衆議院

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第10号 平成24年2月16日(木曜日)

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平成二十四年二月十六日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 笹木 竜三君 理事 武正 公一君

   理事 西村智奈美君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      網屋 信介君    石関 貴史君

      石津 政雄君    磯谷香代子君

      今井 雅人君    打越あかし君

      江端 貴子君    大西 健介君

      奥野総一郎君    金森  正君

      川村秀三郎君   木村たけつか君

      岸本 周平君    櫛渕 万里君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      杉本かずみ君    高井 崇志君

      高橋 英行君    玉木雄一郎君

      玉城デニー君    仁木 博文君

      橋本 博明君    花咲 宏基君

      藤田 大助君    馬淵 澄夫君

      皆吉 稲生君    村越 祐民君

      室井 秀子君    山岡 達丸君

      山崎  誠君    山田 良司君

      湯原 俊二君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    佐田玄一郎君

      坂本 哲志君    橘 慶一郎君

      馳   浩君    平井たくや君

      山本 幸三君    大口 善徳君

      東  順治君    笠井  亮君

      高橋千鶴子君    内山  晃君

      阿部 知子君    重野 安正君

      山内 康一君    中島 正純君

      浅野 貴博君   松木けんこう君

    …………………………………

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)  岡田 克也君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       枝野 幸男君

   国土交通大臣       前田 武志君

   環境大臣         細野 豪志君

   防衛大臣         田中 直紀君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (復興大臣)       平野 達男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松原  仁君

   国務大臣

   (国家戦略担当)     古川 元久君

   国務大臣         中川 正春君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     磯谷香代子君

  金森  正君     藤田 大助君

  岸本 周平君     網屋 信介君

  佐々木隆博君     玉城デニー君

  玉木雄一郎君     高井 崇志君

  仁木 博文君     奥野総一郎君

  馬淵 澄夫君     皆吉 稲生君

  山岡 達丸君     高橋 英行君

  佐田玄一郎君     平井たくや君

  野田  毅君     坂本 哲志君

  東  順治君     大口 善徳君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

  阿部 知子君     重野 安正君

  松木けんこう君    浅野 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     岸本 周平君

  磯谷香代子君     今井 雅人君

  奥野総一郎君     仁木 博文君

  高井 崇志君     石津 政雄君

  高橋 英行君     山岡 達丸君

  玉城デニー君     川村秀三郎君

  藤田 大助君     金森  正君

  皆吉 稲生君     木村たけつか君

  坂本 哲志君     野田  毅君

  平井たくや君     佐田玄一郎君

  大口 善徳君     東  順治君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

  重野 安正君     阿部 知子君

  浅野 貴博君     松木けんこう君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     玉木雄一郎君

  川村秀三郎君     佐々木隆博君

  木村たけつか君    馬淵 澄夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十四年度一般会計予算

 平成二十四年度特別会計予算

 平成二十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計予算、平成二十四年度特別会計予算、平成二十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。質問をさせていただきます。よろしくお願いいたしたいと思います。

 私は、きょうは、農業問題、そしてTPPに反対の立場からの質問をさせていただきたいと思います。

 まず、財務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 資料の一をごらんください。「強い農業づくり交付金」予算額の推移というのがあります。強い農業づくり交付金というのは、自由民主党が十七年につくりました。それまで、農業は非常に補助金が多い、補助金農政ではないかというような批判があったということで、それまで百七十五あった農業の補助金を七つの交付金に分類いたしました。そして、その七つの交付金の中でさまざまな事業を申請していただくというものであります。

 その七つの交付金の中でも、果たしてこの事業は競争力の強化になるのか、あるいは規模拡大につながるのか、流通の合理化につながるのか、そういった三つ、四つの視点でポイント制にしまして、そしてそのポイントで全てを審査していった。それをインターネットで公表して、そして公明正大な交付金制度にしたというのが、この強い農業づくり交付金であり、これは私たちにとりまして本当にすばらしい交付金であると、自由民主党としても自負をしておりました。

 ところが、民主党政権になりまして、どういう勘違いをされたのか、これが無駄であるというようなことになりまして、徐々に予算が減らされてまいりました。私たちにとってみますれば、これは民主党さんがいうところのいわゆる一括交付金の農業版、しかも公明正大なものでありますけれども、この予算が減らされてまいりました。

 平成十七年、四百七十億ありました。そして、自民党政権のときまでは、補正も含めて大体三百五十億から四百億をキープしておりました。しかし、平成二十二年度、百四十四億になりました。平成二十三年度は、さらにそれが四分の一あるいは五分の一近くに減らされまして、三十一億ということになりました。そして、平成二十四年度の当初予算では、さらに減らされて二十一億円ということになっております。

 しかし、ここに来まして、平成二十三年度の第四次補正予算で二百四十五億という、これは当初予算の八倍もの補正予算がついているわけであります。私たちは不思議でなりません。

 それから、次のBを見ていただきたいと思います。農業予算というのは、かんがい排水あるいは土地改良を含め、いわゆる農業土木、公共的な公共事業と、それから所得補償あるいは担い手を育成するための予算、非公共事業、この二つで成り立っております。ですから、Bにあります公共事業部門とそれから非公共事業部門を足し合わせると、Aの農林水産省の当初予算ということになるわけであります。その中で、農業農村整備事業というのがあります。これは土地改良事業が中心でございます。

 民主党は、コンクリートから人へ、あるいは、米が余っているのにまだ土地改良しているではないか、圃場整備をしているではないかというような論法で、この公共事業部門というのを、政権をとって以来、減らしてまいりました。八千億から六千億ありました予算が二千億になりました。そして、判で押したように、平成二十二年からは二千百二十九億円、二十四年度まで続いております。私たちは、これは農産物を生産する手段として必要なものである、必要最低限度はやはりつけるべきであるというような主張をしておりましたけれども、しかし、徐々に徐々に、こうやって減らされてまいりました。

 ところが、今回の第四次補正予算、右の方を見ていただくとわかりますけれども、農業体質強化基盤整備促進事業という名称で八百一億円の予算がついております。これは、中身を見てみますと、土地改良と変わりません。土地改良事業です、あるいは農業土木です。この予算を、いわゆる公共部門を非公共部門につけかえた。これまでどんどん減らしてきた農業基盤整備事業がいきなり八百億円の補正がつく。現場は非常に混乱をしております。

 財務大臣にお伺いいたします。

 こういった年度末になって、補正予算で当初予算の八倍もつける、あるいは四倍も五倍もつける。しかも、それは緊急的なものではない、災害が起きたものではない。こういう予算のつけ方というのは適正なんでしょうか、適正ではないんでしょうか、あるいは普通あることなんでしょうか。

    〔委員長退席、武正委員長代理着席〕

安住国務大臣 おはようございます。

 食と農林漁業の再生というのは、与野党とも、これは緊急に必要であるということは認識をいただいていると思います。

 我が党としても、昨年の十月に基本方針・行動計画というのが策定されまして、総理を本部長とする食と農林漁業の再生推進本部、そういうところでの、いわば農業再生の再構築ということで新しく戦略を設けたことに基づいて今回の補正予算の措置をとらせていただきました。

 先生も御存じだと思いますが、十二月に農林水産委員会においても、国内農林水産業の構造改革の努力を加速せよと。これは、政府を挙げて対応するということは、もちろん予算措置を伴う対応をするようにという御指摘だったと思います。そうした点から、第四次補正予算において、これに基づく予算措置ということで、今先生御指摘のあったような予算措置をさせていただきました。

 特に、この八百一億につきましては、いわゆる土地改良の中でも水利施設の補修とか、つまりかんがい施設がかなり老朽化をしているところについての更新支援事業ということでございまして、そういう点からいえば、自民党にも賛成をしていただきましたが、適切な措置であったのではないかと思っております。

 なお、土地改良全体の予算が平成二十二年から、五千七百億円当初あったのが確かに約半減をしております、二千百億円ずつですね。これは、農林大臣からまたお話をいただければと思いますが、新たな農業所得補償等の施策の中でこの予算というものを充当することで、いわばインフラの整備も重要なことであることは十分わかりますが、それぞれの集落の維持や、やはり中山間地の農家の皆さんに対する対応をしっかりするようにということで組み替えたということは御理解いただきたいと思います。

坂本委員 今言われた食と農の再生のための行動計画、これそのものの位置づけが非常に曖昧なんですよ。これは後で質問をいたします。

 今財務大臣が言われました八百一億円、かんがい用水、あるいは畦畔、いわゆるあぜ道を除去して規模拡大するようなものですね。これは公共事業ではないんですか。

 公共事業、非公共事業の分類の仕方というのは、公共事業の方は、土地改良あるいは建物あるいは集落排水事業、こういったものが公共事業です。そして、非公共事業に分類されるものは、これはそのほとんどが農業者に対する戸別所得補償制度ですよ。あるいは担い手育成のための制度ですよ。いわゆるソフト部門です。所得安定部門です。そのために公共事業と非公共事業を分けている。

 しかし、今言われた、かんがい用水、かんがい排水事業、あるいは畦畔を除去しての土地拡大事業、これがなぜ非公共事業の分野に入るんですか。これは余りにも、あなたたちが、公共事業あるいは農業土木を減らさなければいけない、そういうことだけに拘泥して、そして無理やりといろいろな理屈をつけて非公共事業部門にこの予算をつけかえた。これは、予算の編成上も大変な問題があると思いますけれども、いかがですか。

鹿野国務大臣 公共事業と非公共事業の違いにつきましては、従来から、公共事業は一般的に効用が長期に及ぶ社会資本の整備を実施する事業、こういうふうなことで、公共事業以外の事業は、公共事業のように効用が長期に及ぶ社会資本の整備以外のものとしてその時々の政策課題に応じて行う事業、こういうふうなことでございまして、どちらかというと、先生一番御承知のとおり、大きい一つの事業においては公共事業という位置づけで、どちらかというと規模の小さい事業については非公共事業というふうな扱いの中で、今日まで取り組んできたものと承知をさせていただいているところでございます。

坂本委員 八百一億円が小さい事業だとは思いませんね。それから、社会資本の整備が公共事業でしょう。かんがい排水あるいは畦畔の除去による大規模化、これは社会資本の整備そのものではないですか。非公共事業に分類すること自体がおかしいんですよ。

 さらに質問を続けます。

 こういうことで、地元で、それぞれの地域でどういう現象が起きているかといいますと、昨年の暮れ、十二月の二十六日から二十八日にかけて、土地改良事業団、今で言う水土里ネット職員の幹部の方々がほとんど県庁その他のところに呼ばれました。そして、これだけの、八百億円の予算がつくから、各地域、それぞれ申請をしてくれ、出してくれというようなことであります。昨年の暮れですよ。

 そして、一月六日に、またみんな県庁の方に呼ばれました。そして、県庁担当者あるいは農政局担当者が言うのには、一月の十日までに、あと四日以内に申請をしてほしい、こういう状況ですよ。現場はこのことでどれだけ混乱したか。そして、これまで公共事業そのものは少なくなっていくであろうというような思いの中でいたのに、結果として、今まで採択されなかった事業を少しばかり規模を縮小して、それにのせかえて申請しているというような状況なんです。ですから、立派な公共事業である。そして、それだけ、年末と年始にかけて大変な混乱をしている。

 これは、計画的な農政あるいは予算の効果的な執行という上では、大変な問題があると思いますけれども、いかがですか。

鹿野国務大臣 財務大臣からもお話がありましたとおりに、この四次補正におきましてこういう強い農業づくりの交付金、あるいはまた農業農村整備関連予算につきまして計上させていただいたということは、基本的に、この四次補正の位置づけといたしましては、安全、安心を確保するというふうなことも一つの考え方としてその中には含まれておるわけであります。

 そういう意味で、老朽化等々の設備、施設、そういうものに対して、できるだけ早く対応しなきゃならない、あるいはまた、地域の要望も非常に強いというふうなことから、基本的に、何とか早急に取り組めるものの施設整備、あるいはまた農閑期における、雪国のところは別でございますけれども、農業者がみずからそういう施工に活用できる、そういうことに対して、年度内に取り組めるようなもの、また、その見込みが高いものについて実施していこうというふうなことで、このように計上させていただいたということでございます。

坂本委員 農林水産大臣がどんなにいろいろな答弁をされても、現場の実態というのをお知らせしますと、結局、これは選挙運動に使われているんですよ。

 私の選挙区では幸い民主党の議員の方はいらっしゃいませんけれども、隣の選挙区から民主党の議員の方が来て、今度出馬予定の私の選挙区の民主党議員を連れて各町村長を回る、そして各土地改良を回る。そして、こうやって自分たちが予算をつけたから、とにかく申請をしてくれ、自分たちがこうやって今やっているんだというようなことを言いながら、まさにその八百億円を一つの手段にして選挙運動をやられている。公金を使った選挙運動ではないですか。それはおかしいではないですか。

 そういう実態を見るときに、どう解釈されますか。(発言する者あり)

武正委員長代理 御静粛にお願いいたします。

鹿野国務大臣 私どもは、選挙運動というものを意識して予算計上したのではございません。本当に、今日の各地区におけるところの、そういう実態、実情というふうなものをしっかりととらえさせていただいて、そして現場の声を聞かせていただいて、この計上をさせていただいたということだけは明確に申させていただきたいと思います。

坂本委員 それだったら、当初予算できちっと計画的にやるべきですよ。それをやらないで、第四次補正で、年度末になっていきなりつける、これは無駄遣いの何物でもないじゃないですか。(発言する者あり)

 今民主党の方から、自民党、あんたたちがやってきたことではないですかというふうにやじが飛びました。悲しいことですね。自民党がやったから、あなたたちもやっていいんですか。そういう論法ですか。

 一九九三年、細川総理が、ガット・ウルグアイ・ラウンドで米の一部自由化を容認しました。そして、それに対して批准をしなければならなかった。批准をするときは自社さ政権でした。自社さ政権で批准をしなければならないので、急遽、これは泥縄と言われても仕方がないかもしれないけれども、向こう十年間で六兆百億円、予算を組んだんですよ。しかし、その中身はというと、農業土木の前倒し、あるいは植物園の建設、あるいは農村都市交流事業ということで温泉の建設、こういったことばかりだったんですよ。そして、そこに利権が生まれたんです。それで、いろいろな選挙にも使われたんです。今、連立を組んでいる与党の方が、実際テレビで、あのときはやり過ぎた面があったというふうに言われました。

 私は、このままだったら日本の農業はだめになるし、日本の予算そのものもだめになる、そういうことで、自民党公認がいましたけれども、私ごとで申しわけないけれども、無所属で立候補したんです。そして、有権者の皆さん方の賛同を得たんです。

 今、それと同じような図式が民主党の手によって行われているではないですか。一九九三年あるいは二〇〇〇年代の前半に行われたことが、今、民主党の手によって行われている。選挙のために、あるいは利権が発生する、こういうような志の低い政党にいつなってしまったんですか。

 岡田副総理、農林大臣はいいですよ。私は、岡田さんは、非常にそのかたくなな姿勢、あるいは原理主義と言われるまでのいろいろな信念に対して共感を持っています。こういうような政党じゃなかったはずだ。こういうような農業予算じゃなかったはずです。なぜ、こんな志の低い、こういうことになってしまったんですか、こういう予算のつけ方になってしまったんですか。自分の考えとして意見をお伺いしたい。

岡田国務大臣 今回の補正の中身がそういった議員の御指摘のようなものであるというふうには私は考えておりません。

 ただ、一般論として申し上げると、予算は国民の税金であります。それが特定の政治目的のために使われるということはあってはならないことで、お互い議会人として、そういうことにならないように、しっかりと国会でのチェックも含めてやっていかなければいけないというふうに考えております。政府としても、そのことは常に念頭に置いてしっかりと、私も行政改革担当ということもございますが、対応してまいりたいというふうに思います。

坂本委員 全く計画的な農業政策というものが行われていないんですよ。その場しのぎなんですよ。そして、政策そのものもやはりその場しのぎでつくられているんです。

 資料二をごらんください。農業の政策というのがいかにしてつくられているか、そしてそれを進行していかなければならないか。

 平成十一年に食料・農業・農村基本法というのができました。その食料・農業・農村基本法のもとにおいて、五年に一度、食料・農業・農村基本計画をつくることになっているんです。その五年に一度の、五年間の計画の中で日本の農政というものを進めていくわけです。

 しかし、今回の食と農の再生のための行動計画、平成二十二年、これは鳩山政権だったと思いますけれども、そのときに五カ年計画がつくられた、しかし、それにもかかわらずこの行動計画というのもつくるようになった。それは、EPAを初めとする高いレベルの経済連携に対処するためというふうに言われておりますけれども、それはTPPを前提にしてつくられたものではないんですか。どういう意味でつくられたんでしょうか、どういう定義で。

 それから、その次の資料三を見ていただきたいと思います。

 菅総理が突然TPPを言い出したのが、おととし、二十二年の十月一日であります。そして、包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定したのが、その後、十一月であります。そして、その十日後、第一回のこの行動計画のための会議が開かれているんです。そして、年が明けて、途中で三月十一日に大震災があったにもかかわらず、急いでこれが取りまとめられて、そして今回のハワイのホノルル・APECサミットまでに取りまとめられているんですよ。

 食料・農業・農村基本計画という中で進めなければならないのに、なぜ、これだけ急いで、しかもこの時期にこの計画をつくって、その計画に基づいて第四次補正予算で二百五十億、八百億という大量の補正を組まなければいけないんですか。補正需要がどこにあったんですか。

鹿野国務大臣 基本的に、最初の、前段の先生からの質問でございますけれども、どういう理由で行動計画、こういうふうな基本方針を打ち出したかということでございますが、私が一昨年このポストに就任したときに、二十年前に、正確に言うと二十二年前にも、自民党時代、この農林水産大臣のポストについたことがございました。そのときに比べますと、いろいろな意味で農林水産業そのものが、事態が本当に深刻な状況になっているなというふうなことから、十年間くらいの一つのスパンの中で思い切った見直しを図っていかなきゃならない、こういうふうなことを考えたのでございます。

 しかし、実情を改めて見ますと、そういう状況をそんなに十年間と悠長なことを言っておられない、何とか五年間で新しい日本の農業のあり方、第一次産業の姿というものをつくっていかなきゃならない、このようなことから、食と農林水産業の再生実現会議というふうなものを設置いたしまして、いろいろ専門家の方々に議論をしていただいて、そしてまとめさせていただいたということでございます。

 それから、TPPの問題につきまして後段言及がございましたけれども、TPPについては、御承知のとおりに、交渉参加に向けていろいろと協議をしているという段階でございます。

 また、経済連携というふうなものについては、当然、二〇二〇年におきましてFTAAPを何とか構築していきたい、こういうような考え方に立って、今後どうやって日本の国の成長戦略をこれから推進していくかという、この位置づけの中での包括的経済連携というふうなものの考え方を示させていただいたということでございますので、どうぞこの点は、TPPとの絡みというふうなことではないということは御理解をいただきたいと思います。

坂本委員 補正需要です。今、補正需要のことを一番最後に聞きました。

鹿野国務大臣 そこで、先ほど申し上げましたとおりに、補正につきましては、いわゆる地域の現場の声が非常に高いというようなこと等々、そして、先ほど申し上げましたけれども、四次補正につきましては安全、安心の確保というふうなことも位置づけされているわけでありまして、老朽化等々の施設等々に対してはできるだけ早く対応していかなきゃならない、こういうふうな考え方から、現場の声に応えていくということも含めて、予算を計上させていただいたということでございます。

    〔武正委員長代理退席、委員長着席〕

坂本委員 それでは、非常に要望が多い土地改良事業あるいは農業かん排水、また農業集落排水事業、そして強い農業づくり交付金、こういった事業というのはこれからも重視するということですね。

鹿野国務大臣 基本的に、結論を申し上げますと、強い農業の交付金、あるいはまた農村、農業のいわゆる整備事業というふうなものは、これからも体質強化ということを考えたときには、やはりきちっと常に意識をしてやっていかなきゃならない、こういうふうな考え方でございます。

 ただ、あえてまた申させていただきますと、政権交代によって戸別所得補償制度というふうなものを導入する際に、農林水産省の枠内でいわゆる戸別補償制度を位置づけさせていただいたというようなことから、他の予算に影響を及ぼしたということは、これはそのとおりでございます。

坂本委員 大臣が強い農業づくり交付金は重要と言いながら、一方で、四百億あった交付金が二十億ですよ、平成二十四年度の予算で。二十分の一ですよ。こういうようなことをやっていて、そして一方でこれは重要だ。それは答弁として通らないというふうに私は思います。

 それから、五年間の食と農の再生計画、その一年前、平成二十二年度に五カ年間の食料・農業・農村基本計画というのをつくっているんですよ。だから、それを微調整するなり、それに基づいて検討していけばいいのではないですか。

 そして、専門家の方々に協議をしていただいたといいますけれども、歌手の加藤登紀子さん、専門家ですか。あるいはセブンイレブンの社長さん、専門家ですか。新日本製鉄の役員の方、これは専門家ですか。こういった方々に審議をしていただいて、そして非常に粗雑で大ざっぱなものしかできていないんです。

 そして、もう一つ、重要な点を私は指摘します。

 この中で、平成二十二年につくられた食料・農業・農村基本計画と今回の食と農の再生行動計画に大きな違いがあります。それは食料自給率の点です。

 食料自給率の点で、食料・農業・農村基本計画はこういうふうな記述になっております。経済力さえあれば自由に食料が輸入できるという考え方から脱皮しなければならない。平成三十二年度までに五〇%にまで自給率を引き上げる。四方を海に囲まれた島から構成されている狭い国土条件下で、一億二千万人の国民を養う我が国において、農業は国家の最も基本的な責務であるというふうに記されているんです。

 今度つくられた我が国の食と農の再生のための基本行動方針、どのように記述されているか。今後、農林水産省は、地域と意見交換を行いつつ、施策を着実に実施し、食料自給率の向上を初めとする食料・農業・農村基本計画等に定める目標を達成していくものとする。そして、食料自給率五〇%というのは、書かれてはいるけれども、括弧の中に閉じ込められているんですよ。

 食料自給率五〇%というのを二十二年に高らかに掲げておきながら、三十二年度までに達成するとこれで約束をしていながら、何で今回の行動計画では括弧書きの五〇%になっているんですか。一歩後退されたんですか。食料自給率の問題について聞きます。

鹿野国務大臣 今の点は、前文というのでしょうか、「はじめに」というところにございまして、基本的に、(4)の「本基本方針は、」というところで、「「食料・農業・農村基本計画」に基づく食料自給率五〇%の達成等を目指していく。」こういうふうなことを私どもとしてはその中に盛り込ませていただいておるわけでございます。五〇%を目指すという考え方につきましては、何ら変わったものではございません。

坂本委員 食料自給率五〇%、何ら変わったものではないという答弁をいただきました。

 しかし、昨年、仮にTPPに入った場合、あるいは国境措置がなくなった場合、農林水産省が同じような試算をしております。それによりますと、食料自給率が一三%になる、あるいは、農林水産物の減少が四兆五千億に達する。

 一方で二十二年の食料・農業・農村基本計画では五〇%というのを高らかにうたい上げながら、基本行動計画ではそれが薄められている。そして、仮に国境措置が撤廃された場合に一三%になるという、同じ農林水産省がこういうような試算を出している。この整合性、このことに対してどう説明されますか。

鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、基本的に、食料自給率五〇%を目標としていくということは、何ら変わったものではないということを申させていただきたいと思います。

 それから、いわゆる試算の件でございますけれども、これはまさしく全世界において関税撤廃になった場合に、どの程度の影響があるかということを試算を出させていただいたというふうなことでございまして、その場合は、何ら施策も行わないということが前提になっているわけでございますので、この点はそのままの数字を出させていただいたということでございます。

坂本委員 それでは、三つのケースが考えられるわけですね。

 二十二年の食料・農業・農村基本計画当時に掲げられた五〇%に引き上げるための工程表、これが一つあるはずです。

 そして、食と農の再生行動計画、この中で、EPAを初めとするさまざまな高いレベルの経済連携に対して対処するために、それでも五〇%を維持すると言われた。この五〇%を維持するための工程表をつくらなければならないと思います。

 それと、完全撤廃を全世界がした場合、あるいはTPPに入った場合、一三%という自給率になるということがここで試算になっている。それでも大臣は、五〇%を維持する努力をすると言われた。そうしたら、TPPに入った場合に、あるいはそれ以上の経済連携をした場合に、五〇%を維持するための、あるいは五〇%に引き上げるための工程表をつくらなければならない。

 この三つの工程表をつくってください。そして、出してください。

鹿野国務大臣 基本的に、先生、TPPにつきましては、まだ、具体的に交渉に参加をするということも決めたわけではございません。

 それからもう一つは、私どもといたしましては、この五〇%というふうなものを目指していくということにおきましては、経済連携というものの中におきましても、高いレベルということでございますけれども、センシティブ品目に配慮をしながらというような考え方もその中に盛り込まれているわけであります。

 そういう意味で、私どもとしては、今後とも、この十年間というふうな中におきまして何とか五〇%を目指していきたい、そういう考え方に立っているところでございます。

坂本委員 TPPの参加を前提としたものではないと言いながら、農林水産省の方で自給率一三%という試算が出ているんですよ。それでも大臣は、十年間の間に五〇%を維持するということなんです。

 ですから、委員長、これはやはり二つの試算、工程表を出していただきたいと思います。

 一つは出ています。平成二十二年の食料・農業・農村基本計画の試算、自給率五〇%にするという工程表は出ております。これは、ゴマとかあるいは菜種油とか、そういったものの自給率を高めて、そして五〇%にする、そういう案です。

 そして、その次の、EPAを初めとするさまざまな高いレベルの経済連携に対応するための行動計画、それでも、五〇%を維持する、あるいは五〇%に引き上げるということですから、やはりその工程表が必要なわけです。

 そしてもう一つは、TPPへの参加を前提とするものではないと言われながらも、一方で五〇%を維持するというふうに言われていらっしゃるわけですから、これは、TPPに参加した場合に、では何と何を守って五〇%を維持するのか、どういう作物を引き上げて、そして五〇%に引き上げるのか、この工程表は出すべきだと思いますが、委員長、よろしくお願いします。

中井委員長 いろいろな議論があるようですので、理事会で協議いたします。

 鹿野農水大臣、何か言うことはありますか。

鹿野国務大臣 このTPPに関しましては、今先生くしくもおっしゃられたとおりに、いわゆる市場アクセスにつきましてどういうふうなことを日本の国に求めてくるのか、それからまた各国の生産というものがどういう状況にあるのか、あるいはどれだけの輸出力を持っているのかというようなこと等々は当然各国によっても違うわけでございまして、なかなか具体的な数字を打ち出していくということは難しい点もあるということは御承知いただきたいと思います。

坂本委員 それでも、総論で五〇%に引き上げると言われているんですから、それはある程度の制度設計をしておかなければ、そんな弱腰で、あるいはそんな要するに何もないような無策の中でTPPの事前交渉に向かっても、結局押しやられるだけですよ。何にもなくなる。私はそう断言しますので、ぜひその工程表を出していただきたいと思います。

