衆議院

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第26号 平成24年7月9日(月曜日)

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平成二十四年七月九日(月曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 大谷 信盛君 理事 金森  正君

   理事 細川 律夫君 理事 三日月大造君

   理事 室井 秀子君 理事 石破  茂君

   理事 小池百合子君 理事 牧  義夫君

   理事 高木 陽介君

      井戸まさえ君    磯谷香代子君

      稲富 修二君    今井 雅人君

      江端 貴子君    大西 健介君

      勝又恒一郎君    川越 孝洋君

      黄川田 徹君    岸本 周平君

      櫛渕 万里君    後藤 祐一君

      杉本かずみ君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    中屋 大介君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      橋本 博明君    花咲 宏基君

      浜本  宏君    藤田 憲彦君

      馬淵 澄夫君    本村賢太郎君

      柳田 和己君    山岡 達丸君

      山崎  誠君    山田 良司君

      山井 和則君    湯原 俊二君

      渡部 恒三君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    金子 一義君

      金田 勝年君    佐田玄一郎君

      佐藤  勉君    橘 慶一郎君

      谷垣 禎一君    長島 忠美君

      野田  毅君    馳   浩君

      福井  照君    山本 幸三君

      大山 昌宏君    笠原多見子君

      金子 健一君   菊池長右ェ門君

      三宅 雪子君    山岡 賢次君

      斉藤 鉄夫君    東  順治君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      内山  晃君    服部 良一君

      浅尾慶一郎君    山内 康一君

      下地 幹郎君    中島 正純君

      平山 泰朗君   松木けんこう君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)

   (行政刷新担当)     岡田 克也君

   総務大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   法務大臣         滝   実君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   農林水産大臣       郡司  彰君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          枝野 幸男君

   国土交通大臣       羽田雄一郎君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   防衛大臣         森本  敏君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (復興大臣)       平野 達男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)            松原  仁君

   国務大臣

   (金融担当)       松下 忠洋君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (防災担当)

   (「新しい公共」担当)

   (男女共同参画担当)   中川 正春君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   財務大臣政務官

   兼復興大臣政務官     若泉 征三君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月四日

 辞任         補欠選任

  太田 和美君     三日月大造君

  近藤 和也君     川島智太郎君

  山岡 達丸君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     太田 和美君

同月五日

 辞任         補欠選任

  石関 貴史君     鹿野 道彦君

  笹木 竜三君     山岡 達丸君

  武正 公一君     三日月大造君

  若井 康彦君     平岡 秀夫君

同月六日

 辞任         補欠選任

  鹿野 道彦君     後藤 祐一君

  太田 和美君     金子 健一君

  川島智太郎君     三宅 雪子君

  玉城デニー君     山岡 賢次君

  阿部 知子君     服部 良一君

同日

 辞任         補欠選任

  服部 良一君     阿部 知子君

同月九日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     稲富 修二君

  打越あかし君     山井 和則君

  江端 貴子君     井戸まさえ君

  黄川田 徹君     柳田 和己君

  後藤 祐一君     辻元 清美君

  杉本かずみ君     磯谷香代子君

  仁木 博文君     浜本  宏君

  橋本 博明君     藤田 憲彦君

  平岡 秀夫君     中屋 大介君

  小里 泰弘君     谷垣 禎一君

  橘 慶一郎君     福井  照君

  馳   浩君     佐藤  勉君

  金子 健一君     大山 昌宏君

  山岡 賢次君     菊池長右ェ門君

  東  順治君     斉藤 鉄夫君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

  阿部 知子君     服部 良一君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

  中島 正純君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     江端 貴子君

  磯谷香代子君     杉本かずみ君

  稲富 修二君     今井 雅人君

  辻元 清美君     後藤 祐一君

  中屋 大介君     平岡 秀夫君

  浜本  宏君     仁木 博文君

  藤田 憲彦君     橋本 博明君

  柳田 和己君     黄川田 徹君

  山井 和則君     川越 孝洋君

  佐藤  勉君     馳   浩君

  谷垣 禎一君     長島 忠美君

  福井  照君     橘 慶一郎君

  大山 昌宏君     金子 健一君

  菊池長右ェ門君    笠原多見子君

  斉藤 鉄夫君     東  順治君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

  服部 良一君     阿部 知子君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

  下地 幹郎君     平山 泰朗君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     本村賢太郎君

  長島 忠美君     小里 泰弘君

  笠原多見子君     山岡 賢次君

  平山 泰朗君     中島 正純君

同日

 辞任         補欠選任

  本村賢太郎君     長尾  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  長尾  敬君     勝又恒一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     打越あかし君

同日

 牧義夫君が理事に当選した。

同日

 理事笹木竜三君、武正公一君及び若井康彦君同月五日委員辞任につき、その補欠として金森正君、三日月大造君及び室井秀子君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 お諮りいたします。

 去る六日の議院運営委員会における理事の各会派割当基準の変更及び委員の異動に伴い、現在理事が四名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      金森  正君    三日月大造君

     室井 秀子さん    牧  義夫君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

中井委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻元清美さん。

辻元委員 おはようございます。トップバッターを務めさせていただきます辻元清美です。

 本日は、予算委員会での討論の時間を与えてくださいまして、ありがとうございます。

 さて、総理、やはりこのことからお聞きしなければなりません。非常に厳しい状況です。先日、小沢一郎元代表を初め五十一名の方が離党をされていきました。約一週間たちますけれども、どのように今受けとめていらっしゃるのか。私は、やはり、政権与党の混乱を引き起こしたということを国民の皆様におわびをし、そしてそこからの再スタートだと思いますが、総理はいかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 六月二十六日のいわゆる一体改革の採決をめぐりまして、残念なことでありますけれども、多くのいわゆる造反者が出たこと、そして離党者が出たこと、民主党の代表として大変重たい責任を感じております。国民の皆様には深くおわびを申し上げなければならないと思います。

 加えて、そのことによって国会日程にも影響を及ぼしました。そのことは野党の皆様にもおわびを申し上げなければいけないというふうに考えております。

 この一体改革、これから参議院で御審議をいただくことになりますけれども、これまで以上に政府・与党が一体となって、そして野党の皆様の御協力もいただき、一日も早く成立をさせること、そのことをもって責任を果たしていきたいと考えております。

辻元委員 やはり世論は厳しいです。民主党は一体どうなってんねんという声も、たくさん総理のところにも届いていると思います。

 今、信頼回復、これが最優先で、責任を果たしていきたいというふうにおっしゃいました。私は、国民との対話、国民とのコンセンサスづくりに総理が精いっぱい努力されることがまず信頼回復の第一歩だと思っていますけれども、いかがですか。

野田内閣総理大臣 これは、辻元委員御指摘のとおり、国民の皆様に、社会保障の改革を進めるためでありますけれども御負担をお願いする、そういう議論でございますので、今まで以上に、こうした国会審議を通じて、あるいは対話集会、あるいはテレビでの討論等を含めまして、しっかりとその意義というものをお伝えし、御理解を得るべく最大限の努力をしていきたいというふうに思います。

辻元委員 私は、信頼回復、もう一つ大きなポイントがあると思います。それはマニフェストについてです。

 私は、マニフェストの検証、やはり、何ができて何ができなかったのか、この棚卸しをしっかりして、国民の皆様に、できなかったことはなぜできないのかを包み隠さずお伝えして、それで御判断をいただくということが信頼回復の大きな一歩を踏み出すことになると考えております。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 〇九年のマニフェストについては、できたものも多くございます。でも、できなかったこと、今もできていないこともあります。

 できたものの中については、農家の戸別所得補償であるとか、あるいは高校授業料の無償化であるとか、NPOに対する優遇税制であるとか、求職者支援制度、これは言えば切りがありません。できていないこともあります。暫定税率の廃止であるとか、そういう問題はあります。そのことをしっかりと国民の皆様にお示しをする。

 去年の八月に中間検証を行っておりますけれども、その後、また状況が変わったものもありますので、そういうことも踏まえまして、しっかりと国民の皆様に、何ができたのか、何ができていないのか、できていない理由は何なのかということを御説明しなければいけないと思います。

 その一つとして、いろいろな状況がありましたけれども、やはり、これは中間検証でも触れておりますけれども、マニフェスト財源の確保についての見通しについて十分に検証していなかった部分が大きかったというところは、これは否定できないと思います。そのことはおわびをしなければいけません。

 おわびをしなければいけないもの、それから状況変化、どういうことが起こったのか、そういうことも含めて、マニフェストの検証をしっかりお示しすることが大事だというふうに思っております。

辻元委員 私は、そこが再スタートの原点になるのではないかと思っております。

 例えば、私は政権交代直後の鳩山政権で国土交通副大臣を務めました。菅政権では総理大臣補佐官を務めました。政権交代後、いわゆるコンクリートから人への予算の組み替えの第一走者で走ったんです。

 例えば、ダムを例に挙げたいと思います。

 八ツ場ダムのことがクローズアップされております。しかし、この八ツ場ダムのように、つくりかけ、または計画中のダムは全国に八十三ありました、政権交代して国交省へ入っていったら。国または地方自治体が運営しているものです。これを一旦、全部とめました。そして、再検証しようということをスタートいたしました。その結果、この再検証のプロセスで、八ツ場は継続になってしまいました。

 しかし、今、現状を申し上げますと、三十二の再検証がやっと終わりました。そして、二十二が継続で、十のダムは中止にいたしました。先日も、新潟県のダムの検証が終わったところです。四つのダムの検証が終わりまして、二つ継続、二つ中止なんです。

 国民の皆様には、確かに、たんかを切って、八ツ場ダムとめますと言ってしまった。しかし、とまらなかった。だからだめだと御判断していただくのか、八十三ものダムを検証して、そして三十二の検証が終わって十ダムとめたらしいよ、こちらに重きを置いていただけるのか、それは皆さんの判断に委ねたらいいと私は思っています。

 しかし、言えることは、前政権ではダム一つとめることも非常に難しかったことも事実なんです。私たちはそういう意味では政治の質を変えたのではないかと私は思っています。しかし、これは、今のダムの例のように、国民の皆様にその実態を見ていただいて御判断をいただくというのが検証の姿だと私は思っております。

 財源についてもなんです。

 ちょっとパネルを、皆様に資料をお示ししたいと思います。これは、税金の使い道を変えるということ、この間の結果を、政調そして政府の資料もいただきながらまとめたものです。確かに、公共事業費は減っております。そして、社会保障費などは上がっております。文教関係費も上がっております。

 横の雇用を見てください。建設業の皆様、何とか、大型公共事業をとめること、しかし小さな公共事業をということで踏ん張って、仕事が減らないようにと努力してまいりました。それでも御苦労をおかけしております。一方、教育・学習支援、そして医療・福祉は上がっております。これは雇用の数です。これは事実をお示ししているわけです。

 例えば、社会保障費でいいますと、政権交代の前は、医療崩壊と言われて、妊婦さんのたらい回しなどもありました。何とかこれを食いとめたい。少し食いとめられていると思います。

 また、初めて国土交通予算より文教予算が上回りました。逆転をいたしました。これは、コンクリートから人へという努力もしてきたということではないかと思っています。

 しかし一方、子ども手当などは満額お支払いができなかったわけです。これはやはり、いろいろやりくりしてきたけれども財源の見通しが甘かったということを私たちは率直に認めざるを得ない。私もやりくりをしてきた一人としてそう思います。

 総理も、先ほど財源の見通しが甘かったとお認めになりましたけれども、この現状を見て、どうお考えになりますでしょうか。

野田内閣総理大臣 資料を御提示いただいているとおり、公共事業から社会保障、教育へ、あるいは雇用の影響等を含めまして、これはもう辻元委員も、国交副大臣として、特に国土交通部門においては大変めり張りのきいた予算編成等、資源の配分等に御努力いただきました。そういう努力の積み重ねをしてきているということ、個別の箇所の話ではなく、全体としてそういう動きであったということは、ぜひ国民の皆様には御理解をいただかなければいけないと思います。

 今、子ども手当のお話が出ましたけれども、子ども手当の満額支給という形にはなりませんでしたが、新児童手当という形で三党で合意して、旧制度に倍する恒久制度として確立をしている。一〇〇%実現できなくても、一定程度の前進をしたものも相当ありますので、そういうことも含めまして、しっかりと国民の皆様に御説明しなければいけないと思います。

辻元委員 今ちょっと野党席からやじも飛んでおりますけれども、私は、国交副大臣で入っていたときに、借金だらけの会社の立て直しやなと思いました。四十七都道府県に九十八の空港を誰がつくってきたんでしょう。ダムも誰がつくってきたのか。私は、今の財政の危機というのは……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。私たちは非難の応酬をしている場合じゃないんです。

 今まで、例えば前回消費税の議論があったとき、三%から五%に上げたときから現在まで十八年の間に、国の借金は四百五十一兆円ふえています。今いろいろおっしゃっていますけれども、この間、政権の中心に座ってきたのはどなたかということも考えた上で私たちは今議論をしていかなきゃいけない。

 私は、与党も野党も、皆さんが与党を経験されたときに借金もふえた、私たちも与党をやって、しんどい思いはよくわかりました。だからこそ、非難合戦をしているだけでは始まらないと思いますので、積極的な議論を展開していきたいと思います。

 さてそこで、今、財源が甘かったことは総理もおわびしなきゃいけないとおっしゃっています。そんな中で、社会保障と税の一体改革が出てきました。社会保障財源を安定させたい、その気持ちは、総理が先ほどおっしゃっているとおりだと思いますが、しかし、これはちょっと納得いかぬなとか、不安やな、ちょっとおかしいのと違うかという怒りがあることも御理解なさっていると思います。その理解度が足りなかったら、私は、今後、いい議論が展開されないと思います。

 国民の皆さんは、今回の消費税の増税を含む社会保障と税の一体改革で、どんな不満や不安をお持ちか、総理の御認識をまずお聞きしたいと思います。

野田内閣総理大臣 国民の皆様にはさまざまな声があると思いますが、その中で、特にきちっと御説明をしていかなければいけない声として、私は三つあるというふうに思っております。

 一つは、家計や経済に対する影響を心配する声だと思います。そのことについては、当然のことながら、我が内閣としては経済の再生を最重要課題に挙げておりますけれども、しっかりとデフレ脱却、経済活性化に向けた取り組みをやり抜いていくということを国民の皆様にお訴えしていかなければいけないというふうに思っております。

 それからもう一つは、増税先行で、社会保障は何もやらないのではないかという御議論もあります。これはかなり誤解があると思っております。今回、一体改革の法案の中でも、年金に関するものは二つ、子ども・子育てに関するものは三つ、こういうことで具体的に修正をして、合意をして、前進をしたものがありますし、加えて、これからいわゆる国民会議等をつくって広く議論をしていくものもあります。社会保障を決して棚上げしたりということではなく、増税先行ではないということをしっかり御説明していかなければいけないと思います。

 それからもう一つは、国民に御負担をお願いする前にやるべきことがあるだろう、そういう御議論だと思います。行政改革、政治改革、これは一体的に包括的にやり抜いていくという決意をきっちりとお示ししなければいけないと考えております。

辻元委員 私は、生活や小さな商売をされている方がやっていけるかしらという不安や、それからお金持ちからやはり先に負担してほしいなという不公平感や、それから本当に社会保障に使ってくれるのかなという疑念、この三つがあると思います。

 そこで、審議は参議院に舞台を移しますけれども、総理も問題点を認識されている。それで、再度ここで確認しておきたいと思います。それは、特にやはり逆進性と最高税率の引き上げ問題です。参議院では議員立法ということで提出者に議論の大半は委ねられると思いますけれども、総理としては、この二つはやはりきっちりと対策を打って、手を打たなきゃいけないと今も思っていらっしゃるか、参議院の審議の前に確認をさせていただきます。

野田内閣総理大臣 低所得者対策、そして、今、最高税率という話が……(辻元委員「その引き上げですね、所得税の」と呼ぶ)ああ、所得税のね。はい。

 低所得者対策は、当然これはやらなければいけないと思っております。しっかりとやり抜くということであります。

 それから、今の所得税の最高税率の部分、あるいは資産課税の部分、これはまさに格差是正の観点からやらなければいけない税制改正でありますけれども、来年度の税制改正の議論のときにこれについての結論を出したいと思いますし、その方向性については、三党でこれは合意をしているというふうに理解をしております。

辻元委員 総理、三党で合意していることだから言いにくいかもしれないんですけれども、やはりそこは、税というのは私は社会連帯だと思うんですよ。不公平感が残ると社会はばらばらになります。みんなが仕方がないねと納得感が生まれたら、社会の連帯が生まれるんです。ですから、そこのところはきっちり対応するという発信を総理としても出していただかないと、私はなかなか今の広がっている不安というのは解消しにくいんじゃないかと思いますから、そこは心していただきたいと思います。

 もう一つ、総理は、子供たちにツケを残さないためにとよくおっしゃいます。私もそう思います。ところが、いろいろ聞いてみますと、この増税について、子育て世代が一番しんどいんじゃないかなと私は思うときがあるんです。二人、三人子供がいると、食費もたくさんかかる、教育費もかかる。それから、旅行も連れていってあげたい。家の家賃は高い、ひょっとしたらローンもあるかもしれぬ。しかし、その世代はまだ給料が低い。そして、親の介護もあるかもしれない。

 私は、今回、子育て支援ということで充実したいというメニューは、この増税分に入っている、これは充実させていただきたいと思いますけれども、同時に、この現役世代をサポートしていくようなさまざまな政策を大動員しなきゃいけないと思うんです。子供たちにツケを残さないと言いつつ、今子供を育てている人たちがしんどくなるようでは本末転倒です。

 ですから、今、社会保障と税の一体改革に、みんながサッカーのボールにわっと行っているように見えるんですが、それ以外の外出しで、現役世代応援プランを、私はもう大至急取りかかってほしいと思うんです。総理、お願いしますよ、やってください。いかがですか。

野田内閣総理大臣 今回の社会保障改革の柱は、もちろん年金、医療、介護、これの安定性を確保するということもありますけれども、何よりも、人生前半の社会保障に光を当てて、とかく今の現役世代、子育て世代は負担中心でございましたけれども、給付の対象にもしっかりして、社会保障の恩恵を受けるようにしなければいけないというのが、いわゆる全世代対応型の社会保障にしようというのが今回の改革の趣旨でございます。

 その中で、子ども・子育てについては、これは認定こども園を拡充するという形の中で、質、量ともにこの分野を充実させていくことによって、〇・七兆円、これは従来の規模からすると相当大きな額だと思いますが、それをしっかり確保するということをやりました。

 それ以外の部分についても、やはり社会を担っている、子供さんを育てていらっしゃる皆さんの御負担を軽減するために、あるいはその子供を育てる環境整備のために、あらゆる政策の総動員をしていくことが大事である。これからの人口構成を考えますと、やはり支えている世代にもしっかりと安心が生まれるような状況をしなければいけないというふうに思っておりますので、そういう観点からの政策の総動員をしていきたいというふうに考えております。

辻元委員 その政策の総動員は何か。一つ、何かありますか。

 というのは、私は大阪の商売人の娘なんですよ。負担がふえるんやったら、もうけることを考えなあかんとなるわけですよ。これは経済対策ですね、結局。私は、総理が社会保障と税の一体改革に政治生命をかける、負担をお願いするんだったら、国として、収入が上がる、もうかることに命かけますよと。こっちが両輪でいかないと、これはなかなかしんどいことがふえていくということになりかねないわけです。

 そこで、政権交代後にちょっとまいた種が少し育ち始めていますので、皆様に紹介しながら、提案をしたいと思います。

 これは問題解決型経済といいます。高齢社会とか、子育てがしんどい、その問題を解決することで市場を新しく開拓、これはずっと言われていたことです。

 三年前に、私たちが政権交代直後、国土交通省に入ったときに、高齢者のサービスがついた住宅をさらに伸ばしていこうというプランを立てて、仕込みを三年して、芽を出すまでに約三年間かかるんですね。すぐ芽が出ません。これが、実は今当たっています。ちょっとこれを例にして、皆さんと考えていきたいと思います。

 国土交通大臣、今の現状を報告してください。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 我が国は、高齢者、とりわけ単身や夫婦世帯の高齢者の急激な増加が見込まれております。一方、諸外国に比べ高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合が少ないことから、高齢者が可能な限り住みなれた地域で安心して暮らすことができる住まいを確保していくことが重要な課題となっております。

 このため、昨年四月、厚生労働省と連携して、高齢者住まい法を改正し、介護や医療サービスと連携し、高齢者が安心して居住できる環境を整えたサービスつき高齢者向け住宅の登録制度を創設させていただいたところであります。

 仕込みに三年かかったというお話がございましたけれども、そういう中で、さらに予算補助、税制措置及び融資といった支援措置を講じさせていただいているところであります。

 昨年十月の法施行以降、サービスつき高齢者向け住宅として登録された住宅戸数、六月三十日時点でありますけれども約五万六千戸、また、最近一カ月に限っても、八千戸を超えるペースで登録が行われているところであります。

 今後とも、厚生労働省と連携して、高齢者が安心して暮らすことができる住まいを確保するため、供給を促進するとともに、供給されたサービスつき高齢者向け住宅で高齢者が安心するサービスが適切に提供されるよう、都道府県等による指導監督が適切に行われるよう努めてまいりたいと考えております。

辻元委員 ちょっと説明が長かったんですけれども、中所得者層向けの高齢者住宅なんです。

 今まで、高齢者住宅というと、ようけ一時金がかかって、入るときにたくさんお金がかかるとか、マンションみたいなものを買わなあかんとか、また、低所得者の皆さんは公営住宅がありました。しかし、中所得者の方は、現役時代の一軒家にたったひとりぼっちで住んでいるけれども、買い物にも行けない。そういう方の、中所得者向けで、賃貸なんですよ。

 私たちは、高齢者でどの層が一番今困っているかなと、住むところも、そして賃貸という、そこにターゲットを絞って政策を打ったわけです。今、これは三日に一千戸ずつ伸びていっているわけです。いろいろな人たちが参入しています。私は、NPOもこれから参入していけばいいと思うんです。これは問題解決型経済なんです。

 次にやりたいのは、ゼロエネルギー住宅です。これも、節電節電と言われていますけれども、今、私たちは、エネルギーゼロで住宅をつくろうということをやり始めて、プランを進めようとしています。

 総理、成長戦略会議でまとめていらっしゃって、あれを読んでも、何だか抽象的で、何が重点なのかわからない。私は提案したいんですけれども、今みたいな問題解決型のプランを例えば十個つくる。この高齢者住宅は、もと自分が住んでいた高齢者のおうちがありますね、これを出て、賃貸で借りる、そして見守りや生活相談がある住宅に入る。そのもと住んでいたおうちを子育て中の若いカップルに低価格で貸す、その家賃で高齢者が入る。これは、いろいろな循環なんですよ、世代間の。

 こういう具体的な案を幾つもつくって社会を応援していく。そうすると、増税はあったけれどもちょっと住まいはよくなったねと。そういうような両輪なんですよ、総理。成長戦略を見ていたら、グリーンイノベーションや何やかんやと書いてありますけれども、十個ぐらいこういうプランをつくって、ピンポイントできっちりやっていく、そういうことを私は提案したいと思います。問題を羅列して、そこから引いていく。いかがですか、総理。

野田内閣総理大臣 今、住宅の関連で、いわゆる問題解決型という発想のもとで成長を促していく、そういう御指摘だと思うんですが、従来まとめた新成長戦略のお話もありました。私は、発想は同じだと思っているんです。

 というのは、例えばグリーンイノベーションという考え方がありますけれども、地球温暖化という大きな命題とエネルギーの制約という大きな課題、この課題をどう乗り越えていくか、それを考えることによって、日本のモデルが世界において通用するようにすることによって成長させていく。ライフイノベーションという考え方も、医療、健康の分野においていろいろな課題があります。少子高齢化という制約があります。それを乗り越えることによって一つのビジネスモデルをつくっていくという、発想は、今個々のお話がありましたけれども、基本的には同じなので、それをパッケージで十個、二十個という形で打ち出せるように日本再生戦略をまとめていきたいと考えております。

辻元委員 スピード感が必要だと思います。これも芽が出てくるまで三年かかったんですよ、政権交代直後からターゲットを絞って、こうしようというのに。まだ花は咲いていません。ですから、私は今すぐ始めていただきたいと思います。会議ばかりです、私らもやっていました。しかし、具体策なんですよ。小さく見えるけれども大きいですよ。ぜひお願いしたいと思います。

 そんな中で、被災地でもさまざまな仕事づくりが必要です。これにも問題解決型の仕事づくり、私はやっていけると思います。

 震災の状況で一点気になっている点がありますので、平野大臣にお伺いしたいと思います。

 大臣とは、当時私は補佐官でしたけれども、被災地をリュックサックを担いで回りました。そんな中で二人でずっと言っていたのは、孤立死の問題、心配だねと言ってきました。

 今、孤立死を含む震災関連死がどれぐらいあるのか、まず答えていただきたいと思います。

平野(達)国務大臣 東日本大震災のいわゆる震災関連死でございますけれども、全国の市区町村の協力を得て調査した結果、三月末現在で一千六百三十二人という数字になっております。

 あの大災害で助かった命、あるいはみずから助けた命、助けられた命、当時私は辻元補佐官と、この命は一名たりとも、一人たりとももう失わないようにしよう、そういう御議論をさせていただきましたけれども、残念ながらこういう結果になっておりまして、深刻に今受けとめております。

 原因を今調査しておりますけれども、これまでの分析によりますと、年齢別では六十六歳以上の高齢者が約九割、それから時期別では発災後一カ月以内が約五割というふうになっておりまして、今、この分析をさらに急ぎたいというふうに思っております。

 一方、議員も御承知のように、心のケア対策につきましては、心のケアチームをつくって派遣をしたり、あるいは心のケアセンター、これは厚労省さんとも連携しながらこういうものを設置して取り組んできたつもりではございます。しかし、この状況を踏まえまして、この分析結果も踏まえまして、必要ならばさらにこういった政策の充実強化も図っていかなければならないというふうに考えております。

辻元委員 今、一千六百人以上の方という、これは、総理、非常に深刻です。

 私は、ずっと言ってきました。町の復興、仕事の復興、それだけではだめで、社会のきずなの復興と心の復興が必要なんです。町の復興と仕事の復興は見えるんです。きずなと心の復興は見えないんですよ。

 特に、平野大臣、お願いしたいのは、仮設に入っていらっしゃる皆様も大変なんですけれども、みなし仮設、御自分でいろいろなアパートを借り上げされている方、孤立しがちなんですね。それから、福島県の県外に避難をされている六万人の皆様、この皆様への対応がまだまだ薄いのではないかと私は思っております。

 しかし、これは行政と政府だけではできません。今度もまたNPOやボランティアの皆さんも岩手に集まって対応を考える協議をされるようで、本多補佐官が行ってくださるそうですけれども、私は、NPOなどと連携して、一人も命を落とす人がない、心とそしてきずなの復興、総理、そこにきちんと対応していただきたいと思います。

 総理もこの数字をお聞きになってびっくりされたんじゃないですか、どうですか。

野田内閣総理大臣 一言で数字というよりも、お一人お一人の命ですので、大変重く受けとめなければいけないと思いますし、目に見える復興だけではなくて、やはり心をどうやって支えていくのか、大事な視点だというふうに受けとめさせていただきました。

辻元委員 平野大臣には引き続き、本当にそこのところに重点を置いていただいてもいいぐらいなんですよ、ぜひしっかりやっていただきたいと思います。私も協力したいと思います。

 さて、原発事故とエネルギーの問題もお聞きしたいと思います。

 まず、総理にお聞きします。

 毎週金曜日、官邸の周りに多くの皆さんが集まっていらっしゃいます。私は、これは国民の皆様の原発に対する気持ちの一つのあらわれだと思います。皆様の声です。音ではありません。総理も受けとめていらっしゃると思います。どのようにお感じになっているのか、そしてどのようにしなければいけないとお感じなのか、まずお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 昨年の三月十一日に原発事故が発生をして、まだ一年四カ月であります。ということの中で、国民の皆様が大変複雑な思いを持っていらっしゃることは十分承知をしております。毎週金曜日、官邸の周辺に多くの皆様が集まっていらっしゃることも十分承知をしておりますし、それだけではなく、さまざまな国民の皆様から多くの声をいただいております。国論がまさにまだまだ二分しているテーマだというふうに思っております。

 その中で、まず今回は、大飯の再稼働については政府としての判断をさせていただきました。その理由というものを、しっかり安全性をチェックした上で、必要性も勘案しながらの判断でございましたが、その説明ということをちゃんとやっていかなければいけないということと、この後御議論があるかもしれませんけれども、いわゆる選択、これからの中長期のエネルギーのあり方について国民的な議論をしていただくことになります。そういう国民的な議論を踏まえながらの政府の対応というものをしっかりやっていかなければいけない。この二つのことを今思っているところでございます。

辻元委員 今、二つのことをおっしゃいましたけれども、自分たちも決定に参加させろ、これは国民的議論と総理はおっしゃいました。それから、やはり将来のビジョンを先に示すのが筋じゃないかと。例えばドイツは、十年で脱原発をする、そのために自然エネルギーをこうします、こうします。日本もそれを示してから、その上で再稼働じゃないか、そういう疑念の声がある。これは否定できないと思います。

 今回、三つの案をお出しになりました。それはちょっと後で議論したいと思いますが、そんな中で、国会の事故調査委員会の最終報告がこのたび出されました。人災という指摘もありました。これについて総理はどのように受けとめていらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 何よりも、安全神話に浸っていたということが大きな原因、もう一つは、やはり規制と利用が一体となった組織であったということ、こういう大きな問題点がありました。

 そうしたことを踏まえて、今回、国会事故調から御提言も出ておりますけれども、その事故調の御提言を真摯に受けとめて、まず何からやれるか、迅速に対応しなければいけないものと、よく吟味して対応するものと、整理をしながらやっていかなければいけないというふうに考えております。

辻元委員 私、この人災という言葉を聞いたとき、ある一つのエピソードを思い出したんです。

 これは、昨年、政策提言型事業仕分けに私も参加いたしました。そこで、経済産業省の役人の方が来られて、そこに質問が出たんです。今まで除染とか事故が起こったときの対応、これについて、予算を幾らかけてきて、どんな研究がなされてきましたかという質問が出ました。それに対する答えが、やってきませんでしたと。何でやってこなかったんだと問われて、そういう研究をすると、原発は事故があって危ないものだということを認めるからですと言ったわけです。それはその後、しかし、今回の事故で改めますというようにおっしゃった。これを聞いていた人はたくさんいらっしゃると思います。

 この体質をどう変えるか。細野大臣、例えば規制庁をつくるとか、それから安全対策は目に見えます。ですから、そうじゃなくて、体質なんですよ。ここは目に見えない。だから、再稼働のことだって、安全対策はこうしますと言われるけれども、それをやる人はみんな同じ人じゃないの、その体質はどう変わっているのよと。

 大臣はずっと苦労されていると思いますけれども、この体質を変えるということ、どういうふうに、取り組めそう、またはしんどいな、いかがでしょうか。

細野国務大臣 体質を変えるのは、本当に並大抵ではないというふうに思います。そもそも考え方を変えなければなりません。

 今、辻元議員が指摘をされたように、これは除染とかそういうレベルよりはるかに前のレベルで、シビアアクシデントが起こったときにどう対応するかということについて、政府としての準備が非常におろそかであったわけです。事業者の側にも、それを考えることはやはり、原発が危ない、そういうことを認めることになるのでということで、その以前で半ば思考停止をしていたところがあるわけですね。そこを根本的に変えなければなりません。

 つまり、原子力発電というものは、これはそういうリスクもあるものだということを正面から認めた上で、そのリスクをどうコントロールするかという発想にそもそも立ち直さなければならないわけですね。

 ですから、このことは、新しい組織ができてその日から簡単に変わることではないというふうに思っておりますので、少なくとも、どういうスタンスで物事に当たるのかという大原則を新しい規制委員会そして規制庁では掲げた上で、意識を転換する必要があるというふうに考えております。

辻元委員 先ほど、被災地支援も、きずなと心の復興は目に見えないと。

 やはり、戦後私たちが築いてきたこの国のマイナスであったり、いろいろなおりがたまっていたり、そこを一掃するのが政権交代だったんですよ。そこをみんなが見ているんです。ですから、今、どういう体制をどういう人が担うのか。これから委員長も決めるでしょう。私は、そこを曖昧にしたままでは政権交代の意味が無になるぐらいの思いでやっていただきたいと思います。

 そんな中で、先ほど、将来のビジョンということで、やっとエネルギー・環境会議が三つのパターンをお出しになりました。二〇三〇年に原発依存をゼロにする、一五%にする、または二〇から二五%。この中身についてちょっと枝野大臣に聞きたいと思います。

 これは、この三択なんですか、この三つから選んでください、選びますなんですか。そして、二〇三〇年に一五%ということは、その後はどうなるんでしょう。二〇三〇年になってから考えますということなのか、その後はふやしていきますなのか、減らしていきますなのか。どういう提案なんでしょうか。

枝野国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、これからの原子力をどうするのかということを中心にした今後のエネルギーについては、あえて言えば、昨年の三月十一日以来、マスコミ報道を含めて、国民の皆さんがさまざまに御議論、お考えになってきている話だというふうに思っています。これをある意味で集約していくプロセスにおいて、あえて言えば、百人百様の御意見がある中でこれを集約していくに当たって、三つのシナリオということを、議論を整理しやすくする上でお示ししているものでございます。

 機械的にこの中のどれか一つを選びますということではなくて、この三つのシナリオをお示ししたことを軸に、これでは足りないとか、これが軸だけれどもこれをもっとこうすべきだとか、さまざまな御意見が多分国民の皆さんの中にある。そうしたことを含めて、国民の皆さんの選択、それをしっかりと政治として把握させていただいて決めさせていただきたいと思っております。

 そして、例えば二〇三〇年一五%シナリオというのも、御指摘のとおり、四十年廃炉原則を自然体で適用して、新たな原発の建設が困難であるという状況を踏まえた数字でございますが、今お示しをしている中では、その一五%選択肢に限らず、二〇三〇年の選択肢ということで数字でお示しをした中で、二〇三〇年以降については、いずれにしろ、さまざまなその間のプロセスを踏まえて、きちっと検証作業などをしていかなければならないということの方向をお示ししていますが、そのこと自体を含めて、国民の皆さんの議論を踏まえて決めていくことだと思っています。

辻元委員 今、枝野さんと私は割合コミュニケーションがとれる方だと思うんですが、なかなか、私が聞いても、何がしたいのかちょっとよくわからない面があったんですね。それを国民の皆さんに今から議論していただくということでしょう。

 私たち、脱原発ロードマップを考える会というので、二〇二五年までのできるだけ早い期間に原発をゼロにすることはできないかという、そんな試案を枝野さんにも届けてあります。さまざまな試案も出ております。これは今、民主党内でどんどん賛同が広まって、百名近くになっていっているわけですが、何を国民の皆さんに議論してもらうのか、ここはすごく大事だと思うんですね。そして、どういう国民的議論のやり方をするのか、これも問われますね、これだけ官邸にもたくさんの方がいらっしゃって。

 これは、見せていただくと、古川大臣が御担当のようなんですけれども、全国で意見聴取の会をやる。七月十四日から八月五日までですから、三週間ぐらいで十一カ所しか意見聴取はやらないんですね。あえて、しかと申し上げました。

 それ以外に、新しい手法で、討論型世論調査。確かにこの討論型世論調査は効果があると言われておりますけれども、国民の皆さんにとっては、効果がある調査をしましたでは納得いかないわけですよ。自分たちも参加して決めた、意見は違うけれども、まあ仕方がない、それがコンセンサスですね。これは、十一回というのはすごく少ないと思うんです。

 ちょっと岡田副総理にお聞きしたいんですが、岡田副総理、全国を回って、社会保障と税の一体改革の行脚をされています。これは副総理だけじゃなくて、総理も総務相も財務相も厚労相も、もうあちこち、まだ続けていらっしゃいますね。たしか二月十八日から始めて、まだ続けているんですよ。

 副総理、何回ぐらいこれはやられましたか、副総理だけじゃなくて、政府として。

岡田国務大臣 社会保障・税一体改革のための「明日の安心」対話集会、御指摘のように、二月十八日から開始をいたしまして、四大臣、総理それから私、総務大臣、財務大臣、厚労大臣が手分けをして、副大臣が御参加いただくこともあります。全国各地で、七月九日までに六十三回開催をしております。これは、法案の審議が非常に国会で長く御審議いただいているということの結果でもあるというふうに思っております。

辻元委員 二月十八日から始められて、多いときですと一日四カ所とか五カ所で同時にやっていらっしゃるんですよ。やはり、原発含めエネルギー政策の中長期ビジョンも、政府の姿勢です。私は、四十七都道府県やるのは当たり前じゃないかと思っております。

 なぜかというと、やはり、自分たちも少なくとも参加したと。今の時代は、政権交代前と今政治がどう違うのか。一つは、国民のコンセンサスの時代なんです。今までの政治は、どちらかというと、既得権益の集団に富をどう配分するかで済んでいたんです。今は、負担やリスクをどう分担していただけるかという時代に入りました。そうすると、国民の皆さんとどうコンセンサスをとれるかというそのプロセスをおろそかにしては、どんなに正しい政策であっても無に帰してしまう場合があるわけですね。

