衆議院

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第19号 平成24年3月1日(木曜日)

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平成二十四年三月一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 笹木 竜三君 理事 武正 公一君

   理事 西村智奈美君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      網屋 信介君    石関 貴史君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      今井 雅人君    打越あかし君

      江端 貴子君    大島  敦君

      大西 健介君    柿沼 正明君

      金森  正君    金子 健一君

      川村秀三郎君    岸本 周平君

      櫛渕 万里君    近藤 和也君

      佐々木隆博君    杉本かずみ君

      田島 一成君    高橋 英行君

      高邑  勉君    玉木雄一郎君

      玉城デニー君    仁木 博文君

      橋本 博明君    花咲 宏基君

      樋口 俊一君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    室井 秀子君

      山岡 達丸君    山崎  誠君

      山田 良司君    山本 剛正君

      湯原 俊二君    和嶋 未希君

      渡部 恒三君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    小里 泰弘君

      梶山 弘志君    金子 一義君

      金田 勝年君    城内  実君

      佐田玄一郎君    下村 博文君

      橘 慶一郎君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    池坊 保子君

      富田 茂之君    東  順治君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      内山  晃君   斎藤やすのり君

      阿部 知子君    服部 良一君

      柿澤 未途君    山内 康一君

      中島 正純君    浅野 貴博君

      松木けんこう君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (行政刷新担当)     岡田 克也君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       枝野 幸男君

   国土交通大臣       前田 武志君

   防衛大臣         田中 直紀君

   国務大臣

   (復興大臣)       平野 達男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     松原  仁君

   国務大臣         中川 正春君

   内閣官房副長官      齋藤  勁君

   復興副大臣

   兼内閣府副大臣      末松 義規君

   復興副大臣

   兼内閣府副大臣      松下 忠洋君

   総務副大臣        黄川田 徹君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     網屋 信介君

  江端 貴子君     田島 一成君

  櫛渕 万里君     大島  敦君

  佐々木隆博君     磯谷香代子君

  杉本かずみ君     山本 剛正君

  馬淵 澄夫君     玉城デニー君

  山岡 達丸君     和嶋 未希君

  湯原 俊二君     柿沼 正明君

  伊東 良孝君     丹羽 秀樹君

  橘 慶一郎君     下村 博文君

  馳   浩君     梶山 弘志君

  高木 陽介君     池坊 保子君

  東  順治君     富田 茂之君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

  内山  晃君     斎藤やすのり君

  阿部 知子君     服部 良一君

  山内 康一君     柿澤 未途君

  松木けんこう君    浅野 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     高橋 英行君

  磯谷香代子君     樋口 俊一君

  大島  敦君     櫛渕 万里君

  柿沼 正明君     稲富 修二君

  田島 一成君     江端 貴子君

  玉城デニー君     川村秀三郎君

  山本 剛正君     高邑  勉君

  和嶋 未希君     山岡 達丸君

  梶山 弘志君     馳   浩君

  下村 博文君     城内  実君

  丹羽 秀樹君     伊東 良孝君

  池坊 保子君     高木 陽介君

  富田 茂之君     東  順治君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

  斎藤やすのり君    内山  晃君

  服部 良一君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     山内 康一君

  浅野 貴博君     松木けんこう君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     湯原 俊二君

  川村秀三郎君     金子 健一君

  高橋 英行君     打越あかし君

  高邑  勉君     杉本かずみ君

  樋口 俊一君     佐々木隆博君

  城内  実君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     馬淵 澄夫君

同日

 理事高木陽介君同日委員辞任につき、その補欠として高木陽介君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 分科会設置に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 分科会における会計検査院当局者出頭要求に関する件

 分科会における政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十四年度一般会計予算

 平成二十四年度特別会計予算

 平成二十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計予算、平成二十四年度特別会計予算、平成二十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 本日は、高校無償化等政策効果検証と復興・防災・エネルギー・原子力などについての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 総理、おはようございます。

 総理、二月の二十六日、二十七日と沖縄を訪問されて、仲井真知事とお話をして帰られました。

 総理の日程を見ますと、そこに総理の思いが入っていると私は考えました。一つには、沖縄戦没者の墓苑、これは沖縄本島で決戦が行われ、多くの方が亡くなっております。もう一つは、旧海軍司令部壕視察、そして献花ということで、これは当時の司令官の大田実さんの自決が行われたところ。そして、電報を本国に打っているわけです。「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」ということで。そして、末次一郎先生の胸像を訪問されている。

 沖縄の復帰前から、そして復帰後も、日本の沖縄に思いをはせる多くの総理がいらっしゃったかと思います。今回の沖縄訪問に当たって、総理御自身としてはどういう思いを沖縄に持たれたのか、その点についてお聞かせください。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 ただいま大島さんのお尋ねの、先月二十六、二十七、沖縄を内閣総理大臣になってからは初めてお訪ねをさせていただきました。その初日は、基本的には、これまでの沖縄の歴史を自分なりにたどり、そのことをしっかりと心に刻もうという思いで行き場所を選んだということであります。

 まず、戦没者墓苑においては、これは戦没者のみたまに祈りをささげる、あわせて、ひめゆりの塔の前でも、同じ思いでそのみたまに祈りをささげさせていただきました。

 それから、大田司令官は郷里の先輩でもあります。自決をされたときが、ちょうど私と同じ年であります。その沖縄に対する思い、それから、その後に、末次一郎先生は、若いころに御指導いただきましたけれども、沖縄返還運動、民間レベルで大変なお骨折りをされた方であります。そういう先人たちの沖縄に対する思いというものもしっかり改めて引き継ごう、受け継ごう、そういう思いのもとで、最初、初日、回らせていただきました。

 翌日は、知事初め、政府の基本的な姿勢等を御説明する、そういうような日程をとらせていただきましたが、改めて、初めて内閣総理大臣としてお訪ねをしましたけれども、今般のいわゆるアメリカとの協議の話、あるいは沖縄振興、今後、この後、御質問をいただくと思いますけれども、しっかりと具体的に、論より証拠で、実行で沖縄に誠意を示していかなければいけないということを思っている次第であります。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 私も沖縄に国会議員になる前に旅行で訪問したときに、沖縄の首里城にある歴史の展示をずっと見る中で、沖縄が置かれている歴史的な背景、そしてそれに思いをはせたわけなんです。

 沖縄が一九七二年五月十五日に日本に返還されてから、沖縄振興の法律が十年ごとに改正をされ、今回は四十年が今月の三十一日で終了し、来月の四月一日から新しい沖縄振興法、これは今、政府から国会に提出をされているところでございます。

 この沖縄振興法について野田総理が仲井真知事とお話しされたときに、仲井真知事からは極めて高い評価であったと伺っております。その点につきまして、一つには一括交付金、もう一つは税制に関し、沖縄の自立そして自主性を大きく尊重した法律だと私は考えております。その点について総理のお考えをお聞かせください。

野田内閣総理大臣 ただいまお尋ねの二法案、もう既に国会に提出をさせていただいておりますけれども、まず前者の沖縄振興の特別措置法については、大島さんが御指摘いただいたとおり、振興計画等で沖縄県の自主性をしっかりと反映するということになっておりますし、今般予算でお願いをしていますが、自由度の高い一括交付金、これは千五百七十五億円、沖縄分が入ってございます。全体で一括交付金八千三百億ですが、そのうち、今申し上げたとおり、相当部分、沖縄県の額も入っています。その根拠を置く法律でもございます。このことについて高い評価をいただきました。

 それから、跡地利用を促進する法律。これも、現地では途中視察させていただきましたが、既に返された土地のもとに、今、那覇の新都心をつくっています。間違いなく、跡地を有効利用すると地域の経済の発展に大きく資するものでありますので、それを促進する法律。

 この二法案を、これは野党の皆さんも基本的には御理解をいただいていると思いますので、年度内の成立を期すということを改めて知事に申し上げさせていただきました。知事からも大変強い御期待を表明していただいたという次第であります。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 沖縄振興の法律と、そして米軍用地の跡地の法律につきまして、この二法案、三月三十一日が期限ですので、四月一日から新しく成立し、そして沖縄に寄与するように、衆議院、私たちとしてもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

 次に、今回の復興について、復興庁が二月の十日から設置をされました。そして、復興財源について、実は昨日、参議院で今回、国家公務員の給与の臨時特例法案が成立をして、復興財源として六千億円弱の金額が、国家公務員の皆さんの人件費から二年間にわたり拠出をされるということになりました。

 今回のこの措置というのは極めて異例な措置だと考えております。民間ですと、民間の労働条件、給与というのは、会社側そして従業員側、そして、会社と従業員が話し合うことによって給与水準あるいは労働条件が決まっていきます。

 国家公務員の場合には民間のあり方とは大きく変わっております。国家公務員の場合には、民間と同じように、会社側ですから政府と、従業員側が話し合うというルールがございません。したがいまして、これは協約締結権というんですけれども、要はそういう話し合う制度が準備されていませんから、これは人事院という中立的な機関が、毎年、一万事業所を超える会社の、そして従業員としてはおおむね四十三万人の民間の従業員の皆さんの労働条件、給与体系を調べ、それに基づいて国家公務員の給与というのは決めてきました。

 今回、昨年の五月かと思うんですけれども、震災があり、そしてもう一つは国の財政事情が極めて悪いという、この二つのことによりまして、政府側そして国家公務員、従業員の皆さんとの、給与体系をどうするかという話し合いが行われました。それで、六月三日に給与臨時特例法案の閣議決定が行われまして、この決定内容というのは私は極めて重い決定内容だと思っています。

 それは、私もサラリーマンでした。鉄鋼の不況のときにボーナスが削られ、かつ、当時は給与として五%ぐらいカットされたんでしょうかね。働いているサラリーマンは給与に基づいて生計を立てています。その中にはローンの返済もあります。子供の教育費もあります。そしてボーナス時期になると、それは多くの金額が引き落とされることになります。

 今回の給与、四月一日から国家公務員の皆さん、これは防衛省・自衛隊の皆さんも含んでいます、一定の期間の配慮はさせていただいておりますけれども、含んでおります。ほぼ六十万弱の国家公務員の皆さんの給与、若い方で五%です。係長あるいは課長補佐の方、中堅の方で八%。そして課長、室長、管理職以上の方は一〇%の給与が引き下げられることになります。ボーナスは、これは若い方もそして管理職の方も一律一〇%のカットになっております。

 昨年六月三日の閣議決定に向けての政府側そして従業員の皆さんとの話し合い、そして今回、それに基づいて給与が加重平均で七・八%下がることになります。国家公務員の皆さんの国を思う気持ちというのは私は高く評価するところです。

 世の中、今の経済状況は非常に悪いですから、民間の中小・小規模企業、大きな会社でも給与カットが行われ、ボーナスを払えない企業、そして社会保険料もなかなか払えない企業が多いことも確かなんですけれども、今回、国家公務員の皆さんに、戦後初めて、これは大きな決断をしていただき、復興に向けての財源、そして国の財政のことを思っていただいて、給与を下げさせていただくことに関して、私は非常に重く、そしてそのとうとい気持ちに感謝するところなんですけれども、首相から今回の、昨日通りました公務員の給与が下げられることにつきましての御所見をお聞かせください。

野田内閣総理大臣 昨日、国家公務員の給与を七・八%平均して引き下げる法案がおかげさまで成立をさせていただきました。この間に本当に時間をかけて丁寧に政党間の協議をしていただきまして、我が党の実務者の責任者は大島さんでございました。改めてそのお骨折りに心から敬意を表したいというふうに思います。

 御指摘のとおり、幹部の方、管理職の方では一〇%削減です。私、内閣総理大臣は三〇%、大臣、副大臣二〇%、政務官一〇%ということでありますけれども、特に、大震災発災後、今自衛官のお話もありましたけれども、自衛隊や海保等々、人命救助であるとか生活支援の最前線で働かれた国家公務員の方もたくさんいらっしゃいます。出先機関で本当に徹夜で頑張った国家公務員もたくさんいらっしゃいます。本来ならば手当をふやしてその労に応えなければいけないぐらいの方もたくさんいらっしゃる中でありますけれども、御案内のとおり、復興のためにはお金が要ります。集中して取り組む期間でも少なくとも十九兆円と言われている中で、その財源を確保しなければなりません。財源に制約があって復興が滞るということはあってはならないという状況の中で、この国難を乗り越えるためにも、公的セクターにかかわる皆様にはぜひ今回御理解をいただかなければならない臨時異例の措置でございました。

 おっしゃるとおり、それぞれの皆様に生活があります。御本人にとっても大変かもしれませんが、御家族に御苦労をおかけすることになりかねないというふうに思います。その意味からは、こういう法律を成立させていただきましたけれども、国家公務員の皆様に改めてぜひ御理解をお願いするとともに、私としては、心から感謝をしながら、しっかりと有効にそのお金を使わせていただければというふうに思っている次第であります。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 国家公務員の臨時異例な措置でございました。国家公務員の今回の臨時異例な措置で下げさせていただいたこと、このことについて、今、首相からのお話、御答弁というのはそのとおりであると思います。

 それで、国家公務員、今回は二年間の措置ですが、今後、民間と同じように、話し合って労働条件を決めるということが必要だと考えております。したがいまして、昨年六月三日閣議決定させていただいた改革の四法案についても、しっかりと取り組む必要があると考えております。

 先ほど首相からも御答弁がございました。今、与野党の協議、これは各党の協議が本当に充実をし、かつ御理解をいただいていると考えております。今回の給与法の特例法案についても、また復興関係の法案についても、昨年の臨時国会も、復興庁の設置あるいは復興特別区法についても、与野党でしっかりと協議をさせていただき、そして会期中に通すことができております。私は、復興特別委員会の筆頭理事として、各党の復興を思うその思いにいつも敬服をし、感謝を申し上げているところでございます。

 今回、復興法に関して、大臣が一人、そして副大臣を二人、これまでよりもふやしております。

 まず末松副大臣から、末松副大臣は昨年来、宮城県の現地対策本部長として、震災発災直後から復旧と復興に取り組まれてきました。今回、ワンストップとして復興庁を設置して、全ての役所を統括して復旧と復興に当たられる、その末松副大臣の今持っていらっしゃる思いについて御答弁をください。

末松副大臣 大島先生、ありがとうございます。

 復興の事業の仕事のやり方につきましては、平野復興大臣の御指導のもと、ワンストップという今先生御指摘の考え方を刻み込みながら、誠意ある対応を行っていきたいと思います。仕事における誠意ある、この誠意というのは何かというと、スピードと具体化だと思っております。スピーディーに成果を出していきたいと思います。

 それから、仕事の結果につきましては、国会の諸先生方の御指導のもと、我々日本人が行った復興の事業が世界のモデルになるんだ、世界から見て、さすが日本人がやった復興事業は違う、こういうふうな形で評価されるように頑張っていきたいと思いますし、また、後世の日本人が、さすがやはり先達の仕事は違う、こういうふうな形で実を結ぶような形の仕事に取り組んでいきたいと思います。

 先生の御指導をよろしくお願いします。

大島(敦)委員 続きまして、平野復興大臣にお伺いをさせてください。

 今回、昨年は復興特別区法が通り、そしてまた復興庁、復興局も設置をされて、その体制と制度については、今できつつあります。今、国会では、福島県の特措法の議論が始まるところでございます。復興庁というのは、復興復旧の司令塔として大きな期待を寄せられております。そのことにつきまして、平野大臣の決意を伺わせてください。

平野(達)国務大臣 大島委員には、復興特別委員会の与党筆頭理事として、復興庁法案あるいは特区法案等々の成立に向けて大変な御尽力をいただきました。また、復興庁法案の成立あるいは特区法案の成立の過程におきましては、野党各党からさまざまな建設的な御意見、そしてまた法案修正もいただきました。結果として、かなり内容の充実した法律ができたというふうに思っております。

 これから復興庁は、そういった法律の成立を受けまして、そしてまた、これまで各省が、例えば心のケアの対策あるいは雇用対策等々、さまざまな問題に対応するための施策も用意しております。こういった施策をフル活動しまして、一日も早い復旧復興に向けた努力をこれまで以上に傾けなければならないというふうに考えております。その中心に立つのが復興庁でありまして、その意気込みで復興庁はこれからの復旧復興に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 もう一点、瓦れきの問題等で、今でも復興の進捗が遅いとよく言われております。県ごとに復興の状況も異なるかと思います。予算の執行率が悪いという声も聞かれます。その点についての平野大臣の御所見を伺わせてください。

平野(達)国務大臣 さまざまな指摘を受けていることについては、真摯に受けとめなければならない面も多々あるかと思います。しかし、その一方で、先ほど申し上げましたように、復旧復興に向けた道具立てもおおむねそろったというふうに思っております。それから、公共施設の災害査定、これもほぼ終わりました。今、現地では、本格的な復旧計画の策定に鋭意取り組んでいるところであります。

 これから本格的な復興のつち音が聞こえるように、復興庁がその中心となってしっかりとした取り組みをしてまいりたいというふうに、重ねて申し上げたいというふうに思います。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 今回、大臣が一人、副大臣が二人、これは自民党さん、公明党さん、各党の協力を得て増強させていただいたことは先ほど述べさせていただきました。各副大臣も、先ほどは末松副大臣、そして松下副大臣は、発災直後から原子力被災者支援チームとしてずっと福島に入られて、原子力発電所の事故の対応に心を砕いていらっしゃいました。

 松下副大臣、今、福島の特措法の議論についても政府側で一生懸命努力をされております。松下副大臣から、この福島の再生について国としてどう取り組むべきなのか、その点についてお聞かせください。

松下副大臣 一陽来復、明るい太陽は必ず再びこの地に上ってくる、そう自分に言い続けて、そしてまた、県民の方や被災している方たちに対して激励の言葉を、一陽来復ということで励ましながら一年間過ごしてまいりました。

 この一年、県民の方や被災地の人たちは、寒い冬、そしてまた厳しい夏、そして再び厳しい冬を迎えて、必死に耐えて、しかし前を向いて歩いてこられました。その姿を見ているだけに、政治の温かい行き届いた手を被災地の方々に一刻も早く届けることができるようにしていく、それが私たちの仕事だ、政治の仕事だ、そう言い聞かせてやってまいりました。よく耐えて頑張っておられる、しみじみそう思っています。

 その気持ちをしっかり受けとめた上で、復興庁の仕事として、総理がかねてからおっしゃっていますけれども、縦割りを排除して、心を一つにして、被災地の方々の心をしっかり受けとめて仕事に当たれ、こうおっしゃっています。そのことに尽きると思っていますし、仕事は現場にある、そしてまた、決断して実行して、一刻も早くその成果を地域の人たちに届けていくことができるように、家に帰りたいというその気持ちをしっかり受けとめて力を尽くしていくのが私の仕事だ、そう考えています。

 たくさんの仕事がございますけれども、一つ一つ丁寧にしっかりと実行していきたい、そう考えています。

 以上でございます。

大島(敦)委員 最後の質問になります。

 平野大臣にお伺いしたいんですけれども、福島復興再生特別措置法の中には「国の責務」という規定がございます。非常に重い規定だと考えております。この福島の復興再生、そして国の責務について、いかに政府としては考えているのか、その点についての御所見を伺わせてください。

平野(達)国務大臣 福島は、御案内のとおり、地震、津波の被害に加えまして、原子力災害の影響を最も強く受けている場所であります。

 この福島には、今、十六万人の避難者の方がおられまして、そのうち六万人が県外で避難生活を行っておられます。さらに、そのうち十一万人は、半ば強制的に避難をさせられた方々でもございます。また、風評被害という問題もまだまだ大きな影響を及ぼしております。

 こうした福島の復興再生、この原子力災害の発生という経過から見ても、国の責任というのは極めて大きいというふうに思っております。

 津波、地震というのは、どちらかというと、私はやはり主体は被災地域だというふうに思っています。それに寄り添うのが国だ、そういう位置づけで取り組むことが大事だと思っておりますけれども、福島の復興には、特に原子力災害の復興に関しましては、国が前面に立つ、国が責任を持って立つ、そういう姿勢で臨むということが必要だと思っておりまして、その意味において復興庁の役割はより大きくなるというふうに考えております。

大島(敦)委員 質問を終わります。

中井委員長 この際、田島一成君から関連質疑の申し出があります。大島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 お許しをいただきまして、きょうは、政策効果検証の中で高校無償化に的を絞って、総理以下、大臣にお尋ねをしたいと思っております。

 高校無償化が制度としてスタートいたしまして二年、この制度は、家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込めるために、そんな社会をつくるためにと実施してきたものであり、その意義は非常に大きいものと私自身も考えておるところであります。

 経済的な理由で中途退学を余儀なくされてきた生徒の数も大幅に減少しておりますし、一定の政策効果があらわれていると考えておりますが、文部科学省としては具体的にどのような効果があったとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 田島先生の御質問でございますが、この予算委員会でも他の先生方からもそのことについての御質問がございましたが、改めて、政策効果、こういうことでございます。

 特に、文部科学省としては、制度を導入した平成二十二年度の経済的理由による高校中退者の数は前年に比べて減少している、こういう効果でございます。一つは、三六%減少している、こういう数字の事実でございます。

 また、制度を導入した平成二十二年度の高校中退者の再入学は前年に比べてふえている、こういうことで一五%再入学がされている、こういう事実でございます。

 また、低所得世帯の私立高校生に対する経済的支援については、年収二百五十万円未満程度の世帯については全額免除相当の支援を行う県が十三県から四十三県にふえていっているということで、より多くの都道府県において高校無償化開始よりも手厚くなってきている、こういうことでございます。

 したがいまして、制度導入前に比べて、より希望に応じた進路を中学生が選択できるようになった、こういうふうに認識をいたしております。また、結果として、家庭が負担する学校教育費が負担減になった等々の効果があると文部科学省としては考えております。

 以上でございます。

田島(一)委員 今お示しいただきました数字を見てもおわかりのとおり、復唱はいたしませんが、本当にさまざまな面で効果があらわれているということは一目瞭然であろうかと思います。

 きょう、皆様のお手元に資料をお配りいたします。これは高校無償化の国際比較を抜き出した数字であります。

 後期中等教育段階では、OECDの主要先進国のほとんどの国で授業料は現に無償とされております。年代が明らかなものだけ抜き出しましたが、ごらんのように、一番上に書いてありますアメリカは南北戦争の前から、日本は当時、江戸時代の文政十年であります、もう既にそのころから不徴収がスタートしておりますし、イギリス、ドイツにあっては九十年以上も前から、フランスにあってはおよそ八十年前、そして日本の上にありますオーストリアは五十年前から無償化しているなど、他の国も、遅くとも一九六〇年ごろには無償化されております。現段階で徴収している国は、お隣の韓国のみとなっております。

 このような無償化は、国際的に見ていただいてももはや常識となっており、先進国を自負してきた日本にあっても、二〇一〇年にようやく無償化することで、国際的な常識に追いついたと言っても過言ではないこの一覧だというふうに思います。

 当然のことながら、この無償とされている国々、ここでは所得制限は、もちろんのこと、課されてもおりません。

 我が国の高校無償化制度では、公立高校は授業料を一律不徴収とし、私立高校は全ての生徒に対し就学支援金が支給されることとされております。これに対し、所得制限を設けるべきだという声もありますが、仮に所得制限を設けるとした場合、一体どのような課題が出てくるとお考えか、お答えをいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 田島先生もそこにお示しのとおり、諸外国の大半は無償化である、こういうことでもございますし、私どもの考え方の概念では、家庭の経済的な状況等々にかかわらず、全ての意志のある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくっていく、その教育費につきましては社会全体で負担をしていこう、こういう理念のもとに私どもは整理をしてまいりました。

 したがいまして、そういう考え方の理念と、今先生が申されました所得制限、仮にということでありますと、その理念との関係をやはり一つは整理をしなきゃならない、こういうことでございます。

 また一方で、諸外国ということでありますが、国際人権A規約の、中等教育の無償教育の漸進的な導入にかかわる条約、こういうことで、義務と所得制限の関係の精査がやはり求められる、こういうことでございます。

 したがいまして、私どもとしては、万が一所得制限、こういうことになりましても、我々としては、特定扶養控除の縮減、こういう考え方も打ち出しておりまして、事実上、所得制限に近い効果も副次的にはあらわれておりまして、不平等にはなっていない、こういうふうに思っておりますし、また、家計変動等が非常にあるものですから、所得の把握というのが非常に難しい、そういう中で、本来の、今一番必要なときにそのことが実行できない、こういうケースもあるということでございます。

 以上でございます。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 もはや世界の常識となっているこの高校無償化、私は決して後退させることはあってはならない。また、きょう中継を見ていただいている国民の皆さんも同じような気持ちであろうかというふうに思っております。

 しかし、この高校無償化がどこまで周知されているかという点については、まだまだ見ていかなければならない点があろうかというふうに思います。

 高校無償化の制度の実施によって、社会全体で負担をし、高校生の学びを支えていく。そして将来、この高校生が我が国の社会の担い手として広く活躍をしていってほしいということを期待して、実施をされているものであります。

 この制度の趣旨を現に学んでいる生徒たちにしっかりと理解をしてもらい、社会全体で自分自身の学びを支えてもらっているという自覚を持って勉学やクラブ活動に励んでもらいたいと考えるわけでありますが、今後さらに、より積極的な制度の周知等々が必要あるのではないかと考えます。文科大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 先生おっしゃるとおりでございまして、この制度発足時におきましては、この制度の趣旨を発表したときに大臣の談話を発表いたしております。まさに社会全体で支えているんだというありがたさと、そのことの意志をしっかりさせるためにも、本制度の趣旨に沿って、生徒への周知に努めるよう副大臣名で各関係者に通知をいたしております。加えて、リーフレットを学生に配付をいたしておりまして、さらなる徹底を図りたいと思っております。

 しかし、年数がたってきますと当たり前のようになってくる、こういう懸念もありますものですから、この趣旨を周知徹底するための工夫をさらに私どもとしては検討してまいりたい、このように思っております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 学ぶ高校生に恩を着せるというよりも、どういう制度として今授業料が無償化されたのかを理解させるという点、決してここは間違えないでいただきたいと思いますし、多くのみんながこうして学べるんだということを自覚し、高校生活を謳歌していただけるようにぜひ取り組みを深めていただきたいと思います。

 さて、制度導入時に、公私間格差について随分問題視されてきたことがございました。公立高校は授業料が完全無償となる一方、私立高校におきましては、就学支援金が支給されるものの、平均的な授業料からすれば依然授業料負担が生じるわけでありますから、公立高校に比べて私立高校が不利になるとの指摘もございました。

 このような公私間格差が拡大するとの懸念の声に対して、現状どのような実態になっているのか、文科大臣からお答えをいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 公私間格差の関係についてでございますが、私立高校生につきましては、授業料等々の経済的負担が重いという現実を踏まえて、特に低所得者世帯の生徒につきましては、家庭の状況、いわゆる所得に応じて就学支援金を加算支給する、こういう考え方に立っております。

 と同時に、都道府県が行う授業料の減免等の取り組みについてさらなる拡充を図っていただくために、国としては、基金の延長、積み増しの経費の措置、地方交付税の増額等、必要な措置を講じながら、今先生御指摘のことについて補完をさせていただいている、こういうことでございます。

 そのことの結果として、就学支援金、授業料減免、合わせた支援について、例えば年収二百五十万円以下の世帯については全額免除相当の支援を行う県が、先ほど申し述べましたが、四十三県に上ってきているということでございます。したがいまして、高校無償化開始前よりもより手厚く措置をさせていただいている、こういうことでございます。

 その結果として、私学に入学する志願者が、微増でございますが、ふえていっているということでございますので、大変失礼ながら、公私間格差が拡大する、こういう懸念については、その御指摘は、そういうお声は、しっかりと説明をすれば御理解いただけるものと思っております。

田島(一)委員 当初心配されていたほどではないということを今の御答弁から理解させていただいたところであります。それぞれに低所得者世帯等に対しては手厚いさまざまな施策をこれからも打っていくという点については、大きな期待を寄せるところでもあります。

 その一方、高校無償化の制度導入後も、授業料以外には、教科書代でありますとか修学旅行の積立金など、さまざまな負担があることもまた事実であります。今御答弁いただきました低所得世帯の生徒については、このような負担を少しでも軽減するために、高校無償化制度のみならず、さらなる負担軽減のための支援がやはり必要ではないかと考えているところでありますが、今後、こうした授業料以外の負担についてどのような軽減策等をお考えか、お答えをいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 先生御指摘のところについて御答弁を申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、無償化に伴いまして授業料減免等々支援をいたしておりますが、さらに奨学金の事業を活用するということをやっていこう、こういうことでございますし、そういうことにつきましても、基金の考え方についての一部改正を、より弾力的に使えるような仕組み、さらには制度を延ばす、さらには積み上げをする、こういうことでこれからもやってまいりたいと思います。

 したがいまして、基金を利用する都道府県におきましての、大学生と同様のような所得連動返済型の奨学金制度を整備する、こういうことで制度改正を行っているところでございます。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 学びたいというその気持ちをしっかりと社会が支えていく、やはりこの原点を絶対に揺るがしてはならない、そのように思うわけであります。どうか、それぞれ大変な状況の中であっても、社会を支えていく若い世代をしっかりと支えていく、その気持ちをずっと持ち続けて、この制度をぜひ堅持していただきたいと考えるところであります。

 今回、高校無償化の制度の検証をするに当たって、多くの皆さんからインターネットのメールやフェースブック等を通じて御意見をいただきました。その一つを御紹介させていただきたいと思います。

 高校生ぐらいになれば自分の家の経済状況はよくわかっており、高校無償化制度導入以前では、経済的に授業料を払えない生徒は、非常につらい思いをして学校に通っていました。しかし、高校無償化が始まってから、自分の家の家計の経済状況に気兼ねなく、元気に高校で勉学やクラブ活動に励んでいるのです。高校無償化は決してばらまきでもパフォーマンスでもありません。何があっても堅持してください。

 という、目頭が熱くなるようなメールをいただきました。このように喜ばれている声が寄せられている。それだけ私は高校無償化制度は大きな役割を果たしていると考えるわけであります。

 高校無償化が恒久的な制度としてスタートし、二年。生徒はこれを前提にして進路決定をしていることと思います。今ここでいたずらに制度を変更することが生徒にどのような影響を及ぼすのか、不安をあおることになるのではないかと気になっておるところでもあります。何があっても高校無償化制度は我々の政権でしっかりと堅持をしていくということを、改めて皆さんにお訴えをしたいと思っております。

 この際、野田総理のお考えをぜひ御披露いただき、決意を表明していただきたいと考えるところであります。

野田内閣総理大臣 高校無償化については、今、田島委員にも御参画をいただいて政党間協議をやっているというふうに思います。先般の幹事長間の覚書を踏まえて、政府としてはその政党間協議に対して誠実に対応していきたいと思いますが、高校無償化は、基本的には私は大変意義があるというふうに思っています。

 それは、平成二十年だったか二十一年だったか、どちらかなんですけれども、遺児と母親の全国大会という会に私は党を代表して出席をしました。各党からもそれぞれ代表者がいらっしゃいました。遺児、残された子供です。それは交通遺児もいます、震災等の災害遺児もいらっしゃいます、お父様が自死をされた方もたくさんいらっしゃいます。その全国大会を開かざるを得なくなったというのは、非常に格差がふえてきて、生活が困難になって、久しぶりの全国大会だったんですね。

 お母さんが朝も働く、昼も違うところで働く、夜も働く、懸命に支えている。だけれども、失業したり病気になったときの子供たちは大変です。修学旅行に行かない、進学を諦める、学校を途中でやめる、そういう声をたくさん聞きました。

 日本は、教育は機会均等の国だと思っていました。だけれども、残念ながら、貧困の世襲みたいなことが起こって、学ぼうとする子供たちがそのチャンスを摘まれているという現状が出てきているということを痛感しました。

 したがって、高校授業料の無償化は非常に私は意味があると思いますし、グローバルに見ても、先ほどOECDの比較が出ていましたけれども、あれはまだ一部の国しか書いていませんですよね。OECD、三十カ国ぐらいあると思います。授業料を取っている国は、イタリアとポルトガルと韓国と日本くらいだったですよね。ようやく日本は離れたんです。その意義は、大変私は意味があるというふうに基本的には思っていますので、そういう基本線を維持しながら、誠実に政党間協議をしていただければ大変ありがたいというふうに思います。

田島(一)委員 終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。大島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木(雄)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの玉木雄一郎です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長また与野党の理事の皆様に感謝を申し上げます。

 本日、私は、農業の戸別所得補償制度の政策検証を中心に質問させていただきたいと思います。

 まず、野田総理にお聞きをいたします。

 総理は、民主党代表選挙の際に、大平元総理の田園都市国家構想を参考に、新・田園生活圏構想というものを掲げられました。まず、総理にとって、農業、農村、そして田園の重要性について、総理の基本的な認識をお聞かせいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、農業は、専ら農業というのもありますが、食品等々の関連産業等、裾野が広いということと、まさに食料の安定供給という大変重要な役割を担っているということ、それから、国土、環境面の保全という多面的な機能もある。そういうことも総合的に考えますと、まさに農業は国のもとなりと言って過言ではないというふうに思います。

 加えて、最近、担い手不足等いろいろな課題はありますけれども、基本的には成長産業になり得る、そういうものだと思っていますので、昨年の暮れにいわゆる基本方針・行動計画をつくっていただきましたので、それを踏まえて着実に実施をすることだと思います。

 加えて、観光の面でも、例えば、日本へ観光に来られる方は、かつては秋葉原へ行ったり繁華街を見たりする人もいたと思います。でも、今は、豊かな地方に憧れる外国の方は多いんです。豊かな地方、田園が広がり、おいしいものがあり、おいしいお酒を飲み、人情の機微に触れ、その人たちが観光に、日本はいいところだなと思っていただくことも大事でありますので、私は、農業、田園を基礎としてこの国の発展を考えていくということは、重要な柱になり得るのではないかというふうに思っております。

玉木(雄)委員 ありがとうございます。

 私自身、香川県の小さな田舎町の田んぼの真ん中で生まれ育ちましたので、農地や農業あるいは農村風景の持つすばらしさというのは身をもって感じてきております。また一方で、単なるノスタルジーではなくて、今総理がおっしゃったような、成長産業としての可能性が実は極めて強い分野だと思っておりますし、これをぜひ地域の活性化、日本の活性化につなげていくことが、これからの大事な我々の政策の柱になるというふうに思っております。

 しかし一方で、よく指摘されるように、今、日本の農業が直面している問題、高齢化の問題、そして耕作放棄地が急速に広がっている、大変厳しい状況に直面をしております。そんな中で、民主党、我が政権になってから、我々の政権になってから、一つの切り札として打ち出されたのが農業の戸別所得補償制度であります。私は、この所得補償制度、マニフェストの中でも大変評価できる政策の一つだと思っております。

 まず、お手元の資料一を見ていただきたいと思うんですが、まず評価をするときには、受益をされるというか、対象になる方に御意見を聞くのが一番だと思います。これは農水省のアンケート調査ですけれども、大まかに言って四人のうち三人の方が、この所得補償制度モデル対策事業に加入された方、四人に三人の方が評価をされている、こういう結果が出ております。

 また、昨日、農林水産省から発表された数字によりますと、農業者の所得、ずっと下がり続けてきたんですね。ピーク時の半分になっていると言われています。しかし、このモデル事業を行ったことによって、昨年、農業所得は対前年度比で一七%ふえております。

 もう一つ大事なことは、水田経営体の方、去年、あれだけ米価が下がったと言われました。大問題だと言われました。しかし、米価が下がったにもかかわらず、経営を下支えするこの所得補償制度のおかげで、水田経営については三四%も所得がふえているんです。これが経営の安定に役立つ。

 我々は、単に米の増産のためにこの政策をやっているのではなくて、水田というすばらしい生産装置を守っていかなきゃいけない、そのためにこの制度をやり、転作を奨励し、自給率を上げる作物をつくってもらう、でもそのベースは、この大事な水田を守ろう、これが実は所得補償制度の大きな柱の一つであります。

 しかし、残念ながら野党の皆さんからは、これはばらまき四Kだという批判をいただいております。しかし、私は、実は、単に薄く広く配っていくという意味でのばらまきではないということを少しお示ししたいと思います。

 資料の二をごらんください。

 二つの円グラフを描いておりますけれども、左側をまず見ていただきたいのですが、支払い件数シェアを見ていただきますと、確かに配っている件数、これは〇・五ヘクタール未満の小さな農家に半分以上配られています。しかし、右側のグラフを見てください。実際に支払われた金額ベースのシェアです。これを見ると、この左側の図とは全く違う姿が見えてくるのは、実は、この所得補償制度モデル事業に使われた予算は約三千億円、たしか三千六十九億円だったと思いますが、この三千億の予算の実に約六割は、二ヘクタール以上の規模の大きな農家に集中的に配られているんです。これを見ていただくとわかるように、件数は半分以上小規模農家ですけれども、予算の配分は極めて重点的に、いわば大規模農家に集中的に配られています。特に、五ヘクタール以上に四割が配られている。