 そして、私がこの食と農の再生のための行動計画、ざっと読んだだけでも、どうしても現実と乖離している部分、あるいは不備な政策、そして不適切な記述、こういったものが少なくともまず三カ所見つかりましたので、思いましたので、そのことを報告させてもらいます。

 資料五をごらんください。この中で、黒丸はこの行動計画の中に書かれているものです。かぎ括弧は、これは私の意見として書かせていただいたものですので、御了承いただきたいと思います。

 まず一つは、農地集積の推進。規模拡大推進のための中山間地で十から二十ヘクタール規模の農地とする。北海道を除く本州、九州、四国の中山間地で十ヘクタール―二十ヘクタールを農地とできるところがどれだけありますか。現場は笑っていますよ、何だこれはと。この文言一つ見ても、この行動計画の信憑性が問われる、真剣度が問われるというふうに私は思います。ほかの農家の方も全部そう言っていらっしゃいます。

 そして二番目、新規就農の増大。就農前後の青年就農者に給付金を給付する。四次補正二十三億円、二十四年度当初百三十六億円。年間一人当たり百五十万円の交付。立派なことですよ。青年就農者、新規就農者を育てなければならない、これは非常に大きな私たちの課題です。であるからこそ、私たち自由民主党は昨年に、担い手総合支援法という、新規就農者を育てるための法律をつくって提出したんです。

 新規就農者をふやせばいいというものではないんです。新規就農者をもしふやそうとするならば、一方で、リタイアしていく方、あるいは経営移譲する方、そういった方々にどういう処遇をするのか、退職金的なものを出すのかどうか、そういったものを両方考えながら世代間のスムーズなリレーをしていかなければ、農業の持続というのはないんです。ただ新しく入ってくる人だけを、年間百五十万円やってそして育てればいいということではないんです。

 そして、農業にも、米、麦があります、野菜があります、果樹があります、あるいは畜産がある、酪農がある、その他地域の特産物がいっぱいある。それぞれの農業の作目の分野でどういう後継者を育てるのか、何人育てるのか、そういう計画性がなければだめなんです。そういう計画性がないままに、年間百五十万円交付しますので新規就農してください、これはばらまき以外の何物でもないですよ。五年たっても十年たっても、こんな程度の新規就農対策では絶対結果は出ません。ぜひこれは、きちっと計画的な、法律をつくって、その法律の担保に基づいて、そして予算化すべきことであるというふうに思います。

 そして最後に、六次産業化、成長産業化、流通産業化。この中にこういう記述があります。六次産業化の先達、民間専門家を、ボランタリープランナーとか六次産業化プランナーとか書いてありますけれどもよくわかりませんが、活用した農林漁業者の経営を改革というふうにあります。この記述は、生産者に対して非常に軽蔑した、あるいは高圧的な文言であると私は思います。

 それは、一握りの人たちが、やはり自分たちが生産者でありながら、ヒット商品をつくった、あるいは経営を改善した、そして直売所をつくった、あるいは六次産業化した、そういう方々はいらっしゃるでしょう。しかし、多くの農家の方々は、やはり自分たちは、いかに安全で安心して、そして消費者に喜んでもらえるか、そういうのを営々と、黙々とつくってきている生産者ばかりなんですよ。いわゆる農の達人なんです。農の名人なんです。そこに、農と季節、あるいは農と土、農と家族、農と集落、あるいは農業と社会、そういったもののかかわりを持ちながら一生懸命やっている人なんです。これは、そういう人たちを対象にした形で農林漁業者の経営を改革というふうに訴えているとしか私は受けとめられません。

 実際やってみてください。こういうことでは感情的な対立を生み出すだけです。何らここに生み出されるものはありません。それは、JAとかそのほかの第三者機関がいろいろな形で経営に乗り出すということであるなら別ですけれども、なぜこういうことで農業者の改革という上から目線の文言をつけなければならないんですか。この三点についてお答えください。

鹿野国務大臣 まず最初に、中山間地におけるところの十から二十という形態を目指していくということについては、現実離れじゃないかというようなお話でございますが、これは御承知のとおりに、実現化におきましてもいろいろ御議論いただいての考え方を取り入れさせていただいたというようなことでございます。

 そして、基本的には、中山間地というのは、それぞれの地域によって事情が違うわけであります。そういう事情の違う中で各集落なりあるいは地域において具体的にどういう経営を目指すか、徹底した話し合いの中で、農業経営というものを安定的に継続できるようにするというようなことが大事なことでございますので、やはり、議論をしていただく中から何とかこの十から二十というふうなところを目指させていただきたい、こういうふうな考え方でございます。

 もちろん、平地におけるところの状況からするならば、農地の状況から見ても大変難しいことであるというふうなことは私自身もある程度認識をさせていただいておるわけでございますけれども、中山間地においても土地利用という農業というものが行われているわけでありまして、また、農地の連担化は困難だという場合でも、農業機械の共有化、そういうようなことによってコスト低減というものも可能であるわけでありますから、できるだけ集落営農等の組織・法人化というふうなものによって推進をしていかなければならないんじゃないかな、こんなふうに考えておるところでございます。

 それから、新規就農につきましては、今、御承知のとおりに、四十歳未満の若い就農者は一万三千人程度にとどまりまして、そのうち定着するのが一万人程度でございます。何とか若い人たちにも定着していただくということで、年間二万人ぐらいの定着というものを、まず私どもとしては目標にさせていただいておるわけであります。そして、基本的に大事なことは、二年間は研修期間、そして五年間はきちっとした経営開始型というような形の位置づけで、七年間というふうなことでございます。

 もちろん、ですから、これは市町村それぞれによってリードしていってもらう。そして、そういう中でいわゆる人・農地プランというものを位置づけしていただいてということでございまして、決して、今ばらまきというようなことでございますけれども、初めてこのような事業を行うというふうなことでございまして、それだけ今若い人が求められているということでございます。それにきちっと応えていきたいということでございます。

 それぞれの地域においても、ぜひ、この新規就農というものの制度を活用して、俺もやってみたいというふうなところ、私も地域を回りますと、そういう声も聞こえます。そういう意味では、きちっとこの制度の意味というものを理解してもらって、決してばらまきでないということにしていかなきゃならないと思っております。

 とにかく、半端な気持ちで農業をやってもらうというようなことではなしに、人生をかけて農業にいそしんでもらうということのためにこの制度を設けることにいたしたということをぜひ御理解いただきたいと思います。そういう意味では、地域全体としてのサポートが重要でありますので、できるだけ県なりあるいは市町村と連携をとっていきたいと思っております。

 それから、プランナーの件でございますけれども、先生御承知のとおりに、私どもは決して農業者を軽視しているわけではございません。

 私は、今日まで三十年間、落選しようが、野党だろうが与党だろうが、本当に先生と同じような気持ちで、先生ほどそれだけの思いというものは、それは私は、もちろんそこまでの域に至るということではないわけでありますけれども、懸命に農業者の立場というものを考えてやってまいりました。

 そういう中で、六次産業化というふうなものをこれから推進していくというときにおいては、実は、もう一番先生が御承知ですけれども、私のところも大変な食材を生産してもらっております。それを生かして、農家の主婦の人たちが漬物をつくる。物すごくおいしい、大変おいしい漬物だ。しかし、なかなか販売ルートが確立されない。こういうふうなところから、せっかくのそういうすばらしい産品もそこで途絶えてしまうというふうなケースが多々あったわけでございます。

 そういうことを考えたときに、やはり、農業に今まで関係ない人も、販売ルートとかあるいは加工のプロもおるわけでありますから、そういう人たちにプランナーになっていただいて、いろいろと農業の世界に入っていただいて、指導するなんという立場でなしに、本当に一緒になってこの六次産業化をどうやって進めるかというふうな形のプランナーづくりを今やっているところでございます。

 そして同時に、実績を上げておる方々には、ぜひ意見を言ってもらう、相談に乗ってもらう、このようなことからボランタリープランナーというものを位置づけさせていただいて、そういう人たちが各地域にきちっと位置づけされていくということになれば、それぞれの農業者の人たちが六次産業化を進めるということにおいて、そういうボランタリープランナーの人に率直に相談をしていただくというようなことになりますならば、また一段といろいろな意味で活力を生み出すところにつながっていくんじゃないか、そういう考え方に立っているところでございます。

坂本委員 そうであるならば、十ヘクタールから二十ヘクタールのところは、これは記述を変えるべきです、話し合いをして。こういう十ヘクタール―二十ヘクタールというのが前面に出てくれば、それだけでこの行動計画そのものの信憑性が問われます。

 それから、農業後継者あるいは新規就農者の問題につきましては、これは自民党の担い手総合支援法を参考にしてください。これを通してください。それだけ半端な形で、半端な気持ちでやってもらっては困るというような大きな政策であったら、やはりきちんとした法律をつくって、法律のもとに計画的に新規就農者をどれだけふやしていくかというような五カ年計画、十カ年計画が必要なわけです。それをしないままに、いきなり二十三億円、あるいは百三十六億円、これはばらまきと言われたってしようがないでしょう。

 それから、最後のプランナー、六次産業のところは、少なくとも、農林漁業者の経営を改革、こういう記述はやめてください。農林漁業者ですよ。農林漁業をやっている方ですよ。生産している人ですよ。その人の経営を改革する、やはりこれは上から目線じゃないですか。そういうように私は捉えます。これは大変な反発を全てにおいて招くというふうに私は思います。それほどに粗雑で、非常に粗悪なまがいものなんですよ。私から見れば噴飯物。ただ単にこれをつくっただけならば、本当にこれでは日本の農業はますます混乱してしまうと思う。

 そして、それもなぜ、こういうものを慌ててつくって、こういう行動計画になったか。やはりTPPという問題があるからです。

 そこで、TPPの問題をお伺いいたします。

 TPPの説明会、あるいはTPPについてのさまざまな情報、国民の皆さんたちが今一番知りたがっているのはTPPに関する情報です。情報が少ない。TPPと言われるけれども、賛成しようにも反対しようにも、その情報がないというような意見が世論調査で七五%、八〇%を占めております。

 戦略担当大臣にお伺いします。

 二月の中旬に担当大臣が新聞の全面広告を中央紙と地方紙に出すというような予定をされていたそうですね。ジャーナリストからインタビューを受けて、そして自分がそれに答える、そういう形の広告だったというふうに聞いております。しかし、これが民主党内の反発で中止されたというふうに聞いております。

 なぜ、今、TPPにも参加していないのに、戦略担当大臣としてのいわゆる意見広告的なものを掲載しようと思われたんですか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 意見広告ではございません。まさに今委員からも御指摘がございましたように、TPPについて情報提供が不足している、そういう御指摘は従来からいただいております。そういった意味では、TPPについての一般的な御説明をさせていただく、そうした取り組みはしていかなければいけない。

 さまざまなそういう取り組み、今、シンポジウムであるとか、また、要望に応じて御説明に地方などにも出ておりますけれども、そういうようなことをやっていく国内広報のチームをつくっておりますので、そういう中でさまざまな情報提供、広報のあり方を考えているというところでございます。

坂本委員 これは意見広告なんですよ。結局、戦略担当大臣の意見を述べるわけですよ。本当の情報提供というのは、そういう広告で行われるものじゃないんです。新聞社の取材によって行われるものが本当の情報提供なんですよ。

 そういう中で、例えば、全国紙で三億円はかかるでしょう、主要地方紙でやはり同じように三億円はかかるでしょう。六億円をかけて一回やる。一回やれば、必ずこういう類いのものは二回、三回やらなければだめなんですよ。そういうような、本当に安易な考え方でTPPを進めようとする。私は心配でなりません。

 それから、説明会が各自治体で始まったと聞きます。あるいは、これからシンポジウムが各地域で行われるというふうに聞きます。その主催者が自治体になっています。あるいは、通信社や地方の新聞社になっています。

 このTPPの問題、これは、菅総理が突然本会議で言い出して、そして野田総理がホノルル・APECで参加の協議の表明をした。まさしく国家間の問題です。政府の意思でここまで来てしまったんです。そして、これは国家間の条約の問題です。

 なぜ、政府が責任を持って、きちんと説明会をする、主催してシンポジウムを開く、その中でさまざまな意見を酌み取る、あるいは情報提供をする、そういうことをやられないんですか。政府はただ説明に行くだけ、主催は地方自治体と新聞社にやらせる、そして責任は地方自治体と新聞社にとってもらう。余りにもこそくな手段ではないですか。

古川国務大臣 こそくというお話でございましたけれども、この主催につきましては、より客観的に情報提供を行っていく、そうした観点から、地方の実情に詳しく公正中立な報道機関や各都道府県、こうしたところに主催していただくことの方が適当であると考えて、そうした形でやらせていただいているということでございます。

坂本委員 やはりこれは政府の責任でやるべきものなんですよ。政府の意思決定なんですよ。ですから、政府で情報を提供する、そのことがやはり政府の説明責任であると思います。

 そして、実態としてどうなるか。

 二月の七日に高知県でありました。二百人近くが参加をされたということであります。二時間行われました。二時間行われて、一時間四十分が内閣府から派遣された担当者の説明、そして二十分間が質疑、その質疑もわずか三人に限定されての質疑というふうになっていた。これが果たして情報交換ですか。これが質疑ですか。これが説明会ですか。もっとオープンで、もっと皆さんと率直な意見を、腹を割って質疑をする、そういったものになぜできないんですか。

古川国務大臣 さまざまな、これは時間的制約とかいろいろな、先方の方もあるんだと思います。しかし、できる限り丁寧に情報提供や意見交換はしていきたいと思っておりますし、また、そうした必要があればまた二度三度とそういうことも考えていきたいというふうに思っております。

坂本委員 本当に大まかな、やはり説明会とは言えない、シンポジウムとは言えない、そういうものであると思いますし、私は、シンポジウムの開催にいたしても、それは半端なお金でできるものではありません、名古屋なら名古屋で大々的にやるわけですから。そのお金はどこからどうやって出ているのだろうかというふうにも思うわけです。子ども手当だけではなくて、今度は通信社あるいは地方紙あるいは新聞社に意見広告という形で、そういったところまでもばらまかなければならないのかな、そういう思いさえいたします。

 そこで、アメリカの通商代表部、USTRの方で、昨年十二月七日からことし一月の十三日まで意見募集をやりました。全米の各団体あるいは州、そういったところからさまざまな意見が出てまいりました。百十三件の意見が出てきたということであります。もちろん外務省の方ではそれは全て手のうちに持っていらっしゃると思いますけれども、自民党の方でもこれは全て翻訳をいたしました。ここに幾つか代表的な例を取り上げさせていただきましたので、二、三、読ませていただきます。

 ノースカロライナ州農業・消費者サービス局、「貿易に関する問題以外の理由で一部品目を除外するのであれば協定自体に反対」する、強い姿勢であります。カリフォルニア州の商工会議所、一番下、「TPPはアメリカの労働者とビジネスに利益をもたらし、より競争が激しくなる世界においてアメリカのリーダーシップを維持するものとなる。」ということで賛成。あるいは、全米生乳生産者連合会、「科学的根拠に基づかない食品添加物の規制が非関税障壁として存在する。」というふうになっております。

 その次、アメリカの穀物協会、「農水省の定める表示規制では、配合・混合飼料に対する成分割合や栄養価が細かく示されている。これらの条件を満たす上で、トウモロコシに認められている含有量の範囲は狭く、配合・混合飼料市場への参入は困難。」USAライス連合会、「日本は現在、アメリカ産米の輸入条件として約八百にのぼる化学物質の最大残留基準値検査を必要としている。」「これらは科学的根拠に基づく検査の導入によって不必要な項目を減らすことが出来る。」「二〇〇六年以降、日本は遺伝子組み換え米の混入検査を行っている。これも科学的根拠に基づく検査の必要性はみられない。」というようなことであります。

 非常にアメリカの姿勢としては厳しい。しかも、その大半が、絶対例外品目を設けるな、そして、検疫体制、検査体制をもっと緩やかにしろ、遺伝子組み換えの米が少し入っていいじゃないか、配合飼料の中に遺伝子組み換えのトウモロコシが入ってもいいじゃないか、あるいは配合基準を少し甘く見てもいいじゃないか、そういう意見ばかりなんですね。しかし、これはきちんとしたアメリカ側の意見です。

 このパブコメというのは、これから事前協議の中で、あるいは日本を一旦参加にさせた上での交渉材料として非常に重要視されると思います。こういうパブコメの内容も、私は説明会の中で皆さんたちに提供すべきだと思いますけれども、担当大臣、いかがですか。

古川国務大臣 今議員からも御紹介ありました、米国政府官報告示によります意見募集で提出された意見につきましては、国民への情報提供の観点から、外務省において原文をもとに主要点を日本語で取りまとめて、外務省のウエブサイトに掲載をいたしております。

 ちなみに、今、議員は何かこれがそのままアメリカの主張のように御発言をされましたが、これは各種団体の意見を取りまとめたものであって、米国政府の立場をまとめたものではありません。米国の方針は、こうした意見募集の結果も踏まえて、今現在検討されているものというふうに承知をいたしております。

坂本委員 各種団体意見がそのまま政府の意見になるんです。これが議会に行けばもっと厳しいものになるんですよ。

 ですから、こういったものを、今、ネットで公表すると言われますけれども、説明会のときには配付されますか。

枝野国務大臣 通商交渉、さまざまな分野でいろいろなことをやっておりますが、各国とも、各種関係者の皆さんから、各種団体から、それぞれさまざまな国内的な意見を背負っていらっしゃいます。しかし、そのことが自動的に各国の主張になって、外交交渉、通商交渉をすることなどありません。

中井委員長 こういう資料を公表するかどうかという答弁を。

古川国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、外務省のウエブサイトにも掲載をいたしております。

 これは米国政府の立場ではありません。ですから、今、枝野大臣も申し上げましたけれども、議員も与党を長くやっておられたわけでありますから、では、そのときにいろいろなところから意見を聞く、それがそのまま政府の政策になっていたかというと、そうじゃないわけでありますね。

 ですから、そういった意味では、きちんと米国政府とかそういうところから言われたことについては、当然それは必要に応じてきちんと公表していきたいと思っておりますが、米国国内で各種団体が言ったこと、そのことについては情報提供をこういった形でいたしておりますが、これを何か説明会で米国のパブコメの中身を提出する、そんなことは考えておりません。

坂本委員 政府の意見でなかったら、それは各協会、各団体の意見として配付をして、これはアメリカ政府の意見ではありませんけれどもパブコメの結果としてこういうものが出ていますというふうに説明すれば、それで済むことじゃないですか。なぜそれができないんですか。

 しかも、これは協会やあるいは各連合会、各州を代表してそういう意見を出しているんです。こういうものも出せない説明会なんというのは説明会の中に入らないというふうに私は思います。

古川国務大臣 出せないんじゃなくて、出しているんです。誰でも見られるようになっているわけでありますから、別に隠しているわけでも全くございません。そういう意味では、情報提供はきちんとしているというふうに認識をいたしております。

坂本委員 役所がいつも使う手ですね。公示をしています、そして掲示をしています、そういうのと同じ類いですよ。これだけ国の大きな問題、国の行方を左右するもの、なぜもっときめ細かな説明ができないのか、情報提供ができないのか。だから、国民の皆さんたちは、世論調査でも七〇%、八〇%、やはり情報が足りないというふうに言っていらっしゃるんです。

 オバマ大統領が一月九日に、商務省とUSTRを統合する、そして六つの機関を統合して、新しい商業関係、貿易関係の機関をつくるというようなことを述べました。こういう情報をいつの時点から政府の方は把握しておられましたか。そして、その問題が現在どういうふうに進行して、最終的にどういうふうに決着しそうな状況でありますか。情報をお伝えください。

玄葉国務大臣 ただいまの坂本委員の御質問は、いわば省庁再編統合の権限の問題でございます。これは、一月十三日にオバマ大統領がそういう意思を持っているということを発表されたということでございます。

 私は、省庁再編権限が誰にあるかというのをかつて調べたことがございますけれども、例えば日本と同じような議院内閣制でも、ドイツなどは首相にある。日本はございません。アメリカは、レーガン大統領までは大統領にあった。しかし、今は大統領にない。したがって、オバマ大統領は、そういった省庁再編統合の権限の幾つかの部分について、今議会に対して求めたい、こういう意思を表明されたということです。

 ただ、この動向については注視いたしますけれども、これは、議会がそれについて承認を与えなければなりません。そのことについては、まだ、予断を持ってお答えできる、そういう状況にはないというふうに思っておりますので、当然、TPPなり通商交渉というのは、現行法で行う以上、USTRが通商政策の策定、実施、調整の権限を持っているわけでありますから、USTRと行っていくということになろうかと思います。

坂本委員 USTRは、貿易の最前線で交渉を行い、そしてある意味では相手を力ででもねじ伏せる、そういう実行部隊です。アメリカの軍隊でいえば海兵隊みたいなものです。それが商務省も含めて全て統合される。そういう中で、統合された中でその次の主導権をどこが握らなければならないか。当然、USTRはそれを持ってくるでしょう。そうすると、今回の日本とのTPPに関する交渉の中で成果をとらなければいけない、その成果をお土産に、新たな機関の中で主導権をとる、これがUSTRの考え方であると私は思います。それほど強い覚悟で、決意でアメリカの方は交渉に臨んでくるということであります。

 先ほどからの話を聞いておりますと、何らいろいろな戦略もないままに、そういった情報収集だけ、そして交渉に立ち会うだけ。私は不安でならない。このままだったら日本の農政あるいは日本そのものについても非常に国益として損失につながるということを指摘いたしまして、質問を終わります。

中井委員長 これにて坂本君の質疑は終了いたしました。

 次に、平井たくや君。

平井委員 自由民主党の平井たくやです。

 きょうは、情報セキュリティ会議の議長の官房長官が三十分までおられませんので、サイバーセキュリティーの質問は十一時半ぐらいからスタートさせていただくというふうにしたいと思います。

 その前にいろいろな質問をさせていただきますが、まずは、昨日の我々自由民主党の河野議員の質問に岡田大臣からいろいろ御答弁もいただいていたようですが、要するに、地方公務員の給与の削減をどうするかというようなことだったと思います。産経新聞の記事が事実ではないことだったという答弁やに聞いております。

 今ちょうど、例の公務員給与の引き下げの特例法案、七・八、まあプラス〇・二三はどうなるか、今詰めていただいていると思うんですが、その三党合意を今まさにやっている最中でございますので、余りその内容には触れませんが、基本的に私がやはり理解しておかなきゃいけないなというふうに思っているのは、まず、この特例法案の、七・八か八・〇三になるかどっちかわからないですが、国家公務員の人件費二割削減という民主党さんの方針の中での位置づけが、川端大臣にも今まで何度かお聞きして、最初は、こっちは震災復興財源であるということからそれとは別だということも一度お聞きしたけれども、その後、要するに、二割削減への第一歩だというようなお話もいただきました。一体どっちなんだというのを知りたいんです。

 その件について、行革担当大臣の岡田大臣にお答えいただければと思います。

岡田国務大臣 マニフェストの期間は四年間ということでありますので、今与野党で協議していただいておる、その結論が早急にまとまることを期待しておりますが、まとまれば、その年次においては、その削減額というのは二割削減の一部を構成するということになると思います。

平井委員 ということは、これは復興財源に充当する、復興財源でお願いしたということですよね、閣議決定の内容を見ていると。

 七・八下げるというのは普通の下げ幅じゃないですから、これは復興財源として、二年間、国家公務員の皆さん方にお願いするということだったんですよね。そこのところは変わっていないわけですよね、大臣。

岡田国務大臣 今回合意されれば、そこで出てくる財源というのは復興のために充てるということは既に確認されていることだと思います。

平井委員 でも、この二割削減のマニフェストというのは、震災とは関係なく皆様方はお約束をしていることですよね。この七・八というのは、震災復興の財源としてお願いしていることですよね。このあたりは、後づけで、金額としてはその二割の中に入るという御説明ですか。

岡田国務大臣 我々は、公務員総人件費について、二割を目標に削減するということをマニフェストに書きました。

 結果的に、そのうちの今回の合意を目指している公務員給与の引き下げが震災復興のために使われるということは、これもまた各党で協議の上でお決めいただいたことでございます。だからといって、公務員人件費が削減されるということはこれは事実の問題でありますので、マニフェストのその二割削減目標の一部を構成し、かつ復興財源にも使われるということは何ら矛盾するものではないと思います。

平井委員 復興財源として七・八下げるという話は、三党合意で決めたんじゃなくて政府が出してきた案でございます。政府が出した。それは事実ですから。大臣、どうぞ。

岡田国務大臣 私が申し上げたのは、復興財源にそこで出てくるお金を使うということは各党間で合意されたことである、そういうふうに申し上げたところであります。

平井委員 七・八下げるという話は、これは復興財源ということと、もう一つおっしゃっているんですよ、国家財政の厳しい状況に鑑みてと。この両方で七・八というのを出してきたんです。

 私は何が言いたいかというと、民主党さんのマニフェストは国家公務員の二割削減なんですよね。我々自民党の公約というのもあるんですよ。自民党の公約は、公務員の総人件費の二割削減なんですよ。要するに、国家公務員の二割削減というところは完全にダブっているんです。地方もやりましょうというのが我々の政権公約なんですよ。

 これを考えると、消費税の議論を進めるのもいいんですが、我々は、話し合えば十分この二割削減というものを前に進める方策はあると思うんですが、岡田大臣、いかがですか。

岡田国務大臣 まず、地方をどう扱うかということは、私は、それは地方には地方自治というものもありますから、国と同列で論ずべきことではないというふうに考えております。

 いずれにしても、人件費の削減についていろいろ自民党の方からお知恵があれば、それは一緒に議論しながら練り上げていく、つくり上げていくということは非常に有用なことだと思います。

平井委員 いや、地方のことは地方が決めるというのは、総務大臣が答弁されるのならわかるんですが、行革担当大臣が先回りでそんなことを言っていたんじゃ、結局これは何にもできないですよ。

 ですから、これはもっと本気で、我々、二割削減、力をかすと言っているわけです。これこそ与野党で合意できる方向があるんじゃないですか。地方に、はなから絶対に波及させないというようなことを何で行革担当のあなたが今言わなきゃいけないんですか。どういう気持ちでおられるか。

 それはなぜかというと、総理も予算委員会の答弁で、公的セクター全体で厳しい財政のときにはやはり協力を願わなきゃいかぬということを言っているんですよ。岡田さんは、地方に行くお金も聖域化することがあってはならないという趣旨の記者会見の答弁もされているんですよね。

 だから、そういう流れからいうと、我々は国も地方もやろうと言っているんだから、地方は絶対、それは地方で決めることだから全くそういうことをやらないということを今どうして言われるのか、私はその感覚がわからないんですが、大臣。

岡田国務大臣 私は基本的な考え方を述べているので、基本的にはそれは地方で御議論いただくことだ。条例で決めるということに法律上もなっているわけであります。

 そのことを申し上げているわけで、もちろん、地方について、まず総論としては、私は、今回消費税を引き上げるに当たって、そのうちの一部は地方にも行くわけですから、地方にも御努力いただきたいということは一般論として申し上げているわけです。その中でどういうふうに努力するかを、一義的にはそれは地方で考えていただくことで、そういったこともあわせ申し上げているということであります。

