として入っておりますので、それについても議論をさせていただきたかったんですが、もう時間がございませんので、一点だけ事実確認をさせていただきたいと思います。

 普天間問題について、これは防衛大臣にお答えをいただきたいんですけれども、沖縄の米海兵隊の定員なるものについて、政府は、現政権になってからも、旧政権時代の一万八千人であると米国から聞いているという当時の額賀防衛庁長官の答弁を踏襲していらっしゃいます。

 仮に定員の根拠が米側からの伝聞のみであるとすれば、海兵隊移転の議論の大前提がそもそも怪しいのではないか、崩れるのではないかというふうに思いますが、この沖縄にいる海兵隊の定員が一万八千人であるとする正式な米側の資料あるいは聞き取ったときの会議録等について、防衛省の中に存在するのかということを教えていただきたいと思います。

北澤国務大臣 これは、まず伝聞という言い方になりますと、その根拠をネガティブに考える、こういうことになるわけでありまして、これは同盟国である米国との間で協定を結んだわけでありまして、この協定を結ぶに至る間で米側から一万八千人ということを表明されたわけであります。

 ただし、これに関する議事録はございません。しかし、担当した職員の中でのメモは存在するというふうに聞いております。

川内委員 そのメモの提出を求めたいというふうに思います。委員長、お取り計らいください。

中井委員長 その前に、松本政務官から答弁を、どうぞ。今のメモの件に関して答弁してください。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 先ほど大臣から御答弁をさせていただきましたとおり、これは日米ロードマップの作成に至るまでの日米間の協議の中で米側から説明を受けたということでございまして、これを示す資料を日本側が有しているわけではございません。

 担当官のメモがあるということでございますが、これについては、先ほど委員長に引き取っていただきましたので、理事間の協議に任せたいというふうに思います。

中井委員長 私、引き取っていません。

松本大臣政務官 理事会等で御協議をいただければと思います。

川内委員 終わらせていただきたいと思いますが、米側という人がいるわけではないですから、米側のだれから、いつ、どのような場所で、どのような会議で聞き取ったのかということがそのメモに明らかにされているのかどうか、ぜひ見せていただきたいというふうに思います。

 以上で終わらせていただきたいと思います。

中井委員長 後刻、理事会で協議いたします。

 これにて城島君、山口君、川内君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 私は、普天間基地の移設問題一つに絞って、きょうは質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 一九九六年の四月の十二日に橋本・モンデール会談で返還が告げられたわけですけれども、今日、もう十五年の歳月がたちました。そろそろ、客観的にこの問題を見ていかなければならない時期を迎えているのかなと思うんです。過去の日記ではなく未来のカレンダーをつくる。建設的な質問をさせていただいて、総理からもぜひ建設的な御答弁をいただければなと思います。

 まず、一点目のパネルをちょっと見ていただきたいんです。

 この一点目のパネルの一番上の方に共通の項目とありますけれども、これを見ておわかりのように、沖縄の基地の負担軽減と日本の抑止力の維持というのは、これは両方が成り立たなければいけないんです。だから、これからの政策というのは、沖縄の基地の負担軽減もあるけれどもちゃんと抑止力が維持できる、しかし、日米同盟も大事だけれども沖縄の基地の負担もやる、こういうふうなスキームをちゃんとつくることが大事です。

 きょうは、三つの案が今ありますから、これは後ほど説明します。

 しかし、下の方に書いてあるように、ある意味アメリカ側の都合で、二〇一四年の返還の期間が二〇二〇年に変わるというようなことになると思うんです。そうなってまいると、今の普天間のど真ん中にそのまま、あと十年間普天間の基地が残る。私たちは、普天間の移設のことばかりを今までやってきましたけれども、十年間残るとなってくると、まさに、普天間の危険の除去も同時にやらなければいけなくなってきたのかなと思うんです。

 そのためには、日本政府は、学校や保育園そして病院、そういうふうな、地域が移設をしたいという場合に、予算的にも制度的にもできるような仕組みをつくる。アメリカ側は、できるだけ普天間に帰ってこない、シュワブとかハンセンとか北部訓練場だとか伊江島とか、三十近くのヘリパッドがありますから、その地域にいながら訓練をして、できるだけ普天間に帰ってこないというような危険の除去を現実的にやっていく、こういうようなものが必要になってくるのかなと思っています。

 そういう意味で、後で総理に質問しますけれども、この普天間基地の危険の除去というのは物すごく大事で、やらなければいけないという御認識を後でお伺いしたいと思います。

 次のパネルですけれども、先ほど申し上げましたように三つあります。

 県内移設というのがありますけれども、これは、今見ておわかりのように、政治的にはなかなか厳しいですね。厳しい。

 今、自民党の沖縄県連も県外、国外とおっしゃる。民主党もそういうふうにおっしゃるわけです。今度、知事選挙がありますけれども、公約は県外、国外になると。しかし、公約のときは県外、国外となるけれども、選挙が終わったら許認可の印鑑を押すんじゃないかという声がありますけれども、私は、そんなことをやったら沖縄の基地行政は崩壊するというふうに思うんです。また、こういうふうに公約違反に期待をして普天間の基地の移設問題を解決しようなんて政府がお考えになるとしたら、これはもう本末転倒だと思うんです。

 こうなってくると、厳しい状況になってくると、何をやるかといったら、特措法をつくる以外に道がないんです。これは、二〇〇〇年にもつくりましたけれども、県の権限を国がとって、米軍の工事をやるという特措法をつくる以外にないんですけれども、今は、地方分権というような状況の中で、そこまで踏み込んで国が特措法をつくるというふうなことができるかどうかとなると、それも厳しい。非常にこの辺野古の問題は厳しい環境にあるなという認識を持たざるを得ないと思います。

 二つ目の本土移設。

 鳩山総理が最低でも本土移設ということをお話ししましたけれども、この本土移設も、四県と二十三市町が反対決議をしているんですよ。反対決議をしていますけれども、これはもう当たり前のことですね。沖縄でこれだけ事件、事故があるのに、その事件、事故を解決する仕組みをつくらないで、自分の県に基地を持ってきなさいというような人はいないんです。これは、この抑止力になるような地位協定の改定をせずにして本土移設を政府が言うこと自体が、私は問題があると思うんです。だから、地位協定の改定ができるかどうかが本土移設の大きなポイントになるんじゃないかと僕は思うんです。

 民主と社民と国民新党は、野党時代につくりました。しかし、今、政権を担っておりますけれども、まだこの地位協定が米軍との協議の場に行かない。これはなかなか難しいんです、日本だけの地位協定を変えるんじゃなくて、韓国もフィリピンも、そして中東の国々との地位協定を全部変えなければいけなくなってまいりますから。私は、そういう意味でも、地位協定の改定が難しいとなると本土移設もなかなか簡単にいかないね、そういう認識論に立ってくるんではないかと思うんです。

 三点目ですけれども、国外、今、川内議員が言ったグアム、サイパンというところですけれども、先ほど言ったように、アメリカの財政的な問題で今回は六年間延びるということになりましたけれども、私はこれを解消するために大胆な提案をすべきだと思うんです。

 それは、もう湾岸戦争のときに一兆二千億円を出しましたけれども、一兆二千億円、国民の負担をお願いする。そして、この一兆二千億円、十年間ですから、十年間で国民一人当たり一万円、そして、年でやったら千円、月でやったら八十三円なんですけれども、この一兆二千億円を準備して、グアムを、今貸し付けになっているような予算を提供に変えて、そして、海兵隊のプレゼンスを維持するための支援体制のお金にも回して、日本から、沖縄から海兵隊がいなくなった後の防衛予算をふやすという観点からも、島嶼の、こういうふうな仕組みをつくるという意味での予算にもこれを回す、こういうふうなことを大胆にやらないとなかなか難しいのではないか。

 そして、今グアムの予算は全部金網の中ですよ。グアムの人々の予算には一円も行かない。グアムには病院がない、下水道が整備されていない、ごみ焼却炉ができない。だから、この前、グアムに行っても、基地の建設がグアムのインフラを上回らないようにしてくれというのがグアムの方々の思いですから、グアムの方々も基地が受け入れやすいような環境に、私たちの沖縄の基地が行くわけだから、そういうようなお金もやっていくということは私は必要だと思いますね。

 そして、国外の話をすると日本の抑止力が大変になるという話がありますから、これをちょっと見ていただければわかるように、今、朝鮮半島に有事の際に行くとなってくると、沖縄をキーステーションにしますと、佐世保から沖縄に来る、グアムから集積艦が来る、二千五百人を沖縄で乗せて朝鮮有事に行くのに五・八日かかりますよ。しかし、グアムにちゃんと揚陸艦もあり集積艦もあったら四日間で行きますね。朝鮮半島のその即応能力というのは、一極に集中している方が十二分に即応能力はあるということはもう明確だと私は思うんです。

 それと同時に、海兵隊のペーパーがありますけれども、これは、アメリカの海兵隊がこの前出した新たなプレゼンスという、海兵隊の司令部が出した次世代の海兵隊の姿でありますけれども、沖縄にそのまま駐留しているよりも、この海兵隊をサイパンや、そしてタイやモンゴルや韓国やオーストラリア、そういう地域で同盟国と共同訓練をして、動的抑止力をやった方が日本の抑止力のためにもいい、そういうふうなことをおっしゃっている方々がもう海兵隊の中にいるんですね。

 そういう意味では、シーサーのように沖縄にそのままいるんじゃなくて、とにかく海兵隊を動かす。そのときに、経費がかかるんだったら、日本側が出しても、日本の抑止力のためだから僕はいいと思うんです。そして、グアムが日本の抑止力の対象になるんだったら、思いやり予算もグアムにまで私は波及効果をしてもいい。抑止力もしっかり守れるけれども、沖縄の基地の負担もできる、こういうふうな大胆なことをぜひ考える時期に来ているのかなと思います。

 そして、財政のところですけれども、こうやって一兆二千億を出すというとお金がかかりそうな感じですけれども、沖縄から海兵隊がいなくなると、今の地料が安くなりますし、そして周辺地域のお金はかかりませんから、私の安い見積もりでも、年間千六十億円ぐらいお金が削減されるんです。沖縄に今まで出しているのが出さなくなる。一千六百億円ぐらいまで私は膨れるんじゃないかと思うんです。そうなると、一兆二千億を出しても、十年間で十二分に償却ができる。日本の財政を圧迫するような金額にはならないというふうに私は考えているのであります。

 それで、最後に、説明して質問させていただきますけれども、総理、時間がないから早口になっちゃいましたけれども……(発言する者あり)個人演説会じゃないですよ。

 ぜひ総理、この沖縄の、今、県内か県外かと沖縄が県民同士対立していますけれども、この大きな対立の構図の中は、沖縄から基地は、負担軽減をやってもいいけれども、本当に安全保障は大丈夫なのかという声があることだけは確かなので、こういう国益のジレンマで沖縄県民が非常に悩んでいるということは十分に理解してもらいたい。

 それで、もう一個大事なことは、今やらなければいけないことは、普天間の危険の除去と普天間の移設を早目に決めることです。

 十四年前から沖縄政策協議会をやっていますけれども、あれを今五年ぶりにスタートしましたけれども、沖縄の振興のための政策協議会なんです。今、沖縄の振興のための政策協議会は、もうやっても意味がない。なぜかと申しますと、基地の整理縮小をやらない限り、沖縄の経済は絶対によくならない。土地が返ってこない限り、どこに何をつくっていいのかわからない。だから、この二つに絞って政策協議会はやるべきだと私は思っています。

 それで、沖縄の予算は、自民党政権からこの十年間で一千二百億減らされているんですよ、一千二百億。それでいて、官邸に沖縄の田舎の市町村長を呼んで、閣僚が周りを固めて、カメラのフラッシュをたいて、国民には沖縄のためにやっていますよといいながら、予算をつけるかのようにやっているけれども、結局は、内閣府の予算はこの十年間で一千二百億減っているじゃないですか。そんなばかげたことはしなくていいんです。内閣府に予算をちゃんとつければ、官邸に集まらなくても十二分に物はできる。そういうふうなことを、パフォーマンスをやるのではなく、実体的に沖縄のことをぜひやってもらいたいと思います。

 それで、最後になりますけれども、この協議会を、もう一回決定機関をつくった場合、アメリカの大使と防衛庁長官と沖縄県知事とで話をして、一年間かけてじっくりと話し合う。そして、大事なことは絶対に官僚を入れないことですよ、官僚を。外務官僚だとか防衛官僚だとか入れなくて、積み上げじゃなくて政治家がやる、これが非常に大事。政治家が決めて官僚に具体的に物事を指示していくというやり方をやっていくことが必要だと私は思っています。

 そういう意味では、もう日米安保条約、この日米合意を進めるといってもなかなか難しい。しかし、国家間で決めた日米合意を破棄することは私はよくないと思う。これをちゃんとスタートにしながら、しかし、オバマさんが十一月に来るときには新しいスキームで話し合いをしていこうと。ちょうど十年間延びるんだから。一年間だけゆっくり話し合いをしましょう、そういうふうなことを大統領に申し上げて、具体的な政治の対話をしていくことをぜひ提案したいと思いますけれども、この対話に対するお考えと、そして、今の普天間の危険の除去に対する考え方と、政策協議会に対する総理の考え方、この三つの答弁をいただきたいと思います。

中井委員長 随分範囲の広い御質問というか御意見でしたが、どういう……(下地委員「総理だけでいいです、総理だけで」と呼ぶ)総理だけですか。

 それでは、菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 下地委員から、まさに最も地元をよく知っておられる議員の一人として、かなり具体的、あるいは大変示唆に富んだ提案も含めた御質問をいただきました。すべてに対して同じ深さでお答えできるかどうかはわかりませんが、基本的な立場だけまずは申し上げておきたいと思います。

 現在、政府の立場は、御承知のように、本年五月二十八日の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でも強調されたように、沖縄の基地負担の尽力に全力を尽くすという立場に立っております。

 もちろん、この間、沖縄の皆さんが必ずしもこの日米合意に賛同をされていない方が多い、あるいは、その後の沖縄のいろいろな選挙などにおいてもそういう結果が出ている等も十分承知をいたしております。

 そういう中で、いろいろと説明をしたりしておりますが、先ほど協議会という話が出ましたが、御承知のように、沖縄政策協議会というものがもともとあったのがこの五年半ほど動いておりませんでした。これを、本年九月に、私も、仲井真知事も御出席をしていただきまして、再開といいましょうかをいたしまして、もちろん沖縄振興の問題もありますけれども、米軍の基地負担についても部会のようなものを二つそれぞれにつくって議論をしていこうということで、議論をそういう意味で進めることについては仲井真知事とも合意をいたして、今、第二段階といいましょうか、私の内閣になっての二回目を準備いたしているところであります。

 そういう中で、オバマ大統領が来られるとき、あるいは、二〇二〇年にグアム移転が延びたと、私たちは必ずしもそういう認識は持っておりませんが、下地議員の方からは、チャンスととらえて、もっと根本的な議論をやったらどうかと。

 お気持ちはわからないではありません。ただ、先ほど申し上げたように、私が六月に政権を担当してまだ四カ月でありますけれども、五月の二十八日にできた日米合意、そこからスタートするという、この考え方は先ほど下地議員にも理解をいただいたと思います。その中で、まず、何が現時点でできるのか、そのことを徹底的に模索をし、あるいは沖縄の皆さんにも説明をし、しかし、決して沖縄の皆さんの声を無視した形で、特措法という言葉も出ましたけれども、そういった形で強引なやり方をするということは念頭に全くありません。

 そういう点では、この五月二十八日の原則を踏まえながら、できるところまでしっかり努力をしていく。その中でさらに、今、下地議員の方からいろいろな提案が出ておりますが、そういうものが実際の課題にのり得るのかどうか。

 現時点では、五月二十八日の原則、日米合意と、そして沖縄の基地負担の軽減に全力を挙げる、この立場で、この沖縄協議会も含めて進めていく。そういう状況であるということを申し上げて、答弁とさせていただきます。

下地委員 今、特措法をおやりにならないというこのメッセージは、非常に沖縄県民にもわかりやすくて、信頼のわく答弁だったと僕は思います。

 五月の二十八日に日米合意ができましたから、これをスタートにすることが大事なんです。国家間のことでありますから。しかし、まだ決まっていないと言いますけれども、日本側がずらしてくれと言っているわけじゃなくて、アメリカの都合で十年間、六年間ですね、六年間延びる可能性が出てくるというのは、僕は、菅総理が、この十五年間本当にどの政権がやってきてもできなかったことができる、ある意味チャンスが来たんじゃないかなと。総理は運がいいんじゃないかと僕は思いますよ。

 このチャンスを、私は交渉のやり方としては逃がすべきではないと。時間をかけてじっくりとやっていきましょうというようなことは、今度の十一月のオバマさんとの会談では、私は提案していくことに与野党で反対する人はだれもいないと思いますよ。

 そういう意味でも、建設的に、日米関係は非常に大事でありますから、そういうふうな仕組みを私はこれからも提案していくということは非常に大事。そして、負担に対してもきちっと、先ほど資金の提供の、湾岸基金の提案をさせていただきましたけれども、そういうことも含めて、国民に何でも率直に話していくというようなこともやっていくという、新たな日米同盟を深化させていく姿をぜひ描いてもらいたい、そういう期待をして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石原伸晃君。

石原(伸)委員 自民党の石原伸晃です。

 冒頭、総理に、今国会に臨む総理の姿勢についてお伺いさせていただきたいと思います。

 総理は、この国会は何と呼ばれたか、熟議の国会。私も辞書を引いてみました。よく意見を交換して相談する国会にするとおっしゃったわけであります。

 しかし、残念ながら、総理の御意向は、予算委員会の理事の皆さんあるいは民主党の国会対策委員会の皆さんにはどうも伝わっていないようであります。なぜなら、予算委員会を開会するに当たりまして、基本的質疑は一日でお願いする、こういう話を言ってきたそうでございます。その点、我が党の武部筆頭あるいは塩崎次席、また野党の皆さん方が、それはないだろう、総理が熟議と言っているんだからということで二日間の総括質疑になったわけであります。私は、これでは熟議の国会があきれると思うんですね。政府は今国会で一体何をなされたいのか。

 まず、総務大臣である片山さんが、私も新聞で見ましたけれども、大反対しておった郵政改革逆行法案、JRを国鉄に戻すような法律案を閣議決定された。総理、今国会では、そういう、皆さん方が、一度廃案になったものを、また総務大臣も反対していたということがわかっているようなものを、前回のようにたった七時間で強行採決するような国会運営、ほかの法律案もそうだと思います、そういうことがないのか。そういうつもりがないということをまずお話しいただきたいと思います。(発言する者あり)

自見国務大臣 総理の発言の前に、郵政民営化法案を出したのが逆行じゃないかという話が天下の自由民主党の石原幹事長からございましたので、お答えをいたします。

 五年前、確かに竹中さんと小泉さんが郵政改革法案を出されました。当時、御存じのように、私はことしの八月、アメリカに行ってまいりました。三年前のリーマン・ブラザーズのショックがございまして……(発言する者あり)ちょっとお話を聞いてください、非常に大事な話ですから。当時、アメリカでも金融規制改革法、ドッド・フランク法というのが今通っておりまして……(発言する者あり)いや、大変関係があるんですよ。ここが一番関係がある、よく聞いて……(発言する者あり)いや、違うよ。それで、アメリカでも、要するにオバマさんが出まして、ボルカー・ルールと申しまして、ハイリスク・ハイリターンの仕事は銀行の中の自己勘定ではしてはならないという禁止法案が出ているんですよ。

 ですから、五年前のハイリスク・ハイリターンが全盛の時代と世界の金融は大きく変わっておりまして、そういう時代の、この法律を出させていただいたということを、当時の幹事長でございますから武部先生の怒りもよくわかりますけれども、そういう時代とは変わったんです。そのことを、きちっと自由民主党の方はそういう認識を持つべきですよ。私はそのことをきちっと申し上げておきたいと思いまして、これは後総理がお話しになると思いますけれども、これはもう両党の合意に基づきまして、やはりユニバーサルサービス、そして三事業一体、明治四年以来のきちっと伝統と歴史を踏まえてやることが私は必要だというふうに思っております。確信をいたしております。

菅内閣総理大臣 まず、熟議の国会にしたいという思いはまさにそのとおりであります。熟議ということは、もちろん時間もある程度必要ですが、最も重要なのは中身だと思います。

 きょう午前中、与党の議員の皆さんの質疑の中でも私申し上げましたが、私は所信表明の中で、最も今の時代において、この二十年間の日本の閉塞状況を打開するためには五つの大きな政策課題があるのではないですかということを申し上げ、もちろん、野党の皆さんがそれの中身を批判されるのは自由ですけれども、そういう大きな構えで皆さんに問題提起をしたつもりですが、残念ながら代表質問の中では、それを真正面から、反論も含めて、そういう議論がほとんどなくて、どちらかといえば、個別的な課題や、やっていないとか、そういうことに終始しておりますので、できればこの予算委員会でそうした大きな、国民の皆さんが最も心配をされている、この二十年間の閉塞状態をどう打ち破るか、そういう共通土俵でぜひ熟議の国会にしていただけるよう、野党の皆さんにも改めて心からお願いを申し上げたいと思います。

 その上で、郵政改革関連法案については、郵政民営化によって生じた諸問題を克服し、郵政事業サービスが利用者の立場に立って郵便局で一体的に供給されるようにするとともに、将来にわたり、あまねく全国において公平に利用できることを確保するための法案であります。

 同法案は、民主党と国民新党との間の合意書において、速やかにその成立を期すとしているところであり、今国会において速やかな成立を目指してまいりたい、このように考えております。

石原(伸)委員 自見大臣は、私の質問に答えないで三分半も余計なことを言われました。総理の答弁だけでいいんですよ。時間をしっかりとって議論をしていくと総理はおっしゃりたかったんだと私は思います。

 さて、総理は参議院の本会議で、民主党は大ぶろしきを広げたんだと。私は、胸を張って開き直ったのかな、こんな気がいたしました。

 大ぶろしきを広げるという意味は、ほらを吹く、できもしないことを言う意味だと広辞苑には書いてあります。総理も、今御自身で読まれた郵政改革法案、我々は郵政改革逆行法案、JRを国鉄に戻す法案だと思いますけれども、そういうものをただ読むんじゃなくて御自身の言葉で言われる、それを私は国民の皆さん方は見ているんだと思いますよ。そして、大ぶろしきを広げたというのなら、残念ながら、我々は皆さん方のことを大ぶろしき内閣とこれから呼ばせていただきたいと思います。

