衆議院

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第10号 平成23年2月10日(木曜日)

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平成二十三年二月十日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      石毛えい子君    石津 政雄君

      稲見 哲男君    打越あかし君

      生方 幸夫君    小川 淳也君

      大串 博志君    岡田 康裕君

      加藤  学君    柿沼 正明君

      金森  正君    川村秀三郎君

      吉良 州司君    工藤 仁美君

      桑原  功君    郡  和子君

      佐々木隆博君    斉藤  進君

      斎藤やすのり君    城島 光力君

      空本 誠喜君    田中美絵子君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    玉木雄一郎君

      津村 啓介君    中根 康浩君

      仲野 博子君    橋本 博明君

      本多 平直君    三村 和也君

      水野 智彦君    宮島 大典君

      村越 祐民君    矢崎 公二君

      山岡 達丸君    山口  壯君

      吉川 政重君    和嶋 未希君

      渡辺 義彦君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    井上 信治君

      伊東 良孝君    金子 一義君

      金田 勝年君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      橘 慶一郎君    永岡 桂子君

      長島 忠美君    野田  毅君

      馳   浩君    平沢 勝栄君

      山本 幸三君    佐藤 茂樹君

      遠山 清彦君    笠井  亮君

      吉井 英勝君    中島 隆利君

      柿澤 未途君    山内 康一君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国土交通大臣       大畠 章宏君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     枝野 幸男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中野 寛成君

   国務大臣

   (郵政改革担当)     自見庄三郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (社会保障・税一体改革担当)           与謝野 馨君

   国務大臣

   (国家戦略担当)     玄葉光一郎君

   内閣官房副長官      藤井 裕久君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      大塚 耕平君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     工藤 仁美君

  打越あかし君     三村 和也君

  小川 淳也君     斉藤  進君

  大串 博志君     玉木雄一郎君

  吉良 州司君     吉川 政重君

  佐々木隆博君     加藤  学君

  城島 光力君     岡田 康裕君

  中根 康浩君     和嶋 未希君

  仲野 博子君     山岡 達丸君

  三谷 光男君     空本 誠喜君

  水野 智彦君     渡辺 義彦君

  小里 泰弘君     橘 慶一郎君

  金田 勝年君     永岡 桂子君

  小泉進次郎君     柴山 昌彦君

  齋藤  健君     伊東 良孝君

  菅原 一秀君     井上 信治君

  馳   浩君     平沢 勝栄君

  遠山 清彦君     佐藤 茂樹君

  笠井  亮君     吉井 英勝君

  阿部 知子君     中島 隆利君

  山内 康一君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  岡田 康裕君     柿沼 正明君

  加藤  学君     石津 政雄君

  工藤 仁美君     稲見 哲男君

  斉藤  進君     小川 淳也君

  空本 誠喜君     斎藤やすのり君

  玉木雄一郎君     大串 博志君

  三村 和也君     桑原  功君

  山岡 達丸君     仲野 博子君

  吉川 政重君     矢崎 公二君

  和嶋 未希君     中根 康浩君

  渡辺 義彦君     水野 智彦君

  井上 信治君     菅原 一秀君

  伊東 良孝君     齋藤  健君

  柴山 昌彦君     小泉進次郎君

  橘 慶一郎君     長島 忠美君

  永岡 桂子君     金田 勝年君

  平沢 勝栄君     馳   浩君

  佐藤 茂樹君     遠山 清彦君

  吉井 英勝君     笠井  亮君

  中島 隆利君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     佐々木隆博君

  柿沼 正明君     城島 光力君

  桑原  功君     田中美絵子君

  斎藤やすのり君    橋本 博明君

  矢崎 公二君     吉良 州司君

  長島 忠美君     あべ 俊子君

同日

 辞任         補欠選任

  田中美絵子君     打越あかし君

  橋本 博明君     三谷 光男君

  あべ 俊子君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下地幹郎君。

下地委員 きょうは、民主党の計らいで一時間時間をいただきましたので、この一時間の時間をしっかりと、国民にわかりやすい政治、そういう思いで質問をさせていただきたいと思っております。

 野田大臣には質問はしません。そして、前原大臣には四十分から質問します、それまで御自由に。

 きょうは、与謝野経済担当大臣と四十分間やりますから、答弁時間はゆっくりありますから、思いのたけをお話をしていただいて、私の考えというものをお聞かせいただきたいなと思うんです。

 私がなぜ大臣に時間をとってお話をするかというのは後でまた申し上げますけれども、今の現状だけ申し上げますと、私は国対委員長もしておりますから、この予算をどうしたら早目に御理解いただいて衆議院で可決できるかというのが私の役割なんですね。非常に厳しい状況であります。参議院はねじれ国会でありますから、衆議院で通過をしても、最悪のケース、参議院で否決されてきて、また衆議院に戻ってくる、こういうケースが出てくることは予想されるわけです。

 だから、私がいつも申し上げているように、今この国の大きな問題は、この予算を通して、生活が第一という、民主党も国民新党も同じ考えだと思いますので、そのことをどこまでやれるかというのが一番目。だから、小沢さんの問題も、私たちにとって一番でも二番でも三番でも四番でもない。とにかく予算を通すためにエネルギーを集中すべきだということをずっと私たちは申し上げているのであります。朝から夜な夜なまで何とかこのことをやりたいと思って一生懸命やっていますけれども、今の置かれている環境は、私はなかなか難しいと思うんですね。

 だから、私が一回申し上げたこともあるんですけれども、この衆議院において不信任案を受けるということと同等ぐらいに、予算を通し切れないというのは、総理大臣として、私はなかなかその総理の職を続けることはできないんじゃないか、それぐらい予算というのは重いものじゃないかと思うんですね。

 しかし、新聞を見ると、いろいろな形の中で、予算は衆議院で通過したら三十日で可決をする、関連法案は可決をしなくても、六月まで、税収が集まってきたら、関連法案を通さなくてもこの予算の執行は一部はできるんじゃないかと考えた発言をする方がいますけれども、私に言わせれば、こういうふうな、関連法案と予算を通して初めて予算が通過するということになってくると、関連法案を通さない、それでも六月までの間は執行できるというのは大間違いで、こういう政治的なパフォーマンスに負けた総理大臣が総理大臣をやるのは、私は無理だと思うんです。だから、私は、それぐらい緊張感を持ってこの予算をどうやって通していくかというのが大事なことだということを強く申し上げて、連立である私たちも緊張感を、与党の第一党である民主党も緊張感を持ってやらなければいけないということを強く申し上げているんです。

 その中で、あっちこっちでこの予算の話をする中で、話題の中心はやはり与謝野経財大臣なんですね。なぜ与謝野大臣を菅さんは入閣させたのか、そういうことをおっしゃる方がいっぱいいることは私より大臣の方がよく存じ上げていると思うんですけれども、そういうふうな中で、どうやって与謝野大臣の入閣が、与謝野大臣の経済政策が、社会保障に対する考え方が国民に浸透するかが、私はこの内閣の命運を決めることになると思うんです。だから、四十分間時間をとって、ちょっとお話を聞かせていただきたいというふうに思っています。

 口の悪い人は、こう言う人がいるんですよ、与謝野大臣。ヘッドハンティングをする、大きな会社の部長さんが、少々、中小企業の会社のところにいろいろなことを教えておいて、ああ、この大きな会社の部長さんいい人だなと思ってヘッドハンティングをしたら、このヘッドハンティングをした会社に来てやりたい放題やって、この会社を経営的に厳しい環境に出させて、また大きな会社に戻っていって常務になったり役員になる、そういうケースがあるんですよと言うんですね。

 これは、このぐらいの厳しい言葉が今ある中で、与謝野さんを入れたことがプラス、マイナス、どっちかが今わからない。だから、そこはやはりプラスだと思われることが私は非常に大事だというふうに思っていますから、この厳しい環境の中で与謝野大臣の思いを伝えていくことが、菅内閣そして連立を維持するためには必要だ。

 そして、予算が通らなければ、関連法案が通らなければ、私たちがずっと描いている郵政民営化の改革法案だって、それは通るわけない。それぐらいの厳しい思いでやっていますから。

 まず一点目に、なぜ与謝野大臣はこの菅内閣に入って、批判が出てくるというのをわかりながらも入って頑張ろうと思われたのかというところを少しお話しいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 私の辞令に書いてあることは、税、社会保障一体改革の企画立案をせよ、また、関係各省の大臣と調整せよというのが私が菅総理から与えられた使命ですから、その範囲内で全力を尽くしたいと思っておりますし、自民党におりましたときつくりましたいろいろなことの延長線上に実はございます。例えば、よく話題になる税法の附則百四条というのは私自身が書いた法律でございまして、そういう意味では、私が過去やったことの責任もまたとらなければならない、そのように思っております。

 私は、議員でありますけれども、政治的な動きということではなくて、やはり菅総理が私に命じた社会保障と税一体改革の案をつくる、それだけに集中して仕事をやりたいと思っております。

下地委員 大臣、大臣が官僚のように政策をつくりたい、愚直にやりたいというのはわかりますけれども、今、大臣はもう政局そのものなんですよ。大臣の発言一つ一つ、大臣の存在そのものが政局そのものなんです。だから、社会保障をやりたいというお気持ちがあったにしても、それだけでやれるわけがない。また、大臣を選んだ菅総理、それが、菅総理がもたなくなったということになったら、次の総理大臣が来たら、与謝野さんを選ぶかどうかもわからないわけですよ。そうでしょう。

 だから、私が言っているのは、社会保障の政策をおやりになりたいという、辞令に書いてあるとかそういうふうな話ではなくて、この内閣に入って何をやりたいということを本気でお考えになってやろうとしているのかという、何かもう少し熱いものがあってしかるべきだと思うんです。

 もっと言わせていただくと、この新しい政権は、鳩山総理が、私たちが野党のときに戦ってこの政権交代をやりましたけれども、これは一番目には、小泉改革、それとの、市場原理主義との闘いだというようなことを強く申し上げて新政権ができたんです。だから、子ども手当、農家戸別補償、高校生の授業料の無料化、格差が出てセーフティーネットが必要だからといってあの政策をつくってきたんです。

 小泉さんが経済成長をさせたというのは、私は否定するものではありません。そのとおりだと思います。しかし、その中で、格差が出た部分がある。都市と地方の格差が出た、所得の格差が出た、大企業と中小企業の格差が出た。私の沖縄と東京の格差は、東京の平均所得が五百四十万で、沖縄が百九十万ですよ。こういうふうな格差を埋めなければいけないということが大きな流れになって政治改革をしたわけですよ。

 この小泉さんから始まった格差の是正、大臣は政調会長をやり、それから五回も大臣をやり、小泉イズムの中心的人物が、経済政策が大臣なんですよ。その人がこの新しい政権に来て政権をやるという場合には、社会保障をやりますよというだけではなくて、大臣は、どの考えの小泉さんのよさを持ってきてここで植えつけたいのか、小泉さんのときのどの考えの間違ったところがあるからこれを二度と起こさないようにやりたいのか、こういうことをきちっと言いながら社会保障の話をしていかないと、総理から辞令で社会保障をやれと言われましたということで、国民が本当に納得すると思いますか。

 みずからの立場の政局の意味をやはりもっと考えてやらなければいけないと私は思っている。私は、今の答弁ではちょっと真剣味が足りないんじゃないかなと思いますよ。

与謝野国務大臣 実は、麻生政権で私は安心社会実現会議というのをつくりまして、やはり社会保障の理念というものを変えていこうということを考えました。

 先生が言われている市場原理主義というのは、いわば、小さい政府、自己責任原則の追求等々、やはり日本の社会には少しなじみの薄いものだと思っておりましたので、国民に安心をお与えするとすれば何をやったらいいのか、こういうことを考えて、多くの識者にお集まりいただいて、安心社会実現会議の報告書というものをつくりました。実は、その中で提示された思想というものは、民主党の中で藤井裕久先生が調査会長をやられた調査会でも、ほとんど同じ表現、同じ思想が採用されております。

 したがいまして、私は、自分としては、社会保障国民会議、安心社会実現会議、あるいは藤井調査会の思想の延長線上で社会保障改革をやる、それが私の使命だと思っております。

下地委員 小泉内閣のときの本を書かれていますけれども、その中で、飯島秘書官が小泉改革の真の継承者は与謝野氏だと言っているということを本に書かれていますよね、そうおっしゃっていたと。そして、その後の二〇〇九年の骨太の方針のところで、大臣は、格差の拡大を指摘して、それを是正すべきだというようなことを申し上げているんですよね。私は、そのことを高く評価しているんです。

 だから、社会保障の問題も今おっしゃっていますけれども、この二〇〇九年の、格差の拡大を指摘して、小泉改革の功罪ということを初めに閣僚で申し上げたのは大臣だと思うんですよ。だから、そのときの、二〇〇九年の、格差の拡大を指摘して、是正をしなければいけない、そういうふうなお考えになった背景というのはどこにあるのかというお話をしてください。

与謝野国務大臣 例えば、この例が適切かどうかわかりませんけれども、タクシーの認可というのを自由にしました。今、国会を出て赤坂見附周辺を行くと、何百台というタクシーが遊んでおります。

 これは何を意味しているかというと、一人一人のタクシーを運転されている方の給料というものが下がってしまったということであると同時に、タクシーといういわば機械装置、固定資産が遊休設備になっているということを意味しておりまして、正当な労働に対する賃金が下がると同時に、膨大な遊休資産を抱えたということになります。

 そういう意味では、市場の競争に全部任せておくということが経済として果たして適正かどうか、一部分は、やはり需給調整というものを国がやらなければならないという分野があるだろうと思ったわけです。

 それからあと、典型的なお話をするとすれば、やはり非正規雇用の方々の給与水準の違いでございます。同じ現場で同じ仕事をしている人が給与が違うというのは、もともと不自然なことでございます。ましてや、非正規雇用の方に対して十分な社会保障上の措置がとられていない、これも私は正義にかなっていないと思っておりました。

 したがいまして、今般の社会保障制度改革の中では、通常受けるべき社会保障、例えば年金、こういうものには非正規で働いている方もきちんと加わる、そういう立場の弱い方に光を当てた社会保障制度改革でなければならないというのは、別に閣僚になったからそういうことを申し上げているのではなくて、以前から私の根本的な物の考え方であると思っております。

下地委員 その根本的な考え方をもう一つお聞きさせていただきたいんです。

 大臣は、増税の話というか税率の見直しのときにもこういうふうにおっしゃっていますね。「歳出削減を切り詰めていけば、もうやめてほしいという声が出てくる。増税してもいいから、必要な施策をやってくれという状況になるまで、徹底的に歳出をカットしなければならない。そうすれば消費税の増税幅も小さくなる」、こういうことを本の中でもお書きしている。こういうふうな無駄削減、それが非常に大事だということを大臣はおっしゃっているわけですね。

 今度の社会保障制度の中に、後でまたゆっくりお話ししますけれども、社会保障制度と税一体改革という言葉がそのまま増税論議になっちゃっているわけですよね。だけれども、この増税論議をやる前にやらなければいけないことがあるという認識論を持つべきだというのが私どもの考え方なんですけれども、今、大臣がずっとお考えになってきたこと、先ほどの、社会保障については非正規に対してもちゃんと年金がもらえるような形になる、弱い立場の人を守るというようなお考えと同じように、これまでずっと言ってきた、十二分に無駄削減をしない中での増税はあり得ないというようなお考えは今でも十分にお持ちなんですね。

与謝野国務大臣 無駄という言葉は私余り使いません。歳出削減という言葉の方を余計使っていると思いますけれども。

 財政を再建する、あるいは社会保障制度に持続可能性を与えるというときには、私は三つのことを同時にやらなければならないと思っております。

 一つは、歳出削減であります。それから、できるだけ実質成長率を上げるということです。三番目は、税制を全般的に改革して増収措置をとる。この三つを同時にやる。まず無駄の削除をやって、次に成長をやって、次に税収だという話になると、実は何にもやらないことと一緒になる、そういうふうに思っております。

下地委員 だけれども、大臣は、こう書いてあるじゃないですか。先ほど私が読み上げたとおり書いてあるじゃないですか。徹底的に歳出を切り詰めてから増税の話はすると書いていますけれども。同時じゃなくて、まず歳出削減をして、それから増税の話をするというお考えは変わったんですか。

与謝野国務大臣 骨太二〇〇六という政府の決定文書を見ていただくと、徹底的に切り詰める路線をとりました。二〇〇六年から二〇一一年までに大体十四兆の歳出削減をやるということで、その中で大変評判の悪かった、社会保障制度の伸び率、一兆二、三千億あったものを何とか一兆円で勘弁してくれというような切り詰めをやったわけでございます。

 もちろん、先行的にそういう歳出削減はやらなければならないわけですけれども、無駄がゼロになってから初めて次のフェーズに移るんだというのは、それは無理な注文であると私は思っております。

下地委員 この新しい政権交代した内閣は、この予算をつくるときに、マニフェストの実行をする十二兆円は無駄の削減で出てくると言ってきた政党なんですよ。そして、今、無駄の削減がどうなのかといったら、去年が三兆円、ことしが一兆七千億ぐらい。まだ四兆七千億ぐらいの無駄削減しか今やられていないと。

 だから、今度の予算委員会の全体の姿を見ても、あなた方は無駄削減でマニフェストを全部やると言ったんじゃないかとか、そういうふうな質問で自民党側の野党はぎゅうぎゅうある意味詰めてくるわけです。

 私は、今の段階が無駄削減がもう終わったという段階ではないと思っているわけです。だから、私たちは、もう一回徹底的に無駄の削減をしていく、そういうふうなものの中に、これからまだまだあると思うんですよ、公務員改革もあるだろうし、無駄とは言わないけれども、社会的な、メンタル的な面も考えたら、国会議員の削減という話も出てくるだろうし。

 増税という話をする前にやらなければいけないことは、数字的にも、国民に理解させるためにも、私はまだまだあると思っていまして、ゼロになることがないのは、これは当たり前のことでありますから、この新しい政権の閣僚になられて、今の段階を、どのレベルまで歳出の削減がうまくいっているなと今までの経験からしてお考えになっているのか、どこぐらいまでできると思っているのか、その目安はやはり大臣がお見せする必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 歳出削減というのは、実は非常に難しい作業です。ましてや、社会保障費が国の予算の四分の一以上を占めているときに、社会保障費は削れない、あるいは借金の利息、元本の支払いの国債費も削れない、地方にお渡しする地方交付税等も削れないといいますと、残りの一般歳出の話になります。一般歳出は二十数兆円でございまして、この中からいろいろな施策を切り出していくということは、実は歳出削減を担当された方々がひとしく直面する困難でございまして、歳出削減というのはそんな容易なものではない、すべての予算は理由と根拠がある、そういうふうに私は思っております。

下地委員 大臣、そこが大事なところなんですけれども、大臣が自民党からお移りになってきた、政権交代した、この政権は、そのことを徹底的にやるということで政権交代を、国民から負託を受けたんですよ。そういうふうな中において、大臣が今のような答弁では、これはなかなか難しいんですよね。

 今大臣がやらなければいけないのは、徹底的に、できる以上のところまで歳出削減に取り組む。そうやって、厳しい状況を、無駄の削減を行ってから次を考えますというならわかりますけれども、この政権の私どもが考えていることは、徹底的な無駄の削減。だから、削減をするために蓮舫大臣がいらっしゃって、それもやっている。

 だから、ある意味、こういう答弁をすると、この方向性に水を差すような形になるんですよ。僕はさっきからそれを申し上げているんですよ。それがイコール消費税の話になるから、それではこの政権ではもたないんですよ、閣僚として。そこをしっかりとお考えになって。

 もっと極論からいったら、いいですか、無駄を省く、経済成長を図る、野田大臣がやっているような、予算のさまざまな、特別会計とか一般会計とかいろいろな基金だとかの予算の仕組みの変え方をする、そういう状況の三点セットが全部終わってから、それから消費税の話というのが、私たちの考え方だったんじゃないかなと思うんですよ。

 だけれども、急に、大臣が自民党から大臣になられて、消費税の話がどおんと表に出て、消費税ありきのような話になって、無駄削減に関しても、こんなのはやってみたら限界がありますよねと言われたら、これは政権交代した政策そのものを全部否定していることになっちゃいますよ。

与謝野国務大臣 無駄の削減とか歳出削減を私は一度も否定したことはございません。しかし、財政の状況あるいは社会保障の持続可能性を冷静に考える、やはり今やらなければならないことは今やるという政治としての強い決意が必要であると思っております。

 ましてや、税法の附則百四条には、今年度中、平成二十三年度中に税制抜本改革をやると。これは、消費税を含む税制抜本改革をやって、なおかつ、消費税は社会保障目的税にする、こういうことが書いてあって、政府はそれを命ぜられているわけですから、法律に基づいてきちんとやるということは当然のことであると思っております。

下地委員 大臣、それは、今後ろの方からお話があったように、やらなければいけない、それはわかりながらも、これをやるための段取りというのもあるんですよ。この二月の予算委員会の段階で、そのことを、これはもう決まっていることだからやらなければいけないと持っていくのか、それよりも、今言ったような私の段取りでやっていくのか。その物事を、二十三年度の最後のときまでにこれをやると言っても、それの持っていき方というのが世の中にあるということなんです。

 大臣は政治家なんだから、官僚でもないんですよ。間違ったら、予算が通らなかったら解散があり得るかもしれないぐらいの厳しい状況ですよ。

 社会保障をやらなければいけないというのはだれでもわかる。しかし、今の大臣の答弁を聞いていたら、これは簡単に、三分の二のために、社民党でも無所属の人でも乗ってこないかもしれませんね。(与謝野国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、ちょっと待ってください。

 これは、もう決まっていること、社会保障の心配はだれでもしている、ルールもある。わかりながらも、政治家はそれに向かって段取りをどうするか。

 今、無駄の削減の話をしましたけれども、平成十九年のころから今までの間に経済がどういうふうな状況になっているか。相当悪くなっていますよね。失業者の数も、失業率も高どまりだ。そして、生活保護世帯も、もう三兆円規模まで来ている。自殺者の数も、ずっと十年間、三万人近くやっている。こういう厳しい環境もあることは、大臣が一番御存じですよね。

 しかも、私どもの亀井代表が、中小企業金融円滑化法案をつくりましたけれども、あの法案もいろいろと御批判いただきましたよ。御批判いただきましたけれども、一年間たってみたら、百十万債権が銀行に対して、地方銀行に対して応募しているんです。九十九万債権が承諾を受けているんです。それで、一社二債権ずつ出していると言っていますから、五十万社の人たちが資金繰りに困って、今のままでは払えないから少し延ばしてくれませんかというのが五十万社いるんです。金融庁の調査では、一つの会社に六人か七人と言われていますから、三百万人。今、一万三千件の倒産件数が一万二千件まで下がった背景は、この中小企業の円滑化法案があったからだ、これがなかったら、そのまま倒産件数は相当にもっと高い数字が出ていたんじゃないかという状況なんですよ。

 こんな経済状況であるという認識論を、私たちがどう見るかということです。やはりこれも、ちゃんと経済政策も伸ばす必要があるんじゃないか。

 だから、ある意味、無駄の削減という、国民から見てきたことの視点のものをやるのと同時に、国民の生活環境もよくすること、経済政策をやる。ああ、与謝野さんが来たら経済政策もよくなってきたな、変わってきたな、そういうふうな安心感を与えながら、社会保障の姿を六月か七月までにつくり、経済もよくなってきた、無駄も削減した、そういう状況の中で、こういうふうな社会保障の制度ができるんだったら、経済もよくなってきたし、もう政府も一生懸命無駄も削ったし、そろそろこの論議に乗ろうかというのは、国民から言うべき話なんですよね。余りにも政治の方が先に、社会保障をやらなければいけない、あなたの老後は大変だ、年金は厳しいぞ、財源がないから消費税をやらなければいけないと。消費税だけで社会保障を補えますか。

 そういうふうなことを考えたら、順番は同時にやらなければいけないんじゃなくて、順番は同時じゃないんですよ。そこの考え方が、ずっと、この政権の閣僚になられて合わないんじゃないかと思われているんですよ。だから、さっき言ったように、ヘッドハンティングで来て、買いたくないものまで全部買わせて、会社が厳しくなって戻るんじゃないかという、そんな表現になるんですよ。

 一回、覚悟を決めて、この政権にお入りになった以上は、この政権の中で、さっき私が言ったように、小泉イズムのどこがよくて、どこがだめだったのかをちゃんと自分が今までの経験からしてやっていくということを示す、私は安心する与謝野さんというのになってもらいたいと思うんですよね。今の与謝野さんは増税の鬼みたいな与謝野さんですよ。消費税イコール与謝野ですよ。

 私は、そういうふうなものには期待していないと思う。やはり、与謝野さんが来たら経済がよくなった、いい政策だ、そういうふうなものを始めて信頼を回復してから消費税の話をすべきだ、そう思いますけれども、いかがですか。

与謝野国務大臣 私も自民党の中にいていろいろな議論を聞いておりましたけれども、そういう議論をしながら結局問題を先延ばしにしてきた、これが現在の状況につながっている、これはやはり私個人としては非常に強い反省材料でございます。

 無駄の削減とか不要不急なものの歳出をカットするとか、これはもう当たり前のことで、この仕事はほぼ永久に続けていかなきゃいけない仕事でございます。それが終わったら今度は経済成長で、それが終わったら財政再建だ、社会保障だというふうに順番をつけること自体、やはり物事に何も手をつけないのと同じことになるというのが私の経験でございます。

下地委員 あなた、ちょっとおかしくない。自分で、来年の三月、二十三年度までには社会保障に対する考え方もまとめて、実行しなければいけないと。逆に言えば、無駄を削減する話も経済成長をやる話も、残された期間は少ないんですよ。永久に、毎年この話を続けると言っているわけじゃないんですから。

 何の経験を持たれてそういうことをおっしゃっているのかわかりませんけれども、本人がおっしゃったように、二十三年度末までにはそのことについて結論を出すと言っているわけだから、私が言った二つのこと、無駄の削減も経済成長もやるというのも、残された期間はあと一年もないという時間なんですよ。だらだら無制限にこの話をしようと言っているわけじゃなくて、大臣が言ったとおりのことを言っているんだから。何でそういう答弁になるんですかね。(与謝野国務大臣「委員長」と呼ぶ)ちょっと待ってくださいよ。

 私は、こういう答弁が返ってくると、小泉さんのときにも、経済成長をしたけれども格差が出た。だから、そういうふうなものも是正するように、セーフティーネットも、経済成長の裏には必ずそういうふうな格差が出てくるから、その部分に関しても埋める。ずっと成長したけれども、生活保護世帯は伸びてきたんですよ。こういうふうなものに対しても、自分は経験から、このことについて一つの目安であると。

 地方に関しても、経済が大きい東京だけやってきたから、これも東京が伸びるだけじゃなくて地方の経済が活性化する、内需でできるようなことも、今までの経験からしてやる。

 所得の格差もどうやって埋めるか。今、三十代、四十代の貯蓄率を見ても、高所得者の三十代、四十代は貯蓄をしますけれども、低所得者の三十代、四十代は貯蓄しないんですよ、できないんですよ。みんな子ども手当も使うんです。同じ三十代、四十代でも、高所得者と中所得者と低所得者と違う。

 こういうふうなことの経験からして、経済もよくしながらこういうのも直す、そういうふうな役割が私にありますといってこの政権になって、二十三年度末までにしっかりと、経済も成長して、無駄も格差も出ないようにして社会保障の結果を出していきます、こういうふうな姿を、やってくれるというイメージを私たちは持っていたんです。

 このままでは間違いなく、きついですけれども、今の発言、きょうの話で社民党は乗りませんね、これは。国民新党も頭が痛いですね、これは。これは本当に通りませんよ。(与謝野国務大臣「委員長」と呼ぶ)待ってください。今のような答弁をして、これはあなた一人で菅内閣のこの予算が本当につぶれますよ。

 僕は相当に危機感を持ってこの予算委員会をずっと聞かせていただきましたけれども、私は、そこのところをもっと明確にやっていかなければだめだ、そのことをきょう申し上げたいために、四十分間、大臣、あなた一人にやっているんですよ。

与謝野国務大臣 私は、先生の言われた無駄の削減を否定したわけでもないし、歳出削減を否定したわけでもない。経済成長を否定したわけでもない。みんな必要であって大切であるということは重ねて申し上げてきたわけです。しかし、それを順番をつけてやった瞬間に仕事がおくれるでしょう、このことはやはり自覚していただかないと私は困る、これははっきり申し上げておきます。

 それから、いろいろな予算を執行するという話、こういうことをやれ、ああいうことをやれというお気持ちは十分わかるわけですけれども、それでは、このまま国債発行の垂れ流しで政策を今後もずっと続けていくんですかといったら、どこかでやはりそのけじめはつけなきゃいけないというのが私の考え方でございます。(発言する者あり)

下地委員 どこが明快なのか意味がわからぬな。無駄の削減が国債発行高を上げることにはなりませんよ。当たり前のことじゃないですか、それは。私が言っているのは、無駄の削減をしなさいと言っているんだから。どこが垂れ流しなんですか。(発言する者あり)できていないからそういうことを言っているんだよ。あなた、僕にこんなことを言ったら大変だよ。本当に失礼だな。(発言する者あり)そんなことは言いませんよ。大事に大事に連立は。二度と自民党政権に戻らないように頑張るんですから。

 しかし、これから、あともう少し時間がありますけれども、きょう私と論議したことをゆっくりきょうの夜お考えになって、一番目には予算を通すこと、そして二番目には社会保障の将来の姿を国民に見せることなんですよ。それが、予算を通すことができなくて社会保障の姿は見せられませんよ、大臣。物には順番があるんです。よくそのことをお考えになって私はやっていただきたいということをお話しして、大臣に対する質問を終わります。

 それで、今度は前原大臣、お願いします。

 これも大事なんですけれども、今度の予算の、どうぞ与謝野大臣、いいですよ。私のことを恨まないようにひとつよろしくお願いします。

 日米同盟の姿というのがこれから非常に重要になってきますね。正直言って、鳩山総理のときに日米同盟の中で信頼関係というのが失われたんじゃないか。それはわかりませんよ、そういう声があったことだけは事実ですよね。これから日米同盟がもっと深化されたものになって信頼関係がわくというようなことになっていくためには、どういうことを注意しながらおやりになっていった方がいいのかという大臣のお考えをまずお聞かせください。

前原国務大臣 お答えします。

 まず、大事なことは、日米安保条約に基づいてお互いのそれぞれの責任を果たしていくということが大事なことだと思います。

 五条というのは、日本に対して他国から攻撃があったときには、アメリカはみずから攻撃を受けたものとみなして集団的自衛権を行使するということが書かれております。そして、六条については、この条約がつくられたときには極東という言葉でありましたけれども、この地域の安定のためのアメリカのプレゼンス、これを確保するために、日本が施設・区域を提供する、この二つをしっかりやることが大事だと思います。

