衆議院

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第10号 平成25年3月8日(金曜日)

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平成二十五年三月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      伊藤信太郎君    今村 雅弘君

      衛藤征士郎君    大塚 高司君

      大塚  拓君    大西 英男君

      奥野 信亮君    門  博文君

      金子 一義君    金子 恵美君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    小池百合子君

      小島 敏文君    小林 史明君

      小松  裕君    今野 智博君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      桜井  宏君    清水 誠一君

      島田 佳和君    白石  徹君

      新谷 正義君    関  芳弘君

      田野瀬太道君    高橋ひなこ君

      武部  新君    津島  淳君

      辻  清人君    渡海紀三朗君

      中川 郁子君    中村 裕之君

      野田  毅君    原田 義昭君

      船田  元君    堀内 詔子君

      前田 一男君    牧原 秀樹君

      宮崎 謙介君    宮路 和明君

      保岡 興治君    山本 幸三君

      若宮 健嗣君    大西 健介君

      奥野総一郎君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    寺島 義幸君

      原口 一博君    福田 昭夫君

      坂本祐之輔君    重徳 和彦君

      中田  宏君    中山 成彬君

      西岡  新君    東国原英夫君

      松田  学君    松浪 健太君

      松野 頼久君    山之内 毅君

      浮島 智子君    輿水 恵一君

      佐藤 英道君    江田 憲司君

      柿沢 未途君    佐藤 正夫君

      笠井  亮君    宮本 岳志君

      鈴木 克昌君    村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)

   (道州制担当)      新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山本 一太君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (公務員制度改革担当)

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   環境大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    秋野 公造君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)           田中 俊一君

   政府参考人

   (公正取引委員会委員長)            杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    木下 康司君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     工藤 彰三君

  伊藤信太郎君     金子 恵美君

  うえの賢一郎君    前田 一男君

  金子 一義君     堀内 詔子君

  小池百合子君     小松  裕君

  塩崎 恭久君     菅野さちこ君

  中山 泰秀君     小島 敏文君

  西川 公也君     宮崎 謙介君

  船田  元君     小林 史明君

  牧原 秀樹君     桜井  宏君

  玉木雄一郎君     大西 健介君

  原口 一博君     福田 昭夫君

  前原 誠司君     奥野総一郎君

  坂本祐之輔君     松野 頼久君

  重徳 和彦君     松田  学君

  東国原英夫君     松浪 健太君

  浮島 智子君     輿水 恵一君

  柿沢 未途君     江田 憲司君

  宮本 岳志君     笠井  亮君

  村上 史好君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恵美君     伊藤信太郎君

  菅野さちこ君     白石  徹君

  工藤 彰三君     中村 裕之君

  小島 敏文君     斎藤 洋明君

  小林 史明君     津島  淳君

  小松  裕君     島田 佳和君

  桜井  宏君     牧原 秀樹君

  堀内 詔子君     金子 一義君

  前田 一男君     佐々木 紀君

  宮崎 謙介君     清水 誠一君

  大西 健介君     玉木雄一郎君

  奥野総一郎君     寺島 義幸君

  福田 昭夫君     原口 一博君

  松田  学君     重徳 和彦君

  松浪 健太君     東国原英夫君

  松野 頼久君     西岡  新君

  輿水 恵一君     浮島 智子君

  江田 憲司君     柿沢 未途君

  笠井  亮君     宮本 岳志君

  鈴木 克昌君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     大西 英男君

  斎藤 洋明君     田野瀬太道君

  清水 誠一君     門  博文君

  島田 佳和君     高橋ひなこ君

  白石  徹君     新谷 正義君

  津島  淳君     船田  元君

  中村 裕之君     あかま二郎君

  寺島 義幸君     後藤 祐一君

  西岡  新君     山之内 毅君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     今野 智博君

  門  博文君     木内  均君

  新谷 正義君     武部  新君

  田野瀬太道君     辻  清人君

  高橋ひなこ君     小池百合子君

  後藤 祐一君     前原 誠司君

  山之内 毅君     坂本祐之輔君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     中川 郁子君

  今野 智博君     うえの賢一郎君

  武部  新君     塩崎 恭久君

  辻  清人君     中山 泰秀君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     西川 公也君

    ―――――――――――――

三月八日

 消費税増税を実施せず、二〇一三年度予算での税の集め方・使い方の抜本的見直しを求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会委員長杉本和行君、財務省主計局長木下康司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 昨日の海江田万里君の質疑に関連し、辻元清美君から質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 皆様、おはようございます。民主党・無所属クラブの辻元清美です。

 私は、本日、総理及び安倍内閣の歴史認識の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 それに先立ちまして、総理に一言申し上げたいことがございます。憲法の問題なんです。

 総理、前安倍政権のときのことを思い出していただきたいんです。あのときも、総理が憲法改正をいたしますとおっしゃって、本会議場でも各党から、憲法というのは国民から権力者を縛るものであるということで、その最も権力を縛られる総理大臣が、憲法を擁護する義務を最も負っている行政府の総理が、憲法を改正いたしますということをおっしゃることは、これは御見識の観点からいかがなものかと、各党からの指摘がございました。

 九十六条について、特に今、それも条項を指定して総理が発言されております。

 私は、憲法調査特別委員会や憲法調査会、中山太郎会長のもとでずっと初期から議論をしてまいりましたけれども、この憲法の問題というのは、極めて立法府の問題であります。特に九十六条については、最も重要な条項の一つです。といいますのも、全ての条項を変えるルールを決めるということですから、全てに係ってまいります。ですから、これの扱いについても、歴代の会長のもとで、立法府ではかなり慎重で丁寧な議論が必要であろうと。

 といいますのも、今、政権交代時代です、小選挙区のもとで。かつては、小泉さんのときに、小泉郵政選挙で自民党が圧勝しました。あのとき、まさかその四年後に民主党が圧勝して政権をとるとは誰も予想できませんでした。そして、私たちが政権をとったときも、三年ちょっとたってまた自民党が圧勝する。非常に振り子が振れるように過半数が変わっていくという政権交代時代に入っております。

 そういうときに、二分の一で憲法を変えることができるようになるというのは、政治の基盤を不安定なものにするのではないかということで、憲法改正に賛成の方々の中からも慎重な声が出ていたというのが、憲法の今までの議論の中での一つの断面であります。

 ですから、そういう意味で、もともと三分の二の意味というのは、権力の暴走を許さない、それは、二分の一でできないことをしっかり憲法で決めるという趣旨もございましたので、何だか、多数を占めるものが、数さえ集まれば行け行けどんどんで改正の議論を進めていいというものではないと思いますし、前安倍政権での各党、党派を超えての指摘にもありますように、その旗振りを行政の長の総理がなさるということは、私は、御見識の観点から見ましてもいかがなものかと思いますので、この間、そういうように考えました。指摘をさせていただいておきたいと思います。

 その上で、きょうは、前回、前原委員が質問いたしました、歴史認識の中の従軍慰安婦の日米関係における位置づけということで質問をさせていただきたいと思います。

 さて、その前にもう一つ、昨日、本日の未明ですね、北朝鮮による三度目の核実験に対する追加制裁決議を全会一致で採決したということでございますが、今後の日本の対応について、外務大臣、御報告をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 我が国は、北朝鮮の核実験に対しまして、一貫して、安保理の断固たる対応をとるよう、米国を初めとする関係国と緊密に連携をしてまいりました。今回の安保理決議の共同提案国にもなっております。安保理が今般の北朝鮮の核実験を安保理決議違反として非難し、核実験による核、ミサイル関連活動に関連する金、人、物の動きを強く規制する内容の決議を採択したことを歓迎しておりますし、高く評価をしております。

 そして、その上で、北朝鮮が国際社会の強い警告と非難を真摯に受けとめ、今般の安保理決議を初めとする一連の安保理決議を誠実かつ完全に実施し、さらなる核実験や発射を含む挑発行為を決して行わないよう強く求めていきたいと存じます。

 そして、効果的な対応を考えた場合には、米国、韓国、さらには中国、そしてロシア、こうした関係国と緊密に連携していくことが、北朝鮮に対して強いメッセージを発することになると存じます。

 ぜひ、こうした姿勢で、これ以上北朝鮮が挑発行為を行わないように強く求めていきたいと考えております。

辻元委員 総理は昨日、関係諸国との連携を緊密になさりたいというコメントを出されております。

 日本、韓国、アメリカはもとより、中国も大きな一つの、北朝鮮に対する影響力の行使ということで重要な国になるかと思いますが、それらの国との連携、どのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安保理決議につきましては、中国は常任理事国で、拒否権もあります。重要な立場でありますし、韓国は現在、非常任理事国で、安保理のメンバーでもございます。そういう中におきまして、我々は連携をとりながらこの採択に向けて協力をし合ってきたわけでございます。

 この問題につきましても、先般、朴槿恵大統領との間の電話会談におきましても、この安保理決議についてもお話をさせていただいたところでございますし、また、中国との関係におきましても、北京やあるいはニューヨークで中国政府側との意見交換等を行いながら、情報交換等を行いながら、採択に向けて努力をしてきたところでございます。

 いずれにせよ、この安保理決議が出た以上、世界各国がこの安保理決議にのっとってしっかりとそれぞれの国の義務を果たしていくことが重要だろう、このように考えております。

辻元委員 今、各国との連携ということで、アジアそしてアメリカ、重要な連携。そのためにも、私はきょう歴史認識ということをテーマにと申し上げましたけれども、この歴史認識の問題、総理は、いたずらに政治問題、外交問題化させるべきではないとおっしゃってまいりました。

 なぜこの問題が取り上げられるようになったかというと、選挙中に、慰安婦問題で、これは旧日本軍が直接、間接に関与したことを認め、おわびと反省を表明した一九九三年に出された河野官房長官談話を見直すというような趣旨の御発言を総理が繰り返されたというところから端を発しております。

 それに対して、前原委員が先日、私の前安倍政権での質問主意書に対する答弁、これを閣議決定ということで、総理は見直すということに含みを持たせた御答弁をされてまいりました。そういう姿勢が私は外交問題につながっていくのではないかと懸念をしているわけです。

 総理がおっしゃるこの外交問題、どこの国とどういう問題になるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 どこの国とどういう問題になるかということを総理大臣の私が述べることが外交問題につながってまいりますので、それは答弁は控えさせていただきたいと思います。

辻元委員 前回の二月の予算委員会で、総理はこうおっしゃっています。日本と韓国の外交問題に発展していくことにつながるとおっしゃっているんですよ、答弁で。

 私は、もちろん韓国とも外交問題に発展すると思いますけれども、総理が一番気になさっているのはアメリカではないかと思っております。ですから、きょうは日米関係における従軍慰安婦問題ということで、総理の御認識を伺っていきたいと思っております。

 岸田外務大臣にお伺いします。

 ことしに入ってからの動きですが、一月二十九日、アメリカ・ニューヨーク州上院議会で、この従軍慰安婦問題への日本の対応についての非難決議が出された。また、つい二週間ほど前の二月二十日、アメリカの議員たちによりまして、佐々江駐米大使に、もし河野談話を修正したりすれば、この行為が日米間のゆゆしき含みをもたらし、近隣諸国との不必要な緊張や怒りに火をつけることになるでしょう、こういう文書の申し入れ、これは二週間ほど前だと思いますが、ありましたか。事実関係、あったかないかだけで結構です。

岸田国務大臣 まず一点目ですが、一月二十九日、ニューヨーク州上院議会において、慰安婦問題に関する決議が採択されたことを承知しております。

 二点目でありますが、二月二十日付で、マイケル・ホンダ米国下院議員ほかより、慰安婦問題に関する書簡が佐々江駐米大使宛てに送付されております。

辻元委員 これはアメリカでの動きですが、先日、外務大臣は、一月十三日にオーストラリアに行っていらっしゃいます。このとき、日豪外相会談がございました。この記者会見でも、イギリスの記者の質問に対して、ボブ・カー外相が慰安婦問題に触れて、河野談話の再検討は誰の利益にもならないと指摘されたという事実はございますか。

岸田国務大臣 本年一月十三日の日豪外相会談終了後の日豪外相共同記者会見におきまして、カー豪外相は、河野談話を含む第二次大戦をめぐる歴史問題に関する過去の談話を変更した場合の豪州政府の対応について記者に問われ、それに対しまして、一九九三年の河野談話については、近代史において最も暗い出来事の一つを確認した談話であると認識しており、この談話の再検討は誰の利益にもならないと考えていると回答いたしました。

 そして、同じ記者から、日本政府が河野談話を含む……(辻元委員「それだけで」と呼ぶ)はい。とにかく、外相会談後の記者会見でそういうやりとりがありました。

 ただ、同じ記者から私の方にもちょっと質問がありましたので、安倍総理は、慰安婦問題について、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心を痛めている、この点について歴代の総理と思いは変わっていない、こうしたことを回答させていただきましたし、また、日豪外相会談の中身では、河野談話については取り上げられておりません。

辻元委員 この質問をしたのはイギリスの記者だそうです。ですから、アジアとの関係もそうなんですが、ヨーロッパや豪州、アメリカでも、これはことしになってからの動きですから、非常に懸念が広がっている。

 さて、そこで官房長官、かつて、前安倍政権の官房長官は塩崎さんでした。塩崎さんはこういう御答弁をされています。

 この河野官房長官談話を出した前提ですけれども、政府発見資料の中には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかった。しかし、当時、書いた資料、書き物としての資料だけではなくて、各種証言集とか証言とか、それから韓国にも出向いて証言を聴取し、総合的に判断をしたと答弁されておる。

 今もこの御認識でよろしいですか。

菅国務大臣 せっかくの機会でありますから、安倍内閣の慰安婦問題に対しての基本的なことをぜひ述べさせていただきたいと思います。

 これまでの歴史の中で、多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきた。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく。さらに、慰安婦問題についても、今委員が言われましたけれども、筆舌に尽くしがたい思いをされた方を思い、非常に心が痛む。このことは、総理が発言をされております。

 さらに、安倍内閣として、この問題を政治問題、外交問題にさせるべきではない。さらに、前回の安倍内閣において閣議決定をした、そういう経緯も踏まえて、内外の歴史学者、さらには有識者の手によって、さまざまな問題について今検討がされている。その中で、この問題についても学術的観点からさらなる検討を重ねることが望ましい。

 これが安倍内閣の基本的な考え方でありまして、このことに基づいて私たちは今対応しているということです。

辻元委員 塩崎さんの答弁は踏襲しているかと聞いているんです。

菅国務大臣 今私が申し上げたのが、安倍内閣の基本的姿勢です。

辻元委員 ここで、資料の中に強制性を示すものがなかったというところが焦点になっております。

 それで、一部、資料を御紹介したいと思います。

 ここに本があるんですけれども、「終りなき海軍 若い世代へ 伝えたい残したい」、これはアメリカの下院で問題になった書物で、この中の、中曽根康弘元総理のこういう記述がございました。三千人からの大部隊だ、やがて原住民の女を襲う者やばくちにふける者も出てきた、そんな彼らのために、私は苦心して慰安所をつくったこともある、こういうくだりがアメリカで問題になったんですね。

 これに対して中曽根元総理は、これは休憩と娯楽の施設をつくったんだと記者会見でおっしゃったんですが、その後また、一昨年に、こういう資料が出てまいりました。

 皆さんのお手元に資料をお配りしております。ちょっとごらんになっていただきたいと思います。

 これは「海軍航空基地第二設営班資料 防衛研修所戦史室」、これは防衛省から探していただいて取り寄せたものです。「電子複写不可」と書いてありますが、これは古い本だから、誰でもコピーしていいものと違いますよという意味ですので。

 それで、まず一ページ目を見ていただきましたら、下の方に、右の下の三番目に「慰安所開設」というのがございます。そしてさらに次を見ていただきますと、一番最後のくだり、「設営後の状況」ということで、「主計長の取計で」、これはそのまま読みます、「土人女を集め慰安所を開設 気持の緩和に非常に効果ありたり」と出ておるわけです。

 それで、こういうところに、あえてそのまま読みますが、「土人女を集め慰安所を開設」というところに、強制的に集めという、そういうようなものは見つかっていないということなんですね。

 これは政府の通達などもないということですが、今も通達は出しています、世界じゅう通達も出しますが、強制的に集めろとか、そんな通達は普通、出ないと思うんですね。

 そして、次のページを見ていただきますと、この「主計長の取計で」という主計長、真ん中ぐらいで、海軍主計中尉中曽根康弘さんというふうになっております。こういう資料も新たに見つかってきているわけですね。

 この慰安婦問題、私は非常に深刻に受けとめているんですね。ただ単に強制するという文字がなかったというだけで、果たしてその論理が成り立つのか。

 先ほど、塩崎さんの答弁にもありましたように、これは当時の石原信雄官房副長官、対応された方ですけれども、物理的証拠がないのに強制的に慰安所にされたということを断定するのはけしからぬ、行き過ぎであるという批判が当時もあったと。しかし、さまざまな証言やこういう資料から総合的に判断したというのが政府の見解だったわけです。

 それで、私の質問主意書に対する答弁が、総理がおっしゃる閣議決定があるとか、官房長官が閣議決定があるとおっしゃっているのは、私の前安倍政権のときに出した質問主意書に対する答弁でしょうか。いかがですか、総理。総理がおっしゃっていますから。

菅国務大臣 いずれにしろ、慰安婦問題に対しての安倍政権の立場は、私が先ほど申し上げたとおりであります。(辻元委員「だから、私に対する答弁かと聞いているんです」と呼ぶ)あの答弁書は、平成十九年三月十六日付の答弁書です。

辻元委員 そうしましたら、今皆さんにお配りしている資料を見てください。これは答弁書をつけてございます。

 この右側を見ていただきたいんですが、オレンジの傍線を引いてあるところ、同日の調査の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところであると。ここを取り上げられて、こういうことが閣議決定、閣議決定といいましても、安倍総理がみずから出された、何か発出したというわけじゃなくて、私の質問主意書に対して閣議決定をした答弁書という意味です。

 ところが、その上を見てください。お尋ねの強制性の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関連資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の官房長官談話のとおりとなったものである。また、同日の調査云々で見当たらなかった、これはさっきの塩崎さんの答弁と同じなんです。

 この十年前、政府はどのような答弁をしていたかというのが左にございます。これは片山虎之助委員に対する政府の答弁です。

 政府といたしましては、二度にわたり調査をしました。一部資料、一部証言ということでございますが、先生の御指摘の強制性の問題でございますが、政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見当たりません。総合的に判断した結果、一定の強制性があるということで判断した。

 これは十年前も同じ答弁をしているわけですよ。ですから、私の質問主意書に対して、この黄色とオレンジを入れかえて答弁した、同じ内容と理解してよろしいですね、官房長官。

菅国務大臣 いずれにしろ、安倍内閣の姿勢というのは、私が先ほど来述べているとおりです。

辻元委員 ですから、同じですかと聞いているんですよ。どうぞ、官房長官。委員長、ちゃんと答えさせてください。官房長官、同じですかと聞いていますよ。

山本委員長 同じかどうかという質問に対して答えてください。

菅国務大臣 閣議決定自体しておりますので、これについて基づいていくことは当然のことだと思います。

辻元委員 歴代の内閣が言っていることと同じことを、たまたまと言ったらあれですが、私が質問主意書を出して、同じ答弁を質問主意書への答弁で来て、質問主意書への答弁は閣議決定しないと出せませんので、その閣議決定をもとに、何か歴史家に話を聞くとかおっしゃっていますね。

 ということは、歴代の内閣は、先ほど申し上げました言葉をあえて、書いてあったからもう一度繰り返しますけれども、土人女を集めてというところに強制性が書いていないような資料はたくさんあると。しかし、証言の真実性に鑑みですよ。そうすると、閣議決定、歴代の内閣の答弁はずっと同じです。ということは、証言の真実性に疑問があるということですか、総理。いかがですか。総理です、これは。総理ですよ。

菅国務大臣 いずれにしろ、こうした閣議決定をしていることは、これは事実ですから、そうしたものを踏まえて、内外の歴史学者とかあるいは有識者の人で今さまざまな問題について研究がされていますので、これは学術的観点からさらに研究を重ねる必要があるというのが私どもの立場です。

辻元委員 それが通用しますかね。

 要するに、河野官房長官談話を出した前提を、歴代の内閣は同じように答弁してきたんですよ。強制的に集めるとか、通達を、強制的に出せとかはないけれども、証言や総合的に資料を考えて河野官房長官談話を出しましたという。

 総理にお伺いします。

 河野官房長官談話がありました。そして、この河野官房長官談話に対して、安倍政権のときの閣議決定がありました。この答弁書ですよ。歴代内閣が出してきたのと同じ内容を、質問主意書だから閣議決定せざるを得ない、ただそれだけのことです。

 どう考えていくか。河野官房長官談話と、歴代内閣がこういうようにして官房長官談話を出しましたよという前提を、あわせてどう考えていくか。矛盾しているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 私は、この予算委員会で、平成二十五年度の予算を審議するこの場で、長々とこの問題について辻元委員が質問されている意味がよくわからないんですが、根本的にね。

 そして、一番最初に、私がここに立ったから、最初に憲法九十六条についての私の発言について意見を述べられた。

 私には、自由民主党の総裁という立場と、行政府の長という立場があります。ですから、その中において、例えば選挙制度の問題についての質問がありました。その問題について、あなたは、自民党総裁としてこれを答えろと言われました。

 ですから、私は、それを制約としながら、私はその場では、国会での話ですよということについて……(発言する者あり)

山本委員長 ちょっと静かに。

安倍内閣総理大臣 それは国会で決める話ですよということを言った上で、しかし、自民党総裁として、この問題はできる限り進めていただきたいし、約束している問題だというふうに答えました。

 その中において、九十六条について私が言ったのが言い過ぎだというお話があったんですが、しかし、私は同時に自民党の総裁であります。むしろ、皆さんこそ、この問題については言うな、この問題については言えということになっていて、そこで私は、自由民主党としては既に憲法改正草案をまとめています。まとめている中において、私も自民党の一員としてそれに加わってきた。つまり、それをどう考えているかということについては、自分の考えを述べるべきだということについてお話をするのは当然のことだ、このように思ったわけであります。

 そして、先ほどの質問においては、矛盾はしていません。

 なぜ矛盾をしていないかということについてお話をさせていただきたいと思いますが、それは、いわば歴代の内閣において答弁をしてきた。あなたは今、これはたまたま私が質問したことについて閣議決定したと。

 つまり、質問主意書というのは、皆さんが出されるのは重たいんですよ、閣議決定しますから。閣議決定、全員の閣僚のいわば花押を押すという閣議決定なんです。(辻元委員「わかっています、わかっています」と呼ぶ)ここで私が今答弁していますから、私に一々反応しないでいただいて結構なんですが。

 そこで、いわばその重たい閣議決定をしたのは初めてであります。つまり、その重さの中において、では、果たしてそうしたファクトについてどうだったかということについては、今資料を出されたように、さまざまな資料があります。そういうことについては、むしろ、この場で、外交問題に発展するかもしれないという場において議論するよりも、静かな場において、ちゃんと見識を持った歴史家、専門家同士がちゃんと議論するべきだろうというのが私の考え方であります。

 つまり、私は、何の矛盾もしていないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

辻元委員 私はなぜ憲法のことを申し上げたかといいますと、総理は昨日の答弁で、選挙制度の質問を受けたときに、私は行政府の長ですから、それは国会の問題ですというような趣旨の答弁をされたからですよ。使い分けないでください。

 そして、続きを申し上げたいと思います。

 総理は、今、矛盾していないと言いますけれども、これは、こういう形で河野官房長官談話を出しましたよという前提ですよ。河野さんも同じことをずっと、十年も十何年前からも言っている。なぜこの問題を言っているかといえば、外交問題の根幹なんですよ。総理はこうおっしゃっています、残念ながら、この閣議決定をしたこと自体、多くの方々は御存じないと。

 次の資料を見てください。

 各国で日本に対する非難決議が出ております。つい先日も、一月になってからも、特にアメリカですよ。

 総理は、訪米されるときに、歴史認識を一番気になさっていたんじゃないですか。というのは、前回行ったときに、総理が同じような見直しのような発言をした。私に出した、質問主意書とおっしゃいましたけれども、その即日にシーファー大使が、当時のアメリカの大使が、慰安婦の証言を信じると。

 そして、オランダでも、従軍慰安婦の方々がいらっしゃいました。オランダの首相が閣議で激怒と報道されました。そして、韓国が遺憾の意と言っているわけです。このように、世界各地で日本を非難する決議が出ているわけですよ。ですから、総理そのものの御発言で外交問題をつくっています。

 外務大臣にお伺いしたいんですが、例えばアメリカとかドイツとかフランスとかイギリスとか、欧米で日本に対する非難決議がこの三十年ぐらいの間に出たことはございますか。

岸田国務大臣 非難決議、国会での非難決議かと思いますが、過去、韓国国会におきましては、竹島問題ですとか歴史問題等に関して決議が出された例があると承知しております。(辻元委員「いや、韓国じゃない。欧米です」と呼ぶ)欧米、この御質問の趣旨は、慰安婦問題以外のということですか。これにつきましては、現時点では確認をしておりません。

辻元委員 実は、ないんです。

 安倍政権になって、前回、初めて日本に対して欧米からも非難の決議が出たんですよ。そして、今も、アメリカの議員が佐々江大使のところに行ったりしているんです。

 ですから、総理、先ほど見直しをするような含みのある発言をされましたけれども、歴代言っている河野談話の前提と、それを根拠にしてこの談話を見直すということには無理があると私は思います。

 そして、こういうふうにも総理はおっしゃっています、安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたと。これは、閣議決定したと言うけれども、今までの内閣と同じことを答弁書として閣議決定した、多くの人たちは知らないと。世界じゅう知っていますよ。

 アメリカに行かれて、前回のとき、ブッシュ大統領に対してこの問題で釈明をしたということを、ブッシュ大統領みずからがそのときの記者会見でおっしゃいましたよね、安倍から釈明があったということを。そして、多くの人たちは知らないと。世界じゅう、即日反応していますよ。

 そして、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある。修正されたんですか。どうですか。

 これは、安倍総理の前原委員に対するこの間の答弁なんですよ。河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある、そして、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかないという発言を、総裁選のときに安倍総理が言って、そして、このとおりだと認めたんです。

 河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がありますか、どうですか。

安倍内閣総理大臣 今、事実関係において間違いを述べられたので、ちょうどいい機会ですから、ここではっきり述べさせていただきたいと思いますが、ブッシュ大統領との間の日米首脳会談においては、この問題は全く出ておりません。

 ブッシュ大統領が答えられたのは、その前に私が既に述べている慰安婦についての考え方として、いわば、二十世紀においては戦争や、人権が著しく侵害された時代であった、そして女性の人権も侵害された、残念ながらその中において日本も無関係ではなかった、二十一世紀においてはそういう時代ではない、人権がしっかりと守られていく、女性の人権も守られていく時代にしていきたいということを述べていたことについての評価として述べたわけでありまして、その事実関係が違うということだけははっきりと申し上げておきたいと思います。

 そして、その中において、この問題というのは、いわば歴史のファクトの問題でもあります。一方、総理大臣の私の口からそのことについて議論することは、これは外交問題にもつながっていく可能性もあるわけでありますから、そこはやはり専門家に任せていくべきであろう、このように考えたわけでございます。

辻元委員 総理自身が、不名誉を孫の代までに回復したいと言いながら、世界に不名誉をあちこちつくっているというようにもとられかねないということを指摘させていただいて、私は、外交問題としてこれは本当に深刻になるという懸念を表明して……

山本委員長 辻元君、予定の時間が終わりましたよ。持ち時間を守ってください。

辻元委員 特に、日、米、韓、中国などと、北朝鮮の問題をめぐってしっかりと対応しなければいけないときに、懸念を申し上げて、終わります。

山本委員長 これにて海江田君、細野君、岡田君、原口君、辻元君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 日本維新の会の松野頼久でございます。

 総理、きょうは、準備をしていた質問と若干、きのうの夜、通告はさせていただいておりますが、きのうの夕刊、けさの朝刊に、TPP交渉に関して大きな記事が出ておりますので、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 この記事は、まず、二〇一一年の十一月、先発の九カ国からおくれて参加をしたカナダとメキシコが参加をするときに、交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある、同時に、既に現在の参加国で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない、こういう不利な交渉条件を前提として参加を認められたというような記事が出ているんですね。

 総理、こういう事実は、今、政府として把握をされているかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 さまざまな報道が行われていることは承知しておりますが、御指摘の記事につきましても、当事者であるメキシコあるいはカナダ自身がみずからの立場を明らかにしていない中にあって、我が国がコメントをする立場にはないと考えております。

 これまで得られた情報におきましては、TPP交渉参加国は、交渉参加に関心を表明した各国について、包括的かつ高いレベルの自由化にコミットすること、さらには交渉進展をおくらせないことといった考え方を示しているということについては承知をしております。

 いずれにしましても、引き続き情報収集に努めたいと思っています。

松野(頼)委員 ちょっと今の答弁はよくわからなかったんですが、もちろん、この条件にどうこうと日本政府が意見を言ってくれと言っているわけではありません。こういう条件のもとにカナダとメキシコが参加をしたのかという事実を日本国政府として把握されているのかということを聞いているんです。

 もう一回答弁してください。

岸田国務大臣 ですから、今申し上げたのは、この記事に出ておるカナダ、メキシコ、こういった国々自身がみずからの立場を明らかにしているものではありません。それを我が国がコメントするという立場にはないということを申し上げています。

 カナダ、メキシコ、こういった国々とTPP交渉参加国とのやりとりについて、我が国はコメントする立場にはないということです。

松野(頼)委員 いや、コメントしてくれと言っているわけではないんです。

 要は、そういう不利な条件が後から参加をすると課せられるのか課せられないのかという、現状を把握しているかということを聞いているんです。

岸田国務大臣 我が国の立場は、今申し上げたとおりであります。そして、少なくとも、御指摘のような条件、我が国には提示はされておりません。

 引き続き、情報収集に努めたいと思います。

松野(頼)委員 そして、この記事では、当時の野田政権はこの事実をカナダとメキシコの参加意向表明後に把握をしている、著しく不利なために、両国政府に、水面下で、こんな条件を受け入れるのかと問い合わせたが、両国は受け入れを決めた。

 要は、どの政権というよりも、政府がこういう問い合わせをカナダなりメキシコにしたのかという事実を確認したいと思います。

岸田国務大臣 さまざまな報道が行われているのは承知しております。

 しかし、他の国々とTPP交渉参加国との間でのやりとりについて我が国がコメントする立場にはない、このとおりでありますし、我が国には、少なくとも、そうした御指摘のような条件の提示はされていない、こうしたことでございます。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。私が聞いているのは、日本国政府がこういう確認をカナダなりメキシコにした事実があるとここに書かれているので、それがあるのかないのか聞いているんですよ。

岸田国務大臣 報道につきましてはいろいろ行われている、承知しておりますが、報道について一々我が国がコメントする立場にはない、こうしたことでございます。

松野(頼)委員 私も、報道、これがあるから政府に直接確認しているんですよ、この場で。

 そういう問い合わせをしたかしないかという事実はあるんですか。これは日本国政府として答えられないはずはないと思いますよ。

岸田国務大臣 御指摘の点は、カナダ、メキシコ、こういった国々がTPP交渉参加国とどのようなやりとりをしたのか、こうした報道の中身ですが、これについて我が国がコメントするということは、言及するという立場にはない、こうしたことであります。

 情報収集については引き続き努力する、これは当然のことでありますが、この点について言及する立場にはない、このように申し上げております。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。中身を教えてくれとか、その条件にどうこうということを、コメントを求めているわけじゃなくて、こういう条件で参加を表明しなければいけないのかどうかということを、日本国政府がメキシコなりカナダに確認をしたのかということを聞いているんですよ。

岸田国務大臣 この予算委員会の場で、これについてコメントする立場にないということを申し上げています。

 少なくとも、我が国に対して御指摘のような条件の提示はない、これだけは申し上げておきたいと思います。

松野(頼)委員 委員長、これは、政府が相手国の政府に確認をしたのかという事実を聞いているんです。交渉の中身云々ということにコメントしてくれなんということは全く聞いていないわけでありまして、これはきちっと答えてもらわなきゃいけないと思いますよ。この場で政府に確認しているわけですから、報道を見て。

山本委員長 もう一度、岸田外務大臣、このあれを確認していただくように。日本政府としての立場を明確にしてください。

岸田国務大臣 情報収集については引き続き全力を挙げている、これは当然のことであります。

 しかし、御指摘の点についてコメントする立場にはない、このように申し上げています。

松野(頼)委員 何度も申し上げていますが、私は、条件に対してコメントしてくれなんということは一度も言っていないんですよ。

 こういう交渉条件が本当に行われたのか行われていないのか、日本国政府がカナダの政府なりメキシコの政府に問い合わせて情報収集した事実があるのかということを聞いているんですよ。

岸田国務大臣 情報収集に努めなければいけない、この御指摘は当然のことですし、我々も全力で情報収集に努めています。

 しかし、この報道にあるようなことについて我が国としてコメントする立場にはないということを申し上げております。

 そして、我が国に対してはこうした条件の提示は全くないということ、これをここで申し上げさせていただいております。

松野(頼)委員 いや、政府が問い合わせしたんですかということを、政府に私は議会として聞いているんですよ、今。これを答える立場にないというのは、ちょっと余りにも怠慢だと思いますよ、政府として。

山本委員長 岸田外務大臣、日本がカナダ、メキシコに問い合わせしたかどうかも含めて、情報収集しているかどうか、これについてちょっと。

岸田国務大臣 あらゆる国との間で二国間協議を行い、情報収集に努めております。その情報収集には引き続き努力をしなければいけないと思いますが、この場でコメントする立場に我が国はないということであります。

松野(頼)委員 これは、外務大臣がこの予算委員会の場で、相手国の政府に、中身はいいですよ、外交交渉ですから、中身を聞いているわけじゃありませんよ、要は、事実関係を問い合わせをしたのかしないのかというのは、答える立場になくはないですよ。

 こんなんじゃ予算審議できないじゃないですか。ちゃんと答えさせてください。

山本委員長 いやいや、松野君、それも含めて情報収集に努めているという答弁ですから。

松野(頼)委員 カナダ、メキシコ政府に問い合わせたんですかと聞いているんですよ。

安倍内閣総理大臣 今、外交を預かる立場として外務大臣から答弁をさせていただきました。

 松野委員も官房副長官をやっておられたからよく御承知だとは思いますが、このTPP交渉については、まだ我々参加をしていないものでありますから、なかなか参加国同士のやりとりについては情報収集が難しいということであります。

 かてて加えて、米国と他の国とのやりとりについては、それぞれが外交交渉を行っておりますから、その中身については、当然、お互いに守秘義務がかかっておりますが、我々も必死の情報収集を行って情報をとっているわけであります。

 しかし、その問い合わせをしたかどうかも含めて、我々は、そうした情報収集をする際に相手国に問い合わせをしたかどうかということについても、今この場で申し上げることは、今後の情報収集にも大きな影響があることから、ここでは申し上げられないということを、今、外務大臣が申し上げているわけでありますし、いわば、米国とそうした国々とのやりとりについて私たちは当然コメントするべきではない、こういうことでございます。

松野(頼)委員 それは当然、総理がおっしゃった後段の、他国の交渉条件に対して日本国政府がコメントするべき立場ではない、これは当たり前の話です。

 ただ、要は、日本国政府がカナダ、メキシコの政府にこういう事実があるのかということを問い合わせたか問い合わせなかったかということは、これは答えてもらわないと、審議は続けられないと思いますよ。

 それで、今、いろいろなやじがあるけれども、申し上げます。

 おととしの十一月に、自民党は、交渉条件がわからない状態の中で、当時の野田政権に対して、条件がわからないのに交渉に参加することに反対するという決議を出されているじゃないですか。それは、自民党として国会に決議を出されているんですよ、TPP交渉に反対する決議というのを。

 中身は何かというと、内容がはっきりしないし、国民生活に影響が大きい内容だから、交渉条件がはっきりしない段階で交渉に参加する表明をするのは反対だといって、党を挙げて決議を出しているじゃないですか。その決議は、中身についてわからない状態の中で交渉に参加することは反対だということです。

 ですから、こういう状況の報道がなされている以上、少なくともカナダ、メキシコに交渉条件を問い合わせるというのは、ある意味、問い合わせる方が当たり前の話で、問い合わせをしない、それをコメントできないというのは余りにも、政府として答弁できないというのはおかしいと思いますから、もう一回答えてくださいよ。

岸田国務大臣 カナダ、メキシコを含めて関係各国と、情報収集のために、協議、さまざまな接触を行っている。当然のことであります。

 しかし、具体的に、何を問い合わせたとか、どの部分について話をしたとか、こういったことについて今この場で申し上げることはできないと思っていますし、なおかつ、これは、TPP交渉参加国とカナダ、メキシコの関係についての記事であります。この当事国がみずからの立場を公にしていない、明らかにしていないにもかかわらず我が国がコメントすることは控えなければならないのではないか。

 そして、我が国にとっては、少なくともこの記事にあるような条件の提示はありませんということ。

 国民の皆さんに対してやはり最大限情報を明らかにする、こうした努力はさせていただいていると考えております。

松野(頼)委員 それは、政府として、いろいろな角度で情報収集をして、もしルールに参加をするときにはこういうルールになりそうだということをいろいろなチャンネルで少しでも把握をして、それをきちっと国民の前にできるだけ示して、そして、参加を表明するかしないかというのを政府の判断でする、これは当たり前の話です。