 さて、予算委員会の冒頭から私はこんなことを聞かなければならないことを非常に日本の政治にとって不幸だと思っております。私も聞きたくない。しかし、立場上聞かざるを得ない。

 今回、小沢幹事長が政治資金規正法違反で強制起訴されることになったことはもう御存じのとおりだと思います。そもそも、総理、小沢元幹事長はことしの六月に、鳩山前総理と一緒になって、政治と金の問題を引きずっている責任をとって民主党の役職を、また総理をやめられた人物であります。それがわずか三カ月後、私の記憶が正しければ、九月の頭に総理と一緒に民主党の代表選挙を戦われた。強制起訴ということが十分に予測可能であったにもかかわらず、選挙戦ではこの中にいらっしゃる方の半分ぐらい、合わせて二百人の方が小沢元幹事長を支持された。代表選後には、菅総理、あなた自身が、ぜひ代表代行に就任していただきたいと依頼をされたそうであります。

 小沢元幹事長は七日の会見で、離党や議員辞職については、そのような考えは全く持っていない、淡々と政治活動を続けると言い放ちました。私に言わせれば、いまだに御自身の責任、あるいは全く自覚されていないと言わざるを得ません。

 さらに、ここからが私は問題だと思う。閣僚の皆さん方も、特に法務大臣も問題だと思われたんじゃないですか。検察審査会を、十一人の委員の方がいらっしゃるんですが、平均年齢が三十歳ということしかわからず、さも、若い人ばかりなのはけしからぬ、秘密のベールに閉ざされていると批判をされました。自分に都合が悪くなりますと審判にけちをつける。これでフェアプレーが期待できますか。私はできないと思う。

 各社の世論調査でも、小沢幹事長に何らかのけじめをつけろという声が圧倒的だと思います。(パネルを示す)これは、翌日のものと十月八日の社説ですけれども、朝日「自ら議員辞職の決断を」、毎日「小沢氏は自ら身を引け」、読売「小沢氏「起訴」の結論は重い」、日経「「小沢政治」に決別の時だ」、産経「潔く議員辞職すべきだ」、東京、法廷判断を求めた市民の声。十月八日に至っては、今度は民主党に弾が飛んできていますね。朝日「民主党はこれでいいのか」、産経「起訴議決を甘くみている」。

 それでも、御党の輿石参議院議員会長は、離党も辞職もする必要がないと擁護されております。その民主党の姿勢に、私は、国民の皆さん方は大きく失望し、そして民主党の体質というものはどうなっているんだという怒りを覚えているのが現状ではないかと思います。

 数え上げますと、民主党と金の問題というのは実は切りがないんですよ。私も数えてみた。小沢元幹事長の元秘書石川知裕衆議院議員は帳簿をごまかして離党。鳩山前総理は母親から月々一千五百万円ものやみ献金。きょう、北海道の五区で補欠選挙が告示されましたけれども、こちらは、北海道教職員組合から一千六百万円ですよ、裏金でもらって小林千代美議員が議員辞職。本来なら、この責任をとって今回は民主党の候補を出さない、そのぐらいのことがあるのかと思ったら、そうでもない。また、荒井聰国家戦略相、総理の懐刀と言われた方でありますけれども、税金で漫画本やキャミソールを買って申告書の修正。こちらにもいらっしゃいますけれども、国会でファッションショーをやった蓮舫行革相、川端達夫前文科相も事務所費疑惑を抱え、さらに大阪では、中島正純さんですか、経費の架空計上で離党。

 一連の政治と金にまつわる事件は、すべて今や民主党の議員の方々が主役なんですね。政治と金といえば民主党の専売特許であり、実はこの問題は、小沢元幹事長個人にとどまらず、私は、皆さん方の体質の問題じゃないか、こんなことも思わざるを得なくなってきました。

 さらに申し上げますと、このフリップを見ていただきたいと思うんですけれども、ちょっと総理には見づらいんですが、私、これは非常に鮮明に覚えているんですよ、これを小沢さんが出されたとき。問題となりましたいわゆる自宅の横の不動産取引。これはおもしろいですね。小沢一郎さんから小澤一郎さん、ちょっとサワという字は違うんですけれども、取り交わされたという摩訶不思議ないわゆるこの確認書を公開して、取引には問題ないと説明されました。

 しかし、その確認書なるものは、実は小沢元幹事長の指示で、元幹事長御自身の潔白を証明するために開いた会見の直前に日付を偽装して秘書につくらせたということが今度の検審の議決書の中に書いてある、明らかになっている。きょう午前中も議論になっておりましたけれども、大阪地検の証拠の改ざん問題というものは大変ゆゆしき問題ですけれども、小沢元幹事長も、実はこれを見れば、証拠を偽造して私は潔白ですと国民をだましたんだ。私は、こういう方には、再三再四申し上げておりますように、偽証罪が適用される証人喚問しかないと思っております。

 小沢元幹事長を国会に証人喚問し、一連の疑惑を国会の手で徹底的に究明すべきだと私は考えますが、当然、総理、御賛同願えますね。

菅内閣総理大臣 まず、大ぶろしきという言葉を言われました。

 私が初当選した直後に、ある新聞が、永田町乗っ取り作戦というのを私を中心に書いてくれました。当時、私は五人の国会議員の政党に属しておりまして、永田町を乗っ取るなんということを言えば、まさに大ぶろしきを広げたことになります。しかし、その二十九年後あるいは三十年後に、その大ぶろしきを広げたことが実現できたわけであります。

 つまり、大ぶろしきというのは、そう簡単にはできないけれども、やりたい、やらなきゃだめだと思うことを広げるのが私は大ぶろしきだと思いますが、石原さんの考えは若干違うようでありまして、大変残念な思いであります。

 そこで、このことだけを余り申し上げるつもりはありませんが、先ほども申し上げましたが、私は、二十年間のこの日本の閉塞状態を打ち破るのには、私一人あるいは民主党一つの政党だけではとてもできないということをわかった上で、しかし、まさに熟議の議論をして、次の世代にそういうものを残さないでいくためにこの国会で議論をしようということで所信表明で申し上げたわけでありまして、ぜひとも、皆さんも負けないぐらいの大ぶろしきを広げていただいて、どうやれば日本が今の状況を打ち破っていけるのか、ぜひ熟議の国会の中で議論をしていただきたい、改めてお願いを申し上げておきます。

 そこで、小沢元幹事長の証人喚問についての御質問をいただきました。

 小沢議員御本人が、国会で決めた決定には私はいつでも従うというふうに記者会見でおっしゃっておりますし、また、いろいろな機会に、説明はしたいということも言っておられます。

 そういった意味では、どういう形で国会の場で説明をされるか、もちろん、国会の手続もありますし、あるいは御本人の意向もあると思いますので、そういったことを、正式な提案があれば、幹事長や国対で、御本人の意向も確認の上、どういう形で説明の場を設けるのか、そういうことも含めて対応を協議していきたい、このように思っております。

石原(伸)委員 善意にとらせていただいていいのか、それとも、国会で決めてくれ、本人の意向に従ってくれというのか、今の総理の御答弁では私はわかりません。

 総理は、小沢元幹事長に対しまして、九月一日の代表選の記者会見で、このフリップにありますように、金にまつわる古い政治からはぜひ脱却しなければならない、首相になりたいというなら、しっかりとした説明が必要だ、改めて代表選挙に小沢氏が立候補したので、国民がより納得できる形での説明はされなければならない、国民の常識が国会でもきちっと受け入れられるべきだ、このように発言されております。この考えに一カ月たって変わっていない、私はここは善意にとらせていただきたいと思います。

 しかし、今の答弁はちょっとインスタント答弁のような気がいたします。国会のことは国会で、本人の意向も、それでは、この番組を見ていらっしゃる多くの国民の方々は……(発言する者あり)答えになっておりません。あなた自身がそう言っているのではないか。

 次のフリップを……(発言する者あり)

中井委員長 静粛に願います。静粛に願います。静粛に。

石原(伸)委員 やじに答えるつもりはないんですが、国会中継というこれは番組なんですね。

 総理、このパネルをぜひ見ていただきたいんです。これは、総理の著書の「大臣」の中からの抜粋でございます。「与党の代議士に金銭的な疑惑が持ち上がるとする。」「そんなときにコメントを求められた総理大臣はおそらくこう言う。「国会のことは国会に聞いてくれ。」」「しかし、」「自分の党の議員が疑惑を持たれているのであれば、党首として何らかの措置をとるべきだ」と本に書いてあります。

 ということは、今総理が答弁されたこととは大分違うようであります。この本の著者であります菅直人さんと総理大臣の菅直人さんは、二人いるように思えてなりません。自分の本の中で言っていることが正しいのか。また、国会が決めるの、本人の意向、今の答弁が正しいというのであるならば、八百四十円払って総理の著書を買われた方々にお金を返金するか、国会のことは国会で、本人の意向を尊重してと書きかえた改訂版を出されたらよろしいのではないかと思います。

 説明責任を果たしていないのは、実は小沢元幹事長だけではありません。

 鳩山前総理は、本年三月三日の、院は違いますけれども、参議院の予算委員会で母親から提供された資金の使途について、すべてが終わってから書類の返還を求めて、皆様方に見ていただきたい、国民の皆様方に御説明を申し上げたいと述べられております。一体、この約束は何だったんでしょうか。とっくに終わって、書類が戻って、そして、十二億円以上の偽装献金の使途については、どう使われたか知っている方はいないんじゃないですか。

 十二億円、これは一体どれぐらいの金額か私はぴんとこないんですが、一カ月にすると一千五百万円だそうでございます。毎月新しい家を買っていたならともかくですよ、そんな巨額の金額を、毎日毎日、毎月毎月、使えるわけがないと私は思います。だから、皆さん方も、他の野党の皆さん方も、使途を説明していただきたいと。

 総理は、また所信の中で、金のかからないクリーンな政治の実現が国民の強い要望です、私自身の政治活動の原点ですとまでおっしゃっております。私は、ここで鳩山元総理も証人喚問していただいて、鳩山元総理がみずから約束されたとおりに国民に説明してもらうことが、実は総理、菅総理の政治の原点であり、国民の皆さん方の強い要望であるはずのクリーンな政治の実現第一歩だと思います。御賛同願えますか。

菅内閣総理大臣 いろいろな点に触れられましたので、どの部分から答弁していいか、ちょっと本当に迷うんですが。

 私は、クリーンな政治の実現ということを代表選でも申し上げましたし、所信表明でもそういう趣旨のことを申し上げております。

 代表選で再選される中で、民主党の幹事長に岡田さんになっていただき、党のいろいろなお金の流れについてできるだけ透明に公平にという方針でお願いをいたしておりまして、そういう代表選での私の党についての公約については、それを実行する方向で進めているところであります。

 もちろん、党だけではなくて政治全般においても、例えば企業・団体献金の禁止等、そういう形で努力をしていくことはもちろんのことであります。

 また、私の著書をもしお買い上げをいただいたんだったら大変ありがたいと思っておりますが、その中でいろいろ私が申し上げたことを引用されました。私も、そういうことを著書で申し上げていることそのものを別に否定もしませんし、その考え方の根本を変えているわけでもありません。

 総理大臣という立場になってみて、一つ一つの言葉や一つ一つの行動が従来よりも非常に大きな影響、時には自分が考えることとは必ずしも、違った影響を与えることもあり得る。例えば、私が消費税のことで議論をしようと言ったつもりが、引き上げようと言ったようにも表現されてしまうとかですね。そういうこともいろいろありますので、そういった意味では、先ほど申し上げたように、私としては、この問題についての、表現は若干慎重な表現にとどめているかもしれませんが、基本的な考え方で特に変わったというつもりはありません。

 その中で、鳩山前総理についての御指摘もありました。

 私は、鳩山前総理については、これもいろいろな機会に申し上げておりますが、検察の処分、それから検察審査会、それから裁判ともにすべてがそういう司法的手続が終了し、かつ、鳩山前総理御自身が総理の辞任という大変重い形で政治責任をとられたというふうに認識をいたしております。

 そういった意味で、政治的な大きなけじめはつけられた、このように認識していることは、ほかの機会にも申し上げておりますが、あえてこの場でも申し上げておきたいと思います。

石原(伸)委員 総理は、一つは正直に答えられ、一つはえんきょく的に、鳩山前総理の証人喚問は必要ない、こういうふうに答弁をされたんだと思います。疑惑をみずからが晴らし、クリーンな政治を目指そうという決意は、残念ながら、今の答弁からはあらわれていないんだと思います。

 今回の質疑で、まだ二十五分ぐらいしかたっていませんけれども、改めて政治と金の問題が浮き彫りになったと思います。

 私たちはやはり、許すべきもの、許されざるべきものをしっかりと取捨選択してやっていかなければなりませんが、先ほどの確認書をまたちょっと出していただきたいんですけれども、これはだれが見てもおかしいし、これを証拠だと言った方はやはり証人喚問を要求せざるを得ませんし、鳩山由紀夫前総理に関しましても、またそれに関係する方々についても、改めて証人喚問を委員長に求めさせていただきたいと思います。

中井委員長 前国会以来、予算委員会で協議をされておりますが、今国会で自民党さんから正式に要求があったということを踏まえて、予算委員会理事会で協議をいたします。

石原(伸)委員 総理が正直にお答えになられたというところをちょっと紹介させていただきますけれども、考えていることと違ったことを求められる、いろいろあるから、今回のこの問題の表現というものは慎重になった、これはまさに総理大臣としての職責というものを考えての御発言ではなかったかと善意に解釈をさせていただきます。

 そこで、議題を進めていきたいんですけれども、中国による不当な拘束を受けておりましたフジタの社員の高橋さんの釈放ということは、それ自体は、同じ日本人として私は喜ぶべきことだと思います。

 しかし、ではなぜ釈放に至ったのか。いろいろ考えてみますと、例えば、中国の反体制派の作家であります劉暁波さん、ノーベル平和賞を受賞されました。基本的人権というものがほとんど尊重されていない中国において国際的な包囲網が高まった、これもまた無関係ではないでしょう。また、国会で先日から本格的な議論が始まったこのタイミングにこの釈放というものが選ばれたことも偶然とは思えない。

 そもそも、政府がどう取り繕おうといたしましても、今回の尖閣諸島における中国漁船の衝突事件の経過を見れば、これがその経過でございます。九月七日に巡視船と中国漁船が午前十時、十一時、二回ぶつかった。そして、逮捕に至るのは八日の午前二時。これらのものを見ましても、実は、中国人が日本人を拘束した、ここに入ってありますね、「日本人四人を拘束」「温家宝首相 釈放を要求」、こういうものが、やはり私は、全く無関係だと考えている人は実はこのテレビを見ていらっしゃる方の中にはほとんどいないんだと思うんです。日本人が解放されましても、今回の尖閣問題への政府の対応が、これは後ほど詳しくお話をさせていただきますけれども、日本外交史上に大きな汚点を残した事実であるということに私は全く変わるものではないと冒頭指摘をさせていただきたいと思います。

 さて、今、十月でございますけれども、この十八日には、名古屋でいわゆるCOP10が開催されます。もう既に類似の会議が起こっております。

 この会議には、多様な生き物やその生息環境を守るために、各国から八千名もの方々が集います。生物の多様性を守ることは人間にとって極めて重要であるからであり、私も先日、これはぜひ皆さん方見られたらいいと思うんですけれども、DVDになっていますけれども、オーシャンというフランスのテレビ局がつくった海の生態系のビデオがあるんですけれども、これを見て本当に私も考えさせられました。絶滅危惧種、意外にたくさんいるし、私たち人間はいろいろなことを自然に対してやっているなと。

 そこで、環境大臣にお尋ねしたいんですけれども、ある絶滅危惧種、日本にもたくさんいます、その動物が絶滅に瀕している原因が明らかで、その絶滅の原因を取り除けばその絶滅危惧種が生存することが可能である、そういうとき、その外敵になるものを取り除くということに賛成していただけるか。COP10を控えている松本環境大臣にお聞きさせていただきたいと思います。

松本国務大臣 お答えいたします。

 十八日から行われます生物多様性条約COP10につきまして触れていただいて、ありがとうございます。

 今、絶滅危惧種のお話がありました。

 一般論として、まさに地球上の野生生物は、私たちの命をはぐくみ、森や沼あるいは海洋等々、さまざまなものと連関をして私たちの命をつないでいるというふうに思っております。種のいわゆる絶滅は、まさに人類にとっても地球にとっても、いわゆる食物連鎖の一つが外れるということではなくて、その前後ということもあって、大変大きな危惧を持っているところであります。

 そういう意味におきまして、環境省としましても、種の保存につきまして、まさに絶滅危惧種の捕獲の禁止であるとか、あるいは生息のための環境の改善、飼育下の繁殖ということでやっているところであります。何とかして回避をしていきたい。そして、さらに絶滅危惧種を保全するために努力をしていきたいというふうに思っております。

石原(伸)委員 松本大臣、本当に率直に御答弁ありがとうございました。

 私も、まさに大臣の言われたとおり、ただの連鎖だけではなくて、私たちは守るべきものを、これを守っていかなければならない。COP10の成功を心からお祈り申し上げたいと思います。

 実は、絶滅に瀕しているものが尖閣列島にもいます。センカクモグラというモグラであります。これは実は尖閣固有の種で、尖閣にしかいないそうであります。何が違うかと申しますと、歯の数が他のモグラに比べて三十八本しかない、四十四本なんだそうでございます。そこに種が違うということが実証されているそうなんですけれども、実はこれは、今お見せしておりますのは、一九七六年に魚釣島で採取された一体の標本であります。生態にはまだまだなぞの多い絶滅危惧種だと思っております。

 そのセンカクモグラが絶滅の危機に瀕しているそうであります。原因は、人間が持ち込んだヤギが増殖しまして、最初は雄雌二頭だったそうでございますけれども、今上空から確認しただけで三百頭ぐらいいる。生態系を大きく破壊している。それはセンカクモグラに限らず、この絶海の孤島の中で他の種も私は危機に瀕しているんだと思います。

 先日、高名なアルピニストの野口健さんが松本大臣の環境省で記者会見されたというニュースを聞きました。絶滅危惧種であるセンカクモグラの実態を調査して、ヤギを駆除するために、ぜひ魚釣島へ上陸を許可してもらいたいと訴えられたそうでございます。

 日本固有の領土に絶滅危惧種の調査、保護のために上陸することは私は何の問題もないし、これは人類の共通した願いではないかと思っております。総理に聞くのがいいのか官房長官に聞くのか、どちらの御答弁でも結構でございますが、上陸許可をいただけませんでしょうか。

仙谷国務大臣 尖閣諸島への上陸でありますが、これは、平成十四年四月、小泉内閣だと思いますが、民間の方から尖閣諸島の賃貸借、賃借を受けて政府が維持管理をするようになったわけでありますが、この際に、関係省庁間で協議の上、政府全体として方針を定めた。原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針を決められたということでございます。

 この文書があるかないか捜してみたのでありますが、現時点では、今度は安倍内閣の時代に、平成十九年三月十六日であります、鈴木宗男議員への質問主意書に対する答弁の中で、「尖閣諸島への日本政府職員の上陸を禁止する法令はない」「国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の魚釣島等の賃借の目的に照らして、政府としては、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっているところである。」「過去に尖閣諸島に日本政府職員が上陸したことはあり、その直近の二事例は、平成十八年十月二十七日及び十一月八日の上陸である。」という答弁書が出ていて、この答弁書が、政府として上陸を認めないという方針を活字として残しているものでございまして、現在の菅内閣もこの方針を踏襲しているということで御理解をいただきたいと思います。

石原(伸)委員 長官、私ども自民党政権の政策をすべて否定することが民主党政権のレーゾンデートルのようなことを言っておきながら、さらに、環境庁の大臣が、やはりこういうものは保護していかなければならない。そして、私も言ったように、これは、中国、日本の間の話ではなくて、人類全体の話なんですよ。それなのに、過去の答弁書を引用されてできないというのでは、テレビを見ていらっしゃる方は、またここでも弱腰外交か、軟弱外交かと思われかねない。

 総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 絶滅危惧種の問題と、尖閣を今政府が賃借している、その中の扱いの問題と、もちろん無関係とは申し上げませんが、かなりその意味合いが違うわけでありまして、私は、現在の官房長官の答弁の考え方で対応することが現在の状況の中では適切ではないか、このように考えております。

石原(伸)委員 私は非常に残念なんですね。COP10が名古屋で開かれ、これからどうやって人類が四千万種と言われる種を守っていこうか、そういうときに、今は答弁に歯切れがなかったな、何か下を見ながら。菅さんらしくないですよ。何でこの問題を、絶滅危惧種を救わないんですか。絶滅しますよ。お考えを改めていただけませんか。

仙谷国務大臣 この種の質問を石原幹事長が立場を変えられて質問をされるのであれば、なぜ自民党時代にこのことが実行されなかったのかという自己批判的な立場が、お話がまず必要なんではないか、そうしないと説得力が全くないと私は思います。

 それから、弱腰、強腰の話でありますが、私どもは別に弱腰だとは思っておりません。つまり、皆さん方が弱腰だ、弱腰だ、こうおっしゃるけれども、柳腰というしたたかで強い腰の入れ方もある、こういうふうに私は思っているわけであります。とりわけ、あらゆることを想定しながら、大国として台頭しつつある中国と戦略的な互恵関係という関係の中身を豊富化しつつ、これはつき合っていかざるを得ない関係でありますから、どう折り合いをつけるのか、どう大国としての責任を持っていただいて、国際的なコモンセンスの輪の中に入ってきていただけるのか、このことが我々の課題だ、そのためにしなやかに、したたかに中国に対応していく、こういうことだろうと思っております。

石原(伸)委員 結局他人のせいにする、モグラの生態はどうなっても構わない、総理がいらいらしていないで官房長官がいらいらしているように私には見えました。私は、今長官が答えられたようなことを次の質問の後総理に伺おうとしていたのであります。官邸の中に総理が二人いるといううわさが週刊誌に載っておりましたけれども、今の答弁を聞いておりますと、どうもそんなような気がいたします。