 これは、旧政権時代の経営所得安定対策のように、面積要件を課していって、ただ四ヘクタール以上、二十ヘクタール以上に配るという面積要件がないにもかかわらず、集中的な配分になっていることに実は極めて大きな意味があって、このことを少し説明させていただきたいと思います。

 まず、なぜこのようになっているか。資料三をごらんください。

 生産コストというものは、当然規模が大きくなればなるほど減っていきます。これは経営費と家族労働費を足したトータルのコストを書いています。右肩下がりになっています。つまり、規模が大きくなればなるほど効率化が進んでコストが下がっていきます。ここに、この所得補償制度は全国一律の交付水準で配分するという仕組みを導入したわけですね。

 それで何が起こったかというと、ここを見ていただくと、二十二年度、これはコストがいろいろありますけれども、販売価格の平均が一万二百六十円。これだと、よく見るとどの規模の経営体も赤字になってしまうわけですね。しかし、変動部分、定額部分を合わせて六十キロ当たり三千四百円を交付することによって、二ヘクタール以上の農家では初めて利潤が出てきています。ただし、それ未満の農家については残念ながら十分な利益は出てきていない。

 ただ、ここがポイントで、集約して、右側に寄っていかないと利益が出ないことによって、実は、規模を拡大する、集約化を進めていくというインセンティブが制度そのものに内在しているわけですね。全国一律基準によって、事実上の規模加算になっている、こういうことが一つ言えると思います。

 もう一つ、資料の四を見ていただきたいんですが、この所得補償制度は、そうはいっても、物すごく小さいところには配分しません。全ての販売農家を対象にするんですが、十アール、我々一反と呼びますけれども、一反未満、一反の人はちょっと控除して、それを除いた面積に対して交付するということにしています。ただ、一つ特典がございまして、集落営農、これを組織していただくと、幾つか農家が集まって、集落で大きな共同の経営がなされるということになると、全体から十アールを控除すれば残りには全て払うということで、ばらばらに十アール控除を受けるよりも、集落営農として十アール控除を受ければ一人当たりの受取額は多くなるということで、集落営農組織化を進めていきやすい制度もまた入っています。

 そのことによって、これを見ていただきたいんですが、この間ずっと集落営農、組織化を進めてきたんですが、平成十九年以降、一貫して新設数は下がり続けてきました。しかし、二十三年度を見てください。新設が一気に増加に転じています。

 私は、申し上げたいのは、実は、ばらまきだというのは、小さな農家にどんどん配って、しかも一時貸し剥がしと言われました。せっかく集落営農ができているのに、自分ができるからもうやめて、ばらばらになっていこうということで、集約化、集積化を阻害する制度なんじゃないのかということが言われましたけれども、今お示ししたデータを見ますと、この所得補償制度は、決して農地の集約化や集落営農組織化を阻害するものではなくて、むしろ緩やかな構造改革を促していくような効果が制度そのものにビルトインされている、巧みに設計された制度だと私は思うんですが、この点について鹿野農水大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 まさに今、玉木委員からのお話のとおりに、やはりスタートの時点は、確かに、どうするかということの議論の中で、販売農家ということを一つ仕切ったわけでありますが、そこから努力をして集約化していくというようなこと、そうなっていけば一人当たりの農家の人たちの収入もふえるということによって、さらなる意欲を持っていただいて、安定的な経営に結びつくのではないか、こういうふうな考え方であるということは、まさしく今委員がおっしゃられるとおりだと思っております。

玉木(雄)委員 ありがとうございます。

 鹿野農水大臣が、さらに規模加算というものを入れられて、今それをさらに後押しするような制度を入れられてまさに効率化を進めようとしているということは、制度そのもののそういった効果に加えて、まさにそれをどんどん進めていこうということをおやりになっているので、ぜひ進めていただきたいというふうに思っています。

 ただ一方で、きょうは、与野党で政策検証が課題になっていることですので、あえて私は改善すべき点も申し上げたいと思います。

 一つは、実は、これは私は当初から申し上げているんですが、制度の名前です、名称。

 もう一回資料三を出していただきたいんですが、先ほど申し上げたように、全国一律の水準で交付していますから、大規模化を進めていくインセンティブが入っているということ、裏返すと、全ての面積の農家を戸別には所得を補償していないんですよ。これは明らかです。

 ですから、我々は、これは反省を込めて申し上げるのは、選挙の際に、戸別所得補償制度ですといって説明をしました。それはまさに、あたかも個々の農家の戸別の所得、つまりコストと販売価格のギャップを戸別に埋めていくんだというような、ある種誤解も含め、そういったことを残念ながら与えてしまったのではないかと私は思っております。

 ですから、私は、この戸別の名前については、ここは改めるべきだというふうに思っておりますし、これまで実は国会の答弁で、戸別の口座に振り込まれるから戸別所得補償だというようなことも聞きましたけれども、さすがにそれは苦しい答弁だと思うんです。ですから、私は、与野党で、いいところは改めて変えて、改善して、こういった名称も含めてよりよくして、本当に農家の人たちが安心して将来を見通せるような制度にぜひ変えていくべきだというふうに思っています。

 もう一つ、今度は制度的な点について一つだけ論点を示したいと思いますけれども、それは変動部分についてであります。

 変動部分というのは、米価が下がったら、ある一定水準を下回ったら払うというところです。二十二年、米価が下がりました。ですから、大変だと言ったんですけれども、年度末に六十キロ当たり千七百円が配分されて、これは農家の人は非常に助かりました。ただ、これは年によっては使ったり使わなかったりする予算になるわけですね。つまり、米価が下がれば使う、下がらなければ使わなくていい。つまり、保険的な機能がこの変動部分には入っていると思うんです。

 実は、経営所得安定対策の中で、いわゆるナラシという制度があります。これは、生産者負担を求めて、まさに所得保険的な機能を果たしている制度なんですが、これが今混在しています。

 私は、この二つの制度をある程度統合して、整理をして、そして生産者負担を求める制度に、新しい所得保険的な制度として再編してはどうかと実は思っています。本当にやる気のある農家の人に限られた財政資金を、安住大臣、苦労されていますけれども、集中させていく。では、そのやる気を何ではかるんだというときに、自己負担してもビジネスのリスクをカバーしたいと思う人に集中させればいいんです。ですから、この変動部分については、ぜひ、そういった現行のナラシとの調整、整合、そういったことも含めて見直していくべきだと私は思っております。

 これも含めて、今農家の人に話を聞くと何をおっしゃるかというと、いい制度だと評価もいただきます。でも、いつまで続くかわからないから本当に安心してコミットしていいかわからない、頼っていいかわからないと言われるんですね。

 ですから、私は、これは農業に与党も野党もないし、政党もありませんから、本当に与野党でいい知恵を出し合って、農家のために、日本の農業のためにいい制度をつくるように、法制化を含めた恒久化をすべきだと思うんですが、この点について鹿野農水大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 今、玉木委員からお触れになりました、この所得政策をやる上におきまして、やはり農家の人たちが政府の政策に一番求めることは、できるだけ継続してほしい、とにかく、そのときそのときの場当たり的な政策じゃなしに、こうだというふうな政策であるならば、ぜひそれを続けていってほしい、旧来からそういう要望が非常に強いわけであります。

 そういう意味で、戸別所得補償という、今、名称の問題もありましたけれども、またナラシの問題もありましたけれども、いろいろと三党の間で御協議をしていただくというふうなことの中で、当然、法制化というふうなことを目指していくということが、これからの農業経営の安定にもつながり、農業の人たちの意欲にもつながり、そしてまた食料の安定供給に結びつくものと思っておるわけでございます。

玉木(雄)委員 野党の皆さんの御協力もいただいて、法制化をぜひ進めていきたいと思いますので、大臣も頑張っていただきたいと思います。

 最後に、資料の五を見ていただきたいと思います。

 私も予算編成に携わった経験がありますけれども、最近の予算編成は、ある意味、夢も希望もないんですよ。というのは、社会保障の自然増一兆円、一・三兆円、こういった自然増をいかに他の予算を削って帳尻を合わせるか、こういうことに終始してきた予算編成であります。この間、公共事業が減った、農業予算が減った。これは資料五を見ていただくとわかるんですが、総予算における社会保障関係費の比率だけがむくむくとふえます。それを、以外の経費、その他の政策経費や公共事業を削ることによって何とか合わせてきた。

 私は、これが実は地域を冷えさせた大きな原因にもなっていると思っているんですが、我々政治家が反省しなきゃいけないのは、そのことを、例えば小泉構造改革が悪いとかコンクリートから人へが悪いとか、そんなことで批判してきたんですが、実は、そこに隠れた本質的な問題は、この自然増、人口増に伴う圧倒的な構造変化、歳出増の圧力に対してきちんとした恒久財源を手当てしてこなかったことが、その他の政策経費を十分確保できなかった要因になっていると思います。

 ですから、私は、農業予算を確保するという観点からも、一体改革をしっかりと進めるべきだと思うんですが、安住大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 大蔵省の主計局でずっとやってこられた玉木さんですから一番御存じのとおりで、やはりOECDの統計を見ましても、社会保障以外のお金が、本当に今我々の国では予算づけは難しくなっています。ですから、そういう点では、今御指摘のように、政策をクリエーティブにやっていくためには、社会保障等の財源の確保をしっかりした上で、一般歳出経費について、やはり戦略的にいろいろなことに投資していくような体制というものをつくっていかないといけないと思っております。

玉木(雄)委員 ただ、増税を国民にお願いする前には我が身を削る、我々が政治改革、行政改革に死に物狂いで取り組まなければいけません。そのことに私自身取り組むことを、その覚悟を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

中井委員長 これにて大島君、田島君、玉木君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、野田総理にお伺いをさせていただきます。

 昨年の八月、民主党は、マニフェストの中間検証を公表されました。その内容をしっかり読み込んでみますと、反省点、それから足らざる点も含めまして、非常にフェアな検証であったのではないかなというふうに思います。しかし、この中間検証の目的である、国民にしっかりと説明するということが十分に果たされていないのではないかなというふうにも感じます。

 例えば、この予算委員会でも何度か御指摘されておりますが、高校授業料の無償化で、経済的な理由で高校中退者が三分の二に減ったこと、それから、多くのNPOからも評価を受けておりますNPOの寄附優遇税制の大幅な拡充なども、もっと評価されてもよいのではないかなというふうに思います。

 また逆に、マニフェストに多くの政策を盛り込み過ぎたことや、それから、十六・八兆円の財源捻出の検証に不十分な部分があったということを明記しておりますけれども、これらのことを国民に十分に説明できていないというふうに感じるのですが、野田総理の御所見をお伺いします。

野田内閣総理大臣 今、中島議員御指摘のとおり、昨年の八月にマニフェストの中間検証をさせていただきまして、確かに政策項目が多いんですよね、百八十項目あるんです。百八十項目のうちに、実施、一部実施、これが五六%です。それから、着手、実施直前というのが七九%ということで、意外と限られた財源の中ではこなしてきたと思います。全く手つかずが六%です、当時。これは、でも、引き続き実現を目指していきたいと思いますし、今も、郵政改革法案であるとか出先機関の原則廃止など法案として出しますので、その率をさらに高めていただければというふうに思っています。

 説明不足じゃないかという御指摘、そのとおりだというふうに思います。やってきたこと、その成果、NPOのお話等々ございました、高校の無償化のお話もございました。そういうことをきちっと国民の皆様にお知らせをするとともに、できていないものは何があるか、それはなぜできないのかということも含めて、きちっと誠実に御説明を積極的にしていかなければいけないという御指摘は、まさにそのとおりだというふうに思います。

中島(正)委員 それでは、岡田副総理にもお伺いしたいんですが、今総理のおっしゃったように、民主党がこれまでマニフェストの中で実行できなかった政策はもとより、実行できた政策ももっと国民にアピールするべきだったというふうに私は思うのですが、当時、この中間検証をまとめられた岡田副総理の御所見もお伺いします。

岡田国務大臣 今、中島委員御指摘のとおりであります。党の中で真剣に議論をして中間検証をまとめました。その中には、委員御指摘のような、もちろん我々、できたことはたくさんある、そのことをまず申し上げた上で、しかし、できないものもある、それはなぜかということで幾つかの理由を述べたものでございます。

 例えば教育分野で三十五人学級とかあるいは高校無償化とか、もちろん今与野党でいろいろ御議論していただいていることではありますが、非常に大きな成果だと私は考えております。そのほかにも、我々の今までやってきたこと、なかなか乗り越えられなかったことについて、もっと胸を張ってちゃんと説明すべきだというふうに考えております。そういう努力が十分でなかったことは申しわけないと思いますし、これからしっかりと党の方でPRしていただきたいというふうに考えております。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 民主党のマニフェストには、政治主導、それから予算の組み替え、地域主権など、さまざまなスローガンが掲げられておりますけれども、その根本は、国民の生活が第一だということだというふうに思います。

 民主党政権の政策を検証する際には、この国民の生活が第一だということが実現できているかどうかということだというふうに思いますが、この「国民の生活が第一」を重視する立場から見れば、国民生活の安心を脅かす不安を取り除くということが政権の最重要課題の一つであるというふうに思います。

 国民の生活を脅かす不安には幾つかありますが、昨夜もけさも地震が発生しましたけれども、ここではちょっと自然災害を取り上げたいと思うんです。

 東日本大震災以降、日本列島では地震が起きやすくなっているということであります。首都圏の直下型地震のリスクが非常に高まったという研究結果もございます。これまでに何度も地震に襲われてきた日本にとって、地震に強い国づくりは逃れることのできない課題だというふうに考えます。

 そこで、二〇〇九年の衆議院選挙時の民主党のマニフェストで防災関係の箇所を見てみると、「災害や犯罪から国民を守る」とあります。そのために、「大規模災害時等の被災者の迅速救済・被害拡大防止・都市機能維持のために、危機管理庁」、これは仮称でございますが、「を設置するなど危機管理体制を強化する。」とありますが、民主党政権下でこの危機管理体制の強化はどのように進められてきたのでしょう。また、その体制で東日本大震災と原発事故への対応が十分にできたのか。当時の危機管理体制の評価について、反省も含めまして、総理の御所見をお伺いします。

野田内閣総理大臣 昨年の東日本大震災、地震があったと同時に、津波による大きな被害があって、原発事故も同時に起こるという大変厳しい状況の中での対応については、今、さまざまな事故調査委員会等において検証をしていただいているところでございます。

 当時、政府としては懸命に努力をしたつもりでございますが、やはり、今回の大きな震災を受けての教訓をどうするか、反省は何があったのか、そういうものをしっかりと踏まえた対応をしていかなければいけないというふうに考えております。

 そこで、平野復興大臣が東日本大震災総括担当を兼ねております。東日本大震災対応のうち、特に地震及び津波災害に係る政府等の対応について、府省横断的に総括させていきたいというふうに考えておりまして、平野大臣のもとで、中川防災大臣等関係大臣と連携して、今般の大震災の対応についての反省、教訓事項を整理、体系化した上で、今後の対策に生かしていきたいというふうに思います。

 その上で、首都圏直下地震等々も今大変心配な状況でございますので、そういうことも想定をしながらなんですが、現在、中央防災会議のもとに防災対策推進検討会議も設置をいたしまして、防災対策に関する、例えば災害の基本的な法制であるとか制度等の根本的な見直しをしています。

 もう想定外のことが起こったという言いわけはしない、それが危機管理だという認識のもとで今精力的に御議論をいただいているところでございますが、その中で、今、危機管理庁等の御指摘、体制のお話も出てまいりました。そういう体制の充実強化についてもあわせて検討させていただいているというところでございます。

中島(正)委員 そのような反省を受けて今後どのような危機管理体制を構築していくかという質問をさせていただきたいんですが、この委員会の場でも、与野党を超えて、特に首都圏直下型地震への対応について取り上げられてきました。

 国民が安心できる防災体制をいかにつくり上げていくおつもりなのか。また、このマニフェストに「危機管理庁を設置する」というふうに書かれていますが、具体的に危機管理庁を設置するお考えがあるのかどうか。総理、お願いいたします。

野田内閣総理大臣 切迫性が高いとされる首都直下地震については、これまでも中央防災会議において、被害想定を踏まえまして、これは少し前になりますけれども、平成十七年に首都直下地震対策大綱を策定するなど対策を進めてきたところでありますが、今般の東日本大震災の教訓も踏まえまして、改めて首都直下地震についても、被害想定の見直し、首都中枢機能の継続性の確保、帰宅困難者対策などの対策を強化することとしております。

 先ほど申し上げたとおり、中央防災会議のもとに防災対策推進検討会議を設置させていただきました。この中で防災対策に係る法制度や対応体制のあり方などについて幅広く検討を進めており、近く中間報告が出てくるということでありますが、その中で、先ほどの危機管理庁のお話も含めて、危機管理のための制度及び体制の充実強化に努めてまいりたいというふうに考えております。

中島(正)委員 ありがとうございました。

 ちょうど時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅野貴博君。

浅野委員 新党大地・真民主、浅野貴博でございます。

 本日は、五分という時間でございますけれども、質問時間を賜りました。まことにありがとうございます。

 我が日本にとって最大のウイークポイントでありますエネルギー資源の確保について、二点、内閣総理大臣、野田総理に質問したいと思います。

 まず、ことし四月には、今現在唯一稼働しております北海道泊村の三号機が稼働を停止する予定で、日本は原発ゼロの時期を迎えます。電力需要が逼迫されますが、海外からさらなる代替エネルギーの輸入が迫られると思います。総理として、日本国家の戦略として、どこの国、地域との提携を深めていくお考えであるのか、野田総理にお伺いをいたします。

野田内閣総理大臣 昨年、原発事故が発生をいたしましたので、まさに脱原発依存という姿勢が中長期的な取り組みになってまいります。

 エネルギー・環境会議などを中心に、エネルギーのこれからのベストミックス、国民が安心できるベストミックスを考えていくということは中長期的なテーマでありますけれども、その間の電力需給の心配もございますので、まさに、どの国からという御指摘でございましたけれども、当然のことながら、しばらくは火力に頼らざるを得ないところもあります。天然ガス、どういう国が豊富にあるのか、例えば石油、今イランの問題も心配でありますが、その代替としてどの国からさらに輸入をふやすのか等々は、これは戦略的な取り組みが必要だと思います。基本的には、これらの資源、エネルギー源を有する国で、しかも、まさに戦略的にパートナーとして組めるような国とよく御相談をしながら、その確保に努めるということが基本になるだろうというふうに思います。

浅野委員 まさに中長期的な課題ではございますが、差し迫った短期的な課題に対応するために、今総理がおっしゃった、戦略的パートナーシップを組める、そしてさらに、我が国の需要にかなうところと手を組む。それはまさに、我が地元北海道、最北端の稚内から四十キロほどにサハリンという地域がございます。ロシアが我が国にとって最重要な国の一つになると考えます。

 対ロ関係、北方領土交渉、まさに、これまで政局に翻弄され、我が党の代表鈴木宗男も北方領土問題の解決に尽力してまいりましたけれども、ロシアは豊富な天然ガス、LNGを有しております。アメリカのシェールガスの可能性が指摘されておりますけれども、あす、あさって、来月、再来月にも日本に供給できる体制にはまだなっておりません。

 この点に関しまして、三・一一の震災以降、日本に優先的にLNGを供給するという表明をしてくださったプーチン首相がことし大統領になり得る、この状況において、エネルギー資源問題についてロシアとの提携をどう深めていけるのか、国家戦略としての野田総理のお考えをお聞かせください。

玄葉国務大臣 今の浅野委員の、ロシアとの関係でありますが、その前に、おっしゃるように、エネルギーの安定供給の確保というのは、外交目標のまさに重要な柱でございます。供給源の多角化も含めて、戦略的かつ多角的に進めていかなきゃいけないというふうに思いますし、一月に中東を訪問したのもその一環であったということであります。

 ロシアでございますけれども、まさに、互恵の原則に従って、天然ガスを含むエネルギー分野での協力を進めていきたいというふうに考えています。一月二十八日、ラブロフ外相と外相会談を行いましたけれども、あのときも、具体的にウラジオストクLNGプラント事業あるいはサハリン3のプロジェクト等々について議論を行って、エネルギー分野における日ロの協力を進めるということで、これは一致をしたところであります。

 戦略的な環境が変わりつつあるアジア太平洋地域の中で、私は、日ロ関係というのは新たな重要性を帯びつつあるというふうに考えています。エネルギー協力を含めて、あらゆる分野での関係の発展を図りながら、先ほどおっしゃったような、領土問題の解決に向けてロシアとの交渉をしっかり進めていきたいというふうに考えております。

浅野委員 ありがとうございました。

 日ロ関係は、我が国にとり、地政学的観点からしても重要な意味を持つ国でございますので、野田総理、玄葉大臣初め、精力的に取り組まれることを期待申し上げ、質問を終えます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて浅野君の質疑は終了いたしました。

 次に、下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。よろしくお願いいたします。

 まず、野田総理にお聞きしたいと思いますが、河村たかし名古屋市長の南京三十万人大虐殺事件なかった発言というのがございました。これは、実は安倍内閣のときから、専門家によって日中歴史共同研究を図っていくということでございますので、お互いに、歴史的な事実関係については専門家の方々が精査すればいいことであるというふうに思います。

 ただ、白髪三千丈と言われますけれども、実際に三十万人もの虐殺がなかったということについては私は確信をしていますけれども、きょうは数の問題をお聞きしたいということではなくて、問題なのは、これから日本と中国が隣の国としてさらなる連携強化をしていくということは重要なことだと思うんですね。そのときに、中国において、南京大虐殺記念館、これは三十万人虐殺記念館と言われているんですが、これができたということですね。中国、今あちこちにつくっているんですが、これは抗日記念館の代表格的な施設でありまして、愛国主義教育基地として位置づけているわけですね。

 今後のことを考えると、これは幾ら何でも中国はやり過ぎだ。これは我が国としてはきちっと抗議をしていただいて、そして今後の日中関係を考えたら協調的な中でしていくということで、殊さらこういうことをすること自体、私は中国は問題だというふうに思っておりますが、野田総理の見解をお聞きしたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、河村名古屋市長の発言については、これは基本的には、南京市と名古屋市との関係の中で早く適切に解決されることを期待したいと思います。

 その南京のいわゆる虐殺、どれぐらいの規模であったかということについては諸説ございます。したがって、その数を私が一々云々ということを答えることは控えさせていただきたいというふうに思いますが、その上で、いわゆる中国における記念館の話、これはつくられてから相当な期間がたっています。この時点で突然に何かを言うということが妥当なのかどうかも含めて、これはよく慎重に検討させていただきたいというふうに思います。

下村委員 全く答弁になっていませんが、私が申し上げたのは、南京大虐殺記念館、特にこういう形でやるようになったのは最近の話ですから、これについては日本政府としてしっかりした対応をしていただきたいと思います。

 きょうは本題が高校授業料無償化問題でございますので、またこのことは別に改めてお聞きするとして、本題に入りたいというふうに思います。

 我々は、前回の、私自身が三党合意、実務者協議をお願いしたにもかかわらずやっていなかったということで、今、民主党の協力をいただいて、実務者協議、もう九回目に入りますが、連日やっているところでございます。この政策検証がなかなか進んでいない、また、まだまだ三党合意に至っている部分が少ないということで、引き続きこれからもやっていくつもりでございますが、この中で、きょうはテレビ入りでもございますので、自民党として、この高校授業料無償化、自民党ならこうするということで御説明を申し上げ、そして野田総理あるいは関係大臣からお聞きしたいというふうに思います。

 まず簡単に、お手元の資料、パネルをごらんになっていただきたいと思うんです。

 まず一として、高校を我が国教育制度の中で明確に位置づけ、教育上の成果、これは学力や教育内容の向上などですけれども、これが得られるようにすべきである。義務教育でない高校に多額の税金を投入しているわけですから、高校教育が果たすべき理念、考え方を明確に定めるとともに、学習目標を設定し、そこに到達したかをチェックするため、それぞれのコースに応じた高校卒業検定試験のような仕組みを導入することによって、着実にその成果、効果が税金投入額に対して上がるようなことをしなければ、ただのばらまきになってしまうというふうに考えます。

 それから二でございますが、我々は、今逼迫した我が国の経済情勢の中で、もちろん、できるだけ教育に対して投資をすることは必要だと思いますが、ただ、財政上は上限があるという中で、民主党政府の約四千億円に対して、一割、四百億円削減して、その中で真に必要な格差是正、公私間格差を行うということを考えると、所得制限を設ける、およそ年収七百万、世帯収入ですが。このことによって、公私間格差の是正や低所得者支援の給付型奨学金の財源二千億円としたいと思います。私立高校については、年収六百五十万まで段階的に就学援助給付金を加算する。それから低所得者世帯については、公私ともに年間二十四万円の給付型奨学金を支給する。

 それから三番目に、海外の日本人高校生も支給対象とする。

 それから四番目に、朝鮮高校は無償の対象としない。これは、朝鮮総連との関係や反日教育の是正について確認できない朝鮮高校に国民の税金を投入すべきではない。

 それから五番目、自治体間格差を是正する。私立高校を年収六百万まで授業料を全額免除にする自治体もあれば、生活保護相当であっても全額免除にならない自治体もあります。自治体間の就学支援策の格差を給付型奨学金制度などを用いて国の責任で是正する、この考え方でございます。

 二枚目のペーパーを見ていただきたいと思いますが、これをわかりやすく、公立高校においては、年収七百万未満は政府と同じように十一万八千八百円の就学援助給付金を給付する。さらに、これは政府よりも上乗せして、年収二百五十万と三百五十万、準生活保護世帯まで含めて、年間二十四万円の給付型奨学金、返さなくてもいい奨学金ですね、これを上乗せするという考えであります。

 それから、三枚目をごらんになっていただきたいと思います。これは私立高校ですね。公立高校にプラスして、授業料の格差是正のために、年収三百五十万未満の世帯については、公私の授業料の差額分、約二十五万程度ありますが、それを全部負担するということです。それから、年収三百五十万から五百万未満の世帯については、半分、約十二万円ですけれども、負担する。それから、年収五百万から六百五十万未満の世帯について、授業料の差額分三分の一を負担、給付するという考え方でございます。

 これはなぜかというと、四枚目をごらんになっていただきたいと思うんですが、高校授業料無償化、この言葉もトリックみたいなもので、公立高校の授業料の無償化なんですよ。私立高校にとっては無償化になっているわけじゃありませんから、厳密に言えば、公立高校授業料無償化なんですね。この中で、それぞれの都道府県が減免補助制度を設けております。しかしこれが、都道府県の財政状況によってさらに格差が広がっているんですね。

 下の方、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、これは、かなりの授業料減免補助を連動して施策として行っております。例えば大阪府ですと、年収六百十万までは、私立高校に通っている年収六百十万以下の家庭の子供については授業料を全額面倒を見るという形をとっているんですね。それ以外でも、例えば京都府は、年収九百万までそのような支援策をさらに上乗せしているということでございます。

 ところが、群馬県、山口県、高知県、大分県、鹿児島県等は、生活保護世帯、年収二百五十万程度以下の家庭についての支援、それも全額でない。

 これだけ都道府県格差が広がっていますから、これを解消するということが必要である、これが自民党の考え方でございます。

 そして、野田総理にまずお聞きしたいんですが、先ほど田島さんの答弁の中で、遺児と母親の全国大会の話をしていただき、ありがとうございます。私、その交通遺児育英会の、副会長で、当事者でございまして、お話をしていただいて、ありがたいことだというふうに思います。

 遺児というのは、先ほど総理がおっしゃったように、災害遺児、病気遺児、交通遺児、いろいろな遺児がいるわけですね。この遺児というのは、先ほどの私立高校であっても公立高校であっても、まさにこの二百五十万以下、生活保護と同程度の厳しい状況の中で子供を進学させているという家庭がほとんどです。

 ですから、実態的に言えば、自民党の案というのは、つまり、私立高校であっても授業料分は全部事実上は国が見ますよ、さらに給付型奨学金もありますよということですから、特にそういう家庭の子供にとっては自民党の対案の方がさらに望ましいというのは、おわかりになっていただけると思うんですね。

 確かに、教育費を軽減するということは必要なことだと思いますが、限られた財源の中で、我々は、行き過ぎた平等主義、画一主義で、そういう家庭の子供から鳩山さんの家のようなところまで平等に十一万八千八百円を支給する必要はないというふうに思っておりまして、真に必要なところ、財源が限られている中で、そういうことでこの所得制限を設けて、公私間格差や、あるいは低所得者層の家庭の子供たちに対する支援というのを案としてつくったわけでございます。

 あしなが育英会の全国大会にも出ていただいたという体験からも、ぜひこれについては御理解いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 一つの御提起だというふうには思うんですけれども、一方で、高校授業料無償化を実施するに当たって、その後のまた運営において、いわゆる低所得者への対応、公私間の格差にならないような対応ということは、政府としてもこれに努めてきたつもりでございます。これは詳細については文科大臣が答弁をするかとは思いますが、その上で、さっき田島さんがOECDのいろいろな比較を出しておりましたけれども、基本的には、学ぼうと思っている高校生等々の、学ぼうとする子供たちの意欲をしっかり社会全体で受けとめていこうということが基本的な理念となって、OECD諸国もそうしている。

 したがって、所得制限はしていないということでございますので、所得制限を急にするとなると、例えば、次からの運用ですぐ対応できるのかということも含めて、もう既にこの制度を、定着した前提で考えている子供たちや親御さんも多いという中で、どういう議論があるかは、これはちょっと政党間協議の最中でございますので、余り私が確定的なことを言うのも失礼かとは思いますが、真摯な政党間協議を受けて、政府としてはそれを踏まえて対応したいというふうに思います。

下村委員 ぜひ、民主党も硬直的にお考えをしないでいただいて、今御指摘のような、あるいは指摘させていただいたような公私間の格差の問題というのはやはりあるんですね。それから、低所得者層に対してさらに厚く対応すべきだということについて、まだ最終的な結論は出ていませんが、方向性としては合意を、それから都道府県格差もあるということは認識されておられるというふうに思いますので、そういう視点から。

 そもそもこの法律ができたとき、三年をめどに見直しをするということも附帯決議の中で、その項目も含めて入っていることですから、これはぜひ前向きに、繰り返すようですが、限られた財源の中でより成果、効果を上げるためにどうしたらいいか、こういうことから、柔軟な発想を民主党には求めたいというふうに思います。

 その中で、具体的にお聞きしたいと思いますが、まず、四の、朝鮮学校は無償化の対象としない、このことからお聞きしたいと思います。

 その前に、米朝協議がありましたね。このことによって、我が国のこの問題やあるいは拉致等、全般的に日本と北朝鮮との関係にも影響するというふうに思いますので、まず拉致担当大臣から、この米朝協議の結果を受けてどのように我が国としては臨むおつもりか、お聞きしたいと思います。

松原国務大臣 御答弁申し上げます。

 この米朝のやりとりの詳細については承知をしておりませんが、拉致問題担当大臣としての立場から申し上げれば、拉致問題について全く解決に向けた進展が見られない状況において、あらゆる人道支援に対して反対されておられる拉致被害者御家族や関係者の気持ちについては、重く受けとめなければいけないというふうに思っているところであります。

下村委員 ありがとうございます。

 明確に、我が国としてのスタンスできちっと臨んでいただきたいと思います。

 その上で、この北朝鮮の下部組織である朝鮮総連、それから朝鮮学校、この関係について、今どのような状況なのかお聞きしたいと思います。これは、松原国家公安委員長としてのお立場からお願いします。

松原国務大臣 御答弁を申し上げます。

 朝鮮総連は、北朝鮮と極めて密接な関係を有する団体であると認識をいたしております。また、朝鮮総連は、朝鮮人学校と密接な関係にあり、同校の教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識をいたしております。

 警察においては、朝鮮人学校に及ぼす影響を含む朝鮮総連の各種動向について、公共の安全と秩序の維持という観点から、従前から重大な関心を持って情報を収集しているものと承知をいたしております。

 以上です。

下村委員 今の御答弁のとおりの認識の中で、平野文科大臣にお聞きしますが、朝鮮高校を授業料無償化対象とするかどうかということについて今調査をしている最中であるということですが、調査以前の問題として、朝鮮高校がもし支給対象になったとしたら、これは明らかに、教育基本法第十六条、つまり不当な支配、これに、今の御答弁のように抵触するということは確実な状況であるというふうに私は思います。それから、政治的な中立性を求められている基本法の精神にもこれは違反することであるというふうに思いますが、これについての明確な文科省としての答弁をお願いいたします。

平野(博)国務大臣 今、厳正な審査をしているという状況でございますので、具体的なところは答弁は控えたいと思いますが、ただ、法令違反については当然支給対象にならない、こういうふうに私は思っております。

 具体的な事象については、仮定の話という観点では、今御答弁は差し控えたいと思います。

下村委員 平野大臣、質問を正確に聞いていただきたいんですよ。審査中と関係ない話なんです、これは。

 今、国家公安委員長から話があったように、朝鮮総連は、朝鮮高校に対して、これはもう政治的にも内部に入り込んで介入しているんですね。ですから、これが支給対象になれば、不当な支配ということに、つまり、教育基本法第十六条に違反する。これは、調査している、していない以前の問題なんですよ。明らかではないですか。今の国家公安委員長の答弁がそのとおりであれば、これは間違いなく不当な支配ということになりますよ。これは調査は関係ないですよ。どうですか。

平野(博)国務大臣 北朝鮮、総連、朝鮮学校の関係に関しての部分については、今、松原大臣がお答えをしたそういう認識を共有していることについては私は同じ立場でございます。

 ただ、その上で、その関係が審査基準に抵触するものであるかどうかの問題については、今、規定に沿って厳正に審査をいたしておりますので、現時点でお答えすることは困難、こういうことでございます。

下村委員 支給の対象になるかどうかは、これは教育基本法と別の話です。私が申し上げているのは、教育基本法第十六条に違反するのではないですかということをお聞きしているんですよ。だから、審査している、していないは関係ない話だ。本質的な話なんですよ、これは。これについて明確な答弁を求めます。

平野(博)国務大臣 基本法十六条の部分で、不当な支配、こういうことについては、国民全体の意思を離れて一部の勢力が教育に不当に介入する場合を指すものであり、現時点でそれがどうなのかということについては、お答えは差し控えたいと思います。

下村委員 いや、差し控えたいと言うこと自体がもう逃げているんですよ。政府の機関である国家公安委員長が明確に、朝鮮総連、朝鮮総連の組織の中の、これは教育会というわけですけれども、そこが、総連が朝鮮高校に入り込んでいるということについては明らかになっているわけですから。だから、それは明確に答弁してくださいよ。

平野(博)国務大臣 一般論として申し上げますけれども、ある団体が特定の学校の教育に対して影響を及ぼしている、こういうことをもって直ちに不当支配ということは該当しないんじゃないか、私はこう思いますよ。

下村委員 そうすると、先ほど国家公安委員長の答弁でありましたけれども、では、朝鮮総連が朝鮮学校に入って影響を与えているということは不当な支配にならないということですか。具体的に答えてください、的確に。一般論じゃないですよ。具体的な質問をしているんですから、それに対して具体的に答えてください。

平野(博)国務大臣 先ほども申し述べましたけれども、教育基本法第十六条の第一項に規定する不当な支配とは、国民全体の意思を離れて一部の勢力が教育に不当に介入する場合、こういうことでございます。

 したがって、今、松原大臣の方から申されたものは、そういう、介入しているというところまで言及しているというふうに私は思っておりません。

下村委員 では、改めて松原大臣に、朝鮮総連と朝鮮高校の関係についてお聞きします。

松原国務大臣 お答えいたします。

 同じ答弁の繰り返しになりますが、朝鮮総連は、北朝鮮と極めて密接な関係を有する団体であると認識しております。また、朝鮮総連は、朝鮮人学校と密接な関係にあり、同校の教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。

 警察においては、朝鮮人学校に及ぼす影響を含む朝鮮総連の各種動向について、公共の安全と秩序の維持という観点から、従前から重大な関心を持って情報収集を行っていると承知しております。

 これが私の答弁であります。

下村委員 もう明らかに、教育、人事それから財務、影響していると答えているじゃないですか。これが不当な支配でなかったら、何をもって不当な支配とするんですか。

平野(博)国務大臣 今、松原大臣が申されたことについては、認識は私は共有しています。(下村委員「だめだ、そんな言い方。端的に答えてください」と呼ぶ)

中井委員長 答弁をしている最中に余計なことを言わない。

平野(博)国務大臣 一方で、その関係において、今審査をしているわけであります。

 したがって、その審査についての基準に抵触するものであるかどうか、このことについては今審査手続中でありますから答弁は差し控えたい、こう申し上げております。

下村委員 いや、これは審査は関係ないでしょう。だって、政府の同じ機関じゃないですか。政府の同じ機関である専門機関が明確にそれについては答弁しているわけですから。

 そうすると、今の大臣の答弁は、そのとおりに従うかどうかわからないということですか。

平野(博)国務大臣 今審査中でございますから、そのことについてお答えすることは差し控えたい、こういうことを言っております。

下村委員 冒頭から申し上げているように、これは審査とは関係ない話なんですよ、構造的な話ですから。そのことについては、国家公安委員長がきちっと答えられているわけですから。