 私たち国会は、参加をもし表明するならば、その後、条約批准ということで、それに賛否を、私たち議会としては採決で意思をあらわす、これが当たり前の話なんですけれども、少なくとも、その前段の、ルールは大体こういうふうになりそうだということを探って、議会に対して少しでも説明するというのは、これは当然の責任だと思いますよ。

 皆さんが野党のときに、さんざんそれを言ってきたじゃないですか。TPP特別委員会をつくらなければいけないとか、状況がわからない中で交渉参加には反対する決議を出されたり、これはある意味、当たり前のことだと思いますよ、議会として。

 何でそれが、少なくとも私は中身を聞いているわけではありません。カナダ、メキシコに関して、少なくとも報道の中では、日本国政府は問い合わせた、こういう報道が出ているわけですから、これを予算委員会の場で、確認したんですかということを聞いているのに、答えないというのは、非常に不誠実だと思いますよ。

 まあ、これだけで時間を潰すわけにいきませんから、私たちは、自民党が野党のときに皆さんが要望されたTPPの特別委員会の設置というのと、同時に、本予算委員会でTPPの集中審議というのを、委員長、ぜひ求めたいと思いますので、お取り計らいいただきたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

松野(頼)委員 実は、きょう、幾つか、本題としてやろうとしていた質問がございます。

 今回の補正予算、私たちは賛成をさせていただきました。これは、議会の中で、野党としては異例の対応だというふうに思います。

 確かに、安倍総理が就任をされてから株価がずっと上がって、きのうは一万二千円という大変な数字を出されました。この数字、今のこの景気の状況、私は、野党という立場ですけれども、大変評価をしております、実際に数字を上げているわけですから。

 ただ、そういう中で、今回の補正予算、公共事業中心に偏り過ぎているとか、いろいろな問題はありますが、やはり今の景気の腰を折ることはいかがなものかということで、私たちは、野党の立場でありますが、賛成をさせていただいたつもりでございます。

 ただ、その中で、中身、きのうからいろいろな、公共事業中心だとかいう議論が続いていますが、きょうは、テレビを見ている皆さんにわかりやすい、少し細かい議論をさせていただきたいと思いますので、これは総理じゃなくて、農水大臣で答弁は結構です。

 今回、実は、補正予算の中に、五十件、一兆五千億の基金を積みました。そもそも、この基金というのは、何年間かで使い切るという事業であります。

 補正予算というのは、緊急性を要するから、緊急経済対策ということで補正予算を組むんですけれども、補正予算で基金事業を組むというのは、緊急性を要する補正予算の趣旨にちょっと合わないのではないかというふうに私は思っているんですが、これは大きなあれですから、総理にお答えいただければと思います。

林国務大臣 森林の基金ですから、私の方からお答えさせていただきますが、この御指摘のあった基金の……(松野(頼)委員「まだ指摘していないです」と呼ぶ)今、基金というふうなお話がありましたので……(松野(頼)委員「全体の基金と補正予算の関係」と呼ぶ)基金については……

山本委員長 林大臣、補正についての案件の中で基金という予算を入れることについての抽象論で結構ですから。

松野(頼)委員 いやいや、これは所掌が違う、所掌が違う。総理。

山本委員長 総理に聞いているの。ちょっと林さんの話を聞いてから。

林国務大臣 私のところの基金もそうですから、一応お答えいたしますと、例えば、今、基金というお話がありましたけれども、これは経済情勢の変化とか復興とか、それぞれ、そのときの課題に応じて計上するということになっておりますので、これまで、民主党政権におかれても、補正とか予備費でこういう基金を計上されておられるということでございます。

松野(頼)委員 今のを農水大臣がお答えになるとちょっとよくない状態なので、総理、お答えください。基金と補正予算の関係。

山本委員長 その前に、甘利経済再生担当大臣。補正の担当ですから。

甘利国務大臣 経済財政政策全般を担当いたしております。(発言する者あり)

山本委員長 御静粛にお願いします。

甘利国務大臣 もちろん、補正は緊急性を要しますから、その年度内に適切な事業が見つかって、それが消化できればベストだと思います。

 しかしながら、緊急経済対策とはいえ、当然、いろいろな緊要性を要するものを探していく中でも、期間が迫っておりますから、年度をまたぐという事情は出てくると思います。そして、効果的に、即効性と、それから、いい内容の案件ということになってきますと、どうしてもこの時点で年度をまたぐ必要性も出てくるということで、その知恵としてこういう手法を使わせていただいているというところでもあると思います。(発言する者あり)

山本委員長 御静粛に願います。

松野(頼)委員 これは本当は財務大臣か総理がお答えになっていただく案件だと思いますが、まあ、それはいいです。

 資料一をごらんください。ここから農水大臣の出番なんですけれども。

 林業整備、林業等振興対策事業という、五十の中の一つの基金であります。この基金は、麻生内閣のときに、あのリーマン・ショックの緊急経済対策でつくられた基金です。これは、麻生内閣のときが、千三百七十一億のうち補正が千二百三十八億なんですね。その次の年はそんなに多くありません。その次の年は、今度は東日本大震災復旧復興ということで、また補正になると千三百九十九億積まれています。また、今回の安倍内閣の補正で八百九十八億積まれています。

 要は、この基金を見ていただくと、当初予算は百三十二億から今は六億円、ことし十六億円ということですけれども、どんどんどんどん減っていっている事業なんですね。しかし、補正になるとぼんと積まれて、それを三年間なり何年間で消化をするということをやられている事業なんです。

 ですから、例えば、緊急経済対策だ、だから補正だといって、年度をまたぐことはあるかもしれませんが、さっき甘利大臣がおっしゃったように、三年間で使っているわけですよ。これは、緊急といいながら、余りにも長いんじゃないでしょうか、甘利大臣。

甘利国務大臣 先ほど、そんなに大事なものであるならば本予算でやればいいじゃないかというお話というか不規則発言がありました。もちろん、本予算の中でやるもので、早く始めた方が、早く手をつけた方がいいという案件もあると思います。そういう案件はできるだけ前倒しをして取り組んでいくという意味合いもあろうかと思います。

 年限について、緊急経済対策である以上、できるだけ短いうちに完結するのがベストだと思います。

 しかしながら、この緊急経済対策がどうして発案されたかというと、これは、前の政権のときにも、七―九の数字が年率換算でいうとマイナス三・五になって底割れする、だから、民主党政権下でも補正の必要性が言われたわけであります。その底割れを防ぐためには、あるロットはしっかり早目に打っていかなきゃならない、そういういろいろな事情を勘案して、場合によって、若干、本来の趣旨よりも長くなってしまう案件が出てきたというふうに承知をいたしております。

松野(頼)委員 当初予算がどんどんどんどん削られて、去年は六億しかなかった事業なんですけれども、ことしはちょっと復活して十六億となっています。

 これは、中身の話をさせていただきますと、森林の、林業対策ということで、いろいろな幾つかのメニューがあります。一枚めくってください。

 この基金ですけれども、当初、二十一年、麻生内閣でつくられたときは、地球温暖化防止に向けた森林吸収目標の達成と木材・木質バイオマスを活用した低炭素社会の実現が求められている中、これが冠なんです。後、ずっと書いてあります。

 その下が、二十三年度の補正で積まれたときの実施要綱なんですけれども、次は、東日本大震災により、東北地方で多くの住宅が被災し、沿岸部を中心に木材加工施設等に壊滅的な被害がもたらされたといって、今度は東日本大震災で木材が必要だからというタイトルに変えられて、あと、中身は同じなんですね、ここのアンダーラインを引いている文章。

 要は、この基金にお金を積むことが目的化されているのではないかという疑念を持つわけです。それはいかがですか、農水大臣。

林国務大臣 これは、平成二十一年、今御指摘がありました経済危機対策、それから雇用対策ということで、平成二十二年度の予備費、それから二十二年度の補正予算、これは松野先生たちのときの円高・デフレ対策九十四億円、それから、今御指摘のあった震災復興対策の二十三年度の三号の補正予算、それぞれ積んでおります。

 それぞれ目的があって補正と予備費の対策等を打っておりまして、メニューも異なるものにつけておるということでございますので、それぞれの目的に従って基金には積んでいくんですが、そのお金をどういうメニューに使うかはそれぞれの目的に応じて変わってきている、こういうことでございます。

松野(頼)委員 この基金は会計検査院に指摘されているんですね。この基金の中の二つの事業、メニューが会計検査院に指摘をされています。

 木造公共施設整備という事業があります。どういう事業かというと、このパネル、今、資料の中にもつけさせていただいています。資料三をごらんください。

 要は、国産材を使う公共建物、公共施設に関して補助金を出しましょうというような施策です。例えば、こういう福祉施設とか保育園とかに国産材を使う、そうすると補助金がもらえるという事業なんですね。

 それで、会計検査院は、この約八百幾つやった事業の中で、もっと言うと二百十幾つ、その後まだ会計検査を受けていませんから、二百十幾つの事業の中で二百六、指摘をしているんです。

 また、もう一つ、木質バイオマス利用施設整備というメニューでは、やはり、百二件、九十億円の指摘をしているということ。

 これは、なぜ指摘されたか、農水省、わかっていますか。

林国務大臣 昨年十一月ですが、会計検査院から、木造公共施設等整備事業を実施する際の費用対効果分析におきまして、まず、地域間の交流が図られる効果額等が適切に算定されていない、それから、効果額算定に用いられる係数が検証困難となっているとの意見表示があったということでございます。

 とりあえず、今の御質問に対してはそういうお答えになります。

松野(頼)委員 そうなんです。

 要は、この政策目的は、資料四につけてありますけれども、こういう建物を補助金を出してつくる目的とは、この施設を見た人が、木材を使った、国産材を使った建物はいいなと思って、自分たちもこういう建物を住宅に用いる可能性がある、需要拡大効果というのを狙って、この建物に対して補助金を出しているんですね。ただこれをつくるために補助金を出しているんじゃないんです。要は、その需要が、これを補助金を出してつくることによって拡大していく。

 ここが不思議なんですけれども、この建物を見て、いいなと思って住宅を建てる人が、いわゆるBバイCですよ、〇・一となっているんです。千人に一人が、こういう建物を見たら、自分も住宅に用いたいと思うから、補助金を出してこれをつくっている。

 この〇・一、千人に一人の根拠は、農水大臣、何ですか。

林国務大臣 今、会計検査院からの御指摘を御説明したところですが、この係数については、係数が検証困難となっているという指摘がございました。

 したがって、そもそもこの事業は、地方で計画を出していただいて、自分たちでこういう係数を使ってBバイCを出してもらって計画を出す、こういうことでやっておりましたので、費用対効果が、会計検査院の指摘が出ました。これはこの間、柿沢委員からも御指摘をいただいたところでございますので、その後確認をいたしまして、都道府県に、根拠が明確でない係数は使用せずに費用対効果分析を行う、それによって一を超えたものを採択するように、既に一月に、事務レベルで方針を通知したところでございます。

松野(頼)委員 いや、違いますよ。このBバイC効果に関しては、林野庁がつくっているんですよ、この〇・一というのは。このモデルのBバイCをつくった根拠を伺っているんです。

 このBバイCにのっとってそれぞれの自治体がやって一を上回ってくださいというのが林野庁の責務なんですけれども、このBバイCは林野庁がつくっているんです。ですから、この〇・一という根拠をお聞かせください。

林国務大臣 この〇・一%という係数については林野庁がつくっているという御指摘でしたが、それはどういう資料で示されているものでございましょうか。

松野(頼)委員 これは林野庁に聞いたら、ここのページに書いてあります。資料五を見てください、〇・七八、林野庁調べ。ここも、〇・一、林野庁調べと書いてあるんですよ。

 これは、林野庁と林野庁の外郭団体でつくったハンドブックを利用して〇・一となっていますし、会計検査院も、この〇・一ということに対して指摘をしているんですよ。説明してください。

林国務大臣 林野庁調べということでそこに書いてあるということでございますが、今御指摘のあった全国林業構造改善協会、ここが編さんをしたものに記載されてある、こういうことだと思っております。

松野(頼)委員 ですから、林野庁は、その数字を用いて、これに補助金をつける目的は、この建物に補助金をつければ、これを見た人が、千人に一人、木造の国産材を使った家はいいなと思って住宅を着工する、だから、千人に一人需要が拡大することを目的として補助金を出しているわけです。そのベースの数字として〇・一を林野庁が用いているから、この政策を遂行しているわけですよ。そうでしょう。

 もう一回、お答えください。

林国務大臣 今御指摘のとおり、このハンドブックというものに記載されたものということでありますが、それも含めていろいろなBバイCを出して、トータルでBバイCが一を超えるものという計画をつくっていただいて、それにこの基金から出す、こういう形になっておりますので、したがって、今御指摘のあった、会計検査院から指摘のあったものについては、もともとは改善協会のものですが、その根拠が必ずしも明確でないという御指摘がありましたので、これについては使わないようにという指示を既に出したところでございます。

松野(頼)委員 そうすると、これを使わないと、この政策目的は何になるんでしょうか。

林国務大臣 それ以外にも、そこにお出しいただいていますように、いろいろな効果を出していただいて、それでBバイCが一を超える。したがって、今、松野委員御指摘になったように、これと、それからもう一つ指摘を受けております、それは使わないようにというふうにいたしました。

 したがって、今度出てくるものは、かなりBバイCということではきつくなってくるというふうに我々も考えております。

松野(頼)委員 いや、BバイCの計算がきつくなる話ではなくて、政策目的が変わったんじゃないですかと言うんですよ。

 要は、需要拡大効果とか幾つかの効果を図る中で、炭素を吸収するとかいろいろな効果があるでしょう。その中の需要拡大という効果がなくなったということは、大きく政策目的が変わっているから、実施する政策の中身も変わらなければおかしいんじゃないですかということを申し上げているんです。

林国務大臣 今の〇・一というのは、根拠が不明であるという指摘がございましたから、これは使わないようにと。

 したがって、我々としても、今後さらに調査を進めて、必要であれば有識者なりのお話も聞いて、きちっとした根拠のある係数があれば、それを改めてお出しすることもあり得ると思いますけれども、今の段階ではそれがありませんから、この係数は使わないでBバイCを出してください、それで、BバイCが一を超えるものは計画できちっとそれを出していただきたい、こういうことでございます。

山本委員長 林大臣、需要拡大目的が変化したかどうかについてはいかがですか。

林国務大臣 幾つかある中で、これは一つのものでございますから、それ以外にも、きちっと県の方で、こういうことで効果が出るというものを出していただければ、それは、この係数を使わないものについては、当然、見る対象にはなってくると考えております。

松野(頼)委員 もう一つ、今の需要拡大効果の中で、公共施設における地域材需要拡大効果というのもあるんですが、要は、これを見た自治体が、自分たちもいいなと思ってこのものをつくる可能性があるということ、これは〇・七八という数字を用いているんですね。この〇・七八の根拠を教えていただけますか。

林国務大臣 これも先ほどと同じことでございます。

松野(頼)委員 すると、この係数も使わないということですか。

林国務大臣 お答えいたします。

 これも、同じように会計検査院からも指摘を受けておりますので、先ほどと同じように、この係数は使わないようにという指示を出したところでございます。

松野(頼)委員 そうすると、効果の二つ、また、バイオマスの方も指摘されていますからあれですけれども、少なくとも、今御答弁いただいた効果二つ、これは、係数があやふやだからこの数字はもう使わない。数字を使わないというよりも、では、こういう効果はもう見込まないということでいいんですね。

林国務大臣 この制度の非常に地方で人気のある一つの理由は、独自にそれぞれの都道府県でこういうBバイCをつくっていただいて、そしてそれを計画に出していただく。そのときにこういう係数を使いなさいというのはこのガイドブックにあったわけですが、それが今、その二つについては会計検査院から御指摘があったので、それは使わないようにしなさいと。

 したがって、我々も、これにかわるようなものがないか早急に検討したいと思っておりますけれども、計画をおつくりになる方で、これ以外に、実際に松野議員もおわかりだと思いますけれども、これは効果はあるんだと私は思っております。

 したがって、係数をどうするかという問題についてはいろいろやらなければいけませんが、県の方でこういう計画をつくってやっていきたいというものでBバイCがきちっとあるものであれば、これはきちっと計画として認めていきたいと思っております。

松野(頼)委員 効果を後づけにしたら、つくることが目的になっちゃうじゃないですか。要は、効果を目指して予算をつけて物をつくるわけですよね。いや、この効果はもうない、数字が曖昧だからもう使わないように、この効果も使わないようにと言っていたら、本末転倒の議論なんじゃないですか。つくることが目的化している。

 要は、効果を目指して予算をつけて物をつくるのが当たり前の話ですから、政策を実行するのが。では、その効果が全く、それはもうだめです、この効果は関係ありませんと言い出したらば、それはちょっと手段と目的が違いませんか。お答えください。

林国務大臣 ですから、この効果というものがないと言っているわけではなくて、例えば、住宅における地域材需要拡大効果というものを算定するときに、〇・一というのは根拠がないと会計検査院が言われたので、これにかわるものがどういうものかということをやらなきゃいけないということを申し上げているので、住宅における地域材需要拡大効果がないというふうに申し上げているのではないということは御理解をいただきたいと思います。

松野(頼)委員 これは会計検査院も、資料の九をごらんください、二十三年度まででこの事業は終了するとしたもののということで、終了すると思っていたんですね、会計検査院は。それはそうですよ。効果のデータがしっかりしていないという状況で、効果がどんどん変わってくるという状況で。

 ただ、驚きましたのは、今回の補正予算でこの事業をやりますか。

林国務大臣 今御審議いただいているのは当初予算でございまして、この間、松野先生たちにも御賛成いただいて通った補正予算については、お認めいただきましたので、今申し上げたような考え方に従って、きちっと執行してまいりたいと思っております。

松野(頼)委員 さっきも申し上げましたが、中身にはいろいろ問題はあるが、景気の腰を折ってはいけないということで、私たちは賛成をしたというつもりです。

 ですから、それはあれにしても、要は、今年度、この八百九十八億積んだ基金の中で、この事業を何事業、幾らやるのか、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 これは、先ほど御説明したように、補正予算を成立させていただきましたので、これから計画を出していただいて、それで、先ほどのようなBバイCをきちっと見て、基金にそれぞれ入れていく、こういうことになろうかと思います。

松野(頼)委員 そうすると、では、これは、BバイCのまず費用対効果がきちっと算定、数字が算定できてから執行するということでよろしいですね。

林国務大臣 委員がおっしゃいましたように、BバイCをつけて出してもらうわけですね。それで、我々はそれを見て、基金に、県に出していく、こういうことになります。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。

 まず、林野庁、農水大臣が、この政策を遂行する効果は一体どういうものなんだということを割り出すのが先なんですよ、それぞれの事業体がやるんじゃなくて。要は、これを見た人が、千人に一人、自分が家を建てたいといって需要が拡大するからこういう政策をやりますというのがこの基本なんですよ。そうでしょう。

 その最初の設定のところをきちんと決めてから、もう一回、この予算の執行をされるんですねということです。

林国務大臣 最初に御説明したように、それぞれの都道府県が計画をつくって出してもらう、そこはなるべく自主性を持っていただいて、それぞれ事情が違うところもありましょうから出してもらって、それを我々が見て、なるほど、こういう計画ならこの政策の目的に合っているねということでやっていくということでございますので、したがって、先ほど通知を出したというのは、各県に、会計検査院で指摘があったこの二つの係数については使わないでくださいという通知を出したわけです。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。

 会計検査院は二つ指摘していまして、本省の方、要は、貴庁に対して指摘している部分は、その効果が曖昧であるということ、それぞれの施設に関しては、来場者の数が違っているとか算出のあれが違っているからBバイCの数値が違うということ、二カ所指摘しているんです。

 本省に対しては、BバイCのもとになった効果の数字が判明しない、問い合わせても持ち合わせていない、だから、そこの部分を一カ所指摘。それぞれの施設に対しては、利用者数が間違っていた、これは利用者数に入らないんじゃないかということを指摘している。二つ指摘しているんです。

 だから、本省の方としては、BバイCの基本となる効果、要は、千人の人が見たら一人家を建てるかもしれないという、メニューの中の幾つかのこれは一つの事業なんですけれども、この事業に関しては、きちんともう一回効果を出してから実施されるんですねということを聞いているんですよ。

林国務大臣 結果的には、先生がおっしゃったことになると思います。

 それで、結果的にはというのは、先ほど私が御説明したように、この係数はもう使わないで計画をつくってくださいというふうにしますから、これが入っていないものでやっていただくということになるわけですね。

 したがって、結果としては、これは数字を、さっきお答えしたところであったんですが、それが余り根拠が明確でないと指摘を得たので、これにかわるものは我々も早くつくらなきゃいけないと思いますけれども、それを使わずに、それぞれで計画をつくってくださいと。それで出てきたものをきちっと見るということにおいて、先生が御指摘したとおりになる、こういうことでございます。

松野(頼)委員 ちょっと時間を間違えていて、五分前と入ったのであれですけれども、ぜひそれは各自治体に通知をしてください。

 それと、今年度、一・七億掛ける二百八十二施設、二百四十億、同じものを今つくろうとしているので、ぜひ、その効果がしっかりしてからそれは執行してください。

林国務大臣 おっしゃるとおりでございますので、したがって、この数値は使わないようにという指示を既に事務的には出しておりますが、さらに徹底をしていきたいと思っております。(松野(頼)委員「通知も」と呼ぶ)

山本委員長 地方への通知。

林国務大臣 通知を出しました。(松野(頼)委員「いや、出してください、この効果は使わないようにと」と呼ぶ)これを出しております。

松野(頼)委員 わかりました。

 ちょっと違うテーマに行きます。

 実は今、福島県におけるお子さんたちの甲状腺の検査をしています。この検査は、三十六万人、ゼロ歳から十八歳までのお子さんたちが検査の対象なんですけれども、実はまだ十五万人しかできておりません。

 これはぜひペースを上げていただきたいと思うんですが、今のこの、三十六万人で、二年たって十五万人しか検査ができていないという状況について御答弁いただきたいと思います。

石原国務大臣 ただいま松野委員が御指摘されましたとおりで、福島県では、知事さんの思いもありまして、県が実施主体となりまして、県民の皆様方の健康を長期にわたって見守るための健康管理を行い、そんな中で、二十五年度、来年度でございますけれども、甲状腺がんを発見する等々の甲状腺の検査を行うという計画になっております。

 委員の御指摘は、まだ半分であると。これは、御存じのとおり、放射線濃度の高いところ、あるいは、福島、郡山が終わりまして、これからは浜通りの北部、南部、さらに会津というふうな計画になっておりますけれども、福島県でも、既に、予定を前倒しして実施すべく、これはエコーの調査でございますので、会場を広くとる、一度に多くの受診者の検査を実施できる体制、あるいは、検査に従事する人材の育成のために、地元の医師会の方々の協力を得て研修会をことしからやるなど、今委員の御指摘のとおりの前向きな前倒しの方法をとっていると聞いております。

松野(頼)委員 スピードアップを非常に地元の皆さんは求めております。もっと、福島県内だけじゃなくて、このときの実施で、県外の検査機関との連携というのもメニューに入っているので、できれば、週末、ピストンでバスで他県でも行って、オール・ジャパンの協力を仰いで、ぜひ、一刻も早くスピードを上げていただきたいと思います。

 特に、A1、A2、B、C、これは四段階になっているんですけれども、五・一ミリ以上の結節、要はしこりですね、二十ミリ以上の嚢胞を認めた人、これは二次検査の対象になっているんですが、七百三十五人となっているんですけれども、七百三十五人のうち、二次検査を受けられた方は今何人いらっしゃいますか。

石原国務大臣 ただいま委員の御指摘、平成二十三年度に要精密検査とされた方々が百八十六名で、百六十二名の受診が済んでおります。二十四年度、要精密検査とされた五百四十九名については、日程の調整を行って順次進めているということで、一割に当たる五十六名が受診済みだと聞いております。

松野(頼)委員 きょうは時間が来てしまったので終わりますけれども、これは与党も野党も関係なく、この福島の特にお子さんの健康被害に関しては、オール・ジャパンで、ぜひ速度を上げて地元の皆さんの不安を解消していただきたい、このことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、松浪健太君から関連質疑の申し出があります。松野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 まず、質問に入る前に、今、それこそ松野委員の質問に関連しまして、ただいまの林業再生事業のうち、木造公共住宅等の整備について、平成二十五年に決定された全施設のBバイCの資料の提出、これを委員長にお願いいたしたいと思いますけれども、理事会でお諮りをいただけませんか。

山本委員長 後刻、理事会で検討いたします。

松浪委員 ありがとうございます。よろしくお願いを申し上げます。

 本日は、我が党日本維新の会が結党されて初めての、本予算での基本的質疑ということになります。

 質問に入る前に、我が党の基本的なスタンスというもの、我々がなぜ存在しているのかということについて、まず総理にも共通の御理解をいただきたいというふうに思います。

 我が党は、大阪から発祥し、そして、この国の統治機構を変えるということを目的に我々は行動をいたしております。

 自民党、民主党、政権交代があります。我々が目指すのは維新でありますので、現状の中央集権体制を前提とする以上、この政権交代というのは、我々にとっては、江戸時代でいえば将軍様がおかわりになったというようなお話にしかなりません。今までの体制のもとで、老中がいて、そしてこれまでの幕閣がいてという体制から、我々はまさに新政府をつくろうということを目的に行動をしているわけであります。これがまさに、統治機構を道州制で変えて、そして我が国の政治文化を変えていくということであります。

 ですから、我々の行動パターン、先ほど松野委員からもお話がありました、是々非々で行動します。今までの野党であれば、補正予算に賛成をするというようなことはなかなか考えられなかったと思いますけれども、我々は、現状の日本にとって何が必要なのかということを判断してこれを行っているわけであります。

 ですから、まず、統治機構を変える前に、我々は、今までの与野党の概念を変えていく、政治文化を変えていくということを行っていきたいというふうに思っております。

 そして、私も今、国会対策委員長代理という仕事を預かっておりますけれども、この国会、本当に前近代的なことがたくさんある。実は、この会議を開くためには、こんなばかなことがあるのかという折衝が国会の中でたくさんあるわけであります。(発言する者あり)ありがとうございます。与党席から、そのとおりだという声があります。野党席からもありますよ。

 国会対策委員会という非公式の仕組みが大きな力を持って、この委員会を開く前も、実は、このテレビ中継、与党と野党の割合、どれだけにするんだ。そばじゃないですけれども、二、八がいいか、いや昔は四、六だよ、こんなことで理事会がとまってしまうとか、参加をしないとか、こういうことがある。そして、ほかの委員会に行けば、所信演説で、その間副大臣がいないから、この間は委員会を受けられませんねと。いや、大臣が受ければいいじゃないですか。

 それでも、野党は今まで、そういうことを引き延ばしのために使ってきた。ばからしい。

 我々自身は、結党のときには、副大臣は大臣がいないときのためにつくったんじゃないか、大臣がいなくても、委員会の質疑、こういうものも進めていっていいんじゃないか、新しい国会の姿をつくろうじゃないか、そういうことを申し上げてきたわけであります。ありがとうございます。早速、与野党から拍手をいただきました。

 それで、この質疑に入る前の、それこそ総理の所信の演説ですね、これも私はおかしいと思いますよ。四演説が行われる、一時間半もお話しになる。衆議院で話したことを、その足で参議院に行って同じことを言う。総理大臣は、こんなに暇なんですか。そんなわけはありません。我々は、国家のトップの体力はできるだけ温存をして、国家のために使っていただきたいというのが本音であります。

 このことについては小泉内閣のときにも問題になったと思いますけれども、総理、いかがですか。所信の説明、こうしたものはやはり一回でいいな、二回読んだらちょっとこれはおかしいんじゃないのかな。二度目の総理をされて、感想をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、松浪健太議員から、大変建設的な御指摘をいただいたと思います。さすが維新の松浪、こういう認識をさせていただいたところでございます。

 そこで、国会については国会の皆様に決めていただきたい、このように思うわけでございますし、当然、やはり国会の審議は極めて重要でございます。

 もちろん、今、松浪委員が指摘されたように、総理大臣の仕事はそんなに暇ではないわけでございまして、例えば、先般もIOCの評価委員がやってきているわけでございますし、同時に、外国からの賓客も来ているわけであります。しかし、委員会が開かれている。委員会が終わった後、スロベニアの首相と首脳会談をやるわけでございますが、結局、それは三十分ぐらいになってしまうわけでありまして、そして、そうしたものを終えてから、JOCの委員との晩さん、私が主催をしている晩さんに出なければいけないということになるわけでございます。つまり、そこではオリンピック招致に対して我々も勝負をかけるわけでございますが、今、私は体調、体力が万全でございますが、しかし、一日かなりこの予算委員会での審議に集中した後でございますから、これはなかなか大変なところもあるわけでございます。

 そういう点においても、行政の長としては、そんなところも勘案をしていただければ大変ありがたいな、こんなようには思うわけでございます。

松浪委員 この基本的質疑の時間をめぐって与野党も随分もめているわけですけれども、我が党は、地方議会の皆さんが十数人いらっしゃる。地方議会だったら、最初からぱつぱつっと決めて、それで淡々と進む、どうして国会だけがこんなばからしいことをするのかと。

 私は、この国会から国会対策委員会がなくなればいいな、議院運営委員会だけで表でオープンにがっちりと決めていく、そして、合理的に決めて審議で与野党闘っていくという新しい国会を提案したい。

 ですから、総理の所信についても、この衆議院は、アッパーハウスである参議院にお譲りをして、テレビ中継でもいいじゃないですか。そういうものをこれから受け付けるような新しい国会を提案していきたいというふうに思うわけであります。

 そして、我が党は、統治機構を変えていく政党だということを申し上げました。本当に、大阪からもともとでき上がってきた政党であります。橋下徹さんという特異な政治家の行動パターンが、大阪の地方議員に感染したのかなというふうに私は思っております。大阪の地方議員の皆さん、特に自民党の大阪府連の青年局の皆さんでした、維新になった皆さんと久々に会うと、行動パターンが違う、考えが違う、捨て身で行動する。男子三日会わざれば刮目して見よと言いますけれども、私は、正直、その行動パターンの変化に感動いたしました。そして、この動きに身を投ずることにいたしました。

 恐らく、総理の御地元であります松下村塾、ここに多くの優秀な人材が来たんじゃないと思います。そこである種の化学変化が起きた、だから多くの幕末の志士が出ていったのかなと。私は、これから、本当に捨て身で働く政治家の時代がやってくると確信をしています。

 ですから、報道でもありましたけれども、今回の定数削減、橋下代表からメールが来ましたよ。メールの中には、我が党は比例で伸びた政党です、だから比例を守っちゃだめです、保身は絶対にだめだということが、我々、常にこのメッセージを皆で共有して今闘っているわけであります。

 そして、統治機構の改革であります。まさに我々は、ともに、江戸幕府はもう終わりにして明治新政府をつくりましょうという、これだけの大きな変化を求めたいというふうに思っております。

 私自身は、道州制という政策にこの身をささげてまいりました。実は、この予算委員会、テレビ入りで最初に質問させていただいたのが六年前の第一次安倍政権でありまして、そのときにも、この場で道州制の質問をさせていただきました。

 本当にこの国の根底から大きく変えていくこの道州制について、自民、公明両党ともに、今、もう自公プロジェクトチーム案をおまとめになって、そして党内手続を続けておられるということでありますけれども、今まで、両党ともに高々と道州制を掲げて選挙を戦われた。そして、両党ともに、両党でのプロジェクトチーム案をおまとめになっている。

 その状況について、総理及び公明党の、特に太田ビジョンの一本に最初掲げられました太田大臣に、これについてのお考えを聞きたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私の考えとしては、地方の元気なくして日本の元気はないという考えであります。

 道州制の導入は、地域経済の活性化や行政の効率化などを目指して、国のあり方を、今委員がおっしゃったように根底から見直す大きな改革である、このように思います。私の地元も、山口県でありますが、地域においては、このままではだめだという認識はみんな持っていると思います。

 その中において、道州制基本法については、今、早期の制定を目指して与党において議論が行われているところでございまして、その議論が集約され次第、法案が国会に提出されることになる、このように考えております。

 あそこに座っている今村議員が責任者として道州制をずっと取りまとめてきたわけでありますが、今後、政府として連携を深めて取り組んでいきたい、このように考えております。

太田国務大臣 党を代表する立場ではない、国土交通大臣という立場でありますけれども、かねてより地域主権型道州制ということを主張してまいりました。

 現在の日本全体を見ますと、エンジンが中央に一つだけというのではならない、各道州にエンジンがつくということで地域も力づき、そして国としても発展する、こういうことを目指しているということで、今、与党の論議を見守っているという状況にございます。

松浪委員 今、総理もそして太田大臣も、与党の議論を見守っているとおっしゃっておりましたけれども、実は私、自民党時代、この自公PT案の取りまとめの担当をしておりまして、内容的には既にまとまっております。あと前文をつける段階でしたが、もう前文のみの議論というところになって、当時、あれをおまとめになる中心であった礒崎陽輔議員は、よく、あとはこの骨子案、横を縦の条文にするだけの状況だよということで、もう自民党の中でも議論はかなり尽くされ切っている。

 あとは提出をするだけだと思いますけれども、今、参議院の状況もあります。みんなの党の皆さんは道州制を掲げていらっしゃる。維新も掲げている。

 総理、いかがですか。次の参議院選挙が終わったら、九十六条で我々はまとまらなければならない。その前に、道州制基本法、一緒にやりませんか。

安倍内閣総理大臣 大変力強い御提案をいただいたと思っておりますし、もともと委員が、我が党においてこの議論を進めてこられた、重要な、いわば政策の推進者であったというふうに了解をしておりますし、ですから、我が党の中で、誰が積極的で誰が慎重だということも十分に御承知のとおりだろう、こんなように思います。

 その中で、今、今村さんが御苦労されて、大体取りまとめられつつございます。そのような積極的な御提案をいただければ、当然、我が党としても御党と建設的な議論を進めていきたい、このように思いますので、よろしくお願い申し上げます。

松浪委員 ありがとうございました。

 本当に我々も、先般の質疑の中で我が党の藤井議員から、これは全面的に協力をしていく、一緒にやらせていただきたいと。また、今、総裁としてのお言葉だと思いますけれども、自民党の、与党のトップからもこれだけのお言葉をいただいたということで、シンプルなプログラム法ですから、ぜひ今国会で上げて、もう参議院の争点にはしないというぐらいの、国家のための活動にしていただきたいと思います。

 それで、この道州制、機構論としては、自民党、公明党の中で本当に今まで議論を尽くされている。自民党の中では特に二百回以上は議論が行われているんじゃないでしょうか。機構論はしっかり行われているんですけれども、これが具体策となると、党内はおろか、この国会でもなかなか議論されたことがないと思います。

 私は、本日、この道州制、各論とでもいうべき、実際、それぞれの省においてどのようなことが起きていくのかということを明らかにしていきたいというふうに思っております。

 これは質問通告はしていないんですけれども、太田大臣、台北の町へ行かれたことはございますでしょうか。

太田国務大臣 あります。

松浪委員 話が早いですね。

 台北へ行きますと、歩道の上、所狭しとオートバイが並んでいる。ちょっとした空き地、三角地なんかがあっても、そこにオートバイが執念のように並んでいる。ところが、我が国ではどうか。我が国では、オートバイを置く場所をそういうふうにするということは国土交通省が許可をしないから、日本国全部、全くそういうことができないわけであります。

 こういうものを国土交通省で判断して、歩道の上にもオートバイが全然置けない。東京なんか、取り締まりをやって、官製不況ですよ、かつて二百万台を超えていたオートバイが、今はもう三十万台しか売れないというような時代になっています。

 ですから、太田大臣、本当に、歩道の上にオートバイを置けるかどうかなんということを国家が指示しないといけないと思われますか。

太田国務大臣 国として、私は、交通渋滞や歩道ということの中でどういう駐車の仕方をするかということについては、統一した考えでやるということは大事なことだと思います。

 ただ、全国一律というそうした規制ということについてはいろいろ考える段階には来ているかなというふうに思い、それがいわゆる道州制ということの中の一つの意義であろうというふうに思います。

松浪委員 ありがとうございました。きれいにまとめていただきました。

 本当におっしゃるとおりであります。我々が国会で、国会議員がオートバイの置き方をどうこうと議論することが間違っている。これは、これからは道州議会でやっていただく。明らかにその方向は私は正しいと思います。

 そして、もう一つ。きょうは資料を配らせていただいていると思いますけれども、河川法の道州法への移管イメージというのを書かせていただきました。

 憲法の関係上、道州が法を持つということは現行憲法はできませんけれども、自治立法権ということを大きく大きく解釈して、それから、今後、憲法改正の中で、地方自治の項については、これから道州制に合ったものについては議論をしなければなりませんが、その前段として、この河川法の道州法イメージというのを、我が党の道州制基本法プロジェクトチームの重徳事務局長とともにつくらせていただきました。

