衆議院

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第12号 平成23年2月16日(水曜日)

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平成二十三年二月十六日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      石毛 えい子君    稲見 哲男君

      打越あかし君    生方 幸夫君

      小川 淳也君    大串 博志君

      金森  正君    川村秀三郎君

      熊田 篤嗣君    郡  和子君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      神風 英男君    杉本かずみ君

      菅川  洋君    空本 誠喜君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    玉城デニー君

      津村 啓介君    中根 康浩君

      中野  譲君    仲野 博子君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      橋本 博明君    平山 泰朗君

      本多 平直君    水野 智彦君

      宮島 大典君    村越 祐民君

      森本 哲生君    山口 和之君

      山口  壯君    山崎  誠君

      柚木 道義君    渡辺 義彦君

      渡部 恒三君    あべ 俊子君

      赤澤 亮正君    小里 泰弘君

      金子 一義君    金田 勝年君

      小泉進次郎君    佐田玄一郎君

      齋藤  健君    菅原 一秀君

      中谷  元君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      松野 博一君    山本 幸三君

      遠山 清彦君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

      柿澤 未途君    山内 康一君

      田中 康夫君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣         片山 善博君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       海江田万里君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (沖縄及び北方対策担当) 枝野 幸男君

   国務大臣

   (郵政改革担当)

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (国家戦略担当)     玄葉光一郎君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   防衛副大臣        小川 勝也君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  大串 博志君     平山 泰朗君

  金森  正君     森本 哲生君

  吉良 州司君     熊田 篤嗣君

  郡  和子君     玉城デニー君

  佐々木隆博君     杉本かずみ君

  城島 光力君     山崎  誠君

  津村 啓介君     神風 英男君

  三谷 光男君     菅川  洋君

  村越 祐民君     中野  譲君

  山口  壯君     仁木 博文君

  渡部 恒三君     山口 和之君

  小里 泰弘君     中谷  元君

  金田 勝年君     松野 博一君

  齋藤  健君     あべ 俊子君

  馳   浩君     町村 信孝君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

  山内 康一君     柿澤 未途君

  下地 幹郎君     田中 康夫君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     渡辺 義彦君

  神風 英男君     柚木 道義君

  杉本かずみ君     佐々木隆博君

  菅川  洋君     橋本 博明君

  玉城デニー君     郡  和子君

  中野  譲君     長尾  敬君

  仁木 博文君     山口  壯君

  平山 泰朗君     大串 博志君

  森本 哲生君     金森  正君

  山口 和之君     渡部 恒三君

  山崎  誠君     近藤 和也君

  あべ 俊子君     齋藤  健君

  中谷  元君     小里 泰弘君

  町村 信孝君     赤澤 亮正君

  松野 博一君     金田 勝年君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     山内 康一君

  田中 康夫君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     城島 光力君

  長尾  敬君     村越 祐民君

  橋本 博明君     三谷 光男君

  柚木 道義君     津村 啓介君

  渡辺 義彦君     空本 誠喜君

  赤澤 亮正君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     吉良 州司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 本日は、外交、安保等に関する集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、外交、安保の集中審議ということでありまして、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。持ち時間も少ないものですから、早速本題に入っていきたいと思います。

 最近の中国の動向、またこれからの中国をどう読んでいくか、大変難しい課題であるなと感じております。最近、韜光養晦というトウショウヘイの教えがよくマスコミに報道されるようになりました。日本語で言えば、能あるタカはつめを隠せというような、ある意味で身を低くして力を蓄える、そういう教えがこれまでトウショウヘイの教えで続いてきた。それが、一昨年の七月ぐらいに中国としてそういった方針を転換するような形になっているというようなことも報道されております。また、今回の防衛大綱の中にも、中国について「地域・国際社会の懸念事項」という形で表現をされているわけでございます。

 現在の中国、またこれから十年後の中国、どういう形で認識あるいは分析をされているか。まず、その点について、総理に御見解を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 中国という国の歴史、過去、私もいろいろな機会に物の本を読んだり話を聞くわけでありますが、同時に、これから未来を見通すというのは極めて難しいことだと思っております。

 その中で、一つは、GDPが二位、三位が逆転したということに象徴されるように、中国が経済的に大きな発展を遂げつつある。このことを考えますと、これから先、日中関係の中で、今もそうではありますけれども、経済を中心とした連携というのはより大きなものになっていくだろう、このように思っております。

 と同時に、今御指摘のありました、中国がかなり長い期間軍事力の増強に財政を振り向けている。こういったことを考えますと、これから中国について、やはり国際的な責任ある役割あるいは責任ある行動をとってもらうということが重要であって、そのことが相まったときに、経済、政治あるいは安全保障の面で日中関係がより良好な形で発展していく。

 そういう面で、これからの中国の動きについては、そういった面では少し注意をしながら見守っていく必要がある、このように認識をいたしております。

神風委員 最初に総理にそういった質問をさせていただいたのは、最近の日本の情報収集能力あるいは分析能力について、ちょっと首をかしげるような面が若干見られるなという思いからでございます。

 続いて、対ロシア外交について伺いたいわけでありますが、前原大臣には、先般は大変お疲れさまでございました。大変厳しい内容であったと伺っておるわけでございますが、ただ、私自身は、やはりこの問題、昨年十一月一日にロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島にロシアの最高首脳として初めて訪問をした、この事実は大変重いなという感じがするわけであります。

 そこで伺いたいわけでありますが、メドベージェフ大統領が十一月一日に国後島を訪問するという情報が、外務大臣また総理も含めて、どういう形でいつの時点で伝わっていたんだろうか。これは、当時の新聞を幾つか読んでも、いろいろな報道がなされていて、実態がよくわかりません。

 例えば、これは日経新聞、十一月十四日のものでありますが、大統領が国後島を訪れると観測記事が流れて以降、日本の外務省は一貫して訪問はないと報告をし続けた、それを信じた官邸は強いメッセージも出さずに、無策のまま訪問を許してしまったというような内容の記事が書かれていたり、あるいはまた、在モスクワ日本大使館の幹部は情報は刻々と伝えていたというようないろいろな情報が流れているわけでありますが、まず、事実関係として、どういう形でこの情報が外務大臣、総理にどういう時点で伝わっていたのか、あるいは伝わっていなかったのか。

 また逆に、本当であれば、昨年十一月一日の訪問というのを日本としては阻止すべきであったと私は思っておりますが、それをできなかった原因というのは、これは人の問題であるとお感じになっているのか、あるいは、組織あるいはシステムの問題に不備があったという御認識であるのか。その点について、外務大臣、総理ともにお伺いをしたいと思います。

前原国務大臣 私が外務大臣を拝命したのが九月の十七日でございますけれども、もうその直後からそういった可能性に対する情報というのは上がっておりまして、九月の下旬、具体的な日付は忘れましたけれども、ロシアのベールイ大使を外務省に呼びまして、それについてしっかりと私の方から申し入れを行ったということでありますし、それ以外にも、欧州局あるいは在モスクワ大使館で累次申し入れは行ってきているということであります。したがって、全く情報が上がってきていなかったということではございません。

 ただ、どのような情報が上がってきてということになれば、こっそりお話しすることはやぶさかではありませんけれども、こういう公の場でお話をするということになると、どういったルートで情報を入手しているのかということがわかることになりますので、その点は御容赦をいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、そういった段階から累次の情報は得ていたということでございます。

菅内閣総理大臣 基本的には、今外務大臣から話がありましたように、私のところにも、外務大臣あるいは外務省、あるいは幾つかのところから、一般的な意味でそういう可能性といったものについての情報は聞いておりました。

 それがどこまで、どの時点で、何といいましょうか、確実なものであるかどうか、このあたりについては、今、前原大臣も言われたように、その情報の判断についていろいろな見方、考え方があったということも、同時にそのように当時受けとめたところであります。

神風委員 さらに、プーチン首相が今度三月にも北方領土を訪問するという報道もあります。これについて外務大臣はどのように分析をされ、また、どういう対応を考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。

前原国務大臣 そういった報道があるということについては存じ上げておりますけれども、これは、このたびのロシア訪問でも、私は、だれが何回要人が行こうが、あるいは軍備増強をしようがしまいが、日本の固有の領土であるという法的評価には全く影響はないということは申し上げているところでございます。

 日本の固有の領土という観点から、そういった訪問のないように、いろいろなルートでこれからも働きかけをしていきたいと考えております。

神風委員 きょうは官房長官にもお越しをいただいておりますので、ちょっとそれに関連してのことを伺いたいと思います。

 今回の防衛大綱の中に、これは五ページ、ウという項目になりますが、「安全保障会議を含む、安全保障に関する内閣の組織・機能・体制等を検証した上で、首相官邸に国家安全保障に関し関係閣僚間の政策調整と内閣総理大臣への助言等を行う組織を設置する。」ということが書かれております。これは一部には日本版NSCが設置をされるというような報道もなされるところでありますが、安倍内閣のときにも日本版NSCという議論がございました。当時出ていた日本版NSCというものと、ここで書かれているものとは同じものであるのかどうか。

 またさらに、仮にNSCだとしても、その前提としての情報収集また分析体制、これを現状で十分だと御認識があるのかどうか。新たな情報機関というものが必要であるのか、あるいは何らかの機関の強化というものが必要であると思っていらっしゃるのか。この情報収集能力、分析について、現状で十分だ、あるいはもっと必要なんだ、そこら辺の御認識も含めてお伺いをしたいと思います。

枝野国務大臣 現状の安全保障等に関する政府の情報収集・分析体制は、内閣情報調査室を中心に関係省庁が連携して情報収集、分析を行っております。さらに、合同情報会議等を通じて内閣のもとでの集約した総合的な評価、分析も行っております。

 重要なものについては、必要に応じて、情報官から総理を初めとして私など官邸の幹部に直接報告をされておりまして、情報収集・分析体制は一定の機能は果たしているというふうに思っておりますが、まさに防衛大綱でも、今御指摘いただいたような、「助言等を行う組織を設置する。」という方向性が示されております。こういったことについては、より多くの重要な情報をしっかりと集めて、さらにそれに対する分析の精度を高めるということは常に必要なことだと思っておりますし、そういった意味では、さらにここを強化してまいりたいというふうに思っております。

 安倍内閣において検討されたものについては、その当時は、現行の安全保障会議は見直し、その機能を吸収した国家安全保障会議を設置することなどが検討されたと承知をいたしておりますが、むしろ、今回新大綱で示されていることについては、より実務的といいますか実態的といいますか、箱をどうつくるかということよりも、実際に情報収集と分析の能力を高めるのにはどうしたらいいかというところを、そのこと自体を分析的にやっていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そして、まさに、どういうルートで、どういうふうに情報が収集されて、どういう情報が入ってくるのかというのは、私自身も今官房長官という職につかせていただいてそうした情報に接することができているわけでございまして、率直に言いまして大衆討議をするわけにいかない性質のものでございます。そうした意味では、今、菅内閣のもとでそうした情報に接している人間のところでまずは現状の分析をしっかりと始めていくというところの中で、あえて申し上げれば、結論を、こういう箱をつくりますとかということではなしに、現状の情報収集と分析のその分析をしっかりと行うというところからまず始めていきたいと思っております。

神風委員 ぜひしっかりとした取り組みをしていただきたいと思います。

 続きまして、FXの問題について伺いたいと思います。

 昨年末、防衛大綱、また中期防を取りまとめられたところであります。これはおおむね高い評価ではないかなと私も思っておりますが、この大綱、中期に関しては、またいろいろと議論できる機会があろうかと思っておりますので、また別の機会に譲りたいと思います。

 その中で、やはりこれから、特にこの一年、一番課題になってくるのはFXの問題であろうかなという気がしております。これは、防衛省内に統合プロジェクトチームというものが設置をされて、本格的な着手が行われているというところでありますが、現在の進捗状況あるいは今後の見通しについて、まず防衛大臣に伺いたいと思います。

北澤国務大臣 FXにつきましては、私どもとすれば、二十四年度の予算にこの経費を計上するということで計画をしておるわけでありまして、そういう中でスピード感を持ってやっていかなきゃいかぬということで、次期戦闘機IPTというプロジェクトチームを設置いたしたところであります。

 これにつきましては、本年の一月七日に第一回、それから二月七日に第二回の会合を開いて、これから選定が終了するまで随時精力的にやってまいりたい。

 また、IPTの場においては、早急にその提案要求書、RFPを発出するための作業を今精力的にやっておるというのが現状であります。

神風委員 伺っておりますのは、現在の調査対象機種は六機種というところであります。ただ、恐らくその中で、F22あるいはラファール、ここら辺はちょっと外れてきて、四機種ぐらいに絞られるのかなという気は個人的にはしております。

 そうすると、F35は第五世代、ほかの機体というのは四・五世代ということになります。関係者の皆さんはもう御案内のとおりでありまして、航空機、戦闘機の世界で〇・五世代違えば、仮にドッグファイトをやれば、新しい世代がもう一〇〇%近く勝利をするという状況でありますので、恐らくこの中ではF35というのが一番優位性を持っているのであろうという思いはするわけであります。

 ただ、F35についても、いろいろ不確定な要素がまだまだ多い。実際にこれが日本にいつ配備が可能なのかどうか、本当に不明な点があります。

 きのう防衛省の方に聞いた限りでは、ことしの一月の六日に、アメリカのゲーツ長官が、日本が有力視をしているF35A、空軍型の機体ですね、これについては満足のいく進捗を見せているということで御報告をいただきました。

 ただ、それ以外に、これはまだ公表はされていないようでありますが、アメリカに、国防省の操作試験あるいは評価報告書というのがこれから公表されるそうであります。それによりますと、このF35A型についても、いろいろと操縦機能、アビオニクスあるいはアフターバーナー等にいろいろ問題があって、これはまた、もう少し完成まで時間がかかるかもしれないというような報告がこれからなされるという状況のようであります。

 そこで、ちょっと大臣の方に伺いたいのは、きのうのやりとりの中で、仮定の質問にはなかなか答えづらいということがあったものですから、多少質問の仕方を変えまして、F2というのはなぜこの対象機種に入ってこないのか。F2もある意味では四・五世代の戦闘機であるわけでありまして、F35を除けば、ほかの戦闘機と同じクラスになるわけであります。しかも、百三十機という生産計画がもともと、元来あったものが、九十四機で生産中止している、ことしが最後の生産になるわけでありますけれども、そこら辺、なぜこのF2は対象機種から外れているのか、それについてお伺いできればと思います。

北澤国務大臣 確かに、これから選定していかなきゃいけませんから、仮定の問題について細かくお答えすることはできませんが、今お話のありましたように、F35というものが五世代機ということで関心が高まっていることは間違いのない事実であります。

 そこで、F2については、現在使用しているF2はかなり性能が高まりましたから、自衛隊としては非常に評価をしておるところでありますが、いずれにいたしましても、防衛省とすれば、もう御案内だと思いますが、調査対象は六機種に絞っておりますので、そこのところは、なぜ外れたかということについてはまた御容赦をいただきたいというふうに思います。

 そこで、先ほどゲーツ長官の話も出ましたが、防衛相会談をしたときに、ゲーツ長官の方から、35については、今お話のありました三つのバージョンのうちの空軍型については懸念はないということをはっきり言われたということは事実であります。

神風委員 大臣のお立場ではなかなかお話しできない面がたくさんあるんだろうとは思います。

 F2開発経費三千二百七十四億円、一機当たり、当初の見積もりは五十四億円だったものが百二十三億円、F15とどっこいどっこいぐらいの世界一高価な戦闘機になってしまったわけでありまして、ある意味では欠陥機というような言い方をされることもあります。私自身は欠陥機という言い方はないと思いますが、ただ、少なくとも、やはり発展性の少ない機体になってしまっているのかなというような懸念はあるわけでありまして、これは、大臣のことを批判するわけではなくて、ぜひ、このF2の失敗を今回のFXの局面ではしてもらいたくない、繰り返してもらいたくない。

 それで、今回のFXの選定というのは、ある意味で、これから恐らく三十年後ぐらいにはなると思いますが、FXXの選択あるいはその選定に大きな影響を与えていくのであろうという気がしております。

 私自身は、個人的な見解を申し上げれば、やはり、FXXというのは自主開発、国産機で臨むべきであろうという気がしているわけでありますし、国際的な共同開発というのは今の国際的な流れであることは確かでありますが、今のF35の開発状況を見ていても、これはなかなか、この共同開発というのも大変だなと。一国でやった方がよほど性能がよく、早い、コストも安いものができるのかなというような気もするところでありまして、そこら辺を考えると、やはりこのFXX、ここを目指して、視野に入れて、今回のFXの選定にぜひ当たっていただきたいと思います。これは御要望としてお願いを申し上げたいと思っております。

 時間も少なくなりましたので、最後に、これは確認の意味で、普天間の問題についてお伺いをしたいと思います。

 最初に、お手元に資料が行っているかと思いますが、在日米軍施設・区域の三類型、これをちょっと整理してみたいと思うんですが、これは、日米地位協定によって、在日米軍施設・区域というのは三つの類型に分かれている。よく一般的に、米軍基地、米軍基地という言い方をされますが、三つの類型がございます。

 一つが、日米地位協定第二条一項(a)というものですね。これはいわゆる米軍の専用施設・区域であります。第二条四項(a)、二4(a)と言われるもの、これはいわゆる米軍が管理をして共同使用する基地、米軍管理のもとに施設・区域を日本政府や日本国民が使用するもの。三つ目が、二4(b)と言われる、いわゆる国等管理共同使用、日本側管理のもとで米軍が使用するものであります。簡単に言えば、米軍の専用のものと、米軍が管理をして日米間で共同使用するものと、日本側が管理をして日米で共同使用するものと、この三つの類型があるわけであります。

 そこで、まず大臣に伺いたいのは、昨年の五月の二十八日、日米共同声明が発表されました。その中でも施設の共同使用ということがうたわれているわけでございますが、この施設の共同使用というのは、この三つの類型というか、二4(a)か二4(b)かということになると思いますが、そのうちのどちらであるというのははっきりしているんでしょうか。

北澤国務大臣 五月の2プラス2で、「共同使用を拡大する機会を検討する」ということで合意をいたしました。その後、先般、日米共同使用作業部会というものを立ち上げるということで日米で合意をいたしました。ここでまたいろいろな議論をしていくわけでありますが、私どもとすれば、どちらかに限るということではなくて、それぞれの状況に応じて柔軟にやっていく、米軍が管理しているものでも入っていく、それから、日本が管理しているところでも米軍の訓練が入ってくるということで多様性を持たせたい、こういうふうに思っております。

神風委員 よく、米軍基地の七四%が沖縄に集中しているという言い方をされるわけでありますが、これも正確に言いますと、在日米軍施設・区域の現況という資料をお配りしてあるかと思いますが、全体でいえば、本土に七七%存在をしている、沖縄は二三%。この比率でいえば、これはあくまでも本土に七七%存在をしていて、沖縄の方は二三%の存在ということ、割合ということになります。

 その中で、何が七四%沖縄に集中しているのかといえば、その次の、いわゆる二1(a)の施設、つまり、米軍の専用施設というものが七四%沖縄に集中をしているということでありまして、ある意味では、ある言い方をすれば、この二1(a)の類型をいかにして二4(a)あるいは二4(b)に切りかえていくのか、移行させていくのかというのが非常に重要なポイントではないか。

 普天間問題も、そうした大きな枠組みの中で位置づけることが必要ではないかと思うんですが、最後に総理に、その見解、また……

中井委員長 これはテレビですから、最後にはなくなりますから、まとめてください。

神風委員 決意を含めてお伺いをしたいと思います。

中井委員長 菅総理大臣、短くやってください。

菅内閣総理大臣 沖縄の基地負担をいかにして軽減するかというこの問題は、普天間の危険性除去と相まって大変重要な課題だと思っております。

 今、いろいろな形態を改めてお聞きいたしまして、そういう形も含めて、できるだけ沖縄の負担軽減を進めるように、共同使用の拡大といったようなことも含めて検討してまいりたい、このように考えております。

神風委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて神風君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 田中康夫です。与党統一会派、国民新党・新党日本を代表して、本日はTPPのなぞに関してただしたく思います。

 昨年秋から私は、独立国家日本を二十一世紀の米連邦化の従属へと画策する羊の皮をかぶったオオカミ、トロイの木馬がTPPだ、このように申し上げてまいりました。なぜならば、日本は貿易立国で、とうの昔に開く国、開国済みなわけでございます。仮に至らない点があるならば、本会議の代表質問でも申し上げたように、改める国、改国を行えばよいわけです。

 ところが、最近とみにランナーズハイな躁状態でいらっしゃる菅直人さんは、第三の開国、黒船襲来と、時代錯誤な単語に酔いしれていらっしゃいます。しかし、私は、逆に、哲学も覚悟も持ち合わせぬ指導者のもとで、物品貿易の全品目に加えてサービスや人の移動のすべても例外なく関税の即時撤廃を強いられる無理無体なTPP交渉参加へ猪突猛進をすれば、日本は壊国、すなわち壊す国、破滅する国家の壊国だと考えております。

 ただいま、円グラフをごらんくださいませ。TPP交渉参加九カ国に日本を加えた各国のGDP、国内総生産の比較です。ラジオでお聞きの皆様にも御説明いたしますと、アメリカが全体の約七〇%、日本が約二〇%、オーストラリアが約五%、残りの七カ国、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、ペルー、ベトナム、マレーシアで約五%でございます。

 菅直人さん、この円グラフをあらかじめお渡しした上で質問通告しておりますので、御見解をお願い申し上げます。

菅内閣総理大臣 少し田中議員の決めつけが最初にあるわけです。

 まず、TPPに関しては、現在は、情報収集を含めて関係国との協議をいたしております。

 それから、私の問題意識の最初には、この十年余り、日本のいわゆる経済連携が他の韓国等に比べて非常におくれていた。それは、FTA、EPA、あるいはいろいろな地域的な連携も含めてであります。そういう中の一つとしてTPPがあることは事実でありますが、何か、このTPPだけに決め打ち的に何かをしようとしていることを前提に御質問されるのは、私は、国民の皆さんに誤解を招くのではないか。

 それに加えて言えば、農業の改革はやらなければならない改革でありまして、そのことをしっかりやることと、必ずしもTPPに限りません、今、例えばオーストラリアとのEPAの交渉もやっておりますけれども、そういうことも、両立するにはどうするかということでそれぞれ頑張って交渉に当たっていただいている、こういう認識を持っております。

田中(康)委員 ですから、これは、ごらんいただくように、米国の輸出先はほぼ日本だけになって、日本の輸出先はほぼ米国だけになるわけです。

 そして、今、菅さんは腰砕けな発言をなさいましたけれども、まさにブラジルもインドも、そして韓国も中国も環太平洋であります。しかし、これらの国々は、TPPではなく、FTAやEPAなわけでございます。

 現に、きのう外務大臣も、韓国とのEPA交渉の早期再開をと。農林水産大臣も、オーストラリアとのEPAの早期締結をと。そして、現に菅さんは、けさ九時に、インドというまさに経済立国、貿易立国である国とEPAを結んだことが大変な経済効果だとおっしゃっているじゃないですか。

 では、なぜ、韓国のように、アメリカともきめ細かいFTA交渉を行わないんですか。なぜ、アメリカの米連邦化、私たちはアメリカと一緒に世界をよくするためなのに、中国やそのほかの国々をあえて敵に回すようなTPPというものありきという発想は、私はまさしくこれは壊国であると思います。まさに売国許すまじ、この点を最後に申し上げて、私の質問を終わります。

