衆議院

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第19号 平成25年4月5日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十五年四月五日(金曜日)

    午前八時五十一分開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      伊藤信太郎君    今村 雅弘君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      奥野 信亮君    門  博文君

      門山 宏哲君    金子 一義君

      神山 佐市君    神田 憲次君

      菅家 一郎君    木内  均君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小島 敏文君    小林 茂樹君

      小松  裕君    古賀  篤君

      今野 智博君    清水 誠一君

      島田 佳和君    白石  徹君

      新谷 正義君    助田 重義君

      関  芳弘君    田畑  毅君

      渡海紀三朗君    野田  毅君

      原田 義昭君    船田  元君

      牧原 秀樹君    宮路 和明君

      村上誠一郎君    保岡 興治君

      山本 幸三君    若宮 健嗣君

      大西 健介君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    寺島 義幸君

      原口 一博君    細野 豪志君

      前原 誠司君    松原  仁君

      伊東 信久君    坂本祐之輔君

      椎木  保君    重徳 和彦君

      高橋 みほ君    中田  宏君

      中山 成彬君    東国原英夫君

      藤井 孝男君    浮島 智子君

      佐藤 英道君    柿沢 未途君

      佐藤 正夫君    椎名  毅君

      塩川 鉄也君    宮本 岳志君

      玉城デニー君    村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   環境大臣         石原 伸晃君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   財務副大臣        山口 俊一君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 高原 一郎君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力地域安全総括官)       黒木 慶英君

   参考人

   (元東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員)

   (科学ジャーナリスト)  田中 三彦君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   参考人

   (札幌医科大学教授)   高田  純君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     石川 昭政君

  今村 雅弘君     橋本 英教君

  大塚 高司君     坂本 剛二君

  関  芳弘君     菅家 一郎君

  牧原 秀樹君     土井  亨君

  中田  宏君     小熊 慎司君

  村上 史好君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     あかま二郎君

  菅家 一郎君     関  芳弘君

  坂本 剛二君     大塚 高司君

  土井  亨君     牧原 秀樹君

  橋本 英教君     今村 雅弘君

  小熊 慎司君     中田  宏君

  玉城デニー君     村上 史好君

同月五日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     小松  裕君

  塩崎 恭久君     神山 佐市君

  中山 泰秀君     神田 憲次君

  西川 公也君     門  博文君

  牧原 秀樹君     菅家 一郎君

  宮路 和明君     島田 佳和君

  保岡 興治君     門山 宏哲君

  若宮 健嗣君     村上誠一郎君

  岸本 周平君     松原  仁君

  玉木雄一郎君     細野 豪志君

  原口 一博君     後藤 祐一君

  前原 誠司君     寺島 義幸君

  坂本祐之輔君     藤井 孝男君

  中山 成彬君     高橋 みほ君

  東国原英夫君     椎木  保君

  佐藤 正夫君     椎名  毅君

  宮本 岳志君     塩川 鉄也君

  村上 史好君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     熊田 裕通君

  門山 宏哲君     古賀  篤君

  神山 佐市君     小林 茂樹君

  神田 憲次君     小島 敏文君

  菅家 一郎君     木内  均君

  小松  裕君     大塚  拓君

  島田 佳和君     宮路 和明君

  村上誠一郎君     若宮 健嗣君

  後藤 祐一君     原口 一博君

  寺島 義幸君     大西 健介君

  細野 豪志君     玉木雄一郎君

  松原  仁君     岸本 周平君

  椎木  保君     東国原英夫君

  高橋 みほ君     伊東 信久君

  藤井 孝男君     坂本祐之輔君

  椎名  毅君     佐藤 正夫君

  塩川 鉄也君     宮本 岳志君

  玉城デニー君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     牧原 秀樹君

  熊田 裕通君     清水 誠一君

  小島 敏文君     白石  徹君

  小林 茂樹君     今野 智博君

  古賀  篤君     保岡 興治君

  大西 健介君     前原 誠司君

  伊東 信久君     中山 成彬君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     新谷 正義君

  清水 誠一君     助田 重義君

  白石  徹君     田畑  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     塩崎 恭久君

  助田 重義君     西川 公也君

  田畑  毅君     中山 泰秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、三案審査のため、去る三日、第一班福島県、第二班宮城県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班小此木八郎君。

小此木委員 おはようございます。自民党の小此木八郎です。

 福島県に派遣された委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、山本有二委員長を団長として、理事萩生田光一君、長妻昭君、石田祝稔君、委員秋元司君、石川昭政君、菅家一郎君、坂本剛二君、中山泰秀君、辻元清美君、小熊慎司君、坂本祐之輔君、佐藤正夫君、宮本岳志君、私、小此木八郎の十五名であります。

 去る三日、現地において、松本幸英楢葉町長との懇談、除染の現状に関する関係者からの説明聴取を行った後、いわき市小名浜において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、いわき市長渡辺敬夫君、浪江町長馬場有君、いわき商工会議所会頭小野栄重君及び浜通り医療生活協同組合理事長伊東達也君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、渡辺君からは、避難者の受け入れに係る町外コミュニティーの制度設計を早期に進める必要性、復興交付金制度の柔軟な活用のあり方などの意見が、

 次に、馬場君からは、除染作業の加速化の必要性、子ども・被災者生活支援法に基づく政府の対応のあり方などの意見が、

 次に、小野君からは、国策として福島の復興を支援する重要性、地域経済の復興にいわき市が果たす役割などの意見が、

 最後に、伊東君からは、原発事故が与えた福島の深刻な状況、原発事故収束宣言を撤回する必要性

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、福島復興に向けた予算に係る問題点、東京電力福島第一原子力発電所における停電事故の通報連絡、政権交代後も解決されていない課題、復興交付金の問題点、現行法の枠組みでの復興対応の是非、原発事故に対する責任の所在などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、第二班伊藤達也君。

伊藤(達)委員 宮城県に派遣された委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、伊藤達也を団長として、理事西銘恒三郎君、山田宏君、委員うえの賢一郎君、大塚拓君、奥野信亮君、土井亨君、橋本英教君、若宮健嗣君、玉木雄一郎君、原口一博君、東国原英夫君、佐藤英道君、柿沢未途君、玉城デニー君の十五名であります。

 去る三日、現地において、仙台空港の視察を行った後、仙台市内の江陽グランドホテルにおいて会議を開催いたしました。

 会議におきましては、宮城県漁業協同組合経営管理委員会会長菊地伸悦君、石巻魚市場株式会社代表取締役社長・石巻水産復興会議副代表須能邦雄君、仙台経済同友会代表幹事・アイリスオーヤマ株式会社代表取締役社長大山健太郎君及び建築家針生承一君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、菊地君からは、宮城県内の漁業、水産業の復旧状況、資源管理、漁業経営安定対策の重要性などの意見が、

 次に、須能君からは、復興の司令塔としての復興庁の機能強化、水揚げした魚の放射線規制値の見直しなどの意見が、

 次に、大山君からは、立地補助金拡充の必要性、国立国際介護大学設置による介護人材の確保などの意見が、

 最後に、針生君からは、自然現象と共生する水防対策、地理的特性を生かした復興計画作成の必要性

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、県内の景況感、公共事業予算増加の被災地への影響、水産業復興特区のあり方、国際介護大学構想と医学部新設要望との関連、被災地におけるベンチャー企業振興策、水産業における人材育成などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

山本委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

山本委員長 次に、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として元東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員・科学ジャーナリスト田中三彦君、東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として資源エネルギー庁長官高原一郎君、原子力規制庁次長森本英香君、原子力規制庁原子力地域安全総括官黒木慶英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これよりエネルギー・原発等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村上誠一郎君。

村上(誠)委員 おはようございます。

 御高承のように、東日本大震災が起こってから丸二年がたちます。残念ながら、福島原発事故の原因の解明、また、その収束が、先ほどの小此木委員の報告にもありましたが、野田内閣において、冷温停止で収束宣言したんですが、果たしてどうなんだろうかということを議論させていただきたいと思います。

 今お手元に配付しました福島原発事故の対応。もう二年前のことで、なかなか、どういうことであったのかということがあれなものですから、簡単に事実を検証したいと思います。

 御高承のように、ここにありますように、三月十一日の二時四十六分に地震が起こって、津波が三時三十分に来た。そして、午後三時三十七分前後に一号機から三号機の全交流電源が喪失してしまった。御高承のように、五分間電源がとまって空だきしたら、酸化ウランが溶け出します。

 翌日に、当時の、菅直人氏が、朝六時にテレビカメラを連れて原発視察に行く。そして、御高承のように、午前零時六分に吉田所長が一号機のベントを指示して、結局、実際にベントが行われたのは三月十二日の二時三十分です。その後、一時間後に一号機の建屋が水素爆発した。

 実は、その十二日から十五日の間に、広島原爆の熱量に換算すると二十九倍、ウラン235では二十倍、セシウムでは何と百六十八倍もの放射性物質が飛び散った。そして、ここには書いてありませんが、三月十四日の午前十一時に三号機が水素爆発、そして三月十五日に四号機、二号機でも爆発が起こった。こういうふうになっております。

 御高承のように、実は、もう初期の段階が、この事故の決着をどうするかということで、そのことでほとんどもう決まっちゃったわけですね。

 それで、まずお聞きしたいのは、その右側に書いてありますように、菅さんがテレビカメラを連れていったときに、総司令官として一番やっちゃいけないことをしたわけです。要するに、三原山の噴火のときに、総司令官が噴火口なんかのぞきに行っちゃいけないんです。特に、先ほど申し上げたように、吉田所長は十二日の零時にベントを指示しているのに、菅直人氏が行ったためにベントができない。それは当たり前なんです。ベントをしたら放射性物質が飛び散るから、いやしくも一国の総理が、福島に着いて、そしてまた東京に戻るまではベントできないんです。

 まずお聞きしたいのは、このような総司令官として一番やっちゃいけないことを、その当時の官邸で、誰もとめることが、そういうことができなかったのはなぜなんですか。それを教えていただきたいと思います。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 菅総理の現地視察につきまして、当時の現状につきまして、国会事故調の報告書では、当時の枝野官房長官や寺田補佐官が、お勧めできない、あるいは、インパクトがあるので、そういったことも含めた上で御判断された方がよいという進言をされたということは指摘されてございます。

 その一方で、国会事故調では、これらの発言というのは、「本事故対応の最高責任者であり、指揮者である菅総理が官邸を離れることの危機管理上の問題を指摘したものではない。」とも記載されてございます。

村上(誠)委員 これは後で、また機会があったら御本人を呼んで、もう一回検証していただきたいんですが、まず最初のつまずきはこれであります。

 それからもう一つ、私が今でもわからないのは、この私でさえ、メルトダウンというか、酸化ウランが溶け出したという情報は、三月の十五日に私のところに届いていました。それで、各所に、もうメルトダウンが起こっているんだよ、そんなことで大丈夫かと言った。ところが、御承知のように、皆さん御記憶にあるように、ここにあるように、二カ月間、もう格納容器は溶けて穴があいているにもかかわらず、メルトダウンは起こっていない、水棺化ができると。三カ月近くにわたって、国民を平然とだまし続けた。これは許しがたい行為であります。

 なぜそういうような、メルトダウンが起こっているのに、起こっていないと言って、水棺化ができると二カ月半も言い続けたのか。誰がそういうふうな発言をしろと言ったのか。説明していただきたいと思います。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の原子力安全・保安院では、三月十一日の夜に事故進展予測を行いまして、炉心溶融に至る可能性があるということは認識し、十二日の十四時ごろの保安院の記者会見、それから十三日の十一時ごろの当時の枝野官房長官の記者会見において、その可能性について言及しておりました。

 ただし、国会事故調等で指摘されておりますとおり、その後の保安院の記者会見では、炉心溶融という表現を使わなくなった等、説明内容が変遷したと承知しております。そういった点につきまして、先生御指摘の点については不明でございます。

村上(誠)委員 この国の政府はいつからこんなちゃらんぽらんになってしまったんでしょうか。

 ここにありますと、実は十二日の午後二時十五分に、一号機の測定データからして、一号機に炉心溶融、メルトダウンとしか考えられないことが起きているというふうに当時の中村幸一郎審議官が言っています。ところが、それからしばらくして、午後九時半になったら、発言者が中村氏から野口哲男首席統括安全審査官に変更された。

 実は中村さんの言っていることが正しかった。正しく言った人が更迭されて、そういうでたらめな人が言うようになってしまった。その切りかえを誰がやったんですか。説明してください。

森本政府参考人 事故発生当初において、原子力安全分野における国際関係の業務等を担当していた中村審議官が広報を担当しておりました。保安院によりますれば、しかしながら、国際的な場で事故の説明が求められる機会がふえたので、中村審議官を本来業務の国際関係業務に復帰させたというふうに聞いてございます。

村上(誠)委員 お聞きのように、もう支離滅裂です。こればっかりやっていたらすぐ時間がなくなるので、これはまた後日に譲るとして、まさに、初期の段階における政府の隠蔽体質、秘密体質、これがこの事件を長引かせた大きな原因だったと思います。

 それで次に、先ほどの三を見てほしいんですが、三月十二日から十五日、三月二十日から二十三日、実は大量の放射性物質が飛散したにもかかわらず、当時の枝野官房長官は、直ちに健康に影響はないということで、正確な情報を国民に知らせなかった。また、幼児や妊婦の安全を優先しなければならないのに、幼児にはヨードを飲ませなかった。実は福島では、四五%の児童の方が被曝していると言われております。

 まず、お聞きします。

 アメリカ軍は、飛行機を飛ばして、その当時の汚染状態を外務省と文科省に通告していたと言っています。なぜ、そのような情報が外務省や文科省に通告されていながら、国民にその情報が共有されなかったのか、それを説明していただきたいと思います。

森本政府参考人 御指摘の点でございますけれども、外務省は、米国エネルギー省から入手した航空機モニタリング結果を各官公庁には届けましたけれども、その事実が官邸に伝達されたという形跡はございません。また、文科省も同様に、他の官公庁や官邸に伝達したという事実はございません。保安院についても、詳細は不明でございますけれども、他の官公庁や官邸に送付した形跡はございません。

 これらにつきましては、政府や国会の事故調査委員会の報告書で、縦割り意識による弊害ということで指摘をされてございます。

村上(誠)委員 これもまた答えになっていませんね。

 正直言って、一番大事な、これだけ三日間に飛び散ったときに、正確な情報を国民に伝達するのが政府の最低の義務にもかかわらず、しなかった。今の説明では、なかったと言うけれども、私はうそだと思います。

 実は、私の同級生がフランス大使館に勤めていましたが、フランス大使館は、十五日までに、大使館員並びに仏系の企業の社員は関西以西に逃げろ、そういう通達を出しています。

 また、御高承のように、米軍も、八十キロ以内は危ないと通達を出しています。なぜアメリカが公表しなかったかというと、日本は友好国であるから、余りそれを大声で言って混乱させてはいけないという危惧から、あえて発表しなかったということであります。

 そういうふうな情報がフランスやアメリカからあるにもかかわらず、私の同級生ですら聞いているのに、なぜ政府がその情報をキャッチして、国民に知らせなかったか、これも欺瞞の一つであります。

 もっと重要なことがあります。皆さん御承知のように、チェルノブイリのときに、実は、ポーランド政府は、直ちに全児童と妊婦にヨードを飲ませました。残念ながら、ロシアではやっていないために、この「福島原発の真実」にも書いてあるんですが、約四千人の甲状腺がんや小児がんが出てしまいました。今申し上げたように、ポーランド政府は的確な対応をしたために、ポーランドではゼロであります。

 では、日本において、ポーランド政府でできたことをなぜ日本ではできなかったのか、それを説明していただきたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 事実関係でございますけれども、国会事故調では、平成二十三年三月十四日に、当時の原子力安全委員会から原子力災害対策本部事務局に対しまして、いわゆる安定沃素剤の服用を指示すべきだという助言をファクスで送信したとされております。しかしながら、自治体に適切に伝達されなかったと。

 実際に原子力災害対策本部及び現地対策本部内でどのような検討がされたかにつきましては、これらの報告書において、ヒアリング結果に食い違いがございまして、明確ではないというふうにされてございます。

 この点については、あらかじめどうするかについて明確でなかったという点に反省がございます。規制委員会では、そういったことをあらかじめ定めておくということで、原子力災害対策指針等において安定沃素剤の服用についてルールを定めていきたいというふうに考えてございます。

村上(誠)委員 これも、お聞きのように、答えになっていません。こういう重要なことが不作為でされなかったということは、私は国家賠償法に抵触すると思います。それについて、法務省はどのように考えていますか。

 実は、後の海洋汚染のことで聞こうと思ったんですが、海洋汚染も含めて、将来、国家賠償法の範囲内に入ると私は考えています。これについてはまた後にします。

 次に、海洋汚染については、この左側にありますように、四月四日、実は、その当時の海江田経産大臣が、低レベルだと称して一万一千トンの水を放流しました。ところが、後で調べてみますと、低レベルどころか基準値の五百倍。それから、国民の皆さん方には知らされていないんですが、一番左下に書いてあるように、トレンチからちょろちょろと水が流れていたのが報道されているのを覚えていらっしゃる方がいるかと思いますが、実は、それに流れていたのは四千七百兆ベクレルです。基準値の二万倍です。あれは海面より上だから見えたんですが、海面より下、つまり、水面より下の建物からどれだけの物質が流れ出たかということは、誰も把握していません。

 結論を言うと、このときに一万一千トンをGPSをつけずに流したために、この間、オレゴン州に青森の大きな浮遊物が流れたニュースをごらんになられた方がいると思うんですが、実は、アリューシャン列島、カムチャッカから、アラスカの方へ流れているということが予想されます。

 そのときに、これからいろいろな各国から、今の状況ですと、風評被害や損害賠償請求をされる危険性があると思いますが、法務省はどのような見解を持っていますか。

山本委員長 村上誠一郎君、法務省は要求しておりますか。

村上(誠)委員 ここに法務省が答えると書いてあるんだけれども、来ていないの、誰も。それは手違いだったんですね。

 ただ、また別のときに言いますが、それは可能性としてあるということをテークノートしていただきたいと思います。

 そういうことで、低レベルと称して一万一千トンの水を放流して、今まで、高濃度の汚染水が数十万トン、地下水や海洋に流れ出している。

 ところが、困ったことに、これはまだとまっていないんですね。これは地元の新聞ですが、二〇一一年六月から一年四カ月間に、計約十七兆ベクレルの放射性セシウムを含む汚染水が海に流れ込んだおそれがあるという報道がされています。

 それから、もう一つ困ったことに、汚染水のジレンマであります。これがとまらない。

 要するに、水をかける。それも、時間がないから説明しますが、溶けた酸化ウランがどこにあるかわからないから、大ざっぱにかけるわけですね。そして、汚れた水をまた集めてやる。

 それを最初、アレバ社とキュリオン社にやらせた。ところが、御承知のように、アレバ社は、ちゃらんぽらんな会社ですから、まあ今壊れていますが、あのときから何回も質問をするんですが、答えてくれないんです。

 アレバ社とキュリオン社に対して、一トン当たり幾らの契約でその汚染水を浄化する契約を結んでいるのか、知っている人がいたら説明してください。いるはずです。

茂木国務大臣 キュリオン社やアレバ社から導入した滞留水処理設備については、各設備の基本的な仕様、そして運転維持の方法等について、経産省としても把握し、滞留水処理計画の進捗を確認しております。

 他方、東京電力が各社と締結しております個別の契約の具体的な内容や金額につきましては、東京電力が、相手企業との関係から具体的な内容を公開できない、そのように承知をいたしております。

 ただ、滞留水処理に必要な費用のうち、設備導入に関する費用については、東京電力が福島第一原発の安定状態維持継続のための設備費用全体として見積もった二千百九十四億円に含まれておりますが、この費用は特別損失として原価算定期間前に既に処理されておりまして、昨年認可した電気料金の原価には含まれておりません。

 一方、経常的に発生いたします滞留水処理設備の運転であったりとか保守管理費用については、昨年認可した東京電力の電気料金の原価において、平成二十四年度から二十六年度までの三年間の平均で、年間二百二十三億円が含まれております。

 細かい、一トン当たりの処理が幾らかかるかということでありますが、ざっくり計算をさせていただきますと、滞留水処理設備の設置、運転費用、三年間でこれを二千八百六十三億円と推計いたしまして、その間に処理を行う水を累積で百万立米から百四十万立米としますと、一トン当たりおよそ二十万円から三十万円の単価と試算をされます。

村上(誠)委員 なぜ私がこれを聞いたかといいますと、後で結論で考えるんですけれども、今までやってきた前政権の方式をこのままのうのうと受け継いでいるだけでは、私は収束しないと思います。

 特に、今、茂木さんは、役人の説明でそういう数字を言いましたが、果たして今のような水をあと何十年間かけ続けるのか。そして、かけ続けた水は結局また汚染されて、そしてまたやっていく。今もうあそこに千基のタンクができているのに、それでもまだまだ足りない。七十万トンもため込むつもりでいるらしいんですが、そのため込んだ水も、将来は大きなプールで天日干しするしかないんですよね。

 こんな無駄なことを繰り返して、これは財務大臣、人ごとではないんですよ。この経費を、どれだけかかるかということを早く計算して予測を立てないと、これが必ず電気料金や税金にはね返ってくるんですよ。だから、私が四回もかけて幾らかかるんだと説明しても、まともな答えが返ってこない。それは東電とアレバ社とキュリオン社の個別の契約だという、あほみたいなことで。我々からの税金ですよ。もっと真剣に答えていただきたい。

 それから、もう一つ大きな問題は、ゼオライトなんですね。ゼオライトも、日本の大体五倍のゼオライトを使っているんですね、キュリオン社は。そういうことも、もっとコストパフォーマンスを考えていただきたい。日本の財政は、主計局長、御存じのように大変な事態なんだから。こういう問題も、きちっと主計局が、こんなままでいったらこのぐらいかかるぐらい計算しておきなさい。

 その次に、事故原因です。

 これも、実は、四つも報告書が出ているんですが、どれもまだ確定しておりません。特に、きょうは田中さんに来ていただいているので、御説明いただきたいと思うんです。

 唯一、国会事故調が、要するに、最初みんな、さっき言った、津波のためにバック電源が壊れてメルトダウンが起こったと。しかし、国会の事故調だけが、そうとは言い切れないと。二時四十六分の九・〇のマグニチュードの地震直後、配電線や配管が壊れてメルトダウンが起こったんじゃないかということを指摘しています。その点について、説明をしていただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘のように、幾つかの事故調がありまして、それぞれにメルトダウンの原因については、いろいろな見解の相違がございます。特に、電源を喪失したということについて、地震によったものか、その後の津波によったものかということについては、幾つか今不明な点がございます。これについては、私どもとしては、きちっと今後調査をして明確にしていく必要があるというふうに考えております。

 ただし、そういった電源喪失が、いわゆる地震によって壊れたものなのか津波によるものかということを明確にするためには、現地に入る必要がございますので、そういった点について、放射線のレベルが残念ながらまだ、十分そこを調査するには高過ぎますので、そういったことを踏まえながら、きちっと調査をしていきたいというふうに考えています。

 そのため、調査委員会としては、福島原発の調査をきちっと長期的に、原因を明らかにするというのが私どもの大きな任務でありますので、三月二十七日にその調査委員会のメンバーを決めて、今後一カ月に一回程度の会合を開きながら、できるだけ速やかにそういった状況の調査を明らかにしていきたい、その都度その都度明らかにしていきたいというふうに考えています。

村上(誠)委員 私は、前から申し上げているように、本当に、津波によって電源が失われたことが原因なのか、地震の直接な影響かというのは、使っていなかった五号機と六号機をあけて早く見てくれと言うんですが、なかなか徹底的にやってもらえないんです。

 国会の事故調では五号機、六号機はどのような検証をなさったんですか。ひとつ説明していただきたいと思います。

田中参考人 お答えいたします。

 五号機に関しては調査をしております。三月の五日に五号機は調査をいたしました。六号機はしておりません。

 五号機を調査した理由というのは二つございまして、一つは、加速度が非常に大きかったということです。それからもう一つは、情報提供がありまして、制御棒駆動系の問題が、地震でやられた可能性があるというような情報提供がございました。

 ということで、五号機を特別、我々の方から希望して見せていただいたという経緯がございます。

村上(誠)委員 ありがとうございました。

 この間、党におきまして、福島原発の、調査会の小委員会を開いたときに、国会の調査の委員長でした黒川先生にも来ていただいたんですが、黒川先生がおっしゃるには、我々は、国政調査権ですからオールマイティーだと思っていたんですが、結構いろいろな妨害があったと。もっと国会、国会議員が前面に出て出張ってくれというふうに我々に申されたんですが、いろいろ調査なさっているときにいろいろな障害がもしあったら、御説明ください。

田中参考人 お答えいたします。

 障害というものが強く意識されたものは、こちらに二月七日に提出いたしました、一号機四階の調査に関してです。私はそれだけ強く思っております。(村上(誠)委員「具体的に説明してください」と呼ぶ)

 一号機の四階には、またこれも作業をされた方の情報提供がございまして、地震直後に一号機四階で出水があったということです。それを目撃された方から情報を提供いただきました。

 それからもう一つは、一号機の生命線とも言える非常用復水器ですね。それの運転の仕方、それに対する東京電力の見解等を聞いていると非常に不自然なところが多かったので、一号機の建屋を実際に見てみたいということで、それを東京電力の方にお願いしたわけですが、結局、いろいろ事実と違う説明を受けて、それを断念したという経緯がございます。

 そのときは妨害を受けたという気はしておりませんでしたけれども、後に、事故調が解散してから、別な報告書を見ていて、それに気づいたということでございます。

村上(誠)委員 本当に、今回の事故というのは、チェルノブイリ事件やスリーマイル島のように、徹底的に原因解明をして、人類の共通の経験則にしなきゃいけない。ところが、我が国はいつからこんなちゃらんぽらんな国になったのか。二年間たってもそれが決め切れない、そして後始末もできない。

 そもそも、今回こういうような事態に陥った最初の原点はどこにあるかというと、本来、こういう事故の収束事業の最大の目標は、今の状況を安定化させ、人々に安心してもとの生活に戻ってもらう、そして、収束事業を進める過程で、発電用原子炉の安全性を高度化するための知見を多く得る、すなわち、原因を解明して次の世代にその中身を伝えていくということなんです。

 ところが、そもそも、この詳細で総合的な収束計画は、国が主導して作成、推進すべきなのに、東電という一企業や電気事業連合会へ任せた、ある面では丸投げしてしまった。この事故の大きさ、特異性を考えると、到底、電気事業者の手に負えないです。それで、結局、国が主導し、いわば日本の総力を挙げて事業を進める必要があるということであります。