 これは本当にシンプルなものであります。管理者を国土交通大臣から道州知事にかえて、そして、河川の整備基本方針とか細かいことは全部道州の条例に移管をする。こんなものを見ると、なかなか、お役所の皆さんはびっくりしてしまうかもしれませんけれども、道州制というものを具体的にイメージするにはわかりやすいかなと思います。

 国民の皆さんにわかりやすくするには、川は、この日本国には百九水系あるわけですけれども、これは都道府県をまたいでいるわけですね。だから国家が管理をしようということになっているんですけれども、道州になったときに、この一級河川のイメージ、どれぐらいの川が各道州を横切るのかというようなイメージ的なものを国土交通大臣にお尋ねしたいと思います。

太田国務大臣 百九の一級水系のうちで、二つ以上の都府県にまたがっている水系は五十六水系ございます。

 そして、道州については、どういう区割りをするかということで案がいろいろあるんですが、例えば、第二十八次地方制度調査会において、その区割りということの中で考えますと、十一道州の区割り案に基づいていきますと、二つ以上の道州をまたがる一級水系は二十一水系ということになっております。

松浪委員 半減するということでありますけれども、現状でも、二級河川、きょうのこの河川法には書いておりませんけれども、二級河川で、都道府県をまたがるものについては都府県で話し合って決めるということがありますので、それを準用すれば、一級河川であろうと十分に道州に移管をできるということであろうと思います。

 こうした法案の一つ一つ、我が党はどう考えているかといいますと、きょうは、異例でありますけれども、日本維新の会の国会議員団の政策調査会の表を、我々は資料として出させていただきました。

 通常、自由民主党、そして民主党では、法案は、自民党では国土交通部会、民主党では国土交通部門会議だと思いますけれども、省の縦割りになっている。我が党の場合は違います。我が党の場合は、部会は三つ。それぞれに主査が出てきて、かえる。例えば国土交通の場合は、道州経済部会というところで、国交担当の主査が仕切ってその部会を編成するということになっています。

 どうしてこういう三つに分けているか。これは、道州制が導入されたときに、国家に残るべきものは当然強化をしていくという意味で、国家政策部会というものをつくっている。そして、国の出先機関、この出先機関ごとにこれからさまざまな政策をつくるのであれば、これは経済的に道州に大きな影響力がある、これを道州経済部会。そして、文科、厚労といった、教育とか医療、福祉、市町村で非常に一般市民生活に近いものについては、道州社会部会という部会にしている。

 これによって、今、政府から出される法律案それからまた議員立法というものが、将来的にはどこでどのように議論されるのかということを、我々はふだんの政策調査会そして法案審議の中で行っているということをこれに示しているわけであります。

 これからは、ほかの政党の皆さんも、常に、唯々諾々と今の江戸幕府の中の武家諸法度をどうしようかということではなくて、道州制になったときにどうあるべきか、我が国が本当に新しい姿になったときの法律はどうあるべきかということを、せっかく先ほど総理から建設的な御意見をいただきましたので、これを行ってまいりたいというふうに思っております。

 では、各論を続けてまいろうと思いますけれども、よく、きのうもテレビで随分、東京都内の保育所の問題をやっていましたね。これも、私、おかしいなと思うのは、少し前に自民党の九州の議員さんに、うちは保育所の待機問題なんかないんだけどな、こんなの、おじいちゃん、おばあちゃんが見てくれるし、保育所なんか、待機児童、実感が湧かないなと。

 九州ではそうでしょう、東京ではこうでしょうということで、随分違うと思いますけれども、この保育所の面積要件一つとっても、それから、医療現場では看護師の配置基準とかベッドの面積要件とか、全てのそういったものを厚生労働省が一律で決めていく必要が一体あるのかないのかということを、ちょっと田村大臣に伺いたいと思います。

田村国務大臣 道州制になったときに何を道州の方に権限を渡していくのかというのは、非常に難しい問題だと思います。年金なんかは全国統一でございますから、なかなか難しいんだと思います。

 今委員おっしゃられた保育に関して言えば、決して一律ではないんですよね、今でも。最低基準、これぐらいはお願いしますということを決めているわけでありまして、もっとよくするのはどんどんしていただければいいんです。

 今、東京で起こっているのは、東京の基準があるんですよね、認証保育の。それでは嫌だ、やはり、もうちょっと高い認可保育園、つまり国が決めている最低基準、こういうような保育所を求めて異議申し立てをやっておりますので、そういう意味ではなかなか、この最低基準を引き下げるという方向で働く地域でのそれぞれの基準というのは、どうなのかなという気はいたしております。

 医療に関して申し上げますと、それぞれの地域でどういう医療体制を組んでいくかということを州単位で考えるというのがどうなのか。これはいろいろとこれから議論をしていく話であるのかなというふうに思いますから、道州制という話になれば、そこも含めていろいろな検討を進めてまいろうというふうに思います。

松浪委員 保育という概念に凝り固まれば、保育の基準で議論はあると思いますけれども、事幼児教育といえば、今、幼保一体化の流れもあり、文科省との縦割りの問題もあり。今、厚生労働省が保育所を持っているというからこの基準の問題もあったんですけれども、こうした幼児教育のあり方とか、こういうものも、道州で多様的に設計をするという未来があっても私はいいのではないかなと思います。

 そしてまた、道州制を導入しますと、我々の今までの概念をずっと超えていける。例えば税制、そして、先ほど総理がおっしゃった産業振興策。

 私、今、アベノミクス、第一の矢はうまくいっていると思いますよ。そして第二の矢、もしかしたら、先ほど松野委員がいろいろ追及していましたけれども、ちょっとそごが出て、矢がちょっと曲がっている面が出てくるかもしれない。しかし、これからの成長戦略というところにおいて、今までの都道府県とか、こうしたものを前提としていては私は限界が出てくると思います。道州という枠があって初めて成長戦略が出てくる。

 例えば、私、ドイツに行ったときにびっくりしたんですね。ドイツに行って、ミュンヘンに行ったんです。ミュンヘンに行くと、ドイツ語のしゃべれない特許庁の一等書記官が出てくる。どうしてドイツ語もしゃべれない特許庁の人がここで一等書記官をやっているんですかと伺いますと、EU全体のEPOという欧州特許庁は、何と、ブリュッセルではなくてミュンヘンにあると。それで、よくよく聞いてみると、今度は、商標はどこで扱っているんですか、スペインに別の組織があると。

 これが東京に集中しているということ自体が、私はやはり、日本のこの東京一極集中、法人税の四分の一がこんなに東京で上がってしまうということの元凶だと思うんです。

 医薬品とか医療機器を審査する医薬品医療機器総合機構、いわゆるPMDA、これも東京にあるわけですけれども、今、関西総合戦略特区というものもやっている。この間、私、専門誌の記者と話したんですけれども、PMDAを例えば関西に移して、そして研究開発税制をセットにして関西に持っていく。

 こういったことも、いろいろなことをミックスして産業集積なんかを図っていく、本社機能の集積も図っていくということが、私は、これからの成長戦略としては本当に、今までの枠組みを超えて道州制では機能するんじゃないかと思うんですけれども、大臣、例えばPMDAを大阪に移して、何かそごはありますでしょうか。

田村国務大臣 大阪になぜ移すのかということもあるんだと思いますね。

 もちろん、西日本のいろいろな製薬会社等々が創薬するのにPMDAがあればいいというのはあると思うんですが、一方、では東日本はどうするんだという議論もありますので、うまくそこは、例えば薬事戦略相談等々をしっかりやって、シーズをいよいよ物にしていくような形にする、いろいろなそういう部分に関して、このPMDAの機能、その部分を例えば大阪の方に持っていくだとかというのはあると思いますし、今、基盤研、大阪にありますよね、あそこがいよいよ創薬支援に入ってまいります。オール・ジャパンでやります。

 こういう意味では、大阪にとってはこれから非常に大きな力になっていくと思いますから、そこの役割分担というのもあるのかもわからないというふうに思います。

松浪委員 こうした拠点が二つあるというのは、無駄という考え方もあるし、災害時にはそれが機能するというような考え方もある。

 そして、なぜ大阪なのかということを、別に私が大阪出身だから言っているわけじゃなくて、もともと、道修町という、大阪には製薬企業の本社が軒並み並んでいた。それが、本社機能がどんどんどんどん東京に出ていっているわけですよ。私は別に大阪に行けと言っているんじゃなくて、戻してくれと。

 その拠点を戻して、そして政治として、東京一極集中じゃなくて、産業集積をそこで行っていく。基盤研もあれば、神戸の先端医療都市もありますよ。こういうものこそをどこかに集中していくというのがなければ、今の中国なんかにはなかなか勝てないのではないかなというふうに思います。

 私は、きょうは追及型の質問をしているんじゃないんです。きょうは提案型で貫いていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、次は農水省に伺いたいんです。

 我々も、農水関係のブレーンの皆さんがたくさんいる。これからTPPが導入されたときに一番懸念される点といえば、やはり農地法の観点で、海外では、ファンドから多額の出資を受けて大資本が農業をやっているけれども、日本の場合は、農地法で、異業種から農業生産法人については例えば出資規制があるとか、それから、それこそ農地の転用というものについても、これは平成二十一年にも緩和をされているんですけれども、まだまだこれで本当にTPPに対応していけるとは思えないというような方もたくさんいらっしゃる。

 日本全国でやるとリスクがあるのかもしれないけれども、いざTPPの波が押し寄せたときに、自縄自縛でやるわけにもいかない。こういうときには、私は、本当は、道州ごとで農地法が違って、こっちの道州はこれまでと同じだった、こっちの道州は、どちらかというと開国派ということなんですけれども、変化をした、それでどちらの農業が生き残ったのか、そしてどのような弊害が出たのかと、比べられるといいと思うんですけれども、道州ごとに農地法が違った場合は、こういうものは不都合があるのかないのか、農水大臣に伺いたいと思います。

林国務大臣 お答えいたします。

 現行の農地法でも、松浪先生御存じだと思いますが、四ヘクタール以下の農地は、実は、農地の転用の許可、これは既に都道府県知事がやることになっておりまして、実際に、平成二十二年の数字を見ますと、件数ベースでいうと九九・八%、六万五千三十件ですが、これがもう都道府県知事でやっているんですね。二ヘクタールから四ヘクタールは都道府県知事なんですが、ちょっと大きいので農水大臣と協議をする、これが七十六件で〇・一%。四ヘクタール超、農林水産大臣の許可というのは、実は、四十件で〇・〇六%しか今でもないということでございまして、そういう意味では、現在でも都道府県である程度やってもらっている。

 ただ、大事なことは、今ちょっとお触れいただいたように、この件は、どんどんどんどんいろいろなことをやって、結果としてだめになったということがもしあったとした場合に、それをまたもとに戻すというのはなかなか大変なんですね。

 したがって、日本は農地が非常に限られているものですから、トータルとして農地をどれぐらい持っていなきゃいけないかという観点で、やはりトータルの、何かコントロールする機能というのは要るんじゃないかなというふうに思っております。

松浪委員 ですから私は道州制を申し上げているわけでありまして、四十七都道府県では確かに小さ過ぎるだろうと。

 ただ、日本の道州をつくっても、経済力においては、関西でも韓国ぐらいのGDPがありますし、よく九州はオランダぐらいあるということでありますので、道州といえば、通常の世界基準で考えれば一国に匹敵をするものでありますので、こうしたところでは、今の都道府県では小さいけれども、大臣のおっしゃるとおりかもしれませんが、道州にしたときには、さまざまな工夫、そしてそれなりのリスクというのは、我が国全体でも同じリスクを背負うわけでありますので、我が国全体で失敗すれば全国がだめになる。

 我々、今、シャッター街に苦しんでいますけれども、かつて大店法という法律を全国で改正したわけですけれども、全国がシャッター街になってしまった。もしこれを道州ごとに、ここは大店法を改正するけれどもここはしなかったと、なかなか海外との関係で難しかったかもしれませんけれども、道州制をバッファーにして海外と交渉をしていたら、本当に今の日本はこんなシャッター街ばかりの国になったのかというようなこともありますので、そういった大きな観点から我々はこれから国づくりというのを考えていくべきではないかというふうに思います。

 そして、各論でいいますと最後に教育ですけれども、教育委員会のあり方についての問題点、そしてまた、教育委員会制度というのは国一律でなければならないのかどうか。特に、大阪で教育基本条例が出た後に、私は、下村大臣が党内で大変鋭い御意見を開陳されて、そして政策を進めておられたのには敬意を表するところでありますけれども、御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 お答えいたします。

 教育委員会については、権限と責任の所在が不明確である、また、地域住民の意向を十分に反映していない、そして、教育委員会の審議が形骸化している、さらに、迅速さや機動性に欠けている、こういう課題が指摘されているわけでございまして、その責任体制を確立し、現場の問題に迅速かつ的確に対応できるような抜本改革が必要であるというふうに思っております。

 教育委員会の見直しについては、各界からのさまざまな改革方策の提案内容も踏まえまして、官邸に設置された教育再生実行会議において御議論いただき、一定の方向性を打ち出していただきたいと思っております。

 それを受けて、中央教育審議会においてしっかり議論をいただいた上で、年内に結論を得ていただきまして、来年の通常国会に法案として提出できるように準備をしていきたい。スピーディーに現実対応をできるようにしてまいりたいと思います。

 道州制の中で教育委員会をどう位置づけるかということについては、道州制をどういうふうに形づくるか、道州制とそれから基礎的自治体の位置づけをどう明確にするかということにもなってくるかと思います。

 今でも、県費負担ということで学校の先生は都道府県、しかし実際の設置主体は市町村、それからまた学校現場、あるいは文部科学省と、ある意味では四重構造的な部分がうまくいっていない部分もあるわけでございまして、そういう意味で、基礎的自治体をどう位置づけるかによって地方における教育委員会の位置づけも変わってくるというふうに思いますので、これは道州制議論の中で、より現場の対応をしながら、しかし的確に対応できる教育委員会のあり方については十分議論していく必要があると思います。

松浪委員 現状の対応はそれで結構かと思いますけれども、今言われた四重行政の問題もあります。基礎自治体の問題もあります。もし道州制を導入するのであれば、地方自治法の大部分、今は、人口三十万以上が中核市で二十万以上が特例市でなんという規定がありますけれども、こういうものも含めて、地方自治法を道州にブレークダウンするという仕組みが大事になってくるのではないかなと思います。

 また、教育委員会についても、その必置基準というのは実は地方自治法の中に入っていて、そのあり方を地教行法に流しているということでありますので、こうしたところも各道州で議論をしていただく。

 そうすれば、総理におかれましては、教育基本法とかそういう重いところだけを持っていただいて、外交、安全保障、そして通貨の問題、経済の問題というところに特化をしていただけると、より国家の機能というものも、国家戦略というものがこれで強化をされていくべきでありまして、総理が、保育の問題とか、それこそ河川基準の問題とか、こういうことはこれからは地方にお任せになって、特化をしていただける、そんな国がやはり今求められているのだと私は思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 次の質問、これはまた私たちが随分重視をしています、国の出先機関の問題であります。

 総理に、簡単に、国の出先機関、自民党が道州制基本法をおまとめになるに当たって、第三次中間報告をまとめたときにも、この中では原則廃止するというようなこともありましたけれども、これからの出先機関のあり方について、本当に将来的に廃止していくべきなのかどうかということを、道州制下においてどうお考えかを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 出先機関につきましては、出先機関の機能を移譲する法案に対して、市町村から大規模災害発生時の危機管理体制などに関する慎重な意見が表明されているのは、委員も御承知のとおりだろうと思いますし、私自身も直接そういう声を伺っております。

 この法の取り扱いについては、与党の基本的な考えを踏まえて、地方の声も伺いながら、慎重に検討を行う必要があると思っておりますが、今の御質問は、出先機関をどうするかという大きな考え方なんだろう、このように思います。

 ちょうどきょう、地方分権を政府一体で推進するため、私を本部長として、全閣僚で構成される地方分権改革推進本部を立ち上げたばかりでございます。今後、この本部を中心といたしまして、まずは国の出先機関から地方への事務、権限の移譲等、必要な取り組みについて、これまでの経緯や地方の声なども踏まえて検討を進めていきたいと思っております。

松浪委員 この問題だけは、総理、ちょっとだまされないでいただきたいと思います。

 確かに、自民党J―ファイル、自民党総合政策集の中で、特に「国土強靱化」の中で、「地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理します。」と書く前に、「民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管には反対し、」と書いてしまっているので、なかなか苦しいところはあると思うんですけれども、地方の声というのであれば、実は、町村会は、確かに総理のおっしゃるように言っている。ただ、その町村会の一日前、知事会は、「法案を速やかに提出することを強く求めており、法案化に至ったことを率直に評価する」「選挙後に早期に国会提出の上、成立を期していただくことを強く望む」、こういうふうに言っているので、地方の意見も分かれている。

 これを踏まえた上で、さらに私が指摘をしたいのは、町村会の反対理由であります、災害時の危機管理体制が現実に機能するかどうか、そして、特定広域内のインフラ整備の利害調整がうまくいくのかとか、こういうことを書いているんですけれども、実は、この法律案、緊急対策時、緊急事態については非常に踏み込んでいる。

 どうなっているかといいますと、これは、関係行政機関の長、つまり大臣から指示があった場合には、指示権限を大臣にしっかりと認めている。これは武力攻撃事態法などと一緒です。それに対して対応義務、法律的に言えば応諾義務を課している。

 つまり、この法律は、緊急事態において、大臣からの指示に対しては、武力攻撃事態法を超えるだけの対策を既に打っているということでありますけれども、国土交通大臣、こうしたことについて認識はありますか。

太田国務大臣 当然、認識しています。

松浪委員 これを認識しているのであれば、町村会が懸念するのはわかります、懸念するのはわかりますけれども、この点については、そうそう心配ないのではないか。

 皆さん、特に御承知のことだと思います。東日本大震災が起きたときに、関西広域連合がカウンターパート方式をとって、全国の自治体の中でも最も機敏に迅速に活動したということは、これはもう質問しなくても、皆さんが重々に御認識のことだと思います。

 そしてまた、市町村の意見を聞かなければならないということは重々にある。今、特に俎上に上がっているのは関西広域連合であります。

 この法律はなかなか丁寧なものでありまして、市町村の意見というものを聞かなければならないということを第七条の中で書いているわけであります。「当該都道府県及び市町村の意向を事務等移譲計画に反映しなければならない。」と。

 ですから、指針も内閣府の方から出ているんですけれども、市町村の意見を重々に聞いて、つまり、市町村、半分ぐらいじゃだめですよ、大方、八割以上の感覚だと僕は解釈しておりますけれども、広域連合、特定広域団体の中でそれぐらいの理解が得られればいいんじゃないかということで、これについては、この法律ではしっかりと担保をしているということだと思うんですけれども、新藤大臣、この点、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 まず、松浪健太議員、長い間、自民党で、松浪といえば道州制でしたから、今、八面六臂の活躍で頑張っておられることを敬意を表したいと思います。あなたが自民党を出た後、私にわざわざ挨拶に来てくれて、ぜひそういった思いを共有していきたい、このように思っております。

 その意味において、今のお話ですが、我々もいろいろな声をきちんと聞いていかなきゃいけないと思っています。

 しかし、まず第一として、市長会からは、前の内閣の出した法案については、その法案の内容以前に、衆議院が解散されるという慌ただしいときに法律案の閣議決定を行ったことは、基礎自治体を重視した地域主権改革の推進を標榜する政府の姿勢に反するものであり、まことに遺憾、そして、全国町村会は、国会提出の見込みすらないまま法律案を閣議決定したことは極めて遺憾、こういう強い御心配の声が出ているわけです。

 一方で、関西や九州から、そういった推進しようという声が出ております。ですから、私どもは、そういうもの双方をきちんと受け入れた中でやはり検討していかなきゃならない。

 それから、大規模災害発災時の危機管理に関する懸念に加えて、手挙げ方式ということは、それでは、一つの国の中で広域連合が担う区域とそうでない区域が混在してしまって、本当に協力的な強力な体制がとれるのか、こういう懸案もあります。

 ですから、それらもろもろを踏まえて検討をしてまいりたい、このように思っています。

松浪委員 新藤大臣には私も敬意を表するものでありますけれども、この市町村の件について、ただ、我々が議論すべきなのはロジックだと思います。

 この市町村会というのは全国の市町村会でありまして、当該広域連合の、つまり関西広域連合下の市町村の声とは言えないと思います。実際、関西広域連合下の市町村で本当にこれに反対しているのは数える程度。これをやらせないというのは、地方分権の意思に合うのかどうか。

 まさに、ほかの地域とルールが違うといえば、今までの東京都区制度、そして、先般おまとめになっていただきました、成立させていただきました大阪都法案、これだって全然違いますよ。よく似た広域連合を今までの都道府県の上に見るならば、今回の大阪都構想は、下に見ればそれと同じような構図であるわけで、そのロジックはなかなか私は通らないのではないかと思います。

 そして、私が申し上げたいのは、確かに広域連合という仕組みは、議会のガバナンス、非常に弱いものがあります。県議会とか市町村議会のように、しっかりとした、直接この広域連合のために選挙された議員でやるものではありません。過渡的な仕組みだと考えています。

 しかし、過渡的な仕組みも、我々、ともに道州制を目指すんですから、大阪都構想においても、何が道州制につながるかといいますと、この戦後において市町村合併がたくさんありました。市町村の議員が合併するということはたくさんあった。でも、県レベルと市町村レベルの職員が縦に合併する初めてのケースです。これは、将来の道州制を見据えれば、国の出先機関の国家公務員とそして地方公務員が縦にくっつく、このノウハウを蓄積する。

 今、道州制といっても、全国一律でやるにはやはり混乱が起きますよ。だから、私は、今回の広域連合においても、今回これが認められれば、この法律が通れば、出先の職員の身分は地方公務員になる、こうしたところを一つ一つ積み上げる。

 また、この法律、なかなかすごいのが、今回は、整備局、経産局、環境事務所で、百八十七本、三千の事務をきれいにこの法律の中で列挙している。関係法律を列挙している。今まで、出先の法律、所管法律がこれだけしっかりと精査されたことはなかった。こうした法律を実行していくことによって、今後、道州制につながる。

 先ほどの河川法ではありませんけれども、それぞれの作用法がどういうふうにいっているのか。私は、通則的に一気にいけばいいと思いますけれども、しかし、それが見えてくるという利点もあるということで、将来のこの法案も、まあ民主党さんは道州制を我々ほど明確に標榜しているわけではないですけれども、結果的に、この法律は、出先を今後の道州制につなげるためには非常に有用なのではないかというふうに思っておりますけれども、新藤大臣、改めて御意見をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 我々、今、日本をどうやって変えていくのか。人口減少、少子高齢化、そして、地方が疲弊していく中で自立性が損なわれているのではないかと心配があります。過疎化が進んでいます。そして、都市への集中による土地の問題が発生している。だから、私たちは、この国を変えていかなくてはならない。こういう思いは、安倍内閣、私も一員としてその思いでおりますし、ここにいらっしゃる全議員が同じだと思います。

 ですから、その中で、統治機能、統治機構を強化しながら、それぞれの地域の自立性をどうやってつくっていくか。それは、分権であり、道州制であり、私はその担当大臣をさせていただいております。

 ですから、あらゆることを考えながら、また、ナショナルミニマムということもあります。そういったものを基本に据えながら、しっかりとこれは前進していきたい、このように思っております。

松浪委員 冒頭に申し上げましたけれども、我々は、今までの与野党の概念を超えて物事を変えていきたいと思っております。

 今すぐ道州制基本法を出していただけるならば、ほぼ我々は丸のみをいたしますし、それがすぐ出てこないのであれば、民主党から出されている出先改革の法案も丸のみをしていきたい。我々は丸々のみのみやっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、松田学君から関連質疑の申し出があります。松野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学でございます。

 日本維新の会、きょうは、最初は松野、そして松浪、そして松田と、三本目の松でございますけれども、松野委員の方からは追及型の質問をさせていただいて、その後、松浪委員からは提案型、私の方からはチェック型の質問をさせていただく。

 チェック型といいますのは、政治の大事な課題というのは、時の国の本質的な課題をしっかりと有権者に説明し、大事な課題を説得していくということだと思うんですが、別に、安倍政権の経済政策を否定する、反対するということではなくて、それをきちっと国民と共有しているかどうか、この観点からいろいろな御答弁をいただければということであります。

 まず、TPPのことなんですが、TPPにつきましては、この日本が今直面している現状、人口減少であるとかいろいろな状況の中で、やはり、国家の繁栄基盤というのを、広く成長するアジア太平洋地域に拡大していかなければいけない。そこで、新しい経済の秩序づくりをする、そこに日本が参画するという意味では、大変日本にとってはチャンスであるというふうに捉えるべきだと思います。

 このルールづくりという点では、先ほど松野委員が指摘したような、そこに日本が参画できないのであれば、これは問題だ。これはもう外交の、戦術レベルではいろいろな問題があるかもしれませんが、戦略レベルで考えれば、これをむしろ前向きに受けとめて、まさに安倍総理のおっしゃる強い日本ということに向けて、もっとこれをきっちりと国民に対して説明すべき問題だろうと私はかねてから思ってきたんですが、残念ながら、さきの総選挙で自民党が出したいわゆる重点政策、どうもここに、聖域なき関税撤廃を前提にするならということが盛り込まれておりまして、これは全く内向きで、守りのスタイルそのものであった。全然日本にとっての大事な課題が説明されていなかった。そういうことはまことに遺憾でありました。

 私は、今回の総選挙、私、初当選でありますが、経験を通じまして、やはり、もう既に国民は、課題のソリューションというか解決策というか、それを出してほしい、課題から逃げないでほしいと。

 かつて、消費税というのは、これは言うだけでタブーだったという時代がありましたけれども、そうではない。消費税の前にやるべきことがあると言うだけではなくて、やはり消費税、どうせ政権に入れば上げざるを得ないだろう、これは民主党政権を見てもそうだ。それにまた、原発だって、反原発と言っていたって、あるいはTPPも、反TPPと言っているだけでは答えは出ない。もうそろそろきっちりと答えを出す、そういう政治が必要だという有権者の声を受けて、この維新の会が躍進したのではないかというふうに思います。やはり政治は、きっちりと未来を語る政治をしなければいけない。

 そういう意味でいえば、選挙の段階で、自民党がTPPについてそれを示さなかった。せめてこの国会の場において、この日本がどういう国際経済戦略を描いていくか。

 中でも、アジア太平洋諸国。私も、ほとんどの方が行ったこともないと思いますが、バヌアツ共和国というのにおととし行ったんですが、あそこに行きますと、数年前までは日本車であふれ返っていたのが、もう今や中国車ばかりで、政府の建物はほとんど中国がつくってくれているというような状況でありまして、このままでほっておくと、中国が主宰するアジア太平洋地域、そういう秩序が成り立ってしまうような中で、日本はこれにどうやって臨んでいくか、そういう観点の中から、しっかりとこのTPPについて国民に語っていただきたいと思っておりますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは、基本的には松田委員と認識は同じだと思いますが、自由な貿易環境が日本にとってプラスであるということは、この委員会で再三申し上げてきているところでございます。

 これから世界において、広域な地域において経済の連携協定がどんどん生まれていくという状況になっております。TPP、そしてまたRCEPもありますし、FTAAPという形で広がっていく中において、日本は、ルールづくりを待つ側ではなくて、つくる側になって、そうした枠組みの中で中心的な役割を担っていくことが国益になるんだろう、こう考えているところでございます。

 しかし、我が党が掲げた公約については、やはりそうはいっても国柄というものがありますから、守るべきものはちゃんと守っていきますよ、そういう意思を示したものでございます。

松田委員 国柄。TPPに入ってどうもいろいろな誤解があるのは、最初に日本の開国と言った総理大臣がいたんですが、ここが非常に私はボタンのかけ違いだと思っていまして、日本は、世界の中で最も開かれた国の一つ。長年にわたる欧米との交渉を通じて、平均関税率が低いというのは言うに及ばず、いろいろな意味で市場も完成度が高いですし、それから、例えば政府調達なんかも、内外無差別という意味ではかなり高度な段階に到達している。

 そういう日本にとってみれば、ほかの国々に対して日本に開いてもらうということの方がよほどこの日本にとってTPPの意味があるんですが、そういう本質的な課題を国民がほとんど情報不足でわからないでいる。いろいろな意味で誤解に基づいて、あれが心配だ、これが心配だといって逃げ惑っているという、これは強い日本とは全く逆の姿でありまして、こういう状態に対して、為政者たるものはしっかりと、日本がどういう状況にあるか。

 TPPで日本はアメリカからの輸入がすごくふえると思っている方もいるんですが、農産物の一部はそうかもしれませんが、TPPのアメリカにとっての意味というのは、市場が量的に縮小していく日本ではなくて、日本以外のTPP参加国の方が輸出額も多いわけですね。そういう発展していく国に対して輸出を伸ばしたいというところが本質で、むしろ日本は存在が小さくなっている。日本はむしろ、アメリカからカモにされる価値もないぐらいに、もしかしたら存在が小さくなっているかもしれない。それぐらいのしっかりとした国際社会における日本のあり方というのを有権者に共有させていくということも政治の役割だと思っています。

 その中で、よくTPP反対論の中で、いろいろな政治家の方々とも私も議論させていただきましたが、日本には交渉力がないと言う方が結構多かったんですね。それは、そのときの民主党政権が交渉力がないんだ、だから政権交代だというのであれば、政権交代をしたのであれば、ぜひ強い日本としてしっかりと交渉力を発揮していただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 交渉力というものは極めて重要だろうと思います。

 ただいま委員が御指摘になられた、かつて、ある総理大臣が、日本を開国すると言った。この認識は極めて間違っているんですが、これは交渉力も失わせてしまうんですね。開国していないんだったら、あなた、開国しろよ、こういうことになってしまうわけでありまして、実は、関税においては、日本は最も低い関税率しか張っていないわけであります。そこに大きな誤解を与えたのも事実であります。

 だからこそ、我々は、政権を奪回し、外交力を高めていくために全力を尽くしているわけでありまして、その中において、外交、安全保障の基盤である日米同盟のきずな、強いきずなを復活させたところであります。

松田委員 この中で一番問題になっている農業なんですけれども、TPPで農業が打撃を受けるという発想がそもそも、どうもちょっとおかしいんじゃないかとかねてから私は思っているんです。

 農業の保護方式というのは、何も七七八%もの米の関税ばかりじゃなくて、直接支払いであるとか補助金でやるとか、国際価格との差をこうやって勝てるようにしていくということで、これは欧米ではとうの昔に財政方式に転換しているわけでして、こういった転換というのはかねてからの日本の農政の課題だったはずなんですが、これをなぜはっきり言わないのかな。

 この財政方式に転換しますと、財源がかかるという話はありますけれども、現状でも、高い米の価格を維持するために減反をさせている。この食料不安の地球において、日本は食料を減産させる。そのためにわざわざ奨励金とか補助金まで出して、国民の負担もさせて、高い関税を守るために、ミニマムアクセス米、これは保管料もばかにならないわけですね、いろいろな意味で国民の負担をさせ、高い米を国民に買わせている。これはどう考えてもつじつまが合っていないように思えるわけでありまして、これを財政方式に変えますと、米の値段が下がり、消費者にとってもいい、農業もちゃんと保護される、そして国際経済との調和も合う。一挙両得どころか一挙三得である。

 今、消費税のことで軽減税率といういろいろな議論がされていますが、生活必需品の価格が下がるということは一番大きな社会政策だという気もいたしますが、こういった関税の例外をつくるということよりも、こうした農業の政策の抜本転換をしっかりと国民や農業関係者に語るべきだと思いますが、農水大臣でも結構ですけれども、御答弁をお願いいたします。

林国務大臣 お答えいたします。

 ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉が一つの転換点であったかなと思っておりますが、そのときに、輸入数量制限等の関税以外の国境措置というのを内外価格差をベースにして関税に置きかえた、こういう経緯もよく御存じだろうというふうに思いますが、そういう経緯がございます。

 したがって、例えば、私もサラリーマン時代のスタートがたばこの葉っぱの商売をやっておりまして、各国を回りましたけれども、埋めがたい内外の競争条件の格差。これは、実際に行きますと、例えばアルゼンチンなんかへ行きますと、たばこの農家のところへ訪ねていきますと、おまえがここから見渡す限り全部俺の農場だ、アズ・ファー・アズ・ユー・キャン・シー、こう言われるわけです。それで、当時、八〇年代から九〇年代でしたが、一日、たった一ドルでもう朝から晩まで働く人がこんなにたくさんいる。そういうところと全くフラットに競争するというわけにはなかなかいかない。

 それから、もう委員御承知でしょうが、例えばヨーロッパでも、実は、我が国は、国土面積のうちで日本は一二%しか農地になっていないんですが、イギリスは七三%なんですね。ドイツも四七、フランスも五三。そういうところがございますので、やはり全部こっちからこっちへというよりも、いろいろな手法、関税ですとかそういうこと、それから、直接支払いというのも全くないわけじゃなくて、御存じのようにやっておりますが、この組み合わせでどうやってやっていくかということが大事なことであるというふうに考えております。

松田委員 基本的な農政の大きな転換ということでお聞きしたんですが、なかなかいろいろ難しい問題があるのはよくわかっていますし、また、農業というのは別に量的な規模だけで競争条件が決まるわけでもないので、そこはしっかりとこれから議論をしていただきたいということでございます。

 TPPは、全体的に見れば、我が国が今までEPA、経済連携協定でいろいろな国とやってきたことを面的に拡大するものであって、どうも非常に誤解が多いので、今までやってきたことをこれからも推進していくということなのでありますけれども、一方で、今度はアベノミクスの話に移らせていただきます。

 このアベノミクスは、いわゆるデフレーション、物価が下がっていく状況を水面上に上げて、さらに二%まで上げていく、これは恐らく未踏の領域といいますか、今まで経験したことのない領域に入っていくわけなんですが、とりあえずは、アベノミクスということで、株価とか為替を見れば、ふわっと経済がよくなって、雰囲気もよくなっている。

 これはすばらしいことでありますけれども、日本経済というのを飛行機に例えると、離陸をしたのはいいんですけれども、その後、それが持続的で安定的な軌道を飛んでいくかどうか、変な方向に行かないかどうか、あるいは墜落してしまわないかどうか、これはまさに、しっかりとした経済の運営のシナリオ、それと市場との対話、あるいは経済操縦術といいますか、これからが問われていくんだろうと思っておりまして、その観点から、経済のいろいろな専門家の方々が、本当に大丈夫だろうかという懸念もありますので、そういった懸念につきまして、今の政権の認識を確かめていきたいと思っています。

 まず、済みません、いきなりこういう数式で恐縮なんですが、MVイコールPTという、Mというのはマネーサプライですね。Vというのは貨幣の流通速度。年間にマネーが何回使われるか、これは物価掛ける取引量に等しいという、経済でいえばごく当たり前の数式なんですが、総理は、デフレは貨幣的現象だというふうにおっしゃっておられるんですけれども、いわゆる貨幣数量説というのがあって、通貨をふやせば物価が上がっていくというのがありますが、これについて総理はどういうふうに認識されていますでしょうか。

甘利国務大臣 短期的にはともかくとして、長期的にはそういうことなんだろうというふうに思っております。

松田委員 これは当たり前のことなんですけれども、この貨幣数量説と言っている方程式、当たり前の方程式なんですが、これは別に、左側のMをふやせば、マネーをふやせば物価が上がるという関係だけを言っているわけではありませんで、これは、例えば、右側が膨らめば左側が膨らむ、因果関係が逆のこともあるわけです。

 Tというのはいわば実質経済成長率みたいなものだとすれば、厳密に言えば違いますけれども、実質成長が高まれば通貨に対する需要がふえて、通貨量というのも貨幣に対する需給関係で決まるわけなものですから、結果として物価が上がっていくという場合もあれば、幾らこのM、通貨をふやしても、このV、貨幣の流通速度が下がってしまうということもあるわけですね。これは、金融資産がばっと積み上がると、日本は千五百五十兆円の個人金融資産があるという状況なんですけれども、いろいろな因果関係がありまして、単純にマネーをふやせば物価が上がるということでもないということが一つあります。

 それから、私は、この二%のインフレ率目標の設定を否定するというか反対しているわけじゃないんですけれども、本当にきちっとやるにはどうしたらいいかということで申し上げているんです。

 マネーサプライというのを本当に日銀が思うようにふやせるかどうかというのも、これもかなりいろいろな問題があって、日米欧の経験から見ても、日本は一九九九年から、日銀がコントロールできるのはマネタリーベースといって、現金足す日銀の準備預金、これをマネタリーベース、これを二倍ぐらいにしているんですけれども、マネーサプライは二割程度しかふえていないわけですね。これはアメリカやユーロ圏でも、リーマン・ショック後、三倍ぐらいにマネタリーベースをふやしておりますが、マネーサプライは三割程度しかふえていない。

 思うように物価がきちっと上がるようにマネーサプライをふやすためには、相当マネタリーベースをふやさなければいけないという場合もあり得るわけですね。つまり、中央銀行の資産と負債、幾ら銀行にお金を供給しても、それが中央銀行に対する準備預金として積み上がってしまったらどうしようもないので、こういう形で、中央銀行のバランスシートが拡大するだけで、マネーサプライが余りふえないということも十分考えられる。

 そういう中で、この二%のインフレ率目標を日銀だけでできるとすれば、これは日銀だけの責任だということになるんですが、ここは政府も一緒に協力していこうということでこの共同声明というのができた。