 さて、もう一つ申し上げたい。

 尖閣諸島は日中の領土摩擦の最前線である。今長官の答弁の中にもあったと思います。恒常的に領海侵犯が繰り広げられ、海上保安庁も命がけで日本の領海を守っております。私も国土交通大臣を経験しておりますので、そのことを実は身をもって感じております。当時は一隻の巡視船しか警備をしておりませんでした。そして、その任務のローテーションは他の地域に比べてもかなり過酷なものであった。

 このパネルを見ていただきたい。尖閣列島の魚釣島にある灯台につけられた海上保安庁のプレートであります。元来政府所有でなかったこの魚釣島の灯台、昭和六十三年の設置以来、そこに暮らす日本の漁民の皆さん方、あるいは船舶の航行の安全に大変役立ってきた。そこで、元所有者の方が放棄をされたので交渉をさせていただいて、海上保安庁が保守、管理を行うように私が大臣のときにさせていただきました。そのことは、私はだれにもこれまで黙っていたわけであります。それはなぜか。尖閣における緊張関係というものを、今長官が話されたように大国中国がいる、台湾もある、香港もある、そういう中で感じていたからであります。

 しかし、やはり外交は将棋と同じであります。一手一手詰めていく、そういう努力をしないで戦略的互恵関係を声高々に叫んでも、中国の思いが何も変わっていないわけですから、何にも改善されていくということはないわけであります。やはり、やることはやりつつ静かに対処をする。これまでの私どもの内閣は、菅総理がおっしゃる有言実行ではなく不言実行、あれこれ言わずに黙ってやることはやる。ぜひ総理も、この尖閣の問題をめぐってはやはりやるべきことを黙ってやる、日本の領土をどう守っていくかということを考えていただきたいと思います。

 さて、今回の事件を一言で言わせていただくならば、我が国の領土、領海を命がけで守っております海上保安庁の船に我が国内の領海内で二度まで、艦船は別ではありますけれども、衝突し、逃走を図った中国人船長を公務執行妨害で逮捕しながら、処分保留のまま釈放した。通常こんなことは起こり得ないと思うんですけれども、岡崎国家公安委員長、代表質問でも出ておりましたけれども、あなたは、二〇〇三年に韓国で反日デモに参加した経歴をお持ちの方だそうでございます。国益に関して、岡崎大臣が国家公安委員長として、きちっと対応できるか、大丈夫なのか、こんな不安を持っている国民の方々もいると思います。

 ぜひ、国民の皆さん方の不安を払拭するために、岡崎大臣に伺いたい。

 警察が取り締まりに当たっているパトカーに対して二度体当たりをしてきた、そして逃走を図った運転手を、身柄を拘束しながら、今回の検察の処分と同じように、送致前に釈放するということはあるんですか、ないんですか。お答え願います。

岡崎国務大臣 石原議員にお答えをしたいと思います。

 一般的にでありますけれども、被疑者を逮捕した場合には、刑事訴訟法の規定によりまして、留置の必要がないときには直ちに釈放をし、そして、留置の必要があるときには検察官に送致の手続をしなければならないというふうに認識をしております。留置をしなければならないかどうかの判断につきましては、その事案の軽重や態様、内容ですね、そして逃亡の有無、さらに罪証隠滅のおそれがあるかないか、こういったことを考慮して、状況を考慮しているものというふうに承知いたしております。

 そして、ただいまのような御質問に関しまして、個別の事案でございますので、これは答弁を控えたいというふうに思っております。

 以上です。

石原(伸)委員 これは個別の事案ではなくて、一般論でお尋ねをさせていただいております。

 今の答弁を聞いていて、今回の尖閣諸島における漁船の我が海上保安庁船舶への衝突事件というものは、そしてその後の経緯というものは、起こり得ないことが起こったんではないかと思います。それが政府の対応だった。

 先ほど軟弱を柳腰外交とおっしゃりましたけれども、みすみす中国に、これまで存在しない、日本の固有の領土である領土問題を国際社会に宣伝させてしまう場をつくったということにおいて、外交史上最も大失態である。そして、その対応、最後の対応がよくない。責任を検察に押しつけた。知らんぷりを決め込んでいるじゃないですか。そこが言語道断だと私は指摘せざるを得ないわけであります。

 まず、国民の皆さん方が待ち望んでいるビデオの公開について、お伺いさせていただきたい。

 そもそも、問題のビデオは、九月三十日に当予算委員会で閉会中審査を行いました。その理事会において、迅速に政府の提出を求めるということで、与野党の理事の方々が合意いたしました。ところが、その合意に基づいて、野党が政府にビデオの提出を求める議決を行うよう、きょうの朝も、きょうの昼も求めたのに対しまして、与党はそれに応じようとはせず、いたずらに事態を先送りさせているのではありませんか。

 これは、国会での合意を踏みにじり、ビデオの公開によりまして真実を知りたいという国民の皆様方の声を無視するものであり、断固抗議させていただきたいと思います。

 速やかに、政府に対しまして、当予算委員会にビデオを提出するよう、この委員会の決議を行ってもらいたい。これは委員長にお願い申し上げます。

中井委員長 委員会、理事会、さまざまな協議をしてまいりました。必ずしも、今、石原委員の質問したとおりではないとは思いますが、公開の決議について十分協議をして、できる限り早く諮ってまいりたいと考えております。

石原(伸)委員 できる限り早く取り計らってビデオの提出を当委員会に、公開の方法は理事会でお考えいただきたいと思います。

 ビデオを見れば、論より証拠、どちらの主張が正しいのかわかるはずだと思います。残念ながら、私はまだビデオを、今のようなことでございますので、見せていただいておりません。ビデオを見られた前原大臣も、ビデオを見れば一目瞭然だとおっしゃっている。これは水かけ論になるんですけれども、もっと早く公開していれば、日本の主張、正当性が私はアピールできたんだと思います。その不作為の罪というものも重いですが、いまだに公開しないということの方が私は実は信じられない。国民の方々も、一体どうなっているんだ、そう思われているんだと思います。

 そもそも菅総理がビデオを見ていないということも私は実は腑に落ちない。総理の御性格からしたら、ビデオを実はこそっと見られているんじゃないんですか。なぜ、かたくなにビデオを見ないと主張し続けるのか。公開すべきと総理が海上保安庁の方に指示するつもりはないのか。海上保安庁の方にはコピーがあるはずであります。私は、そのことを総理に、まずこのビデオの問題でお聞かせ願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 同様な質問を本会議でもいろいろな方からいただきまして、お答えをしたわけでありますが、その当時、海上保安庁を所管する国交大臣が見られて、また官房長官も見られて、そしてこういう状況であるということを私に伝えられて、私としても、そういう説明の中で、状況は把握が私なりにできておりました。

 その意味で、その後手続が検察の方に移ったことも含めて、私自身、必ずしも見なければ判断できないというよりも、両大臣が見た上での説明を私なりに納得できましたので、その判断に基づいて、それぞれの必要なことについては相談をして決めていったということであります。

仙谷国務大臣 石原委員にも、それからこの種の議論をなさる皆さん方にもぜひ御理解もいただきたいし、お考えもいただきたいのは、総理がビデオを見ないのはけしからぬという議論を延々と堂々と割となさる方があります。

 ただ、一般論として、刑事事件の証拠を、最高権力者がこの証拠を見たいから持ってこいというふうなことが刑事司法手続の中で行われていいのかどうなのかということであります。つまり、原則としては、原則としてはそういうことはあってはならないわけであります。

 したがって、事件手続を始めるかどうかの判断のところは、まさに事務当局と、あるいは政治が絡まなければならないところについては報告を受ける、その資料として、私どもが例えばビデオを見るということがあるといたしましても、判断の主体はあくまでも刑事司法の担当者でなければならないというのが私の考え方であります。

 そのときに、総理大臣に一々お見せをする場合なのか、あるいは総理大臣がこれを持ってこいと、つまり捜査にくちばしを入れることが果たしていいのかどうなのかというのは、皆さん方にも、これは司法の独立あるいは刑事司法のあり方としてよくお考えをいただきたいと思うんです。

石原(伸)委員 長官、私は総理に質問をさせていただいて、私の質問時間で長官の意見表明を行ってもらうというのは、やはり委員会の運営上私は間違っていると思います。委員長、そこのところはしっかりと御判断を願いたいと思います。

 前原外務大臣、当時は国土交通大臣であられた。九月二十八日の記者会見で、中国政府の対応、こういうものに、我々の主張とは違うということをおっしゃられて、そういう私たちの主張をしっかりと、真実を世界各国に伝えるよう在外公館に指示をされた。

 私は、賢明なる御判断をしていただいたと思うんですけれども、そういうことのためにもビデオの公開というものが必要ではないかという意見を申し述べていて、長官がお話しになったように、総理が見た見ないをどうのこうのするために話しているんじゃないんです。ぜひ前原外相としての所見を伺わせていただきたいと思います。

前原国務大臣 何度か国会で答弁をさせていただいておりますけれども、私が見たのは国土交通大臣のときでございまして、そのときに、その状況把握をするという意味で見ました。

 しかし、それは、海上保安庁が逮捕して、司法手続に入るときには、そのビデオというものが証拠として取り上げられるという可能性が大きかったものですから公開には慎重であったということでございます。

石原(伸)委員 これまでおっしゃっていたことと大分トーンは変わってきているような気がいたしますが、この事案の本質に入らせていただきたいと思います。

 まず御指摘させていただきたいのは、事件の発生から船長を逮捕するまでのおよそ半日の空白でございます。これを先ほどフリップでお示しをさせていただいたところでもございます。

 九月七日の午前十時、十一時ごろ、実は巡視船と中国の漁船が衝突をいたしました。そして、零時五十六分に漁船が停止をし……(発言する者あり)それは後で変えさせていただきます。零時五十六分に漁船が停止して、船長を拘束した。そして、翌日の零時二分に実は逮捕に至ったわけでございます。

 これまでの政府の説明で、十七時ごろ、七日でございます、大臣に、官邸に報告がなされた。当然、そのとき、官房長官、総理大臣にも御報告されたと思います。その後、官邸で二回、関係省庁による協議が行われた。九月七日のことでございます。つまり、現在の日中関係や先ほど長官が長々とお話しになった、また、今後起こり得る事態を分析しまして、その上で政治的に決断をして船長の逮捕に踏み切ったからこそ、半日という時間があったのだと思います。

 総理も、この日の夜のぶら下がりでは、我が国の法律に基づいて厳正に対応していくと勇ましい発言をされております。その後政府の合い言葉になりました粛々とと、厳正に対応するとは、実は違う意味を私は持っていると思います。

 このパネルでもおわかりになりますとおり、当時は、十四日まででございますけれども、民主党の代表選挙の最中で、総理は議員会館を訪問されたり、電話をかけたり、官邸で支援をしてくださる方々の集会に出席したり、大変忙しく過ごされていた。きちんと説明をお聞きになって判断ができたのか。

 また、きょうは、ある通信社の記事でございますけれども、地方紙には一面で載っておりましたけれども、報告時刻を修正、当初は逮捕の翌朝、首相答弁資料で指示なんたる記事が出ておりますけれども、事件の報告を聞いた時刻を修正させたとこの報道は言っているわけですね。

 改めて総理に伺わせていただきますけれども、総理は一体、この九月七日、八日、二日間の中で、事件が発生したこと、船長の身柄を拘束したこと、そして、逮捕の報告もしかりですけれども、そういうものを受けたときに、実際には、長官、あんたに任せるよという指示をされたのか、おい、外務大臣はどこにいる、ちょうど岡田外相は海外にいられたということでございますけれども、どのような指示をされたのか、明快にお答え願いたいと思います。

中井委員長 それでは、菅内閣総理大臣から、報告を受けた時間について答弁をいただきます。

菅内閣総理大臣 九月の七日、今御指摘がありましたが、私は、代表選は確かに進行しておりましたが、総理としての職務は最優先するという姿勢でずっと臨んでおりました。

 そういう中で、午前十一時半ごろ事件の、事案の発生を秘書官から報告を受け、十八時十五分ごろ逮捕の方針を、逮捕という方針でいきたいということを福山副長官から報告を受け、私もそのことについて了解を、特に異論を挟むことはいたしませんでした。そして、翌日の午前八時ごろに、実際には、逮捕状が出されたのがたしか午前零時五十五分、執行が二時三分ということだと思いますが、私が直接聞いたのは、朝になって、午前八時ごろ、逮捕状を執行したということを秘書官から報告を受けました。

石原(伸)委員 確認になりますが、それでは、報告時刻の修正なるこの記事は全くガセネタだということでよろしいんでしょうか。

中井委員長 石原君、それはどこのあれですか。

石原(伸)委員 これは、共同通信が配信をして、昨日また本日付の地方紙の一面に載っている事実でございます。

中井委員長 承知していますか、内閣は。内閣、だれか承知している人はいますか、この配信で。総理がお答えになりますか。

 菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 今、委員長からも指摘がありましたが、今、石原さんは修正という言葉を使われましたが……(石原(伸)委員「記事に書いてある」と呼ぶ)いやいや、少なくとも、記事に書いてあるといっても、私に対しても修正をしたのかと言われましたから。

 修正というのは、何かを発表してそれを変えることを修正というんです。何か私が発表したという根拠があるんですか。私は、今申し上げたように、翌日の午前八時ごろに報告を受けた。修正したということを前提に質問されるのであれば、何か、私がこのときにこう言ったのを変えたのではないか、そういう形で御指摘をいただかないとちょっとお答えのしようがありません。

石原(伸)委員 私は何も、修正したというんじゃなくて、この記事が出されていることで、今の時間の、総理が話されたものとこれと違うので、どちらが正しいのかということを聞いただけでございます。この後、この問題は、時系列を追いまして我が党の政調会長が細かく質問をさせていただきますので、そのとき、この問題の時系列的なことは改めてお話をいただきたいと思っております。

 今のお話をいただきますと、福山副長官から報告を受けて了解をしたと。船長を逮捕してよいという許可を与えたことだと思います。この極めて重大かつ微妙な問題について、総理が政治家として判断したということは私は正しいことだと思っております。しかし、その後いろいろなことが、事態が起こってきた。そして現在も進行中である。そして、総理大臣は間違いなく日本国の政治全般に対する最高指導者であり、最高責任者である。結論はともかく、私は、総理が了解したという判断を下したこと、それ自体は間違っていないと思います。国益にかかわる重大な問題について、官僚任せにせず、話が上がってきて政治主導で決めた。その点については評価しているんです。

 ただし、一度決めたら、何で、先ほどの厳正にという言葉じゃないんですけれども、石にかじりついてでもそれを貫かねばならないのか。私はそこが総理の資質に欠けている点ではないかと思っています。

 ネットの中をのぞくと、まあこれは誹謗中傷が多いんですけれども、総理のことを、優柔不断なぶれ菅とまで御自身が呼ばれていることは御存じでしょうか。政治家として逮捕を決断しておいて、一転釈放をし、その責任をすべて検察に押しつける。

 検察が政府の言うように国内法に基づいて粛々と対応したなら、那覇地検の次席検事が釈放の理由に、読ませていただきますと、有名になりました、我が国国民への影響や日中関係を考慮すると、これ以上、容疑者の身柄を拘束して捜査を続けることは相当でないと判断したなどと言うわけはないんですね。次席検事は、中国人の船長を釈放したのは、検察が外交問題を考慮したのではなくて、高度な政治判断が下されて、検察が諸般の情勢からそれに従わざるを得なかったということを考えたからこそ、あの顔で苦渋の選択であるということを私は言いたかったんだと思わざるを得ないわけであります。だから、日中関係を考慮などという、検察にはできもせず、またしてはならない理由をわざわざ述べたんです。

 勇ましくこぶしを振り上げて、格好いいことを言いながら、柳腰外交で国益を損ね、その責任は検察の責任だとすべて検察に押しつける、ほおかむりをする、その政府の無節操で無責任な、ひきょうな振る舞いに国民の皆さん方が怒っているからこそ、この問題で評判が悪くなっているんじゃないんですか。

 政治決断に基づいて船長の逮捕に踏み切り、さらに拘置延期、十九日、十日間、そういうことを決めたのは、検察が裁判所にお願いして決めるわけですね。明らかにこれは起訴、これを念頭に置いてあった。処分保留のまま、結果として釈放して、その決定には検察がやったことだと言い張る。そんなことを信じている国民は一人もいませんよ。そんな言いわけが世間で通ると本当に思っているんですか、皆さん。本当に私は情けないと思うんです。

 総理、あなたは、今もなお、中国人船長の釈放という国益にかかわる重大な決定を政治家が下すべきではないと思っていらっしゃるのか。釈放の決定について、自分は責任がない、下から上がってきたこと、検察が決めたことを了としただけだという官房長官の発言と同じなんですか。お答え願いたいと思います。

中井委員長 前半の御質問、総理が政治的判断をしたということについて官房長官から……(発言する者あり)いや、官房長官から。そして、後半の部分については、柳田法務大臣からお答えをいただいた後、総理から答弁をいただきます。

 仙谷内閣官房長官。

仙谷国務大臣 先ほどから、刑事司法手続について、割と石原幹事長が大ざっぱに言葉を使われておりますので、私の方から答弁します。やや、そういう言い方は違うのではないかという意味のお答えをまずはさせていただきます。

 つまり、総理が逮捕を許可したという言葉遣いをされました。逮捕を許可した……(石原(伸)委員「了解したと言った」と呼ぶ)いや、許可したとさっきおっしゃった。逮捕を許可したのは裁判所であって、総理ではありません。つまり、海上保安庁の逮捕手続を始めるという方針に、総理は報告を聞いて異を唱えなかったというのが正しいわけであります。

 それで、先ほどからおっしゃっているように、これは、交通事故とか、あるいは自動車の運転違反のケースを先ほど引かれましたけれども、そういうものを一々大臣や総理大臣が許可するとかしないとかという、そういう国ではないというのがこの日本の国であるということをまず前提にしていただきたいと思います。

柳田国務大臣 被疑者の釈放方針を決定するに当たり、どうして日中関係を考慮することができたのかという御質問と理解させてもらいまして、答弁をさせていただきます。

 被疑者の勾留は、基本的に身柄を拘束して捜査を行い、公訴を提起するか否かを決するために行うものであり、釈放の判断に当たっても、起訴、不起訴の判断において、考慮すべき諸事情を考慮することができる。刑事訴訟法第二百四十八条は、起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情として、犯罪や被疑者に関する情状に加え、犯行後の情況を定めているところ。これには、社会一般の状況の変化、起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響が含まれているものと考えられております。

 本件においても、被疑者の釈放に当たっては、犯罪や被疑者に関する情状に加え、社会一般の状況の変化や社会に与える影響等として、被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係等を考慮したものと承知いたしております。

菅内閣総理大臣 先ほど答弁をした中で、いわゆる逮捕の方針の報告を受けた、それで異を唱えなかったというような言い方をして、もしかしたら若干、私の表現も多少誤解を招いたかもしれません。

 つまり、先ほど官房長官から話がありましたように、私が逮捕せよとか逮捕するなと言う立場ではありません。ですから、そういう意味では、その逮捕についての報告があったときに、それについて、その報告に対してわかったということを申し上げたという意味であることを改めて申し上げておきたいと思います。

 そして、釈放については、既に法務大臣から詳しくありましたけれども、私の理解では、検察当局が、被害が軽微であること、犯行の計画性がないこと、初犯であることなどの事件の性質に加え、我が国国民への影響、今後の日中関係など、その他の諸般の事情等を総合的に考慮した上で、つまり、こういうことを考慮することも検察の判断のあり方として法律で認められているというふうに私は認識しておりまして、そういうことを総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断をされたもの、このように理解をいたしております。

石原(伸)委員 総理、私がお話をさせていただいたのは、外交案件においては総理が政治決断をしていいんじゃないかと。それを、検察に矮小化して責任を押しつけているように国民の皆さん方が思うから、そうではないんだということを私は総理に言っていただきたかったんです。

 今の話を聞いていますと、言いわけにしか聞こえないんですよ。そして、官僚の紙を読む。官僚の紙を読むんじゃなくて、自分の言葉で、私は日本国の最高責任者なんだ、ただ、日中関係がいろいろなことでおかしくなってきたから決断をして釈放した、そのよしあしは私が責任をとるから、検察じゃないんだよ、そういう声を言っていただいた方が、私は、国民の皆さん方は検察に対する信頼も回復するし、政府に対する信頼も回復する、そういうことを言っているんです。

 私は嫌なんですよ、総理がこうやっておどおどしながら、官僚の書いたペーパーを読むなんていうのは。独断でいいですから、毅然とした話をしてください。それが最高のリーダーだと私は思います。

 今の総理は、他人に責任を押しつける、私じゃない、私の了とした言葉が誤解を招くようだったら、ああだらこうだら。総理がこれ以上責任逃れをするんだったら、私たちは本意じゃありませんよ、では那覇地検の検事正が言っていることが正しいのか、検事総長が言っているのが正しいのか、なぜ船長を釈放するというような外交事案を一検察が行うのか、そんな能力も権限もあるはずない、国民の前で明らかにせざるを得ないということを総理に話しているんです。

前原国務大臣 これも今まで何度も答弁しておりますけれども、刑事事件を発端として外交問題に発展してきた事例というのは、古今東西、もうごまんとあると思います。しかし、その発端の事例については刑事事件として扱うというのが当たり前で、そのことについて波及をした外交問題については政府を挙げて、外務省を含めてしっかり対応するということであります。

石原(伸)委員 前原大臣、我々、もうさっきも総理に申しましたけれども、独立した存在である検察に対して、喚問をするとかそういうことを言うことは本意じゃないんですよ。しかし、政府が今みたいな答弁を切って、多くの方々がこれはおかしいなと思っていることは間違いない事実なんですよ。そのうそを暴くために検察の証言が必要となるんだということを私は言いたい。

 総理はどうしても検察の判断にしたいようですよね。そうならば、さっき言いましたように、検察の権限、能力を超えて我が国の外交にまで口出ししてきているわけなんですから、独自の判断を下した立派な検察官である那覇地検の方でも、総理が責任持って偉くしてあげたらいいじゃないですか。我々はそう考えていません。だから、しっかりと那覇地検の検事正と検事総長の話を聞かざるを得ない。