 それで、最高責任者の安倍さんにお伺いしたいと思います。

 今まで質疑を聞いていただいてわかったように、初期の対応の失敗のために、ヨードは飲ませていない、海洋汚染はそのままである。実は、今でも毎日四百トンの地下水が福島第一の下をくぐっているのと、汚染水の四百トンと、八百トン近い水が流れています。だけれども、残念ながら海側も山側も遮蔽壁ができていませんから、どんどん福島第一の下をくぐって流れています。

 そういうような状況において、今申し上げたように、そもそも東電では手に負えないと思うんです。そういうことを、その原因解明を含めて、新政府になったわけですから、民主党政権のやっていたことを踏襲するのではなくて、もう一回私は見直す必要があると思うんですが、それに対してどういうふうに御見解をお持ちか、お願いします。

安倍内閣総理大臣 ただいま村上委員との質疑をお伺いいたしておりまして、この事故対応において、どういう問題があったのか、あるいはなぜ対応ができなかったか、これはきっちりと調査をしていくことは極めて重要であるということを再認識させていただきました。

 その中において、確かにこれは一電力事業者が背負える問題ではないわけでございまして、国として継続的にこの事故原因の解明に取り組んでいくことが重要である、このように思います。

 今までも、国会の事故調査委員会あるいは政府の事故調があったわけでございますが、まだ検討をしていく必要があるという項目もあるわけでありまして、中長期的に、継続的に原因究明に取り組んでいかなければならない、安倍内閣として取り組んでいかなければならない、このように思いますし、また、委員が御指摘になったように、この原因そしてまた対応の問題等については、今後、我々はしっかりとそれを踏まえてさまざまな安全対策をしていく必要があるでしょうし、世界的にその知見は生かしていく必要も当然あるんだろう、こうした事故にどう対応していくべきかという教訓としていきたい、このように思っております。

村上(誠)委員 通告はちょっとしていないんですが、我々の勉強会で田中委員長が、まず国の責任で放射能の除染に早急に着手してほしい、二番目は、放射能除染に伴う廃棄物の最終処分方法を早急に提示すること、もっと情報を住民に提供して適切なアドバイスをするべきである、それから四番目に、長期的に健康管理ができるような病院などをつくることということを我々の勉強会で教えていただいたんですが、個人的見解で結構ですが、今の状況はどんな感じか、説明していただけたらと思います。

田中政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 大分前になりますけれども、私が御指摘させていただきました点については、今でも、状況、その問題意識は変わっておりません。ぜひそういった点について、政府としてもいろいろ取り組んでおるのは十分承知しておりますけれども、現場の住民から見ると、まだ十分な、納得できるような状況でもないということも事実でございますので、ぜひ、そういった点について、もっともっと取り組んでいただければありがたいと思います。

村上(誠)委員 今、遠慮なさって言ったんですが、徹底的な除染をすると、やはり二兆五千億ぐらいかかるんじゃないかという計算があります。特に、一つの校舎を徹底的に除染するだけでも約三千万かかると言われています。

 結論を言えば、児玉教授に言わせると、もう汚染されたものは取りかえるしかないんですね。そうすると、予算が限られているとするならば、少なくとも子供さんや妊婦さんがいるような場所を優先的にやっていくしかないんじゃないか、私はそう考えております。そういう問題についても、また一つ、さらに検討していただきたいと思います。

 それから、最後に申し上げた、長期的に健康管理ができるような病院などをやはりこれから、チェルノブイリを見ていますと二十年、三十年のタームですから、息の長い戦いになると思います。そういう面で、そういう病院をやはり政府も意図的につくっていく必要があるんじゃないかと思います。

 それから、今世界では四百基にわたる発電用原子炉が運転されています。それがさらに増加、特に中国は百基以上つくると言っていますが、これら全て、どうなっていくか。そのための戦略、戦術、技術体系の構築を、福島事故の解決の方法というのが大きく役立つものにしなきゃいけない。だけれども、先ほど申し上げているように、今のように、みんながシュリンクして、誰も本気で立ち向かわない、誰も本気で解明しない、誰も本気で本当のことを言わない、これでは日本は、残念ながら、中国の新幹線事故の処理と同じように世界にとられてしまう。これは大きく反省しなければならないと思います。

 最後に、私は、今回の原発事故というのは、先ほど申し上げたように人類全体の経験則とすべく、徹底的に、鶏の骨をしゃぶるぐらいの感じで事故原因の解明をしなきゃいけないんですが、残念ながらなぜ日本ではうまくいかないのかなと、それを考えていました。

 実は、欧米の人たちと話しますと、人間というのは失敗する動物である、だから失敗したときから想定して危機管理を始めていくと。しかし、日本は、事故は起こってはならない、事故は起こるはずがない、事故を想定した議論をしてはならぬ、こういうふうに間違った方向に誘導されてしまったと私は思います。

 特にこの大きな原因は、MITの教授であったラスムッセンさんが原子炉における致命的事故の確率は十億年に一度の程度であるという報告書を出したために、これが実は安全神話の出発点になってしまった。しかし、申し上げたように、人間は必ず失敗する動物である、だから失敗したときにどうするのか。

 はっきり言えば、そういう溶融が始まったときにベントをどうするか、全て訓練していなきゃいけなかった。ところが、実は、後で調べてみますと、福島原発の事故のときに、その原子炉の設計図は四十年前の設計図ですから、今のコピーと違って青写真なんですよ。青写真を引っ張り出してもわからない、暗いし。だから、せめて3Dの立体的な、わかるような設計図を今ある原子炉は全部つくるぐらいのことは、もう危機管理のイロハのイとしてやっておくべきじゃないかということです。

 大体おわかりいただいたと思ったんですが、今ずっと委員長、全部質問しても、中途半端なままです。本当にすとんと落ちるような答弁は一切ありません。やはりこれは、政府も国会ももう一回、事故調査委員会、まあ畑村委員会がありましたけれども、私はあれが妥当だったと思いませんし、この間も黒川先生も一生懸命やってくれた。しかし、党の小委員会で、国政調査権というあれでありながら、かゆいところに手が届くまでなかなかいかなかった、そういうふうに述懐しております。最後に黒川委員長がおっしゃっていたのは、もっと国会議員や各党がやはり積極的に前へ出てもっとやるべきだということであります。

 それで、最後にまたお伺いします。

 今申し上げたように、これは今のままを踏襲していますと、同じことをだらだら続けるだけで、本当に福島県民や皆さん方に対して申しわけないと思うので、もう一回、政府として一からやり直すんだ、もう一回、党と政府が全力を挙げてやるんだ、そういう気概をひとつお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この問題にずっと村上委員は取り組んでこられました。そうした皆様の知見も生かしながら、政府としても、いわば政権がかわったわけでありますから、ゼロから見直しをしていくという思いで、しっかりと原因等を究明していきたいと思います。

村上(誠)委員 よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて村上君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。おはようございます。

 安倍総理におかれましては、政権発足百日を過ぎまして、大変なロケットスタート、私は、この百日間、まさしく疾風怒濤の一日一日であったのではないか、このように拝察をいたします。まさしく、シュトルム・ウント・ドランク、疾風怒濤、この形容がふさわしい百日であったのではないかと思います。

 そういう中で、ロケットスタートと申し上げましたが、やはり今も高い支持率を保っておりますし、さらにこれから、ぜひ、デフレの脱却の問題等を含めて、経済等にもまた全力を傾注していただきたいと思います。

 私は、まずは、きょうの集中審議のテーマとは若干外れますけれども、昨日、日本銀行は新たな政策を決定した。それが市場に大変な好感を持って迎えられたということが株価にも反映をされていると思いますが、この日銀の新たな量的緩和について、安倍総理としてはどういう受けとめ方をなさっているか。これは、評価と言うとちょっと失礼なのかもしれませんので、あえて受けとめをどうなさっているか、お聞きをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 黒田総裁のもと、新しい副総裁と新執行部のもとでの第一回目の政策決定会合となったわけでございますが、黒田総裁以下、二%の物価安定目標に向けて、二年程度の期間を念頭にということで、しっかりと基本的に期間についてもコミットしていただいたわけでございまして、そして、中身については、まさに次元の違う大胆な金融緩和を行って、市場に対して明確なメッセージを出していただいた。まさに期待どおりの対応をしていただいている、このように思います。

石田(祝)委員 いろいろな経済政策は、市場関係者からある一定の範囲での予想をされて、その範囲を下回っていれば逆に失望を招く、こういうことがあろうかと思いますが、それを逆の意味で裏切って、大いなる刺激を与えた、私はこのように思っております。

 それでは、きょうの集中審議のテーマのエネルギー・原発等で少々お伺いをいたしたいと思います。

 総理は、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを目指すとした民主党政権のエネルギー政策を見直す、こういうお話もなさっておりますが、それと同時に、昨年の十二月二十五日に、我が党と自由民主党の連立政権合意、この中で、原発・エネルギー政策、ちょっと読み上げてみますと、「原発の再稼働については、国際基準に沿って安全第一主義を徹底した原子力規制委員会の専門的知見の判断による。同時に、省エネルギー・再生可能エネルギーの加速的な導入や火力発電の高効率化等の推進によって、可能な限り原発依存度を減らす。」こういう連立政権合意もしているわけであります。

 このことについて、現時点において、民主党政権のそういう方針も見直すということと同時に、連立政権合意、こういう点もありますけれども、いま一度、総理のエネルギー政策、特にまた原発についてのお考えを開陳いただきたいと思います。

茂木国務大臣 できるだけ簡潔に御答弁申し上げます。

 エネルギー政策につきましては、まず、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期すことが大前提であります。この点、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするという前政権の方針は、実現の根拠が不十分でありまして、ゼロベースで見直すことといたしております。

 今後三年間、まず、連立合意にもありますように、再生可能エネルギーの普及と省エネルギーの推進を最大限加速していくとともに、原発の安全性については、原子力規制委員会が世界最高レベルの科学的安全基準のもとで判断していくこととなっております。

 さらに、今、火力発電への依存度が九割ということでありますから、御指摘のように、この高効率化を進めていく必要がございます。

 同時に、今後、電力システム改革によりまして発電分野への新規参入を促し、電力需要についても、スマートにコントロールするということで抑制を図っていきたいと思っております。

 これらの取り組みを通じまして、昨年の十二月二十五日に合意いたしました自公連立政権合意にあるとおり、今後は、できる限り原発依存度を低減させていく、こういう方向で進めていきたいと思っております。

石田(祝)委員 朝、御報告がありましたけれども、一昨日、予算委員会といたしまして、地方公聴会、宮城と福島。私は福島の方にお邪魔をいたしまして、四名の公述人の方からも種々御意見を賜ってまいりました。いわきの市長さん、浪江の町長さん、そして商工会議所の会頭さん、また独自の活動をなさっている方、その前に楢葉にも参りまして、町長さんからも御意見をお伺いいたしました。

 そういう中で私が感じたのは、これは我が党の井上幹事長もよくおっしゃっているんですが、これからの戦いはいわゆる二つの風との戦いだと。私も正直感じました。二つの風というのは、一つが風評被害、もう一つは風化。この二つを現地の方々も非常に感じながらきょうまで過ごされて、またさらにこれから復興に向けて頑張っていかなきゃならない。

 私たちも当然、日本全国、何とか東北を再生しよう、福島を復興させよう、こういう思いはあると思いますけれども、どうしてもこれは、我々がさらに東北の復興再生、また福島の復興、こういうことに全力を挙げていかないと、この二つの風に負けてしまうんじゃないか、こういう思いがいたしました。

 そこで、ちょっとお伺いをいたしたいんですが、具体的な話として何点かありました。きょうは全部取り上げることはできませんけれども、原子力損害の賠償についてお話がございまして、これは、これから民法上の賠償の時効を迎える、こういう御心配も実はなさっているわけです。

 一昨年の三月十一日に発生をいたしましたので、もう二年を過ぎました。それぞれ時効の起算点になることは、いろいろな損害について、賠償について起算点は変わるかもしれませんけれども、三年ということがあるわけです。この賠償の時効について、今回のこういう問題については当然賠償の時効の中断をすべきだ、こういうふうに私は思います。

 そしてまた、未申請の方々をどう救済していくのか、こういう問題もあると思いますので、まず、文部科学大臣にこの二点についてお伺いをいたしたいと思います。

下村国務大臣 お答えいたします。

 時効問題への対応については、文部科学省として東京電力に対し、きめ細やかな対応を行うよう要請してまいりました。東京電力は、総合特別事業計画を改定し、時効の起算点を東京電力が請求の受け付けを開始したときからにする等、十分な請求期間を確保するための柔軟な対応が表明されたというふうに承知しております。

 また、被害者と東京電力との間で和解仲介を行う紛争解決センターを利用する被害者の時効に関する危惧を払拭し、和解仲介制度の活用を促進するための措置を講ずる法案を今国会に提出すべく、現在検討中でございます。

 今後とも、被害者の方々が時効の問題で不利益をこうむることのないよう、東京電力の対応と賠償の状況をしっかり見きわめた上で、必要な対応を検討してまいります。

石田(祝)委員 大臣、再度で申しわけございませんけれども、そうすると、被害者の方は、この賠償の時効については一切心配することはない、その三年ということはもう気にかけなくてもよろしい、それは政府また東電を挙げてやります、こういうことでよろしいですね。

下村国務大臣 賠償の状況については、今後とも、東京電力の対応とそれから賠償の全体的な状況をしっかり見きわめる必要もあるというふうに思います。

 また、まだ賠償請求していない未請求者があった場合においても、その事情をよく見きわめて、これは文科省だけの問題ではございませんので、関係省庁とも連携し、必要な対応は十分できるように検討してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 これは立法措置も考えている、こういうことですから、ぜひ遺漏のないようにお願いをしたいと思います。

 それでは、きょうは東京電力の廣瀬社長にも来ていただいておりますので、東京電力として、今大臣がお答えいただいた二つの問題、賠償の問題と、それから請求していない人、この人たちについてどうするのか、この二点について、端的にお答えをいただきたいと思います。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。

 お答え申し上げます。

 私どもとしましても、被害を受けられた皆様が時効によって請求ができなくなるということは、あってはならないというふうに考えております。一方で、御指摘のように、民法の百四十六条があって、現在の法律のもとで、あらかじめ時効を放棄することはできないというのもございます。

 したがいまして、私どもとしましては、できる限り個々の御事情をお聞きして、きめ細かく対応すること。それから、先ほどお話がございましたように、起算日もそれぞれの請求の項目によってどんどんリセットされてずれていくような、そういうことで、とにかく被害者の皆様が不利益にならないようにということ。それからさらに、そうした御不安、御心配をいただくというのも大変よろしくないことでございますので、先ほど文科大臣からもお話がありましたが、ホームページ等々で私どもの考え方については発表させていただいておりますし、そういうことで、なるべく、とにかく不安を抱かれないようにということを努力してまいりたいというふうに思っております。

 また、まだ請求をされていない方というのもいらっしゃる可能性がありますし、これはどれだけいらっしゃるのかをつかむこと自身もまだわからないわけですけれども、そうした方についても引き続き、これはメディアを使ったりということがメーンになるかと思いますし、もちろん、ホームページ等々でアナウンスをしていかなければいけないと思っております。また、そうした方があらわれた後は、しっかり個々の御事情をお聞きして、紋切り型の対応にならないようにしっかり対応していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

石田(祝)委員 この問題、ぜひ東京電力を挙げてやっていただきたいと思います。

 私、ちょっと今の社長の答弁で気になったのは、いろいろな媒体を使ってということはよくわかるんですが、ホームページ、ホームページというのが出てくるんですよ。皆さんはホームページをみんなが見るのが普通だと思っているかもしれませんけれども、これは全く違いますよ。そこのところを勘違いしない。これは役所の人もそうなんですよ。こういう情報をホームページに載せてあります、これがすぐ出てくる。

 私から言ったら、今回、被害を受けている方々、東北ですよね、ホームページを見ているなんということは前提じゃないんですよ。テレビだってラジオだって新聞だって、いろいろなことをやっても、聞いていない人というのはたくさんいらっしゃるんです。我々が考えたら、自分が東京電力の事故で被害を受けた、当然、賠償請求ができる、しかし、その三年間ということを全く知らない人もいると思うんです。

 ですから、これは、ホームページだとかいろいろなこと、それでよしとするということではないというふうに頭を切りかえてもらわないといけないと私は思います。

 私も福島へ行って改めて感じたのは、福島の人たちからすると、自分たちは被害を受けた立場なんだ、責任は国と東電じゃないか、この意識を私たちがゆめも忘れてはいけないと思うんですよ。どっちかというと、俺たちは一生懸命やっているんだから、請求しない方が悪いんだなんということになったら、これは大変なことになりますから。

 廣瀬社長、そういうことはないと思いますけれども、あらゆる媒体を通して、極端に言えば口コミででもやるぐらいじゃないといけませんよ、これは。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 それと、また現地でお聞きをしたんですけれども、福島第一原子力発電所で停電事故がありましたね、三月十八日に。これは、配電盤にネズミが入ってショートしたなんという、浪江の町長が言っていましたよ、発電者がこんなことで停電を起こすなんて、漫画みたいなものだと。漫画と言ったかちょっとわかりませんけれども、そういうことをおっしゃっておりました。

 それで、私は、問題は、いわゆる屋外にそういう配電盤を置いていたということもあると思いますけれども、起きたときに連絡がちゃんと周辺にできていたのか。これは、楢葉の町長も言っていましたけれども、三十分後にファクスが一枚来た、それだけだった。浪江の町長は、朝、役場へ行ったら、机の上に一枚紙切れが載っていたと。こういうことで、一切、説明がそれ以降ありませんということなんですね。

 これは、廣瀬社長、どういうことですか。事故は起こしちゃいけないのは当然なんですけれども、これはやむを得ず起きた。これは起こしたくて起こす人はおりません。しかし、起きているわけですから、それを周辺にどう知らせるか、どうその後のことをやるか、これが大事だと思うんですね。

 ですから、現地の人の受けとめ方は、東京電力は全く変わっていないじゃないか、こういう意識なんですよ。ファクス一枚送られてきた、また、朝出ていったら自分の机の上に紙が一枚載っていた、それだけだというんですね。廣瀬社長、どうですか、このことについて。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 三月十八日の停電事故につきましては、特に地域の皆様、福島の皆様に対して大変御心配をおかけして、本当に、電力会社として、電気のプロとして、大変恥ずかしい事故だというふうに思っております。

 また、公表、通報の仕方もまだまだ本当に足りないところがあり、皆様の思いをしっかり受けとめて、皆様の目線に立って、御心配なさっているということをしっかり私どもの側で受けとめて、そうしたことをしていかなければいけないというふうに改めて強く感じているところでございます。

 当日のことをちょっと詳しく御説明差し上げますと、十八時五十七分に実際に停電がございまして、三十分後にファクスとメールで送り、それからまた九時半に第二報としてファクスとメールということで、先方からもそれぞれ受領したという通知はいただいております。ただ、夜だったために、詳しい御説明は次の日に、それぞれ首長さんを初め回って御説明申し上げたんですが、本当にそういうことで大変申しわけないことをしているというふうに思っておりまして、今後ともぜひしっかりやってまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 きょうは規制委員会の委員長にも少々お聞きしたいことがありますので、質問をいたします。

 規制委員会で、規制基準、今まで安全基準と言っていたようですが、これはもう規制基準だ、こういうことで呼び方を変えたということです。それは結構なことだと思いますが、この原子力発電所の規制基準について、いつまでにこれをつくるのか、そして、それが確定されたら、再稼働についてどのように審査を始められるのか、このことをお聞きしたいと思うんです。

 これは、審査をするのは、委員長、実はグループが三つしかないというんですよ。三グループでやって何カ月もかかるかという審査をするわけですから、審査の順番も私は非常に大事じゃないのかな、こういうふうに思いますが、その点はよしとしても、いつ確定して、それを遅滞なく審査を実施されるのかどうか、その点を踏まえてお答えをいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 改正炉規法の施行期日はことしの七月十八日になっておりますので、それまでに、今、それに間に合わせるべく、新基準の策定を急いでいるところであります。

 具体的には、二月に、中身が大変重要なことでありますので、多くの意見があるということで、パブリックコメントをやらせていただきました。四千を超えるコメントをいただきまして、これについても何度か会合を持ちまして議論をしまして、一昨日、三日になりますが、委員会でそれの対応について決めさせていただきました。

 今後は、来週程度になると思いますけれども、法制の原案をつくりまして、さらに一カ月程度のパブリックコメントをして、七月十八日には十分間に合うように取り組んでいきたいと思っております。

 それから、今後、再稼働についての申請でございますけれども、これにつきましては、今回の新基準についてバックフィットをして、それに合致するということが前提でございます。そういったものが出てくる状況、今後どういうふうに申請が出てくるかは今予測できませんけれども、とりあえず、できるだけ速やかにそれに対応できるようにということで、体制を準備したところでございます。

石田(祝)委員 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 きょうは、大変貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。私も、おとつい福島に参りまして、いわき市長、浪江町長、楢葉町長のお話を聞いてまいりました。この原発事故の本当に深刻さを再度十分に胸に入れて、きょうは質問をいたします。

 今、この福島第一原発の事故原因というのが、きちっといまだに解明されていない。このことについては、我々国会議員全員、反省しなければならない、政府も反省しなければならないと思っております。これについて解明を進めるという趣旨で、きょう質疑をしていきたいと思います。

 これについて、福島第一原発の事故原因、一般的には津波ということが強調されているわけですが、津波だけでなく、地震そのものでも損傷したのではないかという疑いがあって、それがまだきちっと現地調査がなされずに解明されていない、こういう大きな問題がございます。

 その中で、東京電力が調査を妨害したのではないかという疑いが出てまいりました。

 といいますのも、国会事故調、国会事故調査委員会という、法律に基づいて国会の中に設置をされた、専門家の先生の委員会がございました。これは時限立法ですので今は解散しておりますけれども、それが活動しているときに、東京電力に、地震で破損した可能性があるので第一原発の一号機の四階に立入検査したい、こういう要請を国会事故調がされて、それについて東京電力が虚偽のお話をして、その立入検査が結果としてはできなかった、今もできていないという大変重大な問題があるわけでございます。

 そこで、きょうは、今は事故調は解散しておりますので民間人となっておられますけれども、田中三彦元国会事故調委員にもお出ましをいただいて、そして東京電力の社長にもお出ましをいただいて、質疑をさせていただくわけでございます。田中三彦元委員は、かつては原子炉の設計もされておられたということで、技術者であるわけでございます。

 その中で、いろいろな報告書、東電も報告書を出しております。マスコミ報道もございますので、私なりにまとめた論点をここに書いてございます。焦点は、昨年の二月二十八日に、国会事故調が一号機の四階に立入検査をしたいというようなお話を打ち合わせる会議での東電の説明でございます。

 まず一つ目は、東京電力の説明では、四階の現場というのは真っ暗なんだ、そして二番目としては、現地調査は東京電力はついていかない、案内しない、こういうお話があったということでございますが、これに関連して、田中三彦元委員に当日のお話をいただければと思います。

田中参考人 お答えいたします。

 一つのポイントは、私たちは、そのときには妨害を受けているという意識は全くございません。後日に、別の報告書を見ていて、そういうふうに妨害されたということを確信いたした次第でございます。

 東京電力が主に私たちに説明したことは、一号機の四階は非常に真っ暗である、今はカバーがかかっているので暗い、パニックを起こす可能性がある、それから、二十一メートルの高いところから下に落ちる可能性がある、その他もろもろ、そういう話を六十分以上にわたって説明を受けました。

 それで、最後に、きょうじゅうに、そこを調査するかどうかの決断をしてほしいということを言われたので、何人かの方々に一緒に入っていただかなきゃならない責任者としては、これは難しいというふうに判断をいたしまして、その場で、二月二十八日、断念をしますということを東京電力の方にお伝えいたしました。(長妻委員「東京電力が随行しますか」と呼ぶ)

 それから、東京電力が随行はしない、作業者の被曝線量の管理上、随行はできないということを言われました。そういうことで、我々だけでそこへ入っていくのは余りにも危険が大き過ぎるというふうに考えて、断念した次第です。

長妻委員 これについて、東京電力に説明を求めます。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 今のお話のように、昨年の二月の二十八日に、私どもの社員が国会事故調の事務局の皆様初めと打ち合わせを行いました。その際に、今お話ありましたように、四階について、真っ暗である、あるいは、カバーがかかっていない段階の映像を見せて、今はこの程度だけれどもカバーがかかったらさらに暗くなる、照明はないといったような説明をいたしました。

 これらは全て誤りでありまして、本人にも確認いたしましたし、それから、私どもの調査だけでは不十分という経済産業大臣からの御指摘もございまして、第三者を入れてしっかりとした調査をしろということで調査をいたしまして、その結果も、やはり、その二点につきましては誤りであるということが判明しております。(長妻委員「随行については」と呼ぶ)

 随行につきましては、本人、玉井という社員でございますけれども、本人が現場の人間に確認をいたしまして、本人は本社の在勤でございましたので、第一原子力発電所に当時いた人間に確認いたしまして、確かに、当時、昨年の二月ですけれども、まだまだ作業が続いて、もちろん今も続いておりますが、まだまだ作業が続き、これ以上、どのぐらいそれぞれの被曝線量がいくかというのも予想がしがたい段階で、現場としては、できる限り作業員それぞれの被曝の量を落としたい、抑えていきたいという強い思いがあったと思っております。それを受けて、それを聞いて、玉井の判断で、東京電力としては随行はできないという御説明を申し上げました。

長妻委員 そうしましたら、今は線量が高いから随行できないということなんですが、この一号機の四階というのは、今までは一度も誰も入っていないわけですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 これまでも、中がどうなっているのかというのを当然確認する必要がございますので、何回か試み、実際に入って、そのたびに……(長妻委員「何回ぐらい」と呼ぶ)この二月二十八日の段階、昨年の二月二十八日の段階では、その前に三回入っていたというふうに記憶しております。

 それで、そのうちの二回でフィルムを撮っておりますので、そのうちの後半の方、一昨年の十月の十八日に入ったときの映像をごらんになっていただいて、先ほどの説明をしたということでございます。

長妻委員 既に何回か入っておられるということで、しかも、国会事故調というのは、国政調査権を背景に法律で設置をされた委員会でありまして、そこに全面的に協力いただくというのは当然だと思います。これは、案内がなくて入れといっても、穴に落ちると言われたら、これは真っ暗だということで、どう考えても断念するということになるわけであります。

