衆議院

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第4号 平成23年11月9日(水曜日)

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平成二十三年十一月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 岡田 克也君 理事 笹木 竜三君

   理事 武正 公一君 理事 西村智奈美君

   理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      井戸まさえ君    石関 貴史君

      今井 雅人君    打越あかし君

      江端 貴子君    大西 健介君

      大西 孝典君    逢坂 誠二君

      金森  正君    川内 博史君

      岸本 周平君    工藤 仁美君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      佐々木隆博君    斉藤  進君

      斎藤やすのり君    阪口 直人君

      杉本かずみ君    中野 寛成君

      中屋 大介君    仁木 博文君

      野田 国義君    橋本 博明君

      花咲 宏基君    馬淵 澄夫君

      村上 史好君    村越 祐民君

      室井 秀子君    森山 浩行君

      谷田川 元君    山尾志桜里君

      山岡 達丸君    山崎 摩耶君

      山崎  誠君    山田 良司君

      横山 北斗君    和嶋 未希君

      和田 隆志君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    佐田玄一郎君

      橘 慶一郎君    野田  毅君

      馳   浩君    山本 幸三君

      石井 啓一君    東  順治君

      古屋 範子君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君    阿部 知子君

      服部 良一君    江田 憲司君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   総務大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   法務大臣         平岡 秀夫君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       中川 正春君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          枝野 幸男君

   国土交通大臣       前田 武志君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   防衛大臣         一川 保夫君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)            山岡 賢次君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (「新しい公共」担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   国務大臣

   (東日本大震災復興対策担当)

   (防災担当)       平野 達男君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   防衛大臣政務官      神風 英男君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      江利川 毅君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    真砂  靖君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     和嶋 未希君

  打越あかし君     村上 史好君

  逢坂 誠二君     斉藤  進君

  岸本 周平君     阪口 直人君

  小山 展弘君     野田 国義君

  佐々木隆博君     井戸まさえ君

  橋本 博明君     谷田川 元君

  横山 北斗君     斎藤やすのり君

  和田 隆志君     杉本かずみ君

  東  順治君     石井 啓一君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

  阿部 知子君     服部 良一君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     佐々木隆博君

  斉藤  進君     工藤 仁美君

  斎藤やすのり君    横山 北斗君

  阪口 直人君     大西 孝典君

  杉本かずみ君     山尾志桜里君

  野田 国義君     小山 展弘君

  村上 史好君     打越あかし君

  谷田川 元君     橋本 博明君

  和嶋 未希君     今井 雅人君

  石井 啓一君     古屋 範子君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

  服部 良一君     阿部 知子君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     岸本 周平君

  工藤 仁美君     山崎 摩耶君

  山尾志桜里君     森山 浩行君

  古屋 範子君     東  順治君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     和田 隆志君

  山崎 摩耶君     中屋 大介君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     逢坂 誠二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十三年度一般会計補正予算(第3号)

 平成二十三年度特別会計補正予算(特第3号)

 平成二十三年度政府関係機関補正予算(機第2号)


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計補正予算(第3号)、平成二十三年度特別会計補正予算(特第3号)、平成二十三年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長稲田伸夫君、財務省主計局長真砂靖君、厚生労働省年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 東日本大震災発生から八カ月を迎えようとしております。改めて、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、私ども公明党といたしまして、本格的な復旧復興に全力を尽くしてまいりますことをお誓い申し上げたいと存じます。

 また、タイの洪水被害、トルコの震災で被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げますとともに、日本政府として最大の支援を行うことを要請いたしたいと思います。

 まず、大震災の復旧復興について伺います。

 被災者の大半は、仮設住宅や民間の借り上げ住宅等に入居されておりますけれども、多くの方々が仕事を失われておりまして、今後の収入のめどが立たない、あるいは生活のめどが立たないということで、不安にさいなまれていらっしゃる。これは、被災地での企業や事業所の再建がなかなか進まないということから、一時的な雇用はあったとしても恒常的な雇用が生まれてこないということに大きな原因がございます。

 また、被災自治体は、新しいまちづくりのための復興計画のビジョンあるいは骨子というのをつくっているんですが、政府の財政支援のあり方がなかなか見えてこないものですから、住民の方に説明に至っていないということから復興計画づくりがおくれている。こういった状況でありますから、被災地は今、瓦れきは何とか撤去はできましたけれども、復興に向けての建設のつち音がほとんど聞こえない、こういう状況でございます。

 このように復旧復興がおくれている最大の原因は、本格的な復旧復興のためのこのたびの第三次補正予算の提出が先月の二十八日と大幅におくれたことによりますが、これは菅前政権のときに、政権の延命のために、二兆円という極めて中途半端な規模の第二次補正予算をつくり本格的な補正予算の編成をおくらせたこと、これが最大の原因だというふうに思っています。

 先日の本会議の代表質問で、本格復興のための予算執行が冬にずれ込むことへの率直な反省を総理に求めましたが、総理は、必要な対応を適時適切に行ってきた、こういう答弁でございました。

 総理は、この三次補正予算の国会の提出時期は遅くなかった、適切な時期だったというふうに認識をされていらっしゃるのか、政府として全く反省するところはないのか、まずこのことを確認いたしたいと思います。

野田内閣総理大臣 三月十一日に東日本大震災の発災があった後に、まず、五月二日に第一次補正予算を皆様の御協力で成立させていただきました。それから、七月二十五日に第二次補正予算を成立させていただきました。これは合わせて約六兆円でございますが、これらの予算の執行を通じて、瓦れきの撤去であるとか仮設住宅の建設であるとか被災者の生活支援などに努めてまいったところであります。

 その後に、復興構想会議で復興全体の青写真をつくっていただくという作業がございまして、それを踏まえて七月の末に政府としての復興の基本方針をまとめました。その基本方針に基づいて、あわせて、被災地の復興計画がすべて出そろったわけではありませんが、その状況も見ながら対応してきて、今般、第三次補正予算を提出したということでございます。

 その間に必要な部分、例えば除染事業を推進するために九月九日に二千百七十九億円の予備費の活用、汚染された牛肉、稲わらに係る肉用牛肥育農家支援で九月二十七日に八百六十三億円の予備費の活用、中小企業等グループ補助金、これは十月十四日に千二百四十九億円の予備費の活用など、必要な対応は可能な限り行ってきたつもりでございます。

 なお、石井委員の御指摘のとおり、そうはいっても、遅いあるいは行き届いた事業がまだできていないという御指摘があることも承知をしております。そういうこともございますので、今般お願いをしている第三次補正予算、復興のつち音を早く聞くためにも、一日も早い成立に向けて御協力をお願いしたいというふうに思います。

石井(啓)委員 菅政権が速やかに退陣をして二次補正予算をやらなかったら、あるいは、復興基本方針をつくった後、間を置かずに補正予算の編成の指示をしていれば、もっと本格的な復興予算、補正予算の国会提出は早められたんですよ。少なくとも一カ月、場合によっては三カ月近く早められたのではないかという見方もあります。そういう状況はぜひ率直にやはり反省をしていただいて被災者に臨んでいただきたい、こういうふうに思います。

 復興財源について伺いますけれども、今回提出されています復興財源確保法案は、全体の復興期間十年のうち前半の五年間、これを集中復興期間と呼んでいますけれども、この前半の五年間の財源を確保する法案でありますけれども、後半の五年間、この財源の確保というのはどうなるのか、これは今までほとんど議論されておりません。今後の課題ではありますけれども、復興期間の後半の五年の復興財源をどのように確保されるお考えなのか、確認をしたいと思います。

安住国務大臣 前半の五年間は、先生御存じのように集中復興期間ということで十九兆円、残りのことについては、現時点ではトータル二十三兆というふうに見込んでおりますけれども、現実には、もしかすれば、福島県の除染費等々積み上がっていく可能性はある。

 その財源はどういうふうにするんだということでございますが、今後、この財源確保法で償還期限を伴う税負担等はお願いをしましたけれども、税外収入等々さまざまな財源をその時点で確保しながら、必要な経費についてはやはり賄っていかなければならない、私としては、そういう基本姿勢で臨みたいと思っております。

石井(啓)委員 ちなみに、除染の費用は東京電力に求償する予定ですから、とりあえず国が出していますけれども、そこは間違えないようにしていただきたいと思います。

 それで、この復興財源確保法案では、「法律の施行後適当な時期において、」「復興の状況等を勘案して、復興費用の在り方及び復興施策に必要な財源を確保するための各般の措置の在り方について見直しを行う」と、いわゆる見直し規定を置いております。

 五年間で十九兆円という費用を一応見積もっておりますけれども、これは阪神・淡路大震災の事例から類推して推計している部分がたくさんございますので、これから実際に各地の被災自治体で復興計画等を立てていけば、五年間で十九兆円という財源は恐らくもっと膨らんでいく可能性が高い、こういうふうに思います。

 そこで、見直しで復興費用がふえていく場合に、その増加分は安易に増税に頼るべきではなく、これは歳出削減とかあるいは税外収入の確保ということで賄う、こういう原則でぜひやっていただきたいと思いますが、総理、これはいかがですか。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、今回、当面の五年間、集中復興期間については約十九兆円、少なくとも十九兆円という見込みを立てておりますが、これは、阪神・淡路大震災の被害総額からの類推というお言葉がございましたけれども、そういうものを参考にしてつくっております。少なくともという言葉を使っておりますけれども、現実にはこれがふえていく可能性は十分あり得ると思います。

 その際には、石井委員御指摘のとおり、安易に国民の皆様に税負担をお願いするのではなくて、まずやるべきことは、歳出の無駄の削減をするということ、歳出削減、加えて税外収入の確保、これを何としても懸命にやり抜いていく上で財源を確保していくことが基本であろうというふうに思っております。

石井(啓)委員 今申し上げたことは、実は昨日の民主、自民、公明の三党の幹事長会談で確認をされたというふうに伺っておりますので、政府としても、ぜひこの姿勢でやっていただきたいと思います。

 ところで、復興財源確保法案では、今後の税外収入の確保策というのを幾つか挙げておりますね。一つは、日本たばこ産業株式会社の株を、当面二分の一から三分の一まで売却しますけれども、さらに三分の一から全株売却を目指しているというのが一つ。二つ目には、エネルギー特会で保有している資源開発のいろいろな会社がある、その株を売却するということを目指していますね、これが二つ目。三つ目には、日本郵政株式会社の株の売却、これを見込んでいらっしゃいます。それはそれとしてお進めいただきたい。日本たばこ産業については、葉たばこ農家あるいは小売業者に対する配慮が当然必要ですけれども、そういった条件のもとに進めていただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、今後、当初想定していたよりも復興の財源が非常に大きくかかってくる可能性があるということから、さらに税外収入の確保に努めなければならないというふうに考えています。これによって税による国民負担を最小限にすべきである、こういうふうに考えておりまして、具体的に三点、提案を申し上げたいと思います。

 テレビでごらんになっている方はパネルをごらんいただきたいと思います。また、資料を配付しておりますけれども、今後の税外収入確保策ということで、三点提案をいたします。

 一つは、歳出削減でございますが、今、集中復興期間の五年間の歳出削減、これは具体的に取り組むというふうになっていますけれども、この集中復興期間の終了後、すなわち平成二十八年度以降も引き続き歳出削減に取り組んでいただきたい。これが一つ。

 二つ目には、決算剰余金の活用。これは、従来から、今後の復興需要が生じてくる、これによる税収増が期待されるわけですから、それを活用すべきだということを幾度となく申し上げていましたけれども、具体的に、決算で剰余金が出た場合、これをなるべく復興債の償還に充てていただきたい。これが二つ目。

 三つ目に、民間資金の活用ということで、PFIなど民間資金を積極的に活用し財政支出を抑える。

 この三点、具体的に提案を申し上げたいと思います。総理、御見解をいただきたいと思います。

安住国務大臣 今、石井政調会長から御指摘のありました三点でございます。

 一の点につきましては、私もぜひ歳出の削減に取り組んでいきたい、平成二十八年以降もしっかりやっていきたいと思っています。

 決算剰余金の活用については、財務副大臣もおやりになった先生でございますから、大変よく御存じのとおり、毎年六月ぐらいに出てくるわけです。二十二年度に関しては、一兆四千億強出てまいりました。ただ、これについては財政法の一定の縛りはありますけれども、出せるものについては今後もしっかり出していきたいと思っておりますので、御意向に沿えるんではないかと思います。

 なお、民間資金の活用については、PFI等の活用というのは、十分これからも、特に地方自治体等が行う事業等については、民間資金の活用によりまして公的資金をできるだけ抑えていく、そして、民間資金を導入していきながら公的な部分を充実するという点では、その分のお金が財源として見込めるというふうになると思いますので、貴重な提言でございますので、実現をしていきたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 前向きな御答弁をいただきましたので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ちなみに、歳出削減については、集中復興期間は、二十七年度までの分は、子ども手当の見直しやあるいは高速道路無料化の中止分で賄っておりますけれども、引き続き、子ども手当や高速道路の無料化の中断分というのは有力な財源になると思います。

 それから決算剰余金も、これまで過去、全額、経済対策等に使ってきたという事例もありますから、使い道を今の時点で限定されたくないというお気持ちはわからなくもないですけれども、これはなるべく復興債の償還に回すようにしていただきたいと思っております。

 続いて、復興財源を確保するために、国家公務員にも給与削減で協力をしていただく、これが重要だと思っています。

 政府が既に提出しています国家公務員の給与臨時特例法案では、平成二十五年度末までに平均七・八%の給与を削減するというふうにしております。この特例法案というのは、ことしの六月三日に国会に提出をされているものでありまして、既に提出から五カ月以上経過をしております。当初想定していた削減期間というのは三年近い削減期間があったと思いますけれども、提出してから時間がたっているものですから、後ろが決まってくるとその削減期間がどんどん短くなっていく、こういうことになるわけですね。

 そこで、私は、改めて給与の削減期間を三年間に延ばしてはどうか、こういうふうに思います。このことを本会議の代表質問で指摘をしましたが、総理は、削減期間の延長は考えていない、こういう答弁でございました。期間の延長というよりは、むしろ当初想定していた期間に戻すということで、これはおやりになったらどうかというふうに思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

川端国務大臣 給与臨時特例法は、極めて厳しい昨今の状況の中で、国家公務員の皆さんに大変厳しい給与削減をお願いしたものでありますが、まさに極めて異例な措置でありますので、臨時特例的にということで、関係する職員団体でも真摯な話し合いをした中で、平成二十五年度末という期限を、終わりの期限を提示して出した経過は御案内のとおりでございます。

 国会の判断を仰ぐべく法律を出したのが六月三日でありますから、おくれていることは事実でありますが、政府の立場といたしましては、現在のところ、この期間の延長は考えておりません。本法案については、早期に国会で御審議をいただいて、成立をさせていただきたいというところでございます。

石井(啓)委員 臨時特例の措置であることはわかっているんですけれども、六月三日に提出したわけですから、これは、ことしの前半から二十五年度末までを当初予定していたわけですよね。それが、法案の成立がずれ込んできているわけですから、二十五年度末とおしりを切れば、削減期間はどんどん短くなっていく。そういう関係にあるわけですから、二十五年度末にしなければいけないということは必ずしもないと私は思うんですね。むしろ復興財源を捻出するために御協力いただくということでありますから、当初想定していた期間に戻すことは何ら問題のないことだ、私はこういうふうに思っております。

 それで、昨日も議論になりましたけれども、この給与削減特例法案に関しまして、人事院勧告の扱いが問題になっております。

 ことしの人事院勧告、九月三十日に出されましたけれども、十月二十八日の閣議決定では、政府が既に出している給与臨時特例法案、これが平均七・八%の給与削減ということで、人事院勧告による給与水準の引き下げ幅、平均〇・二三%と比べて厳しい給与減額措置を講じようとしているものであり、総体的に言えばその他の人事院勧告の趣旨も内包しているということで、人事院勧告の実施を見送る決定を政府としてされております。

 この人事院勧告の趣旨を内包しているというのはどういうことなのか、このことを総務大臣に確認したいと思います。あわせて、今回の人勧を見送るという決定をしたことについて、人事院の見解はどうなのか、これを続いて人事院総裁にお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 労働基本権が制約されている現行制度におきましては、人事院勧告制度は極めて重要なものであるということは政府としては当然認識をしております。尊重することが基本であるという中で、人事院制度、人事院勧告の中身も真摯に検討させていただきました。

 まず、民間準拠を含めて、給与水準の引き下げが人事院勧告の場合は平均〇・二三%、一人当たり年収減が平均一万五千円、月額にいたしますと八百九十九円、全体の影響額は百二十億円という勧告内容でございます。

 これに対して、既に提出させていただいております給与臨時特例法案による給与減額率は七・八%、一人当たりの年収減は約五十万円、給与にしますと月額で二万八千円、全体の影響額が二千九百億円ということですので、およそ三十三倍の部分でありますので、金額的に、減額という意味では大変厳しい部分をお願いしているということで、水準的にはそういう状況にあります。

 一方、人事院勧告の趣旨に関しましては、本年の人勧は、五十歳以上の職員を中心に支給されている給与構造改革の経過措置を廃止する、あるいは、民間に合わせると、給与水準を、高齢者の部分を引き下げてフラット化するということで、年齢に着目した措置を講じようとしているものでありまして、給与カーブをフラット化するという効果を持っております。

 一方、特例法案は、我が国のこういう危機的な状況に御協力いただくということで、身を削るという観点から、本省の課長級職で一〇%、課長補佐、係長級で八%、係員では五%というように、職責に応じて減額率を変えるということで設定していますが、一般論でありますけれども、職責が重くなるほどに年齢も高くなるという傾向がありますので、この特例法案の実施により、結果としては給与カーブをフラット化する効果があるというふうに思っております。

 したがって、人勧と特例法案は、目的やねらいは当然異にするものでありますが、両者ともに、給与カーブをフラット化させる、あるいは給与水準を大幅に下げるという効果は有しておりまして、その意味において、総体的に見れば、効果において、特例法案は人勧の趣旨を内包していると評価できると考えております。

 フラット化の実例でありますけれども、モデル的に計算しますと、人勧実施では、最若年層はプラス・マイナス・ゼロ、高齢者層は約一万二千円減額ということですが、特例法案では、三万円ぐらい差が縮まるという効果を有しているということを申し添えておきたいと思います。

 以上でございます。

江利川政府特別補佐人 人事院勧告を見送ることについていかがかということでございます。

 今、人事院勧告の趣旨が内包されているという説明がありましたが、私は、今の説明については若干の疑問点を持っております。

 一つは、〇・二三と七・八を比較して、数字が大きい方が内包しているという話でありますが、マラソンをすれば百メートル競走はしなくていいのか、百メートル競走をしなければカール・ルイスもウサイン・ボルト選手も出てこないわけでありまして、人事院勧告は憲法に基づく制度でありますから、まずこれはきちんとやるべきであります。憲法はきちんとやるべきであります。憲法に基づく制度でありますから、きちんとやるべきだと思います。小さいから含まれているという議論は成り立たないというふうに考えます。

 それから、二番目でありますが、フラット化の話が出ました。フラット化につきましては、私どもは、民間給与を見て、あるいは較差の大きさを見て、五十歳以上の人についてその較差を縮小するということであります。係長をずっとやって五十歳以上になった、課長補佐をずっとやって五十歳以上になった、そういう人を縮小するということであります。

 一方、係員から係長、あるいは課長補佐から課長になりますと、職責もふえます、仕事も難しくなります。そういう人にはちゃんと給与で処遇すべきでありまして、その較差は、めり張りはきちんとつけるべきであります。今回の特例法はそのめり張りを縮小するものでありますので、フラット化という意味で内包しているといいましても、中身は全く異なっているわけであります。そういう意味で、フラット化は内包されているわけではありません。

 それから、給与構造改革の経過措置についての話もございましたが、経過措置は、制度を変えるときにはやむを得ない措置として実施をしているものでありますが、五年たちましてもなお経過措置が残っているわけであります。これを廃止しようと。経過措置のための財源は、皆さんの、公務員の給与を、昇給を抑制して捻出しているわけでありますので、この経過措置を廃止しますと、抑制分の回復ができることになります。二十代、三十代、四十代初めの人たちの給与を回復させようということであります。給与構造を公平にする、ゆがみを是正する、そういう上で震災対策の負担を求めるのが、私は給与のあり方として正しいのではないかというふうに思うわけでございます。

 人事院勧告は、今回は実施できるものであります。実施できるものを実施しないということになっているわけでありますが、憲法あるいは法体系に基づいた制度でございますので、これを実施しないといいますと、法体系上問題が出てくるのではないかという認識を持っております。

石井(啓)委員 政府の内部でこれだけ意見の差があるということ自体がやはり問題ですよね。大きな問題をこれははらんでいる。

 これから政府は労使で給与を決めるという方向にしたいということのようですけれども、現時点では、人事院、これは生きているわけですから、憲法に保障された労働基本権が制約されている代償措置としての人事院勧告は尊重する、これは法治主義の我が国のあり方から当然である、こういうふうに申し上げておきたいと思うのです。

 特に問題だと思いますのは、ちょっと総理に聞きますからよく聞いていただきたいんだけれども、今政府が出している給与臨時特例措置というのはあくまでも時限措置です。今の案ですと、平成二十五年度末までですね。そうすると、平成二十六年度になるともとの給与に戻るわけですよ。

 ですから、七・八%下げている、あるいは役職の高い人の方が給与をより多く下げているというふうに言っているけれども、それは全部平成二十六年度になるともとに戻ってしまう。もとに戻ってしまうと、今回の人事院勧告を実施しなければ、人事院勧告が反映されていないもとの給与に戻ってしまうということなんですよ。

 これでは、人事院勧告が全く無視されているということになるんじゃないですか。内包されている関係にはならないんじゃないですか。総理、このことをどう考えますか。

川端国務大臣 まず、私からお答えさせていただきます。

 平成二十六年四月以降のことでございますけれども、それまでにも人事院は毎年勧告を出されます。それぞれに出されたときには、来年以降の人事院勧告についても、人勧尊重の基本方針でその内容を真摯に検討して、国政全般で対応するのは当然であります。

 今の御質問は、期限切れの後のことでありますけれども、現在提出しております国家公務員制度関連法案が施行されていれば、労使交渉により改定が行われることとなりますし、政府としては、人件費に関する基本方針を踏まえた交渉を行った上で、二十五年度中に必要な法案を国会に提出させていただきたい。そしてまた、関連法案が実施、施行されていない場合には、直近二十五年の人事院勧告を踏まえて国政全般の観点から検討を行った上で、二十五年度中に必要な法案を提出するということであります。

 今回は、人勧を最大尊重して、法律は出しませんが、その趣旨を含んだ対応をさせていただいて、その後は、期限切れの部分は、人勧の対応を含めて、しっかりとこの財政状況の中で対応してまいりたいと思っております。

石井(啓)委員 仮に労使交渉で給与が決められるようになったとしても、その交渉のベースが人事院勧告が反映されていないもとの給与になるということが問題だというふうに申し上げているのです。私は、やはり人事院勧告を尊重した上で、あるいは尊重した形で給与の特例的な引き下げを行うべきだ、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

 続いて、事業者の二重ローン対策でございますけれども、ようやく与野党の協議がまとまりまして、野党が提出した事業者再生支援機構法案を修正することになりました。

 パネルあるいは資料の二枚目でございますけれども、産業復興機構というのが政府のもともと考えていた案。これに対して、再生支援機構という右側の案が野党の案でございます。

 支援対象。政府の方は、事業再生の見通しが立ちやすい事業者ということでありますが、野党の案は、事業再生の見通しが立ちにくい事業者であっても支援の対象にする。特に小規模の事業者、農林水産業者、医療福祉事業者を重点的に支援する、こういうことになっております。

 支援期間。政府の方が原則五年に対して、野党の案は原則十五年にしております。この野党の案が十五年としたことに対しまして、政府の方も今この五年を延ばそうという動きにあるというふうに伺っております。

 買い取りの対象ですけれども、野党の案は、リースの債権あるいは信用保証協会の求償権も対象にするということが明確化されております。

 買い取り規模でございますが、政府の方が二千億円規模、野党案は当面五千億円規模、こういうことになっております。

 野党が提出しました再生支援機構法案。これは参議院に議員立法で提出されまして、通常国会で参議院を通過していたんですが、与野党協議が長引いたため、この再生支援機構法案は衆議院でたなざらしになっていたんですね。当初、政府は、産業復興機構の案で十分だというふうに主張をしていましたけれども、結局、協議の中で野党案をやることによって十分な対策ができる、こういうことを認めざるを得なくなったわけであります。

 時間がかかったことによって事業者の再生がおくれざるを得なくなってしまったということになりますから、この点については、私は政府・与党は反省をしていただきたいというふうに思っております。

 ところで、野党案の再生支援機構を設立するためには、政府出資の二百億円と、それから買い取りの資金、これを市場から政府保証をつけた上で調達する必要がある。これは本来、今回の第三次補正に盛り込むべきものでありましたけれども、時期的に間に合わなかったということでございました。

 そこで、政府には、この再生支援機構の設立のための資金については、予備費を活用するとともに、政府保証についても、次の補正予算、恐らく年末になると思いますけれども、そこには盛り込むことをぜひやっていただきたいと思います。この点について、総理、答弁を求めます。

平野国務大臣 石井委員御紹介のように、二重ローン救済法案につきましては、これまで与野党間で協議されてきまして、十月二十日に三党の実務者間で主要論点について合意に至りまして、今国会で本法案のできる限り速やかな成立が図られるものというふうに理解をしております。

 この法案が成立されましたら、再生支援機構が速やかに立ち上がりまして、既に走っております産業復興機構と連携しながら着実に被災者の救済に当たることができますように、必要な予算措置は速やかにやるものというふうに考えております。

石井(啓)委員 これはぜひお願いしたいと思います。

 では、続いて、復興庁について伺いますが、政府の復興庁の設置法案では、復興庁の事務は復興に関する施策の企画立案、総合調整が主体でありまして、復興に関する施策の実施事務は、復興交付金と復興特区にとどまっております。

 当初想定されておりましたのは、強力な実施権限を持つ復興庁。復興基本法にはそういうねらいでこの復興庁というのは入れたつもりでありますけれども、その当初想定した復興庁像とは相当かけ離れておりまして、復興庁の実施権限をさらに強化すべきだというふうに考えますが、総理、いかがですか。

平野国務大臣 復興庁法案の担当大臣でございますので、お答えをさせていただきたいというふうに思います。

 地域の復興は被災地市町村そして地域住民であるということは、繰り返し本委員会でも申し述べさせていただきました。復興庁の果たすべき役割というのは、市町村が復興事業を円滑にやれるように、迅速に行えるように、各府省の縦割り行政を排除して、そういったさまざまな仕事を支援するということの機能を備えなければならないというふうに考えております。

 御指摘の復興交付金につきましては、各府省の補助金を一括化し、被災自治体が行う道路、病院、学校施設、漁港などハード事業全般を横断的に網羅するものであるということ。それから、特区制度につきましては、これは公明党さんからもさまざまな御提案をいただきましたけれども、各府省の制度に思い切って切り込み、規制制度の特例や税制等の特例を実現するものであるということで、復興交付金、復興特区制度とも既存の枠組みを超えて復興を強力に推進するツールになる、施策になるというふうに考えております。

 それから、総合調整権につきましては、予算要求の調整権や勧告権を含む強力なものとなっておりまして、復興庁は、地方公共団体のニーズにワンストップで対応し、支援をすることができる十分な権限、機能を担う組織というふうに考えております。

 これらの権限、機能を活用いたしまして、縦割りを排除し、各府省が持つノウハウ、人材を総合的に活用し、県とも連携しつつ、市町村の支援を一体的かつ強力に行ってまいりたいと考えております。

石井(啓)委員 今申し上げました実施権限をさらに強化するということが、今後、復興庁設置法案をめぐる最大の論点になると思いますので、政府としてもこれは真剣に検討していただきたいと思います。

 ところで、今の復興庁の案には被災三県に復興局と支所を置くというふうになっているんですけれども、三県以外の被災地、例えば私の地元の茨城県とか、ほかの県の被災地では復興庁の窓口というのはどうなるのか。他県の被災自治体に対して地元で復興庁が対応できるように、私は支所等の配置もぜひ考えていただきたいと思いますが、これは担当大臣、どうですか。

平野国務大臣 現行の案では、岩手、宮城、福島に復興局ということと、あと被災地域に支所という考え方で今制度を組み立てておりますが、茨城県等々初め他の県でも非常に被災額が多額に上っている、また被害が大きいという状況もございまして、こういった点につきましては、法案の成立後の全体の制度設計に合わせて、皆様方の意見を聞きながら考えていきたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 これはぜひお願いしたいと思います。

 それから、復興に関する最後の質問ですが、政府の復興特区法案でございますけれども、私ども公明党が従来提案をしてきました企業誘致のための法人税の特例措置、あるいは被災自治体の土地利用の手続の一元化、また国と地方との協議機関の設置、これが盛り込まれていることは評価をしたいと思います。

 ところが、肝心の、法律上の規制を自治体の条例によって変更できる、条例による法律の上書き権、これが認められておりません。このことは先日、代表質問で総理にお伺いしましたけれども、総理は、条例による法律の上書きについては、国会に対して地方公共団体に立法権限の一部移譲を求めるものであり、事後チェックを導入したとしても、政府提案として国会に提出するべきではない、こういう答弁をされています。

 国会の立法権限にかかわるため政府提案として提出しなかったという趣旨であれば、国会がみずからの意思として条例による法律の上書き権を認めれば、政府としてはこれは容認する、こういうことでよろしいのか。これは総理の答弁ですから、総理に確認したいと思います。

野田内閣総理大臣 今回提出している復興特区法案は、石井委員御指摘のとおり、おおむね御党の御提案に沿ったものだというふうに思います。

 御指摘の、条例による法律の上書きについては、さきの本会議の答弁でも申し上げたとおりでありまして、これが基本的な私の考え方であります。

 その上で、要は、国会での修正があった場合の対応という御質問ですが、これはちょっと答弁が難しいんですよね。というのは、法律に従って行政は動くわけでありますので、国会による修正を容認するとかしないとかということを言及する立場ではないということは御理解をいただきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 これは国会で行うことですけれども、当然ここは、議員修正で与野党協議がまとまるためには、やはり政府の意向というのは非常に重要なわけですから、ぜひ前向きな指示を総理として出していただきたいと思います。その点、どうですか。

野田内閣総理大臣 国会の状況をよく見守って対応していきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 よろしくお願いします。

 それでは、社会保障と税の一体改革についてお伺いします。

 まず、年金問題。これは最も関心の高い問題でありますから質問いたしますが、年金財政がどうなっているのか、あるいは年金財政は大丈夫なのかという声が聞かれますので、私は、平成十六年の年金改革、当時私ども公明党がリードしてやったという自負がございますが、これについて確認をしたいと思います。

 平成十六年の年金改革の柱、今パネルを提示しましたけれども、この十六年の改革以前の年金制度というのは、五年ごとに財政計算をして次の五年間の保険料と給付額を決めてきた。ある意味で、五年ごとにシャクトリムシのように進んできたんですね。そういうやり方をしていると、では、将来どうなるのか、将来の保険料はどんどん青天井で上がってしまうのではないか、あるいは給付はどうなるのかという不安があったわけです。そこで、この平成十六年の年金改革というのは、百年先を見通して、保険料や給付の見通し、あるいは年金財政の改善を行う、こういう改革を行ったわけです。

 まず保険料については、これは徐々に引き上げていきますけれども、上限を設定するということで、国民年金については最終的に十六年度価格で一万六千九百円で上限にする、厚生年金は労使折半で一八・三%までの保険料率で上限を設定する、ここまで徐々に引き上げるということにしました。

 それから、給付の方ですが、マクロ経済スライドというのを導入しまして、負担の範囲内で給付水準を調整する。どういうことかといいますと、物価の上昇やあるいは賃金の上昇よりも年金の給付の上昇の割合を抑える、〇・九%抑えるとしています。例えば、物価や賃金が二%上がった場合、〇・九%下げまして一・一%を年金の給付の上昇率にする。物価や賃金の上昇よりも年金の上昇を抑えるということですから、現役世代の賃金の上昇の割合よりも年金の給付の上がる割合が少なくなるということで、その割合のことを所得代替率といいますけれども、その所得代替率は少しずつ下がっていくわけですが、しかし将来とも五〇%は確保する。モデル世帯で、四十年厚生年金に入っている世帯で、将来とも五〇%確保するということで給付の下限を設定しています。

 それから、年金財政上は二つのことをやっておりまして、まず積立金。従来、積立金を取り崩すことは考えていなかったわけですが、おおむね百年間で財政均衡を図るということで、この百年の間で少しずつ取り崩していくというふうにしていく。さらには、基礎年金国庫負担を二分の一まで引き上げる。こういうふうにしまして、百年後まで年金収支が均衡するという改革を行ったわけでございます。そこで、年金百年安心プランというふうにPRをしたわけでありますけれども、年金は年金の制度だけで成り立っているわけではありませんで、出生率などの人口の動向あるいは経済の動向に影響されます。

 そこで、下に書いていますけれども、五年ごとに年金財政の健全性を検証するというふうにしておりまして、平成十六年の五年後の平成二十一年に財政検証を行っています。この平成二十一年の財政検証では、百年後までの年金財政の収支が均衡することを確認しておりまして、また将来のモデル世帯の所得代替率も五〇・一%ということで、五〇%を下回らないことを確認しております。したがって、現行制度の年金財政は安定している、健全である、こういうふうに言えると思いますが、このことを、これは年金局長に確認したいと思います。

榮畑政府参考人 平成二十一年二月に行いました年金財政検証では、将来にわたりまして年金財政の給付と負担の均衡がとれているということが検証されておるところでございます。

 その後の財政状況でございますが、直近の平成二十一年度につきましては、厚生年金基金の代行部分を含む収支状況で考えますと、二十一年度末の積立金は財政検証よりも約四兆円上がっているところでございます。一方、平成二十二年度でございますが、現在集計中でございますが、賃金上昇率が上がっていないところから、財政検証よりも若干年度末の積立金が下がるかなというふうに想定しているところでございます。

 ただ、このように、財政検証の直近の二十一、二十二年度で考えますと、いい年もあれば、そうでない年もございますが、総じて言いますと、現時点では、年金財政はさほど悪化しているというところではございません。

 ただ、賃金が上昇していない等、現下の経済情勢は大変厳しいところがございまして、今後の年金財政は、なかなか楽観できないところがございます。長期的な人口とか経済の趨勢のチェック等々もしながら、年金財政の健全な財政運営ができているかどうか、今後ともしっかりと注視、チェックをしていきたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

石井(啓)委員 平成二十一年の財政検証では長期的に均衡がとれているということを確認しました。ただ、今後の人口やあるいは経済の動向については注視していかなければいけない、チェックをしていかなければいけない、これは当然のことです。

 そのことを今数字で確認したいと思いますけれども、年金財政検証の前提がどうなっているかということですね。平成十六年の年金改革が左側、真ん中に平成二十一年の財政検証でどうなったか、さらに、右側に現状がございます。

 出生率で見ますと、平成十六年の年金改革時点、最新の数値が平成十二年、二〇〇〇年ですが、出生率は一・三六ありました。これに対して、五十年後の二〇五〇年に、少し下がってまた戻っていくということで、二〇五〇年に一・三九というふうに見込みました。これに対して、平成二十一年の時点では、直近の数字、平成十七年に一・二六まで出生率が下がってしまったんですね、これをベースに、二〇五五年、五十年後にはまた一・二六になるというふうにしましたけれども、現状どうなっているかといいますと、実は、平成十七年に出生率は底を打ちまして、その後、着実に上がっています。平成二十二年の出生率は一・三九、平成十六年時点の二〇五〇年の数字をもう達成しています。

 ですから、これは年金財政上は非常にプラスですね。出生率が多くなるということは、これから年金財政を支える子供たち、成人がふえていくということですから、さらに少子化対策を充実させて出生率を着実に伸ばしていけば、年金財政上プラスになるということでございます。

 それに対して、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りがどうなっているかといいますと、平成二十一年の財政検証では、物価上昇率は平成二十八年以降一・〇、賃金上昇率は平成二十八年以降、実質が一・五で名目で二・五、運用利回りが平成三十二年以降、実質三・一で名目で四・一とします。

 それに対して、現状は、平成二十一年はリーマン・ショックが起きましたから、足元の数値がやはり少し悪くなっていますね。物価上昇率は平成二十二年でマイナス〇・七ですし、賃金上昇率も〇・六八。運用利回りは、悪い年もあればいい年もあるということで、平成十六年から平成二十二年までの平均で見ますと一・二四。これは、物価が下がっている中ではまあまあの結果だと思います。累計では十二兆七千億円のプラスになっている、こういうことでございます。

 これは、言いましたように、人口は、これからさらに出生率を上げていければ、非常に明るい。経済の数値については、これから景気対策あるいは経済対策をしっかりやることによって、例えば物価についても、平成二十八年に一・〇にすることが十分可能です。逆に、マイナスのままでいったらデフレが続くということですから、これは克服しなければなりませんし、政府もそういう姿勢で臨んでいると思います。賃金上昇率、実質一・五、これも十分可能です。運用利回り、これは頑張らなきゃいけませんけれども、経済を活性化することによって前向きの利上げが行われれば、実質三・一も十分可能だということで、この経済的な数値も、これから経済対策あるいは景気対策をしっかりやることによって十分可能だ、長期的にも安定する、こういうふうに申し上げたいと思っております。

 ただ、百年安心というふうにPRしてきましたけれども、これは、百年間制度をいじらなくてもいいという趣旨ではございません。ただ、先ほど前のパネルで示したように、年金の基本的なことはしっかりと固めましたので、建物でいえば、基礎や柱はがっちりつくりましたので、あとはリフォームで済むようにしています。建物でいえば、百年住宅をつくりましたから、百年住宅のままで全くいじらないことはない、部分的にリフォームは必要になると思いますけれども、そういった意味で百年安心の制度をつくったということになろうかと思いますので、ぜひ、きょうごらんになっていただく方、そういった意味で御安心をいただきたいと思っております。

 ところで、最近、年金支給開始年齢を引き上げるという問題が報道されています。六十五歳から六十八歳まで引き上げるということですが、これはなぜ引き上げの検討を始めたのか、その理由がわかりません。

 このことを先日の代表質問で総理に聞きましたが、総理は、政府としては、引き上げを決定したものではなく、また、年金の財源対策として議論を開始したわけでもない、こういうふうに答弁されていますけれども、先ほど確認しましたように、現行の年金制度は安定している、長期的に均衡している、こういう状況の中で、なぜ財源対策でもないのに今この引き上げの検討を始めたのか、その理由が理解できないんですね。この引き上げの検討の目的は何なんでしょうか。総理、どうでしょうか。

小宮山国務大臣 御承知のように、日本は世界最長寿国であります。先進諸国を見ましても、アメリカもドイツもやはり支給開始年齢を六十五歳から六十七歳に上げるなど、諸外国もその開始年齢を上げておりますので、そうした中で、最長寿国の日本として、もっと早くそうした年金の支給開始年齢を上げていく議論をすべきだったとおっしゃる方もございます。そうした中で、政府の社会保障の検討会議の中で、民間の委員の方からの御意見もございまして、開始年齢の議論を検討すべきだということがございました。

