衆議院

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第3号 平成22年10月13日(水曜日)

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平成二十二年十月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 岡島 一正君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 小林 興起君

   理事 武正 公一君 理事 中川 正春君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    井戸まさえ君

      石田 芳弘君    糸川 正晃君

      打越あかし君    小野塚勝俊君

      金森  正君    金子 健一君

      川島智太郎君    黒田  雄君

      高野  守君    高邑  勉君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      玉城デニー君    中後  淳君

      津島 恭一君    豊田潤多郎君

      中屋 大介君    萩原  仁君

      橋本  勉君    早川久美子君

      福田 昭夫君    藤田 大助君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      森本 哲生君    柳田 和己君

      山口  壯君    山田 良司君

      湯原 俊二君    渡部 恒三君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    鴨下 一郎君

      小泉進次郎君    佐田玄一郎君

      齋藤  健君    下村 博文君

      菅原 一秀君    橘 慶一郎君

      永岡 桂子君    西村 康稔君

      野田  毅君    馳   浩君

      宮腰 光寛君    山本 幸三君

      石井 啓一君    遠藤 乙彦君

      遠山 清彦君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君    江田 憲司君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   法務大臣

   国務大臣

   (拉致問題担当)     柳田  稔君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       大畠 章宏君

   国土交通大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 馬淵 澄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   岡崎トミ子君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙開発担当)     海江田万里君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (「新しい公共」担当)  玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)

   (公務員制度改革担当)  蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   外務副大臣        伴野  豊君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   経済産業大臣政務官    中山 義活君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   会計検査院長       西村 正紀君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十三日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     小野塚勝俊君

  黒田  雄君     中後  淳君

  竹田 光明君     井戸まさえ君

  玉城デニー君     柳田 和己君

  長島 一由君     萩原  仁君

  森本 哲生君     藤田 大助君

  小里 泰弘君     西村 康稔君

  齋藤  健君     永岡 桂子君

  菅原 一秀君     橘 慶一郎君

  馳   浩君     下村 博文君

  遠山 清彦君     石井 啓一君

  富田 茂之君     遠藤 乙彦君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     竹田 光明君

  小野塚勝俊君     糸川 正晃君

  中後  淳君     黒田  雄君

  萩原  仁君     橋本  勉君

  藤田 大助君     森本 哲生君

  柳田 和己君     中屋 大介君

  下村 博文君     宮腰 光寛君

  橘 慶一郎君     菅原 一秀君

  永岡 桂子君     齋藤  健君

  西村 康稔君     鴨下 一郎君

  石井 啓一君     遠山 清彦君

  遠藤 乙彦君     富田 茂之君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     玉城デニー君

  橋本  勉君     長島 一由君

  鴨下 一郎君     小里 泰弘君

  宮腰 光寛君     馳   浩君

同日

 理事富田茂之君同日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 記録提出要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 基本的質疑を行います。

 この際、昨日の石原伸晃君の質疑に関連し、西村康稔君から質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 おはようございます。自民党の西村康稔でございます。

 きょうは、経済政策、成長戦略、FTAなんかも含め、ぜひじっくり議論をさせていただければと思います。

 まず最初に、円高が進んでいます。きょうも八十一円台、これは大企業にとっても大変厳しい。たしかきのう経団連の会長が、このままではやっていけないと悲痛な声を上げておられました。そして、地方の中小企業にとってはもっと厳しい。倒産もふえている、やっていけない。そんな状況の中で、きょう八十一円台。

 まず野田大臣に、どう対応されますか。

野田国務大臣 西村委員の御質問にお答えをしたいというふうに思います。

 従来から申し上げておりますけれども、為替相場の過度な変動、無秩序な動きというのは経済や金融の安定に望ましくないという認識を持っています。そういう観点から九月十五日に、過度な変動を抑制する観点から、六年半ぶりに為替介入をさせていただきました。

 引き続き、きょうも八十一円台ということでありますけれども、マーケットの動向を重大な関心を持って注視をしながら、必要なときには断固たる措置をとっていきたいというふうに思いますし、加えて、三段構えの経済対策、今ステップツーのところに入ろうとしていますが、こういう政策を着実に実施するとともに、きょう日銀の総裁もお見えでございますが、日銀の金融政策ともしっかりと連携をしていきたいというふうに思います。

西村(康)委員 野田大臣、言っておられることはもっともですが、今こそ介入すべきじゃないですか。市場がどう見ているか。ガイトナー長官との話で日本はプレッシャーを受けた、市場はもう日本は介入できない、多くの市場関係者はそう見ている。どんどん円が買い進まれているわけであります。

 今こそ不意打ちで、まあ、私が言ってやったら不意打ちじゃないですけれども、もちろん、これは時間稼ぎなんです、介入は時間稼ぎ。アメリカの経済が回復基調に乗るまではドル安圧力が続きます。これは非常に厳しい、日本にとっては。しかし、重大な関心を持って注視、そんなことを言っている場合じゃない。いつでも介入する、その決意をぜひお示しいただきたいと思います。

野田国務大臣 デフレが進行している中で、こういう厳しい経済情勢の中で円高が進行して、そしてそれが長期化するということは日本の経済に大きなマイナスだという認識は、委員と全く同じでございます。

 今やるかやらないかということは答えられませんが、必要なときには断固たる措置をとるということでございます。

西村(康)委員 私は、今が必要なとき。不意打ち、私が言うと不意打ちにならないんですけれども、ぜひ断固たる決意で円高を防ぎ、日本の経済を立て直す。もちろん、介入だけじゃだめです。何度も言いますけれども、介入は時間稼ぎにすぎませんから。成長戦略も補正も日銀の政策もやっていただかなきゃいけませんけれども、ぜひ断固たる姿勢で臨んでいただければと思います。

 そこで、日銀総裁にきょうは来ていただきまして、ありがとうございます。

 先般、包括緩和ということで、かなり思い切った、リスク資産まで買うという緩和策を発表いただきました。しかし、これはこれでまた、打ちどめじゃないかという認識がマーケットにも広がっています。報道では、ルビコン川を渡った、精いっぱいの策は全部出した、いろいろなことが伝えられて、もうこれ以上できないんじゃないか、そういう認識も広がっておりますけれども、この円高、デフレ、これに対する総裁の決意をぜひお聞かせいただいて、今後もいろいろなことをやり得るんだということをお示しいただければと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、円高でございますけれども、先ほどの野田大臣の答弁と全く同じでございまして、円高は、輸出企業の採算、それから企業のマインドに大きな影響を与え得るものでございます。そういう意味で、日本銀行も、為替相場の動向とそれが経済に与える影響については、重大な関心を持って注視しております。

 それから、デフレについてでございますけれども、かねて申し上げていますとおり、日本経済がデフレから脱却し、持続的な成長軌道に復帰するということは極めて大事な課題だと認識しております。そういう認識のもとに、先般、包括的な金融緩和策を実行いたしました。

 今回導入しました措置は、相当思い切った措置でございます。これは記者会見でも申し上げましたけれども、今回申し上げました例えば基金でございますけれども、これは初めての政策でありますので、もちろん効果と副作用を入念に点検してでございますけれども、仮に将来そうしたことが必要だというときにはこうした基金をさらに活用して金融政策を行っていくということも、これも有力な選択肢の一つとして考えております。

西村(康)委員 今の御発言は、今回、リスク資産五兆円を含めて三十五兆円の包括緩和策を出されましたけれども、将来、場合によってはこの規模を拡大する、あるいは、リスク資産はなかなか買うとこれは難しいですけれども、REITなんかも市場が小さいですから……(発言する者あり)リスク資産は五千億。REITはマーケットが二兆とか三兆ですから、買えばどんと上がってしまいまして難しいですけれども、例えばETF、これは幾らでも組成すれば買えるわけですし、株価対策にもなる。具体的にはそんなことも私はあると思うんですけれども、そういうことを含めて、今後の円高、デフレの動向いかんによってはさらにいろいろなことを考える、対応をとる、そのことをぜひお示しいただきたいと思います。

白川参考人 今回つくりました基金でございますけれども、これは、先ほど申し上げましたとおり、我々としては大いなる効果を期待しております。一方で、初めての政策ですから、もちろん副作用も点検いたしますけれども、しかし、総合的に勘案して必要だという場合には、こうした基金のさらなる活用も考えていきたいと思っております。

西村(康)委員 アメリカ経済が非常に不透明な状況が続いている中で、まだまだ円高、それからもちろん日本はデフレから脱却できていないわけですので、ぜひ、日銀の金融緩和策も大きなツールの一つですので、引き続き断固たる姿勢でこちらもまた臨んでいただければというふうに思います。

 そこで、総理にお伺いします。

 確かに、円高というときにはドルとユーロが問題になるわけですけれども、もう一つ、ウォン。日本の企業が今世界で戦っているのは韓国の企業であり、ウォンが安い。韓国は為替介入をやっています。為替の取引も必ずしも自由ではありません。ウォン安に誘導している。

 私は、韓国はもうG20を主催する先進国の仲間だ、そのぐらいの経済力をもうつけてきた国だと思います。しかし、立場上、分類上というんでしょうか、途上国のような面もありますから、その立場を生かして為替を、介入したり、取引を必ずしも全部自由化しているわけじゃない、こういう状況だと思うんですね。

 きのう総理は、中国に対して、世界の大国として国際社会で一定の役割を果たすようにしてもらいたい、そういう趣旨の発言をされたと思います。私は、韓国に対しても同様の趣旨で、もう先進国なんだから、G20を主催するんだから、堂々とした為替政策、経済力に見合ったウォン、そういうことを国際社会の場でぜひ言っていただきたいと思いますが、認識はいかがでしょうか。

中井委員長 西村さん、答弁の前に、日銀総裁はいいですか。

西村(康)委員 ごめんなさい。はい。

中井委員長 どうぞ御退席ください。

 野田財務大臣。

野田国務大臣 西村委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 ウォンは確かに、委員御指摘のとおり随時介入を行っております。加えて人民元の方も、六月に為替制度の改革を行い、人民元の柔軟化という路線を打ち出しましたけれども、その動きは歩みが遅いというふうに思っています。

 そういうことを踏まえて、G20、間もなくソウルで行われますが、その前に慶州で財務大臣と中央銀行総裁の会議が行われます。当然のことながら、通貨安競争が大きな議題になると思いますので、議長国としての韓国、その役割は厳しく問われることになるだろうというふうに思いますし、我々も、メッセージとしては、今までG7とかG20で何度か確認をしている合意事項があります。それは、新興黒字国はより為替の柔軟化に向けて改革を行うということでございます。そういう確認をしながら、世界でこういう為替の安定をどういう形で図っていくかという議論を進めていく中で、日本もしっかりと主張していきたいと考えています。

菅内閣総理大臣 私も、財務大臣時代にもG20に出ましたし、先日のカナダにおいてもG8とG20に出ました。

 今の御指摘のように、アジアの中での新興国というのか、もちろん中国が一番注目されていますが、韓国のいろいろな意味での競争力というのは、特に日本との関係では大変大きなものがあります。

 そういう意味で、今御指摘をいただいた点は、今財務大臣の話にもありましたように、やはりG20の席で為替の過度の変動は好ましくないという一つの合意を従来から得ているわけでありまして、逆に言えば、それに対してそれぞれの国がどういう責任を果たすのか。自分の国だけはいわゆる低いところに誘導を人為的にしているということは、必ずしも、G20の全体の協調ということからすれば外れているわけであります。

 そういう点で、韓国にもあるいは中国にも、そうした共通ルールの中できちんとした責任ある行動をとってもらいたいというのは、日本としても、言い方はなかなか難しいんですが、率直に言って、日本も為替介入をしておりますから。しかし、そういう姿勢はきちんと示していく必要がある、それは私もそう考えております。

西村(康)委員 そのとおりだと思うんですね。なかなか各国協調して、それぞれが通貨安競争になりかけておりますので非常に難しい状況だと思いますが、円が際立って高い。これは、成長するアジアの中で、元とウォンはどうしても自由な取引ができない中で、しわ寄せが円に来ている面があるんだと思うんですね。ぜひウォンに対しても注視をしていただいて、日本の競争、世界各地で競争しているのは韓国の企業が多いですから、ぜひそのことも頭に置いて対応していただければというふうに思います。

 次に、民主党政権、菅政権の経済運営の基本的考え方についてぜひ御議論をしたいと思います。

 去年は、コンクリートから人へ、物すごく民主党の閣僚の皆さんはこのことをおっしゃいました。何度もおっしゃいました。そして、菅総理は六月には、強い経済、強い財政、強い社会保障と言われました。六月には、東アジア共同体ということも所信表明で言われました。ところが、今回の所信表明では、コンクリートから人へもない、強い経済、強い財政、強い社会保障の言葉もない、東アジア共同体の言葉もない。かわりに、きのうも議論になっていました太平洋の自由貿易協定、TPPに参加を検討する、突然こんなことを言われました。

 昨年は、子ども手当で家計を支援し、内需振興で日本経済を立て直すんだ、このことをさんざん言われました。ところが、内需振興の話は最近出てきません。インフラ輸出、外需、政策をその都度変えている。

 大ぶろしきを広げて日本経済を立て直すと言うのはいいですよ。しかし、こっちにふろしきを広げて畳み、こっちにふろしきを広げて畳み、長期的に日本の経済をどうするのか、世界の中でどうするのか、そのビジョンがないじゃないですか。その都度その都度、言葉遊び、受ける言葉をその場その場しのぎで言っている。腰を据えて、日本経済の長期的な展望を示して、そして、それに対して何をやらなきゃいけないのか、じっくりと考えて政策を打ち出していただきたいと思います。どうですか、総理。

海江田国務大臣 西村委員にお答えをいたします。

 もちろん、私どもは、中長期的そして足元の経済対策ということに力を注いでいるわけでございまして、中長期的な展望も持ってございます。その中で、菅総理は早くから、やはり過度に外需に依存をした経済成長はなかなか厳しいものがあるから、内需に切りかえをしていかなければいけないということも何度もお話をしているところでございます。

 そうした中長期的な中では、もちろん、我が国が抱えております財政の問題、これが大変厳しい状況がございますから、この財政をどう安定させていくかという問題もございます。

 それから、やはり、特に今度の国会などでは景気対策に力を入れておりますが、去年、一昨年の春から比較的順調に伸びてきました。これには、前の自民党の政権がいろいろな手を打ったということもございますが、そうした効果がやはり途切れてきて、そして、特に、ギリシャの問題でありますとかヨーロッパの問題でありますとかアメリカの問題、それからアジアの問題もございます、そして日本自身の問題もございますから、そういう問題に対してやはり果断に手を打たなければいけないということがございますものですから、ことしの九月に入りまして、三段階の経済のステップを、三段構えの経済対策を打ちました。

 そして、まず第一段、これは九千二百億円の予備費を使いまして手を打った。そして、今第二段、これがまさにこれから補正予算、もう間もなく補正予算ができますから、そういう意味では皆様方の御主張も十分取り入れているつもりでございますから、ぜひその意味では、この補正予算を早くつくって、そして、この中長期的な経済対策の方にしっかりと腰を据えられるようにお時間もちょうだいをしたい、そのように思っております。

西村(康)委員 よくわかっています。やろうとしていることは、言おうとしていることはよくわかっています、海江田大臣。

 ただ、内需も外需も、コンクリートも人も、企業支援も家計支援も、いろいろなことをやはりやらなきゃいけないんです。その都度、まるで焦点が違うかのような、その場しのぎの言葉遊びはやめていただきたい、このことをぜひ申し上げたいと思います。(発言する者あり)後でまた何度も言っていただきますから。

 子ども手当、これはきょう、この後、先輩の鴨下さんが話していただけると思いますけれども、一点だけ。

 たしか、二兆五千億ことしは出しているんだと思います。国費は一兆七千億ぐらいだと思いますが、もう既に六月に支給されています。この十月に四カ月分が支給される、その認識でいいですか、厚労大臣。

細川国務大臣 はい、そのとおりでありますけれども、ただ、その認定の厳しさが少し以前と違いますから、同じような額にはならないとは思いますけれども、支払います。

西村(康)委員 ちょっと意味がわかりません。もう一度答弁していただけますか。

細川国務大臣 はい、支払うということでございます。(西村(康)委員「支払うの」と呼ぶ)はい。

西村(康)委員 十月に四カ月分が出るという認識でいいですか、支給されるということでいいですか。

細川国務大臣 はい、それでよろしゅうございます。

西村(康)委員 子ども手当は目玉政策じゃないんですか。いつ支給されるかも知らないんですか、厚労大臣。去年、あれだけ選挙で、内需振興、家計支援をやる、マニフェストの目玉じゃないですか。いつ支給されるかも知らないんですか。

 四カ月分がこの十月に出る。金額幾らですか、この四カ月分、支給される金額。二兆五千億の子ども手当です。四カ月分が出るんです。幾らですか。

中井委員長 細川厚労大臣、日にちと金額を答えてください。

細川国務大臣 西村委員にお答えしますけれども、通告がございませんでしたので、大変申しわけありませんけれども、ぜひ申しわけをいただきたいと思いますが。済みません。

西村(康)委員 子供支援のための政策なのか経済政策なのか、その趣旨は我々はっきり承知しておりませんけれども、大事な政策なんでしょう、皆さんにとって。通告あるなし、経済政策の基本運営、担当大臣が何月にどれだけ支給されるか知っていて当然じゃないですか。

 まあ、いいです、こんなことを議論していてもしようがないので。簡単に言います。二兆五千億で……(発言する者あり)ちょっと、静かにしてください。

中井委員長 御静粛に願います。

西村(康)委員 ちょっと静かにしてください。二兆五千億あって……(発言する者あり)今から言いますから。

 二兆五千億あって、ことしは十カ月分の予算を計上しているわけです。これは御存じですよね。何度も予算審議しました。そのうちの四カ月分が出るんですから、二兆五千億の十分の四なんですよ。別に、その場ですぐ計算していただいたらわかることで、約一兆円がこの十月に支給されます。いいですか。

 これは、我々は子ども手当には反対していますし、もっと効率のいい成長分野なり、限られた資源を中小企業なり成長分野に使った方がいい、そういうふうに我々は考えておりますが、それでも、もうここまで手続が今月進んでいます。多分市町村では進んでいるんでしょう。ですから、この一兆円は市中に出ますから、それなりの経済下支えの効果にはなります。

 昨年、あるいは予算委員会で議論されたとおり、乗数効果が低いとか消費性向がどのぐらいなのかという議論はありますけれども、一兆円が出るわけですから、これはぜひ、我々百歩譲って、もうやってしまっているんですから、この十月はとめられません。エコポイントの制度も含めて、これが消費に回って経済の下支えになるように、ぜひ閣僚間でしっかりと打ち合わせをして、いつ配られるか幾ら配られるか知らない、そんなことじゃなくて、目先の経済、使えるものは全部使って日本経済を立て直してください。総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 経済政策を真正面から質問に取り上げていただいたことを私は大変うれしく思っておりまして、まずお礼を申し上げます。

 先ほど、答弁のチャンスがなかったので簡単に申し上げますが、この所信表明で、私が二十年間の先送りの中で五本の柱を申し上げましたが、その中で、経済成長がこの二十年とまってきた、それに対して、特に新成長戦略を中心として、その実行をずっと申し上げてきました。

 いろいろなことをばらばらに言われたと言われますけれども、私はそうではないと思っています。すべては新成長戦略を中心として、内需の拡大もあり、いろいろなことがその中に盛り込まれておりまして、そういった意味で、ぜひ骨太の中で、目先の景気対策ももちろん重要でありますが、中長期的に経済成長路線にいかにして戻していくか、そういう観点から経済政策を立てていることをぜひ御理解いただきたいし、もしその問題でおかしいというのであれば大いに議論をさせていただきたいと思っております。

 その中で、今、子ども手当についてのお話がありました。子ども手当については、かなり以前の国会でも議論がありましたが、基本的には、景気対策的効果もありますけれども、根本は、今の少子高齢化の中で、やはり、どちらかといえば高齢者に対する福祉はかなり財政的にも手当てが厚くなっておりますが、子供に対しては非常に相対的に薄い。そういう中で子供を育てられる皆さんに対して、もっと子供を育てやすくしよう、そういう支援的な意味が第一義的な形で、この政策のベースだと私は思っております。

 それに加えて、結果としてその給付がまさに消費を促す効果もある。そういう点では、御指摘のとおり一兆円の費用が個人の家庭に流されるわけですから、それについてはもっと、おっしゃるとおり、ある意味でそういうことについての意識を国民の皆さんにも持っていただいて、ぜひ、場合によっては子供のために使うようにアピールをしていきたい、こう思っております。

西村(康)委員 目的が、本当に我々にはっきりしてない。これは厚労委員会でもいろいろな場でも議論してきましたけれども、子ども手当、本当に子育て支援のためというなら、厳しい世帯に上乗せしてでもやった方がいい。なぜ一千万も二千万も所得がある人にまで配らなきゃいけないのか。どこが子育て支援なのか。ここではもう多くは議論しませんけれども、その上で二つ提案をしたいと思います。

 一つは、もう一回、次は来年二月だと思いますが、二月に支給がある。これは執行停止をしていただきたい。執行停止をして、恐らく七千億円、これは自民党案として提案をさせていただいております。玄葉さんのもとにもお届けをしている中にあると思います。執行停止をしていただいて、より乗数効果の高い、より経済対策として意味がある、より成長分野につながるところに重点投資をした方が効果がある、これが自民党の考えであります。

 二つ目の提案は、きのうもどなたか、副大臣がどこかでコメントしておられましたけれども、高額所得、我々は児童手当のときは、約九百万、八百六十万円以上の世帯には所得制限で配っておりませんでした。そのぐらいの所得がある方には、子育ては御自身の力でできるでしょうということです。せめて所得制限を入れて、その分は執行停止するなり、限られた財源なんですから、総理、財源がないことは総理が一番よく知っておられる。限られた財源をどう有効に使うか、その視線をぜひ持っていただきたいと思います。

 その上で、総理は先ほど、成長戦略という中で一貫しているというお話をされましたけれども、ちょっとパネルを見ていただいて、幾ら成長戦略、幾ら補正予算を組んでも、日本の企業は、もうやっていけない、海外へ逃げていく、雇用を生まない、そういう状況になりつつあることをお話し申し上げたいと思います。

 総理は、六月十一日の所信表明では、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策、これは第二の道と言っています。これはとらない、第一の道の公共事業中心の政策もとらない、第三の道を目指すと。つい先般の所信表明では、供給者本位から消費者目線に転換する、政府が先頭に立って雇用をふやす。

 何をやっているか。いわゆる我々が四Kと呼んだり、ばらまき四兄弟と呼んでいる今の子ども手当、戸別所得補償、高校無償化、それから高速道路の無料化、こうしたものを国がばらまいて経済をよくしようという発想。それから、郵政民営化を逆行させる法案も閣議決定されました。まさに官主導、カン主導と言っても総理主導じゃないですよ。大きな政府、大きな官主導の経済政策をやろうとしているわけです。

 どうなるか。民間は民業を圧迫され、本来、雇用をふやすのは企業がふやすわけです。政府が先頭に立ってお金を配って雇用をふやすというのは、発想が違うんです。企業が頑張って努力をして、新商品を開発し、新しいサービスをふやしていく、その環境をつくるのが政府の役割なんです。お金を配ることじゃないんです。環境をつくらなきゃいけないんです。幾ら、雇用、雇用、雇用と唱えても雇用はふえない。企業がしっかりと活動しないことにはふえないわけであります。

 パネルにありますけれども、資料にもお配りしていますが、企業が雇用拡大をするためにいろいろやろうとする中で、五重苦、まさに雇用空洞化政策を打たれている。その一つが先ほど来議論している円高、デフレであり、二つ目がCO2の二五%削減。三つ目が高水準の法人税率、これもこれから議論します。それから、労働者派遣の禁止、最低賃金の値上げ。

 こうした中で、どうやって企業が日本に立地をして、雇用をふやすことができるのか。ぜひ総理には、供給サイドは応援しない、こういうメッセージを常に出されていますけれども、供給サイドにぜひ目を向けていただきたいと思います。

 そこで、主な点だけちょっと議論します。法人税の引き下げについてやりたいと思います。

 総理は指示を出されたと聞いています。もはや、国税五%分下げるのは当たり前、マーケットはそういうふうに織り込んでいっていると思います。総理、まず、最低限、自民党は二〇%台ということを言っていますが、五%削減、法人税下げ、これに対する決意をお聞かせいただきたいと思います。

中井委員長 西村さん、先ほど言われた御提案二つやらの答弁はもういいですか。(西村(康)委員「いいです」と呼ぶ)今の法人税だけ。(西村(康)委員「はい」と呼ぶ)

 菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 今雇用のことを申し上げたときに言われた議論は、私は一番重要な議論だと思うんです。あるいは第二の道の議論ですね。つまり、今のデフレ状態をまずどう認識するかということをよく議論したいんです。

 つまり、今、実は個人の人も、全体で見ると決してお金を持っていないわけではありません。企業も、お金を持っていないどころか、二百兆もの内部留保を持っております。何を申し上げたいかというと、デフレという状態は、お金を持っている人がそれを使って、例えば若い人だったら、赤いポルシェでも買って、だれかガールフレンドと一緒に遊ぼうか、そういうふうにお金を使うよりも、お金のままで持っていたい。

 西村さんももちろん経産省におられたからおわかりでしょうけれども、お金を、いわゆる流動性を確保することの方に選好、いわば選択がいっている。企業も、私たちは一生懸命、国内に立地をしてもらうように、経団連初めいろいろ言っています。しかし、お金を握ったまま、なかなか設備投資ということに入りません。設備の老朽化は相当進んでいるにもかかわらず、そういう状態が続いています。

 つまり、何を申し上げたいかというと、今言われたように、私たちも民間に任せたいんです。しかし、民間に任せると、個人もお金を使わない、企業もお金を使わない、だからどうするのか、やり方は二つしかありません。国債でそのお金を借りて何らかのことに使う、あるいは税収で何らかのことに使う。問題は使う中身です。そこで、需要を生み出すところに一番使うんです。潜在的な需要が一番あるのは、介護であったりあるいは保育です。

 つまり、雇用というのを私たちが言っているのは、決して失業対策のように、まさに穴を掘って埋めて、穴を掘って埋めて、全く意味はないけれども、お金を渡すことが意味があるんだという意味の雇用対策をやろうとしているんじゃありません。例えば介護でいえば、そこに公的なお金を、それが税金であろうがあるいは国債のお金であろうが投じたら、失業している人がそこで仕事があり、そこでサービスを生み出しますからGDPが上がり、給料をいただければ多少なりとも税金を払う。そこで経済の成長につながり、財政の再建にもつながり、また、介護とか医療の分野でいえば、社会保障の充実にもつながる。私が申し上げている、経済と財政と社会保障の好循環ということを考えて成長路線に乗せたいというのは、そういうことなんです。

 ですから、第二の道について、戻れというようなことを言われていますが、デフレ状況で幾ら供給サイドをより効率化しても値下げ競争になるだけで、需要が大きくならなければ、幾ら供給サイドを安くしたって、それはまさにデフレがより進むだけじゃないですか。

 そういう意味で、私たちが申し上げているのは、雇用というものをキーにして成長させていく、私は、それは一貫した私の政権の政策として申し上げているところです。

中井委員長 総理、五%の法人税の方。

菅内閣総理大臣 済みません。

 法人税については、私もこれは、国外にいろいろな事業所が移転するときの一つの判断に、各国の法人税の比較をもってそういう動きを促進してしまう危険性が現実にありますので、そういった面からは、法人税のあり方について、引き下げの方向を含めて検討するように、率について今私が数字を申し上げる段階まで来ておりませんが、政府税調あるいは党における議論でも、もちろん課税最低限を広げるといった問題もあわせてではありますけれども、引き下げの方向での検討を指示しているところであります。

西村(康)委員 ちょっと決意の強さはよくわかりませんでしたけれども、引き下げの方向で検討を指示しているということですから、これは閣僚内の、大臣の皆さん方もそうでしょうし、党内もそうだと思いますが、五%は最低ラインだと思います。これはぜひやっていただきたいと思います。

 前半のお話、もうこれは議論し出すと質問できなくなるので多くは言いませんが、まずデフレの状況をとめることが大事なわけですから、そのためには、金融政策もそうですし、財政、もちろん、借金をふやさずに、ありとあらゆる財源を使って大きな補正を組むべきだ、それは私は賛成であります。これはまた後でちょっと議論をしたいと思いますけれども。

 その上で、特区制度は片山大臣になるんですかね。我々自民党の提案は、これは玄葉大臣にもお届けをしてありますが、法人税、国税五%はもう当たり前。さらに地方税も含めて、地方に特区をつくって、そこにいろいろな企業を立地してもらう、新しい産業を誘致していく。例えば、北海道もそうでしょう、沖縄もそうでしょう。実は、私の地元の淡路島も特区の提案を出しています。環境、食、そうしたものを、新しい企業、本社を誘致する、新しい産業を誘致する。この特区制度をぜひ生かしていただいて、地方税分まで含めて日本の法人税の実効税率、一覧表を見ていただければわかりますように、各国から比べて圧倒的に高いし、先進国も三〇%前後になってきています。イギリスはさらに下げます。日本の企業が競争している韓国は二四%。

 ですから、こういうことも含めて、デフレを脱却して企業が活動しやすい環境をつくる。そうすると、政府がやる役割は小さくて済むわけですから、企業がどんどん活動していく環境をつくる。そのために、特区制度でぜひこうした面を実現する。そのことをお伺いしたいと思います。片山大臣、いかがですか。

片山国務大臣 特区、今度、総合特区というものがありますけれども、そういう制度を活用して、大いに各地域が活性化をしていただきたいと思いますが、事税制に関しましては、国との整合性、それから他の地方団体に及ぼす影響などもありますので、特区制度の中で検討するだけではなくて、先ほど総理がおっしゃいましたように、政府税制調査会などでも議論する必要があると思っております。

西村(康)委員 我々自民党は道州制というものも提案をしております。道州の中で、それぞれ産業特区、そうしたものを一つずつ、北海道ならどこ、沖縄ならどこ、例えば北海道はもう先行実施していますので、ぜひやっていただきたいと思いますが、そうしたものを活用して、もちろん、全体として法人税を下げていく、地方税分を含めても下げていくことは大事ですけれども、まずはそうしたことも取り組みとしてぜひ御検討いただきたいと思います。これはぜひ我々も提案をしたいと思いますので、御議論させていただければと思います。

 そして、もう一点、コンクリートから人へ。これも最近、民主党の政権のどなたも言われなくなりました。実は、コンクリートから人へと言いながら、コンクリートの予算も減らし、人の予算も減らしている。

 文科大臣、御存じだと思います。文科省の予算は、人に関する科学技術、教育、高校無償化を除いて減っています。一千億近く減っています。高校無償化は多分四千億弱だと思いますけれども、我々の去年の補正予算も含めた予算からすると、一兆円近く減っています。つまり、コンクリートから人へと言いながら、コンクリートも人も予算を減らして、結局、子ども手当と借金をふやしただけじゃないですか。

 まあ、それはそれとして、もちろん公共事業も、我々自民党政権も毎年三%ずつ削減をしてきました、無駄な公共事業をやめようと。しかし、さすがに、去年、事業費ベースでいうと三割ぐらい減っています。何も地方の経済対策のためだけにやるということではありませんけれども、地方で必要なインフラ、バイパスをつくったり、渋滞緩和であったり、防災対策であったり、そうしたことも地方の経済には必要なことです。

 そして、農業についても、農業の基盤整備、これは、我々は、ばらまき、戸別所得補償は反対しています。むしろ、北海道もそうですけれども、基盤をつくって、そして生産性を上げていく、そうした予算を我々は応援をしていく、全体として効率を上げていく、そのための政策が必要だ。

 もちろん、自民党の政策がすべて正しかったとは言いません。我々も反省すべき点はたくさんあると思います。しかし、防災とかそうした基盤整備のような、あるいは地方の必要な基本的なインフラ、こうしたものまでつくれなくなってしまっている。(発言する者あり)もちろんそうです。限られた財源をどう使うか。だからこそ、子ども手当とかばらまきをやめて有効な政策に使え、こういうことを言っているわけでございます。

 総理は、熟議ということをこの国会でよく言われています。我々も反省すべきところは反省をしたいと思います。ぜひ謙虚になっていただいて、もちろん、自民党の政策を全部否定したかったんでしょう。ですけれども、その中に必要なものがある。お互い謙虚な気持ちで、ぜひ、有効な経済政策、日本の経済をどう発展させていくか、地域経済をどう活性化するか、そうした視点で、この国会、まだありますから、今後議論させていただきたいと思いますが、いかがですか。

菅内閣総理大臣 まさに、おっしゃったように、きょうの議論、私は大変いい議論だと思っておりますが、予算でいえば、どういう分野に予算を使うことが短期、中期、長期、長期も含めて日本の経済を立て直す上でプラスになるのか、社会の安定がそれでなるのか、大いに熟議をしていきたいと。

 先ほど、子ども手当のことも、皆さん、よくばらまき、ばらまきとおっしゃいますけれども、例えば、これからこの子ども手当を次の段階にふやすときに、いわゆる現金給付でいくか実物給付でいくかという議論もやっております。例えば保育所をふやすことになれば、雇用が生まれて、先ほど申し上げたように新しいサービスがふえるわけです。そういう議論の中でも、どういうやり方が子供にとってもプラスになり、日本経済にとってもプラスになる、そういう道が一番望ましいわけでありますから、ぜひとも大いに議論していきたいと思っております。

西村(康)委員 そこで、総理は、成長分野でよく、今も保育の話をされましたが、医療の話をされます。医療について少しだけお話をさせていただければと思うんです。

 実は、二十一年の麻生内閣の一次補正予算で、我々は地域の医療再生基金というものを三千百億計上いたしました。各地域で、病院の統合であったり、古い病院の設備を変えたり、あるいは救急センターをつくったりと……(発言する者あり)そのとおりです。この予算は、実は七百五十億執行停止にされまして、各地区でいろいろなことを、今北海道の例も出ましたけれども、私の兵庫県でも、これは尼崎の地域ですけれども、救急センターをつくる、あるいは医師不足に対応するために医師を研修、派遣する、そうした設備をつくる、これも断念をいたしました。

 ところが、驚いたことに、今回の緊急経済対策、補正予算の中にこの復活が入っている。これは、去年の執行停止を、本来やっていれば今もう既に地域の医療は充実に向かって、それぞれの地区でいろいろな努力をしていた、それを応援していた予算であります。それがとめられてしまった。ところが、一年たってまた復活。ぜひ、場当たり的な対応をやめていただきたい、その場しのぎでやるのはやめていただきたい。

 さらに言います。総理は、所信表明の中で、この成長分野、規制緩和の例として、「国際医療交流の拠点とするため、ビザや在留資格の取り扱いを改善します。」という例示をわざわざ挙げられました。いわゆる医療ツーリズムというものでしょう。国内の医療制度改革についての方向性も出さず、国内のこうした救急医療センターの、地域の整備の予算も停止をしておきながら、なぜ外国人を優先し、お金持ちを優先するようなことに、これを例として挙げて推進をしようとされるんでしょうか。地方ではまだ医師不足は続いています。これは自民党も責任があります。だからこそ、補正予算の中で我々は提案をしていたわけです。

 外国人を優先している暇はないわけです。まずは日本国民に、地域で医療が安心して受けられるような仕組みをつくることを優先すべきじゃないんですか。仮に百歩譲って、日本でしかできない高度な検診とか、あるいは人道的な理由でどうしても日本でしかできない、こういうことは受け入れることはあると思います。しかし、まずは国内の医療、地域医療をしっかり充実させること、これが大事なんじゃないですか。ぜひ、このことについて総理にお伺いしたいと思います。

細川国務大臣 お答えいたします。

 西村委員の言われるように、医師不足あるいは医師の偏在というのは、今、日本の医療について大変深刻でございます。

 せんだって調査をいたしました。その調査の中で、そういう医師不足もはっきりしてまいりましたし、診療科目によってもまた偏在をしているということがはっきりいたしましたので、それについては、私どもとしてはしっかり対応していくということでこれから進んでまいります。

 そこで、そのことと、それから先ほどの国際医療交流、それによって、これが成長戦略の中で位置づけられて、それも進める。これはこれで経済成長戦略の中で位置づけ、そしてまた国民の医療もそれはしっかりとやっていく。こういうことの両立は当然させていくということで私どもも考えているところでございます。

