衆議院

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第3号 平成23年2月1日(火曜日)

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平成二十三年二月一日(火曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      石毛えい子君    稲見 哲男君

      打越あかし君    生方 幸夫君

      江端 貴子君    小川 淳也君

      小野塚勝俊君    大串 博志君

      勝又恒一郎君    金森  正君

      金子 健一君    川村秀三郎君

      吉良 州司君    工藤 仁美君

      櫛渕 万里君    郡  和子君

      佐々木隆博君    城島 光力君

      平  智之君    高井 崇志君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      津村 啓介君    中根 康浩君

      仲野 博子君    長尾  敬君

      花咲 宏基君    福田衣里子君

      本多 平直君    三谷 光男君

      水野 智彦君    宮島 大典君

      向山 好一君    村越 祐民君

      森山 浩行君    山口  壯君

      山崎 摩耶君    渡部 恒三君

      甘利  明君    石破  茂君

      石原 伸晃君    稲田 朋美君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    鴨下 一郎君

      小泉進次郎君    佐田玄一郎君

      齋藤  健君    柴山 昌彦君

      菅原 一秀君    橘 慶一郎君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    遠山 清彦君

      笠井  亮君    阿部 知子君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   法務大臣         江田 五月君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国土交通大臣       大畠 章宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (沖縄及び北方対策担当) 枝野 幸男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中野 寛成君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (社会保障・税一体改革担当)           与謝野 馨君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (「新しい公共」担当)

   (科学技術政策担当)   玄葉光一郎君

   内閣官房副長官      藤井 裕久君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   内閣府副大臣       末松 義規君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   厚生労働副大臣      大塚 耕平君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   防衛大臣政務官      広田  一君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       合田 隆史君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月一日

 辞任         補欠選任

  石毛えい子君     工藤 仁美君

  金森  正君     玉木 朝子君

  吉良 州司君     勝又恒一郎君

  佐々木隆博君     森山 浩行君

  城島 光力君     向山 好一君

  津村 啓介君     花咲 宏基君

  中根 康浩君     福田衣里子君

  仲野 博子君     山崎 摩耶君

  本多 平直君     小野塚勝俊君

  三谷 光男君     平  智之君

  水野 智彦君     金子 健一君

  山口  壯君     江端 貴子君

  小里 泰弘君     石原 伸晃君

  齋藤  健君     橘 慶一郎君

  馳   浩君     石破  茂君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     櫛渕 万里君

  小野塚勝俊君     本多 平直君

  勝又恒一郎君     長尾  敬君

  金子 健一君     水野 智彦君

  工藤 仁美君     石毛えい子君

  平  智之君     三谷 光男君

  玉木 朝子君     金森  正君

  花咲 宏基君     高井 崇志君

  福田衣里子君     中根 康浩君

  向山 好一君     城島 光力君

  森山 浩行君     佐々木隆博君

  山崎 摩耶君     仲野 博子君

  石破  茂君     甘利  明君

  石原 伸晃君     鴨下 一郎君

  橘 慶一郎君     齋藤  健君

同日

 辞任         補欠選任

  櫛渕 万里君     山口  壯君

  高井 崇志君     津村 啓介君

  長尾  敬君     吉良 州司君

  甘利  明君     柴山 昌彦君

  鴨下 一郎君     稲田 朋美君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     小里 泰弘君

  柴山 昌彦君     馳   浩君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として文科省科学技術・学術政策局長合田隆史君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原伸晃君。

石原(伸)委員 自民党の石原伸晃です。

 きょうは、菅総理を中心に閣僚の皆さん方に、施政方針演説また政策等々について質問をさせていただきたいと思っております。

 冒頭でございますけれども、記録的な豪雪を記録されております日本海側の皆様また東北の皆様、日常生活にも大変影響が出ている。国として、予想を上回る豪雪でございますので、予備費等々を活用してこの豪雪対策をしっかりとやっていただきたい、このことを冒頭申し述べさせていただきたいと思います。

 また、宮崎県、鹿児島県の県境にございます新燃岳、これも五十数年ぶりの噴火でございます。火山灰、火山弾が飛び、地域の方々の生活にもかなり影響が出ておりますので、きめ細かい配慮をお願い申し上げたいと思います。

 さらに、鳥インフルエンザ、全国に飛び火して、実態はなかなか拡散がとまらないところでございますけれども、この点につきましても、被害に遭われた農家の皆様方にお見舞いを申すとともに、政府としてしっかりとこの問題に対処いただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 冒頭、この三点につきまして総理の御決意をお聞かせ願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 きょう朝も閣議前に、この豪雪の問題と霧島山・新燃岳の問題について関係閣僚が集まりまして、対策に万全を期したいということで話し合ったところであります。

 自衛隊にも出動要請が福井県の方から出されて、そして車の動かなくなったものについては、現時点ではすべて動くようになった、こういう報告もいただいております。また、多くの方が雪おろしで亡くなられているということについても、ボランティアの皆さん、あるいは、どうしてもの場合には自衛隊の出動も含めて、そうした雪おろしのお手伝いというのか、そういうことも検討しなければならない、このように考えております。

 また、新燃岳の方は、大きなドームになっているということで、大きな爆発があると火砕流のおそれもあるということで、そういうことに対してもしっかりと対応したいと考えております。

 また、鳥インフルエンザの問題は、本当に、だんだん広がるというよりも、ぽつぽつぽつといろいろなところで発生している。野鳥が原因ではないかということでありますが、そういうことに対しても、迅速な形で必要な殺処分、埋却等を行うと同時に、新たにそうしたことが発生することを防ぐような、そういう手当てについても、すべての養鶏場に対してしっかりとした対応をお願いする。

 ここも、警察、防衛省、さらには国土交通省、全力を挙げて取り組んでまいりたいし、現在取り組んでいるところでありまして、御指摘のとおり、これらの問題についてはしっかりと頑張ってまいりたい、このように考えております。

石原(伸)委員 今の総理の強い決意を受けて、閣僚の皆様には御尽力をお願い申し上げたいと思います。

 次の問題をまた私、質問しなければならないことを非常に残念に思っております。

 民主党の皆さん方の政治と金に対する責任感、覚悟のなさ、自浄力のなさを端的に示しているのが、小沢元代表の国会招致問題だと思っております。きのうですが、ついに小沢氏が強制起訴されるに至ったわけであります。

 総理は、年頭一月四日の記者会見で、政治と金の問題から脱却したい、そういう年にしたいと述べられました。結局、強制起訴がきのう行われたわけですけれども、国民の皆さん方は、総理は指をくわえて見ていただけじゃないか、政治と金の問題から脱却するために何をこの二カ月間されてきたのか。また、年頭記者会見であそこまで踏み込まれた総理、一体何をお考えなのか、冒頭お聞かせ願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 まず、元代表である小沢議員が起訴されたことは大変残念なことだ、このように考えております。

 そういう中で、この間、起訴をされる前でありますけれども、国会できちんと説明をする、御本人もそういう意思を表明されておりましたので、そういうことを実現することに向けて、政倫審でのお話をされるようにということを私からも要請し、そして岡田幹事長がその段取りを野党の皆さんとも相談をしながらとっていたわけでありますが、残念ながら、最終的、今日までの段階では、御本人が国会前の出席についてそれに応じられなかった、こういうことで、今日まで政倫審における説明もなされておりません。

 私としては、昨日の起訴がありましたが、国会での説明はやはり必要だ、なされるべきだ、こういうふうに考えておりまして、今後も国会で、どういう形でどういう時期に行うかということは、これは国会の質疑との関係もありますので、岡田幹事長を中心に与野党でしっかりと話し合って、そうした国会での説明が実現するように努力をしていきたい、このように考えているところであります。

石原(伸)委員 与野党で努力をしていただきたいと。私たちも努力しています。岡田さんも努力していると思います。しかし、総理が方向性を示さない限り、小沢氏御本人は、政倫審には出ない、強制起訴の事態を受けてますます出る可能性が低くなってきた。

 十一月に一回、十二月に一回、一月に一回、与野党の幹事長・書記長会談が開かれ、野党が一致して政倫審を要求してくれれば、小沢さんが政倫審に出る可能性が高まる、しかし、一〇〇%とは言えないんですと、岡田さんは本当のことを私たちに話したと思いますが、政治は結果であります。総理が昨年からここまで、年頭の会見までおっしゃられて、国会に招致されることがない。さらに、岡田さんは、政倫審そして証人喚問、この二つしかないんだと。

 もうそろそろ総理がリーダーシップを発揮されたらどうでしょうか。私も、質問のたびにこの問題から話さなければならないということは、非常に残念でならないわけであります。国民の皆さん方は、みんなもうわかっていらっしゃると思うんですね。民主党として、小沢さんに国会に来てもらいたいのか、来てもらいたくないのか、これをやはりそろそろ明らかにして、はっきりされたらどうでしょうか。

 またこういうことがあって、これからその処分等々についても民主党の役員会で決められる。そこについて私どもはとやかく申しませんが、やれ離党勧告だ、辞職だ、さらには党員資格停止だ、一体いつまでこの問題を引っ張って、臨時国会のおしり、そして年頭、そしてきょうは二月一日であります。そろそろ民主党の方針を転換していただいて、総理のリーダーシップによって、証人喚問、予算委員会の現場で努力してくれ、そういう言葉があってもいいのではないでしょうか。総理の誠意のある御回答を求めます。

菅内閣総理大臣 民主党として、あるいは私としての方向性は、九月の代表選以来一貫をいたしております。

 代表選で、私は、クリーンでオープンな政治運営、これは、党としてもそういう方針でいくべきだと思いますし、政治全体の運営においてもそういう方針でいくべきだということで、党員、サポーターを含めての皆さんの御支持をいただきました。党運営についても、そういう方向で今現在進めているところであります。

 国会における説明については、先ほど申し上げたとおり、御本人も、ある時期、それは国会で決まればそういう場で説明するという趣旨のことも言われておりまして、そうした中での政倫審への出席ということを要請したわけであります。

 しかし、先ほど申し上げたように、現時点では、御本人が、日程上のことを含めてかもしれませんが、まだ出席を決意されていないということで、大変それは私としても残念でありますし、申しわけなく思っております。

 それに加えて、今、石原議員の方から国会でのいろいろなことを言われました。ここは、国会でのどういう場でその説明をすべきかという議論は、私が総理大臣という立場で決める種類のことではないと思っております。

 党としての立場は、先ほど基本的な方向性は申し上げ、その方向性のもとに岡田幹事長がその立場で努力をしているというのが現在の状況でありまして、ぜひとも与野党間でしっかりと議論をしていただきながら方向性を定めていただきたい、このように考えているところであります。

石原(伸)委員 もう一度伺います。

 総理は、民主党の代表としてリーダーシップを発揮されるのか、この問題に終止符を打つつもりがあるのかないのか、お答えください。

菅内閣総理大臣 私も長年この国会に籍を置いて、ちょうど私が一九八〇年に当選したころには、田中元首相がかなりの大きな影響力を持たれておりました。

 率直に申し上げまして、政治家の政治と金の問題というのは、最終的には、これは政策論とは若干違いますので、御本人がきちんと説明されれば、国民の皆さんが納得されればそれで一つの方向性が出るわけです。

 その上で、若干申し上げますと、私は……(発言する者あり)いいですか。私は三十年間この国会に籍を置いていろいろな場面を見ておりますけれども、この問題が、例えば小沢元代表がそのことで私たちの民主党の政策なりあるいは国政上の問題に好ましくない影響を及ぼされているとすれば、それは私は、何としてもそれに対してはきちっとした対応をとらなければならない、このように思っております。そういう中でいえば、現在の内閣あるいは党の方針は、きちんとしたルールにのっとって物事が決まっているわけでありまして、小沢代表のこの問題で何か政策的にあるいは党の方針が大きく影響されているということはありません。

 そういった意味で、国会での説明に関しては国会のルールにのっとってやるのが当然ですから、それを私にリーダーシップを発揮しろと言われるのは、野党の皆さんまで私に一任されるわけじゃないでしょうから、やはり与野党で御相談をいただくしかないというのは、これは私の立場としては当然だと思いますが、違うでしょうか。

石原(伸)委員 今、総理は、与野党で話してくれと。野党は一貫して、社民党の皆さんを除いて、証人喚問であるんですから、総理が民主党として、証人喚問をこの予算委員会で考えてくださいと言ってくだされば、一歩前に出る。その点を最後、もう一度お聞かせ願いたいと思います。(発言する者あり)

中井委員長 申し上げますが、答弁の声が質問者に聞こえないような状況にありますから、もう少し考えて委員外発言をしてください。

菅内閣総理大臣 今申し上げたように、我が党として、クリーンでオープンな政治運営ということを党の中でもあるいは国の政治においても目指しているということは明確ですし、私もその姿勢で臨んでおります。

 何度も申し上げますが、小沢元代表のこの国会における説明については、必要であるという基本的な立場でこれまでも臨んでまいりました。そういう中で、どういう場で、どういう時期にという問題はやはり国会のルールにのっとって決められることでありますから、私としては、基本的な方向に沿って岡田幹事長がしっかりとこの問題を進める努力をしている、このように思っておりますので、与野党間、あるいは与党の中にもいろいろな意見が民主党以外にもありますので、そういう皆さんの意見も含めて、しっかり方向性を定めるような話が進むことを私も期待をいたしております。

石原(伸)委員 総理、これは総理の小沢元代表の政治と金に関する主な発言を拾わせていただきましたが、今の答弁では、国民の皆さん方は失望されていると思います。やはり、総理のリーダーシップでこの問題に終止符を打つことが熟議の国会をスタートする第一歩になると私は申し述べさせていただきたいと思います。

 さて、総理、低迷する支持率回復に必死になって、新しい閣僚の方が入られた。しかしながら、どこの世論調査を見ても余り評判はよくないようでございます。特に、目玉であったはずの、たちあがれ日本の共同代表であり我々の同僚議員でもございました与謝野氏の入閣には、私たち以上に国民の皆様方が驚かれたのではないかと思います。

 与謝野氏は、実は私たちの、東京の自民党の比例の枠で当選されたんです。自民党と書いてくださった方がいたからこそ、与謝野さんはバッジをつけたわけであります。その人が、いつの間にやら、皆さん方を批判していたはずの民主党の大臣席に座られて、おさまっております。

 総理、これは明らかに私は民主主義のルール違反だと思います。総理そして与謝野さんの政治家としての矜持、あるいは人間としての徳というものは一体どこに行ってしまったんでしょうか。

 総理もかつて、民主党の比例選出の大江議員や渡辺議員が離党して新党に走られたとき、きちっと議席を民主党に戻した上で離党するのが筋だと参議院の予算委員会で話されておりました。

 今、御自身のお言葉どおり、与謝野大臣にも、自民党のバッジを返してあげてくださいと、この場で言ってください。

菅内閣総理大臣 私が与謝野さんに閣僚をお願いした理由は極めて明確です。

 これは国民の皆さんにももちろんお伝えをしているつもりでありますが、つまり、社会保障と税の一体改革というのはやはりこの二十年間ある意味で先送りをされてきた問題であって、我が党としてもこの問題に先送りすることなく取り組もう、こう考えてまいりました。その中で、この問題に対して高い見識と高い志を持っておられる、そういう方として、私は与謝野さんに、ぜひ内閣に参画していただきたいということをお願いして、加わっていただいたわけであります。

 そういった意味で、私がお願いした理由は極めて明確であるということを申し上げておきたいと思います。

石原(伸)委員 税と社会保障の一体改革についてはこの後質問をさせていただきたいんですが、今の総理のお話を聞かせていただくと、民主党の中には税と社会保障の一体改革をやる適格な人がいないので、我が党で取り組んでいた与謝野さんを採用したというふうに聞こえました。

 私の質問の趣旨は、総理が、御同僚が新党に行ったとき、バッジを外されたらどうですかとおっしゃった以上、今回我々に同じケースとして起こったから、総理の口から与謝野さんに、大臣は任命したのはわかりました、せめて私ども自民党の議席は自民党にお返しくださいと、総理がおっしゃっているわけですから、それと同じことを言ってくださいと言っているわけであります。

菅内閣総理大臣 まず、前段で、我が党の中にそういう人材がいる、いないというようなことも言われました。

 私はあえてこの問題であれこれ深入りするつもりはありませんが、例えば自民党の政権の中でも時折民間の方を入れることもありますし、いろいろな方を入れることもあるわけであって、それは、議員の中にもすぐれた議員がもちろん数多くおられるわけですが、場合によってはそうした民主党の議員でない方も含めて、内閣として適任だと、例えば今、片山総務大臣は議員ではありませんけれども、そういう形で私からお願いをいたした方の一人であります。

 それと、後段で言われた問題については、私は、今申し上げましたように、与謝野さんに閣僚をお願いしたのは、社会保障と税の問題で高い見識と高い志を持っておられるということでお願いをいたしたわけであります。

 党との関係については、既に、たしか、たちあがれ日本に籍を置かれていたわけでありまして、その段階で自民党との間でどういう話があったのか私は十分聞いておりませんけれども、いずれにしても、私がお願いしたのは、あくまで、この社会保障と税の問題についてぜひ中心的な役割を果たしていただきたいということでお願いした、これに尽きているところであります。

石原(伸)委員 総理は、深入りするつもりはない、バッジを外してくれと言うつもりはないという御答弁をいただいたと思いますが、私たちは、この問題は極めて人としての徳の問題あるいは政治家としての矜持の問題でありますので、後ほど同僚の鴨下委員からこの問題は詳しく質問をさせていただきます。

 さて総理、国会運営について、総理は代表質問の中で、民主党にも反省すべき点はあったと答弁をされております。しかし、総理が反省したと思いきや、当予算委員会は、野党との日程など何らの協議もなく、強行されました。そうかと思えば、昨日、趣旨説明をもう一度やり直す。

 一日ごとにころころ言うことが変わる人たちの一体どこを私たちは信じればよいのか。武部理事の御苦労はうかがい知ることができないぐらい私は大変なことだと思います。熟議の国会が本当にあきれる。

 さらに、予算の審議が始まる前に、ごらんください、官房長官や党の幹部がそれぞれ勝手なことをこの予算の修正について発言されている。閣議決定された今回の予算というものは、総理、そんなにいいかげんなものなんですか。自分が最善と信じることのできない予算を国会に提出したんですか。

 総理、予算を修正する考えがあるのかないのか、イエスかノーかでお答えください。

菅内閣総理大臣 今、石原議員の方から、熟議の国会に関してと予算について御意見をいただきました。(発言する者あり)

中井委員長 御静粛に。

菅内閣総理大臣 率直に申し上げて、民主党、野党時代、いろいろな場面がありました。そういう中では、野党時代の民主党の国会対応に対して反省すべき点もあった、私はこのように思っております。

 と同時に、さきの臨時国会では、野党の要望に相当配慮して長時間の審議時間を確保するなど、私たちとしては熟議を行うために努力をしたつもりでありますけれども、長い時間の質疑はありましたけれども、こういった社会保障とかあるいは財政といった議論が必ずしも深まらなかったということは、これは残念なことだと思っております。その上で、この国会では、こうした国会質疑あるいは国会の中での党首討論も含めて、しっかりと建設的な政策議論が進むことを望んでおります。

 その上で、予算についてお話がありましたが、この予算案、最善のものというふうに考えて、私の内閣として閣議決定し、国会に提出をいたしております。

 いろいろな発言があったと言われますけれども、私は、それは国会での議論は議論として当然あるわけで、それに耳を傾けることは必要でありますが、これが最善の予算であるという立場で、ぜひともこの予算案どおりに成立をさせていただきたいと強くここの場でお願いを申し上げておきたいと思います。

石原(伸)委員 耳を傾けたいと言いつつ、予算案の修正には応じないというふうに聞こえたんですけれども、それでよろしいでしょうか。

菅内閣総理大臣 今申し上げましたように、私たち内閣として、最善のものということで提出をいたしたわけですから、その最善のものという立場で、この質疑の中でいろいろな御意見にはお答えしながら、その意見については十分耳を傾けたい。しかし、最善であるという考え方を少なくとも私たちは変えてはおりませんので、最善である予算案をぜひとも成立させていただきたい、このように申し上げているところです。

石原(伸)委員 総理の今の御答弁、これまでの国会あるいはテレビでの話を聞かせていただきますと、予算を早く成立させないと日本経済に悪影響が出る、そういうふうに主張されているように聞こえます。しかし、我々はそうは思っておりません。むしろ、この二十三年度予算案が成立することの方が日本経済をだめにすると考えております。

 なぜなら、税収を上回る四十四兆円の国債発行、そして戦後最大の個人への大増税、各種控除の排除、相続税の増税。実は、ばらまきを賄うという、収入よりも借金が多い、家計に合わせるならば赤字家計簿予算は、これは将来的には国民の皆さん方の勤労意欲を損なって、閉塞状態を招き、国際競争力をも低下させると思います。

 その証拠があります。先日の日本の国債の格付の引き下げであります。それにもかかわらず、総理は、経済が余り専門ではないということでございますけれども、そういうことに疎いのでと述べられました。そして、その発言が問題視されますと、判断に必要な情報が集まってこなかったという意味なんだと強弁されました。また人のせいにしましたね。これでは、この情報を上げている事務方はたまらぬと私は思います。

 もうそろそろ、あのときから情報が集まったと思いますので、改めて伺います。アメリカの格付会社が日本国債の格付を引き下げた原因を総理はどのようにお考えでしょうか。

菅内閣総理大臣 最初のことで、同じことを余り繰り返したくはありませんが、少なくとも記者に聞かれた段階では、スタンダード・アンド・プアーズの格付が下がったというその事実を私がまだ聞いていなかったという意味で申し上げたということだけは、しっかりと改めて申し上げておきたいと思います。

 その上で、この格付が下がったことについて、その原因なり理由なりをどう考えるかということであります。

 一つ前提として、このスタンダード・アンド・プアーズという格付会社は、民間の格付会社であることはもちろん御承知のとおりでありまして、それぞれ会社ごとに格付をしている。それはそれとして、ビジネス界なりいろいろな社会ではある程度の意味を持っていることはよく承知をしておりますけれども、必ずしもそのことをもって、私の立場で、それはこういう理由だろう、ああいう理由だろうと言うことが果たして適切なのか。私の発言は、いや応なくマーケットにおいても大変反映をされます。

 例えば、一つの例でありますけれども、スタンダード・アンド・プアーズがかつて大変高い評価をしていたデリバティブ関係の証券が、その後事実上破綻した例も、決してこれは遠い昔のことではなくて、あるわけでありまして、そういう点では、こういった民間の格付は、ある意味での参考にすることはあって結構ですけれども、少なくとも、それに対して、今、私の総理大臣という立場でこうだああだと言うことは控えるのが本来の姿であろう、私はこのように考えております。

石原(伸)委員 総理、今のお話を聞いていて、二つあります。

 一つ目は、情報を聞いていなかったという御答弁だったと思います。しかし、そうであるならば、これは急に格付を下げたんじゃなくて、去年の暮れから下げると言っていたんですね。ですから、その情報が、今はウエブの時代ですから、携帯電話にもすぐ入るわけですよ。やはり瞬時にその情報が入って対応するということが一国の総理大臣として正しい姿勢でありますし、私は、その情報が伝達されていないとしたら、これはもっと大きな問題だと思います。これが第一点。

 第二点目は、ある意味で参考にして、こうであるああであると言わない、それが正解ですよ。そういうふうに何であの情報に接したときに言えなかったかということが問題なんです。野田さんが言ったとおり、コメントを差し控える、そう言えばよかったんです。やっと総理もおわかりになったので、安心をいたしました。

 総理は、財務大臣のときに、日本経済はデフレであると宣言をされました。財務大臣がデフレを宣言されるからには、強力なデフレ対策も同時に打ち出されるとだれもが考えましたけれども、私は、日銀の金融緩和以外何も出てこなかったように思います。

 総理、今総理になられても、現状は財務大臣当時と変わっていないという御認識なのか。そして、もし変わっていないとお考えならば、一年半たったわけですから、これから一体どういう政策を打ち出そうとされているのか。お答え願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 デフレに関して言えば、デフレ状態をいかに脱却するかということで、多くの政策的な手だてを打っております。そして、今年中にデフレから何とか、いわゆる物価が、物価下落から、少なくとも下落ではないところまで持っていくという目標を持って対応いたしているところであります。

 デフレ脱却にどういう手だてを打っているかという趣旨の御質問だと思いますので、私としては、デフレを招いている最大の原因は、いろいろな原因はありますけれども、個人も会社もお金がないわけではない。しかし、お金を使って物を買ったり投資をするよりも、お金のままで持っていたい、そういう傾向が非常に強まっていることがこうした状況を長引かせていることになる。

 そこで、そういうお金を、ある意味政府がお借りするなり、あるいは税金でいただいてそれを使うということが政府の一つのこれまでやってきたことでありますけれども、そのかつての政府もやっていた中でいえば、残念ながら、そのことが効果を十分に上げない分野での政策展開が行われた。

 余り長くなっても恐縮ですから多少短目に言いますと、一九八〇年代までの、公共事業中心のそういう需要拡大が必ずしも日本の成長につながらなかった。そして、小泉、竹中さんの時代の、デフレ下においてデフレを促進するような、つまりはリストラを積極的にやるような政策こそが日本の経済をよくするといって、一層格差の拡大とかそういう面で悪くした。こういう第一の道と第二の道の間違いを正して、雇用を中心に経済を立て直そうという第三の道を提唱いたしました。

 そして、特に、潜在的な需要がある介護とか医療とかあるいは子育てとか、そういう分野にある程度の財政的な支援もすることによって新たな雇用を生み出す。新たな雇用が生み出されますと、賃金に対する引き上げ圧力になり、新たな収入を得た人は税金も払い、そして新しい消費も行いますから、そういう形でデフレ脱却をしていく。

 つまりは、雇用と成長、これの好循環を実現するために、この間、ステップワン、ステップツー、そして現在審議をいただいている来年度予算をステップスリーとして一連の政策を打ってきて、私は、じわじわではありますけれども、その効果があらわれつつある、このように見ているところであります。

石原(伸)委員 一年半たちまして、ことしの末までに物価の下落を食いとめたい、そして、その政策の中心にあるのは雇用政策、そして、雇用の現場としては医療とか介護の分野にお金を入れていくというようなお答えだったと思うんですけれども、私、それでは不十分だと思うんですね。というのは、やはり、需要と供給の間にギャップがあって、経済政策の総動員が実は必要なんじゃないか、私はそう考えます。

 金融、先ほど若干触れたんですけれども、GDPがおよそ五百兆円として、五兆円の金融緩和ですから一%、アメリカは倍のGDPで一千兆として六十兆円、九十円換算ですけれども、そうしますと大体五、六%の金融緩和。この金融の部分でも十分でもないですし、総理が言われた分野だけでも十分ではない。公共事業に対して非常にネガティブな発言がありましたが、公共事業の話は後ほどまたさせていただきますけれども、政策の総動員というものが実は望まれていますけれども、私は、まだまだ片方に偏っているんじゃないか、もう少し門戸を開いて、政策のウイングを広げて、この物価下落、お金が回らないということは非常に日本の大きな問題でありますので、幅広い議論をぜひしていただきたいと思います。

 それと、一点訂正をさせていただきたいのは、森内閣でデフレ宣言をして、小泉成長戦略、すなわち、規制緩和を行って障壁をなくして、いろいろなものが他業種に入れるような形で、デフレは一回修復しました。しかし、またその傾向が顕在化したから、総理が一年半前に、鳩山内閣のときの財務大臣のときにデフレ宣言をされた。この循環であるということは指摘をさせていただきたいと思います。

 私は、この後お話をさせていただきたいのは、やはり需給ギャップをどうやって埋めていくのか。二〇一〇年の七―九の数字で見てもおよそ十五兆円、これは内閣府の数字ですけれども、十五兆円のギャップがある。そんなときに経済波及効果の薄いばらまき政策をオンパレードしても、実はこの問題の回復には全く寄与しない。その最たるものが私は子ども手当だと思います。

 実は、子ども手当を強行採決されました昨年の三月十二日の厚生労働委員会、当時の長妻厚労大臣は、子ども手当に政策目標はない、効果は配った後で検証するという信じがたい趣旨の答弁を連発されておりました。昨年の十二月に厚労省の調査結果というものが出てまいりましたけれども、子ども手当の使い道、何に使っているんですかと。将来が不安だから、四割から四割ちょっとの人が貯蓄に回す。そして生活費に一割強、そして遊興費に一割弱。すなわち、六割を超える方々は、このお金を政策の趣旨であるものとかけ離れた形に使われている。

 これは一体何なのか。何のために巨額の税金をばらまくのか。その巨額の税金、四兆円というお金が入っているこのばらまき予算に私たちが実は賛成できるわけがないわけであります。総理は修正についてネガティブなお話をされたように、ここが全くいじられない限りは私たちは賛成することができない。

 しかも、総理が選挙のときに掲げられたマニフェストに違反をしております。一人二万六千円、金額の問題もそうであります。全額国費負担ということもお約束をされていた、鳩山総理の演説を私は覚えております。そして、それが今どういう結果を招いているかといいますと、地方に理不尽な負担を強いて、地方が大混乱に陥っている。皆さん方の民主党出身の松沢神奈川県知事、先日おいでになりました。山中松阪市長、これは三重県の民主党の職員の方だったと言っておりました。地方負担に絶対反対だ、こういう立場を表明されて帰りました。

 総理、そろそろ、子ども手当については所得制限を設けるとか、あるいは政策的効果、経済波及効果が薄いからデフレ対策にはならないということで、四兆円のお金があるならば、違うことに回してデフレギャップの解消に進むといったような、子ども手当についてこれまでの考えを変更されたらどうか、提言をさせていただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 子ども手当については、我が党のマニフェストの中の極めて重要な政策であります。石原さん初め、しきりにばらまきという言葉を使われます。しかし、これはばらまきではありません。

 政策目的の第一は、今の少子化に対してしっかりとした対応をしようということが第一にあるわけです。これから社会保障全体の議論もいたしますけれども、私たちが昨年決めた五原則の中でも、どちらかといえば、高齢者に対する手当はいろいろとこれまでも充実してきましたけれども、子供に対しての対応は非常に薄かった。そういう反省に立って、この子ども手当というものを、それまでの児童手当にある意味で強化する形で提案をしたわけであります。

 そして、初年度は確かに目標どおりの水準には達しませんでしたけれども、月一万三千円という水準で実施を始め、そして来年度については、三歳児までは月二万円まで引き上げる、こういう形で実施をしようとしているわけでありまして、そういう政策目的に合っているかいないかという議論は大いにあっていいんですけれども、単にばらまき、ばらまきと言葉だけで言われても、それは私は認めるわけにはいきません。

 子ども手当というものの第一義的な目的は、まさに少子高齢化に対する、特に少子化に対する対応の大きな一つでありまして、それに加えて、そのことが経済的にもある程度の効果がある、そういう認識のもとに実行しているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

石原(伸)委員 総理、ある程度の政策効果はどんな政策でもあります。ただ、厚労省がまとめた調査で、六割の人が要するにこの政策目的と思われるものに充てていない現状をどう考えるのかということ、これが第一点。

 第二点目は何か。そうであるならば、恒久的な制度に何でできないんですか。財源を伴わないでお金をまくというのはばらまきというんですよ。皆さん方は、だって、マニフェストで約束されたでしょう。二百七兆円の特別会計の組み替え、四年間で十六兆八千億円のお金を出す、増税はいたしませんといってこの政策を入れたのに。では、子ども手当法案というのは何で一年こっきりの法律案なんですか。

菅内閣総理大臣 まず、この子ども手当を含むマニフェストについては、昨年の段階でもそうですが、いろいろと無駄の削減等で、一部埋蔵金もありますが、三兆円余りの財源を捻出する中から、その一部を充ててこの子ども手当を実現したということであります。そして、今回の三歳児までの引き上げについても、税制の改正も含めてそれに充てているわけでありまして、私は、何かそのことが一時的なことというよりは、確かに、今後のことのいろいろな仕組みの問題がありますので、単年度で法案を出したことはそのとおりでありますけれども、私たちとしては、これは恒久的に続けていくべき政策であるということを前提にして提案をさせていただいている。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

石原(伸)委員 質問にはお答えになっておりません。

 ここはきついところで、私は何でこの質問をさせていただいているかというと、予算案はすなわち衆議院の優越性があります。しかし、皆さん方のこのマニフェストの中で一番の目玉となっている子ども手当、そして、この子ども手当は単年度の法律である、ここのところをセットで議論をしていかないと、この予算の議論をしていったとき、最後、そこで行き詰まるんですよ。これは行き詰まるんですよ、我々賛成できないから。

 だから、この問題について、総理としてここで歩み寄る考えが全くないと言ったら、どれだけ議論をしても平行線で、この問題は行き詰まります。そうしますと、総理が政治生命をかけるとまでおっしゃられた税と社会保障の一体改革の議論に入る前で、これは頓挫してしまう。

 ですから、私は、この問題について、単年度でやっているこの子ども手当法案、その点について、何で単年度なのか、改めて問います。何でなんですか。そして、何で変えようという気がないんですか。我々に歩み寄るつもりは全くないのか。イエスかノーかだけでお答えください。

細川国務大臣 この子ども手当につきましては、もともと控除から手当にという思想がございます。控除というのは、比較的裕福な方、所得の多い方に有利であります。それから、手当というのは、収入の少ない人に有利な制度でございます。

 そういう制度で扶養控除を廃止して……(発言する者あり)ちょっと聞いてください。扶養控除を廃止して、そうしますと、地方の収入もふえるわけなんです。それが二十四年度。二十三年度にはそんなにふえないんです。二十四年度から地方の収入がふえる。そうしたら二十五年もふえるわけです。したがって、その収入がふえる、それを話し合ってやりましょうということで、ことしはふえない、再来年度から地方がふえるということで、そのときにやりましょう、こういうことでございました。(発言する者あり)

中井委員長 武部さんが質問者じゃありませんから、気にせずにやってください。

細川国務大臣 そういうことで単年度にした、こういうことであります。(発言する者あり)

石原(伸)委員 ちょっと、理事の人がうるさくて、委員長、理事の人に御注意を願います。

中井委員長 お互いに静粛にお願いします。

石原(伸)委員 お答えになられなかった。これがこの問題の予算案の審議で大きなとげになってくる。

 一体改革の方の議論にちょっと移らせていただきたいと思います。

 一体改革の議論は、この後、同僚の野田議員から詳しく、午後、行わせていただきますけれども、総理が政治生命をかけられるとおっしゃられた社会保障との一体改革、民主党のマニフェストには残念ながら書いていません。国民に社会保障の全体像を示して、与野党でフレームワークを合意し、その上でサービスを安定的に供給するために消費税を含めた税制の抜本改革を明言しているのは、実は私たち自民党なんですね。

 民主党の皆さん方は、私たち自民党と、先ほどの子ども手当の問題一つとってみても、政策理念が似ても似つかない。私たちが必死になって取りまとめたものを、形だけかりて唐突に一体改革と持ち出されても、それは、はい、わかりましたと私は言うわけにはいきません。