 ですから、私は、古川大臣、これはちょっともう一回、今結論はおっしゃれないと思いますけれども、そういう観点から考えていただきたいと思いますが、いかがですか。

古川国務大臣 委員がおっしゃるように、このエネルギー、環境の将来のビジョンについては、これはできるだけ多くの皆さんに考えていただきたいことだというふうに思っています。

 特に、事故前は、スイッチさえ押せば電気はつく、どこでつくられたかわからない、そういう状況の中でやってきました。ですから、やはりここは国民の皆様方に、自分たちが当たり前だと思っていたことをもう一度見直していただく。その意味では、さまざまな形で議論をしていただきたい。

 今おっしゃったように、意見聴取会は確かに十一カ所ということでございますが、今回、家庭でもあるいは学校でも地域でも、皆さん方に集まっていただいて議論いただけるような、わかりやすい情報提供データベースというのを七月七日に開設いたしまして、ここのデータを使ってぜひ議論していただきたい。そういう議論していただいた結果は、パブリックコメントなどでお寄せいただきたいと思っています。

 また、議員の御地元でも、ぜひこの情報を使っていただいて御議論をいただきたいと思います。ここにいらっしゃる議員の方々も、それぞれの地域でさまざまな形で議論をいただいて、さまざまな形の集まり方があると思います、そういう皆さんから集まってくる議論を踏まえて政府として結論、判断をしていきたいというふうに思っております。

辻元委員 最後になりますけれども、先ほど国民のコンセンサスと申し上げました。国民合意です。これは、負担とリスクの時代には必要なものです。先ほど、税は社会連帯だとも申しました。

 これは、国民の皆さんの御意見を参考にして物事を決めさせていただきますというのはコンセンサスではないんです。そして、今まではそれでよかったんです。国論二分だから最終的に総理が決断をいたします。確かに、決断する政治にしたい、ぶれないでいきたい、総理のお気持ちもよくわかります。しかし、そのプロセスなんです。国民合意というのは、国民のコンセンサスを得ようとする作業そのものであって、そこを怠ってしまったら、せっかく政権交代したのに政治の質が変えられないんじゃないか。

 民主党は、私は当時違う政党でしたけれども、市民が主役というスローガン、私、あれは割と好きだったんですね、他党でしたけれども。私は、政権交代の意味を無にしたくない。それは、国民とともに悩み、考え、この難局を乗り越えるプロセスを皆でつくりたいと思ったから合流したんです。

 ですから、負担、リスクの時代の国民合意のあり方、これをしっかり皆さんと考えながら、できたこと、できなかったこと、試行錯誤しました。できへんこともあって申しわけないなと私も思いながらきょうまで来ました。しかし、それを明らかに、オープンにして、そして一緒に合意をつくっていく、そのプロセスをしっかり踏んでいただきたいということを、最後に総理にも、政治生命をかける、それは私はいいと思います。しかし、国民のコンセンサスあっての政治生命ですから、そこをしっかりと踏まえて政権運営をしていただきたい。最後にそれを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、稲富修二君から関連質疑の申し出があります。辻元さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。稲富修二君。

稲富委員 民主党の稲富修二です。おはようございます。

 きょうは、私は、社会保障と税の一体改革について御質問したいと思います。

 衆議院でもう採決も終わりましたけれども、なかなかまだこの内容については十分に国民の皆様にお知らせができていないと思いますので、これまでの特別委員会でも随分と議論をし、出てきた論点、重なりますけれども、改めて確認を含め御質問してまいりたいと思います。

 私は、民主党の税調の事務局次長として素案の決定、大綱、法案提出、そして特別委員会、衆議院の採決に至るまで、議論に参加してまいりました。それと、もちろん、年が明けて素案が決定して以来、この議論を、地元の皆様と意見交換をしてまいりました。

 その中で、私は、三つのことをやはりぜひ国民の皆様に真正面からお伝えしなければいけないと思います。その一つは、まず、消費増税分の使い方です。そして二つ目が、なぜ今この一体改革をやらなければいけないのかということです。三つ目が、二〇一四年の四月、消費増税前に政府・与党として何をしなければいけないのか。この三つだというふうに思います。

 その三つについて、一つ一つ御質問してまいります。(パネルを示す)

 まず、増税分の使い方です。これはもう既に何度も議論されておりますが、改めて岡田副総理に確認をしたいというふうに思います。

 まず、五%分のうち一%は社会保障の充実に使う、残りの四%は今の社会保障の安定化、つまり現状維持に使う。そして、一%の充実のうち、子ども・子育てに〇・七兆円、医療、介護に一・六兆円程度、そして年金に〇・六兆円程度。以上、これらを、消費増税分は社会保障に目的税化をするということを改めてこの場で確認をしたいと思います。

岡田国務大臣 今委員御指摘のとおりであります。

 今回の五%の引き上げのうち、一%は新しいこと、つまり社会保障の充実に使わせていただく、内訳は先ほど委員が言われたとおりであります、四%については現状の社会保障制度の安定化のために使うという、その基本的フレームワークは変わっておりません。

 三党間でいろいろ御議論いただきました。これはこの一%の部分について御議論いただいたわけで、内容的に当然、法文も含めて変わっているところがございます。しかし、基本的な、一%が新しいこと、充実のためにやり、四%は現状の制度の安定化のためにやる、その基本的な考え方は変わっていない、従来どおりであるということでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 今、先ほども御議論ありましたけれども、増税だけをして社会保障は何もしないんじゃないかという御議論が必ずございます。それについて、一つ一つ小宮山大臣にお伺いをしてまいりたいと思います。

 この子ども・子育て〇・七兆円ということで、大変大きな財源を使う、今回の目玉の一つです。これによって、仕事と子育てを両立している親御さんたち、一体どういう希望が持てるのか、どういうことを期待できるのか。さまざまな論点がありますけれども、ぜひ端的にお教えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 少子化対策の担当大臣としてお答えをしたいと思います。

 新たな制度の中では保育の量と質を確保したいと私ども思っていまして、今回、総合こども園という形はとりませんが、先駆的な仕組みであった幼保連携型の認定こども園また保育所、こうしたところを、認可制度を前提にして、大都市部で保育の需要が伸びている、待機児が生じていることに対して機動的に対応できるような仕組みを導入しています。

 また、地方なども含めて、小規模な保育ですとか家庭的保育が財源が足りなかったので、ここに地域型の保育給付という形で財政支援をしっかりするということで、保育の需要にしっかり応えられるようにしています。

 また、市町村がニーズを、潜在的なものを把握できていなかったものについてしっかり把握をして、それをもとにして学校教育、保育が充実できるようにしている。

 また、待機児さんはゼロ、一、二歳が多いわけですけれども、そこを子ども・子育てビジョンに基づいて、今回財源も消費税で入れていただくので、その予定どおり、平成二十九年度までに四四%を達成できるようにするなど、充実をしていく部分の目玉が子ども・子育て支援ですので、法形式が変わった部分はありますけれども、狙っていた子供にとっての保育そして幼児期の教育の質と量の確保ということはしっかり達成できる体制になっているというふうに考えています。

稲富委員 ありがとうございます。

 この七千億円、子供たちのためにぜひ有効に活用していただきたいというふうに思います。

 年金についてです。

 今回の改正の中で、支給要件二十五年を十年にするということがございます。これまでは、二十四年十一カ月保険料を払ったとしても一銭も年金はもらえないという制度でございました。これは諸外国と比べてもかなり長い支給要件になっていた。それを十年にするということは極めて大きいと思います。

 この点で何が変わるのか、御説明をお願いします。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったような方が無年金になることを防ぐ、なるべく保険料の納付を給付に結びつけるということで、今度二十五年から十年に資格期間を短縮いたしますけれども、そのことによって、現在四十二万人と推計されている無年金者のうち、およそ十七万人が年金を受給できることになる。そういう意味で拡充がされると思っています。

稲富委員 ありがとうございます。

 続いて、また年金のことですけれども、低所得者の方々あるいは低年金の方々に対する給付、これは三党合意ですけれども、それが検討をされ、合意をされました。約五千六百億の予算というふうに伺っておりますが、どのような内容の給付か、御説明をお願いします。

小宮山国務大臣 低所得者への加算として、政府案としては年金の中で仕組みを考えていましたけれども、今回の三党合意で、年金の枠の外で福祉的な給付措置を講ずるということにされました。

 その内容は、三党の確認書で、六十五歳以上の老齢年金の受給者、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者を対象とするということ、給付額は月額五千円を基本として保険料を納付した期間に応じて決定する、また、保険料の免除を受けた期間がある低所得高齢者に対しては、老齢基礎年金満額の六分の一を基本とする給付を別途行うということになっています。この措置による所得の逆転を生じさせないように、低所得高齢者の範囲に該当しない人についても補足的な給付を行う。

 こうしたことが確認をされていますので、この福祉的な給付がしっかりとできるように、厚生労働省としても対応していきたいと考えています。

稲富委員 ありがとうございます。

 この給付の中には障害者の方々も対象になるというふうに先ほどお伺いをしました。ぜひ、これも充実をしていきたいというふうに思います。

 続きまして、実は、基礎年金のこともお伺いしようと思ったんですが、時間の関係で割愛をさせていただきます。

 しかし、いずれにしても、今の年金、子育て含めまして、今回の法案の中では、例えば基礎年金の国庫負担二分の一の充当、あるいはパート、アルバイトの二十五万人の方々に対して厚生年金に御加入をいただく、あるいは被用者年金一元化で官民格差をなくしていく、あるいは産休中の方々の保険料を免除する等々、生活者の視点に立つと極めて大事な社会保障の改革が入っております。

 したがって、冒頭、さまざまありますけれども、社会保障が進まないという御批判は私は全く当たらないというふうに思います。もちろん十分でないこともありますけれども、むしろそれを一歩として次に進めていくということが必要だというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、なぜ今この社会保障と税の一体改革をやらなければいけないのか、決めなければいけないのかという点でございます。

 そして、まず前段として、私は、なぜこの日本国がこれほど借金を抱える国になったのかということを総括する必要があるというふうに思います。その原因を総括せずに、単に財政の収支だけ合わせるということであれば、場当たり的にならざるを得ません。改めて、なぜふえたのかということでございます。

 これは、平成二年度から二十四年度末にかけての国債の増加が五百三十兆円あったということ、その要因を分析したものです。

 左の歳出の増加の要因、このボックスで、約二百三十二兆円がこの原因である、そして右の税収が減ったという部分が約百九十兆円である。この約二十年間で国債の残高がふえた大きな原因は、ほぼ歳出の増加、税収の減少であるということでございます。

 そして、右の税収減というのはまさに経済の問題で、これは総理も何度も御答弁いただいているように、経済の再生をするということ。

 そして、左側のところです。歳出の増加要因、これが二百三十二兆円、この部分によって借金がふえているということ、この点でございます。これは、中身を見てみますと、公共事業そして社会保障、この二つが平成二年度から大きな要因になっているということでございます。

 これを私なりに、改めて、なぜこうなっているのかということ、私が感じていますのは、結局のところ、この二十年間、例えば大型の公共事業をやる、しかしその負担は後に送る。そして、では二〇〇〇年代どうなったかというと、医療、年金が必要である、社会保障を充実させなきゃいけない、しかし、その負担については今考えず先送りする。私は、この二十年のある意味、政治の無責任、それは私も一人です、それと、その先送り体質の集積がこの二十年だったんじゃないでしょうか。

 だから、今回の一体改革は社会保障と税を一体的にやる、社会保障を充実させるのであれば、これはやはり御負担もお願いせざるを得ないということに至った意味だと私は思います。

 したがって、今回、財務大臣にお伺いしたいと思います。なぜ日本国はこれほど借金を抱える国になったのか、改めて分析をお願いいたします。

安住国務大臣 今、事実関係は稲富さん御指摘のとおりでございまして、私なりに申し上げたいのは、私もこの中のほとんどのときを国会議員で過ごしておりましたが、与野党とも、やはり税の負担を国民の皆さんにお願いするのはまことにつらい話でありますから、そういう意味では、均衡した歳入歳出をきちっと守っていくという発想ではなくて、いわば税負担というところはできるだけ避けて、今御指摘のとおり、国債発行という、安易ということはちょっと言いたくないんですが、その道に逃げてしまってきた結果として、政治的にはこれだけの膨大な借金をつくってしまったんだと私は思います。

 そのことは、与党だけ、当時の与党だけに責任があるわけではございません。なぜかといえば、野党の中で、例えば消費税を上げろとか財政再建をしろと強く言った党はないわけですから。

 そういう点では、両方とも大きな責任もあるし、一方で、行政に携わる側も、これだけの危機を持ちながら安易に孫子の代に借金をどんどん積み重ねてきた。だから、まだ大丈夫だ、まだ大丈夫だというふうに思っていたら、もう本当に水がだんだんだんだん体の上まで上がってきたという状況ではないかと思います。

 結果的にこれは国民の皆さんを苦しめることにもなりますので、正直にこの状況を今御説明いただきましたが、だからこそ待ったなしでやらなければなりません。

 選挙の話を御指摘する方もいますが、岡田代表が、当時、やはり消費税の話を提起したりもしておりました。しかし、個々の党の問題というよりも、結果責任はお互い政治に携わる者にあるということで、そういうことも踏まえて、三党の合意が今回成り立ったのは、その重みがあるということも私は申し上げたいと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 総理にお伺いいたします。

 なぜ、今この一体改革をやらなければいけないのか、その質問でございます。

 私も、素案をまとめる際、去年の秋、率直に言って、今なぜ消費税増税を決めなければいけないのかということは、まだ腑に落ちない部分がたくさんございました。しかし、御議論がある中で、今少なくともレールを決めなきゃいけない、あるいは今決めなければいけないというところに至った間には、さまざまな議論の過程があって、私は納得をしてここに立たせていただいております。

 改めて、なぜ今このレールを敷かなきゃいけないのか、ぜひ総理からその御答弁をいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、社会保障改革が待ったなしであるということであります。これまでは、給付は高齢者中心に、負担は現役世代中心にということでありました。給付、負担ともに世代間の公平、世代内の公平を図っていく、これは先送りできない状況にもうなってきているということ。

 それから、財政の話は、今財務大臣からお話があったとおりであります。これもずっと先送りしてまいりました。今の欧州の債務危機等々、海外の情勢を見ても、やはりこれは待ったなしの状況だろうということであります。

 したがって、今回、そういう問題意識を共有することができたことが、一体改革の三党合意に至ったというふうに思います。

 このように、国に対する危機感を共有しながら政治を前に進めていく象徴的なテーマだと思いますので、しっかりと参議院でも御審議をいただいて、そして一日も早く成立できるように全力を尽くしていきたいと思います。

稲富委員 最後に、総理、今度の一体改革、そして経済の再生、そして政治・行政改革を二〇一四年の消費増税前までにやる、やり抜くんだということを何度も御答弁いただいておりますが、最後にもう一度ぜひその御決意をお願いいたします。

野田内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革でありますけれども、実はもっと包括的な改革であって、法案の中身は、今御指摘のとおりです。しかし、それに関係する改革を一緒にやり遂げていかなければなりません。国民に御負担をお願いする以上、やはりデフレを脱却し、経済を活性化させるという、経済の再生は全力でやっていく必要があります。

 加えて、国民の皆様の声というのは、まず隗より始めよ、まずは身を切れ、自分たちが切れ。行政改革、政治改革、これをやり遂げなければなりません。

 行革はこれまでもやってきたつもりでありますけれども、国家公務員の人件費の削減等、この国会でも成果を上げました。だけれども、なお、特別会計の改革、独立行政法人の改革等々、法案を提出しています。こういうものをしっかりとやり抜いていくということ。

 政治改革についても、これは一票の格差是正と同時に定数削減をしなければいけません。これについては、今、私どもの単独の提案をさせていただいておりますが、ぜひ各党の御賛同をいただいて定数削減も実現をしたいと思いますし、忘れてはいけないのは、議員歳費は二年間で五百四十万削ることももう既に決めております。こういうことをしっかりパッケージとしてやっていく。

 何かを先にやらなければ一体改革をやらないんじゃなくて、ありとあらゆるこういう広がりのある改革を全部やり抜いていくという決意で頑張っていきたいというふうに思います。

中井委員長 これにて辻元君、稲富君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 国民と政府との信頼関係というのは物すごく大事だと思うんですね。今回、オスプレーの問題は特にそれを象徴的にしている。難しい問題があればあるほど、信頼関係をつくらなければいけないと思うんです。

 私は、森本大臣が沖縄を訪問するときにやらなければいけないことは二つあると思うんです。

 一つは、沖縄に行って沖縄の方々の厳しい意見を聞いて、この厳しい意見を持ってアメリカに行って、パネッタ国防長官と話をして、それから、この長官の意見を聞いて、もう一回沖縄に戻って沖縄側と交渉していく、これは大事なことだと思うんです。

 二つ目には、逆に、アメリカ側に行ってアメリカの考え方を聞いて、このアメリカの考え方のもとに、調査はどうするんだ、再発防止はどうするんだと聞いて、沖縄に行って県知事にこれを伝える、これも一つの方法としてやるべきだというふうに思うんですよ。

 しかし、森本大臣がやったことは何かというと、六月二十九日に接受国通報がアメリカからあったものを、私が丁寧に沖縄側に伝えなければいけないという、そういうことをやってしまったんですね。言えば、もう伝書バトですね。日本の防衛大臣が従属的にこれを伝えに行くということは、私はこれは信頼が湧くわけないと思うんですよね。

 私は、六月二十七日に森本大臣にお会いしてお話ししたときも、この厳しい問題の中で大事なことは、あなたとの信頼関係が沖縄側で持たれること、この大臣だったらさまざまなことを相談してもアメリカ側に物をちゃんと言ってくれる、結果が出るかどうかは別にして、そういう思いになるためには、まずアメリカがつくっている日程を一回キャンセルして、二十九日の接受国通知も、そして出港のタイミングも、岩国に入れるものも、もう一回全部キャンセルして、話し合いをしようじゃないかとまずアメリカ側に交渉して、それをかち取るところから、あなた始まるんじゃないのと僕は申し上げさせていただいたと思うんですよ。

 沖縄には今までいろいろな事件、事故がありましたよ。いろいろな事件、事故がありましたけれども、少女暴行事件のときの当時の大田昌秀知事でさえも、基地の全面的な閉鎖という言葉は使っていませんね。国際大学にヘリが落ちたときに稲嶺知事が基地の全面閉鎖という言葉を使ったかとずっと調べてみたら、これは使っていませんよ。今度、仲井真知事は、強硬にやったら基地の全面閉鎖やりますよ、こういうふうなことをもう言っているじゃないですか。このことの重みを、このことを言わせているという防衛大臣のこのあり方を私は問いかけたいと思うんですよ。これを言わせないようにするのがあなたの仕事なんですよ。私は、そういうふうな状況の中でどうやってあなたはこの信頼を回復するつもりなのか、これをお聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 私は、そういう意味で、もう一回やった方がいい。牛肉であっても、機械であっても、不備が認められて、これがちゃんと調査が終わって、再発防止が出てから日本には輸入するのが当たり前ですよね。今、調査の報告が出ない、沖縄側も納得しないのにハワイを出港して岩国に向かっている、これはおかしくありませんか、一般的に考えて。

 今は押し戻す、この船を調査結果が出るまで日本に入れない、あなたはそういうふうな決断をして、交渉して、これをかち取らなければ、オスプレーの問題は解決しませんよ、大臣。それをやるつもりがあるかどうか、まずお聞かせいただきたいと思います。

森本国務大臣 オスプレーの配備については、確かに、ことし四月にモロッコで事故が起き、さらに六月にフロリダで事故が起き、この二つの事故が与えた、地元だけではなく、日本国内の皆様方に大変大きな心配、懸念が広がっていることを我が国政府は大変深く受けとめています。

 これは一体、アメリカが言うように、予定どおり、計画どおり日本に配備するということでよいのか、あるいは先生御指摘のように、この問題を少し、アメリカの事故の調査の結果をつぶさに見て、さらに飛行の安全が確認されるまでの間どのように、この計画をサスペンドというか、とめるということが望ましいのか、政府内でも随分と議論をしました。日米間でも随分とやりとりをしました。

 御承知のとおり、アメリカ海兵隊のみならず、このオスプレーというのは、海兵隊、空軍、海軍に配備をされる全体の計画でありまして、沖縄については、もう五十年も使っているCH46という老朽化したヘリを更新するという計画を既にアメリカが持っていまして、この全体計画の中で、いろいろな事故があったけれども、しかし何とか予定どおりに配備したいといって、我が方に、事故の調査結果については異例の措置とも思えるような、つまり、通常、事故の調査をやっている途中に事故の調査の内容を日本に通報するなどということをアメリカがやってきたのは、日本社会に与える影響が極めて深刻であることをアメリカとしても十分理解していたんだろうと思います。

 我が方は、ただアメリカの要求に唯々諾々として従ったということでは決してありませんで、政府部内では、配備計画そのものについてもう一度考えてもらおうということで押し戻しました。アメリカにはアメリカの言い分がありました。

 日米同盟関係というのは大変円熟し、相互に自由に物が言える状態にありますけれども、このように国益や双方の考え方がぶつかっているときに、相手があることですから、どんなに自分で主張しても、長期的にはこれからの日米同盟関係が根本的に傷がつくようなことは決してやってはならず、ましてや、日本の周辺、南西方面のこれからの安全保障を考えたときに、日米はどこで折り合うのが将来の日米同盟関係にとって最も正しいのかということを日米間双方で模索した結果が、先生御指摘のように、まず岩国に持ってくる、しかし、エンジン調整などを行うが、二つの事故の調査報告が日本側に通報され飛行の安全性が確認されるまでの間、一切飛行は行わない、この一点において日米が折り合ったところでございます。

 もちろん、そんなんだったら初めから持ってくるなという意見はありますが、繰り返しになるが、アメリカは何としてもグローバルにこの海兵隊のオスプレー配備計画を進めたい、これは議会との約束でもありましょうし、アメリカの国防省の強い願望で、日本として、同盟国が言える限界ぎりぎりのところを日本は模索して、日本とアメリカの間でこういう一点において折り合ったわけであります。

 今、一言だけ……(下地委員「長い」と呼ぶ)

 以上でございます。

下地委員 あなたは防衛の評論家で、防衛大臣の一番悪い今の癖が出ていますね。誰が考えても、あなたは海兵隊の司令官ですか、あなたはアメリカの国防長官ですか。あなたは日本の防衛大臣ですよ。しかも、事故を起こしたのはどこですか、アメリカですよ。配備計画に狂いをつくった原因をつくったのは、モロッコで落ちた事故もフロリダで落ちた事故も、アメリカが自分でやったことなんですよ。それを、日米同盟のあり方論でこれを考える防衛大臣がどこにいますか、あなた。おかしいよ。普天間のど真ん中にあの飛行機を持っていくということの恐怖感におののいている人たちの意見をあなたはどこで吸収するんですか。

 しかし、今の答弁を聞いたら、また沖縄はあなたに対する不信感が出ますね。これじゃだめですよ。どうしたら日米同盟というものの基軸と、どうしたら沖縄の声を、悩みながら物事をつくっていくかというけれども、あなたは最優先に日米同盟をやっているじゃないですか。地域の住民の理解がなくて安全保障が進みますか、大臣。期待外れだな、あなたは。物知りの防衛大臣なだけだ。

 私は、そういう意味でも、このやり方をもう一回総理とゆっくり、きょうは総理に聞きませんけれども、もう一回お考えになって、信頼を得る方法をまず最優先すべきだ、そのことだけ今回申し上げておきますから。本気で考えないと、あなたは本当に沖縄において取り返しのつかない失敗を起こしますよ。これだけは申し上げておきたいと思います。

 それで、総理、今度は社会保障と税の一体改革について質問させていただきますけれども、衆議院では通りました。しかし、私たち今頑張らなければいけないのは、国民にこのことを理解させなければいけないと思うんですね。

 消費税のこの数字を見ていただきたいんです。これは元年に消費税を入れて、九年に消費税を入れましたけれども、このときの消費税を入れた目的も、財政再建とそして社会保障に税を入れるという話でありましたけれども、導入してから、見ておわかりのように、これだけの定率減税だとか特別減税とか、さまざまな減税をやったものですから、これが財政再建や社会保障に回らなかったんですよね。

 そして、次のパネルを見ていただくと、その結果として、また同じように減税をやり過ぎたものですから、それがそのまま、国債の発行高がどんどん伸びてしまって、消費税の導入時期は百五十七兆円あったものが、七百九兆円まで伸びたんです。だから、今度、野田内閣が消費税を社会保障と税の一体改革ということで決めて枠組みでスタートしたことは、これの反省があると思うんです。私は、このことは非常に大事なことだというふうに思っているんです。

 そして、もう一個、次のパネルを見ていただきたいんですけれども、三枚目のパネルですけれども、社会保障というのは、所得の低い人が受益は大きいんですよ。これが大体の流れになっているんです。

 そして、次のページを見ていただきたいんですけれども、どんどんかえますけれども、これは、年収で二千万円もらっている人。これが四十年間頑張ってお仕事をなされると、大体約一億四千万円ぐらいの税金を払われると言っているんです。そして、現役時代に夫婦子供二人の場合に得る受益は七千万円なんです。そして引退後、七十歳を超えてから二十年間で得る受益は一億円。だから、人生の中で税金を払うのが一億四千万、受益は一億七千万が、年収が二千万円以上の人たちの一般的な形ですね。

 それで、総理、この二千万円を超えている人たちというのは、医療や介護や年金も子育ても、国のサービスは要らないんですよね。病院、入院一つでいっても、個室の五万円ぐらいの病室に入って、保険はかからないけれどもそこに入ることもできる。そして、介護においても、有料ホームに入って、保険がかからなくてもそれができる。子育ても、私学に入れようが何に入れようが、年収がこれだけありますから、自分の思いで物事ができる。国のサービスがなくても、この高所得者というのは十分に頑張っていけるというのが実情だと思うんです。

 そして、次のページを見てもらいますと、年収が三百万の人というのは、大体、四十年間で払う税金が二千四百万。そして、四十年間現役で、義務教育を受ける、さまざまなものを受けるというのが七千万円と、年をとってから年金生活に入って七千万円。人生の中で二千四百万円税金を払って、一億四千万円の受益が、この所得の低い人たちが得ることなんです。

 だから、高所得者の人たちは自分で多様な人生設計できるけれども、低所得者の人は、国のサービスと一体とならないと人生設計できないんですよ。

 だけれども、この国のサービスのところが、財政再建だとか、人口構造が一億人切るとか、高齢化社会になるとか、少子化になるとかといって、壊れそうなんですよね。今回の社会保障と税の一体改革は、この壊れることが低所得者にとって大変なことにもなる、国家の将来の姿としてもよくない、だから元年や九年のときの税制改正と違って、確実に社会保障に税金を入れて安定した社会をつくるんですよと、この目的が大きな部分だと思うんですよ。

 しかし、今、余りにも、逆進性であるとか、低所得者に対して給付をやらなければいけないとかという、この話が出ているものですから、選挙区に行って話を聞くと、この消費税はもう低所得者に対して何か負担を強いるものだというイメージがついて回っている。本当は違うんだ、本当はこのことはあなた方にとって大事なことなんですよという説明が、野田総理、あなたに少し足りないんじゃないかと思うんですよね。これをしっかりとアピールしたら、私は消費税を入れてもいいという人は六〇%になってくると思うんです。

 このことに力を入れてお話をする。いいですか、国民の皆さん、負担だけじゃありませんよ、受益のところも大事なんですよということをもっと力強くおっしゃることが大事かと思いますけれども、そのことをお願いします。

野田内閣総理大臣 そのとおりだと思います。すばらしい御指摘をいただきました。

 従来の消費税の引き上げのことと違って、今回、法律上も予算上も会計上も、全て社会保障に還元をする、社会保障に全て使途を充てるということになっています、制度的に。その結果でありますが、社会保障というのは、要は、これは所得再分配機能がありますので、その結果、今大変わかりやすい図、資料をお示しいただきましたけれども、所得階層が低い方の方ほど受益が出てまいります。

 もちろん、低所得者対策とかきめ細やかな対策はやるんですが、その上で、全体像としても、これは低所得者の方の方が恩恵が大きいんですね。そのことをしっかりと御説明していくことが大事であり、だからこそ、これは国民の生活に極めて直結して、国民生活を守るための改革なんだということをしっかりと御説明していかなければいけないと思います。

 大変わかりやすい資料をお示しいただきまして、ありがとうございました。

下地委員 ここで、この部分の誤解を解くというのが一つ大事なことですけれども、もう一つ、この資料六を見ていただきたいんです。

 これは元年とそれから九年に消費税を上げたときに、元年のときも駆け込み需要というのが出ているんですよね。だから、消費税を上げる前の年というのは、どっと個人消費だとか設備投資とか伸びるんですよ。そして、これが終わると、四月になるとまた下がるんですよね。

 これが大体今までの二回の姿、経済の姿、反動みたいなものになっておりますけれども、三回目になってこのような数字が、棒グラフが出たら、これは勉強していないということですよね。このような駆け込み需要があることはあったにしても、これが消費税が終わってから下がるというようなことにならないようにするというのが、今回消費税を上げる、三回目の私たちがやらなければいけない仕事だと思うんですよ、政治が。

 それで、この数字を見ていただくと、個人消費が伸びていますよね。設備投資も伸びています。こういうふうな伸びているものをもっと伸ばさなければいけない。もっと伸ばさなければいけないとなってくると、総理、ことしの税制改正なんですよ。ことしの税制改正で、総理が、この需要のところをどうやって伸ばすかということについて、目的意識を持ってこれをつくらなければいけない。

 一つは、個人消費が伸びるようにですから、エコポイントとかエコカー減税だとか、こういうふうなことをしっかりとやっていく。それで、個人消費が伸びるように、この部分だけはこの一年間限定でいいですから、贈与税を拡大する。こういうふうにしてお金が動いてそれが消費に回るというのを、ことしの十二月にやれば、来年四月以降からスタートして、その次の、再来年の四月に消費税を上げるまでの来年の一年間で消費が伸びるような戦略図をまずつくるということが一点目に必要だと思うんです。

 その次は、これが四月以降になったら落ちるんですよ。これが四月になったら、上がったら落ちる。今までの結果からすると、イメージからするとそうなる。そうなってくると、それも落ちないようにするためには、もう民間の個人消費はなくなりますから、ここが国の出番だと思うんですね。だけれども、四月以降からお金が動かないとなかなかうまくいかないので、補正予算を組むとしても、公共工事、そして耐震化のものを組むとしても、十二月ぐらいに組んで、ゼロ国債をやって、入札も全部終わって、そのまま四月以降から企業の皆さんに行けるような、前倒しでお金が入るような、四月以降からそれが進められるようなゼロ国債のあり方も考えなければいけない。

 もう一つは、やはり輸出ですね。消費税を受けていない海外の人たちに輸出を高める。個人消費がないからそれをやるというふうになってくると、やはり金融政策を持っておいて、大胆に再来年の一月ごろには金融政策をやる。安住大臣がそのころまで財務大臣でいたら、断固として円安になるように国は進めますよと、財務省がしっかりと一つのメッセージを入れる。そうやって円安基調をつくりながら、国内消費が落ちる分を輸出で頑張る、こういうことをやっていくことが大事だと思うんですよ。

 そういうふうな経済の戦略図をもう一回国民にお見せになると、消費税に対して、逆に、ある意味、来年の駆け込み需要に対する期待感、そして、その都度落ちるはずであるものに対して、いや、大丈夫だという安心感、こういうようなものをやはりおつくりになることが大事だと思うんですけれども、このことについても、何か、社会保障と税の一体改革のこのチームをつくったみたいにして、野田総理の味をきっちりと出した経済政策を打ち出してみたらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

古川国務大臣 委員からの御指摘の問題意識は私たちも全く共有いたしておりまして、そうした視点から、国家戦略会議のもとで、今、総理の御指示のもと、まず、この二年間、一日も早くデフレから脱却をしていかなければいけない、そのためには総合的な政策のパッケージを大胆に取り組んでいこうということで、今まさに関係閣僚そして日銀総裁にも入っていただいたそうした会議で、近々これを取りまとめさせていただきます。

 それをしっかり行っていくと同時に、二年前に一緒につくりました新成長戦略を、昨年の震災そして原発事故を受けてさらに再編強化した日本再生戦略も、近々、国家戦略会議において取りまとめる予定でございます。

 こうした成長戦略も同時に行っていく、このことによって経済をしっかりと再生させ、そのことによって社会保障・税一体改革を決められた手順で実現できるようなそういう環境を政府を挙げて全力でやってまいりたいと思いますので、ぜひ、引き続き御協力をよろしくお願い申し上げます。

下地委員 総理の経済政策に対する思いも、ちょっと短目で。

野田内閣総理大臣 これは下地委員御指摘のとおり、消費税引き上げの前後というのは、間違いなく、これまでの経験からすると、駆け込み需要があって、反動減があります。それを平準化するために今回は二段階という形になっているんですが、そういうことも想定をしながら、何よりも、国民の皆様に御負担をお願いする際には、経済の再生が不可欠でございます。

 今、足元は実質四・七%の成長、これは一月―三月期のQEですが、復興需要を背景にしながら、若干個人消費も持ち直してきています。

 そういうことを見ながら、ただし、その二〇一四年、二〇一五年をにらんだときには、もっと民需主導の経済にしていかなければなりません。そのために、より一層個人消費を喚起するためにはどうしたらいいかという観点を常に持ちながら、状況によって機動的に対応しなければなりませんが、今委員御指摘の視点を持って、年度末の税制改正と予算編成、場合によっては、機動的という意味においては、補正予算も含めて対応していきたいというふうに考えております。

下地委員 今の補正予算も含めて戦略的におつくりになって、それをしっかりと国民に示すことが大事だと思うんです。

 最後になりますけれども、総理、そろそろ個性を出してアピールしていくことが大事だと思います。

 今、尖閣の問題を、国が買いますというような総理の発言がありましたけれども、あれは非常によかったと思いますよ。これは、国の姿勢を見せるという意味ではよかったと思います。

 そして、その次に何を総理にやってもらいたいか。これは選挙制度ですよ。これは、議員定数の削減、反対している人たちが、野党がいるかもしれませんけれども、定数削減を徹底的にやる。今、国民はそれを待ち望んでいますよ。そのことは、三党合意とか三党調整とかいう言葉はもうなくして、だって、消費税が終わったら不信任案を出すと言っているんだから、問責も出すと言っているんだから、もうそんなものを相手にする必要はないですよ。

 自分の考え方でちゃんとこれから選挙制度も出していく、そして特例公債も出していく。衆議院で採決して、参議院に行って否決するなら否決してみろ、それぐらいの気持ちでみずからの個性を出していけば、私は総理に対する支持率は上がってくるというふうに思っていますから、どんどん個性を出して発信していくことを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷垣禎一君。

谷垣委員 総理、おはようございます。

 総理が政治生命をかけるとおっしゃった社会保障と税の一体改革、過日、私ども自民党、公明党と総理の民主党とで三党合意ができまして、関連法案、衆議院を通すことはできた。これから参議院で審議をしていこうという段階でございます。

 そこで、この問題をめぐる政治的な論点を整理したいと思いまして、きょうは立たせていただきました。

 まず最初に、この三党合意、我が党が野党としてこの三党合意を結んだ理由と申しますか、それは第一に、今の財政状況はやはり厳しい、そして、この厳しい財政状況を生んだ責任は、長い間与党をやらせていただいた、政権をとってきた我が党にも非常にある、こういう認識がございまして、そしてそのためには当面一〇%の消費税率の引き上げを国民にお願いしなければならない、こういった主張を掲げ、また公約にも掲げてまいりました。先ほどから総理がおっしゃっているように、それは、社会保障を安定させるためでもあり、また、ツケを次世代の国民に全部負わせるんじゃいかぬ、こういうこともございます。

 さらには、今の国際情勢からすれば、この厳しい国際的な金融情勢、財政状況の中で、日本の政治も財政規律に対してはきちっとやっていくんだというメッセージも出す必要がある、こういう認識、これは総理とも共通の認識だと思います。

 しかし、他方、私どもがこの合意を結びましたのは、三年前の民主党のマニフェスト、財政面について余りにも配慮が足らなくて、我々から言わせれば、ばらまきがたくさんある。このマニフェストについては、我が党の基本法案を基礎として、これにきちっと歯どめをかけて、そして、言葉は何というかですが、棚上げにしてしまったということが一つございます。

 それからもう一つは、これも先ほど総理がおっしゃっていたことでございますが、社会保障国民会議をつくって、そして、本当に、国民に増税をお願いする前に、医療、年金あるいは介護、これについてはしっかりした案をつくっていこうということで、一部で増税先行という言葉があるけれども、そういうふうにはならない、こういうこともあったわけでございます。

 ここまで来ますのに、私ども野党としてもいろいろ苦労をいたしましたけれども、総理も、野党から見ておりますと、大変党内をおまとめになるのには苦労に苦労を重ねてここまで来られた。その総理の御努力には私も敬意を表したいと思っております。

 しかし、他方、二十六日の採決以降、小沢先生たちが離党されて、新しい会派をつくられるということになりました。また、鳩山元総理等々は党の中にとどまられまして、参議院では修正ができないかというような議論もされていると報道をされております。

 我々から見ておりますと、大変言葉は失礼ですが、総理の後ろから鉄砲を撃っているようにも見える。そして、これは単なる民主党の党内問題だけではなくて、与野党三党で結んだ信頼関係の基礎もないがしろにするように見える。こういう状況になっていることは極めて遺憾でございます。

