衆議院

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第3号 平成25年2月8日(金曜日)

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平成二十五年二月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 萩生田光一君 理事 馳   浩君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      伊藤信太郎君    今村 雅弘君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      大岡 敏孝君    大塚  拓君

      奥野 信亮君    金子 一義君

      木内  均君    小池百合子君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      白石  徹君    新谷 正義君

      関  芳弘君    武井 俊輔君

      武部  新君    武村 展英君

      渡海紀三朗君    豊田真由子君

      中川 俊直君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野田  毅君

      原田 義昭君    福田 達夫君

      藤井比早之君    船田  元君

      牧原 秀樹君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    宮路 和明君

      保岡 興治君    山本 幸三君

      若宮 健嗣君    泉  健太君

      大西 健介君    奥野総一郎君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      中根 康浩君    原口 一博君

      前原 誠司君    坂本祐之輔君

      重徳 和彦君    鈴木  望君

      中田  宏君    中山 成彬君

      東国原英夫君    浮島 智子君

      佐藤 英道君    江田 憲司君

      柿沢 未途君    佐藤 正夫君

      山内 康一君    笠井  亮君

      宮本 岳志君    小宮山泰子君

      村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山本 一太君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        小渕 優子君

   財務副大臣        山口 俊一君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   衆議院事務総長      鬼塚  誠君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        伊澤  章君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     照井 恵光君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 久保 成人君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月八日

 辞任         補欠選任

  小池百合子君     藤井比早之君

  塩崎 恭久君     白石  徹君

  中山 泰秀君     中川 俊直君

  西川 公也君     木内  均君

  船田  元君     武村 展英君

  牧原 秀樹君     今野 智博君

  宮路 和明君     佐々木 紀君

  山本 幸三君     國場幸之助君

  岸本 周平君     奥野総一郎君

  辻元 清美君     泉  健太君

  原口 一博君     大西 健介君

  中山 成彬君     鈴木  望君

  柿沢 未途君     山内 康一君

  佐藤 正夫君     江田 憲司君

  宮本 岳志君     笠井  亮君

  村上 史好君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     宮崎 謙介君

  國場幸之助君     山本 幸三君

  今野 智博君     武井 俊輔君

  佐々木 紀君     宮路 和明君

  白石  徹君     新谷 正義君

  武村 展英君     船田  元君

  中川 俊直君     中山 泰秀君

  藤井比早之君     豊田真由子君

  泉  健太君     辻元 清美君

  大西 健介君     中根 康浩君

  奥野総一郎君     後藤 祐一君

  鈴木  望君     中山 成彬君

  江田 憲司君     佐藤 正夫君

  山内 康一君     柿沢 未途君

  笠井  亮君     宮本 岳志君

  小宮山泰子君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     武部  新君

  武井 俊輔君     牧原 秀樹君

  豊田真由子君     宮川 典子君

  宮崎 謙介君     小林 鷹之君

  後藤 祐一君     岸本 周平君

  中根 康浩君     原口 一博君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     大岡 敏孝君

  武部  新君     福田 達夫君

  宮川 典子君     小池百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     西川 公也君

  福田 達夫君     塩崎 恭久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房統計情報部長伊澤章君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官照井恵光君、国土交通省大臣官房長久保成人君、環境省大臣官房長鈴木正規君、原子力規制委員会委員長田中俊一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中田宏君。

中田委員 おはようございます。日本維新の会の中田宏でございます。

 日本維新の会のトップバッターとして、安倍政権にさまざま今回の補正予算に絡んでお聞きをしたいというふうに思っておりますけれども、そもそも、日本維新の会、私たちはなぜここにいるのかということを考えれば、民主党政権、残念ながら、地方分権ということについて期待外れでありました。

 二〇〇九年、民主党政権ができる前に、私や橋下さんも含めて、首長連合ということで、いわば自民党の地方分権の公約、やる気、そして実行力が上回っているのか、それとも民主党が上回っているのかということを私たちは検証した結果、そのとき、民主党の方がすばらしい、こういうことで、当時は民主党に対して地方分権の観点から軍配を上げたんです。

 ところが、残念でありましたけれども、今回、民主党は御承知のとおりの結果になったということでありまして、私たちの分権に関しても、後ろからいろいろと言っていただいていますけれども、一歩前進はあったかもしれないけれども、根本的に改められることはなかった。

 そういう意味では、自民党政権になって、安倍政権も分権に関しては、後ほどお聞きしたいと思いますけれども、しっかりした決意を持っているというふうに覚悟は聞いています。であるならば、そのことについて進めてもらうということも、私たち維新の会というのは、地方から、本当に現場に、地に足のついた議論というものをしていきたいのでありまして、ぜひ安倍政権にはその点をよろしくお願い申し上げたいというふうに思っております。

 今、日本は国難であります。経済財政、そして連日の領海、領空の侵犯、こういったことについては、与党だ野党だは関係ありません。これは、協力すべきは協力をするという姿勢でぜひ臨んでまいりたいと思います。

 また、東日本大震災、このことについても、これはこれからが、本当に本腰を入れてやらなければ、被災地の皆さんに対して申し開きができない、私たちの国会議員としての務めが果たせない、こういう状況でありますから、日本維新の会も、災害対策、今回の被災地に対して、復旧本部を設けてこれに対して取り組んでいく、こういうことになっておりますから、ここも全力を挙げていきたいと思います。

 さて、いろいろお聞きをしていきたいので早速質問に入りますが、まず、今回の中国のレーダー照射の件であります。

 十九日と三十日、これは二回行われているということでありますが、きのうも本委員会においては、防衛大臣に対して、あるいは総理に対して、いかにも報告が遅いのではないかという御指摘があり、その点については、ある意味では率直に認めたところがありました。

 危機管理の要諦というのは、私が釈迦に説法を申し上げるつもりはありませんけれども、とにかく第一報を早くすることなんですね。それは不確実な情報であったとしても、第一報を早くする。すなわち、確認不明のどこかの飛行機、これが我が国に近づいているというのが第一報なのであって、そして、それが中国なのかどこなのかようやくはっきりしてきた、そして、ここまで近づいて、あるいは被害が出たか出ないか、順番にわかってきたことを伝えていくというのが危機管理の要諦なのであって、非常に情けなかったけれども、防衛省はその危機管理の要諦が守られていない。

 一報を防衛大臣に、そして必要があればすぐさま総理にというのが、これから先はしっかりやってもらわなければ困るので、この点については、まず、小野寺防衛大臣には覚悟をちょっとお聞きしておきたいと思います。

小野寺国務大臣 昨日の質問におきまして、私ども、正確に今回の対応について報告をさせていただきました。

 その中で、三十日の事案につきまして、私ども防衛省、そしてその後官邸の方に、五日の日に報告がなされたということで、これは御指摘をいただきました。

 現場としては、しっかりとした情報、証拠が固まってから報告ということを配慮したんだと思いますが、昨日、総理からもお話がございましたように、これからはしっかり、何かそういうような事案が発生しましたら、多少不確かでもすぐに私どもに報告するよう、指示をきのうさせていただきました。しっかりとこれからも対応してまいります。

 また、一つだけ申し上げさせていただきますと、一昨年の震災直後、中田委員、そしてきょういらっしゃいます山田委員から、直接、私ども被災地に支援をいただきました。感謝を申し上げます。

中田委員 今、小野寺大臣からありましたけれども、多少不確かな情報でもという話がありましたけれども、役人の習性なんですよね。完全な情報じゃないと怒られるかもしれない、完全な情報を整えてから出そうというのは、これは習性ですから、その点は、そうではないと、危機管理の要諦というのをもう一度防衛省内で徹底してもらいたいというふうに思います。

 正確な情報をきのう出したという話でありましたけれども、では、正確な情報をもう一つ聞きたいと思います。

 昨日七日付の日本経済新聞の朝刊にこういう記事があります。

 民主党政権時代にも尖閣諸島国有化後に中国艦船からレーダーを照射されたという事実も明らかになった、当時の野田首相や岡田副総理らは日中関係を悪化させたくないとの判断で公表を避けたと関係者は語るという記事がきのう載っています。

 まず、こうした事実はあったんですか。

小野寺国務大臣 御指摘のような、報道のような、野田首相や岡田副総理への報告の結果、公表を避けたとの事実はありません。

 今回の中国艦船のレーダー照射の事案、それ以前に、総理等まで報告の上、公表の必要があると判断された今回のような事案は、発生しておりません。

中田委員 報告を避けたというようなことはありませんということでありましたけれども、事実そのものがないんですね。その点はいかがですか。

小野寺国務大臣 あるかないかにつきましては、これは我が国の、ある面では、さまざまなこういうような哨戒活動等についての手のうちの問題ということになりますが、私が今言えることは、今回のレーダー照射事案があったそれ以前に、総理等まで報告の上、公表の必要があると判断された今回のような事案は、発生しておりません。

中田委員 今のはちょっとよくわからない答弁でありました。疑わしい件も、そして今私が申し上げたような事案も、いずれにしても防衛大臣にはきちっと報告がなければおかしいわけでありますけれども、事実関係として、今、記事にあったように、中国艦船からレーダーを照射された事実、あるいは疑わしい事実はなかったんですか。

小野寺国務大臣 中田さんは私の性格をよく知っていると思います。もう一度繰り返します。

 今回の照射事案以前に、総理等まで報告の上、公表の必要があると判断された今回のような事案は、発生しておりません。

中田委員 そうすると、これは、総理、防衛大臣まで上げる可能性がないようなことはあったかもしれないという話になるんですかね。

 ないなら、ないはずなんです。そして、あったならあったはずであり、その件については、前の政権のことでもありますから、きちっと明瞭に省内の意見を集約して公表してくれればいいわけであって、ないのかあるのかという話なんですが。

小野寺国務大臣 例えば、こういうレーダー照射事案がこれとこれでありましたということで、もし発表した場合に、相手国が、それ以外に例えばもしあった場合、ああ、日本側はこれとこれはわかったけれども、これについては知らなかったんだなというメッセージにもなってしまいます。

 ですから、このようなことについては、私どもとしてしっかりと対応はしておりますが、今回答えられる内容というのは、総理に報告するような事案については、今回のこと以外には発生していないということであります。

中田委員 これ以上は同じ答弁の繰り返しになりそうですけれども、ということは、今回のレベルのようなものは、いずれにしてもないと。ある意味では、それ以下のものはもしかしたら何かあったのかもしれないけれども、しかし、今回のレベルに達するような、あるいは疑わしきレベルに達するようなものはなかった、こういうことなのかもしれないですけれども。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、速やかに、それ以下のレベルのものはもしかしたらあるかもしれませんよ、速やかに大臣までしっかりと第一報が伝わってくる、こういう組織にしなければ、これからますます緊迫をしていく可能性もあるわけです。ぜひその点は徹底をお願いしたいというふうに思います。

 さて、外務省が今回公表をして、そして、このレーダー照射に対して、防衛省から外務省に対して中国に抗議するようにというふうに要請をしたのが五日になっていますね。

 そして、この五日、抗議した、この事実関係は何かというと、外務省の石川浩司中国・モンゴル第一課長、こちらから中国大使館の参事官に抗議をしている、また、北京においては、日本大使館の堀之内秀久次席公使が中国外務省の羅照輝アジア局長に抗議をするというのが、行ったものであります。

 さて、この抗議のレベル、これはもっと引き上げるべきではありませんか、外務大臣。

岸田国務大臣 御指摘のように、二月五日の日に防衛省から外務省は連絡を受け、同日、中国に対し申し入れを行い、抗議を行いました。

 二月五日の日、この中国への申し入れ、できるだけスピード感を持って早く申し入れをする、そのためにはどういった形、ルートがいいか、調整をした結果、御指摘のようなルートで申し入れを行った、こういったことでございます。

中田委員 御指摘のようなルートで行ったということですけれども、これは極めて、この後も議論しますけれども、異常な事態だったというのが政府の認識ですよね。その異常な事態に対して、我が国の課長レベルから参事官にというこのレベルでいいのかという話をしているわけでありまして、もっと高度なレベルでこれはしっかりと日本の意思を伝えていく必要がありませんか。

岸田国務大臣 中国に対しましては、申し入れを行い、抗議を行いました。そして、その際に、事実を確認したいという反応でありました。我々は引き続き、説明責任を果たすべく申し入れています。

 今、中国と意思疎通を図りながら、先方からの反応を待っている状況でありまして、必要に応じてはレベルを上げること、これは当然考えなければいけない、こういった状況にあります。

中田委員 中国があっさりと、我が国の厳然たる事実関係に基づく発表に対して、彼らがしっかりとした対応を、中身を認めるということは、ある意味では考えにくいかもしれませんけれども、これは効果的なレベルでこれからしっかりと言っていかないとまずいと思うんですね。何かありますか。

岸田国務大臣 今申し上げているように、中国の説明責任がどう果たされるか見守っていたところですが、昨日夕刻に、七日夕刻ですが、中国国防部から我が方、在中国大使館に対しまして説明がございました。その説明によりますと、日本側が対外公表した事案の内容は事実に合致していないという説明でありました。

 それに対しまして、本件は防衛省において慎重かつ詳細な分析を行った結果でありますし、我が方として確認したものであり、こうした説明は全く受け入れられないと考えておりますし、そして、その中国側とのやりとり、詳細は控えますが、この日本側の公表内容が事実に合致しないという指摘があったため、かかる指摘は全く受け入れられない旨、こちらから誠実な対応を求めた、こうしたやりとりがございました。

中田委員 でも、これは、中国は全然認めていないという話になると、日本は、国際社会に対してより積極的に日本のしっかりとした事実関係というものを伝えていかないと、ますます国際社会の中における、尖閣をめぐったり、あるいは領土、領海、領空に対する我が国と中国との関係というものを、世の中、世界が誤解をしかねない。しっかりと日本がこれを伝えていかなければいけない。

 皆さんのところにお渡しをしたコピーがございますね。このコピーは、中国の環球時報という新聞記事であります。これは六日付です。ということは、五日に我が方が公表して、その翌日の中国の環球時報でありますけれども、ここで、皆さんのお手元にあるコピーの中にマーカーを引いてあります。このマーカーは何が書いてあるかというと、もし今回のレーダー照射事件が事実とするならば、中国の軍艦は、威嚇を受けた後、日本の軍艦に警告したにすぎない、軍艦が跡をつけられたり、航行の邪魔をされたりしたら相手に警告するのは国際的慣例だ、こういうふうに書いています。中国国内向けかもしれないけれども、これは当然、世界に対して発信をされている情報であります。

 当然、こんなことを世界じゅうの人たちが見たら、日本が何か仕掛けているかのように思うけれども、そうではないことは事実ですね。

 こうしたことに対して、世界に対して日本が働きかけをきちっとやっていくということをやらないと、どんどんどんどんこの問題が、日本が何かやっていると誤解をされてしまいます。外務大臣、そこをしっかりやらなければいけないと思いますが。

岸田国務大臣 御指摘のように、国際社会から我が国がしっかり正しい認識を得るということは大変重要だと認識をしております。

 各国の政府ですとかメディア、あるいは有識者に対しまして適切な説明を行う、そして、国際社会とともに、中国に対して、透明性の向上ですとか国際的な法規、規範を守る、こうしたことを働きかけていく、大変重要なポイントだと思います。ぜひそうした対応をしっかりと行っていきたいと考えています。

小野寺国務大臣 今回の防衛省の分析に当たっては、火器管制レーダーの照射を受けたデータを護衛艦でしっかりと収集を行い、そして日本に持ち帰り、専門部隊で精密な分析を行って、しっかりとして、私ども公表させていただいた状況であります。間違いない状況だと思っています。

中田委員 どんなに事実を持っていても、本当にこれを世界に効果的に発信しなければ意味がない。

 追加して申し上げれば、七日付の同じく環球時報には、事態警告のための火器管制レーダー照射の例は少なくはないというのを載せていたり、それから、香港フェニックステレビは、中国国防省の報道担当者が日本側の発表は事実と一致しないと伝えていたり、さらには英字紙ですよ、チャイナ・デーリー、レーダー照射は中国の脅威をでっち上げるための政治劇だと決めつけたと。また、一部私が耳にした報道では、安倍総理が訪米をする、これに当たって日本側がこういうことをつくり上げている、こういうふうな報道も中国では出回っているようです。

 総理、既に、こうしたことについて世界に対して日本がきちっと説明をするということに対しては、なかなかできていないと、この間、本会議での答弁でもたしかあったというふうに思いますが、これは本当に、単純に指示をするだけではなくて、かなり真剣に、組織立って、戦略的に日本の立場というものを伝えていかないとまずい。この点について、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今回の事案については、ただいま防衛大臣から答弁したとおり、極めて慎重に精査した結果、中国側がレーダー照射を行ったことが明らかになった上で、我々は発表したわけであります。

 日本外交というのは、国際社会において、あるいはまた国際場裏において、礼儀正しく、物静かな外交を行ってきたんだろうと思います。

 これからも、礼儀正しく、物腰は物静かではあっても、しかし、主権や国益が侵害されるときにはしっかりと我々の考え方を述べていく、そういう外交に変えていきます。

 その意味において、国際社会において、我々の考え方、我々の主張を浸透する上において戦略的な体制をとっていく必要があるだろうし、今、そういうことについては既に指示をしているわけでありまして、つまびらかに申し上げることはできませんが、私は、中田議員の指摘は極めて重要な指摘だろう、このことを踏まえながら我々は対応していかなければならない、こう考えております。

中田委員 それから、昨日の午後ですけれども、ロシアの戦闘機二機が北海道の利尻島南西沖にあらわれて、これも領空侵犯ということでありますけれども、この事実関係についてはどうなっていますか、防衛大臣。

小野寺国務大臣 昨日、十四時五十九分から十五時にかけて、ロシア機二機が我が国領空を、御指摘ありました北海道利尻島南西沖上空でありますが、侵犯いたしました。

 地上より通告、警告を実施するとともに、航空自衛隊戦闘機F2延べ四機を緊急発進させました。

 また、直ちに、外務省ロシア課長より、在日ロシア大使館参事官に対して抗議をするとともに、速やかな事実関係の確認を求め、さらに、在ロシア連邦日本大使館次席公使からロシア連邦外務省第三アジア局長に対しても、同様の申し入れを行いました。

 国際法上、国家は、領空について完全かつ排他的な主権を有しております。今回の領空侵犯事案は、その排他的主権を侵すものであり、極めて遺憾だと思います。

 今後とも、しっかり対応してまいります。

中田委員 もう一つ事実関係を確認しておきたいと思いますけれども、これは、防衛大臣並びに総理に対して報告が来ているのは、いつですか。

小野寺国務大臣 私に対しては、事案発生後すぐであったと思います。

 昨日も予算委員会等開かれておりましたが、その予算委員会のさなかにメモが回ってきまして、その場で秘書を通じて指示をいたしました。

安倍内閣総理大臣 私に対しても同様でありまして、昨日の予算委員会中にメモで連絡がございました。

中田委員 ロシアの政府の方は、領空侵犯自体を否定しているようでありますけれども、五年前にもやはり伊豆諸島沖で領空侵犯した事実もありまして、このときのロシアの政府の対応は、どういう発表になっていますか。

小野寺国務大臣 今の件について、まず、領空侵犯事案の事実関係について報告をさせていただきます。

 平成二十年二月九日午前七時三十分から三十三分にかけて、ロシア空軍の爆撃機TU95一機が伊豆半島南部の領海上空を侵犯し、防衛省・自衛隊としては、通告、警告を実施するとともに、航空自衛隊戦闘機F15計二十二機、それから早期警戒機二機を緊急発進させ、対応させたものと承知をしております。

中田委員 そのとき、ロシアは認めていますか。

岸田国務大臣 平成二十年二月のただいまの事案につきまして、確認をし、そして我が国としては公表しておりますが、その当日のロシアの反応については、ちょっと確認をさせてください。(中田委員「当日じゃなくて、その後は」と呼ぶ)それも含めて確認いたします。

中田委員 ちょっと心もとないですね。

 ロシアがこれまたどういう対応をとったのか、そのとき日本政府がどういう対応をとったのかということを、きちっとこちら側は教訓にしながら、また次の一手を打っていかなければいけないわけでありまして、そういう意味においては、ロシアが何を考えて今回やっているのか、その意図というものをどういうふうに分析していますか。

岸田国務大臣 ロシアの意図については、私は申し上げる立場にはありません。今後、しっかりと情報を収集し、事態を確認していきたいと思っています。

中田委員 これもそうなんですけれども、総理、しっかりと、我が国が余りここで手のうちをさらすような議論をできないことは私も十分承知していますから、その点については控えますけれども、中国とロシアがタイミングを見計らっていろいろなことをやっている、このことについて、我が方も、では、どういう対応をしていくのか。

 訪米もなさいます。そういう意味においては、同盟国としっかりと我が国の守りを固めていかなければいけないわけでありまして、この点について、総理の御決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣の方針としては、我が国の人命、財産そして領土、領海、領空を断固として守り抜く、この決意はしっかりと示していきたいと思います。その中において、来年度の予算において防衛費を増額したところであります。

 ずっと防衛費は減額が続いてきたのでありますが、これは国家意思として、我が国の領土、領海、もちろん我が国の人命、財産、これは当然でありますが、領空も含めて守っていくという意思表示である、このように考えております。

中田委員 しっかりお願いをしたいと思います。

 さて、ちょっと時間もありますので次に移りますが、いわゆるアベノミクスという、今、我が国の株も円もさまざま動きが出ている、こうしたことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 昨日のマーケットは、外国為替市場は一ドル九十三円八十銭、日経平均株価の終わり値一万一千三百五十七円ということでありまして、六日には、リーマン・ショック後の最高値の更新を株価もしております。

 そういう意味では、各種さまざまマインドの変化というのも確かにあらわれているというふうに思って、これが本当に、これから先、日本経済の足腰が強い状態につながるということにしていかなければいけないので、その点においては、今後の成長戦略という、三本の矢の三つ目ということにこれは焦点が移っていくんだろうというふうに思います。

 ただ、一つ確認をしなければいけないなといいますか、それは何かといいますと、国債の発行額が気になります。

 二十九日に閣議決定した平成二十五年度予算案の方ですけれども、新規国債発行額が、今年度を三・一%下回る、四十二兆八千五百十億円に抑えた。これは、政府は胸を張っているんですね。国債発行を減らしましたよと胸を張っています。

 しかし、実際には、来年度予算から、今審議している補正予算に借金をつけかえた、こういうふうに言わざるを得ない。この補正予算で増額をする五兆二千百十億円を合わせれば、これは四十八兆円です、国債の発行が。今年度の当初予算よりも九%もふえるんですよ。

 そういう意味では、政府が、四年ぶりに税収が国債発行を上回っていると言っていますけれども、これも疑わしい。うそですね。補正予算を使ってこっそりと国債発行額を積み増している、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

 当然ですけれども、次の世代にこれをどんどんツケ回しをしていくということを、自民党は民主党に対してさんざん批判をしていたけれども、ますます拍車をかけていると言わざるを得ないと思いますね。

 総理、毎年こういうふうに、本予算で胸を張りながら、しかし補正予算でがつんと大盤振る舞いをしていくということをやったら、財政規律そのものが、そもそも概念を変えなければいけないことになります。

 今回の補正予算は特別ですか。

安倍内閣総理大臣 今回の補正予算につきましては、まず、我々政権の使命として、日本経済を再生していく、デフレから脱却をし、行き過ぎた円高を是正していく、その上において、しっかりと日本の経済を成長軌道に乗せていくために、大胆な金融政策と機動的な財政政策、そして成長戦略なんですが、この補正予算は、まさに機動的な財政政策なんですよ。

 これを行ったことによって、初めてマインドが変わりつつある。市場も反応しているんです。今までぴくりとも反応していなかったこの経済は、変わり始めたんです、やっと。

 これはまさに、デフレから脱却への道に入ってきたと私は考えているんです。それなくして、残念ながらデフレから脱却できない。十五年間、ずっとデフレから脱却できなかったんですから。

 だからこそのこれは補正予算であって、毎回毎回やるということでは決してない。

 そうではないという意思を示すために、来年度の予算においては、引き締まったものにしていったわけであります。プライマリーバランスも、マイナス二十五兆円から二十三兆円に約二兆円改善したわけであって、それを毎回毎回やるということではなくて、まず、国の意思として、我々はデフレから脱却をしていくんだという意思を示し、その意思は、かなり私は伝わりつつあるんだろう、このように考えております。

中田委員 今、毎回毎回やるわけではない、こうおっしゃいましたけれども、そうでなければ困るわけであって、胸を張って本予算の方はしっかりとプライマリーバランスは改善しましたけれどもなんということを言いながら、補正予算では大盤振る舞いということを繰り返すことはないですねという確認をしたわけでありまして、そういう意味では、そうだ、こういう御答弁でよろしいかというふうに思いますが、何かありますか。

安倍内閣総理大臣 つまり、今回の補正予算というのは極めて大型の補正予算であります。それは積み上げによるものでありますが、一方、デフレギャップを解消していく、そういうインパクトのあるものでなければならないという考え方、そういう思想に基づいた補正予算であったわけでありました。

 この補正予算においては、その使命があって、その使命を今度の補正予算を執行していくことによって果たしていくのではないか、こう考えております。

 こういう形の補正予算を何回も何回もやるつもりはありませんし、だからこその三本目の矢である成長戦略をしっかりと実行していくことだろう、このように思います。

中田委員 そうでなければ困るんです。

 さて、それで、デフレという言葉がありました。デフレを脱却するためにということでありますけれども、いわゆるインフレターゲットと言われる形で、二%の物価上昇率というものを日銀は目標に定めたわけであります。

 日銀の独立性、このことについては確保しなければいけませんけれども、日銀にどのような役割を期待しているのか、財務大臣、お願いします。

麻生国務大臣 日本銀行との間におきましては、過日、共同声明に書かれておりますとおりに、日本銀行みずから二%の物価目標を目指していくということで、きちんとしていただかねばならぬというところが第一点。

 それから、オープンエンドになっているところはもう御存じのとおりなので、もう一点は、達成するのはできるだけ早くという言葉を使っておりますが、何となく、できるだけ早くというと、日本語で聞くとかなりいいかげんに聞こえるので、これは、英語の方は、アット・ジ・アーリエスト・ポシブル・タイムという、かなりはっきりした言葉が使ってあります。

 そういった意味で、日本銀行としての目的というのは、きちんとした目標を持って、日銀みずからの物価目標を設定していただいて、それに対応していただく。

 また、日銀が幾らお金を刷っても、市中に実需として広がらなければ経済は伸びないのはもう御存じのとおりなので、その点につきましては、財政の方もやります。また、経済の成長戦略の方もやります。この三つをあわせて初めてデフレというものから脱却できていくのであって、これを同時にやるというところが今回一番大きなところだと思っております。

中田委員 麻生大臣は、私は考え方は大変大好きな方なんでありますけれども、その考え方が大好きな方が余り考え方を変えてもらっては困るというふうに思って、一つお聞きをしなければいけないことがあります。

 麻生大臣、平成十三年の三月に、経済財政担当大臣だったんですね。十三年、このときの記者会見、当然このころももうデフレでありますけれども、デフレをインフレ傾向にするためのインフレターゲットを設けた国はいまだかつて世界に例がない、したがって、それが本当に効果を発揮するかどうか、これは甚だ疑問だというふうに疑問を呈しています。

 そういう意味では、今回、随分立場が違うなということなんですが。

麻生国務大臣 中田先生御存じかと思いますけれども、少なくとも、昭和二十年、一九四五年この方、世界でデフレをやった国はありません、一つもありません。したがって、デフレをインフレにということでインフレターゲットをやった国は日本以外あろうはずはないのであって、デフレをやった国がありませんから。

 したがって、ほとんどの国のインフレターゲットは、インフレをこれ以上大きくならないように、一〇%のインフレを五%に抑える、二%に抑える意味でのインフレターゲットというのをやった国はありますが、デフレをインフレにというターゲットをやった国はないという事実をそのとおり申し述べております。

中田委員 いや、麻生大臣、このときは連発してインフレターゲット政策について批判しているんですよ。

 インフレターゲット政策について、十三年の八月二十二日、ハイパーインフレ下では効果があるが、デフレ下では導入したことはない。インフレターゲットなんて、ハイパーインフレーションを抑えるのに成功した例はあっても、デフレをインフレにしたなどというインフレターゲットというのは世界で聞いたことがない。

 平成十五年は、ハイパーインフレを下げるときに使うもので、デフレ下ではやったことがない。平成十五年二月六日は、インフレターゲットなんて、金さえばらまけばインフレになるような話は、経済が余りよくわかっておられぬ人の話で、私は、基本的には、実需というものが出てこない限りはいわゆるデフレがインフレになるはずはない。

 最後の部分は、先ほどおっしゃったところと本当に同じです。ただ、インフレターゲットということが、ハイパーインフレということまで含めて非常に危険なもので、そんなものは荒唐無稽なんだ、こういうふうにおっしゃっているんですけれども、ここは相当宗派がえですよね。

 麻生大臣、いいんです、それは変わったなら変わったでいいんですよ。私はそこをしっかりとやはり言っていただきたいと思うんですね。

麻生国務大臣 今申し上げているとおりはそのままで、別に修正するつもりもありませんし、少なくとも、お金をばらまいたらインフレになるなんて、日本銀行が仮にお金を大量に印刷して地方銀行なり各銀行に行っても、日銀の当座預金がふえるかもしれませんが、その日銀の当座預金にある金から各銀行に、企業が、民間がお金を借りに来て、そこから初めて金が実需として地方に散っていく以外は、お金をばらまくことはありません。そこのところは間違いないでしょうか。

 したがって、そういった意味で、ハイパーインフレーションというのは、私は、ハイパーインフレーションの真っ最中にブラジルに住んでいましたので、ハイパーインフレーションとはどんなものか、皆さんとは違って、その現場に丸々一年ほどいましたので、朝と夕方と値段が違う状況というえらい目に遭った記憶があります。そういったようなときにはもう、ちょっと普通とは言えない生活ということになった。そういった経験からいきますと、いわゆるそれを必死に抑えるという時代と、今の日本におけます状況とはかなり違うのではないか。

 したがって、インフレターゲットというのをみんなよく言われますけれども、インフレターゲットというものはその種のときに使われる種類なので、普通なかなかそういった言葉を安易に使うものではなかったのが、あの時代、間違いないと思いますね。

 そして今、少なくとも、このところ、イギリス、カナダ、オーストラリア等々はインフレターゲットということを一応使って言い始めているのは事実ですけれども、でも、あそこもまだデフレではありませんから。

 そういった意味では、今申し上げているようなことの話、時間の経緯として申し上げればそういうことになります。

中田委員 実需の話はそれは合っていると思うんですけれども、とにかく、インフレターゲットの設定そのものが、麻生大臣は当時から一貫してこれは認めないという立場だったんです。そういう意味では、今回は大きな宗派がえだなというところであります。麻生大臣は言いにくいでしょうから私が言いますけれども、あのころは小泉・竹中路線が嫌いだったんですよね。それが結論なんですよ。ですから、今は変わったということをもっと素直に言っていただければよかったんですけれども。

 これ以上やると時間がなくなりますから、ハイパーインフレも含めて、リスクは必ずありますから、今回の金融緩和、そしてインフレターゲットと言われるものの設定というのはリスクが必ずありますから、そこのかじ取りをやる、ある意味ではつかさにいらっしゃるわけですから、その点をしっかりやってもらいたいということを申し上げておきたいと思います。

 さて、時間がないので次に進みますけれども、我が党の松野幹事長が先般、代表質問において、地域の元気臨時交付金について、地方が、地方自治体ですね、ハードにしか使えない交付金とした理由は何かというふうに聞いたわけでありますが、安倍総理からは、いろいろ御説明がありましたけれども、要は、一言で言うならば、地方の裏負担、これを面倒を見るということで、それを円滑にするためにこの交付金というのを設けたんだ、こういう趣旨の説明がありました。

 しかし、いわゆる公共事業ということについて、いろいろな広い概念があります。すなわち、公共投資というと何だかわからない。公共事業といっても全て含みます。今回の自公政権の出した補正予算というのが、公共投資、公共事業という非常に広い概念というよりは、公共工事、公共建設といった部分にどうしても偏重しているというのが、この地域元気交付金の中にもあらわれているわけです。

 例えば、何かパソコン教育をしていこうとか、学校施設の中にICTの整備を導入しようと思ってもできないんです。なぜできないのか、不思議なんですね。地方にとってみたら、要は、工事をして何か建物を建てなさいということにしか使えない状態になっちゃっている。

 これが現実なんですけれども、太田国交大臣、何でこういう仕組みになっているんですか。

太田国務大臣 補正予算というのは、狙いを定めて緊急ということでやるということで、今総理がおっしゃったように、デフレ脱却ということ、そして今、建物の老朽化が大変進み、防災、減災ということが東日本大震災以来極めて重要であるということに大きく絞ってやるということが、私は今回の補正予算のメーンストリームであるというふうに思っています。

 そういう意味では、中田委員おっしゃるように、パソコンの事業とか、そういうふうなことにはこれは使えないんですけれども、しかし今回は、この元気交付金と、もう一つあわせて防災・安全交付金というものがありまして、これはまた、ここの裏負担分は元気交付金の中でできるという仕組みになっているということを御了解いただきたいと思います。

中田委員 いや、太田大臣、違うんですよ。その地域元気交付金というのは裏負担分に使えるとおっしゃったけれども、これは建設国債の分の裏負担にしか使えないんですよ。ですから、今大臣が恐らく公明党の防災・減災ニューディール、こういう施策の中で、そっちに使えますよと言いましたけれども、きのう大臣がおっしゃっていた打音、あるいは塗装をかえる、さまざまな検査、こういうことには使えないんです。

 結局、大臣が言っていることと矛盾をしていて、この地域元気交付金は使えないという事実、これは大臣、余りおわかりになっておられない。

新藤国務大臣 事業内容にかかわることですので、私の方からちょっと御説明をさせていただきたいと思うんです。

 確かに、委員が御指摘のように、今回の元気交付金は建設公債発行対象経費です。しかし、公債を発行するに当たっては、地方からも御要望いただいているんです。年度末にいかに迅速に景気対策に資するものは何かということで、地方からも御要望いただいております。

 今回は、ソフト事業の関係は五百億円程度なんです。今おっしゃったような地方の単独でやりたいもの、それは補正予算債だとか地方交付税、こういったもので地方財政措置ができるということで、私たちは、今回はハードの方に絞って、しかも一・四兆円という大規模でありますが、そういったものを出したということであります。

 ちなみに、これは本当の名前は地域経済活性化・雇用創出臨時交付金というんですね。でも、ちょっとよくわからないので、元気交付金、みんなで元気を出そうということで名前をつけさせていただいて、ですから、皆さんが元気交付金と言っていただければいただくほど、我々は、それが国民にメッセージとして伝わるんじゃないかということで、うれしいと思っております。

中田委員 地域の元気を高めよう、活性化しようというのは、その趣旨は、名前はいいんです。そして、そのことに対して地域の御要望をいただいたといったところで、今、交付税の話まで出ましたから、交付税はこの後やります。

 だけれども、結局のところ、地方のニーズが生きないんです。だって、活性化しよう、元気にしようといったところで、地域の人たちからしたら、ただ単なる箱物をつくるのではなくて、一石二鳥、三鳥になるようなものをやってもらわないと元気にならないわけです。

 当然ですけれども、地域の人たち、市民、我々国民、この人たちは何を望んでいるかといったら、安全、安心を望んでいると思いますよ、防災の観点から。しかし、安全、安心を望むんだったら、地域の小さな施設に対して、それを検査したりあるいは補修をしたり、太田大臣が言っていた打音をやって、そういうことをして、そして塗装をかえたりあるいは補強したりということをやることは、市民にとって安全であり、かつ地域の事業者に工事が発注され、そして地域が元気になるんじゃないですか。ところが、それに使えないということを言っているんですよ。

 地域のニーズ、そうじゃないですよ。使えないものを国は出して、箱をつくるんだったら裏負担分を面倒見ますよと言っているのがこの仕組みだというところが問題なんですと言っているわけです。太田大臣。

太田国務大臣 誤解があります。防災・安全交付金という中に、まさに調査、点検という項目が入っているんです。ですから、そこの裏負担分も含めて、元気交付金の方でできるという仕組みになっているわけです。

中田委員 だって、今の裏負担に地域元気交付金が使えるはずがないじゃないですか。そこのメニューがそうなっていないですよ。それは大臣、しっかりと勉強されて、また答弁をしていただきたいというふうに思いますね。

 さて、今、新藤さんが交付税の話をしました。この交付税を措置しているんだから、そっちでやりなさいという話もありましたけれども、交付税の話をやらなければなりません。

 交付税というのが実にわからぬ仕組みになっていまして、よく言われるのは、これはもう総務省の補助金と化している、ブラックボックスだ、こういうふうに言われていますけれども、交付税がどういうふうに決まっていくのかということについて、新藤総務大臣、まずお答えをお願いします。

新藤国務大臣 地方交付税は、まず二つの機能がございます。これは、財源調整機能とそして財源の保障機能ということであります。

 ですから、まず、財政力の格差を是正して、全国どのような地域であっても一定水準の行政を確保するための必要な財源を保障する、これが一つ。

 それからもう一つは、交付税の算定は、実は大半がもう基準が決まっていて、国として、こういった仕事をしてくださいという基準が決まっております。これは土木のお金であるとか、それから小中学校の教員だとか、ごみ処理だとか、そういったような福祉、教育など、法令によって一定の基準が決まっておりますから、そういったものはきちんとしたきめ細かな選定をして財源保障をするということです。

 一方で、わかりづらいという話もありますから、包括的に人口だとか面積だとかそういう簡素な算定も含めて、きめ細かな算定とそれから簡素な算定、これを入れてバランスをとっている、こういうことであります。

中田委員 交付税がどういうふうに決まっていくのかというその概略、大臣は政務官もやっておられたからおわかりだと思いますけれども、交付税の総額がどういうふうに決まっていくか、そのプロセスを答えてください。

新藤国務大臣 これはもう委員も御承知だと思うんですが、簡単に言いますけれども、地方税収とそれから国庫支出金、そして地方債、これが算定されます。それに不足するものを交付税として見るということであります。

 ですから、総額は、翌年度の地方財政全体の標準的な歳入と歳出を見込む、その中で所要額を確保する、こういうことであります。

中田委員 簡単に整理をすると、まず財務省とそれから総務省が交付税額をネゴして決めるんですね。それが予算案に盛り込まれてくるんですね。そうでしょう。それが予算案にのっているから国の交付税額はまず決まるわけです。

 しかし、それを地方は、今例えば、もう既に二月の半ばに近くなってきていますけれども、この段階で地方は、来年度予算で一体幾ら交付税が来るか知らないわけです。概略はつかんでいますよ、それは国がこうですと決めているから。しかし、実際は、地方はどれだけ来るか知らないんです。実際に地方が知るのは五月なんです。すなわち、年度に入ってから、その実際の金額を知ることになる。

 なぜかというならば、それは、国会で予算が成立をし、さらにその後、国の交付税総額に対してさまざまな補正係数の変更があって、そして、それが出てきて初めて地方は自前の計算ができるようになって、自分たちの、幾らことしもらえるかということが決まってくるわけです。

 こういうことに対して、私がきょうトップバッターをやっていますけれども、この後、地方の知事、市長をやった首長五人連続で、きょうはやっていきますけれども、地方の実態というものを、残念ながら、国政に携わっている人たちは知りません。そして、年度の途中になって、そうやってわさわさわさわさと、自分たちに一体幾らお金が来るのかということをようやく知るというような実態を知りません。そして、地方のニーズがその中に生きていないということも、これは知りません。

 実は、その補正係数云々という台帳に沿って地方は自分たちの金額を初めて知るわけですが、この台帳というのはここにございます。これが台帳なんですけれども、こんな分厚いんですね。この分厚い台帳を、総務大臣、政務官をやっているときに見たことがありますか。

新藤国務大臣 そういった台帳があることは承知しておりますが、一々細かな算定のところまでは見ておりません。

中田委員 そうなんです。そのとおりなんです。

 しかし、この補正係数というのを変えて、最後、一体幾ら来るのかということを決めるのは、まさにこの台帳に全部書いてあるんですが、この台帳は、皆さん、何で決まっているか知っていますか。これは総務省の省令で決まっているんです。省令で決まっているということは、国会議員は知らない。我々が関知できないところで交付税の最後の金額というのは決まってくるんですね。省令です。