 ただ、後者の方で申し上げれば、下地委員は沖縄の議員でいらっしゃいますので、特に施設・区域の七四%、四分の三が集中をする沖縄でございます。沖縄のみならず、他の米軍基地を受け入れてもらっている地域も含めて、例えば、理解がなければその施設・区域の提供というのはできないわけですから、そういったところの理解を得るための最大限の努力もあわせてしていくという意味での負担軽減策、そして地域との協力、こういったものが、私は安全保障面だけをとっても極めて重要なことではないかと考えております。

下地委員 今大臣がおっしゃったように、日米同盟の中の一番大事な部分は、やはり駐留米軍に土地を提供して、そして専守防衛の形をつくるというのが非常に大事、これはある意味ずっと言われてきたことなんです。

 これをもって私たちは、今まで、これで信頼関係、日米同盟の強化だということを言ってきたわけですけれども、もう一歩進んで、今、韓国が厳しい状況にある中で、韓国との関係をどうやって強固に、日韓の関係を強化するかということも、日米同盟に、ある意味、その強化につながることにもなるでしょう。

 また、海賊対策で行っていますけれども、これをやることも非常に大事なことになるでしょう。アフガニスタンやイラクに自衛隊が行った、こういうふうな災害に行くということも、これも日米同盟にとって、今まではアメリカだけがやっていた役割を日本もできるようになるということは、アメリカにとっても非常にいい話になってくるだろう。グアムで今度F15の訓練があるというようなことに関して、訓練費に関しても、今度日本がお金を出す。こういうようなことも、ある意味、私は、強固な関係をつくるという意味でも一つの方向だろうと思うんです。

 土地の問題も非常に大事、辺野古の問題も大事だけれども、こういうふうな新たな深化論みたいなものもつくっていかないと、焦点がいつもここにばかり当たって、これがうまくいかなかったら全体がだめになるような構図が、今どうも見え過ぎちゃっているんじゃないかなと思うんです。

 そういう意味でも、今私が事例を四つぐらい挙げましたけれども、それ以外に大臣が考えていることで、こういう強化論、やはり基本は日米同盟ですから、そういうようなもので何をやった方がいいのかということをぜひお答えいただきたい。

前原国務大臣 鳩山政権のときに、普天間の問題が焦点がむしろ当たり過ぎて、何か日米同盟イコール普天間の基地の問題のような見られ方をした、そのことによって日米同盟が揺らいだように見えたということは、日本にとってもアメリカにとってもよくなかったし、また、そう見えたことに対して他の国がどう反応するかということは、かなりつぶさに我々は経験をしたわけであります。

 日本も、またアメリカも、そういった経験に立って、まさに今、下地委員がおっしゃったように、基地の問題は一つの日米関係における解決すべきテーマではあるけれども、これがすべてではないということで、菅総理とオバマ大統領の間で、安全保障、それから経済、そして文化、人的交流、この三本柱でさらなる日米同盟関係を発展させていこうということを今合意をし、その作業を具体的に今進めているわけです。

 この安全保障面での協力でも、今、下地委員がおっしゃったように、日米のみにかかわることではなくて、周辺の問題、これは朝鮮半島の問題でありますけれども、あとは海洋の航行の自由の問題。そして、今度インドネシアと日本が協力して議長を行いますけれども、例えば災害が起こったときにどう協力をしていくかということも、アメリカと一緒にやっていこうと。あるいは、不審船の船舶に対するいわゆる捜索、PSI、こういったことも一緒にやっていきましょう。あるいは、これからは海賊退治、こういったものにも真剣に取り組んでいきましょう。あるいは、先ほどおっしゃったアフガニスタン、イラク。こういった安全保障面でも、日本の安全あるいは地域の安全のみならず、グローバルなことについても、協力できることについては協力していこうと。

 例えば、中東の問題でも、私が二回目にクリントン長官と話したときには、中東和平を一生懸命やっておられますので、我々としてできることについてはしっかりやっていきますという中での、日米の協力関係というものを確認いたしました。

 そういう意味で、安全保障でも下地委員がおっしゃったようにたくさんやれる分野があるし、経済協力、そして文化、人的交流、この三つの大きな柱というものをさまざまな分野において総花的に伸ばしていく、そのことによって日米同盟というのはより強固なものになっていくというのは、まさに下地委員がおっしゃるとおりだと私は思っております。

下地委員 それが大事なことなので、こうやって海賊対策とか外に出るのと一緒に、法律的には、集団的自衛権について憲法改正がそう簡単でない以上はどうするのか、こういう根本的なことの論議に入ることも私はアメリカからも理解されることにもなると思う。

 武器三原則の輸出に関しても、今回の大綱ではなかなか厳しい表現になりましたけれども、そういうことも、ある意味、今、日本にある装備品と韓国にある装備品はみんな一緒ですよ。アメリカから買い取っている。もう修理をしなければいけない状況の中に来ている。こういうふうなものも含めて具体的に私どもの国からアメリカに対して提案をしていく。

 今までは、アメリカが要望することに何かこたえなければいけないという感じの受け身的な日米同盟の構築の仕方だったけれども、これから、前原大臣みたいな聡明で発言力のある人が、政策能力のある人がいるわけですから、この機会に本当の姿というものをきちっと追いかけてみられたらどうかというふうに思うんです。そのことについてどうぞお願いします。

前原国務大臣 よく対米追従とかアメリカの言いなりとか、そういったことが言われることがありますけれども、実際こういう仕事をやらせていただいて、それはアメリカから要望が来ることもあります。例えば、牛肉の問題あるいは保険の問題、さまざまな分野でのアメリカからの要望が出てきていることは事実であります。

 しかし、例えばTPPの問題について言えば、この委員会でも先般答弁をさせていただきましたけれども、アメリカからTPPに入れと言われたことは一度もないわけですね。つまりは、TPPに入るか入らないかということを日本が判断する際に、どうすれば日本のプラスになるのか、国益につながるのかという主体的な判断を行った上でアメリカと交渉するということが大事だと思いますし、また、先ほど委員がおっしゃったように、韓国はF15Kですよね、コリアだからK、日本の場合はF15Jということで、共有できる部分があるんじゃないかと言われる点についてはそのとおりであります。

 安全保障の日韓協力というものについては、歴史的な経緯もありますので、余り日本が韓国に対して積極的にというよりは、韓国がどのように考えられるかということも自然に、我々は受け身で待つということも大事でありますけれども、しかし、静かにそういった議論もしていくことも大事だというふうに思いますので、委員がおっしゃったように、日本としてどうすることが相手にも受け入れられ、そして日本の国益にもつながるか、そういう観点で、対米関係のみならず、外交はしっかり行わせていただきたいと考えております。

下地委員 私が申し上げたとおりに、今の日米同盟を駐留米軍の問題にばかり置いちゃうとなかなか関係は厳しい。それはなぜかというと、七五%沖縄に基地が集中しているから、右から左に動かすといっても、これは、自民党政権がやっても新しい政権になってもなかなか難しいことなんです。

 また、政治環境が非常に厳しくなった。時間がかかりますよ。だから、この時間がかかるということを認識したら、これにばかりエネルギーをとられる。負担軽減はやりますよ。やりますけれども、日米同盟という新たな姿を、これができないからだめだというんじゃなくて、しっかりと新たなものを持って信頼関係をつくってもらいたい。

 そして今大事なことは、私は先ほど与謝野大臣にも申し上げましたけれども、予算を通すことなんです。そういう中で、辺野古の予算についても、いろいろな修正の話も出てきますしいろいろなことが出てくる。だから、そういう話が出てきても、私は、信頼関係をどう構築できるか、能力は外務大臣にあると思うんです。

 だから、僕はきょう防衛大臣も呼ばないで外務大臣にお話をしている。これは、この辺野古の問題一つだけで、日本の政局、日本の政治のあり方、そういうふうな中においてこの問題に対して一つの修正があったにしても、これが日米同盟の信頼を損なうものにならない力を持つのは外交だと思うんです。

 そういうふうなことをしっかりとお考えになって、常日ごろからアメリカ政府ともこのことを話をして、この予算がどうなったから日米外交がだめになったというような極端な論議に、世論に持っていかない能力を外務大臣に発揮してもらいたいなというふうに思っておりますから、そのこともぜひお願いしたいと思っております。それは余り答弁しない方がいいから、それでいいと思います。

 最後になりましたので、野田大臣、聞かないと言ったけれども、余りかわいそうだから一個だけ。

 僕のさっき提供した資料をちょっと見てもらえませんか、予算の。これは、私たちが少し考えたもので、左の方の、ABCDと書いてありますけれども、麻生政権から引き継いだときには、三兆円の削減をしてマニフェストをやらない。ことしの予算でもマニフェストをやらない。そして、二十四年の予算からマニフェストを十二兆円乗せる。そうすると、その削減をしてきた金額と経済成長した金額で一挙にマニフェストが実行できますよ、こういうふうな案もありますねというのが私たちの考え。

 だから、政権がかわったそのときから少しずつマニフェストをやるよりも、無駄の削減を徹底的にやっていって、それで経済成長が、ことしも三兆円、三十七兆円から四十兆円まで税収がふえましたから、こういうやり方もありますねというのが一点。

 そして、右の方は、亀井流で、百兆円、百兆円、百兆円と三年間投資をして景気をよくしたら、次の二十五年ぐらいからは税収が六十兆円になって、公債の発行は小さくなりますよ、こういうやり方もありますねというような二つの提示をさせていただきました。

 今の予算がいいとか悪いとかは申し上げませんけれども、あらゆるやり方があるねということの一つの例だけきょうは示させていただきました。これに対する感想を、二分でしゃべったらちょうど終わりますから、ひとつよろしくお願いします。

野田国務大臣 下地委員にお答えをいたします。

 流派の違いはいろいろあるかもしれませんが、一つの、いろいろな制約がある中で大事な予算案をまとめさせていただきました。

 いろいろ評価はあるかもしれません。でも、先ほど申し上げたとおり、限界がある中、制約がある中で、景気への配慮、それからマニフェストの着実な実施、それから地方への配慮、財政規律、これらを総合的に勘案して九十二兆四千億の予算をつくらせていただきました。

 これについては、流派の違いはあっても、これを出していることは事実でございますので、先ほど来委員が御指摘のように、何といっても予算とその関連法案が通らないと、やはり日本経済や国民生活に大変大きな影響を及ぼすことは間違いございません。何としてもこれを通すために、流派を超えてぜひ御支援をいただきますようにお願いを申し上げます。

下地委員 流派は一緒なんですよ、きょう出している予算に僕らも賛成しているから。

 ただ、いろいろな案があるよと。だから、その考え方をまた次に向かって、ことしだけでこの政権が予算をつくのが終わるわけじゃありませんから、来年もまた予算をつくっていただかなければいけませんので……(発言する者あり)終わりません。

 だから、そういう意味でも、次の予算をつくるときには、もう二度と自民党に予算をつくらせないことが大事ですから、ぜひ皆さんと一緒になって頑張っていきたいなと思いますから、よろしくお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次に、平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 まず冒頭、きょうの朝日新聞に「普天間予算凍結提示へ」という記事が出ています。社民党に対して配慮して、予算が成立しても執行を凍結すると。どういう意味かよくわかりませんけれども、その検討を始めたと出ていますけれども、財務大臣、この報道は事実なんですか。

野田国務大臣 私は承知していません。

平沢委員 こんなことは絶対ないということを断言できますか。これは全くの誤報である、そんなことは検討もしていない、あり得ないということを断言できますか。

野田国務大臣 少なくとも私は承知していません。

平沢委員 いやいや、承知していないじゃなくて、では、例えば大臣のところにこれが来たときに、そんなことは絶対あり得ないということでいいですか。官房長官でもいい。

枝野国務大臣 報道は承知をいたしておりますが、各党の間の国会での御議論については、何かあれば必ず私のところに報告が来ることになっておりますが、そういった報告は全くございませんし、内閣といたしましては、ぜひとも、自民党さん含めて各党の皆さんに、予算案原案どおり賛成していただきたく、お願いをしている立場でございます。

平沢委員 いや、私が聞いているのは、執行の停止なんということはあり得ないということでいいですね。財務大臣、官房長官、執行の停止。だから、イエスかノーかでいいんです。執行の停止なんということはあり得るんですか。予算が通っていて、その予算については、どういう目的であれ、それを執行停止するということはあり得るのかどうか。

野田国務大臣 現時点で何か予算執行を停止するという考え、アイデアはございません。

平沢委員 では、この普天間の移設関連予算については、予算が成立しても執行停止は絶対ないということを断言してください。

野田国務大臣 一般論的には、何か支障がある場合に停止するということはあると思いますが、現時点で何かを想定して停止をするという考えはございません。

平沢委員 いずれにしろ、普天間の予算凍結、社民党に対して配慮というのがきょうの記事に出ていますから、これは誤報ということでいいですね。

野田国務大臣 官房長官も私も御存じないということですので、それは……(平沢委員「誤報ですね」と呼ぶ)誤報かどうかというのはわかりませんが、何を根拠につくったかわかりませんが、政府としては承知していないということでございます。

平沢委員 いずれにしろ、どこかで検討しているのかどうか知りませんけれども、そんなことはあり得ないということで理解しておきます。

 そこで、私の方で配付資料を配らせていただいていますけれども、まず一番目の、平成二十二年五月十一日、鳩山総理名で出した政府答弁書、これは前にもここで取り上げたことがありますけれども、革マル派は、将来の共産主義革命に備えるため、各界各層への浸透を図っており、JR総連及びJR東日本労組内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透していると認識していると。これは、去年の五月十一日付で出しているんですけれども、官房長官はこれに署名していますね。

枝野国務大臣 内閣府特命担当大臣、行政刷新担当として、この閣議に参加して署名をしております。

平沢委員 そうしたら、二枚目を見てください。

 覚書なんですけれども、四十一回の衆議院選挙に当たり立候補を予定する「枝野幸男氏とJR東労組東京地本本部とJR東労組支部は、推薦にあたり、次の通り覚書を取り交わします。」として、そして、こういう内容のことが書いてあるんですけれども、例えば、一の1は、「わたしは、JR総連及びJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します。」と。その後のことをこれから説明しますけれども、官房長官、そのとおり連帯して活動しているんですよ、これから説明しますけれども。

 これは、覚書を交わしたとき、官房長官は、JR総連、東日本労組、革マルの影響があるということは知っていたんですか、知らなかったんですか。

枝野国務大臣 御指摘のようないわゆる政策協定は、労働団体に限らず、さまざまな団体と選挙などに当たって政策協定や確認書等を交わすことはよくある話でございまして、連合加盟の産別の一つとそういった協定書を交わすということは、一般的によくあることだというふうに思っております。

 御指摘のような事実については、存じ上げませんでした。

平沢委員 そうしたら、今はもうこういう影響があるということを、こういう政府の答弁書で出しているわけで、それに官房長官も署名しているわけでしょう。では、今はどういう関係になっているんですか。

枝野国務大臣 連合加盟のさまざまな団体とは、連合と民主党、あるいは私も含めてさまざまな関係がございます。その中の構成組織との関係ということで一貫して変わっておりませんが、御指摘のような、質問主意書に対する答弁で内閣としても認識をしている問題は共有して認識をしておりますので、そうした浸透をしている勢力の影響を受けることのないように留意をしていかなければならないというふうには思っております。

平沢委員 何を言っているかさっぱりわからないんですけれども。

 では、お聞きしますけれども、JRの中には、官房長官が覚書を交わしたJR東日本労組と、それから、この労組と対決しているJR連合というのがあるんですね。JR連合は、JR労組東日本、ここは革マルに毒されているということで、そこを厳しく指摘して、JR連合という組織があるんです。これも連合の傘下にある組合なんです。そして民主党を応援しているんです、ここも。そことはどういう関係なんですか。

枝野国務大臣 JR連合も連合加盟の産別の一つであられまして、相手のあることですから、具体的な時期等は申し上げない方がいいと思いますが、私自身もJR連合の幹部の方と意見交換をしたりということは何度もいたしております。

平沢委員 では、覚書とかそういったものも交わしているんですか。そして会合にも出ているんですか、そういう大会とか何かにも。

 というのは、JR総連、東日本労組、官房長官はもうしょっちゅう行っていますね、いろいろな会合。そして平成十八年には、これは覚書を交わした相手方が、御存じのとおり、浦和電車区事件ということで逮捕されている、それは、逮捕されたのが冤罪だという集会があった、そこに官房長官は行かれているわけです。

 ですから、官房長官はまさに一体となってそこで活動しているわけですけれども、同じようなことをJR連合ともやっているのかどうか。

枝野国務大臣 連合さんや連合加盟の各産別、単組等も含めて、基本的にはさまざまな会合、御案内があったところについて、日程の許し、問題のない範囲内で、私なり秘書なりが参加するということをやっておりますが、JR連合からそういった御案内をいただいた記憶はございません。

 ちなみに、地元の連合の、連合の組織をどの程度御存じかわかりませんが、連合は、全国の連合があって、都道府県単位で、私の場合は連合埼玉というのがございまして、さらにその下に地域単位で、連合さいたま市地域協議会というのがございまして、連合のさいたま市地域協議会のトップの名前は会長というんでしょうか何というんでしょうか、議長ですかね、そこを出しておられる産別ということでございますので、そういった点では、接点がJR連合の皆さんに比べて多いのは間違いないというふうに思っておりますが、それはあくまでも連合加盟の一産別とのおつき合いということでさせていただいております。

 また、御指摘をいただきました会合について、詳細は記憶をいたしておりませんが、御承知のとおり私も弁護士でございますので、一般論としての適正法定手続等について講演を依頼されてお話をしたりという記憶はございますが、それ以上のことについて何か話をしたというような記憶は全くございません。

平沢委員 JR総連、東労組からは、官房長官、この前、柴山委員がここで指摘したように、資金が官房長官に相当渡っていますよね。幾らだかわかりますか。七百九十四万円、報告書を見れば渡っていますよ。

 では、JR連合はどうなんですか。

枝野国務大臣 七年にわたって、前後関係では十数年にわたって、トータルをすると延べで今のような御指摘の金額かということを、たしか柴山議員がお調べをいただいて、それは間違いないだろうというふうに思っております。

 JR総連という産別以外の産別の幾つかのところからは、同程度あるいは同程度以上の、長年にわたっての累積でいえば、政治献金を御協力いただいている産別は幾つかあるかと記憶をしておりますが、御指摘をいただいたJR連合については、事前の御通告がございませんでしたので、確認をいたしておりませんので、確認をした上でお答えをさせていただきます。

平沢委員 ないんですよ。

 官房長官、JRの革マル派の四十三名のリスト裁判というのは御存じでしょう。JRの中で、JR東労組の中で革マルで活動していた一部が要するに、もう一緒に活動できないということで出ていったんですよ。出ていった者が、JR東労組、JR総連の中には革マル派がいっぱいいると、四十三名のリストを出したわけですよ、表に、公にしたわけですよ。自分たちが一緒に今まで活動していたわけですから。そして、それを出したもんですから、出された方が、JR総連、東日本労組、これが訴えて、今裁判になっているんですよ。

 その裁判の中で、JR総連、東日本労組は何と言っているか知っていますか。一九九九年十二月まで革マルが活動していたことは事実だと。しかし、一九九九年十二月から関係を絶ったと。これもちょっとよくわからないんだけれども、認めざるを得ないもんだから、一九九九年十二月まではJR総連、東日本労組の中に革マル派がいて活動していたと、はっきりと自分たちが認めているんです。警察じゃないですよ、自分たちが認めているんですよ。

 官房長官、知っていますか。

枝野国務大臣 当該裁判自体存じ上げませんので、何ともお答えをしようがございません。

 内閣といたしましては、昨年の五月十一日付の質問主意書に対する答弁のとおり認識をいたしております。

平沢委員 JR総連、東日本労組の関係者が去年六月三十日に裁判所に出した準備書面というのがあるんですけれども、その中で何と言っているかというと、JRの組合内には、かつては革マル派の組織が存在したが、現時点ではもはや存在しなくなった、こう言っているんです。一九九九年十二月。これはちょっと、非常に矛盾点があるんですけれども、それはともかくとして、官房長官が覚書を交わした、そしていろいろと応援をもらっていたそのときは、はっきりと革マル派が中で活動していたということを自分たちが認めているんですよ。

 そうしたら、先ほどの資金ですけれども、一九九六年から一九九九年まで四百四万円もらっている。革マル派が活動しているときに官房長官はそれをもらっているんですよ、向こうが認めているんです。今、警察は、恐らく今でも革マル派が主導しているということを認めているわけだから。だけれども、自分たちが一九九九年十二月まで革マル派が中で組織があって活動していたということを認めているわけですよ。そこと署名を交わして金を受け取っていたわけですよ。官房長官、おかしくないですか。

枝野国務大臣 昨年の五月の答弁書で内閣としてお答えをしたとおりの認識は、内閣の一員として当時もおりましたので、私も共有をいたしておりますが、一九九九年当時あるいはそれ以前のことについては、少なくとも私は存じ上げませんし、どういう認識であるのかということについては承知をいたしておりません。

 私は、その組織の中にどういう方がいらっしゃるかということは詳細は存じ上げませんが、連合加盟の一産別あるいは一単組との間で、通常の連合加盟の各産別の皆さんとのおつき合いの範囲内でおつき合いをしてきていることでございまして、それぞれの組織の中の構造がどうなっているのかということについては存じ上げません。

平沢委員 官房長官、知らなかったといっても、結果的に、要するに官房長官がサインした相手は、その後、浦和電車区事件で逮捕されるんですけれども、この人は革マルの幹部と言われているわけです。そして、彼ら自身が、一九九九年十二月までは革マルが中で活動していたということを、裁判所に出した準備書面の中で認めているんですよ。これが結果的にわかったんですよ。わかったら、それまでにもらったお金は返すのが筋じゃないですか。

枝野国務大臣 御指摘をいただいています配付資料二にあります覚書は、機関と私個人として、つまり連合加盟の、正確に言うと連合加盟の単組の支部という機関との間で交わしたものでございまして、ここに名前が載っておられる個人と交わしたものではございません。そして、いずれの献金等についても、政治資金規正法に基づいて適正に処理をさせていただいているところでございます。

 繰り返しますが、私は、連合加盟の認められている労働組合と連合加盟の各産別、そういった組合とのおつき合いと同程度の範囲内でのおつき合いはさせてきていただいておりますが、当該組織の中にどういった方がいらっしゃってということについては存じ上げておりません。

平沢委員 知らなかったかもしらぬけれども、後で結果的にわかったんでしょう。そして、本人たちも、去年の六月の裁判所に出した書面の中で、革マルが一九九九年十二月まではいたと自分たちが認めているんですよ。だから、結果的にわかったわけでしょう。そうしたら、それに対して、やはり官房長官だからきちんとしたけじめをつけるのが筋じゃないですか。だって、結果的にわかったんですから。

 返さなくていいんですか、これ。だって、それは、本来なら全部返すべきですよ。最低限、本人たちが、一九九九年十二月までは革マル派が中で活動していたと言っているわけだから、認めるべき。それがわかったんですから。

 どうですか、官房長官。そんなことは知らなかったなんていうことは通りますか。

枝野国務大臣 私がそういった、本日配付の資料に御提示いただいている覚書を交わしたり、それから政治献金等をいただいているのは、法に基づいて認められた連合加盟の産別という機関との間でおつき合いをさせていただいているものでございます。

 そうした組織の中にいろいろな方がいらっしゃる、そして内閣といたしましても、そういった問題のある組織の者がそういった組織の中にいるということはそのとおりでございますので、したがって、そうした勢力に利用されることのないように留意をしてまいりたいというふうに思っておりますが、当該組織そのものは、連合加盟の、法に基づいて適正に認められている労働団体でございます。

 繰り返しますが、そこの中にそういった問題のある者がいるということは、内閣としての認識として私も共有していますので、そういった者に利用されることのないよう留意をしたいと思いますが、あくまでも連合加盟の産別とのおつき合いでございますので、そのこと自体については問題ないんじゃないかと思っております。

平沢委員 今官房長官は、利用されることのないようにと言っているけれども、利用されているんですよ、官房長官、今から言いますけれども。そして、JR連合は、JR総連というのは革マルに毒されているということを言っているわけですよ。JRの中の組合が言っているわけですよ。それで、官房長官は逃げるんですか。

 では、三枚目を出してください。「厚生労働省等ヒヤリングの開催について」というのがありますね。官房長官は呼びかけ人の一人なんですけれども、これを主催したのはどこなんですか、官房長官。官房長官も出ておられますけれども。

枝野国務大臣 ここにもあります、ILOで採択された報告書にあるILOからの要請について関係省庁からヒアリングをした記憶はございますが、さまざまな役所からさまざまな案件についてヒアリングをするということは、今、平沢議員もされているかというふうに思いますが、日々、一日に何件もございますし、五年以上前のことでございますので、詳細は記憶をしておりません。

平沢委員 そもそも、この呼びかけ人の、この紙はおかしくないですか。呼びかけ人は国会議員で、そして出欠の連絡、ファクスの返送先は〇三―三四九一―七一九二と、これはJR総連ですよ。一番下を見てくださいよ、JR総連政治部長。お問い合わせはJR総連の政治部長になっているんですよ、これ。

 官房長官、JR総連と一体となってやって、JR総連の代理人として動いているんじゃないですか。このペーパーを見てごらんなさいよ。

枝野国務大臣 先ほど申しましたとおり、ここにありますようなILO勧告についてのヒアリングをした記憶はございますが、具体的な経緯とか内容とか詳細についての記憶はございませんので何とも申し上げられませんが、当該労働組合に限らず、そして労働組合に限らず、さまざまな皆さんから、この問題について政府はどう考えているんだ、内閣はどう動いているんだというようなことについてのヒアリング等を要請されまして、それについて役所から話を伺うというような機会はあることでございまして、そういったものの一端としてこういったことがあったのかなというふうな記憶はございます。

平沢委員 官房長官、逃げないでくださいよ。

 官房長官、このとき、ILOの勧告についてのヒアリングとか言っていますけれども、ここに詳細な議事録があるんですよ。

 この議事録を見てみますと、官房長官は、警察が今現在進行形でやっている捜査について、これはおかしいおかしいと言って、相当の圧力をかけているんですよ。

 例えば、既に押収されているものの再差し押さえの際には現占有者に対して令状を示せばよいことになるが、これだと、現に占有している捜査当局に対し捜査当局が令状を示せば再差し押さえできることになる、これは刑事訴訟法を改正しないとおかしくないかと。

 要するに、再差し押さえ、これは警察が事前の捜査をやっていたので押さえてあるものを再差し押さえするのは捜査当局に対して令状を示せばいい、それを、もとの所有者のところに令状を示さなければならないんじゃないかということをずっと言っているんですよ。

 それに対して、警察当局は、それは別に法的にも問題ないし、判例上も問題ないと言っているけれども、官房長官はしつこくそれはおかしいということを言っているんですよ、官房長官。(発言する者あり)よくないんですよ。何がいいんですか。

 それと、もう一つ言いますよ。

 令状で押収したものについて、官房長官は何と言っているんですか。官房長官は、裁判官は押収物一件ごとに判断していない、捜査当局が令状の指し示す範囲に該当するかの判断を間違えていると言っているのだと。

 それから、令状で差し押さえたものを一件一件について言って、浦和事件について言えば、連合浦和地協の組織図を差し押さえている、JR総連の組織図であればまだわかるが、これは全然関係ないではないか、だから濫用だと言っているんだ、こう言っているんですよ。

 これは、ILOの勧告を聞いたことにヒアリングしたらなるんですか。これは官房長官の発言ですよ。官房長官は圧力をかけているんじゃないですか。現在進行形の警察の捜索について、再差し押さえのやり方について、捜索のときの押収のものについて圧力をかけているんじゃないですか。

枝野国務大臣 先ほど申しましたとおり、五年以上前のことですし、この手のといいますか、役所の皆さんからさまざまなヒアリングをするということは平沢議員もされているかというふうに思いますが、私も特に野党時代は一日に何件もいろいろなものがございまして、詳細な記憶はございませんし、また、今議事録と称するものをお読みになったようでございますが、確認をいたしましたが、党としても、あるいは私自身としても、議事録的なものを作成することは全くいたしておりませんので、その内容の一々についての真偽については何とも申し上げようがございませんが、私の記憶でも、法律家である立場から捜査手続等について、この案件に限らず、いろいろお尋ねをして、法的に問題がないかどうかというお尋ねをすることは多々ございますが、圧力をかけるというようなことをした記憶は全くございません。

平沢委員 このヒアリングをやるときに、各省庁をやる前に、これを見てください、十時半からJR総連からまず注文を聞いているわけですよ。そして十一時から各省庁を呼んでいるんですよ。そうでしょう、この紙を見てください。

 だから、まさにJR総連と一体となって動いて、そして、この議事録を見ると、明らかに官房長官は現在進行形の捜査に圧力をかけているんですよ。状況を聞いているんじゃないんですよ。捜索がおかしいと言っているんですよ。官房長官、これでも圧力じゃないと言えますか。

枝野国務大臣 まず、配付資料にございますようなこと、詳細な記憶はございませんし、私も自分の事務所を調べてみましたが、当時の、各種のヒアリングはいろいろなところとやっておりますので記録等は全くございませんが、こうして予算委員会に出てきている資料ですから、この資料自体はそういったものなのかもしれませんが、一般的に申し上げても、国民の皆さんからさまざまな案件について、政府としてどう考え、どう動いているのかということについてお尋ねがあって、それを国会議員の広い意味での国政調査の見地から役所にお尋ねをするということは、平沢議員もされていると思いますが、多々行うところでございますし、それに先立って、国民の皆さんから、こういうところに疑問点がある、こういうところがわからないんだけれどもということを伺った上でなければ、まさにどういうところについてヒアリングでお尋ねをするべきなのかということがわかりませんので、特に特別なことだというふうには思っておりません。

 また、私自身、繰り返しになりますが、私も法律家の一人でございますので、さまざまな事実関係について、平沢議員も今野党という立場で警察やその他についていろいろお尋ねをされていようかというふうには思いますが、いろいろなヒアリング、お尋ねはいたしますが、圧力になるようなことにはならないように厳に留意をしてこの間国会議員として職務を果たしてきたということについては、自負をいたしております。