 まず、これらの点について総理の御認識をお伺いしたいと存じます。

野田内閣総理大臣 六月二十六日の一体改革の採決の際には、残念ながら政権与党の側において、反対を投ずる議員、あるいは棄権、欠席をする議員が多く出たこと、大変申しわけなく思っております。加えて、その後、離党者も少なからず出てしまいました。このことは、民主党の代表として、国民の皆様に深くおわびを申し上げるとともに、三党合意をもって、そしてこの成立を期している自民党を含め、公明党を含めて、また御賛同いただいた会派の皆様を含めまして御迷惑をおかけしたこと、加えて、院の構成にもかかわる問題にもなりましたので、国会日程にも影響を及ぼしたことについては、本当に深くおわびを申し上げなければいけないと考えております。

 一日も早く党の規律を回復し、体制を立て直し、そして、いよいよ参議院での審議がこれから本格的に始まろうとしておりますけれども、基本的には、実務者が本当に丁寧な協議を行い、お互いに党内手続を踏まえて合意した内容でございますので、この三党合意をしっかりと踏まえて、そしてその合意を踏まえた法案が参議院できちっと成立できるように、全力を尽くして責任を果たしていきたいと考えております。

谷垣委員 今の国会運営、やはり会派というものを基本にしていると思います。今総理もお触れになりましたけれども、院の構成をどうするか、各委員会の理事の配分、委員長の配分はどうするのか、これも会派によって成り立っている。また、立法事務費も会派というものを中心に考えられているわけですね。ですから、議院の運営はやはり会派、これが基本になっている、それが現実でございますね。

 それで、この会派は、意見が基本的に一致するということが、しかしその前提にあるわけです。意見が違う方が会派の中でともに一緒にいるというのは、これは国会運営の基本とは違ってくる、私はこう思わざるを得ないわけでございます。

 大変失礼ですが、先日、総理は宮城県に視察に行かれました。そのときの報道写真を見ますと、宮城県出身の御党の橋本議員が後ろににっこり笑って写っておられた。この方は、採決のとき欠席された方ですね。その方が、その熱も冷めやらぬうちに、政治生命をかけると言った総理の後ろでにっこりされるというのは、余りにも緩いんじゃないかと私は思います。それから、細野大臣も鈴木克昌さんのところに行かれていますね。

 私は余り細かいことを申し上げるつもりではないんですが、やはり会派で意見を共通にして行動するということがいろいろな国会運営の原則であり、会派と会派が合意を結ぶ前提であるにもかかわらず、余りにもその自覚が緩いんじゃないか、このことは私は指摘をしなければいけないと思うんです。

 総理は、処分を厳しくせよと私が申し上げたときに、他党から言われたくないということもおっしゃったようですが、私は他党で申し上げているわけじゃないんです。今の国会、議院運営の基本的な原則、加えて三党合意をして、私どもの案も取り入れてこういうあれをつくったわけですから、それに対してやはり反対をする、造反をするというのは、私は、これはこの三党合意の信頼関係に響く、このように考えたから、そのように申し上げたわけです。

 大変きついことを申し上げますが、こうして党の中で今いろいろまた牙を研いでおられると言ったら失礼ですが、その可能性のある方々にきちっとどういう行動をとるのか確かめて、御報告をいただけるというふうなことをお考えいただけますでしょうか。

野田内閣総理大臣 党内における、欠席をされた議員、棄権をされた議員あるいは反対票を投じられた議員についての対応については、一応、常任幹事会としては方針を決定いたしまして、それを今、倫理委員会にお諮りしているというプロセスにあるということでございますので、その結果はいずれ明らかになるかと思います。

 今総裁から御指摘をいただいた御批判については、これは甘んじて受けざるを得ないと思いますけれども……(発言する者あり)まさにおっしゃるとおり、党内の問題ではなくて、公党間の信頼の問題、それからまさに国会運営にかかわる問題であるということは十分承知をしております。したがって、むしろ参議院の審議においては、より政権与党が一致結束して対応できるように全力を尽くしていきたいと考えております。

谷垣委員 とりわけ、三年前の選挙のときに、鳩山さんは党代表の座にあられたわけですね。それから、二十年間は消費税率を引き上げないということも公言されていたわけであります。

 今回、鳩山代表は造反をされました。六カ月の党員資格停止処分だと伺っております。それで、輿石幹事長は、処分期間中に選挙となった場合は公認する意向だ、そういう報道がございました。これは総理も同一の認識でいらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 党員資格停止等の処分をした場合の方針を二〇〇七年か二〇〇八年かに決めているんです。その中に、そうした場合における選挙時の公認については党の執行部で判断をするという規定がございます。その規定を踏まえて幹事長がお話をされたと承知をしています。(発言する者あり)

谷垣委員 三日月理事も、そこまで他党に言われちゃ立つ瀬がないという趣旨のことを今言っておられた。それは不愉快でしょう、こういうことを他党に言われるのは。ただ、外に向かって明確に反対を叫ぶ方々を抱えている党に、野党としてどうして協力ができるのかという我々のことも考えていただかなきゃ、それはなかなかうまくいきませんよ。

 それで、六月二十六日、衆議院では採決をいたしました。今総理からも、院の構成もあって、二週間、もう大体二週間になりますね、十一日ですか、参議院本会議で趣旨説明が始まるのは。二週間、徒過したことになります。これは総理からもおわびの言葉がございましたので、もうこれ以上、私も申しません。

 これは、反対側の党から見ておりますと、総理も前へ進めたいというお気持ちもありながら、なかなか党全体としては足並みがそろっていないという総理の苦悩のあらわれではないのかと思っておりますが、いずれにせよ、早急に審議を参議院でも進めて、早く参議院で結論を出そうじゃありませんか。

 その上で、先ほどちょっと申しましたけれども、民主党の中で、今のこの一体改革に批判的な方々の間からは、参議院における修正協議というような議論もあるやに聞いております。そういう可能性はあるんですか、ないんですか、それを改めて伺いたいと思います。

 それに加えて、仮にそういったことがあったり、あるいは参議院で採決に至らないというような場合に、衆議院で再議決してでも現在の三党合意に基づく法案を成立させようという覚悟が総理におありなのかどうか、そのことを伺いたいと存じます。

野田内閣総理大臣 三党合意、これは大変重い合意だと思っております。その合意を踏まえて、法案の修正をしたりとか推進法等々を提案したりしながら、そして衆議院を通ったわけです。その際に、私どもは党の手続を経て党議としてまとめました。この基本姿勢は変わりません。むしろ、御心配をおかけしましたけれども、参議院においては一致結束して採決できるように全力を尽くしていきたいというのが私どもの思いです。

 別にあらかじめ再修正を考えている人がいるかいないか、これは報道ベースでいろいろあるかもしれませんが、私自身は承知をしておりませんが、一致結束してこの法案が成立するように全力を尽くすというのが私の基本的な考えです。

 もちろん、ハウスが違うので、よりすばらしい観点が出てきて、三党が合意できるような修正が生まれる可能性は、これは否定はしません。これは別のハウスの議論でありますので、国会審議を経て、よりいいものができるということはあり得るかもしれませんが、何かを、条件を持って今再修正すべきという議論は、これはよって立つものではありません。

谷垣委員 総理が三党合意を重く受けとめて、それをきちっと踏まえて参議院も対処していこう、そういう御覚悟だと伺っておいてよろしいですね。

 そこで、衆議院では、五十七名の方が税法には反対されたわけですね、そして四十名前後が民主党を抜けられた。参議院では十三名が離党されたということであります。まだどうも、こういった動きが完全に冷めたという、冷めやらぬ状況のように私どもは受けとめております。

 そうしますと、衆議院では与党過半数割れであるとか、参議院では比較第二党ということもささやかれておりました。そんなことをそれ以上突っ込んで聞く気は私はありませんが、二つ伺いたいんです。

 一つは、さきの衆議院選挙で、小沢さんは代表代行として指揮をとられたと記憶しております。それから、マニフェストの表紙は、当時の代表、鳩山元代表が表紙でございましたね。お二人とも、消費増税はマニフェスト違反であるという主張を今も崩しておられないわけですね。それで造反をされた。

 そこで、それでも野田総理は、消費増税はマニフェスト違反ではないというふうにお考えなのかどうか。また、そのマニフェストを掲げ、得た議席、そして、ひいてはそれに基づく政権の正統性、それについては今どのように考えておられるんですか。

野田内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革という考え方を当時の〇九年マニフェストに明示しているわけではございませんでしたし、特に、消費税という記載はございません。その中で、こういう形で国民の皆様に、社会保障のためとは言いながらも御負担をお願いするということがにじんだ内容は全くございませんでした。そのことについては、私はおわび申し上げなければいけないというふうに思います。

 でも、その〇九年のマニフェストについては、これまでも多くのことは、やれたものはあります。できていないものもありますが、引き続き、書いたことの実現を目指していくということを、これは貫いていきたいと考えています。

 その中で、消費税、この社会保障の一体改革は、書いていませんでしたけれども、マニフェストで実現しなければいけないものもありますが、書いてないことでも、国民の生活を守るために、国民の生活が第一という理念という意味からも実現しなければならないテーマだと私は思っておりますので、しっかりと国民の皆様にそのことを御説明していきたいと思います。その意義については、谷垣総裁が冒頭にお話をされたとおりであります。その意義というものをしっかり国民の皆様にお伝えしていきたいと考えております。

谷垣委員 こういう社会保障と税の一体改革が意義のあるものだというのはわかります。ただ、やはり政治を進めていくのは、手順、段取り。総理大臣をやっておられる方に今さらこんなことを言うのもなんですが、やはり手順、段取りというものが私は必要だと思うんですね。

 それで、こういう与党の中で、会期の途中に、会期の初めに院の構成をやるというのはいつもやらなきゃならないことですが、会期の途中で院の構成をやり直すというようなことは、これは私の記憶する限り、めったにない、こんなことはほとんどないですよ。

 そういうことが起こるということも、総理は今、必要だから書いていないこともやるんだとおっしゃったけれども、やはりマニフェストを踏まえた行動。本当は、それは事前に解散して信を問われるのが正しいんでしょうね。だけれども、それはそのときそのときでいろいろなやり方があるでしょう。私は、総理がそう言い張られるけれども、若干というか相当大きく疑問を感じながら今の総理の御答弁を伺いました。

 そこで、もう一つ伺うんですが、これだけ多くの離党者が出ますと、そして予備軍も、まあどのぐらいいるのか私よくわかりませんが、予備軍もおられるように感じます。安定的な政権運営は、これはまことに難しくなっているんじゃないでしょうか。

 一体改革以外にも国政の課題というのはたくさんございます。一体改革だけにかかずらわってよいわけでは決してありません。具体的に、今後どうやって国会等を乗り切っていかれるお考えなのか。

 要するに、決まらない政治というものに対するいら立ち感が国民にあることは事実です。私たち野党もそれに応えていかなきゃならないけれども、何といっても、例えばこの税と社会保障の一体改革にしても、政府・与党が引っ張って物事を決めていくんだ、そういうお気持ちがなければ、これは進まないわけです。その辺はどういうふうに、これからどうやって国会を運営していこうとされるのか、その総理の基本的な今の御認識を伺いたいと存じます。

野田内閣総理大臣 これは谷垣総裁御指摘のとおり、一体改革だけではなくて、さまざまな重要な法案等々がまだ残っております。九月八日まで会期が延長されましたけれども、その間にできるだけ、国民生活にかかわる重要な法案については、これは当然、ねじれている状況でございますので、御党を含めて野党の皆様の御理解もいただきながら進めていかなければいけませんけれども、丁寧に、熟議を尽くしながら、一つ一つ法案が通るように頑張っていきたいというふうに思います。

谷垣委員 いずれにせよ、安定的に政治あるいは議会運営を進めようとすると、非常に今厳しいところに立たれている、このことは間違いないと私は思うんです。

 それで、政権基盤がそのように非常に難しくなっているということに加えまして、政策についても伺いたいと思うんですが、これは民主党の中でもいろいろな御議論があると思いますよ、だけれども、三党合意によって、民主党が総選挙時に掲げたいろいろなものはできなくなったというのが、率直な私たちの認識でございます。最低保障年金を含む新年金制度の創設、あるいは後期高齢者医療制度の廃止、こういうものはもう事実上不可能になったのではないか。

 社会保障制度改革の今度の推進法においては、二条で基本的な考え方が書かれております。これは、自助、共助、公助あるいは社会保険を基礎としてやっていくといった自民党の主張がこの二条には書かれているわけであります。そして、九条を見ますと、一体改革大綱の閣議決定は単なる選択肢になってしまったということだと思います。それで、今後一年間、社会保障制度改革を国民会議で議論していただくわけでございますが、こういった今度の推進法の考え方からすれば、ここに、今マニフェストに書かれたようなものを議題に上げるかどうかも、これはもう物すごく難しいところに来ているんじゃないでしょうか。

 そして、確認書の合意というのを三党で結びました。これは、あらかじめ三党で議論するということになっておりますが、自公は、今おっしゃったようなことは賛成できないわけですね。まあ、公明党のことまで申し上げるのはやめましょう。私どもは少なくとも賛成できません。

 いわば、民主党マニフェストの目玉政策は事実上実現不可能になったのではないか、ここの総理の御認識を伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、推進法の二条のお話がございました。自助、互助、公助の関係。御党は御党なりのお考えがあったと思います。我々も、自助と互助と公助、これはバランスよくとっていくということで、特に自助の基盤が弱まっているので、その環境整備を共助や公助によって助けることによってやっていこうというその考え方と、公明党の考え方もいろいろあると思いますが、言葉では自助、互助、公助が出ていますが、これは三党で折り合える文書をつくったものだと私は理解をしています。

 その上で、個別のそれぞれの固有の政策は自民党にも公明党にもあります。私どもにもあります。私どもの固有政策の中に、最低保障年金や後期高齢者医療制度の廃止というものがあります。これをそれぞれなくすとか撤回をするという文書を合意したわけではありません。それぞれの固有政策を持ちながら、三党間で年金制度であるとか高齢者医療制度についての合意形成を目指す。それぞれの固有の政策を持ち寄るということだと私は理解をしていますし、国民会議においては幅広く有識者も含めてそういう議論をするということで、それぞれの固有政策を撤回しろとかやめさせる、そういう合意の文書では私はないと思っております。

谷垣委員 特別委員会の我が党筆頭理事を務められた伊吹さんも、まだ法案を出しているわけじゃないから、新年金なんかには法案を出しているわけじゃないですね、だから撤回したわけではないと、武士の情けでそういう表現をしておられるのは事実です。ただ、こういった法案あるいは確認書を虚心坦懐にお読みいただければ、もう私は動かなくなっていることは明々白々だ、このように考えております。

 そして、伊吹さんは、そういう棚上げしたわけではないという御議論でした。私も伊吹さんのやや皮肉な表現をおかりして言えば、もし棚上げしたわけではないとおっしゃるのならば、次の選挙には、新年金法案であったりあるいは後期高齢者であったり、どれだけの財源をかけるのかということも含めて公約にしっかりお書きになって戦われるべきだということは申し上げておかなければならないと思います。

 それで、私どもの以上申し上げた認識からいたしますと、総選挙時に否定をした消費増税と相まって、これはマニフェスト違反は明白であると考えております。要するに、民主党マニフェストの大骨は全部切り取られてしまった。仮に法案が成立するとなれば、これは明確になって決定的になってくると私は考えております。

 国民との契約関係でいえば、本来、信を問うた上でこういった問題を、増税を進めるのが筋であった。残念ながら、その機会は逸しました。ここで速やかに国民に信をお問いになるお考えはあるのかないのか、伺いたいと存じます。

野田内閣総理大臣 社会保障改革の大骨が骨抜きになったという認識は、私はございません。三党間の合意文書、確認書というのは、まさに文字どおり見るべきであって、そのことによって私どもの大骨を取り除いたという表現は全くございませんので、それぞれの党の固有政策をこれから主張し、そして実現していく、私どもはそういう姿勢で臨んでいきたいと思っております。

 という基本的なところが違うということでございますが、だから解散・総選挙というお話でございますが、この一体改革も含めまして、やらなければいけないことをやり抜いた暁に国民の皆様の信を問いたいと考えております。

谷垣委員 合意は結んだけれども随分認識が違うところがあるということは、それははっきりいたしましたね。

 そこで、総理、今も、やるべきことをやったら信を問うとおっしゃいました。以前から、法案成立後はやるんだ、信を問うんだということもおっしゃっておりますね。そこで、そうであれば、成立後時間を置く意味というのはどれだけあるのか。むしろ、直ちに信を問うべきではないかということをまた改めて伺いたいと存じます。

野田内閣総理大臣 一体改革も重要な課題です。それ以外にも、さまざまな、例えば特例公債法案等々案件がございますので、やらなければいけないことをやり抜いた後というのは、この一つのテーマだけで申し上げているわけではございません。

谷垣委員 今総理がおっしゃったことと関連して申し上げますと、私どもが今るる申し上げてきたことは、政権基盤も極めて弱くおなりになっているんじゃないか、それから、マニフェストの崩壊も決定的になったんじゃないか、ここのところは総理とちょっと見解が違うんだろうと思います。

 しかし、政権基盤がこれだけ崩壊し弱体化してきますと、ほかにもやるべきことはあるとおっしゃるんだけれども、政策決定もままならない。そのためにも、選挙をやり直して新たな政治体制を構築していくことが必要になってきているんじゃないかというのが私どもの認識でございます。

 それから、マニフェスト、それから消費税に関して言えば、やると約束したことはやらないで、やらないと言ったことをやる、そういうふうにお決めになる以上、国民に信を問い直すことは私は必至になってくる、このように考えております。

 これは単なる法案審議の問題というだけではなくて、政権のあり方、ないしは、私どもの国は政権交代をそう経験したわけではありません、これから、この政権交代がいかにあったか、いかにあるべきかということは、今後の先例をつくっていくというふうに私は思っております。ですから、政権のあり方あるいは国政の運営の仕方としても、私は極めて重要な問題を含んでいるという認識を持っております。

 ですから、政権がこういった自覚をお持ちにならない、そして、今度の三党合意というのは、そういうことを含んだ、それだけの重みのある合意だと私は思います。ですから、それを十分な覚悟を持ってお臨みになるという決意がなければ、我が党は参議院においても重大な決意を持って臨まなければならない、こんなふうに考えております。

 以上、これから参議院の審議に臨むに当たりまして、基本的な私どもの考え方を申し上げさせていただきまして、私の質問はこれで終わらせていただきます。次は、福井さんに譲ります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、福井照君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福井照君。

福井委員 自由民主党の福井照でございます。おはようございます。

 本日は、国土強靱化について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、前後左右、チェックをさせていただく意味で、外務大臣、仙台で世界に向けて、世界防災閣僚会議in東北、防災の主流化、強靱な社会の構築、これを訴えられました。

 防災の主流化、ちょっと聞きなれない、私自身も初めて聞いた言葉です。防災に主流と傍流があるのか、あるいは強靱な社会とは一体何なんだということでちょっと疑問に思いましたので、これを世界に発信された、そして議長総括ステートメントで、アドレス、スピーチをされた外務大臣の方から、ちょっと解説をお願い申し上げたいと思います。

玄葉国務大臣 強靱な社会とは何か、そして防災の主流化というのは聞きなれないのではないか、こういうお話でございますけれども、強靱な社会、これは災害の被害を最小化しつつ、迅速な回復を可能とする社会を構築する。そして、主流化というのは、あらゆるレベルの政策決定において防災というものを意識する、そういう必要がある。特に、これは国、自治体、コミュニティー、それぞれなんですけれども、やはり国際協力の中で防災というものを本格的に取り上げていく必要がある。それは、三・一一東日本大震災を経験した私たちの責務でもあるだろうということなんです。

 ちなみに、一ドルの防災に対する投資が七ドルの被害を防ぐ、そういう数字も紹介されているということもあり、先般仙台で開きました世界防災閣僚会議、おっしゃるように議長を務めさせていただきましたが、そのときは各国から理解を得て、この防災というものを、これから、例えばポストMDGsもそうですし、国際協力の主眼にしていこうということで一致をしたところでございます。

福井委員 ありがとうございました。一ドルと七ドルの物差しは、後ほどまたこちらの方で使わせていただきたいと思います。

 総理も仙台に行かれて、最初のスピーチをされました。今外務大臣から解説がございましたように、防災の主流化、そして強靱な社会の構築というのは、日本から発信をして、世界の共通認識、防災の主流化、全ての、例えば小学校、中学校をつくるに際しても体育館をつくるに際しても、やはり防災というのを施設をつくる主要な目的、あるいは施策でも何でも、防災というのを目的の根幹に置かなければならないというのが防災の主流化と今解説がございました。

 そして、強靱な社会、レジリエントなソサエティーをつくる。打たれ強い、まさに打たれ強いプライムミニスターとして東北に行って世界に発信されたわけですから、その強靱な社会をつくるということについては、これは日本も適用するということでよろしいですね。その確認をまずさせていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 今般の世界防災閣僚会議の冒頭で、今、福井委員が御指摘のあった、強靱な社会、人間の安全保障を基本として強靱な社会をどうやってつくっていくのかということと、それから防災の主流化について、私からもメッセージをお訴えさせていただきましたし、この会議を通じて、日本発のメッセージの発出になったと思います。

 世界にメッセージを発出している以上、大きな大震災を経験した国として、我が国においても、今申し上げたような防災の主流化であるとか強靱な社会づくりについて一生懸命に取り組んでいくということは当然のことだというふうに思っております。

福井委員 ありがとうございました。

 防災の主流化、強靱な社会の構築、これを日本にも適用する、日本でも行政の根幹としてこれから実施をしていくんだということをおっしゃっていただきました。

 そこで、私どもの方は国土強靱化基本法案というのを衆議院の方に提出をさせていただいておりますが、ちょっと頭の整理をまずさせていただきたいと思います。これを聞きながら、国土強靱化基本法案についての総理の所感をお伺いしたいと思います。

 このパネルにございますように、まずイメージを共通にしないといけませんので、災害の強度、強さと社会に与える影響というのはy=x、直線じゃないんですね。これはy=x3のイメージでないと対処ができないということをまず言いたいところでございます。

 もともと、一年に一回とか、あるいは百年に一回程度のものしか私どもは考えていませんでしたので、防波堤だったら防波堤、道路だったら道路、避難路だったら避難路、避難地だったら避難地という個々の防災対策で今までよかったし、やってきたわけですけれども、今回、千年に一回の大エネルギーが東北を襲った、そのときに私たちは経験をしました。やはり、個々のじゃなくて、点から線、線から面、そして、今、市民生活は多層、多重、多段階になっておりますから、立体のイメージでなきゃだめです。単なる横串だけじゃなくて、それぞれが有機的に連携をするということでなきゃミティゲーションできないですね。

 影響がy=x3で大きくなっていく、それを軽減する、ミティゲートするには、役所のBCPも企業のBCPも、エネルギーのバックアップも、情報通信も、そして防災隣組という日本のコミュニティーの根幹も、これをがしっと固めて、そして共同でやらなきゃだめだということを私たちは経験をした、そして学習をしたわけですね。

 だから、政府の大方針として事前の防災、減災を掲げて、国土を強靱化する。国土の強靱化とは、すなわち事前の防災、減災、そしてガバナビリティーの強靱化であるということを掲げたわけでございます。これをもって、国土強靱化基本法というのを提出させていただきました。

 もっと言えば、今までは二項対立の中で戦後の政治も行政も行われてきました。集中がいいのか分散がいいのか、あるいは、自由がいいのか平等がいいのか、国土の均衡ある発展に賛成なのか反対なのか。そういうレベルの二項対立はもうやめようということを基本理念にしております、国土強靱化基本法案は。民主か自民もそうです。

 そういう二項対立じゃなくて、全て矛盾を包摂してアウフヘーベンしてこそ、この国土の強靱化、次の次元の日本によいしょと進めていくということが初めてできる。そのためには、矛盾を解決するためには、高速で運動しなきゃだめなんです。とにかく運動する、世の中を動かしていく。その動かし方の運動論というのが防災、減災活動。防災、減災を通じて国民全体を動かしていって初めて国土全体が強靱化していくということが必要。だから、国家の基本として国土強靱化という目標を掲げようという法律を出させていただきました。

 もう何回か、先月、総理の方から御答弁をいただきましたけれども、改めまして、国土強靱化基本法案につきまして、早期の成立をお願いしたいと思いますけれども、コメントをよろしくお願い申し上げます。

野田内閣総理大臣 東日本大震災の教訓を踏まえまして、強靱な社会を構築していくべきという認識は、先ほども申し上げたとおり、これは共通認識でございますし、特に、これまで学校や病院の耐震化等については政府も全力で取り組んでまいりました。これからも、インフラ整備においても、特に命にかかわる真に必要なインフラ整備については、これは重点的に進めていかなければいけないと考えております。

 こうした問題意識を持っているところは共有でありますが、御党から提出された国土強靱化基本法については、これはしっかりと吟味をさせていただきたいと考えておりますし、国会において十分御議論をいただきたいと考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 では、次のパネルをちょっとごらんいただきたいと思います。

 ちょっとパネルの説明を三枚させていただきますが、ぜひ財務大臣に御見解をお願いしたいと思います。

 このパネルは、先ほど外務大臣の方から、一ドルの事前の防災投資で七ドルの被害額を軽減できるということを御紹介いただきましたが、これを世界に共通認識として発信していただきました。これは大体、防災にかかわる人たちのいわば常識ということでございます。

 それは、ここに書いてありますように、想定被害額の一から二割程度、一〇%から二〇%程度を事前に投入すれば被害を大幅に軽減することができるということで、中央値をとって、七分の一ですから一四・数%ということで、中央値ということで東北でおっしゃっていただいたんですね。一割から二割、これをまず覚えていただいて、しかし、劇的な事例があったんですね。

 劇的な事例は、ハリケーン・カトリーナ。これが来る前に、カテゴリーファイブのハリケーンが来るということがわかっていたんだけれども、あともう少しだけ堤防をつくれば、このカテゴリーファイブのハリケーン・カトリーナをいわばタックルすることができた。大雨でも洪水を起こすことがなかったということで、あとたった二十億ドルで千二百五十億ドル相当の被害を軽減できたということは、これは事実としてあるんですね。ですから、この場合は一・六%ですね。六十倍の効果があった、六十分の一の投資で六十倍の被害を軽減できた。普通は一割から二割。先ほど外務大臣は七分の一というふうにおっしゃっていただいた。

 それから、近いところでは東海豪雨がございました。東海豪雨で五千五百億の被害がありましたけれども、実はそれは、七百億の堤防さえつくっておけば被害が軽減できたということも、割と近い経験を私たちはしているんですね。これは八倍です。

 ですから、七分の一とか八分の一とか、ハリケーン・カトリーナの場合は一・六%ですけれども、一〇%から二〇%程度の事前の防災投資によって私たちは被害を軽減することができるということなんですよ、財務大臣。なので、税法の附則十八条第二項の事前の防災、減災に資金を重点的に配分する、「資金を重点的に配分する」とまで附則十八条第二項で書いていただいたんです。それは、七分の一とか八分の一、あるいはもっと劇的な事例では六十分の一の投資で済むんだというのが事前防災、減災のいわば量ですね。

 一方、このパネルは、内閣府の三月十一日までに計算した結果なんですね。その後、今見直しが行われておりまして、もうすぐ南海トラフとか、もうすぐ首都直下で、そんなものじゃないだろうと。今ここで、首都直下では百十二兆円と書いてありますけれども、そんなものじゃないだろうとアプリオリには言われておりますし、それから、東海地震、東南海・南海を足して、これですと九十四兆円、約百兆円、そんなものじゃないだろうというふうに言われております。その随分前の予測でも、三百十三兆円もの被害額が予測をされている。

 そして、三日ぐらい前に新聞にありました。関西大学の河田先生が、中央防災会議の先生でもいらっしゃいますが、東海、東南海、南海の地震が起これば、今までは二万五千人のカジュアルティー、亡くなる方が出るだろうと言われていたのが、四十万人です。二万五千人が四十万人、十六倍。十六倍の人的な被害を予測しなければならないであろうということが、中央防災会議の正式な発表の前に、いわば個人的な見解という形で発表されておりました。十六倍、そこまでは被害額を見込まなくても、二、三倍にはもう絶対になるわけですね。二、三倍には必ずなるというふうに思わなければならないわけです。

 三月三十一日に内閣府の方から発表された南海トラフの津波の高さだって、高知県の黒潮町は三十四・四メートルです。十三階ぐらいまで行かないと津波から助かることはできない。そんなビル、黒潮町にはありません。

 そうやって被害を予測しておいて、そして被害額の計算はしていますけれども、ノーケアというのが今の状態なんです。なので、附則十八条第二項、事前の防災、減災には重点的に資金を配分すると書いていただいた、その宣言はしていただいたわけですけれども、その中身を今解説させていただいておるわけです。

 ですので、三百十三兆円、二倍にはなるとして六百二十六兆円、その七分の一、先ほど外務大臣がおっしゃった七分の一だと九十兆円。だから、九十兆円、事前に防災、減災に投下すれば、今でも三百十三兆円、普通だったら六百二十六兆円以上の大きな大きな被害が予測されるところを、ゼロにはできないかもしれないけれども、ほとんどを軽減できるということがわかっていてこのまま不作為でいるというのは、これはちょっと看過できないということです。

 もっと言えば、東北で今被害額が十六兆円。今、安住大臣のところで用意していただいている予算が二十三兆円。だけれども、それは三十兆円ぐらいになるだろうともう既におっしゃっていただいております。ということは、この被害額というものの倍は復興復旧のために要るわけですね。

 ということは、今、この古い内閣府の三百十三兆円という被害額の予測の倍は見込むとして六百二十六兆円、その倍が復興復旧にかかるということですね。だから、千二百兆円ですよ。何か似たような数字がありましたね、個人の金融資産千五百兆円。ちょうど一七五五年にリスボンの大地震というのがあって、ポルトガルが、いわば国全体が崩壊したんです。同じことです。国富全体が失われるというぐらいのちょうど同じ規模の被害、復興復旧のために必要だというふうに見込まれているのにもかかわらず、では一体、今年度の予算、どうしておくれたんでしょうか。今年度、補正予算はもう準備しているんでしょうか。これをきょうぜひ御紹介いただきたいと思います。

 ちょっと長くなりましたので、まず財務大臣から、今から岡田副総理とかいろいろな方が、秋に補正予算がどうしても要るんだと。それはデフレ・円高対策かもしれませんけれども、国土強靱化について、国富全体が失われるかもしれないというぐらいの被害想定を考えられているんだという事実、経験を踏まえて、先立つものは財源でございます。今財務大臣の方で財源をどういうふうに考えていらっしゃるか、ちょっと御紹介いただければありがたいと思います。

安住国務大臣 事前防災の考えとか、それから老朽化した公共施設等についての更新のプライオリティーの高さというのは認識はしております。ですから、附則のところに新たにつけ加えをさせていただいて、それを明記したということも事実でございますので、今後そうしたものに沿って、しかし、財政再建の枠をはみ出てやれることではないことも現実にあります。

 先生、私は被害に遭った者としてもあえて申し上げますと、やはり厳密に、命を守るにはどうしたらいいのかということは、例えば黒潮町の、先生の御地元の高知の話で今御指摘がありましたが、三十メーターを超える、では四十メーターの堤防をつくるのかという話じゃなくて、いかに逃げるのかということの避難路をつくったり、防災のニューディールや強靱化というのは非常に必要なんですが、精査をきっちりして、命を守っていくというために必要でコンパクトで、そういう事業というのは何なのかということをまず考えるべきだと思うんですね。そういう中で、知恵をいただいて、この資金ということを入れました。

 ですから、さまざまな資金、民間資金もあると思います。こういうことも活用しながら、一緒に知恵を出していただいて、しかし、これは貴重な国民のお金を使うことになりますから、ゆめゆめ無駄な公共事業と言われないように、お互いいいものをつくりながら、四十メーター近い津波のときに、多分、宮城でも岩手でも、今、被害に遭った人ほど大きな堤防をつくるという発想を持っている方はいらっしゃいません。むしろ、逃げてどうするか、またそういうところに遭わないための地域づくりをどうするか、みんなそういう知恵を持っていますので、そういう中で事業というものをしっかりとつくって、必要なものには予算措置をしていきたいと思っております。

福井委員 おっしゃるとおりですね。ですから、千分の一の災害にはまず逃げる、百分の一は完全にタックルする、抑え込むということだと思います。

 もう少し成長戦略とも関連して申し上げますと、今回の税と社会保障の一体改革、究極の目的は世代間の公平だと思うんですね。ずっと公債残高がふえていくという状態をこのまま後世につないでいくのか、あるいはことしの社会保障のサービス料はことしの消費税で賄うのかという世代間の公平、究極の目的はそこだ。

 ということは、同じことが言えるんですよ。千分の一の、千年に一回の大災害を受けて、いかにも国土が脆弱だということがわかっている今生きている私たち日本人の世代が、先ほど申し上げた千二百兆円の復旧復興のための費用をこのまま先送りするのかということなんです。大地震、大津波は必ず起こるんですから、今、事前に防災、減災をしておいて、将来の負担を軽減しておくこと、これは世代間公平以外の何物でもないわけですね。なので、税と社会保障の一体改革を考えて、そして消費税を上げようとしているときに、大災害についての財政出動をひるむということは、後世に対して愛情がなかったというふうに後世からそしりを受ける。同じことだというふうに思っているんです。

 事実関係として、それでは、建設国債発行残高、残高の量は二百二、三十兆円でずっと一定なんですよ、赤字国債の残高がずっとふえているだけで。先ほど民主党の方からの指摘もございましたが、しかし、残高の表はないんですね。残高のグラフはないんですよ。残高はずっと一定なんです。そして、これから、来年、再来年、その次の年ということで、微減になっていくんです。

 今、五兆、十兆の建設国債の発行をひるんで、将来の千二百兆円の復興復旧の負担を先送りするのか、二百二、三十兆円プラス五兆、十兆というのをひるむかどうか。ひるまずに財政出動をして、国土強靱化の事前の防災、減災に励むというのと、どちらを選択するのか。政府全体というよりは、財務大臣としての見解をぜひ教えていただきたいと思います。

安住国務大臣 四条の公債残高は、いわゆる建設国債については御指摘のとおりでございます。ですから、膨大にふえているというよりも、一定のアベレージで公共事業にこれは使わせていただいているということでございますけれども、今先生から御指摘のように、では、そのお金を惜しんで、後で大きな被害を出して何百倍ものお金を払うのは決して割に合うものではないよということについては、一つの考えだとは思います。

 私が申し上げているのは、それはそうなんですが、どういう津波が来たときに、先ほども一例、黒潮町で申し上げましたけれども、ただやみくもに堤防をつくればいい、河川を越えてくるような波を防げばいいということではなくて、それぞれの地域に応じた逃げ方、日本の沿岸、海岸部分というのは、非常に後ろに、山を背にしていますね。こうしたところに例えば避難の道路をつくったり、それから、復旧可能な町をつくるのにどうするか、避難をしたときにどうするか。私や、ここで言うと小野寺さんや岩手県の黄川田さんの経験でいうと、例えば公共の施設を、少し高台のところに野球場とか公民館なんかをつくっていれば、かなりの時間そこに滞在できて救えた命もあるんです。

 そういう点では、お金をかける、かけ方の議論というものをしっかりした上でコンセンサスを得てやっていったらどうかということを、私、提案申し上げております。

福井委員 いいことをおっしゃっていただきました。

 次のパネルをごらんいただきますと、まさにそれを国土強靱化基本法案の中に書き込ませていただいておりまして、国土強靱化基本計画なるものを国がつくりますね。これは、事前の防災、減災、エネルギーのバックアップ能力、情報通信の多様性確保、成長戦略、必要な項目は全てやらなければなりませんが、まさに今大臣がおっしゃったのは事業箇所ごとの意味ですね。

 防波堤をつくるのか防潮堤をつくるのか、あるいは避難地をつくるのか避難路をつくるのか、その組み合わせをどうするのかということについては、今までは確かに、道路局は道路局、河川局は河川局で、割と身勝手なBバイCしかしていなかったかもしれません。まあそうだと思いますので、今回は、プログラム評価といいまして、もうとにかくこの施設をつくりたいというんじゃなくて、ハードもソフトも加えておおよそありとあらゆる選択肢をここで比べて、そのプログラムの中で、目的と事業効果、必要性についてベストルートを見出す、そういう評価手法にしましょうというふうに書いておりまして、まさに、だからばらまきじゃないよと。

 しかも、ここに書いておりますのは、ばらまきというのは、金額の枠だけ示す、そして目的がない、この二つなんですね。ばらまきと言われる筋合いは二つしかなくて、金額の枠ありき、そして事業箇所ごとの目的が曖昧あるいはないということなんですね。

 ですから、今申し上げました事業箇所ごとの目的というのは、千分の一なのか百分の一なのかということについてベストルートを見出していく。その箇所ごとに、その地域ごとに、一人の命もないがしろにしないということについてのベストルートを見出していく。そして、枠ありきじゃないということは、十年で二百兆とはどこにも書いてないんですね。新聞に書いてあるだけで、十年で二百兆とは誰も言っていないんです。

 確かに、四百三十兆というのはアメリカから枠で示されました。そして、一番多いとき、補正も合わせて、一九九八年の公共事業費の事業量がそのまま十年いったとしたら三百兆ですね。今の政権がそのまま十年続いたら百兆円。