 これは、私も先般、内閣委員会で甘利大臣に御質問しまして、この共同声明というのは共同責任のことなのか、日銀ひとりじゃできないだろう、政府も一緒にやらなきゃいけないんじゃないかとお聞きをしましたし、昨日もこの予算委員会で岡田議員が総理に質問をされていまして、一義的に日銀が責任を持つ、残りの二本の矢でこれをサポートしていくという御答弁をいただいていますのでこれ以上お聞きいたしませんが、本当にこの物価目標というものがいいかということについて、もう一度ちょっと議論した方がいいと思うことがあるんです。

 カーニーさんという今度イングランド銀行の総裁になる予定の方が、名目経済成長率を目標にすべきである、こういうふうに言っているんですが、確かに、こういった式から、経済の実態から見れば、大事なのは物価よりも名目経済成長なんだという考え方もあろうかと思うんですね。これについて政府と日銀が共同責任を負うというのも一つの考え方としてあるかもしれないと思うんですが、これについて、総理の御認識はいかがでしょうか。

甘利国務大臣 そういう考え方があるということも承知しておりますし、カーニーさんは、ダボスで同席をさせていただきました。

 指標としては、例えばGDPの四半期の指標が年四回しか出てこないとか、使いづらい点もあろうかと思いますし、日銀としては、日銀法二条に、物価安定を通じて国民経済の健全なる発展を目指すということが書いてあります。ですから、日銀としては、インフレ目標を設置するというのは本来目標に従っている、政府は、それが実体経済が伴っていくように政府としての努力をするという、ああいうこの間のジョイントステートメント、共同声明が一番やり方としてはうまくいくのではないかなというふうに思っています。

松田委員 何が言いたいかといいますと、マネーというのは、日銀、中央銀行だけの力でふやせるものではなくて、やはり銀行が活発な信用創造をしていかないとふえていかない。しかし、銀行から見れば、収益性のある貸し先がない、資金需要がない。借り手の側から見ると、銀行は金を貸さないから収益性が成り立たない。卵が先か鶏が先かみたいな状態が起こってちっともマネーがふえていかないというのが今の実態で、現象面で見ると、銀行の預金は近年ふえていますが、貸し付けはちっともふえないで国債の運用ばかりがふえているという状態が続いているわけですね。

 そういう意味で、日銀は国債をまだまだ買えるかもしれませんが、金融部門は相当程度もう国債を買っているという状況が続いているわけですね。

 これは、この状態が続いているという中で緩和政策がとられてきて、いわゆる低金利というのが人為的に続けられていきますと、もともとリスクがないと思われている国債に、さらに国債の価値まで中央銀行が保証してくれている、こうなりますと、銀行としては、何もリスクをとっていろいろな中小企業とかそういうところに貸し出すよりは、国債に運用した方が、貸し倒れで責任をとらされることもありませんし、全然楽である。結局、そういうことでどんどん国債の運用がふえてきた、それが銀行のリスクテークや貸し出しを妨げてきた、阻んできた原因の一つなのではないかという見方もありますが、麻生大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 一番最初に言われた、マネタリーベースを日銀が幾らふやしてもマネーサプライがふえないというところが一番理解されないで、一時期よくヘリコプターマネーという言葉があって、マスコミなんかはえらい受けていましたな、何か、金をばんばん刷れば世の中が豊かになるみたいに、こんな単純な話で世の中いくなら簡単よと思って聞いていましたけれども。一時期、これはえらいはやった話だったんですよ。

 結果的にどうなったかといえば、日銀は刷りましたよ、二十兆、二十五兆、三十兆と。結果として、その金は、マネタリーベースとして市中銀行までは届いたけれども、市中銀行には日銀当座預金として残っただけで、そこから先に借り手がいないものだから、マネーサプライにはならなかったじゃないかというのが、多分、松田先生の一番言われたいところなんだと思いますが、私もそう思います。

 事実、そういう歴史が、つい十年前の話ですから。我々は、その教訓を頭に入れておかないと、これは日本銀行に金を刷れと言ったってなかなか無理だろうな、私ども、そう思っておりましたので、安倍内閣のもとでは、日銀とお話し合いをさせていただいて、そちらも刷られる、いわゆる金融は緩和する、ただし、こちらの方も需要をつくり出す努力をしないとどうにもなりませんので、財政は出動。

 これは、今までの財政均衡でこうやっていたのを、とにかく財政が出動して最初引っ張らないとどうにもならぬというところには御理解をいただいて。続いて、それだけだと財政出動だけで終わっちゃいますので、この影響が、民間にも影響が出てきて、市中でいわゆる資金需要が出てくるような、設備投資が起きるとか消費がふえるとかいうことにつなげていくためにどうするかというところが、今回の三つの柱のコンセプトの一番肝心なところだと思っておりますので、これを今後とも積極的に、自信を持ってこの方向に進めていくという決意が大切なんだと思っております。

松田委員 そこもおっしゃるとおりだと思います。おっしゃるとおりなんですけれども、貨幣的現象だといって、本当にこれは、黒田次期総裁候補も何でもやるというふうにおっしゃっているんですが、国債を買い過ぎてしまったら、財政赤字ファイナンスだというふうに言われかねない、だったら、ほかの債券を買おう、あるいは、ETFであれREITであれ何でも買おう。極端なことを言えば、日銀が資産を買えば、それでお金がふえるんだから、それこそ不動産でも買おうとか言いかねないような、まあ、そこまではいかないと思いますけれども。

 そういうことを突き詰めていくと、貨幣的現象というふうに捉えていくと、これも一部の人がこんな議論をしているんですが、デフレに対しては、もともと政府には貨幣発行権があるんだから、政府通貨を出せばいいじゃないか、こういう議論まで行きかねないんです。別に私はこれをしろと言っているわけじゃないんですが、これについて麻生大臣はどんなお考えをお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 松田委員よく御存じのように、お札には日銀券と書いてあるんですが、五百円玉とか硬貨には日本国としか書いてない。すなわち、硬貨の方は、これは日本政府、いわゆる大蔵省が出しておる、お札の方は日本銀行が出しておるという、二つ違った形になっているというのはもう間違いない事実だとは思いますけれども。

 これは、貨幣の発行量の桁が全然違っておりますので、そういった意味では、貨幣の流通量というものは日本銀行の通貨の金融調節だけで決まるものなのであって、これを政府が自由に調達して自由にしちゃうということは、なかなか可能なものではまずあり得ない。それが一つ。

 仮に、日銀の通貨調節を介さず、いきなり直接国民に貨幣を発行するというようなことなどをした場合には、これは、政府と日本銀行のお金が並立する、軍票とは言いませんけれども、そういった時代のことであれば、並立して、これは通貨の二元化ということになりますし、日本の国の円の価値というものに対する信用を急激に収縮させるということになろうと思いますので、これはなかなか難しいだろうというのが率直な実感です。

松田委員 余り時間がないので、少し次に進みたいと思います。

 やはり物価が上がっていくためには、実体経済、実質経済成長率がしっかり上がって、物価は経済の体温計と言われているように、まず体が元気になって、それで物価が上がっていくというのが望ましいんです。ただ、この実質経済成長率というのはどこまで本当に高くなれるのかといいますと、これも甚だ疑問があるのではないか。

 先日も予算委員会で議論があったと思いますが、これから日本の労働力人口というのは毎年一%ずつ減っていって、これがマイナス一%の寄与をしていく中で、一生懸命頑張って労働生産性一・五%の上昇率を維持して、実質成長率はようやく〇・五%。これを相当引き上げて、例えば二%ぐらいの実質成長率が続かないと、それも数年続かないと、インフレ率は二%にならない、そういうエコノミストの試算もある中で、総理は、できるだけ早く二%になるように経済をよくしていくんだとおっしゃるんですが、果たして、二%物価が上がるところまで実質成長率が上がっていく。

 昔、第一次安倍内閣のときに、生産性上昇率を一・五倍にするんだという目標を掲げられました。当時は、毎年の一・六%の生産性上昇率を二・四%にするんだと、たしか第一次安倍内閣で総理は掲げられたと思いますが、しかし、それを達成するのに五年かけてというふうになっていたんですね。当時は、イノベーションだとかいろいろな成長戦略というのを盛り込んで、五年ぐらいかけて上げていくと。

 そういうふうに考えますと、すぐに実質成長率が例えば二%ぐらいに上がって、物価上昇率がそれで二%なら、名目で四%になるんですが、それはなかなか現実的ではないのではないかという疑問が当然湧いてくるんですが、この辺については、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

甘利国務大臣 委員の御疑問の根底には、単に日銀がベースマネーをふやしても、それは実は解決には結びつかないんじゃないかという御疑問があるんだと思います。日銀のインフレ目標の設定、貨幣現象という言葉とあわせて、それが本当にちゃんとつながっていくのかという御疑問があって、いろいろとお話があるんだと思います。

 総理が貨幣現象とおっしゃったのは、市場に出回っている通貨の量と物やサービスの量の関係でいえば、片方がふえればインフレにもデフレにも現象的にはなるんだと思いますが、日銀が通貨の量をふやす、つまり目標を達成するまでという決意が市場に伝わりますと、企業にしてみれば、お金を持っていればいるほど価値が上がる経済から、実は早く必要なところに投資した方がいいんだというマインドに変わるはずなんですね。消費者もそのマインドに変わっていく。

 そのときに政府は何をするかというと、ただ、マインドが変わったときに、魅力的な投資先を用意するとか、あるいは魅力的な商品を出せるような環境をつくる、つまり、設備投資とか消費が拡大していくような環境を政府は政府で整える。それが両々相まつと、物価目標に向かって実体経済が伸びていくという関係にあるんだと思うんですね。そこで、先般、政府と日銀は共同声明をああいう形で出したわけであります。

 この点、委員が持っていらっしゃる疑問の答えになっているかどうかわかりませんけれども、貨幣現象であるということの疑念にはお答えになっているかというふうに思っております。

松田委員 いや、私の疑問に全然お答えいただいていないので。もう時間がないので、次に進みたいと思います。

 要するに、楽観的な経済シナリオを前提にして経済運営をする。これは、第一次安倍内閣のときに上げ潮という言葉がはやって、経済が成長すれば税収がふえていって、財政がそれで何とかなるんだ、そういう議論が相当ありました。

 その後、経済がよくなることを前提とした財政論がいいかどうかというのはいろいろな議論があったんですが、その後、リーマン・ショックが起こって、経済というのはそんなに簡単に、成長させるといっても何が起こるかわからない、やはり財政にしっかり責任を持つべきではないかという議論になっていったんだと思います。

 今国会でも、安倍総理はいろいろな答弁で、成長率を上げて税収をふやしていって財政をよくするんだということをよくおっしゃっているんですが、時間がないので、まとめて質問します。

 金利の問題というのがやはりあるわけですね。経済成長率が高まっても金利が低いという状態はなかなか続かない。やはり経済成長率というのが高まれば、当然のことながら金利は上がっていく。特に、物価というのはなかなか、体が温まって上がらないのに対して、金利は簡単に上がることがあって、かつてタテホ・ショックというのが八七年にあって、一民間企業が債券投資に失敗しただけで、当時の国債利回りが二・五五%から六%台まで急激に上がったというぐらい、この長期金利というのは簡単に上がる。

 金利が一%上がるだけでも数兆円程度、大手銀行の含み損、国債の含み損が発生するという試算もあって、まさに欧州債務危機的な状況につながる可能性もあるわけですね。この金利の上昇が財政に対してどういう影響を与えるのか。

 そして、税収弾性値というのも、第一次安倍内閣のときは、異常にこの税収が、成長率が多少上がってふえたんですが、それがずっと続くわけでもないとすると、普通に考えると、名目経済成長率が上がれば財政収支は悪化していく。これは財政制度審議会の中でもそういう試算があるんですけれども、こういう実態についてもっとしっかりと国民に明らかにして、甘い見通しで夢を振りまいて、経済成長に夢を託して、財政について甘い想定を置いてはいけないと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 決して甘い目標を設定しているということではなくて、我々は、まずデフレから脱却をしていこう、そして経済を成長させていこうということを大きな目標としたわけでありまして、何もしなくてもデフレから脱却をできる、何もしなくても経済が成長していくという甘い目標は立てていないわけであります。そして、デフレから脱却をして経済を成長させていかない限り、これで問題が全て解決するというふうには申し上げておりません。

 しかし、これなくして、残念ながら、財政再建ができないのは厳然たる事実でありまして、デフレ下においては、どんどん国民の富は収縮を、経済も縮小していくわけであります。事実、もう既に五十兆円縮小したわけでありまして、そういう中において、縮小均衡を図っていくのではなくて、まだまだ日本は成長していく力もあるし、金融政策もちゃんとやっていけばデフレからも脱却をできる中において、確かな成長戦略を立てていく。

 この成長戦略の中において、イノベーションと規制緩和、これはそう簡単なことではないということを私たちは自覚をしながら、決意を持って成長戦略を立てていく。そして、新しい投資分野ができていきますから、そこに民間の投資を促していく。ここが一番の大きな勝負だと私たちは思っているんです。

 一本目、二本目の矢を放つことはできた。三本目を次々と射込んでいくことが重要であるという認識を持っている中において、しっかりと経済を成長させていかなければいけないということであります。

松田委員 次の図をちょっとごらんいただければと思うんですが、プライマリーバランスという言葉を総理は御存じだと思います。プライマリーバランスが達成された状態において何が重要かというと、そういう状態になりますと、名目経済成長率と長期金利が一致をしていれば、国債発行残高の対GDP比の拡大がやむということであります。ただ、この名目経済成長率と長期金利の関係というのを長期的に見てみますと、大体、日本の場合、この三十年をとってみて、二十四回、成長率よりも長期金利の方が高い。いわゆるプライマリーバランスを達成するにも二十数兆円の大変な努力が要るんですが、そこに至ってみたところで、国債の対GDP比は拡大が続いていくという状況なわけであります。

 長期金利が成長率よりも低いというのはたった六回しかなかったんですが、それはほとんどがバブル期に集中しているということでございまして、こういう金利と成長率の関係を考えると、経済成長をしても、この金利との関係から見れば、まずは、当面は国債発行が増加してしまう。それが、市場にまた国債がたくさん出てきますから、悪い長期金利の上昇をもたらすという意味で、そう簡単に、財政というのは、成長すれば健全化に向かうわけではない。こういうしっかりとした厳しい認識をもっと国民にはっきり示すということが必要だと思います。

 その上で、先日、我が党の藤井孝男議員が質問しましたが、財政の健全化に向けて立法措置も含めて検討すると、総理は代表質問に対する答弁でされていますけれども、それを、その後、いやそうじゃない、あれはそれを約束したわけではないというふうな御答弁をいただいていますが、我が日本維新の会は、できれば今国会において、財政運営のガバナンスをしっかりさせるための立法をしたいと考えております。これはやはり、時の政治家も、あるいは政府も、甘い想定をしがちでありますので、そこは声なき次世代のために、しっかり縛ったガバナンスを確立する必要がある。

 こういう立法はやはり私は必要ではないかと思いますが、総理の御見解を伺います。

甘利国務大臣 名目成長の方が長期金利より高いにこしたことはない。ありがたいことでありますが、日本と世界の様子を比べてみますと、一概にどちらとも言えないということであります。

 そして、その数値が一緒だと対GDP比の債務残高は変わらないですけれども、おっしゃるように、そこが変わっていく。そのリスクを抑えるために、財政再建努力を常に政府はするという意思表示とプランが必要だと思います。

 安倍内閣におきましても、諮問会議において新たな骨太方針を策定して、そして中期の財政のプランをしっかりつくっていって、二〇一五年度、プライマリーバランスの赤字幅を半分にし、二〇年に黒字化する、この目標をしっかり掲げていくわけでありまして、これからも財政再建努力を具体的につくって、市場に対して示すということが、長期金利をできるだけ上げていかないことになろうかと思っております。

松田委員 総理に御答弁いただきたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 今、松田委員の御指摘になった長期金利と名目成長率の関係についての議論は、小泉政権において、ちょうど私が官房長官の時代に、経済財政諮問会議において結構これは延々と続いた議論でありまして、竹中・吉川論争ということになったわけであります。その際、マンキューの理論の解釈の仕方について議論になりまして、小泉総理から、もうそんなよくわからない議論はやめろという話があったわけでございますが。

 そこで、安倍政権の基本的な姿勢としては、まず、いずれにせよ、デフレから脱却をして、経済を成長させていくことが重要であるし、そもそも、国の経済を成長させていこうという精神を失った国には未来はないだろうと私は思うんですね。だからこそ、まずは経済を成長させていく。しかし、それだけで問題が解決をするとは私は考えていません。

 ですから、伸びていく社会保障費に対応するためには、三党合意して、来年から消費税を上げていくことが決まっているわけでございまして、同時に、無駄遣いは厳に慎まなければならない、このように思うわけでございます。

 そういう中においては、まずは二〇一五年までに二〇一〇年度GDP比のプライマリーバランスの赤字を半分にしていこう、二〇年には黒字にしていこう、こういうことでございまして、その中において、プライマリーバランスが黒字になれば、今委員が御指摘になったように、確かに名目成長率とそして金利の関係においては、上下、いろいろな状況がありますが、だからこそ、これが大体イコールになったとすれば、黒字になれば、だんだんGDP比の赤字が減少していく。まずはそこから努力を始めていきたい、このように思っているところでございます。

松田委員 こうやって議論していくとあっという間に時間がなくなってしまいまして、できれば、我が維新の会からの提案でございますけれども、この経済財政は極めて重要な問題でありますので、一度、しっかりと集中審議の場を設けていただければと思っております。

 それで、最後になりますが、アベノミクスはいろいろなリスクがあると思います。このリスクをしっかりマネジメントしていく高度なマネジメントの力、経済操縦術がこれからの政権に問われているということでありますので、きょうのお答えでは極めて不十分でありますが、マーケットあるいは経済関係者にしっかりと総理あるいは関係閣僚のお言葉で経済を語っていただいて、このアベノミクスが本当に成功するようにしていただきたいと思います。

 今のところ、政治政策としては大変成功しているんですが、本当に経済政策として成功するかどうか。恐らく、参院選直後ぐらいに、四―六月期のGDPの成長、ちょうど緊急経済対策の効果がぱっと出てきまして、いい数字が出てくる。これで消費税引き上げの環境が整うというあたりをうまく狙われたんだろうと思います。

 ただ、問題は、これは臨時異例に公共事業をふやしているわけですから、来年度、ちょうど消費税率の引き上げをやって、いわゆる駆け込み需要の反動減で四―六あたりがぐっと落ちる可能性があるんですけれども、そこにきちっと、ちょうどそのときに公共事業が、一旦上がった水準ががっと減るということが重なりますと、これもまたいろいろな問題がある。

 この辺についてもいろいろとお聞きしたかったんですけれども、時間がもう来ました。

 私ども維新の会は、やはり、日本の次の統治機構の改革ということに加えて、戦後システムを大きく変える。安倍総理も以前、戦後レジームからの決別というふうにおっしゃっていましたけれども、やはり、日本の潜在力を引き出していくために、戦後の行き詰まったシステムを変えていかないと、経済成長も本格的には起こらないだろう。

 そういう意味で、まさに日本の維新をしていくという立場でありまして、本物の保守というのは、日本のよきものを維持発展させていくために不断の変革をいとわない立場であるということを総理と共有させていただきまして、私の質問を終えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、中山成彬君から関連質疑の申し出があります。松野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中山成彬君。

中山(成)委員 日本維新の会の中山成彬です。

 三年四カ月ぶりにやっとの思いで上がってまいりましたけれども、国会周辺もすっかりさま変わり、そして、まさか私が、かつて一緒に仕事をした皆さん方に野党の立場から質問することになろうとは、まことに奇妙な感じもいたします。しかし、日本の現状が非常に危機的な状況にある、どうにかして日本を再生しなければならないという、安倍総理と同じ憂国の情を持って質問をしたいと思っていますので、野党でありますけれども、ひとつ前向きの答弁をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 安倍政権が誕生してまだ三カ月にもなりませんけれども、何か日本が急に明るくなったような、そういう感じがいたします。

 しかし、安倍内閣発足当時を考えますと、日本経済は本当に落ち込んでおりました。日米関係も本当に信頼が薄れ、そして、普天間問題も行き詰まっておりました。何より尖閣列島もすっかり中国に押し込まれてきているという、いわば安倍内閣というのはマイナスの時点からスタートしなければならなかった、こう思うわけでございます。

 しかし、発足早々、日銀との間でインフレターゲットを結び、そして渡米して、オバマ大統領との対談で日米関係は復活した、このように言われて、世論調査等も非常にいいわけでございます。

 しかし、よく考えてみますと、景気もこれからだろうと思います。何より、東の方からはTPPという経済的な圧力が加わってくるし、西の方からは中国とか北朝鮮、経済的、軍事的な圧力が加わってくる、こういう中で、また経済もいろいろ、エネルギーの問題もあります。

 そういう意味では、先行き非常に不透明な中で、こうして政権運営をされているわけですけれども、率直に今の御心境をお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 中山先生も、三年三カ月、臥薪嘗胆の思いで来られたんだろう、このように思います。

 私も、六年前に、病のためとはいえ、総理の座を突然辞することになり、国民の皆様に大きな御迷惑をおかけいたしました。

 今の状況、やっと経済に明るい兆しが見えてきたところではありますが、しかし、私も、六年前のことをもう一度思い返しながら、しっかりと国民の声に責任を持って応えていくことこそが私の責任だろう、このように自重自戒をしているところでございます。

 女房からは、浮かれることなく、感謝しながら頑張りなさい、こう言われております。もとより、浮かれているわけではございませんが、しっかりと地に足をつけながら、一歩一歩結果を出していきたい、このように思っております。

中山(成)委員 ありがとうございます。

 私は、レベルは違いますけれども、全く安倍総理と同じ心境でございますが、家内には、言葉遣いには気をつけろ、こういうふうに注意をされておるわけでございます。

 ところで、早速アベノミクスの話に移りたいと思いますけれども、安倍内閣は、早速、日銀との間でいわゆるインフレターゲット二%を結ばれたわけでございます。

 私は、物価上昇というのは、需要と供給の関係の、摩擦熱みたいなものだ、子供の知恵熱みたいなものでなければいかぬと。だから、経済成長に伴う物価上昇でないと、物価高の不況、いわゆるスタグフレーションという最悪の事態を招くわけでございますから、そこがこれからの問題だ、こう思っています。やはり何といっても、物価だけ上がって、所得やあるいは消費がふえないということでは困るわけでございます。

 私は、ずっと野にありまして、日銀のビヘービアをずっと見ておりましたけれども、どうも日銀というのは、デフレと円高というのは円の価値が上がるんだから日銀の手柄だ、こういうふうに勘違いしているんじゃないかな、そういう思いを実は持っておりました。確かに、あそこの立派な白亜の殿堂の中で仕事をして高給をはんでいますと、なかなか下々といいますか、一般庶民の生活はわからないんだろうな、そういう思いもしたわけでございます。

 先般、シャープがサムスンの軍門に下りましたけれども、私は、社員の無念、察するに余るものがあると思うわけでございますし、また、中小企業の経営者たちが、不渡りを出さないように、本当に必死に金策に走り回っておられる。あるいは、あした首になるんじゃないかと思って、おどおどしながら働いておられるサラリーマンがたくさんいらっしゃる。現にまた、失業した方々もいっぱいいらっしゃるわけでございます。私は、そういうことをもっと日銀は考えていかなきゃいけないんじゃないかと。

 日銀法第二条ですか、日銀は物価の安定を通じて国民生活の健全な発展に資する、こうなっているわけですけれども、私は、これまで日銀というのは、円を守って、国民生活を守ってこなかった、こう断じてもいいんじゃないか、そういう気さえするわけでございます。

 しかし、金融緩和だけではなかなか経済はうまくいかない。午前中もお話がありましたけれども、アメリカとかヨーロッパとか中国、通貨供給量がどんどんふえているんですね。だから、日本は逆に円高になったわけですけれども。あそこは民間需要が非常に強いですから、中央銀行が金融緩和すると、わっと景気がよくなる。しかし、日本は、少々日銀が金融緩和しても、凝り固まっていますから、デフレマインドで凍りついた民需というのがなかなか動かない。

 だから、私は、これからの日本の経済というのは、日銀だけではなくて、やはり政府、そして国民が一緒になって、みんなでやっていこうじゃないかと。まさに、安倍総理が言われましたけれども、一身独立して一国独立する、みんなが前向きに動いていくということが大事なことじゃないかな、こう思っております。

 今回の大型の補正予算、これはまさにそういう意味で、民需を何とか動かしたいということで大型のものになったわけでございまして、これをてこにして、いかにして民間需要を喚起していくか、国民がそれに応じて動き出すかということが非常に大事なポイントであろう、こう思っております。

 ずっと見ていますと、これまで景気対策として補正予算、補正予算でやってきましたけれども、しかし、日本の金融資産といいますか個人金融資産の状況から見て、いつまでもこれを続けられるわけにはいかぬ、こう思っております。そういう意味で、二番目の矢、機動的な財政運営、こう言われますけれども、これをやると、いつまでもずるずるずるずる、おやじのポケットから金を取り出していくような、そういう感じがあるわけで、補正予算は今回でもう終わりなんだよということをここではっきりした方がいいんじゃないかと私は思うんです。

 そうでないと、私は、大蔵省の主計局、そして自民党の政調で、いわば査定する方と要求する方、両方経験したものですからよくわかるんですけれども、当初予算というのはとにかく主計局は非常に厳しく査定します。しかし、景気対策となりますと、やはり額が問題になるものですから、ついつい、いろいろなものを詰め込んでしまう。ですから、不要不急のものまで、当初予算にはなかなかかからないようなものまで、後でどうせ補正があるんだからそこにとっておこうと。

 これは非常に財政規律を緩めるものでありますから、やはり財政法の基本に立ち返って、補正予算というのは何か大災害が起こったときなんかの本当に緊要なものに限る、こういうことをしっかり国民の皆さんにもわかっていただいて、自分たちで動いていこうじゃないか、そういうことを国民に決意してもらう。

 そういう意味で、麻生財務大臣、もう補正予算は今度限りだというぐらいの気持ちを披露いただきたいと思います。

麻生国務大臣 二十四年度の補正予算につきましては、中山先生よく御存じのように、九―十二が年率換算三・五%のマイナス経済成長という予測になりましたものですから、これは底割れするという懸念から大型のものにせざるを得なかったというのが、大型補正を組んだ一番大きな理由なんです。

 おっしゃるように、日本の国債残高は既にGDP比で一五四%ぐらい、二〇一三年度末でそれぐらいになろうと思います。そういった意味では、基本的には極めて厳しい状況になっておりますのは御存じのとおりなので、これをこのままずっと財政によります出動だけでやっておりますと、いわゆる日本の国債に対する信用が失われてみたり、国債の金利が今下がって、きょう〇・六ぐらいだと思いますが、それがいきなり上がってきて、一を超えて二になりなんてことになっていくと、非常に大きな影響も出ます。

 そういった意味で、財政再建を進めていくということも、これは我々は必ずやっておかねばならぬところ。それをみんな考えて、三党合意で消費税等々、いろいろ皆さん御検討いただいているところなので、我々としては、今後、経済財政諮問会議において、この点をきっちり勘案しながらやっていかないかぬと思っております。

 いずれにしても、財政の健全性と経済の再生と、この両方をうまくやっていかないかぬというところで、経済が成長しません限りは借金もなかなか返すことができないのも御存じのとおりなので、そういったところをきちんとやっていくために、私どもとしても、ほかの国の経済にも多大に影響を受けますので、一概にやりませんと安易に申し上げることもできませんけれども、私どもとしては、その点を勘案しながら運営をしていかねばならぬものだと思っております。

中山(成)委員 ですから、第二の矢、機動的な財政運営というのは、規律ある財政運営にぜひしていただきたいな、こう思っております。

 午前中、我が党の松田議員が極めて高度な経済理論を展開しましたので、私は、非常にわかりやすい、庶民の経済政策といいますか、どうしたら日本経済が浮揚していくのか、そういったところに着目してちょっと議論していきたいと思うんです。

 第三の矢で民間需要を喚起する、そういう経済戦略と言われていますけれども、イノベーションと規制緩和、これまでもずっと実はやってきたんですけれども、なかなか目に見えたものがない。やはりそれには時間がかかるんですよ。だから、私は、やはり今は急を要すると思いますから、直接、国民総生産の、要するに、国民のいろいろな動き、働きの中でどこに刺激を与えるかという観点から景気対策を進めていったらいいんじゃないかな、こう思っているんですね。

 それで、具体的なGDPの項目を見ますと、まず目につくのは民間設備投資です。安倍総理も言われましたけれども、今、日本経済の空洞化ということが大変心配ですね。私も、ずっと日本経済の空洞化に警鐘を鳴らしてきたんですけれども、しかし、日本と例えば中国、この賃金の格差が非常に大きいですから、同業者がいたとしたら、先に進出した企業が製品をつくって逆輸入をすれば、日本に残った企業は潰れるということで、どうしても我先に出ていかざるを得なかった。

 しかし、今はもう変わってきましたね。賃金格差も急に縮まってきました。あるいはまた、チャイナ・リスクというようなことも言われて、チャイナ・プラスワンというようなことも言われている中で、ぜひ私は、日本のいわゆる進出している企業、もう一回日本に帰ってきてくれないか、こういうことを考えているんですよ。

 そういうことを考えていましたら、この前、オバマ大統領がことしの一般教書演説で、アメリカの企業に、特に製造業に、国内に帰ってきてくれということを呼びかけているんですね。帰ってきたら、法人税とかそういったところで優遇しますよ。

 どうですか、安倍総理、そういったことを、この前は、報酬アップ、給料上げてくれということを経済界に訴えられましたけれども、国内回帰ということも経済界に訴えかけられたらどうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回、我々も、やはり空洞化は何とか食いとめなければならない、こう思っております。

 その中で、例えば、一時は円高でございましたから、円高・エネルギー制約対策のための先端設備投資促進事業というのを二千億円、補正予算で組んだわけでございます。また、設備投資促進税制も創設をいたしました。こうしたこと等を含めて、多くの企業に、やはり日本企業にとって一番リスクがないのは基本的には日本なんだろう、こう思っております。そして、世界で最も企業が活動しやすい国にしていきたい、それを宣言しているわけでありますから、これに呼応して、多くの経営者の皆さんに、やはり日本だなと言っていただければ大変ありがたい、このように思います。

中山(成)委員 ありがとうございます。ぜひ経済界の皆さん方も、総理のこの呼びかけに応えていただいて、プラスワンは国内に立地しようという気持ちになっていただく、ぜひお願いしたいと思います。

 次は、やはりGDPの中の個人住宅、これをどうしたら喚起できるかということを申し上げたいと思うんです。

 今、東海、東南海、あるいは首都直下型地震、これが起こる確率が三十年間で五〇%から七〇%、こう言われていますね。このためには、やはり震災対策、耐震構造の構築物にかえるとか、いろいろなことが考えられますけれども、私は、いわゆる沿岸部にそういう、いざ津波が来たときのことを考えた耐震マンションをつくったらどうか、こう考えているんですよ。もう既に東京の下町の方で、いざというときにはマンションに逃げ込めるような、そういう話も進んでいるというふうに聞いています。

 私は、やはりこの前の震災でもそうでしたけれども、車で逃げようとしても、大渋滞でかえってたくさんの犠牲者が出る、こういうことを考えますと、ふだんはマンションとして使っているけれども、いざとなったら近隣の住民がぱっと逃げ込めるように、そういう意味では、階段を広くするとか、あるいは幾つかのフロア、ふだんは住民が住んでいるけれども、いざというときには近所の方々が逃げ込めるような、そういう目的を持った防災マンションをずっとつくっていったらどうかなと思うんですよ。

 私の宮崎、この前の北海道なんかは大変な豪雪ですけれども、宮崎は本当にぽかぽか陽気で、もうウグイスが鳴いていますよ。ああいったところで、要するに都会でリタイアした人たち、どうしても東京に住まなきゃいかぬという人は別として、東京のマンションを五千万円で売って、宮崎なんか二千万ぐらいで買えますから、その三千万円は非課税にするとか。そして、地方に移ってもらえば、例えば宮崎の場合には、ゴルフもできるし、釣りもできるし、家庭菜園でもできるし、ボランティア活動でもできる、豊かな消費生活が営めるわけでございます。

 そういったことを考えて、ひとつ、防災と住宅建築、そして老後の余生をさらに生きがいのあるものにする。一石何鳥になるかわかりませんけれども、そういったいわゆる防災マンションというのを、どうですか、防災・減災ニューディールを主張しておられる国交大臣、よろしく。

太田国務大臣 大変すばらしい提案をいただいたと思っています。特に、国とかあるいは自治体で、津波ということに対して、津波タワーというようなことだとなかなか使われないということもございます。そういう意味では、民間投資ということも含めて、防災マンション、そこに支援するという形は、非常に大事な提案だというふうに思っております。

 こうした津波避難ビルを民間が建てる場合、社会資本整備総合交付金を活用してまちづくりの一環として行われる、こうした優良な中高層マンションやビルに対しての支援を現実にし始めているというところでございます。

 今御指摘のありましたように、駐車場が横にある、その上、屋上を使って避難できるようにすれば、そこにこちらから支援ができるというような形もありましょうし、屋上への外階段というのをつけたり、共有部分を使ってそうしたことをやるということは非常に有効なことだというふうに思っていますし、マンションなんかの備蓄倉庫というようなことにも支援をするというような仕組みを今やり始めているところであります。

 きょうはそうしたことの提案をいただいて、さらにそうした支援を強化するようにということで努めたい、このように思っております。

中山(成)委員 前向きの答弁、ありがとうございました。

 三番目は、何といっても、GDPの大宗を占める個人消費をいかに刺激するかということだと思うんです。

 今、世界では日本食はブームですけれども、やはり消費は美徳だ、お金を使わなきゃいけない、こういうふうな雰囲気をつくってもらいたい、こう思うんですよね。人々がもっと豊かな食生活を楽しんだり、あるいは映画とかお芝居とか、教養を高めるために月に二、三冊は単行本を買う、今、出版業界は非常に大変ですから。そういう意味で、日本は教養大国、消費大国を目指さなきゃいけないんじゃないかなと私は考えているんですよ。

 かつてトウショウヘイさんが言われた、豊かになれるところから豊かになれ。この不況の中でももうかっているところはあるんですね。そういったところが率先して金を使ってもらう、そういうことで私は景気をよくしてもらいたい。お金というのは消えることはありませんから、誰かが使えば、それがその人の収入になって、さらに誰かの所得になっていく。これは午前中は、松田議員がいろいろ議論を展開していましたが、具体的に言えばそういうことだと思うのです。

 ぜひ、そういう意味で、私は自民党時代からずうっと言い続けてきましたけれども、交際費課税を撤廃しろと。ことし、限度額を六百万から八百万に上げた、そして全額損金算入。一歩進んだとは言えますけれども、やはりもうこの際、消費の勧めの象徴として、この交際費課税は撤廃するというぐらいの、そういう大胆な経済政策をやったらどうですか。

 これは麻生大臣ですか。

麻生国務大臣 昨年、財務省に行ってこの話をしたときは総スカンでした。全く受けませんでした。無理もないと思いましたけれども。

 しかし、現場を知っている人間からいったら、地方の商店街に限らず、繁華街等々、やはり地方の町が疲弊していった一番大きな理由はこの交際費課税にあったと、私は地方にいるせいか、特にそう思っています。

 したがって、これはやはり撤廃されてしかるべきなんじゃないのかということで、ことし、第一歩として、中小企業、六百万を八百万にしてというのでやらせていただいたんですが、民主党の方にも御理解をいただき、自公同じくということで、今回の税制改正の附則に一応載せるというところまで来たので、岸本さんあたりが反対するのかと思ったら意外と賛成されましたので、よかったなと思って、これの枠を広げろという御意見も出ましたので、こういう意見が出てくるようになったということは、僕は世の中の方が変わってきたんだと思うんですね。

 そういった意味では、ぜひ、いろいろな意味で一層の緩和をということなので、今後、税収総額、これは二千億ぐらいだと思いますので、そういった意味では、こういったものをもうちょっといろいろなものに枠を広げると、消費がそこでふえて、そっちから、逆に消費税の方から回ってくるということもありますので、こういったものは前向きに検討をさせていただきたいと思っております。

中山(成)委員 そのとおりですよね。要するに、税金で消費を抑えるんじゃなくて、消費をふやして税収を上げる、そっちの方がよっぽどいいんですよ。やはり豚は太らせてから食べろということだと私は思いますので、御理解いただきたいと思っています。

 ところで、防衛費の話もちょっとしたいんですけれども、もう時間がありませんので、TPPについて御質問したいと思うんです。

 私はTPPには反対です。でしたと言うべきかな。総理が決断された以上は、もう今さらどうこう言えませんけれども。

 なぜかというと、私は自民党時代……(発言する者あり)いや、いずれそうなるんですよ、それは。自民党時代、アメリカの圧力をずっと感じてきたんですね。アメリカが、グローバリゼーションという名のアメリカナイゼーションで、ずっとこの圧力にさらされてきた、そういう経緯をよく知っているんですよ。古くは、日米繊維問題、あるいは自動車の輸入割り当て、あるいは四百兆円という公共事業の無理やり押しつけ。