西村(康)委員 いろいろな答弁の仕方はあると思いますけれども、まず国内医療を。みんな今心配なわけです。それは、総理も言われたように、強い社会保障をつくらないと、日本の経済、安心して消費もできないわけですし、好循環になっていかないわけでありますから、まずは国内医療を心配ないようにする、そこに全力を挙げていただきたい。その上で、余裕ができれば、もちろん日本の高度な医療を外国の人が受けるのはいいと思いますけれども、まずはそのことに力を入れていただきたいと思います。

 もう一点だけ、これは提案をさせていただいて、PMDAと言われる医薬品医療機器総合機構、ここの審査が遅くて、なかなか新薬の承認あるいは医療機器の承認がされない。これは独立行政法人ですけれども、思い切って独法の制約を超えて、審査官をふやして審査を短くする、こうした取り組みをして新しい産業につなげていっていただければと思います。

 そこで、これは自民党が提案をした、我々の経済対策の中にも入っているんですが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、ここに余剰金がある。我々は、これを補正予算で使うべきだということで提案をさせていただきました。これは野田大臣なのか玄葉大臣なのかあれですけれども、きょうの報道によると、新聞に出ておりましたが、我々の提案を受け入れていただくのはいいんですが、来年度の一般会計に使うというような報道がされていました。

 これは、民主党政権で閣議決定されたいわゆる中期フレーム、財政方針、つまり、恒久政策には恒久財源、臨時的な政策には臨時財源でもいい、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴー、この原則も決められたと思いますけれども、これは余剰金であり、一回限りのお金であります。これを通年の予算の恒久政策に入れるというのは、民主党の方針と違う。むしろ我々は、これを補正予算で使うべきだ、一兆円上乗せできるなら、この一兆円、直ちに今こそこの緊急的な経済対策に使うべきである、こういう提案をしているわけですけれども、野田大臣、いかがですか。

野田国務大臣 西村委員の御質問にお答えしたいと思います。

 鉄道・運輸機構の特例業務勘定の利益剰余金、これをどれだけ国庫返納できるかと、見込み額の今精査を行っているところでございます。一兆円を超える規模になることは間違いないと思いますが、そういう段階でございますので、二十三年度予算編成に生かしていくという方向にしたいというふうに思っています。それが……(西村(康)委員「方針との整合性は。ペイ・アズ・ユー・ゴー」と呼ぶ)いや、これは税外収入という形でもう何年もやってきていることですので、特に異例のことではないというふうに思います。

西村(康)委員 ペイ・アズ・ユー・ゴーを正確に理解をすると、恒久政策には恒久財源ですよね。補正予算は、こういう剰余金を初め一回限りのものを使う、こういう方針で我々はやってきておりますし、それを提案しておりますし、私は民主党もそういう方針になられたと思っておりましたけれども、そこは若干の違いはあるのかもしれません。

 いずれにしても、これは法律改正が必要になると思いますので、もしこの補正予算で使うということで法律改正が必要であれば、我々はこれは協力をしたいと思いますので、これは我々が提案をした案ですから、ぜひ、できることなら直ちにお金を使う方向で議論を進めていただければというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、EPA、FTAの議論に入りたいと思います。

 EPA、FTAについては、自民党も参議院公約で、戦略的に取り組むということをしておりました。日本のGDPに占める輸出の割合、もうお聞きをしませんが、これは非常に低いです。一七%。意外に思われる方も多いと思います。日本は貿易国家でありますけれども、輸出のGDPに占める割合は一七%です。韓国は何と五三%もあり、これは二年前の数字ですけれども、ドイツも四七、八%。輸出で彼らは稼いでおります。日本も本来もっと輸出ができる国だと思いますが、非常に低い。

 それで、きのう前原大臣が答弁をされていましたけれども、日本がFTA締結をしたところ、あるいは交渉中のところ、これを見ていただいたらわかりますけれども、交渉中のところも含めて、日本は三分の一、三六・五%。韓国は六割を超え、EUでは、域内貿易も含めてですけれども八割を超えている。これは非常におくれをとっている。これは自民党政権のときの反省もあります。もっとやるべきだ、これはお互いに同じだと思います。

 そこで質問です。

 総理は、先ほども言いましたけれども、六月の段階ではTPPについては全く触れず、東アジア共同体の話をされていました。TPPという言葉もありませんでした。太平洋の自由貿易協定ですね。ところが、突然、TPPへの参加を検討すると今回表明され、指示を出されたと聞いています。どういう変化があったんですか。東アジア共同体はやめたんですか。

前原国務大臣 やめたわけではありません。

 これは、委員も御承知のとおり、APEC全体で、ボゴール合意というのがあって、途上国・地域も入れて二〇二〇年までに一体として二十一カ国・地域が自由な貿易を行うような仕組みをつくる、こういうことで、二〇一〇年が先進国の一つの評価の年になっているということでありまして、東アジア共同体を目指すと同時に、このFTAAPというAPEC全体の自由な貿易体制を目指していくということについては変わりがありません。

 そのときに、では具体的なものとして何があり得るのかということを考えたときに、もう実際、日本は、これは委員も御承知のとおり、ASEANとは自由貿易協定を結んでいるわけですね。また、二国間のFTAについては、ミャンマーとラオスとカンボジア以外とはもう結んでいるということでありますが、一番やはり大きなポイントは、私はきょうずっと委員の質問を聞いていて、大事なところは、例えば、韓国の対比でウォンの話をされましたね。ウォンは安くて円が高いと。そして法人税の比較をされましたね。韓国は二四%ちょっとで日本は四〇%。そしてFTAのカバー率では非常に低いということになると、これはまさに、韓国と日本でいうと、日本の自動車メーカーとかあるいは電化製品メーカーは、海外ではもう韓国には勝てない、この三つの要因をとっても、ということが明々白々だというふうに思います。

 したがって、東アジア共同体というのがなくなったかどうかではなくて、日本は農業の問題がありますけれども、農業の問題を、これは与野党ともにしっかりと対応策を出し合って、そしていかに自由貿易に踏み出していくかという観点で御議論をいただき、そしてその一つの検討材料としてのTPPであるということも御理解をいただき、ぜひ委員とは建設的な議論をさせていただきたい、こう思います。

西村(康)委員 前原大臣とは、問題意識はほぼ共通だと思います。

 その上で、幾つかTPPについてもお話し申し上げたいと思いますし、韓国との話をされましたので、先にそのことを言いますと、韓国とEUのEPAが来年七月に発効します。日本企業にとってはこれが物すごく大きい。日本企業がアメリカに対して払っている関税額よりも、三千六百億円以上かな、より多くの関税をEUに払っている。四千何百億か払っている。EUに対する関税の方が高いわけですね。これは、例えば液晶は一四%とか車が一〇%とか、これが韓国はゼロになるわけですから、日本企業にとっては非常に厳しい。

 だから、申し上げたいのは、TPPも私は大事だと思いますし、私は最初から交渉に参加すべきだという立場です。これはちょっと後で時間があれば申し上げますが、まずはEUと日本の交渉を進めるべきだ、このことを総理には指示をしていただきたかったし、前原大臣には取り組んでいただきたい。

 ところが、EU側は、もう釈迦に説法ですから余り多くは言いませんが、日本の関税はほとんどゼロですからとれるところがない。欲しいのは非関税障壁。なぜシーメンスの電車が入らないんだ、エアバスは買ってくれないんだ、技術基準が何か違うんじゃないか。あるいは、環八の内側にBMWのサービスショップを建設できないみたいなことまで向こうの要望項目には入っています。これは非関税障壁です。羽田で発着枠をもう少し欲しい。これらのことは決して解決できない問題じゃないと思います。

 ぜひ、まずEUとの交渉、特にEUはまた農業で日本と若干ありますけれども、そんな大きな問題になるところはありません。EUと韓国のEPAでも米は除外されていますから、そういう意味でも余り論点はありません。そういう意味で、EUとの交渉をぜひ開始していただきたいと思いますが、前原大臣、いかがですか。

前原国務大臣 このEUとの交渉については、総理からも指示をいただいているところでございますので、しっかりと取り組みをさせていただきたいと考えております。

西村(康)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。加速をしていただきたいと思います。もう韓国とはスタートしますから。

 その上で、TPPについては、いろいろな話が流れていますけれども、即時一〇〇%関税撤廃というのは、まず事実ではありません。チリなんかも十数年にわたって撤廃をしていくということですから、即時撤廃は九〇%ぐらいだと思います。しかし、小さな四カ国、ブルネイとかシンガポールだけだったら問題ないんでしょうけれども、ここにアメリカ、オーストラリア、それから将来カナダも入っていきたいという意向もあるでしょう、韓国も米韓が終われば入ってくるでしょう。非常に大きなアジアでの、太平洋でのマーケットができるわけですから、これは日本も参加しなきゃいけない。

 一〇〇%将来は関税を自由化する、そう言われたら日本は参加できません。私の地元も農業もあります。日本の農業の問題点、改善しなきゃいけない点もたくさんあります、守らなきゃいけないところもたくさんあります。しかし、例えば、オーストラリアが今度入ってくるわけですが、米豪のバイの、二国間のEPAを見ると、アメリカは砂糖を除外し、乳製品を除外しています。彼らにもセンシティブな、守らなきゃいけないところがあります。一〇〇%はできないんです。そういう意味で、そういった国々が入ってきて条件闘争をやるということであれば、日本も、例えば米は除外する、乳製品は守る、牛肉は守る、幾つかの交渉はあるでしょう。

 さらに、これは農水大臣にお伺いしたいんですが、今のようなばらまきをやって、小さな農家も残し、均一に配る政策では、これは農業に対する支援にはなりません。競争力がつくような形で、規模の大きなものも支援していく。きのう前原さんが答弁された、韓国は一定の財政措置をやっている。日本も、一兆円の農業に対する施策をやるなら、ばらまきじゃなくて、もう一度組みかえて、もちろん、中山間地域とか守らなきゃいけない、最低限のところの条件、守ってやらないといけないところもあるでしょう。しかし、さらに規模を大きくするようなところ、競争力をつけるような仕組みに対して支援をする、これをやっていかなきゃいけないと思いますが、大臣は、新聞記事によると十年かけてやるというようなことも私は読みました。しかし、十年では遅いです。直ちに組みかえていただきたい。いかがですか。

鹿野国務大臣 今、西村委員から、戸別所得補償はばらまきだと。私どもはばらまきとは、そういう認識は持っておりません。

 基本的に、今委員がおっしゃるのは構造改革の問題ですよね。構造改革というのはいろいろありますよ。私たちは日本の国です。アメリカはアメリカの国です。カナダはカナダの国です。そういう広大な土地を持っているところは、広大な土地を活用しての構造改革。我が日本の国は、七割が急峻の日本の国。そういう中でどういう構造改革をやっていくかということで、私たちは、これからもこの戸別所得補償というものを軸にして一つ一つ、規模加算もやっていきますよ、こういうようなことですから、決してばらまきなんというふうな認識を持っておるものではありませんし、将来に向かっても、きちっとしたそういう政策を私たちは実行していくわけです。

 ある程度、十年というのは、一つの移行期間というものを定める場合は大体十年くらいの間かな、そして、そういう中で農業者の人たちにも判断をしてもらう。やはり、きちっと規模を拡大していくためには、じゃ、私はあなたに農業を任せるよ、おれは別のところで働いていくよ、そういうような一つの流れというものの中を十年間というふうなことに考えて、そして、そういう中で農家の人たちにも生産性の向上というふうなものについても取り組んでいただく、こういう私自身の考え方なのであります。

西村(康)委員 日本の農業の特性も、私も農業地域から選出されています、よくわかっていますし、この後、同僚の宮腰さんが質問されると思いますので、そこは譲りますが、前原大臣、十年間かけて農業支援を、政策を組みかえていくか、さらに変えていくという今の大臣。我々の経済、それで十年間余裕ありますか、FTA、EPAをやっていく、あるいは日本経済を立て直す上で。いかがですか。

前原国務大臣 十年間という意味をどうとらえるかだと思います。これは、西村委員御自身も、TPPに逆に今すぐ入ったとしても、十年間は暫定期間としていろいろな例外措置がとれるということをみずからおっしゃっていて、実際もそのとおりでありますし、それはどういうふうにとるかということだと思います。

 いずれにしても、やはり入るときはそれなりの覚悟、覚悟というのは、余り例外なく入るということと、あとは、今まで一番大きな問題となってきた農業に対して、どういう具体的な支援策を行ってパッケージとしてやっていくのかという政治的な決断が求められるというふうに思っております。

西村(康)委員 時間となりましたので終わりますが、ぜひ、これから各委員会でも個別の議論をさせていただければと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、下村博文君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。

 今シャドーキャビネットの文部科学大臣ということですので、教育を中心に質問させていただきたいと思います。

 菅総理、まず菅総理にエールを送らせていただきたいと思っています。

 私、学生時代、随分サークルの大勢の仲間が菅さんの選挙の応援に行きまして、私も何度か行ったことがございます。そのときの、全く何もない中で志だけがある無名の青年が今総理大臣になったということは、これはやはりすばらしいことだと思うんですね。菅さんの前任の鳩山前総理のように、毎月一千五百万も親から子ども手当をもらっておいて、なおかつそれを知らなかったという親不孝の大金持ちの息子とは違って、まさに何もないところから総理になったということは、これはもう本当に心より敬意、また祝福を申し上げたいと思います。

 ただ、総理になった菅さんというのは、残念ながら輝きがなくなった、これは国民の声です。野党のときの菅さんというのは、舌鋒鋭く、政府に対して厳しく批判をしていました。そこまで言うかというほどの容赦のない批判をしょっちゅうしていましたよね。ところが、まさか自分が総理になるとは思っておられなかったのかどうか、総理としての準備ができていなかったのではないか。国民の多くが見ていまして、総理になって精彩がなくなったのではないか、また、うつろな表情、言葉にそれがあらわれている、これをよく国民の皆さんからお聞きするんですよ。

 つまり、あるべき国家像、あるべき国家戦略、あるいは総理としての歴史観、それが見えないんですね。しかし、それは民主党も同じなんですね。民主党にも、基本方針とか、結党理念とか、綱領とか、どのような国を目指すのか、それが全くないわけです。ですから、まず御自分のためにも、党の綱領、党の理念、これを早急につくる必要があるんじゃないですか。いかがですか。

菅内閣総理大臣 かなり前に、下村さんがまだ学生時代、私の応援にボランティアでおいでいただいたことをよく覚えておりまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。また、私も、何かの機会、たしか都議選だったと思いますが、応援に出かけた、そういう時期もあったことを覚えております。そういう中で、私も野党が長かったものですから、野党的な質問が多かったかもしれません。

 ただ、率直に申し上げて、この九月の代表選で再選をさせていただいて、そしてとうとう内閣の大幅な改造を行いました。それまで政務三役を務めていただいた方のかなりの方が党に戻って、逆に、今度は党のいろいろなことをやっていた方が政務三役につく、これによって党と内閣は一体的に物事に当たれる。

 私は、率直に申し上げて、かつての自民党内閣などに比べても、構造的にも非常に政策を実行できる体制がいよいよできた。そういう意味で、今回の所信表明でも私はあえて有言実行ということを申し上げ、また、野党の皆さんの質問ではありますけれども、大ぶろしきという言葉をあえて引用させていただいたのも、そういう党と内閣が一体で推し進めることができるという体制ができたという認識のもとで申し上げたところであります。

 そういった意味では、これから、昨日は恐れないでという言葉も石破政調会長からいただきましたので、まさに恐れないで、本格的な日本の大改革のために問題提起を所信表明を含めてこれからもしてまいりたいと思っております。

 その中で、今、国家観あるいは党としての綱領という話がありました。確かに、これは代表選の折にも党の綱領をつくるべきだという意見がありまして、党ができてもう十数年になりますので、党の綱領については、ぜひそれをつくる方向での検討を始めたい。まだ具体的な動きはしておりませんが、私自身、代表選の折にもそのことを申し上げましたので、そういう方向で取り組んでいきたい、このように考えております。

下村委員 菅総理のためにも、早目につくらないと間に合わなくなるのではないかということを危惧します。

 総理の御夫人、伸子夫人が、「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」という非常に厳しい本を書かれましたね。優秀な奥様がいらっしゃると大変だなという感じがいたしますが、この伸子夫人の著書に、菅総理は特定の思想とか主義への思い入れはないそうですが、その場対応でどうにかやっていく、それが政治だという考え方だ、こういうふうな表現をされていて、非常に適切に表現されているのだなと思いました。

 しかし、総理大臣ですからね。日本のリーダーですから、やはり骨太のきちっとしたものがなければ、これは日本がどっちの方向に行くのか、国民にとって不安だと思います。

 同じようなことが教育にも言えるんですね。菅総理の所信表明には、教育という言葉が一言もありませんでした。

 自民党は、これから教育立国日本を目指します。今本当にこの国が崩れ行く、あるいはきずなが破壊されつつある中で、もう一度この日本を立て直していかなければならない。それは、日本における最大の資源は人材である、人づくりであるというふうに思うんですね。そのために、もう一度子供たちに、世界トップレベルの学力とか、それから規範意識、自分のためだけでなく社会のために、人のために、あるいは国のために、そういう思いを持つ公徳心、そして日本に対して誇りが持てる教育、それを実現していく。そして、人間力を高め、教育で一人一人の可能性を強くしていく。こういうことを教育立国として目指していきたいというふうに思っています。

 そもそも菅総理が教育についてどんな思いを持っておられるか、簡単で結構ですからお答えいただければと思います。

菅内閣総理大臣 私の妻の本を引用していただきましたが、私が余り主義主張にこだわりを持たないという表現をしたようでありますが、学生時代、御承知のようにいろいろな時代がありました。マルクス主義を信奉する人もありましたし、逆の人もありました。そういうものを私もかなり議論してまいりましたので、一つの主義主張で凝り固まったグループとも大分対峙もしてきましたので、そういう意味では、必ずしも私は、そういう既存のイデオロギー、一般的なグループにはほとんど参加をすることはなく、新しい政党をつくることに参加をしてまいりました。

 私の基本的なイデオロギーをあえて言えば、国民主権です。あるいは市民参加です。そういう意味では、私に主義主張がないという、まあ、私の妻が言ったんだから私が文句を言うわけにもいきませんが、少なくとも、そういう国民主権とか、つまり市民参加ということは、下村さんが御存じのころの私、当時から主張し続けてきておりましたし、またあわせて、最小不幸社会という一つの考え方も申し上げております。これは一般的な主義主張と言えるかどうかわかりませんが、私自身の中には政治に対する確固たる信念を持っているということは申し上げておきたいと思います。

 教育の問題、下村さんが若いころから教育にいろいろな意味でかかわってこられたことも私もよく知っております。本当に私も、教育ということを語る、特に政治家の立場として語ることが非常に難しいことを実感しております。

 つい最近も、ヨーロッパ、特に北欧の教育の話を聞きまして、例えば、子供にまず何を言うかというと、あなたは友達と意見が違ったときにはっきりとその意見の違いを主張することができますかというのが、北欧のある国の教育のマニュアルの一つであったとか。つまりは、常に自分の意見を言えるようにする。

 しかし、残念ながら日本の教育は、ややもすれば、これは高校まで含めて、答えがあるものを早く見つける競争の教育がなされている、考える教育ではなくて見つける教育になっている。そういうものが、あるいは日本の国力が低下をしているとすれば、若者の消極的な姿勢になっているとすれば、そういう意味の影響もあるかもしれません。また、もちろん、今の制度的な問題でも、そういうものが十分生かされないという問題があるようにも思います。

 そういう点では、まさに日本は、何も資源がない中で明治以来ここまで来たのは、あるいは明治以前もそれなりの国を形成してきたのは、人間の力、教育の力だと思いますので、その点の重要性は極めて大きいものがある、私もこのように認識をいたしております。

下村委員 今、菅総理がみずからおっしゃったように、国民主権とか市民参加とか、それから最小不幸社会、これは理念とか主義主張ではないと思うんですね。総理としての理念、哲学、国家観、これがやはり必要だというふうに思います。

 教育については、具体的にお話をお聞きしたいところですが、時間がありませんのでまた別の機会にさせていただいて、先日ノーベル化学賞を受賞した鈴木章北大教授、当時は北海道においても開拓精神、フロンティア精神、二宮金次郎と子供のころは言われていたそうですが、そういう教育が北海道でされていたのではないかと思うんですね。

 この鈴木先生が、受賞した後、このようなコメントをしています。「研究は一番でないといけない。“二位ではどうか”などというのは愚問。このようなことを言う人は科学や技術を全く知らない人だ」と厳しく批判しています。さらに、「科学や技術を阻害するような要因を政治家が作るのは絶対にだめで、日本の首を絞めることになる。一番になろうとしてもなかなかなれないということを、政治家の人たちも理解してほしい」と言っている。これは蓮舫大臣ですけれども、あえてもうお聞きしません。よくこれを理解しておいていただきたいと思います。

 菅総理にお聞きしたいんですけれども、事業仕分けでこの科学技術予算というのは大幅に削減されたんですね。当初予算ベースでは、民主党政権になってから、二十七年ぶりに対前年度比マイナス三・三%、四百五十五億円も削減されたんですよ。しかし、鈴木先生が言われているように、科学技術というのは、そして今、菅総理もちょっとお答えになりましたが、日本の成長の唯一の原動力ですね。人、人材、科学技術。この科学技術を国策として強力に予算をふやす方向で推進すべきではないかと思いますが、総理の見解をお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 私が科学技術の担当大臣でございますので、お話をさせていただきます。

 従来は文部科学省で科学技術の担当も兼任している件があったわけでございますが、今回特に、やはり成長戦略の中に科学技術を位置づけようということで、私がその任に当たったところでございます。

 そして、予算が減っておったということでございますが、これは確かにそういう点もこれまではございました。今度の、これはまだ概算の段階でございますが、今回は科学技術につきましては四百八十億円のプラスをしているところでございます。まだこれは概算の要求でございますから、今後どうなるかはわかりませんが、私、科学技術の所掌の担当大臣としては、やはりこの枠をしっかりと確保していきたい、そのように思っております。

下村委員 概算の要求ですから、担当大臣としては当然の答弁なんですよ。だから総理にお聞きしたかったんですが、ちょっと時間がありませんから、それはしっかり海江田大臣に頑張っていただくということで、続けたいと思います。

 総理、先ほど、ノーベル化学賞受賞、鈴木北大名誉教授ですけれども、この北海道が今教育で病んでいるんですね。小学校六年生で、全国学力テスト、これは四十七都道府県で最下位だった。中学三年生で四十三位。それから、体力テストも最下位グループ。子供の虫歯率も最悪。これは本当に、今北海道において不正常な教育が行われているという証左であると、道民の心ある多くの方々が思っているわけです。

 そもそも、北教組、北海道教職員組合ですね、組織率約三五%。しかし、実際、校長、教頭を除けば組織率は五〇%と言われ、極めて強力な組織であって、そして民主党の有力な支持団体であるわけです。この北教組は、日の丸・君が代反対を初めとする学習指導要領違反の偏向教育、それからいじめ実態調査に対する非協力、また違法ストライキなど、数々の問題行動を行っている。

 そして、その北海道において昨日から衆議院の補選が告示されましたけれども、これは北教組の政治資金規正法違反、北教組から一千六百万の裏献金が民主党の小林千代美議員に渡されたという責任をとって辞職をした、こういう問題があるわけです。

 このことについて、これは再三再四、今まで国会で取り上げて、さすがに文部科学省も、そして北海道教育委員会、それから札幌市の教育委員会も問題だということを認識して、すべての小中学校の先生方を対象に、勤務時間中の組合活動、それから政治活動に対する実態調査、これは前例がない大規模な調査を行ったんですね。

 その結果、これは校長先生が各先生方に対する個別調査をしたんですが、個別質問した中で、四百人ぐらいが選挙違反等々、あるいは法令違反に当たるというような回答もあるんです。ところが、問題なのは、勤務時間中の組合活動で五千人、一三%は回答拒否、また政治的行為でも一七%、六千五百人が回答拒否、これはほとんど北教組の組合員であるというふうに言われています。

 つまり、違法な行為を行った者がこれから処分対象になる、一方で無回答の人が処分対象にならないということになると、これは公平の観点からも大変な問題になるわけです。

 まず文科大臣に、この調査結果は、実態はかなり深刻であるという中でさらに実態確認を進めるべきではないかと思いますが、文科大臣の答弁を求めます。

高木国務大臣 下村委員にお答えをいたします。

 今御指摘の点については、これまでもたびたび国会等でも議論がされておると承知をいたしております。

 文部科学省としましては、昨年の政権交代以来、ことしの二月から三月にかけて、報道の中でいろいろ議論がありましたし、また国会の中でも予算委員会等で議論がございました。これについて、川端前大臣初め政務三役、強い意思で、任命権者である北海道教育委員会、札幌市教育委員会に厳しい調査を指導したところでございます。

 今御指摘のとおりの無回答者を含めた実態調査、いわゆる調査の公平性を確保するためには、さらに調査を確認しなきゃならぬと思っております。我々としても、教育委員会に対してさらにこのことについて指導をしていきたい、このように思っております。

    ―――――――――――――

中井委員長 議事の途中ではございますが、ただいま、本委員会に、議長の招待で大韓民国国会議長御一行がお見えになりました。

    〔起立、拍手〕

 パク・ヒテ議長

 キム・ヘンジャ令夫人

 ナ・ギョンウォン・ハンナラ党議員

 キム・テファン・ハンナラ党議員

でございます。

    〔拍手〕

 本日、午前中から対韓国の問題についても議論があったところでありまして、非常にタイミングのいい御来場だ。心から歓迎を申し上げます。

 ありがとうございました。

    〔拍手〕

    ―――――――――――――

中井委員長 それでは、議事を続行いたします。下村君。

下村委員 韓国の国会議長以下、国会議員の方々に敬意を申し上げたいと思います。

 菅総理、日本の大学進学率は今五二%ぐらいですけれども、韓国の大学進学率はもう七、八〇%なんですね。我が国以上に、まさに国家戦略として教育に取り組んでいるということを御理解いただきたいと思います。

 そして、一方で我が国においては、本当に、特に北海道において教育が混乱をしている。それは、今回、この勤務時間中違法な組合活動に関して、初めて会計検査院が入ることになったんです。これは大変なことですよ。

 会計検査院がいつごろ北海道に入る予定か、またどんな調査をする予定か、お聞きしたいと思います。

西村会計検査院長 お答えいたします。

 勤務時間内の組合活動に関しましては、都道府県等の条例で細かく定められております。その条例の定めに違背しましたような場合には、結果的に給料を減額されるというようなことがございます。

 その場合に、国費についても影響が及ぶ可能性があると理解しておりまして、会計検査院といたしましては、国費に影響が及ぶと考えられる部分につきまして効率的な検査が行えるよう、その方法等を検討いたしまして、体制を整えまして、できる限り早期に実施をしたいと考えております。

下村委員 国庫補助負担金が三分の一行っているということの中で、会計検査院が動くということは大変なことだということをよく認識していただきたいと思います。

 このように、北教組事件は、政治と金、それから政治と教育、また政治と労働組合、こういう問題が集約され、極めて重大な事件にもかかわらず、全く反省していないということが今回さらに明らかになりました。

 十月一日、今月に入ってから、北海道庁などで働く職員で構成する自治労全道庁労連が、北海道五区の補欠選挙に関して、勤務時間中に職場の公用のファクスを使用して、民主党の候補者に対する選挙支援を行っていたことが明らかになったんですね。既に全道庁労組も、報道に対して事実関係を認めています。勤務実態調査の結果、北教組による違法な組合活動や選挙運動などが明らかになってからも労働組合が同様の行為を続けていたということは、極めて重大な問題であると思います。

 パネル、資料を見ていただきたいと思うんですが、まず、この上の方ですけれども、九時四十四分AM、ちょっと見づらいんですが、勤務時間中にファクスで堂々と、なおかつ、電話番号があります。〇一一―二三一―四一一一というのは北海道庁の代表番号なんです。役所の中で堂々と勤務時間中にこういうファクスをすべての労働組合の支部に送りつけているんですね。

 二枚目のパネルを見ていただきたいと思うんですが、これは、もちろん名前が入っていたんですが、名前は選挙期間中でもありますし消しておりますが、何とかの候補の必勝総決起集会の参加について。これは一見してわかるとおり、明確な衆議院五区の補欠選挙の選挙活動なんですね。道では、全道庁に対して、庁舎の一部を用途、目的を妨げない限度で事務室として使用を許可しており、庁舎内での選挙活動は、庁舎の公益性の観点からそもそも問題なんですね。

 この文面からして、北教組事件に対する反省が全く見られない。この文面の中で、小林議員と同様に、労組丸抱えの、ちょうど真ん中辺ですね、旧態依然の選挙を行っており、時計の針を戻さないという、反省も何にもない証拠。どこの時計の針を戻さない選挙なのか、こういうことが問われております。

 そして、「参加要請」のところを見ていただきますと、「各支部・労組ごとに組合員の一割以上」という、多数の動員という参加要請が入っているんですね。

 パネルの三枚目を見ていただきたいと思うんですが、まさにもうノルマとなって、それぞれの支部それから労組名を書く、報告者それから参加者氏名を書き込んで、報告期限を九月の二十七日までとして、必ず一割以上は参加させるというのが、この必勝総決起集会に対する参加報告用紙なんですね。

 これは、全道庁の行為が地方公務員法三十五条の職務専念義務違反であることは明々白々です。北海道庁でもこれは認めています。

 さらに、必勝決起集会、これは民主党が衆議院北海道五区に擁立を決定した候補者の必勝に向けた集会でありますけれども、そこに参加を要請する行為、これは事前行為に該当するものと思われます。公選法百二十九条、罰則規定二百三十九条に該当するのではないか。それから、その事前のために発信される本件の文書は、法定外文書の頒布違反に該当するおそれがある。これは公選法百四十二条、二百四十三条ですね。

 この事実関係について調査する必要があると思いますが、菅総理、民主党の代表として、この調査をされる必要があるのではないですか。いかがですか。

片山国務大臣 お答えをします。

 今議員の方からそれぞれ、北海道庁でありますとか、それから、その前に教育委員会の話もありましたけれども、それぞれの任命権者でありますとか庁舎管理者が、法令に従ってこれが適法かどうかを判断されて、それに基づいてしかるべき処分なり処理なりをされるべきかと思います。

 また、公職選挙法の問題になりますと、これは、司法機関がこれをどう取り扱うかということだと思います。

下村委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、そもそも総務大臣は民主党の議員ではないわけですし、総理、これは民主党の候補者の選挙支援をしているんですよ。明らかに選挙違反になる可能性が多々ある。全く反省していない。だから、これは民主党として、党として調査をきちっとする必要があるのではないですかということをお聞きしているんです。代表としてどうですか。

菅内閣総理大臣 選挙に限りませんが、違法行為はもちろん許されないことであります。そういう点で、この北海道五区、そうした一連の事件の反省に立ち返って選挙戦を進めているというふうに基本的には理解いたしております。

 今、調査をしろということであります。この資料、もちろん今初めて拝見をしたわけですが、党そのものというよりは労働組合の活動の中でありますので、それを党としてどういう形でどういうふうに、調査ということを含めてできるかできないかはありますが、少なくとも選挙がきちっと行われているということは担保されなければなりませんので、そういう立場でこのことについても、事実関係が私たちでわかる範囲ではきちっと調べてみたい、党の立場でやれることはきちっと調べてみたい、このように思います。

下村委員 これは当然のことだと思うんですよ。この労働組合は民主党の候補者を支援しているわけですから、そこの労働組合が数々の違法性が問われているわけですから、これについてはしっかりと党として調査をするということは当然なことだと思います。

 そして、さらに、労働組合の違法行為防止の方策ですが、これは調査するだけでは違法行為の防止にはならないわけですね。本来、この北教組事件や自治労全道庁労組事件が生じるのは、労働組合の政治的行為などに対する法的整備が不十分だ、これがやはり大きな原因だと思います。罰則規定がないわけですね。

 この北教組事件で、小林前議員への裏献金の原資、これは五十五億円に及ぶ主任手当のプール金の疑いが持たれているわけです。ただし、現行法上は労働組合の収支を確認する手段が全くない。実際わからなかった。使途などが全く不透明な主任手当の拠出が今後も継続していくことは、これはもう大問題です。

 文科大臣は、この法改正を含め、つまり、主任手当の拠出、事実上はそういう形で裏献金、選挙資金に使われる可能性がこれからも十分あるわけですね。これについて対応策を講じるべきではないかと思いますが、文科大臣、いかがですか。

高木国務大臣 委員御指摘のとおり、職員団体制度につきましては、地方公務員法により統一した仕組みが設けられております。また、国家公務員についても、国家公務員法で同様の仕組みができておると承知をいたしております。

 仮に、職員団体に収支報告の提出を義務づける、こういった法改正を行うことについては、公務員法制全体にかかわる事項でございます。私はそういう認識をしておりますので、これは今後検討しなきゃならぬ問題だと思っています。

下村委員 それで、総理にお聞きしたいんですけれども、今文科大臣が、地方公務員法全体にかかわることだと。総理、この地方公務員法の中で、収支報告の登録労働団体に対する義務づけですね。それ以外に、そもそも、国家公務員は政治的行為については罰則規定があるんですが、地方公務員についてはありません。ですから、国家公務員並みに地方公務員についても政治的行為についての罰則規定を設けるべきではないか。

 またさらに、これから自民党の方でも議員立法で用意をして、これは超党派で民主党にも働きかけをする今状況だと思いますが、この地方公務員に対する能力、実績に基づく人事管理、こういうことをトータル的に合わせて思い切った改革をすればこのような北海道の問題は解決をする、そういう可能性が高いと思うんですね。

 これについて、総理から直接お聞きしたいと思います。

片山国務大臣 地方公務員法の改正についての御意見がございましたけれども、今回のケースで直ちに全国に一律、地方公務員法の規制を強化する必要があるかどうかというのは、私は疑問に思います。

 ちなみに、私がおりました鳥取県では、こういうことはまずありませんでした。むしろ、個別の団体の統治といいますかガバナンスといいますか、それの問題があるのではないか。特に、教育委員会がどういう仕事をしておられるのか、そういうところに実は問題があるんじゃないかと私は思います。

 登録労働組合といいますか、登録職員団体と申しますけれども、これは職員労働組合の中で、当局側が交渉の申し出があったら交渉を義務づけられる、そういう位置づけなのでありますけれども、したがって、その範囲内での必要最小限の規制をしているわけでありまして、私も現場におりましたけれども、その際に収支報告などを義務づける必要性は感じておりません。

 それから、政治的行為につきましては国家公務員と地方公務員との差がありますが、これは、地方公務員というのは職務の権限が地域的にしか及ばないということもあって、その面で必要最小限の、表現の自由を制限することでありますから、その範囲内での差があるんだろうと思います。

下村委員 総理に聞いているのであって、本当に官僚答弁みたいな話は全然聞きたくないんですよ。

 菅総理、自民党の方でも地方公務員法の改正について、この三点、これは法案として出す準備をしておりますので、ぜひこれは民主党の代表として政治的な判断として対応していただきたいということを、とりあえずきょうはお願いしておきます。

 次に、時間がありませんので朝鮮学校問題についてお聞きしたいというふうに思います。

 ことしの四月一日から高校授業料の無償化が始まりましたが、法案が通ったのが三月三十一日、前の日ですよ。ずさんな中で、私立学校においてはさらに公私間格差が拡大するのではないか、あるいは都道府県に対する負担が多い、あるいは低所得者層の家庭の子供たちにとっては実態は変わらない、今まで都道府県で負担をしてくれた部分を、県が負担した部分を国が負担しただけだから実態的には軽減されていない、こういう問題点がたくさんあるんですね。

 この中で今積み残された問題として、朝鮮高校について授業料を無償化するかどうかという問題があります。これについては、文科省が、高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議というのをクローズの中でずっと開いた中で、八月三十一日に民主党、与党の方に出したそうでありますが、この中を見ると、「個々の具体的な教育内容については基準としない。」こういうことが書かれているんですね。