 ですから、今の背の高さが十年続いて、そして東北で三十兆必要、そして今、円高・デフレ対策で、自民党で申し上げている、リーマン前後で三十兆円のGDPギャップがある。半分は成長戦略、半分はこの国土強靱化。その国土強靱化でも、IGベースで十五兆円ということは、公共事業費で七・五兆円。ということは、国費がいわば四兆円。ですから、ひるまずに財政出動というその桁が、そんな十兆、二十兆ということじゃなくて、毎年毎年ベースでいくと四兆、五兆というベースになりますよということでございます。

 しかも、事業箇所ごとにプログラム評価をする、そして枠ありきじゃないということで、メディアで、自民党が先祖返りしているとか、ばらまきをまた始めるとかいうふうに言われておりますけれども、何でそんなことを言われているのか全然わからないということを御紹介させていただきました。

 そこで、国土交通大臣、かわられまして初めて御質問させていただきますので、この国土強靱化について、そして今ございました事業評価、そしてこの防災、減災について、基本的な、やはり人からコンクリートというようなことを自民党が考えているというふうにお考えなのか、あるいは、コンクリートから人へという表題は掲げながらいろいろな施策を今進められているというふうに伺っていますので、その表題と、強靱化しなければならない日本の課題についてどういうふうにお考えか、ちょっと御紹介いただければと思います。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 人の命が第一、そして災害に上限がないとの東日本大震災の教訓を生かして、強靱な国土基盤を構築することは大変重要な課題と認識をさせていただいております。その実現のためには、厳しい財政状況を踏まえて、選択と集中の考え方のもとに、コストの抑制を図りながらも、事業内容を精査しつつ、真に必要な社会資本整備は着実に実施していく必要がある、こういうふうに考えております。

 御党が提出されております国土強靱化基本法案については、この重要な課題に関する御提案がある、こういう認識を持たせていただいておりまして、国会において十分議論をしていただきたいというふうに思っているところでございます。

福井委員 今大臣がおっしゃいました、真に必要だというところなんですね。私も国会答弁書を書きましたから、よくわかっているんですよ。困ると、真にと書くんですね。すごく曖昧なんですね。真に必要というのは一体何なんだ。それで、今申し上げたんですね。このプログラム評価、ここで、その真にという曖昧な言葉でしか表現できなかった今までの行政行為、そして行政の判断、これをもっと明確にしよう、論理的にしようということなんでございますので、ちょっとまたあした以降、役所で御相談をしていただければありがたいというふうに思います。

 そこで、防災大臣、事前防災、減災という言葉が附則十八条第二項にございました。これは本邦初公開ですね。法律用語として、事前防災。だって、防災というのは事前にするに決まっているわけですからね。事後にするのは復興復旧で、防災は事前にするわけです。しかし、事前防災、わざわざそういう単語をつくって、しかも法律用語として打ち出したわけですから、この事前防災の定義というのは一体何なんだということについて、御解説をお願いいたしたいと思います。

中川国務大臣 既にこれまでの議論の中でこの定義というのは出ていると思うんですけれども、災害が発生した後に生じる巨額の復旧復興費用に比べてはるかに少ない額で事前に計画的かつ必要な投資を進めることが必要だということ、そういう意味を込めて、民自公、国会の中で、これを事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分するという形で合意をしていただいたということだと思っていまして、私の方はそれを推測して先ほどのような定義でこれを理解していきたいというふうに思っております。

 それから、先ほどの議論で、確かに具体的にどういう計画を積み上げていくかということになると、やはり地方によってそれぞれ前提となる条件、地方のすみ分け方というのがあると思います。そのすみ分け方によって防災の計画を具体化していく。

 それを全体の計画に結びつけていくということのために、実は、南海トラフにしても、あるいは首都の直下型にしても、地方と国、それからまた民間、それから制服組、これを全部あわせた協議会というのをつくっていきまして、その中で訓練も含めたことを繰り返していく。訓練の中で出てきた矛盾点とか、それから具体的な政策ということに対して提言をしていただきながら、そのサイクルをもって事前の防災計画につくり上げていきたいということで、この七月を中心に各ブロック会議を開催する予定でおります。

 そんなことの中で、それこそ与野党あわせて知恵を出していきながら、これからの計画をつくり上げていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

福井委員 ありがとうございました。

 このパネルにございますように、事前防災、わざわざ事前とつけた今回の意味は、回復力なんです。回復力、ぼきっと折れない。だって、もう災害が多いということを世界じゅうにPRしたわけですからね。四つのプレートの上に乗っていて、地震は起こる、火山もそのうち爆発するかもしれない。それだったら、企業もマネーもどこかよそへ行こうというふうに思わないでちょうだいねというのは、もうこの回復力以外ないんですね。

 しかも、それが二年、三年かかってはいけません。数カ月のうちに直ちに回復する。物流チェーンも、全ての企業も、そして国会も霞が関も直ちに回復する。だから、企業も相変わらず日本で、投資も相変わらず日本でというふうにアピールできるわけでございます。

 ですので、附則十八条第二項に、事前防災、減災の前に成長戦略とありましたが、成長戦略、人の育成と研究開発というのが普通でしょうけれども、それ以外にも、そんな中長期じゃなくて直ちにできる成長戦略というのがあるはずでございますので、経済産業大臣から、この成長戦略について、今役所でどんな準備作業をされているか、ちょっと御紹介いただければと思います。

枝野国務大臣 経済社会の行き詰まりを打開し、豊かさを実感できる成長を実現するために、経済産業省としては、産業構造の転換を進めるとともに就業構造の転換を進めなければならないと考えております。

 まず、成熟を力にした価値創造経済を実現するため、ヘルスケアや子育て、そして新たなエネルギー産業など課題解決型産業の創出を通じた内需の掘り起こし、主要貿易国との高いレベルの経済連携の推進やインフラ輸出、クール・ジャパンの推進等による海外市場開拓に取り組んでいるところであります。

 また、女性や高齢者など多様な主体が価値創造に参画し多くの成長の果実を分配する、人を生かす社会を実現するため、ダイバーシティー経営の推進や、社会人、あるいは主婦、一旦仕事を離れられて家庭に入られたという方が今の日本社会で残念ながら多うございますので、そうした皆さんの学び直しの支援を通じた労働移動の円滑化に取り組んでいるところでございます。

福井委員 この図面、首都高をちょっと見ていただきたいと思いますが、大井埠頭から入った国際海上コンテナ積載車両というのがありまして、これは高さ四・一メーターあるんですよ。首都高に乗っていただくと、三・八メーター以上のものはこっち行きとあるんですけれども、何と、都心環状はそのコンテナ車は通れないんですよ。なので、大井埠頭から上がって銀座四丁目の普通の道路をぴゃっと走っているという状況、六割ぐらいのコンテナ車がそうなんですね。こんな首都高は要らぬですよ。早く首都高は全面的に改修をしなければなりません。

 そこで、国交大臣、首都直下型、先ほど百十二兆円とありました。もっと大きな被害があるでしょう。そして、南海トラフ。首都直下も参議院に、南海トラフの特措法も衆議院に私どもの方で提出をさせていただいておりますけれども、国交省として、首都直下と南海トラフの巨大地震、津波に対してどういう準備作業をしているか、ちょっと御紹介いただければと思います。

羽田国務大臣 具体的に述べさせていただきますと、住宅や建築物また公共施設の耐震性の向上、そして津波防災地域づくり法等に基づく津波対策の強化、またミッシングリンクの解消です。また、水害・土砂災害対策、津波警報、これの改善もしなければならないというふうに思っております。

 また、実践的な防災訓練の実施など大規模災害に対する初動体制の強化、また自治体における津波ハザードマップの作成支援等の対策を関係機関と連携して強力に今進めているところであります。

福井委員 ありがとうございました。

 そこで、国土強靱化のために国が主導して、そして国家機関が主導して防災、減災活動に当たらなければならないという基本理念は、そんなに反対されないんじゃないかと思いますけれども、賛成していただけるんじゃないかと思いますが、これはもう何回もこの国会でやりましたね、釜石の防波堤。ここで見ていただきたいのは、六分間津波が来るのをおくらせたんですよ。

 それで今までの国交省からの説明は終わっていると思いますけれども、この六分の間に何人の方が逃げおおせて死なずに済んだか、この六分の間にどこからどこへ皆さんが逃げられたかということについては、実はアンケート調査で持っているんですね。でも、一言でも言いましたか。

 私たちは、もうどんな非難中傷を浴びても、一土木屋として今しゃべっているんですけれども、一土木屋として、こんな何百億、一千億近くこの防波堤にかかったんですけれども、こんなの無駄やとかと言われて、一言でも何千人の命を救ったということを言いましたか。そんなこと言えませんよ。だって、亡くなった方がいらっしゃるんですから。データは持っているんだけれども、言いません。

 そして、東北で最初にやったことは、東北地方整備局、大臣が指揮して、内水の排除です。それはどうしてかというと、津波が海に帰らない。もう一面海のように、池のようになってしまって、御遺体の捜索活動ができないんです。だから、まずやらなければならないのが内水排除ですね。ポンプ車をいっぱい持っていって、とにかく水を吐き出して、やっと御遺体の捜索活動ができるんです。そんなことをやったと一言でも国会で誰か言いましたか。いいんですよ、そんなこと誰にも褒められなくたっていいんです。必要なことは必死でやります。

 中越で皆川優太ちゃんが助け出されました。助け出したのはハイパーレスキュー隊。だけれども、そのハイパーレスキュー隊を指揮していたのは、羽田大臣の部下ですよ。地方整備局の技官が二名、ハイパーレスキュー隊を指揮していた。全国の道路斜面防災を勉強したから、現場を全部見たから、それでやっとお一人のお子さんの命を助けることができたんです。そんなこと誰か言いましたか。

 ですので、全国の現場を見ているということ、そして国家公務員の矜持、プライド、これを毀損することがあっては、人の命を大事にするという今の政権のポリシーに反すると思うんですけれども、もし仮に、この政権で地方整備局を廃止する、全国の現場が見られないような体制にするということになれば、人の命軽視として、十年後、二十年後、これはもう何を言われるかわからないというふうに思うんですが、担当じゃないのであれですけれども、しかし、抗弁しなければならない国土交通大臣として、地方整備局、地方支分部局の今後のあり方について、一言、短くて結構ですから、決意をお述べいただきたいと思います。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 今御紹介があったように、地方整備局、震災発災以来、寝ずに、また寝袋で過ごしながら、本当に、被災地の復旧復興、そして、避難をされた方、また救助を待っている方のために全力を尽くして働いてきた、こういうふうに思っております。

 そういう中でありますけれども、国土交通省としては、地方整備局が東日本大震災への対応において発揮した機能、そして根幹的なインフラ整備、管理などで果たしている役割を維持することが重要である、こういうふうに考えており、このような観点から、引き続き検討には積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。

福井委員 ぜひ守っていただきたいと思います。

 最後に、あと三分ありますので、財務大臣と経産大臣からそれぞれ、一言ずつで結構です。

 今最も危険な状態にあるのは、円高、デフレもそうですけれども、もっと危険なのは貿易赤字ですね。三十一年ぶりに貿易赤字になりました。四国電力でも毎日四億円の重油を買っているんですよ、伊方がとまっていますからね。毎日四億円の重油を買っている、四国電力ですら。もちろん、エネルギーが全てじゃないんです。しかし、三十一年ぶりの貿易赤字になって、では来年プラマイゼロになるのか。そんな見通しは全くありません。

 一方、経産大臣の方は、では、太平洋側にLPGと石油、ガス精製、何%の施設があるでしょうか。もう施設ごとに紹介しませんけれども、六割から八割。それが南海トラフ、首都直下で動かなくなったらどうなるんですか。それこそ、先ほどの千二百兆円では済まない復旧復興の金額が必要になります。全ての国富を失うがごとくの被害になるわけです。日本海側にエネルギーの基地を設けて、そしてパイプラインでつなげていくという、国内でもそういうエネルギーの入り口から消費までのシステムをつくり上げていく。

 これも、民間で全部やれというのは酷な話です。国が出ないといけません。それも成長戦略と国土強靱化と全く合致する施策だと思います。それが、貿易赤字を解消する、ちょっと迂遠ですけれども、しかし短期的な施策だと思いますが、それぞれ、財務大臣から貿易赤字に対する危機感を短くて結構ですから御紹介いただいて、そして経産大臣から対策、対処策について御紹介いただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

安住国務大臣 昨年は三十一年ぶりに、そういう意味では貿易赤字がありました。これは、大震災に伴って、これが要因だと思います。そういう中で、原子力が稼働できない状況の中で原油高が影響をしたということは、もう先生御指摘のとおりでございます。

 今後、こうした円高やさまざまなエネルギーの問題が日本経済にどういうふうな影響を与えるか。単年度のものだったのか、構造的にこれが続くということであれば、日本経済のありようの根本を考えなければならないような状況だと思いますので、私どもとしては、昨年だけの傾向なのか、そうでないのかということを今注視しておりますので、重大な関心を持って見守っております。

枝野国務大臣 貿易赤字の要因の大きなものにエネルギーの部分があるということは御指摘のとおりでございます。

 まずは、できるだけ安くエネルギーを外国から買うということで、それでも時間がかかることですけれども、一番可能性があるのが、天然ガスについて、これはシェールガス革命によって供給量が大幅に世界的にはふえておりますので、これを何とか原油との連動価格をやめられるように、各国とのかなり強い調子での交渉、協議を努力しているところでございます。

 その上で、特に災害、防災との観点から申し上げれば、御指摘のとおり、エネルギーの関連施設が一気に大きく破壊をされた場合、その回復には相当な時間がかかりますので、日本の社会経済の復旧復興に大変大きな影響を与えることになります。

 したがって、原油のコンビナートなどについてもできるだけ分散化をする努力を進めておりますが、特に天然ガスについては、パイプラインが国内でしっかりと整備されていると大変復旧に役に立つというのは、今回、たまたま東日本大震災の折に、仙台と新潟がガスのパイプラインがつながっていたということが大変大きな効果を上げたということで、これをどうやって早期に整備をしていくのか。これは、経産省の審議会の中でも具体的な検討が煮詰まっているところでございまして、できるだけ前に進めてまいりたいと思っております。

福井委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井委員長 この際、小池百合子君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小池百合子さん。

小池委員 衆議院の小池百合子でございます。

 先ほどの谷垣総裁の質問に対しての御答弁に関して、さらに伺わせていただきたいと思います。

 一言で申し上げまして、冗談じゃないですよ。今もここに、滝大臣、松下大臣、おられます。郵政選挙のときはどういう処分を受けたのか、一番よく御存じの方。今回の処分とは一体何なんですか。これほどの反対議員を出して、そしてまた棄権者を出して、五十七人が反対、そして、欠席を合わせますと民主党議員の四分の一が造反をしたわけであります。

 この緩い処分は一体何なんですか。私たち、三党合意というのは、好きこのんで増税をやりましょうと言っているのではない。自民党もそう、公明党だってそうであります。将来の世代にツケ回しをしない、これからの持続可能な社会をどうやって築いていくかということで、そのような大きな理念のもとで今回の三党合意に参加しているわけであります。

 しかるに、先ほども総裁の方からもお話がございましたけれども、宮城の被災地にいらした際に、棄権をした議員が後ろでにこにこ笑っている。そして、反対票を投じながらも離党はしていないという人につきましては、被災地において、私はこの消費税案に反対をしたということで、後援会からよくやったと言われている、そして、いまだに党にいるというではありませんか。

 一体、おたくの党はどうなっているんですか。私は、これほどガバナンスを日本国が失っているのは、民主党がガバナンスを失っているからだ、こう思わざるを得ないと思います。

 この反対そして棄権をした人たちに対しての処分をきっちりしていただかなければ、三党合意に参加した我々の立場もないんですよ。今党内にいる人たちでも一筆とったらどうですか。これからの三党合意に対しても、そしてまた、これからの党の規範に対してもちゃんと従うんだといって一筆とる考えはないですか。

野田内閣総理大臣 先ほど谷垣総裁とのやりとりでもお話をさせていただきましたけれども、我が党から反対票が出た、あるいは棄権、欠席者が出た、このことによって国民の皆様に大変御迷惑をかけたことを深くおわび申し上げたいと思います。その上で、また国会運営上にも支障を来したということも、これも野党の皆様におわびを申し上げなければいけないと思います。

 それを踏まえてですが、これの対応については、役員会で発議をし、常任幹事会で決定をし、それを踏まえて倫理委員会に諮問をする、これは党の手続に沿って今対応をしているそのプロセスの途中であるということでございます。処分の内容については、これはもう党として決めさせていただきたいというふうに思います。

小池委員 あなたが命をかけると言うから我々は三党合意に参加しているわけですよ。ここを明確にしていただけなければ、また、いいかげんな処分をしているということであるならば、それほどいいかげんな法案だということなんでしょうか。お答えください。

野田内閣総理大臣 法案は、まさに社会保障の持続可能性、そして財政の持続可能性、そういうことを考えた中で極めて大事な法案だと思っていますし、その問題意識を共有しているところから三党合意はできたというふうに思っています。

 その三党合意をしっかり守るべく、参議院の審議では、より一致結束して対応していきたいと考えております。

小池委員 今は、衆議院の採決のその後どうするのかということを伺っています。そして、一筆とるのかとらないのか、とれないのか、そのことについて伺っておりますので、はっきりお答えください。

野田内閣総理大臣 あくまで党内のプロセス、今、きょうは倫理委員会にお諮りをしているところでございます。そういう対応でございますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。

小池委員 今の、党内で党内でとおっしゃっておられますけれども、今度の法律に命をかけて成立したいと言うから、我が党も公明党も、党内の議論、一生懸命集約して、そして取りまとめをしてきたわけですね。

 ところが、法案が衆議院で可決した二十六日の記者会見で、我が党の谷垣総裁、造反者への厳しい処分が参議院での協力の前提としているということについて、その考えについて問われた。そうすると、何と答えたか。政党自治にかかわる問題だ、他党から言われる筋合いはないと反論されたそうですけれども、事実でしょうか。

野田内閣総理大臣 対応がおくれたことによって国会運営に支障を来した、国会日程に影響を及ぼしたということは、これはおわびしなければいけません。ただ、処分の内容については、これまでの前例であるとかさまざまな総合的な判断で内容を決めるということについては、これは御理解をいただきたいというふうに思います。

小池委員 いや、理解できません。

 党内さえまとめ切れないものを、普通、人間は、人に物事を頼むときには、まず身内を固めた上で、それでお願いをするんです。ところが、身内がまとめ切れない中で、そしてほかにお願いをして、お願いされた方だって、それは厳しい厳しい、例えば被災地からの議員だって厳しいんですよ。被災地の方々の心情を考えると、今回の増税というこの法案に対して一票を投じることにどれほど苦しい思いをしたでしょうか。しかし、今後の日本のためにと思うからこそ、それこそが国会議員の使命だと思うからこそ一票を投じたわけであります。

 しかるに、民主党は、人に物を頼んでおきながら、身内でそれほどの造反者を出しながら、けろっとしている、他党から言われる筋合いはない。三党合意というものはそんなに軽いんでしょうか。もう一度お答えください。

 そして、もう一つ。一筆とるべきだ。とるかとらないか、ここをお答えください。

野田内閣総理大臣 まず、けろっとしていません。大変重く受けとめています。政権与党として熟議を尽くして議論をした中で、残念ながら御理解を得ることができなくて、こういう結果になったことについては、大変、民主党代表として責任を重く受けとめておりますので、決してこれは、けろっとしている話ではございません。

 その上で、一筆云々というお話がございましたが、これは党の対応の仕方でございますので、お任せをいただきたいというふうに思います。

小池委員 それは三党合意にかかわる問題になっているわけであります。それほど、命をかけるというのならば、身内から一筆をとるという、そのような姿勢があるべきではないですか。

 一筆をとるという答えがいただけない限りは、私はこれ以上質問を続けることはできません。

野田内閣総理大臣 公党間の信頼を確保しなければいけないことは、これは重々承知していますし、御批判は重く受けとめなければなりません。

 したがって、党の規律を回復し、そして体制を立て直しをさせていただきまして、参議院においては政権与党として一致結束して頑張れるように、全力を尽くさせていただきたいと思います。

 その対応のあり方についてはお任せをいただきたいと思います。

小池委員 それでは、一筆とれないという理由は何でしょうか。

中井委員長 総理、党内にそういう規則があるのかどうかも含めて御説明申し上げてください。

野田内閣総理大臣 党内のプロセスにおいて、役員会で発議をし、そして常任幹事会で決定をし、倫理委員会にお諮りをするという、そのプロセスの中で今まで決めてきたことがございます。その中で、例えば、処分に当たって、その後どうするかについて一筆書くとか書かないとかということは、今まで前例もありませんし、またそういう規約もございません。したがって、そのやり方はお任せをいただきたいということを申し上げているのであります。

小池委員 任せられないから言っているんです。信じられないから言っているんです。心から、心からお願いをしておきながら、これだけの反対者を出した。いや、むしろ、反対者を処分するためにはいいチャンスだぐらいのことだったのかもしれません。どうでしょうか、本音をお答えいただきたい。

野田内閣総理大臣 ちょっと今の意味がわかりません。反対者を処分するのにいいチャンスというのはどういうことでしょうか。

 こういう形で、残念ながら、時間をかけて議論を尽くしました、残念ながらそれでまとまって行動できなかったことを強く反省をしているというのが率直な気持ちでございます。

小池委員 これは、三党の信義に基づいた形でこれから参議院での審議を進めていかなければ、これは成立いたしません。まず、その部分が欠けた上で、欠如した上でこれをそのまま進めるということは私は無理だ、このように思います。

 一筆がとれないというのであるならば、どのような形で担保していくんですか。それだけ聞かせてください。

野田内閣総理大臣 引き続き、みんなが一致結束できるように、あらゆる努力をさせていただきたいというふうに思います。

小池委員 それに対して、我々、そのような言葉をずっと繰り返しておられるから、だから三党合意に我々も、命をかけるとおっしゃったから我々は参加をしているわけであります。合意が結ばれたわけであります。しかしながら、このていたらくですよ。どうやって信頼せよと言うんですか。ちゃんと姿勢で示してください。言葉だけではだめです。

野田内閣総理大臣 参議院審議を通じまして、みんなが結束して対応できるように、全力を尽くさせていただきたいと思います。

小池委員 いや、今、参議院での審議に入る前の話をしているわけで、このまますっと入れるかどうかわかりませんよ。

 まず、代表であるあなた自身が命をかけるというのであるならば、まず党内をきちっと、処分を明確にした上ででなければ、我々も審議に応じられない、このことをお伝えしておきたいと思います。

中井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小池百合子さん。

小池委員 午前に引き続きまして、社会保障・税の一体改革法案について伺わせていただきます。

 特に、五十七人の反対者が出、そして、棄権を合わせますと所属議員の四分の一が造反をしたという政府・与党でございますが、この件について、今後三党合意を進める、そのうちの一角でございます自由民主党といたしまして、例えば処分の仕方の余りの緩さ、そして、これから本当にこの法案を、命をかけてとずっと言ってこられたわけでございますが、そのことを、合意内容を変えずそのまま進めていくのかどうなのか、これらについて一つ一つ伺わせていただきたいと思います。

 まず、先ほどからお話しさせていただきましたように、午前中にも指摘をいたしましたが、例えば消費税の増税、これは単に増税が目的ではなく、三党合意にございます基本的な考えの中にあるように、「税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現する。」というこの点で、我が党は、将来の世代にツケを残さない、そして、目の前のことのみならず、将来に向かってこの国が持続可能なために一体どうあるべきなのかということで、ここは与党と野党の壁を越えて一致し、そして賛同しているわけでございます。

 人に物を頼むときというのは、まず身内を固めてから、そして、それじゃだめだから、それだけでは足りないからお願いをするというのが、これが道理であると私は思いますが、しかしながら、この採決への流れも、そもそも、どっちが野党でどっちが与党かわからない、採決を避けたい、おくらせるような、そんな場面もあったではありませんか。

 私どもは、与党である民主党の代表である総理があれだけ心から心から心からと三度繰り返しておられるにもかかわらず、これだけの反対者が出てきた、造反者が出てきたこと、これをこのままでは、これからの参議院における審議をするに当たって、党対党の信義が築けないもしくは毀損をされているということであり、だからこそ明確な処分をすべきではないか。具体的には、処分者に対して今回処分をする、また党内に残っている人々に対して一筆書かせることぐらいしたらどうだろうかということを求めたわけであります。もう一度お答えをいただきたい。

野田内閣総理大臣 今回の六月二十六日の採決に際して、いわゆる造反をされた議員についての対応については、役員会で発議をし、常幹で決定をし、今、倫理委員会にお諮りをしているところでございます。

 党のルールに従って対応させていただきたいと思いますので、一筆書くとか書かないとか、そういうルールはございませんので、党のルールにのっとって対応させていただきたいと思います。

 ただし、参議院においてより一致結束して採決まできちっと対応するために、やはり公党間の信頼が必要だと思います。そのためにも、今週の木曜日に両院議員総会を開きます。そして、金曜日には、これは地方組織もまとめて一致結束した対応が必要でございますので、全国幹事長会議を開きます。そうした、より結束に向けた、合意形成に向けて最大限の努力をさせていただきたいというふうに思います。

小池委員 しかし、そこを信じろと言われても、なかなか厳しいんですね。

 既にこの状況になっているわけであります。そして、きょう午前中に倫理委員会をお開きになって、処分に不服の五人を聴取された。これは、両院議員総会を開いていない、手続が民主的ではない、党内の意思決定が無効だから処分も無効だ、小沢グループ離党の責任は執行部にある、このような意見まで出ているわけでございます。

 その人たちに対して軽い処分、これでは、今後この国の将来にとって重要な社会保障と税の一体改革を進めていく仲間である自民党とすれば、信頼できない、このことを言っているわけでありまして、ここを明確に、どのようにして担保されるのか、そのことについて明確にお答えください。

野田内閣総理大臣 一定の処分を科す際には、これまでもそうなんですけれども、その当事者の弁明の機会をつくるということがあります。そういうルールに基づいて、それぞれ御意見を主張されたと思います。

 それを踏まえて倫理委員会での一定の御判断があると思いますけれども、その決断を私は待ちたいというふうに思いますし、そういう手続の問題等も含めての御意見があるようですので、なおのこと、風通しをよくするために、両院総会等を開きながら、そうした御意見にもしっかりと対応していきたいというふうに考えております。(発言する者あり)

中井委員長 お静かに。

小池委員 いや、緩いんですよ。その点が、幾つもそういう例があるからこそ、信頼ができないというふうに申し上げている。

 細野大臣、先日、消費税増税法案の衆院採決に反対して除名処分を受けた、もしくは受ける鈴木議員のパーティーに御出席をされたと聞いております。

 現職閣僚が与党を除名される議員の会合に出席するというのは、我々自民党では、多分、決死の覚悟で行くということか、みずからも離党を覚悟するとか、それなりのというか、重い気持ち、重い決断をして行くものなんですね。それを、多分お友達なのでありましょうが、軽く行っておられるんですね。

 これについて何も考えなかったんですか。私はむしろ、閣僚の一人である細野大臣のこの行動に対して総理から、代表から一言注意すべきだと思いますが、細野大臣、いかがですか。

細野国務大臣 鈴木克昌議員とは、私、長年一緒にいろいろなことをやってきた仲間でございますので、パーティーを企画された三カ月ほど前に、出席をというそういうお話がございました。そのときはこういうことになるということは想像していなかったわけでありますけれども、結局はこういう形になりましたので、そのことについては、私としては大変残念だという思いを持っております。

 しかし、その一方で、我々もこれから国会でさまざまな政策を進めていく必要があります。そうしたことを考えたときに、党は分かれたといっても、これまでさまざまな政策についても議論を積み重ねてきた仲間でもありますので、そういった意味で、ぜひ御協力いただきたいという思いも含めて、行ってまいりました。

小池委員 これはやはり政府の閣僚としての自覚、そして与党の一員としての自覚に欠落している、この部分が欠けていると言わざるを得ません。

 三党合意の重みを十分に理解しているのならば、この問題で処分を受ける、もしくは受けた人に対して応援に行くというような閣僚がいる政府に対して、ともに三党合意、政府及びこの三党における合意を、これからもこれまでやってきたような形ではなかなかできませんよ。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 三党合意、大変重い合意だったと思いますし、それを遵守しながら、参議院の審議、そして採決に向けて全力を挙げていきたいというふうに思います。

 相当前から決まっていて、個人的ないわゆる議員としての活動でありましたという説明でありますけれども、今後は国民の皆様に誤解を与えないように十分留意していかなければいけないと考えております。

小池委員 今申し上げたように、私はやはり、閣僚としての自覚であるとか、政府を預かっている与党である、政府とともに進んでいく与党であるということの自覚がそもそも欠落しているのではないかということを申し上げている。

 そして、我が党とすれば、三党合意の一角を担っているものとして、そのうちの一つ、重要な民主党との信義の問題をずっと先ほどから私は申し上げているわけでございます。

 これまでルールがない、一筆書かせることなどルールがないとおっしゃっていますけれども、あなたは代表なんですから、そしてこれだけ大きな、さらにはみずから命をかけると言っているわけですから、ルールがなければつくればいいじゃないですか。明確な姿勢を示さないと、命をかける、その言葉で終わってしまいます。いかがですか。

野田内閣総理大臣 ルールに基づいて対応するというのが基本だと思います。新たな事態を迎えて、新たに急にルールをつくって適用するというやり方は、私は不自然だと思います。こういうことを踏まえて、今後、ルールづくりについての議論はあると思いますけれども、現ルールに基づいた厳正な対応をしていきたいと思います。

小池委員 それは参議院の審議までにすべきだと思います。さもなければスムーズなこれからの進展は望めない、このように思います。いかがですか。

野田内閣総理大臣 もう既に党として、常任幹事会の決定も経て、いわゆる処分案については御提示をし、今倫理委員会に諮問をしているということでございますので、それを踏まえた対応をしていきたいと思います。

小池委員 代表なんですから、それこそ、では倫理委員会の方々に心からお願いすればいいじゃないですか。新しいルールをつくらなければ、この重要な、私が命をかけている法案が厳しいんだということをお願いすればいいではありませんか。あなたは代表でしょう。

野田内閣総理大臣 倫理委員会に今ルールを変えろという話じゃなくて、そのやり方というのは、常任幹事会等で、どういう形で、規約も含めて、あるいはこういう事態が起こったときにどういうルールをつくるかという議論をすることでございます。倫理委員会と御相談する話ではございませんが、今の御指摘を踏まえて、何よりも、参議院において三党合意を踏まえて法案を採決に向けて全員が一致して対応するように、さっき申し上げたように、両院議員総会であるとか全国幹事長会議等々の議論を経ながら、しっかりと結束を図っていきたいというふうに思います。

小池委員 これは、このままスムーズに参議院で審議に入るための環境は整っていると私は到底思いません。そして、そのことを整えるのは、党の代表であり、そして一国の総理である野田総理だと私は思います。そこを、きっちりとこれからわかるような対応をしていかなければ、これからの流れというのは私は極めて難しいものがあるということを明確にここで改めて申し上げておきたいと思います。

 さて、社会保障と税の一体改革ということで、これまでこの場でも議論が進んでおりますが、保障、セキュリティーということは、重要なもう一つのセキュリティーがある。それは、社会保障、ソーシャルセキュリティーと同時にナショナルセキュリティーです。安全保障でございます。私は、野田政権も、そして民主党においても、この安全保障の部分が大いに欠落をしている。今回、民間大臣として森本防衛大臣がお入りになったのは、ある意味ではその証左ではないかと思っているわけでございます。

 そこで、幾つか具体的な例として伺わせていただきたいと思いますが、その前に、社会保障と税の一体改革のときにもずっと将来の世代にツケを残さないということはキーワードのようにして使われてきていました。一方で、では、安全保障はどうでしょうか。将来の世代にこのすばらしい日本を残すことこそが、私は、安全保障を大切にする、もしくは優先をするぐらいの気持ちでやらなければならない、それが政治の大きな責任である、このように思っております。順序を、これをバランスよくというか、むしろ私は、安全保障を優先すべき状態を、残念ながら、この民主党の政権交代によってそのような状態を起こしてしまったと言わざるを得ないと思っています。

 具体的な質問でございますが、尖閣諸島の購入問題が非常に話題となっております。領土等の主権を守るのは、これは当然の私どもの責務であり、何よりも政府の責任でございます。報道によりますと、東京都が現在の所有者から購入後に国、政府が日本の領土である尖閣諸島を買い取るという申し出をされたということでありますけれども、いつ、誰に申し出をされたのか、その点、事実確認をしたいと思います。総理、お答えください。

藤村国務大臣 事実関係ということでちょっと申し上げます。

 まず、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上にも何の疑いもありません。現に我が国はこれを有効に支配している、したがって、尖閣諸島をめぐる解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないと考えています。

 政府としましては、尖閣諸島に関する我が国の一貫した立場に基づいて、従来から尖閣諸島付近海域において厳正かつ適切な警備を実施しており、引き続き万全の体制で警備に当たってまいります。

 今、東京都の御質問がございました。

 今、東京都の購入に関する計画の具体的内容等の把握に努めるとともに、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を継続するとの観点から、今さまざまなレベルで接触をしてこれは総合的に検討をしていくということでございまして、東京都と国とのやりとり、これは今まさに進行中でございますので、このやりとりの中身を細々とは申し上げませんが、そういう調整はしているということでございます。

小池委員 まあ、中身のない官僚答弁というものの典型だったと思います。さまざまとかいろいろとか総合的とかちりばめられて、中身は全くございませんでした。

 石原知事の方に、尖閣諸島を買い上げる、政府が購入するということを伝えたのは、地権者にその旨を伝えてからなんですか。その事実確認だけ、時系列として。

藤村国務大臣 まず事実関係は、今さまざまにやりとりをしているということでございまして、政府が尖閣諸島云々ということを決定したわけではなく、地権者ともそういうお話、さまざまにやりとりをしているということは事実でございます。

小池委員 さまざまな御答弁をいただいているわけですが、石原都知事によると、地権者側は国への売却に難色を示している、このように語っておられます。また都知事の方も、都による購入の方針は変えるつもりはないと明言をしておられます。

 この春に石原都知事と野田総理がお会いになった。また、石原都知事によると、そのときに、国が買ったらどうかねと水を向けられた、しかし、その場での返事はなかった、積極的な対応ではなかったということを石原都知事は述べておられるんですが、いかがですか。これは総理から。

野田内閣総理大臣 春に石原知事とお会いした際の主なお話は、この尖閣の問題ではない、別の問題についての意見交換でございました。その際の帰り際のあたりに尖閣に少し触れられた部分がありましたが、突っ込んだ議論をしているわけではございません。

小池委員 ただ、都知事の方からそういうことは実際に言葉としてあったんでしょうか。

野田内閣総理大臣 都が購入した後に国が所有したらどうか、そういう従来からお話をされている御意見は披瀝をされたと記憶をしています。

小池委員 その際の返答ということについては、都知事は、明確に積極的な対応ということはなかったと認識をしておられるのだと思うんですね。

 しかしながら、これは実際に、さまざまな呼びかけといいましょうか、地権者であるとか、総合的に進めておられるという官房長官の御答弁でありましたけれども、しかし、ここへ来まして、報道でも随分取り上げられて、政府の方針ということで、東京都から国が尖閣諸島を買い上げる、その申し出があったという話が報道をされているわけでございます。

 私は、この地権者も随分、これまでいろいろと、長い歴史の中で、父祖から受け継いできたその土地をどのようにしていくのか、当然のことながら、今後この日本の領土をどうやって守っていくべきなのか、考えられてのことだと思います。

 そして、石原都知事は、都が買うという話を、急にこのことを思いついて発議されているのではなく、この件については、ある種ライフワークとして尖閣の問題に取り組んでこられたわけでありまして、ここへ来て、都が購入したら、じゃ、次は国に譲ってちょうだいね、買いますからねというのは、余りにも軽いと言わざるを得ないと思います。

 さらには、その順番を間違えていると思います。政府がそのような形で所有するというのは一つ考え方としてありますし、私どもも、無人諸島の国有化ということについては既に法案として出しているところでございます。しかし、順番が違います。

 そして、都知事の方が黙って見ていろということを言っているのは、そのとおりだと思います。だって、都と政府がここでやりとりをしているのは誰が喜ぶんですか。結果として、私は、むしろ、望んでおられる、穏やかで、そして、何とおっしゃったでしょうかね。(藤村国務大臣「平穏で安定的」と呼ぶ)平穏で安定的ということをおっしゃっているけれども、政府が、今の官邸のどなたかがこういう形で動いておるというのは、結局、全然穏やかな状況にならなくて、そして、むしろ、中国や台湾などを非常に、別の動きになってきているわけですね。

 さて、そういう中で、ですから石原都知事の側から言わせると、急にトンビが出てきて油揚げをさらわれるようなものだ。さらに、秋にもこの問題をという話というのは非常に政治的なものということであります。九月までにということを言っておられるんでしょうか。それから、ハトとかサギとかいろいろな鳥の名前がこれで出てきましたけれども、ここへ来て今度はトンビというのは、私はよろしくないんじゃないかと思うわけでございます。

 この問題について、地権者が、そもそも国には売却をしない、難色を示しているということでありますけれども、そのことについてどう思われますでしょうか。

藤村国務大臣 まず、さっきから申しているように、地権者、それから、四月には石原知事が発表されましたので、東京都とさまざまに情報交換や話をしていることは事実でありますが、それはそれぞれに関係者がいるわけで、その中身について、報道がいかにされようが、我々としては、その中身について今進行中でございますので、お話しすることはできません。