 審査の内容の結果、不当な支配になるかならないかという話じゃないんですよ、これは。もう明らかにこれは不当な支配だというふうに、当然の話として聞いているんですよ。それについて明確に答えてください。審査して、結果、そうかどうか判断するという話じゃないんですよ、これは。

平野(博)国務大臣 何回答弁しても、私の立場でいえば、朝鮮総連は、朝鮮人学校と密接な関係にある、こういうことは大臣申されました、同校の教育を重要視して、教育内容、人事、財政に影響を及ぼしている、このことについては認識は共有しています、こう答えました。

 したがいまして、その一方で、今審査中でございますから、その審査の中での判断というのは第三者が判断をしているわけでございますので、そのことについての答弁は差し控えたい、こういうことを申し上げます。(下村委員「答弁じゃないですよ、今のは。答えてないですよ、全然」と呼ぶ)

中井委員長 下村君、質問を続けてください。答弁をしております。(下村委員「いや、答弁じゃないですよ」と呼ぶ)

 それは、審査基準の中に……(下村委員「入っていません」と呼ぶ)入っているかどうかをお聞きになればいいことです。下村君。だめです、それは。きょうは幾らやってもだめです。

 お聞きになればいいんですよ。中に入っておるのかどうか、それを。対象になっておるのか。

下村委員 では、答えてください。

 これは、審査の対象では私はないと思いますよ。審査以前の問題として、不当な支配云々というのは、我が国の法律における位置づけですから、審査する、しないの問題じゃないんですよ、これは。そもそも論を聞いているんですよ。それでも審査中というんだったら、審査のどこで、どういう形で、では審査中と言えるのか。ちゃんと答えてください。

平野(博)国務大臣 したがいまして、何回も申し上げますが、ですから、定めた審査基準に基づいて支給をどうするか云々というのが、今文科省として決めておるわけであります。

 今、松原大臣が申し上げたところについては、そういう影響がありますよということについては、私、大臣としては認識していますという、そういうことであります。

 したがって、その影響が審査基準についてどういうふうに、不当なものであるかどうかという判断についてはまだ審査中でありますから、私は答えは申し上げられませんということです。

下村委員 いや、全然答弁になっていませんけれども、では、平野大臣、いいですか、審査基準の中にこの「不当な支配に服することなく、」というものが抵触しているかしていないか、該当しているような項目があるんですか。答えてください。

平野(博)国務大臣 例えば、審査の中で申し上げますと、重大な法令違反、あるいは申請書類の中で重大な虚偽等々があるならば、そういう事実関係をしっかり調べて結論を出す、こういうことであります。

下村委員 だから、重大な法令違反があるというのは、先ほどの国家公安委員長の答弁で明らかじゃないですか。だから、不当な支配と言っているんですよ。それについて答えられないんですか。

中井委員長 松原国家公安委員長に聞きますが、あなたは法令違反というお言葉をお使いになったんですか。もう一度御答弁願います。

松原国務大臣 では、もう一回御答弁いたします。

 朝鮮総連は、北朝鮮と極めて密接な関係を有する団体であると認識をしております。また、朝鮮総連は、朝鮮人学校と密接な関係にあり、同校の教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識をいたしておりますということであります。

下村委員 いや、これは明らかに、私は、教育基本法第十六条の違反になるのではないかということを申し上げているわけですよ。これは、そもそも、審査した結果云々じゃなくて、今はっきり答えられることなんですよ。

 今の松原大臣の答弁のとおりだという、それは共有しているということですから、共有しているということでいえば、教育基本法十六条に抵触する可能性は高いというのは、これは明らかじゃないですか。いかがですか。

平野(博)国務大臣 法令違反であるかどうかという、松原大臣が法令違反ということを私は申し上げている……(下村委員「いや、私が言っているんです、私が」と呼ぶ)いや、ですから、それは見解の違いだと思います。

下村委員 いやいや、全く答弁にならないですね。全く答弁にならない。答えられない。

 これは、答えられないから、全くこういうことを決められないから、この公立高校無償化問題、もう二年たっているにもかかわらず、逆に今審査中、審査中と。実際、今年度だって、今月でおしまいなわけですよ。これは逆に言えば、朝鮮高校の生徒に対してだって、かわいそうな、失礼な話ですよ。まさに今、不作為の作為をやっている最中なんです。それをいつまでも審査中、審査中と逃げること自体がけしからぬ話なんですよ、そんな無責任体制。

 だから、我々は、これはもう法令違反は明らかだから、先ほどの自民党の対案で申し上げたように、朝鮮高校に対してはもう対象から外せ、外すべきだ。国民の血税を使って、反日教育をしているかしていないかわからないところに、なおかつ、このような本国の影響のある教育下の学園に対して日本の血税を投入することについて、なぜ固執するのか。この際だから、もうやめるべきだ。このことについてはどうですか。いかがですか。

平野(博)国務大臣 やめるべきかどうか、今厳正に審査をしているところですから、その判断をもって考えたいと思います。

下村委員 全く無責任ですね。二年たっても全く決められない、当事者能力がないということが明らかになりました。

 時間が来ましたので、ここで終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、馳浩君から関連質疑の申し出があります。下村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 ただいまの下村委員の話に続けて、お伺いいたします。

 朝鮮高校から申請が上がってから一年半が経過しております。これは行政手続上、異例のことだと思います。審査をし、どうするかという判断をする。もっと早く返事を朝鮮高校に出すべきではありませんか。行政手続法上の違反という訴えをされた場合に、もしかしたら、そうなるのではありませんか。お伺いします。

平野(博)国務大臣 行政手続法では、議員御指摘のように、速やかに処理をするということ、ただし、具体的、適正な申請がされてから速やかにするというのが基本だと私は思っています。

 そういう中にありまして、それだけの時間がかかっている、こういう御指摘でございますが、昨年、この手続について中止、停止をしろというふうにその当時の総理の方から停止が出てきました。それは、不測の事態に備え、こういうことでございまして、昨年の八月だと思いますが、再開をし、今、全十校に対しまして厳正な審査をいたしている、こういうことでございます。

馳委員 今ほどおっしゃいました不測の事態に法的根拠はありましたか。

平野(博)国務大臣 法的根拠というよりも、その当時の内閣総理大臣、政府としての意思でございましたので、我々としては、文科省としては停止をしたというふうに聞き及んでおります。

馳委員 超法規的措置でなさったんですよ。当時の文科大臣も、私の委員会質問にそのようにお答えになったんですよ。

 改めて松原大臣にお聞きをします。

 どうして国家公安委員会は朝鮮総連を調査の対象にされているんですか。

松原国務大臣 お答え申し上げます。

 朝鮮総連は、過去に重大な国際テロ事件や拉致容疑事件を引き起こした北朝鮮を支持する在日朝鮮人等で構成された団体であり、北朝鮮と極めて密接な関係を有すると認識をいたしております。

 平成十八年、第百六十四国会の衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会において、当時、公明党の池坊保子議員の質問に対し、小林警察庁警備局長が、昭和五十三年には田中実さん、昭和五十五年六月には原敕晁さんがそれぞれ北朝鮮に拉致された事件において、朝鮮総連関係者の関与が確認されている、在日本朝鮮人商工連合会の幹部がココム規制品を北朝鮮に不正輸出しようとした平成元年の事件により、朝鮮総連が北朝鮮への安全保障関係物資不正輸出にかかわったことが明らかになっている、平成六年に北朝鮮向けにミサイルの研究開発に使用されるおそれのあるジェットミル及び関連機器が不正輸出された事案において、在日朝鮮人科学技術協会が関与していたことが判明している旨の答弁をしているわけであります。

 こういったことを含め、警察においては、これまでも、朝鮮総連の構成員やその関係者が北朝鮮工作員の密入国や北朝鮮の大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に関与しているという事例を把握しているほか、拉致容疑事案においても、そういった関与も確認されている事例も把握しているとのことにより、この朝鮮総連の問題を極めて深く認識しているということであります。

馳委員 東京都や大阪府は、地方自治体として、朝鮮学校に対する支給を差しとめしたりしております。それを参考にすべきではないかと、松原大臣は平野大臣に進言すべきではないんですか。

松原国務大臣 私の認識は今申した認識でありまして、そのことをこの場で申し上げているわけであります。

馳委員 先ほど下村委員からも指摘があり、松原大臣が答弁をされたように、北朝鮮本国、朝鮮総連、朝鮮学校は一体のものとしての認識を公安調査庁が持っており、ホームページを拝見しても、そのことは明々白々なんです。そのことは平野大臣も、調べなくてもすぐにわかる話なんですよ。

 したがって、ここまでずるずると、申請を受けて、審査を引き延ばし、結論を出せないような状況ではなくて、現状においては朝鮮高校には支給をすることができませんという返事をすべきなんですよ。

 そして、私は、二つだけ方法を申し上げたいと思います。高校無償化法に従って朝鮮高校に支給金を出す方法が二つあるんですよ。

 国交正常化すれば、本国において高校に類する課程かどうか、そのことを確認するすべが得られます。二つ目は、我が国の学校教育法上の第一条、第一条校にのっとっての学校法人になれば、正々堂々と出すことができるじゃありませんか。この二つの方法、間違っていますか、平野大臣。

平野(博)国務大臣 今の無償化の考え方は、一条校でなくても、種々の学校であれば出せる、こういうことですから、今先生御指摘のように一条校にすべきであるとか、これは一つの考え方だと思いますが、今の無償化の考え方、理念、範囲という中には、そうでなくても、審査のもとに適正であれば支給することができる、こういう理念で動いております。(馳委員「国交正常化も」と呼ぶ)

 国交正常化ということができれば、そういうことも当然あり得るかもしれませんが、それには、私の立場ではありませんが、やはり我が国固有の問題を、人権問題を含めて抱えておりますから、そこはなかなか、そういう立場で私が答えるわけにいきません。

馳委員 私が指摘したとおり、二つの方法では支給できるんですよ。国交正常化をすれば正々堂々とできるんです。そして、学校教育法上の一条校になれば素直にできるんですよ。

 野田総理、ここはやはり我が国を代表する総理として、朝鮮高校の皆さんは、どうなっているんだ、この日本の国の審査体制はということで、一年半以上も待たされて今日に至っているんです。今のやりとりをお聞きになっておわかりのように、総理として、このことは記者会見なり声明をして明確に伝えないと、何か我が国が朝鮮学校をいじめているような印象として受け取られてしまうんですね。いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 要は、無償化の対象として認めるか認めないか、結論はそれしかないわけです。今、そのための審査を文科省が基準に基づいて厳正にやっているということですから、厳正にやっている最中に、それを飛び越えて私がどうのということは言えません。しっかりと厳正に対処していただきたいというふうに思います。

馳委員 さっきの話をもう一つだけ申し上げておきますよ。行政手続法上、余りにも、申請をしてきた朝鮮学校に対して不誠実です。そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 では、ちょっと論点を変えながら、高校無償化の財源論ということからお聞きをしていきたいと思います。

 まず岡田副総理、この委員会でこの集中審議がされるに至った経緯は、下村さんと岡田副総理のやりとりの発言でした。誠意を持って高校無償化の政策効果についての検証をする、その上で見直しをする。三党合意の確認書が交わされたのは昨年八月九日。どうしてあの確認書が交わされたんですか。お答えください。

岡田国務大臣 当時の私の思いは、これは恐らく石原幹事長、井上幹事長も同じだったと思いますが、非常に政治が停滞している、前に進まない、そういう中で、大きな震災もあって、被災地への対応も必要だ、そしてそのほかのことも含めて、政治をしっかりと前に進めていくために三党が協力してやっていく、そういう思いの中であの三党合意をまとめさせていただきました。

馳委員 岡田副総理、簡単なんですよ。確認書の一番最後に書いてあることが全てなんですよ。公債特例法案を速やかに成立させるために、政治の混乱を避けてお互い合意をしましょう。そのための大きな目的はたった一つなんですよ。野田総理、財政規律を守りましょうということを我が自由民主党も公明党も民主党に対して申し入れをし、岡田当時の幹事長が納得をしてサインをされたんですよ。

 岡田副総理、公債特例法案を速やかに成立させるためにあの確認書を交わしたということについては間違いありませんね。

岡田国務大臣 私の思いとしては、当然それがありました。ただ、私の記憶では、当時、三幹事長の中で、いや、これは別に公債特例法のためにやるんじゃないんだという話は何度も聞かせていただいた記憶がございます。

馳委員 そこは三党の同床異夢のところかもしれません。

 そうなると、野田総理は、この高校無償化法案を審議中に財務副大臣という立場でございました。当時、平成二十一年の十二月ごろでしたか、随分と、当時の文部科学省の中川正春副大臣と野田財務副大臣の間で、住民税、所得税の特定扶養控除、この廃止に向けてやりとりがあったんですよ。その当時、税制改正も現場で担当しておられた野田財務副大臣は、これは、そもそも現状でも、低所得者の皆さん方には都道府県において授業料のほぼ減免措置がなされている、したがって、高所得者に対する支援という考えもあってという発言を記者会見でしておられるんですね。しておられるんですよ、確認をしてあります。

 そうすると、当時は、財務副大臣という立場で、やはりなかなか、予算の査定をするに当たって、所得制限も視野に入れなければいけないということを持ち出したんじゃないんですか。

野田内閣総理大臣 だんだん思い出してきましたけれども、当時、今御指摘の高校無償化であるとか子ども手当とか農家の戸別所得補償のマニフェストの主要項目について、政府としての、政府としてというか、特に査定をする側の論点を掲げたという記憶があります。

 その中で、今の高校無償化については、所得制限が望ましいということじゃないんです、論点としてこういう議論がありますという提示をしたということは、思い出してきました。

馳委員 そうすると、細かい話で済みません、特定扶養控除の所得税、住民税、いわゆる国税、地方税の部分ですよね、岡田副総理、これを縮減して、高校無償化の財源に裏打ちをしよう。やはり恒久政策には恒久財源が必要であるという考え方には異論はないと思います。

 そうしたときに、ここを縮減して手当てできた財源というのは、当時、一体幾らだったでしょうか。

安住国務大臣 十六歳から十八歳までの上乗せ部分の廃止でございますけれども、所得税で九百五十七億、個人住民税で三百九十二億ですから、計一千三百四十九億円でございます。

馳委員 そうすると、当時、何とか千三百億は手当てできたんですよ、恒久財源として。これはまさしく、皆さん方のおっしゃっている控除から手当という部分の論に合っています。

 ただ、高校無償化はあのとき三千九百三十三億円でしたから、三千九百億円から千三百億円を引いた二千六百億円、これをどう手当てするかということに野田財務副大臣は随分苦労されたんですよ。そこで、耐震化の工事、老朽化の工事、これを手当てされるというふうな、コンクリートから人へかもしれませんが、結構ぶった切る、随分とひどいことをされたんですよ。私は、当時、委員会で、余り文部科学省をいじめちゃだめですよと野田総理に言ったじゃないですか。

 したがって、ここは大事なところですよね、恒久政策には恒久財源。とすると、ワンショットの財源を平成二十二年度予算編成で、税制改正で手当てしてもだめなんですよ。あの二千六百億円は、その後、二年たって、どのように手当てをされてきているんでしょうか。

 それとも、もう法律が通ったんだから、優先的に財源は手当てされているんだから、それはいいんだよとおっしゃるかもしれません。そういうふうにおっしゃるならば、我々はさらに自由民主党として言わなければいけないのは、だから、財政規律を守れず、赤字国債をたくさん出さなければいけなくなってしまうんじゃありませんか、こういうふうな議論に入ってくるんですね。

 野田総理、恒久政策には恒久財源、高校無償化の財源、ことしは三千九百六十四億円でしたね、これは本当に手当てされているということを明言してよろしいんですか。

安住国務大臣 特定扶養控除の見直し等の財源を直入しているという目的税ではありません。ですから、そういう点では、マニフェスト主要政策の中の財源については、さまざまな歳出の削減とか税制改正によって、その中には御指摘のようなことも含まれますけれども、そうしたことで恒久的な財源を確保しながらこの施策を行っているというふうに解釈していただければと思います。

馳委員 非常にわかりやすいです。

 したがって、マニフェスト項目を予算要望に盛り込んだので、ぱんぱんにおなかが膨らんで、ぱんぱんになり過ぎて、膨らんだものがさらに膨らみ過ぎて、今の財政健全化を目指すという政府の方針にちょっと無理がかかってきていますよねということを我々は指摘せざるを得ないんですよ。

 ちょっともとに戻ります。

 平野文科大臣、そもそも、国際人権A規約の問題がございました。政権交代する前の平成二十一年度で、公財政支出、国と地方を合わせて高校教育に幾らぐらいつぎ込んでいたんでしょうか。ざくっと、幾らぐらいつぎ込んでいたかということをお示しいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 高校教育、こういう概念でございますが、これは国、地方合わせてということでよろしゅうございますか。(馳委員「はい、合わせて」と呼ぶ)

 具体的に数字は今ちょっと持ち合わせておりませんが、国が大体七百ちょいだと思っております。地方は交付税という部分で約二兆強ぐらいだ、こういうふうに認識いたしております。

馳委員 そうですね、二兆五、六千ほどなんですよ。そうすると、当然、地方の分は地財計画に入っております。そして、授業料としての部分を無償化という言い方になっておりますから、高校無償化と一言で言うよりも、いわゆる高校授業料無償化という政策なんだろうと思います。それがおよそ四千億円。合わせて三兆円。三兆円のうちの四千億円を手当てしたというのが、民主党の皆さん方が政権交代をして訴えておられる政策になるわけなんですよ。

 したがって、私は、国際社会と比較をしても、高校教育に対して公財政支出が今まで全くなかったとまでは言い切れないというふうに思うんですよね。いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 直接の部分につきましては七百十四億円ぐらいだと思いますが、地方が、これは設置者が地方公共団体でございますが、そこに投入をしている金は、これで教育費ということではいきませんが、投入している部分については、かなりの部分は投入しているというふうには認識せざるを得ないと思います。

馳委員 したがって、限られた税収を義務教育ではない高校教育に投入する場合には、やはり一定の所得制限を設けて、より所得の低い、また都道府県の支援のでこぼこのあるところを埋めるような給付型奨学金、あるいは高校生修学支援基金、これは麻生政権のときに補正予算でつくったものです、これを恒久化するような方策の方が財政規律にも合うんじゃないんですかというのが私たちの提言なんですよ。

 文部科学大臣、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 そういう先生お考えの部分は理解はいたします。しかし、我々としては、今の先生おっしゃる部分を含めて、各政党間で今御議論をいただいております。したがって、その結論を待って対応してまいりたい、こういうふうに思います。

馳委員 私は、所得制限の必要性ということを一定の御理解をいただいたと思います。

 親責任、義務教育ではない以上、意欲と能力のある子供を高校に上げて育てていこう、まず基本的には親としての責任があるでしょう。しかし、親にも所得の、いろいろなことがありますから、家計を支援するためにも、やはり所得制限をしながら、低所得の方や都道府県のでこぼこがあるところは国の責任で応援をしていきましょう、私は、文科大臣にはそういう理念を大切にしていただきたいと思っているんです。

 野田総理、済みません、お待たせしました。

 実は、二〇〇六年十月二十日、文部科学委員会、私もあの場におりました。当時の伊吹文部科学大臣と野田委員は、高校の日本史の必修化についての大変すばらしいやりとりをなさっていました。野田さんは質疑の中で、私は民主党の中でも守備位置はライトで、時々ファウルフライもとりに行くんだよ、こういうふうなコメントも残っております。

 そんな中で、日本史の必修化が必要ではないかと当時の野田委員、野田総理がお持ち出しになったのは、当時あの問題があったんですよ、私学の未履修問題で、特に世界史が未履修だった。しかし、私たちからすれば、私学には私学の建学の精神もあるじゃないか、だから、私学は授業料を多目に取るということに対しても理解が一定得られている。まあ、それはそれとして。

 当時、野田総理はこういう提案をされたんですね。世界史にかえて日本史を必修にするか、世界史と日本史を両方必修にするか、あるいは、近現代史を学ぶ必要があり、我が国だけではなくて周辺諸国との関係も含めて、高校生は社会に出る一歩手前であるので、その理解をするためにも世界史と日本史のミックスした教科を必修にすべきではないかと力強く伊吹文部科学大臣に対して訴えておられました。

 そのお考えに今も変わりはありませんね。

野田内閣総理大臣 思い出してきました。

 当時の問題意識で、未履修の問題もあったんですけれども、あるアンケート調査を見たんです。高校生に日米が対戦したことを知らないという学生がたくさんいるということを見てショックを受けたんです。小学校、中学校で一定の歴史は学んできたはずです。だけれども、大体、日本の歴史の場合、散切り頭ぐらいで終わっちゃうんですね。その後の文明開化以降の大事な、困難も含めた歴史をきちっと教えていない。高校生で日米が戦ったことすら知らないというのは、これはまずいんではないかという問題意識があって、きちっと日本の歴史を、もちろん世界史も大事ですよ、という意味で三択の問題提起を伊吹先生にしたときに、かなり前向きに御答弁いただいた記憶があります。

馳委員 先ほど下村委員もお触れになりましたね。名古屋市長の河村市長、南京事件はなかったというふうな発言については、私はこういうふうに認識しているんです。三十万人とか、あるいは戦争における戦闘行為であることが大虐殺という文言で教科書に載るような状況は、やはり歴史家が、正式な、事実に基づいて検証した上で対応なさらなければいけないのではないかというのが河村市長の問題意識の提言なんですよ。

 ところが、それが残念ながら、外交問題として圧力が加えられ、少しずつ少しずつ日本の歴史的な認識の立ち位置が真ん中から左の方へ、中国から言われるたびにまた左の方へ、また左の方へ、半歩ずつ、半歩ずつと行っているうちに、随分左の方に歴史認識が押しやられてきているんです。だから、私は、日本史の必修化、近現代史を我が国の歴史とともに近隣諸国や世界の中で学ぶべきであるという野田総理の考え方は正しいと思っているんですよ。いかがでしょうか。

 そして、平野大臣には最後に、当時、伊吹大臣は極めて前向きに御答弁になったんですよ。もしかしたら同じ政党じゃないかなと思うぐらいに私は見ていました。その後、中教審に諮問しましたか。そして今、高校教育部会が審議しております。私は、ぜひ、野田総理の指摘も含めて、中教審に諮問をすべきではありませんか、文科大臣にお聞きして、最後に野田総理にお聞きします。

平野(博)国務大臣 その前に、先ほど先生からありました、所得制限について理解を示した、こういうふうにおっしゃられましたが、やはり、私どもとして理念がございます、ただし、政党間協議をしておられますから、その結論を待って判断をさせてもらいたい、こういうことでございます。

 今、日本史の問題を言われました。野田総理が当時、そういう御質問なり、伊吹先生との間でやりとりされておられるということでありますが、私は今、文科省の立場でいいますと、中学の教科に日本史を重点的にやっておるものですから、高校につきましては、今現在、世界史、特にグローバル、これからの社会においては世界史も重要である、こういうことであります。

 加えて、先生御指摘のところについては、日本史と世界史とが十分相関がとれる、こういうような知恵も工夫もしておるところでございます。

 加えて、中教審に諮問しているかどうか、これはちょっと私今わかりませんが、今、いろいろな高校の改革を中教審の方でも進めておりますので、その趣旨についても私しっかりと伝えてまいりたいと思っております。

野田内閣総理大臣 当時のいろいろな活発な意見交換の後に中教審があって、それで今はまた世界史必修という形に決定したと思うんです。ただ、その後もまた、いろいろな専門委員会の機会があると思うので、ぜひ私の問題意識も御理解をいただいて御審議いただければ大変ありがたいというふうに思います。

馳委員 最後に、今、成人年齢十八歳という問題が国会でも大きな課題になっております。とするならば、私は、ここまでの税金を投入して高校授業料無償化ということを進めている以上、私たちは全否定していません、所得制限を言っているだけです。とすると、公民教育をさらに内容を充実し、特に社会保障の問題については、高校を卒業した後、就職をし、社会に出る、あるいは、大学に行ってより高等教育を学ぶ子供たちに対して公民教育、成人年齢十八歳ということを考えれば、より公民教育を充実すべきである。そういうことを打ち出してから高校無償化の政策を出してほしかったな、そのように申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、赤澤亮正君から関連質疑の申し出があります。下村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 質問の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 本日は、農業者戸別所得補償制度など、農業についてお伺いをしていきたい。時間があれば、後ほど野田総理の発信力などについてもちょっと議論をさせていただきたいと思いますが、冒頭、野田総理にお伺いします。

 民主党農政の逆走、迷走が、TPPをめぐる国内の賛成派と反対派の対立を激化させたという認識はお持ちですか。

野田内閣総理大臣 逆走、迷走と、ちょっと意味がわからないんですけれども、どういう意味なんでしょうか。後でちょっと教えていただきたいと思いますけれども、TPPの議論が民主党の農政のさまざまな議論に迷走を与えているとは思いません。

 TPP交渉参加に向けて協議をすることについては、方針として決めさせていただきましたけれども、農業の再生については、TPPをどうするか云々以前の大きな問題だと思っていますので、そこの共通認識はあると思います。

赤澤委員 御認識はない、何を言っているのかわからないというけげんな表情をされたという感じだろうと思います。

 きょう、そんな話を私はちょっとさせていただきたいんですが、パネルをごらんいただきたいんですけれども、食料・農業・農村基本計画、これは政権交代後に閣議決定されたものであります。

 記憶に新しいとおり、民主党は、小規模農家切り捨てを自民党がやっているということを盛んに喧伝をして、選挙を戦い、勝たれた、その後の基本計画ですから、パネルにも言葉を細切れで拾っていますけれども、農業生産のコスト割れを防ぐんだ、そして、小規模経営を含む全ての農業者が将来にわたって農業を継続できるように、そのために戸別所得補償制度を導入する、こういうことを打ち出されたわけであります。

 その後、同年の十月に、国民の皆様も唐突感があったので記憶されているかと思いますが、菅総理の所信表明で、TPP参加の検討というのが打ち出されたということであります。

 パネルにしたのは、八月の二日の食と農林漁業の再生実現会議、我が国の食と農林漁業の再生のための中間提言というところで、戸別所得補償については、小規模農家、全ての農家のコスト割れを防ぐというようなことではなくて、一カ所にしか出てこなくなっています。戦略の一、競争力・体質強化、攻めの担い手実現、農地集積。規模拡大の加速化のところだけ一カ所中間提言の中に出てくるんです、戸別所得補償制度の適切な推進。私は、これはもう明らかに、TPP参加を考え始めて、政権交代選挙で考えておられたときの戸別所得補償と中身が変わり始めているというふうに感じます。

 それで、もう一つ指摘をしておかなければならないのは、昨年の十月の二十五日にも、食と農林漁業の再生推進本部決定、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画、これは特に米、麦、大豆等を指すんでしょうね、土地利用型農業については、今後五年間に、徹底的な話し合いを通じた合意形成により実質的な規模拡大を図り、平地で二十から三十ヘクタール、中山間地域で十から二十ヘクタールの規模の経営体が大宗を占める構造を目指すというのを打ち出されました。

 慌てて競争力強化、TPPへの備えというのがもう頭の中にこびりついているんじゃないかと思うんですが、これはもう明らかに、戸別所得補償についての説明も、農政の方向も変わっている、逆走、迷走だというふうに農業関係者には受けとめられていると思います。

 今の話を聞いて、総理はなお、逆走、迷走ということについては異論がおありですか。

鹿野国務大臣 まず、戸別所得補償制度を導入するということにおきましては、ここに資料として出されておりますけれども、意欲ある全ての農業者に将来にわたって農業を継続、こういうふうなことでございまして、そのようなことから、私どもといたしましては販売農家というふうなところを対象として仕切った、こういうふうなことでございます。

 ゆえに、そういうふうな中で、当然のことながら、国民、消費者の方々に対しても、期待に応えていかなきゃならないというようなことから、やはり体質強化も図っていかなきゃならない。こういうふうなことを考えたときに、生産性の向上というふうなことが不可欠でありますので、そういうふうなことを含めて、私どもは、五年間というふうな期間の中で、新しい一つのこれからの農業の姿というものを描いて、それに向かって進んでいこう、このようなことから、二十から三十というような具体的な一つの数字も出させていただいて、取り組んでいくというふうなことにしたわけであります。

 ゆえに、TPPというようなこと等々のお話もございましたけれども、TPPは御承知のとおりに、TPPに向けて今いろいろと協議がなされておるわけでございますので、そのことは別途といたしまして、農業の今日の状況を考えて、やはりしっかりと、国民の人たちの理解を得るべく、農業のあり方というふうなものについて取り組ませていただきたい、そういう考え方に立っておるところでございます。

赤澤委員 余り答えになっていないことを長々述べられると時間がなくなりますので、簡潔にお願いをしたいと思います。

 それで、民主党農政には支離滅裂なところがあると言っているのは私だけではありません。

 専門家の言葉をかりれば、例えば東京大学の農学部長の生源寺真一教授が「日本農業の真実」という本の中で、「農業団体と経済界の対立が激化し、冷静な議論が危ぶまれる状況が生じている背景として、近年の農政が深刻な逆走・迷走状態に陥っていることも指摘しておく必要がある。」と。

 要するに、民主党農政は、政権交代前後、明らかに国内農業の保護を打ち出していた、そういう状態であるから、その後の規模拡大の二十―三十ヘクタールという話を聞けば、「たとえて言えば、持ち上げられるだけ持ち上げられたあげくに、いきなりハシゴを外されたといったところだろうか。」と。

 これも生源寺教授が書いています。「直近の農政をめぐる民主党の大きなブレが反発のボルテージを必要以上に高めたことは否定できない。冷静な議論が困難な状況を生み出した責任は重い。」こういう指摘をされています。私だけが言っているわけではないんです。

 ここに私は、普天間の問題や消費税の問題と同じ構図を見るんですよ。民主党の政治手法は総じて、要するに、最も利害関係の濃い人たちにさんざん期待をさせて、いいことしますよ、いいことしますよ、あなたたちにとってはいいことばかりですよと言って、最後にはしごを外すんですよ。期待を裏切るんですよ。最低でも県外という話がありましたでしょう。

 そして、消費税についても、きょう御臨席といいますか、野田毅委員がおっしゃっていることですけれども、二〇〇七年の参議院選挙の前まで、かなり国民の理解を得ていました。かなり国民の理解を得、努力をしていました。我が党は、消費税については将来的に上げなきゃいけない、そういう立場をずっととってきているものであります。

 それも結局、参議院選挙の後、ねじれてから何が起きているかといえば、要は、無駄を省けば消費税なんか上げなくていいとあなたたちが言ったんですよ。今、その主張はどこへ行ったんですか。

 万事同じなんですよ。この場合の最大の利害関係者は国民全体です。消費税は子供でも払います。そうでしょう。そうやっておいて、大丈夫なんです、税なんか上げません、あなたたちには悪いことしませんよとさんざんいいことを言っておいて最後に裏切る、これですよ。

 同じことが結局農業でも起きたということは、総理、責任を感じてくださいよ。鹿野大臣が何を言おうが、どういう説明を上げておられるかわかりません、まあ、部下と上司の関係ではないけれども。

 しかしながら、専門家も指摘しています。私もそう思います。小規模農家にさんざんいい政策を打つぞと言って、実際、後でパネルで説明しますが、その点きちっと説明を後でいたしますけれども、おかしなことになっている。

 この点についての認識を総理に伺います。

中井委員長 鹿野農水大臣。答弁は簡単にしてください。

鹿野国務大臣 生源寺先生がどういうふうなことの考え方で御指摘いただいたかというのは、私は定かでありませんけれども、農業者戸別所得補償制度というものは、農業者の人たちが、ぜひこれを継続していってほしい、こういう非常に強い思いを持っておられる方が多いというふうなことは、やはりこれは私どもも大事にしていかなきゃならないと思うんです。

 しかし、そういう中で、当然のことながら、この小規模の人たちにおいても、意欲を持った農業者の方々が規模を拡大していけばそれだけ収入が多くなるんですよというようなことでありますから、当然、そういうふうなことの中で、規模を拡大すれば、それは国民にとっても大変重要なことでありますから、誘導していくというふうなことでございまして、私どもとすれば、今先生が言われた矛盾しているような状況というものはないものと思っております。

赤澤委員 今の答弁に私は典型的な民主党の政策論議の貧困を見るんですよ。それは何かといえば、農業者の方たちは予算を配分された。新たに予算をもらったんです。評価するのは当たり前でしょう。

 政策効果の検証というのは、何に照らしてするんですか。農家がいいと言ったから、予算をもらった農家がいいと言ったからいいじゃないんですよ。政策目的があるんです。いいですか、政策目的に照らすのが政策効果の検証なんです。

 農林水産大臣、二つ目的を掲げてあるでしょう。明確に国民の皆さんに言ってください。農業戸別所得補償の目的は二つ、何ですか、言ってください。それだけでいいですよ。長い答弁は要りません。

鹿野国務大臣 まず、意欲ある農業者が農業を継続できる環境を整えて、国内農業の再生を図ることにより、我が国の食料自給率の向上を図るとともに、農業の有する多面的機能が将来にわたって発揮されるようにするために導入をする、こういうことであります。

赤澤委員 要するに、目的に照らして政策効果を検証しなきゃいけないんですよ。それがなぜ必要かといえば、予算をもらった農業関係者がこれについて喜ぶのは当たり前なんです。我々の政策は、政治というのは、国民全体の理解を得なきゃいけないんですよ。農業関係者以外の方も納得する、それを目的に書き込んで、それと合うかどうかをきちっとチェックするんです。

 今、目的は二つありました。先ほどから、玉木委員がした説明がよかったと皆さん言うけれども、決定的な問題があるんですよ。漂流しているんです。何でかといえば、食料自給率の向上と多面的機能の将来的な維持確保、彼は何も触れていないんですよ。それ以外のところで見ばえのいい資料を用意して、最終的に決め手は、農家が喜んでいますと。これじゃ国民全体が受け入れる政策論議にはなっていないんですよ。そのことをきちっと理解してもらわないといけないんです。

 これは総理に伺いたいんですけれども、アンケートで農家が喜んでいるからこの政策はいいんですと言っちゃったら、消費税、反対の国民が多いから上げない方がいいんですという、同じ議論、同じ誤りではないですか。お答えください。

野田内閣総理大臣 単に喜んでいる人がいっぱいいるからという話ではないとは思いますが、ただ、このことに期待をして、そして農業を続けようという意思を持っていらっしゃるということは、これは一つの結果だというふうに私は思いますので、消費税の議論とはこれはまた別の話ではないでしょうか。

 検証は、先ほど玉木さんからは非常に前向きなプラスの評価の話でした。今、逆の検証をいただいているんですが、そういう検証をお互いきちっとしながら、いい制度として定着をさせていきたいと思いますし、逆走、迷走ではないと思います。真っすぐに一歩ずつ前へ進んでいると思います。

赤澤委員 明らかに逆走していると思うんです。同じことを違う観点から見るとこんなに違うのかと思ったんですが、パネルをお願いします。

 当委員会で前にもちょっとこれと違うのを示したことがありますが、似たようなものです。先ほど玉木委員が、全体の約一〇%しかいない二ヘクタール以上の農家に総予算の約六割が配分されているから重点配分なんだと言ったけれども、要は、本当なのかということなんです。

 これを見てもらうとおわかりのように、自民党当時、自公政権当時は、経営面積、日本は平均が今二・二ヘクタールぐらいですが、それ未満の農家には三%の米政策の予算だったんです。それが、小規模農家切り捨て批判をされて、有言実行されました。政権交代後、二ヘクタール未満の農家に四六%の予算を配り、千三百億円配分されたんです。

 規模拡大するには小規模農家が農地を出してくれないと、規模拡大は将来的に頭打ちになるんですよ。集落営農数がふえたと先ほど玉木委員はおっしゃったけれども、自公政権当時からずっと何年もかけて努力してきた成果が流れとしてあります。しかしながら、こんなことで小規模農家に千三百億円、予算の五割近くを配分して、今までもらっていなかった農家です、赤字でも続けてきた方が、お金までもらった。喜んでいる。これから土地は出てこないでしょう。頭打ちになるんですよ。そういう検証が必要だと我々は言っているんです。

 しかしながら、後ほどパネルで説明しますけれども、この検証は、予算にはもう反映できませんと、昨年打ち切られました。鹿野大臣、おかしいじゃないですか。

鹿野国務大臣 当然、重ねて申し上げますけれども、私たちはこの所得補償制度というものをどこに対象として位置づけするかというふうなときにおきまして、実はいろいろ議論があったんです。でも、基本的に、やはり段階が必要じゃないか。

 私も長い間取り組んできましたけれども、農地解放によって農家の人たちが農地を持つことができるようになった。その農地を大事にしたいということで、家族経営というふうなものを中心として農業が営まれてきたわけです。そういう人たちの気持ちというものもやはり大事にしなきゃならぬというようなことから、販売農家という、そういうところにまず位置づけをして、そして、それを自民党農政においても、集落営農というものを非常に大事にしなきゃいかぬ、こういうふうなことで、集落営農というものをさらにこれから継続できるようにする、そのことが収入がふえることにつながるんだ、こういうふうな誘導を持って規模を拡大していくというような、この考え方が私どもの基本的な施策ということになるわけです。