 もちろん、いろいろな議論を、国ベースで地方のことについて議論することは、それは当然あり得ると思いますが、そういう場合にも丁寧にやっていかないと、実現するためには手順も重要ですから、それぞれの知事さんや市町村長さんもおられるし、地方の議会もあります。そういったところにやはり一定の配慮をしながら、やり遂げていくためには物事の手順というものは非常に重要であって、先に何かアドバルーンを上げることが重要であるというふうに私は考えておりません。

平井委員 手順、手順と言っているうちに、民主党さんの四年、二年半ですけれども、要するに公約期間は終わっちゃうんじゃないですか。

 我々は、二割削減するのに手をかしますよと言っているわけですよ。一緒にやりましょうよと。国家公務員だけ今回下げたとして、地方の世論はおさまりますか、それで。いや、それは地方自治体は、もう既に人事委員会の勧告に従って官民の是正、また深掘りして給与をカットされているところもたくさんあります。しかし、今回の特例法案が通った後、地方議会ではいろいろな議論が出てくるのは当然です。住民感情もあるでしょう。

 だから、消費税の議論をする前に、この話は与野党できっちり、これは与党も野党も関係なくやらなきゃいけない話だと私は思うんですが、そういう考えはありませんか。

岡田国務大臣 いろいろな場で与野党で全体の人件費について御議論されるということは、それは悪いことではないし、今回のこの国家公務員の人件費の引き下げの与野党間の議論の中でも、そういったことは一部話題になっているということは承知しております。

平井委員 消費税という問題を不退転でお取り組みになるのであれば、ここは避けては通れないところですよ。先にやらなきゃいけない話。先にやらなきゃ国民はもう信用しないと私は思います。

 ですから、これは我々は、国家公務員だけではなく、総人件費の二割というプランをちゃんと約束させていただいているように、その方向で進めていきたいと思っておりますので、ぜひこのあたりのところは、財務大臣には質問しませんが、恐らく私と同じような気持ちの部分もあると思います。ですから、これは与野党でやればできないことはない、それを恐らく今国民は望んでいると思います。

 この問題はまた別の機会にゆっくりさせていただくとして、きょうはちょっと古川大臣にお聞きしたいんですが、企業再生支援機構御担当だと。余りにも担当がたくさんあり過ぎて本当に大変だと思います。あれもこれもですね。

 そういう中で、企業再生支援機構についてちょっとお聞きをしたいんですが、この企業再生支援機構法の改正案というものがあるやに聞いています。延長したいという意向があるようで、それで、これを財務金融委員会で中小企業の円滑化法の改正案と一括審議をしようというような御意向やに聞いておりますが、それは事実ですか。

古川国務大臣 私に気を使っていただきまして、ありがとうございます。

 企業再生支援機構につきましては、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っております中堅・中小企業等の事業の再生を支援することを目的といたしております。

 金融庁におきましては、今お話がございました中小企業金融円滑化法を延長して、事業再生等の支援に軸足を移し、総合的な出口戦略を強力に推進することとしております。このため、中小企業再生支援協議会を初め、事業再生等の支援を図るためのさまざまな制度、仕組みを総動員してこれに取り組む、そうしたこと等をしているところであります。

 こうしたことを踏まえまして、企業再生支援機構といたしましても、事業再生に向けた金融機関のコンサルティング機能の一層の発揮を後押しするため、期限延長の必要があるかどうかを現在検討しているところであります。

 なお、仮にこの改正法案を提出することになった場合に、この法案は中小企業金融円滑化法の改正法案と密接な関係があるものと考えておりますけれども、どの法案に、付託するかということは国会において御判断をいただきたいというふうに思っております。

平井委員 企業再生支援機構は、金融機関でもなければ、コンサルティング機能を持っているわけでもないんですよ。

 ですから、この企業再生支援機構の誕生の経緯は、私が一番よくわかっているんです。当時、内閣委員会の与党の筆頭であって、その後、野党も経験をしていますし。与野党の合意の中で出てきた、もともとは地域力再生支援機構等々の話があり、民主党さんからは中小企業五百社ぐらい救えという話で進み、ところが、これは、不幸なことにか、民主党さんの判断で、中小企業をやるはずだったのに、企業再生支援機構はJAL再生支援機構になっちゃった。つまり、九割以上のリソースはJALに使われちゃったんですよね。それはしようがないですよ。

 保証枠もいろいろ変わってきました。二十一年は一・六兆、二十二年は三・〇兆、二十三年は三・〇兆、二十四年が一・七兆。この積算根拠等々、最初は二百社以上やると言ってみたり、次は百六十社やると言ってみたり、いろいろしたあげく、結局二十一社、もしかしたらプラス二社というのがその出来高なんですね。

 これは法律の趣旨から考えて、こういうものを円滑化法に無理やり当てはめてひもづけしていくということは、やはり法の趣旨からいっておかしいんですよ、立法趣旨が違うので。ですから、要するに、支援機構法の改正をやるんだったら、過去の議論も一番踏まえてやはり内閣委員会でやるべきだし、円滑化法は円滑化法で別途、関係なくやるべきだと私は思うんですが、いかがですか。

古川国務大臣 当時、私も経産委員会の野党側の筆頭理事でございましたので、今委員が御指摘になった成立の経緯というものは私も承知をしているところであります。

 基本的には、やはりこれは地域の中小企業の再生を図るということが中心であった。しかし、JALの御指摘がございました。地域の、地方のさまざまな企業にもJALの場合には影響を与えるということで、そこは排除はされていないということで、JALの再生にも企業再生支援機構を使わせていただいたわけでございます。

 今の御指摘、まさにこれはいろいろ国会の中でも議論していただければと思いますけれども、今の中小企業の金融円滑化法を延長していく。しかし、これは来年の三月には終わるわけであります。したがって、出口戦略をどうしていくのかということは、やはりこれはしっかり考えていかなきゃいけない話であって、そういう意味では、出口を図っていくという中で、やはりいろいろなツールは必要なんだと思います。そのツールの一つとしてこの企業再生支援機構も使えるかどうか、まさに今それを検討しているわけでございます。

 国会での、どこでどう議論するかにつきましては政府がどうこう申し上げることではございませんので、これは国会の中で議論して決めていただければというふうに思っております。

平井委員 企業再生支援機構は、そんな、何でもかんでも使うような支援機構じゃやはりまずいですよ。出口の話をされましたけれども、出口の心配をなさるんだったら、この秋のJALの出口をまず心配してください。

 要するに、昨日ですか、JALが中期計画を発表されました。今、営業利益も千八百億というようなことで、足元の業績については持ち直している点というのは、公的資金をあれだけ入れているわけですから、いいのかなとも思うんですが、一方で、金融機関に五千億以上の債権放棄をさせて、株主、これは物すごくたくさんいらっしゃったんですよね、株主優待券等々あって。これは一〇〇%減資で、みんな泣きました。

 そういう状況で、今回、要するに、もう一回、三千五百億の出資金を回収しなきゃいけないし、そして多くの株主の方々の理解も得なきゃいけない。支援機構は、結果、JAL支援。再生支援機構のミッションが今大きくなっている中で、また中途半端によその中小企業に行くというようなことのためにこの支援機構を延長させるのはもうやめて、円滑化法の出口は出口でこれは別途考えるべきですよ。

 私はそう思うんですが、JALの出口戦略に関して、機構担当の大臣としてどの程度グリップされているんですか。その点についてお聞きしたいと思います。

古川国務大臣 JALにつきましては、昨日、中期経営計画も発表されました。JALは、不採算路線の徹底的な整理、機材のダウンサイジングなどを着実に進めてきておりまして、二期連続で千八百億円規模の営業利益を達成できる見通しとなっております。また、新しい中期経営計画におきましては、五期連続営業利益率一〇%以上等の経営目標を掲げております。

 この計画において、堅調な需要が見込まれ、JALの強みを発揮できる国際中長距離路線に経営資源を重点投下する一方で、間接部門のスリム化等、人的生産性向上などを通じた抜本的な費用効率化への取り組みを継続することとされており、これは私どもは十分達成可能であるというふうに見ておりますので、今後ともしっかり、そうしたことは、経営状況というものは私どもとしても把握をいたしておりますし、していきたいというふうに考えております。

平井委員 要するに、JALの出口戦略に関して言えば、これは国民負担にならないようにきっちりと監視もしていただきたいし、責任感を持っていただきたい。

 そこで、一つだけ言っておきますけれども、JALさんは珍しく、再建中なのに新規事業にも出資しているんです。これはLCCです。LCCへの出資というのは、LCCを新たな事業の柱にするのかなと思っていたら、そうではなくて、要するに投資です、出資ですよ。このあたりは、私から見てやはり理解しがたい面があるんですよ。

 要するに、自分の路線とバッティングするLCCに対する出資は、抑止力なのか何なのか。このあたりのところは、これはいずれもう一回、国民に理解を得て株式を買ってもらおうとするなら、ちゃんと説明しなきゃいけないと思うんですが、中期計画の中でそのことの説明というのは余りなかったです。そういうところをぜひ問題意識を持って見ていただいて、落とし前をつけてくれと言ったらちょっと乱暴ですけれども、ちゃんとやってもらいたいというのが私の思いです。

 古川さんのそのあたりのリーダーシップに期待をさせていただきますと同時に、何でもかんでも支援機構にするのはもうやめてねと。JALさえも負わせちゃったじゃないですか。本来のことができない。結局、二百社といっていて二十三社しかできなかったんですよ。そんな状況の中で、一年延長してまた何かをやらせるというような中途半端な、場当たり的な発想の延長はおやめいただきたいということを申し添えさせていただきたいと思います。

 もう一つ。では、きょうは、まだもう少し官房長官が戻ってくるまでは時間があるので、共通番号についてちょっとお聞きしたいと思います。これも古川さんが担当なんですよね。私は、本当に担当が多いと思う。

 そこで、共通番号の話になると、結局、住民基本台帳カードの話、住民基本台帳、住民票コード、この辺の話になっちゃうんですよね。このカードというのは、前、私の委員会で、何で住民基本台帳カードの普及率が要するに三、四%しかないのかということに、総務大臣は、それは使い勝手が悪いというか、余りメリットがないから普及しなかったのではないかという答弁もいただきました。

 どうなんですか、皆さん方、住民基本台帳カードをお持ちですか。総務大臣はお持ちでしたけれども、古川さん、あなたは住民基本台帳カードはお持ちですか。

古川国務大臣 私も、既に申請をして、後でとりに行くだけになっております。

平井委員 担当になったので、慌てて。

 これはほかの大臣にも聞いてもよろしいですか、委員長。

中井委員長 どうぞ。

平井委員 はい。では、岡田大臣、安住大臣、玄葉大臣にも、お持ちかどうか。田中大臣そして松原大臣にも、一言、住民基本台帳カードをお持ちかどうか、その点だけ、委員長の許可を得ましたので、お答えください。

岡田国務大臣 私は持っておりません。

安住国務大臣 持っていましたけれども、被災をして自宅がだめになったものですから、再発行をたしかお願いしたと思っておりまして、家内に預けているので、確認できなくて申しわけございません。

枝野国務大臣 持っておりません。

田中国務大臣 持っておりますが、自宅に置いております。

松原国務大臣 平井委員に御答弁申し上げます。

 持っておりません。

平井委員 こんなものなんですね、委員長。要するに、住民基本台帳カードの写真つきというのは、自分が自分であることを証明するには非常に便利なツールですよ。なのに、持っていない。

 国民もほとんど、このカードは三、四%です。二〇〇三年にスタートして、恐らく三百五十万とかそんなぐらいしか普及していないと思います。国民は、住民コード、住基コードをみんな振られていることさえ、実は知っているか知らないかというのも怪しくなっているんですよ。これが要するに今の現状だと私は思います。

 そこで、そういう状況の中で、今度また新たにカードをおつくりになろうという話ですよね。古川大臣、そうですよね。そうすると、この住民基本台帳カードの総括がなければ、新たなカードが発行したら、それがある程度の悉皆性をもって国民に行き渡るというようなことになるんですか。閣僚の皆さんさえ、今持っていないんです。それは事実ですから。そのあたりはどのようにお考えですか。

古川国務大臣 さっき私が申しましたけれども、まだとりに行っていないというのは、名古屋市の場合、平日に区役所に、本人でないと、かみさんでもだめだというので、私が平日ずっと戻れない状況で、とりに行けないという状況にあります。ですから、そういう意味での、今の現場の手続とかそういうものもかなりあるんじゃないかなというふうに私は思います。

 あと同時に、この前の住基カードの場合には四情報だけで、持っていることで国民にとってどれだけの便益があるかという部分がなかなか、今のを聞いていただいても、ほとんど持っていないというのは、やはりそういうところがあったんだと思います。

 そういう意味では、今度のマイナンバー、社会保障・税共通番号については、国民の利便性にとってプラスになるような形のものを考えていくということで導入を今お願いさせていただいているわけでございます。そういった意味で、国民の皆様方にとって、この番号、カードを持つということが非常に便利だということになってくれば、やはりそれは皆さん方の意識も高まっていくと思っております。

 そういった意味では、この番号は、ともすると、何か反対の皆様方からは、国家が国民を管理するためじゃないかということを言われるんですが、そうではなくて、私どもはあくまで国民の目線に立って、国民の皆さん方が便利になるような、そういう視点での番号のあり方というものを考えておりますので、そういう利便性というものをきちんと御説明していくということが非常に大事じゃないかというふうに思っております。

平井委員 この話、私が心配しているのは、この番号の話は、かつて与党であった自民党が推進をする、それに反対するのが旧社会党、そして後の民主党という形で、住民基本台帳法の廃止法案を四回もお出しになって、きょうおられる皆さん方も、その廃止法案の提出者、賛同者になられているわけです。

 それを、要するに方向を変えて、今、古川さんのお話なんかを聞いていると、これは方向性は一緒なんだなというふうに思うんですが、本当に、民主党さんが今度野党になっても、スタンスを変えずに番号の問題に関してはずっと一貫してやるんだぞということになるんですかね、古川さん。

古川国務大臣 社会保障・税共通番号の導入については、実は、私ども、野党時代から一貫して、これはやはり早くやらなきゃいけないということを申し上げてきたところでございます。住基番号については、これは少しそことは考え方が違うということで私ども反対をいたしておりましたが、社会保障・税共通番号については、これは野党時代から一貫して、一日も早く導入すべきだということで考えてきたものでございますので、私ども、野党になることは考えておりませんけれども、しっかりこれは導入を目指していきたい。

 とにかく、この法案を出させていただいておりますので、平井議員には大変御理解もいただいているというふうに伺っております、ぜひここは、与野党の中で、しっかり国会の中で協議をしていただいて、成案を得ていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

平井委員 住民基本台帳法は反対していたけれども、今回つくっている共通番号は住基コードから生成するんですよね。そうなんですよ。

 だから、要するに、基本的に、過去の反対していたという考え方を改めたというふうに私は総務大臣からは委員会でいただいたんですが、そういうことですよね。この番号は住基カードと違うから、いや、我々はずっと賛成だというんじゃなくて、これは住基カードから生成するんですよ、住基コードから。その認識は古川大臣おありですよね。

古川国務大臣 これは、私ども反対をしましたけれども、既に導入をされて使われているわけですね。ですから、新しいこのマイナンバーを導入するに当たって、コスト等を考えても、これはやはり住基コードを前提にしていくのが適切である、そのように考えて、それをもとにしてマイナンバーを生成させていただくということを考えているということでございます。

平井委員 私は、あえて失礼な質問をさせていただいたのは、過去のそういう経緯から、もとにまた戻るんじゃないかという懸念がやはりあるんですよね。ですから、もう反対のための反対のようなことは、こういう問題はやめておいた方がいいし、政権交代でこういう問題がぐらつくようだと、国民は物すごく迷惑すると思います。

 そういう認識がある中で、それにしても今回の番号法案に関しては、やはりいろいろな問題が多いと思います。

 というのも、これは費用対効果の問題とか、国民の利便性とか、最終的に民間とどうつないでいくのかということ。それと、単純に言うと、何で今の住基コードを使わないのかというふうに、私は一般の国民の方々からも聞かれます。そういう質問に対してちゃんと答えていかなきゃいけないと思うし、法案は出したものの、これは私から言えば、まだまだこれから手を入れて修正を加えていかなければ国民の理解を得られるような問題にならないし、公聴会みたいなものを地方でやっているけれども、この番号の問題に関して理解している国民は私の周りにはなかなかいらっしゃらない。

 そのあたりの問題意識は、大臣、いかがですか。

古川国務大臣 住基コードじゃなくて、こういう新たなという、やはり悉皆性というところでちょっと今では不十分じゃないかということで、新しい形ということを考えているわけでございますが、まだまだ国民の皆様方への周知徹底が十分でないという御指摘は、私どももそのとおりだと思っております。したがいまして、今後とも説明の努力はしていきたいと思っております。

 また、この法案で、これで全てというふうに考えているわけではございません。一番基本的な部分をこの法案で一部示させていただいて、この番号についてはさまざまな懸念や不満を持っていらっしゃる方々もいらっしゃいます、利用範囲等については、やはりきちんとそうした国民的な理解や合意を得た上で、最終的な細かい、どこまでの範囲というものも決めていかなきゃいけない部分もあると思います。

 そういった意味では、法案は提出をさせていただいておりますけれども、御党を初め、野党の皆様方の御意見もしっかり伺っていって、そして国会の中で、与野党間で合意ができて必要な手当てをするということになれば、それは私どももそれを受けて考えていきたいというふうに考えております。

平井委員 この番号に関して言うと、論点はもうたくさんあります。

 一番心配しているのは、中途半端なままシステム開発なんかに入っちゃうと、コストはかつてないほど大きなシステム開発になります。いわば、こういう要するにリスクのあるシステム開発というのは、慎重にやらないと、もう今まで政府系のいろいろな大型物件の開発はことごとく失敗している。そうですよね。これは実際そうなんです。

 そういう意味では、一番チャレンジングなことになるし、今政府で検討されている、新しい番号をつくる、それを見えないリンクコードにする、連携するというような話は、よくよく考えると非常に怖い開発のリスクを負います。一歩間違うと、これはサグラダ・ファミリアのようなシステムになってしまう。つまり、いつまでたってもちゃんと起動しないという可能性もある。それは誰が責任をとるんだというようなことにもなる。

 ですから、そういう面は先走りがないように、これは政治家がなかなかグリップできない分野なんですよ。役所は勝手にどんどん思惑で進めていくところがあるので、この番号のシステム開発やその詳細の連携にわたるいろいろな考え方等々については、柔軟に、しかしやはりきっちりと政治主導といいますか、政治家がちゃんと関与しながら間違いのないように進めていただきたいんですが、古川大臣、いかがですか。

古川国務大臣 委員御指摘の懸念は私も共有をいたしております。

 やはり番号がこれだけ、何十年来というか、二十年来必要だ必要だと言われながら導入できなかった一つの理由が、そうしたシステムの問題とか、そういうものもあったんだと思います。

 そういう意味では、やはりそこは極めて慎重にやっていかなければいけない。そして、今お話があったように、知らないところで勝手に進んでいくとかそういうことのないように、きちんとそこは慎重に、丁寧にチェックをしていきながら進めていきたいというふうに思っておりますので、委員の御協力も賜りますようによろしくお願い申し上げます。

平井委員 この問題はもう一つあるんですよ。

 要するに、住民基本台帳法にまつわるいろいろな裁判の経緯、そして政府の見解等々があって、憲法問題とかそういうのを避けるがためにシステムに負荷がかかってしまっているところはお認めになりますか。

古川国務大臣 そうした今までの住基ネットに対する裁判の結果等はしっかり踏まえていかなければいけないと思っています。

 具体的なシステム設計についてはまさにこれからでございますので、今後の検討の中でそうしたこともしっかり留意していきながら進めてまいりたいというふうに思っております。

平井委員 ここは非常に議論しなきゃいけないところで、国家の一元管理に対する懸念等々とか、そういう問題を要するに正面から法改正で議論する。住民基本台帳法を改正していくというのも一つの考え方なんですね。

 住民基本台帳法、現行の台帳法だと、やはり憲法の問題等々にはかかわってくる可能性があります。しかし、ここを真っ正面からやらずに、システムで、数字を符号にかえたからといって、そこのところがクリアできるというのでは、これはやはり余りにも不作為と言われても仕方がないところで、大変難しいハードルではありますが、システムを複雑にすることによって憲法論議を避けるというようなことは政治はやるべきじゃないんですよ、絶対に。

 やはりそこは逃げて通ってはだめだという問題だし、その議論をすると、これはもうたくさん時間も必要になりますので、委員長には、この共通番号はまたぜひ集中審議で、国民にもっと知っていただくことも含め、お願いをさせていただきたいと思います。

中井委員長 理事会で協議いたします。

平井委員 これは税と社会保障とか全部にかかわる問題ですし、このシステム開発、予算でいえば五千億以上かかると言われているんですよ。そういうものを進めるのに、これはやはり国民の理解は絶対要るわけです。ですから、役所が勝手に暴走して、どんどんシステム開発を進めるというようなことがあってはならない。これは笑い事じゃない。民主党の皆さん方がこういうものをちゃんとグリップしてくれているのなら、私はあえてこんなことを言いません。それができていないから、あえて言わせていただいているんですよ。

 ですから、そういう意味で、これは委員会でも取り上げていただきたいし、こういう問題はやはり広く国民に知っていただきたいなというふうに思います。

 それでは、官房長官がお戻りでしたので、官房長官が情報セキュリティ会議の議長でもあるわけですが、まず、情報セキュリティ会議の議長としての自覚はお持ちですかという質問を冒頭させていただきたいと思います。

藤村国務大臣 平井委員には、党のIT戦略検討委員会ですか、そこにおかれまして、きょうまでもさまざま御意見をいただいておりますし、先般も、申し入れという形で非常に貴重な御意見をいただいていると承知をしております。

 私自身も、実は、学生のときはコンピューターを専門でやっていたということもありますが、情報の社会がこれだけ、今や、私たちの学生時代のころとはもう雲泥の差で、とてもとても追いつかない、幾ら勉強しても追いつかない、そんな世界になりつつあるということ。それから、先般からも、サイバー攻撃への対応ということで、国家の安全保障、危機管理上も、また国際競争力の発展の基盤としても、これは非常に重要な案件である。

 そのような認識のもとで、今、私自身は、御承知のとおりだと思いますが、政府の情報ネットワーク社会推進戦略本部、いわゆるIT戦略本部、これは総理大臣が本部長でございます、そのもとで情報セキュリティ政策会議というのがございますが、その議長という立場で、これは非常に重要な案件であり、我々も、きょうまで何回か具体的な会合もしております。

 特に今月は、ちょうど二月、情報セキュリティー月間ということもございまして、啓発運動にも今取り組んでおりますが、私自身が、これは非常に重要な案件、このような認識でございます。

平井委員 官房長官の役割は非常に重要です。これは、答弁もされておりましたが、国家の安全保障にかかわる重大な問題ですので、さらに頑張っていただきたいと思いますし、自民党は、十六項目の申し入れのほかに、サイバーセキュリティー対策という、割と大部になるんですが、そんなものをまとめております。これもぜひ政府も御参考にしていただいて、進めていただければと思うんです。

 一方で、今のサイバーセキュリティーにかかわる体制はやはり不十分だと思います、政府全体を見て。本当に、ITとかNISC、情報セキュリティセンター、これは担当がころころかわる。

 古川大臣はIT担当大臣なんですよね。政権交代してから何代目のIT担当大臣か御存じですか。

古川国務大臣 私は前、副大臣でもこれを担当しておりました。そのときにお仕えしたのが二人で、その後、多分、私が五人目か六人目ではないかというふうに思っております。

平井委員 要するに、五人目ですね。官房長官も今、政権交代して四人目ということで、NISC担当とかIT担当というのはころころかわる。

 民主党さんはこのあたりの政策に優先的に余り取り組んでいないというのが私の印象です。その証拠に、IT戦略本部は政権交代してからまだ一回も開かれていないんですよね。そこは一体どういう感覚なのか、まず教えていただきたいと思います。

古川国務大臣 今、大臣がころころかわるというお話がありましたが、先ほど申し上げたように、私、副大臣でIT戦略のところをまとめておりました。その後、戦略本部でIT戦略を決めて、今、実務レベルは相当細かくやってきているんですね。ですから、その一昨年に決めたことを一つ一つきちんとやっていく、実行していく、そのことがやはり大事だと思っておりますので、私どもとしては、今、そうした実行の過程、いわば刈り取りをしていく、その部分を中心にやっておりまして、そうしたものの進捗状況などもフォローしております。

 そういったものを踏まえて、また近々にでもIT戦略本部は開催をしたいというふうには考えております。

平井委員 役人にやらせているから大丈夫というような話ですけれども、結局、政府CIOも、つくりたい、つくりたいと言いながら、まだ任命していないんですよね。だから、やはりIT政策というのは民主党政権の頭の中に余りないんだと思うんです。そこをやはり認めてもらわなきゃ。もう全然、実際は何にもやっていないもの。

 今、政府CIOはいなくて、CISOだけがいるんですよね。このあたりのところも、官房長官、おかしいと思いませんか。

藤村国務大臣 いわゆる本部自身は持ち回りではあるんですが、その中で、私が先ほど申しましたいわゆるNISCについては、割に頻繁に今開いているというのが現状でございます。

 それから、今おっしゃった、政府としてのCIOが必要という考え方は私も同意いたします。政府全体のIT投資のガバナンスを高め、その効率化を徹底し、さらにシステム全体としてのセキュリティーの向上を図るための仕組みで、非常に重要だと考えております。

 こうした観点から、一昨年五月の新たなIT戦略においても政府CIOの必要性が指摘されていますので、昨年八月の電子行政推進に関する基本方針においても、政府CIO創設のための準備体制の整備が今求められているところであります。今後、速やかに準備体制を整えて、政府CIO制度の創設に向け検討を進めていきたいと考えております。

平井委員 この話も、随分前からやるやると言っていて、結局手がついていないというのが実情だと思います。

 そういう状況の中で、この情報セキュリティーに関して言うと、やはり各省の取り組みについても幾つかお聞きしていかなきゃいけないなというふうに思っています。

 そこで、きょうは防衛大臣にも来ていただいておりますので、大臣には、日本のサイバーセキュリティーのレベルが世界的に見てどの程度のものだと認識をされているのかについて、まずお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 我が国の防衛省としてのサイバーセキュリティーの対策についてのレベルの御質問だと思います。

 防衛省としましては、防衛大綱に示されていますとおり、サイバー空間の安定的な利用に対するリスクは新たな安全保障上の課題となっているということは認識いたしておりまして、特に米国との協力を進めてきておるところでございます。

 現在、戦略的政策協議及び日常的な在日米軍等との協議等を通じて、サイバーをめぐる課題や情報セキュリティーに関する情報交換を行っているほか、本年一月の日米共同統合演習など日米共同訓練等の機会を利用して、サイバー攻撃を想定した訓練を実施する等、さまざまな協力を進展させているところでございます。