小池委員 さっぱり意味がわからないんですけれどもね。

 私は、一言で言えば、この地権者の方は、ずっと個人で所有していようと思っていた、しかしながら、いろいろな状況があるのでありましょう、そこで、長い友人である、そして信頼のできる石原さんにということになったんだろうと思います。

 ある意味で、民主党政府を信用できないから譲るという気になっていないんじゃないでしょうか。私は、もうこの一点に尽きるというふうに思います。民主党政権、民主党政府に譲り渡したならば、結局、その後どうなるか不安だからと。それこそ、国を売るなどという言葉がありますけれども、文字どおり、そうなってしまうのではないか。そのことを生起させたのは、あの尖閣における漁船の衝突事案の民主党政権の対応ぶりの劣悪さからきているものだと思いますよ。

 私は、先ほども申し上げましたように、都と政府の間で何かいがみ合うような、とり合うような事態は避けた方がいいと思います。そもそも、これは領土問題でさえないんです。それをわざわざこのようなグレードまでに上げてしまうということが私は稚拙だというふうに申し上げてきているわけでございます。

 この問題について、先日も、尖閣諸島の方に泳いで上陸という人もおられました。

 今後、それでは、仮に政府が、今も賃貸をしているわけでありますけれども、購入したとき、もしくは東京都に売却がされた後も、そして、きょう現在、今もでありますけれども、上陸許可についてはどのように考えているんですか、官房長官。

藤村国務大臣 国の機関を除いて上陸等を認めないという、魚釣島等の所有者のこれは意向であります。

 それから、今、仮にということでありますが、東京都が尖閣諸島への上陸を、これは報道では要望しているというふうに伝えられています。今後、それは具体的な話があれば、その時点で、上陸の必要性や所有者の意向、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理のためという政府の賃借の目的等をこれは総合的に勘案して、内閣においてその対応を判断することになります。

小池委員 ここは上陸許可を出すべきですね。そういう環境を整えるのが国の仕事であって、まずは東京都の石原都知事の動きをしっかりとウオッチしていくということであります。

 そしてまた、東京都も、十三億ですか、お金が、寄附が集まってきた。匿名のお金がいっぱいあるんですね。もし東京都が買わないなどという、その手前の話かもしれませんけれども、これはお金を返せないんですよ、誰かわからないから。

 ですから、とにかく、今、石原都知事が着々と進めておられるのを政府が静かにバックアップしていくということが、むしろあの重要な地域の安定に資するものだと思っております。だから、静かに見ているということで、総理、どうお考えになりますか。

野田内閣総理大臣 先ほどの官房長官の答弁にもありましたとおり、あくまで尖閣諸島を平穏かつ安定的に維持管理するにはどうしたらいいかという観点の中で、今さまざまなレベルでさまざまな接触をしているということで、何か大騒ぎをするような話をしていこうということではありません。そういうことはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

小池委員 北方領土、騒がしいですね。極めて騒がしい。

 これは、三日の日に、メドベージェフ首相が二度目の国後訪問を強行しました。その際、ユジノサハリンスクから飛び立ったメドベージェフ首相の航空機に空軍の戦闘機が護衛していたというように報じられておりますけれども、この事実を確認させていただきます。防衛大臣、お願いします。

森本国務大臣 メドベージェフ首相が国後島を訪問したときに空軍機が護衛してきたということについて、報道があったことについては承知しております。

 従来から、我が国は、ロシアの航空機の動向について注意深く警戒監視をやってきましたが、最近、ロシアが我が国近海の近接飛行あるいはいろいろな種類の訓練を行っているということについても承知しております。この活動が活発化しているという傾向も見られます。

 一方、我が国は、今申し上げたように、従来から、自衛隊による警戒監視、情報収集に努めておりますけれども、この細部については、我が国の自衛隊の運用並びに我が国の情報収集・分析能力に係る問題でございますので、その細部を申し上げることは控えさせていただきたい、かように存じます。

小池委員 同じように、今もお話にありましたけれども、非常に近接する地域でのロシアの活動が活発であるということでございます。

 報道によりますと、爆撃機四機、これは空対艦ミサイルを搭載して日本領空に接近をしている。私は、これは威嚇飛行である、こう言わざるを得ないと思います。そして、これによって、千歳基地からのF15がスクランブルで対応しているということでございますし、ロシアの海軍が、ミサイル駆逐艦など二十六隻の艦隊がオホーツク近海で大規模な軍事演習ということも計画がある、このように思っております。

 私は、尖閣もそうでありますけれども、竹島はもちろんのことでございます。きょう、韓国・ソウルにおきまして、日本大使館にトラックが突っ込むというような事件もあった、このように聞いております。そしてまた、北方領土でございますけれども、とてもにぎやかであります。

 私は、このようなにぎやかさをこれまで見たことがございません。相手が脇が甘いもしくは緩いとなったときには、むしろ、野望を持つ人であれ国であれ、チャンスだと思いますよ。私は、民主党政権になって、安全保障問題、ここがいつも後回しになる、もしくはベイカントであるということがこのような事態を招いてしまったのではないか。

 私は、森本大臣が今回防衛大臣をお引き受けになったのは、このような状況ではだめだ、自分で何ができることがあるだろうかということでお引き受けになったのではないだろうか、このように思うわけであります。

 御答弁いただいた方がいいかしら。

森本国務大臣 大臣になりましてちょうど一カ月が過ぎまして、自衛隊の隊務を統括するという重い任務を持っておりますけれども、率直なところ、自分がこの一カ月を過ごしてみて、その仕事の多くは、この立法府での仕事、行政府の一員としての仕事、各国とのかかわり方及び地方自治体とのいろいろなお話し合いや陳情あるいは訪問等、ほとんどが政治の問題でございました。

 その意味で、政治家の方々が持っておられる日々の御苦労というのを身にしみて感じた一カ月でございます。

小池委員 ただ、民間人であることのプラス面は、選挙運動をしなくていいということですよ。地元に帰らなくていいということですよ。そして本当に、ある意味で痛みが今あったとしても、我が国が必要だと思うようなことをずばっとおっしゃることですよ。

 私は、その森本大臣を、政府が、そして閣僚の一人一人が支えることをしなければ、民間として来てもらった意味がなくなる、むしろ気の毒な状況になるということを一言申し上げておきたいと思います。

 ロシアに関連して、もう一つ伺います。

 前原政調会長は最近、北方対策担当大臣ということもございましたでしょう、私も一度、安保研の会議でモスクワで御一緒いたしました。非常にエネルギーにも関心が深く、ロシアのガスプロムとパイプラインを敷設するということでやりとりをされておられた、このように聞いております。

 結論から申し上げますと、これは相手のガスプロム側から、経済的にも技術的にも合理的ではないということで、この計画は計画で終わってしまったというのが現状でございますが、この動きについて、外務大臣、どこまで外務省は関与しておられるんでしょうか、便宜供与以外のところで。既にお知らせをしているところであります。便宜供与以外のところ。

玄葉国務大臣 便宜供与以外ということでございました。

 便宜供与のところは、他の国会議員と同様の便宜供与ということでございまして、エネルギーのことは、恐らく経産大臣とお話をしてフォローしたのではないかというふうに思います。

小池委員 この問題は、これはエネルギーにかかわるんですが、答弁、長いから結構です。

 私は、日本の立場を見ますと、戦略的に、日本はいい顧客なんですね。ましてや原発事故の後でございますから、世界じゅうからかき集める。先ほどのシェールガスの話もそうでございます。カタール、インドネシア、これはもうエネルギーを必死にかき集める。その努力をするのは時の政府として当たり前だとは思います。

 しかしながら、このガスプロムが、技術的合理性がない、そして経済的に合理性がないと言うのは、船で運べばいいじゃないか、パイプラインである必然性はないということからきているもので、これはエネルギーの安全保障という観点とはまたちょっと別な話になってしまう。

 私は、そうやって、このガスプロムというのは、前のメドベージェフ、今も副社長がメドベージェフですか、ミレルが社長、いずれにしても、これはもうプーチン直結なわけですよ。そうすると、日本がこうやって、本来は顧客であるべきなのに、パイプラインを引きましょう、引きましょうといってお願いをするような立場になってしまいますと、これはむしろ弱い。日本は、ああ、パイプラインを引きたがっているんだということで、北方領土の交渉についても、むしろ私はやりにくくなるんじゃないだろうか。

 この二重外交について、外務大臣、どう思われますか。

玄葉国務大臣 小池先生がおっしゃるように、いわゆる交渉、これはやはり政府に一元化されるべきだというふうに思います。

 ただ、恐らく前原政調会長が行ったのは、交渉という域ではないというふうに承知をしています。

小池委員 交渉せずして、どうしてノーの返事が出てくるんでしょうか。交渉するからその結論が出てくるわけですよね。

 私は、いずれにしましても、ガスプロムとのこのパイプラインの問題というのは、非常に北方領土交渉に対して影を落としたと言わざるを得ないと思っております。

 もう一つ別の影がございます。それは、先日のG20の場で日ロ首脳会談が開かれ、領土問題に関する発言で、静かな環境の中で実質的な議論を進めていくよう、それぞれの外交当局に指示することとした、このように聞いているわけでございます。

 ロシア側は、この外交当局に指示をするという、その言った段階で、大統領と日本国の総理というレベルから一段わざわざ下げるような、そういう受け取り方をされたのではないか、間違った解釈をされるようなことを言ったのではないか、私はこのように分析をするわけでございますが、そんなつもりもなく多分おっしゃったんだろうと思います。

 私は、ロシア側は別の解釈をしていると思うんですが、いかがでしょうか。総理です。

野田内閣総理大臣 北方領土の問題について、議論をしようということについての合意をいたしました。

 そのときに、まず、いわゆる外交当局、それから外務大臣レベル、そういうものを経ながらやっていこうということでありまして、今後首脳会談等もありますので、その辺の地ならしを踏まえて、最終的には私とプーチンで議論をするということで意見交換ができたと私は思っております。

小池委員 余り御自覚がないようでございますけれども、やはり交渉事、特にロシアのような国との交渉というのは、一言一言注意しなければ、別の解釈をされて、それを理由に、それを盾にされてしまう。

 今、森元総理も、本来ならばロシアの方に訪問をする、特使としてということもありますけれども、これはどうなったんですか。では、外務大臣。

玄葉国務大臣 私は従来から、外交は、交渉は政府が行うものでありますけれども、外交全般について申し上げれば、党派を超えて行うものであるというふうに思っていまして、そういう意味で、森元総理にも、この対ロ外交等についていろいろと御指導いただいたり、あるいは訪ロしていただくことも含めて考えております。(小池委員「いや、予定」と呼ぶ)予定はまだ……。

小池委員 G20の前にというふうに言われていたのが、これはおくれているわけですよ。それは何らかの理由があるからだということでありまして、そういう一つ一つのことを読み取らないといけないというふうに思います。

 その部分が非常に私は心もとないというか、いろいろなメッセージがあるのにそれをきちんと受けとめていない。もしくは、不用意な言葉を使うことによって関係がおかしくなる。国外、県外というのは、国内で言ったとしても、これがどのような影響を及ぼすか。今そのためのいろいろなツケを払わされているんじゃないでしょうか、外交面で。

 アフガニスタンのあの支援だって、ある意味でアメリカの間接的な支援として要求されたんじゃないですか。オスプレーのことだってそうですよ。もっと明確に言わなければならないところを、この間、特に政権交代後の混乱、これに対して、強く言えないということになっているんじゃないですか。そんなことは感じませんか、野田総理。野田総理にここはお願いします。

中井委員長 まず、アフガンの問題等、具体論を答弁させます。

玄葉国務大臣 アフガンは、二〇〇二年から日本は主要なプレーヤーでありますので……(小池委員「ちょっと委員長、聞いていないんだけれども」と呼ぶ)

中井委員長 いや、今おっしゃいました。

玄葉国務大臣 そういう意味では、日本として、やはり国際社会の最重要課題でありますから、今回はホスト国としてまさに主導的な役割を果たしたというふうに考えております。

 その上で、物が言えないのではないか、そんなことは全くございません。

 例えば、日米関係におきましても、今回の動的防衛力、動的防衛協力という新しい概念をつくり出しているわけでありますけれども、あれも日本側のいわば提案でもございます。地位協定の運用の見直しも含めて、我々は、同盟関係の信頼のもとで、言うべきことは言って、お互いにさらにその信頼というものを増していくように努力をしております。

 言うべきことが言えないのではないか、このことは当たっていないというふうに思っています。

小池委員 今いろいろおっしゃいましたけれども、しかしながら、余りにも、民主党政権下における外交というと、そこは各国笑っていますね。(発言する者あり)いえ、残念ながら。外務大臣に笑っては言いませんよ。しかしながら、本音はむしろ我々が聞いているんです、我々が聞いているのであります。本当にこれで、この政府に、党のガバナンスもきかないような政党にこの国がガバンできるはずがないんですよ。

 北方領土の件につきましては、我が党の……(発言する者あり)後ろからあと二十分と教えていただきました。少々お静かに願いたいと存じます。

 「メドヴェージェフ・ロシア連邦首相の国後島訪問に対する決議」ということで、我が党の外交部会、領土に関する特命委員会の方で決議文を出しておりますので、お手元にお配りをいたしました。ごらんいただければと思います。

 これは、外務次官が駐日ロシア大使に遺憾の意を示しただけだけれども、外務大臣による抗議声明を出せ、国家としての意思を明確に示せ、外務大臣のロシア訪問、総理のAPEC参加は、状況を踏まえて再検討せよというふうに書いてございます。

 石破議員などが中心となってまとめたものでございますけれども、いかがでしょうか。APECが近々開かれますけれども、このロシアの問題に関しまして、状況を踏まえて再検討をと私どもは言っております、三党合意のうちの一つが言っておりますけれども、野田総理、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 APECは、今回、九月にウラジオで開かれますけれども、ロシアで開かれるから、今回のメドベージェフ首相の行動があったから、それは一つの考え方だと思います。

 ただ、APEC自体、アジア太平洋地域のさまざまな課題について、それぞれの国のリーダー、エコノミーのリーダーが議論をする場であります。そういう問題も含めて、総合的に検討しなければいけないと考えております。

小池委員 領土問題については、明確な意思を表明するということを常にやっておかなければいけないということでございます。私どもの決議をしっかりと検討して、そして取り入れていただきたく存じます。

 それから、もう一つ申し上げますと、オーストリアの教科書、地図に、日本海の表記が東海と両論併記になっていると。これは、韓国政府が非常に活発にこのロビー活動をした結果とも言われているわけでございますが、これは、まだまだ我が国として、オーストリアの国、そしてまた、それに近いようなことを考えている、もしくは今ロビー活動している先方の国々に対して、やはり我が国の立ち位置と申しましょうか、我が国が、当然のことながら、これは日本海であるということを活動しなければならないと思いますが、これは外務大臣に聞きますか。

玄葉国務大臣 確かに、韓国のロビー活動というのがあちこちで激しくなっているのは事実でございます。当然、それに対して対抗していかなければならないわけでありますけれども、一番よい方法で働きかけをしていく。今回のオーストリアの話も、既に申し入れを行っております。

 ただ、先ほど、小池先生、笑っている、あれはちょっと言い過ぎではないかと思います。そんなことでは全くございません。私自身が経験をしていて、そういうことは全くございませんので、やはり日本は、主要国として確固たる外交方針のもとで責任を果たしていく、そして日本国民の安全を守り、国益を最大化していく、そのために全力を尽くしております。

小池委員 それは、日本国の外務大臣に笑っていますよなどということを言うとそれだけで二国間の大きな問題になるから、言えるはずがないですよ。むしろ、私どもは本音として聞いている。もしくは、あきれているという言葉を使ってもいいかと思います。

 外交の問題を含めて、続けます。

 大使でありますが、前回の予算委員会でしたか、総理が丹羽中国大使のことを非常にかばわれたと思うんです。たしか、利益のためにやっているんじゃないかということをどこかの党の方がおっしゃって、それに対して反論をなさった、かばわれたということを記憶いたしております。

 民間大使のあり方という点でございます。

 むしろ、いい例があります。それはギリシャの大使。野村証券の御出身ということで、金融危機の中にギリシャ大使という意味では、ある意味どんずばりと言った方がいいのかもしれません。私は民間大使を否定するというものではございませんけれども、それこそ、適材適所というなら、その適所の部分をよく考えなければならないのではないか。

 ギリシャと我が国が安全保障上の問題を生じるとは私は思いません。しかしながら、隣国中国との間には、安全保障上のさまざまな課題、それこそさまざまな課題があるわけでございまして、ここに商社御出身の方を持っていくというのは、その商社そのものもそうだし、他の商社もそうだし、非常に実はやりにくいんじゃないか、このように思う。何よりも、この国会の場で、利益のためにやっているんじゃないかなどという質問が出ることがその一つの証明だと思います。

 ですから、そもそも、経済的な交流も高い、一方で安全保障上の問題は数々ある、そういった地域に政治主導という名のもとで民間の方を大使に送ったということは、私はこれは余りにも外交的によろしくないと思っているんです。かえる必要があるんじゃないですか。まず、総理から。

野田内閣総理大臣 丹羽大使の発言については、これについては政府から厳重に注意をし、御本人も深く反省をされているということでございました。そのことをもって、緊張感を持ってこれから職責を果たしていただきたいと思っていますが、私が丹羽大使をかばったというお話ではなくて、何か民間の利益のために動いているという御指摘がこの予算委員会の場でありましたので、じゃ、根拠を挙げてくださいとお話をしただけでございます。

小池委員 でも、そのような質問が出ることが、だから、一つ一つの話ではなくて、発言ではなくて、民間の、かつ、そのような利益追求が基本である商社のトップの方、私も個人的に大変尊敬を申し上げていますけれども、安全保障上のさまざまな問題を担わせるのは無理がある。そしてまた、経済を人質にとられていると思われても仕方がないということを申し上げているのであります。これは再考すべきだということを強く申し上げておきたい。

 ですから、これはある意味で、民主党の外交政策そのもの、もしくは外交への考え方を凝縮しているのではないだろうか。民間大使を出した方が政治主導が明確になるとか、そのような形で進めているとすれば、それは私は、むしろ害あって一利なしということを申し上げたいと思います。

 ただ、一点、最近の野田総理のお取り組みといいましょうか、政府としての取り組みとして評価したいところはございます。それは、集団的自衛権について政府の憲法解釈を見直すということが、分科会ですか、フロンティアという会の委員会でしょうか、ここでレポートが出てきたということですが、社会保障の後は安全保障に命をかけて取り組むおつもりなんでしょうか、総理。

野田内閣総理大臣 国家戦略会議のもとにフロンティア分科会という会議をつくりました。そのフロンティア分科会において、四つの部会があります。これは叡智と繁栄と幸福と平和、その四つの部会で、二〇五〇年、中長期をにらんだ日本のビジョンを考えてほしいということで、多少やんちゃな議論でもいいから提言を出してほしいということで、今回取りまとめがございました。

 その中の平和部会のところに、今委員から御指摘があった、集団的自衛権の解釈についての見直しの提言もございました。さまざまいろいろな御提言がございますけれども、そういう提言も踏まえながら政府内での議論も詰めていきたいというふうに考えております。

小池委員 私は、社会保障と税の一体改革、先ほどから、処分が甘い、そして命をかけると言っていたのにと、このように申し上げているわけでございますけれども、また、ある意味で、この法案そのものは自民党案の丸のみということを表現される方もおられます。私は、むしろ安全保障の案を丸のみしてほしい。ましてや、憲法改正草案もちゃんと準備いたしておりますので、いっそのこと丸のみするということも、我が国が有しているエネルギーそして時間ということを考えたら、いっそのこと早いんじゃないですか。どうですか、総理。

野田内閣総理大臣 率直に、各党のいろいろな考えがあって、その意見交換をする場ができてまいりました。去年の大震災以降、震災関連でそこで合意形成できるようになりましたし、今回御議論いただいた一体改革についてもそうであります。お互いが危機感を持って、国益を考えて、将来の日本を考えて、譲るところは譲ることによって合意形成ができてきていることは、私は政治の大きな前進だと思いますし、そのことによって、これまで先延ばししてきたテーマが結論を出せるようにすることは、これは国民にとってもプラスだと思います。

 ただ、私どもは、それを、だから自民党の案を丸のみして云々という意識はありません。我々も、よって立つ政策がありますし、積み重ねの議論があります。その折り合えるところを探しながら政治を前進させるということが大事であって、私は、さまざまなテーマ、憲法も含めてそういう姿勢で臨んでいくべきではないかと思います。

小池委員 安全保障の案があるとは私どもは承知をいたしておりません。民主党の方はよく言うんですけれども、うちは議論ばかりしているんだという話でございます。やはり結論を出すというのは、まず与党が出すということが本来である。今回の社会保障の案だって、結局私どもの案が丸のみの形になって、そして、採決を拒否する、採決をおくらせるという努力をするのが野党ならぬ与党だったわけで、どっちが与党でどっちが野党なのかさっぱりわからないですよ。与党が審議拒否をするみたいな、そんな瞬間が何度あったでしょうか。

 私は先ほど、冒頭から、処分が甘過ぎる、おたくの政党はガバナンスがないんじゃないか、そんなところとの信義がこれからも継続できるかどうか非常に疑問だということで、午前中の質疑からそのようなことを申し上げてきたわけでございます。

 私どもは、安全保障については、先ほど申し上げたように、社会保障というのは国内の問題、しかし安全保障というのは国家の主権の問題であって、これが守られないで、年金幾ら、そして医療はどうというようなことは、まさかのときはそれはむしろ後回しになってしまう、それぐらいの覚悟を持ってこの安全保障には真剣に取り組んでいかなければならない、このように思います。

 さて、改めてその処分の問題について申し上げますけれども、これも明確な結論をきょうお出しになるんでしょう、このように聞いております。きょうのこの処分の内容を見させていただいて、その上でこれからの信義のあり方というのを私どもは考えざるを得ない。

 そもそも三年前に、マニフェストに期待を寄せて三百八名もの民主党の議員が当選したわけですね。それが今や二割が減って二百五十名であります。もはや国民が選んだという民主党の存在すら疑われるような事態となっているわけでございまして、国民はこのような事態はそもそも想定もしていなかった。

 私は、今こそ国民に信を問うべきではないか、このように思いますし、先ほど、国民は三つの声があるとおっしゃいました。分析をされました。直接聞いてみようじゃないですか。ここであなたが分析をしているよりは、この声を直接聞いてみようじゃありませんか。その方が日本に残されている時間を無駄にしないで済む、このことを私は申し上げたい。いかがですか。

野田内閣総理大臣 国民の皆様の声を踏まえて、先ほど特に三つのことを申し上げさせていただきましたけれども、それはこれまでも対話集会等も通じまして、またこれからもそういう国民のさまざまな声というものに耳を傾けていきながら、御理解が進むように努力をしていきたいというふうに思います。

小池委員 しかし、これだけ約束事が破綻をしてきているわけであります。それを、この一年間、任期までの間、修正、修正、修正を重ねていく、そういうおつもりなんでしょうか。そして、自分がやりたいことを幾つかやっていくということなんでしょうか。

 私は、時間軸というのは極めて重要なんですよね、この国にとりまして。特に、我が国に、世界における情勢は、いつ何どき何が起こるかわからないという状況。東アジアにおいては、むしろ民主党政権が生まれたことによって、本来起こるべきでないような事態も数々、先ほどから使っておられる、さまざまなことが起こっているではありませんか。こんなチャンスを他国に与えてどうするんですか。

 そしてまた、外交問題、先ほども申し上げましたように、一つ一つの言葉の使い方によって相手にすきを見せてしまう、誤った考えを抱かせてしまう。そんなことも、政権交代をして、そして三年はたつわけでありますけれども、これらもいろいろ場数も踏まなければならないことは確かであります。しかしながら、私は、この三年間にわたって国益がどれほど失われたかということを大変危惧しているわけでございます。

 この失われた国益、毀損した国益、これはあたかも、民主党の皆さん、松下政経塾の方が多いわけでありますけれども、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの場ではないんですよ、永田町は。それに対して日本国が授業料として各国に払っているようなものであります。

 これ以上時間を無駄にすることはできません。だからこそ、私は国民に信を問えということを改めて申し上げますが、いかがでしょうか、総理。

野田内閣総理大臣 社会保障は、政権がかわるたびに変えてはいけない、国民の生活に直結した、しかも中長期に制度設計を考えていくものであります。したがって、これはお互いに胸襟を開いて合意をする。今回は非常に大きな前進があったと思います。

 安全保障も、政権がかわるたびにその基本的な方向性が百八十度変わるようなことがあっては、国際社会で信用はされないと思います。そのことを私どもも踏まえまして、だから今、特に日米同盟が大事でありますけれども、2プラス2の議論というのは本音の議論をして、そして折り合ったわけでございます。安全保障についても、しっかりと責任のある対応というものをこれからもやっていきたいと思います。

 その上で、また解散しろというお話がございましたけれども、これは何度も申し上げますとおり、一体改革のみならず、やらなければいけないことをしっかりやり抜いた暁に、国民の皆様の信を問いたいと考えています。

小池委員 我が国の持続可能な社会づくりのために、そして納税者の方々が納得いただけるような、そのような社会づくりのためにという基本的な考えのもとに、三党で合意をいたしました。先ほども申し上げましたように、被災地を抱える議員、この三党合意に従って自民党の議員は活動をしました。行動をいたしました。それに反して反対した議員は、今もぬくぬくと民主党の中にいて、そして被災地においては、私は反対をしたんだということでヒーローになっているという現状。あなたもそうですか。きょうの夕方の処分の行方をしっかりと見守っていきたいと思います。

 私たちは三党合意には当然合意をしているわけではございますが、我々にも限界があるということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

中井委員長 これにて谷垣君、福井君、小池さんの質疑は終了いたしました。

 次に、牧義夫君。

牧委員 新しい会派が誕生いたしまして、国民の生活が第一という名称でございます。きょう現在、衆議院で三十七名の会派でございますけれども、今後、徐々に院内でも数がふえていくものだと思います。

 その新しい会派の最初の質問ということでございます。いきなり戦闘モードでやるのかどうなのかという悩みもありますが、この会派の中でも一番温厚な私が質疑に立ちましたので、まずは礼儀正しく質問をさせていただきたいと思いますが、ただ、この間のいろいろな流れの中で私自身もさまざま思うところがございますので、場合によっては、この間まで仲間であった先輩の先生方に失礼な言葉もあろうかと思いますけれども、何とぞ御理解と御容赦のほどをお願いいたしたいと思います。

 また、失礼をわびるということと同時に、私は、まず失礼をわびてもらいたいというところからお話をしなければならないと思うわけであります。

 先ほど来、処分のお話、自民党の先生方からも出ておりますけれども、時あたかも、今ちょうど、民主党におかれては倫理委員会が開催されているということであります。この処分についての意見があればここで開陳をする場面もあったんでしょうけれども、私も予算委員会の理事としてここに出席をいたしておりますので、党本部に赴くことができませんから、ここでその意見の陳述をさせていただきたいと思います。

 そもそも、先ほど来、自民党の方たちから処分が緩いというお話がございました。この処分が緩いことについての総理からの説明を私も聞かせていただいておりましたけれども、多分この説明では自民党の皆さんは納得しないだろうなと思いますので、私がかわりに、なぜこの処分が緩いのかということを説明させていただきたいと思うわけであります。

 なぜかというと、そもそも、今回の社会保障・税の一体改革の党議決定そのものの手続が本当に瑕疵がないのか、まずそこから、私は、広く国民の皆様方の前でしっかりお話をしておかなければいけないと思います。

 民主党の党議決定のあり方というのは、民主党の規約上、これは党員大会を開くか、あるいはそのいとまがなければ両院議員総会を開いてそこで決めるということになっております。だからこそ、私たちは、両院総会の開会を求め、この開会の要請をするための必要最低限の署名も集めてきたわけであります。

 なぜそれをしたかというと、総理が、この国会において、これは党内でいろいろな議論があることはよくわかっているけれども、しかしながら、もうこれは待ったなしの問題なんだ、だから、議論に議論を重ねた上で、しかし、最終的には五十一対四十九でも自分はこの法案を通していくんだと、不退転の決意をたしかこの予算委員会で示されたんだと思います。

 だからこそ、五十一対四十九、その決着を民主党の両院議員総会でつけてくれるのであれば、本当に私たちが少数であれば、私たちは何も党の決定に逆らう必要はなかったわけで、今でも与党の一員として、この法案に賛成の立場で、ひょっとしたらこっちの方にいたのかもしれない。

 まず、手続上の重大な瑕疵があるということを、政権与党の意思決定が本当にこんなことでいいんだろうか、私は、そもそもこの党議決定そのものがなかったとここで改めて申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 党の意思決定にかかわる御質問でございましたけれども、最高の党の意思決定機関は党大会であります。それにかわって両院総会を開くことができます。ただ、これは、例えば役員構成であるとか大きな基本方針等々を決める場であって、政策の意思決定は両院総会で諮ったことはございません。

 政策における意思決定というのは、これはもう御案内のとおりであって、それぞれの部会、部門会議において御議論をいただいて、そして政調の役員会に諮って、そこで出てきた御意見を政調会長がいわゆる政府・民主三役会議に諮って意思決定をするというのが今の政策決定のルールでございますので、そのルールに基づいて両院懇、両院議員の懇談会等も開きましたけれども、御説明をしながら、多くの皆様の御賛同を得るように努力をしましたので、党の方針としては、政府・民主三役会議で党の方針は決まっているということでございます。

牧委員 通り一遍の御説明はもう何度も聞いた覚えがありますが、では、もう一度お聞かせいただきたいんですけれども、総理が、自分の、みずからの政治生命までをもかけると言ったこの重要な法案は、大切な意思決定ではないんですか、あるんですか。明確にお答えをいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 大切な意思決定でございますので、去年の六月に成案をまとめて、そしてこの年末年始にかけて素案をまとめて、そして大綱として閣議決定をし、三月に法案を提出するまでに、相当に丁寧に時間をかけながら議論を尽くしてまいりました。

 その議論を尽くした中で、政党間の協議を行って三党合意に至ったわけでございますので、そのプロセスにおいては相当丁寧に長い時間をかけてきたと思っておりますし、最終的な意思決定のあり方は、さっきのルールに基づいて対応させていただいております。

牧委員 それでは、多分、一緒に協議をされてきた自民党や公明党の皆さんは、先ほども随分お怒りでございましたけれども、もうこれは怒って当然だと思うんですよね、そんないいかげんなやり方で決めたことを三党協議で諮っていたのかと。

 我々は、五十一対四十九でもやるものはやると言ったから、本当に、党内、最終的には民主的な手続でこれを決めて、でなければ、天下の公党である自民党や公明党の皆さんにも私は大変失礼だと思うんですけれども、いかがでしょうか。こんなんじゃ、さっきの話を聞いていると、三党協議そのものが、もう撤回しろという、自民党席から、撤回しろという声ばかりですよ。どうなんでしょうか。

岡田国務大臣 自民党の先ほどの御質問については、これは我々、誠意を持ってきちんとお答えしなきゃいけないと思います。ただ、今この場で委員が言われると、非常に違和感を覚えるわけであります。

 これは、民主党の中での手続の話であります。そして、私は、委員を見ていて思うんですけれども、委員は、野田政権発足と同時に、厚生労働省の副大臣に御就任になりました。厚生労働省の社会保障改革推進本部が発足したときに、本部長代理に御就任でございます。つまり、この社会保障・税一体改革の社会保障の部分について、責任を持って政府の中でお進めになってきたはずでございます。もちろん、最終的に、法案の閣議決定の際に辞表を提出されたわけでありますが、その間、政府の一員としてやってこられたわけで、ある意味では、最も自分の意見を政府の案に反映させることができる立場におありになったわけで、その委員が今のような議論を展開されることに、私は非常に違和感を覚えております。

牧委員 それは、私、大変な言いがかりだと思うんですよね。私は、最終的に、この三党合意の是非について、党内での決め方に瑕疵があったというお話をしているのであって、当初の、社会保障・税の一体改革と言いながら、先ほど来お話が出ているように、これは、社会保障と増税とはもう全く切り離された、増税先行の法案になってしまったわけですね。それについて私は言っているわけです。

岡田国務大臣 もし委員がそういうふうにお感じであれば、どうして政府の中で、あるいは厚生労働省の中でそういう御主張を展開し、そうでないようにされなかったんでしょうか。そういう機会は幾らでもあったはずであります。今さら言われることに、私は非常に違和感を感じております。

牧委員 党内の話と、政府部内に私がいたときの話を混同しないでいただきたいと思います。

 何か言うことがあれば、おっしゃってください。

岡田国務大臣 私は、率直に自分の感想を申し上げたわけであります。党の中のことと言われても、その大半、委員は、三月までは政府の要職にあられたわけであります。ですから、そういう立場にあって、もし社会保障と税一体改革の中身が実は増税だけなんだというふうにおっしゃるのであれば、それをまさしく責任を持って改めなければならない立場にあったはずではないでしょうか。

牧委員 これはまた後ほど、社会保障と税の部分については、三党協議そのものがそれぞれ切り離して議論されてきましたので、そのことも含めて、後ほど申し上げたいと思います。

 ちょっと私の準備の順序で質問を続けさせていただきたいと思います。さっきの話はまた後ほどさせていただきたいと思いますが、基本的なことから申し上げたいと思います。

 今私は、ここではっきり、仲間の三十七名を代表して、そもそもこれは造反ではない、手続上の瑕疵からスタートした話であるということも申し上げさせていただきましたが、ただ、その後、離党届も出させていただいて、我々が新たな歩みを始めることになりましたので、そのことの正当性についても、もう一言つけ加えさせていただきたいと思います。

 きょうは、造反をしたということで除籍だとか除名だとかという話が決まるというお話でありましたけれども、私たちは、造反をして除籍されたという汚名をまずここで晴らしておきたいと思います。私たちは、国民との約束、三党の談合よりも国民との約束を優先させたということだけは、まずははっきり申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、鳩山元総理もおっしゃっておりますように、この消費税増税については、私たちが政権交代のときに、これからの一任期四年間は増税はしないと約束をしたわけであります。こういう議論はもう繰り返し行われておりますけれども、改めてそのことについて、約束違反をしたことについての総理の弁明をお願いいたしたいと思います。

野田内閣総理大臣 〇九年のマニフェストには、それは委員御指摘のとおり、一体改革あるいは消費税の引き上げという記述はございません。書いてないということは間違いありません。だからこそ、その必要性というものをしっかり国民の皆様に御説明しなければいけないというふうに思っております。

牧委員 私どもが一番言いたいのは、消費税を四年間上げないと言った、だから、二〇一四年以降だから、四年たった後だからいいんじゃないかとか、そういう議論も最初はありましたけれども、何が言いたいかというと、私たちは、消費税を今上げる必要があるかないかということとあわせて、消費税を上げる前にやるべきことがあるんじゃないかということを言ってきたわけですね。四年たったら上げていいなんて一言も言っていないんですよ。

 消費税を上げる前にやるべきことがあると私たちは申し上げてきたわけで、そのことを先頭に立って一番声高らかに、シロアリ退治なくして増税なしとおっしゃってきたのは、ほかならぬ野田総理じゃないですか。いかがですか。

野田内閣総理大臣 やるべきこととして、無駄をなくしていく、行政改革をやるということは、これは牧さんも含めて一緒にやってきたじゃないですか。厚生労働省の中で、予算の組み替え等、相当御努力されたと思います。これはみんなでやってきたはずなんです。

 でも、その上でも、毎年自然増で一兆円ずつふえていくという構造の中で、ほかを削って対応できる状況ではなくなってきているということ、これは総力を挙げてみんなでやってきたはずであります、誰かの責任ではなく。各省の担当の中で、政務三役を中心に、党からもいろいろな御提言をいただきました。それを踏まえてやってまいりましたけれども、なお安定した財源を確保していかなければならない状況の中で、やはり歳入の改革もやらなければいけない。

 これは少なくとも、去年の十二月に党として素案をまとめる段階については、お互いに数字のパーセンテージも含めて織り込むことを、あのときはみんなで拍手で終わったはずであります。それは皆さん御理解をいただいていると思うんです。それを踏まえたこの後の流れでございますので、もちろん、やらなければいけないことはあります、行革、政治改革。だけれども、今は、歳入改革もやるけれども、ほかの改革も絶対やるんだ、包括的な改革として国民の皆様に御理解を求めていくというのが今の私どもの姿勢であって、それは、昨年の素案をまとめた段階で多くの同志が合意していたはずではないでしょうか。

牧委員 事実関係を申し上げると、最後は拍手でまとまったじゃないかというのは、やや事実と異なると思います。前原政調会長が逃げるようにして出ていったというのが、それが三月の終わり方だったということは……(野田内閣総理大臣「十二月です」と呼ぶ)十二月だったですね。その後変わっていますから、時々刻々と。

 それで、もう一つ申し上げさせていただきたいのは、やはり今のお話を聞いていると、税収をこれから上げていかなきゃいけない、その必要性を総理自身がお感じになっているというのはよくわかるんですよ。ただ、我々は、いろいろな主張をこれからもさせていただきたいと思うんですけれども、果たしてこの税率を上げることが税収の増につながるのかどうなのか、その辺の検証もこれからしっかりしていかなければならないと思います。

 そして、その検証をするに当たって、どうも、一方的な財務省の都合のいい理論にどうしても総理自身が振り回されているようにしか私は見えないわけで、これは私だけじゃない、多くの人がそういう指摘をされておりますので、またそういう観点から、本当に集中的に議論を進めさせていただければありがたいなと思っております。