 これは、委員長、ちょっとお取り計らいをお願い申し上げます。

中井委員長 御提案は理事会で諮らしていただきますが、かつて国会でそういう例がなかったし、個々の事件にそれをやったかどうかということの実例も含めて、十分調べて議論をさせていただきたいと思います。

石原(伸)委員 私は、検察が外交問題を考慮して釈放したなら、明らかに検察の越権行為であり、こんなことも過去になかった、だから、こんなことを話しているということを、委員長もしっかりと御認識をいただきたいと思います。

 柳田法務大臣に伺います。

 釈放決定の報告を受けまして、どのような対応を指示されたんですか。検察が外交問題を考慮して事件の処理を判断するなどという、これまでお話をさせていただいてまいりましたけれども、まさに越えてはならない一線を越えたとき、あなたは何をされておったんですか。日本が法治国家でなくなるのを指をくわえて待っていたんですか。それは、私は職務怠慢だと思います。

 官僚の答弁書は要りません。紙で下さい、それだったら。

柳田国務大臣 今回の件に関しましては、時折々に報告を受けておりました。そして、二十四日お昼前に、刑事局長の方から釈放の理由、説明を受けたところでございます。その際、私の方からは、わかりましたということだけを申し上げました。

石原(伸)委員 その答弁が問題だということを私は言っているわけであります。

 外交案件を考慮して検察が判断したら、おまえ、どういうことだとしかるのが法務大臣じゃないんですか。越えてはならないところを越えたわけですよ。

 そして、今と同じような答弁を繰り返しているならば、検察の越権行為を座視し、さらに、あろうことか、了とした。はい、わかりましたと今おっしゃった。私は、こんな職務怠慢の法務大臣は罷免すべきだと思いますよ。総理のお考えを聞かせてください。

中井委員長 法務大臣、職務権限を逸脱している検察かどうかという点について御答弁願います。

柳田国務大臣 先ほども触れましたとおり、第二百四十八条にのっとって地検は粛々と判断を下したものと私は思っております。

 なお、その報告を聞いて、私は指揮権を発動しなかったというのが事実でございます。

菅内閣総理大臣 私は、今の石原さんの一連の議論を聞いていて、必ずしも私の中ではよく流れがわからないんですね。つまりは、政治が判断しろと。しかし、例えば逮捕するしないというのを直接、総理がしろとかするなとかという、そこまで判断をすべきだというところまで言われているのか。

 基本的には、いろんな判断がいろんな段階であると思いますが、少なくとも海保も一つの捜査機関でありますので、そこでの判断があり、その後は検察の判断があり、釈放についても、それは例外的に指揮権発動という規定が法律にあることは私も承知しておりますけれども、今、法務大臣が言われたように、そうではなくて、検察官の判断の中には、先ほど私が多少詳しく申し上げたら、何か役人の文書を読んでいると言われましたが、詳しく言わなければいけないときには間違っては困りますので、つまりは、こういう初犯であったとか、いろんなことの要素に加えて、そうした総合的な判断ができるというふうになっているわけでありますから、そういう判断のもとに検察当局が下した判断に対して、それを法務大臣として、そのことを了としたといいましょうか、認めたということは、私は、法務大臣としての判断は全く正しかった、このように思っております。

石原(伸)委員 それは違います。

 一点だけ言わせていただくならば、検察が外交判断をするということが了とされるのか了とされないのかということで、私たちは、検察にはそんな権限がないと。その権限がない者が判断することを了とした以上、私は問題じゃないかという指摘をさせていただいているわけであります。

 これは、もう言った言わないになりますので、もし法務大臣の腹を切らせることが総理にできないなら、我々が介錯してあげても結構でございます。

 次に移らせていただきたいと思います。

 総理は、今のお話を聞かせていただいても、政治家として、逮捕するのはもちろん現場であります、しかし、その報告が上がるということ、これは間違いなく、中国の艦船による領海侵犯、さらに海上保安庁の船に船をぶつけてくるということであって、政治問題になるなということがあるからこそ、当日二回にわたって官邸で各省庁が集まって会議がなされた、ですから政治家として逮捕という決断はされているんですよ。中国の恫喝におびえてこれはひっくり返したのじゃないかと国民の多くの方々が思っているということも、先ほど示した時系列の中で明らかになっている。

 そして、二百四十八条のことを法務大臣はおっしゃいましたけれども、これは法務委員会で徹底的にやらせていただきますけれども、処分保留のままなんですよ。起訴したわけでも不起訴でもないんですよ。それを、責任を検察に押しつけている。

 今回のような国益にかかわる重大問題について、私たちは、自民党は少なくとも政治家が決断すべきだと思っているのであります。そもそも、総理はそうじゃないと。逮捕するのもしないのも現場が決めるんだ。それでは、こういう領海等々で起こったら、領土問題があるようなところで起こったら、日本国の主権も領土も、国民の命を一体だれが守るのか。最高責任者の総理しかいないんですよ。

 そう考えると、皆さん方のこの答弁を聞いている限りは、本当に外交問題で政権を担当する能力があるのか、覚悟もあるのか、こういうことを天下に知らしめた。この点においては、こんなことでこういう議論をすることは好ましくないという仙谷長官の話と私は一緒なのであります。

 私は、どうも総理の答弁を見ていると、おどおどされていますよ。おどおどしている。これまでの市民活動家、野党の党首であった菅直人のときの勢いがない。男らしくないよ。男らしくない。男なら、やはりずばっと言ったらどうですか、持ち味を。やはりこれはおかしいと思うな。テレビを見ている方がどう思われるか。私はその点をしっかりと総理に御認識をいただきたいということを言わせていただきました。

 最後に、経済について伺わせていただきたいと思います。

 私は、政府の対応は遅過ぎるんだと思います。昨晩、G7に参加している私の友人にちょっと電話して、どうだったかと聞いてみました。各国の日本に対する反応は、ああ、やっと日本も動いたか、それにしてもちょっと遅いよな、こういう一言に尽きるということでありました。

 参議院選挙から二カ月、政府は、今国会の冒頭に補正予算も提出されておりません。一体何をやってきたのか。

 先日、日銀が金融緩和姿勢をとりました。これは評価いたします。しかし、デフレの克服のためには、同時に必要な有効需要の創出、すなわち、政府の皆さん方の経済政策というものが非常に重要なんです。そして、必要なのは、遅過ぎたという言葉にあるように、スピードなんです。日銀が包括的な緩和策に踏み切ったなら、すぐに政府が具体策、需要策、どうやってつくるか、こういう話を何でされないのか。

 私は、さまざまな評価があると思いますけれども、日銀のこの包括緩和は正しいと思う。しかし、日銀にああしろこうしろと主張するばかりで何にもしようとしないから、きょうのマーケットを見ても、円高になった、為替が高くなったことによって、株式マーケットも弱含みになって九千五百円前後まで落ちてしまった。マーケットがどう見ているかということに対する優しさというものが私は大切なんだと思います。

 日銀の決断を生かすためにも、一日も早い具体策を明らかにしていただきたい。今お考えがあるんだったら、海江田大臣、また総理、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

海江田国務大臣 石原委員のお言葉でございます。遅いというお話がございましたが、日銀が包括的な金融緩和策を定めましたのは五日でございます。私どもが緊急総合経済対策を定めましたのは八日でございます。三日でございます。ここ数日間、新聞などでも、私どもが定めました総合経済対策に対していろいろな御意見がございますが、押しなべてスピーディーな対応であったという評価をいただいていると思います。

 それから、私どもはこの間、まず第一次としまして、九月の上旬でございますが、予備費を使いました経済対策、これがおよそ九千二百億円でございます。そして今度は、私どものところに内閣の改造がございまして、そして緊急経済対策、そしてそれに続く補正予算の編成をしろというのが来ましたのは二十八日でございます。ですから、これは玄葉政調会長ともども、まず民主党の意見をまとめる、それから野党の皆様方も官邸に経済対策案を持ってこられましたので、これも十分しんしゃくをさせていただいた。それから、もちろん、同じ与党の仲間であります国民新党あるいは新党日本の皆様方もいろいろな提案をしていただいた。

 そうした中で、先ほどもお話をしましたけれども、五日に、経済対策を定めまして、五つの柱がございます。もう時間も限られておりますので一つ一つお話をすることはできませんが、全体で五兆五百億円。ただ、これは一部、地方交付税の特会への繰り入れもございますから、およそ三兆八千億円でございますが、この中身を定めたところでございます。

 そして今、本当に政府が一体となりまして補正予算の具体的な中身を詰めているところでございますから、これも恐らく今月の末には仕上がろうかと思いますから、それほど遅い遅いとおっしゃるならば、一日も早く熟議をしていただいて、そしてここでこの補正予算を成立させていただきたい、そのように思っております。

石原(伸)委員 フレームだけ示して議論してください、だから門戸は開いていると言っているじゃないですか。具体策を早く示せと言っているのであります。

 それと、最後に総理の決意を実はお聞かせ願いたいんですけれども、総理がきょうの午前中の予算委員会で言っていたとおり、待ったなしの状況なんだと思います。どこの党だけでも多分乗り切れないでしょう。それは総理の言っていることは正しいと思います。

 しかし、私たちが共通に物を決めていく上でどうしても必要なことは、過去、現在、未来、まじめに努力した人が報われる社会、そういうものをつくっていこう、これは我が党の二〇一〇年綱領の中に書いた言葉なんですけれども、そんな中で、今だけよければいいんだ、自分たちだけよければいいんだ、あとは子供たちのツケなんだ、そういう政策は、菅総理が代表選で勝利されたんだからぜひやめてもらいたい、マニフェストは修正していただきたい。

 玄葉さんはかなり思い切ったことを言われている。菅総理も玄葉さんと同じぐらいはっきりそういうことを言ってもらいたい。三Kをやめることじゃないですか。子ども手当、高速の無料化、農家の戸別所得補償、ばらまきをやはりやめる、こういう決意があるのかないのか、単刀直入に総理にお聞かせ願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 一言、前の質問に関連しますが、何か私が元気がないとか、おどおどしているとか、時々有権者からもそう聞かれるんですが、私は、挑発に乗らなくなって少しは大人になったのかなと自己評価をいたしておりますので、ぜひ国民の皆さんにも御理解をいただきたいと思っております。

 そして、今おっしゃったことは、マニフェストについてはいつも私は同じことを申し上げております。〇九年マニフェストは誠心誠意実現のために努力をする、しかし、その中で財源の問題を含めてどうしても実現できないものは、その理由を国民の皆さんにしっかり説明してやっていく、こういう方針は一貫して申し上げているところです。

 そこで、先ほどまさに石原さんも言われたように、今日本は、いわゆる景気の問題、成長の問題と、財政の健全化をやらなきゃいけない問題と、全部言えば五つの項目があると私は思って提起しておりまして、その問題は、どの党が政権をとろうとも、どなたが総理大臣になろうとも、避けて通れない問題だという認識は私は共通だと思うんです。

 ぜひとも、そういう中で、ここは、言っていることがおかしいならおかしいと言っていただくのは大いに結構ですから、まさにその中で議論をして、熟議の中から方向性を、ぜひ合意を目指して、私たちも努力しますが、野党の皆さんにも御努力をお願いしておきたいと改めて申し上げておきたいと思います。

石原(伸)委員 時間が参りましたので、他の委員会でもう少し深まった議論をさせていただきたいと思いますけれども、〇九年のマニフェスト、これとはぜひ決別をしていただきたい。

 誠心誠意実現に努力するということは、言葉を返せば、ばらまき政策と決別し切れない、そういうふうに言っているように聞こえます。もしそうであるならば、菅内閣が続くことは、私は国民にとって大変な不幸だと断言せざるを得ません。総理の言う最小不幸社会どころか、最大不幸社会が実現します。

 きょうの議論を通して私が感じましたことは、国の領土を守ろう、主権を守ろう、政治と金についてみずから自浄作用をもって説明していこう、そういうかけらは残念ながらこれっぽっちも感じることができませんでした。無策無能、無節操な内閣を打倒することが一番即効性のある日本再生策であると申し述べさせていただき、次の石破政調会長に質問を譲らせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、石破茂君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石破茂君。

石破委員 総理、代表選挙を野党の立場から見ておりました。幾つかのことを感じました。一つは、これは本当に一つの政党なんだろうかということを感じたんですね。

 私も、議員になって二十四年余り、自民党の総裁選挙を何度も経験してきました。自分が出たこともあります。自民党の総裁選挙というのは、政策のアクセントの置き方、優先順位のつけ方、あるいは政治手法について、そういう相違はありました。しかしながら、政策が全然違うというようなことはやったことがない。

 つまり、今回、菅候補と申し上げることをお許しいただきたいのですが、菅候補がおっしゃったのは、一つは、マニフェストは見直す、消費税、これも含む社会保障と一体の税制の抜本改正は行いたい、そして普天間については、日米合意、これを踏まえて辺野古への移設を推進する、こういうような公約を掲げられた。

 対する小沢候補はどうであるか。マニフェストは国民への約束だから修正はまかりならぬのである、あるいは消費税、これは無駄の削減が先だ、それまでこれには手をつけない、さらには、普天間の移設は国外、県外、どこですかと問われれば、三人寄れば文殊の知恵で、いい知恵が出てくる、そして第七艦隊だけあれば在日米軍はいいのだ、こういう話をされたわけですね。

 これって、足して二で割るような性格のものではない。全然違う。これは一体何だろうかという思いを私は禁じ得なかった。(発言する者あり)私が禁じ得なかったと言っているんです。禁じ得ない。これは全く違う主張があったということですね。

 そして、さらには、サポーターあるいは党員、こういう方々の投票と国会議員の投票結果が全然違っていた。サポーター、党員という、民主党のコアの支持層ではあるけれども国民の皆さん方に近い立場の一般の方々、そういう方々の支持は菅さんが小沢さんの五倍多かった。だけれども、国会議員の投票はほとんど同数であった。何でこんなに差があったんだろうかな、こう思うわけですね。これは一体何なんだろうかと思うわけです。(発言する者あり)静かに。静かにしなさい。

 そして、選挙の最中に鳩山前代表がこういう発言をされた。私を総理にしてくれた小沢さんを支援することが大義である、こういうふうにおっしゃった。私は、子供のころ、ツルの恩返しという話は読んだことがあるが、鳩の恩返しという話は余り聞いたことがないのだけれども、普通、日本語では、このようなことは大義とは言わないだろう、こう思っているわけですね。非常に不思議な感じがいたしました。

 民主党さんになぜ綱領がないのだろうか。これは、つくらないのではない、つくれないのだ。なぜならば、つくろうとした途端に、憲法観も、安全保障観も、外交観も違う。民主党ができて何年たちますか。政党の憲法というべき綱領がなぜつくれないのかということであります。それはつまり、何で外交政策がぶれるのか、安全保障政策がぶれるのか、それを考えたときに、それは民主党の中において全く異なる考え方が併存をしている、それにゆえんするものだというふうに私は考えざるを得ないのであります。

 しかしながら、この代表選を通じて、私は一つすごく感動したことがある。それは、菅さんが、小沢さん、鳩山さん、そして輿石さん、それに菅さんを加えたトロイカ体制、これを実現するようにと迫られたときに菅さんが語ったと伝えられる、それをすれば総理を続けることはできるだろう、しかし、それでは政治家菅直人が終わってしまう。これは私は正直言って感動しましたね。久しぶりに、政治家菅直人、真骨頂を見た、そのように思ったんです。

 総理、私はこの間の予算委員会で、失礼だったかもしれないけれども、しっかりしてくださいというふうに申し上げました。私は、しっかりしてくださいもそうだけれども、今回はこう言いたい。総理、恐れないでくださいと。

 先送り一掃、こういうふうにおっしゃった。私は、自民党が昨年、国民の皆様方から厳しい審判をいただいたのは、いろいろな理由があると思っていますよ。しかしながら、その中に大きな理由が二つあると自分は自己反省をしながら思っている。それは、二つのことを先送りしてきた、こういう反省があります。

 一つは、憲法、安全保障についての認識をきちんと示してこなかったこと、集団的自衛権についての考え方をきちんと詰めなかったこと、日米関係のこれからについて具体的なビジョンを国民に提示しなかったこと。これは私は、先送りとして、反省をしなければならないと思っている。

 もう一点は、税制改正、消費税を引き上げねばならない、法人税は引き下げねばならない、財政の再建を果たさねばならない、そのことについてきちんとした議論を先送ってきた。このことは私自身として強烈な反省を持っております。

 総理、恐れないでください。国民に対して真っ正面から語ってください。先送り一掃、そうであるならば、今まで先送りしてきたことは何だったのか、自民党が先送ってきたことは何だったのか。政権交代なんだから、今までの考え方を改める。我々はもう野党です。今までやってきたことのどこが間違っておったのか、そのことをきちんと反省する作業を今やっています。どうか総理、そういう意味では似たような立場なのかもしれません。今さえよければいいんじゃない、日本さえよければいいんじゃない、自分たちさえよければいいんじゃない、その思いのもとに、これから議論をしてまいりたいと思います。

 本論に入る前に、二点だけ確認をさせてください。

 一点は、先ほど石原幹事長もお尋ねをしました。総理が逮捕の方針を聞かれた、その時間が実は午前八時であったにもかかわらず、これを直したというような報道があります。これは、真実は私は存じません。そういう報道があった。一面に出ていましたからね、地方紙の。これは何なんだということはお尋ねせざるを得ない。そして、いやいやと、官房長官は午前零時に。参議院の本会議では何とお答えになったか。それは聞いて、しかるべく総理に報告した、こういうふうに官房長官は答弁されておられる。

 官房長官がお聞きになって、その後間髪を入れずに総理は報告を受けられた、こういう認識、事実で間違いないですか。一点お尋ねします。

仙谷国務大臣 ちょっと質問の趣旨がよくわからないのでありますが、事実は、十八時十五分ごろ、逮捕の方針が出てきましたので、それはそれでいいということになって、つまり異を唱えないということになって、それを総理にまず報告したということです。

 それから、おっしゃる、逮捕状が執行されたかどうかというのは、逮捕状の執行が次の日の午前二時三分でありますから、それの執行をされましたよと、要するに逮捕状が執行されたという報告は、次の日の朝の八時に総理のもとに秘書官を通じて届いている、こういうことだと思います。

石破委員 長官、逮捕の方針が決まりましたよということを総理に報告されたのはいつですか。

仙谷国務大臣 私の記憶では、九月七日十八時十五分過ぎであります。

中井委員長 それは逮捕の方針。(仙谷国務大臣「はい」と呼ぶ)

石破委員 その時間は、総理はたしか代表選でいろいろなお仕事をしておられたのではないかと承知をしておりますが、そういう最中も、総理に、十八時十五分ですか、官房長官から御報告があった、こういうことで事実は間違いないですね。

仙谷国務大臣 私の記憶では、総理は総理室で執務をされていたという記憶がございます。九月七日の十八時十五分ころ、福山官房副長官が官房長官の部屋から総理の部屋に赴いて報告をしたということを聞いております。

石破委員 これは、石原幹事長もお尋ねしたことをもう一回尋ねたくもないんだが、地方紙一面に大きく出ている話なんですね。多くの人がこれを見ているわけです。私が言いたいのは、事実か事実じゃないかということと同時に、こんな話が何で出てくるんだ、官邸の危機管理体制というのは一体どうなっているんだというふうに思って、お尋ねをいたしました。

 もう一点聞きます。

 総理がASEMにおいでになりました。そのときに中国語の通訳は同行していませんでした。総理は、何とか温家宝総理との会談を実現したい、そういう強い思いを持っておられたはずです。それは是とします。そうあるべきものでしょう。

 ですけれども、中国語の通訳を連れていかなかったので、どういう会談になったか。向こうは日本語の通訳を連れてきていましたね。総理が日本語でお話しになる、それを総理に同行した通訳が英語に直す、それを中国の通訳が英語を中国語に直すということが行われた。温家宝さんが中国語で答える、それを中国人の通訳が英語に直す、それを聞いた日本側の通訳が英語を日本語に直す、こういう一連の流れだったわけですよね。

 そうすると、では中国語が何なのか、何を話しているのか、どのように伝えられたのかということが日本側でわかる人は実はだれもいなかったということ、これは事実でしょう。(発言する者あり)そんなことは問題ないと言う人がいますが、そんなことは問題でないという意識の方がよっぽど問題ですよ。向こうが何を言ったか、だれにもわからない。こっちがどう訳されたかもわからない。それが何ともないと思う認識自体が大きな間違いです。(発言する者あり)あなたは本当に元外交官でしたかね。ではいいや、やじに一々答えてもしようがない。

 それで、私がお尋ねしたいのは、これはまさか冗談だと思いますが、何で連れていかなかったのか。総理の随員は数を絞れ、こういう仕分けがなされたから、まさかそんな愚かなことはないでしょう。それは本末転倒というものです。向こうは連れてきているわけですからね。いいですか、向こうはわかる人間を連れてきている。では、こちらも連れていくべきではないか。先ほどから連れていかない方がいいと言っているやじがありますが、では、連れていくべきではないという判断をなさったのか。

 これは危機管理の点からいってかなり問題ではないかと思いますが、連れていかない方がいいという御判断があったのですか。

菅内閣総理大臣 まず、冒頭の幾つかのお話の中で、恐れるなというある意味では励ましのお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 まさに、今我々が置かれた状況は、何か目先のため、あるいは短期に政権を維持するためといったような状況ではなくて、本当に後世に、この時点でしっかりとした日本再生の道を踏めるかどうかというときにあると私も考えていますので、そういう意味では、何物も恐れないで私なりに頑張りたい。ぜひとも、与野党を超えて、一緒になって、そういう姿勢で臨んでいただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 それから、今、ASEMでの御質問をいただきました。

 これはまだ、この日中関係のいろいろな出来事は現在もある意味では継続しているというか、先日も防衛大臣が出かけられていますし、これからもまたベトナムでの会談もあるいはあるかもしれませんし、そういう中にありますので、これは御理解いただけると思いますが、余りいろいろな細かい事情まで、どの時点でどういう形で申し上げていいのかというのは、率直に言って慎重にならざるを得ません。

 私は、ASEMに出かける折に、最初から温家宝総理との会談を何としてもセットするようにというようなことは指示はいたしておりません。私的な気持ちで言えば、ある意味、自然体で臨んだつもりであります。もちろん、いろいろな方にいろいろな形で御努力をいただきました。