 なぜか。子ども手当を撤回するつもりはないということはわかりましたが、そのほかにも、これ、見てください。いわゆるばらまき政策。まあガソリン税の暫定税率の廃止は、あきらめたようですし、後期高齢者医療制度もあきらめたようですが、最低保障年金、月額七万円というのは、これだけで要するに四十兆円以上の財源がかかる。高速道路の無料化、これも、きょうは時間がなくてできませんでしたけれども、何でもただにする。高校もただにする。戸別補償もどんどん出す。こういうものをやっておきながら、その一方で大変費用のかかるこの一体改革をやっても、ばらまきをとめるということが私は最初ではないかと思っております。

 総理がやっと我々の言っていることを自覚されたから一体改革をやるというのであるならば、せめて皆さん方のマニフェストで言った浪費部分を削除してやろう、それが為政者の姿ではないか。総理、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

菅内閣総理大臣 何度も申し上げておりますが、ばらまきとか浪費とかという言葉を使われること自体は御自由ですが、私たちは、子ども手当はばらまきとか浪費とは思っていないということは申し上げておきたいと思います。

 また、公立高校の授業料というのがそこの二番目にありますが、これも私はばらまきとか浪費とかには当たらないと。さらには、三番目にあります農業の戸別的所得補償、これも大変重要な政策でありまして、従来の政権がとれなかった新たな考え方を導入したわけでありまして、これまた画期的な政策だ、このように考えております。

 そういう中で、今、社会保障と税の一体改革に関して、私たちも、社会保障の中身については、もちろん高齢化に伴う医療、介護、年金というものもありますし、子ども手当も含めて、あるいは雇用に関する問題も含めて、社会保障制度全般にわたるあり方を議論すべきだと。昨年の暮れに五項目の原則を打ち出しましたが、その中に、第五項目めには、それをしっかりと将来の世代にツケを残すのではない形でやろうということも含めて、若い世代の問題もあわせて社会保障制度の問題の中での議論の土俵にのせていきたい、こう思っております。

 そういった意味では、先ほど歩み寄る可能性について少し石原議員の方からお話がありましたけれども、少なくとも、社会保障制度を議論する中では、高齢者ばかりではなくて子供たちや、あるいは雇用の問題も含めて議論する、そういう場でぜひ与野党の議論が深化していけばありがたいな、このように考えております。

石原(伸)委員 時間ですので、同僚の石破議員に質問を譲りたいと思いますが、私が申したいことは、民主党のマニフェストは、実行しているものと全く実行できないものがある、また、変えようとしているものがある。一体改革にしても、マニフェストには書かれていない。

 ですから、契約に基づいて総理は今、その総理大臣といういすに座られているわけですから、そのいすにしがみつくだけではなくて、契約変更を行ったり新しい政策を掲げるならば、一度、解散・総選挙で、私たちの社会保障はこうなんだ、自民党の社会保障はこうなんだということで議論をして解散をする、そういうことが求められているのではないか。

 これから具体的に、石破議員、また午後の中では野田議員の方から、この一体改革について我々はどう考えるのかという話をしますので、その違いを鮮明にして、総理大臣に、新しい制度を入れるときには信を問うとおっしゃっている以上、解散をして、国民の皆さん方に政治体制を決めてもらう、このことを申し述べさせていただきまして、質問を石破委員に譲らせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、石破茂君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石破茂君。

石破委員 日本各地で多くの災害に見舞われた方々の御労苦に心から思いをいたし、政府におかれては、迅速、適切な対応をお願いしたい。私どもも全力を挙げてこれに当たってまいりたいと思っております。

 まず、石原幹事長から申しましたが、小沢さんの問題。

 総理、この話にそろそろ切りをつけませんか。総理は在職三十年、私も二十五年になります。その多くを、小沢さんなのか小沢さんではないのかということに費やしてきた。

 きのう、小沢さんが強制起訴を受けてのコメントは、国民の皆様、同志の皆様に御心配をかけていることをおわびする。おわびをするのは御心配をかけていることじゃないでしょう。

 ずっと、この長い間、本来我々は議論をすることがもっとほかにあったはずだ。そういう議論に我々は時間を費やすことではなくて、それは新進党であり、あるいは今の民主党もそうかもしれない、小沢さんなのか小沢さんじゃないのか、そのことに物すごく時間を費やしてきた。このことの国政の停滞、これに切りをつけないと、いつも申し上げているように、財政も経済も安全保障もすべて危機管理のモードに入っている、我々はそのことにすべてを費やして議論をし、総理がおっしゃるように熟議を尽くして結論を出す、それが我々が国民から与えられた責任だと思っています。

 私たちは、国会議員をやっていて本当にむなしくなったことがある。きょう一日きょう一日、また小沢、小沢じゃない、私はこういうことをやるために国会議員になったんじゃない、そういう思いを持ちました。

 小沢さんの理想が、例えば自己責任の原則の確立とか……(発言する者あり)静かにしなさい。原則の確立とか、あるいは政権交代可能な選挙制度の確立、それはそれなりに立派なこともあった。だけれども、今問題となっていることは何だろうか。

 例えば、強制起訴を受けて、素人が何がわかる、権力をもって白となったものが素人が集まって何がわかるんだということをおっしゃいましたね。この強制起訴を可能とする法律の改正に、小沢さんはそのときいたかいないか知らないけれども、民主党は賛成をしているんだ。国会議員として賛成しているんです。国民から負託を受けた者として賛成している。それを今ごろ何だ。素人が集まったものに何の意味がある、こんな不遜なことを言っていいのか。私はそうは思わない。

 検察審査会は単なる素人の集まりじゃないですよ。資料を提供されて、それを精査して、議論して議論して強制起訴という形にしたんじゃないですか。どうせ素人なんかにはわかりはせぬ、私はこの考え方が嫌いなんです。

 子ども手当を二万六千円まけば、戸別所得補償すれば、高速道路無料化すれば、高校無償化すれば、それはみんな一票入れるはずだ、財源がつくのかつかないのか、そんなことは関係ない、権力をとってから考えればいいという考え方だとすれば、私たちは絶対にそのような考え方に賛成しない。

 政治倫理綱領というのはだれがつくった。政治倫理綱領をつくったのは、あなた方は当選していなかったかもしれないけれども、それは議院運営委員長たる小沢さんでしょう。疑惑を持たれたときは、みずから進んでその解明に努めなければならない、それが政治倫理綱領でしょう。法廷の場では、法律に触れたか触れないか、それが問われている。しかし我々は、倫理、どうなのだと国民が素朴に思っていることにこたえるべきではないのか、そして、それは国会議員としての責務だと私は思っている。

 私たちの同僚、例えば竹下元総理にしても、私は自民党は完全無欠の政党だったなんて思っていませんよ。だけれども、多くの政治家、自由民主党の政治家が、政倫審にもあるいは証人喚問にも出ました。あるいは総理が先ほどおっしゃったように、田中角栄元総理に対して、中曽根総裁、自民党総裁としてですよ、自民党総裁として議員辞職を迫った。あるいは小泉総裁、中曽根議員に、宮沢議員に引退勧告をした。党のトップとはそういうものじゃないですか。

 総理はきのうも、岡田幹事長を中心としてということをおっしゃった。ですけれども、党のトップとして、もうこれ以上国政を停滞させない、熟議をしよう、結論を出そう、そのために小沢さんと。鳩山さんがそうであったように、政倫審は出ないと言ったらおしまいなんです。議決されても出なかったじゃないですか。だとするならば、残る手は証人喚問しかないではありませんか。それが、政治倫理綱領、これに従う道ではないのですか。

 民主党代表として、御党は代表と総理を分離されたとは聞いていない。自民党でいう総総分離なんかやられたとは聞いていない。総理、あなたは民主党代表であられる。代表として、この問題にけじめをつけるべく、幹事長に任せるのではなくて、証人喚問に出よということをなぜおっしゃれないのか。おっしゃれない理由があったら述べてください。

菅内閣総理大臣 石破議員も、長い政治経歴の中で、いろいろな立場でこの問題あるいは小沢元代表との問題にもかかわってこられたことは私もよく承知をしております。また、今言われた中でも、すべてとは言いませんが、共感を持ってお聞きする部分も多々あったことも率直に申し上げたいと思います。

 そういう中でいえば、私は、九月の、これは民主党の中の代表選挙ではありますけれども、その中で、クリーンでオープンな政治というものをその代表選挙の公約に掲げて、そして党員、サポーター、地方議員、国会議員の皆さんに御支持をいただいて代表に再選されました。その方針で、党の運営、そして国政の運営にもそれを軸にして当たっております。

 そういう意味で、私は、率直に申し上げて、それに反するような形の意見、意見はもちろんあっても構いませんけれども、それは民主党としての基本的な方針にはならない形に現在来ている。そういう意味で、小沢元代表の問題は、確かに、先ほども申し上げましたように、国会での説明は私は行われるべきだと思っております。

 しかし、そのことと、では小沢元代表が今の、例えば私の政権なり党運営について、もちろん、ある程度の影響がないと言えばうそになりますけれども、基本的なところでは、決して小沢さんによって、例えば二重権力とかなんとかということには全くなっておりませんので、そういう点では、私は、一遍に越えられたかどうかは別として、かなりのところ、この長い間の問題について一つの山を越えつつある、このような認識を持っております。

石破委員 なぜ与党の方がここで手をたたくのか、私にはよくわからない。(発言する者あり)これが明快だとも思わない。

 私は、本当にこの問題にけりをつけなければ、この国会が動かなくなっちゃうと思うんです。総理はいろいろなことを議論されたいでしょう。私たちも議論したい。ですから、党内でできることは党内でやってください。我が党としてあれこれできる立場にない。代表として、政治倫理綱領のとおりに、証人喚問に出よと言えばそれで済むことです。ぜひそうしていただきたい。総理のお答えは結構です。

 私は、国会議員になる前に渡辺美智雄先生のお話を聞いたことがある。何とおっしゃったか。政治家とは何なのか、勇気と真心を持って真実を語るのが政治家だと教わったのです。選挙のために、これもただ、あれもただといって、有権者の喜ぶことばかり言って票をとるのは、それはお世辞家というのであって政治家ではない。何が本当なのかということを見きわめ……(発言する者あり)あなた方のことを言っているんじゃないですよ。何を勝手に失礼だとかなんとか言っているんですか。政治家というのはそういうものだと教わったということを申し上げている。

 何が本当なのかということを見きわめるのはそんなに簡単なことではありません。これから先議論しますが、TPPについても国論は完全に二つに割れている。国債の発行についても、格付についても、先ほど総理がおっしゃったことと我が党が言ったことは全く違う。この予算の正当性についても全く違う。何が本当なのかということを見きわめるのはそれだけ大変なことです。

 本当のことを仮に見きわめたとして、それが国民の耳に心地よいこととは限りません。消費税を上げる、だれも喜びません。憲法を改正する、そんなことはできない、そういう方も大勢いらっしゃる。だけれども、国民の耳にたとえ耳ざわりのよくないことであっても、それを語る勇気を我々は持つべきではないでしょうか。そして、それが自分だけわかっていればいいんだというひとりよがりじゃなくて、あの人の言うことだったら本当なんだろうな、そう思っていただく真心、きざな言葉で言えば、我が身の不徳を省みず言えば、真心を持たねばならぬのじゃないかというふうに思っております。

 私は、もう今から二十八年ぐらい前になりますか、渡辺先生のその講演を聞いて余りに感激して、そのテープをもらってきて、国会議員になるまでの間、二年近く、ほとんど毎日それを聞き続けた。自分がそうであるとは思わないが、そうありたいと思って努力をしてきました。ぜひ、総理、真実を語ってください。そして、それを語る勇気を持ち、わかってもらえる真心を総理は持っておられると思うんだ、それをぜひ発言していただきたい、そのように思っておるところであります。

 最近の総理のお言葉は、どうも、よくお考えになってのものではないのではないか、そう思われます。例えば、野党が税と社会保障の一体改革に応じないのは歴史に対する反逆行為だ、そうおっしゃった。参議院の本会議の質問に答えて、いやいや、それは特定の人を非難したのではないというふうにおっしゃいましたね。だけれども、野党がとおっしゃった。歴史に対する反逆行為という、これ以上ない強い言葉をお使いになった。これが非難でなくて何ですか。

 私たちは、揚げ足をとるつもりはないけれども、協議にはいつでも応じます。我が党は、昨年の参議院において、消費税を一〇%ということを掲げた。その使い道も示して、国民の皆様方から御投票をいただいた。それ以来、党内でずっと、野田税調会長を中心として、どういう制度であるべきか、日々議論を重ねている。少なくとも我が党は、消費税を五%上げさせていただく、それは社会福祉目的に使う。そして、財政健全化責任法案、これはもう一度修正をして出しますが、これも出している。私たちは、きちんと議論をし、案をまとめ、国民の皆様方から投票もいただいている。

 総理は、参議院選挙において、自民党の数字を参考にして消費税一〇%とおっしゃった。その後、あれはどうなりましたか。その後、党内でどのような議論がありましたか。協議を呼びかけるのであれば、まず民主党の案をまとめるのが先でしょう。

 自分の党の案がなくて、ばらまきと言おうが何と言おうが、私は、ばらまきの定義というのは、要は、政府に集まった金を家計に移転する、そのことだけではGDPは一円も上がらないですね。お金を移転するだけではGDPは一円も上がらない、経済の当たり前の話です。それを、総理がおっしゃったように、お金はあるだけでは意味がないのであって、使わなければ意味がない。六割が目的外で使われ、その多くが貯蓄に回っているとするならば、そのお金は生きていますか。つまり、恒久財源がないままに経済効果が十分発現されないもの、それをばらまきと私たちは言っているのです。言葉の定義はそういうものです。

 だとして、そういうものを全部残したままで、子ども手当は差し上げます、高校無償化です、高速道路ただの社会実験は続けます、戸別所得補償ですということはそのままにしておいて、さて、税も含めた一体改革は野党と議論しましょう、それはおかしくないですか。民主党の中でこうだという意見をまとめて、自由民主党はもうまとめています、そこから協議をするというのは当たり前の話じゃないんですか。まず、協議を呼びかけるからには、民主党の議論をまとめる、それが当然だと思うが、違いますか、お答えください。

菅内閣総理大臣 基本的には、私、石破さんが今言われたことを否定するつもりはありません。

 今、社会保障については、昨年の暮れに、基本的な考え方を五項目まとめました。その一つは、先ほども議論になりましたけれども、若い世代への支援を強化する全世代型対応の社会保障とすること、それから子ども・子育て支援を強化し、未来への投資としての社会保障とすること、そしてサービス給付を重視し、雇用創出効果を高めること、そして役所の縦割りを超えた包括的支援を行うこと、そして安定財源を確保し、次世代に負担を先送りしないこと、そういう考え方を昨年まとめました。

 そして、現在、政府と与党の間で、この問題の対策本部をつくりまして、与謝野さんに責任者になっていただいて、これから、四月に向けて、まず社会保障制度の改革の案をまとめ、そしてその後、六月をめどにして社会保障と税についての一体的な案をまとめていきたい。

 ただ、私たちが申し上げているのは、我が党、我が内閣としての段取りを決めてはおりますけれども、できれば、もっと早い段階からいろいろな意見を交換して、案づくりそのものの段階から与野党で議論ができないか、そういう認識で、御党に対してもできればそうした議論をしたいということを申し上げているところであります。

石破委員 議論をするのは私は喜んで受けたいと思っています。その前に案をまとめてください。

 総理、この時間は総理の時間ではありません。私の時間でもありません。国民の時間なのです。国民から与えられたこの質問時間です。端的にお答えください、国民の時間なのですから。

 総理は、私が聞きましたのは……(発言する者あり)端的にしているでしょう。案をまとめますか、まとめませんかということを聞きました。まとめない、その案をつくる段階から自民党と協議をしたい、それが端的に言えばお答えですね。総理の後段の部分はそうだったでしょう。できれば案づくりの段階から野党も乗ってくれ、そのことを呼びかけている、端的に言えばそれが答えでしょう。違いますか、どこが違いますか。案づくりの段階から、つまり、民主党案というものはまだない、固まっていない、だから、案づくりの段階から野党も協議に参加するよう呼びかけている、違いますか。どこか違うんだったら言ってください。

与謝野国務大臣 社会保障の改革、年金、医療の改革については、あらゆるところが自分たちの提案をされております。自民党も当然案を持っておられるし、公明党も十二月に発表された。そういう中で、あと、朝日新聞、読売、日経、毎日、産経、あるいは経済団体では経団連、同友会、あるいは連合等が案を出しております。中には民主党の有志議員と自民党の有志議員がつくった案もございます。

 私は、民主党案を含めて、すべての案は全部いい案だということを前提に、虚心坦懐すべての案を、全く予断なくすべての案をまず検討するということが必要であると思っております。その上で、議論を通じて、社会保障改革の方向性が少しずつ浮かび上がってまいりますし、理想論、現実論、できることできないこと、いろいろ考え方は分かれるだろうと思いますが、そういう中で菅内閣としての考え方がだんだん煮詰まってくるわけでございますけれども、その早い段階から、実は、自由民主党も公明党も、あるいは共産党も国民新党も社民党も、それぞれの意見を言っていただきたい。我々は全く白紙の立場で検討を始めるわけでございますから、白紙から始まるということを前提にお考えをいただきたいと思っております。

石破委員 与謝野大臣は、民主党会派にはお入りですが、民主党に御入党なさったとは承知をいたしておりません。

 今、民主党案とおっしゃいました。それでは民主党案なるものはあるのですね。今、与謝野大臣はそういうようなお言葉をお使いになりました。これが民主党案である、税制と社会保障一体となった民主党案である、私は寡聞にしてそのようなものを存じません。いろいろな新聞がお書きになっておる、それは承知いたしております。いろいろな団体が出しておるのを承知いたしております。もういいです、これ以上答弁は要りません。

 これが案だというものを示さなければ協議になりません。案をつくる段階から一緒にやるのであれば、それは連立以外の何物でもありません。私たちは連立に参加をするつもりはございません。案をつくってどうなのだというふうに呼びかけるのが責任与党というものです。そうあるのが当然です。少なくとも私どもはそうしてまいりました。自分たちの案もないのに協議を呼びかけるというようなことはしたことはございません。

 加えて、マニフェストは国民との契約だというふうに民主党の皆様方はおっしゃいました。契約というのはこの社会においてどんなに大事なものなのか、御理解なさっての発言だと思います。今の段階は契約でいえば一体何ですか。債務不履行でしょう。履行不能ですか不完全履行ですか。いや、四年間あるとおっしゃいました。鳩山さんは去年そういうことを言いました。まだ三年もあるのだ、契約期間は四年間なのだ、そして見てくれということだった。

 しかし、契約の中途において、この契約が履行できないということはほとんどの人に明らかになっています。この質疑を通じればわかります。これから質疑を通じてわかるでしょう。

 いいですか、民主党政権はリーマン・ショックの後に政権をおとりになりました。リーマン・ショックがあった。麻生内閣においてできる限りの、エコカーとかエコポイント、そういうような対策を打った。その後で、予算を組み替え無駄を省けば金は幾らでも出てくる、そうおっしゃったのが契約の内容です。契約の内容というのはそういうものであって、ふわっとした漠然なものではありません。(発言する者あり)幾らでもやっていない。そういうふうなことを言わないでください。金は出ると。少なくとも国民はそう思いましたね。予算を組み替えて無駄を省けばお金は出てくる、増税はしなくていい、そう言って一票を入れた人は多かったはずです。リーマン・ショックの後、経済状況が厳しくなることをよく認識した上でそういうような公約を掲げ、これは契約だとおっしゃった。

 これは、普通の契約であれば解除権が発生しますよ。相手方は、つまり、あなた方が債務者であり、債権者は一人一人の国民です。解除権が発生するが、これはできないんですね。不思議なもので、今、愛知県でいろいろなことが行われていますが、二元代表制をとる地方自治においては、有権者の側から議会の解散請求とか首長、議員の解職請求とかできる。だけれども、国政においてはできないことになっている。実は、これは一つの論点だと私は思っています。その議論をするつもりはここではありませんがね。

 ですけれども、ここで、本当に契約だというふうにおっしゃるのであるならば、もう一度、契約はこのように変更します、民主党はこのようにマニフェストを直します、このように税制を直します、その理由はかくかくしかじかです、この上で各党と協議をしたい、そういう立場を改めて主権者たる国民からいただく。

 私どもも、公約を掲げて、私は、おととしの選挙は民主党がすばらしかったと思った人もいたでしょう。だけれども、自由民主党が余りにひどいので一回かえてみたい、そう思った方も大勢いらっしゃったはずですよ。自民党がだめだから……(発言する者あり)静かにしなさい。それはほとんどでも結構ですよ。私はその反省は持っているつもりだ、閣内にいて持っているつもりだ。そして、本当に毎週毎週日本国じゅうあちらこちらへ行き、自民党の支持者ばかりじゃなくて、街頭でも訴えて、いかに自民党が国民の皆様方から拒絶されていたかということは身にしみて知っているし、自分の責任も多いということはよく反省をしています。自民党がだめだったから民主党というチョイスがあった。

 では今度、民主党がだめだから自民党なんというチョイスを有権者の皆様方にさせてはならぬのです。だめ比べなんか何回やったって一緒だ。

 そうじゃなくて、民主党はこのように改める、マニフェストはこのように改める、税制はこのようにしたい、拍手した人はそう思っているんだね、そのようにしたい、自由民主党もこのように自民党は改める、それを掲げてもう一度我々は主権者たる審判を仰いで、ここで議論しようじゃないですか。格付にしても大変なことです。安全保障でも大変なことです。

 総理は、アメリカに行くとおっしゃっておられますね。真偽のほどは知らないけれども、幾つかの新聞では、総理の訪米がおくれる、このような報道が出ている。大変なことですよ。本来であれば、日米安全保障条約改定五十周年の去年に日米同盟の深化について一つの考えが出なければいけなかったはず。総理の訪米もなぜおくれているか、私は真実は知りません。ですけれども、国民の信任を得ない強力な政権なんてあり得ない。

 民主党は、これを変えるのだということを国民に示すべきだ。我々も、こう改めるということを示し、国民に信を問うて、それが近似したものであれば幾らでも協議しましょう。連立なんて話はそれからです。その前に、有権者の審判を経ずして大連立だの何だの言うこと、それは有権者に対する冒涜だと私は思っている。有権者の意思を得ずに勝手に国会議員が、そのようなことを政党がやっていいはずがない。

 私は、もう一度マニフェストを改め、そして税制の考え方を示し、今、与謝野大臣が民主党案とおっしゃった、これで国民に信を問い、そしてその国民の信に基づいて、ここできちんと議論して結論を出す。その考え方について、総理、いかがですか。

中井委員長 大変長い御質問でございました。前半の部分は……(石破委員「与謝野さんに聞いていません」と呼ぶ)いやいや、前半の部分は与謝野さん、後半は内閣総理大臣に答弁いたさせます。

 与謝野担当大臣。(発言する者あり)何でめちゃくちゃですか。質問されておるんです。(発言する者あり)あれだけ長いけれども、聞いている、聞いている。前半を聞いているから。与謝野さん、前へ。(発言する者、離席する者あり)御着席ください。聞いていますから、ちゃんと。

与謝野国務大臣 問題は、やはり、昨年、一昨年掲げたマニフェストというのは、我々その当時、自民党におりましたけれども、財源の問題があるということはみんなわかっていたわけでございます。しかし、政権をとった以上、選挙のときに理想に燃えて言われたことをリアリティーに近づけていくのがやはり政権政党としての責任であると私は思っております。

 それを全部白紙撤回しろというのは余りにもむごいお言葉でございまして、それは、現実的に、民主党の考えていたことが国会で実現可能なものに変わっていくというのは決して国民にとって不利なことでもないと私は思っております。

菅内閣総理大臣 私は、石破さんのいろいろおっしゃったこと全部を否定するつもりはありません。それからまた、ごまかしてお答えしているつもりもありません。

 つまりは、まずマニフェストについて言えば、先ほど来申し上げていますように、確かに、皆さんは、ばらまきということを、例えば子ども手当も言われますけれども、私たちは、まさに、これまでの少子化に対してほとんど政策らしい政策が打てなかった中で、やるべき政策だと、高校の無償化もそうですし、また農業に関しても、戸別的所得補償はやはり、欧米ではかなり以前から進んでいた中でいえば、きちっとこれもやるべきだと思っておりますので、そういう点で、マニフェストについて、大きな項目については相当程度実現しつつあるものもあり、さらには着手したものもあります。

 確かに、ガソリン税の暫定税率など、今日までできていないものもあります。そういう意味では、衆議院四年間の任期の折り返し点がことしの秋に来ますので、その段階で検証をしたい。つまりは、これまでどおり実行するもの、着手してさらに進めるもの、しかし、どうしてもこれはいろんな事情でできにくい、あるいは状況が変わったものについては、場合によっては国民の皆さんにきちんと説明をしたい、このように考えております。

 そのことと、先ほど社会保障と税のことについて案があるのかないのかという御指摘ですが、先ほどこれも申し上げましたが、確かに五原則というのは、抽象的といえばそのとおりであります。しかし、一つの考え方をまずまとめたということでありまして、その中で、私たちとしては、そういう段階からの話し合いも可能なのかなということで申し上げてはいますが、しかし、皆さんの方からしっかりした案をちゃんとまとめてこいということの御指摘もいただいていますので、いずれにしても、先ほど申し上げたように、四月をめどにして社会保障についての考え方をまとめ、そして六月をめどにしてそれと財源を含む税制の一体改革についての考え方はまとめていくと。

 ですから、そこまでは議論ができないと言われれば、それは我々としては、残念ですがいたし方ないと思っておりますが、だからといって、私たちの案をまとめる努力をそれでやめることはありません。

 ですから、四月、六月に社会保障の案と税制一体の案をお示ししていきたい、このことを申し上げておるわけです。

石破委員 昨年の参議院選挙が行われてから随分時間がありました。今、四月、六月とおっしゃいました。野党ではないのですよ。責任与党なのですよ。

 おまえたちが応じないならいたし方がないとおっしゃいましたが、これ、玄葉政調会長いらっしゃって、私は玄葉さんの見識には敬意を払っています。私と考え方が近似したところも多いです。ですけれども、去年の代表選挙を見ていて、全く違うことをおっしゃる方が大勢いらっしゃいませんでしたか。だから民主党の中をまとめることが大変なこともわかっています。でも、大変だからやらないというんだったら与党じゃないでしょう。大変でもやって、結論を出すのが与党でしょうが。(発言する者あり)やっているよとは何事ですか。あなた方はいつ結論を出しましたか。今この時点になって、予算委員会の場になって結論が出ていないことは、それは職務に誠実ではない。夜を日に継いでやることはできるはずだ。冒頭、小沢さんのお話で時間を費やさないでくださいと言ったのは、このことも指しているのですよ。

 玄葉さん、ちょっと回答してください。与謝野さんに聞いていません。玄葉君、お願いします。

玄葉国務大臣 今、石破政調会長が、参議院選挙後、何をやっていたのか、こういう問い合わせだと思いますけれども、藤井調査会をつくりまして、社会保障と税について議論を重ねてまいりました。それについては一定の中間整理がなされております。さらに申し上げれば、民主党の考え方はもともとないのか、こういう議論がございましたけれども、例えば年金については〇九年のマニフェストで一定のお約束はしております。つまりは、最低保障年金は税でやるけれども、基本的には所得比例年金、これは保険料をベースでやりますよ、こういうベースがございます。

 ただ、先ほど来から議論を聞いていまして、少しかみ合わないのは、民主党の考え方あるいは政府・与党としての考え方は、当然まず社会保障については四月に出します。出しますけれども、与謝野大臣も菅総理もおっしゃっているのは、かちっとしたものを民主党として、あるいは政府・与党として最初から出してしまったときに、これは国民的な合意、当然その前に与野党合意を得ていくべき国家の根本的テーマでありますから、したがって、早目の段階で、まだかちっとした案をつくる前からぜひ協議に応じていただきたい、そういうことを申し上げているわけでございます。

石破委員 残念ながら、玄葉さん、その話には乗れない。

 案をつくる段階からと言わないでください。民主党として、どんなに苦しくてもつらくても、大激論があっても、それで党が割れることがあっても、仮にあるとしても、これが案だというものを出す、それが責任与党というものだ。まとめられないんだったら党を割れ。当たり前だろう。

 民主党は選挙互助会ではないはずだ。政策もまとまらずに、とにかく政策はあれこれある、その議論はまとめずに、とにかく選挙互助会だというようなものではないはずだ。我が日本国の責任与党はそんなものであっていいはずがない。議論を恐れずやって、早く結論を出す。私たちは、いつでも議論に応じる。

 そして、言っておきます。答弁は要らない。マニフェストとそれが反するようであれば、もう一度国民の信を問うのは当然である、そのことをはっきり申し上げておきます。

 それではおまえたちはどういう予算を組むのかというお話です。

 これは何度も出しておりますが、もう一度ここで明らかにしておきたいと思います。では自由民主党はどうするんだというお話です。ここのパネル、お手元にお示しをしておるとおりであります。私たちは、単に批判だけして、選挙して自分たちが政権をとろうなどという、そんな浅ましいことは考えてはおりません。自由民主党としてどうなのかということであります。

 ばらまきと言って悪ければ、経済効果が乏しい所得移転にほとんどの意味を認めたもの、そういうようなことを私はばらまきと申しております。言葉はどうでもよろしい。

 まず、このような政策、戸別所得補償、あるいは高速道路無料化、高校無償化、子ども手当、そのようなものをやめて二・八兆円が出てきますでしょう。

 そして、政府予算項目のチェック。例えば、インド洋を中止しましたね。そして、アフガニスタンにお金を出しますよね。仮に、インド洋の補給というもの、あれほど必要性を訴えながら、やめてしまいましたね。そのことによって、それを復活することによって相当お金が出てくる。そのようなものをすべて見ることによって一千億円。

 公務員人件費削減、これもきちんとやらねばなりません。一兆円、これもやらねばならぬですよ。

 無駄撲滅。これは、私どもは無駄撲滅しなくていいなんて言っていない。無駄がなくなるなんということはあり得ない、全部なくなることはあり得ないが、無駄撲滅の努力は常にしていかねばならない。これによって五千億円。

 公共事業予算。これは内閣府につけかえただけですから、この一括交付金の中止により五千億円。

 税制改正の撤回によって〇・三兆円、三千億円。

 基礎年金国庫負担の財源の見直しにより一兆二千億円。

 これで六・四兆円、そのように考えております。

 では、これによって歳出はどうなるのか。

 国債発行額は、一兆円減額をする。

 地方や成長戦略へ二兆八千億円。景気対策と成長戦略は違いますので、ごっちゃにしてはいけません。地方あるいは成長戦略へ二兆八千億円。

 そして、基礎年金国庫負担の二分の一として一・二兆。

 予備費を一兆円に復元するために〇・二兆。こういうようなものを組んでおります。

 これの議論は、これから先、衆参の予算委員会でやってまいります。

 私たちは、財政健全化責任法、これも出し直してまいります。さあ、これに賛成されるか、されないか。この財政健全化責任法、ペイ・アズ・ユー・ゴー、恒久政策には恒久財源、これを本当にできますか。参議院の本会議で、恒久財源ないじゃないかと問われて、総理は、予算の削減等々で確保した、これが恒久財源だとおっしゃった。

 では、来年も再来年もこの手法でできますか。平成二十四年度予算はこれで組めますか。私は、組めるとは全く思わない。そのようなものを恒久財源とは言わない。

 このような予算が正しいか、政府が出された予算が正しいか、そして財政健全化責任法との関連はどうか、そのことも含めて、この予算委員会は議論をしてまいります。総理、ぜひ真摯な態度で臨んでください。これは要望であります。

 次へ参ります。

 国債の格付がなされました。疎いとおっしゃった発言は、それは間違いです。そこは日本語の使い方の間違いでしょう。今後、あのような御発言はなさらない方がよろしいということを申し上げておきます。

 私は、総理におっしゃっていただきたかったのは、だからそれほどの財政危機なのだということをおっしゃっていただきたかった。だから財政再建に向けての努力が必要なのだ、そういうメッセージを発していただきたかったのです。本会議場からお出になったばかりではありません。官邸にお帰りになって、いろいろな報告を受けた後であのような御発言だったので、私はとても残念に思いました。以後、日本国総理大臣として、確たるメッセージ、日本国の意思を発信していただくようにお願いをいたします。

 この格付会社は、実は昨年の今ごろも、格付を下げる、そういう可能性があるよというふうに言っておりました。何もきのうきょう始まったお話ではございません。

 これが今後どうなるでしょうか。団塊の世代の方々、この方々がここ数年ですべてリタイアされる。そういう方々が貯金を取り崩し始める。郵貯も簡保もお金が減ってきている、基金もお金が減ってきている。この状態で、どうしてこれから先、国債が消化できるか。何で国債が下がらないかといえば、いつの日か日本政府はこの財政再建に向けてきちんとした決断をするだろう、そういう期待があらばこそです。

 千四百兆円、千四百兆円と言う。だけれども、ネットはそんなに多くない。これに地方財政、国の財政、そういうものを全部合わせた余剰はそんなに多くないはずなのですよ。それがやがて尽きようとしている。そのときに一体何が起こるのか。

 日本は個人金融資産が多いから大丈夫だ。本当にそうでしょうか。それを上回ったときに何が起こるんでしょうか。日本国民が持っているからキャピタルフライトは起こらない。そうでしょうか。何でキャピタルフライトが起こらないなんぞという、そんな断言ができるんでしょうか。

 これから先、高齢化が進む。おっしゃるとおり、不安だからお金を持っているが、そのお金を使わねばならないという状況が起こったときに、キャピタルフライトが起こったときに、ある日突然、破綻というものは訪れるのではないですか。総理、その危機認識はお持ちですか。

菅内閣総理大臣 私は、鳩山内閣においても副総理という立場でこの問題にかかわり、また財務大臣としてもかかわってまいりました。

 昨年、財政運営戦略というものをまとめました。この中で掲げた目標は、御党が出された財政健全化法と基本的にほとんどの点で一致をいたしております。つまりは、二〇一五年までに現在のプライマリーバランスの赤字幅、二〇一〇年度赤字幅を半減する、二〇二〇年にはそれを黒字にしていく。

 もちろん、この目標がそう簡単でないことは私自身十分承知をいたしております。また、G7とかG20の場でもいろいろな議論がありまして、我が国の姿勢を示して理解をいただきましたけれども、そういう席では、他の国はもっと短期間における財政健全化の考え方を提示されていることも私はよく承知をいたしております。そういう難しい問題であることを承知している中で、しかし、これはやり遂げなければならないということで、この財政運営戦略をまとめたところであります。

 と同時に、もう一言つけ加えるとすれば、リーマン・ショックからの回復というもの、あるいは経済が成長しなければ財政の健全化もなかなか難しいということも念頭に置いて、昨年、ことしと、確かに、税収よりも国債発行が上回るというのは、一般的に言えば大変異常な状況だと言わざるを得ないことも私はよくわかっておりますけれども、ここは何とかデフレを脱却し、成長への方向性に向かう、そのことを含めて財政再建につなげていきたい、こういう考えでこうした方針をとっていることはぜひ御理解をいただきたい、こう思っております。