 ただ、きのうも申し上げましたように、厚生労働省の審議会で検討するときに、これは中長期的な課題です、あるいは、これはすぐに対応するものですということをもっとわかりやすく整理してやるべきだったということで、そこは、混乱をさせて皆様に不安を与えたことは大変申しわけなかったというふうに思っております。

 ですから、今年金局長からもお答えをしたように、現在の財政状況、出生率の動向ですとか、積立金の運用とか、年金財政が厳しいから今しているということではなくて、将来的に検討が必要だからということで検討させていただいている。そういう意味では、きちんと整理をして全体像をお示しし、工程表もお示しをしていきたいと思っておりますので、先日、私の方から、この年金の支給開始年齢というのは、来年の通常国会に法案を提出するとか、ここ一、二年で何かをするということではございませんということは明言をさせていただいております。

石井(啓)委員 将来的に検討が必要だというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど確認しましたように、平成二十一年の財政検証では百年後も財政収支は安定している、均衡していると局長は答えたじゃないですか。だから、今の時点で将来的に検討する必要はないんですよ、平成二十一年の財政検証では。

 それで、諸外国が年金受給開始年齢の引き上げをやっているから我が国もやらなきゃいけないという理屈は、これはちょっと乱暴じゃないかと思うんですよね。何でもかんでも諸外国のまねをしなきゃいけないということはないじゃないですか。日本には日本の事情があって、日本の年金財政の中でどう考えていくか。諸外国をまねするんだったら、ヨーロッパの消費税率は二〇%近いから、消費税率も一〇%じゃなくて二〇%近くにしなきゃいけない、そういう理屈になってしまいますよね。だから、諸外国がやっているからということで単純にやらなきゃいけないという理屈は余りにも乱暴だ、こういうことは申し上げておきたいと思うんですよ。

 中長期的な観点からということで、これは当面法案の提出は考えていない、こういうことでよろしいですか。もう一度確認します。

小宮山国務大臣 当面、来年の通常国会あるいは再来年という短時間の中で法案を提出することは考えておりません。

石井(啓)委員 来年の通常国会はいいんですけれども、それ以降はどうなんですか。来年の通常国会は出さない。では、再来年、二年後、三年後、出すんですか。

 といいますのは、なぜそういうことを確認しているかというと、政府・民主党がまとめた社会保障と税の一体改革の中では、今言った支給開始年齢の引き上げというのは、二〇一二年以降速やかに法案提出すると書いてあるんですよ。二〇一二年以降速やかに法案提出すると、みずからそういうふうにまとめているんですよ。だから、来年は、二〇一二年は出さないかもしれないけれども、では、一三年、一四年で出すというんですか。速やかに法案提出するとなっていますよ。厚生労働大臣、どうなんですか。

小宮山国務大臣 年金の改正すべきものについて二〇一二年以降速やかに提出をすると申し上げているので、すべてのものをそこに入れるということは言っておりません。

 ですから、低所得者への加算ですとか、あるいは受給資格期間の短縮ですとか、当面やらなければいけない、必ず今盛り込もうと思っているものはございますが、あと幾つか検討している中で、何を一くくりにして来年の通常国会の冒頭に社会保障の改革の全体像の中でまずやることとしてお示しをできるかを今検討しているところでございます。その中に支給開始年齢を上げるということは入らないということを申し上げました。

石井(啓)委員 とするならば、六月の一体改革、これは修正してもらわなきゃいけませんよ。順次実施すると書いてあるじゃないですか。二〇一二年以降速やかに法案提出と工程表に入っているんですよ。そこで順次実施する、法案提出に向けて検討すると書いてあるんですから、これは私が言っているわけじゃなくて、あなたたちがまとめた一体改革の成案の中にそういうふうに書いてあるんだから確認したんですよ。そうじゃないと言うんだったら、ちゃんと改めてください。修正してください。

古川国務大臣 担当大臣としてお答えをさせていただきたいと思います。

 この成案では、さまざまなこれから検討していくべき項目について掲げさせていただいたわけでございまして、今まさにその成案に従って厚労大臣のもとで検討をいただいているところでございます。検討が終わって、そして方向が出れば、それは順次法案として提案をさせていただくということでございます。

石井(啓)委員 今手元に持っているんだけれども、ここに書いてあることと違うんですよ。これはまたしっかりと議論していきたいと思います。

 この社会保障と税の一体改革成案の中では、民主党が野党時代から強く主張してきたいわゆる年金の抜本改革、すべての年金制度を国民年金も含めて一元化するということと、全額消費税による最低保障年金の創設、この二つの柱、この年金抜本改革は、数字の伴う具体的な中身は全く示されていません。

 さきの九月の臨時国会の代表質問で、我が党は、「もういいかげんに、民主党が言うところの年金抜本改革案は、実現はおろか、具体的な制度設計すら困難であると認めるべき」だ、こういうふうに迫りましたけれども、総理は、民主党の「「あるべき社会保障」の実現に向けて」と題する提言の中で年金の新制度の骨格が示されているし、また、マニフェストでは平成二十五年に新たな制度の決定を約束している、今回の成案の新しい年金制度の創設について今後政府でも検討を進めていきたいと、従来主張してきた年金抜本改革に取り組むという姿勢を崩していません。

 そうであるならば、平成二十五年度に決定するということになれば、我々の任期満了は平成二十五年の八月です、したがって平成二十五年の通常国会にこの年金抜本改革の法案を提出するということになりますけれども、そういうことでいいかどうか確認したい。

 もう一つは、この法案提出までの民主党と政府との具体的な検討スケジュールを示すべきだ、こういうふうに思いますけれども、総理、どうですか。これは総理の答弁だから、総理に聞きたい。

古川国務大臣 政府におきましては、政権交代以降、新年金制度に関する検討会をつくりまして、昨年六月二十九日に「新たな年金制度の基本的考え方について」という中間まとめをさせていただいております。

 その中で、我々が目指している新しい年金制度というのは、先ほど委員から今の制度が百年安心だというお話がございましたけれども、まさに、新しい制度をつくるとすればそれは百年安心になるような形にしなきゃいけない。そういう制度について言えば、これは、一党だけで制度設計を詳細にすべきものではなくて、やはり党派を超えた国民的な合意を得た上で新しい制度をつくらなきゃいけないだろう。

 そういう考え方のもとに、新しい年金制度についての考え方におきましては、新たな年金制度については超党派で国民的な議論を行っていくべきものですので、基本原則を定めた上で、それ以上の具体的な内容につきましては、最初から政府だけで詰めるのではなくて、新たな年金制度が立つべき基本的な考え方をベースとして、ぜひ超党派で議論をしていただきたいということを政府の方でもまとめております。

 それを受けまして、政府・与党でまとめましたさきの一体改革の成案におきましては、新たな年金制度につきまして、民主党がこれまで主張してきた案をより具体的にブレークダウンした、そうした案も示させていただいております。これを党の方でも、そしてまた政府の方でもこれから議論はしてまいりたいと思っておりますし、もちろん、マニフェストで書きましたように、二十五年度に法案を提出できるように努力をしていきたいと思っています。

 しかし、これは、政府として出すときには、皆様方も含めてやはり合意のできるような状況をぜひつくらせていただきたいと思っております。今、特にねじれの状況でございます。やはり法案を成立させるためには、野党の皆様方の御理解もいただかなければなりません。特に、年金制度のような、何十年にもわたって安定させなければいけない新しい制度について言えば、これは党派を超えた合意が必要でございます。

 そのテーブルができれば、民主党案としてきちんとそこは提案をさせていただく。その準備を民主党の中でもこれからも進めてまいりますので、そういった意味では、ぜひそうしたテーブルにお着きいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

石井(啓)委員 ねじれ国会だから、合意を得るために野党の理解も得たいということなんだろうけれども、我々が理解しようにも、具体的な案がなければ理解できないじゃないですか。

 今まで民主党が示してきたのは、現行制度は上ですね、基礎年金に対して、国民年金は基礎年金だけで、それから厚生年金、共済年金は所得比例部分が乗っかっている。こういう構造に対して、民主党の案は、基礎年金をなくして、最低保障年金、全額税でやる、それから所得比例年金をやる。最低保障年金というのは七万円は支給する、それから所得比例年金は、これは保険料で、保険料率が一五%ということですけれども、それしかわかっていないんですよ。これでどうやって理解しろというんですか。さらに具体的な案を示さなければ、我々は理解できませんよ、国民も理解できませんよ。どうやって国民的な議論をするんですか、この案で。

 だから、かねてより、民主党の案はきちんと具体的な数字を出せと、我々は何回も迫ってきたわけだけれども、あなたたちは一向にやらなかったわけじゃないですか。今になってもできないのに、これから一緒に議論しようじゃないでしょう。一緒に議論じゃない。案をつくるのは、まず民主党が議論して、我々に案を示しなさい。それができないのに、何で我々に理解を求めるんですか。まず、具体的な数字、案を示しなさい。どうですか。

古川国務大臣 石井委員、その図、何度も御党からも委員会などでも出されて言われております。結構、基本的な、大きな違いのところをきちんと示しているんですね。

 現行制度、それで見てもわかりますが、実は、税と保険料が何か明確に分かれているようになっていますが、実際には、今の制度では税と保険料は水割りの状況になっていて、どこまでが税でどこまでが保険料かわからない状況なんです。

 しかし、民主党の案、民主党の案というか我々が考えている新しい年金制度というのは、保険料と税の役割を明確に分けようと。

 保険料の部分については、負担と給付の関係が明確な形にする。そして、税というのは基本的に所得の再分配機能でありますから、所得の再分配という視点で、税の本来の役割に戻って、年金額の少ない人を中心に最低保障年金という形で手当てをして、そして、皆さんに幾ら以上の年金は保障できるようなそういう新しい仕組みをつくりましょうという形で、先ほど保険料率も話がありましたが、保険料率であるとか、今回、さきに、党の方の社会保障と税の抜本改革調査会の方で、民主党の年金改革案について、先ほど申し上げましたけれども、かなり具体的に書き込んであります。今までよりは相当具体的なものが書き込んでありますので、ぜひまたそこを見ていただきたいと思います。

 また、この前の党の議論の中でも、では、一体どれくらいのところまでこの最低保障年金を満額給付するのか、そうした試算も行うようにという話もあって、そうしたものも今内々にやっているところでございます。こうしたものについても、今後、党の方でも議論をしていっていただきたいと思っていますし、また、政府の方でも、そうしたものをサポートはしていきたいと思っております。

 しかし、最終的には、これはやはりテーブルにのっていただいて、その場で考えていただく。特に今、野党の皆さん、自民党の中でも、新しい制度にすべきだという方もいらっしゃいますが、これは、現行制度と違う新しい制度をつくるということでもし合意をしていただけるのであれば、その新しい制度について、例えば税と保険料をきちんと分けましょうということで合意いただけるのであれば、では、そこの中でどれぐらいのいわば保険料率にするのかとか、あるいはどれぐらいのところまで税を入れるのかというのは、まさにその考え方によって議論をしていけばいいわけでございますので、まず、その基本の考え方のところで、私が今申し上げたような保険料と税を明確に分ける、そのところで合意いただけるのかどうか、やはり一つ一つ積み重ねていくということが大事じゃないかと思っております。

 我々も、今後とも努力は続けていきたいと思っておりますので、そういった意味ではぜひ議論に参加していただけますようにお願い申し上げます。

石井(啓)委員 ちょっと総理に答えてほしいんだけれども、今、古川大臣は、新しい年金制度について与野党で合意をすれば具体的な制度設計に進んでいく、こういう趣旨の答弁でした。

 ところが、今この時点で我々に合意を求めるといっても、先ほどから言っているように、この案で一体どれだけ保険料がかかるのか、給付がどうなるのか、このことがわからなければ国民に説明できないじゃないですか。国民に説明ができないものを何で我々が合意できますか。

 だから、我々が理解をするためにも、まず、民主党の案、数字の入った素案をつくってください。例えば最低保障年金は、七万円の満額が、幾らの所得から減少し始めて幾らの所得まで支給するのか。そういったことも含めて、それが示されなきゃ、将来幾ら年金が受け取れるかわからないじゃないですか。そういった点を、まず素案を民主党が示さなければ我々は合意ができません。

 総理、どうですか。その素案をいつ示しますか。そのことを総理に聞いています、これは重要なことですから。総理、どうですか。

野田内閣総理大臣 先ほど古川大臣がお話をされたとおり、五月に、あるべき社会保障という形で報告書をまとめた段階において、制度のポイントについてはかなり突っ込んだ議論をし、そして整理をされてきたというふうに思います。

 さらに、党内で制度の詳細について具体化を進めていくために議論を進めていただきたいというふうに考えておりますし、御指摘のような数字を盛り込んだ作業についても今行っている最中であるということでございましたので、そういうものを踏まえて、党内の調整ももちろんでありますけれども、与野党間の議論も、そういう素材ができ上がった段階からは開始できるものと思っています。

 先ほどの御質問の中で、平成二十五年八月が我々の任期の末であるというお話がございました。もともとマニフェストにも書いてあるとおり、平成二十五年までには法案が提出できるように、今申し上げた諸般の環境整備に努めていきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 先ほどから古川大臣も総理も、あるべき社会保障ということを言っているんですけれども、私も中身を読みましたよ。ほとんど具体的になっていないじゃないですか。何にもないですよ。私が今説明したような程度の中身しか書いてないですよ。これで具体化したなんて、とんでもない話です。

 それで、なぜこの議論をしているかといいますと、これから社会保障と税の一体改革の議論をすると。ところが、民主党さん、この抜本改革を引き続きやるという話ですね。最低保障年金、財源は消費税、これがどれだけかかるかわからないじゃないですか。これがわからなければ税の議論に入れないじゃないですか。民主党さんは、この抜本改革をやるとおっしゃっているんでしょう。それであれば、この抜本改革で幾ら税がかかるのか、それを示していかなければ、社会保障の議論にも入れないし、税の議論にも入れないじゃないですか。総理、どうですか。

古川国務大臣 社会保障・税一体改革案では、年金のみならず、医療や介護、あるいは子育ても含めて、日本の今までの社会保障のあり方を大きく変えていこう、今までの高齢者中心から、全世代対応型、それぞれの人の、個人個人の態様にできるだけ沿ったような形に変えていこう、そうした中で、当面、今まず手をつけていこうというふうに考えている部分の社会保障の機能強化、そしてまた今の制度を維持していく、それに必要な財源として、その手当てとして消費税の五%の引き上げをお願いさせていただきたいということを考えているわけでございます。

 この新制度につきましては、委員も御承知の上で御質問されておられると思いますが、まず制度設計して、すぐこれができればもちろん私どももうれしいわけでございますが、これは合意するまでまだ時間がかかると思いますし、それに、実際にこれがスタートしても、最低保障年金というのは直ちに必要になるわけじゃありません。今の民主党案がもしそのまま成立するとしても、この最低保障年金は、年金制度の成熟に伴ってふえていくというわけでございますから、目先の数年のところでの財源が必要になってくるわけではございませんので、そういった意味では、今のこの社会保障・税一体改革案の中の財源には検討はしておらないということでございます。

石井(啓)委員 公明党は、既に昨年末に新しい福祉社会ビジョンというのをつくりまして、公表しまして、与野党協議を呼びかけてきました。ところが、政府・与党は、あくまでもこの年金抜本改革を実現するというならば、少なくともこの抜本改革の具体案の素案、さっき総理は素材とおっしゃったけれども、素案を示してから与野党協議を呼びかけるべきじゃないですか。

 あるいは、六月の一体改革の案で与野党協議をやってほしいというんだったら、年金抜本改革の看板はおろして、国民に謝罪してから与野党協議を呼びかけるべきじゃないですか。どっちかでやるべきですよ。総理、どうですか。

野田内閣総理大臣 一体改革の成案には、新たな年金制度についての骨格と方向性は書いてございます。その詰めはこれからもやっていくということでありますけれども、現行制度についても改善すべき点がいろいろあります。最低保障機能を強化するとか、そういう議論は、全部そろってからやろうということじゃなくて、順次議論できるものはいっぱいあるわけでございますので、ぜひそういう御議論には御参加をいただきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 総理、二十五年度に民主党の案を出すんでしょう。そのときにどれだけ消費税が変わるかというのは、そこでわかるわけでしょう。そうしたら、また二十五年度に変わるんじゃ、今消費税の議論をしたってしようがないじゃないですか。

 だから、民主党の案を出しなさいよ、少なくとも素案は出しなさいよ。そうでなければ、社会保障の協議も、あるいは税の協議も応じられませんよ。今のままでやるんだったら、この年金抜本改革はもうできません、こう明言しなければ我々は応じることはできません。

野田内閣総理大臣 社会保障の機能を充実強化していく、そして持続可能なものにしていくということ、これは国民の願いだと思います。その中で、当然我々は年金制度抜本改革を考えていますけれども、それ以外にもたくさんのテーマがあるわけです。

 そのために、それを支える財源をどうするかという議論を、全く年金制度の改革案が出ないからそれまでは何もやらないというのは、これは私は責任を果たせないというふうに思いますし、当然私どもも抜本改革案の具体化に詰めた議論をしていきますが、それが全部そろわないから社会保障の持続可能性を議論しない、支える財源も議論しないというのは、私は政治としての責任を放棄していると思います。

石井(啓)委員 それはおかしい。社会保障で最も財源がかかるのは年金じゃないですか。その年金の案を固めないで、どうやって議論ができるんですかということ。しかも、民主党は来年法案を出すと言っているんでしょう。その法案を待ってからでないとわからないじゃないですか。こういう議論なんですよ。

 最後、消費税を聞きますけれども、消費税率引き上げについて、これは、総理が消費税引き上げ法案を成立させてから、実施前に国民に信を問う、こういうふうに述べられていますね。これが公約違反ではないかどうかということで議論になっていますけれども、私は、消費税の引き上げ時期が衆議院選挙で国民に信を問うた後であれば、その前に法案が成立したとしても、任期中に消費税を上げないとした公約に違反しない、こういう考え方で国民は納得しないと思うんですよ。

 といいますのは、消費税を上げないと言えば、これは当然、引き上げを実施しないことはもちろんですけれども、引き上げのための法案も出さないというふうに考えるのが普通の感覚なんですよ。ですから、民主党政権の理屈は、私からいえばこじつけの理屈なんです。多くの国民はだまされた気分になりますよ。

 消費税引き上げ法案を出すとするならば、まずは国民に対し公約撤回の謝罪をするべきじゃないですか。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 政権担当期間中に消費税を引き上げないという議論はこれまでやってきたというふうに思いますし、私もその姿勢は踏襲をしていきたいというふうに思います。

 そのことと、社会保障を支えるための安定財源を確保するために消費税を充てていくという法案を提出して御審議いただいてということと、その実施時期とは当然乖離があるわけですから、私は、今まで申し上げてきたことと、今御説明をして皆様にお願いをしていることは整合的であるというふうに思っています。

石井(啓)委員 総理の答弁では国民は納得しませんよ。

 消費税引き上げ法案を成立させてから国民に信を問うのではなく、消費税引き上げ法案を提出した段階で、法案が成立する前に国民に信を問うべきだ。このことを申し上げまして、私の質問を終わります。

中井委員長 この際、高木陽介君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 きょうは時間が限られておりますので、福島の原発事故における除染の問題についてまずお伺いをしたいと思います。

 まず、昨日メディアの方でも報道されましたけれども、警戒区域や計画的避難区域に指定されている福島県の双葉郡の八町村、この全世帯に福島大学がアンケートをいたしました。そのアンケート結果によりますと、もとの居住地に戻る気はないという方々が二七%。しかも、三十四歳以下の方々では、五割強の方々が戻る気はない、こういうようなアンケート結果が出ておりました。

 そういった中で、総理は先日、衆議院の本会議で、福島の再生なくして日本の再生なし、このように述べられましたけれども、まず、総理にお伺いしたいんですが、その福島の再生というのはどういう状況になったら再生と言えるのか、それをお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 高木さんの御質問にお答えする前に、先ほど石井さんとのやりとりの中で、私が政権担当中は消費税を引き上げないと言いましたが、政権担当中ではなくて任期中ということでございましたので、そこは訂正をさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、今、高木さんからの御質問にお答えをしたいと思いますが、福島の再生なくして日本の再生なし、これは所信表明演説でお話をしたとおりでございます。

 その中身としては、一つは、やはり何といっても、事故収束のために、まずロードマップのステップ2の冷温停止状態。これは、当初は来年一月までという形でしたが、年内実現に向けて全力で取り組んでいきたいというふうに思います。その上でさらに、今後は、溶融した燃料の取り出しなどもしっかりやって、廃炉に向けた中長期的な方策に全力を挙げていくということが福島の再生につながっていくというふうに思います。

 それから、何といっても、今大事な点は除染で、これから具体的に御質問いただくと思いますけれども、長期的に追加被曝線量が年間一ミリシーベルト以下となることを目指して、自治体の要望を伺いながら責任を持って除染を推進する。除染といっても、これはマイナスからゼロに戻すことでありますが、でも、このことをやらないと、ふるさとに戻るいわゆる条件整備にならないと思いますので、全力を尽くしていきたいというふうに思っているところでございます。

高木(陽)委員 公明党は、これまで福島の原発事故に関連しまして、現地に各議員が赴いたり、また、関係自治体、さらに避難されている住民の方々からさまざまなお声をお伺いして、何度も何度も政府の方に具体的な提言、また提案、さらに要望等もしてまいりました。

 例えば、五月二十六日の段階では、学校の放射線基準の見直しや、また校庭等の表土、いわゆる土の処理による安全性の向上、また、六月六日には、子供の健康対策の抜本強化等々、具体的な提案をさせていただきました。

 政府が九月の三十日に緊急時避難準備区域を解除し、それから一カ月以上がもうたちましたけれども、多くの住民は被曝への不安から戻れないでいるわけですね。本来は、除染をして住民の安全を確保してからそういう準備区域の解除、こういうことが行われるのが常識的ではないかなと思うんです。

 そういった中で、今総理もお話しになりました、その復興の第一歩というのはやはり除染なんですね。

 先ほど申し上げました福島大学のアンケートによりますと、戻らない理由の第一というのは、除染が困難だろう、こういうふうに答えられている方が八三・一%なんです。だから、その住民の方々は、除染ができないんじゃないか、または、やってももっと時間がかかるんじゃないか、そういう不安になって、戻らない、もう戻る気はない、こういうふうに言われている。

 総理、今の政府の体制、除染の体制ですね、現状、これで果たして福島の再生はできると思われますか、どうですか。

野田内閣総理大臣 まず体制、予算も入ると思うんですが、予算については、これまで予備費であるとか補正で今回入れる分とか、あるいは来年度の、今、要求分も含めてでありますが、まず一兆一千億程度の除染に対するいわゆる予算措置はとってまいります。もちろん、これだけでは足りない部分があるということは承知をしています。中間貯蔵施設の問題とかを含めて考えていく上で、今後も追加には出てくると思いますが、当面は、こういう予算措置を通じて、国として全面的に除染に向けて前進をさせていきたいというふうに思います。

 それから、体制は、これは今、環境省を中心に対策を組ませていただいています。きのうも御質問をいただきましたけれども、ただ、環境省だけでは人員が足りないということは間違いございませんので、政府を挙げて、これは公募も含めて体制整備をして、国としての体制をさらに強化していきたいというふうに思います。

高木(陽)委員 今、総理の方から、一ミリシーベルト以上の除染についてということが出ました。これは、細野大臣も、委員会等でも何度も何度もお話しされた、一ミリシーベルト以上の除染については国が責任を持つ、このように言われているわけですね。

 そこから見ますと、もし一ミリシーベルト以上汚染されているところを除染しようと思った場合の範囲というのは一体どれぐらいになるのか。対象となる県というのは一体どれぐらいなのか。また、面積はどれぐらいか。または、除染をしたときの、例えば土壌を全部取りかえていく、削っていく、そういう汚染土の量はどれぐらいになりますか。これをまず伺いたいと思います。

細野国務大臣 まず、この面積ということなんですけれども、これは、この法律が施行されれば地域指定ということをすることになっておりまして、それによって決まってまいります。もちろん、法律の施行は一月一日ですので、それより前倒しをして既に除染はさまざまなところで行われておりますが、法律上はそういう形になっております。

 この地域指定なんですけれども、これはそれぞれの市町村と相談をしながらやっていこうと思っておりまして、例えば一ミリシーベルト以上で希望される市町村については、基本的にはすべて指定をする、そういう方向でございます。

 御質問は、それがすべて指定をされた場合どうか、そういう御趣旨だと思うんですけれども、御紹介しますと、二十ミリシーベルト以上のところで五百平方キロメートル、そして五ミリから二十ミリが千三百平方キロメートル。ですから、これを足すと千八百になります。それに一から五というのを加えますと、これが一から五の中で九千八百平方キロメートルございますので、それを合わせると一万を超えてくるということですので、大変広い面積になってまいります。それをどこまで指定するのかというのを、まさにこれから市町村と相談をしながら決めていきたいと思っております。

 一方で、はぎ取る土の量なんですが、これは、いろいろな想定をする、その想定のあり方によって随分変わってまいります。

 私どもが大体千五百万立方メートルというふうに試算をいたしましたのは、五ミリシーベルト以上のところについては相当量をはぎ取り、一から五のところについては必要なところをしっかり取っていく、さらには森林については、これはなかなか推計するのは難しゅうございますので、例えば、落ち葉でいえば一〇%除去し、枝打ちも一定していくというような前提を置いて、千五百万立方メートルという形になってまいります。これをさらに森林も含めてごそっとやるということになると量が多くなる、そういうことになってまいります。

高木(陽)委員 今いろいろと言っていただきましたけれども、例えば、その面積、五ミリから二十ミリシーベルトは、自治体の方が主体的にやって、予算はしっかりとつけましょうと。

 ただ、先ほどから出ている一ミリ以上になると、その面積、全体でいうと一万一千なんですけれども、そのうちの九千八百が一ミリなんですね、九千八百平方キロメートル。そうなりますと、大半は一ミリ。ただ、市町村と相談をしてやるというんですけれども、例えばここの一ミリをやっていると、では隣の市町村から見れば、あそこはやっているのにここはやらないんですかと、住民の方々は不安になりますね。一ミリと言った瞬間から、一ミリ以上やらなきゃいけなくなっちゃうわけですよ。

 そうしますと、予算、先ほど総理は、この除染について約一兆円つけた。そうですね。これまでの予備費で二千百七十九億円、今回の三次補正で二千五百億円。二十四年度の概算要求、これからですね、来年度の予算として四千五百三十六億円。さらに二十五年度、再来年になりますね、これの負担分ということで二千三百億。合わせて一兆一千四百八十二億なんですけれども、一ミリを入れると、この金額は、これどころじゃない、膨大なものになってくる。

 例えば、これは後ほども聞きますけれども、処分の仕方も、五ミリ以上が千五百万立米ですね。一から五ミリシーベルトが千五百万立米。それだけで三千万前後になる。今、瓦れきの問題で、これは放射線がないという前提で、東北三県は大変苦労されている、それを広域で処理しよう、細野大臣も頑張っていますよね。きのうもこういう質疑がありました。東京都が受け入れ始めた。これに対しても、いろいろと放射線に対する不安がある。でもちゃんと検査をしているから大丈夫ですよと。ところが、それでも処理し切れない。それと同じぐらいの量が、この放射線の廃棄物または土等々が出てくる。

 そうなりますと、この一兆一千四百八十二億というのは当面の数字で、これから倍にも、もしくは三倍、四倍、五倍にもなるかもしれないんですけれども、ここら辺の予算について、どういうふうに考えていますか。

細野国務大臣 今年度の補正予算と来年度の予算、さらには二十五年度も含めて前倒しをする部分で、大体一兆一千数百億円ということで今想定をしております。この予算の中に果たしておさまるのかどうかというのは、私は余り予断を持って言わない方がいいだろうと思っておりまして、除染をやればやるほど予算がかかりますので、これを上回ってくる可能性はあるというふうに思っております。そしてそこは、私は、今の福島の状況を考えれば、予算を確保していく必要があるというふうにも思っております。ですから、そこは、まずはしっかりやらせていただきたい。その中で、成果を出して、できるだけ福島の皆さんに安心をしていただきたいというのが率直な思いでございます。

 一方で、私どもがこれから考えていかなければならないのは、低線量被曝というのをどのように考えるのか、こういう問題です。

 ですから、我々は、そうした汚染を広げた以上は、それを取り除くというのは、これはもう、それこそ行政としても非常に大きな責任を負っている。しかしその一方で、低線量被曝ということに関して、しっかりと研究をした上で、例えば今私どもが提示をしている二十ミリというその基準の考え方も含めて、しっかりと住民の皆さん、国民の皆さんにわかっていただく必要があるというふうに思っています。

 その中で、例えば一ミリシーベルトと二ミリシーベルトの違いですね、追加放射線量で一ミリとか二ミリというその違いというのが、これがどういう影響があるのか。そこは、率直に言って、それこそ日常生活の中でいうならば、それこそしっかりと検討した上で、どういった影響があるのかというのを見きわめた上で、生活をしていただくという可能性も含めて検討していく必要があるというふうに思っています。

 若干、奥歯に物が挟まったような言い方になってしまいましたけれども、一ミリ、これを目標としてしっかりやっていく、そういう目標には変わりありません。汚染はなくします。その一方で、低線量被曝の問題については、これは別途しっかり検討して、どうやったら福島の皆さんが安心をして生活していただけるか、そこは検討をきょうから始めたいというふうに考えております。

高木(陽)委員 細野さんは話がうまいから、ずっと今しゃべりましたけれども、一ミリという数字が出た瞬間から、先ほど申し上げましたけれども、その一ミリの被曝量というか放射線が出ているところは、やはりそういう気持ちになるわけですよ。その後、では一ミリから五ミリの間は、低線量はまた今後検討します、こういうふうに言われると、えっ、やはりやらないのかなと。ここら辺のあいまいさ。

 もっと言えば、努力されていると思いますよ、思いますけれども、震災から、また原発事故から八カ月がたって、しかもずっと避難されている方々がいて、いつ戻れるのかという思いがあって、そういうことを考えた場合には、例えば低線量の基準の問題も早急に結論を出して、その上で工程表なりを出さなきゃいけなかったんじゃないでしょうか。

 例えば、今後の除染の流れで、パネルにも書きましたけれども、除染をした廃棄物また土壌の処分というのは、市町村ごとに仮置き場というところに三年程度保管する。次に、福島県ではそれをさらに中間貯蔵施設に搬入する、他の都道府県はその県内で処分するという案だというふうに聞いておりますけれども、この中間貯蔵施設は、二十四年度内に場所を選定する、再来年の三月までですね。この中間貯蔵施設には、三十年間以内に最終処分に持っていく、三十年間置いておく可能性があるわけですね。

 そういうような流れなんですけれども、まず、この仮置き場。それぞれ除染をしますね、土をはぎますね、それを仮置き場に持っていくんですけれども、市町村ごと、コミュニティーごとでその仮置き場を確保するんですが、福島県内に十三市三十一町十五村ある。五十九の自治体で、その仮置き場が決まったのは幾つありますか。

細野国務大臣 まず、仮置き場については、それぞれの地元の皆さん、市町村の皆さんに大変な御負担をおかけしておりまして、御努力をいただいていることに心より敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、現在までに仮置き場の設置のめどが立っているところでございますけれども、警戒区域と計画的避難区域外で決まっておりますのは、福島市内の一部の地域のみであります。一方で、国がモデル事業を実施しております警戒区域と計画的避難区域のある十二市町村は、それぞれの市町村に非常に、国がやるということもあって、それぞれ具体的に御検討いただいて、十二の市町村のうち十の市町村において仮置き場の場所がほぼ確定をいたしました。

 実は、水面下ではさまざまな努力をそれぞれの市町村がしていただいていますので、私どもとしては、その説明と、安全性の確保ということについての責任をしっかりと持ちながら、仮置き場の設置に向かってまいりたいというふうに思っています。

 そういう意味では、ロードマップをお示しし、地元で頑張っていただく中で、非常にゆっくりではありますけれども、着実に一歩一歩前に進みつつあるというのが仮置き場の現状でございます。

高木(陽)委員 さあ、仮置き場が決まって、問題はこの中間貯蔵ですね。これが二十四年度中に場所を選定すると言っておりますけれども、ここに搬入する土壌または廃棄物、先ほど、これは福島県には限っていませんけれども、三千万立米近く、こういう話がありました。先ほどこれもちょっと触れましたが、岩手、宮城、福島の三県のこれまでの瓦れき、いわゆる津波等々でできた瓦れき、これは二千三百万立米と言われている。

 そうなってきますと、果たして福島県内、これはまだ決まっていませんよ、福島県がオーケーしていませんからね、中間貯蔵は。でも、これを入れるもの、これは一体どれぐらいの量に本当になるのか、こういう想定をしないと場所の選定さえできないじゃないですか。これはどうですか。

 中間貯蔵施設にどれぐらいの量を入れるのかという話だよ。ちゃんと通告しているよ。

細野国務大臣 大変失礼いたしました。

 私どもが今想定をしておりますのが、千五百万立方メートルから二千八百万立方メートルということでございます。これは、かなり差がございまして、変わり得るものというふうに思っております。

 ただ、これぐらいの規模であっても相当大きな施設になりますので、そういった施設をつくることができるような準備をしていかなければならないというふうに考えております。

高木(陽)委員 すごくあいまいなんですよね。ロードマップはできた、工程表はできましたというふうに言って、何かみんな、ああ、これでようやく除染がどんどんできるんだろうなと思いながら、今聞いてみると、千五百万立米から二千八百万立米。そうなりますと、その規模、また場所、一カ所でいいのか、二カ所必要になるのか、こういったこともわからない中で、工程表にならないわけですよね。

 例えば、今までいろいろなことで努力されてきている。それはそれで、やっていないとは言いません。ただ、やはりスピード感だとか、そういうものが遅いんじゃないかなと思うんです。

 どういうことかというと、各自治体、十月十七日に、公明党、我が党の井上幹事長、石井政調会長等が避難されている方々のところ、自治体の責任者の方々、いろいろとお伺いしました。

 例えば飯舘村では、政府は除染に必要な財政負担に対する認識が甘過ぎるんじゃないか。また、避難した住民が帰還できなくなるので、除染は短期間で実施するべきだ、しかし、政府にはその認識がない。また、他の地域で暮らしが三年、五年と続くと、子供を持つ家庭は帰還できなくなる。また、これはもう現実論ですよ、雪が降る前に除染するべきじゃないか。そうですね。いわゆる表土を削っていくのに、雪が積もってしまったらできないわけですよ。

 これは、先ほど石井政調会長も冒頭で申し上げておりましたけれども、そういった復興予算がもっと早くできていれば、今どんどんそれが進むわけですね。それがなかなか進んでいないということも問題ではないか。

 また、川俣町の方は、国により汚染土の中間処理施設の方針が決まらないと、町内での仮置き場が決められない。三年で移すと言われているけれども、その先がわからないから、もしかしたら四年、五年と置かなきゃいけないんじゃないかという不安を持っているわけです。

 またさらに、再び飯舘村ですけれども、こういう話がありました。村には現地対策本部として本省の役人が常駐してきた、大変助かった。しかし、七月の十日ぐらいに全員引き揚げた。その結果、その後の復興等については各省庁に一々確認せねばならず、極めて非効率になった。事務的なコストが増大し、除染に関するプロジェクトも各省庁ばらばらで生産性が極めて低い。現地の町、村に担当者を派遣してほしい。

 こういうことなんですけれども、現在、環境省に除染チームがありますね。この除染チームが現地に何人派遣されているのか。

細野国務大臣 現在、環境省でつくっております除染のチームは、全体で四十八名でございます。そのうち、三十二名が本省でさまざまな準備に当たっております。現地には十六名行っております。

 現在、それを、さらに人員を募集いたしまして、年明けには福島県内で五十名体制、そして、年度明け、来年の四月にはこれを二百名体制に持っていくべく、今準備をしているところでございます。

 各省の応援を得て、さらに前倒しで増強してまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 きのうも福島選出の自民党の吉野議員が質問されておりましたね。先ほど申し上げた、五十九の市町村がある、各自治体に一人一人張りつけてもらいたい、こういう思い。ある意味でいうと、除染の規模が小さいところもあるでしょう。ただし、復興復旧に関してはかなりありますから。今の十六人では回り切れませんね。一人で幾つかやらなきゃいけない。幾つかの市町村を担当しなきゃいけない。

 さらには、今度五十名体制になる。福島環境再生事務所、これを一月の一日からスタートさせようということで、公募もかけられている。これはこれでいいと思うんですが、五十名で、いわゆる御用聞きじゃないですけれども、一緒になって話を聞いたり、現地をいろいろ見たり、仮置き場を指定したり、そういうことをやったとしても、五十名全員がやっちゃったら、さらに国直轄のことをやらなきゃいけないんですね、入札もやらなきゃいけない、そういう作業というのはだれがやるんですか。

 そうなると、四月一日には二百人体制にしたい、そういう希望も伺っております。でも、二百名でも少ないぐらいですよ。ある意味では、一つの役所がどんと除染のためだけに乗り出してこないと、除染なんてできるわけがない。そういうことをきのう総理も述べられていましたし、そういう体制もしっかり、各省庁と連携をとりながらと。連携なんというものじゃないんですよ。これは責任を持ってやる。

 ある意味でいうと、この除染の責任者は政府でだれなんですか。だれが責任を持ってやっているのか、教えてください。

細野国務大臣 政府内における、というよりは、除染というのはもう国全体の問題ですから、今、この除染という問題全体の責任者は、環境大臣である私でございます。

 これまで環境省というのは、放射性物質については扱わないということになっておりました。しかし、これだけ大きな問題が出てきて、担当省庁がない、究極の環境汚染ともいうべきこの問題には環境省を挙げて取り組まなければならないということで、体制を整備しております。

 環境省で力及ばないところは、各省や民間の皆さん、ボランティアの皆さん、そして何よりも地元の皆さんの力をおかりして、しっかり実践をしてまいりたいと考えております。

高木(陽)委員 細野大臣がこの問題に関して一生懸命やっているというのはわかるんです。ただ、各省庁との連携のときに、権限は及ばないわけですね。もっと言えば、細野さんは除染だけをやっているわけじゃない。ほかの問題も全部やっているわけです、環境大臣として。

 これからCOPも始まりますよ。CO2問題もやらなきゃいけない。外国にずっと行ったりしなきゃいけない。そういう片手間でできる仕事じゃないですよということを、政府全体が認識しなきゃいけないんですよ。

 口ではいろいろ言っている。申しわけないですけれども、今、民主党政権というのは口先だけじゃないかと思われているんですよ。

 例えば、先ほどの質問でもありました年金問題。年金を一元化し、最低保障年金を導入する、ばんとぶち上げましたね。選挙のときは、今の年金は破綻している、当時の与党を攻撃した。選挙ですから、攻撃はありますよ。私たちが政権をとったらやると言いながら、全くやっていない、数字さえ出ない。あのときの選挙、二年前ですね。

 その前もありました、年金記録問題。あのときは、国家プロジェクトにして、すべて紙台帳とコンピューターデータを照合すると。照合して解決するんだ。いや、それはできませんよと当時の私たちが言ったときに、長妻さんが大臣になる前です、野党でしたから。政権を渡してくれればすぐできると言った。すぐできていないじゃないですか。