 それで、最後の場面で、よく言われていますように、全体のワーキングディナーが終わって、私は、それが終わったらもう記者会見をして帰国する予定でありました。その会場から出た折に、温家宝総理と同じ方向に歩いていて、顔と顔が、目と目が合いまして、ニーハオぐらいは私も申し上げられますので話をして、そして廊下のそばのいすに座って、私の方にも何人かのスタッフはついておりました。向こうにも何人かのスタッフがついておられました。

 ASEMでは多分、温家宝総理の方も英語の通訳が基本的にはついておられて、実は、中国語の通訳は通訳という形ではありませんでした。ある程度の役職を持ったスタッフでありました。そういう中で、英語の通訳二人を挟んで基本的な話はいたしました。確かに、途中の幾つかのところでは中国のスタッフが中国語を日本語に表現されたこともありましたけれども、基本的には、日本語から英語、向こうが英語から中国語、さらには逆のルートで話ができました。

 そこで話をしたことについては、もういろいろな機会に申し上げておりますが、その後の中国側の発表なり我が方の発表において大きなそごは出ていないというふうに思っておりますし、そういう形でしっかりとコミュニケーションはできた、このように思っているところであります。

石破委員 これは全部に通じる話なのですが、危機管理というのは、あらゆる可能性を想定して、どのような場合でも対応できるようにすること。その中の恐らく八割、九割は、そんなことは起こらないんでしょう。安全保障というのはそんなものです。心配して心配して心配し過ぎて、こんなことが起こったらどうしようとありとあらゆる可能性を考えて、それにはどのように法的に対応するか、どのように能力的に対応するか、そういうことをすべて考えて対応するのが私は危機管理だと思うし、それは政府にしかできないことなんだと思っている。

 今後、ありとあらゆることに想定をして、すべてが正しかったとおっしゃるのではなくて、人間だから間違いはあります、そういうことの対応をぜひしていただきたいと思います。

 もう一つお尋ねしましょう。

 政党法というものをどうお考えになりますか。

 つまり、代表選を見ておって、政党とは一体何だろうかということを私は考えた。外国人の方も投票できるんですよね、御党は。日本国の最高権力者たる内閣総理大臣を決めるのに、外国人の方も投票できる。我が党は公選規程において、そのようなことはできないと明らかに定めております。何なんだろう、政党というのは。

 そして、政治と金の問題が出ると、総理はすぐ企業・団体献金の禁止というふうにおっしゃいます。そのことの是非はまた論じましょう。ですけれども、企業・団体献金を禁止すると何が起こるか。例えば立法調査費、例えば政党助成金、そのように公的支出のウエートがさらに上がるということが起こるわけですね。では、そのようなお金をだれがどのように使ったのか。一部の人に権限が集中し、一部の人が好き勝手に使う、そのようなことは許されない。

 あるいは、党の代表の決め方はこのようにするのである、あるいは党の意思決定の仕方はこのようにするのであると。幾つかの国は政党法があります。我が国憲法は、政党法がありません、それを想定していません。でも、私は、国民から政党助成金というものを受け取る、そういう権利を享受するのであれば、国民に対して責任を持つ、そういうような政党の義務を定めた政党法というのを早期につくらねばならぬのではないか。

 小選挙区が導入されて随分たちました。最初考えていたように、私自身、随分一生懸命導入に力を尽くした方ですが、最初想定していたこととは随分違う状況が起こっている。

 細川内閣において、私は、やはりこの席からこういうことを申し上げました。この選挙制度改革が有効に機能するための条件は三つある。一つは、適切な地方分権がなされること。二つ目、主義主張による政党の再編が行われるべきこと。三点目、政党法というものをきちんとつくり、政党は国民に対する責任を明らかにすること。この三つとも道半ばであり、特に政党法については全く具体的に議論が進んでいない。

 私は、政党が国民に対していかなる責任を負うべきか、そのことを定めた政党法というものを議論し、それを制定することが我々立法府にいる人間の、政党に属する人間の責務だと思いますが、総理どうですか。

菅内閣総理大臣 私も政党というものについて大分考えた時期がありました。一人一党という言葉も一方であると同時に、かつてのソ連や現在の北朝鮮のように、あるいは中国も今でもある部分そうですが、政党イコール国家というか、そういう国なり政党もあります。

 そういう意味で、本来は政党というのは、自発的な考え方を持つ仲間が集まってこれが政党だと言えば、日本でも政党を名乗ってもおかしくない時期がありました。今、法律で政党という言葉が入っているのは、多分政党助成金が最初ではなかったかと。それまでは確認団体という形で、選挙においても政党という言葉が使われていなかったように思います。

 そういうことも含めて、私も、政党助成金というものが導入された中では政党の要件がそれに規定されましたので、ある部分、政党助成金の法律が半ば政党法、つまり国会議員が五名以上とか二%以上とか、そういうことを規定してきていると。それで十分かということになると、それは議論の余地はあると思います。

 また、我が党の党員、サポーターが国籍要件がないという問題も指摘をいただいています。

 これも、率直に申し上げて、これまでは野党が長かったものですから、そういう議論は余り出ませんでしたが、政権を担当することになって、御指摘もいただいていますので、この問題もしっかり議論をしていきたいと思います。

 もう一つあえて申し上げれば、今回の代表選挙、率直に申し上げて、私も、民主党の代表選挙ばかりではなく、例えば新進党時代の代表選挙、党首選挙のこともいろいろ関係者のお話も聞いておりまして、かなり厳密なルールをこの間民主党はつくり上げてきたと思っております。一〇〇%ではありません。もちろん、多少の問題はありました。しかし、かなり厳密に執行され、そういう意味では、党内外で、一、二の例外を除けば、執行そのものは大変公平に、公正に行われたというふうに思っておりまして、そういう点では、これからの政党のあり方は、一層、今の御指摘も含めて、本当に政党法が必要であるかないかも大いに議論をしていきたい、こう思っております。

石破委員 先ほどの石原さんとの議論を聞きながら、一点、どうもよくわからないことがありました。小沢さん、鳩山さんの責任についての議論です。ここはもう総理の答弁は先ほどよく聞きました。

 総理、昨年の十二月ですよね、総理が「大臣」という本の増補版を出されたのは。総理、あのときはもう鳩山内閣の副総理でいらっしゃいましたよね。つまり、橋本内閣の厚生大臣をやめて一議員という立場というのではない。民主党の幹部であり、内閣の副総理でありという責任ある立場で、去年の十二月に「大臣」という本の増補版を出されましたね。その中で、三権分立観について述べておられます。

 誤った三権分立観が生まれている。自分は政府の一員だから与党に対して物を言わないとか、国会に対して発言しないとか、そういうことは誤った三権分立観なのだ。正しい三権分立観というのであれば、一国会議員なのだから、与党の党首だから、与党に対してこうせよと言うべきだし、国会に対してこうあるべきだと言うのが正しい三権分立観だ。

 私は、細かい議論をするつもりはないんですよ。それが三権分立というものとあわせて議論をされているので、総理、三権分立観が変わったのですか。総理の三権分立観、今も変わっておらず、総理といえども一国会議員であり、与党の党首だ、与党に対して意見をする、国会に対して意見をする、それは基本的に正しいのだと今も考えておられますか。

菅内閣総理大臣 これは、その部分だけの議論ではなかなか国民の皆さんにも御理解いただけないと思うんです。それで、できるだけ簡単に申し上げますが、議院内閣制という言葉はありますけれども、議院のインは衆議院、参議院の院で、私は国会内閣制と呼ぶのがふさわしいと思っております。

 私は、三権分立は今の憲法の中の第一の原則にはなっていないということを申し上げているんです。第一の原則は、言うまでもなく国民主権です。そして、三権と言われているものは、機能としては確かに行政権、立法権、司法権はそれぞれ分かれておりますが、権限という意味では国民主権の一本であり、そして、その国民主権が一番直接的に反映しているのが国会議員を選ぶということで、そして、この国会で多数を得た政党が、私は与党という言い方は必ずしも正確ではない、ルーリングパーティー、政権党と本来言うべきで、その政権党が、自分たちのリーダーを総理大臣にして自分たちで内閣をつくる。ですから、内閣というもの全体を、政権党、つまり多数をいただいた党が責任を持つのがこの議院内閣制のもともとの原理である、こういうふうに考えております。

 イギリスなどを見てもそうなっております。アメリカの場合は大統領制ですから、もちろんルールが違います。

 そういう意味で、私が申し上げている三権分立というものは、一般的に、国会と内閣が対等だという考え方は間違っている。国会は単なる立法府じゃありません。立法府の前に総理大臣を選ぶ府、つまりは行政を、内閣をつくる府ですから、そういう意味では、当然ながら、国会の方が国権の最高機関であるという憲法の規定、条文どおり理解すべきだというふうに認識しております。

 そういう中で、先ほどもおっしゃったことについて、それを敷衍して確かにいろいろ論を広げておりますが、その議論そのものは、原理は今申し上げたようなところにあるということをぜひ御理解をいただきたいと思っています。

石破委員 原理と答えがやや乖離があると思っているので聞いているんです。またやりましょう。

 ただ、申し上げておきますが、我が国は三権分立を採用するなどと憲法に書いてある国はどこにもないですよ。日本だけがそんなことを言っているわけではない、日本だけないわけではない。私もほとんどの憲法を読んでみましたが、それを採用しているなどということを憲法にきちんと書いてある国はありません。ここのところはもう一度議論をしましょう。これはかなり大事なところであります。

 では、憲法を離れまして、総理の外交についての考え方を承ります。

 総理は施政方針の中で、外交を国民一人一人が自分の問題としてとらえ、国民全体で考える主体的で能動的な外交を展開していかねばならない、これはかなり新しいフレーズであります。正直言って、外交と安保は票にならないと言われてきました。そのようなことを議論しても票にもならない、もっと現世の御利益にかなうようなことを言うべきであるといって、随分と我々もつらい思いをしてきました。

 国民が一人一人のこととして考え、主体的に能動的に考えていく、必要なことです。しかし、国民世論におもねたり、国民世論に迎合する外交は国を滅ぼす、そういうこともたくさんあることは事実であります。

 では、今、国民は、政府が展開している外交、これをどのように考えているかということであります。大体どの調査も似たような数字を出していますが、今回の事件で中国に対する印象がとても悪くなった、二九・五、やや悪くなった、三一・五、海保の逮捕は適切だったとするのは八七・三、釈放決定の判断は適切ではない、これは七〇%、釈放は検察独自の判断であり政治介入はないという説明に納得しているか、納得していないのが八一%、こういう数字なんですね。

 これは何でこんなことになるのだろうかということであります。国民の多くの皆様、私も一人一人に聞いたわけではありません、ですけれども、東京において、あるいは選挙区において、全国において、いろいろな話を承りますが、国民は何を考えているかといいますと、民主党は政治主導を標榜される、今回の一連の動きの中にどこに政治の主導があったのだろうかということ。もう一つは、法にのっとり粛々と判断をした、こうおっしゃる。国内法にのっとって粛々と判断をすると、どうしてこんなことになるのだろうか。それは、そもそも国内法を適用することが誤りだったのか、これは多くの議論がありますよ、それとも法律そのものが誤っているのか、それとも法律の解釈、運用が誤っているのか、どれかですよ。どれかでなければ、国内法にのっとって粛々と対応したら、こんなに国民が不満に思う、不審に思う結果が出るはずがないのであります。

 何でこんなことが起こるんだろうか。私は、介入という言葉がお嫌いであれば、適切な関与と申しましょう。適切な関与はあるべきだったと思っているのです。それが政治の責任というものだと思っているのです。

 総理にお尋ねします。なぜ日本国憲法は、内閣の職務として「外交関係を処理すること。」というのを特に掲げていると思いますか。

菅内閣総理大臣 まず、私の申し上げている国民全体で考える主体的で能動的な外交ということについて真正面から受けとめていただいて、ありがたいと思っております。

 石破さん御自身が言われたように、だからといって、瞬間瞬間の世論調査的な賛否だけで動かしていいということでないことはもちろんであります。ですから、今回の一連のことも、もう少しこの状況が落ちついてきたときに、世論調査があるかどうかわかりませんけれども、どうであったかといえば、私は、一連の流れの中でもっと理解をいただけるところもあるのではないかと。ただ、今の段階で、今おっしゃったような数字が出ていることそのものを否定する気持ちはありません。

 そういう中で、今、介入とか関与とか、ある意味でいろいろ微妙な言葉をお使いになりました。いろいろな議論の中で、外交そのものを検察に何か任せたといったような言い方をされる方もありますけれども、当然ながら、今回のことは、あくまで、ある事件についての処理について、刑事訴訟法に基づいた中での範囲で、ある種のそういった問題、つまりは社会的な影響ということも判断をするということができる形になっていたということでありまして、日中関係、日米関係、あるいは世界との外交関係そのものの方針を検察当局にゆだねたということでないことはもちろんのことであります。

 ですから、そういう中での一つ一つの判断、その中で、政治的にストレートに指示が例えば外務省に出せたりできることと、先ほどの逮捕のように、ストレートにそれに対して逮捕せよとかするなとかと言うべきでないことと、そういう中の全体として、私は、決して百点をいただけるとは思いませんけれども、何とかこの難しい状況の中で、一定程度の範疇の中で、日中関係あるいは国際的な関係の中でも、日本の立場が相当理解された中でこの段階まで来た、そういうふうには私は見ていただいても決して誤りではないのではないかと思っております。

石破委員 済みません、質問に答えてください。なぜ憲法七十三条は「外交関係を処理すること。」というのを特に内閣の職務として定めているのですか。

 つまり、いいですか、外交権はだれに属しているかというと、それは内閣に属しているのです。これが日本国憲法のつくり方です。つまり、日常普通の事務の処理は外務大臣を長とする外務省の所掌として差し支えがない、しかしながら、外交交渉とか外交使節の任免とか、そのように極めて重要なことは、極めて重要であるがゆえに、極めて慎重に取り扱わねばならないがゆえに、特に日本国憲法第七十三条は「外交関係を処理すること。」というのを合議体としての内閣にその職務を負わせている、そのように考えます。

 そのことについて、総理、どのように認識しておられますか。

菅内閣総理大臣 私はこの条文の解説書は今回読んできておりませんが、私なりの見方を申し上げると、この同じ七十三条の中には、例えば「予算を作成して国会に提出すること。」という項目もあります。

 つまり、予算は、確かに提出は内閣の仕事ですが、予算編成については、与党、野党、多くの皆さんがいろいろな意見を言われることも当然ですし、そういう意味で、私は、「外交関係を処理すること。」というのは、直接的なその責任は内閣にあることはもちろんであります、しかし、そのことと、私が申し上げているように、国民の皆さんが外交についても自分たちが担っているんだということを思い、あるいは、与党、野党を超えて、そういう議論をまさにこの場でもしているわけですから、そういうことは決して矛盾しない、そういうふうに理解をいたしております。

石破委員 ただ、内閣の職務ということに対する今の総理の解説は、どのような憲法の教科書にも書いていないですよ。それは間違いです。そこはぜひよく御認識をください。

 そして、今回逮捕をしたということ、これが重大な内閣として処理すべき外交関係に発展するということは、当然だれも認識をしていなければなりません。起こったことは検察が独自に判断をする、その処理は内閣が行う、そうではないのです。起こったこと自体がすなわち外交関係に発展するということは、閣僚の皆様方であれば、当然知っており、認識をしていなければおかしいことなのです。この判断は内閣全体で負うべきものではなかったのですか。

 衝突事件が起こり、それを逮捕する。これは今までこんなことは起こったことはないんだ。向こうの船が我が国領海で違法操業をしている。そして、それに対して何度も退去を警告している巡視船に対して故意にぶつかってきた、これが重大な外交関係に発展することでなくて何だ。これを逮捕し、勾留し、釈放する、それはすべて重大な外交関係、処理すべき外交関係に発展する。その認識は、内閣の一人一人が必ず持っていなければならない。総理であり、官房長官であり、法務大臣であり、外務大臣であり、すべてがその認識を持っていなければならない、それが憲法の趣旨なんだ。

 だとするならば、検察が独自に判断をしました、私たちはしません、そういうことではないはずだ。

 官房長官にお尋ねしたい。そういうような、このような事案が起こりました、逮捕いたします、それを了とされたんですよね。このときに、これが重大な外交関係にやがて発展するに違いない、そういう認識は官房長官はお持ちでしたか。

仙谷国務大臣 当然のことながら、重大であるか、どの程度大きい外交問題になるかは別にして、外交問題にはなるなというふうに考えました。

 つまり、従来、自民党政権のもとでは、接舷をし、立入検査はなさるけれども、逮捕という行動はとっていない。本件の場合は、接舷をしようとした場合に逃げて、それでぶつかってきたという事案でありますから、それで公務執行妨害で逮捕する、こういうことに海保の方針がなったわけですね。したがって、初めての事例ということもあって、外交問題になる可能性といいましょうか、なるな、そういうことは当然のことながら予測をしておりました。

石破委員 率直な答弁で結構です。そのとおりです。外交関係になるという認識を官房長官はお持ちでいらっしゃいました。恐らく、それを総理も共有し、そのことを伝えられたのだと思っております。

 では、これはどう処理すべきだったんだろうか。何せ初めての事案ですからね、長官がおっしゃるように。自民党時代はどうだったこうだった、では、自民党ならどうするんだということを述べなければ極めて無責任だ、私はそのように思っております。

 これは二つあったんだろうと思います。

 中国がどのように反発しようが何しようが、この尖閣は固有の領土であり、領土問題は存在していない、これが日本政府の立場ですね。

 これは、パネルを今出しますが、この間、集中審議で小野寺さんが出したパネルでもある。つまり、尖閣で遭難をした漁船を助けた、漁民を助けた、そのことに対して中国から感謝状が来たということですから、このこと一つをとっても明らかな話なのですよね。反論材料は並べれば幾らでもありますよ、今これを一々やりませんけれども。

 固有の領土である、中国が何を言おうが、ここは我が国固有の領土である、我が国が管轄権を行使すべき領土である、あなた方の主張は何の根拠も持たないのである、そのように言うという、つまり、勾留、起訴、公判まで持ち込む、これが一つの考え方だったでしょう。

 もう一つは、いやいや、いろいろな配慮もしなければならない、穏便に済ませなければならないということであれば、起訴を行うか、起訴猶予とするか、不起訴処分にするか、そういうやり方もあったでしょう。ですけれども、日本国政府としてのメッセージは、いずれにしても政治の判断として発せられる必要があったのだと思っています。国内的にどうのこうのという問題だけではなくて、日本国としてのメッセージは何なのかということを外国に発信する、これも重大な外交のはずだと私は考えているのですね。

 では、長官に伺います。いろいろな報告を受けられた、了とした。了としないという可能性はあり得たのですか。了とする以外になかったのですか。了とする、それ以外の選択肢はなく。

 だって、国内法にのっとって粛々と判断しろと言ったではないかと。官房長官はらつ腕弁護士ですからね。弱い人たちの人権をずっと守ってきた方だ。これは国内法にのっとって粛々と処理しろと言ったではないか、外交関係に配慮するとか、国内への影響がどうのとか、そのようなことは検察の判断すべきことではない、これは政治が責任を持って判断すべきことだと言って激怒するのがむしろ普通じゃないですか。

 でも、それは、そんな可能性はなかったのだ、了とする以外になかったのだ、了としないということは法的にあり得なかったのだというふうにお考えですか。だとすれば、その法的根拠は何ですか。

仙谷国務大臣 という石破政調会長の論理は、捜査に対する指揮権を行使せよという論理に一方ではなります。これはこれで、日本の政治と刑事司法の関係で、国の形あるいは日本の従来とってきた法の支配の問題からして重大な論議を呼ぶことがこれはまた間違いがない話であります。

 つまり、法務大臣に総理大臣が指揮権を発動せよと言うにふさわしい事案なのかどうなのかという、これもまたある意味での政治判断でありますけれども、そういうことをやるべき事案であるかどうかということもあわせて判断をしなければならないということでありましょうから、ある意味でナローパスのようなところを通っていくべき事案だったかもわかりません。

 今回の場合には、司法当局がその持てる権限内で、つまり、起訴便宜主義の考え方のもとで、あらゆる事案の性質、その程度、あるいは刑事事件としてどの程度の悪質性があるのかというようなことに、さらに総合的な判断として日中関係のことあるいは国民のことを考えて判断をされたと。私は、これは検察官の起訴便宜主義の中での判断の枠内で考えたんだなということで、私も了としたわけであります。

石破委員 そう。だから、法務大臣が指揮権を発動するということはあり得るのですよね。それはあり得る。

 指揮権発動というと、みんな、何か極悪非道の、とんでもないことをやるように思っている人もいる。でも、そうであれば、法律がそのようなことを定めるはずがない。それは必要だから、法務大臣は個々の事件を指揮することはできないけれども、検事総長をして指揮することができるという、必要だから法律は定めてあるのであって、必要でないことは定めていません。いいですか。

 今まで、当時の、造船疑獄事件が起こったときに、佐藤栄作自由党幹事長の逮捕を延期し、しばらく任意捜査を続けよという判断を当時の犬養法務大臣がして、そして法務大臣は辞職をし、やがて吉田内閣の総辞職につながっていった。このことの判断は別ですよ。検察審査会にもこの事案はかかっていますからね。そのことをして、全部否定的に考えるべきではない。

 今、官房長官は、刑事訴訟法二百四十八条、起訴便宜主義ということをお話しになりました。これってオールマイティーのものですか。起訴便宜主義というのは検察オールマイティーですか。なぜ起訴便宜主義というものを、起訴法定主義ではなくて、日本国の刑事訴訟法は起訴便宜主義を採用していますか。法務大臣。

柳田国務大臣 先ほども二百四十八条には触れさせていただきましたけれども、同じ答弁を繰り返すことに……(石破委員「なぜ採用したかと聞いている」と呼ぶ)

 二百四十八条をなぜ採用したか。これは地検が判断したものだと思っております。

石破委員 いいですか。起訴法定主義と起訴便宜主義とあるのです。法務大臣、あなたは法務行政の最高責任者なのだから、そのぐらいのことは当然御存じでしょう。

 いいですか。これは最も大事な問題で、起訴便宜主義というのはどういうものなのかという議論がずっとなされているでしょう。これが一番のポイントでしょう、起訴便宜主義というのが。