 だけれども、もう一つ、実は国会議員で知る人がいる。それは誰か。大臣なんです。ところが、今大臣は、政務官のときに見たことはあるけれどもそんな細かい中身までは見たことないと言っているわけです。すなわち、総務省の役人が、この補正係数というものを最後ごじょごじょごじょごじょといじって、大臣にこのしち面倒くさい、こんな千三百ページに及ぶものを見せて、省令を変えて初めて交付税というのは決まるんです。

 要するに、政治家はそこにはタッチもできなければ、ある意味では、透明性が確保された役所における作業ではない中で交付税が決まっているというところ。

 これは僕は、新藤大臣に責任を追及するわけでありません、なったばかりでしょうし。そして、政務官のときにも、正直に言って、見たけれども中身までは見ていないとおっしゃっていたとおり、大臣になっても見られませんよ、こんなもの、一千三百ページも。

 要するに、こういうところで物事が決まっているというところが問題なんです。なぜか。さっきから言っているように、地方自治体は自分たちの金額すらわからないんですよ、年度を越えて。年度を越えて、五月になって初めて、この台帳、これは今言ったように、五月に総務省の中で役人が省令を変えて初めて決まるんだ。それを見て、そして予算をつけている。

 こういう実態があること、分権をきちっとやっていかなければだめだということを大臣にお認めをいただかなければいけないわけです。

新藤国務大臣 これは、現場を御存じの、市長も経験されている委員ならばおわかりだと思います。勝手に国が決めているわけではありません。

 最終的な決断は国が行います。しかし、これは法定に定められたもの、そして、精緻な作業を一つ一つ、自治体と交渉したり連絡をとったりして決めている。最終的には国が基準を定めますが、これは地方も、最後はよくわからないと言いますが、あらかたわかっているわけであります。それは国と地方が連携の中でやっているわけで、私ども政治が、その基準の算定をどう変えたらいいか、そこまで一つ一つさわらなくても、それは自治体の実務の中で、そして国の総務省が指導そして支援している、そういう中で私は担保されている、このように思っております。

中田委員 大臣、それは認識を改めてもらわないと困るんです。

 どういうプロセスで交付税が決まっているかということは、先ほど申し上げたように、だって、やっていたじゃないですか、財務省と総務省が交渉して国の交付税総額が決まるんです。そして、決まったものに対して、今申し上げたように、年度を越えてから補正係数を省令で変えて初めて確定するんです。そして、それに対して地方がさまざま意見を言うのはその後なんです。

 もともと総額が決まっているわけだから、基準財政需要額と基準財政収入額という、この交付税が決まる算定方式がストレートに反映されているわけではないわけです。だって、地方の基準財政需要額を積み上げていって、地方の財政収入額とその差額をといったら、毎年毎年、当然ですけれども、国が決めた交付税総額よりもふえちゃうわけです。

 このふえた分をどうするかが、この補正係数によって、五月ごろいじって、その総額におさめるための操作をしているんです。これが現実なんです。だから、ここは改めましょうよと言っているわけです。

新藤国務大臣 ですから、総務省があるわけです。それぞれ自治体は千差万別です。なので、標準的な財政需要というものを定めて、そして標準的な収入の方も定めている、全体の調整をする、そしてその上で必要な財源の保障をする、こういう制度をつくっているということで御理解いただきたいと思います。

中田委員 全然答弁になっていないんですけれども。

 国が結局のところ決めた総額の中で、地方は最終的には押し込められている、そのために補正係数という省令が活用されているということが問題なんですよ。

 それで、どうなっているかというと、結局、足りない分をどうするかというのが、今、臨時財政対策債という、国に借金をさせる形で、これは交付税を出しているわけです。出しているというのは、すなわち、交付税が足りない分を現金で出しますよと言っているはず。そもそも、これは地方固有の財源ですよ。地方固有の財源なのに、それが足りませんという形になって、結果としては、臨時財政対策債という借金をしなさいというふうになっているわけです。

 今、地方は行革努力をやっています。行革努力をやってきた結果どうなっているかというと、お渡しをしている皆さんの資料をごらんいただきたいと思います。

 オレンジ色の方のグラフを見ていただくと、一般的な地方債の残高推移というのは、間違いなく、少しずつ少しずつ、こうやって減ってきているわけですね、この十年の間。これは、地方はそれぞれ努力して減らしてきているわけです。

 一方で、もう一枚のパネルをごらんいただきたいと思います。赤い方のグラフです。こちらを見ていただければわかるとおり、これはすごい右肩上がりで臨時財政対策債の残高がふえてきているわけですね。右肩上がりです。急速な右肩上がりですよ。これは何を言っているのかというと、結局、足りない分を地方に肩がわりさせますという形になって、地方の赤字公債を出すという循環になってしまっているわけです。

 地方の赤字公債、この臨時財政対策債というのは平成十三年度から始まりましたけれども、これは特例で始めたんです、国に現金がないからといって。そして、それが四次にわたって延長されて今に至っているわけなんですけれども、これは来年、平成二十五年度で期限を迎えます。

 今度こそ、これはやめなきゃだめなんです。そうじゃなければ、国の赤字公債と同じで、国がどんどんどんどん借金漬けになってきたことを国が無理やり地方に迫っているという状態をつくってきてしまっている。地方の自主努力じゃないんですよ、自主努力の方の公債は減っているんですから。それに対して、国から肩がわりされて借金させられているのでふえているという、この実態が問題なんです。

 総理、だからこそ、これは分権をしていくということ。その分権というのは何かといったら、まず私たちが言っているのは、今、国が垂直調整ということで財源を調整している、すなわち、交付税を国が差配しているわけです、さっき言った補正係数で。しかし、それに対して、地方が自分たちで財源調整をするように、まず、する。そして、その後に、私たち日本維新の会が言っているのは、消費税を地方税化しましょうと言っている。こういう段階を踏んでいって分権化をしていかないと、国のせいで地方の借金がどんどんふえている。

 地方は努力をしているのにふえているというこの現状に対して、総理の分権に対する考えをお聞きさせていただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは、行革努力をしているのは事実です。しかし、ぜひこの状態を御存じいただきたいと思います。

 さっきのグラフの、一般的な地方債の残高推移、これが下がってきているというのは、この地方債は建設地方債ですから、公共事業が落ちているから、当然のごとく落ちてしまうんです。一方で、こっちの臨時対策債の方は、これは行政経費の赤字部分を賄いますから、結局そこが、地方税収も落ち込んでいる、そして赤字がふえる、この部分についてふえていってしまっている。

 これは、我々はいいと思っておりません。早くに解消したいと思います。こういうものを発行しなくて済むようにしなきゃいけない。景気回復しなきゃいけないというのは、ここにもあります。

 しかし、単純に、地方が努力してという今の先生のお話は、やや、この地方債が減っているのは、そういう構造的な問題があってこのような結果になっているんだということは御理解いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、総務大臣から申し上げましたように、いわば国の赤字を地方につけかえたわけではありません。

 いずれにしても、国も地方も、こうした赤字を減らしていくべく、それぞれ自主努力をしていくことは当然のことであろうと思います。その中で、地域もそういう、いわば赤字を減らしていく、財政規律をしっかりと維持していく、取り戻していくということを示しながら地方分権を進めていくということが重要ではないか、このように思います。

中田委員 先ほど大臣がおっしゃったのは全然違いますよ。だって、交付税として現金で出るそのものを借金させているんだから。全然それは認識が違いますから、そこはきちっと勉強していただかないと、これから先、通常国会においては、もっともっとこれはお聞きをしていくということになると思います。

 結局、大臣がさっき言ったことの中で一つだけ、交付税を決めるときに地方からのニーズも酌み上げて等々の話で、そして、よりわかりやすくということで、面積だとか人口だとか、こういった外形的なものでやれる交付税もつくりました、それもありますとおっしゃったけれども、これは新型交付税というものですね。麻生政権のときにできたわけであって、麻生政権の、これは私はいい案だったと思います。席を外されましたけれども、菅官房長官が総務大臣のときにつくった話でありまして、これは菅さん、地方議員出身ということも含めて、やったことだと思いますよ。

 ただ、この新型交付税は、全体の交付税の中の一割でしかありません。しかも、その一割は基準財政需要額の中の一割なので、総額で一体幾ら出ているかは、これは丼勘定でさっぱりわからないという状態になっています。しかも、この一割の新型交付税の定義は何かというと、国の基準や義務づけが発生していないものという定義なんです。裏を返せば、九割は国の義務づけ、枠づけ、基準というものがあるという話なんです。

 結局、交付税という、このわかりにくいことをできるだけわかりやすく私はしたかったんだけれども、それは、多くの国民の皆さんが、地方分権というと、国と地方の単純な争いだと思っている。

 そうではない。結局、今言った義務づけだとか枠づけだとかということが地方にあるとどういうことが起きているかというと、保育園を一つつくるのに、一歳児に対して三・三平米の床面積が必要です等々の保育園の基準というものが逐一決まっているんですよ。公園のあり方、道路の幅員、全て、全部国が基準を決めて、その基準のもとに金が出ているということになっている。だから市民に対してニーズに応えることを地方ができないということを、しっかりとわかってもらわなければいけないということなんであります。

 さて、時間がそろそろ来ておりますので最後にお聞きをしていきたいと思いますが、これは続いてまたやります。その次でありますけれども……(発言する者あり)時間は私、もらっているんです。会派の中でです。

 さて、憲法についてお聞きをします。

 これを最後にお聞きをしていきたいと思いますが、憲法九十六条、総理はこれを、先般の本会議でも、まず第一歩としてやっていきたいというふうにおっしゃっておられましたけれども、そのプロセス、総理が描いている中身を教えてください。

安倍内閣総理大臣 憲法九十六条でありますが、憲法改正の発議自体は、国会議員、衆参それぞれ三分の二の議員の同意がなければ発議そのものができない。つまり、幾ら国民の五〇%、六〇%、例えば七〇%の方々が憲法を変えたいと思っていたとしても、三分の一をちょっと超える国会議員が反対をすれば、それは指一本触れることができないということはおかしいだろうという常識であります。

 つまり、その中において、まずここから変えていくべきではないかというのが私の考え方であって、この考え方については維新の会の方針としても大体御賛同いただけるのではないかと思っているわけでありますが、現在、憲法調査会ですか、そこで議論がなされているわけでありますので、そこにおける議論を深めていただきたい。

 と同時に、国民的な議論、まだまだこの九十六条の問題点等々について、国民の皆様と問題意識が共有されているわけではありませんから、まず議論を深めていくことから始めていきたい、このように思っております。

中田委員 九十六条改正、これは日本維新の会としても公約に掲げておりまして、ぜひ御一緒にやっていきたい、こう思っていますけれども、九十六条は、国会内でもこれは議員連盟があります。

 この議員連盟、超党派でほとんどの政党が参加をしていますけれども、古屋大臣におかれては自民党の代表であったと思います。この議連の中身について一番よく御承知だと思いますけれども、九十六条について、その決意をお聞きしたいと思います。

古屋国務大臣 今、この九十六条については、安倍総理から答弁がありましたように、私も安倍内閣の一員でございますので、多くの会派が御主張されている九十六条からまず取り組むべきだ、これが内閣の一員としての全てでございますが、その上で、今、議員連盟の代表だろう、どうなんだという御質問でございます。

 その視点に立って、若干、経緯という視点でお話しさせていただきたいと思いますけれども、二十三年の六月にできました。中身は、民主主義の大原則である、衆参両院の三分の二の同意がなければ、安倍第一次内閣のときにできた国民投票にも付することができない、これはおかしいのではないか、だからこそ、それを衆参両院過半数に緩和しましょうと。

 その理由はただ一つ、主権者である国民が憲法改正の可否について主体的に参画する機会を増大する。すなわち、国民投票を実施して、国民の皆さんに、憲法改正、賛成ですか反対ですかという機会を増大する、これが議員連盟の唯一の目的であり、理由であります。

 そんな取り組みをいたし、貴会派におかれましてもぜひ御協力をいただければということで、議員連盟として、代表としてお話をさせていただきました。

 以上です。

中田委員 公明党は加憲ということを言っておられます。すなわち、環境権等々を憲法の中に入れていくべきだということであります。そういう意味では改憲なわけですけれども、この改憲の中身については、これは本当に慎重にさまざまな議論をしていく必要があると思います。

 ただ、この九十六条は、御案内のとおり、国民の皆さんにもよくよくお知りをいただきたいと思いますが、衆参両院の三分の二以上の賛成があって初めて、憲法改正については、国民に発議をし、国民の過半数の投票を得て初めて憲法改正できる。この衆参三分の二というものを過半数という形にしましょうということなのであって、これは憲法改正の中身を言っているのではありません。改正の手続の話であり、これを変えていくというのは、まさに憲法議論そのものをしっかりと真剣にやりましょうと。どうせ変えられっこないから、いいかげんな憲法議論をやったり、あるいは護憲だと言ったり、中身に入る前の議論を妨げるのではなくて、大いに緊張感ある中身をやっていくためにこの九十六条については改めていきましょうということなのであって、これは党派を超えて取り組むべき問題だと思いますね。

 そういう意味では、太田大臣、この九十六条議連、これは公明党の議員さんも入っておられます。九十六条の改正、これは公明党の皆さんも一緒になって取り組んでいただけますか。

太田国務大臣 私は、公明党を代表しているわけではないんですが、公明党の一員であることは当然です。

 我が党は加憲という立場で、今おっしゃったように、この憲法というものはすぐれているものであるという認識のもとに、時代の要請に合わせて変えるべきものは変えるという部分での、いわゆる部分改正としての加憲という立場で、アメリカ等ではアメンドメント方式ということで今までの憲法につけ加えていく、こういう形をとっておりますが、そういう形態をとっています。(中田委員「九十六条は」と呼ぶ)

 九十六条ということについても、これは我が党の中でもいろいろな意見があり、そしてまた、自由民主党の中にも実はいろいろな意見があろうというふうに思います。

 私は、個人の考え方は持っておりますが、これについて、直ちにオーケーということではなくて、慎重に扱うということが必要であろうというふうに思っていますが、これは合意を形成していくということが大事なのであって、この改正自体が実は三分の二を得るということでありますから、そこでは慎重な憲法審査会での論議がまずしっかり行われるということが大事であろうというふうに思っています。

中田委員 あとの時間を同僚の議員に譲っていきたいと思いますけれども、この九十六条改正はぜひ取り組んでいきたい、こう思います。日本維新の会としては、大いにこれは前に進めていく、公約であります。

 公明党さんも積極的になってください。というのは、公明党さんがいなくても、日本維新の会がいれば、三分の二、衆議院ではありますよ。自民党と一緒になって大いに進めていきたい、公明党さんも一緒になって進めていきたい、こう思っているわけであります。

 ぜひ九十六条を改正して、本当に今、領海、領空、脅かされているこういう事態の中において、日本としてあるべき国の姿は何かということが書いてあるのが憲法なんですから、その憲法というものをあるべき姿に変えていく、その歴史的役割というものを、安倍政権にもリードしていただきたいし、今次国会に集まっている我々の全体の責任として前に進めていくということをぜひやっていきましょうとお呼びかけをして、質問を終わりたいと思います。

山本委員長 この際、東国原英夫君から関連質疑の申し出があります。中田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東国原英夫君。

東国原委員 維新の東国原でございます。

 今、中田議員が、質問が時間的に相当オーバーしまして、十五分もオーバーして、維新のチームワークはどうなっているんだというような御指摘もあるんじゃないかと思いますけれども、カバーしながらいきたいと思います。

 まずもって、総理、このたびの御就任おめでとうございます。

 私が政治行政の中に足を踏み入れさせてもらったのは、六年前、宮崎県知事という立場でありました。そのときにちょうど第一次安倍内閣でありました。ですから、宮崎県知事時代に本当にお世話になったと思っております。この場をかりて、本当に心から御礼申し上げたいと思います。

 また、六年を経て、こういう立場でここでお会いするというのは何かの運命、総理はきのう天命とおっしゃいましたが、何かのそういった縁かなと思い、この縁を大切にしながら、維新の理念であります是々非々で質問をさせていただきたいと思っております。

 私は、六年前に総理の「美しい国へ」という本を読ませていただきまして、今回また新著を出されたので、「新しい国へ」という本を読ませていただきました。内容はほぼ同じだったんですね。全く同じと言っても過言ではないんですけれども、よく言えば、ぶれていらっしゃらないなということであります。

 この二百二十七ページにこういった記述がございます。勝った者が既得権益を手にしたり、負けた者が再挑戦を許されないような社会になるのは、絶対に防がなければならない。もう一回言います。勝った者が既得権益を手にしたり、負けた者が再挑戦を許されないような社会になるのは、絶対に防がなければならない。

 これは非常に示唆に富んだ指摘だと思うんですね。勝った者が既得権益を手にしない。つまり、今回のこの政権交代でいえば、勝った自公政権が既得権益を手にしたり、負けた者が、まあ、我々野党ですかね、特に民主党さんだと思うんですけれども、再挑戦を許されないような、そういう社会、政治であってはならない。これは非常に重要だと思う。

 僕は、この本を六年前に読んで、再チャレンジという言葉が出てくるんですけれども、これはやはり重要なポイントじゃないかなと思うんですね。何回チャレンジしても、挫折しても失敗しても立ち上がっていく、立ち上がるチャンスがあるんだ。これは私も、私ごとで申しわけないんですけれども、再チャレンジの連続でございまして、この言葉にはちょっと感銘を受けたんです。

 同じ著書で、二百二十九ページに、負け組、勝ち組として固定化あるいは階級化してはならない、誰もが意欲さえあれば何度でもチャレンジできる社会であるということであります。

 ともすると、日本は閉塞社会と言われています。将来に夢、希望を持てない、特に若者は。そういった社会をやはり変えていかなければいけない。政治の大事な要諦じゃないかなと思うんです。

 改めまして、今回、見事に再チャレンジされました。結果はどうあれ、今後結果を出すのが政治だと思いますけれども、現時点でもう本当に大きな再チャレンジに成功された総理であります。国民の範として、今挫折している人あるいは失敗している人、これからどうしようかわからない方々に、総理の口から、エールとして、この再チャレンジに関しての思い、そういったものを改めてお示しいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 六年前、本を書いたときに、そしてまた再チャレンジ政策をスタートしたときに何を考えていたかというと、日本という社会は、一度失敗すると、まさにおでこに失敗という判こを押されて、なかなかそれを拭うのは難しいんですね。会社を一度潰した人は、一度会社を潰した経営者としてなかなかファイナンスを受けることもできないし、信用は失われてしまう。

 一方、例えば、米国がやっていることが何でもいいわけではありませんが、あのウォルト・ディズニーも五回会社を潰しているんですね。一度会社を潰した人の方が、いわば企業家としてはすぐれているという見方があったわけであります。

 そして、さまざまな再チャレンジ政策をスタートしたわけでありますが、それから時を経て、私自身、一年で総理の職を辞するという結果になった。政界においてもこれは非常に厳しい。自由民主党総裁、一回やめてもう一回総裁になった人がいないわけでありますから、まさにみずから再チャレンジをすることになったわけでありますけれども、そのときに痛感したんですが、やはりこういう認識を変えていくことが日本の活力を生み出していくんだろうと思います。

 例えば、十八歳のときの受験に失敗すると、それがずっとついて回る。あるいは、二十二歳、例えば十八歳で就職する場合もそうですが、一旦、一発試験で就職に失敗したら、それが人生を決めるのか。やはりこれはおかしいんですね。もう一回こういう勉強をしようと思うことはありますから、そしてその中において学び直しをしていけば、それがちゃんと評価される社会にしていくべきだろう。

 残念ながら、まだ各企業においてはそうなっていない。企業において、もう一度大学や大学院に行く、そしてそれが企業の中においてキャリアを形成していく上において評価されるような、そういう社会に変えていく必要があるだろう、つまり複線化していく必要があるだろうという考え方でもって、今回、稲田朋美大臣を再チャレンジ担当大臣に任命いたしました。

 そういう意味で、社会全体のあり方を変えていく、チャンスのある社会、活力のある社会にしていきたい、このように思っております。

東国原委員 ありがとうございます。

 この第一次安倍政権で私が覚えているのは、再チャレンジ支援総合プランというのがありまして、特に雇用の問題ですね。

 例えばトライアル雇用だとか、私はこのとき初めてトライアル雇用という言葉を知ったので勉強したんですけれども、ハローワークでのマッチングだとか、フリーターとニート、そういったものが問題になった時代であります、今もそうなんでしょうけれども。非正規雇用者とか多重債務者、事業失敗者、母子家庭、そしてまた障害者、刑務所の出所者、そういった方々が再チャレンジをするという。

 このときにフリーターがたしか数十万ぐらい減ったと記憶しているんですけれども、今、若者の失業率八%。若年失業率はずっと高いのでありますが、先般問題になっている生活保護の問題等々、生活保護の補助額を減らすというのも重要といえば重要なんでしょうけれども、その前に、生活保護に入らない予防策といいますか、あるいは生活保護から出ていくという再チャレンジ、こっちの方が大切なんじゃないかなと私は思っているんです。

 そういった意味で、この再チャレンジの支援総合プランというのは私は非常によかったんじゃないかなと思うんですが、これをもう一度この政権でおやりになるおつもりはないか、お伺いしたいです。

稲田国務大臣 今、委員御指摘の再チャレンジということは、総理自身が再チャレンジをされて、今、総理の座に着かれている。本当に、一度倒れても、挫折しても、もう一度かち取るというのは強いことだと私も思っております。

 そして、今委員が御指摘になった若者のフリーターの問題などについては、先日、日本経済再生本部において総理から、関係閣僚が連携して、関係者の声を直接聞き対応策を検討すること、また、男女がともに子育てと仕事を両立させて活躍できるように必要な制度環境等の確立を図ることとする旨の御指示がございました。

 これを受けて、まずは、若者や女性の雇用にかかわっておられる方々の生の声をお聞きする若者・女性活躍推進フォーラムを設けることとしており、そこでの御意見等を踏まえ、若者・女性再チャレンジを可能とする環境整備に向けて課題を整理し、抜本的な対策案を早急に検討するつもりでございます。

 今委員から御指摘があった第一次安倍内閣のプランについても検討し、進めてまいりたいと思っております。

東国原委員 よろしくお願い申し上げます。

 雇用といえば、その窓口になるのはハローワークなんですけれども、我々地方は、この数年間、十年ぐらい前から、ハローワークの地方移管というのを訴えておるんです。地方分権の視点からもこれは重要かなと思うんですね。

 国際的に、雇用対策は、ハローワークは国がやらなきゃいけないような法律もありますけれども、ぜひハローワークを地方に移管していただいて、これは地方分権の観点からもしていただきたいと思うんですけれども、主務大臣。

田村国務大臣 今、お話がございました。やはり、ハローワークのような職業紹介の窓口と、各自治体の福祉当局、こういうところの窓口が一体の方が、今委員おっしゃられたとおり、いろいろな意味で、職業紹介を含めて充実に向かって運営がしやすいんじゃないか、こういうお話だと思います。

 今、現状は、七十八の自治体でそのような形で一体支援窓口というものをつくっていただいて運営していただいておりますし、それから、この間、実は広島市長さんとモデル的に厚生労働大臣の私が協定を結びまして、この協定の中身において、市長さんが労働局の方に要請をしていただける、そういうような協定を結んだりでありますとか、また、埼玉県、佐賀県は特区をつくっていただいて、ここで協定を結ぶ中で、知事が労働局に指示を出せるというような、そのような取り組みもいたしておりまして、非常にうまく回っております。

 ただ、今おっしゃられました、ではハローワークを地方に移管しろというお話なんですが、四つ問題点がありまして、一つは雇用保険です。雇用保険は全国一体で運営していますけれども、雇用保険は、当然のごとく、職業紹介とそれから職業能力開発、これが一体でありまして、でなければ給付が乱発されちゃうわけでありますから、この問題点。

 それからもう一つは、やはり全国の一体ネットワークがありますから、うまく回っていく。例えば新宿のハローワークへ行きますと、結構求人は埼玉だとか沿線沿いが多いんですよ。そういう部分、なかなかこれは一体でやらないと難しいな。

 それから、雇用対策も全国一体でやらなきゃならない。

 さらに、今おっしゃられたILO条約の八十八号、これで、職業安定組織は国の機関の指揮監督下の職業安定機関の全国的な組織でなければならないというようなものがございまして、地方に分権しちゃいますと、これにも違反する。

 このような問題がございまして、なかなか御要望にはお応えできないという状況でございます。

東国原委員 ありがとうございます。

 その件に関しましては、地方も精緻な制度設計をしておりますので、またこれは改めて御議論をさせていただきたいと思います。

 続きまして、私、首長を経験した人間として、地方分権という観点でお尋ねをしていきたいと思います。

 県知事時代、いつも私、窮屈に思ったのが、やはり、国の制度、法令、省令、政令、中田議員からも御指摘がありましたけれども、義務づけ、枠づけ、さまざまなもので地方は手足を縛られて、地方が何か新しい先進的な政策をやろうとすると、いつも国の壁に阻まれたんですね。法令がない、制度がない、予算がない、前例がないというんですね。あれをやられると、地方はやっとやる気になっているのに、なかなか、やる気をそぐ形になるんですね。

 それは、一律的に国の規律でこれをやりなさいと言われると、どうせ政策を考えても同じじゃないかというような感じで、それが地方の疲弊につながっている部分もあるんですね。どうせやっても同じだと。そうしたら、それはもう国に任せておけばいいという依存体質をまた増長させるようなところもありまして、これはやはり分権、地方に権限や財源を移譲して、自主自立のそういう地方政府といいますか、そういったものを樹立していかなきゃいけないんじゃないかなと思うんですね。

 この分権改革、分権推進、私が記憶しているのは、一九九三年に分権推進に関する決議が両議院でされまして、そこから今の分権が始まったんじゃないかなと思うんですね。でも、あれから二十年たっているんですね。二十年たったら、明治維新も二十年で変わったぐらいですから、もう国の形、パラダイムシフト等が行われなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、この二十年間の分権推進に関する経緯、これまでの取り組みというのを総務大臣にちょっとお示しいただければと思います。

新藤国務大臣 地方分権改革推進法、これは、第一次安倍内閣のときに成立いたしまして、そして、地方分権改革推進委員会、丹羽委員会と言われておりますが、こういった累次にわたる勧告、こういったものがあって準備を進めてきました。そして、民主党政権になりまして、国と地方の協議の場の法制化、それから、義務づけ、枠づけの見直しに係る第一次一括法、第二次一括法、そういったものをやって順次具現化してきたというところであります。

 委員が御指摘のように、地方分権は、これは進めていかなくてはなりません。しかし、それは、私はこう思っています。地方分権を進めることで、地方の自立性を高める、地方自治を実現させる、あわせて住民のサービスを向上させる、さらには国家統治機能の強化、国としても全体としてよくなっていく、国と地方がそれぞれウイン・ウインの関係になっていく、そのために私はこの地方分権をしっかりと進めていきたい、このように思っています。

東国原委員 ウイン・ウインの関係というのは、地方と国が対等、協力の関係ということでよろしいんでしょうかね。

新藤国務大臣 これは、国と地方がそれぞれ役割を果たして、そして、両者が合体することによって国力が増強していく、こういうことであります。

東国原委員 大臣御指摘のように、九三年から始まって、二〇〇〇年、地方分権一括法で事務が自治事務と法定受託事務になったんですね、機関委任事務から。地方分権はそれでだんだん進んでいくんですけれども、平成十六年のあの三位一体の改革ですね、平成十六年ショックと言われた、地方はあれがトラウマに今なっているんですね。ですから、地方分権、税源移譲といえばずっと構えるのが今地方の実態なんですけれども、第一次安倍政権で、大臣御指摘のように、二〇〇六年十二月に地方分権改革推進法が成立しております。翌年四月に地方分権改革推進委員会が発足している。

 これはもう私は本当に期待をさせていただいたんですね、これで安倍内閣の改革マインドが前に進むんだということで。そうしたら、これがまだ一次から四次までの勧告がなされない前に、残念ながら安倍総理が退陣なされまして、この後の福田、麻生、鳩山内閣の方に移っていったと記憶しております。

 先ほどの対等、協力ということについて大臣の御認識をまたもう一度お伺いしたいんですけれども、地方分権一括法で、地方分権推進委員会の勧告は、国と地方というのは上下主従の関係ではなくて、対等、協力の関係にすべきだということがこの委員会で言われているんですが、もう一回言います、国と地方というのは上下主従の関係ではなく、対等、協力の関係という御認識で、大臣、いらっしゃいますでしょうか。

新藤国務大臣 それは、そのような認識がこれまでも示されております。

東国原委員 その分権改革推進委員会の一次から四次までの勧告をひもといてみますと、一次勧告が二〇〇八年五月ですね。これは、国と地方の役割分担。大臣がおっしゃったように、基本的な考え方の中に、地方政府のための権限移譲というのがあります。そしてまた、完全自治体。完全自治体というのは、行政権と立法権と財政権を兼ね備えた完全自治体の実現ということになっています。行政の総合性の確保、地方の活性化、自治を担う能力の向上、これが一次勧告です。

 二次勧告になりますと、この完全自治体がまた出てきます。これは地方政府の確立ですね。そして、これは重要なんですけれども、国の法令を上書きする範囲を拡大する、つまり条例制定権の拡大なんですね、これは憲法九十四条の改正にもつながると思うんですが。そして、法制的観点から地方自治の自主性を強化し、自由度を拡大、みずからの責任で行政を実施する仕組みの構築となっております。こういったことが第二次勧告でやられております。

 それと、自治事務のうち、国の法令によって義務づけ、枠づけ、初めてこの義務づけ、枠づけが言及されるんですが、条例で自主的に定める余地を認めていないものが条項単位で約一万条項はあるという御指摘があります。その中のメルクマールに該当する条項が五一・八%、該当しない条項が四八・二%。つまり、一万五十七条項中四千七十六条項、これが見直し対象になっています。

 それで、第三次勧告に入ります。第二次勧告において見直し対象とされた義務づけ、枠づけに係る条項約四千条項のうち、特に問題のある個別の条項ごとに具体的に講ずべき見直し措置が八百八十九条項、義務づけ、枠づけの話です、こういうものがある、これは早急に見直しなさいという勧告が出されています。

 そしてまた、ちょっと注目を引くのが、地方自治関係法制の見直しという勧告が出ています。これは昨今、教育委員会等々で問題になっていますけれども、教育委員会及び農業委員会において、必置規制を見直して選択制にすべきと、この時点でこういう提言がなされているんですね。そしてまた、国と地方の協議の場の法制化ということになっております。

 大臣、この勧告を受けて、こういうことを今後どういうふうにお進めになるおつもりか、ちょっとお考えをお聞かせください。

新藤国務大臣 これは、これまで地方分権改革推進委員会で約四千条項の勧告があったわけであります。その中で、まず第一次、二次の見直しで検討対象とされた千二百条項、しかもその中で、ぜひやりなさいといった八百八十九条項、今御指摘がありました、これについては、七二%、六百三十六条項が見直しが行われております。

 それから、第三次の見直しで今検討対象となっておりますが、これにつきましても、二百九十一条項、これは三百六十三条項の枠づけ、義務づけを見直せ、こういうことになっておりますが、そのうちの八〇%の見直しを行っているところであります。

 私としては、これはまた、今残っているものを含めて第四次で一括して、まとめて、できるだけ早くにこれが進むようにいろいろな必要な措置をしていきたい、このように思っています。

東国原委員 それで、第三次勧告の、第三次一括法案というのは平成二十四年の三月に国会に提出されたんですが、これは残念ながら廃案になっているんですね。ですから、こういうことも御承知おきいただきまして、この分権というのはなかなか、役所の抵抗がありまして、遅々として進まない傾向におおむねあると僕は認識しているんですけれども、再度確認をさせていただいてよろしいですか。

 先ほど申しました、国の法令を上書きする範囲拡大を含む条例制定権の拡充、上書き権の拡充です。これは地方にとって非常に重要なんですね。そして、教育委員会及び農業委員会についての必置規制を見直して選択制にすべきといった条項。あるいは、法制的観点から地方自治の自主性を強化して、自由度を拡大し、みずからの責任で行政を実施する仕組みの構築。そして、義務づけ、枠づけ、今大臣おっしゃったように、こういったものに取り組んでいく。

 つまり、義務づけ、枠づけも重要ですが、それと一緒に全体的な法を改正するという、憲法改正の議論になってくると思いますけれども、上書き権、こういったものを改正する、あるいは拡充する、教育委員会、農業委員会の必置規制を外す、地方の自由裁量権、つまり選択制にすべきだということについて、どうお進めになるか、どういうおつもりか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 まず、第三次一括法は、衆議院の解散に伴いまして廃案になっております。したがって、私としては、これも含めて第四次の一括法を出そう、このように思っています。それは、先般の閣僚懇談会で、各省に対して、今後こういった見直しを進めるのでぜひ協力してもらいたいということで既にお願いをしてあります。ですから、準備が整ったら、この義務づけ、枠づけの見直しについては法案をきちんと出したい、このように思います。

 それから、今のいろいろな必置規制ですとか法案の上書きだとか、これについてはこれまでもずっと検討がなされてまいりました。これはしっかりと議論を深めていかなければならない、このように思っています。

東国原委員 私も行政を経験させてもらって、しっかり検討していく、しっかり議論していくというのは、ほとんどやらないというような意味なんですよね。

 ですから、もう一回申し上げます。

 上書き権というのは非常に重要なんですよ。そして、必置規制の選択制というのは非常に重要なので、もう一度、大臣の意欲といいますか、そういったものをお聞かせ願えればと思います。

新藤国務大臣 これは、いろいろな議論があることは委員も御承知だと思います。しかし、私は、地方分権を進めて国家統治機能を強化する、こういう観点から前進させていかなくてはならないと思いますから、これは議論を深める必要があるんだ、こういうことだと思っております。

 しかし、今の問題は法律に対する根幹的な問題でもありますから、これはしっかりとした議論が必要だ、引き続き取り組まなければならない、このように思います。

東国原委員 しっかり議論をしていただき、スピード感を持って一歩でも前に進めていただきたいと思っているところであります。

 続きまして、地方公務員給与削減についてお伺いをいたします。

 私、地方自治を経験した人間としてちょっと驚いたんですけれども、先般、地方公務員給与の削減、唐突に国から発表されました。これは、あくまでも要請という形でされているんですね。

 これはどういうことかというと、国家公務員の給与が震災復興費等々に充てるべく七・八%削減される、これは二〇一四年の三月までの二年間、時限らしいんですけれども、これを受けて、この受けてというのは、国家公務員が給与を減らしました、だから地方もと。これを受けてというのが、これがまたちょっと信じられないことなんですけれども、平成二十五年七月から地方公務員給与を国と同じく七・八%、これは一律ではないような気がしますけれども、それを要請されたんですね。要請をされたんですよ。総務大臣は、一月二十七日の財務大臣との地財折衝後の記者会見で、地方に要請したと発言されていますね。要請なんですね。

 しかし、地方公務員の給与をカットしてください、その分の地方交付税交付金を削減するというんですね。これは僕、びっくりしまして、先ほど中田議員も御指摘のように、交付税交付金というのは地方固有の財源、財産なんですね。これを勝手に国が、減らします、だから地方公務員の給与を減らしてくださいよ。これは、地方からしたら国の横暴ですね。もうこれは要請じゃないです、強制です。これはおどしであり、兵糧攻めのような感じなんですよ。

 これを聞いたとき、私、三位一体改革というあのショックがまた脳裏をよぎったんですけれども、この要請したというのは僕は強制したに等しいと思うんですが、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 これは目下の最大課題であります、総務省にとって。ですから、よくお聞きいただいた、このように思っています。

 私たちは、今度の措置は日本再生の一里塚だ、このように思っているんです。それは、もうこれだけ日本が弱体化して国力が下がっている、みんなどうするんだというときに、安倍内閣は、ここで頑張ってもう一回持ち上げようじゃないか、国を再生しよう、そのために私たちは国民から負託を得た、このように思っています。

 その実現のために、まず公務員。これは全体の奉仕者であります。国、地方を問わず、公務員。それからその前に、先頭に立つ議員が隗より始めよで姿勢を示そうじゃないかと。したがって、国会議員は二割の給与の削減をしております。国家公務員は七・八%の削減をして、その協力してくれた財源は復興財源に充てるということにしてあるわけであります。そして、地方については、これはぜひ一緒になって国民の前で姿勢を示そうではないか、協力してくださいというのが我々の趣旨なんです。

 それは、地方公務員の給料が高いからとか、努力が足りないからとか、そういうことではありません。そうではなくて、今、現状において、地方でもって国と同じ水準の協力をいただけないですかと。その協力いただいたものは、まず皆さんの地域の防災、減災事業に使っていただきます。それからもう一つ、自分たちの国を元気にするためには、それぞれの町を元気にさせなければいけない。したがって、地域の元気づくり事業というものを打ち立てます。これは、新しい仕事として、地方財政計画の中で特出ししてあるんです。

 ですから、これからお願いする地方公務員の皆さんは、自分たちの給料を削った分は自分たちの町に使われるんだ、そして、その町を元気にさせることによって日本じゅうの元気の塊をつくろうじゃないか、こういうことを我々はお願いしたいということでありまして、国と地方の比較をして云々ではありません。一緒になって、まず隗より始めよで、大義を持って公務員が国民の前でまず頑張ろうじゃないか、こういうお願いをさせていただいたということであります。

 そして、この削減は要請であります。交付税は、総務省として、国が標準的な措置としての給与水準を定めます、それに基づいて算定しておりますので、これは別に強制ではありません。我々が要請をして、そしてぜひ地方に理解を得て、協力してもらいたい。

 丁寧に、これは誠意を持って対応していきたい、このように思っております。

東国原委員 大臣が、これは強制ではありません、要請ですと言えば言うほど強制に聞こえるんですよね。地方はそうなんですよ。総務省さん、財務省さんが、こうです、お願いしますねと言われたら、しろよということなんですよね、あれは。そういうふうに地方はやはり捉えているわけです。

 元気づくり事業のことだと思いますけれども、それは後ほどちょっと御指摘をさせていただきますが、地方交付税、中田議員からもちょっと御指摘があったんですけれども、この交付税というのはなかなか国民の皆さんに御理解いただいていないんですよね。特例公債法案が去年問題になったときに、交付税が減らされますよ、交付税がなかなか執行できないという話があって、交付税とは何ぞやと。基準財政需要額、収入額といっても、一般の国民の皆さんはなかなかわからないですよ。

 この交付税、どういった意義、どういった役割、どういった意味があるのかを、本当にわかりやすく国民の皆さんにひとつ大臣の方から御説明願えればと思います。

新藤国務大臣 これは先ほどもお答え申し上げましたけれども、地方交付税は、まず、財源調整機能と財源保障機能がある、この二つを認識したいと思います。

 その上で、結局、地方税収だけでは地方団体に格差があるわけであります。ですから、その格差がある中で、財源の不均衡を調整しなくてはならない、それは国の役目だと思っております。

 それからもう一つは、実は、交付税の大半は法律で義務づけられていて、地方自治体にやっていただかなければいけない、そういう基準がございます。その義務づけられた事務を、また標準的な行政サービスを行うために可能となる財源を保障する、そのために交付する。

 こういう機能でありまして、この地方交付税があることによって、全国が標準的な自治事務また地方自治が行われる、こういう役割を持っているんだと思っております。

東国原委員 この地方公務員給与の削減については、国の要請とおっしゃいましたが、その前に、国と地方の協議の場等々で地方と話し合ったとか協議をしたということはおありになるんですか。

新藤国務大臣 これは、国と地方の協議の場も正式に設けております。それから、地方六団体の代表の方々は、再三にわたって私のところにもおいでいただきましたし、私も参りました。それから、全国知事会の方にも出かけていって趣旨を御説明させていただいております。そして、ここのところで、まずは都道府県に説明会を設けました。これから市町村に対しても説明会を設けます。