 そして、何よりも、どうして振り回されてしまうのかということが我々の主張の原点の一つにあると思います。

 そもそも、二〇〇九年の政権交代、この原点に立ち返るというのは、私は、二つの原点に立ち返るべきだと思っております。一つは政治主導、もう一つは国民の生活が第一。この二つの基本的な部分を捨ててしまったら、マニフェストのどこが達成されてどこが達成されていないかというようなお話が、けさ一番の与党の質問の中にもありました。こんなマッチポンプのような質問で私はだまされるつもりはありません。一番大事なのは、そもそも、民主党が政権交代をしたときに国民が寄せた期待というのは一体何だったのかなと、その原点にぜひ立ち返っていただきたいと思うんですね。

 今度の私たちの会派は、もう間もなく新しい政党を立ち上げたいと思いますけれども、国民の生活が第一、そして政治主導という原点だけは私たちが引き続いて持ってまいります。

 日本国憲法の前文に、そもそも国政は、国民の厳粛な信託によって、そしてその権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使する、そしてその福利は国民がこれを享受すると書いてございます。主権者である国民を代表する私たち国会議員がその権力を行使して、これが政治主導ですね、そしてその福利は国民がこれを享受する、これが国民の生活が第一という原点であります。私たちは、今こそ、その原点に返らなければならない。

 私は、残念ながら、もう民主党が民主党じゃなくなってしまった、そんな感がございます。

 主権者である国民のために私たちが権力を行使しなければならないんですけれども、しかるに、今の政権がやっていることは、主権者である国民に真実を知らせない。本当にこの国の財政がどういう状況に今なっているのか、本当に日本のエネルギーは原発を再稼働しないと賄えないのか、その真実が知らされないまま、先へ先へと進んでいく。そこで意見を言えば、決められない政治だと、我々がその元凶であるかのようなお話でございます。これでは、本当の意味での国民主権、この国にはあると言えないんじゃないでしょうか。

 さらに、一番たちが悪いのは、今に日本もギリシャのようなデフォルト危機に陥ってしまう、待ったなしだというお話です。大飯原発も、その安全性が十分確認されないまま、この夏が本当に乗り切れるんだろうかと、主権者である国民に真実を知らせないだけじゃなくて、主権者である国民を脅迫してこの国の政治を前に進める、いつの間にか民主党がそんな政党に成り下がってしまったと私は言わざるを得ないわけでありますけれども、そのことについて、総理の御所見をお願いいたしたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、政治主導と国民の生活が第一という理念を私どもは失ったというつもりはございません。これまでも政務三役中心にしっかりと対応してきたと思いますし、今回の一体改革の中身だって、これは多くの議員の皆さんが議論に参加をしながらまとめたもの、それを踏まえて三党で議論をしたわけでございますので、この中身については間違いなく政治主導だと思っております。

 そして、そのプロセスにおいても、何か物事を覆い隠しながら決めてきているかのようなお話がございましたが、少なくとも、この国会審議は、あの安保のときに次ぐ百二十九時間の審議を行って、当然、これは国民の前に公開されている議論であります。そういうものをやってきているわけで、何かを隠しながら物事を決めていくというわけではなくて、まさに熟議のプロセスをたどっているというふうに私は思っております。

 その上で、原発の再稼働についても、この一年以上のさまざまな安全対策の試み、知見、そういうものを踏まえて、安全性の徹底したチェックを行った上で判断基準をつくり、その上で、必要性も含めての総合的な判断をさせていただいたわけでございますので、全て何か公開しないで勝手に決めるということではないというふうに思います。

牧委員 そういうことであれば、話を蒸し返して大変恐縮なんですけれども、両院総会を開いて、カメラが入っている前で、こんな大事なことですから、どうして決めなかったんでしょう。こういうことだから、残念ながら、今の民主党、そして民主党から分裂した我々の今の姿があるんじゃないでしょうか。いかがですか。

野田内閣総理大臣 これは先ほども御説明したとおり、両院総会というのは、あらかじめ議題を決めてやっていく。その議題については、政策案件ではないんですね。政策の意思決定の仕組みというのは、従来のルールどおりに、それに基づいて党議としているということでございます。

牧委員 これは、そうすると、ただの政策案件であって、重大な決め事ではないという理解でよろしいんでしょうか。

野田内閣総理大臣 ただも重大もなく、政策の案件です。重大な案件でありますけれども、ルールに従って決めているということであります。

牧委員 少なくとも、これは自民党と公明党、立派な公党との間の協議です。この意識が、これはただ、一つの政策案件だという意識で、他の政党はどうも、議席からのやじを聞いておりますと、とても同じ次元じゃない、全然違う次元で三者が集まって議論して決めたんでしょうか。

岡田国務大臣 私は、今回の三党合意ですけれども、本当に日本の戦後史の中でも特筆すべき出来事ではないかというふうに思っております。野党の皆さんも本当によく合意していただいたというふうに感謝をしております。

 それは、今の国の財政そして社会保障の現状を見たときに、ここはやはり違いを乗り越えて一つの合意をしなければいけないという政治家としてのそれぞれの思い、責任、そういう中で私は三党合意ができたというふうに考えているところでございます。いろいろな意見はもちろん各党ごとにございます。だけれども、そういうものをあえて乗り越えてやったということでございます。

牧委員 今の副総理のお話を聞いていて、ようやく何か見えてきたような気がするんですが、お互い違いを乗り越えてというお話がございました。違いはたくさんあるんですね。社会保障の中身も全然違う。では、違いを乗り越えて決めなきゃいけなかったものは、税率一〇%という消費税増税への道だけだったということでよろしいんですね。

岡田国務大臣 これはちょっと牧さんの言葉とも思えないんですけれども、今回、八法案あるわけですね。そのうちの一本はもちろん議員立法ですが、残りの七法案、税は二法ですから、子ども・子育ての三本と年金の二法、これは政府が出した法案でございます。そして、そこに三党の合意で修正を加えて、今回、衆議院で可決していただいたということで、そこにもちろん中身はある。そもそも厚労省がお出しになったものがもとになっているわけですから、被用者年金の一元化とか、あるいは二十五年の加入期間を十年に短縮することとか、あるいはパートへの拡大とか、年金についてはそういうことが含まれているわけでありますし、もちろん子ども・子育てについても、認定こども園の拡充その他、中身は非常にあるというふうに、牧さんも本当はそう思っておられるんじゃないですか。

牧委員 中身が空っぽだとは言いませんよ。ただ、もうさま変わりしてしまったというのは事実なんですよ。

 それで、例えばの話、民主党内における三党協議を受けての説明がありました。そのときに、私が一番印象深く残っているのが、長妻元厚労大臣の言葉でありましたけれども、社会保障の担当で細川先生と一緒に窓口になっていたわけですけれども、おもしろいことを言うなと思ったのが、長妻さんは非常に真面目な方だから、つい正直に言ってしまったんでしょうけれども、要するに、民主党の総合こども園の話が、これはとても自民、公明からのんでもらえない、全部棚上げというか、これはもう諦めろという話でありました。そうすると、今回の社保・税の一体改革の中の〇・七兆円の部分の課税の根拠がなくなってしまって、さあ大変だ、だから認定こども園の拡充でお茶を濁そうかというお話だったわけです。

 それは多くの民主党の議員が直接聞いておりますから。では、これは税が初めにあって、後でつじつま合わせの、それ以外の何物でもないじゃないですか。

小宮山国務大臣 私、担当でございますので、ちゃんと正しいことは聞いていただきたいと思います。

 今回、総合こども園の法形式は変えましたけれども、ここの議論をずっと聞いていただいていれば、幼保連携型の認定こども園が先駆的な取り組みをしている、そこであった、二重行政と財源が足りないということをちゃんと手当てしている。そういうことで、今回私どもが狙ったことの八割方はできる体制をとっておりますし、そのほかにもまた小規模な保育とか家庭的保育、そういうところにも、これは三党の実務者が子育てのために合意をした中身ですので、今のような言い方は事実と違いますので、しっかり御理解いただきたいと思います。

牧委員 小宮山大臣には私も大変御指導いただいてまいりましたので、余り失礼なことは申し上げたくありませんが、ただ、これは事実として、民主党の中で三党協議を受けてのそういう説明を聞いたということを私は言っているのであって、だから、後でこの〇・七兆という数字に後づけの理屈をくっつけたというのは、それは私の長妻さんから聞いた説明からの印象だということであって、多分大臣は、そうじゃないんだ、これは総合こども園の理想に向けてかなり前に前進したものであるんだというふうに、それは御自身は自分に言い聞かせなければやっていられないでしょう。

 だけれども、そんなことを言ったら、今度、自民や公明の皆さんからは、そんなはずないぞ、あれはもう完全に理念も骨抜きになっているはずだ、そういう文句が出るはずですよ。出てもいいんですか。これからの参議院の協議にいろいろ差しさわりがあると思いますけれども。

 だから、私は、もう答弁はいいですから、一事が万事こういう形で進んできたということに、本当に残念な思いがしているということであります。

 ついででありますので、もう余り時間がありませんけれども、多くの国民の皆さんが、まだまだ、この社会保障・税の一体改革の一体どこが一体なのか、よく御理解をしていないんじゃないかと私は思います。私自身が、どうも何か自分はキツネに鼻をつままれているような感じがありまして、ずっと釈然としないまま今日まで来たというものがありますので、ここで改めて、国民の皆さんによくわかるように御説明をいただきたいと思うんです。

 岡田副総理だったと思います、これは全額社会保障に充てるんだというお話でございましたけれども、我が国の社会保障費というのは、御承知のように、基礎的財政収支の対象経費の中では五一・五%を占める義務的な経費であります。そのうち、大体税で賄ってきた分が四十・三兆ということでありますね。社会保障給付費、二〇一二年の予算ベースでいいますと約百九・五兆。負担の内訳は、保険料六十・六兆、そのうち個人が三十二・五、事業主が二十八兆。税で賄っている部分が四十・三兆、国が二十九・四兆、地方が十・九兆であります。

 国の二十九・四兆の部分、これを社会保障費に全部充てるということで、単純に計算をすると、今まで賄ってきた社会保障費の中から、増税で、もし仮に、税収が十三兆上がったとすると、全額社会保障に回すということになると、その分ほかにこのお金を回せるような状況になるのか、あるいはその分公債発行を抑えることができるのか、そのどちらかでなければつじつまが合わないと思うんですけれども、お答えいただけますか。

岡田国務大臣 その前に一言。

 先ほどの話は、結局、自民党、公明党の時代に進めていただいていた認定こども園、その問題点として、一つはお金の絶対額が不足している、もう一つは省庁間の縦割りの弊害がある、そういったことは小渕先生が大臣を務めておられたころに指摘をされていることであります。しかし、そういったことをしっかり解消していくという観点から我々も総合こども園を提案いたしましたので、ベクトルは一緒だったわけです。ややスピード感は違ったかもしれませんが、同じベクトルの中で今回合意に達したということで、中身が、全く我々の考えていたことが実現できなくなったということではございません。

 それから、今お話しの件ですが、もちろん今回消費税を増税させていただいて、そして国の取り分について全額社会保障四経費に充てますが、その結果として国債の発行額を減らすということが可能になる、基本的にはそういうふうに考えているところであります。

牧委員 そうすると、五%上げるうちの一%分、二・七兆は社会保障の拡充に充てる、ここまではわかるんです。中身はともかくとして、ここまではわかるんです。その残りの四%分、十・八兆、その分が要は公債発行を抑えるということになってくるという理解でいいんですね。

岡田国務大臣 お金に色がついていないので、なかなか言うのは難しいんですが、それから、かつ、もう一つは、地方に行くわけですから、五%丸々国に来るわけではございません。国に来る部分については、基本的に、本来赤字国債を発行して賄っていた分を税に置きかえるということになります。

牧委員 それでは、今後、二〇一四年、一五年、一六年、一七年と、公債発行の見込みというのはどんなふうになっているんでしょうか。

安住国務大臣 これは、残念ながら、利払い費とかがふえてまいります、今よりも。それと、成長に伴って、どういうふうな予算をつくるか等にもよりますけれども、残念ながら、劇的に公債発行額が減るわけではないんです。ただ、ふえはしない。そして、基本的には現在の発行額よりもやや下がるぐらいの数字で今試算はしております。

牧委員 私がちょっと見せてもらったものでは、数年間はちょっと下がるんですが、結果として、その後またもとに戻っちゃう、さらにふえていくという数字を見せてもらったんですけれども、今正確にわかりますか。

安住国務大臣 牧さんのごらんになっているのは多分中期試算のフレームの予測だったと思います。急な御質問だったものですから手元に私も今数字は持ち合わせておりませんけれども。

 つまり、利払い費はふえていくわけですね。今大体二十二兆ですけれども、仮にこれが五年、十年となっていけば、この額は自然とふえていきます、今の累積額が大きいですから。それから、社会保障費もこの先もふえ続けていくわけですから。そうしたことからいうと、予算全体のパイがふえていくので、その中で公債発行額が今の額と同水準に、またそういう同水準にならざるを得ないような予算構造にこのままいけばなるということを、多分、試算でお示ししたものをごらんになったんだと思います。

牧委員 利払い費はそんなになっていないでしょう。償還費と合わせてじゃないですか。(安住国務大臣「そうです。利払い費というのはそういうことです」と呼ぶ)はい、わかりました。

 ちょっとこれも、余り突っ込んでいくと長くなっちゃうので、また今後の議論に委ねたいと思います。

 もう一つは、これも岡田副総理だったと思うんですけれども、今後、社会保障にこの税を充てていくことになると、さらにその後一六%、一七%と増税が必要になってくるというお話を聞いた覚えがありますけれども、今後、消費税率というのはどういうふうに推移していくんでしょうか。

岡田国務大臣 先ほどの委員の質問にも関係するんですけれども、社会保障に対する必要な税投入というのは毎年一兆円以上ふえてまいります。これは、高齢化が進むということ一つをもってしてもそういう構造になっているということがございます。

 そういう中で、それから今回、交付国債という形で基礎年金の二分の一国庫負担の分について賄う、このことについてはやめるということになったわけですが、いずれにしても、そうすると、それを国債で出さなければいけない、そこをやはり税に置きかえていかなければいけないということであります。

 やがてどうなるかということは、これはもちろん、今の税だけでは賄えなくなるということは当然であります。そこでどうするかということを、私も週末ごとに全国を回っておりますので、よく聞かれます。

 それは、一つは、やはり経済成長がどうなるかということによって税収が変わってくるということは言えます。それからもう一つは、先ほど委員御指摘の行革をどれだけしっかりやれるか、これは持続的にやっていかなければいけないことであります。

 その二つを前提にして、それでも足らない、私は足らないということにならざるを得ないと思いますが、では、そのときに、どういう税で賄っていくのか。先ほど来議論に出ておりました所得税で一部やっていくのか。あるいは消費税でやるのか。あるいは、欧米だと環境税のようなものを社会保障の財源に使っている。いろいろなことが考えられますので、それは今、消費税だけでやるという前提で議論する必要はないというふうに考えております。

牧委員 わかりました。

 もう一つ、なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、この構成を見ていただいてもおわかりのように、基礎的財政収支、一般会計の中の国債費ですとかあるいは地方交付税交付金を除いた、いわゆる裁量的経費プラス義務的経費になるんですけれども、これは消費税という国民が嫌がるもので、財務省が、嫌な、要は義務的な経費を賄っておけと。そうすると、財務省は、その分、ほかに裁量的な、あちこち割り振れるものが出てくるんじゃないか、そういうもくろみで消費税をどうしても上げたいんだということが私には透けて見えてくるわけであります。これについてはまたちょっと、時間がありませんのできょうはいいんですけれども。

 だからこそ、ここへ来て、さっきも質問がありましたけれども、国土強靱化法なるものもまた出てくるわけですよね。こういうものが入ってきたら、今度はこっちへばらまくんだ、あっちへばらまくんだ。もう、とらぬタヌキの皮算用じゃないですか。この法案が出てきたら、総理、どういう扱いにするんですか。

安住国務大臣 もう既に国会に出ておりまして、議運でどういう取り扱いをするかは議論すると思います。

 先ほど私は申し上げましたけれども、やはり、私も被災地の議員として思うのは、やみくもに堤防をどんどんつくればいいとかそういうことではなくて、それぞれの地域に応じた必要性のあるものに対して、プライオリティーの高い予算はやっていかなければならないので、せっかくお預かりした消費税の分は、今、牧さんがおっしゃるように、それは年金、医療、介護、子育てにしっかり充てて、そのかわり、何か余分なものが出てきたらどんどんやるというふうな考えには私ども全く立っておりません。

牧委員 時間がありませんので、最後に二問だけ、ぱぱっと答えていただきたいと思うんですけれども、次期国政選挙、衆議院選挙に向けて、民主党としても恐らくまた新しいマニフェストをつくられると思いますけれども、この新しいマニフェストが、今度、本当に国民に信じてもらえるとお思いでしょうか。これだけマニフェスト違反を繰り返して、次のマニフェストが国民に信じてもらえるか否か、総理の御所見をお伺いしたいのと……

中井委員長 もうそれしか時間はありません。それだけにしてください。(牧委員「はい」と呼ぶ)

野田内閣総理大臣 これだけのマニフェスト違反というお話がございましたけれども、中間検証を踏まえて、相当数のことはやってきておりますし、牧さんが御担当された厚生労働部門の中の特に雇用政策等々は、しっかりこれは全部やり抜いていますよね。そういうことをしっかりと国民の皆様にお訴えし、できなかったことは何なのかということも、その反省も踏まえた上で新しいマニフェストをつくっていきたいというふうに思います。

牧委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて牧君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 公明党は、社会保障と税の一体改革について三党協議に参加をいたしました。これはもともと、持続可能な社会保障制度をつくっていかなくてはいけない、そのためには消費税を含む税制の抜本改革を行っていかなくてはならないという基本認識があったことは確かでございます。そのベースの上で、しかし、今回、野田政権が出してきた一体改革法案は、一体改革とは名ばかりで、一体改革になっていない、このように私たち鋭く、私もこの場に立って何度か指摘をさせていただいたところでございます。

 しかしながら、幹事長会談で、修正の用意がある、こういうお話がございました。また、消費税増税に命をかけるとおっしゃる野田総理と、もともと消費税一〇%という政策をお持ちの自民党、この二党で消費税増税を決めれば、国民生活から少しかけ離れた消費税増税になってしまうのではないか、このような危惧もあり、消費税三党協議に参加をしたわけでございます。

 そして、その結果、持続可能な社会保障が見通せるところまで来た、このように私たちは感じました。まず、このように認識をいたしました。そこで、私たちの政策的な主体的判断として、この合意に参加をし、賛成をするということを決めたわけでございます。したがいまして、私たち公明党は、この三党合意修正案が参議院を通過し、成立するまでは責任を持ちたい、このように思っております。

 総理、参議院通過まで方針をぶれずに貫徹をされるおつもりがあるかどうか、その決意をまずお伺いします。

野田内閣総理大臣 斉藤委員におかれましては、いろいろな曲折はあったと思うんですけれども、今回、三党合意のこの協議を、特に社会保障の部分の実務者協議に御参加をいただいて大変お知恵を出していただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 よく増税先行との議論が言われますけれども、もう実務者でよく御存じのとおり、社会保障の骨格というか持続可能性が見えてきて、そして税制を固めていくというやり方だったものですから、その点はお互いによく意義を共有できるかと思います。

 そうした三党合意でございますので、衆議院においては本当にいろいろと御迷惑をおかけしました。参議院においては、我が党としても一致結束して対応していきたいと思いますし、ぶれずに対応させていただきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 私は、税の方で実務者協議に参加させていただきました。

 先ほど申し上げましたように、我々が主体的な判断で賛成をしたということは、これはもう当然のことでございますが、その上であえて申し上げたい。

 民主党の中に、いまだに、三党協議は密室談合だ、このようにおっしゃる方がいらっしゃる。百二十九時間特別委員会で議論をして、そして幾つかの問題点が明らかになってきました。その問題点について協議を行って、そして、合意をしよう、合意ができるのであれば協議に参加しようと党の中で協議をしてきた。そして合意した。そのことを否定するのであれば、私は、何も決められない国会になってしまう、このように思います。

 しかしながら、民主党さんの中にまだ密室協議だとおっしゃる方がいらっしゃる。また、社会保障置き去りだ、このようにおっしゃる方もまだいらっしゃる。先ほど総理がおっしゃったように、確かに政府の原案は社会保障置き去りでした。しかし、三党協議でしっかり議論をして、社会保障についても、先ほど申し上げたように、その持続可能性が見通せるところまで来た、具体案がほぼ、おぼろげながらですけれども明らかになってきた、このように感じております。

 総理、なぜ、やれ密室協議だ、やれ社会保障置き去りだと言う人を民主党の中で叱責しないんですか。強く意見しないんですか。我々、この三党協議に参加した者として、我々も実は党内でいろいろな議論がありました。しかし、一旦決めた以上、我々は党内をしっかりまとめてこの場に臨んでいるわけでございます。

 民主党の中のこういう意見について、総理がリーダーシップを発揮していない、ガバナンスを発揮していない、このように思いますが、総理、これからの参議院審議を控えてどのような御決意でしょうか。

野田内閣総理大臣 斉藤委員の御指摘のとおり、特別委員会で百二十九時間という総質疑時間でございました。それだけ熱心な御議論をいただいた中で煮詰まってきた論点を踏まえて三党間での政策協議を行ったわけでございますので、密室で勝手に特定の人が決めた話ではございません。十分これまでの議論を踏まえた対応をしたものだと思います。

 そのことは、これからもきっちりと国民の皆様にもお訴えしなければいけないと思いますが、それに関する、残念なことでありますけれども、多くのいわゆる造反者が出たことは、民主党の党の代表として深くおわびを申し上げたいというふうに思います。今、その処分をどうするかというプロセスにありますけれども、党のルールに従って、厳正に対処をさせていただきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 また、再修正というような議論も民主党の中にあると、私は実際聞いたわけではありませんからわかりませんけれども、報道によると、そのような話もあるそうでございます。

 しかし、これは、この三党協議、三党合意の信頼関係を基盤から崩すもの、このように思います。もちろん、参議院で審議をするわけです、その審議の中ですばらしい案が出てくるかもしれない。その可能性を否定するものではありませんけれども、参議院で審議に臨むに当たって、この三党合意をしっかりベースに、再修正ありき、それでは全くこの信頼関係を崩すものである、このように私たちは申し上げなければなりませんが、総理のお考えをお伺いします。

野田内閣総理大臣 お互いに固有の政策を持っていますけれども、まさに国民のために、社会保障の持続可能性を担保し、そして安定財源を確保するという観点から、譲り合うところは譲り合ってできた三党合意でございます。その公党間の合意というものは大変重いものと思っております。基本的には、この三党合意を踏まえて参議院で御審議をいただき、採決を目指したいと思います。

 一般論として、斉藤委員御指摘のとおり、例えば、少数会派の方も含めてさらにいいアイデアがあって、三党が、ああ、それはいいねというのなら、それは修正の可能性はあるかもしれません。これは違うハウスでの議論ですから、そこの可能性はあると思いますが、何かを修正することを前提に今から考えているということはあってはならないというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 そして、この社会保障と税の一体改革が成立した後は、解散して国民に信を問うことが最低限の筋だ、私はこのように思います。

 自民党と公明党は、与党時代、平成二十一年の税制改正で、社会保障の持続可能性を高めるためには消費税を含む税制の抜本改革を行わなければならない、野田政権流の言葉で言えば、一体改革を行わなければならない、もともとそういう認識でございました。

 しかし、民主党の皆さんは違います。さきの衆議院のマニフェストでは、消費税という言葉は一つも出てこなかった。総理は審議の中で、四年間は上げないけれども、八%に上げる平成二十六年四月は四年を過ぎたその後だと。これは私は詭弁だと思います。

 マニフェストに書いていなかったことをやろうとおっしゃる。私はそれを責めるつもりは全くありません。ある意味では、この一体改革が必要だというのは、我々の考え方がやはり正しかったんだ、あの平成二十一年の与党の考え方が正しかったんだというふうに考え方を変えられたわけですから、私はそれを決して責めるものではありません。しかし、今与党の民主党としては、その大きな方針を変えたのであれば、一体改革成立後は国民に信を問うということが、政治の筋として、そして政治に信頼を取り戻すために必要だと思いますけれども、総理のお考えはいかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 マニフェストに掲げたことは、任期中に実現できるようにこれからも最大限の努力をしていきたいと思います。

 一方で、今回の一体改革、国民の皆様に御負担をお願いする消費税の引き上げについては、マニフェストに記載しておりませんでした。でも、これは将来世代を考えて、そして今の社会保障も考えたときに、どうしても避けて通れない、待ったなしの改革であるということはきちっと御説明をしていかなければいけないと思いますし、今回の一連のマニフェストの総括も含めて、国民の皆様に信を問うときにはきちっと、何ができたか、できなかったか、でも、書いてないことはなぜやったのかということも含めてお示しをしながら御判断をいただきたいと思いますが、これは一体改革だけではなくて、まだやるべきことがあります。やるべきことをやり抜いた後に国民の皆様の信を問いたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 今の御答弁を聞いていますと、今回、命をかけてやるとおっしゃっている、このことを既にかなり相対化して、総理の心の中では相対化されているんじゃないかなという危惧が生まれてきました。

 マニフェスト、それは確かに、できたものもある、できなかったものもある、こういうおっしゃり方をするんですが、根本はやはり、民主党が政権をとれば一年間十六・八兆円のお金が無駄を排してすぐ出てくる、これが一点。そして、消費税はだから上げないということだったんだと思うんです。

 消費税については書いてないということですけれども、この基本の二つ、一つは、その十六・八兆円が出てこなかった、そして、何も書いてなかった消費税を上げるということですから、そのほかのいろいろな細かい、マニフェストができた、できないということではなくて、また、ほかにまだ残っていることをやり遂げてからということではなくて、柱になっているこの二つ、この二つを今回大きく変えたわけですから、別に、先ほどから申し上げているように、変えること自体が悪いと私は言っていません。でも、変えたわけですから、ここは国民に信を問うて、堂々と進むべきではないか。もう一度お答えください。

岡田国務大臣 私、当時の幹事長として、ちょっと委員の今の御指摘は少し理解が違うんです。

 十六・八兆ということを申し上げたことは事実ですね。それが全部はできていないということもおっしゃるとおりであります。そこに我々は反省しなければいけない点もございます。ただ、それをやるから消費税を上げなくていい、そういう脈絡ではないんです。十六・八兆は我々の新しいことに使うと、マニフェスト上、はっきりそれを書いているわけです。

 例えば、一部実現している農業の戸別所得補償方式の導入とか、高校の授業料無償化とか、あるいは高速道路の無料化、これはできておりません。そういった新しい政策のために十六・八兆を使うということで、それは歳出歳入にわたってきちんと一覧表にして出しておりますので、これは、やれば消費税を入れなくていい、消費税にかわるものだ、そういう位置づけでは決してございません。

野田内閣総理大臣 解散は、再三再四お答えをしているように、やらなければいけないことをやり抜いた後に国民の皆様に信を問うということであります。

斉藤(鉄)委員 岡田さん、十六・八兆、このお金が出てくれば税制の大きな抜本的な改革はしなくていい、こういうふうな趣旨の訴えをされておりましたよ、選挙のときは。だから、今の御答弁は少し国民の理解と違うということだけ申し上げておきます。

 それでは、次に三党合意についてちょっとお話をさせていただきます。

 一体改革の必要性については、我々も、平成二十一年の所得税法改正案附則百四条、有名な附則百四条に書きました。先ほど来話がありましたけれども、社会保障百十兆、毎年三兆円ずつ伸びている。そのうち税で負担しているのが四十兆、これは国と地方を合わせてですけれども、国負担分だけでも二十六兆ですか、毎年一兆円ふえている。こういう状況の中でこれを放置するわけにはいかない。だからこそ、我々は平成二十一年に、消費税を含めた税制の抜本改革が必要だということを法律に書いたわけでございます。

 そして、そのときに、しかし安易な増税は許さないということで、五つの条件プラス一ということを、簡単に言うと六条件ですけれども、法律の中に書き込みました。これがその六条件でございまして、社会保障制度の具体案を示す、景気の回復、消費税の使い道を社会保障に限定、税制全体の改革の実行、行政改革の徹底、そして低所得者対策の実施。プラス一と言っているのは、この低所得者対策の実施、ある意味で当然のことだからでございます。こういう条件を示しました。

 そして、今回、この六条件が、先ほど申し上げましたように、ほぼ、ある一定程度前進をした、このように我々判断をし、賛成をしたわけですけれども、例えばこの一番上の社会保障制度、ちょっと、たくさんあり過ぎてなかなか言えないんですが、例えば子育てについては先ほど説明があったような充実が行われます。そして、年金についても、基礎年金の半分、二分の一は国庫負担をする、その恒久財源が今回できました。ある意味で、二〇〇四年の、あの坂口厚労大臣の年金改革がこれで完結をしたわけでございます。

 そして、その上に、低所得者への年金加算、それから受給資格期間の短縮、それから短時間労働者への厚生年金適用拡大、産休期間中の保険料免除、これは国民年金も含めてです。厚生年金と共済年金の一元化、遺族基礎年金の対象拡大、そして年金制度、高齢者医療制度については国民会議で一年以内に結論を得る、そして、その確認なしに消費増税はしないという歯どめも法律の中に書き込みました。これはもう社会保障置き去りという批判は全く当たらない、このように思いますが、改めて総理、御答弁ください。

野田内閣総理大臣 ありがとうございます。全くそのとおりでございまして、社会保障を置き去りにしたというわけではなく、年金あるいは子ども・子育てを含めて、しっかりと充実させるところはさせる、安定化させるところはさせる、そういう改革になっております。

斉藤(鉄)委員 次に、この一番下ですけれども、低所得者対策ということを確認したいと思います。

 低所得者対策、つまり消費税は低所得者の方により負担感の大きい税制である、逆進性が高いという言葉を使いますけれども、こういう税制であって、低所得者対策が必須である、これは我々の共通認識だと思います。

 当初の政府案では、この低所得者対策をいつから行うのか、明確ではありませんでした。そして、その中身も、給付つき税額控除、そしてそれができるまでは簡素な給付措置、このような中身だったわけでございます。

 今回、三党合意で二つのことがつけ加えられました。一つは、八%に上げる段階から低所得者対策をしっかり行う。政府案ではいつからやるか不明確だったんですが、今回の三党合意で八%段階からやるということが明確になった。もう一つは、その低所得者対策のメニューに新しいメンバーが加わった。それは、いわゆる軽減税率、複数税率ともいいます。この軽減税率の登場でございます。つまり、よく米、みそ、しょうゆといいますが、基礎的な、例えば食品でありますとか、そういう生活必需品については税率を低く抑えるという方法でございます。

 したがいまして、ちょっとこれをまとめて言いますと、八%に上がる段階での低所得者対策の具体策は二つ選択肢があって、一つは簡素な給付措置、もう一つが軽減税率です。そして、一〇%に上がる段階では選択肢が三つになって、法的には、法律を正確に読むと三つあって、簡素な給付措置もしくは給付つき税額控除もしくは軽減税率、この選択肢ということになります。

 まず総理に、八%段階からしっかり低所得者対策を行うということについて、政府の認識と総理の決意をお伺いします。

野田内閣総理大臣 政府としましても、修正案に示されました方針及び今回の三党合意文書にも示された趣旨に沿いまして、具体化に向けた検討を行い、低所得者対策を消費税率が八%に引き上げられる時点から実施してまいりたいと思います。

斉藤(鉄)委員 八%段階からしっかり行うということでございます。

 この三党協議の中で、私も参加をさせていただいて感じたのは、政府そして民主党さんは、この中で、軽減税率に対しては、複数税率に対しては余り積極的ではないということを率直に感じました。

 確かに、全ての方法に一長一短、メリット、デメリットがございます。この軽減税率について言うと、デメリットは、線引きが非常に難しいとか、政治家の利権の温床になりやすいとか、この品目については税率を下げるよというようなことは政治が決めるわけですから、利権の温床になりやすい等のデメリットがありますが、メリットは、私自身、地元に帰っていろいろ議論をする中で、低所得者対策として最も理解が得やすいのが、実はこの軽減税率です。

 低所得者対策としての理解だけではなくて、最近感じますのは、消費税そのものの理解についても、この軽減税率の存在が非常に大きいのではないかな、このように感じます。(発言する者あり)今、現場の声だよという不規則発言がありましたけれども、まさにそのとおりでございます。

 そして、これは、先ほど申し上げましたように、八%段階から選択肢に入りました。私は、ここが重要だと思うんです。八%にするときにこの軽減税率を考えるということは、必需品については五%がベースになるということでございます。一〇%になるときに考えればいいというのは、ベースが八%になるということでございまして、現場の声は、例えば米、みそ、しょうゆと言われるようなものについては、やはり今の税率、五%がベースになるのではないかという感覚の方が多い。

 そういう意味では、八%段階から考えるということであれば、この秋の税制改正から議論を始めなければなりません。八%になるのが一年半後ですから、この秋からこの制度について考えなくてはいけないかもしれません。

 また、複数税率というシステムを練習するという意味でも、早目に議論を始めておいた方がいい。八%から始めても一〇%から始めても同じようなシステムになるわけです。そういう意味では、総理また政府としても、先ほど申し上げましたように、どうも政府・民主党はこの軽減税率に対して消極的だという印象を受けました。いかがでしょうか、総理。

岡田国務大臣 軽減税率についてのメリット、デメリット、今委員に御指摘をいただきました。私も同じ思いでございます。

 最大のメリットはわかりやすさだと思います。ただ、必需品というときにどこまで広げるのかという問題はございます。特に、それを五%ということで、全体が一〇になったときに五にとどめるということになりますと、ただ食料品だけということになってもかなりの金額になりますし、さらにそれを拡大するということになれば、さらにお金が必要になりますから、逆に言うと、近い将来一〇では足らなくなるということも起こり得る、あるいは、我々が想定してきた社会保障に充てるということの金額が減ってしまうということになるわけで、そういったことについてよく検討する必要があると思います。

 民主党の方は、あるいは政府としては、従来から給付つき税額控除ということを申し上げております。これの最大の問題は、本当に所得の少ない方をどうやって正確に捕捉するのかというところにあるというふうに思います。メリットは、うまくいけば本当に困っている人に届けることができるということで、全体の必要なお金は少なくて済むかもしれないということでございます。

 そういうメリット、デメリットについて、まさしく三党中心によく御議論いただいて、どちらがいいのかということをお決めいただければというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 一長一短があります。そこをしっかり、どうすれば最も国民の皆さんに納得していただける低所得者対策になるかということを議論しなくてはいけないと思います。

 低所得者対策ではないんですけれども、被災地特例ということを考える必要があるのではないかということをちょっと御提言申し上げます。

 八%に上がる、また一〇%に上がる、ちょうどその時期は、東日本大震災の被災地におきまして、住宅取得、それから移転が一番多くなる時期と重なるわけでございます。そういう被災者の方々にこの消費税増税は非常に大きな負担をしていただくことになる。

 消費税のシステムで被災地だけ何らかの救済措置を与えるというのはなかなか難しいかもしれません。別な制度でその負担感を和らげる、負担をなくすという措置になるのかと思いますが、この被災地特例について、消費税増税に当たってぜひ考えるべきと思いますが、財務大臣。

安住国務大臣 私どもも前向きにやろうと思っております。

 今先生からも御指摘いただきましたように、ちょうど引き上げの時期が住宅再建の時期とぶつかる可能性が高い地域が多うございます。ですから、そういう点からいえば、私どもも実は、閣議決定を三月三十日にしたときに、「検討課題に対する法案提出後の対応の方向性」ということで、次のようなことを書いております。消費税の税率の引き上げに当たっても、住宅を失った被災者の方々が恒久的な住まいを確保する際には、地域全体のまちづくりを進める中で支援を行うなど、被災者の方々の負担緩和への配慮というものをやっていきますということは明記しております。

 これは消費税の中で、軽減税率のお話がありましたけれども、基本はやはり単一税率でやるとして、そのほかの何らかの形で被災地の方々に対する住宅再建に対しては特段の配慮を工夫していかなければならないと思いますから、政府としても積極的にいろいろな提案をいたしますけれども、公明党の皆様からもぜひいろいろな御提案をいただければと思っております。

斉藤(鉄)委員 これはぜひ御検討いただきたいと思いますし、我々も提言をしていきたいと思っております。

 次に、この六条件の中の四番目にありますが、税制全体の改革の実行という点でございます。

 今回、三党合意で、消費税という大衆課税を行う以上、公平感の観点から、所得税ないしは資産課税で担税能力のある裕福な方には少し御負担をいただこう、累進性を上げるべきではないか、このような議論の結果、今年度のといいますかこの秋の税制改正で、累進性を高めるという方向性で議論するということになったものでございます。

 特に所得税については、今、所得課税が千八百万で、ですから名目は二千数百万の人になろうかと思いますが、所得税率四〇%、以上上限なしでございます。やはりこれを、例えば三千万とか五千万というところに区切りを置いてブラケットを一つ設ける、そして五%ずつ上げていくというようなことも必要になってくるのではないか。

 また、相続税については、相続税を払う人は、バブルの前で百人のうち八人だったそうですが、今は四人に減っているということだそうでございますので、基礎控除の引き下げ等が必要になってくるのではないか。と同時に、資産移転が起きやすいように、贈与税についてはこれを下げるということも同時に必要かと思いますが、このような税制全体の改革、これも必要だと思います。