 起訴便宜主義は、今法務大臣が答弁されたとおりのことですよ。では、なぜ採用しましたか。なぜ起訴法定主義、すなわち、刑法の条文に該当するものはすべて起訴する、その後の判断は裁判所がやるんだというのを起訴法定主義といいますよね。起訴便宜主義というのは、検察官にその裁量を与えている。それはなぜなのかということを聞いているんです。いいです。では、私が答えることでもないが、お話ししましょう。

 それは、起訴しない方が犯罪人の更生にとって容易な場合がある。起訴しない方が、訴追しない方が犯罪人の更生にとってよりよい場合がある。あるいは、訴追をしなくても、ここは少し違いますが、社会秩序が保たれる。だから、検察官にそのような裁量を与えるべきなのだ。ここはまだずっと争いのあるところです。

 では、これは、いいですか、検察は準司法と言う人がいますけれども、あくまで司法ではありませんね。検察は行政ですね。検察の独立性ということをよくおっしゃいます。検察の独立性というのは、そもそもどこかにその限界を含んでいませんか。

 つまり、犯罪人の更生が容易であるとか、その後の社会秩序が保たれるとか、二百四十八条がどういう場合に適用されるか、どういう場合に訴追ができないかというのは、今、柳田さんが言ったとおりですよ。そのとおりに書いてある。だけれども、その主眼とするところは何なのかと聞いているんです。それは、そちらの方が犯罪人の更生に容易である、それに資する場合があるということと、それをしなくても、訴追をしなくても社会秩序が保たれる場合がある。この二つですよ、起訴便宜主義を認めているのは。

 今回は一体どうなのですか。またやると言っているんですよ。日本に行ってまた漁をしたいと言っているんですよ。

 では、社会秩序は何なのかといえば、それは、沖縄県議会の決議、石垣市議会の決議、お読みになったでしょう。政府に行っても、たしか片山大臣しか会わなかったと言っていましたね、石垣の市長さんは。片山総務大臣だけが会ってくれた、あとの人は面会しようと思ってもだれも会ってくれなかったという話でしたが、石垣の漁民はあそこに行けないんですよ。漁ができないんですよ。中国の漁船は山ほど来ているわけですよ。何でこれが、沖縄県民、八重山の漁民、そういう方々の生活が脅かされている、こういうような行為を認めるべきではないと私は思っている。

 釈放することが社会秩序の維持に役立つ、私はそうは思わないですね。つまり、犯罪人の更生ということも、社会秩序の維持ということも、すぐれて国内の刑事政策的なことに着眼をしているのではないですか。それが起訴便宜主義の当然の限界と考えますが、どうですか。

柳田国務大臣 御説明ありがとうございました。

 私が理解しているのは、先ほども申し上げているとおりでございまして、この適用については事案に応じてやられるものだ、そういうふうに解釈しております。

石破委員 それでは、これは総理の認識を承りましょう。

 今、この中国人船長はどういう法的地位にありますか。つまり、処分保留、処分保留は条文上どこに根拠があるか、私はよくわかりませんが、いいです、法律の細かいことは聞きませんから。処分保留で釈放ですね。中国にもう帰っていますね。これは中国に行っていますから、時効はとまっていますね。そして、日中間には犯罪人引き渡し条約はありませんね。

 検察がまだ起訴するかしないかを決めていないのですよ。起訴猶予になるかどうかも決まっていないのですよ。だけれども、実際に公判を開くことはできませんね。事実上不可能ですね。だって、第一審は必ず被告人は出廷しなければならない、これは常識です。来ませんね。来られませんね。そうすると、仮に検察が起訴するというふうに決めたとしても、公判は事実上開かれませんね。そうすると、処分保留で釈放、中国に帰国してVサイン。まあ、Vサインはどうでもいいが。

 そういうところで、もう公判は開けないという決定を事実上なしたに等しいのではないですか。違いますか。

仙谷国務大臣 事実上、そういうことになるだろうと私も思っております。

石破委員 そうですね。これは釈放した時点で、処分保留という、実は刑事訴訟法にもその根拠条文はない。処分保留するというのは何なのかというと、起訴するかしないかは保留にしますと。

 次席検事さんは、報道にあらわれた記者会見を読む限り、何で処分保留にしましたかと問われて何と答えているかというと、捜査が大体終結をしたからですと答えているんですね。これは処分保留の理由ですか。これは釈放の理由であって、処分保留の理由じゃないでしょう。捜査がほぼ終結したんだったらば、起訴するかしないかの段階に移るのが普通じゃないですか。それは常識ですよね。私は、あえてあの次席検事はそういうすれ違いの答弁をしたんだと思いますよ、そうしないとつじつまが合わなくなってしまうので。

 つまり、あの時点でこのお話はおしまい、もう起訴もできません、起訴猶予として事実上の不起訴処分、それが釈放というところで……(発言する者あり)今、決まっていると答弁したでしょう。よく聞きなさい。そういうような決定になるのではないかと官房長官おっしゃいましたね。つまり、事実上、このことについては最終決着、このことについては政治は関与しなかったということでよろしいですね。

仙谷国務大臣 政治は関与しておりません。

石破委員 これで事は終わりません。つまり、まだ残っているのは、これもやはり刑事訴訟法二百四十八条になる、ビデオの公開です。

 つまり、中国も、外務副報道官がビデオの一部始終の公開を求めるというふうに公式に発言をしていますね。一部だけ切り取るのはだめですよと。巡視船は二隻で撮っているはずですから、一隻だけ撮っているはずがない。前原大臣はごらんになって、明々白々、こういうふうにおっしゃった。悪質だとおっしゃった。

 これは、中国は公開を求めています。国民も公開を求めています。そして今、長官は、もうこれから先、訴追をし、公判が開かれる可能性はほぼないものと思われると答弁をなさいました。これから裁判は行われることはありません。恐らくその可能性が高いのでしょう。だとするならば、なぜ公開をしないのか。

 まず承ります。公開とはどのような概念ですか。

仙谷国務大臣 公開というよりも、現時点では証拠開示の問題だと思います。そうしますと、公判開始前に証拠の開示は原則として行われない、こういう刑事訴訟法四十七条に移っていく。公益上の必要があるかないか、あるいは相当とする事由があるかないか、この判断に移っていくんだろうなと思っております。

石破委員 それでは、国政調査権でこれを予算委員会で公開すべきだというふうに言っていますね。予算委員会にこれを示す。衆議院には秘密会の規定が、実際の罰則規定がありませんので、実際にこれは動かないわけですよ、参議院と違って。

 そうすると、衆議院にこれを提示するということは、長官、公開に当たると考えますか。

仙谷国務大臣 その場合の公開というのは、どのように、いわば提供を受けたビデオを委員会の方で取り扱うかということによって、いわゆる一般に理解されている公開なのか、それとも、提示を受け、それを委員会で見たという意味での開示を受けたということなのか、その辺は、これは委員会の方でのお取り扱いいかんによると思います。

石破委員 では、この判断をだれがやるかというと、一義的には検察官、独立した一人一人の官庁としての検察官ですよね。ですけれども、この議論は、長官覚えていらっしゃると思いますけれども、ロッキード事件の灰色高官のときにさんざん議論をされたことです。私、議事録を全部読み直してみました。

 そのときに、安原刑事局長、あるいは稲葉法務大臣、あるいは吉国法制局長官、どのように答弁をしているかというと、検事には、検察には判断できない場合は当然あるだろう、その場合は法務大臣の指揮権による指揮を仰ぐことになる。しかしながら、法務大臣でも判断できない場合があるだろう、その場合には、閣議にかけた方針に基づいて内閣の長たる内閣総理大臣が法務大臣をして指揮をするということを否定しない、これが従来の政府の答弁ですね。つまり、検察官では判断できない場合があるということを認めているのですよ、従来。

 これがどれだけの外交的な影響を及ぼすかとか、これが国内でどのような影響を及ぼすかとか、それは検察官はそれぞれすぐれた人でしょう、ですけれども、外交の専門家たる外務官僚、それに匹敵する知恵は絶対にない、あるはずがない、だって、やっていないんですから。

 では、国内でどんな影響があるのか、だれが一番判断できるのか。政治家に決まっていますよ。これをやればどんな影響があるのかというのは政治家が一番わかるでしょう。毎日毎日有権者と接し、議論をしている、そして何よりも国民に対して責任を負い得る政治家が一番判断できるに決まっているでしょう。

 だとすれば、この場合に、ビデオの公開、法務大臣、総理大臣、この判断は法的には当然排除しないし、そういうこともあり得るとお考えですか。

仙谷国務大臣 検察当局が判断を求めてくる、あるいは相談を持ちかけてきた場合には、私どもとしてはその相談に乗らなければならない、こういうふうに考えているところであります。

 それともう一つ、石破政調会長の御質問でありますけれども、先ほどロッキードの灰色高官のお話が出ました。これは多分、私が推測いたしますと、検察庁にそういう捜査報告書のようなものがあったか、あるいはそういうものをつくって出せということであったのではないかと推察をいたしますと、文書であります。今回問題になっているのはビデオであります。

 まさに、ここに時代の違いもあると思われるのでありますが、テレビの報道というものが大変国民に対して影響力を持っておる、あるいは国際社会の中でも影響力を、これはプラスとマイナスの影響力があると思いますが、そういう時代におけるビデオをどのように、どういう範囲で公開するのかというのは、これはもう一工夫といいましょうか、一ひねりといいましょうか、我々自身も考えなければいけない問題だと改めて今考えているところであります。

 例のシーシェパードの事件は、あれは多分、判決後にあのビデオが公開された、そういうふうに記憶をしておりまして、今がそういう時期、あるいは外交的なセンスからして、どういうふうに判断をすればいいのか。我々も判断しなければいけないと思いますし、予算委員会の方でもし提示を受けるということであれば、そこから予算委員会の方でも御判断をいただかなければならない、こういうふうに考えております。

石破委員 公開するかしないかは何の基準によるかというと、公開しないことによって守られる公益、大なり、公開することによって得られる公益、これが唯一の判断基準ですよね。公開しないことによって保護される法益、大なり、公開することによって得られる公益、これだけが唯一の判断基準ですよね。

 なぜこのような判断を行ったかという説明は、検察の独自の判断とおっしゃいますけれども、それでは、なぜ行ったかを検察がやるのですか、それとも法務大臣がなさるのですか、それとも官房長官か総理大臣がなさるのですか。

 公開する、しないは皆さんの判断ですよ。だけれども、なぜ大小を判断したか、それを言ってもらわないと外交判断のしようがないでしょう、国民は。

仙谷国務大臣 先ほどの私の答弁で尽きていると思いますが、何か、今の再質問というか、何を聞かれているのか、私はちょっとよくわからないんですが。

石破委員 それでは、いいです。ちっともよくはないがね。

 つまり、公開するかしないかの基準は、公開しないことによって何が守られますかということ。それはこのようなことですということを明らかにして、中国も出してくれと言っている、国民も出すべきだと言っている、そして国政調査権も、それを出すべきだと言っている。これを出すことによって得られる公益、それよりも、出さないことによって守られる公益というものがあって、だから出さないのだという説明をすべきなのではないですかと言っています。

仙谷国務大臣 ほとんど、石破大臣と違うことを考えているわけでも何でもないので、出さないなんということを一言も言ったことはありません。

 つまり、現時点では、刑事訴訟法四十七条のこの要件を満たす行為が例えば国会で行われれば、国会には提示することはやぶさかではないというふうには思っていますけれども、果たして時期がいつか、さらにそこから進んで、どのような開示が行われるのか。事はビデオというテレビ時代の一つの、先ほどおっしゃった灰色高官名簿とは全然違う質のものでもあるから、その辺も考慮、配慮しないといけないのではないんじゃないでしょうか。

 そのおっしゃる、どちらが公益性があるかという、利益衡量といいましょうか、衡量、判断をする上で、そのことは一つの要素になってくるんじゃないんでしょうかということを申し上げているだけの話であります。

石破委員 では、今後どうするかです。今後どうするか。

 私は、中国に対して、もうこのようなことは行うべきではないということをきちんと言うべきだと思う。領海侵犯、不法操業、ましてや巡視船にぶつかる、このようなことはもうしてはいかぬということはきちんと言うべきだと思う。そして、仮定の質問には答えられないと言うのでしょうが、今後このようなことが起これば厳正に対処すべきだ、こういうふうに言うべきだと考えている、宣言すべきだと思っている。

 そして、海洋基本法に基づいて、いいですか、この尖閣列島、これは実効支配しているといいますけれども、その実効支配性というものをもっと高める、そういう努力もしていかなければならないだろう。巡視船もふやしていかねばならないだろう。そして、我が国は領海法がありませんので、どの場合にどのような武器使用を行うか、警告射撃、危害射撃、その要件は何なのか、そういう話をきちんと詰めていくということが今後必要だと思いますが、総理、いかがですか。

前原国務大臣 東シナ海においては領土問題は存在をしない、そして、尖閣諸島は我が国固有の領土である。その前提の中でこれからも実効支配を続けていく。そして、実効支配を続けるためにはどういう体制が必要なのかということは、これは政府内でも当然検討していきますし、予算にかかわることですから、予算委員会、与野党間でもしっかり話をしていただくということになろうかと思います。

石破委員 中国に対してそのようなことを申し入れるべきだということ、そして、国内においても、国外に対しても、今後このようなことが起これば、粛々と対応し、逮捕、起訴、公判あり得べしということをきちんと言うべきだと私は思っております。

 では、中国に対する認識を承りましょう。

 総理、脅威というのはどのような概念ですか。脅威というのは、今まで、中国は脅威か脅威じゃないか、そういう議論がされてきました。脅威というのは何でしょう。

 そして、ついでに一つお尋ねしましょう。総理、国家というのは何だと思われますか。

菅内閣総理大臣 脅威というのは、私が理解しているのは、つまりは能力と意思。つまり、軍事力でいえば、そういう日本に対して何らかの侵略行為をするような能力とそして意思とが重なったときに脅威という形に認識される、このように私は考えております。

 それから、国家というのは、これはなかなか余りにも概念が大きいので、一般的に言えば、領土とそこに属する国民、それに含めて、いわばそれを政治的に統合している主権、こういうものが要素になっている、こう理解しております。

石破委員 我が国は、一九二八年だと思いますが締結した条約がありまして、これは、国民、そして領土、そして統治体制、外交能力、これを国家の要素として我が国は条約を締結いたしております。国家というのはそういうものであり、主権というのはそういうものだ。

 では、中国が脅威かといえば、総理がおっしゃるように、能力、意図ですよね、そして、今は能力は中国はあるわけです。中国だけじゃない、アメリカ合衆国もロシアも、核兵器も持っていますし、能力は持っているんですよ。だけれども、意図はわからない。これは掛け算ですから、意図がゼロであれば当然その積はゼロです。よって脅威はないということになるのですが、意思決定のあり方が中国と日本は随分違うのではないかということも私たちはきちんと認識をしなければならないでしょう。

 総理、前回、文民統制とは何ですかという議論をしました。総理に、自衛官の意見を聞いてください、四幕僚長の意見を聞いてください、そのように申しました。会っていただきました。間違いなく冗談だと思いますが、間違っても、防衛大臣、あなたは自衛官じゃなかったんだねとか、調べてみたら私は自衛隊の最高指揮官だったんだね、そのような冗談を言ってはいけません。総理もそれはサービス精神はおありでしょうが、それは文民統制の根幹にかかわることですから、ぜひ御注意をいただきたいと思うのです。

 仙谷長官も冒頭にスピーチをなさいました。この間、北京・東京フォーラムというのがありました。あの後、私は中国人の学者さんあるいは軍人さんと随分議論をしたんですよ。そのときに、中国において文民統制は機能していますかという議論になりました。当然機能している、軍と共産党は一体である、こういうお話でありました。

 さて、では、党の中央軍事委員会と国家軍事委員会、メンバー十一人です。これは全く同じメンバーです、ですから同一ということになるのかもしれませんね。そのうちの十人は軍人なんです。軍人じゃないのは胡錦濤さんたった一人なのです。これは国務院も全人代も全く関与をすることができません。中国憲法上そうなっている。できない。

 これって、艦隊派とか条約派とかありましたが、条約派の主張を、これは統帥権の干犯である、こう言って統帥権独立を唱え、やがて日本を戦争に駆り立てていった、それとよく似てはいませんか。よく似ているという言い方がいけなければ、近似していませんか。

 中国において本当に文民統制は機能しているのだろうか、そして言論の自由はあるのだろうか。私たち、マスコミにいろいろ言われて悲しい思いをすることも腹が立つ思いをすることもありますよ。ですけれども、文民統制が機能するためには、適切な情報の開示は絶対に必要だと思っている。悪口を言われるのが嫌だったら政治家なんかやめた方がいい、批判されるのが嫌だったらやめた方がいいと私は思っています。

 だけれども、この間、ノーベル平和賞が発表になった。その瞬間、全部のテレビが消えましたね。中国において言論の自由はありません。そして、正しい形、少なくとも我々が認識している文民統制、これは、軍事委員会のうち十人が軍人である、よって、これが機能しているとは私は思わない。

 これはよく認識をした上で中国とこれから交渉し、つき合っていかねばならない。総理、その認識をお持ちですか。

菅内閣総理大臣 中国の憲法とか中国の党の綱領とか、私は残念ながら十分に勉強しているわけではありません。

 ただ、先ほど議論があったように、中国の軍は党の軍であるという位置づけだと認識しておりまして、今言われた、党の軍事委員会と政府のそういったものが二つあって実態的には同じだということの御指摘がありましたが、それに加えて言えば、根本的に、まあ歴史的にと言ってもいいのかもしれませんが、かつて八路軍という言い方がされたわけですが、そういうところから中国共産党というものが歴史的に成り立っているという意味においても、我が国あるいは一般的民主主義国の構造とは違うと認識しております。

 そのことは多分、北朝鮮とかかつてのソ連とか、そういう国々は、いわゆる民主主義手続をベースにした政府と、あるいは民と軍の関係とはかなり違うのではないかという認識は持っております。

石破委員 それでは、ちょっと地図をお示ししましょうか。

 防衛大臣、お疲れさま。きのう行かれて、中国の防衛大臣と会談をなさいましたね。

 中国が採用する近海防御戦略をどのようにお考えですか。つまり、第一列島線、第二列島線というのをつくって、対馬からずっと台湾までいく、これが第一列島線ですよね、地図をごらんになればわかります。そして、小笠原、フィリピン、グアム、これに至る第二列島線、これがありますよね。近海防御戦略というものは一九八〇年代に制定をされたものだ。そして、中国には我々とは全く型の異なる戦略的国境という概念がありますね。つまり、国境というのは地理的に定められるものではない、国力に応じて国境というのは変化をするものだという、我々にはにわかには理解できないけれども、この戦略的国境という概念が間違いなく公式文書にも出てきますね。

 この近海防御戦略、これはどのようなものなのでしょうね。つまり、第二列島線というものを定めた。尖閣は核心的利益というふうに明言をした。いいですか。そういう場合に、尖閣の持つ重要性というのは、第二列島線から西にアメリカを初めとしてそういう海軍が進出してくるときに、尖閣というのは決定的に重要な意味を持つのではありませんか。

北澤国務大臣 おっしゃるとおり、中国からしてみたらこれほど重要なものはない、そういう気持ちがあるから今回のような事案も出た、こういうふうに承知しております。

石破委員 そのとおりです。そういう意識があるからこのようなことが起こっている。友好は大事ですよ。ですけれども、中国の意図をきちんと認識することもあわせて大事なことなのであります。

 では、お尋ねします。普天間基地問題。

 総理は、前回、私がお願いしたことが二つある。一つは、自衛官トップの意見を聞いてくださいと申し上げました。聞いていただいた。もう一つは、沖縄を訪問してくださいというふうに言いましたね。

 民主党の中にはいろいろなことをおっしゃる方がいるようだ。いるようだが、日米合意、これを踏まえて辺野古に移設をする、そういう確固たる意思は今も変わっていないのだろうと思います。

 スケジュール表をこの間も出しましたが、スケジュール表を示してください、日程表。十一月には沖縄県知事選挙がありますね。オバマ大統領が来日されますね。

 総理はこの間の答弁で、それが必要であれば、沖縄に足を運ぶ用意は十分にあると答弁をなさいました。それから二カ月がたっています。一度も訪問をなさっておられません。

 私は、この沖縄の状況、そして鳩山さんが惹起した物すごい状況、これを回復するのはそんなに容易なことだとは思っていません。大変なことだと思っています。ですけれども、総理が国家のために必要な判断をされるのであれば、我々自民党は野党であってもこれをきちんと支えなければいけないと思っています。それが責任野党の責任だと私は思っています。

 ですけれども、沖縄の思いは何かというと、沖縄の話を聞かずに日米間で話を決めたということが怒りなんですよ。だとするならば、踏まれてもけられてもというふうに私は申し上げました。最高責任者たる菅総理、足を運ぶ用意は十分あるとおっしゃりながら、なお沖縄を訪問しておられない。この後、オバマ大統領の来日がある、知事選挙がある。総理、これはずっと、大統領の来日あるいは県知事選挙、沖縄を訪問される御予定はありませんか。

菅内閣総理大臣 私が六月に総理に就任して直後に、いわゆる沖縄の戦争被害の、平和の日に訪れることができました。その後は、直接には訪れておりません。その間、沖縄の協議会というものが五年半ぶりに動き出しまして、そこには仲井真知事にもお出ましをいただいて、二つの部会をつくって、沖縄振興と同時に基地負担の軽減という問題についても進めるといったような作業は行っております。

 この間、行く行かないを含めて、まだ予定を決めているわけではありません。その中で、私なりに頭の中で考えているのは、やはり今、五月の二十八日の合意をただそのまま、ぜひ認めてくれと言っても、なかなかそう簡単ではないというのは理解をいたしております。

 その中で、基地負担の軽減の部分でそれなりに進められる部分がもっとないのだろうかと。例えば北部の演習場は十年前から返還が決まっていながらまだ返っていないとか、または普天間といろいろ関連されておりますが、嘉手納以南のいろいろな基地の問題あるいはグアムのいろいろな移転の問題等々、そういうものについて、少なくともこの部分は基地負担の軽減につながるようなことをまずはやりたい、やろうではないかという提案が何らかの形で少し形ができてきたとすれば、そういうものを持って訪れることができればと。ですから、この間も、別に訪れないとか訪れたくないということではありませんが、現時点では、五月二十八日の原則にのっとって進めるという、その基本を説明することにならざるを得ないということで、いつ、どうしようかを考えているという状況です。