石破委員 景気対策といってこれだけ財政を悪化させた、その責任の多くは自由民主党にあるということはよく認識をいたしております。このことは、我々はきちんと反省をしなければなりません。さればこそ、麻生内閣において、税法の附則の一部を改正し、財政健全化への道筋をつけたつもりであります。

 私は、自民党がすべて正しいなんと言うつもりはありません。この財政が悪くなったということの責任はよく自覚をしながら、だからこそ、どうやって財政を健全化するか、だからこそ、四Kというものは撤回をすべきではないですかということを申し上げているのです。これは、どっちがいいとか悪いとか、そんなことを言ってもしようがない。本当に真実を見つけるのは難しいと冒頭申し上げたのは、そういう意味で申し上げました。

 ぜひ、どっちがいいとか悪いとかいう議論じゃなくて、おまえたちもそうだったじゃないかという議論はやめて、本当にこのままいったら財政はどうなるのか、次の時代の暮らしはどうなるのか、そのことの認識を共有しながらこの予算委員会を進めてまいりたいとお願いをいたしておきます。

 次に申し上げます。憲法についてどういう御認識をお持ちかであります。

 自衛隊最高指揮官としての総理に伺います。防衛省の事務次官通達、これを撤回されるおつもりは今もありませんか。防衛大臣は当然しません。自衛隊の最高指揮官としての総理に伺います。

 そして、憲法との関係で申し上げます。これは事前抑制の法理、日本国憲法第二十一条に定められた、表現の自由を保障した、そこから当然出てくる事前抑制の法理、それとの関係についてどのような認識をお持ちですか。

菅内閣総理大臣 今御指摘の件は、防衛省の事務次官通達についての件だと承知をしておりますけれども、自衛隊というものは、もうよくよく御承知のように、シビリアンコントロールの原則のもとに置かれた実力集団であり、自衛隊法で規定する政治的中立性が確保されることが極めて重要だと考えております。

 そういう意味で、この事務次官通達というものは、決して一般の皆さんの表現とかそういうことを規制するものではないというふうに理解しておりまして、通達については、もちろん所掌大臣の責任のもとにありますけれども、内閣としてこれを撤回するといったことは考えてはおりません。

石破委員 これは官房長官に伺いましょう。憲法によって保障された表現の自由、そこから出てくる事前抑制の法理。官房長官は法曹でいらっしゃいますから、北方ジャーナル事件というのを当然御存じでしょう。昭和六十一年最高裁大法廷の判決だ。ここにおいて事前抑制の法理の例外というものが二つだけ示されている。今回はそれに当たるとはどうしても思えない。

 事前抑制の法理とこの通達の関係について、官房長官、どういうふうに整理なさっておられますか。

枝野国務大臣 言論、表現の自由に当たって事前抑制は原則として許されない、事前抑制の法理は大変重要な憲法上の理念であるというふうに思っております。

 一方で、今回出されました通達は、民間人の言論を事前に統制しようという内容を持つものではなく、また一般の国民の行為を規制する効力も持っておりませんので、憲法上の事前抑制法理に反するものではないというふうに考えております。

石破委員 枝野さんらしくもない。

 いいですか、事前抑制とは何か。表現行為に先立ち公権力が何らかの方法で抑制すること、これを事前抑制と申します。及び実質的にこれと同視し得る、同じと見られるという意味ですね、影響を表現行為に及ぼす規制、これが事前抑制です。これはやってはならないということは判例でも既に確定していることだ。そうですね。

 そして、これの例外として認められるものは何か。これは二つだ、公表されれば害悪の発生することが異例なほどに明白である場合、公表されたら取り返しのつかない害悪の発生する場合。これはプライバシーとか名誉毀損とか、そういうことを指しているのですよ。菅内閣はぶっつぶせとか、そんな話じゃない。プライバシーとか名誉の毀損とか、一回出たら取り返しがつかない、そういうものについては例外であるということになっていますね。

 もう一つは、恣意的な行政裁量の働く余地のない場合、典型的届け出制なんかがそうですよ。あるいは適正な司法手続を通じて行われる場合、これだけが例外なんだ。これは学生のときに勉強したでしょう、これが例外だって。今回のは、このどの例外に当たりますか。当たらないでしょう。いいです、まだ答えなくて。

 今回何をやったかといえば、事前に何をおっしゃいますかというふうに聞く。それは、隊員が政治的目的のために施設を利用したと疑われるおそれがある、そういうことがわかったらば控えてもらう。出るなというわけですね、控えてもらうというんだから。これが抑制でなくて何ですか。

 そして、総理も防衛大臣も、そんなに自衛官が信用なりませんか。彼らが政治目的のために施設を利用させるとでも思っているんですか。そんなことはないでしょう。自衛官たちは、命をかけて国のために守っているんです、働いているんです。それを、おまえたちは政治目的のために使わせるおそれがある、少なくともそういう誤解を招くことがないよう、だれがそんな誤解をしますか。国民の中で、自衛官が政治目的のために施設を使用させている、そんな誤解を持つ者は一人もいませんよ。そんな人間は一人もいない。私は、総理や防衛大臣がそんなに自衛官を信じていないということが悲しいんです。そんな人たちではありません。そういうおそれがあるから、そういう誤解を招くことのないように事前抑制の法理を、むしろ、そっちの方がよっぽど危ないじゃないですか。事前抑制の法理に抵触するじゃないですか。どっちのおそれの方が大きいですか。

 いいですか。憲法に定められた表現の自由ですよ。基本的人権ですよ。それはおもしろくないでしょう。菅内閣が批判されておもしろいはずはない。我々も政権与党にあったときに、靖国問題、これに参拝しない政府はけしからぬ、そういうようなごあいさつもいただきました。けしからなくても、それは、胸に手を当ててみて、自分たちが何か至らないところはなかっただろうか、そういうふうに反省をすべきなのであって、何を逆切れしたか、事前抑制の法理に反するような通達を出して恬として恥じないのは恥ずかしいと思わないのか。官房長官。

枝野国務大臣 繰り返し申し上げておりますが、この通達は、防衛省・自衛隊の庁舎、施設を管理する隊員及び部外の団体が主催する行事に参加を依頼され来賓としてあいさつをし、または紹介される立場の隊員にあてて示されているものであって、一般国民の行為を規制しようというものではございません。

 また、通達という性質上、一般の国民の行為を規制する効力を有しないことは当然でございまして、事前抑制の法理で言います公権力の行使にそもそも当たっておりませんので、さらに申し上げれば、この通達で示された隊員の対応については、あくまでも通達の趣旨、目的の範囲内で行い、いやしくも、まさに事前抑制の法理に反するかのような、一般の国民の行為を規制するものとの疑念を生じさせることがないようにすることとしております。

 隊員の皆さんは、いやしくも一般の国民の行為を規制するものとの疑念を生じさせることがないようにという趣旨も含めて、しっかりとこの通達の趣旨を踏まえて対応しているものと信頼をいたしております。

石破委員 枝野さん、本当に間違っていると思ったら撤回する潔さを持ったらどうですか。そうやって官僚の書いたものを読むなんというのは枝野さんらしくないですよ。間違っているものは間違っている。法律を知らない人じゃないはずだ、あなたは。憲法についてもきちんとした見識を持っている人のはずだ。だから私は枝野さんに聞いている。

 事前抑制の法理ですよ。いいですか。控えてもらう。事前に聞きますね、何をお話しになりますかと。菅内閣をぶっつぶせと言いたい、こんな内閣は許せないのでぶっつぶせと言いたい、そういって団体の方が言ったとしましょう。そうすると、控えてもらうんですよね。そうですよね。控えてもらうんですよね。これが何で事前抑制じゃないんですか。これを事前抑制じゃないと強弁する理由は何ですか。

枝野国務大臣 私も、この通達が出ましたときは、内閣の一員でございませんで、報道等を通じて知りまして、委員御指摘のような疑念も若干持ちました。

 それが、閣僚になりまして、しかも内閣官房長官、法令の解釈に関する責任を持っている立場で、改めて、通達の内容と過去の判例その他、みずから直接検討をいたしました。

 その上でお答えをさせていただいておりますが、繰り返し申し上げますとおり、この通達は、一般の国民の行為を規制する効力を有しないものでありますし、また、隊員にあてて示されているものでございます。さらに、この通達で示された対応については、あくまでも通達の趣旨、目的の範囲内で行い、いやしくも一般の国民の行為を規制するものとの疑念を生じさせることがないようにすることとされておりまして、このことを隊員の皆さんはしっかりと守っていただける。そうであれば、事前抑制には全く当たるものではないというふうに思っております。

石破委員 これはこの後ずっとやります。これで終わったと思わないでくださいね。

 いいですか。こういう発言をするなら控えてくださいと言うとおっしゃいました。そうですね。控えてくださいと言うんですね。言いました、最終的にはこうおっしゃった。それが何で、少なくとも、おそれはあるでしょう。それが、だれも、隊員が政治的目的のために使用させているなんて誤解する人は一人もいませんよ。むしろこれが事前抑制の法理に抵触するというおそれ、むしろ抵触そのものだ。

 私は、基本的人権というものをきちんと読み直せと。私はばりばりの憲法改正論者だけれども、どんなに腹が立とうが何しようが、表現の自由というのは守られるべきだと思っている。自分たちが批判されるのが嫌だから、それを事務次官に命じて通達を書かせる。もってのほかであって、そんなことであれば憲法を読んでからきちんとやれということですよ。憲法に対する理解というものが足りない。

 尖閣の話だってそうじゃないですか。尖閣の対応はあれがすべて正しかった、次回同じことが起こっても全く同じように対応する。イエスかノーか、総理、お答えください。

菅内閣総理大臣 ちょっと突然の、尖閣の話にテーマが飛びましたので、どういう点を聞かれているのか、必ずしも定かではありませんが、少なくとも、尖閣諸島は我が国固有の領土であって、いわゆる領土問題は存在をいたしておりません。その中で、法に反するような行為がとられれば、法にのっとって対応するというのは当然のことだと考えております。

石破委員 わからないならば、それは失礼しました、お教えしましょう。いいですか。ここで集中審議しましたからね。私と総理も随分議論をした。お忙しいからお忘れなのでしょう。では、もう一回申し上げましょう。

 いいですか。外交関係の処理は合議体たる内閣の所掌である、それが日本国憲法の規定ですね。そうですね。そして、では、今総理がおっしゃるように、我が国固有の領土であり、領土問題が存在しない尖閣海域において、公務執行妨害という、我が国の公務の執行の円滑を阻害する、そのような挙に故意に出た中国漁船に対して、これを逮捕し起訴する、これは当然のことだと私は思っていますよ。それがなければ、我が国は法治国家でも何でもない。そして、裁判にかける、当然のことだと思っている。

 しかし、中国人船長を釈放した。これは検察がやったのだとおっしゃった。それは今も変わらない。そういうことですね。

 私は、検察官というものは、法務大臣が任命するものであって、選挙で選ばれていない。よって、国民に対して直接責任を負い得ない。検察官が外交に対する判断ができるのであれば、外務省なんて要らない。一日、二日レクしただけでこの複雑な日中関係がわかるわけはない。どんなに賢くて司法試験を受かった検察官であっても、外交関係の判断をする知見は有しない。そして、その立場を持っていない。その人たちに判断をさせたのは憲法の考え方からいって間違いであるということを私は申し上げました。

 そして、情報を公開するかどうかという話だった。いわゆる映像と言われるものですね。これも出さない。まだ全部出ていない。なぜかと問えば、それは裁判に支障を来すからだと。だけれども、中国人船長はもう中国に帰っている。日本に帰ってくることはあり得ない。不起訴処分しかあり得ないはずであって、だとするならば、裁判の支障になるから映像を出さないということにはならないはずだ。

 我が党であればどうするか。仮に、釈放しなければならない、そういう判断をしたとするならば、内閣総理大臣、合議体の長たる内閣総理大臣が、私の判断において釈放する、全責任は私が負う、なぜならば、外交関係を処理する、これは外交関係の処理だと前官房長官がお答えになりましたので。外交関係を処理する、合議体たる内閣の長である私がその判断をし、責任を負う。しかし、この映像を公開する。中国の皆さんも世界の皆さんも国民の皆さんも、このようなことが行われていた、にもかかわらず私が責任を持って釈放する。それが責任ある政治というものでしょう。それが政治主導というものでしょう。

 これから先の外交というのはそうあるべきではありませんか。内閣総理大臣が一切の責任を持ち、御自身の判断によって、もちろん、それまでにいろいろな議論があるでしょう。しかしながら、決断は、これから申し上げますが、TPPにおいても一緒だ。総理大臣がみずからの判断、みずからの責任、それにおいて行うのが正しいと申し上げているのです。

 ですから、尖閣の問題について、あれは検察がやったのだとか情報は公開しないのだとか、そのようなことは誤りだと私は今でも思っている。誤りだと思うか思わないか、一言でお答えください。

枝野国務大臣 外交関係については内閣でしっかりと責任を持って総理のリーダーシップのもと進めていくということについては、重ねて総理からも御発言をいただければというふうに思っておりますが、一方で、検察権の行使は広い意味での行政の一部でありますが、法で定めておりますとおり、内閣は法務大臣の指揮権を通じてのみ関与できるということが定められております。

 少なくとも、私は官房長官として、この法務大臣による指揮権の行使ということについては、検察権力の行使の独立性という観点から、抑制的であるべきだというふうに考えております。その上で、外交関係等の重要性をかんがみながら、今後、そういった想定される事態に当たっては適切な判断をしてまいりたいというふうに思っております。

石破委員 考え方が違うということがよくわかりました。それはやはり少し反省をし、改めるべきものだと思う。そうでなければ、熟議にも何にもならない、議論にも何にもならない。私たちは、自分たちが無謬だなんて思っていない。あなた方もみんな無謬ではない。この考え方についてどうですか、今後どうあるべきですかということを申し上げているのです。先ほどの事前抑制の法理もそうだ。これは、申しわけないが、憲法に対する考え方が基本的に違うとするなら、その責任は今後徹底的に追及していかねばならぬ、そのことを申し上げておきます。

 防衛大綱に行きます。

 防衛大綱を動的防衛力、何かあたかも変わったかのようにおっしゃいましたが、前の大綱、これは私が長官のときに議論し、大野長官のときにまとめられたものだ。どういうふうに書いてあるか、今後の我が国の防衛力について。前の大綱ですよ。「即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のあるものとする。」これは前の大綱。

 今度の大綱、「即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築する。」どこが違うのかというと、「多機能で弾力的な実効性のあるもの」という前の大綱の言葉が「動的防衛力」に置きかわっただけなんです。

 それで、基盤的防衛力整備構想、すなわち、特定の脅威に対抗するよりは、我が国が力の空白となって周辺に不安定を生ずることのないよう、独立国として必要最小限の防衛力を整備する、これというのは一体何だ。これは捨てたんでしょうね。つまり、目的は力の空白を埋めることだった、どのような防衛力をつくるかというと、独立国として必要最小限の防衛力。独立国として必要最小限の防衛力というのは何と言われると、今つくったものが必要最小限だと。それは問いをもって問いに答えるに等しいのであって、私は、総理、一つ聞きたい。

 邦人救出について昨年言及をされた。国はどこでもいいですよ。韓半島に限らないですよ。エジプトの今の状況、チャーター機を飛ばしますが、これに政府専用機あるいは自衛隊の輸送機、近隣であれば輸送艦、こういうものを派遣するということは、今の自衛隊法では輸送の安全が条件なんです、輸送の安全が確保されなければならぬのです。これはなぜですか。

 私、長官のとき、大臣のとき、これを何度も改正しようと思ったが、力が足りなくてできなかった。物すごく反省をしております。いいですか、憲法九条に言う国際紛争を解決するための武力による威嚇または武力の行使、これに抵触してはならない、そのおそれがあったからだと私は思います。

 だとするならば、明確なルール・オブ・エンゲージメント、これを定める、そして法律を改正する。輸送艦の体制はどうか、輸送機の体制はどうか、あるいは陸上自衛隊の装備は十分か、訓練はどうなっているか。いいですか、動的防衛力というような抽象的なことを言うのをやめて、どのようなものに対して、どのようなものを、どこに、どれだけ、いつまでにということについてきちんとした検証を全部すること、それが動的防衛力ですよ。

 その一つの例が、邦人輸送ではなくて邦人救出なんだ。いざというときに自衛隊の飛行機飛んでこない、ではだれが来るんだ、アメリカの海兵隊でしょうが。日ごろは、やれ国外だ、そういうことを言っておいて、困ったら助けに来てくれ、そんな話が通用しますか。

 私は、この邦人輸送を救出に変えることについて、それについて本当に総理が取り組むつもりがあるか。これが、動的防衛力に対する御理解がどれだけあるか。もしそういうことをなさるのであれば、我々は全面的に支援しますよ。いかがですか。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、動的防衛力についてでありますが、いろいろ御批判はいただきましたけれども、政権交代してから一年の猶予をいただいて、過去の検証から始まって、我々は新しい大綱をつくり上げました。

 大ざっぱに言いますと、〇七大綱では、今お話しの基盤的防衛力構想を中心にされておる。これはあくまでも抑止。そしてまた、一六大綱は、今、まさに石破大臣がおつくりになった、新しい安全保障環境に対応するものとして、対処を中心にしてやってきたというふうに理解をしております。

 我々は、それぞれの時代とそれから安全保障環境の中で、〇七大綱も一六大綱も我が国のために大きく貢献したというふうに思っています。そういう連続性の中で、我々は、今やらなきゃならないのは運用だというふうに思っておりまして、このことはきっと、運用ということで御理解をいただけるんではないかというふうに思っております。

 そして、これをさらに、今まさにお話しになった、実際にどうするのかということにつきましては、これは、十二月にこの大綱をつくって、私が十二月に大臣の指示として、今、防衛省の中に実効性を担保するための改革委員会をつくり、さらには精強性を担保するための人事の改革ということで今指示をいたして、これも六月を目途につくり上げる、こういうふうに考えております。

 それからまた、今お話しの在外邦人の輸送について、これは、つい先ごろの韓国の問題もそうでありますけれども、これに対して総理が極めて危機感を持って御発言なさったということを体して、今言われたことは我々としても真剣に検討をしていきたいというふうに思っております。

石破委員 TPPについて最後伺いましょう。

 いいですか、六月までに何を決めますか。参加するかしないかを六月に決めますか。そして、そのときに参加すると決めて、いろいろな交渉の結果、例えば、いい悪いは別にして、米は例外とか、十年ではなくて十五年にしてくれとか、あるいは、日本は皆保険制度だ、そこで医療を自由化したらばこの皆保険制度に甚大な影響があるので、このことについては別の配慮を求めるとか、いろいろなことがあるでしょう。そういうことを要求した結果、入れられないので入らないということはあり得ることですか。

 そして、今やっていることは、つまり、参加するのかしないのか、わからないまま情報収集はできないのだという話もあります、参加をすることが前提ですか、前提ではありませんか。交渉した結果、ルールが日本に適合しない、だからやめたということはあり得ることですか。そして、農業の改革について六月をめどにとおっしゃいました。これはTPP参加を前提としていますか、していませんか。

 私は、今の段階でいろいろな情報が錯綜している、だけれども政府からこうだというものが出てこない、試算でも農水省の試算と内閣府の試算が全然違う、置かれている前提も全然違う、これで議論をしようというのは、それはおかしいのではありませんか。

 TPPに参加するのかしないのか、いつ決めるんだ。そして、今、参加するということを決めて、交渉の結果、やはり日本の要求は受け入れない、やめたということはあり得るのか、あり得ないのか。(発言する者あり)いいですか、そのことがわからないから、みんな議論ができないでいるんですよ。仮定のことを議論してどうすると、恥を知れ、言っていることについて。少しは責任与党としての責任を持て。

 どういうことになるか明らかにならないから、国内で議論が二分している。このことは、農業者のみならず、全産業をどれだけ不安に陥れているか。

 総理は、参加するのかしないのか。そして、すると決めた後でも、ルールが日本に合わないのでやめるということはあり得るのか、あり得ないのか。農業改革はTPP参加を前提としているのか、していないのか。

 言っておきますが、自給率と自給力は違うのですよ。そして、一つの先進農家を見て日本農業全体を語らないでください。日本農業の問題は、産業政策としての農政と地域政策としての農政、これが混然一体となったところにある。これをどのように分けるか。

 そして、日本の農地というのは、農産物生産の手段というよりは、それは税制によって保有コストが安いから、経済合理性の当然の帰結として資産を保全する手段となっている。それが悪いと私は言わない。経済合理性というのはそういうものだ。そこを解決しない限り、大規模化なんというのはあり得ないのだ。どうやってそれを解決していくのかということに真剣に答えを見出さない限り、理論ばかり言ってもしようもない話だ。

 そして、穀物相場というのは、例えば自動車は全生産量の五割が輸出入に回っている、石油は七割が回っている、穀物はほとんど回っていない、だから不安定なんですよ。だから、米、麦、大豆というものをどうやって確保するかということを真剣に考えていかねばならないのだ。

 TPPについて参加すると決めた後で、しないということはあり得るのか、あり得ないのか。今の段階で、本当に日本の交渉が有利になるような情報が入っているか、入っていないか。入った情報は、機微に触れるもの、機密に触れるもの以外はきちんと公開をし議論に資する、そういう用意があるかどうか、お答えください。

菅内閣総理大臣 いろいろおっしゃいましたけれども、一点だけ、農地が収益還元価格よりは非常に高い状況が戦後ずっと続いておりまして、そういった問題も今指摘された中にはあったのかなと、私もそこにはずっと関心を持ち続けてまいりました。

 TPPについて、御承知のように、現在行っているのは、いわゆる参加交渉ではなくて、これに参加を決めている国との間でいろいろな情報収集をするという意味で協議をいたしております。六月には参加交渉に踏み切るかどうかを決めるということでありまして、もし決めたときに、交渉が始まって、どういうふうにその交渉がまとまるのかまとまらないのか、そこまで今から確定的にもちろん言うことはできませんので、少なくとも六月までには参加交渉に踏み切るかどうかを決めるということであります。

石破委員 終わりますが、いいですか、アメリカの議会は九十日前に通告をしなければならぬのですよ。それから考えれば、根回しとかいろいろなことを考えれば、四カ月前には決めなければならぬのですよ。その時間軸もよく頭に入れた上で、時間軸もきちんと念頭に入れ、何が国益で何が国益じゃないか、そのことを明らかにしないまま国内でいろいろな議論が起こるのを放置している、これは政治として極めて無責任だ、そのことをはっきり申し上げておきます。

 以上で終わります。

中井委員長 この際、鴨下一郎君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 私の方は、社会保障の一体改革について伺います。

 まず、総理に確認をしておきたいんですが、〇九年の衆議院選挙、民主党のマニフェストでは、最低保障年金七万円、そして基礎年金部分は全額税方式でやる、こういうようなことを国民に約束したわけでありますけれども、この方針については今も変わりませんか。

菅内閣総理大臣 年金についていろいろな観点で提案を行っておりますけれども、いずれにしましても、衆議院のマニフェストは今言われた〇九年、参議院のマニフェストでは一〇年において示した現在の民主党案は、社会保険方式、つまりは所得比例年金の部分と、税方式、つまりは最低保障年金の双方の組み合わせを基本といたしております。

 民主党が提案する最低保障年金は、所得比例年金が少ない受給者に補足的に給付をするものであり、現在のような基礎年金とは性格を異にしております。

鴨下委員 もう一度確認しますけれども、基礎年金部分については全額税方式でやる、こういうようなことをマニフェストに書いてあるわけで、社会保険方式と税方式を組み合わせるという話、これはわかっていますよ。ただ、基礎年金についてはどうなのかというのは、全額税方式でしょう。

 では、まず厚労大臣から、ちょっと確認のために聞いておきます。

細川国務大臣 現行制度は基礎年金。ただ、私どもの主張というのは最低保障年金でございます。そこを全額国費でやる、こういうことであります。

鴨下委員 マニフェストを守るという意味では、厚労大臣は見識があるというふうに思います。そして、多くの国民の皆さん、特に低年金、無年金の方々は、民主党が最低保障年金をしっかりとやってくれる、このことをいわば信頼して投票した人はたくさんいる。こういう意味では、私は厚労大臣は見識があると思います。

 さて、総理、与謝野さんを入閣させたというようなことにおいては、与謝野さんは、残念ながら、社会保険方式で基礎年金部分を組み合わせると言っているんですよ。我々はそういうふうにずっと主張してきた。半分は税は入れる、国庫負担は入れるけれども、それ以外のところは、これは保険方式でやる、こういうふうに言ってきている。そのいわば張本人が与謝野さんなんです。その与謝野さんを入れるということの趣旨は、総理、どういうことなんですか。

中井委員長 細川さんから補足説明があると言っていますから、先に細川さんの補足説明を聞きます。

細川国務大臣 今言われました最低保障年金と、それから所得保障の年金を組み合わせるのが民主党の案なわけです。その最低保障年金については、それを税金でやるというのは、マニフェストには書いてあります。

 先ほど申し上げたように、現行制度は基礎年金ですよ。私どもの主張するのは最低保障年金。ですから、そこは違うということを御理解いただきたいと思います。

鴨下委員 だから、厚労大臣は、そのマニフェストを守って、最低保障年金をきちんとやるということをおっしゃっているわけだから、それはそれでいいんですよ。私は、そういうふうに国民に民主党は約束したんだから、そうあるべきだというふうに思っています。

 ただ、与謝野さんの意見は違うんです。だから、その与謝野さんを入れた菅総理の趣旨、あるいは与謝野さんにどういうミッションを与えて入閣させたか、このことについて総理に聞きたいんです。

菅内閣総理大臣 念のために申し上げておきますが、民主党のマニフェスト、いろいろな段階で確かに多少表現方法が変化をしております。

 そこで、先ほど申し上げたように、二〇〇九年と二〇一〇年の、いわゆる政権交代に至った選挙とその後の参議院選挙で申し上げたことを先ほど申し上げたわけでありまして、それには、今厚労大臣からも話がありましたように、最低保障年金は所得比例年金が少ない受給者に補足的に給付するものとなっていて、現在の基礎年金とは性格を異にする、これは将来の改革案ですから、異にするということは念のために申し上げておきたいと思います。

 その上で、今、与謝野さんの、私がお願いして入閣をしていただいたことについて、年金についての意見ということを言われました。先ほどの質疑の中でも与謝野大臣の方から、いろいろな党の意見、いろいろな団体の意見も、ある意味ではすべてを聞いて、そして党なり内閣としても議論したいという趣旨のことを言われましたけれども、私も進め方としてはそういう進め方が最も好ましいと思っております。

 その上で申し上げますと、これまでの民主党が言ってきたことは、今申し上げたように、そうした最低保障年金というものを所得比例年金の少ない者に補足的に給付する、そういう考え方が民主党のこれまでの考え方であったということを別に否定するものではありません。ただ、それも含めてより大きな議論をしよう、こういう段階で議論を進めていただきたいと思っております。

鴨下委員 ですから、私は、社会保障の中で年金というのは非常にボリュームが大きい、給付費でいえば五十兆もあるわけだから、だから、そういうような意味ではこれは根幹をなす話なんです。

 そこで、基礎年金部分については、厚労大臣も、マニフェストに従って全額税方式で最低保障をしっかりやるという話を、だってそういうふうに約束しているじゃないですか。七万円で、そして全額税方式というのは、それは何を示しているんですか。基礎年金とかわる話でしょう。まあいいや。

 それで、その話を、私は与謝野さんを入れたことによって変更をするのかどうかという話を聞いているのです。

枝野国務大臣 社会保障と税の一体改革の統括も担当させていただいておりますので、私からまずお答えを申し上げます。

 厚労大臣からもお答えをいたしましたが、現行制度の基礎年金を最低保障年金に変えるという考え方は、従来の民主党案は持っておりません。これから、今後、保険料等を納めていただく方には所得比例年金の保険料を納めていただき、その方が所得比例年金で受け取る受給額が少ない場合に、税を財源とする最低保障年金を付加するというもので、現状の基礎年金とは全く性質の異なるものでございますので、基礎年金を税で、全額税でというふうに理解をいただきますと、従来の民主党の考え方について誤解を招くというふうに思っております。

 その上で、与謝野大臣が今回入られたということの意味は、民主党がマニフェストにも掲げた年金の考え方は、もちろんこれが望ましい形であると民主党の所属議員として私は思っておりますが、ただ、この年金については、従来からも各党とも、これは政権がかわるごとにころころ変えることのできる性格ではないということで、超党派で合意点を目指していく必要があるということは、それは御党含めて、私どもも従来から申し上げてきているところでございます。

 そして、その幅広い国民的な合意を得ていくに当たりましては、民主党のもちろんマニフェストでお示しをした案をベースとしながらも、さまざまな御意見を承った中で内閣としての成案をまとめていく、それに当たっては与謝野大臣の従来の見識というものを生かしていただきたいということで、総理はそういう御判断をされたと承っております。

鴨下委員 ということは、マニフェストの中で約束した最低保障年金七万円というのは、これはいつ、だれがもらえるんですか。そのことを、選挙のときにはいかにも今もらえるような話があったけれども、それについては、では移行期があって完成形が四十年先だという話というのは、国民はそんなふうには理解していませんよ。ですから、そういうような意味では、私は、まやかしをやったというふうに思っています。

 それと同時に、今回さらにそれを、与謝野さんを入れて、では与謝野さんは総理がおっしゃったように各ステークホルダーから話を聞いて何をまとめると言っているんですか。最終的にはこの保険方式を、もう一度自民党がやっていたような保険方式に戻す、こういうようなことの趣旨をおっしゃっているのかどうかというのを総理、教えてください。

中井委員長 与謝野馨担当大臣。

鴨下委員 いやいや、総理に聞いている。与謝野さんには聞いていません。総理の任命責任に……

中井委員長 与謝野さんにまず聞いてください。

鴨下委員 いやいや、総理の任命責任においてどういうふうに考えているのかということを聞いているんだよ。

与謝野国務大臣 年金、医療の問題は全国民にかかわる問題ですから、多分、今の政治情勢では一党一派で決められるような問題ではない。やはり各党各派が超党派的な立場をとって相談をして決めていただくような問題だと思っております。

 そこで、社会保障、税一体改革の企画立案を総理から命ぜられた私としては、今まで政党あるいは経済団体、報道機関、研究者等々が発表されているあらゆる案をきちんと検討し直すというところから始めるということでございまして、そのときは民主党の案も当然検討の対象になるということでございます。

鴨下委員 今、与謝野さんがおっしゃった民主党案というのはどういう案なんですか。では、これは枝野官房長官。

枝野国務大臣 民主党の案は、先ほども総理がお話しいただきましたとおり、マニフェスト二〇〇九とマニフェスト二〇一〇で示している、この年金の考え方が民主党として従来主張している案でございます。

 ただ、今、与謝野大臣も御答弁されましたとおり、この問題は我が党だけで、現状で決めることもできませんし、また政権がかわるごとにころころ変わる性質のものではありませんので、幅広い国民的な合意を得なければならない。そのこともあの選挙の折には申し上げたつもりでございます。

 さらには、先ほど社会保険方式なのか税方式なのかという、その選択で変わったのかという御指摘もございました。これは、いずれにしても保険料と税とを財源にして組み合わせていく、そのことを、例えば、固有名詞を挙げてよろしいのかどうかわかりませんが、野党の時代に自民党の有志の議員の方と御議論させていただきましたときも、当初の民主党案、当初の自民党案というものは相当違っておりましたが、議論を積み重ねていくと、お互いに自分たちの案とほぼ近い形の内容で一致ができますねというような議論も積み重ねてきた経緯もございます。

 そうしたことも含めて、これから、我が党の従来の案もベースにしながら、与謝野大臣を中心に、さまざまな各層にある御意見をしっかりと受けとめさせていただきながら、国民的な合意の得られる案をまとめてまいりたいと思っております。

鴨下委員 いや、それは明らかなマニフェスト変更ですよ。だから、マニフェスト変更をまずおっしゃって、民主党は白紙だというふうにおっしゃった後に今の話をするんだったら結構ですよ。だけれども、その前に、国民に約束したこのマニフェストについて、申しわけありませんでした、実行できません、こういう話をまず総理がおっしゃってから与謝野さんを起用する、これだったら理解できるけれども、そうじゃないんだったら、民主党の案は白紙ですと、それはないでしょう。

 そういうような意味では、総理、もし、虚心坦懐に与野党を超えて議論をするんだ、こういう話で、私たちのマニフェストのこの案はなかなか実現ができません、特に、財源の問題で、税をたくさん使うということはなかなか難しいです、こういう話があれば、まずそれをおっしゃってくださいよ。それで、マニフェストは、申しわけないけれどもこれは白紙にします、その後に与謝野さんを中心にやるというんだったら、これはこれで話を幾らだってしようがある、こういうふうに思っています。どうぞ。

菅内閣総理大臣 マニフェストというのは、もちろん、子ども手当とか戸別所得補償以外にも、これまで積み上げてきたいろいろな政策を、ある意味ですべて公約というかマニフェストに盛り込んだことはそのとおりでありますけれども、この間議論されていた、いろいろと、ばらまきとか云々という、そういうふうに指摘を受けたものとは、若干従来から扱いが違っております。

 つまりは、無駄の削減の中の費用で、例えばこういうものに充てていきたい、ああいうものに充てていきたいということでこの間やっておりますが、例えばガソリンの暫定税率などはその範疇ではできなかったということでありまして、そういう意味で、年金とか医療制度とか、いろいろな問題についてももちろんマニフェストに盛り込んでおりますが、そういう中で議論をしてきている、そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 その上で申し上げますと、年金制度をこれまでの政権の中でも、二〇〇四年にかなり大きな変更をされまして、それが、百年間は大丈夫だと言われましたけれども、私も、この人口の急激な減少を見ておりますと、これからの十年、二十年、三十年、この大きな変化の中で今の制度自身もなかなか大変でしょうし、あるいは、かつて私たちが考えていた基本となったベースも、さらに人口構造がより大きく変化をしている中で、そうしたこともあわせて議論をする、まさにそういう時期が現在来ている、率直なところ、そのように思っております。

 その上で申し上げれば、先ほど枝野官房長官からも話がありましたように、我が党としてこれまで言ってきた、特に二〇〇九年、二〇一〇年に言ってきたことについては、今説明をさせてもらったとおりでありますが、これから議論をする上で、それも一つの大きな我が党としてはベースであることは言うまでもありませんけれども、それも含めて多くの議論を受けとめて考えていこうということで、与謝野大臣にその責任者をお願いいたしている、こういうことであるわけであります。

鴨下委員 だから、私たちが申し上げているのは、年金の保険料を払って、そして、この年金の世界の中にいる方々は、これは今の制度で持続可能なんですよ。ただ、今言っているのは、民主党さんがそれを批判したのはなぜかというと、未納、未加入、それから無年金、低年金、こういう年金制度の外にいる人たちがカバーできないから、それで全額税方式にしよう、こういう話をおっしゃっていたんです。