平沢委員 官房長官は、議事録を見たら明らかに圧力をかけているんですよ。

 ですから、委員長、関係者を参考人で呼んでください。厚生労働省大臣官房国際課の課長補佐の平嶋さん、大臣官房国際課国際労働機関第一係長藤原さん、これは当時ですよ。それから、警察庁警備局公安課の山田幸孝さん、警備局公安課の柳原さん、それから法務省の国会連絡調整室法務事務官高橋さん、それから刑事局付の浜さん。この六人、この人を参考人として呼んでください。官房長官が今言ったのと全然違いますから。呼んでください。

中井委員長 理事会で協議いたしますが、その議事録というのは、私どもの部会等で余り聞いたことがない言葉でございますので、どこかの役所がメモしておったのを先生がお手に入れられたかどうかについても理事会へ申しつけてください。

平沢委員 これはいずれにしろ聞きますけれども、最後に与謝野大臣。

 与謝野大臣は、去年、たちあがれ日本を立てたとき、政見放送でこう言っているんです。テレビの政見放送でですよ。民主党には、日教組を初めとした労働組合に依存している、私が一番ひどいと思うのは、あの過激派の革マルの代表が民主党の比例に入っている、これはもう許しがたいと。これはテレビの政見放送で言ったんですよ。

 それで、街頭演説、渋谷の駅前の街頭演説で何と言ったかというと、この政権は、民主党政権は、全共闘時代の新左翼崩れが集まってつくっている政権だと思っているんです、民主党は革マルそのものを立候補させている、今ここに列車が走っているけれども、JR東労組は革マルの牙城なんです、その革マルの親分の松崎さんの一の子分が民主党の全国比例で出てくるんです、日教組もいれば、やはり過激派の代表まで民主党の候補に入ってくるというのは異常なことなんです、こう言っているんです。

 去年言われたわけでしょう。街頭で言われ、政見放送でテレビでも言われた。それについてどう思われますか。

与謝野国務大臣 その当時の私の認識を率直に述べたまでであります。

平沢委員 では、革マルの候補者が当選したんです。民主党にいるんです。今、民主党の内閣に入っている。それについては、許しがたいと言っているわけでしょう。そうしたら、それについて何らかのアクションをとっているんですか。

与謝野国務大臣 私は別に民主党の党員でもございませんし、一閣僚でございます。

平沢委員 許しがたいとテレビで政見放送で言って、許しがたいと言って、その民主党政権の中に閣僚として入って、こういうことは許しているんですか。事実上許していることになるじゃないですか。

与謝野国務大臣 許してもいないし、許してもいない。私は閣僚として仕事をやるだけでして、その方が所属しているのは民主党でございまして、私は民主党員ではございません。

平沢委員 何を言っているかよくわかりませんけれども、時間が来たから終わりますけれども、この問題はまだ全然終わっていませんで、先ほどの官房長官の答弁も全く納得できませんので、またいずれ質問させていただきたいと思います。

 時間が来たから終わります。

中井委員長 これにて平沢君の質疑は終わりました。

 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 まず冒頭、枝野長官、今、平沢議員の質問にも触れられていましたけれども、革マル派との関係が政府の答弁書で指摘されたJR総連及びJR東労組からの献金について、今月一日、長官は、今後は、献金等の申し出について、李下に冠を正さずということでお断りするとおっしゃいました。

 では、既に受け取られた七百九十四万円の献金を返すおつもりがあるのですか、ないのですか、明確にお答えください。

枝野国務大臣 政治資金規正法に基づいて適正に受領したものでございまして、今後については、いろいろな御指摘もございますので、李下に冠を正さずという考え方から、お申し出があってもお断りをしようということを申し上げましたが、過去にいただいた政治献金については、法に基づいて適正に受領したものでございまして、それについてどうこうしようということは考えておりません。

柴山委員 問題のある団体からの受領でございます。ぜひ返還を検討していただきたいと思います。

 さて、今月一日、私は、民主党の小沢元代表がかつて代表を務めておられた自由党の政党交付金について質問をさせていただきました。平成十四年、税金によって賄われた政党交付金が十五億円超にわたって当時の幹事長だった藤井官房副長官に支出されていたという問題です。

 藤井副長官、あなたは、この金を受け取っておらず、しかも使い道も御存じないと答弁されました。間違いありませんね。

藤井内閣官房副長官 国会での答弁でございます。

柴山委員 あなたはこのときの私の質問に対して、七、八年前に今と同じことをお答えしていますとおっしゃいましたけれども、どのような機会に、どこでそうしたお話をされたんですか。

藤井内閣官房副長官 七、八年前にこの話が国会で出たときに、マスコミさんの取材に対してお答えしております。

柴山委員 そのとおりだと思います。平成十七年の二月二日、予算委員会で我が党の松岡利勝議員が、時の総務大臣に対してこの問題について質問をされました。しかし、御存じのとおり、松岡議員はその後、これよりはるかに少ない事務所費問題で命を落とされたんです。そのことの重みをぜひかみしめていただきたいと思います。

 そして、副長官、先日も指摘をさせていただきましたけれども、平成十六年ごろ、小沢元代表の関連政治団体である改革フォーラム21の口座に、収支報告書に記載のない約十五億円の入金があったと昨年一月十七日の日本経済新聞で報じられています。このお金がさきに述べた十五億円である可能性はないんですか。

藤井内閣官房副長官 これも柴山委員にお答えしたように、その内容を知りませんので、どこへどう行ったかということは全く承知をいたしておりません。

柴山委員 先日私が指摘させていただいたとおり、当時自由党の会計事務担当者であり、亡くなられた八尋護さん以外にも、同じく自由党の職員で、かつてあなたのところにいらっしゃった高橋豊和さんは、現在、民主党の衆議院第三控室におられます。また、同じく自由党にお勤めだった俊成浩章さんは、現在、民主党の経理部におられます。

 女性の事務をされていた方々も含め、この件について、藤井副長官はその後、きちんと聞き取りなどの調査をされましたか。

藤井内閣官房副長官 全く私の知らないことでありますので、そのようなことは確認をいたしておりません。(発言する者あり)

柴山委員 今声がありましたが、知らないとおっしゃるんだから、しっかりと確認をするべきではないんですか。私があえてお名前を挙げて、しかも参考人招致まで求めているのに、余りにもずさんな対応ではないでしょうか。しっかりと調査をしてください。よろしいですか。

 そしてまた、先日は参考人招致と申しましたけれども、仮に深い関与が疑われる場合には、他の関係者も含めてぜひ証人喚問の検討もお願いしたいと思います。

中井委員長 理事会で協議いたします。

柴山委員 今申し上げた改革フォーラム21は、実質的に民主党小沢代表の財布として巨額の資金を集めてきたんです。

 また、このパネルをごらんください。

 一昨年の衆議院解散日である七月二十一日に、この改革フォーラム21は、小沢氏が代表を務める民主党岩手県第四区総支部に表に出ているお金で三億七千万円もの寄附を行い、翌二十二日には、その民主党岩手県第四区総支部から、そっくりそのまま三億七千万円のお金が小沢氏の資金管理団体陸山会に流れているんです。

 陸山会からは、小沢氏に近いとされる候補者九十一名に、総選挙公示の八月十七日ですけれども、その日までに合計四億四千九百万円が提供されています。

 鈴木総務副大臣、あなたもこのとき五百万円を受け取っていますね。

鈴木(克)副大臣 御答弁させていただきます。

 今お話しのとおり、私も、当時、選挙前に大変厳しい状況でありました。この資金は、本当にありがたくちょうだいをし、適正に使わせていただきました。

柴山委員 一般論として、政党や政治資金団体、すなわち、自民党であれば国民政治協会といった政党のお金の受け皿がありますけれども、それ以外の政治団体から同様の政治団体への寄附金の上限額は年間幾らでしょうか、鈴木副大臣。

鈴木(克)副大臣 一般論としてという御質問でございますので、一般論としてお答えをさせていただきたいと思いますが、政治資金規正法におきましては、政党及び政治資金団体以外の政治団体間の寄附は、同一の者に対しては年間五千万円を超えることができないと記されております。

柴山委員 五千万円。この図でいえば、実に改革フォーラム21から最終的には陸山会まで三億七千万円もの金が移動したということになるわけですが、例えば、今の図のように、政党支部を間に挟むことによって、そうした政治資金規正法違反の罪は免れられるのでしょうか。

鈴木(克)副大臣 総務省としては、個別の案件については実質調査権を有しておりません。具体的な事実関係を承知する立場ではありませんけれども、一般論としては、政治資金規正法においては、政党及び政治資金団体とそれ以外の政治団体との間の寄附については年間の上限額が設けられていないというところでございます。

柴山委員 ということは、副大臣、間に政党支部を挟むことによって、幾らでも、先ほど私が申し上げたような、政治団体間の献金の年間上限額を潜脱できる、そういう御答弁を今されたということでよろしいですか。

鈴木(克)副大臣 政治団体間の寄附の量的制限については、平成十七年の政治資金規正法改正によりまして、平成十八年一月から導入をされておるところであります。この制限は、あくまでもその他の政治団体が同一の政治団体に対して寄附する場合に適用されるもので、政党及び政治資金団体が寄附者または受領者のいずれかである場合には適用されておりません。

 政党及び政治資金団体に対する寄附に上限が設けられていない理由は、政治資金規正法においては、議会制民主主義の健全な発展を図るため、政党本位の政治資金制度の確立を図ろうとしていること、また、政治活動の中心となるべき存在である政党の政治活動の自由を妨げることがあってはならないというふうに承知をいたしております。

柴山委員 政党からの寄附が民主政治の健全な発展につながる。それでは、例えば、この図に示したように、一日違いで政治団体から政治団体への寄附に介在をさせるということが本当に、今副大臣がおっしゃった民主政治の健全な発展を阻害するものではないと言い切れるんですか。

鈴木(克)副大臣 先ほど御答弁をさせていただきましたように、平成十七年の政治資金改正法、これは議員立法でありましたけれども、平成十八年一月から導入をされているということを申し上げました。

 したがって、答弁の繰り返しは避けますけれども、いずれにしても、まさに政治活動の中心となるべき存在である政党の政治活動の自由を妨げることがあってはならないということでこの法が制定されている、このように考えております。

柴山委員 鈴木副大臣、この質疑をインターネットやあるいはそのほかの中継等でごらんになっている国民の、恐らく一人も今の副大臣のお話に納得した方はいらっしゃらないと思いますよ。

 片山総務大臣に伺います。片山総務大臣、今の説明で本当に正しい、それでよいというように総務大臣は思っていらっしゃいますか。

片山国務大臣 政治資金規正法の解釈でいいますと、先ほどの答弁、間違いではないと思います。

 これは、政治活動といいますか、政治資金の問題をどう規制するかという、いわば立法論、立法政策の問題だろうと思うのでありますけれども、柴山議員がおっしゃりたいのは、さっき言った、政党と政治資金団体以外の政治団体間の資金のやりとりというのは規制をしているわけですね、上限五千万、同一のところには五千万という。今の政治資金規正法の規定では、それが場合によっては骨抜きになるのではないか、すり抜けることができるのではないかという御指摘だと思います。それはあり得ると思います。

 であれば、そこをきちっと規制しようというのも立法論としてあると思いますが、その場合には、今度は政党とか政治資金団体の資金のやりとりが全般的に規制されるということで大きく政治活動の自由に制限が加わるということで、これをどこでどういうふうにその制約を加えるかということは、これは私は立法論だと思います。

 ですから、この問題をどうするかというのは、我々は現行法に基づいてその法を執行しておりますので、それは、政党それから皆さん方でよくこの問題ついては御議論をいただくことが必要だろうと思います。

柴山委員 総務大臣、私は、例えば一日違いで同じ額が明らかにトンネル献金されたような本例においてまでこのような規制の網の対象外となることについておかしいと思わないかということをお聞きしたんです。

 それで、今、片山総務大臣は、ではそれは立法論として検討する余地があるというふうにおっしゃいましたけれども、省内でこの問題についてしっかりと検討してしかるべく具体的な解決を導くような対応をするように検討することをお誓いしていただけますか。

片山国務大臣 総務省は、政治資金規正法、公職選挙法を所管しておりますので、日ごろ、これに限らずいろいろな問題点については研究することにやぶさかではありません。

 ただ、研究は検討しますけれども、最終的には、これは立法でありますから、政党、各会派で御議論いただくことが必要だろうと思います。

柴山委員 藤井副長官、この小沢元代表の関連団体のこういったさまざまなマネーゲーム的な資金の移動、こうした金権体質の政治の片棒をあなたはずっと担いできたんじゃありませんか。

 平成十四年につくられた、自由党からあなたに支出された合計十五億円超の領収書があります。この前も示しました。パネルをごらんください。

 前回の質疑では、この領収書を見たことがないとか、私が書いたものかどうかについてはわかりませんと答弁されましたが、捺印までしておいて、そんなことはあり得ない。違いますか。

藤井内閣官房副長官 お答えは同じでございますが、特に印鑑については、柴山委員が実印か銀行印とおっしゃいましたが、全くそれとは関係がありません。

柴山委員 わかりました。

 それでは、筆跡について問題としたいと思います。

 次のパネルは、今の二枚の領収書の署名部分を拡大したものです。平成十四年の分。藤井の例えば点の部分ですとか、特徴が一致しているのがわかるはずです。それぞれ二枚の領収書の署名部分を拡大させていただきました。

 ところで、藤井副長官、私たちの手元には、あなたが御自分で署名をした書面があるんです。

 次のパネルをごらんください。これは平成十二年に衆議院議員の定数削減に関して交わされた合意書です。自民党、公明党に加え、自由党藤井裕久という署名があります。

 そして、この署名部分のみを拡大したのが次のパネルです。これと先ほどの領収書の署名を重ね合わせると一体どうなるか。今回、私どもはこのパネルに少し加工を施しまして、透明なセルでこれを重ね合わせることができるようにさせていただいております。

 まず、この三党合意の署名について、これは、藤井副長官、御記憶ですね。そして、副長官が署名をしたことに間違いはございませんね。

藤井内閣官房副長官 三党合意は明確に覚えています。

柴山委員 はい、ありがとうございます。

 それでは、これと先ほどの領収書の署名を重ね合わせるとどうなるのか。ごらんください。

 まず、藤の字です。続きまして、井の字です。そして、個性のある裕の字です。そして、久。ここまで一致しているんです。

 副長官、この領収書、平成十四年の領収書の署名は、筆跡そのものからあなたの書いたものなんです。お認めになりますか。

藤井内閣官房副長官 これも前回、国会でお答えしたとおりでありまして、私はその金をいただいておりませんから、それに対しての領収書の認識は全くありません。

柴山委員 金を受け取ったかどうかということとこの署名があなたのものかどうかということを、私は今あえて分けて質問させていただいているんです。御自分の書いた署名をあなたは本当に御記憶にない、そして、ここまで重ね合わせてもこれはあなたの署名ではないと言い張るんですか。

藤井内閣官房副長官 認識がないということを申し上げたのは、おっしゃるように、二つを分けてくださってありがとうございます、しかし私は、その認識が、前者の方に認識がない。したがいまして、書いた記憶もない、こういうことです。

柴山委員 これは全く納得できませんよ。領収書という書面に、あなたは明確に、それを見せられて、このように自筆で署名をしているんじゃありませんか。これは、映像で見た方が一体どのように感じるか。先日の私の質問以来、はっきり言ってたくさんの声が殺到していますよ。

 もう一度お聞きします。あなたの署名じゃないんですか。

藤井内閣官房副長官 全くそういう認識がありません。(発言する者あり)

中井委員長 ちょっと時間をとめて。

    〔速記中止〕

中井委員長 速記を起こしてください。

 柴山君。

柴山委員 藤井副長官がこの署名の御自分の字をごらんになって、これは自分の字だなということはお感じにならないですか。

藤井内閣官房副長官 どうにもそういう認識がありません。

柴山委員 それでは、このそれぞれの署名についてぜひ筆跡鑑定を行ってください。委員長。

中井委員長 いや、これは委員会でやることではなしに、御提起の方がおやりになるのが私は筋だと思いますが。まあ、理事会で協議いたします。

柴山委員 前回の質疑でもお見せしましたけれども、平成十四年の収支報告書提出の際にもあなたは会計責任者であり、「この報告書は、政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません。」という宣誓書に署名捺印をしております。二月一日にお示ししたと思います。

 あの筆跡、これも全く同様でしたけれども、あなたが署名捺印したものかどうかは御記憶にないんですか。

藤井内閣官房副長官 そのとおりでございます。

柴山委員 政治資金規正法第二十九条には、第十二条一項または第十七条一項の規定による報告書を提出する者、すなわち会計責任者ですけれども、これらにそれぞれ真実の記載がされているということを誓う旨の文書を添えなければいけないと定められていて、宣誓書の提出を義務づけています。

 あなたは当時、会計責任者でした。あなたがこの署名は自分のものかどうかわからないということで否定するということは、この義務をあなたは果たしていなかった可能性があるということを今みずからお認めになったということでよろしいですか。

藤井内閣官房副長官 その点については、法運用の担当の省庁が決定すべきことだと思います。

柴山委員 ちょっと意味がわからなかったんですけれども。

中井委員長 法運用の省庁が担当することだと考えますと。

柴山委員 この義務を果たしていない可能性があるということは、それでは、関係の省庁が……

中井委員長 判断すると。

柴山委員 判断する可能性があるということでよろしいですか、片山総務大臣。

片山国務大臣 政治資金規正法では収支報告書を出すということになっておりまして、それに故意などで間違いがあった場合には、それなりの罰則規定が設けられているところであります。

柴山委員 ということは、もし今、この宣誓書について、藤井副長官、当時の自由党会計責任者が署名をしなかったということであれば、これは、署名をすることは、うっかり署名をするということはあり得ないわけですから、あるいは署名をしなかったことについて、うっかり署名をしなかったということはあり得ないわけですから、この収支報告書、そしてそれに対する宣誓書添付というものがもし藤井副長官が行っていなかったということが事実認定されたら、それは藤井副長官がこの規定に違反をしたということで間違いないわけですね。

片山国務大臣 個別の問題についてお答えする立場にはありません。

 一般論で言いますと、先ほど申しましたように、政治資金規正法に基づく収支報告書に虚偽の記載をした、そういう場合には罰則の規定があるということであります。

柴山委員 私は、あくまでも一般論として、そのような可能性があるのかということを質問させていただきました。

 いずれにいたしましても、この問題についての先ほど来の御答弁は到底納得できるものではありません。この問題には大きなやみが隠されていて、先ほど鈴木副大臣の方からもお話があったように、日本の民主主義が健全に機能できるのか、あるいは税金の使い道がきちんとオープンに開示できるのか、そういうことが問われているんですよ。

 委員長、ぜひ、政治と金の問題については集中質疑の場を設けてくださるよう、そして小沢元代表の証人喚問を速やかに実現していただきますよう、再度お願いしたいと思うんですが。

中井委員長 政治と金の集中審議につきましては、既に理事会で合意がなされております。

 それから、小沢さんの証人喚問については、今、協議が続行されている最中であります。

 これにて柴山君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは一時間、時間をちょうだいいたしましたので、予定していた質問の前に、先ほど自民党の平沢委員の方からもございましたけれども、きょうの朝日新聞を見て私もびっくりいたしました。「普天間予算凍結提示へ 対社民、政権が配慮」、こういう見出しのもとに、予算が成立しても執行を凍結する検討を始めたと。さらに、見出しだけかと思ったら、中身を見ると非常に詳しいんですね。約十八億円分が対象となるんですが、「具体的には、衆院で採決を行う際、執行を凍結するための付帯決議を可決する。「普天間関連経費の凍結解除に当たっては各会派の合意を得ること」といった文言で調整を進めている。」そういう内容だそうでございます。

 こんな附帯決議がもし可決されてしまったら、これは、各会派の合意を得ることといったら、申しわけないけれども、社民党さんや共産党さんなんというのは合意するわけないわけでありまして、永久に凍結してしまう、そういうメカニズム、システムを考えておられるわけです。

 これは本当に私はびっくりをいたしましたし、もしこの予算の審議の最後にこんなことになってしまったら、せっかく、がたがたになった日米関係が持ち直しつつあって、これから日米の共通戦略目標、あるいは菅総理の訪米などを考えておられる、こういうものが全く御破算になってしまって、日米関係はもう取り返しのつかない悪い状況になることは間違いないと思うんですけれども、まず、先ほどはいらっしゃらなかったので、担当されている二大臣にお聞きをしたいと思います。

 外務大臣、この記事については御存じですか。ないならない、そういうことはないと明言をしていただきたいと思います。

前原国務大臣 存じ上げません。

佐藤(茂)委員 いや、存じ上げませんじゃなくて、そういうことはない、そういう考えなのかどうなのか、担当する外務大臣として明言をしていただきたいと思います。

前原国務大臣 今出している予算案はベストなものを出しておりますので、これをしっかりと御議論いただいて、速やかに御承認いただきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 それじゃ、北澤防衛大臣、同じ質問で、こういう記事についてどう考えて、この記事は全く誤報であり、ない、これからもないということを明言していただけますか。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 佐藤委員にはいいタイミングで御質問をいただいて、私もほっとしておるわけでありますが、私らはこの記事については全く何の関与もありません。それから、そういう考え方もありません。

 そこで、最近考えるのは、根も葉もないものが大新聞と言われるところに堂々と出てくるということは本当に不思議で仕方がないんですが、このことについては、佐藤委員がびっくりされたより私の方が十倍ぐらいびっくりしておりますということを申し上げさせていただきます。

佐藤(茂)委員 担当の二大臣が、そういうことはあり得ない、そういうことを明言しているんですが、予算の責任者である野田財務大臣、これからもこういう記事のような内容についてはあり得ない、そのように断言していただけますか。

野田国務大臣 先ほど平沢議員の御質問にもお答えしましたけれども、報道のような事実はないということでございますし、基本的には、予算は、外務大臣がお話しされたように、ベストなものを出しているつもりで、何かを具体的に執行するというような予定はありません。

佐藤(茂)委員 私は、心配するのは、こういうことが全く可能性ないかというと、この政権にはそういうことをやるおそれがあるから言っているんです。それは、後で質問をしようと思っておったんですけれども、武器輸出三原則等の見直しについて、ほぼ防衛大綱の議論の中で、民主党政権としてはこれをしっかりと書き込む、そういう方向に行っていたんですね。ところが、昨年の十二月六日に、政権の責任者である菅総理が社民党の福島党首と会われて、あっさりと書き込むことを見送りされた。そういう実績があるから私は、本当に信用できないということを申し上げておるわけでございまして、きょうの三人の大臣が明確に言われたことをぜひ忘れずに、しっかりとその言われたとおりに実行していただきたい、そのように申し上げておきたいと思います。

 それで、きょうは関係大臣に来ていただいておりまして、まず、対ロシア外交についてお聞きをしたいと思います。

 前原大臣が、きょうからロシアを訪問されて、あす以降、ラブロフ外相初め向こうの要人と会談をされるというようにお聞きしております。前原大臣は、七日の北方領土返還要求全国大会で、日本固有の領土をできるだけ早く返還させるために、私も政治生命をかけて努力したい、今週ロシアに行き、解決策を見出すため、全身全霊の努力をすると。要するに、領土返還に政治生命をかけるんだ、このように言われました。私は、この言葉を信用したいと思います。

 しかし、菅総理の政治生命をかけるという解釈は、余り重みがないわけです。衆議院の本会議では、どういう意味かというと、最大限努力していきたいという覚悟程度の、そういう表現だということを菅総理は言われている。私は、前原大臣が言われた政治生命をかけるというのは、菅総理の言われているようなその程度のものじゃないと信じたいわけでございますが、しかし、今ロシアをめぐる状況というのは非常に厳しいものがあって、このときに、菅総理が許しがたい暴挙であると言われたこともあって、ロシアも過激に反発をしております。

 そういう中でロシアへ訪問されて、政治生命をかけると言われたこの北方領土返還にかける取り組みに対する覚悟と、今回、訪ロの目的というのは何なのかということを、まず外務大臣にお尋ねをしておきたいと思います。

前原国務大臣 先般もここの場で同様の質問をいただきまして、私が北方領土返還運動全国大会の場で申し上げた中身についてはお答えをしたところでございますが、改めて申し上げますと、私は、大学で国際政治を専攻して、そして松下政経塾で延長線上でさまざまな国際関係に関する研究をさせていただきましたけれども、その一つが北方領土問題でございまして、末次一郎先生にさまざまな御指導をいただいて、政治家になった一つのきっかけがこの北方領土問題の解決であったということで、何とかこの問題を解決したいという思いで、自分が、政治家で国会議員をやらせていただいている、今外務大臣をやらせていただいている、何とかこの問題解決のために努力をしていきたい、そういうみずからの気持ちを申し上げたわけでございます。

 その中で、では、客観的に今どのような状況なのかということでありますけれども、私は、ちょっと広く、大局的に物事を見た方がいいと思うんです。これは別に、だらだら時間をかけるというつもりではありません。六十五年解決できていないんですね。そして、一九五六年の日ソ共同宣言においては、これはさまざまな議論がありましたけれども、二島だけではだめだということで平和条約を結ばずに共同宣言になって、今までさまざまな方が努力をされてきた、こういう経緯がございます。

 ことしが二〇一一年で、来年が二〇一二年、大統領選挙がロシアでございます。そういった環境を考えれば、今何をこの領土問題解決に向けてすべきなのかということになれば、私は、領土問題では原則的な立場をしっかりと言いながら、しかし、日ロ関係というのはまだまだ協力できる分野がたくさんあると思います。そういった信頼関係をさらに広げる中で、領土問題解決のための環境整備をより高めていくということが大事なことであるというふうに思っております。

 後で御質問があることを先にお答えすることになるかもしれませんけれども、先ほど大局的に物事を見なきゃいけないと申し上げたのは、米ソ冷戦時代なんというのはもっともっと厳しい雰囲気だったと思います、日ソ、日ロの交渉というのは。そういう意味で考えると、余り現在どうかということに一喜一憂せずに、大局的な流れの中に立って日ロ関係をどう発展させていくのか、そして、我々の固有の領土であるという立場をしっかりと守りながら、四島の帰属を画定させて平和条約を結んでいくのかということを、しっかりとさまざまな観点から少しでも前に進めていくということが、今回の訪ロの私の役割ではないかと思っております。

佐藤(茂)委員 今、前原大臣は極めて冷静な見解を言われて、大局的な判断に立って見ていくんだという。そのきっかけとして、私は、今、本当に、まともに対話もなかなかできない、そういうパイプがないというか、政権を見ていて、大変失礼だけれども、そういう感じがしているんですね。

 だから、本当に、これから建設的な対話を継続していくための、前原大臣の今度のロシア訪問がきっかけになって、高いレベルでの政治的対話といいますか、こういうものが継続的にされるような、そういう関係をしっかりと構築するべきである、私はそのように申し上げておきたいと思います。

 その上で、この委員会でも質問があったというように聞いておりますけれども、水を差すようで申しわけないんですけれども、今は菅政権ですが、その前の鳩山政権時代のトップにおられた鳩山前総理が、二月五日に根室市で講演して、ロシアとの北方領土交渉について、四島を同時に返せというアプローチであれば、今のような現実の中で未来永劫平行線のままだ、二島にプラスアルファという考え方で、プラスアルファの解釈に知恵が必要だと、そういう報道がございます。これは予算委員会でも前原大臣は否定されているので、もうその答弁は要りません。

 しかし、私が心配するのは、ついこの前まで民主党政権のトップを張られておられた方がこういうことを言われるというのは、この政権または民主党というのは、党の考え方というのはあるのか、ばらばらじゃないのか、そういう疑問を持ったわけであります。

 それで、実は、昨年のマニフェスト、さらに一昨年の夏の衆議院選のときのマニフェストを私も見させていただきました。そうすると、外交・安全保障や外交のところに、ロシアという文字も北方領土という文字も一切書かれてないのです。要するに、これは、国民に出して、これでやりますと言っていたものですから、国民から見たら、民主党はこの問題について余り問題意識や意欲がないんじゃないのか、そういうふうに受けとめられても仕方がない。現に、これ、全部見てくださいよ。私が見ただけじゃなくて、二回のマニフェストのどこにも、北方領土もロシアのことも一切書かれていません。

 ですから、なぜこういうものがこの中になかったのか、これをぜひ御説明いただきたいと思います。外務大臣、代表してお願いします。

前原国務大臣 マニフェストに書き切れないものについては、政策インデックスというものを我々は用意いたしまして、その中に我々としては言及をさせていただいているということでございますし、菅総理も施政方針演説の中でこの問題についてしっかりとした考え方を述べておられますし、私の外交演説でもこの対ロ外交というものについて申し述べたところでございますので、民主党、現政権に対ロ政策がないという御指摘は当たらないと考えております。

佐藤(茂)委員 そういう答弁をされるだろうと思いまして、民主党のインデックスというのを二〇〇八年も二〇〇九年も見させていただきました。

 民主党のインデックスはどうなっているか。「領土問題の早期解決 領土問題の解決は、困難を伴うとともに相当の時間を要するものです。わが国が領土主権を有する北方領土・竹島問題の早期かつ平和的解決に向け粘り強く対話を積み重ねます。」こういう表現になっておるわけです。

 要するに、私が最初に提示した鳩山前総理の話というのは、民主党として、四島返還という考え方でいくのか、それとも二島プラスアルファでいい、そういう考え方でいくのか等については、一切ここには何にも書いてないわけです。ですから、そういうことも含めて、よく今論調で言われているのは、対ロ外交について、この政権は対ロ外交の戦略なんかなかったんじゃないのかというように言われています。ですから、民主党を代表して、民主党政権の対ロ外交の戦略というのは何なのかということを、ぜひ外務大臣、御答弁いただきたいと思います。

前原国務大臣 話す機会をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 さまざまな高官が北方領土を訪れたり、あるいは軍備を増強するなんという話もあるわけでありますけれども、大事なことは、国際法に照らし合わせてみた場合、我々の固有の領土であるということは、これは紛れもない正当な理由があるわけでございまして、今の占拠というものについては法的な裏づけがない中で行われている。したがって、そういう状況であれば、だれが行こうが、あるいは軍事力を増強しようが弱めようが、この法的評価が変わるわけではないということがまず大事なことだと思っております。

 その上で、佐藤委員の御質問にお答えをすると、この法的評価というのは、四島が日本固有の領土である、そしてこれは、佐藤議員も連立政権におられましたけれども、自公政権から我々は引き継いで、四島の帰属を確定して、そして平和条約を締結するというのが我々の、これは、私は別に、政権交代で外交政策の基本的な考え方がころころ変わる必要はないと思っておりまして、これについては、基本的に我々は踏襲をさせていただいているところであります。