 教育にとって最も重要なものは内容である。教育内容を初めから問わないということであれば教育ではあり得ないわけで、何のために国民の税金を投入するのかということが、これは文科省そのものがみずから判断基準を放棄している、教育行政を放棄しているとしか思えないんですね。

 我々は、民族差別をするつもりは全くありません。日本にいる子供たちに対して、同じようにできるだけ軽減措置をとってやるべきだと思います。ただ、朝鮮高校の置かれている状況というのは、これは普通の状況ではないんじゃないかと思います。

 先ほど、韓国の国会議員が来られましたが、韓国の民団系がこのことについて文科大臣に対して申し入れをしているはずです。これについて、どんな申し入れがあったのか、お答えいただけますか。

高木国務大臣 在日本大韓民国民団から申し入れがあっております。本年七月に文科大臣あてに出ております申し入れ書においては、一つとして、朝鮮学校高級部を就学支援金の支給対象に含めるかどうかについて慎重を期する必要がある。また、就学支援金の支給対象に含める場合、教育内容と運営に当局から特段の指導を講じることを条件につけるべき。就学支援金が実際には朝鮮総連への迂回支援につながることを憂慮する。こういう御意見をちょうだいいたしたところでございます。

下村委員 これは、在日韓国人六十万人を代表する民団からの申し入れだと思いますし、まさにもっともな申し入れだというふうに思います。

 このことについて、委員長も前拉致担当大臣として見識を持って発言をされておられましたが、柳田拉致担当兼法務大臣も、今月八日、報道各社のインタビューに応じ、朝鮮学校を高校授業料の実質無償化の対象に含めることについて、教科書に承服できない内容もある、訂正してもらわなければ困るなどと述べたと報道されておりますが、これは事実なのか、また、どんな内容に問題点があるとお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。

柳田国務大臣 朝鮮学校の教科書について、その記述に問題があるのではないかと私の考えを示させていただきました。例えば大韓航空機爆破事件のことなどでございまして、国際的に認知されている事実を曲げるような内容が含まれているということを私は懸念いたしております。

 同時に、先日、拉致被害者家族会の皆さんとお会いした際にも、朝鮮学校の高校の無償化についていろいろな意見を賜りました。その際、教科書の記述についての御懸念も示されました。そういう声も含めまして、拉致問題を担当する観点から、必要な意見はこれからも言っていきたい、そう思っている次第でございます。

 なお、現在、民主党の政策調査会で本件に関する議論を行っていると聞いています。いずれにしても、最終的には文部科学大臣が適切に判断されるものと思っております。

下村委員 これは国民の皆さんにぜひ御理解いただきたいと思うんですが、先ほどの韓国は、これは日本社会で共生していこうということで日本の私立学校になったんですね。朝鮮学校も、外形的には日本の私立学校、学校法人になることは可能なんですよ。にもかかわらず今までならなかったということは、独自の思想教育を行うためにあえて日本の文部科学省の管轄下には入らない、そういう姿勢を貫いてきたんです。

 それを最後まで貫くんだったらいいですよ。でも、授業料だけは無償化の対象にしろというのは、それは筋が通らない。もしそれを求めるのであれば、日本社会の中で一緒に共生していく、つまり、朝鮮総連やあるいは北朝鮮の影響を受けない、日本社会における独自の教育の中で一緒に共生していくという姿勢に変えていけば、これは高校授業料無償化どころか、私学助成金まで得ることができるんですね。こういう観点からしっかり考えないと、これは間違えます。

 最終的に、文科大臣が判断することではなくて、これはまさに総理、総理が中心となって関係閣僚会議を開いて、そこで決定すべき政治的重要事項ではないですか。そのことについて総理にお聞きします。

菅内閣総理大臣 この高校無償化に伴う朝鮮学校をどうするかということについては、先ほど文科大臣からもお話がありましたように、まず審査の基準をどうするかについて文部科学省において検討が行われたところであり、この点については民主党の政調も動き出して、民主党内の意見等も聞いた上で審査の基準について検討を行うことが適当であると考えております。現在は民主党の中でも議論が継続中と理解しております。

 今後は、今回の検討会議の報告や民主党内の議論、これまでの国会における議論等も踏まえ、文部科学大臣が必要に応じて関係閣僚との意見交換も行い、まずは審査の基準を決定し、その後、この基準に基づき個々の朝鮮学校について判断がなされるものと考えております。

 この審査の基準を決定するときには、関係閣僚との意見交換の中では、もちろん私のところにも報告というか相談が上がってくるわけでありますので、そういった中で判断をすることになろうか、このように思っております。

下村委員 最後に、逃げないでください。これは文科大臣だけが決める内容じゃないですよ。これは、尖閣問題と同じように検察のせいにする、あるいは文科大臣のせいにすることじゃなくて、総理が先頭になって政府が政治判断をきちっとしなければ、これは本当に誤ることになります。それを指摘申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、鴨下一郎君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 今、官房長官が中座されちゃいましたけれども、昨日、日中外交を弱腰だ、こういうようなことを言われたときに、官房長官は、柳腰外交だ、こういうふうにおっしゃったんですけれども、柳腰(りゅうよう)という言葉を私は辞書で調べました。細くてしなやかな腰、多くは美人の例え。それから、柳腰を訓読みにした言葉で、細くしなやかな腰つき、また、細腰の美人。こういうような言葉でありまして、官房長官が、弱腰の反対語として柳腰外交、これは外交として私はあり得ない、こういうふうに思うんですが、総理はいかがでございましょうか。

菅内閣総理大臣 御本人がおられないところで御質問いただいても、言葉遣いでありますので、私から余り、コメントは控えた方がいいと思います。

 確かに、柳腰という言葉が、今、鴨下議員が言われたような意味を持つのかなとも思いますが、そこは御本人にぜひお尋ねをいただきたいと思います。

鴨下委員 この際ですから、総理、きょうは、官房長官おいでにならないので、訂正しておいた方がいいんじゃないですか。これはいろいろなところで笑い物になっているんですよ。仙谷おねえがこういうようなことを言った、こういうようなことをインターネットなんかでも流布されていまして……(発言する者あり)いやいや、そうじゃなくて、外交、日本の名誉のために、柳腰外交という言葉については訂正した方がいいんじゃないですか。

 柳腰じゃないでしょう。我々は、二枚腰外交だとか、粘り強い外交だとか、粘り腰の外交だとか、こういうようなことを言うんだったらいいですよ。柳腰外交は撤回してください。総理、撤回してください。

古川内閣官房副長官 今、官房長官の御発言についての鴨下議員からのお話がございましたが、長官がきのう申された趣旨、今、菅総理から言われましたように詳細はもちろん御本人でございますが、私が聞いておりましたところで感じたところは、それは言葉が柳腰という言葉遣いをいたしたかもしれませんけれども、しなやかに、そしてまたしたたかにやっていくと、私は官房長官はしっかりその中身を御説明していたと思います。そのことを御確認いただければと思います。

鴨下委員 だから、柳腰という言葉だけは撤回しておいた方がいいんじゃないですかと言うんですよ。

 趣旨については、私も善意で、ある程度おっしゃっていることの意味はわかりますよ。だけれども、中国の語源には、柳腰(りゅうよう)という言葉は、どちらかというと女性のそういうようなしなをつくるというような趣旨なんですよ。

 だから、私たちは、外交の中で中国に対してメッセージが、柳腰外交だというのがもし出るとすれば、これは日本の名誉のために訂正しておいた方がいいんじゃないですか、こういうふうに申し上げている。

 だから、昨日の話ですから、ここで、いや、それは柳腰じゃなくて二枚腰だったんだ、こういうふうに言えばそれでいいですから、そういうふうに言ってください、総理。

古川内閣官房副長官 先ほど申し上げましたように、長官は、中国で言われているような意味で柳腰というのを使ったのではなくて、その後できちんと御説明を申し上げましたけれども、しなやかでしたたかな外交をする、そのように申し上げたわけでございます。

鴨下委員 これ以上申し上げませんけれども、柳腰というのは決してポジティブな言葉ではない、こういうふうに理解してください。

 総理、まず、昨年の選挙のときに、さまざまなマニフェストを国民に対して約束したわけでありますけれども、私は、民主党を積極的に支持した国民の皆さんの中には、幾つか重要な政策について、これはいいだろう、こういうふうに考えた人たちがたくさんいて、それが投票行動に移ったんだろうと思います。

 その中の一つには、政治と金については菅総理初め多くの人たちがクリーンである、こういうようなことと、それから子ども手当。確かに、私ども自民党の政権のときには、高齢者に非常に重きを置いて、そして子供たちに対しては十分でなかった部分、これはあったかもわからない。だから、そのことについて、多分、民主党に対して積極的に支持をしたんだろうと思います。だから、子ども手当というのは、かなり投票行動に対してはインパクトのあった政策なんだろうと思います。

 それからもう一つは、きょうは、古川副長官おいででありますけれども、最低保障年金、それと加えて、いわば全体的に無年金それから低年金、こういうものの解消、こういうようなことで全額税方式の年金制度を入れる、こういうようなことを高らかにうたったわけであります。

 このことについては、私たちは、なるほど、国民の皆さんはそれに多くを期待したんだな、こういうようなことで受けとめているわけでありますけれども、菅総理、この三点、政治と金についてクリーン、それから子ども手当、それから年金制度全体を改革して、無年金、低年金をなくして税方式を導入する、このことについて民主党は非常に積極的に取り組んだんだ、こういうようなことでよろしいですか。

菅内閣総理大臣 昨年の衆議院のマニフェストでは多くの公約をいたしまして、その中に今おっしゃったことも含まれております。全体としては、私ども、相当程度は実施あるいは着手しており、未着手は限られておりますので、七割程度は前進をしていると思っております。

 今御指摘のあった点で申し上げますと、クリーンな政治という面では、いわゆる企業・団体献金の禁止など、まだ実現はいたしておりませんが、そういう法案を出すという方向でありますし、子ども手当については、少なくとも月一万三千円の実施は始まって、二年目に向かって今いろいろ検討しております。

 年金についてはまだ議論を始めている段階でありますが、少なくともそういう方向で努力をしつつあるということで、そういった意味では、マニフェストについて全力を挙げて実現を目指しているという姿勢は変わっていない、このように認識しております。

鴨下委員 おっしゃるとおりでありますけれども、そういう中で、昨日も議論になりました、それから、昨日は多分、民主党の役員会の中でも議論があったと思いますが、小沢さんに関しての疑念、こういうようなことについて、私どもは証人喚問を要求しているわけでありますし、これは報道でありますけれども、その民主党の役員会の中では、政倫審で御説明なさるというのがいいんじゃないか、こういうふうな話もあったやに聞いておりますけれども、菅総理は、なぜ今に及んで小沢さんをかばうんでしょうか。そして、民主党はなぜ小沢さんに対してそういうような形でかばうんでしょうか。

 私はそこのところが不思議でしようがないんですけれども、党首選のときには、菅総理は、極めて歯切れのいい、我々あるいは国民が留飲を下げるような発言をなさっていたわけでありますけれども、今の段階になってしまったら小沢さんをかばう。このことについて菅総理はどうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 かばうという言葉を使われましたが、代表選は党の代表を選ぶ選挙です。ですから、私としては、民主党のあり方あるいは民主党が目指すべき方向としてクリーンでオープンな政治ということを申し上げ、そして代表に再選をしていただきましたので、そういう方向で党の運営がしっかりと行われるよう、それにふさわしい体制を幹事長初め組んでいただき、そういう方向での党運営を指示いたしているところであります。

 それと、今、鴨下議員が言われているこの国会での扱い、あるいは身分としての議員の問題等々については、基本的には、まず、我が党の大変重要な仲間であり、我が党にとって大変大きな功績を持たれた仲間であるということは、これは当然、私たちの中に共通した認識としてあるし、私にももちろんあるわけであります。

 そういう中で、この間いろいろ御議論いただいていますが、御本人からも、国会で決められればそれに従う、いろいろな機会に説明はしたいということも言われておりますので、そうした国民の皆さんに対する説明、国会における説明については、きちっとそういう提案に対しては受けとめて協議をしていきたい、こういうふうに考えております。

 決して、かばうというよりも、やはりそういう適切な形で対応しなければ、逆に言えば、代表選で争ったから余計に過剰に何かするというのはこれまたおかしなことですので、そういった意味で、適切な対応をとろう、そういう姿勢で臨んでいるところであります。

鴨下委員 今おっしゃっていることは、私から見ると、かばっているなとしか思いようがないんですね。それは菅総理の信念ではないかもわからないけれども、党内の力学なのかもわかりませんけれども、それは決して菅さんらしくないな、こういうふうに私は思いながら聞かせていただきました。

 国民の皆さんの約八割の人たちが、小沢さんのことにつきましては、国会の中で、特に偽証罪を問われるような場でしっかりと説明責任を果たしてもらいたい、こういうようなことでありますから、ぜひ、そういう意味で、菅さん、民主党の代表として主体的にリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、もう一度御意見をください。

菅内閣総理大臣 今も申し上げたところですが、御本人も、国会という場を含めて国民の皆さんに説明をする用意がある、国会でお決めいただいたことには従うということを言われています。

 そういった意味で、どういう場で説明をされることが適切なのか、提案をいただいた場合には、我が党としてもきちっとそれに対して対応して協議をさせていただきたい、このように申し上げているところです。

鴨下委員 国民のいろいろな空気をぜひ読んでいただいて、菅総理が小沢さんをかばうことがないような決断をいただきたいというふうに思います。

 それでは、続いて子ども手当について伺いますが、子ども手当は今、任期中、中途の、これから発展形になっていくというふうに再三御答弁なさっているわけでありますけれども、結果的に、これは、国民に対しての約束でありました二万六千円満額支給を最終的なところではするんですか、しないんですか、これについてお答えください。

細川国務大臣 子ども手当につきましては、二〇〇九年の選挙のマニフェストでは二万六千円、こういうお約束をしたわけでありますけれども、せんだっての参議院選挙のときのマニフェストでは、一万三千円に上乗せをする、こういうことでお約束をいたしましたので、それをどういうふうにこれからやるか、財源の問題もありますから、検討する、こういうことでございます。

鴨下委員 それは、国民との約束、特に政権交代のときの原動力になった子ども手当、このことについて、民主党内閣あるいは菅内閣は、一万三千円ということで許してくれ、こういうような話なんですか。撤回するんですか、全額給付は。もう一度、厚労大臣。

細川国務大臣 せんだっての参議院選挙では、一万三千円に上乗せをして支給すると。その上乗せ支給については、現金か、あるいはそれにかわる現物サービスで支給をするか、こういうことでありまして、財源の問題もありますので、これからの予算編成に向けてそこで検討をしていく、こういうことでございます。

鴨下委員 財源は無駄を省けば十分出る、こういうふうに最初に話して、子ども手当は二万六千円ですというふうに言って選挙をなさったんではないですか。

 ですから、もしそれを変更するというふうにおっしゃるんでしたら、これはさまざまな理由があってこうせざるを得ません、こういうようなことを、この場でも結構ですから、総理、明確にこのことについては説明をしてください。

 多くの、いわば、二万六千円もしかすると給付があるというふうに期待をした方々は、今、裏切られた思いでありますから、このことについては、菅総理から明確に、いや、そういう事情で結果的には一万三千円プラスアルファしか支給できないことになりましたということを、この場で結構ですからおっしゃってください。

菅内閣総理大臣 今、厚労大臣からもお話がありましたように、さきの参議院のマニフェストにおいて、初年度一万三千円に加えて上乗せをすると。その上乗せについて、どの程度の上乗せなのか、またその上乗せの仕方を、現金を上乗せするのか、それとも保育所などをふやす形で、それに上乗せの部分として現物給付でいくのか。今まさに予算編成過程の中で議論をいたしているところです。

 そういった意味で、確かに、当初の月二万六千円を現金ですべて給付するというその考え方を若干柔軟な考え方に変えていることは率直に認めたいと思います。しかし、その部分については、今ちゃんと申し上げたように、一万三千円の上乗せの部分がどの程度で、その中身を現物なのか現金なのか、その部分について今検討しているところですから、最終的にどうなるかはことしの暮れの予算の決定の中で、また、必要であればそのとき、ここまではできましたがそれ以上はできませんでしたということになった場合には、きちんとその時点で国民の皆さんに御説明をいたしたいと思います。

鴨下委員 それは、結果的には、昨年の衆議院選挙のときのマニフェストの立論そのものが間違っていた、こういうようなことなんですか。

 そういう意味で、私たちは、あの選挙のときに、民主党の皆さんは二万六千円を給付する、こういうようなことを約束して選挙をなさったわけで、それで、多くのお子さんを抱えた方々は、民主党に期待して、民主党に投票してみたら少しでも自分たちの子育てに対してサポートしてくれるんだろうか、こういうふうに考えて投票したんだろうと思います。それが政権交代の原動力になったことは間違いない。

 そうすると、そのことについて、もし、こうして総理が、柔軟に、あるいは財源の問題にというふうにおっしゃるんだったら、それはそもそも最初のマニフェストのつくり方、そこが誤っていたんじゃないですか。

 そのことについて、もしここでマニフェストの作成に携わった大臣がおいでだったら、ぜひ答えていただきたいと思います。

野田国務大臣 鴨下委員の御質問にお答えしたいと思います。

 マニフェストづくりにはかかわってはおりませんでしたけれども、今もマニフェストの精神はきちっと生かしていきたいという思いは全く同じでございまして、子ども手当というのは大変重要な政策だと私は思っています。

 すぐに満額二万六千円支給ということは現時点では明確に申し上げることはできませんが、今、厚生労働省から出てきている予算要求は一万三千円ベースで出てきています。加えて事項要求で、先ほど来ずっとお話がありましたとおり、上積みを図って、それが現物か現金かは、これから予算編成過程の中でしっかり議論をしていくということでございまして、しっかりとマニフェストの精神を生かしていくべく予算編成をしていきたいというふうに思います。

鴨下委員 それは精神というようなことですけれども、生きていないじゃないですか、二万六千円じゃないんだから。だから、工程表では来年から満額でありますから、事項要求の中で二万六千円がしっかりと給付できるように最大限、ほかのところを削ってもやるというのが、それが精神を生かすということだろうと思いますので、もしそれを撤回するのでしたら正式な菅総理の声明を出していただきたい、こういうふうに思います。

 ちょっと個別の話で幾つか話を聞きたいんですけれども、子ども手当の中で、当初から問題になっていた、外国にお住まいの、そして多分一生日本に来ることのない、そういうようなお子さんたちにどのくらい給付されているのかということについて、厚労大臣、その人数と金額について教えてください。

細川国務大臣 お答えをいたします。

 海外に居住する外国人の子供については、六月支給時に一万六百五十六人でございました。それに支払われる金額としては、支給額は二億八千万ということになります。

鴨下委員 これから、十月支給についてはいかがですか。

細川国務大臣 それについては現況届というのをやらせておりまして、そこを厳格にやっておりますから、十月分の支給については、先ほど申し上げた額より多少下がるということになろうかと思います。

鴨下委員 根本的に子ども手当を見直すのでしたら、例えば低所得の人たちには一万三千円よりもプラスアルファの現金を給付できるように、あるいは、例えば、前回もいろいろと議論になりましたけれども、鳩山前総理のお孫さんのような方々には給付する必要はないんじゃないかとか、こういうようなことで、所得制限を含めた濃淡をつけて、この政策がしっかりと機能するような制度に、もう少し柔軟にお考えになったらいかがかというふうに思いますが、厚労大臣、どう思いますか。

細川国務大臣 これは、私どもの考えでは控除から手当へという考えでやっておりまして、そこでいろいろと、高い所得の人には割と有利な控除から、そして手当というのは低い所得の方により有利な制度でありますから、そういうことで、控除から手当へと、こういう制度でやっております。

 また、いろいろとこの点で、先ほども、海外にいる子供に対しての手当については大変この委員会でも議論がされたところでございます。それにつきましては、来年度につきましては私どもとしては廃止の方向で検討いたしておるところでございます。

鴨下委員 昨年末の税制改正で、年少扶養控除の段階的な廃止、これは決定しているわけでありまして、この先行決定で、見切り発車の制度設計に矛盾が出てくるわけであります。実際に、三歳未満の子供を抱えるような世帯では逆に負担がふえる、こういうようなことにもなりかねないわけでありまして、私は、満額給付というようなことを大前提に控除から手当へというようなことを制度として考えていたんだろうと思うけれども、これが中途の段階で矛盾が出てきている。

 ですから、本当に控除から手当に徹するのでしたら、それはそれなりに。しかし、それが中途半端なのだったら、もう一度所得制限を含めた制度の柔軟なあり方というのがあるんじゃないか、こういうふうに思っていますし、なおかつ、二万六千円を給付されても、本当に、もう一人子供をつくろうかとか、結婚されていない方が、子ども手当二万六千円をいただけるから結婚して子供をつくろう、こういうふうなことになるのかどうか。こういうような根本的な意味では、本来の少子化対策になるのか、こういうようなことについても十分に検討していただきたいと思います、厚労大臣。

細川国務大臣 少子化対策というのは、これはいろいろな制度をかみ合わせてやっていかなければならないんじゃないかというふうに思っております。

 それは、単に子ども手当が支給されるから、即その効果で少子化対策になるかといえば、それはそれだけではないのであって、例えばワーク・ライフ・バランスとか、そういうようないろいろな制度を組み合わせて少子化対策になるというふうに考えておりまして、そういう意味で、委員が質問されました、即というふうには私どもも考えてはいない、幅広く少子化対策はやっていかなければというふうに思っております。

中井委員長 答弁を補足しますか。

鴨下委員 結構です。

 もし全額給付すれば、五兆円を超えるお金であります。こういうようなお金を費やして、最も効果のある、いわば日本の少子化対策に資するような政策、ぜひこういうようなものにもっともっと知恵を絞って制度設計をしていただきたい、このことを申し上げておきます。

 もう一つ、先ほど菅総理にも伺ったんですけれども、なぜ民主党は現行の年金制度を根っこから変えて、税方式あるいは最低保障年金、こういうようなことにしようとしたのか。それから、七万円の最低保障年金をマニフェストではうたっているわけでありますけれども、私も多くの有権者の皆さんと話をしていたら、ことしの四月から七万円もらえるというふうに誤解していた人たちもいました。そういうような意味で、年金制度については、私たちは多分民主党の政策に国民は多くのいわば期待をしたんだろうというふうに思っておりますが、なぜ税方式、そして七万円の最低保障年金、こういうような制度にする方がいいと思ったんですか。

古川内閣官房副長官 お答えいたします。

 年金問題については鴨下議員とずっと前から議論させていただいておりますが、御承知のように、現行の年金制度ができたのは一九六〇年代から七〇年代。この時代の社会経済の状況と今状況が全く異なっております。

 現行の制度で従来政府がよく言ってきたのは、モデル世帯、夫婦子二人。それが、もう今やひとり暮らしの世帯がふえているとか、そういうモデル世帯自体が存在しない状況になっております。また、当時は、厚生年金、共済年金、そして自営業者中心の国民年金とありましたが、今や国民年金に加入しているのは、自営業者が中心ではなくて、むしろ非正規の労働者、厚生年金に加入できない人たちが四割を占めている。

 そういう意味では、現行制度の前提としている社会状況が全く変わっている。しかも、今、一回就職したらずっと一生その仕事につくんじゃなくて、やはり転職、私も転職しておりますし、鴨下議員も転職していると思いますが、それが当たり前になっている。

 そういう時代の中では、やはり、今の現行制度にかわる新しい制度をつくる必要がある。とりわけ、将来の、老後に対して、今のようなライフ設計が非常に難しい時代になってまいりますと、高齢期の最低限の所得保障というものをできなければいけない。しかし、今の年金制度ですと、低所得の人に対しては確かに免除制度などもあります。しかし、免除された分は当然将来の年金額も少なくなるということで、今のままいくと、非常に多くの低年金の者が将来出てきてしまう。

 そういうことを考えますと、高齢期の最低限の所得をきちんと保障できる、そういうことを国が約束することによって、私たちが将来に対する人生設計ができるような、やはりそういう仕組みをつくることが必要だ。そうした視点から、私どもは、税によって賄われる最低保障年金と、そして保険料で賄われる所得比例年金、この二本立ての新しい年金制度をつくろうということで従来から一貫して主張させていただいてきたわけでございます。

鴨下委員 それは古川さん、野党のときの主張であって、今実際に政権を担って制度設計をなさる人のお答えではないというふうに思いますよ。

 それはなぜかというと、では、最低保障年金七万円、いつからもらえるんですか。きちんと期日について、あなたの考えでも結構ですから、国民に言ってくださいよ。

古川内閣官房副長官 これにつきましては、私ども、そもそも新しい年金制度について、平成二十五年に法律案を成立させる、そこに向けて努力をしていくということはマニフェストでもお示しをさせていただいているところであります。

 そのもとで、私どもは、最低保障年金というのは、新しい制度の中で、これは新しい制度が成熟していく中で満額もらえる形になるというふうに申し上げているわけでございまして、すぐに、来年四月からもらえるとか、そのようなことは今まで一切言ったことはございません。

鴨下委員 制度設計が二十五年までに終わるという話で、実際にそれが動き始めて、最低保障年金、特にお年寄りで本当に低年金で御苦労なさっている人たちがたくさんいる、そういう人たちが生きている間に本当に給付が受けられるんですか。

 ですから、明確に、いつになれば最低保障年金は給付ができるんです、あなたたちのプランではいつなんだ、こういうようなことを明確に言ってください。

古川内閣官房副長官 多分、鴨下議員もおわかりになっていてあえて言っておられるんだと思いますが、今問題なのは、低所得の高齢者の方々が相当ふえてきているという問題なんですね。これを、実は私は、年金制度の世界だけで救おうとすることができるかといいますと、それは多分鴨下議員も無理だというふうに考えていらっしゃると思います。

 私どもは、ここは、だからこそ今問題なのは、低年金、無年金の方でも、中には、これはわずかだと思いますけれども、実はもともと資産等もあって、それこそ今の制度に入るのは嫌だというので入らなかった方もいるかもしれないわけです。そういう人を救わなければいけないというわけではなくて、年金以外に所得もなくて、しかも年金も低年金だ、あるいは、忘れていて入っていなくて、未納であってもらえない、そういう方々、高齢期の低所得の人たちをどう救うか、そのことを今考えていかなければいけないんだと思います。

 ですから、私どもは従来から、これは年金制度の中だけではなくて、例えば所得税の中で給付つき税額控除という制度を入れて、低所得の人たちに対してはきちんと手当てをしていこう、そういう、年金だけでなくて、社会保障全体の、トータルの中で低所得の高齢者の人たちの生活を支えていく、そうした仕組みを考えていきたいというふうに思っております。

鴨下委員 それは、最低保障年金を心待ちにしている人たちをごまかしたりだましたりしているということになっちゃうんですよ、今の答弁では。

 私は、年金だけで生活が十分にサポートできるかどうかというのは、古川さんの今のおっしゃる話というのは、ある部分共感はしますよ。でも、この最低保障年金七万円、特に、今まで年金保険料を納めていらっしゃらなかった人たちにも最低保障年金を給付する、こういうような幻想を振りまいたんじゃないか、こういうふうに思っているんですよ。

 だから、そういう意味で、本当に国民にクールに選択をしていただくために、いつ七万円が来るのか、このことについて、心づもりでも結構ですよ、十年後なのか二十年後なのか、それとも三年後なのか、せめてそのぐらいの感覚でおっしゃっていただければ、おれは関係ないんだな、私は給付の対象にはならないんだな、こういうふうに思って、多分皆さん自助努力するでしょう。

 でも、ことしの四月からは給付が受けられる、そういうふうに思ってがっかりした人たちもたくさんいる。こういうようなことについては皆さんの責任があるわけだから、きちんとそのことについて答えてください。

古川内閣官房副長官 従来から、私どもは、一切そのような、来年四月からもらえるなどということは申しておりません。私どもはきちんと、新しい年金制度をつくっていく、その新しい年金制度としては、税による最低保障年金と所得比例年金。税による最低保障年金を、では何年加入したら満額給付することにするか、まさにこれは具体的な制度設計の中で決めていく問題でありまして、ぜひ、この点につきましては、与野党を超えて議論をさせていただきたいと思っておりますので、鴨下議員にも御協力いただければ幸いでございます。

鴨下委員 結局は、制度設計についての当てもない、そして、いつ給付するか、全然先のことはわからない、こういうようなことですけれども、私たちは、多少建設的な意見を申し上げると、今の現行の賦課方式、そして保険方式、これは、足らないところは確かにありました。未納、未加入の問題、それから無年金、低年金の問題、こういうような問題について補っていけば、現行制度を十全のものにすれば、今おっしゃっていることは大体できる。

 例えば、最低保障機能をもう少しつくる、それから、無年金の人に、場合によると、今はキャッチアップしたいというふうに思っている人には、例えば年金受給期間を二十五年から十年に引き下げる、あるいは、ある年次を決めて特例納付をする、こういうようなことで無年金、低年金の人を少しでも少なくする、そういうようなことで現行制度を十全なものにするという方が現実的なんですよ。

 だから、そのことについて、古川さんは、いろいろな働き方が変わってきたからと言うけれども、全体的に言えば、八千万人ぐらいの人が保険料を納めて、そして、なおかつ四千万ぐらいの人たちが給付を受けているという、一億人がかかわっている制度を、納められない方々だとかそういう人たちのために全部ひっくり返すというのは、これは制度としては決してよくない、こういうふうに言っているんですよ。

古川内閣官房副長官 もちろん、私ども、鴨下議員がおっしゃるように、現行制度を手直ししていく、そして運用の改善とか制度の改正をしていくところもやっていかなければいけないと思っています。ですから、例えば、今この国会に、国民年金保険料の納付可能期間を二年から十年に延長する、そうした年金確保支援法案も提出をいたしております。

 鴨下議員がおっしゃるように、現行制度の直すべきところは直していく。しかし同時に、この今の日本の社会の状況、そして、これから三十年、四十年後の社会経済の状況を考えれば、今から年金を払う人たち、若い人たちにとって安心できる年金制度をつくるということは、これは党派を超えてやはり今やらなければいけないことだと思うんですね。これは鴨下議員が一番おわかりになると思います。

 スウェーデンにおいては、九〇年代に、与野党が党派を超えて新しい年金制度をつくろうという、まさに大きな一歩を踏み出しました。菅総理がおっしゃっている有言実行というのは、まさにこの年金でいえば、二十年以上にわたって、新しい制度をつくるというその努力を、一歩を踏み出さなかった。今こそ、私たちは、新しい制度を生み出すために一歩を踏み出したいと思っておりますので、御協力をお願いいたします。

鴨下委員 年金制度というのは、大体四十年保険料を納めて、それから自分の寿命が終わるまで三十年間ぐらい。だから、七十年間ぐらいでワンクールなんですよ。そういう制度を今変えて、私たち団塊の世代がいわば年金世代のピークになる、こういうようなとき、私はこれは社会保障にとってあらしの中だと思っているんだけれども、そのあらしの中で新制度と現行制度の船を乗りかえるというのは大変危険だ、こういうふうに思っているので、そのことについては古川さんもそれから総理ももう一度十分に現実的に考えていただいて、国民の人たちが安心して、なおかつ、これからも年金をもらい続けられる、こういうようなことについて、四十年先のことを語ったって意味ないんですよ、今のことをきちんとする。こういうようなことで、ぜひこの税方式についてはもう一度お考え直していただきたい、このことを総理に聞いて、終わります。

菅内閣総理大臣 私は、大変いい議論をいただいていると思います。

 今、私自身、団塊の世代でありますし、少子化は決してとまってはおりません。これまでのいろいろな議論が、多分、新たな計算をすればもっと厳しい状況になっていると思います。そういう中で、今、鴨下議員の方から、抜本的なことをもう一度考え直せと。直す直さないを含めて、私はこれはまさに与野党一緒に考えるべきことだと。

 もっと、一言だけ申し上げますと、介護と医療の関係も、果たして別々の仕組みの中だけで考えていいのか。もっと言えば年金まで含めて、年金と介護と医療の保険制度も、ある人は介護のサービスを受けていれば結果としては住居も確保されるということもありますので、そういう意味では、年金制度そのものを根本から考えていこうという提案を含めて、介護、医療の制度も含めたそういう議論をぜひ、私たちもまだ不十分なところがあることはありますので、しっかり案を出せるようにしていきたいと思いますが、ぜひとも野党の皆さんにも一緒になってお考えをいただくことをお願いしておきたいと思います。

中井委員長 この際、宮腰光寛君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 私は、自由民主党シャドーキャビネット農林担当の宮腰でございます。きょうは農業問題についてお伺いいたします。

 まず、米価下落と戸別所得補償制度についてであります。

 ことしから米について戸別所得補償モデル事業が始まりました。農家の所得を補償するという、民主党マニフェストに高らかにうたった農政の大転換であります。しかし、米の過剰と米価の大幅な下落という目の前の厳しい現実。そもそも、戸別所得補償制度が欠陥商品であったということを雄弁に物語っております。民主党の三人の農水大臣の御発言がころころ変わっていることからも、事前にちゃんと考えられた政策でないことがよくわかります。

 まず、赤松大臣。米の戸別所得補償制度ではしっかりと米の需給は引き締まる、大豊作でない限り大幅な下落はあり得ないと答弁。ことしは平年作にもかかわらず、二十二年産米の米価下落幅、昨年の九月に比べ、今のところ最大で六十キロ当たり二千五百円下落。下落幅は既に一五%から二〇%近い。新米でこの価格でありますから、日がたつにつれてさらに下がることは間違いありません。

 次に、山田大臣。米価が下落しても変動部分の予算で十分補てんが可能と答弁をされております。

 そして、鹿野新大臣。米価が大幅に下落して予算が不足した場合は、補正予算で必要な財源を確保すると答えておいでになります。

 まず、米価は下落しない。次に、下落しても大丈夫だ。そして予算が不足した場合はと、大臣がかわるたびにころころ変わってきました。甘い甘い見通しの結果、農家に深刻な影響が出るという現実をわかっていないからであります。

 なぜ大臣の発言がこうも変わるのか。そもそも、戸別所得補償の制度設計に米価下落の原因があるからではありませんか。鹿野大臣、お願いいたします。

鹿野国務大臣 三代にわたっての大臣の発言がころころ変わるということですけれども、誤解をされているようでございますので、まず冒頭に申し上げますが、米価が下落した場合に補正予算の云々は、そういう発言は私はいたしておりませんので、この点は一つ明確に申し上げておきたいと思います。

 そこで、米価の下落ということにつきましては、私もいろいろな関係の方々からもお聞きしておりますし、そしてまた、私自身も、生の声を聞かせていただくということで、過般新潟県にお伺いして、そして関係の方々からも直接お聞きをいたしました。この米価の下落状況というものが、農業者、特に米農家の方々にとっても大きな関心事であるということも承知をいたしております。

 そこで、この戸別所得補償制度というものに欠陥があったから下がったんだ、こういうことでありますけれども、私は、そういう主張には、そうですねと言うわけにはいきません。

 それは、すなわち、基本的にこの米価の下落というものが、私の認識では、今デフレ基調でございますので、どうしても、価格が下がった場合に売れ残りがあるんじゃないかというようなことから、農協といたしましても、仮払金、そういうものをかた目に設定したということが流通業者の方々にも影響している、こんな認識を私ども持っておりますので、決して、この制度が欠陥商品だから米の下落になったんだというふうなことは、私はそういう考え方には立っておりませんということを申し上げたいと思います。

宮腰委員 十月の四日に、秋田県知事が大臣のところにおいでになって米価下落対策を要請されましたときに、そういう御発言があったと報道でされております。

 それから、そもそも、この戸別所得補償制度、みずから買いたたきを招く仕組みです。五月十四日、農水省は買いたたき防止の通知を出しました。これが一つの証拠であります。そして今、米の過剰は危機的な状況にあります。

 菅総理にお聞きいたします。

 ことしの作況は九九、予想収量は六万トン減少。一方で、消費の減退見込みで八万トンの過剰、過剰作付四万一千ヘクタールで二十万トンの過剰、二十一年産米の持ち越し在庫は約三十万トン。これを差し引きすれば、確実に五十万トンを超える大量の過剰米が発生することになります。