平井委員 質問とは違う答えをしていただきましたけれども。

 では、知っているか知らないかということだけでまずお聞きしたいんですが、昨年アメリカはサイバー空間を第五の戦場として位置づけられたという事実に関して、御存じですか。どうですか。

田中国務大臣 いわゆるアメリカの国防政策の中で、サイバーテロというのは、いわゆる交戦規定といいますか、武力攻撃ということの問題との関係がございまして、陸、海、空あるいは宇宙に関係するその問題について、攻撃について、私の理解では、いわゆる作戦上の中に位置づけておるということでございます。

平井委員 要するに、今、交戦規定ということを言われましたけれども、国際法による交戦規定では、軍事施設を狙った攻撃は戦争行為とみなされるわけですよね。そうすると、サイバー攻撃の場合もそれに該当するということをおっしゃったんですね、今。そういう意味ですか。

田中国務大臣 国際法で交戦規定という形の中では、交戦状態に至った、あるいは武力攻撃が行われた、こういうことの中での議論があるわけでありますが、国際的には法的性格の定説はあるわけではありませんし、我が国にとってもまだ議論のあるところでございますので、その議論を踏まえて検討しておるということで理解をいたしております。

平井委員 アメリカは、結局、第五の戦場と位置づけたわけですね。米国防総省は、サイバー空間を陸、海、空、宇宙に次ぐ第五の戦場と位置づけて、米軍に対するサイバー攻撃には物理的な攻撃も辞さないと宣言しているんですよ。

 よく考えてみると、一方、我が国も連日、国家機関や防衛関連企業が狙われているんですね。こういう状況ですから、これは本当に防衛大臣にはリーダーシップを持っていただいて、この状況は有事と私は位置づけるべきだと思うし、国家安全保障の重要課題としてかなりの予算や人材を増強しなきゃいけない、そこのリーダーシップを発揮してほしいという思いで私はきょう質問をしているんです。

 そういう意味で、私と同じように有事と位置づけて、防衛省として、さらに予算等々に関しても抜本的に見直した上で、要するに拡充していくというような考えはおありですか。

田中国務大臣 二十四年度の予算につきましては、九十二億の予算を計画いたしておるところでございます。

 現在、防衛省におきましては、運用企画局長を中心として、さらなる充実を図っていくことで今検討に入っておるところでございますので、先生の御協力もよろしくお願い申し上げたいと思います。

平井委員 予算が非常にシャビーだから、これじゃ十分ではないという問題意識を私は持っています。

 米国国防総省並みにやれとは言えませんけれども、例えば防衛省の全情報システムをカバーする統一情報セキュリティーシステムとか、サイバー攻撃に対する動的防御力、これは二〇一〇年の防衛大綱で日本の防衛政策の基本概念ですよね、この動的防御というのは。これはもうまさに、ここのサイバーの問題に当てはまるんですよ。そうなってくると、今のような予算では全然だめで、これは大臣がリーダーシップをとってやらないと、この問題はもう全然前に進まないんです。

 これは官房長官等々も、いろいろ担当はおられますけれども、国家の安全保障の問題だということになるのであれば、これはもっと踏み込んだ議論の上で、予算を拡充する必要があるんです。そういう問題意識を田中大臣はお持ちですか。

田中国務大臣 現在、サイバー攻撃等の脅威の増大に対処するため、体制の充実強化として、統合幕僚監部のサイバー企画部門の増員をいたしております。また、防護システムの整備等として、サイバー攻撃等に関する分析を行うための重要な手段であるサイバー防護分析装置の機能強化等を行う、こういう経費を計上いたしておるところであります。

 先生御指摘のとおり、我が国の防衛ということになりますと、動的防衛力、運用面の充実を図っていく、こういうところでございますので、省内としてしっかり検討いたしまして充実を図っていくということで私は進めてまいりたいと思います。

平井委員 もっと私は、自分がどうしたいというような大臣のお考え方を聞きたかったんですが、今やっていることというのは、私、もう予算を全部見ていますからわかっています、それじゃ全然だめだ。

 昨年十一月、米国安全保障機関、プロジェクト二〇四九研究所が、中国人民解放軍の通信諜報とサイバー偵察の基盤と題する報告書を公開して、その中で、日本を連日サイバー攻撃しているのは中国人民解放軍総参謀本部第三局で、山東省に複数の基地を持つ第四局と済南市を本部とする済南軍区技術偵察局と指摘しているんです。

 こういう状況の中で、やられている相手も特定できているわけですね、アメリカから見ると。日本はなかなかそれも言いづらいのかもわかりませんが。そういう状況の中で、今の予算じゃ全然だめですよ。

 それで、今、二〇二〇年までに、サイバーセキュリティーの基本的な考え方をNISCの方でも官房を中心にしておまとめなんですが、そんなのじゃ全く間に合いません。我々は、それを五年間で、集中期間で前倒ししてやると。そうなると、各省の全部の予算を見ても、このセキュリティー対策という予算が少ないです。経産省も総務省も、もう全部です。

 防衛省も警察もそうなんですが、きょうはもう時間が少なくなってきたので、このサイバーセキュリティーに関しても、また集中審議をお願いするということになろうかと思いますが、これは本当に、非常に論点が多いし、きょうは各省に本当は質問したかったんですけれども、なかなか質問する時間がなくなってきているので、そういうことなんです。

 結局、この問題は、国家の安全保障にかかわる重要な問題だと思うし、私は田中防衛大臣の話を聞いていて、ますます不安になってしまったんですよ。

 そういう意味で、経済産業省は割と少ない予算の中では先進的な取り組みもしていると思うんですが、せっかくですから枝野大臣にも、御所見、今おやりになっていること等についてお話しいただければと思います。

枝野国務大臣 経済産業省の所掌からは、さまざまな、原発などに代表されるような、安全、セキュリティーの面でしっかり守らなきゃいけないという意味と、それから、ITと絡んだ産業を発展させるためには、日本にはセキュリティーの技術があるんだということが世界と競争していく上で大きな意味がある、この両面でセキュリティーの問題は重要だと考えております。

 このために、まず一つは、我が国にはセキュリティーについての実証の機関もなければ、評価、認証機関もないという残念な状況であります。これでようやく予算をつけていただきまして、セキュリティー検証の施設、サイバーセキュリティーテストベッドを来年度中には構築できる。こうしたところでの検証を踏まえながら、評価、認証の国際標準化に向けて我が国がリードできるように進めていきたい。

 それから、これは人が大変重要だと思っておりまして、独立行政法人情報処理推進機構、IPA、これまで国家試験である情報処理技術者試験の中でセキュリティー技術のレベル認定をしてきましたが、若手の皆さんを中心に、合宿型講習会、セキュリティーキャンプの充実を今検討中でございます。座学とかテキストに従った実習ではなくて、より実践的な技術向上に資する形式を取り入れることで、こうした中から、ここは一種すぐれた、特別な能力を持った人がどれぐらい出てくるかというのが重要だと思っていますので、そういった人たちの裾野をつくっていきたい、こういうふうに思っております。

平井委員 結局、このサイバーセキュリティーの話は、それぞれ実装していかなきゃいけない、今すぐやらなきゃいけない国家安全保障の問題であると同時に、ここは産業政策としての考え方もあるんですよ。サイバーセキュリティー人材というものを今後育てていく、そして、これをやはり成長力の中に組み込んでいくというようなことをやらなきゃいけない。

 これはちなみにということでお話をさせていただいておりますが、アメリカではナショナルサイバーレンジプロジェクトというのがあるんです。これは、民間企業が情報セキュリティー技術を向上させるためのテスト基盤を政府が構築して、まず国防省が五億ドルの予算で、五億ドルですよ、ことしスタートしたんです。そして、民間企業は高度なサイバー攻撃に耐え得る製品や技術を開発して、それが政府によって調達されるだけじゃなくて、その後、民間産業へも普及される。これはホワイトハウスのサイバーセキュリティーコーディネーターの方々がおやりになるんですが、ここにかわる部分が実はないんですね。

 これは、田中大臣はこういう発想もまずお持ちではないと思いますし、そういう予算もないと思うんですが、基本的にこれはどこかがやらなきゃいけないんです。それと……

中井委員長 平井さん、時間が超過していますから、まとめてください。

平井委員 はい、済みません。

 そういう意味で、最後に、セキュリティー関連の予算を各大臣にはもう一度総点検していただいて、全体として日本のレベルがちゃんと上がるのかどうなのか、そして、できるだけ早い期間に国民に安全だと言える環境がつくれるのかどうなのか、そのことをもう一度問題意識を持って再点検していただき、予算の変更も検討していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

中井委員長 これにて平井君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。橘慶一郎君。

橘(慶)委員 質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。最初は万葉集で始めさせていただきます。

 雪がなかなか降りやまないということで、春が待たれるわけでありますが、私のいとしい人に梅の花を見せたいと思ったけれども、雪が降っていてわからないという山部赤人の歌を詠んで始めたいと思います。

 万葉集巻八、一千四百二十六番。

  我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば

 では、四十五分、よろしくお願いします。(拍手)

 きょうの質問の趣旨でありますが、野田内閣の最重要課題、これは社会保障・税の一体改革であろうと思います。消費税の引き上げということに向かってチャレンジされているものと思います。

 野田総理の志ということでの課題の設定、それは理解いたします。また、覚悟、ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ、万葉集の立場でいいますと、決して、決して、決して、決して諦めないと日本語で言っていただきたかったような気はいたしますが、しかし、覚悟も理解をいたしましょう。

 とすれば、この志と覚悟があれば物事が成り立つかといえば、問題は、それをなし遂げるための段取り、午前中の岡田大臣の答弁によれば手順ということであります。ここの組み方がうまくないと究極の目的は達成できないんではないか。その手順、段取りがうまく組めているかどうかということを非常に心配するわけであります。

 それで、前回の本会議場の討論の際、申し上げました。あの山にも登らねば、この山にも登らねば、あっちの山にも登らねばで、ねば、ねば、ねば、ねばになっちゃうとなかなか究極の目的地へ到達しないんじゃないか、そんな思いできょうの質問をお聞き届けいただきたい、このように思っております。

 お手元に、通常国会提出予定法案という、一枚目のページに出ていると思います。平成十四年から二十四年まで、通常国会が始まる前に、内閣としてこれだけの法案を提出します、継続法案はこれだけですという数字を並べてみました。新規提出法案、そんなに多いということではありません。しかし、前国会からの継続法案については、二十三というのは、この十年間で最大であります。この二十三の中に結構重たいものが残っているというのが現状であります。

 平成二十二年秋、臨時国会、百七十六回国会で、菅前総理は、課題解決内閣ということを標榜されました。そのときに、三つの法案はぜひとも課題解決のために上げたいとおっしゃいました。それが地球温暖化法案であり、労働者派遣法であり、郵政改革法案であります。この三つは、まだ上がっていないわけであります。

 そこで、官房長官にお伺いいたします。

 この八十一本と二十三本、多くはありませんか。そしてまた、菅前内閣からのこの三本、こういったもの等、今のいろいろな取り組みの中でどのように進めていこうとされているのか、まず伺います。

藤村国務大臣 橘委員にお答えいたします。

 今、資料を出していただいた中では、新規法案については平均的だとは思います。継続案件が二十三件ということで、これは、昭和四十八年ぐらいまでさかのぼっても、四十八年が二十件ですから、それ以降、一番多いということにおいては、確かに継続案件が多い、このように思います。

 政府といたしましては、国会で御審議いただく法律案について、常に、その時々の政策課題を踏まえて、与党とも相談しながら、精査の上で、必要なものにできるだけ絞る、こういう作業はしておりますが、継続だけは絞るわけにはいかなかったという結果でございます。

 それで、政府といたしまして、内閣提出の法律案が、国会において速やかに御審議いただき、早期に成立が図られるよう努力していきたいというのが姿勢でございます。

 今お問い合わせの三つの案件について、ちょっと申し上げます。

 まず、いずれも、これは平成二十二年の第百七十四回国会で提出したもので、そのうち、地球温暖化対策基本法、それから郵政改革関連法は、参議院で審議未了、廃案となった。選挙がございました。同年秋の百七十六回臨時国会にも改めて提出をさせていただいたということであります。

 まず、地球温暖化対策基本法につきましては、政府案に加え、各会派から、地球温暖化対策の中長期的な取り組みを計画的に進めるための法案を御提案いただいているところであります。今国会で、引き続いてこれは十分に御審議をいただきたいという姿勢でございます。

 それから、労働者派遣法案については、労働者の雇用の安定を図るために極めて重要な法案であることから、与野党で精力的に議論をいただき、ある意味でいいところまでいっているという感触ではございますが、速やかな成立をお願いしたいと考えております。

 それから、郵政改革関連法案につきましては、これも今、与野党で精力的に協議をいただいているところであります。

 郵政改革関連法案が、郵政事業の基礎的なサービスが利用者の立場に立って郵便局で一体的に提供され、将来にわたってあまねく公平に利用できることを確保するためのもの、また、郵政株式売却による震災復興財源の確保といった側面もございますので、これも一日も早い郵政改革の実現が必要と考えており、これも与野党間で相当詰めが進んでいると聞いておりますが、速やかにまとまることを期待したいと考えております。

橘(慶)委員 過去の経緯もずっとお話をいただいたわけでありますが、大変重いものが残っている。そしてまた、たまたま過去の、二十二年からの経緯もお話をいただきました。

 例えば郵政改革法案などは、衆議院で五時間の審議時間で強行採決でありました。それ自体は決して好ましいことではないと私は思いますが、しかし一面、強行採決というのは、刀を振り上げたわけであります。

 だから、これは、覚悟、志、そして段取りの問題でいえば、覚悟の問題であります。強行採決をしたものを参議院で、選挙だからといって廃案にしてしまえば、それは後に宿題が残るわけであります。そういったことも含めて、今かなり宿題が多いということですね。

 そして、臨時国会が二つ、百七十七と百八十の間にあったにもかかわらず、宿題は多い。これでまた今宿題をふやしてしまうと、この後どうなるんだろうという心配をしているわけであります。

 きょうの質問の一番肝の部分を最初にしてしまうわけですが、この後の通常国会案件審議の流れでありますが、私はそれこそまだ二、三年の素人でありますけれども、皆さんよく御存じのように、通常、予算案があり、その後、日切れ法案があり、予算関連法案があり、その他法案がある、こういうことになってまいります。重要なものについては、公聴会をしたり、参考人招致をしたりするわけであります。

 例えば郵政改革法案は、郵政改革特別委員会という特別委員会をつくって審議をするということになっているわけであります。午前中話題になった給与の法案だって、それはいろいろな協議も進んでおりますが、これを国会で審議するとなれば、やはりそれなりに慎重な審議が多分必要になるものだと思っております。

 そういった日程感。皆さんもよく御存じのとおり、定例日は、月水とか火木とか決まっております。途中にはゴールデンウイークもあります。そういったことを全て考えたときに、どういう組み方で最後までいくんだと。民主党さんの政権ということでこれで三代目でありますから、そろそろそういうことについて、やはり誰かがそれはコントロールしていかなきゃいけない。

 表の答弁では、それは国会のお決めになること、それは結構であります。しかし、内閣官房なり総理の、きょうは野田総理がいらっしゃらないからなおいいんですけれども、総理のそばにそういう方がいらっしゃらないと、このままいったら、こういうことの繰り返しで、それが国政の停滞を招くんじゃないか。

 きょう一番申し上げたいことは、要は、政策論で言っているのではありません。この手順、段取りの踏み方について、誰かしっかりコントロールされていますかということをお尋ねしたいわけです。

藤村国務大臣 今御質問でちょっと言っていただいて、国会審議日程については、基本的にこれは国会の中で、特に各党国対のもとで審議日程が決まっていくということでございます。

 その上で、政府としてはということになりますと、まず、官房長官のもとに官房副長官がおりますが、この官房副長官をキャップに、各党との関係なども政府の側からはさまざまにお願いをしたりする。そして、そのもとに実は内閣総務官室というのがございまして、ここのスタッフが各府省とも連携しながら、さまざま国会日程は、相当詰めて詰めて、常に念頭に置いて進めているというところでございます。

橘(慶)委員 その内閣総務官室のスタッフの方とはこれまで何度もお話をしてきております。きょうはあえて官房長官に申し上げました。

 ぜひその観点で、今から順番に質問する中に、いろいろな法案のことが出てまいります。本当にこの国会に出すのか、それとも、今自分たちがやりたいことに向かっていくならこれは切り捨てるのか、その辺はよくお考えになっていただきながら答弁いただければ大変幸いであります。

 去る一月三十一日、閣議決定によりまして、行政改革実行本部また事務局が設置されました。その目的は、今の段階でいえば、社会保障・税一体改革に対する国民の理解を求める、いわゆるお願いをする立場としての身を切る姿勢を示していくということであろうと思うのですが、行政改革担当大臣のお考えをお伺いいたします。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、社会保障・税一体改革で国民の皆さんにある意味御負担をおかけする、それに先立って、まず身を切る努力、そういう意味での行政改革。

 もう一つは、そういったこととは別に、やはり行政改革というのは、政府として常にやっていかなければいけないことである。特に、財政の現状を見たときに、やはり必要度の少ないものはやめるということを日々決断していかないと、この財政の状況を変えることはできないので、そういう意味も含めてやっていこうということであります。

 そして、政府の中でもいろいろなことを議論します。しかし、いざ実行ということになりますと、そう簡単ではない場合もある。そういう意味で、野田総理を本部長とし、私は代行ということですが、各閣僚をメンバーにするこの組織をつくって、しっかりとそこで意思確認をしながら、決めたことを前に進めていこう、実行していこう、こういうことでございます。

橘(慶)委員 日々決断ということで、まさにそのとおりなんです。

 今回の本部事務局というものをつくられる際には、行政刷新会議、行政改革推進室、こういったものとこの本部をまとめた形で、実は既存の組織を一つも廃止せずに全部組み合わせて統合事務局というような形にされているわけであります。

 私は、それは行政刷新会議という形でやられてもよかったでしょうし、行政改革推進室の格上げでもよかったと思うのです。それを全部残した上にまた組織をおつくりになる。なぜそうなのかというのが一点であります。

 そしてまた、今ほど、不断の努力で行政改革というのをやっていかなきゃいけない。まことにそのとおりであります。昨年六月でもって、行政改革推進本部という前の政権から続いていたものが、いわゆるサンセットということで終わったわけであります。そのまますぐお続けになればよかったんじゃないか、それが行政の連続性ではないかとも思うわけであります、今立ち上げるのであれば。

 そういったことについて、なぜそこは、日々の決断でまとめるということをなさらなかったのか、組織を減らさなかったのか、このことについてお答えください。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、今回この行政改革実行本部、その事務局をつくりました。

 そこで、行政刷新会議事務局、行政改革推進室、公務員制度改革推進本部事務局、この三つを中心に事務局を構成しているわけでございます。

 委員御指摘のように、これを全部一旦白紙に戻して新たなものを立ち上げるということも一つの考え方であります。ただ、この中には、法律で設けられていて、法改正をしない限りできないものもございます。そういうことも念頭に置かざるを得ませんでした。

 それと、この三つに加えて、総務省や行革に関連する他の組織の幹部にも併任辞令を発令する形で事務局を構成したわけでございます。事務局長には、政府の中の責任者である事務の副長官を据えました。そういう形で、霞が関も含めて政府一体となって行革が実行できるような体制を整えたということでございます。

橘(慶)委員 行政刷新会議と行政改革推進室は法律に基づかない組織であります。そういったことも含めて、ぜひ本当は整理をされた方がよかったのではないかというのが私の意見であります。

 そして、今もお話のあったように、例えば公務員改革の本部とも、みんな実は併任をかけてこられました。私の方へお訪ねになられるこういったスタッフの方々はだんだん名刺がふえてまいりまして、今までは表と裏でできたんですが、最近、名刺が二枚ないと全部あらわせないというような、こんな笑うに笑えない話も出ております。

 きょうお配りしたこの資料の中の、次のページに、内閣、これはどっちかというと内閣官房ということでの組織図を掲げさせていただきました。通常あるものから始まって、情報セキュリティセンターから行政改革実行本部事務局までこれだけ、それは一個一個は全て大事ですよ、一個一個は大事だけれども、これだけのものが全部ぶら下がっているという状態であります。

 そして、その次のページを見ていただくと、内閣の、内閣官房という、いわゆる日本国政府の言ってみれば行政の司令塔であります。そこの司令塔の機関の定員。

 それは、いろいろな仕事があれば、多い方がいいとおっしゃるかもしれない。だけれども、多ければ多いほど、一人と一人の人間のコミュニケーションをとるために大変なことになっていくわけです。これは本当にこんな形でふえていっていいのか、こういう疑問を持っているわけであります。

 そして、その次のページに参りますと、内閣官房の庁舎の場所、その次は内閣府の庁舎の場所というのをあえてつけさせていただきました。

 今、岡田大臣がおっしゃった、例えば公務員制度の改革推進本部というのは総理府の本府の庁舎にございます。それから、行政改革の実行本部は第四合同庁舎にあるわけです。そして、行政管理局というのは警視庁の横の第二合同の方にあるわけであります。

 それで併任をかけて、本当にこれはいいんですか。これはなかなか国民の方に理解いただけない。内閣官房とか内閣府というと、一つのビルの中にぴしっと集まって、何かすごく、それこそコントロールタワーですからというイメージをお持ちになるんですが、現実はタコの八ちゃんみたいになっている。前に、仙谷前官房長官からは、温泉旅館の離れと言われました。また、スパゲッティとも言われたものであります。平野元官房長官からも、この状況について嘆き節も聞いたわけであります。

 そこで、現在このあるじであります藤村官房長官にお伺いします。

 本当に使い勝手、いいですか。悩みはないですか。いかがでしょう。

藤村国務大臣 府省横断的な政策課題というのが増加している、それで内閣官房あるいは内閣府の総合調整機能の重要性が増している。そういう中で、内閣官房あるいは内閣府の組織がタコ足にもなり、若干の肥大化もしているというのは御指摘のとおりだと思います。

 内閣官房、内閣府において、組織あるいはスタッフについて、考え方としては、当然必要最小限のものとするとともに、併任も、さっき名刺のお話をされましたが、人の数ということを考えると、やはり一人の方にいろいろ兼務していただくという意味で併任を活用し、そして機動的、柔軟に対応するというところに努めてはいるところであります。

 嘆き節がないかと言われますと、私にとっても、本当にちょっと複雑な、一人の方でも非常に多くの併任をされていて、大変な部分があるというのは事実だと思います。

 今後とも、必要となる組織の充実に努めていく一方で、各省庁との役割分担や業務の不断の見直しを行うなど、できるだけ、やはり簡素とシンプルということも目指して維持形成に努めていきたいと考えております。

橘(慶)委員 今、内閣の中では、少子化システムということも内閣府の方で、たしか第四合同の方でやっておられると思います。これは、せっかくこういう機会ですから、御披露させていただきます。

 最初は去年の三月までにこのシステムをつくるという大車輪で、それはもう少し現場もよく踏まえてということで、今、一年かけて、ことしということ。これも、先ほど申し上げた社会保障一体改革の中で両立するのかどうかは別として、一年余計にかけられたんですが、最初に私のところへ説明しに来られた内閣府の職員の方がいらっしゃいました。どうしても早く仕上げなきゃいけない、そういうふうに言われているんだと。ところで、あなたは今まで何をしていたんですか、いや、今まで経済分析をやっていました、では、保育所を見たことはあるんですか、見たことはありません、こういう話であります。

 ですから、何でもかんでも内閣府へ持ってきてやればいいということでもない。厚労省と文科省でチームをつくってやらせた方がいいことがあるかもしれない。何もかも持ってきて、では内閣府の職員なり内閣官房のプロパーの人がオールマイティーかといえば、そんなことはないのは皆さんもよく御承知のとおりであります。

 だから、そこは、先ほどお話のあった、減らすものは減らしたり、新しいものをつけないとか、あるいは課題を解決してしまうとか、そういうことをやって、やはり常に内閣官房が、それこそ東日本大震災みたいなこともあるわけですから、そういうものに対応できる遊びの部分は持っていなきゃいけないんじゃないか、このことを申し上げたいわけであります。

 そこで、現在の内閣官房には郵政改革推進室、行政改革推進室、地域主権戦略室、国家公務員制度改革推進本部、これは皆、総務省の所管と絡むものであります。それは確かに臨時的にということではあったにしても、もう臨時がずっと恒常化しつつある。地域主権戦略室なんていつ終わるんだろう、そういう状況なわけであります。

 それは、総務省の行政管理局もあります、行革の話でいえば。総務省の自治行政局や自治財政局もあります。郵政担当の局もあります。そうなれば、本当にこれでいいのか。

 これを片山前総務大臣にお伺いしたときには、幾つかのものは返してほしいと率直な答弁もいただいているわけであります。川端総務大臣の見解を伺います。

川端国務大臣 総務大臣と同時に地域主権の担当大臣ということもありますが、両方の側から見たときに、先ほど来答弁いたしましたように、基本的には、国のいろいろな仕組み、あるいは制度、仕組みを見直して新しくしていくというのは、それぞれの省が責任を持ってやるのが基本だと思います。

 ただ、先ほどお話ししました郵政の問題あるいは地域主権、国家公務員制度とかいうのは、やはり他省と相当一緒に調整しないとうまくいかないということで今のようなものができているという背景は御理解いただけると思うんですが、確かに、設置されるとずっと残るという傾向があることは事実であります。御指摘のように、やはりその役目が終わったら終わるということで、本来、総務省なら総務省でやっている部分で賄える部分があればそこでしっかりやるというのは、方向性としては私は御指摘のとおりだと思います。

 ただ、現状で、今私たちが内閣府と一緒にやっている部分は、やはり今の時点では、総務省の役割もありますが、他省の役割も含めて連携してやらざるを得ないというか、やるものであろうというふうに思っております。

橘(慶)委員 一つ一つの仕事をとってみれば、みんな大事であります。そして、それは省庁間横断もしなきゃいけないものもいろいろあるでしょう。最初に岡田大臣から答弁いただいたとおりであります。しかし、その中でやはり決断するときは決断して、そうはいってもこれは各省に返そうよということもされないと、だんだんだんだん機能が、要は、コンピューターの中にソフトをいっぱい入れたような話ですね。ソフトをどんどん入れていけば、だんだんコンピューターの動きが遅くなるのと同じ話であります。ぜひ、そうならないように、そろそろお考えになってはどうですかということを申し上げたいわけであります。

 このことに関連して、一つ、私としては、これは苦言になると思いますが、申し上げたいのが次の質問であります。

 今回の東日本大震災、大変な原発の事態に鑑みて、原子力規制庁というものを今お考えになっております。そのこと自体は大変大事なことだと思います。組織のあり方については、いろいろ意見はあるでしょう。ただ、この規制庁を設置するということは、やはりこの霞が関の省庁に一つ外局の庁というものをふやしていくということになってくるわけであります。