 さらに、私が商工部会長として一番反対したのが、いわゆる大店法の規制緩和でした。ああいうことをすると、絶対、中心市街地は廃れますよと。だけれども、残念ながら、いや、アメリカはWTOに提訴すると言っているといって、無理やり押し切られてしまったんです。今、地方に行きますと、シャッター通りばかりですよ。本当に私は残念でたまらない。またTPPも同じように、今度は農村部がああいうふうに崩壊してしまうんじゃないか、こういうことを心配しております。

 私は、日本の農業というのはアメリカの農業と違う。アメリカは産業ですよ。しかし、日本の農業は生活そのものだと思っているんですね。きょう午前中もお話がありましたけれども、アメリカの農家と農地は別ですよね。一日車で走っても小麦畑、トウモロコシ畑、産業です。しかし、日本の農業というのは、農家の近くには商店もあり工場もある、地域共同体としての農業でした。だから、日本の伝統、文化、あるいは宗教までも含めたそういう農村部が崩壊してしまうというのは、私は大問題だと思っているんですよ。

 ですから、安倍総理は、日本は瑞穂の国、棚田に象徴されるような美しい日本の国土ということを言われますが、私は、損得を超えた、要するに国益を超えたものがあると思うんですね。ですから、私は、そういう数量では考えられない日本の美しい国土、美しい国柄を守るということをぜひ前提にして交渉に当たってもらいたい。

 しかし、残念ながら、もう既に自動車の関税、乗用車二・五%、トラック二五%と決まった。何か、大坂夏の陣、内堀まで埋められてしまったような気がするんですけれども、一体、日本は何をアメリカに要求するんでしょうか。

 私は、そういう意味で、きちっとした国益を踏まえた、国柄というものを守るという決意でTPP交渉に参加してもらいたい、そのことをお願いしたいと思うんですけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ただいままさに中山成彬先生が御指摘された点が、私は極めて重要な点だと思っております。

 日本は、古来より、朝早く起きて田に出て、汗を流して稲をつくって、そしてみんなで協力をして水を分かち合い、秋になれば五穀豊穣をみんなでともに祈ったわけであります。今も新嘗祭を天皇陛下は挙行しておられるわけでございますが、御皇室とともに豊作を祈るわけでございまして、これこそが、私は、日本の古来からの美しき、麗しき伝統なんだろうと思います。そういう営みの積み重ねがあって日本は田園風景を守ってきたわけでございまして、私も、この国柄を守っていくことこそ私の使命である、こう思っています。

 その中において、このTPPについては、参加するかどうかというのはまだ決めているわけではございませんが、国益をしっかりと守っていく、そして最善の道は何かということを見きわめながら判断をしていきたい、このように考えております。

中山(成)委員 ありがとうございます。ぜひ、しっかりとした信念に基づいて、この外交交渉、アメリカに当たっていただきたい、決してアメリカの圧力に屈することなく頑張っていただきたいと心からお願い申し上げます。

 ところで、私は、政権交代必至という中で、民主党の政策、外交、防衛、経済、教育政策に問題がある、これは日本を滅ぼすことになると思って、それこそ政治生命をかけて、それを阻止しようとしました。残念ながら、政権交代で三年と三カ月、本当に歯がゆい、むなしい思いで過ごしてまいりました。

 何より、私は、政治主導、脱官僚、そんなことで、官僚を使わないで本当に日本の国の運営ができるものかと非常に危惧の念を持っていました。案の定、一番大変だったのが東北の震災、福島の原発事故だったと思います。

 しかし、安倍内閣になって、直ちに復旧のテンポが速まった。大変結構なことだと思うんですけれども、実は、第二の犠牲者が宮崎県民だったんです。

 民主党政権下で、口蹄疫が発生しました。新燃岳も爆発しましたけれども、この口蹄疫の対応が非常におくれたんですね。実は、十三年前に発生したときには、江藤先生、大原先生、堀之内先生、山中先生もおられた。もうみんな亡くなりましたけれども、直ちに集まられて、予算措置をして、農水省が態勢をとりました。たった三十七頭の殺処分で済んだんです。

 ところが、今度、三年前に発生したときは、農林大臣は何か、メキシコなんかに会議で行っちゃった。初期の対応がおくれて……(発言する者あり)キューバでしたか。二十九万頭の殺処分ですよ。

 本当に、農家にとっては、家畜は家族同然です。私も小さいころから牛馬の世話をしてきましたからわかるんですけれども、家畜にワクチンを打たなきゃいけない、殺処分をしなきゃいけない、本当に修羅場でした。

 しかし、宮崎の人たちは立ち上がったんです。五年ごとに行われる牛肉の共進会でも連続トップでした。また、新しく和牛を導入しようとする、そういう農家もふえています。

 しかし、皆さん、本当にまだまだ風評被害は残っている。地域経済は停滞しています。地元からいろいろな要望が来ていると思うんですけれども、代表して農水大臣、ぜひこの地元の要望に応えていただきたい。お願いいたします。

林国務大臣 お答えを申し上げさせていただきます。

 今先生からお話がありましたように、平成二十二年の四月の宮崎県における口蹄疫の発生、その前の十二年のことをお引きになってお話がありましたが、十二年のときは発生してから同年の九月に既に清浄国に復帰をしておりますが、二十二年の四月の場合はかなりの期間がかかってしまった。そして、三十万頭に近い殺処分だったということで、三年が経過するわけでございますけれども、まことに甚大な被害で、宮崎県の、今先生がおっしゃられた関係者の皆様の御労苦というものは筆舌に尽くしがたいものであったというふうに考えております。

 農林水産省としても、被害を受けた地域の復興、発展に向けて、可能なことを全てやっていくということといたしまして、この間も知事さんもいらっしゃいましたけれども、御要望を踏まえて、二十五年度においては、患畜等の埋却地の原状復帰を支援するということにいたしております。

 今お話に出ました江藤先生の御子息というか、江藤拓先生が今、私の右腕で、副大臣で、現地とそれこそ緊密に連絡をとってやっていただいておりますので、今後も県と意見交換をしながら、口蹄疫からの復興に向けて必要な支援に努めてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

中山(成)委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 さて、教育問題に移りたいと思います。

 今、いじめの問題とか体罰の問題とかいろいろありまして、政府の教育再生実行会議でもいろいろなことを検討されていると思って、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思うんです。

 やはり、いじめることはひきょうなことで、人間として許されるものじゃないんだ。今、NHKで「八重の桜」というのを放映していますけれども、会津の什のおきての中にも、弱い者をいじめてはなりませんと。私が生まれ育った旧薩摩藩ですけれども、やはり、弱い者いじめをするな、うそをつくな、小さいころからたたき込まれましたよ。だから、このことは、家庭で、学校で、しっかりと教え込まないかぬ、私はそう思っています。

 このことはきょうはもう取り上げませんが、実は、国際的に日本の子供たちがいじめられているという話をきょうはしたいんです。

 文科大臣、いらっしゃいますか。

 今、日本の留学生が、アメリカとかカナダで、中国や韓国の留学生に、あなたたちの祖先に自分たちの祖先はひどい目に遭ったんだといって責められて、日本の留学生が本当に肩身の狭い思いをして過ごしているんですよ。そういう話を聞いたことはありますか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 尊敬する中山文部科学大臣のもとで、私は文部科学大臣政務官としてお仕えをさせていただきまして、そのとき勉強をした結果、文科大臣になれたということで、感謝とともに、また、その中山先生が野党のお立場から質問され、私が答えるというのも不思議なえにしを感じますが、誠実にお答えさせていただきたいと思います。

 我が国の子供たちは、日本のことをよく知らない、日本の歴史や文化、伝統を知らない。真の国際人というのは、やはり真の日本人であるからこそ、諸外国の人たちともきちっと話すことができる。しかし、外国に行って、改めて、自分が何も日本のことを知らない。

 そのために、領土問題あるいはいろいろなことについて、何ら反論もできないし、聞くばかりで、一体、日本の学生たちは本当に賢いのかというような形の中で、いじめられるというよりは、多くの日本人が、外国に留学して、いかに自分は日本のことを知らないのかということを痛切に感じ、そこから改めて日本の勉強をし直している。しっかり日本の教育について変えてほしい、こういう話をたくさん聞いておりますし、御指摘のようなことがあるというふうに思います。

中山(成)委員 そうですね。思い出しますね。私が文科大臣になったときに、政務官でもいいからチームに入れてくれと。私はあのとき、下村さんの教育にかける熱意を本当に感じたんです。その後、官房副長官とか、あるいは教育再生の会議で中心的な役割を果たしておられる。すばらしいことだと思っています。本当に頑張っていただきたいと思います。

 ところで、今、韓国も朴新大統領、近々、習近平主席就任ということでございます。首脳会議も予定されていますね。私は、ぜひ北朝鮮の金正恩氏とも会って、そして拉致問題を早く解決してほしい、こう思うんですけれども、そのときに常に出てくるのが、歴史を直視して未来志向で、こう言われるんですよね。

 きょうは、歴史を直視するというのはどういうことかということを、ぜひ皆さん方と考えてみたいと思うんです。

 今度、四月二十八日は主権回復の日ということで、自民党さんも、近現代史を学び直す日にしよう、こういうことを考えていらっしゃるようですけれども、一足先にちょっと話をさせていただきたいと思います。

 日本の戦前の朝鮮とか台湾の統治、これは、欧米諸国の植民地主義、いわゆる略奪だけを目的としたそういうものとは違っていたと私は思っております。学校とか病院をつくり、道路や鉄道をつくり、そして、例えば台湾では、嘉南タイシュウといって、八田技師が大変なかんがい事業をやりました。ちょうど私は出くわしたんですけれども、五月八日の日には地域の住民たちが集まって八田技師の遺徳をしのんでいる、そういう場面にも出くわしたことがありました。

 そういった中で、私は、朝鮮も同じようなことをしていたんだということを皆さん方に御理解いただきたいと思うんです。

 このパネルを見ていただきたいんですけれども、右側にありますのは、「京城に地下鉄」と書いてありますけれども、実は、東京で一番古い地下鉄、銀座線が浅草―渋谷の間に開通したのは一九三九年。しかし、翌年の一九四〇年には、もう京城に地下鉄ができているんですね。この一例だけで、いかに日本が当時の韓国の近代化に熱心であったかということがおわかりになるんじゃないか、こう思っております。

 その横の朝鮮半島の地図でございますけれども、昭和十二年の時点で、朝鮮の国鉄、私鉄合わせて五千キロメートルの鉄道ができていた。そして、昭和二十年までにはさらに千キロメートル延長したんですね。

 この下の写真は漢江の大鉄橋ですけれども、この大鉄橋ができた明治三十二年、一八九九年、我が国が京城と仁川の間に鉄道を敷設するまで鉄道はなかったんですね。だから、すごい鉄道網を短期間につくったということがわかっていただけると思います。

 左の方の写真ですけれども、これは京城帝国大学です。これは大阪帝国大学よりも七年早く、名古屋帝国大学よりも十五年も早く、実は建てられているんですね。そして、日韓併合の時点では公立学校はたった百校しかなかった。しかし、昭和五年の段階では公立小学校は千五百校。昭和十七年には四千二百七十一校の公立学校を設置したんです。

 しかも、この写真を見てください。鉄筋コンクリートですね。れんがづくりです。私は昭和二十五年に小学校に入りましたけれども、木造のおんぼろ校舎でした。本当に、そういう意味で、私は、日本というのは、台湾もそうですけれども、朝鮮も内地と同じような、そういう統治をしたんだということを御理解いただきたいと思っています。

 この一番下の女学校など、今、日本にあったら、これは文化財指定物じゃないかな、このようにさえ思うんですね。

 次は、麻生副総理に後でお聞きしますけれども、創氏改名は朝鮮人が望んだんだ、こういうふうに東大で講演したら朝日新聞でたたかれた記事でございますけれども、現在使われている高校の日本史の教科書を見ますと、ここに三つの教科書を並べましたけれども、「日本風に改める創氏改名が強制された。」「日本式氏名を強制した創氏改名など、」、創氏改名などを強制した、こういうふうに検定教科書には書いているんです。

 ところが、この左の方を見ていただくと、「氏の創設は自由 強制と誤解するな 総督から注意を促す」、こういう記事があります。そして、内地式に変更、締め切り後も変更することができますよと言っているので、決して強制ではない。

 真ん中の写真を見ますと、創氏改名に殺到しているソウル市民、こういうふうに書いてあるんですね。

 麻生副総理、平成十五年に東大で発言をされたときは、こういう記事を知らなかったでしょう。今、改めて、どういうふうに思われますか。

麻生国務大臣 これは、たしか政調会長の時代だったと記憶しますけれども、この発言は東大の五月祭で話が出たんだと思いますが、とにかく、その発言につきましては、日韓関係の間にそごを来すということで、私の方から、その後、記者会見だったと思いますけれども、韓国の国民の方々に、こういった話で日韓関係の間にいろいろな意味で不愉快な思いをさせたということでおわびをしたというように記憶をいたしております。

 この問題に関する現在の個人的な認識を、今これをいただいて改めてまた申し上げるということもいかがなものかと思いますが、今は第二次安倍内閣の閣僚をやらせていただいておりますので、この問題に関する私の個人的見解は差し控えさせていただきます。

中山(成)委員 それでは、下村大臣。

 教科書の検定というのは事実に基づいて行われるべきは当然だと思うんですけれども、ここに提示した三つの教科書、いずれも明らかに間違っていますよね。

 この教科書で学んだ学生が、例えば大学入試で創氏改名は強制と答えた場合に、これはマルですか、バツですか。非常に大きな問題なんですよ。本来であれば、こういう教科書は回収すべきだと思うんですけれどもね。そうでなくても、これを使っている学校へ正誤表を配付する、そのようなことをしてもいいんじゃないかと思うんですけれども、期待する文科大臣、よろしくお願いします。

下村国務大臣 お答えいたします。

 現在の教科書検定におきましては、もう先生御承知のことでございますけれども、学習指導要領に基づき、教科書検定審議会の学術的、専門的な審議に基づいて行われ、申請図書の具体の記述について、その時点における客観的な学問的成果や政府見解、適切な資料等に照らして欠陥を指摘するものでございます。

 これが欠陥かどうかということでございますが、現在、日本史大事典また国史大辞典というところにおいても強制したという記述が表現されているということの中で、教科書検定においては、これは欠陥には当たらないという判断が現在されているところでございます。

中山(成)委員 そこをやはり政治主導で、下村大臣、やはり間違っていることは間違っている、それをちゃんと訂正すべきじゃないか、このように思いますが、次に移ります。

 次は、午前中、辻元議員がいろいろ言っていました、いわゆる従軍慰安婦の問題でございます。

 慰安婦問題は、官憲が介入したと誤解させた最初の記事というのは、平成四年のこの記事なんですね。「慰安所 軍関与示す資料」。ところが、この資料をよく見てみますと、これはそうじゃないですね。この資料というのは、悪徳業者が募集に関与しているようなので注意するように、そういう通達なんですね。全く逆なんですよ。

 当時の朝鮮を見てみますと、これは真ん中を見ますと、道議会選挙、八割以上の人が朝鮮人なんです。そして、忠清南道の知事、ここにありますように、初代、六代、八代、九代、十代、そして昭和二十年に至るまで全部朝鮮人でした。ほかの道も同じようなものでした。そして大田の警察、ナンバーツーの警部と高等刑事も朝鮮人が務めていた。

 これらの体制で、官憲の強制連行というのは考えられないんじゃないですかね。

 今、この従軍慰安婦の問題が世界に広まっている。ソウルの日本大使館の前には、従軍慰安婦と称する少女の像がある。アメリカでも、朝鮮人の多いニュージャージー州には同じような銅像が建てられ、そして高速道路に大きな看板が出て、日本人が朝鮮女性を二十万人セックススレーブにした、性奴隷にした、こういうふうな看板がかけられている。これは私は、本当に日本人にとって屈辱だと思うんですよね。こういうことをさせちゃいけない、こう思うんです。

 大体、二十万人もの女性をさらっていく、その親たちは一体黙って見ていたんでしょうかね。やはり、そんなことはないと思うんですよ。

 まして、私は、あえて、日本の兵隊さん、昔の兵隊さん、世界一軍律厳しい軍隊だったと世界から称賛されていたんですね。これはもちろん、日本がおくれて列強の仲間入りしたから、よく見られたいということもあったんでしょうけれども、根底にあるものはやはり武士道だったと思うんですね。武士道があったからこそ、私は、日本の兵隊さんというのは立派な戦いをしたんです。それなのに、こういったことで侮辱されているというのは、我々の先祖が侮辱されているというのは看過しがたい、こう思っているんです。

 ここで安倍総理に聞くのはちょっと何かなと思いますので、お答えは要りませんけれども、ぜひ、こういうふうなことをみんなでわからないかぬと思っているんです。

 ここにありますように、官憲が強制連行したんじゃなくて、実はそうじゃなくて、これは、一枚だけが東亜日報の記事ですけれども、あとは全部当時の朝日新聞ですけれども、これを見ますと、朝鮮人が良家の子女を誘拐して満州に売り飛ばした、十七歳と十九歳の日本人だった、こう書いてありますね。あとは全部、見てもわかりますように、農村の娘に毒牙とか、桃色の巣を暴くとか、警察がしっかり仕事をしていたということが全部わかる。日本人が何かやったということは、調べても調べても出てこないんです。

 私は、戦前、日本も貧しかった、ですから、いわゆる慰安婦として苦界に身を投じなければならなかった、そういう悲しい身の上の女性がいっぱいいたということも知っています。

 だけれども、いかにも朝鮮人だけが従軍慰安婦にされた、こういうふうなことはやはり誤解を解いてもらいたい、このように思っているわけでございまして、午前中に辻元議員がここに出しましたけれども、各国で従軍慰安婦に関する決議、動議が出されている。何というか、朝鮮の方というのは、粘り強いというかしつこいというか、本当にすごいなと思うんですけれども、私は、こういうふうなことがずっと今蔓延している、これは自民党にも責任があると思うんですね。

 自民党のずっと歴代の外交、その場しのぎ、その場しのぎで、謝ればもうそれ以上は追及しませんから、そういう言葉に乗せられて、いろいろな談話等が出されました。そのツケが全部、安倍総理、今ここに来ているんですね。だから、私は、自民党にも責任がある、このように思うんですね。

 日本人は、惻隠の情といいますか、大体お互いわかるでしょう、あるいは、謝ったんだからいいじゃないか、人をだましてはいけない、小さいころから教えられますけれども、しかし、だまされる方が悪いんだ、あるいは、うそも百回言えば本当になるんだ、そういってプロパガンダに励んでいる国民もいるということ、そのことを忘れちゃならない。

 私たちは、そういう意味で、国際社会に生きていく上で、ダブルスタンダードで生きていかなきゃいけないという決意を固めなきゃいかぬと思っています。総理にはお答えは要らないことにしておきたいと思っています。

 もう時間が少なくなりましたけれども、さきの戦争は侵略戦争だった、こういうふうに私たちは思い込まされていますが、一九五一年、昭和二十六年ですけれども、GHQの総司令官であり東京裁判を主宰したダグラス・マッカーサーは、米国議会の上院の軍事外交委員会におきまして、第二次世界大戦について、日本は米国によって閉じ込められ、資源供給の道を断たれた、日本が戦争を始めた目的は主として安全保障の必要に迫られてのことだった、こういうふうに明確に侵略戦争を否定しているんですよ。今の東京は、石原前都知事の指令で、このマッカーサーの発言を副読本として使っているんですね。

 期待される下村文科大臣、どうですか。これを全国の公立学校に副読本として配付したらどうですか。

下村国務大臣 御指摘の「江戸から東京へ」、私も、先生から御質問があるということで、きょう、手に入れさせていただきました。東京都教育委員会が独自教材として作成されているものでございます。

 このような地域で作成した教材のうちすぐれたものについて、ほかの地域においても活用されるということは大変有意義だというふうに考えます。このため、文部科学省として、各都道府県教育委員会などの担当者を集めた会議などを通じて情報の共有化を図ってまいりたいと思いますし、各都道府県で使われている副教材ですばらしいものについてはぜひ全国で共有化されるように、文部科学省としても働きかけをしてまいりたいと思います。

中山(成)委員 前向きの答弁、ありがとうございました。

 時間がだんだんなくなりましたので、ちょっと提案でございますけれども、今、私たちは、子供たちがどういう教科書で習っているのか調べることは非常に困難ですね。

 安倍総理も一緒に、あれは平成九年でしたか、亡くなった中川昭一さんとかと一緒に、日本の前途と歴史教育を考える議員の会をつくりました。古屋議員もあのとき一緒でしたけれども。あれは最初、中川先生が自分の娘の教科書を見たら、とんでもないことが書いてある、これはいけないということで、いわゆる教科書議連をつくって活動して、今はもう中学校の歴史教科書にいわゆる従軍慰安婦という言葉はなくなった。これは本当によかったなと思っています。

 私は、文科大臣に提案なんですけれども、ぜひ、日本の今使われている検定教科書、これを見られるように文部省のホームページに全部出してもらいたいと思うんです。

 ついでに、中国とか韓国は、物すごい反日、愛国教育をしているんですよ。その中国から今いっぱい日本に入ってきていますよ。彼らがどういう教育を受けているのか、やはりその辺は知っておいた方がいいと思うので、この中国や韓国の教科書も一緒にホームページに載せていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のように、我が国で使われている教科書について、広く国民の皆様方にそれぞれわかるような形で、ホームページを含め、文部科学省としても、より情報を提供するということは大変重要なことであるというふうに思いますし、しっかり対応させていただきたいと思います。

 ただ、文科省のホームページで他国の教科書等を同じような形で掲載するということについては、著作権の問題やあるいはそのときの政治的な判断、外交的な判断もございますので、できたら文科省以外のところで、民間等で、先生初め、お考えになっていただければ大変ありがたいと思います。

中山(成)委員 それでは、これは外務省にお願いするしかないんですけれども。

 最後になりましたけれども、この尖閣列島の地図、この上の地図は既に外務省のホームページにあるんですけれども、この下の方の地図はまだないんですよ。これは台湾が発行したものなんですね。これもぜひ外務省のホームページに載せてもらいたいなと。これは、はっきりと尖閣列島は日本の領土だということが明らかになるようになっていますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

 いろいろと、もっと質問したいことがあるんですけれども、時間が参りました。

 私たち日本維新の会は、教育問題に一生懸命取り組んでおります。ぜひ集中審議をお願いしたい。そのときに、先ほどの話にもありましたけれども、朝日新聞の関係者にもぜひ来ていただきたい、このことを委員長にお願い申し上げます。

山本委員長 後刻、理事会で取り計らいます。

中山(成)委員 ありがとうございました。

山本委員長 これにて松野君、松浪君、松田君、中山君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党、江田憲司でございます。

 安倍総理、連日、本当にお疲れさまでございます。

 冒頭、本題ではないんですが、本日、日本時間の未明ですか、北朝鮮に対する制裁決議が行われましたけれども、安倍総理はどう評価されておられますか。

安倍内閣総理大臣 この制裁決議につきましては、憲章の七章を引くものでございまして、強制性と、厳しい経済制裁について各国が責任を持って実行していくというものでございまして、中身につきましても、日本が米国あるいは韓国とともに協調しながら求めてきたものは大体入れ込むことができた、このように思います。

 あとは、各国が協力して、北朝鮮の今とっている挑発行為をやめさせ、彼らの政策を変えていくことに資するものにしていきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 私も、総理おっしゃるとおり、当初は、伝えられるところによりますと、中国の反対等もあって、法的拘束力のないものになるんじゃないかと言われたところが、国連憲章七章に基づく決議となったということと、中身も、貨物検査、さらには金融制裁、そういった中身を盛り込まれた、本当に結果的には非常に評価できる内容だったと思います。

 そういう中で、これもちょっと総理の御感想を聞きたいんですが、中国が最終的に賛成に回り、こうした決議案ができ、そして、その後の中国の国連大使の発言等を見ておりますと、決議をしただけではなくて、しっかり各国が履行しなきゃだめなんだというような発言をされておられますね。だから、中国もちょっと北朝鮮に対する対応、態度が変わってきたのかなと思いますけれども、総理はどう受けとめられますか。

安倍内閣総理大臣 今回は、安保理の常任理事国である中国とそして米国が最終的には詰めていくわけでございますが、今までは、どちらかといえば、中国は非常に慎重な立場を維持してきました。

 今回は、米国も、あのミサイル発射はアメリカを射程に入れたものである、今までと全く違う、米国に対する脅威の次元が変わったという理解の中で、相当、中国との折衝の中でアメリカの要求する立場は強かったんだろうと思うわけでありますが、中国にとっても、これは、いよいよ北朝鮮がレッドラインを超えるのではないかという危惧、危機感を持ったのではないか、これは推測ではありますが、という分析をする専門家もいるわけであります。

江田(憲)委員 そこで、そのレッドラインですよね。ちょっと心配されるのは、先ほど報道があったんですけれども、北朝鮮当局が、南北間、北朝鮮と韓国の間の相互不可侵あるいは朝鮮半島の非核化、こういった過去の合意を全て破棄する、それは米韓合同演習がスタートする十一日を期してやるんだというような発表をしておりますね。

 いつもの北朝鮮の挑発行為だとは思いますけれども、しかし、国民の側からすれば、やはり、朝鮮半島の情勢が緊迫化する、それがましてや核開発、核攻撃も含むものになるということになれば大変な危機だと思いますので、それに対して、安倍総理、これからもしっかり取り組んでいただくという決意をきょうここで表明していただいて、国民に安心を与えていただきたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 今、江田委員が御指摘になった北朝鮮の反応に対応いたしまして、政府、官邸におきまして、危機管理監のもとに、対応する体制を組んだところでございます。

 韓国、米国と情報の連絡、連携を密にしながらしっかりと対応していく、当然、国民の生命と財産はしっかりと守っていく、そういう考え方でもって対応していきたいと思います。

江田(憲)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、きょう通告させていただいております本題に入りたいと思うんですが、アベノミクスを初めとした安倍総理の政権運営というのは、私から見ても、極めて順調にいっていると思います。その結果、国民的な支持率も高い内閣ですね。ただ、安倍政権も自民党政権だということで、私も過去自民党政権を支えた一人として、やはり危惧というか、今後の行く末について懸念をするところがあるんです。きょうは、その点を中心に安倍総理にお聞きをしたいと思うんですね。

 それは何かというと、アベノミクスの大きな柱である成長戦略、そのまた大きな柱である規制改革を本気でやろうと思えば、やはり自民党の支持基盤に切り込まざるを得ないと思うんですね。それからTPPの問題もそうでしょう。さらに言えば、地域主権であるとか地方分権、公務員制度改革につきましては、これは霞が関官僚の抵抗というのも容易に予想されますし、あるいは、そのバックにいる政治家の皆さんの反対もあるかもしれませんね。

 ですから、きょうは、個別具体的に聞いてまいりますので、そういった懸念をぜひ払拭される、総理としての御見識、答弁を本当に期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 そういう意味で、まずTPPなんですけれども、総理が参加を決意されたということは、私ども、遅きに失したとはいえ、高く評価をしております。

 そもそも、多国間にしろバイであるにしろ、通商交渉、国際交渉に参加するか否かがここまで政治的大問題になったということは、過去、例になかったんですよ。例の牛肉・オレンジ交渉のときもそうでした。ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉のときもそうでした。参加するのは政府の決断でやって、協定を署名するとか批准するとか妥結する段階で、確かに、国論を二分するような議論が起こったことは事実ですね。

 しかし、今回の場合は、これは私は民主党政権の責任も重いと思うんですけれども、参加するか否かがここまで大問題になった。こういった不毛な争いに終止符を打たれたということは、私は評価をしたいと思うんです。

 ただ、日米首脳会談はいつあったんですかね、先月末あって、今の段階で、総理、まだ参加表明を正式にされていない。いつ正式に表明されるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今までの交渉の経緯、経過、また現在進行中の交渉もございます。それとともに、国内への影響もございますし、また党内のさまざまな心配する意見もあります。そうしたもの、あるいはまた米国側の国内の調整、あとまた他の、既に参加をしている国々との米国の調整もございまして、そうしたところと平仄も合わせていくことも必要でございまして、今、この段階でいつだということは申し上げられませんが、これは余り時間をかけずに決めていきたいと考えております。

江田(憲)委員 そういう意味で、私はよく言うんですが、TPPについては三、五、九という数字が大事だ。三、五、九という数字ですね。これは、御案内のとおり、TPP、実際交渉している実務者会合、三ですから三月、今まさにシンガポールでオンゴーイング、進行しておりますよね。次回が五月と言われていますね。その次が九月と言われているんですよ。

 そうすると、例の米国議会の九十日間ルール、事前通知ルールというのがありますよね。そうすると、総理、どうお考えになっているんでしょう。報道では来週早々にも表明されるというのが出ているが、それはともかく、この段階で表明をされると、日本は九十日ルールによると五月からは参加できない、こういう理解でよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、江田委員が御指摘になった三、五、九、当然、交渉担当者も我々も頭の中に入れているわけでございまして、まだ参加いかんは決めておりませんが、もし参加ということになれば、参加するからには我々の意見が通る、そういう体制また状況をつくっていきたいと考えております。

江田(憲)委員 そうなんですよ。こういったマルチ、多国間交渉は、期限を切っても延び延びになるというのは過去の例からもよくあることなんです。このTPPも、来年妥結するんだ妥結するんだと延ばし延ばし。ただ、御承知のように、オバマ大統領が初めて一般教書演説で、TPP、決意表明をされましたよね。それから、カトラーさんというんですか、USTRの代表か副代表か忘れましたが、責任者も、ことしじゅうに妥結するんだというような表明をされて、例年になく、ことし妥結という雰囲気が非常に盛り上がっているんです。

 そうすると、この九十日ルールで五月に参加できなければ、九月になっちゃうんですね。そして、これも御承知のように、十月のAPECバリ会合で妥結をするのではないかと言われておりますけれども、それを前提とすると、九月、仮に米国議会の九十日ルールをクリアして参加できたとしても、もう翌月には妥結となると、これは、安倍総理もおっしゃっているような、日本の国益を反映させるとか、日本の訴え、主張を反映させるということがほぼできなくなる。これまでの各国のドキュメントをもらって、もう翌月妥結みたいな話、こういう事態になるんですよ。

 ですから、ちょっと遅きに失したというのはこういうことなので、ただ、そういう状況にかんがえてみれば、やはり、来週あたり参加表明されるにしても、五月から参加させてくれとか、いやいや、五月は一応決まったスケジュールかもしれないけれども、ぜひ六月に延ばしてくれとかやらないと、十月妥結を前提だと、おっしゃっているような日本の国益が反映できないと思いますけれども、どうお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いずれにせよ、我々、もし参加ということになれば、しっかりと国益を守る、また交渉力を持って、得るべきものは得る、そして守るべきものは守っていきたい、このように決意をしております。

江田(憲)委員 ちょっとよくわからない。

 ぜひ総理、そこは頭に入れていただいて、ことし妥結、かなり可能性は高いと私は見ておりますので、そこは来週でも再来週でも表明をされたらすぐ参加各国と協議をされて、やはり妥結する前に十分な時間的余裕を持って、日本の訴え、主張を聞いてくれという交渉を、外務大臣、経産大臣も含めて、ぜひよろしくお願いします。

 そこで、我々みんなの党は従来からTPP積極参加、積極推進の立場ですから、そういう立場から、この前の日米首脳会談の共同声明ですか、ちょっと私が懸念を持つのは、双方のセンシティビティーですね。日本は農産品、アメリカは車ということだそうですが、この車、米国車に対して、報道されているところによりますと、事前協議で、TPPというのは原則十年で関税撤廃ですけれども、それを先延ばししようとか、関税撤廃は聖域化しようとか、そういったことに今なっているんでしょうか。これは外務大臣ですか、経産大臣、どちらでも。

岸田国務大臣 先日の日米首脳会談で発せられました日米共同声明の第三段落目で、従来からアメリカの関心事でありました自動車等について触れているわけですが、この第三段落目の意味は、従来までもこうした課題について日米間で協議をしてきた、これを今後も引き続き協議するということを確認した、こういった内容ですので、引き続きまして日米間でこうした関心事について今協議を行っている、こういった状況であります。今、協議の最中ということです。

江田(憲)委員 あの共同声明の文はそのとおりなんですが、ただ、きのう、きょう報道されているところによりますと、事前協議でカトラーさんという方が今来日されているんですか、そこで、アメリカの車の関税については猶予するとか期限を延ばすとか、そういった報道がされていますけれども、それは事実ですか。

岸田国務大臣 御指摘のように、二日からカトラー通商代表補が来日をしています。先ほど申し上げました、日米間で引き続き協議をしていくという方針に基づいて日米間で意見交換を行っている、こういった状況ですので、まだ何も決まっていない、これが実情です。

江田(憲)委員 いずれにせよ、TPPの存在意義は、他のマルチ、バイの枠組みとの違いは、やはり高いレベルの自由化を実現するんだというところにあったと思うんですよ。

 ですから、どういういきさつか知りませんが、米国みずからが、自分の車についてはセンシティビティー、センシティブなんだというようなことを言い出すと、御案内のように、ベトナムという国はもう参加していますけれども、バイクとか二輪車とか、一〇〇%近い関税があるんですね。それにもかかわらず、参加してやっているわけですよ。そこがどうなるのか。

 マレーシアは、ブミプトラ政策というマレー人優遇政策がございますよね。政府調達にはマレー人を優遇する。こういったまさにWTOルールに反するようなことをやっているわけで、ただ、マレーシアも、参加しながら、それを撤廃しようとしていたのかもしれませんけれども。

 しかし、アメリカや日本のような、TPP参加国の中では枢要な国が、この二カ国がむしろみずからこういったセンシティビティーがあるんだよみたいな話をし出すと、これは火を見るよりも明らかなんですけれども、やはり各国がそれぞれのセンシティビティーを言い募って、TPPというのはどうなるんだろうと。私もそういう交渉に携わったことがあるものですから、本当に心配になるんです。

 そういう意味で、安倍総理、そういった懸念を払拭できるんでしょうか。もちろんこれから交渉なんですけれども、決意をお願いします。

安倍内閣総理大臣 今回の共同声明においては、まさに今、江田議員が御指摘をされましたTPPが持っている意義、意味について、高い水準の協定を達成していくこととなることを確認するということが最初の段落に入っております。

 その中で、やはり日本としても守らなければいけないものがあります。そして、自由民主党が、国民との約束、選挙の公約、行った公約がございます。そうしたものをこの声明の中に入れたわけでございまして、大切なことは、このTPPを通じて、いわばTPPの理念はもちろん大切ではありますが、同時に、日本の国益、そして守るべきものを守っていくということも同様に大切ではないか、このように思っております。

江田(憲)委員 それはある意味で当たり前のことで、マルチ、多国間交渉というのはそういうものなんですよね。

 参加も反対だとおっしゃるような方に申し上げたいのは、マルチというか多国間の極致でありますWTOのドーハ・ラウンドがなぜ決裂したのか。二〇〇八年に決裂しましたね。しかし、世界の百数十カ国が賛成をして、もう妥結寸前まで行ったのに、きっかけはインドのセーフガード、緊急輸入制限、あと、そのバックにいた中国、こういった国が反対をしたおかげで、もう全部が台なしになっちゃったんですよね。これがマルチなんですよ。

 ですから、申し上げたいことは、多国間交渉というのは、これはTPPもそうですけれども、日本が一方的に押し込まれるとか、のまされるということではない。ましてや、TPPというのは、日本というのはメジャーなプレーヤーですから、当然、日本の国益をやらないかぬ。

 ただ、くれぐれも言っておきますけれども、我々みんなの党は、極力そんな聖域はなしで、農産品も含めて高いレベルの自由化を促進していくべきだ、これは後でまた議論をさせていただきますけれども、そういう立場ですからやれるんですけれども、反対する側に立ってみても、マルチというのはそういうものなんですよ。

 ですから、この数年間、参加するしないでこんな議論を続けてきたというのは、本当に私は愚かだったと。その結果、さっき言ったように、もう妥結寸前まで行って、日本の国益が反映されないような事態になっている。もうこれは言ってもしようがないんです。残念なことです。

 そこで、このTPP関連、これで最後にしますけれども、ちょっと個別的な案件で、自民党さんも何かペーパーまでつくって、これが懸念されるんだと言っていますから、その懸念を私なりにちょっと払拭したいと思って、担当大臣に御質問します。

 ISD条項というのがありますよね。何か、ISD条項がおどろおどろしい、TPPで初めて出てきた条項だというようなイメージを、印象を国民に与えているんですけれども、このISD条項というのは、今回、TPPで初めて盛り込まれる条項なんですか。どうですか。

岸田国務大臣 ISDS条項については、従来、我が国が結んできた投資関連協定においても、多く盛り込まれている条項であります。

江田(憲)委員 そのとおりですよ。一九七八年、あれはどこでしたか、インドか何かの投資協定でしたか、大体二十幾つ、二十六でしたか、日本は、投資協定、自由貿易協定の中でISDS条項というのはもう入れてあるんですね。日本は一回も訴えられていないんですよ。

 国民の皆さんにわかりやすく申し上げますと、ISDS条項というのは、あたかも生命保険の標準約款のようなものなんですよ。悪いけれども、皆さん、生命保険の標準約款は読まないでしょう。当たり前のように入っているんですよ、この条項は。