 とにかく、丁寧に、私は誠意を持って説明をしていきたい、このように思っております。

東国原委員 地方は国よりも大変苦労しまして行革努力をしているんですよ。給与も本当に減らしておりますし、かつかつでやっている部分もあるんですが、そこにもって一律に七・八%削減しろと言われると、非常に、これはどうなのかなと。しかも、交付税を人質にとって、交付税を減らすぞというこの国のやり方というのは、私は何か暴挙じゃないかなと思ったりもするんですね。

 御説明をされた、協議をされたとおっしゃいますが、それは協議ではなく、こうしますからね、それに協力してくださいよ、そうしなさいよ、そうしろよなんですね。そうなんですよ。協議で、あなたたちはどう思いますか、選択で、地方が自主的に考えてくださいと言われても、地方は従わざるを得ないんですよ。各地方の財政課の課長なんかはほとんどが総務省の官僚の方が行っていますから、そういった面もあって、手足を縛られているんです。

 結局、国が政策を決めて、その政策の目的としてこの交付税を使われるというのが、私はどうも納得がいかないですね。それはしようがないといえばしようがないんでしょうけれども、このシステムとかこの考え方をちょっと変えていかないと、本当のこの国の再生はないんじゃないかなと思うようなところがあります。

 ちなみに、数字の話なんですが、地方公務員給与七・八%を実施した場合、国の歳出が八千五百四億円削減されるということでありますが、この数字の根拠をお示しいただければと思います。

新藤国務大臣 公務員の給与の削減額が約八千五百億円になる、これは七・八%をやっていただいた場合の計算をしただけ、こういうことでありますが、ちょっと質問の趣旨がわからないんですけれども、根拠というのはどういうことでしょうか。

東国原委員 ですから、地財計画の中の総人件費というところで算出されたんでしょうか。

新藤国務大臣 そのとおりでございます。

東国原委員 では、そう言って答えていただければよかったんですけれども。

 この八千五百四億円、これは交付税と臨財債が減る要因になるということで、財源不足がふえるので、地方との折半ルール、つまり、国が四千億、地方が四千億ということで、約四千億の地方交付税を減らすということ、そういう認識でよろしいですかね。

新藤国務大臣 その御認識で結構でございます。

東国原委員 再三言いますけれども、国がやるんだから地方もやれ、国は復興費に充てるから、地方も復興費、あるいはまちづくり、元気、防災、減災でしょうが、それに協力してくれというのは断りづらいんですよね。復興というと協力せざるを得ないというのもありますから、うまい手口を使われたなと思うんですけれども。

 再三言うように、交付税は地方の固有の財源ですから、ここを操作されると、やはり中央集権、中央のコントロールなのかということになるんですね。だから、ここを、国の常套手段として財源不足を地方に負わせるという、ずっとそれで地方はいじめられてきたと思うんです、私は。

 ですから、これは何か国の財政削減の政策的な要因があるのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 これはまず、私たちは、単なる財政削減措置には終わらせたくない、そうしないということで、このような方針を打ち立てました。一方で、国家とすれば、財政の改善をしていかなくてはなりません。ですから、地方においてもまず国に対して協力をいただきたい。その意味で、地方交付税の削減というのは、これは大規模なものになります。結果的には二千五百億円の地方交付税の削減になるんです。

 しかし、私は、本来であれば八千億円の給与の削減に対して、国と地方折半ですから、四千億の減額になります。でも、その中から、地方の元気づくり、そして、防災対策でお金を地方にきちんと使っていただく、見合う事業をつくらせていただいたわけでありまして、まず国としても財政再建に資する、そして地方は活力を落とさずに元気になっていただく、こういうこともやっていただく。そして、まず、日本じゅうがみんなで頑張ろうじゃないかというものを公務員が隗より始めよで示す。総務省はその調整をさせていただくということでございまして、三方一両得、このように考えていただければありがたいな、このように思うんです。

 それから、先ほどから再三いただいております、一律にというのは納得いかないということでありますが、国に準じた措置をしてくださいというお願いでありますから。きょう実は発表したんですが、ラスパイレス指数の今年度の最新の数字が出ました。したがって、既に国並みの削減、国よりも下回る、そういった努力をされているところについては今回の措置は適用されないわけであります。それから、今年度例えば二%とかカットする予定があるとすれば、その差を協力してくださいという意味でありまして、全国一律ではありません。それぞれの個別自治体と相談をしなければならない、こういうことで御理解いただきたいと思います。

東国原委員 三方一両損というのは久々に聞きましたね。これは、三位一体改革のときに……(新藤国務大臣「一両得」と呼ぶ)一両得ですか。いや、あのときも、三位一体改革のとき、三方一両得と言われたんですよ。でも、あのとき、地方だけが損をしたんですね、だと私は思っている。地方だけが損をしたんですね。まあ、その話はまた。

 三位一体の改革のことはまた言えばちょっと切りがないので、今、事業の話をされたので、では、その事業の話をさせていただきます。

 今回の交付税を減らすということで、その補填的な意味があるのでしょうけれども、全国防災事業費の地方負担分九百七十三億、これは、直轄と補助事業の裏負担分、充当率一〇〇%で、全部借金できるということですね。全国防災事業債、地方債を発行できる。地財計画上は地方債の増額分として計上する。地財計画の歳出の特別枠、事業費として九百七十三億円を配分する。元利償還分は基準財政需要額に積算していいですよ、その中の八〇%は交付税措置しますよと。でも、二〇%は地方債ですよ。つまり、これは地方の借金ということですよね。

 それで、二番目が、緊急防災・減災事業費四千五百五十億。これは地方単独事業なんですが、充当率が一〇〇%、元利償還が、七〇%を基準財政需要額に入れていいよと。三〇%が地方負担なんです。これも地方負担が三〇%。

 先ほどから大臣御指摘の、地域の元気づくり事業費三千億。これは半分が臨財債、一千五百が。それで、一千五百は交付税措置。

 結局、地方が給与を減らしました、そのかわりに事業をやりますよ、先ほど大臣がおっしゃったように、防災、減災してくださいね、地域づくり、元気、やってくださいねとおっしゃっても、地方の負債も残るわけですね。これについて、どうお考えですか。

新藤国務大臣 ですから、そこが地方の国に対する協力ということになるわけであります。そして、地方財政措置の中で、地方の負担については後年度しっかりと見ていく、こういうことになるわけであります。

東国原委員 そこなんですよ。だから、国の政策でやって、地方も協力してくださいよということがどうも解せないんですよね。ですから、地方負担は絶対に折半ルールで、地方も協力してくださいよという、さっきの強制の話になりますけれども、そういうことが国の政策で勝手に行われる。国が国家公務員の給与を減らしたので地方も協力してくださいよ、やりなさいよ、では交付税で措置しますけれども、二割、三割は地方の借金でやってくださいよということ、これが何か中央主導で、地方分権に逆行するのではないか。

 地方の主権という、主権という言葉を使うと自民党さんはお嫌いでしょうけれども、地方がやはり自主自立の、先ほど言ったように勧告に完全自治体なんというような話もありますから、そういった権限、財源を移譲するということに逆行するのではないかという思いを持っておるわけです。

 元気づくり事業費約三千億ですが、これは臨財債が半分。また臨財債という単語がここで出てきたので、さっき中田議員も臨財債について言及されておりましたけれども、臨財債について、国民の皆さんは余り御存じないかもしれませんので、大臣の方からちょっとわかりやすく説明をお願いしたいと思います。

新藤国務大臣 これは、簡単に言えば赤字地方債のことでありまして、資金が不足したものを埋めるための赤字のものであります。

東国原委員 特会の借入金が平成十三年に四十兆にもなりまして、それで、これ以上もう借金できないということで臨財債に振りかえた、そういう認識を私は持っているんですけれども、それでよろしいですか。

新藤国務大臣 そういう御認識でよろしいと思います。

東国原委員 今、臨財債の総額は幾らぐらいになっておりますか。

新藤国務大臣 これは、累積残高で四十五兆百九十三億円です。

東国原委員 平成十三年に特会の借入金が四十兆に達したので、これはいかぬということで、新たな借金、臨財債、その臨財債がもう四十兆を超えているんですね。この現実について、大臣、どう思われますか。

新藤国務大臣 これは先ほどもお答えいたしましたが、できるだけ、この発行は、我々とすれば望ましいものと思っておりません。

 ですから、その最大の解決策は景気対策、景気の向上であります。そして、地方の税収がしっかりと確保できること、これによって解消されていくものにしていかなければなりません。テクニカルなことはいろいろございますが、基本は、まず国が元気になることによって地方も元気になる、そういうことだと思います。国と地方のいろいろなとり合いについては協議しなければいけない、こういうことだと思います。

東国原委員 臨財債は、どう見ても交付税の先食いなんですよ。交付税で臨財債を措置するとおっしゃっていますけれども、本当にそれは担保されるんですかね。私は、これは返せないんじゃないかなと思っているんですよ。

 また臨財債のことは追ってやりますけれども、元気づくり事業費、この計算式を私は見ました。

 パネルをちょっとごらんいただきたいと思うんですけれども、先ほど総務大臣の方から御説明がありました、まさしくこれが交付税の計算式なんですね。これを見て、国民の皆さんはおわかりになりますかね。私も何回も首長時代に説明を求めたんですけれども、本当に事務的な説明で、何かうやむやにされたような記憶があるんですけれども、この計算方法の意義、ちょっと大臣、説明をしていただけませんか。

新藤国務大臣 交付税ですとかこういうものがわかりづらい、これはごもっともだと思います。私もそう思いますから。

 それは、結局、なぜそうなっているかというと、いかに公平にやるか。精緻をきわめればきわめていくほどわかりづらくなっていくわけなので、ですから、それに、どこかに何かおかしなことがあってはいけない、これを正すのは政治の役目であります。しかし一方で、やはりそれぞれの町にできるだけ日本国民として同じような暮らしをしていただこうという観点からすれば、これは精緻なものにならざるを得ないというのは、私が今、大臣を担当いたしましての感想であります。

 その上で、元気づくりについては、わかりづらくて恐縮なんですが、簡単に言います。地域の元気づくりの今回のお金は、これは、地方のそれぞれの行革努力を反映した配分をしたい、私はそういうふうに考えたんです。

 ですから、単純に、その地方団体が削ってくれた分が行くのではありません。そうではなくて、それぞれの行革努力、それは、例えば人件費を、今の直近のラスパイレス指数、それからさらに直近の五年間の平均を見て、自治体でもって削減努力をしてきた、そういった数字が配分に反映されるようにしようと思っています。

 それから、あわせて職員数の削減も行っていただいているわけであります。ですから、これも、全国の職員数がピークだったのは平成五年から九年なんです。この全国の地方公務員の職員数がピークだった五年間の平均職員数と、それから直近の五年間の平均職員数、これによって削減の幅がわかってまいります。

 給与とそれから人間の削減、そういった行革努力をどういうふうにやっていただいたのか、それを一生懸命やったところには配分が手厚く行くように、そして、みんなの、その町の努力がきちんと反映した、そういう事業にしようじゃないかという設計をさせていただいているのであります。

東国原委員 これは行革努力ですね、ラスが入っていますから。ラスが入って、人件費を減らしたところは多く配分しますよと。それで、地域の元気づくりなんですね。この計算と事業がちょっと結びつかないんですよ。

 地域づくり事業、では、地方は何をすればいいんですか、何を積算すればいいんですか。何でもいいんですか。まあ何でもいいんでしょう、色はつかないんですからね。でも、ラスの考え方と、この計算式と地域づくりというのが直接結びつかない。

 今まで、交付税は、農業振興だとか土木だとか、そういった係数がありましたよね。一部にわかりやすかった部分もあったんですが、今回のこれは、何か無理くりつくったような気がするんですね。それで、理屈を合わせるために、防災、減災に使ってくださいよ、地域元気づくりに使ってくださいよと。これを国の政策でやられて、地方は責任を負わされて、計算させられて、議決が必要ですから議決して、それで給与を減らす。国の政策に翻弄され続けている地方じゃないかなと思うんですね。

 ですから、ちょっと時間がありませんので、時間もオーバーぎみなんですけれども、結論を、また今後この委員会等々でやっていきたいと思います。

 こういう交付税は、もう今や、中央が地方をコントロールして、もういっそ廃止というか、あるいは特会に直入とか、新たな、財政調整、財源確保とおっしゃいましたけれども、そういった制度を考えていかなきゃいけない時期、あるいは考えていかなきゃいけない時代になっているんじゃないかと思うんですけれども、大臣、そのことについてはどうですか。

新藤国務大臣 委員の問題意識は共有したいと思います。それは、今、日本全体の課題だと思います。ですから、そのために地方分権、そして国家をどのように統治していったらいいか、我々は必死でその方策を探っているということだと思うんです。ですから、そういったことは問題意識を共有して、いろいろな議論をしていくべきだと思います。

 しかし一方で、今、現状で、全国の地域の皆さんにきちんとした自治ができるために、やはりこのような調整機能と保障機能というものはしっかりと確保していかなくてはいけないんだと思いますし、私は、基本として国と地方を分けておりません、国はやり、地方は自分たちのと。地方の皆さんは全て日本国民ですから、国と地方を分けて対立関係にするのではなくて、同じ町民であり、市民であり、国民なんです。

 ですから、その中で、どうやって分担しながら、我々が日本人として、どのようによい暮らしを自分の愛する地域で暮らしていけるか、そういったことを追求していくべきだ、このように思っています。

東国原委員 まだまだお聞きしたいことはあるんですが、時間ですので、私はルールを守りたいと思います。

 そうですね。大臣もおっしゃるように、やはり協力していかなきゃいけない、対等に協力していかなきゃいけない。

 私が今回問題意識を持ったのは、やはり国が地方を下に見ている、上下主従の関係というのを強調した、そこなんですね。ですから、そこを、地方の意見も聞きながら、地方に優しい政権与党であってほしいと思うんですね。そういった意味で、今後も議論させていただきたいし、また、地方分権の政策等々も鋭意努力して進めていただきたいと思います。それをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、鈴木望君から関連質疑の申し出があります。中田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鈴木望君。

鈴木(望)委員 鈴木望と申します。

 私は、地方自治の実務を担ってきた立場から、国と地方のあり方、具体的には国の出先機関の廃止について質問をさせていただきたいと思います。

 国の機関といいますと、東京の霞が関を国民の皆様方は想像しがちでありますけれども、実は、各省庁別に全国に散らばっております。

 私が市長をしておりました静岡県磐田市を中心にフリップでまとめてみましたので、ちょっと説明をさせていただきたいと思います。

 このように実にさまざまな機関が設置をされておりまして、星で記したのが、静岡県の中にあります国の出先機関でございます。表示は静岡県だけを星印で記したわけでございますけれども、実は、お隣の山梨県にも、また長野県にも、愛知県にも、実にさまざまな機関が設置をされております。また、名古屋市には、中部地方のミニ霞が関とも言われます、地方整備局、運輸局などの地方支分部局がまとまって設置をされております。こういった実態は、多分、国民の皆さんはよくわかっておられないというふうに思うわけです。

 国家公務員の平成二十三年度末の定員は三十万一千人でありますけれども、そのうち出先機関の職員の皆様方は十八万八千人ということで、実に全体の三分の二を占めているわけであります。人件費等のコストもばかになりません。また、そこを効率的に機能させる、無駄をなくしていくか否かということが極めて大きな意味を持つわけでございます。今回の大型補正予算も、効果的な執行という面で密接な関係を持つと思います。

 そこで、国土交通省、経済産業省、環境省の出先機関について御質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、後で質問をさせていただきます、民主党政権下で閣議決定をされた法案で移譲の対象となった機関が、今申し上げました三つの省の機関であるからであります。お尋ねをしましたそれぞれの省の出先機関の定員と人件費の総額はどのくらいか、御説明をよろしくお願いいたします。

久保政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年度末の国土交通省地方整備局の定員は二万五百五十七人です。また、地方整備局の人件費は平成二十四年度予算で千八百三十九億円の内数でございます。

照井政府参考人 経済産業省の出先機関である経済産業局につきましては、平成二十四年度末の定員は全国で千七百八十八名でございます。また、人件費については百二十四億円でございます。

鈴木政府参考人 環境省の出先機関は地方環境事務所でございますが、ただいま、福島の除染等のために、三年の任期つきの職員二百四十五名を福島環境再生事務所等でいただいております。これを除きました地方の定員は三百九十八名ということでございまして、これにかかる人件費は二十八億円でございます。

鈴木(望)委員 三省だけでも、また移譲の対象となった部局だけの金額をお尋ねさせていただいたわけでありますけれども、それでも相当の金額であるということであります。

 国の出先機関につきましては、かねてから、二重行政の弊害、中央の地方への過剰な介入などが指摘をされておりまして、その改革が大きな課題となっていたところでございます。

 さて、総理にお尋ねさせていただきたいと思いますけれども、所信表明演説及びその後の代表質問に対する御答弁でも、国と地方のあり方を見直し、国の出先機関の問題を含め、地方分権を積極的に推進していかれるというふうに理解をさせていただきましたが、もしそうであれば大いに応援はさせていただきたいと考えますが、その点をまず御確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘されましたように、地方分権を進めていく、地方が地域の特性を生かして自分たちの意思を、そして未来に向かって自分たちの考えを生かしていくことができるような行政を進めていきたい、そのための改革はどんどん行っていきたいと思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 現在の日本の制度は、国、都道府県、市町村の三層構造であるというふうに言われておりますが、一地方都市の首長をしていた実感から申しますと、実は四層構造である、そのように実感をしているところであります。

 なぜなら、事業を採択してもらうにも、また補助金をつけてもらうためにも、またさらには、さまざまなそのための報告を出すためにも、また許認可等の手続をするためにも、必ず国と都道府県の間に国の出先機関、地方支分部局が介在をするわけであります。

 実例を挙げさせていただきます。こんなことがございました。

 磐田市には国道一号線が貫通をしておりますが、その混雑緩和のために、国一の磐田バイパスが設置をされました。しかし、有料バイパスであるということで、国一の混雑は少しも解消されない。全国の人々が利用する東海道、国道一号線であります。その混雑緩和のためにはバイパスの無料化と四車線化が必要だ、これは地元のためということよりも全国のために必要だということで、地元経済界の方々とも相談をしまして、一緒に国に陳情に行くことにしたことがございました。

 まず、磐田市から、東の静岡市、ここは県庁がありますので、東に移動して、JRで約一時間でございます。そこで説明をいたしまして、今度は西に向かいまして、当然、磐田市を新幹線から眺めながら、名古屋市にあります国土交通省の地方支分部局である中部地方整備局に参ります。そして、そこで説明をいたします。

 中部地方整備局では、たしかそのとき、これは大事な問題だから、本省の霞が関に行って陳情、御説明をしてくださいということでございました。そこで、今度は名古屋市からまた東に向かって、当然、私の地元の磐田市を車窓から眺めながら、通過しながら東京に行って、そして同じ説明をさせていただいたわけであります。

 文字どおり、東奔西走であります。もちろん、一人で行くわけではありませんので、お金と時間もかかります。

 そして、私がここで強調したいことは、これは何も磐田市の特殊な事例ということではなくて、全国至るところ、そして何回も同じようなことが行われている普遍的な現象であるということであります。

 地方のことは地域が一番よくわかっている、自分のことですから。現状や課題、そして解決策、それらを最もよく理解しているのに、権限と財源がないために、遠くの、地域の実情を知らない方々に御説明をし、理解を求め、同じ説明をしかも何カ所もしなくてはいけない、これが実態であると思っております。

 一緒に行きました隣町の商工会議所の会頭さん、この人は、一代でトラック運送の会社を起こして上場企業にまで大きくした企業人でありますけれども、名古屋から東京に至る車中で、みそカツ弁当をつつきながら、こんなことをしていたら日本は潰れてしまうとつぶやいていたのが、今でも強く記憶に残っております。民間人の感覚からすれば、国の出先機関、特に地方支分部局は、無駄な組織というだけではなく、迅速な意思決定を妨げている、単に官僚の権限の拡大のために存在をしているというふうに見えたわけでございます。

 そこで、総理にお聞きしたいと思いますが、この民間経済人の言葉は、不必要な規制や手続はなくすという意味で、私はまさに民間経済の活性化の核心をついた言葉だというふうに思いますが、総理はどのようにお受けとめになられるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 確かに、地域のことを一番よく知っているのは地域の方々でありますから、必要以上に口出しをすることは慎んだ方がいいんだろう、このように思います。

 その中において、今までも、国から地方に対して権限や事務の移譲を行ってきたところでありますが、今後とも、地方の声にしっかりと耳を傾けながらそうした改革を進めていくべきだろう、このように思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 さて、出先機関の改革につきましては、最近では、平成二十一年三月、麻生内閣当時の地方分権改革推進本部が、地方分権改革推進委員会、これは第一次安倍内閣当時設置をされた委員会でございますけれども、その第二次勧告を踏まえて、出先機関改革に係る工程表を策定されております。

 また、さきの民主党政権では、平成二十二年六月の閣議決定の地域主権戦略大綱で国の出先機関の原則廃止の方針を掲げまして、出先機関の改革に取り組まれました。

 そして、紆余曲折を経た結果、昨年十一月十五日に、国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律案及び「国の出先機関の事務・権限のブロック単位での移譲について」が閣議決定をされました。これは、国の地方支分部局のうち、経済産業局、地方整備局、地方環境事務所の三部局の事務を地方自治体でつくります特定広域連合に移譲することを内容としたものであります。

 十一月十五日の閣議決定といいますと、その翌日の十一月十六日に国会が解散をされたということで、そういう意味では、まさに異常な状況とも言える中で閣議決定をされまして、この法案は国会に未提出の状況となっております。

 この法案を改めて見ますと、当初の全ての出先機関廃止の意気込みとは随分と異なりまして、三つの機関だけの特定広域連合等への移譲にとどまる結果となっております。羊頭狗肉とは言わないまでも、竜頭蛇尾の感を深くするところでございます。しかしながら、懸案の国の出先機関の廃止に向けて、一歩ではありますが前進ではあると、地方自治に身を置いた者としては素直に評価をできることも事実でございます。

 そこで、新藤地方分権担当大臣にお尋ねをさせていただきますが、この法案を安倍政権ではどう評価し、どう扱うおつもりなのでしょうか。よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 この法案につきましては、閣議決定されましたが国会に未提出、こういう状態であります。

 しかも、この法案に対しまして、まず全国市長会の方からは、これは国と地方の役割分担のあり方、また危機管理体制等について丁寧な議論が必要であるにもかかわらず、衆議院が解散されるという慌ただしいときに法律案の閣議決定を行ったことは、基礎自治体を重視した地域主権改革の推進を標榜する政府の姿勢に反するものであり、まことに遺憾であると。

 それから、町村会の方からも同じような趣旨で、災害時の危機管理体制が機能するのか、それから、手挙げ方式によって、一つの国の中で特定広域連合が担う地域と引き続き国が担う地域が混在する、こういった問題が出てきております。

 ですから、私としては、地方分権は進めていくんです、ですから検討はしたいというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、地方の声も踏まえて、また、私ども政府・与党内の、しっかりとした与党の声も踏まえましてこれは対応していきたい、このように思っております。

鈴木(望)委員 今御答弁をいただきましたとおり、確かに、この法案につきましては、特に、地震、台風、水害等の広域災害が起こった場合に、地方自治体の寄り合い世帯である特定広域連合が果たしてきちんと災害に対応できるのか等々の問題が指摘をされまして、基礎自治体の一部が反対をしていたのも事実でございます。

 この場でこの法律案の中身について議論するつもりはございませんが、一点だけお尋ねをさせていただきたいと思います。

 確かに、広域災害が起こった場合の問題等が指摘されておりました。それを受けて法案では、非常事態における管轄行政機関の長は、特定広域連合に職員の派遣その他必要な措置を要請、指示することができる旨の規定を設けて対応をしているわけでございます。

 批判に応えて、広域災害対応力の強化を法案の中でも、この仕組みの中でも図っているわけでありますが、これについてはどう評価をされるでしょうか。

新藤国務大臣 まず、検討は総合的、全体に行われるべきものであって、今の御指摘についてはまだ検討中ということであります。

 また、あわせて、反対の声もありましたが、九州地方の知事会であるとか関西広域連合からは、進めてほしい、こういう要望もあります。ですから、それも含めて、もう一回リセットをして検討しなくてはならないだろう、このように思っています。

鈴木(望)委員 いずれにいたしましても、いろいろな指摘、問題があるにせよ、曲がりなりにも国の出先機関の一部が地方に移っていく、そういう仕組みができたのも事実でございました。たとえ小さな一歩であるにしても、出先機関廃止に向けて、前を向いて具体的な提案がなされているわけであります。

 行政は、ある意味では政治は積み重ねであると思いますので、この法案、仕組みに、実は、自民党のJ―ファイル二〇一二を見せていただきますと、総合政策集ですね、「民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管には反対し、地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理します。」このように書いてあるわけであります。

 ちなみに、ここから読み取る限り、安倍政権、自民党政権はこういった仕組みに消極的ではないのかなというふうに拝察をするわけでありますが、仮に、このような仕組み、法案に消極的であるとしたら、国の出先機関、地方支分部局は、安倍政権として今後どう具体的に整理を進めていくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 総理、よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど総務大臣からお答えをいたしましたように、確かに、地方支分部局の廃止については、一部の市町村から強い反対の声があったのも事実であります。

 事実、私がかつて訪問した福島のある市長からはメールで、これはもうやめてもらいたい、つまり、大規模災害のときの対応はこれじゃできないじゃないか、アドホックに広域連合的にその場でつくったってうまくいくはずがないという強い要請でありました。かつ、それは、国の出先機関はなくなっても、それぞれの県庁が出ていったものができれば同じことになるのではないか、かつ、うまく機能しないのではないか、そういう感想が述べられていたわけであります。

 しかし、今までのこの質疑の中で議員がおっしゃっている問題意識も確かに私も理解をしているわけでありまして、そうしたさまざまな議論や、今までのそうした問題点に対する議論の積み重ね、地方の声にもよく耳を傾けながら、我々、基本的には地方分権を進めていくというそのあり方を検討していきたい、このように思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 私の、今の御答弁を推察した中では、やはり道州制の議論ということじゃないのかなと思うんです。道州制の議論をする中で国の出先機関をどのように整理していくのか、それが一番の核心的なところじゃないのかなというふうに推察するわけでございますけれども、道州制の議論、これは、言って簡単ですけれども、実際にいろいろな議論をしていくというのは、なかなか時間がかかる、困難な課題ではないのかなとも一方で思うわけでありまして、慎重に検討していくということでありますけれども、国の出先機関の不合理はかねてから指摘をされて、相当な時間がたっております。

 また、道州制と一緒にもし仮に議論をしていくということになりますと、またまた時間がかかってしまう。それならば、少なくとも麻生内閣当時の出先機関改革の工程表、これは平成二十一年三月で出されたわけですけれども、そこで示されました国の出先機関の事務、権限の見直しを早急に行っていただきまして、地方に移管できるものは地方に移管をしていただきたい。

 ちなみに、出先機関改革に係る工程表では、経済産業局では消費者取引の適正化、製品安全に係る事務、権限の地方移譲など、地方整備局では国道の整備、管理、一級河川の管理の地方移管など、地方環境事務所では家電リサイクル、オフロード排ガス規制に係る事務、権限の地方移譲などが見直しの主なものとして掲げられているところでございます。

 そこで、経済産業大臣、国土交通大臣並びに環境大臣にそれぞれお尋ねをさせていただきます。

 所管の地方支分部局で工程表に示された事務、権限の見直しをどう具体的に進めるのか、よろしくお願いいたします。

茂木国務大臣 鈴木委員のおつくりいただきましたこの資料を見ますと、静岡県にたくさん星があるんですね。実は、企業が新しい製品をつくると、テストマーケティングをやるのは、一番多いのは静岡なんですよ。それだけ静岡県というのは全国で平均的な地域ということになるのかもしれませんけれども。

 例えば、産業構造、それからまたそれぞれの地域の置かれている今、景気の状況、相当違っております、関東と関西、そして北海道と九州。そういった中で、先日も各地方の経済産業局長を集めまして、省で会議をやりました。地域ごとに、どういう産業政策、経済対策が立っているか、こういう議論は深めていきたい。また、私の方から各局長に、各地域レベルで決められることはしっかり決めてくれ、本省に上げるのではなくて、地域ごとの判断をしていってくれ、こういう話もさせていただいております。

 そういった中にあって、地方分権改革、これは行財政改革の一環としてしっかり進めなきゃなりませんし、またそれに経済産業省としても全面的に協力をしていきたい、こんなふうに考えておりますけれども、先生の方からも御指摘があった道州制の問題もあります。

 そして、例えば、経産省の出先であったり、国交省の出先であったり、環境省の出先であったり、ばらばらに議論するのではなくて、全体でどういう改革を進めるのか、こういった議論が今私は必要なのではないかなと思っておりまして、新藤地方分権改革担当大臣、そして稲田行政改革担当大臣を中心にしながら、全体像のあり方を検討する中で進めていきたい、そんなふうに考えております。

太田国務大臣 大変丁寧な御指摘をいただいて、何もできないとするならば、二十一年の自公政権の中でつくったものからまず始めたらどうなのかという御提案だったと思います。

 四年たっておりまして、その間には東日本大震災もあったりしました。それらも踏まえて、政府の中でこれから検討すべきものだと私は認識をしております。

 また、きのう、国土交通省として、まさに南海トラフの、地元にも関係のあるところで、関東整備局から四国整備局、そして各県にも協力いただいて、広域の防災訓練を行いました。

 そうしたことも勘案し、また、東北の震災のときには、国土交通省の東北整備局、運輸局がくしの歯作戦ということで、大変な中で真っ先に道路の啓開等をしたというようなこと自体は大変貴重なことだというふうに思っておりまして、さまざまなことを勘案しながら検討すべきもの、このように思っております。

石原国務大臣 鈴木委員にお答えしたいと思います。

 行政改革というのは、無駄を省いて効率のいい社会をつくっていく、その一環の中で国の機関を統廃合していくというのは、私は大賛成であります。また、総理も御答弁されましたように、地方の特性を生かすための地方分権、地方分権といいましても権限とお金がなければ絵に描いた餅である、やはり動かせるものは動かしていく。

 きょう委員がお配りいただいた表を見せていただきますと、伊豆半島に星があって、これは国立公園の管理事務所だななんて考えたんですが、環境省は国立公園を管理させていただいております。そこで働いていらっしゃるレンジャーと言われる方は、国の役人ですけれども、本当に牧歌的で、自然を本当に守らなきゃいけないみたいな、国の役人の中にあっても、一種、自然に対する慈愛や地球環境に対する啓蒙、こういうものにすぐれた方々であるし、そういう方々に対する期待もある。

 また、御議論になったように、道州制等総合的にどういうふうに考えていくのか。新藤さんが地方分権推進大臣でありますので、しっかりと相談させていただいて、またお知恵も拝借させていただいて、地方の首長さんとしての生の意見、やはり地方の声を聞かなくて物を進めていくというと、また中央が物を描いたということになりますので、その点に留意して、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 どうも突っ込むのは余り得意じゃないものですから、余り突っ込んだ指摘に対する御答弁が何となくいただけなかったような感じがするわけでありますけれども、いずれにしましても、時間が来ました。

 やはり道州制だと私は思います。出先機関の廃止のためにも、すぐにでも道州制の議論をしてもらわなければならないと考えますが、いかがでしょうか。総理に再度お尋ねをさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 国と地方のあり方を基本的に考え直していくためにも、今委員が御指摘の方向に国と地方の関係を改革していくためにも、道州制を我々は考えているわけでありまして、今、自由民主党におきましてもその方向で議論がなされているわけであって、その中において、政府としっかりと連携をしていきたい、このように思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 いずれにしても、中央集権体制が制度疲労を起こしている、これは共通の認識だと思いますけれども、そうした現在、地方分権改革は、地方の数々の規制を取っ払って、その持てる自主性であるとか創造性であるとか活力を取り戻して、日本を再び元気にするためにも、現下の最重要課題の一つである、そういう認識をしております。そして、そのためにも、国の出先機関の地方移譲は最低限越えなければならないハードルの一つであるはずであります。

 日本維新の会は、本音で、本気で、この国のあり方を国から地方へ変えようとしております。ぜひ、国の出先機関の廃止の問題に真正面に挑戦をしていただき、地方分権改革を前に進めていただきたいと思います。よろしくお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、重徳和彦君から関連質疑の申し出があります。中田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。重徳和彦君。

重徳委員 ここで、ちょっとブレークで、首長経験者ではなく首長選挙経験者ということで、日本維新の会、重徳和彦、これから質問をさせていただきたいと思います。

 二年前、ふるさと愛知から、地方から日本を変えるんだという思いで、自民党愛知県連推薦の形で愛知県知事選挙に出馬をいたした者でございまして、当時お世話になりました先生方も今は大臣として席を並べていらっしゃいますが、胸をかりるつもりで、思い切りぶつかってまいりたいと思っております。

 自民党を中から変えていくのではなく、今は、立場は外から、この日本の政治を変えていきたい、こういう思いで立ち上がっております。二年間浪人をいたしまして、地べたをはう生活をしておりましたので、今、有権者の皆様方に最も近い立場から、今から議論させていただきたいと思います。

 日本維新の会は、明治維新以来、百四十年ぶりの思い切った根本的な体制維新を目指します改革派政党でございます。この後の議論で根本議論をしていきたいと思っておりまして、自民党は決して守旧派政党にならないように、安倍政権に頑張っていただきたい、こういう気持ちでこれから討論をさせていただきます。

 まず初めに、安倍政権の基本姿勢についてお伺いいたしたいと思います。

 まず総理に、TPPについてお伺いしたいと思います。

 民主党政権はTPP参加に積極的な、党内ではさまざまな議論がございましたが、積極的な参加を目指すという形で、野田前総理がそういう姿勢を示されておりました。昨日の原口委員からも、基本方針がまだ安倍政権から示されていないというようなことがございましたが、今の状況、お考えをお示しください。

安倍内閣総理大臣 自民党の選挙における公約は、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、参加には反対するということであります。さまざまな関税があるわけでありますが、それは、日本の国内の国益あるいは国柄を守るために関税が張られているわけであります。いわば関税自主権の中において我々は関税を張っているのであります。

 一方、民主党政権のときに、日本を開国する、そういう発言がありましたが、これは全くの誤りであって、日本の平均関税率は世界でも最も低いわけですね。既にもう相当、日本は国を開いているんだという認識はちゃんと持たなければいけませんし、むしろ、国際社会に対してもそういうことをちゃんと言っていく必要があるんだろう、このように思います。みずから開国しなければいけないなんということを言うのは、みずから交渉力を弱めることになるんだろう、こんなように思うわけでありますが、自由民主党としては、その公約はしっかりと守っていく。

 一方、自由な貿易環境というのは、これは日本にとって国益である、このように考えております。第一次安倍内閣におきましても、EPA、FTAについては積極的に推進をしてまいりました。極めて厳しいと言われたオーストラリアとの交渉もスタートをした。

 その中において、このTPPが果たして国益になるかどうかという中において、事前交渉が今進んでいますから、その交渉の状況をしっかりと把握しながら、あるいは、影響等がどうなっていくかということについて今検討を行っているわけでありますが、それを勘案しながら、国益にとって最善の道をとっていきたい、こう考えております。

重徳委員 何度かそういった御説明を伺っておりますが、なかなかスピード感というものが見えてまいりませんで、これからスピード感を持って国際交渉に臨んでいただきたいというふうに考えます。

 次に、経済産業大臣に、原発・エネルギーの問題について、基本姿勢をお伺いしたいと思います。

 民主党政権は、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを目指す革新的エネルギー・環境戦略というものを示しておりましたが、自民党政権、安倍政権としてはどうお考えでしょうか。

茂木国務大臣 重徳先生、二年前からどうされていたかなと思っていたんですけれども、このたびは当選、本当におめでとうございます。

 先生は自民党のエネルギー政策についてはよく御案内だと思いますが、御質問いただきましたので、改めてお答えをさせていただきたいと思います。

 自民党のエネルギー政策、そしてこの政権のエネルギー政策につきましては、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないようにエネルギー需給の安全に万全を期す、これが基本的なスタンスであります。そこの中で、まずは三年間、再生可能エネルギーそして省エネの拡大、こういったことに全力で取り組んでいきたいと思っております。

 そして、原子力につきましては、福島での原子力事故、この反省も踏まえまして、安全第一の原則を貫く、いかなる事情よりも安全性を重視する。そして、この安全性については、新しくできました原子力規制委員会、独立した委員会の専門的な判断に委ね、ここが安全だと言わない限り、原発の再稼働はありません。安全だと判断された原発については再稼働を進めていきたい、こんなふうに考えております。

 そういった再生可能エネルギーの拡大の問題、そして原発の安全性のチェックの問題、そういったことを経ながら、十年以内に電源構成のベストミックス、こういったものをつくっていきたいと考えております。

 そして、二〇三〇年代に原発稼働をゼロにする、こういった前政権の方針でありますけれども、十分な根拠は示されていないんですね。できるかできないかわからない。こういうことについてはきちんとゼロベースで見直しを図っていきたい、こんなふうに考えております。

重徳委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 今の原発の方針につきましても、今回、補正予算を物すごいスピードで急いでいる割には、これからの原発・エネルギーの問題をどうしていくのかは十年かけていくということで、これまた少しスピード感が、もっともっと必要なのではないかと私は思います。

 このほかにも、民主党政権のときには、脱官僚とか、コンクリートから人へとか、あるいは二酸化炭素を二五%削減するとか、いろいろな方針が、つまり、それまでの自民党政権をひっくり返すような形で、あらゆることを否定する形で民主党政権はいろいろな政策を打ち出し、そして失敗したことも多く、この間の総選挙では民意がすっかり離れてしまったという形だったんですが、今度は自民党政権が、民主党政権がやってきたこと、やることなすこと全部否定するということでもまたいけないんじゃないかというふうに私は思っております。そのあたりは、国民世論の希望、期待というものもしっかりと踏まえた上で、適切な御判断をしていただく必要があると思います。

 なぜならば、つい三年半前に、自民党政権、長らく続いてきた長期政権が、古い体質だとかいろいろなことに対しまして国民の皆さんが辟易として、そしてもう嫌だという思いを持って、新しい政権を三年半前に求めたわけですから、そういうものが一切変わらないままにまたもとに戻るのでは、ただの先祖返りではないか、時計の針を戻すだけではないか、こういう厳しい目も国民から向けられていることをぜひとも皆様方に御承知いただきたいと私は申し上げたいと思います。

 さて、こういう問題意識を持ちながら、本日の議論、残り十五分しかありませんけれども、議論させていただきたいと思います。

 いわゆるアベノミクスと言われる、三本の矢と言われる経済政策をこのたび打ち出しておられますけれども、私は、この三本の矢が全く同じ三本だというふうには見えないんですね、いろいろな強さという意味で。

 一本目の金融政策については本日は触れませんが、二本目の公共事業、機動的な財政出動というものなんですけれども、公共事業につきましては、これは見方によりますが、使い古された、さびついてしまった矢ではないかというふうに見ておられる国民の皆さんはたくさんいらっしゃいます。そして、むしろ三本目の、民間投資を喚起する成長戦略こそが、まだほとんど誰も放ったことのない黄金の矢ではないか、これこそが強い矢なのではないかということを思っている、期待されている方々がたくさんいると思います。

 こういう中で、特に本日は二本目の矢につきまして、議論を深めたいと思うんです。

 どうも、これまでの説明では、経済対策という言葉、雇用対策という言葉、そして安心、安全という言葉、これが全部一緒になって、ごたまぜになって説明されているように見受けられます。そしてさらに、今回、借金を物すごくふやすんですけれども、そのふやす理由、根拠というものも曖昧なまま、今の経済対策、雇用対策、そして安心、安全という三つの、少しぼんやりした理由をつけて、どんと五兆円以上のさらなる国債を、建設国債を発行する道を進んでいるように見えます。このあたりの曖昧さを少し解きほぐしていきたいと思います。

 まず一つ目として、フリップをごらんいただきたいと思いますが、これまでの五十年間、一九六〇年から二〇一〇年までの五十年間の社会動態の変化をごらんいただきたいと思います。