 それで、四番目、五番目をお伺いするんですけれども、そうすると、東京電力の当日の説明者、玉井部長の、東電の調査によると、これは故意ではないんだ、あくまで勘違いなんだということ、そして玉井さんが単独でやったことで、誰にも相談しないでこういうことをやった、玉井さん本人の話で、組織的関与はない、こういうふうに結論づけたわけであります。

 私も、今、配付資料でも玉井さんの経歴をつけさせていただきましたけれども、玉井さんというのは企画部部長だから、文科系の方で素人の方なのかと思いましたが、実際は玉井さんは技術者でありまして、かつては柏崎刈羽の原発の技術総括部長でもいらっしゃる。あるいは、福島第一原発の第一保全部計測制御一・二号機グループマネジャーということで、まさにこの一号機のグループマネジャーもされて、プロ中のプロ、原発畑をずっと歩いておられる方が、間違ってそういう説明をした、組織的関与がないということは、私も断定するわけではありませんけれども、にわかには信じがたいと私は感じるんですけれども、これについて、事故調の元委員の田中さんに見解をお尋ねいたします。

田中参考人 個人的に間違ったということですけれども、そうは思えない説明がありました。

 それは、最初の説明で、十月の十八日に入った、二〇一一年十月十八日に、二十分近くにわたって東京電力は一号機の四階を調査しております、その方々に状況をよく聞いて、なおかつ福島第一原発の方からも情報をもらってきょうは説明に来ておりますと言っております。ですから、誤るはずがないと私たちは思っております。

 それから、こういう重要な問題を、国会事故調が、被曝はある程度するということも当然我々は覚悟していたわけですけれども、一号機の四階に入るということは、これは大きな問題だと東京電力は感ずるはずです。したがって、この問題を玉井さんが個人的に許可したり許可しなかったりするという問題ではないはずです。我々はそういう話として受けとめてはいない、当然、東京電力の全体の結論として私たちは聞いているわけでございますから。

 それで、一週間後に迫っている説明会ですから、私たちとしては緊迫しているわけです。その中で行われた説明会という位置づけで、とても、個人の判断で間違ったとかそういう話ではないと思います。

 具体的に、例えば、チャリンと音がする、ビデオの中で音がする、これは何が落ちた音ですとか、それから、線量計ではかっている、その線量計の重さは十キロあります、実際は三キロなんですけれども、十キロありますと。それから、これを持っている方はフルマラソンも経験された方だと。

 もう確かに聞いてきているという、最初のお話どおり、よく御存じです。にもかかわらず、中が暗いかどうか、そのときにカバーがかかっていたかどうかについて誤るなんということは、これはあり得ないと私たちは思っておりました。

 したがって、何度も言いますけれども、我々は、東京電力の全体の話として、正しい説明を受けているというふうにずっと認識しておりました。だから、別に脅迫を受けたとか、そのときには全く思っておりません。非常に自然な説明だというふうに考えて、断念したわけです。

長妻委員 東京電力の社長、この点はいかがでございましょうか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 私どもの調査だけでは不十分ということで、先ほどの繰り返しになりますが、経済産業大臣からの御指導をいただきまして、第三者の弁護士の先生方三人による調査を、上司の関与、あるいは組織的な関与という点につきましても調査をしていただきました。

 その結果、弁護士の先生方が聞き取り調査等々をされました結果、メールのやりとり等々を見ました結果、玉井は、これはよしあしの問題はございますけれども、事実として、玉井は上司に事前に相談することなく、自分が、先ほど私申し上げましたように、現場の福島第一に勤めている人間との聴取、いろいろ聞き取りをした結果を二月二十八日に国会事故調の事務局の方初めに話をしているということで、上司は知っていなかったというふうに第三者検証委員会の方で結論をされております。

 また、玉井は、今幾つか田中元委員から御説明がありましたように、明らかに誤ったことを言っておりますけれども、放射線の量であるとか、瓦れきが散乱している状態であるとか、あるいは確かに危険な状態であるとかといったような、いわゆる正しい説明もしておりまして、その誤った点については、先ほど私申し上げたとおり、何点かあるのは事実でございます。

 以上でございます。

長妻委員 ちょっと説明がわからないんですが、そうすると、東京電力が弁護士さんのチームで調査をして、単独で、組織的関与がなくて、玉井さんが自分で勝手に言っちゃった、そして、間違えて、故意ではないという話なんですが、これは当然、事故調の、今の田中三彦元委員とかいろいろな方にもヒアリングしているわけですね。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 私どもがお願いしました第三者検証委員会の先生方、これは皆さん、弁護士さん、法律家でいらっしゃいますから、その方々の御判断により、国会事故調は秘密を守らなければいけないというふうに規定されておりまして、それは、国会事故調はもう既に存在しておりませんけれども、国会事故調がなくなった後も引き続き、そうした点については拘束されるという規定がございます。守秘義務でございます。したがって、法律家として、そうした法律がある以上、その守秘義務を破るようなお願いをするということは差し控えたということでございます。これは、私どものお願いした弁護士の先生三人、第三者検証委員会の先生方三人の御判断でございます。

 この判断は、私どもが第三者検証委員会にお願いした点は、まさに玉井の発言が何らかの故意や意図を持ってされたものかどうか、あるいは上司の関与、組織的な関与があったかどうかという二点を中心にお願いしてございます。したがって、この二点を判断する上で、いろいろな角度から第三者検証委員会で調査、検証していただいた結果、細部についての多少の順序であるとか物の言いようであるとかといったようなことは、一〇〇%、国会事故調の先生方に聞けてはおりませんので、そこの限界はございますけれども、私どもがお願いした二点については判断できるという判断だというふうにお聞きしております。

長妻委員 そうすると、虚偽の説明を受けた側の国会事故調の人には、国会事故調の事務局の人も含めて、誰一人ヒアリングしていない、ヒアリングしたのは東電の社員と東電のOBのみ、こういうことなんですか。

廣瀬参考人 はい。おっしゃるとおり、私どもの社員とそれからOBでございます。

長妻委員 これは、かなり不可解だと思うんですね。その玉井さんのことを検証するのは、東電内部だけ聞けば十分だというような趣旨のお話もあったやに思います。

 私もこの報告書を読みました、その弁護士さんの東京電力の報告書を。そうすると、玉井さんの発言として、ホットスポットモニターは数キログラムあるいは十キログラムぐらいの重量があり、ビデオ撮影でホットスポットモニターを持っている者はフルマラソンを二時間半で走り切るぐらいの体力があるが、相当きつかったと言っていると。

 ですから、これは、入るのは大変だよ、十キロもあるんだということを言われているんですが、さっき田中三彦さんは、十キロじゃない、三キロというふうな話がありましたが、社長、細かい話ですけれども、これは三キロなんですか。

廣瀬参考人 御指摘のとおり、三キロでございます。

長妻委員 いろいろこれを見ると、東京電力が認定された発言だけでも、玉井部長は、建屋内でけがでもされたら当社ないし福島第一の現場に多大な負担がかかる、ぐあいが悪くなっただけでも相当大きな報道になることを認識していただきたい、こんなようなことは認定されておられる。

 あるいは、マスコミ報道では、おやめいただいた方がよろしいんじゃないでしょうか、きょう御判断いただきたい、これはマスコミ報道の発言でありますけれども。

 これは、マスコミ報道によると、当日の会話を録音したテープがあるというふうに報道でございますけれども、田中元委員にお伺いしますが、録音したテープというのはあるのでございますか。

田中参考人 お答えします。

 ございます。

長妻委員 そうであれば、ぜひ委員長にお願いしたいのは、そのテープを理事会に提出して、我々でまず聞いてみたい。

 本当にその組織的関与や故意がない、私も決めつけるわけじゃありませんけれども、これは重大な話で、単に入るのが妨害されたというんじゃなくて、第一原発の事故の原因が、地震そのものでも破損したかしないかということは、なぜ原因が特定されることが重要かといいますと、実は、ことしの七月から新しい原発の安全基準が施行されます、実行される。そのときに、仮に第一原発の原因の一つが地震ということも認定されれば、これは、安全基準が、では、もうちょっと耐震性をパイプの部分も含めて強化しよう、こういうことになるわけで、日本国の原発の安全性にとっても大変重要なことだと思っておりますので、ぜひ理事会で協議いただきたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

長妻委員 本来はもっといろいろな論点があるので、不十分ではあるんですが、さらに、時間の制約もありますので、ここまで聞いて、安倍総理がいらっしゃらないんですが、政府にお伺いしたいんです。

 私が聞いておりますのは、ことしの二月七日に、経済産業省が東京電力に、信頼の置ける形で事実関係を調査し報告されたいと。それで報告書が出てきたということで、これは東電の職員とOBだけに聞いて、それで出てきているわけで、まさか経産大臣、これでオーケーというわけではないですよね。

茂木国務大臣 恐らく、論点の大きな一つは、虚偽の報告であった、これが意図的か意図的ではないか。これは長妻先生でも判断できません。また、東電だけに判断させるべきではない。こういったことから、第三者委員会の設置をということで、弁護士のチーム、御案内のとおり、長い経歴を持つ方々であります。

 そして、故意であったかなかったか、こういう判断をするのには、そのチームの専門的な判断で、国会事故調にヒアリングは必要ない、このように判断されたと考えております。

 いずれにしても、国会事故調の調査が行われなかったのは事実であります。ですから、今後、国会事故調等々におきまして調査を追加的に行いたいという場合は、現地調査、さらなる調査を行うということでありましたら、随行等も含め最大限協力させるように、東電に対して指導していきたいと思っております。

長妻委員 いや、そういうことを聞いているのではなくて、建物の中の調査の話じゃなくて、今回、虚偽の説明をされた。これは別に、玉井さんという方が勝手に一人でやった話だ、そして組織的関与もない、故意ではないということの調査で、東電は、弁護士さんのグループとはいえ、東電の職員とOBしか聞いていないんですよ、ヒアリング。それで報告書が経産省に出ているんですよ。その報告書を受理して、これでよろしいですというふうに了解するんですか。

茂木国務大臣 今も御答弁を申し上げましたが、まず、この報告が間違っていた、それについて、意図的であったか、それとも意図的でなかったか、このことが一つの大きな論点である。ですから、それは第三者において判断をすべきということで、第三者の検証委員会をつくるように指導いたしました。

 そして、その第三者の委員会、専門の弁護士の先生方、そして裁判官、検事等の経験もあるチームで、この判断をするのにはどういうヒアリングが必要か、こういう基準に基づいて適正な検証をされた、このように考えております。

長妻委員 これはちょっと驚きます。この東京電力の検証が適正だと。

 つまり、当事者、職員とOBだけしかヒアリングしていない検証、非常に政府は後ろ向きだと私は言わざるを得ないわけでありまして、これは、政府がやらないんだったら、委員長、これは国会の事故調に対する話ですから、国会ですから、ぜひ理事会でも、今後、この予算委員会でもこの問題は継続してやっていくということが必要だと思います。

 国政調査権を背景にしてつくられた組織について、虚偽の話をされて、ヒアリングの調査は内部だけで聞いて、はい、これは間違っただけですと。これで、はい、そうですと国会は言うわけにいかないです。今の政府は私は問題だと思いますけれども、我々は、そんな素直に、はい、そうですと言ってはならないと思います。

 ぜひ理事会でお願いします。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

長妻委員 そして、きょう私も実際に東電の質問をするので、お伺いいただいて聞いたところによると、この第一号機の建屋の四階については、線量が高いので、もし入るとしても千人、二千人の人が必要だと。それは、ちょっと入ってちょっと出て、ちょっと入ってちょっと出て、千人、二千人が必要だということを私は説明を受けたんですが、これは実際、これまでも何回か入ったということなんですが、そんな千人、二千人が必要になるような状況なんでしょうか、社長。

廣瀬参考人 これまでも、一号機の四階には何度か調査に入っております。そのたびに、四階に滞在している時間は非常に限られております。その限られている時間にも数ミリレベルの被曝をしております。

 したがって、結局、人・時間みたいなものですけれども、長い時間いれば当然たくさんの被曝を浴びます。したがって、一人当たりを少なくしようということであれば、たくさんの人間が入る、そういう例えで申し上げたんだというふうに思っております。

 引き続き、とにかく一号機の四階には入っていただかないといけないと我々は思っておりますので、ぜひとも、私どもとしては、線量が少し昨年よりは下がってきているということもございます……(長妻委員「千人、二千人というのは、そうなんですか。大体そのぐらいなんですか」と呼ぶ)

 ですから、その調査の規模によると思っております。調査の総時間を千人で割れば当然少なくなりますし、百人で割ればその十倍を被曝するということでございます。

長妻委員 これまでも入っているということで、それほどの線量なのかというのはこれから検証が必要ですけれども、千人、二千人ということが本当なのかどうか、これは今後検証をしないといけないと思っております。

 そして、もう一つ大きな問題、今のにも関連するんですが、何が目的で国会事故調がこの中に入ろうとしたか。これは、国会事故調の報告書が、実は、地震による損傷の可能性を排除しない主な六つの理由ということで、明確に、この六つについては津波でなくて地震の影響の可能性があるということを、具体的に六つ書いているんですね。これについて解明がなされていないんです。解明がなされていない。

 一つ目は、地震動に耐え得ない可能性がある、耐震補強が未了だったから。二つ目は、小さな配管破断とそれによる炉心損傷や炉心溶融の可能性がある。三つ目は、非常用交流電源喪失が津波到達前に生じている。四つ目は、出水を目撃している、水が噴き出したものを目撃している。五つ目は、イソコンと言われる非常用復水器について、運転員は、操作に当たって冷却材の漏れを気にしていた。六番目が、主蒸気逃がし安全弁、SR弁というものが作動しなかった可能性があるというようなことで、田中元委員は、一号機の四階で、非常用復水器、原子炉を冷却する大変重要な装置でありますけれども、イソコンと言われているものが地震の影響で動かなくなったのではないのかというような、もろもろの地震の影響度を調べようとしたわけでございます。

 これについて、七月に原発の新しい安全基準が施行されるわけでありますけれども、ぜひ、今回、平成二十五年度の予算審議なんですね、予算委員会。調べますと、原発関連予算、原子力関連予算というのが三千九百六十五億円、一般会計、特別会計合わせて。除染とかは除いてですよ。ある意味では、原子力を安定させる、原発を推進する等々の経費、あるいは調査をする等々の経費が三千九百六十五億円、この予算委員会で審議されるわけでありまして、それを審議する中で、やはり地震の影響というのを明確にしていく必要が国会の責務としてあるのではないかと思います。

 まずは政府にお伺いしますけれども、これについて、第一原発の事故原因を徹底的に立入検査をして、今曖昧になって、立入検査、第三者が入っておりませんけれども、これを徹底的にやるんだという決意を表明していただければと思います。総理でも結構です。

茂木国務大臣 調査、検証、これは引き続き徹底的に行っていきたいと考えております。

 そして、国会事故調、政府事故調の報告等も受けまして、原子力規制委員会におきましても、これから新しい安全基準をつくっていくプロセスの中で、そういった検証もしっかり進めていくことになっております。

長妻委員 ちょっと決意にしては心もとない気もするんですが、委員長、これは国会でも、国会事故調は今解散されていますけれども、ぜひ、その国会事故調のメンバーの中でもう一度再編成をして、第三者の立場で、今度は東京電力も適正な御協力をいただいて、徹底的に調査する、こういう国会事故調の再編成、再立ち上げが必要だと思いますので、ぜひ理事会でも協議いただきたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

長妻委員 そしてもう一つ。

 おとつい、私、福島に地方公聴会でお邪魔したということを申し上げました。そのときに異口同音に福島の皆さんから出た話は、第一原発の近くにあります福島第二原発は、これはどう考えてももう廃炉にしてくれ、廃炉にしてほしいというお話もいただいているところでございまして、今現在は、地震のこともあって、福島第二原発は一号機から四号機まで全基冷温停止ということでとまっておりますけれども、これはよもや再稼働をする可能性があるということではないというふうに私は信じております。

 当然いろいろな問題はあるにせよ、それを乗り越えて、再稼働しない、廃炉にするという御決断を政府にいただきたいと思うんですが、これは最後、もう時間もないので、総理、いかがですか。一言、総理、お願いします。

茂木国務大臣 福島県内の原発につきましては、一昨年の十月、福島県議会において、福島第一そして第二原発の廃炉を求める請願を採択するとともに、一昨年の十二月、福島県が、県内の原子力発電所については全て廃炉とすることを求める計画を決定しております。そしてまた、ことしの三月二十五日には、福島県議会において、県内の原発の全基廃炉を求める意見書が採択をされております。

 これまでにない大事故を経験し、いまだ十五万人の被災者の皆さんが厳しい避難生活を余儀なくされている、こういった状況を考えれば、このような請願等が提出されるのは十分理解ができるところであります。

 今後の原子力発電所の取り扱いについては、まず、原子力規制委員会において専門的、独立的な立場から安全性が判断されることになっておりますが、原子炉設置者である東京電力においても、この規制委員会の判断、そして福島県や県議会の要望、立地自治体も含めた地元のさまざまな要望、意見を踏まえて、総合的に勘案しながら適切に判断を行っていくべきものと考えております。

 一般論として申し上げると、原発の再稼働においては、改正原子炉等規制法に基づきまして、原子力規制委員会において原発の安全性の確認が行われることになっております。そして、規制委員会により安全性が確認されれば、事業者がみずからの判断により再稼働することが可能となる法律の仕組みになっております。ただし、現実には、立地自治体等関係者の再稼働に向けた御理解というのが大切だ、そのように考えております。

 この点におきまして、福島県内の原発については、原子炉設置者であります東京電力において、福島県や立地市町村も含めた地元の皆様のさまざまな要望、意見などを総合的に勘案しながら判断を行っていくべきものと考えておりますが、現在の福島の皆さんの心情を考えますと、他の原発と同列に考えることは難しいと思っております。

長妻委員 私は難しいことを聞いているのではないんです。

 福島第二原発については、今、これから検討するようなお話もありました。総理、再稼働の可能性というのはもうないんだ、再稼働の可能性はなくてもう廃炉にするんだ、こういう強い意思をぜひ表明していただきたい。あらかじめ早目に、御心配されておられる方も多いわけですから。

 先ほどの質問でも、原発の事故が起こらない安全神話の話がありました。事故は起こる、こういう前提でいろいろな物事を組み立てていくというのが基本であります。

 この第一原発の近くの第二原発については、総理、再稼働の可能性はないということをぜひ宣言していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 再稼働については、仮に安全性が確保されたとしても、地元自治体あるいは住民の方々の御理解がいただけなければ、それは難しいわけでございまして、その中において、福島第二については、私も何回か福島に足を運んだわけでございますが、その際、被災者の皆様、なかなかふるさとに戻れないという厳しい状況の中において、これは御理解をいただくのはそう簡単なことではない、再稼働は容易ではないというふうに認識をいたしております。

 今後の福島県内の原子力発電所の取り扱いについては、まずは事業者において、こうした状況などを総合的に勘案しながら判断を行っていくことになると思います。

長妻委員 もうちょっときっぱりと言っていただく必要が私はあると思っております。

 いずれにいたしましても、今私が議論いたしましたのは、今回の地震の、あるいは津波の事故に関する原因究明ということを申し上げましたけれども、当然ですけれども、事故が起こるときに全く同じパターンで次も起こるということではありません。そんな事故は、全く同じパターンというのはないわけで、そういう意味でも、地震の影響というのがまだまだ未解明でありますので、これはぜひ、与野党とか国会とか政府とかは関係なく、オール・ジャパンで、政府も政府の立場で、国会も国会の立場で、早急にこの地震の影響をチェックして、七月の新しい原発の安全基準に間に合うように取り組む、こういう強い決意を国会、政府に持っていただきたい。私自身も、人ごとでなくて、一生懸命やらなきゃいけないというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。

 先ほどからお話が出ておりますように、二日前の四月三日に福島で地方公聴会がございました。私も参加いたしましたけれども、多くの現地の皆様から非常に深刻なお話を承りました。

 それらの皆様の声も受けまして、きょうは、まず最初に、先ほども出ましたけれども、三月十八日にまた福島第一原発で停電が起こった、このときの東京電力の対応、憤慨していらっしゃいました。それに比べまして、先ほどの社長、翌日説明に行ったとかおっしゃいましたけれども、私は、あの答弁をお聞きしておりまして、危機感が足りないと思います。

 これは、ネズミが配電盤に触れたということでショートした、それだけで停電したわけです。そして、使用済み燃料プールや共用プール、九つが冷却できなくなったわけです。事故当時、特に使用済み核燃料のプール、冷却できなくなったら三千万人の避難になるかもしれない事故につながるんじゃないかということで、米軍が一番懸念した。これにつながりかねない大きなトラブルだったわけです。

 ところが、浪江や、そして、お会いいたしましたさまざまな自治体の皆さん、楢葉の皆さんは、ファクス一枚だと言っていました。皆さんに資料をお配りしています。ファクス一枚はこれです。

 社長にお伺いしたいと思います。このファクス一枚ですよ。そしてここに、免震棟にて電源が即時停止する事案が発生したと書いてあるだけなんですよ。この対応で、先ほど、翌日説明に行きましたとおっしゃいましたけれども、浪江の町長は、来た職員に話を聞いたら、バックアップ電源がなかったんですとか、それから、原因はわかりませんを繰り返すばかりだったということです。

 これは、地元の自治体の皆さんにとりましては、楢葉町など、一部避難、昼間には帰れる、中に入れる状況になって、Jヴィレッジもありますよね、お世話になっていますよね。そして、昼間に楢葉に帰っているとか、被災者の皆さんはばらばらなんです。万一避難を緊急に要請しなければいけないときにどうすればいいのか。本当に怒り心頭で、こういう発言をされていましたよ、東電の神経がわからない。先ほどの御答弁では危機感が足りないと思います。

 このファクス、ごらんになったことがありますか。どうですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 おっしゃるように、そのファクスとそれからメールで、同様の内容について第一報、第二報というようなことでお知らせしておりますけれども、確かに、それだけごらんになって、一体どうなっているのかという御心配を抱かれるのは、全くそのとおりだと思っております。

 私どもとしましては、今回の反省に立って、どうしても現場の技術者として、事故の原因を突きとめて、それもあわせて報告しようという傾向がございますので、そうしたこともしっかり、通報を受けられる側の方々の思いについてもちゃんと理解して、とにかくわかったことからどんどん公表、通報していくという姿勢にしていかなければいけないと思っておりますので、大変深く反省しておるところでございます。

辻元委員 反省、この前もお呼びしたときに、さまざまな点について反省をおっしゃったわけですが、形にしていただきたいんですね。

 それでは次に、ヒューマンエラーということ、説明に行く職員の人たちの対応。それからもう一つ、大きなことは、この福島第一原発の中で働いている作業員の人たちの労働環境が一体どうなっているのか。これは本当に、事故を食いとめるのも人間、また、事故を再発させるのも人間です。幾ら立派な防潮堤を築いても、それだけではだめなので、この作業員の実態について、東電の社長に幾つかお伺いしたいと思います。

 今、福島第一原発の中では毎日約三千人働いていらっしゃるということで、東電の社員は二百名、それ以外の方は関連企業の下請の皆さんである。

 ちょうど、昨年の九月から十月にかけまして、東京電力が作業員四千人の皆さんにアンケートをいたしました。私、これを見てびっくりしたんです。このアンケートによりますと、半数近くが、偽装請負の可能性があるとか、それからさらには、震災後賃金が減ったという人が四分の一、そして、東京都の最低賃金八百三十七円未満の人が五%、危険手当が加算されていないという人が三分の一というようなアンケート結果を見たんです。

 社長にお伺いしますけれども、このアンケートを受けてどう対処されたのか。そして、この偽装請負の実態というのは、昨年も、関西電力の大飯原発でも暴力団関係会社が関与していると言われかねない偽装請負の実態も明るみに出ました。偽装請負についてどのような解明をされたのか、お答えください。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 御指摘のアンケートは、昨年の九月に、御指摘のように、協力会社の方々四千人に対して行いました。

 幾つか御紹介がありましたが、それ以外にも、労働条件や労働安全に関する相談窓口があることを知らないとおっしゃった方が六割ですとか、違法派遣や偽装請負というワードに近いんですが、そのワードを知らない方が七割であるとか、雇用主と作業を実際指示していらっしゃる会社が違うといったような回答をされた方が五割を占めるなど、そういったことが判明しました。

 これを受けまして、私どもとしましては、とにかく職場の就労環境、処遇等について改善していかなければいけないということから、これは、私どもが請負会社に発注して、その請負会社から御存じのような多重の構造になっていくわけですけれども、まず請負会社に対してアンケートの結果をフィードバックして、これは私自身もやりましたけれども、請負会社の方々に、それぞれの責任範囲においてしっかりとした対応をしていただきたいということをお願いいたしました。

 また、これは厚生労働省さんの協力のもと、違法派遣であるとか偽装請負であるとか、あるいは適正な雇用のあり方についてぜひ知っていただくための講習会をやらせていただくことにいたしました。

 また、福島第一で作業されている方々を対象といたしまして、入所教育にこうしたものを取り入れていくということも今やらせていただいております。

 とにかく、適正な雇用を管理する側の元請の会社につきましても、それぞれでまた調査をしてくださいということもお願いして、今やり始めております。

 もちろん、先ほどありましたように、相談窓口のあることすら知らないというお答えもありましたので、相談窓口がこういうことでここにあります、こういう人で、いつでも来てくださいというような周知をいたしました。

 ということで、とにかく、まだまだ足りないかもしれませんけれども、引き続き、御指摘の問題については大きな問題だというふうに思っておりますので、さまざまな策をこれからも講じていきたいというふうに考えているところでございます。

辻元委員 アンケートから半年たっているわけですが、偽装請負はあったんですか、なかったんですか。

廣瀬参考人 私どもとして、まだ、偽装請負があったという判断には至っておりません。

辻元委員 今、この福島第一原発の作業員の皆さんがさまざまな証言をされ始めております。

 これは総理に聞いていただきたいんですけれども、通常の自然な状態であれば一年半かかる線量を一日で被曝とか、作業に手なれたベテランほど被曝して現場に出られなくなるとか、入ってくる人は未経験の若い人が多くなっているんじゃないかとか、現場で丁寧に教えていられない、というのは、現場で教えている間に被曝してしまうからとか、日給八千円の人もいる、どうも、線量が上がって危険度が増しているのに賃金は下がっているようであるとか。例えば弁護士関係の皆さんやさまざまな団体も、この実態について聞き取りなども始めているんです。