 だから、言うのは結構。でも、多くの国民は、その言葉を信じるわけですよ。(発言する者あり)解決はしていないんだよ。

 そういうような中で、今回の問題も、努力はされていることは認める。しかし、大切なことは、もっと政府を挙げて、口先だけじゃなくて、人数もどんとマンパワーを投入してやらなきゃいけない。

 官房長官、十月の二十四日の復興特別委員会で、我が党の高木美智代議員が質問した。そのときに、除染推進本部、こういったものを設置すべきじゃないか、もう本当に全責任を負ってやる。官房長官は、それについて前向きな答弁をされた。その後どうなりましたか。

藤村国務大臣 今おっしゃったとおり、除染は、当面でもこの二、三年で一兆一千億円を予算の面でも超えるような大変大きな事業である、まずそういう認識のもと、大規模除染の迅速かつ着実な実施のためには、これは環境省を中心として関係省庁が連携し、政府全体として取り組んでいかなければならない、そのように考えておりますし、政府としては、今、原子力災害対策本部のもとにこの除染について体制を組んでいきたい、このように考えております。

 まず、事業実施に必要な職員を環境省に集中的に配置することとし、とりわけ福島県には、福島環境再生事務所を設ける等、重点的に職員を配置する順番が今決まっております。

 加えて、除染と関連の深い関係省庁からの職員の配置など、政府を挙げた取り組みに向けて、今調整中でございますが、スピードアップしてやってまいりたいと思います。

中井委員長 少し委員長として申し上げますが、昨日も、吉野議員のときにも細野君からお話がございました。今もまた高木議員の質問でございます。

 きのうは、除染の仮置き場探しに三十人人を入れるという話だったが、仮置き場も除染も同じ人数でやるという話じゃないか、きょうの話は。これは足りるのか、二百人体制を含めて、僕も率直に思います。

 官房長官を含めてお話がありましたから、除染の専門家というのは日本に少ないことは知っておりますが、とにかく、地方自治体を助けるために、地域の人の安心のために、政府を挙げて、人数を送り込んで手伝いをする、除染作業を早める、こういうことを要請したいと思います。よろしゅうございますか。

高木(陽)委員 委員長、どうもありがとうございました。

 言葉はもういいと思うんです。現実的に進めることしかないんですね。細野大臣も何度も足を運ばれている、それはわかりますよ。やっていないということはない。ただ、やはり住民の側から見れば、まだまだもっとやってもらいたい、本当に寄り添ってやってもらいたい、こういう思いなんです。総理もすぐに、総理に就任された後、現地も行かれて、だからこそ、そういう気持ちのわかる政治を行ってもらいたいということを要望したいと思います。

 続きまして、円高の話をちょっとさせていただきたいんですが、昨日から、ニューヨーク、ロンドン市場、七十七円台に入ってきた。けさも東京市場は七十七円台の後半を行ったり来たりしている。

 実は、総理も中小企業等を視察された。私も先週、中小企業の町でもある東京の大田区を歩きまして、製造業の苦しい円高の声を聞いてきました。

 ある会社は、従業員が三十人、鉄道の信号の部品、また線路のポイント、分岐をするときに使用する部品をつくっている。技術はなかなかのもので、取引先は日本全国、JR、私鉄各社で、その部品だけでシェアはもう半分を占めている。しかし、新しい鉄道というのは、なかなか路線ができませんから、メンテナンスだけですから、拡大するためには海外に進出しなきゃいけないということで、販路を求めてアジア各国に進出している。

 ただ、その中で、ことし二月、値段設定の際、為替リスクを考えても一ドル八十円と考えていた。当時は一ドル八十二から八十四円の動きだった。八十円だったら大丈夫かな、こう思ってやった。ところが、円高のため、決算のとき、七十七円で、二百万円の利益、三百万近い利益が百万割り込んだ。まだ利益が出ているからいいですよ、こういうふうに言われた。利益が出るどころか、損をされるところも出てきているわけですね。中小企業としては大変苦しい中で、今の政権はとても中小企業を助けてくれていない。独自に海外展開をしなければならない。

 また、社長はこのようにも語っていました。売り込みに行くのに、自分で機材を持って、薬売りのように単身乗り込んで、展示会の準備もすべて自前で行う、それで販路開拓をしている。今の円高は、ほかの国だったら暴動が起きるぐらいの水準だ、こういうふうに言われたんですね。

 総理は、就任直後の所信表明では、「経済成長を担うのは、中小企業を初めとする民間企業の活力です。」と言われている。そういった中で、この円高。

 この間、財務大臣、介入しましたね。この今の円高の認識、さらにその介入後の評価、これはどうでしょうか。

安住国務大臣 ちょっと反論するようですけれども、政府が無為無策で円高はけしからぬというお言葉でございますけれども、やはり冷静な議論は必要だと思いますよ。

 やはり、今のこの世界状況の中で、欧州が、まさにギリシャもそうですし、イタリアに至っては政変になって、けさ方になって首相の辞任表明まであって、ユーロに対する信用不安というのは大変なものです。一方、アメリカの経済統計を個々に見ましても、金融緩和の中で、さまざまな、公共事業等を含めて、財政出動もやっていますけれども、なかなか回復軌道に乗っていない。

 こうした外的な要因も含めての円高であることは委員当然御承知のはずであって、では、それに対して我が方が手を全く打っていないかといえば、そんなことはございません。ことしに入ってからも三度にわたる介入をさせていただきました。協調介入もありましたし、単独介入もございました。そのことも含めて、過度な為替の動きや投機的な動きに対しては逐一、総理が財務大臣のときも、私になって後も、これは市場に対しても強いメッセージも発しております。

 一方、中小企業の、今のレートのことに関して言えば、全くその社長さんのおっしゃるとおりですが、今の政府が全く無為無策で何ら手助けをしていないということは、私は少し当たらないと思います。

 現実には、ジェトロを含めて、例えば海外展開やそういうことに対してはしっかりと、説明会をやったり、手を打っています。また、逆に言えば、円高の守りの話を今委員はおっしゃっていますけれども、攻めのことでいえば、ファシリティーを十兆円程度積み上げて、その利用頻度の高さというのは大変なものでございます。

 ですから、経済の全体の構造が今もしかしたら大きく変わり得る中で、これをまた一方でメリットにしながらやっていくというところもあるし、また今度の予算でも一兆円を超える中小企業対策をやっておりますので、何か全くそれをやっていないということは当たらないということだけ申し上げさせていただきます。

高木(陽)委員 一生懸命やっていると思う、一生懸命やっていると思うんだけれども、大切なことは、現場の中小企業の人たちがそれを実感されていないということなんだ。ジェトロがやっている、いろいろと海外展開のアドバイスもしている。ところが、では全企業そういうふうになっているかというと、そうじゃないわけですよ。そういう実態を見てもらいたいんだ。

 中小企業というのはもう何十万、何百万とある。その中でみんなが苦労しながらやっている。それで、全くやっていないという話じゃないんだけれども、そうやって頑張っていながら、結局そういう連携がとれない中で自分で販路を開拓してやっているというような人がたくさんいるんですよ。それが今苦しんでいるんだよということをまず認識してもらいたい。これが一つ。

 その上で、為替介入も三度、そして四度目、やってきた。やっても結局もとに戻っちゃうんですよ。総理が財務大臣時代も、四兆円規模を一気にやった。一週間たったらまた戻っちゃった。これは、財務大臣が言われたような海外的な要因はありますよ、ヨーロッパの問題、アメリカの問題、日本の責任じゃないかもしれない。しれないけれども、ここは日銀と一体になってやらなきゃいけない。

 きょうは日銀を呼んでいないのであえて聞きませんけれども、例えば日銀との連携、やっていると言うんですけれども、ある意味でいうと、日銀が十月の二十七日、金融緩和をした、五兆円積み上げた。ところが、全く市場は反応しなかった。それで七十五円台に突入したところで、財務大臣がここで決断するわけでしょう。だから、タイミングが悪いわけですよ。また今七十七円に来た。

 納得するまでと言われましたね、納得するまで。今、七十七円になってきた。納得していますか、どうですか。

安住国務大臣 私が言ったことは、私自身のレートの話ではなくて、今高木さんもおっしゃったように、日本の物づくりをしている人や、ことしの初めの、年初のレート決めのときに、八十円が大体の水準なんです、それから見たら、その人たちからいったら割の合わないということを私は申し上げたんですね。

 それで、日銀の話ですけれども、これは政策決定会合が二日間にわたって行われて、結果としては日銀は五兆円規模の金融緩和を新たにやられるということで、私はこれはこれで評価をしております。それをもって、ただ市場が反応しないからだめだ、だめだという話は、わかっておっしゃっているとは思いますけれども、そんなことではないし、私自身の介入のタイミングについては、私自身が判断をしてやらせていただいたということですから。しかし、これは連動して、緊密な連絡をとりながらやらせていただいております。

高木(陽)委員 為替の話をすると、もう時間が限られているのでここで終わりにしますけれども、中小企業の対応ということで、いろいろな手を打っていると言いましたけれども、中小企業円滑化法が二〇〇九年、平成二十一年の十二月に施行された。これは、中小企業、住宅ローンの借り手が借金返済の負担軽減を申し込んだ場合に、金融機関はできる限り返済期限の延長、金利減免といった条件変更などの措置をとるように努める。これはこれで中小企業はかなり助かりました。それで、昨年延長した。これが来年三月に切れちゃう。

 景気動向そして円高の状況を見ると、これはこれでまだ厳しい状況ですから、これは延長した方がいいと思うんですが、それについてどうでしょうか。

自見国務大臣 高木先生にお答えをいたします。

 先生今さっき言われましたように、中小企業というのは四百二十万社ございまして、日本の法人の九九・七%が中小企業でございまして、約二千八百万人の方々が働いておりますから、日本において四人に一人は中小企業の従業員であるということは高木先生よく御存じだ、こう思うわけでございます。

 実は中小企業金融円滑化法案、これは実は政権交代の前に、ちょうど一週間前に、衆議院選挙に当たっての共通政策、六つしかございませんけれども、その中の一つに……(高木(陽)委員「短く言って。延長するかどうかという話だけ」と呼ぶ)わかりました。それできちっと公約して亀井静香前大臣が御存じのようにつくったわけでございます。(高木(陽)委員「宣伝はいいから、延長するかどうか」と呼ぶ)いや、先生が何も仕事をしておらないというようなことを言われていまして、お言葉を返すようですけれども、ぜひその辺、国民の方にも御理解をしていただきたいということでございます。

 そういった中で、先生は、延長のときも大変、前回、公明党さんも御協力いただいたことはありがたいと思っておりますけれども、非常に今円高で厳しいという状況はわかっています。しかし、きちっと、今まだ結論は出しておりませんけれども、先生の声も聞きながら、やはり基本的に、民間金融というのは、借りたお金にまた利子をつけて返さねばならないというのが民間金融機関の宿命でございますから、金融規律ということもございますから。しかし一方、円高、あるいは経済全体でいえば下振れで大変厳しいわけでございますから、その辺を考えて、また国会議員の皆様方の大変貴重な声もしっかりいただきながら判断をさせていただきたいというふうに思っております。

高木(陽)委員 延長するかどうかという質問だけでしたから、もっと短くやっていただければと思います。

 時間が本当に限られているので、高額療養費のことをちょっと最後にお伺いしたいと思います。

 ことしの二月の予算委員会で、私、高額療養費の問題について質問いたしました。

 そのときは、慢性骨髄性白血病を患う方の話をちょっと紹介させていただいて、抗がん剤のグリベック、これは当時、一錠三千五百円で、一日四錠飲まなきゃいけない、保険がきくけれども、患者の負担の月額の上限を定めた高額療養費制度の適用を受けても月八万円かかっちゃう、医療費の負担が重くて、薬をやめれば白血病で命を失う可能性がある中、医療費の負担に追い詰められたその女性患者は包丁を手に持って自殺をはかろうとした、それをご主人、夫がとめて、金の切れ目が命の切れ目か、こういうふうに語ったというエピソードを紹介しました。

 高額療養費制度は、所得に応じて負担が変わりますね。年収約八百万弱、これを上位所得者といいますけれども、月十五万円程度の自己負担、年収二百万円以下、低所得者の方々は月三万五千円の負担、一般の方々はこの間に入りまして、大体年収二百万から八百万までの間、最高八万円を払って負担をするということなんですが、例えば、年収三百万の方と年収八百万の方だと、同じ八万円を毎月払うと苦しい。だから、公明党は、ここで刻みをもう一つつくったらどうかということで、今回、厚生省の中でいろいろと議論、審議会で、この刻みができる。例えば年収三百万のところで線を引いて、それ以下の方々は限度額を引き下げよう、これはこれですばらしいと思うんですね。

 ところが、それと同時に出てきたのが、受診時定額負担、窓口で診療を受けるたびに百円払う。この財源でそっちを賄おうみたいな話になってきて、これはちょっと話が違うんじゃないかなと思うんですが、これについてどうですか。

小宮山国務大臣 委員が今おっしゃいましたように、がんの患者さんなどは、本当に高額な療養費を長期にわたって払われている。その中で、おっしゃるように、もっと年収で刻みをつけなきゃいけないということで、現在、社会保障審議会の医療保険部会で、十月のこの部会で、年収三百万円以下の方について、自己負担額の上限を現在の八万円から四・四万円に引き下げること、また、自己負担に年間での上限額を低所得者の方には設けること、これを今検討しています。

 その財源については、保険料を引き上げることがなかなか難しい、それから経済状況がなかなか厳しいということもありまして、長期の高額療養費の財源に充てるということで、現在、受診時定額負担の検討をさせていただいています。

 ただ、この場合には、低所得者の方には定額負担の軽減策を行うことなどもあわせて検討しておりますので、これは、多くの方の御意見を、また各党の御意見も伺いながら、しっかりと検討したいと思っています。

高木(陽)委員 最後に、総理、今の問題で総理の御意見だけ聞きたい。

 実は、今回の自己負担限度額の引き下げに必要なのは三千六百億円というふうに厚生労働省は言っている。おととい、会計検査院は、二〇一〇年度の決算検査報告書を野田総理に提出した。国費の無駄遣いとして五百六十八件、四千二百八十三億円に上った。だから、この無駄遣いで四千二百八十三億円出ているんですから、三千六百億円のこの高額療養費の負担、出るじゃないですか。

 だから、負担をさらにふやすんじゃなくて、捻出するという、本当に医療に関しては負担をふやすのは厳しいですよ。だから、総理、ここら辺のところをどうお考えか、最後にお伺いをして、質問を終わります。

中井委員長 野田内閣総理大臣。質問時間がもう終わっていますので、短くお願いします。

野田内閣総理大臣 基本的には、無駄をなくしていきながら対応するということでございますが、今の受診時定額負担、いろいろ関係者の御意見も聞きながら対応していきたいというふうに思います。

高木(陽)委員 以上で終わります。

中井委員長 これにて石井君、高木君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 東日本大震災、そして東京電力福島第一原発の事故から八カ月であります。こんなときにTPPか、復興の最大の妨げだ、これが被災地共通の声であります。

 そこで、まず野田総理、去る十月二十日に福島の県議会が、TPP交渉参加に反対する決議を全会一致で採択いたしました。こう書かれております。

 東日本大震災、さらに原子力災害とそれに伴う風評被害等により農林水産業が受けた被害は計り知れず、今後の再生産に向けた経営の維持等、生産者・団体・行政が一体となって取り組んでいる最中、TPPの参加によって本県の農林水産業はもとより、地方そのものが崩壊するものと懸念される。

  また、TPPは貿易だけでなく、金融や知的財産、労働、医療分野なども幅広く含まれるため、第一次産業のみならず、多くの産業が危機にさらされ、日本人の雇用も不安定になる危険性をはらんでいる。

  よって

ということで

 拙速にTPPに参加することは、福島県の復興の足かせになるものであり、TPP交渉参加に反対することを決議する。

このように述べております。

 総理は、今お聞きになって、この福島県議会の決議をどう受けとめておられるでしょうか。

野田内閣総理大臣 まずは、福島県はまさに被災地でございますが、こういう被災地の、特に農林漁業の復興ということを意識して、先般、十月二十五日に政府決定した、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針がございます。こういう取り組みを行いながら、そうした不安をなくすように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

 一方、TPPについては、今の福島県のそういう声もあります。さまざまな声をちょうだいしています。慎重な御意見もあります。推進すべきという意見もあります。時期尚早という意見もあります。さまざまな意見を、今党内でも闊達な御議論をいただいていますが、そうした御意見も踏まえながら、広範な視点があると思うんです。ただ、政策全体の推進というものを八月に決めていますけれども、これに基づいてしっかりと議論をして早期に結論を得るというのが、今の私どもの姿勢でございますので、さまざまな声をお聞かせいただきながら対応していきたいというふうに思います。

笠井委員 農地を復旧しても、TPPによる米価暴落で地域農業はつぶされてしまう、参加を検討していると聞いただけで復興への気持ちがなえてしまう、総理は、この被災地の声を本当に真剣に受けとめているのかと思います。

 福島県議会だけではありません。農水省のまとめによりますと、昨年十月から現在までに、TPPに関する意見書が、被災県を初め四十四道府県議会から上がっております。そのうち、参加すべきではないが十四、そして慎重に検討すべきが二十八であります。市町村議会では、合わせて千四百二十五件、参加するべきでないだけでも約八割であります。全国町村会、九百三十四町村が入っていますけれども、ここも三度にわたって反対決議を上げている。

 総理は、さまざまな意見があると今言われました。そういう中で早期に決めると言われるわけですが、こういう状況が全国にあるときに、目前のAPEC首脳会議、この場でTPP交渉参加表明を行うという結論が出せると本当に思っていらっしゃるんでしょうか。その点、どうですか。

野田内閣総理大臣 さまざまな不安や懸念にお答えをしていくために、これまでも情報収集に努め必要な説明をやってきたと思います。ただ、それは不十分だという声もいただいておりますので、さらにそうした情報収集と説明責任は果たしていきたいというふうに思います。

 その上で、議論は本当にいろいろな視点があると思いますが、議論が熟した段階においては、やはり一定の結論を出すということが必要だというふうに思っております。

笠井委員 議論が熟したと言われましたが、だから、まさに熟していないんです。こういう状況がある。

 そして、直近の世論調査でも、政府は説明していないというのが八割です。よくわからないが四割。とても国民的にしっかりした議論が行われていないことは明らかで、APECは今週ですから、まさに熟したなんという状況じゃありません。昨日、国技館では六千人の大集会が行われて、JAや日本医師会など広範な団体はもちろん、国民的な不安と怒りが広がっております。

 与党民主党の中でも大きく賛否が分かれて、二十二回も議論したって、結局、交渉参加を決められぬでしょう、やじっているけれども。衆参の国会議員の過半数、三百六十三人が、一千万を超えるTPP反対署名の請願紹介議員になっている。なぜこうなっているかといえば、熟しているどころか問題点ばかりで、何よりも、TPP交渉の大前提が大問題だからだと思います。

 そこで、確認したいんですが、政府はよく、交渉に参加しないとルールづくりに入れないというふうに言われますけれども、このTPPの交渉というのは、いかにもこれからルールをつくる交渉を始めるというふうに聞こえますけれども、では、改めて確認したいんです。これは外務大臣ですかね。TPPというのは、既に四カ国、P4という、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが入っている協定がある。この協定を引き継ぐ交渉だということであります。

 そこで、その協定に当たっては、二つの基本的な原則というかルールが既にあるということだと思うんです。一つは、TPPでは、すべての貿易にかかわる関税はゼロにしていくという問題、もう一つは、関税以外の方法での貿易制限はこれまた原則撤廃していくということであります。

 こうしたTPP交渉に新たに参加するには、この二つのことは基本的に認める、これが前提条件だということでは間違いありませんね。

玄葉国務大臣 今、笠井委員が、P4協定を引き継ぐからという話で、いわば関税の原則撤廃、そして他のルールをもっと緩めるという話がありました。

 確かに、TPPというのはより高い水準の自由化というものを目指すという意味では、ある意味そのとおりだというふうに思います。

笠井委員 そのとおりだということであります。

 そういうTPPの交渉に参加するということは、では、日本に一体何をもたらすか。何より、国民への食料の安定供給を土台から壊すことになるという問題が議論されて、問題になっている。政府自身も、重大な懸念を認めています。

 外務省が提出した資料で「TPP協定交渉の分野別状況」という文書がありますけれども、これによりますと、日本側の慎重な検討を要するという懸念の問題が、二十一分野にわたって、それぞれについて懸念点が具体的にあるということがるる述べられているわけであります。

 ページをめくって最初に出てくるところでいいますと、こうあります。「高い水準の自由化が目標とされているため、従来我が国が締結してきたEPA」、経済連携協定において、「常に「除外」または「再協議」の対応をしてきた農林水産品(コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等)を含む九百四十品目について、関税撤廃を求められる。」「求められる。」と書いてあります、文章が書かれています。これは外務省の文書です。

 そこで、鹿野農水大臣に伺いますが、農水省はこれまで、日本の関税率平均といえば一二%で、国際的にも十分低い水準にあるということも含めて、これ以上下げるというのではなくて、やはり守るものを守る、とにかく、いろいろな場面でいろいろな言い方がありましたが、守るべきものは守るというふうに答弁されてきましたが、大臣、このTPPに参加しますと、今の外務省の懸念点はあるわけですけれども、農林水産品の関税も、これはすべてゼロになっていくことになるということでよろしいんでしょうか。

鹿野国務大臣 今外務大臣からお話がありましたように、TPPというこの協定は、いつの時点でというふうなことは言われておりますけれども、いわば関税撤廃を前提としてというふうなことであると言われておるということは承知をいたしております。

笠井委員 そうなると、これに入れば、農産品についても関税が撤廃されていくということになるなと。農水大臣。

鹿野国務大臣 そのようなことだと思っております。

笠井委員 そこで、そうなるとどうなるかということなんですけれども、この新聞に出ている意見広告が目を引いたんですが、「店頭から国産豚肉が消える!?」と、日本養豚協会の出した意見広告が十一月の三日付で新聞に出されました。

 そこで紹介されている、意見広告の中に出ているのが農水省の試算の資料なんですけれども、農水省は、すべての関税が撤廃された場合の農林水産物の生産などへの影響について、試算を既に出しております。

 このグラフにありますように、食料自給率が現在の三九%から一三%ということで、とにかく急落をする、この薄青の線であります。そして同時に、豚肉自給率についても急落をするということで、現在国内で生産されている豚肉の七〇%が輸入に置きかわる。この養豚協会の意見広告でも、「産業としての養豚は国内から消滅してしまうことにもなりかねません。」というふうに警告をいたしております。

 米生産については九〇%がなくなっていくということで、農林水産物の生産額は四兆五千億円も減少して、関連産業も含めると、GDP、国内総生産の減少というのが八兆四千億円になって、雇用は三百四十万人減る。

 農水大臣、これは農水省の試算だと思うんですけれども、関税を撤廃するとそういう深刻な事態になってしまう、こういうことでよろしいわけでしょうか。

鹿野国務大臣 基本的に、TPP交渉という中で、具体的な形でこのTPPに参加をするということになった場合に、何も手を打たないというふうなことを前提として、こういうふうなことが予測されますということでございます。

笠井委員 何も手を打たなければということが前提だと。そして、総理は、このTPPの参加判断のいかんにかかわらず、農業再生は進めるとか両立させるということも、本会議以来、かねて言われてきましたけれども、そうはいっても、日本がTPPに参加することは、とにかく農林水産業に大きなマイナスになる、大打撃を与えるということは明らかだと思うんです。

 関税がゼロになれば、畑作は壊滅する。サトウキビ、てん菜、酪農、畜産なども全滅であります。政府が出したこの再建方針・計画も、土地利用型ということになっております。平地で二十ヘクタール―三十ヘクタールの経営体が大部分、大宗の構造をつくるというわけでありますけれども、そうなりますと、九六%の農家が切り捨てられて、十人に九人以上を離農させるということになってしまうんじゃないか。

 そうなると、両立させるとか手を打たなければと言いますが、結局、関税を撤廃することによって、そういうことでどうやって両立できるのかということになってくるんじゃないんですか。

鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、具体的な施策を何もしない、こういうふうなことを前提として私ども農林水産省としては提示をさせていただいたわけでありまして、当然、このTPPに参加するかしないかというふうなものは、交渉参加についてもまだ決めていない段階であります。

 ゆえに、私どもとしては、とにかくTPPに、交渉に参加するかしないにかかわらず、私どもが食料の安定供給、そしてしっかりと食料安全保障問題に取り組んでいくということは、これは私ども農林省に与えられた責務であると思っております。

笠井委員 今のを聞いていますと、とてもあした決める、総理が判断するなんて言える状況じゃないなということと、何もしなければということですが、では、出していると言いますけれども、その政府が出している計画を聞いて、農家の方や、養豚業界もそうです、畜産の方も、いろいろな方が、関係者が、ああ、これならいける、TPPに入ったって大丈夫だというふうに言っているんですか。聞いたって、全然そんな納得、していないわけですよ。

 具体的に納得できるものを出さずに、こうよくなるかもしれないという願望を幾ら言ったって、これまでも自由化ということでどんどんつぶされてきたというのが実際の当事者です。牛肉、オレンジ、米、結局、バケツに穴をあけておいてどんどんつぎ込んだって、自給率はどんどん下がってきたじゃないか、これがこの間のさんざんの経験であります。それよりも、具体的に生きた血の出る現実を、このTPPに入ることによって、関税撤廃することによって起こす。

 大体、競争相手というのは、世界でも最も農産物の安いアメリカやオーストラリアです。日本農業が壊滅的打撃を受けるのは避けられない。一戸当たりの耕作面積がよく言われます。アメリカは日本の百倍、オーストラリアは千五百倍、北海道の方だってかなわないと言っているんですよ。競争できる強い農業なんといっても幻想だということを、実際に当事者の皆さんはもう痛感している。まさにそういう問題だと思います。

 政府は、守るべきものは守りますと、今大臣も言われましたけれども、繰り返して言うけれども、では具体的に、米を守る、あるいはこれを守るということは一切言わないじゃないか。それに対して、こうやれば守れるという、ちゃんと納得できるものも出ていない。

 二〇〇六年には、衆参の農林水産委員会で、当時、日本とオーストラリアの自由貿易協定について、重要品目を除外しない交渉入りには反対を全会一致で決議してきたわけであります。

 TPP交渉に参加するに当たって、では、重要品目、センシティブな品目は守る、このことについてははっきり主張して、貫けるとはっきり言えるんですか。

鹿野国務大臣 国会決議のことは、私ども承知をいたしております。

 ゆえに、昨年の十一月に、政府におきまして包括的経済連携につきましてまとめさせていただいた中におきまして、いわゆる高いレベルの経済連携を進めていくということでございますけれども、そういう中で、センシティブ品目に配慮をしながらというふうな項目もその中に盛り込まれておるということを申させていただきたいと思います。

笠井委員 配慮しながらなんということじゃ、弱々しくてだめなんですよ。

 大体、カナダの場合は、このTPPに交渉参加するかどうかということで、チーズやアヒルなどの家禽類の肉については関税撤廃を表明しなかったということで、交渉参加を断られちゃったわけでしょう。交渉に参加しようとすれば、結局、いや、何とかその点についてはというふうなことを言ったって、貫けないということになるじゃないですか、参加するということになってくれば。

 TPP交渉参加というのは、日本の農林水産業に壊滅的打撃を与えて、国民への安定的な食料供給を土台から崩す。特に、被災各県にとってはさらに深刻であります。日本の有数の米どころ、ワカメ、昆布、サケ・マスなど水産業にも甚大な被害が出てくる。TPP参加強行は、だから復興への希望を奪うという声が上がっているわけであります。

 政府は国益ということを口にしますが、私はこれほど国益を損なうものはないと思います。自国での農業と食料生産をつぶして、専ら外国に頼る国にしていいのか。この国の根本的なあり方が問われていると強く言いたいと思います。

 そこで、この交渉に新たに日本が参加するには、もう一つ前提となる条件があると思うんです。既にTPP交渉に参加している国は九カ国でありますが、新たな交渉参加を決めた国については、そうした既に交渉に参加している国に、私たちの国は参加したいですということを通報して説明をして、そしてそれら諸国の同意を取りつけるための調整協議を行うことになります。

 そこで、玄葉外務大臣に伺いますが、この参加各国の中で特にアメリカの場合、新たな交渉参加国を認めるためのアメリカの国内手続というのはどのようになっているか、端的にわかりやすく説明してください。

玄葉国務大臣 できるだけ端的に御説明いたしますが、その前に一言、二言。

 先ほどの関税の話でありますが、申し上げたとおり、原則関税撤廃なんですが、長期的かつ段階的撤廃を主張する国が多い、また同時に、中には除外を求める意見も出ていて、まとまっていないというのが現状だということを事実関係として申し上げたいと思います。

 それと、カナダの話は、決定的に一つだけ違います。それは、いわゆるNAFTAに入ってアメリカともう既に自由貿易協定を結んでいるということも、これは事実関係として申し上げたいと思います。

 今のお話は、TPP協定交渉への新規参加につきましては、正式な手続規定があるわけではありません。その上で、参加には、現在交渉に参加している九カ国の同意が必要であるというふうに承知をしております。

 今おっしゃった米国、確かに、ペルーとか豪州、マレーシア、チリ、これは閣議了解、閣議決定で結構だということなんですが、米国は議会というものが、もともとTPA法によっていわば授権している、もともと通商権限が議会にあって授権していたという経緯があるものですから、米国政府については、新規の参加国と交渉開始をするという場合に、少なくとも九十日前に連邦議会に交渉開始の意図を通知し議会との協議を行う。この議会への通知は、ある程度米国政府と議会との調整、協議が進んでから行われるというふうに承知をしていて、このための時間も一定程度必要になる、そういうふうに考えております。

笠井委員 今の答弁をパネルにしてみました。

 各国それぞれあるということがありましたが、アメリカとの関係でいいますと、まず、日米両政府の事前協議、これは既にいろいろやってきているということも含んでありますが、参加をするというふうに表明した場合になりますと、アメリカ政府に伝えるということで参加したいという表明をして、アメリカ政府は、今度は米議会との間で、今大臣も言われました調整、協議を事前にやった上で正式に通知をする。そして、その後、最低でも、少なくとも九十日間と言われました、それをかけて同意、承認を得ることになります。そして、それで初めて日本は参加国の交渉テーブルに着けるということになるわけであります。

 そうしますと、アメリカはこれまでも、毎年日本に対して対日要求報告書ということを、いろいろな種類がありますが、繰り返し出しながら、日本に貿易の制限を取り払うように強く要求してきている国であります。そのアメリカから日本が交渉参加の同意、承認を受けようとすると、政府だけじゃなくて議会も含めてこういう手続が必要で、九十日ですから、三カ月プラス事前にということで、期間は定まっていない、官房長官は、かなり長くなるかもしれないというようなことも記者会見で言われた。

 そういう時間もかけて、交渉に参加したいなら、アメリカの意向、要求についてはどうするんですか、対日要求をちゃんと聞いて受け入れなさい、アメリカの要求をのまなかったらこういう承認手続は得られませんよ、交渉に入れませんよ、こういうことを言われることになるんじゃないでしょうか、これから。

玄葉国務大臣 確かに、TPP協定の目指す高い水準の自由化交渉をする準備がある、そういうことを、少なくともそれに対する信頼を、参加国からそれぞれ得ていかないといけないということは確かだというふうに私自身も考えております。ただ同時に、現時点で、今おっしゃったような個別の二国間の懸案事項をあらかじめ解決していくことを交渉参加の前提条件として示している国はありません。

 その上で申し上げますと、今おっしゃったような、特定国から個別の二国間懸案事項への対応が求められる可能性というのは私はゼロではないと思います。可能性としてはあるというふうに思いますけれども、その場合、やはり、何が対応可能で何が困難かということを、TPPの協定とは別に個別にしっかりと対処するということが、私としてはというか、日本国政府としては大切なことなのではないかというふうに考えております。

笠井委員 今大臣言われました、信頼を得るためにはということは、要するにTPPの原則、先ほどいろいろな言い方をされましたが、関税は基本的にゼロにしていく、それから関税以外の規制も撤廃するということをちゃんと言わないと信頼を得られないわけです、そういう世界ですから。

 結局、そこにあらかじめ前提条件としてこれをのまないとというようなことを書いていない、言っていないと言いますけれども、前提条件としてそういうことを言っていなくても、アメリカは実際には、この要求をのまなかったら交渉に入ることに同意しないと言ってくる、そういう可能性はあるというわけですね。二国間ではそういうことを求めてくる可能性があるというわけですね、さっき。(玄葉国務大臣「ゼロじゃない」と呼ぶ)ゼロじゃない。

 そうすると、そういう可能性があったときに、それは二国間の交渉と言いますが、アメリカは、結局、日本が入るかどうかを同意、承認する側なんですよ。そうすると、アメリカにとって気に入らない、これじゃ信頼を得られないということになったときに、二国間の話というのは実際にTPPに入るための前提になりますよね。アメリカとしては、この要求は必要だ、これは最低限のんでもらえなかったら、やはり入ってもらうには信頼を得られないよ、信頼できませんよと言われたら、そういうことになるんじゃないですか。そうなりませんか。

 しかも、アメリカは、民主、共和両党が議会にいますから、いろいろな要求がぎりぎりあるわけです。結局、そういうことになるんだと思います。それを否定しますか。

玄葉国務大臣 先ほど申し上げましたように、可能性としてゼロじゃないと思います。確かに、言ってくる可能性というのは私はあると思いますよ。だから、そのときにやはり、先ほど申し上げたように、何が対応可能で何が困難かというのをこちらできちっと判断して、協定とは別に、個別にきちっと対応したい、こういうことを申し上げたわけです。

笠井委員 別にならないんですよ。だって、対等、平等じゃないんです。アメリカから承認してもらわなきゃいけないんです。そのときに、信頼を得るためにはこれが必要となったら、二国間で話し合ったって、それがTPPに入る前提になってくるわけですよ。

 そうなりますと、TPPというのは食料あるいは農業だけではありません。暮らしと経済のあらゆる問題がかかわってきて、今、二十四分野が交渉対象とされて貿易の制限撤廃が求められてくるということで、いろいろな議論がある。

 では、アメリカは実際に日本に対して何を求めてきているか。

 外務省が十月二十五日に提出した文書がここにございますが、米通商代表部、USTRが公表した二〇一一年外国貿易障壁報告書の日本に言及した部分であります。さらに、それ以外にも、貿易の技術的障害に関する報告書なども含めると、私、数えてみましたら、ざっと約六十項目にもわたって、要するにアメリカ・ルールで自由化せよという要求を列挙しております。

 例えば、今とりわけ国民の関心が高い食の安全にかかわる部分を見ますと、遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃というのを求めてきております。通商代表部の報告書にはこうあります。アメリカのバイオテクノロジー食品の輸出が妨げられ、場合によっては完全に締め出されるというふうな批判をして、そういう不当な貿易障壁だということで表示義務の撤回を日本に求めております。

 玄葉大臣、そういう要求はアメリカからありますね。あるかないかだけで言ってください。あるかないかだけで結構です。

玄葉国務大臣 二国間の経済対話ですから、不断にこういう話はあるということなんですね。

 ただ、これはぜひ言わせてください。つまり、この遺伝子組み換えの表示というのは、まず一つは、御存じだと思いますけれども、WTO……(笠井委員「そこはこれから議論するんですから、あるかないかを言ってください」と呼ぶ)議論しますか。

中井委員長 質疑者と答弁者に申し上げますが、答弁、質疑は委員長の許可が要ります。座ったままで勝手に物を言わない。だめ。

玄葉国務大臣 はい、わかりました。

 それで、WTO・SPS協定というのがあって、既にそのWTO・SPS協定の中で、いわゆる科学的な知見に基づけば、国際水準よりも高い水準の措置を行うことができると書いてあります。現に今議論が、TPPの中では行われていませんが、実は行われる可能性は私は否定できないと思います。

 ただ、そのときに、例えば豪州とかニュージーランドとか日本というのは非常に厳しい表示を求めるでしょう。オーストラリア、ニュージーランドはそうです。では、例えば、豪州とアメリカのFTAでそういう表示が緩んだかといえば、緩んだとは私は承知しておりませんし、ニュージーランドもそうでございます。

笠井委員 私の質問に答えていただきたいんです。私は、そういうことが要求としてありますかと聞いたので、そこをはっきり言ってください、あるかないかだけ。あるんですね、そういう要求が。

玄葉国務大臣 先ほど申し上げたように、不断に二国間ではあるんです。同時に、TPP協定の中ではまだ議論されていない。だから、事前にいろいろこれまでもあったからあるかもしれないと申し上げて、それについての私の考え方を申し上げたわけです。

笠井委員 あるかもしれないじゃなくて、外務省が出した文書に書いてあるじゃないかということを言っているんですよ。

 アメリカから、非関税障壁の撤廃なのだから表示を撤回せよと、TPP交渉に入る前段で、二国間で求められることになるんですよ。交渉の場でほかの国と協議する以前に、アメリカは、入りたければそれをやりなさいよと言ってくるという可能性があるわけでしょう、ゼロじゃないと言うのだから。そこを言っているわけです。

 パネルをお願いします。

 加工食品の表示というのがあります。だれでも、お店に行きまして食べ物を買うときに、加工食品の場合でいえば、まず見るのがこういう表示だと思うんですよね。原材料は何か、大豆なら、遺伝子組み換えでないというふうにあるかないかがやはり大きな注目点になります。消費期限あるいは賞味期限はいつか、保存方法はどうか、そしてだれがどこでつくったか、確認してから買うんだろうと思います。

 大体、消費期限、こうありますが、これだって、もともとは製造年月日とあったわけですよね。その表示があったのに、アメリカも要求するということが大きな要因になって、一九九四年に廃止されました。当時のアメリカの議論は、製造年月日表示では、アメリカから日本に輸出してくる食品の方が輸送期間が長い、そうすると、日本の店頭で並べられたときに比べられて、つくったのはアメリカの方が古いね、だからやはり新しい方を買おうということで売れ行きに影響が出て、アメリカに不利になるという要求があって、そしてそれが消費期限、賞味期限表示にされてしまったわけであります。

 今回も、アメリカの要求を受けると、まず、TPP交渉に入る前段の段階で、それに入るためにはこういう要求をどうするんですかと突きつけられて、豆腐、納豆、みそなど三十品目に表示が義務づけられている遺伝子組み換えでないという表示が、消せというのがアメリカの要求ですから、それを受ければ消えてしまうということになります。やはり消費者から見ると、本当にこれは心配でしようがないわけですよ。

 これは総理に伺いたいんですが、こういうことになるということになりますと、食の安全、安心というのが本当に総理として保証できるというふうにお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 先ほど玄葉大臣からもありましたように、食品の輸入につきまして食品安全に関する措置を実施する権利というのは、WTOの衛生植物検疫措置に関する協定、SPS協定で日本を含む各国に認められていますので、輸入食品については、これをもって的確に監視していくことができます。

 TPPの協定交渉で主な議論の内容は、検疫措置を実施する際の手続の迅速化、透明化の向上、規制当局間の委員会の設立、リスク評価における科学的根拠の開示、こういうことはある模様ですけれども、現在、食品添加物、残留農薬、それから遺伝子組み換え食品の表示ルールなど、個別の食品安全基準の緩和というのは議論をされていないと承知をしています。