 赤松元大臣は、大潟村のルール違反農家の肩を持って、秋田県全体におどしをかけたことがあります。その秋田県の試算では、米価下落により、県全体で米の生産額の減少が約百六十億七千万円、約一五%の減収になります。戸別所得補償の交付金百四十九億三千万円を加えても、差し引き十一億四千万円の収入減少になります。私の地元富山県を初め、米どころほど厳しい結果になります。さらに、将来の担い手であります中規模農家、この層が強く影響を受けることになります。

 何のためのばらまきなのか。農家は泣きますよ。総額三千三百七十一億円にも上る米戸別所得補償の予算を使っても農家の所得を補償できないのならば、まさに本末転倒であります。壮大な無駄遣いで日本の農業、農村を社会実験の場にしてはいけない。これこそ事業仕分けの対象とすべきだ、私はそう思います。もし過剰米対策を一切やらないとすれば、この先に待っているのは、さらなる米価下落と減反の大幅強化という不幸な結末しかありません。

 総理、篠原副大臣がおっしゃっているとおり、米価の下落は農家の自己責任なんですか。お願いいたします。

鹿野国務大臣 今いろいろおっしゃられましたけれども、基本的に、この戸別所得補償制度という中には変動部分というものがあるのは御承知のとおりでありまして、価格が下がったときに対処する、そういう政策も盛り込まれておるわけでございます。そういう意味では、農家の人たちに安心して生産に励んでもらおうというような考え方がその中に含まれていますよということも御理解をいただきたいと思うんです。

 そしてまた、いろいろとおっしゃいましたけれども、大体、今後どういうふうな価格の動向になるかということについては、いろいろなことを言われておりますけれども、今月末には、ある程度、生産体制ができれば、どんな結果が出たか、調査の結果も出ますので、これからの一つの動向というものを見きわめなければなりませんけれども、少なくとも、制度というものを導入することによって、御承知のとおりに、生産数量の目標というものは二万トン減った。そういう中でも、御承知のとおりに、今回、四万一千から八千ヘクタールというようなところがきちっと需給調整されているということからいたしますならば、やはり相当この成果というものは、この制度を導入したということについては評価をしていただけるのではないかな、こういうふうに思っております。

宮腰委員 我々の政権のときに、過剰作付七万二千ヘクタールから三年間で四万九千ヘクタールまで圧縮してまいりました。三年間で二万三千ヘクタール。今回は、三千三百七十一億円も使ってわずか八千ヘクタールしか圧縮できていない。割り返すと十アール当たり四百万円に相当します。無駄遣いです。

 きのうから補欠選挙が始まった北海道、そのお米、これまでは味と価格に値ごろ感があってよく売れておりました。ことしの北海道の新米はほとんど売れなくなりました。本州の米どころのコシヒカリが安くなっている。これまでの買い手がそちらにシフトしたからであります。北海道の農家は今、売れなくて本当に困っております。政策の誤りでこういうことが現実に起きているんですよ。わかっておりますか。

 本会議で米価下落対策をやらないとおっしゃった菅総理、今からでも決して遅くありません。所得補償より現実的に効果がある集荷円滑化対策の基金の活用、政府米買い上げの前倒しという緊急対策を今度の補正予算で実施される気持ちは本当にありませんか。

鹿野国務大臣 集荷円滑化対策というものは、平成十七年、十八年、こういうふうなことでやられたわけでありますけれども、私どもは今これはやっておりません。

 これは特別措置というようなことで、税制上もいわゆる措置がされているわけでありますけれども、この戸別所得補償制度というものは、下落、米が下がった場合どうするかということで変動部分というものも措置してあるわけでありますから、今言われたような円滑化対策というものも、これもそのために使うということになると整合性がとれませんので、私どもはそういう考え方に立っておりませんということを申し上げたいと思います。

宮腰委員 整合性に随分こだわっておいでになるようでありますが、危機感もそれから柔軟性もなかった口蹄疫の対応、これによって蔓延を招いた。今の米の過剰を放置すれば、米価下落の蔓延は来年以降も確実に続くことになります。何のために戸別所得補償をやったのか。意味がありません。

 戸別所得補償と言いつつ、実質は全国一律の支援単価であります。秋田県のように、全国一律の単価によっては収入減をカバーできない場合、なぜ政府として責任をおとりにならないんですか、鹿野大臣。

中井委員長 ちょっとお待ちください。ちょっと待ってください。

 口蹄疫の問題も出ましたし、先ほどは名指しで篠原副大臣を言われましたから、両方、二つ答えてください。米価下落の問題、責任と、それから口蹄疫の問題。(宮腰委員「委員長、時間がないんです、後もあります」と呼ぶ)そうですか。質問されたら答弁するのが義務ですから……(宮腰委員「いやいや、後の質問もありますから」と呼ぶ)それでは、口蹄疫のことはいいですか。(宮腰委員「いいです」と呼ぶ)はい。

 それでは、鹿野農水大臣。

鹿野国務大臣 最初に、円滑化対策の発動は、平成十七、十八ではなくて、平成十六、十七でございますので、これは訂正させていただきます。

 基本的にこの戸別所得補償制度というものは、重ねて申し上げますけれども、定額部分とそして変動部分ということで、両方にわたってきちっと、岩盤も含めて、変動した場合もということが盛り込まれておりますので、この制度については私は、これからいろいろと農家の人たちは、調査をした結果でも、やはりこういうときにこそありがたい制度だなというようなことで、さらに、では参加をしよう、こういうような人がこの世論調査の結果でも明確に出ているわけでありますので、来年はもっと参加者がふえてくるもの、こういうふうに思っておりまして、そういう中で需給調整もされていくものと思っております。

宮腰委員 甘いですよ。米価の大幅下落という厳しいペナルティーをルールを守っている大多数の農家に押しつけるのはとんでもないことであります。このことを、米どころ山形県御出身の鹿野大臣に御理解いただけないはずがありません。

 秋田県や北海道に加えて、さらに一段と厳しい状況にある宮城県。小野寺代議士のところに農家の皆さんから悲痛な叫びが寄せられております。これまで専業農家として、プライドを持って国に精いっぱい協力してきたが、今回の戸別所得補償でそのプライドをずたずたにされた、我々農家は国の小作人にされている、こういう悲痛な声が寄せられております。

 農家が望んでおりますのは、再生産可能な適正な価格と安定した経営所得の両方であります。今回の理念なきばらまき政策は、まじめな農家のプライドを奪っているんです。

 我々の政権のときに、農業、農村が果たしている食料の供給機能以外の機能、つまり多面的機能が国民生活や国土保全に欠かすことができない重要な機能であることから、条件不利地域補正のための中山間地域直接支払い、あるいは農地・水・環境保全向上対策という二つの直接支払いの仕組みを日本で初めて導入してまいりました。洪水調節、地下水涵養、あるいは生態系の保全、集落機能の維持、こういった農業、農村が持つ多面的機能を評価して、参加するすべての農家を対象とする仕組みであります。これは地域政策として打ったものでありまして、現場からも国民からも高い評価をいただいております。いわば日本型直接支払いの仕組みの原点であります。

 一方で、意欲ある農業者の経営努力が所得増大につながる経営所得安定対策を産業政策として打ってまいりました。集落営農を含め、しっかりとした農業経営体が経営する面積の割合は、既に全国の農地面積の半分を占めております。

 地域政策と産業政策を区別して、両方の政策をさらに拡充していくのが日本農業の正しい道であると我々は考えております。

 次に、EPA、FTAについて伺いたいと思います。

 菅総理は、所信表明演説で、全品目で原則一〇〇%の関税撤廃を約束するTPP、環太平洋戦略的経済連携協定、この参加を検討すると唐突に言い出しました。経済無策の菅内閣が一発逆転をねらって広げた大ぶろしきだと思います。

 我々は、EPAやFTA交渉を戦略的に推進して、インドを含めて十二カ国まで合意をしてまいりました。しかし、TPPはそれらの貿易交渉とはまるで違います。TPPにおける原則一〇〇%の関税撤廃、これは我が国の貿易政策の歴史的転換を意味します。

 この問題で、来月のAPEC首脳会合までに我が国の方針を決定することはとても無理があります。現内閣は、尖閣事件の後、あれだけ言っていた東アジア共同体構想について、ここ最近何も言わなくなりました。そのかわりの目玉として、APECで議長国としての面目を保つためにTPPの話を唐突に持ち出しておいでになったのではありませんか、菅総理。

前原国務大臣 先ほど同僚の西村康稔議員にもお答えをいたしました。西村委員の御質問は宮腰委員とは違う観点で、むしろ推進のお立場で御質問されたと思いますけれども、いずれにしても、東アジア共同体構想を捨てたわけではございませんし、APECというものが二〇二〇年を目指して、二十一の国・地域というものがより自由な貿易の連携を目指していく、こういうものの一つの形としてTPPが出てきている、こういうふうに認識をしておりまして、これも検討を加える。

 そして同時に、宮腰委員がおっしゃったように、戦略的なEPA、FTA、二カ国というものも今後考えていきたい、このように考えておりますし、TPPに仮に参加をしたとしましても、いきなり関税がゼロになるわけではありません。経過措置というのはございますし、そういう意味においては、今後、農業の面から御心配をされていると思いますけれども、そういう対応策も含めて議論をしていくことになろうかと思っております。

宮腰委員 御承知のとおり、日本は今でさえ世界一の食料純輸入国であります。米だけは何とか自給を保っておりますけれども、小麦の自給率一三%、大豆の自給率七%、食肉、牛乳・乳製品、砂糖なども、まだまだ国民が期待する自給率にはなっておりません。

 平成十九年に農水省がまとめた「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響」という文書では、国内農業生産額の四二%に当たる約三兆六千億円が減少、GDPの減少は約九兆円、就業機会の減少は約三百七十五万人、食料自給率は四〇%から一二%まで落ち込むというふうにされております。仮にアメリカやオーストラリアなどが加盟する予定のTPPに参加すれば、毎年少なくとも数兆円単位の生産額の減少、百万人単位の失業、一〇%単位の食料自給率低下が起きまして、日本人の食、ひいては国民生活に悪影響は必至だというふうに思います。

 農水省は、今月中旬にはこの問題に対する基本的な考え方を取りまとめるというふうになっておりますけれども、その際には、当然、TPPに参加した場合の国内農業への影響の試算をセットで提出すべきであります。試算がなければまともな議論はできません。試算を提出する用意はおありですか、鹿野大臣。

鹿野国務大臣 先ほどちょっと言いっ放しでありましたので。

 私どもは、戸別所得補償の問題、いろいろな問題、価格が下落しているなんというふうなことを、戸別所得補償制度に参加している人たちに責任を負ってもらうなんというふうな考え方は持っておりません。農業者の人たちがいかに再生産に結びつけていただくことができるかというようなことから戸別所得補償制度というものを導入したということでありますので、これは明確に申し上げておきたいと思います。

 それから、TPPのことにつきましていろいろ言及がございましたけれども、これはあくまでも、過般、総理大臣が検討ということを申されたわけでありまして、それ以上のものでもない、それ以下のものでもないわけであります。

 そういう中で、私たちは、このEPAを進めていくというようなことの中で、私たちの考え方というもの、農林水産省の考え方というものを出していきたいなというようなことの中で、当然、TPPについてどうであるかということも検討していかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。

中井委員長 鹿野さん、試算は出すんですか。

鹿野国務大臣 試算につきましては、そう簡単に出るものでもありませんし、いつの時点かは当然出すということになりますけれども、今具体的にどの時点かというのは、今後、当然、検討する中でそういうふうな数値が出たらば出していきたい、こう思っております。

宮腰委員 影響の試算なしに方針なんか立てられっこありません。いいかげんですよ。これだけの影響があってこういう方針を立てたという、基本的な考え方をまとめるに当たって、影響の試算なしでまとめられるわけがありませんよ。外務大臣に聞いておるわけではありません。鹿野大臣に試算をセットで出していただきたいと申し上げておるんです。

鹿野国務大臣 もちろん、EPAを進めるという中におきましてTPPの問題も、これは私たちにとっても重大な関心でありますから、当然、その場合どうなるかというようなものも含めて、数値というふうなものでどこまで限られた期間であらわすことができるかということもございますけれども、それは出していかなければならない、こういうふうに考えております。

宮腰委員 ぜひそのとおりにお願いいたしたいと思います。

 時間がなくなってまいりまして、実は、篠原副大臣においでいただいて、きのう、おとついと韓国においでになって、韓国におけるEPA、FTAの影響を現場で見てきていただいたわけでありますが、その点について、どうなっているのか。韓国の農村現場あるいは国内対策、これについて、簡潔に、率直にお願いいたしたいと思います。

篠原副大臣 お答えいたします。

 おとといときのうと二日間ですが、駆け足ですが行ってまいりました。三つ申し上げたいと思います。

 韓国と日本は状況が似ております。自給率は、十年前と比べて一〇%低くなりまして四四%、農地面積は、二十年前の二百十一万ヘクタールから百七十八万ヘクタールに減っております。高齢化も激しくて、二十年前は、六十歳以上はわずか三一%だったのに今は六一%。全くうり二つで、ウルグアイ・ラウンドのころ、双子兄弟と言われていましたけれども、全く同じじゃないかと思います。これが一つでございます。

 対策でございますけれども、これは感心いたしました。FTAをきちんと推進していくという決断を、ある時期、一九九七年のIMFの関係で危機が訪れました、そのときにしたんだろうと言われております。

 二〇〇四年、ウルグアイ・ラウンド対策ということで、きのう前原外務大臣からもお答えいただいておりますけれども、八兆三千三百億円、そして、アメリカとのFTAをやるということで一兆四千二百八十億円、合計で何と九兆一千億円です。この対策をもう事前に講じている。それでFTAに備えようとしているということでございます。これには感心いたしました。

 次に、農業界の皆さん、実は五人の方々と駆け足で濃密な意見交換をしてまいりました。その中に、FTAを推進するという学者もおられました。総じて言いますと、びっくりしたんですけれども、今のところ、やはりFTAを推進しなければいけないんだということで、農業界もある程度認めているということでございます。ただ、完全かというと、そうじゃなくて、三つ問題点があると。

 影響が過小評価だ。先ほど、影響がどの程度かというのがわからないと対策を立てられないと言っていましたけれども、例えば、牛肉完全自由化するのを、九・三%しか生産は減らないと言っているんです。我々は、四年前に、オーストラリアとの自由貿易協定が議論されたときに、オーストラリアとだけでも五六%減ると言っているわけですね。ですから、農家の皆さんは、評価が低過ぎるというのが一つです。

 それから、事前に対策を九・一兆円もやってもらっていながら、これでも少な過ぎて、まだ発効していないわけです、いざ発効したら、こんなものじゃいけない、二倍か三倍必要だというのが一つ。

 それから、競争力の強化と言っているけれども、幾ら規模を拡大したって、アメリカ、オーストラリアと一体一緒にやっていけるのか、やっていけっこないんじゃないかということを言って、心配されておられました。

 そして、問題のTPPをどのように考えているのかと言ったら、そんなことは毛頭考えていない、着実にFTAでやっていくと。なぜかというと、EUとアメリカとやりましたけれども、韓国も同じ、米の十六品目、これを除いてやっていると。この二国間で着実にやっていくのが一番の道だということを非常に強調しておられました。

 以上でございます。

宮腰委員 二国間、とにかく、我々も近々韓国に行って調査をしてまいります。その上で、農水委員会等でしっかりと議論をさせていただきたいと思います。必ずしも十分ではありません。特に、日米FTAの備えは十分でないというお話だったと思います。

 最後に、財源問題。

 これまで、赤松、山田両前大臣は、戸別所得補償制度は農林水産物の貿易自由化を前提にしていないと明確に繰り返し発言をしておいでになりました。それに対して鹿野大臣は、EPAを推進する際には国内対策として新税、環境税が必要だ、新たな財源がなければ戸別所得補償はもう限界だと正直に発言をしておいでになります。だれが見ても、明らかに政策の転換ではありませんか。

 総理、戸別所得補償制度は貿易自由化の前提ですか。その際に新税が必要になりますか。新税なしでやれるんですか。お答えください。

鹿野国務大臣 戸別所得補償制度は戸別所得補償制度として、これからどういうふうにこの展開をしていくかという中で、当然、いろいろ品目も、その対象も拡大をしていく場合は、もはや現在の農林水産省の予算だけではなかなか難しいですねと。一方、EPAを推進する上においては、国内対策をきちっとやらなきゃなりませんから、そのためには新たな財源が必要ですねということで、一つの考え方として、環境産業として、環境税というものも一つの考え方ではないですかということを私は申し上げているということであります。

菅内閣総理大臣 私は、今の宮腰議員からの問題提起は、非常に重要な提起をいろいろな部分でいただいたと思っております。

 私も、数年前、民主党の農業再生プランの責任者になって、そのときも、鹿野先生にお願いをして、篠原さんと山田さんにいろいろ研究をしていただいて、この戸別的所得補償、欧米でやっているものについて導入しようとしたときの、たしか代表などを務めさせていただきました。

 当初は、私の理解では、戸別的所得補償は米以外の穀物を中心に導入をするという発想があったわけですが、昨年、いろいろな議論がありまして、水田事業という形になって今日の状況になっている。このことも含めて、今のいろいろな御指摘も、私にもいろいろなところから耳にもちろん入っております。

 と同時に、きょうここで御党の西村議員が、逆に、このEPA、FTAあるいはTPPについて積極的な御意見も伺いました。これは、単に私は嫌みで言っているわけではなくて、まさに日本にとってどういう選択をしていくのか。今の韓国の状況を篠原さんが、若干短い時間でのお話がありましたが、まさに日本にとってどういう選択をしていくのかということを、これは党派を超えて問われているんだと思います。

 私も、農業については、地域政策という観点からも含めて、若い人が安定的に農業に従事することができるようにという観点から検討をお願いしてこの戸別的所得補償が出てきたわけでありますが、そういった意味も含めて、決して責任逃れをするつもりではなくて、本当に、日本の農業の将来であると同時に日本の将来について、これはあわせた議論が必要なときに来ているということを、きょうの宮腰議員の問題提起を含めた御議論からより強く感じた、それについてはしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

宮腰委員 民主党の代表選挙のときに、戸別所得補償があるからEPA、FTAに突き進んでも大丈夫なんだという御発言が山ほどありました。そのことを踏まえての私の質問であったということを申し上げて、終わります。

中井委員長 これにて石原君、石破君、河野君、西村君、下村君、鴨下君、宮腰君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、冒頭でございますが、チリの鉱山事故で、一人目の作業員が地上に無事救出されたというニュースが入りました。(拍手)大変うれしいニュースでございます。全員の無事生還を心からお祈り申し上げたいと存じます。

 さて、私どもの山口代表は、さきの参議院選挙におきまして、民主党政権に対してレッドカードを突きつけました。これは、民主党政権の数々の迷走ぶりに対して厳しく問うたものでございますけれども、鳩山政権におきましては政治と金の問題がありました。また、マニフェストの迷走というのがありました。さらには、普天間基地移設問題の迷走もございました。

 菅政権になりましてから、参議院では消費税をめぐる迷走ぶりがございましたし、また最近では、円高やデフレ対策への対応の鈍さですとか中国船衝突問題、また、小沢さんの検察審査会の二回目の議決ということで、政治と金の問題が再燃をしている。こういう状況でございまして、こういったように民主党政権の迷走ぶりが続く限り、私ども公明党としては、厳しく民主党政権に対峙せざるを得ない、このことをまず申し上げておきたいと思います。

 まず、政治と金の問題から質問をさせていただきます。

 九月の十四日に、東京第五検察審査会は、小沢氏の政治資金規正法違反事件で起訴すべきとの二回目の議決を行いました。

 衆参本会議の代表質問におきまして、我が党の井上幹事長、山口代表から総理に対しまして、民主党の代表として、小沢氏に対し証人喚問を含めて国会における説明責任を果たすように指示すべき、こういうふうに求めましたけれども、総理は、国会で議論、決定すべきものだ、また、御本人がみずから判断し、対応することが望ましいとまるで人ごとのような答弁を繰り返されました。また、昨日の予算委員会では、本人の意向も確認の上、どういう形で説明の場を設けるかを含め対応を協議したい、こういうふうに答弁をされまして、結論を先送りにされています。

 検察審査会が二回にわたり起訴相当との議決をしたことは、小沢さんに対しまして、公の場で疑惑についてきちんと説明しろ、こういう国民の意見の反映だというふうに考えています。裁判の手続と並行しまして、国会といたしましても、この国民の疑惑解明を求める声にこたえるため、証人としてぜひ小沢さんに説明を求めたい。菅総理には、民主党代表として、小沢さんに証人として国会で説明責任を果たすよう指示されることを改めて求めたいと思います。総理の答弁を求めます。

菅内閣総理大臣 石井委員からお話があったとおり、私、昨日のこの予算委員会でも申し上げました。小沢議員御本人が、国会で決めた決定にはいつでも従う、そういうふうにおっしゃっております。そういった意味で、国会での説明をどういう場でどういう形で行うのが適切であるのか、そういう正式な提案があれば、我が党としても、きちんとそれを受けとめて、そして対応を協議させていただきたい、このように考えております。

石井(啓)委員 本人の意向を確認されるということでございますけれども、仮に、小沢さんが、いや、自分はもう国会で説明したくない、こういう意向であれば、民主党としては、小沢さんに国会に出てきてもらわなくてもいい、こういうことでしょうか。

菅内閣総理大臣 小沢議員御本人が記者に対して、国会で決めた決定には私はいつでも従うと、そこまで言い切られているわけでありますから、私は、そういう意味では、御本人が、もちろん何らかの御意見はお持ちだと思いますけれども、少なくとも、国会で何らかの形で国民の皆さんに説明することはやるんだと言われておりますし、また、国会でそういうことを決めることになれば、今申し上げましたように、私たちも、きちんと提案があった段階できちんと協議に応じて判断していきたいと思っております。

石井(啓)委員 総理、それは国会で決める決めるとおっしゃっていますけれども、国会で決めるためには、民主党がまず決めなきゃいけないんですよ。民主党が賛成しなきゃ決まらないんですよ、原則として。

 民主党さんは、賛成するに当たって、民主党の党内の意見をまとめるに当たって小沢さんの意向を確認したいということを言っているわけですから、このままでは、小沢さんがうんと言わなければ民主党は賛成しないということになるのではないか、こういうことを申し上げているんです。どうですか。

菅内閣総理大臣 これから理事会等でもいろいろ議論が行われるんだと思いますが、政倫審という場もありますし、そして、一部の党でしょうか、予算委員会における証人喚問という言葉も出ておりますから、そういう意味では、きちんと提案があった中で、その段階で、段階を踏むということもあるかもしれませんし、まずは御本人が、例えばこういう場でまず説明したい、そういう意向があった場合には、場合によれば、それをまずやりましょうということを提案させてもらうこともあるかもしれません。今、こういう場合にこうするということを決めているわけではありませんので、そういう意味では、きちんと協議に応じて、御本人の意向を聞くことはやはり聞きたいと思います。

 しかし、場合によれば御本人の意向に沿った形、場合によれば沿わないでもこれをやらざるを得ないというときには党として判断をしていきたい、こう思っております。

石井(啓)委員 総理、正式な提案があればというふうにおっしゃいますけれども、もう既に野党として要求しているんですよ、小沢さんの証人喚問要求は。だから、これはもう正式な提案があったという前提でぜひ進めていただきたいと思うんですね。

 それから、今、政倫審ということを示唆されましたけれども、政倫審というのは、疑惑を持たれた政治家がみずから弁明する場でございますから、その政倫審で説明したいということであれば、それはそれで結構でございますけれども、ただ、政倫審というのは原則非公開の場でございますから、やはり十分な説明をしていただくためには、きちんと公開の場で、しかも偽証すれば偽証罪に問われる、そういう緊張感のある証人という立場できちんと説明をしていただきたい、こういうふうに私どもは思っています。

 この問題は、私は、小沢さん個人の問題にとどまらず、民主党が政党として本気でクリーンな政治をやるのかどうか、その意思が問われている問題だと思うんです。

 さきの民主党の代表選挙では、小沢さんは、国会議員票ではほぼ菅総理と二分する票をとられていますね。民主党の最大の実力者のお一人というわけでございますので、私は、小沢さんにかけられている疑惑というのは民主党にかけられている疑惑そのものだというふうに思うんですよ。ですから、ここは民主党として積極的に疑惑解明に応じるべきです。少なくとも、クリーンな政治を掲げる菅総理としては、党首としては、当然そうされなければいけないと思いますけれども、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 今申し上げましたように、代表選でも、私は、クリーンでオープンな政治ということを申し上げ、党の運営についてはそういう方向で進めたいということで、新しい執行部をつくり、そのことも指示いたしております。政治家の政治と金の問題全体についても、企業献金、団体献金の禁止などについては、ぜひ積極的に進めてまいりたいと思っております。

 小沢議員の問題については、いろいろな御指摘はいただいていることはもちろんよく承知をしております。しかし同時に、今回の検察審査会ということにおける扱いというのは、私の理解では議員に対して初めてのケースということもありますし、そういうことも含めて、今申し上げましたように、きちっと国会の中で手続がとられればそれに応じると小沢さん御本人が言われているわけですから、その手続の中で私どももきちんきちんと判断をさせていただきたい、こう思っております。

石井(啓)委員 ちょっとパネルを示します。

 これは、きのう自民党の石原幹事長が出された菅総理の著書の言葉ですね。「総理大臣は国会議員でもあり、同時に与党の党首である。自分の党の議員が疑惑を持たれているのであれば、党首として何らかの措置をとるべきだ」と。これに対して総理は、これについて基本的な考え方は変わっていない、こういうふうにおっしゃいました。

 であるのであれば、総理は、民主党の党首としてリーダーシップを発揮されて、小沢さんの国会招致を実現するべきだ、こういうふうに思います。重ねて伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 代表選挙の折にも、私は、代表選挙に改めて立候補された小沢議員に対して、やはり国民の皆さんにきちっと、もっと理解がいただけるように説明されるべきだということを公の場でも申し上げましたし、また御本人も、そのときにも、それはそういう形をとりたいと言われました。また、今回の検察審査会の議決の後の記者との話の中でも、国会できちんと決まればそれに従うということをちゃんと言われております。

 ですから、今、石井議員が言われたことでありますが、「党首として何らかの措置をとるべきだ」と私の本に書いてあるわけですけれども、今申し上げたような形できちんとした対応をしてまいりたい、こう思っております。

石井(啓)委員 しっかりした対応をとっていただきたいんです。国民が期待するような、そういう対応をとるように求めたいと思います。総理が有言実行を標榜するなら、ぜひこの本に書いてあるとおりに実行していただきたい、こういうふうに思います。

 続いて、鳩山前総理に関して質問を申し上げますけれども、鳩山総理はことしの三月三日の参議院の予算委員会で、裁判が終われば関係資料を公開する、こういうふうに約束をされました。この約束を果たしていただくために、私どもは代表質問におきまして、鳩山前総理が関係資料を公表するように、菅総理のリーダーシップの発揮を求めたところでありますけれども、総理は、鳩山前総理御自身が総理辞任という大変重い形で政治責任をとられたという答弁で拒んでいらっしゃいます。

 総理を辞任すれば国会での約束をほごにしていい、こういうふうに菅総理はお考えでいらっしゃるんでしょうか。伺います。

菅内閣総理大臣 これもいろいろな機会と重複するかもしれませんが、鳩山前総理の問題では、検察処分、さらには検察審査会の審査、そして関係者の裁判ともにすべてが終了しており、かつ、総理辞任という大変重い形で政治責任をとられたわけであります。

 今、辞任すれば国会での約束をほごにしてよいと考えるかということでありますが、私は、政治家の問題について、やはり政治家としてどういう責任のとり方をとるのかというのは、それぞれ最終的には御本人が判断されることだと思いますが、しかし、総理大臣という立場におられる方がやはりそういう問題を含めて総理大臣を辞任されたということは、私は政治的には大変大きなけじめのつけ方であったと思いますので、そういった意味では、一つのけじめは、政治的なけじめはついたというふうに理解していいのではないかと思っております。

石井(啓)委員 総理、政治的なけじめをつけるということと総理時代の約束を果たすということは別問題ですよ。

 仮に、政策的なことであれば、次の内閣によって政策が変わることはあるかもしれません。しかし、総理の自分自身のことに関して、こういうふうにやります、この約束が、どうして総理が辞任したらやらなくてもいいということになるんでしょうか。そういうことになれば、総理時代の約束というのは全然信用できなくなるじゃないですか。それを認めれば、菅総理自身の約束も信用できないということになるじゃないですか。どうなんですか。

菅内閣総理大臣 約束にもいろいろな種類の約束がありまして、総理として、やろうと思って、しかしできなくて例えばやめた場合、いろいろなケースがありますが、そういう場合には当然、総理として、ある政策を実行したいということで約束しても、どうしてもできなくて、できないことで責任をとってやめれば、それは、その約束は、もちろん、できないからやめるということを含めて、できないことはあるわけです。

 この約束は、私は、鳩山前総理が鳩山前総理個人として、自分としては、こういう段階になればこうしたいと、多分、総理を続けておられることを前提で思われたのかどうか、そこまで私もよく、ここまで来るとわかりませんが、少なくとも、鳩山さん個人として、そういう思いの中でそういう発言をされたんだと思います。

 そういった意味で、先ほど申し上げたように、総理としての大きなけじめをつけられたというふうに私は認識をしておりまして、そのことを、私がかわって、鳩山前総理のかわりに何かを、本人の問題として判断する問題であるとすれば、私がかわりに判断することは残念ながらできない問題だと思っております。

石井(啓)委員 いや、違うんですよ。これは、国会に対して資料を提供しろ、こういうふうに私どもは要求しているわけですよ。そのことを民主党の代表としてきちんとやるべきじゃないんですか、こういうふうに申し上げているんです。

 だから、鳩山さん個人の問題じゃないんですよ。国会で約束したということは、国民に約束したということですから。その国民との約束を簡単にほごにしてもいいというような鳩山さんやあるいは菅総理の感覚というのは、私はとても受け入れがたい、こういうふうに申し上げたいと思いますね。

 だから、総理としてけじめをつけたという問題と、それはそうでしょう、鳩山さんは、最低限でも県外移設と言った約束を守れなかったからやめたんでしょう。その約束を守れなかったということと、個人の約束を守るかどうかというのは別問題ですよ。これはきちんと、これからも引き続き私ども主張していきたいと思うんです。

 総理は、熟議の国会、これを求めていらっしゃいますよね。ただ、この熟議というのは、政府・与党にとって都合のいいことだけを議論するということではないはずなんですよ。与野党に熟議を求めるのであれば、野党の証人喚問要求あるいは資料要求に対して真摯に応じるべきじゃないですか。総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 政治と金の問題も政治課題の中で極めて大きな一つであることは、もちろん私も認識をいたしております。そういう意味で、政治と金の問題でのいろいろな指摘についてしっかりとお聞きをし、またいろいろ議論を交わす、今まさにそういう形で議論を交わしているところであります。

 そういう意味で、小沢議員の問題、鳩山議員の問題、それぞれ性格は私はかなり違うとは思いますけれども、それぞれの問題提起をしていただく中で、私たちなりに判断をしたい。

 私の考え方については、今申し上げたように、若干意見が違うかもしれませんけれども、現時点で申し上げられるところでいえば、もう同じ繰り返しは申し上げませんが、そういう考え方で私自身はいる。さらにということであれば、さらに議論を続けるということになろうかと思います。

石井(啓)委員 政府・与党の都合のいいテーマだけで熟議を求められても、それは虫のいい話だ、こういうことは申し上げておきたいと思います。

 それでは、再発防止策の方に移らせていただきます。

 民主党としては、政治と金の問題の再発防止策として企業・団体献金の禁止をうたっていらっしゃいます。それはそれとして、これは早くぜひやっていただきたい、こういうふうに思いますけれども、私は、企業・団体献金の禁止を進めるにしても、それだけで政治と金の問題の再発防止策にはならないというふうに思っているんです。

 企業・団体献金の禁止をすることによって、鳩山前総理あるいは小沢元幹事長の政治資金をめぐる問題、これは再発防止が可能だというふうに、総理、お考えでしょうか。

菅内閣総理大臣 再発防止というのは、政治と金全体でいうと、いろいろな分野がかつてもあったし、今もあると思っております。

 ですから、私も多少議員として長くなっておりますから、あるいは議員の前も含めていえば、ロッキード事件のときなど、今のいわゆる政治資金規正法をだんだんと強化してきたこと、あるいはそういうことが、政治に金が、少なくとも当時の中選挙区制では金が非常にかかるという指摘の中から小選挙区中心の現在の制度に変えたこと、さらには、政党助成金をお願いする一方で、従来よりはかなり厳しい献金の範囲といいましょうか、そういうものを規制したこと、それぞれ、ある意味での、当時の問題となったことの再発を防止するというか、できないようにするための対応であったと思っております。

 今回の小沢議員、鳩山前総理の問題の再発防止ということをどういうふうに受けとめるかでありますけれども、私は、御党が提案されている監督責任を強化するというのも一つの道だとは思います。ですから、それはそういうやり方が効果的であるという考え方も私は私なりに理解できますが、一方では、そのことによって予想されない問題、マイナスの問題も生じるかもしれません。

 そういったことも含めて、つまり、秘書が何かやったことが即議員の身分にかかわるというストレートなことが、果たして本来の問題の再発防止という効果だけではない副作用を生むかもしれませんので、そこはぜひ国会に提案をいただく中で、本当に熟議で、真摯に議論をさせていただきたいと思っております。

石井(啓)委員 鳩山前総理の問題というのは、これは実のお母様からいただいた多額の資金提供、これを偽装していたということですよね、亡くなった方の名義を使ったり全く献金したことのない方の名義を使ったり。というか、これは個人献金の偽装になるんです。

 また、小沢さんの問題、小沢さんはいろいろ問題ありますけれども、例えば昨年の西松建設の問題でいえば、本来、実質的に、西松建設からの企業献金が西松の社員が会員になっている政治団体からの献金ということで、トンネル献金という形をやっている。これは企業献金をトンネルしている形なんですね。ことしの問題になった事案というのは、これは不動産購入の原資をめぐる、これが個人の資金であるにもかかわらず銀行からの融資であるかのように装ったんではないか、こういう問題でございます。

 いずれにしましても、企業・団体献金を禁止することによっては、再発防止というのは無理なんですね、この鳩山さん、小沢さんの問題というのは。

 そこで、ちょっと検察審査会も。

 これは、これまでも国会で示しています検察審査会の議決ですが、一番上の四月の鳩山総理をめぐる問題については、「監督責任だけで会社の上司等が責任を取らされている世間一般の常識に合致していないので、」本条項というのは政治資金規正法第二十五条第二項ですが、これは改正されるべきだ、こういう議決になっています。

 四月二十七日、東京第五検察審査会、これは小沢さんに関するものですが、「「秘書に任せていた」と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか」こういう議決になっています。

 七月、東京第一検察審査会、これも小沢さんに関する議決ですが、「政治家自身が「公開された内容を知らなかった」などと言って責任を免れることを許さない制度を構築すべき」。

 いずれにしましても、政治家が責任逃れをしている、このことが問題だということで、検察審査会の数々の議決が指摘をされているわけです。

 そこで、私ども公明党の提案でございますけれども、今、総理からもちょっと御紹介いただきましたが、現行法の政治資金規正法第二十五条第二項が、会計責任者の選任と監督と両方についての過失を求めている。監督についての過失というのはあり得るとしても、選任についての過失というのは、これは証明するのはほとんど無理です。したがって、この第二十五条第二項を適用された事例はございません。

 したがって、私ども公明党の改正案としては、選任または監督ということで、監督だけでも過失があれば政治家の責任を問える。秘書などの会計責任者が虚偽記載等を行いまして、それについて政治家の監督責任が不行き届きということであれば、政治家に罰金を科して、政治家の公民権停止、失職を求める、ここまで厳しくやって初めて、政治と金に関する問題の再発防止策が抜本的に可能だ、私どもはこういうふうに申し上げているわけでございます。

 先ほど総理の答弁では、いろいろ副作用があるみたいだから検討しなきゃいけないということのようですけれども、これはぜひ真剣に検討していただきたいんです。先ほどの検察審査会もありましたけれども、一般世間では監督責任だけで問われるんですよ、普通の会社は。部下に対する監督責任だけで上司は責任をとらされるんです。やはりそういう一般常識に合ったような改正にすべきだ、私はこういうふうに思います。もう一度総理に答弁をお願いします。