 総理、こういう話を聞いたことはありますか。総理、いかがですか。聞いたことがあるかないかだけ。

安倍内閣総理大臣 日給千円というのは初めて……(辻元委員「八千円」と呼ぶ)八千円ですか。

 そういう事情、仕事が大変だという話については、直接聞いたことはございませんが、新聞等では読んだことがございます。

辻元委員 八千円ですので、失礼いたしました。

 新聞等でと。

 私は、これは、廃炉に向けて、そして、先ほど申し上げましたように、今まだネズミ一匹で配電盤がとまるというような事態で、この働く人たちの環境というのは非常に大事だと思っております。

 茂木大臣にお伺いしたいんですが、事故直後、当時は、命がけでこの事故を食いとめた人たちがいました。フクシマ・フィフティーズとも呼ばれました。そして、私は、先ほども申し上げたように、この状況は変わっていないと思います、今回の事案を見ても。今も、この人たちが原発の暴走を食いとめている。そんな中で、労働条件、そして労働環境、健康管理、これは私、監督官庁として、大臣として、この実態をしっかりと調査して、管理していくということも必要でないかと思いますが、いかがですか。調査してくださいよ。

茂木国務大臣 現場の作業員の方々、本当に厳しい環境の中で必死に作業に当たっておられる。まさに、これまでに経験のない厳しい作業、そして作業内容も未経験のことをされている、そういった作業環境の改善には常に取り組んでいかなければならない。東京電力に対して、しっかりした指導をしていきたいと思っております。

 同時に、この問題、個々の作業員、ここでできる問題だけではなくて、組織やシステムを含めて、あらゆる角度から安全確保の取り組みが必要だと考えております。

 東京電力も、現在、協力企業などと連携をいたしまして、作業員の安全意識の向上のための連絡会議の開催、さらには、安全パトロールの実施、監視装置を活用した作業環境などの確認を行っているところでありまして、そこの中で、作業現場全体の安全についても、そしてまた作業員個々人の安全についてもきちんと把握をし、そして、問題があったら改善をするというたゆまざる努力を続けてまいりたいと考えております。

辻元委員 お答えは、きれいにお答えいただいたんですが、既に昨年からアンケートの調査も出ていますので、もう一度、今、システムとおっしゃいましたよね。これは下請の問題なんですよ。こういうことも含めて、これは今後の廃炉にとっては非常に重要だと思いますので、そういうことも含めて調査をしていただけますか。いかがですか。

茂木国務大臣 作業員個々人の作業環境の問題、そして組織としての取り組みの問題、さらに、システムとしてどういったことができるか、そういったことも含めて、きちんと状況を確認し、改善すべき点があったら改善をしてまいりたいと考えております。

辻元委員 しっかり報告をしていただきたいというように思います。

 東電の社長にもお伺いします。

 下請が何次まであるのかわからぬ、九次、十次あるんじゃないかという話も出ています。それから、途中で賃金が中抜けさせられていく、お話を聞いたことがあると思うんですよ。

 これは、前政権の民主党政権のときに、細野さんが大臣でした。そのときに、五次、六次というのは、今回の原発の非常に重要な作業にとって、もっとフラット化して直接雇用、または、長期戦ですから、それができなくても、二次、三次ぐらいまでフラット化すべきではないかと、民主党政権時代、東電にも話をしていると思うんです。そういう検討をされたらどうですか。いかがですか。

廣瀬参考人 おっしゃるように、三十年、四十年かかる作業ということでございますので、多少時間がかかっても、そうした改めるべきについては改めていく必要があるというふうに考えておりますので、引き続き、私どもとの契約関係にある元請さん皆さんの御協力が必要でございますので、そうした方々との相談をしていかなければいけないというふうに思っています。

辻元委員 これは、今後の福島第一原発の事故対応にとって非常に重要な点なんですね。茂木大臣、細かくやってください。私、いろいろ細野大臣が民主党政権時代にやってきたことを近くで見ておりまして、この労働者の働く状況について、私どもは物すごく気にしてきたんです。ですから、細かくやっていただきたいと思います。

 実は、東日本大震災が終わった年に、全国から、この原発で戦う現場の人たちに対して称賛、本当によくやっているということで、例えばスペインでは、震災があった年に、皇太子賞の平和部門、スペインでですよ、フクシマ・フィフティーズに授与しているんですね。これは、みずからを犠牲にして核災害を食いとめた、そして、深刻な影響が自分たちにももたらされる可能性もあるのに顧みずに働いたということで、スペインで、外国で賞を出されているんですよ。

 総理にお伺いしたいと思います。

 先日、総理は国民栄誉賞を決められたんですが、私は、このフクシマ・フィフティーズの人たちも含めて、こういう人たちが国民栄誉賞に値すると思うんですが、いかがですか、総理。いかがですか。出したらどうですか。

安倍内閣総理大臣 そういう議論を今ここでやるのはいかがかと思いますが、基本的に、国民的なコンセンサスの得られるような、前人未踏の大きな記録を残したり、あるいは記憶を残した方々に対して国民栄誉賞を出していくという方針で我々選んできているところであります。

辻元委員 もうちょっと何か思いを込めていただきたい。なぜかといいますと、先ほどの答弁もそうなんですけれども、ちょっと私、総理がこの事故の実態に対して認識が甘いんじゃないかと。

 といいますのも、先ほど、三月十八日に新たなトラブルがあったと申し上げました。その三日前にこういう発言をされているんです。原子力といういわば過酷事故は経験しましたが、安全性を高める知恵も力もノウハウも手に入れているんですね、それを手放していいのかということで、こういう発言をNHKのニュースウオッチ9でされていました。私、これを聞いたときに、安全性を高める知恵も力もノウハウも手に入れているとは何と楽観的なんだろうと思ったんですよ。

 こういう一連の、またこの三日後に大きな事故もあって、まさか今もこう思っていらっしゃるとは思いませんけれども、認識を変えていただきたいと思いますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 それは辻元さんの認識であって、過酷事故を通じて、今フィフティーズの話もされたじゃないですか、ああいう中において、こうした事故にどう対応していくかということについて、まさに我々は身をもって経験をしたわけですよ。それにどう対応していこうかという不断の努力を行っている。しかし、人間は完璧ではありませんから、いろいろなことがある。でも、そうなっても、過酷事故にならないような対応をとっていくことが重要ではないか、このように思うわけであります。

辻元委員 それでは、総理もおっしゃっていますが、安全性を高めていくことが重要だと思います。総理は、「妥協することなく、安全性を高める新たな安全文化をつくり上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。」というようにも施政方針でおっしゃいました。

 ちょっと具体的に伺っていきたいと思いますが、原子力規制委員会委員長にお伺いします。

 今、活断層の問題とか四十年廃炉の問題など、国民は非常に注視しております。まず、活断層の問題についてお聞きしたいと思います。

 新規制基準の骨子というのを出されておりますが、委員長、そんな答弁書を見なくても、簡単な質問ですから。活断層の上に原子炉があったら、これは安全性が認められないという見解ですね。

田中政府特別補佐人 これまでもそうですが、新しい規制基準でもそこを明確にさせていただきましたけれども、活断層が直接、原子炉の重要施設、分類でいうとSクラスと申していますが、そういった下に明らかにある場合には、それは設置を認めないというのが以前からの指針でもありますし、今回、それをさらに明確にさせていただいたというものでございます。

辻元委員 そうしますと、総理にお伺いします。

 総理は、安全が確認された原発は再稼働とおっしゃっていますので、今、規制委員会委員長は、活断層の上にある原発は安全性の確認ができないという御答弁でしたので、活断層の上にあると認定されたものは再稼働はさせないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 個々の対応については、原子力規制委員会において極めて厳しい基準を決めていくわけでありますから、原子力規制委員会において決められた基準において原子力規制委員会が判断をしていく。我々は、その判断を受けて、稼働するかどうか判断していく、こういうことに手順としてはなっていくわけであります。

辻元委員 ですから、その手順はわかるんですが、今、規制委員長が活断層の上に建っているものは安全と認められないということですから、これは政府としても再稼働させないということでよろしいんですね、総理。

茂木国務大臣 委員も御案内のとおり、今、規制委員会におきまして新しい安全基準をつくっているわけであります。そこの中には、シビアアクシデント対策、さらには……(辻元委員「今の質問に答えてくださいよ」と呼ぶ)ちゃんと聞いてください、きちんとお答えしますから。そして、先々の新しい知見、これも安全基準に入れていく、いわゆるバックフィット、こういったものもとってまいります。

 そして、七月十八日までに新しい安全基準、全体像ができ上がってまいります。個々の問題ではなくて安全基準全体に照らして一つ一つの原子力発電所が安全であるかどうか、当然、規制委員会としてはそういう判断をされるんだと思います。その判断によって安全か安全でないかが決まっていく、こういう法律のたてつけになっていると思います。

辻元委員 総合的に判断するのではなく、今もう、規制委員会委員長が、活断層の上に建っている原発建屋については安全性が認められないとはっきり言った、そして、安全性が認められないということは、再稼働させないんだなと聞いているわけです。いかがですか。

茂木国務大臣 原子力規制委員会は、新しい安全基準に基づいて安全性の確認をいたします。そして、今その作業をまさに規制委員会によって行っているところでありまして、新しい規制基準の全体像ができ上がりましたら、個々の原発の安全性の判断、検証が進むと思っております。

辻元委員 個々のどこの原発と言っているわけではないわけですよ。

 茂木大臣は、福島第一原発の事故を受けまして、いかなる事情よりも安全を重視する、そして、その安全については独立した原子力委員会においてその判断を行うと。

 だから、原子力規制委員会委員長が、活断層の上にある原発は安全は認められないともうはっきりおっしゃっているわけですよ。ところが、曖昧な答弁でしょう。(茂木国務大臣「いやいや、違う」と呼ぶ)では、その点、答えてください、活断層の上に原子炉があるというものについては再稼働はできないと。

茂木国務大臣 辻元委員、よくお聞きください。これは、委員長が一人で、一つの基準だけで安全性を図るものではないんです。規制委員会として新しい安全基準をつくるんです。全体像としての安全基準をつくるわけであります。

 そこの中において、個々の項目でもこれが安全でないというのが出たら、その原発の安全性というのは認められないことになりますけれども、安全基準が出る前に、決まる前に決める問題ではないんです。新しい安全基準に従ってということに法律もなっているんですから。やはり法律に違反しちゃ私はいけないと思います。

辻元委員 もう既に、例えば規制委員長の私案というものも出ておりまして、その私案にも……(発言する者あり)違う違う。今は、この新安全基準じゃないですよ。別の案件。例えば大飯の原発をどうするか。七月で一旦とめて検査をするのか、九月の定期点検まで動かすのかとか、実際もう動いているわけですよ。ですから、私は問うています。

 というのは、今活断層が一番関心がありまして、グレーが多いんですね。グレーが多いから、今大臣や総理としてはっきり答えると何だかまずいかなというようにしか思えません。

 もう一つ、ちょっと伺いたいと思います。

 田中委員長、きのう会議を開いて、何か猶予期間の話を議論したという話も聞いておりますが、この新規制基準に盛り込まれる緊急時制御室、第二制御室というのは、どういうときのために必要なんですか。

田中政府特別補佐人 第二制御室は、特定安全施設という部類に入りまして、通常使っております原子炉制御室が機能しなくなったような事態が生じたときにおいても原子炉を安全に停止していける、そのための機能を持たせるということでございます。

辻元委員 それは、例えば具体的にはどんなときでしょう。何か報道などによりますと、テロとか今回の津波、今回の福島第一原発では機能しなくなったわけですけれども、ああいう事態ですか、具体的に答えてください。

田中政府特別補佐人 テロは想定しておりません。テロの状況とか隕石とかというものについては、今のところ……(辻元委員「具体的にどういうとき」と呼ぶ)実際には、今回の福島のような状況が起きたときに、現在の普通の制御室にとどまることができないような状況が生まれたときに、第二制御室を使って停止させるというような目的です。

辻元委員 そうすると、委員長、お聞きしますが、この第二制御室、すごく重要ですよ。福島みたいな事態と今おっしゃいました。

 そうすると、五年間、これはつくるのを猶予する、期間をですね。七月に新規制基準をつくって、そして審査に入りますが、五年間猶予するというように今議論されているようですが、そうすると、この五年間に、今、規制委員長がおっしゃったような、福島第一原発のような事故であったり、さまざまなそれ以上の事態が起こらないという想定で、五年間猶予するというような議論をされているんですか。

田中政府特別補佐人 そういった過酷事故に対する対策については、さまざまな観点からいろいろな手だてを今要求しております。その中の、基本的には、状況によって対応できるようなものを、例えば電源装置ですと移動電源とかいろいろなことを、水源もそうですけれども、そういったものを準備するわけですね。

 ところが、そういった考え方をとっているのは、アメリカなんかはそういう考え方をとっているんです。それから、固定式で、そういう第二制御室のような安全施設をとって、考え方をとっているのはヨーロッパなんです。

 我が国は、今回の事故を踏まえて、両方を備えるという、非常に、少し厳しい要求をさせていただいています。

 ですから、当面、移動とかそういうことについての安全対策は十分にとらせていただくということで、福島のような事故は二度と起こさないということでやらせていただいていますので、いわゆる特定安全施設という少し時間のかかるものについては、少し時間を、余裕を持って整備していただこうということでございます。

辻元委員 委員長、しっかりしてくださいよ。私たちのときに、委員長を選ぶか選ばないか、民主党政権でした、賛否両論あって、しかし、きちんとやってくれるだろうと。

 今、テロは想定していないともおっしゃいましたね。そんなことを委員長としておっしゃっていいんでしょうか。

 それと、もう一つ、今、サイバーテロもすごく心配なんですよ。サイバー、遠隔操作で。原発はサイバーテロに対して非常に弱いという指摘もある中で、そして、非常に日本は厳しい対応をヨーロッパなどに比べてするようになっていますと、当たり前ですよ、福島の事故があったんですから。

 そうすると、五年間猶予するということは、これはよくわからなかった。五年間にそういうことはない、またはほかのもので対応できるんだということですか。そうすると、五年たって、この第二制御室ができない場合、動いている原発をとめるんですか、どうですか。

田中政府特別補佐人 五年の猶予期間中にそれが整備できない場合には、とめていただきます。

辻元委員 今はっきりおっしゃいましたね。委員長、意見を変えないでほしいんですね。

 というのは、この前、大飯の問題も、経済性とか社会的事案に関係なく、七月に、一旦とめて、検査するんだと。しかし、先日、私案というものをお出しになって、いや、これは九月の定期点検まで動かし続けるんだというように変わってきちゃっているんじゃないかなと。

 もっと申し上げますと、民主党政権のときに、かなり厳しく委員長に対しても、意見は申し上げられませんけれども、やはり原発に対して厳しい姿勢でした。しかし、何かこのところ、安倍政権では、安い電力で経済成長、そのためにスムーズに再稼働させたいという空気が強くなってきている中で、原子力規制委員会までもがそれに引っ張られているのではないかというような声も出ているんですよ。私も心配しています。

 そうすると、私は、五年間の猶予とおっしゃいますけれども、今は福島第一原発の事故があって最初の安全基準なわけですよ。だからこそ、やれることは全部やって、これはサイバーテロの対策もしっかりやらなきゃだめですよ。全部やった上で再稼働の判断だと思いますが、総理、いかがですか。

茂木国務大臣 我々は、原子力については、いかなる事情よりも安全性を大事にしていきます。そして、エネルギーについては、安定供給、これが、国民生活、経済活動の上からも極めて重要だと考えております。

 同時に、今ほとんどの原発が停止をする中で、火力発電に九割頼る、そこの中で、燃料費も昨年三・一兆円上昇するということになりますと、当然、国民生活を考えても、また企業の行動を考えても、いかにしてこのエネルギーコストを下げていくか、これについても政治としてはきちんと考えていかなければいけない、私はそんなふうに思っております。

 大飯の話、いろいろされていますが、ぜひ、大飯の再稼働を決められたのは民主党政権だ、こういったことも踏まえて御議論いただけるとありがたいと思っております。

辻元委員 だからこそ言っているんですよ。前政権も、反省することも、そして厳しくやったこともあるんですよ。経験したからこそ、今申し上げているわけです。

 そして、今、低廉、安い電力が必要、これは私もそう思います、産業政策。しかし、福島以後は、いつも安倍政権の閣僚及び総理は、安い電力というのが先に出てきます。それ以前に、安全な電力を求める時代になったんです。ここが先なんですよ。ですから申し上げているんですね。

 そこで、自民党の十年後のエネルギーのベストミックスについてお伺いをしたいと思います。

 総理、安倍総理がこれについて、それは長過ぎるんじゃないかという批判に対して、これも先ほどのNHKの番組で、私、あれっと思ったのでちょっとこの際お聞きしておきたいんですが、例えば核融合というものは、もう何年もやっていますし、相当なお金をかけていますが、これは短縮しても七、八年はかかります、うまくいけば莫大なエネルギーを手に入れることができると。

 この自民党のベストミックスの中には核融合も含めるということですか。七、八年で、これは可能性があるという何か根拠に基づいておっしゃったんでしょうか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 NHKの番組で申し上げたのは、いわば無責任に単年度でそうしたものができるということを私たちは申し上げるつもりはない、こういう文脈で申し上げたわけであります。

 我々は、三年間において、原発について、安全という判断を規制委員会でされたものについて、政府として責任を持って判断して再稼働させていくわけでありますが、同時に、再生可能エネルギーを初め、そうした新しいエネルギーについて国家資源を投入しながら新たなイノベーションを目指していく、そういう中において、十年以内にエネルギーのベストミックスを構築していくということであります。

 そして、こうしたイノベーションというのは画期的なものができていきますから、そう簡単にはこれは予測できないんですね。ですから、七、八年でできるかもしれないし、それは、今まで五十年とか言われていますから、五十年かもしれないし、そこは今から予測することはできない。だからこそ、我々は、まず三年間で、国家資源を投入する中において、これはかけた予算規模にもよるということもございます、その中において、十年間の中において、ベストミックスをしっかりと構築できるようにしていくということであります。

 中身について、今この場で、何が入っているか、何が何%かというのは、それはわかりませんよ。だから、我々は、できないことを言わないというのが自民党ですから、言うだけにはならないように、三年間でしっかりと、しかも、エネルギーというのは生活においても、産業においても死活的に重要なものでありますから、強い責任感を持って、ちゃんと三年間において、まずは国家資源をしっかりと投入しながら、十年間でベストミックスを構築していくということが責任ある立場であろう、このように考えているところでございます。

辻元委員 今、できないことは言わないとおっしゃったんですが、私はなぜこれを取り上げたかというと、自然エネルギーのことはもうわかっているんですが、核融合だけ、いきなり総理がおっしゃったんですよ。これは、もしもITERのことを指していらっしゃるとすれば、既に予算が七百億円、これが二千百億円に膨らんで、それでも実験炉すらできていない。そして、これは「もんじゅ」の二の舞になるんじゃないかなとちょっと思ったから言ったんですね。

 私は、一連の話の中でこういう話がぽんと出てくるということこそ、今までこれは夢物語になるんじゃないかと言われてきたことをかなり重要なインタビューでおっしゃっている方が夢物語だと思いますよ。できもしそうにないことで、十年間のベストミックスというのを、あたかも何か新しいエネルギーがどんどん出てくるように、何か正当化しようとしているな。それに対して……(発言する者あり)いや、これは「もんじゅ」の二の舞になりますよ。非現実的ですよ、実際に。

 ですから、私は、このエネルギーの問題というのは非常に難しい、それはよくわかります。しかし、原子力規制委員会もしっかりしていただきたい。政治的なことや経済や社会の案件を考えずに、科学的にやるとおっしゃっていたわけです。そして、安いエネルギーで経済成長をという大合唱に、今、安倍政権がなっているように思います。そして、民主党の二〇三〇年代にはゼロにしよう、これは再処理も今後どうするか議論になるかと思いますが、再処理したらプルトニウムが出ますよ。MOX燃料もうまくいきませんよ。いっていませんよ、実際に。

 そして、そういう中で、きょう、石原慎太郎日本維新の会代表がインタビューで、ここにありますが、びっくりしました。「核武装を議論することもこれからの選択肢だ」。

 以前、麻生総理も、私、これは思い出したんですけれども、安保委員会で議論した折に、核兵器というものの保有についても検討すべきか、だんだん隣がみんな持っていくときに日本だけ何の検討もされないというのはいかがなものかとか、安倍総理もかつて、憲法上は原子力爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は、小型であればねと発言されているんですよね。

 プルトニウムがどんどんたまっていく。私は、原発はフェードアウトしていくしかないと思います、その問題から考えても。ですから、自然エネルギーをふやして新しい産業をつくることと同時に、国際社会を見ても、日本の閣僚や政党の代表が核武装の論議を言う、そしてプルトニウムをため込むなんということになったら、日本の信用も下がっていく。私たちは総合的に考えて、トータルに、外交も全て考えて、二〇三〇年代にゼロが現実的だとして民主党は判断をいたしました。

 自民党は、日本を取り戻すというのは、英語で言えばジャパン・イズ・バックというんですか。私は、何か安いエネルギーで経済成長という錦の御旗のもとに、もとのエネルギー政策に自民党は戻っているんじゃないか。日本を生まれ変わらせなければならないわけです。リボーンですよ。

 ということを最後に申し上げまして、余り民主党の政策に非現実的だとおっしゃらない方がいいということを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、細野豪志君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。細野豪志君。

細野委員 私も、お二人に引き続いて、原発につきまして主に質問させていただきたいと思います。

 まず、何人かの質問者から話がありましたが、十八日に起こりました停電トラブルにつきまして、これまでの質問者と私は立場が異なります。それは、事故そのものを担当していた当事者だということであります。あのトラブルが発生をしたときに、日本国民、特に福島の皆さんが大変懸念を持たれたということについて責任がございますので、その点についてはまずおわびを申し上げたいと思います。

 その上で、やはり当事者としてやっていた立場から幾つか非常に気になることがございますので、お伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 茂木大臣、先ほど東京電力の対応についてはさまざまな厳しい指摘がありました。私は、資源エネルギー庁、これは廃炉に向かって責任を持って監督官庁としてやっていく立場でありますから、資源エネルギー庁としてもどう評価をしているのか、それをしっかりとまずお聞きして、どう対応したのかということについても、対応の是非についても、資源エネルギー庁としての対応ですね、簡潔で結構ですので、まず御説明いただきたいと思います。

茂木国務大臣 三月十八日の夜であります、私は、東京電力の報告が若干おくれた、そんなふうに思っておりますが、一報を受けまして、私の方から資源エネルギー庁に対しましても、責任ある人間がきちんと省に出て、東京電力とも連絡を密にするように、そしてまた、定期的に私のところにも報告を入れるようにということで、時系列を追ってそれぞれの事態の収拾、こういったことを進めてまいりました。

細野委員 これは総理にもぜひ認識を持っていただきたいんですが、私が事故を担当していた、初めは補佐官、その後は閣僚としてやりましたけれども、やはり一番緊迫をしたのは、あの事故が起こった三月の十一日以降の一週間。プールの燃料、水が確認をできるかどうか。それを考えますと、六月ぐらいまでが、この四号機のプールを中心にいかに安定化させるかということで一番緊迫したんです。

 総理、改めて認識を持っていただきたいんですが、四号機のプールには何本燃料があるか御存じでしょうか。千五百三十三本です。今回停電のあった共用プールに何本あるか、申し上げたいと思います。六千三百七十七本です。あの停電は二十九時間で回復しましたけれども、総理、仮に四日間続いていたら、四号機については保安規定の六十五度を超えていたんです。そして、さらにそれが続くということになると、それこそ蒸発して水の高さが下がってくるということだって考えられるぐらいの事態だったんです。

 私は、そうならないようにということで、設備の多重化、多様化というものに努力してきたつもりでしたが、いまだ、二年間たって、そうなっていなかった。その責任も自覚しているからこそ、この問題が福島そして国民に対して大きな不安を与えて、現実的に解決しなければならないという責任が政府自体にあるということをぜひわかっていただきたいというふうに思うんです。

 そこで、茂木大臣に一つ確認をしたいと思います。

 三月の十八日に事務方に対して指示をされた。それは、当日ですから、恐らくそれしかなかったと思います。その後、二十一日に原因究明の調査と再発防止の検討を事務方が指示をしたというふうに聞いています。

 改めて申し上げますが、冷温停止状態を達成した一昨年の年末からこの一年と数カ月の中で、今回、最大のトラブルだったと思います。この最大のトラブルのときに、担当大臣である茂木大臣はやはりきちっと東京電力を直接呼び出して指示をするべきだったのではないか。

 私はしつこいぐらいやっていました。顔もつながっていましたし、東京電力に半分住んでいたような時期までありましたから、やや立場は違いますけれども、担当大臣であるならば、責任を持ってこうしたトラブルに対応するという意味では、私はやや危機意識が薄かったのではないかというふうに思います。

 大臣、そこの反省はありませんか。

茂木国務大臣 こういったトラブルがあったわけですから、そこの収束に当たるに当たって、その経験、反省というのは、二度とこういったことが起こらないように生かしていかなければいけない、そんなふうに思っております。

 そして、細野委員がおっしゃった全体のタイムスケジュール、何日だったらもつか、そういったこともきちんと頭に入れながら、それを逆に計算しながら、事態の収拾については確認をしてまいりました。

 考え方はいろいろあると思います。そこの中で、例えば東電に政治家が乗り込んでどなりつける、さらには東電の人間を呼ぶということで、私は事態が収拾されるのではない、専門家をしてきちんと仕事に当たらせる、それができているかどうかをきちんと指導する、これが政治の役割だ、こんなふうに考えております。

細野委員 それは、茂木大臣、ちょっと違うんですよね。

 もちろん、私も技術の専門家ではありません。茂木大臣も技術の専門家ではありません。ですから、個別のことについて、あれはどうなんだ、これはどうなんだと細かく指摘する必要はないと思いますよ。しかし、こういう深刻な事態になったときに、それに対して事業者としてしっかり対応すべきということは、これは責任者としてやはり言うべきなんです。

 茂木大臣、改めてちょっと認識を持っていただきたいんですけれども、茂木大臣は福島第一原発の所長さんの名前を言えますか。もしくは、福島の安定化センターで担当している責任役員、顔はつながっていますか。技術担当部長の顔はつながっていますか。そういった人間も含めて、どういう体制でやっていて、その人間は信頼に足るのかどうかも含めて、やはり大臣自身が踏み込んでやるべきなんです。やれるようにしておくべきなんです。

 もう一つ申し上げます。

 後ろ側には経済産業省で私と一緒に事故対応したメンバーがいます。皆さん優秀な人です。頑張っています。しかし、総理にもこれは認識していただきたいんですが、総理、聞いてください。