赤澤委員 全く説得力がない。

 端的に言えば、規模拡大と小規模農家の維持、ブレーキとアクセルを両方踏んでいるということですよ。大変な予算の無駄遣いになります。そのことは理解をしてもらわないと。しかも、農家が逆走、迷走と感じているのがその証拠なんですよ。

 玉木委員には申しわけないんだけれども、彼は非常に能力のある方です、弁舌爽やかで、人柄もいい、非常にいいプレゼンをされたと思いますが、申しわけないが、先ほど申し上げたように、食料自給率の向上、それと多面的機能の維持という話は余りされなかったので、少し面映ゆい言い方をすると、真の政策効果の検証というのをここでやらせていただこうと思うんです。

 農家所得が一七%ふえた、きょうの日本農業新聞に出ています。大変おめでたいことだと思います。しかしながら、農業予算総額を二年間で一五%近く、四千億ぐらいカットしたんですね。しかも、その中で無理に戸別所得補償をやった。何が起きているかといえば、土地改良の予算、私の理解では七千億ぐらい昔あったものを、政権交代当時は六千億ぐらいですかね、二千億台まで落としたんです。七割カットですよ。

 端的に言うと、どんどん農業予算総額が減っていく中で、戸別所得補償をやるために農家の所得がふえました、いいけれども、将来、かんがい施設がぼろぼろになるんですよ、一言で言うと。そういうことなんです。

 短期間に予算をふやして、ばらまいて、農家の所得がふえた。農家が喜んでいることに私は異存はないですが、未来が大きく損なわれるということなんですよ。それこそがまさに多面的機能の維持が難しくなることなんですよ。そうすると、農業者戸別所得補償制度の目的に書いてあることにまさに反することに多額の予算をかけているということになるんですよ。それが一点目です。

 もう一つ。食料自給率のパネルをごらんください。

 今の多面的機能が損なわれれば、農業は国の基と総理もおっしゃっています、そこが損なわれるんですよ。そこの手当てをきちっとしないとだめですよ。余り深刻に受けとめていないようだから、農業をわかっていない議員が多いようなんだけれども、畑作を中心にやっている、米でないところは、かんがい施設が、来年水が来ると思った、宮崎県や鹿児島県では、七年後になった、どうしてくれる、農業を続けられない、そういう声をちゃんと聞かなきゃだめですよ。

 それで、自給率の話もちょっとさせていただきます。

 このパネルを見ていただくと、端的に言うと、自給率を上げるには小麦と大豆なんですよ。小麦と大豆の増産をし、そして自給率を上げていこうというのが基本的な戦略です。平成二十二年度について見ていただくと、作戦成功なんですよ。小麦、大豆についても主食用米並みの所得を補償します、こう言って、そのとおりに実はなっているんです。

 そういう喧伝で、小麦をつくってもらうように、大豆をつくってもらうように努力をしたんだけれども、実際起きたことは、これはテレビを見られている方は赤い数字を追っていただければいいです、小麦、大豆の所得というのが主食用米よりも多くなった。言ったとおりのことをやったんです。その意味では、制度自体は、所得補償制度の目的に合ったことをやった。ところが、問題は、食料自給率の寄与を見てください。自給率は下がったんですよ。平成二十二年度に四〇%から三九%に下がった。

 いいですか。農業者戸別所得補償制度の二つの目的である食料自給率の向上と多面的機能の将来的な維持確保、両方危うくなっているから、我々は、盛大に検証しましょう、検証が必要です、民主党農政の流れじゃだめですと声を大にして言っているんですよ。なのに、予算にはもう反映できないと。後ほどパネルで説明しますけれども、大変不誠実に協議が打ち切られております。

 ということで、この二点。土地改良の予算を大幅に削って、今、誤りをどうも認めないでもない。三党協議の中でも出ました、我々も削り過ぎたかと思っているので今ふやしていますと。そんなことで間に合わないですよ。土地改良を削り過ぎたことと、この自給率の向上が効果が出ていないことについて、大臣、どうするつもりなんですか。

鹿野国務大臣 土地改良事業につきましては、確かに、私ども、政権交代後、予算が削減されました。それは、戸別所得補償制度というものを導入する際、農林水産省内の予算で調整をした、こういうことでございます。そういうふうなことから、確かに、重ねて申し上げますけれども、削減されました。

 しかし、そういう中で、政策的にも、長寿命化等々というようなことで政策を転換したと同時に、緊急的に、老朽化等々が進んでいるというようなことも含めるならば、やはり予算措置もしなきゃならないというふうなことから、二十三年度におきましては前年度比に関連も含めて一一三%、そして二十四年度の予算案につきましては一一二%、こういうふうなことで配慮をさせていただいておるところでございます。

 それから、今御指摘いただきました自給率のことでございますけれども、これは先生が一番御承知のとおりに、二十二年におきましては、北海道が異常気象ということで、猛暑そして長雨、このようなことから、北海道が特に麦等々が不作であった、てん菜等々が不作であった、こういうふうなことがこの数値となって自給率に影響を及ぼしているというふうなことでございます。

 引き続いて私どもは、まさしく今先生がおっしゃるとおりに、麦、大豆というふうなものの生産を拡大することによって自給率をふやしていかなきゃならぬわけでありますから、そういう政策をこれからも具体的に進めるということで対象も畑作物まで広げたわけでありますので、そのことが理解されるようにこれからも推進をしていかなきゃならないと思っております。

赤澤委員 それでは、岡田副総理に伺います。

 この間、エレベーターで二人になったら、最近俺は余り呼ばれないとおっしゃっていたので、お呼びをいたしました。ちょっと呼んでほしかったテーマとは違うかもしれないので、そこはおわびをいたしますが、呼ばせていただいた次第であります。

 平成二十三年の農業者戸別所得補償制度の三党協議実務者会議です。お呼びした理由は、これのもとである、八月九日、三党合意の確認書に署名をされたのが当時の岡田幹事長でいらっしゃるということで、一言いただきたくてお呼びをしたんです。

 そこには、ここの委員は皆さん御案内ですけれども、テレビを見られている方のためにちょっと申し上げておくと、高校無償化と農業者戸別所得補償制度について政策効果の検証をして、必要な見直しを検討して、一二年度予算の編成プロセスにおいても誠実に対処する、対応するというようなことが書かれていたということであります。

 このパネルでも、テレビでごらんの皆さんは赤い字を追っていただければポイントはわかるんですが、要は、八月九日に確認書に署名をしてから第一回が開かれるまで、十一月二十九日、三カ月と二十日かかっているんですよ。

 加えて、その席で何が展開されたかというと、さっきの話なんですよ。出てきた資料は、事実関係がデータとして出ている資料、それは我々が要求したものです。自民党が要求したものに加えて、アンケートの結果、戸別所得補償は評判がいいです、それだけが出てきたんですよ。

 我々は怒ったんです。政策目的に照らして何にも評価が書いていない、事実とあとアンケートだけだ、あなたたちは政策効果というのを集票効果と間違えていませんかということを言って、出し直してもらったわけです。その結果、十二月七日に民主党の検証結果が出てきたんですよ。合意してから四カ月です。

 岡田幹事長、この委員会で、二月の十三日だったか、高校無償化についてその後のてんまつは知らないとおっしゃって、かなり紛糾したことがありますけれども、このような経過を見て、御自身が署名された三党協議のその後の党の立ち居振る舞いとして、これは誠実だったと思われますか。我々は極めて不誠実だと思っています。一言いただけないでしょうか。

岡田国務大臣 まず、三党合意は、先ほど申し上げましたように、このねじれという困難な状況の中で、三党が協力をして政治を前に進める、そういう思いの中でつくられたものでありますので、これは誠実に履行されなければならない、基本的にそう考えております。

 ただ、その後、三党合意を八月九日に結んだ後、そのことも一つのきっかけになり、菅総理が御退任になり、そして野田政権が発足した。そこで人の異動もあったという中で、若干それがうまくつながらなかった面があったのではないか。それは私も当時の幹事長として大変責任を感じているところでございます。

 ただ、その後、十一月あるいは十二月にどういうことがあったかということについては、私、中身を存じておりませんので、そこのコメントは避けたいというふうに思います。八月九日から十一月二十九日まで、約三カ月ですか、三カ月以上あいたということがあったとすれば、それは遺憾なことだと思います。

赤澤委員 率直に、遺憾であるということ、そして一般論であるけれども誠実に対応すべきだということ。細かいところは、確かに本当にお忙しい副総理ですから、なかなか聞き及んでおられないかと思います。

 最後、ちょっとてんまつを紹介しておくと、五回やったとおっしゃるけれども、十二月七日に民主党の検証結果がようやく出てきた。評価が確かにいろいろ入っていました。中には、先ほどの玉木委員がおっしゃっていたようなことも入っている。

 私どもは、公明党も一緒です、今のタイミングで予算に反映できるんですか、そこがポイントですよ、三党合意のポイントなんですよと聞いたらば、結局出てきたことは、十二月の七日に出てきたんですよ。予算に反映するには二日後の九日にまとまらないと無理ですと言われたんですよ。どんなに頑張っても来週の月曜にはまとまっていないとだめだと財務省が言っていますと。これは余りに不誠実ですよね。

 ということで、我々は、自公そろって、これはもう協議を続けられない。予算に反映させる前提で我々は誠実に検討もしてきたし、我々の検証結果というのはお渡ししてあります。お答えが出てくるのがこれでは余りにひどいじゃないかといって打ち切られているんです。

 そこで、総理にも民主党の代表としてお伺いしますよ。

 玉木委員が先ほどおっしゃったことも、私は一応、提示された主張には全て理をもって反論をいたしました。そして、所得補償の目的である食料自給率の向上あるいは多面的機能の将来的な維持確保が危うい、今の流れは危ういということを我々は言っているんです。高校無償化とあわせて、予算にも場合によっては反映する前提で、きちっと協議を再開するように党に指示してください。どうですか。

野田内閣総理大臣 戸別所得補償の影響に対する見方はいろいろあると思います。例えば自給率の関連で申し上げれば、大臣がお話しされたように天候不順等の影響もあったと思いますので、警鐘としては受けとめさせていただきたいというふうには思います。

 その上で、あらゆる政策分野、私は、与野党間で闊達な議論をしながらより精度を高めていく、効果のあるものにしていくことは大事だというふうに思いますので、戸別所得補償についても、御批判も含めてでありますけれども、きちっと意見交換をしながら、本当に国民の皆様に納得していただくものとして定着をしていくようにしていきたいというふうに思います。

赤澤委員 それで、我が党からは、高校無償化について新たな合意がされ、その中で、高校無償化等ということで、不誠実な対応だったと。農業者戸別所得補償も含めていただいていると考えています。そのことをきちっと踏まえて、しっかりと農業者戸別所得補償制度についても、予算に反映できる余地があるのであれば協議をやる用意は我々はありますので、それを一方的に打ち切られて怒っているのであって、その点ぜひ御理解の上、対応をお願いしたい。これはお願いしておきます。

 最後に、残された時間でありますけれども、総理の在任中記者会見の頻度。私が二月九日に質問をしたときに、総理は、自分は記者会見を過去最高ペースでやっていると。私はおかしいなと思ったので、質問主意書で調べたところ、これは時間が来ましたので指摘だけにとどめておきます。時間が参りました。

 ただ、総理の在任中記者会見。記者会見だけをとれば、おっしゃるように、第一位野田佳彦総理、十八日に一回。発信力で知られた小泉純一郎総理は五十八日に一回。しかしながら、皆さんは、ここに名前の挙がっている人たちは全部、ぶら下がりをやっているんですよ。ぶら下がりは、平日の朝夕、週に十回あります。これをカウントしたら、小泉、安倍、福田、麻生、鳩山、菅総理は、皆さん、〇・七日に一回以上発信しているんです。

 そして総理は、実は、御自身の政治献金問題が出たとき、あるいは沖縄の防衛局長の問題が起きたとき、二回起きました、いずれもぶら下がりをやっていないから発信していないんです。あの会見のときに、盛んに、自分はやるべきときはやっている、問責とかも逃げていないと言ったけれども、明らかに都合の悪いときはやっていないということだけは指摘をして、私の質問を終わります。

野田内閣総理大臣 私は、短い言葉でぱっと質問されて、それにぱっと答えるというやり方をするよりは、きちっと時間をかけて丁寧に説明したいという思いでやっているわけで、そして、やりたいときだけではありません。言いたいことを言ったって、聞きたいことを聞くのが報道機関ですから、それは全く関係ないというふうに思います。

    ―――――――――――――

中井委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。

 平成二十四年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は

 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、防衛省所管及び他の分科会の所管以外の事項

 第二分科会は、総務省所管

 第三分科会は、法務省、外務省、財務省所管

 第四分科会は、文部科学省所管

 第五分科会は、厚生労働省所管

 第六分科会は、農林水産省、環境省所管

 第七分科会は、経済産業省所管

 第八分科会は、国土交通省所管

以上のとおりとし、来る三月五日分科会審査を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次いで、お諮りいたします。

 分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会審査の際、政府参考人及び会計検査院当局の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、小里泰弘君から関連質疑の申し出があります。下村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず冒頭に、午前中、所得補償の議論がございました。では、自民党はどうかといいますと、自民党としては、農業、農村が果たしておられる多面的な機能、あるいは担い手育成の観点から、新たな支払い制度の法案、新たな制度として、いわば真に農業、農村のためになる法案として既に提出をしておりますことをまず申し添えさせていただきます。

 さて、日本は今、国内市場が細る中で貿易自由化をさらに図っていかなければなりませんが、TPPをめぐって国論が二分をされております。私は、この問題は、アジアの成長をいかに取り込んでいくか、方法論の問題であると思います。そういった観点から議論をしてまいりたいと思います。

 まず、貿易自由化を契機にして農業の構造改革を図れば国際競争力をつけられるといいます。果たしてそうでしょうか。

 パネル一をごらんいただきたいと思います。

 農業の構造改革とは、つまるところ、規模拡大が中心になるんだろうと思います。このグラフは、米農家に着目をしまして、生産コストと作付面積をグラフにしたものであります。規模拡大でコストは下がっていきますが、五ヘクタールを過ぎたあたりから余り下がらなくなります。そして、十五町歩、十五ヘクタールを超えると、ほとんどコストは変わらないということになります。すなわち、規模拡大を図ってもコスト削減には限界があるということになりますが、農水大臣、御異論はございませんか。

鹿野国務大臣 確かに、今、小里委員から申されたとおりに、十五町歩くらいのところで一つの限界というふうなものがあるのではないかということでありますけれども、十五町歩以上というふうなことになってきますと、例えば機械を一セットから二セットくらいにしていくというようなことによって、規模を拡大することによって、さらなる生産性の向上が図られるという可能性はあるものと思っております。

小里委員 先般、農林水産委員会の質疑では、筒井農水副大臣から、「規模拡大によるコスト削減で国際競争力を持つなんということはあり得ない」という明確な答弁がございました。農水大臣の今のお話も、基本的にはそういう線に沿ったお話であろうと思います。

 ちなみに、アメリカのコストは、日本の限界と思われる一万一千五百三十一円に対しまして、わずか二千円であります。大変な差があるということでございます。なおまた、米国とFTAを結んだ韓国、現在、七年前から農業の国内対策を進めておりますが、その韓国の駐日大使が、先般、韓国の農業の将来展望は明るいとは言えないとはっきりと述べておりました。

 貿易自由化を契機にして農業の構造改革を図れば輸出競争力をつけられるといいますが、これには限界があるということをまず指摘させていただきたいと思います。

 続きまして、その米韓FTAを結んだ韓国を見習えといいます。TPP推進論拠の一つになっておるわけであります。では、米韓FTAで韓国は何を得たんでしょうか。パネル二に書いております。

 まず、韓国が得たものは、米製品の例外措置、そして、もともと低関税の工業品関税の撤廃ぐらいであります。

 一方で、韓国が譲歩したものを見ていきますと、米製品を除く農産品の実質的な関税撤廃、そしてまた、自動車の安全基準審査、排ガス規制の緩和によりまして、韓国の市場に米国の車が入っていきやすい仕組みになっております。弁護士等の事務所につきましては、米国人が韓国で事務所を開設しやすい仕組みになります。農業共済、漁業共済、郵便局等の簡保サービス等につきましても仕組みが変わりまして、要するに、米国の保険会社が韓国に参入しやすい仕組みになってまいります。経済特区での保険外診療、医薬品価格の決定の方法等々、全て米国の要求の丸のみであります。あるいは、著作権の保護期間の延長によりまして、著作権の多い米国に有利な協定になっております。ISD条項、まさに自国の制度を自分たちでつくれなくなってしまうかもしれないという、極めて警戒すべき条項であります。また、遺伝子操作食品の問題を初め、食の安全の問題も心配をされるところでございます。

 このように見ていきますと、まさに米国側のやりたい放題、韓国のぼろ負けであるという印象を持たざるを得ません。

 この米韓FTAをさらに強化していくのがTPPだといいます。事実、米国側からこれを上回る要求が、従来、日本に寄せられているわけであります。あすは我が身であります。

 この米韓FTAについて、どのような感想と申しますか、受けとめ方をしておられるか、総理にまずお伺いしたいと思います。感想ですから、総理。

玄葉国務大臣 この米韓のFTAでありますけれども、我が国がTPPなりEPAを考える上では、特に米国との関係では、やはり参考になると思います。なぜかといえば、米国の直近の締結したEPAだからであります。

 ただ、この第三国同士のEPAについて我々が政府として評価するというのは果たしてどうかと思っています。韓国の政府の立場に立てば、韓国政府の判断として、全体として国益にかなう、こういう判断をされたからこそ合意に至ったものというふうに考えております。

小里委員 ちなみに、韓国政府の発表では、この米韓FTAによる経済効果、韓国にGDPにして五・七%の成長を提供する、そういう発表でありますが、一方、韓国の国会で、外交通商委員会で、計算をし直したところ、実は年率にして〇・〇一%成長でしかないという指摘が、一方の意見として出されております。

 なおまた、この種の計算には非関税分野は入っていないはずであります。すなわち、この右の欄のほとんどが計算には入っていない。大変な影響がそこには与えられるということを、まず申し上げておきたいと思います。

 韓国の大統領の政策企画秘書官を務めたチョン・テイン氏は、米韓FTAについて述べた論文の中で、主要な争点において我々が得たものは何もない、米国が要求するものはほとんど全て譲歩してやった、そのように述べて、すなわち交渉の完敗を認めております。

 米韓FTAの国会承認をめぐりましては、連日、大規模なデモが発生をしました。そして、昨年十一月、国会で強行採決をされましたが、怒号が飛び交うばかりか、催涙弾まで炸裂をしたという報道でありました。そしてまた、ことし四月、韓国の国会議員選挙で勝利が確実視されている野党からは、政権を取り戻した暁にはこの米韓FTAを破棄する、そういう宣言までなされているわけであります。

 まさに、米韓FTAをめぐって、韓国は泥沼であります。大混乱であります。この韓国の二の舞を決して演じてはならないと思います。

 総理、これはお伺いいたします。

野田内閣総理大臣 アメリカが二国間のこういうFTAは、多分、当面ほかはないと思いますので、直近のこの米韓のFTAというのは参考にしなければいけないと思いますので、よく分析をしていきたいというふうに思います。

小里委員 ぜひ謙虚に検証をしていただきたいと思います。

 繰り返しますが、この米韓FTAを強化するのがTPPという位置づけであるということでございます。

 韓国与党の南景弼通商委員長、与党でありますが、こう述べております。国民の警告に対応できていなかった、そう言って、米韓FTAの失敗を認めておるわけであります。そして、与党ハンナラ党は、その批判の大きさの余りに政党名を変えたんですね、二月十三日。もって銘ずべきであると思います。

 さて、米国は最も大事な同盟国でありますが、だからといって、これまで通商交渉において日本に対して優しかったわけではありません。

 パネル三をごらんいただきたいと思います。日米通商交渉の歴史であります。一九五七年の日米綿製品協定によりまして、日本は綿製品の対米輸出の自主規制に追い込まれました。その後も、鉄鋼、テレビ、繊維、自動車と、ことごとく対米輸出の自主規制に追い込まれてまいりました。あるいは、大店法改正、日米保険協議によりましては、米国の企業が日本に進出をしやすいように制度まで変えさせられたわけであります。

 そこで、総理にお伺いしたいと思いますが、ここにある日米半導体摩擦、あるいは日米スパコン貿易摩擦、これはいかなる経緯でどのような結末を迎えたか、お答えいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、先ほど、米韓の話は参考になるというお話をいたしました。それは確かに参考になるんです。ただ、もっと厳しいのがTPPである、こういうことでございますが、一つ言えることは、少なくとも、あの米韓のFTAで工業製品の関税が、韓国が米国に対して輸出をするときに下がったことによって、日本はその分野における競争劣後になったことは間違いないと思うんですね。

 それともう一つは、バイ、二国間の交渉と多国間の交渉というのは必ずしも同じではないということも含めて、しかし、さはさりながら、今、小里委員がおっしゃったように、これはよく分析をしながら進めていかなければならないというふうに思います。

 今いただいた資料の、半導体とスパコンの貿易摩擦がどうなったかというのは、ちょっと失礼ですけれども、通告いただかなかったので、この部分についての細かい経緯はこの場で申し上げられませんけれども、ただ、言えることは、この一九七〇年代とかというのは、この二国間の通商交渉の歴史、これは確かに厳しいものであった、私もそう思います。

 ただ、当時の状況というのは、米国にとって対日の貿易赤字というのが大変大きかった。これは恐らく、米国の貿易赤字全体の五割から六割を占めていたんじゃないか。実は、今どのくらいかといったら一割未満なんですね。ですから、その違いがあります。ただ、だからといって、米国をいわゆるタフネゴシエーターでないと言うわけではありません。極めてタフでございますので、そこは当然、心してかかっていかなければならないというふうに考えております。

小里委員 対米的に日本の貿易黒字であったということでありますが、それは、とりもなおさず日本の製品が優秀であったということでございます。それ以上のことでも以下のことでもないと思います。

 それと、米韓FTAにおいて工業品の話がございました。低関税でありますが、撤廃をいたしました。それによって幾ばくかの効果はあるんだろうと思います。例えば自動車で見ましてもそうでしょう。

 しかしながら、先ほど右の方に、パネル二でごらんいただきましたように、一方で、自動車の安全基準審査、排ガス規制の緩和等々、非関税分野で一方の規制が緩和されている、これで大分相殺される部分が出てくる、そういうことはおわかりであろうと思います。

 さらに、ちなみに申し上げますと、自動車は五年間で二・五%の関税を下げるということでありますが、年間〇・五%ですね。これは、二百万円の車で見ると年間一万円ぐらいの値下げができる、その程度の効果であります。それよりも、この右の方の影響が私は場合によっては大きいんじゃないかな、そんなふうに思うわけであります。

 そこで、先ほどの半導体摩擦等の話であります。一九八〇年代、優秀な日本の製品が米国市場を席巻しまして、これに脅威を抱いた米国側が、これをダンピングである、不当に廉売、安値販売をしているということで訴えまして、日米半導体協定が結ばれました。その結果、日本の企業は価格面の統制を受けます。そしてまた、生産指導、減産指導まで受けまして、そして二年間で日本の輸出は半分になったという経緯がございます。

 あるいは、日米スパコン摩擦におきましては、同じようにダンピングで訴えられまして、何と四五四%の反ダンピング関税を課せられまして、実質四年間にわたって日本は米国の市場から締め出されたわけであります。

 このように、述べてまいりましたように、米国は、圧倒的な政治力で自国品を守り、日本の市場をこじあけてきた、そのような歴史がある、日本の制度をも変えさせてきたわけであります。いわばその集大成と申しますか、一気にここで圧力をかける、その道具立てがTPPであると私は思うに至っているわけであります。ぜひ、答弁にあったような悠長なことではなくて、ここはしっかりと、対外、韓国の例そして日米通商の歴史をしっかり見ながら臨んでいただきたいと思うわけであります。

 では、日本の目指すべき方向であります。

 パネル四をごらんいただきたいと思います。TPPでアジアの成長を取り込むと言いますが、果たしてそうなるんでしょうか。パネルでごらんいただきたいと思いますが、これはアジアにおける自由貿易圏構想を示したものであります。TPPの欄、赤線で囲った部分でありますが、このTPPには、中国、韓国あるいはインド、インドネシアといったアジアの大どころが入っておりません。したがって、これではアジアの成長を取り込むことにはならぬのだろうと思います。

 加えて申し上げますと、TPP九カ国の中で、ブルネイ、マレーシアを初めとする六カ国、このオレンジの線で囲った国々でありますが、この六カ国とは日本は既に、FTA、自由貿易協定を結んでおります。オーストラリアともFTA締結に向けて交渉を進めております。ここに新たにTPPを加えても、よほど日本に都合のいい条件でない限り、TPPの効果は限られるんだろうと私は思います。さらに、ニュージーランドを除いていきますと、残るは米国だけであります。

 経済規模で見ましても、日本とアメリカでTPP全体の九二%を占めます。まさに、TPPは日本とアメリカとの協定にほかならないと言われるゆえんでありますが、この点はどうでしょうか。

玄葉国務大臣 小里委員がおっしゃるように、米国の占める割合、そして、日本が仮に参加をするということになれば、その日米で占める割合というのは、大変大きいことは事実でございます。

 ただ、これは、いわゆるFTAAP、アジア太平洋全体の自由貿易圏をつくるときに、唯一交渉中のまさに経済連携である、マルチの、バイ以上のですね。そういう状況の中で、今参加をしている国々だけでTPPの完成体になるのかといえば、必ずしもそうではないんだと思うんです。

 つまりは、今、日本が関心を示し、メキシコが示し、カナダが示し、場合によっては、ほかのアジアの国々もこれからそういったことになるかもしれない。

 しかも、TPP関係国と参加に向けて協議に入るということを野田総理が表明をし、それと同時に、例えば中国なども日本との投資協定に非常に前向きになってきている。これまた事実でございますので、まさに戦略的に、そういったTPPあるいはバイラテラルの、二国間の経済連携等々を組み合わせながら進めていかなければいけないんだろう、そう考えております。

小里委員 メキシコ、カナダも手を挙げてきておるという話であります。

 この図で見ますように、メキシコとは日本は既にFTAを結んでおります。メキシコとの協定で、日本は守るべきものを守っております。牛肉、豚肉、あるいは小麦、米その他、守っております。メキシコにしてみれば、取り逃したものであります。これを取り戻せるかもしれない、そういう感覚でもって名乗りを上げたんだろうと私は思います。カナダも同様であろうと思います。カナダも、乳製品を初め、とりたいものがいっぱいある。いわば日本を食い物にできる、そのチャンスだということで手を挙げたんだろうと私は思います。

 あるいは、お話をいただいたアジアの国々、これからいろいろな課題を解決していかないといけない事情を抱えております。そういった国々にとって、TPPのこの非常に野心的な厳しいルールというものは、いかにもハードルが高いんですね。だから距離を置いているんですよ。

 パネル五番をごらんいただきたいと思います。

 ASEANがTPPに対抗して固まろうとしているという記事であります。まずは、ASEANはASEAN周辺でもってしっかりと固めよう、それでもってTPPに対抗しようとしている、そういった記事であります。

 もう一回、パネル四に。

 要するに、TPPへ日本はなかなか、中国も当然でありますが、アジアの重立った国々は入っていきづらいところがあります。では、どうしたらアジアの成長を取り込んでいけるんでしょうか。

 この地図でごらんいただきたいと思いますが、アジアの成長を取り込むには、まずは日本がしっかりとアジアの自由貿易圏構想をつくることに主導権を発揮すべきであろうと思います。

 ごらんになってわかりますように、ASEAN自由貿易連合、この国々とは既に日本は、ここにもう一本線を引くべきでありますが、FTAを結んでおります。すなわち、ASEANプラス1はもうできておるんですね。中国、韓国とも共同研究を日本は進めている。これを入れたらASEANプラス3になります。さらに、オーストラリア、ニュージーランドを加える。インドとは既に結んでおりますが、これを加えますとASEANプラス6になります。既にASEANプラス6まで視野におさまってきておるんです。

 TPP以外に動いておる貿易圏構想はないというお話でありますが、事実上もう動いておるんですよ。既にアジアの経済統合は始まっているわけであります。しかも、このASEANプラス3ないし6の方がTPPより二倍の経済効果がある。これは政府系の独法の発表であります。あるいは、ASEANルートの方が極めて柔軟に、いわば日本の農業を守り、日本の社会のシステムを守り、文化を守っていく、そういう柔軟なルールがつくっていける可能性があるんです。

 アジア太平洋地域の貿易圏構想という山に登るのにTPPルートとASEANルートという二つのルートがあるとすれば、TPPルートよりもASEANルートの方が早いし、安全だし、景色がいいということになります。ぜひそこは、アジアの方の取り組みも今進めていただいておりますが、ぜひ精力的に進めていただきたい。そして、このASEANルートをしっかりと確立させてから、それからTPPに対応していく、しっかりと正面から対応していく、それが一つの筋道であろうと思います。

 時間がありませんから、一言お願いします。

玄葉国務大臣 一言で申し上げれば、ASEANプラス3もASEANプラス6も進めていきます。ただ、カナダとはまだEPAを結んでいません。ですから、我々から何か今回のTPPで取り損ねたものをとろうということではありませんし、一方で、例えばベトナムと我々はEPAを結んでおりますが、とれていないものがいっぱいあります。だから我々はとろうと、一カ国だけ挙げてベトナムに申しわけないんですけれども、ですから、そういうこともあるということは理解をしていただいて、建設的な議論をぜひさせていただきたいと思います。

小里委員 カナダ等とは個別に進めていってもいいんだろうと思いますね、一つの方法として。

 平成の開国、バスに乗りおくれるな、そういったいわば情緒的な言葉でもってTPPがあおられてまいりました。全体主義的な様相すら呈しているわけであります。考えてみますと、戦前の新体制運動で、バスに乗りおくれるなという言葉がスローガンとなりまして、日独伊三国軍事同盟へと走っていったわけであります。あるいは、情報を隠蔽する、都合のいい情報ばかりを発信する。今の政府の姿勢、まさに大本営発表であります。

 開国ということでありますが、日本は日米通商修好条約を幕末期に結びました。これは不平等条約だと言われております。すなわち、何が不平等であるかといいますと、関税自主権の放棄、そして治外法権を認めさせられたわけであります。TPPにおける関税撤廃は、まさに関税自主権の放棄であろうと思います。TPPにおけるISD条項は治外法権に通ずるものがあります。

 そういった不平等条約を日本は改正をするのに何と五十年かかっているわけであります。ましてや、今回のTPPでは、日本の文化あるいは日本の社会のシステム、農業だけじゃなくて経済全般にまで影響が及びかねない大変な課題であります。その対応の仕方次第では取り返しのつかないことになりかねないわけであります。私は、今の民主党にそれができるのか、極めて厳しい交渉が予想されます。本当に民主党政権でそれがやっていけるのか、極めて不安であります。

 よろしかったら、一言。

野田内閣総理大臣 過去の不平等条約であるとか最近の厳しい状況のお話が中心だったと思いますけれども、私はもうちょっと戦略的にアジア太平洋地域を考えた方がいいと思っております。

 やはり繁栄の中心はこれからパクス・パシフィカの時代になると思います。そのときに、分厚い中間層を取り込んでいく、巨大な中間層を取り込んでいく、そして豊富なインフラ需要に応えていく、これは日本にとってチャンスだと思います。

 そのチャンスをつくるときに、貿易・投資のルールについて日本がイニシアチブを持っていくこと。このアジア太平洋地域にはピンチもあります、海洋をめぐる問題ほか、そういうピンチについても日本がイニシアチブを持ってルールをつくっていくこと、そういう積極的に捉えて対応すべきではないかと思います。

小里委員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、梶山弘志君から関連質疑の申し出があります。下村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 きょうは集中審議ということで、福島の原発対応について質問をさせていただきます。

 つい先般、NRC、アメリカ原子力規制委員会の議事録が公表をされました。また、民間事故調の発表もありました。そして、今現在、政府事故調の中間報告を経て、また、国会事故調におきましても、随時議事録が出ているということであります。この結果を随時原子力の安全に反映させていくという責務が政府にはあると思っております。

 こういった調査結果がいろいろ出てくることはすばらしいんですけれども、一方で、残念ながら政府の議事録がなかったということで、日米の認識の差が浮き彫りにされているなというような気がいたします。

 今度の事故調の結果を、先ほど申しましたように、随時安全対策に反映をしていかなくちゃならない。と申しますのは、大半の原子炉はとまっているんですけれども、そこには使用済み燃料プールがある、また原子力の研究開発に携わる施設等もあるということで、そういったことを今回の二の舞にならないように防いでいくということであります。

 ですから、事故調の結果、またNRCの議事録の発表に関しては、いろいろな見解があるかと思いますけれども、できる限り詳細に、誠実に、的確にお答えいただければと思います。

 まず最初に、米国との事故直後のやりとりについてお伺いをしたいと思います。

 NRCの議事録を見ますと、大変な緊迫感の中で、日本からの情報が足りないということで独自に判断せざるを得なかったということが書かれております。

 三月の二十一日に日米の合同会議が開かれるまでアメリカは独自に情報を収集していったということでありますが、その結果、かなり慎重な判断もされたと思うんですけれども、なぜ三月の二十一日までアメリカに的確な情報の提供ができなかったのか。枝野経産大臣、当時官房長官でありますが、官邸に情報が集中していたということでもありますし、今回の民間事故調のインタビューにも答えられているということですので、ぜひ詳細にお答えいただければと思います。

枝野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 確かに、日米間の情報共有といいますか、意思疎通が十分ではなかったという嫌いがございまして、それを踏まえて、二十一日以降、合同調整会議を設置いたしまして、その結果として相当意思の疎通がよくなったという経緯がございます。

 当初の段階においては、情報共有がというよりも、十分に当時の、私、官房長官という立場からもそうですし、それから官邸全体あるいは保安院全体としてもでありますが、十分な情報の掌握や、それの整理ができていなかった。

 一方で、アメリカ側からは、もっと、つまり、その時点で発表したり公表したりしている事実関係以外にも、何か政権中枢などは知っているのではないかという認識がおありになったのではないか、そうしたところで認識のずれといいますか、そうしたことがあったこと。

 そして、ここは、今、逆に経済産業大臣という立場で、特に保安院が所管でございますので、保安院と例えばNRCとの関係について、具体的にどういうベースでどういうやりとりをしていたのかということは、さらにきちっと精査をしないといけないなというふうに思っております。

梶山委員 今大臣からお話を伺いましたけれども、こういう事故というのは初動が大切なんですね。初動の動きいかんによって、その事故が大きくなるのか、それとも収束するのか、また国民に不安を与えるのか与えないのかということも含めて、初動が大切だと思うんですけれども、その点で、アメリカの技術も導入をしている、日米原子力協定も結んでいる、そしてアメリカと緊密なほかのやりとりもあるという中で、なぜアメリカに情報がないと言われるような事態になったのか、私はちょっと理解ができないと思っております。

 これは情報開示を拒んだということではありませんね。

枝野国務大臣 当時の官房長官としての私の認識としても、それから今経済産業大臣として一連のいろいろな調査報告や、今回御質問を受けるということで保安院等にも確認いたしましたが、持っている情報はアメリカと共有をした上で、できるだけの御協力をいただくようにと官房長官として指示もしておりましたし、少なくともそういう認識で仕事をしていたというのが現時点での保安院から上がってきている報告でございます。

梶山委員 それでは、日米の合同の会議が開かれる前にアメリカから直接支援の申し出があったということがNRCの議事録にはありますけれども、そして日本がそれを断ったということで記載されておりますけれども、その事実はあるんでしょうか。

枝野国務大臣 少なくとも、具体的な話として、どこかに来た話について、支援を断ったというような話については承知をしておりません。

 ただ、民間事故調の報告書によれば、政府ではなくて、独立行政法人原子力安全基盤機構に対し支援の申し出があったことに対して、日本時間三月十二日の夜八時過ぎに、必要があれば支援をお願いしたいということで、具体的な支援の申し出に対しては今のところ必要ないと読み取れるような趣旨の、メールで回答したというような記載がございます。これはアメリカ側からの情報のようでございます。

 機構に対しての申し出として機構として回答したということでありまして、今、そのやりとりに政府として関与していないかの確認をしておりますが、それについては関与していないというのが今までのところの報告でございます。

梶山委員 独法の機構のやりとりだということなんですけれども、民間事故調またNRCの書類によりますと、規制当局に直接ということが書かれている文書を見ましたけれども、ここで水かけ論をしても仕方ありません。ぜひその真相究明というか、どこが受けて、どこが、ニュアンスの違いはありますけれども、断ったのかということをぜひ明確にしていただきたいと思います。