 今まで、保安院というのは資源エネルギー庁の下部機関でありましたから、この保安院というものに課長さんが何人もいらっしゃった、その課長さん方は、みんな経済産業省令の省令で決まる組織であったわけであります。それを原資にして、今回は環境省の外局として原子力規制庁というお考えでありますから、いわゆる政令で定まる、職の格としては一つ位置づけの高いものに全部スライドするわけであります。

 よって、皆様方におつけしたこの資料の六ページのところに、中央省庁の課等の推移というのが並べてあります。これは今、平成二十三年度八百八十八、今回二十四年度は、ですから五つふえて八百九十三ということになってまいります。

 原子力規制行政は大変大事であります。それは認めます。しかし、今、国民の皆さんに、言ってみれば身を切る姿勢でいろいろなことを示していくというときに、果たしてこの中央省庁の課の数をふやしていいのかどうか、こういう問題意識なわけであります。これは、方法論はあったと思います。ほかの省庁の課を一つずつ減らせばよかった、こういう話であります。

 実は、この予算委員会では、あるいは財政金融委員会では、マンデル・フレミングの法則というのが大変有名な法則としてあるわけでありますが、私はあえてここで行政学の法則を一つ申し上げたい。これをパーキンソンの法則といいます。仕事はどんどんふえていく、ほっておくと組織はどんどん肥大化する、だからどこかでなたを振るわなきゃいけない、こういう話であります。

 この平成二十四年三月末ということに向かって課をふやすということで、本当に時節柄いい判断なんでしょうか。総務大臣のお考えをお伺いします。

川端国務大臣 表でお示しいただきましたもののスタートが平成十三年というのは、平成十三年から中央省庁の改革をやっていこうということで、おおむね千程度に減らした後に、いわゆる省庁再編ですね、それから九百に近い数まで減らしていこうということでやってきて、今のような数字になりました。

 そのときの基本的なルールとして、本府省及び外局の内部部局の課は政令で決める、附属機関の課は省令で決めるということで、スクラップ・アンド・ビルドが原則ということで、政令の課を設置するときは政令の課を廃止するということが大原則でありました。

 今回、原子力規制庁の設置に当たっては、その任務である原子力の安全の確保に係る責任と事務の分担関係を明確にするためということで、庁の事務を分掌する六つの課と五人の分掌官を設置するということにいたしました。その際、原子力安全・保安院に置かれていた十一課を廃止する。政令で設置する分が五つふえましたが、減らした方の原子力安全・保安院は、課は省令で設置しているために政令では減らない。ですから、省令で減らした分で政令がふえたということになってしまった。

 そういう意味で、課という数としては、トータル、全部合わせると、省令、政令、合わせた分では変わっていないんですけれども、原子力規制庁の内部部局における責任と事務の分担を明確にするため、課の組織とする必要がどうしてもあったということで、結果としてはこういうふうになりました。実質的には組織の膨張にはなっていないんですが、政令と省令でのスクラップ・アンド・ビルドがまたがったことによってこの数字になりました。

 実質的に、この業務においてまさに安全を確保するためという趣旨に基づいて、やむを得ない措置としていたしましたけれども、これがそれ以外の組織の膨張になることは絶対しないという歯どめはかけておることでありますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

橘(慶)委員 それは仕方がないですよ。その組織だけで考えれば絶対必要なんですよ。だけれども、そこだけで物事は終わっていないわけで、中央省庁は、それこそ、法務省もあれば、財務省もあれば、農林水産省もあるわけです。

 ここは自由答弁で結構です。岡田大臣、どうですか、これは、やはり減らす、八百八十八に戻した方がいいんじゃないですか。いかがです。

岡田国務大臣 個別のことに所管外の私が余り言うべきではないというふうに思います。

 ただ、委員のお話、先ほどから聞かせていただいていて、私は、かなり同感でございます。

 私自身も、内閣府の大臣、行政刷新はそうなんです、それと、行革や社会保障・税一体改革、これはむしろ内閣であります、そういう二つの組織に身を置いている。いろいろ部下を招集しても、内閣と内閣府双方から集まってくる。そういうこともあって、今回、事務局という形で一本化したということもございます。

 内閣府というのは、いろいろな期待感を持ってつくられた組織であり、また重要な役割を現に果たしておりますが、次第に肥大化していることは間違いない。本来、ある程度まとまったものは各省庁に戻して、そこでやっていただくべきではないか。そうでないと、併任というような形で、あるいは出向という形で、各省庁から内閣府にどんどん人はふえてくるけれども、必ずしもそれが効率的に行われているかどうかというところについては疑問もある。その象徴が、建物があちこちに分散していて一体感がなかなかとれないというような問題がございます。

 内閣についても、御指摘のように、少し肥大化の傾向がなきにしもあらずで、そういうことを一度きちんと整理してみる必要があるのではないかという気はいたします。

 ただ、目前、社会保障・税一体改革とか行革とか、重要な仕事がございますので、そういうものに、皆様の御協力をいただいて、ある程度めどがつけば、そういったことにも着手をしてみたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 そのめどがなかなかつかないまま毎年毎年過ぎているということも、どうか御理解いただきたいなと思うわけであります。

 しかし、そういう認識を持っていただいているということは一つは前進でありまして、そういう認識のもと、さらに話を続けます。

 国の行政機関の定員でありますけれども、前の自公政権の中では、定員純減計画というのがありまして、平成十八年度から二十二年度の五年間で、日本年金機構に社保庁が移行したので一万二千人減った、これを除いても、全部で五・三%、一万七千四百七十三人の純減がなされたわけであります。皆様方につけた資料では、その次のページに、行政改革推進法対象分野における主な取り組みということで、総人件費改革のところに、細かい数字でありますが、この数字が載っているところであります。

 「平成二十二年度以降の定員管理について」ということで、前政権下の、いわゆる自公政権下の末期、二十一年七月一日閣議決定で、二十二から二十六年度の五年間、今度は純減計画ではないんですが、二十一年度末の定員、おおむね三十万二千二百ウン十人ということでありますが、その一〇%以上を合理化するということで、二十二年度は六千六十六人、二十三年度以降は、そのときの考え方として、地方出先機関の改革の状況も見て目標数字を決める、こうなっていたわけであります。

 あくまで、この六千六十六人という二十二年度の目標数については、これはいわゆる純減ではなくて、これだけの査定をして減員する、だから、増員すればまたふえるわけですけれども、普通に考えたら、そのおつりで減っていくということではあるんですが、この計画、その後どうなっているか、総務大臣からお答えいただきます。

川端国務大臣 御指摘のように、この数字はいわゆる片道の数字でございますが、二十二年度からの五年間で一〇%以上、平均でいいますと二%以上の合理化を行うとしているということでございます。

 平成二十二年度は、目標数六千六十六人を上回る六千三百三十人、二・一%の合理化。これ以降も、二十三年度は六千三百二十人、二十四年度は六千四百十三人。それぞれ目標数を上回る合理化を行って、三年間のトータルで一万九千六十三人、六・三%。ですから、三年間で、計算上、六%を上回る六・三%の合理化を行っているところでございます。

橘(慶)委員 総務大臣、ただいまの数字は、それは減員でありまして、逆に割り戻しの増員があるわけですから、実際の数字としては、その数字になっていない。私の、総務省からいただいている数字、総務省のホームページによれば、二十四年度末の、今度の予算でセットされた定員は二十九万九千七百五十八人。ですから、三十万二千二百六十三人から、この三年間で二千五百二十三人、〇・八%の減員、このように数字として出ているわけであります。これでよろしいですか。

川端国務大臣 純減でいいますと、二十三年度が一千二百二十三名、二十四年度が一千三百名、合計二千五百二十三名で間違いございません。

橘(慶)委員 ですから、このペースがこれでいいかどうかということなんですよね。よく国家公務員総人件費の二割削減の話が出てまいりますが、これは、よく言われる、給与の部分と人員の部分があるという話。しかし、人員の部分では、この三年間の予算のセットで〇・八%の減に実はとどまっているという状況であります。

 二十四年度予算案におきましては、人件費は、六百六十一億円、一・三%減の五兆九百四十四億円なんですけれども、定員の減少率では公務員全体で〇・二%くらいなんですが、予算が定員の減少率を上回って減っている原因ということについて、財務大臣からお伺いいたします。

安住国務大臣 国家公務員の人件費は、公務員の給与費、そのほかに、退職手当、国家公務員共済組合負担金等を加えた額で計上しておりますので、その点でいえば、人件費の一・三ということになるわけです。

 国家公務員の人件費の増減要因というのはさまざまありますけれども、言うと時間を食ってしまいますので、トータル、マイナス六百六十一億円ということになります。

橘(慶)委員 なかなか、総人件費というとコントロールできない部分があるということだと思います。

 そこで、平成二十一年度予算、これが言ってみればマニフェストのスタートになるわけですが、五兆三千百九十五億円から見ますと、この二十四年度予算、五兆九百四十四億円というのは、二千二百五十一億円、四・二%の削減となっているわけですが、この中に日本年金機構へ移った方というのがあるわけです。それは、現実、またそこで働いておられるということでいえば、それをカウントするのは、本当は、財務大臣の立場としては本意ではないだろうと思います。

 その日本年金機構への移行分を除いて、三年間の達成率というのはどれだけになりますか。

安住国務大臣 二十四年度予算における国家公務員の人件費の総額は五兆九百四十四億円でありますから、二十一年度に比べるとマイナス二千二百五十一億円となりますが、今御指摘のように、日本年金機構への移行による減少分というのは、マイナス七百五十億円を除いた減少額を仮に試算するとマイナス一千五百億円程度となりますので、マイナス二・八の削減ということになります。

橘(慶)委員 なかなか、そういうもので現実やっていくということは、一つ一つの課題を解決していくということは非常に難しいということを申し上げたいわけであります。その中で、これからどう進めていくか、どういう時間軸でしていくか、しかし、また見据えていかなきゃいけない部分もある、このあたりをよくお考えいただきたい、こういう意味でございます。

 それで、少し私はここまでで時間を食いましたので、幾つか骨の部分だけ、この法案はどうなんだろうというところをあと質問させていただきたいと思います。

 独立行政法人の改革ということで、結構大きな提案を今いただいているわけであります。独立行政法人の中に、法人の性格づけをして幾つかのタイプに分けるであるとか、それから、過去の独法の整理合理化計画、凍結をされたわけですが、その中にあった幾つかのものについてはやはりやろうとか、いろいろあるわけですけれども、果たして、この時期、個々の法人を改革していくことは非常に大事なことでありますけれども、この段階で独法のそもそも論みたいなことまで本当にやる時期なのかということなんです。

 改革の実を上げるということと、そういった大きな、大仕掛けなことをやるということは、今、最後に目指す山を登る際に本当に必要な山なのか、こういう趣旨であります。岡田大臣の見解をお伺いいたします。

岡田国務大臣 独立行政法人につきましては、先般、閣議決定をさせていただいたところでございます。

 中身については、委員御指摘のように、独法制度そのものを大きく変えるという中身も含まれたものでございます。例えば、主務大臣や監事による法人の外部、内部双方からのガバナンスが不十分であるという点に対してしっかりと対応したものにすることとか、あるいは、運営費交付金の使途が不明確なものがある、そういったことに対応しなければいけない。あるいは、第三者のチェックが不足しているということで、不要資産を保有していたり不透明な取引関係の存在などがある。

 そういったことに横断的に対応するために、独法制度そのものについてしっかりと、もちろん個別に改正するということも重要でありますが、制度そのものも、独法制度ができてもう十年たって、いろいろな問題も明らかになってまいりましたので、双方で対応する、そういう手法をとったところでございます。

橘(慶)委員 今、そこまで大上段で問題をいろいろ複雑にする必要があるのかなという心配をするわけです。

 出先機関改革のことについては、皆様方におつけした資料の一番最後に、現状の最新の方針というものが書いてあるわけであります。

 これは総務委員会でも少しお話ししましたが、私は、この取り組み方針については、最初ちょっと言われた話よりは、言ってみれば改善が加えられたものだと思っております。「「アクション・プラン」を、百かゼロかということではなく、少しでも前進させるよう、」と。少しでも前進させるようということであります。

 そして、出先機関のこの法案については、「来年」、これはことしになっていますけれども、今の通常国会への法案提出は「最大限努力。」であります。最大限の外はあるわけであります。そういうことにしておけば、いろいろな遊びの部分があるということだと思うんです。

 私は、総務大臣に一問だけ、どのようにこれに基づいて進めていくのかということと、また繰り返しになりますが、今いろいろなものをごちそうとしてお膳に載っけない方がいいという考え方なんですが、どうでありますか。お考えをお伺いいたします。

川端国務大臣 一連の流れは基本的に御理解いただいているというふうに思いますが、アクション・プランの中で、特に、地域でやりたい、ブロック単位でやりたいという御希望のあるところの御要望を踏まえながらやっていこうという経過の中で、関西と九州がやりたいということを踏まえて、そこの皆さんからの御要望として、いわゆる三機関ですね、国交省、経産省、環境省の出先機関をやりたいということで、大きなその受け皿の組織のあり方と、それから権限も、事業をそのまま権限として移せるものと、工夫をしないと移せないというか、移すには工夫が要るというのと、基本的にはほとんど無理ではないかと、三つに分けて、それで今、各府省も含めた調整を行っております。

 そういう中で、いろいろな議論があります。この前も地方の皆さんを含めてやりましたが、非常に、基本的には前向きに取り組んでいただいているのはありがたい。ただ、課題も多い。そういう意味で、丁寧にしっかりと議論を詰める中で、目的は、地域の身近で、より充実した行政サービスが提供できるということに尽きると私は思っていますので、先ほどのあれですが、丁寧に一つ一つ小さな峰を、山を越えながら頂上に向かってまいりたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。そのような感じで、独法の方もぜひよくお考えいただきたいという趣旨なのであります。

 地域戦略一括交付金についても幾つかお伺いしておきたいと思います。

 ことし、これも言ってみれば少し、最初の市町村全部までというのから見れば、政令市まで入れてみようということで、いろいろな私どもの意見も取り入れていただいて、いわゆる一歩一歩の形に変えていただいていることは、その方がよかったと思っております。

 ただ、政令市も対象として拡充されたんです。去年は四千七百七十二億円、都道府県対象。これに政令市も加え、事業も九事業から十八事業にふやして、六千七百五十四億円にふやした、このようにおっしゃっておられるわけであります。資料は皆さんの最後のページにおつけしております。

 ただ、昨年の四千七百七十二億円に当たる部分については、どうやら査定の筆が入って減額をされた、こういう話を聞いているわけであります。ここの部分が非常に気になるわけですが、どのような減額であったのか、お伺いいたします。

川端国務大臣 今回、総額でいえば、沖縄分を除きまして、四千七百七十二億円が六千七百五十四億円。沖縄も入れますと、五千百二十億円が八千三百二十九億円。総額をふやした、対象事業もふやしたということでありますが、既存の部分の概算要求は、なべて一割減で要求しなさいということから要求をいたしまして、そして、それに加えて、減額分を特別枠として一・五倍要求できるということで要求いたしました。

 そういう部分で、残念ながら、そういう一割減の要求プラスアルファということの要求の中で、結果的には、四千五百二十三億円、五・二%減という形になってしまいました。基本的には、東日本大震災の復興向けを除いた地方向けの投資補助金等の全体の減額が六・六%ですけれども、それよりは減らなかったということで、既存の事業はそういう部分で減りました。

 ただ、総額的には、全体としてはふやしましたし、今までの継続事業を引き続きやっていただくと同時に、自主性がふえるようにということを含めて、今回の、今年度の県の実際を踏まえた仕組みで政令市を拡大したということでありますので、これも苦労をしながらでありますが、着実に前へ進んでいるというふうに思っております。

橘(慶)委員 そこは少し評価が違うわけでありまして、一番地方が心配していたのは、まとめることによって、安住大臣もいらっしゃいますが、査定の筆は一本で入れやすくなるんじゃないか。だから、結局、四千七百七十二億円あったものが五%削られちゃった。これではおもしろくないわけです。

 そういうことでは、まとめて、やがて削っていく、その上に新しい事業が入ってくる。だから、総額はふえている、だけれども、現実、そこの事業だけで見れば減っていく、これでは困るので、ここはぜひお考え直しいただきたい部分であります。

 そして、配分基準も、そうなれば、九事業から十八事業になれば当然変わるわけであります。この配分基準を早く決めないと示達がおくれる、こういう問題であります。

 あわせて、この配分基準がいつ出されるのかということ、去年もこれは非常にもめました。そしてまた、配分基準が精緻になればなるほど、それは地方交付税の算定に近づいていくわけであります。それであれば、なぜそういった仕事を内閣府でやらなきゃいけないのかという問題もあるわけであります。あわせてお答えいただければと思います。

川端国務大臣 今年度は初めてやりましたので、いろいろな仕組みをどうするかという議論も、地方の皆さんのことを丁寧に聞くということで、結果的には、多分これは六月ぐらいになった。それで、地方議会の予算を含めては大変タイトであった。

 来年度は、一定のそういう実績を持っております。その分で、今までの継続分と新たにメニューを拡大した部分に関しての基本的な配分方式は、都道府県、政令指定都市にも既に一応の作業方針として、都道府県分については、二十三年度の配分方式を基本に、客観的指標による配分割合やメニュー拡大に伴い必要な変更を加えるということと、政令指定都市については、都道府県における配分方式に準じて作業を進めるということは説明をしてあります。

 そういう意味で、引き続き、いろいろまとまって予算も最終的に決まっていくという状況、そして、予算が最終的に成立した時点になりますけれども、ということでは可及的速やかに、昨年度は決まってから制度をもう少し詰めるというタイムラグがありましたけれども、来年度はそれがないということで、情報提供は今も含めてこれからも緊密にやって、支障のないように最大努力をしたいというふうに思っています。

橘(慶)委員 もう一つの、算定は総務省で行うべきというのはどうですか。

川端国務大臣 済みません。失礼しました。

 ある程度、客観的指標で配っていくということにすると、自由裁量の部分がふえるという意味では、性格的に地方交付税と似てくるというふうな点は間違いなく生じてくるというふうに思います。

 ただ、この自主戦略交付金は、地方が自由に事業を選択できる、選択した後の事業は補助事業でございますので、そういう意味では、地方の一般財源として交付税を使うのとは異なって、国庫補助金としての事務手続が要るということであります。

 なお、府省の枠にとらわれずに地方の自由な事業が選択できるように、内閣府設置法の改正を行って、府省の枠を超えた交付金事業ということで内閣府の中に法定して、地域自主戦略交付金の予算を一括計上して、こういうふうな交付限度額算定を行うこととしているという仕組みになっているということは御理解いただきたいと思います。

橘(慶)委員 そうやって内閣府の仕事をふやすことがいいのかどうかということでお受けとめいただければと思います。

 時間が大体参りましたので、一つ申し上げておきたいのですが、きのう高木委員から東日本大震災の復興予算の執行状況ということでお話がございました。

 これは実は総務委員会でも話題になりまして、地方が交付税で措置をいただいて負担をする、そういう部分についてのところで見ますと、これは総務委員会で確認しておりますが、二十三年度で実は災害復旧費として三兆二千億円の予算措置が地方負担のある総事業費としてあったわけであります。そのうち九千八百四十四億円だけ、地方としては、三月末に執行見込みであるから、その分の交付税を交付してほしいということになっていまして、そのため、交付税は一千億円、二十四年度予算に繰り越したわけでありますが、それでいきますと、二兆二千三百億円が来年度予算に、二十四年度に執行が繰り越される、こういうことになって、三分の一しか執行されていない、こういうことに見えてくるわけであります。

 このこともぜひあわせて、きのうの高木委員の御指摘とあわせて、執行状況がどうであるのか、ぜひこれは、きょうは答弁は結構ですから、財務大臣、また復興庁長官とよく整理をして、そして、予算委員長、どうかこれをまた委員会の方へ出していただくようにお取り計らいをお願いしたいと思っております。

中井委員長 理事会で協議します。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて橘君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。予算委員会で質問させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 まず、福島特別立法についてお伺いをいたします。

 未曽有の東日本大震災、原子力発電所の事故災害から間もなく一年を迎えようとしております。本年を復興再生元年として、国会、政府挙げて被災地の復興に取り組まなければなりません。とりわけ、原子力発電所の事故に見舞われた福島県の復旧、復興、再生には、まだ多くの課題が山積しております。

 政府は、二月十日、福島復興再生特別措置法案を閣議決定し、国会に提出をいたしました。私たち公明党も、福島県の復興・再生に関する提言を一月二十四日に発表し、二月一日に平野復興大臣に申し入れをさせていただきました。また、我が党は福島特別立法検討プロジェクトチームを発足しておりまして、協議を重ね、今、政府が提出された福島復興再生特別措置法に対するいろいろな検討をさせていただいております。まず、この件につきまして、問題点を指摘させていただいて御答弁をいただきたい、このように考えております。

 まず、子育て支援措置としての十八歳以下の子供の医療無料化につきましてお伺いをしたいと思います。

 文科省の調査によりましたら、昨年九月一日時点で、ちょっと古いわけでありますが、幼児、児童生徒の県外への転校は一万一千九百十八名。他の被災県に比べますと、桁が違うんですね。こういう状況でありますから、福島県といたしましては、これは何としても、こういう子供たち、親御さんも一緒に出ておられるということで、打開をしたい、その一つの考えとして永続的な十八歳以下の子供の医療無料化を国に求めてきたわけでございます。

 本年二月七日の参議院の予算委員会において、我が党の渡辺孝男議員の質問に対し、小宮山厚生労働大臣は、県が独自で基金で、福島県民健康管理基金でなさるので、そこの助成金の特例を設けるとか、いろいろな形でその基金を援助するということを考えていきたいと答弁をされました。また、野田内閣総理大臣及び平野復興大臣も、当時は復興担当大臣ですね、この件につきまして、基金が枯渇しないように支援を行う旨、答弁をされているわけでございます。

 野田総理は、十八歳以下の医療無料化について、ストレートに実現することはできませんけれども、県が基金を活用して対応するということの中で、問題は、これをしっかり継続させていくということが大事だと思いますので、そのためには、まず基金が枯渇しないようにすること、そのための支援は万全を期していきたいというふうに思いますと。同趣旨のことを平野当時復興担当大臣も答弁されております。

 政府としてこのような方針を立てておられるわけでございますから、私どもとしましては、今回提出された福島復興再生特別措置法案の中に、条文で書いていただけないのか、そのことが、この方針を法的に担保するという形で福島県の皆さんにも安心していただける、こういうふうに考えるわけでございます。

 十八歳以下の医療の無料化ということを、県の基金であるといいましても、今ゼロ歳の人も実は十八年継続をする話なんですね。ですから、基金ということで枯渇しないようにするといいましても、その答弁だけでは福島県の皆さんは安心できないわけでありまして、ここについての条文化、法定化ということにつきまして、平野復興大臣にお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 福島県における十八歳以下の医療費無料化につきましては、国としては、医療費の根幹にかかわることだということで、直接それに国費を出すということは現段階ではできないということで、県からは極めて残念だという言葉がございましたけれども、国側の考え方はおおむね了解していただいたというふうに思っております。

 委員の御趣旨は、今回、それにかわって県が、福島県民健康管理基金等の活用を含めまして、今その具体的な方策を詰めている最中ではございますけれども、将来この基金が枯渇することがあるじゃないか、それに向かって国もしっかりとしたコミットをすべきだ、そう条文で書くべきだ、そういう御意見だったと思いますけれども、基本的に、まず県の取り組みをしっかりとフォローするということが基本だというふうに思っております。

 この基金は、国が七百八十億、それから東電が二百五十億、それをもとにして動かす基金でございまして、この無料化、県の独自の取り組みという形でやるわけでありますけれども、無料化を将来ともわたって存続するというときに、その基金のお金をどうするかということについては、それが将来枯渇しないように、国としてもその段階で県と話をしながら前向きに取り組むということがやはり大事だというふうに思っています。

 ただ、これを現段階で法律の条文に書くかどうかということについては、今、我々のスタンスとしては、まず県の取り組みを見て、その基金というものの創設が国と東電のお金でできたという経緯もございますので、この経緯を踏まえて、枯渇という問題が出てきた場合には県と国が真摯に向き合ってお話をする、そういうスタンスで臨むのがいいのではないかというのが今の政府の考え方であります。

大口委員 そこで、県と協議をしてということになりますと、これはやはり、信頼ということからいきまして、枯渇しないようにすると総理はおっしゃったわけですよね。そこまでの答弁をされているわけですから、そこから後退しちゃうんじゃないですか。そうじゃなくて、やはりここは法定も含めて検討するという前向きな答弁を大臣に私は求めたいと思いますが、いかがですか。

平野(達)国務大臣 この基金が国のお金と東電の二百五十億というものからできているということでありまして、それをもとにして医療費を無料化するということであります。そういうことで県も了解したということでございます。この財源が将来どこかの段階で、これは健康管理基金ということで、健康診断にも使わなくちゃなりません、それから医療費の無料化ということにも県が使うということでございますから、この経緯はきっちり尊重しなくちゃならないというふうに思っております。

 枯渇という問題につきましては、繰り返しになりますけれども、その段階で前向きに、やはりきちっと国も対応しなければならないということは、私どもも了解しているつもりであります。

大口委員 次に、今回、環境省が一月の二十六日に、住民の早期帰還を目指して除染工程表を発表しました。しかし、福島県の住民の方々は、健康被害に対する不安がございます。

 そこで、放射線による健康上の不安の解消につながる措置として、放射線被曝に起因すると疑われる健康被害が将来発生した場合に、国は、保健、医療及び福祉にわたる措置を総合的に講ずべきであると思います。福島復興再生特別措置法案ではこうしたことが明確に書かれていません。この点について政府の考え方をお伺いしたい。やはり、こういう措置を法文で明文化するということ、当然そうあるべきであると考えますが、いかがでございましょうか。

平野(達)国務大臣 条文に関することなので、私の方からお答えをしたいと思います。

 福島復興再生特別措置法案では、放射線に関する健康上の不安の解消など、住民が安心して生活できる環境の実現のための施策を一応規定はしております。

 紹介させていただきますと、具体的には、これは細野大臣のところが所管になりますけれども、健康管理調査の実施に関する措置、放射線対策として農産品等の放射線濃度の測定、除染の迅速な実施、児童等の被曝放射線量の低減のための措置、放射線の人体への影響等に関する調査研究の推進、それから医療及び福祉サービスの確保のための施策、こういった規定を盛り込んでございまして、こういった施策に取り組みながら、放射線被曝に対する不安解消に必要な措置を講じるよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大口委員 ですから、今私が言ったようなことをやはり明確に条文化するということが、これは県民の安心につながるわけです。ですから、この部分についてどうなのか、ストレートにお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 今言ったような部分については、各条に、こういった施策を実施する、そういう規定になっております。という答弁でよろしいでしょうか。

大口委員 ですから、放射線被曝に起因すると疑われる健康被害が将来発生した場合に、国は、保健、医療及び福祉にわたる措置を総合的に講ずる、こういうような条文をしっかり書いていただきたいと言っているんです。

平野(達)国務大臣 まずは、放射線被曝に起因すると疑われる健康被害が将来発生した場合というよりは、そういったものに対する不安の解消ということと、こういうことが発生しないようにするための措置というのをこちらで規定しております。

