衆議院

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第4号 平成23年2月2日(水曜日)

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平成二十三年二月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    石毛えい子君

      磯谷香代子君    稲見 哲男君

      打越あかし君    生方 幸夫君

      小川 淳也君    大串 博志君

      金森  正君    川村秀三郎君

      吉良 州司君    郡  和子君

      佐々木隆博君    城島 光力君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      玉城デニー君    津村 啓介君

      中根 康浩君    仲野 博子君

      長尾  敬君    橋本 博明君

      平山 泰朗君    本多 平直君

      三谷 光男君    水野 智彦君

      宮島 大典君    村越 祐民君

      柳田 和己君    山口  壯君

      渡部 恒三君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    橘 慶一郎君

      野田  毅君    馳   浩君

      石井 啓一君    高木 陽介君

      遠山 清彦君    笠井  亮君

      志位 和夫君    阿部 知子君

      江田 憲司君    山内 康一君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   法務大臣         江田 五月君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国土交通大臣       大畠 章宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (沖縄及び北方対策担当) 枝野 幸男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (公務員制度改革担当)  中野 寛成君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   与謝野 馨君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (「新しい公共」担当)

   (科学技術政策担当)   玄葉光一郎君

   内閣官房副長官      藤井 裕久君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     玉城デニー君

  大串 博志君     橘  秀徳君

  金森  正君     磯谷香代子君

  吉良 州司君     長尾  敬君

  城島 光力君     阿知波吉信君

  中根 康浩君     平山 泰朗君

  仲野 博子君     柳田 和己君

  菅原 一秀君     伊東 良孝君

  山本 幸三君     橘 慶一郎君

  遠山 清彦君     石井 啓一君

  富田 茂之君     高木 陽介君

  笠井  亮君     志位 和夫君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     城島 光力君

  磯谷香代子君     金森  正君

  橘  秀徳君     大串 博志君

  玉城デニー君     打越あかし君

  長尾  敬君     橋本 博明君

  平山 泰朗君     中根 康浩君

  柳田 和己君     仲野 博子君

  伊東 良孝君     菅原 一秀君

  橘 慶一郎君     山本 幸三君

  石井 啓一君     遠山 清彦君

  高木 陽介君     富田 茂之君

  志位 和夫君     笠井  亮君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本 博明君     吉良 州司君

同日

 理事富田茂之君同日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 まず、冒頭ですが、災害関係についてお伺いします。

 昨年末からの記録的な豪雪によりまして、各地で甚大な被害が生じております。政府には、自治体への財政支援、また交通、電力などインフラの確保に万全を期していただきたいと思います。

 また、宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳の噴火による大量降灰によりまして、農作物等に打撃が生じております。政府には、噴火予知、万全な避難体制の確保とともに、降灰被害への救済措置も迅速適切に対応していただきたいと思います。

 さらに、野鳥由来の高病原性鳥インフルエンザの養鶏場での発生が宮崎県、鹿児島県、愛知県で相次いで確認をされております。政府にあっては、感染拡大の防止に全力を挙げるとともに、野鳥からの感染を防ぐために、防鳥ネット等の防疫体制の点検整備の徹底、風評被害の防止、野鳥の監視体制等の強化を求めたいと思います。

 まず、冒頭、総理に確認をいたします。

菅内閣総理大臣 石井議員がおっしゃるとおり、宮崎、さらには鹿児島、幾つかの災害が重なっております。加えて、全国的に豪雪の被害が広がっております。今おっしゃった点すべてについて、私どもも同様の考え方を持って対応いたしているところです。

 簡単に申し上げますと、まずは、大雪で亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、特に除雪に関しては自衛隊の出動なども行っており、また、御指摘の除雪費用の追加配分や特別交付税、こういったことに対してもきちんと対応してまいりたい、このように思っております。

 また、新燃岳については、昨日、四回目、さらには、きょう早朝、五回、六回目と爆発的噴火があり、火砕流の心配も出てきているところでありまして、万全な警戒態勢をとるということにいたしております。さらには、降灰による農業被害についてもしっかりと対応してまいりたい、このように思っております。

 また、鳥インフルエンザについては、残念ながら、まだ点々と新たなことが発覚しておりますが、初動をしっかりと立てて、さらに、今御指摘のあったように野鳥による感染ということの可能性が高いわけですから、防鳥ネットをすべての養鶏場にしっかりと張るような、そういった指導もより強めてまいりたい、このように思っております。

 いずれにいたしましても、防災大臣あるいは農水大臣を中心にそれぞれの対応を強めてまいりますので、ぜひ御協力のほどもよろしくお願いします。

石井(啓)委員 各地で御苦労されている皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、政府には迅速適切な対応を重ねて要望しておきます。

 それでは、きょうはまず、社会保障と税制の一体改革について質問をさせていただきたいと思います。

 総理は、一月十三日の民主党の大会で、野党が協議に応じないなら歴史に対する反逆行為、こういうふうに発言されました。また、一月二十四日の民主党の両院議員総会では、ややもすれば野党の方が議論から逃げようという姿勢が見えている、このように野党に対する挑発的な発言を繰り返しております。

 しかし、公明党は昨年六月、菅総理の就任直後から、社会保障に関する与野党協議会の設置を提案してまいりました。私どもも、みずから提案をしたわけですから、公明党としての改革案をやはりきちんとまとめなければいけないということで、昨年末に私どもの党で「新しい福祉社会ビジョン 中間取りまとめ」、これを発表させていただきました。後ほど、私の次の委員からこの内容については詳しくさせていただきたいと思いますけれども、この新しい福祉社会ビジョンは、二〇二五年を中長期の目標といたしまして、医療、介護、年金、子育て支援に加えまして、雇用ですとか住宅ですとか、あるいはいわゆる孤立化といった新しい社会の課題にも対応する、そういった社会保障のトータルのビジョンでございます。私どもはこれをつくりましたので、これで与野党協議に応じる準備ができているわけでございます。

 一方で、私どもは、政府・与党が与野党協議を呼びかけるのであれば、まず政府・与党みずからの社会保障の改革案をきちんとつくってください、このように重ねて要求をしてまいりました。しかし、これまで社会保障の具体的な改革案を示さずに逃げてきたのは、野党ではなくむしろ民主党の方じゃないでしょうか。この点、総理いかがですか。

菅内閣総理大臣 先ほど、私のいろいろな発言について御指摘がありました。

 率直に申し上げて、この問題は、この二十年近くの急激な人口の変化等も含めて、必ずしも対応が、これは我が党を含めて、十分であったかといえば決して十分ではなくて、いよいよこの安心できる社会保障制度、あるいはそれを維持可能にしていくためには、もう先送りができない重要な課題だ、こういう認識のもとで、必ずしもどなたに対してとかどの党に対してということではなくて、現在この国会に籍を置いているすべての議員がこの問題には取り組む、そういう歴史的な責任があるのではないか、こういう認識の中で申し上げたことで、若干の言い過ぎがあったとすればそれは謝りたい、こう思っております。

 その上で、今、具体的な社会保障ビジョンについて、公明党がこの新しい福祉社会ビジョンを昨年の暮れに出されたことは私たちもよく承知しておりますし、その内容についても、大きな方向として、私たちが考えている方向とかなり軌を一にするところも多いというふうに受けとめております。

 民主党あるいは内閣としてのしっかりした案をまず出すべきではないかという御指摘もいただいておりますので、今、政府と与党の本部をつくりまして、四月までに社会保障のあり方について考え方を提示し、六月には社会保障改革と税の一体改革、これについての案を提示させていただく予定で作業を進めております。

 それが出てからという御指摘もありますけれども、私どもとしては、その前からでも与野党の議論がいただければということで申し上げているところでありまして、そのことについても御理解をいただければ、このように思っております。

石井(啓)委員 今、総理は、だれに言ったか特定したわけじゃないと言っていますけれども、これはもう、文脈からすれば野党に対して批判しているのは明らかじゃないですか。そういう、余りみっともない言いわけをされない方がいいと思うんですね。

 かつて福田内閣の時代に、福田総理が当時の民主党の小沢代表に対して社会保障国民会議への参加を党首会談で呼びかけたんですけれども、拒否をされたんですね。そうすると、菅総理の理屈では、当時の民主党は歴史に対する反逆行為を行った、こういうことになると思いますけれども、そういうことでよろしいですか。

枝野国務大臣 この年金を中心とする社会保障改革については、石井委員も御承知のとおり、長い経緯がございます。

 かつて国会で両院の年金問題の合同会議が設置をされたこともございます。設置を合意した当時、私は政調会長だったと思いますが、その後、その会議に野党側、民主党側の筆頭幹事として加わらせていただきました。そのとき、野党という立場でこの年金の合同会議に参加をさせていただいたんですが、そのときは、政府の側もがちっとした案を持ち、民主党としてもそれは〇九年マニフェストにもつながっていく案を持ち、それぞれの具体的な案を持ちながら議論をしたわけでございますが、残念ながら、それぞれがそれぞれの案の非常に細かいところの問題点を指摘し合うということに終わりまして、建設的な合意に向けた議論が進まなかったということは、委員も御承知だというふうに思います。

 そうしたことを踏まえた中で、我々が今回、与党という立場でこの問題の議論を、幅広く国民的な合意を得ていこうということに当たっては、それぞれががちっとした案を持ってしまいますと、どうしてもそれに拘泥をせざるを得ないことになるのではないだろうかということを危惧いたしまして、できるだけきちっと、もちろん我が党にもマニフェストで目指す方向性は示させていただいておりますが、どこが共通点で、どこが違っているのかということを基本のところから積み重ねていった方が国民的な合意形成につながるのではないかということで、今回、私どもが与党にならせていただいたという立場と、そして野党時代の経験を踏まえて、合意形成に向けては前広で協議をさせていただいた方がいいのではないかということを今回は申し上げてきている、こういう経緯の中でございます。

 したがいまして、もちろん、野党の皆さんの御要望が、政府案、政府・与党案をがちっとまずは固めろ、そして示せという御要望については、当然、協議をしていくに当たって、総理も申し上げさせていただいたとおり、それを踏まえて対応させていただきますが、今申し上げたような経緯とそれに対する思いがあるということは、ぜひ御理解をいただければというふうに思います。

石井(啓)委員 いや、私が指摘したのは、その最初の年金の与野党協議がうまくいかずに、結局まとまらなかったわけですよね。その後、福田内閣で改めて社会保障国民会議の与野党協議を呼びかけたら参加されなかった、そのことを指摘しているんです。

 ちょっと待ってください。官房長官、私の質問と関係ない長い答弁をして、私の貴重な質問時間を奪わないでほしいんですよ。委員長、注意してくださいよ、ちゃんと。

 それで、総理、もう一度聞きますけれども、かつて民主党は野党時代に、与野党協議を呼びかけられたら参加しなかったんですよ。ところが、与党になったら今度は逆に、与野党協議に参加しないということで野党を批判している。これはもう完全に御都合主義じゃないですか。人がやったのは反対するけれども自分がやったのはいい、こんなことではとても信頼関係は生まれない。私は、まずは民主党は、野党時代の自分たちの行動を真摯に反省して謝罪することから始めるべきだ、こういうふうに思います。

 そもそも、総理は、政党間の協議をきちんと調えて社会保障の改革をまとめなきゃいけない、そういう立場にあるわけです。その総理があえて野党に挑発するような発言をする。これでは、与野党協議をみずから壊すようなことをしている、こういうふうにしか思えませんけれども、総理、どうですか。

菅内閣総理大臣 我が党が野党時代の対応についての御指摘、確かに、いろいろな場面について思い起こしてみますと、反省が必要なところもあったと思います。やはり野党という立場ではやや政局的に物事を考えがちであったな、こう思っております。

 余り他のことまで言うのは時間があれですが、かつて金融国会などでは、当時の野党であった民主党もきちんと対案を出して、与党なり政府と話し合って進めたこともありますけれども、そのときそのときいろいろな経緯がありますが、今御指摘の点は、確かに野党としてやや政局的な判断に偏り過ぎたかな、こう思っております。

 そういった意味で、お互いに与党を経験し、野党を経験する中で、さらには、ねじれというものも何度か経験する中で、現在の状況は、内閣として法案を出したとしても、野党の皆さんが賛成いただけなければ法案が成立しないという状況もまさに客観的に存在しているわけであります。そういう中で、今御指摘のように、政府として、与党としてしっかりした案を出せという御指摘は、それはある意味、筋の通った御指摘でありますので、私たちとしては、その前から議論をいただくこともあっていいのかなとは思っておりますが、少なくとも、その御指摘にも沿った形で、四月までには社会保障の改革についてきちっとした案を提示させていただき、六月段階では、それに加えて税との一体改革についても案を出していきたい、こういうふうに考えております。

 どの時点になるかということは、まだ皆さんの御意見はわかりませんが、ぜひともそういう中で御議論をいただきたい、このようにお願いを申し上げます。

石井(啓)委員 総理の一連の挑発的な発言は、野党時代の行動を反省しているとはとても思えないんですよ。口先だけだ、こういうふうに指摘をしておきます。

 それでは、社会保障の中でも最も給付額が多く、国民の関心も最も高い年金制度について取り上げたいと思います。

 これは、上の二つが民主党の年金改革案のイメージですね。下のグラフは、現行制度と公明党の改革案でございます。

 まず、下のグラフから説明いたしますと、現行制度は、国民年金とそれから厚生年金・共済年金等に分かれているわけでございますが、この基礎年金の部分は、黄色で書いています保険料が二分の一、青の部分の税が二分の一。さらに、厚生年金・共済年金等は、保険料で所得比例部分がある。

 これに対しまして、私ども公明党の改革案というのは、所得の低い方、具体的に言うと、複数の世帯で二百万円以下の所得の方については、基礎年金を二五%加算する加算年金制度をつくってはどうかというのが私どもの提案です。ピンクの部分ですね。これが現行制度と公明党の改革案です。

 それに対して、上の二つのグラフが民主党の年金改革案のイメージです。一番上のグラフは二〇〇三年マニフェストに載っています民主党の案ですが、まず、年金をすべて一元化する、所得比例年金をつくる。そして、国民基礎年金をつくって、今の基礎年金と似たようなものだと思いますけれども、これは財源は全額税にする。国民基礎年金については、所得に応じて逓減をしていく。こういうイメージを出されておりました。

 その下のグラフですけれども、これは現在民主党さんが予算委員会等で提示されて説明されている改革案でございますけれども、同じく、年金を一元化して、所得の比例年金、財源は保険料でやる。それに対して、最低保障年金ですね、これが少なくとも七万円、どなたでも受け取れる。最低保障年金、これを全額税、具体的に消費税で行う。これが民主党の年金の改革案でございます。

 したがって、民主党の年金の改革の柱は二つあって、一つは、すべての年金を一元化するということ、もう一つは、最低保障年金をつくって、これは全額税、消費税でやる、これが二つの柱だというふうに私は理解をしております。

 ところで、昨日のこの委員会の質疑では、この年金の改革について取り上げられまして、今後検討される民主党の年金改革というのは、超党派での合意を見出すために、国民的な合意を得るために、民主党のマニフェストをベースにしながらも、さまざまな案を検討していく、こういう趣旨の答弁が、これは与謝野大臣からも枝野官房長官からも、また総理からもあったと思います。

 そういたしますと、今説明をさせていただいた民主党のマニフェストを変更する可能性があるということでいいかどうか、これを確認したいと思います。

菅内閣総理大臣 我が党の案も含めて詳しく御説明いただいて、ありがとうございます。

 我が党の案、今御説明のあった二〇〇三年、それからその次は何年でしょうか、いろいろな段階でありますが、現時点のマニフェストは、二〇〇九年そして二〇一〇年の衆議院選挙、参議院選挙で提示をいたしているものが現在我が党のマニフェストという認識でおります。

 そして、今御指摘がありましたように、このマニフェストについては、これを一つのベースにいたしますが、同時に、これは与謝野大臣からも既にお話が出ておりますように、あらゆる、いろいろな党なり、あるいは新聞社とか、あるいはいろいろな団体の年金を含めていろいろな意見については、それをしっかりとお聞きして、その中から四月に向けて一つの考え方をまとめていきたい、このように考えておりまして、さらにその上で、先ほど申し上げた六月を経て、できれば与野党の中でそういうものを含めて議論をいただきたい。

 ですから、今マニフェストの変更という表現をされましたけれども、マニフェストそのものは、〇九年、一〇年のマニフェストが現在存在しているわけですけれども、それをベースにしながらも、与党として、あるいは民主党として、あるいは内閣として、六月までにさらに議論を積み重ねて一定の案をつくっていきたい、このように考えている、こういうことであります。

石井(啓)委員 民主党の案をベースにしながらも議論をしてつくっていくということでありますから、民主党の言っていた、一元化あるいは最低保障年金、全額税という案も変わる可能性があるということだというふうに理解をいたしました。

 そういたしますと、仮に変えるとすると、これは民主党の年金政策の大幅な変更ですね。これは、かつて野党時代に民主党は、特に二〇〇四年の政府の改革案、いわゆる百年安心プラン、これをさんざん批判してきて、一元化が必要なんだ、最低保障年金、全額税で必要なんだ、さんざん批判してきたんですけれども、これを変えるということになると、それまでの主張は誤りだったということになりますね。確認しておきます。

枝野国務大臣 民主党は、従来から、年金を一元化するべきであると。それは、きのうも御答弁申し上げましたが、現在の国民年金に加入されている皆さんが、国民年金という制度がつくられた当時とは大分構造が変わっていて、一定の資産をお持ちの自営業者の方を想定していた国民年金が、むしろ資産のない、あるいは収入の乏しい方が多くなっているという状況の変化の中で、そうした皆さんがしっかりとした年金を受けられるためにどうしたらいいかということで、そのための技術的な手段として一元化ということを申し上げてまいりました。

 また、そうした皆さんを初めとして、老後の安心できる生活のために、どんな方でも最低限の給付を受けられるようにするためにどうしたらいいかということで、最低保障年金ということが必要であるということをお示ししてまいりました。

 そして、恐らく、この対応が必要であるという二点については、今後の御議論でございますが、多くの皆さんに御同意をいただけるのではないかというふうに思っています。

 問題はその解決の方法で、解決の方法として、従来から私どもは、年金の一元化とそして最低保障年金ということを申し上げてまいりましたが、そこの技術的な問題については、幅広くさまざまな御意見を踏まえながら、よりよきものを目指してまいりたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 いや、それは技術的な問題じゃないですよ。特に最低保障年金が全額税かどうかというのは、与野党の間の一番の論点になっているところですよ。これは技術的な問題じゃないですよ。この最低保障年金を全額税でやるのか、あるいは社会保険料方式も最低保障年金のところでやるのか、これが今最大の焦点なんじゃないですか。これはどうするんですか。総理、どうなんですか。総理、答えてください。

枝野国務大臣 御指摘のような視点もあろうかと思いますし、そうしたことは今後議論をぜひさせていただければというふうに思いますが、いずれにしても、年金の給付については、その財源を、保険料と税を財源にしていかなければならない、特に現役の時代の所得の多くなかった方についてはその組み合わせでなければならないということについては、どちらの案も、現行制度も民主党案も共通をしているかというふうに思います。

 むしろ、例えば現役時代の所得の多かった方、したがってどういう制度をとるにしても老後受け取る保険料に対応した年金額が多い方について、税をどの程度乗せるかということについての考え方、これは確かに今後の御議論だというふうに思っておりますが、私どもの案、民主党の案も、どの辺で線を引いてどういうような組み立てをしていくのかということで、なかなか難しいことはあります。

 したがって、もうすべての方に税を入れる、ベースのところは同じ金額にするという従来の考え方のプラス面も理解をしております。しかし、まさにそこを、全体の財源のことを考えたときに、所得の多い人に税で補うかどうかという、そこのところが私はこれからの議論のポイントではないかなというふうに思っておりまして、その点については、実際の財源がどれぐらい必要かということと、それから、どの辺で線を引いてどういう形で実際の税による給付の部分を給付していくのかということについて、いろいろな御議論をいただければというふうに思っております。

石井(啓)委員 委員長、官房長官の答弁は長過ぎる。社会保険料と税の組み合わせなんて、そんなの、正確に説明がないとだめですよ。今言っているのは、最低保障年金、基礎年金のところが全額税かどうかということを言っているんですから。そこをずらして答弁されていますよ。

 与謝野大臣、どうですか。

与謝野国務大臣 やはり年金の問題は国民全体の関心事でございますから、広く意見を伺うということが大事であって、民主党の案も一つの案、あるいは公明党の案もいい案である、すべての案はいい案であるという前提でいろいろな方面の案を全部まず伺うという、そこからこの作業はスタートしなければならないと思っております。

 したがいまして、予断を持って、この案がいいとか、この案でなければどうしてもだめだとか、そういうことではなくて、虚心坦懐にすべての方の御意見を伺った上で案を作成するということがコンセンサスを得るために必要な手順だと私は思っております。

石井(啓)委員 今の与謝野さんの答弁を聞いて、私は改めて、民主党はこのマニフェストの年金改革案を変えるために与謝野さんを登用した、こういうふうに思わざるを得ません。

 それで、民主党の案、実は、イメージは示されているんだけれども、具体的な数字はないんですよ。最低保障年金七万円というところだけなんです。

 幾つかちょっと指摘しますけれども、では、最低保障年金を全額税でやると言っていますけれども、この税は幾らになるんですか。どれぐらいの財源が必要だというふうに想定されているんですか。例えば、現行制度の基礎年金でやれば、税と保険料を合わせて支給総額は約二十兆円なんですよ。それに対して、この民主党の最低保障年金というのは総額どれぐらい支給すると想定しているんですか。

枝野国務大臣 できるだけ短くお答えをしようと思います。

 繰り返し申し上げますが、現在の基礎年金に所得比例の部分を乗せているという制度を前提に組み立てているわけではございません。むしろ、白紙のところから絵をかいて、どういう制度が一番いいのかという、その将来のでき上がり姿として案を示しているので、今の制度を前提にしてということを言われますと、若干議論が錯綜するのかなというふうに思っております。

 その上で、お尋ねでございますが、税をどれぐらいこの年金のところに注ぎ込むことができるのかということは、まさに国民的な合意が必要な問題でございまして、最低限七万円は必要であろうというところについては明確な我が党としての方針をお示しさせていただきますが、では、どの程度の部分を、自助、共助ではなくて公助の部分として税で補うのかということについては、まさに国民的な合意が必要だというふうに思っておりますが、例えば七万円をすべての人々に税で負担をする場合に比べれば、当然のことながら、少ない額を税として負担をお願いすることになるということだと思っております。

石井(啓)委員 依然として長いんだ。要するに決まっていないということでしょう。長々と答弁しないでくださいよ。

 それで、これから社会保障の費用の議論をしようというのに、何で民主党の、財源がどれだけかかるかわからないんですか。これは議論できないじゃないですか。現行案は基礎年金二分の一税だ、将来どれぐらい税金が必要かというのはわかるでしょう。それに対して民主党の、税をどれだけ投入するのか、その数字を示してくれなきゃ比較できないじゃないですか。

 総理、きちんと示していただけますね、民主党の案を。

枝野国務大臣 これからまさに国民的な合意を、どういった税の投入ということで御理解をいただけるのか、あるいはまた老後の安心としてどうしたものがいただけるのかということについて整理をいたしまして、四月までにその社会保障の全体像をお示しするということは、繰り返し申し上げているところでございます。

中井委員長 枝野さん、数字がわからないならわからないで、理由をきちっと言ってください。数字が出せるんなら数字を出してください。

枝野国務大臣 委員長の御指摘にお答えを申し上げますが、まさに最低保障年金、最低でも七万円は老後のために必要であろうということは決めておりますが、そのカーブその他のことについては、これから国民的な合意をどうしたら得られるのかという観点で議論を詰めて、四月までにはお示しをすることになるというふうに思っております。

石井(啓)委員 国民的な合意を得るためにというふうにおっしゃっていましたけれども、国民的な合意を得るまずその前に、民主党の案そのものがどういう案だか示す義務があるでしょう。

 このグラフでいえば、最低保障年金、どれだけ税が必要かというのは、このグラフのAとB、これがどれぐらいの所得にするかによって変わってくるんですよ。Aは最低保障年金が逓減される始めの所得ですね。Bはこれがなくなって所得比例だけになる。これをどのように設定するかで最低保障年金、どれだけ税が必要かが決まってくるんです。その数字を出しなさいと言っているんだよ。どうですか。

枝野国務大臣 ではそれを、四月の社会保障一体改革の社会保障の全体像をお示しする時点では、必ずお示しをさせていただきます。

石井(啓)委員 わかりました。それは民主党の今の案として出すということですね。

枝野国務大臣 まさにこれから、今、与謝野大臣のところで民主党案をベースとしながら、国民的な合意が得られるであろうと思われるよりよき案をお示しする。その時点では、例えば現在の民主党案そのままのところであるならば、その具体的な数字を当然お示ししなければそこから先の財源の問題の議論ができませんので、そうしたことを含めた案をお示しすることになると思いますし、また、その議論の中でまさにさまざまな案を検討させていただくということになっておりますが、いずれにしても、一定の具体的な数字を示した形でなければ、その後の六月をめどにお示しをするというこの財源の話についてお示しできないことになりますので、それについては一定のお示しをできるということになると思っています。

石井(啓)委員 では総理、聞きますけれども、今の官房長官の答えは、若干のずらしがあるんですよ。

 というのは、この今の民主党の案をそのまま示すのではなくて、これを変えたものを示してくる可能性がある。私たちは、今の民主党案そのものがどうなのかをちゃんと示しなさいと言っているんですよ。というのは、今の民主党案がすばらしい案だったら、私たちも賛成する可能性がありますから。まず、御自分たちが今まで、二〇〇三年に出してもう七年以上たちますよ、このイメージは。与党に入ってからも一年五カ月もたっていますよ。かつて、民主党さんが野党の時代に具体的な数字を示さなかったのは、厚生労働省から数字がもらえないから示せないんですと言っていたんですよ。与党になったんですから、示すことができますでしょう。

 まずは、民主党、このマニフェストの案の数字をきちんと示してください。総理、どうですか。総理、答えてください。

菅内閣総理大臣 まず、非常にわかりやすくそこに我が党の案も二つ書いていただきましたが、二〇〇三年の段階と、先ほど申し上げましたように、二〇〇九年、一〇年の段階でいえば、下の、つまりそこで言う二番目に書かれたものが二〇〇九年、二〇一〇年の我が党の提示をしているイメージでありまして、それについて、今御指摘があったように、そこに書かれているAとかBとかいうところの、つまりはどの程度の比例で、年金がいただける人のどのあたりまでに最低保障を乗せるかどうかというのは、率直に申し上げて、まだ具体的な数字をこれまでに固めてはおりませんでした。ですから、そういう点では、数字の面ではまだ確定した案にはなっておりません。

 その上で、先ほど申し上げましたように、今、我が党なり内閣として本格的な案を四月に向けてつくろうとする場合には、もちろん、民主党のこれまで申し上げていたこの真ん中のイメージで書かれたことも一つのベースでありますけれども、先ほど与謝野大臣も言われたように、いろいろな案についてすべてを土俵にのせて議論をしたい、このように思っております。

 これは、余りほかのことは言わない方がいいかもしれませんが、石井委員はよく御存じのように、かつては積立方式からスタートした年金が、今の性格は非常に賦課方式になっておりますし、人口の動態も、少なくともこの五年、十年の中でも予測が大きく変わってきておりますし、さらには金利の変動等もあって、私は、我が党もそうではありますけれども、基本的な従来のベースが大きく変わってきているということもあわせて念頭に入れた中で、先ほど与謝野大臣から言われたように、四月に向けて、一つの考え方として我が党の案をベースにいたしますけれども、必ずしもそれが固定的にこの四月に提示するものにそのままスライドするということではなくて、幅広く検討していきたい、このことを申し上げたところであります。

石井(啓)委員 ですから、幅広く検討した結果、一つの案をつくるというんでしょう。その前に、まず民主党さんの案がどういうものなのかというふうに詰めなければ、ほかの案と比較できないでしょうと言っているんですよ。税金をどれだけ投入するかと言っているのに、民主党の案がどれだけ税金を投入しているかわからなければ、比較できないじゃないですか。与謝野さん、どうですか。

与謝野国務大臣 総理を議長とするこの問題に対する集中検討会議が五日から始まりますが、実際のヒアリングは十九日から始まります。現在、民主党の中でも、そのヒアリングに向けてきちんとした準備をされておられると私は考えております。

石井(啓)委員 よくわからない答弁でしたけれども。

 では、もう少し問題点を指摘しますと、この民主党の案は、Bの地点からは最低保障年金がもらえなくなりますね。所得比例だけになります。そうしますと、この所得比例の制度の設計の仕方によっては、Bより上の所得の方、中堅の所得の方は現行制度より年金受給額が少なくなる可能性がありますね。そういう問題点もあります。

 もう一つ言いますと、一元化の方ですけれども、一元化もなかなかこれは難しい問題があります。自営業者等の所得をいかに把握するかという問題もありますが、ここで指摘したいのは、今まで国民年金に入っていた自営業者ですとかフリーターの方、そういった方の事業主負担というのはどうしたらいいのか。事業主負担ですよ。厚生年金とかあるいは共済年金は、事業主が保険料の半分を負担していますね。しかし、国民年金に入っている方の場合は、事業主に相当する方はいません。一元化した場合、国民年金に入っていた方々の事業主負担というのはどうするんですか、制度として。総理、お答えください。

枝野国務大臣 石井議員、かつて民主党が野党で国会に法案をお出ししたときの議論も御存じでお聞きいただいているんだと思いますが、そのグラフにありますAとBが変数であると同時に、これは現在保険料を既に納め終わっている方、あるいは既に相当程度納めている方をその制度に無理やり変えようという提案をしているわけではございませんので、財源が幾らかかるかというような話も、つまり、移行期間を二十年でとるのか、それとも四十年でとるのかということの変数で大きく変わってまいります。

 その上で、お尋ねの自営業者等の雇用主負担相当分をどうするのかということについては、まさに我が党の案の、無謬などということを申し上げているつもりはございません。そこのところについては考え方、両面あると思います。その分のところを、保険料を、勤労者、雇用主負担がある方に比べて倍納めていただくという考え方もあるでしょうし、あるいは逆に、そこの部分のところを何らかの形で補うという考え方もあると思います。そこのところはいろいろな議論があり得るということで、従来からお示しをさせていただいています。

石井(啓)委員 今、枝野さん、保険料を倍にする案というのもあったけれども、民主党のマニフェストでは、同じ所得ならば同じ保険料を負担すると書いてあるんですよ。それは事業主負担がなかったら、もらえる年金は半分になってしまうじゃないですか。これが民主党の一元化の姿なんですよ。どうなんですか。

枝野国務大臣 これは石井議員も十分御承知だというふうに思いますが、勤労者の皆さんの保険料の半分を雇用主の側が負担をしていることの性格をどうとらえるのか。もちろん、ここで軽々なことを私は申し上げるべきでないというふうに思っておりますが、そうしたことの考え方なども踏まえながら考えていかなければならない。そういった意味では、大変重たい問題であるというふうな認識はいたしております。