石破委員 先送りしないでください。ぜひ熟慮、熟議じゃない、熟慮ね、何が必要なのか、何がプラスになるのかよくお考えください。

 十一月十三日にはオバマ大統領の訪日が行われる。そして十一月二十八日は県知事選挙がある。それまでに行かないということがあるとは私は思わない。あっていいとは私は思わない。総理は先送りはしないとおっしゃった。正面から向き合うとおっしゃった。ぜひそうしていただきたいと思っております。

 尖閣、これも我が国固有の領土です。守っていかねばなりません。尖閣を守る上においても沖縄におけるヘリ基地の存在は必要だと私は思っています。それは前回、これは何なのかといえば、台湾があるからだというふうに申し上げた。尖閣も距離的に見ればそうですよね。ほんの近くですからね。

 外務大臣は御存じだと思います。シーナイトがオスプレーにかわると仮にします。これは岸・ハーター交換公文に示された重要な装備の変更には当たりません。当たらないはずです。このオスプレーというのは、速度も搭載量も航続距離も二倍ないし三倍のものです。そうすると、これが入ってくるということは、どこにヘリ基地を置くかということに密接に関連をするはずです。このことから目をそらすべきではない、このことを私は申し上げておきます。

 そして、最後に北朝鮮。権力継承期に、かつて、金日成主席から金正日軍事委員長にかわるときに、主席は今でも金日成だけですからね、ラングーン事件、大韓航空機爆破事件、これが起こりました。権力継承期にはそういうことが起こってきた。韓国の哨戒艦が撃沈されたことがそれと関係があるかどうかは、それは私は論証する知識を持たない。しかしながら、権力継承期というのは、相当注意をしなければならないことだと私は考えています。

 私は、北朝鮮政策というものこそ中国ときちんと議論をするべきではないか。そして、アメリカ合衆国、クリントン外務国務長官が、尖閣は日米五条の適用範囲だと言ったことで安心をしてはいけません。これは、「施政の下にある」というのはどういうことかという議論をちゃんとしなければなりません。そして、日米安全保障条約第三条、自助、相互援助。自助を本当にしてきたかということを考えなければなりません。本当に尖閣を守る能力を我々は持っているか。それは武力攻撃があった場合ですからね、五条が想定しているのは。では、その場合にはすべてアメリカにお任せよ、そんな話にはならないでしょう。絶対になるはずがない。

 私は、北朝鮮の議論をするときに気をつけなければならないのは、中国がなぜこの事態をずっと黙認してきたか、あるいは先般の儀式においては、なぜ中朝友好があれだけ演出をされたのかということを考えなければならないと思っています。

 いいですか。北朝鮮が崩壊して、あるいはあそこで軍事衝突が起こって、一番迷惑するのは中国でしょう。武装難民が来るかもしれない。何が起こるかわからない。統一朝鮮がアメリカの影響下に入るかもしれない。だから、そういうことが起こらないように経済援助をし、支えてきた。その間に、着々とミサイルの高性能化を行い、核の小型化を行って、それが実現されたときに局面は大きく変わるのだと私は思っています。

 だとするならば、日米間の同盟の深化、これを具体的にやらねばならぬでしょう。総理に対して、この間提言が出ましたね。サマリーぐらいお読みだと思いますよ。それは、一般法を定めるべきだ、基盤的防衛力構想は改めるべきだ、そして武器輸出、このことも考えるべきだ、集団的自衛権の議論をきちんとやれ、このように書いてある。総理はもうお読みになったかもしれません。このことを着実に実行していかねばならないのが日米同盟の深化です。

 もう一つは、中国が持っているその懸念。武装難民が来たらどうする、あるいはそこに戦火が交えられることになったらどうなるかというときに、日米同盟はどう機能するか、米韓同盟はどう機能するか、そのことをきちんと議論した上で、中国とも正面から議論をする。私は、公開の場でやってくれなんて言いませんよ。そういうことをやっていかなければ、この権力継承期の極めて危険な朝鮮半島情勢、これに対処することはできないのではないかと思っています。

 軍事にも詳しい前原大臣、ぜひそうしていただきたい。そのことが、我が国がこの北東アジアに責任を持つことと、そして中国と正面から向き合うときに、この軍事の議論を離れてしてはならない。だからこそ、この尖閣の問題はおろそかにしてはならない、私はそういうことだと思っています。

 外務大臣の認識を承ります。

前原国務大臣 いろいろな事情にお詳しい石破政調会長なら私の申し上げることがどういうことを意味するかということをおわかりいただけると思いますが、先般の日米外相会談におきまして、日米の同盟の深化をやっていこうということを合意いたしました。

 後ろから言いますと、人の交流、そして二番目には経済の交流、これは貿易もそうですし、インフラ輸出の関係もそうです。そして、一番大事なことは、日米安保条約に基づく日本とアメリカの協力体制というものをより深化させようということで、そのときに具体的に申し上げたのが、朝鮮半島の情勢と、そして日本を取り巻く戦略環境の変化というものであります。それについての日米同盟の協力をさらに深化させていこうということで合意したということで、御理解をいただけると思います。

石破委員 最後に一つだけ要望して終わります。

 我々は、補正予算にどう対応するか決めていません。とにかく早く示してください。議論をするからには、示さなければ議論のしようがありません。

 我々は要望を全部出しました。

 一つ、アンチビジネス的な政策はやめてもらいたい。ブレーキとアクセルを同時に踏むようなことはやめてもらいたい。CO2二五%削減、最低賃金千円、あるいは派遣法の改正、このようなものをやるということは、アンチビジネス以外の何物でもない。

 そして、税制改正に正面から取り組んでもらいたい。法人税を下げないで、どうして日本企業が外国と対抗できるのか。総理がおっしゃるように、日本は過度の外需依存なんかじゃありませんよ。韓国や中国の三分の一から四分の一ぐらいしか外需はないんだ。これを拡大していくためには何ができるか。財務大臣、相当努力をなさったが、円は高いままだ。どの国だって、輸出を振興しようと思えば自国の通貨が安いに決まっている。だとするならば、できる企業、これが雇用に直結する、それは何なのかといえば、税金を下げることでしょう。これは判断すればできることでしょう。これはぜひやってもらいたい。設備投資減税もやってもらいたい。償却資産の固定資産税、これの見直しもやっていかねばならない。

 あわせて、消費税の議論から逃げないでください。消費税は、課税範囲が少子高齢化にも対応し得る、そういう税制です。景気の変動にも強い税制なのです。公平な税制なのです。消費税は悪いと最初から決めてかかることはありません。

 消費税がこれから先の経済にどのような影響を与えるかということも考えながら、事は急ぐのです、税制改正を急いで行うこと、そしてまた、アンチビジネス的なマニフェストは下げること、そういうことをきちんと議論し、補正予算の審議に正々堂々と臨んでまいりたい、このように考えます。

 以上で終わります。

中井委員長 この際、河野太郎君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。河野太郎君。

河野委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 自民党のシャドーキャビネットの中で、行政刷新並びに公務員制度改革を担当することになりました。蓮舫大臣のカウンターパートを務めさせていただきます。大変光栄でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、事業仕分けでございますけれども、政策的なものがあるものは別として、行政の中に無駄がある、その無駄を指摘して、これは削ろう、あるいはほかのやり方をしよう、そうやって行政の無駄を削っていくというのは、これはもう、与党、野党の枠を超えて、国家国民のために必要なことだと思っております。与党のチーム、野党のチームという違いはありますけれども、時には、協力できるところはお互いしっかり協力をし、あるいは、与党がやったところは政府でそれを詰めていただければいいわけで、野党が、こういうこともあるよ、そういう提案も与党にさせていただいて、あるいは政府にさせていただいて、野党がやったことも、いいものはどんどん取り入れていただきたい。

 そのためには、定期的に与党のチームあるいは政府のチームと野党のチームと協議もさせていただきたいと思いますし、今若干、事業仕分けのための資料要求をすると、資料はあるんだけれどもこれ出していいんでしょうかみたいなことを役所がおっしゃることがありますので、そういうものはどんどんどんどん出していただいて、まず与野党で、行政の無駄というのはこれから先もきっちり仕分けをやって、無駄というのは削り続けなきゃいかぬと思いますので、そこはぜひ協力関係をしっかり築いてやらせていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

蓮舫国務大臣 河野委員にお答えをさせていただきます。

 同じく、行政刷新、公務員制度改革担当ということで、協力できるところ、議論をできるところ、熟議の国会での審議を通じて、国をよくするための提案であれば、私は真摯に受けとめさせていただきたいとまず思っております。

 また、事業仕分けにおきましては、自民党の中では河野太郎委員は元祖でもございます。私たちは、政権交代をさせていただいて、政府の中で事業仕分けを行わせていただいておりますけれども、もちろん、これは与党だから政府だからという独占のものではございませんので、野党の皆様方が気づいていただいた行政の無駄、税金の浪費、当然これは正すべきものであると思いますし、私どもも万能ではございませんので、気づかせていただけるところがあれば、定期的に御意見はちょうだいしたいと改めてお願いを申し上げます。

河野委員 事業仕分けで大事なのは、やはり常識的な目線で、これはどう考えても常識でおかしいよねというものは、やはりしっかり削っていかなきゃいかぬと思います。

 それともう一つは、やはり事業仕分けをやっている人間の信頼性、この人が言っているんだから、それはなるほどそうだろうなというのをやはりお互い築いていかなきゃいけないんだと思うんです。

 カウンターパートとして、一言だけ苦言を呈させていただかなければなりません。

 高価な服を着て商業雑誌のカメラの前でポーズをとれば、それは、残念ながら、商業目的と言われても仕方がないことだと思います。政治活動の記録というならば、ふだん着ている洋服で写真を撮ってもいいはずだと思いますし、政治を身近なものにするのに百数十万円の洋服は、これは必要がないんだと思います。

 人間だれでも間違いは起こします。大事なのは、間違えたときに、間違えました、済みませんときちっと謝るというのがやはりその人間の信頼性を高めていくことだと思います。この部屋の中にいる人間の中で、間違いを犯さなかった人間というのはだれ一人いないはずであります。そこはきちっと非は非として認めるというのが大事だと思います。

 いろいろな人が心配しておりますので、一言だけお伺いをいたしますが、あの撮影で、ギャラをもらったり着ていた衣装をもらったりということはないと思いますが、それでよろしゅうございますね。

蓮舫国務大臣 まず、苦言は真摯に受けとめさせていただきます。

 私は、雑誌の取材を通じて、政治への関心を高く持っていただきたい、発信をしたかった。それが、写真撮影の場所が不適切であったという指摘があれば、それは私の真意ではございませんので、おわびを申し上げます。

 なお、ギャランティーをいただいたことはございません。洋服は、いただいてはおりません。提供を受けただけでございます。

 ありがとうございます。

河野委員 場所や機会というのを除けば、大変お似合いであった、一言つけ加えたいと思います。

 さて、民主党政権発足からことし八月六日まで、全省庁で千五百九十人に肩たたき、早期退職勧奨が行われた。そのうち、拒否したのは二人だけだった。しかも、その千五百九十人に対して、一切その後の天下りのあっせんはしなかったということになっております。

 片山総務大臣、民間から今回閣僚として登用された大臣の常識的に考えて、バブル経済のときならそういうことはあったかもしれません、しかし、リーマン・ショック後、有効求人倍率も非常に低い、経済の状況もどう考えてもよくないというときに、千五百九十人が退職勧奨をされて、あっせんもなく千五百八十八人が受け入れるというのは、片山大臣の常識で考えて、どう思われますか。

片山国務大臣 お答えをいたします。

 退職勧奨を受ける職員については、自力による転職を視野に入れて退職勧奨に応じているものと理解というのがその答弁でありますけれども、やはり私が公務員をやっていたときの印象からしましても、何らかの以心伝心とかそれから問わず語りとか、そういうものはあったのではないかと推測はされます。

 ただ、今天下りのあっせんはしないということを前提にしてやっているときに、しからば整理退職をやるのかとか、一切新規採用をしないのかというわけにもいきませんので、いわば、今過渡期の時期に、いろいろな苦肉の策とか、そんなことはあるんだろうと思います。

 私が一番問題だと思いますのは、一種のグレーゾーンだとしたときに、役所の影響力があるからそういう以心伝心とかあうんの呼吸というのがあるとすれば、それは役所の方がやはり変えなきゃいけない、権限とかそういうものを変えなきゃいけない、こういう方針でこれから臨んでいきたいと思っております。

河野委員 民主党政権は、あっせんはないんだということを言い続けておりましたが、これは国民目線で見れば、世の中の常識で考えれば、そんなはずがあるわけない。今いみじくも以心伝心、問わず語りというお話がありました。これはやはり裏下りがあるとしか私には思えません。

 現在の国家公務員法では、この裏下りの監視をすることが実はできるんですね。再就職等監視委員会という組織が国家公務員法の中で位置づけられていて、この委員会がきちんとそれをチェックすることができるはずであります。はずだけれども、今できません。なぜですか。この再就職等監視委員会には委員長も委員もいないからです。なぜいないんですか。総理。

蓮舫国務大臣 再就職等規制違反の監視機関につきましては、民主党政権が発足して間もない去年の十二月でございますが、再就職等監視委員会を廃止して、新たに監視機能を強化した再就職等監視・適正化委員会を設置することとしまして、ことしの二月には国家公務員法改正案を国会に提出しました。その後、国会で真摯な御議論を賜ったんですけれども、残念ながら審議未了で廃案となりました。次期通常国会に改めてこの監視機能をさらに強化する、そして国家公務員法改正案を提出することとしています。

 なお、これが今現在動いていないというのは、我々が野党のときにも、その当時の政府でありました自民・公明政権のところから同意人事事項も出てまいりましたが、この再就職等監視委員会にはあっせん承認機能を含んでいるということがありまして、我々は、委員会として適切ではないとして、反対をしていたものでございます。

河野委員 つまり、民主党は野党のときに、この委員会の人事案にことごとく反対をされてきました。そして、与党になったら、この委員会を改正するからという理由で、きょうに至るまで人事案をお出しになっておりません。

 今、蓮舫大臣おっしゃったように、次に国家公務員法の改正案が出てくるのは来年の通常国会ですね。この半年間は人事案を出さないんですか。これは蓮舫大臣ですか、片山大臣ですか。半年間空白があるのに、人事案を出さないんですか。

蓮舫国務大臣 現段階で人事案を提出することは考えておりません。

 ただ、河野委員もよくおわかりの上で御質問をされていると思いますが、私どもは、再就職あっせん規制等に違反する行為を監視する中立公正の第三者機関の存在、それを立ち上げることは必要があると認識しておりまして、引き続き、今後提出する国公法改正には、さらに強化した内容の第三者委員は盛り込んでいきたいと考えております。

 その上で、他方、規制に違反する再就職あっせんはしないという方針につきまして、退職管理基本法案、これはことし、平成二十二年の六月二十二日に閣議決定をしてございますが、ここに明記して徹底を図っているところでございまして、国家公務員出身者が役員等に在籍する公益法人の徹底的な見直し、あるいは独立行政法人の役職員等に、まさに河野委員が御指摘しているような裏下り等の御懸念、省庁によるあっせんはないけれども、代々同じ各省庁の同じポストから再就職をしているケースがございますので、ここは徹底的に見直しを進めていきたい。三代以上天下りが続いていると思われるところは、現段階で総務省において調査をしているところでございます。常にこれは、我々は真摯に対応し、皆様方に、国民に疑われることがないように管理、指導を徹底してまいりたいと思っています。

河野委員 できるだけ答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。

 要するに、これはこういうことでございます。

 通常国会で階総務大臣政務官が、今の状態は、つまり人事案件を出さない状態は法律違反の疑いである、そう答弁されております。それからもう半年たっているわけですね。これからまた半年間、人事案件は出しません。要するに、先ほど片山大臣が、裏下りが以心伝心、問わず語りであるのではないかという状況を半年間放置し、これから半年間また放置をする。

 この委員会がないときに、実は、総理大臣がその権限を行使できるんです。だから私は、さっき総理に御答弁をいただきたいと思ったんですが、片山大臣が、どうも以心伝心、問わず語りがあるようだとまでおっしゃいました。権限は今、総理にあります。裏下りがあるのかないのか、総理、持っている権限でこれからこの半年間きちんと調査されますか。この権限を使うかどうか、総理大臣、お答えください。

中井委員長 蓮舫担当大臣。(河野委員「いやいや、総理に聞いているんです」と呼ぶ)

蓮舫国務大臣 御指名をいただきましたので、簡潔にお答えをさせていただきます。

 職員の退職管理に関する政令の附則に規定されている内閣総理大臣の権限を行使して規制違反行為の調査を行うべきではないかという御質問ですが、総理権限行使は、法律において第三者機関である委員会に委任した権限を政令の規定により委任元の内閣総理大臣において行使するものとしてありまして、法律が想定していない措置を政令で行うことに問題があるとして、従来から私たちはこれは申し上げているところでございます。

河野委員 つまり、菅内閣は、有言不実行、違法状態内閣じゃないですか。

 裏下りがあると担当の総務大臣が、まあ、あるとはおっしゃらなかったけれども、以心伝心、問わず語り、これはほとんど裏下りをやっているということですよね。半年間その状況を放置して、これから半年間放置をする。権限は総理にある、しかし総理大臣はその権限を行使しない。つまり、裏下りを既成事実化してしまおうというのが今の菅内閣ではありませんか。

 委員長、総理に聞いているものはちゃんと総理にあれしてください。

 それで今、蓮舫大臣から……

中井委員長 河野さん、質問ですか、今。

河野委員 質問ではありません。総理は答えられないでしょうから結構です。

 退職管理基本方針というのを閣議決定されました。民主党の天下り問題、いかにもひどい、いかにもこの天下り対策が骨抜きにされてきたということを、古賀茂明さんとおっしゃる前公務員制度改革審議官がずっと実名でこの問題提起をされております。今、経済産業省の官房付か何かになっていらっしゃると思いますが、この古賀さんを国会に参考人にお招きをしてお話を伺いたいと思うんです。どうも地方にあちこち出張に行かれているという話もございますが、経産大臣、国会がぜひ参考人でお招きをしたいと決めたら、古賀さんが国会に参考人として来られることに大臣として何か問題を感じていらっしゃいますか。

大畠国務大臣 お答えさせていただきます。

 今、河野議員の御指摘でございますが、この委員会で決定をさせていただけたら、それはきちっとこたえなければいけないかなと私は思っておりますが、いずれにしても、委員会で御検討いただきたいと思います。

河野委員 どうも古賀さんの肩に手が伸びているという話もありますので、これは、委員長、理事の皆さん、ぜひ早いうちに参考人招致をお決めいただきたいと思います。

中井委員長 理事会で後刻協議いたします。

河野委員 ありがとうございます。

 この退職管理基本方針の中に、局部長の専門スタッフ職というのが盛り込まれております。これについて、人事院勧告を要請されておりますか。給与法改正の中に入れる前提でしょうか。担当の大臣からお答えをいただきたいと思います。

片山国務大臣 人事院が本年八月の人事院勧告におきまして、政府の取り組みを見ながら、「必要な給与水準等の検討を進め、成案が得られれば、速やかに勧告することとしたい。」という報告になっております。

 それから、先ほど来、裏下りの質問のやりとりにも言及がございましたけれども、私が申し上げましたのは、河野議員と問題意識は同じだと思いますけれども、勧奨の数は随分減っているんですけれども、一、二の例外、二、三の例外を除いてぴったりうまくいっているというのは、まあ何となく違和感があります。違法なことはもちろんないと思いますけれども、OBを通じた、そういうあうんの呼吸のようなものがひょっとしてあるのではないかという懸念を申し上げたわけです。

 したがって、そうあってはいけないので、さっき蓮舫大臣が答えましたように、三代以上同一省庁から行っているようなケースは、それは調べてみる、今はそういう状態であります。

中井委員長 片山総務大臣、委員長が余り発言をしてはいけませんが、私は、原口前大臣の答弁と少し違うように思います。感じだとか、何となく思うとかいうことよりも、あなたの答弁をきちっと調べてお答えになるべきだと私は思います。そういう意味で、少し御注意を願います。

河野委員 いやいや、私は、民間から登用された大臣がどう感じていらっしゃるかというのを聞いているので、大臣の答弁に全くおかしなところはないと思いますよ。

中井委員長 感じで答えるべきことではありません。

河野委員 いやいや、私は感じを聞いているんですから。委員長が余計なお指図をする必要は私は全くないと思います。

 さて、この退職管理基本方針には二つのことを柱にしていますね。

 一つは、局長、部長がだんだんだんだん、肩たたきができない、天下りあっせんができないものですから、行くところがなくなります。専門スタッフ職という今まではなかったような役職をつくって、これは恐らく人事院勧告で一千三百万円以上の勧告になるんでしょう。そうすると、それだけ高い給料を払って、今までになかったこの局部長の専門スタッフ職というのがぼこぼこできる、人件費がどんどんふえることになるじゃありませんか。

 総務大臣、これは何人を想定しているんですか、このポストに。

片山国務大臣 今各省でそれぞれ鋭意検討されていると思いますので、現段階で何人ということは把握しておりません。

河野委員 つまり、各省で何人かずつですよね。それは数十人じゃないですか。数十人に一千三百万円以上払ったら億の単位で、公務員人件費二割削減どころの騒ぎではありませんよね。これは全く逆行するんじゃないですか。

 もう一つの柱が現役出向というものであります。つまり、今までは、部長や局長をやっていた人間が部長や局長をやめてから独立行政法人に行きます、あるいは役所の息のかかったここへ行きますということだったんですが、どうもそれをやっちゃいかぬ、だけれども行くところがない、だから、順番を変えて、先にそういうところへ行きなさい、最後だけ役所へ戻ってくれば、それで現役出向ですというのが現役出向というものでございます。

 現役出向と天下りのどこが違うのか。これは事業仕分けの中でも、現役出向も天下りも全く同じじゃないかという仕分け人の指摘がございました。順番が単に入れかわるだけ。独立行政法人になってから部長になり局長になるのか、あるいは部長、局長をやめてから独立行政法人になるのか、その違いだけで、これは全く天下りと同じでございます。だからこそ、仕分け人が事業仕分けの中で指摘をしております。