 そして、疑われる健康被害が将来発生した場合ということを規定するのがいいのかどうかということについては、これは国会でも御議論いただきたいと思いますけれども、私どもとすれば、まだここまでのところは用意しなくてもよろしいんではないか。

 むしろ、繰り返しになりますけれども、今地元の中でも大きな問題になっておりますのは、放射線に対する不安、健康不安ということだったと思います。こういったものを解消する、それからあと、疑われる健康被害が出てこないようにするということで、除染等によって放射線のレベルを下げる、こういったものを法律に規定して、健康に対する不安を取り除くということが基本ではないかというふうに考えております。

大口委員 この点についてはまた議論したいと思いますが、やはり、あらゆる可能性について万全を期すという姿勢で政府は臨まなきゃいけない、こういうふうに思います。

 三番目に、復興交付金でございます。

 復興交付金を充てて行う事業の対象とすることができる地域についてでございますが、条文を資料でお示ししたいと思います。

 これは東日本大震災復興特別区域法、特区法ですね、この七十七条に、復興交付金事業計画の作成という中で、要するに、福島県もこの特定市町村に全て入っているわけですが、その後、限定されています。東日本大震災により、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失、損壊等の著しい被害を受けた地域、こういうふうに限定されているわけでございます。

 ですから、例えば、中通りでありますとか会津の方にはこの条文どおりに当てはまらない場合があって、なかなかこの復興交付金というのが活用できない、現場からそういう声が上がっているわけですね。

 それで、原子力被害という特殊な事情を十分考えますと、福島において柔軟かつ弾力的に復興交付金が活用できるように、この地域、この条文のこの部分、七十七条のこの部分につきましては、福島県内の全ての地域がこれに含まれるよう特別措置法においてちゃんと措置をすべきである、私はこういうふうに考えますがいかがかということと、特区法の七十九条に、復興交付金の交付に関する基本理念というものが、これは衆議院の修正で盛り込まれたんですが、その精神から照らしてどう考えるのか、お伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 まず、復興交付金につきましては、復興特区法において、東日本大震災により、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失、損壊等の著しい被害を受けた地域、こういうふうに規定したところでありまして、津波、地震、原子力災害ももちろん入るんですが、公共施設、建物等々が著しい被害を受けた地域の復興に向けての支援、そういう意味での交付金だということでございます。

 福島県内の全市町村を対象としており、また、復興特区法における東日本大震災には原子力災害も含まれていることから、福島県及び県内の全市町村は、地震や津波による被害と同様に、原子力災害により相当数の施設に著しい被害が生じた地域の復興、地域づくりのための事業に復興交付金を活用することも可能です。

 可能ですけれども、繰り返しになりますけれども、著しい被害ということで、内陸部はどうしても、著しい被害という観点からすると、適用の範囲から外れる地域も出てまいります。ただ、災害復旧事業とか、その他、例えば企業の立地のための交付金等々については、この交付金の外の制度もございますから、こういったものも使えるということであります。

 それからあと、原子力発電所の事故を起因とする公共施設等々の被害が出た場合には、概念上は復興交付金等々もその対象にはなり得るということでありますが、今のところ、原子力災害と公共施設の被害ということについて直接の因果関係が認められるような地域はそんなにないのかなというのが、今の私どもの率直な感想であります。

 その一方で、原子力災害の地域については、これ以外に、例えば福島県には特別の交付金、基金等々も設置しておりますから、そういったものの活用も十分可能だということもあわせて申し上げさせていただきたいと思います。

中井委員長 大臣、七十九条の修正項目の精神に照らしてどうだと聞いているんです。

平野(達)国務大臣 七十九条の精神、まさにこの精神にのっとって復興交付金は運用すべく、今関係市町村と詰めさせていただいているということでございます。

大口委員 復興交付金というのは大変な期待があるんですよね。それで、やはり中通りや会津の方々もこれを使いたい、こういうことでございますから、そこは政府で、適用できるようにしっかり検討してください。大臣、お願いします。よろしいですか。

平野(達)国務大臣 七十七条、七十九条、この精神を外さないようにしっかり運用してまいりたいというふうに思います。

大口委員 さらに、復興交付金を充てる事業等について、今回、福島復興再生特別措置法で盛り込まれている中に、原子力災害による被害を受けた産業の復興再生計画、これがありますね。それから、再生エネルギー源の活用とか、医薬品あるいは医療機器等に関する研究開発等、あるいは国際競争力を強化しよう、こういうことの重点推進計画というものがありますね。

 こういうことに基づいて国が認定するものでございますから、こういう事業についてはやはり復興交付金が使えるようにするのが大事だ、七十九条の精神からいっても、この基本理念からいっても、そうであるべきだ、私はこういうふうに考えますけれども、いかがか。それと、特区法における復興交付金の運用の弾力化ということをやはりもっと真剣に考えていただきたいんですね。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 福島県におきましては、福島特措法に基づき策定される、産業復興再生計画には原子力災害により被害を受けた福島の産業の復興及び再生の推進を図るための措置、重点推進計画には福島における新たな産業の創出に寄与する措置が記載されることになっております。

 一方で、先ほども申し上げましたけれども、こういった計画を受ける形で、例えば、企業立地補助や国際的な医療拠点、開発拠点等の整備など、福島原子力災害等の復興基金の造成を既に行っております。それから、再生可能エネルギーの研究開発及び関連施設の整備などの関連予算を含め、総額五千三百四十億円程度の予算措置を第三次補正予算なんかでも措置してございます。こういった措置をフルに活用していただくということがまず基本かなというふうに思っています。

 あわせて、この計画にのっとって、例えば、まだまだ不足だという点がございますれば、これはまた福島県とも協議して、また財務当局とも協議しながら、この計画の実施に必要な予算はしっかり確保しなければならないというふうに考えております。

大口委員 次に、中間貯蔵施設についてお伺いします。

 細野大臣、けさは島田の広域瓦れき処理の試験焼却に行かれたということです。私どもも、これは推進していかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 その上で、昨年十二月二十八日、細野当時原発事故担当大臣が福島県知事に、中間貯蔵施設を福島県双葉郡内に設置する考えを示されたわけですね。そのことについて、政府の今の方針についてお伺いしたいということ。それから、今回政府で検討しているのは、あくまで中間貯蔵施設であって、最終処分場については別途検討するということでよいのかということ。それから、福島特措法に、中間貯蔵施設を最終処分場としない旨をしっかり規定して法的に明確にすべきではないか。

 この三点をお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 まず、けさ方、島田市の方で試験溶融ということで取り組みましたものですから、行ってまいりました。委員会で御容赦をいただいて行かせていただいたことに、心より感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 御質問の中間貯蔵施設でございますけれども、昨年末お示しをしましたとおり、双葉郡内に設置の要請を引き続いてさせていただいております。双葉郡の方々は避難をされている方がたくさんいらっしゃいますので、一番つらい思いをされている方々にさらに負担をお願いすることになるというのは本当に心苦しい限りではありますけれども、やはり除染を進める上では、どうしても、出てくる土を何らかの形で貯蔵しておかなければならないということでございまして、今、これは、何とか可能性をそれぞれの地域で探っていただけないかということで、双葉郡の八町村それぞれの皆さんに、個別にさまざまなお願いをさせていただいている、そういう状況でございます。その考え方には変わりはございません。

 そしてもう一つ、そうした中で、私どもで申し上げておりますのは、やはりこれだけ大きな負担を福島の皆さんにお願いをする以上は、最終的な処分のあり方というのは、県外ということをしっかりと目指していくべきだということでございます。

 三十年という期間を設定いたしましたのは、三十年たてば全体の放射線量は下がるということももちろんありますけれども、それと同時に、減容化の技術開発も随分進むのではないかというふうに考えておりまして、既にその研究開発は始めております。そういったことも含めて、三十年後にはそれを凝縮してコンパクトにして、最終処分をしっかりと目指していきたいと思っております。

 法制化というお話でございますけれども、一つの考え方としてはそれもあり得るというふうに思っております。今地元とさまざまな、協議に入りたいということでやっておりますので、その協議の中で、どういった形にすれば確実に方針をしっかりと次の内閣、次の政権にもつなぎとめていくことができるのかということについて検討してまいりたいと考えております。

大口委員 今、法制化ということで前向きの答弁がございました。やはり、この方針の永続性ということは、法的に担保するというのが一番なんですよ、法治国家におきましては。よく検討していただきたいと思います。

 次に、電源開発促進税制及びエネルギー対策の特別会計についてお伺いをいたします。枝野大臣、お願いします。

 福島県は、いわゆる電源立地交付金を来年度から申請しない方針であると聞いております。福島県がこのような判断をしたことについてどういう思いがあるのか、大臣の認識をお伺いしたい。

 また、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する国の施策を実施するための財源の確保を図るため、この電源開発促進税制及びエネルギー対策特別会計の見直し等を行い、いわゆる電源立地交付金の財源を活用することも考えられるわけでございますが、これについての政府のお考えをお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 福島県からは、原子力に依存しない社会づくりを進める、そのことの中で、市町村配分分を除いて申請しないというお考えを表明されております。

 もちろん、国全体として原子力をどうするかはこの夏に向けて検討中でありますが、特に、事故の当事県である福島県がこうした御判断をされて申請をされないというお考えをされているということについては重く受けとめているところでございまして、県が辞退された額については、予算案への計上を見送っているところでございます。

 それから、財源の問題でございますが、電源立地交付金そのものは、ほかの、現に立地をしていただいて請求されている地方自治体が多々あるわけでございますので、それを何か流用というわけにはいきませんが、広い意味でのエネルギーの特別会計ということでは、既に国会でお認めいただいている、二次補正における原子力被災者・子ども健康基金の創設、あるいは三次補正の再生可能エネルギー先駆けの地とするための総額一千億円の基金創設など、こうしたところについては、エネルギー特会から予算計上をしているところでございます。

 繰り返しになりますが、現に原発の立地をお願いして、そのときのお約束で電源立地交付金を交付している地方自治体とのお約束はしっかりと守らなきゃいけない一方で、エネルギー特別会計の使い方等については、法の趣旨あるいは税の目的等のところとの整合性がとれる範囲内で、安心、安全、そして復興に、できるところについては使わせていただくということでやらせていただきたいと思っております。

大口委員 次に、二重ローンについてお伺いをいたします。

 再生支援機構につきましては、昨年十一月二十一日の株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づいて、ようやく二月二十二日に再生支援機構が設立をし、三月五日から業務が開始されます。

 この再生支援機構法は、公明党、自民党が中心となって議員立法として、これは参議院では昨年の七月二十九日に可決したわけですが、衆議院におきまして、三党協議の中で、新たな法律のスキームは否定的だったんです、民主党が。しかし、これは三党協議で協議を重ね、四カ月近くたって十一月二十一日に成立をした、そして今回、三月五日からスタートをする、こういうことになったわけでございます。

 立法者の一人として、大震災から一年を迎えようとしている段階でこの再生支援機構がスタートするということに対しては申しわけない思いでいっぱいなんですが、しかし、この再生支援機構が二重ローン解決のために有効に機能し、そして被災事業者の方々の再生に大きく貢献することができるよう、私どもは全力を挙げてまいりたいと思います。

 これにつきまして、平野復興大臣の、この再生支援機構の設立、業務開始に当たっての基本的な認識、決意をお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 委員から御紹介がございましたように、昨年十一月に支援機構法が成立をいたしました。大口委員には大変な御尽力をいただきました。

 機構の設立、業務開始に向けて、今、鋭意準備を行っておりますけれども、きょう設立認可を行ったところでございます。三月五日から業務を開始する予定で、今、その準備を加速させている、こういう状況です。支援機構の社長には、事業再生、地域金融等に精通された元足利銀行頭取の池田憲人氏にお引き受けいただくほか、事業再生の知見を有する人材が役職員として、一体となって被災事業者の再生支援に最大限取り組める体制を整えてまいりたいというふうに考えております。

 これから復興が本格化してまいりまして、二重ローン問題も、どちらかというと、今まで債務の延長、支払いの延期等々の措置によって表に出てこなかったんですけれども、この二重ローン問題が大きな課題になってくるというふうに思います。そういった意味でも、この再生支援機構、既に先行しております産業復興機構とあわせて大車輪の仕事をしていかなければならないというふうに考えております。

大口委員 今、産業復興機構の話が出ました。

 政府は、もともとは産業復興機構を各県に置いて、それでやれば十分だという話だったわけですね。それで、中小企業庁が中心になって昨年の十月から十二月にかけて、被災五県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、青森県に、各県の中小企業再生支援協議会のもとに産業復興相談センターを設置し、そして、窓口業務、事業計画のチェック、買い取り価格のチェック、債権者間の調整、産業復興機構への債権買い取りの要請、リスケ等を行ってきたわけですね。そしてまた、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の被災四県については、いわゆるファンド法による、中小機構が八割出資した産業復興機構を設置して債権買い取りをさせる仕組み、これをつくったわけでございます。

 これに対して、我々が議員立法でつくった再生支援機構は、四次補正で今回政府保証枠というのが五千億認められて、五千億円の買い取り規模を持つ。これは、産業復興機構四県で二千億と比べますと非常に、二・五倍の大きさであるわけでありますが、我々のこの再生支援機構というのは、できるだけ多くの事業者を支援の対象とする。これは法律の十八条の三項に書いています。

 そして、産業復興機構の支援が行き届きにくい小規模事業者、農林水産事業者、医療福祉事業者、これに重点を置いて、そしてまた中堅企業も、資本金五億円以下あるいは従業員一千人以下についても対象にするということでございますけれども、これにつきましては、支援困難なものについては再生支援機構の方でやるということでございます。

 そういうことで、零細事業者について、非常に手間暇かかるわけです。また、非常に数も多いわけであります。産業復興相談センターでは、振り分けとして再生支援機構の方にこういう零細な事業者、そしてまた支援困難なものについて振り向ける、こういうことについて確認いたします。いかがでございましょうか、大臣。

平野(達)国務大臣 まず、支援機構につきましては、仙台本店と東京本部の二カ所に拠点を設けますけれども、加えて……(大口委員「いや、その前に振り分けはどうか。今、振りわけの話です」と呼ぶ)そうです、振り分けの話です。

 窓口については、産業復興相談センターにとりあえず一元化して、この窓口で十分かどうかというのは現況を見ながらこれから検討しますが、とりあえず一元化します。

 今、委員の御質問に答えますと、いずれ、この支援機構は、小規模事業者、農林水産業者、それから医療福祉事業者などにきめ細かく対応する、そこに重点を置いて設立されましたので、産業相談センターにそういう案件が持ち込まれたときには、優先的にといいますか、支援機構にその案件はお任せする、必然的にそういう方向になってくるというふうに思っております。

大口委員 次に、再生支援機構の組織の体制、これは極めて重要なわけでございます。これにつきましては、再生支援機構の本店が仙台、これは我々が強く要求してそうなりました。そして、東京本部を千代田区に設置するということを聞いているわけでございます。

 しかし、今大臣もおっしゃいましたように、再生支援機構というのは、小規模事業者、農林水産事業者、医療福祉事業者という零細なところに対してはきめ細かく対応しなければならない、こういうことでございます。そして、そういうことからいいますと、産業復興相談センターに相談窓口は委託するということでございますけれども、やはり、各県の産業復興機構のように、どちらかというと買い取りだけというよりも、もっと仕事としては膨大なわけでございます。

 また、現場に本当に寄り添うような形でやらなきゃいけないわけですね。ところが、本店は仙台、そして東京本部を置くということで、産業復興機構は岩手県、宮城県、福島県そして茨城県にあるわけでありますが、仙台以外、被災県において支店等がない。これで本当に被災事業者に寄り添った形できめ細かな対応ができるのか、私は非常に疑問に思っておりまして、そこら辺、いかがでございますか。

平野(達)国務大臣 まず、窓口については、先ほど言いましたように、まずは相談センターで一元化させるということで、また、委員のおっしゃるように、小規模事業者等々に対する窓口が必要だということであれば、その状況に応じてこれは考えなければならないというふうに考えております。

 それから、産業復興機構は先行しておりますので、この産業復興機構との連携をしながら支援機構が仕事をして、その両者が相まって仕事をできるような体制をつくることも大事ではないかなというふうに思っています。さらには、支援機構によるその支店的なものをつくるということではなくて、産業復興機構との連携ということもやはり考えていかなければならないというふうに考えております。

大口委員 大臣、もう御存じのことだと思いますが、産業復興機構というのは買い取りが主でありまして、やはりこれは再生支援機構が責任を持ってやっていかなきゃいけないと思うわけですよ。ですから私が指摘をしているわけなんです。そこはどうですか。

平野(達)国務大臣 産業復興機構、頑張っておりますけれども、なかなか買い取りがまだ進まなくて、岩手県もやっと二件目が決まったということの報告を受けております。

 その背景には、企業グループ補助金等々のこともございまして、さまざまな背景があるようですが、いずれこれから、この二重ローン問題、債権の買い取りはふえてくると思います。そういう中で、やはり産業復興機構、もうだめだということではなくて、産業復興機構にも仕事をしていただかなくちゃなりませんし、支援機構と相まってということで申し上げましたけれども、基本はそういう方向で考えまして、とにかく二重ローン問題が解消できるような、そういった体制づくりだけはしっかり進めていきたいというふうに思っております。

大口委員 これは大臣もおっしゃっていますけれども、被災五県の産業復興相談センターの案件処理件数、これを見ますと、直近は六百六件ですよ。そして、産業復興機構の買い取り決定、これは、岩手県だけ、二件だけですね。

 一月七日のNHKスペシャルで、「“震災失業”十二万人の危機」ということで、この例は、美容院を経営されている、六歳の息子さんと二人暮らしの女性ですよ。それで、二十五年ローンで、一年半前に理容室、自宅兼で建てた。一千五百万円のローンがあった。今回流された。店舗の再建のために少なくとも一千万円のローンを組まなきゃいけなかった。そして、これについて産業再生機構に電話をしたけれども、対応してもらえなかった。それで、産業復興相談センターに電話したら、産業復興機構を紹介されたけれども、結局何もしてもらえなかった。こういうことで、たらい回しにされたということが出ております。

 こういうことがNHKで報道されますと、やはり、産業復興相談センターというのも、電話してもしようがないんだな、あるいは、産業復興機構についても、これは期待できないなということがもうアナウンスされているわけでございます。

 私ども、この産業復興相談センターの仕組みにつきましては、中小企業庁が中心になってやられたわけでありますけれども、非常に改善をしなきゃいけないことがたくさんある、もっと機能を強化しなきゃいけないことがたくさんある、こう思うわけですが、枝野大臣、いかがでございましょうか。

枝野国務大臣 まだ相談を受け付けた中で買い取り決定やリスケ合意に至ったものが少ないということについては、当事者の皆さんのお立場に立てば、できるだけ早くということが必要だろうと思っております。ただ、例えば再生の可能性をしっかりと判断いたしませんといけないということがございますし、また、買い取りやリスケに際しては、不動産の鑑定や債権者間の調整などがやはりある程度の時間が必要だということは御理解をいただければと思っております。

 それぞれ、産業復興相談センター、そして産業復興機構においては、中小企業庁がしっかりと研修その他をさせていただいておりますが、現場で御苦労いただいている皆さんのほとんどは、民間金融機関の皆さんや地元の税理士さん等でございまして、大変汗をかいて頑張っていただいているということは御理解いただければというふうに思っております。中小企業庁としても、さらにきめ細かく対応できるようにということで努力をさせていただきたいと思います。

 なお、御指摘のありましたテレビ番組についてでございますが、これは実は、産業振興機構というところに産業復興相談センターがある。その産業振興機構と産業復興相談センター、そして今度支援機構ができる。若干名前も紛らわしいし、どこが中心的窓口なのかということについての周知が必ずしも十分でなかった点があろうかというふうに思いますが、産業復興相談センターにきちっと御連絡いただければ、きちっとワンストップで受けられるように、このことはしっかりと徹底をしているところでございます。

大口委員 だから、広報のあり方も考えなきゃいけません。それから、例えばこの産業復興相談センターというのも長々しい名前ですから、もう少しわかりやすい、愛称みたいなものを考える必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

枝野国務大臣 周知、わかりやすさということについては、さらに努力して改善できる点がないかどうか、御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。

大口委員 ただ、農家の場合、なかなか商工会議所には行きづらいという面があります。また、漁業の皆さんの場合もそうでございます。そういう点で、農協や漁協、あるいは商業者なら商工会議所とか、一番身近なところにやはりちゃんとしっかりと相談をして、事業再生について力強く、きめ細かく相談を受けられ、そして再生支援機構のサービスがしっかり受けられるようにできるかどうかが勝負だと思うんですよ。

 今、はっきり言って、先行した各県の産業復興機構は機能していません。だって、二千億といっても、二件ですよ、買い取りが。今回は五千億の規模があるわけです。ですから、そういう点では、本当にきめ細かく対応していくためにも、それぞれの各関係機関と連携をして、そして窓口でどこまで充実して、これだったら信頼できるな、これだったらいろいろと手続を進めていけるなということが確信を持てるような体制をつくっていかなきゃいけないと思うんですが、その点、平野大臣、いかがでございましょうか。

平野(達)国務大臣 被災地域の土地利用計画の骨格も大体見えてきまして、これが実行に移されますと、個人商店、個人事業者、こういったものが、もう一回もとのというか、また仕事を復活させたい、そういう希望が次から次へと出てくると思います。

 こういう中でも二重ローン問題が足かせにならないように、そういったきめ細かな対応をしっかりやるように、この支援機構にしっかり仕事をしていただかなければなりませんし、あわせて、復興相談センターにつきましては、委員の御趣旨も踏まえまして、相談窓口も必要に応じて充実していけるように、これは中小企業庁とも連携しながら取り組んでいきたいというふうに思っております。

大口委員 中小企業庁だけではなくて、農林水産あるいは医療関係も含めて、よろしくお願いしたいと思います。

 今回、私どもが心配しているのは、再生支援機構にRCC、整理回収関係の方が二十五名いらっしゃる。専門家ですけれども、どちらかというと回収にこれまでいそしんでこられた方。だから、事業再生の方をしっかりやってもらわなきゃいけないですから、私ども、これは注目していますので、大臣、しっかり見てください。

 それから、支援基準につきましても、メーンバンクやスポンサー等から貸し付けや出資を見込まれる場合というのが条件になっているわけでありますが、政府系金融機関も、メーンバンクやスポンサーと一緒に、新しい融資あるいは出資というものを積極的に行っていただかなきゃいけないと思うんです。この点、平野復興大臣、それから財務大臣も、これは政府系金融機関のある意味で所管の代表格として、政策金融機関も積極的に支援をしていくということについて御答弁いただきたいと思います。

平野(達)国務大臣 これは大口委員も一番お詳しいわけでありますけれども、三党合意にも、「政策金融機関は、「支援機構」からの要請に基づき、債権者である金融機関等と連携を図り、事業者の再生に必要な補完的な資金供給について適切な役割を果たす」ということが三党合意で決めておられまして、これを受けた形で、政策金融機関との連携はしっかりとっていきたいというふうに思っております。

安住国務大臣 事業を本当に再生するための新しいお金をどういうふうに融通するかということですけれども、大前提としては、やはり民間の金融機関が提供して、それを公的な機関が補完するということが前提だというふうに踏まえてはおります。ですから、支援機構が支援対象をそうした考えに基づいて判断はしていってもらう。

 ただし、日本政策金融公庫は特別貸し付け等で震災対応に全力を挙げておりますので、東日本大震災事業者再生支援機構や事業者からの相談についても、随時、柔軟に対応する予定でございます。

大口委員 財務大臣、被災地は地元でございますので、ぜひともここはしっかり推進をしていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。

 支援基準につきましては、いろいろ数値基準が出てまいりました。

 今回の再生支援機構、十五年かけて支援をしていくということでございますから、やはり十五年以内というような非常に長いタームで、例えば債務超過の解消を考える。それから、有利子負債のキャッシュフローに対する比率、これは十五倍以内というようなことも聞いておりますけれども、これはしっかりとそういう形で緩やかにしていく。

 あるいは、五年以内を目途に営業利益の黒字ということですが、硬直的に考えていただくと困ります。やはり、農業の場合ですと、農地の浸水地域は土地改良に数年の時間も必要ですし、また医療関係ですと、人口が戻ってきませんと患者さんもふえません。こういうことがありますから、そこは柔軟にやっていただきたい。そして、営業利益の黒字化ということとともに、選択肢として、経常利益の黒字、こういうものも選択肢の中に入れていただきたい、こういうふうに考えます。

 支援基準について、簡単に御答弁いただきたいと思います。

平野(達)国務大臣 まず、今回の事業支援というのは、震災による被災事業者支援という、どちらかというと非常事態における支援でございまして、そのための基準であるということも留意しつつ策定してまいりたいというふうに考えております。

 今委員からもさまざまな御提案がございましたけれども、個別の業種特性等にも配慮する、あるいは合理的な事情ありと認められる場合には硬直的に適用しない、そういった規定も支援基準に含める予定で、現場に合わせた、そういった運用が図れるように、これは最大限配慮してまいりたいというふうに思っております。

大口委員 我々は、議論で、再生支援機構が被災事業者から債権を買い取る、それで、簿価と買い取った価格の差額、これについては原則として免除をすべきである、こういう提案をして、大臣も、昨年十一月十四日、衆議院の復興特別委員会におきまして、この法律の目的が債務の負担を軽減しつつ被災事業者の再生を支援することとなっているから、運用はしっかりそういう形のものにしていきたい、こういう答弁をされました。これの確認をお願いします。

平野(達)国務大臣 いわゆる簿価と買い取り価格の差額を例えば全額免除すべきだ、そういった考え方もございますけれども、ここの点に関しましては、そういった考え方もあるということなんですが、それをきっちり定めるということではなくて、買い取り差額以上に場合によっては支援をする場合もございますし、そこまでいかなくてもいいのではないかというケースもありますので、そういった考え方を基本としつつ、しかしやはり硬直的に決めないという考え方で、要は、再生するためにできるだけの支援をするという考え方でこれは運用していきたいというふうに考えております。

大口委員 財務大臣にちょっとお伺いしたいんですが、東日本大震災の被災事業者が、再生支援機構または産業復興機構に買い取られた債権について、再生計画に基づいて債務免除を受けた場合、この債務免除益の課税関係、これはどうなるのか、お伺いしたいと思います。

安住国務大臣 御指摘の、法人事業者と個人事業者の双方についてあると思いますので、それぞれについてちょっとお話を……(大口委員「簡潔に」と呼ぶ)簡潔に。

 一般論で申し上げますと、法人事業者については、法人税法上、法人が債務免除を受けた場合の債務免除益は益金と算入されるわけであります。他方、その事業年度の費用、損失の額が損金の額に算入されるほか、過年度に生じた青色欠損金や、つまり七年前ですね、一定の場合におけるいわゆる期限切れ欠損金が、これは七年より古いものですね、損金の額に算入される結果、通常、法人税の課税関係は生じないものというふうに考えております。

 個人事業者については、これもやはり債務免除益については経済的利益として課税対象にはなりますが、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であるとされた場合には免除されるものについては課税しないものと取り扱っております。