中井委員長 これにて田中君の質疑は終わりました。

 次に、町村信孝君。

町村委員 自由民主党の町村信孝でございます。

 きょうは、外交、防衛集中ということでございますからそのことについて伺いますが、冒頭に、これは別に質問ではございませんが、この一両日、小沢元代表のことが盛んに報道されております。党員資格停止ですか、まことに大甘な処分というふうに書いてありました。私もそう思いますよ。私もかつて幹事長代理であったときに、田中眞紀子さん、鈴木宗男さん、加藤紘一さん、三人の処分を厳しくやりました。それと比べると、何とも民主党は優しい政党だなと思います。

 また、証人喚問を我々野党は一致して求めているんです。そうすると、国会がお決めになることだと。国会とはだれですか。民主党がオーケーと言えばやれるんですよ。そのことを、国会がお決めになることだと言って逃げる、民主党の自浄能力のなさと、そして菅総理のリーダーシップのなさきわまれりということをまず冒頭申し上げた上で、外交の基本的な問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、最近いろいろな調査を見ていると、国民の九割までもが日本の外交あるいは安全保障というものに心配をしている、不安を持っているということがあります。私も地元へ帰って、およそ平素外交とか防衛に関心のないような人と話しても、町村さん、日本丸は国際社会の中で漂流して一体どうなるんですか、心配ですよね、そういう意見を頻繁に耳にする、これは多分同僚議員みんな同じじゃないかと思うんです。その原因を総理は一体何だと御認識しておられますか。

菅内閣総理大臣 やはり、一言は小沢議員のことを申し上げなければなりません。

 一昨日の役員会で党員資格停止の処分の発議を行いまして、そして、昨日の常任幹事会において処分案が決定されて、倫理委員会にかけられているところであります。処分が大甘と言われましたからやはり反論はさせていただきますが、党員資格の停止処分というのは、すべての党員としての権限を判決が確定するまで凍結するものでありまして、決して大甘な処分ではなくて極めて厳しい処分だ、このように思っているところであります。

 次いで、次の御質問にお答えをいたしたいと思います。

 まず、現在、国際情勢が非常に大きく変化している中で、我が国の周辺においても大変不確実性あるいは不安定性が存在していることは私はだれもが感じていることだと思っております。そういう中にあって我が国の平和と安定を確かなものとするために、防衛力を着実に整備するとともに、現実主義を基調にして世界の平和創造に能動的に取り組んでいるところであります。そして、日本の安全保障のベースは、もちろん、一つは自主的な防衛であると同時に、日米同盟というものを基本としていることは言うまでもありません。

 そういった意味で、世界の大きな変化がある意味でこの日本の周辺にも及んでいることを含めて、国民の皆さんがいろいろな感じを持たれていることは私も理解をいたしておりますけれども、やはり日本自身、日米同盟を基盤としてしっかりとした安全保障体制、日本の安定というものは保たれている、このように認識をいたしております。

町村委員 日米同盟を基礎にというくだりは、私は評価をしております。長年の菅総理の御主張とそれが合うのかどうか私にはわかりませんが、少なくとも総理大臣としてそういう姿勢をお持ちであるということは、私は評価をします。

 その上で、私はあえて申し上げたいのでありますけれども、ということは、日米中、いわゆる正三角形論というのがありますね、そういうものはおとりにならない、日米が二等辺三角形の底辺に二つしっかりあるということ。あるいは、総理の施政方針にも前原外務大臣の外交演説にも、東アジア共同体という言葉が一言もなかった。これは私は、この例のマニフェスト、皆さん方がおつくりになった、もうだれも信用していないと言っておりますが、しかし、さはさりながら、ここにやはりでかでかと「東アジア共同体」と書いてある。私は、この東アジア共同体というのをもう撤回されたらどうかと思うんですよ、今度いろいろ修正、撤回されるというんだから。どうでしょうか。

菅内閣総理大臣 まず、日本とアメリカと中国の関係は、もちろん経済の関係、文化の関係、歴史の関係、いろいろあります。そういう中で、私は、安全保障を中心としてあるいは政治的なものを中心として見たときに、私自身が正三角形というような表現をいたした覚えはありません。やはり日米が基軸の中にありますが、もちろん日中の関係も、経済的にも文化的にも、もちろん歴史的にはもっと古いわけですが、大変重要だという認識を持っております。

 それから、今、東アジア共同体ということについてお触れになりました。私は、最近の演説などでこの用語を使わないのはなぜかという指摘も受けておりますけれども、日米同盟を基軸としながら、APEC、つまりアジア太平洋や、東アジア首脳会議、これには米ロが今回から加わっております。それからASEAN地域フォーラムなどの地域協力の枠組みを活用し、開かれた形で重層的な協力関係を強化していくという姿勢には変わりはありません。

 そういった意味で、東アジア共同体を否定しているのではなくて、東アジア共同体の中にアメリカという要素も含めた形での地域的な重層的な協力関係が望ましい、こういう認識を持っております。

町村委員 私は、一月末にアメリカにちょっと行って何名かの有識者と話をしました。

 この東アジア共同体というのは、まことに評判が悪いんです。一つは、ニューヨークの国連総会の場で、胡錦濤国家主席と当時の鳩山首相がアメリカに何の話もしないまま、ぼんと言ったと。後で中国の要人が米政府の要人に会ってこう言ったそうです、あれは鳩山総理が勝手に言っているだけで、中国はあんなものに参加する気は全くありませんからと。こうまで言われている東アジア共同体のイメージがもう既にあるんだということは、どうぞしっかりと御認識をいただければと思っております。

 その上で、私は、この同じくマニフェスト、「緊密で対等な日米同盟関係をつくります。」こう書いてあります。私は、この緊密で対等な日米同盟関係、一体どういうものなのかなと。

 ちょっとこのパネルの一を見ていただければと思います。

 私たちは、冷戦が終わって、そして、一体日米同盟とは何だろうかということを考えながら、ここに書いてあるような日米安保に着目をした体制強化というようなことで、弾道ミサイルを初め、周辺事態法、これは民主党は反対でした。有事法制、これは民主党は賛成でした。その後、2プラス2で米軍再編等々を、これは安保ということでやってきました。もう一つ、グローバルな安全保障での日米協力という意味では、PKO法を初めとして、テロ特措法、これも民主党は反対、イラク特措法、民主党は反対、それからアフガン補給特措法、民主党は反対。

 我々は、皆さん方が反対をしたけれども、やはり日米の同盟をさらに強化し、ブラッシュアップしていくという意識を持ってこういった一連の政策をとってきたわけであります。これがまさに緊密で対等な日米関係をつくるこれまでの努力だ、私はこう思っておりますが、今や最も緊密でない今の日米関係の現状があります。

 総理の御認識で、例えば対等でなかった日米関係というのは、今までどんな例を総理は念頭に置いてこのマニフェストをつくられたんでしょうか。

菅内閣総理大臣 マニフェストは、当時の執行部を中心にいろいろ議論をしてつくったものでありまして、私も代表代行という立場ではありましたけれども、個人個人の思いまでは全部は承知をいたしておりません。

 私が感じておりますのは、緊密でというのは、大いに私は緊密でいいと思うんです。対等でというのももちろん悪くないわけです。問題は、そのときに、自主的に判断をした中で対応しているのか、ややもすれば自主的な判断を超えて、いろいろな事情の中で自主的な判断を超えた形で、いわば引きずられてしまったような形での判断があるとすれば、そこはやはりどういう形かできちんとした対応が必要だと思っております。

 例えばイラクの問題なども、当初はイラクに大量破壊兵器があるということを前提としていろいろな議論がなされたわけですけれども、何年か後にはそのことが間違っていたということになったわけでありまして、そういった意味では、そういったことに対する当時のことも含めた検証があって、やはり我が国が、緊密で対等ではあるけれども、一方的に言われたことが一〇〇%そのとおりでなかったということも歴史的にそう遠くない歴史があるわけでありますから、こういうことも含めて自主的に判断をしながら協力するべきところは協力していく、これが対等という考え方であろうと私は思っております。

町村委員 今の総理のお話を聞いていると、イラクのサマワに自衛隊を派遣したのは、あれはアメリカが言うとおりにやっただけで、日本の自主的判断はなかったと今おっしゃったんですか。

菅内閣総理大臣 私が言ったことをちゃんと聞いていただければ。

 あのイラク戦争が始まった時点で、アメリカはイラクに大量破壊兵器があるという前提でいろいろな行動をとられたわけで、それに対して日本も、必ずしも我が国自身の情報が、当時は私は野党におりましたから、我が国がどの程度の確かな情報をアメリカ以外のラインから聞いていたかどうかわかりませんが、少なくともそれから何年かたった検証の中では、そういう大量破壊兵器はなかったということが事実上認められたわけでありまして、そういうときの日本の判断のあり方が必ずしも、もしかしたらインテリジェンスの能力を含めてということになるかもしれませんが、自主的に判断するに足るだけのことができていなかったということを例示したわけでありまして、何かそれと違うことを例に挙げられるのはちょっと違うんじゃないでしょうか。

町村委員 イラクに核があったから私どもはサマワに人を送った、自衛官を送ったのではないということだけははっきり申し上げておきたいんです。その他いろいろな要素、国連の決議等々もあってそれを決めたんだということを改めて申し上げておきたいと思います。

 私は、対等なというのは、まことに耳ざわりもいいし、また、国と国としてはそれは対等であることは当たり前です。では、どうやったら対等になるか。それは、アメリカは核兵器を持っている、日本は持っていない。日本核武装その他、このパネルに三つ書いてあるような、あるいは非武装中立、あるいは某大国の属国化、これは仙谷さんなんかが言われたそうです。しかし、こういうのはいずれもバツですよね、ここに書いてあるように。

 とするならば、私たちは、今ここに一、二、三、四、五と書きました、より大きな防衛面での自助努力であるとか、あるいは共同演習の拡大であるとか、インテリジェンス、サイバー防衛協力の緊密化、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権を認める、こうしたことを今後もやっていくということが、これは総理が、今度、より深化した二十一世紀の日米ビジョンを、果たして五月に総理がアメリカに行けるかどうか、それはわかりませんけれども、そういうものをつくりたいというお気持ちがあるそうです。

 より深化した二十一世紀の日米ビジョンの中身、もちろん人的交流とか経済は別にして、すぐれて安全保障、外交面でどういうことを総理はお考えでしょうか、お伺いをします。

菅内閣総理大臣 ここに町村さんが、「対等な日米同盟を実現する方策」、バツとマルがついているんですが、私は、マルの中にもいろいろと議論があるところですけれども、それ以上に、この中に、例えば日本が、今は多少減りはしましたけれども、ODAを通して多くの国に支援しているとか、そういうものが必ずしも入っていないことにちょっと驚いております。

 私は、この間、こういう立場になりましてから、新興国のリーダーと、本当にかなりの数の方とお会いをいたしました。多くの国は日本をモデルとして、目標としてやってきたと。そういう中で、確かに我が国はいわゆる武力をもって応援するということは憲法上の問題もあってやっておりませんが、そのことが、私も、かつての湾岸戦争、第一次のときに、お金は出したけれども人は出さなかったからということで、何か後ろめたいような気持ちを少し私自身の中にも残しておりました。しかし、いろいろな国の人たちと会ってみると、必ずしもというか、軍隊を送ってくれた国以上に、軍隊ではない形で民生支援をした国が自分たちの現在の成長を応援してくれたんだという国がどちらかといえば多いぐらいであります。

 そういう意味で、我が国にとって、もちろん軍事的な安全保障の重要性を別にそれで軽視するわけではありませんけれども、我が国とアメリカが対等というときには、アメリカがやれることの中でも日本がやれないこと、あるいは能力的にもやれないこともありますと同時に、日本の方が得意であって、日本の方がある意味アメリカではできないことでやれることがあるわけです。現実に、緒方貞子さんなどとアフガニスタンのことなどもやっておりますけれども、アフガニスタンでNATOでのいろいろな行動もありますけれども、日本の行動がどれだけアフガニスタンの中でも評価されているかということも一つの例に挙げておきたいと思います。

町村委員 冗長な答弁はおやめをいただきたい。

 ODAは、もちろんそれはあるでしょう。私は、安全保障面で今後、日米関係でやるべきことは何でしょうかということで幾つかの例示を挙げたんです。

 そこで、例えば大きな防衛面の自助努力。今回、私はワシントンに行って、これも有識者の方々、議会人とも会いました。残念ながら、防衛大臣は大変御努力をされたんだろうが、この大綱は評判が悪い。それはなぜか。それはやはり、予算の額と人を減らしているからです。これでは、日本が本当に一緒になって、地域の安全のため、あるいは我が国自身の本気で防衛努力をやるかというところについて重大な疑問符がついてしまった。

 そういう意味で、私は、大綱の中身も大きな問題があると思いますし、武器輸出三原則も、当初、何とか懇談会ですか、大分前向きな検討の様相だったのが、これも社会民主党さんのリクエストに応じて検討にグレードダウンしてしまったなどなど、こういうことで一体、私は、本当に対等な日米同盟、より緊密な日米同盟関係をつくることが総理はおできになるのかなと思いますから、私がここに述べておりますことを真剣に受けとめていただきたいと思います。

 次に、在日米軍再編と普天間基地の移設の問題について申し上げます。

 在日米軍の重要性、私はこんなイロハみたいなことを言うつもりもなかったんですけれども、驚くべき前総理の発言がまたあったものですから、またこういう当たり前みたいなことを言わざるを得ないんです、鳩山さんの。あれは方便で抑止ということを使ったということで、これほどまた沖縄県民を愚弄し、日本国民をばかにし、アメリカをばかにした言葉はありませんよ。

 私は、もう一度改めて総理の口から、在日米軍の重要性、意義というものを述べていただきたい。

菅内閣総理大臣 私は、沖縄の海兵隊を含む在日米軍は、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定のために極めて重要な役割を果たしている、ある意味での公共財的な役割を果たしているもの、このように認識をいたしております。

町村委員 ということは、あなたは鳩山前総理と違って、そういう方便で言っているわけではないということを今言われたわけですね。

 同じようにもう一つ伺いますけれども、普天間移設先がなぜ沖縄県内でなければならないのか、総理は、このことを沖縄県民に向かっても知事に向かってもまだ話されたことがないはずです。つい先日、私は仲井真さんと話したときに、仲井真知事からは、肝心のことを総理は言われないんですよ、なぜ県内移設が必要なのかと。

 そして、私は、これは日本国全体にかかわることですから、改めてこの場を通じて日本国民全体に、なぜ沖縄県内でなければならないのか、そのことを明確に述べていただきたい。

菅内閣総理大臣 私は、十二月に沖縄に出かけたときに、知事とお話をすると同時に、そこにはマスメディアがすべて入っておられましたので、県民の皆様にもきちっと伝えたいということで、少し長いあいさつの中で、普天間の移転に関して、いろいろな意味で辺野古への移転ということが、後で少し批判は受けましたが、実現可能性を含めて考えれば、確かに県外、国外ということが沖縄の皆さんにとってはベストかもしれないけれども、実現可能性等々を考えた中で、あるいは危険性の除去とか、あるいは多くの基地の返還などを考えたらベターだと考えるということを申し上げました。それに対しても、ベターということについてかなり御批判をいただきました。

 あえて申し上げますと、自民党の皆さんが大変苦労されたことは私も承知しておりますので、それ以上のことは申し上げたくありませんが、残念ながら、現在では沖縄の空気は、ある意味、そうした県内というものに対して非常に強い反発があるわけであります。そういうことを含めて、私としては、十二月を含めて、精いっぱい、現在のある時間の長さの中で、実現可能性も考えた中では、危険性除去の意味で、普天間というものが、あり得る選択ではないかということをこの間一貫して申し上げてまいりました。

町村委員 実現可能性があるから、それは一つの理由かもしれませんが、もっと本質的に、戦略的に、なぜ沖縄でなければならないのかということはお考えにならないんですか。

北澤国務大臣 町村先生にはもう釈迦に説法のようなことであろうかというふうに思いますが、我々内閣として常に沖縄の皆さんに説明しておりますことは、海兵隊を含む在沖縄の米軍の抑止力は極めて日本にとって重要である。

 そこで、沖縄についてはということでありますが、沖縄の地理的な優位性、それから米海兵隊の特性、さらには普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去する必要性、こういうものを総合的に判断をして、ぜひ沖縄で御理解をいただきたいと再三にわたって申し上げているところであります。

町村委員 そこで言う地域的優位性とは何ですか。もうちょっとかみ砕いてお話しください。

北澤国務大臣 米国のQDRにもありますように、グアムを、再編してあそこを安全保障のハブ化したい、そういう大きなスケールの中から、特に危険性といいますか、懸念のある北朝鮮あるいはまた中国の軍事力の増強、そういうものに対して沖縄の地政学的な位置というのは十分に今申し上げた理由になるということであります。

町村委員 総理、そこを言わないと。ただ実現可能性であるとか、危険性除去はもちろん必要なんだけれども、何ゆえに沖縄県内でなければならないのかというのは、今、北澤大臣が言われた肝心なことを総理自身はみずから言わないんです。だから、沖縄の人は、この人は本気で沖縄県内移設を考えているんだろうかということについて疑問を持たざるを得なくなるんです。そこが、悪いけれども、総理、今まで総理御自身の説明の中で一番欠けているところであります。

 もう一つは、今までの努力。総理になって九カ月たった。一回目は儀礼的な慰霊式典の参加、しかし九カ月、たった一回しか総理は行っていない、この熱意のなさというものも沖縄県民は非常に腹を立てているんです。

 それから、第一、民主党沖縄県連というのは一体何ですか。この間の知事選挙で、どんどんどんどん伊波候補をやったじゃないですか。党内もおさめられていない。そして、もし仲井真知事がいいというなら、何で仲井真知事を応援しないんですか。それもやらない。だったら、堂々と県内移設を主張する候補者を立てればいいじゃないですか。それもやらない。

 こういうことの一つ一つが、ああ、要するに本気ではないんだ、菅代表は、菅総理はというふうにみんな受けとめているんです。

 その上で、今度、玄葉さんが、これは大臣というよりは党の代表ということですか、社民党と予算修正協議を始めたんでしょうか。その中で、沖縄、普天間関連の二、三十億円でしょうか、何か予算の削除要求が出た。これは事実ですか。そういう要求が出ているのが事実かどうか。そして、それに対してどういうお考えであるのか。

玄葉国務大臣 町村先生御指摘の社民党さんとの協議でございますが、社民党さんの方で予算案並びに予算案の関連法案について民主党と協議を行うという方針が出されたということでお会いをしたことは事実でございます。

 現在、入り口の段階でございますけれども、ただいま御指摘の要請というか問題意識については私のところに伝えられたところでございますけれども、普天間関連予算については、私としてはかなりハードルが高いというふうに考えております。

町村委員 玄葉大臣はかなりハードルが高いという表現にとどめておられるが、総理大臣、これはまことに金額以上に重要な予算なんですよ。削除はしないとこの場で断言してください。

菅内閣総理大臣 現在出している内閣としての予算は、もちろん、出す以上はベストなものだと考えて、予算関連法案も含めて一日も早く成立をお願いいたしているところであります。

 と同時に、政府がベストと思って出しているわけですが、与野党間でいろいろな議論があることは、これは議会制という中で当然のことでありまして、党としていろいろな党と、必ずしも社民党に限らず、必要があれば、あるいはこちらからもお呼びかけをして議論をしていただいているという状況は認識しておりますが、政府としては、今申し上げましたように、やはり最も望ましい形で提案をいたしているのが原案だと考えております。

町村委員 修正の一般論を私は聞いているのではないのです。この普天間の移設予算を削除しないとこの場で明言してくださいと言っているんです。

菅内閣総理大臣 ですから、今申し上げましたように、内閣としては、提案をさせていただいているものが最もベストな案だということで、一日も早い成立をお願いいたしております。

 ただ、政党間で、与党も含めて議論をしていることについて、それはそれとして、そうした議論があることは、私は当然望ましい姿だと思っております。

町村委員 担当大臣は、ハードルが高いという精いっぱいの表現をされた。総理はそれ以下ですよ。それ以下じゃないですか、あなたは一般論しか言わないんだから。

 この重要な予算は、ほかの予算はともあれ、この予算だけは絶対カットしない、そしてこの普天間移設をしっかりと進めるという基本姿勢、基本的な政策があるならば、外交、安全保障の基本政策を三分の二の数合わせのバーター材料に使うなんて、これは最低きわまりない話ですよ。この場でもう一度、絶対にこの予算は削減しないと明言してください。

菅内閣総理大臣 我が党は、玄葉戦略大臣に、同時に党の政調会長という重要な役割をお願いいたしております。そういった意味で、政党間の政策的な協議の責任者でもあるわけです。

 もちろん私も党の代表ではありますけれども、内閣総理大臣という立場は、やはり予算案提案という立場でいえば主の立場であるわけでありまして、そういった意味では、今の予算案を、ぜひ野党の皆さんにも賛同いただいて、そのままの形で成立をさせていただきたい、基本的にはそのように考えております。同時に、政党間の協議まで、私の立場で否定するものではありません。

町村委員 これが政党の代表である総理大臣の発言であるかと思うと、私は唖然としますし、数合わせのために国家の基本政策までも十分変えてしまう可能性のある総理大臣なんだということをみずから今お認めになったから、悪いけれども、この程度の総理大臣なんだなということを、この際、私はあえて言わざるを得ないのであります。

 その上で、私はもう一つ申し上げますけれども、どうやって一体沖縄県民の信頼を、失われた信頼というのは、それは、私どものときはあったんですよ。このパネルのところを見てください。少なくとも平成十九年八月、環境アセスメントの方法書をつくった段階で、事実上アメリカ政府ともあるいは沖縄知事とも合意ができていたんです。それに基づいて彼らは意見書を十月に出してきたんです。ところが、八月、九月に政権交代になったから、この知事の意見書は宙に浮いてしまったわけですけれども、これは、私どもはこれを受けて数十メートル沖合に移設するということで仲井真知事とも話が事実上できていた。ところが、今皆さん方は、それをすっかりひっくり返してしまった。沖縄県民の信頼失墜、怒り、ここから始まっているわけですよ。これを一体どうやって回復されるつもりか。

 だから私はさっき、毎月でもいいから、総理、足を運びなさいということを申し上げました。それから、本当は沖縄担当大臣なんかは毎週行くべきだと思うけれども、これは、かわいそうなことに枝野さん、官房長官だから行けないんですね。こういう人事をやること自体が沖縄県をばかにしていることになるんですよ。官房長官と沖縄担当大臣兼務なんて、考えられない人事ですよ。この人事の間違いもある。

 そして、もっと言えば、あと一年たつと沖縄振興法の期限が切れるんですね。これにどう立ち向かうのか。地元の人は、今度、法律改正する、これが最後の法改正ではないかな、これで真の自立した沖縄をつくろうという、そんな思いでいる方々が多いようであります。

 私は、そうした沖縄県民の考え、気持ちというものをやはり受けとめて、こうしたことについてももっと前向きにしっかりとやるということを、本当はこれは僕は枝野さんがもっと、官房長官と兼務ではなく専任大臣として、何度も何度も足を運んで、それはそれでしっかりと沖縄県民の信頼を回復する努力をしなきゃいけない、こう思います。