 御指摘の点もしっかりと受けとめながら、与謝野大臣のもとで、四月に向けて案をどうしていくのかということの参考にさせていただきたいと思います。

石井(啓)委員 随分いいかげんなんだね、民主党の案というのは。重たい問題と言うけれども、二〇〇三年から七年間、民主党は何を議論してきたんですか。それは当初からわかっている問題でしょう。このことは、厚生労働省から数字をもらわなくても議論できる話じゃないですか。重たい課題だったから議論できなかったんでしょう。議論を避けていたんでしょう。そういうことじゃないですか。総理、どうですか。

菅内閣総理大臣 この一元化というものの難しさは私たちも認識をいたしております。

 これは、もう一つは、いわゆる公務員やいろいろな共済制度と今の厚生年金についても、たしかこれについては皆さん方も一元化という方向を、こちらの部分だけ、被用者保険については言われていると思いますが、それ自体もなかなか制度的な過去の経緯等で難航しておりますが、今も御指摘のありました自営業者を中心とした国民年金に入っている皆さんとの一元化というのは、おっしゃるとおり大変難しい問題を抱えております。

 今、枝野官房長官からありましたように、これについては、一言で言えば、制度設計によっていろいろな選択肢があり得る。例えば、お医者さんとか弁護士さんとかそういう皆さんは、場合によれば、仕事をしている立場と雇っている立場が一体と見てそれを両方払う、そういう選択もありますし、いやいや、そうではなくて、やはり働いている立場ということだけを考えて、その分しか払わないという考え方もありますし、まさにそれは、さまざまな選択肢があるということの段階で、御指摘のとおり、その結論はこれまでのところまだ出しておりませんでした。

石井(啓)委員 時間をかけて議論してきましたけれども、民主党の年金改革がいかにいいかげんだったかはっきりしました。

 野党時代だったら、確かに、数字がはっきりしないからという言いわけは通用したかもしれない。だけれども、今、政権与党にあるんですから、そんな言いわけは通用しないんですよ。政権に入ってから一年五カ月近く、何をやってきたんですか。いまだに民主党の案も詰められていない。これでよく与野党協議をやろうというふうに言えますね、自分たちの案もしっかり示さないでおいて。こんないいかげんなことではできませんよ。

 いずれにしましても、政府が政府としての案をまとめる前に、まず、今まで国民の皆さんに示してきた民主党の案をきちんと示していただきたい、具体的な数字も含めてきちんと示していただきたい、そのことを申し上げます。総理、どうですか。

菅内閣総理大臣 先ほど来申し上げていますように、政府・与党の中で、四月に向けて、今いよいよ本格的に議論を始めようとしております。ですから、〇九年、一〇年マニフェストに申し上げたことそのものを現時点で何か詰めていくということではなくて、先ほど与謝野担当大臣からもお話がありましたように、それも十分に詰まっているとは言えないかもしれませんが、少なくとも、民主党のこれまでの考え方も一つのベースとしながら、他のいろいろな意見も含めたものの中で議論をし、そして提案を皆さんに提示できるように四月までに詰めていきたい、このように考えております。

石井(啓)委員 結局、今の総理の答弁も、民主党のマニフェストをこれから詰めようというふうな考え方はないとおっしゃっている。

 要は、今まで野党時代の民主党がいかにいいかげんだったのか、いいかげんな案だから具体化できないんでしょうが。実現不可能な案だから、結局ほかの案にかえて、今の民主党の案をやみに葬ろうとしているんじゃないですか。もし、この民主党の案をベースじゃなくて、ほかの案にかえてきたとしたら、私どもはそう評価せざるを得ませんよ。民主党が野党時代に言ったことは全部うそだったと、そういうことでしょう。

枝野国務大臣 繰り返しの御答弁をさせていただいて大変申しわけありませんが、本当に年金は、政権がかわるたびに変えることのできるような制度ではございませんので、野党時代から、党派を超えた合意形成、国民的な合意形成が必要であるということを申し上げました。

 それゆえに、今回の前に、菅総理が民主党の代表で、現在の岡田幹事長が幹事長でありましたときに、党内で異論もございましたが、国会に年金合同会議を設置するということに合意をいたしまして、その議論をさせていただきました。

 そこでの議論がなかなか前に進まなかったのは、お互いの案をかちっと細かく固めてしまうと、そのことの細かいところの議論に入ってしまって、そもそも、ここは公明党の案でも、それから私どもの従来の案でも、例えば、現在年金が少ないフリーターの方であるとか自営業者の方をどうするのかというようなことを、お互い同じような問題点を考える、そのための解決策をこれまで示してきているわけでありますので、私どもも、各党あるいは各界の御意見、そういった問題をどうやって解決するかということについては、政権与党という立場で真摯に耳を傾けながら議論を進めさせていただきたいと思いますので、今後とも、どういう形で今の年金の問題点を解決するか、積極的な御意見をいただければ幸いに存じます。

石井(啓)委員 関係ない答弁、長い答弁しないでくださいよ。

 結局、民主党がみずからの案を具体的な数字も示さずに出さないとするならば、それはきちんと謝ってもらわなければ、我々は協議に応じることはできませんよ、与党の案を今までさんざん批判してきたんですから。その民主党の看板政策が間違いだったということになるんですよ、これを改めるとしたら。さんざん、これがベストなんだと言ってきたんじゃないですか。かつて野党時代に民主党は、自分たちが政権をとったらこの民主党の年金改革をやるって断言していたでしょう、枝野さんも。それができないんだったら、今までのものは全部うそだったということになりますよ。まずは民主党の案を示すべきだと重ねて申し上げたいと思います。

 きょうは、予算の方もやろうと思っていたんですけれども、想定外に年金の方で時間がとられましたので、予算の方がちょっと時間がなくなってきました。

 二十三年度政府予算案の問題点、私どもは三点あると思っています。大きな問題点として三つあります。一つは、景気・デフレ対策が中途半端だということ、二つ目には、財政健全化の道筋が見えないということ、三つ目には、マニフェスト破綻が明確になっている、こういう大きな問題点がございます。これは一つずつ今から指摘をしていきます。

 まず、景気対策、デフレ対策ですけれども、政府は、来年度予算、成長戦略の目玉として、元気な日本復活特別枠二・一兆円、これを予算計上いたしました。しかし、その予算の中身を見ますと、元気な日本復活というにはとてもふさわしくない予算がたくさん入っているんですよ。

 この右上の「国民生活の安定・安全」というところに、防衛省、在日米軍駐留経費負担、これは思いやり予算、これが何で元気な日本復活なんでしょうか。一千八百五十八億円。弾道ミサイル防衛関連経費一千八十億円、これが何で元気な日本復活なんですか。燃料費、何でこれが元気な日本復活なんですか。法務省の方でいくと、国選弁護人関連業務あるいはいわゆる法テラスの費用、何でこれが元気な日本復活なんですか。

 総理、とてもふさわしくない予算ばかり計上されているじゃないですか。総理、どうですか。

野田国務大臣 元気な日本復活特別枠を編成するに当たりましては、四つの観点から各省から要望を上げていただくようにお願いをいたしました。その四つの観点が、その図にも示されているとおり、マニフェスト、新成長戦略、こういう分野と、それから国民生活の安全・安定、そして人材育成・新しい公共、こういう観点から各省から要望を上げていただいて、出てきた要望は百八十九でございましたけれども、評価会議で優先順位をつけて、そして予算づけをしたというのが経緯でございまして、もともと国民生活の安定・安全という分野は入っていたということでございます。

石井(啓)委員 いや、総理、総理に聞いているんですよ。在日米軍駐留経費、弾道ミサイル防衛関連経費、燃料費、国選弁護人の関連業務費、これが何で元気な日本復活なんですか。総理、何でこれが元気な日本復活なんですかと聞いているんです。しかも、これはいずれも継続事業なんですよ。新規事業ではない、継続事業なんですよ。何で防衛省だとか法務省の継続事業の予算の一部が元気な日本復活なんですか。おかしいじゃないですか。

野田国務大臣 弾道ミサイルの話とかあるいは在日米軍駐留経費、これはまさに国民の生活の安定・安全にかかわる話でございます。ということで、趣旨としては逸脱していないと思います。

石井(啓)委員 もしそうだとしたら、防衛省の予算は全部ここに入らなきゃおかしいじゃないですか。防衛省だけじゃない、警察庁の予算も入らなきゃいけないかもしれない。何で一部だけ入ってくるかということなんですよ。

 これは、概算要求がおかしな概算要求だったからこんなことになっているわけですよ。各省の概算要求、九割要求しろということでしょう。それで入ってこなかった分は、この特別枠に要求せざるを得なかったんじゃないですか。だから、防衛省だとか法務省だとか、人件費あるいは契約済みの経費ばかりのところは、この特別枠のところでこういう従来の事業も要求せざるを得なかったんですよ。だからこんなことになっているわけで、元気な日本復活特別と言いながら、全く関係のない予算ばかりが並んでいる。

 目玉政策でしょう、元気な日本復活というのが。目玉政策でこんな偽装だとか架空計上があるようでは、成長戦略もおぼつかない、こんなふうに私は申し上げております。答弁は求めていません。

 そのほかにも、来年度予算について申し上げれば、民間のエコノミストは、来年度予算の実質経済成長に与える効果というのはほとんどゼロだ、こういうふうに判断をしておりますし、また中小企業の資金繰り、これも緊急保証制度が今年度末でなくなることによって、私ども懸念を抱いています。また、公共事業がさらに五%カットされまして、疲弊している地域経済に与える影響、こういったことも懸念をしておりまして、景気対策、デフレ対策が中途半端ということが一つです。

 二つ目ですけれども、財政健全化の道筋見えず。

 政府は、昨年六月に財政運営戦略というのをつくりましたね。二〇二〇年度には予算で、その年の政策的な経費は税収で賄えるようにする、これがプライマリーバランスの黒字化ということですけれども、二〇一五年度には今のプライマリーバランスの赤字の半分を削減する。そういう目標は立てていますけれども、その目標に至る具体的な計画はありません。道筋がありません。どういうふうにこの財政運営戦略の目標を達成するんですか。総理、どうですか。財政運営戦略ですよ。総理、答えてくださいよ。

中井委員長 景気・デフレ対策と財政健全化、二つについて、菅直人内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 まず、景気・デフレ対策が中途半端というふうに言われますが、リーマン・ショックの直後に政権交代があった中で、その時点で継続して予算案をつくり、現在は来年度予算案をつくっておりますけれども、この段階で、まだ出口戦略に、日本の場合は景気の状況が厳しいだろうということで、どちらかといえば景気刺激的な形の予算をこの二年間は継続させていただきました。その結果、一時二番底の心配とかいろいろ言われておりましたけれども、少なくとも緩やかながら景気が回復しつつあって、来年度も一・五%の成長が見込まれております。

 そういった意味で、景気・デフレ対策に関して、かなり厳しいところからスタートしましたから、確実に、着実にといいましょうか、緩やかながら効果を上げつつある、このように国民の皆さんには見ていただけると私は思っております。

 その上で、財政健全化についても、今御指摘ありましたように、運営戦略のもとで、二〇一五年までに一〇年比でプライマリーバランスを半減し、二〇年までには黒字化する、この目標も極めて厳しい目標であることは十分承知をいたしております。それは、先ほど申し上げたように、リーマン・ショック後の傷が非常に深いわけでありますので、余りに早く健全化に向かって予算を縮小するといったようなことをすれば、逆に一番上に書かれたことが、まさに逆行しかねないということもあります。

 しかし、そのぎりぎりの中で、昨年来申し上げていたように、財政規模で基礎的財政収支の対象になっている部分については約七十一兆円以下に抑制する、そして新規の国債発行は約四十四兆円以下に抑制するという、この財政規律はきちっと守った上で来年度の予算案を提示いたしたところでありまして、財政健全化の道筋については、この来年度の予算とその前に決めています財政運営戦略によって道筋を示し、その道筋に沿って進めているということは御理解いただけるもの、このように考えております。

石井(啓)委員 いや、そもそも来年度の予算の国債発行が今年度と同等の四十四兆三千億円以内におさめたから財政健全化だというのは、そのこと自体が甘いんですよ。

 それから、先ほど言いましたけれども、財政運営戦略、目標はあるんだけれども、具体的にその目標に到達する計画はないんですよ。政府も経済財政の中長期試算を示されているけれども、二〇二〇年度、二〇一五年度、それぞれプライマリーバランス、目標を達成するために収支改善をしなきゃいけないとなっているでしょう。その収支改善のために、いかに歳出を削るのか、あるいは歳出で削れない分、歳入でやるのか、そういう具体的な計画がないじゃないですか。だから具体的な道筋が見えないと言っているんですよ。だから先日、アメリカの格付会社で日本の国債の格付が下がったんですよ。これは、民主党菅政権に具体的な財政運営戦略がないからこういうことになっているわけですよ。そのことは申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間がありませんから、「マニフェスト破たんが明確化」の方に移りますけれども、来年度予算では、主要政策、子ども手当、高速道路無料化、それからガソリン暫定税率、いずれもマニフェストでうたっておりますような目標にとても到達できない、実現のめどが立たないということが明らかになりました。これはマニフェストの破綻と言ってもいいと思います。このことを率直に認めるべきじゃないでしょうか。総理、いかがですか。総理、総理に聞いています。

野田国務大臣 財政の話をちょっとさっきの流れでお話ししてからマニフェストの話に入りたいと思います。

 確かに、国債に比べて税収は少ないという異常事態ですが、これは平成二十一年度の決算ベースから起こっていることであって、まさにリーマン・ショック後のあの厳しい財政状況になって、税収が三十兆円台に落ち込んだときに、国債をあのとき五十三兆発行しています。それに比べれば、平成二十二年度はその差が七兆差に縮まり、今回は三兆差まで縮んできているという意味で、財政健全化は着実に進んでいますし、中期財政フレームに基づいて、ローリングをしながら目標達成をしていきたいということを申し上げた上で、マニフェストの主要事項、いろいろございましたけれども、三・六兆円の財源を確保しながら、要は、安定した財源を確保しながら着実に実施をしているということでございます。

 マニフェスト全体は、四年間で実施をするものでございます。それについてはこれから中間的な整理があると思いますけれども、財源を確保しながら着実に実施しているというのが私どもの現状認識でございます。

石井(啓)委員 今、野田大臣、三・六兆円の財源を確保していると随分大見えを切りましたけれども、マニフェストでは、来年度は十二・六兆円確保するとなっているんですよ。マニフェストの工程表、そうなっているでしょう。十二・六兆円の目標に対して、わずか三・六兆円しか確保されていないじゃないですか。これで十分やったと言えるんですか。

 この財源案、この手のものを私、この予算委員会に出すのは三回目なんですけれども、二十五年度節約目標、国の総予算の見直しで九・一兆円出す、埋蔵金や資産の活用、増税合わせて十六・八兆円二十五年度では財源を出すと言っているんですけれども、もう既に二十三年度では、このうち十二・六兆円出しますというのがマニフェストの工程表に載っかっているわけです。それで、二十三年度は、当初の工程表によると、子ども手当は月額二万六千円満額国の費用でやりますとなっていますし、ガソリン税暫定税率も、これは初年度から全額廃止するとなっておりますし、高速道路の無料化も、三年目には、二十四年度には主要なところは無料化をする。これが全然実現のめどがないじゃないですか、財源を確保するめどもないじゃないですか。

 だから、総理、マニフェストの破綻、この際、率直に認めるべきじゃないですか、いかがですか。総理に聞いていますよ。

菅内閣総理大臣 何度も申し上げておりますが、私の立場からすると、マニフェストについては相当前進している、こう思っております。

 例えば子ども手当について、従来、もちろん児童手当を公明党の皆さんの努力でつくられてきたわけでありますが、一般的に言えば、高齢者に対する福祉についてはかなりいろいろな施策がとられていた中で、子供については相対的に非常に薄かったわけであります。そういうことに対して、子ども手当という新たな制度をつくろうということで、確かに、月二万六千円という最終目標には現在至っておりませんけれども、一万三千円に加えて、三歳児まで二万円というところまで来たわけであります。少なくとも、これまでそういう制度が、まあ児童手当はありましたけれども、それ以上なかったものに対しては、大きな前進をしたのがこの子ども手当のマニフェストだ、このように思っております。

 ほかの問題でも、例えば農業の戸別的所得補償、高校の無償化など、相当程度前進しておりますし、一括交付金の問題も、今回、五千億を超える規模で実現をいたしました。

 そういった意味で、何か破綻とかばらまきとかという言葉をいろいろ使われますが、私たちからすれば、お約束したマニフェストについて、一〇〇%できたとはもちろん申し上げません、しかし着実に前進していると考えております。

 しかし、それでは、最終的に一〇〇%できるのかということについて言えば、この九月で衆議院の任期の半ばを迎えますので、これまでやれたこと、今着手していること、しかし、これからさらに二年間を見通してもなかなか難しい問題もあるのかどうか検証を行って、その検証によっては、この部分については難しいということがあれば、きちっと理由を申し上げて国民の皆さんの理解を得たい、このように考えているところでありまして、決してマニフェストは破綻はいたしておりません。

石井(啓)委員 いや、確かに一部は実現をしていますよ。一部は実現しているけれども、肝心の目玉政策、主要政策が、言ったとおりやっていないじゃないですか。子ども手当だって、本来は二十三年度から満額支給でしょう、二万六千円。違いますか。ガソリン税の暫定税率なんか、二十二年度からなくすと言っていたじゃないですか。高速道路無料化、どうするんですか。こういう今まで言ってきた主要の政策ができるめどがないから、破綻していると言っているんですよ。

 今言った主要政策、きちんとできるめどがあるんですか、総理。

菅内閣総理大臣 同じ繰り返しは避けた方がいいと思いますが、主要政策という中で、今私が申し上げましたように、子ども手当については、一万三千円に加えて、三歳児まで二万円ということですから、何割という言い方はしにくいですけれども、少なくとも相当程度実行されていますし、あるいは農業の戸別的所得補償、これは農業政策の考え方を根本から変える考え方でありまして、今回、それを前進させることになっておりますし、これも進んでおります。高校の無償化についても、これは事実上、実現をいたしているところであります。

 ですから、その主要な部分の見方の若干の差があるのかもしれませんが、私たちは国民の皆さんに、まさに胸を張ってというところまでいくかどうかは別として、少なくとも、主要なところについてはしっかりと前進しているということは申し上げても決して間違ってはいない、私はこう思っております。

石井(啓)委員 これは、数字がはっきりしていますよ。二十三年度、十二兆六千億円分やれると言ったのが三・六兆しかできていないんですから、三分の一しか達成できていない。このことはしっかり数字で示されています。そのことを申し上げています。

 では、税制改正についても申し上げますけれども、民主党マニフェストが左ですね。二十二年度、二十三年度税制改正が右です。

 民主党さんは、子ども手当は、所得税の配偶者控除、所得税の扶養控除を廃止すると言っている。ところが、実際にやっているのは、所得税だけではなく、個人住民税も廃止したり見直したりしている。配偶者控除は全く手をつけずに、マニフェストにない給与所得控除の見直しをやっている、こういうことなんですね。それから、特定扶養控除は存続すると言いながら、昨年度、高校生の年代の特定扶養控除は縮小しました。また、公的年金等控除を拡大する、老年者控除を復活する、こういうふうにマニフェストにありながら、これは全く手がつけられていません。先ほど申し上げましたように、ガソリン税等の暫定税率廃止をすると言いながら、これは当分の間、税率として維持している。

 マニフェストに書いてあることはやらないでおいて、マニフェストにないことをやっている。どうしてこういう税制改正になるんですか。

野田国務大臣 今御指摘いただいた個人の所得課税というのは、累次の累進の緩和であるとか控除の拡大等によって、財源調達機能と所得再分配機能が低下をしてきてまいりました。そういう観点から、所得再分配機能を改めて見直して、むしろこれは、格差拡大という状況の中でその見直しを行うと同時に、今個別の控除のいろいろお話ございましたけれども、全体として、民主党としては控除から手当へという、個別の控除どうのじゃなくて、全体として控除から手当という、そういう流れの観点から今議論をしてきている最中でございます。

 その中で、例えば、先ほど御指摘いただいた年少扶養控除の問題等、これはもう既に控除見直しを行いましたけれども、あわせて、これは国税と地方税とのいわゆる一貫性という観点から、地方税についても同時に改革をせざるを得ないというスタンスであります。

 加えて……(発言する者あり)いや、全体がまさに控除から手当でございますので、そういう流れでの御理解を……

中井委員長 余計なことに答えずに、答弁を。

野田国務大臣 はい。

 あと、公的年金等控除の拡大、老年者控除の復活、これはまさに、マニフェストの実現は四年の間でございますので、先ほどから御議論をいただいている年金制度の抜本改革やあるいは配偶者控除の問題も、これから引き続き議論することは税制改正大綱にも明記しておりますので、そういう流れの中で議論を進めていくということでございます。

石井(啓)委員 いずれにしろ、税制改正についてもマニフェスト違反は甚だしいということがはっきりしております。来年度の予算案、先ほど申し上げましたが、大きな問題点がある、このことを重ねて指摘しておきたいと思います。

 最後でありますけれども、きょうの私の質疑におきまして、年金問題を含む社会保障と税の一体改革、いかにいろいろな問題があるか、課題があるかということがわかりましたので、この点につきましての集中審議をぜひお願いいたしたいと思います。委員長。

中井委員長 理事会で協議いたします。

石井(啓)委員 では、以上で終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、高木陽介君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 石井政調会長に続いて、質問させていただきます。

 先ほどからの質疑を聞いていますと、民主党のマニフェストはもう既に破綻をしているな、国民との約束が破られているな、これはもう明確になったと思いますが、そういった中で、公明党は、先ほど政調会長のお話の中にもありましたように、与野党の社会保障の協議をしっかりやっていこう、これは、少子高齢社会の中にあって国民にとって重要な課題である、だから、これはしっかりと国会として議論をしていかなければいけないということで、与野党協議を求めてまいりました。

 その中で、先ほど紹介がありました、公明党は新しい福祉社会ビジョン、こういうものを昨年の暮れにまとめまして、そういった中で、これからの福祉社会、社会保障はどうあるべきか、そういう具体像を提案させていただきました。

 「各論」としましては、「年金」「医療」「介護」「子育て支援」「障がい者福祉」「雇用」「住宅」「貧困・格差」「ソーシャル・インクルージョン」、これは社会的包摂または社会的包容力といいまして、新しい福祉、例えば高齢者の社会的孤立、DV対策、または引きこもり対策、児童、高齢者、障がい者の虐待対策、ホームレス、ネットカフェ難民の問題等々、そういった今までの福祉ではとらえられなかった問題までしっかりと提案をさせていただいております。

 総理は、社会保障と税の一体改革というふうに言っておりますけれども、まず、どのような社会保障制度をつくるか、どこまでのサービスを行うか、これはこれから民主党が案を出すと言っておりますけれども、政権をとって一年五カ月、一向に具体案が出てこないで、これから議論するというのは余りにも遅過ぎるのではないかな、このように感じます。

 その中で、まず医療の問題として、当面の対応、この福祉社会ビジョンにおいては、「医師確保対策の充実」、二番目に「安心の医療提供体制の構築」、三番目に「医療制度の見直しと法整備」。中長期の課題としては、一、「医学部定員の増加や診療科の偏在を改善する医師養成システムの改革」、二、「都道府県単位の医療保険者へ再編・統合」、三、「がん対策の取り組み強化」と、多角的、重層的に提案をさせていただいております。

 その中で、本日は、特に高額療養費制度の見直しについて伺ってまいりたいと思います。

 昨年、この予算委員会の場で井上幹事長が、また先日の代表質問では山口代表、さらに井上幹事長等がこの高額療養費制度について質問をさせていただきました。

 特にがんの問題でいきますと、現代、二人に一人ががんに罹患をする。その中で、三人に一人ががんで亡くなる。死亡原因としては今一番高い。こういった中でがんの療養をする、それ以外にも慢性的な疾患で苦しんでいる方々、そういう方々がたくさんいらっしゃいます。

 その方々は、保険制度はあるんですけれども、自己負担の重さに本当に厳しい状況になっていると思いますが、この高額な療養費負担に苦しむ患者の現状ということをどういうふうに認識しておられるか、まず総理に伺いたいと思います。

細川国務大臣 高木委員にお答えいたします。

 療養費につきましては、患者の皆さんにとって、先ほど出ましたようながん医療などについては大変高額になっております。そういう意味で、それについての負担感が大変重くなっているのではないかというふうに思います。

 高額療養費制度というのがございまして、患者の皆さんの負担に対しては一定のところで歯どめをかけるということで、重い病気にかかった人だとか経済的に不安な方に対しては、不安が生じないようなそういう配慮をいたしているところでございます。

 ただ、それでもなかなか負担感が重いということを感じている方もおられることは事実だと思います。

中井委員長 細川厚労大臣、高額で、どのぐらいの人がどういう負担だという数値があるんですか。細川さん、ないの。(細川国務大臣「それは質問されていない」と呼ぶ)次の質問か。

高木(陽)委員 厚労大臣が答えるのもいいんですけれども、総理の認識を聞きたかったんですね。

 もう一つ、お手元にお配りをさせていただきましたけれども、昨年、そしてことしに入りまして、この高額療養費、患者負担が大変だ、自己負担が大変だという話の中にあって、各マスメディアも大きく取り上げています、昨年来から、毎日新聞、また読売新聞、産経新聞等々もその企画をしながら、連載記事を出しながら。

 その中の一つで、これを紹介したいと思うんですが、私ども公明党も、難病対策等々で、患者の皆様方から絶えずそういった負担の重さについてお伺いをしております。そして何度も何度もこれを政府等に申し上げておりますけれども、なかなか理解いただけないので、これを紹介したいと思いますが、ちょっと読ませていただきます。特にテレビを見られている国民の皆様方も、こういう現状があるんだということを知っていただきたいと思います。

 まず、

  「私が死ねば、家族が楽になる」

  慢性骨髄性白血病を患う新家幸子さん(51)は二〇〇九年一月、茨城県の自宅で、台所にあった包丁を自分の首に突きつけた。傍らにいた夫の尚員さんは、包丁を握った幸子さんの手を押さえながら、「高額な医療費が彼女を精神的に追いつめていたのか」と、思わずにはいられなかった。

その後、これは慢性骨髄性白血病の薬、特に抗がん剤、グリベックというものが承認をされたんですが、これは、

  一錠約三千五百円で一日四錠。保険がきくが、患者負担の月額上限を定めた高額療養費制度の適用を受けても、月約八万円かかる。

  薬をやめれば白血病で命を失う可能性がある。しかし医療費負担は重い。悩んだ末、〇八年十二月、服薬を中断した。幸い病状は悪化せず、病気仲間の強い勧めで一〇年四月に服薬を再開したが、尚員さんは「「金の切れ目が命の切れ目」という現実が今もあるんですね」

こういうような記事をちょっと抜粋して読ませていただきましたが、金の切れ目が命の切れ目という現実、こういうのがあるんです。これについて、総理、どう思われますか。

菅内閣総理大臣 この高額療養費制度というのは、実は私、初当選したときに、当時の社会労働委員会に所属をして取り組んだ問題の一つでもありました。当時、薬の使い過ぎというようなこともありましたので、私は社民連という、社会労働委員会でただ一人の委員でありましたが、薬の方の自己負担を若干高くして、そのかわりに高額療養費の上限を下げるという案を出したことを今でも覚えております。残念ながら一人しか賛成者がいませんでしたけれども、そういう思い出を持っております。

 今おっしゃったように、この高額療養費制度というのは、保険の自己負担の中でも、そういうがんのような重篤なお金のかかる治療で、その自己負担をある一定以上は負担しないでいいという上限のことでありまして、そういう点で今、高木委員から言われたことは大変重要なことだと認識をいたしております。

 そういう意味で、高齢者に限りませんけれども、私は、本当に治療が必要で高い負担がかかる方に対しては、こういう制度をもって、ある一定以上の負担を超えないようにしていくというこの制度は非常に重要でありまして、その水準をどの程度にどういう所得層について定めるかということについてさらに検討が必要だという御指摘は、十分念頭に入れていかなければならない、こう思っております。

高木(陽)委員 今、高額療養費制度は重要だ、そしてそういった現状を念頭に入れていかなければいけないというお話がございました。

 ちょっとパネルを出していただいて、もう一回確認をさせていただきたいと思います。

 この高額療養費制度、これは所得に応じて自己負担が変わるわけですね。上位所得者、標準報酬月額五十三万円以上となりますと、年収でいいますと約七百九十万円。この方々は一カ月十五万円、ここまでは自己負担をしていただくということですね。それ以上はしっかりと保険の中でやっていく。一方、低所得者、この方々は市町村民税非課税の方々ですから、夫婦二人子供一人で年収大体二百六万円ぐらいというふうに見られています。その中間が一般の方ということで、これは年収大体二百万強から八百万弱までの間、全部入るわけですね。この方々が月額で八万円払う。

 もう一つパネルを。人数にしてみますと、協会けんぽ、健保組合、あと国保、この真ん中の部分が多い、これは当然ですね。多いんですが、この方々が今負担を感じているんです。低所得者の方々は、かなりそうやって今まで何度か改正をしながらやってきた。

 しかしながら、この真ん中の方々なんですけれども、やはり、年収二百万と年収七百万の方が、同じ病気にかかった場合、同じ八万円をずっと負担し続けるというのは、これは現実的に厳しい。だから、先ほどの記事にあったように、金の切れ目が命の切れ目となるんです。

 そこで公明党は、ここで、一般所得の方々のところにもう一つ線を引いて、もう一段階つくったらどうかと。そこで、一つの例として、三百万円以下の方々のその負担限度額、月額八万円から半額の四万円に引き下げたらどうか、このように提案をしていますけれども、これについて、総理、どう思いますか。

細川国務大臣 お答えいたします。

 まず、高額医療について限度額が決まっておりますけれども、今の制度では、自己負担額を超えても、まず窓口ではこれを全額払わなければいけない、後で手続をして返ってくる、こういうことになっております。そこも負担感が非常に重いということで、それについては、平成二十四年度からこれまでのことはやめまして、直接現物給付でやる、窓口で三割だけ払えばいい、こういうような一つ負担緩和をやった。

 それと次は、これは検討をさせていただきましたけれども、社会保障審議会の医療保険部会で議論いたしましたけれども、なかなか厳しい財政状況でございまして、その保険料負担をいたします、特に国保あるいは協会けんぽの皆さん方から御理解をいただくことがなかなか難しくて、二十三年度の予算案は見送らざるを得なかったということを御理解いただきたいというふうに思います。

高木(陽)委員 全然御理解できないですね。

 昨年のこの予算委員会でもやって、当時は鳩山総理ですよ、それを検討すると言った。その後、総理が六月に就任して、代表質問でもこの質問が出て、検討すると言った。

 社会保障制度審議会、ここで昨年は四回にわたって議論したんですね。そのときに、この公明党が提案した、三百万で一つ線を引いて半額にしましょう、こういう提案をしたら、では幾らかかるかという試算をした。二千六百億ですよ。