 ですから、とにかく、TPP反対論者というのは、今回初めて出てきたように言う。とにかく、どんどん訴えられると。そんなことはないんですよ。

 確かに、NAFTAでカナダがアメリカ企業に訴えられた例なんかを見てみると、カナダ政府は負けましたけれども、それは、国際調停、仲裁で負けたのではなくて、国内企業にも負けている理不尽な規制だから負けているんですよ。それを何か、アメリカ企業がカナダに勝った勝ったなんて、メキシコにも勝った勝ったなんて、本当に不安を助長していると思いますから、それは一点申し上げておきます。

 二つ目、よく出るのがありますね、遺伝子組み換え食品の表示規制ですよ。

 遺伝子組み換え食品の表示規制、アメリカは表示がなくていい。もちろん、アメリカだってどこの国だって、遺伝子組み換え食品の安全性は確認した上で流通させているわけでしょう。だから、問題はそれを表示するかどうかです。

 これは、時間の関係もありますから、担当大臣に答えていただかなくて結構です。私が御説明しますと、アメリカは非表示ですよ、遺伝子組み換えをしていても。しかし、日本は、遺伝子組み換えをした食品が残留しているというか食品に添加されている場合は、しっかり表示する。EUはもっときつくて、とにかく、含有されていようがされていまいが、遺伝子組み換えをしたら全部表示するんですよ。

 この点については、もちろん、日本は、みんなの党も譲るつもりはありませんよ。表示義務をなくすなんて譲りませんよ。それから、御承知のように、オーストラリアやニュージーランドは断固反対しているわけですね。EUは、もちろん、厳しい規制をやっているんだから反対ですよ。

 この辺については、WTOのSPS協定、ちょっと難しくなるんですけれども、植物検疫協定というのがありまして、ここでしっかり自国の主権が認められているんですね。自国の国益、安全性担保のために独自の考え方でいい。

 それから、上乗せする場合、要はそういった安全規制を強化する場合は、科学的根拠が説明できる場合はオーケーだ。これは、WTOのもとにあるコーデックス委員会というところで判定されます。

 いずれにせよ、日本が今の表示を撤回するような事態には絶対ならないんですよ。なぜなら、さっきマルチの現場で言いましたよね。豪州とニュージーランドも反対しているんですよ。日本が反対すれば、アメリカが幾ら言ったって絶対これは協定にならないというのがマルチ、多国間交渉の常識なんですけれども、なぜか、これまでそういった常識が通用しない議論が続いてきたというのが私は大問題だと思います。

 時間もありません。最後に、健康保険、医療保険。

 これは、ここまで来るともうデマゴーグとしか言いようがないですよ。WTOのサービス交渉の中でも、健康保険、医療なんかは入っていないんですよ、全然。それが何でTPPで突然、健康保険、皆保険が崩れるようなことをアメリカが言ってくるんでしょうかね。少しでもアメリカのことを知っている、アメリカの政治の内情を知っているような人からすれば、この健康保険制度がアメリカにとって極めてセンシティブだということは誰でもわかる話ですよ。

 あのクリントン大統領の奥さん、ヒラリーさん時代にクリントン政権で取り組んだんですよ。日本と同じような皆保険をやろう、それで頓挫したんですよ。共和党との関係もあったでしょう。

 そういった極めて国内的に政治的なセンシティブなマターを、わざわざTPPの場で、おまえらはちょっとおかしい、日本の皆保険はおかしいから、俺たちのメディケア、メディケードにしよう、プアな、貧乏な人とそれから老齢者だけの健康保険にしようと言うわけがないんですよ。それを、農協が医師会まで仲間に入れ込んで、健康保険も崩れると。

 私は、ここまで来るともうあいた口が塞がらないので、きょうはこれにとどめますけれども、TPPお化け論と言われたこともあります。私に言わせれば、TPPの幻影をつくってシャドーボクシングをしているようなものなんですよ。ぜひ冷静に考えてください。

 TPPというのは、私は、安倍総理がどう捉えておられるか知らないけれども、WTOのドーハ・ラウンドが決裂して以来、地域ブロック的にあちこちに自由貿易・投資クラブができているんですね。ASEANプラス3もそうだったでしょう、6もそうだったでしょう。TPPもそうだったでしょう。EUだってそうでしょうね。

 ですから、TPPのメリットは確かにありますけれども、それよりも、日本というのはやはり人材と技術しかないんですから、その人材と技術を世界じゅうにめぐりめぐらせて、付加価値を上げて、新製品をつくって、それを売っ払って飯を食っていくしかない国民なんですからね。まさに自由貿易・投資、安倍総理がおっしゃるとおり。

 それを、どの花が咲くかわからないんですよ、今。ASEANプラス3なのか、6なのか、TPPなのか、あるいはFTAなのか、EPAなのか。みんなの党はどれでもいいんですよ。TPPだけにこだわっているわけじゃないんですね。どの花が咲くかわからない段階では、保険を掛けて日本はどのクラブにも顔を出して、保険料を払って参加して交渉していくというのが一番大事なことだ。これに入らないというデメリットははかり知れない。メリットを論ずることも大事ですけれども、デメリットの方がはるかに大きいと思っているわけです。

 富士山の登り口、いっぱいありますよね。頂上までどこが一番いいのかわからないから、いろいろな登り口から頂上を目指していくというのが、私は、自由貿易、自由投資立国の日本のとるべき選択だと思いますので、安倍総理、これがTPPの最後ですけれども、より自由度の高い、それはありますよ、農産品、農協の反対、いろいろありますけれども、ぜひ、自由度の高い、レベルの高いTPPを実現していくんだという決意を、一言で結構ですから、述べていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま江田議員からさまざまな御指摘、御教示もいただきました。そうしたものも勘案をしながら、最終的には、国益を守る、また、守るだけではなくてそれを増進させるという意味においても、最終的に最善の道を決断していきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 ちょっとこれは担当大臣で結構なので、最後、例の試算ですよね。TPPのメリット、デメリットについて、農水省が出し、経産省が出し、内閣府も出し、ばらばらだったものを統一しようといって今試算中だと聞いていますが、今どうなっているんでしょうか。

菅国務大臣 前政権では省庁ごとに試算が出た結果、国民が非常に混乱をしましたので、ここは内閣府で一つの試算を出すべく、今、鋭意作業中でございます。

江田(憲)委員 いつごろまでに出されるんですか。もう随分前から試算中とおっしゃっているんですけれども。

菅国務大臣 今、内閣官房でやっていまして、総理の表明には間に合うような形でしております。

江田(憲)委員 では、参加表明されるときに同時に試算も出される、こういうことですね。

菅国務大臣 総理が表明するしないはまだ言っておりませんので、そういう中で、総理の判断の材料になるような時期には出したいと思います。

江田(憲)委員 では、来週早々と報道されているので、その前に出るんでしょうね。

 一言あえて申し上げますと、この農水省の試算というのもむちゃくちゃなんですよ。前の農水省事務次官の高木さんという方ですら、この試算はこけおどしで何の意味もないとおっしゃっている。

 林大臣、林大臣は商社にもおられて、民間出身だから、ちょっと積算を見ればすぐわかりますよ。

 農水省というのは、農業の生産額が四・一兆円、TPP参加で減る。四・一兆円ですよ。農業は今、八兆円ぐらい、何ぼぐらいですかね。GDPは七・九兆円減る、自給率は四〇%から一四%に、失業者は三百四十万人あふれ返るというのが農水省の試算ですよね。これを見たら、それは国民はびっくりしますよ。TPPというのは絶対参加しちゃだめだと。

 しかし、前提を私なりに見ると、これは全世界相手ですよ、TPP国だけじゃなくて、全世界を相手に即時関税撤廃が前提になっている。しかも、何の国内対策も講じないのが前提。価格的に競合する国産品は全て海外品に置きかわる。国産牛肉もゼロになる。これは価格競争力だけじゃないんですよ。もう常識だけれども、品質とかサービスとか、いろいろな競争力があるんです、品物には。

 中国米に至っては三千円で試算している。皆さん、中国米が今、国内でどのくらいで流通しているかわかりますか。もう九千円、一万円になっているんですよ。三千円というのは十年前の話なんです。それを今、それで積算している。

 アメリカからカリフォルニア米がどんどん入ってくる。それで、アメリカ米とタイ米だ何だ、全部合わせて八百万トンの米が全部置きかわる。一割は残ると言っていたのかな。しかし、日本人が長い粒の米を食わないのと同じように、短い粒のジャポニカ米というのは、アメリカは今せいぜい三十万トンしか生産していないわけです。

 それから、三十万トンが来る、日本が市場だといって入ってこようとしても、それは船賃だ何だ、流通経費を入れれば、さっき言ったようにアメリカ米も九千円、八千円になっているんですから、おいしい日本米は恐れることもないのに、これが全部、日本人はカリフォルニア米と中国米を食べるんだという前提ですから。

 安倍総理と菅官房長官、私が言ったことはうそじゃないので、ぜひ、内閣官房から試算が出てきたら、よく見てください。林大臣も、反論したいでしょうが、これはもうしようがないから、今度、試算のところで林大臣もよく訴えてやっていただければと思います。

 さて、農業ですから、林大臣は、主役はこの農業、農政の立て直し、農業の再生のところですので、大臣には聞かせていただきますので、御安心ください。

 まず、安倍自民党政権は攻めの農業というキャッチコピーで言っておられますが、安倍総理、この攻めの農業というのはどういうことを想定されているんでしょうか。

林国務大臣 先ほどの試算のことについても、まあ、そのとおりなんです。我々が来る前にできていたものですから、そういう試算でつくってあった。

 それは、交渉に入るときに、さっきおっしゃったように、私もシンガポールの最初のFTAのときから携わっておりましたので、参加するしないでこれだけかかっているというのはいかがなものかというのを野党時代に質問したことがあります。試算についても、ばらばらに出していてという質問も実はしたことがあるんです。

 したがって、これは全部公表資料で、当時の農水省がそういう前提でやっているというのは江田委員がおっしゃったとおりでありますから、それは今回、まず、ばらばらに出しているということや、前提をもう少しはっきりさせて、その前提は少なくとも政府全体で共通認識になっているものをつくるべきではないかということで今作業しているということ。

 それから、高木次官は、その言葉遣いではなくて、余りにこれは試算がそういう前提だということをおっしゃっているので、こけおどしということは多分お使いにはなっていらっしゃらないんじゃないかなということを、本人の名誉のために申し上げておきたいと思います。

 済みません、前置きが長くなって。

 攻めの農業は、総理からも最初から御指示をいただいていることでありまして、まず、やはり現場、これは工業と若干違うなと私も思いますのは、やはり現場の勢いとかやる気というのが、まあ工業もそうなんですが、特に現場の声、地域の潜在力というのが大事だなと改めて思っております。この現場重視の視点に立って、農産物の高付加価値化に積極的に取り組む。

 それから、今度はディマンドサイドといいますか、輸出を出していくとか国内の需要を喚起していく。これも、例えば、イチゴでも「あまおう」というのが今ブランド化されておられますけれども、そういうことをどんどんふやしていって、需要をやる。この間をつなぐ、六次産業化と言っておりますが、バリューチェーンをやっていく。

 こういうことを、ディマンドサイド、サプライサイド、両方やることによって、付加価値の高い、強い農業ということをやっていこうというのが攻めの農林水産業であります。

江田(憲)委員 聞けばわかるんですけれども、でも、右の耳から左の耳に抜けちゃうんですよ。

 具体論がないとだめだと思いますから、まずその点で、規制改革会議で重点四分野というのを決められたそうですが、一つが健康・医療、二つ目がエネルギー・環境、三番目が雇用、四番目が創業・産業の新陳代謝となっているんですけれども、農業というのはこれに入っているんですか、入っていないんですか。入っているのなら、どこなんですか。

稲田国務大臣 今委員御指摘の四分野は、総理から指示をされた重点三分野と、その横串での、創業という意味での四分野にしております。

 農業につきましては、産業競争力会議で今大きな議論がなされておりまして、その中で規制改革で検討すべきものがあれば検討する、そういう仕切りになっております。

江田(憲)委員 重点分野なのかどうか、端的に答えてください。

稲田国務大臣 総理から指示をされた重点分野は、雇用、医療・健康、環境・エネルギー、この三つの重点分野が経済再生本部によって一月二十五日に指示をされております。

江田(憲)委員 では、総理、農業は重点分野に入っているんですか、入っていないんですか。

甘利国務大臣 産業競争力会議の中に、テーマ別会合、重点分野をつくっております。その中で農業の議論をいたします。

 総理から、攻めの農業、日本の農業というのは、守るも大事だけれども、攻めるポテンシャルは幾らでもあるんだということで、そこを強くしていこうということでございます。

江田(憲)委員 全然解せませんね。規制改革会議の場でも……(甘利国務大臣「それから、こっちから向こうへボールを投げます」と呼ぶ)ちょっと、どうぞ。

甘利国務大臣 つまり、そこで、規制改革会議で議論していただくというような項目が具体的に浮かび上がってくる。それに関しては、規制改革会議にボールを渡して、そちらで議論していただくということも考えております。

江田(憲)委員 何か聞いていると、農業を前面に出したくないなという配慮が感じられるんですよ。

 それは、健康・医療も大事、エネルギーも環境ももちろん大事ですけれども、農業というのは、自民党だって民主党だって何だって、どの党だって、どの経済評論家だって経済学者だって、農業はこれからの成長産業だとみんな言うわけですよ。その農業が何で明示的に規制改革の重点項目に入っていないんですか、総理。

 今、重点項目だとおっしゃっていただければいいんですよ。別に何もそれで揚げ足をとるわけじゃないので、重点項目だと思っているのなら。

安倍内閣総理大臣 この三分野については、まずは三分野に絞っていこうということではありますが、基本的に、今、甘利大臣が答弁をさせていただいたように、産業競争力会議においてもさまざまな議論がなされていきます。必要なものはどんどん規制改革会議に投げて、そこで結果を出していこう、こういうことでございます。

 規制改革会議においては、重点を絞るかどうかについても議論があったんですが、これは、重点というか、特定のターゲットを決めずに全てを網羅的にやろうという、基本的にはそれなんです。それなんですが、まずはこの順番でいこうと。こういうことで御理解をいただきたいと思います。

江田(憲)委員 いつも率直な物言いの総理が、奥歯に物が挟まったような。

 だから、これはやはり我々からすると、参議院選挙までなるべく農業は下の方に隠して隠して、余り波風立てないように行こうという配慮だと思わざるを得ないんですよね。

 そんな、時間をかけている場合じゃないんですよ。やはり農業は規制改革が大事です、これから議論しますけれども。規制改革には農業に限らず時間がかかりますので、それはもう参議院選挙までどうこういうんじゃない、今から最重点項目として、民間委員を中心に、農業だ農業だという発言がいっぱい出たそうじゃないですか。にもかかわらず、あえて農業を明らかな名前として出さないというのはね。

 まあ、そうですけれども、そんな形式的な話をしてもしようがないので、実質的な話をさせてもらいたいと思うんです。

 まず、農政。我々は、何もTPPに参加して農業が壊滅していいと思っているのじゃなくて、農業の再生とセットでTPPに参加すれば農家の人は何の心配も要らないということでやっているわけで、その話をこれからします。

 最初のパネルをちょっとここに立てておきまして、農水大臣に率直な、素朴な質問をします。

 食料自給率を上げないかぬとか、水田の多面的機能は尊重すべきだ、大事にすべきだとおっしゃりながら、なぜ、水田の作付面積を年々人為的に、政府が主導して減反という形でやっているんですか。これは矛盾だと思いませんか。

林国務大臣 今先生がおっしゃっているのはいわゆる生産調整ということだと思いますが、これは、無理やりということではなくて、実は、インセンティブといいますか、いろいろな政策で誘導することによって、米の消費が減少しておりますので、水田の活用の中で、例えば大豆は自給率七%しかないんです、それから小麦は一一%、したがって、水田から大豆、小麦に行っていただければこういう応援をしますよというメリット措置をやって参加を誘導するということでございまして、逆に、これに従わない場合は何かペナルティーがあるというようなものではないということでございます。

江田(憲)委員 減反というのは、政府、官僚統制のきわみでありまして、強制をしてはいない、それは許認可で縛ってはいないでしょうが、農家の戸別所得補償、民主党政権時代のあれも、所得補償をもらうためには減反に参加するのが条件になっていたと思いますよ。それで十アール当たり一万数千円の何か所得補償が来るみたいな、こんなニンジンをぶら下げられちゃったら、大体みんな減反に参加するんですよ。現に参加しているわけです。

 今、水田、二百五十万ヘクタール、これもどんどん減ってきましたけれども、二百五十万ヘクタールのうち百万ヘクタール、四割に当たる水田は減反の対象になっているわけでしょう。

 ですから、これは一番国民にわかりにくいところですよ。だって、農水省の立場で四〇%、これ自体もおかしい話です。世界でどこも採用していないカロリー換算で四〇%自給率ですけれども、それを前提にしても、それを五〇%、六〇%に上げていこうという政府が、そして自民党さんも民主党さんも、水田の多面的機能だ、水源涵養機能だ、景観維持機能だ、防災機能だとおっしゃりながら、政府がこういう仕組みをつくって減反を毎年進めているというのはおかしいんですよ。

 ですから、我々みんなの党は、まずこの減反を段階的に廃止するというところからスタートするんです、我々の農政は。

 それで、ちょっと先に出し過ぎちゃったそのパネルを出していただきたいんですけれども、要は、世界の潮流というのは、これはちょっとわかりやすく説明すると、減反はなぜやっているかというと、さっき林大臣が御説明になったとおり、これは生産調整、需給調整ですからね。米の消費量はどんどん下がっている。しかし一方で、供給が一定だとどんどん、経済学のABCですよね、価格が下がるから、供給の方も減らして、価格を悪い言葉で言うと高どまりさせる。

 今、一俵一万五千円、高い米を買わされているのは消費者ですよ。減反があるおかげですよ。減反があるおかげで、需給調整をして一万五千円に高どまりさせているんですね。プラス、輸入米については七七八%もの関税がかかっているんですね。この需給調整の高どまりと関税七七八%をあわせて、これは、専門用語で価格支持といいますね。高いように価格を支持しているんですね、需給調整と関税で。

 しかし、このグラフを見ていただくように、ガット・ウルグアイ・ラウンドが妥結する前と妥結した後で、アメリカもEUも豪州も、どんどんこういった価格支持政策はやめて、直接支払い制度の方に行っているんですね。直接支払い制度というのは、何を隠そう民主党政権時代につくった戸別所得補償です。要は、税金で農家の所得を補償していこう。こういうふうに、価格支持から直接支払いへという流れが世界の潮流であるにもかかわらず、この日本、見ていただければわかるように、ウルグアイ・ラウンド妥結前と後でほとんど変わっていない。

 そして、おまけに、ヨーロッパやオーストラリアやアメリカは、価格支持をなくすかわりに所得補償で直接支払いをふやしてきたのに、日本は、価格支持はそのままにしておいて、所得補償までやっている。あれもこれもなんですよ。こんな国はないんですよ。

 ぜひ、総理、今後の農政を考えるに当たって一番のポイントは、細かいことは抜きにして、段階的にでもいいから、まずこの減反をやめる。そして、農家に対する支援は価格支持から直接支払いにしていく。これが我々の考え方なんですけれども、これに対する見解をお願いします。

林国務大臣 先生のところの、みんなの党の農業政策、パンフレットを少し見させていただいて、どなただったでしょうか、参議院の方でもその議論をしたことがございます。生産調整を全部やめて、需給のバランスがこうなって安くなる。たしか、そのときの議論は、だから、それがどんどん輸出で出ていくじゃないか、したがって需要がふえるんだ、こういうようなお話でありました。

 確かに、定型的な議論としては成り立ち得る議論かなと思ってそのときお聞きしていたんですが、大事なことは、大体それをどのぐらいの前提条件でやると幾らぐらいになって、幾らぐらいになったときに、ほかの国と比べて値段がどの辺になるのかということを踏まえていろいろな検討をしてみませんと、どちらが定性的に正しいということがなかなか言えないのではないか、こういうふうに思っております。

 実は、二十一年に、石破農水大臣のときにシミュレーションも、幾つか類型を分けて、これも試算といえば試算ですが、やっておりまして、その公表された試算を見ても、そういうふうになる数字はなかなか出にくいなというのがこの結果であったということでございます。

江田(憲)委員 総理も林大臣も、そこは、政権におられるんですから、早急に計算すればわかる話です。

 では、ちょっと次のパネルをお願いしたいんですが、さっき触れていただきました、我々みんなの党の農政というのはこういうことなんです。わかりやすくパネルにしましたけれども、要は、農業を輸出成長産業にするためにはまず減反を廃止する。

 廃止すれば需給調整がなくなりますから、今、一俵、六十キロ一万五千円の米は、多分一万円を切るかもしれない、九千円、八千円になるかもしれませんね。しかし、今、さっき言いましたように、中国米、アメリカ米とも国内流通価格は九千円とか一万円なので、価格競争力的に言えば国内は本当に心配なくなるんですよ。

 そして、もちろん、中国を初めとした優良な消費市場にどんどん米が輸出できるようになります。中国の市場というのは、米の消費量、一億三千万トン、そのうちジャポニカ米、短い粒の日本米みたいなものが実は三千万トンですね。日本人が年間生産している米が八百万トンですから、その四倍近い市場が今あるわけですよ。そこに輸出できていく。

 それはもう皆さんも御承知のように、上海へ行ってください、シンガポールへ行ってください、北京に行ってください。もう二倍、三倍する日本のコシヒカリだ何だ、米が飛ぶように売れているわけです。この前、あるテレビで中谷元さん、きょうはいらっしゃらないんですが、中谷元さんが言っていましたよ、中国の高官の夫人が日本米を倉庫に一トン買い占めたと。それぐらい日本の米はおいしい、安全だと売れている、二倍、三倍でも。それが価格が下がるとなれば、どんどん売れますよ。そうして輸出産業化していく。

 ただ、幾ら数量がはけても、単価が下がるわけですから農家の所得は下がるかもしれません、それは。そこを所得補償、税金で填補してあげるというのが、我々みんなの党の、ある意味で所得補償制度なんですよ。

 今までの民主党というのは、申しわけないですけれども、民主党も変わったのかもしれないけれども、のべつ幕なし、大規模農家も零細農家も、頑張る農家も頑張らない農家も、専業農家も主業農家も、全部一律基準で税金をばらまくから。今何ぼあるんですか、戸別所得補償の予算は。六千億、七千億。減反補助金は二千億円ですよ、年間。我々は減反補助金をなくしますから二千億浮く、戸別所得補償は振りかえますから六千億浮く。八千億円で、林さん、ぜひ計算してほしい。

 八千億円の財源があるから、それでこういう戦略的な戸別所得補償をすれば何の問題もありません。これを今ごらんになっている農家、みんなの党は農家をつぶそうとしているんじゃないかと。とんでもない。農家の皆さんは、頑張る農家は特に、何の心配も要らないんですよ、所得補償されるから。そして、それだけ輸出余力が出れば、一旦、食料危機だ、輸出入ストップだというときは、その輸出余力を国内に回せば自給率は五〇にも六〇にもなるんですよ。

 総理、何か音なしなんですよ、今、農政には。だから、林さんが答えてもいいけれども、林さんが答えた後、委員長、ぜひ総理からお願いします。

林国務大臣 お許しいただきまして、ありがとうございました。

 実は、今、江田委員がおっしゃったものは、先ほどちょっと私、だらだら説明すると長くなると思ってはしょりましたが、シミュレーションをやった値に割と近いところがあって、このシミュレーションは平成二十一年にやったものですが、十九年産から十年ぐらいかけて段階的に生産調整をやめていくというようなことをもしやった場合に十年目にどうなるか、こういうのをやっております。

 これはいろいろな前提がありますが、はしょりますけれども、市場価格が七千五百十四円、六十キログラム当たり。今おっしゃったような値段。それから生産コストは、集約化がある程度進むんですが、やはり土地の状況等がほかの国と違いますので、一万一千六百六十円ぐらい、六十キロ当たり。したがって、この差額を埋めていくということになると、財政負担が八千四百億円ぐらい、今おっしゃったような話でございます。

 ちなみに、二十三年産、今の状況を見ますと、市場価格は一万五千円で、生産コストは一万三千円ですから、財政負担は三千七百億円で済んでいるということでございます。

 それから、もう一つ参考までに申し上げますと、この初期値でとった十九年産、まだ自公政権のときでしたが、このときは、産地づくり交付金ということをやっておりまして、今と制度がちょっと違うんですが、市場価格で一万五千円で、生産コストが一万三千円で、当時の制度では財政負担は一千五百七十億円だったということでございます。

 やはり、こういう数字を出して議論しますと、財政負担がかなり出てくるのは事実でありますし、それから、先生おっしゃるように、輸出が果たしてどれぐらい伸びるのかというところが一つのポイントにはなるのかな、こういうふうに思います。

江田(憲)委員 私がお話をして、今度こそ安倍総理に答えてほしいんです。

 試算はいろいろあります。今のに反論すると、二十ヘクタール以上の農家はもう六千円なんですよ、コストが。それから、私の理解では、平均的な原価は九千八百五十円なんですよ。一万一千何とかというのは、超零細企業も含めて。多分そうだろうと思います。

 ですから、さっき言ったように、減反補助金二千億、戸別所得補償の振りかえで六千億があれば、十分、追加的な財政負担もなくやれるんです。

 それから、やはり今、結局、戸別所得補償があるから貸し剥がしが起こっているんでしょう。今まで米をつくらずに貸していた人までが、飼料米をつくったら金がもらえるといって貸し剥がしなんかがあって、これは大規模化、集約化に逆流しているんですよ。

 総理も、この前の代表質問の答えで、農地の大規模化、集約化を進めていかれるということになれば、これはまさに、今一万五千円もするから零細農家もやっていっているんですよ。なぜかというと、一万五千円だったら、やめて米屋で買うともっと高いから、一万五千円でも自分でつくって自分で食っている方が得だというのは、それは人間ですから働きますよね。だけれども、これをやるとどうなるかというと、一俵九千円、八千円になったら、もう零細農家はやっていけないんですよ。だから、零細農家は、専業農家、主業農家に農地を貸したり売ったりするんです。

 それで、私どもは、零細農家を潰せと言っているんじゃないんです。今、皆さん、これはもう釈迦に説法ですけれども、零細農家の農家所得というのは幾らですか。零細農家、兼業農家の農家所得というのは二十万、三十万ですよ。毎月じゃないですよ。年間ですよ。一家収入の六%、七%ですよ。あとは、月―金、サラリーマンで働いているわけです。だから、製造業は大事なんですよ、TPPで。

 ですから、全員反対じゃないんですよ、農家の人も。ある調査では、四五%は反対だけれども、一七%は賛成だという調査もあるんです、共同通信ですけれどもね、農家のTPPに対する。

 ですから、誤解があり過ぎるんですね。ですから、こうやって集約化して、大規模集約化農家が、所得補償をやめて輸出産業化して、もっと今の収入を上げていけば、地代支払い能力も上がりますから、零細農家の人は、こういった小さな土地を貸して地代でもうけた方が農家をやっているよりもさらにもうかるという図式になっていくんです。だから、これは自然の摂理で集約化されていくんですね。

 安倍総理、何か私はおかしいことを言っているでしょうか。しかも、これは十年間でやればいいんです。TPPは、即廃止じゃないんですよ、関税撤廃。十年間でロードマップを書いて、工程表を書いてやればいいんですよ。

 そうしないと、私どもは物すごく危機意識を持っています。だって、今までウルグアイ・ラウンドで六兆円ばらまいても、米の関税を七七八%にしても、どんどん農業は衰退していきましたよ。よく言われているように、岩手県分の農地が失われて、埼玉県分の荒れ地ができているわけですよ、休耕地が。どんどん農家人口も減っている。そういう中で、もう平均年齢は六十六歳でしょう。新規参入しなきゃ、十年後、これは極端な話ですけれども、七十六歳ですよ、まあ、そこまでいきませんけれどもね。だから、これはほっておいても、守っても守っても、日本の農業は衰退の一途なんです。

 私は、安倍総理、攻めの農業というのはそういう理解をしているんですよ、勝手に。私どもの言っていることはおかしいですか。総理、攻めの農政とおっしゃるのなら、ぜひこういった政策もちゃんと考えて取り入れていただきたいんですよ。最後、ちょっと総理に。

安倍内閣総理大臣 第一次安倍政権におきましても、当時の松岡農林水産大臣のリーダーシップで、農産品の輸出を進めるという中において、先ほど江田委員も例として挙げられましたが、中国に米を輸出いたしました、難しい交渉だったんですが。しかし、最高級品に限れということでございましたので、魚沼産コシヒカリともう一品種にしたんですが、競りの結果、一俵七万九千円で売れたわけでございまして、これは、国内で売る値段よりもはるかに高く売れたわけでございます。

 そしてまた、集約化も進めていこうと、担い手に基本的に農地を集めていくという政策を行いました。そうしたこともあって、その後の民主党政権の戸別補償制度によってその政策がかなり変えられてしまったんですが、今の現状においては、二十ヘクタール、これはかなり広いですよね、二十ヘクタール以上の農業経営体が耕作する面積は三割まで来たわけでございまして、これは、一時に比べて相当集約化は進んできたと言ってもいいんだろう、このように思います。

 この中において、同時に、農地は多面的な機能を持っておりますから、そこもちゃんと考慮しながら、しかし、江田議員の、結局、今のままではその多面的な機能も維持できないではないかという御指摘でしたが、私もそういう危機感を持っております。

 何といっても、若い人たちがこの農業という分野に参加をしてきてもらうためには、自分たちの情熱や熱意、努力によって新しい未来が切り開かれていくという分野にしなければならない、このように思っておるわけでありまして、ただいま江田委員が指摘をされた点も参考にさせていただきながら、輸出もそう簡単なことではないんですが、相当の努力が必要なことではありますが、いずれにせよ、農家の収入がふえていく、そういう時代をつくっていきたいと思っております。

江田(憲)委員 おっしゃるとおり、中国に輸出するには、相手は国営企業だし、手数料は一キロ八百円も取るとか、法外なこともありますから、そういった努力はしなきゃいけません。

 しかし、これはOECDの報告なんですけれども、二〇五〇年には世界の人口は九十億人になる。今、六十数億だと思いますけれども、九十億人になって、食料増産は七〇%アップしないとだめなんですね。だから、もう日本は減反している場合じゃないんです。日本の米はおいしくて安全ですから、どんどん輸出産業にしていきましょう。

 それで、この前、本会議で安倍総理が、民主党時代の戸別所得補償を経営安定化何たらかんたらというのに改めるとおっしゃっていたんですが、ちょっとこれを御説明、林大臣で結構ですが、どう変えるんですか。そこは戦略的にやってほしいんですよ。

林国務大臣 戸別所得補償制度の見直しをすると我々は公約にうたっておりました。

 それで、今委員がおっしゃったように、政権交代、我々がまだ与党であった最後のときに、集積加算ということで、我々はそのときのことを平成の農地改革と呼んで、補正に基金を入れて、そして集落で集積が進みつつあったんですが、それが、いわゆる戸別所得補償が入ってきたということで、もう一度、やはり集めるのはやめて、もとに戻してやっていこうと。

 それを貸し剥がしというふうにおっしゃっているんだと思いますが、確かにそういうことがあったということもあって、その見直しをしようということを決めて、実は、野党のときから、いろいろな三党協議の中で、やれないのかということを実務者レベルでやっておりました。それは結局、協議が調わなかったものですから、政権交代までなかなか着手できなかったということでございます。

 したがって、そういうことがあるので、現場の方は今の制度で既にいろいろな準備をされておられる、営農準備がもう始まっているので、名称は何たらというふうにおっしゃっていましたが、正式には経営所得安定対策ということに変更した上で、基本的には、現場が混乱しないように、二十四年度と同様の仕組みでやります。

 したがって、本格的な見直しは、二十六年度に向けて今まさにその検討をしている、こういう状況でございます。

江田(憲)委員 ですから、御努力はされているんでしょうが、やはり農政の哲学、フィロソフィー、理念がないんですよ。

 さっき言ったように、その限りにおいては民主党政権と一緒なんですよ。要は、価格支持も同時にやりながら、直接支払いも、あれもこれもやって農家を守ろう、農業を守ろう、こういうことなんです。それじゃ農業は活性化しません、再生もしませんよ。

 これは、国民的に言うと二重の負担ですよ。だって、そうでしょう。本当は一俵九千円で買える米を一万五千円で買っているわけですから、消費者負担でしょう。関税が七七八%、高い輸入米を買わされるんだから、消費者負担ですよ。プラス、所得補償は税金負担ですよ。消費者負担、納税者負担。だから、国民の皆さんはもっと怒っていいんですよ、これをごらんの方は。

 さっき言ったように、ヨーロッパもアメリカも、それはシフトさせているんですよ。価格支持はやめますけれども、では、直接支払い、納税者負担でお願いしますよといってやっているんです。その哲学がないまま幾らやったってだめです、申しわけないですけれども。

 それで、四番、五番に書いていることがまさに農業の新陳代謝。株式会社に農地を買えるようにしよう。これはもう皆さん御存じですけれども、リース方式、株式会社は賃借はできるんですね。しかし、どうして農地が持てないんですか、株式会社は。農業というのは、いろいろな産業の中でも一番、農地、土地を持って永続的に営む業じゃないんですか。それをなぜ、わざわざ賃借にとどめて、土地取得はだめだと言っているのか。理由をまた聞かせてください。

林国務大臣 お答えいたします。

 先ほどのところとちょっとかかわってくるんですが、まだ、我々、制度を今から検討するということでございますので、どういうバランスで今先生がおっしゃったようなことをやるかというのは、まさに今からのことでございます。

 それで、実は、平成二十一年度の農地法改正で、二十ヘクタール以上の農業経営体、かなりふえてきておりまして、先ほど総理からも御答弁がありましたように、既に三割でございます。それから、農業法人数もこの十年で二倍以上に拡大ということで、農地集積はかなり進んできているものと我々は考えております。

 したがって、今のお話でございますが、株式会社のいわゆる参入は、リース方式では、今おっしゃったように、完全に自由化をされております。

 なお、所有権取得の場合は、うまくいかなくて耕作放棄というふうになった場合に、リースですと、リースを解除して原状回復ということが容易に行えるわけですが、所有権が移転してしまいますとなかなかそういうわけにいかないということでありまして、リース方式、今申し上げましたように、かなり進んでおります。また、いろいろな方にアンケートをとっても、当面この方式でやりたいという方がかなり多いということもありまして、我々としてはそれでやっていきたいというふうに考えております。

江田(憲)委員 リース方式が非常に有効だったのは認めますよ。最近でも、千社以上がリース方式で参入した。ですから、担い手の問題もしかりですけれども、これはリースでもそうなんですから、土地を取得してやる、本来そうでしょう。ワインをつくるのにブドウ畑を賃借でやれといったって、ワインなんて、百年も二百年もビンテージでやっていく決意のある人は、それは賃借権も最近は非常に保護されているとはいえ、やはり所有してやりたいでしょう。

 ただ、林大臣の懸念されるように、株式会社というのは利益追求だから、もうだめだったら、はい、やめたといって、農地もぱあんと手放しちゃう、転売しちゃう。そういうこともあるでしょうから、この最後に書いたのがゾーニングというもので、要は、簡単に言うと転売規制ですよ。

 株式会社に参入していただくんだけれども、そこで土地を買ってやる場合は、とにかく、はっきり言って、そこはもう転売させない、一切。そういった規制も考えられるし、今、いろいろな農地の主業と零細農家のやりとりなんかのところにもコーディネーターみたいな調整機関があって、農地の集約機関も設ければいいと私は思いますよ。

 御承知のように、今の農業委員会というのはもう本当に機能していないというか、もっと言えば、違法の転売を許しているような、本来の委員会の設置目的とは違う運用をしている委員会も多いんですからね。こんな委員会は改組して、まさに農地は大事ですから、こういった株式会社を入れた、それは確かにデメリットも弊害もあるかもしれないから、それはもう何度も言いましたね。

 安倍総理、この前、私が、一般的に、規制法人、縦割り法人は、とにかく株式会社、NPOも入れて、それで競争させてサービスを向上させる、ただ、株式会社、NPOが入った弊害があるのなら、投網をかけるような主体規制じゃなくて、行為規制でちゃんと取り締まればいいじゃないですかと言って、基本的に御賛同いただきましたよね。ですから、まさにこれなんですよ。我々も弊害は認識しているんですよ。

 ですから、これは全部通すと、減反の問題もしかり、株式会社の参入の問題もしかり、全部これは規制改革なんですよ。我々は、規制緩和一辺倒をしろと言っているんじゃなくて、こういうゾーニングの強化のような規制強化も必要なんです。規制緩和と強化をあわせて規制改革と言っている。皆さんもそうだと思いますね。

 ですから、安倍総理、ちょっと、林さんはもう十分御説明いただいた。それで、総理に……(林国務大臣「細かいところ」と呼ぶ)いや、だからもとに戻るんですよ。やはり農業は規制改革の重点項目ですよ。四分野に入らなきゃ、五番目でいいんですよ。五分野ですよ。それは最後に言って、では、その前に、ちょっと時間もあれなので、林さん。