 いずれにいたしましても、私は、総理自身が何度も足を運んで、第一、名護にも行っていないということ自体が、これも大変問題ですよ。そういう努力をもっとしっかりとやっていただくことを強く要請して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、中谷元君から関連質疑の申し出があります。町村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中谷元君。

中谷委員 引き続き、日米関係についてお伺いします。

 今、鳩山発言についての質疑が行われましたけれども、問題は、昨年の五月にアメリカとの日米合意を結んだときの総理大臣だった人の発言でございます。こちらに発言をまとめてみました。

 民主党の鳩山党首は、選挙の際に、普天間移設先は国外に、少なくとも県外にと言っていました。しかし、やはり移転先は辺野古しかないということで、昨年の五月二十八日ですか、記者会見をしまして、国民に謝罪しました。そして、辺野古に移転する理由をこのように説明しております。日本と東アジア地域の抑止力を維持するためのやむを得ない結果だと。

 そして、ここへ書いていますが、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった、学べば学ぶほど、連携し抑止力を維持していることがわかったと書いてありますが、二月十日の共同通信インタビュー配信記事によりますと、まず、徳之島もだめで、辺野古になったときに、理屈づけをしなければならなかった、海兵隊自身が沖縄に存在することが戦争の抑止になると、直接そういうわけではないと思う、海兵隊が欠けると、すべてが連関している中で米軍自身が十分な機能を果たせないという意味の抑止力という話になる、それを方便と言われれば方便だが、広い意味での抑止力という言葉は使えるなと思ったと。

 驚きました。これがアメリカと文書をもって合意した総理大臣の言うべき言葉ですか。このことは日米合意の存立を揺るがしかねない大問題でございますが、菅総理、この発言をどう思われますか。

菅内閣総理大臣 直接、鳩山前総理から話を聞いたわけではありません。ただ、先ほど来、町村議員の御質問にもお答えいたしておりますように、私は、総理に就任した時点から基本的には今日までこの問題で同じことを申し上げているつもりであります。

 つまりは、一つは、五月の二十八日の日米合意をまず踏まえていくということであります。また、沖縄における海兵隊を含む在日米軍の存在は、我が国の安全にとってもアジア太平洋地域の安全にとっても極めて重要な役割を果たしている、公共財的意味を持っている、このように申し上げてきましたし、現在もそのように考えております。

中谷委員 私は、総理大臣として今、沖縄の人たちに、そしてアメリカの人たちに、そして日米のために一生懸命努力している人のために、誤解がないようにしなければならないんですが、前総理大臣ですから、民主党の党首としても、総理大臣としても、鳩山由紀夫氏からこの真意とそして考え方をまず聞いてください。総理大臣、いかがですか。

菅内閣総理大臣 沖縄の地元の有力紙がインタビューされたというふうに承知をし、またその新聞は読んでおります。また、その後、鳩山前総理みずから若干のコメントですか、ぶら下がりですか、されたという報道もお聞きをいたしております。

 やはり、発言をされた方の真意というかそういうものは、御本人がどういう形で考えられて言われたということでありますので、前総理ではありますけれども、私が鳩山さんにかわって、こうだった、ああだったと言うのは適当だとは思いません。

 やはり、私は私の考え方を聞かれれば、明確にこれまでも申し上げましたし、これからも申し上げてまいりたいと思っております。

中谷委員 アメリカもそうですが、日本じゅうの国民が沖縄にこの基地が必要だということは、抑止力ということでありまして、これは総理大臣としてはきちっとその点は確認をすべきだと思います。

 そして、委員長、この発言について、鳩山由紀夫氏を予算委員会に参考人として要求するようにお願いいたします。

中井委員長 昨日も自民党議員から御要求がございました。

 理事会で協議いたします。

中谷委員 もう沖縄の名護の市長も、これで沖縄に基地移転する前提がなくなったんじゃないかと。方便という言い方をしましたので。早急に、総理、これは処理をしていただきたいと思います。

 そこで、総理の安全保障に関する認識を伺いたいんですが、この発言の中でも言われておりますが、鳩山氏は、沖縄の海兵隊は米国人を救出する役割の軍隊と言いました。総理、海兵隊は何のためにあると考えていますか。

菅内閣総理大臣 私は、陸海空、アメリカの場合は四軍制で海兵隊があり、海兵隊がどういう役割を果たしているかというのは私なりには、中谷委員ほどではないかもしれませんが、理解をいたしているつもりです。

 ただ、それらの関係性とか役割とかというものを、私の今の立場で事細かに申し上げることは必ずしも適切ではないのではないか。場合によれば、担当大臣に答えさせます。

 私が申し上げたいのは、別にそのことを避けるというのではなくて、先ほど冒頭申し上げましたように、海兵隊を含む在日米軍全体として、我が国の平和安定にも、アジア太平洋の地域の安定にも大変重要な役割を果たしているということでありまして、個別に何か、海兵隊の機能はこうだからこうであっていいんじゃないかとか、ああだからああだっていいんじゃないかという、そのところまで私が申し上げるのは必ずしも適切ではないと思っております。

中谷委員 あなたは、日本の国の自衛隊の最高責任者です。そして、日本の国の防衛、これについて責任を負っております。

 沖縄の海兵隊の意味。これは、まず我が国の安全保障、このために必要不可欠な存在でありまして、私は自衛隊のときに沖縄へ行って海兵隊と訓練しました。また、毎年、沖縄の軍人、海兵隊の人と富士山に登ったりして、やはり我が国を守ってくれていることに対して敬意を表しています。そして、海兵隊の隊員から話を聞くと、彼らは、アメリカから遠く離れてこの日本にやってきて、自分の命をかけてもこの国を守るんだ、そしてこのアジアの平和を守るんだ、そういうことを真剣に言っております。まず、こういう人の気持ちがわからなければなりません。

 そして二つ目、これは抑止力、プレゼンス。台湾と中国の問題、北朝鮮と南北の問題、何かあったときに、この海兵隊がいるということで事態は収拾されます。いわば抑止力という意味において、日本の防衛に必要な存在です。

 そしてもう一つ、今、テロ、災害、不測な事態、いつ何か起こるかわかりません。このとき海兵隊は、単にアメリカの人たちの、自分の国の命だけ守るんじゃなくて、日本人も含めて、インドネシアも韓国も台湾もタイも、すべての国の人々を救わなければならないという崇高な気持ちを持っておられます。

 それに対して、鳩山前首相はアメリカ人の命を守るための任務だと言ったことに対して、総理大臣としてこれは違うんだということを説明してください。何か言うことはないですか、責任者として。

前原国務大臣 今、中谷議員がおっしゃったとおりでありまして、海兵隊の任務というのは、何か紛争があったときに真っ先に投入される部隊が海兵隊であります。

 先ほど北澤大臣から町村議員の質問に答えておられましたけれども、なぜ沖縄かということの一つの理由は、日ごろの訓練の場所、そして佐世保にある強襲揚陸艦とのセットの話、さまざまな観点からのコンビネーションの中で沖縄という地が抑止力も含めて最善である、こういうことであります。

 したがいまして、我々としては、もし万が一、日本国に何かがあったときには日米安保条約第五条に基づいて日本の安全に力を果たしてくれる、あるいはこの地域の安定と平和のために役割を果たしてくれる、そういったアメリカ軍そしてまた兵士に対しては敬意をしっかり払わなくてはいけないというのは当然のことだと思っております。

中谷委員 前原さんは外務大臣でございますが、自衛隊の指揮官じゃありません。自衛隊の最高指揮官は総理大臣ですから、総理大臣に聞いています。

 沖縄の海兵隊、先ほど町村さんから質問がありましたが、何で沖縄にいなければならないのか、自衛隊の最高指揮官としてお答えください。

菅内閣総理大臣 今、前原外務大臣の方から少し、いわゆる揚陸艦というんでしょうか、海兵隊を運ぶ船の配置とかいろいろなことも言われました。

 ですから、私は、海兵隊というのは、まさに日米安保条約のもとで、もし我が国に対するどこかの国の攻撃があったときにともに戦ってくださる、そういう立場にある皆さんだということで、私からも敬意をあらわしたいと思いますし、実は、この国会が始まる少し前に外交の講演をいたしましたけれども、多くの大使が聞いておられましたが、その場でもそのことは特に触れさせていただきました。

 その上で、私は、抑止力という言葉は、最初に非常に強く頭にあるのはやはり核抑止力、日本は核兵器を持たない、そういう意味では、核に対してはアメリカの核の傘にあって、その核抑止力に負っているということは、これは今日も続いていると思います。そして同時に、最低限の自国の防衛はやはりみずからの力でやるべきだ、最低限というのがどのレベルかということはありますが、それが自衛隊の任務であろう、このように思っております。

 そういった意味で、沖縄におけるアメリカの海兵隊、たしか第三海兵隊でしょうか、他の二つの海兵隊はアメリカ国内におられるわけでありまして、その任務は、先ほど申し上げておりますように、日米安保条約に基づく日本の防衛義務を負っていると同時に、アメリカのアジア太平洋あるいは世界戦略の中でいろいろな役割を果たされているということもこれは客観的な事実でありまして、そういうことも含めて、私は、沖縄の海兵隊の存在というものを、そういう日本国内だけのためではなく、もっと広い意味を持っているというふうに認識をいたしております。

中谷委員 御理解いただきたいのは、自衛隊というのは自衛力しか持っていません。要するに盾と矛の関係で、自衛隊でできない部分を在日米軍が補っていますが、なぜ沖縄かというと、力の空白を生じさせないためなんです。沖縄でこういう抑止力が方便だったと言われると、プレゼンスが落ちます。沖縄での海兵隊のプレゼンスの低下、これは中国海軍を勇気づけて、西太平洋における活動範囲を広げることになります。

 また、沖縄に海兵隊が残留すること、これは有事の際に自衛隊と在日米軍が共同で対処するということも必要でありまして、特に米軍は盾と矛の部分、両方担いますけれども、これがいることで沖縄の攻撃が手控えられる。これが在日米軍と日米の両方の抑止力ということでありまして、海兵隊は沖縄でなくてもいいという議論は著しく我が国のこの対応を弱めてしまいます。これは今、ロシアの動き、そして中国の動き、こういうことも連動しますので、この点はぜひ御認識をいただきたい。

 そして、この発言の中にまだまだ大問題があります。

 一つは、鳩山氏は、米軍が辺野古にこだわるのは沖縄がパラダイスのように居心地がよいためと言いましたけれども、いいかげんにしてください。米国人は、ふるさとを離れて、命をかけて、日本の平和と安全のために、どれほどつらい思いをしながら、どれほど肩身の狭い思いをしながら、どれほど使命感を持ちながら仕事をしているのか、わかっているのか。

 この辺野古に至る経緯は、地元の市長さんや関係者がまさに命をかけて話し合ってきて、我々が積み上げたものです。この積み上げを壊した上に、さらにさらに後ろ足で砂をかけるようなことを平気でやられる前総理、私は容認することができません。謝罪すべきだと思います。

 そして、北澤大臣にも言及があります。防衛省の考え方を超えてもっと勝負してほしかった、外務、防衛官僚は言うことを聞かなかった、彼らが米国と交渉するから私はそこまでできなかった、それを後悔している、こんなことを言われております。

 いろいろな思いがあろうかと思いますが、最後にこのインタビューはこういう言葉で締めくくられています。オバマ大統領も周囲からインプットされていた、日米双方が政治主導になっていなかった。これは、アメリカの大統領を非常にないがしろにして、決めつけているという見方でありまして、このことも米国政府にはきちんとその真意を説明する必要がありますけれども、北澤大臣、名指しで言われましたが、どういう感想をお持ちですか。

北澤国務大臣 今さら私は自分を売り込むつもりはありませんが、私は、大臣に就任して以来、この問題について真剣に取り組んで、抑止力の問題、そしてまた沖縄の地政学的な立場、沖縄の皆さん方の思い、そういうものをずっと検証する中で私なりの判断をきちんといたしたわけでありまして、防衛官僚が私に何かインプットしたというようなことは全くありません。

 それから、私は、細かく読んでおりませんけれども、鳩山前総理の発言というものはなかなか理解ができません。人生、長く生きておりますと時々とんでもないことが起きますが、私の人生の中でも、一、二を争うような衝撃的なことであります。

中谷委員 それでは、時間の関係で次の話題に移りますが、総理、きょう二月十六日、これは何の日だと思いますか、朝鮮半島で非常に注意をしなければならない日ですが。

 答えを申し上げます。北朝鮮の金正日総書記、六十九歳の誕生日です。何が起こるかわかりません。

 ソウルには何万人もの日本人が住んでいます。総理は、昨年十二月十一日、朝鮮半島有事の際に半島にいる邦人救出のために自衛隊機で救出に向かおうと思ったときに、日韓でルールづくりができていない、安全保障に絡む協力関係が進んでおらず、少しずつ相談を始めればいいと述べました。

 総理、この後、邦人救出について、政府で一体どのような検討をされ、どこまで進んでいるんですか、この総理の発言について。

前原国務大臣 防衛庁長官をやられた中谷議員でございますので、余り個別の例に基づいて議論をしているということについては、私からは言及は避けたいというふうに思っておりますけれども、一般論として、邦人救出のあり方については、政府の中でさまざまな議論をしているところでございます。

中谷委員 前原大臣、きょうは韓国から外務大臣が来られていますので、まだお話ししていなかったらぜひお話をしていただきたいと思いますが、やはり邦人救出というのはどこの国でも、自国の国民を国、政府が救出するというのは当然のことであって、我が国だけがこれが完全にできていないという状況です。

 パネルをごらんください。

 自衛隊法の中に、在外邦人の輸送ですよ、救出じゃなくて輸送の項目がありまして、この内容は、輸送の安全について外務大臣と協議をし、これが確保されると認めるときは邦人の輸送を行うとなっていますが、問題は、安全が確保されているというときしか救出に行けないということで、安全であれば別に自衛隊が行かなくてもいいし、私はこの前のエジプトとか今のイランとか、政府専用機、ダボスに行くよりはエジプトに飛ばすべきだと思いますが、要は、ここの法律が問題でございます。

 韓国と協議をすると同時に、法律を見直すという意味で、我が党は、輸送の安全が確保されないときでも自衛隊を派遣できるという法案をもう既に出しています。どうですか、政府、与野党で協議をして、早急にこの法律の改正をするという意思はございますか。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 既にそういう研究をなさっておられることは十分承知しておりますが、一方で、現実的な問題とすれば、自衛隊がそこへ、その空港におりたことがないという現実があります。そしてまた、そこで管制がどの程度行われるのか、そういう極めて現実的な問題がありますので、御提案もいただいておりますので、そういうことはしっかり協議をしたらいいかな、こういうふうに思っております。

中谷委員 この問題は、やはり政権交代したときがチャンスなんですね。我々のときできなかった問題は、やはり憲法なんです、憲法。日本国憲法の中で、どの程度の自衛隊の行為を許すべきかという意味で、枝野さん、安全保障の責任者で、実際日本人が危機のときは、あなたが判断しなきゃいけません。そういう意味では、手段を多く持っておくということが必要です。

 枝野官房長官は、憲法について国会でもよく対応されておりましたが、民主党はいまだに憲法調査会、参議院でも設置されていませんし、衆議院でも協議をすることを決断しておりませんが、これがスタートしなければ憲法の問題は議論できませんし、今、政府の官房長官ですから、憲法の解釈、自民党政権のときはかなり検討しました。憲法の解釈、これについて可能とするための検討をする意思はありませんか。

枝野国務大臣 今、中谷先生初め国会に提出されている法案について直接のお答えは避けたいと思いますが、現行憲法のもとでも、邦人救出等を初め我が国の国民の、特に在外邦人の安全をしっかりと守っていくということに向けて、憲法上の制約ということでできないということではなくて、そういった意味ではまだやれる余地は多々あるというふうに認識をいたしております。

 ただ、問題は、それを具体的、現実的に、どこまでどうできるのかということについては、先ほど防衛大臣から御答弁申し上げたとおり、今、御党からの御提案も含めて、検討をさせていただいているところでございます。

中谷委員 問題は、政府の姿勢として問うておりますので、自民党はこの案をもう出していますから、この改正案、安全じゃないときも救出に行ける。ですから、早くこのラインまで、中でまとめて出してください。その時点で成立できると思います。

 もう一点、総理に伺いたいことがあります。

 これはつい五日前に発表されました米国の国防戦略の報告書です。QDRに基づいて、アメリカの統参本部が、アメリカの軍隊を国家のためにどう動かすかという、これは二十ページぐらいある、ぎっしり英文で書かれた文書ですが、日本を書かれているくだりはこの三行しかありません。非常に寂しいです。韓国はもっともっと、この何倍も記述をされていますが、それほど日本とアメリカの関係は希薄になったのかなという思いです。

 内容をちょっと読んでみますと、この内容は、アメリカのこれからとしましては、防衛計画の大綱を踏まえて、自衛隊の圏域外の運用能力の向上のためにアメリカは支援する用意がある、そして、日本と韓国との協力のために米国は支援するという内容です。

 この点について、総理は、昨年の十一月でしょうか、日米の首脳会談の際に、アフガニスタンに対して医療部隊を派遣することに対しまして、アメリカ大統領に前向きに検討しますということを発言し、その後、アフガニスタンに調査団を送ったわけでございますが、あれから大分時間もたっていますけれども、今、この対外支援のことについて、一体アフガニスタンをどうするつもりなのか。そして、その後、自衛隊を含めた対外関係の運用強化、これはどのように考えておられますか。総理が発言しましたので、総理、答えてください。

菅内閣総理大臣 今、中谷議員が言われた形で、アフガニスタンへの自衛隊の医官派遣について、幾つかの協議をいたしました。昨年十一月十三日、日米首脳会談において、私からオバマ大統領に、アフガニスタン国軍の医療分野での教育訓練について要請があると承知しており、前向きに検討していると述べたわけですが、現時点では、派遣の形態や法的根拠等について検討を続けているというのが現状であります。

中谷委員 これは総理の決断でできます。おれに決断させるのが菅直人だと言われては困ります。

 調査報告に基づいたら、私は、安全性、そしてアフガン政府の意向、これは可能だと思っておりますが、問題は法律を整備することだと思っております。

 九・一一のときにつくりましたテロ対策特措法、これはインド洋の燃料補給支援もできますが、アフガン国内での医療や後方支援もできる内容になっています。やはり、こういった、アメリカに約束した以上、早く法律をつくって、国会で審議して、自衛隊を堂々と活動できるように出すというのが筋だと思いますが、この点、総理はどうお考えですか。

前原国務大臣 この点は、アメリカに言われてということではありません。

 アフガニスタンに対して日本がどういう貢献ができるのかという中で、独自に考えていることでございまして、先ほど総理が答弁をされましたように、今検討中でございまして、結論を得て判断をしていくということになります。

中谷委員 非常にだらしないですね、言い出しただけで、やりくさしという状態は。(前原国務大臣「検討中です」と呼ぶ)検討中ですか。

 ですから、アメリカとの信頼関係も、SCCということで協議は続けていますけれども、やはり約束したことをしっかり一つでも二つでもやるという姿勢、これが日米の本当の意味の信頼関係につながります。

 したがって、非常に残念なのは、去年、日米安保五十年でした。やはり日米両国で記念式典は行うべきでした。今から十年前、私、防衛庁長官でしたが、サンフランシスコ条約五十年のときは、サンフランシスコでも東京でもしっかりとした式典を行って、日米のこれからの歩むべき方向を確認しておりますが、昨年は何も行われていない。ただ紙切れ一枚で終わっておりますが、まさに日米関係って、こんな寂しいものなんでしょうか。これがすべていろいろな問題に影響を受けておりますが、少なくとも、私がきょう言った邦人救出と自衛隊の海外の活動の強化については何らかの姿勢を示すべきだと思います。

 前原さんに伺いますが、今から十数年前に、前原さんが野党のときに、私にガイドラインの問題で、アメリカの艦艇が平時、周辺事態において非常に攻撃されたときに、自衛隊の船が横にいたときに、自衛隊が護衛または対処できるかという質問に対して、前原氏は、そんな情けないことでどうするのかということを言われましたが、同じ質問を前原さんにさせていただきます。こういった周辺事態に、米艦艇が危険なときに、自衛隊の船が横にいた場合に対処できるんですか。

前原国務大臣 まず一つは、先ほどおっしゃった、日米関係がおかしいということはありません。私は、日米関係は極めて盤石で強固なものである。それは、やはりお互いが戦略環境に基づいて協力していくことが大事だということで認識をしておりますので、そういう意味では、何か普天間の問題がすべてで、それで日米関係ががたがたしているという前提で物をおっしゃるのは、まずやめていただきたいということであります。

 その上で、先ほどの御質問でございますけれども、法的解釈は自民党政権からいまだに変わっておりません。

 ただ、私もこの立場につかせていただいて、ガイドラインのたゆまざる見直し、つまりは、いつもガイドライン、平時あるいは周辺事態それから日本有事、こういったものを具体的に今の戦略目標というものに合わせて見直していくということが大事だということで、それは、北澤防衛大臣とともに作業しながら、アメリカとも不断の見直しをしているということは申し上げたいと思います。

中谷委員 真の日米関係というのはやはり約束したことを守ることであって、こういった活動についても、我々はもう意見をまとめていますので、早く民主党の中できちんとまとめて提案してください。外務大臣、防衛大臣、リーダーとしてお願いします。

 最後に、きょうのまとめですが、とにかく安全保障がわかっていない人は総理大臣をやるべきではありません。別に菅総理がそうだと言っていませんが、少なくとも、菅総理は沖縄の基地問題も日本の外交も安全保障もむちゃくちゃにしてしまいました。取り返しのつかないことになりました。

 今、菅総理、総理大臣として伺います。普天間の移設問題、明確なスケジュールを示してほしい。ことし五月に訪米するまでに何を決めるんですか。何をどこまで決定しなければならないと現時点で考えておられるのか。沖縄の皆さんが注目しています。お答えください。

菅内閣総理大臣 この普天間の問題、一方で、ことし前半の間に私がアメリカを訪れて、オバマ大統領と日米同盟の深化について、できれば何らかの共同声明といったようなものを出していきたい、こういうスケジュールになっておりますが、そのことが、例えば普天間の問題でいついつまでに何をこうしていくということとストレートにつながっているわけではありません。

 ただ、五月二十八日に日米で合意したことについて努力をしていく。幾つかの問題で、例えば2プラス2を行うことが必要だとか、そういうことは当然ありますけれども、行くまでに、どこどこまでの期限を切って何かをする、そういう形にはなっておりません。できれば、もちろん普天間の問題も重要でありますけれども、きょうも話題になりました、それ以外の、例えば日米間におけるアフガニスタンや他の問題等々、ハイチなどでも頑張っておりますけれども、そういう国際的な社会の中で我が国がより協力できるところ、あるいは逆にアメリカが中心になるべきところ、そういうことについても、より積極的な形でそうした協力関係が合意できれば望ましい、こう考えております。

中谷委員 今の答弁は全く内容のない答弁でありまして、もうこのままでは、日米安保を初め、日本外交は八方ふさがりです。総理としてやはり決めるところは決めて、国民に安心感が出されるように、そうしないと非常に混迷が続くということを申し上げまして、質問を終わります。