 そして、この北方四島の日本への帰属が確認されれば、実際の返還の時期とかあるいは態様については柔軟に対応するという基本方針、これも自民党、公明党の政権ではとってこられましたけれども、我々も、そういった柔軟性は持って交渉に当たっていかなくてはいけないと考えております。

佐藤(茂)委員 わかりました。要するに、この部分については簡略化すると、自公政権のときの基本的立場というのは踏襲するんだ、そういうことでございます。

 ただ、状況としては、非常に、今、この三カ月で、ロシアの実効支配というのはさらに強める、そういう意思を鮮明にしております。きのう通告したとき以上に、きょうも各紙が報道しておりますが、メドベージェフ大統領が、先日、北方領土に行ってきたセルジュコフ国防相らに会って、きょう、この後に質問をしようと思っている軍備増強の意向というのを明確にしていると。

 要するに、何が問題かというと、ここ三カ月で、北方領土を訪問したロシア政府高官というのは五人いるんですね。最初は、経済開発関係の、また地域開発関係の大臣とか、第一副首相でした。しかし、ここ二回続けて、防衛関係の、そういう大臣や次官というのが視察をして、国後島に駐屯する第十八機関銃・砲兵師団と面会して、師団の装備近代化を進める考えをその場でも表明されて、帰ってきても、きょうの各紙にあるように、大統領とそういう話をしている。そういうことでございまして、社会資本の整備や開発のみならず、軍事面でもロシアの実効支配を北方領土に対して強めよう、そういうことを今ロシアは、要するに日本に当てつけるかのようにやっているわけですね。

 私は、今、このなかなか手をこまねいていざるを得ないというような状況でいいのかという、手詰まり感が国民の中にも本当に強いと思うんです、こういう報道を見る限り。ですから、ぜひ前原大臣、大きな立場はあるんだけれども、こういう具体的にこの三カ月間でロシアが実効支配を強める動きをしてきていることに対して、やはり何らかの発言とかはきちっとして、対策を打たないといけないんじゃないかと思うんですが、大臣の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

前原国務大臣 大統領のみならず、こういった閣僚級、大臣クラスが行ったときには、我々の立場と相入れない行動であるということで、その都度、ロシア側に日本の立場をしっかり伝えて抗議をしているところでございます。

 その上に立って申し上げますと、国防大臣が行ったということなんですが、過去にも、例えばイワノフという国防大臣がいましたけれども、彼は二〇〇五年に択捉に行っておりますし、累次、去年から、何度もお答えをしておりますけれども、クリル開発計画というものが行われてから、これは、先ほど委員が引用していただきましたけれども、二〇〇六年に閣議決定をされて、二〇〇七年から二〇一五年までの計画であります、合計金額が日本円にして約八百十三億円ぐらい、これのフォローアップをしている、指示をしているという意味があろうかと思いますし、また、先ほど佐藤委員がおっしゃったような、日本に対するさまざまなメッセージというのもあるかもしれません。

 しかし、我々は、それをそういった解釈をする立場もないし、大事なことは、繰り返しになりますけれども、国際法に照らし合わせてみれば、北方四島というのは日本の固有の領土であるということは紛れもない事実であって、そういう意味では、国際法上根拠のない占拠を今しているわけでありまして、要人が何人行こうが、あるいは軍人に対してどういう指示が出ようが出まいが、我々の法的評価には全く関係ない。

 大事なことは、領土問題は極めて大事な日ロ関係の問題ではありますけれども、しかし、これも大局に立って考えた場合、隣国であって、経済、技術協力、あるいは、例えば朝鮮半島の問題とか、さまざまな国際場裏で日ロ関係で協力できるところはいっぱいあるわけですね。そこら辺の潜在的な日ロ協力関係のポテンシャルがまだまだ発揮されていないということから考えると、先ほど、別の方、下地委員が、日米関係は基地だけではないんだ、こういう言い方をされておりましたけれども、領土問題というのは大事なテーマではありますけれども、領土問題と同時に、日ロ関係で発展させるべきところを発展していく中で、その信頼関係を高めて領土問題も解決をしていくという大局に立ったアプローチが私は大事だと思いますので、ぜひその点については、外交問題にはある意味で与野党なく、国益に照らして、専門的にやっておられた佐藤委員のバックアップもお願いをしたいと思っております。

佐藤(茂)委員 それで、今、経済の分野で十分協力していく余地もあるんだというお話ございました。

 そこで、一つだけ確認をしておきたいと思います。

 これは既に記者等から聞かれて言われているかと思うんですが、要は、昨年末にメドベージェフ大統領が唐突に北方四島を含めた統一経済圏、自由貿易圏というものを打ち出されて、日本にぜひ共同開発をしてはどうか、そういう提案をした、菅総理にもそれは伝えたんだ、そういうことがありました。ロシアから具体的にそのような提案があったんでしょうか。なおかつ、日本政府として、そういう北方領土の経済共同開発などというロシア側の提案に乗るのか乗らないのか、それについての考え方を外務大臣にお尋ねしておきたいと思います。

前原国務大臣 二つお尋ねがございました。

 まず、具体的な提案があったのかということについては、具体的な提案があったと認識はしておりません。

 それと同時に、共同開発、これは仮定の御質問になるわけでありますけれども、ロシアの法律の管轄下に置かれる中での共同開発なんてあり得ない。日本の法律が及ぶ中での共同開発なら、我々としては考えられ得るというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 基本的な考えはわかりましたので、それでしっかり交渉していただきたいと思います。

 それで、それに関連して、ちょっと教育面でのことについて、文部科学大臣に来ていただいておりますので、外務大臣に聞こうと思ったんですが、もう文部科学大臣だけで結構です。

 官房長官も記者会見されていますし、外務大臣もそのことについて記者会見されているんですが、一月下旬の日本教職員組合、いわゆる日教組の教育研究全国集会、教研集会で、北海道根室市の中学教師が、北方領土はどこの国の領土かわからなくなったと生徒に問いかける授業の実践例が報告された、そういうことについて、外務大臣は、大変遺憾だ、事実関係を確認したいと事実関係の調査に乗り出す意向を示された。もうこの答弁は結構です。

 それで、私は、教研集会でのこの報告、根室市といったら北方領土がすぐ見えるところです。そこの教師がこういうことを言うというのは愕然としまして、これは氷山の一角じゃないのかと。要するに、我が国の教育というのは、周辺諸国に比べて弱い点は、領土主権について本当に小さいときからしっかりと教育がなされているのかどうかということについて、よく我々、社会に出たときに話をしましたら、疑問を持たれる、そういう方が結構いらっしゃる。

 ですから、本当に学校教育で、北方領土が我が国固有の領土である、竹島は我が国固有の領土である、尖閣諸島に領土問題は存在しないということを、国の主権、領土に関する基本的なことを最低限しっかり子供たちに教える、そういうことがなされているのかどうかということをこの際しっかり調査して、そういう教育の大切さの周知徹底を図るべきである、そのように私は考えるんですけれども、文部科学大臣、見解をお聞きしておきたいと思います。

高木国務大臣 佐藤委員にお答えいたします。

 委員の御指摘の点については、私も同感でございます。先般の教育研究全国集会での発言の内容については、私も具体的には把握をいたしておりません。今、北海道教育委員会において事実関係を確認中でありまして、まずそれを私は待ちたいと思っております。

 言わずとも、島の返る日平和の日、これは北海道民の悲願であり、あるいは国民の大きな声であります。私たちとしても、北方領土の一日も早い返還についてはしっかり取り組んでいかなきゃならぬと思って、そういう意味で、現行の中学校の社会科の学習指導要領及びその解説では、北方領土が我が国の固有の領土であることなどについて教えることにしております。平成二十四年度から実施される新しい中学校の学習指導要領の解説においては、竹島についても北方領土と同様に教えることとされております。また尖閣諸島については、これはもう領土問題は存在しないということから、学習指導要領解説においては記述がありませんが、その取り扱いについても私たちは今検討中でございます。

 いずれにいたしましても、北方領土は我が国の固有の領土である、こういうことについてこれからもしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 本当に、文部科学大臣、この事実関係、今掌握中だと言いましたけれども、これは、前後、どういう形の文脈の中で言われたのかも含めてしっかり掌握していただいて、やはりこういうことが教師の研究発表の場で出ることのないように、また実態がどうなっているのかなどもぜひつかんでいただいて、善処していただきたいと思います。

 では、文部科学大臣、これで結構でございます。

 続いて、話はかわりまして、国土交通大臣、済みません、お待たせをいたしました。

 ホームドア及び可動式ホームさくの設置について何点かお聞きしたいんですが、一月十六日の目白駅で視覚障害者の転落死亡事故がありました。それを受けて、大畠大臣も調査を指示されて、昨日、検討会も議論し始めたと伺っております。

 私は、やはりこういう事故を二度と繰り返してはならない、そのように、これは国民すべてが思っていると思うんですが、我が党も、具体的に被害に遭われた視覚障害者の団体の皆さん等からもさまざまに声を伺いました。そのときに、私どもも反省したのは、そういう視覚障害の人にならないとわからない、やはりそういう不安感というのがあるなというのを改めて痛感させていただいたんです。

 要は、聞くと、全盲の方の多くが転落の経験があるということでございます。ある団体の中心者の方は、今まで人生において二回ホームから転落したとみずから語られていましたし、別の団体では、全盲者六十八人中四十四人が転落、つまり三人に二人は転落経験がある、そういうことを語っておられた。要するに、言われていたのは、現状では、命がけでホームは歩かないといけないんだ、特にホームを歩くときが交通機関の中で最も緊張していて、普通の十倍から二十倍神経を使っておられるということを切実に訴えておられたわけでございます。

 だから、バリアフリー社会の実現に向けて、安心して歩けるホームを一日も早く実現できるように早急に対策を講じていただきたいと思うんですが、大畠大臣は、二日前のこの具体的な整備計画の発表、これは新たに二百八十五駅が設置を計画している、そういう内容を公表されて、合わせて七百八十三駅になるんですね、今四百九十八が既設ですから。

 そのときに、大畠大臣は、今後、ホームドアを整備すべき駅の設置基準を検討し、整備が前倒しで進むように期待したい、このように言われていたわけでございますが、私は、設置基準を決める際には、乗降客の多少もさることながら、こういう本当に一番ニーズの高い視覚障害者がどういうことを要求しているのか、どこの駅を要求されておるのか、そういうニーズをしっかりと聞いていただくことが大切だと思っているんですね。

 ですから、ぜひ設置基準を検討する際に、事前に視覚障害者の当事者団体の声を聞いていただいて、それで整備計画に反映をしていただきたい。要するに、そういう視覚障害者や関係者の皆さんの意見聴取を丁寧に国交省としてもやっていただいて検討していただきたい、そのようにお願いしたいと思いますけれども、国土交通大臣の見解を伺いたいと思います。

大畠国務大臣 ただいま御指摘をいただきました点について御答弁を申し上げたいと思います。

 ただいま、視覚障害者の方が三人のうち二人はそういう経験をお持ちだというお話、あるいは命がけでホームを歩くという状況にある、こういう御指摘をいただきました。

 私も、国土交通大臣を拝命いたしまして、今御指摘の、一月の十六日だったと思いますが、全盲の方がそういう危険な目に遭われたというお話、そして、一月の二十六日が、ちょうど十年前の平成十三年の一月二十六日の日に、転落した方を救おうとして当時の李留学生あるいは日本人の関根さんが救出に入って、三名とも大変残念なことになった、こういうことを契機に見直しをしよう、こういうことを提起いたしました。

 その結果として、転落した場合の対策としては、転落を検知するマットですとか、転落したときにホームに上がれるようなステップを設けるとか、これは一〇〇%やった。それから、さまざまな形で対策はとっているところでありますが、転落しないための対策はどうしているんだ、こういう指摘をいたしました。その調査結果は佐藤議員から御指摘のとおりであります。

 そこで、きのう、その対策をさらに進めるために、鉄道事業者を全部集めまして、いろいろ検討会を開始しました。ただ、きょう、この御質問をいただきましたので、けさ担当官と話をしましたが、やはり利用者の声を聞かなきゃならない、それも視覚障害者の方の御意見をきちっとこの検討会の中でお伺いしよう、こういうことを朝方の会議で方針を指示したところであります。

 したがって、第二回目、三月ぐらいに行われますが、そのときにはぜひ視覚障害者の皆さんからお話を伺って、命がけでホームを歩くことがないような状態をどうつくるかということについて、意見を踏まえて対策を進めてまいりたいと思います。

佐藤(茂)委員 ぜひ、しっかりとお願いしたいと思います。

 というのは、例えば東京のJRでいうと、具体的に言われていました。東京では、視覚障害者が数多く利用している駅というのは、ちょっと聞いてもらえれば、事前に打診があったら、関係施設が近くにある駅で、高田馬場駅と今回事故のあった目白駅だと言って、絶対言われるんですよ。だから、そういうことをちょっと聞いていただければ、すぐわかるんだという話もされておりました。

 次に、そのときにも言われていたのは、バリアフリー社会を目指して国交省も力を入れて、いろいろなインフラ整備、交通機関を変えていただくのは非常にありがたいと。なおかつ、我々も推進しましたが、バリアフリー新法でエレベーターがつく駅というのは非常にふえてきました。しかし、言われるのは、便利性を追うことを推進していただくのは非常にありがたい。しかし、最も大事なのは、安全性を追うことをぜひ優先的にやってもらいたいんだ。まさにそのとおりだなと、当事者の皆さんのお話を聞いて、そういうふうに言われました。

 ですから、この前の発表では、自主的な整備目標というのを、各鉄道事業者の数を発表されただけなんですけれども、やはり国の政策として、今の段階でいいますと、きちっと推進していくべきである。新設駅は設置が義務づけられているんですけれども、既設駅というのは努力義務にとどまっているんですね。なおかつ、駅にエレベーターをつけるにもかなりいろいろ困難な問題があるというのはこの前説明をいただきました。

 例えば、ホームの構造が古い状態のままで、設置に多額の費用がかかるというところもあるし、また、ドアの位置が異なる多様な編成の列車が乗り入れているという路線では、一つのホームドアの固定した形じゃなかなか決まらぬというような、いろいろな問題も含めてございます。しかし、これからのバリアフリーの安全性を確保していくんだという観点から、国の政策として、やはりきちっと推進していくべきであるというように思うんですね。

 そういう自主的な鉄道事業者の計画だけに甘んじているのではなくて、段差とかスロープとかエレベーターの目標を立てて国交省が推進してきたように、ホームドアの整備についてもきちっとした目標を定めて、またロードマップもある程度つくっていただいて、推進に取り組むべきではないのかと思いますが、国土交通大臣の見解を伺っておきたいと思います。

大畠国務大臣 国土交通省としても、積極的にこの問題について取り組み、基準を設けて推進すべきじゃないかという御指摘でございました。

 先ほどちょっと答弁させていただきましたが、その事実関係だけもう一度させていただきます。

 転落した場合の待避スペースの確保またはステップの整備率、これについては一〇〇%、対象の二千七十四駅で終わった、それから非常停止押しボタンまたは転落検知マットの整備率については九割ほど終わった、これは報告を受けたんですが、さらに、先ほど御指摘のホームドアの設置基準というものを国土交通省としても改めて定めるべきじゃないか。私もおっしゃるとおりの考えから、事業者の方のお話をいただきながら、あるべき、設置すべき基準というものを定めて、私としては指示をして、国土交通省としてもホームドア設置に向けて推進するように努力をしていきたいと思います。

佐藤(茂)委員 ぜひ、今前向きな答弁をいただきましたので、なかなかそう単純な話ではないというのは理解した上で申し上げているので、ただ、やはり国の施策としてやっていくためには、ある程度の数値目標も持ちながらやっていただきたいと思います。

 その上で、これで国交省については最後にしたいと思うんですが、ただ、できる駅というのは、現実問題、駅単位で見たら非常にやはり限られてくるんだろう。また、やると決めて整備目標を決めても、具体的に設置されるまでに数年かかる。それまでは、今の現状のホームがそのまま残るという駅がほとんどなんですね。

 それで、当事者の皆さんにお聞きしておりますと、やはりこの事故を防ぐための駅員さんの現状の配置というものも、ぜひもう一度国の方でもチェックしていただいて、鉄道事業者の皆さんにホームの安全対策に万全を期すようなそういう徹底をしていただきたい、そういう要望が強くあったわけでございますが、国土交通省としてそういうことに取り組まれるのか、お聞きをしておきたいと思います。

大畠国務大臣 御指摘の、いわゆるホームでの転落を防止するための人員の配置でございますけれども、私もデータを見せていただきますと、平成十四年にはホームでの事故が百十三件だったんですが、平成二十二年では二百三十四件とふえております。

 したがって、ホームドアが設置されるまでの間、特に金曜日の夜が、夕方から夜間にかけての転落事故が多いわけでありますけれども、そのようなときに的を絞って、ホーム事故の発生状況に応じた人員の配置をすべきだろうと思いますので、この検討会の中でも、単なるホームドアの設置についてどうするかだけでなく、現在の駅でのホームからの転落事故を未然に防ぐために人員の配置等についてもやるべきだ、こういうことで、私としては未然の転落防止のための対策も指示をしたいと思います。

佐藤(茂)委員 ぜひ、きょうは国土交通大臣、前向きな答弁をいただきましたので、検討会等も期待しておりますので、具体的に進めていただきたいと思います。

 それでは、国土交通大臣、結構でございます。

 それでは、次のテーマに移りまして、防衛大綱につきまして防衛大臣を中心に、また官房長官も来ていただきましたので、お聞きをしたいと思います。

 この大綱は、防衛力のあり方について、これからおおむね十年後までを念頭に置くということですので、今ここできちっとこの大綱の考え方というものを明確にしておく必要がある、そのように思います。ですから、きょうのこの数分ではなくて、別の委員会も含めてこれからしっかりと議論をさせていただきたいと思うんです。

 まず、動的防衛力というのが今回の一番の特徴でございまして、そういう概念が採用されたんですけれども、これについては、私どもの井上幹事長も最初の衆議院の代表質問で聞かせていただきました。また当委員会の予算委員会でも、二日目でしたか、石破自民党政調会長からもこのことに触れられました。

 政府として、やはり国民に理解されるような明確な説明が必要だと思うんです。動的防衛力について、どういう概念なのか、防衛大臣の見解を求めておきたいと思います。

北澤国務大臣 お答えを申し上げます。

 動的防衛力というのは、まず、少しかたい答弁になりますけれども、将来に向けて我が国が持つべき防衛力の基本的方向性を示したものでありまして、一六大綱策定後の安全保障環境の変化などを踏まえて、今後、運用に焦点を当てた防衛力を実現することにより我が国の安全保障を確保する、こういう基本的な考え方であります。

 先日、石破政調会長にもお答えいたしましたように、我が国の防衛政策というのは私は連続性があるべきであるというふうに思っておりますので、そういう意味で一言申し上げたいと思いますが、後ほどまた基盤的防衛力構想等についてもいろいろ御質問があろうかと思いますが、〇七大綱では、基盤的防衛力構想を中心に据え、まず抑止ということを重視してつくられた。その後、一六大綱では、新たなテロの脅威など安全保障環境に対する対処を重視してきたというふうに思っております。

 それぞれの大綱は、その時代の環境の中で我が国の安全保障にとっては大きな貢献をしてきたというふうに私とすれば理解をして、その上で、さらに新しい安全保障環境の中で今ある防衛力、そしてまた、今回見直しさせていただいた大綱の中でこれをいかに有効的にやるかということで、運用というフレーズをもって対応していきたい、こういうふうに思っております。

佐藤(茂)委員 そうすると、一六大綱との違いということをもう一度改めて聞きますけれども、一六大綱では、多機能で弾力的な実効性のある防衛力というように言っておりました。新大綱の表現というのは、この委員会でも、石破さんでしたか、言われていましたが、ほとんど文面は一緒なんですね。新大綱で「即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築する。」、一六大綱では「即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のあるものとする。」と。要するに、動的防衛力と、多機能で弾力的な実効性ある防衛力を入れかえただけ、そういう表現になっているわけです。

 しかし、これは実際に同じものなのか、それとも、違うのならどこが違うのか。ぜひ、今、防衛大臣、最初に説明されただけではよくわからないので、再度御説明いただきたいと思います。

北澤国務大臣 今国会で、この大綱そしてまた中期防については、しっかりした御議論をいただくということは大変ありがたいことでありまして、私どもも、精力的に内容について御説明をしてまいりたいというふうに思っておるわけであります。

 まず、一六大綱で、我が国の防衛力は、基盤的防衛力構想の有効な部分は継承しつつ、多機能で弾力的な実効性のある防衛力とすることを明記しておるわけでありまして、これは、先ほど申し上げましたように、抑止の考え方を重視し、そしてまた、それまでの基盤的防衛力構想の有効な部分に新たな考え方を加えて取りまとめた防衛力のあり方の指針であったというふうに思うわけであります。

 その上で、新大綱は、一六大綱を含むそれまでの大綱との連続性の中で、一六大綱策定後の安全保障環境の変化などを踏まえ、今後、先ほども申し上げましたように、運用に焦点を当て動的防衛力を構築するということの基本的な考え方を申し上げたわけでありまして、変わってないじゃないかというお話があるわけでありますが、そういうことではなくて、我々は、基盤的防衛力構想が〇七でスタートして、一六で有効なところは残して、そして、新しいものにしろということの中から、ただいま申し上げたような考え方で進めさせていただいたということであります。

佐藤(茂)委員 いや、大綱自体が変わっているというのは、私も別にそれを否定するものじゃないんですよ。

 要するに、防衛力の概念、動的防衛力と、我々が議論してつくった一六大綱の多機能で弾力的で実効性のある防衛力は、この防衛大綱の中の表現、概念、定義づけだけだったら、ほとんど、言葉を入れかえただけで、全く一緒じゃないか。どこが違うんですか。大綱全体の、継承するかどうか、そういう違いはわかった上で言っているんですよ。動的防衛力と、多機能で弾力的な実効性ある防衛力の違いというのはあるんですか。一緒のものなんですか。

 というのは、我々、一六大綱の議論も私ずっとさせていただいて、策定にかかわりました。そのときに、今説明で言われた、粗っぽく言うと、今までは存在する自衛隊だったんだと。それを機能する、もっと運用する、動く自衛隊に変えようじゃないのかというのは、もう一六大綱のときからそんなものは議論して、それでどういう表現がいいのかと。多機能で弾力的で実効性ある防衛力にしましょう、そういう議論を我々、当時与党でもしっかりとさせていただいて、一六大綱というのができたんです。それと動的防衛力とどう違うんですか。一緒なんですか、違うんですかということを端的にお答えいただきたいと思います。

北澤国務大臣 お答えを申し上げます。

 具体的なことからお話をした方がいいかと思うんですが、例えば、我々がイメージしているのは、その前提としてお話ししなきゃいけませんのは、実効性を向上させるための構造改革委員会というのを立ち上げて、副大臣を中心にして議論を今いたしております。その中には人的構成の改革も含まれておるわけでありまして、まず、この人的な構成の改革というのはこれから非常に重い荷物になるわけでありますけれども、我々はこれをやらないと、先ほど申し上げたような運用という面での実効性が担保できない、こういう考え方を持っております。

 そういう中で、具体的に申し上げますと、例えば南西諸島の重視というようなことを書かせていただいておりますが、これは、ある勢力が一つの島嶼部に上陸しよう、あるいは上陸をしたというような場合に、今持てる力を統合して迅速にこれを拒否する、そういう運用ができるようなものをつくり上げていきたい。そういう中で、これは大綱と中期防の両方に記載されておりますけれども、例えば潜水艦の増強であるとか、あるいはまた、先ほど申し上げた島嶼部の陸自の監視部隊を配置していく。あるいはまた、新型の固定翼哨戒機の整備をしていく。これを新中期防期間中に、五年の間に十機ほど整備するというような、ちょっと長くなりますから省きますが、二十三年度予算では、これを担保するために、例えば燃料の増額を予算に計上させていただいておる。そういうようなことを踏まえて御理解をいただいていきたい、こういうふうに思います。

佐藤(茂)委員 ですから、もう端的にお答えください。

 要するに、動的防衛力と、多機能で弾力的、実効性ある防衛力は違うのか、いや、ほとんど同じだ、そういうものなのか。もうイエスかノーでお答えいただきたいと思います。

北澤国務大臣 端的に申し上げれば違うんです。

 しかし、一六大綱のときのものを否定した上で新しいものをつくるというのではなくて、私は連続性を大切にしたいと思っておるので、今ある勢力をどう変化させていくかということの中で違うものをつくり上げたい、こういうふうに思っております。

佐藤(茂)委員 この続きはちょっと専門的になるので、また別の委員会でやらせていただいて、官房長官に来ていただきましたので、何点か、防衛大臣も含め、外務大臣も含め、お聞きしたいと思うんです。

 要は、この大綱のポイントは、中国に対する認識をどうとらえるのかということが一つの大きなポイントになっているわけです。それで、この大綱では、中国については、「地域・国際社会の懸念事項となっている。」そういうふうに明確に位置づけておられます。

 そこで、まず官房長官の中国観についてお聞きをしたいと思うんですが、官房長官が中国という国をどのように認識しておられるのか。

 これは官房長官になられる前に、昨年の十月二日だったと思うんですが、党幹事長代理としてさいたま市で講演されまして、報道によると、「中国との戦略的互恵関係なんてありえない。あしき隣人でも隣人は隣人だが、日本と政治体制から何から違っている」「中国は法治主義の通らない国だ。そういう国と経済的パートナーシップを組む企業は、よほどのお人よしだ」、これは朝日の報道ではこうなっている。まあ、前後は違うことかもしれない。しかし、あしき隣人だと言われたことが、翌日、ほかの新聞も含めて大きな見出しになっている。

 あしき隣人であり、また日中の戦略的互恵関係なんてあり得ない、そのようにそのとき言われているんですけれども、そのとおりでよろしいんですか。官房長官の中国観をぜひ語っていただきたいと思います。

枝野国務大臣 報道は若干ニュアンスの違っているところはございますが、それについては申し上げません。

 日中関係は、歴史的にも地理的にも、あるいは中国の面積、人口、あるいは経済力等を考えても、日本にとっても、そしてアジア太平洋地域、そして世界にとって重要な関係と認識をいたしております。一方で、透明性を欠いた防衛力の強化や海洋活動の活発化には懸念を持っております。また中国は、腐敗、汚職、環境問題、経済格差等、急速な経済発展に伴うさまざまな問題に直面をしていると認識をいたしております。

 我が国としては、中国が平和的に発展し、国際社会の責任ある一員として適切な役割を果たすことを期待いたしております。特に、本年は辛亥革命から百周年でございます。また、来年、日中国交正常化四十周年の節目でございます。日中両国の間にはさまざまな課題のあることは事実でございますが、日中国交正常化、あるいはその後の日中関係においては、御党の皆さんの大変な御尽力によってさまざまな困難を乗り越えてこられてきているというふうに敬意を表しておりますが、私どもも、我が国の国益を踏まえた上で、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済分野での協力関係の進展も含め、大局的見地から、中国とともに、お互いによい隣人となるべく努力をしてまいりたいというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 それで、長々と言っておられるのは、要するに、あしき隣人だ、そういう認識は変えられないのか、いや、あれはああいう時世柄はずみで言って、あれは撤回するということなのか、そこだけ明確にしていただきたいと思います。

枝野国務大臣 実は、直接にどこかの国をあしき隣人というふうに申し上げたものではないというふうに私自身は思っておりまして、ただ、よい隣人であろうとあしき隣人であろうと、隣人とはよくつき合っていかざるを得ないんだという一般的なことを申し上げました。文脈の中でそういうふうに受け取られた向きはあろうかというふうに思うことは否定をいたしません。しかし、まさに今申し上げたような前提の上で、お互いによき隣人となれるよう努力をしてまいりたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 それで、外務大臣にいろいろお聞きしようと思います。

 外務大臣は、野党時代、民主党の代表としてアメリカへ行かれたときに、たしかCSISだったと思うんですけれども、そこで講演されたときに、中国のことを現実的脅威だ、そういうふうに明言されました。

 今、外務大臣になられて、こういう防衛大綱の議論にも加わって、「地域・国際社会の懸念事項となっている。」ということにまで議論にかかわっておられたんですけれども、具体的に、そういう考え方というのは全く変えられていないのか、中国をどのように認識されているのか、外務大臣の見解を伺っておきたい。

前原国務大臣 今回の防衛大綱の議論では、四大臣が八回にわたって、一回二時間以上だったと思いますけれども、加わりまして、私もその中で議論に参加をさせていただきました。

 中国とは、経済関係においては、日本からすると輸出も輸入も第一位ということでありますし、中国からしても、輸入は日本からがナンバーワン、輸出はアメリカに次いで日本がナンバーツーということで、経済的な相互依存関係はより高まってきているということで、そういう意味でのウイン・ウイン関係は築けていると思います。

 他方で、二十一年間で約二十倍の防衛費が増強されている。しかも、その防衛費は、ペンタゴンやあるいは他国のシンクタンクの分析では、公表数字の二倍から三倍実はあるのではないかということで、不透明さというものが指摘をされているわけでございまして、そういう意味での懸念というものは、我々は強く持たなくてはならないというふうに思っております。

 いずれにしても、隣国同士は引っ越しできませんので、お互いがやはり言うべきことはしっかり言って、そして戦略的な互恵関係というものをしっかりと築けるようにお互いが努力をしていくということが大事であり、言うべきことはしっかり言っていくということが今後も大事だと考えております。

佐藤(茂)委員 それでは官房長官、せっかく来ていただいたのでお聞きをしておきたいんですが、大綱の中に、首相官邸に設置する国家安全保障に関する助言組織のことが触れられておりまして、要するに、安全保障会議を含む、安全保障に関する内閣の組織、機能、体制等を検討した上で、首相官邸に国家安全保障に関し関係閣僚間の政策調整と内閣総理大臣への助言を行う組織を設置すると明記されております。

 これについては、いわゆる日本版NSC、国家安全保障会議だというようなことを念頭に置いた報道もありますけれども、この組織についてぜひ官房長官にお聞きしたいのは、大綱に議論されて明記されていますから、どのような組織をどういうスケジュールで具体化されていくおつもりなのか。官房長官、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

枝野国務大臣 我が国の国家安全保障において、官邸が司令塔として適切に機能することは大変重要なことだというふうに認識をしておりますし、従来からそういった観点で、前政権においてもそうやってきていただいたと思いますし、私どもも進めているところでございますが、さらに今回、防衛大綱で、御指摘のような視点で助言等を行う組織を設置することとしたことは、それをさらに強化してまいりたいという思いでございます。