 そうすると、そういう意味において言えば、私たちは、大方は持続可能だけれども、一部の人たち、これについてはきちんと救済するということについては耳を傾けていたんです、あのときにも。だから、そういう意味でいうと、菅さんの今おっしゃったことというのは、そういう低年金、無年金、それから未納、未加入、こういう人たちをどう救済するかという話について、では、民主党はどういうふうに考えるんですか。この話については、我々は、例えば修正の保険方式でカバーしていこうという話を提案していますよ。

 ですから、そういうような意味においては、もし社会保険方式でやるという話になるんだったら、これは十分にお互いに了解可能なんだけれども、それなんだったら、全額税方式という話を、まず看板をおろす、そして国民に謝る、このプロセスが必要だというふうに思っています。

枝野国務大臣 まず、従来の民主党案は、確かに未納、未加入の皆さんが大変問題だということで、それは、特に国民年金が制定された当時は、それなりに資産をお持ちの自営業者の方を想定してつくられた国民年金という制度が、現在は、資産もなくて、あるいは収入も低い方、あるいは収入のない方の方がむしろ中心になっているというこの変化を踏まえて、こうした皆さんにしっかりと皆年金の制度の中に入っていただくために、まずは、すべての皆さんを一元化した、つまり、働き方によって関係のない、一元化された所得比例年金をつくる。そのことによって、すべての皆さんがいわゆる保険方式としての年金の中にしっかり入る。その上で、今、無年金である方とか低年金である方とかということの議論を超えて、新しい制度のもとにおいても、年金の受給額が少なくなる方に対しては最低保障年金ということで補うことが必要である、こういう考え方でございますので、誤解のないように御理解をいただければというふうに思っております。

 その上で、決して、民主党のマニフェストを党として撤回したとか、今している状況だということは、民主党のマニフェストを撤回したというような状況ではございません。民主党の案をベースに、これから、まさにさまざまな案が従来いろいろなところから出ていることを、与謝野大臣を中心に議論を進めていくということでございまして、これを、まさに国民的な合意を得ていくに当たって、現に政権を持たせていただいている私ども民主党が、この民主党案が金科玉条のようにすばらしいものなので、だけれども皆さんの意見を聞かせてください、こういう姿勢では国民的な議論も進まないし、国民的な合意は進んでいかない。むしろ、私たちの案はあるけれども、まずは、いろいろな案もいいところがあるでしょうから聞かせていただく中で、そして議論をしっかりと進めていきたい。

 その結果として、恐らく、従来の民主党案の考え方に近いことで国民的な合意が得られるだろうというふうに期待をいたしておりますが、そのことも少し言い過ぎかもしれません。まさに虚心坦懐にさまざまな御意見を聞かせていただきながら、政府としての案をまとめていきたいと思っております。

鴨下委員 年金議論は、これから厚労委員会でも十分にさせていただきます。

 総理、今の話も含めてですけれども、与謝野さんを起用したというようなことは、社会保障と税の一体改革、その中で、もしやるんだとすれば、社会保障全体の話は厚労委員会等でいろいろと議論するわけですけれども、与謝野さんを起用した大義というのは、私はないと思っているんです。そして、申しわけないけれども、今あそこにお座りになっている正当性、これについてはないと私は思っている。

 それはなぜかというと、自由民主党の比例代表の候補として当選して、その後に離党してたちあがれに入られて、そして、たちあがれを離党して、無所属で民主党と会派をつくった。これは、公職選挙法についても国会法についてもぎりぎりセーフだけれども、立法趣旨としては、自民党を離党して民主党の会派を組むということは、政治家としての矜持あるいは正義、こういうものからかなり著しく反する、私はこういうふうに思っているんですけれども、総理は、与謝野さんが入閣したことの大義というのは一体何なんですか。

菅内閣総理大臣 まさに二十年にもわたってこの社会保障制度についていろいろと議論がある中で、やはり今ほとんどの国民の皆さんが、このままで安心できる社会保障制度であり続けることができるのか、そのことについては、私は、圧倒的に多数の国民の皆さんが強い関心を持ち、場合によっては心配をされていると思うんです。そういうことを本格的に検討するに当たって、この問題について高い見識とそして強い志を持っておられる与謝野さんこそが、この問題に取り組んでいただく担当大臣としては最もふさわしい、これにまさる大義はないと私は思ってお願いをしたところであります。

鴨下委員 総理は、大義は、最も見識のある人だ、日本じゅう探しても与謝野さん以外にはこういう見識のある人はいない、こういう話でありましたけれども、もしそうなんだったら、例えばあそこに片山大臣がおいでですけれども、民間人。そういう意味でいえば、与謝野さんが属人的に優秀だという話なんだったら、別にバッジにこだわる必要はないでしょう。民間人としてお迎えをしたらどうなんですか。

 そのことについて、私たちは、与謝野さんがおつけになっているバッジは自由民主党の有権者がつくったバッジだと思っているんですよ。自由民主党を支持した方々のバッジなんですよ。ですから、そのバッジをお返しになって民間人としてお迎えしたらどうなんですか。そのことについて、総理、総理のお考えを聞かせてください。

菅内閣総理大臣 私も、この国会に長くいて、いろいろな政党の、新たな政党ができたりあるいはいろいろ合併があったり、いろいろな場面を見てまいりました。ですから、私もその場その場でいろいろな発言をしておりますので、私自身の発言も含めて、申し上げることがすべてが整合性があるとまでは申し上げませんが、ただ、鴨下さんもおわかりのように、私が与謝野さんをお願いしたのは、ただいま申し上げたように、まさにこの問題で最もすぐれた見識と志を持たれているお一人だということでお願いしたわけでありまして、それ以上でもありませんし、私としては、それ以上のことを申し上げるつもりはありません。

鴨下委員 いや、ですから、総理、バッジをつけている必然性がどこにあるんですかという話なんですよ。

 ですから、与謝野さんは優秀かもわからない、しかし、今バッジをつけてここにおいでになるということ、これは自由民主党の比例代表で受かられた方なんですよ、その方が今こういう状況でお座りになっているということについて、総理は、やはり政治家としての矜持、こういうような意味においても、あるいは与謝野さんをいわば使う、こういう趣旨においても、しっかりとこの際民間人として与謝野さんを起用するべきだ、私はこういうふうに思いますが、もし与謝野さんが民間人だったらどうですか、登用しましたか。

菅内閣総理大臣 自由民主党から、たちあがれ日本の結成に参加をされ、その後無所属になられたという経緯はもちろん存じ上げておりますが、何か仮定を持って、こういう場合だったらどうか、ああいう場合だったらどうかということは考えたことはありません。そのままの与謝野さんの存在の中で、私としては、この問題では最もふさわしい方だということで、まさに三顧の礼をもってお願いをした、もうそれに尽きるところであります。

鴨下委員 それでは、私はもともと、自由民主党の中でも与謝野先生とは個人的にはおつき合いをさせていただいていました。ですから残念なことでありますけれども、今の私と総理のやりとり、これをお聞きになっていて与謝野さんはどういうふうにお感じになって、政治家としての責任、あるいは、私たちと一緒にあの〇九年の逆風のつらいつらい選挙を戦われた仲間であったわけでありますけれども、そのときに残念ながら私たちは苦杯をなめて、そして辛うじて比例で救っていただいた、こういうバッジであります。

 本当に苦しいこの選挙の中で得られたバッジを、与謝野さんはどういうふうなお気持ちで今こうしていらっしゃるのか、お聞かせいただきたい。

与謝野国務大臣 自民党と私の関係ですけれども、昨年、除名ということで、いわば軍隊でいう不名誉除隊ということになりました。したがいまして、自民党の私に対する処分はそこで終わったものと私は思っておりました。

 その後、いろいろ考えるところがあって、自分一人で財政とか社会福祉の問題を講演して歩いておりましたけれども、今回、菅総理から、社会保障と税の話を一体的に企画立案してくれ、こういう命令がありましたので、いわば私の政治家の最後の仕事としてこれを引き受けたわけでございます。

 今、鴨下先生も御指摘の国民に対する責任は、いい仕事をすることによって果たしてまいりたいと考えております。

鴨下委員 自由民主党が除名したということ、このことで聞いているわけじゃないんですよ、私は。自由民主党を支持してくれた有権者に対して、与謝野先生、どういうふうにお考えになっているんだ、こういう話であります。

 確かに、東京一区で与謝野先生を書いてくれた、与謝野馨と書いてくれた人たちもたくさんいらっしゃる。しかし、そこにおいでの海江田大臣に残念ながら惜敗したわけであります。

 ですから、それで救われたのは、自由民主党というふうに比例で書いてくださった皆さんの票で今バッジをつけているわけでありますから、その人たちに対して、与謝野先生、どういうふうにお考えになっているのか、その人たちに対してどういう責任を果たされるのか、こういうことを言っているんですよ。

与謝野国務大臣 私も、私の選挙区は千代田区、港区、新宿区の三つですが、自由民主党の時代はその三区の支部の支部長を務めておりまして、党勢の拡大には心血を注いでおりました。

 したがいまして、私としては、私を応援してくださった方は、お目にかかると必ず頑張って仕事だけはやれと激励される方が九九%の方でございます。

鴨下委員 ですから、菅総理は、見識があるから社会保障と税の一体改革について与謝野さんにお願いをしたという話でありますから、その見識を買われたんでしたら、民間人でも十分にやれるでしょうという話なんですよ。

 ですから、それは、私たちも与謝野先生のそれぞれの御高説については尊敬するところもあります。そして、それについて一緒に議論をする大前提として、残念ながら、今の与謝野先生の議席において、そこにお座りになっている正当性というのはどうしてもない、私はこういうふうに思っているものですから。

 そのことについて、やはり、もし与謝野先生が、最後のいわばライフワークを実現するために頑張って、そして、どんなことを言われてもやるんだ、こういう決意がおありなんだったら、別にバッジにこだわる必要はないだろう、こういうふうに思うんですが、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 申しわけないんですが、議員を続けますことは、有権者への責任であり、また、この仕事にかける私のモチベーションを維持するために必要だと思っております。

鴨下委員 御本人のモチベーションを維持するためにバッジをつけているということについては、甚だ私は理解できません。そして、このことについては、自民党を離党なさるときに誓約書だとか何かというのがあったわけでありまして、このことは私は言いたくなかったけれども、しかし、あの苦しい選挙のときに誓約書を入れられて、そして、もし離党をするようなことがあったら自分は辞職をしますというようなことで、実際に自分で署名をなさっている誓約書があるんですよ。こういうようなさまざまないわば約束事、こういうものをすべてほごにしてでもやるべき大義というのは一体何なのかというのを、私は疑問を感ずるからあえて申し上げているんです。

 そして、社会保障全体のことをおやりになるんだったら、きちんと自分の今までのプロセスを整理されて、どなたでも納得して、ああ、与謝野先生は御立派だ、こういうふうな立場でこの問題に取り組んではいかがか、こういうふうに思っているわけでありまして、まことに残念であります。

 菅総理、このことについて、菅さんもかつて民主党から離党をされた人たち、例えば渡辺秀央さんだとかこういうような方々のときに、比例で受かられた方は辞職するべきだ、こういうような趣旨の話をなさっている、これと全く同じだというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

菅内閣総理大臣 同じお答えで恐縮でありますけれども、まさに大義ということを聞かれました。私は、今私たちが置かれた状況の中で、社会保障と税の問題というのは極めて大きな国民的な課題であって、これにふさわしい方に責任を持って取り組んでいただくということは、国民の皆さんに対して本当に、こういう能力と見識を持たれた方にやってもらうんだという最大の大義だ、私はそのように思っております。そういう意味で、私はそういった観点から与謝野さんにお願いをしたわけでありまして、その点について大義にもとるとは全く思っておりません。

鴨下委員 それでは、当時離党された方々は大義がなくて、そして与謝野さんには大義がある、こういうようなことというふうに受けとめて、実に、あのとき渡辺さん初め離党された方は大義がなかったというふうに総理がおっしゃるということは、これはちょっと違うなというふうに思います。

 今、与謝野さんにちょっとお伺いしますけれども、社会保障全体の一体改革あるいは社会保障と税の一体改革というような意味において言えば、これは一体改革というのはどっちにかかるんですか。社会保障も一体改革するんですか、それとも社会保障と税をひっくるめて一体改革、こういうようなことの理解でいいんですか。

与謝野国務大臣 税法の百四条には税制の一体改革が書いてございます。所得税、法人税あるいは相続税の大体の税の方向は書いてございます。

 それから消費税については、社会保障目的税にするということが書いてあります。その際、社会保障の範囲というのは、医療、年金、介護、そして子育て、こういう分野でございます。この百四条を具体化するというのが私の仕事であると思っております。

鴨下委員 せんだって、大臣になられた後に、記者会見等で、例えば支給年齢を引き上げる、こういうようなお話もなさっていますけれども、このことについては税と社会保障の一体改革とは別途に議論するという話でおっしゃっているわけですけれども、この趣旨はどういうことですか。

与謝野国務大臣 今の諸制度というのは、人間が六十五歳ぐらいまでしか働かない、そういう制度であって、やはり人間は九十歳ぐらいまで生きる、それまで社会の中で頑張る。そういう意味では、今の六十五歳の定年というのは働きたい方を社会からむしろ除外している制度だ、そういうふうに感じておりまして、定年は延長して七十歳ぐらいまで働く。働くということが遊んでいるよりははるかに人間にとっては充実感があると私は思っております。

 そういう意味では、社会制度全体を高年齢化している日本の社会に合わせてつくり直していくということも、この話とは別にきちんと考えなきゃいけないんだろうということを申し上げたところでございます。

鴨下委員 今のお話だと、支給年齢は引き上げていきたいというような趣旨の話でありましたけれども、厚労大臣、このことについては、多分意見が違うというふうに思いますが、いかがでしょうか。

細川国務大臣 今の法律では六十五歳で支給をしていくという、今変更の過程にあります。基礎年金の方は六十五歳、そしてその他の被用者年金の方につきましては二〇二五年から六十五歳、こういうことになっております。

 そうしますと、年金がもらえる時期、開始時期と仕事を定年などでやめる、そこにギャップがあったらいけませんから、そこで、継続して年金の支給時期まで仕事ができるような、それを今、法律でしっかり定めてやっているわけです。

 したがって、今は六十五歳に変更する途中でありますから、それをしっかりと雇用の継続につなげていくというのが今は一番大事なことだというふうに思っておりまして、ただ、引き上げの問題については、中長期的なこととしては当然議論になるものと思っております。

鴨下委員 時間がありませんから、この問題も含めて、厚労大臣と与謝野大臣そして枝野官房長官、しっかりと閣内を一致させていただきたいというふうに思います。

 加えまして、与謝野大臣は、結果的に、社会保障あるいは年金は、税方式をおとりになるのか、それとも、自民党から従来おっしゃっていた、社会保険方式と税の負担を折衷して基礎年金部分についてはやる、こういう従来のお考えなのか、このことについて確認をさせてください。

与謝野国務大臣 私、今回の改革のキーワードは、持続可能性と世代間公平ということだろうと思っております。

 これは、社会保険方式プラス税という方式で多分やらざるを得ないと思います。それについてもいろいろなバリエーションがありますけれども、各方面の御意見を聞いて、そして、最終的には各党協議の場で結論を出していただきたいと思っております。

鴨下委員 ということは、これからの各ステークホルダーからのいろいろな意見を踏まえて、民主党の最低保障年金七万円、こういうようなことも変更する可能性があるということですか。

与謝野国務大臣 先ほども申し上げましたように、つくった方のすべての案、これはだれがつくったかを別にして、すべての案はいい案だということを前提に検討することが大事だと思っております。したがいまして、願わくは、自民党の案も勉強させていただきたいと本当は思っておるんですが、現時点では、なかなか政治的にはかなわないことであるんだろうと。

 したがいまして、民主党の案もきっちりみんなで勉強する必要がある。すべての案はいい案だと思っていまして……(発言する者あり)今まで言っていました。予断を持って一つの案を判断することはありません。

鴨下委員 これから多分、社会保障は国民にとって非常に重要な関心事でありますから、これは、与党だけではないし、政府だけではないし、あるいは野党も含めてきちんとした議論をするべきだ、こういうふうには思っております。

 ただ、そのときに、信なくば立たずじゃありませんけれども、与謝野大臣は必ず、我々が議論しやすいようにしっかりと自分の身をきれいにして、それから議論をしていただきたい、このことを最後に申し上げまして、質問を終わります。

中井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、野田毅君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。野田毅君。

野田(毅)委員 委員長、質問に入ります前にぜひお願いしておきたい。それは、私が答弁を求めた人以外に答弁するように委員長から指名しないでもらいたい。まず、これが第一点です。

中井委員長 承っておきます。

野田(毅)委員 それではだめだよ、委員長。質問者は私なんですから、私が求めている人から答弁をしてもらう、この原則を委員長はしっかり守ってもらいたい。

 それからもう一つは、大変限られた時間ですから、これは往復で時間がカウントされますので、菅総理、できるだけ簡潔に答弁してください。聞かないことまで余り言わないでもらいたい。この二つを冒頭、お願いをしておきます。

 そこで、既に午前中の質問でも出たわけですが、先般のスタンダード・アンド・プアーズですか、国債の格付引き下げについてさまざまな話題が出ましたね。疎いという発言があったんですが、そのことをとやかくは言いません。ただ、その後、ダボスの会議に行かれました。私は、これは非常に大事だったと思うんですよ、あの後だけに。

 特に、現在の世界情勢は、御承知のとおり、あのリーマン・ブラザーズのショック以降、どの国も景気の急激な落ち込みをどうやって乗り越えるかということで、軒並み財政出動をして大幅な赤字がふえた、何とか景気と両立させようということでみんな必死になっている。それは、ヨーロッパの姿を見ても御案内のとおり。

 特に、ヨーロッパ以上に債務残高が圧倒的に高い日本、しかもデフレが続いている。高齢化が世界で最も今既に進んでいる。そこへ輪をかけて最も加速度的にそれが進んでいる。こういう状況の中で、日本はどうやってこの財政危機を乗り越えていくかという、それに対して、まさにこのダボス会議というのは格好の場を与えてくれた。むしろ、菅総理にとっては疎い発言をリカバリーを行う最大のチャンスだったんだと思うんですが、さて、その格好の場で、総理はこの問題についてどういうアピールをしてこられたのか、伺いたい。

菅内閣総理大臣 もう野田委員おわかりの上で聞かれていると思いますが、私が疎いと言ったのは、あくまで、本会議の直後でしたので、その話を聞いていないということで申し上げたので、別にそのことをリカバーしなければならない問題だとはまず思っておりません。

 それから、今回のダボスのメーンテーマは、ニューリアリティーという、新しい現実に対する規範ということでありまして、私が特別講演で話を申し上げたのは、「第三の開国」ということと、それに伴って逆に弱い人が社会から切り離されることがないように、「絆」という、この二つのキーワードで話をいたしました。

 今御指摘の問題、私もG20などで財政運営戦略の説明を半年ほど前にして、そのときには、特にギリシャ問題もあって大変重要な課題として議論いたしましたが、今回のダボス会議で、合わせて五つか六つのセッションなどがありましたけれども、この問題を中心的な課題で議論することは、そういう機会はありませんでしたし、私の特別講演にも、必ずしもこの問題をストレートに取り上げたところはありませんでした。

野田(毅)委員 報道によりますと、ドイツのメルケルさんも、債務の圧縮にさらに力を入れると。あるいは、特に英国は総理みずからが、国債の格付は今も世界で最高ランクですよ、その最高ランクを維持するために、徹底して歳出カットと消費税の引き上げを訴えて、財政再建にまさに政治生命をかけるということを訴えてきている。ヨーロッパはみんなそうでしょう。アメリカだって、ガイトナーが成長と債務圧縮をどうやって両立させるかということに必死になっている。

 私は、そういった現在の客観情勢、このことを思うと、このことに言及しなかったということ自体が、疎いということを言葉じゃなくて行動において実証したんじゃないかと。私は、そのことが次の引き下げを催促する材料にならないか心配をいたしております。

 そこで、もう一つ聞きたいんですが、今確かに、国債がこれだけ膨大な山があるにもかかわらず、金利がそれほどはね上がらない、何とか小康状態を保っているということ、その原因はどこにあると菅総理はお考えですか。金利がほどほどで何とかなっている、小康状態を保っている、どういうふうにお考えですか。

菅内閣総理大臣 まず、一般的にも広く言われていることですけれども、日本の国債は大部分を国内で消化されているということ。それから、今、基本的に、例えば企業がどんどん銀行からお金を借りて投資をするという活動が非常に低迷していて、全体として金余り状況にあって、多くの地方銀行などでも預貸率が非常に下がっていて、結局のところ国債購入にそれが充てられているということ。

 もう一つは、これは多少自画自賛とまでは言いませんけれども、財政運営戦略というものを我が内閣では定めて、これは自民党が出されている財政健全化法とも内容を一にしておりますけれども、二〇一五年までには二〇一〇年比でプライマリーバランスの赤字を半減し、二〇二〇年にはそれを黒字に転換する。もちろん、この課題そのものは極めて難しい課題ではありますけれども、少なくともその線に沿って、来年度の予算で約束をした大枠の一般歳出七十一兆と国債四十四兆というのを守っている。

 こういうことが重なった中で金利が一%台を保っている、このように認識をいたしております。

野田(毅)委員 おおむねそのとおりです。

 実は、そういう状況で、つまり、一つは消化能力がまだ何とかなっているんじゃないか、いわゆる個人金融資産と借金残高とのバランスの問題。したがって、国内消化がまだある程度進んでいる。しかし、どこかで限界点がどんどん近づいてきている。いま一つは、何といっても財政再建の余地が大きい。すなわち、消費税が圧倒的に低い現実にあるということが、いずれはちゃんとやるのではないか、日本の政治はそれぐらいのことをし切るんじゃないかという見通しがあった。

 ところが、今回は、菅内閣になって、どうやらその見通しが狂ってきた。ひょっとしたらできないんじゃないかという、実は市場の中に不安感が出てきた。それはいろいろあります。国会のねじれがどうだとかあるけれども、その前に、与党の中自身がねじれてしまっている。そのことを見て、やはりこれではどうなるんだということがそういったことにつながったんだ。

 したがって、これは本当は悠長な話じゃなくて、かなり沸点に近づいてきているんですから、そうならないように、よほど我々は、与党、野党を超えて、この問題にはしっかりと対応していかなきゃいかぬということですよ。

 改めてこの点について、菅総理は、言葉じゃなくて、財政再建にまさに政治生命をかけるという思いをこの前、本会議でもおっしゃったわけですから。どうですか、政治生命をかける、そのことについて。どうぞ。

菅内閣総理大臣 野田委員がおっしゃられていることについて、私も基本的には考え方を一にしているつもりです。

 つまり、この今の日本の財政状況そのものは、もうだれのせいであるとかないとかを超えて、どなたが総理であろうが、どの党が政権を握っていようが、しっかり取り組まなければならない課題であるということは、一般的にもそうですし、私自身にとっても、特に財務大臣をやらせていただいたときに、ギリシャ危機、その後、今日までまだヨーロッパの通貨は安定いたしておりませんが、そういうものを見ている中では、御指摘のとおりであります。

 と同時に、この問題は、私にとっても、参議院の選挙の折に、やはり物事の段取りを含めてしっかりした形で議論を進めなければならないということも非常に強く感じました。

 そういう意味では、まずは経済の成長ということ、そして社会保障を維持するためのまさに税との一体的な改革という問題、こういう問題をしっかりと国民的な合意を得る形で話を進めないと、やはりこの大きな課題を解決していくことはなかなか難しいということもわかっておりますので、そういうことも腹に据えながら、決してゆっくりでいいとは思っておりませんが、しかし、余り慌てて物事を進めるのではなく、国民的な理解をしっかりと踏まえながら進めなければならない大きな課題だ、このように認識しております。

野田(毅)委員 政治生命をかけるという言葉はとうとう避けられたので、また後ほど触れたいと思います。

 覚悟のほどを述べただけだというお話があったので、あら、そんな程度であれば結局そんな程度の成果しか出ないんだなとみんな受けとめておるということは、まず指摘をしておきたいと思います。

 それから、今日の財政状況が大変厳しい状況になった、みんなわかっているんですけれども、いつからこういうことになったんだろう、何が原因でこんなに借金が重なったかというと、よく民主党の皆さんは、自民党時代に公共事業をやったからなったということを盛んにおっしゃるんだけれども、もう少し事実に即してあなた方も判断してもらいたい。

 それは、私は昨年の予算委員会でも申し上げたつもりです、表を使って。それはむしろ、菅さんも与党時代、連立を組んでおられたころ、自社さのころ、あのときの方が圧倒的に建設国債は多かったんですよ。今世紀に入ってそれが壊れてから、むしろ、特に小泉さん以降、やり過ぎるぐらい公共事業をカットしてきたんですよ。この事実に即した発想をしないといけませんね。世の中に結構誤解があるものですから、あえて申し上げておきたいんです。

 これは、今世紀に入ってからの国債がどれだけ積み上がったか。六百六十八兆円が現在の普通国債の残高であります。これが二〇〇〇年の残高は三百六十八兆ほどある。つまり、半分近くが今世紀に入ってからの借金の増加です。その内訳を見るとどうなっておるか。まさに、建設国債は三十八兆しかふえていないんだよ。それに対して、赤字国債が何と二百六十三兆ふえているということなんですよ。

 ちなみに言えば、民主党政権になって二度予算をつくられた。それは下のところに書いてありますけれども、六十五兆の赤字国債と、合計七十三兆ふやした。自公政権時代は、九年間で、約十年近いですが、合計二百二十七兆だけれども、この二年間でばっと七十三兆ふえているという現実もある。

 決してそのことをとやかく言うつもりはありませんが、ただ、相手方を、公共事業をふやしてきたからこういうことになったと言うようなことはおやめになった方がいい。むしろ、コンクリートから人へというきれいな言葉遣いの中で、結果として、人への借金がどんどんどんどんふえているということなんですよ。財政規律という点からすればどっちが問題が大きいのか、赤字国債と建設国債と。財政規律ということをどう考えているんでしょうか。

 ちなみに、日銀引き受け国債と建設国債と、どっちがより悪いことになっていると思いますか、総理。これぐらいは財務大臣を経験しているんですから、財政規律のイロハのイじゃないですか。私は、この問題は、去年だったか、予算委員会か財金委員会でも菅さんに質問したことがあります。どっちでしょうか。財政法にちゃんと書いてある、財政規律の原点が。どうですか。

菅内閣総理大臣 今、野田委員から、いわゆる建設国債と赤字国債についての違いを指摘いただきました。ただ、私は、建設国債が相対的によかったというのは、少しその意味合いが違うと思います。

 つまり、建設国債というのは、本来はそれを使うことで、例えば東京―大阪の新幹線ができる、あるいはいろいろなインフラが整備される。例えば今の新興国などのような時代であれば、一九六〇年代であれば、そのことが日本の経済の拡大につながったわけです。いわゆる単年度の乗数効果といったものではなくて、本質的なGDPの拡大、成長につながったわけです。

 しかし、それが一九八〇年代あたりから先は、結局のところは、建設国債という名前で、投資なんだといいながら、その投資が翌年の、それこそ乗数効果じゃありませんが、いわゆるお金が流れた分だけは確かに効果があるけれども、できた本州―四国の三本の橋から、そういうものがより大きな経済効果を及ぼしたかというと、それが及ぼさないためにこの二十年間の経済の低迷が生まれているという意味でいえば、私は、建設国債も、決してそれが効果があったとか、あるいは赤字国債よりはよかったとは言えない。

 逆に言えば、この後、多分、野田さんが言われるのかもしれませんが、それでは赤字国債がよかったかといえば、これまた、事実上、社会保障費が財政の中で埋まらない分を赤字国債で埋めてきたということもありますので、それぞれ性格は違いますけれども、どちらがよりよかった、悪かったということは言えない、私はこう思っております。

野田(毅)委員 私が聞いたのは、財政規律の上からはどうですかと。経済効果を聞いているんじゃないんです。財政法は財政規律の基本です。当たり前じゃないですか。

 赤字国債というのは、人間の生活でいえば、三度の飯を子供のツケで食うような話ですよ。そういう節度というものが守られなきゃいかぬ、それが財政規律ですよ。一方で建設国債は、やはりそのものの、経済効果は別としても、その便益性が残る。住宅ローンみたいなものだ。だから例外的に認めているんだ。それでもただし書きで認めているんですよ。財政規律のイロハぐらいはちゃんと知っておいてくれなきゃいけませんよ、財政法の精神を。

 それからもう一つ、では、日銀引き受け国債と赤字国債、どっちが財政法で禁じられていると思いますか。菅総理、財務大臣経験者。答えをしてください、総理。総理に聞いているんです。

菅内閣総理大臣 まず、先ほどの件ですが、私は野田委員ほどは確かに詳しくないかもしれませんが、財政法上、いわゆる建設国債についてはある範囲の中で出すことが許されているわけですが、赤字国債はその都度、特例公債法、法案という形でやらなければならない、より厳しい制約を課しているということは承知をいたしております。

 ただ、先ほど申し上げたように、だからといって、それは一つの国債を出すときのルールとして厳しいということであって、それがいい、悪いという判断とはストレートにはつながっていないのではないかと思っております。

 それから、今おっしゃったことも、御質問に答えることになるかどうかわかりませんが、日銀引き受けというのは、今直接の引き受けはしていないはずでして、市中から日銀が国債を買うという形であるわけで、その点も、どちらがどうというふうに一義的に言えるのかどうか、率直に申し上げて、私はそのようには思っておりません。

野田(毅)委員 ヒントというか、答えを出してあるでしょう。お手元に私が配った、財政法の四条、五条にちゃんと書いてあるじゃないですか。そう言ってくれればいいんですよ。

 要するに、財政規律ということをしっかり頭に置いてください。つまり、日銀引き受け国債よりももっと禁じられることが赤字国債なんですよという認識ですよ。この認識がしっかりないから、何か特例法でやっていればいいんだというふうな、ある意味ではモラルハザードを我々全体が来してしまったんだ。

 最初に赤字国債を発行したころは、十年で完済するという話だったんだ。償還期限十年だ、借りかえしない。これも、最初に発行したときにはそのことを条件として発行したんですよ。だけれども残念ながら、そのころに、一般消費税もうまくいかない、なかなか大変だ、そういった中でそういうことになっちゃった。だから、結果として、借りかえ、借りかえがビルトインしてしまったということですよね。

 だから、そういったことをぜひ総理はしっかりと肝に銘じてもらいたい。そういう意味で、財政再建を本気でやろうというときに、公共事業だけをたたいてできるものじゃないということをもう一遍確認をしておきたい、こう思うわけであります。

 そこで、もう一つ聞きたいのは、きのう発表されたんですけれども、平成二十三年度予算の後年度歳出・歳入への影響という、これはごらんになりましたか、総理は。

菅内閣総理大臣 提出されたことは承知をしておりますが、詳細な分析を私自身がやっているかといえば、まだ詳細な分析はやっておりません。

野田(毅)委員 これは、私もきのう見て、大変ショックを受けました。これは政府でつくった数字ですよ。

 それによりますと、少なくとも、これから、今年度の予算を前提として、歳出については今年度予算で決めたことが一定のルールで今後も続くと。幾つかの想定はあるんですが、成長率が一・五%の場合と三%程度の場合と二つに分けていますね。どちらでいっても、ことしは借金は四十四・三兆ですけれども、来年、素直にいった場合にはどうなるか。おおよそもう五十兆近くになります、どっちにいっても四十九兆余りになる。再来年はもう五十兆を超えます、その次はもっとふえますと。こういう数字になっているんですよ。今でさえ国債の残高が危険状態にあるときに、今後ますますそれがふえていくということですね。

 しかも、その数字の中には、今日までやったマニフェストはそのまま継続して行われるという前提になっているけれども、今後、できていないものをこれからやるというものは入っていない。つまり、民主党がこれからマニフェストを全部一切やらないとしても、今のような数字になるということなんですよ。

 この点は、財務大臣どうですか。

野田国務大臣 間違いありません。野田議員の言ったとおり、この試算は、二十三年度の予算と制度を前提としてそのまま試算をしたものでございまして、数字はおっしゃったとおりです。

 ただし、だからといって、例えば試算の一のように、二十四年度がその差額分全部国債発行になるかというと、そうではなくて、やはり、これからも歳出も歳入も一体的に改革を進めながらこの数字を抑えていく、これは一定の試算のもとでの計算であるということは、ぜひ御承知おきをいただきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 十分わかっているんですけれども、何でこんなにふえるのかということの原因分析。やはり埋蔵金がぐんと減るということですよ、これは。それが大きく数字を膨らましている原因なんですね。

 ですから、もう一つの民主党のマニフェストは、この前お出しになったのは、歳出面で平成二十五年までに十六・八兆円マニフェストでふやしていくと。その財源は、全部既存の中をやりくりして、無駄を外すことによったり、あるいは租税特別措置を見直したりすることによって、同じように十六・八兆円賄います、プラマイゼロですというマニフェストだったですね、民主党は。だから、歳出面のほかに、今度は歳入面のマニフェストがあった。

 では、歳入面のマニフェストで、事業仕分けも行われたんですけれども、どれだけ今日まで、十六・八兆のうち、平成二十三年度予算に反映されるまでにどの程度の効果が出てきたのか、教えてもらいたい。

野田国務大臣 少なくとも、マニフェストの主要事項を実行するために、例えば子ども手当であるとか高等学校の授業料無償化とかというために確保した財源というのは、平成二十二年度、今進行中のものについては、一・一兆円が税制改正分です。そのほかが歳出削減分であります。二十三年度については、これについて税制改正分が〇・二兆円ふえると思います。歳出削減分が〇・四兆円ふえると思います。合わせて三・六兆円でマニフェストの主要事項については実現をしていて、よく、財源を確保しないでやった場合にはばらまきという御指摘があるかもしれませんが、安定した財源を確保しながら着実に実施をしていくという姿勢で臨んでおります。

野田(毅)委員 私は、今まで、質問でばらまきとはまだ言っていないんですよ。だから、大分御認識しておられるんだな、そういうふうに思いますね。

 そこで、ばらまきとは言いませんが、事実に即していけば、あと結構残っているマニフェスト、例えば暫定税率をなくするよとか、あるいは高速道路だって無料化にするよとか、そのほか、子ども手当だってまだ半分残っているんでしょう。そういったことを、これは次の選挙までの間にやりますという話になっていたわけだから。今言った後年度影響試算の中には入っていないんですよね。入っていなくてもこれだけ大きな借金が重なるんですよ。

 これはもう、完全にマニフェストは破綻していると思いませんか。この点は、大臣どうですか。

野田国務大臣 さっき申し上げたとおり、主要事項は、二十二年度、今進行中は、三・一兆円分進行しています。そして、今度新たに、来年度については三・六兆分、子ども手当とか農業戸別所得補償については拡充するという形で三・六兆分。財源を確保しながら、お約束したことの精神を生かしながら着実に実施をしていくということでございまして、十六・八兆とか九・数兆の話はあります。