中井委員長 この際、赤澤亮正君から関連質疑の申し出があります。町村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正です。

 質問の時間をいただき、ありがとうございます。貴重な時間でありますので、閣僚の皆様には簡潔な答弁をお願いしておきます。

 昨年、十一月九日、予算委員会で私、質問いたしました。引き続き、環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPを含む経済連携について質問をいたします。

 まず、菅総理、現在、TPPへの参加をめぐり国論が二分をしている、かつ、建設的な議論、かみ合った議論が余り行われていないため、国民の間に混乱と不安が広がっているのはなぜだとお考えですか。

菅内閣総理大臣 この問題は、一つは、いわゆる経済連携ということについて言えば、この十年間、例えば隣国の韓国などに比べて、多くの国とのFTA、EPAの締結がおくれていたわけでありまして、それを、現在、インドとのEPAが結ばれ、ペルーと結ばれ、また今、一番難しいとされるオーストラリアとの議論も始まっている。私は、経済の連携ということで言えば相当程度進展をしている、このように思っております。

 その上で、もう一方で、農業の改革について、今、実現会議を……(赤澤委員「総理、TPPについて聞いているんです」と呼ぶ)いや、ですから、今、御質問は、そういう不安が広がっていることをどう思うかと言われたから……(赤澤委員「TPPについての不安ですよ」と呼ぶ)

中井委員長 質疑者は答弁を聞いてください。

菅内閣総理大臣 そういった意味で、農業についての改革についても、今議論を進めているところであります。

 TPPは、御承知のように、そういった地域連携の中の一つのあり方でありまして、これについては、昨年の十一月の段階で、情報収集を含めて関係国との協議を開始するということで、現在協議を開始いたしております。

 こういった事柄一つ一つの進行状態について、もっと国民の皆さんによくわかるようにということで、今度は各地域におけるフォーラムを開催することにいたしておりまして、そうした努力によって国民の皆さんの理解を得て、最終的には六月の段階で交渉に参加するかどうかを決めたい、こう考えております。

赤澤委員 すべて、前回の予算委員会で私が指摘をした、思いつきで、準備全くなしにTPPについて参加の検討を表明し、その後も戦略がないということに端を発していると思います。

 端的に言えば、TPPについて、日本が得るもの、そして譲るもの、全く国民に情報を明らかにされていません。そして、どういった国内対策とセットでそれが出てくるのかもわからない。にもかかわらず、総理は内外で、あるいは総理に限りません、閣僚の皆さんが開国、開国と浮かれ騒いでいる。これは、国民が不安を覚えたり混乱しない方が不思議なんですよ。

 なので、二番目に伺いたいと思うのは、なぜ、肝心のTPPの具体的内容、あるいは農業などの国内対策、さらには財源を、国民の混乱や不安に先駆けてタイムリーに示すことができないんですか。

玄葉国務大臣 赤澤委員御承知のとおり、昨年十一月に包括的経済連携の基本方針というのが決まったわけです。

 今お尋ねは、ハイレベルEPAではなくてTPPだということでございます。そのときに、御存じのように、情報収集のための協議、交渉に参加をして情報を収集するということではございません、情報収集のための協議ということで、鋭意、今でき得る情報収集を行っているところでございます。

 おっしゃるとおり、適時適切に、でき得るだけの情報提供をしていかなければならないというふうに考えております。

赤澤委員 きちっと準備をしてからTPPの検討を表明していれば、国民の混乱が起きる前にいろいろなものが提示できるんです。全く手順が逆だから、こういうことになっているんですよ。

 そこでお伺いをしますが、六月にTPPについて何を決めるのか、これは総理、お答えください。

菅内閣総理大臣 TPPの交渉に参加をするかどうかということを決めたい、こう考えております。

赤澤委員 加えて、それでは、国内対策についてはどういったものが示されるんですか、六月の時点で。

鹿野国務大臣 現在、食と農林水産業再生会議におきまして、また実現会議におきまして、これからの農業というふうなものを、どういうふうに構造改革も含めて持っていくかというようなことを、今の農業の実態というものを踏まえて検討してもらっているわけでありますけれども、その中には当然、昨年の十一月におきまして、我が国の包括的経済連携に関する基本方針も出したものですから、そういう中で具体的に国内対策もどうやっていくかということも、そういう議論の中に盛り込んでいただいて、そして基本方針を六月に出す、こういう方向でございます。

赤澤委員 それでは、パネルに今御指摘のあった基本方針、抜粋を載せております。ポイントは、「高いレベルの経済連携を進める。同時に、」「抜本的な国内改革を先行的に推進する。」当然のことながら、国内改革の方があわせて出てこないと、国民は、これは何が起きるかわからない。

 端的に言えば、賛成な人間でも、例えば国内改革がそんなに力の入っていないものだったら、これは賛成できない。あるいは、反対の人間でも、国内改革をそれだけしっかりやるならちょっと考えてみようか、こういうこともあるかもしれません。

 同時に出すことが大事なんですが、六月に交渉に参加することを決める時点で、農業の国内改革、財源も含めて示せるんですか。

玄葉国務大臣 先対策という言葉が御存じのようにあるわけであります。今鋭意、食と農林水産業の再生実現会議という会議、そして、そのもとに置かれている幹事会で精力的にヒアリングをしております。

 いつも申し上げておりますけれども、守りの部分と攻めの部分と、六月に基本方針をまとめたいというふうに考えております。

赤澤委員 それでは、その基本方針に一体何が書かれるのかということなんですよ。対策の中身は、これは当然のことながら金額が入り、財源が明らかになっていなきゃ関係者は全く安心できませんし、議論もできません。基本方針が示されるというのは、その中身はどんなものなんですか。

玄葉国務大臣 通告がなかったので、今具体的に責任を持ってどこまでお答えできるかというのはございますけれども、でき得る限り具体的なものにさせていただきたい、そう考えております。

赤澤委員 今確認いたしますが、行動計画、いいですか、国内対策、そして予算額も入り、財源も書いた行動計画は十月というのが基本方針だったと思いますが、できる限りのものを六月に間に合わせて出すという答弁だったと思っていいですか。

玄葉国務大臣 何かひっかけ質問をされているのかどうなのか。

 赤澤さんが今おっしゃったとおり、行動計画が極めて詳細なものになって、ただ六月の基本方針もでき得るだけ具体的なものにする、こういうふうに申し上げたわけです。

赤澤委員 具体的に金額は入るんですか。

玄葉国務大臣 現在検討中です。

赤澤委員 そこについて現在検討中で逃げられましたけれども、一言で言って、交渉に参加するというのは非常に大きな意味があるんです。

 その決定をするに当たって、国内対策、どれぐらいの予算で、どういう対策が打たれるのか、全くそれを国民に知らせることなく、その議論もなしで先に進むことというのは、私は許されないと思いますけれども、いかがですか。

玄葉国務大臣 ですから、同時並行的に農業強化策を今検討しているわけです。それを六月に出させていただくということを申し上げているわけです。

赤澤委員 同時並行でなきゃいけないですよ。本当に同時並行じゃなきゃいけないんですよ。今の話は、六月に参加を決定した後で、対策が出てくるのは十月だという話じゃないですか。それは全く話が合わない。六月の時点でスローガンだけ出されて先に進まれたら、これは、過去に大迷惑を国民にかけた民主党の、最低でも県外と言ったけれどもできなかったとか、あるいは八ツ場ダムをやめると言ったけれどもいまだに混乱しているとか、同じことですよ。本当にきちっと国内対策が実現できる裏づけを財源つきで示さなきゃ、議論なんかできるわけないでしょう。責任持って答えてください。

 総理、いかがですか。玄葉さんのは答えになっていませんよ。

菅内閣総理大臣 今、各関係大臣から申し上げていますように、TPPについては六月に、参加をするというのではなくて、いわゆる参加について交渉に入るということであります。もちろん、TPPそれ自体も……(発言する者あり)いや、ずっと言っています、そういうふうに。六月には交渉に入るかどうかを決めると。その参加をするための交渉に入るかどうかを決めるのが六月だというのは、従来から言っていることであります。それとあわせて、農業の再生実現会議で、六月をめどにこの農業再生に関して基本方針を提示します、そして十月に行動計画を策定しますと。

 私のイメージでいいますと、この農業の再生実現会議は、つまり、現在例えば就業年齢が六十六歳になっているといったような、必ずしも直接この経済連携の問題があるなしにかかわらず、衰退している農業をどうするかという問題と、それからこの経済連携に伴って影響を受けるものに対してどうするかという問題をあわせてきっちりと議論をしていく必要がある、このように考えております。

赤澤委員 今のお答えでは全く安心ができないわけです。少なくとも、民主党政権、財源については、マニフェストについて十分なものを用意できなかった、あるあると言ってできなかった、そういう過去がございます。

 加えて、本当に私があわせて心配をするのは、当然のことながら、その対策が六月前には示される。加えて、TPPの先取りと言っていい日豪についても、それまでは国内対策がある程度出るまでは先に進まないものだと思ったら、先週、日豪のEPA、交渉再開したんですよ、十カ月ぶりに。日豪EPAについては、これは明らかにTPPの先取りですけれども、それについての国内対策というのはきちっと示すんですか。これ、現実の交渉はもうやっているんですよ。関税撤廃の話にこれから進む可能性があるんですよ。いかがですか。総理、お答えください。

海江田国務大臣 赤澤委員にお答えをいたします。

 まさに今御指摘のように、せんだって、十カ月ぶりにこの日豪の交渉がスタートしたところでございます。そして、約二十の分野にわたって今まさに議論がスタートしたばかりでございます。

 そして、四月をめどに次回のこの会合を開くということになっておりまして、そうした一つ一つの会合ごとにこれから国内の対策もしていかなきゃいけないわけでございますが、何分に、今まだその対策の前の段階の成案を得ておりませんので、成案を得る、その作業と同時に国内の対策も考えていかなければいけない、このように考えております。

赤澤委員 それでは、玄葉さんでも海江田さんでもいいです。日豪EPAがまとめられずに、TPPの参加交渉に入ることができるとお考えですか。

海江田国務大臣 赤澤委員にお答えをいたします。

 本来、日豪の提携とそれからTPPとは別物でございます。しかし、この両者の間に共通する問題もございますので、そこは、両方を同時並行的に議論をしていく、こういうことでございます。

赤澤委員 それでは、日豪についてもいろいろと発言が続いております。

 実は、昨日、農業新聞にも、玄葉大臣が、これはTPPについて述べられた。関税についても撤廃の対象から外れる部分があるというようなことをおっしゃっている。裏返せば、関税撤廃する部分もTPPについてある。

 日豪についてはどうお考えでしょうか。関税撤廃の余地があるというお考えでしょうか。

玄葉国務大臣 日豪の交渉は、全体として着実に進展をしているという報告を聞いていますが、具体的な農産品についてどうなっているかということについては、相手国とのこともございますから、今この場で申し上げることは残念ながらできません。

赤澤委員 それでは、ちょっと二番目のパネルを見ていただきますが、要は、基本方針に書いてあることはこういうことなんです。

 センシティブ品目、日本にとって重要な品目、主に米、麦、砂糖、牛肉、乳製品といったようなものでありますけれども、これについて「配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし、」具体的に変わったのはここです、「交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す。」こういうことです。

 高いレベルの経済連携については、二月十日の予算委員会で、玄葉大臣が吉井委員の質問に対して、ハイレベルEPAというのは、農業分野では重要品目の関税全廃を意味するものではないが、タリフラインでまさに九〇%あるいは九五%を超えるハイレベルEPAだと考えてよいという趣旨の答弁をされています。

 ハイレベルEPAとは、九〇%超、九五%超、いずれなんですか。

玄葉国務大臣 相手国が特定されている中で明確な数字を申し上げることはできませんが、一般論で申し上げれば、やはり九〇%は最低でも超えていかないと、いわゆるハイレベルEPAとは言わないだろう。世界の潮流から遜色のない高いレベルというのは、一般的には九五%を超えるものになるのではないかというふうに思います。

赤澤委員 それでは、鹿野大臣にお尋ねをします。一般論でも結構であります。

 九〇%超でも、正確に計算すると、九百四十品目、我が国は重要品目として扱っていますから、一〇%を超えてきます。一〇%超、つまり九〇%超のきちっとしたハイレベルなものをやろうと思えば、重要品目の関税撤廃は現実的な問題となってきます。九五%超となれば、さらに多くのもの、半分ぐらいは関税撤廃しなきゃいけない。この余地がハイレベルEPAであるわけですね。

鹿野国務大臣 それぞれのEPAを進める相手国のことにおいて、数字的にはいろいろ出ると思いますけれども、当然、今、玄葉大臣から言われたとおりに、九〇が九五というようなことが一応高いレベルというようなことであるならば、そういうことを意識しながら交渉していかなきゃならない。

 しかし、一方においては、このセンシティブ品目をどうやって配慮をしていくかというようなことも当然あるわけでございますから、その両にらみをしながら交渉に当たっていくということだと思います。

赤澤委員 今の答弁は、結局、成り立たないと思うんですよ。

 それはなぜかというと、九〇%超を目指そうと思えば、重要品目の関税を撤廃しないと、これは実現しませんよ。

 二〇〇六年、平成十八年の全会一致の衆参両院の農林水産委員会の決議というのがあるんです。衆議院の場合であれば、「米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。」これであれば、重要品目の関税は撤廃できませんよ。おっしゃっていることは矛盾していませんか。

鹿野国務大臣 矛盾しているということではございません。我々とすれば、この国会決議、これは注視して、きちっと考えながら、念頭に置いて交渉に当たっていかなきゃならない。しかし一方、高いレベルで経済連携も進めていかなきゃならない。それがどの程度の、具体的な品目についてどうなるかというふうなことは、まだ品目別の話し合いまでいっておりませんので、そういう状況の中で、私たちは、この国会決議というふうなものを念頭に置いて交渉に当たっていくというふうなことは考えていかなきゃならないと思っております。

赤澤委員 本当に、言っていることの意味が要はわからないわけですよ。

 私が前回の予算委員会でも指摘をしたことなんですけれども、玄葉さんは、閣議決定した、方針を決めたんだから閣内不一致はないというようなことをおっしゃるんですけれども、この国会決議も守って、重要品目の関税撤廃をしないでハイレベルの経済連携というのは、具体的にあり得るんですか。玄葉さん、鹿野大臣、両方お答えください。

玄葉国務大臣 国会決議につきましては、多分、手元に資料がございますけれども、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目について、除外または再協議の対象となるよう、政府一丸となって全力を挙げて交渉すること……

中井委員長 玄葉君、委員会決議です。

玄葉国務大臣 委員会決議ということでございますけれども、基本的に、センサティブ品目あるいは重要品目に配慮を行いながら交渉を行うというのは、我々の基本的な姿勢でございます。

鹿野国務大臣 ここに書かれてありますとおりに、委員会決議というのでしょうか、委員会決議は結局国会決議ということでありますけれども、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などというふうなものを、重要品目というふうなことを指定した場合に、高いレベル、果たして九〇程度のものが九五になるかどうかというようなことを十分意識しながら交渉に当たっていかなきゃならない、こう思っております。

赤澤委員 鹿野大臣、ちょっと逃げの答弁はぜひやめていただきたいんですよね。

 見ていただけばわかるとおり、九五%を目指そうと思ったら、肉類でありますとか肉の調製品であるとか、そういうものの関税を一部撤廃していかなければ、これは実現しようがありませんよ。九五%超なんかはそれでなきゃできませんよ。どうやってできるんですか。具体的に説明してください。

鹿野国務大臣 品目別の交渉という段階ではまだございませんので、私どもとすれば、重ねて申し上げますけれども、高いレベルというような状況になっても重要品目について配慮をするというようなことが成り立つように、粘り強く交渉していくというふうなことを考えておるところであります。

赤澤委員 もう一回聞きます。

 配慮というのが閣議決定の方針でありますけれども、この農水委員会の決議であれば、除外または再協議の対象とするということを言っているんですよ。単なる配慮じゃないですよ。それは守れるんですか。重要品目の関税は撤廃しないんですね。そのことを断言してくださいよ。議論になりませんよ、これは。

鹿野国務大臣 委員会決議というふうなものが、今先生から言われたとおりに具体的な考え方として出ていますけれども、そういう委員会の決議というふうなものを意識して交渉していくというようなことは、当然我々としては大事なことだというふうなことを申し上げているわけです。

 ですから、今、赤澤委員が、九五というふうなものが本当にそういう範囲内でできるのか、こういうようなことでありますけれども、具体的に、私どもは何とか、高いレベルというふうな状況の中でどうするかというふうなことを考えながら交渉に当たっていくというふうなことを、今の段階ではまだ品目ごとというふうなことの交渉に入っておりませんので、そういう考え方で交渉していきたいという基本的な考え方を申し上げさせていただきます。

赤澤委員 全く答えになっていません。だから安心できないし、本当に不安と混乱が広まるんですよ。

 なので、具体的には、日豪EPAの交渉を、これは四月にキャンベラで予定していますよね、先に進めることについては全く無責任だと。高いレベルの経済連携について、いろいろな選択肢でもいいですよ、これならできる場合がある、国内対策、こういうものを考える、具体的な内容です、こういう形で結ぶんだと。それプラス農業などの国内対策、パッケージでぜひ示していただきたいと思います。そのことについてお約束ください。

玄葉国務大臣 おっしゃるように、重要品目については、国内の対策をどうするのかというのは、率直に申し上げて、私の方でも内々検討をしております。

 九五%という場合も、何をもって九五%かというのも率直に言ってあるわけですよね。例えば除外の問題と、例外の問題と。例外も、実は期間の問題、そして同時に、仮に農産品で関税が安くなった品目があったときに、それに対してセットで農業強化策、仮定の話ですけれども、例えばの話、畜産だったら、では今の不足払い制度をどうするのかとか、そういった議論を当然並行しながら行っていくということでございます。

赤澤委員 今ので全く説明になっていないと私は思うし、では、鹿野大臣に聞きます。今、関税撤廃するときに期限を設ければ、その形では考え得るんだということをおっしゃいました。では、重要品目について、期限つきで関税撤廃するということを検討しているんですね。

鹿野国務大臣 交渉事でございますので、期限を切るというふうなことは、果たしてそれが我が国にとってプラスになるかどうかということを考えたときには、やはりこの点は、期限を切るかどうかというふうなことは考えなきゃならないことだと思います。

赤澤委員 総理、お二人の閣僚がしている話が合っていないですよ。

 要するに、期限つきの関税撤廃みたいな話を検討するのも選択肢だ、だから九五%超もあるんだと玄葉さんは言ったわけですよ。鹿野大臣はそれについて全然お答えになりませんよ。総理としてはどう考えておられるんですか。

枝野国務大臣 今、玄葉大臣、鹿野大臣両方からお話し申し上げておりますのは、まさに今、現に、オーストラリアとの関係では交渉がスタートをしたところでございます。その前のTPPについては、各国での交渉の状況から情報を集めているところでございます。

 まさにそうしたことの中で、相手国もどういう主張をしてくるか、あるいはTPPについても、これは原則論みたいなことはいろいろ言われていますけれども、今協議に参加している各国も、それぞれ国内にどうしてもその国にとって守らなきゃならない産品があるわけでございますので、では実際に各国ともどういう交渉が進んでいて、どういう中身になっていくのかというのは、まさに今、現在進行形でTPPがあります。

 日豪については、まさに二国間の交渉の中で、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますとおり、農水委員会での決議も踏まえて、我が国にとって重要な国益をしっかり守りつつ、一方ではできるだけハイレベルの経済連携を進めていくという、大変困難ではありますけれども、そのことを目指して交渉している途中でございます。

 そうした中で、お尋ねがありましたので、例えばということでいろいろな選択肢があるということを両大臣からお話し申し上げているのであって、そして、実際に交渉が進んでいく過程においては、当然のことながら、今の段階では相手国との関係で申し上げられないことも、具体的に煮詰まってくれば国民の皆さんにも御説明をし、そして必要に応じて、例えば農業に関してであれば、どういった農業の振興策がセットにされるのかということは、もし締結に至るとしても、当然それまでの間に示されていくものでございます。

 現時点はまさに日豪の交渉が再開をされたところでございますので、いろいろな選択肢があるという中で、農水委員会での議決を踏まえながら努力をしていく、その上で、できるだけハイレベルの経済連携を進めていくという方針を御理解いただければと思います。

赤澤委員 非常に空疎な言葉を本当に並べられるんだけれども、それで安心できると私は思いません。

 もう一度具体的に申し上げますけれども、TPPの交渉に参加する前に、TPPの具体的内容、それから農業などの国内対策、そして財源を国民にきちっと示してほしい。加えて、日豪についてはもっと切実なんです、切迫しているんです。四月に次の会合を開いて、玄葉さんも海江田大臣も、六月までに決めたいんだ、年半ばだ、年央だともう言って歩いておられるんですよ。

 本当に現実の問題として国内対策をもう決めてもらわないと、合意しちゃったけれども、後で財源を確保できなかった、国内対策を打てなかった、そういう危険を冒してもらっては困るんです。

 総理にこれを伺いますよ。きちっと事前に、日豪についても、国内対策、財源、交渉を合意する前にちゃんと示していただけますね。

菅内閣総理大臣 赤澤委員十分御承知の上で言われていると思いますが、日本とオーストラリアの交渉というのは、ある意味では、スタートができたことを含めて、私は大きな前進だと思っております。そして、もちろん、オーストラリアもTPPの九カ国の一員でもありますから、こういったことがすべて並行的に前進をしてきている、こう認識しております。アメリカとの関係も、残念ながら、我が国はアメリカとのFTAは韓国のようには結べてはおりません。

 そういうことを含めて、TPPというものだけを何かターゲットにしているというのではなくて、全体のものを進める中で、一方では農業の改革も並行的に進めて、最終的には、それは何月何日にぴったり数字が合う合わないはこれは別です。だって、もしそういうものに入ったとしたって、何年間かの経過措置等があり得るわけですし、ですからそういうことはありますが、基本的には、当然ながら、片方が全くわからなくてこれだけ決めろというようなことにはならないわけで、こちらも大体わかってきたところでこちらも大体わかってきて、そこで一歩越えていくのか、さらに進めていくのか、そういう意味では、今おっしゃったような、つまりは、一方が全くブラックボックスで、それでやるなんということは考えていませんが、かといって、一〇〇%決まってから片方が決まるということでもない、同時並行的だと考えております。

中井委員長 対策をどうするかというのをちょっと。(赤澤委員「そうですよ、何も答えていないですよ」と呼び、その他発言する者あり)静かに願います。

菅内閣総理大臣 対策も含めてです。

 ですから、先ほど農業に関して申し上げたように……(赤澤委員「事前に示すかと聞いているんですよ。イエス、ノーしかないです、答えは」と呼ぶ)

中井委員長 質疑者は勝手にしゃべらないでください。

菅内閣総理大臣 ですから、それも、今申し上げたように、同時並行的に物事を検討して進めていくということを申し上げているんです。

赤澤委員 検討していくとしかお答えになっていないんですよ、総理。示さないということじゃないですか。そんなことでは本当に混乱しますよ。

 要は、もとからただせば、準備なし戦略なしで取り組むからこうなるんです。国内対策の準備が全然間に合わないじゃないですか。

 そのことをきちっと指摘しておきたいし、委員長にお願いしたいのは、一般論でも結構ですよ、九五%超で、重要品目について、先ほどの期限を定めて関税撤廃するでも何でもいいです。きちっと、我々はなかなか成り立たないと思っているんですよ。一般論で結構です。九五%超のハイレベルの経済連携、それについて、具体的にこういうパターンであればできると示してください。そのことを紙で出してください。そのことを委員長にお願いしておきます。でなきゃ、以後の議論がかみ合いません。