 財務大臣、どのようにお考えでしょうか、簡潔にお願いします。

安住国務大臣 特別委員会では斉藤先生からも御指摘を随分いただきまして、私も、方向性としては政府と公明党の考え方は同じだと思います。

 所得税につきましては、今の税率をやはり収入の高い方に少し御負担をお願いする方向で、また、相続税や贈与税についても、今、お亡くなりになった方百人のうち実際課税をお願いしているのは本当に四人程度でございますので、何とかこれを広げさせていただいて、バランスというものをもう一度再構築させていただきたいと思っております。

 法案からは落ちましたけれども、年度改正において、三党でこの方向性に沿って協議をするとなっておりますので、具体的な提案をぜひさせていただきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 次に、二番目にあります景気の回復でございます。

 やはり現場で話をしていますと、この景気の悪いときに消費税を上げられたら、もううちの会社は潰れる、どうしてくれるんだという声はたくさんございます。

 当初の政府案には、附則第十八条に努力目標が掲げてありました。名目成長率三%、実質成長率二%を目指すということでございます。今回、三党合意で、この十八条に第二項目めを加えまして、けさもお話がありましたけれども、具体的な景気・経済対策、こうやって景気を向上させるんだということが第二項目めに加わりました。

 そして、第三項目めにあります、「前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止」、つまり消費税を上げないということですね、「その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」という文言。そして今回、法律にはなっておりませんが、三党合意の部分で、「消費税率の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。」という文章が加わりました。

 このことは、つまり、政府案ではただ景気が上がるように頑張りますという努力目標だけが書かれていたんですが、今回の三党合意によって、景気が悪かったら、また、景気の回復なしに消費税を上げることはしないという歯どめが明確にかかった、このように理解をしておりますが、総理、その理解で総理も理解されておりますね。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、附則の十八条でありますけれども、向こう十年間、名目成長率三%、実質成長率二%という政策目標を掲げながら、御指摘のあった二項で、それをどうするかという各党のいろいろな御意見を調整しながらの項目を入れさせていただきましたし、当然のことながら、その経済の状況、さまざまな指標等を勘案しながら判断をする、そういう全体の流れになっていますし、そのときの政権のまさに総合的な判断にかかってくるというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 総理は、消費税増税に命をかけるとおっしゃっている。ということは、景気の回復がなければ消費税増税はできないという歯どめが今申し上げましたようにかかったわけですから、景気回復に命をかける、こういう御決意で臨まれる、その点だけ確認します。

野田内閣総理大臣 一体改革を実現させるためにというよりも、まさに、日本の今大きな課題は経済の再生でございます。デフレ脱却と経済の活性化、政策の総動員を行いながらしっかりとやり遂げていくということで、一体改革をやるからというよりも、それも含めて強い決意で経済の再生を図っていきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 そして、その具体的な景気・経済対策、第二項目めに書きました具体的な景気・経済対策ですけれども、事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することによって経済の成長を図っていくということが入ったわけでございます。

 この事前防災及び減災について、我々公明党は防災・減災ニューディールという政策を発表させていただいたわけですけれども、最近、その財源については、今回消費税を上げた財源を使うのではないかというようなことが言われております。それは全くの誤解でございます。消費税引き上げ分は、ずっときょうも議論がありますように、社会保障に使われる、特に国費については社会保障に使われる、こういう仕組みになっておりますので、そのことを申し上げておきたいと思います。

 その防災・減災ニューディールの基本的な考え方ですが、「予防保全によるライフサイクル・コスト縮減」という図を見ていただきたいと思います。図が二つございます。いずれも横軸は年数でございます。

 そして、上の図は、例えば、これは何でもいいんですけれども、道路橋、橋でも結構です、ダムでも結構です、そういう公共構造物、その公共構造物の施設の健全度を示しております。時間がたてば健全度が落ちてくる。使用限界ということがございますが、そこまで落ちてくるのに、例えば五十年とか六十年とか、鉄筋コンクリート構造物の寿命ということが言われております。

 予防保全によるライフサイクルコストの縮減、これが防災・減災ニューディールの基本的な考え方でございますけれども、使用限界まで来てこれを補修するということを繰り返しておりますと、下の図がそのかかるコストでございます、非常に大きなお金がかかってしまう。それに至るまでに予防保全による小規模な補修を行うことによって、コストを大幅に下げることができる。そして、命を守るためにこの公共構造物の補修はしなくてはいけない、どっちみちしなくてはいけないお金でございます。それを集中的に、そして予防保全の措置とやることによって安くやるというのが基本的な考え方でございます。

 このことをぜひ理解していただきたいのと、次は、ただ公共事業をまた復活させるのではないかというような批判がございますので、そうではないということを示した図でございます。

 あくまでも、これから考えられる、右下にございます、多発する地震、また気候変動への適応。台風、大雨、竜巻等、気候変動によるのではないかと思われる自然災害も多発してくるようになりました。この自然災害に備える。そして、左上ですけれども、自助、共助、公助の基盤をしっかり支えることによって地域防災力を強化する。そして左下、事業コストの圧縮。先ほど申し上げました、予防保全の考え方でライフサイクルコストを削減する。そして右上、これを計画的に行うことによっていわゆる予見性を高める、また、集中的な投資を行うことによって景気の回復を図っていく。

 それらを通じて、目的は、命を守るということでございます。災害に強い国づくりで安心と活力を生む、このような考え方が防災・減災ニューディールでございます。

 この考え方は、総理、附則十八条の第二項に入れた今回の景気回復のための重点投資、この趣旨に合致するものだと我々は考えますが、総理のお考えをお伺いします。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、附則十八条第二項に明記されてございます。「我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」、こういう形で明記をされておりますので、これまでも、学校であるとか病院の防災については力を入れてきたつもりでございますが、これからも真に必要な、命にかかわるインフラについては、この考え方にのっとって対応していきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 したがいまして、先ほど、前の質問者がとらぬタヌキの皮算用というようなお話をされておりましたが、消費税の財源を当て込んでいるのではなく、我々が長期的に、基本的にこの国を守るために、そして命を守るために行っていかなくてはいけない社会資本のメンテナンス、これを計画的に、また安く行うことによって経済へも効果をもたらしていくんだという基本的な考え方だということをもう一度申し上げておきたいと思います。

 それから、経済対策の一環ですけれども、転嫁対策。

 これは、現場を回りまして、いやあ、我々下請は、結局、消費税が上がってもその分を元請に請求できない、もしくは、請求できたとしてもいろいろな無理難題を言われるんだと。例えば、デパートに行って、そこにある靴下の値札を全部おまえの責任で変えろ、このようなことを言われる。だから、この転嫁対策ということ、また無理難題を言われるということに対して十分政治も目を配ってほしいということを何度も言われます。

 今回、独占禁止法、下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずる、このように三党合意で、独禁法、下請法を改正してまでこれにちゃんと対応するぞということを明確にしたわけでございますけれども、総理のこの転嫁対策への決意。

 それから、転嫁対策といいましても、どうしても中小企業庁や公正取引委員会だけの対応になるんですが、現実には、各業界を見ている各省庁、この各省庁が全力を挙げて連携しながらやらないと、中小企業、零細企業を守っていくことにならない、このように思います。

 もう一つ、表示カルテル。やはり、転嫁をスムーズにするためには、総額方式に、総額方式はやらなきゃいけないんですが、このうち税額はこれだけかかっていますということを表示させてもらった方が転嫁しやすい、元請に請求しやすいという声もございます。しかし、それを業界で申し合わせてやるとカルテルになるんだそうです。そういうことに対しての措置、こういう転嫁対策も全力を挙げてやらなくてはいけないかと思いますが、これは、法改正等、また非常に独立性の高い公正取引委員会との調整等ございます。総理の御決意を伺います。

松原国務大臣 今回の税率引き上げが二段階にわたるものであることもあり、中小零細事業者を中心に、消費税の価格への転嫁について懸念が示されていることを踏まえれば、過去の消費税導入時、引き上げ時を上回る転嫁対策が必要である。

 三党による修正案でも、独禁法や下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずるとの規定がつけ加えられており、政府としては、この規定も踏まえ、立法措置の具体的な内容について検討を進めてまいりたい。

 取引上優越した地位にある事業者が消費税の転嫁を拒否する等の行為については、被害を受けた中小零細事業者の方々から告発を期待しにくいため、情報提供を受け身で待つだけではなく、積極的な監視、取り締まりを行うための体制を整備することが必要不可欠である。

 このため、政府が五月三十一日に取りまとめた中間整理では、公正取引委員会、中小企業庁は、各所管省庁と連携して、積極的に違反行為等の情報収集、調査を行うこととし、時限的に人員を拡大するなど、転嫁状況に関する監視、検査体制の強化を図るなど、方針を示している。政府としては、この方針のもと、政府一丸となって違反行為の効果的な取り締まりを図ってまいりたいと思います。

 それから、カルテルですね。いわゆる表示カルテルについては、必要に応じ、独占禁止法の適用除外とするための法的措置を検討するとの方針が示されております。この方針に沿って政府として具体策の検討を進めているところ、表示カルテルの独占禁止法適用除外制度について公正取引委員会においても積極的に検討を進めているところであります。

 以上です。

斉藤(鉄)委員 松原大臣、その棒読みは余りにひどいじゃないですか。しっかりやっていただきたいと思います。

 以上、この六条件について大きな成果が得られてきたということで、今回、我々、合意に賛成をしたということを申し上げさせていただきます。

 あと時間が三分ですので、原子力の問題、総理に一点、これは重要な問題です。

 今回、原子力規制委員会法、この中で、いわゆる保障措置、IAEAの査察の問題を文科省から原子力規制委員会に一元化しました。そのことで安全保障という言葉を使ったわけですけれども、これが原子力基本法の方に波及をして、日本の原子力の平和利用について、基本姿勢が変わったのではないかという疑念がございます。その疑念はない、あくまでも非核三原則を堅持し、核武装を行わない方針に変わりはないということを総理から明確に御答弁いただきたい。

 それから、国会事故調の報告が出てまいりました。その事故調の中で、本来、この事故調の報告ができて、それを受けて規制委員会をつくる、そういう時間的順番でなくてはいけない、我々もそう思ったわけですが、基本的に、今回国会事故調が規制委員会の規制のあり方について出してきた提言は、前回三党でつくりました非常に独立性の高い原子力規制委員会、あの内容と、ほぼといいましょうか、一致をしているということで、我々も安心をしているわけですが、基本的には再稼働も、その新しい規制委員会が自分たちのつくった新しい基準で再稼働の判断をするという方向に早く行かなくてはいけない。

 ちょっと三つ、ぱぱぱっと、もう時間がありませんので質問をしましたけれども、最後、総理の御決意を伺います。

野田内閣総理大臣 まず、原子力規制委員会設置法の一条と、それを踏まえての改正原子力基本法第二条において「我が国の安全保障」という文言が規定をされましたけれども、端的に言えば、疑念は無用であるということでありますし、野田内閣として非核三原則を堅持していく方針には変わりございません。

 それから、このたび発足する規制委員会のもとで新たな安全の基準をつくっていただいて、その後についてのいわゆる再稼働についての判断はその基準がベースになるということでございます。

斉藤(鉄)委員 まだ時間があるようでございます。

 二番目の質問、つまり、国会の事故調査委員会が出してきた新しい規制庁のあり方、その提言と、今回、ちょっと時間的に前後してしまったんですけれども、成立をした規制委員会のあり方、これは考え方が基本的に合致している、時間の前後はありましたけれども、独立性の高いものができたということの確認を、総理として、その確認をしたいと思います。

中井委員長 野田総理大臣。時間ありません、一言だけ。

野田内閣総理大臣 時間の前後はありましたけれども、考え方は基本的には一緒でございます。

斉藤(鉄)委員 終わります。

中井委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、米軍の垂直離着陸機オスプレーについて質問をいたします。

 アメリカ政府は、先月二十九日、普天間基地にオスプレーを配備することを正式に政府に通報いたしました。今月下旬には岩国基地に陸揚げをし、そして試験飛行を行った上で、十月初旬にも普天間基地で本格的な運用を開始しようとしております。

 防衛大臣はそのときの記者会見で、地元を説得できる自信はない、このように述べました。ところが、その翌日から沖縄、山口両県を訪れて、アメリカの配備方針をそのまま伝えたのであります。

 総理に伺いますが、防衛大臣の訪問は総理の了解のもとに行われたものですか。

野田内閣総理大臣 防衛大臣がオスプレーの配備について、沖縄県そして山口県、岩国市、それぞれに御説明に行くということは事前に私も聞いておりました。了解をしておりました。

赤嶺委員 防衛大臣みずからが説得できる自信がないというこんな方針、なぜ伝えに行くんですか。

 しかも、防衛大臣が沖縄を訪れたのは六月三十日ですよ。六月三十日というのは、ちょうどその日は、沖縄で五十三年前に、うるま市の宮森小学校に嘉手納基地のジェット機が墜落をして、そして同窓生やその当時の先生方が慰霊祭を行っていたその日なんですね。その日に、オスプレーの配備、内容に自信はないけれども説明に行く、こんなことはあり得ない話ではありませんか。

 沖縄では、六月三十日に、宮森の日にオスプレーの配備の説明に来る、どういう政府なんだ、沖縄のことを何もわかっていない、六月三十日をどういう日だと思っているんだ、このような声が上がっています。

 総理、このような声をどのように受けとめられますか。

森本国務大臣 総理の許可をいただきまして、沖縄県及び岩国、山口に参上して、今回の接受国通報の内容を、背景説明を行うとともに、むしろ、地元がこれをどう受けとめておられるのか、そのことを今後の我々の対応策に活用するためにどのような方法があり得るのかということを率直に御意見を伺いに両方参ったわけです。

 確かに宮森小学校の事件は知っていましたが、岩国市、山口県、並びに沖縄をどういう順序で訪問するかについては、土日でもありましたので、これはこちらの予定だけで計画ができるわけではなく、受け取る方の御日程にも予定がありましょうから、両方とも協議をして、順序が今のような状態になったこと。特に、山口県は、まず、問題のオスプレーは沖縄に配備するのであるから、沖縄に先に行って沖縄に御説明の上、山口県に来ていただきたいということを言われましたので、全部の日程を調整して、先生の御指摘は確かに承りますけれども、事前にそれは知っておりましたけれども、そういう日程になったわけでございます。

 自信がないからということは、私が言葉をいかように説明しても、十分私は説得する能力というのが必ずしもないだろうと。むしろ、そのことよりも、地元の御意見を率直に伺うことがこの際重要であると思って参上したわけでございます。

赤嶺委員 こんなの、森本大臣、詭弁ですよ。これを許した総理も総理ですよ。

 宮森小学校のジェット機墜落というのは、十八人の犠牲者を出しました。その翌々年に、うるま市の川崎にやはりジェット機が墜落をいたしました。ベトナム戦争のときには、嘉手納の弾薬庫の横にB52爆撃機が墜落をいたしました。そして、沖縄国際大学のヘリの墜落です。戦闘機が墜落をする死の恐怖、墜落の恐怖、これは県民の記憶として残っているんです。

 そういうことについて、何の考えも持たずに、たまたま都合が合ったから沖縄を先に行きました、了解ください。了解できるものじゃないですよ。やることがそもそも間違っているということを厳しく申し上げておきたいと思います。

 それで、次に、オスプレーの安全性について具体的に聞いていきます。

 オスプレーは、開発過程で四度の重大な墜落事故を引き起こし、三十人の犠牲者を出したいわくつきの軍用機であります。政府はこれまで、二〇〇五年の量産開始以降は安全性に問題はない、このように説明してきましたが、その後も、二〇一〇年にはアフガニスタン、ことし四月にはモロッコ、六月にはアメリカのフロリダ州で墜落を繰り返しています。

 まず、モロッコの事故について伺いますが、オスプレーは、ヘリのように飛行することも、また、左右に取りつけられたプロペラを前方に傾けることによって固定翼機のように飛行することもできる軍用機であります。ヘリ機能で離発着し、そして固定翼機の機能で飛んでいく。アメリカ政府は、モロッコの事故について、機体にふぐあいはなかった、このように説明する一方で、追い風を受けているときにプロペラを前方に傾けたからと指摘しています。

 モロッコの事故報告について、防衛大臣、そういうことですね。

森本国務大臣 四月に、海兵隊に配属されているオスプレーMV22が訓練中に事故を起こしたことは事実でございます。現在まだ調査中と聞いています。今先生の御指摘のような中間報告が出たことも承知しております。

 我々は、最終的な事故調査報告を待っているところですけれども、少なくとも、今までの調査の途中経過を見て、この機体に機械的なふぐあいあるいはシステムとしてのふぐあいはなかったということを聞いております。アメリカは、この事故にもかかわらず、この同機、MV22というオスプレーを引き続き運用しているということも承知しております。

 我々は、この事故調査報告ができるだけ速やかに日本側に通報され、その事故調査報告の中に同種の再発事故を防止する具体的な策がとられるよう、アメリカに強く申し入れているところでございます。

赤嶺委員 防衛大臣、沖縄で繰り返し起こってきた事故のたびに、米軍なんか訓練の中止なんかやらないですよ。むしろ、訓練をやっているから安全だという安全の証明にして、余計恐怖に陥れているんですよ。防衛大臣も、モロッコの事故以降も米軍は訓練を続けているから安全だなんて、こんな理屈、通りませんよ。むちゃなことをアメリカがやっているということじゃないですか。モロッコの中間報告とおっしゃいましたけれども、まるでパイロットの操縦が問題だったと言わんばかりの説明であります。

 オスプレーの開発に携わったレックス・リボロ主席分析官、去年の八月、私がこの委員会で取り上げた方ですが、最近はよく日本のメディアにも登場されておりますが、モロッコの事故について次のように指摘しています。

 モロッコの事故はオスプレーの典型的な事故でした。パイロット席にはプロペラの向きを変える小さなボタンがある。これを前方に動かし過ぎると墜落する。ボタンをさわっただけで機体を墜落させる可能性があるのがオスプレーの特徴です。このように指摘しているわけです。

 事故発生の当時は、日中、しかも天候は晴れであります。そのようなときに、パイロットによるわずかな操縦ミスで墜落するなら、そもそもこの機体が極めて墜落しやすい構造だ、そういうことではありませんか。

森本国務大臣 モロッコの事故については、今説明申し上げたとおり、米側は事故調査の途中でありまして、我々に知らされている情報は、先生が先ほど御説明になりましたように、訓練中に、乗員をおろして、そしてオスプレーが上昇しようとするときに、百七十度回転をして、機首を上昇というか上に上げ、この飛行機は回転翼のモードとそれから固定翼のモードをコンバージョンする、つまり転換する、ナセルを動かして転換するわけですが、転換するときに、上昇しながら頭を下側に突っ込んで事故を起こしたというのが中間報告の内容です。

 繰り返しになりますが、真の事故原因については、まだ我々は通報を受けていません。ただし、この飛行機が海兵隊に配備されているオスプレーであるということでありますので、我々は、同種の事故を再発防止するための措置がとられること、並びに、飛行の安全ということをアメリカ側が確認しても我が方が別途の手段で飛行の安全を確認するという手段をとって、この飛行機の飛行の安全性を確認しようと考えています。

 なお、データだけを見ると、モロッコで使っていた海兵隊のオスプレーMV22というのは、今まで十一万五千時間使っていて、事故率は計算によると一・九三。海兵隊が持っている全ての航空機の事故率二・四五よりも安全性は高いというデータが出ているわけです。これは過去の事故率のデータであります。

 いずれにせよ……(赤嶺委員「質問だけに答えてください。次の質問ですから、それは」と呼ぶ)わかりました。いや、私は、この飛行機の安全性について御質問があったので、事故率について引用したわけでございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 今、防衛大臣は、オスプレーは安全だということを一生懸命私に説明しようとしたんですか。

 私は、モロッコの事故原因は、ちょっとしたパイロットの操縦ミスで事故につながる、そういうことを、アメリカのオスプレーの開発に携わった主席分析官の発言を伺ったわけであります。

 オスプレーの安全性について、事故率も含めてこれから聞いていきます。

 オスプレーの安全性については、これまでさまざまな問題点が指摘をされてきております。中でも致命的な欠陥として挙げられたのが、いわゆるオートローテーション、自動回転機能の問題です。オートローテーションとは、飛行中に仮にエンジンが停止しても、機体が降下するときの空気の流れからプロペラを回して着陸する機能のことであります。

 まず、これは国土交通大臣に伺いますが、日本の航空法ではオートローテーション機能のないヘリの飛行は禁止されております。その理由を説明していただけますか。

羽田国務大臣 航空法においては、民間の回転翼航空機について、国際民間航空機関、ICAOの定める国際基準を受けた航空法の規定により、自動回転飛行、オートローテーションが可能なことが必要である。これにより、飛行中に全エンジンが不作動となった状態でも、自動回転飛行、オートローテーションに移行することで安全な着陸を確実にしているところであります。

赤嶺委員 日本では、航空法に基づいて、オートローテーション機能のないヘリは飛行が禁止されている。その理由は、今国交大臣が述べられたとおりであります。航空機の安全を保つ上で絶対に必要な国際的な基準であります。

 ところが、オスプレーはオートローテーション機能に重大な欠陥があることが指摘をされてまいりました。先ほど紹介したリボロ氏は、オスプレーのオートローテーション機能は一度も実証されたことはなく、私も多くの専門家も非常に疑わしいと考えています、このように述べているんですね。

 防衛大臣、伺いますが、オスプレーのオートローテーション機能は実証されているんですか。

森本国務大臣 先生御指摘のように、オートローテーションというのは、そもそも、エンジンがとまった場合に、特に回転翼の航空機が飛行中、エンジンからの出力によらずに空力によってのみブレードを回転させるという手段でありますけれども、二つのエンジンが、今まで十万時間以上飛行して、オートローテーションが必要な状況になったことはないというアメリカ側の説明を受けています。

 アメリカ側からは、このMV22がオートローテーションの機能を持っているという説明を我々は受けていますが、そもそも、この飛行機がオートローテーションになるときには、回転翼の場合、当然のことながら、直下して落ちるというのではなくて、揚力を得るために適切に回転翼のナセルを使って前に前進をしながら降下率を緩和するというか、緩やかにしながら緊急着陸をするというシステムになっており、そのことはオスプレーのパイロットは全て必要な訓練を受けている、かように承知しております。

赤嶺委員 アメリカから説明をされた必要な訓練を海兵隊のパイロットも含めて実際にやっているんですか。つまり、実際、実証されているんですか、こういうことを今私は聞いているんです。アメリカが、エンジンの故障はなかったとか、オートローテーション機能はあると説明されているとか、説明を聞いているんじゃないんですよ。アメリカの専門家が、オートローテーション機能は実験、実証がないと言われている。それについて、あるのかないのか、答えていただけますか。(発言する者あり)

中井委員長 傍聴席は静かにしてください。

森本国務大臣 MVの22という海兵隊が使っているオスプレーは、オートローテーション機能を持っていて、しかしながら、十万時間以上飛行して、このオートローテーションを使って緊急着陸をするような事態には今まで至っていないということです。

 パイロットが訓練を受け、これから岩国及び沖縄に配備される際、本土で必要な訓練を受けた練度の高いパイロットが両方の基地に配備されるということも聞いております。したがって、個々のパイロットがオートローテーションの能力を持っているのかどうかというより、私が申し上げているのは、まず、機体はオートローテーションの機能を持っている、パイロットはその必要な訓練を受けている、そのような要員が日本に来る、この三つのことを申し上げたわけです。

赤嶺委員 十万時間飛んでオートローテーション機能を使うような場面にはまだ出会ったことがないということなんですが、十万時間という時間の中には、開発試験期間中のあの四回の墜落、三十名の死亡、これは入っていませんよね。そのときにオートローテーション機能があったかどうか、調べられるはずですよ。実際に配備された後の話じゃないです、実験、開発中にどうだったか、そこまで調べてオートローテーション機能があるなしを政府が判断すべきじゃないですか。説明を受けています、これじゃ説明にならないですよ。

 なぜそういうことを私が申し上げるかといいますと、製造元であるベル・ボーイング社は、オスプレーのガイドブックの中で、オートローテーションには頼らない、このように述べています。アメリカ政府をチェックするアメリカ政府監査院、GAOは報告書の中で、オートローテーションはオスプレーの必要条件から除外された、このように述べています。

 専門家もメーカーも監査院も全て否定しているわけです。これでどうしてオートローテーション機能はある、このように言えるんですか。この根拠をもっと明確にすべきだとお考えになりませんか。

森本国務大臣 アメリカ側が、特に製造会社であるボーイング社のガイドブックに記載されているのは、MV22という海兵隊に配備されたオスプレーは、いわゆる連邦航空局の規定に基づいて一般的な回転翼飛行機に求められているオートローテーション機能というものを必ずしも法律上義務づけられてはいないのですが、これは民間機の話ですが、軍用機にあっては、用途、任務、あるいは想定される環境といいますか、あるいは航空機の特性から、民間航空機に適用される連邦航空局の規定は適用除外になっているわけであります。

 我が方、つまり防衛省がつくりましたパンフレットにありますように、万一、二つのエンジンがとまった場合の緊急着陸の際、その際の飛行状況に応じて、固定翼のモードに移転して滑空するか、もしくは、先ほど申し上げたように垂直離着陸のモードによってオートローテーションを行うという機能を持っていることは、従来からアメリカから説明を受けたとおりでございます。

 私はまだ乗っていませんが、飛行機に乗ってみてオートローテーションが確認できるかどうかというのは必ずしも、私はまだ乗っていないので何とも申し上げられませんけれども、少なくとも、設計上、この航空機を設計して製造したボーイング社のガイドブックにはオートローテーション機能があるということを説明しているとおりでございます。

赤嶺委員 もうしどろもどろであります。私が乗ったら証明されるとか証明されないとか、こんなレベルでオスプレーの配備を進めようというのは大問題であります。自衛隊のヘリだってオートローテーション機能はあるわけでしょう。それを、何でそういうことが、日本政府自身が確かめてもいないようなそういうヘリを、欠陥ヘリを飛ばすんですか。

 さっき事故率の問題がありました。防衛大臣の答弁が長過ぎてちょっと時間が迫っておりますので、事故率は割愛いたしますが、少なくとも去年の八月、私がこの委員会で質問したときに、当時の北澤防衛大臣は、オスプレーの事故率は、普天間の今配備されている老朽化したヘリよりも事故率は低いんだ、だから安全だと言っておりました。

 ところが、この間のモロッコの事故で、オスプレーの事故率は老朽化したCH46のヘリよりも高くなっております。CH46のヘリの約二倍です、事故率の高さは。それで、防衛省が絶対に加えたくない空軍のオスプレー、これも入れると約三倍以上、四倍です。もう異常に危険度が高まっている。

 きょうはここまでにとめて、もう一つ別の問題に移ります。

 パネルを見ていただきたいと思います。これは、米軍がオスプレーの配備に当たって実施した米軍自身の環境レビュー、これから作成したものであります。

 グリーンルート、ピンクルート、そしてブルールートなど、色の名前のつけられた六つのルートがあります。東北から信越、四国から紀伊半島、九州、沖縄まで、まさに日本全土をオスプレーが飛び回る計画であります。

 防衛省は、このルートに関連して、二十五の県に環境レビューの説明を行ったということであります。これだけの範囲をオスプレーが飛び回る計画、政府は、こういうルートでオスプレーが訓練を行うことに同意しているんですか。

森本国務大臣 オスプレーが日本に配備されてからどのような運用計画になるかということは、まだ決まっていないと思いますし、我々は通報を受けていません。

 この環境レビューに書いてある内容は、これから配備された後、具体的にオスプレーを使って海兵隊が各種の訓練を行う場合の経路をあらかじめ定め、それに基づいてどのような環境影響評価があるかということを調査した結果として示したルートだと聞いています。したがって、この飛行ルートどおりに訓練するなどということは、まだ全くアメリカ側から通報を受けておりません。

赤嶺委員 防衛大臣、きのうのNHKの討論会では認めるとおっしゃったじゃないですか。あなた、テレビで認めるとおっしゃったんですよ。今、国会のこの場で、まだ正式に通報を受けていない。接受国通報のことであるなら、接受国通報がなければ米軍はできないんですか、今までの日米関係で。きのうのテレビでの発言は何ですか。

森本国務大臣 昨日の番組で私が申し上げたのは、正確に見ていただきたいのですが、あの六つですか、ルートを、これから飛ぶ可能性があるのかという前泊さんの質問に対して、このルートで海兵隊が訓練をすることはあり得ると思いますと申し上げたんです。

 あり得ると申し上げたので、アメリカ側から通報を受けたのかという御質問でありましたので、まだアメリカ側からは通報を受けていません。それでは一体、あの飛行ルートを使って飛行することがあり得るのかということについて、昨日の番組では、あり得るという私の推測を申し述べたところでございます。

赤嶺委員 本当に支離滅裂な答弁であります。

中井委員長 いや、正確に言うていますよ。

赤嶺委員 かばいたい委員長のお気持ちもよくわかりますが、つまり、通報が来たらあり得ると言っているんですよ。あり得るというのは、やるということじゃないですか。

中井委員長 ちょっと違うな。それは違うな。

赤嶺委員 それは、委員長が一生懸命大臣をかばうお気持ちもよくわかりますけれども……

中井委員長 いや、専門家の意見。

赤嶺委員 専門家らしくない意見だから言っているんです。

 私も地図で確認をしてみたんですよ。このルートの下には、山合いの集落もあります。市街地もあります。風光明媚な温泉地もあればスキー場もあります。学校や病院もあります。人口密集地や学校、病院の上空で低空飛行訓練を行うことは、九九年の日米合意で認められていないはずであります。ですから、このようなルートでオスプレーが訓練を行うことは許されないはずです。

 当然、大臣、通報が来たら、日米合意に違反するからこの訓練は認められない、このようにおっしゃるんですね。

森本国務大臣 先生が今お示しになっておるこのルートを使ってアメリカ海兵隊が訓練をすることは、理論上はあり得ると思います、まだ通報を受けていませんが。

 しかしながら、このようなルートを使ってアメリカが実際に訓練を行う場合には、平成十一年一月に、先生今御指摘の日米合同委員会において、国際民間航空機関、ICAOや、あるいは航空法第八十一条に規定される最低高度などの基準を用いることといった具体的な措置が日米間で合意されているところでございまして、防衛省としては、米軍に対して、低空の訓練を行うに当たっては、この日米間の、日米合同委員会の合意を遵守し、住民の方々の安全及び安心に最大限に配慮するように働きかけるつもりでございます。

赤嶺委員 受け入れることを前提の答弁に変わってしまいました。

 正式な通報はないと言いながら、千ページもの環境レビューを各県に渡しているんですよ。それで今、大問題になっているんですよ。

 これらのルートは、八〇年代の後半以降、米軍の戦闘機による低空飛行訓練で大問題になってきたところです。一九八七年には、奈良県の十津川村でワイヤを切断する事故が起こりました。九四年には、高知県の早明浦ダムで墜落事故が発生をいたしました。最近も、二〇一〇年には秋田県で、突然の爆音に驚いた比内地鶏が大量圧死しました。中国地方には、ここには記載されていないもう一本のブラウンルートがありますが、昨年は岡山県で、衝撃波によって土蔵が崩壊する事故が起こりました。

 今までもこれだけの被害が繰り返されているルートであります。ここに欠陥機だと言われるオスプレーの低空飛行訓練、政府は野放しにしていいんですか。いかがですか。

森本国務大臣 日米安保体制に基づいて日本に駐留する米国が、いろいろな条件下においてその能力を発揮するに必要な訓練を行うのは、日米安保体制の趣旨に従うものだと考えています。

 この種の低空訓練というのを各種の航空機が日本で行うのは、まさに、そういういろいろな環境下において、米国がその能力を最大限に発揮するように訓練を行っているものであって、しかしながら、その際、我々の国民の安全あるいは安心というものに十分配慮するよう双方の調整をするのが日米間の協議でありまして、今、先ほど申し上げたように、平成十一年に日米間で行った日米合同委員会の合意に基づいて、アメリカ側が、住民の安全や安心に最大限の配慮を行いながら米軍の訓練を行うということを我々は確信しておりますし、また、アメリカもそのように配慮するものだと考えております。

中井委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山委員 国民との約束を大切にする新党きづなの内山晃でございます。

 総理、ちょっと冒頭、先ほど自民党の委員から、三党合意について、仲間と呼ばれておりましたけれども、うれしいですか。その感想を聞かせていただきたいと思うんです。

野田内閣総理大臣 三党合意を結んだわけであります。お互いに苦労しながら、譲り合いながらまとめた内容でございますので、その意味において、仲間という表現がどういう意味合いで出たかわかりませんけれども、お互いに成立を目指していくという意味においての、その意味での親近感を込めた表現だったと受けとめさせていただきたいというふうに思います。

内山委員 もとの民主党の、離党した私たちみたいな者も仲間でありまして、三党合意を破棄して、もとの仲間と仲よくやったらどうですか。そういう意向はありませんか。

野田内閣総理大臣 三党合意を結んで、党内にはいろいろな過程がありました、過程がありましたけれども、党の方針として決めて合意をしたわけでございますので、これを実現するために、これからもぶれずに進んでいきたいというふうに思います。

内山委員 それでは、質疑に入ります。

 先週、原発事故調の報告書が提出されました。

 報告書には、日本では事故など起こらないとして原子力を推進してきた、日本の原発はいわば無防備のまま三・一一の日を迎えた、入省年次で上り詰める単線路線のエリートたちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは重要な使命となった、この使命は、国民の命を守ることよりも優先された、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされたと書かれています。そして、原発事故は明らかに人災だと結論づけております。

 総理も報告書を読まれたと思いますが、総理の率直な御所見を伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 政府としては、あの地震の発生直後から、あるいは原発事故が発生をした直後から、炉の冷却であるとかあるいは住民の皆様の避難とか、懸命に努力をしてきたというふうに承知をしています。ただし、今回の事故調の報告にも出ているとおり、その判明した事実、状況を鑑みますと、事態の認識や対応において十分ではなかったという御指摘をいただいております。

 こうした御提言などを踏まえて、二度とこのような事故が起こらないように、そしてしっかりとした危機管理対応ができるように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

内山委員 報告書の提出を待たずに大飯原発を再稼働させたこと、この委員会の存在を軽視していたのではなかろうかという意見もありますけれども、いかがでございましょうか。答弁を求めます。

枝野国務大臣 原子力発電所の再稼働問題については、実は何度か申し上げてきておりますが、昨年の夏に玄海原発が、三・一一以前の手続によれば、再稼働の直前まで行っておりました。

 しかしながら、三月十一日の原発事故を踏まえて、三月十一日以前の手続で再稼働をするということはよくないであろうという政治決断に基づいて、ストレステストに準じた確認作業や、安全委員会にも関与をしていただくという、従来の手続を超えた慎重なプロセスをとるということを昨年の夏に決めました。その手続がたまたま国会事故調の報告書が出る出ないという時期と重なりましたが、逆に、そのストレステストなどの手続は、そういうのがあるから早くやってしまおうとかあるいは遅くていいんだとか、そういったことでなく、粛々と作業を進めてきたということでございます。

 もちろん、今回、事故調から報告書はいただきましたので、ここに新しい知見、取り入れなければならないことがあれば、これはあらゆる新しい知見について、もちろん規制委員会ができれば規制委員会においてですが、それを取り入れて、安全性についてはさらなる向上を目指していくということでございますので、今、報告書については、しっかりと、規制委員会発足まで安全について責任を持っております保安院において精査をして、新たな知見があればそれを取り入れていきたいというふうに考えております。

内山委員 いろいろ理由は後から幾らでもつけられますけれども、この意見書が出る前に稼働させてしまうのではなかろうか、やはりこういう意見がたくさんあったわけでありまして、そこは、枝野さんのおっしゃるようなことを、今あえて反論しませんけれども、拙速な大飯原発の再稼働に強く抗議をいたしまして、フル稼働は直ちにとめるように要求をしたいと思います。

 次に、北方領土についてお尋ねをいたします。

 北方四島は一寸たりとも日本に渡さない、日本人は酒も飲めないほど怒っているだろう、これは国後島を訪問したロシアの首相の言葉でございます。この言葉について、総理、感想はいかがでございましょうか。総理の感想を聞きたいと思います。

野田内閣総理大臣 メドベージェフ首相の国後訪問については、これは日本政府の立場を明確に明らかにし、そして抗議の意思というものを外交ルートを通じて行っております。

 その上で、今、個々の発言がございました。先般、私は、プーチン大統領とお会いしたときに、この北方四島の帰属の問題を、まさにお互いに号令をかけよう、議論しようということを言いました。基本的な問題というのは、これはやはり静かな環境の中で実質的協議をすることが大事です。静かな環境の中での実質的協議というのは、政治家同士の議論をするということであります。

 したがって、公開の場であるとかメディアを通じたやりとりについて一つ一つコメントすることは妥当ではないというふうに思います。個人的な思いはありますが、それを一つ一つコメントすることは妥当ではないと思います。

内山委員 この北方領土の問題を総理は外交的案件と捉えているのか、それとも政治的案件と捉えているのか。この捉え方によって大きく方向が違うと思うんですが、もう一度お尋ねをしたいと思います。国民が納得できるような明確な答弁でお願いを申し上げます。