 これは恒常的にやらなきゃいけないと思うんですけれども、実は、平成二十一年の四月十七日、これはまだ私たちが自公政権、連立政権を組んでおりました。そのときに、補正予算を組むときに、高額療養費制度のあり方の見直しに関する与党合意というのをやりました。

 これは当時、公明党政調会長、今の山口代表と自民党の保利政調会長が合意をするんですが、医療費助成の対象となっていない難病患者、家族の方や、慢性疾患等を抱える患者、家族の負担の実情を十分に認識し、適切に対処、高額療養費制度については、患者負担の現状や医療保険財政の状況等を踏まえつつ、年末までにそのあり方を検討するということで、年末、税制改正のときに財源を明確にしてやりましょうという合意だったんですね。

 ところが、その年の九月、政権交代になりましたから、民主党になったわけです。これはどこかへ行っちゃったわけですよ。どこかへ行っちゃったから、去年のその予算委員会からずっと公明党はこの問題を提案している。社会保障制度審議会でやったら二千六百億かかると。

 今の厚労大臣の話だと、お金がないからという話ですね。ところが、子ども手当創設で昨年一兆二千億円かけたんですよ。今回上積み分が二千八十五億円ですね。やめればいいんです、これを。今回の上積み分をやめればいいんですよ。そうすれば、これが出てくるじゃないですか。

 これについて、総理、どうですか。総理だよ、総理。官房長官が財政をやっているんじゃないんだから。総理が政治的な感覚としてどう思うか聞いているんですよ。総理、答えられないんですか。

枝野国務大臣 内閣の全体調整をお預かりしております私の立場から申し上げます。

 高木議員の御指摘は大変重要な御指摘だというふうに思っております。残念ながら、本年度の予算案で御期待、御提案に沿うことはできませんでしたが、きょう御指摘いただいたことも含めて、社会保障の一体改革の議論の中で何とか努力できないか検討をしてまいりたいというふうに思っております。

高木(陽)委員 「民主党マニフェストへの取組状況」というのを去年の十二月、厚生労働省がつくったんですね。まあこれ、政府・与党ですから、つくらせたんでしょうね。

 その中で、実は、民主党のマニフェストがどこまで実現しているかということで、高額療養費制度についてあるんですね。マニフェストでは「高額療養費制度に関し、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図る。」と。これは、取り組み状況で、未着手、検討中、一部実施、ほぼ実施、実施済みと五段階あるんです。ところが、これは聞いたら政務三役の指示によってこれをつくったらしいんですけれども、高額療養費は民主党のマニフェストは実施済みなんです、もうできたと言っているんです。これ、できちゃったんですか、民主党のマニフェストは。どうですか。

細川国務大臣 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、窓口での支払いの負担がなくなった、現物給付になったということが……(高木(陽)委員「委員長」と呼ぶ)

中井委員長 答弁中です。

細川国務大臣 それが実施済み、こういうことでありまして、そのマニフェストの取り組み状況というこれを見ますと、その書いてあるすぐ下に「引き続き更なる軽減策について検討」、こう書いておりまして、したがって、委員が今言われておることについても、これはまだ検討事項だ、こういうことでございます。

高木(陽)委員 それだったら、実施済みじゃなくて一部実施にしたらいいじゃないですか。そうでしょう、大臣。

 だから、そういううそを書いちゃいけない。さらにやるんだったら、まだできていないわけですから、これは間違いなわけです。訂正してください。

枝野国務大臣 高木議員もよく御理解の上で御指摘していただいているんだというふうに思いますが、マニフェストには非常に具体的なものと非常に抽象的なものといろいろなレベルのものがございます。そうした意味では、ここでお示しをさせていただいている高額療養費に関するマニフェストは抽象度の高いものでございまして、そうした抽象度の高いマニフェストの達成については、いろいろなやり方、評価の仕方があるだろうと思っております。

 ただ、いずれにしろ、高木議員御指摘のとおり、そして、ここにも書いておりますし、厚労大臣がお答えしておりますとおり、この問題については何とか引き続き努力をして、特に今社会保障の一体改革の議論を四月までにお示しするということの中でさらなる努力をしてまいりたいというふうに思っておりますので、引き続きそういった声を、御提起をいただきますようお願いを申し上げます。

高木(陽)委員 総理にちょっと聞きたいと思うんです。

 これは政治決断だと思うんですよ。どういうことかというと、先ほどからマニフェストができていないじゃないかだとかいろいろな話が出てきました。数多くのマニフェストがある、その中でどれをやっていくか。本当は全部やりたいと思っているでしょうね、民主党の皆さん方は。でも、財源の問題からいってできるものとできないものがあるね、だから見直しという話も出てきている。それはそれで結構でしょう。

 ただ、問題は優先順位のつけ方なんです。貴重な税金を国民の皆様方からお預かりして、そして、やらなければいけない問題はたくさんあります。少子高齢社会の中にあって、年金、介護、医療、さらには子育て、教育、または防衛も重要でしょう。そういったいろいろな問題の中で、どれを限られたお金の中で優先的にやるかというのを決めるのが政治ですよね。そうですよね。

 民主党のマニフェストを一気に全部やれといったって、できないというのはもう明らかになっています。では、どれを優先するか。農家の戸別補償が優先なのか、高校無償化が優先なのか、子ども手当が優先なのか。

 そうじゃなくて、命にかかわっている、金の切れ目が命の切れ目といって、本当に命を落としそうな人、この人を守るのが政治じゃないですか。それが優先順位が上じゃないですか。総理、どう思いますか。

菅内閣総理大臣 高木委員の今おっしゃった基本的な考え方には私も同感いたします。私も、HTLVの問題では公明党の江田議員とも御一緒させていただきましたが、そういった問題について、本当に困った人、本当に厳しい状況にある人に対して手を差し伸べるということは大変優先度が高い問題だと思っております。

 そういう意味で、私自身、先ほども申し上げましたように、この高額療養費払いのことは従来から関心を持って見守っておりました。今回の問題で、今の御指摘でいえば、今、枝野議員からありましたように、これからの社会保障改革の中で十分議論するに足りるといいましょうか、そういう大きなテーマだと思っております。

 二千六百億円という数字を挙げられましたけれども、このものをどう負担するかというときに、制度的に見ると、税の部分と、いわゆる保険料、皆さんが払っている保険料で見る部分があるようでありまして、税の部分では九百億、公費負担に影響しますが、残りの千七百億は、例えば協会けんぽ、健康保険組合等々の保険料の中から支出されるわけでありまして、そういう皆さんにとっても、もちろん関係者もおられるわけですから、理解を得なければならない、こういうことで社会保障審議会等で議論されてきたんだと思います。

 ぜひとも、そうした皆さんの理解も含めて、どの部分についてどのような仕組みを、もし加えるとすれば加えることが望ましいか、今後の、与野党でそういう場ができれば、私たちは望んでおりますが、その社会保障改革の中でぜひ議論させていただきたい、このように考えております。

高木(陽)委員 先ほど申し上げましたけれども、平成二十一年の四月の段階で、当時の与党としてみれば、自公はこれをやろうと言ったんです。政権交代でできなくなっちゃったんですよ。

 今、総理は、いわゆる公費、いわゆる税金でやる部分と保険料でやる部分というのがあった。今のシステムはそうですよ。でも逆に、基金という形でやることもできる。それはまさに政治の決断なんです。

 私は、最低限、政治がやらなきゃいけないことというのはあると思うんです。やらなきゃいけないことはたくさんあるんですけれども、でもやはり、農家の戸別補償、これはマニフェストでやりたい、その気持ちはわかりますよ。高校無償化、これもわかりますよ。でも、そういうものより先にやらなきゃいけない命の問題、命を守るという問題、これはまさに、与党であろうが野党であろうが、国会議員として絶対にやらなきゃいけないことだと思うんです。

 ですから、この問題、今回の予算には入っていません。入っていないけれども、今現在、慢性疾患で、いわゆる命と闘いながら、その薬を飲むのか、お金がないからやめるのか、こういう判断をしている人たちがいる、その人たちのことを思えば決断してもらいたい、そのように思います。

 その上で、もう一つ、介護の問題もあるんですね。

 社会保障というのは、先ほど石井政調会長が話した年金というのは多くの関心を持っている。でも、切実な問題として今あるのは介護の問題なんです。やはり、高齢社会の中にあって、その親の介護をどうするか、家族の介護をどうするか、または家族であればいい、ひとり暮らしの方もいる、そういう一つ一つの問題、幅の広い課題がある。

 その中で、私たち公明党は、昨年のこの予算委員会でも紹介をさせていただきましたが、今、三千人の公明党の議員がいます。地方議員を含めましてこの三千という数は、民主党より多い、自民党の公認の議員の数より多いんです。その三千人の議員がそれぞれの現場の中に入って、介護の施設に行く、またはひとり暮らしの高齢者の方々のところに行く、そういうことで、介護の総点検ということで調査をしました。そして、それをまとめ上げて、昨年の二月の段階で、新しい介護ビジョンを提案させていただきました。

 そういった中でも一つ取り上げさせていただいたのが、介護職員の、従事者の待遇の問題なんです。この方々がいなければ、施設介護も含めて、または在宅介護も含めて、これはなかなかできない。その私たちの調査によりますと、離職率が高い原因、この介護従事者の調査だと、八五・七%の人が、業務内容に対して収入が低いため離れてしまう。心身の負担が大きいため業務内容が厳しいということでやるんですが、これは収入とリンクしている部分。八割の人たちが、やはり報酬について、厳しい、こういうような認識を持っているんです。

 公明党は、労働力不足の対策として、与党時代、介護報酬でプラス三%改定し、月額九千円の増額を実現。また、介護職の処遇改善交付金の実現で月一万五千を増額。合計で二万四千円程度の処遇を行いました。

 それで、民主党はこの介護報酬の問題についてどのように、または、今、菅内閣はどのようにしているのか、これをお伺いしたいと思います。

細川国務大臣 介護職員の処遇改善につきましては、今委員が言われました介護報酬をプラスにするということについては、平成二十一年度からプラス三%に改定をいたしました。さらに、介護職員一人当たりの平均月収を一万五千円引き上げるということでの処遇改善交付金、これを二十一年十月から実施いたしております。それによって、介護報酬によります効果は約九千円、そして、先ほどの一万五千円の交付金の二つを合わせまして、二万四千円の増額になったところでございます。

 そこで、民主党のというふうに言われましたけれども、民主党は、四万円の引き上げということをマニフェストでお約束もいたしていたところでありますけれども、先ほど申し上げましたように、介護職員の改善については、一定の改善はされましたけれども、さらに改善もしていかなければいけないだろうというふうに思っております。

 それは、二十三年度末で改善交付金が終了いたしますので、二十四年度からこれをさらに続けていくということ、そして、二十四年度からは、介護報酬、そういう改定もございますので、そういうところでいろいろと検討をしていく、こういうことでございます。

高木(陽)委員 今、厚労大臣が二十一年度からと言いました。これは自公政権じゃないですか。それを継続しているだけなんですね。

 これは、公明党の地方議員の方々が現場に行って、ただ単にアンケート調査しただけじゃないんです。いろいろな話を聞いてきました。その一つをちょっと紹介させていただきたいと思います。

 埼玉県で介護施設の職員として働くAさんは二十五歳。奥さんと子供二人の四人家族。介護科のある高校を卒業し、希望を胸に介護施設に就職したが、夢との落差に驚いた。仕事もハードな中で介護福祉士の資格も取ったが、給料の手取りは安く、夫婦共働きでないと二人の子供を養うことはできない。アパートの家賃も高く、生活が大変。仕事量に見合うだけの給料でないと職場をかえざるを得なくなると心配している。ぜひとも介護職員の処遇改善に取り組んでほしいと願っている。こういう話がありました。

 継続している。一遍にいかないまでも、民主党のマニフェストでは、これを四万円にすると言っているんです。でも、今はそこまでいっていませんね。大切なのは、今までのずっと議論、きのうからの議論もそうですけれども、やってみますと、いろいろと言うことは言うんですね、検討しますだとか、これをやりますと。ただ、やる段階の工程がはっきりしないんです、計画が。だから、安心できないんです。もちろん財源が必要でしょう。でも、そういった部分で、その工程表も含めて、民主党のマニフェスト、四万円アップするという、これはいつやるんですか。総理、マニフェストの問題ですから。

枝野国務大臣 二十一年度改正で、このときには高木委員が御尽力されておりますが、一定の前進をしている中で、細川厚労大臣からもお話がございましたとおり、ちょうどその期限が二十三年度で終了いたします。また、介護報酬の改定もございます。

 これに合わせて、介護職員の皆さんの処遇を何とか改善できる方向での検討を今進めているところでございますので、この介護報酬改定とそれから二十三年度で切れたところでどうしていくのかというところで、介護報酬をさらに引き上げられないかどうか、努力をしてまいりたいというふうに思っております。

高木(陽)委員 さっきから何度も言っているけれども、努力していきたいだとか、本当にそういうような言葉はもういいんです。本当にやってもらえるかどうか。

 総理、総理は市民派と言われていた。本当に弱い人の立場を大切にしよう、そういう思いで政治に飛び込んだと思うんですよ。それで総理になられた。政権を担ういろいろな問題、課題がたくさんあって、それを一つ一つ全部やるというのは大変かもしれない。でも、その原点である市民が困っている、苦しんでいる。先ほどの高額療養費制度でもありません。こういった問題で、民主党のマニフェストに掲げた四万円、このマニフェストは僕はいいと思うんですよ。それをやるのかどうか、それをお答えください。

菅内閣総理大臣 私は、この介護報酬を引き上げるという考え方は、基本的には大変強く必要だといろいろな場で言ってきたところであります。それは二重の意味で申し上げてまいりました。

 一つは、もちろん、余りにも労働条件が厳しい、そういう社会的な中での、何といいましょうか、仕事に見合った報酬に達していないというそれ自体の問題であります。

 もう一つは、この分野を含めて潜在的にニーズが非常に高いにもかかわらず、それが理由で、つまり給料が安いことが理由で供給サイドがうまく働かない。ある意味で、昨日も自民党の議員の皆さんと議論しましたが、私はこの分野は経済的に見ても成長分野だというふうに見ておりまして、そういうところに例えば仕事が新たに入ってくれば、失業率も下がりますし、その雇用によってデフレ脱却の方にもプラスになっていく、いろいろな経済的な効果もある、このように考えております。

 そういう意味では、今言われました公明党を中心とした御努力で、九千円の介護報酬の引き上げと一万五千円の処遇改善の交付金が支給されて、現在二万四千円でありますが、これを維持するにも今後新たな財源が必要であり、我が党のマニフェストの目標である四万円ということになれば、もちろんそれに対してもさらなる財源が必要になります。

 まさにこういう問題について、社会保障制度改革、社会保障改革全体の中で、この制度を維持あるいは拡大することとその財源を安定的に維持していく制度ということで、ぜひとも協議をしたいということを私たちも申し上げていますし、公明党の方からも既にそういった提案も出されていますので、そういう課題、この課題についてもぜひそうしたことで協議をさせていただいて、前向きに取り組んでいければ、こう考えております。

高木(陽)委員 総理、協議、協議と言うけれども、例えば、昨年末の予算の編成のときに、科学技術、これは重要だと、総理の一言でアップされた、これを自慢されていました。一昨年になりますか、ガソリン税の問題があったときに、当時の小沢幹事長が、一言で、これはやめる、こういうような話でやった。政治決断というのはそういうものでしょう。

 しかも、協議なんか必要ないんですよ、民主党のマニフェストで四万円やると言っているんですから。これは協議の話じゃないんです。やるかやらないかの話なんです。ほかの問題では決断しながらやって、私がやりましたと言って、こういった高額療養費制度、さらに介護報酬の問題といった、こういうものに対しては協議と言って逃げる。

 政治決断してくださいよ。まさにここは菅直人という政治家の、もっと言えば、民主党という政党の菅内閣が弱い立場の人を守れるのか、庶民を守るのか、そういう問題なんです。これができないということは、まさに庶民、弱い人を守れない、そういう政権なんだということが明らかになると思います。ここのところをしっかりと認識をしていただきたい。

 時間も限られた中で、もう一つ。今、雪害が問題になっています。記録的な大雪。そういうような中で、公共事業を昨年は一八%削り、今回は五%。公共事業を一気に削ってきたことがこの雪害に大きな影響を与えているのではないか。

 現地でいろいろな話があります。特に、地方の建設業界、これは実は、公共事業で本当に何とか食いつないできたというのがある。民主党、特に菅総理、きのうから第一の道、第二の道、第三の道と言っていましたね。第一の道は公共事業だと。別に公共事業がいいだとか悪いだとかという問題以外に、現実の問題として、地方の大きな経済の柱であった。それがどんどん削られることによって、倒産をする。何とか頑張っていても重機等が維持管理できない、こういう話があるんですね。

 例えば、鳥取県の中部地方、ちょうど十二月、年末、大きな雪で国道九号線がとまりました。ピーク時には百社あった建設業者が五十一社になっている。その雪害、いわゆる除雪をするための契約を県と結んでいる会社、重機を抱えていたわけですね。これが、なかなか景気が悪い、仕事もない、重機をずっと維持できないということで、百三十台あった重機が八十一台になる。いろいろと頼んでもできない。

 直轄の国道は、国交省が直接やりますから、地方の整備局がやるから、これは大体できるんです。問題は、県や市町村が委託をする建設業者がなかなかこういったことができない。こういった問題があるんですね。

 ここら辺のところに関して、公共事業は、もちろん集中と選択はしなきゃいけないけれども、地域活性化の問題で、一気に行ってしまうと、こういった雪害にも影響するのではないか。ここら辺のところで、総理、どう考えますか。

大畠国務大臣 高木議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。

 公共事業関連予算が削減されたので、これが雪害対策等にも影響を与えているんじゃないか、こういう御質問でございました。

 確かに、公共関係予算は一八%削減されているところでありますが、雪害対策については、道路の除雪費用については、今回、大雪が降っておりまして、費用がかさんでいるということで、追加配分を検討して、十分な予算は確保したいと思います。

 さらには、除雪のための工夫等も行っておりまして、全体的な予算のコスト低減にも努めておるところでありまして、私どもといたしましても、全力を挙げてこの雪害対策には取り組んでまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 特交、いわゆる交付金でいろいろと応援をする、これは当然なんです。お金があれば済むという話じゃなくて、実際問題、除雪をする業者さん自体が少なくなってきている、重機がなくなってきているという、これは今お金を出したとしてもできないわけですよ。なぜそういうことがわからないのかなといつも思っているんです。

 民主党の方々というのは、優秀な方々が多いでしょう。ただ、現場を知らないんですよ。本当に現場がわかっていたら、鳥取県の選出の方々またはそのほかの今雪害で大変な方々、もっともっと政府を突き上げていますよ、同じ与党から。そういう話が聞こえてこない。

 対策本部をやっていればいいという話じゃない。対策本部なんかつくったって、現場の人が苦しんだらだめなんですよ。そういう現場の声をしっかりと受けとめられない、これが今の菅民主党政権の実態だと思いますよ。

 そういうような中で、この問題、これは雪害だけじゃないんですね。今後の道路維持管理だとかこういう工事で、前原さんが国土交通大臣のときに一気に一八%削った、英断だったかもしれないけれども、やはりその影響というのをしっかりと認識をし、検証をし、その中で現場の声というものを、会議じゃなくて足を運んでそれを実感していただきたい、このように思います。

 あと残り五分となりました。本来はこの話も余り取り上げたくなかったんですが、政治と金の問題、きのうからこの問題もありました。小沢元代表が強制起訴されたと。

 国会での説明責任について、総理は、まず一月二十七日の本会議での代表質問の答弁で、国会での説明責任は必要であると一貫して言われていますね。

 岡田幹事長は、一月の二十日、記者団に、国会で説明する手段は政倫審と証人喚問の二つしかない、その一つをみずから封じることは、残された一つということになるということで、政倫審に対して小沢元代表はなかなかうんと言わない。

 そういうような中で、代表選のときにこの問題も結構論争になっている。それで、総理は、ちゃんと説明するべきだと、あの九月の代表選以来ずっと言われている。しかも、今回は不条理を正すと言われた。この不条理を正すということは、しっかりと説明をしてもらいたい、こういうことだと思うんですが、総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 私は、代表選ではクリーンでオープンな政治ということで、これは党運営においてもそういうことでやるべきだと思っておりますし、現在そういう姿勢で臨んでおります。日本の政治全体についてもそうあるべきだと思っております。

 この中で、小沢元代表のことに関して、強制起訴ということになったことは残念でありますけれども、国会で説明をするということは以前から御本人もいろいろな機会に言われてきたことでありますので、そのことはそのこととして行われるべきだ、やられるべきだ、それは変わっておりません。

高木(陽)委員 総理、脱小沢というふうにマスコミでも言われていますけれども、ある意味でいうと、ここはけじめをつけようということなんですね。もちろん、司法は司法でやる。ただ、国会議員として、国民に選ばれた国会議員として、そういう疑惑を持たれた場合にはみずからやる。ところが政倫審に出てこない。あと残るは証人喚問しかないじゃないですか。それで、岡田幹事長に任せて与野党協議と言っている。

 幹事長に任せるんじゃなくて、もう、きのうも話が出ました。野党は証人喚問でいきましょうと言っているんです。あとは民主党がいいですよと言うだけでいいんですよ。いいですよという決断をする最高責任者は総理じゃないですか。岡田幹事長じゃないんですよ。総理が、いいですよ、わかりました、やりましょうとこの場で言ってくれれば、それで済むんです。けじめがつくんですよ。どうですか。

菅内閣総理大臣 私は、先ほど来申し上げていますように、小沢元代表が国会で説明されるべきだということは、もう言ったとおりであります。

 けじめというときに、私は、この党の運営を含めて、何かこの政治と金の問題は、政策論とは若干違いますよね。やはり最終的には、そのかかわった政治家自身が自分の責任で対処すべき問題だと思っておりまして、今の段階で、小沢元代表の問題で特に党の政策がどうとか党の運営がどうということには、私は影響はそう出ていないと思っております。

 そういう中で、国会での、どういう場で、どういう形で説明をするべきかということは、これは、党の代表ではありますけれども、少なくとも各政党間で協議をするということでありますので、やはり、岡田幹事長を中心に、そういう姿勢で臨んでもらいたいということを私からも指示をいたしているところであります。

中井委員長 高木君、時間が来ていますから。

高木(陽)委員 総理、最後に一言だけ申し上げたい。

 都合の悪いことは協議だとか検討するだとか、先送りばかりです。大切なことは、国民が世論調査でもこれはおかしいと思っているんです、大半の方が。それについてけじめをつけられるかどうか、まさにこれが問われているんです。

 今の民主党はこういうけじめのつけられない政党だ、そういうふうに申し上げて、質問を終わりたいと思います。

中井委員長 これにて石井君、高木君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、菅総理に質問いたします。

 まず、全日空と並んで日本の空の足を支える日本航空で進められている企業再生のあり方についてただしたいと思います。

 日本航空は、経営破綻のもとで、一万六千人の人員削減を進めた上、昨年末に百六十五名のパイロットと客室乗務員の整理解雇を強行しました。この整理解雇は、労働者の基本的権利を侵害する違法、不当なものであり、既に撤回を求めて提訴が行われております。経営の再建は、一義的には企業の責任で行われるものであり、私は人員削減のすべてを否定するものではありません。しかし、空の安全を確保することは、政治が直接に責任を負わなければならない問題です。その立場から具体的にただしたいと思います。

 この問題について、総理は、私の代表質問に対して、日本航空の再生に当たっては、安全な運航の確保を大前提としつつ経営改善を実現していくと答弁されました。再生を進める際に安全が大前提という考え方は、私もそのとおりだと思います。再生の大前提は安全、これが政府の立場だということをまず最初に確認しておきたいと思います。端的にお答えください。

菅内閣総理大臣 まさに公共交通でもありますし、航空、飛行機という極めて安全性に気を配らなければならない分野でありますので、その点は、おっしゃるとおり、安全性が大前提でなければならない、こう考えております。

志位委員 安全が大前提とおっしゃられました。

 私、ここに、日航の、社外の識者や専門家など五名で構成する日本航空安全アドバイザリーグループのまとめた報告書、座長は柳田邦男さんがやっておられる、二〇〇九年十二月にまとめた「守れ、安全の砦」と題した新提言書を持ってまいりました。

 そこにはこのように述べられております。「安全への投資や各種取り組みは、財務状態に左右されてはならない」「財務状態が悪化した時こそ、安全への取り組みを強化するくらいの意識を持って、「安全の層」を厚くすることに精力を注がなければならないのである。決して安全の層を薄くすることで、コスト削減を図ってはならない。薄氷を踏みながら航空機を運航するエアラインを、誰が選択するだろうか。」私は、高い見識が書かれていると思って読みました。

 この点で、日航の新会長になった稲盛氏の発言を見ますと、率直に言って重大な危惧を持たざるを得ないのであります。稲盛会長は、最近の日本経済新聞のインタビューで、一年前は、安全が第一で利益は二の次だった、今後は、数字に強い人材の育成につなげると述べています。毎日新聞のインタビューでも、就任直後は、航空会社は安全と定時運航、サービスが第一、利益は二の次と言う人すらいた、責任感があって数字に強い幹部を育成する、こう述べております。

 安全の層を厚くすることに力を注がなければならないときに、安全が第一が問題であるかのようにトップが言うことには、私は大きな危惧を感じざるを得ないのであります。

 総理は、再生の大前提は安全とおっしゃいましたが、そのお考えともこれは食い違いがあるとお感じになりませんか。総理に伺っています。

大畠国務大臣 志位議員の御質問に、まず私の方からお答えを申し上げたいと思います。

 物づくりでもあるいは航空という乗り物でも、安全第一ということが大前提であることは、そのとおりだと思います。そういう方針で会社の更生に当たっていただきたいと私は考えております。

志位委員 ですから、その安全第一という考え方とそごを来すような発言ではないかと総理に聞いているんです。

菅内閣総理大臣 どういう場面で、どういう前後の脈絡でおっしゃられた言葉を紹介されたのかわかりませんので、正確に言葉としてどうこう申し上げることは差し控えたいと思いますが、私が理解している日航のこれまでの状況は、どちらかといえば親方日の丸、場合によっては、いろいろな政治的な関係も含めて、国があるいは政治が困ったときには何とか助けてくれる。

 そういう意味で、いわゆる民間企業として、きちんと、安全はもちろんでありますが、同時に数字といいましょうか利益といいましょうか、そういうものに対するしっかりした対応能力がなかった、そういう趣旨のことはよくお聞きしておりました。わかりやすく、八百屋の主人もできるような人材がいないんだというようなことも時々紹介されておりましたが。

 ですから、私は、安全との関係で、それを軽視したということではなくて、従来の日航がそういう親方日の丸的な体質が強かったことに対して、もっとしっかり民間企業としての経営能力を強めたい、そういう趣旨で言われたのではないか、そのように推察ないしは理解をいたしております。

志位委員 安全の軽視ではないとおっしゃられたんですが、それでは、事実を見ていきたいと思います。

 稲盛氏のもとで、どういうやり方で人員削減が進められてきたか。先ほど紹介した、安全の層を厚くする方向か、逆に薄くする方向か。二つの大きな問題を私は指摘したいと思います。

 第一は、日航が年齢の高い人から選別して退職強要と整理解雇を行ったという問題です。その結果、日航では、五十五歳以上の機長、四十八歳以上の副操縦士、五十三歳以上の客室乗務員が一人もいなくなりました。

 ちょっとこのパネルをごらんいただきたいんですが、これは、日本乗員組合連絡会議の調査による資料に基づいて、日本航空と全日空の機長の年齢構成をグラフにしたものです。上が日本航空、下が全日空です。四十歳から六十四歳までの機長の数を年齢ごとに棒グラフにしたものです。

 日本航空の五十五歳以上は点線で囲んでありますが、これは、この間の人員削減で既に退職、解雇された機長であります。そっくりいなくなりました。人員削減の結果、日本航空では五十五歳以上のベテランの機長が一人も今はいなくなっているんです。全日空と比較しますと、違いが際立ってまいります。

 総理に伺いたいんですが、総理は、日本航空では、リストラ解雇によってこういう機長の年齢構成になっているということを御存じでしょうか。

菅内閣総理大臣 今、こういう表をいただきまして、ああ、こうなっているのかとわかりましたが、必ずしも、この日本航空の再建に当たって、どういう形のいわゆる人員整理が具体的にどういう形で行われているかというところまで詳細にフォローする立場ではありませんので、詳細なことまでは承知をいたしておりません。

志位委員 詳細にフォローしていないということですが、全体の状況については、知らないでは済まない問題なんですよ、空の安全には国が責任を負っているわけですから。経験を積んだベテランパイロット、客室乗務員の存在が、いかに空の安全にとって重要か。

 二〇〇九年一月、ニューヨークで、ハドソン川の奇跡と報道された飛行機事故が起こりました。US航空のエアバス320が離陸直後、高度八百五十メートルで、エンジンに鳥の群れを吸い込み、両エンジンとも停止する深刻な事態に陥った。しかし、機長を中心とした見事なチームワークで、ニューヨーク・ハドソン川への緊急着陸を成功させ、乗客、乗員百五十五人のうち、一人の犠牲者も出さず、奇跡の生還を果たしたという事件であります。

 私、事故調査報告書も読んでみましたけれども、エンジン停止から着水までわずか三分三十秒です。この間に乗務員は、補助動力の始動、管制塔との連絡、エンジン回復の試み、機体のコントロール、着水準備などを冷静にやり抜いています。

 機長のサレンバーガー氏は五十七歳、副操縦士は四十九歳。機長、操縦士とも、日航が今回切り捨ててしまった世代であります。しかし、経験と熟練を積んだパイロットの存在が危機に際していかに大切かを痛感させる事故だったと思います。

 これも私、持ってまいりましたが、そのサレンバーガー機長が米連邦議会下院の小委員会で証言したものがあります。命が救われたのは、熟練を積み、よく訓練された乗務員のおかげです。ここですね。副操縦士と客室乗務員のすばらしいチームワークを称賛するとともに、機長は次のような警鐘を鳴らしております。

 安全のための措置を採算の圧力で犠牲にしてはなりません。空の安全にとって最も重要なものは、経験をよく積み、よく訓練されたパイロットなのです。パイロットの経験と熟練が少なくなれば、否定的な結果を我々は目撃することになるでしょう。

 この証言は重く受けとめるべきだと考えますが、総理、いかがでしょう。

大畠国務大臣 ただいまの御質問でございますが、私も物づくりの世界で仕事をしてまいりましたが、年齢とともに多くの経験を積み、いろいろな場合に適切な対応ができるのは経験者だ、そういうことを私も知っております。