中井委員長 後ほど理事会で協議いたします。

赤澤委員 次に、郵政についてお伺いをします。

 昨年五月二十一日、米国通商代表部、USTRのプレス発表で、同日、ジュネーブで、米国の大使とEUの臨時代理大使が日本大使と協議をしました。郵政改革法案は、今提出されている法案ですね、内外企業の平等な取り扱いなどを規定するWTOのサービス協定に触れる可能性があるとの立場を表明した。翌日の日本新聞各紙は、米欧側はWTO本部のあるジュネーブで日本側と協議することで、将来、WTOに提訴する構えを見せたなどと報じました。

 TPPの交渉に参加するためには、米国を含む九カ国の合意を得なければなりません。特に米国の場合には三カ月前の議会の承認が必要です。

 そこで、郵政担当の自見大臣にお尋ねをします。

 現在、菅内閣が包括的経済連携に関する基本方針、すなわち全閣僚が署名した閣議決定に基づいて、米国の合意を必要とするTPPの交渉への参加を検討しているということは、郵政に関する米国や米国議会の懸念を晴らすことに自見大臣も賛成であって、したがって、郵政改革法案は今国会に提出することはないと理解してよろしいですか。

自見国務大臣 赤澤議員にお答えをいたします。

 去年の五月、ジュネーブで、アメリカのWTO大使、またEUの大使が日本の国際機関の大使に対して懸念を表明したという話は聞いておりまして、それに対して、それは大事な点なんですが、アメリカとEUは、日本が郵政を民営化するかどうかに関しては中立的だ、一切そこは国内の問題だから何も口を挟まない、ただし、結果、対等な競争条件をきちっと確保していただきたいということを申し上げてきているわけでございます。

 私も実は八月にアメリカに行きまして、ブレナードというアメリカの国務省の次官とお会いしました。ブレナードは私にもその懸念を表明されましたので、私はきちっと、郵政の法案においては十二条において、郵政事業は同種のものの業務を行う事業者との競争条件の公平性に配慮するものという基本方針をきちっと法律に明記してありまして、そして、この基本方針のもと、経営の自主性、競争条件の公平性のバランスのとれた設計としているところであり、郵政改革法案は、WTO協定を初めとする国際条約、それはもう先生御存じのように、日本国は自由貿易でやはり戦後非常に富を得た国でございますから、自由な貿易というのは基本的に大変大事なものでございますから、そういった意味で、WTOの協定を初めとする国際条約の基本的精神に反するものではないという考えを、私はブレナードさんにもきちっと説明をいたしたわけでございます。そういった意味で、国際的な整合性、これは確保しているところでございます。

 これからが大事なところでございますが、我が国の郵政改革に対して米国等が関心を有していることは承知しておりますが、これまでの環太平洋パートナーシップ、TPP協定交渉で、我が国の参加条件として、米国等の関係国から郵政改革に関する言及はないものだというふうに承知をいたしております。

赤澤委員 全くもって、自見大臣、甘いです。USTRがプレス発表しているということは、議会に向けて、この問題を指摘していますよ、議会の懸念はわかっていますよということです。議会は必ずこれをフォローします。

 しかも、具体的な話で、対等な競争条件の中には、検査や報告がほかの民間の金融機関と比べて郵政は甘いとか、具体的な指摘が中に入っているんですよ。今後必ず問題になります。今みたいな認識では、交渉に、TPPにもし参加したら、必ず注文がどんどん厳しくなりますよ。

 一般論で結構です。自見大臣、TPPには賛成なんですか。

自見国務大臣 菅総理も申し上げておりますように、環太平洋パートナーシップ、TPP協定については、菅内閣としては、関係国との協議を続けて、ことしの六月を目途に交渉参加について結論を出すということになっていますから、今、私は国民新党の副代表という立場もございますが、菅内閣の一員でございますから、そのことについて予断を持って言うことは、やはり政党人として今は言うべきでないというふうに思っております。

赤澤委員 今は言うべきでないと思っているということは、内心、自分は反対だとほとんど吐露されているようなものですね。そういう意味によくとれたと思います。

 そして、国民新党の下地幹事長が、昨日、郵政改革法案、これが今国会で成立しなければ、自分が責任を持って菅直人を倒すと。与党の幹部から倒閣するんだという話まで出てきました。それだけ大事にされている自見大臣なんですから、本当にこの問題は指摘しておきますよ。必ずアメリカの議会が、三カ月の承認期間を得るときに、日本はこれをやっていないからだめだと出てきますからね。私が注意してさしあげたけれども、法案についての本当に懸念事項、それについてまじめに受けとめて考えておかれないと大変な問題になりますよ。指摘をしておきます。

 そして次に、TPPの影響試算についてお尋ねをいたします。

 これは発表されたものを抜粋したものでありますので見ていただきますが、内閣府、農水省、経産省がそれぞれ公表した影響試算が全体として意味するところは全く明らかでありません。

 例えば、経産省の試算による、TPPに参加しないことで失われるGDP十・五兆とありますけれども、農水省はTPPに参加すると七・九兆失われると。しかも、それでは農水の方が少ないように見えるけれども、多面的機能三・七兆を合わせれば十一・六兆で、今度は経産省の数字より大きくなる。どうもよくわからないんです。全体としてどう評価していいのかわかりません。影響試算を踏まえた政府の評価は全体としてプラスなんですか、マイナスなんですか。総理にお伺いします。

玄葉国務大臣 政府として統一した試算は行っておりませんが、産業全体で見ている影響試算はこの一番左側のマクロ経済効果分析、GTAPモデルになります。

 そして、委員の、農業への影響試算でございますが、これは御存じのように前提がありますね。前提、書いていませんね。つまりは何の対策も行わないという前提、そしてもう一つはすべて除外品目はないという前提、そういった前提での影響試算でありますから、それぞれもちろん数字は少し幅を持って見ていただきたいと思いますけれども、トータルな、産業全体でごらんになるということであれば、このGTAPモデルということになります。

赤澤委員 まさに今、玄葉大臣が自分でおっしゃったことなんですよ、私が言いたいのは。国民の間に不安と混乱が、何でか。国内対策が行われていない前提の試算を発表して、それ以上のものが出てこないからみんなが本当に不安になるわけですよ。当然のことながら、国内対策をきちっと準備して、それを入れ込んだ試算を示すべきじゃないですか。それをきちっと示してください。

玄葉国務大臣 今の赤澤委員の指摘は、私は建設的な指摘だと思いますよ。

 だから、そういう意味では、そういったさまざまな試算をできる限りつくって、適時適切な段階で公表するということをきちっと考えていきたいというふうに思います。

赤澤委員 これは民主党の党内でも指摘がある。二月五日の毎日新聞では、党内のプロジェクトチームが、試算をやり直せ、あるいは、一月三十一日の衆議院予算委員会の基本的質疑で山口委員も同じことを言っています。みんなの共通認識なんですよ。ぜひやってほしいんです。再試算して政府統一見解を出すべきではないですか。

 いつまでに再試算をされるか、お答えください。玄葉さんでもどなたでも結構です。

枝野国務大臣 ここで委員がお出しになった資料にあります試算は、一定の条件のもとでそれぞれの関係する省がしたものでありまして、そういった意味では、ほかの対策も打たずに農業に一番悪い影響を与えた場合ということで、この数字を農林水産省で出しているわけであります。

 まさに今、玄葉大臣もおっしゃられたとおり、これからTPPの、現在の協議の状況も果たしてどういうものになっていくのか、我々は注視をしてその情報を集めているわけでありますし、それから、これからまさに具体的に最も効果的な、金額だけ幾ら積めばいいという話じゃなくて、まさに効果的な対策を打たなければいけないわけでありますから、そうしたことをきちっと整理してお出ししていくということの中で、ある段階で、そのTPPについての集まってきている情報で、TPPの中身がどういったものになっていくのか、そしてそれまでの間に積み重なってきた国内対策でどういったことが積み重ねられてきたかということを合わせた段階で、この状況で進むならばこういうふうな試算ができると言うことができるかというふうに思いますが、現状、まさにこれから一番効果的な農業対策について積み重ねをして、先ほど来御議論いただいているとおりのスケジュールでお出しをしていくわけでありますし、TPPについても、現在協議をされている国の間でどういうことになっていくのか、これから情報がどんどん集まってくるという状況ですので、そうしたものを見据えた上で試算をお示しすることになるというふうに思っております。

赤澤委員 いつまでにと聞いたけれども、何もお答えがありません。

 何度も申し上げていますとおり、不安と混乱がなくかみ合った議論をきちっとするには、TPPにしてもそうです、日豪にしてもそうです、我が国が得るものと譲るものをきちっと国民に説明をしてもらって、どういう国内対策をし、その財源はどういうもので手当てをして、その結果の影響試算はこうです、だから安心してください、前に進みます、こういうことをやらなきゃだめじゃないですか。およそできていないですよ。菅総理大臣、どう考えているんですか。

菅内閣総理大臣 まさに私たちが十一月のAPECの前にこうした問題を含めた基本方針を定めたのは、そういう議論をしっかりやった上で方向性を六月に決めていこうという、まさにそのためにその手前の方針を決めたんです。

 それまでは、約十年間、例えばオーストラリアとのEPA交渉も、アメリカとの交渉も、EUとの交渉も進んでこなかったわけですから、そういったことを含めて、その十一月の方針決定以来、二国間も、あるいは地域間もいろいろ進んでいる中で、確かに、おっしゃるとおり全部の数字が出たわけではもちろんありません。しかし、六月に向けてその問題をすべて議論しながら、そして国民の皆さんにも判断をいただけるような形できちっと出せるものを出していって、そして方向性をもう一段、今度は交渉に参加するかしないか、参加したらもう必ず決まるということでも、あらかじめ決まっているわけじゃありませんから、交渉に参加するかどうかというステップをそこの段階で決めていこうと。

 ですから、ぜひとも議論を大いに、赤澤さんのように活発にやっていただくことは、私は大歓迎であります。

赤澤委員 なぜTPPについて、先ほど指摘した準備不足、それについて説明を私が求めているのに全く説明がありませんでした。

 そして、TPPについて先ほど申し上げたように、何も内容がわからない、国内対策もない、影響試算もない、にもかかわらず、ダボスで開国ということを盛んに訴えてこられました。私は、これは総理みずからがやった日本のネガティブキャンペーンじゃないかと思っています。

 総理、日本の関税というのは決して高くはないですね。全平均をとれば低い方であるということです。にもかかわらず、一方的に開国を言われました。

 総理がネガティブキャンペーンでなかったとおっしゃるのであれば、相手の国、貿易相手国にも、日本は開国するからあなたたちも開国しろということを一言でも呼びかけられましたか。総理に聞いています。

中井委員長 時間が来ておりまして、テレビですから……(赤澤委員「いや、ダボス会議の総理の演説です」と呼ぶ)ちょっと待ってください。時間がもう終わっております。次は他党の質問になりますから、簡単に菅総理。もうその後はなしです。

菅内閣総理大臣 私が申し上げたのは、日本が例えば若者の留学なども含めて減っているとか、いろいろな意味でもっと日本が自信を持って国際社会に責任を果たしていこうということを含めて開国を申し上げたわけであって、決して、何かそういった限定的なことで申し上げたわけではありません。

中井委員長 これにて町村君……(赤澤委員「一方的に開国を言うなんというのは売国ですよ、私はそう思います」と呼ぶ)座りなさい。

 これにて町村君、中谷君、赤澤君の質疑は終了いたしました。ルールをお守りいただくようにお願いします。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 私は、三十分の時間をいただきましたので、総理に対して、日中関係について特に御質問をさせていただきたいと思います。

 昨年の九月三十日、この予算委員会の閉会中審査におきまして、尖閣諸島をめぐる問題について、菅総理、前原外務大臣に質問をしました。

 その際に、一九七二年七月二十八日に行われました公明党訪中団と周恩来首相との会談の内容を紹介させていただいて、先人の知恵に学ぶべきだという御指摘をさせていただきました。

 実は、ことしの一月の十一日から十三日まで、日中友好協会会長を務める自由民主党の加藤紘一衆議院議員に同行させていただきまして、この尖閣問題で前面に出てこられました中国の戴秉国国務委員や元駐日大使の武大偉朝鮮半島事務特別代表と会談をさせていただきました。武大偉さんは、今、六カ国協議の特別代表もされています。

 戴秉国さんにお会いしたときに戴秉国さんはこういうことを言われていました。昨年、釣魚島問題が発生したが、戦略的互恵関係をいかに発展させるかが大事だ、新しい問題が起こってくるけれどもその原因がどこにあるのかよく考えている、双方が真剣に検討する必要がある、一対一の対話をしたいと思っている、こういうふうに会談でまず戴秉国さんは言われました。

 加藤議員と戴秉国さんが、加藤先生が団長ですのでずっと話が続いた後に、私にも質問の機会をいただきましたので私の方から戴秉国さんに、実は以前に戴秉国さんにお会いしたことがある、一九九七年と九八年の二回、当時まだ戴秉国さんは中国共産党対外連絡部の部長さんでしたけれども、今、民主党の幹事長をされている岡田克也先生とか、中川正春さんも御一緒だったんですが、当時、戴秉国さんとお会いしていろいろな話をさせていただいたことを御紹介しましたら、にこにこされて、おお、新進党と言われました。新進党で行きましたので、当時のことを思い出されたんだと思うんですが、よく覚えていらっしゃるなということでした。

 その際に、岡田幹事長、尖閣の事件が起きたときは外務大臣でいらっしゃいました。その後、前原大臣に引き継がれたわけですが、私は戴秉国さんに、問題が起きたときに岡田さんと直接やり合ったらよかったじゃないですかという話をしました。なかなか民主党の皆さん、中国とのパイプがないということで苦悩されていたと思うんですが、そういう話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだ、直接話がしたかった、いろいろあってできなかったけれども、これからは一対一の直接の対話が大事だと思うと。会談が終わった後、わざわざ私のところへ歩み寄ってこられて、富田さん、岡田さんにちゃんとこの話を伝えてくれと言われたんですね。本当に大事なことだと思います、いろいろなパイプがありますから。

 私の方からは、さまざまなレベルでの対話のルート、例えば一緒に行っていただいた加藤紘一先生とか、政界を引退されましたけれども自民党の元幹事長だった野中広務先生とか、日中間で本当にいろいろなパイプをつくってこられた方々を、与野党関係なしに、そういった信頼関係を築いてきた方たちのルートを利用したらどうだろうかという話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだと思うというふうに言われていました。それで、岡田幹事長にもその旨をお伝えしました。

 昨年の尖閣問題、いろいろ局面が出てきましたけれども、あれを踏まえて、菅総理は、今後同じようなことが起こらないように、どういうふうに外交的な視点から政府として取り組んでいくべきだというふうに考えているでしょうか。まず、その点をお話しいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 御指摘をいただいたことは本当に大変重要なことだと思っております。私も、一九七〇年代に中国に初めて出かけ、当時は、孫平化さん、もう亡くなられましたが、そういう皆さんとお会いをし、ずっとやってまいりました。

 あの事件が起きたとき、これは余り申し上げてはいけないことかもしれませんが、確かに、民主党の代表選の渦中にあったことも多少の影響があったかもしれません。そういう個人的な関係まで手を広げていろいろとお願いするというところまで、私自身は、いろいろ頭には浮かびましたけれども、いきませんでした。

 そういう中で、今おっしゃったように、政府と政府、外務省と外務省、あるいは党と党、当然でありますけれども、同時に、長いつき合い、いろいろなつき合いの中での培われた人間関係の信頼というものをやはり大事にしていかなければならない。改めて、今の富田委員のお話を聞きながら、その重要性を感じたところであります。

富田委員 ぜひ、その点をしっかりやっていただきたいと思うんです。

 武大偉さんは、実はこういうふうにも言われました。武大偉さんは元駐日大使です。大使を務めていたときにも同じような問題が起きた、私のときに本当に同じような問題が起きたんだけれども、そのときは、日中関係を損なわないように、とにかく両国政府が一生懸命努力したんだというふうに言われました。たしか今回の事件とはちょっと質が違う事件、上陸事件ですから、出入国管理法違反ということで強制退去させることができたので、今回のような形になりませんでしたけれども、今回は公務執行妨害罪での逮捕ですから、強制退去の規定はありません。

 そういったことも含めて、中国側にきちんと日本の国内法を理解してもらう必要もあると思いますし、今後どういうふうにしていくかということで、政府の中に対処方針というものはあると思うんですが、その対処方針についてちょっと事務方にお尋ねしましたら、そういうものがあるかないかも話せませんと。まあ、危機管理上そういうこともあるんだろうなと思いますけれども、ぜひ、今回の経験を踏まえて、事件は事件として法律できちんと処理をしなければいけないけれども、日中関係に影響を与えないように政府がしっかり判断をしていっていただきたいと思いますので、その点、よろしくお願いいたします。

前原国務大臣 尖閣の日本の立場は委員も御存じのとおりでありますが、しかし、お互い、東シナ海を挟んで隣国でございますので、一般論として、日中間で誤解や摩擦を減ずるべく、常日ごろから中国側との意思疎通というものを強化することは重要で、また、このような観点から、万が一不測事態が発生した場合に備えて、中国との間で重層的な危機管理のメカニズムを構築しておくことは極めて重要だと考えております。御指摘のとおりだと思います。

富田委員 ぜひ、そういうふうにやってください。

 それで、この尖閣の問題の影響だと思うんですが、昨年の十月に内閣府が外交に関する世論調査を行いました。皆さん、委員のお手元には資料一とパネル一の写しということで出してありますが、この中で、中国に親しみを感じないと答えた方が七七・八%、前年から一九・三ポイントの大幅増。一九七八年以降の調査で最悪のレベルだ。もう一つ、日中関係を良好だと思わないと考える人は、前年から三三・四ポイントふえて八八・六%になっている。親しみを感じる人は二〇%、前年比一八・五ポイント減。ほぼ半減、過去最低のレベルだ。

 これは、尖閣問題が起きた後の中国政府の対応にもいろんな問題があったと思います。ただ、日本人の対中感情というのは、八〇年代の後半までは、親しみを感じる割合が七割前後を保っていたんですね、この図を見ていただければわかるように。それが、天安門事件が起きた八九年に急激に悪化しました。悪化したけれども、その後ほぼ横ばい状態だった。民主党政権ができて、東アジア共同体ということを、先ほど批判もありましたが、対中関係を重視する民主党政権ができたということで若干好転したんですけれども、今回、急激に冷え込んだ。この国民感情をどう戻していくかというのは、私は政治の責任だと思うんですね。

 総理は、こういう数字を見た上で、政府としてどんな取り組みをすべきだと考えますか。

菅内閣総理大臣 私もこの数字を、グラフを拝見いたしまして、ある意味、大変ショックを受けました。確かに尖閣をめぐる問題が大きな影響を両国の国民に与えたんだと思っております。

 そこで、私も幾つかの努力をしなければと思っております。

 先日は、中国との関係の深い、特に経済界の皆さんにお話をいろいろと聞かせていただきました。幸いにして、その皆さんが言われるには、経済の分野では、確かに一時的な影響が出かけたけれども、大きなマイナス影響にはならなくて、それまでの継続案件などは順調に進行しているというのが、そのとき来られた五、六人のかなり有力な企業のリーダーのお話でありました。そういうお話の中にも、これからの日中関係のさらなる進展のことがあり得ると思っております。

 それに加えて、やはりこれから民間レベルでのいろいろな交流も、もう一度改めていろいろな機会を使わなければならないと思っております。

 私も、ちょっと古い話ですが、お大師さんの関係で青龍寺というところを訪れたことが西安でありますけれども、そういう日本から仏教関係の人もかなり中国に行くようになりましたし、そういったあらゆる階層等を通しての交流をやっていきたいと。

 私も今から二十数年前、胡耀邦さんのときに青年の交流で行きまして、国に帰ってからは、私の卒業した大学に来ている留学生を毎年お招きを、五十人ほどするということを二十年ばかり続けてまいりましたが、もっともっと幅広い形でそうしたことを今度は内閣という立場でも努力をしたいと考えております。

富田委員 総理の経験をお話しいただきましたけれども、実は去年の九月、尖閣の問題が起きたその時点で、中国側もかなり痛みを感じていたわけですね。

 中国の方で日本から来られるいろんな団体を拒絶したとか、そういう例がいっぱい出てきました。日本への旅行も中止になったり、いろいろしていましたけれども、その中で、実は九月の十八日、北京の盧溝橋にある抗日記念館で日本の漫画展が開かれていたんですね。これは作家の石川好先生たちが中心になって、ずっともう五、六年続けている漫画展の一環だと思うんですが、この漫画展の開催も一時危ぶまれたようですが、やはり戴秉国国務委員たちが後押しをしてくれた。

 日本といろいろ、ちょうちょうはっし、やりとりしている中で、やはりまじめに考えている人もいるので、今そういった文化交流が大事だ、民間交流が大事だというふうに総理言われましたけれども、本当にそういうところを菅内閣としても、私は野党の立場からですけれども、大事にしてもらいたいなというふうに申し上げたいと思います。

 実は、九月七日にあの事件が起きたとき、九月の十七日から二十一日まで、漫画展以外に、中国の広州市に高校生の国際文化交流事業ということで高校生の箏曲部が行って、向こうの伝統芸能の人たちと一緒に合同演奏会とか開いているんです。こういうこともきちんと中国側が受け入れてやってくれているんですね。こういう事実もあるんだということをきちんと日本政府として、中国を嫌わないように、中国が嫌にならないように、国民に向けて発信していくことも大事だと思うんですね。

 新日中二十一世紀委員会というのが今、日本と中国の民間の方たちの間でやられています。前回の新日中二十一世紀委員会、小林座長のころに、アニメとか映画を、日本の文化を中国にきちんと紹介するようなことをやったらどうだということを最後に提言されたようです。それをことしの六月八日にまた北京でやられるというんですね。

 だから、そういったこともきちんと政府もいろいろな形でバックアップしてあげて、今、日本の国民は、これまで日本国内には反中国とか嫌中国という言葉があったと思います。そういうグループもいたと思います。でも、尖閣の問題で中国は怖いと思うような人がふえてしまった。そういうところをぜひ文化交流、経済交流の中で直していっていただきたいと思いますし、総理からも今お言葉をいただきましたので、その点、ぜひまた検討していっていただきたいと思います。

 次に、総理の施政方針演説を聞いておりまして、全般的にはちょっと平たんだなというふうな印象だったんですが、一点、ここはすごいなと思ったところがあります。平和創造に能動的に取り組む外交、安全保障政策の章で、このように総理は言われました。

 太平洋諸国との関係強化にも努めます。中国の近代化の出発点となった辛亥革命から、ことしで百年になります。革命を主導した孫文には、彼を支える多くの友人がいました。来年の日中国交正常化四十周年を控え、改めて両国の長い歴史を振り返り、幅広い分野での協力によって戦略的互恵関係を充実させることが重要ですというふうに述べられていました。辛亥革命に触れられたというのはすごい大事な視点だと思うんですね。