 確かに、マニフェストというのは、お約束したことを何をやるかということと、財源手当てをどうするかという二つの面があるんですね。それは、きょうの午前中の答弁でもあったかと思いますけれども、ちょうどことしの九月に折り返し点になりますので、その進捗状況を踏まえて、引き続き何をやっていくのかということは、あるいは何がいつまでにできそうなのか、もしかすると、できそうもないものが出てくるかもしれません、そういうものを折り返し点に向けて総括していくということだと思います。

野田(毅)委員 もうそろそろ財政再建への具体的な道筋に入っていかなきゃいけない、時間との勝負になっているんですよね。

 そこで、私は聞きたいんですけれども、本会議でたしか総理が、マニフェストの見直しを、九月がちょうど任期の折り返し点だからという話があるんですよ。それは、そのとおりですか。そういう答弁を本会議でされましたよね、九月にマニフェストを検証して見直すと。それは、そのとおりですね。

菅内閣総理大臣 今、野田財務大臣からも同趣旨の話がありましたが、私もいろいろな機会に、ことしの九月がほぼ、衆議院の任期の四年間ということでいえば真ん中になりますので、この間に、マニフェストに沿って進んでいること、着手したこと、しかし、いろいろな理由からこれ以上進めることが難しいものを含めて検証して、そのことについて、また必要であれば国民の皆さんにきちっと説明したい、このように考えております。

野田(毅)委員 ということになると、私にはよくわからないんですよ。

 今のマニフェストをそのまま前提として税と社会保障の一体改革の案をおつくりになるということになるんですが、それでいいんですか、総理。

菅内閣総理大臣 御指摘が必ずしも正確にわかって答えられるかどうかわかりませんが、今申し上げたように、マニフェストにもいろいろな課題があります。例えば子ども手当でいえば、来年度に向けては三歳児までは月二万円という形で今お示しをしております。そういうことについては、それを前提とした形で、あるいは、それをさらに広げるか、もうこの程度しか無理かということも含めて、九月ごろをめどに、検証の対象には全体をしていきたいと思っています。

 ですから、そういう部分は前提となる部分もあるし、例えばガソリン税の暫定税率は現在事実上進んでおりませんが、その扱いを今後やるのかやらないのか、そういうことも判断した上で、そういう判断に基づいたものと、社会保障と税の一体改革というものが広い意味では関連はしてくると思いますが、一応、マニフェストはマニフェストとして検証したい、こう考えています。

野田(毅)委員 よくわからないんですよ。順序が逆じゃないかと。だって、社会保障と税の一体改革ということは、言葉はどうでもいいんですけれども、税制改革そのものでしょう。

 税制改革と、税と社会保障一体改革は違うんですか、同じなんですか。総理、頭の中ではどうなっているんですか。

菅内閣総理大臣 どういうことで言われているのか、必ずしも正確にわかりませんが、この間申し上げているのは、四月をめどに社会保障改革の形を、党と内閣で考え方をまとめる、その上で、その社会保障の新しい改革を進める上で、財源の問題を含んだ議論を六月ごろにはまとめてお示ししたい、こういうことを言っているわけでありまして、そのこととマニフェストに関することは、いや、関係がないとは言いませんが、社会保障の議論は今申し上げたような日程で進めていきたいというのが基本的な考え方です。

野田(毅)委員 わからないですね。

 社会保障を改革しようということになれば、あわせて、今まで言ってきたマニフェストを変更することになるんじゃないですか。あるいは、そのとおり、あのまさにばらまきのマニフェストを前提として社会保障改革をやろうというんですか。どっちなんですか。

枝野国務大臣 社会保障と税の一体改革につきましては、社会保障の大きな柱である年金についてマニフェストにお書きをしております。

 それは、先ほど来、午前中の質疑で申し上げましたとおり、ベースに御議論をいただきますが、さらにいろいろな御意見も伺って議論をしていくということで、最終的な結論は、これから議論の上で、どういうマニフェストの関連になるかということになってまいります。そして、その財源について一体的に改革をするということで、これを六月をめどに結論を出して、成案を得てお示しをしていくということを申し上げております。

 それと、マニフェストにお示しをした、先ほど来出ている子ども手当を初めとするそれぞれの施策を実行するための財源は、歳出削減等の手段によってしっかりと生み出すということでお約束をしてきておりますし、また、その方針の中で進めてきております。

 もちろん、お金に色はついていませんから、一つといえば一つかもしれませんが、マニフェストの推進はしっかりと財源を確保しながらやっていく。それとは別に、社会保障の一体改革の財源をどうしていくのかということを議論していくということでございますので、決して矛盾しないと思いますし、また、ある意味では切り離して議論ができる、その限りではできることだと思っております。

野田(毅)委員 社会保障の改革というのは、今、年金の話をされたんだけれども、年金以外にもたくさんあるわけでしょう。その中に、マニフェストに散らばっていますよね。当然、そうなれば、まさにマニフェストと一体になっているんじゃないですか。だから、マニフェスト自身を修正するという前提でなければ一体改革の結論は出ないんじゃないですか。おかしいじゃないですか。

 だから、今からマニフェストをどう見直すかということは言えないかもしれないが、少なくとも、見直すということを九月までやらないということは、これはちょっとおかしいんじゃないですか。少なくとも、今のマニフェストの前提が崩れているということじゃないですか。少なくとも、総理、順序が逆じゃないですか。総理、どうですか。総理自身に聞いているんですよ。

 それから、いま一つ、これはぜひ総理に聞きたい。

 それは、今、枝野さんがいろいろ言ったんだけれども、要は、お金に色目がないんですよ。財源をどこでつくろうが何しようが、もし仮にマニフェストを、そういうことをやっていなければ、国債発行額は三・六兆円減らすことができたんじゃないですか、何だかんだ言ったって。国債のトータルを減らすことはできたはずだ、マニフェストをやっていなければ。当然の話ですよ。それは論理のすりかえですよ。総理、どうですか。

菅内閣総理大臣 野田委員が言われていることを私なりに理解をしますと、確かに、マニフェストの中で、子ども手当とかあるいは求職者支援とか、広い意味での社会保障に関するものも入っておりますから、そういうものを含めた社会保障制度改革というものに関連がある部分があることは、確かにおっしゃるとおりです。

 ただ、先ほど申し上げたように、現在、マニフェストについては、かなりスタートをしているものもあれば、ガソリン税のように、実際上は、現在のところ手がついていないものもありますから、そのことは当然ながら念頭に置きながら、社会保障と税の一体改革については、先ほど申し上げたような日程を念頭に進めていきたい。

 九月というのは、いわゆる四年間の半ばという意味で九月ごろを一つのめどに検証したいということでありますので、そこは私は、そんなに決定的に、こちらが先だ、こちらが後だというのではなくて、社会保障の議論の中で、場合によっては、一部については前倒し的な議論が必要になるかもしれない、そういう形で十分対応できるもの、こう考えております。

野田(毅)委員 大分時間が過ぎていますが、一つ確認しておきたいんですけれども、一昨年の国会で成立しました所得税法等の改正案の附則百四条、ここには、平成二十三年度中に法制上の措置を講ずる、こういうことですから、この点はちゃんと守るんでしょうね、政府を拘束しているわけですけれども。確認をしておきたい。総理。

中井委員長 野田佳彦財務大臣。

野田(毅)委員 これは、総理自身も財務大臣を去年しておられたんですから、ぜひ総理自身の決意のほども聞かなきゃいけないので、確認しておきたいです。

中井委員長 では、野田さんと総理とお二人に答弁願います。

 野田佳彦財務大臣。

野田国務大臣 御指摘のとおり、附則百四条の規定は「平成二十三年度までに」ということですから、平成二十四年三月までに、年金、医療、介護、子育てなど、社会保障に必要な費用の増大を踏まえて、消費税を含め、税制の抜本改革法案を提出することを政府に義務づけております。

 当然のことながら、法治国家でございますので、政府としては、法律を尊重し、しかるべき対応をしていくということが筋だというふうに思いますし、そのためにも、今後、いろいろな抜本改革の際には、この扱いも与野党で真摯に、胸襟を開いて議論をしていきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 今ので確認をしましたが、そうすると、国会で審議をする時期はいつになりますか。ことしの秋の臨時国会ですか、あるいは来年の通常国会ですか。

野田国務大臣 政府としてのスケジュールは、今回何回も出ていますから、四月までに社会保障の安定強化に向けた制度設計をしていくということと、六月に、それを支えるための税の安定的な財源をどうするか、及び財政の健全化に向けた一体的な改革を成案を得る、成案を得ると同時に工程表も出すということになっていますので、そのときに決めたいというふうに思います。

野田(毅)委員 いずれにしても、ことしの秋か来年の通常国会、どちらかですよね。どっちかで、それより後になることはないということは確認しておきたいんだ。

野田国務大臣 いずれにしても、平成二十四年の三月までに抜本改革案を出すということが今の法律になっていますので、そのことは尊重をして、しかるべく対応していきたいということでございます。

野田(毅)委員 それから逆算していくと、そんなにもう時間はないだろうということですよね。だから急がなきゃならぬのですよ。

 そこで、私は、今の政府のテンポで間に合うんだろうかということが全然わからないんですよ。今盛んに、案づくり前に一生懸命一緒にやろうという話があるけれども、これは午前にも話がありました。我が党は、既にこの前の参議院選挙で、正面から消費税の当面一〇%ということも公約の中で明記しました。そして同時に、その使い道について、数字を挙げて、基礎年金の二分の一のために使うとか、あるいは少子化のためにどうとか、合計幾つかの項目を並べて明記しています。昨年の我が党の税制改正の考え方の中でも、はっきりと党として出しています。

 案がないのは政府なんですよ。我々は、有権者に公約として提示をして、その上で選挙で改選第一党になった。ある意味では、ルビコンを我々は既に渡っているんですよ。だけれども、政府・与党は全然、川の手前で右往左往しているだけじゃないですか。本当に我々と同じレベルの案を政府・与党の中でまとめ切る、せめて我々が出したぐらいの案を政府・与党が六月にまとめるというのは、それに匹敵するようなものをまとめようということなのかどうなのか。どうですか、総理。

中井委員長 与謝野社会保障・税一体改革担当大臣。

野田(毅)委員 いや、これは聞いていません。だめです。委員長、だめです。

中井委員長 いや、これは担当に聞こう。担当です。六月までにまとめるのが担当でしょう。

野田(毅)委員 違う。私は、与謝野さんは……

中井委員長 委員長が指名しました。委員長が指名している。委員長が指名しました。与謝野さんです。(発言する者あり)

野田(毅)委員 私は、与謝野さんの答弁は求めません。

中井委員長 全大臣と書いてあるじゃないですか。

野田(毅)委員 私は認めていない。総理、総理。だめだよ委員長。何という横暴なことをするんだ。

中井委員長 担当だから。

野田(毅)委員 担当は関係ないよ。私が総理に聞いているんだよ。

中井委員長 座ってください。着席してください。

野田(毅)委員 こんな大事な話を総理がみずから答えられなくてどうするんですか。(発言する者あり)

中井委員長 委員長の議事進行に従ってください。言動を少し慎んでください。

 菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 私は、野田委員が従来から考えておられることについては、大変貴重だし、参考にしなければいけないところもたくさんあると思って私自身考えておりますので、そういう点で、今おっしゃったように、確かに、昨年の参議院の段階で自由民主党として消費税一〇%というものを明示されたことは、まさに、ルビコンという言葉を使われましたが、大変なある意味勇気のある決断であった、そこは本当にそのように思っております。

 私も、そういう中で、一〇%を参考にしてということを言ったことが、必ずしも私はすぐに上げるという趣旨ではなかったつもりですけれども、参議院の選挙ではそういう誤解も招いたということで、改めて、参議院選挙が終わった後に党としてこの問題をしっかり取り組んでいただきたいということで、先ほど御説明がどなたかからありましたけれども、藤井さんを座長とした中でそうした議論をいただきまして、一定程度の方向性を示す中で、例えば昨年の十二月に基本的な社会保障改革の考え方の五項目をまとめ、その五項目めには、いわゆる将来にツケを残さないということも含めて盛り込んだところであります。

 その上で、先ほど来申し上げておりますように、与謝野大臣を責任者として、四月までに社会保障制度のあり方、そして六月にはそれに加えて税制一体の改革案を出す。午前中の議論でも申し上げましたように、どちらが先、後はありますけれども、自民党が先であることを認めた上でも、我が党あるいは我が内閣で確定的なものを出す前に、一緒に与野党の議論ができるものならばしたいということで呼びかけをさせていただいておりますけれども、現時点でいえば、まずは、政府は政府として案を出せという御主張が強く出されておりますので、それに向けて四月、六月の段階で出していきたい、これが今の我が内閣としての方針です。

野田(毅)委員 僕は、今までの総理の政治姿勢なり、事をなそうとする場合の手順の運び方ができていないという気がするんですよ。もし仮に、本気でやるんなら、本気で政治生命をかけて日本の財政危機を乗り越えようという腹があるんなら、違った手順に入っていると思うんです。

 まず、党内の一本化のためにどんな努力をしていますか。鳩山さんとさしで話したことはありますか。小沢さんとも、さしでこの問題で協力を求めたことはありますか。私は、総理はどうも、言葉ではいろいろおっしゃるけれども、実際にみずから汗をかいてそういったことをやったことはないでしょう。どうやってまとめ切れるんですか。今、ばらばらばらばらしているじゃないですか。

 今こういう状況の中で、もし我々が今の段階で皆さんと一緒に協議ということになれば、もう一遍我々がルビコンを、またもとへ戻って川を渡らなきゃいけない。せっかく我々は先に案を出して、有権者に問うてやってきたわけでしょう。今度は民主党が正面から同じことをやるべきじゃないですか。今の民主党は、四年間は消費税を上げないということを公約にしたんでしょう。鳩山さんはそう言ったんでしょう。そして、選挙で勝って政権を握ったんだ。それと違うことをあなたはこれからおやりになろうというわけだ。でしょう。では、消費税の引き上げはやらないということなんですか。

 私はなぜそう言うかというと、税と社会保障の一体的改革という言葉でごまかして、消費税の引き上げをごまかして、そして結局は何にもやらないということじゃないですか。では、先ほどの附則百四条に基づく法案を出すということは、当然消費税の引き上げを中心とする法案にならざるを得ないじゃないですか。総理、どう思いますか。

 だったら、正面から国民に向かって真摯に今日の危機を訴えて、おわびをして協力を求める、そうでなければ解散をする、そして正面から消費税の引き上げを掲げて民主党が選挙をやる、当たり前のことじゃないですか。どうですか。

菅内閣総理大臣 野田さんの言われることの相当部分は私も同じような考え方なんですが、つまり、この問題は、当初、野田さんも言われていたように、一年、二年で起きた問題ではないんです、先ほど言われたように。ですから、この問題を越えていくには与野党含めた議論が必要ではないかということも申し上げているわけで、確かに、我が党の政権の中で謝らなきゃいけないこともあるかもしれませんけれども、それは、別に我が党だけでこれだけの状況を生み出したわけではなくて、その前の状況もあるので、まさにどちらがいいとか悪いと言わないでやりましょうというのは、野田さんも言われましたし、私もそう思っています。

 その上で申し上げれば、この問題で、今、民主党の中のことを言われました。いや、確かに、党の中をまとめるのは大変です。しかし、私は、現在の内閣と現在の党の体制、九月の党大会で改めて私が代表に選任をいただきましたので、その中で、基本的に今申し上げている方向に党内がだんだんと収れんしつつある、このように見ております。そういう意味で、先ほど申し上げたように、ちゃんと社会保障の五つの原則もまとめましたから、その中から次の四月、六月に向かってまとめていくことは、しっかりとやれる体制ができているわけです。

 ですから、ぜひそれは、自民党は一つの大きなルビコンを渡られたというのは、そこは私は評価をいたしますけれども、その中で、せっかく私たちが、では、そのルビコンを渡られたことも参考にして議論をしようじゃないかというときに、いやいや、おまえたちも先に渡ってくるまではまだ様子を見ると。それは一つの見識かもしれませんが、できることならその前から議論しましょうと申し上げているということを野田さんには御理解いただきたいと思います。(野田(毅)委員「だから、結局は何もやらぬということじゃないですか」と呼ぶ)

中井委員長 野田君、指名してからしゃべってください。

 野田君。

野田(毅)委員 結局、今の総理の話を聞いていると、ルビコンを渡らないということじゃないですか。むしろ、あなた方はルビコンの手前におるところに我々に一緒に来いという話じゃないですか。

 もう一つは、私は、最初に国債の格付の話をしました。だけれども、今なぜ小康状態か。それは、国民の金融資産と借金とのバランスですよ。だけれども、先ほど収支見通しの話をしたでしょう。どれだけ積み上がってきていますか。あと数年じゃないですか。数年で逆転するんじゃないですか。どうなるんですか、そのときに、国内消化はもう限界になったときに。一%国債の金利が上がるだけで一兆円、余分な利払いがふえるんですよ。ことしでも十兆円、利払いで消えているんですよ。本当に今、危機状況にあるじゃないの。しかも、国債はどんどん積み上がっている。マニフェストはまだ見直しをはっきりさせない。そういう状況で、これはこの内閣では、もうとてもじゃないができない。

 やはり、民主主義の原点にのって、本気でやるんなら、国民に正面から消費税の引き上げを掲げて、そして審判を受けなさいよ。まずそれが先決だ。我々も一緒にやろうやないの。できるだけ早くやれば、残念ながら我が党もそれだけ十分に信頼回復していませんよ。やってみればどっちが勝つかわからぬですよ。むしろ、この春にでも総選挙をやって、勝った方にこの問題で協力する、どっちが勝っても、事このことに関しては協力する、それだけ約束すればいいじゃないですか。

 私は、今のまま菅さんが、結局は、何だかんだ言いながら、ああでもない、こうでもないと言いながら、ルビコンの手前で右往左往して時間稼ぎをしているんです。今の話を聞いたって、せいては事をし損じるようなことを言っているから、そんなことをやっていれば、菅さんは延命できても、日本の国の寿命は縮まるんですよ。だったら、早く、どっちが勝ってもいい、事このことに関しては、党派を超えて、身を捨てて国を救う、その気持ちにならぬのですか。

菅内閣総理大臣 野田さんが言われた中で、前半部分までは、危機感を含めて、私も財務大臣をやったときに、ギリシャの問題を含めて、何度となく各国と議論をし、また私もそれなりに国内でも申し上げてきたつもりであります。そういう意味での危機感については、野田さんが持たれている危機感と私はそう違わないと思っております。

 ただ、一つだけ違うのは、この段階で解散をして何が生産的なんですか。まさに、そのための、国民が選択できるきちんとした、社会保障と税の一体改革の案をきちっと提示して、できることならば与野党で合意をして、一部の野党で反対する党は当然残ると思いますけれども、その中で、最終的に消費税を引き上げることになる場合には、引き上げ前にきちんと国民の信を問うということは申し上げているわけですから、そこまでまず一緒に進もうということを申し上げているわけであります。

野田(毅)委員 終わりますが、一つだけ今のことに関して、そうであれば、四月にはまとめるんですね。まとめられなかったら、あなたは責任をとりますか。四月に、社会保障について。そのことだけ私は強く言っておきます。いいですね。

 総理、いいですね。四月には社会保障をまとめ切るんですね。いいですな、首を縦に振っているから。

中井委員長 時間が来ています。

 この際、塩崎恭久君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。(発言する者あり)静粛にしてください。

 塩崎恭久君。

塩崎委員 自民党の塩崎恭久でございます。

 先ほど来、S&Pの格下げの問題について、何人か話が出ていますが、余りにも総理の答弁が無責任なので、私も続いてまず御質問を申し上げたい、こう思います。

 そういうことには疎いので改めてにしてほしいというのが発言でありましたが、発言の真意については私はもう問いません。参議院の本会議で、聞いてなかったということだというふうに言っていました。

 そうだとすれば、それは危機管理上、一時間何分かあったのに、何も知らない、その程度の総理だということであります。もし知っていて、本当に疎いということであれば、これは総理失格だということでありますので、余りその言葉についてはこだわりません。

 そこで、総理、このスタンダード・アンド・プアーズのプレスリリースというのがありますが、お読みになりましたか。

菅内閣総理大臣 目は通しました。

塩崎委員 目を通しましたというのは、読んでいないという意味ですよね。

 これはたまげるべきことですよ。あの尖閣のときに、ユーチューブに流出したビデオも見てなかった。もとの海上保安庁のビデオも見てなかった。自分では何もやらない総理ですよ、菅さん。これだけ問題になって世界が心配をしているのに、このプレスリリースを読んでいない。(発言する者あり)

 実は、本質の質問をしろという話でありますから申し上げます。先ほど来、財政運営戦略というのを大分強調されておりました。それはそれで結構なことだと思うんです。これは去年の六月に閣議決定されているもので、これは菅さん御自身が閣議決定されたわけですね。そうでしょう。

 それで、その中に、「具体的な取組」という中に1、2、3とありまして、3のところに、「最近、ギリシャ等において財政不安が著しく高まるなど、公的債務のリスクに対する内外の市場の目は厳しさを増している。」いろいろ書いてあって、「市場の信認を確保するため、」「市場との対話を重視した国債管理を強化するとともに、財政規律に対する政府の強い意思を内外に向けて発信する必要がある。」こう書いてあるんです。これは閣議決定ですから、菅さんのお決めになったことですよ。

 まさに、あの格下げが起きたときに、財政規律に対する政府の強い意思を内外に発信すべきだったんですよ。にもかかわらず、聞いていなかった。聞いていないわけはないんだ。我々はみんな携帯電話であれは速報で知っているわけですから。国会から出てきたときに必ず知っているはずだし、車の中で秘書官から聞いているはずですよね。それでも言わなかった。この点についてどう思いますか。これは自分で決めた閣議決定に反したわけですから。

 そして、さっきの話も、野田さんには聞いていないんだよ。さっきの話でも、あたかも一民間の格付機関がしょせんやったことだ、デリバティブで間違ったそういうところだよね、いかにも簡単に扱っているのがよくわかりましたよ。

 ところが、ここに、3のところに市場という言葉が三回も出てくるんですよ、数行の中に。そのくらい大事だということを御自身でお決めになっていながら、その程度の認識だということについて、自分で決めたことを守らなかったら、やはり国民に対して謝罪すべきですよ。どうですか。

菅内閣総理大臣 率直に申し上げて、塩崎さんの言われていることは、少し何かこう、私の認識とはずれているんですね。これは円の為替相場の場合もそうですが、国債の金利の場合もそうですけれども、つまり、私の総理大臣という立場で何を言うべきで何を言うべきでないかということもあるんです。

 市場との対話というのは、まさにこの財政運営戦略を掲げ、そして、今御審議いただいている来年度予算で、昨年から約束をしていたぎりぎりの財政規律、七十一兆の支出と約四十四兆以下に国債を抑えるということを守っている、こういう姿勢をマーケットが一つの大きな判断材料にしているわけでありまして、私がこの場でこういうことを言ったから言わないから、一般的に言えば、先ほど野田委員からもそういうことについて直接触れないことについては理解をいただきましたけれども、そういうことを塩崎さんもよくわかっているはずなのに、何か言葉で発することだけでマーケットとの会話をしているわけではない。実際に予算案そのものを見ていただいてちゃんとマーケットが判断している。

 ですから、マーケットは、この格付が下がった後においても、金利の上昇はなくて、冷静な対応をしているということももちろん塩崎さんはおわかりの上で言われているんだと思いますが、これがまさにマーケットとの対話の効果があっているということを示しているじゃないですか。

塩崎委員 そもそも、予算案はとっくに公になっていて格下げられたんですよ。それに、言葉が、マーケットというのは何かが全然わかっていないということなんですよ。

 つまり、格付機関もマーケットの一員ですから、格付機関があってみんな債券を発行したりしているわけですから、それをマーケットじゃないと言うんだからたまげた話であって、発するべき言葉とそうじゃないのがあると言うんだったら、疎いのでなんというのは最も発するべきじゃない言葉ですよね。こんなことを言っておいて何を言っているのかと私は言いたいんです。

 それで、菅さん、さらに申し上げれば、民間企業にこの国債の格付が下げられるということにどういう影響があるか御存じですか。

菅内閣総理大臣 今はどういう意味での御質問か必ずしもわかりませんが、まず、先ほど申し上げたように、それはマーケットというのはいろいろあります。しかし、一番直接的なマーケットというのは、国債に対する金利がどう動くかということが、これが一番の直接的な問題でありますから、そういう意味で申し上げたわけです。

 民間は、それは民間でまたマーケットに社債等を出しますから、そういうものに対して国債との有利性、不利性ということでの影響は、それは当然あるだろうと思っています。

塩崎委員 全くわかっていないのがよくわかりました。

 この発表と同時に……(発言する者あり)よく聞いてくださいよ。この日本の国債の格下げと同時に、日本の企業、例えば保険四社、電力五社、ガス二社、民間企業だけでこれで十一社格下げになっているんですね、同時に、自動的に。なぜかといったら、国が基本的に一番トップでないといけないから、国が下がったら下げられちゃうんですよ、そこに張りついているところが。

 そのほかにも、御存じかもわかりませんけれども、御存じないんだろう、これは。政府系金融機関とか政府系のところも五つ、東京都、愛知県、政投銀……(発言する者あり)トヨタは別よ、そういうところが全部下げられているんですよ。いや、社債の発行のときにも言っているので、格下げになることが全くわかっていないんだよ。だから、すぐわかるわけですよ。自動的に下げられているということを知っていれば、あんなことは絶対言わないはずで、下がっていれば、当然、これは調達コストが高くなるんだから。

 国の財政が悪い、国の政策が悪いことによって民間の企業に迷惑をかけているというぐらいの自覚を持っていただかなきゃいけない、そのことを言っているんですよ。どうですか。

菅内閣総理大臣 よく国が民間に迷惑をかけているというのを私に対して言われるんですが、私は、本当のところ、これだけの一千兆円近い国債発行残高があって、先ほど来申し上げているように、財政の運営戦略を立てて、そしてそれに沿って、少なくともそれと矛盾しない形で来年度の予算を提示して、まさにそういう形で、責任を果たす形で予算編成をしているわけです。

 確かに、それでも格下げが行われたこと、それ自体は決して喜ばしいとは思いませんけれども、まさに先ほど読めと言われた中にも書いてありますが、つまりは、それはいろいろな解釈があるでしょう。つまり、ねじれ国会だから、なかなか我が政権が出したいろいろな予算と関連法案が通りにくいから、そういう形で、私たちが言っている、本来なら正しいと思われている健全化が進まないから格下げになったという見方もあるわけでありまして、ぜひとも、格下げではなくて、格上げになるように、我が党が、我が政権が出している健全化の中身を含んだ予算に対して、皆さんも協力して、一日も早く成立をさせていただきたい、このことをあわせてお願いしておきます。

塩崎委員 読めと言われたものとおっしゃったから、では読んでいなかったということがよくわかりましたけれども、ここの中にも、何をやったら格上げになるかということが書いてあるんですよ。先ほど来出ているように、去年から格下げをするぞということが予告されているわけですね。今回も、さらにまたもう一回下げるかもわかりませんよということも書いてある。

 一方で、だけれども、格上げにするんだったらば、こういうふうにすべきだということも書いてある。何て書いてあるか知っていますか。イエスかノーかだけ。知らないんだったら、知らないと言って。

菅内閣総理大臣 知らないです。

塩崎委員 知らないそうでありますから、申し上げると、それは、こう書いてありますね。「二〇〇〇年代前半のように政府が財政再建と成長見通しの改善に向けた施策を実行できれば、格上げを検討する。」これがこのマーケットの一参加者である格付の機関が言っていることですよ。「二〇〇〇年代前半のように」というのは、だれが総理だったかわかりますよね。ここのおやじさんですわな。

 これ以上申し上げませんけれども、要は、ここにも書いてあるし、実は、これは我々自民党の議員も、野党もみんな共通だろうと思うし、国民がむしろ共通に思っていることは、やはりこれは、先ほど来ずっと出ていますけれども、政府債務問題への一貫した戦略がないということと、もう一つは、成長戦略が脆弱だということですよ。

 鳴り物入りで、去年の六月に、さっきの財政の運営戦略というのを設けて財政再建の目標を、我々とほとんど同じものを設定した。そして、新成長戦略も設定した。中長期の見通しも一応、経済財政について出した。そういうことをやっているんですよ。やっているけれども、格下げされている、来年度予算も出されて。

 そういう評価がなぜ我々だけじゃなくて世界でも起こるのかということをよく考えてもらわなければ、あなたは今、日本国総理大臣でありますから、これは日本の財政のみならず、経済に対してもやはり責任を持っているということなので、私は、この程度の認識だということで愕然としますが、ぜひ委員長、経済、特に地方経済が大変なことになっていますから、経済についての集中審議をぜひお願いしたい、こう思います。

中井委員長 既に理事会では、自民党さん含めて他の野党から、集中審議についての提起がございました。理事間協議でこれの実施についてお諮りをいたしているところであります。今のテーマについて含めて協議をさせていただきます。

塩崎委員 次に行きますが、マニフェストの見直しがさっき大分議論になりました。特に、社会保障と税の一体改革との関係で、我々聞いていても、どうにもよくわからない、腹に落ちない話ばかりでありました。

 そもそも、折り返し点だから見直す、こういうようなことをおっしゃるんですね。さっきもおっしゃっていましたよ。そんなものなのかいな。まあ取り繕っているんでしょうけれども。我々としては、やはりこれはもう、ばらまきをしながら増税をするだのような話はあり得ないから、そうすると、どうしても皆さん方のマニフェストを見直してもらわざるを得ないということだろうと思うんですね。だけれども、一体、何を見直して何を見直さないのかもよくわからない。

 おまけに、菅さん、一月の七日にネットの番組に初めてお出になられて、そこで見直しのことをはっきりおっしゃっていました。全面的に見直すとおっしゃった。ところが、金曜日の参議院では、全面的に見直す方向じゃなくて、むしろ、検証という言葉が使われて、検証の結果、仮にマニフェストの見直しが必要ということであれば、その際には国民の皆様に丁寧に説明することで理解を得たい、こう言っているんですね。

 そうすると、仮にの話ですから、本質的には、ひょっとしてマニフェストは見直さないこともあるんですか、こう聞きたくなるんですけれども、いかがですか。

菅内閣総理大臣 他の委員の皆さんにもお答えしてきたところでありますが、マニフェスト、特に〇九年マニフェストについて、相当程度既に実施をいたしております。子ども手当についても初年度は半分ではありますが実施しましたし、それから農業の戸別的所得補償、さらには高校の無償化等々、相当程度実行をしているわけです。また、着手したものも含めれば、もっと多くあるわけです。確かに、一部にガソリン税の暫定税率など、これも今、環境税といったような問題の中である意味議論がなされているわけです。

 ですから、そういう相当部分を実行したことを含め、二年がたとうとしておりますので、そうしたやったもの、着手したもの、まだ着手できていないものをそれぞれしっかりと検証した中で、例えば、この部分はやはりあと二年かけても難しいというものがもし出てくるとすれば、それは国民の皆さんにきちっと理由を含めて御説明申し上げよう、そういうことを言ってきたところで、特に私が言っていることが変わったとは思いません。

塩崎委員 さっき申し上げたように、今回S&Pで期せずして明らかになったことは、財政に関する政策が全然みんな説得されていないということと、経済成長戦略というものがこれまただれもこれでうまくいくだろうと思っていないということなんですね。

 それで、今、財政の話を聞いています。さっき話が出ていたように、社会保障と財政の一体改革のタイミングなんかと、いろいろタイミングの話が出てきました。

 一つ、私たちびっくりしたのは、これは岡田幹事長が、予算が成立した後にマニフェストの見直しの機関を党内につくると言っているんですね。これは一体どういうことなんですか。

 つまり、我々は、マニフェスト、さっきも、今度は三・一兆が三・六兆になるわけだね。それを含めた予算を我々審議するわけですよ。にもかかわらず、そこから、今度は見直しをやると言うけれども、とりあえず予算が通るまではこのままでやってください、終わったらさあ直すぞということでやりますということですが、代表ですから、一体どうしてそんな遅い時期からやるのか。

 さっき野田先生も言ったように、早くから見直していかなきゃいけないし、そもそも四月に社会保障の絵を見せると言うならば、私は本当は、社会保障と税の一体改革じゃなくて、社会保障と財政の一体改革でやらなければ、支出の部分というものが議論の中に入らないままに増税の話だけが出てきて、支出を切らないのに税の話だけ、増税の話だけが先に来る、これはやはりおかしいんじゃないかと私は思っているんです。だから、それは社会保障と税の一体改革という名前は本当は社会保障と財政の一体改革で、支出の方の話も一体的にやらなきゃいけない。

 ですから、マニフェストの見直しというのと社会保障と財政の一体改革は一緒にやらなきゃいけないはずなんですよね。こういう重大な問題を皆さんと一緒に、まあ先々議論するかわからない皆さんの案をまずつくるのに、党の方では何か予算が通った後からやり始めますみたいなことを言っている。そんなことでこの大きな問題に取り組めるんですか。

玄葉国務大臣 マニフェストの検証の時期と、社会保障に対する民主党あるいは政府・与党の考え方をお示しする時期との関係でありますけれども、まず基本的に、二年、折り返し地点なので、マニフェスト全体は九月に検証するということでありますけれども、おっしゃったとおり社会保障分野に関しては、既に仙谷調査会ができて政府・与党で検討を始めておりますから、結果として、その調査会で得られる結論が事実上、社会保障分野のマニフェストの検証ということになるのではないか、そう考えていただいてほぼ結構でございます。

塩崎委員 そうなると、さっき野田大臣が、少なくとも二十四年三月末までに一体改革の結果として税制の改革の法律を出してくる、こういうお話がありました。一方で、菅総理、大きな税制改革をするときには信を問うということもおっしゃってきましたよね。

 そうなると、この問題というのは、与野党協議もしようしようという話でありますけれども、まずは政府で案を取りまとめるということで、マニフェストの変更も含めて今お話があったようにやってくるわけですから、そうすると、政府・与党案がまとまる。それと与野党協議が行われて、どこかで合意をするかもわからないですよね。そうすると、今度は法案を提出する。これがいつかという問題になるわけで、ではその成立がいつで、それから施行はいつなのか。

 そうなると、菅さんがおっしゃっていた選挙のタイミングというのは、一体どの時点で国民に信を問うのか。何となく野党と一緒にやっていればそれでいいのかというようなことでいっちゃうんですか。そうしたら今まで、では一体いつの、任期満了だったらおかしいですよ、それは全然合わないから。必ず大きな改革の前に信を問うとおっしゃったんだから、だったらいつ選挙をやられるんですか。

菅内閣総理大臣 まず、一般的に言っても、こういう時期にいつ選挙をやるのかということを確定的に言うことはできないし、またすべきでもないと思っております。

 先ほど来議論がありますように、百四条の規定の中で、一定の政府を、まあ今の法律は自公政権下でつくられた法律ではありますが、一定の内閣を、政府を拘束する要素がありますので、先ほど野田財務大臣がその線に沿って進めたいということを言われました。