 それでは次に、官邸の対応ということで、ここにきょうはおいでにならないんですけれども、菅前総理の対応についても幾つかポイントが書かれておりますので、その点についてお伺いをしたいと思います。

 まず、第一原発を視察ということでヘリコプターで出かけたわけでありますけれども、これに関して、枝野当時の官房長官は、絶対に後から政治的な批判をされると反対をしたが、菅総理はそれを振り切って行ったというような表現が、それが事実かどうかはまた一緒に御答弁をいただければと思いますけれども、そういう発言がありますけれども、これは真実でしょうか。

枝野国務大臣 十二日の未明の段階で、東京電力あるいは原子力発電所の方から、十分な情報、それも例えばベントができないということについて、なぜできないのかといった情報が入ってこないということの中で、事態の重要性に鑑みれば、誰かがしっかりと現地に行ってコミュニケーションのラインをつくってこなければならないという認識は私も持っておりました。その場合、行くとすれば、総理か、当時の官房長官としての私か、海江田経済産業大臣かであろうというふうには思っておりました。

 したがって、誰かが行くということについては、私もそうであるだろうと。そして、その場合、政治的なリスクを考えなければ、原子力について若干でも基礎的な素養を持っている菅総理が一番望ましいだろうと私も思っておりましたが、ただ、政治的なリスクとしては、総理が官邸を離れるということについては、それがもし客観的に正しい判断だったとしても批判をされるであろうと。したがって、そのことは官房長官として申し上げました。

 ただ、当時の菅総理は、そういった政治的なリスクよりも、いかにこの原発の事態を収束させるのかの方が重要なんだから、そういった要素のことは考えなくていいということでお出になった、みずから行くという判断をされた、こういう経緯でございます。

梶山委員 今、誰かが行く必要があるという認識はあったということでありますが、総理が行く必要はないと思うんですね。誰もがそうは思うんですね。多分、海外の方でも、えっ、総理が行ったのというような反応だと思うんです。

 体を張ってでもやはりとめるべきだったんじゃないか。今だから言えるのかもしれませんけれども、私は事後であってもそういう意識を持っておりますけれども、この件に関しましてはいかがでしょうか。

枝野国務大臣 官房長官の役割というのは、内閣総理大臣を政治的に守るという役割と、もちろん国務大臣として国民益、国益のために仕事をするという両面があると思っています。時としてそれが矛盾をする場合もあり得るというふうに思います。

 内閣総理大臣を守るという観点からは、体を張ってでもとめるべきであったと思っておりますが、国民益、国益を守るという観点からは、判断は間違っていなかったと思っております。

梶山委員 国民益、国益から考えても、私は総理が行くべきではなかったと思います。どなたか技術的に詳しい方と、あと、総理の権限を委任されたような方が行くべきであったと思っております。

 今でも、間違いではないということを今断言されておりますけれども、再度伺いますけれども、間違いではなかったという判断でしょうか。

枝野国務大臣 総理大臣を守るという観点からは、体を張ってでもとめるべきであったのではないかと思っておりますが、原子力発電所の事故をいかに小さく早く収束させるかという観点からは、菅総理が当時行かれたことは間違っていなかったと私は思っております。

梶山委員 総理が最適任者だということでありますか。それとも、総理大臣が行かなくちゃならないという意味でしょうか。どちらでしょうか。

枝野国務大臣 十一日の深夜から十二日の未明にかけて、海江田経産大臣を先頭にして、東電のリエゾンの方、あるいは保安院の幹部、班目委員長にも途中からお入りをいただいて、相当激しく、何とか情報をちゃんと上げてくるようにということをやりとりしていたにもかかわらず、そして、ベントを早くしないと大変なことになるかもしれないという問題を共有して、それは東電の方なども含めて共有していたにもかかわらず、なぜベントが行われないのかという情報すら上がってこないという状況。まさに我が国にとって、その時点で早くベントを実施する、あるいは、少なくともベントができないならなぜできないのかという情報を、保安院の幹部であったり安全委員長であったり、あるいは政権の中枢がしっかりと掌握ができるということなしには、まさに他のあらゆる手段が、本当に原発が爆発するようなことになったら対応できなくなるというか、大変大きな被害をもたらすという状況の中にありました。

 したがって、現地で責任を持って判断できる人間が行って、ちゃんと情報が上がってくるようなラインをつくり、現場の状況を把握するということが必要であった。その際においては、やはり責任を持って判断するということを含めて考えれば、もちろん専門家である班目委員長にも御同行いただいておりますが、政治的に責任を持つことのできる立場として、総理か官房長官か経産大臣か、誰かが行く必要があるだろう。

 リーダーシップのあり方として、一番のトップは、どんと構えて、上がってくる情報をしっかりと踏まえた上で判断するのが日本型の一般的なリーダーシップのあり方として評価をされるであろうということは、その当時から私も認識をしておりましたが、ああした、まさに危機的な状況になりかねない状況の中にあっては、むしろ、最終的な責任と判断の権限を持つ者が最前線で情報を把握せざるを得ないという状況の中でありました。

 私は、いろいろな御批判はあろうかというふうに思いますし、それから、現地での対応ぶりなどについて、ほかにももうちょっとやりようがあったのではないか等という御批判はいろいろあろうかというふうに思いますが、総理があそこで原発に行って現地の所長等とコミュニケーションをとるという判断、そして、実際にそのことによって、その後、とにかく吉田所長が、これもいろいろな客観的な御評価はあるかもしれませんけれども、少なくとも責任感を持って仕事に取り組まれて、そして、少なくとも一定程度適切な御判断をされた、ここが非常に信頼に足る人物であるということをしっかりと判断、認識できたということを含めて、その後の対応に当たっても大変意義のあったことだと私は思っております。

梶山委員 総理が、最高責任者として、その後にさまざまな判断をするのに吉田さんが非常に信用に足る、信頼できる人物だということを認めることができたということは、そこは認めますけれども、果たして総理大臣が行く必要があったのか。そして、さらにはまた、このことによってベントがおくれたようなことがなかったのかどうかというと、非常に疑問に感じております。

 この議論に関しては、昨年の五月来ずっと議論しています。ですけれども、その五月のときには、推測であるとか、また確実ではない新聞記事やニュースを前提にそういうやりとりをさせていただきました。きょうは、冒頭申し上げましたように、NRCの議事録が公表になった、そしてさらには民間事故調の報告書も出てきた、そして、政府事故調や国会の事故調の中間報告や議事録も出ているという中で、一つ一つ確実にやはり検証していく必要があるんですね。これは、私は、今、菅総理はおやめになりましたけれども、菅総理一人に責任を負わせる気はありません。今後、こういう事故が起こったときに、どういう対応をするのか、どういうシミュレーションをするのかということが大事だから聞いているわけであります。

 そして、冒頭申しましたように、大半の原子炉はとまっていますけれども、そこに使用済み燃料がたくさん入ったプールがあり、そしてさらには原子力の研究開発施設もある。けさのことでありますけれども、茨城の県北部で震度五弱の地震がありました。東海村は大丈夫かなという思いで、私も地元ですから思いましたし、またニュースでも、東海村の原子力施設には問題はないようですという話がありましたから、安堵をしたわけでありますけれども、そういった観点で、これから、あしたにでもやはり可能性としては起こる可能性があることに対して、総理が行ったんだから、次も総理が行くんだということになるのかどうなのか。

 先ほどおっしゃいましたように、総理大臣か官房長官か経産大臣ということでありましたけれども、そういったシミュレーションも、枝野大臣の判断だけでなくて、やはりもう始めるべきであると思いますけれども、御意見いかがでしょうか。

枝野国務大臣 まず、ベントに対する影響については、これは、民間事故調の報告書あるいは政府事故調の中間報告等で、特に政府事故調の中間報告等で初めて私も知ったことがございますが、原発の線量の問題であるとか、それから、県とのやりとりの中で、避難を優先させた等という現地の、適切な判断だったのではないかと思いますが、そういったことが事情であったということは明らかになっている、菅総理が行かれたことがおくれの原因ではないということは明らかになっているというふうに私は思っております。

 その上で、私は、一般論として、あの局面であれば、内閣総理大臣の職にある者が行くことが適切であるということを申し上げているつもりはありません。同じようなことがまた起こってはいけないわけですが、もし、今の立場で、今の顔ぶれで、あのときと同じような局面があったら、私は、経済産業大臣として私が行きますということを強く総理に申し上げるだろうと思います。

 これはまさに、危機時においての、基本的なマニュアルや基本的な考え方は当然事前に準備しておくべきだと思いますが、その局面局面における判断であるというふうに思います。

梶山委員 それでは、もう一つ。

 保安院と総理との信頼関係が崩れていたということで、総理が六名の内閣参与を任命されたわけでありますが、これがまた、情報が錯綜したり混乱をする原因になったと私は感じております。このことにつきましても、枝野大臣が、常にやめた方がいいですよととめていましたという、新聞記事でありますけれども、そういう記載がありますけれども、事実、そうなんでしょうか。

枝野国務大臣 これも先ほどの、官房長官として内閣総理大臣を守るという観点からは、いろいろな視点から、総理大臣のリーダーシップのあり方であるとか危機管理のあり方について、政治的にあるいは社会的に批判を受けるということになるであろう、したがって、避けた方がよろしいですということは何度か総理に申し上げました。

 ただ、まさにああした危機管理の状況の中において、国民益、国益を守るという観点からどうであるのかということについては、私は菅総理に意見は申し上げておりません。

梶山委員 保安院に対する信頼をなくしていたということで、総理の決断のときにはこの六人の内閣参与の方がアドバイスをしていたと思います。

 そして、もう一方、総理にしっかりとした進言をする立場として原子力安全委員会があるわけでありますけれども、このベントと海水注入に関して判断するまでの間で、班目安全委員長にも相談があったかと思います。そして、このことでベントや海水注入がおくれたというふうに思うのかどうか、班目委員長の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

班目参考人 まず、ベントのおくれでございますけれども、私が最初にベントを進言したのは十一日の夜九時ぐらいだと思います。この時点では、私は、まだ炉心は溶融に至っていない、ただ最終的な熱の捨て場がなくなっておりますので、とにかく圧力を下げて、圧力容器の中に水を入れ、そうするとその水の行き場がないから、蒸気としてベントをしなきゃいけない、そういう形で進言してございます。ただ、後からわかったことでございますけれども、直流電源まで全部失われている状態では、これがほとんど不可能だったということでございます。

 さらに、事態は進行してしまって、夜中を過ぎると、今度は格納容器の圧力自体が上がってきている。こうなってくると、私としても、恐らく格納容器の中にはかなり放射性物質が出ているということで、これはまたさらに住民の避難という問題も絡んできた。さまざまなことがあっておくれたのであって、このあたりを時系列も含めてしっかり御理解いただきたいと思っている次第でございます。

 それから、海水注入につきましては、この件につきましては、十二日の午後のかなり早い時点から、もう真水がなくなるということで、海水注入やむなしという議論は行われてございました。それで、その場合どういう問題があるかということでは、例えば塩が析出してしまったら困るとか、あるいは腐食が進むと困るとかいうことについても、いろいろ議論は済んでいたところでございます。

 それで、その問題が、夕方になってさらに何か問題になったというふうにいろいろなもので読むわけですけれども、このあたりについては、私は正直なところ、はっきりとした記憶はございません。はっきり申し上げられるのは、海水を注入することによって再臨界が起こるかと聞かれると、これは温度が冷えれば再臨界の可能性は常にあるわけですから、ゼロではないと答えると思います。ただ、臨界しても構わないんです。それよりも冷えないことの方がもっと大問題なので、必ず海水でも何でもいいから冷やすために水を入れてくださいということは私自身は申し上げていたつもりでして、それがおくれた事情については、私の方では承知してございません。

梶山委員 今再臨界のお話がありましたけれども、班目委員長が再臨界に関して当時の菅総理にアドバイスをした、そのことによって菅さんが慎重になった、これも一つ考えられる、当たり前のことかもしれませんけれども。

 ゼロではないという言い方だったわけですか。それとももう少し違う言い方があったわけでしょうか。

班目参考人 正直申し上げて、ゼロではないというのは、可能性はなくはないという言い方であって、私としては、はっきりと申し上げられるのは、私がゼロではないと申し上げたことによって、海水注入をためらうような雰囲気がそこに生じたということはなかったと記憶している。そういうような事実は、全く記憶がございません。

梶山委員 はっきりしないということでありますが、一方の当事者だけから話を聞いてもなかなかはっきりした事実がわかりませんので、委員長にお願いでありますけれども、菅前総理を参考人としてこの委員会に呼んでいただくことを理事会でお諮りいただきたいと思います。

中井委員長 理事会で協議をいたします。

 同時に、国会で調査委員会もつくられておりますから、そういったものの結論も見てみたいと考えておりますが、必ず協議いたします。

梶山委員 次に、水素爆発の可能性なんですけれども、これに関しては、班目委員長が水素爆発の可能性はないと言い切ったかどうかはわかりませんけれども、そういうニュアンスで菅総理は捉えていて、水素爆発はないと言ったじゃないかというような、現場にいるような会話が出てきているんですけれども、その辺についての御記憶はいかがでしょうか。

班目参考人 非常にはっきり記憶していますのは、ヘリコプターで現地に向かうときに、これからどういうことが行われるのかということについて御説明申し上げております。

 ベントという操作は、原子炉圧力容器の中の蒸気を格納容器に出して、そうすると格納容器の圧力が上がってしまうので、大気にベントする、こういう手順になります。

 このとき、菅総理の方から、それでは炉心が損傷していたらどうなるのかというお尋ねがありましたので、その場合には水蒸気と反応して水素が生じていますと。菅総理の方から、それでは水素が爆発するのではないかというお尋ねがあったので、格納容器の中は窒素で置換されていますから、そこには酸素がないので爆発しません、最後に、スタック、煙突のてっぺんから出たところで初めて酸素と触れ合って燃えます、そういう形になりますので、このベントというのを急げば水素爆発の可能性はございませんというふうにはっきり申し上げていると思います。

梶山委員 格納容器の中に限って言えば爆発はないですというお話でしたけれども、それ以上の想定というのはなかなかその場ではできなかったものでしょうか。

班目参考人 爆発といった場合、核爆発という問題と、それからチェルノブイリのような、あれは水素爆発ではなくて水蒸気爆発なんです。それと、あと水素爆発の問題がございます。

 それで、私は、恐らくいろいろな形で、核爆発というのはあり得ませんよ、ただし、チェルノブイリのようなことになっては困るので、水蒸気爆発というのは大変気になります、ただ、可能性としてはかなり低いだろうと申し上げていると思います。

 最後の水素爆発なんですけれども、これについては、建屋の気密性があそこまで高くて水素爆発が起こるということまでは、私もちょっと失念していたというのが実態でございまして、水素爆発が建屋で生ずる可能性については何も進言していない、これは事実だと思います。

梶山委員 次の質問で、炉心溶融、メルトダウンの可能性についてどうお考えかということをお聞きしたいんですけれども、水素爆発と絡んで、炉心溶融、メルトダウンと言われる、燃料棒が損傷して、燃料を入れている被覆管が溶け出して、そして水と反応して水素ができてくるということは、その進言をした時点では、水素爆発の可能性について進言したときには、そういう認識というのはございましたか。

班目参考人 ヘリコプターの中で、現地に行くときには、実は、ヘリコプターで現地に着くまでにベントは終わっていて、もう水の注入が始まっているのではないかというふうに私は勝手に思い込んでおりました。その時点では、したがって、まだ炉心は溶けていないと思っているわけです。

 ただ、後からよく考えてみると、しかし、既に格納容器の圧力が上がっているということは、これはもう炉心は溶けていて水素が発生していたと考えなきゃいけないなというふうに、後からは非常に反省した事項でもございます。

梶山委員 班目委員長だけが技術的な話をするわけじゃないですから、班目委員長の周辺に、また菅総理の周辺に、その可能性について言及する方はいなかったんでしょうか。

 というのは、今、失念をしていたということでありますけれども、燃料が損傷すれば当然水素が発生をしている、さらにまたそれが進めば格納容器も損傷する可能性があって、そこから水素も出る可能性がある、また、ベントをすれば出る可能性もあるということでしょうから、後になって冷静に考えれば、そういうことは、我々技術者じゃない者であっても理由を聞けばわかるわけなんですけれども、そのときの技術者で、総理また班目委員長にアドバイスをする方はおいでにならなかったんですか。

班目参考人 十一日から十二日の未明にかけては、私がいたのは、危機管理センターの中二階と呼ばれている部屋の、十人も入ればいっぱいになってしまうような非常に小さな部屋でございます。そこには、多分、私以外には、東京電力の武黒フェローと川俣部長と、あと誰か東電の人間がいたと思います。それからあと、保安院も、平岡次長あたりがいたと思いますが、基本的に、技術的な話は私と武黒フェローとの間で交わされていて、これは海江田大臣からの要請で、武黒フェローから直接頼まれても政府としては例えば自衛隊を動かすとかそういうことはできないので、私の口からどういうことが起こっているかを説明せよと言われたということです。

 そのときの雰囲気としては、相談できる相手は、私は、私以外には武黒フェローしかいないという状態でアドバイスを続けなきゃいけなかった。保安院の方からいろいろな情報というのが、私の記憶では全く入ってこなかった状態だったというふうに記憶してございます。

梶山委員 技術についてアドバイスする方が班目委員長しかいないような状況、そして、東京電力の武黒フェローとやりとりはするけれども、基本的には班目委員長が総理にアドバイスをするということですが、こういう緊急時にそういった体制がいいのか、望ましいのかどうかという点では、いかがお思いでしょうか。

班目参考人 実のことを申し上げますと、そのような形で私がずっと助言をする形になるとは思ってもいなかったところでございます。

 それで、よく考えてみると、まず、こういう形では無理だから、少し技術的な人間を集めてきちんとした議論をしながらどうあるべきかというのを議論すべきだということを、本来だったら進言すべきだったのかなというふうに今では反省してございます。

 ただ、当時の物すごく緊迫した状態で、即刻何か、これはどうしたらいいかということの助言を求められている状態では、正直申し上げて、そこまで頭が回らなかったのも事実でございます。

梶山委員 国の行く末を決めるようなというか国の危機対応ということで、果たしてそれでいいのかなという気がいたします。まあ、いずれこれも検証されることでしょう。

 そして、メルトダウンの認識についてなんですけれども、アメリカ側、NRCは初動でその可能性についても言及をしているということでもあります。そして、私も、四月の六日に経済産業委員会で、メルトダウンについて細野大臣が言及しているけれども、そういう事実があるのかということを問い合わせたところ、ないという答えが返ってきております。そして、メルトダウンということに関しては、燃料棒の損傷よりもさらに進展したことをいうということで、当面は燃料棒の損傷を認識しているところだということがありました。

 それぞれ政府部内においても認識が違うのかなという気がいたしますけれども、班目委員長は、燃料棒の損傷、メルトダウン、段階が違うのかもしれませんけれども、それらについてどういう認識をお持ちだったでしょうか。

班目参考人 明らかに、十二日のかなり早い段階から、メルトダウンは進んでいるという認識ははっきり持ってございました。

梶山委員 それは情報隠蔽になるんじゃないでしょうか。

 と申しますのも、原子力というのは公開が原則ですよ。これは、公文書管理法があるなしにかかわらず、細大漏らさず外に対して公表していく、その上で信頼が成り立っているということであります。そういったことが政府部内で議論をされて、安全委員長が認識をしているのに、そういった情報が出てこないということはどういうことなんでしょうか。

班目参考人 このような非常事態においては、原子力安全委員会というところは助言機関でございます。そして、実際に国民に対して発信するところは原子力安全・保安院でございます。原子力安全・保安院に対して原子力安全委員会はいろいろと助言する、あくまでも国民に対しては原子力安全・保安院の方から説明する、こうあるべきなんです。もし原子力安全委員会が原子力安全・保安院と全く違うことを言い出したら国民は大混乱に陥るということから、ある程度、表現を差し控えざるを得ないという状況であったということを御理解いただきたいと思います。

梶山委員 それでは、発表すべき保安院に対して班目委員長はどういうやりとりをしたのか。保安院と意見が違うから我々は意見を差し控えるということだけでは、国民に対する役目は果たせていないと思っています。

 そして、現実に、五月十二日に東電がメルトダウンを認めたということになりますが、ここまで国民はメルトダウンの事実というものを知らなかったということになるわけなんですけれども、それらも踏まえて、委員長はどうお考えでしょうか。

班目参考人 メルトダウンという言葉であったかどうかは知りませんけれども、少なくとも原子力安全委員会は、三月の時点において、たしか二号機のタービン建屋で高濃度の汚染水が発見された時点において、これは溶けた炉心と冷却水が接触してできたものです、その接触した場所も、圧力容器の中かもしれないし、格納容器に出たところで起こったことかもしれないということをしっかりと文書として発出してございます。

梶山委員 文書として発出しても、国民に対するメッセージにはならないと思うんですね。

 そして、このことがわかれば、自主避難も含めてもう少し安全な方へ皆さんの考え方が動いたと私は思うんです。ちょっと余りにも無責任な表現ではないかなと思いますけれども、何か反論があれば。

班目参考人 原子力安全委員会としては、保安院に対して再三再四、炉心の状況がどうなっているのかをきちっとした形で国民に説明しなさいということを原子力安全委員会の本会議の場で再三申し上げております。それにもかかわらず、持ってくる絵というのが、物理的にあり得ない絵というのを持ってこられている。そういうことが続いていたということをぜひ御理解いただきたいと思います。

梶山委員 理解できないですね。やはり理解できない。

 それは、持ってくる絵が違った、政府部内でのやりとりですよね。それを、今、こういうことだったから理解してくれ、後になってから、しばらくたってから、実はメルトダウンは我々は認識していたんだと言っても、何となく納得できないことだと思います。もうこれ以上は、言っても同じような話しか返ってこないと思います。

 そして次に、SPEEDIについてお伺いいたします。

 これは私も復興特の中で、当時の枝野官房長官にSPEEDIの存在を知っていたか、知らなかったかという質問を五月の二十三日にさせていただきました。正直に、知らなかったということでありますし、後にわかってからその対応を図ったということでありますけれども、班目委員長は当然SPEEDIの存在は知っていたということでよろしいんでしょうね。

班目参考人 これは防災訓練においてERSSとSPEEDIを使って避難区域の決定を行うということをやってございますので、当然よく承知しておりました。

梶山委員 政府部内では、文科省からの説明がなかったということであります。

 そして、三月の十六日、今度は運用が文科省から安全委員会の方にかわったということでありますが、これは間違いない事実でありますか。

班目参考人 三月十六日に官房長官の方からの指示があったのは、モニタリングについての実施は文科省で行いなさい、その評価は安全委員会で行いなさいということであって、SPEEDIの移管については一切官邸の方から指示は受けてございません。

 それにもかかわらず、文部科学省の方から、ある意味では文科省の中で決定して、SPEEDIは安全委員会の方でこれからは運用することにしてもらいたいというふうな話があったと承知してございます。

梶山委員 その時々の気象状況を示すだけでも避難には役立ったと私は思っておりますけれども、残念ながら、班目委員長、先日の国会事故調の中で、役に立たない、SPEEDIは避難に使えないというような表現をされているわけでありますけれども、これも事実に相違ありませんか。

班目参考人 実際問題として、風というのはくるくる回るものです。そして、放出源情報がないと、一体どこの方に風が吹いたときに放射性物質が行くかということは非常に予測するのが難しい話になります。さらに、SPEEDIの計算自体一時間かかります。

 したがって、今回のような非常に早い現象のときには、このような予測手段を使って避難を決める、こんなことをやっている国は世界じゅうどこもございません。そういう意味では、あらかじめ違う方法、すなわち、発電所の方の緊急時の状態がどれぐらい差し迫ったものかという指標によって半径何キロという形で避難をする、これが世界の標準的な考え方でございます。

梶山委員 班目委員長は今も安全委員長だと思うんです。もしということは余り言いたくありませんけれども、きょうなりあしたなりこういう事故が起きたとき、避難についてのアドバイスを総理大臣にすると思うんですけれども、今度は何を利用して避難をせよということなんでしょうか。

班目参考人 現在、原子力安全委員会の方では防災指針の見直しを進めてございます。その中に基本的な考え方というのはもう既に示してございます。

 実際の避難ということになりますと、地区の区割りの問題がありますので、少し行政庁の方に手伝ってもらわなきゃいけないんですが、大ざっぱな地図をもとに、やはり、半径何キロのところは今避難してくださいとか、次は半径何キロについてはと、そういう避難の指示になるのではないかと思います。

梶山委員 私の地元であります茨城県、東海村があるんですけれども、東海村は平和利用の先駆けであったわけですね。

 茨城県は、いろいろなところで原子力に対しての理解を求めるための読本、冊子等を発行しています。そして、小学生、中学生、高校生、一般向けのものとあるんですけれども、その中に、SPEEDIがあるから安全だということが書かれているんですよね。私たちもやはりそれを見ています。

 現実に、これは高校生向けのものですが、きょうは資料を提出していませんけれども、ここに、「事故のときに大気中の放射性物質がどう動くかを地形や気象条件を考えに入れながら予測するSPEEDIが整備されています。」ということが書いてあるんですよね。やはりこういったものを信じて立地をして、いざ事故になったときに大丈夫だという思いを持っている人たちがたくさんいるということなんですよ。

 非常に無責任じゃないですか。今、現職の安全委員長ですよ。おやめいただいたらどうなんですか。辞表を出したらどうなんですか。私は地元として黙っていられない。

班目参考人 まず、SPEEDIに関しては、おっしゃるとおり、文科省の管轄で行われていたものなので、安全委員会としてはもうちょっといろいろ意見を申し上げるべきだと思っております。

 それから、私自身の処遇でございますけれども、いずれにしろ、四月になりますと新規制組織になるということで、原子力安全委員会自体がなくなりますので、当然やめることになると思っております。

梶山委員 余りにも無責任な発言じゃないですか。四月になったら新しい組織になるからやめる、だからいいんだということで、あした起こるかもしれないんですよ。きょう起こるかもしれない。現実に、きょうの朝も震度五弱の地震があって、みんな心配していたんです、東海村どうだったかなということで。それが、四月になったらどうせ今度は新しい組織ができますからということだったら、そういう考えの方だったら、即刻辞表を出してやめるべきだと思います。御意見があれば。

班目参考人 原子力安全委員会としては、例えば安全設計指針とか、いろいろなものが明らかに間違っていた、したがって、まずこれを直すということに全力を挙げるということで、三月いっぱいをもって、全力を挙げているところでございます。

梶山委員 設計指針はいいですけれども、事故が起こったときどうするんだと。野田総理に対して技術的な助言をする、どうしたらいいということをこの無責任な班目委員長がするということですか。

 総理、もしよければ一言感想を。

野田内閣総理大臣 東日本大震災を受けて、いろいろな教訓があったと思います。今度の新しい組織ができるまでの間も、委員が御指摘のとおり何が起こるかわかりません。その教訓を最大限に生かして、きっちりと安全のための役割を果たしていただきたい、緊張感を持って対応してほしいというふうに思いましたし、国民への説明も、緊張感を持って説明してほしいと思いました。

梶山委員 総理の言う緊張感、この緊張感に欠けるのが私は班目安全委員長だと今痛切に感じているところであります。

 きょうは、岡田大臣、おいでいただきまして申しわけございません。議事録の作成についてなんですけれども、先般、予算委員会で我が党の齋藤健委員の質問に答えて、反省をしているということですから、今さら謝罪は結構ですので、その進捗度合いについてお知らせいただければと思います。

岡田国務大臣 議事録につきましては、議事録といいますか、これは記録です。しかし、その記録というのは、意思決定の経緯及びその実績が把握できる文書ということでございますので、今それぞれの本部等で議事概要の作成を行っていただいているところでございます。

 私の承知している限り、おおむねそれが完了しつつある。しかし、最終的にそれぞれそこに登場する皆さんの確認も要りますので、そういった作業を今行っているところというふうに承知をしております。

梶山委員 冒頭申し上げましたように、菅前総理がおやめになるときに、後で歴史の評価を受けるということでありましたが、その評価を受けるための準備ができていなかったということであります。これは、公文書管理法等の議論も先般の予算委員会であったことも承知しておりますので、この議論はするつもりはありません。

 ただ、原子力に関しては、先ほども申しましたように、細大漏らさず全て公開ということの上に信頼が成り立っているということであります。ですから、このNRCの議事録を見て、アメリカの情報公開というのは進んでいるなということを感じるとともに、やはり今回の事故に対しての政府の認識の甘さがあったのではないかなと思います。

 私は、民主党政権を責めているわけではありません。これが、菅さんから野田さんにかわろうとも、野田さんからほかの政党にかわろうとも、同じことが指摘をされるわけであります。

 ですから、そういったことのないように、やはりきっちり議事録もつくり上げていただきたいと思いますし、評価にたえ得る議事録、メモの羅列でも私はいいと思うんですよ、そのときのメモがあれば。役人の方というのは、必ず我々のところに来るときもメモをとっているんですね。メモやめてくださいというところまでとっていますから、必ずあるんです、どこかに。私はしゃべりたくないときにはもう黙ってしまうんですけれども、必ずやはりそういうメモがあると思います。こういうものがないということ自体が、何か隠蔽しているんじゃないかという疑念を抱かせることになると思うんですね。

 もう一度、公文書の管理担当の大臣として、気構えをお聞かせいただければと思います。

岡田国務大臣 昨日も開いたわけですが、公文書管理委員会というのがございます。そこに私二つのことをお願いしておりまして、一つは、なぜ今回こういう事態に至ったのかという原因の究明でございます。関係のところからは既にヒアリングをこの委員会のメンバーが行っていただいておりまして、そのことを踏まえて、しっかりと原因を究明したいということであります。

 二番目は、今後そういうことが起こらないためにどうすべきかということをしっかりこの委員会でも御議論いただき、政府としてしっかりとした対応をしていきたいと思います。

 今、議事の概要などを作成している最終段階にあると先ほど申し上げましたが、これは、後世しっかりと、後世というか、原子力にしてもあるいは災害にしても、こういった大きな事故でありますので、そのことがきちんとわかるように、なるべく幅広く情報公開が必要であるというふうに考えております。

梶山委員 ありがとうございました。質問を終わります。

中井委員長 この際、城内実君から関連質疑の申し出があります。下村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。城内実君。

城内委員 自由民主党・無所属の会の城内実でございます。

 質問に先立ちまして、先般手術を受けられた天皇陛下の一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。

 本日、予算委員会での質問の機会を与えていただきましたこと、まことにありがとうございます。十分という短い時間ですから、重箱の隅をつついたり、あるいはクイズ形式の質問はいたしません。どうか御安心ください。保守派を自任されておられる野田総理の国家観、国益観といった本質的な問題のみ御質問させていただきます。御答弁は、何とぞ簡潔明瞭にお願いいたします。

 まず、本題に入る前に、政府は二十九日、皇室制度に関する有識者ヒアリングの初会合を総理官邸で開き、今谷明帝京大学特任教授、そしてジャーナリストの田原総一朗氏が意見陳述し、ともに女性宮家創設に賛成したと報道にあります。

 私は、民主党にあって数少ない保守派である政治家野田佳彦議員を、所属政党会派を超えて長年尊敬しておりました。女性宮家の創設は女系天皇への道を開く危険性があるといった学者の見解もあります。私も、どちらかというとその立場にあります。

 神武天皇以降、百二十五代と連綿と続いた男系の皇統を変更することは、我が国の国柄にかかわる重大な問題でありますから、いわゆる保守派である野田総理御自身は、有識者のヒアリング内容いかんにかかわらず、男系たるべしとのお立場であると理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。

野田内閣総理大臣 今般、有識者の皆様にヒアリングをしているということは、何よりも皇室活動が安定的になるように、今の御公務の御負担を考えたときに、そのことは急いで考えなければいけないというところから始まった議論でございまして、委員御指摘のとおりのこの長い長い歴史の歩み、あるいは憲法とか現行の皇室典範、その位置づけを考えたならば、皇位継承のあり方をここで議論することではないということは明確にさせておきたいというふうに思います。

城内委員 しかし、女性宮家創設を突破口にして、男系か女系かといった道を切り開くという懸念もありますので、これはまさに総理の歴史観、宗教観、哲学にかかわる問題ですから、何とぞ、これは慎重に御判断いただきたいというふうに思います。

 次の質問に移りますが、新政権発足に当たりまして総理が寄稿された昨年十月号のボイスの論文を読ませていただきました。増税論はさておき、そこに書かれてあることに私は多く共感いたしました。極めて健全な国家観、国益観を持っていらっしゃるなと思いました。例えば、「日本には海がある。排他的経済水域は面積でいうと世界で六番目。深さの要素を加えれば四番目。」と、海洋国家日本を高々と主張されました。また、最先端レベルの我が国の宇宙技術の利活用の提唱など、本当に私は共鳴しました。

 その点、野田政権の前の鳩山、菅政権は、事業仕分けで科学技術予算までも大幅に削ろうといたしました。人類史上の大快挙である「はやぶさ2」の予算、あるいは世界一のスパコン、こういったものを削減しようとしたではないですか。まさに、総理がボイスで主張されたことに全く反しています。

 事業仕分けは国民に向けたパフォーマンスであり、鳩山、菅政権の負の遺産であることを率直にお認めになってはいかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 事業仕分けは、やはり、行政の無駄はどこにあるかということを不断の努力で見ていこうという一環の中で行った事業でございますので、個別の事業の評価についてはいろいろ見方があるとは思います。しかし、従来と違った視点で、国民目線で、しかも国民が見ている中で、いろいろな人に集まって御議論いただいて、どこが無駄なのか、何をやめたらいいのかという議論をすること自体は、私は、基本的にこれからも必要ではないかというふうに思います。

 個別の話の評価はいろいろあるかもしれません。その過程でそういう議論をした方がいいとは思います。

城内委員 無駄をカットすることについて私は反対しませんけれども、必要な予算をつけるべきであって、無駄なものは徹底的にカットすべきであるということをやっていただきたかったと思います。

 次の質問に移ります。

 尖閣諸島の問題ですが、これはまさに、海洋国家日本の権益が侵されかねない重要な問題であります。海上保安庁法を改正して、海上保安官が警察官にかわって不法行為を働く外国人を逮捕できるようにするという改正案が今国会に出されるということを聞いております。これは私は、もし事実としたら、大変評価します。ぜひとも、他国や特殊な勢力の圧力に屈せず、こういった海上警備強化の取り組みを、領土問題が存在する竹島、北方領土も含めて、進めていただきたいと思います。

 そもそも、一昨年の尖閣諸島での中国船長の逮捕とその後の那覇地検による釈放という、主権国家としてはとても信じられないような民主党政権のまずい対応により、国会議員を含めて韓国の方々が我が国固有の領土である竹島に大挙押し寄せて音楽会を開いたり、そしてメドベージェフ大統領が戦後初めて北方領土を訪問したりと、惨たんたる結果が導き出されました。長年積み上げた我が国の領土問題が、この尖閣問題への対応のまずさで、二歩も三歩も四歩も五歩も後退してしまったではないですか。

 さらに、竹島の関連でいいますと、菅政権のときに、宮内庁所蔵の朝鮮王朝儀軌を、昭和四十年の日韓基本条約、文化協定に反して、政治判断で、これは返還じゃなくてお渡ししたと、何か意味不明なんですけれども、その後、日韓関係は飛躍的に改善するどころか、ソウルの日本大使館の前に慰安婦の銅像が建つ始末であります。これはまさに外交の失敗ではないですか。

 総理は、民主党政権の総理なんですから、前政権の失政を真摯に認め、反省を踏まえて、一から領土及び国土保全の問題に対処いただけますか。イエスかノーでお答えいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 今、多岐にわたるお話ですが、基本的には、領土、領海をしっかり守っていくという意味ではイエスです。

城内委員 もう時間がありませんので、次の質問に移ります。

 最後に、TPPの質問です。

 自国の国益を追求することとは、我が国の国民の幸せ、企業、団体の利益を踏まえて、あらゆる合法的手段を使って目的を実現すること、そしてそのために、外交交渉に当たっては他国の不当な圧力に屈しないことだと確信していますが、いかがでしょうか、総理も同じ考えですか。

玄葉国務大臣 今、城内委員がおっしゃった、不当な圧力に屈しない、当然のことだと思います。

城内委員 であるならば、既に、日本のTPPへの参加条件として、アメリカ産業界からさまざまな要求が出されています。環境に優しい我が国の軽自動車の制度を廃止せよとか、食品の検疫を緩めろとか、こうした要求が既にありますよね。アメリカ政府がその企業、団体の意見を踏まえて日本に突きつけてきた場合は、総理はこれを拒否するお考えですか。

玄葉国務大臣 以前も申し上げましたが、まず食品の安全につきましては、WTO・SPS協定上の権利の行使を妨げるというようなことは日本国政府としては受け入れないというふうに考えていただいてよいというふうに思います。

 また、軽自動車云々という話は、アメリカ側から日本国政府にそういう話はございません。

城内委員 仮定の話ですけれども、もし政府からあったとしても、それはきちっと突っぱねていただきたい、そういうふうに思います。領土問題を初め、外交の対応がいまいちなので、私は、こういった点はしっかりとやっていただきたいと思います。