 まさに大綱が決まったところでございまして、この大綱に基づいて、今後、具体的な体制について、これまでの検証を踏まえた上で進めてまいりたいというふうに思っておりますので、できるだけ早くこういったことは進めたいとは思っておりますが、現時点で、いつごろまでにというお答えは、まだそういう段階ではないというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 だから、要は、後で聞こうと思ったんだけれども、PKOの方は内閣府で懇談会をされているんですよ。これなんかは、どういう形がいいのかどうかについての会議体、検討会も含めて、そういうものもやられるというのは、全く今のところは白紙なんですか。そういうことをされるのかされないのか、御答弁いただきたいと思います。

枝野国務大臣 大綱が決められたことを受けて、どういった体制で検討していくのかということを含めて、今まさにその検討を始めているところでございまして、できるだけ早く、こういった形で、こういったスケジュールでということをできるだけ具体的にお示しをしたいというふうに思っておりますが、まずは、検証をしっかりとしながら、その方向に向けての着実な一歩を踏み出してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 それで、話はかわりますけれども、アークライト計画というのが、今アメリカで進められているのがございます。要するに、米軍の研究機関で、昨年、このアークライト計画というのが公表されまして、アメリカ海軍の艦艇が約三千キロ先の目標を三十分以内に攻撃する新兵器を目指す計画なんですね。

 ただ、問題は、その運搬手段に、日米が共同開発中の弾道ミサイル防衛用のSM3ブロック2A、迎撃弾ですけれども、これが想定されている、そういうふうに言われております。これは、日米間で言われている、事前同意のない第三国移転あるいは目的外利用を禁止する厳格な管理、そういう書簡をお互いに交わしておりますけれども、これとの関係でどう見るのかということが非常に問題になってくると思うんですね。

 今回公表されているアークライト計画のとおりだとすれば、約三千キロ先をピンポイントでたたく、それも超音速、マッハで、三十分で到達するという攻撃的兵器なんです。これにSM3ブロック2Aの技術等を、また製品等を使うということは、書簡で言われている目的外使用に当たるのではないか、そういうふうに考えるんですけれども、防衛大臣でも外務大臣でもどちらでも結構です、御答弁いただきたいと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 このアークライト計画は、米国防高等研究計画局がホームページで公表したその資料によりますと、今お話のありましたように、非常に高速かつ長距離を飛翔する攻撃ミサイル計画だと私どもは承知をいたしておりますが、二〇一〇年度から米国において開始されたばかりでありまして、このミサイルがSM3ブロック2のブースターを基本とするような読み取り方もできますけれども、ただ、これは検討中でありますので、私どもも、このことについては米側とも十分協議しながら詳細を研究していきたい、こういうふうに思っております。

佐藤(茂)委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、要は、冒頭申し上げましたように、政局的判断からある野党に近寄って、本当に日米関係で大事な懸案である普天間の予算を凍結するなどというような、そういう間違った選択をされないように訴えまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 基本的質疑で子ども手当の地方負担分について質問させていただきましたが、昨日、自由民主党の加藤勝信議員の方から、子ども手当と児童手当の違いは何なんだという本質的な質問がありまして、私も全く同じように問題意識を持っていたものですから鋭い指摘だなと思ったんですが、その結果、けさの予算委員会の理事会に厚生労働省の方から小宮山副大臣が来てくださいまして、「子ども手当について」というペーパーを出していただきました。

 委員の皆さんには資料配付されているようですが、ちょっと確認をいたしたいと思うんです。

 「子ども手当の目的と少子化との関係」ということにつきましては、「子ども手当については、次代の社会を担う子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援する観点から支給するものである。 その結果として、保育所の整備等の現物給付やワークライフバランスの推進と相まって、子どもを安心して生み育てることができ、少子化の流れを変えることに資するものである。」と。ここは理解できます。

 二番目として「子ども手当と児童手当の関係」として、最初の丸ポツで、「子ども手当は、次代の社会を担う子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援する観点から支給するものである。」これは、昨年の衆議院の本会議、また当委員会で、当時の鳩山総理がこのように話されていました。

 丸の二つ目のポツで、「一方で、児童手当は、次代の社会を担う児童の健全育成とともに、家庭における生活の安定に寄与することも直接の目的としている。このため、所得制限があるなど子ども手当と異なる面がある。」ここも、鳩山総理が言われていました。

 丸の三ポツで、これはきょう初めて見てびっくりしたんですが、「しかしながら、子ども手当と児童手当は、子どもの育ちを支援するという面では、共通する面があるほか、いずれの制度も家庭に対する現金給付施策であり、児童手当のこれまでの実績を基礎としながら、子ども手当制度を構築してきたところである。」と。

 これは、今までの、民主党の皆さんがずっと我々に説明してきたものとは大転換なんじゃないかなと。児童手当と子ども手当は全然違うんだとずっと言われていて、きのう加藤議員も紹介されていましたが、鳩山前総理は昨年二月一日の衆議院本会議で、「両者はその趣旨、制度の内容が異なっている」というふうに、わざわざ明言されたんですよね。でも、今読み上げた文章ですと、同じじゃないか、児童手当の拡充をしてきたんだというふうにしか私には読めないんですが、細川大臣、どうでしょうか、どういう御認識ですか。

細川国務大臣 これは昨日も申し上げましたけれども、子ども手当の支給につきましては、これは基本的には、次代の社会を担う子供一人一人に、その育ちを社会全体で応援をする、そういうことです。

 そして、その違う面については鳩山前総理が強調されたと。だけれども、同じ面もあるというところを整理したのがこの「しかしながら、」のところでございまして、それは、子ども手当と児童手当はどちらも同じように子供の健全な健やかな成長を応援するんだ、これは共通だと。そして、これは、それぞれ現金給付、こういう面も共通であると。そして、この子ども手当法案では、従来の児童手当法の仕組みも利用するという形で仕組んでおりますから、そういう意味で、これまでの児童手当で蓄積してきた実績という面も共通をしているということで共通点を述べさせていただいたということで、そこは御理解をいただきたいというふうに思います。

富田委員 いや、それは理解できないですよ。

 大分枚数の多い資料を配らせていただきましたが、資料の一をぜひごらんになっていただきたいと思います。「民主党「子ども手当」政策の変遷」ということで、九八年以降の民主党のマニフェスト、政策インデックス等を全部読ませていただきました。これは私の事務所で作成したもので、もしかしたら誤りがあるかもしれませんので、またそれは言っていただければ訂正をしていきたいというふうに思います。

 九八年には手当の言及がなかったんですね。九九年の統一地方選挙で子育て支援手当法というのが出てきました。これは政策委員会の提言にも、九九年八月二十四日付で「児童手当を改め「子育て支援手当」を創設する。」というふうに出ていたんです。ところが、二〇〇一年の参議院通常選挙政策では「児童手当や奨学金を拡充します。」というふうに、児童手当に戻っちゃったんですね。

 マニフェスト二〇〇三では手当に言及はありませんでしたけれども、二〇〇三の政策集では「児童手当の拡充等」と書いてありました。マニフェスト二〇〇四では「次世代育成支援のための子ども手当(児童手当)を拡充します。」と。これは、子ども手当というのは児童手当だという意味ですよね。マニフェスト二〇〇五、これは多分岡田代表のときだったと思いますが、「民主党 日本刷新八つの約束」ということで「月額一万六千円の「子ども手当」を支給します。」と、一万六千円の子ども手当というのが初めて出てきました。ところが、その年のインデックス二〇〇五を見ますと、「子ども手当(児童手当)の拡充等」。何なんだ、これは一体という。二〇〇七年以降は「子ども手当」ということでやってこられて、二〇〇七年のときに月額二万六千円というふうになりました。

 子ども手当は児童手当と違うんだというふうに、二〇〇七年のころから明確に民主党の皆さんは言われていたと思うんですが、先ほどの細川大臣の御説明では、違う部分もあるけれども共通の部分もあるからそれを今回明らかにしたんだと言うんですが、政調会長を兼ねられている玄葉大臣、それで本当にいいんですか。今の変遷を見ると、それはちょっとおかしいんじゃないのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 これは、富田先生いろいろ御指摘をされておられましたが、正式にそれぞれの担当者が整理をさせていただいた結果が、きょう理事会に小宮山副大臣から出させていただいたペーパーということでございますので。

 最終的に、子ども手当の趣旨というのは、子供の育ちを支援するという面でやはり児童手当と共通する面があるし、同時に家庭に対する現金給付施策であるということで、今まではどちらかというと、違うという側面を強調し過ぎていたということなんだと思います、これはもう正直に申し上げて。そこを、現実に制度設計するときには児童手当を活用しているのもこれまたファクトとしてあるわけでありますので、ですから、こういった児童手当のこれまでの実績を基礎としながら現在の子ども手当制度を構築しているというのは、もう実態だということだと思います。

富田委員 玄葉大臣は正直だから正直に言われたんだと思うんですが、児童手当の拡充という面があるというのなら、実は、これは二〇〇四年のマニフェストで「子ども手当(児童手当)を拡充します。」と言っておきながら、ちょっと資料の二を見ていただきたいんですが、この資料の二は、昨年この予算委員会で私ちょっとパネルを立てさせていただいたんですが、こちらは年度が平成になっていますので、平成十六年が二〇〇四年です。マニフェストで児童手当を拡充と書いているこの二〇〇四年に、小学校三年修了前まで児童手当を拡大しました。右側、民主党の対応を見ていただけますか。改正法案に反対、委員会採決欠席、何でこんな態度を民主党の皆さんはとられたんですか。

 児童手当の拡充をずっと言ってこられたのに、実際の法案審議では反対される。これは、与野党関係なしに子育てを支援するんだという考え方が共通であるのなら、私はこのときにもきちんと賛成すべきだったと思うんですが、なぜ反対したのか。玄葉大臣、理由はわかりますか。

玄葉国務大臣 率直に申し上げて、私はその当時の反対理由を記憶しているわけではございません。ただ、過去、民主党が児童手当法の改正に反対してきた理由ということで一つ挙げるとすれば、給付内容が十分でないのではないかということのようでございます。

 同時に、これは率直に私の感想として聞いていただきたいんですけれども、恐らくその国会全般の状況もあったのではないか、そういったトータルな判断をされたのではないかというふうに推測をいたします。

富田委員 今の資料の二を全部見ていただければ、公明党の方で努力して、自民党の皆さんの了解を得ながら少しずつ拡充してきて、額が少ないんだという御批判はありましたけれども、それを一歩ずつ積み上げてきたんですね。

 今回の子ども手当はこれの上に乗っているわけですから、やはり民主党の皆さんも、その経過はしっかり理解していただきたいと思いますし、民主党の方で、二〇〇八年十二月十一日に、第百七十国会に民主党の子ども手当法案を提出されました。この法案は、残念ながら、二〇〇九年の七月二十一日の衆議院解散によって審議未了、廃案になってしまったんですが、二〇〇九年の衆議院選直前までこの民主党の子ども手当法案は国会に継続になっていたわけですね。

 この法案の中身、皆さん覚えていますか。若い先生は知らないんだと思うんですが……(発言する者あり)小宮山さんは当然御存じですけれども、ちょっとピックアップしますと、第六条で月額二万六千円というのが出てきています。支給対象については、第三条と第四条で十五歳、中学三年生が終わるまでというのが出てきます。十五条の第一項で費用は全額国負担と書いてあります。一番ひどいのは、附則の第二条で児童手当法は廃止と書いてあるんですね。

 この中身で間違いないですか。玄葉さん、わかりませんか。わからない。いや、いいです。わからないならいいです。

 法案にこう書いてありますので、民主党の皆さんは、御自分たちが出されて、この法案で衆議院選を戦ったというふうに私は理解しています。やはり全額国負担というふうに費用は書いてあるし、児童手当法は廃止するというふうに明確に民主党の法案には書いてあるんですね。民主党はこの考え方を捨てちゃったんでしょうか。その点どうですか、玄葉さん。

玄葉国務大臣 今の富田先生の質問は、全額国負担かどうか、こういう御質問かというふうに思いますけれども、結局、問題は、地方負担も、今、かつての児童手当の部分の地方負担だけなんですね。ですから、これからそういった問題も含めて、場合によっては検討対象にしていくという答弁が関係大臣からもございましたけれども、ただ、いずれにしても、国が制度を変更して単純に地方が増収になる、それをそのまま地方のポケットに入れるということはなかなか考えにくいなと。

 問題は、さまざまな現物サービスとかそういった面とのいわゆる相殺がどこまでできるのかとか、そういったことを考えていく中で、今のような議論は収れんされていくのではないかというふうに考えております。

富田委員 いや、児童手当法は廃止と書いてあったんですね。廃止しないでそれを流用するというのは、私、ちょっと民主党の考え方とは違うんじゃないか、まあ財源がないからやられたんだと思うんですが。ここはやはり皆さんの党が出した法案に明確に書いてあったわけですから、やはり児童手当とは違うんだということで子ども手当法を出してきたと思いますので、その点はしっかり認識をしていただきたいと思います。

 この委員会で、我が党の竹内議員が月額一万六千円と月額二万六千円の根拠は何なんだというふうに問いただしましたら、民主党の皆さんの方から、「子ども手当について」ということで、予算委員会の理事会に資料が提出されました。それが資料の五―一から四までです。

 資料五―一を見ていただきますと、下の方に、一・六万円の根拠ということで、「次世代育成をすすめる一環として、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除(老親控除以外)を廃止することにより、子ども手当(児童手当)を充実します。所得水準にかかわらず、義務教育終了年齢までの子ども一人あたり、月額一万六千円を支給します。(所要額三兆円)(民主党マニフェスト二〇〇五)」と書いてあります。

 これは、小宮山副大臣がこの当時は随分御努力されて、配偶者控除と扶養控除を廃止して、その分で出てきた金額を子供の頭数で割った額だというふうにいろいろなところで御説明されています。

 でも、ちょっと調べましたら、資料の三を見ていただけますか。資料の三、「所得税の各人的控除の減収見込額(平成十七年度予算ベース)」、ちょうどこの年です、二〇〇五年ですから。これを見ますと、配偶者控除〇・七兆、扶養控除も、全部入れたとしても一・七兆。二・四兆しかないんですね。

 これは、多分このほかにもいろいろかき集めて三兆円用意するんだというふうな御趣旨だったと思うんですが、ただ、マニフェストに書いてある限りはこの二・四兆でやらなきゃいけないのに、ここでも三兆円というふうに上乗せになっています。ちょっと過大になっているんですね。

 もう一回資料の五―一に戻ってもらいたいんですが、今度、二・六万円の根拠としては、「子どもの育ちに必要な基礎的な費用の相当部分をカバーする」「諸外国の手当制度と比較しても遜色ない水準とする」というようなことを書かれて、マニフェストに盛り込まれたんだと。

 それで、「年齢ごとの生活費及び基礎的学費の平均額」というのが、実はこの資料の五―二についています。資料五―二に、これは民主党の政策調査会の方でつくられた資料、民主党から提出されたものをそのまま出させていただきましたが、これを見ていただくと、ゼロ歳から中学生までどのぐらい基礎的学費がかかるかが書いてあります。

 ゼロ歳、一万八千四百五十七円で、中学校、十二歳から十四歳までは六十四万五百五十八円。これを全部平均すると月額で二万五千四百三十三円になるから二万六千円だというふうに民主党の皆さんは説明されたいんでしょうけれども、この基礎的学費のところ、ゼロ歳、乳幼児、四、五歳児、小学校低学年、高学年、中学校と金額が違うんですよね。(発言する者あり)それはそうだと言うけれども、四歳から五歳と中学校が極端にやはり費用がかかるわけですよ。

 子ども手当でもしここを何とかしようというなら、全部の月額平均をとってそれで二万六千円だというのではなくて、やはり四、五歳児とか中学生に手厚くなるように制度設計するのが合理的なんじゃないかと思うんですが、なぜこれを平均ベースにして二万六千円というのが出てきたのか、玄葉大臣、わかりますか。わからない。どういう考えか、ちょっと考えられる範囲で教えてください。

玄葉国務大臣 私、今の富田先生のお話を聞いて、その考え方はその考え方として確かにあるなというふうに思いました。

 同時に、推測も込めて申し上げると、何で上に行けば行くほど上げなかったのか、全部同額なんだということでありますけれども、例えば、きのうも質問にありましたが、貯蓄に回っちゃうんじゃないか、こういう議論がありますけれども、私から見ると、確かにすぐその子供の子育て費用に使っていただくのがいいんですが、恐らくそれは進学のための、例えば中学生になる、あるいは将来高校生になる、そのための貯蓄なんだと思うんですね。

 そういう意味では、ある意味子育てのために生きていくお金だというふうに考えれば、これはこれで一つの考え方なのではないかというふうに思います。

富田委員 いろいろ言われましたけれども、私は、この二万六千円というのは多分根拠はないんだろうと。小沢代表のときのマニフェストでいきなり一万円プラスされて、えいやで選挙目当てにやったんじゃないかなというふうにずっと思っていました。

 いろいろちょっと勉強させてもらいましたら、平成二十二年度の第八回の税制調査会、去年の十一月九日に開かれたようですが、その議事録を見ましたら、その中にこの二万六千円が決まった経緯が書いてありました。野田財務大臣と小宮山厚生労働副大臣との間でやりとりがありまして、もう忘れているかもしれませんが、公開されていますので、ちょっと引っ張り出したんです。大臣は多分忘れていらっしゃると思うんですが、ちょっと紹介させてもらいます。

 野田財務大臣が、

  小宮山さんの御発言があったので改めて確認したいんですけれども、私、二〇〇九年のマニフェストも、今回の参議院のマニフェストも関わっていないんです。ですから、子ども手当のところで確認したいんですが、控除から手当という哲学の中で、どの控除を倒して、月額どれぐらいの子ども手当を出すというのが原点だったんですか。多分、二万六千円と違うと思うんです。積み上げの議論ではないと思いますので、少しその辺の確認をさせてください。

これは私も、野田さんと同じ立場だったら、こういうふうに話したと思います。

 それに対して、小宮山厚生労働副大臣が明確に言っているんですね。

  最初、私が制度設計の責任者をしていたときに、最初の子ども手当の設計は、子どもの扶養控除と配偶者控除をなくす。それは男女共同参画と子どものことと併せてやっていったものですから、その中で子どもの扶養控除と配偶者控除を外した金額を子どもの数で割ったものが一万六千円です。それが原点です。

先ほど紹介させていただきました。その後が大事だと思うんですよ。

  その後、ある時期にぽんと一万円積まれた総額六兆円というものが出てきて、これは政権を取ったら財源は出てくるということで、そういうふうになりましたので、そこは少し最初の制度設計と違って、ばらまきであると言われることの始まりかなと、そのように思っております。

やはり小宮山副大臣は本当に正直な方、一万六千円には根拠があるけれども、二万六千円は小沢さんがえいやとやったんだと言われているわけですよ。

 私は、この二万六千円は根拠のない数字だと思うんですが、野田さん、どうですか。

野田国務大臣 税調の中でそういうやりとりがあったことが記憶として今よみがえってきました。

 それは、事実そういうやりとりがあったと思いますが、一方で、根拠としては、これはもろもろ、外部にも、あるいは党内の議論においても、二万六千円の根拠については、いろいろ実態調査を踏まえてやってきたということでございますので、それを踏まえて、基本的には、安定した財源を確保しながら着実に実施をしていきたいというふうに思います。

富田委員 野田さんの言を信じたいんですが、去年の十二月十九日の日経新聞の社説にこんなことが書いてあります。「理念なき子ども手当の迷走は目に余る」という題で、

  子ども手当をめぐる迷走は目にあまる。「社会全体で子どもの育ちを応援する」という当初の理念はそっちのけで、つじつま合わせに終始している。財源については配偶者控除の廃止を選挙に不利と断念し、給与所得控除の縮小分などを急きょ持ってくるドタバタぶりだ。

  しかも、新法は再び来年度限りの時限立法にするという。これでは去年、今年に続いて来年も迷走を繰り返すことになろう。恒久財源も恒久法もない手当では、少子化を反転させることなど期待できない。

これが私は国民の声だと思うんですね。

 ここの社説にも指摘がありましたけれども、配偶者控除、小宮山副大臣の税調での発言の中にもきちんとそれを財源にするんだというふうに言われていた、その配偶者控除をなぜ二十三年度税制改正で廃止しなかったんですか。これをちょっと財務大臣にお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 控除から手当という流れの中で、基本的には、さまざまな人的控除についてはこれから随時見直しをしていきたいと思いますし、二十二年度、二十三年度税制改正大綱、具体的にそれぞれ取り組んでまいりました。

 配偶者控除についても、今回は入っていませんが、税制改正大綱の中には明記されてございまして、「配偶者控除を巡る様々な議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、配偶者控除については、平成二十四年度税制改正以降、抜本的に見直す方向で検討します。」ということでございますので、引き続きこの見方で検討していきたいと思います。

富田委員 マニフェスト二〇〇九やインデックス二〇〇九で、配偶者控除を廃止して子ども手当に転換すると明確に書いていましたよね。今、大臣は二十三年度税制改正大綱を読まれましたけれども、二十二年度の税制改正大綱にも、「配偶者控除については、その考え方等について広く意見を聴取しつつ整理を行った上で、今後、その見直しに取り組むこととします。」と、同じような文言が書いてあるわけじゃないですか。毎年毎年先送りにしていって、もともとの民主党の財源としての根本だった配偶者控除をなぜそんなに先送りするのかな。ここはやはり理解できないんです。

 同じように、税調の会合で、小宮山副大臣がこんなふうに言っていますよ。

 配偶者控除については様々な御意見がありますけれども、これは民主党ができたときから男女の調査会といたしましては、これはライフスタイルの選択、働くか働かないか、どういう働き方をするかにかかわらず公平で公正な制度であるべきであるということで、この配偶者控除はそこに、フェアでないから廃止をということをずっと言ってまいりました。あと、男女共同参画の基本法の中にもそういうことを、ちゃんと公平な制度にするようにと、社会制度の見直しにも掲げられているところでございまして、ここは子ども手当をつくったときの発想からも、そういう

民主党の原点と言われている。

 民主党の原点でもあります男女共同参画というところからしても、配偶者控除は廃止するという姿勢は是非出していただきたいと思っています。

こういう意見がありながら、今大臣が言われたいろいろなことを考えて先送りしてしまったわけですけれども、ここをきちんとしないと、民主党のこれまでマニフェストでずっと言われていた根本が、私は覆っていくと思うんですね。先送りばかりしていないで、正面からやはり議論をしていただきたかったなというふうに思います。

 では、配偶者控除の方はやめておいて、何で住民税の控除の見直しをしたのかな、二十二年、二十三年度税制改正で。これは言っていなかったはずですね。

 平成二十二年度の税制改正で、個人住民税の一般扶養控除、年少分の廃止、そして特定扶養控除の見直しをしました。平成二十三年度の税制改正では、個人住民税の成年扶養控除の見直しをしました。これは、民主党の皆さんがずっとこれまで言ってきたこと、公約に反するんじゃないですか。明確なマニフェスト違反じゃないですか。玄葉さん、どうですか。

玄葉国務大臣 一つは、参議院選挙を迎えるに当たって、我々、かなり、地方の支部も巻き込んだ参議院選挙マニフェスト議論をいたしました。そのときに、二万六千円をあきらめるということではないんですけれども、少なくとも、二年目、実は、〇九年のマニフェストでは二万六千円と書いたんですけれども、これはもう難しいということで、一万三千円に、現物、現金バランスよく上積みをするというふうに変えたんですね。その点については私は、参議院選挙で国民の皆様の理解はその点は得られたというふうに実は認識をしています。したがって、財源見合いで子ども手当の上積みを、現金も、そして現物もしていくということにいたしました。

 先ほど富田先生が配偶者控除の議論をされましたけれども、党の税調でも相当この配偶者控除は激論になりました。もし配偶者控除を本当になくせるなら、恐らく二万円近くの子ども手当を支給することが十五歳までできたんじゃないかというふうに思いますが、その点は税調の議論の中でできなかった。これは事実でございます。

 したがって、何とか財源見合いで、ゼロ歳から三歳未満、七千円上積みするその財源をどうやって恒久財源で、特に公明党がおっしゃっているような恒久財源で手当てするためにということで、こういった議論になっていった。ただ、大きくとらまえれば、控除から手当へという中での結論であるということを申し上げたいと思います。

富田委員 参議院選挙前の議論でそうなったと言いますけれども、参議院選用のマニフェストに書いていないでしょう。いろいろ見ましたけれども、マニフェスト二〇〇九では、「子ども手当の創設と所得税(国税)の控除見直しによる影響」という欄に、わざわざ「住民税(地方税)の配偶者控除、扶養控除は見直しの対象とせず、現状のままとする。」というふうにマニフェストの一番最後に明確に書いてあるんですね。

 もっとひどいのは、二〇〇九年、衆議院選挙の前だと思いますが、民主党のホームページを今開くと、二〇〇九年七月二十三日付のところに、「【抗議文】七月十九日放映「サンデープロジェクト」での発言について」という文書が掲載されています。これは、当時の自民党の細田幹事長あてに平野役員室長から抗議文が出ているんですが、その中に、「民主党が主張している配偶者控除と扶養控除の廃止は所得税のみであり、住民税は含んでいません。」と。

 細田さんが、住民税も含んだ、これだけ増税になりますよというのを、多分「サンデープロジェクト」でやられたんですね。それに対して明確に、わざわざ違うといって、いまだにホームページにこれは残っているんですよ。残っているのに、財源の見合いということで住民税の部分を見直すというのは、こういうのはやはり公約違反なんじゃないんですか、どうですか。

玄葉国務大臣 配偶者控除じゃなくて住民税の方を見直したじゃないかというお話でございますけれども、先ほども若干申し上げましたけれども、全体としてはやはり控除から手当へということがあるのと、地方との関係では、あくまで国の制度変更あるいは税制改正変更で地方が増収になる分について、そのまま地方の財布に入るということは、これは地方の皆様には御遠慮いただきたいという話を以前からさせていただいておりますので、そういう中でこういった議論になってきたというふうに御理解をいただければと思います。

富田委員 今のはちょっとすりかえがあって、児童手当は廃止されるんだから、地方の皆さんは、その地方負担分というのは自分たちで使えると思っていたわけですよ。

 子ども手当と児童手当は、そもそも成り立ちが違うというのは前回の委員会でもお話しさせていただいたんですが、児童手当は地方自治体から出てきた政策なんですよ。それを国が取り上げて、私たちの先輩が取り上げてくれた。子ども手当は、民主党の皆さんが自分たちの政策だということでつくり上げた。地方自治体の皆さんは何のかかわりもないわけです。だから、地方の増収分があるからその分をというのは、ちょっと論理のすりかえじゃないかな。

 もう一つ、資料としてつけさせていただきましたけれども、資料の六、これは今言われた地方の増収分がこれで、平成二十二年度税制改正による増減収見込み額と二十三年度税制改正による増減収見込み額と書いてあります。

 これ、菅総理も言われたし、片山総務大臣も地方は増収になるんだからということを言われましたが、ちょっと違うんじゃないんですかね。地方負担は今五千五百四十九億円あります。この資料で見る限りは、地方の増収は最大で四千八百九十六億です。足りない。しかも、来年からということですから、ことしはないんですよね。

 そこの部分を地方の皆さんは怒っているので、自民党の小泉進次郎議員が鋭く指摘していましたけれども、地方の意見聴取のあり方、ここを考えていかないと、五大臣会合で決めたからということで民主党の皆さんは押し切ろうとしているんでしょうけれども、地方財政審議会がきちんと意見書を出して、その後、五大臣会合があって、子ども手当法案の閣議決定がある前後に片山総務大臣の方から地方財政審議会の方にはちゃんと説明しましたと。こういう協議のやり方では、私は地方自治体の納得は得られないと思うんですね。

 地方財政審議会の意見が出てきたときに、総務大臣がそれをしっかりと受けとめて、五大臣会合のところで、地方自治体はこう考えていますよということをきちんと主張するのが総務大臣の役目だと思うんですが、片山さん、どうですか。

片山国務大臣 私が就任してから以後のことで申しますと、実は、地方財政審議会の意見を聞く聞かないというそれとは別に、地方財政審議会自体が必要に応じて勧告をするとか、それから一般的な意見を申し出ることができるという規定がありまして、それに基づいて、十二月の何日だったでしょうか、年末に、まだ五大臣会合をやっているころですけれども、そのときに会長がまとめられまして、私のところに持ってこられました。

 それは、地方財政全般の話でありますけれども、その中には当然子ども手当の話も入っておりまして、そこでは、子ども手当自体を全額国費とすべきだと。先ほど来問題になっております地方税の見直しによります増収分と、それから、児童手当を仮に廃止した場合の児童手当に係る地方負担分については、これは別途他の国費との間で調整をすべきだ、そういう負担の調整をした上で全額国費とすべきだ、そういう意見書を持ってこられまして、そこで若干の意見交換をいたしました。

 ですから、私も実は、内々の話を、内々といいますか、経緯を話をしますと、五大臣会合ではそういう意見も述べました。述べましたけれども、制度全体としては、とりあえず二十三年度はこういうことでいこうということで、それについては、何回もここで私も申し上げましたけれども、実質的に子ども手当としての新たな負担を地方に求めているわけではありませんので、それはこれでよろしかろうということで、意見は意見として聞きましたけれども、五大臣合意に合意をした、こういうことであります。

富田委員 ぜひ総務大臣にはもっと五大臣会合でも頑張っていただきたいし、今後の制度設計の中で総務大臣が頑張らないと、地方はずっと反乱してくると思いますよ。

 今の総務大臣の答弁を納得するわけではありません。地方自治体の皆さんは、本当にこの負担をふざけるなというふうに言っていますので。

 委員長にお願いですが、地方自治体の皆さんの代表として、松沢成文神奈川県知事、山中光茂松阪市長、松崎秀樹浦安市長、熊谷俊人千葉市長、ぜひ参考人で当委員会に呼んでいただいて、現場の意見を聞いていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

中井委員長 理事会で協議いたします。

富田委員 よろしくお願いします。

 もう一つ、厚生労働省の方で、子ども手当が不成立だったらということで、児童手当の支給が六月にできなくなるというようなことを民主党幹部らに伝えていたというような報道がありました。

 児童手当用のシステム改修には三カ月が必要とされ、支払い月の六月に間に合わず、支給できない可能性が多い、厚労省見解というのを伝えていたということなんですが、それだったら、今から改修したらどうですか。野党の賛成が得られないんだから、こんな法案通りませんよ、今のままだったら。だったら、今から改修の準備をしたらいいと思うんですが、大臣、どうですか。

細川国務大臣 いろいろ御議論をいただいておりますけれども、私どもとしましては、今提案をいたしております子ども手当法案を、ぜひ年度内に成立ができるように、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。