林国務大臣 ゾーニングのお話がありました。

 農業振興地域の整備に関する法律というのが御案内のようにありまして、この農振地域内で農用区域を設定するというゾーニングをやっているんですが、それは委員も御承知のとおりだと思いますが、土地の利用の仕方、用途をゾーニングは指定するということであって、要するに、実際に農地として耕作するかしないかという規制は、これはできないんです。

 そういうことをやるということになりますと、例えば、都市計画法で宅地として決められた土地の上に実際に家を建てるか建てないかというのは、これは持っている人の自由ということで、おどろおどろしいことを言うと言われるかもしれませんが、憲法二十九条、財産権の保障との関係もあって、そういう行為規制をこのゾーニングにかけるというのはなかなか難しいという点があるということは申し上げておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、江田委員からさまざまな御指摘をいただいて、規制改革会議で議論をする話題にふさわしいというお話でございました。

 いずれにせよ、先般、産業競争力会議において、農業を中心に議論をいたしました。今御指摘の観点も含めて、甘利大臣のもとで行っているこの産業競争力会議で、こうした農業の未来のために何が必要か、規制改革も含めて議論した上において、必要であれば、当然、規制改革会議において主要なテーマとして議論をしていきたいと思っております。

江田(憲)委員 現下の最重要課題ですよ、農政、農業の再生は。あらゆる観点から見て、あらゆる角度から見ても、安倍政権の最重要課題ですから、必要があればとかなんとかという、その辺がやはり、冒頭に言いましたよね、安倍政権も自民党政権なんだなということで、今は順調だけれども、我々はしっかり監視、チェックしていきますから。

 それで、では、農業と同じように、病院経営になぜ株式会社が入れないんですか。その理由を教えてください。

田村国務大臣 幾つか理由はあるんですが、地域医療の根幹になっている病院、株式会社等々、自由競争の中では参入、退出の自由というのがございますから、突然退出されちゃいますと、地域医療が壊れるというのが一つ。

 それから、ほかに主な理由として、やはり企業は利潤の最大化を図っていくというものがあります。医療を考えますと、これは保険という制度でございまして、税金と保険料で成り立っておるものでありますから、ある意味閉ざされた、そういう形の中でこれを運営していくわけでありまして、そうなってきますと、利潤の最大化をされますと、もちろん不正に診療請求するというわけじゃないのでありましょうけれども、問題が起こるであろう。

 さらには、今、DPCを導入しているところは多いんですが、出来高ということを考えますと、やはり介護と比べると、かなりその部分は、出来高という部分で、やったらやった分だけ診療報酬がとれるということで、医療保険全体が増大化しちゃうというようなおそれがあるということです。

江田(憲)委員 突然ですが、麻生財務大臣、麻生飯塚病院という病院がありますけれども、今、田村大臣がおっしゃったような問題だらけの病院なんでしょうか。

麻生国務大臣 今まで聞いた質問の中で最も鋭い角度からの御質問だと思って、江田憲司先生の見識に改めて敬意を表します。

 昔からなんですよね。炭鉱屋がやっていたの、病院。だから、株式会社麻生セメント、当時、麻生鉱業の中の病院事業部だったんです。炭鉱は幾つもありましたが、みんな、けがが多い何が多いというので、全部なくなって、病院だけ全部こうやって今の飯塚に集めたから、もともとが株式会社だったからそのままと。

 医療法人にした方が税金を安くしてくれるとか、いろいろ言われましたよ、厚生省から。そうすると、厚生省にまた頭を下げなきゃいけないじゃない。こっちは通産省だけ頭を下げればいいんだから、二回も頭を下げるのは嫌だから、通産省だけにさせていただきました。

江田(憲)委員 麻生飯塚病院は株式会社。おっしゃるとおり、戦後の時期に数十できたのが残っているんですけれども、麻生大臣も自分の病院をいいとは言えないでしょうから、私が言いますけれども、すばらしい病院ですよ。

 実は、弟様の泰さんとは、もう二十年以上前、通産省でセメントを私が担当しているとき、そのときに仕事でおつき合いをして、当時、麻生セメントも相当立て直しをされ、それから、この病院は、たしかハーバードの医学部と弟さんが提携をされて、本当に近代化されたんですね。昨今、私もいろいろな友人、知人から聞くと、それは医療サービス本体も全くすばらしいけれども、例えば、皆さん、病院の会計で待たされることが多いんですよ。それを麻生飯塚病院というのは、ぱぱぱっとインターネットで、ぴぴっとすぐできる。

 だから、皆さん、株式会社が経営する病院が悪いなんて、今どきそんなことを言っているのは厚生労働省だけなんですよ。

 キッコーマンが経営をしている野田にある病院もトヨタ病院も、全部地域の中核病院として、麻生セメントの会社員だけじゃなくて、中核病院として、住民の信頼に足る病院として経営しているんですよ。それを阻んでいるものは何か、こういうことですよ。

 何で株式会社を参入させないんですか。何か、今おっしゃったような弊害が飯塚病院にあるとかトヨタにあるとか、あるんですか。ぜひやってください、それを。

 それから、ちょっと時間もないので、もう一つだけ。

 要は、病院の理事長は医者じゃなきゃいかぬという規則もあるんですよ。病院長が医者である必要はあると思いますよ、私は。実は、うちの弟も病院長をやっていますよ、医者として。理事長は経営なんだから。世界じゅうどこを探しても、株式会社を参入させていない国はありませんよ、先進国で。韓国は、日本と同じような医療制度を持っていますけれども、病院の理事長の九五%は医者じゃないんですよ。何でこんな規制をするんだ、ちょっと緩めたとはいえ。

 ですから、何か反論があるのなら、もうセットで。株式会社の参入と、理事長はもう経営のプロでいいんですよ。そういうことで病院の立て直しもやっていけるんですから、ぜひ前向きな答弁を。

 総理、最後ですから、最後に総理にも聞きますから、ちょっと考えておいてください。

田村国務大臣 たしか六十一施設ぐらいあったと思うんですけれども、麻生財務大臣もおっしゃるとおり、もともとは、大体、企業の福利厚生をやっていた病院なんですよね。そこから地域医療に行って、これは医療法の以前からありますから、そういう意味からすると、もう普通の医療機関と変わらないだけの社会性というものを持っているんです。

 株式会社というのは大体もうけようということでやることが多いわけでありますが、そういうような意思を持っていない、持っていないとは言わないけれども、非常に薄いといいますか、社会性が高いということで、これから参入する株式会社とは違うということであります。(発言する者あり)いや、これはもうけますと、一応保険というクローズされた制度ですからね。だから、そういう意味では、一般の市場ではないということは御理解ください。(江田(憲)委員「やじに答えないでください」と呼ぶ)済みません。

 それからもう一点。理事長の話ですが、これは昭和五十五年、御承知だと思いますけれども、富士見産婦人科病院、ここで医療の事件が起こりました。理事長は医者でもなかった、その理事長が子宮を摘出するということで、これは事件になったんですね。それ以降厳しくなって、今、御承知のとおり、特定医療法人や社会医療法人や、それから地域医療支援病院、こういうものを運営しているところは、理事長は医者以外でもいいというふうな形に変えてきておりますので、その点は緩めてきておるということでございます。

江田(憲)委員 最後です。

 ですから、ごらんになっている方もおわかりのように、日本だけです、株式会社の病院経営を禁止しているのは。それから、病院長はともかく、理事長は経営のプロですよ。その方がいいという判断なんですね。

 ですから、これは農業と違って明示的に、総理、規制改革四分野の一つとして医療が入っていますから。ここまでお聞きになって、私が理不尽なことを言っているのならいいですよ、却下していただいて。少しでも聞くに足りるとお思いになったら、これはぜひ検討してくださいよ、規制改革会議で。お願いしますよ、前向きな答弁。

安倍内閣総理大臣 麻生病院を初め、今既に株式会社として存在する病院は、今、麻生大臣からお話をしたように、昭和二十三年の医療法施行前に設立をされた、私の山口県にも宇部興産病院があって人気があるんですが、基本的に会社の福利厚生を目指している病院であって、多くの病院は、事実上、そこの赤字を本体の収益で補填をしています。しかし、麻生病院のように収益を上げている病院もありますが。

 これは株主、まあ麻生さんも株主かもしれませんが、株主には還元せずに会社の福利厚生に回していたり、あるいは病院の施設増に回しているという状況もありますので、これの方はどうかなと思うんですが、理事長については、確かに、病院においては医療という観点からと病院経営という観点からもありますので、そういう経営感覚を持った人が枢要な地位にいることも私はずっと重要なポイント、議論するポイントでもあるかな、このように思っておりました。

江田(憲)委員 ですから、今の話は、株式会社ならだめで医療法人ならいいなんというレベルの話じゃないので、ぜひ検討していただきたいし、やはりこれは、安倍総理、やらないと、結局、自民党は医師会、農協におもんぱかってやらないんだと言われちゃいますからね、メディアは特に。ぜひやってください。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 デフレ不況の打開には、国民の所得をふやす、賃上げが一番の鍵であります。私は、この問題を、ちょうど一カ月前の二月八日の当予算委員会で提起をいたしました。

 これを受けて、安倍総理は、二月の十二日、経済三団体の首脳と会談をされて、従業員の報酬引き上げ、これを要請されました。

 総理、その結果、経済界の回答はどうだったでしょうか。

安倍内閣総理大臣 笠井委員の御指摘もございましたし、安倍政権の意思もございまして、経済三団体に申し入れを行ったわけでございます。

 基本的には、もちろん、賃金等の労働条件については各企業の経営状態によるわけでありますが、いわば経営状況が向上している、収益が上がっている企業から、賃上げあるいは一時金について対応していきたい、こういう回答がございました。

笠井委員 個々にではあっても、踏み出し始めたことはいいことだと私は思います。

 しかし、大どころを含めて、大方は一時金の引き上げにとどまっている。実際、米倉日本経団連会長も、業績がよくなれば一時金や賞与に反映をする、景気回復が本格的になれば給料、雇用の増大につながると言われて、これは要するに、給料の引き上げというのはずっと先、事実上、賃上げゼロ回答ということではないかと思うんですが、こんなことでいいか。総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、地方の中小零細はなかなか状況が厳しいでしょうから、それはまだ難しいんだろうな。そういうところも賃金を引き上げることができるような状況を早くつくっていきたいと思っておりますが、まずは、そういう体力があるところからはぜひやっていただきたい。

 私と笠井さんが全く同じ考えになるというのは非常に珍しいことでありますが、私も強くそのように思うわけでございまして、既に、ローソンとかジェイアイエヌとかセブン&アイ・ホールディングスとか、あるいは、きょう、ニトリもそういう意向を表明してきました。ファミリーマートもそうですし、一休とか日本郵政グループとかソディックとか、次々とそういう会社が出てまいりましたので、体力があるところはその対応をしていただきたい、このように思っております。

笠井委員 前回、私の質問で、大企業が二百六十兆円を超える内部留保をため込んでいるもとで、その一%を使えば八割の大企業が月一万円の賃上げを実質的にできる、こう提起いたしました。それに対して麻生副総理は、今言われたようなことができる条件に企業側があることは確かだと、全体としての評価をされました。

 そこで、このパネルをごらんいただきたいんですが、例えば、大企業で国内従業員に月一万円の賃上げをするには、連結内部留保をどれだけ活用すればいいか。これは、私は有価証券報告書をぐうっと洗ってやりましたので、数字は、麻生さん、ちゃんと確かだと言いたいんですけれども、試算してみました。

 トヨタ自動車は内部留保の〇・二%、三菱UFJは〇・一%、キヤノンは〇・二%、武田薬品工業は〇・〇五%、東芝は〇・八%というぐあいで、月一万円の賃上げをできる。もちろん、今総理が言われたように、個々の企業の賃金は労使が話し合って決めるものですが、大方の目安がわかると思います。

 そこで、麻生副総理、長引く不況で国内需要が冷え切っている中で、余剰資金を新たな設備投資に振り向けることは期待ができません。賃上げによって内需を活発にすることこそ、余剰資金を生かせる道ではないか。これは、私、労働者にとっても、企業にとっても、国民全体にとっても、こんなにいいことはないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 共産党と自民党が一緒になって賃上げをやろうと言うのは、多分、歴史上始まって以来なんだという感じがしながら、この間も答弁をしたと思います。

 今の話は、これは本来は連合の仕事なので、私らのあれじゃないと思うんですが、過日もお答えをしましたけれども、給与が上がるというのをベア、ベースアップでやる場合は、今後、先行きどうなるかというのがいま一つわかりませんから、企業もいま一つ腰が引けているところはあるんだと思います。

 安倍政権ができてまだ三カ月たっていませんので、まだいま一つ、今の政権は大丈夫かと思われていることは確かだと思いますので、その意味では、そこらが安定した、これは大丈夫だということになれば、今のように結びつく。三本目の矢が動き始めた段階では間違いなくそういう方向に行くと思いますが、少なくとも今の段階で、一時金で十万とかいったような形で出せるなり、ボーナスで出せるなりすることは十分できるということになりつつあるんだと、私は今、その後もいろいろ経団連やらとやらせていただきましたけれども、そういった感じがしております。

 そういう方向になると、内部留保が出てきて賃金に回ると、そこから消費に回っていきますので、GDPを押し上げていくのにとりましては、GDPの中に占める個人消費の比率は極めて高いものですから、設備投資も物すごく大きいものですが、個人消費が伸びる点ということを勘案すると、短期的にも、一時金という形でそういった内部留保が賃金に回るということは、日本の経済が活気づくためにも重要な要素の一つだ、私はそう思っております。

笠井委員 一致するところは多いと思うんですけれども、一時金だけじゃなくて、やはりベア、そして月々の昇給に上がっていくということでやらないといけないと思うんです。

 大企業の内部留保というのは、今お話ありましたが、人件費の削減で目先の利益はふやしたけれども、国民の所得が減って市場が収縮するということのために、企業経営としての有効な使い道がなくなって、企業の内部に余剰資金として急激にたまっている。そのほんの一部を、一時金、そして基本給も含めて賃上げに充てれば、日本経済の好循環の突破口になるんじゃないか。だからこそ、今、本腰でこの問題を要請すべきだと思うんです。

 もう一つ、全く光が当たっていないのが、労働者の三分の一を占める非正規労働者であります。

 パネルをごらんいただきたいんですが、非正規労働者の割合と勤労者の平均給与年額、それに、資本金十億円以上の大企業の内部留保の十年間の推移を示したものであります。

 非正規労働者は、約二〇ポイント、四百万人もふえている。他方、勤労者の平均給与はどうかといえば、八ポイント、約三十二万円も減っている。そして、大企業の内部留保は、その間に約二百六十兆円へと、十年間で百兆円もふやしているわけであります。

 労働者を不安定な雇用に置きかえて給与を引き下げながら、大企業はもうけをため込んできた。総理、これが賃下げ社会の大きな原因になっている、こういう認識はお持ちじゃないでしょうか。いかがですか、総理。

甘利国務大臣 企業のそうした行動は、将来にわたって投資をする見通しがしっかりつかない、つまり、内部留保としてためておいて体力を温存し、そして確かな投資機会のときに乾坤一てきの勝負をする、そういう環境にあることと、それから、非正規雇用がふえるということは、正規雇用というのは、言ってみれば、ある種、ベース労働で、調整には不適格であります。そういう自信のなさというところが、どうしても非正規雇用がふえて、正規が伸びていかない。

 ということは、政府としては、投資機会をしっかりつくって、デフレマインドを払拭して、持っているよりも投資した方がいいんだという環境をつくることが必要だと思います。そういう見通しが立ってくると、ベース労働としての正規雇用をもっとふやしていけるという自信につながっていくんじゃないかと思います。

 政府としては、そういう環境をつくる、つまり、デフレマインドを払拭して、これからは投資環境が整ってくるんだ、それと、成長戦略でしっかりとしたロードマップをつくって、政府がコミットをして、企業に自信を持たせて、投資やあるいは雇用や給与に反映させていく、そういう道筋をつくっていくのが使命かと思っております。

笠井委員 いろいろ言われたけれども、マインドの問題ということを強調されましたが、私、厚生労働省の労働経済白書を見ても、需要不足、デフレが起こっている最大の要因というのは所得の低下だ、それは主に非正規雇用者の増加による、こう分析しているわけであります。

 何でこんなことになったのか。企業がいろいろ都合があるとかということ、そういういろいろな都合があるという問題。そして、政治の問題としては、歴代自民党政権の時代に進めてきた労働法制の規制緩和、つまり、そういう企業の方向、都合というのに合わせてどんどん規制緩和することによって、非正規雇用拡大など、働く人の所得を減らし続けてきた、そうした政策の結果ではないか。そこへの反省がないのか。総理、いかがですか。

田村国務大臣 デフレが生じている原因がそのような形だとは、白書では申し上げておりません。所得の低下がという話です。デフレとは書いてありません。そこは訂正をさせていただきます。デフレはそれだけが要因ではございませんので、そういうことではないということであります。

 今、非正規化の問題が出てまいりました。確かに、バブル崩壊後、九〇年代から、たしか産業の空洞化という話等々が出まして、経済産業の構造変化、こういう中において、どうやって雇用を守るんだ、これは、事業側もそうでありますし、労働者の方もそうであります。そういういろいろな議論の中で、制度改革というのは、労使が話し合いをして決まってきたものでございます。

 ちなみに、この間、欧米はかなり失業率が上がりましたが、日本は、非常に景気が悪いときも、それほど失業率が欧米のように上がらないんですね。これは、そういう意味では、この働き方というものが一つのバッファーになったことは確かであります。

 ただ、そうはいっても、この非正規の働き方の待遇が決していいわけではございませんので、これをどう改善していくか、これは大変大きな厚生労働省の課題でございまして、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

笠井委員 今、白書の問題がありましたけれども、要するに、そういうことを非正規化することによってデフレが進んでいるんです。

 しかも、これは経済財政諮問会議の民間議員をされていた吉川洋さんですけれども、「デフレーション」、この中でもまさに指摘されているのはそうだと思うんですよ。デフレの鍵は賃金、デフレに陥った原因は、既に述べたとおりということで言われながら、結局、バブル崩壊後の不況と国際競争の中で大企業における雇用制度が大きく変わり、名目賃金が下がり始めたことであるということも指摘をされている。

 ところが、政府みずからがデフレを招いたことへの反省がないどころか、総理が、労働法制の規制緩和をもっと進めると一方で財界に約束されるようでは、非正規がさらにふえて、いつまでたってもこの不況から脱却できないということになる。

 総理、ローソンとかということも言われましたけれども、あのニュースを聞いて、近所のコンビニで、給料が上がるんですってねと話したら、関係ないですよ、上がるのは本社で働いている社員だけ、こう言われた、この声が寄せられました。つまり、二十万のうち、若手正社員三千三百人の一時金、これは大事ですけれども、これだけだということであります。

 そうした中で、非正規労働者の時給を百円上げようという要求が今、全国で高まっております。総理に伺いたいんですが、いろいろな問題の指摘とかにあると思うんですが、安倍内閣の賃上げ対策の中に非正規労働者は対象に入っているのか。非正規の実態は、一体、これで変わっていくのか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 正規労働者、非正規労働者の関係等については、先ほど田村大臣から御説明をさせていただきました。

 安倍内閣としては、働き方が多様化をしている中において、さまざまな雇用形態があるべきだ、こう思っているわけでありますが、当然、非正規労働者から正規に変わりたい、そういう人たちに対して門戸が開かれていなければいけないわけでありますし、そういう方々に対してチャンスのある社会をつくっていきたいと考えております。

 第一次安倍内閣のときにおきましても、再チャレンジの一環として多くの企業にそれを呼びかけまして、ワールドという会社は、数千人規模において非正規の方を正規にという道を開いてくれました。そういうことも含めて、我々は対応していかなければならないと考えております。

笠井委員 賃上げの中に、非正規労働者というのも当然対象に入って進めるということですね。

安倍内閣総理大臣 我々が呼びかけている対象としては、三団体に対して呼びかけましたが、世の中一般にお願いをしているのは、つまり、これは正規、非正規関係なく、もちろん、賃上げ、収入がふえていくことによって消費がふえていく、当然商品が売れていくわけでありますから、当然また設備投資もふえていく。こういういい循環に入っていくという意味においては、これは、笠井委員も指摘されたように、企業側にとってもいい出来事でありますから、当然そういう呼びかけは行っていきたい、こう思っておるところでございます。

笠井委員 賃金増大、これは大事なことだと言われましたが、それはやってもらいたいんですが、一方で、産業競争力会議では、正社員を解雇しやすくするという議論が行われている。これは、これまでの賃下げと不安定雇用を広げてきた方向じゃないかと思うんですが、そんな議論は、一方では、賃下げ社会を一層加速させることになります。

 今こそ、非正規労働者の時給も引き上げて、正社員化の流れをつくって、安心してみんなが働ける政策を実行すべきだ。働く人の所得をふやして、下請企業への適正な単価に充てれば、消費がふえて内需が活発になって、企業活動も活性化して確実に収益が上がる。日本経済が活性化する。私、デフレ不況脱却と言うなら、こういう政策にこそ転換すべきだ、このことを強く言いたいと思います。

 そこで、TPP問題です。

 安倍総理が来週にもTPP交渉への参加表明を行おうとしていることに、JAや医師会を初めとして、全国各地、各分野から怒りの声が上がっております。総理は、聖域なき関税撤廃、これを前提にする限りTPP交渉参加に反対する、これが自民党の公約だと言われてきました。

 そこで伺いたいんですが、このTPP交渉において聖域がないということになると、どういう事態になる、だから反対だ、こうお考えなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 答弁する前に一つ加えさせていただきますと、先ほど、賃上げをするという企業の中で例として挙げましたジェイアイエヌは、これはパートを含めて千五百人の方々の賃金を上げるということを既に宣言していただいております。

 そして、ここで今、聖域の意味ということでありますが、TPP参加については、守るべきものは守らなければならないというのが我が党の立場でございます。聖域なき関税撤廃を前提条件とするのであれば我々は交渉に参加はできない、こういう考え方でありました。

 そこで、首脳会談を行った結果、それはそういうことではないということを私は認識した、確信したということでございます。

笠井委員 守るべきものを守らなかったらどういうことに日本がなる、だから反対だとお考えなのか。

安倍内閣総理大臣 例えば、今回、日米の間で共同声明を出したところでございますが、その中で、日本には農業分野というセンシティビティーがある、ここがまさに私は聖域だろう、こう思っているわけでございまして、農業には、産業という面だけではなくて、環境や地域や文化や人々を守る、こういう機能を持っているわけでございます。つまり、これが守られなかったら、こういうものを失ってしまうということになると思っております。

笠井委員 要するに、無制限に自由化をして外国との貿易の壁が全く取り払われたら、安い品物、外国の産業がどんどん入ってくる、農業を初めとして国内の産業が大打撃を受ける、こういう事態になるということだと思うんです。

 あたかも、この問題については、総理が今言われましたが、交渉次第、入ったときに、そこで守るべきものを守るということを言われるんですが、では、結果として、総理の言われるような聖域が必ず守られると保証されるのか。

 そこで伺いたいんですが、TPPは、既に九カ国が二〇一〇年までに交渉に入って進めているわけであります。そういう九カ国と、後から参加する国との間で、条件が違うということはないのか。

 例えば、二〇一一年十一月に、カナダとメキシコが新たにTPP交渉参加を表明して、半年後の昨年六月に、新たに交渉に参加をいたしました。その際、既に交渉してきた米国など九カ国から、何らかの条件をつけられたことはなかったんでしょうか。

岸田国務大臣 今御指摘の点につきましては、きのう、きょうと、さまざまな報道が流れております。

 メキシコ、カナダが本件についてみずからの立場を明らかにしていない中にあって、我が国として、メキシコ、カナダ、そしてそれ以外のTPP交渉参加国とのやりとりについてコメントする立場にありませんが、これまでの情報を勘案いたしますときに、TPP交渉参加国は、交渉参加に関心を表明した各国について、包括的かつ高いレベルの自由化にコミットすること、さらには交渉進展をおくらせないこと、こういった考え方を示してきているという情報があります。

 引き続き、こうした点につきましても情報収集に努めていきたいと考えております。

笠井委員 昨日来議論があったと思うんですが、その中で、情報についてコメントしないとかという話がありますが、それを言うと今後の情報収集に影響があるという話もされました。

 影響があるということを言われるということは、何らかのものがあるということですか、つかんでいるということでしょうか。

岸田国務大臣 情報収集につきましては、全力を挙げて取り組んでいます。

 その中で、個別の課題について、これを確認したとか、これをやりとりしたとか、こういったことについて触れることは控えさせていただく、こういった趣旨でございます。

笠井委員 カナダとメキシコは、先行して交渉してきた九カ国との間で、極秘念書によって極めて不利な条件を承諾した上で、昨年六月に交渉参加を認められた。これは、既に、アメリカの貿易専門誌など、内外の報道で指摘されてきたことであります。これまで指摘されてきた条件というのは、私、とんでもないものだと思うんです。

 一つは、現行の交渉参加九カ国が既に合意した条文は全て受け入れ、九カ国が合意しない限り再協議は行わない。二つ目に、将来、ある交渉分野について現行九カ国が合意した場合、拒否権を有さず、その合意に従わないといけない。そしてさらに、交渉を打ち切る権利は九カ国にあって、おくれて交渉入りした国には認められないなどというものであります。

 総理、新規交渉参加にはそういう何らかの条件があったのか、なかったのか、こういう問題を聞いているんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 さまざまな報道がありますが、メキシコ、カナダ、こうした他の国がTPP交渉参加国との間でどのようなやりとりをしたのか、その当事国自身がこれを明らかにしていない中にあって、我が国としてコメントするのは適切でないと申し上げております。少なくとも、現状、御指摘のような条件、我が国には提示されていない、これだけは確かでございます。

笠井委員 コメントをするかどうかじゃなくて、つかんでいるかどうかを聞いているんですね。コメントをするかはその上の話なんです。つかんでいます、だが言えないという問題がある。

 しかも、今、我が国にはこうした条件は提示が全くないと言われましたが、当たり前なんですよ。カナダ、メキシコは参加表明してから提示をされたわけで、まだ表明していない日本に条件の提示はないんです。

 参加表明するとなれば、そうしたら、入ったときにはこういう条件ですよという具体的な話がある。しかし、それを聞いたら、今度、抜けられないのがTPPなわけですよ。だって、情報は参加国で共有するけれども、ニュージーランドが言っていますけれども、この交渉が締結した後だって、四年間は交渉内容は秘密にすると言っているわけでしょう。つまり、外には明らかにしないけれども、入ってくるということをはっきり表明したらその具体的な話をしますよというのがTPPなんですよ。だから、日本に全くないのは当たり前なんです。

 総理は、先ほどの質疑の中で、我が国は参加表明していないので十分に情報がとれないとおっしゃいました。情報収集が難しいということを言われたんですけれども、ということは、参加表明して情報がとれたときには、私、重大な条件だったらもう手おくれじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは、参加をしないと正式に情報を得ることはできませんし、そういう情報の共有がなされないわけでありますが、今の段階においては、外務大臣が答弁をさせていただいているように、その中においても、我々は、最大限の努力をしながら情報を収集しているところでございます。

 そして、参加した以上は、我々、守るべきものはしっかりと守っていくという決意で、強い交渉力を持って交渉していく覚悟でございます。

笠井委員 参加した以上は守るべきものは守ると言いながら、さっきみたいな条件がついたらそれができないというのが、今問題になっているわけですよ。

 それで、最大限の努力をすると情報収集の問題も言われましたが、総理は、昨日の答弁では、種々の情報や報道もあるけれども、判然としない部分もあるというふうに答弁されました。これはどういうことか。判然としない、そういう内容があることについて把握をしているということでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今までもずっと、既に参加国は交渉をしているわけでございますし、まだ今も交渉は継続中でございます。

 そういう中においても、事前の交渉というのを、例えば日本は米国と行ってきたわけでございますし、それもまだ続いているわけでございますが、という中において、我々、とっている情報もあれば、これは輪郭がぼやっとしているものもありますし、そこのところは、まだ参加をしていないわけでありますので、情報収集の力は入れておりますが、参加をしていないという限界の中で、まだ判然としていないものがある、こういうことでございます。

笠井委員 国益にかかわると言われてきましたが、これから参加するかどうかの日本にとっては重大なことで、そして、ぼやっとしたものがあるとか輪郭とか、まだ十分つかめていない。ぼやっとしたものがあるということで、入ってみたら大変なことだったということになったら、これは、それこそ責任問題になりますよね。

 判然としない、ぼやっとしたものがあるのに、十分なものがないのに参加の判断ができるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは交渉参加ですから、交渉参加するかどうかの判断について今検討をしているわけでございます。

 ですから、交渉参加をしたら、それがすぐ締結ではないわけでございまして、もし交渉参加ということになった場合は、そこで、交渉力を強化し、そして情報収集力も強化をしながら、国益を守るために全力を尽くしていき、そして結果を出していく、これは当然のことなんだろう、このように思っております。

笠井委員 違うんですよ。今問題になっているのは、参加してみたら大変な手かせ足かせがあるということが問題になっているから私は言っているんですよ。参加した中で頑張りますと言うけれども、頑張れない状況かもしれないということでしょう、これは。

 だって、さっき言ったみたいに、後から入って、やっても、もう合意したところはだめよ、ほかの国、九カ国がうんと言わなかったら再協議できない。あるいは、将来、ある分野について、九カ国が合意してやったけれども、新しく入ったところが、それは、いや、困るよねと拒否権をやろうと思っても、それは許さないよということとか、交渉を打ち切るということについても、九カ国だけがあって、後から入ったものがそういう権限を持っていないということになったら、幾ら頑張ろうと思っても、総理、頑張れないということにかかわる問題が問題になっているから、それが、ぼやっとしているとか輪郭がよくわからないとかというようなことで判断したら大変でしょうということを私は申し上げているわけであります。

 では、岸田外務大臣に具体的に伺いますが、これまで外務省は、内閣官房、財務省、農水省、経産省とともに、TPP交渉参加に向けた関係国との協議を進めてきたと思います。その中で、新規交渉参加国に求める条件について、既に具体的につかんでいるものがあるんじゃないですか。

岸田国務大臣 これまで得られた情報で、TPP交渉参加国は、交渉参加に関心を表明した各国につきまして、包括的かつ高いレベルの自由化にコミットすること、そして、交渉の進展をおくらせないこと、こうした考え方を示している、こうした情報は得ております。

 条件等につきましては、具体的なもの、引き続き情報収集に努めたいと思いますが、現状、我々が得ている情報では、そうしたところであります。

笠井委員 それは、いつつかんだのですか。

岸田国務大臣 このTPPの議論が起こり、そして、昨年来、我が国におきましては、二国間協議、あるいは情報収集のための協議、そしてさまざまな国際会議等での発言等、さまざまな情報収集に努めています。その情報収集の結果であります。

笠井委員 どこからつかみましたか。

岸田国務大臣 さまざまな国々との協議から得た情報を総合的に勘案して、そういった認識に立っております。

笠井委員 当時は、民主党政権の時代でありますけれども、外務省は、こうした条件をめぐる問題についてつかんだことについて、当時の野田首相に全て報告していた、こういうことでよろしいですか。

岸田国務大臣 ちょっと、前政権の内部でのことにつきましては十分承知はしておりませんが、当然、政府一体となって情報収集に努めていたものではないかと想像いたします。

笠井委員 昨年末の政権交代以降、間もなく三カ月になりますが、安倍総理は、前政権からこの問題について引き継ぎを受けましたか、この条件について。

安倍内閣総理大臣 受けておりません。

笠井委員 外務省など関係省庁からは、報告、説明を受けてきましたか。

安倍内閣総理大臣 それは受けてまいりました。

笠井委員 いつの段階で受けましたか。

安倍内閣総理大臣 これは、政権につきましたのが十二月の二十六日でございますが、いつか、正式な日時は定かではありませんが、私の方から、TPPについて、事前の交渉の状況について説明をしてもらいたいということを指示いたしまして、説明を受けました。それは、就任してからそんなに時間がたっていなかったと思います。

笠井委員 岸田外務大臣は、先ほど、一定のものはつかんでいたと言われたんですけれども、そうした問題を承知していた、条件は日本の交渉参加にかかわって重要な問題だということでの、情報収集して一定のものをつかんでいたと言うのだったら、なぜ、そういう問題について積極的に明らかにして言わなかったんですか。

 メリット、デメリットという問題の中に、こういう問題点があるということを書いていないですね、どこにも。

岸田国務大臣 御指摘の点は、先ほど答弁させていただきました、TPP交渉参加に関心を表明した各国について交渉参加国がどのような態度で臨んでいるか、こうした点について明らかにしなかったのではないかという御質問かと思いますが、引き続き、そういった情報につきましては、さまざまな機会で明らかにさせていただいております。

笠井委員 いや、私が聞いたのは、参加するかどうかということが問題になっているときに、内閣府なり政府なり外務省なりがいろいろな資料を出しました。メリットがある、デメリットがある、入った場合にこういう問題があると、いろいろ出したけれども、しかし、少なくとも、大臣が一定のものはつかんでいると言ったような、参加に当たっての条件にかかわることについては、そういう資料には出してこなかったんじゃないかということを聞いているんです。

岸田国務大臣 交渉参加国が、交渉参加に関心を示している国に対して、交渉をおくらせないように意思を表明しているという点につきましては、別にこれは隠しておいたものではないと思います。

笠井委員 違うんです。参加するかどうかがこれだけ国会でも議論になっているときに、国会や国民に対して、まだ情報収集は輪郭で、ぼやっとして不十分なものがあるかもしれないけれども、参加した場合にこういう問題点があるというようなことについて、むしろ、メリット、デメリットというのだったら、隠すとかいうんじゃなくて、積極的に言わなきゃいけないんじゃないか、議論の検討の対象にのせなきゃいけないんじゃないか、そういうことをやってきたのかということですよ。

岸田国務大臣 これは、前政権の時代のことですが、二十四年三月一日、「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」、こうしたことで、今申し上げたようなことについても明らかにしております。

笠井委員 それは知っていますよ。私も、当時、この委員会で質問したときに扱った資料ですから。では、この国会議員の中で、あるいは国民の中で、そういう問題について、条件ということに議論があるんだなとか、日本が新たに入ろうとしたときに、そういう条件にかかわって、いいのか悪いのかということについて検討しようといったときに、どこかに書いてありますとかいう話じゃないでしょう。

 総理も、情報が不十分、ぼやっとしていると言われた、そして岸田大臣もいろいろ言われるけれども、これから情報収集に努めるとかと言われるけれども、これだけ、入ったときに手かせ足かせになるようなことがあるかもしれないと言われて、実際、カナダやメキシコはそう言われてきた。

 私、このことについて重大な関心を持って、これでいいのかという問題に対して、正面からやらなかったら大変なことになるんじゃないかと思うんですよ。林農水大臣、どうですか。

林国務大臣 今やりとりを聞いておりまして、私の方では、そういう情報を事前に知っていたというようなことはございません。

笠井委員 それでどうするんですか。

林国務大臣 今外務大臣から御答弁があったように、関心のある国に対して示されたことという中に、今外務大臣がお話しになったようなことが入っていたということですから、それはしっかりこれまでもお示ししてきた、こういうふうに、外務大臣が御答弁されたとおりだというふうに思います。

笠井委員 承知していなかった、これから調べてみますみたいな話で、これは農林水産業にかかわって、預かっている大臣ですが、農業はもちろん、国民生活全体にとって、入った場合に物が言えない、あるいは、こういうことで、決まったことはうんと言わなきゃいけないという、重大な影響を及ぼしかねない問題。私、その程度の言い方というのは許されないと思いますよ。

 今、岸田大臣が言われました。ここに「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」、平成二十四年三月一日付、内閣官房、外務省、財務省、農水省、経産省の文書があります。大臣がちょっと言われたけれども、その中で、「新規交渉参加国に求める共通の条件」、「新規交渉参加について」ということの中にそういうことが見出しに立って、そして三つのことが言われているんですよ。「包括的で質の高い協定への約束(コミットメント)」「合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さないこと」、さらに三つ目に「交渉の進展を遅らせないこと」。

 まさにこうしたことについて、改めて確認しますが、既に、昨年三月の段階で、少なくとも政府は把握していた。間違いありませんね。

岸田国務大臣 この内容につきましては、今御指摘のあったとおりであります。

 こうした交渉参加国の方針につきましては、既に昨年三月、明らかにされています。

笠井委員 なぜ、こういう重大関心事があるということを積極的に言ってこなかったんですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げたように、この交渉参加国の関心、交渉をおくらせないという姿勢につきましては、従来も、私からもたびたびこの発言をさせていただいております。

 今、現状においては、TPP交渉において具体的に結論が出た項目、これは、中小企業にかかわるテーマ一つだけだというふうに認識をしています。

 そういった中にあって、我が国として、最大限、国益を追求するために努力をしていく、これは当然のことだと思っています。

笠井委員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。

 当時、昨年は民主党政権だった、その問題もあると思いますよ。だけれども、さっき総理が言われたみたいに、今の政権ができて三カ月たっているわけですよ。総理自身が、こういう問題を含めて、必要な情報は聞いてきたと言っているわけでしょう。それを、日本が参加したときに大変なことになるかもしれない問題について、こういう問題がありますよということでちゃんと言ってこなかった。責任重大じゃないですか。