 最後に、総理は、世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためには、TPPを通じて高いレベルの経済連携が不可欠ですという答弁をこれまで何度も繰り返しております。一見もっともらしいんですが、極めて抽象的で、具体性を欠くんですね。日本国民にとってどういうメリットがあるのか、具体例や数字を挙げていただきたい。お願いいたします。

中井委員長 時間がない割には大きな質問でございますけれども、野田内閣総理大臣、簡単に言えたら、簡単に答えてください。

野田内閣総理大臣 では、具体例で一つだけ、もう時間がないから申し上げますと、模倣品とか海賊版等々がなくなっただけでも千数百億の被害はなくなる等々、たくさん、いろいろ数字を挙げて申し上げることはできると思います。

城内委員 時間が来ましたので、これで質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて下村君、馳君、赤澤君、小里君、梶山君、城内君の質疑は終了いたしました。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 きょうは、高校無償化の政策効果の検証を三十分間やらせていただきたいというふうに思います。

 一昨年の三月、衆議院の文部科学委員会で高校無償化法案の審議が始まりまして、その過程の中で、さまざまなことが判明してきました。

 当委員会でも何度も質問させていただきましたけれども、特定扶養控除縮減、民主党の皆さんは見直しと言っていますけれども、その見直しの影響で、逆に実質負担増になる世帯がかなり多く出てきたということ。このパネルも何度かここで出させていただきましたけれども、当初、文部科学省は、全日制の公立の高等学校、そして私立の高等学校は全部、高校無償化によって負担が減るんだというふうに説明をされていました。ただ、文部科学委員会での審議が進むに当たって、このパネルの色がついているところですが、定時制、通信制、そして特別支援学校はほとんど全世帯で実質負担増になる、これが判明しました。

 当時、きょう来ていただいている中川国務大臣は文部科学副大臣、総理は財務副大臣ということで御答弁いただいたんですが、それから、何とかこの影響をできるだけ少なくしようということで、民主党政権でもいろいろ議論をしていただきました。

 ただ、この委員会でも問題になっていますが、昨年の八月九日に、民主党、自由民主党、公明党三党で確認をして、この高校無償化を含めて、二十四年度以降の制度のあり方について、政策効果の検証をもとに必要な見直しを検討する、そして、これらを含めた歳出の見直しについて、平成二十三年度における歳出の削減を前提にして、平成二十三年度第三次補正予算並びに平成二十四年度予算の編成プロセスなどに当たり誠実に対処することを確認する、こういうふうに決めたにもかかわらず、残念ながらなされなかったということで、この委員会が一日半とまって、また三党の幹事長が確認書を交わしていただいて、委員会が動き出しました。

 その確認書の中で、「不誠実であるとの批判を真摯に受け止め、謝罪する。」というのが第一点。そして、「政策効果の検証と必要な見直しの検討につき政党間協議を行う。」これは今やられています。三項目めとして、「平成二十四年度予算について、引き続き予算審議の中で論議を深め、上記の協議を踏まえ、必要に応じ予算に反映させることも含め、誠実に対処する。」というふうに書き込まれました。

 今、審議がされているわけですから、この「予算に反映させることも含め、誠実に対処する。」ということについて、総理はまず御自分でどのように考えているんでしょうか。これを御答弁いただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 今回、予算委員会でも御指摘いただいたとおり、残念ながら、その政党間合意、三党合意を踏まえた誠実な協議が進んでいなかったことについて、私からこの場でおわびをさせていただきました。

 その上で、新たに三党の幹事長が結んだ確認書、これに基づいて、今後の政策効果の検証と、それを踏まえて誠実な対応、誠意ある対応をしていきたいと思いますが、その過程の中で、「必要に応じ予算に反映させることも含め、」という文章を入れておりますので、まさにこの言葉どおり、今後の協議を踏まえながらの対応をさせていただきたいというふうに思います。

富田委員 今、修正だというやじが飛びましたけれども、ぜひ修正も含めて御検討いただきたいというふうに思います。

 委員の皆さんには資料をお配りしていますが、資料の3の一をちょっとごらんになっていただきたいと思います。

 この委員会、二月十五日の日に我が党の高木美智代議員が総理に、私が今お尋ねした件について御質問させていただきました。総理の方でやはりずっと気にかけていただいていて、この資料の3の一にあります、その下の括弧でくくられたところを見ていただきたいんですが、野田政権としてどういう対応をしたかということで、二十三年度第三次補正予算において百八十九億円を積み増して基金を三年間延長した、これはまず各党合意でやらせていただきました。その下の段に、所得連動返済型の奨学金制度を含む、返還に関する負担軽減制度を整備するということをやりましたよと。これはこの二十四年度予算の中に入ってきています。

 これを認めるかどうかということですが、この二つの制度改正あるいは予算措置をしたということで、特定扶養控除の見直しで負担増になった世帯は全部救われるようになったんでしょうか。全部なったのなら、この二十四年度予算、こういうふうな枠組みをつくっていただいて、我々はこれに賛成すればいいんですけれども、私にはちょっとそうは思えないんですが、文科大臣、どうですか。

平野(博)国務大臣 富田先生の御指摘のことを踏まえながら、ではどれだけカバーできたのか、こういうことでございます。

 私どもは、施策としてはやはり、高校生修学支援基金を活用する、その活用の前提としては、所得連動返済型の奨学金をやっていただける、こういうことを前提に基金を活用してもらいましょう、こういうこと。

 二つ目は、返還の猶予並びに減免制度を導入する場合には、この基金、もともと使う目的がはっきりしておったんですが、これも制度改正して、今先生御指摘のところについてカバーできるように改正をさせていただいたということでございますので、結果、これで全部補ったかどうかは、今これからの施策のものでございますので、しっかりそれができるように私どもとして進めてまいりたい、かように思っております。

富田委員 文科大臣はよくわかられているので今のような御説明だと思うんですが、高校生の奨学金は、この委員会でもずっと問題にしてきましたけれども、都道府県事業です。文科省が直接やるわけではありませんので、基金を積み増ししていただいて、その基金を使いやすいようにした、あとは都道府県がどう動くかだということだと思うんです。

 大学生の奨学金である独立行政法人日本学生支援機構の奨学金事業における所得連動返済型の無利子奨学金制度では、本人が三百万円を得るまでの間は猶予しますよという制度改正を今回しようとしているわけですね。これを踏まえて、高校生の奨学金でも同じようにしてくれというふうに文科省の方で言っているわけですから、そうすると、高校生修学支援基金の方の奨学金制度でも、やはり三百万という頭打ちが出てくるんじゃないんですか。実際はこれからどう動いていくんですか。その点、文科大臣、どうですか。

平野(博)国務大臣 先生の今の御指摘も踏まえながら、やはりしっかりともともとの趣旨が生かせるように検証したいと思いますし、それに近づけたい、私はかように思っております。

富田委員 ちょっと文科大臣には後でまたお聞きします。

 安住財務大臣。負担増が見込まれる世帯、2の資料をお手元に配らせていただいていますが、これは全部足しますと二十七万八人が今年度でも影響を受けます。今の文科大臣の答弁では、定時制、通信制、特別支援学校はまず取っかかりができた、都道府県が動いてくれれば何とかなりそうだ、カバーするかはこれからの話。ただ、この一番上の、進学も就職もしていない子供一万三千七百十六人、ここへは今の文科大臣の制度説明では手が届いていないんですね。文科省の所管範囲ではない。ただ、ここもずっと二年前から問題にしていたわけですよね。

 中川大臣は、文科副大臣のときから民主党の政府税調で、これが問題だということをずっと指摘されてきた。でも、結局今、ここに何の手当てもできなかった。

 安住財務大臣、何で手当てしなかったんですか。去年の九月二十七日のこの予算委員会で、事情はよくわかりましたのでちゃんと適切に改善しますと私に約束しましたよね。どうなったんですか。

安住国務大臣 私が言ったのは、全体の話の中で申し上げました。

 ですから、そういう点では、先生から再三ここで教えていただいて、その結果として、今文科大臣からもお話がありましたように、所得連動で、いわゆる三百万円までは免除ですけれども、その収入が出てきたらお返しくださいよという。給付型では残念ながら都道府県制度の中で越えられないというふうに私としては判断をしたので、完全給付型にはなりませんでしたが、先生の御意向等を踏まえて、こうした対応をさせていただきました。

 御指摘のように、これは九月の時点では一万六千ですけれども、今回出していただいた一万三千の方々のところでは、進学をしないとすれば、新たに高卒の資格を取られて上級の高等教育を受けられない方々に対しては確かにこの給付は行かないので、そういう点でのサポートはこの制度では行き届いていないということは事実でございます。

富田委員 いや、事実でございますじゃ困るんだよ。高校実質無償化に伴って民主党が特定扶養控除の見直しをしたんですよ。民主党政権でやって、この一万三千七百十六人の親御さんたちの世帯は負担増になっているわけですよ、現実問題として。ここは手が届きませんでしたで、それでいいんですか。いろいろな事情があって高校に通えない、また高校をやめてしまったお子さん、そういった方たちがこの一万三千の中に入っているわけですよね。(発言する者あり)今のやじは本当に適切ですよ。弱い者いじめですよ。そこは、民主党はもう弱い者いじめはしようがないんだと放置するんですか。

 安住大臣、安住さんが財務大臣になる前、この制度設計をした当時の民主党の税制調査会、平成二十二年度の税制改正大綱で、十六歳から十八歳の特定扶養控除を見直します、ただ、これらの見直しに伴って現行よりも負担増となる家計については適切な対応を検討しますというふうに税制改正大綱に書き込んでいるんですよ。税制改正大綱は閣議決定していますよね。自分たちの内閣のときに決めたんじゃないからいいんだというふうに言うんですか。

 二十二年度に閣議決定した税制改正大綱について、この二十四年度の税制改正に向けて民主党は何にも議論しなかったんですか。そこはどうですか。

安住国務大臣 それで、二十二年の二月に、実は関係省庁間の政務官を中心に、今先生の御指摘のあったような問題もあるものですから、これをどうしていくかということで、PTを立ち上げました。立ち上げたPTの中での検討をしているんですが、その中で、この特定扶養控除の見直しによって負担増となっている家計、つまり今のような例でございますけれども、それに対して、文部科学省の教育費負担の軽減や進学支援の施策、だから、これは今私どもとしては一つ前進をしたんじゃないかと思うんですが、それから、若者の育成支援などの関係府省の施策について幅広く検討しましょうということで、現在そういう話を行っております。そこで検討しているということでございます。

富田委員 今、二年間も検討しているのかよとやじが飛びましたけれども、二十二年に検討しますと言って、二十四年の税制改正はもう決定しちゃったわけですよ。

 では、二十五年度で必ずやるんですか。返事をしてください。

中井委員長 安住財務大臣。済みませんが、予算委員会でもたびたび富田議員から御指摘があって、かなり前向きの返事をそれぞれしていますから、はっきり、なぜやらなかったのかというのを理由づけで言ってください、理由はあったんだと思いますから。

安住国務大臣 全体の中ではかなり前進しているんです。ですから、私が申し上げているのは、所得連動型のこの貸与制度については、新しくこれで、富田委員の御指摘の部分については、かなり私どもは公明党の意見も受け入れて、そうだなということでやって、後で出てくるかもしれませんが、都道府県の貸与も、ゼロだったのが、これは二十二県で実際に行われるようになったので、九月の時点でここでお話ししたことのかなりの部分は、前向きに前進を、政府としてはやりました。

 ただ、現実に、この中学校までの就学、つまり義務教育で終わっている一万六千世帯、今、一万三千の世帯の皆さんに対するところについては、これは残念ながら、今具体的なところまで結論は至っていないのが事実でございますので、今後このPT等で早急に結論を出したいというふうに思っています。

富田委員 今の答弁を聞いていますと、特定扶養控除の見直しが政策的に誤りだった。もともときちんと民主党の中で議論したわけじゃなくて、財源として、午前中、馳議員が聞いていましたけれども、三千九百億の財源のうち一千三百億を何とか手当てしたいからということで、急に出てきたんですよ、民主党税調の話の中で。きちんと民主党の中で政策的な影響について議論しなかったからこうなったんじゃないんですか。私はずっとこれを質問していて、そう思うんです。

 資料の4をちょっと皆さんごらんになっていただきたいんですが、この資料の4は、文科省の方から各都道府県の高校奨学金事業担当課に宛てた非常にわかりやすい文書です。「高校生修学支援基金の改正について」ということで、この二枚目、三枚目を見ていただきますと、二枚目の一番下に、「低所得世帯の生徒等への対応について」というところに、なぜ今回文部科学省がこういった制度改正を行ったかの理由が大きく三点書いてあります。

 ちょっと読み上げますと、

 高校授業料無償化の導入により高校生の学習費負担は軽減されたが、従前より授業料の減免を受けていた低所得世帯の生徒等については、教育費の負担軽減につながらない場合があること。

これがわかったわけですね。

 次に、

 平成二十二年度税制改正において、教育費等の支出がかさむ世代の税負担の軽減を図るために創設された特定扶養控除の上乗せ額の縮減が行われ、

その後ですね、

 公立の定時制・通信制高校や特別支援学校高等部など、従前より授業料が低廉であった学校の生徒については、中学校以前で「子どものための手当」を受給するものの、高校については無償化導入前よりも負担増となる場合があること。

こういうのがわかってきた。

 もう一枚めくっていただいて、一番上。

 また、奨学金の利用にあたっては、将来の返済の負担、不安を理由として利用をためらう者が多いことから、その不安を解消するため、返還に関する負担軽減制度の整備が必要であること。

 こういう三つの理由で、今回、文科省の方で制度改正していただいたんですけれども、これが後から出てくるということは、高校授業料無償化はよかったけれども、それに伴って特定扶養控除の見直しをしたという政策的な決定が私は間違っていたんじゃないかと思うんです。

 どうですか、文科大臣。

平野(博)国務大臣 富田先生、お言葉ですが、私は決してこれは間違っていたわけではないと思います。しかし、先生の御指摘のところについては、これは先生からもございまして、何としてもそういう負担増になるところについてはカバーをしたい、こういうことで施策を実施してきたところでございます。

 したがいまして、見直しについて、先生ももう御案内のとおりでございますが、六百万までの方については基本的にカバーリングできております。それ以外のところについては、実施主体が県でございますから、県の判断としてしっかりとやっていただくための、国として、文科省としての手だてをこれからも補給していく、こういう考え方に立っておりますので、間違いではない、こういうふうに思います。

富田委員 間違いじゃなかったら、何で救済できないんですか。もう二年もたっているのに、何の救済もできない一万三千人の子たちが残っちゃっているし、残りの二十四万何がしの子供たちも全部救済されるかどうかわからないですよね、これから。

 間違いじゃなかったと言われるけれども、中川国務大臣にお伺いしたいんですが、そもそも、ここに民主党のインデックス二〇〇九を掲げましたけれども、皆さんの手元にもコピーを置いてありますが、所得税の改正について、「人的控除については、「控除から手当へ」転換を進めます。子育てを社会全体で支える観点から、「配偶者控除」「扶養控除(一般。高校生・大学生等を対象とする特定扶養控除、老人扶養控除は含まない。)」は「子ども手当」へ転換します。」と書いてあるんです。赤で書いてありますね。

 こういうふうに政策集、インデックス二〇〇九で民主党はちゃんと書いていたんですよね。中川大臣がこれを書いたんじゃないんですか、どうですか。

中川国務大臣 私が書いたというわけではないんですが。

 そうしたマニフェストの趣旨というのは両面ありまして、それこそ、控除から手当へという流れ、これを税の流れの中でつくっていきたいという、その思いというのは、やはり控除であれば、所得の高い人たちに有利に働いて、そして低い人たちには控除額が少ない、そういうことでありますから、それを再配分するという意味からも、手当へ向いて転換をしようという、その趣旨があったということです。

 御指摘のように、税制調査会での議論の中で、その趣旨というのがまず出て、その中で特定扶養控除の議論はあったんですが、特定扶養控除は普通の扶養控除に対して二倍の控除をしていますから、その半分だけでもという議論の中でこれを調整したということ、そういう経緯がございました。

 現在ではもう所管外なんですが、御指名でありましたので、答えさせていただきました。

富田委員 やはり、事実上マニフェスト違反なんですよ、これ。皆さん、これで選挙を戦ってきたんだから。

 中川さんはそのときの政府税調でこんなふうに言っていますよ。進学する子供にはお金がかかる、マニフェストでも特定扶養控除の廃止はうたっていない、あるいは、総選挙で、高校生以上にはお金がかかるから特定扶養控除には手をつけないと説明してきた、その辺の議論なしに出てきたのは問題だと。一番よくわかって、指摘されているんです。まあ今大臣だから、こういうふうには言えないんでしょうけれども。ここにまず問題があったんだと思うんですね。

 それで、提案なんですが、民主党の議員の皆さんにちょっと聞いていただきたいんですけれども、資料の3の三番目、文科大臣が言われた、今、都道府県事業の方でこの新しい制度を検討する、あるいは実施予定だという都道府県に丸がついています。二十一が実施予定で、二十六が検討中。これは、全部やっていただければある程度カバーできるんですが、残念ながら、去年の三月に、こういうふうにやりますと言われましたけれども、九月までどこもやりませんでした。そのときに、私は、民主党の議員の皆さん、都道府県会議員と連携して、都道府県事業ですから、ぜひ推進してくださいとお願いしたんですね。

 この3の三の資料を見てください。御自分の出身地、全部書いてありますよね。鉢呂筆頭の北海道は検討中、やらないということです。武正理事の埼玉県も検討中、やらないということです。笹木さんの福井も検討中、やらないということです。まずいでしょう、やはりこれは。これで検討中というのは、やらないということです。

 では、これの千葉県のところを見てください、十二段目の千葉県。実施予定と書いてあります。でも、先週の金曜日、私どもの公明党の千葉県議会議員が千葉県の教育長に尋ねました。二月、三月議会で実施できません。結局、六月に持ち越しになる。

 だから、きょうの議論を踏まえて、民主党の皆さん、ぜひ地元の都道府県会議員に働きかけて、六月にちゃんとやる。実施予定でもやらないんです。ここに二十一、実施予定と書いてあるけれども、それでもやらないんですよ、まだ。だから、きちんと説明して、先ほどの改正の説明書を国会議員はよく理解して、都道府県会議員に話してもらいたい。

 我々公明党は、二百人を超える都道府県会議員に全部これを説明しました。今、質問してもらっています。民主党の皆さんは、五百人を超える都道府県会議員を抱えているんです。国会議員の皆さんがきちんと説明すれば、本当に子供たちがこの奨学金を受けられるようになる。ぜひそれはお願いしたいというふうに思います。

 もう一つ、都道府県が仮にこういう事業をやったとしてもカバーできない可能性がある。カバーできない人たちにどうするかというのを、やはり野田政権としてきちんと考えてもらいたいんですね。

 高校生修学支援基金というのは、今、授業料と入学金まで拡大されました。入学金が借りられるようになりました。一生懸命やっていただいたのでそこまでいったんですが、それ以外にも、通学費とか給食費、教材費、また修学旅行費、本当に大変かかる。負担増になる世帯にこの高校生修学支援基金の対象をちょっと拡大して、こういった授業料以外のものについても使えるようにしたらどうかなと思うんです。これを一つやれば、負担増になった世帯の親御さんも本当に楽になります。それが一つの提案。

 もう一つ、特別支援学校。これはかなり大きな問題ですけれども、特別支援学校は、特別支援教育就学奨励費があります。これは、授業料以外の通学費、給食費、教材費、学用品費、修学旅行費まで対象で支給できるんですね。七十八億円、二十四年度予算でもついています。これを何とか拡大して、負担増になった特別支援学校に通うお子さんたちに何とか援助できないですかね。

 本当に、ハンディを持って、一生懸命勉強したい、それを抱える親御さんは、大変な中、子供たちを特別支援学校高等部に通わせています。そういう人たちが全部負担増になったまま放置しておいていいわけはないので、ぜひこの特別支援教育就学奨励費を何か拡大する方向で文科省から指示していただけないかと思うんですが、文科大臣、どうですか。

平野(博)国務大臣 先生御指摘のところは、私も、ごもっともなところだというふうに思っております。

 ただ、特定扶養控除の廃止に伴う負担増というところではなくて、改めて、特別支援教育就学奨励費がございますし、それを拡大していく、こういうことについて、文科省としても、これから、保護者の負担を軽減する、こういう視点で進めてまいりたい、検討してまいりたい、このように思っております。

富田委員 平野大臣の熱意は買いますけれども、今、いつやるんだという話ですね。できれば、この予算委員会でこれだけ審議しているわけですから、どこかにめどをつけていただいて、何らかの方法でぜひやっていくことを考えていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、残念ながら、今回の予算では給付型奨学金が入りませんでした。中川大臣が芽出ししたいとずっと言って、民主党政権になってから、概算要求で、鳩山さんのときに百二十三億、菅さんのときに百二十二億、そして今回、百二億概算要求を出したのに、全部蹴られた。三連敗だとやじが飛びましたけれども、そのとおりです。

 給付型奨学金は、私の後ろにいらっしゃる江端先生も、民主党を代表して、鳩山総理のときでしたか、施政方針演説に、給付型奨学金を導入すべきだと提案されていましたよ。民主党も自民党も公明党もみんな提案しているんだから。反対しているのは財務省だけだ。安住さん、どうするんですか。

安住国務大臣 これはやはり都道府県事業ということで、これは三位一体改革の中で財源も含めて都道府県にお渡しをしたという経緯があります。ですから、富田先生から再三指摘をされて、私も昨年九月、ここでなるほどと思ったんですが、都道府県がやっていないじゃないかと。だから、これについても、私どもとしては、これは果たして財務省がそういうことを言うのがいいかどうかは別にして、主体的に文科省なり教育委員会でやってもらうことで、この六月までには少なくとも二十一県でこれはやることになりました。

 昭和の時代、初めからなかなかこれは議論があったところで、我々としては、しかし、もし給付ということになれば、これは将来的にこの財源が枯渇をすることもあるし、だから返していただく、それも連動で返していただくということで、また次の世代にそれを引き継ぎながら、都道府県でやっていくのに国がサポートをしていく制度にした方がよかろうということで、こういう判断をさせていただいたということでございます。

富田委員 全然わかっていないんだよね。全く別問題です。

 もう時間もありませんので総理にちょっとお尋ねしたいんですが、午前中もボイスの話が出ていましたけれども、総理が大平総理を尊敬しているというふうに書かれていました。ことしは日中国交正常化四十周年ですので、私もいろいろ調べて、その中で、大平総理の「私の履歴書」にその当時のことがいろいろ書いてあるということで、「私の履歴書」を読ませてもらいました。

 そうしましたら、大平総理が大蔵省の主計官のときに、昭和十八年、今から七十年前に、大日本育英会制度、今の奨学金制度の原型をつくられたんですね。大平総理もそんなに裕福な農家出身じゃありませんから、高校からすんなり大学へ行かれませんでした。香川県の篤志家の奨学金をいただいて、私の母校一橋大学の前身の東京商科大学に入学された。それで、苦労されて勉強された。

 それで、主計官になって自分が奨学金をつくるようになったときに、給付型か貸与型かと迷ったときに、大平総理は、育英事業を国が行う以上、本来給費制にすべきだと考えた。給費制にするとか貸費制にするとかいう基本的な考えについてさえ、当時方針は決まっていなかったそうです。でも、やはり自分は、できるだけ、人数を絞っても給費制にすべきだというふうに考えてやったけれども、いろいろな圧力があって、最後は貸与制になってしまった。

 七十年前にこの制度をつくった人は、やはり給費制が大事だと言っていたわけですよ。そう考えると、今の安住さんのような答弁じゃなくて、日本の将来を担う子供たちにどういうふうな形で教育を受けさせるか、経済的に大変な子供たちにどういうふうにさせてあげるかというのは、国のリーダーが考えて、やはりここは給費制の奨学金制度というのも、ひとつ風穴をあけるべきじゃないかと思うんですが、その点、総理、どうですか。

安住国務大臣 このときは大平主計官は確かにそういう主張をしておられます。しかし、当時の植木主計局長は、これは議論がありまして、それで、理は理としても、できるだけ多くの青年に奨学金というものを浸透させるためには、範囲の狭いところでの給付でなくて、広くやはり貸与をしながらそのお金を回していこうという議論があったのは全く事実でございます。

 ですから私は、昭和の初めからという議論を実はしたんですが、そういう経緯があったので、しかし、今回先生から御指摘を受けて、非常に使い勝手がよくて連動性のある、事実上給付に近いような貸与制度を設けましたので、ぜひ御理解いただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 富田議員にはずっとこの問題、御質問いただきまして、そのたびに、ちょっと全面的に御理解をいただくまでのことはできなくて恐縮でございますが、御指摘をいただいたことの改善はさせていただきました。

 それは御指摘があったればこそであって、そのことは先般の公明新聞の一面でも高く評価されておりましたけれども、きょうも、まだ届いていないところがございますけれども、きょうの御指摘などを踏まえまして、検討させていただきたいというふうに思います。

富田委員 公明新聞のことはいいですから、ぜひ、総理が決断されればできることです。

 質疑時間が終わりますので、一点だけ。

 厚労大臣に来ていただいて申しわけなかったんですが、子どものための手当、児童手当について、三党協議が始まるんじゃないかという報道がけさありました。もともと去年の八月に合意されていたわけですから、いい形で協議が進まないと、この三月末までに協議ができないと児童手当法に戻ります。事務方にも迷惑をかけるし、手当を待っているお母さんたち、お父さんたちにも大変な迷惑がかかります。どういった形で協議を進めていったらいいか、最後に厚労大臣のお考えをお聞きして、終わりたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、昨年夏の三党協議のとおり、あそこにある項目をぜひ三党で御協議いただきまして、その結果をいただいてこちらはしっかりと対応いたしますので、ぜひ御協議をいただきたいと思っています。

富田委員 終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、池坊保子さんから関連質疑の申し出があります。富田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 野田総理とは、初めて質問させていただきます。私も誠実に真摯に質問したいと思いますので、どうか誠実にお答えいただいたらと思っております。

 関連と申しますよりは、むしろ、公明党、自民党、民主党の幹事長の覚書を踏まえまして、私たちは、実務者会議として九回、十数時間、この高校無償化の問題で審議をしてまいりました。それを踏まえながら、私は野田総理に伺いたいと思います。

 野田総理は、代表選の前に、私は文部科学大臣になりたいとどこかで講演なさいましたね。覚えていらっしゃいますか。覚えていらっしゃいませんか。書いてございましたよ。文部科学大臣なんです。それで私は大変好感を持ったんです。

 でも、総理就任後、前に財務省の副大臣、そして大臣をなさったからか、財務省の言うことは全てお聞きになる。洗脳されていらっしゃるんじゃないか。だけれども、ほかのことに関しては余り御関心がないのではないかと私は危惧いたしております。

 百七十九回、百八十回の所信表明、二回にわたり、教育という文言は一言も出てまいりませんでした。それゆえにか、文部科学大臣は、この高校無償化から三回交代なさいました。

 言うまでもなく、教育は、将来の日本を支える人材育成の大切な基礎になるものだと私は思います。そしてまた、総理が全力で取り組んでいらっしゃる東日本大震災の復興、元気な日本の復興をなし遂げていくためには、未来への先行投資である教育、この野田総理の取り組みの姿勢というのは不可欠ではないかと思っております。

 野田総理、教育に対してどのような姿勢で取り組んでいらっしゃるのか、また、今審議されております高校無償化、これに対しての総理の理念をまず伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 確かに、池坊先生御指摘のとおり、どこかで、私は文科大臣になりたかったということは言ったことがあります。教育の分野、きょう、先ほど馳先生の御議論にもありましたとおり、教育基本法の議論のときは教育再生特別委員会の筆頭理事もやっておりました等々、教育にはすごい関心があるんです。

 特に、今、未来への投資というお話がございましたけれども、私流の言葉で言うと、子供は未来から送られてきた留学生だと思います。確かな未来に送り届ける役割があると思います。まさに資源の少ない日本にとって、人材というこの大きな武器はもっともっとやはり大事にしていかなければいけないと思っています。

 その意味で、高校無償化の位置づけでありますけれども、そういう大事な教育の機会を、教育の機会は均等だというはずなのに、受けられない可能性が格差社会の中で出てきた、それは何とかしなければいけないという中で高校無償化というものが出てまいりました。

 これは、OECD諸国の中では高校の授業料を取らないところが多い中で、ようやく日本もその列に加わるようになったということで、現実に、高校無償化を導入した後、経済的な理由によって中退をするという人たちは三六%減ったとか、効果があります。政策効果が出ておりますので、その意味では、教育を進める上で、その環境整備として高校授業料無償化というのは重要な位置づけになるのではないかというふうに思います。

池坊委員 高校生の無償化というのは、全ての高校生に無償化なのではないですね。公立学校に通っている子供には無償化でありますが、私立学校に通っている子供にとっては支援金でございますので、決して全ての高等学校の学生たちに無償ではないということをまず御認識いただきたいと思います。

 それと、三六%の中退者が減ったということですが、そもそも、経済的理由で高校を中退いたしますのは、今ちょっとここにございませんが、パーセンテージは極めて低いのです。ほかのさまざまな要因によって高校を中退している、その中の、二%の三六%というのは、高校生が今三百四十万人おります中の本当にほんのちょっとであるということをまず御認識いただけたらと思います。

 平成二十二年三月、私たち公明党は高校無償化制度導入に賛成いたしました。なぜなら、公明党は、家庭における教育費の軽減、教育の機会均等を、自公政権下、さまざまな施策の中で大きな政策の柱として掲げ、そして行ってきたからでございます。

 しかしながら、この法律は、民主党の唯一のマニフェスト実現のために、中教審の審議を経ることもなく、教育的観点、生活支援的観点からの検証もなく、高等学校教育が抱えるさまざまな問題の解決に一切触れることなく、やみくもに授業料だけを無償にしたのです。

 私たち公明党は、三年後の検証とそれに伴う見直しを附帯決議の中に盛り込み、修正案に賛成いたしました。私、この附帯決議、読み上げましたので、今も心にしっかりととどめております。

 それでは、その中身は何なのだ、不十分な点はたくさんあるんですね。この授業料無償化によって、今までもきっちりと授業料減免を受けていた低所得者層の方への対策が何にもなっていない。それから、特定扶養控除の見直しによって、特別支援学校に通う世帯にはこれは負担増となっている、その対策はどうするのか。公私間格差の是正、そして私学助成、あるいは高等学校の質の向上など、これらの問題の解決はされていない。これは三年後きっちりと見直しましょうねと、私どもは心配してそれを入れたのです。

 私は、それらの問題を解決する第一歩として、今までずっと自民党の方も言っていらしたと思います、給付型奨学金の創設を強く求めております。

 総理、現在の奨学金制度というのは貸与ですね。だけれども、お考えになってください。総理のお子様が十五歳で勉学のために多額のお金を借りなければならないとしたら、この一応恵まれていると言われている日本の社会の中で、子供の精神的負担が大きいというふうにはお考えになりませんか。

 これは、財務省の方はすぐ、所得連動型返済があるじゃないか、これは出世払いなんですね。でも、私が申し上げたいのは、貸与というのは自分の背中に借金を背負っているということなんですよ。そういうことで社会を生きていかなければならないということと、そういうことの重みというのを私は財務省の方はお考えになったことがあるのかしらと不思議なんですね。

 私立だと四十六万円、それから公立だと二十四万円、つまり授業料以外に一年間に必要な額です。それは、私立だったら入学金、通学費、授業料、教科書代、さまざまとあるんです。そして、低所得の方々は、大変でアルバイトをしている、学力が続かない、中途でやめる、それが世代間連鎖の貧困を招いているとも言われております。総理は、これに対してどのようにお考えなのか。

 そして、三連敗と言われておりますけれども、文部科学省が子供たちのことを思いながら財務省に提案いたしますと、いつも財務省はこれを却下なさる。私は、弱い人への思いやりに欠けているんじゃないか。

 財務省は、強きを助け弱きをくじくそういう存在なのかなと私は思っておりますので、そうでない御答弁を安住大臣、続けて、まずは総理から……(安住国務大臣「私から」と呼ぶ)いいえ、総理と申し上げましたので、総理、お願いいたします。

 これは、総理がしっかりとどのようにお考えになっていくかということは、極めて重要なことだと思います。

野田内閣総理大臣 まさに給付型の御提起は、この委員会でも、それぞれ委員のお立場から御提起ございました。政府内においても、文科省から要求があって、そして査定をするということを何回かやってきておりますが、意味としてはよくわかります、そういう意義も。

 一方で、どういうケースがあるかなんですが、給付で奨学金をやったと。その奨学金をもらいながら、例えば、大きな成功をおさめて、大変な収入を得るような人が出てきたというようなこともあるんですね。

 貸与だと幅広くできます、返していくわけですから。返していく、そうすると、その事業というかその裾野は、引き続き続きます。給付だと、その規模をどうするかという議論も出てくると思います。等々、ちょっと総合的な議論がなお必要ということによって、今、今日に至っているのではないかなというふうに思います。

安住国務大臣 今総理の御指摘のありましたところが私の言いたいところでございますが、まず、その前提としては、先生、やはりこれは都道府県事業であって、その財源等も、三位一体の改革の中で地方自治体に渡しております。

 そういうこともありますから、やはり都道府県でやっていただくことを前提として考えれば今の貸与ということがあるのと、今総理からもお話ありましたように、もしこれで将来大変な大金持ちになった方がいれば、それはやはり返していただいて、返していただくそのお金でまた次の世代の人に貸与する。

 しかし、それだけでは重荷があるという御主張は、全くそういうこともあるので、私たちとしては、今回、新しく貸与制度というものを工夫させていただいたということは、ぜひわかっていただきたいと思います。

池坊委員 野田総理、今までこれを検討してきた、子供たちは育ってまいります。ですから、今まで検討してきた、その今までは、では何だったんですか。こういうことは速やかにしていただきたい。そして総理は、速やかにしなければいけないということもおわかりになっていただいていると私は思っております。

 それから、その人たちが、お金持ちになったら貸与でなくたって社会全体で子供を育てると言っているんですから、そういう方々から寄附ができるように寄附控除をしていただくとか、いろいろな方法があると私は思います。

 社会全体で子供を育むという理念は、私はもちろん賛成でございます。でも私は、みんなが助け合う、その中には、公助だけじゃない、共助もあるのではないかというふうに考えております。

 私どもが自公政権下の中で行っておりました児童手当、これを私は大変すばらしいと自画自賛いたしますのは、国、都道府県、市町村及び事業主が、それぞれの立場の人間が費用を分担しながら子供たちを支えているということではないかと私は思います。

 例えば、三千九百六十億、高校無償化に使う費用、このパイが広げられないというならば所得制限を設けたらというようなお声もあることに対して、私は、ちょっと一応の理解は示すんですね。

 というのは、今も総理がおっしゃったように、裕福な方はちょっとだけ辛抱していただいて、そのお金を真に支援が必要な方々に回す。

 例えば、今、三百二十万人の高校生がいます。所得一千万以上の方が遠慮してというと、約一六%ですから五十一万人の方です。そうすると、六百二億浮く。私はこういうのを給付型に回してはどうかと考えたりもいたしておりますが、現実にこれをいたしますには、事務的な煩雑な手続が必要であるとか、高校現場において、八四%の子供たちは申請書を出さなければならないとかいう問題もあると思います。

 ただ、理念としては、社会全体で支えるということはそういうことなのではないかな。例えば保険料、高額所得者の方は高くお払いになりますよね。だけれども、それを取り戻すために、病気をしなくちゃ損するとは誰も考えませんでしょう。健康である自分を幸せに感じ、そして病んでいる方々に回すということなのではないかと私は思います。

 今すぐ所得制限を設けるということとは別に、理念として、社会全体で子供を育てる、支え合うということをどのように考えていらっしゃるか、野田総理、お伺いしたいと思います。

中井委員長 これは、平野文科大臣。

 あなた、座ってください。

池坊委員 文科大臣ですか。これは理念を伺いたいんです。

中井委員長 さっきはあなたの言うとおり総理を指名しました。今度は私の言うとおりにしてください。

池坊委員 わかりました。そのようにいたしましょう。

平野(博)国務大臣 池坊先生、済みません。総理じゃなくて大変申しわけなく思っておりますが、もう先生もよく御理解いただいた上での質問だと思っております。

 やはり未来への投資ということと、何人も本当に教育を受けたい意欲があればそういう機会均等を与えていくんだ、こういう考え方のもとに、社会全体で学生を支えていく、こういう理念でございまして、そういう意味では、所得制限をかけていくということよりも、そういう理念を先行させながら、できる限り、先生御指摘の障害者が入っていないじゃないかとか、定時制の方に負担がふえているじゃないかとか、いろいろありますが、それは何らかの方法でカバーをしていくということですので、理念としては、先ほど総理も申し上げたとおりだと私は思っております。