菅内閣総理大臣 私は、一般的に、何か緩くしろとか、抜け穴をどんどんつくれということを申し上げているつもりはないんです。

 ただ、例えば、選挙法もだんだんと厳しくなりました。かつては相当、関係者がいろいろ起訴されても、自分の任期、衆議院でいうと最長四年、参議院でいうと六年だけ裁判で頑張っていれば、任期が終わったから、たとえその後で本人が有罪になってももう終わったこととされたのを、そうではない形になりました。

 しかし一方で、率直に申し上げて、私はやや厳し過ぎる面もあるのかなという気もしたことが何件かあります。

 例えば、運動員買収という形である方が失職しました。簡単に言えば、電話かけをアルバイトにやらせたということで失職しました。確かに今の法律では電話かけをアルバイトにさせてはいけないということになっておりますが、かつては、そういうことを余り厳しく言わないで、多くの候補者がやっていたり、あるいは、それで取り締まられたことはありませんでした。

 そうなると、では、アルバイトに例えば旗を持ってもらってもいいけれども、声をかけて菅直人をよろしくと言ってはこれは運動だからだめだとか、非常に微妙な問題がたくさん現在でも生じております。私は、このあたりはもう少し、決して緩めるために緩めるということではなくて、クリアにするために、もう一度、このあたりはそれこそ超党派で議論していい課題だと思っております。

 そこで言われた選任、監督というのも、私もそうたくさんのケースを知っているわけではありませんが、言い逃れのためにそういうことの規定が使われている部分も確かに個々のケースではあるかもしれません。しかし、私たちも、秘書を選び、あるいはいろいろな人を頼むときに、どこまでそういったことについて、その秘書なりが法律をよくわかっているかいないかということを、完全にはできません。

 そういうことを考えますと、選任及び監督ということについて、今、公明党のような案に変えることによってどういう事例が生じるのかということも議論をする必要はあるのではないかと申し上げているので、必ずしも結論的に反対と申し上げているわけではありません。

 もうこれ以上はくどくど申し上げませんが、従来、もともと政治資金規正法というのは入りの点についてのオープン化、透明化ということが大きかったわけですが、最近は出の方を非常に問題にすることになりましたが、確かにそれは、出が何に使われたということも重要かもしれません。しかし、私は、従来の政治と金の問題でいえば、簡単に言えば汚職のような金とか、あるいは政治的に何かをねじ曲げるためにその対価として金をもらっているという、入りのことがやはり一番重要で、出は、もちろん選挙法とかなんとかに違反しちゃいけませんけれども、そのこととは若干性格が違うのではないか、こう思っております。

石井(啓)委員 それはやはり入りと出と両方きちんとやらなきゃいけないんですよ。入りの方が重要で、出はそうではないというのは、私はちょっとおかしいと思いますね。

 いずれにしましても、この私どもの改正案に対して民主党さんはどう対応するのか。これは、私どもにとりましては、民主党が本当に再発防止策を真剣にやろうとしているかどうかのいわばリトマス試験紙だというふうに思っていますので、そのことを申し上げておきたいと思います。

 あわせて、国会議員の歳費日割り法案についても確認をしておきたいと思います。

 これは、さきの参議院選挙直後の臨時国会におきまして、我が党が議論をリードしまして、日割り計算で当選前に当たる部分の歳費を自主返納できる特例措置を実現させました。これとあわせまして、与野党が合意をして、次の臨時国会までに、すなわちこの臨時国会ですね、国会議員歳費を日割り支給するための法案を改正するということで与野党合意を取りつけました。

 合意どおりに国会で実現をさせるということを確認いたしたいと思います。総理の答弁をお願いします。

菅内閣総理大臣 日割り法案については、各党、考え方としては合意ができているというふうに私は理解しておりまして、手続的にさきの国会では間に合わなかったので自主返納という形をとったと思っておりますので、きちんとした法律にすることについては賛成をしたいと思っております。

石井(啓)委員 その点については、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 では、続いて、マニフェストについて質問をいたします。

 マニフェストというのは国民との約束でありますから、これは政府・与党が最大限実現に向けて努力するのは当然のことであります。ただ、一方で、マニフェストというのは金科玉条ではございませんので、例えば、その政策の中身が誤っていたり、政策変更する場合、それは国民にきちんと理由を説明して修正するということは私はあり得るというふうに思っています。

 ただ、最も避けなければいけないのは、マニフェストがどうなるのかわからない状態になる、実現するのかしないのか、修正するのかしないのか、どうなるのかあやふやな状況に置くということが私は一番避けるべきことであるというふうに考えています。

 そういった意味におきまして、今、民主党のマニフェストの扱いというのが不明確になっていまして、マニフェストが迷走しております。この点についてただしていきたいと思います。

 まず、総理は本会議の答弁で、衆議院のマニフェストは任期中の実現を国民に約束したものである、こういうふうに答えられていますけれども、任期中の実現を約束したということになりますと、今パネルで示していますけれども、これは民主党の衆院選のマニフェストの工程表ですね。任期途中、平成二十二年度から二十五年度にかけて各年度、主要な政策をどのように手順として実行していくのか、これを示したのが工程表でございますけれども、この衆院選のマニフェストの工程表がどうなるのか。これはなくなってしまうのか、あるいは修正するのか。この工程表の扱いというのはどうなるんでしょうか。まず、総理に伺います。

菅内閣総理大臣 工程表を含めてマニフェストでありますので、〇九年のマニフェストについては、誠心誠意、実現を図るべく全力を挙げていくというのが基本的な姿勢です。

 と同時に、現実に、例えばその中でも暫定税率の廃止については、今年度予算ではできませんでした。幾つかの理由がありますが、もちろん、税収が大きく減少した、あるいは無駄遣いの廃止の中で生み出せた初年度の費用が三兆余りにとどまったといったようなことを含めて、これは初年度実行できませんでしたので、それについてはおわびを申し上げ、説明を鳩山前総理がされたところであります。

 そういう意味で、この工程表そのものを含めてこの四年間の任期の間に極力実現を図っていくという姿勢そのものには変わりはありませんが、今申し上げたように、どうしてもできない場合には、その理由を説明し、それを国民の皆さんに理解いただけるよう説明していきたい、こう考えております。

石井(啓)委員 それでは、具体的な問題で確認します。

 民主党マニフェストの変遷ですが、左側は衆議院のマニフェスト。まず、子ども手当は、今年度は月額一万三千円、半額支給でございますけれども、これを、当初のマニフェストですと、来年度以降は満額支給、月額二万六千円を支給する。それに要する予算というのは、これはマニフェストによると五兆五千億円。参議院のマニフェストはどうなっているかというと、財源を確保しつつ一万三千円から上積みをするというふうになっています。

 右側が概算要求ですけれども、概算要求は、この上積み分というのは予算編成過程で検討するということになっていまして、来年度、一万三千円からどれだけ上積みするかというのは予算編成を経ないとわからないということのようですが、これは、先ほどの総理の答弁からしますと、来年度満額支給するかどうかは今ちょっとわからないようですけれども、少なくとも任期中、平成二十五年度までには満額支給、二万六千円を支給するということでよろしいわけですね。確認をいたします。

菅内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、基本的に、〇九年のマニフェスト全体を任期中に実現するという基本原則は変わっておりません。それに向けて全力を挙げるという基本的な考え方は変わっておりません。その中で、先ほど来申し上げているように、どうしても財源的な制約等で難しいものについては、その理由も含めて説明するということを申し上げております。

 子ども手当については、今そこにお示しをいただきましたように、初年度、半額の月額一万三千円は、御党の賛成もいただいて実行することが現在できております。来年度についてはそれに上乗せをしていこう、その場合について、どれだけの額、それも、現金で上乗せをするのか、保育園などの充実という形で現物で上乗せをするのか、まさにそのことを、現在の予算編成過程でその議論をいたしております。

 そういう場合に、最終的な目標がどうかということを言われますと、基本は二万六千円満額を現金でというのがマニフェストであることは、何度も申し上げますように、原則としてそれを、実現を目指すわけでありますが、いろいろな議論の中で、それに一部かえて、現物給付の方がより効果的だ、あるいは、より国民の皆さんにある意味で歓迎してもらえるという場合には、そういう若干の変更があり得るわけでありまして、そのときはその理由を含めて御説明を申し上げたい、こう思っております。

石井(啓)委員 私が聞いたのは、一万三千円からの上積み分を現金でやるのか現物でやるのかということを聞いたわけではありません。現物だとしても二万六千円分は支給するのかどうかということを確認したんです。もう一度答弁ください。

菅内閣総理大臣 これも何度もお答えしていますように、〇九年のマニフェストについて、まさに今の言葉で言えば、満額分に相当する何らかの対応を実現するように全力を挙げたいという姿勢は変わっておりません。

石井(啓)委員 よくわからないんですよ、結局。子ども手当、満額やりたいけれども、何か留保条件がついている。

 では、高速道路無料化に行きますよ。

 衆議院のマニフェストでは、全国の高速道路を無料化する、そのための予算が一・三兆円ですね。参議院のマニフェストでは、段階的に原則無料にする。来年度の概算要求では、やはり段階的に原則無料ですが、要求している額が一千五百億円。一・三兆円に比べると大分違いますね。このペースでいって、果たして任期中に高速道路の無料化が本当にできるんでしょうか。総理の答弁を求めます。

菅内閣総理大臣 余り同じような形でお答えするのがいいかどうかわかりませんが、高速道路の無料化については、御承知のように、現在は社会実験を実施いたしております。社会実験でありますから費用的にそう大きな額にはなっておりませんが、しかし、それでも相当の区間、何十%と言っていいんでしょうか、三〇%ぐらいになりましょうか、相当の区間について無料になって、そこの便益が高まったのか、部分的には渋滞が多くて困っているのか、いろいろな影響がプラスマイナス出ております。

 そういうことを、社会実験をする中で、その結果を踏まえながら、衆議院の任期満了までに最終的に高速道路を無料化するという約束を実現すべく全力を挙げるという姿勢には変わりはありません。

石井(啓)委員 努力をするということですけれども、本当にできるかどうかは、明確な説明はありませんでした。

 では、最後、ガソリン税の暫定税率ですが、衆議院のマニフェストは、ガソリン税などの暫定税率は廃止、二・五兆円。参議院のマニフェストは、特に記述がありません。一一年度の概算要求は、これは環境省の方が、ガソリン税に係る当分の間の税率、暫定税率は今、当分の間の税率というふうになっていますけれども、税の名称を変更しつつ現行負担水準を維持する。だから、暫定税率、当分税率という名称は変わるけれども、税率を維持するという概算要求になっているんですね。

 これで、暫定税率の廃止、このマニフェストが実行できたというふうに言えるんでしょうか。総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 環境税の議論は、必ずしも今回のマニフェストそのもののあるなしにかかわらず、議論が従来からありますし、議論があったところであります。一般的にも、環境税、いろいろな言い方がありますが、炭素税という言い方もありますけれども、その場合に、二酸化炭素を排出するものに対して、その排出量を一つの基準として税をかけようという考え方があるわけであります。

 そういう意味で、今回といいましょうか、ガソリン税の暫定税率そのものは、税率という形では残さざるを得ないという判断をしたわけでありますが、環境税を検討し導入ができる段階では二重に残すということにはならなくて、結果としては、環境税というものの導入の中で、ガソリン税というものを全部なくするのか、一部どうするのか、それをあわせて検討する課題になろうか、こう考えております。

石井(啓)委員 これは、ガソリン税を環境税というふうに名前を書きかえただけなんですね。看板のかけかえですから、これはマニフェストの廃止というのには全く当たらない、この点は完全にマニフェスト違反状態になっている、このことを指摘したいと思います。

 結局、総理は、このマニフェスト、任期中最大限実現に向けて努力をしたいというふうにおっしゃっているんですけれども、財源等でどうしてもできない場合は御理解いただきたいということで、最大限努力をしますと言いながら、一方でできない場合の言いわけを用意されているんですよ。だから、本当に実行するかどうかというのは国民にとってはわかりません。今の総理の答弁を聞いても、本当に二万六千円子ども手当をもらえるのかしら、確信を持った人はだれもいないと思いますよ。

 このように、マニフェストの扱いが不明確になっている、このことが私は問題だと思うんですよ。実行するならする、修正するならする、その点をきちんと明らかにすべきじゃないですか。それが国民に対する説明責任だと私は思いますけれども、総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 私ども、昨年の九月に鳩山内閣が成立して一年余になります。それ以前から日本の経済は難しい状況に入っておりましたが、たしか初年度で、その後、税収見通しをさらに下回る税収しか入りませんで、それに対して国債をさらに積み増さざるを得なかったこともよくよく御承知のとおりであります。そういった全体の財政状況、さらには今日的な、新たに急がなければならないいろいろな経済政策、社会政策、そういうものもあるわけであります。

 もちろん、マニフェストというのは選挙における国民の皆さんとの約束ですから、何回も繰り返しましたように、四年間でそれの実行に向けて全力を挙げることは当然でもあるし、そのことはそういう姿勢を貫いておりますけれども、何かそのことで、変えるなら変えるではっきりしろと言われる、その言われる気持ちはわからないわけではありませんけれども、しかし、ある意味では、一方では、毎年毎年、その都度その都度あらわれる現象に対してもきちんとした対応をしていかなければなりません。

 そういう意味で、私たちは、新成長戦略というもう一つの大きな骨太の経済政策、あるいは財政運営戦略という大きな方針を立てて、中長期の、これは任期中だけではありません、例えば二〇一五年までにどうする、二〇二〇年までにどうする、そういう五年、十年という展望の中で推し進めなければいけないことも並行して、できるだけマニフェストと矛盾しないように、実行を目指しているわけであります。

 ですから、そういう御指摘をいただくことは甘んじて受けますけれども、今、〇九年のマニフェストをこう変えて、あとはこのとおりやるんだということではなくて、二〇〇九年のマニフェストどおり何としても四年間の間には実行するということを全力を挙げるという形で国民の皆さんに御理解をいただきたい、こう思っております。

石井(啓)委員 いや、全力を挙げると言いながら、もう初年度から破綻しているじゃないですか。だって、初年度、大体、さっきの工程表によると、七兆円やると言いながら三兆円分しかやっていないでしょう。半分もできていないんですよ、主要な政策でいっても。

 もう既に第一歩からつまずいているんです。第一歩からつまずいて、何で二歩三歩と進めるんですか。今の状況を見たら、とてもマニフェストがきちんと実現できるだなんて信用している国民はいませんよ。これを中途半端なままにされているから、国民は、菅総理は何をしたいかわからないんですよ。ここがきちんとしていないから、今民主党政権が何をしようとしているかわからないわけです。

 結局、菅総理がこのマニフェストについてあやふやな答弁しかできないのは、やはり財源がきちんとしていないからなんです。財源がきちんと確保できれば自信を持ってできますと言えるはずなんですよ。

 これは、民主党のマニフェストの財源案ですね。真ん中の欄に赤い文字で書いています、下に書いていますけれども、二十五年度には十六兆八千億円の財源を生み出しますと。それは、公共事業、人件費を二割削る、それから六・一兆円、いろいろ節約して九・一兆円、埋蔵金や資産の活用、租税特別措置の見直し、合計十六兆八千億円。この財源が、自信を持ってこれをやれますと言えるんだったら、一〇〇%マニフェストどおりにできますと断言できるはずですよ。それができないから、何かあやふやなことになっているんじゃないですか。

 では、総理、このマニフェストの財源案、今でも自信を持って達成できる、これが実現できる、こういうふうにお約束できますか。

野田国務大臣 総理の前に私の方からお答えをさせていただきます。

 ここに書いてあるマニフェストの財源、最終的には二十五年度節約目標でございますので、確かに、御指摘のとおり、二十二年度の財源としては三・三兆円でございましたが、着実にその目標を達成できるように、歳出歳入両面の改革をこれからも引き続き行っていきたいと思います。

菅内閣総理大臣 財務大臣からも答弁がありましたけれども、このマニフェストがつくられる段階、私は必ずしも中心的な役割は担っておりませんでしたが、確かに財源の問題はなかなか議論がありました。そういう意味で、こういう形でどこまで捻出できるのかという議論は、率直なところ、ありました。

 その中の議論で、いや、政権をとれば、構造的な改革も含めてやる中でやれるんだ、そういう形で、当時中心的だった皆さんの意見もあり、私も一時期厚生大臣をやりましたが、政権そのものを中心的に担った経験は今回初めてでありますので、いや、政権をとれば、もっといろいろなところにたくさんの無駄があるだろうということで、そういうことも含めてこういうマニフェストを掲げて戦ったわけであります。

 先ほど野田大臣からもありましたが、まさに仕分けも、第二弾、第三弾と進めて、これから出先機関の廃止に向けての構造も進め、さらには、いわゆる特別会計はもちろんですし、一括交付金に持っていくということも進めて、そういう構造的な、国の形の構造を変えるということに、今から二歩、三歩と進んでまいりますので、そういう中で、財源についても、この四年間でこうした目標で実現を目指す、それに全力を挙げるという姿勢は、これについても同じ立場であることを申し上げておきたいと思います。

石井(啓)委員 マニフェストの最大の肝、ポイントは財源案にあると私は思っています。といいますのは、財源の制約がなければ幾らでもバラ色の政策を掲げることができるわけです。現実的な財源案の中で、どこから優先順位をつけてどこまでやるのか、それを示すのがマニフェストです。

 したがって、財源案が一番大事なんですよ。ここがおかしかったら、この財源案がおかしかったら、いいかげんだったら、これはマニフェストそのものがいいかげんだということになるんですよ。これが本当にできるのかどうか、これが最大のポイントなんです。

 今、できるからというやじを言っている人もいますけれども、民主党の代表選挙ではこれができるかできないかが最大のポイントだったんでしょう。小沢さんは総予算を見直せば財源は生み出せると言ったんだけれども、菅さんはそうじゃないとおっしゃったんでしょう。だから、この財源案は見直さなきゃいけないんじゃないですか、菅総理としては。違うんですか。

野田国務大臣 マニフェストを実現するために財源が大事であるということは、それはまさに委員の御指摘のとおりだというふうに思います。特に、二十二年度は、税収が九兆円も落ち込むという厳しい中で、三兆三千億円の財源を確保して、マニフェストの主要事項は三・一兆円という形で、効率的に実施をするという形で何とか工夫をさせていただきました。

 同じように、財源を確保しながら、マニフェストでお約束したことを着実に実施できるように頑張っていきたいと思います。

石井(啓)委員 民主党は政権をとってもう一年たっているんですよ。残りの任期はもう三年を切っているんですよ。ですから、この時点で、マニフェストの財源をきちんと検証して、本当にどこまで財源が導き出せるのか、それをきちんとやるのが民主党の責任じゃないですか。

玄葉国務大臣 石井政調会長から、マニフェストの扱いについて厳しい問いがございます。

 総理そして野田大臣とも、〇九年のマニフェストをできる限り誠実に実行する、こういう答弁でございます。そういう思いは私にもありますが、ただ、石井政調会長、これは一緒に考えていただきたいというか、あわせて申し上げたいことがあるのは、先ほど御指摘がありましたように、参議院選挙での我々のマニフェストの扱いということなんですね。

 つまり、おっしゃったとおり、一つは、税収が四十六兆入るという前提でのマニフェストが〇九年のマニフェストでした。しかし、実際は三十七兆しか入らなかった。そして同時に、おっしゃるとおり、財源の問題もこれありだ。こういうことがあって、我々は、全議員参加のもとで、あるいは党員、サポーターも巻き込む中で議論をして、〇九年のマニフェストを一部修正する形で一〇年の参議院選のマニフェストをつくった。

 私自身も、〇九年のマニフェストは全くと言っていいほどかかわっていませんが、参議院選挙のマニフェストは一定程度かかわっております。そのときにはまさに、例えば子ども手当は、二万六千円という書き方は、はっきりはいたしませんでした。一万三千円プラスアルファ。そのときは現物か現金か、こういう形で書きかえてあります。同時に、高速道路も、先ほど御指摘がありましたけれども、目指しますという表現に実は変えています。

 ですから、私が申し上げたいのは、そういう〇九年マニフェストを実現したい気持ちはあるけれども、一定程度、地に足をつけて修正をしてきている。同時に、この間の代表選挙でおっしゃるような戦いがあったわけです。その戦いには決着がついて、菅総理が勝ったわけですから。そういう意味では、一〇年のあの参議院選挙でのマニフェストの一定の修正というのは、ある意味で、私はこれからそれをベースに考えていかなきゃいけない、そう思っております。

石井(啓)委員 今の玄葉大臣の説明は、限りなく修正を目指す答弁だと思いますけれども、総理は、去年のマニフェストを最大限実現を目指すとおっしゃっていますね。微妙な違いがあると思いますけれども、総理、どうですか。

菅内閣総理大臣 御承知のように、一昨年の政権交代後、約一年近くといいましょうか、私が代表になるまでは、民主党は党の政調を廃止という状況でありました。私が代表になって党の政調を復活させ、玄葉さんに政調会長と現在は国家戦略担当大臣の兼任をお願いしているところであります。

 党の中での議論というのが、従来、ややそういう場がなかったこともあったわけですが、こういう形でしっかりと政調が復活しましたので、マニフェストというのは、党として、もちろん当時は野党でありましたから党しかないんですけれども、党として選挙に向かってつくった公約でありましたので、それをどう扱うのかについては、内閣だけで扱うというのは必ずしも望ましいことではないということで、玄葉政調会長に党の中での議論も並行的に、現在も含めてお願いをいたしております。

 そういう意味で、今、玄葉担当大臣の話があるいは私より踏み込んだ表現に多少聞こえたとすれば、党の議論もそういう形で進んでいるということの認識だと思います。

 ですから、本質的に、私は、二十五年に向かって〇九年マニフェストの実現を誠実に目指していく、目指していくという姿勢にはお互いに変わりはない、こう思っております。

石井(啓)委員 いつまでも、目指していく、目指していくという建前では困るんですよ。本当にどこまでやるのか、これをきちんと示すのが私は国民に対する誠実な態度だ、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、景気、経済問題に移らせていただきます。

 ちょっと質問を飛ばさせていただきまして、補正予算の関係を申し上げますけれども、総理は所信表明演説でも、今国会最大の課題は経済対策のための補正予算の成立です、こういうふうにおっしゃいましたけれども、最重要課題であるならばこの臨時国会冒頭に補正予算が出ていてもおかしくないんですが、いまだに出ておりません。これはいささか遅過ぎるんではないでしょうか。

 十月八日には補正予算のベースになる緊急総合経済対策が閣議決定されていますけれども、現実に補正予算を提出されるめどというのはいつなのか、お伺いをしたいと思います。

野田国務大臣 三段構えの経済対策を九月十日に決定をし、そして今、ステップツーに向けての準備に入りました。

 御指摘のとおり、補正予算の骨格となる経済対策については、十月八日に閣議決定をしているところでございます。この閣議決定した経済対策を、計数の整理をしたり、あるいは補正予算書として策定するには約三週間はかかりますけれども、可及的速やかに国会審議に資するように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 十月下旬ということかと思いますけれども、もう国会は半分過ぎちゃっているんですよね。

 それで、実は十月八日の緊急総合経済対策ですが、閣議決定されて、私も中身を見ましたけれども、メニューは示されているものの中身は詰まっておりません。しかも、メニューごとの予算額も示されていない。これでは、残念ながら私どもとしては評価のしようがございませんので、この補正予算に関しましては、実際に国会に提出されてから私どもの具体的な意見を申し上げる、こういうふうに思っております。

 ところで、今、野田大臣も三段構えというふうにおっしゃいまして、第一段が九千億の予備費ですね、第二段が今回の補正予算、第三段が来年度予算ということのようでございますが、私は、この三段ロケットで円高、デフレに本当にきちんと対応できるのか、いささか疑問でございまして、本来は、二十三年度予算にとどまらない、もう少し中長期のデフレ対策を示していただくのが必要であって、その第一歩として今回の補正予算を位置づけていただきたい、こんなふうに考えております。これは指摘をしておきたいと思います。

 私ども、九月二日に公明党としての緊急経済対策を示しております。これは、私どもとしては、パッケージの政策、一体のものでございますので、この中で優先順位というのはないというふうに申し上げているんですけれども、その中でも、現場からの声に応じた政策について幾つか御紹介をいたしたいんですが、一つは、介護職員処遇改善交付金の拡充でございます。

 これは、前政権の平成二十一年度一次補正に盛り込まれまして、介護職員が大変厳しい労働環境であるにもかかわらず非常に低賃金ということで人材が定着しない、こういった状況を改善するために、昨年の十月から二年半にわたって介護職員の給与を引き上げる、こういう交付金を実施しているわけでございますが、介護関係者からは、これは、介護職員だけでなく、同じ職場にいる事務職員や、また看護職員にも適用していただければ、もっと使い勝手がよくなる、こういう声が多く寄せられております。

 ぜひそういうふうな拡充をしてはどうかと思いますが、これは厚生労働大臣、いかがでしょうか。

細川国務大臣 石井委員にお答えをいたします。

 高齢化がどんどん進んでまいりまして、介護に必要な職員というものは大変需要が大きくなっております。そういうことで、介護分野における人材確保というのは、今大変重要でございます。

 そこで、委員が言われました介護職員処遇改善交付金の対象を広げたらどうかということ、これは私どもの方でも本当に真剣に検討をいたしてまいりました。

 しかし、残念ながら、財源の関係から、一つは、人材不足となっております介護職員の方に重点的に財源を投入しなければいけないんじゃないかということ。さらには、もう一つは、介護に関していろいろな職員がおられるんですけれども、その仕事の内容に比較して介護職員がちょっと低いということで、そこで、介護職員のみを対象とするということになっております。

 そういうことで、私どもとしては、介護についてはいろいろ、チームでやっておられますから、介護職員だけではなくて、その他の職員にもいろいろと配慮して、やりたいところは本当にやまやまあるんですけれども、限られた財源の中ではめり張りをつけた対応をしていかざるを得ないということを御理解いただきたいと思います。

石井(啓)委員 ちょっと今の大臣の答弁は残念でありました。

 それからもう一つ、中小企業の金融関係ですけれども、依然として中小企業をめぐる金融環境は大変厳しいものがございます。特に円高等で先行きの見通しが厳しくなっておりますから、これからますます大変な状況になる可能性があるわけでございまして、中小企業の経営者の方からは二つ要望が出ております。

 一つは、中小企業金融円滑化法、これは亀井大臣の時代に、いわゆるモラトリアム法ということでつくっていただいた法律ですけれども、これが来年三月末で適用期限を迎えますので、これを延長してほしいという要請。また、緊急保証制度、これもリーマン・ショック後の金融環境を改善させるために非常に多く利用されておりまして、三十六兆円の枠がありますけれども、既に二十二兆円、約百二十四万社が利用されておりますけれども、この緊急保証制度も来年三月末で適用期限を迎えますので、この延長を求める声がございます。

 この二点について、それぞれ金融担当大臣、経産大臣から伺います。

自見国務大臣 石井議員にお答えをさせていただきます。

 今お話がございましたように、中小企業金融円滑化法案は、昨年の秋の大変厳しい経済金融情勢のもとで、今御案内がございましたように、亀井静香前大臣が三党合意に基づいてやった法律でございますけれども、厳しい経済情勢あるいは雇用情勢の中で、中小企業の金融の円滑化を図るための臨時の措置でございまして、今お話がございましたように、中小企業の資金需要が高まる中……

中井委員長 自見さん、済みません、ちょっと短く。

自見国務大臣 はい。

 年末、年度末、二回ずつ含めることができるように、来年三月の時限立法でございますから。

 いずれにしても、同法の期限を延長するかどうかにつきましては、今後の経済情勢あるいは中小企業をめぐる資金繰り等々を考えながら、総合的に勘案して、石井代議士の御要望でもございますから、延長を視野に入れて検討してまいりたいと思っております。

大畠国務大臣 ただいま石井委員から景気対応緊急保証の一年延長という御質問をいただきました。

 この制度は、リーマン・ショック直後の混乱期を初め、中小企業金融の円滑化に大きな貢献をしたことは事実であります。しかし同時に、金融機関がリスクを負わないということから弊害もあるということも指摘されておりまして、基本的に単純延長は行わないということにしたいと思いますが、一方、現在の円高等で、中小企業が年末の資金繰り等で大変困るという情勢もございますので、中小企業者のニーズを踏まえつつ、重点化を図る。

 どのようにするかでありますけれども、基本的に、小規模事業者に配慮した小口零細企業保証の推進、それから借りかえニーズの増加を踏まえた借りかえ保証の拡充、推進、さらに日本公庫等による直接貸し付けの充実など、総額十五兆円規模の資金繰り支援策を盛り込んだということでございます。

 そういうことで、年末年始は中小企業の皆さんに御心配をいただくことがないように対処してまいりたいと考えております。

 以上です。

石井(啓)委員 年末年始はもちろんでありますけれども、それ以降も中小企業が金融に困らないようにぜひお願いをいたしたいと思います。

 時間が参りましたので、同僚議員にかわります。

中井委員長 この際、遠藤乙彦君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 私は、石井委員に続きまして、外交問題を中心に、特に重要な外交問題における政治主導のあり方あるいは危機管理のあり方といった角度から質問をしていきたいと思っております。

 かつてケネディ大統領は、内政の失敗は政権が交代すれば済むが、外交の失敗は国家の滅亡すらあり得る、こういった言葉を残しました。大変これは重い言葉でありまして、ケネディ大統領は、そういった思いを胸に、特に重要な外交問題には全身全霊を投入して対処したというふうに理解をしております。

 例えば、キューバ危機の例があります。これは一九六二年十月に発生した事件でありますが、冷戦たけなわの時代、当時、ソ連がアメリカののど元にあるキューバにミサイル基地を建設し、ミサイルを運び込もうとした。それが、情報が伝わってケネディ大統領がすぐに対処をしたわけでありまして、大変これは水際立った対処ぶりであったと思っております。

 特に、いろいろな意見があった中で、海上封鎖、そしてまた臨検といったことを中心に、ソ連の出方を見ながら対処し、ソ連の船がやがて引き返していった。これによって冷戦は大きな分水嶺を迎えたわけでありまして、その後、平和共存の流れへ、そしてまたデタント、緊張緩和、そして最終的にはソ連の崩壊へつながったわけであり、国際政治を学ぶ者にとっては大変重要な事件であったと思っておりますし、また、今振り返れば、ある意味では政治主導の模範、あるいはまた危機管理のお手本といったふうに私は受けとめております。

 それに引きかえ、我が日本国の民主党政権の外交、安全保障問題への対応は余りにも拙劣と言わざるを得ない。単に拙劣であるのみならず国益を大きく損なっているということ自体を、ぜひともこれは痛切に反省していただきたいと思っております。

 特に、最近、民主党政権交代後、いろいろな国際会議あるいはシンポジウム等で出る中で、日本について衰退途上国とか後退国家といったような言葉で日本に言及する有識者もふえてきております。これが実態でありまして、ぜひともこういったことを痛切に受けとめていただきたいと思っております。

 そこで、まず総理にお伺いいたしますが、民主党さんは政治主導ということを大変よく口にされます、あるいは危機管理の重要性を訴えられますけれども、特に政治主導とはどういうことなのか。なぜ今、政治主導を強化していかなければならないのかといったことにつきまして、総理の見解を簡潔にお答えください。

菅内閣総理大臣 今ケネディ大統領のキューバ危機のことを引かれました。私も大変評価をする一こまでありますが、同じケネディ大統領が、その後、ベトナム戦争に深入りをいたします。これは、結果としては、私は、必ずしも的確な判断ではなかったということも客観的には言えるのではないかと思っております。

 その中で、今、政治主導ということについての考え方をお問いになりました。

 私の認識で言えば、政治主導のいわば対比する言葉は官僚主導だと思っております。そういう意味で、従来の日本の政治、特に内閣のいろいろな決定は、役所が上げてきたものを大臣は最終的に判断はしておりますけれども、どちらかといえば、大臣が役所の中で一人だけぽつんといて、そして、閣議も事務次官会議で上がってきたものを決めていく。特に内閣は官僚主導の要素が極めて色濃かった。それに、逆に党の方で、自民党の場合だと政調会とか、御党の場合も似たものがあると思いますが、そういう形で政治主導というのか、政党なり政治家の意見が反映する仕組みが二重構造になっていた、二元的になっていたというふうに認識をいたしております。

 私たちの政権交代後の内閣では、そういう二元的なことではなくて、内閣についても、政務三役を中心に、政治家が従来よりはより責任を持って判断をする。同時に、私の内閣になってからは、党も内閣とより一体化して、あわせて政治主導で物事を判断していく。もちろん、官僚組織は経験やいろいろな専門知識があるわけでありますから、そこからの情報やそこからの提言はしっかり受けとめながら、しかし、最終的な判断は政治家あるいは政治家の政務三役等が判断していく、それが政治主導のあり方だろう、このように認識をいたしております。

遠藤(乙)委員 総理の見解はわかりましたが、民主党政権、特に鳩山内閣において、まさに政治主導ということで普天間移設問題が処理された。惨たんたる結果となり、最悪の結果に終わっております。

 以前の日米合意では、パッケージになっていて、最も危険な基地である普天間を辺野古に移設する、これによって危険を除去する、そしてまた在沖縄の海兵隊八千名及び家族がグアムに移転する、そしてまた嘉手納以南の基地が返還される、この三つがパッケージとなっており、二〇一四年までにこれが実現されるということになっておりました。これが実現されれば、沖縄の負担軽減については大きな前進が見られたはずであります。

 それが、鳩山総理のいわゆる政治主導によってすべてだめになり、それに加えて、日米関係に、信頼関係に大きなひびを入れた。トラスト・ミーと言って、裏切った。そしてまた抑止力、学べば学ぶほど抑止力の重要性がわかった、要するに、それまで抑止力の意味がわかっていなかったということを言っているわけですね。

 無知無能、無為無策、無理、無駄、むら、これが民主党のやってきた政治主導の実態ではないかと私は思っておりまして、今までのパッケージが壊れただけではなくて、日米関係の信頼にひびを入れ、沖縄の人々の心をもてあそび、大きな傷跡を与えた。そしてさらに、さまざまな周辺国から足元を見られるような事態になった。惨たんたる事態になったわけでありまして、なぜ民主党の言う政治主導がこういう最悪の結果になったか、総理はどう考えますか。

菅内閣総理大臣 私は、鳩山政権を引き継ぐ中で、特にこの普天間の問題は最も重要な課題と受けとめて、私自身が直接、できるだけあらゆることを把握しよう、そういう立場で今日まで取り組んでまいりました。

 さきの内閣のことを云々することは差し控えたいと思いますが、一つはやはり、それぞれ、外務省そして防衛庁と官邸の一つのチームプレーというものが、場合によれば、それぞれがやや調整なくいろいろ発信したことが、より若干の混乱を招いたのかなと。

 ですから、私はあらゆることを、外務大臣、防衛大臣、あるいは沖縄担当大臣、そしてその部下である事務次官以下と、官邸は私と官房長官、副長官、事務の副長官も含めて、必ず大きい意味での三者、あるいは沖縄担当を含めれば四者が、きちっと問題認識を一致する形で物事を現在も進めるように努力をいたしております。

 そういう中で、アメリカとの首脳会談も、電話を含めれば三度、直接お会いしたのが二度でありますが、こういった問題も含めて、改めて、私とオバマ大統領との間での信頼関係、あるいは外務大臣と国務大臣との信頼関係等を通して、あるいは防衛大臣等の信頼関係を通して、日米間の信頼関係は今日しっかりしたものになっている、私はこう認識をいたしております。

遠藤(乙)委員 この普天間問題、猛省して、ぜひ真摯に取り組んでいただきたい。何よりも、沖縄との対話、沖縄の人々の心をどう知っていくか、これが一番のポイントだと思っております。

 その上でお聞きしたいのは、沖縄について、この移設問題、どういう時間的な見通しを持って総理は考えておられるのか。いついつまでにと明確な答えは必要ありませんけれども、大体どういうスケジュール感でこの普天間移設問題を解決しようとされているのか、そのことについて伺います。

菅内閣総理大臣 まず、五月の二十八日の合意を踏まえてという形で私の内閣がスタートをいたしました。この間、御承知のように、八月の実務者の考え、あるいは十一月のオバマ大統領の訪日、さらには、まだ日程は決まっておりませんが、2プラス2、さらに沖縄の知事選等々があります。