 今後、食品安全基準の緩和などが協定交渉の中で提起される可能性は、それはすべてのことに可能性は排除されませんけれども、仮に日本が参加をする場合、TPP協定のような複数国間の交渉では、ある国の食品安全に関する措置の変更をほかの国から一方的に求められることは考えられないというふうに思います。

 ですから、とにかく、食品安全について日本がこれまで守ってきたものについては、この交渉の中でしっかりと協議をして、日本がそれを脅かすようなことを受け入れることはしないということを申し上げたいと思います。

笠井委員 今あれこれ言われましたが、では、私、伺いましょう。

 先ほど、「TPP協定交渉の分野別状況」ということで、これは政府が内閣官房以下出している、状況の文書ですね。外務省だけじゃありません、各府省出しています。この中で、具体的に、各分野についての規定という中でこういう懸念が表明されています。私の質問です。「現時点では議論はないが、仮に個別分野別に規則が設けられる場合、例えば遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国にとって問題が生じる可能性がある。」「遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国にとって問題が生じる可能性がある。」と政府は書いています。

 どういう問題が生じる可能性があるというふうに考えているんですか。さっきは問題は起きないと言いましたけれども、どういう問題が生じる可能性があると考えるんですか。

玄葉国務大臣 その文章の趣旨は、まさに日本が求める表示と違う基準を主張する国がTPP協定の交渉の中で出てくる可能性は排除されないという意味であります。

 その上で、先ほど申し上げたように、現時点では議論されていないけれどもそういう主張がなされて、そのときには、我々は、もう既に認められているWTO・SPS協定、これをいわば曲げるような規定を受け入れるという考えをとっていないということであります。

 事実関係で申し上げれば、やや繰り返しになって恐縮ですが、オーストラリアとかニュージーランドとか、TPP以外ですが、韓国もそうなんですけれども、実際、非常に厳しい表示を日本のように求めています。それが変わったかと言われれば、変わっていません、全く。

 ですから、一方的に一カ国のルールがそれで全体のルールになるかといえば、私は、率直に申し上げて、なり得ないというふうに考えています。

笠井委員 米韓のFTAでは、これは撤廃されているはずですよ、遺伝子組み換えは。

 まさにそういう点でいいますと、私がさっきから言っているように、このTPP交渉の舞台になる前段の問題が問題なんですよ、アメリカから言われるわけですから。これまでだって、この表示が変えられてきたんだ、アメリカの要求で。またやられるんじゃないかという話をしているわけです。

 いろいろ言っても、そこのところの説得力はありません。BSEの月齢引き下げのように、日本は、結局、アメリカに譲歩することになるという懸念が実際に国民からあるわけです。とにかく日本に売りたいというアメリカに対して、国民の食の安全、安心を守るという立場から、絶対に譲歩しないと国民の前で言えるのかといえば、そうなっていないじゃないですか。

 食の安全にかかわっては、牛肉の問題でも、今言ったような緩和の問題があります。そして、日本国民の食の安全を脅かす要求を列挙して突きつけてきているのがアメリカであります。

 それでなくても、この食の安全の問題というのは、今度の福島原発事故によって大量の放射性物質が拡散されて、子育て世代はもちろん、多くの国民は、放射能汚染を心配して食の安全に神経をとがらせている。その上に、TPP参加によってさらに脅かされる。政府に言ったって、少なくとも、問題が生じるようなことが起こるというわけでしょう。そんなことを許しちゃいけないと思うんですよ。よく考えるべきだ。

 もう一つだけ聞きたいと思います。

 国民の命と健康にかかわる医療の分野ではどうか。

 アメリカの通商代表部の報告書では、日本では「厳格な規制によって、外国事業者を含む営利企業が包括的サービスを行う営利病院を提供する可能性等、医療サービス市場への外国アクセスが制限されている。」と批判して、日本の医療を外国企業に開放するように要求してきております。

 私は、こういう要求を、議論して受けることになると大変なことになると思います。医療に利益第一主義が持ち込まれて保険のきかない医療拡大で自己負担がふえると、お金持ちしかよい医療が受けられなくなる、不採算部門切り捨て、地域からの医療機関撤退が一層進みかねないという懸念があります。

 こういうことが交渉対象にならないという保証がありますか。

玄葉国務大臣 混合診療の解禁とかあるいは営利企業の医療参入、これはTPP交渉で議論の対象にはなっておりません。同時に、TPP協定交渉参加国間のFTAを調べてみますと、公的医療保険制度は適用除外ということになっているところであります。

 いずれにせよ、現時点で公的医療保険制度そのものについて議論の対象になっておりませんが、仮に議論の対象になったと仮定した場合であっても、我が国としては、やはり国民皆保険制度を維持するということで対応していくべきものというふうに考えております。

笠井委員 大臣、外務省が一昨日、民主党に対して提出した追加の資料がございますね。追加説明資料の中ではこうあります。「TPP協定は交渉中であり、その内容は予断できないものの、混合診療の全面解禁がTPPで議論される可能性は排除されない。」と書いてありますよ。

 そう言わなかったでしょう、今。これは一体どう違うんですか。民主党の中では、排除されないという問題があると言っているんじゃないんですか。可能性は排除されないんでしょう。

玄葉国務大臣 いや、私先ほど申し上げたように、まず一つは、現時点で議論されておりません。既存のFTAでは適用除外になっています。仮におっしゃるように議論の可能性が出てきた場合は、私はこういう姿勢で臨みますということを申し上げたわけです。

笠井委員 可能性が出てきた場合じゃなくて、可能性が排除されないと外務省は文書で民主党に説明していますが、可能性が排除されないと言えないんですか。説明が違うじゃないですか。

中井委員長 玄葉君、この文書の説明をしてください。

玄葉国務大臣 可能性は、どういう場合であっても可能性として全く〇・〇%かと言われれば、それはそうじゃないかもしれません。ですから、先ほど申し上げたように、仮に出てきた場合はこういう対応をしますということを申し上げたわけです。

笠井委員 民主党の中での説明は、外務省ははっきり、可能性は排除されないと言い切っているわけですよ。なぜそこをあいまいにごまかすんですか。

 どんな場合でも可能性はゼロというのはありませんという話じゃなくて、ここでは「混合診療の全面解禁がTPPで議論される可能性は排除されない。」と書いてあるんですよ。そうなんでしょう、そこは。これは違うんですか。違うんだったらどういう、民主党の議論とも違うんでしょう。

玄葉国務大臣 ちょっと今、お手元にある資料が私の手元にないので。ただ、議論される可能性はゼロじゃないということかと言われれば、それはゼロじゃないかもしれません。ですから、先ほど対応方針を申し上げたわけです。

笠井委員 TPPではこのことが今問題になっていない、大臣もそう言われましたが、日本が入っていないから問題になっていないんですよ。保険証一枚でどこでも医者にかかれるという日本の国民皆保険制度は、WHOの年次報告書の中でも世界の成功例とされてきました。これまでの九カ国の交渉で対象になっていないのは、そういう国がないからなので、日本が交渉に入ったら、対象になる可能性が大いにあるということなんですよ。

 アメリカ政府、議会から、そういう規制を取り払わないとTPP交渉に入れてあげないと言われたらどうするか。米側の要求のとおり混合診療が全面解禁されたら、窓口の三割負担だけじゃなくて、十割負担の自費診療もあわせて入ってきて、必要な医療はすべて保険で行うという皆保険制度が壊される。(発言する者あり)今、医療格差と言われましたが、そういうことが起こるわけですよ。

 いいですか。これは、そういう問題についてアメリカが要求している。それを前段の、結局、日本がTPP交渉参加意向表明したときに、アメリカ政府、議会の承認を得るときに、入りたかったらそういうことものみなさいよと。相手はアメリカですよ。これまでさんざんそういうことでやってきた相手でしょう。断るならはっきり断るという保証があるんですか。絶対それをさせないと言えますか。

玄葉国務大臣 ですから、冒頭申し上げましたように、二国間の懸案事項について、TPP協定に入る前にいろいろ要求してくる可能性は排除されません。それについては、何が対応可能で何が困難かというのを二国間で個別にきちっと対処します。今の、おっしゃったような公的医療保険制度は、維持しなきゃいけないというふうに思います。

笠井委員 アメリカとの関係でいえば、個別の対処が、結局、それがTPP交渉に入るかどうかの前提条件になってくるわけですよ、先ほど大臣が言われたみたいに。

 そうしますと、これはFTA、EPA、あるいは、この問題でもずっと議論がありましたが、米韓で見ますと、アメリカだって韓国に言ってきたんです、そういう問題について。

 米韓FTAでは、医療分野に株式会社が参入するということで、現に仁川では、ベッド数六百のニューヨーク・キリスト長老会病院というのが建てられている。すべて個室のみで完備されて、医療にかかわる費用を病院経営者みずからが決めることが可能になっているんです。

 結局、アメリカ・ルールでやれということになってきて、それを受けなかったら、いいですよ、受けないんだったらTPP参加については保留しましょう、入れてあげませんと、アメリカが認めなかったら入れないということになります。

 総理、そこまでしてどうしてTPP交渉参加に前のめりなのか。総理は、TPP協定について、アメリカだけじゃなくて幅広い参加国が参加するものであって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むことができる枠組みだと言われました。しかし、現在のTPP交渉参加国というのは、アジア太平洋諸国、たくさんありますけれども、そのうち九カ国だけということです。それに日本が加わったとしても、十カ国のGDPをずっと計算してみますと、日本とアメリカで全体の九一%を占める。残りの九%のうち、大体五%がオーストラリアです。それ以外の国が数%。そういう比率になっている。

 日本のTPP参加というのが、結局のところ、事実上の日本とアメリカのFTA、自由貿易協定、こういうことになるんじゃないですか。総理、いかがですか、これは。

野田内閣総理大臣 相当前提条件が違うと思うんですが、そこまでして前のめりにというお話がございましたが、委員がおっしゃったような、日本の誇るべき公的保険制度を壊すようなことまでして何かを進めようという気持ちは、私は全くありません。

 二国間の交渉があって、相手がいろいろ要求してくることはあるでしょう。それは可能性はゼロではないと思うんです。それは玄葉大臣がおっしゃるとおりです。だけれども、対応困難なもの、対応できるもの、それはきちっと国益を踏まえて、きちっと交渉するというのが日本の立場であるべきであろうというふうに思っています。もし交渉に参加する場合の話ですよ。

 というふうに基本的には思いますので、前のめりで云々、そんなことまでのみ込んでという、そういう議論はちょっと飛躍があり過ぎるというふうに思います。

中井委員長 総理、日本とアメリカとの二国間のFTAじゃないかという質問に答えてください。

野田内閣総理大臣 現状の九カ国の中で日本が入った場合には、おっしゃるように、GDPの比率で見ればそういうことになるというふうには思います、数字の上では。

 ただ、これはTPPからFTAAPへの道筋もあるわけで、それからの広がりも考えると、単なる九カ国のGDPだけで比べるものではないだろうとは思います。

笠井委員 広がっていくんだと言われましたが、では、アジアの国々で、例えばインドネシアの外務大臣は、私たちはTPPじゃなくてASEANでやっていきますよときのうも言われました。結局、そういう流れができているわけじゃないんですよ。

 今、総理が冒頭に、いや、守るものは守るんだ、皆保険は守る、絶対そこは交渉で頑張ると言われましたが、では、具体的に示してください。参加意思を表明する、それに当たっては、これは守ります、これは守ります、これは守ります、その一覧表をちゃんと出して、その上で議論しようじゃないですか。出しますか。

玄葉国務大臣 まず、自由化交渉のテーブルにはすべてのせるというのが、すべての国の原則なんですね。その上で、我々は同意を得て参加国に、仮にですよ、入る場合はなるということです。その上で、交渉の中で我々は、当然、何を守り何を攻めるのかということを踏まえてしっかりと対応するということだと思います。(発言する者あり)

笠井委員 交渉がわかっていないという声がありましたが、そのとおりだと私は思いますよ。

 だって、テーブルにのる前に日米の協議があるんですよ。入れてもらうかどうかがあって、テーブルにのってからになってくるわけで、そもそも、最初に言ったように、このTPPというのは、関税はゼロにしていく、それからそれ以外の規制も取っ払うという話の世界に入ろうというわけですから、そうじゃなくて、これは守りたいんですというところが入ってきたら、これは異質な国ですね、我々の世界と違いますよと言われたら、断られるという話になるんですよ。だから、これは守るというのをはっきり出して、国民とも議論してという話にならなきゃおかしいと思うんです。

 私は、今アジアでそういう広がりがあると言われましたが、今、このTPPの動きというのは、アメリカ主導で、そういう自由貿易圏を日米中心に広げようということになっている。金、人、物さえ自由に動かせば経済はよくなる、妨げるものは悪だと言ってきた、そして各国の自主性を否定する、そんなやり方をやってきたマネー資本主義の典型だと思います。もう完全に失敗したわけです、そういうやり方は。それを装いをかえて蒸し返すのがTPPで、新しいどころか、古いシステムでしかない。だから、韓国だって、米韓FTAにやはりすごい、そういう流れに対して強い抵抗、反論、そして運動が起こって、批准になって問題になっているわけですよ。

 総理、今焦っているのはアメリカの方だと思います。国内の長引く不況、金融危機のもとで、失業率も増大する、経済が行き詰まっている。来年の米大統領選挙も控えていて、オバマ大統領は再選戦略をとっているという中で、日本のTPP参加によってアメリカの対日輸出戦略に取り込もうと必死になっている。そういう中で、日本が早くTPP交渉に参加表明しないと入れてあげないと言いながら、結局は、この間だって期限をずらしながら、日本を待っていますと言っているのがアメリカ政府通商代表です。それを何で、乗りおくれるからなどと慌てなきゃいけないのか。一たん交渉参加を表明したら、次々とアメリカは対日要求を突きつけてくる。そういう国です。それをのまなかったら、参加は認めないと言われるだけじゃないですか。

 総理、本当に国益を考えるなら、こんな道をとるべきじゃないと思うんですが、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 私どもの政権としては、高いレベルの経済連携、そして特に農業との両立を図っていこうということは基本姿勢でございまして、日本とEUとのEPA交渉も加速化させていきたい、日韓もやっている、日中韓も考えている等々、その中で、TPPというのはその可能性があるのかどうかということを今議論させていただいているということでございまして、単に、アメリカはこんな思惑があるとか、そんな話だけではなくて、日本の国益としてこの交渉に参加した方がいいのかという、主体的な判断でいきたいというふうに考えております。

笠井委員 だったら、そういう主体的な判断について、もっと国民的議論をしなきゃだめじゃないですか、国益は何かと。そこが問題だと思います。

 私は、今進むべき道は、やはり国民生活を応援する内需主導の政治に切りかえる。そして、世界との関係、アジアの関係も、互恵平等の経済関係をつくっていくということで、食料主権はその中できちっと大事にする、そして経済主権も大事にする、尊重しながらやる、そういう枠組みを大いにつくるという先頭に立つべきだと思います。

 最後に聞きたいと思うんですが、政府は、国民や国会には情報を出さずに、ようやく出すと言い出しましたが、与党に小出しに出して、そして、さまざま議論してきたと言っていますが、懸念には、主体的に判断する、最大限に努力する、慎重に検討する、余地は考えにくい、可能性はゼロとは言えない、こういう言葉を並べ立てて、事を小さく見せようとしていると思います。他方では、アメリカとは緊密に協議しながら、国のあり方の根本、国益にかかわる重大問題で拙速に結論を出そうとしている。こんな姿勢は許せないと思うんです。

 そこで、この問題の最後に総理に伺いたいんですが、政府は与党に対し、さっき言ったように、与党のチームには資料を出して、追加資料を出してということで、二十二回やってきたそうです。でも、日本の国会は公式の議論の入り口に入ったかどうか、そういうところであります。

 一方で、どうですか。アメリカ議会の方でいきますと、さっき大臣も答えましたが、日本政府の交渉参加の是非について、米政府との事前協議に時間をかけた上で、日本が交渉に参加するかどうかを認めるかどうかだけでも、三カ月の議論する時間があるんですよ。

 日本の国会では議論もこれからで、国民の意見も聞かずに、まさか、三カ月どころか、あした交渉参加を表明するなんてことがあっていいんですか。アメリカの方には、御丁寧に三カ月以上の手続を経るわけです、参加するかどうかだけで。日本には、あしたにも参加表明するなんてことがあっていいんですか。こんな国会軽視はないんじゃないですか、国民軽視は。

野田内閣総理大臣 交渉参加の云々を前提として、アメリカがそういう九十日のルールがあるということはそうです。ほかの国はありません。

 そういう中で、では日本はどうかというと、仮に交渉参加をして政府が署名をしたとしても、最終的には国会の承認、批准を得なければいけないわけで、国会の統制は受けるし、しっかり議論いただくということはあるんです。

 その前にも、当然しっかりと情報収集して、御説明はしていきたいというふうに思います。

笠井委員 最終的には批准されるからいいんだと言われますけれども、そこで否決されたら、また日米関係でいろいろなことを言われるんじゃないんですか。

 そんなことが起こる前にまずこの段階で、だって、アメリカ議会の方は、三カ月以上かけて日本が交渉に入るかどうかやるんですよ。日本の議会にちゃんと資料を出して、国民にも資料を提示して、国益はどうなのか、これは守る、これは大事だ、ここまではこうなんだということも含めて、いろいろなシミュレーションも出てくるでしょう、そういうことを徹底して議論した上で日本が参加するかどうかということを判断したっていいんじゃないですか。私たちは交渉参加反対ですけれども、少なくとも民主主義を考えたら、主権国日本を考えたら、そのことぐらいやっていいんじゃないでしょうか。総理、いかがですか。

玄葉国務大臣 国会で議論するというのは、それはもちろん大事なことだというふうに思います。

 ただ、事実関係を改めて申し上げますけれども、アメリカの場合は、もともと議会に通商権限があった、それをTPA法という法律でいわば授権していたという経緯があるわけです。日本は、今、野田総理がおっしゃったとおり、内閣に条約締結権があって、国会は承認するんだ。まさに制度の違いなので、もちろん、こういう制度であっても、日本として、できる限りの情報提供に努めて、その中で国民的な議論、議会の中での議論を成熟させていくということは大切だというふうに考えています。

笠井委員 それぞれの制度の違いがあるのは私も知っています。アメリカの制度と日本の制度は違う、条約に当たっても違うと先ほど言われました。アメリカも詳細に、条約についてはいろいろあります。日本は日本であると言われたけれども、しかし、事情があったって、こういう大事な問題で、国のあり方そのものにかかわることで、これだけたくさんの懸念が出ていて、そして、それに対しても十分に答え切れたかといえば、与党民主党の中だって二十二回議論されたんでしょう。私も報道でしか知りませんが、最終的にそのときに、では、民主党として参加しますという表明をすると決めたんですか。決められないんでしょう。そういう問題があるときに、それがわかっていて、そして政府自身も懸念事項があると言っていて、与党の中からも野党の中からも、団体や国民の中からも、こういう懸念がある、そうなったときどうするのか、たくさんの疑問や問題点が出ているときに、それについてきちっと議論を経ずして踏み出していくということが、民主主義としてやっていいのかという問題だと思うんですよ。

 何か、手続論じゃないんです。条約で、実際結ばれたら、その後は当然手続にのっとって、日本でどうするかというのは批准の手続があります。でも、少なくとも、これだけ日本の命運にかかわる問題で、しかも大震災の後に、被災地に大きな問題をもたらすというようなことも言われていて、当事者からも声が上がっている中で、こんなことやっていいのかという問題になってくると私は思うんです。

 総理、率直に、その点については、被災者のことを思って、あるいは国民のことを思って、少なくともこういうプロセスは必要だ、そして、機が熟したらと言われましたが、今熟していると言えるのかということについては真剣にお答えいただく必要があるんじゃないですか。機が熟したと言うなら、なぜ、何をもって熟したのか。先ほど私、たくさんの反対の決議も申し上げました、疑問点、意見も申し上げました。なおかつ、熟しているから判断するということが言えるとすれば、何をもって言えるのかということ、そして熟していると今思っているのかどうか、この問題をどう扱っていくのかということについて最後に伺っておきたいと思います。

野田内閣総理大臣 被災地の復興は、これは最優先です。これは我が内閣の最大かつ最優先の課題であるということはずっと申し上げてまいりましたし、三次補正予算もそれが骨格となっています。

 それと同時に、今回のこの問題は、まさに日本が、アジア太平洋地域の成長力を取り込んで貿易・投資のルールづくりに主体的にかかわっていくかということと農業の再生との両立を図れるかどうか、そのほか御指摘のいろいろな御懸念があることは事実でございますが、そういうものを踏まえて、何が国益かということを総合的に判断をしなければいけないし、そのための議論をこれまで行ってまいりましたけれども、その結論は早急に出していきたいというふうに考えております。

笠井委員 こうなればよくなるといういろいろな願望があったり、いろいろな計画があっても、実際に起こってきたこと、起こること、マイナス面というのは大きいという問題を含めて、私は委員長にお願いしたいと思います。

 このTPP交渉参加の是非に関して、当委員会で参考人をお呼びいただいて質疑をすること、そして、全国各地で意見が出ていますから、地方の公聴会、参考人招致の公聴会を開催することを理事会で協議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中井委員長 理事会で後刻協議いたします。

笠井委員 終わります。

中井委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、きょうは特に食の安全問題について取り上げたいと思います。

 皆さんも御承知のように、三月十一日の福島の原発事故の後、今、我が国の食卓は不安に揺らいでおります。人間が生きていく上にとって最も大切な食、一日三回、お小さいお子さんから御高齢者まで、皆さん食べて命をあすにつないでおられますが、この食の安全が揺らぐということは国が揺らぐということでもありますので、あわせて、その食の安全にも深くかかわりますTPP問題についても総理にお尋ねをいたしたいと思います。

 冒頭、ちょうど十年前ですね、二〇〇一年の九月十日、九・一一があのアメリカのツインタワービルが攻撃された日ですが、その前日、我が国においてBSE、狂牛病の発生、一例目の報告がされました。千葉県でのことでありました。これは、異常プリオンという、脳の中にたまる異常なたんぱくが牛のみならず人間にも病変を起こすということで大変不安に襲われたことを、私も議員になってまだ一年目でありましたが、強く覚えております。

 冒頭、鹿野農水大臣にお伺いしたいと思いますが、あの教訓、あのときから我が国の食の安全についての体制というのは大きく進歩いたしましたし、また、この食の安全ということをめぐって、鹿野大臣は、あのBSE問題とは何であったのか、そして何を学び、どこへ向けていくべきかについてお考えをお尋ねいたします。

鹿野国務大臣 今、阿部先生から御指摘の件につきましては、農林水産省といたしましても大変重要な問題意識を持ち、平成十五年でございますけれども、農林水産省内に消費・安全局というものを創設いたしまして、食の安全性の向上に取り組んできたところでございます。

 当然のことながら、農林水産省といたしましては、BSE対策の具体的な教訓、こういうことでございますけれども、今申し上げたようなことも含めまして、消費者の健康保護というふうなものを最優先に、まさしく科学的知見に基づきまして、食品の安全と消費者の信頼確保というふうな問題に取り組んでいくことが大変重要だということで今努めておるところでございます。

阿部委員 では、信頼を取り戻すために政治のやったことは何であろうというふうにお尋ね申し上げるべきだったかもしれません。

 あのとき、厚生労働大臣は坂口大臣で、農水大臣は武部さんでありました。この二〇〇一年の九月十日のBSE発生後、直ちに十月の十八日、全頭検査、とにかく牛を一頭残らず検査しようという方針と、それから、どこで生まれて、どこで育って、どこに、解体されて販売されるのか、トレーサビリティーなどのシステムを整え、食品安全委員会をつくり、食の安全基本法をつくった。これはやはり一つの大きな、日本の食の安全上、獲得したことであると私は思います。

 さて、この食の安全という問題が、今ある意味で外圧に揺らいでいるというのと、内側におられる総理初め今の政権与党の中では、そこまで譲ってしまうのかなという疑念が私にちょっとございますので、たださせていただきます。

 と申しますのは、このTPP交渉に先立つかのように、露払いであるかのように、今我が国は、とにかく牛は全頭検査、そして危険部位と言われる脳とか脊髄とか、プリオン、異常たんぱくがたまりやすいところはゼロカ月から全部取るという徹底した仕組み、そしてさっき申しましたトレーサビリティー、どこで生まれて、黄色いイヤタグが牛についているかと思いますが、あれはトレーサビリティーの象徴でありますが、この三つをもって、全頭検査して、危険部位は除去して、氏素性を明らかにしてずっとフォローしていくという三つをやってございます。

 ところが、最近、アメリカ側からというか、常にアメリカ側から寄せられている要求は、この全頭検査にいたしましても、もう少し、例えば今、二十カ月以内の牛しかアメリカからは輸入しておりませんが、これを三十カ月、あるいはもっと月齢に関係なく門戸を開いてくれまいかという要請が政府にもおありだと思いますし、これはいろいろ、米国の上院議会なども二〇〇五年などは決議しておりますし、絶えず日米の政治のマターに上っておりました。

 すなわち、食の安全は、守るためには政治的にもきちんと対応していかなければならないという証左だと思いますが、今私がここにお示しした、これは基準の違いですね。

 日本並びにEUは、簡単に区分いたしますと、食肉そのものを検査してございます。日本は二十カ月月齢を超え、でも日本は全部やっておりますが、あるいは、EUでは七十二カ月月齢を超え、ブルガリア、ルーマニアなどでは三十カ月を超えるもの、要は、牛はある月齢を経ると物がたまってくるということで、肉を直接食肉検査に付しております。

 下を見ていただきますと、アメリカ、カナダ、OIE、これは国際的な食肉の検査と言ってもいいと思いますが、そういう機関では、じかに食肉検査はいたしませんで、発生の頻度を問うような検査方法であります。すなわちアメリカでは、三十カ月以上の牛がもしふらふらとへたり牛になった場合に、それを検査していく。そして、そのリスクが百万頭に一頭を超えるか超えないか、こういうサーベイランスをいたしておるわけであります。

 この二つを見ても、大きく区分すると、日本、EU、あるいは米国、カナダ、OIEなどは、安全性に対する考え方の差。

 そして、実は全頭検査いたしました場合には、例えばですが、二〇〇一年から二〇〇五年の六月まで四百五十万頭を日本では全頭検査しておりますが、このうちから二十頭のBSEが出ました。一方、アメリカは、全部で、これより少し後の期間ですが、三十八万頭検査し一頭。検出頻度が明らかに異なります。何でもそうですが、全部検査した方が、それは出る頻度も高い。

 そして、この検出方法プラス、それを安全と考えるか安心と考えるか、ここにはさまざまな文化の差、仕組みの差があると思います。

 小宮山大臣は、こういう差異を踏まえた上で、今後のこのBSE問題、どのように対処されますでしょうか。

小宮山国務大臣 BSEの対策につきましては、今委員も御指摘いただいたように、ちょうど十年たちましたので、最新の科学的知見に基づいて判断をするということが求められていますので、そういう意味で、アメリカからどうのこうのという前に、十年たったので科学的に再評価をしましょうということです。

 そのため、先日、十月三十一日に開催されました薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会で、この問題の経緯ですとか、国内外の対策の現状などを御説明して、今御意見をいただいているところです。

 この食品安全規制、御承知のように、SPS協定によって最新の科学的知見に基づくことが求められておりますので、十年たったところで見直しをしたい。

 それを考えるもう一方では、放射線の影響について、風評被害も含めて、海外でその輸入が禁止されていたりしていることに対して、日本としては、科学的知見の中で大丈夫なものは輸入していただきたいと申し上げていることとの関係もあるというふうに思っています。

阿部委員 科学的知見と呼ばれるものが切り口によって大きく変わるということは、御党の政権内でも経験されたと思います。校庭のミリ数を何ミリシーベルトにするかで政権内からもいろいろな御意見が出ました。

 科学は確かに日進月歩いたしますし、その知見を抜きには物事は語れませんのですが、先ほども申しましたように、全頭検査体制にある我が国と、アメリカのように、ある月齢以上、ある症状を出したものをサーベイしている中では、見つかってくるものも違います。大体、頻度も違ってまいります。科学的知見といったときには、こういう手法の差もきちんと取り入れないといけません。

 ちなみに、御党が二〇〇六年にBSE問題で訪米をしておられます。

 このとき、アメリカとの差は一番何であるかというと、アメリカは、何カ月月齢といっても、実はトレーサビリティーがないので、本当にその箇月かどうかわかりません。肉質で判断する。簡単に言えば、年とってそうだとか若そうだとか。そして、実は、この月齢の書かれたものと実際との違いが、アメリカ国内の消費者団体によれば、四〇%余りあるのではないかという報告も、これは御党の報告ですから。

 それから、特定危険部位の除去というやり方も違います。日本では脳も脊髄も全部除去しますが、アメリカは三十カ月以上ということになっておって、ここにおいても、たまり病が起きるときの危険への構えが違います。これは、よしあしではなくて文化の差もあるんだと思います。

 一つには危険部位の除去、一つには月齢が不確かであるということ。そして、御党からも、アメリカに視察に行かれたときに、トレーサビリティー、それでは本当にどこで生まれて、どこで育って、どこに行くのと、やっていただけまいかというお話もされたそうですが、これはなかなかコストとの関係でイエスと言われない。今、わかるだけでもこれだけの差があるわけです。

 そこに科学的知見と一言でおっしゃいますが、問題は深刻で、まして、信なくば立たずなんです。どういうことかというと、政治が国民から信頼されていなければ安心もないということであります。安全についても科学的知見、いろいろな、例えばアメリカ国内の飼育状況も含めて、検査の考え方も含めて、検査実績も含めてやっていただかねばならない。もちろん、今、放射線で日本が海外にいろいろ輸出できないのは事実です。これについても私は解決策を持っておりますので、安易に科学的という言葉に紛れないで、何をなすべきか、より安心、安全の強化のためのプロセスをお考えいただきたいと思います。

 次の質問をお願いします。

 ここにお示しするのは、このBSE対策にあって、十年前、何が起きたかということを牛肉の価格で示したものであります。これは特に野田総理に見ていただきたいのですが、十三年の九月に発生して、そして約一年をたたずしてでしょうか、牛肉の価格は急速にもとに戻りました。これは急峻な立ち上がりだと思っていいと思います。

 ここでなされた対策は、先ほど申しました、一カ月後には全頭検査に持っていった、それから食の安全基本法をつくることを国会で合意した、安全委員会もつくった、あわせて、十五年の後半になりますが、ここでトレーサビリティーが実施に移された。この約一年余の間にそれだけのことがきちんとなされ、実は、実施に移される前、実施するぞという法律ができたときから、これは回復をしております。

 ここから私どもが学ばねばならないことは、そうした出来事は感染症という出来事であっても、そのとき政治が何を準備したかによって結果は変わるんだと思います。

 野田総理にお伺いいたしますが、野田総理は、このとき千葉でしたし、実際に発生ということも御存じであったと思います。今私がここで繰り返し政治政治と申しますのは、安全の考え方も違う、国民の受けとめも違う、その中で、生きている政治、生の政治、打てば響くような政治をやらなきゃいけないが、はてさて、先ほど来、アメリカと我が国の違いは余りにも大き過ぎて、この食の安全で容易に譲ることができないと思いますが、総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 阿部委員御指摘のとおり、最初にBSEに感染した牛が発見されたのは千葉県でございましたし、今の議論を聞いていて思い出してきたんですが、この予算委員会で、当時の武部農水大臣にこの問題で私も質問をしたことがございました。

 いずれにしても、国民の食に対する安全そして安心を確保するために政府を挙げて取り組んだ結果がこういう形で、これは価格にあらわれておりますけれども、そういう効果があったんだろうというふうに思います。

 基本的な姿勢としては、やはり食の安全、安心は国民の最大の関心事でありますから、それにこたえていく基本的な姿勢は私どもも変わらないつもりでございます。

 先ほど小宮山大臣がお話をされたとおり、別に対米関係ではなくて、ちょうど十年たつ中で、しっかりともう一回、その科学的知見という言葉についてはいろいろお考えがあるということでございましたが、改めて再評価をしていこうというのが今の日本政府の動きであるということを御承知いただきたいというふうに思います。

阿部委員 アメリカとの関係ではなくてと言われましても、総理も政治家であれば御存じだと思います、絶えず日本が突きつけられているのは、この牛肉の解禁であります。

 二〇〇三年にアメリカでBSEが発生して、その後、輸入は禁止されて以降、常に常に、いかに門戸を開くかということにアメリカも腐心し、議会も決議を上げているということは先ほど申したところであります。

 現実にある問題を何とかではなくてと言うのではなくて、相手を見て、実態を見て対処していかないと、私は国民の命も安心も守れないと思います。それがずっと、けさの御答弁でもそうでありました、想定されるけれども可能性は小さいとかいう一般論にしないで、もう現実に繰り返し、はっきり言って牛肉交渉ですよ、開けと。そうであれば、総理が今のような一般的な御答弁であっては、私ども国民は、ああ、やっぱり何だか押されていくんじゃないかと余計余計不安になります。

 実は、アメリカからの牛の解禁、いろいろな経緯がありましたが、この三年間だけでも十五件ですか、本当はあってはならない部位の混入が認められている。日本に来た牛ですよ。あるいは、月齢の詐称といいますか違うのがわかったなど十五件、わかっただけでもあるんですね。

 こうやって見ると、本当にこの問題というのは、相互検証と、どんな牛の飼い方をしているか、どんな検査にあるかということがきちんと担保されないと、私は、一般的に、日本の安全基準の見直し云々と言えないところに問題があるということをぜひ総理に認識していただきたいと思います。

 引き続いて、次のパネルをお願い申し上げます。

 さて、先ほど小宮山大臣もおっしゃいましたが、今、我が国の食品の放射能汚染の問題があって、主には中国、韓国、台湾などアジアの国々が多いですが、我が国の食品は多く輸入をとめられた状態にあります。

 これも改善せねばならないことですが、国内に目を転じてみても、先ほど私が、牛肉の価格は政府の迅速な対策によって急峻に戻っていった、キロ当たり千五百円とか千六百円とか戻っていった図をお示ししましたが、一方、これは我が国の現在の牛肉の価格、特に四県、福島を初めとして栃木、宮城、岩手の価格は低落しております。岩手県は一関の稲わら問題、宮城は登米の稲わら問題、栃木は那須あたりの高濃度汚染、そして福島は御承知のように本当に気の毒な状況にあります。

 これらの価格の低迷、例えば、福島産はキロ当たり六百九十二円、これでは、えさを与えて丹念に育てて、出荷したくても、原価割れどころではない状態だと思います。また、この四県の中では比較的上位にあるという岩手県でも、全国平均の千五百九十六円を下回って、千三百九十三円・パー・キログラムであります。すなわち、これら四県の牛の価格は明らかに下落をしております。

 小宮山大臣に伺いますが、今、牛のセシウムの検査はどうなっておるのか、そして、なぜこの下落を放置しているのか、これについて御答弁をお願いします。

小宮山国務大臣 今、牛もですけれども、食品中の放射性物質につきましては、厚生労働省が定めましたガイドラインに基づいて、各地方自治体でモニタリング検査を実施しています。国では、検疫所ですとか国立試験研究機関を紹介する仕組みをつくりまして、この地方自治体の検査体制を支援しているというのが今のやり方です。

 特に、汚染稲わらによる牛肉の放射性物質汚染問題が確認されて以降、より効果的、効率的なモニタリング検査の実施、これをするために、一つは、牛肉や米、麦類について、簡易測定機器の導入によるスクリーニング検査の導入を推進してきました。もう一つは、文部科学省の航空機モニタリングデータの地方自治体への提供を行いました。また、厚生労働省も、国立医薬品食品衛生研究所、こうしたところで流通段階の買い上げ調査を実施するなど、取り組みを進めています。

 その結果、安全だということを、先ほどから委員がおっしゃるように、本当に日本人が食の安全、安心に非常にセンシティブであるということはよく承知をいろいろしておりますので、そうした検査をした上で、現在出ているものは安全であるということをしっかりとわかりやすく、データも伴ってお知らせをしていきたいというふうに思っています。

阿部委員 今言ったような、つらつらつらっとしたことじゃだめなんですね。ポイントを定めて、では、小宮山大臣、何でこんなに下落しているんですか。これで生活できるんでしょうか。そこまでの真剣さが政治家にないから、幾ら美辞麗句を並べたって対策になっていないんですよ。

 これ、例えば、小宮山大臣御存じでしょう、東日本四県産牛肉の安全宣言等に関する要望書、すなわち岩手、宮城、福島、栃木の四県の知事から、十月十二日、厚生労働相にも農水相にも野田総理あてにも出されていますよ、こういう実態を踏まえて。彼らが望んでいることは、全頭検査体制を確立してくれ。スクリーニングとかサーベイランスじゃだめなんですね。今、例えば福島県で屠殺された牛は、そこで福島県が全部はかる。そして、他の、例えば芝浦等に出たものは、福島県が依頼して、そのデータをもらう。だけれども、それは国民には開示されていないし、国がリーダーシップをとった検査体制じゃないから共有されないんですね。そうしたら、ああ、これは福島県か、いや、こっちの松阪の方がいいかと。見えないし、わからないし、国の覚悟のほどが伝わらないから、不要な価格差が生じています。

 すべてこの四県が、これだけの価格下落に悩む中で望むことは全頭検査なんです。私が冒頭BSEで申しましたように、あのときの素早い行動がやはり本当に日本の食品安全行政を見直すもとになったということは、政権交代前のことですが、命に色はないし、政党もないんです。食の安全が揺らいだら、国が揺らぐんです。なぜ全頭検査を迅速に指示なさいませんか。

 総理、いかがですか。ごめんなさい、今度総理に聞かせてください。これだけの価格差が出て、ほっておく総理ってありですか。私は、あり得ないですよ。

 これ、本当にセシウムが高くてこうなっているなら風評じゃないでしょう。福島は福島ではかっておられます。ただ、それが共有されない。他の都道府県も、この四県についてははかっておられますでしょう。ただ、それが共有されない、国を挙げた体制じゃないから。稲わらも実は松阪まで行っていたんですから、松阪牛まで。今、食というのはあっという間に広がるんですね。その安全は全国民にかかわるんですね。なぜ、BSEに学んで、全頭検査体制をしき、公表なさらないんですか。野田総理、お願いします。

野田内閣総理大臣 先ほどから御議論あった、これはBSEに感染した牛の問題とは違うのは、あれはいわゆる肉骨粉の流通過程が不明だったから、だから全頭検査したと思うんです。今回の汚染稲わらが原因となっている放射性セシウムの牛は、対象が明確であるということから全頭検査はしていない。ただ、出荷制限を解除する後には全頭検査をしているというような状況で今対応しているというふうに思っていますので、BSEの問題とはちょっと違うんだというふうに思います。