 オレンジ色の棒グラフ、ずらりと右肩上がりに上がっている、これが自動車の保有台数なんです。日本人というのは、一九六〇年、一番左端では、日本じゅうで車は全部で三百四十万台しかなかったんです。これが高度成長期にいわゆる新三種の神器なんて言われまして、クーラーとカラーテレビと並びまして車、これを一億国民みんな欲しがったんですよ。この車を手に入れたくて手に入れたくて、そのために一生懸命働いて、そしてトヨタのカローラは一九六六年に発売されました。いよいよ大衆車の時代がやってきたわけでございまして、みんなが車を手にするようになってきた。

 どんどん通行量、車の量がふえてきたわけですから、それに合わせる形で国道、グラフで出しているのは、一般国道と主要地方道しか出していません。もちろん、市町村道とかいわゆる田舎の道はまだまだ舗装しなくちゃいけない道もあります。それはわかっておりますが、しかし、こういう主な道路というのは物すごいスピードで高度成長期に整備をされ、国民的には、自分は車を買ったんだから、運転できる道路がたくさんふえたら、物すごくこれはハッピーです。

 それから企業も、それまで三十分かけて原材料を運んだり、物流というものがあって、三十分かかったところが十五分に短縮されました。渡れない川が渡れるようになりました。くねくね曲がっていた道が、トンネルをぶち抜いて、バイパスをつくって、真っすぐ行けるようになった。これは物すごい経済効率の向上に結びついたと思うんです。

 そのような意味で、国民共通の夢をさらに膨らませるとか経済効率性を活性化させるという意味での高度成長期の公共事業の経済波及効果と、それから、維持補修だとか安心、安全、老朽化対策だと説明されております今回の公共事業の経済効果につきまして、この違いにつきまして、安倍総理、本会議でも一度お答えいただいておりますが、ここでもう一度お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 本会議において松野議員から質問をいただきました。大体同趣旨だと思います。

 高度経済成長期の公共投資、いわば、今委員が御指摘されたように、高速道路をつくれば移動が短縮をされ、その分、生産性が上がっていくわけでありますし、また、飛行場をつくっても同じような効果があり、かつ、それは海外との関係においても、移動を短縮させ、そして貿易を活発にしていく、そういう効果があります。

 他方、今回の補正予算においては、ミクロ的には、安心、安全のための補修等も中心的に行われておりますし、また、防災、これは効果としては、まさに人の命を守る大切な公共事業であろうと思います。

 一方、国が需要を創出するということにおいては、同じように需要を創出していくということであり、それも必要としている。マクロ的にはデフレギャップを埋めていくという効果があると我々は考えているわけでありまして、大胆な金融緩和プラス、国が需要を創出していく。

 そして最後、これは黄金の矢とおっしゃった。確かにこれは非常に重要であり、かつ難しいと私は覚悟をしているわけでありますが、この矢をしっかりと放っていくことによって持続的な経済成長を可能にしていくだろう、こう考えているところであります。

重徳委員 今の御説明は何度もお聞きいたしましたけれども、今総合的な対策を打つということには私は一切否定はしないものでございます。

 ただ、今やはりおっしゃったのが、安心、安全という効果という意味で、防災対策は確かに重要です。それから、公共事業そのものによって、建設業それから材料だとかいろいろな、そっち分野の需要を喚起するということはもちろんできると思います。しかしながら、やはり高度成長期におけるいろいろな広い意味での経済波及効果を今回の、今の時期の公共事業は持っていないというのは、これは明らかだと思います。

 もちろん、安心、安全というものを私は全く否定するどころか、私の地元でも、豪雨になるたびに水害が起こりますし、地震だって恐ろしい、津波だって恐ろしい、大変なことです。

 しかし、ここで議論したいのは、今このタイミングで、年度末のこのぎりぎりの、補正が成立したってあと一カ月しかない、そんな時期に無理やり押し込むようなことまでして、この安心、安全というものを、本来計画的、継続的に行うべきいろいろな対策を今このときにぎゅうぎゅう詰めにやっていく、そういう必要性があるか、こういう議論だと思いますので、この点を再度御認識いただきたいと考えております。

 次に、公共事業、いわゆる雇用対策という意義があると思うんですけれども、言うまでもなく、行政が発注者となり、建設業者が受注者となって公共事業を行うわけですから、受注者たる建設業者の皆さんにとっては、これほど大きな雇用対策としての機会はないわけでありますけれども、これも少し見方を変えますと、確かに公共事業は政府しか発注できないわけだから、政府が発注するものとしてはそういう形であるのは一つの道理なんです。

 しかしながら、雇用の場がなくて困っているのは決して建設業界だけではなくて、あらゆる分野の、商店街なり自営業者なり中小企業なり、本当にみんな困っている中で、ある意味、こういった予算の使い方、五兆円の借金をしながら、建設業界に対しては物すごく手厚い雇用対策になるんですが、そのほかの分野にそういう直接的な雇用の効果を生まないというものについては少し不公平感が、少しじゃなくてかなり不公平感があるということ。

 もう一つは、このいっときの雇用創出の効果を生むために、本来は現世代の助け合いなり所得再分配によるべきものであるところを、後の将来世代の借金を莫大に、これは六十年かけて国債を償還しますから、六十年後まで借金を返させながら現世代の一時的な雇用創出をするということについても、世代間を超えた不公平感があるんじゃないか、このように見るんですが、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 重徳委員も、たしか岡崎でしたよね。地方を選挙区としておられますから恐らく感じておられるんでしょうけれども、こうした公共事業をやることによって地域がにぎわいを取り戻すのは事実なんですよ。

 それは単に建設業者だけでは全くないですよ。こうした公共投資を行えば、建設業者だけではなくて、例えば、そこは鉄骨を必要とすれば鉄骨、そしてまた鉄骨を運ぶ業者、そして、そういうところが利益を上げれば、さらに人を雇ってくるかもしれないということなんですね。その後、きょうは仕事ができてよかったなと思って、帰りに飲み屋で一杯やるということになればビールも売れる、こういう波及効果はあるんですよ。事実、にぎわいを取り戻してきているのは事実ですね。

 まだ予算は執行されていない中において、そういう期待が地域で、地域の雰囲気が変わりましたから、そういう雰囲気を変えるという大きな効果も実際出てきているんですね。これが大切なことであって、そして、さらに申し上げれば、先ほど申し上げましたように、デフレから脱却をしていくという大きな使命を我々は持っている中において、この三本の矢の中でも、この二本目もやはり大切なんですね。

 そして、地域が再生をしていくためには、再生していくための生産性を上げていく必要がありますから、そうした予算をしっかりと使っていく、これも今回の中の対策としての、地域が活力を得ていく、これも大きな柱の一つである、このように考えております。

重徳委員 今総理がおっしゃる範囲での経済効果があるということは、私も重々承知をしております。ただ、それは先ほど申し上げました、高度成長期における広い意味での経済波及効果が今はないということは総理御自身も答弁されているわけですから、そういう範囲内の効果でしかないということはお認めいただいているところだと思っております。

 さらに言うと、総理は本会議におきまして、財政出動をいつまでも続けるわけにはいかない、国債発行が将来の負担となるのは御指摘のとおりであり、財政出動をいつまでも続けるわけにはいきませんとも述べられております。

 ということは、財政出動によって公共事業を、今のような大きな規模の公共事業を続けることはないと宣言されているわけですから、そういう意味では、建設業者、あるいはそれによって潤ってくる方々にとっても、この特需的な財政出動による経済対策というのが一体いつ途切れてしまうのかという不安も必ずあるはずなんです。

 もちろん、いろいろな意味での波及効果が、三本の矢をあわせてやるわけですから、それによる総合的な経済効果だと御答弁いただくだろうということも予想できるんですが、少なくとも公共事業を、政府が発注者として今の規模で続けることはないわけですから、そういう意味での建設業界などの不安というものは、これは依然として続くものだと考えております。

 それから次に、国債について、建設国債のあり方について根本議論をしていきたいと思うんです。

 建設国債というものは、通常は、一般の家計と同じように、その年の税収をもって歳出に充てるという当然の行政の財政運営になるわけなんですが、この例外といたしまして、大きな資産を形成し、道路とか橋とか、そういう何十年ももつような資産をつくるわけですから、それは借金をもって後の将来世代が負担する、だから建設国債を発行するという正当性が法律上も、財政法上、認められている、これは私も承知をしております。

 しかしながら、問題なのは、今、六十年償還ルールです。国債を発行して、何遍も借りかえて、最終的には六十年かけて償還するんですが、六十年後の、あるいはその手前でもいいです、二十年、三十年後の日本の人口なり生産年齢人口、きのうも岸本委員から話がありましたが、毎年一%減っているんです。したがって、納税者だって減るわけです。そういう前提で、縮小していく納税者、つまり、借金を返す人たちがどんどんこれから減っていくのに、今までどおりどんどん同じように建設国債を発行していくということは大いなる問題ではないか、今までのように安心して建設国債をばんばん発行していればいい時代はもう終わっていると思います。

 何とかしてこの建設国債に歯どめをかけるべきではないかと思いますが、麻生大臣、いかがでしょうか。

山口副大臣 ただいま建設国債のお話でございますが、先生も御案内のとおり、建設国債というのは財政法四条一項、これを根拠にしておるわけでありますが、決して野方図に発行というわけではございません。

 御案内のとおり、この対象となる公共事業というのは、資産を形成する支出であり、通常その資産からの受益も長期にわたるというふうなことから、例外的に公債発行によって財源を賄って、後世代に費用負担を求めるということが許容されておるというふうなことでありますが、先生の今お話しになりましたとおり、さまざまな情勢の変化等々もあります。そこら辺は、しっかりと慎重に我々もやっていきたいと思っております。

重徳委員 慎重にやっていくというお言葉がありました。やはり将来世代に対する責任というものを私たち大人はしっかりと持ちながら経済財政運営をしていかなければならない、このように考えております。

 最後に、安倍総理、これまで本会議におきまして、何度も、公共事業イコール無駄遣いあるいは悪である、単純なレッテル張りからは卒業すべきだという趣旨のことをおっしゃっております。しかし、国民的には、やはり本当にまた公共事業でいいのか、どれだけ借金すれば気が済むんだという声だってたくさんあるんです。

 私は、計画的、継続的な公共事業をしっかりやって安全、安心を守るのであれば、これは公共事業イコール善だと思います。善なる公共事業はたくさんあると思いますが、今回のような急激なアップダウンを伴って、建設業者もこれから先どうなっていくのか不安で不安でたまらない、こういうようなことを誘発する財政出動ないし公共事業の仕方というのは、いささか、将来に対しても、あるいは建設業界に対しても無責任な部分があるんじゃないか、このように考えますが、御見解をお述べください。

安倍内閣総理大臣 財政を再建していく中において、国債のいわば償還を行いながら新規発行を抑えていくという道をとっていかなければいけない。そのためには、まず無駄遣いをなくしていく、これは当たり前のことでありますが、税収もふやしていかなければいけない。税収をふやしていく道においては、増税だけかといえばそんなことはなくて、経済を活発化させて、経済を成長させて税収をふやしていくということなんですね。前年度、四十兆円ちょっとしかないわけですよ。かつては五十兆円を上回っていたわけですから。

 そこで、やはり大切なことは、経済を成長させていく。そのためにも、デフレから脱却できなければ名目経済は成長していかないんですから、だからこそ私たちは、財政再建のためにも何とか、この十数年続いているデフレを脱却していく、ここに最重点を置いて、我々は思い切った、いわば金融緩和と機動的な財政出動をやったわけなんですね。これをきちんとやっていくことによって、我々は結果を出していきたい。

 まだこれは、予算も通っておりませんし、執行されていないんです。ですから、まずはこの補正予算もなるべく早く通していただきたいと思います。そして、効果を出して、成長させて、税収を上げていこうじゃありませんか。我々も、しっかりと結果を残していきたいと思っております。

重徳委員 冒頭申し上げましたとおり、三本目の矢こそがその真価が問われる部分だと思っておりますので、ぜひともこれは与野党しっかりと論戦をして、これから、デフレの脱却、日本の成長に向けて、しっかり取り組んでいきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、坂本祐之輔君から関連質疑の申し出があります。中田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 私は、埼玉県東松山市長を十六年間務めました。そして、その前は市議会議員を務めておりました。行政運営経験を通じて、国政に対して多くのことを考えてまいりました。きょうは、その経験に基づいて御質問をさせていただきたいと存じます。

 今、日本には千七百十九の市町村がございます。千七百十九の市町村には市町村長がいて、住民の幸せのために、そして市民福祉向上のために、安心して安全に暮らせるまちづくりを実現するために、日夜努力をしていらっしゃいます。

 地域の発展なくして国の繁栄はないと私は考えています。その市町村長がみずからの指針とするところに、日本国憲法に定めている条文がございます。

 それでは、地方自治について総理に御質問をさせていただきます。

 日本国憲法の中の第九十二条においては、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とあります。総理はこの地方自治の本旨についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと存じます。

新藤国務大臣 先に私の方から総括してお答えをしたいと思います。

 まず、我が埼玉県、同県人の坂本先生から御質問いただくことは、うれしく思っております。

 また、ただいま御質問の、憲法が保障する地方自治の本旨、それは団体自治と住民自治ということでございます。国とは別個の地方自治体が地方の行政を自主的に処理する、これが団体自治、そして、地方自治体の運営は住民の意思と責任に基づいて行う、これが住民自治であります。

 私は、この地方自治は、自立性と独自性、これをきちっと確立させながら、国の、また国家機能の一つとして機能する、そして住民サービスを満足させ、魅力ある町をつくる、こういうことではないかと思っております。

安倍内閣総理大臣 ただいま総務大臣から答弁をいたしましたように、団体自治、住民自治というこの二つの理念で進めていくことが地方自治の本旨であろうと思っております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 まさに地方自治体は、例えば市で申し上げますと、市長を中心とする職員が、議会のチェックをいただきながらも、市民福祉向上に努めています。そして、片や多くの市民の方たちが、みずからの手で知恵を絞ってまちづくりを行う、多くのイベントを行っていく、そういった二つの要素がありますが、その地方自治体においては、原則として国が関与することなく、地方自治体の独立性をこの地方自治の本旨ではうたっております。

 地方自治体の独立性というのは、すなわち、権限、財源、そしてマンパワーを地方に移譲して、そして、市町村は市町村の財源のもとに、それぞれの特色を生かしてまちづくりを行うことだと私は考えます。

 私が市長に就任をさせていただいた当時、地方分権推進法が制定をされました。そしてその後、一括法が平成十二年に施行されて、地方分権がもっともっと進んでいくのかと考えておりましたけれども、なかなかそのことを実感するには至りませんでした。

 しかし、この地方自治の本旨に基づき地方自治体の運営を行うのであれば、ただいま私が申し上げましたように、地方分権をしっかりとスピーディーに進めていくことが、そこで生活を営む多くの市町村民の皆様方のさらなる幸せにつながるのではないかと考えています。

 そこで、総理にお伺いをさせていただきますが、地方分権を推進するに当たりましての総理の決意をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 地域のことを一番よく知っている、問題意識を持っていて、そして地域のことを一番考えているのは、やはり地域に住む住民の皆さんなんだろうと思います。そういう意味におきましては、一番住民に近い団体が行政を行っていく、これが極めて重要であります。

 そういう意味におきましては、市町村あるいは県、そういう地方になるべく国から権限を渡していく、財源も含めてですね、という中において、あるべき地方自治、地方分権を目指していきたい、このように思っております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 維新の会の議員からは、地方分権に向けた権限の移譲あるいは財源の移譲等、質問が相次いでいるところでもございますが、それでは、以上を踏まえて、今年度の補正予算について、その中でも商店街の活性化についてお伺いをさせていただきます。

 全国の商店街の数と、この十年程度の、商店街がどのように減少していったか、この数の推移をお聞かせいただきたいと存じます。

茂木国務大臣 御質問いただきました商店街、小売業全体の販売額の約四割を占める、地方経済にとって極めて重要な経済主体である。それだけではなくて、委員も市長としていろいろ経験されたと思いますが、地域コミュニティーの主要な担い手としての機能も極めて重要だ、こんなふうに考えております。

 そういった中で、商業統計、これは五年間の統計でありますので、一番新しいデータが平成十九年でありますが、直近のもので申し上げますと、商店街の数が全国で約一万三千、そして店舗数が約四十三万店、従業員数が二百九十四万人、年間の商品販売額が約五十三兆円となっております。

 これを十年前と比べてみますと、平成九年の商業統計になりますが、平成九年から十年間で、商店街数は約一一%減、そして店舗数は三一%減、従業者数は一二%減、年間商品販売額は二四%減と、いずれも減少しております。

 東松山市もそうかと思いますが、全国的に極めて厳しい状況にある、こんなふうに認識をいたしております。

坂本(祐)委員 衰退したこの数、商業を取り巻く環境というのは年々厳しい状況下にあります。それは商業、工業を通じても同様だと存じますけれども、大型店が出店をされてから、個店商業への影響は著しく、大きく変わってまいりました。

 これらの衰退した主な原因を大臣はどのようにお考えになるでしょうか。

茂木国務大臣 商店街の衰退、さまざまな要因があると思います。

 よく言われることが三つございまして、その一つが、やはり大型店の出店の影響。そして二つ目には、都市機能を初め、特に駐車場の問題も含めて、中心市街地の場合、そういった機能が不足をしている。三番目には、全国的に景気が低迷をしているということでありまして、まずは経済をしっかりさせていかなければいけない、これが新政権の方針であります。

 そして、大型店、確かに影響はあるんですけれども、大型店の、例えば中心市街地から十キロ圏内にある数と中心市街地の売上高、相関係数をとってみますと、そんなに高くございません。必ずしも全てが大型店というわけではありませんが、そういった影響もあります。

 そういった中にあっても、大型店が近郊にあっても、さらには駐車場が少なくても、頑張っているところは頑張っている。恐らくやはり、地域の人材の育成、そしてまたコミュニティー機能をいかにそこの中で発揮していくか、そういったところで工夫しているところがいい成果を上げているのではないかなと思っております。

坂本(祐)委員 衰退した要因は、今大臣がおっしゃっておられましたように、大型店が出店をしたときから大きく変化してまいりました。しかし、今現在、私たちの国では、IT化が進んで、買い物弱者と言われている方たちも通信販売等を通じて買い物をすることが多くなりました。そして、今ではコンビニエンスストアも宅配を始めております。こういった状況も大きく考えられる中で、少子高齢化、これがさらに拍車をかけているのだと思います。

 小さな商店、商店街を形成する商店は、主に一人から五人程度の家族で営業されている店が多いと思います。私も、家が商店でございましたので、代々続く父や母の背中を見て育ちました。商業を取り巻く環境は年々厳しい。しかし、そういった状況の中にあっても、お客様のためにこそ店があるんだという信念を持っていれば、必ずお役に立って、売り上げを増すことができるのではないか、多くの商店はそう考えていらっしゃると思います。

 しかし、大きな時代の中で景気が低迷をしてしまいました。このような状況の中で、頑張っても頑張っても、衰退あるいは閉店を余儀なくしてしまう商店もふえています。

 シャッター通りという言葉が近年使われております。このシャッターをどうあけてもらうのか、これは市議会でもよく質問があることでもあります。そして、シャッターをあけるよりは、閉められたその店をどのようにまちづくりに生かしていくのか、今度は商店街を新たなる住宅街として提供ができないのか、こういった視点も大切だと思っております。

 しかし、商業の発展なくして町の発展はないと私は考えてまいりました。大臣には、今後、一つの商店あるいは商店街、さらには日本の商業を発展させていくための応援をどのようにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 大変重要な御指摘、そして御質問をいただいたと思うんです。

 やはり私は、人というのはあると思います。小さなお店であっても、例えばお酒屋さん、その県にあります全てのブランドのお酒をそろえて、まさに今インターネットも使えますから、そういうマーケティング機能で全国にそういったものを発信することによって新しい展開をしている、こういうお店もあります。

 そういった中で、私は、一つは、いかに人材を育成していくか、そしてもう一つは、商店街の持っている、中心市街地の持っているコミュニティーの機能、これをいかに強化していくか、こんなことが重要だと考えておりまして、今回の補正予算でも大きく二つの事業を進めることにしております。

 その一つが、商店街に対するソフト面での支援策。商店街の活性化に資するイベント、そして、次世代の人材育成のための研修事業等々を支援するために百億円を計上いたしております。

 そしてもう一つが、コミュニティー機能を強化していく。その地域でのお祭りであったりとかそういうイベントを通じて、大型店にはないような魅力を引き出していくということが必要だと思います。そして同時に、地域における高齢化が進む中でも、安心、安全を確保していく。こんな意味から、地域コミュニティーのニーズに応える、安心、安全な生活環境を守るための施設整備の支援として、今回、二百億円を計上してございます。

 過去の実績で申し上げますと、なかなか全体的に厳しい中で、こういった商店街の支援の実績、大体、対象の六五%の商店街において集客が改善をしている。六五%ですから三分の二です。これが高いか低いか、いろいろな評価があると思いますが、全体が低迷をする中で、三分の二の商店街がこういった対策によって少し上向いてきている。こういったことは好意的に捉えて、しっかりした対策をこれからもとっていきたいと思っております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 今、大臣から、補正予算の事業についてもお話をいただきました。商店街まちづくり事業、約二百億円を計上されています。そしてまた、商店街活性化事業には百億円という大きな予算を計上されています。内容等につきましても、今御説明をいただいたとおりでございます。

 しかし、私が思うのは、こういった商店街の活性化事業、これは、すなわち、地方自治体に任せて、地方自治体の状況に合わせた地域おこしの一環として商店街を育成した方がいいのか。あるいは、その補助金をそのまま一括交付税等で地方に移譲していく、そういうシステムの中で、地域の商店を、市町村が中心となって、あるいは商工会の意見を聞きながら、商店街の意見を聞きながら発展をさせていった方がいいのではないか、そう考えております。まして、この補正予算の中で、この緊急経済対策の中でこれらの事業費を充てる、そう簡単には商店街が活性化を図ることはできないと考えています。

 私どもの町では、地域住民の皆様が町内会、商店街あるいはPTAと協力をして、夢灯路という町おこしをしています。

 木枠でつくった、その周りを和紙で張った灯籠を、一キロ離れた沼と沼を結んでその間に置いて、その二つの沼を見物してもらう。男沼、女沼と申し上げますけれども、そのことによって恋が芽生えるんだという、そういった地域を知る、町を知るイベントを市や国の補助金なしで行っています。当初、二日間でも一万人しか見えなかった観光客が、九年目を迎えて四万人に上っている。きょうは写真でお見せできないのが残念でありますけれども。

 そういったまちづくりを行うには、例えば、補正予算の中にあるカメラや街路灯を設置するのではなくて、むしろ、地域の実情に合わせていく。国からの上意下達でなくて、地域の住民の皆さんが、地域、個人の創意工夫、努力によってまちづくりを行っていくということが大切なのではないか。

 すなわち、地方交付税が果たしてきた役割というのは、戦後、どこの町に行っても道がきれいになって、学校がきれいになる、田んぼの中を走っても道路が整備をされている。これは、とてもすばらしい交付税制度だと思っています。しかし、時代が多様化される今の状況の中、私は、今申し上げましたように、交付税を一括交付税として地方に移譲していく、むしろ、維新の会としては、消費税を地方税化したらどうかというふうな提案を申し上げております。

 金太郎あめのような町をつくっていく時代は終わって、これから都市間競争が厳しい時代を迎えています。地域は地域で、しっかりと財源を確保していかなければならない。私の町は環境が中心なんだ、私の町は福祉が中心なんだ、そういった個々の特性を生かした都市があらわれてもいいのではないかと考えています。

 この点に関しては、先ほど総理がおっしゃったように、地方分権施策をしっかりと推進していただくことによって、私は、市町村が潤いを持って、そして決定権を持って、新たなるまちづくりに臨んでいくことができるのではないかと考えています。

 今申し上げた商店街まちづくり事業と活性化事業、合計三百億円の事業が計上されておりますけれども、この三百億円は、新年度予算に当たっては、同様な予算でどのくらい計上されていらっしゃるでしょうか。大臣にお伺いいたします。

茂木国務大臣 補正予算で、それぞれの事業で、まちづくりの事業が二百億円、そして商店街活性化事業百億円という形で、相当な規模でまずやらせていただくというつもりでおります。

 そして、委員御指摘のように、きちんと地域ニーズを反映したものにしていかなきゃいけないということで、まず、商店街まちづくり事業におきましては、地域の、市役所であったりとか、さまざまな行政機関の要請に基づいて実施をしていくということを考えております。

 また、地域商店街活性化事業につきましては、採択時に、その商店街の地域コミュニティーとの連携、こういったものを重視して採択をしていきたいと考えております。

 この三百億をまず使って、緊急の課題でありますから、それに対応していく。その上で、本年度予算としましては三十八・七億円を計上いたしております。

坂本(祐)委員 三十八・七億円と今大臣がおっしゃいました。

 私は、地方行政を預からせていただいた立場とすると、それはおかしい。そう思うのは、なぜ、補正に商店街まちづくり事業と活性化事業で三百億円の予算を計上しているものが、新年度予算で三十八兆円程度に減ってしまうのかというところに……(発言する者あり)済みません。地方行政をしておりましたので、億という単位が定着しておりまして、申しわけありません。確かに桁が大きく違うんです。

 それほどの額が新年度予算で今度は減少してしまうというその計上の仕方のあり方に、残り一月足らずで商店街の活性化のためにこの三百億円が費やされるのは難しい、ここに来て、なぜ十五カ月予算なのかということにも疑問を持つわけであります。市町村は、単年度単年度でしっかりと予算の枠組みをして消化をしていく、ほとんどそれを使い切っても足りない、そういう状況下の中で、苦しんで、あえいで、市民の皆様方のために市政を行っています。

 財政法上における補正予算の考え方というのはどのようなものでしょうか。麻生大臣、よろしいでしょうか。

麻生国務大臣 補正に関して言わせていただければ、今回の補正に関しては、何といっても、御存じのように、昨年の七―九の経済指数がマイナスになっておりました。年率換算三・五%のマイナスだったと記憶します。したがいまして、そのような状況下で新年度に入っていくというのは極めて厳しい経済状況になるということで、経済を、まずはデフレ不況からの脱却を一番に挙げておりますので、その関係上、政府がかわって、政権がかわったら、経済対策はデフレ不況からの脱却に充てたということをはっきりさせるために、きちんとした、数字で理解していただける意味でもということで、補正予算は大型なものをやらせていただきました。

 しかし、新年度につきましては、御存じのように、財政をそのままずっと伸ばしっ放しというわけにはいきませんので、まずはそれを見た上でという形で、景気がある程度上向いてくればそれでよし、さらになければと、いろいろなことをその状況によってあわせて考えねばならぬと思っておりましたので、まずは、補正の考えは、先ほど申し上げたように景気を浮揚するのが一番、そして新年度の予算につきましては、財政の健全化というところもある程度はおなかに入れた上でやらないといけませんので、今申し上げたような数字になっているんだと御理解いただければと存じます。

坂本(祐)委員 景気対策、これはよく理解できます。しかし、補正予算という考え方に基づくと、緊急を要するもの、こういった補正予算のあり方からすると、この予算をここで補正に上げていくべきではなかったのではないかと私は考えています。商店街の活性化について、切り口は一つでありますけれども、緊急性があるのかどうかという問題になろうかと思います。

 麻生大臣は、報道によりますと、一月の二十九日の臨時閣議後、来年度予算に対して、今までと比べて締まったものをつくり上げたとおっしゃっておられました。

 来年度予算において、税収四十三兆九百六十億円、国債発行額四十二兆八千五百十億円。二千四百五十億円低く抑えたということでありますが、これは、新年度予算に計上する予算を補正に盛り込んだだけではないかというふうに私は思えてなりません。緊急経済対策の名のもとに、ばらまきをしていてはいけない、そう思っております。

 市では、当然、副市長がいて、一番財政に厳しいのは財政担当職員です。総理が景気回復のために、そして大臣も景気回復のためにということになってしまっては、今私が申し上げたことが、そのまま将来、子供たちのツケに回ってしまう。しっかりとした財政規律を守るということにはならないのではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 おっしゃることは全く正しいと思います。私どもも、同じように、きちんと財政ということの健全性をいかに早く回復させるかというのは、常に頭に置いておかなければならない問題と思っております。

 したがいまして、財政の健全化の観点に立てば、新年度の予算につきましては、これまで三年間ずっと公債発行の方が税収を上回っておるという状態、常識では考えられない状態が約三年、借金の方が収入より多い話ですから、そういった状況を続けているのはいかがなものかということで、ここは何としても税収の方が特例公債よりは多い形にしたい、そう思っておりましたので、それがきちんとしたメッセージとして伝わると思っておりましたので、その点を考えて、重点的に、かなり伸ばさねばいかぬというものは伸ばし、見直さないかぬものは見直すという方向で編成をさせていただきました。

坂本(祐)委員 大臣からは景気の回復のお話がございました。私も、今の日本にとって最も大切なのは景気の回復、金融緩和も行い、そして積極的な財政出動も行った方がいい、そう考えております。

 しかし、これは、多くの国民にとってわかりやすく説明をしていただくということであれば、私は、補正予算は補正予算でしっかりと組んで、そして、今申し上げた商店街の活性化事業等、小さな事業ではあっても、市町村にとっては多くの予算を費やす予算です。しっかりと、地方自治体が置かれている立場、そして一つの地域が置かれている立場を調べていただいて、そのことをもって大きく新年度予算でしっかりと対応するべきではないかと考えております。

 緊急経済対策の補正予算、この中には、今私が申し上げましたように、商業の活性化ばかりではなくて、ほかにもこういった予算の組み立てが見受けられます。先ほど申し上げましたように、財政規律をしっかりと守っていく、そして、将来の子供たちをしっかりと成長させていく、安心して暮らしを子供たちに続けていただくためにも、その規律を守っていただきたい。

 補正予算の枠組みを変えるべきではないかと考えておりますが、総理、お考えはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回の補正予算の意味、意義については、既に財務大臣から答弁をさせていただきました。

 我々としては、この補正予算において、地域活性化及び商店街の活性化のために二兆四千億円投入しているわけでありますが、地域活性化のためには、公共事業についていろいろな議論がありますが、公共事業も地域活性化のためには必要である、有効であるということは、市長を経験しておられますから、議員もよく御承知のとおりだろうと思います。

 そして同時に、今回、追加公共投資が大規模であるがゆえに地方の負担も大きくなるということにおいて、その軽減をし、また、迅速かつ円滑な実施を図るために地域の元気臨時交付金も創設をしたわけでありますが、この中には、先ほど経産大臣からも答弁いたしましたコンパクトシティーの重要性、委員も御指摘でありますが、そのための予算も入っておりますし、また観光地の振興の予算も入っておりますし、あるいはまた農林水産業の基盤整備等を盛り込んでいるわけであります。

 プラス、地域を活性化させるためにさまざまなイベント、これはまさに地域がその個性を生かしたイベントを行って、地域の人たちの活力を引き出し、また、心を一つにしてさらに集客力を増していく、そのための資金も入っているわけでありますから、これを一日も早く実施して、その成果を出していきたいと思っております。

坂本(祐)委員 地方自治体のこういった予算の枠組みと国の予算の枠組み、大きな違いがあると私は感じておりますが、これからも市長としての経験、こういったものを生かして御提言をさせていただきたいと考えています。

 ぜひ、地方自治体のさらなる発展のために地方分権をしっかりと推進していただくことを願って、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、山田宏君から関連質疑の申し出があります。中田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山田宏君。

山田(宏)委員 日本維新の会の山田宏でございます。

 きょうは、日本維新の会、私も含めて六名のメンバーが質問に立たせていただきまして、そのうち五名が首長経験者であります。私も国会に戻ってきまして、十七年ぶりということで、かつての同僚に会うと、随分風貌が変わったねというふうに、苦労の程度がわかるんですけれども、その期間、十一年間は杉並区の区長として仕事をさせていただきました。その経験も踏まえて、きょうは、最後のバッターでございますので、率直に総理にいろいろとお伺いしたいと思っております。

 私は、まず安倍総理に、今回重責を担われたこと、心からお祝いと、また敬意を表したいと思っております。

 多くの点で安倍総理とは価値観を同じくするものでございまして、党は違っていても、我々ぜひ共通の点については思い切って応援をしていきますので、一番大事なことは、やはりトップの決断です。いっぱい反対があっても、やはり決断すべきときに、タイミングのいいときにきちっと決断をして、批判はあえて受けていくということで物事は前進するということを私たち首長は経験してまいりました。ぜひ、そういった総理として大仕事をなし遂げていただきたいと心から期待をいたします。

 ちょっとその前に、今回いろいろと我が党の議員が御質問させていただきまして、小さい話なんですが、大事な話をTPPの前に申し上げたいと思っています。

 今回の補正予算、いろいろな理由でこれぐらいの時期になりました。そしてまた、十三兆円、実質十兆円の大きな、史上二番目の補正予算ということになりました。地方から見ますと、年度内にこれを消化するというのは、とてもじゃないけれども無理な話です。

 そうすると何が起きるかというと、このさまざまな地方に配分された事業に対して、各地方自治体は、これは予算として計上し受け取ったけれども、しかし今年度中には消化ができないということで、繰越明許ということをやらなきゃいけないわけです。そのために、国の予算ですから、繰り越しの理由を各出先機関に、さっき鈴木望議員がいろいろと実体験に沿ってお話を申し上げましたけれども、いろいろな省庁の出先機関に繰り越しの理由を提出しなきゃいけないんですね。これが大変なんですよ。もう本当に細かいものを全部、数人で行って、なぜ繰り越すのかと。自治体のせいじゃないですよね。そうでないのに、自治体が理由をつけてこれを提出するという大作業が来るんです。

 こんな時間の無駄、こんなに人手の無駄、国の方で、そういったものはもう出さなくてよろしいというふうにしていただけませんか。どうでしょう。

新藤国務大臣 よい御指摘だと思うんです。

 その上で、まず大切なことは、ですから、補正予算の早期成立、これがまず第一なんです。それから続いて、早期執行、これが極めて重要です。

 これは何が起きるかというと、通常、国が交付金を決めます。しかし、自治体は区長さんだったり市長さんがいらっしゃるから、自治体は、今度それを、国からのお金を受けるための議会を開かなきゃなりません。その議会が定例の三月にやるんだとすれば、もうこれで半月以上おくれます。それから、仮に議会で受けたとしても、今度は、工事を発注するときに、ある一定金額以上の契約は、契約承認の議会を開かなきゃなりません。それは定例でいけば六月議会ですよ。ですから、そういうことを工夫していただかなきゃいけない。早期執行の手続をやっていただきたい。

 それからもう一つは、前払い制度。結局、発注しても、地域にお金が実際に払い込まれなければ、景気効果にならないわけです。通常だと、ある一定金額を超えると、例えば、前払い金は、何億円の工事を出したって五千万とか、これは効果を発揮しません。ですから、ぜひ、これは私どもは全国の自治体にお願いしております。早期の執行とそれから迅速な手続、この工夫をしていただきたいということであります。

 あわせて、今の御質問の件についても、これはできる範囲、どこまでがあるのか検討したいというふうに思いますが、まずは早期成立と早期執行をよろしくお願いします。

山田(宏)委員 早期成立については、我々野党もいたずらに時間を延ばそうという気はございません。そしてまた、きちっとした十分な議論というものを深めた上で、早期にやはり成立をしていくべきだと考えております。

 ただ、地方自治体の経験から申し上げますと、一日、二日、三日という話ではなくて、これはもう、予算の概要というのは、各役所と省庁とが大体打ち合わせして、どういうものがあるのかというのは大体もうわかって、事務局同士で大体決まっているんですね。そしてあとは、これから地方議会がありますから、その地方議会で審議をして成立させるんだから、新藤大臣おっしゃられましたけれども、そういうのじゃなくて、本質は、今申し上げたいのは、追及しているんじゃないですよ、今回はいろいろな理由でこういうことになった、どっちが悪い、どっちがいいじゃなくて、この負担を下げてくださいよ。どうでしょう。

新藤国務大臣 御存じだと思いますが、定例議会でやっていたのでは、これは早まらないんです。ですから、臨時議会等、そういったものを開いていただかなきゃならない。これは、委員にもそうですし、これをごらんになっている全国の自治体の関係者の皆さん、ぜひ配慮してもらいたいと思います。

 その上で、今の御提案については、私が全て所掌しておるわけじゃありませんから、ですから、いろいろな工夫をしなければならない、これは問題意識を持って研究したい、このように思います。

山田(宏)委員 総務大臣が全部所掌しているわけではないということなので、ちょっと質問通告にはないんですが、総理、どうでしょう。

安倍内閣総理大臣 ただいま総務大臣が申し上げたように、各自治体においては、早期実施できるように努力をしていただいた上において、今回は大型の補正になったということでありますから、我々も、地方の負担ができる限り軽減されるよう検討していきたいと思います。

山田(宏)委員 ぜひお願いをいたします。

 私、都議会の議員を八年やりまして、その後、国会の議員を二年半ぐらいやりまして、そしてその後、地方自治体の首長をやりました。議員をやったときの経験と、それから首長になった十一年間、比べてみると、自分の考えが随分変わったというのが印象なんです。

 どう違うかというと、議員のときは、やはり予算の使い道というものに非常に強い関心を持ちます。そしてまた、そのことで論議をします。議会もそうです。しかし、こういう自治体の経営ということに携わると、支出も大事だけれども、むしろどうやってそのお金をつくるのか、借金をしないで、そして住民に負担をさせないでどうやってお金をつくるのかということばかり、頭がいっぱいになるんですよ。この違いを自分で感じてまいりました。恐らく、そちらに座っておられる安倍総理ほか皆さんは、そういうようなマインドになっておられるんだろう、こう思っております。

 そういった経営者、自治体経営者、国家経営者というのを経営者と言わせていただければ、企業の経営者と同じように、今、国の状況が大変厳しい中で、その企業をどうやってよくしようかというときに、大体三つか四つ、企業の経営者だったら頭に浮かぶ。一つは、やはり売り上げを上げることです、これがもう一番大事。二番目は、コストを削減する、これが二番目。そして三番目、どうしてもしようがないときは銀行に借金を申し込む。そして最後に、商品やサービスの値上げなんです。でも、これは競争から落ちていく可能性がある。

 国の経営も一緒だと思うんです。最初に値上げをしたらいけないんだ。これは増税です。最初に努力すべきは、やはり売り上げを上げること、そして次に、コストを削減すること、これにまず徹底的に取り組むことがいい。今回、アベノミクスと言われている三本の矢のうち、先ほども議論になりましたように、三本目の矢、成長戦略こそ、やはり売り上げを上げるということにつながるものだ、こう思っております。

 そこで、この売り上げをどうやって上げるのかというのは、非常に難しいことがあると思います。しかし、私は、結果としては、規制改革と、それから、やはり海外への市場を広く、なるべくマーケットを大きくして、日本がいろいろなところに、努力をすれば売れるようにしていくというようなことが一番成長にふさわしい、こういうふうに思います。

 そういった意味で、TPPについてお聞きをしたいと思います。

 TPP、環太平洋パートナーシップ協定ということについては、各党にいろいろと議論がございます。我が日本維新の会は、TPPについては、なるべく早く協議に参加をし、そして国益に従って判断をすべきであるというのが私たちのスタンスです。

 今回もいろいろと議会で取り上げられましたけれども、このTPP、デメリットのことはたくさん言われるんですけれども、TPPのメリットということについて、総理の方から、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 このTPPについては、基本的な姿勢なんですが、自由民主党、また私としては、自由な貿易環境というのは日本にとってプラスである、こう考えています。

 そして、その中にあって、FTAやEPAを推進してきたわけでありますし、このTPP加盟国、米国そして太平洋の国々でありますが、こういう国々と貿易において自由な環境をつくっていくということにおいてはもちろん大きなプラスもあるだろう、このように思いますね。日本は鉱工業製品については圧倒的な競争力を持っておりますから、この競争力が生かされていくということは大きなメリットになっていくんだろうと思います。

 しかし、その中において、いわば農業分野、あるいは食品の安心、安全や国民の安心にかかわる分野について、どうやって守っていくことができるかどうかということについても、十分に目配りをしていく必要があるだろう、このように思います。

山田(宏)委員 まさに、デメリットも当然ありますけれども、大きなメリットもあるんだと。

 先ほど申し上げましたとおり、いわゆるアベノミクスが成功して日本がいち早く立ち直ってほしい、それを通じて、教育や防衛など大事な仕事にお金を回してほしい、こういうふうに思っております。