 私は、この間について、原則、つまり五月二十八日の合意を踏まえるという原則を踏まえつつ、まず沖縄の皆さんに実感してもらえるような基地負担の軽減が他の分野で実現できないだろうかと。

 先ほど、嘉手納以南のことも遠藤さんからもお話がありました。北部訓練場の移設というか返還も決まっていながら、十年間進んでおりません。また、グアムについては、予定どおりいけば半分ぐらいの海兵隊が移ることが日米で合意されているわけですが、これが予定どおり進むことが沖縄の皆さんの負担軽減につながると私は思っておりますが、そういうものを順調に進めるにはどうしたらいいか。そういう負担軽減が沖縄の皆さんに実感してもらえるような方向の努力をまずやっていこうということで、今まだ十分な成果までは上がっておりませんが、順次そういう考え方で物を進めております。

 そういう中で、普天間の移転という五月の合意については、やはり沖縄の地元の皆さんの合意がないままにそれを強行することはできませんので、今、沖縄政策会議というものも再スタートをさせておりますし、そういういろいろな形で負担の軽減と沖縄の皆さんとの理解というものを進める中で、もう少しこの状況が打開されることを期待し、その中から移転の問題をより具体的に話し合うことができればいいなと。現時点では、まだその段階までは残念ながら行っておりません。

遠藤(乙)委員 時間的な見通しは立っていないということがわかりました。

 それからもう一つ。差し迫った課題は、やはり普天間の危険の除去ということだと思います。やはりこの普天間、すぐには移設は無理だ、これはもう民主党の失政の結果、そうなってしまったわけでありますが、差し迫った課題は、やはり世界一危険な基地と言われる普天間、その周辺の住民の危険性をどう除去していくか、最大のテーマだと思っています。

 いつか沖縄国際大学に墜落事故がありましたが、住民の方のそういった死傷がなかったことは奇跡的な出来事だと思っておりまして、今後、もしこういった何かヘリコプターの墜落事故があれば大変な惨事になることは間違いないわけでありまして、最大の力点を置いて、最優先の課題としてこの普天間の危険除去について取り組んでいただきたい。具体的にどのような努力をされるのか、米軍との間でどういう話をしていくのか、これにつきまして聞きたいと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 普天間の危険性を除去するということは前政権から最大の課題でありまして、ちょっと表現が適切かどうかわかりませんが、最大の事象はこの普天間の施設を他に移す、こういうことであります。

 それに先立ちまして、あそこの、ちょっと表現がよくわかりませんが、鉄塔を外すとかそういうようなことの積み重ねはしてきておりますけれども、そのことによって沖縄の皆さんの安心感が、除去されたということではないという今現状でありますので、二〇一四年を目指して真剣に検討をしていく、こういうことであります。

遠藤(乙)委員 いずれにしても、猛省を踏まえて最大の努力をしていただきたい、強く要請したいと思っております。

 それから、外交問題そのものではありませんが、危機管理、これも非常に全体に関連しますのでお聞きします。お聞きしますといいますか、意見を述べたいと思うんですが、先般の口蹄疫の問題がありました。これはやはり民主党政権の大きな失敗だったと私は思っております。

 二〇〇〇年に口蹄疫が発生しました。これは宮崎県、北海道で発生をしましたが、大変初動がうまくいって、初動段階でこれは制止することができた。全体で七百四十頭の殺処分で終わったわけであります。ところが、今回、二〇一〇年の宮崎県で発生をした口蹄疫は、あっという間に広がり、初動で失敗したことにより、最終的には二十八万八千三百頭の殺処分を行ったわけであります。

 ぜひ私は申し上げたいんですが、実は、もう三月末ごろから口蹄疫の発生は伝えられておりました。四月の末、連休前のときになって、民主党政権、鳩山政権の閣僚の出張案件が、私は議運の理事会の理事をやっておりますので、出てきた。その中で農水大臣の出張も入っておりました。私はそれを見て、こんな時期に出張していいのかということを問題提起しまして、もう口蹄疫が発生している、陣頭指揮をしてやるべきではないかという趣旨で、大丈夫かということで申し上げたわけであります。

 官邸を代表して出てこられた当時の官房副長官は、大丈夫です、万全の体制をとっております、御安心くださいと大見えを切ってこの出張案件を押し切ったんですね。ところが、連休が明けてみたら、燎原のごとく広がって、大変な悲惨な実態になってしまいました。

 これは一事が万事ということだと思いますけれども、やはり民主党政権にこういった口蹄疫という非常に重大な問題について危機意識が薄かった、管理ができなかった、管理危機ではないか、管理危機内閣だと私は当時思ったわけでありまして、案の定、連休明けに大変な悲惨な事態になりまして、やっと八月に入って終息をしましたが、まさにこれも民主党政権の危機管理意識の薄さ、強く私はこれは指摘したいと思っております。

 今回の尖閣の問題に含めましても、こういった事態があらわれているわけですね。まさに代表選挙、七月十一日に参議院選が終わっているわけです。もっと早く代表選挙をやって政治空白をなくす、当然のことです。それを、党内の事情にかまけて九月十四日まで延ばした。ここにまた民主党政権の危機管理意識の薄さというものを私は読み取っているわけであります。

 まさに、今回、尖閣問題が発生したのは九月の七日でございます。二十四日に釈放になりましたけれども、大変なこれも国益に大きな打撃を与えました。日本は圧力を加えれば屈する国であるというイメージを全世界に発信してしまった。例えば、シンガポール・ストレーツ・タイムズは、中国の強い圧力で釈放という大見出しを掲げた。また、韓国の聯合通信は、日本の降伏宣言で幕といった、大変これも厳しい表題を掲げております。

 まさに、日本はずっと、尖閣の問題は、我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないと言い切ってきたわけでありますけれども、今回の事態を契機に、あたかも領土問題が存在するかのごとき印象を世界じゅうに振りまいてしまった。これは大変に国益上大きなマイナスであります。

 そういった意味で、この尖閣の問題を検証しながら質問をしていきたいと思っておりますが、特に先ほどの、危機管理の問題を申し上げましたが、初動の失敗、これが大変大きな問題であると思っております。

 特に、尖閣問題は折々の意思決定の節目がありました。七日に事件が発生し、八日に逮捕を決め、そしてまた勾留延長決定が十九日、船長の釈放が二十四日ということでございますが、重要な節目があるわけですが、私は、特に事案発生から逮捕に至る時間、これが最も重要な決断の誤りだったというふうに見ております。

 特に七日の午後、官房長官のところで、官邸で協議をやった。外務省の幹部あるいは海上保安庁の幹部が集まって会議をやった。ここでまさに、逮捕し、粛々と国内法を適用していく、その方針が出て、それを了としたわけでありますけれども、まさにこれが最大の初動の失敗であったというふうに私は見ているわけであります。

 官房長官にお聞きしますが、七日の午後の会議において、官房長官を中心とした会議において、どういう見通しをしていたのか。特に、中国側の出方、どう見ているのか、シミュレーションをどうしていたのか。なぜ逮捕、送検という判断に至ったのか。その辺について簡単に説明をいただきたいと思います。

仙谷国務大臣 口蹄疫問題から危機管理の問題に問題提起をされておりますので、お答えをいたしたいと存じます。

 まず、口蹄疫でございますが、少なくとも菅内閣が成立した、六月の八日だったと思いますが、それ以降の動きは、戦力の集中的投入といいましょうか、逐次投入を絶対やってはならない、一挙にここは埋却に、本格的に、どんなことがあっても取り組むべしというのが総理の指示でございまして、現に六月二十日までにはその計画ができ上がって、つまり二週間たたずにほぼ口蹄疫ウイルスの広がりをなくすることができたというふうに事実としてなっております。

 私は、そのことについて、口蹄疫の危機管理というのは、それは集中的な投入、あるいは各省庁間や宮崎県との調整というものに手間取っておりましたけれども、少なくとも六月の八日以降にはこれが極めてスピーディーに運んだということが一つであります。

 それから、先ほど、今度の尖閣諸島周辺の問題をめぐって、非常に否定的な新聞記事を援用されてお話をされたわけでありますが、これは遠藤さん、ちょっとフェアではないと思います。つまり、私は、御党の山口代表があの船長を釈放したときに談話を出されて、大変これは政治的に、あるいはこの段階で釈放したことは全体としていいのではないかという肯定的な談話を出されたことを大変感謝しておりますし、公明党という党は、全体的に、部分を取り上げて足を引っ張るということじゃなくて、全体的な考え方ができる政党なんだなと改めて評価をしたわけであります。

 そこで、現時点での……(発言する者あり)盗人というのはちょっとひどいんじゃないですか。現時点での、韓国にせよ、その他アジアの各紙にせよ、あるいはヨーロッパ各紙の評価がどうなっているかということも御考慮をいただきたいと思います。

 今、日本と中国がこの問題でとった態度について、どういう外交的あるいは国際政治的評価が行われているか。これを見れば、単に大きい声でほえ立てたり、単に強い態度で押し出していくというふうなことが今の国際政治の上で評価を受けないことは明らかである。私は、そういう総体がすべて危機管理あるいはダメージコントロールとしては必要なんだなと改めて思っているところであります。

 そこで、先ほど、七日のお話でございますが、九月七日十時五十分ころ、巡視船「よなくに」と中国漁船の衝突について、海上保安庁から官房長官の秘書官に連絡がございました。直ちに秘書官から自分に連絡がございました。事件発生から、九月七日夕方、二回にわたり関係省庁から説明を受けました。七日の十六時四十分ごろ、外務省、海上保安庁より報告をまずは受けました。そして、これは時間がかかるということで、それじゃもう一度二十一時ごろに集まろうということで、官邸に外務省、法務省、海上保安庁より報告をいただいたということでございます。

遠藤(乙)委員 聞いたことにほとんど答えていないわけなんですが、時間がないので、少しはしょって議論を進めていきたいと思っております。

 二〇〇四年三月二十四日に、やはり尖閣諸島への活動家の不法侵入という事件が発生しております。三月二十四日、小泉内閣当時、中国の民間活動家七人が尖閣諸島に上陸をして、沖縄県警がこれを不法入国容疑で逮捕したけれども、二日後に処分保留で強制送還をしております。このとき、小泉総理が記者会見で、不法侵入に対しては法に基づいて適切に処理し、同時にこの問題が日中関係に悪影響を与えないよう大局的に判断しなければならない、そういう基本方針に沿うよう関係当局に指示したという記者会見を行っております。まさにここには、きちっと国家の意思を表明しなければならないという側面と、それから日中関係に悪影響を与えない、二つの視点が明確に込められた指示を与えたということでございます。

 この七日の午後の会議の場では、いろいろ関係省庁が集まっていると思いますが、当然、政治主導という視点からは、官房長官が与えるべき指示は、まず、この尖閣が我が国固有の領土であることについて国家意思を明確に表明すべきだということと、もう一つは、日中関係を悪化させないように配慮すべき、この二点を指示すべきなわけですが、あなたはそういう指示をしましたか。

仙谷国務大臣 先ほどの話はあれですか、小泉内閣時代で、上陸をした者を一たん検挙はしたけれども釈放したと。(遠藤(乙)委員「二日後に釈放した。強制退去にした」と呼ぶ)二日後に。

 公明党さんのお立場は、今回の場合も一たん逮捕をして釈放すべきであった、こういうお立場でお話しされているんですか。

遠藤(乙)委員 まあ、それは反対質問で、これは私の個人的意見として申し上げますが、今回はやはり、前回の尖閣、活動家の不法上陸、これに対する小泉内閣の対処は非常に適切であったというふうに私は思っております。たまたま難民認定法という法律があったということもこれは幸いしたと思いますけれども、きちっと政治主導で国家意思を明確に示す、尖閣が我が国固有の領土であることを示す、そのために逮捕はする、しかし、日中関係に悪影響を与えないように難民認定法で処理をして、二日後に排除しているわけですね。したがって、これは非常に適切な処理であったと思っておりまして、七日の協議をした日に、この問題は従来の参考例として議論しましたか。

柳田国務大臣 平成十六年の事案は、入管法違反の容疑のみでございます。詳しく申し上げますと、尖閣諸島に上陸した者に入管法違反以外の罪の容疑はなかった。ということになりますと、入管法の規定、これによりましたらば、逮捕した警察から直接入管当局に身柄が引き渡され、送還したものである。だから、難民どうのこうのではなくて、入管法の特例によって強制送還をしたということでございまして、今回の分は公務執行妨害という容疑で逮捕しておりますので、この入管法の規定には合わないということでございます。

遠藤(乙)委員 事案が違うことは当然承知の上で私は言っているので、大事なことは、国家意思をきちっと表明することと、もう一つ、日中関係を悪化させないという、この二つを、政治主導、当時、官房長官としては当然指示すべきなわけです。それを踏まえて事務方が検討すれば、いろいろ知恵も出るわけですよ。それを、全くそういう指示をしなくて、単に検察に丸投げをした、それがこういったことになったわけですね。

 それからもう一つ、あの時点で議論を主導したと思われるのは前原大臣だと思いますけれども、朝日新聞によりますと、おれが逮捕を決めた、官邸はひよっていたけれども、おれが逮捕を決めた、この処置は間違えていなかったというふうにいわば報道されております。会議に出ているか出ていないかは別として、前原大臣がそういった決断に影響力を与えたというふうに報道されておりますけれども、どういう判断でこういったことを考えられたのか、お聞かせ願いたい。

前原国務大臣 先ほどから質問を聞いていますと、海外のメディアの報道も日本に対して厳しいものばかりを取り上げられて、そして、中国に対しても同様の厳しいメディアの報道は海外にいっぱいあります。そういうものを両方取り上げてやられるのが日本の国会議員として真っ当な意見ではないですか。

 それと同時に、参議院の本会議で私はそれについて答弁いたしましたし、また、閉中審査の予算委員会でも答弁いたしましたけれども、記事は事実ではありません。それを前提に質問をされると、答弁できません。

仙谷国務大臣 遠藤議員のおっしゃることは大変アンビバレントなことをおっしゃっておるわけで、つまり、国家意思を示すために、領海侵犯をした上で違法操業をしている漁船を、これを国家意思の発露として、ちゃんと接舷をし、立入検査をしようとした。そのことを妨害するように船に衝突してきたという公務執行妨害事件ですから、当然、二隻の巡視船で並走というか追いかけて、停船を命じ、接舷をし、立入検査をし、そして逮捕の手続に入ったということでありますから、これは当然、国家意思をしっかりと行使した、こういうことであります。

遠藤(乙)委員 私が聞いているのは、官房長官が政治主導できちっと国家意思を示すとともに、日中関係が悪化をしないように配慮すべし、ちゃんとこういう指示をしていますかということを聞いたんです。

仙谷国務大臣 日中の戦略的な互恵関係に配慮しつつも、この段階では、逮捕令状の交付請求に入るということでございましたので、そうですかといいましょうか、それは、官邸としてもそれを了承するというか、了とするという意思を伝えてあります。

遠藤(乙)委員 結局、検察任せにしたんだろうということだと思います。これは大変重要な、まずは逮捕についてはそうだし、その後、検察に送検したわけでありまして、やはりこの時点で、逮捕することは私は当然だと思いますけれども、送検する以前に、超法規的措置でこれは国外退去にすることもできたし、また、検察に送検してからも、まさに指揮権でこれは対応することもできたわけでありまして、そういった総合判断をするのが政治だろう。それを、検察の手にすべてゆだねてしまったところに、今回の問題が複雑になった。特に中国側が十九日以後、激烈な反発をしてきたわけで、なぜそうなるかということの読みも十分なくて、コミュニケーションも十分でなくて、日本側の一方的な思いでやったということに今回のトラブルがあったというふうに私は思っております。

 また、広報については、要するに、海外メディアはそう言っているという例を紹介したわけであって、そういうふうに国際にとられていること自体が非常に国益にマイナスだと言っているだけであって、一つの例を言ったわけでありまして、必ずしも全部を網羅しているわけではありませんけれども、そういうイメージ上のマイナスがあったということを申し上げているわけであります。

 ちょっと時間がありませんので、もう少し進めたいと思っておりますが、今回の問題で、要するに、日中間の十分な対話のパイプがなかったこと、また、初動でやはり十分な政治主導がなかったこと、こういったことが今回非常に大きな問題に発展してしまって、せっかく日中関係が発展してきたのですが、大きくここで傷つけてしまったということが問題だと思っております。

 そこで、今後の問題、課題ということで、逆に、時間がありませんのでお聞きしたいと思っておりますけれども、一つ指摘したいのは、今回、丹羽大使が現地に行っておられます。大変立派な方であり大変すぐれた経済人でありますけれども、他方、民主党が経済人を民間大使に任命したときに岡田大臣は、これから日中間は経済問題が大事だ、したがって、経済分野で活躍していただくために経済人を、民間人を大使に任命したと言われております。

 しかし、日中関係は今まで、全体的に発展し経済も発展したけれども、常に政治問題が発生してブレーキがかかって、政冷経熱と言われ、最終的には経済も冷え込んでしまって大きなブレーキになってきたわけで、経済の方は民間に任しておけばどんどん発展するわけですけれども、むしろ、政治問題が発生しないように、発生しても一定の範囲でコントロールできるように処理することに最も政治が心を用いなければならないわけであります。

 そういった意味では、民間人大使をこういった問題の矢面に立たせること自体がいかがなものかということも思うわけでありまして、そもそも、民主党がそういった経済人の方を、非常にこれから問題が重大である日中関係に任命されたこと自体に問題があったのではないかと私は思っております。

 そういった意味では、本来ならば当時の大臣である岡田大臣に聞きたいんですが、前原大臣、その任命責任というか任命の方針、それはいかがなものかということについて、どうお考えでしょうか。

前原国務大臣 先ほどから伺っておりますと、二〇〇四年の段階では、小泉政権は賢明な判断をして、日中関係を考えた、こういうことをおっしゃっていますけれども、今まさに議員がおっしゃったように、あのときは政冷経熱だったんですよ。つまりは、いい悪いじゃないですよ、事実問題として申し上げているのは、靖国問題であのときは日中関係がかなり冷え込んでいた。そのことも、この入管法違反の即時国外退去というような判断にあったんじゃないですか。

 だから、そこはもうちょっと公平に、先ほどから申し上げているように、一面的なことだけではなくて、あのときは、まさに今議員がおっしゃったように政冷経熱だったんですよ。だから、そういう状況の中での判断もあったんだということはおっしゃらないと、全く公平じゃないですよ。

 それと同時に、丹羽大使は、今委員がおっしゃったように立派な方です。この方が大使だったから今回の問題がこうなったということではありません。これは、大使としては非常に今もしっかりやっていただいておりますし、私は今このお立場をいただいておりますので毎日ほど公文を見ておりますし、本当に一生懸命にやっていただいております。そういう意味では、公館もバックアップをしている、本省もバックアップをしている、判断には全く間違いはなかったと思っております。

遠藤(乙)委員 今後の問題をも考えて、ではずっと民間人をやっていかれるかどうかということも含めて今お聞きしたかったわけでありまして、そういった問題はあるということはぜひ、民間人の方をこういう領土にかかわるような話について矢面に立たせることはやはり酷ではないかという感じを私は持っておる。まあ、これはいいとして。

 それから、次の問題に行きたいと思っていますが、もう一つ、フジタの問題がちょうどこの案件の中で浮上をしました。先週、高橋さんが解放された、これは非常によかったことと思っておりますが、国内の報道では、あたかも中国がこれを不法に拘束したような報道があって、これは私は事実とは違うだろうと思っておる。私自身の調査でも、ちょっとこれは違うんだろう。やはりこれ自体、偶発的な問題であって、それが結果的に利用された側面はあるかもしれないけれども、これはやはりもう一度きちっと検証していくことが大事だと思っております。

 特に、那覇地検の釈放のときの理由の一つに、我が国国民の安否ということが出てきます。このフジタの問題が非常に重要な今回の背景にあったことは事実なわけでありまして、ただ、このフジタの職員は、いわゆる遺棄化学兵器の事業にいわば関与しようということで中国に出張しておった。しかし、いわゆる市街地を歩いていてたまたま撮影したのがここだったということじゃなくて、むしろ田舎の一本道を入っていって、軍事施設のところでビデオ撮影をしたわけで、これは本来はちょっと非常に不注意な行動だったわけだと思います。

 しかし、問題点は、そういった日本の民間企業が非常に機微な事業に関与するに際しても、むしろこの遺棄化学兵器処理事業を所管する内閣府が十分な指導監督をそもそも怠っているんじゃないか、余りにも丸投げし過ぎて、こういった機微な問題があることに対して十分な指導監督をしていなかったんじゃないか、そういった管理責任、監督責任があると私は思っておりまして、この点について、海江田大臣、答弁をお願いします。

海江田国務大臣 遺棄化学兵器の処理につきましては私の担当でございますので、お答えを申し上げます。

 遠藤先生はもうつとに御案内だろうと思いますけれども、遺棄化学兵器には、まず発掘そして回収、これは自衛隊、現役の自衛隊あるいは自衛隊のOBの方々、専門知識を持った方々がこれに当たります。

 そして、そこから先がいよいよ処理と廃棄でございます。この処理と廃棄の部分につきましては設備も必要でございます。そして、これを民間の企業、フジタもその中の一つの企業でございますが、当たることがございます。

 私どもとフジタとの関係は、平成二十一年十二月からことしの八月まで、そうした設備の移動そして据えつけ、組み立てに関する契約を結んでおりました。そして、契約を結ぶに際しましては、これは当然のことでありますが、細かなそういう注意事項等もしっかりと契約の中に書き込んでございます。

 ちなみに、昨日、実は自衛隊の方々が、およそ十名でございますが、制服の方々が、いよいよ東北に行きまして、そして、先ほどお話をした発掘回収作業をやるということで、私のところに表敬訪問に来ましたので、私の方から現在の中国との状況等について説明をしたところでございます。

 ですから、今はもう既にこのフジタの社員との間に契約が切れておりますので、その契約の切れた社員が石家荘のところに行っていろいろ調べをしていたようでございますが、これは私どもの責任のあるところではないと思っております。

 以上でございます。

遠藤(乙)委員 いずれにしましても、今回の問題は非常に、誤ったナショナリズムを刺激する可能性がありますので、ぜひ事実をよく調査する、フジタの職員からもよく事情を聴取し、中国からもよく意見を聴取し、現場検証もして、ぜひ検証して、今後こういった偶発的な問題が、たまたまこういった問題に絡んでしまったわけでありますけれども、こういったことがないようにぜひ十分な注意を払っていただきたい、このことを希望したいと思っております。

 いずれにしましても、今、日中関係は戦略的互恵関係ということで大きく発展をし、日中が協力し合うことは、日中双方のみならず、アジア、世界全体にとっても重要なことであります。もしこれが今回のような事件で非常にこじれてしまいますと、日本も深く傷つく、中国も深く傷つくことは明らかでありまして、戦略的互損関係、お互いが損をする関係になってしまいまして、これは日中双方また周辺国にとっても非常に大きな不利益でして、ぜひともそういうことのないように、今回の問題の教訓を踏まえ、再発防止策も含めて、しっかりと取り組んでいただきたい、このことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 以上です。

中井委員長 答弁はいいですか。

遠藤(乙)委員 では、最後に総理の。

菅内閣総理大臣 遠藤議員からの最後の御指摘は全くそのとおりだと思っております。

 いろいろな経緯があり、まだその経緯が完全に落ちついたわけではありませんが、ASEMで温家宝総理と二十五分間会話を交わすことによって、ハイレベルの政治家の交流及び民間交流が再開という形になりました。そういう形で、全体としては落ちつく方向に行っていることは、今、遠藤委員からもあったことで、互損関係ではなくて戦略的互恵関係に戻った、私の表現で言えば、六月の、私が就任した後に主席とお会いをしたときの時点に、原点に戻れた、こう思っておりまして、御指摘のことはこれからも肝に銘じて対応してまいりたい、このように思っております。

遠藤(乙)委員 以上で質問を終わります。

中井委員長 これにて石井君、遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 総理は、一に雇用、二に雇用、三に雇用ということでさきの民主党代表選挙でも強調されて、今国会の所信表明演説でも、経済の歯車を回すのは雇用です、政府が先頭に立って雇用をふやしますと言われてこられました。その雇用問題で現在最も深刻だと言っていいのが、大学、高等学校などの新規卒業者、新卒者の就職難の問題だと思います。

 この八月に開かれた合同会社説明会に参加した首都圏のある四年生の女子学生は、まさかこんな時期まで就職活動をしているとは思わなかった、卒業後、派遣の仕事かアルバイトをしながら就職先を探すしかないと、まさに疲れ切った表情で述べていました。この女性の学生は、百社以上も応募したんですけれども、内定どころか面接に進めたのもわずか五社だけという状態だったと。また、高校生の場合、就職を希望しても、一度も就職試験を受けられずに卒業せざるを得ない高校生が三分の一を占めるという地方もございます。まさに超氷河期と言われる深刻な事態が進んでいる。

 そこで、まず、総理、学校を卒業した若者の社会人としての第一歩が失業者という社会でいいのか、この基本認識について、今の就職難についての見解を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 笠井委員の方からも御紹介いただきましたけれども、私は、雇用というのは経済の立て直しの点でも大変重要であるし、今まさに笠井委員言われたように、特に新卒者の場合に学校を出て就職が見つからないということは、社会の中で自分の居場所がない、あるいは、自分は場合によってはこの社会に必要でない人間なのかなというような、心の中にそういう深い傷を受ける可能性もありまして、そういう点では、何としても新卒者の高卒、大卒の皆さんに就職が見つかるようにいろいろな形で全力を挙げなければならない、このように認識をいたしております。

笠井委員 ことしの春、就職も進学もせずに進路未定となった大学生は、実に全国で八万七千人にも上ります。高校生の就職率も過去最低でありました。今、来年に向けても事態は日々深刻になっております。

 毎日コミュニケーションズのことし八月の調査によりますと、来年、二〇一一年春の大学、大学院卒業予定者の内々定の率、これは一番新しいので七月現在になっていますが、これを見ますと、全体で五四・五%ということで、男女いずれも半数前後にすぎず、とりわけ女子学生には厳しい状況であります。

 この間、私自身、東京や地方の国立、私立の大学生、教員の皆さんや大学当局の担当者、それから大学関係者からも直接現場の切実な声を伺ってまいりました。

 二つ問題があると思います。一つは、新卒者の採用数の確保の問題。もう一つは、学生の就職活動が過熱化して長期化している問題であります。

 そういう中で、日本学術会議は、ことし七月二十二日に、深刻な大学生の就職難が大学教育にも影響を与えているということで、ここに持ってまいりましたが、こういう提言をまとめまして、ことし八月十七日に文部科学省に提出いたしました。

 先日、私は、この提言にかかわった検討委員会の高祖敏明副委員長らに直接話を伺いました。こう言われていました。マスコミなどからは卒業後三年新卒扱いということばかり注目されているけれども、大学や就職活動のあり方全般を見直す、そういうことが必要だ、話し合いの場が必要だということを強調されていました。大学関係者からも、こういうふうに切実な声が上がっております。

 去る十月七日の衆議院本会議の代表質問で、我が党の志位委員長は、過熱した就職活動を是正するルールをつくるために、大学、経済界、政府の三者による協議を直ちに開始する、そのことを提案いたしました。ところが、総理からはこの点についての明確な御答弁はなかったんですけれども、そこで、改めて総理に伺います。

 総理が雇用問題に真剣に取り組んで、特に新卒者の就職に力を入れるとおっしゃるなら、今すぐにでも政府自身が音頭をとってテーブルをつくって、大学、経済界、政府、三者によるこの問題での協議を始めるべきではないかと思うんですが、総理、いかがでしょうか。

高木国務大臣 笠井委員にお答えをいたします。

 お話にありましたように、ことしの春に就職できなかった大学生、高校生は八万人を超えるという調査もございます。特にその中で、就職活動あるいは採用活動が長期化をしておる、複雑化をしておる、そしてまた早期化しておる、そういうことが言われております。この中で、学生の負担を軽減しなきゃならぬ、私もそのような認識でございます。そういう立場から、先日、経済団体にも私は足を運びました。今週末には、アポイントの関係で中小企業団体にも出てまいります。

 私としては、もちろん、経済を強くすること、それから大学の就業力を上げること、これは大事なことです。その上で、できるだけ採用枠を拡大していただく。そして、卒業後三年以内の方々は新卒扱いにしていただく。そして、今は三年になると、もうそろそろ就職活動、そういうことで行動しなきゃならない、そういう実態にあるわけでありますので、これをとにかく正常化させてほしい、是正をしてほしい、こういう要望をしてまいりました。

 経済界にしても、これについては賛意を示していただきました。特に最近、商社業界におきましては、二〇一三年度入社の新卒者、これは現在の二年生に当たりますけれども、対象の採用スケジュールをおくらせるための具体的な検討を始める、こういう経済界からの動きもございます。私どもは、このことについて、しっかりこれからも取り組んでまいりたいと思っています。

 なお、御指摘の経済界関係者あるいは大学関係者、そして私ども関係省庁との一つのテーブル、これについては、検討の場としてできるだけ早く開会をできれば、このように思っておるところです。

中井委員長 細川厚労大臣。(笠井委員「いやいや、もういいです、同じですから。もう答えていますから」と呼ぶ)就職のことですから。(笠井委員「今もう答えていただいたからいいです、厚労大臣。後で伺いますから」と呼ぶ)ちょっと待ってください。委員長はもう指名しましたから、座ってください。

 細川厚労大臣。

細川国務大臣 笠井委員に御説明いたします。済みません。(笠井委員「もういいです、それで」と呼ぶ)ちょっとお聞きください。(笠井委員「じゃ、質問に答えてください、端的に。場のことだけ」と呼ぶ)

 大学の皆さんとも相談をしてやらなければいけないということで、私ども厚生労働省としては、各都道府県に新卒者就職応援本部というのを設置いたしました。ここには、大学の皆さん、高校の皆さん、そして産業界の皆さん、そしてハローワークの人、労働界もそうです、そういう方が集まって計画を立てて、そして、そこで就職の応援をする、こういうことで今やっているところでございます。

笠井委員 中央レベルでやるかどうかということで、政府が入ってということを質問して、文科大臣、お答えあったわけです。

 総理、ちょっとそのことについて、三者の協議の場、政府がテーブルをつくってということについて、総理大臣として大事な問題だと思うんですが、一言お願いします。

菅内閣総理大臣 既に政府でもいろいろな円卓会議等をつくっておりますが、政府では、雇用戦略対話という形で、労働界、経済界、政府を含めて、学校関係者にも参加をしていただいて、意見交換を始めております。

笠井委員 そういう文科大臣が言われたような、三者によるテーブルをつくる準備をして、検討するために進めている、そういうことを準備している、それは必要だ、やるということで、総理としてもよろしいですね、それは。

菅内閣総理大臣 そのとおりでありまして、先ほど厚労大臣からもありましたように、同時に全都道府県の労働局にも、そうした形をそれぞれの地域でとる。これは、地域でとることの方がより近い形でやれますので、より強力な、両方が相まって強力な体制になっていくと期待しております。

笠井委員 今ありましたけれども、大学、経済界、政府、これら三者がやはりきちっと話し合ってこの問題の解決を図る、当然地方レベルでも必要です。そういうことでこの問題に当たっていく、大事なことだと私は思います。

 そこで、具体的に伺っていきたいと思うんですが、まず、何より就職活動が、ありましたように早期化、長期化をして、学業と就職活動が両立しないという問題、これをどう是正するかということが、そういう際にも大きなテーマになってくると思います。

 かつては、大学と企業による就職協定がありまして、大学生の会社訪問というのは四年生の十月一日から行われておりました。それでも抜け駆け的に協定破りが横行して、いわゆる青田刈りということが社会問題化をして、ついに協定自体も一九九七年になくなってしまったわけです。とりわけこの間、就職活動の早期化、長期化というのが、この二〇〇二年の超氷河期と言われた時期から見ても、著しくひどくなっているという実態がございます。

 そこで、このパネルをごらんいただきたいんですけれども、二〇〇四年ごろまでの就職活動のスタイルと比べても、七カ月も企業との接触というのが早くなっています。五年前には、学生が企業と接触を始めるのは四年生になる直前の二月の説明会からで、三月から選考が始まって、四月から内定という流れでありました。

 それが現在はどうなっているかといいますと、学生と企業との接触が始まるのは三年生の七月の職場体験のインターンシップ、十月からのオープンセミナー、そして社員交流があって、さらに、年が明けて二月から説明会、そして、なかなか選考があっても内定が決まらずに、就職活動が四年生の七月以降も続いて、一年以上にも及ぶというのが当たり前になっている。大学院の修士課程では、一年後半から研究に手がつかないという状況であります。

 この五年間に事態は急速に悪化をして、就職活動が長期化している、そういう事実について、文科大臣、そういうことだということで端的にお答えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

高木国務大臣 学生が学業に専念できる、そういう環境をつくることが重要であると……(笠井委員「いや、長いかどうかということです」と呼ぶ)ええ、それはそうです。私はそういう認識であります。

笠井委員 先ほどから、聞いたことにお答えいただきたいんですね、いろんなことをおっしゃるよりも。

 ことし四月五日の朝日新聞の「声」の欄に、こういう投書が寄せられております。

 「内定取れぬ学生は負け組なのか」。私は内定をとれないまま今春大学を卒業しました。常に違和感を覚えながらの就職活動でした。大学は本来、勉学の場です。私自身、中学のときから勉強したかったことを大学で学べました。しかし卒論や専門的な授業がふえる、そういう三年のときに就職活動が始まり、会社説明会や面接のため授業を休まなければならないことが、週に二、三度はありました。まるで就職のために大学に入ったような日々が続き、目的だった勉強が途中から就職に変わり、どんなに一生懸命勉強しても内定がとれないと、学内でも負け組扱い。私は就職するために大学に入ったんじゃない。何度も心の中で叫んだ言葉です。国も企業も学生のことをもっと真剣に考えてほしい。

 まさにこういう声でありまして、私、このほかにもたくさん伺いました、直接。同様の声が学生の皆さんから寄せられました。大学生活の半分を就職活動に当てると。何のために大学に行ったのかという声が上がるのは当然だと思います。

 そこで、総理、こうした実態があるということで、就職活動が学業を圧迫している事態は直ちに解決すべきだ。こういう点でも大学、政府、経済界、三者で協議するというなら、この問題をどう正すつもりなのかということについて、これはやはり大事な大きな問題ですから、総理にぜひお答えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 今御指摘ありましたように、新卒者の就職・採用活動については早期化、長期、複雑化し、それにより学生の負担が大変大きくなっていると。せんだって、京都にある大学に私も行きまして、直接学生さんからもそういうお話を聞きました。

 こうした問題は、経済界、労働界、大学などが一体となって取り組むことが重要であり、関係大臣から経済団体に対し、早期の採用選考の活動の抑制などの要請をしているところであります。また、特に面接に当たっては、学生の人格を傷つけることがないよう、公正な採用選考について注意を促していきたいと考えております。

 先ほど、就職協定、私もかつてはそういうものがあったということを覚えておりますけれども、そうした形の復活が可能かどうかということも含めて、同時に、やはり全体として雇用が厳しいことがその背景にあるとすれば、単にそういう形だけでは十分ではないのかもしれません。

 いずれにしても、関係者にも強く努力を促していきたいと考えております。

笠井委員 総理からも、今、経済団体に対しても政府としても要請しているところだとありましたが、日本経団連は、この問題でも倫理憲章というのを出しております。しかし、これは単なる申し合わせになっていまして、そういうやり方に任せてきたのが一番問題だったなと私は改めて振り返って調べてわかります。

 ここに、二〇〇五年、これは、毎年経団連はこの問題で倫理憲章を改定して出しているんですけれども、例えば、五年前なんですが、二〇〇六年度の新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章というのがありまして、六項目立っているんですが、今質問した早期化、長期化の問題にかかわっては、こうあります、二項目めに。

 「採用選考活動早期開始の自粛」と。「在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。」これはいいことが書いてあるんです。毎年これが改定されて、基本的に同じことがずっと引き継がれているんです。