 今御指摘の件につきましては、どのような形で安全を確保して企業の再生を図るのかということについては、しっかりと私も、お呼びして確認をしたいと思います。

志位委員 経験の重要性をしっかり知っているという御答弁でした。

 私も、日本航空で長く機長を務めてこられた多くの方々から話を聞きました。パイロットには、技術と知識と経験の三つが必要だというお話でした。そのうち、技術と知識は研さんによって得ることができる。しかし、経験だけは時間を経ないと得られない。そして、この経験の積み重ねこそが、ぎりぎりという危険な場面に遭遇した際に決定的な役割を果たす。これは異口同音に言われたことでありました。

 私、もう一枚、これはJALが作成した訓練マニュアルの一部であります。航空機をつくったボーイング社自身が作成したトレーニングマニュアルが引用されています。そこでは、仮にマニュアルにないような、想定されないような危機に遭遇したらどうするかについて、次のように述べております。

 ガイドラインがほとんどない状況に直面することもあります。この非常にまれにしか起こらない事態に対して、すべてをカバーするような手順の作成は不可能であり、実際的でもありません。このような事態に遭遇した場合にとるべき適切な行動のためのガイドラインは、それまでに積み上げられてきた経験や知識、コンベンショナルウイズダムと書いてありますが、と呼ばれているもので、最も安全な方法と判断される行動を状況に応じて決定するというものです。

 これは総理に伺いたいんですが、危機に遭遇した際に最後に頼るべきは、それまでに積み上げられてきた経験と知識だとメーカー自身が言っているわけです。そうしますと、経験の厚い人、年齢の高い人から解雇する、最も経験を積み、それを次の世代に継承すべきベテランの乗務員を残らず解雇する、このやり方は、安全の層を薄くするものだと私は考えますが、いかがでしょう。今度は総理。

菅内閣総理大臣 一般的に言えば、先ほど志位委員長も言われましたけれども、どういう社会であっても、真新しい技術の習得とかそういうことは比較的若い人が適格かもしれませんが、やはり経験が物を言うといいましょうか、そういう分野もたくさんあります。この政治の分野でも両面があると思いますし、あらゆる分野であると思います。そういう点で、今言われたこと自体、私、否定するつもりはありません。

 ただ、そのことと、どういう形の人員構成あるいは年齢構成をとるかということは、それは、当然安全性を考えた上でそれぞれ判断されるべきもので、何かを一義的にこうあるべきということを、特に私のような立場の者がどう考えるかと言われても、そこはそれぞれの分野、それぞれの社会によって基準も違うでしょうから、考え方も違うでしょうから、私からこうあるべきというところまでは申し上げることはできません。

志位委員 いろいろおっしゃいましたけれども、私の指摘、これでは安全の層を薄くするのではないかということについて、否定するつもりはないということをおっしゃられたのは重要な答弁だと受けとめておきたいと思います。

 私は、年齢の高い人、経験を積む人から解雇するというやり方は、空の安全にとって最後に頼るべき経験の重要性、これを否定する思想、考え方、やり方だと思います。まさに安全の層を薄くするものだと言わざるを得ません。

 もう一つ問題があります。

 第二に、日航が、過去の病気の欠席や乗務離脱の日数を整理解雇の基準にしたことです。

 航空法では、運航乗務員の心身に起因する事故を未然に防止することを目的として、航空身体検査を定期的に行うことを義務づけております。この身体検査は、運航の不安全要因となり得る乗員の心身状態を徹底的に排除するもので、ごくわずかの不調でも乗務を禁止する、健康であっても不適合と判定される場合もあると政府のマニュアルに明記されているような厳しいものです。だからこそ、常に一定割合で、乗務できない乗務離脱者が存在しております。

 そして、重要なことは、この制度は乗員の自己申告によって支えられているということです。例えば、睡眠障害、腰痛、これは外的検査をやってもわかりません。自己申告で初めてわかるわけであります。そういう検査で過去の病欠や乗務離脱を整理解雇の基準としてしまう、そういう前例をつくってしまったらどうなるか。私は、そういうことをやってしまったら、今後は、体調不良があっても、ちゅうちょなく会社に申し出るということが難しくなるんじゃないか、このことを強く気にしていますが、いかがでしょう。

大畠国務大臣 お答えを申し上げます。

 ただいまの御指摘でございますけれども、志位委員長からお話がありますように、安全第一というのがまず大前提でございまして、国土交通省としても、これまでも日本航空に対して、航空法に基づく立入検査や報告徴収により安全管理体制について監視、監督を行ってまいりましたし、今後とも、安全な運航の確保については、日本航空に対してしっかり指導監督をしていく所存であります。

 なお、ただいま具体的に御指摘をいただきました整理解雇につきましては、司法の場で判断されることとなっておるため、お答えは控えさせていただきたいと思います。

志位委員 これは、ちゅうちょなく体調不良を申し出るということができなくなるんじゃないかと聞いたわけです。整理解雇の問題は今司法で争っているにしても、安全の問題は、飛行機が飛んでいるんですから、今もう責任を負うべきなんですよ。ちゃんとお答えください。

大畠国務大臣 ただいまの具体的な御指摘につきましては、私どもの方でもまだ確認をしておりませんので、ぜひ確認をして、もしもそのような状況にあるとすれば、私もいろいろと考えるところがありますので、適切な形にすることがいいと思います。

志位委員 確認をして適切に対処したいということですので、ぜひこれはやっていただきたいと思います。

 総理に伺いたい。

 これは、世界百カ国、十万人の民間パイロットで組織する国際操縦士協会が昨年十一月十六日に発表した声明です。日本航空が病欠などを整理解雇の基準にしたことについて、このように述べております。

 正当かつ社内規程に準じて病欠したにもかかわらず、病欠記録を整理解雇基準に用いることは、航空の安全を脅かすものである。このあしき前例ができ上がれば、乗員は、体調不良にもかかわらず、職を守るために乗務につかざるを得ない危険な状況が発生しかねない。

 私は、本会議でこの警告を引き、空の安全を危険にさらすとの世界のパイロットの声にどうこたえるつもりですかと総理にお尋ねしましたが、定かな答弁はありませんでした。

 今しっかり再検討もするということを大臣もおっしゃられたけれども、ぜひこの警告を重く受けとめて、総理みずから、そういう職場で体調不良が申し立てられないという状況は一掃していただきたい、もしあったら一掃していただきたい。

菅内閣総理大臣 御指摘されていることは私も私なりに理解いたします。つまりは、体調不良でも無理をして乗務するようなことになる、そういう原因をつくることは好ましくないというか、よくないということはそのとおりだと思います。

 そのことに関して、どのような形で、だれがどう判断するかということはありますが、先ほど国交大臣からも答弁がありましたので、少なくともそういうことにならない方向でしっかりと見守っていきたい、こう考えております。

志位委員 そうならないように見守っていきたいということはぜひやってほしいんだけれども、今回の整理解雇のやり方そのものがそういうことにつながることを私は問題にしたので、そこにさかのぼって見直していただきたいと強く要請します。

 今回の日航の人員削減のやり方は、私がずっときょうるる申しましたけれども、空の安全よりも利益中心、利益追求を優先するものと言わざるを得ません。国民が願っている日航は、何よりも安全な日航ですが、その願いに背くものと言わざるを得ません。

 そもそも、日本航空の経営破綻の責任は、政府の過大な需要予測による空港乱造や、国策で米国から総額約二兆円もの高額なジャンボ機を大量購入するなど、政府と日航旧経営陣にあり、それを労働者に転嫁することは許されるものではありません。

 この整理解雇は、日航が一千四百六十億円もの利益を上げていること、みずから設定した人員削減目標を超過達成していることだけを見ても、判例で確立している整理解雇の四要件をじゅうりんすることは明らかだと考えます。日本航空の無法な整理解雇は、すべての労働者の権利を侵害し、さらにすべての国民の命と安全にかかわる重大問題です。私は政府に、日本航空による無法な整理解雇を中止するよう強く指導することを求めます。

 同時に、委員長に提起したい。

 国会として今回のリストラ計画全体を航空の安全の観点から徹底的に再検討するために、日本航空の稲盛会長を本委員会に参考人として招致するとともに、この問題での集中審議を行うことを提案するものです。お計らい願いたい。

中井委員長 予算委員会理事会で協議いたします。

志位委員 次に、総理が平成の開国として推進しているTPPについてただします。

 このパネルは、東アジア諸国とTPPとの関係を図にしたものです。総理は、アジアの成長を取り込むなどと述べて、その方策としてTPPを位置づけておられます。しかし、中国、韓国、インドネシア、タイは、TPPと一線を画す態度をとっております。

 東アジアの十三の国々の中でTPP交渉に参加しているのは、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアの四カ国だけであり、人口でいえば東アジアのわずか五・七%にすぎません。しかも、そのすべてが、既に日本とFTA、自由貿易協定、EPA、経済連携協定を締結している国々です。したがって、日本にとってのTPP参加の意味合いというのは、事実上米国とのFTAの締結ということになるのではないか。

 仮に日本がTPPに参加して十カ国の枠組みになったとしますと、日米だけでGDPの九〇・八%を占めることになります。まさに事実上の日米FTAです。しかも、二国間のFTA交渉ならば関税撤廃の除外品目の交渉の余地がありますが、TPPというのは、原則例外なしの関税撤廃がルールになっているわけです。つまり、日本にとってのTPP参加とは、端的に言って、例外なしの関税撤廃を原則とする日米FTAの締結ということになるんじゃないでしょうか。これはいかがでしょうか、総理。

前原国務大臣 APEC、二十一カ国・地域がございますけれども、このAPECは、経済統合を目指していこうということで、FTAAPというものを目指しているわけであります。TPPはその中の一つの道筋として考えられているわけでございまして、現状の九カ国だけを考えて物事を見るのではなくて、FTAAPに向けた道筋の中で日本がどのような方策を選んでいくのかという観点からも物事は考えるべきだと思います。

 同時に、ASEANやあるいは日中韓FTA、そういったものも我々は研究をし、そしてそれについて結論を出した上で臨んでまいりたいと思っておりますので、別にアメリカだけではなくて、APEC加盟国あるいは他の国も含めて、できる限りの自由貿易を進めていきたいと考えております。

志位委員 TPPはFTAAPに向けた道筋だとおっしゃいました。しかし、韓国、中国は参加していないわけですね。

 ASEANでGDP一位のインドネシアの政府は、TPPについて、厳しい条件だ、国内準備が不十分であり、まずは地域貿易の枠組みに力を入れることが先決だと、否定的であります。それから、GDP、ASEAN二位のタイ政府も、まずはASEANが中心になって進めるべきだと、TPPに一線を画す立場です。さらに、ASEANのスリン事務総長は、今ASEANが重視しているのは東アジアの域内での経済連携だと言っております。TPPが東アジア全体に広がる動きになっているとは、これは言えない。アメリカ主導の枠組みです。アジアの成長の取り込みどころか、アメリカの対日経済戦略に日本が組み込まれるというのがTPPの真実の姿だと私は言わなければなりません。

 このTPP参加によって失うものは何か。今度は、総理にお聞きしたい。

 まず、何よりも国民への食料の安定供給です。TPPとは、農産物も含めてすべての品目の関税をゼロにする協定です。関税ゼロとなったら、農水省の試算によると、食料自給率は四〇%から一三%に急落し、米生産の九〇%は破壊され、農林水産物の生産は四兆五千億円も減少する。政府は、昨年三月に食料自給率を四〇%から五〇%に引き上げる食料・農業・農村基本計画を閣議決定されていますね。自給率五〇%と関税ゼロ、総理、どうやってこれは両立できるんでしょうか。

 私は本会議で質問したんですけれども、定かな答弁がありませんでした。今度は総理にお答え願いたい。総理です。総理に聞いているんです。

玄葉国務大臣 委員長おっしゃるとおり、TPPについては、まだどうなるかというのは定かでありません。同時に、私たちは、六月に、総理としてTPPに対して交渉に参加するかどうかを判断するという段階でございます。

 その上で、昨年十一月に包括的経済連携に関する基本方針を打ち立てて、私たちは、確かにハイレベルの二国間の経済連携を進めるということは決意をしたところでございます。したがって、新たな開国、このことを奇貨として、農業の再生を目指すという立場でございます。もともと農業の問題については、この経済連携があるなしにかかわらず、どうするのかというのはそもそも待ったなしではないかというふうに思います。

 したがって、今回のこの経済連携を進めることを契機にして、守りの部分と同時に、例えば、鹿野農林水産大臣もおっしゃっているように、輸出も含めて、ブランド化も含めて、六次産業化も含めて、その対策を六月までにしっかりまとめるというのが我々の方針でございます。

志位委員 私は、自給率五〇%と関税ゼロがどうしたら両立するのか聞いたんですよ。何の答弁もしていないじゃないですか。

 総理、総理の答弁の中で、これは本会議の答弁ですけれども、結局、農地集約による大規模化、戸別所得補償制度、これをやれば何とか両立するんだ、そういう答弁でした。そういうことですか。

菅内閣総理大臣 まずTPPについて、今そこに表を並べられたわけですが、私の全体の見方と志位委員長の見方はやや違っているなという感じがいたしております。

 つまり、日本はもともと貿易の自由化の優等生とも言える国で、WTOドーハ・ラウンドにも積極的にかかわってきたわけですが、残念ながら、この十年近くだけを見ると、例えばお隣の国の韓国がアメリカとのFTA、あるいはEUとのEPA等々が進む中で……(発言する者あり)ちょっと待ってください、これはTPPの問題ですから。進む中で、残念ながら、日本がそういうところとの二国間あるいは地域間の経済連携の対応が足踏み状態にあったということの中から、それではこれからどうしていこうかということで、APECの始まる前に、我が内閣として、こうした問題に基本的には積極的に取り組んでいこう、そういう中でTPPについても情報収集を含めて関係機関と協議をしよう、そういうところまでを決定いたしたわけであります。

 ですから、そういう大きな日本の姿勢、まあ余り長くなったら恐縮ですからこの程度にしますが、つまりは、貿易だけではなくて、若い人が海外に留学する数も減っているとか、そういう内向きな日本をこのままでいいのか、そういう問題意識も含めてこの問題も考えているわけです。

 その中で、現在、農業のことについていろいろと関連したことを言われました。これも他の大臣からもお話がありましたが、農業政策に関しては、現在大変大きな改革を必要としている時期だと思っております。この十年、二十年の間でも農業生産が約二〇%減っておりますし、そして、就業している人の平均年齢が六十六歳になっていることを考えますと、いずれにしてもこの改革が重要でありまして、その中で、今自給率の問題も言われましたけれども、つまり、自給率を高めるために、まず自給率そのものよりも、耕地面積そのものが今は減っているわけでありまして、そういう放棄地をどうやってもっと若い人に参加をしてもらって活力ある農業をやっていくのか。その中には、土地利用型の米の問題と野菜等では対応が若干違います。

 そういうことも含めて、現在、農業の改革の本部をつくって進めているところでありまして、これからそうした農業改革の方向性が出てくる中で、先ほど御指摘のあった五〇%の自給率というものも両立できる方向性を目指していきたい。

 先ほど、四〇%から一三%というのは、前提としては、何も対応しなかった場合にそうなるという試算だ、そのように聞いているところであります。

志位委員 私は、関税ゼロと自給率五〇%はどうして両立するのか、こう聞いたんですけれども、今は長々と話したけれども、この両立する方途については何ら答弁ができませんでした。ただ、総理は少なくとも本会議では、大規模化と戸別所得補償ということ、これを両立の方途としておっしゃったので私は聞きたいと思うんですよ。

 大規模化とおっしゃいますが、アメリカの農家一戸当たりの耕地面積は日本の百倍以上、オーストラリアでは何と一千五百倍ですよ。この圧倒的な格差は、広大な平原に展開するアメリカやオーストラリア、急峻な山地や複雑な地形で営まれる日本という国土条件を背景にしたもので、人為的な努力で埋められるものではありません。日本でアメリカやオーストラリアのような急拡大は到底できない。

 ここに、二〇〇七年二月に農水省が発表した「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」がございます。これを見ますと、「生産性向上努力と関税水準」という項目でこう書いてあります。

 「狭い国土、湿潤で病害虫が発生しやすい気象、高い人件費等わが国の農業生産の前提となる諸条件の下では、」大規模化や技術革新によって「農業者の生産性向上努力を最大限引き出したとしても、国土条件が大幅に異なり、経営規模にして我が国の百倍から数千倍もの大規模経営が広がる米国や豪州のような国で生産される低廉な農産物との価格差を完全に解消することは不可能。」こう言い切っているわけですよ。

 ですから、これは、政府自身が大規模化を初めとする生産性向上努力を幾らやっても、アメリカやオーストラリアと競争することは不可能と言っているじゃないですか。今度は農水大臣。農水省の問題でしょう、農水大臣。

鹿野国務大臣 まず冒頭に申し上げますけれども、基本的に、まだTPPに参加をするかどうかというのは決めていないわけです。

 ただ、先ほど玄葉大臣から申し上げましたとおりに、これからの我が国として、人口減少というような中で国民的安定を図っていかなきゃならない、その場合はやはり経済成長も必要だ、その一環として、やはり市場を広げていく必要がある。そうすると、外国に対して、諸外国に市場を広げていくということであれば、受ける側も市場をやはり広げていく必要があるんじゃないか。

 こういうようなことから、私たちは昨年の十一月に、EPAというものを推進して、そしてアジア全体も含めた我が国の成長のあり方というものを考えていこう、こういう中で決めたわけでありまして、その中で、TPPというふうなものをどうするかは、いろいろな情報をとって、農産物の問題だけではありませんから、二十四の分野においていろいろ協議をしているということですから、そういうようなことも情報を収集してどうするかということを決めていくということであります。

 この今の段階で、当然、二〇〇七年の当時において、なかなか今日の状況の中では思い切った外国並みの、比較できない状況というふうなものがあるので、政策的にも限界があるんじゃないかというふうなことはそのとおり報告でございますけれども、しかしそれは、何もしないという、現在の国境措置というようなものの中で、いろいろなことも含めて言っているわけでありますから。

 私どもとしては、そういう今日の我が国の置かれている農業の実態、こういうふうなものも含めた中でどうあるべきかということを総合的に判断をしていくという意味で、これからの議論がなされていく、こう思っております。

志位委員 何もしないでというふうにおっしゃったけれども、生産性向上をぎりぎりやったとしても、とても競争できないと農水省自身が言っているんですよ。

 それから、ここにもう一つ重大なことが書いてあります。

 戸別所得補償とあなた方はおっしゃるけれども、この農水省の試算を読みますと、関税などの国境措置を撤廃した場合には、仮に巨額の税金を投じて農産物の価格下落に見合う差額を補てんしたとしても、こう書いてあります、「国内農業等の生産減少、食料自給率の低下等は避けられない。」こう結論づけているんですよ。そして、国産農産物の価格低下分を補てんするための費用だけで少なくとも毎年二兆五千億円も新たに必要になると試算しているとともに、このような巨額の財政支出は、農業者を含め、国民、納税者の理解を得られないため、実施は困難だ、こう言っているんです。

 ですから、これは農水省自身が、幾らお金をつぎ込んでも、これはもう競争にならない、関税ゼロにしたら自給率低下は避けられないと言っているわけです。ですから、私は、TPP参加というのは、国民の願いである食料の自給率の向上という願いとは絶対両立しないということをはっきり言っておきたいと思います。

 さらに、もう一つ失うものがあります。日本の経済主権です。

 ここに、外務省、財務省、農水省、経産省が一月二十日に作成した「TPPに関する各国との協議」と題する報告書がございます。TPP協定交渉参加国からの情報収集の結果を取りまとめたものであります。次のように述べております。

 ちょっと中心部分をパネルにしましたが、センシティブ品目、重要品目については、「原則として除外や再協議は認めず、長期の段階的関税撤廃といったアプローチによるべきという考え方が基本。」関税撤廃。「新規参加には全ての交渉国の同意が必要であり、そのためには新規参加希望国がTPPの目指す高い水準の自由化交渉に真剣に取り組む用意があるとの信頼を全交渉国から得る必要がある。なお米国は、新規参加を認めるためには議会の同意を取り付けることが必要。」「日本が関税撤廃のみならず非関税措置の改革にも取り組むことを期待。」

 こういう報告書です。総理に伺いたいんですが、この報告書、受けておられますか。これは総理に、受けているかどうか。

中井委員長 最初に、鹿野農水大臣から二〇〇七年の……(志位委員「いや、受けているかどうか聞いているんです」と呼ぶ)志位さん、ちょっと座って。志位さんの御指摘の農水省の報告書を今どう扱っているかということについて答弁をいただき、そしてその後、総理から答弁いただきます。

 鹿野農水大臣。

鹿野国務大臣 二〇〇七年の報告というものにつきましては、今日のこの地政学的な中における我が国の農業として、他の外国とのいろいろな意味での比較というふうなところからの考え方というものが述べられたわけであります。

 ゆえに、私どもが、TPPというふうなものについて、まだ決めておりませんけれども、その判断をする場合は、当然我が国の農業の実態というふうなものを踏まえた中で、そしてどういう国内政策を行うことができるかということも総合的に判断した中で決めていくということになるわけであります。

志位委員 委員長、答弁を求めます。報告を受けているかどうか。

中井委員長 これは菅さんから言ってもらいます。一月二十日のことについて聞いている。

菅内閣総理大臣 TPPに関する各国との協議というのはいろいろな形で進んでおりまして、一〇〇%すべての報告を受け取っているかどうかは別として、適宜報告は受けております。

志位委員 この報告書には、ここにありますように、TPP参加にはすべての交渉国の同意が必要、特に米国については、議会の同意を取りつけることが必要、関税撤廃だけでなく、関税以外の貿易障壁、つまり非関税措置の撤廃に取り組むことも要求されると述べております。要するに、これから日本がTPPに参加するためには、関税の問題でも非関税障壁の問題でも、米国政府と議会の要求を丸のみにせざるを得なくなるということであります。そうなったら、どういうことになるか。

 例えば、ここに二〇一〇年三月に米国通商代表部が議会に提出した報告書があります。そこでは、いろいろなことが書いてありますけれども、食品安全にかかわる対日要求として、次のような項目が列挙されております。牛肉のBSE対策で日本が行っている月齢制限などの規制を緩和せよ、米輸入の際の安全検査を緩和せよ、ポストハーベストの食品添加物の表示をやめよ、有機農産物の殺虫剤、除草剤の残留を認めよ、こういうことがずっと書いてあるんですよ。これらを結局は交渉の中で丸のみにせざるを得なくなる。

 食料を完全に外国頼みにしたあげく、外国から輸入する食料の安全基準までアメリカの言いなりになる。総理、こういうことじゃないですか。総理、答えてください。総理、答えてくださいよ。あなたが出ているんですから。

玄葉国務大臣 まず、志位委員長から御指摘のあった農業の話。

 鹿野大臣とともに私、再生会議の副議長を務めておりますから一言だけ申し上げます。

 まずは、関税がゼロになるとはわかりません、はっきり申し上げて。それと、輸出が促進されれば、それだけで自給率は上がります。それともう一つは、国民全体で支える農業をつくろう、そういう思いもあって、六月の再生会議の報告に向けて今取り組みをしているということを一つ申し上げます。

 同時に、今の御質問でありますけれども、非関税障壁については、それは確かに金融も通信もそれぞれあるでしょう、あるいは医薬品もあるでしょう。だけれども、これは取引のベースをそろえるという意味では、必ずしも日本側にすべてデメリットかと言われれば、むしろメリットの方が大きい分野だってたくさんございます。ですから、そういったことも総合的に勘案しながら、これから最終的に判断をしていくということになろうと思います。

志位委員 関税ゼロになるとは限らないと言ったんですけれども、関税ゼロが原則だというふうな情報を収集しているじゃありませんか。交渉の中で何とかすると言うけれども、アメリカは、政府だけじゃなくて議会の承認も必要だと。議会の承認が必要ということは、民主党だけじゃなくて共和党も認めてもらわなきゃならないということなんですよ。丸のみにしなきゃならないということになる。

 TPPは、食料だけでなく郵政民営化などの金融や保険、医療の規制緩和、労働の規制緩和、あらゆる分野が交渉対象とされています。二十四分野と言われていますけれども、日本の経済主権をすべて米国にゆだねるということにならざるを得ないと私は考えます。

 私たち日本共産党は、開国どころか、日本という国のあり方を根本から壊すTPPへの参加には絶対に反対です。日本がとるべき進路としては、次の二つの方向が大事だと考えます。

 第一に、貿易の拡大は当然ですが、食料、環境、雇用など、市場任せにしてはならない分野まで自由化一辺倒であってはならない。特に食料については、食料主権、自国の食料は自国で生産するといった立場に立った貿易ルールの確立が、飢餓や食料不足が地球的に広がる中でとりわけ大切であります。

 第二は、米国に経済の面でも追随する道ではなくて、東アジアの諸国との経済連携を進めることが大切だと思います。大きく成長しつつある東アジア諸国と多様な農業を、互いに尊重し、共存共栄を図りながら、平等互恵の経済関係を発展させる、こうした方向にこそ私は日本の未来があると私どもの考えを表明するものであります。

 次に進みます。

 社会保障の問題です。安心できる社会保障をつくることは国民多数の強い願いです。総理は、社会保障改革とともに、消費税を含む税制抜本改革を進めると表明されました。しかし、現に進めていることは何か。

 私は、本会議の代表質問で、全国どこでも大問題となっている、高過ぎる国民健康保険料の問題を取り上げました。これをごらんください。これは、所得三百万円の四人家族、三十歳代の両親と子供二人世帯の国保料です。札幌市が四十五万六千五百円、さいたま市が三十九万七千百円、新潟市が三十九万六百円、大阪市が四十二万八千七百円、京都市が四十五万三千七百円、岡山市が四十三万八百円、福岡市が四十六万八千円。どこも、三百万円という所得の一割を大きく超える保険料なんですね。

 昨年三月、参議院の予算委員会の質疑で、我が党の議員がこの政令市での国保料の実態を示して鳩山首相の認識をただしたことがあるんです。その一年前と比べても、それぞれ各市とも上がっております。そのときの鳩山首相の答弁は、所得三百万円の方がその一割以上の国保料を払わなければならないのは率直に申し上げて相当高い、こういう御答弁でした。

 菅総理の率直な感想を伺いたいんですが、菅総理もこの実態は相当高いという御認識だと思いますが、いかがでしょう。一言で結構です。

菅内閣総理大臣 所得三百万円に対して一〇%をかなり超える負担というのは、負担感としてはかなり重い、そういう感じはいたします。

志位委員 かなり重いと、これはやはり総理もお認めになったわけですが、そうであるなら、なぜそれに追い打ちをかけるようなことをするのか。

 民主党政権は昨年五月、厚生労働省の通達で、市町村が独自に行っている一般会計から国保会計への繰り入れをやめ、保険料の値上げに転嫁せよとの号令をかけています。今、市町村は、財政が苦しい中でも必死に努力して、総額で三千七百億円の公費を繰り入れて国保料のこれ以上の値上げを抑える努力をしています。それをやめたら、国保料はさらに一人平均一万円、四人家族で平均四万円もの値上げになってしまいます。

 私が本会議で高過ぎる国保料の値上げに追い打ちをかけるこの通達は直ちに撤回すべきだとただしたのに対して、総理はどうお答えになったか。御指摘の通達は、保険料引き上げだけでなく、収納率向上や医療費適正化策の推進など、国保財政安定化のための施策を提言したものですという答弁でした。要するに、国保料引き上げだけではなくていろいろやっている、国保財政安定化のためには国保料引き上げが当然だという答弁だったと思います。

 今でさえ高過ぎて払えないという悲鳴が列島に渦巻いているときに、四人家族で平均四万円もの保険料の引き上げを押しつける通達を出す。総理、これは胸に痛みを感じませんか。これは重いなとおっしゃられましたね。そういう通達、胸に痛みを感じませんか。

細川国務大臣 志位委員の御質問にお答えいたします。

 国民健康保険、御承知のように、保険財政が大変規模が小さい、不安定になりやすいということで、財政運営の広域化というのが今大きな課題となっておりまして、都道府県が市町村国保の広域化を支援するための方針、これは広域化等支援方針と言っておりますけれども、それを策定して、広域化を推進しているところでございます。

 先ほど御指摘のありました点につきましては、昨年の五月、この広域化支援の方針の策定のために、技術的な助言として都道府県に通知をしたものでございまして、そのときに、一般会計繰り入れによる赤字補てん分についてはできる限り早期に解消に努めること、こういうことを言ったわけです。

 しかし、これについては、市町村における一般会計繰り入れを禁止するとかそういうことではなくて、国保財政の健全化のためには、計画的、段階的に赤字解消に取り組んでほしい、そのためには、保険料を引き上げるだけではなくて、収納率とかあるいは医療費の適正化とか、そういうことを推進すべきだというようなことを助言いたしたものでありまして、その点、御理解をいただきたいと思います。

志位委員 市町村の一般会計からの繰り入れを禁止したものではないというふうに言うんですけれども、それを解消して保険料を引き上げると、はっきり書いてありますよ。

 それから、今、収納率の向上とおっしゃいましたね。収納率向上というかけ声でどんなことがやられているのか。無慈悲な保険証の取り上げと、過酷な保険料の取り立てです。

 今、国保料の滞納世帯は四百四十五万世帯、加入世帯の二割に上っています。正規の保険証を取り上げられ、資格証明書や短期保険証に置きかえられた世帯は百五十二万世帯に上ります。さらに、取り立てでは、滞納者への脅迫まがいの督促、プライバシー無視の財産調査、預貯金、生活必需品の差し押さえなどが各地でひどくなっています。けさのNHKテレビでも、年金を差し押さえられてしまった方が自殺されたということも特集番組で放映されておりました。

 私、一例を述べたい。大阪市で飲食店を経営している男性からの訴えです。

 不景気で客足が落ち、昼間は夫婦ともにパートで働き、必死に子供二人を育ててきたが、この間、急激に経営が悪化し、国保料の支払いが困難になった。それでも毎月、区役所の窓口に相談して、分割納付を続けてきた。

 ところが、昨年十二月、市から、財産調査の結果、財産が判明したとして、滞納金、延滞金合わせて八十三万五千円を払わないと差し押さえを実行すると通告された。判明した財産とは何か。子供たちのための学資保険ですよ。長男はことし大学受験です。次男は高校二年生。この二人の大学入試、入学金、学資の支払いのためのものですよ。必死に分割納付を続けてきたのに、子供のためにこつこつ積み立ててきた学資保険まで差し押さえる。子供を大学にやることも許されないのかという痛切な訴えであります。全国各地でこういった強権的な差し押さえが急増しております。

 保険料が高過ぎて、払いたくとも払えない人から保険証を取り上げる。経営難の中でも約束どおり保険料を分納している人が、学資保険まで財産と認定されて、耳をそろえて滞納分を払えとおどされ、差し押さえの制裁を受けるという事態が現に起こっているんです。これは余りにひどい事態だ。これが収納率向上の実態なんですよ。これは余りにひどいと思いませんか。