 私はそれに加えて申し上げれば、この間、先ほどの、これは自民党の野田委員の言われたことも含めて、我が党なり我が内閣として案を出したときに、それが与野党間でどういう議論が可能なのか、できるのかできないのか、やはりそのこともしっかりと見守らなければならないと考えております。

 そういう意味で、そうしたことを含めて、最終的にこの案でいこうということが、できれば与野党で合意され、そしてどの段階でそれを実際に施行するのか、いろいろな課題もそれに加えてまだあるわけでありますから、そういう中で最終的に施行される、つまりは、例えば消費税の引き上げということが、自民党は一〇%引き上げをもう既に決められていますが、例えばそういうことが行われる場合には、行われるまでにはやはり国民の信を問うことが必要だ、その考えには変わっておりません。

塩崎委員 はっきりいつだかよくわかりませんが、ちょっと別な話で、細川大臣、高齢者医療制度を直そうということで法律を出されるという話になっていたはずでありますが、今国会に出てくるんですか。

細川国務大臣 後期高齢者医療制度につきましては、これを廃止するということで、今、厚生労働省の方で検討した結果、そういうまとめをいたしました。

 それで、この国会に提案を目指して今検討しておりますけれども、この国民健康保険の財政運営などにつきまして、これまでの市町村、これについて、高齢者については県の方にお願いもしたい、こういうことになっておるわけですけれども、なかなかそういうところで合意も得られていないようなところもありまして、今国会にも提出をするということを目指して、今検討しているところでございます。

塩崎委員 目指しているということは、出ないかもわからないということでいいんですかね。

細川国務大臣 今検討をして、今国会に提出を目指しているということであります。

塩崎委員 目指すんですから、うまくいかないこともあるんだろうというふうにしかとれないんですが。

 そういうことを前提に、皆さんの言う社会保障の税との一体改革という、一番大きい塊が高齢者医療ですよね。我々は、後期高齢者医療制度ということで、いろいろ直しながら、今定着しつつあるわけですけれども、それを全部直そうということでやろうとしている。それが法律として出てくるか出てこないかわからないのに、四月までにこの社会保障の改革の絵は全部かき切る、こうおっしゃっているわけですよね。それは一体可能なのかなと。

 では、何を前提に、最もこれから伸びるであろう医療、そして、今は五割ですけれども、高齢者医療の国費負担は五割ですけれども、では、これをふやすのかふやさないのか、保険料でいっちゃうのかどうなのか。大分、負担増の話が出ていて、いろいろ党内ではおしかりを受けているようですけれども、そういうようなことが決まらないままに社会保障の形が決まるということはあり得ないんだろうと思うんですよ。もちろん、年金のさっきの話もありますけれども、その辺はどうなんですか。

枝野国務大臣 今、具体的に、この国会でできれば御審議をお願いしたいということで法律案をつくっていることについては、所管の細川大臣の方からお話を申し上げたとおりです。

 そして、今の時点で具体的な案があるもの、そして、年金については民主党としての案はございますが、いろいろな御意見を承って、そして、よりよいものを、四月をめどにまとめていくもの、いろいろな種類のものがございまして、いずれにしろ、四月の段階で、例えば現行の制度そのままでいいではないかというのも社会保障全体の中では部分的にはあるかもしれません。いろいろな種類によって、何をどの程度どう変えるのかということを含めて四月に案を出すわけでございますので、その法律案がその段階までに出ているか出ていないかということは、四月に案をまとめることについての障害にはならないというふうに思っております。

塩崎委員 余りそうは思いませんが、次に行きたいと思います。

 次に、この財政政策に対する信認がないということのもう一つのあらわれで、今度の予算でのペイ・アズ・ユー・ゴー原則について、ちょっとお聞きします。

 国会での答弁で、マニフェスト政策については財源は確保している、こういう答弁がありました。我々が見る限りは、先ほどの財政の運営戦略、この中で見る限りは、一般的にこのペイ・アズ・ユー・ゴー原則を書いてあるわけでありまして、そうすると、例えば基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げ分の二・五兆、これは、我々の反対にもかかわらず、埋蔵金、特に鉄運機構を使いながら、これでペイ・アズ・ユー・ゴー原則を守った、こうおっしゃっているようですけれども、そんなことはないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか、総理。

野田国務大臣 御指摘の、基礎年金の国庫負担二分の一を継続するに当たっては、これは臨時財源を充てるということを行いました。御指摘のとおり、鉄運機構の剰余金一・二兆円を含めて二・五兆円の臨時財源を充てるということ、今回は特例公債法の中身でもございますけれども、御理解をいただければというふうに思います。

塩崎委員 少なくともこの財政運営戦略には、歳出増または歳入減を伴う政策の新たな導入、拡充ということで、皆さんの、言ってみれば政権を担当してからは初めてのことを、去年に引き続きではありますけれどもやるということでありますから、これはまた別だという話にはならないと思うんですよね。だから、これはやはりペイ・アズ・ユー・ゴー原則の違反じゃないかというふうに思います。

 それから、もう一つは法人税減税の問題です。これは、税調の大綱にも書いてありますが、素直に、「「ペイアズユーゴー原則」との関係では今回の税制改正による財源の確保は十分でありません」、こう正直に書いておられますよね。だから、これはペイ・アズ・ユー・ゴー原則を守らなかったというふうにしか読めないわけですけれども、そういうことでよろしいんですね。

野田国務大臣 全体としては、歳入歳出すべてペイ・アズ・ユー・ゴー原則を当てはめながら組んだつもりです。ただし、この法人実効税率の引き下げは、これは多分十二年ぶりぐらいだというふうに思いますが、なかなかデフレ脱却できないという状況の中で、やはり雇用と投資に思い切って踏み切ろうという政治判断があったということで、これは例外的にこういう形になりました。

塩崎委員 例外的にですから、これはペイ・アズ・ユー・ゴー原則を当てはめることはできなかったというふうに正直にお認めになったということでよろしいですね。答えなくていい、間違っていなければそれで。

野田国務大臣 経済成長とそして財政健全化、これは両立を図っていく中での決断だったんですが、さっき申し上げたとおり、基本的にはペイ・アズ・ユー・ゴー原則を当てはめた対応をしていますけれども、法人実効税率については課税ベースを広げる努力もしましたけれども、全体としては財源確保が十分なされなかったという意味で、ただし、これはあくまで雇用と投資を思い切って促したいという政治判断であるということは御理解をいただきたいと思います。

塩崎委員 正直にペイ・アズ・ユー・ゴー原則は当てはめられなかったということを認めたわけですね。

 それから、マニフェスト関連施策は全部一応当てはめているというふうにおっしゃっているようでありますけれども、子ども手当、これはいずれも恒久財源でやれたというふうには我々から見るとなかなか思えないんですけれども、何を根拠にそうおっしゃっているんですか。財源を言ってください。

野田国務大臣 財源は、各種控除を倒していくということの中で……(塩崎委員「数字を言ってください」と呼ぶ)ちょっと今手元に持ってきていませんけれども、今回は、給与所得控除、それから特定扶養控除、こういう控除を見直すことによって財源確保をしています。

 ただし、これはよく、多分、単年度で何で終わるんだという議論になるんですが、その控除が生きてくるのは少し時間差がある分、少し単年度ずつでこうやってやっていかざるを得ないという状況が今ございます。

中井委員長 塩崎さん、数字を答えさせますか、いいですか。

塩崎委員 いいです。今、正直に、すき間があるということをおっしゃったから、もうこれで十分で、やはりこれもペイ・アズ・ユー・ゴー原則は単年度で見れば満たされていないと……(野田国務大臣「それは時間差で、誤差ですよ」と呼ぶ)時間軸でこれをやるなんということは財政運営戦略にはどこにも書いていませんから、そういううそを言っちゃいけないですよ。

 実は与謝野大臣も、報道によれば、子ども手当については本当の財源が手当てできていない、来年以降、重大な問題になると、財政のプロの与謝野さんも御指摘になっているぐらいでありますから、ここのところはこれから審議を重ねていきますので、また追って、これについてはきちっとやっていきたいというふうに思っています。

中井委員長 与謝野さんの答弁は要りませんか。

塩崎委員 要りません。

 それで、次に、ちょっとパネルをお願いしたいんですが、菅総理は経済学がお好きのようなので、ちょっと出したいと思います。

 いきなり大学の授業に戻るような話でありますけれども、総理、これを見たらわかるように、成長というのはどうやって起きるんだという話で、簡単な話ですよね。経済成長、要するに生産ですよね、生産関数ですよ。資本と労働と生産性、この三つで大体決まるよね、こういうことだろうと思うんですね。

 総理は、どの変数を動かしたいですか、どの変数を動かして成長させたいと思いますか。

菅内閣総理大臣 経済成長を促す意味では、それぞれの要素が重要だと思いますが、例えば労働力は、今、労働力人口が減少しかねない状況の中で、女性や高齢者の就労をさらに拡大するという意味で、少なくともそれが下がらないようにしていきたいし、資本についても、法人税を引き下げて、目的の一つに、やはり企業にもっと積極的な投資をしてもらいたい。それに加えて、当然ながら生産性を上げていく。いずれも重要な要素だと考えています。

塩崎委員 テレビでごらんになっている国民の皆様は忘れられているかもわからないから、改めて、重ねて申し上げておきますと、〇九年の衆議院の総選挙のときには、民主党のマニフェストに成長戦略というのは全く、一言もありませんでした。分配政策、配ることだけであって、この配る元手をどうやってつくるんだという作戦は、何にも戦略がなかったということなんですね。

 それで、今の総理のお言葉を聞いても、ああなるほどと。我々が心配になり、そしてまた、我々が地元へ行っても、みんなから、この国はつぶれるんじゃないか、経済ももうつぶれるんじゃないか、こういうことばかり言われる。その理由がよくわかる。それは、総理からの発信が余りにもふらふらだからですよ。

 さっきのS&Pの話は、さっき申し上げたように、財政も政策も一貫性がない、戦略性がない、そして成長戦略もはっきりしないということだろうと思うんですね。

 次のパネル、まさにこれは、十二月、ちょうどまだあのときは、副総理でおられたときに総理がおまとめになったというか、成長戦略ですよね。このときの、第三の道というのが出てまいりましたね、覚えていらっしゃると思うけれども。ここで、第一は公共事業、第二は生産性向上、第三は需要、雇用。今、ちょっと雇用のことをおっしゃいましたけれども、こういうことだったんですね。

 それで、そのときに何を書いてあるかというと、基本的に、第一の道も、最初はよかったけれどもだんだん間違ってきたよねと。第二の生産性向上も、選ばれた企業のみに富が集中し、中小企業の廃業は増加だと。その原因が、言ってみれば第二の道で、供給サイドの生産性向上による成長戦略だ、こういうことをおっしゃったんです。御記憶だと思います。そして、これからは第三の道だ、新たな需要、雇用をつくるんだということをお示しになって、六月に成長戦略というのが出てきたんです。

 その次のパネルを見ていただきたいと思いますが、これを見てみると、経済財政白書、これは七月ですから、これも菅内閣になってからですけれども、菅さんは十月に、供給側が幾らコスト削減に努めても、ますますデフレが進んで景気は悪くなっちゃうということをおっしゃっているんですね。これは所信表明演説ですよ。そうなっている。

 ところが、その七月の、これをごらんのように、政府の方は、総理と違ってさすがに物事をわかっていて、「家計の回復を確かなものとするには、」「供給側における広い意味でのイノベーション、生産性の上昇なしには考えにくい。」こうおっしゃっているわけです。これは政府のペーパーですよ、こんな分厚いものが。

 これを、一体ではこの矛盾を、供給側が幾らコスト削減、生産性を高めたってだめだとおっしゃった総理のもとでつくられた白書は、実は「生産性の上昇なしには考えにくい。」こうおっしゃっているんですけれども、総理、これは、矛盾するのはいかがですか。

菅内閣総理大臣 一番の第二の道の間違いの本質を聞いていただいて、大変ありがとうございます。

 第二の道、つまり小泉、竹中さんの時代にやられたことは、簡単に言えば、余り具体的な会社名を出したらあれかもしれませんが、ある自動車会社が徹底的なリストラをやって、コストカットをやったわけです。確かに、コストカットをやったことによってその会社はV字形回復をしました。これを全部の会社がやれば日本はV字形回復するという発想だったんです。では、全部の会社がやったらどうなりますか。どんどん首を切られた人だけ出て、その人が別の会社に同じだけの給料で雇われるならばいいですけれども、雇われなかったら失業者か非正規雇用になって、現実になったわけです。

 つまり、生産性の向上と言うときに、本当の意味でのイノベーションによる生産性の向上と、そういうリストラを徹底的にやることによるコストカットの生産性の向上がマクロ的に見たときにどういう影響を与えたか。まさに第二の道でどんどんコストカットと称してリストラをやり、そして非正規雇用をどんどん拡大したことによって、マクロ経済的に言えば経済は全く拡大しませんでした。

 その間違いを私は指摘して、第三の道はまず雇用から、それで雇用と成長からとるべきだということを出したわけで、今、そのことがある程度緩やかながら効果を上げつつある、このように考えています。

塩崎委員 十月、十一月ぐらいにおっしゃっていたことと全く同じことを言っていたので、全く予定どおりのお話を聞かせていただきました。

 今の雇用、雇用とおっしゃったのは、確かにこの十月の所信表明演説のときもそうなんですよ。要するに、供給側が幾らコスト削減してもだめだ、経済の歯車を回すのは雇用だ、政府が先頭に立って雇用をふやします、医療、介護、子育てサービス、そして環境、需要のある仕事はまだまだあります、これらの分野をターゲットに雇用をふやす、そうすれば国民全体の雇用不安もデフレ圧力も軽減されます、消費が刺激され、所得も生まれます、バラ色の世界がやってきますみたいなことをおっしゃっていますけれども、そうなっていますか。

 政府が雇用をつくって、それで国の経済が回っていくはずがないじゃないですか、この程度のことで。企業の中に仕事ができて初めて雇用ができて、そして経済が回っていくというんだったらまだしも、政府が先頭に立って雇用をふやす対象は、医療、介護、子育てサービス、そして環境。特にこの中で、医療と介護、子育てあたりは相当税金が入っているところですから、だから、税の使い方としても経済の効率としても余りよくない。さっきもちょっと話が出ていましたけれども、そういうところなんですね。

 それで、結局、さっきから申し上げているように、もともとおととしの衆議院選挙のときには、民主党の皆さんには成長戦略というものはなかったんです、発想がなかったから。そして、慌てて〇九年の年末に成長戦略の骨子をつくって、去年の六月にやっとお役所がみんな一緒になってこんなちょっと分厚いものをつくってきて、上半身は菅さんの考え方で、さっき言ったような第三の道みたいなことで、下半身は、実は第二の生産性もやらなきゃいけないという真っ当なことを言っているものがくっついてきているという、ばらばらなことをやっておられるのが菅内閣の仕事なんです。

 それを見てわかるように、この「「成長戦略」のブレ」というのを見ていただくとわかるように、最初は需要や雇用の拡大とおっしゃっていた。これが総理になられてすぐ。その後、十月に、成長と雇用による国づくりと。だけれども、成長が目的なのに、成長による成長なんて言っているんだから、意味がわからないことをおっしゃっている。そして今度、総理におなりになってから半年ですから、半年で、今度は平成の開国ということで、これが今度は成長のもとになると。

 もちろん、国をオープンにすることはもう当然ですから、私も、後で出てきますけれども、自民党の中で成長戦略特命委員会をつくったときにも、オープンにしていくということはちゃんと言っていますが、しかしながら、キーコンセプトがここまでぶれるというのは、一体何をやろうとしているのかというのがよくわからないわけです。経済視点はそういうことを見ているし、そして、後からまた出てくるように、経済の邪魔をするようなものがいっぱい出てくるということなので、一体、成長戦略の根幹の朝令暮改をいつになったらやめてくれるんだというふうに多分思っているはずなんですね、プレーヤーたちは。

 そこで、結局今回も、さっき申し上げたように、S&Pが期せずして言ってきたのは、キーコンセプトのぶれ、つまり戦略性が全くないということを言っているということであるので、そこで、次の……(菅内閣総理大臣「答えていいですか」と呼ぶ)いや、要らないです。

 そこで、次の、さっき申し上げたように、集中審議をぜひ経済についてやっていただきたいと思っているので、この数字もちょっと時間がないからもうお見せするだけで、これは何が言いたいかというと、経済財政の中長期試算という、去年六月に出してこの一月にアップデートしたもの、これを数字として入れているものです、真ん中の二列は。その手前に、過去二十年間の平均というのを入れてあります。参考に、右側にアメリカというのを入れていますが、何が言いたいかというと、菅さんが、余り重要じゃないし、竹中・小泉改革、実はさっきのS&Pの中でも、二〇〇〇年代の前半にやられていたことをだめだとおっしゃっていますけれども、マーケットの人たちはそれをやれと言っているということを覚えていただいた方がいいと思いますが、生産性を尊重しているということで、つまり、菅さんの政府も。だから、二・三で成長シナリオ、慎重シナリオだって一・九ですから。

 問題は労働人口なんですね。これは、九〇年代はふえていますから、二〇〇〇年代に減り始めて、でも二十年間でいけばプラス〇・二でありますが、シナリオを見てみると、一〇年代はマイナス〇・六とマイナス〇・二ですから、結局、伸びないようになっている、かなりこれでも伸ばしたつもりなんでしょうけれども。そうすると、無理やり生産性を上げなきゃいけない。

 ところが、どっちの施策も、我々が見る限り、きょうは時間がないから細かいことは言いませんけれども、成長戦略の中身を見る限りは、生産性を上げるという意味においても、それから労働力人口をふやすということについても、ほとんど議論にはなっていないし、我々には聞こえてきていませんから。

 ところが、アメリカを見てもらうと、やはり労働人口が一・一、これは二〇〇〇年から二〇〇八年までですけれども、そこまでふえていて、生産性が日本と同じぐらいの一・八で二・四ふえるということなので、これでは、少なくとも、生産性の実現可能性も、それから労働力人口をふやす、つまり世界から……(発言する者あり)いや、移民じゃないです。移民のことなんて、そんな単純な話をしているわけではなくて、世界から、いい人、いい物、いい金には、つまり、資本も労働もそして生産性も高めるためには技術、これが入ってこない限りは無理だよねということを私は言いたいので、ちょっとこれをやりたいと思います。ですから、やれることは全部やる。

 次、もう一つ……

中井委員長 答弁させないの。

塩崎委員 いいんです。させない。

 もう大胆なことをやらなきゃいけないのに、中途半端なことしかやっていない。それは、例えばこの法人税の話も、確かに五%下げましたけれども、償却をやめるとか、また逆に増税も大分やっていますよね。

 それで、もう一つは、特区もやりますと言っていますけれども、実に中途半端で、こんなもので集まるわけがない。何でかといったら、海外、韓国、シンガポールを見ても、韓国は六つの特区があるけれども、法人税は五年間ゼロですよ。シンガポールは、戦略産業は十五年間ゼロですからね。それから、沖縄はやっていましたけれども、三五%所得控除で、今度はアジアの拠点化というのとそれから総合特区、二つともせいぜい五年間二〇%ですからね。

 我々は、自民党フェニックス戦略というのを去年五月にまとめましたけれども、五年間ゼロ、その後五年間半減、そして、それは国内の他の工場なんかをスクラップされたり雇用をやめられたら困るから、そういうものはもちろんちゃんと規制をかけていけば税収は減るわけがないというような提言をしているわけであります。

 そういうことで、今の、生産性の伸びとかに対して余りフレンドリーじゃない菅さんのやり方、そしてまた、労働力人口についてもほとんどと言っていいぐらい発信がなされてこない、これでうまくいくわけはないというのが私たちの考えです。

 ですから、ここにちょっと書いてありますけれども、改めて集中審議でまたやりますけれども、このままでは、結果、トータルの政策で経済というのは伸びたり伸びなかったりするわけですので、結局、ばらまきをやりながら成長戦略だ成長戦略だと言ったって、最後は消費税の増税が待っているわけですから、大増税が。それでは経済が伸びるわけがないということを申し上げて、ですから、ばらまきは我々はやらないで、消費税は、それは最終的には上がるでしょう、社会保障のためにも。だけれども、それを最大限抑制していくのが我々自民党のやり方なんだということを申し上げたかったので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて塩崎君の質疑は終了いたしまして、甘利明君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。甘利明君。

甘利委員 一九六八年に当時の西ドイツを抜いて世界第二の経済大国になった日本でありますが、その四十二年後に、二〇一〇年、昨年、ついに中国にその座を追われるということが確実になったわけであります。人口が日本の十倍以上ありますから、普通に経済成長をしていればやがて抜かれるというのは仕方がないことだと思います。

 ただ、我々が注意しなければならないのは、この間に日本の一人当たりGDPの順位がどんどん落ちてきているということなんですね。一九九三年の世界第二位から、直近では、恐らく二十位近くまで落ちてきているわけであります。これと平仄を合わせるかのように、スイスの国際経営開発研究所、IMDが発表する国別国際競争力、この評価も、かつての二位から二十七位へと順位を下げてきてしまったわけです。つまり、日本の一人当たりGDPの推移というのは国際競争力とリンクをして下がってきているという事実なんですね。

 特に政権交代十カ月後に発表されたIMDのランキングは、一挙に十位下がりました。国際競争力の数値というのが一人当たりGDPのいわば先行指標とも言えますものですから、そうすると、この競争力の評価の急激な低下がこの後の一人当たりGDPの大幅な下落につながりかねないということは、この点は憂慮をしなきゃならないというふうに思っております。

 先ほど来、塩崎さんからも指摘がありました、しばしば指摘をされたことでありますけれども、民主党の政策というのは、お金を配る方の政策というのはたくさんある、でも、競争力の源泉であるお金を生み出す方の政策に少し力が入っていないんじゃないか、まず配分ありきの政策で、その原資というものをどうやって生み出すか、その政策が乏しいと指摘されてきたわけですね。

 成長戦略がないじゃないかと、まず真っ先に鳩山政権のときに言われました。鳩山政権では、大慌てで、年末に成長戦略なるものをおつくりになりました。私も拝見をいたしました。これを読んで愕然としました。

 なぜ愕然としたかというと、総論を読んでいると、こう書いてあるんですよ。我々は自民党の成長戦略の間違いを正した上で新たな成長戦略を策定する、最大の間違いは供給サイドに立った成長戦略であったということである、我々は供給サイドには立たないで需要サイドに立った成長戦略を行うと書いてあったんです。事実、翌年一月の経済四団体の賀詞交歓で、私行っていました、当時の鳩山総理が立って、申しわけないけれども皆さんの側、供給サイドには我々は立たないということをおっしゃって、かなりびっくりしたのであります。

 総論を読んでいくと、供給サイドには立ちません、需要サイドに立った成長戦略を行うとちゃんと書いてあるんですが、ページをめくっていきまして各論に目を通していきますと、突然そこには供給サイドに立ったこういう施策が羅列されているんですね。それも大体我々の時代に、私が大臣をやっている時代につくったようなものがずっと並んでいたわけですね。表紙と中身、総論と各論が正反対であったということに愕然としたんですね。調べてみると、どうやら表紙だけは議員が書いて、中身は役所に丸投げしたというのが真相だったようでありますけれども、そのときには民主党の政治主導というのはこんなものかなというふうに思ったのであります。

 日本は、経済大国であるがゆえに諸外国に一目置かれて、経済大国であるがゆえに各般の施策が遂行できるというのが事実だと思います。そして、新たな成長を獲得するためには、パラダイムシフトに呼応したグローバルな戦略図が必要なんです。その戦略図というのは、ちゃんと整合性がとれてなきゃならないんですね。

 そこで、きょう、私の時間は、経済政策を中心に総理と関係大臣に質問をさせていただきます。

 総理は、たびたび今は第三の開国だということをおっしゃいますよね。第一の開国が明治維新、第二が戦後、そして第三が今とおっしゃって、それゆえに各国とのEPAを加速してTPPに参加をして、農産品もどんどん輸出すべきだとおっしゃる。農産品はどんどん輸出した方がいいと思います。EPAも一生懸命取り組む。TPPは、解決すべき課題というのはちゃんと分析して、失敗がないように向かい合わないと、ちょっと簡単にはいかないと思います。

 総理が開国とおっしゃる、開国の対岸にあるのは鎖国ですよね。開国とおっしゃるのは、日本が半分鎖国状態にあるという意味だと思うんですけれども、どこの部分が開国していないとお思いなのか、まずそこから伺います。

菅内閣総理大臣 一言、成長戦略について述べさせていただきますが、私は鳩山内閣のときに国家戦略担当となりまして、この成長戦略を、十二月の三十日に基本方針をまとめ、去年の六月に最終的なものをまとめました。

 この中で、まさに先ほど塩崎議員との議論でもありましたように、第二の道の間違いを申し上げました。今、甘利さんからも供給サイドでなく需要サイドということを言われましたけれども、つまり、当時の供給サイドというのは、先ほど申し上げたように、供給サイドの生産性を上げる、生産性がイノベーションで上がるのならいいんですが、簡単に言えばリストラで上げる。それを広げたところが、結果としてマクロ経済的にも日本の成長につながらなかった。

 私が需要ということを言ってきたのは、先ほど塩崎さんには答弁の機会を与えていただきませんでしたけれども、つまりは、潜在的に需要があるところに、例えば介護とかそういうものがあるところに、ある程度の財政出動をしても、給料を少し上げれば、例えば仕事がない人が介護や保育やそういうところの仕事につく。

 そのことは、失業率が下がりますから、賃金アップの圧力になり、デフレの脱却になり、あるいは若干の税収増になり、さらには消費増になる。そこに雇用と需要と成長のよい循環をつくり出すことができるという考え方でありまして、私は、今回の予算もそういう基本的な考え方、方向で組んでいる、それが今じわじわと効果を上げている、このように考えておりまして、決してぶれるどころか、私が国家戦略大臣のときから今日までずっと、需要、雇用と成長をリンクさせるということをやってきたということだけは冒頭申し上げておきたいと思います。

 それから、開国についてでありますが、これはちょうどダボスの講演でも申し上げたわけですが、日本は、貿易上の形でいえば、世界でも一、二を争うといいましょうか、開国された国だという認識を私自身持っております。

 ただ一方で、最近、若者の海外への留学生の数がどんどん減ってくるなど、どちらかというとやや内向きな傾向になっている。そういう中で、私は、日本の、若者を含めて、もっと自信を持って海外に出ていく、あるいは自信を持って国際社会での役割を担っていく、そして自信を持って、例えばアジアの成長あるいは世界の新興国の成長をインフラの問題とか技術の問題で応援しながら、一方ではその大きなエネルギーを日本自身に取り戻してくる、つなげてくる、こういうことが必要だ、このように考えておりまして、そういう意味を込めて第三の開国ということを申し上げているところであります。

甘利委員 第三の道、さっきもちょっと聞いていました。第一の道が、公共事業で景気を先導しようとした。しかし、なかなかこのBバイC、コスト・ベネフィットが落ちてきてその牽引力になってこない。そこで第二の道で、規制緩和とか生産性向上で牽引をした。そうしたら、リストラが起きて、それはその企業は救われるかもしれないけれども、全体としてみんなが同じ行動をとれば失業の山になるんじゃないか。だから第三の、需要から始まる、需要サイドの政策ですか、というお話を聞いていました。

 イノベーションであれ、コストパフォーマンスを上げることであれ、生産性向上というのは企業の競争力に欠くべからざるものなんですよ。つまり、経済成長の原動力が生産性の向上だということを認識しておかないと大変なことになりますよ。

 総理はよく某自動車会社と出されます。その某自動車会社というのは私の選挙区なんですよ。その某自動車会社の名誉のために言っておきますけれども、総理がイメージされているような首切りというのはしていないんですよ。配置転換とか、受け皿をちゃんとつくってやったんです。それで、生産性を上げて、その会社は世界で戦える力を持つようになりました。あれをやらなかったらどういうことになっていたかというと、会社ごと倒れているんですよ。失業はべらぼうにたくさん出ているんですよ。

 それで、各企業が生産性を上げて、では、仮に出てくる失業者、ここは、それを出さないために生産性向上をやらせないというんじゃなくて、産業政策として受け皿をどうつくっていくか、一方で生産性を上げながら受け皿をどうつくっていくか、そういう政策なんですよ。だから、こっちがあるからこっちはやらないといったら全部倒れますよ。そこはちゃんとしっかり頭に刻んでおかないと、とんでもない発言になりますよ。これは笑われますよ、専門家を前に言ったら。

 それで、第三の道。第三の道というのは、では、介護施設をどんどん次から次へとつくっていく。年収二百万円の人をたくさんつくってどうするんですか。(発言する者あり)いや、それは、四百万、五百万にしたら財政資金が相当要るということですよ。

 経済成長というのは、財政資金はできるだけ少なく、経済効果はできるだけ多くという策を探るのが経済成長戦略なんですよ。金を幾らでも落としていけば何だってできますよ、失対事業なんだから。乗数効果というのを、波及効果というのを考えなきゃいけないんです、成長戦略というのは。そこを無視した政策というのは財政赤字をつくるだけなんですよ。福祉の乗数効果というのは低いはずですよ。そこをちゃんと成長戦略として考えていかなきゃいけないんですね。総理は第三の道がお好きですけれども、蓮舫さん、二番じゃだめですかと言ってくださいよ、二番じゃだめですかと。

 それで、開国の話になりました。総理も日本の関税が低いということは御認識をされているわけですよ。つまり、日本は開いている。では、何で日・EUの経済連携協定ができないかというと、向こうにメリットがないわけですよ。向こうは開国していないんですよ。工業製品の関税が高いから、日本に輸出するときには日本は関税がないから。だから、向こうからどんどん輸出するのは、何もこれから交渉しなくたって済むんですよ。自分がわざわざカードを切る必要がないからなんです。

 日本は、開国し過ぎちゃったから切るカードがないんです、農業カードしか。だから、個別、二国間交渉というのは非常に難しい。だから、一挙にWTOで世界的ルールに持ち込んじゃおうというのが日本の戦略だったんです。ところが、全世界を巻き込んだというのはなかなか難しくて、うまくいかないので、それで各国が半分あきらめてそういう方向に走り出しているというのが現状だということを認識していただきたい。つまり、日本を開国するという感覚よりも、グローバリゼーションの中で日本が主役となるための戦略という認識が正しいんだと思うんです。

 TPPとか農業は政調会長が質問されたと思うので、グローバリゼーションの中で日本経済がどう戦うかということについて質問をしていきます。

 前任の鳩山総理の所信の中に、内需主導型の安定的経済成長を実現することが極めて重要であるというふうにありますね。それから、同じく本会議答弁の中で、家計を直接支援することによって、これは子ども手当を指すんだと思いますが、個人消費を拡大するとともに、新たな分野で産業と雇用を生み出し、内需を中心とした安定成長を図るというふうに書いてあります。

 鳩山内閣は、外需主導から内需主導へ、供給サイドから需要サイドへという政策のスタンスでありました。菅総理も、菅内閣もこれを踏襲しますか。

菅内閣総理大臣 少しこれとやはり関連するものですから、先ほど言われたことにちょっと戻りますけれども、私が申し上げているのは、介護のところでいえば、今、甘利さんは何か失対事業のようなニュアンスで言われましたけれども、そういうことを考えているわけでは全くありません。

 つまりは、介護には潜在的需要があるんです。医療にもあるんです。あるいは子育てにもあるんです。そこにある程度の応援をすれば、それが月二万円とかの給料かもしれません。それによって新しい雇用が生まれ、そして新しい給料をもらってサービスが生まれ、そこには、失業率が今四・九まで下がりましたが、下がることによってデフレからの脱却の道も見えてくるということで、決して失業対策的な形の雇用ということを申し上げているわけではなくて、潜在的な需要のところにこそ成長のチャンスがあると。もちろん、一方では、グリーンイノベーションとか、そういう新たなイノベーションの分野にもチャンスがあります。

 ですから、逆に言えば、第一の道と言われた公共事業も、乗数効果という言葉は私もこの二年間で大分勉強させていただきましたけれども、つまり乗数効果というのは、どちらかといえば、ことしお金を使ったら来年どれだけ効果があるという意味ではありますけれども、東京―大阪の新幹線のように長期的に効果があったか、あるいは、本州―四国の橋のように、お金はたくさんばらまいたけれども、それこそほとんど効果がなかったか。

 そういう観点から見たときに、私は、そういう介護の方にお金を使うことと、例えば本州―四国の橋にお金を使うことで、どちらが経済効果があるかといえば、まさに介護の方にお金を使った方が経済効果があるというのが現在の多くの経済関係の人たちが認めているところだ、このように思っております。

 その上で、今、内需、外需のことを言われました。私は、率直に申し上げて、日本経済をこれからさらに立て直して成長の軌道に乗せるには、内需を拡大すると同時に、外需についても積極的にそれを取り込んでいくという両面作戦が必要だと思っております。

 特に、現在、新興国、たくさんのインフラ需要があります。せんだってのベトナムでの、私もズン首相との間で原発の合意をいたしましたが、さらに加えて、道路や港湾の話もいろいろあります。そういったものは、基本的にはいわば外需でありますけれども、そういう外需も大いに日本が取り込み、内需も大いに取り込んでいく。

 供給サイドと需要サイドという言葉については、先ほど少し申し上げましたが、供給サイドを考えなくていいと言っているんじゃないんです、生産性を上げることを考えなくていいと言っているんじゃないんです。

 生産性の中身には、本当に新たなイノベーションによる生産性の向上と、リストラによるいわゆる数字の上での生産性の向上とがあって、企業にとっては、ですから、雇用が完全雇用の状態であれば、リストラはどんどんやればいいんです。なぜかというと、首を切られた人は、完全雇用であれば、同じぐらいの給料でほかにどんどん移れるから、最も効率の高い配分になるんです、これは。自動的にというのが経済学の原則です。

 しかし、そうでない、完全雇用でない状態でやった場合には、逆に格差の拡大とかを招いて、現実に成長しなかったわけですから、そういう意味では、今申し上げたように、内需、外需の両方の取り組みと同時に、まさに供給サイドと同時に需要サイドを重視しなければならないということを私の考え方としては持っているということです。

甘利委員 私は、介護施設が必要なんか何も言っていないです。介護施設は、需要に応じて、財政の許す限り対応すればいいんです。でも、これは、社会保障事業として対応するもので、成長戦略としてとるべきではない。

 成長戦略というのは、高付加価値政策なんですよ。高い付加価値を上げていかないと還元ができないんです。還元ができないと給与が上げられないんです。だから、いい生活を高い人件費でやっていける国というのは、高付加価値の産業がいっぱい立地している国しかないんですよ。高付加価値化にしていかないと、成長戦略は賄っていけない。そのお金で、財政資金として、社会保障事業をやるんじゃないですか。だれが稼ぐんですか。みんな使うということばかりじゃないですか。そういうことを言いたいんです。

 それで、外需も内需も大事だというお話、供給サイドから需要サイドへというのは余りよくわからなかったですけれども、つまり、鳩山内閣とは大分姿勢が変わったということですよね。鳩山さんが、書いてある、だって私、答弁も全部チェックしてみましたもの。