大口委員 あと、債権買い取り価格の算定方法につきましても、附則の三条の簡易な方法ということは、今検討していただいていると思います。

 産業復興機構の方は、過去三年ないし五年のキャッシュフロー、それを、再生計画によって売り上げの見通しを出して、そして五年ぐらいのフリーキャッシュフローを現在価値化して決めるということでございますが、今回の再生支援機構、これについての買い取り価格の算定方法は、やはり十五年間の支援ということも考えて、五年ということでなくて、例えば十五年後ぐらいまでのフリーキャッシュフローですとか、あるいは十五年後の担保価値ということになってくれば相当また価値は上がってきます。そういうことも踏まえた価格算定方法ということを検討すべきである、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

平野(達)国務大臣 今、算定方法をさまざまな観点から検討させておりますけれども、一方で、やはり一物二価というのもおかしいなという考え方もございます。その一方で、支援機構のやり方、独自の考え方もあるのではないかという考え方もございまして、支援機構は支援機構で債権の買い取り価格の考え方があるのではないかという意見もございまして、今、そこは調整中でございます。

 いずれにせよ、附則の第三条の趣旨を踏まえまして、事業再生計画、事業者の経営状況の見通し及び担保財産の価格の見通し等を勘案した、適正な時価というとまた月並みな言い方になりますけれども、そういった価格算定ができるような方式をしっかり設定してまいりたいと考えております。

大口委員 次に、原子力損害賠償紛争解決センターについてお伺いしたいと思います。

 この原子力損害賠償紛争解決センターは、今、二月十四日時点の申し立てですが、九百三十三件、件数はそうなっています。ところが、和解に至った件数は四件にとどまっています。

 昨年九月一日に申し立てた第一号の件は、東京電力が一部拒否して、まだ和解は成立しておりません。これから、南相馬市の小高地区、一万人を超える集団の申し立てもあると聞いておりますし、また、双葉町の弁護団が結成されて、二月末に第一次、そして、それについて集団の申し立てがある、こういうようなことを聞いています。

 ですから、この紛争解決センターにつきましては、やはり体制を整備しなきゃいけないと思うんですよ。要するに、時間がかかり過ぎている。仲介委員が百二十七名、それから、パネル調査官が三十名、事務局でもそれ以外で二十名、こういうことでして、今、調査員がみずから領収書の整理をやったり、そしてまたコピーをしたり。要するに、本人が申し立てているのが八割で、代理人がついていないのが多いんですよ。こういう未整理の段階で来ていただくものですから、そういう点でも大変になっているんですね。

 やはり、仲介委員、パネル調査官、事務局員、この辺を大幅にふやさないと、膨大な処理というのはできないということが一点。これに対して対応をどう考えるのか。

 二点目に、そういうことで、原発損害賠償事件というのは、これは非常に、百五十万人とも二百万人とも言われるわけでありますよね、膨大なものになるわけです。ですから、これにつきましては、和解の事例をしっかり集積して、そして公表すべきだと思います。申し立て件数、具体的な申し立ての内容を類型化したもの、それから解決した和解の概要、これはもちろん申立人個人が特定されないように配慮はしなければいけませんが。そしてさらに、和解に至らなかったケースについても、センターが提示したもの、こういうのは公表して、これは基準になりますから、相対交渉にもプラスになります。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 議員は非常に専門家でもありますし、御指摘の点はよく理解をいたしております。

 現実を少し御報告申し上げますと、特に、紛争、訴訟という概念でいきますと、やはり、基本は相対ということですが、今回の原賠法に照らし合わせまして、被害者をいかに早く救済するか、あるいは公平にきちっとやれるか、こういうことでございます。

 私どもが、今の紛争に持ち込まれております案件を見ていましても、なかなか数が、毎月のごとくふえてまいっております。今委員御指摘のように、自主的避難者でも百五十万人ぐらいおられるということですから、当然かなりの方々がおられる。

 こういう観点で、今委員御指摘の状況については、特にパネルですね、あるいは調査官、調査官が今事務の、本来の業務でないところに追われておるものですから、これは早急に体制を強化する、こういうことでございますし、また、相対の東電の方におきましても、相談窓口を一万人規模にふやして、何としても被災者を早く賠償で和解ができるような体制強化を図りたいということでございます。

 もう一点、先ほど申されましたように、公表するということは、より迅速に進めていく、こういう観点で私は非常に大事な御指摘だと思っております。ただし、個人情報等々の問題は十分考慮しながら、きょうでも大体の流れについては公表してまいりたい、こういうふうに思っておりますので、適宜公表することによって、類型化が確定をし、より紛争解決に寄与するものと私は思っておりますので、先生御指摘のとおり、きょうでも公表したい、このように思っております。

大口委員 ぜひとも情報公開はしっかりしていただきたい。そして、それをいい例として、参考になる例として発表していただきたい、こういうふうに思います。

 とにかく、今一兆六千億円ぐらい既に賠償金として払われています。やはり、和解を尊重するということを東電はしっかり考えていただかなきゃいけない。ですから、この点、枝野大臣、和解仲介案の尊重ということを、もちろん特別事業計画には書いてあると思うんですが、しっかり履行を求めてください。お願いします。

中井委員長 枝野経産大臣、時間が終わっていますので、短くやってください。

枝野国務大臣 御指摘の件は、十三日の緊急特別事業計画の変更認定に当たっても伝えたところであります。

 東京電力は、和解仲介案ではなくて和解提示理由だから、まだ途中なんだとか、いろいろなことを言っていますが、国民的な常識に従って対応するように、さらに厳しく指導してまいります。

大口委員 以上で終了します。ありがとうございました。

中井委員長 これにて大口君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、今冬の豪雪対策について伺います。

 二月十五日現在で、犠牲者が九十八名にも上りました。重軽傷が千四百八十五名です。被害に遭われた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、お見舞いを申し上げます。

 しかし、今なお被害は進行形であります。十日、国道二百七十九号線、四百台もの自動車が立ち往生した青森県の横浜町に行ってきました。地域の消防団が徒歩で一台一台声をかけ、避難所に誘導してくれたり、地元住民が炊き出しをするなどして、丸一日近く立ち往生したままだったにもかかわらず、一人の病人さえ出さなかったという取り組みに大変敬服をするものです。

 また、十三日には、災害対策特別委員会として新潟、長野に行ってきましたが、家をすっぽり隠してしまうほどの雪の深さに驚くとともに、雪おろしに精を出す住民の姿を見て、事故のないように祈る思いでした。

 雪は災害である、この立場に立って、これ以上犠牲者を生まないように、政府の強力な支援を求めたいと思います。

 日本共産党の豪雪対策本部としては、二月八日に申し入れを行っています。機械やオペレーター不足などの除雪体制への支援、通学路の確保、ひとり暮らしの高齢者や障害者などの弱者対策、きめ細かい対策が求められます。

 十日には、社会資本整備交付金、これが百一億円追加交付されたことは承知をしておりますが、市町村道への臨時特例補助の決定が急がれます。また、特別交付税措置も強く要請されておりますが、前田国土交通大臣と川端総務大臣にそれぞれ伺いたいと思います。

川端国務大臣 委員御指摘のように、大変な雪害でありまして、被害の大きさに本当に心が痛む思いでありますが、総務省といたしましては、基本的に除排雪の費用に関しては、普通交付税において今までの実績を含めて手当てをしておりますが、今回はこれをはるかに上回る費用が発生している自治体がたくさん出ているということは事実であります。

 年間を通じた所要額をできるだけ的確に把握して、地方公共団体の財政運営に支障が生じることなく、地方の皆さんが安心して除排雪に取り組んでいただけることが一番肝要だというふうに思っております。この旨について、要するに、生命の安全確保が一番大事であります。これで安心してしっかり取り組んでいただきたい、そして、年度内の費用に関しては、特別交付税も含めてしっかりと財政運営に支障がないようにやるという旨は、既に地方自治体にお伝えをしてあります。

 それを含めまして、現在、特別交付税三月分について、三月下旬の決定、交付を目途に算定作業をやっているところでございます。

前田国務大臣 お答えいたします。

 ただいまの川端総務大臣の御答弁のように、基本的には自治体の道路の道路管理者としての維持管理、そこには交付税等が参るわけですが、先生御指摘のように、社会資本整備総合交付金も百一億円出しました。加えて、市町村に直接行くように、臨時の特例措置として、道路会計、道路勘定を今かき集めておりまして、それで対応するということで、同時に調査にも入っているところでございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 両大臣とも前向きな答弁であったと思うんですけれども、一日も早くメッセージが届き、現実に交付がされるように、また実態に即してお願いしたいと思います。

 それで、道路の問題でもう一言お願いしたいんですけれども、例えば新潟県でいいますと、昨年の道路除排雪経費は百三億円、それに対して補助対象事業費は八十四億円。国費で見ると、交付決定したうちの十九億円にしかなりません。百三億円のうち十九億円であります。泉田県知事によれば、雪庇の処理や基本待機料など、補助対象外の事業が大き過ぎるのだと指摘をしています。実際に私たちも歩いてみて、せり出した雪庇の下を子供たちが毎日通学で歩いているわけですから、これは絶対に必要な事業費だと言わなければならないと思いました。

 また、青森市でいいますと、二十二億六千二百万円の当初の予算に対して、一月末で既に二億近い赤が出ております。先ほどお話しした交付金による除雪費用というのは雪寒法第三条に基づく雪寒道路が根拠となっておりますが、この雪寒道路は、青森市でいいますと、昭和六十三年二百キロ指定されて、四十キロしか延長されておらなくて、実際に除排雪をやっている道路というのは千三百五十キロだというので、かなり実態に合わなくなっているわけですね。でも、市町村は、国の指定外だからといって除雪しないというわけにはいかないわけです。

 そういうことに本当に鑑みれば、やはり雪寒道路の指定を見直して、生活道路の確保、これにさらに前に向く必要があると思いますが、いかがでしょうか。

前田国務大臣 先生御指摘のように、大雪というのは災害に近いわけでございますから、そういう意味で、できるだけの対応をしてまいりたいと思います。

 ただ、基本的には、この雪寒法においても、都道府県道レベルまではかなりの指定率になっているわけですが、市町村道レベルになってまいりますと、御承知のように非常に範囲も広うございますから、どうしてもこれは自治体の主体のことになってくる上に、実は公共事業費なんかも、要するに、ひものつかない交付金というような形でどんどん渡しているものですから、そういう中で、建前としては、県等においてもできるだけの対応をしていただきたいということが片一方であります。

 ということも踏まえた上で、道路勘定、もうわずかしかないんですけれども、かき集めるだけかき集めて、とにかく対応をさせていただこうと思っております。

中井委員長 前田国交大臣、予算委員会でこの雪害が質疑が一番多いんですが、今、災害に近いものだと考えているという御答弁がありましたが、災害じゃなしに災害に近いという認識なんですか。

前田国務大臣 雪に対する維持管理という意味においては、雪寒法において指定をしているわけでございますが、こういうような状況になりますと、災害と心得て、道路勘定を総動員して、先年度あるいは先々年度よりも実は公共事業費そのものは随分削減しているわけですが、道路費もそういう中からかき集めて、最大限のことをさせていただこう、こう思っております。

中井委員長 高橋さん、余分なことを言いまして済みません。

高橋(千)委員 今委員長が指摘したことを私が今お話ししたかったんです。自分の最初の質問にちゃんと言ってあるんですね。雪は災害であるという立場に立てという意味で質問をしておりますので、災害に近いなどということを今言われるというのはちょっとあり得ないのであるということを指摘したいと思います。

 何度も言うように、本当に市町村の財政力を超えた事態になっているけれども、国の対象じゃないからとか、国から来たお金がこれしかないからということでそのままにしてはおけないのだと、命が危ないという立場で市町村は取り組んでいるわけですから、それにしっかり応えていただきたい、このことを重ねて要望したいと思います。

 さて、次のテーマに行きたいと思います。

 二月八日、障がい者制度改革推進本部の総合福祉部会において、障害者自立支援法にかわる法律の厚労省案が示されました。まだ名前がありません。まず、中川担当大臣に経緯をちょっと確認したいと思うんですね。

 二〇〇八年から九年にかけて、全国の障害者ら七十一名が原告となって、障害者自立支援法違憲訴訟が行われました。民主党は二〇〇九年の総選挙で同法の廃止を公約に掲げ、翌二〇一〇年一月七日の基本合意を踏まえて、同年四月までに全国十四地裁全てで和解が成立しました。この基本合意に基づいて、新法をつくるべく、当事者参加の制度改革会議の中で議論をされてきたのではなかったかと思います。この経緯について確認をしたいと思います。

中川国務大臣 お答えをしたいと思います。

 まず、障がい者制度改革推進本部、これの設置なんですが、これは二〇〇九年の十二月八日に設置をされました。障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を集中的にやっていく、その中での改革ということを議論していくということと、それから、関係行政機関の相互の緊密な連携を確保しながら、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るということ、これを目的にして設置をいたしました。

 それで、それに続いて先ほどお尋ねの障がい者制度改革推進会議が設置をされたんですけれども、これは同年の十二月十五日に設置をされております。さまざまな先ほどの判決も含めた議論を踏まえて障害者施策の推進に関する事項について意見を求めて、それを総括していくということになるんですが、特に、障害当事者がここに参加をした形で障害者制度改革を推進していく、そういう前提で委員の構成等々を考えながら設置をしているということであります。

高橋(千)委員 次の質問の前にもう一度確認をしますが、基本合意を当然踏まえているということでよろしいですよね。イエスかノーかで。

中川国務大臣 それぞれ、裁判の推移を前提にしながら推進本部もあるいは推進会議も設置をされておりまして、同時並行的にということであります。

高橋(千)委員 非常に言葉を選んでいるような気がいたしますけれども。

 障がい者制度改革推進本部のもとに設置された総合福祉部会は、昨年八月に骨格提言を発表しました。新法を目指してと題した提言には、冒頭、基礎となったのは二つの指針であると。一つは、先ほど大臣がお答えになった障害者の権利条約である。そしてもう一つは、基本合意文書であるということです。そして、目指すべき六つのポイントとして、谷間や空白の解消、社会的入院や家族介護への依存など社会問題を解決すること、本人のニーズに合った支援サービスなど、六つのポイントを明記しています。

 この骨格提言の全面具体化こそ求められていると思いますが、政府として、この骨格提言をどう評価し、同じ立場で頑張ると言えるのか、伺います。

中川国務大臣 御指摘の骨格提言は、障がい者制度改革推進会議のもとで開催されている総合福祉部会、ここにおいて八月に取りまとめられたものであります。この提言は障害当事者の方々の思いが詰まっているものだ、そういう前提に、しっかりと受けとめる必要があるというふうに考えております。

 現在、厚生労働省が具体的な制度設計及び法制化作業を行っている段階ということでありまして、障害者施策担当大臣としましては、でき得る限り障害当事者の方々の思いが踏まえられた内容となるということを希望しております。

高橋(千)委員 全くなっていないと思います。思いが詰まっている、それは当たり前です。どんな思いでこの会議をやってきたのか、それをしっかり受けとめるとか、できる限り反映させればいいんだ、そういうものですか。

 資料の一枚目に、当時の和解をしたときの記事を載せておきました。一月八日の東京新聞、当時の長妻厚労大臣が謝罪をして、握手をしている記事です。また、その下には、全ての和解、十四地裁で和解が成立して、総理が原告に、鳩山当時総理ですけれども、おわびをしている場面であります。

 この記事の中で、広島県の秋保喜美子さん、全国最初の原告となった秋保さんが、法の問題点を世の中の人にわかってほしかった、法が障害者やその家族を苦しめている、今まで思いが伝わらなかったが、わかり合えて、すごく感動していますと声を絞り出したと書いてあります。厚労大臣は、心からの反省を表明します、多大な混乱を招き尊厳を傷つけたと述べたとあり、尊厳を傷つけた、この言葉が本当に重い意味を持っていると思うんですね。

 それが、わずか二年後です。この基本合意が踏みにじられたと強い抗議が寄せられています。

 資料の四枚目、4を見ていただきたいと思います。「国による基本合意の反故を許さない! 集団訴訟弁護団 共同抗議声明」であります。この前段のところにこう書いてあります。アンダーラインを私が引いておきました。

 本年一月二十四日付「内閣提出予定法律案等件名・要旨調」の記載は「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」であって、「法廃止」でも新法の上程でもなく、二月八日の総合福祉部会において、その実態は一部改正に過ぎず、「骨格提言」とは全く異なるものであることが明らかになった。

 基本合意の根幹に反するものであって、明らかな約束違反である。

下の方を読みます。

  国が訴訟上の和解で確認した基本合意を反故にする先例を見過ごすならば、今後、社会保障・薬害のみならずあらゆる政策分野の集団訴訟における基本合意が軽んじられることになり、和解による解決を妨げ、ひいては国民の司法への信頼をも失うことにもなりかねず、その悪影響は計り知れない。

  基本合意は、政権や政治情勢の変動如何に関わらず国家として遵守すべき法的文書であり、訴訟上の和解の中心をなすものであることを、国は改めて銘記すべきである。

というふうに、薬害肝炎やハンセン病、原爆症、中国残留孤児、HIVなど、十三の訴訟団が共同で抗議声明を発表しています。

 今読み上げたように、単なるマニフェスト違反、そういう類いのものではないんですね。国としての公的な約束なんだ。この重大性をどう受けとめているのか、官房長官に伺います。

藤村国務大臣 高橋委員にお答えいたします。

 今、厚生労働省が検討している法案において、障害者基本法を踏まえた基本理念を盛り込むとともに、法律の名称そのものも変えるというふうに検討していることを聞いております。

 障害者自立支援法違憲訴訟原告団、弁護団の方々とは、先般二月九日に厚生労働政務官がお会いして、まず厚生労働省案の説明を行い、意見交換をさせていただいたと聞いておりますが、引き続き、基本合意にのっとった関係者の御理解が得られるよう努めなければならないというふうに考えております。

高橋(千)委員 多分、今官房長官は途中の経過、政務官に説明をされたというところを聞いていることをお答えになったと思うんです。

 これは、やはり一方の当事者が、約束したことと違うのだ、つまり、約束をしたことによって裁判を終わらせたわけですから、このことについて認められないと言っている、そういう重みについてどう考えるかということなんです。それが結果としてどうかということよりも、この基本合意の意味、国の約束なんだ、それはお認めになりますよね。

藤村国務大臣 基本合意というのは大変重いものだと受けとめています。

高橋(千)委員 そこで、資料の5、先ほどの次のページを見ていただきたい。これは、二月八日の総合福祉部会で、部会長の佐藤久夫氏が提出した「骨格提言における提言項目と厚生労働省案の関連整理」というものであります。

 骨格提言がどのような構成になっているかというのがここでわかるんですけれども、六十項目あるわけですね。丸、三角、バツとなっていて、丸となっているのも一応「不十分ながら」です、あくまでも。「不十分ながら骨格提言を取り入れている事項」となっているものは、何と、見ていただければわかるように、六十項目中三カ所にしかないんです。全くないとほとんど近い。

 これでも、厚生労働省の案は障害者自立支援法の廃止だと言うのですか。

小宮山国務大臣 委員が御指摘の、今資料で提供されたものは、今回の厚生労働省案としての法律の中身だけが評価されているものだと思っています。このほか、これまでに予算措置ですとか運用改善によって対応している事項があるということ。また、平成二十二年の十二月に成立いたしました障害者自立支援法等の一部改正ですとか、昨年成立いたしました障害者虐待防止法等によって対応している事項、その事項についてはここでは表記をされていないというふうに思います。

 厚生労働省としては、骨格提言についてはもちろん重要だと受けとめておりまして、これは段階的、計画的にしっかりと実現をしていきたいと考えています。そういう意味で、法律による対応のほか、報酬ですとか予算、運用などあらゆる政策手段を組み合わせまして、障害者施策の充実に精いっぱい取り組んでいきたいというふうに考えています。

高橋(千)委員 聞かれたことに答えておりません。廃止ですか、また新法ですか、あわせて答えてください。

小宮山国務大臣 今回の改正法では、障害者基本法を踏まえました理念を盛り込むことですとか、法律の根幹となります名称や目的規定を改正すること、こうしたことをしっかり盛り込んでおりますので、障害者自立支援法の廃止になるということだと思っています。

高橋(千)委員 まず、名前を変えただけでは、例えば、後期高齢者医療制度が大変批判をされて長寿医療制度と変えたことがかつてありましたけれども、名前を変えただけで実体は伴わないわけなんですね。しかも、名前が今ないわけですから。

 今、いろいろ予算措置が云々とおっしゃいました。でも、そういうこともひっくるめて新しい法律の骨格をつくるんだということで提言が出されているのに、その提言が全く反映されていないじゃないかという質問に対して、まともな答えになっていないんです。そのことをどう認めるかということなんです。

 そこで、二月八日の総合福祉部会の席上で、厚生労働省の中島誠企画課長はこういう発言をしています。法律の廃止とは、新旧の法律の継続性を考慮する必要がない、または考慮してはいけない場合、今までの法的効果を全てなくしますという場合に思い切って廃止を行うものですとして、六万弱の事業所指定とか八十万弱の支給決定が一旦消えるから大変な混乱が生じるだろう、しかし、正直言って、こういったことは本気でやらないといかぬということにはならない、こう言っているんですね。

 つまり、和解をしたけれども、約束をしたけれども、それは本気でやらなくていいと言ったことになるんですよ。これは重大な背信行為ではありませんか。大臣、これ、公の場で厚労省の課長が述べているんですよ。どうです。

小宮山国務大臣 その発言につきましてはしっかりと調べまして、その発言は不適切だと思いますので、私の方からも注意をしたいと思います。

高橋(千)委員 不適切ということだと。ですから、廃止、はなからできないと思っていたわけではないし、できなくてもいいと思っているわけではないということでよろしいですね。

 では、ちょっと続けますよ。

 忘れてはならないのは、全ての和解が成立したのは二〇一〇年の四月ですね。ところが、翌月にはもう障害者自立支援法の改正案、いわゆるつなぎ法案が自公民三党合意によって提出されて、一旦は参議院の委員会まで通りました。大変な全国の原告団、その時点でもう怒っているわけですよね。その時点でもう約束が破られたと。私たちは、これは事実上、自立支援法廃止じゃなくて延命だと言って反対をしました。でも、同法案は廃案になったんですが、結局、再提出されて、同じ年の十二月に成立をしているんです。こういう経過があったということを、まず一つ重大な問題として記憶をしなければなりません。

 ただ、その同じ年に、その間に、資料の3ですね、六月二十九日、閣議決定がされております。「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」ということで閣議決定がされてあって、改めて、一番下のところを読みますけれども、「応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定」に向けて云々ということで、「平成二十四年常会」、まさに今ですね、「法案提出、二十五年八月までの施行を目指す。」とあります。

 閣議決定違反でもないと明言できますか。

小宮山国務大臣 先ほども申し上げましたように、今回の改正法では、障害者基本法を踏まえて、その基本理念を盛り込むということ、また、名称や目的規定を改正するということから、これは障害者自立支援法の廃止になりますので、閣議決定を踏まえた対応だと考えています。

高橋(千)委員 あくまでも踏まえた対応だというお答えで、到底認められるものではないと思います。

 では、新法の名前はどうなりますか。

小宮山国務大臣 新法の名前につきましては、今、民主党のワーキングチームでも検討されていますので、検討を経て決定をしたいというふうに思います。

高橋(千)委員 ですから、名前さえ決められずに、どういう旗を掲げてこの国会で新法を通すのかということが本当に問われると思うんですね。

 二月八日、翌日の新聞各紙の報道を見れば、朝日、日経は、障害者自立支援法改正案と報じました。毎日も、「障害者新法」と書きましたが、「実態は「自立支援法改正案」と言える。」と報じています。読売は、「新たな障害者福祉制度について、」と書き出したものの、「民主党がマニフェストに掲げた同法の廃止はせず、法改正で対応」と報じています。これが事実だと思います。みんなが、もうこれは単なる改正にしかすぎないと言っているんです。

 障害のある方たちが廃止を望んだ制度の根幹にあるもの、応益負担はなくなりますか。制度の谷間はなくなるんですか。

小宮山国務大臣 障害者自立支援法で一番問題とされた今御指摘の応益負担につきましては、これは平成二十二年十二月の障害者自立支援法、それから児童福祉法等の一部改正によりまして、応益負担から応能負担にこれは改正をされているというふうに思っています。

 今回の改正は、これまで御本人による努力、それへの支援を中心に据えていたのが障害者自立支援法でしたが、障害者基本法の改正を踏まえまして、日常生活、社会生活の支援を社会全体でしていこうということで、可能な限り身近な場所で受けられるということ、共生社会を実現すること、社会的な障壁を取り除くことを新たに理念として掲げるなど、法の理念としてこうした社会として支えるということを盛り込むなど、単なるつなぎ法の一部改正ということではない、しっかりと新しくつくるものだというふうに申し上げたいと思っています。

高橋(千)委員 単なるつなぎ法の一部改正ではないと今答弁をされましたけれども、その単なるつなぎ法で応能負担になったから、今回の厚労省案は応益負担の部分は一言も触れていない。一番の根幹でありながら、そこには、もう終わったことだ、解決したことだという立場に立っているんです。そこがそもそもおかしいではありませんか。

 確かに、基本合意の中で非課税世帯の無料ということが打ち出されましたので、そこが実現されたことは認めます。しかし、基本合意には配偶者も含めてとしているのに、そこも見送られました。自立支援医療についても見送られました。わずか百億から二百億円の予算措置が見送られて、今も定額の負担が、一応所得一定スライドがありますけれども、定額負担が残っているという実態ではありませんか。

 制度の谷間もいろいろおっしゃいました。難病患者を入れるとも言っています。でも、その席上で、難病患者の団体の代表から、新たな制度のすき間が生まれる、そう指摘されているではありませんか。そのことに対して何にも答えていないのです。

 骨格提言は、さらに、障害者福祉関連予算がGDP比〇・一九八%にすぎないということで、OECD諸国並みの予算の拡充を求めています。そこで、新法については、社会保障と税の一体改革素案では、言葉としては触れているんですけれども、増税して担保する社会保障四施策の中には障害者福祉は入っていないんですよね。そうすると、消費税増税ではない財源の確保を目指すんですか。それとも、新法のための新しい予算は必要ないという意味ですか。

藤村国務大臣 今、社会保障・税一体改革のこととの関係の御質問だと思います。

 新法は今現在検討中であることから、まだその財源確保についてはお答えしかねますが、いずれにせよ、障害福祉の予算というのは、これは高橋先生、ちょっと最近だけ言ってみますと、平成二十一年度五千五百十二億円が今二十四年度では七千八百八十四億円ということで、予算編成で常に適切に確保していくことが必要である、このように考えています。

高橋(千)委員 要するに、当然、予算は少しずつ伸びています。今年度も一千九十七億円の増額。これはあくまでも自然増分なんですね。新しい法律に基づいて、新しい予算措置が必要だというのは、ここにも全然出てこないんですよ。先ほど大臣がいろいろおっしゃったんですけれども、財源的にも担保されていないんだと。ですから、一番肝心の部分も何も触れていないし、やはり、つなぎ法の一部改正という指摘、つなぎ法によって自立支援法が事実上残ると言わざるを得ないなということになるわけですね。