 そういう中で、この成功の鍵となる成長戦略のTPPというのは、私は、後でお聞きしますけれども、いろいろな前提を超えてもし参加をすることができれば、アベノミクスにとっては大きな福音になるんじゃないか、こう思っているんですけれども、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 ちょうどこれは委員が配っていただいたTPP交渉参加国でございますが、ベトナム、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、メキシコ、ペルー、チリという国々でありますが、こういう国々の成長力を日本が取り込んでいく。日本は、残念ながら人口においては減少という傾向に入っている中において、この中でも特にベトナムは人口がどんどん伸びていくという過程にあるわけでありまして、いわば、このアジアの地域、そして環太平洋地域の成長力を取り込むということにおいては当然メリットはあるんだろう、このように考えております。

山田(宏)委員 ありがとうございます。

 さて、そのTPPへ、私たちは、交渉にはなるべく早期に参加する方が国益につながる、こういうふうに考えております。

 その中で、自民党の公約につきましては、先日以来、総理の方からいろいろと御答弁がありました。聖域なき関税撤廃というものが前提である限り交渉には参加しない、逆を返せば、それが前提でなければ交渉には参加するというふうに捉えられます。

 そこで、果たしてこれが大前提なのかどうかということが問題なんでありますけれども、まず茂木大臣にお聞きしますけれども、茂木経済大臣は二十九日の閣議後の記者会見で、新聞記事によりますと、先日御訪問されましたダボスでアメリカの通商代表部のカーク代表と会談した際、例外品目が認められるかどうかということについては一定の感触を得たというようなお話をされたと報道されております。

 この一定の感触とは一体どういう感触なのか、また、例外が認められるという感触なのか、その辺のところをお聞かせいただければありがたいと思います。

茂木国務大臣 先月末、ダボスにおきまして、WTOの非公式閣僚会合、そしてダボス会議に出席をしました。その際、米国のカーク通商代表部の代表とお会いをいたしました。そこで、日米の経済関係全般について、さらにはTPPについても話し合いを持ちました。

 そこの中で、TPPというのがどういう性格の経済連携交渉であるのか、そしてまたアメリカがどのような問題について関心を有しているのか、有意義な意見交換をさせていただきました。そういった意味におきまして、一定の感触を持たせていただいた。決して、特定の品目が例外になります、なりません、そういう議論は行っておりません。

 そういった意味ではなく、TPPの性格、そして、これまで日本も前政権の間で事前の協議をやってまいりました。そういったことにつきましても我々として検証した上で、国益にかなう最善の道は何か、これを模索していくわけでありますが、これまでの経過、さらにはTPPの性格等々について一定の感触を得た、こういうことで申し上げました。

山田(宏)委員 一定の感触というのは何なのかとお聞きしたんです。

 短くちょっと御答弁をお願いしたいと思うんですけれども、一定の感触というのは、要は、これが前提は前提というか原則だけれども、例外というものは交渉次第だ、米とかじゃないですよ、一般的に交渉品目があるんだということを意味しているんでしょうか。明確にお答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 TPPにつきましては、我々の方針、自民党としては、聖域なき関税撤廃、これを前提にする限り交渉には入りませんということであります。

 そして、このTPP交渉の進め方としては、全ての品目をテーブルにはのせます、こういう形にはなっている。そして、高いレベルの経済連携協定を目指すという意味でありまして、それにつきまして、私は一定の感触と申し上げました。

山田(宏)委員 ちょっと大事なところなので。全ての品目をテーブルにのせるのはわかりました。しかし、全ての品目の関税をゼロにするということではないですよね。

茂木国務大臣 恐らく、タリフライン、これまで、TPPじゃなくても、EPAにしてもそうでありますけれども、それからまたFTA、アメリカでタリフラインが大体一万ぐらいあると思います。日本が九千ぐらいになってくると思いますけれども、これまでのさまざまなFTAであったりとかEPAの交渉、このタリフラインの中で何%いくか、例えば八〇%とか八五%とか九〇%とか、非常に高いレベルのものを目指しているということであります。

 繰り返しになりますけれども、具体的にどの品目について例外がある、ない、こういう議論はいたしておりません。

山田(宏)委員 それは聞いていないんですよね。まあいいや。

 そうしたら、ちょっと方向を変えて、甘利大臣。

 先日、甘利大臣も、「例外品目「可能性ある」」という記事の中で、記事なので確認をさせていただきたいんですけれども、甘利大臣は、「(聖域なき関税撤廃という)かたくなな前提条件が変わる可能性はある。ゼロではないと思っている」、こういうふうな御発言をされたということですが、これが事実ならば、その根拠等をもう少し御報告いただけないでしょうか。

甘利国務大臣 TPP交渉が他の交渉と違いますのは、私が通商交渉に臨んだ経験からしますと、それぞれ譲れないものを多少多目に抱えて交渉に参加して、その中で、うちはこれを譲るからそっちもこれは取り下げてくれみたいなことで、だんだんだんだん例外区域を狭くしていって、この辺で、これ以上譲れないというところで妥結が成り立つんですね。TPPの場合は、最初からもう裸で上がってくれ、それから交渉でとっていくという、ちょうど逆な交渉のスタイルになっていると私は感じているんです。

 表現の仕方にもよると思うんですけれども、各国とも、一〇〇%、例えばシンガポールのように、ほとんど国内産業がなくて全面自由化ということが可能な国と、それぞれの国内でいろいろな事情を抱えている国とは事情が違います。事情を抱えている国が集まっている中で、全く裸で交渉に臨むということを大前提と本当にできるのか。

 アメリカだって、砂糖なんか譲れないはずですよ。それ以外にも多分いろいろ出てきます。ですから、自民党の党公約で、例外なき関税撤廃を前提とすると、我々はそれじゃ交渉に入りません、それはそのとおりなんであります。果たして事実としてそうなんだろうか、アメリカだってそんなことはできないんじゃないかなというのを経験値で私は感じている。

 それは、実際にいろいろな場面で接触が続いていくと思います。そういう中で姿形が明らかになってくる。全く建前どおりの話であるならば我々は前へ進めないけれども、実は違うんだということであるならば、また新しい局面が出てくるであろう。その経験値からの感触を申し上げたわけであります。

山田(宏)委員 ありがとうございました。

 経験値から見ると、今までの交渉の方向とは逆だけれども、まず上がって、徐々に、これはお互いセンシティブな話だよねということは交渉事項になっていくものだろうというふうにお考えになられている、こういうふうに認識をしていますけれども、正しいですか。

甘利国務大臣 いろいろな場面で話が出た中で、事務的にも接触はしていると思います、その可能性は全くゼロではないということを申し上げているのであります。

 ただ、これはやってみなければわからない。かたくなな姿勢が崩れないのか、建前として崩せないのか、実はそうではないのか。これは、可能性としては、どっちにとってもゼロということは言えないということを申し上げているわけです。

山田(宏)委員 そうですよね。交渉というのはそういうものなんですよ。

 茂木大臣、ちょっと確認なんですけれども、去年の三月に東京で、ウェンディ・カトラー米国通商代表部の代表補、ナンバーツーですね、その方が、APCAC、アメリカ商工会議所アジア太平洋協議会、ここのシンポジウムに出られていろいろな発言をされている。その発言の内容は、我々が気にしているような、例えば、混合診療も含め、公的医療保険制度外の診療を認めるようなものではTPPはないとか、単純労働者を入れることは、こんなことはTPPの話ではないとか、いろいろとこういうお話をされているということは御確認されているでしょうか。

茂木国務大臣 経済産業省そしてまた外務省、それぞれの省庁におきまして、事務レベルそしてまた大臣レベルでも話し合いの機会というのは持っております。

 そういった中で、個別の品目がどうなるか。これはセンシティブな品目もございます。センシティブな品目については答弁の方も極めてセンシティブになる、このことは御理解いただきたいと思います。

山田(宏)委員 私は、茂木大臣は昔からずばずばちゃんと本音を言っていただけるというふうに思っておりまして、ここはもう昔どおりの茂木大臣で御答弁をお願いしたい、こう思っているんですけれども。

 要は、いろいろとよくわからないように国民の皆さんも思うかもしれませんが、それぞれ各国で気になる項目がある、それはやはり交渉材料だということだと思います。だから、全てが全部例外なく関税撤廃という前提ではないんじゃないか。それが原則ではあるけれども、今後は、それをテーブルにのせながら、全てについて議論対象、交渉対象だというふうに素直に私は受け取るんですね。

 外務大臣にお聞きしたいんですけれども、去年三月に外務省は、TPP交渉参加に向けた関係国との協議結果と題した資料を発表しております。その資料には、次のような記述があります。

 例えば、全品目をテーブルにのせることは全品目の関税撤廃と同義ではないという発言が関係国からあった。または、包括的自由化の解釈は国によって異なるという指摘もあった。このことについては、外務大臣は御認識いただいているでしょうか。

岸田国務大臣 私も、先月十八日、アメリカに参りまして、クリントン国務長官、またカーク代表、こうした関係者と会談をさせていただきました。その際に、TPP交渉というもの、全ての品目をテーブルにのせるというのが原則であるというこの言質、先方から何度も聞きました。そういった方針については私も認識をしております。

 そして、前の政権から引き続きまして、政権交代後も、TPP参加国各国との間で、二カ国間協議、そして情報収集のための協議、こうした協議は積み重ねております。

 一月も四カ国と協議が行われていますし、二月も精力的にこうした二カ国間協議、情報収集のための協議を続けております。こうした協議の中で情報を収集し、実情を把握するべく努力している、これが現状でございます。

山田(宏)委員 先ほどの報告は御認識されているんですよね。

岸田国務大臣 はい、認識しております。

山田(宏)委員 今それぞれの大臣の方から御答弁をいただいてまいりました。

 アメリカの新聞なんかを見ても、テーブルにはのせるけれども、全ての品目はテーブルにはのるが、しかしそれは交渉次第というのがやはりこの実態ではないかと思うんですね。

 そうすると、聖域なき関税撤廃が最初から前提ではないというようなシグナルは、いろいろなところから感ぜられるわけです。

 もう一回、外務大臣にお聞きします。

 きのうも原口議員の御質問から出ておりましたが、このスケジュールなんですけれども、十二月に、この間、十五回目の予備的会合というんですか、準備会合が行われまして、今度、三月、五月、そして九月、そして予定としてはことしの十月のAPECで、まず第一フェーズというんですかの調印を行う。大体、今そういうようなスケジュール感で流れている、こういうふうに認識してよろしいですか。

岸田国務大臣 TPP交渉につきましては、まず、この十五回目の交渉会合において、二〇一三年中を目指すということ、また、ASEAN関連首脳会合においても、二〇一三年中を目指すということが確認をされています。

 御指摘のようなスケジュールが予想されますが、結果的には、今後の交渉の進みぐあいによって全体日程の変化もあり得る、慎重に注視していきたいと存じます。

 それで、最後に、先ほどちょっと答弁させていただいた際に、各国との協議、一月、四回と申し上げましたが、済みません、四回というのは去年の一月でありまして、ちょっと数が間違っておりました。協議を続けているということは事実でございます。

山田(宏)委員 昨日の原口議員の御質問だと、アメリカには九十日ルールというのがあって、TPPに交渉参加するためにも、全交渉参加、協議国の承認を得なきゃいけない。特にアメリカは議会の承認に九十日はかかるというようになれば、私、十月に入ると言ったって、十月にはもう料理は全部できていて、本当はスパゲッティが食べたかったのにラーメンが出てきたりするわけですよね。だから、本当に食べたいものを食べたい、あるべきルールをつくるためには、事前交渉に参加することは国益のためには必至だと思うんですよ。

 そうすると、九月とすると、九十日減らしますと、最低五月にはやはり何らかの形で、今のスケジュール感でいけば、表明が必要になる。それを超えると、できた料理をそのまま食べるか食べないか、イエスかノーかという話になりかねない。これで本当に交渉なのか。

 そういう点で、このスケジュール感というのは総理も御認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 年内に交渉を妥結するということについては、私も承知をしております。その中において、今日に至るまでの事前交渉、あるいはまた、経産大臣、外務大臣がそれぞれいろいろな感触を得ております。そうした感触を総合的に判断をして、私は最終的に判断をしたい、このように考えております。

山田(宏)委員 この前提ですね、聖域なき関税撤廃というのが必ずしも交渉参加の前提ではないということが確認されれば、当然交渉には参加するということだと思うんですけれども、今、全体のいろいろなお話や調査の御報告を聞いていると、大体、周辺の情報はわかってきたというふうに思うんですね。

 そうすると、やはりそろそろ、本当にこれが前提なのか、前提といいながらもこれから交渉次第というふうになるのかは、最後はやはり決断をされる総理が御確認をいただかなきゃいけない。それは、日本の国のさまざまなつかさつかさの人が調査した結果で判断するだけではなく、一番強力な大国であるアメリカが一体どういう認識なのかということも含めて、やはり今度の首脳会談でこのことはぜひ確認をしていただきたい。

 きょう、何か朝、そういったニュースが流れたようでございますけれども、このことについてもう一度、総理が、オバマ大統領との首脳会談、初めての首脳会談、そして、日米同盟をさらに強化、深化していくためにはとても大事な一歩です。ここでやはりきちっと確認をしていただいて、そしてその上で、これは自民党が公約にした前提条件というものではないというふうに総理御自身が確認をされれば、ここはリーダーとして、首脳会談の場でやはり協議参加を表明されるべきだ、こういうふうに私は思っておりますけれども、まずは、その確認をされるのかどうか、その辺をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPについて、日本が交渉に参加するかしないか、これはTPPにとって極めて重要なことは事実でありますし、また、米国政府の関心が、日米同盟、日米関係という文脈においても関心が高いのも事実であります。

 その中において、自民党で公約に掲げたように、聖域なき関税撤廃を前提としているのかどうかということについて、私自身が確認をする必要があります。その確認した上において、さらに、交渉に参加するかどうかという判断をしていきたい。確認するのは、私自身が確認をしなければならない、このように考えております。

山田(宏)委員 済みません、もう一度、オバマ大統領との会談で、何らかの形でその辺の感触を得る努力をされるということでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 今の段階で、日米首脳会談の議題についてここでいろいろと申し上げることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、首脳会談は予定されているわけでありまして、私自身がそういう感触を得ることができるかどうかということは極めて重要なポイントであることは間違いないだろう、このように思います。

山田(宏)委員 ありがとうございます。

 昨年十一月に、日中韓FTA交渉の開始を政府は宣言しました。この中の国は、時に自分の資源を政治的理由でとめたり、輸入物に対して検査の期間を長引かせたり、または投資している企業のさまざまなルールを突然変えたり、またさまざまな海賊品をいっぱい出しているような国とFTA交渉をするということを一方でやりながら、同じように、長い同盟国で同じ価値観を持っているアメリカをも含む交渉については非常に懐疑的に取り組むというのは、私は何となく解せない気がするんですね。

 やはり日中韓FTAの交渉に入るのであれば、そちらを妥結させるためにも、またはそちらを進ませるためにも、これはバランスをとってTPPの協議に参加することの方が私は国益に合うと。それで、いい方に入ればいいんです。ですから、そういった意味で、交渉に参加をして、そして国益を十分きちっと踏まえた交渉をして、もしそのTPPの交渉で、これは我が国の国益に合わないということであれば調印しなきゃいいんだし。

 そういった、交渉をして調印をしなかった例が今まで、外務大臣、ありますか。

岸田国務大臣 かつて、京都議定書のときのアメリカ、こういった先例はあると存じます。

山田(宏)委員 そうです。京都議定書もそうだし、それから日韓EPAの交渉も、交渉を開始したけれどもやはり協議調わず、これもだめ。大体、交渉というのはそういうものですから。TPPについても、私は、やはり強力なチームをつくって国益の増進に尽くすべき時期が来たのではないか、こういうふうに考えております。

 なおさら、今回の議会でもいろいろ問題になっておりますように、レーダーの照射事件とか、東シナ海、南シナ海のさまざまな問題を考えておりますと、やはり日米同盟というものが、今きちっとさせていかなきゃいけない時期で、もちろん集団的自衛権とか普天間の問題もとても大事な問題ではありますが、アメリカ側の関心を見ますと、やはりこのTPPというものについての共通項をお互いがつくれるかどうかということが、本当に日米同盟に、安倍総理があちらに行かれてぱっと決断したら、それは、ああ、今まで決められない政治で先送りの政治ばかりだったけれども、このリーダーは違う、信頼できる、もうそうなるに決まっていますよ。

 そうなれば、今まで、私にしてみては、ちょっと質問の時間がないんですけれども、安倍総理と価値観を共有している靖国の問題にしても、従軍慰安婦、さまざまな歴史問題にしても、そういうことについて、残念ながら、アメリカとの関係上、さまざまな配慮で、政権としてはそれを今の課題としては取り上げないという方針を貫いておられることは私は理解しています。理解していますけれども、やはりそのために、そういうものもきちっと、我々が本当に大事にしてきたものを、日本の独自のプライドとか主張とか自分の国は自分で守るとか、こういったことを実現していくためにも、ここが揺らいでいたらそれが全然進まなくなっちゃう、今までの政権と同じになっちゃう。

 ここは絶好のチャンスだと思うんです。ここさえきちっと押さえれば、歴史問題にしても領土の問題にしても、ある程度めどがつけられるかもしれない。

 私は、そういった意味でも、今回の初めての日米の首脳会談というのはとても大事だと。リーダーとしてこれを決断されれば、日本維新の会なんか次の選挙で吹っ飛んじゃいますよ。もう自民党圧勝間違いなし。必ずそうなる。私はそういうものだと。国民はそう思っているんですよ、どうせ自民党は後で賛成するんだ。だけれども、ずるずるなればなるほど、我が国にとってはマイナスなんですよ。

 ここは、党内に反対のあることもわかっています。それから、さまざまな団体が反対しているのもわかっています。しかし、それを説得していくのがリーダーの役割で、私たち首長も、いろいろな反対の中で、やはり中に入って説得してきましたよ。ここが真骨頂です。

 総理、ぜひ御決断をお願いします。

安倍内閣総理大臣 ただいま山田委員から極めて思い切った御発言もございましたが、いわばTPPについては、これは重要な問題であり、さまざまな課題も含んでおります。

 農業問題についても、やはり守るべきものは守らなければならない。産業という側面で切って言えば、どんどんどんどん地平線が広がっていくわけでありますから、いわばTPPのプラス面だろう、このように思いますが、一方、例えば私の地元は山陰の地域でありますが、棚田が広がっております。これはもう息をのむほど美しい棚田が広がっていて、農業の生産性ということにおいては生産性は極めて落ちるんですが、こうしたいわば瑞穂の国の原点である棚田風景があって初めて美しい日本なんだろう、私はこのように思います。

 この日本の国柄を守りつつ、いかに地平線を開いていくことができるかどうかという中において決断をしていきたい、このように考えております。

山田(宏)委員 私もそれは全く同意です。やはり、交渉に参加することはいいことばかりじゃないです。その中でデメリットを受ける産業も、または業界もあります。そういったところには十二分に配慮をすべきだと思うんですね、今後の国内政策において。しかし、本筋を、タイミングよく、見失ってはならない。国益のためにも私はそういう判断をお願いしたい、こう思っております。

 きょうは、この後、消費税の問題とか、あと五分と来ましたし、ちょっとなかなか五分じゃできないので、幾つか、私たちが大事にしているテーマについてお聞きをしておきたいと思います。

 まず、靖国神社の問題です。

 私も毎年参拝させていただいています。それはなぜかと申しますと、国の命令によってとうとい命を犠牲にされた方々に対して、国自体が、または国民がそういった方々に対しての感謝の気持ちを失ったら、やはり私たちの未来は開けない、こういうふうに思ってきたからです。総理もそうだったと思う。ここにいらっしゃる多くの大臣の方々もそうだったと思うんです。

 前政権は、なぜか知らないけれども、全大臣が参拝してはならないというような、足どめみたいな、そういう申し合わせがあったのかどうか知りませんけれども、安倍新政権、第二次安倍政権は、この靖国参拝、これは、私は別に八月十五日にこだわっていません。これまでの総理もみんなこだわっていなかった。八月十五日じゃなくて、靖国にこれまで、昔から、一九四五年から、総理は、一年に二回、三回、参拝された方もずっとおられました。中曽根総理になって、一九八五年に一時これが中断され、その後、小泉さんになってまた復活して、また中断ということになりました。それが安倍総理にとっては一つの残念な点だということは御発言されている。

 さて、安倍政権において、この靖国参拝、どの方がいつ行かれるかわからないけれども、これは、内閣として、閣僚は参拝しちゃいけないなんというようなことはないんですよね。

安倍内閣総理大臣 もちろん、内閣として、全員が参拝しろとか、全員が参拝してはいけない、こんなことを申し上げるつもりは全くございません。これは、各閣僚の自由意思に基づいて行われることだと思います。

山田(宏)委員 ありがとうございます。

 そうしたら、ちょっと何人かの大臣にお気持ちをお聞きしたいと思っているんですけれども、稲田大臣、私は、大臣の野党のころの質問は本当にすばらしいなと思っていたんですよ。ぜひ実行していただきたいと思うんですけれども、靖国の参拝はされますか。

稲田国務大臣 私の所掌外のことでありますし、また、危機突破内閣である安倍内閣の一員として、また総理とは、弁護士時代、また政治家になってからは思想信条を一致し、ずっと政治行動もともにいたしておりますので、安倍内閣の一員として適切に判断し、行動してまいります。

山田(宏)委員 稲田さん、あなたがそう言ったらもうみんな同じ答えになっちゃうんですよ。

 では、また聞かなきゃいけないんですけれども、古屋大臣、どうですか。

古屋国務大臣 総理がいつもおっしゃっている、国のために命をささげた方々に哀悼の誠をささげるのは当然である、その気持ちは私は寸分とも変わることはありません。

 しかし、内閣の一員として、参拝するとかしないとか、そういうことをここの場で言うのは適切ではないと思います。

 今総理からも、それぞれの閣僚が全部参拝しちゃいけないとか、みんな参拝していいとか、そういうことを指示するつもりは一切ないとはっきりおっしゃいました。私は、内閣の一員として、総理の言葉をしっかり重く受けとめて適切に対応したいと思います。

山田(宏)委員 期待しております。

 新藤大臣、どうでしょう。

新藤国務大臣 私は、もう既に何度も行っております。子供のお宮参りも初詣でも、家族で機会があればしょっちゅう行っておりますし、祖先がいるわけでありますから、これは特別なことではありません。ふだんのことであります。

 そして、今後については、これは内閣の方針というのがございますから、その中で適切に判断していきたい、このように思っております。

山田(宏)委員 安倍内閣の方針は、今お聞きしましたように、自由ということで、個人の判断ということですから、個人の御判断でお願いしたい、こう思っております。

 自民党は、日本を取り戻すということで、本当に取り戻さなきゃいけない。また、我々維新の会は、強く賢い日本をつくる、そういう思いで、これからやはり、自分の国は自分で守る、誇りの持てる国にする、そして世界に雄々しく競争に乗り込んでいく、こういうような強く賢い国をともにつくっていきたい。その分野ではぜひ協力をしてやっていく決意ですので、どうか頑張っていただきたい、こう思います。

 以上です。

山本委員長 これにて中田君、東国原君、鈴木君、重徳君、坂本君、山田君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党、江田憲司でございます。

 まず、安倍総理、総理御就任、本当におめでとうございます。私も、総理大臣という地位にあるお方に、二年七カ月でした、毎日毎日おそばにお仕えをいたしましたので、総理大臣という重責、さらには御心労、そういった問題、多少わかっているつもりでございますけれども、ぜひとも、お体にお気をつけてというのは、そんな甘いものじゃありませんけれども、ぜひ総理大臣、しっかり頑張っていただきまして、本当にこの国の将来を切り開いていただきたいというふうに切に思います。

 我々みんなの党は、これはもう立場ははっきりしておりまして、反対のための反対はいたしません。批判のための批判もいたしません。とにかく、きょうもそうですけれども、政策論争を尽くして是々非々で対応していく。安倍総理と我が党の政策、考え方が一致すれば全面的に支援をしてまいりますし、考え方が異なればその問題点をしっかり問いただしていきたいというふうに思っているわけでございます。

 そういう意味で、安倍総理、ロケットスタートですか、総理に就任されてから、私が見させていただいても、本当に官邸発で、総理大臣主導で、アベノミクスを初めとした政策、大胆な政策転換といいますか、まさに政権交代をしたんだというのが本当に国民に目に見えるような形でやられているということについては、私は本当に心から敬意を表したいと思うんですね。

 ただ、問題は、これが続くかどうかなんです、私の経験からいっても。橋本政権でも、最初は官邸主導だったんですね。橋本龍太郎総理の支持率も、実は高かったんです。一年半たっても、内閣支持率はまだ六〇%近くあったんです。ただ、残念ながら、それ以降いろいろなことがありまして、どんどん支持率も下がり、求心力も失って、退陣ということになったわけですけれども。

 そういう意味で、私は、一つ象徴的な出来事として、安倍総理が経済財政諮問会議を復活させたという点に着目させていただいております。

 実は、これは私、手前みそですけれども、私は中央省庁再編のときにそれを担当させていただきまして、特にこの経済財政諮問会議を提案させていただいたものですから、民主党政権時代にこういった官邸主導の仕組み、道具立てといいますか、そういったものが休眠していることについて大変憂えておりましたけれども、このたび安倍総理が復活をされた。

 経済財政諮問会議というのは、実は私は、ホワイトハウスのCEA、カウンシル・フォー・エコノミック・アフェアーズという、経済諮問委員会をモデルにしたんです。閣僚級ですね、委員長は。しかも、マクロ経済、ミクロ経済、国際経済、三委員のもとに、助教授や講師クラス、とにかく全米じゅうの経済関係の英知を集めて、そこでホワイトハウス主導でやっている。

 そういった意味で、経済財政諮問会議、ちょっと変な名前でしょう、考えてみれば。経済諮問会議じゃないんですよ。財政をあえて入れたんですよ。大変な苦労でした。常に、経済財政諮問会議だよと総理が言っても、何度、返ってくる資料を見ても、財政が抜けているんですよ。三回突き返したんです、何で財政が入っていないんだと。ここがみそなんですね。

 要は、釈迦に説法でございますけれども、組織管理の要諦というのは、金と人事を握ること。どこの民間会社でも役所でもそうです。内閣でもそうだと思いますね。金と人事を握るという、一つ、金、国の場合は予算です。この予算を官邸で握る、それが今までできていなかった。そこで、わざわざ財政という文字を入れて、財政の基本的な枠組みや予算の基本方針を官邸で決められるようにしたんですよ。

 恐らく、今回の補正予算、本予算、いろいろな方針も、安倍総理と経済財政諮問会議、こういったところを中心にお決めになったんだとは思うんですけれども、この経済財政諮問会議をめぐっては、光り輝く時代と全く失せた時代があったんですね。

 それはなぜかというと、経済財政諮問会議はあくまでも道具立てですから、これを使える能力のある人、典型的には小泉純一郎元総理大臣でした。竹中平蔵担当大臣を挙げてもいいかもしれませんね。こういう方が道具立てを、しっかり意味を理解されて使われているときは光り輝いていたんですよ。

 それが一旦、この経済財政諮問会議、その意義づけもわからず、使い勝手もわからない人にかわった途端に、全く、経済財政諮問会議、存在しているのに、どこに行きましたかというふうになってしまった。そうこうしているうちに、これは常にあることですけれども、事務局が財務省を初めとした霞が関に占拠されて、事務局主導になっていく。本来、政治主導の武器であったはずの経済財政諮問会議が、どんどん霞が関主導の本拠地になってしまう。これが一番、この経済財政諮問会議、私は制度設計した者としても非常に悔しい思いで見ていたことなんですね。

 ですから、最初にぜひ安倍総理、この経済財政諮問会議というのはマクロ経済のフレームをつくるところだけじゃないんだ、国家の基本である予算、それをしっかり総理大臣主導でやる機関なんだ、そういう御認識のもとに、しっかりと安倍政権では活用していかれるという決意表明をまずお願いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま江田議員から、極めて重要な点について御質問がございました。

 安倍政権においては経済財政諮問会議を復活させました。私も、小泉政権時代に官房副長官を務めておりまして、諮問会議の重要性は十分に認識をしておりました。当時、竹中担当大臣とともに、毎週毎週土日に主要なスタッフが集まって、どのようにこの諮問会議を運用していこうか、どうやって引っ張っていこうかということを議論したわけでございますが、そうした多くの方々の努力があって機能が発揮をされたんだろう、もちろん小泉総理の決断力もあったんだろう、このように思います。

 そうした意味において、いわば経済財政政策の司令塔として諮問会議を活用していきたい、このように考えております。

江田(憲)委員 わかりました。ぜひお願いします。

 その場合、常に財務省という役所は、予算の編成権を渡したくない。実は、民主党政権は、私はスタートダッシュにつまずいたというふうに評価をしているんですけれども、民主党政権、いろいろな評価があると思いますが、スタートダッシュにつまずいたのは、まさにこの点でした。

 民主党さんは、来るべき政権交代を控えて、しっかり準備はされていたんですね。例えば、政権移行チームをつくる、そこで内閣の基本人事、基本政策はしっかりとすり合わせをした上で、新しい内閣を船出させる。国家戦略局、これは経済財政諮問会議をアウフヘーベンした、もう一段上ですよ。経済財政諮問会議というのは、申しわけないですけれども、最後は多少骨抜きにされて、諮問機関に成り下がったんですね。私は最初、企画立案、実行機関にしたかった。それを民主党さんはちゃんと、国家戦略局と名前は変えましたけれども、そういう位置づけにしていた。しかし、そういった政権移行チームも結局つくられず、国家戦略局もつくられず、ここでスタートダッシュにつまずいたというのが私の勝手な評価ですけれどもね。

 そういう意味で、この経済財政諮問会議がしっかりと権限を握るかどうかというのがポイントなんですけれども、これは必ず起こると思います、安倍政権でも。財務省がとにかく事務局を占拠して、しっかりと財務省主導で予算を握っていこうと。

 当時、藤井裕久財務大臣は、政権発足直後にこうおっしゃっているんです。予算編成権は財務省にあるんだ。私は聞いてのけぞりましたね。藤井裕久さんが主計官時代の話かと思いましたよ。

 これは釈迦に説法ですけれども、予算編成権は、憲法上、内閣にあるんです。内閣の中の大蔵省、財務省主計局には事務委任をしているだけなんです。まさにその基本認識に基づいて、我々みんなの党は、綱引きはもう懲り懲りだ、官邸と財務省の予算編成をめぐる綱引きは懲り懲りだ。

 私も、最初、設計するときは、石原信雄元官房副長官、歴代内閣に務めた方ともお話し合いをして、予算の骨格や基本方針は官邸で決めて、具体的な査定作業までは大蔵省に任せればいいじゃないかと。私もそのときはそう思ったんです。だから、今みたいな設計をしている。しかし、事ほどさように、十数年たってまだ財務省が性懲りもなくそういったことをしてくるのであれば、我々みんなの党は、これを内閣予算局にすべきだと提案をしているんです。

 もう経済財政諮問会議というまどろっこしいようなやり方ではなくて、既にホワイトハウスにもあるような行政管理予算局みたいな内閣予算局、そこで総理が予算をしっかりと管理され、編成されていく、これが国家の基本だと思いますけれども、そういった検討をされる余地はございませんか。

安倍内閣総理大臣 私自身、勉強不足で、内閣予算局というものがどういう存在になっているかということについてはつまびらかではありませんが、しかし、今委員がおっしゃったように、予算編成については、しっかりと内閣が、官邸が主導で行っていくということが極めて重要であり、そしてその司令塔は経済財政諮問会議であり、そして骨太の方針をつくっていくわけでありますが、この骨太の方針において基本的な予算編成の方針を決めていくということが重要であろう、このように思っております。

 今回の補正予算についても、普通であれば、財務省はもっともっと小さな規模ということを考えたんでしょうけれども、今回はいわば官邸主導において、財務大臣にも指示をしながらその中で補正予算を編成したわけでありますし、来年度予算についてもそうであります。防衛費等の増額についてもそうでありますが、そうしたことは基本的に、国の大きな方針というのは官邸で決めていく、これは当然のことであろう、このように思います。

 その中において、しっかりと諮問会議を活用していく上において、今の委員の懸念が当たらない、そういう結果を出していきたい、このように考えております。

江田(憲)委員 その過程において私が指摘したような弊害が出てくるようであれば、ぜひ総理の主導で予算局ということも検討していただきたいと思います。

 それから、私が先ほど申し上げましたように、組織管理の要諦は金と人事を握ると申し上げましたが、そのもう一方の人事でございますね。

 これは安倍総理もよく御存じのように、自民党政権時代に国家公務員制度改革基本法というのが成立しまして、二〇〇八年ですね、そこで内閣人事局をつくると、もう決まっているんですよ。それをずっとほったらかしにしてきたというのがこの数年の政治でありましてね。

 実は、特に幹部公務員、指定職以上ですね、部長さんだ、局長さんだ、審議官さんだ、こういったところの幹部公務員の人事を官邸で握るというのは非常に大事なことで、これは野党時代の自民党さん、たしか二〇一〇年でしたか、塩崎恭久さん、今は政調会長代理でいらっしゃいますが、窓口になられて、我々みんなの党と共同で提出した国家公務員法改正案というのがあるんですね。

 そこでは、ほぼ理想に近い公務員制度改革の設計がなされておりまして、例えば、では内閣人事局というのはどこまで権限を集中させるのか、総務省の、人をふやすふやさない、定員を査定する権限も一緒にする。人事院に給与課というのがあります。これは、あるポストにどういう給料を出すのか、グレードといいますか等級ですね、これを査定する権限も集中させる。そして、財務省にも給与課というのがありますけれども、財務省が全体を差配しているんですね、公務員の給与関係。それも全部一緒にするんですよ、この自民党とみんなの党が一緒に出した法案は。

 それから、幹部公務員については、この人事局に統一した上で、降格も可能にする、能力・実績主義で。特別職にして、身分保障も外しますよ。それはそうでしょう。民間だって、役員会に入るときには、一旦退職して、退職金をもらってボードメンバーになる。そういった慣行もあるわけで、役所だって同じですよ。指定職になった役員クラスは、身分保障のある一般職はもうやめていただいて、特別職になって、それでしっかりと能力、実績で働いていただく。行政官ですから、時の内閣の方針に、総理大臣が策定した国家運営の基本方針に基づいて、行政官はそれを執行していく。そういったものを担保するために、非常にあらまほしき公務員制度改革法というのを一緒に出しているんですね。

 ぜひ安倍総理、経済の問題は大事ですから後でやりますけれども、やはり、一次安倍内閣の原点も、ある意味ではそこにあったわけですから、このあらまほしき公務員制度改革法をぜひ成立させるんだという意気込みを今ここで語っていただきたいんです。

安倍内閣総理大臣 確かに、第一次安倍政権において公務員制度改革に取り組んだわけでありまして、その後、基本法ができてから五年近く年が経ているわけでありまして、そして、そのときの宿題が現在なお解決をしていないということは重く受けとめなければならない、このように思っております。

 その中におきまして、我が党の塩崎議員も参加して御党と一緒につくった法律が既にある。これは廃案になったわけでありますが、あるわけであります。しかし、この法案につきましても、さまざまな議論があったのも事実でございまして、こうした議論や経緯を踏まえながら、公務員の総人件費を抑制していくということの重要性も踏まえながら、将来の国家像を見据えて検討していきたい、こう考えております。

江田(憲)委員 ちょっと後退した感じで大変残念ですけれども、ゆめゆめ、これは野党時代の気楽さから出したんだというようなことはやめていただきたいんですよ。これはもう公党として責任を持って国会に提出をされたわけですよ。問題点をいろいろ検討したあげく、クリアして、自民党さんとしてしっかりとした手続を経て提出されたわけですからね。この辺が、安倍総理、やはりこれは試金石になるんですね、政権の姿勢、政治姿勢を占う上で。

 我々は、国家公務員の人件費二割カット法案もずっと出してまいりました。民主党さんもマニフェストで二割カットと約束をされていたんですが、なかなか重い腰を上げていただけなくて、最終的には、昨年、土壇場になって、選挙間近になって、七・八%、二年限りの削減ということでお茶を濁されてしまったわけですけれども。

 いずれにせよ、我々みんなの党は、こういった幹部公務員法、それから国家公務員の人件費二割カット法を含めた国家公務員改革法というものをしっかりとこれからも安倍政権に突きつけて、ぜひ安倍総理のリーダーシップで実現をしていただきたいと思っていますので、ちょっと、先ほどの答弁ではなかなか、見ている方も私も納得しませんので、もう一度、決意表明をお願いします。

安倍内閣総理大臣 私の基本的な考え方は、公務員制度改革基本法が成立をしたときといささかも変わっておりません。そして、我が党が御党とともに法律をつくった、この重さを十分に、今もこれは受けとめているわけでありまして、これは野党時代だからつくったということではもちろんならないわけであります。それは当然そうです。

 しかし、その後さまざまな議論があったことも踏まえて、公務員制度改革に取り組んでいく、これは当然のことであろう、私はそう決意をしているところであります。

江田(憲)委員 では、ちょっと教えてください。

 スケジュール感はどんな、総理、念頭に置かれていますか。

安倍内閣総理大臣 これは現在、党内でも議論されているところでございまして、担当大臣は稲田大臣でございますが、担当大臣のところにおいても、どう取り組んでいくかということが今検討されているところであります。

江田(憲)委員 それでは、これからいろいろな機会がございますから、これはもうそのたびごとに確かめてまいりますので、今の総理大臣の御答弁に従って、しっかりと政府部内でも検討していただきたいと思います。

 さて、日本郵政……

山本委員長 江田委員、稲田さんが。

江田(憲)委員 時間もありますので、結構です。

 それでは、次の問題に行きまして、日本郵政の社長人事ですね。

 これも実は民主党政権発足直後に大問題になりまして、要は、天下りの根絶を訴えていた民主党が、あろうことか、日本郵政社長、超一級の天下りポストに、大臣があっせんをするという形でつけてしまったということがあったわけでございます。これが余りにも象徴的、驚天動地の話だったものですから、私の見るところ、民主党政権が凋落の道に入ったのはここがきっかけだったと私は思っておりますけれどもね。そのときに菅官房長官も、改めて私は過去の国会答弁とか質疑を見ましたけれども、当時菅議員も予算委員会で、これを天下りと言わずして何と言おうか。そのとおりですよ。

 それが、政権交代のどさくさ紛れに、昨年十二月でしたか、社長交代人事が行われた。御党の、自民党の石破幹事長はこう言われている。政権移行時に重要人事を行うのは断じて許されない。当時幹事長代行であられた菅義偉さんは、政権移行期の中で唐突に財務省出身の社長が同じ財務省出身者にたらい回しをしている、これは官僚のやりたい放題だ、国民不在の人事であって看過することはできない。まさに我が意を得たり、おっしゃるとおりだと思っております。

 この郵政社長人事、御承知のように、一〇〇%政府出資ですからね、株主は一人なんですよ。株主総会といったって、株主は一人なんですよ。国が出るだけなんです。具体的には、理財局次長という役人が一人出るだけなんです。

 この株主総会で、安倍総理、この社長人事を振り出しに戻して、再考させるというお考えはありませんか。

新藤国務大臣 お答えする前に、私も橋本総理の近くにおりましたから、ちょうど初当選でございました、委員がとても献身的に総理に仕えられていたことを私はよく承知しております。本当に御苦労をいただいておりますことに、まずエールを送りたいと思います。

 その上で、執行役社長の選任、これは日本郵政株式会社の経営判断に委ねられておりますから、まずはそれを尊重すべきであります。

 そして、取締役社長を選任する取締役会を構成する取締役の選任は、総務大臣の認可を要するということでございます。そして、私としては、この取締役の認可に当たっては、日本郵政株式会社の目的である日本郵便株式会社の経営管理の適切な実行、そして、郵政民営化の目的、基本理念及び基本方針に適合した経営の実行、こういった観点から審査を行いたいと思っています。

 具体的には、経営管理を適切に行える人材である、また、三事業のユニバーサルサービスの提供責務、公益性、地域性の発揮及び金融二社の株式処分を適切に実施できる人材である、こういったことを踏まえてしっかり審査したい、このように思っております。