 では、外需もとても大事と今おっしゃった。それはそのとおりだと思います。とすると、総理、昨年の所信質疑の答弁で、菅総理は、一昨年の金融危機は、外需に過度に依存していた我が国経済を直撃した、だから他国以上に深刻なダメージを与えたんだと御答弁されていますよね。一昨年の金融危機は、日本経済が外需に過度に依存したから起きたんですか。

菅内閣総理大臣 御承知のように、リーマン・ショックというのは、もともとはいわゆるサブプライムローン、金融の面で来たわけですが、我が国は、幸いにして、金融は他の先進国に比べても相当健全性を維持していたわけです。しかし、それでありながら非常に経済的な形で大幅に後退した原因は、これは客観的に申し上げて、外需に大きく依存していたものの、その外需が急激に縮小したために、日本のそうした経済の低迷が他の国よりも大きかったという、客観的に、私はそのことは間違っていなかったと思います。

 その上で、内需についても拡大し、今申し上げたように、外需についても、今の新興国のそういうエネルギーを大いに我が国のエネルギーにつなげていく、それが必要だ、こう申し上げているわけです。

甘利委員 申しわけないですけれども、全くおわかりになっていないですね。(発言する者あり)いやいや、そうしたら、こっちも多分わかっていないんでしょう。

 日本の外需依存度というのは、世界で一番低いんですよ。アメリカと並んで世界で一番低いんです。先進国は、イギリスもフランスも、みんな日本より外需依存度は高いんです。ドイツに至っては、たしか日本の外需依存度の二・五倍ぐらいありますよ。韓国は三倍です。外需依存度が高いからダメージを受けたというのは、全くの認識の違いなんですよ。

 日本は、国内経済というのは、さっきからも話が出ているように、人口が減る、労働力人口が減る。労働力人口の一時的なふやし方というのは、女性と高齢者が市場に入ってもらうということですけれども、それも限界があります。それで、労働力が減っていきますね。資本も取り崩しになっていく。そういう中で、生産性が大事だというのはさっきの話で出ましたけれども、内需で大宗をカバーしていくというのは限界があるんですよ。外需をいかに取り込むかということがとても大事なんです。だから、外需依存度をもっと上げなきゃいけないというくらいなんですよ。

 そこで、次に言うことは、何か事があったときに外需の影響をどう減らすかという政策に向かっていかなきゃいけないんです。外需が高いからそれを減らそうというのは、大間違いの政策になるんです。

 ドイツというのは、日本の二・五倍外需依存度があったけれども、何で影響を受けなかったか知っていますか。域内経済ですよ。EUの輸出が域内経済だったから、為替リスクとかカントリーリスクを比較的受けなかったんです。

 要は、さっきから話が出ているEPAとか経済連携というのは、そういう視点で、要するに外需を取り込む、スムーズに取り込む、リスクを減らして取り込む、つまり、外需の内需化を図るという作業をしなきゃいけないんですよ。それは、外需依存度が高いからじゃないんですよ。自動車とか電機に頼っていたと、もっといろいろなところに開発をしていく、輸出企業ということ等々、外需依存度を上げながら、為替リスクやカントリーリスクを減らすための政策をするということが成長戦略から大事だということなんです。それは御理解いただきたい。

 そこで、先ほど来総理がおっしゃっている、成長するアジアの成長をどう取り込むか、そのとおりですよ。世界の成長センターたる東アジア、さらには、インドまで含めれば、南アジアのところまで行っていいんだと思いますけれども、そこの成長をどうやって日本に取り込むか、そういう戦略をちゃんと描かなきゃならないですね。そのための戦略はどうお考えですか。

菅内閣総理大臣 まず、外需を内需化しなきゃいけないという御指摘は、全くそのとおりだと思っています。また、EUの場合は、EU内の取引が非常に大きいわけですから、これを外需といえば外需ですが、EUという単位でいえば、いわばその部分は東京と大阪の間で鋭意取引しているようなものですから、ですから、そういうふうな側面だと思っております。

 それから、今言われた戦略ということですが、まさにそこなんですよ。私がダボスで申し上げた、あるいは今申し上げた、日本が非常に開かれた国だということは、一般的にそのとおりだと私も今でも思っています。

 ただ、この十年ぐらいの間を見ると、よく言われるように、典型的には、お隣の国、韓国などを含めて、二国間あるいは地域間のFTAやEPAをどんどん進めていく中で、相対的に我が国がそういう面で足踏み状態が続いた。WTOドーハ・ラウンドも、これは我が国だけのもちろん責任ではありませんけれども、もう十一年にも達するほど結論がなかなか出せないでいる。

 そのようなトータルの中で、昨年のAPECの前に、この経済連携についての基本方針というものを内閣として決定したわけであります。つまりは、この足踏み状態にあるFTAやEPA、特に、今EU等のことも言われましたが、EUとの関係、アメリカとの関係、オーストラリアとの関係などなど、積極的に取り組んでいこうと。

 この間、それを決めてから以降でも、インドとのEPAが決まり、ペルーとのEPAも決まり、かなり進展しつつありますが、その方向性をしっかりと進めていこう。まさにこれが一つの大きな戦略でありまして、そういう形で、先ほど申し上げたように、新興国の発展やそういうものを我が国の成長につなげていく、その大きなキーがこの経済連携の推進であり、一方で、国内的な意味での農業の再生である、このように考えております。

甘利委員 そんなのはやってきたんですよ、はっきり言って。それは単発的な政策ですよ。EPA、私もいっぱい結びましたよ。ASEANとも相当、何十回とやって、持ち込みましたよ。そうじゃなくて、そのもとになる設計図は何ですかと言っているんですよ。設計図がないと言っているんですよ。

 なぜならば、我々が政権のときにやった政策は何かというと、東アジア全体の経済開発の設計図面を日本がかいていく請負をしようよということですよ。これが、ERIAという東アジア・ASEAN経済研究センター、シンクタンクなんです。東アジア版OECD。そこで各国別の経済開発の設計図をかいていくんですよ。それに従って、具体的な、原発の問題だとかインフラの問題だとかいろいろ出てきますよ、設計図面にのっとって提言をしている。

 そのERIAというものの信用度がどれくらいかというと、ASEANでもう大歓迎です。いろいろなことは全部もうERIAに頼もうということで、経済分析を全部依頼していますよ。その設計図面のもとに、だってODAがついて、日本企業が乗っかって、日本チームがついて、そしていくんじゃないですか。そういう設計図。

 その設計図と、それからもう一つ私がつくったのは、アジア人財資金構想ですよ。菅政権の中にも、アジアの高度人材を日本に呼び込むとありますよ。

 ベトナムのハノイにハノイ工科大学というのがあるんですよ。恐らく工学系ではベトナムで一番難しいところです。そこに日本のODAでIT学科というのをつくりました。その中でもさらに難しい、つまり技術系の、ベトナムじゅうの、ベトナムというのは数学がたしか世界で何番目かですよね、そのえりすぐったのが目指すところなんです。そこが、アジア人財資金構想で、後半年次は日本の大学に留学するんですよ。

 問題は、では日本の成長にどう取り込むかというと、そこから日本の研究機関、公設研究機関あるいは民間の研究機関、あるいはそのまま企業、そこに取り込む。これがアジアの一番上の優秀な人材を取り込むという設計図なんですよ。

 この設計図、アジアの成長を取り込む、アジアの人材を取り込む、掲げてありますよ。だけれども、そのためのインフラ、事業仕分けでカット、廃止ですよ。どうしてですか。

海江田国務大臣 甘利委員にお答えをいたします。

 確かにおっしゃるとおり、甘利委員あるいは二階先生もそうでしたね、平成十九年度からERIA、これは東アジア・ASEAN経済研究センター、予算措置がとられたところでございます。アジア人財資金についても同じでございますが、この東アジア・ASEAN経済研究センターについては、まず拠出金、毎年十億円、向こう十年、これはやはり国際公約でございますから、しっかりと今年度も予算の措置がしてございます。

 それから、このほかにインフラ関連の委託費というのが七億円ぐらいございましたけれども、やはりこの中には随分無駄もあるだろうということで、詳しくは蓮舫大臣の方から必要があれば御答弁をさせますが、このインフラ関連の委託費について削ったということ。

 それからあとは、ほかのASEANの国もここには、まさに自分自身の国の経済成長に資する研究をやるわけでございますから、拠出をしてもらおうということで、ASEANの国々もやはりそういう必要性を感じた、それから自分たちの国も大変な成長をしておりますので、日本だけにすべてを押しつけるということではなしに、自分たちで出そうということで、それぞれこれから拠出があるということでございますから、これからもERIAについては、まず十年間はしっかりと私どもの資金が入っていくということでございます。

 それから、アジア人財資金構想でございますが、これにつきましては、もう既に二千人の実績がございます。そして今、一千人がまだ在校生として残っておりますから、この人々が卒業するまで、平成二十四年度までにつきましては、引き続きこれは私どもでも支援をしていくということであります。

 そして、これは私どもの、国の資金だけではありませんで、やはり、そうした優秀な留学生がいることによって潤う日本の産業界もあるわけでございますから、少しずつ産業界に置きかえてもらうということで、先生方がこういう構想を平成十九年度に打ち出してから、民間の企業も随分、アジアからの留学生を独自に受け入れるような、あるいは奨学金の資金もできておりますので、そういう形に置きかえていこう、そういう考え方でございます。

甘利委員 まあ、海江田さんは同級生だから、この辺にしておきますけれども。

 私が言いたいのは、EPAはわかりますよ、インフラ輸出はわかりますよ。それは広大な設計図面の具体的な策なんですよ。具体的な策だけやって、設計図をないがしろにしちゃって、これでどうやって戦略なんですかということを言いたいんですよ。単発的な外需取り込みじゃなくて、きっちり戦略図をかく、戦略図を実行するためのインフラツールを日本が仕掛ける、そういう発想がなかったら取り込みなんかできませんよ。そのことを私は言いたいんです。

 そこで、国外市場と国内市場をどういう関係図にするか、戦略図にするか、ここも大事ですよ。

 海外というのは、東アジア、南アジア、需要が爆発している地域ですよね。そこで日本の物やサービスがシェアをとっていくというのは、とても大事なことですよ。これはしっかりとした仕掛けをやっていく。

 では、国内は何をするか。国内は、まず、新しい付加価値を生み出すイノベーションセンターの意味合いを持たなきゃならない。新しい付加価値、高付加価値な製品、産業、そこを生み出すセンターにしていって、そして、試作品なり立ち上がりのもの、あるいは日本人の質の高い労働力でないと精度が発揮できないようなものをどんどんつくっていく。

 つまり、差別化ができるものは日本でつくり、そして、スタートアップで差別化ができるものはどんどん新しいものを開発していく。それが、完全に生産が平準化できる、平準化できるというのは、どこでつくっても同じ性能、同じ質が出るようなものになってきた、そうしたら、それを生産拠点で量産化してシェアをとっていく。

 そこでもうけたお金は日本に返ってくる。返ってくるときに、新たなイノベーションを起こすために使う、設備投資に使う、あるいは日本の従業員の、労働者の待遇改善に使う、あるいは下請代金の引き上げに使う。そういう高付加価値、利益をたくさんとれる、よそと競争してもたくさんとって勝てる、そういうものを生み出す関係、そして海外でシェアをとる関係。

 それで、利益を持ってくるときに、今までは差額税制というのがありました。法人税差額を納めなきゃならない。だから、海外にもうかった金を置いておくから日本に返ってこない。私は、私が大臣のときの戦略として、それもなくそうということを提案しました。これは珍しく財務省が、拒否するかと思ったら結構のみましたよ、配当課税五%だけちんけに残しましたけれどもね。それで返ってくる。不況下にもかかわらず、それを実行する前に返ってきた金が二兆五千億、実行してきたときに三兆円返ってきました。

 そういう全体の戦略図を頭にしっかり置いて、そして各論は議論をしてもらいたいと思うんです。

 そこで、国内を研究開発拠点、あるいは輸出拠点、もっと輸出しないと、その下請、中小企業が仕事がありませんよ。大企業は恐らく海外に出てもやっていけます。しかし、中小企業はついていけない。だから、生産拠点もある程度のロットで日本になきゃいけないんですよ。それは、なるべく高付加価値化に向かうようなイノベーションを起こしていかなきゃいけませんよ。そのために、つまり、日本国内の投資環境をよくするためにどういうことを考えますか、あるいは考えられましたか。

海江田国務大臣 甘利委員にお答えをいたします。

 これは新成長戦略実現会議という司令塔がございます。この中に、国内投資促進円卓会議という組織がございます。ここの責任でありますのが私、経産大臣で、以前は大畠大臣が非常に頑張ってくれたわけでございますが、ここが、昨年の十一月でございましたけれども、国内投資促進のプログラムをつくりました。

 この国内投資促進プログラムの中で、実は、法人税率の五%の引き下げというのが一つの条件になっております。それから、アジアの拠点化構想ということでいいますと、今、法人税率、実効税率、今度五%下げますと三五%になりますが、海外の研究機関あるいはアジアにおけるヘッドクオーターと申しますか拠点、こういう法人については、これは所得控除をやることによってさらにもう一段下げまして、およそ二九%ぐらいの税率にするというようなことも今法案として準備をしてございますが、そうしたこと。それから、国内でしっかりと基礎の科学技術に対する投資を行うこと。それから、やはりEPAですとか多国間の貿易の協定によってしっかりと国を開く。

 こういうプログラムが打ち出されて、そういうプログラムを打ち出してくれるのなら、産業側も、まず設備投資ですね。これが今、リーマン・ショック以降、一番低いところで大体六十二兆円ぐらい、落ちてきましたけれども、これから五年後には八十兆円台にしよう、十年後には百四兆までにしよう、こういうお互いのアイデアを出し合って、そしてそこで共通の確認をしたところでございます。

 ここで、今後ともそういうプログラムをつくっていくつもりでございます。

甘利委員 経団連が百兆円の投資をすると。今回の施策で百兆円の投資をすると絶対言っていないと思うんですね。彼らが考える条件がみんなそろえばということですよ。

 ある野党から、法人税減税をしたって設備投資なんか起きないよ、なぜならば、こういう中でも内部留保は史上最高に積み上がっているんだから、法人税減税をしても内部留保が積み上がるだけだとおっしゃっている党があります。必ずしも一〇〇%そうだとは思いませんが、しかし、今確かに大企業の内部留保は積み上がっているんですよ。

 それで、これは経産省のデータをもらって、経産大臣は御存じだと思いますが、海外に生産拠点を移す、あるいは研究開発拠点を移す、あるいは本社を移す、今実行しているところは、ふえてきましたけれども、まだそんなべらぼうじゃないです。ただ、検討しているというところが物すごく多いんです。検討しているところが多くて、内部留保も積み上がって使わないというのは何かというと、これは出方を見ているんですよ。あと一、二年でどっちにするか決めちゃおうと思っているんですよ。そのときに、法人税や租特の問題やいろいろあるでしょう。

 もっとあるのは、私が聞いている話ですよ、何かというと、この政権はいろいろなことを決定する過程がよくわからぬというんですよ。だれがどこで何を決めるのかがわからない。だれかが一カ所で何か言い出したものが、党内の議論にさらされないで、気がついたら政府の案になっていた。案になっちゃった以上は、おれは反対だけれども反対できないと。自公の場合は政調会で、ある案が出るときにいろいろな議論に耐え抜いて、それを論破できるだけの政策が生き残れるんです。それがなるんです。つまり、何をしでかされるかわからないから怖いということなんです。これは私は何人も聞いていますから、本音は野党だから余計言うでしょう。

 そこが、つまり先が見えない。この政権が、産業政策はアンチビジネスなのか、今のところそういうふうに見えるというんですけれども、あるいはプロビジネスか、どういうスタンスをとるのかがわからない。CO2マイナス二五%があっという間に決まっちゃったり、最賃千円はあしたでもやるんじゃないかと、いろいろなことが急にぱっと出てくる。あるいは組合の代表を経営委員会に入れる、とんでもないのが突然ぱっと出てきて、本当に政府の案になりかねないという怖さがあるんですよ。そこなんですよ、一番は。

 ちょっと時間がなくなっちゃったので、質問の順序を変えます。

 日本を研究開発拠点にするというのはとても大事、これは共通の理解だと思います。そのために研究開発の減税、ここは本当は質問したかったところなんですけれども、これを削って法人税に回すというのは絶対許せないというふうに思いますけれども、それ以外に研究開発関連予算、科学技術予算ですね、ここが大事なんですが、総理は事あるごとに、私はふやしましたよ、科学技術予算全体をうんとふやしましたからと御自慢されていますけれども、どのくらいおふやしになって、その効果というのはどう期待できるんですか。

菅内閣総理大臣 平成二十三年度の科学技術関係予算は三兆六千四百八十五億円と、前年度当初予算比七百五十億円増となっております。その中でも、科学研究費補助金については、特に若手研究者への支援など大幅に拡充するとともに、その一部の研究費について、研究費の使い勝手を向上させるため、基金化を図ることといたしております。この基金化は大変喜ばれております。

 なお、総合科学技術会議が昨年行った科学技術の基本方針についての答申においては、グリーンイノベーション、ライフイノベーションなど課題対応の重点化、さらには基礎研究及び人材育成の強化などに取り組むとともに、平成二十三年度から五年間で政府研究開発投資の対GDP比一%、総額約二十五兆円を目標に掲げております。

 今後、答申を踏まえて科学技術基本計画を策定し、科学技術を強力に推進してまいりたいと考えています。

甘利委員 七百五十億円前年よりふやしたんだと胸を張っておられます。

 きょう、文科省の局長、来ていますね。この予算の中に人文科学の予算は入っていますか。

合田政府参考人 お答えをいたします。

 科学研究費補助金でございますとか大学関係の予算の中に人文科学、社会科学系の予算も含まれております。

甘利委員 そのままいてください。

 去年は入っていましたか。

合田政府参考人 科学研究費補助金については昨年も入ってございました。大学関係につきましては……(甘利委員「いやいや、今の人文科学のもので」と呼ぶ)はい。科学技術関係経費の中に科学研究費補助金の人文・社会科学関係の予算は含まれておりました。(甘利委員「いやいや、今の……」と呼ぶ)

中井委員長 質問のときは立って手を挙げて言ってください。

 甘利君。

甘利委員 来年度予算に人文科学の国立大学運営費交付金が入れてありますよね。去年は入っていなかったはずですよ。

合田政府参考人 今御指摘のとおりでございまして、科学研究費補助金については人文社会系も含まれておりましたけれども、国立大学運営費交付金については含まれていなかったというのはそのとおりでございます。

甘利委員 いいですか。今まで、国立大学運営交付金、人文科学、これは何かというと、要するに経済学部とか法学部の金ですよ。これって、科学技術予算には入れないんですよ。今まで一回も入れたことはないはずです。今回、この金を千二百億入れて、そして科学技術予算が膨らんだとおっしゃっているんですよ、総理は。世間ではこういうのを何と言うんですか。いいですよ、もう時間がないんだから。

 膨らませたように見せて、我々は科学技術にこんなに力を入れています、去年は入れていなかったのに、ことしは文科系の予算を入れて全体を膨らませておいて、何がふやしたですか。

高木国務大臣 甘利委員にお答えをいたします。

 御指摘の点につきましては、我々としては、特に今回の予算については、これまでの反省も踏まえて、我が国がこれからも国際競争力を持つためには、科学研究費の増額というのは極めて重要でございます。したがいまして、文部科学省の予算の中でも、科学研究費補助金については、前年度比六百三十三億円と、大幅の拡充をしたところでございます。

 今後とも、例えば再生医療や、あるいはがんの克服、あるいは環境・エネルギー、宇宙開発、そういった分野におきましても、引き続き取り組んでいきたいと思っております。

甘利委員 こういう目先のごまかしみたいなことはやらないで、真剣にやってください。

 以上です。

中井委員長 この際、稲田朋美君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 北陸地方を中心に記録的な大雪となっており、住民の生活に多大な影響が出ております。けさの委員会で総理から福井についても触れていただきましたけれども、何とぞ、迅速かつ十分な対応をお願いいたします。

 さて、総理は、今回の内閣改造で与謝野大臣を任命されて、政治の道義を捨て、また、マニフェストでお約束をされた財源が破綻し、消費税の増税など、まさしく政権交代の大義が揺らいでいると思います。きょう私は、その点を質問していきたいと思っております。

 また、総理は熟議の国会とおっしゃっておりますけれども、昨年の私の代表質問の中で、無駄排除に関する質問に関し、総理は、事業仕分けの無駄排除七千億の根拠を示してから質問してほしかったと、まるで私が根拠なく中傷誹謗の質問をしているかにお答えになりましたが、一昨年の事業仕分けの成果については、総理もみずから名を連ねておられる「平成二十二年度予算編成について」と題する書面で、七千億弱であることが明示されております。熟議の国会と言うのなら、誠実な答弁をしていただきたいと思います。

 先週行われた代表質問やけさの委員会での総理の答弁を聞いておりますと、答弁漏れ、言い逃れ、繰り返し、開き直り、強弁に終始し、果たして総理自身に熟議の姿勢があるのか疑問に思いました。

 また、政治生命をかけるの意味を問われて、最大限努力していきたいとは、総理、その程度のことが政治生命をかけるということですか。政治家として情けないと思います。どうか、一国の宰相として言葉の重みを自覚していただきたいと思います。

 このパネルは、総理の著書の一節です。これが総理の予算編成についての基本的な考え方だと思います。「私には、「削る」という発想がそもそもない。」また「マニフェストで国民と約束した、七兆一千億を最初に計上する。」と書かれております。

 では、総理、なぜ、マニフェストで平成二十三年に実施すると国民に約束をした十二・六兆円を真っ先に予算計上なさらないのですか。

菅内閣総理大臣 御承知だと思いますが、マニフェストには二つの面があります。一つは、こういうことをいつからやりたい、例えば子ども手当を創設してこうやりたいというものと、そして、ある意味でその財源となる無駄の削減でこれだけのものを捻出していきたい、これが相まって一つのマニフェストになっております。

 率直に申し上げて、それを進めていく中で、必ずしも、当初想定したテンポで、あるいは想定した金額でその捻出の方ができなかった部分については、例えば初年度でいえば、三兆一千億程度が捻出できましたので、それで子ども手当の一万三千円などをまずスタートさせましたが、ガソリン税の暫定税率の廃止ということはできなかったわけでありまして、そういう仕組みの中で、現在、第二年度についても、できる限り無駄の削減をしながら、例えば、子ども手当についての一部積み増しとか、あるいは戸別的所得補償についての拡大とか、そういうものに充ててきている、こういう形になっております。

稲田委員 ただいまの総理の御答弁は、私の質問に対してはお答えになっていないと思います。

 私が聞きましたのは、総理の著書の中には、削るという発想はそもそもなくて、まず真っ先に、マニフェストで十二・六兆円約束をしているのなら、それをつけて、その後でほかの予算を組むのだということが書かれているわけですから、今財源がないからその約束を果たせないというのは、まさしく、総理のおっしゃっている、著書の中での予算編成の原則とは違うことを行った、有言不実行の一つだと思います。

 また、総理はこの著書の中で、削る発想がないとおっしゃっているにもかかわらず、平成二十三年度予算の概算要求組替え基準では、一律一〇%削って特別枠に充てるという、まさしく削るというやり方を示しておられるわけであります。

 マニフェストの予算をまず優先的に全部つけるという話も、削るという発想がないという話も、二重の意味ででたらめではありませんか。有言不実行、不誠実そのものだと思います。

 さらに、削るという話も、その削るふりだけで実際には全く削れていません。例えば、一律一〇%削減して出した二・五兆円のうち、人件費、思いやり予算などはそのままですし、元気な日本復活特別枠といっても、ほとんどが看板のかけかえではありませんか。

 自民党はきちんと削っていました。自民党政権下のシーリングでは、毎年、五千億ないし一兆円削っていました。民主党の無駄排除はわずか三千億です。マニフェストで国民に約束した無駄排除九・一兆円とはほど遠いのではありませんか。

菅内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、マニフェストについては、ある意味で入りと出とペアでマニフェストになっていた関係で、できる限りこの二年間で、最終的には四年間ですが、やれるところからやってきて、そして、削るべきところについて、捻出するものができたところで新たな施策を進めている、これが実際の姿であります。

 私の著書で、削るという考え方ではなくて、まずは優先度という考え方を申し上げたわけですけれども、そのこと自体を、私は自分の言葉を否定する気はありませんが、現実の予算編成の、今マニフェストの問題でいえば、党の方針としては、今申し上げたように、こちらで捻出をするものから出してそれを使っていくという形ですので、それを超えて出していけば結果的にはどこかの財源が不足するわけでありますので、そういう仕組みでやってきているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

稲田委員 総理、私の質問を聞いてください。

 私は、総理はマニフェストで約束をした十二・六兆円を真っ先につけると言ったのに、それを予算計上していないのはなぜですかという質問をいたしました。それに対する総理の答弁は、結局、財源がないのでつけられなかった、この本とは違うことをおっしゃったわけです。

 次に私が質問をしたのは、自民党政権下ではシーリングで五千億ないし一兆円削っていたけれども、民主党が削ったのはわずか三千億じゃありませんか、九・一兆円に比べたらけた外れに少ないですねということを質問したわけであります。

中井委員長 野田財務大臣、削った分について。三千億は違う。

野田国務大臣 自民党政権のときに五千億、一兆削ったということはないと思います。それはその次の補正予算の前提であったはずで、一つの予算で五千あるいは一兆なんという単位でやったことはありません。組み替えの最大の額は私は三千億と記憶をしていますので、事実と違うと思います。シーリングでのあの見直しは、いわゆる我々流の組み替えの考え方でも三千億が最大の数字だったというふうに思いますので、事実が違うと思います。

中井委員長 野田さん、違う。民主党は三千億しか削っていないということについて言ってください。

野田国務大臣 平成二十二年度、今執行中の予算は、マニフェスト関連では約二兆円歳出削減をしています。加えて、今度、三・六兆分の財源をつくるために、さらに〇・四兆の歳出削減をしているというのが事実でございます。

稲田委員 私は、民主党は事業仕分けで削減した金額はわずか三千億ですねということを質問しているわけであります。(発言する者あり)ごまかしていません。

中井委員長 お静かに願います。

蓮舫国務大臣 細かくお答えさせていただきます。

 事業仕分けの評価結果等を踏まえまして、平成二十三年度予算編成におきまして、一般会計ベースにおいては、歳出について徹底した見直しを行いまして、概算要求から追加的に約三千五百億円の歳出削減を実現するとともに、独立行政法人等からの国庫納付等によりまして約一兆四千億円を確保してございます。また、これ以外なんですが、行政事業レビュー、国丸ごと仕分けとして各府省が見直しを行っていただいているんですけれども、これは、各府省における概算要求段階の一般会計及び特別会計を合わせまして、見直し分が約一兆三千億円。

 これを機械的に足し上げますと、平成二十三年度予算編成における行政刷新会議の取り組み全体におけます効果は約三兆円となります。

稲田委員 蓮舫大臣、お言葉ですけれども、それがごまかしだと私は申し上げているんです。総理も代表質問に対する答弁で、事業仕分けで三兆円とお答えになったので、私は、総理に質問しているにもかかわらず蓮舫大臣が来られましたから、反論いたしますけれども、今、蓮舫大臣が御説明になった中で、事業仕分けで削ったと言えるのは、歳出削減額の約三千億だけです。次の歳入確保の一・四兆円は、削ったのではなくて、もともとあったものを取り崩したものです。しかも、そのうちの一・二兆円は鉄道・運輸機構のもので、本来ならそれを恒久財源で賄うべきであった年金基金に充てるという禁じ手を使われたわけです。そもそも、このお金は鉄道関連に使うべきお金で、一銭も新幹線の新規着工予定の部分に使わないのか、本当に疑問です。

 また、年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる財源は税制抜本改革でやることに法律上なっていたのを先送りして逃げたのが、民主党の予算案ではありませんか。ごまかしに鉄道・運輸機構のお金を流用せず、きちんと税制改革をやり、鉄道機構のお金は正当、有効に使うべきだと思います。

 また、最後の、行政事業レビュー一・三兆円ですか、これは事業仕分けとは何の関係もなく、反映額という意味不明の言葉どおり、本当に切ったものではなく……(発言する者あり)

中井委員長 静粛に願います。静粛に。

稲田委員 そのほとんどは事実上継続されているものではありませんか。これを足して三兆円と言うのをごまかしと言うんですよ。

野田国務大臣 まず、基礎年金の国庫負担分の……(稲田委員「総理に聞いています」と呼ぶ)これは私の担当もございますので、事実関係をきちっとお話しした上で、さらに大所高所で補足があれば、総理にお願いをしたいというふうに思います。

 まず、基礎年金の国庫負担分の二分の一、これは、今回の二十三年度限りではなくて、自民党・公明党政権のときにも臨時財源はやっております。

 その上で、確かに今回は苦労しました。本来は、やはり税制抜本改革をやって、その穴をきちっと埋めなければいけないというのが筋だと思いますけれども、その中で、一・二兆円の鉄運機構の剰余金ですが、これを何で充てたのかというお話がございました。

 これは、確かにそれは鉄道関連で生まれた剰余金ではありますけれども、もともと、これは一般会計で債務を二十四兆承継しているという事実があります。ということは、こういう年金の破綻をさせちゃいけないというときに使っても、私は、これはしかられる話ではないと思いますし、国土交通大臣ともよくお話をした上で進めさせていただいたものであります。

 ちなみに、一・二兆円も、これは事業仕分けの一環で出てきた数字であります。一・四五兆円出てくる剰余金をどうするかということを、基本的には国庫返納というのを、事業仕分けの評価結果が出ました。もちろん会計検査院でも御指摘ございましたけれども、この一兆円以上を見つけるということはなかなか大変なことです。

 今までの政権で見つけたかどうか。一兆円といったら、一万円札を積み上げると、高さ一万メートルです。重さ百トンです。それを私たちの政権は見つけて、有効に生かそうとしているという政権であることは御理解をいただきたいというふうに思います。

 加えて、行政事業レビューも、これも事業仕分けの一環です。その考え方を各府省でやってもらって、国ごと丸ごと仕分けという概念のもとでやっているということで、これは一貫性があるということでございます。

稲田委員 委員長、私は、総理のこの著書に関連をして、総理に質問をいたしております。また、今の三兆円についても、総理が代表質問に対する答えとしておっしゃっておりましたので質問をしたものであります。ほかの大臣に答えていただきたくないと思っております。

 ただ、今、野田大臣がせっかくお答えになりましたので言いますけれども、一・四兆円は、これは事業仕分けではなくて、いわゆるあったものを取り崩したにすぎません。また、最後のこの行政レビューに至っては事業仕分けと言えるものではなくて、ごまかしじゃなくて、きちんとこの行政レビューについて切ったとおっしゃるのであれば、何を幾らずつ切ったのか、そしてそれが何の財源に使われたのか、明確に、資料でこの委員会に提出いただくことを求めます。

中井委員長 野田財務大臣。(発言する者あり)資料で出すかどうか答えたらいいじゃないですか。

野田国務大臣 まず、一・四兆円あったものを使ったと言いますけれども、もともとあったかどうかを確認もしないで使ってこなかったことが問題だったんです。それを前提として、きちっと生きた使い道をしようというのが今回の対処であります。

 資料については、行政事業レビューで出てきた財源であるとかお金とかそういう、可能な限り、出せるものは出していきたいというふうに思っています。

中井委員長 野田さん、僕、口を出してまた怒られますが、一兆円というのは積んだら一万メートルと言いましたが、あれは九千メートルの間違いと違いますか。一万メートルは昔の札束じゃないですか。(発言する者あり)どうでもいいですが。

稲田委員 ただ、野田大臣、私の質問は、無駄排除で九・一兆円という割には財源が出ていませんねという中での、事業仕分けの三千億です。今の鉄道・運輸機構などの埋蔵金はほかのところで財源として計上されておりますので、純粋に言う事業仕分けの財源、無駄排除は私は三千億だと思っております。

 もう一つ、総理、見過ごせないごまかしを指摘させていただきます。

 総理は、谷垣総裁の代表質問に対する答弁で、一括交付金は財源確保のためではないとおっしゃいました。私は耳を疑ったのです。政権交代のときのマニフェストの中で、無駄排除九・一兆円のほとんどは補助金から削るという計画になっておりました。六・一兆円です。財源確保のためでないとはよくおっしゃったものだと思います。結局、国民に約束した、補助金を一括交付金にしても、数兆円も削ることが実現不可能なので、財源確保のためではないなどとうその上塗りをされているのです。

 総理は、答弁で、五千億が対象になったと威張っておられますけれども、対象が五千億だろうが、一兆円だろうが、十兆円だろうが、民主党が削減した額はわずか三百億です。つまり、国民と約束をしていた六兆円の二百分の一。結局何もやっていない、でたらめと言われても仕方がないんじゃありませんか。

菅内閣総理大臣 これは、ぜひ国民の皆さんにもお聞きをいただきたいんですが、一括交付金にするということの最大の目的は、今回は県ですけれども、県が自主的に、例えばこれを橋に使いたい、いや、これは圃場整備に使いたいということを自分たちで決められるようにするということなんです。

 そういうことで、当初は、各省庁にそういうものを出してくれと言ったら、合わせて二十八億しか出てこなかったわけですが、片山総務大臣が中心になって、私も各大臣に強い要請をいたしまして、そして、来年度においては、まず、県ベースで五千百二十億円が一括交付金化され、さらに再来年には、今度は、基礎自治体も含めて、一兆円規模の財源が一括交付金として、自治体の自主判断で使途が決まる。

 私が申し上げたのは、基本的に、この一括交付金の考え方の第一の要素はそのことにあるのであって、それが財源の確保を中心的な目的で取り入れたのではない。ただ、結果として、自治体がみずからの判断でやれば、必ずしも必要でないけれども補助金がついたから事業をやったというような無駄が、そういう意味ではなかなかカウントしにくいですけれども、なくなりますから、より効率的な財政運営につながってくる、そういうことで申し上げたところであります。

稲田委員 またしても、総理は私の質問に対してお答えにならないんですよ。

 私が聞いたのは、九・一兆円のうちの大半の六・一兆円、この大半を一括補助金で出すとおっしゃっていたのが、結局三百億、約束をしていた二百分の一しか出せなかったですねということをお伺いしたわけであります。

 次に、質問をいたします。

 与謝野大臣の起用のことについてお伺いをいたします。

 民主党の政策を厳しく糾弾していた与謝野大臣を閣内にお入れになったということは、民主党が変節をしたのか、それとも与謝野大臣が変節をされたのか、二つに一つだと思います。

 与謝野大臣、大臣は、平成二十一年の選挙前、財務大臣でいらっしゃいましたときに、民主党のマニフェストで十七兆円のばらまきをやることについて、記者会見で、ほとんど犯罪に近いとおっしゃいました。覚えておられますね。それなのに、なぜ大臣は、あなたが犯罪だと批判した政策を推し進める民主党の内閣に参画をされるのですか。犯罪に加担することになりませんか。また、犯罪の共犯者になってしまわれたのはなぜなのか。