阿部委員 今の総理の答弁には二つ認識の、失礼ですが、誤りがあると私は思うんですね。

 確かに、肉骨粉はBSEの伝搬の原因とされていますが、もう一つ、例えば牛に与えるミルク、代用乳だったのではないかという論議もずうっとあるんですね。

 そして、今総理は、今出ているものは全頭検査されているとおっしゃいましたが、それは、県が自主努力でやり、データも県しか持っていなくて、国民が共有されないんです。

 私は、ここに国のリーダーシップと国の本当の国民に向けたメッセージが必要だから、わざわざ、小宮山さんじゃなくて総理に伺っているんです。総理大臣の役はそれほど重いんですね。そこをおわかりにならないまま、例えばTPP問題もそうですが、揺らぐ食の安全ということに対してこんなに私は、もちろんTPPでもそうですし、これまでのアメリカとの交渉でも絶えず問題になってきたところですから、国民は大きく懸念するわけです。

 こんな価格の下落、では総理、本当にどう責任とるんですか。何してあげるんですか、何してくれるんですか。そんなこと幾ら言ったって、どうにもなっていないじゃないですか。そこの結果責任を問うというのが政治家なんですよ。

 だから、簡単にTPPにも加入、参加表明とかしないでいただきたいんです。私たちは、結果についてある程度の予測をしなきゃいけないし、対策を持っていなければ物事は進めてはいけないということなんですよ。

 総理、伺いますが、今、日本の放射能汚染牛で、あるいは野菜で、輸出制限等々で輸出額は一体どのくらい減っていると思いますか、四月から七月までで。これは質問予告していませんから、農水大臣でも結構です。

鹿野国務大臣 済みません、正確な数字は後ほど先生に御報告させていただきたいと思います。

阿部委員 私が予告すべきだったかもしれませんが、四月から七月までで一千五百億なんですね。これは、例えば十七都道府県に広がって、そのうち十県からのものは中国などは全品禁止とか、いろいろな措置があるからですよ。四月から七月で全体の輸出額が一千五百億のうち、百五十億減っただろう。千五百億の一〇%減っておるということであります。

 でも、私は、これは極めて深刻だと思います。総理が攻めの農業とか言うけれども、攻められないですよ、相手の門戸が閉ざされているから。こういうこと一つとっても、国が覚悟を決めて、全品のトレーサビリティーに相当するような、米にしても牛肉にしても、きちんと全袋をはかるべきだと思いますよ。

 次の質問に行かせていただきます。

 私の時間制約なので、最後に、TPP問題についてお尋ねをさせていただきます。

 私は、第一次産業が震災と原発でこれだけ苦しい立場にあるときに、なぜ総理はそんなに焦ってTPPの参加表明をなさるのか、政治家として信じられないんですね。そのことがどんなに、大体、交渉ですから、国力と国力、国の状態がどんなところにあるかを、彼我の力関係もありますから、これは見きわめないといけないことなんだと思うんです。

 例えば、ここにお示ししたのは、日中韓FTAの準備のされ方と、今のTPPの差を私はぜひ総理に知っていただきたいんですね。

 総理は、聞き及ぶところによると、今度のAPECで交渉参加を表明したいとおっしゃいますが、例えば日中韓FTA。中国も体制が違う国ですし、ただ貿易量は一番多い、東アジアですから。こことのFTAに際しては、産官学共同研究というものを民間ベースで約九年、その後、政府になられてからも、もう足かけ二年。

 そして、そこではさまざまな、投資分野、知財分野、関税分野、競争政策、あるいは今私が言った衛生植物検疫措置、政府調達、食料、いろいろなものをきちんといわば下調査して、その結果で次に進むかどうか決めています。

 なぜ総理、今度のAPECで表明なさるやに言われるのですか。御答弁を聞いて終わりにします。

中井委員長 時間が来ておりますので、短くお願いします。

野田内閣総理大臣 日中韓のFTAについても、この交渉は加速をさせていきたいというふうに思いますし、特に日韓については、そのことをこの間、李明博大統領にお話しいたしました。同時に、高いレベルの経済連携は、日中韓だけではなくて、さまざまな分野がございますので、領域もありますので、TPPはその一つというふうに考えております。もちろん、十分な皆さんの議論をよくお伺いしながら、しっかりと結論を出していきたいというふうに思います。

中井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 震災から七カ月たちまして、やっと本格的な補正予算が提出をされました。本当に遅過ぎると私は思っていましたところ、先日、看過できない記事が目につきましたので、冒頭、これについてお伺いをしたいと思います。

 パネルをごらんいただきたいんですけれども、これは、十月二十五日の朝日新聞朝刊、オピニオン欄というところに、前総務大臣の片山善博さん、こういった一面のでかでかとした記事が載っておりまして、そこに驚くべきことが書かれているんですね。ちょっとパネルで読ませていただきます。

 私は、第三次補正予算を早く決めましょうと言い続けたが、財務省が震災を機に増税をすることにこだわって進まなかった。復興のためなら国民も増税に応じるはずと復興を人質にとった。復興のおくれを菅さんの六月二日の辞意表明以降の政治空白のせいにする人がいるが、的外れだ。真の原因は、財務省のへんてこな論理、これを野田さんが代弁し、当時財務大臣ですね、これを菅さんがとがめなかったところにある。多くの与党議員が財務省にマインドコントロール、メディアも同じ。

 こういうことがインタビューで書かれているわけですね。

 まず、名指しをされた財務省、主計局長が来られていると思いますので、これに対して何か反論があればお願いします。

真砂政府参考人 委員の引用されました部分の御指摘は、全く当たらないというふうに思います。

 私ども、三月十一日の大震災以来、政府の方針に沿いまして、予備費の積極的活用、それから第一次補正予算、第二次補正予算、そして今回御審議いただいています第三次補正予算の編成に、職員一丸となって全力で取り組んできたつもりでございます。今後とも所掌事務の遂行に万全を期していきたいというふうに思っております。

江田(憲)委員 事務当局としてはそう言わざるを得ないでしょうね。

 ただ、私も片山善博さんという方を存じ上げておりますけれども、改革派知事として鳴らされ、そして総務大臣として入閣された。私は、とてもうそをつくような方とは思えないんですね。これが事実とすれば、これはもう財務省の幹部、責任問題ですよ。こんなに被災地、被災民の方を愚弄することはありませんからね。要は、復興を人質にとって増税にこだわり、補正予算の提出をおくらせたとおっしゃっているわけですから。

 これに対しては、ぜひ、その当事者であった野田総理にお聞きしなきゃいけません。

野田内閣総理大臣 増税をしたくて復興をおくらせたなんてことはあり得ないということであります。

江田(憲)委員 本当は、きょうは片山善博さん御本人を参考人にお呼びしたかったんですけれども、残念ながら民主党の反対で実現しませんでした。

 これは重大問題ですよ、責任問題ですよ。ぜひ、委員長、参考人招致を、片山善博さん、お願いいたします。

中井委員長 理事会で決定をいたしました。

江田(憲)委員 それでは、我々みんなの党は、この予算委員会でもずっと増税なき復興を訴えてまいりました。一方で、当然、野田政権、民主党政権は復興増税路線。報道されているところによりますと、自民党さんも公明党さんも、償還期間を十年か二十五年かという議論はあるにしても、復興増税を容認する路線。そういう意味では、みんなの党と、民主、自民、公明党さんとは明確な違いがあるわけです。

 このパネル、一番下の片山さんの言葉を引き続きちょっとかりると、こう書いてあるんですね。

 増税を人質に補正をおくらせたことについては、まるで、救急病院に重篤な患者が運び込まれているのに、治療費の返済計画を提出するまで待たせておけというようなものだ。異様だ。しかし、世の中がそれを異様だと言わないところがまた異様だ。こうおっしゃっているわけです。

 それから、浜田宏一さん、エール大学の教授で、二〇〇〇年初頭には内閣府の経済社会総合研究所長も務めておられた著名な経済学者のお言葉をかりると、復興増税についてはこうおっしゃっていますね、「まるで災害という傷を負った子供に」増税という「重荷を持たせ、将来治ったら軽くすると言っているに等しい。」これは、リチャード・クーパーさんというハーバード大学教授との日経新聞六月二十日の記事の中から引用させていただきました。

 同じように、復興財源を増税で賄えば、日本経済に一層不況圧力をかける。復興は現世代だけではなく将来世代にも恩恵を及ぼす。その一部を将来の世代が負担するのはむしろ公平だ。今回の大災害は戦時にも匹敵するもので、公債に頼るのがむしろ原則である。

 我々の、みんなの党の考えを代弁していただいているような、まさに我々も同じ意見でございます。

 そこで、我々も、単なる増税反対では無責任ですから、この予算委員会でも、累次、我々の増税に頼らない財源案というものを提案してまいりました。今回まとめましたので、パネルをごらんいただきたいんです。

 みんなの党、これは十年間でございますね。これが今二十五年に延ばされようとしているわけですが、十年を前提に申し上げますと、まず、私も累次指摘をしてきた国会議員、国家公務員の人件費カット、これは我が身を切る改革ですね。これは、この前の私の質問でも、野田総理は、国家公務員人件費二割カットはやるんだ、次の衆院任期切れまでにやるんだという明言をされましたから、これで十兆円出るわけですね。

 それから、政府保有株、日本郵政、JT、政策投資銀行。これは、郵政は政府も検討すると。JT株は売却する。政策投資銀行は入っておりません。

 それから、例の朝霞住宅に象徴されるような公務員宿舎を売却すれば一・八兆円、プラスその他の国有資産の売却で二兆円、合わせて三・八兆円出る。

 それから、これも私がずっと、みんなの党が指摘をしてきた特別会計の剰余金。これにつきましては、国債整理基金で十・八兆円。労働保険特会雇用勘定、これは、はっきり言いますと、失業保険料を取り過ぎなんですね。これが、この三月末の時点でも五・五兆円の剰余金として積み上がっております。財政投融資特会の剰余金、これは一兆円。これは野田政権も活用される。

 加えて、我々は原発を将来なくしていくという方向でございますので、どうしても今の原発立地、既存の立地市町村への交付金等を残しましても、毎年二千億円ぐらいはカットできますので、十年間で二兆円。

 そして、民主党の高速無料化とか子ども手当、こういったものの抜本的見直しで、十年間で三十五兆円。

 我々は、これにプラス日銀の直接引き受け、これは借金上乗せです、ちょっと性質が違います。

 それから、前回私が申し上げた、外為特会に満期になった米国債が毎年十五兆円規模で戻ってくる。これは初めて財務省が認めたんですよ。安住さんは十四・五兆円だと直していただきましたけれども、五十歩百歩です。いずれにせよ、十四兆、十五兆円のお金が満期になって戻ってくるわけですから、では、それを復興に活用すべきではないですかという提案をしたんですけれども、これも無回答でした。

 いずれにせよ、十年間で八十兆、百兆円ぐらいのお金があるんです。ただ、そのうちの十兆円が出れば、いや私も、政府株なんかすぐ売れとは言っていないんですよ。十年でも二十五年でも、その期間内にタイミングを見計らって、市場の動向をしっかり見た上で売っていけばいい、こう言っているんですね。ですから、この中の、八十兆円プラスアルファの中の十兆円でも工面できれば、現実化できれば、今の九・二兆円の増税なんか吹っ飛ぶわけですよ。

 ぜひこういった前向きの考え方で、野田総理もなるべく増税はしたくないと思います、今のときに。ですから、野田総理、ぜひこういったものも検討していただけませんか。

安住国務大臣 まず、片山総務大臣のところで、三番目の、一方的におっしゃっているので、私はちょっとこれは認識の違いがあるなと思うんですけれども、重篤な患者が運び込まれているのに、治療費の返済計画を提出するまで待たせておけと。

 私は被災地の人間だから申し上げますと、江田さん、それぞれの自治体の復興計画は、十月の時点でもまだようやく三割なんですよ。七割は全く。地元を含めて、国のよこす予算がないからと言う人もいます。しかし一方で、私自身の土地も、まだどうするか、自分でもなかなか、両親と話をしても、生家のところをどうするかと悩んでいる。

 だから、何も私が今財務大臣だから言うわけじゃないですけれども、何かすべて財務省が悪くて、マインドコントロールなんという言葉は余り国会でお使いにならない方がいいと私は思いますよ。(江田(憲)委員「片山さんが言ったんだよ」と呼ぶ)先生のような方がそれを御紹介するというのは、ちょっと私はいかがかなと思いますし、そういう点では、私は、さまざまな反省もありますけれども、決してそれがもとで遅くなったということではないということだけはわかっていただきたいと思います。

中井委員長 今のことに対して答弁して。

安住国務大臣 それから、八十兆円、いろいろあるので、では、一つずつ丁寧に説明をしていきたいと思います。いいですね。

 総理は既に三〇%の俸給の返納、我々大臣も二割やりました。あとは、国会議員の、江田先生らを含めてどうなさるかは議会でお決めになっていただければいいと思います。

 それから、国家公務員の人件費については、丁寧に説明します。七・八%を、これは法案を出させていただきましたので、ぜひ、総務委員会での御議論になると思いますけれども、国家公務員分だけでも、やれば三千億円弱ぐらいになる。

 日本郵政株式会社の株の売却につきましては、凍結法案がございますので、この凍結法案のまず解除をして、そして今我が党が出させていただいている法律の成立を得て、そして会社が元気になって、その上で株式の三分の二の売却が見込めるようになったときにやはり視野に入ってくるんではないでしょうか。ただ売ればその時点で高額なお金が入るんではなくて、いい会社になって、投資をしたい、その株を保有したいという状況になって初めてこれはできるものであって、そういう点では、ぜひ御協力をいただいて、売却をできる可能性に、まだ三つ目ですか……(江田(憲)委員「早く」と呼ぶ)

 今度三つ目に、では入らせていただきますけれども、JT株については、今回三分の一ですね、これは御賛成いただくと。将来的には全額も……(江田(憲)委員「いいです。わかっています、それはやっていますから」と呼ぶ)そうですか。

 政策投資銀行については、これはちょっと法律上の枠がありますので、いずれ検討したいと思います。

 ちょっと異論があるのは、公務員宿舎を全部売ると四兆円近くなると。これは、あれですか、独法が持っている国立大学とかそういうのも含めて……(江田(憲)委員「いやいや、一・八兆円、公務員宿舎だけでは。その他の資産」と呼ぶ)その他ですね。だけれども、それは、自衛隊とか海上保安庁の方が入っているような宿舎も全部売却しろという考え方は、ちょっと我々とは違うと思うんですね、みんなの党の皆さんの考え方というのは。

 それから、国債整理基金の剰余金に関しては、話せば長くなるんですけれども、一般会計の定率繰り入れ一・六、御存じだと思いますけれども、説明しますか。(江田(憲)委員「もういいです、十分やりました」と呼ぶ)

中井委員長 あなたは、余計なことを言わずに、淡々とやってくださいよ、説明中なんだから。

安住国務大臣 はい。

 これは、減債基金でございますから、先生、これを使うのはやはりマーケット上どうか。

 労働特会については雇用調整金に回していますから、これは、とり過ぎだと言いますけれども、失業対策等に必要である。

 財投は、今御指摘のとおりです。

 原子力と四Kについては見解の相違が多少ありますけれども、九番目については今後検討だということだと思います。

江田(憲)委員 説明する努力は多とします。

 ただ、国家公務員の人件費カットについて言えば、みんなの党は、二割やられるのなら賛成しますよ、八%削減は。これで打ちどめなら反対ですよ。この前、野田総理はやられると言ったから、これはやられるんですね。だから、やられると毎年一兆出て、掛ける十で十兆出るんですね。これは、いずれ手当てできて、増税はなしとなる。

 それから、郵政株は、株式売却の凍結法案、あれを解除すればいいんですよ。我々は郵政改悪法案だと思っていますから、これは、予定どおりやっていれば、とっくに去年上場していたわけです、株式を。小泉路線でいけばもう売却できていたんですけれども、そこは見解の相違があります。

 特別会計云々は、もうさんざんここで議論しましたから、そこは見解の相違ですね。

 ただ一点だけ、これだけ言いたいんですよ。国債整理基金で、今まで九・八兆、一兆上乗せしているでしょう。これは何かといいますと、御存じのように、新発国債は大体二%の利子を想定して予算は計上しているんですよ。しかし、御案内のように、皆さん、今長期国債の実勢金利は一%ですから、二%と一%で、一%分浮いているわけですよ。これが一兆円ことし出てくるんですよ。これは必ず使いますね、野田総理。

安住国務大臣 減債の基金をどういうふうにするかということに関して言えば、だって定率繰り入れの話ですから、先生が言うように、一時的にはどうしたってそれは逆転現象が起きて基金はたまるけれども、しかし、だんだんこれは減っていくわけですから、これはやはり基本的には減債基金というふうに積ませていただくということになると思います。

江田(憲)委員 これはさんざん議論して、とにかく私が言っている繰り入れを停止しろというところについては見解の相違がありますから、言わない。これは違うんですよ、減債基金とは。これは、二%利払い分としてあらかじめ予算に計上した分が一%で済んだので、その余った分を使いましょうという、いわば歳出削減の部類に入る話で、減債基金だ何だ、将来の借金返済の原資を先食いするということでは全然ないので。

 これは、野田総理、御存じですよね、財務大臣でしたから。どうぞ。

野田内閣総理大臣 予算をつくるときに、過去に何か一番急激に変動したのが一・一%だったんです。だから、実勢の金利にプラスして一%ほど上乗せして予算に計上して、その結果、実際の金利が一%ぐらいだった場合にはその差額が出てくる、そういう御指摘だと思いますが、その活用については、大いに有効に活用していきたいというふうに思います。

江田(憲)委員 本当にさすがによくわかっておられる。だから、これは今年度中に一兆円出ますからね。財務当局にも聞いたら一兆円出ると言っていますから、早速九・二兆が一兆減って八・二兆、増税分になるわけで、ぜひお願いします。

 さて、消費税の問題もいろいろ言われていますが、これは昨年の閣議報告、それから党と政府の決定でも、経済状況の好転が前提、党の方は条件ともう少しくさびを打ったらしいですが、いずれにせよ、消費増税するには経済情勢の好転が必要になるんです、前提条件。

 今、皆さん、この附則に書いてあるのは平成二十年度を含む三年間で経済状況が好転したかどうか、だれもそう思っていないと思いますよ、国民一人として。リーマン・ショックが起こり、大震災が起こり、原発事故が起こり、経済は今本当に大変な状況になっているときに、とても経済状況の好転とは言えないと思いますが、この点についての野田総理の御見解をお願いします。

野田内閣総理大臣 現時点は、やはり大震災がありましたし、その落ち込みからの回復過程ということでございます。

 その上で、しっかりこれは明文で申し上げたいと思いますが、一体改革の成案の中には、「名目・実質成長率など種々の経済指標の数値の改善状況を確認しつつ、東日本大震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、総合的に判断」をするというのが、いわゆる経済状況を好転させるかどうかの考え方の基本に置くということであります。

江田(憲)委員 御指摘のとおりで、ただ、その点を言いますと、御承知のとおり、名目成長率は八年度マイナス四・六、九年度マイナス三・七、一〇年度は〇・四で多少上がりましたけれども、この四―六月期を見るとマイナス三・三ですよ。GDPデフレーター、これはもう一貫して二〇〇八年以降マイナスですよ。そして、消費者物価指数もずっと前年比マイナスが続いている。完全失業率に至っては、五%を超えている。足元は四・四になっていますけれども、これは岩手や宮城や福島県の数値は抜いていますからね、統計とれないから。とにかく、こんな状況ではとても消費税増税、そんなことができるような状況じゃないということを申し上げたいと思います。

 そこで、ただ財務省の言うことを聞いていると、とにかく日本の財政は破綻寸前だ、とにかく増税必至だみたいなキャンペーンがやられているんですよ。その中で、野田総理の所信表明演説でこういう表現があった。きょう生まれた子供一人の背中には、既に七百万円を超える借金があると。

 何でこれだけ言うんですか。本当にミスリードだと思いませんか。私は、フェアに言うんだったら、七百万円の借金はあるけれども、同時にこの子供は五百万円のお金を手に持って生まれてくると言わなきゃだめじゃないですか。これが本当に、財務省の都合のいい数字だけ出して、マインドコントロールする技術なんですよ。

 端的に聞きますよ、総理。財務省が言うように日本の国家財政が破綻寸前であるのならば、何でこんな急激な円高になるんですか、何で国債の金利が一%を割る割らないまで低水準になるんですか。

 それから、CDSって御存じですか。安住さん、CDS、ちょっと答えてください。

安住国務大臣 クレジットの話ですけれども。

 これは先生、だけれども、外的要因は全部一切無視してお話をなさるとそういう話になるんじゃないでしょうか。

 だって、今、欧州やアメリカの状況を見ながら、それこそ御党は、為替相場等については、どちらかというと、相場の、市場に任せろという話でしたよね。そういう中でいえば、例えば景気の問題等々、循環がヨーロッパも非常に難しくなってきて、そういう中で円高の傾向というのは今強まっている。長期国債が一%だったのは、私は、財政は非常に厳しいことを認識しつつであるということが前提だと思いますよ。

 決して日本の財政が、何か私どもが粉飾をして出しているとか、そういうことじゃなくて、我々は、一定のOECDのルールに基づいて対GDP比で出しているわけであって、そういうことをいろいろお考えになってやっているわけで、財務省のマインドコントロールというお言葉はせめておやめいただくとありがたいなと思います。

中井委員長 安住さん、CDSというのは何でしたか。(安住国務大臣「ですから、最初に言いました」と呼ぶ)答えた。

 あれでいいんですか。(江田(憲)委員「まあ、いいです」と呼ぶ)総理、答えますか。(江田(憲)委員「いいです」と呼ぶ)はい。

江田(憲)委員 粉飾とは私言っていませんからね。それは訂正してください。

 わかっていますよ、ユーロ危機だ、米国経済が低迷している、その反射的利益もあるでしょう。しかし、たとえそれであったとしても、財政破綻寸前の国の資産を買うばかはいないんですよ、市場関係者で。なぜ買っているかというと、日本の資産が安全だと思っているから買っているんですよ。どんなにユーロ危機があっても、アメリカの経済が低迷していても、財政破綻でデフォルト寸前の国債なんか買わないんですよ。破綻していないと思っているから買っているんですよ。

 では、これをちょっと証明してみせますから、次のパネルをお願いします。

 本当に財務省のプロパガンダは、結局、とにかく国の長期債務は一千兆円あるんだ。片方しか言わないんですよ。しかし、これは常識ですよ、経済の。これは、会社の貸借対照表。国のバランスシートもやっと出てきましたよ。これを見ていただければわかるんですよ。とにかく財務省が言っていることは、この貸借対照表の右肩の負債しか言っていない。確かに負債は千百三十五兆円ありますよ。しかし、資産が七百七十八兆円あるということを言わないんです。だから、さっきの、確かに子供は七百万円の借金を背負って生まれてくるけれども、同時に五百万円のお金を手にして生まれてくるんですよ。

 ですから、我々みんなの党も、三百五十七兆円、資産負債差額がありますから、財政再建は重要だと思っています。財政規律も重要だと思っています。ただ、今の優先順位としては違うんじゃないかと言っているので、ちょっと待ってください、最後まで説明しますから。

 そして二番目に、個人金融資産、これをよく言われますね。これも千四百五十三兆円あります。ただ、この点でも財務省は、いや、この個人金融資産から住宅ローンを抜くと大体千百兆円ぐらいになる、そして国の長期債務、合わせて千兆円超えちゃった、いや大変だと、個人金融資産を凌駕するような額に接近してきたので、もう国債が売れなくなる、暴落する、これも財務省の論法なんですよ。

 しかし、これは全くナンセンス、経済学的に言うと。なぜならば、国全体の金融資産は、これをごらんのように、五千五百七十二兆円あるんですよ。そして、国債を買っている主体というのは、家計ではなくて金融機関、企業なんですよ。家計はたった四・五%しか国債を保有していないんですよ。ですからこれも、あたかもこの個人金融資産を超えると破綻寸前だというのは誤りです。

 それからおまけに、対外純資産は、日本が持っている、日本人が持っている海外の資産は二百五十二兆円あります。そして、経常収支は十七兆円の黒字です。

 ですから、こういったものが国のファンダメンタルズなんですよ。国債の信認なんですよ。支払い能力なんですよ。これを見て諸外国の投資家も含めて日本国債を買っているから、長期金利が一%を切るような状況になっている、円高が急激に進む。

 そして、CDS、さっき触れましたね。これはクレジット・デフォルト・スワップというもので、これは言ってみれば、簡単に言えば、国債がデフォルト、債務不履行になったときの損失をカバーする保険料だと思ってください。ギリシャはこれが五〇%以上保険料を超えているんですよ。もう二年で破綻するみたいな数値になっている。日本は一%少々ですよ。これはもうイギリスやアメリカと遜色のない数字なんです。これはもう、市場は正直ですから、市場はこういう国のファンダメンタルズを見た上で、今こういった状況が現出されているんです。

 何度も言いますよ。我々も財政規律は重要だと思っています。しかし、この国難のときに、デフレで景気が悪いときに、財政再建を最優先して増税するのは世界の常識に反しますよと言っているんですよ。我々は、まずデフレを脱却して、経済を成長路線に乗せて税収を上げていく、そして、不要な資産そして我が身を切る改革、無駄遣いを解消していく、それをまずこの数年間でやるのが先決だ。増税はその後でいい、もし考えるとしてもですよ、それが我々の立場ですから。

 何か御反論があれば、言ってください。

安住国務大臣 まず、政府資産、純資産をどれぐらいに見込むかということですけれども、公式には四百八十四兆と我々は思っています。ですから、先生、仮に、百歩譲ってと言ったら変ですけれども、それを差し引いた額としても、対GDP比における債務残高は先進国中最悪の一三〇%であることは事実なんです。これはイタリアよりも悪いんですよ。ですから、そういう点では何も政府純債務があったとしても、これはマーストリヒト条約では入っていないんですよ、マーストリヒト条約に基づく資料というのはいわゆる今出しているものですから。そこはぜひわかっていただきたいと思います。

 それから、個人金融資産と申しますけれども、それは銀行が預かっていて、その銀行が国債を買っているということですから、そのことを抜きにして考えるわけにはいかない。

 最後に、クレジット・デフォルトのことでいうと、ある日突然発散することがあり得るのであって、今一%だから大丈夫だというのであれば、逆になぜイタリアは六・六%になるのかということに対しては、やはりそれは気をつけないといけないから財政再建は重要であるということでございます。

江田(憲)委員 御高説、承りました。

 それでは安住さん、財務省が出している二〇〇二年の外国格付会社あて意見書要旨というのは御存じですか。

安住国務大臣 今、手元に持ち合わせておりません。

江田(憲)委員 では、これは最後に野田総理に、委員長、もう最後ですから、聞いて終わりますけれども、ここで財務省が見事に説明している。二〇〇二年に日本国債の格付が下げられたときに、こう反論しているんですよ。

 日本は強固なファンダメンタルズを持っている、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないと断言しているわけですよ。そして、格付は広い経済全体の文脈、ファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきであるとして、マクロ的に見れば日本は世界最大の貯蓄超過国だ、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている。さっき言いませんでしたが、九五%は国内で消化されている。日本は世界最大の経常黒字国で債権国であり、外貨準備も世界最高だ。

 まさに私がこのパネルで説明したことを対外的に言っているわけですよ。(安住国務大臣「十年前ですよ」と呼ぶ)基本的に変わっていませんよ、数値は。

 もう時間がありませんので、総理、要は、言いたいことは、今総理が取り組む、政治家が取り組むべきことは、財政再建よりも、まさにこの大震災の復旧復興、それを増税なしでやっていく。なぜならば、景気が悪い。デフレから脱却して、経済を成長路線に乗せて税収を上げていく。とにかく……

中井委員長 もう答弁時間がない。

江田(憲)委員 まだありますよ。

 とにかく、九七年に三から五に消費税を上げても、この折れ線グラフをごらんのように、九七年以降、一切税収はふえていないんですよ、景気が悪かったから。これが歴史の証明なんです。最後に総理に答弁を求めて、私の質問を終わります。

野田内閣総理大臣 最後の御質問もちょっと多岐にわたっていたんですけれども、まず、格付の話についての財務省のコメントは、これはちょっと時期的にずれがあると思います。多分、格付についての強い反論をしたかったからそういう話をしたと思いますが、今は、格付には一々コメントしないというのが基本的な政府の姿勢であります。

 その上で、経済の成長と財政再建の両立を図るというのが私どもの政権の目的であって、何でもかんでも増税ではありません。今回の復興はまず果たさなければいけませんが、復興の財源についても、歳出の削減とそして税外収入を最大限確保して、その上で足りないところを臨時的な税制措置でお願いをするということでございますので、何でも増税ありきではない、そして、これからの財政再建と成長の両立は何としても実現をしていきたいというふうに考えております。

江田(憲)委員 どうもありがとうございました。ぜひ財務省の呪縛から脱却してください。

中井委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 この際、五分ほど、暫時休憩いたします。

    午後二時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五分開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより一般的質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。

石破委員 一般質疑に入りたいと存じます。

 先ほどまでの質疑、なかんずく我が党の質疑者の質疑の中で何点か確認をしたい点がございます。

 大臣、お忙しい中、御苦労さまです。もう退室していただいてよろしいですよと申し上げたら、どうぞ御退室をいただきたいと存じます。

 まず、山岡大臣にお尋ねをいたします。

 きのう、平沢委員の質問に対しまして、このようなやりとりがございました。山岡議員が事務所の秘書の方に対しまして、事務所の財政が厳しいので、経費が厳しいのでマルチで稼いでくれと言ったといったことに対して、断じてそのようなことはないというふうにおっしゃいました。事務所の方はそのことについて証人喚問にも応じたいというふうにおっしゃっておられるやでありますが、もしそういうことであれば、この場で証人喚問ということについてやるべきだと私は思います。

 もう一度確認しますが、断じてそのようなことを言った覚えはないということでよろしゅうございますか。

山岡国務大臣 私は、その必要もないし、そんなことを言った覚えもないので、ですから平沢委員にも、どなたなのか教えていただきたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。

石破委員 もう一つお尋ねをいたしたいと存じます。

 平沢委員の質疑の中で、二〇〇八年に開かれましたイベントにおきまして、御多忙でありました山岡当時の国会対策委員長がわざわざ御出席になって、ごあいさつというよりも、これはもはや講演に近いものではないか、私、昼休みにDVDを見てみました、これはごあいさつというよりも講演ではないかなというふうに思ったのでございますが、その中で、何でこの会に来たかということを山岡議員が述べておられます。

 すなわち、何と書いてあるかというと、自分の事務所の秘書をずっとやってくれていて、大変優秀だった高野さんという方がおられる、この人は皆さんの仲間で、今トップリーダーになっている、その高野さんが皆さんと一緒に頑張っている、そういうこともあって、きょうは何があっても来なきゃいけないと拉致をされてきたんですと。拉致という言葉が正しいかどうかは別にして、つまり、ずっと秘書をやっておられたこの方がおられて、大変に優秀であり、秘書をおやめになった後、こういうような会に参加をされ、いわゆるネットワーク商法のトップリーダーとなっておられるというようなことを述べておられるわけであります。

 お尋ねしますが、この秘書さんは、秘書をなさりながらこのようなネットワークビジネスをしておられたということでよろしいんでしょうか。

山岡国務大臣 私の秘書には兼業を禁止しておりますから、少なくとも、私の知る限りにおいては、秘書をしながらしていたとは思っておりません。

石破委員 それでは、この方にお尋ねをすればわかることでございますが、どうも、先ほどのマルチで稼いでくれというお話とつなぎ合わせますと、秘書をずっとやっておられて、大変優秀だった、そういう方が今トップリーダーとして稼いでおられる。今の大臣のお話ですと、大臣の事務所は兼職を禁止しておられるので、秘書在任中はそのようなことは一切やっていなかった、秘書をやめられて、それからこのようなビジネスをなされ、トップリーダーになられたということで間違いございませんか。

山岡国務大臣 少なくとも、私の事務所で兼業をしているということはないと私は信じております。どういうことであったかは、そのころ確認もしておりませんでしたが。

 ただ、いずれにしても、おやめになってから、非常に厳しい病気になって苦労されているということなので、私は同情を寄せているのは事実でございます。

石破委員 それは事務所によってスタイルは違いますが、大変優秀であったということで、大臣が非常に信頼をしておられた方だと拝察をいたします。その方がそういうことをやっていたか、やっていないか。不労所得とは言いませんが、幾ら汗水垂らして働かなくてもいいとはいえ、これは大変な仕事だと思いますよ。楽して金が稼げたら、こんな苦労しないのであって。

 そういう方がやっていたかどうかは知らないということをおっしゃっておられるのですね。やっていなかったという断言はなさらないわけですね。

山岡国務大臣 やっていたかいなかったか、確かめたこともありませんし、またそういう認識も持ったことはない、こういうことです。

石破委員 やはり、この方もお呼びしてお話をお尋ねしなければいかぬと思います。すなわち、事務所の経費が厳しいのでマルチで稼いでくれなんぞと言ったことは断じてないとおっしゃっておられるわけで、どうもここに何か関係があると思うのが普通なのだろうと思います。断言をするつもりはありません。来ていただいて、お話を承りたいと存じます。

 と申しますのは、大臣は消費者担当大臣でもいらっしゃるわけであって、消費者に対して、悪徳商法にひっかかってはならないよということを啓蒙し、そしてまた、そのような業者に対して警告を発する、そういう立場におられるわけでございます。

 このイベントの講演を拝聴して、拝見して、こんなものには参加しちゃいけないよ、皆さんはそうじゃないんだよね、そのことには気をつけようねという御発言は全然なくて、徳川家康が出てきたり織田信長が出てきたり、結構忙しいお話がいろいろあって、とにかく、今までのそういうような常識を打ち破れというようなことをやるんだというようなことを随分とおっしゃっておられます。

 私は、これが違法だということを断じているわけではございません。それは合法なものもございますが、警視庁から出ているいろいろな文書、あるいはいろいろな、きのうの中井委員長の御地元の伊賀市でしたか、あそこから出ている文書、どういうようなマルチ、ネットワークビジネス、それはやってはならない、そしてまた、それは十分啓蒙すべきだと大臣はお考えですか。

山岡国務大臣 委員にお願いなんでございますけれども、一般の民間人のお名前をここで出すのはぜひ差し控えていただきたい、こういうお願いを申し上げます。私のこの委員会のことで御迷惑をかけたくはない、こういうふうに思っております。

 それで、私は率直に言って、いいとか悪いとか、それほど認識が深かったわけではありません。

 今、どれがよいマルチか、悪いマルチかと御質問ですか。(石破委員「どう認識しておられますかと聞いているんです」と呼ぶ)もう一回言ってください。

石破委員 いいですか、担当大臣でいらっしゃるわけですからね。私は、すべてが違法だと言っているんじゃないんですよ。ですけれども、警視庁や、あるいは伊賀市のそういうような委員会や、こういうような商法には気をつけなければいけないということを言っているわけで、それはいろいろな、こんな場合、こんな場合ということが言われているわけであって、そのことは当然知っていなきゃおかしいでしょう、大臣として。

 どういうようなのがやってはいけないネットワークだと言われているか認識しているかと聞いているんです。

山岡国務大臣 よく聞き取れなかったものですから、済みません。

 どういうのかというと、これは特定商取引法で定めて、書面交付をきちっとやって、不実のことを告げる行為をしないで、なおかつ、人を威迫したり困惑させる行為をしたり誇大広告をしない、これは正常なビジネス。こういうことを犯せば、これは違法なビジネス。こういうふうになると思います。

石破委員 きのう、暴力団論議がありましたけれども、このネットワークビジネスで一番苦しんでいる人はどんな人だと思いますか。このネットワークビジネスに参加をして、多くの負債を抱えて苦しんでいる人というのは、どういう状況で苦しんでいると認識しておられますか。

山岡国務大臣 そこまでよく認識をしていなかったし、今いろいろと話を聞いてはおりますが、しかし、いずれにしても、これのスタートのときもそうですが、そういうことをなくす、健全なビジネスを育成するんだということで、私も、仮とはいえ、タッチをさせていただいたと。

石破委員 どういうことで多くの人が苦しんでいると認識をしていますかと聞いているんです。どういう人たちがどういうことで今一番苦しんで、秘書官、持ってこなくていい。持ってこなくていい。それは本人が認識していなければおかしいでしょう。

 どういうことでどういう人たちが苦しんでいるんですか。二カ月たっているんでしょう、消費者担当大臣になって。

山岡国務大臣 どういうことでというのは、いずれのビジネスでも言えるかもしれませんが、成功をしない、例えばセールスにおいても販売成績が十分に上がらないで、場合によっては自己負担までしながらやっている、こういう人がいるやに聞いておりますが、そういう人は御苦労をされていると思います。

石破委員 そういう人の方が多いんじゃないですか。これで成功した人は少ないんじゃないですか。

 それで、違法だとか違法じゃないとか、そういう問題ではありません。つまり、多くのノルマを課されて、親類、知人、友人、そういうところに、頼むから買ってくれ、入ってくれというふうに会員をふやしていく。地方は特にそうですよ、義理がたいですからね。あるいは、高齢者の方々が多い地域があります、そういうところで義理人情に厚い人たちが、そうかそうか、それなら入ろうかということでどんどん入っていく。しかしながら、ノルマがきつい、そのために自分でお金を出さざるを得ない、物は売れない、借金はかさむ、そのことで大勢の人たちが苦しんでいるんじゃないですか。

 そして、このビジネスは、成功した人よりも、多くの負債を抱えて苦しんでいる人の方が多いんじゃないですか。だから、違法じゃない、違法じゃないからいいんだという話にはならないんじゃないですか。

 少なくとも消費者担当大臣は、そのようにして苦しんでいる人たちがいる、ノルマがきつくて、入会金が高くて、やたらめったらイベントが多くて、それに参加をさせられて、そういうような、わなというのかな、そういうのにはまらないように、仮に健全なものがあるとするならば、ノルマは少なく、入会金は安くというようなものであるべきなのであって、大勢の人たちがそれで苦しんでいる、その解消に努めるというのが消費者担当大臣じゃないんですか。

山岡国務大臣 特定商取引法の対象になっている業種、例えば、わかりやすく言うと、一般のセールスの話は今申し上げましたが、それはいずれもそういう傾向が、まず親戚から行くとか、ノルマがこなせないとか、そういう話はたくさんあると思います。ただ、ほとんどの人がとか、多くの人がそういう状態であるという報告等は私はまだ受けておりません。

石破委員 それでは、何万という苦情が寄せられているのは、これは一体何なんですか。そういう人たちが本当に、義理がたい人たちで、人情に厚い人たちで、そういうのにほだされて、多くの負債を抱えて苦しんでいる。それが多くないからいいんだという認識は、私は全く正しくないと思いますよ。

 そういう人たちを救うのが仕事であって、そういう甘言に乗らないようにということを啓蒙するのが消費者庁の仕事じゃないんですか。

山岡国務大臣 おっしゃるとおり、そういうことを啓蒙して、そういう情報を提供していく。

 ただ、何万とおっしゃいますけれども、その中身は一般の問い合わせも含めての数字で、それが今だんだんと四万から一万ぐらいに減ってきているというのが、きのうの質問での当局の答えでございますし、そして、そういう質問総数でいくと、例えば宅地取引、不動産関係というのは合計でいけば四十万来ているとか、分母もそういう数字であるわけで、そのうちのこの一万、こういうことで、必ずしも絶対数では判断しにくい面があると思います。