 そして、これはひどいことに、七月二十二日付で政令を改正して、現役出向できる対象先を職員で九法人、役員出向を三十八法人ふやしているんです。例えば国土交通省、当時は前原大臣ですね。例えば成田空港、関西空港、JR各社、それも北海道、四国、九州、貨物だけです。高速道路は、東日本、中日本、西日本、本州四国連絡、首都高、阪神高速、東京地下鉄株式会社、軽自動車検査協会、小型船舶検査機構。まさに、天下り先リストと同じようなところに現役出向してもいいですよ、現役出向したら退職金を通算しますよ、そういう政令改正をやっているんです。

 これ、済みません、質問通告していないんですが、厚生労働大臣、この七月二十二日に厚労省主管の役所、幾つ追加されたか、あるいはどういうところが追加されたか、もし今おわかりなら、質問通告していませんからおわかりでなければ結構ですが、どうですか。

細川国務大臣 通告いただいておりませんので、私、わかりません。

河野委員 質問通告ございませんから、それで結構でございます。

 この七月二十二日のリストを見ると、あることに気づくんですね。これは何かというと、前厚生労働大臣、長妻さんという大臣がいらっしゃいました。長妻さんは野党のときに、役人もハローワークに行きゃいいじゃないかと言った方です。年金保険料を事務費に流用するなんかはとんでもない、年金保険料は年金のためだけに使え、そう言った方です。

 ところが、その人が大臣になったらどうしたか。社会保険庁で懲罰の、懲戒の対象になった人まで全部あっせんをやったじゃないですか。年金保険料を事務費に流用するなと言った方が、数千億単位で事務費に流用したんですよ。だから、私は長妻さんという厚生労働大臣を全く評価しないんですが、その長妻さんが唯一やったことが、この七月二十二日の政令改正の中に厚生労働省所管の法人を一つも入れなかったんです。彼は体を張ってとめたんです。だから、役所の中はハチの巣をつついたような騒ぎになった。

 今、なぜ私が厚労大臣に質問通告がないのに指名をしたかというと、前大臣が体を張ってリストに入れなかったということを大臣の引き継ぎで新大臣は引き継がれていらっしゃいますか。

細川国務大臣 具体的には聞いておりません。

河野委員 これ、厚労大臣、次の政令改正で厚労省所管の法人を入れますか、それとも入れませんか、どうですか。

細川国務大臣 私は、厚生労働大臣に拝命を受けたとき、その就任のあいさつで、長妻前大臣の政策、考え方などについては継承をしてまいりたい、こういうことを発言いたしましたので、そういう方向でやっていきたいと思います。

河野委員 先ほど片山総務大臣がOBのあっせんの話をされました。どうも民主党内閣になってから、政務三役やOBがあっせんしたものは天下りでないかのごときの話になっていますが、総務大臣、これはどう扱えばいいんですか。

片山国務大臣 役所が何らかの影響力を及ぼしてあっせんをしたのは、やはりそれはあっせんに該当する、天下りに該当するんだろうと思います。

河野委員 当初、野党のときにいろいろおっしゃっていたことと大分話が変わってきましたよね。最初は、肩たたきはしないんだ、そういう話がございました。肩たたきをするのは自己変革のマネジメントを放棄しているんだ、そう言って、肩たたきは禁止するという法案を野党のときに民主党は出されましたが、政権をとった瞬間に、裏下りはありです、現役出向はありです、部門長の専門スタッフ職に一千万円払って役所の中に置いておきましょうということになりました。

 私たちは、むしろ、そんなことをするぐらいなら、給与水準を民間と同じように最後の方をこう下げていって、人件費がふえないようにして、そして天下りをしないようにする、そういう法案が大事だと思って我々は出してきたわけであります。

 そういう法案を我々は出しましたけれども、鳩山前総理は、国家公務員法の修正協議には一切応じないみたいな話をされました。仙谷さんがわざわざ、中川秀直さんの質問のときに、電話で修正しますよみたいな確認までされました。そして、では修正協議していただけるのかと思ったら、三宅雪子さんがダイビングをしたあの有名な強行採決になった、そういう事態であります。

 しかも、そのときに、民主党は、与野党が協議をしてつくったこの改革のための基本法まで一方的に改正しようとされたわけであります。総理大臣、この公務員制度改革のための基本法というのは、政権交代があっても公務員制度改革はきちっと一緒にやらなきゃいかぬから、こういうことをこういうタイミングでやっていきましょうねというのを与野党が合意して決めたんじゃありませんか。それを一方的に修正しようとしたというのは、それは幾ら何でもむちゃくちゃだと思いますよ。

 基本法を与野党合意なしで改正することはしないということを、菅さん、総理大臣としてここで明言してください。(発言する者あり)

中井委員長 ちょっとお待ちください。

 河野さんのいろいろな御質問や御意見は、私も前大臣をしておりまして、随分誤解があると思います。その一つを前原外務大臣から答弁をした上で総理大臣に答えてもらいます。

 前原君。

前原国務大臣 先ほど河野委員から国土交通省についてのお話がありましたので、前職のときのことですので、お話しいたします。

 現役出向の話……(河野委員「時間に入れないでくださいよ、これは委員長の持ち時間ですよ。私は聞いていないんだから」と呼ぶ)ちょっと河野委員、我々、現役出向というものは、現役出向、早期勧奨退職をしたときには、今まで自民党政権のときには退職金を渡していたんですよ。退職金を渡して、そして公益法人でまた給与、高いのをもらって、そしてまた退職金をもらって、わたりをして、そういうものをやめようということで、我々は全くもって天下りを禁止しているわけですよ。この現役出向については、退職金は渡しませんし、定年までしか働きません。つまりは、給与は同じなんですよ。退職金は一回だけなんです。自民党政権とは全く違う、それだけ申し上げておきます。

中井委員長 仙谷さん。

河野委員 総理大臣じゃないよ。総理。総理じゃない。総理なんですか、仙谷さん。総理大臣はだれ。(発言する者あり)

中井委員長 静粛に願います。

河野委員 いや、ちょっと待ってください。仙谷さんが総理大臣なんですか。

中井委員長 仙谷さんの名前を挙げたじゃないですか。

河野委員 総理でしょう。仙谷さんが総理大臣なんですか。じゃ、総理大臣、答弁してくださいよ。

中井委員長 仙谷官房長官、答えてください。

 河野さん、たびたび言われますが、お名前をさんざん挙げられたわけですから、まず仙谷さんから。

河野委員 おかしい。総理大臣の答弁でしょう。これは委員長の持ち時間でしょう。(発言する者あり)

中井委員長 先ほどから河野さんの御発言をずっと聞いてまいりまして、河野さんの理屈はよくわかります、質問もよくわかります。しかし、事実認定で違うところがあって、十分説明し切れていない点を前原さんと仙谷さんに説明をしていただいた上で、総理から答弁を求めます。

 仙谷官房長官。

仙谷国務大臣 前国会で公務員制度改革法案の審議を担当した者として、河野太郎議員の今の問題の立て方について、私とは全く事実認識と理解が違うなという前提でお答えをしたいと思います。

 つまり、自民党の皆さん方も、これは静かに胸に手を当てて考えてごらんになれば、そんなに自慢ができるような法案ではなかったと私は思います。

 そして、今、給与表がある年齢から、つまり五十数歳から下がってくるというふうな給与表をつくればいいと我々は提案したとおっしゃるけれども、そんなものは全くなかったじゃないですか。つまり、幹部職員なら人事院の代償措置と関係なしに、労働基本権を与えていない現段階でも賃金の給与表の減額ということができるかもわかりませんけれども、少なくとも一般の職員については、労働基本権を奪った中で、そんな賃金カーブを落とすような給与表を果たしてつくれるのかという大問題の前に、皆さん方もそこは手をつけていなかったじゃありませんか。

 つまり、そういう前提があって、それから修正協議についても、これは、現場の理事が修正協議に入りましたけれども、松本大輔議員だったと思いますが、自民党の方で、自民党の提案を丸のみしないと修正協議できない、こういう強硬な態度であったから協議が始まらなかったということだったじゃないですか。

 修正協議というのは、お互いにここはこうだよね、ここはこうだよねということがない限り、丸のみをせよ、そんな話で修正協議ができるはずないじゃありませんか。

中井委員長 いいですか、菅総理大臣は。

河野委員 総理大臣、基本法の改正はやらない、野党の合意なしに基本法の改正はやらないということを明言してください。

中井委員長 河野さん、先ほどから三回、四回と指名なしで発言されていますが、御注意ください。

 それでは、菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 河野議員の質問、率直に申し上げて、私の方には質問通告が来ておりません。これは、今の討議を見ておりましても、かなり複雑な経緯があるものですから、そういう点で必ずしも……(発言する者あり)ちょっと、やじを理事の方が飛ばされるのであれですが、少なくとも私のところにはそういう質問通告はありませんでした。

 私の基本的な考え方を申し上げると、政府においては、公務員の労働基本権や使用者機関のあり方等を含めた総合的、抜本的な公務員制度改革の具体像を検討しているところです。総合的、抜本的な改革を実現する上でより適当であると判断し、次期通常国会に関連法案を提出することを検討いたしているところです。

河野委員 与野党が合意をしてつくった公務員制度改革に関する基本法を、与野党の合意なしに一方的に改正しようとしないですねというのがさっきの質問です。答えてください。

菅内閣総理大臣 私自身がその中身についてちゃんと把握した上で判断をしたいと思います。

河野委員 つまり、この内閣の総理大臣は公務員制度改革に関心がない、天下り問題に関心がない、そういうことですか。

菅内閣総理大臣 いや、ですから、河野さん、私も外交からあらゆる問題について聞かれたことはできるだけちゃんと答えようとして、もちろん私がすべてわかっているわけじゃありませんから、必要なことは事前に調べてお答えをする姿勢で臨んでいます。

 ですから、今言われたことについては、ちゃんと私なりに把握をした中で、必要なときにきちんと私の見解を申し上げたいと思います。

河野委員 金曜日の午後四時に、内閣官房、内閣府の経済財政担当、国家戦略担当、外務大臣、国交大臣、公務員制度改革並びに総務省の担当の方に全部来ていただいて、こういう質問をやりますという通告を丁寧にやらせていただきました。そして、きょうお出ししている書類の中にも「特に総理」というのが書いてございます。

 ですから、何も総理がやらずにいろいろな人に割り振るというのでは、細かいことを総理に聞こうとは私は思いません。しかし、基本法を与野党の合意なしにやらないぐらいのことを総理大臣としてきちっとやはり言ってもらわないと、それは、なかなか与野党の議論はできないですよね。

 さて、次に行きたいと思いますが、時間がなくなっちゃうといけませんので、一度、国家戦略、政治主導の方へ行って、また時間があればこっちに戻りたいと思います。

 総理大臣、現行法のもとで、経済財政担当大臣と国家戦略担当大臣の役割分担は何でしょうか。これは金曜日の四時にきちんと通告をしてありますから、総理大臣、お答えください。

菅内閣総理大臣 政治主導確立法案の成立、施行後……(河野委員「違います。現行法の話です」と呼ぶ)現行法ですね。はい、わかりました。

 現在の、現行法での国家戦略担当大臣と経済財政担当大臣の役割分担についての御質問ということでお答えをいたします。

 玄葉国家戦略担当大臣については、党の政調会長を兼任しており、予算や税制、経済運営など内閣の重要政策の基本方針について、政府及び党において企画立案、総合調整を担っていただいております。

 これに対して、海江田経済財政政策担当大臣については、マクロ経済に関する調査分析や、これを踏まえた経済対策などの経済政策の取りまとめを担っていただいております。

 両大臣には、緊密に連携をとりながら経済財政運営を行っていただいております。

 御指摘、ああ、ここまでですね。以上です。

河野委員 済みません、指摘はしておりません。

 そうすると、二つ質問があります。一つは、この菅内閣で経済と予算の司令塔はだれなのか。もう一つは、予算編成の基本方針はだれがつくるのか。総理大臣、お願いします。

菅内閣総理大臣 今回、玄葉政調会長が国家戦略担当大臣に就任をしていただきました。今の御質問については、基本的には国家戦略担当大臣の所掌と理解しております。

河野委員 そうですか。これは、補正予算のときにきっといろいろフォローアップがあると思いますが。

 それでは、もう一つ。政治主導確立法案が成立したら、国家戦略局の所掌事務の中に、予算編成の基本方針の企画及び立案並びに総合調整に関する事務が入ります。政治主導確立法案が成立すれば、国家戦略局に予算編成の基本方針は移るんですね、総理大臣。

菅内閣総理大臣 国家戦略室は私も最初の担当大臣でありまして、その段階では、総理の指示に基づいて権限が決められておりました。(河野委員「いや、法律ができたら」と呼ぶ)いや、ですから、そういう形でありました。

 今回の法律は、まさに法律に書かれていると思いますが、国家戦略局のほか行政刷新会議の設置などを含んでおりますが、本法案成立、施行後の役割分担について申し上げると、国家戦略担当大臣は、総理大臣の指示により国家戦略局の事務を指揮し、予算や税制、経済運営など内閣の重要政策の基本方針について企画立案、総合調整を担っていただきます。

 これに対して、経済財政政策担当大臣は、マクロ経済に関する調査分析やこれを踏まえた経済対策などの経済政策の取りまとめを担っていただくことになっております。

河野委員 配付資料でもお配りをしておりますけれども、法律ができるとこうなるんですね。内閣総理大臣の下に内閣官房長官がいる。そして、その下の副長官のうちの一人が国家戦略局長になるんです。そして、今申し上げたように、この国家戦略局の所掌事務が予算編成の基本方針の企画及び立案並びに総合調整に関する事務なんです。

 ということは、この国家戦略局長になる内閣官房副長官が、内閣法が官房長官に与えている総合調整の権限を使って総合調整をやる、そういうことでよろしゅうございますね。

菅内閣総理大臣 この図に入っていますか、これは。国家戦略担当大臣がこの図には入っていますか、国家戦略担当大臣がどこに……(発言する者あり)注ですか。

 ですから、国家戦略室の段階で私は担当大臣になりましたが、今度局長が生まれたとしても、この上に国家戦略局担当大臣というものをきちんと置いて、上に置いて、そして、それに対して総理から先ほど申し上げたような指示を出しますので、そうした権能は、国家戦略担当大臣が持つと同時に、局長としては局長として、その政治的な指導のもとに今おっしゃったような機能をあわせて持つという理解です。

河野委員 政府が出された法案はこのとおりなんですよ。国家戦略担当大臣は枠外なんですね。今総理がおっしゃったように、この上に国家戦略担当大臣がいるというならば、何でそういう法律にしなかったんですか。

仙谷国務大臣 これは河野太郎議員もおわかりだと思いますし、そこに塩崎前々官房長官がいらっしゃるので、これはまことによくおわかりいただいていると思うんですが、日本の今の国家行政組織法と内閣法と内閣府設置法、この構造からいきますと、官房長官の下に国家戦略担当大臣がつくわけにもいかないし、内閣官房の中にもう一人内閣官房長官をつくる、そういうラインをつくるという法制度がつくれないということでありまして、したがって、内閣府の大臣は、内閣府の特命担当大臣と言われているものはすべて、形式的なラインがないんだけれども、それは総理大臣の特命によってある部署を担当する、こういう形になっているはずであります。

 そこで、そういう全体の組織からしますと、本法案成立、施行後は、内閣総理大臣が国家戦略担当大臣という特命担当大臣に指示によって戦略局の事務を指揮し、予算や税制、経済運営など内閣の重要政策の基本方針について企画立案、総合調整を担っていただくということになるわけであります。これは、他の内閣府の特命担当大臣もほとんど同じ法律構造にならざるを得ないということでございます。

河野委員 今の内閣法では、官房長官にしか総合調整の法的権限はないんですね。ここに国家戦略担当大臣が枠外に位置づけられていても、役人は官房長官のところに走るじゃありませんか。玄葉さんが右と言っているけれども、仙谷さん助けてくださいと言ったら仙谷さんが出てきて左と言う、そういうことができる。

 それから、このやり方しかないんだというふうに今官房長官おっしゃいましたけれども、それは新しくつくるんだから、内閣法を改正すればいいじゃないですか。今まではこういうやり方しかなかったというだけで、新しいことをやるんだったら、法律を変えればいいじゃないですか。すっかりこれはお役所にだまされているわけですよ。役所の人間からしてみれば、だれが権限を持っているのかよくわからぬ状態が一番いいんですね。それは、官房長官にしかこういう権限がありませんよ、法律的には戦略局長を指揮できるのは官房長官ですよ、官房長官が変なことを言ったら、いやいや、これの担当は戦略担当大臣じゃないですかと、どっちにも転べるようにしている役人にころっとだまされているんじゃないですか。

 この法案は一度撤回をして、きちんと国家戦略担当大臣を位置づけた法案をお出しになった方がいいんじゃないですか。

仙谷国務大臣 元与党でいらっしゃったわけですから、現在の内閣法、内閣府設置法、国家行政組織法の構造を御存じのはずの河野太郎先生や皆さん方がそういうむちゃくちゃな議論をされるとは、私は全く想像がつきません。

 そして、現実の運用でありますけれども、菅現在の総理が副総理兼国家戦略担当大臣をされておるときも、私が国家戦略担当大臣をやっているときも、それから現在の玄葉さんがやっているときも、官房長官との間でそういうそごが生まれたことはありません。

 このことについての、つまり、例えば経済財政の、予算や税制、経済運営などの重要政策の基本方針について企画立案、総合調整をせよという内閣総理大臣の指示がありましたら、例えば財政運営戦略にしてもあるいは中期財政フレームにしても、これは明らかに基本方針でありますが、この企画立案、総合調整は国家戦略担当大臣が主導的につくったという経過からごらんいただいても、あるいは地球温暖化対策基本法でございましたか、これも時の鳩山総理大臣が、国家戦略担当大臣がこれは主導的に総合調整に入れということで入りまして、法案ができ上がったということもございます。

 そういうふうに、その時々に応じる場合もありましょうけれども、これは、そういうやり方でやる以外に、この現在の内閣諸制度を根底的に変えて官房長官を二人つくるというふうなことは、かえって混乱を招くと私は思っております。

河野委員 民主党の言っている政治主導というのは、しょせんその程度ですか。内閣法があるから、内閣府の設置法があるからできませんという程度の政治主導じゃ、これは官僚の手のうちで転がされるだけじゃありませんか。やはり、運用と法律が違うというならば、運用に合わせた法律をきちっとお出しになるべきではないんですか。国家戦略担当大臣といって、荒井さんは三カ月で首になりましたよね。結局、この国家戦略担当大臣というのは、人によって役割が変わってくる大臣になってしまうんじゃないですか。それをやはり防がにゃいかぬのではないんでしょうか。

 もう一つ、この法律の問題は、この法律が規定しているのは、国家戦略局長が政治家ですよね。その下の国家戦略官が政治家です。二人しか入らないんですね。麻生内閣のときに出した国家戦略スタッフという考え方は、政令で人数を規定することができましたから、必要なら何人でも入れられました。恐らくこれは、小沢幹事長が余りここに人を使っちゃいかぬとおっしゃったから二人に絞ったのかどうか、それはわかりませんけれども、たった二人でいいんですか。いや、それは、ここに担当大臣がいるから、担当大臣を入れれば三人かもしれませんけれども、そんな人数でいいんですか。

玄葉国務大臣 河野委員からさまざまな御質問がありましたけれども、まず一つは、先ほど官房長官からお話がありましたけれども、私たちの中でも、総理と話し合いながら、官房長官と私の総合調整についての戦略課題は明確に役割分担をする、今その最終調整中でございます。それが一つ。

 もう一つは、今の法律で、私たちとして、よりベターなものだということで出させていただいていますけれども、これは率直に申し上げて、官房長官はめちゃくちゃなという発言をされましたけれども、与野党で話し合ってよりよい政治主導確立法案をつくり上げる、どちらが政権交代しても政治主導の内閣をつくるというのは至上命題でありますので、私は、そこは柔軟に、それぞれの党の考え方を、よい点は受け入れながら、政治主導確立法案を通していくということが極めて大切だと。

 ちなみに、政治家を何人入れるかという話は、国会法で我々は出していますけれども、それも含めて、私は、与党、野党で話し合った上で、今継続審議になっていますから、この法案をどうしていくかということを考えていくというのが日本全体にとって大切なことだ、そう考えております。

河野委員 自民党の中にも、いろいろな法案の準備はございます。日本版NSCでしたか、そういう法案の準備もありますから、何が本当に政治主導のためにいいのかというのは、ぜひ、そのむちゃくちゃな、運用と法律が違う、だれが大臣になるかによってその人の権限が違うような法案ではなくて、法律を読んだら運用がきちっとわかるようなものを我々もやっていかなければいかぬと思いますので、そこのところはしっかり議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 残り時間が極めてわずかになりましたので、最後に一つだけ、全く違う質問に飛ばさせていただいて申しわけございませんが、群馬県の治水基準点であります、八斗島(やったじま)と読むんでしょうか、これは八ツ場ダムのかかわりもあるところでございますが、ここの基本高水を計算するモデルに使われた飽和雨量というのがどういう数字であったのか。五八年、五九年、八二年、九八年に洪水がございました。この四年にどういう数字が使われたか、計算に使った数字を教えていただきたいと思います。国交大臣。

馬淵国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のこの飽和雨量でございますが、これは、河川整備基本方針検討小委員会におきまして、いわゆる洪水の再現計算に用いた数値でございます。一九五八年、昭和三十三年九月の飽和雨量が三十一・七七ミリ。一九五九年、昭和三十四年八月の飽和雨量が六十五ミリメートルでございます。八二年、これが百十五ミリメートル。九八年、これが百二十五ミリメートルでございます。

 以上でございます。

河野委員 ありがとうございました。

 これからも、きょう議論になりました天下りあるいは公務員制度改革は、きちっと与野党で議論をさせていただきたいと思いますし、最初に蓮舫大臣から御答弁をいただきました事業仕分けについては、我々もきちっと無駄の排除ができるよう御協力をさせていただきたいと思っております。

 今後とも、しっかりとした、建設的な議論をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

中井委員長 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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