 ところが、総理、これは書いてあって、いいことなんだけれども、守られていたら今のような早期化、過熱化が起きるはずないんですね。ところが、憲章を決めて、毎年のようにバージョンアップするたびに、表面上の言葉とは逆に、全く逆にますます事態は悪化して、実際にはノンルール化しているというのが実態であります。こうした経済界に要請して、その自己責任に任せるというだけではだめだ、日本経団連だけでは解決能力はない、そういうところまで来ている、経済界といっても。こういうことだと思うんです。

 日本学術会議の高祖検討委員会副委員長は、就職活動の早期化と長期化で、三年生以降は教育が成り立たなくなっている、専門教育を受けるべき最も重要な時期に学生が能力を伸ばせないと指摘して、職業に生かせるような専門的知識を学べる大学教育こそ必要だということを強調されていました。

 会社説明会とか、あるいは、会社に応募するに当たってまずエントリーシートを出す、その受け付け、面接の開始日などについて、やはりこの問題を大学、経済界、政府がしっかり協議をして、就職活動が学業を妨げることがないようにすべきではないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。

高木国務大臣 そのようなことで、私たちも、これからも引き続き努力をしていきたいと思います。

笠井委員 単に就職活動が早まって長いだけじゃなくて、近年、一層煩雑化しております。学生の精神的、肉体的負担、苦痛は大変なものだ。

 めちゃくちゃにこの問題で振り回されている学生の皆さんから、こういう声があります。

 初めは、こういう仕事につきたいと思っていたのが、何社も落とされるうちに、自分にその仕事は向いていないのではないかと、どこでもよくなるのがつらかった。まだ内定が出ず、毎日泣いている。スーツを見ると吐き気がすると。こういう叫びが上がって、当事者だけじゃなくて、親や祖父母も子や孫のことが心配でたまらないと。全国各地で今起こっている事態です。

 大学のガイダンス、企業のインターンシップ、就業体験をする。そして、説明会には、同じ会社が同じ内容で複数回やっても、両方出ないと次に行かせてもらえない。そして、応募する動機などを記入する、手書きでやらなきゃいけないというエントリーシートも何十社も出して、そしてそれが通るかどうかわからない。その後もさまざまな形態の試験がある。そして、一つの企業が就職希望者に、何度も呼び出して面接を繰り返すのが当たり前になっている。就職活動を始めてから内定までハードルが幾つもあるわけです。その間、授業などお構いなしということになる。

 地方のある国立大学の理系の教授は、こう言われました。大学三年で研究室に入った学生が、入った途端に就職活動でいなくなって、長期間にわたってしょっちゅう欠席をする、これでは学生を指導できないし、研究もできないと。

 こんな事態を放置していいんでしょうか。総理、率直に、どうお感じになりますか。

菅内閣総理大臣 先ほど来、基本的には同じことをいろいろな形で言われておりまして、そうした形が現在進行しているということを認識すると同時に、そういうことは決して好ましいことではない、そのように私も思っております。

笠井委員 これは、私、本当に深刻な実態だと思うので具体的に今紹介しているわけですが、しかも、企業による一般常識からかけ離れたやり方が横行しております。採用決定に至る日程、スケジュールも一切明らかにされずに、面接結果を通知する期日も示されず、長い間待たされるというのが当たり前になっている。そして、一次面接を通った学生には、会社から非通知の設定で携帯に電話がかかってきて、そして二次面接の日時が伝えられる。それも、一方的な通知だけ。それが、二次、三次、四次、五次という面接がある。繰り返されます。

 大銀行を受けた都内のある私立大学生の話ですけれども、こう言っていました。

 電車に乗っていて、携帯に電話がかかってきた。済みません、今電車に乗っているんですというふうに言ったら、ではあしたかけ直しましょうということで会社から言われた。でもと思って慌てて急行電車をおりてかけ直したら、発信専用の番号で、つながらない。そして、今に至るまで、その会社からもう連絡、電話がないと。

 つまり、いつでも、その場ですぐに出てこなかったら、もうその人はふるい落とされるという事態があちこちである。この話を聞きまして、私、学生の方が電車の中で、済みません、今電車だからと言ってすぐ切って、おりてと、常識を持って対応されたのに、相手の会社はいかに非常識かと思いました。

 一たん就職活動に入ると、いつ呼び出されるか面接があるかもわからない。だから予定も立てられない。バイトもできずに、もちろんゼミも授業もまともに出られない。こんな非常識は直ちになくさないといけないと思います。直ちに具体的行動をとるべきだ。採用決定に至る日程を明らかにして、面接の合否を発表することぐらいは当然やる。これも、つまり、会社もそれから大学も学生も、みんながそうだよねと納得するやり方をきちっと協議して決めるのが一番だと思うんですよ。当然これは必要だと思いますね。いかがですか。

高木国務大臣 笠井委員、個々の事例を出されましたけれども、このような厳しい雇用情勢の中です。大学も経済界も、そしてまた学生本人も、十分な認識を持ってこれらに対応するべきだと思っております。

 いずれにいたしましても、就職活動、採用活動の早期化とか長期化、これについての是正について、これからも一つのテーブルで具体的なお互いの意見交換をしていきたいと思っております。

笠井委員 企業の側が、何を基準に、どういう判断で採用しようとしているかも不透明で、いっぱい問題があるんです。

 学生の人格を踏みにじるやり方が横行していると先ほど答弁でもありました。大問題だと、私も聞いて本当に改めて思うんですが、とにかくやり方がめちゃくちゃで、大学で学んだことはろくに評価もされない。エントリーシートの書き方を指南する外部コンサルタントの講師は、大学で学んだことなど書くなと教えるというんですよ。某球団を持つ企業は、エントリーシートに自分が一番気に入った写真を張りつけてそれを説明しろと言われて、何を試しているのだかわからないと。

 都内のある私立大学には就職活動のためのゼミの授業がありまして、東大、早稲田などと戦うには秀でたものが必要だと教えられる。ある人は、枝豆はどの程度の塩かげんが一番おいしいか、それを研究しましたと面接で言ったら、まあ、相手はおじさんたちだからと言われたそうです。そうしたら、それが受けるからといって合格したとか、そんなふうに授業で教えられて、他人がやらないような異常行動をやるのが大事だと教えられるというんですよ。ある学生は、東京から九州までヒッチハイクしたり、公園で野宿していろいろな人に話しかけましたという経験をやったというので面接で話したら、それがいいですと。ゼミで発表すると、学生から、いいことをやったなと褒められる。このゼミをとれば単位も取得できるというふうになっている。

 就職活動ではこういうノウハウだけが広がって、やってもいないのに、面接では受けをねらってうそをつくようになって、もう耐えられないという学生がおりました。真剣なんですよ、これは本当に。面接では、どれだけストレスに耐えられるかということを見るということで、意図的に侮辱的な問いかけをする圧迫面接がある。企業がやるんですよ。最後に何か聞きたいことはありますかと面接で言われて、そのときに質問で、この会社の労働条件は何ですかと聞いたら、もうそれでだめ、禁句だということがまかり通っている。学生の人権を無視するようなこんな理不尽は直ちになくすべきだと思います。

 こうして、学生の精神的、肉体的な疲労感とともに、一方で、企業の側も徒労感も限界に来ているという状況です。こんなことに莫大なエネルギーを費やすことが、学生はもちろんですが、大学、企業にとってもいいわけないと痛感しました。それがどんなに日本の経済社会にとって損失か、まともな発展を妨げているか。学生が学んだことが評価されない、やりたいことが学べない。これで日本の経済がよくなるわけないと私は思いました。

 こういう問題を先ほどから幾つか聞きました。そして、そういう問題も三者の協議でちゃんとやりますと言われた。きっちりやってもらいたいと思います。

 そして同時に、緊急の措置として、就職活動をする学生の経済的負担の軽減も待ったなしです。

 ある地方大学の学生に聞いたら、首都圏、やはり人気企業というと本当に集中するという状況で、そこへ行かなかったらとなるんですね。そういうのは当然だと思います。そして、首都圏の企業を受けるには交通費や宿泊費がかさんで、信越地方でも大体月八万円ぐらいかかって行ったり来たりすると。バイトして交通費、宿泊費を稼いだり、生協の格安バスを利用したりしてしのいでいるというわけですけれども、ある学生は、では、東京でどこに泊まるか。友人三人と一定期間、ウイークリーマンションをシェアして活動していると。

 今日の事態が深刻なもとで、そういう経済面でも緊急に国として、各大学を通じて就職活動を経済的に支援する取り組みをやはり今検討、拡充すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

細川国務大臣 地方の学生などが就職のためにお金が大変かかっているということ、これについては、笠井委員が今言われたとおりだろうと思います。そういう意味ではいろいろな形で支援をしていかなければいけないと思いますけれども、経済的な支援となりますと、職を求めている人は学生だけではないということもありまして、経済的な支援を直接するということにはなかなか難しいのではないかというふうに思います。

 しかし、私どもとしては、そういう学生の皆さんにはできるだけの御支援をしなければいけないということで、都道府県には新卒者専門の新卒応援ハローワークというものを設置いたしまして、大都市圏や近県での就職を希望する地方在住の学生に対して、ハローワークが持っております全国ネットを活用して、広域的な職業紹介などをさせていただいております。

 いろいろな形で私どもも就職支援をしていきたいというふうに思っておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

笠井委員 今ありましたけれども、お金のない者は就職活動もできない、就職活動するとバイトもできないというのが現実であります。放置すれば新たな格差社会をつくるだけだ。

 学術会議の提言の中でもこの問題に触れていまして、「長期化する就職活動が学生にもたらす負担の中で、最も切実なものの一つが、地方の学生が東京等の大都市圏で就職活動を行う際の宿舎の問題ではないかと考えられる。このことについて、各種の公的な宿泊施設の低廉な価格での利用や、宿泊費・交通費に関する何らかの補助制度の創設等を検討すべきではないか」と学術会議も提言しています。

 やり方はいろいろあると思うんです。しかし、そういう問題を真剣に検討して具体化すべきだというふうに思います。強く求めておきたいと思います。

 就職協定の歴史は一九五二年にさかのぼります。ちょうど私が生まれた年で、もう五十八年、いろいろな問題があったんだなということを改めて感じますが、これまでも、就職協定が結ばれながら、ペナルティーがなかったことから違反する企業が後を絶たずに、協定が事実上機能しなくなって廃止されて、倫理憲章という企業側の自己責任に任せる、そういうもとでノンルールになってしまう。加速度的に事態が悪化してまいりました。この悪循環こそ断ち切るべきだと思います。

 この問題を解決するには、やはり一つの会社、業界だけではできない。競争があります。だからこそ政府の役割が決定的だ。今こそ政府が入って、先ほど御答弁ありました経済界と大学、そして学生の声もしっかり受けとめながら協議して、きちっと守られるルールをつくる、実効性を持たせるということが必要だということを強く求めておきたいと思います。

 同時に、今日の就職難の最大の根底にある重要な問題は、新卒者の採用数そのものが少ない。これをもっと確保することであります。高校生も大学生も、とりわけ大企業の採用数が今大幅に減っている。なぜ減っているんでしょうか。その要因を端的にお答えください。

大畠国務大臣 先ほどから笠井委員のお話を伺っておりまして、私自身の就職したころを思い起こしました。私は、一九七四年でありますが、工学部でその年の七月までは卒業論文に没頭し、おおよそ卒業論文のめどがついた段階で就職を探し始め、就職したわけでありますが、先ほどのさまざまなお話を伺っておりまして、企業の方にも大きな問題がありますし、さらに、現在の教育制度の中で、大学の授業というものが大変無為に過ごされているような感じも受けます。

 したがって、経済産業省として、ぜひ優秀な学生がしっかりとした環境で十分に勉強して将来に備えるという体制ができるように、一つは、私は文部科学省と労働省とも関係してやっていきたい。

 もう一つは、なぜ就職先が少ないのか、こういうことでありますが、現在の経済下において経営の方も将来見通しがなかなか立たない。そんな中で、ことしは就職を何人募集するか、そんなところでいろいろさいなまれているのじゃないか。私の場合は、一九七四年、ちょうどオイルショックのときでありましたから、私は同期の人間が千人いますが、次の年は百人に絞られました。したがって、経済の状況によって経済界も企業もいろいろ思いあぐねながらやっていると思いますが、現在の経済状況というのは就職先の少ないという要因の一つではないかと推測をしております。

笠井委員 端的に質問に答えていただきたいんですが、新卒者の求人が減っているのは景気悪化のせいだけじゃないと思うんです。大きな背景には、この間でいいますと、派遣や請負などの非正規雇用の拡大があります。正規雇用も雇用の調整弁にされて非正規に置きかえられてきた。製造業の大企業でいいますと、五百人以上の従業員のところでは、雇用している労働者は一九九四年の二百六十九万人から百八十七万人、八十二万人、三〇%も減りました。一般事務職にしても、専門業務など、そういう名前をつけて野方図に非正規雇用を解禁してしまったという問題が大きくあります。

 一たん採用が正社員じゃなくて非正規になればどうなるか。その後、その学生が正規採用されるのは本当に難しくなります。不可能と言っていい。だから学生は、何としても正社員として採用されるように、必死で就職活動に取り組んでいるわけであります。

 企業の側としても、新卒の正社員をきちんと確保しないと、社員の年齢構成に大きなひずみが生まれるということになります。かつて超氷河期と言われた時期に、どの企業も新卒採用を絞り込んでしまった結果、仕事の継承ができない、三十歳になっても部下がいないという部署が出たりしました。大分大きく問題になりました。その過ちを繰り返してはいけないということであると思います。

 総理、新卒者の就職難打開のためにも、非正規雇用を拡大した労働法制の規制緩和を抜本的に見直して、そして、日本の雇用のあり方を非正規から正規へと転換するという大きな切りかえがどうしても必要だと思うんですが、これは大きな問題だと思うので、総理、端的にお答えいただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 今、正規、非正規という面に視点を向けられての論拠ですが、私も、この十年間あるいは二十年間、非常に非正規雇用がふえたことは、従来的な意味の正規雇用あるいは年功序列というものも含めて大きく変わってきた、あるいはその制度を破壊してきた背景にあると思います。

 ただ、そのことと、もう一つ、やはり日本経済のいろいろな意味での成長がとまって、デフレ状況の中で企業がなかなか投資をしない、お金はあるけれども投資をしない、国内に投資をしない、そういったことも先ほど言われた雇用の数がなかなか伸びないことにあると思うんです。

 もう一つ、この機会に申し上げたいのは、大企業のことを言われておりますが、中小企業は、一般的に言えば大企業に比べて求人倍率は四ぐらいでありまして、大企業が〇・六とか〇・五ですけれども、非常に、中小企業は潜在的には新卒者を採りたいと思っているところが多いわけです。しかし逆に、新卒者の方もあるいはその家族の方も、余り名前が知られていない企業にはなかなか足が向かないということがあります。

 そこで、私が現実に視察をした京都のジョブパークなどでは、中小企業とのマッチングのためにトライアル雇用とかいろいろな仕組みを、そのジョブパークそのものが数百社の中小企業が会員になっていまして、おもしろいことを言っていたのは、企業の目線と言うから、何で勤めたい人の目線じゃないんだと言ったら、そうじゃないんですと。企業が欲しくなるような人がどういう人かということの目線で、そこに来た学生さんなんかに短期的な、それこそ、先ほど言われた就職試験のときだけうまいことを言うというんではなくて、三カ月ぐらい仕事をして、ああ、なかなかこいつやるじゃないかと思われるようなそういうトレーニングをしっかりしている、そういう話も聞きました。

 そういう意味では、いろいろなことをやらなければいけませんが、一つの大きな分野は、中小企業の中で発展可能性を持った中小企業も多いわけですから、いい人材が入ればますます伸びる会社もあるわけですから、そういうところに対するミスマッチをマッチングさせるということも極めて重要なことだろう。その点も今、全国各地で、ワンストップでそういうことができるような体制をつくりつつあるということも申し上げておきたいと思います。

笠井委員 今、中小企業のことを言われまして、中小企業は雇用の七割を支えています。経済の主役でありますから、有能な人材がきちっと入っていくように、その魅力を知らせるのは必要だと思うんですが、マッチングしないのは、さっき言ったような、就職活動のあり方が過熱化をして、人気企業にとにかく集中するということで、中小企業に目が行かないという状況がつくられているということがある。学生自身が学んだことから就職先を考えるのが本来なのに、その以前から就職活動をやらなきゃいけないという状況がつくられるということが根底にあるということを言いたいと思うのです。

 それと、大きな背景の問題として非正規のことを言われました。そのためにも、やはり労働者派遣法の改正をめぐって、抜け穴だらけの政府案を抜本的に見直して、雇用は正社員が当たり前という社会に踏み出すべきだということも強く言いたいと思います。

 そして、成長のことを言われました。私、一問だけそこで総理に伺いたいんですが、大企業は、新卒採用を減らす一方で内部留保や手元資金をふやし続けてきたということが言われてまいりました。今、大企業を中心に生産は回復して利益もふえてきた。ところが、使い捨てできる派遣や期間社員などの非正規で対応して正社員をふやそうとしないということをやってきて、この問題も起こってきている背景があります。

 新卒者の初任給というのは平均二百四十万円ぐらい。大企業の内部留保は、この一年間に十一兆円ふえました。そのふえた分の三・四%を使うだけで、還流するだけで、就職も進学もしない大学、短大、高校の新卒者十五万七千人を雇って、一年間給料を払うことができるじゃないか。内部留保を二百三十三兆円から二百四十四兆円にふやすことと、そのほんの一部で就職難を解決する、大企業もちゃんと採用する、そして長時間労働もなくして賃上げしていく、有為な人材が新入社したときから思い切り仕事ができるのと、どちらが日本経済や企業にとって有益かということもぜひ考えるべきときに来ていると思うんです。

 総理自身も昨日の答弁で、企業の社会的責任ということを言われました。そして、二百兆円もの内部留保を人材にも投資するように、特に力ある企業には要請していきたいと言われました。大事なことだと思うんです。政府としても、経済界に対して強力に、そういう努力の中で新卒者の採用数の確保を働きかける、これをやるときじゃないかと思うんですが、これはきのうの総理の答弁との関係なので、ぜひ一言、総理にお願いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 おっしゃることは、先ほど来申し上げているように私も賛成なんです。ただ、民間企業ですので、要請はできます、しかし強制的に、あなたのところはこれだけは採ってくださいということはなかなかできません。

 考えてみますと、何が根本的な原因なのか、これは卵と鶏のようなことはありますが、私が時折、雇用から需要、あるいは潜在的な需要のあるところに場合によっては財政資金を投入しても、そこから雇用を生み出し、サービスを生み出し、生産を生み出していく、そういう好循環があれば、そこに働く人がふえれば当然消費がふえますから、また内需がふえ、内需がふえれば、大企業、中小企業を問わず生産の規模がまた膨らみます。ですから、笠井さんが言われていることは間違いではもちろんないんですけれども、何か無理やりに雇用を企業につくらせるという手だてそのものがない中で、どうすればそういう雇用を生み出すようなお金の流れをつくることができるか。この問題が、私は、成長と雇用という、私が雇用、雇用と言うと成長が先だと言われる方もあるんですが、私は表裏一体だと思うんですが、そのメカニズムをいかにして回転させるかということまでできれば御提案をいただければ、でないとなかなか、いや、おっしゃることは私も間違ってはいないと思うんですよ。私たちも積極的に大企業には働きかけはしますけれども、大企業自身がインセンティブを持って大勢の若者を雇おうということになる状況をどうやってつくるかということを、まさに成長と雇用の中で考えていきたいと思っています。

笠井委員 そこが大事だと思うので、私も、強力に働きかける必要がある、このことを申し上げている。やはり、今こそ大企業が内部に滞留している巨額の資金を投資や雇用などの生きたお金として日本経済に還流させる、還流させることが日本経済の危機打開のために不可欠だと申し上げているので、そうやって家計を直接応援するし、内需を底上げすることによって本当によくしていくというわけです。そういう政策の転換が必要だということを申し上げているわけであります。ぜひそのことをやっていただきたいと思います。

 次に、沖縄米軍普天間基地問題に関して質問いたします。

 沖縄の米軍普天間基地について、菅総理は、さきの本会議で、普天間飛行場の移設については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでまいっております、沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたいと答弁されました。

 五月の日米合意とは、普天間基地を辺野古に移設する、いわゆる県内移設であります。これに対して、沖縄県民の総意ははっきりしています。ことしに入ってからでも、名護市長選挙、県議会決議、九万人の県民大会、名護市議選などを通じて、普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設反対を県民の総意として表明してきています。五月の日米合意の実行が不可能なことは、もうだれの目にも明らかだと思うんです。

 普天間基地問題の原点は、市街地のど真ん中にある危険きわまる基地は即時閉鎖、撤去するしかないということであります。移設を前提にしたのでは問題は解決しない、これが十五年間の教訓じゃないかと思うんですが、これは、総理、御自身の答弁にかかわりますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 まさにこの問題が、鳩山前総理が本当に総理になられてからずっと、あるいはその前からずっと取り組まれた問題であることは御承知のとおりです。そして、いろいろなことを検討された上で、改めて五月二十八日の日米合意、つまりは辺野古への移転という方向性を含む日米合意に、戻ったという表現もありますし、改めてそういう形を合意したということがあります。

 私は、政権を引き継いだ中で、まずはこの合意の原点からスタートすることによって、まず日米関係においても、信頼関係を回復する中で、その中から何らかの理解や打開の道を見つけたいと。他の方にもお答えしましたが、できれば沖縄の基地負担をほかの分野で先行して負担軽減ができるような、北部の演習場の返還とか、今はすぐはできておりませんが、嘉手納の南の返還とか、あるいはグアムへの移転を予定どおり、約半数の海兵隊を移転する計画を予定どおり進めるとか、そういう形で沖縄の皆さんに負担の軽減を実感してもらえる中で、そしてその中から普天間の辺野古への移転について御理解がいただける状況が生まれるかどうか。もちろん、楽観をしているわけではありません。

 よく皆さんもおわかりのように、普天間そのものが極めて危険なところにあることは私自身も認識をいたしております。そういう中において、それでは普天間そのものを、例えば何か一部、近くの学校をどうしたらいいとか、そういうことになることについても、必ずしも現在は合意が得にくい状況にあることもわかっております。

 まあ、これ以上言わない方がいいかもしれませんが、今、沖縄周辺を含む国際的な状況も、ある意味で大変不透明な状況がより増していることも含めて、この問題、もちろん簡単ではありませんけれども、まずは五月二十八日の日米合意を踏まえたところからスタートして、理解が得られるように全力を挙げてまいりたい、このように思っております。

笠井委員 沖縄の県民の負担軽減が実感されるように、そして理解を求めたいとおっしゃいましたが、果たしてそうかという問題であります。

 では、総理は、アメリカが実際どういう動きをしているかということを御存じかということなんですけれども、アメリカ海兵隊は、このほどこういう報告書を出しました。計画書ですね。二〇一一会計年度の航空機配備計画というものであります。これを公表した。この計画には、普天間基地に関して極めて重大なことが盛り込まれております。

 普天間のかわりにつくる施設の建設がおくれたり中止になった場合には、最新鋭のオスプレーという輸送機、この写真にありますけれども、この配備のために普天間基地に新たな施設を建設すると。このオスプレーというのは、ヘリよりも大型で、戦場に物資や兵員を運ぶということで、ヘリのように上下もやれますし、それから水平でずっと飛行機のように高速で走れるということでありますけれども、これを配備のための施設を建設すると。そして、最終的に閉鎖されてかわりの施設に移るまで、一〇〇%運用可能であることが求められるということまで書かれています。

 アメリカ側は、辺野古移設の日米合意の実行を求めながら、その一方で普天間基地を継続的に使用することを考えている。しかも、オスプレー配備のための新たな施設建設を行って、かわりの施設、つまり辺野古に新基地が建設されて移るまで普天間基地をさらに増強して、一〇〇%運用するということまでこの計画書で米海兵隊は言っているわけであります。

 アメリカのこうした計画方針をどのように受けとめていますか。

北澤国務大臣 笠井委員は、今二つのことを質問されました。

 まず一つは、オスプレーの配備であります。これは、事務方同士の協議の中では議題にはなっておることは事実であります。しかし、これはあくまでも海兵隊の計画でありまして、国防総省からは、国防総省としてこれを認めているわけではないという意見を我々は聞かされております。

 それからもう一つは、二〇一一年度の航空機配備計画についてであります。これも海兵隊の、今お示しをいただいた表の中にありますが、航空輸送部装備品の保管所であるとか、滑走路・誘導路の路肩、これを普天間の飛行場の中で改修あるいは補強したい、こういうふうに言っておりますが、これはあくまでも、二〇〇六年の協議の中で決まって、それを米軍としては、海兵隊としては我慢してきたと。しかし、なかなか普天間の移設ができないので、運航上支障を来す場合はこういうことをやりたいということでありまして、これも実務を担当する海兵隊の計画の中にあるわけでありまして、国防総省がそれをするというところには至っていないということです。

笠井委員 米側のオスプレーの配備計画については、私も一九九九年の十一月に参議院の予算委員会でこの問題を取り上げたのは、もう十年以上前です。ずっと問題になってきたけれども、日本政府はそれが進んでいる事実を十年以上も隠してきた。そして、それがここまで具体的になっても、いまだに国防総省全体のものじゃないと言って、だれが信用するかということなんですよ、沖縄の県民も。アメリカは我慢してきたと言うが、我慢してきたのはアメリカじゃないんですよ。沖縄県民は、この被害に我慢をさんざんしてきたわけですから。

 このパネルをごらんいただきたいと思いますが、今大臣が言われましたので、今回発表された計画には普天間基地の新たな施設建設整備計画が入っています。航空輸送部装備品の保管所、それから滑走路・誘導路の路肩、補助滑走路帯、それから飛行機をとめる駐機場などの区域の接合の改良、エプロン改良、駐機場建設が列挙されています。移設するという新基地がまだできないからということで、現在の普天間基地をもっと使いやすいように増強していこうというものであります。この米側の計画について、沖縄県民は、危険な普天間基地が増強されて固定化されるんじゃないか、こういうふうに危惧しているわけであります。実際、そういう方向になって動いている。

 それでは、日米合意とも違うことが米海兵隊によって計画されている、大変なことだと、米政府に、これはどういう段階のものかときちんと問い合わせて確かめたんですか。海兵隊にこういう計画があるけれども国防総省がどう考えているのかと、これは勝手に海兵隊がやっているんだとか、そういうことを確かめたんですか。

北澤国務大臣 先ほども総理から決意が表明されましたけれども、こういう事態にならないように、二〇一四年を目指して代替施設の建設に努力をする、最大の努力をするということであります。

笠井委員 二〇一四年に代替施設をつくって、そっちに行くからいいというふうに今言われましたけれども、パネルの三の下の方に、これは細かくてあれなんですが、じゃ、オスプレーの配備計画を、海兵隊がどういうものを持っているかというのが書いてあります。

 現在、普天間基地に配備されている中型ヘリ部隊は二つの中隊がありますが、今回の海兵隊の計画によりますと、その二つのうち一つの中隊は、二〇一二年の十月からアメリカ・カリフォルニア州のミラマー基地所属のオスプレー中隊と交代をする。もう一つの中隊は、十二機ですが、これは二〇一三年にミラマー基地所属の別のオスプレー中隊と交代する。これが二〇一二年、一三年にやってくるというのが海兵隊の計画です。

 今大臣は二〇一四年に辺野古ができるからと言われたけれども、二〇一二年には海兵隊は、それ以前にオスプレーを持ってくるという計画を公然と出して、今回、部隊名と基地名まではっきり書いたということが初めて出たわけであります。

 こういう状況になって、まさにこれは普天間基地周辺、県民にとっては新たな負担じゃないかと。当然じゃないですか、これ。こんなのけしからぬと言って、話が違うとアメリカに言うのは当たり前じゃないですか。

北澤国務大臣 これは、米側とも交渉をしてつまびらかになっておるわけでありますが、あくまでも一部隊としての計画でありまして、それをもって米国国防省が予算をつけて日本側へ通達した、そういう話では全くないわけであります。

 例えば、我が国に例えれば、海上自衛隊がこういう装備をどこそこでやりたい、こういって希望を出すことはあるわけであります。しかし、それが防衛省の計画に載るかどうかということは、それはまた別の問題、こういうふうに理解しています。

笠井委員 これは、本当に確かめたのかが問題になります。防衛省の報道官が去る八日に記者会見の中で尋ねられて、米側に聞いたら否定しないと思う、そう言ったんですよ、この計画について。もう語るに落ちたという状況じゃないですか。聞いたら否定しないという話を言ったんだから、報道官が。

 そうなりますと、このオスプレーというのはとにかく危険だと言われているわけです。住宅地域を戦場に見立てて飛行する訓練もやる、海兵隊の殴り込み能力を強化できるというものでありまして、不安定な構造なので、開発段階十年間に、主な事故だけでも四件、三十人が死亡している。未亡人製造機とまで言われたような、そういうものです。この配備、運用を一二年から始める。再来年からやることによって、周辺住民、沖縄県民は、世界一危険な普天間基地の危険性がますます高まる、ここに一番恐怖と危機感を持っているわけですよ。

 総理、こういう問題、負担軽減と言われましたけれども、本当にこれが負担の増強じゃないと言えるんですか。アメリカ政府に、海兵隊一部隊だと防衛大臣は言われましたけれども、これについては、やはり、そんな動きはけしからぬ、やめてもらいたいとこれは言えないんですか。総理、それはいかがでしょうか。最後に伺います。総理に伺います。

中井委員長 北澤大臣、時間がもう来ていますから、簡潔に答えてください。

北澤国務大臣 お答えします。

 オスプレーの導入と基地の補てんというのは全然別の話でしょう。ですから、それを……(笠井委員「一二年に導入すると言っているわけですから、計画についてちゃんとやっているのかどうかですよ、アメリカにちゃんと言ったかどうかですよ」と呼ぶ)質問は委員長の許可を得てやってください。

 このオスプレーについては、私も野党で委員長をやっていた時代に、防衛省の役人が絶対ない、ないと言ってきたんですよ。それはうそか、うそだと、こういう議論の続きでした。私も中へ入ってよく見ましたら、米側は計画をしておるけれども、正式に申し入れがないんですよ、国防省から。それを混同するから複雑になる。

 また、これと普天間の設備の改良というのもまた全然別の話でありまして、それを全部一緒くたにして、大変だ、大変だと言われると、民衆の判断を狂わすことになりますので、一つずつきちんと質問していただきたい。

笠井委員 これはやはり、アメリカにはちゃんと言うべきときには言わなきゃだめだ、こういうことをきちっと言わなきゃいけないということを申し上げて、質問を終わります。

中井委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 菅総理が第百七十四回国会の所信表明演説で、沖縄県民に対する長年の過重な基地負担に対する感謝の念を表明しました。この菅総理の感謝の念の表明に対しては私も多くの県民も強い違和感を覚え、去る七月九日の沖縄県議会でも、県民の思いを全く理解していない行為であるとの意見書が全会一致で採択されております。

 今度の臨時国会における所信表明演説では、沖縄の基地負担に対する感謝の表明が消えました。総理にどのような心境の変化があったんでしょうか。

菅内閣総理大臣 さきの国会で感謝の念とかあるいは沖縄の全戦没者の追悼でお礼という言葉を述べたことについて、沖縄の皆さんが県議会などでそれが問題だという決議をされたということはお聞きをいたしました。

 私、率直に申し上げて、どの部分がある意味皆さんの気持ちを逆なでしたのかなということを私なりに考え、あるいはいろいろ見てみましたら、結局のところ、一つは、お礼を申し上げるということはその後も基地を固定化して使い続けたいということにつながってくるのではないか、そういうことが一つあるということが言われまして、そういう受けとめ方をされたのかなと思いました。

 そういうことを含めて、確かに私も、一般的に、本来なら国全体で受け持たなければならない基地負担を極めて過重に沖縄に負担を受けていただいていることでお礼とおわびということで申し上げたんですけれども、そのことが基地の固定化を目指して申し上げたというふうに受けとめられたとしたら、それは私も十分にそのことが理解できていなかったことを反省いたしたいと思っております。

 基本的には、確かに一遍に多くの基地を解消することが今の状況ではなかなか難しい状況ではありますが、基地負担をできるだけ軽減するために全力を挙げるというのが、あの五月二十八日の日米合意とともになされた閣議決定でもありますので、その線に沿って努力をしたい、こう思っております。

照屋委員 今総理から、なぜ県民の怒りを買ったか、県会から批判を受けたかということについて、率直な反省がございました。

 ところで、総理は、六月四日の民主党代表就任の記者会見で、数日前から「琉球処分」という本を読んでいる、沖縄の歴史を私なりに理解を深めようと思っている、このように述べております。芥川賞作家の大城立裕氏が書いた本を指していると思いますが、あの大著を最後まで読破しましたか。

菅内閣総理大臣 実は、夏休み、少し時間がとれましたので、そのときに文庫本の上下巻を読み終えることができました。

照屋委員 私なりに理解をする琉球処分というのは、明治政府が、強権的、軍事的圧力、これを行使して、一方的に押しつけた方針で琉球王国を解体した処分である、こう理解しますが、総理は、本を読んで沖縄の歴史における琉球処分をどのように理解し、認識を深めたんでしょうか。

菅内閣総理大臣 大変、この本は、私にとっても知らない歴史的なことを含めて、あるいはいろいろな出来事を含めて、小説の形ではありますけれども、かなり当時の歴史的な背景を踏まえたものだというふうに認識をいたしました。

 その中で、当時は、ちょうど日本が明治維新という形で薩摩藩を含めて廃藩置県になる中で、沖縄についても、最終的には県という形になる道筋の中でいろいろな出来事があったことが述べられております。

 今、照屋先生は照屋先生なりの見方をされたわけでありますが、私も、この本の中で書かれていることは、今おっしゃったような部分も確かに述べられている。その背景はいろいろな背景があると思います。いろいろな背景があると思いますが、明治維新という中で、ある意味で、沖縄には明治維新の中でも普通の藩とは違った歴史があることもその中にもちろん書かれておりますが、各藩も県という形に、当時はたしか県知事は任命制でありますので、いわばやや中央集権的な形になっていく中で、沖縄においてもそれが適用されることによって、今、照屋先生がおっしゃったような思いを受けとめられた人たちがあったということも述べられている、そう感じております。

照屋委員 沖縄では、菅総理が五月二十八日の日米合意を踏襲するというのは平成の琉球処分だとする声が圧倒的に多くありますが、総理はどのように思いますか。

菅内閣総理大臣 この五月二十八日の日米合意の経緯は、照屋先生もよく御承知のように、鳩山前総理が、ある意味で、県外、場合によっては国外というものを含めていろいろ検討された中で、結果として、いろいろな判断のもとで、県内移転、辺野古のあたりへの移転ということに、再度、そうすべきだという判断をされて、日米合意がなされたわけであります。

 決して、私も副総理として賛成したわけでありますから、その責任を免れるつもりは全くありませんが、私が政権を引き継いだときにおいて、まずここからスタートをしないと、ある意味で、日米の間の話し合いにしろ、あるいは、沖縄の皆さんはもちろん、この合意に多くの方が反対であることは承知をしておりますけれども、少なくとも、そこからスタートをした話し合いをしなければ、話し合いの立場があいまいなまま、混乱が一層継続するというふうに考えまして、私としては、五月二十八日の日米合意を踏まえて、そして同時に、負担の軽減に全力を挙げるということを申し上げたつもりであります。

 そういう意味で、私が五月二十八日の合意を踏まえてと言うことが、琉球処分の平成版に当たるというふうに、もしおっしゃっている方があるとすれば、私自身にとっては大変残念な思いがいたします。

照屋委員 私は、菅総理が平成の琉球処分官にならないことを願っております。

 ところで、総理は、五月二十八日の日米合意の踏襲をオウム返しのようにおっしゃっております。総理は、普天間飛行場移設問題の解決が、地元沖縄との合意なしに日米間の合意だけで実現をすると思っておられるんでしょうか。

菅内閣総理大臣 これも常に申し上げているつもりですが、日米合意に基づいて普天間の移転を進めるということを申し上げております。

 ただ、その道筋として、例えば、八月には専門者による一定程度の合意がなされ、また、今後いろいろな段階が進むにしても、沖縄の、それが県とか市とかいろいろな段階、あるいは沖縄県民という広い意味も含めて、何かこう、県民の皆さんの反対を踏みにじる形で強引に推し進めることは、やるべきとも思っておりませんし、そういう形でできるとも思ってはおりません。