江田(憲)委員 審査したいのは、対象は何ですか。

新藤国務大臣 審査をしたいんじゃなくて、審査を行うことになるということであります。総務省において取締役の選任について審査を行います。

江田(憲)委員 今回の社長人事は、取締役の中の昇格ですから、多分、それは対象にならないというのが正式な答弁だと思います。

 ねぎらいの言葉をかけていただきましたが、手かげんすることはありませんので。新藤先生にもいろいろお世話になりまして、ありがとうございました。

 さて、菅官房長官。菅官房長官も、失礼ながら、橋本政権の九六年の総選挙で初当選をされて、私も非常にお世話になって、御指導を受けてきたんですよ。

 菅官房長官、真っ当なことを言われている。今でも変わらないでしょう。どうぞ。

菅国務大臣 何て答えようかなと思っていますけれども。

 私、つい先日、記者会見の際に記者の方の質問を受けました。そのときに、こう答えました。政治家の発言は重い。それだけです。

江田(憲)委員 さすがですね。私が敬愛をする、同じ横浜です。実は私を国会に出した張本人ですからね。済みません、これ以上言うと、予算委員会はね。委員長、済みません。

 安倍総理、結構こういうのを聞くんですよ、政権発足当初は。ぜひ菅官房長官の言葉を踏まえて、総理の見解を問います。

安倍内閣総理大臣 先ほど思い出したんですが、私が青年局長のときに、なかなかとれない橋本総理とのアポイントを、当時江田秘書官にとっていただいたことを思い出したわけであります。

 そこで、官房長官があのように答えているわけでありますから、当然、官房長官としての発言は、内閣を代表している発言だと思っている。内閣を代表している官房長官が記者会見で答えているわけでありますから、その発言は当然重たい発言であるということであります。

江田(憲)委員 わかりました。もうこれ以上詰めなくても、大体わかりましたから、ぜひ期待をしております。

 それから、けさですか、衆参の議運に公取委員長の人事も提示をされました。

 公正取引委員会の委員長人事も大変重要な人事だと我々は思っていまして、そこにまた、この日本郵政社長、この社長さんは坂篤郎さんといって、事務次官経験ではないんです、官房副長官補。実は、私が橋本政権の総理秘書官時代の同僚です。ですから、個人的な恨みつらみは全くございません。個人的にはいい方です。しかし、いい方であるということと、こういった天下り、たらい回し人事をしていいかどうかというのは別の問題ですから追及をさせていただきましたが、公取委員長人事までが財務省事務次官というのは、全く私は腑に落ちませんね。

 どういう資格基準、お考えで、こういった人事を提示されたんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この公取の人事につきましては、先ほど、日本郵政については、政府が一〇〇%株を持っているとはいえ、民間会社であります。一方、公取は性格が違うところでありまして、そこは人物本位で、我々、杉本さんが適切であろう、こういう判断に至ったわけであります。

江田(憲)委員 ちょっと基本論をやりたいんですけれども、皆さん、財務省、財務官僚に対する見方、考え方というのをやはり抜本的に改めないかぬと思いますね。

 私は、財務省を潰せと言っているんじゃないんです、ゆめゆめ。財務省は財務省で立派な仕事がある。財政規律、いろいろな無駄な事業を要求してきたときには、しっかりとそれをぶった切る、そういった能力にたけた人たちだということは認めるんですよ。

 しかし、人のアイデアをぶった切る、持ってきた予算をぶった切る、そういったものにたけて、ずっと若いころからそういった修行を積み重ねるんですよ。大体、ペーパーを見て、少しでもお金がかかりそうな、新しい新規予算がかかりそうなところは目を皿のようにして見て、ちゃんとそこは修正しろというような、そういった育てられ方をした役人が、功成り名を遂げて事務次官になる。

 だから、そういった、経済や金融の実態とほとんど乖離した、ほかの役所はまだ民間会社とつき合う機会も多いんですけれども、財務省、特に主計局官僚、この人も主計官僚ですよ。主計官僚というのは、大体、役所を相手にしてああだこうだ議論して、それで予算を査定する。

 いや、それが悪いと言っているんじゃないんです。そういう仕事をしてきた人が、どうしてこういう公正取引委員会のような、自由経済の番人ですからね。公正取引委員会の委員長の仕事というのは、まさに我々も能力や経験に照らして判断すべきだと思っていますよ。我々は、全くそれに当てはまらないというから、これから申し上げているように反対なんですね。

 というのは、やはり公正取引委員会というのは、もちろんこれは釈迦に説法ですけれども、カルテルとか不公正な取引方法、そういったところに立入調査をして、これは犯則調査権限というのも認められましたから、立入調査をして、事情聴取をして、差し押さえまでできる。こういった警察、検察類似機能もあるし、審決、審判のような裁判類似機能もあるんですね。だから、司法類似、検察、警察類似機能を持っているんですよ。しかも、これはミクロの世界ですからね。企業活動、企業行動の世界ですから、こういった企業や経済の実態に精通していなきゃいかぬわけですよ。

 そういう観点で、確かに、公取委員長というのは戦後ずっと大蔵省の官僚OBの指定席だった。それを橋本政権のときに初めて変えたんです。それはふさわしくないと思って変えたんです、先ほどの理由で。そして誰にしたかというと、当時東京高検検事長を務められた根来さんという検察官出身の方を委員長にした。それはまさに、公取の仕事、求められる能力、資質に照らしてそういった人事をしたわけですよ。

 ですから、そういった意味からしても、こんな公取委員長にわざわざ財務省の事務次官を据えるというのは、私には全く理解できないんですけれども、何か反論があればよろしくお願いします。

菅国務大臣 内閣として、現時点で杉本さんが一番ふさわしいということで私たちは推薦をいたしました。

 それで、今委員が言われましたけれども、公取委員長は、法律、経済に関する高い見識、これを示し、公正な判断を行うことができる上に、行政実務にも精通している者である、そういうことでありましたので、内閣としての判断で杉本さんを示している。

江田(憲)委員 内閣が提案されるのは自由ですが、我々みんなの党は国会の場でしっかりと反対をいたしますから。これは、能力、資質、しっかり考えた上で、今私が申し上げたような理由で。

 これは自由経済の番人ですからね。もともと、銀行だ証券だでもって、箸の上げおろしまで許認可で縛って、許認可行政をやっていたような風土のある組織から上がってきた人は適さないと私は申し上げているので、みんなの党も、そこは筋を通させていただきますので、御銘記をいただきたいと思います。

 さて、人事関係の最後は、非常に話題になっております日銀総裁の人事でございます。

 これについては、もうメディア等で我が党の考え方、それから我が党の代表もこの前安倍総理にお会いいただいたときにお伝えをしているというようなことも聞いておりますけれども、改めて申し上げますと、我が党が言っている、まず経済学のPhDを持っている、それから語学が堪能である、それからマネジメント能力がある、こういった三つの要件というのは、これはある意味で当たり前のことです。わざわざ言うような話じゃありません。失礼ですね、日銀総裁のような非常に立派な職責を担われるポストの方に、こんな三つの要件が必要なんだよと言うこと自体が私は失礼だと思いますし、これはもう日銀総裁が日本語をしゃべれるというぐらいと同じ程度に当たり前のような話だと思うんですね。

 ですから、私は、きょう強調したいのは、この日銀総裁、セントラルバンクのトップですから、これはやはり市場との対話能力。これは私も偉そうなことは言えません。金融市場の微妙なシグナルを嗅ぎ取って、臨機応変にセントラルバンクのトップとして対応していく。こういった市場の対話能力というのは、私は、教科書を読んだり、何年間か金融界に身を置いたから習得できるような能力ではなくて、やはり若いころから金融市場に親しみというか、身を委ねというか、研さんを積んで、それで習得してくるような、高度なプロフェッショナルな資質だというふうに思っているわけです。

 ですから、まさにそういった観点から日銀総裁という人事は行わなければならない。

 それから、ちょっと言葉がよくないですが、わかりやすさのために言えば、金融マフィアという、ちょっと違う言葉ですけれども、金融マフィアみたいな、まさにこういう国際場裏の中では、もとセントラルバンクの人とか現バンクの人というのは、インナーサークルというか、マフィアの世界のように極めて特殊な人脈も持っていなきゃいかぬ。そういう中で、もちろん英語をしゃべって、おつきもいない、通訳もいない中で、セントラルバンクのトップが集まって、五、六人でちょうちょうはっし議論をして国際的な金融問題に対処していく、そういった能力が必要ですから、当然、国際的な人脈も持っていなきゃいかぬわけですね。

 ですから、そういった目で見て、我々みんなの党は、これも申しわけないけれども、財務省を否定しているんじゃないんです。財務省のような組織で、特に主計官僚だ税務官僚だということで偉くなってきた人が務まるような商売ではありませんと言っているんですね。もっと正確に言えば、こういった財務省のOBの方は、今私が申し上げたような、市場との対話能力であるとか国際的人脈であるとか、それからPhD、経済学の知識、経験も持っているとか、そういった資質に合わないからだめだと言っているんですね。

 プラス、やはりもう一つ考慮しなければならないのは、中央省庁の再編と申し上げましたけれども、当時、安倍総理も、青年局長でいらっしゃった、自民党の二回生の国会議員でいらっしゃった。ですからおわかりのように、当時は、大金融接待スキャンダルで、大蔵改革なくして行革なしと言われた時代だったんですよ。橋本政権の一丁目一番地の課題が、大蔵省から金融行政を分離するという、財政と金融の分離という仕事だったんですね。それを、大蔵省に対して刃向かう政治家もいない、役人もいない中で、私が、本当に黒子だったんですけれども、まだ若造が、橋本総理の指示を受けて、この財政と金融の分離を担わせていただいたこともあるので、ぜひ安倍総理にはそのときの経緯もリマインドさせていただきたいんですよ。

 そのときに、なぜ財政と金融を分離しなきゃいかぬのかということを、総理大臣が長を務めている、官邸に置かれた行革会議で、専門家も入れて徹底的に議論したんですよ。結論からいえば、財政と金融というのは利益相反関係がある、だから分離した方がいいんだという議論になりました。

 では、その利益相反関係とは何かというと、財政と金融が一体であれば、例えば、大蔵省が財政出動を逡巡して、景気をよくしたいものですから、金利を必要以上に抑えさせてバブルが発生したという事例もございましたし、それから、覚えておられますか、住専処理問題で六千八百五十億円、最終的には税金投入をしましたけれども、それもおくれにおくれたんですね。もっと早く住専処理をやっていたら、金融破綻とか金融恐慌の傷はもう少し少ないもので済んだかもしれませんけれども、とにかく、財政出動を逡巡したばっかりに、住専処理に税金投入がおくれた。

 また、住専会社にいっぱい大蔵省のOBが天下っていたものだから、その人たちの取締役だ、地位を重んじておくらせた。こんな利益相反関係もある。

 もっと言えば、日銀の国債引き受けというのも時々議論に上りますけれども、これも、財政政策を日銀や金融機関に行わせるために日銀の引き受けというのを強要することもあり得るかもしれぬ。

 こういった議論をさんざん尽くした上で、大蔵省から金融行政を分離して金融庁にした。

 それから、日銀総裁や副総裁、幹部人事からも、これは御承知のように、それまではたすきがけ人事といいまして、日銀総裁は、大蔵省の事務次官か日銀プロパーかでたすきがけをしていたんですね。それをやめさせて、日銀総裁、副総裁から大蔵省OBを一掃したという経緯もございます。

 ですから、こういった日銀総裁のトップの資質、能力の要件と、財政と金融の分離の経緯も踏まえて、ぜひ適切な方を、総理、今度これは本当にシンボリックで、全国民が注目していますので、ぜひ適任を選んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日銀の総裁とあと二人の副総裁の方の任期がやってくるわけでありますが、この総裁、副総裁の人事は極めて私は重要であろう、こう考えております。

 まさに三本の矢の中でも極めて重要な、デフレ脱却そして二%の物価安定目標到達のための極めて重要な金融政策に向けて、大胆な金融政策をしっかりと実行していただく方でなければならない。覚悟を持って、そして能力がなければならないということだろうと思います。また同時に、今委員が指摘されたように、金融の場合は、国際金融マフィアというか、このサークルの中のインナーとなり得る能力も重要であろう、このように思います。

 金融政策を進めていく中において、例えば、大胆な金融緩和を進めればいわれのない批判も受ける場合もありますが、そのときにちゃんと説明していただく能力は大変大切だろうと思います。

 しかし、その際、どこの役所だからということは、余りそれは私はこだわるつもりはありません。たとえ財務省出身でも、そこに座っておられる山本幸三先生のような方は、もちろん日本銀行の総裁にすることはありませんが、能力は十分にあるんだろうと思います。

 そういう能力本位で、能力があり、そして意思を持ち、考え方を共有する方を選んでいきたい、ぜひ江田委員を初めみんなの党にも賛成していただきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 これは待ちましょう、安倍総理も十分認識をされていると思いますので。これはある意味で、まかり間違えば政権のターニングポイントになり得るような話ですから、そこは安倍総理の英断も求めたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと安倍総理が席を外されたのであれなんですが、アベノミクスなるものの議論に入りたいと思います。

 我々みんなの党が年来訴えてまいりました大胆な金融の緩和。山本幸三先生もそうですね。デフレ脱却議連。とにかく、二%のインフレターゲットの設定を含む大胆な金融緩和という、年来のみんなの党の主張を安倍総理も採用していただいて、その結果、株はどんどん上がり、円はどんどん安くなっている。本当に御同慶の至りだと思いますよ。本当に評価をしております。

 この大胆な金融緩和、そして機動的な財政運営、さらには規制の抜本改革を含む成長戦略、これはもう総論はいいですよ。総論はみんなの党も大賛成ですね。ただしかし、問題は各論、中身でございます。

 まず、この大胆な金融緩和のところで本当に心配なのは、昨年、バレンタインプレゼントというのがありました。昨年の二月十四日、バレンタインデーの日に、日銀が、一%の物価上昇をめどとするという、これはインフレターゲットじゃなくてインフレゴールでしたけれども、こういったへっぴり腰といいますか及び腰の目標を出しただけで、当時も円が八十四円ぐらいまで安くなり、株は千円以上上がったんですよ。

 しかし、残念ながら、一月後にはもとに戻ってしまった。それはなぜかというと、結局、金融市場に見透かされたんですね。いや、やはり一%のめどだった、これは見せかけだった、本気で金融緩和をやるつもりはなかったんだなと思って、ぼんと戻っちゃったんですよ。

 ですから、我々みんなの党が心配するのは、またこの二の舞になりゃせぬかということなんですね。

 そういう意味で、きょう日銀総裁が来られておりますので、総理がおられませんので、まず日銀総裁にお聞きします。

 この前、一月二十二日でしたか、政府と共同声明を出して、しかも、日銀は政策決定会合もやられて、金融緩和の道筋というものを示されたと思うんです。

 例の資産買い入れの基金ですね。私の理解するところでは、二〇一三年、ことしは従来どおり買い増しをしていく、それで基金残高は三十六兆円ふえる。では、来年以降はどうなるんだ。来年以降は、私の理解するところ、毎月十三兆円ずつ買いオペをやっていく、国債を中心に買いオペをしていって、基金残高は年間を通じて十兆円しか積み増さない、こういった道筋を示されたと思うんですけれども、これがどうして大胆な金融緩和なのか。

 二%のインフレターゲット実現に向けて、これはどういった効果があると日銀は考えているのか、御答弁をください。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、物価の見通しあるいは経済の見通しというところからお話をさせていただきます。

 内外経済の動きを見ますと、海外経済に、これは米国や中国を中心に持ち直しに向けた動きが見られておりまして、最近の為替相場の動きも次第に我が国の輸出の下支えに作用していくというふうに考えられます。

 加えまして、内需の面でも、新車登録台数がエコカー補助金終了直前の水準を回復するなど、全体として底がたさを維持しておりまして、先行きも、各種経済対策の効果もありまして、底がたく推移するというふうに見込まれます。

 こうしたもとで、我が国経済は年央ごろにかけまして緩やかな回復経路に復していくと予想しておりまして、足元おおむねゼロ%となっています消費者物価の前年比は、二〇一四年度にはプラス一%弱にまで緩やかに上昇していくということが見込まれます。

 このような状況のもとで、日本銀行の金融政策運営について見ますと、資産買い入れ等の基金を通じた買い入れや、別途設けています貸出支援基金を通じまして、今後一年余りの間に、残高ベースで見ますと五十兆円超の増加、GDP対比でいきますと一〇%の増加という大規模な資金供給を行います。

 さらに、今議員から御指摘のとおり、一月の決定会合では、二〇一四年度以降も、期限を定めずに毎月、長期国債二兆円程度を含む十三兆円程度の金融資産の買い入れを続けることを決定いたしました。

 これにより、基金残高は、二〇一四年中にさらに、つまり、二〇一三年中に大幅にふやして、そこからさらに十兆円程度増加していくということでございます。

 先ほど申し上げましたけれども、経済物価情勢が改善していくというもとで、同じ金融、例えば同じ金利水準でも、その持つ意味は、さらにまた効果が上がってくるわけでございます。

 日本銀行としましては、物価安定の目標の実現を目指しまして、手綱を緩めることなく強力な金融緩和を推進していくこと、これは約束をしております。金融緩和を継続していくことによりまして、金融面から経済、物価を支える力が強まっていくというふうに考えられます。

 それから、私どもとして、大量に今資金供給しておりますけれども、この資金をさらにぜひ民間の方に使っていただきたいというふうに思っております。今般、政府においてもさまざまな競争力、成長力の強化に向けた取り組みを進めていく、こうしたことがさらに物価の方にも好影響を及ぼすというふうに期待しております。

江田(憲)委員 詳しい説明を聞いても、全く道筋がわからないんですよ。

 ちょっと端的に答えてください、一四年以降、毎月十三兆買い増しをして、残高はなぜ十兆円なんですか。

白川参考人 二〇一四年度のお尋ねでございますけれども、日本銀行は現在、長期、短期の国債、それからCP、社債、ETF、REIT、こういうのを買っております。十三兆円の買い入れの中には短期の国債も入っております。短期の国債は、償還期限が到来しますと、これまた残高が減少するのでまた買い入れます。したがいまして、積み上がっていくためにこれは着実に買い入れを行っていくということで、十三兆円との関係はそういうことでございます。

江田(憲)委員 今の御説明でうかがえるように、日銀というのは本当に満期間近の国債を買うんですよ。二年物とか、長期国債でもわざわざ満期間近なものを中心に買うんですよ。

 そうすると、何が起こるか。これは簡単でしょう。せっかく市場にお金を出しても、満期がすぐ来ちゃうからすぐ回収しちゃう。だから、マネタリーベースはこの十年間で全然一定なんですよ。リーマン・ショック以降も、イングランド銀行初め、三倍、四倍、FRBもそうですよ、いろいろな銀行がマネタリーベースをふやしているのに、日本銀行は一定なんですよ。なぜかというと、見せかけの金は出すんですよ、だけれども、すぐ回収しちゃうんです。

 ストックが大事なんです、残高が。だから、十三兆やります、毎月やりますといったって、市場は見透かしているから、あの二十二日の共同声明と政策決定会合の後は、株は安くなり、円は高くなったんですよ。完全に市場は見透かしているんですよ。

 だから、ポイントはここなんですよ、安倍総理、我々が制度的担保、すなわち日銀法の改正をしてくださいと言っているのは。こういった共同声明何とか、経済財政諮問会議でチェックします、それもいいでしょう。しかし、今までの日銀のビヘービアを考えれば、まさにこういった形で小出し、後出しなんですよ。それで結局二%の物価目標は達成できないとなったらどうするんですか。

 ですから、我々は、しっかりと日銀と政策協定を結んで目標を設定してレビューをする、レビューをした結果、日銀がさらなる手段をとらないかぬときには手段をとっていただく。そして、どうしても、二年たっても三年たっても実現ができないようであれば、そこはもう日銀総裁のリーダーシップのなさということでしょうから、それは責任も問えるようにする、こういった日銀法の改正ということをして制度的な担保をしないと、やはりアベノミクスのパラダイム転換というのは保障されないと思いますよ。

 安倍総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 私も、野党の党首であったときは今委員のような手段についての議論をさせていただきましたし、委員の御指摘についてもなるほどなと思う点が多々あったわけでありますが、今は政府の責任者でございますから、手段について発言することは差し控えたいと思います。

 しかし、その中において、新たに選任される総裁のいわば手腕、方向性が極めて重要であろうと思います。その中において常に、私は、日銀法の改正というものを視野に入れながら、結果を出していくことが大切でありますから、そういう結果が出てこないという状況になれば、当然、日銀法の改正というものも現実味を帯びてくるということになるんだろう、このように思います。

江田(憲)委員 日銀総裁人事と日銀法の改正というのは、これはもう車の両輪としてアベノミクスを最後まで完遂していくための重要な道具立てでございますから、ぜひ安倍総理、よろしくお願いしたいと思います。

 我々は、大胆な金融緩和、それから公共事業の全否定はいたしません。公共事業も、この前のトンネル崩落事故のような維持、補修、管理はもちろん必要ですし、それから小学校、中学校の耐震補強工事なんかはぜひとも早急にやらなければいけません。ですから、公共事業を否定するものではありませんけれども、やはり補正で五兆円ですからね。年間予算が四・七兆円のところを補正で五兆円、来年度予算はまた五兆円を超える、そうした中で十兆円もの公共事業を積めば、必ずそこには無駄が入り込んでくる。徹底的に中身を精査したいと思います。

 それから、こんな莫大な公共事業を一体、全国で執行できるのか。そうでなくても、今、被災地は、資材の高騰、人材不足、とにかくそれで復興もままならないという状況にある中で、こんな十兆円もの公共事業を全国展開すれば、そうでなくても建設業の有効求人倍率は一を超えているんですよ。ほかの業界と比べて求人の方が多いんですね。そうした状況で本当に執行できるのか。

 官民ファンドというのは、本当に役人主導で、リスクマネーを出すという趣旨はいいけれども、しかし、これまで自民党政権のときだって、四兆数千億、四十六の官民ファンドを積んだけれども、二年後には二兆円余らせてしまった。これは会計検査院の報告ですよ。

 ですから、今回だって役人は、私も役人でしたけれども、こんな短時日に補正を十兆積めと言われれば、余り知恵がないから、官民ファンドで積んでおこう、公共事業だって全部前倒しでこちらに積んでおこうとなっちゃうんですね。ですから、ここは、同僚議員、これからしっかりと精査をさせていただきたいと思います。

 きょうはもう時間が迫ってまいりましたので、こういった大胆な金融緩和、そして公共事業、いずれにせよ、これはカンフル剤ですから、一時的な効果はあっても、例えば公共事業については、これは安倍総理にはもう釈迦に説法ですけれども、打ち続けることはできませんね。ですから、これを持続可能なものにしていくためには、やはり官需よりも民需、すなわち民間主導で自律的な経済成長を実現していかなければならない。そこが成長戦略ということで、ここまでは安倍総理と我々みんなの党は一致していると思うんですね。

 ただ、問題は、その経済成長戦略で今回も高らかに訴えられている規制改革。我々はこれがポイントだと思っています、規制改革が。

 きょうは時間がありませんから総論だけでいきますけれども、例えば、誰しも言うでしょう、医療や介護や農業や電力、エネルギー、教育、これが将来の成長分野だ。自民党さんだって民主党さんだって、評論家の方々だって、みんな言うわけですよ。しかし、具体策がない。なぜ具体策がないんだ。こういった分野には、やはり官僚統制というか、本当に規制が多いんですよ。

 私は縦割りの規制法人と言っているんですけれども、例えば、社会福祉の領域には社会福祉法人がある、教育には学校法人がある、農業には農協や農業生産法人がある、電力には一社独占の、地域独占の電力会社がある。全部これは官僚統制というか規制ですよ。そして何が起こっているかというと、その規制で守られている既得権益がある。そして、新しい血、株式会社やNPOが参入できないような参入障壁を設けている。

 日本は資本主義社会ですから、資本主義社会の基本的な単位は株式会社。これは人類の英知で生んだ。この株式会社そのものが、こういった分野に入れないようになっている。我々はこれに着目して、闘う経済成長戦略、闘う改革と言っているんです。

 では、何と闘うかというと、これは既得権益ですよ。この規制で守られた既得権益と闘わなければ、こういった新しい血、新陳代謝はできない。新しい会社を設立する、設備投資を活性化していく、そういうことで経済というのは牽引されていくわけですから。

 この社会福祉法人、電力会社、あるいは学校法人や福祉法人もあるかもしれない。そういうところから、申しわけないけれども、票やお金をもらっているのが自民党なんですよ。自民党の基盤を形づくっているんですよ。

 それが悪いと言っているんじゃないんです。そういった基盤はあるにせよ、票やお金をもらっているにせよ、そこを全体の国家国民の立場に立って打ち破って、こういった縦割り規制法人、これを廃して、株式会社やNPOを参入させていく。

 我々も、やはり安全とかそういったものには配慮すべきだと思いますから、そういった話は行為規制でやってください。こういうふうに投網をかけるように法人規制、主体規制をかけて、あらかじめ入らないようにして規制をかけるのではなくて、もしそれで安全や衛生やいろいろな問題で懸念があるのであれば、行為規制でちゃんと法律で規制をかければいい。その点は規制強化になるかもしれません。

 そういう形で、やはりこういったところに株式会社やNPOをどんどん参入させていく、これが設備投資の活性化を促して経済の牽引力を生んでいく、これが我々みんなの党の考え方なので、きょうは時間がありませんから、この考え方について、総理の不退転の決意表明をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も、入り口で全部だめですよと、入り口で規制を設けて参入させないという考え方はやはり間違っているだろうと。いわば違法行為、こういうことは明らかに社会性にもとるし安全にも問題があるという、行為で規制していくという考え方については、私も基本的に賛成であります。

 規制改革というのは成長戦略の一丁目一番地であるという考え方で我々も取り組んでいきたい。非常に難しい問題があるんですが、岩盤を砕くというと、いろいろな方々は砕かれてしまうと思うかもしれませんが、そうではなくて、つまり、全体が成長していくという考え方から、規制していたがためにその分野は、もうこれは守ってもらうんだ、自分たちの努力や情熱で新しい地平が開かれるということではないんだという考え方を変えていく。つまり、自分たちの努力や情熱、知恵で新しい地平が開かれていくんだという分野に変えていくという観点から規制改革を行っていきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 ぜひお願いします。

 それから我々は、こういった規制改革による新規参入、設備投資の活性化と、きょうはちょっと時間がないのでやりませんが、TPPですね。我々はもう一貫して、みんなの党だけですよ、積極参加、推進を訴えてきたのは。やはり、TPPでアジアの三十億人の市場を初めとした市場を内需化していくということも大事でしょう。

 それから、民間主導というためには、やはり自由償却制度を初めとした投資減税、そういった減税中心の、補助金だとか公共事業ではなくて、減税中心の施策というものもとっていく必要がある。

 こういう形で、規制改革、自由貿易、自由投資の促進、さらには減税、投資減税、そういった手法で民間主導の自律的な成長が促せるかどうか、成長路線に乗せるかどうかは、これは私はアベノミクスの一番の真骨頂というか、一番の肝のところだと思います。

 こういった問題こそ時間がかかるんですよ。特に規制改革は時間がかかるんですよ。ですから早急に、規制改革会議も設けられたということですから、ぜひそういったことで、大胆な、今まで歴代政権は、二百、三百、四百の規制緩和策を出してきたけれども、実体経済には全然きかないような、言いわけ程度の規制改革しかやってこなかったんですね。

 ですから、ぜひ安倍政権には、大胆な規制改革、新規参入の促進、株式会社、NPOを生かしていく、ぜひお願いをしまして、きょうは一時間もあって、もっとできると思ったんですが、なかなかできませんでしたが、あとは柿沢未途議員に任せたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 この際、柿沢未途君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柿沢未途君。

柿沢委員 みんなの党の柿沢未途でございます。

 安倍政権が発足して以降、株高が進み、きょうは一万一千百五十三円、円安が、きょうは九十三円台ですか、進行しております。大変好ましいことだと思います。経済成長による国民の福利増進という目標を達成するために理にかなった政策を実行してくれるものと、私だけでなく世界の投資家が期待している、そのあらわれであると思います。

 民主党政権は、経済学の基本的な常識を無視した理論を振りかざすことがあったように思います。その典型的な例が、菅総理の唱えた、増税してばらまけば経済が成長する、こういうものではないかと思います。

 旧自民党政権の公共事業中心の経済政策を第一の道、小泉政権の生産性重視、市場原理主義を第二の道、こういうこととして、それにかわる第三の道として今の考え方を唱えたわけです。第三の道の本家であるアンソニー・ギデンズ卿が聞いたらびっくりするような考えではないかと思いますが、あのときも、前の文献を見ると、カンノミクスなんと言われたんですよね。私たちは、増税すれば景気がよくなるなんというのは経済の常識に反した勘違いではないかというふうに言っていたものです。

 菅総理いわく、増税も借金も、国民のお金をお預かりして政府が使うという点では変わらない、国民のお金を政府が引き取らせていただき、経済の拡大に的確につながるようなものに使っていく、増税してばらまけば経済が成長する、こういうことなんですけれども、この菅元総理の経済財政観について、総理はどのようにお感じになられるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 現在内閣参与を務めていただいております浜田宏一エール大学名誉教授も、この菅さんの、増税すれば経済が成長する、驚くべきばかげた考え方だ、このように論評をしているわけでありますが、私も、浜田先生、また柿沢委員の御指摘のとおりだろう、このように思っております。

柿沢委員 大変思い切った御答弁をいただきました。

 さて、では、今回の緊急経済対策です。

 必要性が高く、効果の高い事業に重点化した、総理も財務大臣もお話をされておられます。本当にそうでしょうか。緊急経済対策として、経済への即効性があって、高い投資効果の見込める対策になっているんでしょうか。

 まず、マクロの経済効果から見てみたいと思います。一枚目のパネルをお願いします。

 内閣府の試算によると、今回の緊急経済対策は、事業規模で二十兆円、これによるGDPの押し上げ効果は二%分だ、こういうことになっています。そうすると、機械的に試算をすると、これは五百兆円の〇・〇二ですから大体十兆円ということになる。官民で二十兆円の需要追加をする、それによるGDPの押し上げ効果が十兆円。二十兆円需要追加して、GDP押し上げ十兆円。これはどういうことなんでしょうかね。

 雇用創出効果の方を見ます。

 六十万人の新規雇用を創出すると試算をされています。これも機械的に割り算をすると、国費十三兆円で六十万人の雇用ですから、つまり、一人の雇用を生み出すのに二千万の国費を投入していることになります。

 実はこれでも控え目な計算でして、雇用創出六十万人のうち、このうち五十万人はGDPが二%押し上がることによって機械的に誘発される就業数とされていますので、国費投入で直接的に生み出される雇用数というのは、これは十万人分なんですよ。そうすると、一人の雇用創出に一億三千万円の国費をかけている、こういうことになるわけです。

 これらを見ると、緊急経済対策の経済対策としてのコストパフォーマンスは余りよくないかのようにも見受けられますけれども、政府は、この緊急経済対策の投資効率といいましょうか、十分と思っておられるんでしょうか、お尋ねします。

甘利国務大臣 御承知で質問をされていらっしゃると思うんですけれども、雇用を何十万人支えるために国の事業としてこれをやりましたということではありません。この事業は、緊急に必要と国民から要求されること、それはインフラの信頼性であります。そして、インフラでも、競争力に資するようなものについて優先的にやっていく、あるいはこれから民間投資が進んでいくような環境整備づくり、これらを目的としてやっているのであります。

 それで、直接的な効果はおっしゃるように機械的にはじいて出す、あるいは、GDP押し上げ効果を産業連関表を使って換算すると雇用がこうなるという機械的な数値であります。もちろん、これらを通じて、この緊急経済対策の中には、これから規制改革であるとか税制の効果とか、そもそも民間投資を誘発するような成長戦略が入ってくる。そうすると、それが日本経済全体を動かしていって、結果としてさらに大きな成果を生んでくるということでありますから、この数字対この雇用者を割るというような趣旨のものとは、本来、この経済対策は少し違うというふうに思っております。

柿沢委員 財務大臣も同じ見解ですか。十三兆円の補正予算を組んだ御本人ですから。

麻生国務大臣 基本的にGDPの押し上げ効果という話を聞いておられるんだと思いますが、二%の計算方法というところが一番問題なんだと思います。

 緊急経済対策に盛り込まれたそれぞれの事業というのが、民間設備とか固定資本形成とかいろいろありますけれども、そういったもののGDPの各需要項目というのに対してどの程度の直接的な押し上げ効果があるかということを、補正予算の概算に基づいて計算してああいった形で出した、機械的に積み上げて出したというのがあの数字というように御理解いただいたらよろしいと存じます。

柿沢委員 事業費ベースで二十兆円の需要追加をしました、官民で。GDPが押し上がるその効果が十兆円分だということが本当にコストパフォーマンスとして十分であるのかどうか、こういうことをお尋ねさせていただいたわけですが、私は、これは予算の中身にやはり問題があるのではないかと思います。

 防災、減災目的の公共事業に重点化をしている、そのこと自体は私は否定すべきものではないと思いますが、しかし、それだと建設工事を行ったという以上の便益は短期には生み出さないので、どうしたって、経済にもたらす効果、投資効率は低くなる。さらに言えば、本当に防災、減災、あるいはトンネル、橋梁等の既存インフラの補修等に重点化できているのかどうか。

 きのうも、麻生財務大臣が笹子トンネルの例を出されて民主党政権をいわば批判されていましたけれども、では、そうおっしゃるのであれば、今回の補正予算の公共事業費五・二兆のうち、幾らが既存インフラの補修費に振り向けられているんですか、こういうふうにお尋ねをすると、これは財務省は答えられない。

 補正予算案を国会に提出する一月二十八日までには、新規が幾らで、補修が幾らか、内訳の推計を出すかのようなことも言われていたようなんですけれども、結局、今に至るまでその内訳は出ていない。そうおっしゃっている割には、補修に幾ら回ってということについては、この予算書を見てもわからない。こういう状況なんですね。

 二枚目のパネルをお願いします。

 この予算書を見ますと、その他施設費として、政府機関や独立行政法人等の施設整備費が八千六百四十三億円計上されています。公立学校の耐震化の予算等も含まれていますから、これは別に全てが問題だというわけではありません。しかし、よく見ると、おやっと思うものもあるんです。

 例えば、防災対策の推進として、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究施設の整備に九十九億円、独立行政法人農業生物資源研究所三十七億円、独立行政法人農業環境技術研究所二十六億円、まあ、どこがどう違うのか、ぱっと聞いてもわかりにくいんですけれども、それぞれの独法の研究施設整備費の補助に百六十億円、上の三つを合算すると計上しているんです。しかも、矢印を見ていただければわかりますけれども、当初予算の何十倍もの驚くべき積み増しをしているんですよ。

 これらを緊急経済対策の一環として、しかも、防災対策の推進として補正予算に盛り込んだ理由は何ですか、お尋ねします。

林国務大臣 お答えいたします。

 二十四年度補正予算では、日本経済再生に向けた緊急経済対策の一環ということで、農業試験研究独立行政法人の老朽化対策のための施設整備等に要する経費を、今御指摘があったように、百六十二億円ほど計上しております。

 ちょっと似たようなところがあってわかりにくいという御指摘がありましたが、この三法人合計で、十三施設の改修、それから二十施設の建てかえ等のほか、二施設で防災研究施設の強化を行うということにしております。

 いずれも老朽化が著しいものですから、今後大規模な地震等があれば研究人材の人命にかかわる事態や研究材料の喪失といったものが想定されますので、早急な対応が必要であるということで、今回の補正で、今お話があったように、復興・防災対策というのが重点分野とされたということも踏まえまして計上しておるところでございます。

柿沢委員 林農水大臣、今、大変小声で御答弁をされましたが、三つの独立行政法人で十三の改修、これはいいかもしれない。二十の建てかえをやる。これは建設公債の対象経費ですよね。つまり、借金して建てかえるんですよ、独立行政法人の研究施設を三十以上も。どうですか、本当に防災対策の推進、そして緊急経済対策として、国民目線から見て正当化され得るんでしょうか。

 続いて、参ります。

 成長による富の創出として、総務省所管、独立行政法人情報通信研究機構の研究基盤施設整備費への補助に五百億円計上しています。当初予算を見てください。〇・六億円ですよ。〇・六億円が五百億円。一体何をやるんですか。

 そして、成長による富の創出というならば、その施設整備がもたらす投資効果を数量的に明らかにしてください。お願いします。

新藤国務大臣 まず、この五百億で何をやるかといいますと、超高速光通信、現在よりも百倍高速な通信を可能とする技術、これの研究に入ります。入りますというか、今やっているんですが、この実用を前倒しさせます。それから、トンネルですとか社会インフラの劣化状態、それから環境情報だとか刻々変化しているものを処理できるビッグデータ、この実用化も前倒しさせます。それからセキュリティー関係ですね、セキュリティー技術、これも実用化を前倒しさせます。こういうものを可能とする施設を整備するというお金であります。

 これはちょっと、多分うちの方の役所の説明が悪かったと思うんですが、お尋ねの〇・六億円の当初予算というのは、今まである施設の修繕費でございます。それは、毎年ずっと、もう十年間計上している、経常的に使われている修繕費であります。

 この私たちの今回の五百億は、これまでもやりたいと思ってトライしてきたものであります。実は、平成二十一年度に同じものを三百八十九億で打ち出しておりました。残念ながら、政権交代がありまして、民主党政権において執行停止をかけられた。こういうことでこの研究がおくれてきていたわけであります。

 したがって、我々とすれば、成長による富の創出、あらゆる分野でこういった高速処理それからビッグデータ、こういうものを使えることによって、可能性が広がりますし、防災や環境に処理をできることになるんです。

 このお金は、〇・六億円が五百億円になったのではありません。そうではなくて、もともとの研究経費を、とまっていたものをやった。しかも、二十三年度においても、別の施設でございますが、八十八億使っております。

 ですから、これはちょっと私どもの説明が、事務方の説明が悪かったのかもしれませんが、そういう将来への投資だということは御理解いただきたいと思います。

柿沢委員 まず、〇・六億が五百億になったわけではないと言いますけれども、この〇・六億は別の話だということは、ゼロが五百億になった、こういうことですよね。

 なおかつ申し上げれば、先ほどお尋ねを申し上げた後半の問いに対するお答えがまだないんです。五百億の投資によって、成長による富の創出という名目で支出されるわけですから、どういう数量的な効果を見積もっておられるんですか。

新藤国務大臣 ゼロが五百億になったのではございません。そして、二十三年度では八十八億やっておりました。今回のものは、かつて研究、今、既に続けてきてあるものであります。ですから、そういう施設をもう既にやっているんです。技術開発をやっているんですけれども、新しい設備を投資することで、研究が加速され、実用化が近づく、こういうことで御理解ください。

 それから、情報通信産業中心のさまざまな分野での、これの実用化による経済効果だけで千三百億円程度に達する、このように我々は見込んでおります。

柿沢委員 これは、今後また精査をさせていただきたいと思います。また、この場は国民の皆さんがテレビを通じて国会の審議を見ておられる場ですので、そういったやりとりがどういう形で国民に映るかということもあるかなというふうに思います。

 これは、私たちから言わせれば、補正予算だということに乗じて、役所の皆さんが自分たちの掌中にある箱物整備をやってしまおう、今までたまっていた、そして認められてこなかった予算要求をこの補正で、青天井だから全部入れてしまおう、こういうことで、ここぞとばかりに予算要求してきて、それを右から左に予算計上している、こういうふうにしか私には見えないですよ。

 さらに見ます。一番下です。

 森林整備・林業等振興対策費、こういうものがありますが、当初予算の約五億円から約五百五十億円に積み増しされているんです。当初予算の百十倍の額を、いきなりこの段階になって、年度末、あと一カ月半しかない段階になって支出するんですか、お尋ねします。

林国務大臣 平成二十四年度当初予算では、森林整備・林業等振興対策費ということで、今お話がありましたように、森林の整備保全の推進、林業、木材産業の健全な発展等を図るためということで、都道府県等に対し交付される森林整備・林業等振興整備交付金を五億円計上したところであります。