 経済産業省は、私が事故を担当していたときに、頑張りましたよ、頑張りましたけれども、事故の収束の一義的な責任はあくまで事業者にあるという、ここはなかなか踏み込めなかった。私は繰り返し繰り返し言っていました、違いますと。

 それは東京電力に一義的に責任はあるでしょう、しかし、それと同時に、事故を起こしたのは政府も同じだけの責任があるんだから、この作業は政府と東京電力が共同作業でやらなければならない、言うならば政府はその当事者なんだということを繰り返し繰り返し言ってきました。

 仲間だったメンバーですから、やや踏み込んで言うのは若干気が、果たしていいのかという思いはありますが、やはり経済産業省の諸君には申し上げたい。この事故の当事者は東京電力だけではありません。政府も直接の当事者です。

 今回の事故の対応、四日間冷却できなければ本当に四号機のあの燃料プールが六十五度を超えていた可能性があるという緊迫感があったならば、私は、ちょっと対応は違ったと思う。

 ですから、茂木大臣にもう一度申し上げたいのは、経済産業省は、時間がたって担当がかわったり、言うならば、それこそ安定した状態になってきたら、徐々に徐々に当事者としての立場から後ろに引いてくると思いますよ。既にその兆しが出てきている。それを、いや違うんだ、経済産業省は当事者なんだから、しっかり自分たちがやるんだというふうに言い続ける役割は大臣なんですよ。大臣、ぜひその自覚を持って、同じようなトラブルは起こしちゃいけません、起こしちゃいけませんが、いろいろなことがあったときに、そのことを繰り返し繰り返し言っていただきたいと思います。

 総理、技術の部分にどれぐらい口を出すかということについては、いろいろあるでしょう。私もそこまでやるべきだとは思わない。

 ただ、改めて確認をしたいんですが、先ほど村上委員の質問に対して、事故の検証については政府が責任を持ってやるという発言をされました。

 もう一つお伺いしたい。事故の最終的な全ての解決、すなわち廃炉に至るまで、政府は当事者としてかかわるべきであるというふうに思いますが、総理、そこはいかがですか。総理にお伺いします。

茂木国務大臣 お聞きいただきました所長、高橋所長だと思います。

 細野委員ほどは、私、緊密にまだ連絡をとっていないかもしれませんけれども、レベルレベルできちんとした連携はとっていかなければいけない、そんなふうに思っております。そして細野委員も、経済産業大臣が東電の福島復興本社の全員の名前を覚えろ、こういうお話でおっしゃっているのではないんだと思います。

 そして、先ほども申し上げましたけれども、事態をいかに収拾するか、どこから危険度が出てくるかということで、やはり今回、私は、四号機の使用済み燃料プールの冷却設備がいつ復旧するか、これに、率直に言いまして、一番注目をしておりました。これについては二十一時間で復旧いたしました。

細野委員 総理にお伺いします。

 総理、事故の、廃炉に向かっての責任は政府そのものがあって、その当事者なんだということについて確認をさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もちろん、一義的には東電でありますが、しかし、とても東電で全部背負い切れるわけではありませんし、原子力政策は国が推進してきたものであります。

 ですから、廃炉に向かって、その廃炉のための技術の革新、研究等については、もちろん国が行っていく分野ではあろう、このように思いますが、基本的に、国も東電とともに責任を持って廃炉に向かって進んでいくように努力をしていく、これは当然のことであろう、このように思います。

細野委員 技術も大事なんですが、事故そのものの最終的な解決に向かって当事者意識を持っていただくということが極めて重要だと思います。

 総理、もしくは茂木大臣もそうなんですけれども、やはりどうしても、時間がたっていることと、政権がかわっているので、そこは私と同じ意識を持っていただきたいんですね。そこは、当事者で来ただけに、あの十八日から十九日は、私もちょっと寝ることがままならないぐらい心配しました。ただ、直接何か言うのも、今野党ですからという気持ちがあるわけです。皆さんに託すしかないわけです。

 ですから、そこはまさに当事者として意識を持って、今の政権の皆さんにやっていただきたいし、官僚の諸君にもそのことを強く求めておきたいというふうに思います。

 では、続きまして、エネルギー政策全体について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、これは総理にお伺いします。

 自民党の昨年の選挙の公約、私、ずっと選挙前から読んでおりました。その中で、こういうくだりがあります。「原発の再稼働の可否については、順次判断し、全ての原発について三年以内の結論を目指します。」こう書いていますね。これは今も守っていこうというふうにお考えでしょうか。総理にお伺いします。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁いたしましたが、三年間、ことしの七月までに規制委員会が厳しい基準を決めていく中において、その後、安全について判断をしていく、そして、基本的にはこの三年間の中において、動かすかどうかということを判断していくことになる、こういうことでございます。

細野委員 今、三年以内に判断していくという話があったんですが、私、この公約を見たときから、ちょっと、正直言って、疑問を持っていました。

 というのは、この再稼働の判断というのは、政権そのものができるわけではないんですね。与野党で協議をして、三条委員会という形で原子力規制委員会が誕生しました。そこで客観的に決めるということになっているものを、政権が三年でせかしてやらせるということは、これはあってはならぬだろうという思いを持っていました。

 そこで、きょう、原子力規制委員会の田中委員長に来ていただいています。私が閣僚をやっておったときは国会同意が得られませんでしたので、仮免許の形になって申しわけなかったと思っています。ですから、しっかりやっていただきたい。

 改めて確認をしますが、再稼働の判断というのは本当に三年以内にできますか。ということは、再稼働しないということになれば、これは廃炉にしなければならないということにもなるわけですから、非常に大きな判断をずっとしていくということになるんですが、それは現実的にできるかどうか。

 そしてもう一つ、先ほど、辻元委員の質問に対して、やや気になる答弁がありました。それは、セキュリティーです、テロ対策。これが安全規制の何か範囲に入っていないかのような、そう聞き取れるような答弁がありましたが、それは委員長、だめですよ、セキュリティーを政府としっかりやるんだから。

 このセキュリティーそのものもしっかりやるという決意を、やはりこういう時期だからこそ、委員長には示していただかなければならないと思いますので、そこも確認をしたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答えいたします。

 私どもの立場としましては、これまでも何度も申し上げていますが、再稼働をするかどうかという判断はいたしません。科学的、技術的な見地から原子力施設の安全性を確認した上で、再稼働に値するかどうかということの判断はさせていただきます。実際には、再稼働をするかどうかということは、ほかのさまざまな要因があろうかと思いますので、そこは私どもは関与しないということでございます。

 それから、三年でということですけれども、今、予断を持って三年でということをできるかどうかということは、申し上げにくいところがございます。それは、事業者からどういった申請が出てくるか、どの程度の申請が出てくるかということでございます。新しい規制基準は相当厳しいものですから、それに合致したものでなければ事業者からの申請は多分ないと思っておりまして、そういうことを踏まえて、申請が出てきたら、できるだけ速やかにその審査を進めていきたいというふうに思います。

 それから、先ほど、核セキュリティーのことで若干誤解があった点は、おわび申し上げたいと思います。

 核セキュリティーは、原子力規制委員会の大きな役割でございます。ただ、先ほど申し上げましたのは、特定原子力施設の位置づけとして核セキュリティーまで考えておるのかということでしたので、そういうことではなくて、核セキュリティーについては、今、関係、警察とか海保ですね、そういうところの御協力もいただきまして、相当厳重に、一般的な意味での核セキュリティーはやっております。

 もう一つ、国際的に見ると、核セキュリティーのレベルが低いのではないかという議論もあります。それにつきましては、先日、核セキュリティーの専門委員会をつくりまして、基本的にそこできちっと、我が国に合った核セキュリティーというのはどうあるべきかということを今議論を開始したところでございます。

 大変申しわけありませんでした。

細野委員 田中委員長は原子力の専門家ではありますが、セキュリティーということになると、全てを専門的にお一人で考えるというのは無理だと思います。だからこそ、官僚のスタッフの中に、警察からも、また防衛省からも職員が入っているということでありますから、そこはしっかりとやっていただきたいと思います。

 総理に、質問はしませんが、改めて申し上げますが、三年以内というのは正直きついと思います、それぞれの原発によって状況が違いますので。自民党の公約とはいえ、三条委員会として独立してやるわけですから、余り三年、三年とおっしゃらず、そこはしっかりと原子力規制委員会に任せて、そこで確実にやっていく、そういう判断をしていただきたい、これは私の方から要望しておきます。

 もう一つ、私の方でやはり正しておく必要があるなと思いますのは、原発の新設です。

 茂木大臣にまずお伺いしますが、十年以内にベストミックス、これを確立するということですね。ベストミックスを確立する、十年以内だということですが、例えば十年をめどにということで考えましょう。そうしますと、ベストミックスが決まって、ベストミックスを満たすかどうかは既存の原発で判断をするわけですね。そうすると、例えば、新設する原発が幾つか計画をされていますが、それらを果たしてつくるのかどうかというその判断は、下手すれば十年以上先になりませんか。そこまでこれを全部放置するんですか。お願いします。

茂木国務大臣 まず、自民党の公約で、一定のめどとして、再稼働については三年ということでありますけれども、もちろん、電気事業者、炉の設置者から申請が来ていないものについては、それは安全性は確認できない、これは誰が考えてもそういうことになるわけであります。

 今後のプロセス、正確に申し上げれば、個々の原発の安全性の確認、まさに新安全基準ができる七月以降になって、当然、申請が出てきても、一遍にたくさん出てきましたら、それを同時にできるかどうか、三チームということでありますから、そうでない可能性もある。そうなりますと、当然、規制委員会において一定の優先順位を立てて、順序立てて、そしてまた一定のスケジュール感、これをもって安全性の判断をしていただける、こんなふうに私は考えております。

 その上で、ステップとしますと、やはり既存の原発をどうするか、これが第一ステップで、原発の新設であったりとかリプレースについてはその次のステップになると考えております。できる限り原発依存度を低減させていく、こういう方向に沿って判断するのは当然のことだと考えております。

 電源構成のベストミックス、これはなぜ十年ぐらいかとか、どういうことをやっていくかといいますと長くなってしまいますので、割愛をさせていただきたいと思っておりますが、電力の安定供給、エネルギーコスト、世界の化石燃料供給リスクの情勢判断、原発事故の検証と安全技術の進歩の動向など、じっくり見据えながら、やはりある程度の時間をかけて検討していくことが必要であると考えております。そういった検討の中で、新設そしてリプレースの問題は検討すべきものと考えております。

細野委員 随分のんびりした話なわけですね。

 そこで、ちょっと一つ具体的にお伺いしたいんですが、山口県の上関原発、あそこが、新設をめぐって非常にいろいろな意見が激しく闘わされております。去年、知事がかわりました。

 あわせてもう一つ、御説明する必要がありますね。

 実は、あそこはもう三十年ぐらい前から原発の新設について議論が行われているんですが、埋め立てをして、その上に原発をつくるという形になっています。その埋め立ての申請免許というのが、これが平成二十年の十月に交付をされておりまして、その一年後、二十一年の十月に、埋め立ての着工の届け出がなされております、三年の期限で埋め立てをすると。去年の十月に三年たったわけですね。それで、これを延長したいということを中国電力が言ってきた。それに対して前の知事さんは、延長は許可できないという発言を一回されて、これで上関原発はもうつくられないという認識が地元で広がりました。ところが、知事がかわって、これは自民党が支持をされた知事さんですが、山本知事になって、今は棚上げというか、判断保留のような形になっていますね。

 茂木大臣、これを十年もこのまま放置するんですか、埋め立てするかどうか。やはり、そういったことについては総合的に考えて、一回白紙に戻すという選択があるんじゃないですか。いかがでしょうか。

茂木国務大臣 上関原発も含めて、新設、リプレースにつきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりであります。

 そして、中国電力によります上関原発の公有水面の埋立免許の期間伸長の申請につきましては、委員も御案内のとおり、公有水面埋立法に基づきまして、これは山口県が審査、判断すべきものでありますので、それにつきまして私がコメントを申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。

細野委員 経産大臣、それは違いますよ。山口県は、国の方針が決まらないから、埋め立てについても保留しているんですよ。ですから、山口県が勝手に判断は、実質的にはできないんです。今の安倍政権、自民党政権がベストミックスを十年決めなければ、山口県知事も同じように、埋め立てについて十年先延ばしをするんですよ。(発言する者あり)十年以内でということであれば、それを決めるまでは動かせないんですよ。ですから、そういう逃げは打っちゃいかぬと思いますよ。

 そして、総理にもお伺いしたいと思います。

 祝島の方々がこのことに反対をされていることは、多分、総理も御存じだと思います。山戸さんという方と電話で少しお話をさせていただきました。知事がかわって、そして安倍政権になって、新設が相当進むのではないかということについて懸念を表明されていました。

 ちょっとこれは、おもしろいと言うとあれなんですが、興味深いなと思いましたのは、山戸さんは、安倍総理の奥様には会ったことがあるそうです。奥様は、原発について反対という発言も既にされている。ここで余りそれを詰めた話はしません。

 ただ、安倍総理、そういう懸念を祝島の方が持っておられて、そして上関原発については、これだけ三十年の歴史があって、埋め立てという物すごく重要な判断の局面に来ているという中で、そろそろこれを白紙に戻すということをお考えいただけませんか。

 もう一つ理由があります。それは、九電力、原発を持っているところがありますが、冬の電力の需給関係からいうと、中国電力が一番余裕があるんですよ。つまり、原発の新設の必要性についても、実は緊急性はない、ほかの電力でやっていけるという状態にあるのが中国地方なんですね。

 それでも、原発、やりますか。

安倍内閣総理大臣 事実関係については茂木大臣から答弁をいたしますが、我々は、十年間ずっと何もしないというのではなくて、三年間を目途に、いわば原発を再稼働するかどうかというのを判断を進めていって、そして、その中において再生可能エネルギーを初めさまざまな新しいイノベーションに挑戦をしていくという中において、十年間でベストミックスを構築していくわけです。だから、順次、代替可能なエネルギーにかえていく、そして依存率は低減していくということでありまして、この十年間の中においてそれを構築するということでありますから、十年間、例えばそうしたところについて判断をしないということではないということであります。

 また、上関については、これは長い歴史があることでございます。確かに、祝島の方々は強く反対をしておられるということは承知をしておりますが、一方、上関の皆さんについては大分状況が違うわけでありまして、前の知事さんも自民党の支持の知事でありましたし、この知事が後継者として指名した今の山本知事が、いわば反原発ワンイシューで戦った飯田さんと、上関においては圧倒的大差で現知事が勝っているというのもあるんですね。実は、山口県全市町村で二番目に高い得票率をとったのが上関であるということもつけ加えておきたいと思いますが、その中において、どちらにしろ、この問題については、先ほど茂木大臣から答弁をさせていただいた姿勢で我々は考えていきたいと思っております。

細野委員 十年かどうかはわかりませんが、これ以上、上関の状態を、政府が決めない中で、ずっと同じような状況を続けるのは、これは私はよくないと思いますね。

 私どもが政権をとっていたら、新設については、しないという方針を出していました。そして、この上関原発はちょうど埋め立ての申請、延長ということでしたから、そこで判断できたと思います。ここは政権として判断が大きく分かれるところだということがよくわかりました。私どもとしては、そういう主張をこれからもしてまいりたいと思います。

 残された時間が約十分ほどとなりました。きょうは、エネルギー、原子力ということが主でありますけれども、一点だけちょっと違う議題を、理事の皆さんにもお許しをいただいて、させていただきたいと思います。

 主権回復の日についてであります。

 四月二十八日に主権回復の日を政府として式典を行うということが発表されております。これは閣議決定がされていますね。私どもとしても、この主権回復の日をどのように判断していくのかということについて、さまざまな意見を今交わしているところでありまして、このことを考える上で、総理に少し認識をお伺いしておきたいことがございますので、幾つか質問させていただきます。

 去年の四月二十八日、自民党を中心として、主権回復六十周年の記念の国民集会というのが開かれていて、安倍総理は、当時は総理ではおられませんでしたけれども、メッセージを出されています。メッセージですから、余り一つ一つの言葉は揚げ足をとるつもりはありません。ただ、そこに総理の重要な歴史認識が入っているのではないかというふうにも思いますので、少し紹介をさせていただきたいと思います。

 本来であれば、この日をもって日本は独立を回復した日でありますから、占領時代に占領軍によって行われたこと、日本がどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか、もう一度検証し、それをきっちりと区切りをつけて日本は新しいスタートを切るべきでしたと。

 つまり、昭和二十七年四月二十八日のサンフランシスコ講和条約の出発というのは、本来あるべき姿でのスタートではなかったというふうに読める御挨拶をされているんですが、日本はどのように改造され、精神に影響を及ぼされ、そしてスタートがなぜ間違っていたのか、そのあたりについて、ちょっと総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 昨年、ほぼ自民党主催だったのかな、主権回復の記念日が開催されたわけでございまして、私は、たまたま前から約束をしていた講演がございましたので、ビデオメッセージを出したわけでございます。

 昨年、いわば六十年を記念して行った式典ではございましたが、六十年前にまさに日本はサンフランシスコ講和条約、平和条約を結んで、戦争時代を終結したわけでございます。七年間の占領時代というのは戦争状況の継続であるということなんですね。そして、平和条約を結んで、日本は外交権を初め、初めて主権を回復したということになるわけであります。

 ただ、私が投げかけた問題点は、きっちりとそこを区別していなかったことによって、占領時代と、これから独立をしたという、いわば精神においての区切りをつけていなかったのではないかということですね。

 そして同時に、この七年間の間に、憲法とかあるいは教育基本法、国の形を決める基本的な枠組みができた。そして、それは果たしてそれでいいのかということであります。例えば、ドイツにおいては、いわば占領軍がいた段階におけるものは、憲法ということではなくて基本法という形にして、そうした状況が変わったときにもう一度考え直そうということでありましたが、日本はそうではなかったということであります。

 そこで、もう一度それをやはり考えてみるべきではないかということを申し上げたわけでございまして、それは、六十年前に、本来であればやっておくべきことだったのではないかという問題意識を申し上げたところでございます。

細野委員 確認ですが、そうしますと、憲法ができたのは昭和二十一年ですね。二十七年に日本はサンフランシスコ平和条約が発効して独立をしていますね。つまり、その六年間の間、もしくは独立をするときにはもう憲法は新しくしてスタートしておくべきだった、そういう御認識ですか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、いわばさまざまな疑問があって、例えば、ハーグ陸戦協定上、占領している期間にはその国の基本法を変えてはならないという規定があるわけでありますが、しかし、その中において我々は、事実上、これは占領軍がつくった憲法であったことは間違いがないわけであります。形式的にはそうではないわけでありますが、しかし、占領下にあってそれが行われたのはファクトとして事実であります。その中において、やはり占領が終わった中において、いわばそういう機運を盛り上げるべきではなかったかというのが私の考えであります。

 まさに、これは昭和二十一年でありますが、当時の幣原内閣において、松本烝治担当大臣が案をつくっていたわけであります。甲案、乙案というのを考えていたわけでございますが、これは二月一日に毎日新聞がスクープしたわけでありまして、このスクープした案を見てマッカーサーが激怒して、そして二月の四日にホイットニー民政局長とケーディス次長を呼んで、もう日本には任せておけないから、これは私たちでつくろうという指示をホイットニーとケーディスに出して、そして、ホイットニーがケーディスに対して、委員会をつくってつくりなさい、そして二十五人の委員が、そこで全くの素人が選ばれて、たったの八日間でつくられたのが事実であります。これが原案と言われているわけでありますから。

 しかし、そこは、そういう事実も踏まえて、その段階ではそういう事実に対してもみんな目を覆っていたんですよ。ですから、そういう事実をやはりちゃんと見ながら、自分たちで真の独立国家をつくっていこうという気概を持つべきではなかったかということを申し上げたわけでございます。

細野委員 御認識はよくわかりました。

 もう一つお伺いしたいんですが、私は……(発言する者あり)では、申し上げます。

 私は、戦後のこの歴史の中で、現行憲法が果たしてきた役割を前向きに評価をしています。もちろん、完璧なものではなかったかもしれない。しかし、当時の我が国の状況の中で、三原則、すなわち、国民主権をしっかり確立し、基本的人権を守り、そして平和主義を保っていく、この三原則のもとに戦後六十年にわたって日本が独立国としてやってきたことを評価しています。ですから、そこは、総理と私の考え方というのが恐らく異なるということだろうというふうに思います。

 その上で、総理、お伺いしたいことがあります。それは、憲法というのは何のために存在するのかということですね。憲法というのは、何のために存在するんですか。どういったことが一番重要なんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、勝手に、私があたかも自由や民主主義や基本的人権、そういうものを否定しているかのごとく発言されるのは極めて迷惑な話でありまして、自民党案においても明確に、平和主義、そして自由民主主義、基本的人権、この基本的な考え方、国民主権、そうしたものは受け継いでいくということをあらかじめ宣言をしているわけでございます。そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。

 憲法制定過程における問題点について私は申し上げているわけでありまして、しかし、その問題点は決して小さなものではないということは申し上げておきたいと思うわけであります。

 そして、同時に、憲法というものについては、いわば権力を持っている権力者側に対して、かつては王権でありますが、王権に対してさまざまな制約を国民が課す、そういう存在でありました。しかし、今、自由や民主主義が定着をしていて、国民主権ということが明らかになっている中にあって、果たしてそれだけかどうかということなんですね。いわば、どういう国にしていくかということも、やはり憲法には、これは込めていくべきなんだろう、このように私は考えているわけであります。

細野委員 先ほど私が、総理と私が違うねと申し上げたのは、現行憲法に対する評価が違いますねということを申し上げたんです。総理は、できればスタートから、現行憲法ではなくて、自民党が主張してこられたような憲法が必要だというお考えだった。私どもは、現行憲法が戦後果たしてきた役割を前向きに評価をしているという意味で、違いますねということを申し上げました。

 今、総理が立憲主義についておっしゃいました。そうなんですよね、憲法というのは、権力をしっかりと縛るためのものなんです。そういった意味で、自民党が出されているこの自民党憲法案というのは、そういう大原則を私は逸脱していると思います。きょうは、そのことを長々ここで議論するつもりはありませんが、そこは、戦後に対する認識であるとか憲法観が、自民党と民主党とは違うところがある。

 したがいまして、四月二十八日の、この歴史をどう見るかについても、ややスタンスは違うけれども、私は、日本が主権を回復したということ自体は前向きに評価をしておりますので、この会合には党を代表して出席をしたいというふうに思っております。

 その上で、総理、もう一つ提案があります。

 四月の二十八日は、本当に日本が真に独立した日なのかということについて、私は疑問を持っている。なぜなら、四月二十八日に独立することができなかった人たちがたくさんいるわけですね。奄美の皆さん、小笠原の皆さん、そして沖縄の皆さんです。沖縄の皆さんが本土に復帰をされたそのときが、本当の意味で日本が独立をした日じゃないですか。

 そこで、提案があります。昭和四十七年五月十五日、沖縄本土復帰の日を、四月二十八日と同じように政府としてしっかりと式典をする、それを主権回復の日としてもう一つしっかりと定めるということを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今から六十一年前に日本は主権を回復しましたけれども、残念ながら、主権外に奄美、小笠原そして沖縄があった。しかし、このときに、サンフランシスコ講和条約において平和条約を結ばなければ、そもそもそうした主権外に置かれている地域を取り返す外交権すらなかったわけでありますから、当時は苦渋の決断なんですね、占領軍がいるんですから。

 その中において、まず占領軍から、基本的には、占領軍という形ではなくて、当時の日米安保条約という形で、条約に基づく駐留軍という存在に変えて、占領軍から自分たちの主権を取り戻して、外交権を回復して、そして悲願として、そうした主権外に残された方々を取り戻す。

 その中において、当時の自民党も、その段階では自民党ではありませんが、佐藤栄作も、まさにライフワークとして、沖縄が返ってこなければ戦後は終わっていないということは明確であったわけでありまして、そういう歩みをしてきたということは、それは間違いがないということは申し上げておきたいと思います。

 そして、ことしの主権回復の日、平和条約を記念する式典でございますが、これは毎年毎年やるというものではなくて、昨年が六十年という節目でございましたが、まだそれができなかったのでということでやるわけでありまして、どういうタイミングでやるかはまた今後考えていきたい。

 これは毎年毎年やっていく式典ではないということは申し上げておきたいと思いますが、同時に、沖縄のいわば返還された五月十五日でございますが、この日についても、どういうタイミングでやるかどうかということは考えながら、今細野幹事長が言われた点は、我々も当然考えていかなければならない、このように思っております。

細野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて長妻君、辻元君、細野君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 公聴会の件についてお諮りいたします。

 平成二十五年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は来る四月十一日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑を続行いたします。藤井孝男君。

藤井(孝)委員 日本維新の会の藤井孝男でございます。

 きょうは、原発関係とエネルギー関係の集中審議ということでございますが、午前中の質疑をお聞きしておりますと、ほとんどが原発関係の質問が多かったように見受けます。私は、総理初め関係大臣に、エネルギーを中心とした安定供給、あるいは総合エネルギー政策、あるいはエネルギー資源外交という観点から質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、確認といいますか、今度、原子力規制委員会と名前が変わったんですかね、田中委員長がいらっしゃっているのでお聞きいたしますが、新聞等によりますと、七月に新たな規制基準を示すということになっていますが、これは間違いございませんか。確認をさせていただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 改正原子炉等規制法の施行が七月十八日に期限とされていますので、それまでに新規制基準を公布することとして今準備しておりますので、大丈夫でございます。

藤井(孝)委員 ということは、ちょっと懸念しておりましたのは、この原子力の安全基準、規制基準というのが、厳しくといいますか、二度と事故が起きないためにも慎重を期しているという話がありまして、ややもするとこれがおくれるんじゃないかという懸念があったものですから、あえてお聞きいたしたわけであります。

 では、間違いなく七月十八日の期限までに公開するといいますか、公示するといいますか、そういうことでよろしいですね。それでよろしければ結構です。

 それで、実はなぜ私がこの質問をしたかといいますと、もしこれがおくれるというようなことになりますと、今、電力各社はたしか六、八%、値上げを申請していると思うんです。これは、新しい規制基準が出た後も、そして今原発がほとんどとまっている状況ですけれども、もしこの公示がおくれて再稼働ができるかどうかという、それをクリアしなきゃいけない問題はありますけれども、しかし、多分、電力各社は、クリアするという前提で、そういったことも含めて六、八%の値上げを申請しているのではないかというふうに私は考えておるんですね。

 もし、これがおくれたり、なかなか再稼働ができない、安全を満たすことができないということで延びれば延びるほど、今、円安傾向になっていますから、そうなりますと、電力会社は非常にまたこのコストを吸収するのが難しい、そういう状況にならざるを得なくなるわけであります。