 外交的案件と捉えるのか、政治的案件と捉えるのか、どちらという形で捉えておりましょうか。

野田内閣総理大臣 ちょっと違いがよくわからないんですが、日ロ関係を考えたときに、北方四島の帰属の問題というのは、これは大きな問題です。日ロ関係を考えたときに、もっと本当は経済的にも、潜在的にはもっと次元の高いレベルに持っていけるはずでありますけれども、北方四島の帰属問題をしっかりとさせない限り平和条約は締結をしない、これは日本の基本的な姿勢でございます。

 その姿勢を堅持していく中で、個々に起こった問題についてどう対応するかということですが、それが外交的案件なのか、政治的案件なのか、ちょっとその違いが、両方の要素があるんだろうというふうに思います。

内山委員 やはり政治的案件で、日本政府の合法的な権利に関する案件でありますから、しっかりと対応すべきだと思っています。

 明確なメッセージも出さずに外務大臣がロシアに訪問しても何の意味もないと思いますので、日本の領土である北方領土の非日本化がこれ以上進まぬように、不法占拠であると、ロシア政府に日本の方針をしっかりと、毅然たる態度で伝えるべきだと思います。ぜひ、外務大臣がロシアに行くことをやめるべきだと私は思います。

 さて、次に、通告してありますけれども、ハローワークの情報漏えいについてお尋ねをしたいと思います。

 ハローワーク、大変問題を起こしておりまして、厚生労働省では、内部で一体どういう調査をされているのか、それから、雇用保険の記録にアクセスする職員と相談員が約二万人いるようでありますけれども、この人たちの再発防止対策はどうなっているのか、答弁を求めたいと思います。

小宮山国務大臣 ハローワーク横浜の非常勤職員が、雇用保険の被保険者に関する個人情報を漏えいさせ、報酬を受け取ったとして逮捕、起訴されたこと、これは大変遺憾で、申しわけないというふうに思っています。

 現時点では、捜査中ですので、厚生労働省としては詳細な事実関係を把握できていません。

 個人情報の取り扱いを徹底するために、一つは、被保険者情報へのアクセス権限を業務上必要不可欠な職員に限定をすること、そして、被保険者情報へのアクセス状況について、毎日、各職員からの報告や、管理者によるアクセス記録のチェックを行うこと、そして、各ハローワークでの個人情報の適正な取り扱いについての研修を強化すること、こうした対策に万全を期しまして、ハローワークでの個人情報の適正な取り扱い、徹底をしていきたいと考えています。

内山委員 こういう問題というのは、昔、社保庁でも記録ののぞき、職務外閲覧というのがありましたね。こういったときに、厚生労働省、同じ安定部門、安定局と社会保険庁と両方持っていたわけでありますけれども、こういったことの教訓というのは生かされていなかったのか、ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。

小宮山国務大臣 ハローワークでは、職業安定法などの規制に基づきまして、個人情報の目的外利用の禁止を徹底してきています。平成十七年には、個人情報が記載された文書をハローワークで交付や送信する場合、必ず行うべき項目を徹底しています。また、全ての職員、相談員に対して、個人情報保護の研修の受講を義務づけています。また、平成二十二年二月に業務運用を開始しましたハローワークシステムでは、情報セキュリティー対策として、ICカードとパスワードで認証をとり、アクセス記録の保存を行っています。

 厚労省といたしましては、引き続き事実関係の解明に努めまして、新たにまた判明したことに対して対策が必要であれば、早急にとりたいと思っています。

内山委員 最近の新聞から拾った数字でちょっとお話をしてみたいと思うんですけれども、平均所得が五百三十八万円と国民生活基礎調査の報告がありました。二十三年ぶりの低水準ということであります。生活が苦しいと感じている世帯の割合は六一・五%、過去最高である。世帯所得の減少の原因は、企業の経営が厳しいことで雇用に影響が及び、労働者の所得低下につながった。とても消費増税を実施する環境ではないな。これはやはり、一にも二にも経済の活性化、デフレ経済の対策が急務であるとこの数字は示していると私は思っています。

 さらには、国民年金の納付率が五八・六%、これも過去最低の納付率である。原因は、二十代、三十代を中心に、収入が低く保険料を払えないとの現実がある。そして、同じように国民健康保険料、この滞納世帯も、五世帯に一世帯が滞納している。

 国民年金の未納、未加入を防ぐ目的で、国民年金を含め、厚生年金、共済年金の一元化を行うはずじゃなかったんですか。国民年金の納付率向上に税と社会保障の一体改革はどのように機能するのか、関係するのか、答弁を求めます。

岡田国務大臣 今回は、共済年金と厚生年金の一元化であります。したがって、国民年金の一元化は含まれておりません。全体の一元化の問題は、年金制度の抜本改革の問題として国民会議で議論をするというふうに我が方としては思っているところでございます。他の各党ともよく協議をして、真摯な議論を行いたいというふうに考えております。

小宮山国務大臣 今御指摘がございましたように、本当に未納者がふえているということ、これは、今の国民生活が非常に厳しい状況にあると思っておりますので、今年度は、もっと、個別に訪問するとかいろいろな形で、納付をしていただけるようにきめ細かに対応できるように、日本年金機構での、未納率をなくしていくパーセンテージも上げまして、そこのところは力を入れてしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

内山委員 今まで議論していた税と社会保障の一体改革では、この国民年金の未納、未加入、納付率の低下というのは救済できないわけですよね。安心した社会保障制度にならないじゃないですか。

 しかし、時間がないので、もう一つ質問しますけれども、岡田副総理がおっしゃいました厚生年金と共済年金の一元化。共済年金独自の職域加算を廃止して、二〇一五年十月に新たな年金をつくる、これはおかしいんじゃないですか。

 厚生年金と共済年金、厚生年金にはそういう職域加算はないわけですよ。それを一元化することによって、共済年金から職域加算をとって平等にすればいいじゃないですか。それをなぜ、二〇一五年の十月に、新たな、共済部分だけ職域加算のようなものをつくるんですか。二〇一五年十月というのは、消費増税が一〇%になったときじゃないですか。共済年金のために、国民から消費増税をして、公務員の共済年金の上乗せ年金をつくる財源を出させるんですか。違うなら、答弁してください。

岡田国務大臣 まず、今回の厚生年金、共済年金一元化の中で、職域加算部分の廃止ということが書かれております。そして、それにかわる新しい年金制度を検討するということでございます。

 有識者の方々に集まっていただいて、合計七回議論をいたしました。私も全て参加をして、一緒に議論をいたしました。

 結果的に、まず、公務員の場合に、退職給付、つまり退職一時金とそして年金、税の入る部分ですね、この全体額を官民格差をなくす。現時点でいえば四百万あります。これをゼロにするということであります。

 そういった大前提のもとで、官民格差がない状態の中で、一時金で払うか、年金で払うかという、その組み合わせをどう考えるかという問題であります。全て一時金だという考え方も確かに出ました。しかし、トータルの金額が同じであれば、それは国民負担にはなりませんので、一時金で一部分払い、残りを年金で払うという考え方もあり得る、そういった中で制度設計をしたものであります。

 ただし、追加的な税投入などということになっては困りますから、非常に保守的な、安定性のあるそういう制度設計をすることによって、追加的な税投入というのが基本的にない、そういった提案を有識者からいただいたところでございます。

内山委員 厚生年金の加入者は、現在、三千四百五十一万人、厚生年金基金に加入している人は四百四十七万人ですよ。厚生年金の加入者が、全員、上乗せ年金に入っているわけじゃないんですよ。だから、共済年金の三階建ての部分が共済独自だと言われるゆえがそこにあるわけでありまして、そこに、これから増税をして税金を充てていくということでしょう。

岡田国務大臣 退職給付、つまり、一時金で出すか、年金で出すか、いずれにしても合計額は、官民格差を調査の結果、完全になくすという前提であります。ですから、税投入額は変わらないわけです。

 その中で、それを全て一時金で出すのではなくて、一部年金の形で出す、そういった制度設計をしたということであって、新たな税負担がそこで生じるということではございません。

内山委員 基礎年金の上に報酬比例があって、その上に厚生年金にはない職域加算というのが共済年金ですよね。だから、共済年金と厚生年金をあわせて一元化するということは、共済にだけある職域部分、三階部分をなくして統合するというのが普通なんじゃないんですか。厚生年金とのバランスがとれないじゃないですか。そうでしょう。厚生年金は、基礎年金に報酬比例があって、それだけですよ。だけれども、共済年金は、その上にもう一つ三階建ての部分がある。その三階建ての部分を税で賄おうというわけでしょう。

中井委員長 岡田君。時間が来ていますから、短く。

岡田国務大臣 企業にも企業年金がございます。それは、全てではもちろんございません。

 委員、誤解しておられるのは、そういった形で年金の部分に税が半分入るということですが、その分、一時金が減っているということです。全体で官民格差がゼロになっているということです。

内山委員 時間が来ましたので、終わります。

中井委員長 これにて内山君の質疑は終了いたしました。

 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 午前中にも議論がありましたけれども、毎週金曜日の夜、官邸前で、大飯原発再稼働に抗議する行動が行われております。ツイッターなどで知った一般市民が次々と加わっております。十万人とか二十万人とか、六〇年安保闘争以来の人数だとも言われております。

 総理は、六月二十九日の金曜日の日には、大きな音だねと言ったそうですね。先週金曜日には音から声にようやく昇格したようですけれども、私は、大変失礼ながら、政治家として極めて不遜な態度だなというふうに思いました。

 国民の多くは、安全性が確認されたという説明に納得しておりません。総理、国民の不安と抗議を真っ正面から受けとめていただきたいというふうに思います。

 そこで、今焦点になっている大飯原子力発電所の断層、F―6断層について質問いたします。お手元に資料とパネルを準備させていただきました。

 私も、超党派の国会議員五名と、それから変動地形学の専門家、東洋大学の渡辺満久教授と一緒に、六月二十七日、大飯原子力発電所敷地内に入って調査をいたしました。

 このパネルは、渡辺先生が調査をもとに作成された全体図です。赤い線が断層です。断層はあっちこっちにありますけれども、一番長く上から下に走っているのがF―6断層です。大飯三、四号機の増設申請書に添付された図面を検討した渡辺先生が、地層のずれ、それから粘土の存在から、これが活断層ではないかと指摘をされているわけです。

 ごらんのとおり、F―6断層は、耐震安全上重要で、活断層の上には設置してはいけないというSクラスの非常用取水路が横切っております。もしこれが活断層ということであれば、これは、再稼働はおろか、違法建築、違法設備ということになるわけです。

 先週七月三日には、保安院の専門家会議でこのF―6断層の問題が取り上げられることになっておりましたが、何と関電は写真などの資料を出してこなかったために、先送りになってしまいました。こういうことになると本当に怪しいんですよね。

 国会事故調の報告書は、福島第一原発事故は人災だった、何度も事前に対策を立てるチャンスがあったと断じています。専門家の指摘を無視する大飯再稼働も新たな安全神話であり、人災を招くものではないかと思います。

 渡辺先生は現地を見て、このA、D、Eの三カ所は掘ることは可能だと特定して、一週間ぐらいで掘って調査できるというふうに判断をされているわけですけれども、総理、大飯の再稼働を一旦ストップして、このF―6の断層の調査をすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 まず、この渡辺先生の御指摘は、昭和六十二年の、この大飯原発をつくるときの安全審査の際に使われたスケッチをもとに御指摘がされていると承知をしております。そして、このスケッチを踏まえて、もとにしながら、昭和六十二年にも、トレンチ調査などによって、この破砕帯が十二から十三万年前の地層が動いていないものだということを、専門家の皆さん、既に御確認をいただいているところでございます。

 したがいまして、その当時も使われていた資料からの御指摘でありますので、新たな知見には当たらないと考えておりますが、しかしながら、安全規制はここまでで十分というものではなく、安全神話に陥らないようにしなければならないという考えから、継続的に意見を聴取していくことが重要と考えており、前回、残念ながら資料が整わなかったことは遺憾でございますが、次回の意見聴取会において、関西電力においてはそれまでに最大限追加資料を提供するよう求めており、その時点で入手できる追加の資料を全て出した上で、公開の場で専門家に議論をしていただくことといたしております。

服部委員 渡辺先生は、活断層であるか否かの判断は地震学者にはわからないとおっしゃっているんです、地形学者でしかわからないと。この八五年の三、四号機の増設の設置申請書で、トレンチの図面がございます。それを見て、これは活断層の可能性が極めて高いというふうに言われているわけですよ。ですから、こういうことをきちっと対応していかないから、また安全神話になるわけじゃないですか。一週間でできると言われているわけですからね。もう答弁は結構です。このことをやはりきっちりと政府として調査していただきたいということを強く求めます。

枝野国務大臣 六十二年の段階で、今回、渡辺先生が御指摘になっている図を専門家、それはいろいろな専門家がいらっしゃいますが、その専門家がごらんになり、なおかつ現地も掘った調査をして、そして、いわゆる活断層ではないということを評価いただいて、そして、その当時も使われていた資料に基づいて、いや、活断層の可能性があるのではないかという御指摘ですから、これは新しい知見には当たらないと申し上げています。

 だけれども、しかし、まさに安全神話に陥ってはいけないということで、さまざまな専門家の皆さんにも入っていただいた公開の場でしっかりと、新しい知見に当たるのか当たらないのかということについては、次回の意見聴取会においてチェックいたします。もしそこで、これは新しい知見だということになれば、新しい知見を踏まえて対応させていただきます。

服部委員 七月三日には関電は資料は持ってこなかったということですから、ここは所管としてきちっと事業者を指導していただいて、必ず調査をしていただきたいということを強く申し上げたいと思います。

 国会の事故調の報告書が出ました。福島第一原子力発電所の事故は人災であった、あるいは、国の規制機関が電力業界のとりことなっていた、あるいは、事故はいまだに収束をしていないなどの幾つもの重要な指摘がなされたわけです。

 重要なことの一つに、いわゆる津波の前に、地震によって冷却材喪失といった重大な損傷事故が起きた可能性というものを指摘されております。

 しかし、政府は、再稼働の判断基準の中では、地震の影響については、安全上重要な設備、機器が安全機能を保持できる状態にあったと推測されるという前提で考えられていたというふうに思うんですけれども、今回のこの事故調の指摘によって、再稼働の前提が崩れたということにはなりませんか。

枝野国務大臣 政府としては、これまでの分析結果をもとに、安全上重要で主要な設備については、微少な漏えいが生じるような損傷が主要な設備に生じたかまでは現時点で確かなことは言えないが、安全を保持できる状態にあったものと推定をしているということでございました。

 他方、今回、国会事故調の報告書で、これに関連する部分について指摘をいただいております。まさに先ほど来申し上げておりますとおり、安全神話に陥ることなく、新しく得られた知見を常に適切に反映していく必要があると考えておりまして、現在、この事故調査報告書、事故調の報告書について調査、分析を進めております。大変大部のものでございますし、専門的な問題でございますので、もう数日お時間をいただきたいと思いますが、決してこれを無視するつもりはございません。ここでの御指摘を踏まえて、適切に対応したいと思っております。

服部委員 我々は繰り返し、事故の検証なしに再稼働するのはおかしい、あるいは、少なくとも国会事故調の報告が出る前に再稼働を決断するなんというようなことはとんでもないことだということを申し上げてきました。今回の国会事故調の報告を真剣に受けとめていただいて、私は、この再稼働についても見直すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 先ほどもちょっと議論がありましたけれども、先日成立した原子力規制委員会設置法で、原子力基本法などに、「我が国の安全保障に資する」という文言が盛り込まれました。日本国内だけでなく、韓国などからも、核武装に道を開くのではないか、そういった懸念をする声が出てきております。

 私の質問主意書にも七月三日に答弁をいただいておりますけれども、総理、ここは改めて、この場で国民の皆様に、原子力の軍事転用はしない、非核三原則は守っていくということを明確に国民の前に明言していただけませんでしょうか。

野田内閣総理大臣 原子力規制委員会設置法第一条や改正原子力基本法第二条等において「我が国の安全保障」という文言が規定された趣旨につきましては、参議院環境委員会における法案の審議等を踏まえ、設置法により、原子力規制委員会が原子力安全規制、核セキュリティー及び核不拡散の保障措置の業務を一元的に担うという観点から規定をされたものと理解をしております。

 原子力基本法第二条の、原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限り行うものとする旨の規定内容は、原子力基本法の改正前後を通じて変わるところはなく、設置法は、我が国の原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限るという方針に何ら影響を及ぼすものではございません。

 したがいまして、野田内閣としては、非核三原則を堅持していくという方針に変わりはございません。

服部委員 疑念を招き、拡大解釈が懸念されるような文言は、速やかに削除すべきだというふうに私は思います。

 一九五五年に原子力基本法ができたときにも、当初、安全保障という文言があり、これを国会で議論して、議論の末に法案から削除したという経過もあります。私への答弁書には、「平和の目的に限るという方針を国内外に適切に説明していく」というふうに答弁されておりますけれども、それならば、総理、内閣としてこの文言の削除のための改正案をぜひ提出してくださいよ。どうですか。

細野国務大臣 今、服部委員御指摘の安全保障というこの文言は、自民党と公明党の方からさまざまな提起を受けて、そして、三党で一定のコンセンサスを得て提出をされたものであります。

 その趣旨は、当然、平和に関する明確な限定を設けた上で、核セキュリティーであるとか、またはセーフガードなどの措置をしっかりとしていくという趣旨だというふうに理解をしておりますので、この法律に基づいてしっかりと新しい組織を立ち上げさせていただきたいと考えております。

服部委員 私は、ぜひこの文言は削除していただきたいということを申し上げ、これはまた引き続き、国会でもぜひ議論をさせていただきたいということを申し上げたいと思います。

 さて、エネルギー、環境に関する選択肢についてですけれども、いよいよ、原発の比率をどうするのか、脱原発にかじを切れるのかどうか、国民的議論を経て八月中に決定をされるというふうに今言われております。

 二〇三〇年の原発比率をゼロとするのか、一五とするのか、あるいは二〇から二五とするかという三つの選択肢が出されておりますけれども、私はこれは非常にわかりにくいというふうに思っております。同時に、国民的議論も余りにも短過ぎるというふうに思います。

 ちなみに、この二〇から二五%というのは、原発の新増設もやっていかなければならない、あるいは運転期間の延長がないと達成できないような数字になっております。

 ここに表で、これは一五%のケースについてちょっと私なりにエネ庁の資料をもとに試算をしたわけですけれども、この稼働率八〇%、要するに、新増設はしない、四十年で廃炉にしていく、そうすると二〇三〇年には一五%になりますよとエネ庁は言うわけですね。ただし、稼働率は八〇%です。ところが、この十年間で稼働率八〇%なんて全くあり得ない、七〇%を超したのが二年あっただけだ。今までそういうレベルなんですね。

 ですから、そういうことからすると、この一五%という数字も、やはり、新しい原発をつくるという前提、あるいは、例外と言いながら四十年をどんどん延ばしていくという前提のもとに組み立てられているんじゃないかとも見えるわけです。

 そしてまた、新規増設をしないということであれば、当然、二〇五〇年ぐらいには原発ゼロになるわけですね。だから、二〇五〇年原発ゼロの通過地点として二〇三〇年の一五があるのか、あるいは、ずっとつくり続けて一五%というものを維持するのか、ここはやはりいろいろ見方が分かれるわけですね。

 先ほど枝野大臣は、三択をどこかに選びますというような、そういうことではないんだということもおっしゃいましたけれども、この国民的議論、八月にもその結論を出そうというふうに政府はおっしゃっているわけですけれども、総理は、このエネルギーの議論、脱原発の議論、国民的議論を、どういうような姿勢、考え方でお進めになろうとしているのか、その基本的な考え方についてお聞きをしたいと思います。

枝野国務大臣 政府としては、昨年来、原発への依存をできるだけ引き下げるという大きな方針を固めています。今回お示ししている選択肢も、その枠の中でのお示しをした選択肢であります。ただ、原子力のあり方あるいはエネルギーのあり方については、まさに百人百様の御意見があろうかというふうに思っている中で、国民の皆さんの御意見というのを集約していくということの見地から、三つの選択肢をお示しいたしました。

 しかし、この中のどれか一つに固定をされるものではなくて、御指摘のとおり、例えば一五%シナリオについても、いや、一五%シナリオでもいいけれども、必ずそこから先も四十年廃炉をしていって、そうすると二〇五〇年ぐらいにゼロになるんでしょうか、ということであるならばそれがいいとか、いや、一五%で維持するのがいいんだとか、それは多様な意見があるんだろうと思います。できるだけ国民各界各層においてさまざまな御議論をいただき、また、そうした多様な御意見があるということをしっかりと踏まえた上で、できるだけ幅広く柔軟にさまざまな声を踏まえた中で集約をしていきたい。

 ただ、議論の期間が短いという御指摘については、これはもう昨年の、あえて言えば三月十一日から、原子力政策を一から見直さなきゃならないということが国民のほとんどの皆さんの御意見であったろうというふうに思いますし、例えば総合エネルギー調査会を初めとして、公開の場でさまざまな議論を一年続けてきている、そうしたことの中で、いよいよその集約に向けて三つのシナリオをお示しさせていただいたということでございます。

服部委員 私は、要するに、どういう政策の選択をするかという、やはり数字だけがひとり歩きして政策が非常に見えにくい、そういう意見を持っております。

 それで、先日、東京電力の新会長と社長が福島第二原子力発電所を視察されました。会長は、廃炉は未定というふうにコメントされているわけですけれども、福島県は既に脱原発ということを決めて、福島第二原発も廃炉の方針だというふうに聞いております。

 枝野経産相も、先週金曜日の記者会見で、福島県知事が廃炉を求めていることを踏まえて、廃炉は避けられないというふうに言われておりますけれども、エネルギー政策の結論をまつまでもなく、福島第二は廃炉が前提であるという理解でいいんでしょうか。

枝野国務大臣 これだけの事故で、今も県民の皆さんに大変な御迷惑をおかけしている福島県、地元の御意向というのは大変重たいというふうに思っておりまして、そのことを踏まえて対応するというふうに考えております。

 ただ、最終的には、これは会計等にもかかわってくるところでございまして、政治ベースにおける全体としてのこれからの原発のあり方についての手続や判断、それからそれを踏まえた東京電力における最終的な手続、判断、そして会計上の手続、判断ということがございますので、それについては段階を踏ませていただくということについては御理解をいただけるのではないか。

 ただ、そういった手続的な段階があるということを前提とした上で、最大限、県の意向を踏まえて対応するべきであるということで、その方向についてはお話をさせていただいているつもりでおります。

服部委員 私は、もっとめり張りのある原子力発電所の仕分けをすべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 時間もなくなりましたので、最後ですけれども、先ほど来オスプレーのお話がございました。

 森本防衛大臣が仲井真知事と面談をされた翌日の七月二日の地元紙の一面「強行なら「全基地閉鎖」」、知事が全基地閉鎖を言及ということが地元紙の一面を大きく飾っておるわけです。

 ここはちょっと総理にお聞きしますけれども、この沖縄の声にどう応えていかれるのか。オスプレーの強行をするということで、沖縄の全基地閉鎖もあってもいいじゃないか、社民党はそういう考え方ですけれども、そういう理解でいいんでしょうか。総理、一言お答えください。

中井委員長 時間が経過しました。

 こんな難しいことを一言で答えるのは大変ですが、一言答えてください。

野田内閣総理大臣 このオスプレーの問題、配備については、沖縄の皆様、あるいは岩国、山口県の皆様に懸念が広がっていること、大変申しわけなく思いますけれども、これは、米国もそのことを意識しており、六月二十九日の接受国通報に際して、調査結果が日本政府に提供され、飛行運用の安全性が再確認されるまでの間は、日本においていかなるオスプレーの飛行運用も控えることを表明しております。

 そういうことの調査結果であるとか情報等が入りましたら、的確にそれぞれの自治体の皆様に御説明をしていかなければいけないというふうに思います。

中井委員長 これにて服部君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 最後の質問ですから、ぜひおつき合いいただければと思います。

 きょう一日の質疑を聞いておりまして、一つ私の印象に残ったことがございます。

 それは、これは質問通告をしておりませんが、民主党代表の野田総理に伺いますが、どうも消費税の増税法案の採決以降、あるいはその前からかもしれませんが、自民党あるいは公明党と民主党との間の差が大分なくなってきているんじゃないかなというふうに思いますが、民主党代表としての野田総理は、いずれ解散・総選挙も行うというふうに言っておられましたから、ここだけは自公と違うというのはどういうところだというふうに思われますか。

野田内閣総理大臣 大分似てきた、近寄ってきたというお話でございますが、こういうねじれた国会の中で、国益のためにお互いに譲り合って、そして合意形成を図るということは、これは私は大きな前進だと思います。

 ただし、よって立つ基盤、これまでの議論の蓄積からすると、固有の政策をお互いに持っております。固有の政策は、私どもは、これまでの二〇〇九年のマニフェストあるいは参議院選挙のマニフェスト、そこに自分たちの理念や具体的な考え方を書いてございます。そういうものはしっかりこれからも実現をしていきたいと思っておりますので、その点については、各党とそれぞれマニフェストが違いますので、よって立つ基盤はやはり違うところはあるというふうに御理解いただきたいと思います。

浅尾委員 もう一点、通告がないことで恐縮でございますが、今、服部さんからもお話がありました。このオスプレーの配備は、万が一事故があったときには、これは沖縄の米軍基地というのがそのまま継続できるかどうかわからないということでありますが、そのことを決めると。例えば、例えがいいかどうかわかりませんが、福島第一原発の事故というものも想定外の事故でありました。

 ですから、事故というのはいろいろなタイミングであり得るということだと思いますが、あってはいけないというふうに思いますけれども、しかし、これだけ反対がある中、しかも普天間の問題等々でねじれている中でオスプレーというのを配備した場合のその危険性、要するに、事故があるかもしれない、そのあったときの日本の安全保障に与える危険性を承知の上でそれを認めるということで、野田政権としての考え方でよろしいかどうかだけ確認させていただきたいと思います。

森本国務大臣 先生のお尋ねは仮定の議論なので、しかし、この世の中に、科学技術というのは一番最初から一〇〇%完璧で始まるなどというものはあり得ないわけで、いかなる可能性もあるんだろうと思います。

 ただ、米国は、この新しい技術を開発し、本当に今まで苦労に苦労を重ねて、困難を克服して、私はその運用に成功するということに確信を持っております。日米安保体制はその確信に基づいて運用されなければならない、かように考えております。

浅尾委員 これは、総理、大変重要な安全保障上の問題であります。原子力発電所も、事故が起きないということでありましたけれども、起きました。しかも、今回は、事故が起きるかもしれないという中で、さまざまな声がある。そこで配備をするということは、そうした場合には基地が危なくなる可能性もある、置けなくなるという可能性もあることを承知の上で、政治家として野田総理が決断されるという理解でよろしいかどうか、端的にお答えいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 同盟関係を維持し、そして抑止力を維持するという観点の中で、そういう大局的な観点を持つということは基本でありますけれども、一方で、モロッコにおける事故、そしてフロリダにおける事故、その調査結果というものをしっかり情報提供を早急にしてもらう、そしてそのことをしっかり地元の皆様にお伝えをし、政府としての安全性をきっちり確認をするというプロセスはしっかりとっていきたいというふうに考えております。

浅尾委員 それでは、きょう累次の質問が出ております国会事故調査委員会の報告書について質問させていただきたいと思います。

 私は、今回の報告書の中で一番根本的で、そして本質的なところは、この事故調査委員会が指摘をしております、規制のとりこというんですかね、ここの部分にあるのではないかなというふうに思います。

 私も予算委員会等々でも累次質問をさせていただいたときに感じたのは、保安院という組織は実は専門家がいない、専門家はその下部組織である例えば原子力安全基盤機構から情報をもらっている。ですから、専門家でない人がその下部組織からもらった情報で判断しているということで、結果として規制される側が、決して原子力発電事業者が誘導したということではないと思いますけれども、そこに何となく自信がないから頼らざるを得なくなってしまったというところがあるんじゃないかというふうに思いますが、この報告書を受けて、そして新しい法律が、今度、まあ衆議院は通りましたけれども、どういうふうに変えていくことができるのか、変えていくつもりなのかということをまず伺いたいと思います。

細野国務大臣 私も報告書を読みまして一番気になったのが、そのとりこという言葉でありました。

 この昨年の事故を受けまして、私自身も、保安院の関係者、そしてJNESの関係者、さらには東京電力の技術者とも随分、さまざまな議論をする機会を得ました。その中で感じておりますことは、やはりどうしても現場に近い人間の方が技術に詳しくなって、規制する側がそれに若干劣るというこの状況を何としても変えなければならないと思います。

 どこの国も苦労しておりますが、特に米国のNRCの例などを見ておりますと、自前でしっかりと教育をする機関を持っておりまして、そこで育てていく、それに加えてOJTの機会でしっかりと原発の中にみずから入り込んでそれを実際にやっていくという、その二段構えの体制になっております。

 日本の場合はいずれも欠けていたと思いますので、まずはしっかりと自前の人材を育てることができるような、国際原子力安全研修院、これは構想段階でありますが予算をつけておりますので、これを準備をさせていただきたい、そして国際機関への派遣も含めて幅広い知見を得る。もう一つは、単に書面で審査をするというのにとどまるのではなくて、実際中に入って検査をしてOJTで能力を高めていく。この二つの面での抜本的な強化が必要ではないかと考えております。

浅尾委員 一つだけ、参考になるかどうかわかりませんが、申し上げておきたいことがあります。

 かつて、金融機関の検査というのはプロパーの職員が、プロパーというのは最初から当時の大蔵省内に入った人が検査をしておりました。しかし最近は、金融庁が実際にさまざまな高度な金融取引をしていた人を中途で採用する、その人が検査をするようになっている。

 ですから、今後は、もし原子力発電所を政府として継続していくということであれば、実際に原子力発電所で働いていた人を中途で採用するというのが、その検査をできる人が育つまでの期間としては私は必要なんじゃないかと思いますが、そういう考えはあるかどうか、伺いたいと思います。

細野国務大臣 実は、今も原子力安全・保安院の中には、電力会社やメーカーで勤めていた、中途採用した職員はかなりおるんですね。ですから、そのやり方自体はこれまでも採用してきたわけですが、それをさらに具体的な能力を向上させるという意味で、進めていく必要性はあるというふうに思っています。

 ただ、そのときに大事なのは、今まで動かしていた人間がすぐ検査に回ると、これはそれこそ関係を疑われることにもなりかねませんので、そこにしっかり線を引いて、違う会社のものについて関与するとか、かなりそこは厳格な運用が求められるということも考えております。

浅尾委員 では、次の質問に移らせていただきます。

 今回、社会保障の改革については、国民会議の議論に先送りされました。

 私、社会保障の改革の中で一番必要なのは、これは前にもこの委員会でも指摘をさせていただきましたけれども、今の年金というのは、例えば、ことし生まれたお子さんは、払った保険料の四分の三ぐらいしか国民年金の場合はもらえない。だから、例えば七十歳以上の方でいうと、二・一七倍もらえるというのが合っている、それが財政的にもつということなんだろうと思います。

 本来、本当の意味での年金の改革というのは、では、お孫さんは四分の三しかもらえない、自分は払った保険料よりも多くもらえるという今の制度を、そのままやっていくという手もあります。しかし、これはやはり変えるんだということも考える可能性もあるだろう。その場合に、ではどういうふうにやっていったらいいかというのが多分改革の本来の道筋だろうというふうに思いますが、そのときに一つ大切なことは、年金というのは将来支給されるキャッシュフローというか現金の流れがあるわけでありますが、この将来支給されるキャッシュフローの計算式が、実は厚生労働省の年金局にはあるんですが、これをなかなか表に出してもらえていません。

 もっと言うと、今政府が言っているのは、将来支給される年金を現在価値に直すと一千百五十兆円ぐらいですというふうに言っていますが、これは将来のお金ですから、一定の利率で割り戻さなければいけない。これが四・一%、細かいことは除きますが、四・一%という非常に高い利率になっています。今の金利だけとってみるとゼロ金利というような状況でありますから、その割り戻す利回りが小さい数字になれば、一千百五十兆円というのがもっと大きな数字になるということなので、ぜひ、まず小宮山さんには、すぐできることでありますので、このキャッシュフローの数字というものを国会の場に提供していただいて、そして、社会保障の改革というのは現実の数字に基づいてやれるような体制を組んでいただきたいと思いますが、その点について御所見を伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 キャッシュフローの数字というのは公表しております。

 それで、今、最初に出していただいた表ですけれども、これは事業主負担分も入れた上でやっていますよね。ですから、今の厚労省が申し上げている、若い人たちでも自分が払った以上もらえますよというのは、自分が払った分で言っている。ただ、こういう考え方も民主党の中ではとって、新しい年金で対応しようということも考えている。これから払われる分の賃金がそこに当たっているということもあるので、それも含めて、この最初の表につきましては、国民会議の中で御議論いただければいいと思っています。

浅尾委員 キャッシュフローの数字というのは、今申し上げましたように、現在価値の数字しか出ていなくて、将来どういう形になるかというのは出ておりません。これはまた事務方ともやらせていただきますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 最後の質問に移らせていただきたいと思いますが、先ほども取り上げられておりました国民生活基礎調査の概況ということで、平成二十二年度の世帯収入は十一万六千円減少ということでありますが、世帯収入が少ない世帯ほど、収入に占める消費の割合というのは、一般論で言えば高くなります。消費性向が高くなるということでありますが、今度、消費税を増税すると、可処分所得というか、その分、消費できる真水の量は減るということになります。

 本来であれば、政府の方で、では、世帯収入の、せっかくこうした立派な調査をされておられますし、五百三十八万というのは平均値でありまして、中央値は四百二十七万ということなので、より多くの方はもっと少ない世帯で暮らされているということでありますが、そういうマクロモデルを使いながら、実際に増税をしたときに、消費性向、一定の割合を置いた場合に、どれぐらい日本のGDPが減るのか、そして、その結果、どれぐらい税収が、消費税以外の税収というふうに申し上げた方がいいかもしれません。例えば、消費税が上がった結果、売り上げが一〇%落ちると、利益率が五%ぐらい下がるというのが、小売の中のレストラン事業なんかはそういう計算だというような数字がありますが、そうしたマクロ経済のモデルをつくった上で、実際の増税のときに判断をするということも必要なんじゃないかと思いますが、その点についてどういうふうに考えておられるか伺えればというふうに思います。

中井委員長 古川担当大臣。時間が経過していますから、短くやってください。

古川国務大臣 経済に与える影響は丁寧に勘案していきたいと思っております。

中井委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中井委員長 この際、野田内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野田内閣総理大臣。

野田内閣総理大臣 G8キャンプ・デービッド・サミット及びG20ロスカボス・サミット出席に関する御報告をさせていただきます。

 私は、五月十八日から十九日の日程で米国にて開催されたG8キャンプ・デービッド・サミット及び六月十八日から十九日の日程でメキシコにて開催されたG20ロスカボス・サミットに出席しましたところ、それぞれの会合について御報告いたします。

 G8サミットは初めての出席でありましたが、G8の各首脳と世界経済や地域情勢などの幅広い課題につき、密度の濃い意見交換を行うことができました。

 経済については、欧州債務危機への対処や財政健全化と経済成長の両立の重要性について活発な議論を行いました。私からは、社会保障と税の一体改革の取り組みや、金融面での安全網の拡充に向けた我が国の取り組みを紹介しました。

 主要な地域・政治情勢については、北朝鮮、ミャンマー、イラン等について突っ込んだ議論を行いました。特に北朝鮮については、私から、国際社会の一致した対応を呼びかけ、各国首脳の賛同を得て、G8の連携を確認することができました。

 また、G8サミット出席の機会に、EU首脳、オランド・フランス大統領とも個別に会談し、日・EU・EPAの早期交渉開始の働きかけを行ったほか、各国首脳とも会議の合間を利用して意見交換を行いました。

 次に、G20ロスカボス・サミットについて御報告いたします。

 私はサミットの初日のみ出席しましたが、最も重要なテーマとなった世界経済のセッションにおいて、以下の諸点について発言を行いました。

 まず、欧州債務問題への懸念の高まりが世界じゅうの金融市場を不安定にしていることを指摘しつつ、急速な円高が進んでいることへの強い懸念を表明しました。

 さらに、欧州経済情勢については、一刻の猶予も許されず、G20首脳が市場の信認回復に向け、力強いメッセージを示すことが必要であると主張しました。

 日本経済については、財政健全化と経済成長を車の両輪として捉え、社会保障・税一体改革法案を本年三月に国会に提出し、成立を目指して全力を挙げていることや、日本経済の再生、震災復興の取り組み等を通じて本年度二%を上回る成長が可能と見込んでいる旨説明しました。

 そのほか、貿易・投資の保護主義的措置が増大していることが懸念される中、G20として保護主義的措置に断固反対していくとの強い決意を示すべきである旨主張しました。

 加えて、今回のG20サミット出席の機会に、カルデロン・メキシコ大統領、ユドヨノ・インドネシア大統領、プーチン・ロシア大統領を含む多くの国の首脳と二国間の会談、懇談を行いました。特に、プーチン・ロシア大統領とは、安全保障、海をめぐる協力、エネルギーを含む経済分野を中心に日ロ間の協力を進めていくことを確認しました。また、領土問題に関し、静かな環境のもとで実質的な議論を進めていくことで一致し、それぞれの外交当局に指示することとしました。

 内外の経済情勢について取り組むべき諸課題は引き続き大きなものでありますが、与野党の御協力を得つつ、また、今回の外交成果も踏まえ、大震災からの復旧復興と日本経済の再生に向けて引き続き全力で取り組んでいく考えであります。

中井委員長 次回は、来る十二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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