 一方、補正予算では、今の厳しい状況を克服して、輸入木材に対抗し得る強い林業や木材産業を構築するため、森林整備加速化・林業再生整備費補助金ということで、今御指摘のあった五百五十四億円を計上しているところでございます。これで、早急に地域材の需要拡大等を図ることを目的に、木材加工の流通施設ですとか、木造の公共施設、それからバイオマスの利活用施設の整備等の事業を支援したい、こういうふうに考えております。

 これは、各都道府県に設置されております森林整備加速化・林業再生基金に積み増しをして、地域のニーズに応じて支出をされていくものであり、非常に使い勝手がいいということで都道府県の皆様から好評を得ているところでございますが、年度内に各都道府県への交付を完了させまして、十五カ月予算の考え方のもとで、早期に事業を実行していくこととしておるところでございます。

柿沢委員 つまり、御答弁は、これは五百五十億だといっても、都道府県にそれぞれ基金を造成して、造成された基金、既存のものですけれども、そこにお金を配分するというやり方だから、執行は基金を取り崩して来年度以降ということになる、そういうことで、五百五十億円、いきなりこの時期に積んでも、ある意味ではおかしくないんだよ、こういうことなんだろうと思います。

 御答弁のとおり、これは森林整備加速化・林業再生整備費補助金といって、都道府県に基金を造成して木造公共施設の整備費等に充てるものです。これで老人ホームや保育所や木質バイオマス利用施設をつくったりしてきたんですけれども、平成二十一年度から二十三年度に行われた事業三百五十七件のうち三百八件、事業費ベースで総額百八十七億円中百七十億円分で、費用便益分析が適切に行われていなかったという会計検査院の指摘を昨年十一月に受けたばかりなんですよ。

 言ってはなんですけれども、森林整備、林業再生の名目で、予算ありき、効果度外視のばらまきを行ってきたとしか考えようのない事業なんです。この事業に、過去の反省も総括もないまま今までの三倍の五百五十億円をつける、こういうことなんですか、お尋ねします。

林国務大臣 ちょっと今のところは必ずしも、御通告がなかったので、きちっと把握をしておりませんが、改めてチェックをしたいと思います。

 いずれにいたしましても、都道府県からの聞き取りで要望を把握して計上しておりますので、きちっと執行されて、今委員から御指摘のあったような、BバイCが非常に低いというようなことがあって会計検査院等から御指摘がないように、しっかりと執行してまいりたいと思います。

柿沢委員 十一月に指摘を受けて、その上で、一月にまとまった補正予算には今までの予算の三倍を積む、これはやはりあり得ない。しかも、効果の高い、緊急性の高い、そういう事業に重点化をした、こう言っている緊急経済対策、補正予算にこうした項目が紛れ込んでいて、そして、私がお尋ね申し上げたら、そのこと自体、会計検査院の指摘を受けているという事実すら大臣は御存じない。こういうことで本当に内閣としての予算統制ができているのか、こういうことにもなってしまうのではないかというふうに思います。

 官民ファンドについても、これは同様だと思います。

 先日の本会議で山内康一議員が申し上げたように、官と民がリスク分担して成長分野に大胆に投資する、こういうふうに言うわけですけれども、官も民も責任をとらない無責任体制で、投資のリターンが見込めないのは、過去の産業投資が示しているところであります。これは、いたずらに官僚の天下りや現役出向先をふやすだけのことになりかねません。

 一つ例を挙げれば、株式会社農林漁業成長産業化支援機構、平成二十四年度当初予算で二百億円を出資し、二月一日に発足したばかりだというのに、さらに補正予算で百億の追加出資を計上しています。これで農林水産業の経営強化を支援する、こういうことなんですけれども、経営陣を見ますと、常勤の社長、CEOには元農林中金の副理事長がついておられます。

 ここで、待てよと思ってしまうんです。そもそも、農林水産業の経営支援を金融面から行うというのは、農林中央金庫法に基づく、農水省所管の金融機関である農林中金の役割ではないですか。

 今や、農林中金は、JAバンクから上がってくる四十兆円の預金を有価証券で運用する日本有数の機関投資家と化していて、肝心の農林水産業への買し付けの比率は極めて低い。しかし、だからといって、同じ目的の別の機関を政府出資でまたつくって、しかも農林中金のOBを経営者に据えるというのは、これはおかし過ぎませんか。

 屋上屋を重ねて農水省ファミリーの権益を拡大しているだけ、こういうふうにも思えるんですけれども、この農林漁業成長産業化支援機構、こういう名前の機構ですけれども、一体何をする機構なんですか。

林国務大臣 お答えをいたします。

 今御指摘のあった株式会社農林漁業成長産業化機構、A―FIVEというふうに略称しておりますが、これは、農山漁村で所得と雇用を拡大していくために、六次産業化と言っておりますが、一次産業である農林水産物等の価値を、二次産業、三次産業等につないでいって高めていく取り組みによって、農林漁業が持つ潜在的な成長力を顕在させていこうということで、この株式会社、この機構をつくりまして、今言ったような取り組みに出資等による支援を行うということで、政府とそれから民間が共同で出資をして設立されまして、二月一日に業務を開始したところであります。

 具体的にどういうことをやるのかというお尋ねでございましたが、今申し上げましたように、農林漁業者が中心となって一次産業、二次産業、三次産業が連携した加工販売や輸出等を行う事業活動に対しまして、まず、会社の設立までのアドバイスをする。それから、もちろん設立に当たっての資本金の提供、出資ということですね。それから、設立後最大十五年間にわたる経営支援の実施。こういうものをハンズオンということで一体的に行って、攻めの農林水産業の展開を図る上で大きな役割を果たしているというふうに思っております。

 なお、会長はボストンコンサルティングにおられました堀紘一さん、それから、社長も日興証券におられた方が来ておられます。

 以上でございます。

柿沢委員 今の社長の日興証券の方というのは、元農林中金の副理事長さんなんです。

 そもそも、GDPへの寄与度が一・五%程度しかない農林水産業への予算投入が八千億円にも上るということ自体が、緊急経済対策としてどうなのか。しかも、独法の箱物整備だったり、官民ファンドへの出資だったり、投資効果の薄い林業名目のばらまきと実証されているような事業だったり、これは中身を見ると、さらにどうかと思いますよ。

 私たちは、農林水産業への支援に異を唱えるつもりは全くありません。農業に関する規制改革、農協改革を行い、また、農地の集約化を行って、新規参入等、競争によって成長産業化する、これは私たちも望むところであります。

 しかし、今回の補正予算にそうした視点は、私から見ると乏しいように思われます。結局、国費十三兆円、事業規模二十兆円という額の積み上げを優先して、中身は省庁任せになってしまったのが今回の補正予算ではないのでしょうか。

 額は大型補正だから、これでGDP押し上げ効果がある、こう言うんだったら、政府が増税または借金で国民の金を預かって配れば経済が成長するという、冒頭の勘違い経済学と同じになってしまうと思うんです。

 経済成長の主体は、国ではなく、やはり民間企業でありますので、その投資意欲、事業意欲を喚起する、特定の産業に傾斜したこちらからの資源配分ではなく、やはり押しなべて利益を享受できる減税をメニューとして中心に据えるべきだというふうに私は考えます。そのことを申し上げて、次の項目に移りたいと思います。

 きょうは、原子力規制委員長に来ていただいています。

 国会同意人事がこれから採決されようというのに、原子力規制委員長は既に現職で執務されておられるわけです、これから同意するのに。これは民主党政権が、原子力緊急事態宣言中という理由を持ち出して、国会同意を省略したのが原因です。

 原発事故等、その被害拡大を防げなかったこれまでの保安院や安全委員会にかわって、原子力規制を担う極めて重要な委員会の委員選任でありますから、賛否を決めるに当たって、私は、この国民公開の場で十分に識見や安全思想を確認しておきたいというふうに思っております。

 これまで、日本の原発の安全基準について、世界標準に比べて余りにもプアな、しかも、電力事業者の経営サイドに立った、安全思想に欠けた安全基準がまかり通ってきたと私は思います。

 そもそも、耐震設計の基準超過となる地震を、二〇〇五年以降、五回も経験している。こんなことは考えられません、世界的には。そこに三・一一がやってきて、今度は千年に一度の災害だから仕方がないみたいな話になりましたけれども、しかし、これは、アメリカの原子力学会から、千年に一度の高頻度のリスクを除外していいはずがない、アズ・ショート・アズ・ワンサウザンドイヤーズ、こういうふうに厳しく批判をされている考え方であります。

 世界標準の確率論的ハザード解析では、十万年に一度のオーダーのリスクに備えるべきであるということなのに、日本ではそれができていない。そして、今すぐにはできないと前政権の細野大臣は答えられています。こんなお粗末な安全基準、安全思想で、原発再稼働なんてとても認められません。

 世界の標準的な安全に対する思想と比べて、今までどのような点で問題があったか、それを踏まえてどのような安全基準をつくり、適用するのか、お考えをお聞きしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 端的に申しますと、これまで、シビアアクシデントが発生した場合の対策が安全規則に取り入れられていなかったということが、まず第一に挙げられると思います。さらに、科学技術ですので日々進歩がありますが、それを安全規制基準に適宜取り入れてくることができなかった。

 現在、それを踏まえまして、世界でも最高レベルの安全を確保するためのシビアアクシデント対策と、それをきちっと事業者が履行できるようなバックフィット対策ということを求めて、今、基準を策定中でございます。

柿沢委員 きのうも議論になりましたけれども、原子力規制庁の前審議官による、断層評価報告書の原案が原電の常務に漏えいされていた、こういう問題がありました。これは、内規違反でもあり、八回も会っていたというんですから、わかった上での出来事だと思います。

 原子力村、こんなふうに形容されるように、事業者と規制機関と学術界、インナーサークルのもたれ合いを断ち切るためにつくられたのが、この規制委員会、規制庁だったはずであります。それが、できたそばからこのありさまでは話になりません。この件をどう総括するかは、原子力規制委員会が規制機関として業務を行う正当性そのものにかかわると思います。

 今後、科学的立場に立った安全基準の確立と厳格な適用をする、そのことを含め、この件についてもきちんと御答弁をいただかないと、場合によっては田中委員長のことを信任できない、こういうことになってしまいます。

 この点について、国民の前でぜひお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 今回の事態については、大変残念で、大変遺憾に思っております。

 と申しますのは、原子力安全規制は、このたびの事故で地に落ちたと私は認識しております。それを、いかに信頼を回復できるかということが最大の課題だと思っておりました。そのために、できるだけ透明性、中立性、そして独立した判断ということを求めてきました。私たち委員自身はもちろんそうですが、規制庁職員にもそれを求めてきましたが、こういったことがその中で起きたということについては大変申しわけなく思っておりますし、今後、そのことが起こらないように、早速、一昨日の委員会でも新たにそれを防止するための内規基準を定めて、長官から各職員に徹底させていただいたところでございます。

柿沢委員 田中委員長、田中委員長は、我々の側からは、本当にやってくれるのか、そして一方の側からは、あなた、厳し過ぎるんじゃないのか、こういうふうに双方から批判をされている、どこまでやるのかということが大変注目をされている存在だと思うんです。しっかり頑張っていただくことを期待して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて江田君、柿沢君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、東京電力福島第一原発事故について質問いたします。

 この事故の調査を担当しました国会事故調査委員会の委員だった田中三彦氏が、昨日、衆参両院議長と経済産業大臣に文書を提出されました。昨年二月、第一原発の現地調査を決めた国会事故調に対して、東京電力が虚偽の説明をして、そして調査を妨害したというものでございます。

 そこで、衆議院事務総長、その文書が伊吹文明衆議院議長に届いていると思うのですが、届いていますか。

鬼塚事務総長 お答えいたします。

 昨七日、午前九時三十一分でございますが、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、いわゆる国会事故調の元委員、田中三彦氏より、伊吹衆議院議長宛てに一通の文書がファクスで届けられました。

 内容は、報道にありますとおり、東京電力側の虚偽に基づく非協力姿勢により、一号機原子炉建屋内の非常用復水器、ICの事故調査が行えなかった、衆議院議長に経緯の解明と現場調査の実施を求めるというものでございます。

 衆議院議長は、国会事故調元委員の御指摘ではございますが、国会事故調は、完結した報告書を提出しておりまして、既に解散しております、また、国会事故調の提言にもあります、規制当局を監視するための常設の委員会である原子力問題調査特別委員会が設置されている現在、与野党協議に基づきまして、同委員会で取り扱う問題であるとのお考えでございます。

 以上でございます。

笠井委員 今そういう文書が届いているようでございますが、最後のところは別として、今言われたように極めて重大な問題で、この事故が津波によるものなのか、それとも地震による損傷がなかったのか、今もそうですけれども、事故調査をめぐって大きな焦点となっていたときのことであります。

 国会事故調の現地調査の責任者だった田中氏は、当時、一号機四階の原子炉建屋非常用復水器が、東電の主張と違って、地震直後に壊れた可能性がある、そのことを確かめようとした。ところが、東電からの説明で、真っ暗闇の現場での調査は危険であると判断し、やむなく断念した。しかし、その説明は、その後明らかになったビデオ映像などによって、完全な虚偽であり、重大な調査妨害だったというものであります。

 田中氏は、配管破損を示唆する特定の現場状況の隠匿を図った疑いすらあるということで、このような妨害行為は、国会事故調査のみならず、その設置者たる国会と国民を欺くものであり、到底許されるものではありませんと、厳しく批判をしております。

 そこで、茂木経済産業大臣、東電の監督官庁として、あなたにも同じ文書が届いていると思います。経済産業省には、田中氏は、東京電力の虚偽説明の検証と現地調査の実現への協力をお願いしたいと要請されているわけでありますけれども、これにどう応えるか。虚偽の説明の検証ということになれば、その前提は、現場がその後、東電によって変えられちゃったら現場を見に行っても意味がなくなるわけで、現場保存も大事なことでありますけれども、そのことも含めて、どのようにこの要請に応えるおつもりか、お答えください。

茂木国務大臣 要請文書、きのう、七日付で届いております。

 東京電力が昨年二月、福島第一原発一号機の現地調査をしようとした国会事故調に対して、一号機の内部の状態、明るさについて事実と異なる説明を行っていた、こういうふうに聞いております。仮に東京電力が何らかの意図を持って虚偽の説明をしたとすれば、断じて許されないことであります。

 昨日、東京電力に対しまして、事実関係を明らかにする、そしてその報告をするように、そういう指示を出したところであります。また、今後、現地等におきましてさらなる調査が行われることになる場合には最大限協力するように、東京電力に対して指導しております。

笠井委員 ここに国会事故調の報告書がございますが、膨大なものであります。

 そこに、黒川清委員長が冒頭に書いています。「この大事故から九か月、国民の代表である国会の下に、憲政史上初めて、政府からも事業者からも独立したこの調査委員会が、衆参両院において全会一致で議決され、誕生した。」このもとで六カ月やってきたと。

 黒川委員長が言われているんですが、先ほどの議長の話とも関連がありますが、六カ月調査したときに、幸いなことに、国政調査権を発動しなきゃいけないようなことがないと思われてやってきた、つまり、関係者が協力してくれたからあえてやらなかったんだと言ったんです。ところが、協力どころか、今問題になっているのは、それを妨げることを東電がやっていたんじゃないかという問題であります。だから、これは本当に放置できないんです。

 黒川委員長が述べているとおり、国会事故調というのは、国会の国政調査権を背景にして、事故の調査を行う権限を持っていたものであります。したがって、今回の東電の行為というのは国会の国政調査権に対する妨害行為と言わなきゃいけない、そういう性格の問題だ。極めて重大な問題であって、当然、国会として真相究明と再調査を行う、こういう対応が必要だと思います。

 そこで、委員長、国会の国政調査権にかかわって、東電による虚偽の説明ということが問われております。

 東京電力の広瀬直己社長、それから当時の担当者の玉井俊光元企画部長の、虚偽かどうかが問われているので、当委員会への証人喚問を要求いたします。

 同時に、田中三彦氏にも、当委員会として国会に招致して事情を聞くべきだ。

 この件について理事会で協議をお願いしたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

笠井委員 事務総長はこれまでで結構です。

 そこで、福島原発事故から間もなく二年であります。いまだに緊急事態宣言は解除されておらず、十六万の避難者の方々がふるさとに戻れない。

 安倍総理は、二月一日の参議院本会議で、収束の問題について、収束していると簡単には言えないと答弁されました。ならば、総理は、一昨年十二月十六日、当時の野田首相が行った収束宣言については、政府としては撤回するということでしょうか。

茂木国務大臣 東京電力福島第一原発事故の収束宣言につきまして、一昨年十二月に、前政権において、原子炉の状態を定量的に評価した上で冷温停止状態の達成を確認したものである、そのように認識をいたしております。

 現在、一号機から三号機の原子炉について、注水冷却を継続しており、原子炉の温度は約二十五度から四十五度と低温で安定していると承知をいたしております。

 一方、四号機の使用済み燃料プールについては、東京電力による技術的な評価により十分な耐性を有していることが示され、当時の原子力安全・保安院がこれを確認したところであります。さらに、使用済み燃料プール底部の補強工事を既に実施しております。

 今後も、年四回の定期検査により、建屋の耐震性に関して、建屋の傾きがないことや、鉄筋コンクリートの強度が保たれていること等を確認していく予定であります。

 このような同発電所の状況につきましては、さきのIAEA福島閣僚会議を初め、国際会議等の場を通じて情報提供を行ってきたところであります。

 今後も、廃炉プロセスに全力を挙げて取り組むとともに、国内外に対する情報発信を強化してまいりたいと考えております。

笠井委員 総理に聞いたのに経済産業大臣にあれこれ言われたけれども、要するに、撤回するのかどうかについては全然話がないんですよ、いろいろ言うだけで。なぜ、撤回するとはっきり言えないのか。

 福島県議会は、この収束宣言の撤回というのを強く求めて、二度にわたって全会一致で意見書を採択しております。一つは、一昨年の十二月二十七日でありますけれども、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束宣言の撤回を求める意見書というものであります。もう一つは、昨年、ついこの間、十二月二十日でありますけれども、真の収束の早期実現を求める意見書というのを、いずれも全会一致で、我が党も提案しましたが、結局は自民党提案のものが全会一致ということになって、最後、採択されております。

 その中ではこう言っております。政府が収束宣言したことは、当県の実態を理解しているとは言いがたく、避難者の不安、不信をかき立てる事態となっていると厳しく指摘しているわけであります。

 除染、賠償を初めとして、安全、安心の福島県を取り戻したい、これが県民の総意であることは言うまでもありません。ところが、一昨年の収束宣言の後、政府の避難区域の見直しが進められて、東電による賠償打ち切りという動きも今進んでいる。

 総理が福島の再生に責任を持つというふうに言われるんだったら、まず、あれこれさっき経産大臣言ったけれども、収束宣言は撤回する、はっきり言って、そこからちゃんとこれからのことをやるべきじゃないでしょうか。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 前政権において、一昨年の十二月に、原子炉の状態を定量的に評価した上で冷温停止状態の達成を確認したものである。その確認において、収束という表現を使ったんだろうと思います。

 私は、総理就任後、福島県に参りました。今、笠井委員が御指摘をされたような、そういう住民の方々は受けとめをしておられた。いまだに帰還できずに不自由な生活を強いられている皆さんとも私はお目にかかってお話をいたしました。その中において、原発事故が収束しているということは簡単に申し上げられない状態であるというふうに私は認識をしております。

笠井委員 簡単に申し上げられないということでありますけれども、簡単にじゃなくて、これは、言えないんだったら撤回だと私は思うんです。

 では、総理に伺います。総理就任後、直ちに行かれて視察もされたので。現在、福島第一原発はどうなっているか。先ほどるるステップ2とかいう話は大臣からありましたが、ちょっと端的に伺いたいんですが、では、福島第一原発からいまだに放射性物質が出ているのかどうか、これはわかっているんでしょうか、総理。

茂木国務大臣 通告を受けておりませんが、いまだ、福島第一原発、高い放射能状態であることは間違いありません。

笠井委員 では、大量に使われている冷却水はどうか。しばしば冷却水の配管から水漏れを起こして、敷地内にある大量の汚水タンクもこれ以上置けなくなるために、東電は海洋に流そうとさえして、漁民の怒りを呼んでおります。もう汚染水は出ないと言えるのか。

 それから、では、メルトダウンした原子炉など原発施設がどういう状態に今あるかわかっているのか。それが地震などで再び破壊をされて、さらに放射性物質がまき散らされるおそれはないのか。ここはもうはっきりしているんでしょうか。

 これはどうですか。総理も、実際、視察に行かれていると思うのですが。

茂木国務大臣 私も、先日、福島第一原発、視察に行ってまいりました。そして、四号機、中に入って実際の状況も確認いたしました。相当、震災の影響を受けた状況というのは残っております。

 御案内のとおり、一号機から三号機、さらに放射能状態は高い状態でありまして、そして、燃料棒ではなくて、溶けたもの、デブリが残っている。この摘出する作業、これは相当困難をきわめるだろう、こんなふうに考えております。

 東京電力がこの廃炉を進める、そういった中で、国としても、研究開発初め、しっかりと廃炉を進めていくということを進めていかなきゃならないと考えておりまして、補正予算におきましても八百五十億円資金を用意いたしまして、こういった廃炉に向けた研究開発を進めていきたい、こんなふうに思っております。

 さらに申し上げますと、中長期のロードマップ、この進捗管理を行う上でも、それぞれの号機によって状況というのはかなり違っております。前政権では、全体を見て何年、こういった形でロードマップをつくっておりましたけれども、個々の機ごとにどういった形で廃炉を進めていくのか、こんなことも含めて、できるだけこの期間を縮められるように、こういうことで今検討いたしているところであります。

笠井委員 放射性物質が高い状態にある、そしてまだいろいろな問題があると言われたので、収束しているとは言えないというのははっきりしていると思うんですよ。いまだに原子炉の内部にも近づけない。そして、冒頭の一号機の四階の問題もあります。四号機の燃料プールも大丈夫かという指摘も専門家からある。まさに収束していない。はっきり言って当たり前だと私は思うんですよ。

 ところが、総理は、簡単に言えないという言い方をされましたが、その一方で、昨年十二月の二十九日に就任後初めて行かれて、そして翌日三十日のテレビ番組で発言をされております。新たにつくっていく原発は、事故を起こした東京電力福島第一原発とは全然違う、国民的理解を得ながら新規につくっていく、第一原発は津波を受けて電源を確保できなかったが、福島第二、女川などは対応した、その違いを冷静に見きわめる必要がある、こういう趣旨で発言をされております。

 事故の究明は終わったことにして、原発の再稼働にとどまらず新増設ということになれば、これはもう原発推進姿勢そのものということになります。福島第一原発事故の全容もわからない、簡単に収束しているとは言えないというふうに言われているのに、津波が原因だった、その対策をとれば大丈夫だという認識で新規につくっていくなんということをどうしておっしゃることができるんでしょうか。総理、総理の発言ですから。

安倍内閣総理大臣 先般、福島の現地を訪れまして、いまだにふるさとに帰れない方々がたくさんいらっしゃるわけでありまして、十分にめどが立っていない。

 そういう皆さんの話を伺う中において、もちろん、新しい技術の開発、そして、いわば新たな安全基準の設定、そしてそれに対する対応能力等々も見きわめていく必要もあるでしょう。しかし、そうした避難をしている方々の心情を思えば、やはりこれは慎重に、腰を据えてじっくりと考えていかなければいけない課題である、このように思っております。

笠井委員 そうしますと、年末に言われた総理としての、東京電力の福島第一原発と新たにつくるのは違うという趣旨の、あの流れの発言というのは撤回ということでよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 あのときの発言においては、やはり冷静に考えていく必要があるということを申し上げたわけであって、いわば新たな技術の中において解決する可能性というものもないわけではないわけであります。

 しかし、同時に、やはり事故の結果についての検証も十分に進めていく必要もあるでしょうし、また、私がお目にかかった人たちも含めて、被災をしている方々の心情も考えながら考えていく必要がある、こう現段階では思っているということであります。

笠井委員 事故の原因の検証も進んでいないということもお認めになった上で慎重にと言われたんですが、私は、やはり総理の口から、福島第一原発とは全然違うということが出ること自体が本当に問題だと思うんです、率直に。

 国会事故調報告は、事故は終わっていない、こう言って、政府事故調報告も、国は引き続き事故原因の究明に主導的に取り組むべきであると言っているわけでありまして、その立場とも違うんじゃないか。

 いまだに原子炉の内部にも近づけずに、どこがどのように壊れているのか、津波なのか、地震の一撃で配管が破損したのか、原子炉の状態がどうなっているのかもつかめていないわけですよね、要は。それなのに、福島第一原発は津波を受けて電源が、事故になったというのは想定外の津波のせい、そういうふうに電力業界が一貫して主張してきた言い分と同じことになっちゃうんじゃないか。どこが違うのか。

 安全神話に陥って、原発をつくり、推進してきた歴代自民党政治の反省が全くないんじゃないかと思うんですが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 我が党が政権にあって、安全神話の中にあって原子力政策を進めてきたということについて、安全対策ということについては反省しなければならない、これは再三申し上げてきたとおりでございます。

 しかし、同時に、事故の調査は厳格に進めていく必要もあるでしょうし、あるいはまた、今後そうした事故を克服できるかどうか、科学技術においてできるかどうかということについては、やはりこれは挑戦し続けていく必要というのもあるんだろう、また、それについても検討していく必要はあるのではないのか、このように考えております。

笠井委員 反省は言われたんだけれども、私は、安全対策の問題だけじゃないと思うんですよ。今、後段で言われた、事故を克服できるか、科学によってというのが、まだわからないわけですね。それで、原因がわかっていない。できないとすれば、もう原発だめよという話になるわけで、そのまだやっている途中の話の段階において、原発をこれからもみたいな話が出てくる、新しいものをつくるとか再稼働の話が出てくる、こんなことはあり得ないと思うんです。

 私は、総理がゼロベースで見直すとよく言われますが、ゼロベースで見直すべきは、歴代自民党政権が安全神話につかってきた原発推進政策そのものだ。この地震、津波がある列島において、本当にあり得るのか。科学技術からも、原発を持っていいのか。あり得ないというようなことになってきているわけですけれども、二度と福島のような事故を起こさないというなら、やはり私は、政治の決断として、原発ゼロ、直ちにやめるということをやるべきだということを改めて申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、働く人の所得をどうふやすかというテーマについて質問したいと思います。

 安倍総理は、経済の再生を掲げて、日銀に言って、物価を二%上げようということで今政策を進めている。

 そこで、物価が上がれば、国民の所得がふえて暮らしがよくなるのか、国民の最大の関心事だと思います。みんなそのことを、大丈夫なのか、本当にそうかなと。

 物価が上がったら、働く人の賃金が確実に上がっていくという保証があるんでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 我々がなぜデフレから脱却をしなければならないと考えたかといえば、デフレ下にあっては、物の値段が下がっていく以上に収入が下がっていくわけであります。つまり、今までの経済財政政策、金融政策を続けていく以上、実は収入が下がっていく。

 事実、国民総所得は五十兆円減少したわけであります。年金においても、これは物価スライドしていくわけでありますから減少していくわけであって、この状況を変えなければいけないという中において、我々、三本の矢によってデフレ脱却を目指しているわけであります。

 現在、金融の大胆な緩和という中において、まずは為替とそして株式市場に変化が出てきたわけでありますが、企業が、業績を回復する中において収益を上げ、そしてその収益を上げていく中において、また、いわば労働分配率を考えていくという中において人材に投資をしていく、そしてそれが給与として賃金の上昇につながっていくであろう、このように期待をしております。

 事実、先般、ローソンが、働き盛りの従業員の給与を二、三%引き上げると。こうした動きがどんどん出てくることを期待したいと思います。

笠井委員 物価が二%上がれば、平均的なサラリーマンの世帯で大体年間十万円近くも支出がふえる。既に、円安の影響で、輸入食料品とか小麦とか、あるいはガソリンなども急騰しているという事態であります。その上、来年四月には消費税が八%、踏んだり蹴ったりとみんな思っているわけです、本当に深刻に。

 総理は今、企業の収益が上がれば雇用と賃金上昇につながるというふうに言われましたけれども、果たしてそうなってきたかという問題があります。

 小泉政権から第一次安倍政権の時代の二〇〇一年から二〇〇七年、この平均現金給与でありますけれども、年額換算にすると幾らになるか、厚生労働省、二〇〇一年と二〇〇七年の額を答えていただきたいと思います。

伊澤政府参考人 二〇〇一年の数字でございますが、四百二十一万六千円。二〇〇七年が三百九十六万四千円でございます。

笠井委員 当時、この七年間の平均給与というのが、四百二十一万六千円から三百九十六万四千円ですから、二十五万円も減っているわけです。景気が拡大したとき、あのとき、そうでありました。そして、円安も重なって、企業は軒並み最高の利益を出した。

 あの当時も、この委員会での会議録を改めて読み返してみましたが、安倍総理は、予算委員会で、企業が利益を上げれば賃金は上がると言われていた。そして、今と同じように成長戦略その他、やられてきたわけでありますけれども、それなのに、賃金は大きく下がってしまった。

 下がってしまったという事実はお認めになりますね。

安倍内閣総理大臣 既に政府から答弁をしているとおりであります。

 問題は、ずっとデフレ下にあったわけでありまして、このデフレマインドの中において、投資あるいはまた労働分配率を上げていこうという意欲は残念ながらなかった、それが大きな原因ではなかったかと思います。

笠井委員 給与は下がってしまったということでありましたけれども、その事実はお認めになりました。

 では、一体、その上がった収益、当時最高の収益を上げていたわけですが、この収益はどこへ行ったんですか。

麻生国務大臣 基本的には、企業は今、巨大な内部留保を抱えていると思っております、少なくとも東証一部上場企業の四三%、四%は、多分、実質無借金経営になるぐらい。二十年前とは桁違いに自己資本比率を高めた。

 常識ですと、笠井先生言われるとおり、内部留保は、本来でしたら、賃金に回るか、配当に回るか、設備投資に回るかすべきものだと存じますが、それはいずれも、その分は、貸し剥がし、貸し渋りに備えてか何か知りませんが、企業はじっと、金利がほとんどつかない内部留保をずっとため込んで持っておられるという、この企業マインドが今一番問題なんだ。

 私ども、今回の経済対策をやる上で最大の問題は、この企業マインドだったと思っております。

 今それが如実なんだと思いますが、幸いにして、株価が上がり、輸出企業にとっては、ドルが高くなり、円が安くなり等々いたしましたので、企業にとりましては、明らかに、思わぬ利益が入った分が収益としてふえるわけですが、そのふえた分が、先ほどローソンの話が出ましたが、企業の従業員に長らく迷惑をかけてきたので従業員の給料を上げようと言われる会社もありますし、北九州なんかでいえば、例えば安川電機も同じような考え方をはっきり言っておられます。そういった企業もあれば、まだと思っておられる。ここのところは我々が強制してやらせるというような部分ではありませんので、これは、私ども、共産国家じゃありませんので、自由主義国家ですから、勝手なことは言えませんので、そういったわけにはいかぬのです。

 したがって、ちょっとそこのところは御理解いただいて、企業が、やはりこれは伸ばしてやらないかぬ、給与を上げてやらないかぬというような気になるかならないか、これは、これからの大きな流れだと存じます。

笠井委員 共産国家と、何かわけのわからないことを言われましたけれども、我々、何も強制してなんという話をしていないんです。後でもやりますけれども、やはり経済の理屈に従ってちゃんとやろう、ちゃんとルールをつくってやればできるという話をしているので、いろいろなことをごちゃごちゃ言わない方がいいんですけれども、大臣。

 でも、冒頭のところはかなり、そうかなと、そのとおり言われているということはあると思うんです。

 私、ちょっと出してみたいと思うんですけれども、パネルがあります。

 平均給与の年額でありますけれども、これ、ピークは一九九七年であります。その時点を一〇〇としますと、企業の経常利益というのが、この青い線でやっているものでありますけれども、一五九ということで、二〇一一年まで、ジグザグはあります、リーマンもありますけれども、全体として上がってきているという状況がある。

 そして、その間に平均給与はどうかというと、この一九九七年一〇〇からずっと下がりまして、一五%も下がって、二〇一一年には八五というところまで来ていて、額でいうと六十六万円も減っているわけであります。

 他方で、今、麻生大臣言われた、大企業の内部留保というのが、これは、青い線の濃い方でありますけれども、一八五ということで、額でいうと百二十兆円もこの間にふえている。

 株主配当はどうかといえば、この赤い方でありますけれども、これもジグザグはありますが、一〇〇というのに比べて、二八四ということで、大幅に急増しているわけであります。

 つまり、大企業は、大幅に利益をふやしたのに、働く人の所得や雇用を減らして、それが内部留保や株主配当に至っている。もちろん、企業によっていろいろ事情は違うけれども、全体としてそういうことになっている。

 こういうことであるということは、そうだと、改めてちょっと確認したいと思うんですが、どうですか。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、これは、デフレマインドがありますから、デフレ下においては実質金利は上がっていくわけですから、どうしてもキャッシュとして持ちたい、それが内部留保になっているということだろうと思います。

 そのマインドを変えるのが我々の政策であって、それによって、先般、先ほども申し上げましたように、新浪社長も、安倍政権の要請を受けて、二、三%上げていくということを言ってくれたわけであります。

 先ほど、麻生副総理は、我々は共産党でないからそんなことを要求しない、こういうふうに発言をしたんですが……(笠井委員「共産党じゃないですよ、別に」と呼ぶ)ええ。それは、政権としては撤回をいたします。

 我々は、来週、経営者の皆さんに集まっていただいて、デフレを脱却していくためには、しかもそのスピードを上げていくためには、一日も早くそれが賃金、給与という形で実際に実体経済にあらわれてくることが一番早いわけでございますので、経営者の皆様にも、それはひいては企業の利益にもつながっていくわけでありますから、経営者の皆さんに集まっていただいて、一時金という形でもいいですから、何とか今、収益が上がる可能性が出てきたことを、給与あるいは賃上げ、また一時金という形で協力をしていただきたいという要請をするつもりでございます。

笠井委員 総理も財務大臣も、マインドの問題だ、気持ちの問題と言っているんだけれども、それでデフレが起こったわけじゃないんですよ。マインドという要素がないというような、そういう否定はしませんがね。

 しかし、一番の問題は、共通して言われているのは、厚労省の労働経済白書を見ても、それから、かつて自公政権時代の経済財政諮問会議の民間委員をされていた吉川洋さんという東大教授、最近も「デフレーション」という本を書かれましたけれども、この中でも言われている。そして、佐藤日銀審議委員も最近言われましたけれども、要は、賃上げあるいは所得増なしにデフレ打開はできないんだ。吉川さんなんかは、デフレの鍵は賃金だ、もともと賃金が下がったからこうなったんだと、共通してやっているわけですよ。

 それを何か気分の問題で、これを切りかえて収益を上げるようにすればと言うけれども、今までもさんざん収益が上がるようにして、なってこなかったわけですよ。

 では、今まで自公政権のときにはマインドの問題を無視したのかというと、そうじゃないわけでしょう。自公政権なりに言っていたわけじゃないですか。それでもそうなってこないで、財務大臣が言われたみたいに、全部、内部留保にたまっちゃったんだという話になっているわけでありまして、そこのところをしっかりと見ないといけないというふうに思うんです。

 アメリカもEUも、経済は好調どころか、経済危機のもとでさまざまな矛盾が噴出していますけれども、しかし、名目成長も働く人の所得も、リーマン・ショックで減った後、回復して伸びているわけですよね。名目GDPも、そして働く人の所得も、回復できずに減り続けているのは日本だけですよ。共産主義国家でもない、何でもない日本ですよ。資本主義国家の日本ですよ。それがデフレの最大要因になっているということであります。そして、それは誰がつくったのかという問題が問われてくるわけです。

 そういう中で、賃下げに加えて非正規雇用が拡大をし、いつ職を失うかもしれずに、自分は大丈夫とは誰も思えない。雇用不安は深刻になっている。企業の収益が上がっても働く人の所得につながらない、ここに問題がある。これを変えなきゃいけないというところに、何で、もっとちゃんとずばっと焦点を当てて取り組みをやらないのか、原因と責任をきちっと捉えないのかということであります。

 そこがはっきりしないから、総理は今、経済界にも要請してというふうに言われましたけれども、では、伺いたいと思うんですが、財界、大企業の方はどうか。

 今、賃上げをやらないと言っているだけじゃなくて、定期昇給の凍結とか見直しとか、そんなことまで口にして、さらさら賃上げなんか考えていないということを言っているわけですよね。

 総理は、では、そういう経済界、財界の立場について、この姿勢はおかしいな、ひどい、変えてもらわなきゃいけないというふうに思われますか。

安倍内閣総理大臣 今委員は、リーマン・ショック後の米国と日本を比較されました。(笠井委員「いや、その前からのことも言いました」と呼ぶ)その前からもそうなんですが、特にリーマン・ショック後ですね。何が大きく違うかというと、やはりこれは金融政策が決定的に違ったんですね。アメリカがQE1、2、3というのをやった。しかし、日本はやらなかったんですよ。ですから、デフレマインドのままなんですよ。

 デフレマインドを変えていくこと、たかがマインドとおっしゃったけれども、これはいかに大きいか。つまり、それによって今インフレ期待は上がっているじゃないですか。〇・七%まで来たんですよ。それは、まだ実際に我々は補正予算も通していただいていない中において、金融政策を変えただけで、どうなりましたか、為替は。株価はどうなったんですか。実際に効果が出ているじゃないですか。ファクトですよ、これは。

 いろいろなことをごちゃごちゃ理屈を述べた人たちがいますが、我々がやっている政策が正しいんです、今ファクトにおいて。そして、まだ、我々は政権をとって一カ月しかたっていないんですよ。一カ月しかたっていない中で、残念ながら、まだそれは賃金には反映していない。

 しかし、その中においても、既に、先ほど申し上げましたように、ローソンにおいて、あるいは安川電機において、賃上げをしようと。これ、三カ月前に考えられましたか。誰にも思いつかなかったじゃないですか。

 つまり、我々の政策が経済を変えているんですよ。私たちは必ず変えていきます。

笠井委員 金融政策で、日銀がお金を刷っていけばよくなるという話で、これまでだってさんざん、じゃぶじゃぶやってきたわけでしょう。それで、今までなってこなかったじゃないですか。

 それで、私、伺いたいんです。

 個々の企業がどうかという問題じゃないんですよ。そういう中で、マインドの問題だと言われるけれども、では、個々の企業の中で、上げるようにやろうかなと思っているところがあるかもしれないとか言っているけれども、しかし、経団連がはっきり言っている。賃上げしない、そして定昇の見直しをする、こういうことを明言している、経済団体が。

 では、これについてはいいことなのか悪いことなのか、はっきり言ってください。

安倍内閣総理大臣 私はマインドだけと言っているのではなくて、つまり、金融政策を実際に変えるわけですよ。そして、金融政策を変えることがマインドを変えていくことにつながっていくんです。それが極めて大きいということを申し上げているのであって、そして、ただ金融政策だけでは実際に賃金が上がっていくまでには時間がかかりますから、なるべくそのサイクルを速くしなければいけないということで、我々は経済界に要請をしていることであって、経済界にとっても一日も早くデフレ脱却をすることはプラスですから、その意味において、経済界に対して、賃上げは全然しませんよという態度ではなくて、むしろ我々の政策に対して協力をしてもらいたい、つまり、利益が出るという見通しの中においてはそれを従業員に還元していただきたいということを申し上げていきたいと思っております。

    〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕

笠井委員 この一九九七年からこれまで、さんざん収益が上がっても回ってこなかったんですよ。そこの問題でしょう。

 では、具体的に聞きたい。

 日本経団連が二〇一三年版の経営労働政策委員会の報告書でこう言っております。これまで、物価が下がって賃金は実質的に上がっている、だから賃上げはやらない、こう言っている。幾ら総理が、収益が上がっている企業には賃上げを求めてやっていくんだ、そして上がるようにしていくんだと言っても、結局、経団連の側では、物価が下がっているから働く人の賃金をもっと下げてもいいということまで今言っているわけですね。