 同時にまた、これは茂木経産大臣よく御存じのように、電力各社は、この不幸な事故がありまして以来、いわゆる天然ガス、石油あるいは一部石炭等々を輸入してフル稼働しているわけです。とりわけ石油火力発電、これは古い老朽化した発電所を今再稼働させてフル稼働している。私は、原発の事故は大変な事故でありましたけれども、この石油火力の発電所も相当無理して稼働しているんじゃないかなと。

 そういったことを踏まえて、その点について、経産大臣、その辺は大丈夫かどうか、ちょっとお聞きしたいんですが。

茂木国務大臣 委員御指摘のように、あの三・一一の東日本大震災そして原発事故以来、ほとんど原子力が稼働しないという中で、今、日本の発電は九割が火力に依存をする。これが、電力各社にとりましても、コスト的に大きな負担になっているのは間違いございません。

 そして、老朽化した火力のたき増しをやっておりますので、この部分につきましても、設備の更新であったりとか高効率化を進めていくことが喫緊の課題だと考えております。

藤井(孝)委員 そういう認識で、要注意と申しましょうか、チェックを常に怠らないようにしていただきたい。もしここがまた別な形の事故が起きたり、稼働ができなくなったりしますと、本当に日本の国民生活あるいは産業基盤に大きな影響を与えるということですので、その点をよろしくお願いいたしたいと思います。

 なぜ私は非常に心配して今質問をいたしたかといいますと、これはもう釈迦に説法ですけれども、日本のエネルギー自給率というのは、原子力を含めて大体一番ピークのときで一九・五%ぐらいあった。しかし、三・一一以降、今現在ほとんどの、五十基の原発がストップしている状況ですから、そうしますと、日本のエネルギー自給率というのは四・四%かその程度の自給率。日本の食料が非常に自給率が低いといっても、カロリーベースで四〇%あるわけですが、エネルギーに関してはこれはもう四%という、ほとんど海外から天然ガス、石油、石炭等々を輸入しなきゃならない。

 こういう状況の中で、日本の国民生活をいかに安定的に、あるいは経済成長させていくか、あるいはまた産業基盤を強化するかというのは、まさにこのエネルギーをいかに安定して供給するかというのが、私は国家的に一番大切な、国の根幹をなすものだと思っているわけであります。

 そこで、経産大臣が、たしか二月でしたか、基本方針の中で、エネルギー政策全体については、中長期のエネルギー構造も含め、総合エネルギー調査会にて三月を目途に検討を開始し、具体化を進めたいと言われていますが、この点について、今の状況、今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 藤井委員は、かつてアラビア石油に御勤務をされまして、特に資源外交であったりとかエネルギー政策に造詣の深い先輩議員だと、かねてから敬愛をいたしております。

 委員御指摘のとおり、資源小国であります我が国、エネルギーの自給率、これは四%でありまして、欧米諸国と比べても自給率が極めて低い、この向上というのが非常に大きな課題だと思っております。

 そして、委員御指摘のとおり、エネルギーの安定供給、これが何よりも重要でありますし、直近の状況におけますと同時に、コストの低減をいかに図っていくか、こういったことが重要だと考えております。

 そのために、まず、エネルギーの調達そして発電のサイドで、再生可能エネルギー、これの最大限の導入を行うと同時に、低廉なLNGの確保、そして世界最高水準の石炭・LNG高効率発電を環境に配慮しながら導入する、そういったことによりまして、多様なエネルギー源の確保、そしてまた多角的な資源の確保、こういったことが重要になってくると思っております。

 そういった観点からも、総合資源エネルギー調査会におきまして、現在、総合部会で検討をスタートいたしまして、年内には一定の結論を得るべく作業していただいているところであります。

藤井(孝)委員 ぜひ着実な、国民に対してもあるいは各産業界に対しても、このことをしっかり具体化して実現に向けて進めませんと、多分、私は、七月にこの新たな規制基準が出るようですけれども、なかなかそれをクリアしたからということにはなり得ない、なかなか難しい問題があって、結果的に、原発が稼働するかどうかというのはまだ不確定なような状況だと思うんですね。そういう中で、やはり一方で、石油、天然ガス、あるいは輸入先のリスクヘッジ、いかにも中東に偏り過ぎている我が国の輸入状況を打破するためにも、どうぞ中長期的な政策を含めて、経産大臣、この計画をしっかりと立てていただきたいと思っております。

 国民の皆さん方にも私も常に申し上げて、また地元でも言っているんですけれども、先ほど申し上げましたように、食料も足りない、TPPの問題もいろいろありますけれども、しかし、何といいましても、エネルギーの自給率が四%台、本当に心もとない。これで世界の経済大国を支えていくというのは至難のわざであります。

 同時に、世界的な傾向として、私はまたこれも何度も申し上げていることなんですけれども、今、世界では三つの奪い合いといいますか争いがあるというのは、一つは今言ったエネルギーの争奪戦、もう一つは食料の争奪戦、そしてもう一つは水の争奪戦、これが世界の三大争奪戦と言われています。

 特に水については、日本は、災害、水害、台風等々で、長期的な雨で、水は十分あるじゃないかと思いがちだと思いますけれども、しかし、食料は四〇%しか自給率がない。その他の食料については、海外の耕地をお借りして、そこから生産できるいわゆる農産物を日本は輸入しているということですから、そこにも雨が降らなければ農産物は育たないわけですから、これを間接水、バーチャルウオーターといいますが、そういった意味で日本は恩恵をこうむっているわけですね。

 そういったことを、日本人が、我々国民も政治家もしっかりここのところをわきまえて、いかに日本がこれから先進国としての、またアジアのリーダーシップをとっていくためには、まさに根幹を揺るがすようなこのエネルギーの問題というのをしっかりさせないと、先ほど申し上げたように、日本の産業基盤、生活基盤も揺るがしかねないということでありますので、その点をあえて私はお聞きしたわけでございます。

 そこで、もう一つの問題を総理にちょっとお伺いしたいんですが、最近、どなたでも、シェールガスというのが頻繁に出てまいります。シェールガスというと、国民の皆さん方もわかっている方はいらっしゃると思いますけれども、このシェールガスというのは一体何ぞや。

 今、シェールガス革命とも言われています。世界じゅうに、シェールガスの埋蔵量は、多分二百年から三百年の埋蔵量があるだろうという説もあるぐらいです。石油に取ってかわる新しいエネルギー源だと言われておりますけれども、きょうはエネルギー庁長官、いらしていますね。まず基本的に、このシェールガスというのは一体どういう代物なのか、そういった点について、むしろ国民にわかりやすく教えていただけますか。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 シェールガスというのは、薄くてかたい岩石が折り合った地層中に含まれる、いわゆる天然ガス、メタンガスでございます。

 これは薄くかたい岩石が折り重なった地層中にございますので、流動性が極めて低くて、単にこのシェールガスを掘っただけではガスはほとんど地上に噴き出してまいりません。そのために、この開発のためには、水平に井戸を掘る技術でございますとか、あるいは水圧によって人工的に岩石に割れ目をつくる、こういった技術が必要でございます。こういった技術が進歩いたしましたために、二〇〇六年以降、アメリカにおいて生産が拡大しております。

 ただ、御指摘のとおり、世界じゅうにこれは賦存しているというふうに言われております。

 以上でございます。

藤井(孝)委員 簡単に言いますと、頁岩といいますか、一つの地層の岩石の中にガスが埋蔵されている、しかし今まではそれを地上に吸い出すことができない、くみ出すことができないということで、新しい技術が発見されて、特にアメリカを中心としてこのシェールガスが開発されているということなんですね。

 そこで、もう一つお聞きしますが、アメリカは今急速にシェールガスを開発していますけれども、そうすると、このシェールガス、私の認識だと、石油と違ってガスを液状化しないと輸出できないわけですね。天然ガスとある意味で似ているところがあるんです。石油の場合はその埋蔵量のまま保存していても大丈夫なんですけれども、シェールガスは、開発して生産しますと、それをいつまでも保管、保存するというのは劣化してきますから、多分これを輸出していかなきゃいけない。

 そういう意味では、アメリカはこれだけ、乱開発とまではいきませんけれども大変なスピードで開発している、その分を、アメリカのそういった関係業界それから産業界もこれを輸出しろと。しかし、アメリカの法律というか考え方は、これを輸出するには、いわゆるFTAの締結国には輸出することができるけれども、その他の国については個別的な交渉だと。だから日本も、リスク分散でアメリカからLNGも入れようとしている、そして、さらには将来このシェールガスを輸入しようとする場合、個別交渉になるわけですけれども。

 そういった意味においては、アメリカはそれまで、どちらかというと、石油大国でありながら、安全保障上石油はなるべく保存しておいて、中東を初め海外から膨大な石油、天然ガスを輸入していた国ですけれども、もしこれが今後、LNGも含めて、あるいはシェールガスも含めて、アメリカが輸出を促進するということになりますと、これは大きくアメリカのエネルギーの政策が転換するということになるんですね。

 そうなった場合に、総理、これが為替にも大きく影響してくると思うんですよ。きのう、アベノミクスで大胆な量的緩和が日銀を中心に行われましたけれども、これによってさらにこれから後押しして、期待感だけじゃなくて本当に経済的な要因で日本の景気がよくなっていく、あるいは物価目標が二%を達するということで、経済的な要因で日本の為替が円安になる。ある意味では、為替というのは、円安、円高、プラスマイナスがありますけれども。

 いずれにしましても、そういうことであるならば、私は、雇用もふえ、賃金も上がってくると思うんですけれども、こうしたアメリカのエネルギー革命がもし起こり得るとすれば、これは大きな構造的な変化で、世界の為替市場にも影響するし、多分、LNGもシェールガスも、特にLNGも原油価格にリンクしている形になって値段が決まってくる。そうなりますと、日本が、いわゆる輸入国である国が商業ベースだけでこれを輸入しているということになりますと、また高い油を買わざるを得ない。

 そうすると、これが産業のあるいは生活のコストアップにつながっていくということで、こうした考え方を踏まえて、このオイルシェールガスあるいはLNG、エネルギーの供給先の分散化というのは大変大事なんですけれども、そういったことも含めて、このアベノミクスというのはそんな要因も含めてお考えいただきたいと思っていますが、いかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になったように、経済を成長させていく上において、安定的な、そして廉価なエネルギー源を我々は得て、そういう供給を確保していくことが極めて重要であります。現下の情勢においては、その多くをアラブの国々に頼っているわけでございますし、石油も、そしてガスもホルムズ海峡を通ってくる。我々としては、なるべく供給源を分散化していきたいという考えでございます。

 そこで、シェール革命でございますが、まずは、現実的に供給できる国として米国が考えられるわけでございまして、二月の日米首脳会談においても、オバマ大統領に対して、このシェールガスについて、日本への供給についてこちらからお願いをしたわけでございます。そしてそこで、オバマ大統領は、同盟国の日本の重要性を十分に考えながら判断をしていくということでございました。

 今後、いわばガスの供給国としてはロシアも考えられるわけでございます。御承知のように、中東ではカタールがございますが、いわば買い手側として、幾つかの供給先を得ることによって、ある程度価格について我々も交渉できる立場になっていくことができる。

 このように、安倍内閣におきましても、官房長官のもとに、戦略的に、エネルギーの供給についてどのように対応していくか、どのように安く買っていくことができるかどうかということを今考えているところでございまして、そういう観点からも外交を展開していこうと思っているところでございます。

藤井(孝)委員 そこで、一つエネルギー庁長官にお聞きしますけれども、今総理から、いわゆる供給先、輸入先を分散化する、リスクヘッジをしていかなきゃいけないということでありますが、私の理解しているところですと、LNG相場というのがあるわけです。

 特に、今カタールという国の名前が出てまいりましたけれども、カタールは今、年間で大体一億トンぐらいの天然ガスを生産しております。多分、これが数年先には一億四千万トンぐらいになるんだろうと思います。同時に、今生産しているうちの七割近くは日本に輸出している。ですから、最大の顧客の中部電力さんが、浜岡がああいう状況になっていますので、今急遽カタールにお願いして、カタールは快く供給プラスアルファをしていただいている。ありがたいことなんですけれども、しかし、値段は決して安くはない。

 そしてまた、カタールはまださらに生産を増産させる整備をしているということで、その分をアメリカに売ろうとした傾向があったんですけれども、しかしアメリカは、先ほど申し上げたように、LNGを輸出しよう、あるいはシェールガスも輸出しようというような動きになってきて、アメリカがカタールからの天然ガスを買うことがほぼなくなったということで、今、そのカタールの余剰天然ガスがヨーロッパにスポット的に流れている。

 それがどういう影響を与えているかというと、今度は、ヨーロッパに最大の顧客を擁しているロシアの天然ガスが、なかなか価格を維持しながらヨーロッパに流すことができない、輸出することができないという難しい問題になっている。

 そして、そうなると、ロシアはやはりその価格を維持する、それによってロシアの経済の根本は成り立っているわけですから、それがウラジオストク、いわゆるサハリン、そちらの方に開発。そこへ日本の企業とコンソーシアムを組んで、そこで天然ガスを開発して日本に送り込む。

 要するに、言い方は語弊があるかもしれませんけれども、今、LNGドミノみたいなのが起きているわけですね。

 そういった中での日本というのは、あらゆるところにリスク分散と同時に、単なる輸入するというんじゃなくて、そうなると、そのもととなる権益までも獲得して、そしてそれは、ただ民間だけに任せたらとても資金的にも、あるいはリスクをしょうこともなかなか難しいということで、一つの役割をしているのがJOGMECという機構だと思います。

 このJOGMECというのは、要するに石油天然ガス・金属鉱物資源機構、これは、かつて石油公団というのがあったんですが、石油公団がいろいろな無駄を使っている何だかんだということで、これを廃止して、いろいろ紆余曲折して、今はこういうJOGMECというシステムになっているわけなんです。

 そこでまたエネルギー庁長官にお伺いしますが、これも、国民の皆さん方、JOGMECといってもどういう役割をしているのか、そういったことについてちょっと御説明いただけますか。

高原政府参考人 JOGMEC、今委員が御紹介くださったとおり、大変長い名前でございます、日本名でいいますと石油天然ガス・金属鉱物資源機構といいます。

 この具体的な業務といたしましては、我が国の企業によります探鉱あるいは開発事業に対しまして、リスクマネーを供給いたします。出資ですとか融資ですとか債務保証でございます。それからまた、実は、技術協力などを通じまして資源国との関係強化も図っております。それから、事業リスクが非常に高く開発の進んでいない地域における地質の構造調査、こういったことも行っております。その他、石油及び金属鉱物の備蓄でございますとか、あるいは鉱害の防止事業の支援なども行っております。

 以上でございます。

藤井(孝)委員 長官、済みません、もう一つ。

 それで、今、平成二十五年、これは大臣の方に聞いた方がいいのか、JOGMECに対する予算規模は、独立行政法人ですよね、どんな規模になっているか教えていただけますか。

高原政府参考人 まず、これは政府が出資を行っております。出資の金額は四千三百六十五億円でございます。

 さらに、東日本大震災の後に資源確保の重要性がさらに再認識をされたということでございまして、国際的な資源獲得競争が激化していることなどを踏まえまして、昨年、JOGMEC法を改正いたしまして、資源確保のためのリスクマネーの供給機能を強化するということでございます。産業投資資金の追加、三百三十六億円だったところを千二百三億円までリスクマネーの供給が可能になっている、そういう次第でございます。

 以上でございます。

藤井(孝)委員 そこで、具体的なことをむしろ例に挙げた方がいいんじゃないかと思うんですね。

 というのは、モザンビークという国があって、アフリカの東海岸の方ですね、ここのところに、海上でいわゆる巨大なガス田が発見された。たしかこれはJOGMECも出資してというか、やって、世界三大ガス田になり得るような埋蔵量が発見されたということですね。これは大変すばらしいことだ、画期的な発見だと思っております。

 しかも、これは海上ですので、アフリカ地域は非常に治安が不安定なところですから、モザンビークも決して治安がいいとは言い切れない国でありますけれども、そういう中でこうしたガス田が発見される、そしてそこに出資をした。しかし、これから先、これを開発しただけではなくて、さらに設備投資をして、そして輸出できるように液化して日本に持ってくる。

 実は、八三%、石油はホルムズ海峡に頼っております。さらに、LNGも三〇%近くホルムズ海峡に頼っている。そうなりますと、もしこのガス田が、今後しっかりと開発し、そして液化して日本に送ってこられるようになると、ホルムズ海峡を通らずに巨大なLNGを日本に供給できる。

 こういうことに今JOGMECが非常に貢献している。そしてまた、一般の民間企業もそこに参加してくる。こうした技術というものは日本は既に持っていますから、これは大変なことだと思っているわけでございます。

 そういう意味で、総理、こういう地道な、このJOGMECという機構があるわけですから、こうしたことの今の予算規模、これは決して多くないと私は思っています。要するに後年度負担で、これを成就して日本に供給する、そういう観点からのエネルギー政策というものを考えてもらいたいと思うんですが、総理あるいは経産大臣、どちらでもよろしいですけれども。

茂木国務大臣 資源の川上の分野に日本として参画をして、きちんとその権益を確保していく、極めて重要な課題である、そんなふうに思っております。

 そして、石油でいいますと、委員御指摘のとおり、中東からの輸入の依存度が八三%、それに対しまして、天然ガスの場合は二九%であります。

 そして、価格におきましても、まだ国際価格が天然ガスの方が比較的市場メカニズムができ上がっていないということで、安価な調達も可能になってまいります。

 例えば、先ほど御指摘いただきましたアメリカのシェールガス、掘り出すコストが大体百万BTU当たり三・三ドルで、そして液化する三ドル、日本に輸出をする三ドル、九・何ドルから十ドルぐらい。ところが、現在、日本が買っております天然ガス、これは大体十六ドルから十七ドルということでありますから、かなり安く買える部分もあります。モザンビークのプロジェクトもございます。

 現在、オーストラリアであったりマレーシア、こういったところから輸入しております天然ガスにつきましても、新たな権益をさまざまな地域で開発していく、極めて重要な課題だと思っております。

藤井(孝)委員 そこで、もう一つ。

 モザンビークでも発見された。あるいは、モザンビークは内陸部では今度、これも新聞に、きょうか、出ていましたが、新日鉄住金の方があそこの石炭の開発の契約をしたということで、そういう意味では、着実に日本も世界各国に供給先を、石炭にしろ石油にしろ天然ガスにしろ、リスク分散しているというのは結構なことだと思っています。

 しかし一方では、ことしの一月にも大変不幸な事件がアルジェリアで起きたわけですね。十名の日本人が犠牲になったということで、中東、アフリカの政治情勢というのは決して私は楽観視しておりません。

 シリアも今内乱状態になって、単に反サダト対サダト派ではなくて内乱状態になっている。あるいはイラクも、アメリカ軍は撤退したけれども、さらに、シーア派、スンニ派のいわゆる争いで多くの犠牲が出ている。アフリカに目を転じましても、あのイナメナスの事件以来、日本人の人質はその後出てきていないのは幸いでありますけれども、私が聞くところによると、イギリス人、フランス人は相当人質をとられて、犠牲になったということがまだ起きているというふうな状況で、不安定な状況が続いている。

 そういう意味では、これから日本がさらに中東、とりわけアフリカの方へ進出するためには、政治情勢をよく把握しておかなければならないんですが、この点について、外務大臣、どういう認識でおられるか、お聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 中東・北アフリカ地域は、いわゆるアラブの春と呼ばれる、数十年に一度の大変革を今経験しております。新しい国づくりに向けた民主化プロセスが進んでおりますが、他方で、長期的な民主化の成功のためには、政治、経済、社会面の抜本的な改革が必要であり、これからが正念場という認識を我が国も国際社会と共有しております。

 そして、この地域において重立った国の状況を申し上げるならば、例えばイランにおきましては、核問題につきまして、我が国は深刻な懸念を国際社会と共有しています。EU3プラス3とイランとの間で協議が行われていますが、ぜひ対話を通じて結果が出ることを期待はしていますが、我が国は、対話と圧力のアプローチに基づき、我が国独自の形成してきたパイプを活用しながら働きかけを行っております。

 ホルムズ海峡につきましては、イランの核問題をめぐりまして、二〇一一年末から二〇一二年初頭にかけてホルムズ海峡を封鎖の警告というものが出されていましたが、最近はそのような発言は見られない、こうした状況にあります。

 イラクにおきましては、二〇〇七年夏以降、大幅な治安改善が進んでいると認識をしております。

 シリアにおきましては、二年以上も暴力と弾圧が続いている、情勢は極めて深刻であると認識しておりますし、また、北アフリカ、この地域全体につきましては、いわゆるアラブの春の後の独裁政権崩壊により、政府機能が弱体化している。こうした事態を背景に、一部に武器の流出、過激派組織の活動などが問題になっている、このように認識をしております。

藤井(孝)委員 今の外務大臣の説明は、ちょっと甘いのではないかなという感じを受けます。私は、北アフリカを含めて、エジプト、あるいはイラク、シリア、またアフリカのマリも含めて、まだまだ厳しい治安状況だと思っております。

 そこで、先日、たしかオバマ大統領とネタニヤフ首相の会談が行われました。今、ホルムズ海峡もかつてのような緊張感にはないけれども、しかし、イスラエルがいつまたイランを攻撃するかわからぬという懸念も拭い去れないということがあったかどうかは別として、先般、首脳会談が開かれたということは、私は結構なことだと思っております。

 そこで、総理にお聞きしたいんですが、こういった政情不安でありながら、日本という国は、平たく言いますと、いわゆる旧宗主国、ヨーロッパは、アフリカなんかにも植民地政策、あるいはまたアジアにも、東南アジアにも植民地政策をとっていた。しかし、日本というのは、中東、アフリカに関してはそういったことは全く経験しておりませんし、むしろ、中東、アフリカ諸国は日本に対して親日的な関係を、感情をずっと持ってきたと私は思っていました。

 ところが、先般のアルジェリアのあの事件を見ますと、どういうことが起きているのかなと。本当にあの国はいまだに親日的な国家なのか、それとも、テロに対するアルジェリア政府のあの独断が、結果的に日本が巻き込まれた、日本人が巻き込まれたということで済まされるのかどうか。

 そういったことを含めまして、しかし私は、旧宗主国とイスラム国家といいましょうか、アフリカ、中東、そういった対立に我々は対象外の国家であり、先進国であり、技術があり、環境問題あるいはさまざまな問題について私どもは援助できる、そういう立場にあると思っているんです。

 ただ一方、懸念しているのは、アラブの国、特に北アフリカの国々から、少し日本は親欧米に偏り過ぎているんじゃないかという懸念が出てきているのかなという、そんな心配も、私、心の隅では感じ始めております。

 こういったときこそ、今度総理が、五月、連休を利用してアラブの方に行かれますよね。たしかそういう予定を聞いていますけれども、UAEであるとかあるいはサウジアラビアへ五月の連休に行かれるというふうに聞いていますが、その点をちょっと確認させていただきたいんですけれども。

安倍内閣総理大臣 まだ外交の日程についてははっきりと決めたわけではございませんし、国会の日程等々も勘案しながら判断をしていきたいと思いますが、いずれにせよ、今委員が御指摘になったように、中東諸国あるいはアフリカの国々との友好な関係を構築していくことは、日本のエネルギー政策についても極めて有利であろう、このように思っております。

 エネルギー支援の分野では、互恵的な観点に立ったエネルギーの安定供給、資源探査への協力などを進めていきたい、こう考えておりますが、同時に、今の御指摘のように、日本だけが何か支援をかち取ろうと考えているのではないか、あるいはまた、日本は彼らの価値観を理解していないのではないかというふうに思われてはならないわけでございまして、伝統的に、よく御承知のように、アラブの国々とは日本は大変いい関係にあるわけでございますし、アフリカの国々に対しては、かつての旧宗主国とアフリカの国々との関係とは違う関係を構築してきたわけでございまして、こうした日本のいわば今まで構築してきた信頼関係をさらに発展させていきたい、こう考えております。

 そういう中におきましては、中東和平やシリアの問題への対応、イランの核問題や、紛争やテロや貧困、そういうものに対して日本がしっかりと取り組んでいくという姿勢も示していくことが極めて重要ではないか、このように思っております。

 第一次安倍政権のときにも、私は湾岸諸国を訪問いたしました。その際に、いわば資源だけの関係ではなくて、文化であり経済、まあ資源以外の経済関係ですね、日本が投資をしてそれぞれの国が発展をしていくような、そういう関係を構築していこう。人的な交流もそうですし、教育において我々が人材教育について協力をしていくこともそうですが、そうしたさまざまな分野、多様な協力を通じてそれぞれの国々との関係を発展させていきたい、こう考えているところでございます。

 いずれにせよ、私だけではなくて、副総理を初め多くの閣僚がそうした国々に行って、関係を構築していくことを目指していきたい、このように考えております。

藤井(孝)委員 ありがとうございます。非常に重要な発言であります。

 と申しますのは、六年前、第一次安倍内閣のときは、湾岸諸国、クウェートの方は行かれたんですか。

安倍内閣総理大臣 前回は、UAEとクウェート、もちろんサウジアラビア、そしてカタールという国々でございました。

 やはり外交を展開していく上において、どうしても中東の国は、出張できる期間が限られておりますので、そうすると出張する相手国も限られますので、そのときに行けた国と行けなかった国、そういうことになってしまうわけでありまして、本来であれば、一年間に二回ぐらいに分けて中東をもし訪問できれば、それが一番理想的ではないか、このように思うところでございます。

藤井(孝)委員 湾岸諸国もそれぞれ発展していまして、私もかつて、四十年前にカタールという国に二年半近く赴任したことがあるんですが、そのころは本当にまだ小さな国だったんですけれども、今はすばらしい、大発展した国家になっています。

 その当時、特にクウェートは中心的な国家でありました。また、イラクから侵攻されたり、さまざまな紆余曲折がありましたけれども、しかし、伝統的に日本に対しては非常に親日的な国家でありますので、もしまだ日程が決まっていない、連休や国会との関係もありますけれども、できればそうした国々を、大切な、古いときからの友人である、友好国であるクウェートといった国も、そういった観点から頭の中に入れていただければ大変ありがたいかなと思っております。

 そしてまた、今総理から、各閣僚がそれぞれということの中で、特にアフリカ諸国ですね。これは先ほど、宗主国という関係で、アフリカ諸国との関係。

 一つ、これは私なりの持論なんですが、一九七〇年代ごろから日本は東南アジアに対して大変な投資をした、技術提供を含めて。そのことによって東南アジアが、日本からの技術援助、さまざまな投資をしっかり吸収して、ルックイーストなんという言葉も出てまいりまして、非常に発展したわけであります。この東南アジアもほとんどが宗主国の支配に長い間置かれた国々だったんですけれども、日本の技術、援助というものが非常に効果的に発揮されて成長してきたという実績があるわけであります。