中井委員長 ぼちぼち時間が近づいていますから、短く。

菅内閣総理大臣 今、志位委員長が言われたことそのものは、本当に胸の痛む思いもいたしております。

 ただ、全体のことをちょっと申し上げますと、国民健康保険そのものの構造的な問題というのがあることはもうよく御承知だと思うんです。つまりは、比較的所得の少ない人あるいは職業についていない人が多く入っておられるわけです。

 先ほど、いわゆる一般会計からの繰り入れということを言われましたけれども、一般会計というのは自治体の一般会計ですから、自治体で納税した人のそれの一部を国保に入れるということに、私はそれを否定しているわけではありません。否定しているわけではありませんが、例えば、サラリーマンの人は自分の健康保険料も取られた中で税金を払っているわけですので、そういったことを含めて、この国保という制度が、先ほど枝野官房長官も別の機会にあれしましたが、かつては、個人で営業しているお店とか農業とかそういうことで、それなりの収入がある人を前提として組まれた制度が、今やそういう制度の実態が変わってきたということを踏まえて、今後の国保制度はどうあるべきかということで、先ほど来の厚労大臣の見解も示されているわけです。

 だから、私は、決して消極的なことを申し上げているわけではなくて、どうか、こういう問題も含めて社会保障のあり方という大きな土俵の中でぜひ議論をしていただきたい、こう思っております。

中井委員長 最後のまとめを志位君、時間が過ぎていますから。

志位委員 今、構造的な問題ということをおっしゃいましたけれども、国保の最大の構造的な問題は、一九八四年には国庫負担が五〇%であったのが、今は二四%まで減らされた。ここにこそ最大の構造問題があるんですよ。

 そして、民主党は、政権をとったら国庫負担を九千億ふやすと言ってきたんですよ、そして保険料を下げると言ってきたんですよ。それがあなた方のマニフェストに書いてあったんですよ。それをほうり投げて、この高過ぎる国保料をさらにもっと値上げする、こんな通達を平然と出す、こういうやり方はもう絶対に改めるべきだということを最後に強く求めて、私の質問といたします。

中井委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に富田茂之君を指名いたします。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 新燃岳の引き続く噴火や火山灰、あるいは日本各地で報じられる豪雪、そして鳥インフルエンザの拡大など、さまざまに被害に遭われた皆さんには心からお見舞い申し上げますとともに、また政府にあっては、迅速でそして手厚い対策をぜひお願い申し上げるものです。

 私の持ち時間が三十分ですので、単刀直入に、私の通告してございます質問に移らせていただきます。

 菅総理は、所信表明演説でも盛んに平成の開国ということを述べられましたが、私は、実は、もし、この今という時代を考えるに当たって、最も何が私どもの国の発展やあるいは安定の制約要因であるかといえば、一言で少子高齢社会。高齢化は、平和の配当であると思います。戦後六十五年、一貫して平和であれたことの配当は、御長命な御高齢者を私どもの社会が世界一として抱えることになりましたが、一方の少子化という問題は、実は政治の無策によって、日本は著しく少子化が進んでおるというふうに考えます。

 そうした中にあって、社民党も、与党でありました時代に、子供の政策に力を入れようということで子ども手当を提案し、御一緒に去年までは賛成をいたしておりました。しかし、今年の予算を見ますと、これは、もう他の委員も御質疑の中で述べられておりますが、果たして本当に子供の育ちの支援になっているか、あるいは私たちの社会の抱える困難を改善していけるものになっているかというと、私は、残念ながらそうではないんだと思います。

 冒頭、菅総理にお伺いいたしますが、菅総理が盛んにおっしゃる、江戸の末期から明治の初めにかけて、総理の言う第一の開国ですね、黒船がやってきてという時代に、諸外国から日本にやってきた外国の方々、例えば大森貝塚を発見したモースとか、あるいは英国人の女性の紀行家、旅行していろいろな見聞記を書くイザベラ・バードなどがこの日本という国をどう見たか、とりわけ日本における子供をどう見たかということについて、質問外、通告外ですが、もし何か御存じであれば菅総理にお願いをしたい。

 首をかしげられましたので、そうですよね、通告していないから。実は、その当時、日本はヨーロッパから見ても、子供を本当に大事にする国だとだれもが思ったんですね。例えば、男性が小さな子をひざに抱いて遊ばす光景、日本各地で見られたこと。その文化や風景や、子育てのその姿そのものが西洋の人々を感動させたといろいろなところに書いてあります。翻って、現在の我が国はどうであるか。この前の予算委員会でも取り上げましたが、児童虐待は後を絶たない。本当に悲しい国になってしまいました。

 総理は、最小不幸社会とおっしゃったけれども、私はもっとポジティブに、例えば、イギリスは二〇〇七年に、イギリスに暮らす子供たちが世界一幸せであるようにというふうにブレア政権ではメッセージを出しました。子供たちに、幸せにしたい、幸せになってとメッセージする方が、最小不幸社会と言われるよりも私はうんと伝わると思います。

 そして今回、二万円、三歳未満、そしてそれ以降は一万三千円の現状というふうになさいましたが、総理はここにはどんなメッセージを込めたのでしょう。一問、お伺いいたします。

菅内閣総理大臣 今、日本が抱えている最大の問題が少子化というようにおっしゃったことは、私も基本的には同感です。別の表現をしますと、人口減少というのは、多分、日本の歴史の中で初めてのことではないか。こういうことを考えますと、その最大の原因といいましょうか、減少は少子化があるわけでありまして、そういう点で、子供を産み育てやすい社会をもっと早い時点から考えて、政策が必要であったと反省も含めて考えております。

 今回、もともと子ども手当については、連立政権として御一緒した中で、そういうことも含めて、子供に対する、育てるための広い意味での負担をある程度社会的にカバーしていこう、そういう考え方で生まれた制度であることは、御一緒でありましたのでよく御理解をいただいていると思います。

 その上で、今回、三歳未満については一万三千円から二万円に増額するという形の改善といいましょうか、進展を提案いたしております。この考え方は、一般的に、子供さんがゼロ歳から三歳というのは、親御さんも二十代あるいは三十代、比較的若いということで、収入も比較的低い。しかし一方では、子供が小さいだけに、なかなか共稼ぎが今の社会では難しくて、出産、育児の負担感が比較的高くなる、こういうことも考えたこと。さらには、児童手当制度当時と比べた負担増にはならないようにという、このこともあわせて考えた中で七千円引き上げて二万円といたしたところであります。

阿部委員 お示しいたしましたのは、去年の段階、そしてことしの段階の子ども手当の成り立ちでありますが、民主党の皆さんは、児童手当の部分をあんこにして、その周りに子ども手当を乗せたとおっしゃいますが、そもそもこの図でも問題があるわけです。地方負担ももとはないはずでありました。

 今、イチゴのショートケーキみたいに上に乗せた三歳前の二万円というのは、菅総理は、短絡的に言うと、若い世代は子供が小さくてなかなか働けないとおっしゃいましたが、この政権の目指すべきものは、そうした世代が働けるように応援する、すなわち、ずばり言うと保育の充実に上乗せ部分はかけるべきであります。もしそのお金がここに使えるのであればであります。

 保育の充実にするか子供への現金給付にするかは、実は前政権の中でも随分論じられておったと思います。前政権の時代、「子どもと家族を応援する日本」という中では、これも超党派でいろいろな意見を交わした結果、まず今、菅総理のおっしゃったように、若い世代が大変だ、働けるように、所得をふやしてもらえるようにするために現物給付を急ぐべきだという結論でありました。

 私は、一年目、現金給付で一万三千円にした、これはいろいろなことを言われますが、やはり国民に理解してもらって、日本で育つ子を幸せにするためにぜひやっていただきたい。ただ、しかし、その次のステップに、さらに、財源のさまざまな問題を抱えながら、ここに上乗せを三歳前にしていくということは、まず一つ、国民の納得、理解が得られない、政策的に有効性が問われるという二つの大きな問題があると思います。

 おまけに、果たして、地方も反対していらっしゃいますけれども、ことしはこれでやったとして、引き続く年度はどうなるか。これは、子ども・子育て新システムというのを政権は出しておられます。これは見ていただければわかりますように、現金給付と現物給付を、主には市町村の、地域の裁量で配分というふうに御説明があります。

 もし、これをこのままとると、現物給付というのは保育ですね、現金給付は今のような子ども手当ですね。これすらも地域で勝手に自分たちの独自の配分をしていいというお考えなのでしょうか。もしそうだったら、ことしこれだけ無理をして、無理無理をして現金給付分をかき集め、そして来年、再来年はどうなるかわからないという持続性のない政策になりますが、菅総理、いかがでしょう。

菅内閣総理大臣 まず、子ども手当について、小さい子供を持たれている親御さんについて、現物給付、つまりは、保育といったところにもっと力を入れるべきだ、私はその基本的考え方は全く賛成であります。そういう意味では、特命チームをつくって、待機児童をゼロにする、さらに、今御指摘のあった子ども・子育て新システムというものも、そういうものに基本的にはバランスよく力を入れていこう、そういう考えになっております。

 ただ、三歳児までというのは、先ほど二つのことを申し上げましたが、二つ目の、従来の児童手当制度当時と比べて一部控除がなくなりますので、この世代について負担が増大しないように、そういうことの配慮からしたものでありまして、基本的には、今、阿部さんのおっしゃるように、しっかりと若いお母さん、お父さんが子供さんを保育所に預けて働けるようにしていきたい、このように考えております。

阿部委員 確かに、新政権では、前政権のとっておられた年少の扶養控除、小さいお子さんを育てている親御さんの扶養控除を外して現金給付に変えましたので、今総理のおっしゃったような三歳前は、逆に、恐らく年収六百万から八百万世帯では手取りが少なくなってしまうということも再来年には随分起こってくるように思いますが、逆に、もしそれを踏まえたとしても、やはり多くのお母さん、子育て中の声は、先に同じ財源があるなら保育園をもっとスピードアップして充実してほしい、これは都市部ですね。あるいは、田舎等々では、孤立して育児していることを何とか地域で支えるような、地域の体制にかけるお金にしてほしいという声の方が圧倒的に多いと思います。

 私は、本当に、この政権が始まって、どこまでそういうフィードバックをなさったのか、前政権とのつじつま合わせの兼ね合わせだけで政策を打つのはやはり本当の新政権らしさがないと思います。私どもは……(発言する者あり)そうです。今おっしゃったように、マニフェストの到達のみにこだわるとこういうことになる。本当の子供政策を超党派で話し合ったらいいんです。子供は社会の宝、国の宝だからです。この点をぜひ菅総理にはお願いしたい。

 次に、社民党からの提案です。

 社民党は、この間、一万三千円の試算根拠は、お示しいたしましたように、ゼロから十五歳の子供に実際かかっている食費と被服費の平均値が月額一万三千円。説明する時間がないので見ていただきたいですが、よく衣食足りて礼節を知ると言います。この衣と食、着るものと食べ物の部分の平均額が一万三千円です。ほかに、教育費として下に書いてございますものを含めると、二万五千円とか六千円になってまいりますが、これは現物給付で、保育やさまざまなサービスとして出していく、特に困った人に手厚く出していく。私は、国民への説明が足りないんだと思います。何を合意点にするかが足りないんだと思います。

 社民党は、先ほど新システムの中でどうなるのというのに総理はお答えにならなかったけれども、新システムが発足しようと何しようと、一万三千円の現金給付は、全額国の財源でやるのであればやるべしという、いつまでも地方財源を当てにしたり、なぜなら、地方で充実させるべき保育がおくれてくるからであります。

 時間の制約で、もし次の質問と一緒に答えていただければありがたいですが、総理は、タイガーマスク現象あるいは運動と呼ばれるものをどう受けとめておられるか。私は、もし総理から、この国の大事な子供たちを、自分がみずから、総理大臣菅直人が守り抜くぞとメッセージすれば、伊達直人は菅直人であったというくらいに思っています。

 なぜなら、日本の国民の多くが、先ほど、モースが明治の初めに見た日本の光景、子供を大事にしたい、社会で守ってあげたいという根っこは持っているんだと思います。その根っこを持っている日本の国の国民の気持ちをどこに向けていくのか、ここがやはり圧倒的にメッセージ力が不足しておられる。その結果、逆に言えば、子ども手当が何であり、何から充実すべきかが飛んでしまっています。

 そして今、火急にやっていただきたいことがあります。実は、消えた子供たちというのがあります。住民票を御自分の住んでいるところに残したまま所在不明となる子供たちです。あの大阪の虐待事件の楓ちゃんや桜子ちゃん、あの二人がそうでありました。大阪に住民票は残ったまま、発見された場所は違う場所でありました。

 今、こういう子供たちが、毎日新聞の調査だけでも、少なくても三百五十五人、全国に広げれば一千七百人いるのではないか。あるいは、小中学校で一年以上学校に来ていなくて、その安否が確認されない子もまた同じように数百人、三百三十三人でしょうか、これも調査は不十分です。

 まず、政権としては、最もSOSを出したくて出せない子供たちのところに私は手を差し伸べるべきだと思うし、そのために、消えた子供たちの実態調査、これは市町村にお願いするしかないわけですが、これをやっていただきたい。そして、子供一人一人の台帳をつくっていただきたい。子供は、生まれてすぐ出生届を出して住民票に入る、だけれども、その後、三、四カ月健診で来ない、予防接種のときもどうなったかわからない、何か御病気に遭って医療機関かもしれない、情報がばらばらに管理されています。一人の子の情報をパーソナルサポートするための子供台帳、後ろで消えた高齢者と言っていただいていますが、御高齢者の問題と同様に、ある意味では守っていかねばならない。そして、子供たちがSOSを出せないということを本当に強く受けとめて、消えた子供たちの実態調査、やればできます、やっていただきたいが、いかがでしょう、菅総理。

中井委員長 菅直人内閣総理大臣、三つの点、御質問がありましたから、お答えください。

菅内閣総理大臣 まず、タイガーマスク運動ということについて、私は、多くの国民がやはり何らかの形で、困っている子供だけには限りません、いろいろな形で困っている人に対して手を差し伸べたいという思いを持っておられることの一つのあらわれだと思っております。そして、このことはよく、寄附に関して、アメリカなどに比べて、日本では非常に一般的に寄附が少ないということが言われます。それを、ちょうどある番組をテレビで見ておりましたら、なかなか寄附をするような場がないとか、あるいは寄附してもそれが本当にちゃんとした目的に使われるのか確かでない、こういうこともあります。

 そこで、御承知のように、私たちとしては、新しい公共という概念の中で、NPOに対しての寄附の控除をしっかりとやっていこう、そういう税制改正を出すのと並行して、このNPO法人が、今認定NPOが非常に限定されているものを一定程度の条件のもとにもっと大きく拡大していこう、つまりは、官のやること、あるいは私企業がやることの間に、NPO的な新しい公共として受け持つべき分野がもっともっと大きい位置にそのエネルギーはあるはずだということで、今進めているところであります。

 それに加えて、子供台帳についての御提案でありました。確かに、消えた御老人の話はかなり注目されておりますが、今お聞きをして、子供が住民票と違うところにいる、ということは、多分学校に行かないままにある意味での行方不明になっている、こういうことについての御指摘、私としても初めて指摘を受けて気がつかせてもらいました。

 そういう点で、あるいはこれは、学校というものとの連携なども含め、自治体と連携して行うことだと思いますが、ぜひ前向きに検討してみたい、このように考えております。

 新システムについて、いろいろな将来の議論をいたしていることは知っておりますけれども、まだ具体的な形で固まっているというふうには承知をいたしておりません。この問題も、広い意味でといいましょうか、社会保障の中心的な課題の一つでもありますので、これから社会保障制度についての超党派的御議論の中でもぜひ議論に参加をしていただければと思っております。

阿部委員 総理、それが何でもかんでも社会保障システム論議に丸投げするなと言われているところなんですね。

 私は、せめて民主党政権が、上乗せは必要ないと思っていますよ、一万三千円でやり始めて、この二年しかなくて、その次どうなっちゃうかわからないと言われたら、お母さんたち、こんな、一体何なのと思いますよ。それは、結果的に修正されることはあり得るでしょう。でも、せめて総理、最初には一万三千円の給付だけは守りますとか言わないと、それはマニフェストでうたった最初のスタートがもうなくなっちゃうんですよ。全額国庫負担で一万三千円現金給付しますと始めたんですから、そこまで引っ込まないでいただきたいんですね。逆に、そうでないと論議の次が成り立たないんです、あいまいにされて。私どもは試算根拠を出しましたから、しっかり総理は見ていただいて、やっていただきたい。そして、おまけに、これ以上の増額、今のところできまいと私が思うのは、実は、財源のために、子供のない世帯、それも必ずしも所得が多くない世帯にもろに負担をかけるからなんですね。

 結局、今度、ショートケーキのイチゴの部分を乗せるためにやったことは、所得税の見直しなんですけれども、このために、ここに書いてございます成年扶養控除というものが、ちょうど真ん中の部分、五百二十万人に当たる二十三歳から六十九歳までの方が何らかの理由で所得が十分じゃなく御家族のどなたかの扶養になっている場合に、これを所得にして四百万くらい、収入にすると五百六十八万からだんだんなくしていきましょうということなんですね。

 総理、次のページも見ていただきたいが、私は、去年、おととしの税制改正でも、では、何でここに五百二十万人も本来働いていていいはずの人たちが働けない、あるいは働くところに到達できない状態にいるのか、このことに手当てしないと、簡単に控除を外して、今ある最低の家族の守りを外していいんですかと伺ったと思うんです。でも、ことしはまたここを縮小していきたい、廃止していきたいということでした。

 そもそも、年収で五百六十八万、所得で四百万は、総理の言葉で言うと、中よりかなり上とおっしゃいましたか、そういう表現をとっておられますよ、収入にして。本当でしょうか。私は、一家を、平均的な所得を相当に上回る水準、五百六十八万、所得で四百万の世帯を相当に上回ると言って、そこで例えば、引きこもっているお子さんもいるでしょう、あるいは定職がなかなか見つからない人もいるでしょう、さまざまな要因があって家族という形態の中で暮らしている人たちを全くはしごを外していいものかどうか、これが一点です。

 おととしの審議の折には、そういう人には、さまざまな就労支援、パーソナルサポートで就労支援をやるということでありました。でも、やっとモデル事業で五カ所始まり、今度の予算で十九カ所。これは、五百二十万人中少なく見ても三百万人は、そうした働いていない、でも働く可能性は持っている、だったら支援が必要な、普通は物をやるとき、支援をきちんと一方でやって、そして税の見直しを行うとやらなければ、この層はみんな、まかり間違うと生活保護とか他の形になってしまいますよ。これが果たして、生活再建を第一とする私ども社民党と三党連立合意に成り立った民主党政権のやることなのかどうか。

 総理、二点お願いします。

野田国務大臣 阿部委員の御指摘のとおり、今般、税制改正の中で成年扶養控除の見直しを行わせていただくこととなりました。その中身は、委員からも御指摘がございましたけれども、現在は、いわゆる控除の対象は五百二十万人ほどいらっしゃいます。ただ、その中で、どうしても自立して生活することが困難だと思われる方は引き続き控除の対象となります。心身に障害を持っていらっしゃる方であるとか、学生であるとか、六十五歳以上の高齢者であるとか、こういう皆さんについての控除は引き続き続くことになります。

 加えて、あとは所得制限のお話もされました。その高さをどう見るかはいろいろあるかと思いますけれども、所得で四百万、これは給与収入でいうと五百六十八万でございます。ちなみに、パートを除く労働者の平均給与額は四百七十八万ということでございますので、こういう平均給与を上回る方に御負担をいただくというような措置をとらせていただきました。それによって対象から外れるという方は、およそ百万人ほどではないかなというふうに思います。

阿部委員 野田大臣は正直なので、およそとおっしゃいましたが、調べていないからわからないんですよね。

 五百二十万人のプロフィールを調べてくれ、そうしたら、総務省に調査して年齢とか年収分析はやられましたよ。私が言うのは、今、野田さんがおっしゃった、例えば学生で、これも学生もとてもコアな学生。短期間学校に行っていて、しかし、それが自分のキャリアアップにつながるような学生は含まれない。それから、さっき言ったフリーターとかで、しかし、何とかスキルアップしたいとやっている最中の人も含まれない。一体どんな人たちがこの五百二十万人の中にいるのか、きちんと調査して、その人たちがきちんと働けるための施策を打って。

 今やられたことは、これとこれとこれは残しましょう、しかしその他は働けるはずだといって、そこで終わっているんですね。はずだで終われば苦労はないんです。現実には、働いていないからこういう形になるわけです。

 私は、要因はさまざまだと思います。世で言う引きこもりもあれば、どなたか御家族の介護をしているキーパーソンかもしれませんよ。社会的ケアシステムが余りに劣った日本では、ここにこれだけの人がたまり込んでいる。総理は、パーソナルサポートでこれからやるとおっしゃいましたけれども、果たして本当にその体制は進んでいるんですか。何人がそこでサポートできますか。

 おまけに、最後に一つだけ。

 ジョブカードというのも見直すとおっしゃいますが、私は、ジョブカードは地域で頑張っている商工会議所などのお力をもっとかりた方がいいと思いますよ。そうやってみんなで支えていって、仕事をしてもらう。これが新政権の姿でなければならないと思いますが、総理どうですか、最後に。ごめんなさい、一つしかもう時間がないと思います。

菅内閣総理大臣 今、野田大臣からもありましたように、この五百万を超える皆さんの中で、本当に控除がなくなる対象者は百万人程度と見ておりまして、その上で、パーソナルサポートについて、いろいろなサポートがありますけれども、雇用について特に重要だと考えております。これは、新卒者の雇用というだけでなく、今、求職者支援という制度も改めて恒久化いたしますし、また、自殺対策あるいは貧困対策、こういう全体の皆さんを包摂していこうという特命チームをつくりました。

 そういう意味で、これからそういう分野に対して、よりしっかりサポートしていきたい、そういう施策、まだ十分ではない部分もありますけれども、少なくともそういう姿勢で臨んでまいりたい、こう思っております。

阿部委員 十分でないとき、はしごを外せば何が起こるかです。総理、よく考えて善処していただきたいと思います。

 終わらせていただきます。

中井委員長 これにて阿部さんの質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党の江田憲司でございます。

 総理は、社会保障と税の一体改革を提起されました。我々みんなの党も、社会保障制度改革、財政再建の重要性は人一倍認識をしているつもりでございますし、そのためのプランも出しておるところでございます。

 しかしながら、我々みんなの党は、増税の前にやるべきことがあるだろう、これが一貫した立場でございます。そして、私が記憶しているところによりますと、民主党さん、民主党政権も、実はちょっと前までは我々と方向性が一緒だったのではないかと思いますので、その点をちょっと確認したいと思います。

 ちょっとパネルをごらんいただきたいんです。

 民主党マニフェスト二〇〇九では、税金の無駄遣いを徹底的になくし、国民生活の立て直しに使う、それが民主党の政権交代なんだと高らかにうたい上げております。

 そして、つい一年前のこの予算委員会の菅副総理の御答弁でございますが、四年間、消費税の引き上げはいたしませんと。そして、これは有名な言葉になりましたけれども、逆立ちしても鼻血も出ないほど完全に無駄をなくした段階で議論を行い、必要であれば必要な措置をとる、こう明確におっしゃっているわけでございます。

 ただ、私が耳を疑いましたのは、みんなの党の渡辺代表の質疑に対する答弁で、これは二十七日ですけれども、無駄というのは、永遠に新たな無駄が生まれるんだ、そして、略しますけれども、無駄がゼロというのがどういう状況なのか、よく理解できませんと。

 私は、これを聞いて耳を疑ったわけでございます。完全に無駄をなくす、一切なくすとおっしゃっていた総理が、その完全に無駄がなくなるという状況が理解できない。これは、総理、お立場を変えたということでよろしゅうございますか。

菅内閣総理大臣 言葉を素直に理解していただければ、御理解いただけると思います。変えたわけではありません。つまり、逆立ちしても鼻血の出ないほど完全に無駄をなくしたと言えるところまでやろう、つまり、徹底的に無駄をなくそうということを申し上げてきたわけで、それに対して、せんだっての渡辺代表に申し上げたのは、そのことを変えたわけではありません。

 ただ、無駄というのは、あらゆる政策を進める段階で、新たにやっているうちに、当初はよくても、だんだんルーズになったり無駄が生じたりするわけですから、常に、ある意味で永遠に無駄をなくする活動が必要だと。行政改革だってそうだと思います。永遠にそういうものは必要なので、もうこれで無駄の削減は終わったというふうに、静止的に、スタティックに決められるときはない、無限にそういう努力は続けなければならないんだということを申し上げたわけで、考え方を変えたわけでは全くありません。

江田(憲)委員 今の総理の御説明は、わからないわけでもありません。しかし、それは一年前、総理がこういう、鼻血も出ないほどと言ったときも、状況は全然変わっていないわけですよ、そういう認識を持たれているとすれば。でも、それにもかかわらず、その当時は、一切なくす、完全に無駄をなくすとおっしゃっていたわけで、そこはやはり与謝野さんが閣僚に登用をされた効果かなと思うわけです。

 では、もう一点。

 一年前、消費税は四年間上げませんという公約は、これはもう撤回されたわけですね。

菅内閣総理大臣 四年間というのは、衆議院の任期の四年間ということでありまして、私たちが約束しているのは、そうした消費税など大きな税制改正、消費税を引き上げるといったときには、必ず、それよりも前に、最終的に、国民の皆さんにそれについて信を問う、そのことを行った上でやるということを申し上げたわけで、それは任期の終わった後に実施することにしたい、そういう展望の中で申し上げた言葉であります。

江田(憲)委員 では、今の理解では、二〇一三年八月に四年が終わりますが、それ以前には増税されない、こういうことですね。

菅内閣総理大臣 基本的な考え方としてはそういう設計図ですが、今、与野党間の協議がまだ始まっておりませんけれども、与野党でもそうしたことを含めた議論をしていきたい。つまりは、私の考えだけで物事が決められる問題と、この問題は中期、長期の財政の問題も含めてやりますので、基本的考え方は今申し上げたとおりです。

江田(憲)委員 わかりました。ちょっと私の認識が間違っていました。二〇一二年度には税制改革、法律の附則に法制上の措置をとるとあるから、二〇一二年度にやられると思っていましたけれども、それは、四年間は上げないというのは基本だというふうに理解をいたしました。

 それでは、総理も、もう徹底的に無駄をなくすんだ、国会議員が身を切る覚悟で臨まなきゃいかぬのだと施政方針でもおっしゃっておりますので、ちょっと具体的にただしてまいりたいと思います。

 我々は、なぜ増税の前にやるべきことがあるだろうと言っているかと申しますと、増税の前にしっかりとした手順、プロセスを踏まないと国民の理解も得られない、かつ、この国もおかしくなってしまう、そう思うからでございます。

 そういう意味で、無駄を徹底的になくす、国会議員は身を切るという意味で、総理、一点最初にお聞きしますけれども、総理大臣、国会議員の給料、ボーナスカットというのも絶対やらなきゃいかぬと我々みんなの党は思っておりますが、私の知るところ、総理の月給、歳費は月々二百六万円、この前、たった五千円しかカットされなかった、これは本当ですか。

菅内閣総理大臣 どの部分を指摘されているのかわかりませんが、基本的に全部の閣僚が給与一割カットを従来からいたしております。

江田(憲)委員 その一割カットというのは、これは自民党政権時代からずっとやっている話なんですよ。あなたが努力したわけじゃないんです。あなたが努力したのは、二百六万円の月給を五千円カットしただけなんですよ。閣僚は、百五十万円以上もらっているのに四千円カット、これは事実ですから。こんなことで、総理、国民に負担をお願いできるんですか。

中井委員長 江田さん、少し、その五千、四千円というのはどういうことか説明を。

江田(憲)委員 人事院勧告で一・五%削減が勧告されて、公務員はそうなりました。しかし、閣僚、特別職は月給部分で〇・二%カット、ボーナスで〇・一五カ月分カットで、トータル一・五%カット、いずれにせよ一・五%カットなんですが、月給に直せば五千円なんですよ。これは総務省が発表している数字ですから。そんなことで国民に負担をお願いできるとお思いですかとお聞きしているんです。

菅内閣総理大臣 今の御指摘は、いわゆる公務員給与と横並び、私たちも広い意味では公務員でありますから、そういう意味でのカットであって、今御指摘をされているように、まさに国民の皆さんに、いろいろな面で、ある意味厳しいことをお願いしなきゃいけないときに対して、我々が身を切るということとは若干違うと思っております。

 その上で申し上げれば、確かに従来から続いてきたことでありますが、我が内閣においても一割の歳費のカットということを継続していると同時に、私としては、何らかの提案をするときには、少なくとも閣僚についてはもう少し、具体的な数字をここの場で申し上げることは控えますけれども、さらにそうした歳費のカットが必要である、このように思っておりますが、それは何らかのことを提案するときには必ずそうしたい、こう思っております。

江田(憲)委員 人勧というのは一般職公務員が対象なんですよ、特別職は準じる必要がないんです。そんな法律の義務づけもないんです。ですから、従来も自主的に一割返上をしているんですよ。ですから、これだけ財政事情が厳しいといって、増税をされようというのなら、やはり五千円カットは国民は理解できないと。まあいいです。

 次に、国会議員の定数削減。これについては、昨年秋の所信表明で、明確に総理は、年末までに方針を取りまとめますと明言されました。どういう方針でしょうか。

菅内閣総理大臣 既に民主党としては幾つかの考え方を提示いたしております。衆議院の定数を八十名、参議院については四十名程度の削減という方向性を打ち出しております。

 ただ、御承知のように、この問題は、やはり内閣が提案して行うという性質のものではなくて、さらに加えて言えば、いわゆる一票の格差の問題、つまりは選挙制度の問題とも関係するわけでありますから、基本的な考え方は、党としては持っており、既に表明をいたしておりますけれども、それを進めるに当たっては、各党各会派間で御協議をいただいて成案を得ていきたい、このように考えています。

江田(憲)委員 それは、確認ですが、これが民主党の一致した方針なんですね。

菅内閣総理大臣 そのとおりです。

江田(憲)委員 わかりました。

 それでは、そのときに、同時に、企業・団体献金の禁止についても年内にまとめると明言されていますが、その方針を教えてください。

菅内閣総理大臣 これも、既に我が党の考え方は申し上げているところでありますけれども、企業・団体献金の全面禁止、そしてその場合には三年間の経過措置をつけ、そしてその間に個人献金がより広がるような手だてをとっていく、こういうことを我が党の方針としては決めておりまして、これもぜひ政党間協議の中で進めていきたいと思っております。

江田(憲)委員 いや、それは二〇〇九年のマニフェストで書いてあることなんですよ。それをあえて、去年の秋、所信表明演説で、年内に企業・団体献金の禁止に方針をまとめるということは、いつまでにどういう形で、こういう方針だと私は理解しているんですけれども、それを教えてください。