 午前中の質疑で、大臣の財政再建や社会保障に対する強い熱意はわかっておりますので、どうして犯罪に加担をされるのか、また、犯罪をやめさせるためにどのようなことをおやりになるつもりなのか、お伺いをいたします。

与謝野国務大臣 その当時、私は財務大臣をやっておりましたから、余りむちゃな財政プランをお示しいただいても、それは実現不可能だと役所的にはすぐわかるわけでございます。

 犯罪に近いと言ったのはやや言い過ぎでございますが、これまでのところ、何とかマニフェストはやってこられましたけれども、ここからは、なかなか、財源の壁という厳しいものに民主党自体がぶつかると私は思っております。それは、九月には見直すと総理も幹事長も言っておられるわけですから、やはりそれは客観的に冷静に、実現可能性ということに視点を置いて、国民の理解を得つつ見直す必要があるのではないかと思っておりますが、これは民主党のことでございますから、閣僚が余り深く言うべきことではないと思っております。

稲田委員 大臣が犯罪に近いとまでおっしゃったこのマニフェストの全面見直しに向けて、大臣が御尽力されることを望みます。

 総理にお伺いをいたします。

 私も、与謝野大臣の政策に共感を覚えるところが多くありました。したがいまして、総理が与謝野大臣の政策に共鳴を得て、そして任命をされたというお気持ちはわかります。ただ、与謝野大臣は、かつて、自民党の総裁候補であり、自民党・公明党政権の最後の閣僚であり、自民党の比例で当選をなさった方であり、打倒民主党政権を標榜するたちあがれ日本の共同代表をやった方です。つまり、自民、公明、たちあがれの三党を裏切った方であり、有権者を裏切った方。そのような人を、超党派協議をしようとするテーマの担当大臣にすることは、余りに無思慮、無神経ではありませんか。

菅内閣総理大臣 先ほど来、与謝野大臣を任命したことについての大義がどこにあるのかという趣旨の同じ御質問だと思います。

 私は、この社会保障と税の一体改革という問題は本当に大きな課題だと思っております。いろいろな政党間の変化というのは、私も三十年この国会におりますので、いろいろな形で、議員がある意味、新たな党をつくったり変化をしたりすることはあります。ですから、それはそれとして確かに重要なことではありますけれども、私は、今、この二〇一一年というときにあって、社会保障と税の一体改革というこの大きな大きな課題にとって、それを進めるためには与謝野さんのような高い見識と志を持った方が最もふさわしいという認識のもとで大臣への就任をお願いしたわけでありまして、私はそのことが間違っているとは思いません。

稲田委員 またも私の質問に正面から答えずに、はぐらかしの答弁に終始をされました。

 総理、政治は信なくんば立たずです。仮に正しい政策であったとしても、正しい人が言わなければ国民はついてきませんよ。信頼や信念のない人を閣僚とするような、そんな信なき政治はいずれ破綻することを指摘しておきます。

 自民党は、党内大議論の末に、財政再建のために消費税の増税をする抜本改革が必要だとして、それを税法の附則にも書きました。党内で大議論がありました。自民党は本当のことを言って下野をし、民主党は、国の二百七兆の予算を組み替えれば、その一割、二割、つまり二十兆、四十兆すぐ切れると豪語して、増税の必要もないし、十六・八兆円のばらまきもできるなど、さまざまな、選挙目当てのできもしない政策を訴えて政権をとられたのです。

 ここに民主党の有言不実行の政策を列挙いたしております。

 財源がけた違いに出てこない。国会運営や答弁の乱雑さ。外交まで検察に丸投げ。利益誘導政治。クリーンでオープンな政治と言いながら、鳩山、小沢問題説明せず。小泉構造改革批判しながら、開国、TPPですか。緊密で対等な日米関係の信頼関係は破綻しています。普天間移転せず。後期高齢者医療制度、廃止後の具体案なし。民営化からの逆行。生産調整をやめて戸別補償、結局計画生産の一律ばらまき。ガソリン値下げせず。高速道路無料化せず。CO2二五%削減の計画すらなし。公務員人件費削減せず。議員定数削減せず。企業・団体献金廃止せず。

 与謝野大臣にお伺いをいたしますが、この財源についてどのように思われますか。

中井委員長 稲田さん、この財源というのはどの財源ですか。

稲田委員 この資料の中の一番の、無駄遣いをやめて九・一兆円、天下り廃止して十二・一兆円、予算を組み替えて二十兆、四十兆、消えた財源のことです。

中井委員長 四十兆はさっきちょっと直していただくことになったと思いますが。

稲田委員 パネルは民主党の理事の先生方の異議で三十兆に直しましたけれども、しかし、選挙期間中は、予算を組み替えて一割、二割の財源はすぐ出ると皆さん方はおっしゃっていたので、二十兆、四十兆。

中井委員長 僕は知りませんが、だれが言ったんでしょう。

稲田委員 選挙後の藤井大臣もテレビでおっしゃいましたよ。

中井委員長 以上のような質問ですから、与謝野大臣、お答えください。

与謝野国務大臣 同情して物を言えば、知らなかったと、少し厳しく言えば、無知であったと言わざるを得ないぐらいの数字でございます。

 しかし、実際、政権をとれば、金庫の中もわかるわけですから、政策はどんどん現実的になっていく、そういうことはあるわけですから、マニフェストに沿って今までやってきましたから、ここから先の難しい局面をどう乗り切っていくかというのは、菅総理初め民主党に課せられた非常に大きな課題であると私は思っております。

稲田委員 今、与謝野大臣は、民主党は無知であった、知らなかったとおっしゃったわけですけれども、総理、今の大臣のお答えを聞いて、マニフェストを全面改定するおつもりはありますか、特に財源について。

菅内閣総理大臣 私たち民主党という立場でいえば、政権担当をしたのは一年半前が初めてであります。私は自社さ政権のもとで厚生大臣を一年弱務めましたが、そういう経験が若干ある方もおられますけれども、率直に申し上げて、財政の本当の中身、さっき一兆数千億の鉄道関係基金のことも言われましたが、なかなか、野党の立場では、そういったものの存在も含めて、見出すことは野党の時代は難しかったわけです。

 そういう意味で、野党としてつくったマニフェストについて、今、与謝野さんからは、知らなかったという少しやわらかいお話もありましたけれども、私たちが考えていたところの無駄というのが、確かに見つかったところもありますし、まだ時間がかかる問題もあるし、一部は私たちが過大に見積もっていたところもあります。

 そういうことを含めて、私たちとしては、政権を担当して一年半、もうすぐ、あと半年で二年たちますので、その段階で、マニフェストについて、どこまではやった、どこまでは将来やれる、しかしここから先はなかなか難しい、こういったことをしっかり検証して、国民の皆さんにそのことをお伝えして了解をいただきたい、このように考えております。

稲田委員 さんざんばらまいておいて、公約したはずの無駄排除は全然できない。与謝野大臣も、無知だった、知らなかったとお認めになっております。そして、やはり増税したいから野党も連帯責任を負ってくださいなどと、無責任政治のきわみではありませんか。国民はもうごまかされません。予算審議を真摯に進めたいとおっしゃるのであれば、ばらまきマニフェストの撤回と、無駄排除がけた外れにできなかったことの謝罪と、国民に対してきちんと説明をされるべきではないでしょうか。

 また、総理、二大政党とおっしゃるのであれば、選挙で訴えた政策の評価、変更は国民に信を問うべきだと思っております。ばらまきを悔い改めず、ばらまきを前提の増税の議論には私たちは参加することはできません。なぜなら、増税したとしても、その分が子ども手当の上乗せなどばらまきに使われてしまうからです。

 最後に、前原大臣にお伺いをいたします。

 前原大臣は、昨年の暮れから、日朝直接対話を進める旨の発言をされています。しかも、日朝間の交渉の進め方は白紙とおっしゃっています。一体どういう意味かわかりません。日朝交渉の基本は、拉致問題の進展が前提のはずです。大臣の発言は、拉致問題で日本が軟化したとのメッセージになります。現に北朝鮮メディアからは、直接対話に意欲を見せる前原大臣の発言を歓迎し、肯定しております。

 安倍総理のとき、六カ国協議で北朝鮮に重油支援をすることに決めましたが、日本はそれを拒否しました。国益に合致した正しい判断でした。ところが、大臣は、一貫して重油支援をすべきだという姿勢で質問をされたのです。また、福田総理のときも、拉致問題の進展がなければ何もかも支援をしないということはむしろ外交の裁量を狭める、そういう質問をされております。

 どうして大臣はそんなに北朝鮮に甘いのでしょうか。

 大臣は、平成四年と平成十一年、二度北朝鮮を訪問されています。平成十一年、大臣は既に衆議院議員でしたが、御地元の支援企業と一緒に訪朝されています。その目的は何で、北朝鮮でどなたにお会いになりましたか。

前原国務大臣 まず、後者からお話をいたします。

 私の地元の企業で手機の織物をしている会社が、中国で仕事をされておりましたけれども、中国の人件費が上昇したということで、北朝鮮で仕事ができないかということを相談を受けまして、そして、京都の朝鮮総連を通じて、その企業が北朝鮮に工場をつくられることになった。その工場ができたところを見に行ったというのが私の二回目の訪朝の全体像でありまして、それ以上でもそれ以下でもございません。

 それから、白紙で臨むということを申し上げたのは、すべて、その白紙で臨むと私が申し上げた前後の記者会見なり発言を踏まえておっしゃっているのかどうかということをまず私は確認していただきたいと思います。

 私は、日朝の問題に臨むときの大前提は、二〇〇二年の九月の十七日の日朝平壌宣言、これを我々は政権交代後も継承するということを申し上げています。つまりは、拉致、核、ミサイル、これの包括的な解決をして、その上で日朝の国交正常化をするということを繰り返し私は申し上げております。そういうものを全くなくして、白紙でなんということを言った覚えは一切ございません。

 私どもは、今回の北朝鮮の延坪島への攻撃、あるいは天安の撃沈事件、あるいは濃縮ウランの問題、どんどんどんどん挑発を重ねていく中で、また対話のテーブルにのせようとする北朝鮮のやり方というのは極めて問題だというふうに私は思っております。

 この拉致の問題も極めて重要です。私が日朝の直接交渉をということを申し上げたのは、私も何人も拉致被害者の御家族とお会いをして、そして、どんどんどんどんお年を召されている中で、一日も早く解決をしてもらいたいと。そして、稲田さんもこの問題に取り組まれていると思いますけれども、前の家族会の会長をされていた横田さん、めぐみさんのお父さんは、とにかく日朝の交渉をやってくれということを稲田議員にもおっしゃっているんじゃないですか。直接交渉して、拉致問題を何とか切り開いてほしいということをおっしゃっているはずであって、二〇〇八年の前政権の、福田政権でありますけれども、六者協議以降、全然接触できていないんですよ。拉致問題をやるやる、やるやると自民党政権でおっしゃいながら、直接交渉もできていない。我々、政権交代で直接交渉もしなきゃいけない、そうでないと拉致問題は解決できないということを申し上げているわけです。

 そして、先ほど、安倍政権とそれから福田政権のときの私の質問をとらえておっしゃいました。拉致も大切ですけれども、日本を射程に置いているミサイルの数は二百発以上ですよ。核弾頭は何個あるかわかりません。しかし、核を開発してと言われている。もしこれが使われたときにどのような状況になるかということを、日本はみずからの危機と思って考える必要はないんですか。

 つまりは、拉致も大事だけれども、このミサイルやそして核の問題を真剣に取り組まないと、今生きている日本人の国民の生命財産、あるいは何十年後まで禍根を残すようなことになったらどうするのかという思いの中で、総合的に判断をすべきだということを私は申し上げているわけであって、決して拉致問題を軽視しているわけではありません。

 原点は、二〇〇二年の九月十七日の日朝平壌宣言、核、拉致、ミサイルの包括的な解決で国交正常化をする、それであります。

稲田委員 いずれにいたしましても、拉致問題が進展していないにもかかわらず北朝鮮に対して支援をすべきであるという姿勢の外務大臣が、北朝鮮と直接対話、または訪朝することは、日本の国益には合致しないと思います。

 まだまだお聞きしたいことはありますが、続きはまたの機会にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

中井委員長 この際、柴山昌彦君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 ぜひ御答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。

 民主党の小沢元代表ですけれども、きのうの強制起訴の手続を受けて、総理は、けさ、我が党の石原議員が今後の対応を質問した際に、基本的な方針として、国会での説明を求めると述べられました。しかし、期限も見通しもない方針は方針とは言いません。一体いつ国会での説明を実現させるおつもりなんでしょうか。

菅内閣総理大臣 私が申し上げたのは、国会での御本人の説明が必要だ、そのように考えている、そして、そのことについては国会の手続の問題がありますので、我が党でいえば岡田幹事長を中心に、与野党間でよく協議をしていただきたい、このように申し上げました。

柴山委員 問いに答えてくださっていないんですけれども、その手続はいつまでに終わるんでしょうか。

菅内閣総理大臣 国会での手続を、それは総理大臣という立場と党の代表という立場はありますけれども、残念ながら、いつまでにどうするということを単独で決めることは私はできない種類のことだと。ですから、与野党でよく話し合っていただきたいと申し上げたんです。

柴山委員 一つの指標があります。折しも、小沢氏の秘書だった石川知裕議員の初公判が今度の二月七日に予定されています。その場で、冒頭陳述で検察側がこの陸山会事件についてどのような事実を主張するか。小沢氏のかかわりについても明らかにすると思いますが、それが、小沢元代表にどういった政治的責任あるいは説明責任があるかを判断する材料になるとお考えになりませんか。

菅内閣総理大臣 私は、その公判がどういう形で進むかという予測をする立場にありませんし、もしそういう予測を柴山さんがされたからといって、その仮定に基づいて何か申し上げるということはやはりすべきではないと思っております。

柴山委員 江田法務大臣を初め、いささかでも法律業務に通じておられる方は、この初公判で検察官の冒頭陳述が行われるということは、恐らく広く知られていることだと思います。

 仮に冒頭陳述が行われた場合、今少し声がありましたけれども、それに近い時期に政治と金についての集中審議を行っていただけると理解してよろしいですか。

中井委員長 集中審議の件につきましては、ただいま各党間で協議がされております。

柴山委員 話はかわります。

 こちらのパネルをごらんください。

 これは、平成十四年、小沢さんが当時代表を務めておられた自由党、今は民主党と合併していますけれども、自由党の政党交付金に係る報告書要旨の抜粋です。

 申し上げるまでもなく、政党交付金は国民の払った税金によって賄われるもので、以後の政党活動のあり方にもさまざまな影響が出てくることからも、その使い道につき国民に対する説明責任があるとされているわけです。

 この表を一見見て明らかなとおり、赤で囲ったここの組織活動費、九億七千九百万円が藤井裕久氏へ、そして五億四千百九十万円が藤井裕久氏へ。この項目が金額的に突出しているんです。

 藤井副長官、この合計すると十五億円超となるお金を一体何に使ったんですか。

藤井内閣官房副長官 その内容は存じません。

柴山委員 次のパネルをごらんください。

 こちらはそのときの領収証の写しです。この下の欄に藤井裕久との署名捺印が見えますが、これはあなたのものではないのですか。

藤井内閣官房副長官 まず、前半を申し上げましたが、私はそのお金を受け取っておりません。したがって、そういう認識は全くありません。

 ですから、今の問題については、私としてはその認識が、まず領収書の認識がありません。

柴山委員 確認ですけれども、これは領収証と書いたのをあなたは全く見ないで署名捺印をしたということなんでしょうか。

藤井内閣官房副長官 認識がありませんから、それは私が書いたものかどうかについてはわかりません。

柴山委員 今、大変重要な御答弁をされました。

 私はあえて、この藤井裕久の後に押捺されている、あなたの恐らくこれは銀行届け出印であろうかと思われますけれども、それをプライバシーの観点から塗りつぶしています。

 これがもし、その印影が明らかになって、それがあなたの銀行届け出印あるいは実印ということになれば、その印鑑が冒用されたということの御主張をされるわけですか。お答えください。

藤井内閣官房副長官 その紙は見たことがないので、何とも申し上げられません。

柴山委員 次のパネルをごらんください。

 しかも、あなたは、当時、自由党の幹事長であり、かつ、この収支報告書にもあるとおり、会計責任者だったはずです。そして、この隣にある収支報告書提出の際に添付される宣誓書、「この報告書は、政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません。」というこの書面に署名捺印をされております。

 先ほどの領収証と同じ筆跡に私にはどう見ても見えるんですけれども、これはあなたの字ではないのですか。

藤井内閣官房副長官 その紙の中のその文字は、私は認識がありません。

中井委員長 ちょっとお待ちください。

 藤井先生、これはお持ちなんですか。この資料はお持ちなんですか。

藤井内閣官房副長官 持っています。

中井委員長 持っていますか。はい。

柴山委員 自分の書いた、あるいは捺印した書面が真実かどうか、収支報告書、しかも幹事長かつ会計責任者という立場にありながら、その署名をしたかどうかを忘れるような方が内閣官房副長官をやっておられる。これは私は許されないことだと思いますよ。

 もう一回お答えください。

藤井内閣官房副長官 知らないということを申し上げております。

柴山委員 くしくも、平成十六年ごろ、同じく小沢元代表の関連政治団体である改革フォーラム21の口座に、収支報告書に記載のない約十五億円の入金があったと昨年一月十七日の日本経済新聞で報じられています。

 そして、その改革フォーラム21は、一昨年の衆議院解散日である七月二十一日に、小沢氏が代表を務める民主党岩手県第四区総支部に表に出ている額で三億七千万円の寄附を行い、翌二十二日には、その同額が、今回問題となっている資金管理団体陸山会に流れているんです。

 陸山会からは、小沢氏に近いとされる候補者九十一名に、八月十七日の総選挙公示までに計四億四千九百万円が提供されています。

 藤井副長官、このように報道等で疑惑を持たれれば、その説明責任が生じるはずです。あなたがどうしても、このさきに述べた十五億円の使い道、御存じないとおっしゃるんだったら、一体だれが知っているんですか。

藤井内閣官房副長官 私が知らないということで、それ以上のことはわかりません。

柴山委員 繰り返しますが、あなたは当時、自由党の幹事長で会計責任者でありながら、その自由党が受け取っている政党交付金、これについての使い道、しかも自分が領収証に自筆で署名捺印されているものについて、使い道について一切知らない、そしてだれが知っているかもわからない、こういうふうにおっしゃるんですか。

藤井内閣官房副長官 これは、七、八年前に今と同じことをお答えしています。それから自来七、八年間、同じようにお答えをいたしております。

柴山委員 この収支報告書の表紙には、事務担当者としての八尋護さんとおっしゃる方の署名があります。残念ながら、もう亡くなられておられます。しかしながら、当時、同じ自由党の職員で、かつてあなたのところにいらっしゃった高橋さんですとかあるいは俊成さんですとか女性の事務をされていた方々などが御存じないんでしょうか。今は民主党の職員となっておられるはずです。いかがですか。

藤井内閣官房副長官 今の名前は全部承知をいたしております。

柴山委員 それでは、現在、民主党経理部におられる俊成浩章氏、同じく民主党の衆議院第三控室の高橋豊和氏の参考人招致を求めます。

中井委員長 理事会で協議いたします。

柴山委員 再度確認をいたします。

 この署名捺印は、あなたは、御自分のものなんですか。再度御答弁ください。

藤井内閣官房副長官 今申し上げましたように、このお金はもちろんいただいておりませんし、それから今の内容も存じません。したがって、これについての認識がないんです。ですから、私はそれをどうこう言う立場にありません。

柴山委員 これがこの官邸の実態でございます。

 次の質問に移ります。

 ごらんください。ここにある質問主意書、我が党の佐藤勉衆議院議員が昨年の四月二十七日に提出し、それに対する答弁書が、閣議決定の上、五月十一日に送付されてきたものです。

 枝野長官、昨年の五月十一日当時、長官は行政刷新担当大臣として内閣におられました。間違いありませんか。

枝野国務大臣 内閣府特命担当大臣、行政刷新担当として内閣におりました。

柴山委員 この質問主意書は、JRの労働組合に、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派、すなわち革マル派が影響力を持っているかということについてのものでした。このように書かれています。

 革マル派は、共産主義革命を起こすことを究極の目的としている極左暴力集団であり、これまでにも、殺人事件等、多数の刑事事件を引き起こしている。革マル派は、その組織拡大に重点を置き、周囲に警戒心を抱かせないよう党派性を隠して基幹産業の労働組合等各界各層への浸透を図っており、JR総連及び東日本旅客鉄道労働組合内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透していると認識している。今後も、革マル派は、組織拡大に重点を置き、党派性を隠して基幹産業の労働組合等各界各層への浸透を図っていくものと見られる。

 こちらの、次のパネルをごらんください。

 これは、枝野長官の政治団体が、平成八年以降、今の答弁書にあったJR総連及びJR東労組から幾ら献金を受け取ってきたかを示すものです。一昨年の衆議院選挙の年まで、一時中断の時期もありますが、継続的に合計七百九十四万円に上るお金をもらっていたことになります。

 枝野長官、あなたが閣議決定に署名した答弁書で問題が指摘されたJR総連、JR東労組からこれだけの献金を受け取ることは道義的に問題があると思われませんか。また、今後も献金を受け取るおつもりがおありなんですか。簡潔にお答えください。

枝野国務大臣 私は、連合加盟の各産別といろいろな意味でおつき合いさせていただいておりますが、その連合加盟の各産別とおつき合いをする範囲内で当該労働組合ともおつき合いをさせていただいてまいりましたが、それ以上でもそれ以下でもございません。

 今後については、李下に冠を正さずということもございますので、献金等のお申し出があってもお断りさせていただこうと思います。

柴山委員 次のパネルをごらんください。

 李下に冠を正さずということを今おっしゃいましたけれども、今後はそれを、内閣官房長官、内閣の方針として内閣の各大臣に周知徹底されるおつもりはありますか。

枝野国務大臣 それぞれの政治活動、特に政治資金やその他のことについては、基本的にはそれぞれの政治家がそれぞれの責任でしかるべく対応されるものと思います。

柴山委員 しかしながら、先ほどの答弁書には閣議決定の上署名がされたということを念のために申し上げておきたいと思います。

 今の提示させていただいたパネルは、枝野長官が平成八年の、長官の二期目の総選挙の際、仮にYさんとしますけれども、JR東労組大宮支部の委員長と取り交わした覚書です。間違いありませんか。

枝野国務大臣 大分前のことでございますので、個別具体的に正確に記憶はいたしておりませんが、一般論として申し上げれば、連合に加盟する各組合とのおつき合いの範囲の中で、そこに示されているような、いわゆるひな形的な政策協定を結ぶことはあると思っておりますので、私の署名だと思いますので、そのような政策協定を結んだことがあるんだろうというふうに思います。

柴山委員 一般論として、慣例的にそのような協定書を結ぶというように今おっしゃいました。

 しかしながら、この墨塗りをした方、今申し上げたようにYさんと申し上げますけれども、Yさんは、このころ、JR革マル派のリーダー的地位にあるLC会議のメンバーであり、職場から集めた革マル派のカンパを上納する財政担当者だったんです。そして、この書面を見ると、1のところに書かれているとおり、「わたし」、枝野長官ですけれども、「わたしは、JR総連及びJR東労組の掲げる綱領を理解し、連帯して活動します。」と明記されています。さらに、このYさんは、平成十四年、方針に従わなかった組合の同僚をおどして脱会を強要したといういわゆる浦和電車区事件で他の幹部とともに逮捕され、東京高裁まで有罪判決が出ています。

 枝野長官、長官は、この判決に先立つ平成十八年十一月に開催された「えん罪・JR電車区事件から四年〜七名の完全無罪をかちとる」埼玉県集会に呼ばれて講演をされていますね。決して一般的な関係じゃないじゃありませんか。

枝野国務大臣 その協定書に書かれているような趣旨の内容のことについては、個別には名前を挙げませんが、他の労働組合等とも、あるいは労働組合以外の団体とも、一般的な政策協定として締結されることはあるというふうに思っておりますし、それから、今黒塗りにされておられます部分の方について詳細な記憶はございませんが、これは機関と私との間でしたものではありません。連合加盟の産別組合との間で結んだものでございまして、たまたま、当該、そのときのその立場におられた方がどういう立場であったのかということは、少なくともその時点では存じ上げませんでした。

 また、今の集会については、詳細について記憶はございませんが、一般的に、私も柴山さん同様、弁護士でございますので、適正法定手続についていろいろな場所で講演を頼まれて、その限りにおいてそういった講演をすることはあるかというふうに思いますが、当該組合の活動そのものについての講演とか何かをしたという記憶はございません。

柴山委員 弁護士として適正手続についての講演をしたということなんですけれども、覚書が交わされた先ほどの平成八年以降の長官と両組合との関係を見ると、実に八回にわたって新年会等の講演会に御出席をされているということなんです。

 さらに、昨年夏の参議院選挙で比例当選された田城郁議員は、JR総連の政策調査部長であり、JR東労組の委員長や会長を歴任した革マル派創設者の一人である松崎明氏の側近でした。また、日本鉄道福祉事業協会の元理事長が業務上横領を行ったとされる刑事事件で、田城議員の口座にも入金がなされていたとして、捜索、差し押さえを受けており、田城議員はそれが不当であると国家賠償請求訴訟を提起しましたが、高裁で棄却判決が出て既に確定をしております。総理、間違いありませんね。

菅内閣総理大臣 今お聞きになったことを私自身、承知をいたしておりません。

柴山委員 今、述べたことは、昨年十月十二日に、同じく佐藤勉議員から出された質問主意書で、あなた方の政府が閣議決定の上、答弁書で書かれたことなんです。

 菅総理、私は労働組合の健全な活動を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、社会的にさまざまな問題が指摘される過激な活動を行う組織については、断固として政治や行政からの遮断を図るべきだとお感じになりませんか。いかがですか。

菅内閣総理大臣 一般的に申し上げれば、私たち民主党はいろいろな団体に御支援をいただいております。労働組合でいえば、いわゆる連合の皆さんにも多く御支援をいただいております。そういう中にたくさんの組合があるわけであります。

 そういう意味で、そういう皆さんとのおつき合いというのは、基本的には、そういう党と連合との友好関係を背景に、あとは個々の議員なり候補者が判断することだと思っております。

 もちろん、今言われたような、組合に限りませんが、社会的に、何といいましょうか、問題が極めてあるということの団体との関係というのは、当然ながらそこは気をつけなければならない、このように思っております。

柴山委員 なお、夏の参議院選挙では、民主党の比例代表で当選された十六名のうち実に十名が労働組合、教職員組合系の候補者であります。こういった民主党の組合依存体質が、例えば今度提出されます税制改正法案で、一定以上の給与収入のある役員のみに負担を強化する給与所得控除の見直しですとか、経費的性格と認められない組合費をサラリーマンの特定支出控除の対象に追加するですとか、筋の通らない政策につながっているのではないか、また、公務員の人件費二割カットというマニフェスト実施の障害となるのではないか等々という問題点を今後徹底的に追及させていただきます。

 次に、与謝野大臣に伺います。

 鳩山前総理が、平成十四年から二十一年にかけて母親から十二億円を超える巨額の子ども手当を受けていたということで、おくればせながら贈与税約六億一千万円分の納付をしたのですが、悪質性がないということで、平成十四年と十五年の二年分、約一億三千万円が、時効により、まあ除斥期間というのが正確かと思いますが、鳩山前総理のもとに還付されたとのことであります。まじめに毎年税金を納めたら戻ってくるはずのないお金が、まんまと鳩山前総理の懐に入ったことになるわけです。

 大臣、大臣は昨年二月十二日の予算委員会で前総理を平成の脱税王だと批判されましたが、どう思われますか。

与謝野国務大臣 そのようにお呼びいたしましたことは事実でありますが、鳩山由紀夫前総理に対しては、税務当局が厳格に税の執行を行ったと思いますし、また、還付があったかどうかというのは私は知りませんけれども、それらについても厳密な税法の解釈を行った上でのことだと考えております。

柴山委員 それで納得されるんですか。

 あなたはこの日の同じ委員会質問で、「民間の方だったら、十何億も贈与を受けていて、ああ知りませんでしたなんと言ったら、すぐ告発されて逮捕、起訴。まあ、少なくとも一年以上、二年か三年刑務所へ行くんですよ。総理大臣だけ特別扱いしていいわけはないんだ。」と追及されたんですよ。いかがですか。

与謝野国務大臣 野党ですから、そのぐらいの迫力で物を言わなきゃいけないと思っていました。

柴山委員 自分が質問をした言葉に立場が変われば責任を持たない、これが今の与謝野大臣の体質であります。

 大臣、これは私の提案ですけれども、国がこれだけの借金を抱えているときに、本人がわざわざ払うと言って申し出た額は納められるようにすることを考えるべきですし、コンピューターのシステム上、時効期間を延ばすということもぜひ検討してほしいと思うんですが、いかがでしょう。

野田国務大臣 委員の御指摘は、報道を前提にお話をされているというふうに思います。鳩山元総理が後から贈与税を払ったとか、還付があったとか、個別の案件については私どもはお話をする立場ではございません。という前提で議論を進めていただきたいというふうに思います。

中井委員長 済みません、野田さん、時効を延ばすとかそういう話について。個人じゃなしに、個々じゃなしに。

野田国務大臣 一般論でそのお話をするには大きなテーマだと思います。

柴山委員 ぜひ御検討ください。

 また、与謝野大臣はこの質疑の中で、鳩山前総理の資金管理団体である友愛政経懇話会への偽装寄附問題を追及し、当時の菅財務大臣に、偽装寄附で「税の還付を受けた人がいるかどうか調べてください。別に名前は必要ないですよ。今は国税庁のコンピューターもよくできているから、ボタン二つ、三つ押せばぱっと出てくる。」と質問されています。野田大臣と連携して、この調査を行っていただけますか。

与謝野国務大臣 日本の税務署というのはなかなか厳しい役所でして、政治家であろうとも現職の総理大臣であろうとも、税務の執行については極めて厳正であると私はいつも思っております。

 したがいまして、鳩山さんのケースも、国税当局は厳正に税務執行を行ったと私は推定をしております。

柴山委員 私は失望いたしました。

 与謝野大臣、鳩山前総理は秘書の刑事裁判が終われば国会に一件記録を提出すると明言しておきながら、いまだ約束を果たしておられません。私たちが要求した関係者の証人喚問もまだ実現していません。総理と連携して、この実現に向けて汗をかいてくださいますか。

与謝野国務大臣 これは国会と鳩山前総理との関係でございまして、私どもが、行政側にいる人間が汗をかいてもどうしようもないことだと私は思っております。

柴山委員 失望いたしました。

 前原大臣に、続いての質問、お伺いいたします。

 前原大臣、私が今手元に持っているのは月刊誌中央公論の平成二十年七月号のコピーです。与謝野大臣と前原大臣の対談記事が載っています。この中で前原大臣は、その前年に実施された前々回の参議院選挙のマニフェストで、農家への戸別所得補償など主要政策の経費が十五・三兆円と試算されていることに加えて、道路特定財源のガソリン税暫定税率を廃止するなど、これに加えて新たな政策を加えると十八兆円かかるとした上で、行政改革だけで捻出するのは絶対無理だ。マニフェストをまとめるとき、当時の政策責任者たちの間では、最後まで財源の根拠が希薄だとの難色が示されたと聞いているが、最後は小沢さんのえいやだったと実態を暴露しています。

 また、前原大臣はこうもこの中でおっしゃっています。民主党が最もしてはならないのは、国民に対して耳ざわりのいいことばかり言っておいて、仮に政権をとったときにやっぱりできませんという事態を招くこと、すぐに自民党に政権が返る、最悪だ。御記憶ですか。

前原国務大臣 覚えております。

柴山委員 さすが前原大臣、藤井官房副長官と違ってよく御記憶だったと思います。

 そして、この参院選のマニフェストが基本的に一昨年の総選挙につながったわけですから、菅総理、これは選挙をやる前から、先ほど無知だ無知だというお話がありましたけれども、決して無知ではない。民主党がマニフェストの実施が無理だとわかっていたということの証明です。

 そして、藤井副長官、もう一度記憶を手繰っていただきたいんですけれども、大蔵省OBで財務大臣を務めたあなたも、一昨年の総選挙前、七月七日の民主党常任幹事会で、財源にはそこまで触れなくていいんだ、どうにもならなかったらごめんなさいと言えばいいじゃないかと述べておられたと報道されています。違いますか。

藤井内閣官房副長官 ごめんなさいという言葉はマスコミさんがつくった言葉です。私は、そういうことに対しては謙虚に反省しなきゃいかぬということを申し上げただけです。

柴山委員 いずれにせよこの事態は、小沢さんのみならず、民主党全体の責任であります。今の政権に正統性は全く認められないということを申し上げさせていただき、前原大臣に次の質問をさせていただきます。

 前原大臣、先ほど前原大臣は、同僚の稲田議員に対して北朝鮮問題についてお話をされました。大臣はことし一月四日の記者会見で、対北朝鮮外交について、拉致問題という日本の主権にかかわる問題もあるので、六カ国協議や多国間の場のみで北朝鮮問題を扱うのではなく、拉致、核、ミサイル問題をじかにしっかりと二国間で話ができる状況をつくり出すことが大事だと述べられ、十一日の会見や十五日の訪問先の韓国でも同様の発言を繰り返しておられます。

 これに対して北朝鮮側は、例えば国営朝鮮中央通信が、関係発展に合致する肯定的な動きだと歓迎する報道をしています。

 繰り返しになりますが、大臣は、本当に北朝鮮との二国間対話が諸案件の解決につながるという見通しを持っておられるんですか。

前原国務大臣 二つのことを申し上げたいと思います。

 一つは、現実に、二〇〇二年、そしてその後に、小泉元総理が訪朝されて拉致被害者が帰ってこられた。政治が直接動いた中で拉致被害者が帰ってこられたのは、これは事実であります。また、拉致問題がまだ全面的に解決されていない中で、やはり政治が、政府が主体的に動くということは、これは拉致被害者の御家族の方々も願っておられることではないかというふうに思っております。

 ただ、その前提として、やはり我々独自でやることには限りがあります、情報も含めて。また、北朝鮮の分断作戦に乗ってはいけない。そういう意味において、日本、韓国、アメリカとの連携というものはしっかりととるということと、そして、やはり今一番この問題について被害を受けて敏感になっているのは韓国です。

 去年、延坪島への攻撃、そしてまた天安の撃沈、こういうものにおいて被害を受けたのは、当事者は韓国でありますので、韓国との話がまず先行される、南北の議論が先行されるということの中で、我々は直接の対話というのももちろん設けていきたいと思いますけれども、とにかく、日米韓、そしてロシアや中国との連携をしっかりとっていく中で問題解決のために取り組んでまいりたい、そう考えております。

柴山委員 くれぐれも、日本が突出して日米韓の結束を乱すようなことをすることは避けてくださいと前原大臣に重ねてお願いさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて石原君、石破君、鴨下君、野田君、塩崎君、甘利君、稲田君、柴山君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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