 ただ、いずれにしても、先生のおっしゃるように、もし問題があったり、あるいは不正があれば、当然厳重に、厳正に対処していく、そういう立場でありますから、私としては、そういう違法のない健全な業者からの献金とは思っておりますが、自発的に全額お返しを申し上げたというところです。

石破委員 献金のことなんか聞いていません。

 では、大臣に就任してから、そのような今おっしゃられたことを達成するために今まで何をなさいましたか。

山岡国務大臣 消費者大臣としては、例えば、地域の消費者生活センター等々に行って、そういういろいろの報告、相談等々の実情を把握したり、あるいはPIO―NETにどういう情報が送り込まれてきている、その中身はどういうものか、そういうこと等を消費者関係については行っております。

石破委員 官房長官、国としてお手伝いをしたいというふうに野党のときにおっしゃっておられたわけですよ。それが与党の側に立ち、そして消費者担当大臣、そしてまた国家公安委員長、犯罪を取り締まり、そして消費者を守る、そういうお立場に立たれたわけですよ。

 そして、二〇〇八年というから、ついこの間の話ですよね。国として、このような国のためになるビジネスを応援したいというふうにおっしゃっておられた方、そういう方を消費者を守る大臣にし、そしてまた犯罪を取り締まる国家公安委員会の委員長にされたということは、私は、総理の誠実な人柄とは別に、この内閣とは一体何なのだということを思わざるを得ない。

 適材適所であるとするならば、きのう総理はきちんとお答えにならなかったけれども、なぜ一番適材なのか。民主党さんあるいは国民新党さんには合わせて四百人になんなんとする国会議員がおられるわけで、その中でなぜ一番適材だというふうに御判断になったのか。そのことは内閣全体の信用の問題だと思いますよ。この人をおいてほかにない、余人をもってかえがたい、だから判断をされたんでしょう。なぜそうなのかという判断を、きのう総理はお示しになりませんでした。

 この時間は総理がいらっしゃいませんけれども、ぜひお伝えください、なぜこれが一番いいというふうに判断をされたのかということです。山岡大臣、結構です。

 次に、吉野委員が聞いておられた動物の問題でございます。

 これはきのう、吉野委員は何も奇をてらってあのパネルを示したわけではありません。どれだけ地元の人たちのことを思い、どれだけ寝食を忘れて地元のためにやってきたか、それは同じ選挙区である玄葉大臣もよく御案内のとおりだと私は思っております。このことに与党も野党も関係はございません。

 問題は、大臣、十二月までときのうおっしゃったように私は記憶をするのですよ。この動物をどうするのか、ほかへ移すのか、どうするのかということについてですね。まだ十一月の初旬であって、あと二月近くあるわけですよ。その間に動物たちは、えさも食べられず、水も飲めず、どんどんどんどんあのような形で命を失っていくわけですよ。私は、そのようなことがあっていいとは思わないし、これは感情論のみならず、法的にもそうなのではないかというふうに思っているのです。

 つまり、動物愛護法第四十四条というのを御存じでいらっしゃいますね。その趣旨をお述べになってください。

鹿野国務大臣 動物そのものの立場というふうなものを尊重して、そして施策を講じていくというふうに私どもは認識しております。

石破委員 これは農水省所管の法律ではありませんが、この問題を論ずるときに必ず出る議論なので、大臣、よく御案内のことだと思います。

 つまり、第四十四条は、愛護動物は犬とか猫に限らず、牛であり、馬であり、豚であり、綿羊であり、ずらっと書いてありますが、「愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行つた者は、五十万円以下の罰金に処する。」というふうに書いてあるわけですね。

 もう一方、原子力特別対策法という法律があって、この法律の方が動物愛護法よりも優先するという考え方なのか、それとも、みだりにということではないのだという考え方なのか、どちらの立場に政府は立っておられますか。

 もう一つ、昭和六十二年十月九日総理府告示の、産業動物の飼養及び保管に関する基準、これを御存じだと思います。管理者、すなわち飼い主ですね、「管理者は、地震、火災等の非常災害が発生したときは、速やかに産業動物を保護し、及び産業動物による事故の防止に努めること。」こういう基準がありますね。御存じのはずです。何でこれがきちんと守られないのか。

 つまり、国が立ち入りを禁止することによってこの保管者の義務を果たすことができないとするならば、入ってはならないと言った政府がこの義務をかわって負うということになるのが法律の考え方としては当然じゃないですか。

鹿野国務大臣 後段の件でありますけれども、この件につきましては、警戒区域の中におきましても、どういう形で対処していくかというふうなこと等々について、今、いわゆる放射線量の低いところから何とか囲いさくをつくりまして、そして、まさしく具体的な形で動物をそこに囲い込むというふうな施策をとっております。

 それは、基本的に、原子力安全対策本部におきまして、この警戒区域におけるところの家畜等々につきましては、まさしく今日、処分をするという決定に沿って対処しているということでございます。

石破委員 済みません、私はそのようなことをお尋ねいたしておりません。原子力特別対策法という法律があって、動物愛護法という法律があって、そしてまた今申し上げた保護に関する基準があって、この三つはどういう関係に立っていますかということを聞いているんです。

枝野国務大臣 原子力災害対策本部の副本部長という立場から御答弁をさせていただきます。

 今回の原子力事故が生じたことによって、特に警戒区域等を設定した初期の段階においては、まずは人命、人に対する健康を守るということに全面的に徹せざるを得ない状況の中で、動物に対する対応が十分ではなかった。それは、愛護法の関係でいえば、みだりにというところとの関係で、人命、人の健康を守るという措置のためにやむを得ない措置であったということで解釈されるものというふうに思っております。

 その上で、警戒区域等に対する立ち入り等、つまり、人に対する健康への影響についてリスクが一定程度低減された段階から、例えば動物、家畜についての安楽死等の対応や、今農林省で頑張っていただいている、今生きている家畜等に対する対応を順次進めていただいているところでございますが、これについては、原子力災害対策本部としても、できるだけ、特に今生きておる動物等についての対応を急ぐように農水省と連携して努力したいと思います。

石破委員 この話は、随分前からあるお話ですよね。何カ月も前から指摘していることですよね。その間にどんどん牛の命が失われているわけで、きのうの写真を直視できますか。あんなのを直視できますか。私は普通できないと思いますよ。あれを見て涙を流さない人がいたとしたら、私はその人の人間性を疑いますね。私、本当に悲しかったし、あの牛がどんな気持ちで死んでいったかと思えば、人間の責任というのは物すごく重いと思う。そんなに傲慢でいいと私は思わない。それは、枝野大臣は今、法的にいろいろなお話をなさいました、私は全く納得していないけれども。

 では、保管義務というのが飼い主に、保管者にあるわけでしょう。水をやり、えさをやり、そういうのがあるわけでしょう。入っちゃいけないということで、それはできないわけでしょう。だとしたら、いけないと言った国にその責任があると考えるのが普通じゃないですか。

 そうでないとするならば、放射能の被害を受けないようにきちんとした措置をした上で、飼い主が、えさをやり、水をやりということで立ち入りを、お願いだ、入れてくれなんと言って警察官に泣いて頼むなんという、そんなことがあっていいですか。

 今こうしている間もどんどん命は失われているんですよ。すぐに対策を講じる、一頭でも死なないように今すぐやるということがどうして言えませんか。なぜ言えない、農水大臣。農水大臣に聞いています。

枝野国務大臣 ぜひ御理解をいただきたいのは、これは、今回の原子力発電所事故以降の対応について、こうした大きな事故についての準備ができていなかったということの結果として、特に周辺地域の住民の皆さん、そしてそこにいた動物も含めて、十分な対応が、当事者の皆さんから、至らない点が多々あったことは間違いない。それも大変申しわけなく思っております。

 ただ、まずは周辺住民の皆さんの人命そして健康ということを最優先に、また、その上で、自衛隊や消防の皆さん初め、危険な中で頑張っていただきましたが、まさに事故の収束や周辺住民の皆さんの健康へのリスクとの比較の上でリスクを冒していただきましたが、そういったことの中で、動物などに対する対応がどうしても、周辺の放射線量やその時点での原子力発電所の状況等にかんがみたときに、では警察や自衛隊の皆さんにそのリスクを冒していただくということをお願いできる状況でなかった時期を一定程度つくったことは間違いありません。

 そうしたことの中で、現状では、順次入れるような状況になってきて以降の対応がまだまだ十分でないという御指摘については真摯に受けとめて、原子力災害対策本部としても、農林水産省等ともしっかりと連携をして、できるだけ迅速に対応してまいりたいと思います。

石破委員 この話はもうこれ以上しませんが、それを飼っている人がどんな思いでいるかというのは、枝野さん、わかっているでしょう、あなた。話も聞いて、気の毒だという言い方は私はしたくないので、本当にそうだといって共感をしたでしょう。

 だとしたら、人命が今すぐに緊急を要するような状況かといえば、もちろん、深刻な状況は続いていますよ。しかしながら、山古志村のときにCH47で自衛隊が牛を運んだ。私は、自民党政権が全部正しかったとは言わないけれども、あのときに自衛隊のヘリを使ってでも牛を運んだということはやはりきちんとした人道的措置だったと思っていますよ。それが今できないはずはない。

 そして、今我々が要求をしているのは、口蹄疫とはわけが違うので、これは伝染していくものでも何でもないんですよ。こういうような被害を受けたその牛がどのようにして経年変化を起こし、どのようにして健康に影響が及ぼされるかということは、きちんと科学的なデータをとるということも非常に意味のあることであって、農水大臣、今こうしているときも牛がどんなに苦しんでいるか。そして、飼い主の人たちが本当に涙に暮れているということは大臣よく御認識をいただいて、役所にお帰りになって、何かすぐできることはないか、今すぐ運べる牛はいないのかということについて御指示をいただきたいんですが、どうですか。

鹿野国務大臣 きのうも吉野委員から具体的なことの問題提起がされたわけでありますけれども、私もきのうの段階でお答えしたところでございますけれども、一つ、きょうも石破委員から御指摘いただきましたので、実用技術開発事業として、まず、屠畜前の牛の放射線量に関する研究の公募というふうなものは早速行ってまいります。そういうふうなことで具体的な措置を講じてまいりたいと思います。

石破委員 一頭でも多く助けてやってくださいよ。一日も早くやってくださいよ。そして、飼い主をこれ以上泣かせないでくださいよ。それは国の責任として絶対にやるべきだと私は思いますがね。

鹿野国務大臣 今具体的に申し上げた事業につきましては、本日公募をするというふうなことで措置を講じてまいりたいと思います。

石破委員 その結果は日々検証していきたいと思っております。このことは与党がどうの、野党がどうのという話では全くありませんので、ぜひお願いをいたしたいと思います。

 第三次補正について承ります。財務大臣、よろしいですか。

 これが、最初十年というお話が十五年になり、十五年が二十年になり、二十年が二十五年になり、何かもう一声みたいな話で、どんどんどんどん話が行くわけですよ。これは、結局のところは、世代間のリスクシェアリングをどう考えるかという問題なんでしょうね。そして、課税平準化仮説というものをどう考えるかという問題なんでしょうね。このことについてはいろいろな議論があって、Aという学者はこう言い、Bという学者はこう言い、私たちのように経済を専門としていない者は、何が正しいのかということがにわかには判断しかねる。

 しかしながら、仮に二十五年でも二十年でもいいが、この課税平準化仮説と世代間のリスクシェアリングという両方の観点から、大臣は、この返済期限というのはどういうものであるべきだとお考えですか。

安住国務大臣 当初十年と言ったのは、復興計画が十年であったからということをベースにしてやりました。

 課税の中でこれがどういうふうに負担がかかっていくか、負荷がかかるかということで計算をして、それが大体、経済を含めて、影響がどれぐらいのものかということは計算をいたしました。

 その中で、これは所得税のことが主でございます、法人税はちょっとおいておいて。そこでやったときの試算でいえば、五百万円年収で、御家族四人で、中学校と例えば高校のお子様を持っていらっしゃる御家族で、今ちょっと資料を持ち合わせていないんですけれども、大体、月にワンコイン以内でおさまるような課税負担をお願いするというようなことでどうだろうかということでスキームをつくったんです。

 そこには、あわせて、たばこと、そして法人税については、先生一番御存じですが、一たん下げて二五の段階から、またさらにそこで一〇パーを課税しますから、二八%台にする。しかし、実際は三〇から下がるわけですから、結果的には負担ベースは広がりますから、そこで三年だけ御負担をお願いするということにしました。

 しかし、今やっている、きょうも三時から税調会長間で、野田先生と藤井会長、それから斉藤会長でお話しいただくようでございますが、これを二十五年に延ばして払うということで基本的な合意は得られたと私、聞いております。今後、税目を、さらにたばこ等を含めてどうするかということをこれから御議論いただくということでございます。

 ですから、そういう点からいえば、二十五年にしたということで課税負担そのものは下がるわけでございますので、それがまた経済にどういうふうな影響を与えるか等をよく考えながら決断をいただいたのではないかというふうに思っております。

石破委員 これもいろいろな考え方があって、実際にそれによる被害を受けている世代とか受けている地域ではなくて、受けていない世代、受けていない地域でシェアをすべきだという考え方もあるんですね。どっちが正しいかというのは、これは数学の話じゃないので、こっちが正しいということがわかるわけではありません。

 ただ、もう一つは、私は復興にかかるお金が、二十兆円とか、それよりもう少しかかるのかもしれませんが、実は議論の本体は、千兆円になんなんとする、このずっと積み重なったものをどうしますかというのが実は議論の本体なのであって、このお話にも課税平準化そしてシェアリングのお話は必ず来るお話なのであって、つまり、長い時間で返そうよという人たちは、この本体の負担をしなきゃいけないときに、負担が二重になってはいかぬので、この震災の部分の負担はなるべく低くしようね、長くしようね、こういう考え方なんだと思います。逆に、こっちの方、本体に手をつけなきゃいけないんだから、この震災分を早く返しちゃおうねという考え方もある。両方あるはずなんですが、大臣はどっちですか。

安住国務大臣 個人としての意見を申し述べるのが適当かどうかですけれども、私は当初、消費税も一案ということで、それは何年かに、短期間の中で、いわゆる十九兆、二十三兆というお金の中の主要な部分を最初に払うという案もあるのではないかと思った一人でございます。

 ただ、世代間での、先生おっしゃるように、負担をどこまでやるのかということをいろいろ考えたときに、これは本当に、どちらが正しいかとか経済学的な問題ではないんですね。もういわゆる政治判断の問題として、そこに二十五年の問題というのがある。一説には、これは建設国債で六十年でやっても、公共物をつくるのだから償還期限の六十年というものをベースにした建設国債という案も、これは自民党の中にもあったわけでありますから、そういう意味では、さまざまな考えの中で収れんされてきて二十五年ということだと私は判断しております。

 他方、累積債務の問題もこれはやはり無視できないので、これは先ほど江田先生とはちょっと、いろいろ意見が食い違うところはあるかもしれませんが、私はあそこでちょっと一つだけ言い忘れたのは、なぜ金利が一%台だと。これは率直に言って、まだ消費税が五%だからということは一つの事実としてあるんだということは、国際会議で私は実感をしておりますので、それはつけ加えさせていただきます。

石破委員 これはひとり言だと思って聞いてくださいな。

 私は、ずっといろいろな議論をしていて、あのバブル景気のときに消費税を上げるということをきちんと言えなかったのは、私は、自民党にいた者として物すごく贖罪感を持っています。

 あのときに、消費税を上げるということをきちんと言うべきではなかったか。ということを言ったけれども、ほとんどだれも聞いてくれなかったのでね。これはもう、自分の言っていることはおかしいのかなとまで思いましたが。あのときに言うべきだったし、そしてまた、二〇〇〇年代に景気がよかった一時期がありました。あのときにきちんと言うべきだったという反省は、私個人、物すごく持っています。

 それでは、これから先、どうすれば消費税の上げ幅をそんなに上げないで済むのかというのは、税外収入も考えなければいけませんが、消費税のアップをいつ行うのかということで、延ばせば延ばすほど、実は消費税率を物すごく上げなければならなくなってくるのではないだろうかという議論は、私はすべきものだと思っています。もちろん、一遍に増税をするということがいいことだとは思いません。いいことだとは思いませんが、先延ばしにすればするほど消費税の増税幅は大きくなるのではないかということを、今生きる我々として考えねばならない。

 もう一つは、本来であれば、何でこんなに財政の機動力がなくなっちゃったかといえば、やはり会社でもいろいろな準備金を積むわけですよ。想定外なんということを言っちゃいけないので、巨大地震が起こる、巨大津波が起こるということはやはり予想されたことですね。少なくとも、津波を除外して、原子力災害を除外したとしても、巨大地震が起こるということは、ある程度みんなのコンセンサスになっていたことで、これから先も起こることですよ、間違いなく。

 だとすれば、そのための積み立てということも実際にやっておくべきものではないのか。財政健全化というのはそういうことではないのか。そのときになって、また増税だ増税だというような話をするよりも、私たち今の時代を生きる人間にも負うべき責任があるのではないだろうかという自己反省を私は持っていますが、いかがお考えですか。

安住国務大臣 全く御指摘のとおりだと思います。

 私、竹下内閣のときにちょうどNHKの記者でございましたので、消費税が大変な状況で、しかし、竹下内閣でやり遂げたのはつぶさに見ておりました。ただ、あのときは、先生、やはり直間比率の見直しで税収が非常によかったわけですから、単年度で、次の次の海部内閣のときにはもう六兆円も税収が余ったりした、今では考えられないような状況で、そういう中で、実は、やはり直間比率に挑んだというのは偉大な功績だったと思います。

 高齢化社会の中で、この直間比率を変えていかなければ、先ほど先生御指摘のように、税収が硬直化しているというのは、シャウプ勧告以来、所得税、それから所得税から分かれてきた法人税に非常に依存をしたと。高度成長のときは月給取りの方がふえて、所得税は自動的に源泉徴収されますから、これはいいわけです。二十六兆もピーク時にはあったわけですから。今はこれが半分ですから。そういう点では、法人課税もこれは所得課税の一部なので、そういうものが非常に硬直化している中で、やはり高齢化社会の中でどういうふうに、担税をどうさせていただくのかということが重要な課題だったと思います。

 今は、その竹下政権時代に比べれば、もう財政は危機的な状況です。先ほどから、金利が一%だから大丈夫じゃないかと言いますけれども、先生御存じのように、これはいつ発散するかわからない、いつはじけるかわからないという緊張感の中で実は我々は財政運営を自民党政権下もやっているわけであって、そういう点からいえば、早ければ早いほど、やはり消費税を社会福祉に使って安定させるということは、私も共感いたします。

石破委員 できれば総選挙のときにそうおっしゃっていただきたかったですね、そのお話は。かなり認識を共有していますよ。だけれども、総理はさっきいろいろな答弁をなさったけれども、消費税を上げるという法律をつくって、それが可決されてから国民に信を問うというお話をなさって、それは選挙に言ったことと全く矛盾はしないとおっしゃいましたね。それは、総理の頭の中では、無理やりこじつけるとそういうことになるかもしれない。

 しかし、圧倒的多数の国民はそう思わなかったですよ。民主党政権が政権担当の間には、いいですか、任期満了じゃなくて政権担当ですよ、政権担当の間には消費税を上げず、無駄を省けば子ども手当等々も含めて金は幾らでも出てくるんだ、そう思って一票入れたに違いない。周りの人に聞いてごらんなさい。民主党政権が消費税を上げるという法律をつくってから信を問うというふうに思いましたかと言えば、そうは思わなかったでしょう。

 私は、フェアにやるべきだと思っているんですよ。必要なことは、自民党であろうと、民主党であろうと、公明党さんであろうと、私は前提条件を共有すればそんなに違った答えが出てくると思わないんだ。だけれども、国民をはっきり言えば詐欺にかけるようなことをやってもしようがない。どう思いましたかということであって、もしそうであれば、こういう法律をつくりたいがどうなんだろうかということで信を問われる方がフェアじゃないですか。

 これは財務大臣にお聞きするべきかな、官房長官かな、財務大臣でいいですか。そっちの方が私はフェアだと思うし、そっちの方が国民の意思というものがはっきり出るんじゃないんですかということなんです。

安住国務大臣 御指摘は、それはその部分はあると思います。

 しかし、石破先生、政調会長として御苦労いただいて、これは反論すると心苦しいんですが、岡田代表のときに我々は参議院選挙で消費税を三%上げるときちっと言っているんです。しかし、総選挙で……(発言する者あり)小泉総理はあのときは上げないと言っている。総選挙のときは、今、石破先生の所属しておられる党も、高木先生が所属しておられる党も我が党も、消費税は言わなかったはずです。だから、それはそういう点ではお互いさまで、しかし、前回、参議院選挙で一〇%に上げるということを公約に掲げて戦われたということは、十分私は評価をいたします。

 ですから、我が党も、鳩山代表のときに、消費税を上げる、実際実施するときには信を問うと言っているわけですから、制度設計の前に、また制度設計をしたときと実際に上がるときにはタイムラグがあるわけですから、そこは総理の言っていることに何ら矛盾はないと私は思っております。

石破委員 どっちがどっちみたいな話はしようもなくて、自民党がだめで民主党が勝って、民主党がだめで自民党が勝ったみたいなことをずっとやっていてもしようがないわけですよ。岡田さんのときにそうだったことも知っています。その後、総選挙で言わなかった。我々も、総選挙のときにそのことは、所得税法の附則の話はしたけれども、それ以上余り正面に出さなかった。去年の参議院で、かんかんがくがく議論の末、一〇%ということを出した。それはどっちも出したこともある、引っ込めたこともある。そうであれば、もうフェアに、こういうことでどうなんだろうかということで信を問う方がフェアだということでとめます。この議論はまたしましょう。

 だけれども、私は、きちんと国民に向けて語りかければ、それは判断していただける英知は国民の皆様方がお持ちだと思いますので、やはりそういうふうに真摯であるべきではないかと自己反省も含めて申し上げておきます。

 次に、安全保障に参ります。この間、安全保障の議論がほとんどなかったので。

 普天間です。

 外務大臣でよろしいでしょうか。普天間になぜ海兵隊が必要なのかということについて、端的に御見識をお述べください。

玄葉国務大臣 できるだけ端的に申し上げたいと思いますが、やはり、一言で言えば、地理的な有利性というか、地理的な問題だというふうに思います。

 つまりは、いわばシーレーンに近接をし、ある意味、潜在的紛争地域にほぼ等しく近く、かつ太平洋、南シナ海、東シナ海を結ぶ、そういった場所に沖縄が位置をしているということが最も大きいというふうに思います。

石破委員 時間がないから私の方から申しますが、要は、日本は海兵隊という軍種を持っていないのでね。海兵隊というのは何もアメリカの専売特許じゃなくて、韓国も持っていれば、フィリピンも持っていれば、ロシアも持っていれば、マレーシアも、インドネシアも、大体、海洋国家もしくは海岸線の長い国、島国というのはみんな海兵隊を持っているのです。日本が、持っていないという非常に変わった国なのです。

 何で持たなくてもいいか。それはアメリカがやってくれているからなのであって、では日本は海兵隊を持たなくていいのかといえば、そういうお話にはならないのではないでしょうか。海兵隊がなければ島嶼防衛、離島防衛はできません。陸上自衛隊に西方普通科連隊がありますが、それは、とらの子みたいな連隊であってね。日本は何千という離島があるわけですよ、国家主権の体現たる。海兵隊がなければ自国民救出だってできないわけですよね。アメリカの海兵隊は領事機能も持っていることは御存じのとおりですよ。

 沖縄における負担というのは何なんだろうかということを考えたときに、土地をとられ、犯罪が起こり、あるいは騒音があり、いろいろな負担があるけれども、最も大きい負担というのは、日本国の沖縄に外国の軍隊が当たり前のようにいるという負担が一番大きいのではありませんか。

 日本にできる部分はないんですか、アメリカの海兵隊に負わせるのではなくて、日本国が海兵隊を創設して。そんな簡単にできるものじゃないですよ。五年や十年でそんな能力ができるとは私は思わないですよ。だけれども、例えば、韓国であるいは東南アジアで我が国民が危難に遭遇したときに、逃げてくるときに輸送の安全が確保されなければいけないなんという、私はそれはいいことだと思わないんだ。そこにおいて、憲法九条において禁止された国際紛争を解決するための武力の行使をやるわけじゃないんだから、何も非戦闘地域という概念を設定しなくても、日本にできることがたくさんあるのではないかということを私は一つ申し上げたい。

 もう一つ外務大臣に申し上げておきたいが、私は菅総理に沖縄に行ってくださいということを何度も言いました。とうとうそのためにはおいでにならなかったですよね。野田総理にも行ってくださいというふうに申し上げましたね。だけれども、行って成果が出なかったらどうするのというので沖縄担当大臣や防衛大臣や外務大臣が行っておられるわけだけれども、私はやはり総理が行かれるべきだと。

 まず、虚心坦懐に、鳩山総理の、抑止力について学ばないままに国外とか県外とか言ったことは、民主党全体として誤りであったということを言うところから始めないと何にも始まらないと私は思いますよ。基地の受け入れなんて、沖縄の人、だれもが望んでないんだから。民主党政府を、はっきり言って沖縄の人はだれも信じてないんだから。だとするならば、済まなかったと言うところから始めるべきだと思います。

 総理がおられるときに聞くべきでしたから、大臣、お答えになれなければ構いませんが、もし御所見があればどうぞ。

玄葉国務大臣 財政の問題も含めて、非常に責任感にあふれる質問に心から敬意を表したいと思います。

 今の、まず、みずからなすべきことをなせというのは、私は全くそのとおりだというふうに思います。その一つの選択肢を先ほど石破先生はおっしゃったということなんだろうと思います。

 まず、やはり我々は、みずからの防衛力を整備する。今、動的防衛力という言い方をしておりますけれども、その何たるかという議論も当然出てくるとは思いますけれども、まずそのことについて思いをめぐらし、行動するということが極めて大切だというふうに思います。その上で、総理も沖縄に行かれて率直な思いを謝罪も含めて申し上げるというのは、適切な時期を見計らっておられるのだろうというふうに思います。

石破委員 防衛大臣にお尋ねします。

 海兵隊の話とあわせてですが、自民党時代に防衛力のあり方検討というのをずっとやっていたんですよ。引き継ぎを受けられたかどうか知りませんが、ずっとやっていた。それは私が大臣のときであり、あるいは林大臣のときであり、そしてまた浜田大臣のときであり。

 つまり、陸上自衛隊の最適の装備と海上自衛隊の最適の装備と航空自衛隊の最適の装備と、三つ足したらば全体の最適になるかといえば、必ずしもそうではない。個別最適の総和は全体最適ではない。統合運用ということをやるのであれば、防衛力整備も統合であるべきだ。制服がどうの、内局がどうの、いや、だめなのは財務省がうんと言わぬからだの、そんなお互いの責任転嫁ばかりやっていても仕方がなくて、陸海空このようなオペレーションをやる、例えば離島防衛なら離島防衛、邦人救出なら邦人救出、こういうオペレーションをやるためには陸海空どのようなものが最もふさわしいかという防衛力整備も統合でやるべきだというお話が、本当に完成寸前まで来ておったところ、民主党政権になってゼロに戻った。

 それは今どういう状況になっていますか。海兵隊の創設とあわせて見解を述べてください。

一川国務大臣 今先生が問題提起された問題について、私も当時そういういろいろな検討がされてきたというお話は聞いておりますけれども、中身についてはまだ十分勉強しておりません。

 ただしかし、先生が問題意識として持っておられることは、我々も問題意識としては当然持つべきだというふうに思っておりますので、そういったことについては引き続きしっかりと省内でも、また党内でも、また内閣でも、いろいろな面でそういう問題意識を持つべきだというふうには思っております。

 また、私たちが昨年末にああいう大綱を決めさせていただいたという中で、その中には動的防衛力という一応の概念が入ってきておりますが、今先生がおっしゃったようなことをその動的防衛力というイメージの中には相当含めて、陸海空トータルとして機動性を発揮したい、そういう意識が十分私は込められているというふうに思います。

 ただ、それを具体化するために、防衛省の中で具体的な構造改革、人的なことも含めて、いろいろな装備品のこと、それからまたいろいろな配置のこと、部隊のこと、トータル的にそれをいろいろと今検討を始めたばかりでございますけれども、これからそういうことのいろいろな詰めをやらせていただきたいというふうに思っております。

 ですから、先生のおっしゃった、陸海空個々の問題というよりもトータルとして総合力をしっかりと発揮できるような、そういう防衛力のあり方というのは当然あると思います。動的防衛力も、その活動量といったようなものに着目しながら抑止力を向上させていきたいということだろうというふうに私は思っておりますので、そういう面では、また先生方のいろいろな御指導の中でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

中井委員長 海兵隊は。

一川国務大臣 海兵隊の問題は、先ほど外務大臣がお答えになったことだと思いますけれども、私も、基本的には、沖縄の海兵隊というのは、やはりあそこの地理的な条件等からしまして、アジアそれから太平洋地域の抑止力という観点からしましても、沖縄という地域において今米国の海兵隊というものは必要であるという認識を持っております。

中井委員長 一川さん、日本で海兵隊が必要かどうかとお尋ねでございます。

一川国務大臣 それについては、我々もそういう問題意識はそれなりに持っておりますけれども、ただ、我が国の憲法というものの中で、最大限そういうものがどこまで編成され得るものかどうかということについては、いろいろな制約があろうかと思うんです。そこのところは、また引き続き勉強しながら解決すべき問題だろうというふうに思っております。

石破委員 どういう制約かというのは御存じですね、日本国憲法上の制約がどういう制約なのか。どういう制約ですか。

一川国務大臣 今、我が国の憲法下においては、集団的自衛権を行使しないということをしております。そういう中にあって、やはり我が国の憲法のもとで、直接我が国に対する急迫不正の武力行使があった場合とか、あるいはまた自衛力を発揮するための一つの要件というものを従来から持ってきておりますけれども、そういう中で物事を考えてみた場合に、集団的自衛権にかかわってくるような海兵隊というものの問題を今具体的に詰めるということは非常に難しい状況にあるというふうに思っております。

石破委員 集団的自衛権と関係ない部分がほとんどで、邦人救出というのはそういう話じゃないし、離島防衛というのはそういう話じゃないですよ。

 そして、日本が例えば朝鮮半島に行って港湾を確保するとか補給地を確保するとかいうことであれば話は別ですが、それ以外にも海兵隊の任務というのはたくさんあるので、私はここから先は申し上げませんが、大臣、ぜひ、自民党時代に検討した防衛力のあり方検討というのを、指示して、読んでいただけませんか。本当に真剣に真剣に何年もかけて議論したものですよ。

 防衛費が足りないとか言われますが、武器輸出三原則もそういう文脈であって、日本の戦車はアメリカの戦車の倍高いんだから。戦闘機は世界で一番高いんだから。イージス艦一隻、千三百億円するんだから。そうであれば、共同研究し、共同開発し、共同生産し、共同使用するのが当たり前なんでしょうが。そうしていって、どうやって開発のリスクを下げ、国民の経費の負担を減らし、共同使用するかということを考えるのが政治というものなんでしょうが。

 何のためにやるんだという意識を持って、もちろん大臣は、単にきょうがあすになればいいというつもりではないと思いますよ。何をやらねばならないのか。今、我が国の安全保障に残った時間は短いので、ぜひその点は御留意をいただきたいと思っております。

 それでは、あと残った時間、私もTPPについてお話をさせていただきたいと思います。

 法務大臣、後で少し承りますので、ごめんなさい、もう少しお残りいただきたいと存じます。

 外務大臣、TPPというのはアメリカが言い出したものですか。アメリカにとってどのような利益がありますか。九カ国の中で非常にコントラストがはっきりしているのは、私はアメリカとベトナムだと思っているんですよ。オバマ大統領が、やれ輸出を促進するだの雇用を確保するだの、いろいろなことを言っていますが、それとTPPはどういう関係があるというふうに外務大臣は御認識ですか。

 そして、ベトナムというのは、あれだけちっちゃな国であって、私も何度か行ったけれども、農業が強い国だとは思わないですよ。工業も勃興期にあるけれども、そんなに工業製品の競争力が強いとも私は思わないですよ。アメリカが、この九カ国の中で自国と工業製品において競争力のある国は入っていないですよね。入るとすれば日本が初めてですよね。だとするならば、このTPPというものに込めるアメリカの思いというのは何だというふうに大臣は分析しておられますか。

玄葉国務大臣 いろいろな角度から申し上げることは可能だと思いますが、今、石破先生の御質問の文脈からあえて一つ選んで申し上げれば、アメリカのアジアあるいはアジア太平洋へのコミットということになるのではないかと思います。

石破委員 そうですよね。そう考えないとなかなかこの話は理解するのが難しいのですよ。

 つまり、オバマ大統領の支持基盤というのは労働組合ですよね。あるいは農業団体ですよね。特に労働組合だ。では、自動車は競争力があるのかといえば、そんなにないだろう。農業はオーストラリア相手に競争力があるのかといえば、いろいろな指標を見る限りはあるとは思えない。そして、日本もミニマムアクセスなんぞというものを受け入れておって、私はこれは考え方を変えなきゃまずいと思っているんですけれども、そこはかなりアメリカの米が入ってきているわけですよね。国家貿易という考え方からいって、そうなっていますよね。

 この答えは農林大臣でもよろしいんですけれども、余りアメリカが大変な利益を受けるとは考えにくい。もちろんほかの分野もありますから、自動車と農業だけ取り上げて言うのは均衡を失するかもしれないが、アメリカの意図というのをどのように我が国が分析をするのかというのは、これから交渉に臨む上において、仮に交渉するとすればですよ、極めて重要なことだと私は思いますが、それが一点。

 もう一つは、これは官房長官に聞いた方がいいのかもしれないが、民主党がこの交渉に参加するというのは非常に危ないと私たちは思っているんです。私でもそう思う。なぜならば、この試算というのが、農林水産省の試算は、何もしなければという試算を出してくるわけですね。経済産業省は、参加しなければという数字を出してくるんですね。内閣府は、何だか足して二で割ったようなものを持ってくるのね。何なんだ、これは。

 農水省は、何もしなければこれだけの失業が出ます、自給率が一四%に下がります。経済産業省は、参加しないとこうなりますでしたね。内閣府はよくわからない。私は、それは統一すべきなんでしょうよ。政府として、TPPに参加した場合に前提となる数字はかくのごとし、そして条件はこのようなものである、だとすれば、こういうことになるのだというのを一つにして示すのが当たり前であって、農水省は農水省が、経産省は経産省が、内閣府は内閣府が、これで国民に対して情報開示が十分だなんぞということは間違っても言えないですよ。

 もし仮に、あしたTPPの交渉に参加をするということであれば、その三省、一府二省と言った方がいいのかな、これがどういうことなのかということを統一して示して国民に理解を求めるぐらいの誠実さが必要だと思いますが、どうですか。

玄葉国務大臣 農業の話は鹿野大臣からおっしゃっていただくのがよいかと思いますが、なるほど、アメリカの意図というものはどういうものなのか、輸出拡大と雇用拡大と言うけれども、本当にそうなるのかといえば、おっしゃるように、例えば、自動車の例を出されましたけれども、トラックで二五%の関税があり、乗用車で二・五%の関税がある、それらがなくなるということに対するアメリカの自動車業界の警戒感というのは非常に強いというのも現状だというふうに思います。

 そういうことも含めて、やはりトータルで考えていく。それは先ほど申し上げたように、これは経済だけではなくて、外交、安全保障上の意義も含めてトータルな判断が必要になるというふうに考えています。

鹿野国務大臣 アメリカは、農業者にとっては米を何とか日本に輸出したいという意欲を示しておるということは承知をいたしております。また、牛肉等もそうでありましょう。

 しかし、私は、今ちょっと石破委員が触れられましたけれども、オバマ大統領のこの日本に対するTPPの問題については、私個人の考えでありますけれども、いわゆる広域連携をどうやってとっていくかということを考えたときに、これだけ勢力を伸ばしているアジアをどういう形で取り込んでいくかというふうなことは、当然アメリカとしても意識を持っているというふうなことはあるのではないか、こう思っております。

藤村国務大臣 政府が昨年秋に公表した試算というのは、実はそれぞれの省庁でばらばらというところは確かにあります。細かくは申しませんが、昨年十一月に包括的経済連携に関する基本方針を作成するに当たり、経済連携協定が我が国に与える影響について内閣官房及び関係府省でそれぞれにさまざまな試算を行った。一つは内閣官房であり、一つは農水省であり、一つは経産省である、こういうことだったと思います。

 そこで、今おっしゃったように、統一すべきということでございまして、つい先般発表いたしましたのは、これは実は内閣官房の試算として、関係府省と調整したシナリオに基づき、WTOを初め広く国際関係機関が活用しているモデルを使用して行った経済全体への影響ということでございまして、これは中身は細かく申しませんが、そういう一番最新のものは、十年間で二・七兆円、年間で二千七百億円ぐらいの試算、こういうことでありました。

石破委員 国民にわかりやすく説明する努力というのが全く足りないと思いますよ。

 今も長官がずっと読みながらおっしゃるわけで、パネルでも使って、こうです、こうですということをちゃんと説明しないでこれだけ国論を二分しちゃうというのは、私は政府として相当に無責任だと思っていますよ。

 厚生労働大臣、お待たせしてごめんなさいね。

 これは先ほど来議論が出ているんだけれども、国民皆保険という、これの持続可能性はともかくとして、私は、何かの手を打たないとこの国民皆保険も持続しなくなるという危機感は持っています。

 TPPと国民皆保険、すなわち、TPPに入ると混合診療というものが無理やり強要されてという話がある。だけれども、その国でどういう医療制度をするかはまさしく国家主権の問題なのであって、そんなものは絶対にだめですということを私は言うべきではないかと思っている。

 混合診療の是非とはまた話は別なんだけれども、国民皆保険というものがかりそめにも毀損されるようなことがあるならば、我が国は絶対にそれは譲るべきではないと思いますが、それでよろしいか。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおり、国民皆保険の制度は、必ず守らなければいけない、譲ってはいけないものだと思っております。

石破委員 それでは、いいです、厚生労働大臣。もうよろしい。

 それじゃ、アメリカとの事前の交渉においてそれは言うべきですよ。議会に対してもそれは言うべきですよ。絶対守らねばならないものは言うべきだと思う。

 では、経済産業大臣に伺います。

 これもいろいろ議論のあるところですが、ISDS、ISDとも言われますが、このことについて、これまた議論が二分されていますよね。すなわち、日本がばんばん訴えられて、膨大な国民の税金が外国企業にとられるという見方もある。いや、我が国は海外に多く投資をしているのであってという考え方もある。

 このことについて、経済産業省としてどういうような統一した考え方を持っていますか。

枝野国務大臣 少なくとも、今回のTPPを別としても、当該規定を諸外国と結んできている例がありますが、そうしたことによって我が国の企業が訴えられて問題になったケースはない。逆に、現下の国際的なさまざまな投資環境等を総合的に判断すると、我が国の企業が諸外国において差別的な取り扱い等によって不利益を受けるという可能性に対する対応をどうしっかりつくっていくかということが我が国にとって重要な課題である。