富田委員 ぜひ賛成をお願いしますと言っておきながら、きょうの毎日新聞朝刊三面で「予算修正 日程綱渡り 「社民三要求」を調整」というふうに大きく書かれていました。この中に、午前中問題になっていました、普天間の予算の執行をとめるというのと、成年扶養控除の見直しも論点の一つとして挙がっていました。

 これをもし見直したら、子ども手当の財源が欠けちゃうんじゃないんですか。社民党との間でこういう調整をしておきながら、我々公明党や自民党に子ども手当に賛成しろと言うんですか。おかしくないですか。大臣、どうですか。

細川国務大臣 その報道につきましては、私どもとしては、どういう形でそういう報道になっているのか存じておりませんので、それに対してはちょっとお答えができません。

富田委員 いろいろ聞いてきまして、まだちょっと質問できなかった部分もありますが、引き続きこの委員会で質問していきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて富田君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、私は、TPPについて質問をしたいと思います。

 日本が仮に参加すると、TPPは、日米でGDPの九割、オーストラリアを合わせると、参加十カ国のGDPのほとんどをこの三国で占めるということになります。それだけに、日本とアメリカ、日本とオーストラリアの関係が大勢を決めるということになってくると思うんです。

 そこで、まず伺いますが、二月七日からきょう、十日まで、日豪EPA交渉が行われています。一年近く中断していたものが再開に至ったわけですが、昨年十一月九日の閣議決定、包括的経済連携に関する基本方針で、センシティブ品目について配慮しつつとはうたっているんですが、すべての品目を自由化交渉の対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指すという方針を出しました。

 まず、外務大臣に伺っておきたいのは、この立場で臨んでいると理解していいんですか。

前原国務大臣 今委員のおっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんが、日豪EPA交渉につきましては、昨年十一月に、包括的経済連携に関する基本方針、閣議決定をされたものでありますが、それを踏まえて、世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連携を進める、センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象として、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指すとの考え方のもと、交渉に臨んでおります。

吉井委員 それでは、農水大臣に伺いますが、この日豪EPA交渉において、重要品目の中には、小麦、砂糖、牛肉、乳製品は入っているんですか。

鹿野国務大臣 交渉事でございますので、具体的に個別品目につきましては、詳細について申し上げることは控えさせていただきますが、一つの考え方といたしまして、二〇〇六年の十二月の衆参の農林水産委員会における国会決議におきましては、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目が、除外または再協議の対象となるよう交渉することとされておる、こういうことでありますことは念頭に置いておるところでございます。

吉井委員 念頭は、まあ置いておいたらいいんですけれども、念頭に置いたとしても、オーストラリア側は、この四品目が最大の関心事なんですね。農水大臣は、小麦、砂糖、牛肉、乳製品は重要品目だから、日本としては関税引き下げの対象外、除外にするという立場に立っているのかどうかを伺っておきたいと思うんです。

鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、この案件につきましては、交渉事でございます。ゆえに、今我が国としてこういうことの考え方に立っているというようなことについて、品目ごとに申し上げるということは控えさせていただきたいと思っております。

吉井委員 それは、ちょっとおかしいんじゃないかと思うんですね。

 二〇〇六年十二月七日に衆議院、十二月十二日に参議院で、それぞれ農水委員会において、これは全会一致で決議されているんですね。

 一枚目の資料をごらんいただきたいと思うんですが、「日豪EPAの交渉開始に関する件」であります。この一番目、さっきちょっと、大臣もおわかりのようで言われたわけですが、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外または再協議の対象となるよう、政府一体となって交渉することと。鹿野大臣は、この全会一致の国会決議の立場で重要品目を守るという、この立場に立っているんですね。確認しておきます。

鹿野国務大臣 私が冒頭にお答え申し上げましたとおりに、この国会決議というふうなものは十分頭に入れながら今後の交渉に当たっていかなきゃならない、こういうふうなことは念頭に置いておりますというような一つの言葉で表現をさせていただいたということでございます。

吉井委員 これは念頭の話じゃないんですよ。頭の中が中身があろうが空っぽであろうが、大事なことは、鹿野大臣が全会一致の国会決議の立場で重要品目を守るという立場に立っているのかどうか。交渉事の中身を聞いているんじゃないんですよ。あなたがどういう立場に立っているか、このことを聞いているんです。

鹿野国務大臣 私が今、念頭に置いてというようなことを二度にわたって申し上げました。これは、国会決議というふうなものをもちろん意識して今後交渉に当たっていかなきゃならないという思いを申し上げたわけであります。ただ、交渉事でありますから、それは、重要品目というのは何であるかという品目についてまで今言及するというふうなことは控えさせていただきたい、こういうふうに申し上げているわけでありまして、十分このことは私どもは念頭に置いてあるということによって対応していくというふうなことになるわけであります。

吉井委員 私は、交渉の中身を今聞いているんじゃないんですよ。農水大臣が、あなたの党も賛成しているんですよ、全会一致の国会決議の立場で重要品目を守るという立場に立っているのかどうか、このことを聞いているんですよ。

鹿野国務大臣 国会決議というふうなものがある、この国会決議を念頭に置くというふうなことにおいて対応していく、こういうふうなことを重ねて申し上げさせていただきます。

吉井委員 委員長も聞いてはっておわかりのように、これは念頭に置いてかどうかの話じゃないんですよ。全会一致の国会決議なんですよ。あなたの党も賛成したんですよ。その国会決議の立場にきちんと立つのかどうか、このことを聞いているんです。

鹿野国務大臣 当然、私は、重ねて申し上げますけれども、国会決議というふうなものをきちっと意識しながら、念頭に置いて、そして対応していくということなんです。

 これは、品目ごとにどうこうということは今申し上げることはできませんが、これはもう国会決議にきちっと、そういうふうなものを念頭に置いて対応するということは、それはいろいろな意味が含まれているというふうなことで御理解いただきたいと思います。

吉井委員 念頭に置くだけで守らなければ、国会決議というのは全会一致であっても意味がなくなってしまうんですよ。

 あなたの党自身が賛成して全会一致で決めた国会決議をあなたが守るのかどうかということを、私は、重要品目に入るとか入らぬとかいう話はもう済んでいるので、それを聞いているんじゃないんですよ。交渉事の話じゃなくて、その立場を守るのかということを聞いているんです。

鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、国会決議というふうなものを十分念頭に置いて対応していく、こういうふうなことで私たちはやっていきたいということだということでありますから、それは当然のことながら、我が党も参加をして、そして賛成した決議でありますから、そのことを念頭に置いてやっていくというふうなことはどういう意味であるかということは、それはもう御理解いただけると思います。

吉井委員 念頭に置くと言うだけで、きちんと決議を守るということが言えないということ自体が非常に情けない話だというふうに思うんです。

 昨年十一月九日の閣議決定文書で、すべての品目を自由化交渉対象とするとして、アジア太平洋地域における、交渉中のEPA交渉再開に向けた作業を加速するということを閣議で決定したわけですが、この立場で外務大臣は十一月にオーストラリアを訪問して今回の日豪EPA交渉を準備したのではないかと思いますが、確認しておきます。

前原国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

吉井委員 つまり、外務省の方は、すべての品目を自由化交渉対象として、そしてこれを加速するという立場でやっているんですよ。

 経産大臣に来ていただいているから伺っておきますが、今夜八時から出発してオーストラリアへ行かれるんですね。あらかじめペーパーでいただいておりますが、日豪EPA交渉合意に向けた議論を加速するために行くんだということになっております。それだけに、鹿野大臣の方が念頭に置いておって、外務大臣もあなたの方も加速する立場で行くとなってくると、重要品目、これも入ってしまうと、これは国会が考えていたのと全く違う姿になるわけですね。

 経産大臣としてはこの点についてはどういう立場で今夜立たれるのか、伺っておきます。

海江田国務大臣 吉井委員にお答えをいたします。

 国会のお許しをいただきまして今夜豪州へ向かいますが、その主な目的は、第二回の日豪の閣僚会談でございます。貿易担当の大臣あるいは経済担当の大臣と、まさに第一回に引き続いた第二回目の、全般的な日本と豪州の経済協力関係についての話し合いがその目的でございます。

 そして、今現在まだ交渉中でございますが、日豪のEPAの交渉もございますから、その交渉の途中経過でございますが、きょうまでの経過も踏まえて、私どもは、それをお互いが納得のいく形で、もちろん私どもの主張はしっかりとしてくるつもりでございますが、最終的な合意が得られるようそれを加速化するということでございます。そのためにきょう行ってくるということでございます。

吉井委員 私はちょっと官房長官に伺っておきたいんですけれども、要するに、外務大臣にしろ経産大臣にしろ、この日豪EPAを加速化すると。その加速化という内容は、あらゆる品目について自由化を交渉対象とする、さらには関税をゼロに目指しているわけですが、一方、農水大臣の方、農水省の方は念頭に置いて念頭に置いてというところから出てはいないんですけれども、国会決議の方では重要四品目は除くということになっているんですね。ですから、政府の中で、一体、この重要な品目をちゃんと尊重するのか、それとも、いや、そういうことはもう目をつぶって加速化しましょうという立場でいくのか。これは、政府の考え方というものを官房長官に伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 外務大臣や経産大臣からお答えをいたしましたのは、EPA交渉について前に進めていきたいということでやっているということでございますが、EPA交渉に当たりましては、内閣全体としても、世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連携を進める一環として、「センシティブ品目について配慮を行いつつ、」という文言が「すべての品目を自由化交渉対象とし、」という言葉の前にきちっと入っておりまして、衆参の農林水産委員会で御決議いただきました決議について念頭に置きながら、なおかつ、今のような方針でEPA交渉に臨んでいるところでございます。

吉井委員 これは念頭に置いておくだけの話じゃなくて、全会一致の国会決議は重たいものだ、これを無視するようなことは許されない、認められないということをまず申し上げておきたいと思います。

 次に、二枚目の資料をごらんいただきたいんですが、昨年十月八日の新成長戦略実現会議で提示したものですね。これは玄葉大臣に確認しておきます。

玄葉国務大臣 ちょっと確認しておりませんが、恐らくそうだろうというふうに思います。

吉井委員 これは、恐らくの話じゃなくて、もともと玄葉大臣の方がまとめて、その六ページなんですね、この文書は。

 それで、伺っておきたいのは、これにありますように、「日米間の経済連携のあり方」、このペーパーの中で、「米国との経済連携強化の方策には、日米のバイのEPA」、つまり日米FTAのことですね、それと「TPPの双方の可能性あり。」と。また、日米EPA、TPPの留意点というのが下にありますが、要するに、日米FTAもTPPも同じことだという認識を持っているわけですね。

玄葉国務大臣 御存じのように、EPAは二国間のものでございますし、TPPはマルチのものである、そういう意味では違うわけでございますけれども、日米だけ見た場合、共通の留意点は当然こういう形であり得るんだろうということでしたためたメモだというふうに思います。

吉井委員 これは、あなたの方でまとめられた資料ですから。

 それでさらに、日米EPA、TPPの共通の留意点の四つの項目の中の一つに、「農産品分野や非関税分野で高い水準の自由化と改革を行う意思を表明し、それに伴うコストを受け入れる覚悟で臨む必要」とあって、注意書きがありますね。この「注」の中で、米国のFTAでは、相手国は約九七%以上、TPPは一〇〇%自由化が求められるとしております。玄葉大臣に確認しておきます。

玄葉国務大臣 今、吉井委員の御指摘でありますが、そもそも、この後、十一月に包括的経済連携の基本方針を取りまとめたわけでありますが、二国間EPAについて国際的潮流と遜色のない高いレベルのEPAを結んでいくということは、私たち政府の方針として決定したところでございます。

吉井委員 だから、日米FTAとTPPとは同じものだということなんですよ。そして、高いレベルの自由化というのは、一〇〇%関税をゼロにしていくということなんです。TPPというのはそういうものだということを政府自身が認識してこのペーパーをまとめているわけですよ。

 そこで次に、配付した資料の三をごらんいただきたいんですが、これは、二〇〇九年七月二十七日に発表した民主党マニフェストです。ここでは、日米FTA締結だったんですが、これに対して、農業者の猛反発を受けて、七月二十九日に菅代表代行は、FTA交渉においては、農林水産物に関して米など重要な品目の関税を引き下げ、撤廃するとの考えはないと声明を出しておりますが、これは玄葉大臣に確認しておきます。間違いないですね。

玄葉国務大臣 恐縮ですけれども、通告があれば調べてまいりましたけれども、こういうことが仮にあったかなかったかはともかくとして、高いレベルの二国間EPAは、今ここにもございますけれども、除外品目が実はございます。例えば、米韓が非常に高いレベルで二国間EPAをやっておりますけれども、米は除外です。畜産の一部もそうでございます。あるいは、アメリカとオーストラリアが高いレベルでEPAを結んでおりますが、それまた、砂糖などの除外品目がございます。

 ですから、全くTPPと同じとか、そういう話とはまず違うし、例えば、仮にこの声明がそうだとしても、そういったセンシティブ品目に配慮をしながら交渉を行っていくというのが昨年十一月の包括的経済連携に関する基本方針の中にもしっかり書き込んであるということは申し上げたいと思います。

吉井委員 まず、前段では、もともと、バイのEPAなりFTAとTPPの双方の可能性があるんだけれども、いずれもハイレベルの自由化が必要で、EPAとTPPの共通点として、肝心なところは共通しているんだということをちゃんと書いているわけですよ。

 それで、後段のマニフェストの方なんですけれども、これで皆さんは選挙を戦ったわけですよ。それで、もともとの最初のマニフェストというのは、日米FTA締結だったんですね。七月二十九日に菅代表代行は声明を出して、重要品目ですね、関税引き下げ、撤廃する考えはないと、ちゃんと声明を出しているんですが、これは、これで玄葉さんも選挙を戦われたんですから、それを確認しているんです。

玄葉国務大臣 それはぜひ時間をいただいて確認をさせていただければと思いますが、恐らく、確かにこういうような経緯があったように私も記憶はしています。

 ただ、そうだとしても、先ほど申し上げましたけれども、ハイレベルEPA、ほとんどのハイレベルEPAには除外品目がございます。例外品目もございます。そのことは申し上げておきたいと思います。ですから、仮にこの声明があったとしても矛盾しないと思います。

吉井委員 これは民主党のホームページでわかるわけですから、今さら後で確認するような話じゃなくて、これで戦ったわけですからね、皆さん。

 それで、民主党は、二〇〇九年八月五日には、JAなど八団体が七月三十一日に提出した日米FTA断固阻止等に関する声明に対する申し入れを出しています。その中で、米など重要品目の関税の引き下げ、撤廃をしないことを条件に交渉するものとし、日本の農林漁業、農山漁村を犠牲にする協定はあり得ないとしたわけですが、これも確認しておきます。

玄葉国務大臣 こういう事実関係は、恐縮ですけれども、やはり通告していただかないと、自信を持って申し上げることはできません。

吉井委員 これはちゃんと通告しているんですよ。こういう趣旨のことを聞きますということは言っております。

中井委員長 吉井君に申し上げます。あなたの御通告は、TPPと、これだけじゃないですか。ほかに詳しく出していただいていますか。メモは出ているの。

吉井委員 いやいや、個々にちゃんと、それはレクをやっていますから。(発言する者あり)ちゃんとやっていますから、それは委員長、ちゃんとやっている。

中井委員長 そうですか。共産党さん、いつもちゃんとやってくれるから珍しいなと思って聞いていたんです。

吉井委員 いや、全然珍しくない。どこやらの党が夜中の十二時過ぎやったのとは全然違うんです。私はもっと早い時間にちゃんとやっていますから。

中井委員長 それじゃ、きちっと答えてください。

吉井委員 それで、重要品目除外と言いながら、今、民主党、菅内閣がやっていることは、マニフェストの重要品目の関税引き下げ、撤廃はしないというのから、要するに、米国との間でFTAの交渉を促進、こういうふうに、これはマニフェスト、補強といっても、修正マニフェストというのは非常に珍しいんですね、これはわざわざやっているんですが、しかし今、除外だと言いながら、それを含めて促進だと言い出したら、これはマニフェスト違反になってくるんじゃないですか。

玄葉国務大臣 昨年十一月に包括的経済連携の基本方針を決めました。ハイレベルEPAについて政府として決意をしたことは事実です。

 ハイレベルEPAというのは、まさに九〇%あるいは九五%を超えるハイレベルEPAだというふうに申し上げてもよいかと思いますけれども、例えば、先ほど申し上げたように、韓国と米国の例でいけば、恐らくタリフラインで九八%台、九九%レベルのEPAを米韓で結んでいるわけです。それでも米は除外なんです。あるいは畜産の一部は除外なんです。そういう形で重要品目を除外しているんです。ですから、何も矛盾はしないと思います。

吉井委員 全然、重要品目除外と言いながら、実際には、それを含めて、念頭に置くだけで促進ということになってきたら、これはおかしいじゃないかということを言っているんです。

 昨年十一月九日の、今おっしゃった閣議決定では、すべての品目を自由化交渉対象とし、関税ゼロの高いレベルの経済連携を目指すと決めたんですね。ここからTPPへの参加へと大きくかじを切っているわけですよ。だから、菅さんの所信演説でも、びっくり仰天、急に出てきたという話になっているんです。

 修正マニフェストとも、七月三十一日の、菅代表代行の声明にも明記した、重要な品目の関税を引き下げ、撤廃するとの考えはないというJAなどへの約束に違反するものになったら、これは玄葉大臣、マニフェスト違反なんじゃないですか。

玄葉国務大臣 ですから、今後の交渉の結果として、例えば、仮にFTA交渉において全く除外品目がないというような結果が出たら、確かにそういう意味では、ここに書いてあることとは違うのではないかということになろうかと思いますけれども、そういうことは私はあり得ないというふうに思っています。

吉井委員 玄葉さんがあり得ないと思う思わないはあなたの自由なんです。しかし、閣議決定の文書というのは、それから全会一致の国会決議というのはもっと重いものだと思うんです。

 昨年、APEC報告の本会議で、私がTPPの本質は結局日米FTAではないのかと質問したときに、菅総理は答弁をしませんでした。マニフェスト違反についてもやはり明らかにする必要があると思うんです。

 それで、菅総理出席のもとで、TPP問題に関する集中審議を行うこと、それから、これに関連したさまざまな関係者の参考人質疑というものがやはり必要だと思うんです。

 これは委員長の方にお願いいたします。

中井委員長 理事会で後刻協議いたします。

吉井委員 次に、TPPは参加国の間で、すべての品目にわたり無条件に関税ゼロ、非関税障壁撤廃ということで進められております。

 資料の四枚目に見るように、外務省によると、二十四の作業部会での議論というのは農業だけでなくて、工業、繊維・衣料品の市場アクセスのほかに、衛生植物検疫、政府調達、金融サービス、投資、環境、労働など、いずれも中小企業や雇用や自治体の公契約、国民の安全と健康など、あらゆる国民生活の暮らしや安全を守っていく規制や基準が対象になっているんじゃありませんか。

玄葉国務大臣 今御指摘のように、こうした二十四の作業部会においてさまざまな議論が展開をされているというふうに思います。ただ、御存じのように、TPPにつきましては、私たちはまだ参加の意思決定をしておりません。情報収集をしている、協議をしている、そういう段階でございますので、それによって得られた情報で今、分析、検討を始めている、そういう状況でございます。

吉井委員 きのう私はレクチャーをやりましたときに、これは外務大臣であれ、玄葉大臣であれ、いずれでも、それは内閣の方で決めていただくということで、ちゃんと項目を示して言ってあるんです。私の方は、あらかじめ伺ったときには、外務省の方で各省庁の取りまとめをいただいております。玄葉さんがお答えいただいてもこれは結構です。それで、今お答えをいただいたわけです。

 そこで、次に伺っておきたいのは、サービス貿易の自由化が検討されておりますが、これは、昨年十一月九日の閣議決定では、看護師、介護福祉士等の海外からの人の移動に関する課題について、人の移動、すなわち、雇用・人材戦略の推進を、非関税障壁撤廃とともに、経済連携交渉と国内対策の一体的実施として取り上げているものです。

 労働分野の作業部会の議論では、ILO条約尊重などあるんですが、それは当たり前のことなんですね。しかし、ILO条約のかなり多くのものを日本は批准していないんですよ。

 その上で、サービスで人が移動するということと、非関税障壁撤廃だということになると、TPPのネガティブリスト方式により、二国間EPAにある看護師、介護福祉士だけじゃなくて、商用移動などとして、海外労働者の参入に道を開くことになってくると思うんです。

 そのとき、既に大企業から請負単価引き下げを求められて赤字受注に走っている中小企業が海外労働者を受け入れることで単価引き下げに走ると、アジア並み賃金の横行によって、日本の労働者全体の賃金引き下げの圧力となって、これは所得の減少、消費購買力の低下、国や地方の税収減、デフレスパイラルで国民生活にマイナスが生じてくると考えられるわけですが、この労働に対する影響について、どれだけ深い検討を行っているのかを伺います。

玄葉国務大臣 人の移動につきましては、ある意味、今おっしゃったこととは違って、いわゆる、適切な表現かどうかということはありますけれども、一般論として言うと、これはなぜかというと、TPPについてはまだ参加交渉に入っているわけじゃありませんので、明確に答えることはできません。ただ、一般論として申し上げると、今までFTAで単純労働者について扱ったという例は余り私は承知をしておりません。

 ただ、例えば、エンジニアが他国に行ってどういう扱いを受けるか、あるいは商談とか企業内転勤とか、そういったことをむしろ議論の対象にしているということでございますし、逆に、例えば労働者の保護をどうするか、例えば途上国で長時間、低賃金の労働がある、そういったことに対して問題ではないかという観点からむしろ議論されていると考えていただいてよいのではないかというふうに思います。

吉井委員 私が聞いていますのは、TPPに参加していないのはわかっているんですよ。参加するかどうかということを六月までに決めるわけでしょう。参加してから、いや、これはもう全部自由化になったんですと、海外から安い賃金の人が入ってきて、アジア並み賃金にさらされたら、日本の労働賃金というのはずっと押し下げ効果が働いてしまうわけですよ。日本経済全体に問題が出てくるんですよ。だから、どういうアセスメントをやっているんですかということを聞いているんです。

玄葉国務大臣 それは、現時点で得られた情報で分析をするしかありません。

 ちなみに、交渉に入ったって、実際に参加する、つまり締結するというわけではありませんから。仮に、交渉に入るという決断がなされた場合は、まさに今おっしゃったとおりの、かなり詳細な分析が可能になる、アセスメントが可能になる、そういうことではないでしょうか。

吉井委員 これは、大体、先に議論しているところがルールを決めて、それを認めないとそもそも入れないわけですから、ですから、そのときにどういうルールができているかということもありますけれども、まず日本としてアセスメントをやるというのは当たり前の話なんですよ。

 WTOのサービス貿易協定ではポジティブリスト方式なんですが、TPPはネガティブリスト方式ですね。ですから、リストに明記しないものは全部規制緩和なんですよ。日本とアジアの二国間のEPAにあるような看護師、介護福祉士にとどまらないで、あらゆる分野の労働者の参入が可能になってくるんじゃないですか。

玄葉国務大臣 冒頭申し上げましたけれども、基本的に、一般的に、いわゆる単純労働者について扱っているという例は、私は余り承知しておりません。

吉井委員 あなたが承知していないのは困るので、しっかり承知してもらわないと困るんですよ。

 業務サービス、通信、建設・エンジニアリング、流通、教育、環境、金融、保険、観光・旅行、娯楽・文化・スポーツ、運輸の十一分野のサービス貿易が、提供する人が国境を越えて移動する、これは全部対象ですね。

玄葉国務大臣 今確定的に答えることはできませんけれども、それは議論の対象にはなるでしょう。ただ、医療を例に挙げて申し上げますけれども、例えば医療について、では現実にどうなるんですかといったら、恐らく、国籍による差別の禁止、つまり内国民待遇とか数量制限、もっとわかりやすく申し上げれば、お医者さん、医師や病院の数の制限などは、まさに議論して各国が約束をするということになるのではないかというふうに思います。

 ただし、WTOとかEPA等において我が国が約束しているのは、基本的に、病院サービスについて外国資本の参加に制限をしないこと、日本国内の医師免許を取得した外国人が日本国内で医療サービスを提供することを制限はしないこと程度に限られているのが現状でありまして、実際に、今後も、医療など人の命あるいは健康にかかわる分野については、国際交渉においても当然ながら慎重に扱っていかなきゃいけないというふうに思っていますし、例えば、いかなる資格要件が必要なのかどうか、こういった議論については当然我が国が主体的に判断をしていく、そういうたぐいの話だろうというふうに思います。

吉井委員 WTOのサービス貿易協定の場合はポジティブリストなんですよ。だから、今あなたがおっしゃったように、例えば医療について、仮にポジティブで載せたら、それはいけませんよということですが、今度、TPPはネガティブリストなんですよ。だから、載っていないものは全部可能になるんです。

 WTO協定を、膨大なものですけれども、あなたはお読みになったらよくわかるんですけれども、今挙げました十一分野のサービス貿易については、それを提供する人が国境を越えて移動してくることについては、これは認められるんでしょうということを言っているんですよ。

枝野国務大臣 我が国も協議に参加をしていないTPPの交渉の見通しをおっしゃられているわけでございますが、まさに、各国とも、それぞれの国ごとにさまざまな事情、国内の御意見をお持ちだからこそ、こうした二十四の作業部会が設置をされて、今TPPの協議が日本以外の何カ国かで進んでいるという状況でございます。

 そして、まさに今私たちは、外務省などを通じて、この交渉の過程でどういう協議がなされていて、どういう方向になっていくのかという情報を収集している状況でございまして、もちろん、そうした情報を踏まえて、我が国の国益あるいは国民の皆さんのトータルとしての利益に反することがないような内容になるのか、それともそうではないのか、まさに情報を今集めている段階でございまして、何か確定的に、こうなるんでしょう、だからどうするのということを聞かれましても、だからこそ今情報を一生懸命収集して、そのしっかりとした確実な情報に基づいて、これから我が国としてどうするかということを協議していこうという状況でございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 TPPに参加するということについてですから、TPPについてあらかじめ研究してその方向を語ったんじゃないんですか。今、官房長官のお話を聞いていたら、何か人ごとみたいな話なんですね。そうじゃなくて、菅さんは、TPPに参加するんだ、これは平成の開国だと言っているんですよ。それを言いながら、何か人ごとみたいな話になってしまうと、あれれということになりますよ。

 多国籍企業となった自動車、電機など大企業からすれば、日本だけで物をつくって輸出しているんじゃないんですよ。外国各地に工場を設けて、海外での部品調達やらいろいろやっているわけですね。要するに、シームレスな経済環境にすると、どこで物をつくっても同じ労働コストになるとすると、これは短期的視野で見ると、大企業にとっては大きなメリットがあるんですよ。

 しかし、その結果として、雇用喪失と低賃金で国民所得の減少となり、それは日本的に見れば、消費購買力を落とし、国内需要の減少、デフレスパイラルの道へ進むわけですね。税収の落ち込みで、ますます税収に対する社会保障予算の比率は高くなるわけですよ。国債残高も上昇を招いてしまうわけですよ。それをやっていたら、経済、社会、国民生活に閉塞感を深めてしまうばかりじゃないですか。

 だから、官房長官、何か人ごとの話じゃなくて、本当にこれは平成の開国だと言って浮かれていることができるときなんですかということを私は伺っているわけです。

枝野国務大臣 菅内閣として、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携については、高いレベルの経済連携を目指すということで、国を開いてまいりたいというふうに方針を出しておりますが、その方針においても、これは関税に関すると思いますが、センシティブ品目に配慮を行いつつということをしっかりと申し上げております。

 そして、その上で、決して人ごとではなくて、TPPについてはまさに強い関心を持って、どういった状況で、まさに二十四もの作業部会が設置をされて、それぞれの中でさまざまな御議論がなされているものと思います。そうした中の状況をしっかりと認識、把握をして、それに基づいて六月をめどに方針を示していくということでございますので、まさにその交渉の状況、情報というのは、今一生懸命アンテナを張って集めているところでございますし、そうやって集めた情報については、可能な限り、国会内外を通じて、皆さんにも知っていただくよう配慮をしてまいるつもりでございます。

 ただ、何かあることについて、既にもう決まっていて大前提で動かないことだということを前提に御議論を今いただいても、そのこと自体が、今TPP参加予定は九カ国だったでしょうかのところで交渉をされている状況でございますので、私どもは、その情報をもとにして、国会での御決議とか、我が党が従来申し上げてきた姿勢とか、そして、もちろん国民生活に与える影響等をしっかりと検討した上で、TPPについては、協議に参加するかどうかを決定してまいりたいというふうに思っております。

吉井委員 開国だ、開国だと言いながら、TPPはネガティブリスト方式でいくとか、こういう話は別なんですね、調査するまでもなくわかっている話だし、十一分野のサービス貿易で、提供する人が国境を越えて入ってくるということもはっきりしているわけですから、その結果として日本経済はどうなるのかということを、官房長官としては、やはり政府を取りまとめていく中でしっかり取り組んでもらわなきゃ困ると思うんです。

 人、物、金が国境を越えて動くシームレスな経済環境で、結局、利益を受けるのは多国籍企業となっている輸出型大企業なんですが、アメリカの通商代表部の二〇一〇年度外国貿易障壁報告書においても、それからせんだっての日米間の貿易フォーラムにおいても、規制改革の中で、自動車整備工場のゾーニング規制、酒類卸売免許制度、食品添加物承認手続、医薬品、医療機器の承認期間の短縮などを三月までに取り組んで、そして昨年六月の閣議決定のフォローアップを図ると具体的に話を進めているんじゃないですか。

前原国務大臣 この日米貿易フォーラムは、日米両国間の貿易・投資にかかわる話でございまして、今委員が取り上げられたテーマとは別個にTPPはございます。

 その別個の、別個というかTPPのほかに扱われたテーマといたしまして、二国間の問題あるいは日米双方の通商政策というところで、今挙げられたものも含まれることを申し上げますと、アメリカにおけるリチウムイオン電池輸送の規制強化、あるいは食品安全強化法に関する懸念、関心、これは我々からアメリカ側に提起をしたものでございますし、アメリカ側からは、牛肉、そして郵政、あるいは自動車の技術基準ガイドライン等に提起があったものでございまして、これはTPPとは全く別個の二国間の経済の問題、貿易に関する問題として議論をされていると……(吉井委員「私が挙げた四点も入っていますね、自動車整備工場ゾーニング規制とか」と呼ぶ)いや、私の手元にはそれはございません。(吉井委員「いや、入っている」と呼ぶ)では、調べて答弁させていただきます。