照屋委員 総理、来る十一月二十八日の沖縄県知事選挙に、現職の仲井真知事と、伊波洋一宜野湾市長が立候補を表明しております。仲井真知事は、五月二十八日の日米合意の見直しと、普天間基地の県外移設を求めております。伊波氏は、日米合意の撤回と、普天間基地の県内移設反対、辺野古新基地反対を強く訴えております。

 私は、どちらが当選なさっても、もはや普天間基地の辺野古移設実現は不可能だと思いますが、総理の所見を伺います。

菅内閣総理大臣 これは、沖縄選出の照屋先生に申し上げるまでもありませんが、普天間の基地の移転という問題は、橋本総理と、たしか、十数年前のアメリカ大統領、クリントン大統領でしたかブッシュ大統領でしたか、クリントン大統領のときに提起された課題であります。

 今も、普天間の基地は米軍の海兵隊の基地として使われ、ある意味、非常に住宅地の真ん中ということで危険性を伴っているわけであります。そういう意味で、普天間の危険性の除去、もちろんそれは、先ほど国防大臣からもありましたように、県外に移転する、あるいは国外に移転すれば除去になることは確かでありますけれども、それが難しいとなったときに、そうしますと、県内の移転か、あるいは現在のところでの継続的な使用かということに、選択肢としては、いい悪いじゃなくて、県外か国外か、県内移転か現在のところかということに一般的にはなるわけであります。

 そういう意味で、今の状況が大変難しい状況にあることは、私は重々、私なりには知っているつもりでありますが、今、例えば県内移転がもう不可能というふうに私がもし申し上げるとすれば、それは結果として五月二十八日の合意を合意としては実行できないということを表明することになりまして、合意そのものが崩れてしまいます。

 私は、そういう中で、日米の合意を踏まえて、どこまで皆さん方の理解が得られるか、大変ではありますけれども、一方では普天間という現実があるわけでありますので、そういう中で、我が党ではないときの政権でありますけれども、ある時期までは辺野古への移転についてもかなりの理解が得られていた時期もあったというふうに承知をしておりますが、確かに状況はかなり変わっております。

 そういう意味で、今、話を余りこれ以上くどくど同じことを申し上げても恐縮ですが、そういういろいろなことも考えながら、やはり五月二十八日の日米合意を踏まえて、まずは日米関係の信頼関係を高めながら、沖縄の皆さんに説明なり私どもの考え方を真摯にお伝えしていきたい、こう考えております。

照屋委員 去る一月の名護の市長選挙では、陸にも海にも新しい基地は建設させないという稲嶺市長が当選をし、九月の市会議員選挙では、辺野古新基地建設反対の議員が圧倒的に多く当選をした。名護市民の民意は明確なんです。もはや日米合意どおりに辺野古に新基地はつくれないということを、私は総理を初め菅内閣の全閣僚に認識をしてもらいたいと思います。

 ところで、総理、民主党代表でもある総理に尋ねますけれども、先ほど申し上げた十一月の沖縄県知事選挙、政策を含めて、自民党、公明党が推す現職の仲井真知事を応援するのか、伊波洋一宜野湾市長を応援するのか、それとも民主党独自候補を擁立するんでしょうか、お答えください。

菅内閣総理大臣 この御質問は、内閣総理大臣への御質問ではなくて、党代表ということでありますので、その立場でお答えをいたしたいと思います。

 沖縄県の知事選については、民主党沖縄県連内においてもいろいろと意見がありますが、この知事選については、党の規約で、候補者の擁立は本部の常任幹事会で決定することとなっております。

 現在のところ、幹事長、党の選対の関係者が、沖縄県連との調整も含めて検討作業を進めております。現在のところ、どうするかの結論はまだ決めてはおりません。

照屋委員 北澤防衛大臣に尋ねます。

 沖縄県知事が辺野古の海を埋め立てることに反対した場合、特別措置法を制定して、県知事から公有水面埋め立ての許認可権を奪って強硬に辺野古新基地建設を進める意思をお持ちでしょうか。

北澤国務大臣 これは昨日の予算委員会で総理自身もはっきりと言われましたが、菅内閣とすれば、そういう手法はとらないということであります。

 また、御案内のように、菅総理が五月二十八日の日米の合意をスタート台にしてやる、こう言われております。その合意の中には、日米はともに地元の自治体である沖縄との意思疎通を明確にしていくことを決めた、こういうふうに、正確な文章ではありませんが、正確に申し上げれば、「両政府は、米軍のプレゼンスに関連する諸問題について、沖縄の自治体との意思疎通を強化する意図を確認した。」こういうふうに言っておるわけでありますので、御理解をいただきたいと思います。

照屋委員 私は、沖縄を差別して、平成の琉球処分となる特措法は絶対につくっちゃいかぬと。これはまた地方自治の本旨にも反することになる。特措法をつくらなければ、いよいよもって辺野古は不可能だということを申し上げておきたいと思います。

 関連して、北澤大臣。名護市への米軍再編交付金に関して、沖縄防衛局が二〇〇九年度に内示した六事業約六億円の支給を保留しております。これは、辺野古新基地建設に反対する稲嶺市政への沖縄防衛局の嫌がらせとしか思えません。大臣の見解を伺います。

松本大臣政務官 事実関係ですので、お答えいたします。

 名護市に対しては、平成二十一年度の再編交付金として、平成二十一年四月に約十億円の交付を内定通知いたしました。このうち六事業に係る約六億円については、地元調整に時間を要したことなどから、名護市からいまだに交付申請が行われておりません。

 国は、本年三月末に平成二十二年度への繰り越し手続を行ったところでございます。繰り越しとなっている六事業につきましては、沖縄防衛局が名護市から事業の目的や概要等に係る説明を受け、名護市に対し、計画している施設の使用方法等について照会中でございます。

 いずれにしましても、名護市と調整をしながら、法の趣旨に照らし適切に対応してまいりたいと思います。

 したがいまして、嫌がらせということではありません。

照屋委員 官房長官は記者会見でおられませんので、これは総理にお伺いをしますが、一九九八年の沖縄県知事選挙で、外務省から上納されていた外交機密費を含む官房機密費から三億円が政府側から稲嶺前知事陣営に渡ったと、当時の官房副長官の任にあった鈴木宗男前衆議院議員が証言をしております。

 菅総理は、一般論として、官房機密費が選挙に使われることをどのように思いますか。

古川内閣官房副長官 お答えいたします。

 鈴木元衆議院議員の発言内容についての事実関係は、承知をいたしておりません。

 内閣官房報償費につきましては、その取扱責任者であります内閣官房長官の責任のもとに執行することとされておりまして、その使途については明らかにしないこととされております。

照屋委員 菅総理、来月の沖縄県知事選挙で官房機密費が使われることはないとお約束をしてください。

古川内閣官房副長官 繰り返し申し上げますけれども、内閣官房報償費につきましては、官房長官の責任のもと執行することとされておりまして、その使途については明らかにしないこととされております。

照屋委員 明らかにしないというのは民主党政権らしくないね。もしかしたら使うかもしらぬな。

 さて、前原大臣にお伺いいたします。

 大臣は、百二十三・六デシベルという爆音をどのような状態と理解をし、想像できるでしょうか。

前原国務大臣 みずからそういう爆音と言われる状況に置かれたことはないと思いますけれども、一般的な騒音レベルで申し上げますと、自動車の警笛が百十デシベルぐらい、そしてジェット機の離陸が百三十から百四十デシベルぐらいだということでございますので、百二十三デシベルというのは相当の騒音、爆音だと想像いたします。

照屋委員 北澤大臣はどういう感覚を持っていらっしゃいますか。

北澤国務大臣 会話が不能であるというレベルだというふうに承知しています。

照屋委員 北澤大臣、対話が不能であるという状態をはるかに超えているんです。百二十デシベルが航空機のエンジンのそばにいる状態、百二十デシベルを超えると人間の聴覚の限界なんです。この人間の聴覚の限界、これが百二十三・六デシベル。去る十月五日、嘉手納基地所属のF15戦闘機が普天間基地に飛来した際の記録であります。心臓が悪い通院加療中の市民が、命にかかわる問題だと悲鳴を上げている。

 総理、嘉手納基地や普天間基地の爆音は激化をしているんです。しかも、この嘉手納、普天間の両基地の爆音は、司法の場で既に違法だと断罪をされて、国の責任が追及されている。にもかかわらず放置をされている。

 北澤大臣、この爆音軽減に取り組むという大臣の決意、約束を沖縄県民に示してください。

北澤国務大臣 この音は耐えがたいものであるということは、私も報告を受けております。

 ただ、これは照屋委員は十分御存じだと思いますが、平成八年の三月に、日米合同委員会の場で、午後十時から午前六時の間の飛行等の活動は米軍の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限されることや、夜間飛行訓練は、在日米軍に与えられた任務を達成するために、また、飛行要員の練度を維持するために必要最小限度に制限されることなどが内容とされた航空機騒音規制措置が合意をされておるわけでありまして、米側からすれば、この合意に基づいて最小限にやっておる、こういうふうに言っておりますが、我々は、今回のことをとらえて、米軍に、可能な限り周辺住民の方々への影響を最小限にするように、累次にわたり、そして今回も申し入れをさせていただいております。

照屋委員 前原大臣、この爆音問題は非常に深刻なんです。いかにして政府がより実効性のある対策を講ずるか、これが大事なんですね。政府は、米軍の基地運用を優先させて、市民の命と安全を守ろうとしない。それで幾ら総理を初め各大臣が沖縄の基地負担の軽減と口先だけで言っても、ウチナーンチュの心には響かない。基地負担あるいは爆音、これははるかに県民の受忍限度を超えておる。

 どうされますか、前原大臣。

前原国務大臣 そこにお住まいの沖縄の皆さん方、また、特に当該地域の皆さん方には、大変な重荷といいますか御迷惑をおかけしているというふうに認識をしておりますし、大変深刻な問題であると考えております。

 平成八年に普天間飛行場における航空機騒音規制措置についての合意がなされているわけでございまして、まずは徹底的にこれを米軍側に遵守してもらうように、我々、外務省としても、外交ルートを通じてしっかりと沖縄の皆さん方の思いというものを改めて伝えるということはお約束をさせていただきたいと思います。

照屋委員 菅総理、民主党代表選で、まずやるべきことは、一に雇用、二に雇用、三に雇用とおっしゃいました。我が国の雇用情勢は極めて深刻です。たくさんの問題点がございます。

 社民党は、派遣労働者の保護を強化する立場で、労働者派遣法の改正を強く求めております。現在、衆議院において継続審議になっている労働者派遣法改正案の速やかな成立を期す総理の決意をお示しください。

菅内閣総理大臣 労働者派遣法については、私も所信表明演説の中で、実現をこの国会で目指したいということを申し上げました。

 これまでの派遣労働に関する行き過ぎた規制緩和を適正化して労働者の生活の安定を図ることが重要でありまして、御審議をお願いしている改正労働者派遣法は、派遣労働者の保護をするための抜本的な改革として、当時の与党三党、社民党と我が党と国民新党で共同でつくり上げ、提案したものであります。

 今般の改正案は、労働政策審議会で公労使三者がぎりぎりのところで合意をしていただいた、バランスのとれたものであると認識しております。他の野党の理解もいただいて、今臨時国会で速やかに御審議をいただき、早期に成立をお願いしたいと私どもも思っております。

照屋委員 最後は、馬淵大臣とほろ酔い談義で終わりたいと思います。

 いわゆる復帰特別措置法で、酒税軽減措置が二〇一二年五月に期限切れを迎えます。泡盛やオリオンビールは沖縄の誇る地場産業であります。沖縄の産業振興、ウチナーブランド確立の観点から、酒税軽減措置のほかに、原料米価格の引き下げ、あるいは県外出荷拡大のための物流コストの低減策など……

中井委員長 照屋君、手短にお願いします。

照屋委員 政府による総合的な財政支援が不可欠だと思いますが、大臣の決意をお聞かせください。

中井委員長 照屋君、質疑時間が終わっております。テレビの中では質問時間をお守りください。

 馬淵沖縄担当大臣。簡略に頼みます。

馬淵国務大臣 お答えさせていただきます。

 返還以来七回延長ということで継続させていただいておりますこの軽減措置につきましては、二十四年の五月の適用期限を見据えながら、二十四年度の税制改正要望の中でしっかりと検討させていただきたいと思っております。

 以上でございます。

中井委員長 これにて照屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 江田憲司でございます。

 総理、有言実行内閣、ぜひそうしていただきたいと思うんですが、前内閣が内閣ですから、やはり言っていることとやっていることが違う、言っていることもころころ変わってしまう、そうしたことで国民の信を失って退陣をした前内閣の二の舞にならないように、きょうは、一つ一つ具体的な事例に沿って、有言実行かどうか問いたださせていただきたいと思います。

 さて、これは昨日来から大変大人気の本でございまして、この「大臣」という総理の御著書、実は私も思い出がございます。橋本政権が終わると同時に辞表を出しまして、海外へ行く前に民主党の代表室にごあいさつに伺いました。橋本政権では厚生大臣と総理秘書官ということで一緒に仕事もさせていただきましたので、ごあいさつをさせていただいたときに直接、前の初版でございますけれども、いただきました。

 その後、読んだわけでございますけれども、ほとんどこの内容については首肯できる、問題意識も共有できる、菅直人さんという政治家には期待してもいいのかなと思わせた本でございました。だからこそ、きょうは、その期待を裏切らないでぜひ答弁をいただきたいと思うんですね。

 そこで、避けて通れない問題で、もう何回も聞かれておりますから嫌だとおっしゃるかもしれませんけれども、ここにやはり、疑惑を持たれた議員は、党首として何らかの措置をとるべきだろうと書いてあります。

 小沢一郎さんの問題は、強制起訴の問題もあるでしょう、ぜひ司法の場で刑事責任はとことんやってほしい。しかし、国会や政党というのは政治家の政治的道義的責任にけじめをつける場ですから、小沢一郎さんにつきましては、強制起訴の問題はさておき、御自身の秘書三人がみずからの政治活動に関して逮捕、起訴されているわけです。

 ここの閣僚の席に座っておられる方も含めて、過去、秘書が逮捕されただけで離党された方もおられます。議員辞職までされた方もおられます。それが、それなりの政治的道義的責任のけじめのつけ方でしょう。

 ぜひ総理、党首として、何らかの措置を講ずる、そう御言明いただけませんでしょうか。

菅内閣総理大臣 御承知のように、九月に代表選がありまして、私は、クリーンでオープンな政治、党内の選挙ではありますが、このことを公約として再選させていただいた中では、まず党の運営においてもそういう原則が貫かれるよう、そういう形の、幹事長の選任などを含めて実現するように手当てをしたところであります。

 もちろん、クリーンでオープンな政治というのは、党内だけではなくて政治全般に言われるということは当然だと思っております。

 そういう中で、今、小沢議員の問題について御指摘をいただきました。

 私は、二つ大きく問題があると思います。一つは、この間、小沢さん本人が、国民の前でちゃんと説明する、国会においても、ちゃんと国会で決めていただければそれに従っていく、こういうように言われている。つまり、説明責任の問題が一つあると思います。

 私は、それについては、何度も答弁いたしておりますように、そういう御本人の意向も含めてきちんと提案をいただいてきておりますから、その中でどういう場が適切か議論をして、最終的に必要であれば私も判断をいたしたいと思っております。

 もう一つ、その身分の問題があると思います。これについては、一般的には、いろいろな出処進退というのは、基本的にはまず政治家本人が判断をされることでありますが、特に今回の場合、私として、検察審査会の議決による議員の強制起訴というのは初めてのケースでありまして、そういう点では、従来のケースとの対比というものが、若干新しいケースだという認識も持たなければならないと思っております。

 そういう中で、まずは党務を統括する幹事長に党内外の意見を聞きながら対応を検討していただいている、こういう状況にあります。

江田(憲)委員 強制起訴の問題はさておき、秘書三人が逮捕、起訴される、尋常な事態じゃないわけですから、そこはぜひ党首としてのすぱっとした御答弁をいただきたかったのですが、大変がっかりいたしました。

 もう一つ、この本には大変すばらしいことが書いてあるんですね。「予算をどうつくるか」という章がありまして、そこにはこう書いてあります。「私には、「削る」という発想がそもそもない。」予算は「すべてをゼロベースで始める。前年がこうだったから、そこから何パーセント削るとか、上乗せするという発想はない。」ここまで書いてあるんです。そして、シーリングは廃止すべきだと。

 ところが、どうでしょう、皆さん。ことし七月、閣議決定された菅政権の来年度概算要求基準では、社会保障費や地方交付税を除く一般的な政策経費については一律一〇%カットだ。これはまさにシーリングそのものじゃないですか。そして、そこから出した財源を一兆円の特別枠に充てる。これはどこかで見た光景じゃないですか、皆さん。これは、自民党政権時代に毎年採用されていた財務官僚主導の古い古い予算編成手法ですよ。

 どうしてこういうことを、すばらしいことを訴えておられる、そして、昨年の鳩山政権時代の概算要求基準、そこでは、まさに「全ての予算を組み替え、新たな財源を生み出す。」と決定されている。これを民主党革命だとまでおっしゃって胸を張っておられる。どうしてこうやって豹変されるのか、私には理解できないんですが、御答弁をいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 私として、まだ予算編成にストレートにかかわった経験がない段階でそのようなことを申し上げたし、それができれば今でも理想だと思っております。

 昨年のことを言われましたが、昨年は、たしか八月の三十日でしたか三十一日に、自民党政権のもとでの概算要求が出されました。それを一たん全部ストップさせて、改めてその後、多少の経緯がありますけれども、我が党の鳩山政権のもとでの概算要求を出させ直しました。しかし、残念ながら、その中身はほとんど自民党時代の概算要求に私たちのマニフェストを上乗せした形になっていて、それを、九月ごろでしたか、十月でしたか、それから二カ月間、三カ月間で何らかの形に仕上げたわけでありますが、率直に申し上げて、そのときの若干の反省があります。

 つまりは、概算要求を廃止したつもりであったにもかかわらず、結果として、自民党時代ではあったにしても、そのものに上乗せした形で出てきたものですから、やはりこれでは、より難しい調整で、結果として、大きなめり張りのつく予算にするには、もちろん昨年の場合はマニフェストがありましたので、それでめり張りはつきましたけれども、それだけでは必ずしも十分ではない、こういうことを申し上げました。

 ですから、今回も、江田議員はおわかりになって言われていると思いますけれども、つまりは、全体を最終的に大幅に組み替えるその途中過程のプロセスとして、年金、医療や地方交付税を除いた二十四兆円について、まずは九割に絞り込んだ概算要求を出してくれと。それによって一兆を大幅に上回る元気な日本復活特別枠の財源を確保して、それをさらに切り込むことも含め、しかし一方で上乗せすることも含め、そのやり方によってより大きなめり張りをつける、そのプロセスとしてのいわゆる九割に絞り込んだわけでありまして、そういう点で、とにかく最終的に予算案が確定した段階でどういうものになったかということを、その時点で大いに御批判なり評価なりをしていただきたい、こう思っております。

江田(憲)委員 いや、要は、去年はそれは確かに自民党の予算をベースに継ぎ足しで上乗せしただけで、それは政治主導ができなかったという証左をみずから自白されているようなものです。

 それで、一律一割カットというのは、逆に言うと、九割は既得権益で認めるということなんですよ。当たり前のことなんですよ。私ももうこの世界は長いですけれども、こういうやり方をすれば、ゼロベースで見直す、予算を総組み替えするなんということは、もうはなからあきらめている。いや、そうなりますから。これ以上申し上げません。

 それで、では今度、代表選で総理が明言をされた人事院勧告を超えた人件費削減、やられるのかやられないのか、はっきりお答えいただきたい。

 その前に、片山大臣、私は片山さんが改革派知事としてやってこられた御功績は本当に心から敬意を表しています。片山さんが鳥取県知事時代に人事委員会の勧告、それを上回る賃下げ、賃金削減をしたと思いますけれども、それは事実ですか。お答えください、簡潔に。

片山国務大臣 鳥取県の当時の財政事情もありまして、人事委員会の勧告とは異なって、五%から七%のカットをいたしました。

江田(憲)委員 財政難で、人事院勧告は、それは尊重できればそれにこしたことはないですよ。しかし、鈴木善幸内閣のように、やはり財政難を理由に勧告を実施しなかった例もございます。

 ぜひ総理、代表選で明言されたんですから、いろんな問題があることもわかっておられた上で明言されたんですから、この場で人事院勧告を上回る削減をするとおっしゃっていただけませんか。

菅内閣総理大臣 これも御承知のことでおっしゃっていると思いますが、代表選でそれを上回ることを目指すということを申し上げました。その中で、人事院勧告の取り扱いについては、現下の社会経済情勢や厳しい財政事情、他方で国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格などを勘案し、政府において現在鋭意検討をいたしております。

 そういうことで、今鋭意検討をしているところであります。

江田(憲)委員 いや、総理なんですから、そんなことはおわかりの上で代表選で言ったと、それはみんな受け取りますよ、国民も民主党議員の皆さんも。それで投票したわけでしょう。ここで言えない、検討なんて、もうとんでもないことです。

 では、それも含めた、私も累次この場で取り上げました、国家公務員の人件費を二割カットする、五・三兆円のうち一・一兆円を削減するんだとおっしゃっているわけですよ。ただ、御承知のように、ことしの予算は、人勧をうのみにして、たった千四百四億円削減、そして、今回の人勧をそのままうのみにすれば、たった七百九十億円の削減、合わせて二千二百億円。これは一・一兆円のたった五分の一ですよ。二年間かけて五分の一。どうやって二割削減するんですか、どうやって。

 それで、それならば、まあ、お答えになっていますよ、労働基本権を付与する、来年の通常国会に公務員制度改革法を出す。そのスケジュール感で、本当に任期満了四年間でできるんでしょうか。

 考えてください。今、二〇一〇年なんですよ。通常国会、来年は二〇一一年、出すとしましょう。そこで成立すれば、二〇一一年の五月、六月、早くても成立はそこですね。そこからすぐ施行できませんよ。労使交渉の枠組み、だれがどうやってやるのか、枠組みづくりで施行期間が要りますよ。そうすると、二〇一二年の四月から、やっと労使交渉が早くてもできるんですよ。

 一二年中に、では労使交渉しましょうか。それで、見事それが削減できたとしましょう。そうしたら、それは一三年から施行されるんですよ。そして、衆議院の任期満了は一三年の八月に来るんですよ。何で二割削減ができるんですか。

 ですから、私は何度も何度も、工程表を示してください、こう申し上げているんですよ。何でできるんですか、お答えください。

片山国務大臣 今度の改造内閣で、私がこの総人件費の問題についての担当大臣になりました。

 現時点で、江田議員がおっしゃるような工程表を具体的にお示しすることはできませんが、いずれにしても、四年間で、これは人件費というのは単価掛ける人数ですから、それぞれの要素についてできることをやっていく。

 例えば、行政改革で事務事業見直しをして、その分は人数を減らす。それから、例えば、これからまた出るんだろうと思いますが、補助金の一括交付金化が実現しますと、各省の補助金配分係、その業務もなくなります。その他、地方の出先機関の地方への移管でありますとか、それから給与の改定でありますとか、そんなことを含めて全力を挙げてやっていくということで、できるだけ早くその具体像は示していきたいと思います。

江田(憲)委員 そういう答弁はもう聞き飽きたんですよ。

 それで、今出た地方出先機関の原則廃止。これは、所信表明演説を聞いて、私、おやっと思ったのは、地方出先機関の原則廃止じゃないんですよ、言葉が。地方出先機関の統廃合となっているんですね。私も役人出身ですから、この統廃合というのは役人用語なんですよ。広辞苑に載っていませんよ。要は、これは、看板のかけかえを許す、伝統的にそういう言葉遣いなんですよ。

 この地方出先機関の廃止、原則廃止、この方針はぶれていませんね、総理。いかがですか。

片山国務大臣 地域主権改革の中での出先機関廃止につきましても、私が担当になりました。

 原則廃止の姿勢のもとにゼロベースで見直すこと、これは変わっておりません。

 実は、自己仕分けを各省でやってもらったんですけれども、これは総理も御指摘になられましたように、ゼロ回答ではありません。まあ、非常に不十分なものであった。それに対して、これから改めてしっかりとやっていこうということ、強い指示がこの間出ましたので、私もそれを受けて全力を挙げたいと思っております。

江田(憲)委員 今御指摘のように、十月七日の地域主権戦略会議では、この出先機関の局の廃止どころか、国の十三機関四百七十二の事務、権限について、各省庁が出してきたものはその一割、たった四十五件にすぎなかった。出先機関の廃止どころか、こんな事務事業の仕分けですらこの程度のことなんですよ。

 そして、これは、私が春先にこの予算委員会で質問したときに鳩山総理は、この国家公務員人件費の二割減の一番主な項目はこの出先機関の地方への移管ですとおっしゃられたわけで、ここができなきゃ二割削減なんて絵にかいたもちなんですよ。

 総理、この辺について、決意を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 江田議員も橋本内閣でいろいろと苦労されて、現在の省庁のあり方も、当時の橋本総理としては、一つの霞が関改革ということでやられたんだと思いますが、率直に申し上げて、十数年たってみると、巨大な役所が幾つかでき、内閣府のように非常に複雑に絡み合ったところができ、必ずしも機能的な内閣府あるいは省庁という形にはなっておりません。

 この出先機関の問題も、そういう意味で、どれだけ難しいかというのは、多分、私以上に江田議員の方がよく御存じだと思います。そういう中で、今、片山総務大臣からも言っていただきましたように、原則は一切変えておりません。どこまでやれるかというのは、まさに私たちの政治的な責任にかかっている、そういう覚悟で現在臨んでいるところであります。

江田(憲)委員 いや、橋本行革の功罪については私も反省点もあります。そんなことをあげつらわないでください、総理大臣。もう、これからのことを前向きに考えましょうよ。

 そういう意味で、この出先機関の廃止というのは、皆さん、どうやってやるんですか。我々は道州制を導入しようと言っているんですよ。そういう受け皿がないと絶対にできないんですよ。できないことをやろうと言っているんですよ。だから私は質問しているんですよ。

 では次に、一括交付金ですね。

 これも代表選で大きな争点になりました。小沢一郎さんが二十一兆円のひもつき補助金を一括交付金化しよう、こうおっしゃって、総理も最後はお認めになったようでございます。これも十月七日の地域主権改革会議で、何とこの二十一兆円のうち、投資的経費の三・三兆円の内訳ですら、各省が地方に一括交付金化できるというのは二十八億円ですよ、皆さん。二十一兆円のうち二十八億円ですよ。

 これは、本当に総理、民主党政権下で一括交付金化をやられるんですか。やられる場合は、その投資的経費三・三兆円だけではなくて、小沢一郎さんが主張されているような、社会保障や教育費も含めて二十一兆円分、将来的にやられるんですか。ちょっと、はっきりお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 現在のもくろみとしましては、とりあえず、来年度から投資的経費に手をつける、その後、いわゆるソフト経費について順次進めていくということであります。

 おっしゃったように、三・三兆円の中で、各省が自主的に差し出したものは二十八億円でありますが、それで終わるというわけでは到底ありませんので、先般の地域主権戦略会議でも、それから翌日の閣議後の閣僚懇談会でも、総理から非常に厳しい御指示がありました。私を含めて各府省の大臣にありまして、それを踏まえて、改めて新たな気持ちでこれに取り組んでいく、こういう所存であります。

江田(憲)委員 伝えられるところによると、総理大臣は人事権の行使までにおわせてやられたというのは、私は、ここはぜひ、そこまで指示をされた、こういうことをやってほしいんですよ、菅さん。こうやって指示してほしいんですよ。だから、私はその部分は信じようと思っていますから、ぜひやってください。

 それから、私、この一括交付金の議論を代表選で聞いていて非常にけげんに思ったのは、使い道を自由にするのに、何で国からわざわざ地方に交付するんですか。税源移譲をすればいいじゃないですか。何でわざわざ国から地方に交付せないかぬのですか、一括交付金化で。まさか、第二地方交付税化して、また今度は、地方交付税は総務省だ、一括交付金は財務省だ、また財務省がああだこうだと文句をつけられる、そういった制度にしようとしているんですか。

 総理、ちょっと明確にお答えください。

片山国務大臣 一括交付金については、できる限りその自由度を高めるということで、各省の枠を超えるということ、こういう方針でやっていきます。

 ただ、とりあえず、今のことを言いますと、既に数年がかりのハードの事業なんかをやっていますので、ある程度暫定期間というのは、やはり移行期間というのは要るんだろうと思います。その後は客観的な、国の恣意のきかない制度にする、これが目標であります。そうなった段階で、そこから先は、実はこれは私の考え方でありますけれども、そうなった段階では、例えばこれを交付税の方に一元化するとか、それから、おっしゃったように、税源移譲で一般財源化するとか、それは、道行きは幾つか考えられるだろうと思います。

江田(憲)委員 総理、では、今の片山大臣の、その暁には税源移譲する、今おっしゃいましたけれども、総理、それでよろしいんですね。

菅内閣総理大臣 片山大臣から言われたように、たしか今二つの選択肢を挙げられたと思います。いわゆる一般的な地方交付税に一元化する、あるいは税源移譲する、そういう方向で考えたいと思います。

江田(憲)委員 地方交付税は、御案内のように、総務省、旧自治省があれこれ言うというのは片山大臣が一番よく御存じですから、そんなことをしても地方の自由度は高まりませんので、ぜひ税源移譲をお願いしたいと思います。

 それから、昨日出た裏下り、現役出向ですね。何か退職金を払わないからいいだろうみたいな発言もありましたけれども、そんな問題じゃないんですよ。皆さん、ちょっと考えればわかるでしょう。現役出向、二、三年後には省に戻って幹部クラスになる人とやめてから来るOB職員と、民間会社にとってどっちが怖いんですか。

 天下りを禁止する意味というのは二つあるんですよ。一つは、役所と天下り先が癒着をして行政をゆがめる。二つ目は、そういう出向ポストや天下りポストを維持するために無駄な補助金や許認可を維持する、無駄な団体を組織防衛する、これが問題なわけですよ。

 ですから、私が申し上げているのは、幹部クラスの現役出向なんというのは、今まで役所ですらその弊害を認めてやってこなかったことなんですよ。それを、何を困ったか、どんどん大っぴらにやるようになってきた。こんなことをしたら、民間会社や独立行政法人に与える影響は多大なもので、天下り以上に弊害が多いんですよ。即刻撤回をしてください。どうですか、総理。

仙谷国務大臣 現役出向と例の裏下りという御質問でございます。

 それで、裏下り、裏下りと、こういうふうにおっしゃるわけでありますが、少なくとも、昨年の九月十六日の鳩山政権成立以降、ありていに言えば、郵政の社長の関係を皆さん方から指摘をされているわけでありますが、それ以外に具体的にこれが裏下りだという御指摘を受けたのは実はないんですよね。(江田(憲)委員「損保協会をやったじゃないの、何を言っているんですか」と呼ぶ)総務省がやったというのはどういう意味ですか。(江田(憲)委員「予算委員会で損保協会をやったじゃないですか、副会長をここで」と呼ぶ)全然やっていない。いいですか、事実をちゃんと把握してからおっしゃっていただきたいと思います。

 それから、現役出向につきましては、これは従来の天下りとは全く性格が異なる、こういうことであります。つまり、国への復帰を前提として、出向時や復帰時に退職金が支払われることは全くありません。職員の出向先の給与水準についても、国民から批判を受けることがないように適切な対応をとることにしております。

江田(憲)委員 何を寝ぼけたことを言っているんですか。

 この場で私が、損保協会の副会長は、十代以上、大蔵官僚が指定席のように座っているじゃないかと指摘したじゃないですか。それをあなた方は金融庁の担当課の事務官に聞いただけで、盗人に、あんた盗んだのかと聞いたら、盗んでいないと言うに決まっていますよ。それで調査したと。そんなことでこんな裏下りが根絶できると思っているんですか。

 それから、きのう出たように、千五百九十人の人が退職勧奨をこれだけ受けているんですよ、二人しか拒否していない。あとの人はみんな自力でやったんですか。そんなことは考えられないというのがきのうの片山大臣の御答弁だし、私も官僚にいたから、こんなことはそれを信じる方がおかしいわけですよ。もういいです、答弁は。

 それでは最後に……(発言する者あり)そう指摘したから答えただけですよ、何を言っているんですか。

 では、最後の補正予算……

中井委員長 テレビの関係がありますから、どうぞ。いいですか。

 仙谷官房長官。

仙谷国務大臣 損保協会の件は、江田さんがおっしゃるように、甚だその種のものであるにおいが強いことを私も認めます。

 ただ、そのほかにありますか。つまり、郵政、損保協会のほかにありますか。これを御指摘ください。(江田(憲)委員「だから、千五百九十人の後、千五百八十八人が全部自力で行ったなんて信じる方がおかしいじゃないですかと言っている」と呼ぶ)ちょっと待ってください。それを説明します。

江田(憲)委員 もういいです、時間もありませんから。質問をしていないんだ。

 さてそれで、補正の中で今回措置されるというふうに言われている中で、三千五百億円の地方交付金、これも地方の裏負担に使われそうだ、六千億円の港湾や空港整備、これも公共事業だと。

 私は、民主党になって、前原大臣が御努力されて、一・三兆円の公共事業費削減をやったじゃないですか、これは政権交代の象徴だと思って、当時は評価をいたしましたよ。それを、今回の補正予算で一兆円を埋め戻す。

 そして、あの道路会社に前渡しした料金下げ財源を使って、一・四兆円も、それでまた、四車線化だ、高速道路の新設をさせるような権能を道路会社に持たせる。こういうことで、コンクリートから人へどころか、私に言わせれば、人もコンクリートもという、何でもありの予算になっているということを指摘したいんですよ。

 この点で、財務省の幹部がこう言っているというのが報道されました。民主党政権は「みんなに愛敬を振りまいて理念も何もなくなってきた。まさに人からコンクリートだ」と財務省幹部が言ったという報道が朝日新聞でもされております。

 私は、人からコンクリートとは言いませんよ、コンクリートも人もというのが民主党のばらまき政策だということを申し上げて、この史上最低の、ホッチキス対策だと霞が関で言われていることを最後に指摘して、これに対する総理大臣の見解を求めたいと思います。

野田国務大臣 多岐にわたるお話で、何が御質問だったのかわかりませんが、人からコンクリートとか関係なく、ばらまきは全くやっておりません。生かしたお金を使っていきたいと思います。

江田(憲)委員 以上のようにですね……

中井委員長 ちょっと、あなたに指名していません。着席してください。

 菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 いや、どの部分が質問なのかちょっとよくわからなかったので。(江田(憲)委員「コンクリートも人もじゃないんですかと言っているんです」と呼ぶ)

 この地域活性化交付金ということでいえば、これはハード事業に限定されておりませんので、それは適切な、どうしても必要な事業の、それはコンクリートの部分もあるでしょうし人の部分もあるでしょうが、それはそれぞれの自治体、地域で判断をしていただくことになると思っています。

中井委員長 質問時間が来ていますが、一問だけ認めます。

江田(憲)委員 これは、一覧表にいたしましたとおり、今ごらんになっているように、これはそれぞれの項目について、もうほとんど有言実行どころじゃないという実態が明らかになったと思います。

 ぜひとも、きょうは日銀総裁まで来ていただいて、さらなる金融緩和策、積極的な発動について御質問しようと思いましたけれども、もう時間でございますので、大変申しわけありませんでした。これで私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

菅内閣総理大臣 その表のことをあれこれ申し上げませんが、少なくとも、私が有言実行内閣と申し上げたのは、今回、代表に再選されて、内閣を改造し、党の執行体制を変えまして、これからいよいよやれる、本格稼働だ、これから言うことをこれから実行しようという、その覚悟を込めて申し上げたということだけは申し上げておきたいと思います。

中井委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっています。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に富田茂之君を指名いたします。

 ただいまから十分後に再開することとし、暫時休憩いたします。

    午後五時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時十七分開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、国会法第百四条による記録提出に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する件の調査に関し、本年九月七日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案をめぐる問題について、那覇地方検察庁に対し、本年九月七日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の映像記録の提出を求めることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 衆議院規則第五十六条の規定による手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十八分散会


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