 障害者自立支援法にかわる新法というのは、私は、公約破りが随分指摘されている民主党政権にとって最後のとりでではないか、そう思っているんですね。どんな思いで原告らが裁判を決意し、闘い、そして和解を決断したのか、そのことを本当に踏まえなければなりません。

 違憲訴訟弁護団がまとめた「立ち上がった当事者たち」という本がございますが、その中で、和解を決断するまでの原告団、弁護団の思いが記されています。

 少し読みます。「平成二十年十月三十一日に集団提訴したときには、「十年はかかるだろう。最後までしっかり頑張ろう!!」と腹を決めていましたが、平成二十一年夏の衆議院選挙で政権交代があり、早々に厚生労働大臣や総理大臣が「自立支援法は廃止します」と明言されたことに大きな期待を持ちました。」とあります。

 そして、一月七日に、訴訟にかかわってきた人たちが会議をして、ずっと話し合うんですね。その場面を書いています。「原告たちの気持ちは大きく揺れていました。ここまで、裁判での勝利を目指して力を合わせて、一つになってやってきたのですから……。 誕生したばかりの内閣を信頼していいものなのか。それともあくまで裁判での結論が出るまで続けるのか。」一人でも和解に賛成できない人がいれば裁判を続けるべきだと考えて、みんなが思いのたけを話し合って、最後は全員の意見が一致して、その日のうちに基本合意の調印に臨む。

 それで先ほどの新聞記事になるわけですけれども、そのときの胸のうちをこう書いています。「厚生労働省での出来事は感動の連続でした。言葉には言い表せぬ達成感と希望で、涙があふれ出ました。「障害があっても、その人らしく生き生きと生活していくことができる!」「先進国日本が、世界に胸を張れる新しい制度作りがスタートするんだ」と大きな期待を抱かせてくれました。」と記しています。

 この同じ原告らが、わずか二年で、裏切られたと激しい抗議の声明をしなければならない事態になったとはどういうことでしょうか。今からでもまだ遅くありません。廃止条項を盛り込み、骨格提言に基づいて新法を目指すべきではありませんか。

中井委員長 時間が来ましたので答弁はできないんですが、特別に、短く。その後、もう終わりですから。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃる気持ちは、私も同様な気持ちを持っています。

 予算も、確かに自然増分しかとれていません。でも、予算と運用と法改正とあわせて、最初に申し上げたように、段階的、計画的に皆様の声にしっかりと応えていけるように最大限努力をしたいと思っています。

高橋(千)委員 終わります。

中井委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正であります。

 きょうは、二十分という時間をいただきました。簡潔明瞭な答弁をお願いいたします。

 私の選挙区に日出生台という大きな演習場がございます。そこで、今、在沖米海兵隊が来て演習を続けているわけでありますが、きょうは、私は、それに関連をして皆さん方に答弁を求めていきたいと思います。

 まず最初に、防衛大臣と外務大臣に質問いたしますけれども、平成八年の八月二十九日付で、外務省、防衛施設庁名で、「県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の分散・実施について」という文書が発出をされております。平成九年三月二十八日付で、横浜防衛施設局の「沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の分散・実施について」という文書が出されておりますが、これは間違いなく外務省並びに防衛施設庁が出した文書であるという点の確認をまず最初にしておきたいと思います。

玄葉国務大臣 今の重野委員の御質問の「県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の分散・実施について」、平成八年八月二十九日の文書は、外務省と防衛施設庁でつくられてございます。

田中国務大臣 防衛省及び外務省が発出したもので間違いないかという御質問でございます。

 先生御指摘の「県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の分散・実施について」、平成八年八月二十九日、当時の防衛施設庁が公表した文書でございまして、両文書、間違いございません。

重野委員 そこで、具体的に質問してまいりたいと思いますけれども、防衛施設局の文書の中に「キャンプ・ハンセンでの訓練について」という項目があります。

 その中に、キャンプ・ハンセン演習場における訓練内容として、百五十五ミリのりゅう弾砲、迫撃砲の実弾射撃訓練、小火器の射撃訓練、一般訓練などを挙げている。その上で、本土の演習場で分散実施される訓練として、「現在、キャンプ・ハンセン演習場で行われている訓練のうち、」分散実施されるのは「県道一〇四号線を挟んで行われている百五十五ミリ榴弾砲による実弾射撃訓練」と書かれています。

 普通の日本語としてこの文章を理解すれば、分散実施されるのは県道越えの百五十五ミリりゅう弾砲だけで、小火器や迫撃砲訓練でないということは自明だというふうに思っています。

 ところが、実際の分散実施においては、ライフルや機関銃を使用した訓練、白燐弾の使用、さらに通信や兵器の移動、設置といった訓練も行われている。これは明らかに、先ほど紹介をしました文書と違うことが行われている。この点について大臣の認識を尋ねます。

田中国務大臣 横浜防衛施設局の文書に反して拡大した訓練を実施しているのではないかとの御質問でございます。

 現在実施している小火器の訓練は、沖縄でも、百五十五ミリりゅう弾砲の実弾射撃訓練と一体のものとして行われておりました。本土においても、小火器の訓練を百五十五ミリりゅう弾砲と一体のものとして行うに当たって、本土の移転先、五演習場の全ての関係地方公共団体等に説明し、その御理解をいただいた上で、平成十八年度から実施しているものでございます。

 また、いわゆる白燐弾は、発煙弾として百五十五ミリりゅう弾砲の実弾演習訓練において使用される弾種の一つでございます。小火器あるいは白燐弾を使用した訓練については、沖縄県道百四号線越え実弾射撃訓練に関する文書に反するとの御指摘は、一体でございまして、当たらないというふうに考えておりますし、いずれにいたしましても、地元の方々には今後とも丁寧に御説明を申し上げていきたいと思っております。

重野委員 今の説明によると、百五十五ミリりゅう弾砲の県道越え射撃訓練を本土に移転する、書いていないけれども、それは同意語なんだという説明ですよね。

 私は、その地域の皆さんから見れば、これはイカサマだと思いますよ。だって、そんな話が全くない。始まったら、途中からそういうものが付随されていって、それは、専門、米軍だとか自衛隊の常識からすれば、そういう小火器の訓練が一緒に行われるというのは当たり前なんだという。これは、市民感覚と離れた言い方だと僕は思いますよ。私が言っているのは、まさに市民感覚で言っているわけです。そんなことするなんか言っていないじゃないか、なのになぜするの。

 確かに、今言った説明のように、県の方も防衛庁、防衛省の方からそういう説明を聞いたと聞いていますよ。だけれども、シビリアンから見たら、そんな専門的なものを押しつけてきて、そんなことは常識なんだという言い方というのは、私は極めて不親切だと思いますね。

 それはやはり、それを受け入れる自治体だとかその地域の皆さんを軽く見ているというところからそんな発想が出てくるのではないかと思うんですが、大臣、そういう思いは持ちませんか。大臣が地域に住む一般の市民という感覚で見たときに、そういう指摘が出るのは当然だろうというふうに言われても仕方ないと私は思いますよ。その点についてどうですか。

田中国務大臣 先生御指摘のことはよく理解をいたすところでございます。

 やはり、地元の皆さん方に受け入れていただく、こういうことで進めてきておるところでありますし、また、自治体の方々あるいは地域の方々の御理解なくしてこれは進まないわけでありますので、このお話を進めるに当たって、あるいは、事前に、訓練をするという日にちなりいろいろ御説明を申し上げているようでありますが、なかなかその話がしっかり届いていないということは私も心配をいたしておりますので、丁寧に御説明を申し上げ、さらなる御理解を得るべきであるというふうに思っておりますし、防衛省も心がけていくようにしていければと思っております。

重野委員 それだけではないんですね。

 これが大分で始まって、もう今十回目がやられているんですけれども、現地の自治体の関係者の話を聞きますと、訓練の内容についても、当初に比べれば、現在、極めて隠蔽的だというんですね。例えば、今、防衛局は、米軍からの要請だというふうな説明をするんだそうでありますが、何か言えば、セキュリティーの問題である、あるいは安全性の確保の観点から言うことはできない、こういう説明がこのところまかり通っているんですね。これは、私は、受ける市民の側から、あるいは自治体の側からすれば、そんな説明は説明にならない。

 だから、だんだんだんだんアメリカの沖縄における県道越え射撃訓練を五つの自衛隊の基地に持ってきたわけですよね。そのときは頭を低くしてお願いしますと言ってきたんだが、もう回数が十回を超えると、ごくごく当たり前になって、そういうきめ細かな説明がなされていないという。それに対する受け入れ側の不信感というのは非常に高まっていますよ。防衛施設局に言ってもオウム返しだ、今言ったような説明しか返ってこない。

 私は、こんなことが果たして自衛隊と市民の関係においていいことなのか、そこのところを防衛省はしっかり考えないといけないんじゃないかと思うんですが、大臣、どうですか。

田中国務大臣 沖縄におきまして、県道百四号線の訓練の移転につきましては、沖縄の皆さん方も大変御心配をされました。そして今日があるわけでございまして、本当に、受け入れていただきました地域の皆さん方の御協力なくしてこの在日米軍の訓練はないわけでありますから、当然、沖縄においてこれだけ御心配があった点でありますので、この移設で受け入れていただきました皆さん方にも、同じように私は丁寧に御説明を申し上げ、そしてまた、今後、不安なきようにしていく。

 それで、やはり、そのまま訓練を移行しておりますから、私も確認をいたしましたけれども、沖縄で訓練をしておるもの以上のものは移転をしておらないということでございますので、その点は申し添えたいと思います。

重野委員 私は、今大臣が言った大臣としての思いというものをどう防衛省全体の中に行き渡らせるかというところが大臣に問われてくる。

 県道越え射撃の移転というのは、県道越えだったから移転したんですよ。県道越えするときには県道はとまるんですから。それがやはり問題になって移転したということは、小火器の移転じゃないですよ、百五十五ミリ砲の移転なんです。それにかこつけてその他の演習も本土に持ってくるというのは、これはやはりイカサマだと言わなきゃなりませんよ。この点は、私はやはり、大臣、しっかり米軍に対しても言ってもらいたい。

 もう一つ、夜間の訓練についても、これはもう地域の皆さん、大迷惑なんですよ、九時まで。先週、三日前、もう激しい訓練をやって、熊本まで音が聞こえるというんですね。八時五十八分までやったというんです。それで、九時までに終わったという説明になっているんです。

 向こうに言わせれば、夜間の訓練も大事だと言うんだそうです。だけれども、それはやはり、沖縄から本土に持ってきたという経緯から見て、ちょっと米軍は思い上がっているんじゃないか。九時までは何をやってもいいんだ、そういうふうなことがまかり通っているということについては、私は問題があると思うんですね。

 現地沖縄では、一九八〇年以降、この夜間訓練についての記録も残っておらぬというんです。記録も残っておらぬと、何を意味しているか、わかりませんよ。

 だけれども、少なくとも、このキャンプ・ハンセンでの一〇四号線越え射撃訓練については、夜間の射撃訓練というのは、ある意味では自制的ではなかったのかなと私は推測するんです。それに比較したときに、今、私の地元の日出生台で行われている夜間の訓練というのは、やはり常軌を逸していますよ。その点についてはどうですか。

田中国務大臣 この夜間の問題でございますけれども、沖縄県道百四号沿いの実弾訓練、演習でありますが、これは、昭和五十四年度に実施したものが残っておるという報告がありました。

 確かに残っているかどうか再確認をして、そして御説明を申し上げということにいたしておりますが、夜間の射撃訓練は、昭和五十四年以前について具体的には確認されておらないということでありますが、SACO最終報告の内容を逸脱したものではないというふうに考えておりますし、また、地元からの要請を踏まえて、米側に対し、夜間射撃訓練を必要最小限とするよう、機会を捉えて要請をしておるということでございます。

 今後とも、地元、周辺住民への影響が最小限にとどまるように、再度私からも督励をいたしまして、そして、御心配がならないように対処していければと思っております。

重野委員 私は、大臣に、この点については本当にしっかり物申してほしいと思いますよ。

 現地沖縄からの報告によると、県道一〇四号線を越える射撃訓練について、夜間の訓練というのは非常に抑制的だった。ところが、今や、日出生台では夜間に九十発も撃ち出すというんですね。これは地域の人から見れば、何をやっとるんだ、これは日本の一部だぞと。そんな形で、米海兵隊の訓練が今行われているんですね。これはやはり問題だと思いますよ。

 それで、私は驚いたんですが、この在沖米海兵隊のきょう来ている隊長はミアガニーという中佐の方ですけれども、この方は、首相の名前を知っているかと地元の新聞記者が聞いたら、知らないと言うんですね、知らないと。日本で演習する、大きな問題になっている、そのときに、その指揮官が、新聞記者が日本の総理大臣の名前を知っているかと言ったら、知らないと言う。一体どの程度の人間が来ているのか、こう思いますよ。

 事ほどさように、在沖米軍が日本という国を、政府を、あるいは防衛省をどう見ているのか、そういうことを疑わざるを得ないような言動と行動が今続いているということ、その点は、大臣、やはりしっかり受けとめて、在沖米海兵隊に対し、あるいは米国に対し、しっかり物を言ってほしい、このように思いますが、どうですか。

田中国務大臣 アメリカの方とお会いすることもこれから多くなると思いますので、先生の御趣旨は伝えたいと思います。

 この県道一〇四号線越えの訓練につきましては、私も、外務政務次官をやっておりました数年前でありますが、沖縄から直接要請を受けたということを思い起こしております。そのとき、防衛庁でありますが、強く要請をしたという経験もございまして、今日を迎えているわけでありますが、地元の日出生台の方々にさらに御理解をいただいていきたいと思いますし、在日米軍の皆さん方にも伝わるようにしていきたいと思っております。

重野委員 時間が来ましたので、以上で終わります。

中井委員長 これにて重野君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 外務大臣にお尋ねをします。

 二〇一〇年の秋に、難民の第三国定住という制度がスタートしました。タイの難民キャンプにいるビルマ、ミャンマーからの難民を日本に受け入れるという制度です。この第三国定住というのは、欧米諸国は昔からやっているんですけれども、アジアでは日本が初めての試みでした。そういった意味では、国連機関や人権問題に関心のある人たちの間では、発足したときに、国際的に非常に高く評価されておりました。

 この制度の現状について、外務大臣の認識、評価をお尋ねします。

玄葉国務大臣 ただいま山内委員がおっしゃいましたように、この第三国定住、アジアでは初めてということで、多くの関係者の期待があったというのは、私もそのとおりだというふうに思います。

 この第三国定住、難民問題の恒久的解決策の一つということで、我が国としても、国際貢献及び人道支援の観点から受け入れることとしたものだというふうに思います。パイロットケースということで、平成二十二年に開始をし、これまで、第一陣として五家族二十七名、第二陣として四家族十八名が来日をしているというふうに承知をしています。

 現時点で、このパイロット事業の評価を断定的に行うというのはなかなか難しいところがございますが、私のところにも、このままでよいのかという提言あるいは御指摘などが寄せられているというのが現状でございます。

山内委員 この制度が始まったときは、国内の日本のNGOも大変期待しておりまして、外務省がこういうことをやるようになったのは非常に驚きを持って迎えられて、非常に期待が高かったんですけれども、うまくいっているケースもありますが、問題も非常に多く指摘されております。

 例えば、日本語研修をわずか六カ月だけやって、その後は放り出してしまうような形になっているんじゃないか。例えば、六カ月の日本語研修ではそんなに日本語は上達いたしません。子供が病気になったときに救急車を呼ぼうと思ったけれども、日本語が通じなくて困った、そういう例も出ているぐらいで、とてもじゃないけれども、この程度の研修期間では足りないし、その後のフォローも非常に悪いんじゃないか。

 あるいは、難民事業本部という外務省の外郭団体みたいなところがアレンジをしているんですけれども、そこの雇っている通訳の日本語が余りうまくなくて、コミュニケーションがうまくいっていない。あるいは、この難民事業本部というところは、自分たちのスタッフ以外と連絡をとるなと難民に言っているそうなんですね。

 実際には、日本では、難民の支援をやりたいという人は結構たくさんいらっしゃるんです、いろいろなNPOあるいは自治体の人、ボランティア団体。そういう意味では、この難民事業本部の対応に対して、いろいろなところから批判というか不満を聞いておりますが、そういった現状を大臣は把握されていらっしゃるでしょうか。

玄葉国務大臣 山内委員からいろいろな御指摘をいただきました。そういうさまざまな御指摘をまさにこういう場でいただくのは、私は大変よいことだというふうに思っております。

 今、おっしゃったように、パイロット事業で始めた、期待が高かった、もちろん今でもやらないよりはやった方がいい、ただ、改善点がたくさんあるということだろうというふうに思います。今おっしゃったように、日本語教育を含めて、支援のあり方についてさまざまな指摘があるということを、私も、昨年末だったと思いますけれども、ある方から指摘を受けて知りました。

 とにかく、パイロット事業でございますので、不断に事業を検証していこうと。先ほどおっしゃっておられましたけれども、確かに、支援期間とか支援内容なども、研修期間という意味では、北欧などでは二、三年である、イギリス、カナダなどでは原則一年だということのようでございますので、やはり今回のこのパイロットケースの実施状況というものをよく検証していかなければならないな、そういうふうに考えているところでございます。

山内委員 こういう国会で指摘されるよりも先に、ぜひ外務省としても、難民事業本部には億の単位でお金が投入されております。たしか来年度予算でも六億ぐらい入っていたんじゃないかと思いますが、そういった意味では、しっかり把握していただきたいと思います。

 外務省あるいは内閣官房が事務局になって、難民受け入れ、各省集まって担当官が話し合う場があるんですけれども、そういう役所だけで話し合うんじゃなくて、地方自治体とかNPOとかそういったところも早い段階から巻き込んで、受け入れのスキームをつくる段階から入っていくということをぜひやっていただきたいと思います。それが大体ヨーロッパでもアメリカでもスタンダードになっております。

 例えば、三重県の鈴鹿市というところでも難民受け入れをやっているんですけれども、三重県のケースでは、非常に地域のコミュニティーが温かく迎え入れてくれているというような事例があるようですが、これも別に、難民事業本部という外務省の外郭団体が率先してやったというよりは、地域の人たちが自発的にそういう善意に基づいてやってくださっている例が非常に多くて、余り政府というか外務省のイニシアチブが見られていないということがあります。

 ですから、企画の段階から、自治体、地域のコミュニティー、NGO、そういうところを巻き込んでいくことが必要だと思うんです。そういうことが必要であるにもかかわらず、難民事業本部が抱え込んでいて余り自分たちの事業に口出しをさせない、そういう指摘があります。それについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

玄葉国務大臣 実は、こういう場で指摘をいただくのはよいことだと申し上げましたけれども、こちらでやれることはとにかくやろうということで、昨年末にある方から指摘をいただいたものですから、担当局長を私の方で呼んで、改善できないかというお話をいたしました。

 その結果として、今、山内委員がおっしゃったように、ちょっと今手元にないんですけれども、さまざまな方々に入っていただいて、この事業をどう改善していくかという会を、NGOなんかに入っていただいて、たしか二回開いたのではなかったかというふうに思います。そういった意見を踏まえながら、ぜひ今後、この事業の改善などについて考えていきたいというふうに考えております。

山内委員 恐らく、大臣がおっしゃっている改善の提案というのは、なんみんフォーラムという団体が出したものではないかと思います。これは、日本で難民受け入れをやっているさまざまな団体が集まってつくったネットワークのようなもので、それで集まってみんなで話し合った提案を政府に出したと聞いております。

 その提案に対して、政府は今後どのように応えていくおつもりなんでしょうか。

玄葉国務大臣 まさに、私の方からそういう意見交換会を行うようにということを言って、おっしゃったように、今後の改善策というものが議論されているということでございますので、平成二十五年度以降の方針については、この方針に基づいて、今後、難民対策連絡調整会議において決定していかなければならないというふうに考えております。

山内委員 大変いい提案がたくさん具体的に挙がっていますので、真摯に応えていただきたいと思います。

 それと、この制度の受け入れの条件についてお尋ねをしたいと思います。

 この受け入れ条件が厳しいという指摘があります。平成二十年十二月十六日の閣議了解によると、受け入れ難民の条件として、「日本社会への適応能力がある者であって、生活を営むに足りる職に就くことが見込まれるもの及びその配偶者又は子」ということで、若くて働ける人で、家族持ちで子供がいないとだめだという、物すごくいろいろな条件がついております。

 本来、難民の受け入れというのは人道目的でやるものですから、あたかも労働力受け入れのような条件でまず最初のスクリーニングをやっている、このことが批判をされております。

 普通、ヨーロッパとかアメリカの国では、人権と人道目的で受け入れるわけですから、病気の方とかあるいはシングルマザーとか、そういう条件の悪い人を一定数受け入れる。あるいは、医療技術の整った先進国の方がケアしやすい、そういう理由で、条件の厳しい人を優先して受け入れる国もあります。

 ところが、日本は、元気で働けて、子供がいて家族がいて若くないとだめだ。これでは単純労働力の受け入れみたいな条件になっておりまして、そもそも人道目的とは思えないような条件がある、このことも批判されています。

 この条件について、今後、パイロットですから、パイロット事業が終わった後、変えていくチャンスがあると思うんですけれども、この先に変えるおつもりがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。

玄葉国務大臣 これもおっしゃったとおり、平成二十年十二月の閣議了解で、パイロットケースにおける第三国定住の難民に対する定住許可条件というのがございます。「日本社会への適応能力がある者であって、生活を営むに足りる職に就くことが見込まれるもの及びその配偶者又は子」ということで、おっしゃったとおりの状況でございます。

 これは、家族で支え合うということで、初めて訪れる日本で生活を送ることに対する不安が軽減され、日本の社会、生活習慣、文化等に早くなれることが期待されていることによるものであるということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、ただいま、NGOなどが入ってさまざまな前向きな提言がなされているという状況でございますので、いわゆる難民対策連絡調整会議というところで、今おっしゃったような御意見も含めて、平成二十五年度以降のありようについて検討をしていきたいというふうに考えております。

山内委員 それと、今受け入れをやっている難民事業本部というところについてお尋ねをしたいと思います。

 この組織は広尾の一等地に事務所がありまして、大臣、行かれたことがおありになるかどうかわかりませんが、大変立派なオフィスを構えて、本部長は歴代、外務省のキャリア官僚です。天下りではなくて出向で、人事ローテーションのように毎回キャリアの官僚が来ているんですけれども、ほかにももう一人、外務省の出向の方がいらっしゃいます。

 毎回来る外務省の人が、難民問題に特に詳しいとか国際法に詳しいとか、UNHCRに出向していたとか、そういう人が来るんだったら私も文句は言わないんですけれども、毎回来るキャリアの人は、難民に本当に関心があるのかなという人がいらっしゃいます。それで、二年ぐらい席を暖めて、すぐ何とか領事館とかに出ていかれます。こういう人をつけていたら、やはり現場の感覚からもずれてしまいますし、人件費が高い割には余りパフォーマンスがよくないという状況が生まれているんじゃないかと思います。

 今、独法だと、もうトップは公募でしましょうみたいなことが大分流れが進んでいますが、こういう団体こそ、国際法の大学の先生とかNGO出身とか国連の元職員とか、そういう専門性の高い人を公募で雇っていく、そういったことが効果的なんじゃないかと思うんですが、この状況をどうお考えでしょうか。これからも外務省のキャリアが二年ごとにやってきてまた去っていく、こういうことはやめなきゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 まず、恐らく松本前大臣のときだったと思うんですけれども、少しでも改善しようということで、平成二十三年度の難民等定住支援事業の公募ではアジア福祉教育財団のみの応募となったということでありますが、平成二十四年度の同事業における参加条件については、より参加しやすいものにするように見直しを図った。結果として、企画競争に三団体から応募があった。でも、結果として、おっしゃるアジア福祉教育財団が最も高い評価を得たため、同財団へ委託を依頼したということなんですね。

 この財団は、もう全て御存じだと思いますけれども、これまでインドシナ難民などを受け入れてきた経緯があるということだと思います。このトップが、いつも外務省のいわば現役であるという問題点についてどう考えるかということでございます。

 私も、これはけさでありますけれども、山内委員がこういう質問をされるということでございましたので関係の担当者たちと議論をしたんですけれども、確かに、インドシナ難民の受け入れなどを行ってきた実績がある。これまでの経緯もある。ただ、あのときは、いわゆる国際NGOなどがまだ十分成長していなかったと言うと失礼ですけれども、数が少なかったということは確かにあるのではないか。

 したがって、今後、こういった第三国定住を受け入れる団体、特に今おっしゃったような団体についてのトップのあり方などについては、やはり検討していくということは必要なのではないかというふうに考えているところでございます。

山内委員 一応入札にはなっているけれども、難民事業本部以外の団体にはなかなか受注できないような条件をつくっていたり、仕様の設計の書き方、スペックインというんでしょうか、スペックをほかの団体にはなかなかとれないように書くと、どうしても難民事業本部に行くということもあります。ですから、入札のやり方とか仕事の投げ方ももう一度考え直す必要があると思います。

 実を言うと、私は国会議員になる前にプロポーザルを書いて落とされたことがあります。正直言うと、難民事業本部よりもずっと安くていい仕事ができる自信はありましたけれども、スペックがそういうふうになっているんですね、経験が何ぼとか職員が何ぼとか。それは、事業費がつかないと人を雇えないんですね。

 そういった意味では、難民事業本部は別に難民援助に関して高い評価を得ているわけではありません。インドシナ難民に関しても、大勢受け入れましたけれども、いろいろな批判があって、問題があったんですが、その後ほとんど検証されておりません。そういった意味では、既に問題があることが確認済みの団体と言ってもいいぐらいです。

 そういう意味では、今までの評価基準がそもそもそれでよかったのか、入札の条件がこのままでよかったのかとか、もう一度徹底的にぜひ政治主導で見直しを図っていただきたいと思っていますし、大体、難民支援を政府機関がやっている国というのは余りないんですね。ほとんどが国連とインプリメンティングパートナーという契約を結んだNGOとか赤十字が現場で受け入れているのが国際標準です。そういうもう少し国際標準に近い、まともなやり方になるように変えていっていただきたいと思います。

 時間がないので、最後に、質問というよりも要望ということですけれども、この日本の第三国定住、余りうまくいっていないといううわさが既にタイの難民キャンプで広がっているそうです。ですから、全然応募が少なくなっている。就労条件も悪い。聞いていたよりも全然労働時間が長くて、過酷な仕事で、しかも日本語研修も余り十分じゃないまま放り出されてしまう。

 こういったあり方を、パイロットですから、検証した上でしっかり見直しをして、よりよいものにした上で拡大をしていっていただきたいとお願いしまして、時間が来たので終わりたいと思います。

玄葉国務大臣 よい提言をいただいたと思っておりますので、しっかり外務省内で検討したいと思います。ありがとうございました。

中井委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十七日午前九時から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会


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