吉井委員 次に、日本医師会初め医療関係者から、外資が支配する病院の発生、混合診療の全面解禁による国民皆保険制度の崩壊、保険会社などの利益追求第一主義の問題など、懸念される問題点が随分挙げられておりますが、国民の生命や健康、安全よりアメリカの医療機器企業や製薬会社のもうけ第一に走ってしまうと、これは日本の国民にとっては大変な問題になると思うんです。しかし、TPPの六月参加判断に向けて政府はこの医療分野に取り組んでいるんじゃありませんか。

玄葉国務大臣 ですから、先ほども申し上げましたけれども、具体的にお示しすることは困難ですが、健康とか命とか、そういったものにかかわるそういう分野については国際交渉において慎重に扱わなきゃいけないということは、私は先ほども申し上げたはずでございます。

 ですから、いずれにしても、私たちがその資格要件などについては主体的に判断をするということが大切だというふうに思いますし、それはできるというふうに思います。

吉井委員 これは、慎重判断の問題じゃないと思うんですよ。

 次に、TPP参加国の検疫に関する作業部会とともに、日米間では食品添加物の承認手続などが議論されているわけですね。日本が食品衛生法に基づいて残留農薬を表示して食品添加物扱いにしているのを、それは規制だといって、アメリカは、外せ、輸入を認めよと言っているわけですね。そういう実態にあるんじゃないですか。

細川国務大臣 食品衛生法におきまして、収穫後に使用される農薬、いわゆるポストハーベスト農薬、これはおっしゃるように食品添加物として取り扱われております。

 私ども厚生労働省としましては、引き続きポストハーベスト農薬を食品添加物として取り扱って、そしてその使用に当たっては、今後とも、法令に従って、規格基準の設定や適正な検査の実施、その他の安全性確保ということに私ども厚生労働省としては努めてまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 国民の健康や安全を守るための基準や規制まで取り払え、商売の邪魔だというのは、これは乱暴な議論を言ってきていると思うんです。

 それで、BSEの問題が起こった後、輸入禁止になってきたアメリカ産牛肉について、日本政府は現在二十カ月以下を条件にして輸入を認めているわけですが、アメリカはこの月齢制限を撤廃せよと言っていますね。

 ところで、二月八日に、月齢が確認できない牛肉が入荷してきたんじゃありませんか。これは二〇〇六年の輸入再開以降で十四例目になるのではないかと思いますが、報告を求めます。

鹿野国務大臣 二月の四日でございますが、動物検疫所が東京港に到着した米国産牛肉を検査しましたところ、特定危険部位ではないが、月齢で確認できない大腸が五十六箱含まれていることを確認いたしました。このため、当該牛肉の出荷施設からの貨物についても輸入手続を直ちに保留いたしまして、在京の米国大使館等を通じて、当該大腸の月齢を確認したところ、当該品目が二十カ月齢以下であることが確認できない旨の回答が二月八日にあったわけでございます。

 これらの状況を受けまして、厚生労働省とともに、当該大腸の出荷施設からの輸入手続を停止し、米国政府に詳細な調査というものを要請しているところでございます。

吉井委員 これは、要するに、日本の基準に基づいて認めておっても、きちんと守られていないというのが現状であって、まして、それを輸入検疫の問題やら、それから食品添加物の承認手続などをあいまいにしてしまうような要求が出されているもとで、とにかく国を開けばいいんだということで、何でもありというのは、私は、これはとんでもない話だと思うんです。

 アメリカ主導のTPPというのは、アメリカの金融投機企業それから大企業や穀物メジャーの要求と、日本財界のシームレスな多国籍企業展開のための環境整備の要求というのが最大のねらいなのではないか。実際にTPPに日本が参加した場合に、日本で、参加地域のGDPの九割を占めることになるわけです。ですから、日本でアジア経済を支配することになってしまいますが、これは国民にとって利益になるものではないということを申し上げておいて、次に、私は、WTOによって、日本はほとんど、自国の固有産業の分野を含めて、例外品目をつくらなかったと思うんです。

 それで、伺っておきたいのは、日本の関税率ゼロの農産品の品目割合は現在三四・二%、工業製品などその他品目割合は五五・九%。日本は世界で最も開かれた国なのではありませんか。

野田国務大臣 ただいまの御指摘は、WTOの譲許表でゼロ税率を譲許している品目の割合のお話だと思います。委員の御指摘のとおり、農産品、非農産品、これは、平均しますと、日本は五三・〇%になります。ほかをちょっと比べてみますと、米国が四五・七%、EUが二八・九%、中国が六・四%、韓国が一四・一%と承知しています。

吉井委員 ですから、農業品でも工業品その他品目でも、もう圧倒的に関税ゼロなんですよ、日本は。最も開かれた国なんです。

 それでは、先進国について、第一次産業のGDPを見てみますと、日本は確かに一・五%ですが、アメリカは一・一%、イギリスは〇・八%、ドイツは〇・八%。先進国、工業国というのは、もともと農業のGDPが低いのは当たり前なんですよ。その中で、日本が一番GDPが、これらの国の中では多い方なんですよ。ところが、同じ先進国でありながら、食料自給率を調べてみると、日本は四〇%、アメリカは一二四%、イギリスは六五%、ドイツは八〇%と、農業のGDPが低いから食料自給率が低くなるということはないと思うんですね。

 農水大臣に伺っておきます。

鹿野国務大臣 今、先生御指摘のとおりに、関税率の低い先進工業国であっても自給率が高い国が存在するというようなことは、今もお触れになりましたけれども、その中でも、さらにアメリカにおきましては一二四%、それからフランスにおきましては一一一%、こういうような状況でございます。

 あえて申し上げますならば、食料自給率が一〇〇%を超しているということは、生産のうち輸出されているものが多いというようなことで、国内生産の需要を上回ることになるということもつけ加えさせていただきます。

吉井委員 もともと、WTO協定のときにこれを議論して、外務省の経済局長から答えていただいたんですが、どの国でも、これは自分のところにとって守らなきゃいけないものだということは除外できたんですよ、日本も米を除外することができたわけです。しかし、それをやっていない中で、日本の自給率はどんと落ち込んでしまったというのが実態です。

 次に、これは一九六〇年の安保といったら、まだ私は、前原さんはもっと小さかったかもしれないけれども、私は、京都府立高校の三年生で、受験勉強をほったらかして安保のデモに行っておったんですけれども、忙しかったんだけれども、大事なのは軍事同盟だけじゃないんですよ、安保第二条で経済条項というのがあって、日本は、極東における製造業の拠点の位置を受け持つとともに、アメリカから言われるままに農産物輸入の自由化と、関税率をWTOで事実上ゼロにしたんですよ。

 その結果、日本の食料自給率は、一九六〇年は実は七九%だったんです、八割だったんですよ。しかし、これが急減して、九五年のWTO以降は、四二%から四〇%台と四割へ、今も四割ですが、ずっと半減したままなんですよ、半減してしまったんですよ。

 だから、GDPで一・五%の農業が九八・五%の他の産業分野を犠牲にしているというのではなくて、自動車、電機など一部の輸出大企業の犠牲にされてきたのが農業なんじゃないですか、農水大臣。

鹿野国務大臣 いろいろな経緯の中で、そういう今先生が申されたようなことに推移をしてきたというふうなことも、これは否定できない面もあるんじゃないかと思います。

吉井委員 それでは、日本より一次産業のGDP比率の低いアメリカ、イギリス、ドイツの食料自給率は日本よりはるかに高いわけですね。一・五%の農業が他の産業を犠牲にしていると主張している日本よりも大きく他の産業を犠牲にしているはずじゃないかと思ったら、そうじゃないんですね。米国、英国、ドイツの食料自給率が日本よりはるかに高いのは、農業を国家安全保障の根幹に据えているからじゃないんですか。

 だから、国民の伝統的食習慣の中心にあるその国の基幹的農産物については、関税障壁を設け、輸出補助金も含めて農業補助の財政支出を行っている。食料安保の確立とともに、農産物を輸出戦略品目に挙げて、莫大な国家財政による補助をしているから、これだけ食料自給率が高いんじゃないんですか。

 これらの国で、工業製品の売り込みのために何か農業を犠牲にしている国があれば、農水大臣、教えてほしいと思うんですが、どうですか。

鹿野国務大臣 先進工業国におきまして、非常に自給率の高い先進工業国でも農業に対して非常に手厚い補助を行っておる、こういうふうなことは、アメリカなりEUにおきましても、具体的な形で直接支払いが行われています。

 米国では一農家当たり八十九万円の直接支払いが行われておりますし、EUでは農業所得に占める直接支払いの割合が七八%、こういうのが実態でございます。

中井委員長 吉井君、時間が来ていますからまとめに入ってください。

吉井委員 はい。

 幕末から明治にかけて、黒船から始まった開国のとき、このときに、一八五八年、日米修好通商条約が結ばれたんですが、アメリカから入ってくる輸入関税はゼロだったんです。逆に、日本からアメリカへ輸出する物品は高い関税が課せられるという不平等な状態がありました。関税自主権を取り戻すのは一九一一年ですから、五十三年かかったんですよ。関税自主権を取り戻すのにそれだけかかっているのに、平成の開国だなどと浮かれているのはおかしいんじゃないですか。

 私は、最後に、内橋克人さんが東京新聞に書かれたのを紹介しておきたいと思うんですが、関税自主権さえ剥奪された百六十年前の開国、第一の開国の歴史を知る者ならば平成の開国と叫ぶだろうか、農業は開き過ぎるほど開いている、穀物自給率二八%、飼料用トウモロコシ全量輸入、大豆九四%、小麦八六%、ともに輸入依存、そんな先進国はほかにない、国を開くとは何か、下心を秘めた政治の言葉のわなを見抜く怜悧が国を救うと。

 私は、これは非常に大事な言葉だということを指摘して、時間が参りましたので質問を終わります。

中井委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、雇用問題を中心に質問をいたしますが、前段に、事業仕分けなど、独立行政法人や政府関連公益法人の事業見直しから生ずる職員の雇用問題について、まずお聞きをしたいと思います。

 昨年の四月と五月に行われました事業仕分けの第二弾、これは独立行政法人と政府関連公益法人の事業が対象でありました。本日御出席の枝野官房長官、蓮舫行政刷新担当大臣とともに、当時与党でありました社民党から私も参加させていただきましたが、その際、私は、独立行政法人や公益法人に対する官庁からの天下り、さらには、関連団体やあるいは財団との不透明な契約あるいは受注関係について徹底的に見直しをすべきだという立場で臨んでまいりました。

 ただ一つ、強く懸念していることは、事業の廃止や縮小、あるいは民間や自治体への譲渡という判断を受けた独立行政法人やあるいは公益法人の職員の雇用問題についてであります。

 独立行政法人は、過去において累次の整理合理化が行われてきました。その際には、労使の独立性、自律性を尊重するとか、他の独立行政法人や政府関係機関などの受け入れ措置で横断的な雇用確保に努力することなどが、その都度閣議決定をされてきました。ところが、昨年十二月七日の閣議決定されました独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針では、「抜本的な見直しに当たって、独立行政法人の雇用問題に配慮する。」とあるだけでありまして、極めて不十分と言わざるを得ません。

 この点で、独立行政法人の事業見直しで、「雇用問題に配慮する。」とはどのような意味なのか。少なくとも、これまでのように職員の雇用確保は政府の責任で努力するものと受けとめているわけでありますが、その点をまずお尋ねいたします。

蓮舫国務大臣 お答え申し上げます。

 中島委員には、昨年、事業仕分けを行ったときには、ともに仕分け人として御参画をいただきまして、これまでの事務事業の非効率性、あるいはお金の適切ではない使い方について、ともに一緒に改善をする努力を行っていただけたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。

 また、仕分けを行っているときにも、中島委員は一貫して、雇用の問題に慎重に配慮をする、極めて明快な御指摘をいただき、それはぜひ反映をさせていただきたいと私も思っているところでございます。

 御指摘の独立行政法人の事業仕分けは、昨年の四月に行わせていただきまして、そこから全事務事業あるいは資産の見直しを行って、昨年の十二月にまさに基本方針については閣議決定を行ったところでございます。御指摘のように、この閣議決定におきましては、「見直しに当たって、独立行政法人の雇用問題に配慮する。」と定めております。

 これは、まず事務事業の見直しをさせていただいた上で、その次のステップとして、来年度においては独法の組織、制度そのものの見直しを行っていこうと考えておりますので、今度の組織、制度の見直しを行っていくときには、当然、雇用の問題に直結してくるということが容易に想定をされますので、安易に雇用の問題を取り扱うということは当然あってはいけない。

 ただ、必要ではない、国民の税金を使って行われている事業ですから、その事業の見直しを行って、独法をゼロベースで見直していくときに、最終的に雇用はどうするのかというのは政府の責任で、慎重に配慮をしていくというのは同じ問題意識を共有しております。

中島(隆)委員 ただいまの蓮舫大臣の答弁、まことに、今のような確認でぜひお願いをしたいと思います。

 特に独立行政法人は、これは橋本行革のときに特殊法人の見直しの中で独立法人が設立されてきたわけであります。しかし、それ以降、この行革見直し、公務員制の見直しの中で、逐次見直しされてきたわけでありまして、この独立法人は、今百四ありまして、十三万人働いているわけでありまして、この働いている方々は、当然、国の仕事の国民的な行政を担っておられる方ですから、ぜひ今蓮舫議員が言われた、慎重に今後対応していただきたいというふうに思っております。

 それから次に、政府関連の公益法人の見直しと職員の雇用問題についてさらにお尋ねをいたします。

 事業仕分けで六十七法人、七十七の事業が対象となりました。多くの事業が廃止の判断を受けたわけでありますが、まず、事業仕分けなどを通じて、政府関係公益法人の事業の見直しによって当該公益法人の職員がどの程度削減をされたのか、その把握がされておりましたら、その実態について御報告をお願いいたします。

蓮舫国務大臣 昨年の五月に実施をしました事業仕分け第二弾、後半の部分では、今御指摘の政府系公益法人を対象にさせていただきました。対象となったのは六十七の法人でした。

 この六十七の法人について、その後、職員数にどのような変化があったのかを調査したところ、平成二十一年十二月一日時点と平成二十二年十二月一日時点で比較をしますと、全法人の合計でおよそ千人、九・三%職員数が減少していると承知をしております。

中島(隆)委員 今の数は了解をいたしました。

 それで、具体的な話をいたしたいと思いますが、事業仕分けで私が担当いたしました公益法人の事業に、財団法人国際協力推進協会、APICという組織でありますが、国際協力プラザ事業があります。判定は事業の廃止で、所管の外務省みずからが事業仕分けの場で廃止を言ってきたものでありますが、事業を廃止し、国際協力機構、JICAに丸ごと事業移管する可能性も外務省から当時の事業仕分けの中で示されました。

 それで、事業仕分けの際、私は、JICAに事業を移すのであれば、当然、職員の雇用も移管すべきではないか、慎重に雇用問題を考えるべきだと強く求めたわけでございます。これに対して、外務省の担当者は、そういう指摘をいただいたのはありがたい、私どもも配慮したいと述べられたわけでありますが、ところが、現在聞き及んでいる範囲では、職員六人、嘱託二人の雇用継続として維持されるのか、あるいはJICAに移行できるといった話になっていないという状況をお聞きいたしております。

 この点について、現状がどうなっているのか、前原大臣の方にお尋ねいたします。

前原国務大臣 先ほど蓮舫大臣が答えられた、先生も御参加された事業仕分けとは別個に、各役所が行っている独自の仕分けというのがあります。私は、中島先生も国土交通委員会におられましたので御承知だと思いますけれども、各整備局にある建設弘済、建設協会、あるいは道路保全技術センターとか、あるいは駐車場整備推進機構、こういったものをなくすということを行ってまいりました。

 そこの大きな目的は何だったかといいますと、やはり職員の数を減らさないと基本的に行革効果は生まれてこない。つまりは、二つの組織を一つにした、つまりは今先生のおっしゃったようなAPICをJICAに統合したからということでは行革効果は出てこない、こういう面がございまして、今我々としては、先ほど正社員が六名そして非常勤が二名とおっしゃいましたけれども、今は五名と一人です。

 この合計六名の方については、どのように再就職をあっせんするかということも含めて今考えているところでありまして、JICAへの移行というよりは、むしろ、先ほど申し上げたように、やはり統合して人数が減るということが行革効果が生まれてくるということで、ただ、この方々の今までのキャリアというものを生かせるところがないのかどうかということを、真剣に我々としては再就職支援、相談に乗らせていただいているところでございます。

中島(隆)委員 状況については今お尋ねいたしたわけでありますが、聞くところによりますと、年度末、この三月末で外務省では今のように解雇、事業を廃止するという方向でありますが、全員解雇ということで進められているような気がいたすわけです。

 APICの事業の廃止はそういう方向で進むにしても、そこに働いておられる方々の再就職、これについてはもう事業仕分けで明確に、今も責任を持って対応するということでございますので、ぜひ再就職の対応については外務省が責任を持って対応していただきたいというふうに思っております。

 それから次に、公益法人職員の雇用保護について、枝野官房長官にお尋ねいたします。

 平成二十一年十二月に閣議決定されました、政府関連公益法人の徹底的な見直しについてで、解散に至る公益法人が出てくることを想定しつつ、職員の雇用問題には一切触れておりません。そこで、民間の労使関係だからということかもしれませんが、政府の側から行う業務の見直し、あるいはそれに伴う法人の廃止ということですから、これは政府の責任は免れないというふうに思いますが、これについて枝野官房長官はどういうふうにお考えですか。

枝野国務大臣 中島委員には事業仕分けで大変お世話になったこと、改めて私からも御礼申し上げます。

 そして、御指摘のとおり、公益法人を改革するに当たっては、国からの事務事業の委託等がなくなることで職員の数を減らすことになる公益法人、あるいは場合によっては廃止になるような公益法人もあり得るということは間違いございません。

 そうした中で、そこで働いている皆さんの雇用問題については、質問でも御指摘いただきましたとおり、これはあくまでも形式的には国とは直接かかわりのない民間団体という形式でございます。だからこそ、これまでここにかなりの問題があったということなわけですけれども。

 ということでございますので、独立行政法人などの場合のように、直接の記載をするというか言及をするということは、なかなか、率直に言って困難かなと思っておりますが、先ほどのJICAの例で外務大臣が、従来、事務事業を委託していた側の官庁としてその雇用問題にしっかりと配慮していくというお答えをさせていただきましたとおり、今まで事務事業等を委託していた関係省庁において、そこでの雇用問題についてしっかりと目配りをするように、内閣官房の立場から各省庁には申し伝えて、しっかりと目を配ってまいりたいというふうに思っております。

中島(隆)委員 ただいまの回答は了解をいたしますが、特に政府関連公益法人は、御存じのとおり、国の仕事を委託するわけでありますので当然国の行政を担った方々でありますので、十分そのような配慮をお願いしたいと思います。

 次に、雇用問題それから賃金情勢についてお尋ねをしたいと思います。

 この政権は、生活第一を掲げている政権であります。そのために高校授業料の無償化や、あるいは子ども手当の創設、農家への戸別所得補償などを実現してきたというふうに考えております。しかし、国民の圧倒的多くが働く者、勤労者であるとき、生活第一といった場合、その大きな柱は雇用の安定でありまして、賃金水準の改善に集約されると思います。

 昨年十二月一日の時点の大学卒の就職内定率が六八・八%、過去最低の数字を示しております。今春卒業予定の高校生の就職内定率も七〇・六%、こういう低水準であります。また、賃金水準の低下も大変深刻な状況でございまして、国税庁が昨年九月に発表しました民間給与所得の実態統計調査によりますと、民間労働者の二〇〇九年一年間の平均給与は、前年から二十三万円減少している、こういう水準に低下しています。ピークでありました九七年の平均給与と比較をいたしますと、額で何と六十一万四千円が、率として一五%になるんですが、このような低下が起こっているわけであります。

 そこで、深刻な就職難あるいは下がり続ける賃金についてどのようにお考えをお持ちであるのか、枝野官房長官にお尋ねいたします。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、特に今春の新卒者の内定率が大変低いということや、あるいは全体としての賃金が抑制傾向が見られるということで、大変厳しい雇用環境が続いているというふうに思っております。これは、当該当事者の皆さんにとって大変厳しい状況であるということにとどまらず、日本経済全体を考えても、こういった状況の中でなかなかデフレを脱却していくことはできないというふうにも思っております。

 さらに言えば、単にお金の問題にとどまらず、特に職がないということは、まさに社会と個人をつないでいく一つの大きな柱、軸でございます、きずなの一つの大きな柱でございますので、そうした点からも、こうした厳しい雇用状況というものは一刻も早く改善をしてまいりたいということで、雇用をつなぐ、つくる、守るという取り組みを新成長戦略を初めとして進めているところでございます。

中島(隆)委員 特に学卒者、新規卒業の方々の就職難というのは大変な状況にございます。ちなみに、学卒未就職者、長期の失業が一年以上の方は百万人に上ると言われております。新卒者が六八・八%、四割近くが就職できない。しかも百万人が就職できないでそのまま離職をされている、未就職という状況にございます。ぜひそういう状況を把握しながら、雇用対策に取り組んでいただきたいと思います。

 そういう雇用状況の中で、今回、政府は法人税五%の引き下げを昨年の十二月十六日に決定いたしておられます。菅総理が日本経団連の米倉会長と会談をされたときに、法人税の引き下げに際して、雇用拡大や働く者への分配を強く要請されました。

 私ども社民党は、法人税率の引き下げには強い懸念を抱いております。法人税の引き下げがなくても、企業には雇用と賃金の安定、拡大をする、そういう余力が私はあるというふうに思っております。

 ところで、ことしの春闘で、労働側のナショナルセンターであります連合は、この間引き下げられてきた賃金の回復をさせるために、賃金総額一%のアップを要求いたしております。これに対して日本経団連は、極めて否定的な立場を今とっているわけでありますが、深刻な雇用、賃金情勢の中で、菅総理が、要請に真摯にこたえてほしい、経営側はこういうふうに強く求められたわけでありますが、これについてどのようにお考えになるのか、経営側の対応ですね。それについてお尋ねしたい。

枝野国務大臣 総理から日本経団連の米倉会長にも、雇用に対して強く要請をいたしたところでございます。これを受けて米倉会長からは、日本国内投資促進プログラムも念頭に、積極的に国内の投資や雇用創出に取り組む所存であるというコメントが出されております。この国内投資促進プログラムによりますと、五年後の民間投資を約八十四兆、十年後には民間設備投資を約百四兆というプログラムもつくられております。

 もちろん、日本経団連の加盟企業の中にも、経営状況のいいところ、悪いところ、いろいろなところがありますから、一律にすべての企業がということを米倉会長のお立場からお約束をできる立場ではないだろうというふうに思いますが、当然、今回の特に法人税減税の趣旨は、米倉会長を初めとして、日本の経済界の中心となって活動されている皆さんは御認識を十分されているところというふうに思っておりますし、結果的に、その法人税減税の趣旨と違ったような経営行動が行われてくれば、社会的にも大きな糾弾をされることになろうと思っておりますし、私も、そんなことがあったら絶対に許されるものではない、強い姿勢で臨んでまいりたいというふうに思っております。

中島(隆)委員 国も地方も今、非常に財政が赤字でございます。そして、賃下げは特に家計を大変厳しい状況に追い込んでいるわけです。しかし、日銀の資金循環統計によりますと、金融機関を除く民間の企業が保有する現金預金の残高が、昨年九月末時点で、過去最高の二百五兆九千七百二十二億円に達していると言われています。

 企業が雇用拡大を含め生産に投資できる資金は余っているわけでありまして、今、経済界が言われた百四兆、民間投資を今後やるということでありますが、この企業の投資、これがどのように行われるのか。特に、中小企業については非常に厳しい状況があると思いますが、先ほど申しました現金預金、さらには雇用の拡大、賃金の安定、この取り組みについては十分企業として対応できるわけでありまして、ぜひ、法人税を五%引き下げればさらに企業の利益が上がるわけでありまして、それが株とかあるいは配当とか、こういう資金が回る、内部留保に回るということであってはなりませんので、特に政府は、今後、経済あるいは雇用、地域の活性化に向けて企業のこの姿勢、強く今後要請をしていただきたいということと、この結果を注視をどのようにして行っていかれるのか、その決意をお尋ねしたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘いただきました、民間の非金融法人企業の現金預金の額が過去最高になっているという御指摘については、実は、一方では、金融資産全体では、〇六年から〇七年ごろをピークにして、当時一千兆円を超えていたものが今七百七十兆円程度ということで、大きく下がっておりまして、金融資産をどういった形で持つかというシフトの結果ということでございますので、その点は若干、最高だから、今、内部留保的なものが一番大きくなっているということではございません。

 しかし、私も実はその席で、企業が内部留保を抱えて、あるいは配当や経営者への配分に回して、働いている人たちや中小零細企業にお金が回っていないということは、個々の関係者の皆さんにとってだけではなくて、日本経済にとっても大変ゆゆしきことだと厳しく追及をしたことがございます。その認識は、私自身全く変わっておりません。

 今回の法人税減税を契機にして、将来に向けて前向きな投資に積極的に取り組んでいただき、また、それを通じて雇用の拡大や、あるいは経営余力のあるところについてはそれを働く皆さんにもしっかりと還元するということを通じて、デフレを脱却し、社会の安定性を高め、そして日本の新しい成長へとつなげていっていただかなければいけないというふうに思っておりますし、こうした場で中島委員などからもこうして御指摘をいただくことを通じて、国民的にも厳しい目で見られているということは企業の各経営者の皆さんも当然御認識をされているものと思っております。

 内閣としても、もちろんこれは、先ほど申しましたように、個々の企業ごとに状況は違いますので、一律に全部にこうしなさいと言うことのできる話ではございませんが、投資や雇用の余力がありながら、しておらずに、配当等にそれを回すような企業がないよう厳しく見守ってまいりたいと思っていますので、中島委員におかれましても、ぜひ、そうした点での御協力をよろしくお願い申し上げます。

中島(隆)委員 今の決意でぜひ臨んでいただきたいと思います。円高、デフレを回復するためには、やはり国内の投資と働く皆さん方の所得を上げることが一番重要だと思いますので、ぜひそのような姿勢でお願いしたいと思います。

 さて、政府は、最近の雇用情勢について、持ち直しの動きが広がりつつあるとする一方、依然として厳しいという認識に立っておられます。確かに、昨年十二月の数字を見てみますと、就業者、雇用者とも三カ月ぶりに増加となっております。

 しかし、総務省の労働力調査、雇用形態別雇用者数の推移を見てみますと、昨年の第三・四半期までは、パートあるいは派遣、非正規労働者が非常にふえているという状況にございます。逆に、正規雇用の方が減っている、こういう数値が出ているわけであります。リーマン・ショック前と昨年の第三・四半期を比べますと、正規雇用者数が八十六万人も減少しているという状況にあります。正規雇用については、拡大の兆しが全く見えない、有効求人倍率も全国平均で〇・三八、こういう大変な状況になっているわけであります。

 正規雇用を減らし続け、非正規雇用が増加をしている、こういう就業全体に占める非正規雇用の割合が増加するということは見逃せない、こういうふうに思っております。雇用情勢全体が厳しく、わけても正規の職員の雇用が非常に危機的な状況にあるわけでありますが、政府はこの状況についてどのように認識されているか、お答えをいただきたいと思います。

細川国務大臣 今、中島委員が御指摘になりましたように、最近の雇用者数の伸びを見てみますと、正規雇用者の数は減少の傾向にありまして、一方で、非正規雇用者の数は増加傾向にあります。

 また、正社員の有効求人倍率は、リーマン・ショック以降も〇・二四倍まで低下しておったのが、最近では多少上昇いたしておりまして、八カ月連続では改善いたしておりますけれども、それでも〇・三八ということで、まだまだ厳しい状況となっております。

 また、雇用失業情勢につきましては、これの方は、最高が五・六%のときもありましたけれども、直近の調査では、四・九%まで下がっております。したがって、失業者の数も三百万人を下回るということで、持ち直しの動きが広がりつつある、こういうふうな判断をしたわけでありますけれども、しかし、なかなかまだ厳しい情勢にあるということでございます。我々もそういう認識をいたしております。

 そのために、正社員の求人をとにかくふやさなきゃいかぬということで、これはハローワークを挙げて積極的に進めております。そしてまた、なかなか就職がしにくい、こう言われております年長のフリーターの人たち、こういう人たちを正社員に採用してくれれば、それに対しての経済的な支援をする、こういうような方策も立てておりまして、それらを積極的に進めることによって正社員の数をふやしていこう、こういうことで取り組んでおります。

中島(隆)委員 実情は今のような実情ですが、特に雇用対策については、政権がかわりましても、前政権時代から非常に雇用対策は次から次に結果としては行われているんですけれども、結果は正規雇用に十分つながっていない、こういう状況です。

 先ほど言いました非正規の労働者が、二十二年度末では、千七百万人が千七百七十五万人と、七十五万人ふえているわけですね。ですから、この原因は、三党合意を行いました、前政権が行いました労働者派遣法、私はこれが一番最大の要因ではないかというふうに思っております。

 今でも雇用対策が非正規雇用の方につながっているということですので、この点を考えるならば、やはりこの労働者派遣法を一日も早く採決して成立させて、本当に若い人たちが夢と希望を持って働ける環境をつくるということが必要ではないかというふうに思っておりますので、今議会で一日も早く採決できるように強く要請をしておきたいと思います。

 さて、雇用保険について伺いますが、昨年四月から、雇用保険の範囲が、六カ月以上の雇用見込みから三十日以上の見込みに拡大されました。非正規あるいは有期雇用労働者への雇用保険の適用を拡大させることを目的としたというふうに思います。

 そこで、数点お尋ねをしたいと思いますが、まずは、厚生労働省が、この改正によりまして、推計二百五十五万人が新たな雇用保険の加入対象となった、こういう説明をされていますが、その実績はどのようになっているのか、それが第一点。それから、雇用保険に加入できない雇用労働者が全体の三割は存在しているのではないかというふうに私も聞いているんですが、被保険者資格を得ていない労働者がどの程度おられるのか。この二つについてお尋ねをいたします。

細川国務大臣 雇用保険の適用の拡大ということにつきましては、働いていても雇用保険に入れない、そういう人たちがいるということで、昨年、雇用保険法の改正をいたしました。そこで、働いている人たちはすべて雇用保険に入れるようになったわけでありますけれども、この雇用保険の改正というのは、それまでは六カ月以上雇用の見込みがなければだめだったんですが、それが三十一日以上見込みがあればということで拡大いたしました。