 そしてまた、アフリカは、恐縮ですが、東南アジアに比べてアフリカの諸国はまだまだ発展途上にある。だから、今こそ、今度はアフリカに目を向けて、日本がこうした東南アジアで行ったようなさまざまな形の援助をすべきだ。先ほどのJOGMECなんかもその一端を担ってくるんだろうと思います。

 同時に、これも釈迦に説法みたいな話なんですけれども、これは一つの提案なんですけれども、日本には総合商社というのがあるんですよ。ところが、外国には総合商社という企業体というのはないんですね。これは日本独自の企業体だと思っています。確かに、個別の企業でも優秀な企業は海外に出て活躍している、非常に発展しているという企業もありますけれども、この総合商社的な考え方。

 というのは何かといいますと、今度また政権が交代しまして習近平体制になりましたけれども、よく見ますと、中国という国は、総書記か首相が交互にアフリカを訪問して、そして、資源、これからさまざまな食料も含めて獲得するためには、インフラ整備、空港をつくる、港をつくる、道路をつくるということで、それによって、日本よりも一歩も二歩も進んでいろいろな契約を結んでいる、開発をしている。

 これが、ある面では、非常に現地の人から見れば喜んでいるんですけれども、某国の人の話を私は聞きましたら、ところが、来ている人はほとんど中国人。結果的には、開発される発展途上国の国の一部の人と、そして中国あるいはヨーロッパ、そういったかつての搾取的な体制のような形の中で、資源を獲得するためにはインフラを整備してやるぞと。それは単に、その国の成長を総合的に押し上げていくというのではなくて、まさに資源獲得のための、関係するインフラ整備である。

 しかし、日本は、総合商社的になりますと、単に資源という目的ではなくて、その地域のポテンシャリティーというのは何があるのか、そしてどうすればこの国は、それについては、いわゆる金融システムについても教えてあげる、技術的な問題についても援助してあげる。そういう総合商社的な発想で日本国政府が、今一歩も二歩も中国におくれている、そうしたこれからの資源開発戦争の中で、単に資源だけを求めて金をどおんとつぎ込んでやるのではなくて、まさに東南アジアでも成功を見たそういう発想が私は必要ではないかと思っています。

 麻生副総理はよく御存じだと思うんですが、私も台湾へよく参りますけれども、日本も台湾を五十年統治しました。しかし今、台湾は、不幸ながら国交はありませんけれども、非常に親日国家になっている。

 特に、五月八日、石川県の八田與一という土木技師が、一九三〇年、十年かけて台南のあの水害と災害にさいなまれているところに烏山頭ダムというのをつくりまして、それがいまだに大穀倉地帯となって、台湾の国民に大変喜ばれている。そして、二年前は、馬英九総統閣下御自身が自分で音頭をとって、そこに八田與一記念公園というのをつくりまして、そして、石川県の技師ですから、森元総理も参加しまして、私も参加しました。

 本当に、そういった意味で、日本の統治というのは、確かに一方ではそれは植民地と同じじゃないかと言う人もいるかもしれませんけれども、日本は台湾に対して、教育、技術、あそこには大学もつくりました、そしてまた農業改革を進めた。ということは、結果的に今日、国交が正式にはないけれども、非常な民主国家として発展している。

 こういう実例が東南アジアでもあると思うんです、マレーシアもそうだと思いますし。そういう意味での今度アフリカに対する日本の援助のあり方というのは、私の一つの提案ですが、総合商社的な感覚で、単に資源獲得のためにどっと資金をつぎ込むんじゃなくて、まさにそういう発想で資源外交を遂行していただきたい、そういうふうに思っていますが、その点について御感想はありますか。

安倍内閣総理大臣 ただいま藤井委員が御指摘になったように、日本のアジアでの支援、また欧州のアフリカへの支援、一つの違いといえば、基本的に日本の場合は、無償援助もいたしますが、有償援助もしていく、そこに日本はポイントを置いたわけでございます。

 有償援助をするということは、日本が援助したお金をもとに、富を生み出す何かをつくっていく必要があるわけですね。つまり、無償であれば、そのお金を使ってしまって終わりになってしまうわけであります。

 ですから、例えば食料であれば、食料そのものを援助するのではなくて、農業を興していくために必要なものは何か。農業の技術であるとか、あるいは肥料工場をつくっていく、そういう援助を日本が行ってきた結果、日本の援助のやり方は成功だったのではないかという評価を得ているんだろうと思います。

 そういう知見を生かして、アフリカにおいても成功例をつくっていくということで、さまざまな取り組みをしているわけでありますし、アフリカで援助をする際に、日本のみならず、日本がかつて援助をしたアジアの国とともにそうした支援をしていくということもやっているわけでございます。

 さらには、今委員が御指摘になったように、総合商社的という意味においては、ファイナンスもすれば、人材育成もすれば、そしてその後の操業技術もちゃんと教えていくし、操業をしていく上でさまざまな問題、課題の支援もしていく、いわばまさにウイン・ウインの形を目指していくべきだろう。露骨に資源をとりに行く、そして、その利権をとってしまえばあとは全部俺のものということではなくて、必ず、投資をした結果、両国がよかったなと思えるような投資を行っていくべきなんだろうと思っております。

 先般、モンゴルに出張した際、モンゴル側から言われたのは、まさにさまざまな鉱物資源があることが明らかになったわけでありますが、その中で、非常に、その鉱物資源を自分たちで守らなければいけないというナショナリズム的な考え方が出てきている、しかし、自分たちは日本を信頼している、日本はそういうものをモンゴルの国民から奪おうとはしていないから、日本の資本はとにかく大歓迎だ、こういうお話もございました。

 これは、今までの我々の支援の仕方が正しかったということではないか。もちろん、さまざまな課題、問題はありますよ。そういう反省点も含めながら、しかし、大きく評価されているというのは事実だろうという中において、アフリカこそ、まだまださまざまな可能性が眠っているわけでありますから、我々もしっかりと協力をしていきたいと思います。

藤井(孝)委員 そこで、たしか六月の一日から三日までの間、第五回アフリカ開発会議というのが開かれるわけであります。これは、大いに今総理がおっしゃったことを発信する絶好の機会ではないかなと私は思っております。

 これもJOGMECがもちろん協力してやっているわけでありますけれども、JOGMECは、その前に、五月にいわゆるJ―SUMITというのをやりまして、この六月の第五回アフリカ開発会議に先んじてそういったことを催しまして、アフリカのエネルギー担当大臣の講演だとか、そして民間企業にも参加していただいて、理解を深めていくということであります。

 どうぞ、六月に開かれる、これは産業大臣が主催なんですかね、これは非常に、今の総理の発言と関連して、アフリカに対する開発援助、こういう絶好の機会だと思うんですけれども、ぜひその点についての意気込みをお伺いできればと思っています。

 どちらでもいいですよ。では、J―SUMITから。

茂木国務大臣 済みません、それでは外務大臣の前に。

 まず、この五月、六月、まさに日本にとりましても、アフリカ・マンスといった形で、資源のフロンティアでありますアフリカとの関係を強化していきたい。

 五月の十八日に、私と南アフリカのシャバング鉱物資源大臣が共同議長として、日・アフリカ資源大臣会合を開催いたします。そして、委員の方から御指摘いただきましたように、五月の十六、十七日に、国際資源ビジネスサミット、いわゆるJ―SUMITと呼ばれておりますが、これを開催いたしまして、アフリカの資源担当大臣、そして世界の鉱業関係者、さらには日本のユーザー企業に参加していただいて、プレゼンテーションであったりとか商談の機会を設けていきたいと思っております。

 そして、こういった一連の会議を六月のTICAD5に反映させていきたいと考えております。

岸田国務大臣 アフリカにつきましては、近年、毎年五%以上の経済成長を続け、今世紀末まで人口の増加が見込まれる、市場としても大きな可能性があるということで、大きな期待が集まっています。

 躍動の大陸と言われるゆえんですが、このアフリカ支援ということで、我が国は、TICADというアフリカ開発会議、二十年前から五年ごとに開催をしております。これは、冷戦後、国際社会のアフリカに対する関心を呼び戻すきっかけになったという会議でありますが、この会議を通じて、我が国の独自の支援のあり方をしっかり示していかなければなりませんし、今日までも示してきました。

 我が国のアフリカに対する支援、例えば、単なる支援ではなくして、投資や貿易につながっていく、対等なパートナーシップと自主的なオーナーシップを尊重する、そして、こうしたアフリカが発展するための背景となるような平和や安全についても日本がしっかりと支援を行っていく、こうした点が中国を初め他のアフリカ支援とは違う特色だと自負をしております。

 こうした我が国独自のアフリカ支援のあり方も、こうしたTICADの場を通じまして、しっかり示していきたいと考えております。

藤井(孝)委員 最後に、今、岸田外務大臣から、TICAD5をしっかりと有効に使って、そして我が国の資源外交というものを発信していきたいということであります。

 総理、本当にこれは、日本が、中国や、どちらかというと欧米諸国のように、とにかく資源そのものをとりに行くというんじゃなくて、まさに総合商社的に日本のいろいろな知恵のプランを示せば、それが結果的にその国の国民の生活の向上、経済の購買力も上げるということにつながってまいりますので、そうした意味からも、これからの中東、アフリカ諸国に対する資源外交というのは、日本の国民にとっても、そしてまたそういった発展途上国にとっても、大変、ウイン・ウイン、お互いにハッピーになるということにつながっていくと思いますので、どうぞ決断を持って、リーダーシップを発揮して頑張っていただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。

山本委員長 この際、中田宏君から関連質疑の申し出があります。藤井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中田宏君。

中田委員 日本維新の会の中田宏でございます。

 総理を初めとして、お聞きをさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 藤井孝男先輩の後に続いて、もろもろお伺いをしていきたいと思いますが、きょうの集中審議のテーマに先立って、一つ、ぜひお聞きをしておきたいのは、中国で今大きな懸念になり始めている鳥インフルエンザについてであります。

 今回の鳥インフルエンザ、H7N9という鳥インフルエンザでありますけれども、けさ、我々が知っている限りにおいては、既に患者が十四人、そして死者が五人になったという状況でありますけれども、その後、何か新たな情報はつかんでいますか。

田村国務大臣 今委員からお話があった点でありますけれども、鳥インフルエンザH7N9型でありますが、三月三十一日に中国政府が公表いたしましてから、けさまでは、十四名が感染をし、五名死亡でございましたけれども、その後、六名目が死亡されたという情報を確認いたしております。

中田委員 そういう意味では、ますます感染が拡大をしているということでありますが、恐らく、まだ人から人へということには至っていないという状況ではあろうと思いますけれども、こういう場合は全て最悪の事態を想定しながら対応しなければいけないということでありまして、その点、抜かりなくお願いをしたいと思うんですね。

 私は、思い起こしますと、今から四年前でありますけれども、平成二十一年にH1N1の新型インフルエンザが発生をして、これがついに日本に入ってきたという大騒ぎを思い出すんです。

 まずは、日本に入ってきたという前に、入ってくるだろう、そしてそれがどこで見つかるか、こういう大騒ぎになっていました。マスメディアは、とにかく、どこで第一号が出るかということになりますし、御記憶だと思いますけれども、防護服よろしく、重装備の係官が飛行機内に立ち入って、そして検査をする、こういった事態にもなっていたわけですが、その当時、私は横浜市長を務めていたわけなんですね。

 これは本当に忘れない思い出ですけれども、ちょうど今ごろです、四月の三十日の夜。いつ発症例が出るかということの中において、疑い例が出たんですよ。疑い例が出まして、それが横浜市の男子高校生だったんです。この男子高校生が、そういう意味で、病院に入り、その検査結果、確定結果というのを待つという夜でありました。

 逐一連絡が入るわけですが、なかなか、最後、遺伝子検査をやって確定をさせるには時間がかかります。本当にいらいらする気持ちではありましたけれども、厚労省と我が方横浜市との間ではきちっとコミュニケーションはとれておりました。我が方の担当者も、一生懸命やっていた岩田という担当者、そして厚生労働省の方は難波さんという方が主に窓口になって、しっかりと連絡をとっていました。

 検査結果が出たら、厚労大臣、そして横浜市長である私、同時にこれは会見をしようということで全ての話はついていたんですが、日付が変わった五月の一日、なかなか検査結果が出ないという中において、厚労大臣が記者会見をするというニュースが流れるんですね。これは午前一時ころです。私も、もうこの日は夜を徹するつもりで、ずっと情報収集、そのために体をあけてありますから、NHKを見ていると、午前一時過ぎにテロップが出るんです、この後、厚生労働大臣の緊急記者会見と。こう出たところから、一気に、これは第一号だというので、パニックが始まるわけです。

 国民は寝静まっているころでありますけれども、そのパニックは、マスメディア並びに厚労省、そして私ども横浜市の現場でした。そのテロップが流れた瞬間から、横浜市には次から次へと押し寄せる電話の嵐。そして結局どうなるか。電話はパンクするわけです。

 そして、見切り発車で、厚労大臣、名前は特にこの場で出しませんが、舛添さんという方であったと記憶をしておりますけれども、結局、検査結果が出ないまま記者会見をするんです。そして、横浜市とは連絡とれない、神奈川県とも連絡とれない、どうなっているんだ、こういうふうになるんですね。

 一言で言えば、勇み足だと言わざるを得ない。それはその後の検証でもはっきりしていますから、別に今さら恨み節はないですよ。だけれども、ここは、緊急事態が来ることを想定して、落ちついて対処しなければいけない。

 菅官房長官は横浜選出でもありますし、この事態も当時把握をしていたと思いますけれども、ぜひとも、どたばたではない、どっしりと、そのときが来るものだと思って覚悟して対応してもらいたいと思うんですが、その準備はいかがですか。

菅国務大臣 私も、当時のことを今、記憶を新たにいたしているところであります。マスコミのあの報道ぶりというのは、大変なパニック状況でもあったように思っています。

 今度のこの特措法の中には、国と地方自治体との連携を密にする、こうしたことをしっかりと組み込んでおりますので、常に、何しろ現場は地方自治体の皆さんですから、そこと日ごろからの連携をしっかりとって対応させていただく、その体制はしっかり今とっているところであります。

中田委員 今、官房長官から特措法というお話がありましたけれども、これは新型インフルエンザ等対策特別措置法ということで、それこそ、今お話し申し上げた過去の事例も踏まえて、教訓とし、つくった法律ということであります。

 例えば、いざ国内で感染が広がりそうだという場合には、人が集まる施設、これは民間であったとしても、例えば映画館だったりとかあるいは遊園地だったりとか、こういう場所においてもやはり制限を加えなきゃいけないんです。ところが、制限を加えるにおいても、我々地方自治体が制限を加えようと思っても、どこに法の根拠があるんだと今までは言われてしまっていたわけですね。

 そういう意味では、この特措法ということで、ある意味ではきちっとした裏づけを持ってやれるわけです。そのためには、新型インフルエンザ等緊急事態宣言というのを政府が出すという手続もありますし、ここら辺を果断なくやることが必要だと思いますね。

 釈迦に説法は申し上げるつもりはありませんが、緊急事態、非常事態というときには、私が尊敬する、安倍総理も恐らくお親しく、尊敬しておられる佐々淳行先生がよくこうおっしゃいました、緊急事態には、空振りは許されるが、見逃しは許されない。すなわち、先に食いついていって物事の準備をし、それが結果として何もなければ許されるけれども、しかし、見逃して事態を大きくしてしまってはだめなんだという教訓でありまして、ぜひともこの点はよくお願いをしておきたいと思います。

 あわせて、これは全国の皆さんも見ておられるでしょうから、ちょっと私の方からこの機会に申し上げておきますが、人から人へとうつって国内の基準でフェーズ4という段階に入ったときには、恐らく政府も緊急事態宣言が出ているころだと思いますけれども、そのときに、熱が出た、ちょっと怪しい、顔が赤っぽいといったらどうするかといったら、これは今のうちから言っておきたいと思うんですけれども、病院に行っちゃだめなんです。病院に行っちゃだめなんです。ここが大事なんですね。病院に行っちゃだめなんです、何度も言いますけれども。

 疑いを自分で持った人、あるいは家族でちょっと病院に行ってきた方がいいんじゃないのと思われた人が次から次へと病院に行っちゃったら、病院はパンクするんです。そして、単なる風邪の人から本当に新型のインフルエンザの人までひっくるめて院内感染しちゃうんです。これがパニックの始まりなんです。

 ですから、そういう状態になったときにどうするか。四年前は、発熱相談センター並びに発熱外来、こういうのを設けて、必ず発熱相談センターに電話をかけるのが最初なんですよということを告知していたんですが、それもなかなか、十分に広がって、国民の皆さんに理解できてもらっていたわけではないんです。横浜市民もそうなんです。

 今回は、発熱相談センターではなくて帰国者・接触者相談センター、帰国者・接触者外来ということが設けられることになっていますから、絶対に、病院に駆け込むのではなくて、帰国者・接触者相談センターに電話を入れる。これは各地方自治体に全部、政府の通知とともに設けられることになりますから、日本全国です、必ずそこに電話をして、それからそこのアドバイスに沿った行動をとるということを徹底してもらうことを私はぜひこの機会に申し上げておきたいと思いますし、まさにそういう準備をしていくことこそが、日本の、我が国のリスク管理だと思いますので、この点、官房長官、しっかりやっていただきたいということについて、私はこれは今のうちから周知しておいた方がいいと思いますから、その点、お願いしたいと思います。

菅国務大臣 実際の経験に基づいての周知徹底の仕方について、貴重な御意見であったというふうに思います。私どもも、真摯に受けとめて、そうした対応をしっかりととるように、内閣を挙げて取り組んでいきたいと思います。

中田委員 ぜひお願いします。

 あわせて、山本委員長、外交や安全保障も危機管理ですけれども、こういった新型のインフルエンザ、これも危機管理でありますから、本委員会において、こういった危機管理ということについて、これから先、集中審議ということもぜひ御検討いただきたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で検討させていただきます。

中田委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 さて、それでは本題に入りたいと思います。

 官房長官、もしお仕事、もしじゃないですね、忙しいに決まっているんですから、どうぞお引き揚げいただければと思います。

 さて、エネルギーの問題であります。

 同僚の藤井先輩から既に話がありましたメタンハイドレート、これについて日本も大いなる期待ができるという状態にもなってきました。既に先月中旬の話もありましたけれども、渥美半島沖、ここにおいて、メタンハイドレートの試験採掘が成功したということであります。

 これは、聞くところによれば、日本の天然ガス消費量の百年分に当たるということですから、大いなる可能性がある。資源小国と言われた日本が、資源大国とは言いませんけれども、少なくとも資源というものについて、より自分たちで調達をできる国になっていくという上においては、これは極めて貴重なことだと思っております。

 今申し上げた先月中旬のメタンハイドレートの試験採取の件は、これはマスコミを通じて多くの人たちが知るところとなりました。ところが、マスコミも知らない、国民も誰も知らない、失礼ながら、ここにいる同僚の国会の先生方並びに閣僚の皆さんも知らないという日本の大きなグッドニュースもあるんです。

 それは何かといいますと、昨年の一月から四月にかけて、アメリカ・アラスカ州において、メタンハイドレートの試掘を実はある機関がやっておりました。どこかといいますと、アメリカのコノコフィリップス社という会社と、日本では、先ほど来出ているJOGMEC、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構、ここが共同で試掘をやっていたんですけれども、ここにおいて大きな成果がもたらされているんです。

 それは何かというと、先ほどの渥美半島沖のは、要は海底からメタンハイドレートを取り出しましたということなんですが、その原理はある意味では同じでありますけれども、何が画期的かというと、アラスカ州の当地において、永久凍土の下にあるメタンハイドレートの層に二酸化炭素を注入して、そしてその圧力で、今度は逆にメタンハイドレートを取り出すという、このことに成功しているんですね。すなわち、CO2は何かといえば、これはできるだけ地中の中に埋め込んでしまう、一方でメタンハイドレートを取り出すという、これは極めて画期的な成功事例なんです。

 申し上げたように、これは日本も大いに貢献しているわけです。独法JOGMECですから、いわば日本政府が大いにやってきたと言ってもいいわけでありますが、申し上げたとおり、これは誰も知らないですね。

 アメリカではどうなっているのか。ちょっとパネルをごらんいただきたいと思いますし、皆さんのお手元にも資料をお渡しさせていただきました。

 これは、アメリカの資源の、報じているインターネットのサイトから今回は拾ってきたものでありますけれども、ここにおいては、アメリカのエネルギー省の長官でありますスティーブン・チュー長官が大々的にこれを発表しているんですよ。エネルギー省長官ということは、日本でいうならば、茂木さん、経産大臣であります。

 アメリカでは、日本と共同でやったことをこうやって大々的に報じて、大きな可能性だと言っているときに、日本では誰も知らないんですね。経産大臣、出てきたためしがないですよ。

 そういう意味では、こういうことをもっともっと日本はしっかりと報じていくことも必要だし、そのことをもって、より国民の理解を得て、その上で、先ほど藤井さんもおっしゃった戦略的な資源調達ということに向けた政策を打ち立てていくべきだと思いますけれども、茂木大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 先般の渥美半島から志摩半島の沖合で実施しました世界初のメタンハイドレートの海洋産出試験、これにつきましては、私は会見で、結構、思ったより出たと言ったら、そのまま流されまして、英国、アメリカそして中国等の主要メディアでもカバーをしていただきました。

 そして、委員御指摘のように、昨年、これも私は画期的だと思うんですけれども、JOGMECと米国の資源のメジャーの間で国際共同実験を行っておりまして、これは、二酸化炭素で転換する部分と、もう一つ、減圧法でやるのと両方やっているわけでありますけれども、大きな実験がございました。

 残念ながら、昨年の一月から四月ということで、私は大臣ではありませんでしたので、そのときの状況がどうかわかりませんが、こういったことはこれから日本としてしっかり発信をしていく。そして、いろいろなオプションを日本が持っているんだということが、資源外交上も極めて、そしてまたエネルギー価格を下げていく意味でも極めて重要になってくる、こんなふうに考えております。

中田委員 皆さんにごらんいただいているこのパネル、写真は、昨年の五月二日に、申し上げたように、アメリカのスティーブン・チュー長官が大々的に発表している絵でありますから、もちろん当時の政権は自民党ではないわけでありますけれども、ぜひ、今後は、今申し上げたように、本当に戦略的に進めていく上でも、茂木さんのリーダーシップをお願いしたいと思います。

 総理にも一言だけお聞きしたいのは、やはり日本という国は、これまで資源を買ってくる国だったんですよね。これは、戦争に日本がいよいよ踏み出さざるを得ないというような状況なども、実は、エネルギーというのは非常に大きな背景にありました。そういう意味では、当時も商社が、エネルギー、すなわち石油、こういったことを海外に向けて買いに走っていたわけですけれども、それではどうにもならなくなった時代背景がありました。世界の環境がありました。

 やはり、我が国は少資源国であることはみんなわかっているわけですから、これを、今もって商社が買ってくるという状態から、国が戦略的に開発をしていくというふうに改めていかないといけないと思いますので、この点は、総理の覚悟だけお聞きをしておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、中田委員がおっしゃったように、戦前は五割以上、七割近くを米国に石油では頼っていたわけでございまして、そこで石油を絞られて日本は戦争に突入をしていくわけでありますが、その反省から、日本は、なるべく供給源を多角化、多様化していこうという努力をしてまいりましたが、今後は、今委員が御指摘のように、自前のエネルギーを持てるということと同時に、日本がその権益自体をちゃんと確保していくということも含めて、我々のエネルギーを確保していく、そういう戦略を進めていきたいと思っております。

中田委員 それでは、原発のその後について、きょうの本題、私にとっての本題に進めていきたいと思います。

 私は、きょうここに立つに当たっては、どういう言い方をするのか、言葉を選びながらやらなければいけないなと思って、非常に緊張感を持って臨んでおります。言いにくいこと、批判をされるかもしれない、そうも思いますけれども、私は一つの提案をしたいというふうにも思っております。

 まず、現在も福島第一原発の事故によって避難を余儀なくされている方々、被災者の皆さん、苦難を強いられている皆さんには心からお見舞いを申し上げなければならないと思いますし、この方々の人生設計をもう一回できるようにしなければならない、これは政治の役割だ、こう思っております。

 そして、この福島第一原発というのが東京電力であるということを考えれば、私は、横浜に住んでいたり、あるいはここ東京でこうして働いていたりというような中においては、かの地福島から電気がこうして私たちのために供給されてきたことを考えれば、政治家という以前に、一国民、人として、福島の皆さんに対して、これから先、しっかりとできることをやらなければいけない、こういうふうにまずもって思うわけであります。

 その福島において、今、除染作業が進んでおります。特に福島県内の十一市町村においては、除染特別地域ということで除染の作業が進んでいるわけで、国が直轄してそれを行っております。

 政府が試算をしている数字がどうなっているかということを私の方から申し上げますが、福島県内の除染等によって生じる汚染土壌や汚染廃棄物の総量、これは一千五百万立米から三千百万立米ということで見積もっているということであります。

 一千五百万立米というのはどのくらいかといいますと、ダンプカー、これは十トンですね、十トンのダンプカーでおよそ二百万台に相当するという、すさまじい量になるわけです。だけれども、これは一千五百万立米ですから、では、それが三千万という倍になったときにはという話になると、なおさらこれはすさまじい台数が必要になります。

 そして、そこにかかっている費用でありますけれども、平成二十五年度本予算案においては、四千九百七十八億円を見積もっております。これまでの累計でも一兆二千八百七十五億円に上っております。

 そして、この除染対象ですけれども、これは住居区域なんですね。いわば、福島県内には森林がいっぱいありますけれども、この森林は除外をされています。

 石原大臣、森林が除外されていることについて、簡単に、なぜかということをお教えいただけますか。

石原国務大臣 これも多分、委員御承知の上、御質問されているんだと思うんですけれども、森林の除染よりもまず生活圏の方からやろうということで、平成二十四年、二十五年の二カ年間で除染を行うというふうに決められております。

 そうはいいましても、やはり御要望はたくさんあります。しかし、森林だけを除染するというようなことであっては、今委員御指摘のように、福島は本当に森の多いところでございますので、やり方がなかなか定まらない。

 やはり、林業と再生するというような形で、今、復興大臣を中心にタスクフォースをつくらせていただきまして、単なる森林だけの除染ではなくて、林業との共生、育成、こういうことも考えて、次なる手段を考えていこうというのが、現在の安倍内閣の立場でございます。