 ただ、その上で、どういう制度の組み方を具体的に組むかということについては、慎重に対応しなきゃいけないと思っています。

石破委員 枝野さん、ちょっとわからないので教えてください。

 これは、判断はどこが行いますか。その場合に、国家主権というものはどのように機能しますか。そしてまた、それに国家として不服であった場合にどうなりますか。

枝野国務大臣 ちょっと、御質問の趣旨を十分に理解できているかどうかわかりませんが、最終的にそれぞれの国の裁判所が判断するプロセスのところでの流れだというふうに理解していますが、ちょっと待ってください、質問の趣旨を勘違いしていますか。ごめんなさい。

石破委員 それは国際的な機関が判断をするというふうに私は理解しておって、今大臣がおっしゃるように国内の裁判所が判断をするというのならわかるんです。国際的な機関が判断をするということになった場合、実際、今そのはずですからね。そのときに国家主権というものはどのように機能するのか、そしてまた、国際機関においてなされた判断というものに主権国家がそれはおかしいと言った場合に、どこか提訴できる仕組みがあるのかないのか。

 すなわち、外国に我が国の投資というのは多いです。確かにそうなんですが、だからいいんだという話にはならないのであって、仕組みそのものがどうなのですかということについて、これも相当に議論が沸騰していて、私も正確な知識を持たないのでお尋ねをしているのです。

枝野国務大臣 まさに組み方の問題だというふうに思っておりまして、国際機関において決定された決定を最終的に各国において執行していかなきゃならないわけですから、その執行の権限と決定の権限をどう組むのかということは、例えば法の執行については各国が基本的には主権のもとで握っているわけですから、そことの関係を国際規定上どう組んでいくのかというような組み方についてを含めて、そこは慎重な制度の組み方についての議論は必要だと思っております。

石破委員 ということは、不服があれば国内の法執行としてやらないことは留保される、こういうことですか。

中井委員長 枝野君、わかりましたか、今の質問。

枝野国務大臣 まさにそういったことを含めて、細かい議論をしていかなきゃならない。済みません、今ちょっと質問の最後の方を十分に聞き取れなかったんですが、細かいことをしっかりと、こういったことを組み込むに当たっては、かなり慎重に細かい制度設計について詰めていかなきゃならないと思っていますけれども。

石破委員 ごめんなさい、きちんと通告しておくべきだったかもしれませんが、これはかなり議論になっているということは、経産大臣御存じのことだと思います。

 農業でもそうであって、私は、では鹿野大臣にお尋ねしますが、関税収入というのは農産品に関しては幾らですか、去年で。

鹿野国務大臣 申しわけございません。ちょっと具体的な数字は持ち合わせておりません。

石破委員 何でこういうことを聞いているかといいますと、どの国も農業保護はしているわけですよ。アメリカだって目いっぱいしています。オーストラリアだってしていますよね。

 大臣も、私、当選一回のときの農林大臣でいらっしゃったから印象が強烈なのだけれども、あのときからずっと話をしているわけです。私はあのときに当選したばかりで、二十五年前で、いろいろな農業者団体の会合に行って、米は一粒たりとも入れません、食管制度は絶対守ります、減反はこれ以上拡大しませんといって約束して、何一つ守れなかったということに対する物すごい罪悪感を私は持っているんです。政務次官をやり、総括政務次官、今で言う副大臣をやり、大臣もやって、ずっと頭の中にあるのはあのときの約束なんですよ。だれも責任をとっていない、何一つできていない、このことは農家、農民の皆様方に対して私は本当に申しわけないことだと思っているからこそ、この農政改革は絶対にやらなきゃいかぬと思っているのです。

 どの国も農業保護をやっている。アメリカもそう、EUもそうです。オーストラリアだってやっていないとは私は思わないですよ。ただ、そのお金を関税収入でやるという形でやるのか。つまり、消費者が負担をするという形でその財源を確保するのか、それとも、納税者が負担をして、何にどれだけ使ったのかということが明確になる形でやるのか。これは、TPPに参加しようがしまいがという議論がよくあるんだけれども、TPPに参加を仮にして、関税を段階的に取っ払うとして、そうすると、農業保護の財源をどこに求めるのだという本質的な議論になるわけですよ。それは四千億円のはずですよ、農産物によって入ってくる関税というのは。

 何でずっとこれだけ農業者が減り、農地面積が減り、そして農業者が高齢化したかということについて、私は私なりの考えを持っているのだが、鹿野大臣、どのようにお考えですか。

鹿野国務大臣 やはり基本的に、私は、二十数年前のことを思い起こしますと、農業に対する、第一次産業に対する国政の取り組みというものは、いわば半ば真ん中に近いものがありました。しかし、この間ずっと見てみますと、関心事が非常に低くなってきておる。

 それは、輸入品も大分ふえてきたというようなこともあり、食料安全保障に対する認識も薄れてきた、そういう中で、地域におけるところの農村、農業のあり方というものも変わってきた、そして農林水産省の予算も減ってきた、そういうようなことが一つの流れとして歯どめがかからないまま来てしまったというようなことが一つのポイントではないかな、こう思っております。

石破委員 私は、自給率という議論は、私はそういう議論もしてきましたが、そんなにすごく積極的な意味があるとは思っていないんですよ。

 つまり、安全保障としての自給率というものを考えたときに、言い方は悪いかもしれないけれども、町のネズミが糖尿病ですみたいな、こんな飽食の生活を支えるのが安全保障としての自給率だとは私は全く思わない。朝昼晩、普通に働いて、何とか命をつないでいける、昭和二十八年とか二十九年とか、そういうときの食生活を確保するのが、私は安全保障のいい意味での自給率だと思っている。それを可能にするのは農地の面積であり、農業者の数であり、農業者の年齢構成であり、土地改良を初めとする農業基盤だと思っている。それが全部毀損されつつあるわけですよ。

 農地はどんどん減る、なぜなのだ、生産額はどんどん落ちる、なぜなのだ、高齢化はとまらないのはなぜなのだということを考えたときに、それは、どうしても米の値段を維持しなければならない、だとすれば、生産調整をやらざるを得ない。結果として水田がどんどん減っていって、何で自給力が保てるのだと私は思うんですがね。この生産調整のあり方を今後とも続けることは本当に正しいですか。

鹿野国務大臣 昭和四十六年のときから米の生産調整が始まったわけです。それは、そのときは、過剰米処理にお金がかかり過ぎる、一兆円もかかったわけですから、そういうところから生産調整をというふうなことが始まったわけでありますけれども、今日の状況というものを考えたときには、国際社会におけるところの食というふうなものがどういう状況にあるかということを考えたときに、やはり食料安全保障に対する考え方というのは変えていかなきゃならない。

 昭和四十年代におきましては、いわゆる国際分業論というふうな形が出まして、食料の増産は土地の広いところにやってもらいましょう、こういうふうなこともありました。しかし、今日のこの状況を考えたときに、昨年のAPECの農業大臣会議におきましても、やはりこれから各国が食料の増大に努めなきゃならない、こういうような合意を生み出したということからしますと、今日の状況というものは、こういう御時世の中で、国際社会におけるところの食料事情というものも踏まえた中で、安全保障問題に取り組んでいかなきゃならないと思っております。

石破委員 私は、戸別所得補償という名のもとに、すべての人に補償するというやり方は間違いだと思いますよ。やはり規模拡大をする、お米だけで生きていかねばならぬ、そういう人たちに手厚くするということをやっていかないとだめなんだと思う。

 もう一つは、これから先、人口がどんどんふえる中にあって、日本の水田面積というのを守っていかないと、これだけ災害が多くて、これだけ保水力を持つ水田をばんばんつぶして、あちらこちらに水災害が起こって、水田をどうやって守るのかということは、本当に真剣に考えていかねばならぬことじゃないんですか。そのときに、連担化をしていくということに対して、つまり規模拡大をやったって、こっちに一ヘクタール、こっちに三ヘクタールなんてことをやったって、全然生産性なんか上がらぬですよ。

 お金を使うとするならば、どうやってスケールメリットを生かすのかということ。そして、どんなに頑張ったって規模拡大なんかできないというところは、全く別の社会政策としてそこを支える。それはまさしく納税者が負担するのが正しいのであって、そんなもの、関税から消費者に負担させるべきものではないと私は思いますが、どうですか。

鹿野国務大臣 私は、石破先生とそう変わらないんです、基本的には。まさしく生産性の向上というふうなものをこれからやっていかなきゃなりません。

 所得補償制度も、先生言われたとおりに、一律というふうなことはインセンティブであります。すなわち、一生懸命努力すれば、それだけ収入が上がります。ですから、もう一つは、まとまっていけば、まとまって集落営農なり法人化をしていけば、それだけ収入が上がるんですよというようなこと。これは農家の人に選択してもらう、ここに私はポイントがあると思っております。

石破委員 私、農水大臣の一番最後のころに、地域マネジメント法人という法案を書き始めたんです。すなわち、村役場もなくなった、町役場もなくなった、職員もいなくなったという中にあって、本当に声が届かなくなっちゃった地域がいっぱいあるんですよ。今から町村合併をもとに戻せなんて話にならないので、農業協同組合、JAとか土地改良区とか、まさしくまだ組織として残っている、そういうものこそ地域の担い手であるべきなのだということ。一人は万人のために、万人は一人のためにというのが協同組合の理念のはずですよ。

 私はきれいごとを言うつもりもないけれども、農業協同組合にいろいろな権限が与えられている、それはやはり地域を守る。一人は万人のために、万人は一人のために。地域を守るというJAの新しいモデル、これも農水省が提示すべきだと思いますが、どうですか。

鹿野国務大臣 私は、今おっしゃられたとおりに、農協というふうなものは、これだけの組織というのは世界に冠たるものだと思います。この組織をいい方向にやはり結びつけていくというふうなことが大事なことだと思っております。

 そういう意味では、今具体的な提示がございましたけれども、さらに、全国のあらゆる地域に網羅されたところのこの組織というものをどう生かしていくかというふうなことは、よく話し合いながらやっていきたいと思っています。

石破委員 この議論の最後に申し上げておきます。

 私は、とにかく何でもいいから参加の表明なんだという話じゃなくて、農業はどうなるんだい、先ほど経産大臣からお答えいただいたあの問題は一体どうなるんだい、医療はどうなる、金融はどうなる、こういうことがこうなるが政府はこういうことをやって絶対に守るんだ、その上で交渉する、それでだめだったらば国会は承認しなくていいということをきちんと言うべきだと思うんですよ。そういうことを言わないままに、いや、あした、いや、まだまとまっていない、そういう話は国の経営方針としていかがなものかと私は思いますよ。

 きょうお答えいただかなくていいけれども、何でアメリカとの二国間FTAではだめなんだいという議論も随分ありますね。それは、FTAという二カ国のもの、TPPという十数カ国のもの、ドーハ・ラウンドという百数十カ国のもの、それぞれの成り立ちの違いだと私は思っているけれども、国民の皆様方が思っていることに対してもっときちんと真摯に答える、そういう努力が全然足りないとしか言いようがない。そういう努力をせずに、これが国益なんだと言われても、それは賛成も反対も判断しようがない。私は、消費税もそうですけれども、政府はもっと真摯に国民に向き合うべきだし、国会に向き合うべきだというふうに思っております。

 最後に、法務大臣、ごめんなさい、お待たせをいたしました。共謀罪について承りたいのですけれども、例の、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、いわゆるTOCという条約がありますね。大臣、これは共謀罪を成立させなくても大丈夫だというふうにおっしゃっておられましたが、今でもその見解に変わりありませんか。

平岡国務大臣 TOC条約の締結の必要性というのは私も十分に承知しているつもりでございます。

 その上に立って、共謀罪についてはこれまでも何年かにわたって激しい議論をさせていただきましたけれども、我が国の今の法制上のもとで、私は、共謀罪、新たに自民党政権時代に提案していたようなものをつくらなくても、条約は締結できるというふうに考えております。

石破委員 法務省、来ていただいていると思いますが、法務省の従来の立場は、これは共謀罪の導入が不可欠だという立場を法務省並びに歴代の法務大臣はとっていたはずだが、法務省、今の考えは変わったんですか。

稲田政府参考人 今御指摘のございましたのは、平成十七年に法務省で準備いたしました法律で、国際組織犯罪防止条約を担保する法律を提出いたしましたときに、どのように私どもで申し上げていたかということでございますが、これにつきましては、当該条約の担保のために必要な法律を整備するということを考えて法案を提出したものだというふうに申し上げてきたところでございます。また、それによりまして、一定の組織的な犯罪に対して効果的に対処することができるというふうに申し上げてきたところではございます。

 ただ、他方で、この法案の審議の過程におきまして幾つもの問題が御指摘があったところでございまして、これらの点も踏まえて検討していかなければならないというふうに考えております。

石破委員 変わったのかと聞いているので、それはまた、あれですか、いろいろな指摘を受けたのでもう一度考え直すという立場になったということですか。この条約に入るということは、我が国にとって非常に必要なことであり、喫緊の課題だと思いますが、どうなんです。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、平成十七年に提出した際の考え方というのは一方にあるわけでございますが、ただいま大臣からも御答弁がございましたようなことを踏まえて今後やっていかなければいけないというふうに考えているところでございます。

石破委員 立場が変わったということですね。あなた方は一体だれを見て仕事をしているんだということですよ。これはいろいろな役所に感ずることだけれども、これは防衛大臣にお尋ねしようと思ってできなかったが、例の次官通達もそうですよ。あれほど自衛官をばかにした話がどこにあるか、私は今でもそう思っていますよ。あれは撤回すべきだと思っています。また安住さんと議論してもいいけれどもね。

 つまり、先ほどの人事院の話もそう、今の法務省の話もそう、政治主導が誤っているのであれば、それを正していくのが政府だと思う、私はそれが官僚の矜持だと思っている。だれを向いて仕事をするのか。国民を見て、国益を考えて、真の意味でですよ、そういうような姿勢に転ぜられることを心から願うし、できないのであれば、それは政権交代以外にないということを申し上げて、私の質問を終わります。

 以上です。

中井委員長 これにて石破君の質疑は終了いたしました。

 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、医療分野における諸課題、特にみずからの政策テーマを中心に質問をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。特に、安住大臣、初めての質疑になりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、公明党がこれまで取り組んでまいりました脳脊髄液減少症についてお尋ねをしてまいります。

 この脳脊髄液減少症といいますのは、交通事故あるいはスポーツなどによりまして、頭部あるいは全身を強打することで脳脊髄液が漏れ、頭痛あるいは倦怠感に悩まされる、それからさまざまな症状を起こす病気でございます。これまで医学界では、何らかの衝撃で髄液漏れが起きることはないと否定的な見解を述べておりました。事故による同症の発症を訴える被害者と保険会社との間で、補償をめぐる訴訟が各地で相次いで起こされております。

 私は、二〇〇三年十一月に初当選をいたしまして、すぐに患者会、また専門医とも会いました。その四カ月後なんですが、平成十六年三月に脳脊髄液減少症、国会で初めて質問主意書を提出いたしました。そこで治療法の研究あるいは保険適用を求めました。さらに、公明党では、その二年後、十八年に、他党に先駆けまして、党内にこの問題のワーキングチームを設置いたしました。これまで、脳脊髄液減少症の治療法の確立、あるいはこの治療法でございますブラッドパッチ療法という療法への保険適用など、対策強化を繰り返し述べてまいりました。

 こうした取り組みが実を結びまして、厚生労働省の研究班が、平成十九年、統一した診断や治療の指針づくりに着手をいたしました。そして、先月、十月十四日になりますけれども、画像による初めての診断基準が発表されました。初めての統一基準ができて、患者救済への大きな一歩が期待をされているわけであります。

 私が質問主意書を提出したその答弁には、「合理的に疑わせるに足るデータ等にこれまで接したことはなく、」というような非常に冷たい答弁書がそのときは返ってまいりまして、以来、七年以上たって、ようやくここまでこぎつけることができたと感慨深いものがございます。

 そこで、今後は、効果的な治療法が確立をされていくべきだということが新たな課題となってまいります。

 治療では、自分の体液を採取して、腰や脊髄の硬膜の外側に注入をして、脳脊髄液が漏れる穴をふさぐ、これがブラッドパッチ療法という療法です。日本医大の調査によりますと、症状を訴えた患者の八割以上で症状が改善をされているという報告もございます。厚労省の報告にも効果ありと明記をされておりますこの治療費には、まだ保険適用となっておりませんので、一回の入院で三十万円前後がかかってしまうというわけであります。

 十月七日、脳脊髄液減少症患者支援の会の皆様と、厚生労働省にブラッドパッチ療法の保険適用を求める要望書、二十三万七千八百四十六人の署名簿を添えて提出をいたしました。一日も早い保険適用が待たれております。

 昨年四月なんですが、当時の長妻大臣、平成二十四年度の診療報酬改定で保険適用する方針を明らかにされていたと聞いておりますけれども、来年度、診療報酬改定の際に、これに関しましてはぜひ保険適用していただきたいと思います。厚労大臣、いかがでございましょうか。

小宮山国務大臣 ずっと委員が取り組んでこられました脳脊髄液減少症、これについては、今御紹介がありましたように、診断基準が関係学会で了解をされまして、これから、今これもお話のあったブラッドパッチ療法など治療法の有効性を確認するなど、引き続き治療法の確立に向けて研究を実施していく予定だと研究班の方からは聞いています。

 こうした研究を経まして、これから脳脊髄液減少症の診断、治療法が確立されて、安全性、有効性が確認された場合に保険適用ということで、なるべく早くそれができるように、研究班の方からも意見を聞きながら検討していきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ということは、次期診療報酬改定にはこれは間に合わないという解釈でよろしいんですね。待っていらっしゃる患者数も非常に多いわけであります。もし来年度の診療報酬改定でこれが入らないとすれば、まず、ではその手前で先進医療として位置づけていただきたい、このように思います。

 先進医療が認められますと、認可をされた医療機関では、ブラッドパッチ療法に必要な検査あるいは入院費用に保険適用がなされます。ですので、前後に非常に高額にかかっていた部分に保険が適用されるとなると、非常に患者負担が軽減をされます。

 大臣、もし保険適用が来年間に合わないとするのであれば、その前に、先進医療の申請にはぜひとも速やかに対応していただきたいと思います。いかがですか。

小宮山国務大臣 おっしゃいますように、先進医療として保険診療と併用を認めるということに向けて、これは積極的にやりたいと思っております。

 このブラッドパッチ療法については、患者の負担軽減、研究推進のために、今研究を行っております医療機関が先進医療の申請に向けた準備を今行っているというふうに聞いています。この申請が行われた場合には、専門家の意見を聞きながらですけれども、保険診療との併用の可否、これについて速やかに、こちらの方は本当に急いで速やかに検討して、できるようにしていきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 患者の方は、立っていることが非常につらい、あるいは、もちろん仕事もできないとか、お子さんに至っては学校でなかなか普通の生活ができない等、非常に悩んでいらっしゃいます。ですので、まずは保険適用、これは強力に進めていきたいと思っておりますが、その手前の先進医療、これに関しましてはぜひ速やかに対応していただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 次に、再生医療の問題について質問してまいりたいと思います。

 二〇〇六年ですけれども、iPS細胞などを使った、京都大学山中教授の、人の皮膚から同じような赤ちゃん細胞をつくることに成功したということで大きな話題となりました。そのとき、世界じゅうの研究者が熾烈な競争をしておりましたので、このニュースが発表されて、これが世界を駆けめぐったということであります。今では世界のだれもが知っている細胞、このiPS細胞などを使った再生医療が非常に注目をされております。科学においても、これは大きく促進をしていかなければいけない分野だと考えております。

 私は、この再生医療をぜひ自分の目で確かめておきたいと思いまして、三年前なんですが、東京女子医大と早稲田大学の工学部でまさに医工連携をしております先端生命医科学研究教育施設、TWInsを訪問いたしました。

 ここでは、女子医大の医師、白衣も着ていなくて、まさに医工連携で、医学部も工学部の方も一緒になって、こういうものが必要だと言われれば工学部の方はすぐにそうした機器を開発していくということで、非常にすばらしい施設であります。

 ここでは、岡野光夫教授が中心となりまして、再生医療、目覚ましい発展をしているその最先端の現場を見せていただきました。ここでは、自分の細胞を培養して、薄いシートをつくってまいります。これを重ねて積層化して、成形をしまして、中にはそれに動きを加えて、訓練をするというんですか、そのようなこともして、それで角膜とかそれから心臓、食道などにこの細胞シートで治療をして、既に有効性が示されておりました。岡野教授からは、国際連携しながら世界の患者を治療したいという、非常に大きな目標を掲げていらっしゃいます。

 今、日本が世界の再生医療に大きく貢献していくためには、この治験を円滑に進めて実用化できるよう、さまざまな障害を取り払い、研究の支援を急ぐべきだと非常にそのとき感じました。

 先日、今度は札幌市にあります札幌医科大学を訪れました。ここでは脳梗塞治療の最先端技術である細胞再生治療の研究開発を行っております。島本学長からは、世界的にも注目をされている研究であり、本格的な治療が始まれば多くの国民に貢献する、そうおっしゃっていらっしゃいました。

 きょうは、皆様のお手元に資料を配付させていただいております。ここでは自分の、脳梗塞患者の腸骨というところから局所麻酔下で骨髄液を採取していく、これを細胞調製施設で目的の細胞を分離して、約二週間で約一万倍に培養していく。この約一億個の細胞を五十ミリリットルのバッグに封入して、そしてこの細胞製剤を三十分から一時間かけて静脈から投与をしていく。非常にシンプルな形の、自分からとって増殖をしてまた自分に投与するという方法であります。

 骨髄液の採取、非常に短い時間で患者の負担が少ない。また、脳梗塞は脳の病気であるにもかかわらず、静脈投与ということで効果が出るということであります。

 治療前治療後、こうした効果が出ておりまして、今、十二症例、既になされておりまして、この一覧にもございますように、例えば三番なんですが、この方も介護度が五だったものが自立をしている、運動麻痺が著明に改善をしている、職場復帰をしている。あるいは六番の方にしても、介護度四から自立をしている、運動麻痺は全快、失語症も著明に解消しているということで、映像も見せていただきましたけれども、全く動かなくなっていた手が上がるようになる、会話が戻ってくる、そのような効果がございます。

 その他の疾患へも適用できるのではないかと言われております。脊髄損傷、脳腫瘍、プリオン病に対して有効性を示唆する結果が出、特に脊髄損傷疾患でも好結果が出ている、このような研究を今行っております。

 脳梗塞というのは四十万人が発症する非常に多い病気でありまして、その後遺症に悩む方も非常に多いわけでありまして、その結果、介護に要する家族の負担であるとか、あるいは国の負担、医療費、こういうことを考えますと、非常に注目すべき研究ではないかと思っております。

 この再生医療、医療製品として一刻も早い実用化が望まれています。日本では、薬事法という法律に基づいて承認を得る必要があります。ですので、ここに至るまでさまざまな障害、安全性の基準や手続が明確でないため審査に時間がかかるなど、コストも労力も諸外国に比べて格段にかかっております。

 これは十月二十六日の読売新聞にも出ておりますけれども、再生医療では既に、培養した皮膚、軟骨の細胞が製品化をされ、やけど、けがなどの患者に移植をされている。岡野教授によると、このような再生医療製品は世界で約五十件がもう既に承認をされております。実用化を目指した治験中のものも三百件以上あります。しかし、日本で承認されたのは皮膚製品一つのみ、治験中のものは一つもないということで、この原因は、医療製品を審査する医薬品医療機器総合機構、PMDAの審査に時間が大変かかる、かかり過ぎるということであります。

 再生医療の製品は、これまでのものと違って、新しい安全性の基準、手続が必要なわけですけれども、その研究開発にこうした法整備、体制が全く追いついていないということが言えるかと思います。こんな治験も必要だ、こんなデータも要るということを求められたりして、再生医療を製品化するメーカー側が治験に消極的になってしまう。

 日本で唯一承認をされましたTEC社の皮膚の場合、日本では治験まで四年かかったものが、ヨーロッパでは申請して四カ月後には治験が認められた。諸外国に比べて日本が非常におくれをとっていることが言えるかと思います。

 医療に限らないんですが、日本では非常にすばらしい研究開発あるいは技術革新というものがあるんですが、実際、これが実用化して製品として売り出され、ましてやこれが日本の売りとして海外に出ていく、ここの部分が非常にまだ脆弱であると言わざるを得ないと思っております。日本で開発されたものが逆に海外でもう治療が始まり、日本が海外に行って日本発の治療を受けてくる、このようなことが起きかねないわけであります。

 再生医療の実情に合った整備が求められていると思います。この再生医療につきまして、文部科学大臣そして厚労大臣、両大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のように、再生医療というのは、恐らく、人類の医療技術というのを一つ高いステージに持っていく、その最先端を行っているものだというふうに私も思っております。

 さらに言えば、日本の今の技術というのが世界でトップクラスを歩んでいるということもありまして、文科省としても戦略的にこれに投資をしていくということにしてきております。

 さっき御指摘のありましたように、山中教授を中心にするプロジェクトが一つありまして、これは再生医療の実現化プロジェクトということで、二期に今入ってきております。これに参加しているのが、このiPS細胞の樹立を受けて、それを、拠点をつくって、その拠点の中でさらに実用化していくということですが、京都大学、慶応大学、東大、それから理研がこのプロジェクトの中でやっていただくということです。

 それからもう一つは、再生医療の実現化ハイウェイという事業、これは二十三年度から始まるわけでありますが、この基礎研究の成果をもとにしまして、関係各省、これは厚生労働省と経済産業省ですが、これが協力をして、プロジェクトを組んで、基礎から応用へ向いて引っ張り上げていくというプロセスをつくり上げていきたいということであります。これには、iPSだけではなくて、体性幹細胞それからES細胞、これも含めた形のプロジェクトがこの中に入っております。

 さらに、橋渡し研究加速ネットワークというのがあるんですが、先生御指摘の、北海道の大学でこの事業を使ってやっているプロジェクトがこれであります。

 いずれにしても、私たちとしても、基礎から臨床、それから実用化に持っていく過程の中で、世界のスピードに負けてはならないというふうに思っています。いろいろな改革が必要だという意識を持ちながら考えていきたいというふうに思っています。

小宮山国務大臣 御指摘のとおり、日本ではどうしても認可がおくれるというドラッグラグ、デバイスラグの問題に取り組むために、認証する機関のPMDAの人員をふやしたり、いろいろなことをしているところです。

 それで、おっしゃったものにつきましては、ヒトiPS細胞などを用いた、人を対象とした研究を可能にするための環境を整えるために、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針という指針を改正しまして、やりやすくしているというのが一つ。それからまた、相談にも応じるということで、ことしの七月から、医薬品医療機器総合機構で、開発早期の段階から大学やベンチャー企業などの相談に応じるような薬事戦略相談、こうしたことも開始をしています。

 そのような環境を整えながら、何とか認可ができる、認証できることを早めるように努力していきたいというふうに思っています。

古屋(範)委員 ぜひ、各省連携をして、この分野、体制整備を急いでいただくよう心からお願いしておきます。

 文科大臣、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 次に、被災地での心のケアの体制についてお伺いをしてまいります。

 三月十一日に大震災が発生をし、今、うつ病あるいは心的外傷後ストレス症候群、PTSDなど、いろいろな面で心の不調を訴える方が急増しております。石巻市の被災者を対象に行った厚労省の調査によりますと、四割以上の人に睡眠障害の疑いがあるということが判明をしました。

 この数カ月間、現場の切実な声を聞く中で感じましたのは、やはりスピードが必要だということです。そして、現場の声を聞く。そして、私たちも理念に掲げております人間の復興。インフラの復興、あるいは企業の再生、産業の再生、その基盤となるのが人間の復興、やはり心の復興であると考えております。

 宮城県の女川町というところでは、住民の悩みを聞く町民ボランティアの養成、また、医療、保健などの専門職の方への心のケアの人材育成の講習事業、こころのケアスタッフ育成事業に取り組んでおります。七月に開始をして、八月に私も現地に行ってまいりました。

 傾聴ボランティアの育成に関しては、傾聴という言葉が非常にわかりにくいということで、聴き上手ボランティア養成事業というふうに言いかえてやっておりました。非常に温かな雰囲気の中で、ここには、国立精神・神経センターの認知行動療法センター長大野教授が現地に通い、そして鹿児島の精神科医のチームも一緒になって、今この事業を進めております。被災地でのアウトリーチシステム、また認知行動療法を活用したプログラムをここでモデル的に立ち上げよう、そしてこれを被災地に広げ、あるいは全国に広げていこうという取り組みが始まっております。

 この聴き上手ボランティアさん養成研修会、最初は十四人の方がいらっしゃいまして、東北弁で、中心となる保健師さんが非常に情熱を持って取り組んでいらっしゃいます。皆さん、話し相手が欲しいとか、少しでも高齢者のお話を聞いてあげたい等々、さまざまな理由で来ていらっしゃいました。こういう方々に大野先生から、悩みを理解する、うつ病に対しての基本的な講義というものも直接されております。ロールプレーで、本当に非常に充実した研修をしております。また、看護師、保健師、ケアマネジャーなどの専門家のためのこころのケアスタッフ研修会、こういうものも行っております。

 被災地で、津波で流され、町内会とかそういうものはもうコミュニティーが壊れてしまっているんですが、それぞれ移動した先で、ここを八つに分けて、心のケアのカバーをしていこうという新たな取り組みをしております。

 そこで、第三次補正予算案で、被災者の方々に対しての心のケアを行う財政支援、二十八億円を計上されていますね。こうした取り組みを全国に広げていくために、予算の拡充がさらに必要なのではないかと思いますが、厚労大臣の御見解を伺います。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるように、これから心のケアは、本当に長期にわたって非常に必要なものだと思っていますので、今、被災県からも御意見を伺って、専門家をどれだけ派遣したらいいか、そのような調整も進めているところです。

 今、御紹介いただいた二十八億円の予算は、活動拠点となる心のケアセンターを、それぞれのところの精神保健福祉センターですとか保健所あるいは市町村の保健センターなど、今ある既存の設備を使ってソフト的にそこをやっていこうという形で取り組んでいまして、心のケアに当たる専門職の人材確保をしながら、訪問支援、おっしゃったようなアウトリーチ型の手法も活用して、仮設で話を聞いたり、あるいは医療活動を行ったり、そういうことができるようにというふうに思っています。

 この二十八億円は、被災県に基金として積みますので、今お話にあった女川の話を聞くようなボランティア、そうしたことにも使えるというふうに思っております。

 心のケアについては、御党からの御提言も承っておりますので、しっかり取り組んでいきたいというふうに思っています。

古屋(範)委員 同趣旨の質問を財務大臣にもさせていただきたいと思います。

 こうした心のケア、私たち公明党では、女性の視点から防災を見直そうということで、女性防災会議を立ち上げました。そこで、阪神・淡路大震災を経験された兵庫県の清原理事をお招きして、先日、講演を行っていただきました。現地で体験をして、その復興に携わってきた体験をもとに、この期間、半年くらいたつとだんだんと沈んでくる、この時期、特に気持ちがなえてきてしまうので、次々と復興に対する手をスピーディーに打っていくことが大事だとおっしゃっていました。

 特に、家族と地域の大切さ、それから広い意味での仕事、要するに生きる意欲をつくっていかなければいけないと清原理事がおっしゃっていたんですが、私も、その観点から、仮設住宅の介護等のサポート拠点というものをつくって、仮設住宅で生活の支援、あるいは健康の支援、また心のケア、介護支援等々、そういうもの、訪問したりあるいは相談に来られたりなど、全面的に支えていく拠点が必要だということを主張してまいりました。

 ここも徐々にできつつあるようなんですが、同じ質問になりますけれども、心のケアの体制の強化に対して財務大臣の御所見があればお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 財務大臣というよりも、行っていただいたところは私の郷里でございますので、ちょっとお話をさせていただきたいと思うんです。

 私も、財務大臣になる前は毎週帰っておりましたし、なってからも二、三度、現に、私の家族も小学校にずっと、二カ月ほど避難しておりましたものですから、よくわかっているつもりでおります。

 ただ、こういう例がございました。確かにお金の問題もあるんですけれども、例えば女川町なんですけれども、先生、最初に発災したときに、自衛隊の部隊が三日から一週間おきに交代したんですね。そうすると、被災者の方々から、せっかく親しくなりかけたのに、またいなくなって新しい人が来られると困ると。そこで、自衛隊の皆さんが工夫なさって、一カ月近く同じ部隊が、四国のたしか善通寺の部隊だったと思いますが、一カ所に長くいてくれたんですね。

 そうすると、女川町民の、ほとんどの方は体育館に避難なさっていたんですけれども、自衛隊の方々と大変心の触れ合いができて、そこからやはりいろいろな、心の中に持っているストレスを自衛隊の皆さんに話してくれた。自衛隊の皆さんも、遺体の捜索とか、本当に、夜になると若い隊員はなおさらストレスが物すごくたまって、そういう中で、やはり人間というのは助け合っていかなきゃいけないというか、私はそういうことをケースとして非常に見ております。

 もう一方、例えば心のケアというのは、被害に遭った方々の程度にやはり物すごくよるんですよ。私の知っている人でも、お母さんだけ助かって、子供さん三人それからおじいちゃん、おばあちゃん、だんなさんまで亡くなった人の精神と、家だけなくなった方とでは全然違いますから。

 私、そういう方々と会っていますと、確かに先生がおっしゃるように、こういう方々に来ていただいてチームをつくっていただく、何回か来てもらうのはありがたい、しかし、そこで何かやっているというふうに思われたくないという人も結構いたんです。ですから、施設をつくってやるということも大事ですけれども、私は、やはりコミュニティーをきちっとつくって、その中でしっかりと、専門家の皆さんに長くいてもらってサポートする仕組みづくり、これがやはり大事だというふうに思っております。

古屋(範)委員 私は、施設の必要性を求めているわけではございません。派遣チームも、もうこれからは地元の方々が担っていかなければいけないので、地元が担う体制づくりを手助けしてほしいということを申し上げております。中長期にわたる心のケアの支援、ぜひお願いしたいと思っております。

 次の質問は、被災地だけではなく全体の問題に移ってまいります。

 今、うつ病患者は全国で約百万人を超えると言われております。毎年の自殺者も三万人を超えております。

 そこで、私たち公明党は、うつ対策に力を入れてまいりました。そこで認知行動療法という療法に注目をいたしまして、さまざま、この拡充を求めてきました。

 昨年の四月にこの認知行動療法は保険適用となりました。しかし、なかなか人材が全国的にこの療法を行うほどいないということで、では一体どこに行って治療を受けたらいいんだという指摘がございます。今、国としてもこの認知行動療法の普及に力を入れていらっしゃると思うんですが、やはり保険適用のさらなる拡充が必要になってまいります。

 この認知行動療法は、今うつだけなんですが、うつ病だけではなく、パニック障害とかアルコール依存症、それから不眠症などにも効果が実証されていまして、ITを活用した認知行動療法というもの、応用の可能性も広がっております。ですので、他の症状への拡大を求めていきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、チーム医療への保険適用も拡大していただきたいと思っております。

 大野先生から、うつ病に対する認知行動療法の効果を検討した結果、医師だけで行った場合それからチームで行った場合、両者ともうつ症状の改善を認めることができたという結果が出ております。この認知行動療法を普及させていくためには、医師だけではなく、やはりチームで行う体制整備がぜひとも必要となってまいります。

 来年度の診療報酬改定で必ず認知行動療法の保険適用の拡大をしていただきたいと考えております。いかがですか。

小宮山国務大臣 今おっしゃいましたように、うつ病などの患者に対する認知行動療法について、平成二十二年度の診療報酬改定で、医師が実施するものを新たに評価をいたしました。

 今おっしゃったような、看護師とか心理職などがチームとして行うものにつきましては、医師と同様の効果があるかどうか今検証しているところで、また、チーム医療を診療報酬上評価することにつきましては、こういう研究の成果ですとか、それから、医師が実施した、前回の改定に基づいた成果なども検討をしながら、さらに検討を進めていきたい、そのように思っています。

古屋(範)委員 ことしの六月なんですが、国立精神・神経医療研究センターに認知行動療法センターというものが設置をされました。ナショナルセンターとして多くの機能を担っていくことが期待をされております。

 このセンターは、年間百人程度の専門家を育成するということを目標につくられました。大変専門家が不足をしております。先日、山口代表ともここに行ってまいりまして、大野センター長あるいは堀越先生等と意見交換をしてまいりました。

 ここに、来年度の予算要求で九千八百万円要求をされておりますけれども、だんだんと研修も進んでまいりまして、確かに震災で執行が若干おくれたんですが、目標の百五十人には少し届かないかもしれませんが、八十人から百人ぐらいの育成はできるということであります。今年度の指導者数の三倍から四倍、三十人から四十人の指導者ができると見込まれていまして、その指導者たちが全国に育っていって、育成をされる専門家も二百人から三百人、ネズミ算状態でこれが広がっていくことが予想されます。ですので、この九千八百万円という、非常に少ない予算額だと思っております。

 イギリスでは、これに対して三百億以上の金額を投じまして、すべての精神疾患で悩む国民がこうした精神治療にアクセスできるような、その体制をブレア政権のときにつくって、今それが着々と進行しております。

 自殺、うつで失われるもの、この経済損失でありますけれども、約二兆七千億と言われております。また、二〇一〇年まで、自殺やうつ病がなくなった場合のGDP引き上げ効果は約一兆七千億とも言われておりまして、ここに力を入れていくということが、もちろん本人にとっても非常に大きなことでありますけれども、我が国にとって非常に大きな効果をもたらすと思っております。

 九千八百万円というのは余りにも少ない金額だと思うんですが、まず厚労大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 認知行動療法を実施できる人材養成のために、平成二十三年度から研修事業を行っておりまして、来年度も、今九千八百万円が少ないというおしかりをいただいているところなんですが、具体的には、医師を対象に百五十名、それから看護師、心理職対象に七百名、これで研修をしたいと思っています。今おっしゃったように、研修を受けた人の中からまた優秀な指導者を生み出すということが大事だと思うんですが、そうたくさん一度には指導者が生まれないということもございまして、来年度は今年度と同じという形にさせていただきました。

 ただ、力を入れなきゃいけないということはよく承知をしておりますので、しっかりやっていきたいと思っています。

古屋(範)委員 国立の精神・神経センター、小平という非常に不便なところにありまして、工夫をされて高田馬場にサテライトをつくられようとしております。ここもなかなか常勤職員も雇うことができず、苦労してやりくりをしながら何とかこのサテライトをつくろうとされているんですが、ここにはやはり何らかの予算をつけるべきじゃないか、そう思うんですけれども、小宮山大臣、いかがですか。

小宮山国務大臣 高田馬場にできましたサテライトセンターにつきましては、引き続き、国立精神・神経医療研究センター、この運営に必要な交付金の確保に全力を尽くしたいと思います。

古屋(範)委員 安住大臣、ただいま議論してまいりましたうつ対策につきまして、何か御所見があれば最後にお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 知らないことばかりでしたので、本当に教えていただきましてありがとうございました。

 先生とはヨーロッパに研修旅行で一緒に行かせていただいたり、大変親しくさせていただいておりますけれども……(古屋(範)委員「IPU、IPU。研修旅行じゃない」と呼ぶ)いや、プライベートじゃなくて議員派遣でございます。認知行動療法の人材育成をしっかりやっていきたいというふうに思っておりますので、厚労省とよく相談しながらやっていきたいと思います。