菅内閣総理大臣 内容的に、先ほど申し上げたように方向性を出しておりますし、今、法律の案づくりもやっておりまして、ほぼまとまりつつあります。

 ただ、先ほど来申し上げているように、これはやはり各政党間の協議の上で、閣法として出すには余りふさわしくないものだと思いますので……(江田(憲)委員「民主党のを聞いている、民主党の方針」と呼ぶ)ですから、民主党の方針は先ほど言っています。(江田(憲)委員「いつまでですか、それは」と呼ぶ)いや、もう既に方針は……

中井委員長 済みません、菅さん、ちょっと。

 もし民主党の方針なら、政調会長、玄葉君でございますので。いいですか。(江田(憲)委員「いいですよ」と呼ぶ)

 幹事長じゃないとわからないんだそうです。

 それでは、代表、もう少し答弁してください。

菅内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、私が御説明したように、企業・団体献金は禁止、そしてその場合には三年の経過措置の中で、一定の経過措置を設けて、その間に個人献金を充実できるようにしていく、そういう法案については今準備しています。

 ですから、それがいつ施行できるか云々は、それは法律が与野党で、合意された中で出さなければいけないわけですから、これは党の方で出していただくことになります。

江田(憲)委員 法案を準備されていると言うから、法案というのは普通、何年に禁止すると書くのが常識なんです、だから聞いている。まあいいですよ、決めていないんでしょう。(発言する者あり)では、決めているなら言ってください。いつまで。

枝野国務大臣 マニフェストでお示ししたとおり、施行の三年後から禁止をするということの法案を準備して、いつでも提出できる状況を整えておりますが、まさに各党間で合意をしないと、これは一党だけで強行的に決めるような話ではございませんので、各党の御意見も踏まえた上で国会の中で議論を進めていきたいと党の方から報告を受けております。

江田(憲)委員 わかりました。

 このパネルをごらんいただくとわかるんですが、今の財政危機、我々も認識しております。これは例えると、倒産の危機に瀕している会社にでも例えられましょうか。これはもう国でも、国家経営でも企業経営でも同じなんですけれども、まず社長や役員が身を切る、国でいえば、総理、閣僚、国会議員が身を切る、これが大前提ですね。そうじゃないと、従業員、社員に無理なことは言えない。公務員にも無理なことは言えない。だから、私は、国会議員給料三割カット、ボーナス五割カット、みんなの党はこれまた引き続き出しますから、ぜひ賛成していただきたいと思うんですね。

 そして次に、従業員、公務員ですよ。今、JALさんが会社更生中です。一万六千人の社員を削減する。これは四万八千の三分の一削減。パイロット、客室乗務員、二割、三割給与カットですよ。

 そこで、私がこの場で何度も問いただしてまいりました国家公務員の人件費二割カット、これはもうアバウトな、定性的な説明は要らないですよ。二〇一三年八月までにやるとおっしゃるんですから、それまでに具体的にどうやってこの五・三兆円のうちの一・一兆円を削減するのか。今は、今までたった五分の一の二千数百億円しか削減しておりません。あと二年半、法律を策定する作業、成立させる時間も要ります。具体的な工程表をここで示してください。

片山国務大臣 定性的なことはもう申し上げません。

 二割カットの大きな要素でありますのは単価でありまして、単価、給与の水準でありますが、これを中心にして二割カットを実現させようということで、先般、官房長官を議長とします関係閣僚会議を開催しまして、具体的な今後の進め方などについて話し合い、合意を得たところです。その後、閣僚懇談会で、総理からもその実現方について私を含めた関係閣僚に御指示があったところであります。

 これについては、鋭意、今、特に単価の部分について内容を詰める作業を始めておりまして、これを今通常国会に出したいという基本方針のもとでやっております。その際に、法案を提出する際に、工程表といいますか、その要素について、どういうものでこの二割カットを実現するかという全体像をできる限り明らかにしたいと考えております。

江田(憲)委員 それでは確認ですが、労働基本権を付与して、労使交渉で給与改定をする、これはぜひやってほしいんですけれども、私にはどうしても、公務員の労働組合に支援をされている民主党政権が、労使交渉でそういう給与の単価を下げられるのか、給与を引き下げられるのか、疑問に思っておりますので、しっかりやるという決意表明をちょっと総理にしていただきたいんです。

菅内閣総理大臣 今まさに片山大臣から話がありましたように、現在のルールでは人事院勧告というものがベースになっておりますので、そういう形ではなく、ある意味での労使交渉で物事が決められる、そういう制度的な改革を行った上で、まさにそうした協議を行うことになります。

 そのときには、これはもちろん国民的な課題でもありますから、公務員の皆さんもその国民の一人として、もちろん私たち国会議員もそうでありますが、しっかりとその立場を理解いただいて、協力いただけるように全力を挙げることは当然でありますし、そこは国民全体の中で御協力をいただけるもの、こう考えております。

江田(憲)委員 今お聞きになったとおりでございますので、これがしっかりとこれまでと違って実行されるように、私もこれからもしっかりと監視をしてまいりたいと思います。

 それでは、さっき給料の単価のことをおっしゃいましたが、労働基本権付与のメーンの目的は、これは人員整理でありますね。人件費というのは給与掛ける人数ですから、給与だけ減らしてもだめです。JALさんも一万六千人の削減をされている。

 この国家公務員の人員削減、これに対する決意を総理から再び聞きたいと思います。

片山国務大臣 人員削減につきましては、基本は仕事を減らすことでありまして、これを徹底したいと思っております。

 それからもう一つは、例の地方出先機関改革などによって、これはブロック単位の機関を準備の整ったところから順次移管してまいりたいと思いますけれども、それに応じてかなりのスリム化ができると思いますし、あと、ブロック単位でなくても、具体の事務権限の移譲に伴いましても、国家公務員のスリム化は順次図っていきたいと考えております。

江田(憲)委員 いや、片山大臣、それは違うんじゃないですか。

 私は、年末、報道を見てびっくりしたんですよ。出先機関の地方移管、これはここでも鳩山前首相が私の質問に答えて、国家公務員人件費二割カットのメーンは出先機関の地方移管なんだと明確におっしゃいましたよ。しかし、十二月二十八日閣議決定された地域主権戦略会議のアクション・プランでは、この出先機関の事務事業の移譲は二〇一四年度中に行うと書いてあるんですよ。

 できないじゃないですか。任期切れが二〇一三年八月なんですよ。二割削減のメーンだとおっしゃっていた出先機関改革は二〇一四年に先送りして、どうして二割カットができるのか、もう一度よく説明をしていただけませんか。

片山国務大臣 それは多少説明が要るのでありますけれども、出先機関改革は二つの要素がありまして、一つは地方整備局とかそれから農政局のようなブロック単位の機関をどうするのかという話で、これはさっき言いましたように準備の整った地方から順次移管していきたい。

 これには多少時間がかかります。といいますのは、大勢の職員を引き受ける体制をしっかりしなきゃいけませんので、今の現行法ではできませんので、その法律をどういうふうにするのかということで、これは、今もう協議を始めたんですけれども、準備を始めてこれの法案を出すのが二十四年の通常国会になります。それからスケジュールを追っていきますと二十六年にならざるを得ないということで、これは先送りではなくて、ちゃんとした体制を整えるためにはそれぐらいの期間が必要だということです。

 それとは別途、個々の事務ないし場合によっては機関の移譲もあるかもしれません、これはもう順次やっていくことにしておりまして、先般の地域主権戦略会議でこれを推進する体制をつくることをもう決めました。今、人選をやっているところであります。

 いずれにしても、その推進母体には私がトップになりまして、個別の案件について、難題、問題を解消する、そして移管を進めるということにしたいと考えているところです。

江田(憲)委員 いや、今、難しいから、二〇一四年度中にやると閣議決定に書いてあるわけですよ。それで前倒しで何か移管をして、人員削減するなんて全然書いてないんですよ、閣議決定は。

 だから、申しわけないですけれども、これはもうはっきり言って旗をおろされた方がいいと思います。国民を欺いた、だからもうできません、こう言った方がまだ潔いと思いますね。くどくど言うのもあれですけれども、これはもう破綻をしていると思います。

 それではもう一点。皆さん方を応援されている地方公務員の人件費カットというのは、民主党政権はどうされるんですか。準ずるんですか、国家公務員に。

片山国務大臣 地方公務員の給与は、国家公務員の給与をこの国会で法律でもって決めるのと同じ仕組みで、それぞれの自治体の議会で条例で定めることになっております。これが仕組みであります。

 今日までも地方公務員の給与については、それぞれの自治体で、定数の削減でありますとか、それから人事院勧告を上回るカットでありますとか、それをやっております。もちろん全部が全部ではありませんけれども、多くの団体でそれをやっております。

 今後どうなるかということにつきましては、地方公務員の人件費といいますのは、給与水準は地域の民間の給与でありますとか生計費でありますとかと比較するのでありますけれども、大きな要素で国家公務員との比較も出てまいりますから、国家公務員の動向によって地方公務員の給与水準も決まってくる、こういうことになります。

江田(憲)委員 要は、地方の自主性に任せて政権としては何もしないということをおっしゃった。これは、自民党政権時代ですら、国家公務員に地方公務員は準じると、しっかり閣議決定もしてやろうとされておられたわけですから、民主党政権が後退するというのは、私には本当に解せません。

 それでは、この表にありますように、上層部が身を切り、従業員、公務員が身を切ってもまだ足りないんですよ。JALさんは、不採算路線四十五路線を廃止して、あと子会社、これは百十社あったんですけれども、五十七社に削減をしようとしていますね。ジャンボ機みたいなものは全部売り払う。こういった資産売却で負債圧縮、事業の効率化というのをやっているんですけれども、国に直せば、これは行政仕分けであり、埋蔵金の発掘であり、無駄遣いの解消なんですよ。

 そういう意味で、JALさんがやった子会社の売却、これに匹敵するのが独立行政法人の全廃ですね。民主党さんはマニフェストで、全廃を含めて抜本的に見直すと約束をされましたけれども、ちょっとこれは事実だけ答えてください。政権交代時、独立行政法人は幾つで、今現在、独立行政法人は幾つか、事実だけ答えてください。

蓮舫国務大臣 お答えをいたします。

 確かに、マニフェストでは独立行政法人をゼロベースで見直すとさせていただきました。ただ、我々が政権を託していただいたその直後に、何の基準も設けずに独立行政法人を廃止いたしますと、さまざまな分野でこれは当然影響が出てまいりますので、昨年の四月の独立行政法人の事業仕分けを受けまして、百四の独法の八百を超えるすべての事務事業を洗い出しまして、事業仕分けの評価結果に沿って、いわゆる横ぐしを刺して廃止並びに見直しというものをまとめまして、三百五十六の事業を反映させて、去年の十一月に基本方針をおまとめして、十二月に、独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針として講ずべき措置として、これは閣議決定をいたしました。

江田(憲)委員 そんな悠長なことを、一年半も政権交代からたって、こんなことを言っていて本当にいいんですか。

 私が答えましょう。政権交代時には九十八あった独立行政法人は、今は何と六つふえて百四になっておるんですよ。どこが全廃を含めた抜本的見直しなんですか。全く国民の期待を裏切っているじゃないですか。それを一言申し上げておきます。

 それでは、もう時間もありません。最後に、我々は、こういう一、二、三の手順を踏んだ上で、しかし、じゃ、リストラされた会社が製品価格を上げていいか、国が消費税を含む増税をしていいか、そうじゃないと申し上げたいんです。

 そのときの景気の情勢を見ないと、景気が悪いときに商品の価格なんか上げてやったら、逆に売り上げが減って利益が減って、また倒産危機に瀕しちゃう。国もそうですよ。消費税で税収上げをねらってみたら、逆に法人税を中心に税収が落ちて、また財政赤字の幅が広がったということになりかねません。ですから、我々は、まずデフレギャップを解消して経済を成長路線に乗せろ、こう主張しているわけなんですよ、増税をする前にですよ。

 そこで、一つ御認識を聞きたいんですけれども、小泉政権時代、実は基礎的財政収支、一時は二十八兆円の赤字でした。これが二〇〇七年には六兆円に減ったんです。これは、実は当時、増税していませんよ、小泉さんは増税しないと言っていたんですからね。これは名目一・一%の成長があったから、二十兆円以上、財政赤字が改善したんですよ。このとおりじゃないですか。

 もう一つ言えば、クリントン政権が、三千億ドル、三十兆、二十五兆円の赤字を引き継いで、見事に九八年に黒字化したんです。これは、当時五・七%の名目成長があったんです。大統領の教書でもそういう分析をしています。

 ですから、我々は、成長なくして財政再建なしと言っているんです。成長なくして社会保障の財源の調達もなしと言っているんですよ。ですから、増税の前に成長路線に乗せよと言っているんですけれども、この考え方は間違いですか。

野田国務大臣 確かに小泉政権のときに、平成十四年から十八年の間に、国と地方のプライマリーバランスが約二十兆ほど改善をしていることは事実だというふうに思います。

 ただし、その後、リーマン・ショックがあって、今その穴が約三十七兆に開いています。これをまさに穴埋めしていくためには、委員がおっしゃるように、成長によって増収を図るということもやらなければいけないと思います。そのための予算は組んだつもりです。新成長戦略を実現するということ。

 ただし、成長だけで財政再建ができるかというと、今はもっと厳しい状況になっているというふうに思いますので、歳出の無駄遣いを洗うということは当然やりますけれども、あわせて、やはり社会保障をしっかり支えるためにも、あるいは財政健全化を図っていくためにもさまざまな方法を考えなければいけないというふうに思います。

中井委員長 江田君、時間が来ていますから。

江田(憲)委員 だから、私はプロセスがあると。それを皆さんは同時にやると。この前の総理の答弁でも、そういうことをやりながら同時に社会保障や税のあれもやるんだと。それは間違いです、そんなことやったら元も子もなくなります、こう申し上げているわけでございます。

 とにかく、総理は、社会保障と税の一体改革の協議に野党が乗らないのなら、これは歴史への反逆だとまでおっしゃいました。私が申し上げさせていただきたいのは、国民の期待を一身に受けて政権交代した民主党政権が期待を裏切り続けることこそ歴史への反逆だと最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中井委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 引き続き基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 それでは、平成二十三年度予算案等、質疑を行わせていただきます。

 まず総理に、この一年半、政権交代後を振り返っていただきたいと思うんですが、各種経済の数字、非常に上向きの数字が出始めているのではないかというふうに私は思っております。

 例えば、マンションの販売額は、首都圏では六年ぶりに増、近畿圏でも三年ぶりに増。粗鋼生産額も三年ぶり増。日銀も昨年度の成長率を上方修正。

 あるいはまた、有効求人倍率も平成二十二年年初から改善の一途をたどっておりまして、完全失業率も四・九%へということで、これはやはり政権交代前、平成二十一年八月、有効求人倍率〇・四二、そしてまた完全失業率五・六%、いずれも過去最低あるいは過去最高ということで、本当に経済のどん底の中での政権交代であった。それを、この一年半の間に、先ほど総理が言ったように、まず景気の回復、経済成長、これを最優先で取り組むといったところが成果を出してきているのではないかというふうに思っております。

 あるいはまた、毎月の勤労統計調査、これは厚労省さんが発表しておりますが、一人当たりの現金給与総額、月平均三十一万七千九十二円、前年比〇・五%増ということで、これも四年ぶりに前年を上回っております。

 こういったところを振り返って、どのように今のこの経済状況、そしてこれからを見通されているのか。

 一方、この予算委員会で指摘があるように、S&Pの国債の格付が下がった、こういった指摘もあるわけですが、ただ、これについては、ムーディーズあるいはフィッチというところは据え置かれております。ムーディーズについては平成十四年から二十一年に向けてずっと上げてきている、あるいはフィッチについては十四年十一月でとまっている、S&Pについては十九年四月に上げて、そしてまた下げている。各種の格付機関の国債の評価というものはそれぞれまちまちである、こういったことも指摘をできるわけですが、さりとて、やはり財政規律といったことも当然しっかりと堅持をしなければならない。

 こういった状況での御所見をお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 まさに二〇〇九年、政権交代のもと、鳩山内閣がスタートした中で、大変厳しい状況にあったことは御指摘のとおりであります。まさにリーマン・ショックの真っただ中で、当初、さきの政権、つまりは麻生政権で見通した税収がその後九兆円も落ち込むといった極めて厳しい中でありました。

 そこで、二つのことを考えました。一つは、その段階を含めて、当面の景気を含めた景気刺激ということと、それがもう少し長期の見通しでいかにして経済成長につながるか、この二つの観点を持って対応したつもりであります。

 そういった意味で、ある意味、財政規模については、大変厳しい財政状況の中ではありますけれども、余り早く出口戦略をとると景気の上向きが逆に逆行してしまいかねない。そういうことで、本年度予算、さらに今御審議いただいております来年度予算、財政規律をぎりぎり守りながらも景気刺激的な方向で予算を組み、この間、三つのステップ、ステップワン、ステップツーを踏まえて、ようやくにして、足取りはまだ速くはありませんけれども、今御指摘があったように景気の上向きが続いてきていると思っております。

 と同時に、このことが長期の経済成長へとつながらなければならない。これについて、私は、第一の道、第二の道、第三の道という考え方を成長戦略の中で申し上げてまいりましたが、一時的に財政出動をして、一時的に景気刺激をして、それが終わったらまたもとのもくあみということではなくて、それが次の成長につながっていく。その大きな柱として、成長戦略を昨年の六月にまとめたところであります。もう余り詳しくは申し上げる必要がないかと思いますが、ライフイノベーション、グリーンイノベーション、そしてアジアの成長を取り込み、そして需要の拡大を図っていく、こういうことであります。

 格付の問題にも御指摘がありましたが、この問題は、まさに日本の財政のマーケットへの信認がしっかりと保たれ、得られるような、そういう道筋を歩むことが、結果としてこうした格付に対してもいい影響を与えていく、このように考えております。

武正委員 財政規律については、財政運営戦略あるいは中期財政フレームの堅持ということで新年度の予算が組まれていることは、既に財務大臣から御説明があったというところでございます。

 そういった意味で、この一年半、先ほど蓮舫大臣からも、事業仕分けあるいは行政事業レビュー、この予算委員会でも言及があるわけですけれども、やはりこの間の成果というものを、もう一回、この新年度予算に向けてどういった成果があったのか、改めて御報告をいただきたいというふうに思っております。

 また、特に行政事業レビューでございますが、私も外務副大臣として当時外務省で担当しておりましたが、やはり各府省みずから事業仕分けをやるといった観点から、それぞれがしっかりと取り組むという意味での行政事業レビューの役割、これは大変大きいものがあったというふうに思っております。これも引き続き新年度以降も続けていくのかどうか、私は続けていくべきだと思いますが、それについてもお伺いをしたいと思っております。

 先ほど、独法改革あるいは公益法人改革等について年末に閣議決定もしたというお話もありましたが、そうはいっても、やはり行政刷新担当大臣として、もし、さらにこの分野に力を入れていくべきではないのか、あるいは内閣として改善すべき点があるとすればこういったところがあるのではないのかといったところがあれば、それもあわせてお答えをいただきたいと思います。

蓮舫国務大臣 お答えいたします。

 まず数字的なところから答弁させていただきますが、事業仕分けの評価結果を受けまして、平成二十三年度予算案に、各省に御努力をいただいて適切な反映をいただきました。歳出の見直しを行いまして、概算要求からは追加的に約三千五百億円の歳出削減を実現するとともに、独立行政法人等から不要資産などの国庫納付等によりまして約一兆四千億円を確保いたしました。

 これに加えて、今、武正委員が言及をされました行政事業レビュー、国丸ごと仕分けでございますが、概算要求前に各府省みずからが決算ベースで、自分たちが税金を使って実際に行った事業に無駄がないのか、あるいはもっと効率化できるのではないか、あるいは事業自体がもうそろそろ役割をついえているのではないかという見直しを徹底的にしていただきまして、結果として、これは特別会計と一般会計を合わせて、一兆三千億円の効果がございました。

 機械的に足し上げますと、平成二十三年度、行政刷新会議の取り組みによって、約三兆円の効果があった。

 昨年は、この行政事業レビューというのは、初めての取り組みなので、試行的に行ってまいりました。その結果も踏まえて、より効果的に行えることはないのか、行政評価レビューシートも含めて、今私のところで取りまとめていて、ことしからは本格的に実施をすることによって、事業仕分け、そして各府省みずからが行う行政事業レビュー、そして既存の財務省の査定であるとか、総務省の行政評価であるとか、あるいは独立した会計検査院であるとか、あるいはこうした国会での御審議を経て、二重、三重、四重に、無駄が生まれないような取り組みを不断に行っていきたいと思っております。

武正委員 先ほど来、野党から、民主党のマニフェスト、破綻ではないかというような指摘があるわけですが、着実に実績を上げているということがおわかりいただけると同時に、さらなる取り組みが必要ではないかというふうに私は思っております。それこそ、契約の透明性確保、随意契約の見直しとか、あるいはまた独法の改革、これについては、もうマニフェストでその金額を庁費等で出していくというところにも含まれているわけですので、私はもっともっと取り組みをさらに強化していく必要があるというふうに思っております。

 そういった中でありますが、与謝野大臣、昨日、ちょっとこのマニフェストについての御答弁の中で、私はやはりまだまだ取り組み道半ばと。

 例えば、これは前政権時代の話でございますが、防衛省のいわゆる山田洋行事件というのがありまして、これがようやく去年、大体の結論が出てきた。百二十二件、六十八億七千五百万円余りの契約を交わして、その過払い額が二十五億七千百万円余り、四十三億円の正価に六十八億円が支払われた。それについて相殺をして、その返還は終わったということなんですが、依然、中央調達については百二十三件のうち四十六件が確認中、地方調達については五百九十七件中二百三十三件がまだ確認中ということでありまして、やはりこういった中央調達、地方調達の契約については、これは防衛省が一例でございますが、まだまだ改善の余地ありということではないかということの証左というふうに考えております。

 あるいは、国立病院機構、これは平成十八年度、我々が予備的調査で出した数字ですが、国立病院機構の医療関係の契約のうち、約二割がいわゆる一〇〇%予定価格とぴったりの受注といったことが出まして、これについても今随意契約の見直しに国立病院機構も取り組んでいるわけですが、直近の数字でも、一社受注が一般競争入札の三割を占める。これは、医療関係はなかなかほかとは違うんですよという説明が、当時野党時代、厚労省から受けたわけですが、こういったところが果たしてどれだけというところも、まだまだ取り組むべき余地は大いにあるというふうに思っておりますが、与謝野大臣、我々はもっともっとまだやる余地はあるというふうに思って、このマニフェストの額は出せるんだというふうに思っておりますが、ちょっときのうの御発言について、改めてお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 マニフェストを作成された当時、民主党は野党でございましたから、政策その他をつくる場合の情報量というのは、与党よりもどうしても少なかった、そのことを申し上げたかったわけですが、やや礼を欠く表現になりまして、大変申しわけないと思っております。

 ただ、その当時、私は財務大臣でございましたが、やはり財源問題は、民主党が政策を行っていく上で最大の関門になるということはすぐわかっておりました。

 今までのところは、皆様方、必死の努力をされておりますが、これからはさらに厳しい壁があるだろう、そのことを申し上げたかったわけでございまして、礼を失した部分については大変申しわけないと思っております。

武正委員 ありがとうございます。

 与謝野大臣ともども、このマニフェストの実現に向けて、与党も一体となって、政府と一体となって実現をしていきたいというふうに思っております。

 そこで、先ほど蓮舫大臣からは御発言がなかったんですけれども、私はこの間も予算委員会でも申し上げましたが、内閣法三条あるいは会計法十条にありますような各省各庁の分担管理、これが我が国の行政組織の成り立ちになっております。ここにやはり横ぐしを入れるような改正をしていかないと、どうしても、いわゆる縦割りを乗り越えるぐらいの思い切った取り組みというのはできないのではないのかというふうに思っております。

 これは、当然、国家戦略室を戦略局として法制化する、こういった法律にもかかわってくるでしょうし、あるいは行政刷新会議の位置づけについても、各省各庁に横ぐしを入れるような、そのぐらい強い、さらなる権限が必要ではないかというふうに私は思っておりますが、蓮舫大臣、もしこれについてコメントがあれば。

蓮舫国務大臣 済みません。先ほど、あわせて答弁させていただこうと思っておりましたのが、失念いたしました。

 まさに、武正委員が野党時代に民主党内で率先して取り組んでこられた無駄の削減の中には、今の縦割り行政を何とか、いわゆる横ぐしを刺して効率的にしていきたいという、そのもとで私も学ばせていただきました。

 今、私のもとには公共サービス改革分科会を設置しまして、いわゆる政府調達、これが何とか改革できないんだろうか、各省で完結するのではなくて共同調達あるいは競り下げ入札等も含めまして、ここは今までにない形で改革を行っていきたいとして取り組んでいるところでございます。

武正委員 ありがとうございます。

 そうした中、我々が、〇九マニフェストでは、埋蔵金を活用というところで四・三兆円というふうに出ておりますけれども、これは、平成二十一年度補正予算でも活用した資金、財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計の運用益というようなことなどの一部を政策経費に充当するなどが書かれております。あるいは政府資産の計画的売却ということでありますが、財務省が作成している連結財務諸表では、平成二十年度末で現金預金が三十五兆円ございます。

 民間では、キャッシュマネジメントということで、現金預金、お金を、言葉は悪いですが、こき使うということで、遊ばせない、こういったことで取り組まれているわけですが、私は、こうしたことをいいますと、〇九年の五月十四日に、我々が野党時代に、公会計法ということで、こうした連結財務諸表については作成を義務づける、あるいはそれをできるだけ早く出す、こういったことを、あるいは、国家公務員の責任の厳格化とあわせて、きちっとこれについてもやはり政府として取り組んでいくべきだというふうに思っております。これは指摘にさせていただきたいと思います。

 では、今度、国会としての取り組みはどうかということで、我々は、昨年十二月に、民主党の政治改革推進本部の総会ということで、先ほども総理から言及のあった定数の削減、そしてそれによって国会の経費の二割カット、そして、暫定的でありますが、暫定的に、こうしたことを各党に呼びかける間ということで、歳費の一割カットということを総会で確認しております。

 また、企業・団体献金禁止についても先ほど総理が言及したとおりでございますが、それについてはやはり個人による税制上の優遇措置というものがなければいけないということになりますので、財務大臣、こうしたことの見通しについて御所見を伺えればと思います。

野田国務大臣 私も、野党のときに、政治改革推進本部の事務局長を務めさせていただきまして、今般提出をする準備をされている民主党の法案、企業・団体献金を廃止する、個人献金を助長するような、そういう制度設計をするというような基本構想をつくることに携わりました。

 ただ、今私は政府の立場でございますので、政治資金にかかわる部分は、これは基本的にやはり党として法案をおまとめいただき、各党と真摯な御議論をいただいて成案を得るということが筋だろうと思いますので、そういう流れになることをもとかかわった者として今見守っているという状況でございます。

武正委員 ぜひ、党としても成案を得るべく取り組みを加速させていきたいというふうに思っております。

 さて、公務員制度改革について担当大臣に伺いたいと思いますが、今、公務員制度改革、昨年も法案が提出されておりますが、残念ながら成立をしていないという状況の中で、再度今国会にも提出ということでありますが、公務員制度改革ということでの取り組み状況、法案の内容も含めてお答えをいただけますでしょうか。

中野国務大臣 お答えをいたします。

 大変長い間の懸案でもあり、そしてまた、これは前政権当時からでも常に国家公務員制度の改革については意識を持って取り組まれてきたテーマだと思います。いよいよ、ある意味で大詰めに来ていると言っても過言ではありません。御指摘のとおり、この通常国会に法案を提出する予定で、今急ピッチで作業を進めているところであります。

 与党内のPTでもその方向性が既にまとめられておりますし、我々としては、それを今、最終、仕上げる段階に来ておりますけれども、一つは幹部職員の人事管理の一元化、そして退職職員の監視の問題、そして、とりわけ注目をされておりますのが自律的労使関係、どうしていくかというこれらのことについて、そしてまた労使交渉に関する、アフターケアといいますか、フォローの問題として、中立的な第三者委員会の設置など、それらのことの仕組みを、構成をしながら今煮詰めているという段階でございまして、この通常国会に法案を提出すること、そのことは、そのまま、予定どおり提出をする段取りに今なりつつあります。

 以上でございます。

武正委員 総務大臣に先ほどに続きましてお伺いしたいんですが、国家公務員総人件費の二割削減ということを我々はマニフェストでうたっているわけですが、この総人件費というところの概念なんですけれども、私もこれの作業にもこの間かかわってきた経緯の中では、例えば非常勤職員、人件費には正確にはくくられなくて物件費の方に入ってしまう、こういったところも含めて総人件費というような形で議論してきた経緯が実はあったというふうに思います。

 そういった意味で、こういった考え方も含めて、あるいは、〇九マニフェストでは、先ほども触れましたが、人件費については一・一兆円と書いてありますが、先ほどの独立行政法人、公益法人、独法については三兆円を超える額が交付金などで交付をされておりますが、当然その中に人件費も入っているわけでして、こういった額が六・一兆円ということでいうと、そこら辺は、ある面、ちょっと大きくとらまえていくような考え方も必要なのではないかなというふうに思いますが、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、現在、総人件費二割カットの全体像を示したいということで作業を始めております。

 その中で一番中枢になりますのが、何といっても、それは一般職の公務員のいわば単価の問題、給与水準の問題でありまして、当面これが焦眉の急でありますが、これを法案化して国会に提出しますときには、他の要素、定員でありますとか、それから退職手当、その他の手当でありますとか、そういうものも含めてどういう全体像が描けるのかということを出そうと思っております。

 その際に、今、武正議員がおっしゃったような、これまでマニフェストに書いてありますリジッドなものではなくて、多少幅のあるようなことも考えられるということは、私も今想定をしております。その一つが、幾つかおっしゃったものだと思います。

 その中に、今、非常勤職員の問題に言及されまして、これも当然、広い意味での人件費、厳密に物件費にカウントされているものもありますけれども、広い意味での人件費でありますから、そういうものも取り込むということは一つの考え方でありますし、また人件費というものを一つの体系としてとらまえれば、そこまで手をつけるということもあるんだろうとは理念的には思いますけれども、ただ、実態を見てみますと、非常勤職員というのは、モデル的に見てみますと、例えば年収で百八十万円台というようなレベルの方が多いのでありまして、そういうところをさらにカットするかどうかというのはよほど慎重でなければいけないと私は思っております。

 むしろ、今、格差是正といいますか、表現が妥当かどうかわかりませんけれども、官製ワーキングプアというようなものを何とか解消したいということも念頭にないわけではありませんので、そんなことも頭に入れながら、これからの検討課題としたいと考えております。

武正委員 ちょうど独法改革のときに、ある独法でしたけれども、その独法の人件費の二割が非常勤職員で占められていたといったこともございまして、もしかすると、ある面、安易に非常勤職員の方をふやしていったというようなことが、本来は正規の職員でといったところがあったとすれば、そういったところは今のように改めていく必要があると思いますが、大臣からは、幅広で、考え方をちょっと大きくいこうじゃないかということを御答弁いただいたと思います。