 それで、その改正をして、ではどれぐらいふえたか、こういう御質問でありますけれども、三十一日以上六カ月未満の人たちがどれくらい入ったかというのは、なかなか調査がしにくくて、今、正確な統計はまだ出ておりません。

 ただ、ハローワークの担当官からの報告によりますと、特に、百貨店とかスーパーマーケットというような小売業、あるいはまた運輸業、飲食業、あるいは製造業で三十日以上の新規取得がふえているというような報告を受けております。

 それからもう一つは、雇用者全体で雇用保険に加入していない労働者の割合でありますけれども、これが三割程度になるという認識でございます。

 どうして加入していないかという理由につきましては、一週間での所定労働時間が二十時間に満たない方、あるいは会社の役員の方、あるいは昼間の学生アルバイトの方というような方が大体三割ぐらいいるということで、これは法律上除外されておりますので、そういう方がほとんどだということでございます。

中島(隆)委員 もう一点、雇用保険の現状についてお尋ねしたいと思います。

 有効求人倍率が低く、なおかつ正規雇用の求人が少ないとなると、求職活動の期間が長期化するわけでありまして、そうしますと、失業手当の給付期間が切れてしまいます。そこで、所得がほとんどないまま求職活動を余儀なくされるという方が相当数いらっしゃると思うんです。

 そこで、失業手当の給付を受けていない失業者が失業全体の中でどの程度おられるのか、それについてお尋ねいたします。

細川国務大臣 端的に申し上げます。

 大体、約七二%というふうになっているということでございます。

中島(隆)委員 失業者の中で七二%も失業手当の給付が受けられないということは、全く生活そのものが大変な困窮の中で求職活動をされているという現状であると思います。そういう面では、雇用期間の見直し、あるいはそういう方々の就職支援、これらの強化が必要ではないかというふうに思っております。その点について、強く改善を求めておきたいと思います。

 それから、労働時間が週二十時間以下、あるいは登録派遣労働者で二つ以上の事業主に雇用されている労働者への保険適用を検討すべきではないかというふうに思っておりますが、特に、基金制度を求職者支援制度について恒久化するということが今検討されております。

 そこで、第一のセーフティーネットとして、扶養手当の給付期間の延長、それから雇用保険の適用範囲のさらなる拡大、あるいは失業手当の給付期間の延長、これについて、改善あるいは改正を検討されているかどうかをお尋ねいたします。

細川国務大臣 雇用保険の失業等の給付につきましては、労使の保険料を基本として、失業した方に対しての生活の安定、就職の促進を図るために支給をしているものでありまして、これは共助の考え方に基づいて運営をされているものでございます。

 そのために、雇用保険は、みずからの労働による賃金で生計を維持している労働者という方を適用対象ということにいたしているところでございます。平成二十二年の改正法によりまして非正規労働者の適用拡大を図った際にも、所定労働時間が二十時間未満の労働者は適用除外としたところでございます。

 なお、これらのいろいろな問題につきましては、労使の参加する労働政策審議会におきましてもいろいろと御議論をいただいているところでございます。

 また、基本手当の所定給付日数、厳しい雇用失業情勢が続いておりまして、解雇などによります離職者につきましては、平成二十三年度末の暫定措置といたしまして、個別に六十日分を延長する個別延長給付の対象ということにいたしております。

 先月、労政審の雇用保険部会の報告におきましても、給付日数などにつきまして、個別延長給付などの取り扱いとあわせて引き続き検討すべきということでありますから、それらを踏まえましていろいろと対応してまいりたいというふうに考えております。

中島(隆)委員 先ほど、数字も、保険適用を受けていない方の数も七二%と出ていました。これは、これまでの雇用保険の改悪といいますか、要するに、期間を短縮あるいは支給額も減らすという、やはりこれまでの雇用保険の改悪があったためだというふうに思っています。

 失業中も、失業した方は住民税や国民健康保険、年金、こういう保険料を払わなきゃならぬということも伴うわけでありまして、ぜひ、雇用保険の今後の範囲の拡大、あるいは失業手当の給付期間延長、これについては十分改善をしていただきたいと思います。

 時間も来ておりますので、最後、要望だけを申し上げておきたいと思います。

 特に、雇用問題について今現状を申し上げました。これまで数多くの雇用対策がなされておりますが、特に、基金訓練、基金を積んで、手当を出し生活費も出す、そういう制度をやっていますが、これが非正規雇用で、まさに企業の、そういう受け入れをやっている、まじめにやっているところもあるんですが、やはり、そういうところを徹底的に厳しく監視をしながら、正規雇用につながる、そのような訓練と生活支援の給付にしていただきたい。

 それからもう一つは、行政体制の確立です。

 これだけ雇用の状況が厳しい状況の中で、来年度の国家公務員、公務員を減らせという声でやられるでしょうけれども、来年は新採三千人減らすと。その中で、雇用行政を一番やるハローワークの現場は、前年度よりも八割も減らす、こういう計画があるようでありますが、私は、無駄なところは削らなきゃならぬけれども、こういう雇用対策、重要なハローワークの現場等については、十分雇用相談に応じられる、そういう人員体制をぜひとっていただくために検討していただきたいと思います。

 時間が参りましたので、以上、質問を終わらせていただきます。

中井委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 税と社会保障の一体改革についてまずお伺いします。

 消費税率引き上げを含む税制改正の決定及び実施の時期についてお伺いします。

 菅総理は、きのう党首討論で、〇九年に成立した税制改正法の附則百四条にのっとって、消費増税を含む税制改正法案を一一年度末までに成立させる、こういう考えを表明されました。法案が成立しても、税と社会保障の共通番号などいろいろなことがある、こういうことで、法案が成立してもすぐ税率を上げるわけではない、こういうことも見解としておっしゃられております。

 先日、我が党の江田幹事長の質問に対しては、菅総理は、税制改正実施のタイミング、要は増税のタイミングが、基本的には一三年八月以降、衆議院の任期以降というふうに答えておられますので、理解としては、これは一一年度末までに法案を成立させて、しかし実施は一三年八月以降だ、こういうことが政府の今の方針であるということで考えてよろしいでしょうか。

与謝野国務大臣 我々は、税法附則百四条の規定に従って作業を進めておりますが、法百四条の定めるところによれば、平成二十三年度中に法的な整備を行うということでございますけれども、その税法をいつから施行するのかということは、やはり高度な政治的な判断にもよるわけでございまして、いつから施行するかということは確定的に申し上げられない、そういう段階でございます。

柿澤委員 高度な政治判断である、それはそのとおりかもしれません。税率アップをいつから行うか、これについては高度な政治判断が必要とされる。そうだとすると、これはやはり総理が、最高指導者がおっしゃられている、一三年八月以降というのが基本的な考え方であるということを与謝野大臣としても基本的には尊重されるということで、確認ですが、よろしいですね。

与謝野国務大臣 立法が行われるときに、恐らくこれは各党で話し合われると私は確信をしておりますので、これは、政府だけでこういうふうにしますということではなくて、税法が成立する過程で、各党とのお話し合いの中できちんと出てくる問題だと私は思っております。

柿澤委員 いや、私は政府の方針を今お伺いしているんです。

 高度な政治判断が税率引き上げの実施時期の判断には必要とされるということですから、高度な政治判断を一義的に行わなければいけないのは、政府においては内閣総理大臣ですよね。内閣総理大臣が基本的には一三年八月以降ですよとおっしゃっているわけですから、これは、そういうことで、政府の方針として、与謝野大臣も尊重すると答弁しなきゃおかしいじゃないですか。

与謝野国務大臣 総理はそうおっしゃっている。総理の御意向でございます。

 しかしながら、立法というものがございまして、立法の内容を最終的にお決めになるのは国会でございますから、国会が決めたとおり施行していく、こういうことになると思います。

柿澤委員 答弁の後段は大変余計なことで、私は政府の方針を聞いているわけですから、今前段でおっしゃった、一三年八月という日時を総理がおっしゃっているわけですから、そのとおりだというところが御答弁になるというふうに思うんですけれども。

 そうだとすると、来年度予算はどうやって組むんですか、一二年度は。もう財源がない、そして、税制改正も含めて今すぐ行わなければ本当にいけないということをおっしゃっていて、結果的に実施時期が一三年八月以降だと総理が考えたとおり行えるようであれば、結局、一二年度一年間、どうやって予算を組むんですか。お尋ねします。

野田国務大臣 社会保障と税の一体改革は、六月までに成案を得て、一方で、それで工程表をつくるということになっていますので、そのことによって時期は正式には決まると思いますが、それまでの二〇一二年度の予算については、引き続き歳出歳入の改革をやりながら予算編成をするということになります。

柿澤委員 来年度の予算の編成、そして政府原案の決定に当たって、もうこういう予算は来年は組めないだろう、組むべきではない、こういうことだったと思います。

 結果的に、税制改正、皆さんのおっしゃる税制改正、まあ消費税の増税ということだと思いますが、そうしたことが行われる時期が菅総理の言うように一三年度にずれ込んでしまえば、二〇一二年度予算はまさに今回と同じような、税収を赤字国債の新発額が上回るような、そうした予算を組まざるを得ないじゃないですか、もう一年。どういう整合性があって菅総理はそうした御発言をされ、そして野田大臣が今のような御答弁をされているのか、私は理解に苦しんでしまいます。

 次に、菅総理は党首討論で、四月に社会保障の改革案、そして六月に消費増税と社会保障の一体改革案をまとめる方針を改めて表明して、与野党協議への参加を呼びかけた。四月に党内、与党内合意を得る、こういうこともおっしゃっていたと思います。

 しかし、自見大臣いらっしゃいますけれども、どうもこれは国民新党は反対のようですよね。亀井静香代表も、六日、社会保障と税の一体改革に関する政府の集中検討会議に柳沢元自民党税調会長が起用されたことについて、自公から政策転換をしたんじゃないのか、こんなことがうまくいくはずがない、自公の政策と決別した原点を押さえないで解決はあり得ない、狂気のさたと言われても仕方がない、こういう表現で強くこの社会保障の集中検討会議を批判されているじゃありませんか。

 これは四月に成案をまとめられるんですか。与謝野大臣、どうですか。

与謝野国務大臣 柳沢さんという方は、柿澤先生のお父上と同じぐらい優秀な方で、非常に見識の広い立派な方なので、この方が加わることによって非常に議論も深まると私は思っております。

 私は、総理が表明された四月、六月という日程を必ず守るように全力を挙げてまいります。

柿澤委員 午前中、やはり国民新党の下地幹事長が予算委員会の質疑に立たれておりましたけれども、その模様も私も拝見しましたが、四月に社会保障の改革案についての与党内合意、そして六月に税制も含めた合意が与党の中で形成されるというふうにはとても思えなかったんですが、そうしたことが仮に行えなかった場合、与謝野大臣、菅総理も含めて、政治責任というのはどう考えておられるんでしょうか。

与謝野国務大臣 やると言ったことはやります。

柿澤委員 与謝野大臣は、三顧の礼をもって菅総理から請われて、このことのために、いろいろな経過を経て入閣をされているわけですから、今のお言葉は殊のほか重いというふうに思います。

 続きまして、この間、いろいろ予算委員会の質疑を見ておりまして、与謝野大臣のおっしゃることと、例えば菅総理、ほかの閣僚がおっしゃることとが場合によっては随分食い違っているというか、めいめいが好きなことを言っているんじゃないか、こういうふうな感じもするので、幾つかお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、子ども手当の財源についてですけれども、無駄削減で捻出をするという菅総理と税制改正による捻出を唱える与謝野大臣との間で見解が食い違っているように思われます。

 菅総理は、八日の夜に、子ども手当の財源については、無駄を削減して捻出した財源を充てるのがマニフェストの基本的な考え方だ、こういうふうに述べておられます。

 一方、与謝野大臣は、予算委員会の答弁で、税法百四条の関係で、消費税の社会保障目的税化が規定されているということで、当然子育ても入るということで、消費税を増税した場合、子ども手当の財源に消費税収を充てることもあり得る、こういうことを認識として示したというふうに報道では論評されています。

 この二つの発言にそごがあるように思われますし、場合によっては、菅総理は無駄で捻出するけれども、足りない分はこういうところで補うんだよ、こういうことなのかもしれませんが、見解をお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 正確に申し上げますと、百四条の規定は、消費税を上げる場合は目的税にする、それには社会保障にお金を使うと。正確な表現を申し上げますと、確立された医療に使います、年金に使います、介護に使います、そして少子化対策にも使いますと申し上げました。

 私の答弁は、社会保障目的税の中に、少子化を子育てと言いかえましたけれども、子ども手当のために消費税を充当するという発言は一度もしておりません。むしろ、総理の発言に平仄を合わせるように、子ども手当の財源は無駄の削除等で財源を見つけていくんだということを答弁しております。

柿澤委員 子ども手当の財源として消費税の増税分を充てることはしないということを、今、与謝野大臣は御答弁されたという理解でよろしいですか。

与謝野国務大臣 先の先のことまではわかりませんけれども、当面、問題になっている子ども手当と消費税は切り離して物を考えております。

柿澤委員 与謝野大臣の過去の発言と今の民主党政権の大臣となってからの発言にも矛盾が指摘をされています。

 例を一つ挙げます。子ども手当の経済効果についての見解です。

 与謝野大臣、七日の予算委員会で、公明党の竹内議員の質問に対して、子育て世代のほとんどの方はぎりぎりのところで生活されているので、生活に充てられるということが容易に想像できる、こういうふうに御答弁をされて、子ども手当が貯蓄より子供のための消費に回る、こういうことを通じて経済効果につながるのではないか、こういう見解を示しておられます。

 ところが、与謝野大臣の御著書であります「民主党が日本経済を破壊する」、この本の五十六ページにこう書いてあるんです。公共事業などを抑制するかわりに子ども手当などを手厚く支給する直接給付で途端に家計の懐が暖かくなり、個人消費が急増して景気がよくなるような説明を民主党はしている、冗談ではない、子ども手当と名前をつけてお金を配っても、親が子供のための消費に回す保証などどこにもない、こういうふうにこの本の五十六ページに書いてあります。

 これはまさに子ども手当の、消費に回っての経済効果というものを疑問視ないし否定することだと思いますけれども、この過去の発言と七日の答弁の矛盾はどう解消されるんでしょうか。

与謝野国務大臣 過去、現金給付に近い形でお金を配った例としては、地域振興券それから定額給付金、こういうものもありますが、いずれの場合も、これは本当に消費に回るのかという疑問が呈されました。これは、地域振興券のときには調査をいたしました。まだ定額給付金はフォローアップの調査はしておりませんけれども、そういう現金給付をした場合に、それが全部使われるという保証は実はないわけです。

 私が本の中で述べているところは、子ども手当などを景気対策として考えるということは多分正しくないのであって、やはり子育ての家庭に対して手を差し伸べる、そういうところに子ども手当の意義がある、そういう御説明があれば私は納得するわけでございます。

柿澤委員 与謝野大臣、これは公明党議員の、子ども手当が経済効果があるかないか、そうしたくだりの答弁として、いいですか、もう一度言いますけれども、子育て世代のほとんどの方はぎりぎりで生活されているので、生活に充てられるということは容易に想像できる。まさに、今言ったように、消費につながって経済効果があるということをお認めになる文脈で御答弁をされているんですよ。こうしたことを考えれば、今の与謝野大臣の御答弁は、自分自身の御答弁を否定しちゃっているじゃないですか。

与謝野国務大臣 消費されるということは容易に想像できますけれども、それが全額消費されるかどうかという保証はないわけです。

柿澤委員 今の御答弁を聞いていて、民主党の席から今の与謝野大臣の考えが正しいんだ、こういうお話が飛んでいますけれども、事実上、与謝野大臣は、この本の段階から今御答弁をされている段階でお考えを変えた、こういうふうに受けとめられることになるのではないかなというふうに思います。

 続きます。消費税の増税が本当に財政再建につながるのかというお話です。

 消費税を、一九九七年、三%から五%に引き上げました。きょう手元に、財務省が出している一般税収の推移が私の手元にありますけれども、済みません、皆さんの手元にはありません。ごめんなさい。とにかく、この三%から五%に引き上げた平成九年、一九九七年段階で五十四兆円の税収があった。この平成九年、三%から五%に引き上げたその年の税収を、その後、一度たりとも実は一般税収は上回ったことがないんですね。この間、ずっと税収がその増税前を下回ってきている。

 この歴史的な歩みを見て、これで、消費税を増税することによって税収がふえて、そして財政均衡化が図られる、こういうことを与謝野大臣は本当にお考えになられますか。

与謝野国務大臣 本当に考えています。

柿澤委員 私たちは、先日の予算委員会において私も申し上げさせていただきましたけれども、この二十年間、名目ベースの経済成長が全くゼロで、マクロ経済の運営に失敗してきたことが、この状況、税収の大幅な落ち込みをもたらしている最大の要因だ、こういうふうに思っております。

 その原因は何かといえば、民主党政権の閣僚、菅総理なら、自民党政権の政策は間違いだった、公共事業ばらまきの第一の道でもなくて、小泉流市場原理主義の第二の道でもなくて、需要と雇用に着目した第三の道だということになるんでしょう。

 しかし、この自民党政権の経済財政政策の中枢を担ってきた与謝野大臣はどうなんですか。自分のつくってきた政策を否定して、今の菅総理の言葉に同意をされるのか。それとも、民主党は無知だったと御答弁でおっしゃられたこともあるので、民主党の方が、かつて与謝野大臣がおつくりになった考え方の経済財政運営に歩み寄ってきた、こういうふうに認識をされているのか。宗旨がえをしたのは与謝野大臣なのか、あるいは民主党の側なのか、どっちだと考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

与謝野国務大臣 自民党時代、また小泉内閣、あるいはその後続きました安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、やはり財政再建というのは非常に大きな目標でございまして、我々としては、何回もプライマリーバランスという目標を立てて、歳出削減あるいは歳入増加のために目標を立ててきたわけでございます。

 それと同じ手法で、民主党政権も、二〇一五年にはプライマリーバランスの赤字を半減する、二〇二〇年にはプライマリーバランスに到達すると。手法も考え方も全く一緒でございまして、私は、自分の考え方を全く変えることなく今の職にあると思っております。むしろ、私が今まで言ってきたことをちゃんとやるというためにも頑張りたいと思っております。

柿澤委員 そうすると、民主党政権が日本経済を破壊するという本を出されて、そして、かつては民主党政権の経済財政運営を強く批判もされてこられた与謝野大臣ですから、基本的に、民主党の側が与謝野大臣のお考え方を、あるいは正しい考え方と言うべきでしょうか、理解して、そしてそれに歩調を合わせるようになった、こういうふうに与謝野大臣は理解されているということですね。

与謝野国務大臣 そんなにはうぬぼれておりません。

 鳩山内閣が発足したときに、やはり鳩山内閣に欠けていたのはマクロ経済政策であると私は思っておりまして、その本もその延長線上に書かれておりますけれども、実はおととしの暮れ、随分急いでつくったなと私は思いましたけれども、一応民主党政権の成長戦略もでき上がったわけですから、一応マクロ経済政策もその緒についたと思っております。

柿澤委員 続きます。日本の消費税の税率は先進国より低い、他の先進国と比べて低い水準だ、こういうことが言われますけれども、与謝野大臣の考えはいかがですか。

与謝野国務大臣 それは、表を見れば一目瞭然でございまして、五%の水準にあるのは日本と台湾、お隣の韓国は一〇%になっております。

 そして、日本が非常に手本にいたしましたヨーロッパの社会政策を行っている国々では、スウェーデンが多分二五%、デンマークもそれに近い、フランスは一九・六、ドイツもメルケル首相が二〇近くまで上げ、またイギリスでも、今は一七・五ぐらいだと思いますけれども、これも二〇にするということで、日本がお手本とした国々はみんな二〇%近くいっているということは現実の数字でございます。

柿澤委員 こうしたこともあって、与謝野大臣、消費税を、税率を引き上げて、そして今後の財源として使っていく余地がある、こういうお考えなんだろうというふうに思います。

 世界の趨勢、そして、特にお手本としたヨーロッパの税率はこうなっているんだということで、日本は五%で、それに比べれば低いではないかということですが、そうすると、世界的に見ると、消費税を社会保障の目的税としている国というのがほかにあるんだろうかというふうに思うんです。

 消費税を社会保障の目的税化している、こういう国はほかにありますか。

与謝野国務大臣 多分、フランスとドイツはそうしていると思います。

柿澤委員 いや、消費税を明確な形で社会保障の目的税として使っているというケースは、今、日本が目的税という言葉を使って行おうとしていることを除けば、私は例はないというふうに思います。

 我が党は、消費税を全額地方の財源に使うべきだということを申し上げております。安定的で経済規模に見合った税収が入る。世界的に見れば、その方がむしろ主流ではないかというふうにも考えております。

 現在、消費税の税率は五%です。ただし、このうち一%は地方消費税に充てられています。国税の消費税の二九・五%は地方交付税交付金に充てられている。

 地方六団体は、消費税と地方消費税の割合を二・五、二・五にしてほしいとか、あるいは法定率の引き上げを求めておられますけれども、消費税を上げる場合は、増税分を地方に回すというお考えは与謝野大臣にはありますか。

与謝野国務大臣 今のところ、地方に回せということを言っておられる方は、私のところに一人もありません。

柿澤委員 総務大臣いらっしゃいますので、これについて御見解をお尋ねしたいと思います。

片山国務大臣 先日も申し上げましたけれども、これは、現在、社会保障のあり方をまず検討し、それで国と地方の社会保障におけるサービスの担う度合いというのが決まってくると思いますから、それに対応した地方財政措置をどうするのかということになるだろうと思います。その際に、当然、地方消費税というものもその一つの有力な候補になるだろうと思います。これが一つです。

 それからもう一つは、消費税の経緯からいいますと、実は、消費税導入前には地方税として幾つかの消費課税がございました。例えば木材引取税とか、大きなものでは電気ガス税とか、それから料理飲食等消費税とかありまして、それらを段階的に消費税の方に一元化したといいますか、消費課税の一本化をした経緯があります。

 そういう意味からいいましても、地方側からすれば、消費税に対して、確かに徴税などはしておりませんけれども、課税行為はしておりませんけれども、歴史的には地方消費税に対して応分の取り分というんでしょうか、シェアはあってしかるべき、そういう意見はあるだろうと思います。

 もう一つ申しますと、昭和二十年代の初めにシャウプ税制ができたときに、実は、都道府県の基幹税目といいますか、これは付加価値税ということで構成されました。現在の事業税の前身であります。これが付加価値税、消費税に近いものでありますけれども、これが実現できませんで、基本的には所得に対して課税するという現在の事業税の形態になっておりますけれども、もとをただせば、都道府県が付加価値税を課税する主体、こういうことに位置づけられたという歴史的な由来もございます。

柿澤委員 今、与謝野大臣、総務大臣の御答弁を聞かれたと思いますし、またこれから強い要望が寄せられてくると思いますけれども、私たちは、この消費税という税目は、社会保障の伸びに従って税率が自動的に上がっていくようなそんな目的税化をするよりも、全額地方の財源として使っていくべきだと思いますし、また地方消費税の拡大という道筋を持ってそうした道筋をつくっていくべきだというふうに思っております。

 埋蔵金についてお伺いをいたします。

 与謝野大臣は、自民党時代から埋蔵金はないと言ってきたはずですけれども、特別会計の剰余金や積立金の取り崩しは過去五年間の予算編成の際に毎回行われております。初めて予算に活用された〇七年度から五年間で四十兆円規模に上ります。もうない、もうないといって、底をついたと言われながら、年末の予算編成になりますと、大詰めになると、あったといって出てくる。

 これについて、与謝野大臣はどう考えられているんですか。

与謝野国務大臣 埋蔵金というのは、まだ見つかっていないお金のことをいいます。今まで使ったお金は全部見つかっていたお金でして、見つかっている以外にはお金がない、そういう意味で埋蔵金はない、こういうことを申し上げたわけです。

柿澤委員 これは究極の言い逃れですね。埋蔵金は見つかったらもう埋蔵金じゃない、よくぞこのような御答弁をされました。

 では、一つ聞いてみます。国債整理基金の特別会計の剰余金はどうでしょうか。

 国債整理基金特会には、減債基金十二・五兆円がたまっております。財務省は、この十二・五兆円を残すために新発国債十兆円を発行して、借金を返す手持ち金をふやすために借金をしてふやしている、こういう状態になってしまっている。こんなことをやっているのは日本だけだというふうにも聞きます。さらに、この特別会計から国債の広報のための経費なども支出をされている。

 この際、借金を返すために新たに十兆円の借金をしていくというこんなことをやめて、国債整理基金特別会計の剰余金をまさに埋蔵金として使えるのではないかというふうに思いますが、財務大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 正確な数字で申し上げますと、二十一年度決算で、国債整理基金特別会計、剰余金は二十・七兆でございます。内訳は、今委員御指摘のとおり、減債制度に基づいて、将来の国債償還財源として制度的に積み立てる部分が十二・五兆です。残りの八・一兆は、国債発行の平準化を図る観点から、二十二年度の国債の償還に必要な借換債を二十一年度中に前倒しで発行する、そういう措置をとっていまして、いずれにしても、これらの剰余金というのは、将来の国債償還に充てるということのルールのもとにおいて使われております。

 それで、今この時点で、格付会社がどうのとか日本の財政規律がどうなっているかというときに、そのルール自体を変えていくことは、私は日本の財政に対する信頼性を損なうのではないかというふうに思っております。

 事務費の取り扱いについては、これは仕分けの評価も受けたので、それについての対応はきちっとしていきたいと思いますけれども、あと、減債基金については、これも、昨年十月ですか、特会の仕分けにおいて、「オペレーショナルリスクに十分配慮しつつ、繰上償還に充てることも含めた検討を行う」、こういう評価はいただきました。これを受けて、平成二十三年度の国債発行計画においては、整理基金の取り崩しによって三兆円程度買い入れ消却の実施は行っていきたいと思います。

 こういう改善はどんどんやっていきますけれども、制度の根幹、ルールを変えること自体は、私は果たしてどうかというふうに思います。

柿澤委員 続いて、労働保険特会、厚生労働大臣にお伺いします。

 労働保険特会は、保険といいながら、民間保険に義務づけている保険数理ができておらず、割高の保険料を設定し、スパウザだとか私のしごと館だとかの無駄遣いを延々重ねながら、なお五兆円の積立金があります。最悪、今後、失業率が今の水準で五年間続いたとしても、なお一兆円以上の積立金が残る、こういうふうにも言われている。

 また、労災勘定の積立金が八兆円あって、必要な規模は七・九兆円だというけれども、これも、保険数理に基づいて責任準備率が幾らかということが定まっているわけではない。いわば、幾ら積み立てるべきなのかわからないまま何兆円も積立金を積んでいる状況になっているわけですね。

 しかも、今の政権は、わざわざ雇用保険国庫負担の本則化ということも言っているようですし、こうした中で、ある意味では、一般会計の投入を続けて積み増そうということもされている。

 そうした雇用保険、労働保険特別会計の積立金の水準、これはやはり部分的には埋蔵金ということを言うことができるのではないでしょうか。お伺いします。

細川国務大臣 御指摘の労働保険特別会計の積立金、一つは、あなたも言われました労災保険、この労災保険につきましては、既に労災に遭われてけがをされた方あるいは亡くなられた、こういう方に対しての年金を給付する原資。そしてまた、雇用保険におきましては、不況期におきます失業給付の支払いの財源とするために、労使で納めていただいている保険料を積み立てているものでございます。したがって、この積立金を取り崩すのは、他の政策にするのはいかがなものかということがございます。

 それで、たくさん積み上げているということでございましたけれども、雇用保険の方では、一時期は、平成五年では四兆七千億くらいありましたのが、雇用保険の適用者がたくさんふえまして、平成十四年には四千億ぐらいに減っているときもあるんです。そういうふうに、雇用というのは、一時期にどんと失業者がふえて、必要なお金の額がぐっとふえるというようなこともございます。

 それから、労災保険につきましては、今、けがをしたり亡くなったりした方で年金を受給されている方が約二十三万人おられまして、平均年金額が年に二百万円、そして、大体十八年ぐらいこれが継続するということで、大体八兆円はかかる、こういうようなことで、決して多くの積み立てが残っているということではないというふうに思っております。

柿澤委員 せっかく自見大臣に来ていただいておりますので、郵政改革について最後にお伺いをしておきたいと思います。

 現政権の郵政改革に関しては、私たちは、民営化の逆戻しだ、こういうことをかねてから申し上げてまいりました。そして、現政権の郵政改革が、将来的に郵政事業をどのような姿にしていくのか、どういうふうに経営が成り立っていくのかということに関する試算、経営シミュレーションが全く今もって示されていないではないか、このことを繰り返し申し上げてまいりました。

 この間、全く、そういうふうにして、結局、この郵政改革法が成立した後の郵政事業がどうなっていくのかということについて、自見大臣を初めとする今の政権の皆さんは明確な姿を語っていない。経営シミュレーションをなぜ今もって出さないんですか。このことをお尋ねしたいと思います。

中井委員長 時間があと一分しかありませんから、短くお願いします。

自見国務大臣 はい、わかりました。

 柿澤議員にお答えをいたします。

 シミュレーションについては、もう御存じのように、一定の前提を置いて策定することは可能でございますが、日本郵政グループの経営を担うのは日本郵政グループ自身でございまして、政府としてはシミュレーションの結果に責任を負うことは困難であるということの理由で、政府としてのシミュレーションを行うことは考えておりません。

 実は、先生御存じのように、六年前でございますけれども、さっきの郵政民営化に関しまして、当時の政府は、骨格経営試算及び採算性に関する試算を公表されましたが、例えば郵便局会社については、二〇〇九年でございますが、決算と比較してみると、経常利益が骨格経営試算では二千十五億円、利益が上がっている、こういうシミュレーションでございましたが、実際の決算は六百二十五億円ほどでございまして、大変大きく乖離しておりまして、その有効性は、やはりいろいろな前提条件によって違ってまいりますので、そういったところの有効性に疑問があるのではないか、そう思って、シミュレーションを示していないところでございます。

中井委員長 柿澤君、まとめてください。

柿澤委員 こういうことを言って、結局、先の姿を明確な形で示さないということで進んでいるのは、まさに今の税と社会保障の一体改革の、年金改革も含めたことと全く軌を一にしているような思いがします。

 そういう意味で、まさに青写真ないまま、このまま前に進もうという、そうした姿勢には私たちは賛同できないということを最後に申し上げて、質問は終わりにさせていただきたいと思います。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

 来る十四日は、北海道及び福井県で地方公聴会を行います。御参加される各委員におかれましては、よろしくお願いいたします。

 次回は、十五日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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