 さっき総理が冒頭に言われたように、物価が下がってきた理由、問題のデフレに関連して、物価が下がる、その物の値段以上に収入が下がっているということも言われました。つまり、実際には、物価の下がる率よりもっとたくさん収入が減っているという状況にあるのに、物価が下がっているから結局賃上げは要らないと。もっと下がっているから大変なんですよ、暮らしは。だけれども、下がる率よりもっと収入が下がっているのに、しかしそれについては、物価が下がっているんだから賃上げはやらなくていいじゃないかと言っている、そういう日本経団連のこの理屈については、これはおかしいな、理不尽だな、身勝手だなと思いますか。

安倍内閣総理大臣 経団連は経団連の考え方でおっしゃっているんだろうと思います。

 笠井委員がおっしゃっているような状況を変えるために、今我々は、三本の矢でデフレ脱却を目指していかなければいけないと考えているわけであって、経団連のこのコメントについて、私はそれについていいとか悪いとかコメントするつもりはありませんが、しかし、私たちの希望としては、経団連の方々にもなるべく、賃上げあるいは一時金という形であっても従業員の給与がふえていく、そういう対応をしていただければ大変ありがたいと思っています。

 その中において、来週、経営者の皆さんに集まっていただいて、そうした要請を行っていきたいと考えているところであります。

笠井委員 収益が上がったら賃金に反映するようにしてもらいたい、期待していると言われるわけでしょう。

 しかし、経済団体で最大の経団連が逆のことを言っているわけですよ、賃上げはしません、定昇も見直しますと。そして、これまでさんざん、物価が下がっているんだからもう賃上げは要らないんだという話までしているという状況になっていることに対して、総理が言われていることと、少なくとも総理の理屈でいえば違いますよね。(発言する者あり)

 そうですよ、失業率だって大変ですよ。雇用だって、本当にリストラがどんどん進んでいるわけですよ。こんな状況になっているわけです。そういうときに、今内閣がやろうとしていることと違うんだから、おかしいじゃないですかと。

 ここでおかしいというふうなことは言えないんですか。コメントする立場にないというのはどういうことでしょうか。総理、どう思うんですか。

    〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 今、笠井委員がおっしゃったような状況というのは、今までのトレンドなんですね。(笠井委員「今もそうなんですよ。だって、経団連が言っているんですから」と呼ぶ)いや、今までの状況を変えようと。

 今までの状況というのは、物価が下がり、それ以上に給与が下がっていくという状況があったんですよ。その中では、実質金利が上がっていきますからキャッシュで持とう、こういうことになっていくんですね。投資もしなければ、人材にも投資をしない。どんどんどんどん縮小してきたんですよ。だからこそ、私たちは思い切った政策を行っていく。

 そして、先ほど笠井委員が、十年間、いろいろな状況について、賃金も上がらない、そういうことをおっしゃった。(笠井委員「事実でしょう」と呼ぶ)それは事実ですよ。しかし、事実だからこそ、私たちは何が足りなかったかと。それは何が足りなかったかといえば、思い切った金融緩和なんですよ。金融政策が違ったんですよ。だからこそ、私たちはそれをやった。

 まだ政権ができて一カ月ですから、そう簡単にまだ給与は上がりません。しかし、さまざまな指標においていい兆しが見えてきたのは事実です。その兆しを見て、何人かの経営者は、それだったら応えていこうということになったんですね。そういう人たちがどんどんどんどんふえていけば、それは連鎖になっていきます。いい循環に入っていくように我々も努力をしていきたい、このように思います。

笠井委員 総理が言ったって相手は応えていないんですよね。収益が上がったってやらないと言っているのが経団連ですからね。そのときに、身勝手な主張を許して、日本じゅうの企業が、個別例外があるかもしれないけれども、一斉に賃下げをやっていったら、国民の所得はもっと減って消費と需要を減らすというもので、デフレがもっとひどくなるわけですよ。

 それで、マインドの話と金融政策の話を一生懸命されますけれども、では、何でこんなに賃金が下がってきたのか。もとはといえば、経済界が、収益が上がってもとにかく賃金に回さないという意思を持っていたという問題と、それから、賃下げが進んだのは、歴代自民党政権が大企業のリストラと賃下げを野放しにしてきた。私も何度も言ってきましたよ、その問題。麻生総理大臣のときにもやってきました。

 そして、労働基準法や労働者派遣法など、相次ぐ改悪をして、規制緩和をどんどんやってきて、そして、どんどん収益が上がっても賃金に回さない、内部留保をためていくということをやってきたんじゃないですか。そのことによって、結局、働く人や国民の所得が減って、所得が減ったら消費が減るんです。そうしたら需要が減って、そうしたら、もっと企業だって生産できなくなるということになります。設備投資に回らない。そして、ますますデフレがひどくなるという悪循環になってきた。

 だから、さっきみたいに、厚生労働省の白書だって、吉川さんだって、日銀の委員の方だって、今やはり鍵は賃金だ、賃金を上げること、あるんだから、それをやることによって切りかえていけば、そうしたら好循環になるじゃないかという話をしているわけですよ。なぜそれをやらないかという話が全然やはり、これまでの政策に対する分析と、それから、原因の深い反省という問題がないということを私は強く感じるところであります。

 私は、先ほど見たみたいに、それから麻生副総理も言われました、これまで、働く人の所得を減らして、企業が内部留保をためてきたということがあった。私は、既にそこに、つまり、強制とかいう問題じゃなくて、原資があるじゃないか、賃上げするのに。

 これから新たにやるということを、手をつける、やろう、いつになるか期待していると総理は言われるけれども、いつになるかわからないという状況になっている。

 それに対して、既に、働く人や中小企業は一生懸命頑張ったけれども、それが賃金や下請の単価に回らずに企業の内部留保に回ってきたと麻生副総理は先ほどおっしゃいました。おっしゃったようなこと、そこのところに着目してやればいいじゃないかということをもっと考えるべきだと思うんですよ、これまでの反省に立ったら。

 そこで、麻生副総理に伺いたいんですが、四年前の二〇〇九年の一月の九日でした。この予算委員会で、副総理は隣の席に座っていらっしゃいました。そして、私、質疑をいたしまして、企業の内部留保を活用した雇用確保の問題、これについて私と議論をいたしました。覚えていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 御期待に応えられるほど記憶力はよくありませんので、もう一回言っていただくと助かります。

笠井委員 いや、そういう質疑をしたということについて。

麻生国務大臣 笠井先生とこの種の話をよく、自由主義経済がわかっておられるなと思って、すごく感心して、前々から伺っております。

笠井委員 我々、市場経済というのを重視していますから、そこのところは、そういう意味では議論がかみ合って当たり前です。市場経済を通じてその先に行こうという話をしているんです。

 あのときに、私の内部留保の質問に、当時の河村官房長官は、積極的に経営者団体を通じて要請をしていくと明言されて、麻生総理も、当時、重ねて言わないといけないと、要請する考えを表明されました。

 私は、今こそ、つまり、マインドの問題とか、これから収益が上がったら行くように期待するという以前に、企業内部に既に眠って余っている、この資金を賃上げ、雇用確保などにきちっと使う、経済に還元する、まさに必要じゃないかと思うんですけれども、どうですか、その点。

麻生国務大臣 賃金、もちろんです。また、内部留保の部分が企業の設備投資に回るということは経済の規模が大きくなることになりますので、設備投資に回る、これも大事だと思っております。配当、もちろんです。

 その三つに全く行かないで内部留保がふえ続けたというところが今回の中で一番問題なんだと思いますが、なぜそうなったかと言われれば、多分、たび重なる債務超過という状態が続いていた企業にとりまして、なぜそんなに債務超過がふえたかといえば、それは、完全に資産がデフレーションを起こしたからです。

 株価が、三万八千円がただの七千円、八千円に下がり、土地も一五%まで下がり等々で資産が暴落したために、企業としては債務超過という状態を二〇〇三年、四年ぐらいまで抱えておりましたので、企業はずっとその間は貸し剥がし、貸し渋りに対抗するために内部留保をためにためたというのが、多分、企業経営者のマインドだったんだと思います。それがずっとまだ続いていた。

 それが今回、政策が大きく変わったことによって少し動き始める状況になったというところなので、ただ、御存じのように、タイムラグが必ずありますので、賃金が一番最後に回ってきますので、その差をなるべく縮めるという努力は今後ともし続けなければならぬものだと思っております。

笠井委員 賃金のために内部留保が必要だというふうに認められました。

 もちろん、それ以外にということで設備投資のことを言われましたが、設備投資するためには需要がなきゃだめですから、需要が伸びるためにはやはり給料が上がらなきゃだめなんですよ。という点でいうと、やはりそこのところであるし、タイムラグといえば、既にあるものを使うというのが一番早いわけです。

 そこで、大企業の内部留保でありますけれども、この十余年間で百二十兆円も積み増しされて、二百六十兆円にも上っております。

 パネル二ですけれども、我々、ちょっと調べてみたんですね。連結内部留保を五百億円以上持っている企業グループ、七百まで調べました。約七百。試算してみると、内部留保の一%を使えば、つまり、いろいろな貸し剥がしとか言われましたけれども、一%ですよ、一%使えばほとんどの企業で賃上げができて、月額一万円の賃上げができる企業というのは約八割になります。それから、従業員数でいうと、約七割が月額一万円、賃上げできるんですね。ほんの一部でできる。こういう性格だということは、そのとおりと思われますか。

麻生国務大臣 その数字がどれほど正確なものか、笠井さんがつくられたので、私ども、それを裏づけるものがありませんので、それをそのままだという前提で、それが間違いない数字だという前提でしかお答えできませんが、それがそのままなのであれば、今言われたようなことができる条件に企業側はあるということは確かだと存じます。

笠井委員 きょう議論してきましたけれども、企業が内部留保の一部を使って今すぐ賃上げすることができるようになる、そのために政治が何ができるのか。

 私たち日本共産党が内部留保の一部を賃金などに活用すればいいというふうに言っているのは、何も強制してやれというのじゃないんですよ。先ほど麻生さんが言ったけれども、我々は強制なんて考えていないんです。そうじゃなくて、経済の理屈でやっていけばいいんです。

 何も大企業の経営の中に手を突っ込んで、そしてお金を取り出して国民のために使えということを言っているんじゃなくて、それぞれの会社がみずから雇っている労働者や下請の給料が上がるために使うように、政治がルールをつくろうということを我々は提起しているんです。

 何かというと、人間らしい暮らしを保障するということで、我々日本共産党の提案は三つです。

 一つは、労働者派遣法の改正で正規雇用を原則にする。二つ目に、最低賃金を時給千円以上に引き上げて、全国平均で今七百四十九円ですけれども、制度として中小企業には国が手当てしながら引き上げる。そして、公正取引で、適正な下請・納入単価を実現する。

 そういうことをきちっと政治が決めれば、企業が内部留保を活用して、みずからの労働者の賃金や下請に対して払うことができる。まさにこれこそやるべきだ。ましてや、こんなときに消費税増税なんか、とんでもない。それこそきちっと政治の役割をやるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

山本委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 きょうは、安倍総理初め関係大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 現在、安倍内閣、本当に高い期待値が出ております。安倍総理にとっては、してやったりというところがあるかもしれませんけれども、きょう、総理のお顔を見れば、余裕をうかがうことができます。

 しかし、その一方で、国民の中には、本当に自民党は変わったのだろうか、また、アベノミクスで生活がよくなるんだろうか、そういう声があるのも事実でございます。

 きょうは、短い時間ではありますけれども、その国民の声というものを、生活者、消費者の視点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、唐突でありますけれども、安倍総理、百円ショップに行かれたことはございますか。

安倍内閣総理大臣 百円ショップの経営者は広島県の方でありまして、私と同じ中国地方でございます。当然、私の地元にもございますので、何回も行ったことがございます。

村上(史)委員 百円ショップは全国いろいろなところに、津々浦々ございます。

 実は、この百円ショップ、そのルーツは大阪にあります。大正末期に、大阪のデパートに十銭均一売り場というのがあらわれました。そしてその後、昭和五年に、大阪の難波というところに十銭ストアというお店が開設をされた。それが百円ショップのルーツだと言われています。まさに庶民の町である大阪、そして大阪商人の真骨頂、そういう思いをいたします。私も地元は大阪でございます。

 そういう面では、この百円ショップというのは大変私たちにとって、庶民にとって使い勝手のいいお店なんです。前回選挙のときに百円ショップをよく利用いたしました。そして、不景気の中で、主婦が、あるいは小遣いを持たない子供たちや学生が百円ショップを利用している。

 その百円ショップこそがこのデフレ不況の中で大きく成長した業界であるということ、これは、デフレの結果、百円の均一になったのではなくて、営業努力によって百円均一のお店が立派に成り立っているということです。(発言する者あり)そうではないんです。デフレの結果ではなくて、営業努力によって安売りができるようになった。そのことが、きょう私が言いたいことなんです。

 物価が下がることは決して悪いことではありません。庶民にとって、物価が低いということは家計を楽にします。そういう視点に立つならば、デフレの現象で、その原因というものが物価の下落にあるというのではなくて、それよりも給与、賃金が上げられない景気に根本的な問題があるのではないか、私はそのように思っています。

 そして、その背景にあるのは、日本が置かれている独自の問題です。先進諸国の中で、デフレ不況になっている国は日本だけだと言われています。その根本的な問題は、構造的な問題を日本が抱えているということです。

 その一つの例が、国民にとって、将来不安を抱えている。社会保障一つとっても、年金、医療、介護、それの将来像、安心して暮らすことができるかどうか、それに対する不安があるから、消費も控える。

 一方、企業側にとっては、明確な経済成長のための目標がない、日本にその方向性がないから、将来不安があるから、設備投資もできない。どうしても内向きになっていく。

 国民も企業もそういう内向きの萎縮した状況だからこそデフレが脱却できないのではないか、私はそのように認識をしておりますけれども、安倍内閣にとって、デフレ脱却、第一の優先課題だと思います。その基本的な認識について、甘利大臣、お尋ねいたします。

甘利国務大臣 先ほど、共産党の笠井先生から資本主義市場経済のレクチャーがありましたけれども、あの中で私が共感できるのは、負の連鎖を断ち切らなきゃならないということであります。消費の停滞が生産の停滞を呼び、それが所得の停滞を呼ぶ。その連鎖でどんどんマイナスのスパイラルになってくる。我々は、これをプラスのスパイラルに変えようというふうにしているわけであります。

 今、先生から、物価が下がることは、消費者にとって、事実上、可処分所得が上がることになるから、悪いことではないのではないかと。確かに、物価が下がって所得がふえていくのであるならば、それはそうだと思います。

 物価が下がるということは、いい物価の下がり方と悪い物価の下がり方があります。いい物価の下がり方は、生産性の向上によって、省コストで同じものができる、そのコストを下げた分だけ下げられる。これは競争力につながります。これは賃金の低下につながりません。しかし、売れないから、しようがないから下げて、損しても売る、その連鎖が始まりますと、利益が残りません。利益が残らないと、賃金や設備投資や下請代金にはね返っていきません。

 我々は、いい意味で、生産物の競争力がついていく、所得が上がっていく、生産が拡大していく、そういう、いい、プラス連鎖をつくろうということであります。

 まず、先ほど、世の中の気を変える、気分の問題じゃないかというお話がありましたけれども、しかし、物価安定目標を二%にするということは、これは中央銀行が宣言したわけであります。つまり、マインドとして、これからは少なくとも軽い物価上昇になっていくんだということになれば、あした買うよりきょう買った方がいいという気持ちになるわけであります。そこからプラスの連鎖も起きてくる。あわせて、我々は、実体経済でありますから、実需をつくっていくということで、景気刺激策で実際の財政出動をしたわけであります。

 しかし、総理がおっしゃるように、いつまでも財政出動はできません。これは種火をつけるわけであります。本体は民間経済です。民間の大きな経済、言ってみれば、日本の五百兆が動き出すということが大事でありまして、そのためには、魅力的な投資先が見つかるということが必要であります。それが成長戦略であります。それをしっかりと示すことによって、種火をつけて、本体に火がついて、民需主導で経済が回ってくる。プラスの連鎖に変えていきたいと思っております。

村上(史)委員 今の御説明は十分承知の上で私は質問をいたしました。

 そういう負の連鎖を断ち切るということ。そして、景気が先か、物価の下落をとめる方が先か、これは鶏と卵の論争になってしまいます。それよりも、先ほど私が申し上げたように、日本の抱えている構造的な問題をまず解決すること。できなくても、その方向性を国民そしてまた企業に示していく、そのことがまず前提としてなければならないのではないですか。そのことを私は言いたかったわけでございます。

 そういう面で、金融政策だけでもちろん事が片づくわけではありません。同時に、景気対策、まあ、財政出動と言ってもいいと思いますけれども、その財政出動も、今回の補正予算、その中身を見ると、本当に実のある政策になっているのか。それは、今までの議論を通じてもはっきりわかってきたと思います。

 単なる数字でGDPを上げるだけが目的ではない、中身が問題だ、そのことが再三指摘をされました。そして、今回、政府では、GDPの押し上げ二%、そして雇用創出六十万人、こういう目標を設定されました。しかし、民間のシンクタンクの多くは、〇・六から〇・九%ぐらいしか押し上げ効果はないんじゃないか、結局、お金を投じたけれども効果が見込めないのではないかという声が出ていることも事実です。

 特に、政府の方から、GDPの押し上げ効果について発現効果の期間というものが示されていません。いつ効果が出てくるのかわからない状態で、景気はよくなりますよ、それは誰も信用しない。そのことを、まず、財務大臣。

甘利国務大臣 いつ、この経済対策の効果が出てくるのか。これは、できるだけ予算を早く通していただきたいと思っております。そうしますと、この年度末から次年度当初、まあ、三、四、五あたりが一番効果があるようなことを我々は期待いたしております。

 それで終わりではありません。経済成長戦略をつくります。ここは、民間投資が、つまり、先ほど二百数十兆というお話がありました、それをしっかり動かしていきたいというふうに思っております。その成長戦略に向かって投資が進んでいくということも非常に大事なことだというふうに思っております。

 とにかく、気の問題という話は随分前から出ますけれども、安倍政権ができました政権交代から今日までの間に、円が随分大きく動きました。これは、輸出企業の後押し、利益の拡大を図っています。自動車産業では相当なプラスになっているはずであります。

 加えて、たしか株価が二千円以上上がりました。今、日本の企業、事業会社が持っている株式、あるいは金融機関が持っている株式、これが平均で二千円上がったといたしますと、事業会社にとってみれば二十一兆円ふえたということになります、金融機関にとってみれば十七兆円ふえました。三十八兆円、内部留保をふやしたと同じ効果であります。

 これは、単なる気の問題ではなくて、次なる展開をする企業の力になってくるはずであります。

村上(史)委員 答弁は、恐れ入りますけれども、もう少し簡略にお願いしたいと思います。

 それでは、麻生財務大臣にお聞きしたいと思います。

 今、発現効果の期日についてはお触れになりませんでしたけれども、GDPの押し上げ効果、結局、その効果がいつあらわれるかわからない、そういう状況で幾ら景気対策だと言っても説得力がないでしょうということを申し上げているんですけれども、景気回復がなされないままにいわゆるインフレターゲットを設定してインフレが進行していく、こういう状況の中で、国民生活はどういう状況に追い込まれると想定をされますか。

麻生国務大臣 ちょっといま一つ御質問のピントがよくわからないんですけれども、おっしゃりたいことは、タイムラグがあるということに対してどうされるかということをおっしゃりたいんですか。(村上(史)委員「そうです」と呼ぶ)短く言えば、そういうことですね。いろいろ言われたので、どこがポイントなのかよくわからなかったんです。済みません。

 基本的には、金融緩和というものが実体経済に影響をして、その分が実需に回り、そしてそれが賃金にはね返ってくるにはタイムラグがある。それはもう、商売をやられたり何かいろいろしたから、御存じのとおりなんだと思っております。

 したがって、日銀の大胆な金融緩和だけではだめで、我々としては、財政の出動によって、今、GDPのうちの三つ、三つというのは、いわゆる個人消費と設備投資と政府支出、この三つのうち二つがとまっていますから、残りが最初に引っ張るという意味で、財政の出動。そして、その後に、実体経済のために、甘利先生やら茂木先生がやっておられる産業政策による成長戦略というのと、この残り二つをやらないかぬわけですが、最初のここが問題だった。

 この残り二つが動き始めますもので、いつ終わるかというと、これを一緒に今までやったことがありませんから、この二十年間で初めてこの三つを一緒にどんと動かすのができたのは、間違いなく、安倍政権になって、我々に力を与えていただいて、それを一緒にやれるという状態になれたのだろうと思って、それが気分にはね返ってきて、株が二千円上がってみたり、また為替が、我々の意図しないぐあいに、七十八円とか九円だったのがいきなり九十円なんということになってきたんだ、我々はそう思っております。

村上(史)委員 実体の経済の中で、先ほど私が申し上げたように、きょうは生活者、消費者の立場から質問をしているということは、生活をする上で、二年先、三年先になるかはわからない、景気の回復はどうなるかわからない、でも、実態的には物価が上がって、一方では収入が伸びない、そういう生活に置かれた国民の生活はどうなりますか、それを政治として手だてをする手段はお持ちですかということをお尋ねしています。

甘利国務大臣 御心配はよくわかります。物価目標を掲げた、物価が安定的に二%になった、よかったね、しかし、物価が上がっただけで後がついてこないということを御心配されているんだと思います。

 ですから、我々は、物価目標を掲げると同時に、もちろん、インフレ予測というものが実体経済にはね返ってくることというのはたくさんあるんです。それと同時に、実体経済、実需をふやしていくとか、あるいは企業マインドを上げていくことを通じて、今度は、先ほども総理がおっしゃられました、企業に、できるところから始めてくださいと。トウショウヘイの、お金持ちになれる人から先になってくれじゃないですけれども、企業余力として、うちはベアはできないけれども一時金ならできるというなら、それをやってくださいと。それが始まれば、連鎖が始まって、プラスの連鎖になってきます。ですから、ほかの収益の悪いところまでプラスの効果が進んでいきます。

 だから、どこかを動かさなきゃならないんです。そうすれば全体が動いてきますから。タイムラグはあると思います。当然、理想的には、賃金が先に上がって、それからほかがついてくるのが理想かもしれません。しかし、多少の我慢はしていただくかもしれませんけれども、全てがうまく動いていくように、我々は、物価上昇目標と同時に、実体経済をしっかり動かしていくように成長戦略もつくっているわけでありますし、企業収益が個人に返ってくるような税制を仕掛けたり、要請をしたり、あらゆることをやっていきます。

村上(史)委員 ぜひそういう効果があらわれるように、努力はしていただきたいと思います。

 最後に、消費税の問題についてお話をしたいと思います。これは、今申し上げた景気と密接に関係をしています。

 総理は、国会の御答弁で、十月になると思いますけれども、消費税増税をするかどうか機械的には決めないんだ、そのような発言をされておられます。この趣旨、意味はどういうことでしょうか。

安倍内閣総理大臣 税と社会保障の一体改革の中で、自民党、公明党、民主党で合意をいたしまして、法律を通しました。その法律の中において、来年の四月から八%、再来年一〇%ということは決まっています。そして、来年の四月から上げていくという判断については、ことしの秋に、そのときの足元の経済状況を総合的に勘案して決めていくということになっております。

村上(史)委員 そういう抽象的なことではなくて、例えば、どういう数値がいつの時点で認められれば判断をするとか、そういう具体的なものを示していただきたいと思います。

麻生国務大臣 附則十八条というのを読まれたら大体それでおわかりいただけるんだと存じますが、消費税の引き上げに当たりましては、名目だけではなくて、いわゆる実質の経済成長と物価動向、また種々の経済指標を確認し、経済状況などを総合的に勘案、いろいろざあっと、ほかにも書いてあるんですけれども、長ったらしい人が長ったらしく書いていますので物すごく難しく書いてありますけれども、簡単に言えば、景気がよくならなきゃ上げないと書いてあるんですよ。簡単に言えば、そういうことが書いてある。

 私どもは、それを考えて、景気がよくなるように、目下、一生懸命努力をしていると御理解いただければ幸いです。

村上(史)委員 そういうふうにおっしゃりながら、この補正予算の中で年金の特例公債金を計上されています。これは消費税増税を前提にしたはずです。もう上げるという前提でこの補正予算に組まれたのではありませんか。ということは、やるということが前提のはずなんです。

 やるという、その経済的な指標、それは具体的に四―六の指標ですか、それともほかの指標ですか。そのことをお聞きします。

安倍内閣総理大臣 消費税を上げるのは、ただむやみに税率を上げるのではなくて、税収をふやしていかなければ意味がないわけであります。ですから、税収がふえていくという状況はできているかどうかという判断をするわけであります。

 ですから、そういう中において、我々は、何が何でも、とにかく決まっているから上げるということではなくて、法律にのっとって総合的に判断をしていくということが大切なことではないかと思っております。

 今おっしゃったように、基礎年金の国庫負担分について引き上げていくということが決まっておりますが、しかし、だからといって、税収が逆に悪影響を受けるようであれば、それは上げていかない方がいいわけでありますから、税率が上がったって税収がふえていかなければ意味がないわけでありますから、そういう判断をしていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、我々は、デフレから脱却をし、行き過ぎた円高を是正して経済を成長軌道に乗せていく、このことに全力を傾けていきたいと考えております。

村上(史)委員 最後にお尋ねをいたします。

 消費税増税は、経済の、景気の回復に足かせとなりませんか。せっかく景気対策しておきながら、それのブレーキ役になってしまうのではないかと我々は危惧をしております。認識をお聞きします。

安倍内閣総理大臣 まず、消費税を引き上げるということについては、自民党、公明党、民主党の税と社会保障の一体改革の中において、伸びていく社会保障費に対応するためには、これはやはり消費税を上げていくということが大切ですね、日本の国債、そして日本という国の信認を維持していくためには必要であろうというふうに考えているわけであります。だからこそ、我々も賛成して法律を通した。

 その中で、来年消費税が上がっていくことは決まっていますが、今委員がおっしゃったように、景気に悪い影響、つまり、実際に税収が逆に減収になるという危険性があるような状況、だからこそ、デフレが続いているという状況の中においては、我々は、そういう判断はなかなかできないということであります。

村上(史)委員 時間が参りましたので質問は以上とさせていただきますけれども、しかし、最後に申し上げたいのは、一九九七年、消費税が三%から五%に上がったとき、いわゆる橋本内閣のときです、その後、一体どういうことが起こったのか。それは教訓として学ばなければならないし、そして、同じ過ちを繰り返すことはできないと思います。国民生活を守るために政治があります。そのことを念頭に、最善の政治をしていただきたい。

 これからも、野党ではありますけれども、政府のさまざまな取り組みについて質問させていただき、そして、いい方向に進めるように努力をしていきたいと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

山本委員長 この際、小宮山泰子君から関連質疑の申し出があります。村上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党、小宮山泰子でございます。

 まず、冒頭にこれを申し上げなければならないのは大変残念ではございますけれども、私たちは、女性議員の有志におきまして、徳田前政務官の辞任に関しまして、官邸への申し入れをさせていただこうといたしました。昨日は、残念ながら官邸に入ることもできず、本日朝、委員会室の前で菅官房長官にこの申し入れの紙を渡すことになりました。

 そのような状況というのは大変残念でもございますし、また、この委員会におきましても、柔道のメダリストが実刑判決を受ける、そういった事件に関して、本当に女性への性暴力というものを私どもは許してはならない、そういった思いでおります。

 このことに関して、十分に、政府、任命責任もございますので、説明をしていただきたいという思いで、申し入れを再度繰り返させていただきます。

 そして、何よりも、この問題におきまして、また柔道のメダリストに対して、きのうの答弁にございましたが、総理からは、女性に対する暴力は女性の人権に対する著しい侵害であり、決して許されないものとした上で、政府としても、配偶者からの暴力やストーカー行為等の根絶に向けて積極的に取り組んでいくと答弁で述べていらっしゃいます。

 私自身、今回、安倍総理が、自民党の総裁として、女性の議員を重責に、また、今までの自民党の歴史にはなかったような役職につけられたということ、これは本当に女性として、決定権の中に入っていくということは念願でもあり、また、その責任を私どももしっかり負っていかなければならないという意味においては、この安倍総理の行動、言葉というのは大変心強く思っているところでもございます。

 残念ながら、今回、菅官房長官におかれましては、ふだんからは考えられないほど非常にそっけない対応でございましたので、正直申し上げまして、総理がこれだけおっしゃって行動に移していらっしゃるのに、水を差す、また疑念を持たなくてはいけないような状況にもありました。

 ぜひ、この点に関しましてはもう一度お考えをいただきたいと思いますとともに、また、女性の支援という意味において、社会での活躍ができる体制について、通告はしてございませんけれども、総理にいま一度その思いというものを聞かせていただければと思います。

菅国務大臣 徳田議員については、政務官を辞退したい、その内容についてはどうだという話を聞いたときに、女性の問題である、しかし、内容については、相手方との約束があるので話すことができないということになっていた、そういうことでありました。

 徳田政務官の辞任、極めて残念だと思います。そして、そのことについて皆さんからの申し入れということでありましたけれども、既に政府を去っておりますので、私どもが徳田議員に関してのそうしたものを受け取るべきではないというふうな判断をいたしました。

小宮山委員 改めて申し入れの内容をお読み直していただくことをお願いいたしまして、この問題はここまでにさせていただきますが、ぜひ、総理におきましては、やはり女性が、沖縄でのこともございます、しっかりとこういった暴力から、また、合意のない性犯罪、そういったものも含めまして、しっかりと守っていただく、そういった日本国であっていただきたいと思いますので、引き続き、この問題、女性の人権の問題でございます、この点に関しましては、内閣におきましてもさらに重大に受けとめていただきますことをお願いいたします。

 よろしいでしょうか。うなずくこともないんですか。

山本委員長 どなたに質問ですか。

小宮山委員 総理です。

菅国務大臣 私が対応させていただきましたので、そうした申し入れの趣旨は受けとめさせていただきます。

小宮山委員 総理にお答えいただけないのは、女性政策を応援していただけると思っておりますのに、大変残念でございます。また、そういう意味においては、この問題に関しては、まだまだ、ちゃんと実行に移していただけるのかということ、ぜひ強く申し入れをさせていただきたいと思います。

 それでは、私ども生活の党におきましては、やはり原発はゼロにしていかなければならない。また、この点に関しましては、日本じゅう、また世界におきましても、この方向に向かっているということは合意をされているんだと思っております。

 その中において、今まで政官業の癒着からつくられた安全神話というものは崩れ去り、今も情報開示などの信用回復というものはない。また、今晩もございますけれども、首相官邸前に集結される方々、この思い、そして不安、憤り、こういったものを私たちは真摯に受けとめなければならないと思います。

 震災を契機にエネルギーの需給体制やエネルギー政策の大幅な見直しというものを図らなければならないということは、皆様も同じ共通認識だと思います。特に、これまでのエネルギー政策は、経産省のもとで取り組まれてまいりました。しかし、エネルギーの転換をするには、これだけでは足りないということも事実だと思っております。原子力村の問題など大きくございますので、新エネルギー、再生可能エネルギーへの取り組みというのは大変重要かと思います。

 そこで、農水省においては、補正予算において小水力等再生可能エネルギー導入推進事業一億二千万円、地域バイオマス産業化推進事業など十億六千四百万円と、正直申し上げまして、経産省のエネルギー施策の額から見ますと大変つつましやかな予算かとも思いますが、しかし、ここから全ては始まるんだとも考えております。早急に、電力も農作物同様に地産地消の体制をとれるようにすることが重要と考えております。

 このような観点で、今後、農水省として、エネルギー産業の強力な担い手となっていくよう、より具体的な目標作成を含め、どのように取り組んでいかれるのか、また、どのような対策をとられていくのか、御説明をいただければと思います。

林国務大臣 大変温かい御質問をいただきまして、ありがとうございました。

 農山漁村におきまして再生可能エネルギーの導入を促進するということは、地域の活性化にもつながる取り組みとして、大変重要であるというふうに考えております。

 このため、農林水産省では、今御指摘のあったものも含めて、再生可能エネルギーの発電事業による収入を地域の農林漁業の発展に活用する取り組みとか、地域材の利用促進のための木質バイオマス利用施設の整備、こういうものを二十四年度の補正予算に盛り込んでおります。

 それから、二十五年度予算には、地域のバイオマス活用の産業化等に必要な施設整備、それから、今お話のありました小水力発電に係る調査設計等、予算を盛り込んでおるところであります。

 このような支援措置を初めとして、地域の農林漁業の発展や、農山漁村の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を積極的に展開してまいりたいと思っております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 エネルギーもぜひ地産地消できるよう、この分野は、さらに研究、そして実施も含めて頑張っていただきたいと思います。

 さて、同じように、経産省以外でもエネルギーをつくるということはしております。これは国交省であります。官民連携による下水道資源有効利用促進制度検討委員会を設置し、有識者など、またさまざまな提言も取りまとめられていらっしゃいます。

 その中において、事業においては下水道革新的技術実証事業などがあって、下水や下水汚泥等の資源エネルギー利用の効率化なども実際に始めさせていただいています。そしてまた、もちろん下水道施設を使っての小水力発電ももう始まっております。私自身も、東京都の例でありますが、視察に行かせていただきました。

 こういった分野、これもやはり地産地消でエネルギーがつくれる、そういう意味では有望なものだと思いますし、また、これから日本の景気を上げるという意味においては、この分野に関しても海外にさまざまな技術の販売等をできるかと思いますので、国交省においても、エネルギー産業の担い手となっていくような、より具体的な目標がございますか。その点に関しまして、御説明と回答をお願いしたいと思います。

太田国務大臣 小宮山委員には大変御努力をいただいていることを承知しております。ありがとうございます。

 下水道から発生する下水汚泥につきましては、ガス発電ということと固形燃料化が可能である、二つの方向から、再生エネルギーとして極めて重要であるし、また現実にそれが実用化できるというふうに思っているところです。現在、全国で三十二団体、三十九カ所でこれが実施をされておりまして、一層の導入が図られるよう努力をしたいというふうに思っています。

 また、下水汚泥のエネルギー化に係るガイドラインの策定や、低コスト、高効率な技術の実証事業を実施しておりまして、さらに今後とも、こうしたことについて努力をしていく決意でございます。

 また、先ほどありました小水力につきましても、これは国交省も関係をしておりまして、手続の簡素化ということと、ここをやりたいというところがどこに相談していいかわからないということがありますものですから、窓口をしっかり国交省の各事務所で行うということもさせていただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

小宮山委員 後ほど伺いたいと思いますけれども、やはりインフラ整備というのは莫大なお金がかかるものでもあります。また、下水道などは、合併浄化槽と農業集落排水など、三省あわせて、さまざまな議論もされています。しかし、これを効率よくやっていくこと、地方に財政負担をさせない、さまざまな問題点を含んでいるのも事実でございます。

 さて、次に行く前に、もう一度ちょっと、ここは経産大臣になるんでしょうか、または法務大臣かもしれません。通告はしておりませんけれども、お答えいただきたいと思います。

 まず、情報開示という問題におきまして、先ほど笠井委員のときにございました、国会事故調への虚偽説明という問題。こういったことがあると、やはり早くに原発をゼロにするべきであるという声ももちろんあります。そして、多くの巨額を国は投じていることもあります。

 そして何よりも、国会事故調、これは議院運営委員会の方でも議論になりましたけれども、国会で議論したこと、こういったものに従わないというか、おろそかにするということは、やはり国会軽視なのではないか。この点に関しましてさらなる注意を促していただけるのか、その点を確認したいということが一つ。

 もう一方、報道ベースになりますけれども、東電の吉田前所長の聴取記録を検察が押収したということで、政府の事故調は責任追及は目的としない事故調査の記録を捜査に使うという報道がございました。

 昨今、警察におきましては、冤罪問題であったり、調書の改ざんであったり、また調書の紛失、証拠物の紛失といったことがたびたび報道されています。事故の現場にいた所長の資料というものは、今後、私ども日本が原子力を扱う中において大変重要な資料でもございます。この部分に関しまして、資料がきちんと保存されること、このことに関してぜひ守っていただけるというお答えをいただければと思っております。よろしいでしょうか、お願いいたします。

茂木国務大臣 小宮山委員から御指摘いただきました東京電力の国会事故調への虚偽の説明の件でありますが、仮に東京電力が何らかの意図を持って虚偽の説明をしたとすれば、断じて許されないことだ、このように考えております。

 昨日、要請文書を受け取りましたので、昨日、東京電力に対しまして、事実関係を明らかにするよう指示し、報告を求めております。また、今後、現地調査などさらなる調査が行われることになる場合には、最大限協力するように東京電力に対して指導してまいりたいと思います。

谷垣国務大臣 証拠書類の押収の件について御質問がございました。

 私ども、個別の事件の捜査、どういうふうにしているかということは言及しないことにいたしております。捜査は適切に行われなければなりません。それは検察において適切に行っているというふうに私ども考えておりますし、私どもとしても、そこはきちっと監督してまいりたいと思っております。

小宮山委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 また、今回、大変大きな補正予算は、巨額、五兆円にも上る建設国債の発行、つまり将来の借金で成り立つ部分がございます。これだけされますと、過去の自民党政権でも日本の借金を膨らませてきた、その二の舞にならないかと、多くの議員、そして国民も心配になっているところでもございます。

 この中で多く見受けられる項目というのが、防災、減災、復興の名目でございます。国交省と直轄の部分でも、命と暮らしを守るインフラ再構築ということで六千百六十億にもわたる予算の計上がされています。これだけかけてどれだけ防災になるのか、現実的なことはしっかりとわからない。

 ぶっちゃけた話、丼で提示をされても、これが借金をしてまで本当に必要なのか、ここをぜひ具体的に、これをすることによってどのような効果が発揮されるのか、簡潔に御説明いただけないでしょうか。

太田国務大臣 予算の規模ということはかなりの規模になりまして、それが具体的に、防災、減災、老朽化対策ということにきちっと納得できる形で国民の皆様に御提示できるかどうかということが大事だと思っています。中身をしっかり吟味するということにしっかり心がけて、今やっているところです。

 そこで、具体的な予算計上ということの中で、通学路の安全対策とか、そうした目に見える形もございますが、こうしたことについては、例えばこの通学路の安全だけ、時間がございませんので申し上げますと、緊急合同調査、点検をさせていただきました。八万百六十一カ所を点検いたしまして、そして、必要というところが七万四千四百八十三カ所。こういうことで、きちっと点検、調査し、ここに手を打つということを吟味させていただいているところでございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 私が県議会議員のときに、通学路の問題がございまして、その言葉をつけると予算がとりやすいと、随分と役所の方がおっしゃっていました。そんなことのないように、きちんと国民の納得できるようにしていただかなければならないと思いますので、これからもしっかりと注視をさせていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、今回、外交の問題におきまして、中国、ロシア、やはりこの問題に関しては領土の問題もございます。

 私ども超党派の議連、当時、自民党では中川秀直先生が、また、民主党では川端先生や森山代議士が熱心に取り組んでいらっしゃいました水循環基本法案というのがございます。

 これはやはり、水の公共性という問題がありますし、また、外国資本の水源の土地の買い取りという問題が大きくある。これは条例だけではもう済まされない問題にもなりかねません。この土地の公共性、日本の国土を守るという意味においても、こういった観点というものは大変重要かと思っております。

 今後、総理におかれまして、やはり国土を守る、そしてそのためには、領土問題や、そういった意味では領土に対しての教育というものも大変重要かと思います。ぜひその必要性を、水という公共財について総理のお考えを聞かせていただき、最後にしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 水資源の確保や環境の保全の観点から、水の適正な利用を通じた健全な水循環を確保することが重要であると考えております。熱心に委員が取り組んでこられたことも承知をしております。

 御指摘の水循環基本法に関しましては、超党派の国会議員の方々によって議論が重ねられ、法案提出に向けて検討が行われているというふうに承知をしております。

 政府としてはその議論を見守っていきたい、このように思っております。

小宮山委員 私どももぜひしっかりと法案を出せるように準備をさせていただきたいということを伝えさせていただき、ぜひ御一緒に。

 また、しっかりとこの補正予算、二十四年度、二十五年度の前倒しも含んでおりますので、私どももさらに精査をさせていただき、結論を出させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて村上君、小宮山君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十一分散会


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