 これも、昨年六月ですか、退職管理基本方針ということで、やはり現役出向についても、これはある面、どうしても今、公務員制度改革、定年延長とか内閣人事局への一元化とか、これがなかなかうまく、まだこれからといったところもあって、去年そうした基本方針が、まとめざるを得なかったといったところがあったということは、我々もやむを得ないかなというふうに思っておりましたが、せっかくこれから公務員制度改革の法案も出てまいりますので、そうしたところも、見直すことができるところはぜひ見直しをしていっていただきたいというふうに思っておりまして、例えば独法などの公務員のOBポストの公募について、現役出向は公募しなくていいというようなところも、やはりこの公務員制度改革の法案の中で、あるいはそれに合わせて見直しをしていくべきではないかというのは、私の考えについてお伝えをしておきたいと思います。

 ちなみに、公務員OBポスト九十一については、昨年六月までの公募の結果、民間からの方が六十二名、OBの方が二十四名ということで、それは、OBの方がまた応募される、そして採用されるのは、私は大いに結構だと。それは公募という形で、開かれた形で行うということが、民主党としての考えの基本だろうというふうに思うわけでございます。

 そこで、今度は、先ほど総理も言及された新成長戦略について伺いたいと思いますが、先ほど来、新成長戦略も役人の皆さんに丸投げだというような野党の批判がありましたが、調べてみますと、私も参加した会議も含めて、成長戦略策定会議、大臣の皆さんによって、半年間ですけれども、十二月から六月までの間に四回、それから副大臣、政務官による検討チームが四回、そして各府省のヒアリングが、事務方から一週間をかけて、また副大臣、政務官からも一週間をかけてやっていったということで、まさに政務三役がリーダーシップをとってこの成長戦略をまとめたということも、我々は胸を張って言っていくべきではないかというふうに思っております。

 そういった中で、金融担当大臣にお聞かせをいただきたいんですが、新成長戦略の七本目に金融というものを置いた意味。これはもう、いわゆる九八年の外為の自由化から、いわゆる金融ビッグバンということで、各種いろいろな法改正が行われてきた中での、その流れをさらに加速する意味での政権交代であったのではないかというふうに思っております。また、特にインベスターズリレーションズ、IRということで、特にデットインベスターズリレーションズということで、プロ向けの債券市場をつくっていこうと。これは、アジア債券市場構想とも軌を一にするということで、私も高く評価をするわけですが、こうしたことの取り組みについて、大臣から御説明をいただけますでしょうか。

自見国務大臣 武正議員にお答えをさせていただきます。

 先生もまた、政府の政務三役としてあるいは与党の一員として、成長戦略あるいは新成長戦略に大変御尽力されたという話が今あったわけでございますけれども、昨年六月に閣議決定されました新成長戦略では、金融戦略が実は七つ目の、七つの戦略分野の一つとして位置づけられております。

 先生御存じのように、今まで、過去、いろいろと政権が成長戦略をつくってきたわけでございますが、大きなカテゴリーの中の、七つの一つに入ったのは実は今回が初めてでございまして、これは先生が言われたように、やはり二〇〇八年の秋のリーマン・ショック、これもある意味で大変大きな、世界史的な金融の、投資銀行の破綻でございましたが、それからまだ立ち直っていない世界経済、あるいは通貨、あるいは金融の世界があるわけでございますけれども、そういった中で、非常に細心の注意はやるけれども、同時に、これをダイナミックに、成長の戦略の一つに実は加えさせていただいたわけでございます。

 金融の役割としては、従来から、先生御存じのように、実体経済を支えることと、それから、今先生がプロ向けの市場だというような話もされましたけれども、そういった中で、金融自身が成長産業として経済をリードするということの二つが期待されているところでございまして、これらを踏まえて、金融庁では、昨年の十二月に、これは与党の先生方にもいろいろ御論議いただきまして、金融資本市場及び金融産業の活性化のためのアクションプランを取りまとめたところでございます。

 アクションプランには、企業等の規模、成長段階における適切な資金の供給、これが二〇〇八年のリーマン・ショックでは一時ほとんどアメリカでも資金の供給がうまくいかないという事態になったわけでございますが、そういったことも踏まえながら、きちっと、やはり検査監督も必要でございますけれども、同時に、金融が持っているそういった一番基本的な機能、これをしっかり再構築を世界でもしていく必要がある、日本でも非常にその辺は気を使って金融をやらせていただいておるわけでございます。

 それから二番目が、今さっき菅総理も、アジアが非常に成長しているという話でございましたが、アジアのメーンマーケットたる日本の市場、我が国の金融機関のアジア域内での活動の拡大を通じて、アジアと日本をつなぐ金融の実現。特に日本の中堅・中小企業に、今アジアは非常に成長しておりますので、その活力を日本の中堅・中小企業にも取り入れるために、実は先日、財務大臣、経済財政大臣と私と、ひとつ三省、力を合わせて、中小企業、中堅企業がアジアに行くときに、しっかり経済の情報あるいは産業の情報、そして金融面でも応援していこうということを決定させていただいたわけでございます。

 そういったことを通じて、アジアのメーンマーケットたる、同時に、日本の市場、我が国の金融機関のアジア域内での活動の拡大を通じた、アジアと日本とをつなぐ、そういった意味での金融の実現。

 それから、国民の資産、金融資産がございますから、それを本当に安心して活用できるように環境整備をしていく。

 この三つを柱として今後取り組んでいき、各種施策を盛り込んで、このアクションプラン、これは新成長戦略実現二〇一一、先月の二十五日に決定させていただきまして、今度の通常国会にこれの一括した法律を出すべく一生懸命準備中でございますので、ひとつそういったところで各党各会派の御協力、やはり今の不況を脱していかねばならない、そして新たな時代における新たな金融の役割もあるわけでございますから、そういったことをしっかり注視しながら、また先生方の御指導もいただきながらやっていきたいというふうに思っております。

武正委員 国家戦略担当大臣、こうした新成長戦略の実現、あとEPA、FTAということからお伺いをしたいんですが、私は、TPPについては、当然、食料自給率を上げるという大前提に立って、私はやはり参加について前向きでありたいというふうに思っております。

 ただ一方、日中韓のEPA、FTAの共同研究、これも同時並行で走らせているわけですので、特に日中韓の中で金融面の協力というものを進めていいのではないかというふうに私は思っておりますが、これは先ほど言ったアジア債券市場構想にもつながるわけですが、これについて御所見を伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 今、武正委員から御指摘がございましたように、新しい成長戦略、先ほど総理からもございましたけれども、グリーンイノベーションあるいはライフイノベーション、それぞれありますが、一つの柱は、アジア三十五億人の内需を日本の内需と考える。アジア太平洋は四十億人でありますが、アジアは三十五億人、その三十五億人の内需を日本の内需とするためには、言うまでもなく、その前提はアジアの安定的な成長ということだろうと思います。

 同時に、今、武正委員が御指摘をされたように、昨年十一月の包括的経済連携における基本方針においても、日韓も含めてハイレベルEPAを進めていくんだという決意をした、これは私は民主党政権そして菅政権の大変大きな成果だというふうに誇っていいというふうに思いますし、おっしゃるとおり、日中韓のこの共同研究も前倒しをして進めていくべきものであるというふうに考えております。

 今御指摘のあった、アジアの債券市場フォーラムも、確かに、為替リスクなどを回避するという観点からすると、現地通貨建ての発行あるいは発行体そのものの多様化、必要でございます。これは武正さんが副大臣のときだったのかもしれませんけれども、そういったフォーラムをもう既に開催をしていますし、同時に、アジア開発銀行のいわゆる信託基金などもつくっております。

 まさに我が国が主導してこういった問題に取り組んでおりますので、これからも新成長戦略の一環として力強く積極的に推進をしてまいりたいというふうに考えております。

武正委員 それでは、地域主権について伺いたいと思います。

 今回の一括交付金化、五千億を超える額を、いわゆるひもつき補助金のひもを取っ払ったということ、そして来年と合わせて一兆円ということでございますが、ただ、自治体からは、九割継続事業ではないのかということで、果たしてこれがどれだけ自由に使えるんだろう、あるいはまた、特に社会資本整備総合交付金等の幾つかの交付金の中での移動ということも指摘されておりますので、それをもっとさらに枠を広げることが来年度以降できるのかどうか、こういったことが尋ねられているわけですが、これについて地域主権戦略担当大臣にお聞きをしたい。

 あと、今ちょっと懸念をしているのは、年度内に予算関連法案が通らなかった場合ということからいうと、いわゆる内閣府設置法改正案が通らないときのそういう影響というものも当然懸念をされるわけで、いわゆる一括交付金がどうなってしまうのか、その影響についても、あわせて地方交付税法案、年度内成立できないときの影響も含めてお聞かせをいただきたいと思います。

片山国務大臣 いわゆる一括交付金でありますけれども、これは、来年度からスタートさせたいということで関連の予算を計上しておりますし、関連の法案も提出することとしておりますけれども、いずれにしても、今回で完成形ということではございません。これは、スタートさせて運用しながら順次改善を加えていきたい、進化させていくべきものだと思っております。

 おっしゃったように、一部の自治体からは幾つかの懸念も出ております。これは、いろいろ説明をするんですけれども、従前の、国が例えば三位一体改革でありますとかいろいろなことをやってきたときに、何か前口上と実態とが違うなという経験を自治体はしているものですから、今回についてもいささか色眼鏡で見ている面がないわけではありませんが、これはやってみたら自由度が増したということがわかるはずであります。

 もちろん、事前のチェックをなくして事後のチェックに切りかえるとか、自治体の方で、事業の選択とか箇所づけとかを自治体の意思でやるということに、こういう基本方針でやるんですけれども、実際やってみますと思わぬところで何か自由度を阻害するようなことがないわけではない、あるかもしれませんので、それらは常にフォローアップをしまして、こちらで順次改善をしていく、そういう意味も込めて進化をさせていきたいと考えているところであります。

 それから、予算関連法案が通らなかったらどうかというのは、これはぜひ通していただくということでやっていただきたいのでありますけれども、例えば一括交付金に関する関連法案もありますので、これが通らなかったときどうするかということはよくよく考えてみたいと思いますけれども、いずれにしても、一括交付金で想定したスムーズな交付というのが滞ることは確かであります。

 そうしますと、自治体の方でせっかく予算化をしてもらってもそれがスピーディーに事業化できないというような支障も出てまいりまして、先ほど来議論になっておりました地方の経済の停滞というものを一層進めることになりかねない、こういう危惧を持っております。

 それから、地方交付税につきましては、これは、今回の提出しております交付税法案によりまして、およそ六・一兆円、ルールといいますか、何もないときのルールよりは増額することにしておりまして、加算することにしておりまして、これがなくなるということになりますと、具体的には四月の概算交付、概算交付というのをやるんですけれども、このときに恐らく一兆五千億円ほど自治体に対する交付が今我々が予想しているものよりも減ってしまう。

 そうしますと、自治体の方の資金繰りが滞り、財政運営に支障が生じることになるということでございますので、ぜひ、そういうことにならないように国会のできるだけ早期の成立をお願い申し上げたいと考えているところであります。

武正委員 総体的に経済が上向きのいろいろな指標を先ほど冒頭御紹介したとおりでございますし、ましてや地域経済、これがまだまだ厳しいという状況でございますので、やはり何といっても予算、予算関連法案の年度内成立が必要だという思いを強くしたところであります。

 そこで、規制改革について、これも蓮舫大臣にお聞かせをいただきたいと思います。

 昨年九月十日の閣議決定、それからそれについての中間報告、規制改革仕分けというようなことも言われておりますが、そうした取り組みとともに、この後総務大臣にもちょっとお伺いをしたいんですが、私、電波のオークション制度というのを野党時代から三度ほど国会に法案も提出してきたこともありますので、これについて、昨年九月には明記されておりましたが今回は外れておりますので、そこの理由についてもお聞かせをいただきたいと思います。

蓮舫国務大臣 規制・制度改革につきましては、昨年三月に行政刷新会議のもとに規制・制度改革に関する分科会を置きまして、第一クールと題して去年の六月までにまとめて実際にもう動いているもの、そして第二クールとして先月、一月の末に中間報告を取りまとめていただいて、これまでの規制・制度改革の取り組みも含めて、三月の上旬に規制仕分けを、仕分けの外部性あるいは公開性という特徴を利用して国民の皆様方に見える形で、どういう形で規制を強化あるいは緩和していくことができるのかを議論しようとしているところでございます。

 武正委員が御指摘いただいた電波オークションについてでございますが、経済対策の中の「日本を元気にする規制改革一〇〇」を昨秋に行いました。このときに電波の有効利用のための制限の見直しとしまして、周波数を新たに利用する者に、既存の周波数利用者を別の周波数に移行させるための費用、これを市場原理を活用して負担させるなど、オークション制度の考え方を取り入れ、そうした措置を講じることが平成二十二年の九月十日に閣議決定をされました。

 今、詳細については総務大臣にお伺いをいただきたいと思うんですが、法案提出も含めて、総務省でこの閣議決定を受けて適切な対応をしていただけておりますので、私どもとしてはフォローアップを常に行っていきたいと考えています。

武正委員 それでは総務大臣にお聞きをしたいと思いますが、そうしたオークション制度の考え方がきちっと法案に明記をされているのかどうか。もし明記されていないとすれば、それをどのような形でフォローするのか。

 また、昨年十二月十五日に、政務三役では、今度、第四世代携帯電話については欧米型の完全オークション、これを実施するということも確認されたと聞いておりますが、こういったところはどのような形で実現をしていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

片山国務大臣 先ほど蓮舫大臣の方から御答弁申し上げたとおりでありますが、当面の、既存の無線局の周波数移行に伴うオークションでありますけれども、これは実施をしたいということで、その旨、電波法の改正法案の中に盛り込んでおります。

 具体的には、携帯電話事業者に周波数の割り当てをするということになる際に、その開設計画の認定制度でありますけれども、その認定の審査基準である開設指針に規定する事項の中に、当該費用の負担に関する、移行に要する負担に関する事項を追加する、こういう改正内容であります。

 ただ、懸念もありまして、これによって、入札でありますから、過当競争になる可能性もあって、それが今後、携帯の利用者への負担増ということにならないとも限らない、また、既存の周波数を割り当てられている事業者との間の競争条件の有利、不利が生じる可能性がないわけではないということで、これについては、費用負担の上限について設けることも定めたいと考えております。

 それから、一般の、第四世代の携帯電話についてのオークションについてでありますけれども、これは、さきに総務省がICTタスクフォースというところで検討していただいた中にこのことについての言及もありまして、これについて、導入について早急に議論を進めることとして、今さらに今後の検討を始めたいということにしているところであります。

武正委員 ぜひ、閣議決定の趣旨にのっとって透明性の確保と、それから、やはりこれは、私は、欧米などもそうですが、国庫収入にもつながってくるということも考えられますし、あるいはまた、電波ビジネスは今二十兆円ぐらいのビジネス規模でしょうか、これが十年、二十年後八十兆円にというような、そうしたビジネスの大変飛躍の期待される分野でございますので、ぜひ、電波オークションということで御対応を積極的にお願いしたいというふうに思っております。

 それでは、厚労大臣に子ども手当についてちょっとお聞かせをいただきたいんですが、今幾つかの市町村で、子ども手当は全額国費でということで、新年度の予算への計上を国費ということでやっている自治体が出始めているんですが、聞くところ、昨年、五大臣の合意で、自治体のさまざまな意向である、保育料の天引きや、給食費については保護者の方の同意があれば天引きなども含め、居住地は日本など、いろいろな改善を五大臣合意している。

 それに対して、地方六団体も評価のそうした文書を発出しているというふうに聞いておりますが、それについての御所見と、これも同様に、年度内に子ども手当の予算関連法案が成立しない場合の影響、これをお聞かせいただきたいと思います。

細川国務大臣 武正委員にお答えいたします。

 子ども手当法案につきましては、これまでに、地方六団体の皆さんと、私も含めまして政務三役で会合を持ちまして、意見交換もさせていただいたり、また、私自身、それぞれの団体の長の方に個人的にもお会いもしまして、政府の考え方をお話し申し上げてまいりました。

 その際、地方の方からは、全額国庫で負担をしてほしいとか、いろいろな要望もございましたし、私どもの考えもお話し申し上げまして、結局、来年度の子ども手当につきましては、従来の児童手当、そのときに地方が負担をしていた、その分だけ地方に負担をしていただいて、そのほかの部分については、新しく、三歳未満の七千円アップにつきましても全額国庫で負担をする、こういうことで決めさせていただきまして、そのことの御了解などについてもいろいろとお話もさせていただいてきたところでございます。

 そういう中にあって、地方の強い要望もございました、保育料あるいは給食費などについて子ども手当の中から何とか直接支払うような、そういう方法もとっていただけないか、あるいは、地方が自由に使えるような、現物給付もできるような、そういうこともしてほしい。こういう御要望もございましたので、保育料あるいは給食費につきましても子ども手当から直接徴収できるような、そういうような工夫も法案にさせていただきました。また、地方が現物給付などについて自由に使えることも考慮してほしい、こういうことにつきましては、地方の実情に応じた子育て支援サービスを拡充するための交付金も設ける、こういうことも今回の法案に入れているところでございます。

 なかなか、地方の団体の中には、全額国庫で負担すべきだという御意見の団体もありますけれども、私どもとしたら、これからも地方の理解を得られるように積極的に話し合ってまいりたいというふうに思っております。

 年度内に成立しないというときには、今年度の子ども手当法案については、これは今年度、単年度の法案でありますから、そうしますと、ことしの四月一日からは児童手当法が適用されるようになる、こういうことでございます。

 そうしますと、所得制限などがついておりますから、一番現場が混乱をすると思われますのは、児童手当の場合には随時払いというのがございます。四月に入りまして子供たちが異動をします。そうしますと、随時払いですから、児童手当の請求をしてくると支払わなければならない。そういうときに、所得制限などがついておりますから、なかなかそこに支払うことができないような、そういう大変困った状況も出てまいります。そういうことをぜひとも御理解もいただきたいなというふうに思っております。

武正委員 報道では、システムをもとに戻すのに、要は児童手当の方に戻すのに、三カ月から六カ月、半年かかるというようなことなどもあって、大変な大混乱を来すおそれがありますので、これについてもやはり、何としても年度内の予算そして予算関連法案の成立が必要な一つの理由だというふうに思います。

 そこで、高校の授業料無償化についてお聞きをしたいんですが、外務大臣の方にちょっとお聞かせをいただければと思います。

 文科大臣には、私の方でちょっと説明をさせていただきますが、国立大学の減免、これについては、平成二十三年度二百二十五億、前年度百九十六億ですから二十九億円の増。私立大学についての授業料の減免は四十九億、九億円増。それから日本学生支援機構の奨学金等についてでありますが、貸与人数は百二十七万二千人、学生の割合では三五・七%、これは二・一%増。無利子が三十五・八万人、これは〇・九万人増、有利子が九十一・四万人、七・九万人増ということで、やはり大学教育についてもきちっと予算でもさらに増額が組まれているわけです。

 高校授業料の無償化と相まって、我々野党時代に、国際人権規約、高等教育無償化条項、当時は日本とマダガスカルとルワンダ、三カ国だけが留保をしていた。これは何としてもおかしいじゃないかということを、OECDの中でも最低レベルのそうした高等教育のお金といったことで、これはある面、私は、国際公約ということで、ばらまきという批判は当たらないというふうに思うんです。

 そういった意味では、私は、そろそろこの留保を取り払う、そういった試みがあっていいんじゃないかというふうに思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。

前原国務大臣 武正委員が副大臣のときに御努力をされたテーマの一つでありますけれども、今はマダガスカルと日本のみが留保をして、ルワンダは外れたということであります。

 この社会権規約につきましては、どういう規定になっているかと申し上げますと、「種々の形態の中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとする」、こういう記述になっております。

 今回の高校実質無償化法、そして先ほど委員が御指摘をされた大学教育のいわゆる支援の充実ということで、留保の撤回の可能性が高まってきているというふうに思っておりまして、この義務との関係を精査して、前向きに検討していきたい、このように考えております。

武正委員 時間も大変迫ってまいりました。

 総理にお伺いをしたいと思いますが、硫黄島からの遺骨帰還のための特命チーム、私も外務大臣にかわり第一回の会合に出席をいたしました。阿久津政務官が中心となってこの間取り組んできたその成果というものも含め、また総理がこのことには殊さら、大変強い思いを持っておられるというふうに思っております。

 私も去年、ちょうど一年前に、日米合同慰霊式典、硫黄島の方で参加をしてまいりました。そうした中で、このことにかけるその強い思いについて御披瀝をいただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 ちょうど四年前、まだ野党の時代でありましたけれども、初めて硫黄島に自衛隊機で視察に参りました。一泊、泊まりまして、またその前後に、幾つかの本や当時上映されていた二つの映画なども拝見をいたしました。

 本当に、現地に行って、いろいろなごうに入りましたけれども、狭い狭い、熱い熱いごうの中で多くの日本兵が戦って亡くなられたというその思い、また一方で、アメリカの海兵隊にとっても最も激戦であって、ある意味では、この言葉が適切かどうかわかりませんが、アメリカの側から見ても、敵ながらあっぱれだ、そういう認識を持たれたすさまじい戦いであったということを改めて認識をいたしました。

 その上で、アメリカの亡くなられた方の御遺骨はほぼ完全に国に戻されたと聞いておりましたが、日本で亡くなられた方、二万三千人余りでありますけれども、まだ四割しか遺骨収集が終わっていない。各ごうを捜すわけですが、もうそこには残された遺骨は非常に少ない状況でありました。

 私、日本に帰りまして、国会図書館で関係資料を当たっていましたら、一冊だけ記録がありまして、ブルドーザーで亡くなった方を埋めている姿がアメリカの資料にちょっと出てまいりました。これは必ず資料があるはずだと。当時野党でありましたので、私もそれ以上はなかなかできなかったわけですが、大変気に残っておりました。

 そこで、内閣ができたときに特命チームをつくりまして、アメリカの資料も徹底的に調べて、阿久津議員に調べていただいて、かなり大きな集団埋葬地が見つかりまして、そのところにも先日も行って、これは超党派で慰霊祭をやってきたところであります。

 もうこれ以上申し上げませんが、一言で言えば、やはり国のために戦った皆さんの亡くなられた方に国に帰ってもらうのは国の責任であります。それと同時に、できれば若い方にも現地に行っていただいて、そういう戦争の歴史というものをしっかり認識して、そうしたことをいかにすればなくすることができるか、そういう意味をも感じていただければ。さらに言えば、この硫黄島は日本の領土でありますから当然やらなければならないわけですが、海外における遺骨収集についてもこれからもしっかりと取り組んでいきたい、このように考えております。

武正委員 過日、民主党の沖縄協議会で、岡田幹事長と一緒に沖縄の方での遺骨収集現場も行ってまいりまして、ちょうど四遺体が出ておられる場所に行ってお線香を手向けてまいりましたが、まだ沖縄にも百柱から千六百柱があるといったこともあわせてお伝えをし、遺骨収集への取り組みをお願い申し上げ、質問にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて武正君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子一義君。

金子(一)委員 自由民主党の金子一義でございます。

 片山総務大臣に、我が国の今度の予算のフレームについてお伺いします。

 地方交付税が七千億、当初予算が減っていますよね。七千億減っているんですけれども、来年度の当初予算はここが発射台になるんですか。

片山国務大臣 交付税につきましては、先ほどおっしゃいましたのは、一般会計から特別会計への出口といいますか入り口といいますか、そこの部分だと思いますが、実際に地方交付税交付金が自治体に配られる金額は昨年度よりも増額をしております。

 自治体にとって一番重要なのは、一般会計から特別会計にどうなるかということではなくて、特別会計から自治体にどれだけの総額が交付されるかということ、これが一番重要だろうと思います。

金子(一)委員 大臣、そのまま。

 私が伺っているのは、ことしの話。来年度予算じゃないの。次の年の予算の発射台はこれがベースになるんですねと聞いているの。

片山国務大臣 これは、今の地方交付税の仕組みというのは、実はちょっと異例の状態がずっと各年度続いております。

 といいますのは、本来の地方交付税の総額というのは、国税五税の一定割合、それぞれの国税の収入に交付税率を掛けたもの、これによって定まります。したがって、平年度ベースといいますか、通常だとそれで決まるんですけれども、それだと実はとても現下の地方財政の状況に対応できませんので、特例加算でありますとかいろいろな特例を講じまして、できるだけ実態に合ったような形にしているわけであります。

 そういう意味でいいますと、土台というのは、本来、国税五税の一定割合ということで、それに、今年度、二十三年度どれだけの加算をするかということをやってきたわけで、それは、二十四年度も残念ながらそういう特例の積み上げをせざるを得ないということだと思います。

金子(一)委員 片山さん、そのままどうぞ。

 だって、来年度予算、二十三年度予算は、去年補正で積み上げたものを持ってきたわけでしょう、ここに。一兆円の補正、補正予算でやったじゃないですか。与謝野さんは反対したけれども、この補正予算。一兆円、去年の補正で積み上げたものを来年度の本予算に積み上げているんじゃないですか。

 どうして、二十四年度、その先同じことがやれるんですか。剰余金が同じように出るわけがないでしょうよ。

片山国務大臣 二十三年度から二十四年度にどうなるかは、やってみませんとわかりません。

 確かに、おっしゃるように、二十二年度の補正、これは臨時国会で行ったものでありますけれども、これは国税の収入見込みというものを変えられたものですから、自動的に、交付税のその段階での精算といいますか、再計算というものを迫られたわけで、その結果、一兆円を二十三年度分に繰り越したといいますか、そういう措置を講じたわけであります。

 これは、二十三年度をやってみて、また、二十二年度と同じような、収入増といいますか、収入増とか収入の違いが出てくるかどうか、これはわかりません。また、決算剰余金が国税で出てくるかどうかわかりません。そういうわからない状況の中で二十四年度をどうするかというのは、また再来年度の地方財政対策で考えるということになります。

金子(一)委員 さっき公明党の石井委員の御質問に対して、菅さんは、財政ルールを健全化しました、さらに来年も、四十四兆円と七十一兆という基礎的支出のことを言っているんだと思いますけれども、健全化したから、それに沿っていくんですと言ったばかりじゃない。あなたは今、やってみなきゃわからないと言ったんだ。どうなっているんだ。

片山国務大臣 それは、剰余金が出るのかどうかと言われるので、それはやってみないとわからないということを申し上げたわけです。

 先ほどの総理の答弁を敷衍いたしますと、交付税については、三年度間は自治体の一般財源総額を確保するということを、これは地域主権戦略会議の中で決めております、これは財務省も含めた政府全体として決めておりますから。そういう意味でいいますと、総理の言われたルール化といいますか、そういうことは今やっているところでありまして、それの中で、とりあえずその決めた年度までは一般財源総額は確保するということであります。

金子(一)委員 拍手するような話じゃないんですよ。

 全体の国の枠組みを見てください。

 私、資料としてお配りしたものなんですけれども、七十一兆円を何とか維持するために、去年の補正予算の一兆円を加算してやりくりしたんでしょう、今の姿というのは。だから、予算の建前上は、七十一兆円という経常支出というのが守られているように見えるんだけれども、実は補正予算の一兆円をこっちへ持ってきて、地方自治体に、御心配なく、ふえますから、五千億逆にふえますからと言っているにすぎないんでしょう。

 野田財務大臣、七十一兆円、これは本当に、このいびつな財政の姿で健全と言えるんですか。

野田国務大臣 いびつかどうかという認識はちょっと違うと思いますが、歳出の枠七十一兆円以内に基礎的財政収支対象経費はおさめたということでございます。

金子(一)委員 民主党、菅総理も、景気の第一段、第二段、第三段、こうおっしゃっているんだよね。

 ところが、この補正予算の一兆円、これは第二段に入っちゃっていたんだ。それが今度、使い回しして本予算に入れているんじゃないか。つまり、第一、第二、第三の第二の予算を使い回しして本予算に入れている。何なんですか、これは。

野田国務大臣 表現の仕方だと思うんですが、補正予算で御説明したときも、一・三兆、地方交付税については、二十二年度内については三千億、翌年度以降に一兆円という御説明をしておりましたので、何の矛盾もないと思います。

金子(一)委員 矛盾しているとかなんとかという話ではなくて、形の上で、第一段でこれだけ飛ばします、第二段でこれだけ打ち上げますと言っておきながら、法案はいいですよ、地方税法を改正してやったんだから。私は違反をしているとは言っていない、地方交付税法。違反をしているとは言っていないけれども、取り繕いもひど過ぎますねということを言っているんですよ。

 ちょっと、それでは、一括交付金、これは総理の、今回、一丁目一番地なんです。地方向け補助金の全体像を、片山さん、教えてください。

片山国務大臣 その地方向け補助金の全体像という意味はちょっと私もよくわかりかねますけれども、自治体が行いますハード事業それからソフト事業につきまして、それぞれの事業について一定の割合で国が補助金を交付することがあるということで、それはそれぞれの予算で定められております。

 今回、そこの何を変えようとするかといいますと、今回はとりあえず、ハード事業のうちの都道府県向けの部分について……(金子(一)委員「それは聞いていない。いいや、ちょっと一たん下がって」と呼ぶ)よろしいですか。

金子(一)委員 ちょっとお答えいただいている趣旨、私の説明が悪かった。

 私の資料の二ページ目、大臣、見てください。きのうこれは質問登録してあるテーマなんですよ。地方向け補助金の全体像、今お配りしているのは二十二年度。二十二年度は、二十一年度比、十九・五兆から二十一兆、一・五兆ふえていますよね。私が伺ったのは、二十三年度の地方向け補助金の全体は幾らなんですかと聞いているの。

片山国務大臣 ちょっと私、今は総務大臣としては全体像を把握しておりませんので、後刻、財務省とも相談をしまして必要な資料を提出します。

野田国務大臣 済みません、ちょっと通告をいただいていないので、資料を整えておりません。

金子(一)委員 通告しているんだよ。きのうの六時半におれは通告しているんだよ、委員部を通じて。

 片山さん、では、ちょっと一つだけ教えてください。二十三年度は去年に対してふえるんですか、減るんですか。

野田国務大臣 済みません、二十三年度の地方向け補助金等の全体像ですが、概算額で二十一兆八千百五十二億円ということで、ふえるということでございます。

金子(一)委員 二十二年度は、地方が嫌がる子ども手当一・七兆、高校無償化は〇・四兆。一・五兆ふえているけれども、二兆円は、地方が嫌がっているのがふえているんですよね。来年度どうなるんですか。