岸田国務大臣 この資料の中をお読みいただければと存じますが、議論を蒸し返さないことについて以下の発言があった、「交渉参加の条件として九カ国で合意したものではない。」こうした点もちゃんと指摘をしております。

 こうしたことも含めて、我が国として現状を把握し、そして認識をしている、こうしたことでございます。

笠井委員 まあ、そう言ってくると思ったんですがね。

 合意済みの部分をそのまま受け入れて議論を蒸し返さないこと、これが参加条件の中に挙げられている。それで、九カ国で合意したものじゃないから、それは動いているものだみたいなことを言いましたけれども、二つ問題がある。

 一つは、TPPというのは、新たに参加する場合に、それまで参加している国の全ての、参加していいですよということを受けなきゃいけないわけですよね。承認を得なきゃいけないわけですが、そのときに、百歩譲ってですよ、去年三月の段階で、九カ国で、この条件、合意したものでないとしても、そういうことを主張したということで、はっきりこのことが大事だと言っている国があるわけですよ。例えば、その三行後に、「交渉参加国がこれまで積み上げてきた交渉の成果から新規参加国もスタートする必要があるという意味である。」というふうに言っているところもある。

 つまり、九カ国のうち、一カ国でも二カ国でも三カ国でもいいけれども、この条件をクリアしなかったら、自分の国は、日本が入る、あるいはほかのカナダ、メキシコが入ることはオーケーしませんよと言ったら、入れないんですよ。新規参加の条件というのはそういう問題なんです。九カ国で合意したものが全てかどうかという問題じゃない。

 もう一つ問題は、これは三月の時点です。メキシコ、カナダが実際に表明してから、結局、参加が認められたのは去年の六月ですから、大臣が一生懸命、今、合意じゃないとか言っている文書の三カ月後です。

 では、三月から六月までの間に、この条件、例えば、合意済みの部分はそのまま受け入れて議論を蒸し返さないことについては、交渉参加の条件として九カ国全部で合意したのかどうかについても確認したんですか。そういう情報はあるんですか。

岸田国務大臣 まず、先ほどのこの文書でいきますと、さらに、議論を蒸し返すことは避けたいが、重大な判断を要する事項はこれまで合意されていない等々、こうした情報も含まれていること、これはぜひ御指摘をしたいと存じます。

 そして、その上で、引き続き情報収集に努めているわけですが、少なくとも、我が国として、さきの日米合意等において確認したことと相反する情報は、我々は得てはおりません。

笠井委員 具体的には明らかにできないわけですよ、三月以降どうなったかということについても。

 そういう条件を書いたレター、念書がある。そういう存在については確認しているんじゃないんですか。ないんですか、そういうことも。

岸田国務大臣 情報収集には努力をしておりますが、少なくとも、我が国にとって交渉参加に条件となるような情報については、我々は認識はしておりません。

笠井委員 だから、表明していなかったら教えてもらえない話なんです。

 政府は、そもそも交渉に参加しないと具体的な交渉内容と到達点がわからない、だから情報収集に努めるとさんざん言ってきました。その上、今度は、新たに参加した途端に、包括的で質の高い協定への約束、つまり、関税、非関税措置の撤廃の達成を約束させられる一方で、合意済みの部分をそのまま受け入れて議論を蒸し返さないとか、交渉の進展をおくらせないとか、そんな誓約をさせられたら、聖域どころか、架空の聖域になってしまいます。

 総理、総理自身も、判然としない部分がある、ぼわっとした部分があると言われましたけれども、今聞いていたって、私たち国会議員も国民も、全く判然としない、ぼわっとした部分があるわけですよね。そんな状況でTPP交渉に参加すると表明したら大変なことになる。できるはずがないと思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 我々が今判断するのは、交渉に参加するかどうかを判断しなければならないわけでありまして、交渉に参加するかどうかということについての情報を今収集しているところでございます。

 そして、もし参加をするという判断をすれば、参加をした中において、そうすれば参加国でありますから、情報を共有できるわけであります。そして、まだこれからも交渉はたくさん残っているわけでありますから、その中において、我々は、守るべきものはしっかりと守って、得るべきものはしっかりと得ていきたい、このような姿勢で交渉をしていく、そういう決意でいきたい。

 しかし、今の段階では、まだ、参加するかどうかということについては、党内の議論、あるいは米国側の状況もありますから、そうしたものを総合的に判断して、しかるべきときに、国民の皆様に、どうするかということをお示ししたい、このように思っております。

笠井委員 参加したら大変になるということについての情報収集が不十分で、入ってみたら大変なことになるという条件があって、そして、そのことを教えてもらったら抜けられないという話になるんですから、大変なことになります。

 総選挙直前の昨年十一月十五日に、野党時代の安倍総理は、総裁の時代ですが、会見で、TPPについて、今に至るまで情報公開はほとんどされていない、国民的な議論を深めていく努力も、そもそも野田さん自体がしていないじゃないですかと批判しています。そして、御本人や政党が十分に議論を深めているか、理解を深めているか怪しいときに、いきなり外交の場に持ち込む、外交を選挙のためにもてあそぶとまで言われました。私、その批判は、まさに総理御自身にそのままはね返ってきているんだと思うんですよ。

 国民や国会には都合の悪い情報は出さず、そして、曖昧な、輪郭もわからない、ぼわっとしているというような状況の中で、アメリカとは協議しながら、国のあり方の根本、国益にかかわる、農業、食の安全にかかわる重大問題で拙速に結論を出そうとする。絶対許せないと思います。

 最後に、委員長、TPP交渉の参加の是非に関する当委員会での集中審議及び参考人質疑の開催を理事会で協議していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山本委員長 後日、理事会で協議いたします。

笠井委員 終わります。

山本委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 三月十一日は、本当に国難ともいうべき東北大震災の二年目ということであります。本当に悲惨な、大変な出来事でございました。お亡くなりになった方、行方不明の方はもちろんでありますが、いまだ本当に困難な生活を余儀なくされている皆さんのことを思うと、我々は、やはり今きちっとそういった方々の声に、思いに応えていかなくてはいけない、このように思っております。

 また、もう一点、過日の北海道の雪害で大変な被害があったわけでありますが、とりわけ、みずからのコートを脱いで、かぶって、そして子供さんの命を守ったあの岡田さん、私は、あのお話を聞いて、本当に涙させていただきました。そういった、子供を一生懸命守っていく、これがやはり、我々、人としての務めであるし、親としての務めだ、このように思っております。

 質問に入る前に、私は二つのことを申し上げたいというふうに思います。

 一つは、安倍総理は、施政方針演説で、国民の皆さんに自立を呼びかけられました。自立が大切なことは、もちろん私もわかっております。しかし、自立したくてもかなわない、そういう方々が、弱い立場の方々がたくさんおみえになるわけであります。

 したがって、強者の理論ということではなくて、弱者の目線でやはり事を進めていっていただきたい、そういう人に手を差し伸べていただきたい、それが政治の姿だというふうに思います。この基本をぜひ、総理初め皆さん方には忘れないようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 もう一つ申し上げたいと思うんですが、総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国、世界一を目指す気概、そして、世界一安心、安全な国、このようにおっしゃられました。将来への前向きな言葉を聞いて、恐らく多くの国民も鼓舞され、そして、新しい国づくりに向かって頑張っていこうという気持ちになったと私は思います。

 ただ、残念ながら、いずれも抽象論でありまして、具体的にこういう形で進んでいこうということではなかった、このように私は思っております。

 いずれにいたしましても、補正予算が成立をしました。そして、その期待によって、株は上がり、円高も是正され、内閣の支持率も上昇しておる、これが現実だというふうに思っています。

 しかし、問題は、それらを持続するために具体的な政策の裏づけというものが必要であるというふうに思います。とりわけ、夏の参議院選挙を目前にして、有権者の皆さんが判断できる、そういう具体的政策を私は出していくべきだ、このように思っていますし、そういう点について、今から、時間の許す限り御質問をさせていただきたい、このように思います。

 さて、我々は、増税の前にやることがある、このように言い続けてまいりました。政治家みずからが身を切る改革をやる。そして、徹底して無駄遣いをやめる。これらに国民の皆さんが納得されるまでは消費税増税はだめだということを言い続けております。

 このことを前提として、まず、消費税に関して二点確認をさせていただきたいと思います。

 第一点は、消費税の増税の時期、判断基準の明確化ということであります。

 税制抜本改革法のいわゆる景気弾力条項では、消費税率の引き上げの前に、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずるとされております。

 その判断時期について、総理は、引き上げ実施時期の半年前というふうにおっしゃっていました。二月一日の参議院の本会議で御答弁をされておるわけですが、その後においても、経済財政状況の激変等が生じた場合には適切な対応を行っていく、このように御答弁をされました。

 そこで、お伺いをしたいんですけれども、その判断の具体的手順、内容の詳細についてはいまだ明らかにされていないと私は思います。国民にしてみれば、そのより具体的な説明が聞きたいということではないでしょうか。具体的に、何を指標とするのか、いつ決断をするのか、明確にしていただきたいというふうに思います。

 もう既に、来年の八%は見送るかもしれないという説もあるやに聞いております。何によって、いつお決めになるのですか。具体的に国民にお知らせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 来年の消費税の税率の引き上げにつきましては、既に御説明をさせていただいていますように、年金、医療、介護、あるいは子育て、こうした社会保障費の増大に対応するために、そして日本という国の信認を確保するために引き上げることにしております。

 一方、附則十八条におきまして弾力条項が書かれているわけでありまして、その中身についてはこの附則十八条に書いてありますが、本年秋に、この附則第十八条にのっとりまして、名目及び実質の経済成長率、あるいはまた種々の経済指標を確認いたしまして、経済状況等を総合的に勘案して判断をしていきたい、このように考えております。

 当然、消費税率を引き上げていくのは税収増を図るためでありまして、何が何でも上げていかなければならないということではなくて、附則十八条にのっとって総合的に判断をしていく考えであります。

鈴木(克)委員 今言われた種々の経済指標というところを詳しくお聞きしたかったんですが、そういうことで総理が御判断をされるということはわかりました。

 次に、低所得者の皆さんに対する対策をお伺いしていきたいというふうに思います。

 同じく税制抜本改革法では、消費税率引き上げに伴う低所得者対策として、給付つき税額控除や複数税率の導入について総合的に検討するとされております。

 複数税率については、二十五年度の税制改正大綱の取りまとめの議論の中で、公明党の皆さんは積極的な姿勢であり、自民党は慎重姿勢であった、このように報じられております。最終的に、消費税率の一〇%引き上げ時に軽減税率制度を導入することを目指す、こういうまことに曖昧な結論、つまり先送りの決着になった、私はこのように思っております。

 まず国民の皆さんが納得をする低所得者対策が決定をされなければ、増税の判断も行うべきではない、私はこのように思いますが、総理の御見解をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 消費税率引き上げに当たっての低所得者対策については、税制抜本改革法において、消費税率八%段階から、給付つき税額控除と複数税率のいずれかの施策の実現までの間の暫定的、臨時的な措置として、簡素な給付措置を実施することとされております。本年二月の三党合意において、引き続き協議を行うとされているところでございまして、与党間及び三党間での議論を踏まえながら、法律の規定にのっとって検討していく考えでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、先に弱者に対するといいますか、低所得者に対する対策をきちっとして、そして国民の皆さんに、だから税を上げさせてくださいというのが本来であって、そのことをきちっと示さない限り、消費税のアップというのは私はやはりやるべきではないというふうに思っております。

 次に、プライマリーバランスについてお伺いをしたいと思います。

 前政権時、私もいっとき前政権の中に加わっておったわけでありますが、財政規律という言葉がまさに飛び交っておりました。現在はその言葉がどこかへ行ってしまったような感じで、いわゆる景気対策という言葉の前にかすんでしまったのではないのかな、こんなふうな率直な思いがいたしております。

 安倍総理は、民主党政権時代に掲げられた、国、地方のプライマリーバランスについて、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比の半減、二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標の達成を引き続き目指すことを表明されました。

 しかし、内閣府の試算では、二〇一三年度のプライマリーバランスの赤字は三十三・九兆円、対GDP比六・九%と、二〇一〇年度からの半減どころか、二〇一〇年度よりも悪化する見込みである。これは政府みずからが試算をしておるわけでありまして、麻生財務大臣は、引き締まった予算だ、このようにおっしゃっておるわけですけれども、これは、民主党政権時代よりも後退した、いわば放漫財政だというふうに言ってもいいのではないか、このように思っています。

 こういう状況の中で、甘利経済財政担当大臣は、本年の半ばくらいに骨太の方針を出す、こういうふうにおっしゃっておったんですが、同時に、さらに具体化するのは少しタイムラグを置くということも言われております。つまり、年半ばというと六月ぐらい、そして、さらに二、三カ月おくれるということになれば参議院の選挙の後になる、こういうことになるのではないかなと思います。

 むしろ、参議院選挙に臨む政府の姿勢として、私は、きちっと国民の前に財政運営の具体策を出していくべきだ、このように思いますが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 決して放漫財政ではありませんで、なぜ一三年度のプライマリーバランスが悪化したかというと、これは、年度予算単体ではございません、国と地方の、しかもSNAベース、国民経済計算ベースです。言ってみれば、単体予算が企業でいえば本体の予算ベースだとすると、SNAというのは連結の、しかも執行ベースですから、つまり、補正を組んだそのお金が実際に使われている年度でカウントをされます。

 というのは、かなりの部分は一二年度ではなくて一三年度で使われます。執行ベースで対GDP比のプライマリーの赤をはかっているわけでありますから、当然、大型補正を組んで、それが年度内で全部消化できなければ次年度に行くということですから、数字が悪くなるのは経済対策の結果ということであるわけであります。

 そして、私どもは、二〇一五年のプライマリーバランスの赤字幅を一〇年比半減する、そして二〇年には黒字化するという目標はおろしておりません。これからもしっかりとそれに取り組んでいくということを宣言いたしておるわけであります。

 それから、骨太の方針、骨太と呼ぶか呼ばないかという議論はありましたけれども、財政の健全化、持続性に向けて大きな方針を示す、これは、総理の御指示で、年央にも取り組んでいきたいと思います。

 具体的に中期の財政プランをはかっていくときには、成長戦略等いろいろはからなければならない要素もありますから、それを勘案して、タイムラグが必要だということを申し上げたわけでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、やはりこの財政運営の具体策というのは、国民が最も関心を持つところであります。消費税が上がるか上がらないか、そして我が国の財政が将来どうなっていくかという重大な問題でありますので、しっかりと国民の皆さんに説明をし、そして納得をしていただく、こういう努力を政府として、していくべきだ、このことを申し上げておきたいと思います。

 財政といいますか、こういった関係の最後としまして、円安における家計負担の影響、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

 言うまでもありませんが、円安は、輸出企業についてはプラス面があります。しかし、国民の生活を第一に考えた場合、円安はプラス面ばかりとは言えません。既に、ガソリンの価格は十二週連続で上昇しております。電力料金は、四月から十社、電力料金の値上げを実施する。そしてまた小麦ですね、四月から一〇%上げる等々、食料品への影響も出ておるわけであります。

 内閣府の消費動向調査で、一年後に物価が上昇すると見ている人の割合は前月の六〇%から六五%にふえ、家計の物価予想も上昇してきておるわけであります。

 もちろん、物価が上がればいいという考え方があるかもしれませんけれども、問題は、景気が回復をしなくて賃金もふえなければ、結局、アベノミクスによる一番の被害者は、家計を圧迫される国民である、私はこのように思います。このことについて、総理はどのようにお考えになっているでしょうか。

甘利国務大臣 物価が上がると予想する人がふえてきた、デフレ予測を払拭するためにやっているわけでありますから、ふえてこないと困るのでございます。

 つまり、今まで、現金を持っている方がずっと得だという意識のもとでは、消費も投資も進まないんです。だから、使った方が得ですよという環境をまずつくって、それから、内部留保を持っている人が使って、持っていない人に回っていくようにしなきゃいけないのでございます。

 そこで、物価上昇だけで終わらないように、実質経済がきちんとついていくように、そのために、短期の景気刺激策と、そしてその後を引き継ぐ成長戦略で、明確に企業のマインドがこれからは投資だという方向に変わって、しかも、その投資の先もきちっと照らしてあげる。規制緩和もして邪魔者もどかしていく、そういう遠大な作戦をこれから展開していくわけでありまして、持っている人が使わないと持っていない人に回っていかないということでございます。プラスの景気循環をしっかり回していくということでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、まさに景気が回復をして、賃金がふえていく、雇用も上がっていく、こういうことになれば、それは国民としても容認できるところでありますが、もしそれができないということになれば、これは本当に国民だけが犠牲になる、家計を圧迫されることになるということだと思います。

 だから、冒頭申し上げましたように、強者の理論ではなくて、弱者の目線でひとつぜひ政権運営をしていただきたいということを申し上げたわけであります。

 次に、TPPについて、ちょっと順番を変えさせていただきまして、お伺いします。

 先ほど笠井委員からもお話がありました。今回、総理がアメリカへ行かれて大統領とお話をされ、そして帰国後、要は、交渉というものについては、これは大丈夫だということをおっしゃったわけでありますが、聖域の確保は交渉の中で決まることだということと、それからもう一つは、聖域なき関税撤廃ではないということをおっしゃられたわけであります。

 私は、このことに違和感を実は覚えておりまして、なぜそんなことを申し上げるかということでありますけれども、実は、総理がお帰りになった翌日のニューヨーク・タイムズがここにございます。

 そこにどういうふうに書いてあるかということなんですけれども、アメリカの主要各紙は、一応二十二日の日米首脳会議について報じているけれども、まず中国問題や米軍普天間基地の移転等、外交問題を中心に触れており、TPPは後ろの方に扱われているにすぎない。ニューヨーク・タイムズでは、一応共同声明は紹介しつつ、全ての物品が交渉の対象となることに日米合意したことを伝えただけで、具体的な結果は何も生じていないという小見出しまでつけている。

 ここにありますけれども、こういった小見出しの中で見ると、具体的な結果は何も出ていないということ。ただ、いわゆる穏やかな会談であったということは、もちろん書いてあります。

 しかし、日本に帰られて総理がおっしゃった話を聞いておりますと、あたかもこの問題について、日米が間違いなく、総理と大統領の間では話ができたというような報道がずっとされて、今日まで来ております。

 しかし、アメリカでどういうふうな形で報道されておったのかということもきちっと国民の前に知らせないと、私は、やはり不十分ではないかなと。もちろん、それはアメリカのメディアの話で、日本のメディアではないというふうに強弁されるかもしれませんけれども、私は、やはり一方的な情報を知らされて国民が誤った判断をするということには問題があるというふうに思っています。

 時間があれば、それ以外の、例えばフィナンシャル・タイムズの話とか、いろいろありますけれども、まずこの点を総理に直接御確認させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 オバマ大統領との間では、首脳会談は二回、いわばパートワン、パートツーがございまして、まず、執務室におきまして、政治そして国際情勢等について会談を行いました。そして、五分ぐらいのコーヒーブレークを経て、場所を閣議室に移しまして、そこで昼食をとりながら、昼食をとりながらといっても、冒頭から事実上、経済問題をやろうということになっておりましたから、前半で政治、外交問題、そして地域情勢、そして後半で経済問題。

 ですから、TPPはこの経済問題で議論をするということになっておりましたから、後半で行われたわけでありますが、後半でちょっとやったとか、問題としていわば重要視されていなかったから後半でやったということではなくて、そういう分け方をしていたということでございまして、後半の冒頭でTPPについてじっくりと会談を行ったということでございます。

 また、御指摘のニューヨーク・タイムズの記事でございますが、小見出しには、今委員が指摘されたような小見出しがありますが、大見出し、見出しは、日米首脳、密接な関係を再確認、こう書いてありまして、オバマ大統領と日本の安倍総理は二十二日、ホワイトハウスで会談を行い、力を拡大しつつある中国という挑戦に日米の同盟国が直面する中、両国の関係を、数年間にわたる摩擦を経て、堅固な基盤の上に戻したことを示した、こういうふうに書いてあります。そして、首脳会談は、日米関係が温かさを取り戻す可能性を示唆した、こういうことも書いてありますので、ついでに御紹介をさせていただきたいと思います。

鈴木(克)委員 そのことは、私も今ここに持っておりますので、わかっておるんですが、要は、私が聞きたかったのはTPPなんですね。TPPの問題でお伺いをしたかったわけであります。

 いずれにしても、ほかの質問もありますので、もし、あとあれば、そのほかの報道のお話もさせていただきますが、次に移らせていただきたいというふうに思っています。

 我が国のエネルギー政策についてお伺いをしたいと思いますが、言うまでもありませんけれども、福島の第一原発事故の発生によって我が国のエネルギー政策というのは大きな転換を迎えた、このように思っております。いわば、今後、どういうような形で原子力にかわるエネルギーを調達していくかということになるというふうに思います。再生可能エネルギー、シェールガス、そしてメタンハイドレート等々、新しいエネルギー源の開拓というものが本当に我が国の今後を左右するのではないかなというふうに思っています。

 総理は、三月四日の衆議院の本会議で、原発の再稼働については新基準のもとに判断していくこととし、三年程度で既存原発の行く末を見きわめながら、十年以内に新しい安定したエネルギーミックスに移行させていきます、こういうお話でありました。

 ここで申し上げたいのは、この前、日光でも最大震度五強を記録する強い地震がありました。我が国は、東日本大震災以来、活動期に入ったということを言う方もみえます。

 そこで、全国各地に無数の活断層が存在をしている我が国であります。アメリカは、言うまでもありません、百四の原発があるんですが、日本の国土の二十四倍とか二十五倍です。日本は、二十五分の一にもかかわらず五十四基がある、しかも地震列島であるということを考えていったときに、これは本当にゆゆしき問題だというふうに私は思っております。

 中央防災会議の中間報告なんですけれども、地球上で発生したマグニチュード六以上の地震の約二割が日本に集中しているというふうに言っておるわけであります。

 我が党は、遅くとも二〇二二年までには原発に依存しない、そういう国家をつくっていかなきゃならない、こういうことを主張しておるわけでありますが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、地震の活動期に入ったということであるならば、万が一に本当に事故が起きたとき、これは取り返しのつかないことになります、あってはならないことでありますけれども。

 したがって、我々は早期に脱原発基本法を出す準備をしておりますが、ぜひ総理も、ここで大きな決断で、やはりいつまでに原発はやめるんだ、そしてそれにかわるエネルギーについては徹底的に、今から国を挙げて、いわゆる成長産業の一環として育てていくというところをひとつお話しいただきたい。

 電源立地地域対策交付金、これが、今年度予算で九百六十八億二千万、要求があります。私はこのお金をやはり自立的なエネルギーの導入、再生可能エネルギー等を含めて活用すべきだ、このように思っておりますが、総理のお考えをお聞かせください。

茂木国務大臣 二点について御質問いただいたと思っておりますが、確かに日本は地震の多い国であります。

 同時に、残念ながらエネルギー資源に乏しい国でありまして、我が国のエネルギー政策の基本、これは、いかなる事態においても国民生活であったり経済活動に支障がないようにエネルギーの需給に万全を期す、こういうことで考えております。委員の方からも再生可能エネルギー、我々も三年間最大限の導入を図っていく、こういったことを考えております。

 同時に、原子力発電につきましては、今回の事故の反省を重く受けとめまして、新しい原子力規制委員会におきまして国際的に一番高い水準での安全基準をつくりまして、そこで安全性を判断する、安全性が確認をされた原発については再稼働を進める、そういった過程の中で、できる限り原発依存度を低下させていきたいと思っております。

 エネルギーのベストミックスでありますが、数字を仮置きするのは、ある意味、やろうと思えばできるんです。しかし、いろいろな要素を含んでおります。そして、それぞれの要素がどうなっているか、具体的に検証していかなきゃならない。

 例えば、再生可能エネルギー、どこまでふえていくのか。そして、実際に安全な原発の再稼働がどこまでできるのか。そして、高効率の火力発電、こういったことにも取り組みをしていく。さらには、安価なLNGであったりとかメタンハイドレート、さまざまな新しい資源、こういったものも検討していかなきゃならない、こんなふうに思っております。

 同時に、これからは、電力システムそのもの、これも改革をしまして、例えば、発電部門に新規参入、再生可能エネルギーも含めて進めていく。同時に、需要の方も、これまでは、需要というのは決まっている、そのもとで供給を積み上げる、こういう政策でありましたけれども、需要側の方もコントロールしていく。そういったことで、実証実験をやりますと、地域によっては、電力の消費量、こういったものも二割ぐらい削減できる。

 こういった全体の改革、二〇二〇年ぐらいにはおおむね完了できるのではないかな。その段階におきまして、それぞれのエネルギー、責任ある形でのベストミックスを考えていきたい、そんなふうに思っております。

 それから、電源立地交付金の件でありますが、この件につきましては、二十五年度予算案におきましても、原発の運転停止の長期化に伴います地域経済への悪影響を緩和するために、従前と同水準の金額を計上させていただいております。

 そして、この交付金、これは御案内のとおり、根拠法になりますのが電源開発促進税法でありますので、これでそのまま太陽光それから風力等を見るわけにはいきませんけれども、交付された自治体におきまして、そういった再生可能エネルギーの促進のために使用するということは可能であります。

鈴木(克)委員 御答弁いただいたわけでありますが、新しい安全基準でいわゆる再稼働をしていくということでありますが、やはり、新しい安全基準だから絶対にいいということではないと思うんですね。もう本当に想定外のことが起きる、これがやはり自然界の問題だというふうに思っています。

 先ほど申し上げましたように、我が国は地震列島であります。世界の二〇%、マグニチュード六以上のあれが集中しておるわけですから、やはり私は、再稼働の前に、徹底した代替エネルギーの社会をつくっていくべきだということ、そして、十年以内に完全に原発から脱却をする、このことをぜひひとつお願いしたいというふうに思います。

 今大臣から御答弁がありました、JOGMECがやっております例のメタンハイドレートでございますが、実は、私の地元であります愛知県の沖で、今、海洋産出試験というのをやっております。これは国内の天然ガス市場の約百年分に相当するものが埋蔵されておるというふうに言われておりますので、ぜひこれを急いでいただいて商業化を図る、そして、いわゆるガス化施設等の整備を行う、このことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。そして、石油への依存を大幅に下げていく、これがやはり今の電力料金が上がっていくことを防ぐ、一つの大きな抑制効果にもなっていくのではないかなというふうに思っております。

 もう一点、トリガーの問題です。

 これは、トリガー条項が、震災の関係で適用を停止されておるわけでありますけれども、今、国民の皆さんの一番の関心事というのは、ガソリンがどんどん高くなっていく。あの場合は百六十円が三カ月ということでありますけれども、そういう可能性も私はないことはないというふうに思うんですね。

 したがって、国民の皆さんにある意味では安心していただくために、このトリガー条項というのを復活させるべきではないかというふうに思いますが、その点、御答弁をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 ガソリンの価格でありますけれども、上昇要因は幾つかあると思うのですが、一つは、原油価格が国際市場で上がっていることと、ここに来まして円高というものが是正されてきたという形でありますけれども、原油価格そのものは比較的足元が安定をしてきましたので、現段階で今のガソリンの値段が大幅に上昇するということはないかもしれませんが、市場の動向は今後もきちんとウオッチをしていきたい、そんなふうに思っております。

 それから、メタンハイドレートでありますが、せっかく鈴木委員の方から御質問いただきましたので、よいニュースを。

 来週早々にもガスの生産試験を渥美半島から志摩半島の方で行わせていただきたい、こんなふうに思っておりまして、非常に有望な分野だと考えております。二〇一八年度までに、商業化に向けました生産技術の確立を目指して頑張っていきたいと思っております。

鈴木(克)委員 エネルギーの最後として二点お伺いをしたいと思うんですが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が昨年の七月からスタートをしたわけでありますが、政府が掲げる今年度の目標導入量は達成できるのかどうか、まず、ここを一点お伺いします。

 もう一つは、大型蓄電池の整備ということであります。

 蓄電池市場というのは二十兆円規模の市場であるというふうに言われています。そのうち、大型蓄電池というのは三五%ぐらいを占めていくのではないか、こういう予測があるわけであります。したがって、ここはぜひひとつ力を入れて、成長戦略の一つとして進めていただきたいと思うんです。

 ただ、二十四年度に、二百九十六億円の予算が計上されました。これは、再生可能エネルギー発電の支援のための大型蓄電システムの緊急実証事業ということで二百九十六億円の予算の計上があったわけですけれども、二十五年度にはこれはなくなっちゃったんですね。

 これは、先ほど申し上げましたように、二十兆円という大きな市場に対して日本がやっていく分野は非常に大きいというふうに思っています。既に、NASだとかレドックスフローとかいう技術を日本はもう開発しておるわけでありますし、NAS蓄電池についてはもう既に商業化しておるわけであります。したがって、ぜひこれは、引き続き、政府の方として支援をしていっていただきたい。

 この二点、お伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 固定価格買い取り制度とも関連いたしました再生可能エネルギーの導入量でありますが、政府として、かちっとした目標値を設定しているわけではありませんが、今年度中に二百五十万キロワットの発電設備が導入される、こんな見通しを立てております。

 十二月段階までで百十七万キロワットまで来ております。そして、固定価格買い取り制度の効果によりまして、これは伸びてきておりますので、着実に導入が拡大して、それに近い数字が出せるのではないかな、こんなふうに考えているところであります。

 それから、蓄電池の普及は、我々も極めて重要だと思っています。そして、日本は、この蓄電池の技術が世界一なんです。ですから、二〇二〇年に我が国関連企業は、世界の蓄電池市場、委員おっしゃったように二十兆円の中の五〇%のシェアを獲得する、こういう目標に向けまして取り組みをしているところであります。

 平成二十四年度は、委員御指摘のように、予備費を使ってやらせてもらいました。二十五年度でありますが、御案内のとおり、蓄電池、やはりコストが高いんですね。どうしてもこのコストを半減ぐらいしていかないと、なかなか普及していかない。このコスト削減のための研究開発補助金として、二十七億円を計上いたしております。

鈴木(克)委員 だんだんと時間も迫ってまいりました。

 次に、私は、成長戦略の決め手となるというふうに信じてやまないお話をさせていただきたいと思います。

 ここに、見本市、展示会場の世界の状況、資料としてもお配りをさせていただいておると思いますが、日本の展示会場というのは相当大きいだろうと国民の皆さんは思ってみえるかもしれませんけれども、実は、この表にありますように、世界で六十八番目なんです。要するに、八万平方メートルなんですが、世界最大はドイツのハノーバーの四十七万平方メートルということであります。

 したがって、このお手元の資料の黄色い字のところは中国なんですけれども、中国が今、物すごい勢いでコンベンションといいますか展示会をやっておりまして、その状況がどんなふうになっているかというのが、もう一つの棒グラフの方でございます。

 ここにありますように、日本は三十五・一万平米ということであります。中国は四百七十五万平米。アメリカがもちろん最大なんですが、六百七十一万平米ということであります。これは本当に、恐らく国民の皆さんも、日本がこんな状況になっているんじゃないというふうにお思いだと思います。しかし、これが現実であります。

 申し上げたいのは、非常に経済波及効果というのが大きいんですね。これはもう言うまでもないと思います。この前、三日間で海外からも何万人という方も見えていますし、経済波及効果だけでも相当大きなものがあった、こういうデータを私はいただいてきております。

 ぜひひとつ、成長戦略の一つの、早急にやらなきゃならないものの一つとして、展示会場の大きなものをつくっていくということ。

 それで、もう一つ、私が成長戦略で御提言をしたいのは、実はカジノでございます。

 外国、アメリカやヨーロッパは、必ず展示会場の近くにカジノがありまして、世界各国から来た方々にいわゆるカジノでまた楽しんでいただくということであります。したがって、私は、日本もそろそろカジノを解禁し、そして民間業者にこういった会場をつくってもらい、その一角にカジノを擁するということはいかがかなというふうに思っております。

 スマートエネルギーウイークということで、三日間あった。ちょっと経済波及効果だけ申し上げます。二十六カ国から千五百八十五社集まりました。そして、専門家が八万八千六百五十四人お見えになりました。商談金額が三日間で一千八百億円ということであります。そして、一万三千人が宿泊をされ、その経済効果というのは、飲食と宿泊、交通で七十三億円。そして、世界六十五カ国から八千三百十七人の方々が見え、会期中のセミナーに参加された方が一万一千四百三十人ということで、本当に、これは五百人のコンベンションを二十四回開催したのと同じことでございます。また、パーティーは五十個以上ということであります。

 これは本当に経済活動といいますか、大きなものだというふうに思っていますので、ぜひひとつ、展示会場について、そしてまたカジノについて、あわせて二点、御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま国際見本市について、最初に例として、日本は六十八位というお話でございました。

 安倍政権としては、世界から投資を呼び込んでくる、あるいは、世界からいろいろな方々がビジネスチャンスを求めて日本にやってきて、その中において日本は日本の商品、製品を紹介する、そういう場をつくっていきたい、まさに日本をアジアのゲートウエーにしていきたいという観点からいえば、大きな機能的な国際見本市場を日本につくる、重要なことであると思います。

 私も、東京ビッグサイトに行って、こんな大きなところがあるのかなと思ってびっくりしたんですが、しかし、その後、ハノーバー・メッセに行く機会がございまして、余りにも大きいので相当びっくりしたわけでありますが、しっかりとこの見本会場に我々も力を入れていきたい、委員の御指摘で改めてそのように思いました。

 そして、委員のアイデアとして、これにあわせてカジノを併設してつくっていこうということでございますが、お尋ねのように、カジノの導入が産業振興をもたらし得るとの議論があることは承知をしておりますが、一方で、カジノについては、刑法の賭博罪等が成立し得ることや、治安に悪影響を与えかねないことなどの問題点も指摘をされております。

 カジノの導入をめぐっては種々の議論がなされているところでございますが、御指摘のアイデアなども参考としながら研究をしていきたいと思います。そういう研究においては、国際観光産業振興議員連盟、通称IR議連において、カジノの経済に与える有効性等についても、また問題点についても議論がなされてきたというふうに承知をしております。

 世界においても、シンガポールあるいはマカオが、カジノによって世界からたくさんの人たちを呼び込むことに、あるいは国際会議を誘致することにも成功しているということも承知をしております。

 鈴木委員は事務局長としてずっとこの議連を引っ張ってこられまして、ここにいる岩屋理事は会長代行でございますし、麻生太郎副総理は最高顧問、何か似合っている感じがするわけでありますが、実は、資料を見ましたら、私も最高顧問になっております。

 つまり、いろいろな課題もありますが、そういう課題はどのように克服していくべきかということもよく議論をしながら、しかし、私自身は、これはかなりメリットも十分にあるな、こんなように思うところでございます。

鈴木(克)委員 時間があとわずかになりました。最後に、個人保証の撤廃ということでお話をさせていただきたいと思います。

 今、個人保証のルールを見直すという動きが出ております。百二十年ぶりということで法制審議会の民法部会で議論がされておるわけでありますけれども、この中に個人保証ルールの見直しというものがあります。直接経営責任のない第三者が多額の負債を負わされて破産や自殺に追い込まれるといった我が国特有の悪弊を断ち切るという意味では、私は、ぜひここは進めていかなければならない、このように思っております。ただ、それによって中小企業が資金繰りに窮するようなことがあってはなりません。

 そこで、信用保証協会の信用保証制度というものがあるわけでありまして、これをきちっとやっていかなきゃならないんですが、非常に心配なデータがありまして、平成二十年度では百三十三万件に対して十九兆五千億の保証をしたわけでありますが、二十三年度には八十六万件ということで、十一兆に下がっているんです。これは一体全体どういうことなのかということでありまして、二十四年度はさらに下がっていくのではないかというふうに言われております。地元の中小企業の方々からは、信用保証協会の保証渋りだ、こういうふうに言われておるわけですね。

 したがって、信用保証協会の信用保証実績がリーマン・ショック以来減少傾向にある、このことについてどのようにお考えなのかということ。

 それから、金融機関の中小企業への貸し出しも二百五十兆円台から二百四十兆円台に減少してきておる、こういうことでございます。今年度末で中小企業金融円滑化法が切れます。したがって、そういうことと相まって、中小企業の皆さんがこの信用保証制度をより活用しやすい、こういうことにしていただかなくてはならないというふうに思っています。

 二千八百万人が中小零細企業で働いてみえます。まさに、給料が上がり、そして雇用が守られるということは、経済成長のかなめだと私は思うんですけれども、ぜひ、この個人保証の問題と、それから中小企業に対する保証制度の問題、この二点を御答弁いただきたいと思います。

茂木国務大臣 時間が来ているようですので、簡潔に申し上げます。

 今委員の方からいただきましたデータといいますか数字でありますけれども、フローベースではそうなんです。確かに、リーマン・ショックのすぐ後ですから、我々も三十六兆円の資金繰り対策を実施しまして、十九兆の保証がつきました。そして、これが若干減ってきているわけでありますけれども、ストックベースで見ますと、ほとんどその保証の額というのは変わっておりません。そして、全体の貸出残高が少なくなる中で、この比率というのは、リーマン・ショック前よりふえているところであります。

 同時に、三月末で円滑化法は期限切れを迎える。金融大臣とも連携をして、中小企業、小規模企業の資金繰りに万全を期してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 終わります。

山本委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十一日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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