池坊委員 先ほどこの質問に対して総理とお尋ねしたら、総理のお答えがございませんでしたけれども、先ほどというのは、さきの質問に対しての総理の答えがそうだよとおっしゃることでございますか。この理念ということに対しては、総理はやはりそうだというふうにお考えでいらっしゃいますか。みんなが回り合って所得制限を設けたりすることもあってもいいのではないかと私は提案をいたしましたけれども、そのことに対しての総理の御答弁はなかったように思います。

野田内閣総理大臣 子供の育ちというか、高校生等の育ち、学びを社会全体で支えていこうというのがこの授業料無償化の一つの理念ですが、同じ理念に立つ社会全体で支えてという形でやっている国で、所得制限を設けている国はないと思うんですよね。だから、理念と制度を推し進めるということとの関連の中で、先生の御指摘はどう受けとめていいのか、ちょっと私はわかりかねたのですが。

 ただ一方で、今真摯に政党間協議をやっている中で、所得制限のお話は出てきています。それは注意深く見守っていきたいと思いますけれども、一方で、今すぐに、では、仮に所得制限を導入した場合の実務的な困難等々も含めての、今回の御議論の中では、そういう実際的な御判断もぜひいただければありがたいなとは思います。

池坊委員 今のお話を伺って、では、理解するといたしまして、そうすると、三千九百六十億の中、このパイは私はしっかりと堅持していきたいと思っておりますから、この中で所得制限をしなかったら給付型奨学金というのは当然できませんね。

 それでしたら、私は次の提案といたしまして、税と社会保障の一体改革、総理は大変御熱心でいらっしゃいます。二月十七日に社会保障・税一体改革大綱の閣議決定が行われました。その中で、子育て支援についても若干の言及がございましたけれども、教育の質と機会の確保について触れていらっしゃいます。私は、機会の確保というのは低所得者への経済的支援を意味するものではないかというふうに解釈しております。

 大綱では未来への投資ということを高らかにうたわれていらっしゃいます。社会保障を次世代に引き継ぐことの意義は、極めて大きいのではないかと私は思っております。次世代を担う人材を育成する教育の重要性も、私は見落とすことがあってはならないと思うんです。

 若い世代は、当面は、自分と子供たちのことが問題なんです。医療、介護、年金、それは確かにわかるよと。私は今切実な問題としてわかっております。でも、三十代の世代の子供たちにとっては、それははるか遠くのことなんです。今、子供たちをどうやって育てるか。そういう中にあっては、私は、この税と社会保障の一体改革の中に、全ての子供たちがあまねく勉学をすることができるような、給付型奨学金を私は提案しておりますけれども、教育をきっちりと入れるべきというふうに考えております。いかがでいらっしゃいますか。

中井委員長 平野文科大臣。

池坊委員 文部科学大臣には、いつも、毎回毎回、質問させていただきまして、本当に何回も何回も大臣とやっております。

中井委員長 池坊さん、司会は私がやりますので。

池坊委員 ただ、私の要望も聞いていただきとうございます。

中井委員長 座ってください。十分聞いて答弁しますから。

平野(博)国務大臣 先生に対するお答えでございますが、本年二月の十七日に閣議決定されました社会保障・税一体改革の大綱において、「次世代を担う子ども・若者の育成」が掲げられておりまして、特に次世代を担う子供、手に職をつける、そういう就業につなげるための教育、さらには訓練環境の整備、教育の質、機会均等を確保するための方策、特に生計困難でありながら好成績をおさめた学生等への支援を強化する、こういうふうに掲げられております。

 そういう意味で、文科省としても、そのことをより具体的にしていくためにしっかりと対応する決意でございます。

池坊委員 なぜ私が総理や財務大臣に伺いたいと申し上げるかといいますと、教育に関しましては、大臣と私どもの意見というのはそんなに変わらないんじゃないかと思います。でも、いい提案をいたしましても、大概、財務省に却下されるということが多いのです。ですから、こういう場をおかりして、野田総理のお考えを伺いたい、並びに、財務省はどういう考えで教育に立ち向かっていらっしゃるのか、そういう理念を伺いたい、私はそういうふうに切に希望してここに立っております。

 それでは、何かかみ合わないところもございますけれども、それは納得はいたしませんが、時間もございます、公私間格差のテーマに移らせていただきたいと思います。

 先ほど理念の中で、野田総理はおっしゃいましたね、高校生無償化だ。ところが、これを読みますと、この法律は公立学校に通う子供たちへの不徴収、並びに、私立学校の子供たちへの支援金なんです。

 今、私立学校の授業料というのは、三十七万千九百五十円というのが普通のお金でございます。十一万八千円じゃ足りないのです。確かに、六条二項によって私立学校への加算というのがございますけれども、二百五十万の世帯では二倍、三百五十万では一・五倍加算されておりますけれども、なおこれでは私立学校に通う世帯は大変だというのが現実なんです。

 野田総理、御存じでいらっしゃいますか。橋下市長は、大阪は、全て低所得者の方は私立学校は無料なんです。そして、段階的に所得に応じてお金を払うということになっております。

 私が総理にこの教育の問題にすごく迫っておりますのは、文部科学大臣だけじゃない、トップがこうとお決めになったら、橋下さんをこの点において私は見習っていただきたいんですね。理念をお持ちになったら、これをすることもできるわけです。

 ですから、私は、今のこの幅をもっと広げて公私間格差の是正を図るべきだというふうに思っております。これもやはり、委員長、よろしいですか。

中井委員長 これは総理です。

野田内閣総理大臣 公私間格差をどうするか、これは大事な観点だと思います。

 その中で、今、文科省においても、都道府県や私立学校の関係者から御要望を承りながら、その改善を試みているというふうに思います。一挙にゼロというような方向を出せるかどうかというのは、これは困難かもしれませんけれども、そういう要望を踏まえた対応をしばらくはちょっと注視していただければありがたいと思います。

中井委員長 野田さん、池坊さんは二回にわたって高校無償化じゃないじゃないかと言うていらっしゃるんですね。授業料の、公立の無償化だと。これについて少し感想を答えてください。

野田内閣総理大臣 だから、公立学校は授業料のまさに無償化で、一方で、私立の学校についてはそれに見合う形の就学支援ということでございますので、だから、いわゆる位置づけは違うかもしれませんが、金額的なもの等々を含めての公平性は担保しようとしていることについては御理解をいただきたいというふうに思います。

池坊委員 委員長、ありがとうございます。

 橋下府知事でいらした時代にできたことが野田総理ではできないということはないのです。つまり、私は、公私間という中は、文部科学省がそもそも公教育は公立しか頭にないのではないかというふうに考えているんです。

 私立というのは、かつては特別な存在だったかもしれません。でも、今は私立は三割なんです。東京都では六割ございます。そして、これは富裕層が行くんじゃないんですね。さまざまな事情によって私立を選ばざるを得なかった子供たちが行っているわけです。ですから、子供の立場になりましたら、それを扶養している親の立場になりましたら、やはりこれは高校生に無料であってほしいと願うのは当然だと思うんです。

 ですから、私は、やはりこの拡充ということが、例えば五百万以下の方には、ちょっと、今は一・五倍ですから、三百五十万を五百万などにするということも考えていただきたいと思うんです。文部科学大臣は多分それは賛成でいらっしゃると思うんですが、財務大臣はいかがでいらっしゃいますか。

安住国務大臣 それは、お金がたくさんあればそういうこともあると思いますけれども、やはり限られた財源の中で有効にやっていく。今、一部の都道府県は確かにそういうことはあります。しかし、その都道府県は、別のことでは多分負担増を強いている部分もあると思います。それは政策の選択ですけれども。

 先生、やはり全国一律に、私立には恵まれた教育環境を持っている学校もたくさんありますから、そういう意味では、私は、総理が先ほど申し上げましたように、公立に通っているお子さんの、頭割りではありませんけれども、一人当たりの平均に見合う額を補助するというのは極めて適正だというふうに思っております。

池坊委員 今大臣おっしゃっていましたね、これは政策だと。つまり、何を優先事項に掲げるかということなんです。限られた財源、そうです、私どもが一生懸命働いて納めた税金、それを配分なさるだけなんですよ、財務省は。まるで自分が稼いで人に配っていらっしゃるように錯覚していらっしゃるかもしれませんけれども、そうではないんですね。

 その中で、では国民のニーズが一番高いのはどこかなと考えましたときに、小中は義務教育ですね。それから、大学はやはりさまざまな支援の方法もある。国がしておりますでしょう。だから、高校だけちょっとエアポケットになっているんじゃないかなというふうに考えますので、財務省もしっかりとそれに関してはお考えを持っていただきたい。それは理念の問題だと思います。(安住国務大臣「いやいや、それだけじゃないんですよ」と呼ぶ)それだけじゃないの。では、どうぞ。

中井委員長 それでは、最後に野田総理に答えを。

野田内閣総理大臣 だから、限られた財源をどちらに振り向けていくかという議論だと思うんですけれども、基本的には二十二年度の予算をつくったときの考え方がベースであって、社会保障をしっかり充実させていく。文教関係は八%ふやしました。人への投資はちゃんとやっていこうという政権であるということは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

池坊委員 ありがとうございます。

 財務大臣、今、経営者で所得が違うんだよとおっしゃった。そうしたら所得制限をつけたらいいんですから、それはちょっとおかしいと思いますが、子供の問題に関しましては、党派を超えて、真摯にこれからも建設的な考えをしていきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて富田君、池坊さんの質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうのテーマである政策検証に入る前に、総理に、そもそも国会と国会議員の役割とは何であるかという問題についてお聞きしたいと思います。

 日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存する」と宣言しています。その主権者国民の代表をしているのが国会議員であり、政府を暴走させないようにする、それが国民の代表で構成する議会の最大の役割と私は考えます。

 我が党の佐々木憲昭議員が、本会議において、同様の趣旨の質問を総理に行いました。総理は、国会議員が、国民から選ばれ、国民の声を代弁して議会活動を行うことは、御指摘のとおりと考えますと答弁されましたが、これは確認してよろしいですね。

野田内閣総理大臣 穀田委員御指摘のとおりで、そう答えました。

穀田委員 そこで、国民の代表たる議員をどう選ぶのかという問題です。

 選挙制度は議会制民主主義の土台にかかわることでありまして、選挙制度はどの党が有利とか不利とかということではありません。民意をいかに反映させるかが大事であります。総理は、各党にはそれぞれ意見があると答弁しております。そのとおりで、立法府にある各党が、いかに民意を反映させるべきか真摯に議論すべきものであります。現在の国会の議席において多数を占めているからといって、多数党が自分の考えを押しつける、こういうやり方があってはならないと思います。同時に、立法府が議論して決めるべきことであって、ましてや、与野党協議会において議論しているさなかに政府が口を出すようなことがあってはなりません。

 総理は、この間、一定の陳謝を行っています。二月二十三日の予算委員会で、政府としては、選挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し、より慎重な態度で臨んでまいりますと答弁されました。各党の協議を尊重するということでよろしゅうございますね。

野田内閣総理大臣 これも、私どもが社会保障と税の一体改革の大綱をつくったときに、定数削減の話を入れていることで、この委員会から御指摘をいただきました。

 それを踏まえまして、穀田さんおっしゃるとおり、政府としては、選挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し、今後の閣議決定においては、より慎重な態度で臨みますと表明をさせていただきました。

穀田委員 その答弁は、簡単に言うと、尊重するということですわな。各党協議会の議論を尊重し、やっていくということだと思います。

 そこで、国会はどんな議論をしているかということなんですけれども、衆議院選挙制度に関する各党協議会が昨年の十月につくられました。きょうも含めて、以来、十四回議論を重ねています。この機会に、国民の皆さんにも総理にも、どんな議論を各党協議会がしているのかについて知ってほしいと思っています。

 十八年前、政治改革と称して、現行の小選挙区比例並立制がつくられました。そのもとで五回の総選挙が行われました。この結果、余りにも弊害が大きい、この制度を続けてよいのかという問題を多くの党が提起していることが最大の焦点であります。導入以来十八年にして、選挙制度そのものの改革が広く議論されるようになった。これは初めてのことであって、極めて重要なことだと思います。

 実は、自民党も、現行制度は大政党に有利な制度と述べて、民主党以外の全ての政党の間で、現行選挙制度が民意を議席に正確に反映せず、ゆがめている、得票率と議席占有率が乖離している、このことが共通認識になっています。

 現行の小選挙区制は、パネルに示しましたが、第一党が四割台の得票で七割の議席を得る。この二回の総選挙の結果をパネルにしてみました。小選挙区選挙の〇九年の選挙で、第一党の民主党は四七・四%の得票で七三・七%の議席を占め、そして政権交代しました。その前の〇五年の選挙では、小泉内閣の郵政選挙でしたが、自民党が四七・八%の得票で七三・〇%の議席を占めました。

 小選挙区制が、第一党に四割台の得票で七割台の議席を与える制度である、このことは総理も認識していますね。

野田内閣総理大臣 それは御指摘のとおりだと思います。したがって、政権交代等のダイナミックな動きが出てきたというふうに私は理解をしています。

穀田委員 総理は、後で言いますが、民意の集中の話をしたいんだと思うんですけれども、今、私は、これほど得票と議席の乖離がある、これが各党協議会で問題になって、この制度は続けていいのか、ちょっとおかしいのと違うかということが、大体、自民党と民主党を除けばそういう認識になっているということを改めて強調したいと思うんです。

 そこで、今、ダイナミックな政権交代という話で、特に、総理はたびたび、民意の集中ということに言及されておられます。私は、民意の集中の結果、どういう政治が行われたのかということについて問いたいと思うんです。

 〇五年の総選挙で、小泉政権は、先ほど述べましたが、郵政選挙を行い、自民、公明の与党で三分の二の議席を獲得しました。そして、やったことは、自衛隊の海外派兵や、構造改革の名のもとに社会保障が削られました。国民はそんなことまで同意を与えていません。ところが、強行採決と、参議院で否決されたものを衆議院議席の三分の二の多数を使って再可決を連発しました。あたかも白紙委任を受けたかのように、多数の力で押し通す政治が横行したことは、皆さんも御記憶に新しいところだと思います。

 国民の批判で政権交代が起きました。ところが、民主党政権は、マニフェストで掲げた公約を次々と覆す。参議院選挙で敗北し、ねじれ国会となると、今度は国民不在の妥協を繰り返し、さまざまな協議を密室で行ったということが、これまたこの国会の中でも明らかになりました。結局のところ、民意を集約した虚構の多数政権による強引な政治、多数のおごり、このことが国民の民意を反映しない政治をつくって、国民の政治不信をつくり出していると私は考えます。

 この制度をつくった当事者からも反省の弁が述べられています。細川総理は小選挙区に偏り過ぎたと言い、河野前衆議院議長は、政党の堕落、政治家の資質の劣化が制度によって起きた、こう指摘をしています。総理はこの指摘をどう思われますか。

野田内閣総理大臣 九三年同期当選の穀田さんでございますので、政治改革四法の議論は、今、御指摘も踏まえてまたよみがえってきたんですけれども、今、小選挙区比例代表並立制の弊害のお話を中心にされていますけれども、やはりどの制度もプラスマイナスいずれもあると思うんです。その前のあのころの議論は、中選挙区制は、政権選択とか政党選択、政策選択ではなくて、サービスの競争みたいになってしまって、国事に奔走する政治家よりも雑事に奔走する政治家がふえてしまっている等々の反省の中から、今の選挙制度が生まれたと思います。

 かといって、おっしゃるとおり、どの制度もプラスマイナスある中で、それをどう評価するかだと思いますけれども、今、かつて万年筆を交わして政治改革のサインをした二人から厳しいそういう御意見が出ていることは残念だとは思います。

 私は、それでもなお、選挙制度だけの問題かという問題があるんです。今、政治家の劣化のお話をされました。これは選挙制度のものかどうか、本当にそれだけかどうかはよく検証しなければなりません。何でもやはり選挙制度のせいにしてしまうと、ちょっと議論を狭いものにしてしまいますので、今御指摘の議論の中には、選挙制度と関係ないものも入っていたような気がしましたので、率直に感想を申し上げさせていただきました。

穀田委員 いや、私が言っているのは、お二人が、当事者がそう言っているということをまず指摘したわけですね。プラスの面、マイナスの面があると言いますけれども、選挙制度が本当の意味で国民の民意を反映しているかという問題が本来の基準でなければならないと私は思います。

 そこで、総理大臣は、九三年の政治改革にかかわったことをお話しされました。私も一緒に当選した者の一人として、では、それでどうだったかということについて、一言言っておきたいと思うんですね。

 十八年前ですよね。それは、細川内閣が提案した小選挙区比例並立制が、衆議院は通りましたが参議院では否決された。そして、衆参両院の両院協議会が調わず、廃案にされました。そして、残念なことに、それこそ私は残念なことに、当時、土井議長があっせんで、細川総理と自民党河野総裁の間でいわゆる総理・総裁協議といいますか合意というのが行われて、一夜にして国会の正式の結論をひっくり返し、今の制度を誕生させました。そもそも制度の誕生自身に大きな問題があったということは言わなければなりません。しかし、そのことを経て、今のお二人が失敗だと反省していることが重要だと思います。

 そこで、私は全てを選挙制度だなどということは言っておりません。今お話があったように政権交代がダイナミックにできたと言いますけれども、当時、八〇年代から既に自民党は四〇%台の得票率に後退していました。ですから、当時、それこそ票の格差を是正していれば、それこそ区割りの問題も含めてきちんとしておれば、政権交代は可能だったのであります。ですから、何か小選挙区制ができたことによって政権交代が行われたのではなく、九三年自身に政権交代が行われた事実がそれを示していると私は思います。

 今、超党派で、衆議院選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟がつくられ、百五十名を超える議員が参加をしています。代表世話人の民主党の渡部恒三氏は、一九六九年以来国会議員を務めてきて今ほど政治が混迷した状態はない、原因は選挙制度、小選挙区制は間違いだったと述べています。また、自民党の加藤紘一氏は、政治が活力を失い日本全体が沈下している、最大の原因は小選挙区制だと言い切っています。

 そこで、今我々は何をなすべきか。そこで一番最初に私が言った、選挙制度はどうあるべきかということになります。

 どの世論調査を見ても、選挙制度を抜本的に変えるべきだという国民の声が多数に上っています。この機を逃してはいけないと私は思っています。今必要なのは、現行の小選挙区制に固執するのではなくて、民意を反映するよりよい選挙制度の改革の議論こそ急ぐべきだと考えます。

 選挙制度を変えるというのはそれほど難しいことではありません。何せ日本の選挙制度史上、小選挙区制は過去に二度廃止されています。先ほど総理は、各党協議会、立法府の役割についても言及されましたし、その反省の弁を、行政府としてのあり方の問題を含めて述べられました。私どもは、この各党協議で改革の実現を何としても図らなければならないと考えています。

 そこで、いわば虚構の多数といいますか、そういうもとで行われている政治の、きょうの議題でありますマニフェストに関連して、次は聞きたいと思います。

 この間、私は、ずっと国土交通委員会に所属してきまして、公共事業の問題についてただしてまいりました。公共事業で何が問題になってきたかということです。これは、あり方の問題です。それは、採算性を度外視して、この狭い国土に九十八もの空港をつくる、それから高速自動車道、それからダムをつくって、土建国家と言われるほど、右肩上がりのバブル時代の計画をどんな状況になろうともやり続ける、これでよいのかということが問われました。

 民主党は、この問題を捉えて、一旦計画すればとまらない、それから、このような公共事業のあり方はおかしいと。国民の声もそうでした。こういう中で、民主党のマニフェストは、コンクリートから人へとして、そのマニフェストの中で、時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直すということを書かれていました。これが公約の中心ですね。

前田国務大臣 穀田委員にお答えいたします。

 平成二十一年のマニフェストでは、公共事業については、一・三兆円削減するというふうに約束しておったわけでございますが、二十四年度予算までに二・五兆円を上回る削減を達成しております。

 一方、東日本震災がありました。その反省に立って、人命第一、災害には上限がないという、これは社会資本整備審議会が出していただいた教訓でありますが、そういったことを踏まえて、国民生活の安全、安心を確保することはもとより、持続可能で、活力ある国土づくり、地域づくりをするために真に必要な社会資本整備を着実に推進していく必要があります。

 もちろん、選択と集中、コスト縮減、そういったこと、あるいは第三者による事前評価等を実施して、真に必要な社会資本を戦略的に整備してまいります。

穀田委員 国土交通大臣の所信表明を聞いているんじゃないんですよ。マニフェストでは全面的に見直すと言っていたよねと。そうでしょう、総理。

野田内閣総理大臣 コンクリートから人への理念のもとに、全面的に見直すということでございました。

穀田委員 では、マニフェストに掲げた、今お話があった、時代に合わない大型事業は全面的に見直す、これはどうなったかということについて議論しましょう。

 中止を明言した八ツ場ダムは、建設の継続を決めました。東京の高速道路で、一メーター約一億円もかかる外環道は、凍結していたが、本格工事を着工しました。白紙と言っていた整備新幹線の未整備区間の新規着工にゴーサインを出しました。

 これでは、国民に約束した全面見直しなど、全くないじゃありませんか。どこが、全面見直ししたんですか。

前田国務大臣 先ほど申し上げたように、真に必要だという点で絞っておるわけでございまして、特に昨年のあの大震災を踏まえると、やはり多重防御、外郭環状道路にしても、この東京首都圏で環状道路が高速道路でまだ通っていないわけです。そういったものをつながないと、いざ災害のときに、特に直下型等が言われているときに、そういうものはやはり選択をして、早期につながなければならないという結論を有識者会議で出していただいた。

 それに基づいて今その方向を出そうとしているところですが、基本的には、無駄な公共事業は削減するということでやっておるところでございます。

穀田委員 要するに、見直したじゃなくて、有識者会議で結論が出たのはこういう中身だったと言っているにすぎないじゃないですか。

 何を変わったんだ。やめると。見直しをするというのはやめるということじゃないですか。しかも、中止を明言して、あのときはどう言ったか。この問題は、八ツ場ダムや川辺川ダムというのはそういう見本なんだというところまで言った。つまりそれは、さまざまなやり方について中止をするということをみんなの前で言ったということじゃないですか。何を言っているんですか。

 そこで、では、実際の現実はどうかということなんですね。全面見直しどころか、これから先まだまだ続く、大型の新規事業が続くではありませんか。

 ダムの建設は三兆八千三百億円、高速道路は三十三兆一千五百億円、整備新幹線は四兆四百億円、国際コンテナ戦略港湾に五千億円、これを合計しますと、何と四十一兆五千二百億円にもなります。莫大な新規投資額が計画されている。

 これは政府の政策でありまして、つくり続ける計画ですよね。間違いありませんね、大臣。

前田国務大臣 穀田委員、そこに、この資料を出していただいているようですが、いろいろな仮定があると思うんですね。

 しかし、民主党政権になって、事業というものについては厳密な検証を施し、そして、採択されたものについてのみつけておりまして、この先どういうような計画で、例えば高速道路の三十三兆と載っておりますが、それは多分、いろいろ計画に上がっているものを足し合わせるとそういうことになるということで、現実は、きちっと検証した上で事業採択したもののみについて予算をつけているものでありまして、例えば道路について言うと、直轄の高速道路、高規格道路ですね、事業の二〇一一年度末の直轄分の残事業は約八兆円ということになっております。

穀田委員 それは違いますよ。ここに書きましたように、高規格幹線道路約一万四千キロメートルのうち、今の時点での残事業、これは三千九百三十キロメーターあるわけですから、それをやめると一言も言っていないわけですから、それを計算するとこうなる。ですから、この数字はこのとおりですよ。このとおりやらないと。やめるというんだったら、やめてごらんなさいよ、やめないんだから。

 私、これを今指摘したのはなぜか。これほど莫大な金をかけるということが一つある。もう一つは、公共事業でつくったインフラというのは、必ず維持管理の費用が要るし、そして、耐用年数が過ぎたものの建てかえの費用、いわゆる更新費が必要となる。では、どのくらい費用がかかるかという問題なんですね。

 二〇〇九年度版の国土交通白書、これを持ってきました。これによりますと、書いてあるんですけれども、そこには、「二〇一一年度から二〇六〇年度までの五十年間に必要な更新費は約百九十兆円と推計」と記述されています。

 これは間違いありませんね。そのことだけ言ってください。

前田国務大臣 もちろん、これは前提を置いての数字なんですね。

 要するに、こういう時代がこのままやると来るぞという一種その警告を込めて、今ある施設をそのまま更新する、地域の構造も、人口は減るしどんどん変わっていくわけでございますから、そういったことを一切無視して、もしもこのままやるとこういうことになりますよという数字を挙げているわけでございます。

穀田委員 一切無視してというのは書いていませんよ。そういうことを前提にしてやればこうなるとあなた方がここに書いているんじゃないですか。それを私は言っているだけですよ。

 では、もう一度、百九十兆円かかるということは確かだと。では、白書のデータをわかりやすくパネルにしたので、見ていただきたいと思います。

 これは、図表の緑の部分が新設費用です。一九六四年の東京オリンピックの前後、建設ラッシュがありました。その後、高度成長期が続きます。そして、日米構造協議に基づく公共投資六百三十兆円の押しつけのもと、バブルの後の景気対策が行われ、そして膨大な投資が行われたわけです。

 図表の赤い部分が建てかえ費用です。コンクリートの建物というものは建てかえが必要です。これまで建てかえの費用はそれほどでもなかったけれども、今後大幅にふえていく。それが今から五十年で百九十兆円かかるということです。

 そして、青い線が二〇一〇年度の予算の水準を示しています。二十五年後の二〇三七年には、維持管理、建てかえの費用さえ賄えない。そういうことをこの国土交通白書は記していますね、国土大臣。

前田国務大臣 そういう前提を置いてやるとまさしくそういうことになるわけでございまして、そこで、大きな警鐘を鳴らしているわけであります。

 したがって、持続可能な地域づくり、国土づくり、地域の構造も、人口も減るでしょうし、経済社会構造も変わっていくでしょう。そういったものに対応した社会資本施設整備、それをコンパクト化して、長寿命化して、そして民間も参入してというようなことでいかに持続可能な地域づくりをするか、その方向に社会資本整備のあり方も変えるわけでございます。

穀田委員 先ほど述べましたように、山がこうありますね、総理。これは必ずつくった分だけ、どのぐらい費用が全部でかかるかは別として、次は更新しなくちゃならぬわけですよ。ずれてくるわけですよね。すぐ国土交通大臣は、長寿化を行うと。それはやるのは当たり前なんですよ。だけれども、それを少しばかりやって少しばかり減らしたからといって、二〇三七年には、維持管理費、管理と建てかえ費用も賄えない。こういう時期が、ちょっとずれることはあったとしても、当然それはやってくるわけです。

 しかも、国土交通省の所管分だけでこれだけなんですよ。しかも、この中には高速自動車道の建てかえの費用は入っていないんじゃないんですか。それだけ言ってください。入っていないでしょう。

前田国務大臣 直轄分の中には入っていると思いますが、いわゆる高速道路会社等のものについては入っておりません。

穀田委員 公共事業は国土交通省だけではありません。

 そこで聞きますが、厚労省は、今後五十年間の上水道の更新費は幾らと推計していますか。

小宮山国務大臣 お尋ねの水道施設の更新費用ですが、あくまで一つの試算として、今後およそ四十年間でおよそ三十九兆円と推計をしています。

 ただ、これは、どれぐらい古くなっているか、費用がどれぐらい要るか、これを計画的、効率的にやるアセットマネジメント、資産管理に関する手引を策定していまして、これに基づいて計画的にやるようにしたいと思っています。

穀田委員 三十九兆円かかる。

 では、文科省は、小中学校の建てかえに今後五十年間に必要な更新費はどれほどと見積もっていますか。

平野(博)国務大臣 穀田委員の御質問にお答えします。

 五十年間でどれぐらいの更新費用がかかるか、このことについては、現時点で適当なデータを持ち合わせておりません。しかし、現存する公立小中学校の建物が三万校ございます、校数として。建屋としては十二万棟ございます。そういう中におきまして、約二十五年以上経過している建屋につきましては七割ある、こういうことでございまして、幾らかかるかということについては、今、確かなことは申し上げられません。

穀田委員 だから、現時点では持ち合わせていない、だけれども、三万一千七百二十三校あって、築二十五年以上たっている非木造の校舎が七割、正確に言えば七〇・七%を占めている。ということは、これは当然、更新の費用の中で、一つの学校当たり十数億から二十億弱かかるわけですよね。だから、これまたとてつもない金がかかるということだけははっきりしている。

 大体、安住さん、うなずいていますけれども、今後五十年間、これは絶対に建てかえなくちゃならないわけですよ、小学校、中学校。文科省が何ぼかかるかというのを持ち合わせていないということ自体が問題と言わなければならないと私は思いますね。問題だと言っているんですよ。別に答弁を求めているわけじゃありません。それは確かなんです。だって、今後どうなるかということで、公共施設やいろいろな建物について、政府が実際の、今後建て直さなくちゃならぬという問題についてどう掌握しているかという問題が問われているからであります。

 先ほど言ったように、国交省だけで百九十兆円がかかる、ほかにも更新がいっぱいある。これがどのくらいかかるかということを推計した方がいらっしゃいます。これは東洋大学の教授の根本さんという方なんですが、著書で、「朽ちるインフラ 忍び寄るもうひとつの危機」という中に、実は、今後五十年間の更新投資総額は三百三十兆円に上る巨大な金額となると指摘しています。

 総理、このくらいの費用がかかるということをどういうふうに認識しておられますか。

野田内閣総理大臣 これから、建てかえ等々、維持管理、メンテナンスでも、今のその三百数十兆が本当にどれだけ正しいかはわかりませんが、今までのやりとりを聞いて、相当な額が必要であることは間違いないというふうに思いました。

穀田委員 ですから、三百三十兆円というこの推計が正しいかどうかというのはあるけれども、いずれにしても、今後五十年間でとてつもない額がかかる。幾ら長寿命化しようと、幾ら減らそうと、必ずそれは、一定の時期には建てかえをし、やらなきゃならないということ、こういう事態に日本があるということだけは確かなんですね。

 そこで、昨年十一月の行政刷新会議の提言型政策仕分けでは、中長期的な公共事業のあり方として、公共事業について、現状では持続可能性がない、それから、新規投資は厳しく抑制していかなければならないというふうに提言していますが、それは事実ですね。岡田大臣。

岡田国務大臣 昨年十一月の行政刷新会議が実施をしました提言型政策仕分けの結論として、新規は厳しく抑制していき、選択と集中の考え方をより厳格に進めるべきである、既存ストックの維持管理については、民間資金の一層の活用を図るとともに、重点化、長寿命化を図りつつ、見通しを立てた計画的な更新を行うべきである、こういうふうに結論づけたところであります。

穀田委員 そうすると、今お話があったように厳しく抑制すると言うけれども、八ツ場ダムは先ほど述べたように復活する、そして東京外環道は着工する、そして整備新幹線も進める、それから、ダムや高速道路、大型事業はまだまだつくり続ける。一体、こういう内容が、その提言どおりやられているのか。

 そして、私は、今、岡田大臣が述べたことを岡田大臣に逆に聞きます。どうせまた前田大臣は、長寿命化とそれから持続可能性と集中化、この三つぐらいのパターンで言うんですから、そうじゃなくて、今、その提言どおりこの問題についての見直しが図られたかということについて、そのことが実行されて提言どおりやられているかという問題について、私は総理ないしは岡田大臣に聞きたいと思います。

岡田国務大臣 先ほどの委員のお話を聞いておりまして、例えば学校であれば、子供の数は減るわけです。そうすれば、全部をそのまま建てかえるのではなくて、いろいろなやり方がそこでも考えられるというふうに思います。ですから、いろいろな工夫はしなければいけないと思います。

 その上で、個別のことについては私はあえて言及しませんが、ただ、トータルの一般会計における公共事業予算、これは、民主党政権になって、先ほどのお話のように、かなり減らせました。そういう傾向は私はきちんと維持すべきであるというふうに考えております。

前田国務大臣 ちょっと事実だけ申し上げますと、もちろん新規事業採択は、先ほどの仕分け等の方針に基づいて、厳しく、選択と集中、そしてまた採択、絞り込みをやっておりまして、予算面では八%の縮減を行っております。そして、要求段階で新規二十カ所、出てまいっておりましたが、決定段階では十六カ所に絞り込んでおります。

 穀田先生の言われる、八ツ場ダムに、外環に、あるいは新幹線にというお話ですが、まことにそういう意味では残念ではあるんですけれども、やはり、首都東京の安全であったり、そして国際間の競争からいって、絞り込んだ上で、重点的にどうしてもやらざるを得ない公共事業に絞ってやっているということ、予算づけをしているということを御理解いただきたいと思います。

穀田委員 だから、最初に言ったわけですよ。そういう大型の直轄公共事業というのは全面的に見直すと言ったわけですやんか、それがあなた方の公約ですやんか、それがやられていない。結局のところ、一番肝心な、先ほど示しましたけれども、ダムの問題にしても、それから高速自動車道にしても外環道にしても、そして整備新幹線についても、中心は全部残っているじゃありませんか。肝心なところは全部あるんですよ。

 それで、何かというと皆さんは重点化ときます。今、こんな新規をやっているような時代じゃないじゃないか、新規をやっているような金はないということまで提言のところで言われている。そして、更新費用がこれだけかかるという話まで出た。こういう中で、それを続けていいのかということが、当時言っていたことが問われているじゃないかということを私は指摘しているわけです。

 重点化と言うんだったら、新規から維持、そして維持管理、更新のところにシフトを移すべきだ、そして、大型開発事業から命と暮らし、地域密着型の公共事業に変えるべきだ、そのことによって、私は本当の意味で持続可能性が出てくると思うんですね。

 問題は、そう言うと大体大臣はうなずいているんですけれども、そうなっていないから言っているわけですよ。こういう事態になっているじゃないかということを言いたいと思うんですね。国民が、自民党政権時代に、建設ありきというやり方に対しておかしいと思った。とまらない公共事業に対して皆さんがおっしゃった、コンクリートから人へ、さらには時代に合わない公共事業というのは見直す、この公約をしたからこそ民主党に期待したわけですね。しかし、それがことごとく中心のところで裏切られている。

 なぜ見直すことができないか、なぜ転換することができないか、ここが問題なんですね。ここは……(発言する者あり)違うんです。やはり自民党時代もそうだったんですが、大型公共事業の推進の背景には、例えば、アメリカの公共投資計画実施の圧力、さらには、鉄鋼、セメント、ゼネコンなどの財界の大企業の圧力がありました。これが実は、民主党が……

中井委員長 穀田さん、時間が来ますので、まとめてください。

穀田委員 大きな転換をし出したのは、その財界の要望書を受けてからそっち寄りになってきたんだと思うんですね。八ツ場ダムにしろ、高速自動車道にしろ、新幹線にしろ、見直しのトーンが下がってきた。結局、民主党もアメリカや財界中心の政治を脱却できないところに根っこがある、このことは確かだと思います。

中井委員長 時間が来ましたから、まとめてください。

穀田委員 こういう政治の土台をつくっているのは選挙だ、これを変えたいと思います。

 以上です。

野田内閣総理大臣 まず、数字で申し上げますけれども、政権交代前の公共事業費は、これは七・一兆です。平成二十四年度の当初予算は四・六兆です。だから、大型事業を何かぼんぼんアメリカの圧力でやっているようなイメージの今終わり方ですけれども、それは全く違うという御答弁を申し上げておきたいと思います。

中井委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 まず冒頭、総理に、昨日、米国と北朝鮮がウラン濃縮、核実験、長距離ミサイル発射を一時停止するという合意がありました。総理はこの合意についてどう受けとめておられるか、今後の展開、日本の対応についてお聞きをしたいと思います。

野田内閣総理大臣 昨晩、米朝間の合意があったということで発表がございましたけれども、北朝鮮をめぐってはもろもろの懸案があります。我が国にとっては拉致、そして核、ミサイル、こうした解決に向けた、基本的には重要な一歩であるとして、歓迎をしている次第であります。

服部委員 こういうアメリカの外交を見ていますと、アメリカはなかなかしたたかだなというふうに思うんですけれども、去年、予算委員長も中国に行って何か北側と接触をしたとかしないとか、いろいろありましたけれども、この間、日本政府としては独自に何か動きをされたということはないんですか、北との関係で。全く何もされていないんですか、政府として。総理、御存じであれば。

野田内閣総理大臣 特に六者協議の関係国と連携をしながら、その情勢の分析、そしてさまざまな動向、注視をするということで、直接云々ということは控えたいというふうに思います。

服部委員 中井さんは特使で行かれたのかなと思って、やるなと思ったんですけれどもね。一日も早く六カ国協議が再開をされ、そして東アジアに平和構築と非核化のプロセスが進むということを期待いたします。