野田国務大臣 質問の御趣旨がちょっとわからないですが、地方が嫌がっていることについてのお尋ねでしょうか。

金子(一)委員 それも含めた全体像の姿の中身を教えていただきたいんです。

野田国務大臣 金額の内訳ということだというふうに思いますけれども、二十二年度が子ども手当等で一・七兆になっていますが、これが二十三年度では二・一兆になるということでございます。それから、文教・科学振興の関係で高校無償化は変わりません。義務教育も変わりません。あとは、ふえるところが……。御指摘はこの二つですか。(金子(一)委員「はい」と呼ぶ)二つだと、今、子ども手当のところで〇・四兆ふえるということになります。

金子(一)委員 菅総理が、本会議場でもここでも、今度の一括交付金というのは、五千百二十億、当初、二十八億きりなかったものを私のイニシアチブで五千百二十億出しました、これが一括交付金で、地方で何でも使ってもいいんですとおっしゃっているんですが、各省庁から幾ら出させたんですか、野田財務大臣。

片山国務大臣 これは計数のとり方にもよるんですけれども、およそ五千四百億円ぐらいを各省から協力といいますか供出を願いまして、それが、最後は財務省の査定がありまして、五千百数十億円になったということであります。

金子(一)委員 片山大臣、私が伺ったのは、各省庁からそれぞれ幾ら出させたのかということをお伺いしているんです。

片山国務大臣 事前に通告をいただいておりましたら詳細な資料をここで御報告しますけれども、後刻、資料をお届けします。

中井委員長 ちょっと待ってください。

 財務省、資料ありますか。

 それでは、全部読みますか。どこか関心のある省庁ありますか。(金子(一)委員「いや、読んでください」と呼ぶ)全部読みますか。はい。

 野田財務大臣。(金子(一)委員「いや、主要官庁を読んでください」と呼ぶ)資料は後でみんなに出します。

野田国務大臣 今申し上げた、各省からどう出たかというよりも、五千百二十に固めた際の交付金の内訳では申し上げることができます。それでよろしいでしょうか。例えば……

中井委員長 資料を出せばいいじゃない。

野田国務大臣 詳しい資料は後で御提出をさせていただきたいと思いますが、社会資本整備総合交付金で三千七百六十億、農山漁村地域整備交付金が千九十億、水道施設整備費補助が百九十億、交通安全施設整備費補助金三十七億、学校施設環境改善交付金二十六・九億円、工業用水道事業費補助十三・四億円、自然環境整備交付金一・二億円、環境保全施設整備費補助金〇・五億円、消防防災施設整備費補助金〇・一億円ということで、関連の省庁はこれで透けては見えるかというふうに思います。

金子(一)委員 去年の十二月の主計局の資料は、各省庁別、出ているんですよね。私もここに持っているけれども、各省庁のもの。

 それから、ある省庁の予算を、予算書を見ると、二段書きで、幾らつけかえましたと書いてあるんですよ。ですから、何とか交付金じゃなくて、各省庁別に幾ら出したのかということを出してほしいんです。

野田国務大臣 今手持ちの資料はこういう御説明しかなかったんですが、そういう形での資料の出し方、そういう形でしたいというふうに思います。

中井委員長 ちょっと待ってください。

 あした午前中の理事会までに間に合いますか。財務省、間に合いますか。

野田国務大臣 間に合うように提出をさせていただきます。

中井委員長 それでは、あした午前の理事会へ提出をしていただくということでお願いします。

金子(一)委員 片山総務大臣、この一括交付金の配分基準、教えてください。

片山国務大臣 これは今検討している、検討といいますか、詰めているところでありますけれども、仕上がりの姿とそれから初年度の基準とはいささか異ならざるを得ないと思っております。

 といいますのは、各自治体が継続事業などをやっておりまして、急に新しい基準に切りかえますと、継続事業などの進捗に支障を生じる可能性がありまして、自治体からも懸念が出ておりますので、当面は、継続事業の残事業年分が施行が可能なような基準にしたいと思っておりまして、今考えておりますのは、およそ九割は継続事業分に配慮した基準とする、残りの一割を、例えば人口とか面積とか、これは今検討しているところでありますけれども、できるだけ客観的な基準でもって決めるということにしたいと思います。

 これを二年度目、三年度目で、継続分とそれから新規分との割合をシフトさせていって、数年間で客観化をしたいと思っております。

金子(一)委員 私が伺っているのは、片山さん、違うんですよ。

 継続はいいですよ。九割継続だ。だけれども、一般的な配分基準はどうするかということを伺っているの。

 あなた方がよく言っているのは、客観的指標に基づいてとか条件不利地域、勘案してと言っているんだね。条件不利地域といったって、いっぱいあるよね。離島、農山村、過疎地、雪害の地域。

 地方自治体が、この一般配分基準って何だろうかな、菅さんはこの一括交付金をどんどんどんどん将来ふやしていくと言っているんだから、この基準が明確でなかったら、地方自治体、不安でしようがないでしょう。安心しているのはあなただけだよ。

片山国務大臣 おっしゃるとおり、基準は非常に重要であります。であればこそ、今慎重にこれを検討しているところであります。

 自治体の予算との関連でいいますと、確かに、おっしゃるような、自治体に多少の懸念はあると思いますけれども、さっき言いましたように、初年度はその一割分が客観化されるということでありまして、ここのところを今慎重に検討しているところであります。

 正直言いまして、各都道府県の中で幾つかの異論があります、意見の違いがあります。といいますのは、主として大都市部を抱える都道府県からは、できるだけ人口とか面積に応じて配分をしてもらいたいという意向が示されております。一方では、過疎地を抱えたり高齢化率の高い地域を抱えている府県からは、できるだけ、財政力でありますとか条件不利でありますとか、そういうところを十分に勘案してもらいたいということがありまして、これらを両方一緒に満足させることはなかなか難しい。そんなこともありまして、今検討しているところであります。

 私は、これは、とりあえずは来年度は一割分についての基準でありますけれども、これがだんだんだんだんふえていきますから、その過程で、できるだけ自治体の意見も伺いながらこれも改善を加えていく、そういう多少余裕を持った決め方をしていければと思っております。

金子(一)委員 片山大臣、一割の分とか二割の分とか、関係ないんですよ。この配分基準をどうするのかというのは、地方自治体の心配だけじゃないんです。我々国会も、ここは予算委員会でしょう。国に対して、この一括交付金がどういう基準でつくられていくんですかというのをこの予算委員会で議論しなくてどうするんですか。

 だって、何なんですか、配分の基準を決めるのに、武正さん、何言っているの、あなた。配分額が基準によって決まっちゃうんだから。今議論しているじゃ済まないのよ。予算の委員会でそういう基準をはっきりさせなきゃ、我々、国の予算、イエスなんて、ああ結構ですなんて言えるわけないでしょう。どうするの、一体。

片山国務大臣 先ほど申し上げましたように、九割についてはもうおおよそ決まっておりますので、そういう面では、自治体にとって大きな不安はないと思います。

 残りの一割をどうするかということで、これは非常に重要でありますので、それは例えばえいやで決めてしまえば決めることは可能であります。もしそれが、国会の御意思でえいやで決めた方がいいというのならやれないことはありませんけれども、私はそれは当面の妥当な結論に必ずしも至らないんではないかと思っておりまして、多少の時間をいただきたいというのが現在の考え方であります。

金子(一)委員 片山大臣、あなたは本当に役所出身だよね。地方自治体には心配ありませんとあなたはおっしゃっているんだけれども、心配しているのは我々国会なんですよ。国会が、将来これはどうなるのというところを、あなた、二年目、三年目、だんだん枠を広げていくと言っているのに、国会で予算委員会で議論しないで、基準も示されないで、いつの間にか配分されちゃう。

 地方交付税の配分基準がブラックボックスでしょう。あなた、地方交付税と同じようなブラックボックスに持っていっちゃうつもりなんですか。

片山国務大臣 地方交付税がブラックボックスということはないと思うんです。地方交付税法の改正案を毎年出しておりまして、少なくとも重要な要素については法律でもって決めていただいているわけであります。もちろん、省令などで決めていることがありますから、これをさらに透明化するということは今後の課題だろうと思います。それが一つであります。

 それから、年々そのウエートが高まるのに、今ブラックボックスのような基準でいいのかということでありますが、これはさっき言いましたように、年々進化させていきたいと思っておりまして、改善を加える方針であります。本当に自治体の意見もよく聞きながら、もちろん国会でこれは最終的には予算をお決めになることでありますから、国会の意向を踏まえて決めますけれども、とりあえず、初年度は多少の時間をいただきたいというのが偽らざるところであります。

金子(一)委員 最後、いいことを言ってくれたよ。国会の意向を配慮してくださいよ。あなた、全然、今出していないんでしょう。国会の意向をどうやって酌み取るのか。

 今、だって、この三月、地方議会はあるんですよ。三月の地方議会を目の前にして、九割やりますからいいです、そんな話じゃないでしょう。年々進化させるとあなたは言ったけれども、毎年基準を変えるわけ。ことしの条件不利地域、来年の条件不利地域、配分方法を変えるつもりなんですか。

片山国務大臣 毎年一からごろっと変わることはないと思いますけれども、一たん決めたものについて、自治体からいろいろな意見が多分出てくると思います。それらをできる限り公平に踏まえるということは必要だろうと思いますから、最小限度の改善は必要だと思います。

 それに、これは毎年予算で、国会で審議をしていただくわけでありますから、その過程でもまた、恐らく議員の皆さん方からも初年度つくった基準についていろいろと御意見があろうかと思いますから、そういうことを踏まえて改善していくということは必要な作業だろうと思います。

金子(一)委員 大臣、あなたはもうころころ、不安を与えているんですよ。来年度は来年度でまた国会の意見を聞きながらやりたいと。結局、また変えるというわけでしょう。だけれども、ことしについての基準が、国会の意向を何にも受けていないところで決まる。つまり、国会議員の意思なんかどうでもいいと、地方自治体の意見を聞けば、あとはうまくやるから、国会議員は黙っておれという話よ。どうなの。

片山国務大臣 そんなことを申し上げているつもりはないのであります。

 本当は、理想を言いますと、すべて、その九割分はもちろん決めて、残りの一割も早々と決められれば一番いいんですけれども、初年度のことでありまして、それから、客観化された基準といいましても、さっきいみじくも議員がおっしゃったように、農村部に配慮するのか、離島に配慮するのか、大都市部に配慮するのか、いろいろな要素がありまして、それが百家争鳴とは言いませんけれども、知事会なんかからも随分意見が出てきておりまして、そういうのを慎重に踏まえる必要があるだろうということが当面の課題なわけであります。ただ、それは金科玉条、不磨の大典にするつもりはありません。それを、これからも必要な改善を加えていきたいということであります。

 自治体が、それでも、五千億の一割で五百億がどうなるかわからないという、でも、これもゼロか一〇〇になるわけではありませんので、その辺のある程度の相場観というのは多分あるだろうと思いますし、それから、私の経験でいいましても、例えば従来のやり方であっても、果たして箇所づけでその補助金が来るのかどうかわからない、そういう段階で実は自治体は予算を組んできておりますので、多少のそういう未確定要素といいますか不確定要素は当然内在して予算を組んでおります。そのことは御承知おきいただきたいと思います。

金子(一)委員 やっぱり片山さん、役人だよね。だって、知事会、知事会って盛んに言うじゃないですか、知事会からいろいろな御意見を承りながらとか。知事会から御意見を承るのはいいんだけれども、もとより大事だけれども、しかし、ここの国会の場に全然出さないで知事会を相手にしているというのでは、我々国会はたまらないじゃないですか。おかしいな。

 予算編成の見える化、菅総理の言う一丁目一番地、一括交付金化といいながら、そういう見える化というのは、体育館でインターネットでつながないと見える化にならないんですか。ここで出してくださいよ。

片山国務大臣 例えば、基準をつくる場合に考慮すべき要素としてどんなものがあるのか、そういうことでありましたら出すことは可能であります。それぞれをどの程度勘案するのかというのは、多少時間をいただければ私どもとしてはありがたいということであります。

金子(一)委員 継続します、この問題。国会は無視されている、我々。これがわからないと言っている民主党の委員は何なのと思うけれどもね、こんな大事な話が。審議できないじゃない、こんな大事な話。ちょっと何とかしてよ。

中井委員長 金子さん、質疑を続けてください。(発言する者あり)質疑を続けてください。金子君。金子君。(発言する者あり)一銭残らず配付先が決まらなかったら予算審議はないというのは、ちょっと理屈にならぬよ。

金子(一)委員 あなたの言うように、一銭残らず決まらなきゃ予算審議できないと言っているんじゃないんですよ。一番大事な基準について納得のいく説明をしてくれと言っているわけです。

中井委員長 そうすると、金子さんは、基準の項目を出せとおっしゃっているんですね。

金子(一)委員 項目じゃなくて、我々に対して、どういう基準かということをここで説明してくれと言っているわけです。

中井委員長 それでは片山さん、もう一度説明してください。

片山国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますが、九割については、かなり明確な基準がもうお示しできるわけです。残りの一割について、これは初年度のことでありますし、さっき議員もいみじくもおっしゃったように、非常に自治体の関心の深いことであり、かつ、これをだんだん大きくするときには、かなり影響が出てまいりますから、これにしばらく時間をいただきたいということであります。

 それで、もしこれを、さっき何回も申しましたけれども、例えば二年度目からかなり変わってもいいというようなことでありましたら、早目に出すことは可能でありますけれども、できれば、そんなに大きく変わらない、微調整、改善の程度でとどめたいということを考えておりますので、しばらく時間をいただきたいということであります。

中井委員長 片山総務大臣、先ほどあなたは、客観的な条項については出せると言ったんです。それはいつまでに出すのか。

片山国務大臣 それは、もうあすにでも出すことは可能であります。それはあすにでも出せます。

中井委員長 それでは、あしたの朝、理事会に届けてください。

金子(一)委員 書いてあるじゃないですか、皆さんのペーパーに、客観的指標導入によりと。客観的指標って何ですかと聞いているのに、まだしばらく御猶予いただきたいというのは、一体何だということ。

中井委員長 金子さんに申し上げます。

 今、片山さんは、あしたの朝、資料を客観的な項目について出すと言いました。しかし、それではだめだとおっしゃるのかどうか、もう一度御質問ください。

金子(一)委員 あした、私、持ち時間ないんだよ。出してくださいよ、今。

中井委員長 自民党さんの時間があります。

金子(一)委員 それじゃ、この時間はとめて、私、あしたやり直しましょう。(発言する者あり)だめだ。今出してください。

中井委員長 それでは、協議のために、十分間休憩します。

    午後三時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十九分開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 金子さんの持ち時間につきましては、理事間の協議の間の時間を改めてプラスして、二十三分残っておりますが、プラス十分、三十三分ということでいたします。

 この資料が配られましたので、片山総務大臣から、まず最初にこの資料についての説明をいたします。片山総務大臣。

片山国務大臣 先ほど申しました、一割分についてどういう基準にするかということで、これは、今回、それぞれ各省に所属しておりました補助金を持ち寄りました、関係省庁から申し入れのあったものがここに書いてあります。これからどういうふうにこれを案分といいますか組み合わせていくのかというのが、客観化された指標づくりのプロセスであります。

金子(一)委員 ようやく一歩前進はしたと思います。

 ただ、この客観的指標、これで何が決まるのかな。これは検討ポイントですよね。私がこれから言うことを、片山大臣、よく聞いて。

 あなたはさっきから、九割、九割、継続事業と言っているんだけれども、実はそれは国全体の配分の話であって、各県ごとに見るとばらばらでしょう。ある県では継続事業、ある県では継続事業が削られる。ばらばらなんですよ。そうすると、この客観指標というのは一体全体何だということになるんだけれども、どうなんですか。

片山国務大臣 先ほど申しましたけれども、全体のうちの九割相当分は、いわゆる継続事業の残事業をにらんだ基準で配りたいと思っております。それは、各県で、継続事業の残事業、二十三年度に施行するものがどれぐらいあるかということを調査しまして、それを尊重しながら配分をしていくということになります。

 残りの一割は、継続事業とは関係なく、ここにありますような指標を組み合わせた客観化された基準で一割分は各都道府県に配分する、こういうことになります。

金子(一)委員 片山大臣、ちょっと二つ。

 一つは、先ほど私への答弁に、継続事業について新たな基準をつくりたいと言っていたよね。あれはどういう意味ですか。

片山国務大臣 継続事業について新たな基準をつくりたいと申し上げた記憶はないんですが、要するに、九割は継続事業ができるようにしなければいけないので、九割分については継続事業の事業量を勘案して配分をするということであります。

金子(一)委員 国全体としては九割継続事業、だけれども、県ごとに見ると、継続事業を認めたり認めなかったりする。これも今、地方自治体がみんな不安がっているんですよ。各県に聞いてごらんなさいよ。おれのところは二割切られちゃうんじゃないか、おれのところはどうだろうか。だから、三月議会、今度統一地方選があるんですよ、あなたは選挙がないけれども。みんなぴりぴりしているんですよ。客観基準はどうなるんだろうか。もう一遍答えてください。

片山国務大臣 継続事業といいますのは、国として、例えば国交省なら国交省で、継続事業の全国分は把握できるはずであります。それから、別途地方ごとに、各四十七の都道府県ごとに調査をしますと、それぞれの事業についての継続事業も把握できます。それは、恐らくは国レベルでつかんだものと各都道府県分を積み上げたものとは一致するはずであります。その点については、さほど、さほどというか不安を持っていただくことはないと私は思います。

 残りの一割については、今申し上げたような事情でまだルールは決まっておりませんから多少の不安とか懸念はあるかもしれませんけれども、その一割については、できるだけ早いうちに決めたいと思いますけれども、現時点ではまだ決まっていないということであります。

金子(一)委員 それが不思議なのよ。できるだけ早く決めたいけれどもまだ決まっていませんと。ということは、国会に対して、どういう基準でやりますということはまだ決められていない。

 だけれども、この予算は四月一日から出るんでしょう、配分されるんでしょう。国会の議決、中身を経ないで配分されちゃうという話じゃないか。国会軽視も甚だしいよ。やはりだめだよ、これは審議できないよ。

片山国務大臣 私も長い間、行政の経験がありますけれども、予算ですべて箇所づけから何から一〇〇%決まっていなければ予算が決まらないということはなかったと思います。

 例えば、地方交付税交付金の総額を決めていただいて、重要な要素は決めますけれども、配分の具体的な基準は省令その他で決まってまいりまして、配分が決まるのは七月ごろなんです。それのよしあしは別にしまして、それと比べて、これが特に、五千億の一割で五百億円でありますから、それがまだはっきりとその基準が決まっていないということがそんなに致命的だと私は思わないのでありますけれども。

金子(一)委員 まるで官僚主導だよね。今までのことと全く同じだよ。

 内閣府も、配分基準は七月までに決めますなんてばかなことを言っているんだ。四月に配分されるんですよ。九〇%の箇所づけの話じゃないのよ。客観的な基準というのは何ですかと。

 都道府県ごとにどういう、交付税はいいさ、それぞれ交付税法に定まっているんだから。何もないから聞いているんですよ。

片山国務大臣 誤解があるようですけれども、九割分は、継続事業の今調査をしておりますけれども、その調査結果によって決まるわけです。ですから、自治体の方がそんなに不安に思われることはないと思います。残りの一割が、まだ我々として決めていないということであります。

金子(一)委員 我々は、一割も二割も一〇〇%も、そんなことはどうでもいいのよ。一番大事な客観基準が決まっていないということに対して、何も基準が決まらないのに予算を通してくれという話では我々審議できないじゃないですかということを再三言っているんだ。

片山国務大臣 九割については、これを基準と言えるかどうかわかりませんけれども、配分のルールは今申し上げているところであります。残りの一割については、初年度でもありますし、少し時間をいただきたいということでありまして、その程度のことは許容していただけないでしょうかということであります。

中井委員長 金子君、どこに疑義があるんですか。(発言する者あり)そういう制度はたくさんあるじゃないですか。あなたもやってきたじゃないですか。

金子(一)委員 そういう制度は委員長はいっぱいあるじゃないのと言うけれども、この一括交付金化というのは、菅さんの目玉商品だと言っているわけ、目玉政策。補助金をなくして一括交付金化するという、国の形を変えようという話でしょう。その一丁目一番地の基準が何も決まっていません、国会で議論しませんという話では、審議はできませんと言っているんだ。

菅内閣総理大臣 私がこの間申し上げているのは、一括交付金という形で、従来ならそれぞれの省庁がまさに箇所づけをして、補助金を割り当てて箇所づけをするのを、少なくとも、まだ今回は公共事業という大きな範疇ではありますけれども、それぞれの省庁から、この部分は補助金の形をとらないで一括交付金で結構です、そういう形に出していただいたのが全部で五千億強になったわけでありまして、そういう意味では、各県にそれを配分することによって、県の自由裁量の範囲が省庁の枠を超えて大幅に広がる、そういう意味合いは極めて大きな意味を持っている。これは、地域主権戦略会議には現職の何人かの知事さんもメンバーとして入っておられますが、そういう知事さんからは大変高い評価をいただいております。

 その上で、今のことを私もこの場で聞いておりましたけれども、やはり継続的な事業が相当程度あるわけですから、それは継続できるような手当てをするというのが片山総務大臣の説明だったと思いますし、継続的な形でない割合は初年度は一割程度だということで、今この客観的指標の検討状況ということを示されて、こういう考え方をベースに一つの配分のルールをつくっていこう、そういうことでこの検討状況が出されたというふうに理解しております。

 私は、他の制度との関係でいえば、このことで、これから二月、三月、四月といく中で、ルールがだんだん明確になり、必要に応じては各知事の皆さんの意見も聞きながら、あるいは国会の場での議論もあるかもしれませんが、だんだんルールが明確化していくことになるのではないか、このように考えております。

金子(一)委員 菅総理、国会審議の場もあるかもしれませんがって、最後に御発言されたのは何ですか。国会審議があるかもしれませんがって、基準を決めるに当たって、国会で決めなくてどうするんです。知事の意見を聞くだけでどうするんです。これは、菅首相のある意味目玉の政策なんですよ。先ほど申し上げましたように、国の形を大きく変えて、地方自治体が自主的にいわば決めるという、国と地方の形を大きく変える第一歩じゃないですか。

 ですから、一年目、二年目、三年目、どんどん枠を広げていって、来年は市町村まで広げるとか、行き着く先は、補助金は全部地方自治体でしょう、財源も地方自治体でしょう、そこまで考えておられるのかどうか知りませんが。そのときに、一丁目一番地の大事な、地方自治体に対してどういう配分基準でいくんですかというのが、ことしは長い将来の国の形を決める一年目ですよ。第一歩をけつまずいて決まりません、それじゃ議論にならないじゃないですか。

菅内閣総理大臣 私が今の片山大臣の説明をそばで聞いている中で言えば、現実の問題として、初年度が五千億強で、そのうちの九割は継続事業ということでありますので、五百億前後がある意味で継続事業以外の形で配分される。そのときのルールが重要であることは、私も、金子議員が言われるとおり、大変重要だと思って聞いておりました。

 ですから、そのルールづくりについて、時間的な経緯を含めて、どういう段階でやるかということで、今この客観的指標の検討状況ということを示されたわけであります。一般的に、地方交付税の場合もいろいろと従来からルールがあるわけで、それの詳細なことは片山大臣が一番詳しいわけでありますけれども。

 ですから、こういう客観的指標も一つのこれからの検討材料として、こうすべきだ、ああすべきだということを議論を進めていくことになる、そう認識をいたしておりますけれども、何かそれではまずいんでしょうか。

金子(一)委員 首相の理念、考え方、我が国をどういう方向に持っていきたいかという、大きな形を変えたいという意図は、これも枠組みでつくったんですよね。そうですよね。

 この一括交付金というのを閣議決定したのはいつです。去年の六月か七月なんですよ。六月、七月に、去年ですよ、閣議決定しておいて、いまだにできていない。さっきの片山さん、いいんですよ、総理、九割とかなんとかは忘れてください。九割の話をしているんじゃないの。第一歩としての配分基準を、これから国の形を変えていくのに、どういうふうにやりますというのができていませんじゃ、国会で審議ができませんということを言っているんです。

菅内閣総理大臣 九割について忘れてくださいと言われますけれども、この間の経緯を私も何度も申し上げておりますが、議論の中では、当初二十八億円しか各省庁が一括交付金化をすることに出してきませんでした。それは、二十八億円でも五百億円でも五千億円でも同じだといえば、それは性格は同じかもしれませんが、二十八億円という程度の話であれば、まさにこれまでの補助金のそう大きくない一項目にしかすぎないわけでありまして、それを、片山大臣も努力し私も努力する中で、まずは来年度は五千百二十億、その翌年は、今度は県段階だけではなくて基礎自治体段階も含めて一兆円規模の一括交付金にしていこうと。

 こういう方向性がやっと定まってきたのは、まさに予算の、いわゆる内閣の予算案を決定するぎりぎりまでは省庁とのやりとりで決まらなかったわけでありますから、その決まった中で、次にはどのような形でまずは来年度予算の中でそれを配分するかということでありますので、その中で九割方は今日の状況では継続案件に振り向けるということで、あとの一割についてのまずはルールづくりを始めようと。

 それも、ルールづくりは、それは一たん決めたら永久に一定のものになるのか、まずは初年度は初年度として一応適正だと思うものでスタートをして、そして、来年、再来年と実行する中で、継続案件がだんだん少なくなっていけば割合がどんどん大きくなりますから、そういうときに自治体の意見を聞き、そして国会の議論も含めて、そうした若干の変更も含めて議論をすることもいいのではないかというのが先ほどの片山大臣の説明であったと思いますし、私は、聞いていただいている国民の皆さんはそのことで十分納得がいただける説明だ、このように理解をいたしております。

金子(一)委員 全く納得できないんですよ。

 だって、今、地方自治体、国民が一番不安になっているのは、来年度、予算がつくんだろうか、来年どうなるんだろうか、この予算は来年も続くんだろうか、継続性があるんだろうか、一番不安になっているんですよ、地方自治体は特に。来年は、今度は市町村にも対応しようとしているわけでしょう。今度、県に対応したのが、市町村に物すごくはね返るわけです。

 だから、枠を広げるに当たって、市町村議会だって、今度統一地方選があるんですよ、三月に。そのときに客観的な基準というのが何だろうか、政府部内でなかなか詰められなかったから、この国会で決まっていませんなんて言われたんじゃ、委員長、私はちょっと質問できない。

片山国務大臣 今、市町村のことを金子議員はおっしゃいましたけれども、市町村のことは今回俎上にのせておりません。今回問題になっているのは都道府県の予算であります。したがって、都道府県の配分の基準を今つくろうとしているわけであります。

 実は、市町村は千七百二十三だったでしょうか、今ありまして、大きなところから小さなところもありますので、なかなか都道府県のようにはいかない。したがって、非常に複雑な問題も抱えておりますので、これは一年間かけてじっくり検討しましょうということでありまして、市町村のことは、今回、御心配は要らないと思います。

 それからもう一つは、自治体がこれは来年度つくのかどうかわからないというのは、実は今それがあるんです。本当に補助金の箇所づけが自分のところに来るのかどうかというのがわからないまま、実は予算計上しているんです。ですから、自主的に決められないんです。それを今回のこの一括交付金化によってある程度の目安がついて、自分のところで箇所づけができるようにしましょうという大きな前進なんです。ですから、これは、制度を変えるための産みの苦しみの一つのプロセスだというふうに御理解いただければと思います。

金子(一)委員 再三言っているんだけれども、箇所づけの話じゃないんだって。箇所づけといったら、去年私と前原さんとやらざるを得なかったけれども、ああいう箇所づけ、秘密漏えいの話じゃないのよ。基準をどうするのかというね。しかも、市町村が、来年じゃありません、その次の問題ですと言っているんだけれども、市町村はどうするのかというのは、あなた方は再来年やると言っているんだから、関係ないなんという話じゃないの。みんな、はらはらどきどき、どういう基準をつくろうかと思って見ているんだから。

 質問できない。

片山国務大臣 市町村は確かに心配だと思いますけれども、今回の基準が市町村に適用されるわけではありません。市町村の補助金を一括化するときにはそれにふさわしい基準をつくるわけでありまして、これについてはできれば早いうちにもっと、今回の都道府県分はちょっと昨年の改造以来ばたばたとやりましたけれども、市町村分についてはもう少し早いうちからじっくりやりたいと思っております。

中井委員長 金子君。(金子(一)委員「これ以上できません」と呼ぶ)どうしてですか。

 金子君、やってください。時間が流れます。(発言する者あり)

 金子さん、あと十分ありますから、どうぞ御質疑続けてください。(発言する者あり)

 どうぞ金子さん、今のことを御質疑ください。(発言する者あり)

 金子さん、もう一度申し上げます。どうぞ質疑を続けてください。(発言する者あり)

 金子さん、時間が流れるだけだから。(発言する者あり)

 金子さんの質疑が終わり次第、理事会を開会いたします。したがって、金子さんの時間の範囲を、金子さん、質疑を続けてください。この問題について、十分理事会で協議をいたします。(発言する者あり)ほかでもいいですから、どうぞ。(金子(一)委員「残余何分」と呼ぶ)あと三分。(金子(一)委員「三分じゃ質問できっこないじゃないの」と呼ぶ)さっき十分まけたよ。

 金子君。何か一つやってください。

金子(一)委員 三分で質問しろと言われたら、何もできっこない。だけれども、では、ちょっと一つだけ、三分。

 国交大臣大畠さん、八ツ場ダム、中止するのかどうか、今、予断なき検証をやっていますよね。もし中止になった場合に、この八ツ場ダムにかかった事業費、そのうちの地方の負担部分というのは返すんですか、返さないんですか。

大畠国務大臣 国土交通大臣として金子先生が大変な尽力をされた、そういう歴史については十分存じ上げています。

 この八ツ場ダムにつきましては、大臣就任のときに申し上げましたとおり、一切の予断を持たずに検証する、こういうことでおりまして、どうなったかという場合のことについて、今お話しする段階ではないと思います。

金子(一)委員 何だよ、これは。これじゃ質問できないよ。

 だって、前原大臣のときに、八ツ場は中止とやったわけでしょう。これもマニフェストだよね。だけれども、予断なく検証ということで今変わったわけなんだけれども、にもかかわらず、今の大畠大臣、中止になった場合に地方負担を返すかどうかを言う立場にないと、あんな答弁じゃ納得できない。

大畠国務大臣 私も国土交通大臣を拝命して約三週間でございます。この間、この八ツ場ダム問題の重要性については十分今私も研さんを積んでおりますが、いずれにしても、この八ツ場ダム、大変大事な話でありますから、一切の予断を持たずに今検討している段階でございます。

金子(一)委員 ちょっと私、一分残っているけれども、またとめるよ、これは。あんな答弁じゃ、ふざけていますよ。地元に対して無責任だよ。

 だって、一都五県の都道府県は、中止にされたら自分が負担する部分が返ってくるかどうか、大臣がコメントできませんなんと言ったら、何だよ、これは。ちょっとこれ以上質問できない。

中井委員長 あと三十秒残していますが、それでは、本日は、ここでしばらく休憩といたします。

    午後四時三十二分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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