 総理、具体的に、この辛亥革命百周年、また来年の日中国交正常化四十周年に向けて、どういうふうな分野でどういう協力を具体的に進めようと考えられているのか、ぜひ国民の皆さんに示していただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 もう富田さんはよく御存じの上での質問でありますが、辛亥革命、まさに清朝を倒して、そして中国を近代化していく。何度も革命に失敗した孫文を日本に亡命を受け入れて、多くの日本人が助けて、その中から蒋介石も誕生すると同時に、今の共産党につながる皆さんも誕生していった一つの大きな節目であったと思っております。その中に、日本の先達の皆さんがそれを支えたということは、私は、私たち自身、誇るべき一つの日中の歴史である、こう考えております。

 そういう中で、今既にいろいろな形で、例えば孫文を記念してのシンポジウムとか、いろいろな催し物がいろいろな方面で企画をされているわけでありまして、そういうことについて、政府としても、中心になってというよりは、どちらかといえば、いろいろな企画を後ろから支える、応援する、そういう形で、まさに超党派的な形で、あるいは民間の動きを応援するという形で進めていくことができれば、そして、それを日中国交回復四十周年の大きな節目の年につなげていくことができればありがたい、こう考えております。

富田委員 ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思うんですが、内閣官房参与を務めていらっしゃいます松本健一麗澤大学教授が、中央公論のことしの二月号に、特集、辛亥革命と日本人の百年という中で、「孫文の墓でアジアとナショナリズムを振り返ろう」という論文を発表されています。総理もこれを読まれた上での御発言だと思うんですが、松本先生は本当に含蓄のある論文で鋭い指摘をされています。

 こういうふうな文がありました。「今年は、辛亥革命からちょうど百年になる。あらためてその意義を問い直すことは、単に日本が中国の「建国」に寄与した歴史を確認するにとどまらない。今、東アジアを包み込んでいる緊張関係がどう生み出され、その流れを変えるとしたらどんな方法があるのか。その解を探すために、辛亥革命―中華民国の成立を中心とした、百年前のあの時代に、一度立ち戻る必要がある」のではないかという御指摘をされて、いろいろ、今総理が言われたような、日本の人たちが孫文を助けたことをずっと話された後、最後にこういうふうに締めくくられています。

 「アジアの連帯、アジア・アイデンティティを模索し共有することが繁栄への道である。辛亥革命百周年の今年は、そのアジア的価値観を日中両国が認識する場を作る絶好の機会である。 たとえば、日本政府は中国の中山陵、すなわち孫文の墓前で行われる辛亥革命記念の式典に日本の代表を送り込むべきだ。そうすれば日中連携の原点を確認することができるであろう。」

 どんな形でできるかは、総理が今言われたように、前面に出るのがいいのか、バックアップするのがいいのかわかりませんが、ぜひ政府を挙げて取り組んでもらいたいと思いますが、どうでしょうか。

菅内閣総理大臣 おっしゃったように、この孫文の考え方、三民主義というものの中で、私、かつて土地問題の関係で民生主義の中における問題を少し取り上げたことがありますけれども、私たちが今においても大きく参考になる考え方であると思っております。

 また、有名な孫文の日本における演説において、覇道を選ぶのか王道を選ぶのかと、当時の軍国主義化してきた日本に対して、ある意味、突きつけた言葉というのは、今の我々にとっても非常に大きなものがあり、場合によっては、今の中国にとっても逆に問い返したいという気持ちもいたしております。このことを、一九七二年の共同声明とか一九七八年の友好条約にも、ある意味、覇道は求めないということを両国が確認し合っているわけですけれども、ややもすれば、そのことをお互いの国民がやや、もしかしたら忘れる、あるいは疑念を持っているのかもしれません。

 こういった問題について公明党が国交回復前から大変努力をされてきたことも高く敬意をあらわしたいと思いますし、ぜひとも、先ほどのグラフにあったような形が、もう一度もとの、両国ともが相手の国の国民を好きになるという、そういうことに戻すような幅広い取り組みを政府としてもやってまいりたい、こう考えております。

中井委員長 行事に出るかどうか。行事にだれか送るかどうかということを答えてください。

菅内閣総理大臣 行事については、機会があればぜひ私自身も行きたいところですが、私が行けないときには必ずだれかに出させたいと思っております。

富田委員 委員長の的確な御指示に感謝します。

 今総理が言われた、孫文の大アジア主義の演説のことに触れられたんだと思うんですが、私も、松本先生の論文を契機にこの大アジア主義の演説、いろいろな原稿があるのでさまざまな解釈がありますけれども、読ませていただきました。

 孫文は、一九二四年、大正十三年に、第一次国共合作協議のため北京に向かう途中、北京に行かないで、長崎から神戸に来られて、大アジア主義と題した演説を行いました。その中で、武力で従属させる西洋の覇道に対し、徳によって慕わせる東洋の王道という価値観を示して、アジア東方の民族が連携する重要性を説かれたというふうに言われています。

 彼は、中華民国にとって二十一カ条要求は不平等条約そのものであり、受け入れは日本帝国主義を認めたのと同義だと主張した後に、最後に、今後、日本は西洋覇道の番犬となるか、あるいは東洋王道の干城となるかと問いかけて、日本国民が慎重に考え、選ぶことにかかっていますというふうに結んだとされています。総理がそこの部分を今ちょっと言われたんだと思うんですが。この言葉は、日本の軍国主義への警鐘だったんですが、現在に置きかえると、私は、軍備拡大に走る中国自身に対する警鐘になっているのではないかなと。総理もちょっと触れられました。

 一九七八年八月、日中平和友好条約交渉で、当時のトウショウヘイ副総理と園田外務大臣との会談に同席された田島高志さんという元外務省中国課長が先月、読売新聞に「中国の覇権主義を憂慮」という文を寄せていました。ちょうど私たちは北京にいてこの文を読んだので、びっくりしたんですけれども、こんなことを書いているんですね。

 この方の評価ですから、違う観点もあると思いますが、

  今や中国は世界第二の経済大国となり、核兵器の保有、軍事費の激増で軍事力も強大化した。「中華民族の偉大な復興」を唱えて海外進出を広げ、中国海軍の原子力潜水艦は国際ルールを守らず日本の領海を潜水航行し、南シナ海を「核心的利益」地域と公言して東南アジア諸国に不安感を抱かせ、世界を驚かせている。これは中国が大国主義、軍国主義、覇権主義に向かう兆候かとも憂慮される。

というふうに指摘をされていました。

 この点、本当に大事だと思うんです。総理も今触れられましたけれども、一九七二年の日中共同声明で、お互いに覇権を求めないというふうにきちんと書かれています。これを考えると、今の中国の動きというのはどうなのかな。

 先日、太平洋からインド洋までを指揮下に置くアメリカ太平洋軍のウィラード司令官が朝日新聞のインタビューにこうやって答えています。彼はアメリカ議会の証言で、中国軍の急速な変革はアジア太平洋地域の軍事バランスに影響を与えるというふうに述べたようです。

 これは具体的にはどういうことなんですかと聞かれて、一つは、中国自体の軍事力増強で地域全体の軍事力のバランスがシフトしている、崩れているということを指摘されて、もう一つは、中国の意図の不透明さに不安を抱く地域諸国がそれぞれの軍事力を強化している、特に潜水艦と先進型航空機の調達ぶりにあらわれているというふうに具体的に指摘をされています。中国だけが拡大しているんじゃなくて、それに恐れを抱く周辺諸国が同じようにまた軍備を拡大している、ここは本当に問題なんじゃないかという指摘をされています。

 こういう点を踏まえて、去年の七月、ベトナム・ハノイで開かれましたARFでは、アメリカのクリントン長官が、南シナ海での武力使用への反対あるいは自由航行の保障などを訴えました。中国を名指ししないものの、暗に中国にこういうことを求めるというふうにだれもが受けとめて、これに対してASEANの各国外相らが、私たちもそう思うということを続けられた。当時出席されていた岡田外務大臣も、やはりその点は懸念する、きちんと話し合いをすべきだというふうに指摘をされていました。

 これは、中国が南シナ海を核心的利益というふうに呼んだために、東南アジア諸国の皆さんは、中国が今まで核心的利益と言っていたのはチベットとか台湾のことですから、もしかしたら、何かあったら軍事侵攻してくるんじゃないかという恐れを抱いていろいろな準備を始めてしまっている。これは本当に東南アジア、東アジアにとって大変大きな問題になると思います。

 私たちが中国に訪問していたときに、実は殲20というステルス戦闘機の試験飛行までやられていました。ゲーツ国防長官が見えているのに、まるでそのときに合わせたかのようにやられている。空母ももうすぐ二隻就航してくる。

 こういう状況を考えたときに、孫文が言われていた覇道なのか王道なのかというのを中国に対して今回言ってあげられるのは、隣国で本当に友人である日本だと私は思うんですが、日本政府として、この時期に、日本は軍国主義で間違えた道を一たん歩んだわけですよね、その経験のある日本こそが中国に、同じような道を歩んでいるんじゃないんですかということをきちんと指摘すべきだと思うんですが、総理、その点はいかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 大変いいというだけではなくて重い御指摘をいただいたと思っております。

 私も、この演説が行われた一九二四年当時のこともあわせて考えてみますと、ちょうど日本が満州事変に至り、二十一カ条ということの中で、日中戦争に入っていく段階における日本の、ある意味で真髄をついた演説であったと思っております。

 それだけに、信頼関係をしっかり持った中でこういうお話ができる、そういう環境をぜひ、先ほど来のいろいろな御指摘の形も含めて、そして、まさに個人と個人として信頼関係を持った形でこういう話が友人としてできるよう、私も努力をし、また機会を見つけてそういった形がとれればとっていきたい、このように感じております。

富田委員 終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、遠山清彦君から関連質疑の申し出があります。富田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 菅総理、総理は鳩山内閣の副総理であられたわけですから、鳩山総理とはそれなりに親しい御関係だと推察をいたしますが、きょうの委員会で既に同僚委員からございますように、とんでもない発言がありました。鳩山前総理は、何かあったんですか。いや、総理から答弁は要りません、これ以上二人の仲を裂くつもりはありませんので。

 しかし、先ほども北澤防衛大臣が、鳩山前総理の海兵隊の抑止力は方便だったという発言は、人生の中で一位、二位を争うとんでもないことだったと怒りを抑えておっしゃっていたわけでありますが、私、実は、去年の今ごろ、まだ浪人中でございまして、地元の沖縄によくおりました。毎日ニュースで見ていた映像は鳩山総理のぶら下がりの取材でございまして、最低でも県外、腹案がありますと、もう朝晩、お昼も流れておりました。それが五月に、鳩山総理が県外移設の方針を突然、県内移設に変えた。沖縄県民の皆さんにとっては、これが人生で一位、二位を争うとんでもない話だったんです。まさかということだったんですね。

 そのまさかというとんでもない話の最大の理由を、方便、ある意味、うそと言い放ったわけでございます。私は、総理大臣をやめたからといって、言っていいことと悪いことがある、これは民主党の皆さん、そう思っているんじゃないですか。

 ですから、先ほど来、委員長、自民党の議員からも、きのうもきょうも出ておりますけれども、ぜひ、当予算委員会に鳩山前総理を参考人として招致をいたしまして、前総理の真意をただしたい、このように思いますけれども、よろしくお願いいたします。

中井委員長 公明党さん、自民党さん、両党から再三にわたってお申し入れがありました。重く受けとめて、理事会で協議いたします。

遠山委員 総理、次は答弁をいただきたいと思います。

 昨日、私が提出をしました質問主意書に対しまして、政府の閣議決定を経て、答弁書の通知がございました。

 その私の質問主意書の中では、きょう、この後御質問に立たれます社民党の照屋寛徳議員が、今月三日の当委員会におきまして、普天間の予算計上についてこうおっしゃっておりました。昨年、社民党が理解をしたから、今年度、理解するだろうと思ったら大間違いと照屋議員はおっしゃられまして、政府として社民党の要求を、社民党の要求というのはその経費の削減ですね、削除。これを受け入れるかどうかという質問主意書を私は出させていただきました。

 きのういただいたお答えは、去年五月の日米の共同発表を踏まえて、普天間飛行場の移設を進めることとしているので、平成二十三年度予算の成立に向けて努めてまいりたい、こういう政府の答弁でございました。

 これは、社民党さんの要求にノーという意思表示と受けとめてよろしいですか、総理。

菅内閣総理大臣 先ほど同趣旨のお話を他の委員からいただきましたけれども、現在提出をさせていただいている予算は、内閣としてはベストのもの、そういうふうに考えておりまして、これをそのままの形でぜひ成立をさせていただきたい、こう思っております。

 と同時に、党と党が、与党と野党がいろいろな課題で協議をするということについては、それはそれとして必要でもあるし、有意義なことであろう、このように考えております。

遠山委員 総理、一点確認。簡潔な御答弁で結構ですが、内閣としては今の予算案がベストだということは、与党が野党と交渉した結果、これを変更することは、その余地はあり得る、そういうことでよろしいんですか。どうぞ。

菅内閣総理大臣 今、審議中に、総理である私がそういう可能性を余り踏み込んで申し上げると誤解を招きますので、私ども、つまり内閣としては、このままの形でぜひ成立をさせていただきたい、それがまさに基本的な姿勢だということであります。

遠山委員 同じ答弁ばかりでしょうから、次の質問に行かせていただきます。

 沖縄の米軍基地の返還前と返還後の経済波及効果について、私、きょう、この予算委員会で取り上げたいと思っております。

 私は、初当選は約十年前、参議院議員としてでございますが、そのころから沖縄を拠点として活動しております。沖縄の有識者の方から最初に教えられたのは、遠山さん、沖縄の経済は三K経済というんだよと。三K経済という意味は、公共事業、それから観光、最後が基地関連事業、この三つが沖縄経済の柱、まあ一つの見方ですけれども、イニシャルをとって三K経済、こういうことを教えられたことがあります。

 ただ、私、きょう国民の皆様の前で申し上げたいのは、沖縄の経済構造は脱基地経済へと大きく踏み出してきているわけでございまして、今も一部の誤解に基づいたマスコミ報道では、沖縄の米軍基地からもたらされる被害というものはあるんだが、もしかしたらこの米軍基地の存在によって沖縄の地元に経済的恩恵がある、こういう誤った指摘がまだ一部の報道で見られているわけでございます。

 そこで、きょう皆様にお配りした資料を見ていただきたいんです。パネルもございますが、これは昨年の八月に沖縄県庁が発表した資料でございます。

 まずこれは、沖縄の米軍基地で既に返還をされた地区が、現在、現在といってもこれは数年前、二、三年前の数値でございますので、今はもうちょっと大きい可能性が高いわけですけれども、まず、那覇の新都心地区を見ますと、これは、累次返還されまして、最終返還されたのは昭和六十二年でございますが、返還前にこの那覇新都心地域が生んでいた生産額は五十四億七千四百万円、所得は十六億七千五百万円、雇用はたった三百九十人でございます。

 それが返還後、今どうなっているかといいますと、生産は六百六十億を超えておりまして、十二・一倍の経済波及効果、所得は百八十一億九千六百万円、十・九倍、雇用も、この地域で五千七百二人の方が雇用されておりますので、十四・六倍、こうなっております。

 さらに、下を見ていただきたいと思いますが、昔ハンビー飛行場があった北谷のエリアですね、この沖縄の中部、中北部の北谷桑江・北前地区はもっと衝撃的な数字が出ております。生産については、二億八千六百万から五百九十六億五千五百万で二百八倍以上、所得については、八千九百万円から百六十億三千五百万円、百八十・二倍、そして雇用も、たった二十人しか地元の方は雇われていなかったこの北谷エリアが、今や五千人を超える方が雇われておりまして、二百五十一倍の雇用効果ということになっているわけでございます。

 ここに如実に示されておりますとおり、特需で沸いた朝鮮戦争とかベトナム戦争のときの話は遠い遠い過去の話なんです。今や、この数字に如実に示されているとおり、沖縄県においては、地元への経済波及効果という点でいえば、基地を返還していただいた方が経済効果は圧倒的に高いんです。基地があるから経済的恩恵が沖縄はあるんだからいいでしょうなんていう議論は、この数字の前に消し飛ぶんですよ。

 ところが、これを理解している人が少ない。国会議員でも少ない。マスコミでも少ない。だから誤解に基づいた報道が今でも一部あるんです。そのことを私は指摘させていただきたいと思います。

 在日米軍基地の約七五%が沖縄にある、この事実は、米軍基地から直接的にもたらされる騒音とかあるいは米兵等による犯罪等の被害だけではなくて、ここのグラフの中に示されている高い数字、潜在的経済発展というものを犠牲にして沖縄に米軍基地が成り立っているということを、私は、菅内閣の閣僚の皆様にぜひとも御理解いただきたいと思っております。だからこそ、ある意味これだけ大きな犠牲を払って国の安全保障に貢献をしているんです、沖縄は。そうでしょう。ですから、そのことを踏まえて、沖縄県民の皆さんの基地返還要求の声等には、どこまでも誠実に、真摯に対応していただきたい。

 先ほど来出ておりますとおり、総理は、ことし六月にも普天間移設の問題について方針を政府として決めて、訪米もされるということでございますけれども、この数字を御認識いただいた上で、どう沖縄県民の意見、要望に向き合っていくか、御決意を改めて伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 今、最後に言われたのは、ことし前半にアメリカに行くということを申し上げたので、普天間のことについては、期限を切っての取り組みではなくて全力を挙げて取り組むという趣旨で申し上げましたので、そこだけ最初にちょっと念を押しておきます。

 今の遠山委員からの御指摘は、私も昨年、二日にかけて沖縄を視察して、改めて、おっしゃったことをそのときも感じました。ここで出されたこの都心地区も出かけました。また、ITが非常に拡大している、いろいろな産業として拡大しているという実態も知りました。そして、特に一番出生率の高い地域でもあり、また仲井真知事御本人も、あと一息応援してもらえば沖縄は十分に自立してやっていけるんだという趣旨のことも言われておりました。

 そういったことをもろもろ含めて、今おっしゃるとおり、基地によって経済が成り立っている状況は、少なくとも現在は全くそうではなくて、大きな基地が、特に南部の地域では高い利用が想定されますので、そのことが大いにプラスになる、このような理解をいたしております。

 と同時に、あえて申し上げれば、そのためにも、何とか普天間の危険除去と普天間の移転が成立すれば、そのような基地負担の軽減あるいは危険性の軽減あるいは経済におけるプラスにもつながる。その場合に、何とか五月二十八日の合意を御理解いただけないか。これはなかなか難しいことはわかっておりますが、決してタクティックで申し上げているのではなくて、そういう沖縄の皆さんへのいろいろな意味での基地負担の軽減や経済的な大きなプラスも含めて、実現可能性をできるだけ早く進めるために、ベストではなくてもベターという言葉は余り使ってはいけないんですけれども、実現可能性のある中での御理解をいただきたいというのが私の本心からのお願いであります。

遠山委員 総理、沖縄県民の今の気持ちをちょっと代弁しますと、普天間移設の問題は民主党政権になってかなり迷走して、解決が非常に難しくなっています。そういう中で、二〇〇六年に日米が合意したロードマップの中では、嘉手納基地以南の基地を返還すると。これはパッケージ論とよく言われますけれども、アメリカ側は普天間基地とセットでということをおっしゃっているわけですが、実は、嘉手納基地以南の施設が全部沖縄に返されますと、この総面積はどれぐらいの大きさかというと、お手元にお配りした資料の那覇新都心地域の二十倍の面積なんです。だから、那覇新都心地域の二十倍の面積が沖縄に返還され、そこが跡地利用、再開発されたら、これはもしかすると、兆単位にいくような経済波及効果を生むポテンシャルを持っているわけです。ですから、仲井真知事が沖縄の自立経済のために一刻も早く嘉手納以南の基地返還をしてくれと言っているわけでございます。

 これに関連して、前原外務大臣、おととい沖縄県浦添市の市長それから市議団とお会いになったというふうに承知をいたしております。

 浦添市は、この嘉手納以南の米軍施設の中でも最大級のキャンプ・キンザー、別名牧港補給基地というものを擁しておりまして、実に浦添市全体の一四%を占めるわけでございます。浦添市議会が、自民党、公明党、社民党、共産党、民主党、全会一致で、普天間移設のプロセスとかかわりなく、このキャンプ・キンザーを早期返還してもらいたい、こういう要請決議を出しまして、防衛大臣のところにも官房長官のところにも伺ったそうですが、前原大臣だけが前向きな御答弁をされたと。日経新聞にも、今米側と交渉していますと引用されているわけですが、それはそういう理解でよろしいんですか。

前原国務大臣 遠山委員御承知のとおり、昨年の五月二十八日の2プラス2の共同宣言の中でも、牧港補給地区の一部については先行返還を目指す、早期返還における優先分野として位置づける、こういうことであります。

 同時に、仲井真知事からも、このキャンプ・キンザーについては切り離して何とかお願いできないか、こういうお話がございましたので、そういう要望も含めて、もともとこの一部を早期返還における優先分野としているし、また、こういう沖縄からの要望もあったということで、アメリカ側と話をしているということを私は浦添市長に申し上げたところでございます。

遠山委員 率直に、それはすばらしいことです。ぜひ、普天間移設のプロセスが迷走している中で、それとある程度切り離しても、嘉手納以南の、牧港を初めとする施設の返還のために、外務大臣、先頭に立って努力をしていただきたい。それは私ども応援をしたいということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 次に、もう大分時間もないわけでございますが、国際協力銀行、JBICの分離問題について伺いたいと思っております。

 政府は、日本政策金融公庫に統合された国際協力銀行を分離独立させたいという方針のようですが、その理由は何なのか。報道を見ていますと、大企業のインフラ輸出のために、より戦略的、機動的に対応するためにJBICを独立させるということのようですけれども、腑に落ちない点がございます。

 というのは、今のままで十分やっておられるんじゃないか。菅総理も、たしかベトナムに行かれて帰ってきたときに、ベトナムへのインフラ輸出で原発とレアアースの件で契約まとめてきましたと自慢をされていたわけでございますから、別に、今の状態でできているわけですから、わざわざJBICを分離する意味がよくわからないんですね。

 そこで、総理に、合わせて二点、なぜ分離するのか、それからもう一つは、分離することによってインフラ輸出が仮にふえたとして、今、目下最大の課題である国内の雇用というのはふえるんですか。その点について明快な御答弁ください。

野田国務大臣 これは、今も確かに、そのベトナムの問題とか、実績があることはあるんですけれども、経済界等からかなり強い御要請がございました。一つは先進国向けの輸出金融ができたらいいなとか、困っているのは短期つなぎ融資であって、それに対する資金供与ができたらいいなとか、あるいは海外企業の買収の際の資金供与があったらいいなと。

 そういうさまざまな御要請にこたえるためにJBICの機能強化をさせていただきたいということで、その機能強化をする際の実を上げるためには、日本政策金融公庫から分離をして、専門的に機動的に対応することが必要だろう。そういうことで、昨年十二月に、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合において、JBICの機能強化と、そして日本政策金融公庫からの分離をするという方針が決定されて、法案の準備をしているというところでございます。