 先ほど、朝鮮高校の授業料無償化の適用をするなというような声がいろいろありました。私、意見だけ申し上げておきます。

 無償化の適用の判断については、政治から切り離す、教育内容は問わないということになっております。高校課程に類するカリキュラムがあるかどうか、客観的、形式的な基準を満たしているかどうかを見る。政治的な思惑に子供を巻き込んではいけません。朝鮮高校に通う子供の半数が韓国籍とも聞いておりますし、日本籍もいる。そういうことで、何よりもやはり差別はだめだということを申し上げ、この件につきましては二月の十五日に総理と一回やらせていただきましたので、きょうは答弁は求めません。

 それで、きょうのテーマは政策効果検証ということです。

 今どき、三党合意というふうにいいますと、すっかり民主、自民、公明の三党合意ということになっているんですけれども、我々衆議院議員は二〇〇九年の八月の衆議院選挙、政権交代を実現したときの選挙で選ばれているわけですね。そして、民主党、国民新党、社民党の三党連立政権が発足をして三党合意ができたわけです。元祖三党合意なわけですね。(発言する者あり)いや、これが実際、民意なんですよ。だから、政策検証というならば、政権交代時のこの元祖三党合意を本来検証しなければならないわけなんです。

 総理、ここにパネルで、政権交代のときの約束はどうなったのかということを提示させていただいております。まあ本当に、変われば変わるものだなと。国民の中には、裏切られたという気持ちが蔓延していますよ。行き過ぎた競争社会に歯どめをかけて、生活再建だ、あるいは対等、平等な日米関係、いいじゃないですか。辺野古は、私、もうとまったと思いましたよ。私も、やっと政治が変わるんだなと夢を見ました。ちょっと短かった。あっという間の夢でした。

 総理、この政権交代に本当に期待した人に対して、裏切りではないと自信を持って言えますか。

野田内閣総理大臣 この間の議論でマニフェストの話は随分出ましたけれども、PRが少なかったところはあるかもしれませんが、やったことも相当あるんですね。

 間違いなく言えることは、今、社会保障と税の一体改革の議論がありますが、社会保障を充実させる方向でかじを切ってきたことは間違いありません。これまでの政権が二千二百億削ってきたものを、私どもは、例えば最初の初年度で九・八%ふやしました。まさに国民の生活を支える社会保障、困ったとき、苦しいとき、弱ったとき、誰もがいつ遭遇するかわからないものについての安心感をもたらすための努力は間違いなくやってきていますし、その中には、貧困、格差、非正規雇用の問題についても状況改善に努めてきているというふうに思います。

 それからもう一つは、やはり地域主権の関係で、国全体も苦しいんですが、三位一体改革で地方が疲弊をしました。その立て直しは、ずっと交付税を積み上げてふやし続けてきていますし、自由度の高い一括交付金であるとか、義務づけ、枠づけの見直しであるとか、あるいは今回も出先機関の原則廃止とか、こういうことは着実にやってきているんですね。そこはぜひ御理解をいただいて、一刀両断で、何か路線が変わったようにお話がありますけれども、そうではないですから。

 今回の普天間の問題だって、これは対米追従ではありませんので、アメリカとしっかりと対等に協議をしていきたいと思っていますので、一刀両断でやられちゃうと、何か全然違っているように見えますが、私どもの基本的な思いはしっかり堅持をしながら今も頑張っているということは、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

服部委員 今、沖縄の話が出ましたけれども、沖縄の皆さんは裏切られたと思っていますよ、本当に。

 野田総理が民主党政権三代目の総理です。総理がかわるたびに、民主党はどこへ行くのという感じですよ。

 総理、質問をちょっと変えますけれども、総理の立場から、鳩山連立政権に対する評価を聞かせてください。

野田内閣総理大臣 鳩山政権のもとで、私は当時、財務副大臣として最初の予算編成のお手伝いをさせていただきました。先ほど来お話があったとおり、コンクリートから人へ、そういう理念のもとで、私はあのとき大胆な組み替えの予算をつくったと思います。社会保障関係費は九・八%ふやしました。文教費は八%ふやしました。一方で、さっき、何か大盤振る舞いしているようなお話がありましたけれども、公共事業関係費は一八・三%減らしました。というように、大胆な予算の組み替えはやってまいりました。その第一歩をしるしたのは鳩山政権だったというふうに思っています。

 それは、普天間の問題を含めて、いろいろな評価はあるかもしれませんが、政権交代の一歩目は、その大事な予算をつくるところは、基本的には、暫定税率の問題等、マニフェストが実現できないところもありましたけれども、私は、評価はいろいろあるかもしれませんが、一生懸命政権交代に応えようとした一つの政権であったと思っております。

服部委員 ここに、連立政権合意のときの、いろいろつくった法案がございます。郵政の法律、後期高齢者とか障害者自立支援法とか、結局、今の時点でどれも実現しておりません。こういった法案をまず真っ先に実現しなければならなかったんじゃないんですか、消費税とかTPPを持ち出す前に。実現をしてから先に進めばいいわけじゃないですか。ネバー、ネバー、ネバーギブアップと言って、何のことかなと思ったら、消費税を上げますよと言う。そうじゃなくて、ネバー、ネバー、ネバーギブアップと言ったら、こういう法律を、政権交代のときに約束した法律を通すということが、本来しなければならなかったんじゃないんですか。

岡田国務大臣 私は、この三党合意を結んだときの二回目の幹事長であります。

 先ほど委員、いろいろ言われましたけれども、例えば、消費税を上げないとか、普天間移設は最低でも県外とか、そういう表現は三党合意の中にございません。普天間の問題も、当時、幹事長間で随分議論いたしましたが、あえて三党合意の中にはそういう具体的な表現は盛り込まないということで、それだけで五日間ぐらい議論した記憶がありますが、三党合意にはそういう普天間という固有名詞は入れないことにしたわけで、そこは、三党合意の中にはそういったことは入っていないということは申し上げておきたいと思います。

 いろいろと今委員がおっしゃいましたけれども、結局、国民新党、社民党、民主党の三党連立だったわけですね。それが、残念ながら、途中で社民党さんが離脱をされた。そういうことも、あるいはその後の政策に影響があったかもしれません。私としては、ぜひ残っていただいて一緒に仕事をしていただければもっと違う展開もあったかもしれませんが、今後とも、そういう連立与党ではないかもしれませんが、いろいろな面で協力しながら、お互いに目指すところを追求していきたいというふうに思います。

服部委員 何か、社民党が離脱していなかったら政策がもうちょっと違ったかもしれないみたいなふうにちょっと聞こえましたけれども、まあ、次に行きます。

 非正規労働者が増加をしているわけです。この上の三五・二%というのは総務省の統計、下の三八・七というのは厚労省の統計なわけですけれども、少し前は三人に一人が非正規だと言っていたのが、今は四〇%が非正規の時代となってきました。

 政権交代のときにあれだけ大騒ぎして、大騒ぎと言ったらいけませんけれども、二〇〇九年の一月の日比谷の派遣村、私もちょうど一月の四日に行きましたら、その当時の民主党の雇用対策本部の菅前総理が大演説されていましたよ。

 それで、次のパネルですけれども、貧困率も上昇しています。女性の三人に一人が貧困だ、あるいは六十五歳以上の女性の貧困率が四七%、それから母子家庭の貧困率が四八%、非常に深刻ですよね。国民は苦しんでいます。

 総理、非正規労働者がふえたりすることはだめだというふうにお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 それは、非正規でないにこしたことはございませんが、今、リーマン・ショック以降、いろいろな事情の中で非正規がふえてしまっています。

 そういう意味では、今回、また有期労働の法制も出しますし、いろいろな形で、ハローワークで正規の方へ行くようにという支援をしたり、または求職者支援法とか、いろいろなことで、能力を上げることを含めて、なるべく正規になるように、期間限定でない雇用になるようにと努めているところでございますし、今回、社会保障の一体改革の中でも、全員参加型社会ということで、初めて社会保障の中に就労ということを入れて、若年者の非正規のところへの支援とかいうことも含めて、ここは本格的にやろうと思っております。

 貧困率については、長妻元厚労大臣のときに、相対的貧困率、これを公表したことというのは政権交代後の非常に大きな成果だと思っておりまして、さらに、今御指摘があったように、これからこの貧困率をどのような形で政策に結びつけられるかということで、二十四年度は検討会の経費なども計上しておりますので、しっかりとそのあたりも取り組んでいきたいと思っています。

服部委員 総理、政権交代しても非正規の労働者の割合がふえているというのは、これは政策の失敗だというふうにお考えになりますか。それとも、もうちょっと時間をくれということでしょうか。

小宮山国務大臣 今も申し上げましたように、これは政権交代をしたからということではなくて、世界的な経済の状況とか、いろいろな中で雇用の状況が悪化をしているということは残念ながら事実でございます。

 その中で政権交代をした今の政権としては、しっかりと働く者を支えるという立場から、今回、社会保障の改革の中でも、先ほど申し上げたことのほかに、低所得の方へのいろいろな加算とかさまざまなことで、できることはしながら今取り組んでいるというところは御理解いただきたいと思います。

服部委員 委員長、今度は総理にお願いしますね。

中井委員長 はい、中身によって。

服部委員 総理、これは、企業は非正規がふえた方が安上がりでいいわけですよ。だから、ここはやはり政治の責任として、非正規の割合を必ず減らしていくという約束をしてください。決意をお願いします。

野田内閣総理大臣 今、非正規の割合が三六パーぐらいでしょうか。非正規がふえ、あるいは定着することの弊害は、これはもういろいろな面で出ていると思うんです。非婚につながっていたり、家庭を持たなくなる、その分、だから少子化にもつながっていく等々の影響は、これはまさに社会的な影響は極めて大きいと思います。

 したがって、これまで何もやっていなかったわけではありません。ハローワークにおいてフリーターの正社員化に向けての努力をするとか、あるいは、さっき小宮山大臣がお話しになったように、第二のセーフティーネットの求職者支援制度を昨年の十月から導入したり、さまざまな取り組みをやってまいりましたが、ここは服部委員と同じように、やはり非正規の割合が減っていく努力を、これは政府も、企業にも御理解をいただいてその努力をしていくことはどうしてもやらなければいけないことで、認識は一致をしております。

服部委員 パネルはちょっとないんですけれども、お手元に、いわゆる再分配が貧困解消になっているかというグラフを配付させていただいております。我々、税金を納めて社会保障など再分配が機能することによって、国民全体で生活の苦しい人に対しても支えながら社会を構成しているわけです。ところが、この表を見ますと、共稼ぎとか一人親とか単身者とか子供に対しては、この再分配の機能がうまく機能していないんですね。貧困率がなかなか減らないという現状があるわけなんですよ。

 それで、今回、消費税を上げるということなんですけれども、消費税を上げて本当に困った方にお金が使われるのか。例えば、二百万の非正規労働者が今回の一体改革で具体的にどうなるのか。パートしか仕事がないシングルマザーが一体どうなるのか。具体的な試算をされたんですか。

小宮山国務大臣 今委員がお示しいただいたこの表は、昨日、西村委員が紹介をされまして、そこでも議論をさせていただきました。再分配機能が下がっているということに対しては、子ども手当とか、それから高校授業料無償化によって低所得者の方の可処分所得がふえているということも、きのうお話をいたしました。

 そうした中で、しっかりと取り組ませていただきたいと思っておりますので、そこのところは御理解をいただければと思っております。

服部委員 もう時間が経過しておりますので、次に原発の問題を質問させていただきます。

 おとつい、再稼働問題について、枝野経産大臣、細野大臣ともいろいろとやらせていただきました。原発の再稼働がどうなるのか、国民の大きな関心事となっております。きょうは、おとついの予算委員会の私の議論でいろいろ整理をさせていただいた論点をここにお示しさせていただいております。

 福島第一原子力発電所の事故の検証、これが一体どうなのか。国会、政府事故調の報告が一体どうなのか。それから、検証を反映した安全指針あるいは耐震設計指針の見直しがどうなるのか。あるいは地震動や津波の想定の見直しがどうなるのか。耐震バックチェックをどうするか。それから、緊急安全対策、シビアアクシデント対策、防潮堤とか、こういった対応がどうなるのか。

 あるいは、最低十兆円規模の事故損害に備える保険というものを準備できるのか。地元の範囲というのは一体どうなるんだ、あるいは地元の合意はその上でどうなるんだ。あるいは防災指針の見直し、防災体制の整備というのはいつ完了するんだ。

 原子力規制庁が発足をしますけれども、実質的な規制が施行されるのは来年の一月以降だというふうに言われております。その前に再稼働が駆け込みでされるようなことはないのか。あるいは、原発の老朽化のことも問題になっております。もう今既に四十年たっている、あるいは四十年を迎えているような炉をどうするのか。マーク1をどうするのか。そういった議論をさせていただいたわけです。

 それで、もう枝野大臣とはさんざんやりましたので、総理に二点だけお聞きをしたいと思うんですけれども、きょう班目委員長が安全指針が間違っていたとおっしゃった。さっき発言されたのを覚えておられますか、間違っていたと。これは、国会事故調で指針に瑕疵があったということをおっしゃっているんですね。ですから、瑕疵があったということと間違っていたということは、まあ同じことなんでしょうけれども、そこまではっきり言われたので、ちょっと私もびっくりしたんです。

 おとついの班目委員長も、事故調で明らかになった事実も含めて、最新の知見というものを全て反映して見直しを進めたいというふうに言われたんですけれども、このことの意味は、福島の原発の検証をきちっとやって、そして、それを安全指針にきちんと反映をさせる必要があるということをおっしゃっているわけですね。

 それで、そのことを抜きに、安全と言葉で言ったから原発というのは安全じゃないわけでしょう。一体どういう基準で安全というものを評価するかということですから、総理の考え、要するに、検証そして安全指針の見直し、このことがきちっと完了するまで再稼働というものはあり得ないという、その所見をお聞きしたいと思います。

野田内閣総理大臣 二度と同じような原発の事故は起こしてはいけないということを前提とする上では、今政府で行っているいわゆる検証、これは中間報告が出ました。それから、国会の中での事故調の御議論、そして先般、民間事故調からも御提起がございました。そういうものを真摯に受けとめて今後に生かしていくということが何よりも肝心だろうと思います。

 でも、そういうものが出そろうまで何もしないのかというと、例えば原発の再稼働については、今ストレステスト、これはIAEAのレビューも受けながら、それを踏まえたストレステストをやって、そして保安院が評価をし、安全委員会が確認をし、最終的には地元の御理解をいただいているかどうか等を勘案しながら政治判断をするということは、当然、全てが出そろってからではなくて、一定の方向性は見えてきているものもあると思いますし、それぞれの、保安院や安全委員会においても、過去の教訓を踏まえながらより厳正な対応もしていると思いますので、そういう中での対応をさせていただきたいというふうに考えております。

服部委員 歯切れが悪いんですよ、歯切れが。

 ことしの夏、政府の事故調とか国会の事故調の検証結果も出るわけでしょう。そして、それを踏まえて、班目さんじゃないけれども、安全指針の見直しもしなければならないと言われているわけでしょう。ですから、その前に再稼働を判断するようなことはあり得ないんじゃないですか。住民にしても、どう判断したらいいんですか。もう一回、御答弁お願いします。

野田内閣総理大臣 ストレステストの一次評価の部分は、もう御案内のとおり、先般……(服部委員「ストレステストのことは言っていないです」と呼ぶ)いやいや、福島の、まさにああいう事故、津波等が、大きさが来たときに、炉心溶融しないための余裕がどれぐらいあるか、そういうストレステストをやっているわけでありますから、その評価を踏まえて保安院、安全委員会が確認をしていく中での判断でございますので、もちろん、より安全に万全を期していくという意味では全ての報告が出そろってからということはありますが、今からでも、しっかりと安全性をチェックしながら、その稼働をめぐっての議論をしていくということはあり得るというふうに思います。

服部委員 それでは、もう一点御質問しますと、今、原発立地の住民は、万が一事故があったときにどうやって逃げるんだ、どういう対策をするんだということで、非常に今議論になり、不安に思っているわけですね。先ほどSPEEDIの議論が出ましたけれども、放射能が高いところにみんな逃げているわけですよ、SPEEDIを公開しなかったがために。

 ですから、やはりこういったことは、きちっと防災計画が見直されない限り、再稼働を検討することはあり得ないと私は思いますけれども、その点どうでしょうか。

中井委員長 時間が超過しています。簡単に答えてください。

野田内閣総理大臣 今のSPEEDIの活用の仕方を含めて、あるいはそれを踏まえた対応ができなかったということはそのとおりであって、その反省はしなければいけませんが、再稼働の問題は、先ほどのように、しっかり安全性をチェックしながら判断をしていきたいというふうに思います。

服部委員 質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて服部君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 まず、食品の新規制値についてお伺いをいたしたいと思います。

 放射性物質の暫定規制値について、食べ物五百ベクレル、飲み物二百ベクレル、キログラム当たり、こういう基準が、チェルノブイリ事故を経験したウクライナやベラルーシの数値と比べて大ざっぱでしかも甘い、これまで指摘をしてまいりました。ようやく今般、暫定規制値にかわり、食品百、牛乳五十、飲料水十、そして乳児用食品五十、こういう新しい規制値が決まり、四月から適用されるということになりました。

 まず小宮山厚労大臣にお伺いいたしますが、この新しい食品の規制値について、厳し過ぎる、こういう意見もあるようですけれども、この数値について、厚生労働省として、公衆衛生また放射線防護の観点から合理性のある規制値である、このように考えておられるでしょうか。お伺いをしたいと思います。

小宮山国務大臣 まず、先ほど委員が大ざっぱだとおっしゃいましたけれども、決して暫定規制値も大ざっぱではございません。国際的な基準の中で十分に安全性が担保できるものです。

 ただ、今回の新しい基準は、全体に汚染の濃度が低下していることなども踏まえまして、安全の上に安心をしていただくためにつくったものですので、今おっしゃったように、合理的な数値だというふうに思っています。

柿澤委員 子供を含めて全ての人を放射性物質の内部被曝から守るための食品の新規制値を決めるに当たって、驚くべき出来事が起きました。

 厚生労働省の新規制値の案が妥当かどうか、文部科学省の放射線審議会が諮問を受けて答申をするわけですけれども、この放射線審議会の会長を昨年二月まで務めていた中村尚司氏が、パブリックコメントの期間中に、反対の立場からコメントを厚生労働省に送るよう呼びかけるメールを関係する学会の会員に送っていた、こういうことであります。

 これが東京新聞に報じられたメールの全文でありますが、ここには、「本案が施行されますと、福島県の農業、漁業へ甚大な影響を与え、福島県産の農作物、海産物が売れなくなる可能性が一層高まります。」と、公衆衛生、放射線防護の観点とは違う、農漁業者への配慮を理由とする反対論が書かれている。そして、末尾には、放射線審議会の現会長である丹羽太貫会長の名前を出して、丹羽先生とも連絡をとってコメントを出しました、こういうふうに書いてある。

 放射線審議会の関係者が自分の息のかかった学会の方々に呼びかけて新規制値に反対するようなパブリックコメントを出させたということであるとすれば、これは、玄海原発の運転再開に向けて九州電力が協力会社の社員に賛成のメールを送らせて大問題になった、九電やらせメール問題と同じ構図になってしまうというふうに思います。

 これは徹底した事実関係の調査が必要ではないかと思いますが、文部科学大臣、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 今、議員の御指摘につきまして、パブコメの要請メールということで、中村尚司前放射線審議会会長が丹羽現会長と連携をしながらやったのではないか、こんなことが報じられました。

 私も、これはもし事実であるならば大問題になる、こういうこともございまして、二月の三日に、直ちに、本当にこれは真実なのかということの調査を役所に指示いたしました。

 調査の結果、現会長につきましては、そのような働きかけを行った事実はない、こういう報告を受けました。しかし、私も直接会長にお会いをするということで、二月の八日に直接お会いし、事実でないという確認をいたしました。今後とも、誤解を受けるようなことのないように、公正な審議、運営に努めていただきたいということも添えて申し上げたところであります。

 一方、中村前会長につきましては、これはもう既に審議会の会長を解かれた専門家という立場であり、一専門家として知り合いのところにそういうお声がけをしたものである、こういうふうに私は思いました。

 したがって、放射線審議会は密室でやっておりません、公開の場でやっておりますので、オープンの場で公平な審議が行われた結果の判断だというふうに理解をいたしております。

柿澤委員 丹羽現会長に関しては、直接お会いもされて、調査もされて、御本人として、このようなメールを発出するに当たって関与していない、こういうことをおっしゃっている、こういうことであるようですが、中村前会長に関しては、そもそも、マスコミの取材に対しても、こういう内容のメールを送ったという事実は認めておられるようでもあります。

 中村前会長は、昨年二月まで放射線審議会の会長を務めておられた。そして、昨年十月に文部科学省が公表した放射線に関する学校副読本の作成委員会の委員長も務めていて、この副読本は、原発事故に関する言及がほとんどなく、スイセンからも放射線が出ているんですよ、こういうふうに、放射線があたかも危険性というかリスクのないものであるかのような表記がなされている、公衆被曝のリスクを軽視しているんじゃないか、こんなふうに一部にも批判をされている、この副読本をつくった方であります。

 さらに、中村氏は、現在も、文部科学省の放射線量分布マップの作成等に係る検討会の主査ともなっている、文部科学省が放射線に関してさまざまなお仕事をお願いしているという方であります。

 要するに、中村氏の考え方は文部科学省の考え方と同じであるのか、これをお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 これは決して、文部科学省と同じ考え方だと先生御指摘ですが、そうではございません。あくまでも一専門家としての考え方で対処していただいているわけでございますので、今回のメールの問題とは直接リンクをしているということではございません。

 ただ、先生御指摘のように、そういう懸念が起こってくるということになりますと、これは厳重に私は対処したいと思っています。

柿澤委員 このメールについては、さまざまなところから回ったものをちょっと拝見させていただきましたけれども、少なくとも当初は、丹羽先生、中村先生から反対意見を出してほしいということでこのメーリングリストに流しますとか、こういう形で出回っていたものであります。

 御本人が否定をされておられる、こういうことにとどまらず、こういうやらせメールのようなことで子供を含めた人々の健康を守るための食品規制値がゆがめられるというようなことがないようにしっかりと取り組んでいただきたい、このように思っております。

 続きまして、枝野経産大臣にお伺いいたします。

 枝野経産大臣は、今パネルをお出しさせていただいていますが、一カ月前の一月二十七日、原発稼働ゼロでもこの夏は電力使用制限令を出さなくても乗り切れる、こういう趣旨の発言をされておりました。おりましたが、ところが、二月二十四日になって、安全が確認でき、地元の理解が得られたら、今の電力の需給状況では稼働させていただく必要があるとして、原発再稼働の必要性にここで初めて言及をされた、こういうふうに報じられております。

 わずかこの一カ月の間にどんな変化があったのか、どのような理由で再稼働が必要という見解を持つに至ったのか、枝野経産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 何も変化しておりません。あえて言えば、聞かれ方が違ったということでございます。

 従来から、電力の需給状況が大変厳しくなるということは政府の見解としてもお出しをしているところでございまして、それから、再稼働がなければ、そこにパネルが出ておりますが、いずれにしても相当な節電をお願いしなきゃならない。また、これはことしの話ではありませんけれども、従来の原発の発電コストを前提にすればでありますけれども、これが火力等に置きかわれば電気料金のコストが上がる。もちろん、各社、今、企業努力によって、ことしの夏は東京電力以外は値上げせずに乗り切ろうということで努力をしていただいているという状況でございますが、そういった状況でございますから、安全と安心が確認できるならば再稼働をする必要があるだろうというふうに従来から思っております。

 ただ、需給が大変であるということと、安全性、安心の確認については全く切り離して考える。つまり、需給が大変だからということで安全性についてあるいは安心についての評価、判断に影響を与えることはない、そのことを従来から申し上げてきているところでございます。そして、現にその安全と安心について今確認するプロセスの途中でございますので、最終的にこの結論がどうなるかはまだわかりません。

 したがいまして、この夏に向けて原発が再稼働しない状況というのは、十分に可能性がある。その場合であっても、電力使用制限令という、これは強制措置でございます、これはせずに乗り切りたい。それが乗り切れると断言はしておりません。できる可能性は相当程度あるということで、今努力をしているところでございます。

 また、電力使用制限令や、あるいは日本の産業に大きな影響を与えることなく乗り切るための検討は、パネルにあるとおり、進めているところでございまして、何も変わっておりません。

柿澤委員 聞いていても、全くあやふやではありませんか。

 今の政府がどういうふうに国民から見られているか。先ほど社民党さんの質疑でもありましたけれども、今の政府は原発の再稼働に大変前のめりになっているんじゃないか、こういうふうに思っている国民が多いんじゃないかと思うんです。

 今の政府は、班目委員長をわざわざ留任させておいて、ストレステストの一次評価は不十分だと班目さんがおっしゃったら、今度は、それは再稼働の判断に影響を与えないんだ、こういうふうに班目さんの発言は切って捨てる。非常にこれは前のめりの印象を与えていると思うんですよね。

 再稼働は総合的に政治判断をするというのが政府の見解だというふうに思います。ということは、まさに政治家の皆さん、枝野経産大臣を初めとする皆さんがこの再稼働の判断をするわけです。だから、皆さんがどのような印象を与えているか、原発再稼働に前のめりなのじゃないか、こういう印象を与えているということは、国民に対して非常に大きな影響がある、意味がある、こういうふうに私は思うんです。そのことを指摘申し上げておきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 きょうは、マニフェストの効果検証がテーマとなっております。私は、労働者派遣法の改正につい取り上げたいと思います。

 最初に総理の御認識を伺いますが、マニフェストに掲げられたとおり、労働者派遣法の改正を行えば派遣労働者の雇用の安定につながる、こういう認識を総理は今もなおお持ちですか。

小宮山国務大臣 政府が提出いたしました労働者派遣法の改正案、これは派遣労働者の雇用の安定を図るために非常に重要な法案だという認識はずっと持っております。

 ただ一方、東日本大震災ですとか円高とかあの欧州の危機など環境が変わっていることもありまして、前の臨時国会で、民主、自民、公明の三党で修正案が出されました。この修正案も、政府案に盛り込まれていた労働者の保護規定の多くが維持をされていまして、法案の持つ意義とか効果は失われていないというふうに考えています。

柿澤委員 私が労働者派遣法の改正を取り上げたのは、マニフェストに掲げられた政策の中で実は最も国民に与えた被害が甚大だったのはこれではないかというふうに思うからです。

 労働者派遣法に関連して、専門二十六業務適正化プランに基づく行政指導が行われてきました。長妻厚労大臣の肝いりで始まったので、通称長妻プランと呼ばれています。専門二十六業務というのは、期間の定めのない派遣が認められている業務で、通訳、秘書、アナウンサー、設計、ソフト開発等々です。

 派遣の期間制限を免れるために専門二十六業務と称している不適切な派遣を摘発し、正社員になれない派遣に安定した雇用を与えよう、こういう狙いで始まったんでしょうけれども、それでどのような結果が生まれたかということなんです。

 長妻プランは、二〇一〇年二月の職業安定局長通達で始められました。すると、二十六業務に該当しないとされた派遣労働について、労働局の行政指導によって雇用契約が終了させられるケースが次々に発生をしたんです。

 一例を挙げれば、パソコンのスキルを生かしてパワーポイントの資料をつくった、プレゼン資料をつくる、こういう作業をやっていたんですけれども、社員が退職した都合で庶務の仕事を兼務した、そうしたら、これはだめですということになって、雇用契約終了。あるいは、受付の業務、十六号業務ですけれども、これをやっていた人が会議室までお客様を案内してお茶出しをすると、これは受付業務に当たらないから、二十六業務の派遣としては雇用できません、終了。こういうことが続いてきたんです。

 そして、労働局の指導も、二百人指導官がいれば二百様の解釈があると言われていて、前任者がセーフだと言っても、次の人はアウトだと言う。これでは、専門二十六業務の派遣は怖くて雇えない、こういうことになってしまう。労働局の裁量行政による萎縮効果が極めて大きいものだったというふうに思います。

 その結果、パネルを見ていただきたいんですけれども、平成二十一年から二十二年の一年間で十五万人減少、二十二年から二十三年で十一万人の減少、専門二十六業務は、何と二十六万人もの人が今までどおりの派遣で働き続けることができなくなってしまったんです。一方、下を見てもらうと、政府案のとおりに派遣法が改正されれば禁止になっていたはずの製造業派遣や日雇い派遣、さらにそれ以外の派遣も、この二年間で軒並みふえているんですよ。減っているのは専門二十六業務だけなんです。

 これを見れば、専門二十六業務適正化プラン、長妻プランが与えた影響の大きさがわかるだろうというふうに思います。二十六万人もの派遣労働者が、法律でもない一片の通達で、それまでの雇用契約の終了を強いられている。私は、これは二十六万人の官製派遣切りと言っても過言ではないというふうに思います。

 長妻プランによる派遣労働者の大量失職が生じているという認識はおありでしょうか。

小宮山国務大臣 委員が御指摘のような認識は持っておりません。

 この適正化プランはしっかりと目的を今達成しつつあると思っておりまして、その専門二十六業務派遣適正化プラン以降の雇用状況、これにつきましては、平成二十二年三月と四月に指導を行いまして、是正が完了した事案で見ますと、九七・六%の派遣労働者の雇用が維持をされていまして、離職した派遣労働者は二・四%しかいません。ですから、この適正化プランによってこれだけの数が生まれたという委員の認識は、私の方は持っておりません。

 先ほど申し上げたように、派遣が減っているというのはいろいろな経済状況の中で減っているということでございまして、これはやるべきことをしっかりとやっていることだというふうに考えています。

柿澤委員 これは二十六業務の五号業務、事務用機器操作ですけれども、リーマン・ショックでも三万人減です。その後、見てください。長妻プランが始まって、十九万人も減っているんですよ。

 先ほど、九〇%以上が雇用を継続していると言いますけれども、基本的にそれは、期間の定めのない派遣労働からパートやアルバイトになったり、一年限定の契約社員になったり、それに加えて時給が五百円も下がったり、こういう形で雇用を継続しているケースがほとんどなんですよ。これで、雇用契約が終了して、そしてよりよい安定的な就労条件についた、こんなケースは、現場の声を聞いてみるとほとんどない。役所に職を奪われた、こんな声まで現場から聞こえているような状況ですよ。

 私は、民主党政権がマニフェストに基づいてやってきた政策が二十六万人の官製派遣切りを生み出して、そして、派遣は搾取されてかわいそうだから禁止しなければ、そういう思い込みに基づく政策が労働政策をゆがめて、当の派遣労働者にしわ寄せをもたらしてきたというふうに思います。

 この考え方を根本的に改めるべきだと思いますが、野田総理、最後に御答弁をいただきたいと思います。

中井委員長 時間が来ています。野田さん、短くやってください。

野田内閣総理大臣 長妻プランの認識については、今厚労大臣が御説明したとおりだというふうに私は思いますけれども、派遣労働者の保護と、そして雇用の安定のためのまさに法案成立にぜひ御協力をいただきたいというふうに思います。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 マニフェストの一ページ目にあります、人間を大切にする政治というものをぜひ実現していただきたい、そういう思いを込めて、きょうは質問をさせていただきます。

 今、仙台市では五十三名の児童が給食を拒否しています。給食を食べないでお弁当を持ってきているんです。これはなぜかといいますと、子供を持つお母さんが放射能に対して不安の声を上げているからです。特に給食なんですけれども、検査の頻度、それから検査体制が十分ではありません。仙台市では一週間に一回、給食でよく使われる素材を二品だけ検査しています。これから検査頻度を上げるとは言っておりますけれども。

 平野大臣に単刀直入に言います。もっと検査器を設置してほしいんです。国の三次補正で盛り込まれた検査器がまだ一台も納品されていないと聞いております。ぜひスピードアップして納品をさせてください。それから、数も全然足りません。三次補正予算の検査器の補助金は、一県につき五台しか補助金が出ないという話でございます。

 来年度の予算にも検査器の補助金がつくというふうに聞きました。質問なんですが、来年度予算に組み込まれているのであれば、どこの地域を対象に、一県につき何台程度か、検査対象は、食べる前の事前検査の対象か事後検査対象か、精密な測定が可能なゲルマニウム半導体検出器か簡易の検査器か、これはどうなのかということをぜひ端的にお願いいたします。

平野(博)国務大臣 今委員の御指摘でございますが、特に放射能から子供を守る、人を大切にする、こういう考え方のもとに、特に食の安全という観点でこの問題について対処しなきゃならない、こういうふうに思います。

 まず、食の安全というのは、出荷段階からしっかりと制限を加えてチェックをする、こういう部分が一つ。それを前提にして、私どもの立場でいえば、学校給食におきましては検査の事業を行っていく、こういうことでございます。

 特に学校給食の放射性物質の検査、これは二十三年度の三次補正の予算につきましては、検査機器の整備、こういうことで、御要望のある十六都県に対して七十七台の検査機器の購入の助成をいたしているところでございます。

 さらに、特に福島県におきましては、原子力被害応急対策基金、こういう基金をベースにして、その中から食の安全ということで約五十三億円のベースでもって対応しているところでありますし、特に学校の給食につきましては七億円の予算を計上させていただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、私どもは、特に福島県の県内につきましては、調理場を含めて学校給食のあらゆる現場につきましては必要な機器の経費を措置いたした、こういうことでございまして、これから順次スピード感を持って配置されることを期待いたしているところでございます。

 今先生の御指摘は、福島県外についてはどうなんだということでございますが、今のところ、二十四年度予算案につきましては、福島県内につきましては一市町村当たり一カ所、福島県外は全国を対象として一都道府県当たり二カ所程度を配置しよう、こういうことでございます。

 先生御指摘の御心配につきましては、さらにこれを拡大する、こういうことも含めて検討してまいりたいと思っております。

 特に、機器の問題につきましては、より精密な、高精度な機器の開発をしていかなきゃならない、こういうことで、まずはゲルマニウム半導体の検出器等、より精度の高いもの、加えて、私は、特にスピード、いわゆる時間軸を短い時間で精度よくはかれる検出器につきましては、我が省としては、今、研究開発、さらには業界と連携をとりながら、その開発を指示いたしているところでございます。

斎藤(や)委員 スピードアップとそれから検査網の充実というのを、ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、仙台では給食を食べない子供が五十三人と言いましたけれども、牛乳はもっと多くて、四百二十五名の児童が拒否をしております。

 牛乳というのは、複数の酪農家が搾ったものを、一回クーラーステーションというタンクに集めた後で出荷されています。自治体の検査は、タンクの検査です。つまり、複数の酪農家の牛乳がミックスされていて、これを検査しています。ですから、タンクに入れる前の段階ではかれば、汚染のリスクは減るわけです。

 大変手間がかかるわけなんですけれども、子供たちの健康も風評被害も防ぐことというのはこれでできると思うんですけれども、ぜひ、農水大臣、厚労大臣、ちょっと端的に、短目にお願いいたします。

鹿野国務大臣 今お話しのとおりに、各酪農家が生産する原乳というのは、地域のクーラーステーションと呼ばれる原乳の冷蔵保管施設に一旦保管されまして、その後で乳業工場に輸送されるというのが一般的でございます。そういう中で、いわゆる消費者に供給する牛乳なり乳製品の安全性を確保する観点から、より消費者に近い段階であるクーラーステーションにおいて自治体が定期的に原乳の検査を行っている、こういう状況であります。

 そこで、農林水産省といたしましては、まず餌の管理をしっかりとやる、こういうことで、まず原乳段階での安全性を確保する。そして、関係省庁なり自治体と連携をして、検査の結果を速やかに、正確に情報提供させていただく。こういう取り組みを通じて、消費者の信頼を回復していくというふうなことが大事なことだと思っておるところでございます。

小宮山国務大臣 今、農水大臣がお答えになったとおりですけれども、クーラーステーションで検査をするというのは、原子力災害対策本部が定めたガイドラインの方法に従ってやっているところで、やはりこれは、消費者に提供される状態により近いクーラーステーションでやることが適切な方法だと考えています。

 国民の皆様には、こういう形で、なるべく口に入れられるところに近いところでしっかりチェックをしている、それで、どこの酪農家のものかということはさかのぼってちゃんとチェックができるようになっておりますので、こうしたことをわかりやすく丁寧に御説明したいと思っています。

斎藤(や)委員 実は、子供に給食をこっそり持ってこさせようとしている親もいます。子供がこっそり持ってきた給食を民間の検査機関に出させるためなんです。本当にそんなことをさせたら、子供はかわいそうですし、いたたまれません。いじめの原因にもなると思います。弁当を持ってきている子供も、一緒に給食を食べたい、そういうふうに強く思っているはずでございます。だから、検査の頻度を高めて、検査網を強化しなければいけないというふうに思っております。

 確かに、原発事故を起こしたのは東電ですけれども、子供たちの命を守るというのは国の責任です。地方に任せるんじゃなくて、ぜひ国がしっかり示していただきたいと思います。ここまでは、残念ながら、子供たちの命を守るんだという姿勢が感じられませんでしたけれども、人間を大事にする政治というのが言葉だけにならないように、しっかり施策を持って国民にアピールをしていただきたいというふうに思います。

 以上、質問でした。ありがとうございました。

中井委員長 これにて斎藤君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に高木陽介君を指名いたします。

 次回は、明二日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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