古屋(範)委員 誤解がないように。IPUでジュネーブに行って、WHOの訪問を私が要望して、安住大臣がついてこられただけのことですので、そこは誤解のないように最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて古屋さんの質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、最初に、宅地の液状化被害に対する支援制度についてお尋ねをいたします。

 国交省の調べでも、液状化の宅地被害の件数が約二万七千件に上るとされております。被災者の住宅再建なしに地域の復興はありません。被災者への公的支援の抜本的な拡充が必要であります。

 私は、七月二十日の予算委員会で、当時の菅総理に液状化対策の実施を求めました。

 私が、「公共インフラの復興の延長線上で宅地の液状化被害対策というのではなくて、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度をしっかりと設けるべきだ、」と迫ったのに対し、菅総理は、個人住宅の液状化被害に対して今の制度の中で対応するには、都市インフラの補強といった形の延長線上で対応することが比較的迅速に対応できるということで先ほど述べたが、本質的に、個人の家の対応については新たな制度を含めて検討が必要だと答えておりました。公共事業の延長線上での支援ということではなくて、個人の家に対する、宅地に対する新たな制度の具体化の必要性を述べたものであります。

 そこで、前田大臣にお尋ねいたしますが、今回の東日本大震災復興交付金の基幹事業の一つとして、液状化対策推進事業が創設をされました。この事業は、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度となっているんでしょうか。この点についてお答えください。

前田国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のように、そういった議論を踏まえて、新たに液状化対策推進事業というものが創設されました。

 これ自身は、委員御指摘のように、公共施設、道路であったり下水道であったり、そういったものと宅地を一体的に行うということで、実際は、実態上は街区とかそういうところがあるわけですから、家の周りにはちっちゃな市道であったり、必ず公共施設等があります。そういうところでなるべく公共で見れるような対策を打つということで、個人の負担というものをなるべく軽くするというようなことを考えております。

 また、液状化ということになりますと、多分一つの街区なんかは地籍なんかが相当乱れてまいりますので、そういった地籍のきちっとした再確認といいますか再調整というようなことで区画整理事業といったようなことも入る場合、そういったものでサポートできるところはサポートするといったことで、公共で見れるところは最大限見ていくという新たな支援事業でございます。

塩川委員 今の御答弁にあったように、公共の事業と一体で進めることによって、結果として個人の負担を軽くするんだということであります。

 ただ、この液状化対策推進事業についてのこういうポンチ絵などを見ても、公共施設の液状化対策費は公費で負担し、民間家屋の液状化対策費は所有者の負担、こういうふうに書いてあるわけですね。結局は、公共施設の液状化対策の延長線上で民間宅地部分の液状化対策費用が軽減されるというだけであって、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度となっておりません。

 ですから、七月の質問のときに、今の制度で対応するとしたら公共の延長線上でやるしかないという従来の答弁を踏み込んだ菅総理の答弁があったにもかかわらず、従来型でとどまっているというのが実態であります。

 実際、被災者の方のお話を伺っても、宅地を水平にするだけで、工法によって四百万とか八百万円がかかるとされております。地下の配管部分についても、その復旧費用で百万とかという金額がかかる。さらに、敷地内などの改修費用を加えれば、とても払うことができないという被災者が生まれるわけであります。費用のことを考えると身動きがとれないというのが今の被災者の実情であります。宅地の液状化被害に対して、被災者への公的な支援制度が必要であります。

 そこで、平野復興担当大臣にお尋ねしますが、復興交付金には効果促進事業というものがあります。液状化対策推進事業などの基幹事業と関連をし、復興のためのハード、ソフト事業を実施可能とする使途の緩やかな資金だということであります。

 では、液状化被災者の負担軽減のための公的支援として、この効果促進事業はどのように使えるんでしょうか。

平野国務大臣 まず、個人の住宅に対する支援ということについては、もう委員御案内のように、被災者生活支援法というのがございまして、その範疇の中で、全壊の家屋については三百万円を限度に支給をするという制度がございます。あと、それ以外の、いわゆる個人財産というものにつきましては、これは今までの災害においてもそうなんですが、いわゆる別な補助体系で補助するというのはなかなか難しいというふうに考えております。

 ただ、この被災者生活支援の方も、実は阪神・淡路のときはございませんでした。その後のさまざまな災害等々の経験を踏まえて、国会での議論も踏まえまして、こういった制度を用意したということです。

 それで、今お尋ねの、いわゆる効果促進事業について個人負担の軽減に役立てるかという話でございますけれども、これは先ほど国交大臣からもお話がございましたけれども、少なくとも液状化対策推進事業におきましてはかなりのやはり配慮がなされたのではないかというふうに私は思います。その上でさらに個人の負担に係るものに対して補助を出すということについては、効果促進事業であってもほかの事業であっても、なかなかこれは慎重に対応すべきものではないかというふうに思っております。

塩川委員 阪神・淡路大震災も踏まえて被災者生活再建支援法で支援が行われるようになった、これ自身が大きな被災者の運動、国民の世論と運動の中で前進をさせられたものであります。

 そういう点でも、個人財産に係ることについての公共の事業に対しても、ここにさらに踏み込んだ支援策を行っていく。公共事業を行うに当たっても、被災者生活支援法は支援法としてしっかりと、さらに額をふやすという話はどこに行ったのか、これにしっかりと対応してもらうのと同時に、こういった一連の復興交付金などを使った事業についても、被災者の負担を軽減するための直接の公的支援を行うというところにさらに踏み込むことこそ必要だ。効果促進事業というのがその事業の効果を促進するためというのであれば、被災者の液状化の被害について、その被災者の負担の軽減なしにはこの事業そのものも進められないわけですから、ここの、被災者の負担軽減に充てられるようにすることこそ踏み出す必要がある。

 その点で、この液状化対策推進事業というのが、先ほど申し上げましたように、そもそもの基本的考え方というのが、民間家屋の液状化対策費は所有者が負担をするという理屈になっているわけであります。これをやはり制約とするのではなくて、こういう家屋の液状化対策費は所有者が負担という制度そのものを見直す必要があるんじゃないのか。復興交付金の事業で被災者の生活再建、住宅再建を行うということであれば、この復興交付金の基幹事業のメニューそのものも見直していく、これこそ必要なんじゃないのか。この点について、ぜひお答えください。

平野国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますけれども、まず、個人の財産に対するいわゆる補助金を出すということについては、これはやはりあくまでも慎重であるべきだというふうに思っています。しかし、それでもやはりさまざまな今回の被害が多いという中で、家が本当に著しく被災を受けた場合については、先ほど答弁申し上げたとおりでありますが、三百万円の支給をするということで制度を用意しているわけです。

 さらに、今回の液状化対策推進事業につきましては、これはいろいろな配慮がなされていまして、個人に係る部分の負担をできるだけ少なくしようという、余りこれを言い過ぎますと、この制度というのは一体何だという話になりますからあれなんですが、そういう形で、個人の負担にかけないで、いろいろな整備についてはできるだけ公共の範囲ですくっていこうというか拾い上げていこうというかなりの配慮がなされているというふうに私は思います。この制度によって、少なくともこれまでの対策よりはかなり個人の負担は減ってくるのではないかというふうに私は思っております。

塩川委員 そういう配慮がなされている制度というのも、実際でもこういった説明の中で民間家屋の液状化対策費は所有者の負担などということがこうはっきりとうたわれるようなことだと、現場での使い勝手として、実際に被災者への配慮というのが十分に行われなくなってしまうのではないのか、そういうことにもなりかねないわけで、そういう意味でも、こういう事業の具体的な措置についても一歩踏み出していく。

 直接の公的支援も可能だという方向での対応こそ行うべきで、公共性の話が今ありましたけれども、被災者の住宅再建そのものが地域の再建であり、そして最大の公共性、公益性を持つものなんだ。こういう立場で、被災者への抜本的な公的支援の拡充のために、液状化対策推進事業のこういった所有者負担などを求めるような要件そのものを改めるなどの抜本的な復興交付金の事業の見直しを強く求めておくものであります。

前田国務大臣 今、平野担当大臣からの御説明にありましたとおりですが、委員の御指摘のようなことを受けとめて、なるべく公共でというわけなんですが、例えば、液状化対策の事業そのものがまだなかなか大々的に現地でやられていないと思うんですね。ということで非常に不安を感じておられると思うんですが、実際には、これは自治体にとっても初めての事業ですから相当戸惑っているところがあります。

 その辺については、技術的な支援といいますか、そういったことも含めてやりまして、液状化対策に必要な調査だとか事業計画案の作成だとか、それからコーディネートというのは、最後は私のところも残るかもわかりません。しかし、公共でどの辺のところまでやるかというようなことも含めて、計画段階から公共で応援して、そうすると周りのところは大体公共でやれるんじゃないか、このように考えております。

塩川委員 自治体の戸惑いという点でも、こういう要件がつくことによって被災者の支援というのが後ろ向きにならざるを得ないんじゃないのかという懸念があるわけですから、こういうことこそ見直せということを改めて強く申し上げます。

 次に、復興に向けた被災自治体の体制強化についてお尋ねをいたします。

 被災地での被災者支援、復旧復興の推進に当たって、被災自治体の体制強化が課題となっております。被災自治体では、津波などで少なくない同僚を失いながら、職員の方たちが懸命に活動してまいりました。今、陸前高田市やあるいは大槌町など被災自治体の職場の状況を伺いますと、一つは応急仮設住宅からのいろいろな要望にこたえなくちゃいけない、被災者の支援の業務がたくさんふえている。また二つ目には、震災から八カ月で通常業務も戻ってきている、その仕事というのも大きくふえてきている。それに加えて今後の復興業務に対応しなければならないという、三重の業務の対応が求められているという声が上がっているところであります。

 国の復旧復興事業のおくれに対する被災者の憤りが現場の自治体職員に向けられていて、大変つらい思いをしている。過重な労働の中で、幹部職員の退職ですとか、あるいはストレスによる病気休暇なども生まれているところであります。

 そこで、現状について平野大臣に一言お答えいただきたいのが、こういう被災者支援、復旧復興の推進のために被災自治体の職員体制の強化が不可欠じゃないのか、このように考えますが、大臣としての受けとめをお聞かせください。

平野国務大臣 まさしく委員が今御指摘のありましたように、被災自治体につきましては、通常の業務に加え、これまでは被災者に対する支援、それから仮設住宅の建設に向けたさまざまな調整、こういった仕事が重なっておりました。これから第三次補正が成立いたしますと、十二兆という予算がここに入っております。この十二兆の予算すべてが自治体の執行ではございませんが、かなりの部分が自治体の負担になってまいります。そういった意味での執行体制をどうするか。

 これは今、川端大臣のところを中心に総務省でも考えていただいておりますし、復興本部でも考えております。その中で、例えば国でやれるものはできるだけ国でやるという意味において、代行制度を活用する、あるいは県から受託する仕組みもございます。東日本大震災ではございませんけれども、新潟、福島の大豪雨の災害復旧については、只見川については福島県から国土交通省が委託を受けて復旧をやる、そういったことで今やることになっています。

 そういうさまざまな国の直接的な支援もあるということでございますし、それから、これから国の方でも、URとか鉄道機構さん、今既にお手伝いいただいていますけれども、こういったものの活用も考えていかなければならないというふうに考えております。

 いずれ、これから、委員御指摘のように、自治体の仕事、多分、予算規模だけで見たときに、数年分の補正予算の分がどんと乗っかってくるという形になりますので、この執行体制につきましては、国もしっかりとウオッチして、できることは支援はしていかなくちゃならないというふうに考えております。

塩川委員 今、平野大臣のお答えをいただきましたように、数年分の予算措置に当たるような業務が一度にかかってくるという状況であります。

 この間、全国の自治体からは、職員が派遣をされる応援派遣が行われて、被災自治体の業務を支えてまいりました。被災自治体では、本格的な復旧復興に向けて、短期の応援派遣から、長期の職員の応援派遣を求める声が切実となっております。例えば、仮設住宅に移った被災者の心のケアにロングスパンで対応するような保健師が必要だとか、また、ハードの復旧復興事業に関係する土木職の人材が欲しい、こういった声など、専門職のニーズが大変強いものとなっております。

 そこで、川端大臣にお尋ねをしますが、被災自治体への全国自治体からの長期の応援派遣に対して、国としては、被災自治体の要望にどのようにこたえる取り組みを行ってきたのかをお答えください。

川端国務大臣 お答えいたします。

 非常に自治体の負担が多くなっていることは御指摘のとおりであります。

 それで、現在は、総務省が窓口になりまして、被災自治体、市町村からの御要望を受けまして、全国の市長会、町村会にいわゆるマッチングをする、我々が窓口になりまして御要望を受けて、市長会、町村会を通じてお互いのやりとりをいたしまして、そして、全国から協力をいただいて応援を出すという形を今構築、システムとしてやっております。

 その中で、御指摘のように、土木建築職、税務職だけではなくて、いろいろな幅広い職種に関しても御要望があります。そして、現在は長期でということもあります。そういう部分はできるだけきめ細かく御要望を受けとめて、そして、全国にお願いをして仰ぐようにということで支援を行っておりまして、引き続き、可能な限りきめ細かくそういう御要望にこたえられるように、今お話しの対策本部、各府省も含めての人材要請もありますので、きめ細かくやってまいりたいと思っておるところでございます。

塩川委員 今お答えがありましたように、総務省が窓口となって、市長会、町村会等の御協力をいただいてマッチングの取り組みをやっている、長期の応援派遣に対してきめ細かく対応したいという話でした。

 しかし、実態は極めて不十分だと言わざるを得ません。石巻市からこの応援派遣の実情をお聞きいたしました。現在、一週間とか三週間程度の短期の応援派遣が約六十名ぐらいいらっしゃる。一方、派遣元自治体との間で派遣協定を取り結んだ長期の応援派遣が三十五名であります。

 長期の応援派遣職員の確保の方法は、二通りだと言っておられました。一つは、今、川端大臣がお答えになったような、県の市町村から、総務省を通じて全国の市町村にお願いをするという仕組みであります。でも、それで足りないんですよ。実際には、石巻市がみずからの縁故、つながりを使って確保しているという数、その数が、総務省のマッチングで半分、石巻市が直接確保したのが半分なんです。つまり、現状のマッチングの仕事というのが、被災地の自治体のニーズにこたえられていないんですよ。これを直ちに解消するような対策をすぐ打つべきじゃありませんか。

川端国務大臣 実態は、その市町村が独自に、例えば姉妹都市であるとかいろいろな関係を含めて、そういう御要請をじかにされて、ダイレクトにお受けになるというケースもあります。

 ただ、総務省としては、そういうもの以外、要するに、自分たちでこういう応援をしてほしいということに関してはすべて、別に選別して受けているわけじゃありません、すべて受け入れて調整をしております。その中で、さらに御縁があるからということでやっておられるというふうに思っておりますので、我々の部分によりニーズが来れば、その分にしっかり対応させていただきたいと思っております。

塩川委員 いや、ニーズは出しているんだけれども、こたえられていないということを言っているんですよ。ちゃんとお願いしているんだけれども、なかなかマッチングが成立しないというので、現場も人手不足ですから、そのために独自で探さざるを得ないという状況なんですから、そういうことについて、総務省が現状をつかんで対策をとることこそしっかりと行うべきだ、このことを申し上げておきます。阪神のときにも三年ばかり長期派遣が行われたわけですから、今後大きく需要が膨らむような長期の応援派遣に対する対策を総務省として、国としてしっかりと措置する、このことを強く求めておくものであります。

 あわせて、石巻市からの要望というのは、長期応援派遣についての財政負担の問題なんです。

 三次補正では地方負担をゼロにとうたっているんですけれども、この長期職員派遣についての被災自治体の負担がゼロになっていないという問題があるということが言われております。実際に聞いてみても、長期応援派遣については被災自治体の方が負担をするということになります。そのときに、特別交付税で措置するんだというんだけれども、措置するのは実績ベースで八割だというわけですよ。二割は被災自治体の負担が残ったままなんです。累積をしていけば、人件費を含めて大きな金額になる、年度末で丸めて特別交付税で持ってこられても、本当に対応できるのかどうかわからないという不安の声が上がっているわけですね。

 震災復興特別交付税のように全額措置をするような、いわば地方の負担をゼロにするということをうたっている今回の補正予算であるならば、長期応援派遣に係る被災自治体の負担もゼロにする、このことを約束していただけますか。

川端国務大臣 今のお問いの前に、先ほどの部分は、最大限努力して、送り出す市町村側の部分とのマッチングでありますので、少しおくれている部分もありますけれども、これは鋭意、最大限、改良の努力は重ねてまいりたいというふうに思います。

 今のお話でありますけれども、御指摘のように、応援していただいた分の費用は基本的には派遣先の被災団体が負担するという仕組みでありますけれども、この分は特別交付税措置を講ずることということで、九月二十日に実施した二十三年度特別交付税の第二回の特例交付においては八割を措置、一億四千万いたしました。ということで、二割は御負担になっております。

 これは、他団体からそれぞれの市町村がどれだけのニーズを受け入れるかということが、基本的には必要に応じてということでありますが、幾らでも受け入れたら全部出るということになると際限がなくなるという部分で、多々ますます弁ずではありますけれども、ということで、一応、今、各団体の職員数の状況とその判断でどれだけ受け入れるかということは任せてある話でございますので、今、八割特交で見ました。

 ただ、被災団体の財政状況がそれぞれあるというのは事実でございますので、財政状況については引き続き実情をよくお伺いして、その運営には不安や支障がないように、きめ細かく丁寧に対応してまいりたいと思っております。

塩川委員 丸めて特別交付税で年度末で措置しましたということでは実態はわからないですから、この分についてはしっかりと、全額、震災復興特別交付税などで対応しますということをぜひとも宣言していただきたい。被災自治体の応援のためにも、そういう取り組みこそ総務省として行ってもらうことを強く求めておくものであります。

 こういった被災自治体への長期応援派遣を強化するとともに、正規職員の確保が必要となっております。

 石巻市でも、正規職員の方へのニーズが強くなっている。実際には、二〇〇五年に一市六町が合併をして、そのために、国が押しつけてきた集中改革プランの中で、この間、二千三十人の職員が被災時には千七百九十人まで減ってきております。死者、行方不明者の方は四十八人いらっしゃるということを見ても、被災自治体の正規職員の数が大幅にこの間で減っている、少なくなっている現状があります。

 そのもとで、河北新報などを見ても……

中井委員長 塩川君、時間が超過しています。

塩川委員 職員の削減というのが地域の防災力を弱めることになったんじゃないのか、市町村合併が震災への対応を弱くしたという声が上がっている。その大もとに、合併自治体における合併の算定がえが十一年以降減少する、そういった合併自治体に対する財政措置の結果によって、将来の交付税削減を見越した職員削減が行われているわけです。

中井委員長 塩川君、まとめてください。

塩川委員 はい。

 こういった普通交付税の合併算定がえそのものについて、石巻市の復興計画については、この復興計画期間を踏まえた延長を求めますという要望も上がっています。ぜひとも、普通交付税の合併算定がえについては石巻市の要望にこたえて延長を行っていく、このことが強く要望として上がっていることについて、ぜひ石巻市の要望にこたえていただきたい。

中井委員長 いや、答弁する時間はありません。

 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 きょうは、まず普天間基地問題について質問いたします。

 政府は、沖縄県民の反対を押し切って辺野古の新基地建設を推進、しかも、回り回ってV字滑走路案に逆戻りしました。

 米側は、ことし六月の2プラス2協議後のゲーツ前国防大臣の記者会見、あるいは、この九月に日米首脳会談が行われましたけれども、オバマ大統領からも野田総理に具体的な進展を求めているというふうに言われております。

 では、具体的進展とは何か。それは、公有水面の埋立許可を沖縄県知事が出して、工事が着工されること。そのために、防衛省は年内に環境アセスの評価書を出す方針というふうに言われております。

 防衛大臣にお聞きします。

 十月二十七日の参議院の外交防衛委員会で、辺野古移設について、沖縄県知事の公有水面埋立許可権を奪う特措法の制定は全然念頭にないと答弁をされています。特措法は選択肢にないという確認でよろしいでしょうか。

一川国務大臣 私が前に答弁したとおりでございまして、念頭にございません。

服部委員 ありがとうございます。

 それでは、藤村官房長官にお聞きします。

 十月二十八日の記者会見で、藤村官房長官は、この特措法の問題、今の時点でも将来においても念頭にないというふうに明言をされました。これは官房長官、きょう野田総理がおられたら野田総理に直接お聞きしたかったんですけれども、野田総理の名代として、政府の統一見解として、辺野古移設に関して特措法を初めとする強硬手段は将来にわたって一切排除していると、この国会の場ではっきりとおっしゃっていただけませんでしょうか。

藤村国務大臣 沖縄の皆様には誠心誠意御説明をし、努力している最中でありまして、特措法について全く念頭にございません。

服部委員 ありがとうございます。

 菅前総理も、予算委員会でこういうことをおっしゃっています。「決して沖縄の皆さんの声を無視した形で、特措法という言葉も出ましたけれども、そういった形で強引なやり方をするということは念頭に全くありません。」そして、北澤防衛大臣も、「菅内閣とすれば、そういう手法はとらないということであります。」というふうに、菅内閣としてはそうだということを明確におっしゃっております。

 今、防衛大臣と官房長官の方から同趣旨のことをおっしゃったというふうに思いますけれども、菅前政権のこの方針、これを野田政権に引き継ぐ、そういう理解でいいですね。念のためにもう一回御答弁をお願いします、官房長官。

一川国務大臣 お答えさせていただきます。

 今の件については、前内閣がそういう方針だということを私は十分知りませんでしたけれども、全くそれでよろしいというふうに思います。

服部委員 ありがとうございます。

 それで、年内に環境影響評価の提出をされるやに聞いているわけですけれども、新聞等の報道、いろいろ報道がありますけれども、先日、十月二十五日に、パネッタ国防長官との会談で、一川大臣は年内提出を確約したというような報道があるんですが、これはアメリカに対して確約をしたということでしょうか。

一川国務大臣 ちょっと正確にお話ししますと、十月の十七日に仲井真知事さんの方に出向いて、年内に環境影響評価書が提出できるように準備をさせていただきたいというお話をさせていただきました。それで、十月二十五日のパネッタ国防長官に対しても、年内に環境影響評価書を提出できる、そういう準備をします、日本の野田内閣としての基本姿勢ですということをお話しさせていただきました。

 ですから、今、新聞かテレビか知りませんけれども、その報道はちょっと正確ではないと思います。そういう準備をしますということをお伝えしたということでございます。

服部委員 確約はしていないけれども、準備はしますということを言った、こういうことですね。

 同時に、そのときの会談の中で、十二月までに沖縄の理解を取りつけたいというふうにパネッタ長官に言われたということも一部報道で出ているわけですが、沖縄の理解が評価書の提出の前提になるんでしょうか。そこはどうでしょうか。

一川国務大臣 そのことも正確に報道されていないと思いますが、沖縄の今回の環境影響評価書にかかわる環境影響評価法の手続、そういったものについては、期限を切って沖縄にお話をしているということは一切ございません。パネッタ長官も、アメリカ側の意向として、期限を切っているということは一切お話しされておりませんし、会見のときも、ある記者からそういう質問がありましたけれども、パネッタ長官はそれを否定しておりました。

服部委員 私の今の質問の、十二月までに沖縄の理解を取りつけたいという趣旨について、特に十二月とかいう期限はないという今の答弁ですか。

一川国務大臣 理解を求めるということは、環境影響評価書を提出する準備はさせていただくと。私が、理解を求めるというような表現を使ったのは、要するに、環境影響評価書の準備をさせていただき、それを提出する場合にも、沖縄県側と十分話し合いをさせていただいて、それで理解を求めたいということをお話ししたというふうに思います。

 ですから、沖縄県の知事さんを初め関係当局の皆さん方に、我々が準備したものを十分丁寧に説明させていただくということを前提にお話しさせていただいております。

服部委員 ということは、説明はするけれども、理解していただけるかどうかはまた別の話。ということは、要するに、理解がなくても出すときには出す、こういうことになるわけでしょうか。

一川国務大臣 環境影響評価書の内容について、沖縄県、知事さん以下の皆さん方の御意向がその場ですぐオーケーだということは、なかなかそれは難しいと私は思うんです。それは、その後の手続として、また知事の意見を言う手続がございますし、また、その知事の意見を受けて影響評価書を補正するという作業も残されているわけですから、そういうことで、私たちは、理解を求めるというのは、内容について理解を求めるというよりも、環境影響評価法に基づく手続について理解を求めるということでございます。

服部委員 私が聞きたいことは、環境影響評価法に基づいて、例えば、評価書を出したら、後、知事の意見が出てくるとか、そういう手続のことを聞いているんじゃなくて、この年末にもそういう評価書を出すんじゃないかと沖縄県民はかたずをのんで見ているわけですね。その提出について沖縄は少なくとも反対しているわけでしょう。これはもう御存じのとおりですね。その反対ということが賛成というふうに変わらなくても、とにかく出すんですねということをお聞きしているわけです。手続のことを聞いているんじゃなくて、そういう政治判断をお聞きしているわけです。

一川国務大臣 ですから、我々は、その提出するまでの間、今の影響評価書が、当然、作業が終えてくれば、それをちゃんと説明して、沖縄県側に丁寧に説明をさせていただく。期限を切って提出するといったことは一切言っておりません。

服部委員 次に行きます。

 アメリカの議会から米軍の方にマスタープランの提出を求めていると思うんです、この米軍再編、グアム移転等について。それで、この前、防衛大臣は参議院の外交防衛委員会で、環境影響評価書に影響を与えるような問題を把握することは大前提であるので、はっきりしないまま提出しても信用されないから、しっかりチェックしていきたいというふうに言われているんです。

 ということは、米軍が米議会に出すマスタープランを待って、そしてそれをきちんと防衛省として検証した上で環境影響評価については出す、そういう整理をされているという理解でよろしいでしょうか。

一川国務大臣 グアムに移転する、グアムにおける今の計画のことだと思いますけれども、我々は、沖縄の海兵隊でグアムへ移転する部隊構成というものが、まだアメリカ側として最終的に固まったものになっていないというお話を聞くものですから、まず、その移転する海兵隊の部隊構成をはっきりしてほしいと。それがはっきりしないと、沖縄に残る海兵隊の部隊の構成によっては環境影響評価にも影響しかねないということをお話し申し上げたわけです。

 ですから、パネッタ長官にも、そのあたりを早く決めていただきたいということと、グアムのいろいろな必要な予算は、我が方も予算措置しているわけですから、しっかりとそれを執行してほしいということをお願いしたわけです。

服部委員 もう時間がなくなってしまいまして、経産大臣にお聞きをいたします。

 福島市の渡利地区で、特定避難勧奨地点に指定をされなくて、今、住民から非常に不満の声が上がっております。

 国は、高さ一メートルで毎時三マイクロシーベルトというものを基準にされているわけですけれども、一方、南相馬市では、十八歳以下と妊婦を対象にして、高さ五十センチで毎時二マイクロシーベルト以上という基準で百六世帯、この特定避難勧奨地点に指定をされているわけですね。

 ところが、福島市の方は、そういう同じような地点が三百九世帯も該当しながら、指定をされていない。国は、あくまで一メーターの三マイクロだと言うんですけれども、片一方では、南相馬市では五十センチで二マイクロを指定しているにもかかわらず、指定しない。これはダブルスタンダードじゃないのかということで、非常に地元の方が怒っておられるんですね。特に、やはり妊婦とか子供の健康の問題というのは、これは大変な問題です。

 この前、議運でもチェルノブイリに行きました。私はちょっと行けませんでしたけれども、きのうは議運理事会で伊達の除染の現場も視察してきたわけですけれども、本当にこの深刻な放射能被害の中で、この基準を、もっと国が一貫した方針を持って、南相馬市と同じ基準で福島も適用すべきではないかというふうに考えますけれども、ぜひ大臣、所見をお伺いいたします。

枝野国務大臣 若干、ダブルスタンダードになっているという誤解を生じさせていることについては、しっかりと整理していかなきゃいけないと思っておりますが、国としては、一年間の積算線量二十ミリシーベルトという線で線を引いて、それを超えると推定される地点とその近傍地点について特定避難勧奨地点にしているということでございます。

 南相馬市についても、基準は国の基準、今の基準でございますが、近傍地点というのを具体的に特定するに当たっての便宜的な考え方として、南相馬市においてそういったものをおはかりになって、それが基準であるかのように伝えられておりますが、政府の基準は、あくまでも二十ミリシーベルトで、なおかつ、周辺地域の皆さんの地域の事情や家族構成など、諸条件を勘案して決めているものでございます。

 この福島市の渡利地区についても、そうした線に基づいた上で、その超えていると判明している地域が地理的に地域の端に位置していること、周辺住区の線量率が低いことなどから、まずは除染を優先して行った上で改めて測定をすることを当面の方針として、県や市とお話をさせていただいております。

中井委員長 服部君、時間が来ていますから、まとめてください。

服部委員 国のその基準の考え方はわかっているつもりなんですけれども、しかし、実際に南相馬市では、百三十一世帯のうちの八割の百六世帯は、五十センチの二マイクロで指定をされているわけですよ。それで福島はされていないわけですね。この二マイクロでも、年間でいくと十七・五ミリシーベルトという大変高い線量なんですよ。そこに本当に子供とか妊婦をほったらかしておいていいのかということですので、ここはぜひ検討していただきたい。

 そして、このチェルノブイリの表を見ていただきますと、一ミリシーベルト以上について、移住の権利地域というのを設定しているんですよ。移住したくない、離れたくない人はおってもいい、しかし、離れたい人はそういう権利がある。ぜひ、これはまた検討していただきたい。そのことを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

中井委員長 これにて服部君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 まず最初に、震災復興担当大臣にお尋ねします。

 今回の補正予算でも、被災地で活動するNPOに対する支援のスキームというのはいろいろあるかと思います。そして、現場のNPOの方から上がっている声として、いろいろな省庁にまたがっている、文科省だったり厚労省だったり、いろいろな省庁にばらばらにあるので、わかりやすく整理してほしいという声が大変多いわけです。

 今回の補正予算で、どういった被災地のNPO向けの助成のスキームがあるか、大臣からまとめて御紹介をお願いしたいと思います。

平野国務大臣 今回の災害に当たりましては、NPO等に、被災者支援、それから被災地の復興支援に大いに活用していただいておりまして、被災地の復興は、このNPOの皆様方の支援なくしては成らない、そういうお声も聞いております。

 その際、国の予算制度、例えば厚労省ですけれども、雇用創出基金事業を活用して被災者を雇用し、仮設住宅の孤立防止のための事業を実施しているNPOさん等もございます。こういったNPO等が活用できる予算につきましては、これまでもNPO等との意見交換を何回かやっておりまして、その場で説明をさせていただきました。

 第三次補正予算案につきましては、現在、NPO等が活用しやすいと思われる予算を復興本部で今整理してございます。これがまとまり次第、速やかにNPO等との会議の場に提供して、わかりやすく説明するとともに、ホームページ等々でもしっかり公表したいというふうに考えております。

山内委員 もともとNPOでずっと活動してきたような人であれば、ある程度行政の仕組みもよく知っていると思うんですけれども、今回被災地で新たにNPOをつくろうとか、今回被災を見て何か動きたいということで初めて活動を始めたような人はたくさんいらっしゃると思います。そういう人たちにわかりやすく広報していただけるように、文科省だから厚労省だからという縦割りにならないように、ワンストップでサービスするようなサービス、特にインターネット等を活用して、ぜひしっかりとサポートしていただきたいと思います。

 続きまして、「新しい公共」担当大臣にお尋ねします。

 先日、内閣委員会でも寄附金税制について質問させていただきました。当時、政務官から非常に丁寧に答弁いただきまして、これまでわかりにくかった点が大分明確になって、NPOの関係者の方からも大変感謝されたんですけれども、ただ、今度寄附金税制が変わるということを知らない人がまだ結構いる。あるいは、知っているけれども、何がどう変わるかわからない、どういう手続が必要かわからない。それを周知徹底する場が欲しいし、知らない人には教えるための努力、来年の四月からですから、もう余り時間もありません。そういった丁寧な周知徹底のための活動が必要だと思いますが、どういうふうにお考えでしょうか。

蓮舫国務大臣 お答えします。

 御指摘いただきましたように、まさに新しい公共の活動が広く広まるためにも、さまざまな発信というのがとても大切だと思っております。

 特に、寄附税制の拡充、これは草の根の寄附の促進を目的としているものですが、法改正をお認めいただきまして、来年の春から施行をされる。そのためにも、一つでも多くのNPO法人等によく中身を御理解いただき、より積極的に活用していただきたいと思っております。

 これまで、例えば、首相官邸のブログですとか、政府広報オンラインのホームページですとか、あるいは地方の説明会、十一月上旬、まさにこれからも行う予定にしております。あるいは、時事通信社のトップページにおけるバナー広告なども行っていると同時に、地方公共団体あるいはNPO支援組織等が主催する説明会も、今現在、全国各地で展開されていると承知をしております。

 ただ、委員御指摘のように、もっと広げるためにも努力をするべきではないかという御意見は私どもも認識をしているところでございますので、私も、できることがありましたら、さまざまな機会を活用して、寄附税制拡充の内容について、きめ細やかな情報発信をしていきたいと考えております。

山内委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 今回、補正の三次でも、新しい公共支援事業交付金、被災三県特定のものがついているようですけれども、こういったスキームを生かして、特に、被災地を、初めてNPOを始める人が非常に多いんだと思うので、そういう懇切丁寧な支援をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

 続きまして、防衛大臣にお尋ねします。

 今回、東日本大震災で大きな被害を受けた、自衛隊の施設も非常に大きな被害を受けて、特に航空自衛隊の松島基地等ではF2戦闘機十八機が海水につかってしまったという、自衛隊自身も被害を受けているわけです。

 さきの一次補正の予算の中で、水没してしまった十八機のF2戦闘機の修理が可能かどうかを調べるための分解調査に百三十六億円かけていらっしゃいます。修理に百三十六億だったらわかるんですけれども、修理できるかどうかを調べるためだけに百三十六億円の調査費がついている。十八機ですから、一機当たり七億五千万かけて、修理できるかどうかを調べるだけで七億五千万ですよ、一機当たり。

 これは、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。高過ぎませんでしょうか。

一川国務大臣 今先生がお話しのとおり、松島基地において、このたびの大震災におきまして、教育用の戦闘機F2が十八機水没したということなんです。

 この水没した十八機の調査費として、第一次の補正で確かに百三十六億円の要求をし、計上されております。これは確かに私自身もすごい金だなというふうに思いました。

 いろいろと聞いてみますと、この調査というのは、この戦闘機のエンジンとか航空機の構成品をすべて分解して調査する、再利用できるかできないか等も含めて。そういうことでこれだけの経費がかかると一応積算で出していたということなんですけれども、これは、結果的には、実は、十八機すべてを再生させるということじゃなくて、最終的に六機を修復しましょうということで、最終的に四十六億円の調査費で執行するということに決定いたしました。

 ですから、約九十億ですか差額があるわけですけれども、それは、当然ながら、国庫に返納するというのか、不用額として計上するというような格好になろうかと思います。

山内委員 今回、十八機で、十二機はオシャカになってしまって、六機を修理ということですけれども、見ると、六機修理するのに八百億円かかる、新聞報道によるとですけれども。六機で八百億、一機当たりにすると大体百三十三億円。これは、F2の新品で平成十九年に買ったとき、値段は毎年変わっているんですけれども、平成十九年の単価で、新しいものを買ったときの単価が百三十二億円です。修理すると百三十三億円です。

 これは、素人考えでもちょっと高いんじゃないかなと。電器屋さんに行って、電気製品、二万円のテレビを修理したら二万円かかりますといったら、恐らくほとんどの人が新品を買うと思うんですよね。

 これは、何であえて修理をし、そして、その修理費がこの水準で本当に妥当なんでしょうか。大臣のお考えをお聞きします。

一川国務大臣 先ほどお話し申し上げましたように、最終的にというか、水没したものは、六機、修復して使うということに決めたわけでございますが、これは、今エンジン等々のいろいろな部品を再利用するという前提で積算したところ、一機当たり約百三十億ということなんです。それで、それの修理費として八百億という格好で、第三次補正予算として今、要求の中に入れさせてもらっているということです。

 これは、では、これでなぜ大丈夫なんですかということになるんですけれども、実は、この戦闘機の予備機というのが三機調達できるということになりまして、それでトータル九機になるわけですけれども、それでも当然パイロットのいろいろな養成ということが必要ですから、米軍の方にパイロットの養成というものもある程度お願いをしながら、最終的に十八機当時の技量が落ちないように持っていきたいというふうに思っております。

中井委員長 一川大臣、質問者は、技量が落ちる落ちないじゃなしに、百三十億なら買っても一緒じゃないかと言っているわけです、百三十億で買えるじゃないかと。

一川国務大臣 それは、我々の今の調べでは、直近の価格では、百三十七億七千万円という一応価格があるんです、取得価格。だから、それよりも、再利用した方が一機当たり約八億弱安くなるということなんです。

 そういうことで、できるだけ、今は厳しい財政の中ですから、それは少しでも安くするという前提で作業を進めているということでございます。

山内委員 エンジンを再利用するんだったらもっと安くてもいいような気もしますし、何か、一回塩水につかった戦闘機に乗れと言われたパイロットの気持ちというか、車だったら走っていてとまっても死にはしませんけれども、飛行機だと空の上ですから大変……(一川国務大臣「委員長、済みません、間違えました」と呼ぶ)どうぞ。

一川国務大臣 申しわけないです。

 今現在、このF2という戦闘機は生産が既に終了しているということなんです。そういうことなので、現時点でこれを本当の新造機ということで取得するとすると、一機百五十億かかるということなんです。

 それで、我々は今、先ほど、再利用すれば、分解したものを修理して、そうすれば一機百三十億で一応でき上がるということなので、一機当たり約二十億円の一応節減になるという前提で予算要求をさせていただいたということでございます。

山内委員 若干まだ納得はいかないんですけれども、十八機が、今回三機補充して九機になると。そうしたら、本当にこれから先も、十八機体制、訓練用に要るんでしょうか。例えばフライトのシミュレーターとか昔よりも大分発達していると思いますけれども、補充は今後どういうふうにお考えなんでしょうか、このなくなっちゃった分ですね。

一川国務大臣 ですから、今、分解して再利用するものが六機、それから、従来からある、予備機として持っているものは三機、合わせて九機。

 それ以外のことについては、パイロットの養成については、米軍側の協力でパイロットの養成に入るということで、その十八機、教育用として使っていたときのパイロットの養成には支障のないようにしていくということでございます。

山内委員 まだ若干納得はいっていないんですけれども、例えば、来年度予算でFXの四機取得費用が入っていますね。来年度予算、五百五十一億円。一機当たり百三十七億円で新しいものを調達できるわけなんですけれども、新しい飛行機を買えるのに、この異常な修理代の高さ。やはり何らかの工夫が必要だと思いますし、生産中止になってからそんなにたっていないはずですから、もう一回再検討していただいた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、もう一度大臣にお伺いします。

中井委員長 時間が来ておりますので、防衛大臣、座ってください。

 先ほどからの山内君の質疑については、もう少し当局ときちっと数字を合わせて、合理的な説明をあしたの理事会へお出しいただくように要請して、山内君の質疑を終わります。

山内委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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