菅内閣総理大臣 前半はお話がもうありましたが、今JBICが属している日本政策金融公庫というのは、いろいろな機能を合併させたために、ややJBIC的な役割が、全体の中ではどうしても機動性がないということで、そうしたいというふうに理解いたしております。

 また、雇用にどうつながるかということでありますが、先日、中国の関係ではありますけれども、そういう海外で活躍している企業の方にお会いしますと、やはり海外で大きなインフラの仕事をすると、その中枢的なものはやはり国内でつくっていくことが多いと。そういう意味では、こういうパッケージインフラでの受注を日本企業がとれば国内の雇用にも大きくつながっていく、こう理解しております。

遠山委員 総理、大企業の中で若干雇用がふえることはあるかもしれませんが、中期、短期で見れば、JBICを分離独立させて大企業のインフラ輸出を海外で進めても、国内の雇用効果というのは私は極めて小さいと。

 あえて、こんなことを言うと怒る人がいますけれども、JBICを独立させたら財務省OBの天下り先がふえるだけじゃないですか。今、JBICの副総裁二人は財務省のOBで、ここに数字がありますね、常務以上の役員十二名のうち五名が財務省OBで、代表権を持つ役員五名のうち三名が財務省OBでしょう。ここを独立させるということは、今は政策金融公庫の総裁がJBICの総裁も兼ねていまして、この人は帝人出身の民間の方ですけれども、JBICが独立したらまたトップに旧大蔵省、財務省の官僚が天下ってくるのではないかというふうに思いますので、そういう天下り先をふやすような、疑念を起こすようなことを民主党さんがやられるのはどうかなと私は思います。

 それで、時間がなくなってきましたので、実は、国際協力銀行が政策金融公庫と統合されるときに新たなミッション、使命として加わったのが、日本の中堅・中小企業の海外進出を積極的に助けますと。だから、正直言うと、JBICというと大企業相手というイメージだったのを、中堅・中小企業も支援しますということになったんですね。

 ところが、私が調べましたら、大臣、これは数字ですから御答弁は要りません。JBICによる中小企業の海外進出への支援は、件数で言いますと、二〇〇七年度十一件、二〇〇八年度十件、二〇〇九年度はたった五件ということで、余りというか、ほとんど成果を上げていないと言わざるを得ないわけでございます。

 総理、最後に伺いますが、日本の企業の九九・二%は中小企業でありまして、ここが元気にならなければ、総理がよくおっしゃっている平成の開国なんてできない、私はこのように思うんです。財務省の方に知恵をつけられたのかどうかわかりませんが、官僚の天下り先をふやすような機構改革をやるよりも、もっと本質的に中小企業を支援するような、助けるような支援策をやるべきではないか、私はこういう立場でございます。

 そこで、具体的に、本当は海江田経済産業大臣に申し上げようと思ったんですが、総理にぜひお答えをいただきたいと思いますけれども、今、日本の中小企業の多くは、私の地元の九州や沖縄でも、経済成長著しいアジア諸国にぜひ進出をしたい、ベトナムに行ってやれないか、インドネシアに行ってやれないか、バングラデシュに行ってやれないか、インドに行ってやれないか、こういう思いを持っている中小企業の経営者の方はたくさんおります。しかし、これだけ景気が悪い、大企業と違って中小企業は財務体力が非常に弱いですから、自前のお金で海外に社員を派遣することなんか到底できないところがほとんどであります。

 総理が開国、開国とおっしゃるから、それは開国ということは、明治維新のころもそうですけれども、やはり人材育成が一番の基盤でしょう。そうしたら、自分たちの力では海外に研修に送れない中小企業を助けるために、例えば中小企業の社員だけを対象に公募して、一定期間の間、私はぜひ三千人から五千人ぐらいの規模でやっていただきたいと思いますが、公的資金を入れて、海外の研修を中小企業の社員が受けて、あるいは技術指導を現地でして、地元の言葉や商習慣を覚えてまた日本の中小企業へ戻ってくる、そして日本の会社が成長著しいアジアに進出するための原動力になる、こういうプログラムをぜひとも考えるべきじゃないかと思いますが、総理、最後に御答弁をいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 本来なら海江田経産大臣が答えていただくのが直截ではありますが、今おっしゃったことは大変重要だと考えております。

 そこで、経産大臣を中心に、農水省、金融庁、財務省など関係機関が協力して、現在も中小企業の海外展開支援を一体的に取り組んでおりますし、さらに努力したいと思っております。

 委員御指摘の、中小企業において海外対応ができる人材を育成、確保することが重要だと考えております。ここに中小企業海外展開支援会議、これは経産大臣を長とした支援会議を設置するという形で具体化をいたしております。先ほどJBICについて天下りということを言われましたが、そうしたための改革ではなくて、海外に出る企業の支援ということで、中小企業に対しても、JBICも含め、しっかりとやるように私からこの場で改めて海江田大臣にも指示をいたしたい、このように考えます。

遠山委員 総理、私は、大企業の海外へのインフラ輸出がだめだと言っているつもりはないんです。それは大いにやっていただいて結構です。ただ、そこばかり支援をしないでほしい、中小企業をぜひとも支援する政策をやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

中井委員長 これにて富田君、遠山君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、米軍普天間基地問題について総理に伺います。

 この間の経過を振り返ってみたいと思います。

 普天間基地の国外、最低でも県外への移設を掲げて鳩山内閣がスタートをしたのは一昨年の九月のことでした。以来、約九カ月間、従来の名護市辺野古にかわる新たな移設先の検討を行ってまいりました。さまざまな移設先が浮かんでは消え、結局、昨年五月、辺野古に戻ることになりました。このように決めました。一体なぜまた沖縄なのかと多くの県民が落胆し、強い疑問を持ったのであります。

 それに対し、当時の鳩山首相は、沖縄を訪問した際、学べば学ぶにつけて、海兵隊のみならず、沖縄に存在している米軍全体がすべて連携し、抑止力が維持できるという思いに至ったと説明をしました。私は遠くからその鳩山総理の姿を見ておりました。

 ところが、今回、その鳩山首相自身が、共同通信と沖縄タイムス、琉球新報、地元二紙のインタビューの中で、その説明は後づけの理屈で方便だったと認めました。具体的にこのように言っています。

  徳之島も駄目で辺野古となった時、理屈付けをしなければならなかった。海兵隊自身が(沖縄に)存在することが戦争の抑止になると、直接そういうわけではないと思う。海兵隊が欠けると、(陸海空軍の)すべてが連関している中で米軍自身が十分な機能を果たせないという意味で抑止力という話になる。それを方便と言われれば方便だが。広い意味での抑止力という言葉は使えるなと思った。

このように述べているわけです。

 戦後、米軍基地にずっと苦しめられてきた沖縄に新たな米軍基地を押しつける決定が、こんな軽々しく決められていくというのは、私自身、この報道、方便だという地元紙の報道を見たときに、あいた口がふさがりませんでした。

 総理は、鳩山前首相の発言についてどのように考えていますか。

菅内閣総理大臣 私、鳩山前総理から直接にお聞きはいたしておりません。報道で拝見をいたしました。

 私としては、鳩山前総理はその後、若干の釈明の、ぶら下がりといいますか取材にも応じておられましたが、いずれにしても、そうした表現についても、本当に問題でもありますと同時に、私自身の考え方は、先ほど来申し上げていますように、沖縄の海兵隊を含む在日米軍の存在は、我が国の平和、このアジア太平洋地域の平和と安全にとって大変大きな役割を果たしていると考えておりますので、内容的にも私の認識とは若干、もし報道されているようなことであったとすれば、違っていると認識をいたしました。

赤嶺委員 菅総理は昨年の六月、就任に当たっての記者会見で、五月の日米合意について、鳩山前総理の思いをしっかりと受けとめて、引き継いでいかなければならない、こう述べているわけです。ところが、総理が引き継いだ日米合意の根拠、これは後づけの理屈だったということであります。

 総理はこういうことを鳩山さんからお聞きにならなかったんですか。

菅内閣総理大臣 全く、そういった表現を含めて、そういう趣旨のことはお聞きをいたしたことはありません。

赤嶺委員 鳩山総理はこうも言っています。なぜ米国は辺野古にこだわるのかという記者さんの問いに対して、アメリカは沖縄にいることでパラダイスのような居心地のよさを感じている、戦略的なメリットも当然だが、思いやり予算、県民の優しさも含めて、国内には沖縄よりよい場所はないという発想があるのではないか、このように述べております。

 この点について総理はどのように認識しておられますか。

菅内閣総理大臣 少なくとも、私自身の認識とは大きく違っております。

赤嶺委員 戦後、米軍は沖縄を占領下に置いて、そのもとで住民の土地を強制的に奪い、基地をつくったという歴史は総理も御存じだと思います。広大な米軍基地はこのように構築されたんですが、この基地のある場所というのは、本当に眺めのいいところなんです。基地の中から見る沖縄の海というのは、こんなにすばらしいのか、こんなすばらしい自然が地球上にあるのかと思うぐらいすばらしいんです。眺めのいいところは全部米軍基地が強奪したんです。そういう歴史を持っています。それが今に引き継がれています。

 七〇年代後半以降は、日米地位協定上アメリカが負担すべき米軍の住宅建設あるいは光熱水料まで、思いやりの名のもとに、日本が肩がわりしてきました。このようにしてつくられたパラダイスのような居心地のよさがあるから米軍が居座り続けているというこの鳩山前総理の指摘は、私もそのとおりだと思っております。思いやり予算や、強制的にいいところばかり取り上げて、ビーチも持っている、パラダイスなんですよ。それが米軍が沖縄にいる理由なんです。

 ところが、問題は、そういう認識を十分に持ちながら、辺野古に基地を押しつけるために抑止力という言葉を使ったことであります。日米合意を正当化するための、まさに方便です。県民に、国外、最低でも県外と約束しながら、なぜ辺野古に戻ることになったのか。この際、徹底的に究明する責任が菅内閣にあるのではありませんか。

菅内閣総理大臣 赤嶺議員のお気持ちあるいは見方でおっしゃることは、それはそれとして、そういう見方もあろうかと思いますが、私なり内閣としての基本的な考え方は、やはり日本の安全、平和というものの中で、日米安保条約というものは日本にとっても必要なものであり、またその日米安保条約の大きな要素が、米軍へ基地というものを提供する一方で、アメリカが日本が攻められたときにはともに守ってくれる、そういう関係が基本になっているということであります。

 そういった意味で、今沖縄の皆さんにとって返還後も多くの基地がある状態が続いていることについては、私どもも政治家として対応の不十分さを強く感じておりますけれども、今の米軍、沖縄における海兵隊の基地の存在そのものは、これは国の方針、政府の方針として日米の間で取り決めて存在しているものであって、それをいろいろな表現で言うのは、政府の立場、内閣の立場からすればそれは適切ではなくて、日本にとっても必要な基地ということで受け入れているというのが私、総理としての立場であります。

赤嶺委員 抑止力という方便で沖縄に基地を押しつけ続けて、そして本当にいい場所、広大な土地を米軍基地として使い続けている。

 やはり、日米合意の経過について、委員長、日米合意の根幹にかかわる問題だと思います。私は、鳩山首相を参考人として招致して、この問題で改めて集中審議を行うことを求めたいと思います。

中井委員長 鳩山首相とおっしゃいましたが、元首相でございます。前首相でございます。

 先ほどから、自民党さん、公明党さんからも御要求がございました。共産党さんの御要求も含めまして、理事会で協議をいたします。

赤嶺委員 鳩山さんについて、先ほど来から菅総理の認識を伺ってまいりました。

 総理は米軍の抑止力についても言及をされたわけですが、今度は総理自身の御認識を聞きたいと思います。

 菅総理も野党時代に、米軍の抑止力についてさまざまな発言を行ってまいりました。二〇〇六年六月の講演では、よくあそこ、あそこというのは沖縄ですね、沖縄から海兵隊がいなくなると抑止力が落ちると言う人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません、地球の裏側まで飛んでいって攻める部隊なのです、沖縄に海兵隊がいるかいないかは日本にとっての抑止力とは余り関係のないことなのです、このように述べております。

 総理は、海兵隊の抑止力に関する見解、いつ、どのようにして変えたんですか。

菅内閣総理大臣 私、総理になる前、特に野党の時代にそうした趣旨のことを、私もいつ、どこの場ということまでは今すぐはわかりませんが、言っていたことは十分あり得るということで、お聞きをいたしておりました。

 その上で、どの時点で変えたかということでありますが、何月何日の時点ということではありませんけれども、近年の極東あるいは北東アジアの状況、特に北朝鮮の核、ミサイル、拉致という状況の、ある意味での脅威が拡大しているなどを中心としたアジア情勢の緊迫の中で、より有効な抑止力ということを考えたときに、沖縄に海兵隊があることも抑止力の一つの要素となっている、このような認識に達したわけであります。

赤嶺委員 北東アジアの情勢、二〇〇六年と今日と、やはり同じ情勢認識が政府の中にもありましたし、国会でも議論されていました。結局、総理も、政権についたら学んで、抑止力は大事だという、学べば学ぶほどという立場ではありませんか。

 かつて総理は、「改革政権準備完了」こういう御自身が書かれた本の中で次のように述べております。

 「戦後の日本の外交は、冷戦構造の中で、一貫して基軸である日米両国の良好な関係を維持することを最優先課題としてきた。「米国のイエスマン」と世界中から笑われようが、冷戦構造が崩壊した後も、政権が変われば新しい首相は真っ先に」「ホットラインで米国大統領に電話し、日米首脳会談の予定を入れるという「現代の参勤交代」ともいうべき慣行が続いている。 日米関係さえうまくやっていれば、外交は及第点という意識が、歴代自民党の政権では強かった。そこには、長い目で見た国益や、宗教や言語も違う近隣諸国との間に敵対関係を作らないための外交戦略といった観点は希薄だった。」と述べた上で、沖縄の米軍基地について、「民主党中心の政権では、沖縄の基地の相当部分を占める海兵隊の沖縄からの撤退を真剣に検討するよう米国にはっきり求めていく。」と、ここまで述べているわけです。

 ところが、総理は、就任する二日前の六月六日、オバマ米大統領と電話会談を行い、普天間基地問題について、先般の合意を踏まえ、しっかり取り組んでいきたいと伝えたわけです。政権につく前と政権についた後で、言っていること、やっていること、全く正反対ではありませんか。

菅内閣総理大臣 まず、私もその本を出したことは記憶をちゃんとしておりますけれども、冷戦時代、それからポスト冷戦になって、さらには、九・一一を含む、ある意味、ポスト冷戦からさらに変化をしてきている国際情勢の中で、私は、冷戦時代と、ポスト冷戦と、さらに九・一一以降の大きな国際的安全保障状況は変わったと見るべきだと思っております。

 そういった意味で、日米、あるいは先ほども申し上げましたように日米安保条約というものも、かつては、まさに東西対立の中での、ある意味、西側の一国としての共同の安全保障であったわけですが、ポスト冷戦から、さらに今日の状況は、そういうソ連を仮想敵国とした状況から大きく変わった中で、先ほど申し上げましたような北朝鮮の脅威といった問題もあるわけであります。そういった意味で、私が変わったと言うのは、そういう国際的な情勢の変化ということもあります。

 それからもう一つ、率直な言い方をどこまでしていいかわかりませんが、鳩山総理が辞任されたことの理由の大きな一つがこの普天間の迷走にあって、その迷走はもちろん沖縄の皆さんにも大変御迷惑をかけましたが、ある意味では日米関係そのものもやや不安定なものになっておりましたので、私としては、その面も考えた中で、やはり五月二十八日の日米合意というものを踏まえた形でスタートをすることが日本の大きい意味での国益にも沿うものであると考えて、そういう立場で今日まで進めてきたところであります。

赤嶺委員 総理、前段でおっしゃった国際情勢の変化というのは後づけで、やはり方便だと思いますよ。鳩山さんと同じですよ。政権につく前、ついた後で、百八十度違うことをしています。

 要するに、後段で述べられましたけれども、政権についたらアメリカに物が言えなくなった、そういうことですよ。だから、あれだけ沖縄県民が猛反発しても、普天間基地を辺野古に押しつけようとしているわけです。

 民主党政権、対等な日米関係を掲げていたはずであります。これでは一体何のための政権交代だったのか、このように言わざるを得ないという指摘をしておきたいと思います。

 それで、こうした経過を経てつくられた日米合意にかかわって、今沖縄で何が起こっているかという問題です。総理は、沖縄の理解を得て日米合意を実行する、このように言いますが、現場で起こっているのはそのようなことではありません。

 沖縄防衛局が、辺野古に基地を建設するための調査をしゃにむに推し進めようとしております。名護市が基地建設反対の市の方針に基づいて防衛局の基地建設のための調査を不許可としたのに対し、一月末に、国は、行政不服の申し立てまでしてごり押ししようとしました。およそ理解を得てという姿勢では全くありません。総理、こういうことはやめるべきだと思いますが、いかがですか。

北澤国務大臣 総理に御指名でありますが、経緯を担当の大臣として申し上げさせていただきます。

 これにつきましては、この委員会でもたびたび御答弁を申し上げておりますように、国も一事業者としての立場で、法令に基づいて手続をとったというふうに御理解をいただきたいと思います。

赤嶺委員 総理、基地をつくるために、名護市が基地をつくることに反対で調査を不許可にした、それを国にも権利があるといって地方自治体を行政不服に訴える。国が自治体を訴える、こんなことが許されるんですか。

中井委員長 北澤防衛大臣。(赤嶺委員「いや、総理、説明を受けていますから、総理が答えてください」と呼ぶ)許されるんですかと聞いていますから。

北澤国務大臣 法の趣旨にのっとってやっておるわけでありますから、強権的な意味で、国がいかにも力の弱い地方自治体を弾圧する、抑えるとか、そういうような趣旨ではないというふうに御理解ください。

赤嶺委員 北澤大臣、前もあったんですよ。一九八〇年代に、那覇市が自衛隊の文書について、那覇市が管理している文書について情報公開をしたら、防衛省は那覇市を裁判に訴えたんです。地裁で負け、高裁で負け、そして最高裁でも負けたんですよ。

 政府が地方自治体を訴えるようなやり方を、あなた方は今度、名護市にやろうとしているんです。そんなことはやめるべきじゃないですか、総理。

菅内閣総理大臣 今、防衛大臣の方からお話がありまして、私もそういう趣旨だと説明をいただいております。つまりは、準備段階における技術的な事項であり、その法的手続において、法令に基づいて粛々と対応すべき種類のもので、不服申し立てに至ったと。

 もとより、この手続をもって、普天間飛行場の移設そのものを地元の意思を無視した形で強引に進めようとするものではない、このように理解をいたしております。

赤嶺委員 理解を求めながら進めますと言いながら、実際にやっていることは、地方自治体いじめじゃないですか。米軍再編交付金についても、前の市長のときに交付することを内定しておきながら、基地に反対する市長が決まったら交付金を打ち切るという、こんな自治体いじめで、理解を得るどころか自治体をいじめて基地建設を進めるようなやり方、こんなことは絶対に許されないと思います。

 それで、皆さんが口を開いたら沖縄の負担軽減を進めると言う問題について、現実にはそれに逆行する事態が起こっている、このことについて伺います。

 沖縄には、陸上の米軍基地があるだけではありません。周辺海域にも広大な米軍のための訓練水域が広がっています。合計二十九カ所、約五万五千平方キロメートルもの訓練水域が設定され、日本の領海、排他的経済水域にもかかわらず、漁業者が自由に操業できない状況になっています。

 そのうちの一つであるホテル・ホテル訓練区域の一部を解除することが日米合意には盛り込まれました。ところが、その合意が何ら具体化されないにもかかわらず、昨年十二月、米軍は、沖縄本島南東の訓練区域外の海域で模擬機雷の捜索、回収の訓練を行いました。過去最大規模の日米共同統合演習が行われたときのことであります。

 さらに、ことし一月にも、区域を無視して爆撃訓練を行おうとしました。一月から二月はソデイカ漁がピークを迎える時期で、多くの漁船が漁に出ていた。漁業者の安全と操業にかかわる重大な問題だということで、沖縄県も、そして漁協も、激しく抗議をいたしました。

 訓練区域を縮小するといいながら、実際には区域の外に訓練がどんどん拡大しているわけです。負担軽減どころか、負担が増大しているわけです。これについて、総理、どのように考えますか。

北澤国務大臣 ホテル・ホテルの返還については、今日も米側と頻繁に協議をしておりまして、これは必ず実現させなければいかぬ、このように思っております。

 また、ほかの地域での訓練については、今お話のありましたように、米軍はそれを取りやめております。

赤嶺委員 米国は、去年の十二月に訓練区域外で訓練したことはあるんですよね。防衛大臣、それはお認めになりますよね。

北澤国務大臣 今委員が御指摘をされた地区がどこであるのか特定をしていただかないと、それからまた、私が事前に通告を受けておりませんので、正確を期すためには、場所を特定していただき、場合によっては後日御答弁申し上げます。

赤嶺委員 総理、これは大変なことですよ。

 去年の十二月、沖縄近海のパヤオの上で訓練をしようとして、そして自衛隊は漁協に来て、こう説明したんですよ。掃海訓練、回収訓練というのは浅いところでなければ軍事的な効果は出ないんだ、このように言ったんですよ。まさに軍事優先のやり方がまかり通っているわけです。

 まかり通っていて、負担の軽減、あるいは理解を求める、あなた方は、やっていることと言うことが全く正反対。まさに、野党の時代のマニフェストを曲げたら毒食らわば皿までで、どこまでも行こうとしている。こういうことは絶対に許されない。

 もし負担の軽減と言うのなら、沖縄に新しい基地の建設をすぐにやめることですよ。そして、普天間の問題は即時無条件撤去する以外に解決の道はないということを申し上げて、質問を終わります。

中井委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 菅総理に尋ねます。

 なお、私の質問時間は限られておりますので、答弁は簡潔に、明瞭にお答えください。

 鳩山前総理が、地元二紙とのインタビューに応じ、普天間飛行場の県外移設断念の理由として掲げた在沖米海兵隊の抑止力について、辺野古しか残らなくなったときに理屈づけしなければならず、抑止力という言葉を使った、方便と言われれば方便だったと述べたようであります。

 総理、鳩山前総理の抑止力は方便との発言報道に、多くの県民はアキサミヨーと驚き、あきれてマブヤーヌギしています。大変に怒っています。私は、菅総理が主張をする日米合意の踏襲はこれで根拠や正当性を失ったと思いますが、総理の所感を伺います。

菅内閣総理大臣 鳩山前総理の発言、私も沖縄の新聞で読ませていただきました。直接には話はお聞きをしておりませんで、その真意について、その後、釈明の会見といいましょうか、そういうものも若干されたことを報道で見ております。

 いずれにしても、私どもとして、この五月二十八日の日米合意というのは、政府と政府、国と国との合意でありまして、そして、その中身については、私としては、沖縄の海兵隊を含む在日米軍の存在は、やはり日本の安全にとっても、このアジア太平洋の安定にとっても必要だ、そういう認識のもとで、その合意を踏まえて対応していく、そのことは変わらないことだと思っております。

照屋委員 社会民主党の福島党首は、日米合意に反対をして大臣を罷免されました。今回、鳩山前総理の方便で罷免されたことが明らかになりました。ひどいですね。悔しいですね。

 委員長、私も鳩山前総理を当委員会に参考人として招致することを求めます。

中井委員長 理事会で後刻協議をいたします。

照屋委員 私は、二月三日の予算委員会で、沖縄防衛局名護事務所設置経費を含む普天間飛行場の辺野古移設関連予算並びに東村高江のヘリパッド工事関連予算を全面削除するよう求めました。その際、同関連予算が約十八億円であると指摘しましたが、それは歳出ベースの金額で、契約ベースでは約七十億円だと判明しました。

 菅総理、内閣として、契約ベースの辺野古移設関連予算及び高江のヘリパッド工事関連予算を全面削除する考えをお持ちか、イエスかノーかでお答えください。

北澤国務大臣 このことについては、過日のこの予算委員会でも、官房長官並びに私から答弁をしております。

 イエスかノーかということでありますから、ノーであります。

照屋委員 全面削除をしないで社民党に予算案や予算関連法案への賛成の協力を求めてもだめですよ。

 菅総理、二月三日の予算委員会における私の質問に対して、辺野古は宜野湾市に比べて人口密集地域ではない、したがって、普天間飛行場を辺野古に移設すれば危険性は軽減されるといった趣旨の答弁をされました。菅総理は、危険な米軍基地は人口密集地域の本土より辺境の島沖縄へ、宜野湾市より人口が少ない名護市辺野古へ、そういう認識をお持ちなんでしょうか。

菅内閣総理大臣 先ほどの質問は防衛大臣が答えられましたが、私の理解するところでは、北部訓練場の高江ヘリパッドは普天間とはちょっと別の、関連のない案件だとお聞きしております。それも含めて、党と党の議論が行われていると承知をいたしております。

 それから、人口密集地域ということについての御質問ですが、私が申し上げたのは、こういうところだったらいいとか悪いということで申し上げたというよりも、現在存在している普天間の基地が人口密集地域にある、一方、今この日米合意で一応、案として上がってきている辺野古は、現在は海の上で、そこを埋め立てるわけでありますので、そういう意味で、万々一事故があった場合にそういう影響が少ない地域だ、そういう客観的な見方を申し上げたところであります。

照屋委員 菅総理は、沖縄県の人口はどれぐらいおるとお思いでしょうか。

菅内閣総理大臣 正確かどうかわかりませんが、二百万人前後だと思っております。

照屋委員 約百三十九万人。日本の人口の約一%ですよ。一%の人口で国土面積は〇・六%。しかし私は、政治家や政治の使命は、一%、〇・六%の人間の尊厳を守るのが政治の使命だと思いますよ。

 菅総理は二月三日の予算委員会で、私が辺野古移設について、総理が沖縄の理解が得られたと判断する具体的な根拠、基準を問うたのに対して、あいまいもこの答弁に終始している。残念であります。

 総理、酢のコンニャクだのと言わないで明確に、名護市長、沖縄県知事との文書による合意書締結が沖縄の理解を得られたとする必要条件か、お答えください。

菅内閣総理大臣 現在のところで、そうしたいろいろな関連、仲井真知事を含め稲嶺名護市長、沖縄県議会、名護市議会といった皆さんから、辺野古移設については厳しい御意見があることは、よく承知をいたしております。

 この問題については、もちろんそうした行政に携わる、あるいは議会の関係者の御理解もそうですし、ある意味で沖縄県民全体の皆さんの理解を得られなければなかなか物事を進めることはできない、そういうふうに認識をいたしております。

照屋委員 菅総理、私も社会民主党も、古い自民党政権に回帰することは全く望んでおりません。私たちは、菅内閣がマニフェストを忘れ、新自由主義の政治に回帰したこと、これに怒っているんだ。

 ところで、外務大臣、先ほど公明党の遠山議員からも質問がありましたが、二月十四日、普天間飛行場の移設とパッケージではない牧港補給地区の早期単独返還を求める浦添市議会や市長らの要請に対し、関係省庁で米側に提案して話を進めていると返答したようであります。私も早期返還を望んでおります。外務大臣の答弁に市議会も市長も大いに喜んでおりますが、協議の進捗状況と対米交渉の決意をお聞かせください。

前原国務大臣 先ほど公明党の遠山議員にもお答えをいたしましたけれども、昨年の五月二十八日の2プラス2での共同宣言において、牧港補給地区、いわゆるキャンプ・キンザーの一部について、早期返還における優先分野として合意をしているところでございます。

 一方で、浦添市の皆さんあるいは仲井真知事からも、全体も早期返還に向けて努力をしてもらいたい、こういう要望をいただいておりまして、そのことをアメリカ側にも伝えているということでございます。

 今交渉している最中でございまして、できる限り沖縄の皆さん方の要望というものにこたえられるように私も努力をしていきたいと思っておりますけれども、ただ、ロードマップというのはパッケージの問題もございます。これは先生とは立場が違う問題ではございますけれども、その中にあっても、できる限り沖縄の御要望にこたえたいという思いでアメリカ側に話をしているところでございます。

中井委員長 菅総理から補足説明があります。菅内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 先ほど、私が新自由主義に行ったという趣旨のお話がありましたが、私は、自分自身、そういう認識を持っておりません。特に、私は、雇用とか最小不幸社会の実現ということを正面に掲げております。

 確かに貿易についての自由化のことは必要だと思っておりますが、決して、小泉・竹中時代のそうした政策がよかったとか、その政策に戻るつもりは全くありませんので、そこだけはぜひ御理解をいただきたいと思います。

照屋委員 前原大臣、ぜひ、先ほどの答弁における決意を単なる方便に終わらせないで進めてもらいたいと思います。

 ところで、外務大臣にお伺いしますが、米空軍嘉手納基地の第一八航空団と第三五三特殊作戦群が、本日の十時半ごろ、沖縄県や関係周辺自治体の中止要請を押し切って同基地内でパラシュート降下訓練を強行いたしました。

 私が聞きたいのは、沖縄の基地負担の軽減を主張しながら、どうして外務、防衛両省は訓練中止をアメリカに求めなかったのか。これでは、菅内閣の沖縄の基地負担の軽減も方便に終わってしまうではありませんか。

前原国務大臣 今、照屋先生がおっしゃったように、米軍が本日午前十時半ごろ、嘉手納飛行場においてパラシュート降下訓練を行ったわけであります。六名が嘉手納飛行場に降下をしたということであります。

 このパラシュート降下訓練につきましては、私も自社さのときの担当でありましたので、よく覚えておりますけれども、平成八年のSACO合意、沖縄に関する特別行動委員会の最終合意に沿って、伊江島で行うということが決まりになっております。

 ただ、自然条件等の制約によって伊江島補助飛行場の使用がどうしても困難な例外の場合には、定期的でない小規模の降下訓練であれば嘉手納飛行場も使用し得るというのが日米両政府の従来からの理解であります。実際、今回は、平成八年から数えまして五回目でございます。

 米側からはあくまでも例外的に行ったものであると説明を受けておりますし、我が方からは、公共の安全に妥当な考慮を払うとともに、今後とも基本的には伊江島補助飛行場で行うように申し入れたところでございます。

照屋委員 大臣、米側は、伊江島補助飛行場周辺が天候不良、こういうことで強行して、マスコミが伊江島に問い合わせをしたら非常にいい天気だと。こういうことを外務省もしっかり掌握して米側に言わないとだめですよ。

前原国務大臣 その点はちゃんと把握をしております。

 それで、数日間、伊江島の天候が悪くて、パラシュート降下訓練もあるいは空母艦載機のパイロットも、ある一定期間の訓練をしなければその資格が剥奪をされるということで、おりなきゃいけない。そして、きょうが本当に伊江島が天候がいいかわからないという状況の中で、嘉手納飛行場であればある程度の悪天候でもできるというような説明がございましたけれども、それは、先生おっしゃるとおり、基本的には、SACO合意に基づいて伊江島補助飛行場で行うべきということの申し入れを行っているところでございます。

照屋委員 もう時間も残り少ないので、北澤防衛大臣。

 枝野官房長官が、辺野古移設と振興策はリンクしないと予算委員会で言いました。ところが、地元の真部沖縄防衛局長は、リンクするかのような、まるで政府方針から逸脱した官僚発言をやっておりますが、そもそも名護防衛事務所を新設する必要があると思っているんですか。

北澤国務大臣 まず、真部局長の発言の趣旨でございますけれども、普天間飛行場代替施設の建設事業による地元への経済効果について言及したものであって、また、それがいかにも、今委員がおっしゃられたようにとられたということで、もし発言の仕方にそごがあれば注意を申し上げますが、私のところへ来ている報告ではそういう趣旨ではないと。

 それから、名護の防衛事務所については、もう委員御案内のように、前市長の時代に強く誘致をされて決断をしたわけでありまして、今の状況の中でどうするかということについては十分また御協議をさせていただきたいと思います。

照屋委員 終わります。

中井委員長 これにて照屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 まず、日ロ関係からお伺いをいたしたいと思います。

 菅総理は、二月七日の北方領土の日に北方領土返還要求国民大会においてあいさつをされて、昨年十一月のメドベージェフ大統領の国後島訪問を許しがたい暴挙だというふうにおっしゃいました。すると、その後行われたラブロフ・ロシア外相と前原外務大臣との日ロ外相会談の後の記者会見で、ラブロフ外務大臣が、良好な雰囲気の中で会談を行いたかったがそうはならなかった、北方領土の日に受け入れがたい行為があったからだ、こういうふうに遠回しに、この菅総理の許しがたい暴挙という発言について、会談の雰囲気を険悪なものにさせた、こういうふうに指摘をされています。さらに加えて、平和条約問題で日本政府が過激なアプローチに同調するなら交渉の展望はないということで、領土交渉の何か打ち切りを示唆するような発言までこのときにラブロフ外相はおっしゃっています。

 菅総理があのときにロシア側の強硬姿勢をあの発言によって誘発してしまった、こういうふうに菅総理自身は今振り返ってお考えになられるかどうか。それとも、あのときに許しがたい暴挙だというふうにおっしゃったことによって、どのような効果がその直後にある日ロ外相会談にあるというふうに考えておられたのか、お伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 昨年の十一月の一日、メドベージェフ大統領が国後を訪問する、その直後においても私は直接に抗議をいたしました。また、その後もロシアの閣僚の北方領土の訪問が幾つかありました。そういうことに対して、私は、日本国民の多くは、それを認められない、許せないという思いを持たれている、私自身にもその思いがありましたので、ちょうど北方領土返還の大会の場でありましたけれども、その思いを率直に申し上げたところであります。このことによって、その後に行われた日ロ外相会談、大変厳しい雰囲気の中で行われたという御報告も大臣からいただいております。

 それが、ある意味で、どういう効果というのかあるいはプラスマイナスがあったのかということは、これは一概になかなか言えないかもしれませんが、私としては、日本国民が持っている思いを、やはり伝えるべきところはしっかりと伝えた上で、しかしその中で、厳しい中ではあったけれども、ある意味率直かつ建設的な議論が外相間で行われたということでありまして、それを踏まえて、今後も、領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針に基づいて、粘り強く交渉を続けてまいりたい、こう考えております。

柿澤委員 日ロ外相会談が終わった後も、ロシア側の極めて強硬な発言が続いております。

 インタファクス通信によると、十五日、ラブロフ外相は、日本との平和条約交渉について、日本が第二次世界大戦の結果を認める以外に道がないと述べて、交渉を前進させるには、第二次世界大戦の結果として北方領土がロシアの領土になったということを承認することが必要だ、こういうことを言っているそうです。昨年十一月のAPECの横浜会合でも、菅総理は、国後島を訪問したばかりのメドベージェフ大統領と会談をされて、そして、クリル諸島は将来にわたってロシア領だと面と向かって言われたということであります。にもかかわらず、来年中、すなわちことしじゅうの訪ロを招請されて、招待に感謝をしたい、そう遠くない時期にモスクワかロシアを訪れて交渉協議をやりたい、こういうふうにおっしゃった、応じたというふうにも言われております。

 今回の日ロ外相会談では、菅総理のことしじゅうの訪ロという話は一切出なかったようでありますけれども、菅総理の訪ロに向けた準備というのは進んでいるんですか。菅総理は、ことしじゅうにぜひ招待に応じてロシアを訪問したい、こういう思いは捨てておられないんでしょうか。

前原国務大臣 ロシア側の政府高官がこういう発言をした、それに対して、こういった場で質問を受けてまた私や菅総理が発言をした、そのことによって、私はマスコミを通じて交渉をやるものではないと思っていますし、ラブロフ外相とも、直接会って議論しようということを今回も言ってまいりましたし、その姿勢は貫いていきたいと思っております。

 そして、我々の大前提は、今までの諸合意、諸文書、そして法と正義に基づいて四島の帰属を確定して、そして平和条約を結ぶという考え方については、我が方の考え方は申し上げているところでございます。

 ことしもロシア側の政府高官の訪日というのが計画をされておりますし、また、今回合意をしたいわゆる円卓会議というものでハイレベルの交流というものが行われる予定でございまして、領土問題については原則を踏まえてしっかりやる、そして、協力できるところについては、経済あるいは国際場裏における協力、これもしっかりやっていく、その方針で臨んでいきたいと思っております。

中井委員長 済みません。総理の訪ロについては。

前原国務大臣 十一月のAPECの横浜の会議で、メドベージェフ大統領が直接、菅総理に対して訪ロ要請をされたということでございまして、今後どのような議論をお互いしていくかということの前提の中で、我々としては、総理に行っていただく準備というものを遺漏なくやっていくということで、準備を行いたいと思っております。

菅内閣総理大臣 今、前原大臣からお話があったように、招待そのものは、私は今でも生きていると思っております。

 ただ、行くとなれば、領土問題の交渉、場合によっては経済的ないろいろな案件の問題も話し合うことになりますので、それに向けて、今回外相同士の話し合いが行われたことも踏まえながら、どういうタイミングでどういう形で行くのか、それはしっかりと検討してまいりたいと思っております。

柿澤委員 時間もありますので、対中戦略についてお伺いをいたします。

 パネルをお示ししましたが、中国が戦略上重視していると言われる第一列島線と第二列島線を示したものです。これは、皆さんにとっては、そんなことはよくわかっているよというものかもしれませんけれども、今回、国民の皆さんもテレビを通じてごらんになられていますので、あえてお示しをさせていただきました。

 第一列島線とは、日本列島から九州、沖縄、尖閣諸島も入ります。フィリピン、ボルネオに続くこの赤点の線がそれになっております。第二列島線というのは、伊豆諸島から小笠原、そしてグアム、サイパン、最終的にはパプアニューギニアまで至る線です。

 中国は、近年、海軍力や空軍力などの増強を通じて、接近阻止・領域拒否、アンチアクセス・エリア・ディナイアル、A2ADと言いますけれども、この能力を高めていると言われております。特に、第一列島線の内部や、第一列島線と第二列島線の間の領域で中国がこうした能力を高めつつあるということが、今、関係者の中で大変な警戒感を呼んでいるわけです。

 中国が開発中とされる対艦弾道ミサイル、ASBM、東風21は、射程約千五百キロメートルということで、中国本土から発射をし、衛星などを通じた誘導で海上のアメリカの空母もピンポイントで攻撃できるとされています。この開発に成功していけば、アメリカの艦隊は自由に西太平洋の海域に入れなくなって、日米安全保障条約を事実上無力化させる危険性がある、こういうふうにも言われております。

 このため、ASBM、東風21は、まさに中国の接近拒否戦略の切り札であり、また戦略環境を一変させるゲームチェンジャーであるとまで言われております。まさに、その接近拒否戦略の最前線として中国から位置づけられているのが第一列島線であり第二列島線で、要するに日本列島なわけです。

 中国は、二〇一〇年までに第一列島線内部の制海権を握ると、二〇一五年にずれ込むとも言われていますけれども、そして二〇二〇年には第二列島線内の制海権を確保するのが目標だというふうにも言われていて、取りざたされている空母の建造の方針もその一環だと見られております。

 もう一度パネルを見ていただきたいんですけれども、日本はそうした、まさに第一、第二列島線の真っただ中、いわば最前線にあって、そして中国の接近拒否戦略によって、有事の際にアメリカ軍の来援と切り離される重大なリスクを抱えていると思います。

 防衛大臣にお伺いをしたいと思いますが、日本はこうした中国の軍事能力の向上をどのようにとらえ、そしてどのような措置を日本として検討しているのか、お伺いしたいと思います。

北澤国務大臣 もう既に、新しい防衛大綱、中期防はごらんをいただいておるというふうに思いますが、そのことを基本にして、ただ、中国の意図について今断定的に言われましたけれども、中国がそういうことを断定的に意図しているということではないわけでありまして、活発な海洋活動、あるいは軍備の増強、そういったものに対して我々は懸念を持っておると。

 そこで、先月十三日に、ゲーツ国防長官と私は会談をいたしまして、日米の共通の戦略目標の見直しやこれを踏まえた今後の日米防衛協力の方向性について基本的な考え方を示せるよう、日米同盟の深化についてこれから協議を加速させていきたい、こういうふうに合意をいたしたところであります。

 アクセス阻止、エリア拒否については、米国防省が発表したQDRにおいて、多岐にわたる洗練された武器等を有する国家が、米軍部隊の展開を阻害するアクセス阻止能力を行使する可能性がある、こういうふうに規定をしておりまして、それに対して米側が今度はどういう対応をとっていくかということでありますけれども、QDRでは、統合エアシーバトル構想について、空軍と海軍が、陸、海、空、宇宙、サイバー空間といったすべての作戦領域をまたいでどのように能力を統合させるかという課題に現在取り組んでおる、こういうことであります。

柿澤委員 まさに、アメリカはQDRにおいて、こうした接近阻止・領域拒否戦略に対して、統合エアシーバトルという新しい作戦構想を提示しているところであります。西太平洋を初めとする海域において、こうした接近阻止・領域拒否能力を有する脅威に対して、空軍と海軍が、空、海、陸、宇宙、サイバー空間をまたいで能力を統合して対処していくという構想です。

 こうしたことについて、今後、日米2プラス2で策定予定の共通戦略目標の中でも、日米の共同の対処すべき作戦構想としてひとつこれから取り組んでいかなければならないものではないかと思いますけれども、今後の日本のアメリカとの共通戦略目標の設定においてこうした構想をどのように取り込んでいくのか、お伺いをしたいと思います。

北澤国務大臣 これについては、今申し上げましたように、共通戦略目標について突っ込んだ協議をしていくと。

 先ほど町村委員が安全保障について御意見を言われておりましたが、町村さんがこの日米の防衛協力について三段階アプローチというものを主張されて、大変私は戦略的にいいものをつくっていただいたというふうに思いまして、今申し上げたのは第一段階でありまして、その後、第二段階、第三段階ということで今後協議をしていくわけでありますが、まず今のところは、とりあえず戦略目標について日米で合意をする。

 それと、先ほど富田委員がいみじくも言われておりましたけれども、中国の武力の増強をみんなが脅威だと思ってこれに備えようとすると大変なことになるわけでありまして、先ほど菅総理との議論を聞いておりまして、私も非常に感銘を受けたわけでありますけれども、ここのところをどう中国に理解してもらうかという戦略も、これは軍事だけではなくて、違う意味で大変に貴重なものだというふうに私は思っております。

柿澤委員 御答弁をいただきまして、続いて、個別の問題に入っていきたいと思います。

 十四日に日本国際フォーラムとアメリカのCSISが共催した「スマート・パワー時代の日米関係」というシンポジウムに、私、参加をしました。CSISのマイケル・グリーン日本部長や防衛大の神谷教授らが参加をされておられましたけれども、スマートパワーというのは、御存じのとおり、軍事力を中心としたハードパワーや、外交や経済協力などソフトパワーを融合させた概念、オバマ政権の対外政策の基本原則を示すキーワードです。

 しかし、十四日のシンポジウムでは、まず語られたのは、どちらかというとハードパワーの重要性の方でありました。ハードパワーはもう古い、ブッシュ時代に軍事偏重、ハードパワー偏重が否定されたから今度はソフトパワーだというのは違うと。そして、日本はソフトパワーを云々するよりも、ハードパワーの宿題をまだ果たしていないじゃないか、こういう意見が出されました。それはすなわち、集団的自衛権の問題であり、武器輸出三原則の問題だと。東アジアは、先ほど申し上げたような非常に脆弱な戦略環境の中にあるわけです。

 今回、新しい時代の安全保障と防衛力に関する懇談会の民主党政権になってからの報告書でも、この集団的自衛権の問題は、やはり憲法解釈を見直すべきではないか、こういうことが言われている。そして、外務大臣となられた前原外務大臣も、まさにこの集団的自衛権の行使については、場合に応じてこれが行使できない、アメリカの武力行使と一体ではだめなんだ、こういうことではいけないのではないか、こういう見解を披瀝されてこられたと思います。

 こうしたことについて取り組むべき時期が来ている、こういった意見も有識者の間では高まっておりますけれども、前原大臣はどのようにお考えですか。

前原国務大臣 今、柿澤委員がおっしゃったことについての問題意識というのは、私も共有をしている部分がございます。

 現在、私は菅内閣の閣僚でございまして、この集団的自衛権の問題においては、現時点で、例えば憲法解釈を変えてやるということではありません。また、先ほど武器輸出三原則の話がありましたが、あれは防衛大綱の中にも、今後検討するということで、特に二点書かれています。一つは共同生産の問題、そしてもう一つは国際貢献の際の、外に出す場合のいわゆる例外規定も含めてですね。そういった問題については、今後要検討していくということで、大事なポイントだと両方とも思っております。

柿澤委員 もう一つ、日本版NSCの問題について最後にお伺いをしたいと思います。

 外交、安全保障の官邸の司令塔機能として、日本版NSC、国家安全保障会議の設置について、昨年の参議院の予算委員会で菅総理は、魅力的な提案で前向きにとらえたい、こういうふうに発言をされて、新しい防衛大綱にもこれは盛り込まれましたけれども、その後の検討がどういうふうに具体的に進んでいるのか、なかなか見えてこない状況になっております。

 通常国会に法案提出を視野に入れているなんという報道もあったんですけれども、これはどうなっているんでしょうか。集団的自衛権の問題も、また武器輸出三原則の問題もそうですけれども、もしかすると社民党さんに配慮をして引っ込めてしまったのか、こういうふうにも思いますけれども、菅総理のお考えはいかがでしょうか。

中井委員長 時間が来ておりますので、菅総理から簡単にお答え願います。

菅内閣総理大臣 NSCの考え方は、各方面からもいろいろ意見をいただいております。

 その中で、私が考えますのは、やはり今、日本の基本的な役所の体制は、外務省、防衛省、あるいはいろいろな関係の縦割り構造を官邸において統合的にやっていくには、相当しっかりした青写真をかかなければならないというのがこの間の私の考えているところであります。

 そういった点で、まずは、そういうものにかかわる各大臣を、そういう中で一つのイメージについていろいろな機会に少し議論をしていきたいし、また、場合によってはそうしたものに対するいろいろな外部の意見も聞いてみたいと思っております。

 まだ具体的に何か作業を公的な形で始めているというところまではいっておりませんが、十分関心を持って対応していきたいと思っております。

柿澤委員 これはもう期限を切って進めていかなければ実現をしない問題だと思いますので、それだけ申し上げて、時間も参りましたので、質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中井委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。

 平成二十三年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じます。

 公聴会は来る二月二十二日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中井委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次回は、明十七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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