中田委員 お答えいただいたとおりだと思いますし、また、住居から二十メーターほど離れている森林であれば、生活していく上での安全には影響はないだろう、こういう判断だとも聞いております。

 それは一つの判断だと思いますが、とはいえ、裏山に除染がなされていない森林があれば、なかなか人はそこに戻りたいとは思いませんね。風が吹けば葉っぱは飛んでくるわ土は舞い上がってくるわ、雨が降れば土砂は流出してくるわというところに、お宅のエリアは大丈夫ですからというところに、どんなに言われたところで戻りたいとなかなか思わないわけであります。

 例えば一例を申し上げますと、川内村、ここは、平成二十三年九月に緊急時避難準備区域が解除をされました。そして、昨年の二月に帰村宣言をいたしました。それから一年後のことし二月の時点でどういう状況になっているかというと、帰村者は全村民の四割。四割の人しか戻っていない。この四割の帰村者の定義というのは、四日以上村で暮らすという定義であります。

 そして、この四割しか戻っていない帰村者のうち、六割超の方々は五十代以上の中高年層なんですね。すぐ察しがつくと思いますけれども、子供が小さいというような若い夫婦は戻ってきません。また、子供の有無はともかく、若い人たちが働く場として戻ってくるということにもなっていません。かつて商売をやっていたというのであるならば、全村民が戻って同じような暮らしになれば商売は成り立つでしょう。しかし、そうでない以上、戻らない。こういう状態で四割の人しか戻っていないということになっているわけであります。

 すなわち、安全ですからどうぞ戻れますよということと、一方では、今申し上げたように仕事のことや、そして何よりも、安全とは違って安心かという観点に立ったときには、戻れないという現実があるわけです。もっと言うならば、これは地元の方々からも私は聞きましたが、戻れないというのではなくて、また自分の意思として戻らないという決断をしている方々もたくさんいるということであります。

 これはちょっと頭の中にお入れをいただいた上で、さらに私の方で前提を申し上げたいと思いますけれども、それでは福島第一原発、こちらのその後の状況はどうなっているのかということでありますが、前政権のときには、冷温停止をしたということを受けて、それで収束宣言というような状態が確認をされていました。しかし、収束と言えるのかということについて、福島の人たちは、とてもとても収束などではない、こう思っていると思います。

 総理も、本委員会においては、収束という言葉は使えないというふうにおっしゃっていたはずでありますが、この認識はお変わりないですね。

安倍内閣総理大臣 福島に参りまして、まだ多くの方々がもともとの生活に戻れていないという中において、収束をしたということは言えない、このように思いました。

中田委員 前政権から今の安倍政権まで引き継がれている政府と東電の廃炉に向けた中長期のロードマップ、これにおいては、三十年から四十年後に廃炉を完了させるとあります。三十年から四十年と言っていますけれども、もちろんそれ以上かかる可能性が十分にある。まあ、九分九厘、それより早くはないということがこの三十年から四十年という表現だということは、これはもう、ここにいらっしゃる皆さんは共有できると思います。ということは、三十年から四十年先まで収束しない、収束という言葉は使えないというのがまず現状の認識だと思います。

 先ほど、川内村でも四割の人しか戻っていないと申し上げましたが、果たして、この福島第一原発に近いエリア、すなわち川内村よりもよっぽど近いエリアに住んでいた人たちが、安全基準を満たしましたから、さあ、お戻りくださいという状態になって、戻るでしょうか。メルトダウンして、炉心の片づけが終わっていない、その廃炉が終わっていない原発が近くにあるところに、安全基準を満たしました、どうぞお戻りくださいといって、戻りますか。これはないですよ。

 私は、福島県民のこれから、当該地域の人たちの人生設計を私たち政治家はしっかりとサポートしなければいけないと先ほど申し上げましたけれども、このことを考えたら、戻れるかのような言い方でずっと引っ張っても、これは不誠実だと思います。もはや戻れない、いや、政治においては、戻るべきではないところというふうにどこかで決断をしないと、この人たちの人生は、ずっと今のままの状態で、五年、十年、二十年と過ごしていくことになりますよ。若い人たちは、私は四十八です、では、その状態で三十年後と言われたら、私は七十八ですよ。七十八までのその間を避難生活、こういう状態にするわけにはいかない。

 私は、ここはどこかで政治の決断が必要だというふうに思っておりますが、安倍総理、いかがですか。

茂木国務大臣 まず、廃炉の問題でありますが、これは急いでいかなきゃならない。ただ、相当困難な作業、そして時間もかかってくると思っております。

 実は、前政権の時代は、一号機から四号機まで一緒に中長期のロードマップをつくっておりましたが、一号機から四号機、それぞれ置かれている状況というのは違います。新政権になりまして、号機ごとにどういった廃炉をやっていったらいいか、こういった形でこのロードマップを見直す、六月までには見直しを行いまして、一日でも早く、一年でも早く廃炉が終わるような作業をしていきたいと思っております。

 その上で、被災者の皆さん、それぞれ悩まれていると思います。いろいろな複雑な思いもある。そういった中で、帰りたい、ふるさとに戻りたい、こういう希望を持たれている方がいる限りは、我々は、それに向けて全力を尽くしていきたい。線引きの見直しの問題もやっていかなきゃならない、そしてまた、復興のためのさまざまな作業、こういったことも急いでいかなきゃならない、そういった思いで取り組んでいきたいと思っております。

中田委員 時間も限界がありますから、総理には後でお伺いすることといたしまして、今、茂木大臣おっしゃられたように、一日でも早く、一年でも早くというのはそのとおりなんですけれども、とはいえ、中長期ロードマップにおいて三十年から四十年と書いてある中で、一方では一日でも早く、一年でも早くと言って今の状態を続けていくということは、これは、真に当該被災者の皆さんの立場に立ったときに、やはり矛盾することだと思うわけです。

 言いにくいことを申し上げるかもしれないと言いました。時間もないので、先に、言いにくいことを申し上げます。

 私は、どこまでで線を引くかはともかくとして、この場所はもはや戻るべきではない、そういうエリアとして国が決断をして、そして当該被災者の皆さんの生活支援をしていくべきだと思います。それは、ただ単なる生活支援があるという意味において申し上げているだけではありません。言いにくいことはここから先です。いわば、このエリアは戻らないという前提の中で、人が住む場所ではないという前提の中で、日本のために、そして福島の皆さんのために活用しなければしようがない。

 今、除染した放射性廃棄物は野積みです。仮仮置き場です。なぜならば、仮置き場も設置できません。仮置き場を設置すれば、中間貯蔵施設ができないままずっと置かれるに違いないと思って、仮置き場すら設定できない。だから、仮仮置き場で、あたかも、ホールクロップとでもいうんですか、丸い円柱型の袋詰めした状態で、田んぼのあぜ道や民家の庭や、そういったところにそのまま野積みの状態なわけですよ。

 この仮仮置き場がそうやってあちこちに見られる風景は、仮置き場ができないから。なぜ仮置き場ができないかといったら、それは中間貯蔵施設がつくれないから。中間貯蔵施設は福島県内でつくるということにしている。だけれども、その説得材料は、中間貯蔵であって、それは最終処分場、福島県外にこれまた三十年以内に運び出します、こういうスキームで説得をしようと思っても無理なんですよ。おわかりかもしれません。言いにくいこととは、この地域、人が住めないということをもうはっきりさせて、私は、放射性廃棄物の最終処分の場所にする、これを政治はどこかで決断するべきだと思います。

 先ほど申し上げました、トラックで県外に運ぶといったって、二百万台ですよ。これをまた運ぶ運ばないで大変な騒ぎになりますよ。受け入れるところはありますか、最終処分場として。ないですよ。私はここを、今すぐとは言いません、総理、どこかで正直に言わないと、被災している方々もかわいそうだし、また、我が国として、こうした問題の負の部分というものをどこかでけじめをつけて、前に進めていくことができない、こう思うのであります。いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 今、中田委員が御指摘のように、確かに政治の判断、決断というのは、こうした問題を処理していく上で極めて重要であると思います。

 福島県の三春町においては、首長と議会とそして自治体が一緒になって、区域区域に話し合いをして、仮置き場をみんなで決めなければ除染はしないという大きな判断をし、そして除染をしないという、恐らく町長としても非常に言いにくかったんだろうと思いますけれども、これは議会もあるいはまた自治体もそこで一致をして、しかし、その結果、仮置き場をつくって除染は進んでいるということになっているわけでございます。

 そこで、今の御指摘の点でありますが、先ほど茂木大臣が答弁をさせていただいたように、自分はふるさとに帰りたい、こうなったのはやはり東電と国の責任ではないか、その責任を果たせ、我々は今その思いと向き合っているわけでございまして、その中で、確かに、ではこれはいつまで待てばいいんだという課題もあります。そういう中において、我々も検討しながら判断をしていきたい。どう判断をしていくかということについては、やはり住民の皆様のお気持ちに寄り添っていく必要がありますから、その中において考えていきたい、このように思っております。

中田委員 もう時間がありませんから質問しませんが、最後に申し上げるならば、事の規模や性格は違うでしょうが、チェルノブイリは今から二十七年前の事故でした。三十キロ圏内に人は住んでいません。それが実態です。

 原発再稼働、このことについての安全性を確保した上でのエネルギー、電力供給、これの賛否や、あるいは、こうした案件について政治的にどちらの側に立つかということは差しおいたとして、私は、今申し上げたようなことを決断していくことは極めて重要なことではないだろうかというふうに思っているわけです。

 仮に、では東京都が最終処分場を引き受けましょう、お台場に埋め立てましょうといって、福島県内から二百五十キロ、そこにトラックが往復した、ダンプが往復した。先ほども申し上げたように、すさまじい量ですよ。二百台が一日、スムーズに来て四時間かけて運んできたとしても、これは二十七年かかる。一万日かかるんですから。二百台で往復してですよ。これを県外にというのは幻想です。私は、どこかでこういう判断をしていくことこそが政治だと思います。

 私も、横浜市長、こういうのを務めてくる中においては、言いにくいけれども言わなきゃしようがない、どこかで決断しなきゃしようがない、嫌われるだろうけれどもやらなければしようがない、こういうことはいっぱい、それは総理の悩みとは違うスケールかもしれないけれども、経験をしてきました。

 ぜひ私は、こうしたことについて、それこそ安倍総理の決断というものをどこかで示していただいて、そして、日本が前に進むように、被災者の皆さんが前に進めるようにしていく、このことをお願いして、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

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山本委員長 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として札幌医科大学教授高田純君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 この際、山田宏君から関連質疑の申し出があります。藤井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山田宏君。

山田(宏)委員 日本維新の会の山田宏でございます。

 中田宏委員の後に、山田宏でございます。

 まずちょっと、質問通告をさせていただいておりませんけれども、もしお答えができれば、今のタイムリーな課題でございますので国民も心配していると思いますので、北朝鮮の今の状況、そして、日本としての今後の対応、また、来週G8が予定されておりますけれども、ぜひ効果的な行動をとっていただきたいとお願い申し上げますけれども、この点について、総理、お願いできますか。

安倍内閣総理大臣 現状の北朝鮮の挑発は、これは相当、我々から見るにレベルの高い挑発でありまして、許しがたい挑発と言ってもいいんだろう、このように思います。

 その中において、北朝鮮の例えばミサイル発射というものに対しては、我々は万全を期していきたい。そういう態勢において、政府でしっかりと対応するように、情報収集をし、万全を期すようにという、総理としての指示は既に出しております。

山田(宏)委員 それでは、きょうはエネルギー・原発の問題でございますので、まず、四月二日、電力システムに関する改革方針というのを閣議決定されました。いわば、電力の自由化に向けて、特に送発電を分離するということで、電力会社の発電部門、送配電部門というものを分けていこう、そして、そこに新たな会社の参入も認めていこう、こういうことでございます。我々日本維新の会としては、この決定を歓迎いたしております。

 また、何よりも、今回は、二〇一八年から二〇年の間に実現するという、きちっと期限を定めて、お尻を決めて決定されたということはとてもよかったと思います。責任が明確になります。

 この送発電分離は、消費者にとっては大きなメリットです。それはやはり、電力会社、発電会社を選ぶという形で競争が行われますので、電力料金は恐らく競争の中で適正なところに下がっていく、またサービスも向上する。そういったことを考えますと非常にいいと思っているんですけれども、この点について、メリット、デメリットを簡単に、まず国民の皆さんに御説明いただけますでしょうか。

茂木国務大臣 この電力システムの改革、今新たなエネルギー制約に直面する日本にとっては本当に避けては通れない改革だ、こんなふうに思っております。

 今、山田委員指摘のように、これから我が国として多様な電源を求めていかなきゃならない。そのためには、発電部門にも多くの参入がある、こういったことが重要になってまいります。

 そして、発電部門、小売部門自由化、そしてまた、送配電部門が中立化をするということによりまして、競争が起こりまして、料金の低下ということが起こってまいります。さらには、消費者、電力を使う側からしますと、どういう電源を、またどういう料金メニューを選ぶかということによって、全体の電力料金、この支払う料金も下がりますし、またそれが省エネにつながっていく、こういうメリットがあると思っております。

 デメリットの方も言いましょうか。

 デメリットは、一般的に言われますのは、発電部門とそれから送配電部門は、今まで結局、独占体制で一体的に運用してきた。これが分離をされるということで、安定供給は大丈夫なのか、こういう懸念を持たれる方もいるわけでありますが、今回閣議決定いたしました電力システムに関する改革方針、ここにも明記してありますように、送配電事業者に電気の需給調整を行う義務を課すということで、電気が安定的に供給される仕組みとしておりますし、また、災害時には発電事業者と送配電事業者が協力するルール、こういうのも定めることにしております。

山田(宏)委員 いわば、電力会社を二つの会社にこの図のように分けて、そして、一つの有力な案は、それを束ねるホールディングカンパニーをつくるというのが法的分離というものだと思います。

 きょう東電の社長がおいででございますので、東電の社長の御意見もお聞きしておきましょうか。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。お答え申し上げます。

 電力システムの改革によって、やはり一番大事なことは、引き続き安定的な電気をできれば安いお値段でしっかりお届けするというところは、しっかり担保していかなきゃいけないと思っております。その上で、あるいはそれを促すために、自由化、競争を促進するなり、それからカンパニーを分けるなりということが、手段としてあるんだと思っております。

 そうした観点から、私ども、まさにこの四月の一日から、まだ法律ができておりませんので、ある意味、擬似的といいますか、試験的なものでございますけれども、社内にカンパニーを設けまして、発電をする、私どもは今原子力がとまっておりますので、火力が中心ですので、火力、燃料をつかさどるフュエルアンドパワーカンパニー、それからネットワークを受け持つパワーグリッドカンパニー、そして小売部門を受け持つカスタマーサービスカンパニー、それを上で束ねる、ホールディングのような形ですが、コーポレートという四つに分けて、まさにスタートしたところでございます。

 いろいろなメリット、デメリットは当然ございますし、これから実際にやってみていろいろな難しい点も出てくる可能性もございますので、そうしたものをいろいろ検証して、できればまたそうした結果をお国なり、あるいは他の電力会社さんにお示しできれば大変いいことだなというふうに思っております。

山田(宏)委員 そういう流れに対して、電力会社も今協力をして、シミュレーションもされているということですので、消費者また事業者にメリットがあるように、ぜひお願いしたいと思っております。

 この点に関して、ちょっと一点だけお願いがあります。

 今、新しい発電事業者も入ってこられるということになるんですけれども、太陽光発電などの事業者も、買い取り制度などで、現在どんどんできています。

 これは、ある市長、ウナギで有名な市の市長から聞いたんですけれども、ウナギの養殖の池のところがもうどんどんあいてきて、ここに太陽光発電の事業者が入ってきて、消費地も近いので、そこで太陽光発電をして、そしてそれを売っていこう、こういうことを考えても、実際、太陽光パネルは並べられるんだけれども、そこから送電線に行かせるためには、太陽光の電圧そのものが不安定だし、また、送電線の電圧も高いんですね。市街地といってもやはり六千ボルトぐらいある。だから、変圧器を置かないと送電線に送れないわけです。

 だから、この変圧器をどうかしなきゃいけないというので、電力会社にやってくださいよと言っても、それは、電力会社は自分のところの競争相手になるようなところに変圧器なんかは出しません。そうすると自治体がということになってくると、実際、これをやろうとしても、現在のところは、この変圧器の設置に対して何らかの助成が要るんじゃないか、こういうふうに私は考えているんですけれども、この点、どうでしょう。

茂木国務大臣 委員御指摘のように、太陽光発電の電気を送電するとなりますと、当然、送電線側の電圧に合わせるための変圧器、これが必要になってまいります。

 そこで、昨年七月に開始をいたしました固定価格買い取り制度では、変圧器のコストの回収を可能とするため、変圧器の費用も含めた電力会社の送電線に接続するために必要となる準備的な費用を、再生可能エネルギーの発電に通常要するコストということで、これをカバーする価格を設定いたしております。

 それに加えまして、初期投資負担の軽減を図るため、再生可能エネルギー発電設備を対象とした低利融資制度を設けておりまして、変圧器の費用も融資の対象としております。さらに、その融資制度額を引き上げることといたしております。この変圧の問題もあります。

 同時に、もう一回、電圧を安定させていかなくちゃいけないんです。太陽光も風力もそうなんですけれども、太陽光が大体、設備の稼働率で一二%ぐらいです。風力が二〇%ぐらいになっている。そして、日によって、お日様が出たり出なかったり、風が吹いたり吹かなかったり、こういったことで変わってくる。

 これを安定的な電源にしていくためには蓄電池が極めて重要でありまして、この蓄電池についても、導入のための支援を行っていきたいと思っております。

 日本は蓄電池の技術がすごいんですよ。世界でトップレベルでありまして、今はまだ、ポータブルといいますか、携帯であったりとか、それに使っておりまして、一兆円ぐらいの市場が、二〇二〇年にはこれが二十兆円に広がっていく。その中心になりますのが、この電力系統、それから自動車、こういった形でありまして、そこに対する支援も行いまして、二十兆円の市場の半分を日本がとっていく、この意気込みで頑張っていきたいと思っております。

山田(宏)委員 今、新しい電力会社、再生可能エネルギーの電力会社がきちっと事業として成り立つように、できるだけ電力自由化に向けてパワーアップして助成をしていただきたいというふうに思います。

 きょうは、福島原発事故に関して参考人の方がおいででございますので、私からも何点か御質問させていただきたいと思います。

 元委員の田中参考人に、先ほども民主党の御質問がございました。私、四階のフロアで水漏れを見た職員が何人かいたというような、そういうことも証言としてある、だから一回見てみなければわからないと。単に津波で電源が、非常電源も喪失して、そしてメルトダウンが起きて、そして水素爆発じゃなくて、その前に何かあったんじゃないかというのが先ほど長妻委員からもお話がありました。

 私が注目しているのは、その水漏れは、田中参考人から見ますとどういうような原因というふうに、想定するとすれば想定できるんでしょう。

田中参考人 最近、東京電力がそれに関する報告書といいますかレポートを公表しております。

 それを見ると、換気ダクトがあるんですけれども、そこからの水漏れであるというふうに推論をしております。その線もあると思いますけれども、それを見た目撃者の話と食い違うところも幾つかございます。

 それから、現在の現場の状況というのは、水素爆発が起きた後でありますので、なかなかその部分が正しく証明できないということがある。ほかの、二号、三号あるいは四号、五号、六号でも、あるいは第二原発の方でも同じような構造があるわけで、そこら辺がどうなっているのかとか、いろいろ調べたいこともございます。

 まだ、東京電力の考え方が正しいかどうか、それは実際に見てみないと、元国会事故調の我々としてはわからない、判断できないということでございます。

山田(宏)委員 今度は東電の社長にお聞きしたいんですけれども、これはNHKの番組でもたしかやっていたんですが、アイソレーションコンデンサー、アイソレーテッドコンデンサーといいましたか、冷却を、いざという非常のときに、非常電源も失われても、本当に少量の電源で水を勝手に回して冷やしていくという、もう最後の最後のとりでみたいな、そういう装置がありますよね。

 このことについて御説明いただくと同時に、一号機でこのICと言われる自動の冷却器が稼働していたのかどうか、それをお聞きしたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 二年前の三月十一日でございますが、地震が起きたのが十四時四十六分、津波の到達が、その後、五十分ぐらいたった十五時三十五、六分、そのぐらいだというふうに思っておりますが、その間、ICは正常どおりに作動しております。

 それはどうしてそういうことが申し上げられるかといいますと、その間、核種の挙動は普通にとれておりましたので、そうしたパラメーターを見た上で、その間は普通に運転されていたということが確認できておりますので、地震でICが壊れているというふうには思っておりません。

山田(宏)委員 そういうお答えだったんですけれども、この報道では、このICを動かす手動のレバーをオンにしたりオフにしたりしているうちに地震が来て、オフのまま、そのまま、それに気づかずに、このICが稼働していなかった、そしてそこからだんだん煙がもやもやと外に出ていったという報告があった、こう聞いているので、稼働していなかったんじゃないですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 おっしゃるように、運転員はICを何度か操作しております。最初は、水圧が下がったということからICをとめました。その結果、また戻ってきました。ということで、まさに、危機のときのマニュアルに定められたとおりの運転をしております。それに対して、IC側は反応しているというふうに考えております。

山田(宏)委員 そうすると、あの報道は間違っている、こういうふうにおっしゃられてよろしいですか。

 ごらんになっているかどうかわかりませんが、それは、ICのレバーがオフになったままで、そのIC、つまり冷却器が稼働していなかったというんじゃなくて、実際ずっと動かし続けた、こういうことでございますか。

廣瀬参考人 説明がちょっと不十分で、申しわけございませんでした。

 そうした操作を何度かやっておって、いよいよ津波が十五時三十七分ごろにやってくるわけですが、そして電源が失われて、それ以降ICはとまっておりますが、その前の最後の操作といいますか、生きている間の最後の操作がオフにしてあったということで、それ以降はもちろん、したがって、とまったときは、とめてあったということでございます。

山田(宏)委員 報道のとおりですよね。

 そうすると、津波で非常電源まで全部だめになった。そして、本当はこのICで冷やせるはずだった。

 ところが、意図的じゃないですよ、過失で、それがオフになったままになっていたということであれば、これはひょっとすると、津波によって水素爆発が起きたんじゃなくて、本当は、ICが稼働していれば起きなかったという意味では、結果的に見れば、非難しているんじゃないですよ、今後の基準をつくるために我々がしっかり物を見ておかなきゃいけないのは、やはり、それを忘れてしまった、または最後まで気づかなかったということによって爆発が起きた、人災、こういうふうに言える面もあるんじゃないですか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 確かに、たまたまちょうど十五時三十七分に津波が来たときにオフになっていたということで、その後もちろん動いていないというのは事実でございますが、先ほどの繰り返しになりますが、その間運転員は、マニュアルに定められたとおり、上がったり下がったりしますので、それに応じて、当然、入り切りの操作をするということでございます。

山田(宏)委員 今後この課題はいろいろ出てくると思うので、また、きょうは参考人に来ていただいていますので、次のテーマに移りたいと思います。

 次は、放射能の、日本の持っている基準について、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。

 二〇一三年、ことしの二月二十五日の読売新聞の社説は、「原発風評被害 放射能の基準から考え直せ」という社説を上げております。その内容は、まず第一行目に、「放射能の安全基準について政府は根底から考え直すべきだ。政権交代はその好機と言えよう。」こういうふうに述べて、前政権の放射能の基準は、ここの文章によりますと、例えば食品の放射能基準を厳格化したんですけれども、これは政府の放射線審議会がこんなことをすれば弊害が出ると警告したけれども、当時の小宮山厚生労働大臣が政治的に押し切った、こう書いてあるわけです。

 要は、科学的な根拠ではなくて、当時の雰囲気は本当にみんなが不安であったから、わからないわけじゃない。しかし、政治的な形での基準というのは、私はあり得ないと思うんです。

 なぜならば、この間、おとといに、私も地方公聴会で仙台へ行きました。そこで菊地さんという仙台の漁協の責任者が来られて、自分たちがとった魚の放射能の基準がおととしまでは五百ベクレルだった、それを去年になって、四月になってから百ベクレルまで下げてきた、その根拠を聞いてもよくわからぬ、そして消費者の人たちや販路の人たちはなぜだなぜだということで不安になって、販路さえなかなか開拓できなくなった、こう言っているんですね。だから何とかしてくれということなわけです。

 その点で、このような声を、農水大臣、お聞きになっているでしょうか。

林国務大臣 私も実は、一月か二月だったと思いますが、現地にお邪魔したときに、山田委員とお会いになった方と同じ方か、または石巻でもお会いしておりますので、お会いして、そういうお話を聞いております。

 実際に、全部検査をするという検査機械も見せていただいたんですが、今お話があったように、基準値をめぐる風評被害ということで考えますと、やはりどうしても、基準値以内におさまっていても、放射性物質の含有量が低いものを食べたいという消費者の心理があります。それから、こうした心理を背景に、流通業者等が基準値よりも厳しい自主基準的なものをやる。こういうもので風評被害があるということはあり得るんだろうというふうに考えております。

山田(宏)委員 そこで、きょうは、放射線防護学を専門とされておられる札幌医科大学の高田純教授に参考人としておいでをいただいております。高田先生、ありがとうございます。

 今、食品、特に魚などで放射能の基準を下げたわけですけれども、放射線防護学というものをまず簡単に御説明いただいた上で、今回のこういった決定を専門家、研究者から見てどう見えるのかということを御説明いただきたいと思います。

高田参考人 お答えいたします。

 放射線防護学、これは放射線、エックス線の発見、レントゲン博士ですね、この発見から始まっております。エックス線の医学利用が人類の病気の治療に対して大きく貢献した。それでレントゲン博士は最初のノーベル賞をとっているんですが、それ以来もう百年近く、この放射線防護学研究は、医学的なリスク研究で最も進んだ分野であります。

 ですから、今回の福島のことでも、いろいろなことが科学的にはわかっているんです。ところが、前政権の二年間、現地の科学調査が十分されないまま、二十キロ圏内のブラックボックス化が進み、また、放射線はゼロが一番いいという誤った判断、これのもとにいろいろな形で規制が始まった。

 きょう、ここの会場に、この委員会に、皆さん、およそ百人ぐらいの人たちがいらっしゃるわけですが、大体、自然界に放射能があります。カリウムの放射能、およそ成人一人に四千ベクレル。ですから、百人いると四十万ベクレルの放射能がここにあるんです。私たち人類は、放射線、放射能がゼロの世界で生きているわけじゃないんです。

 ですから、この基準に関してもきちっと科学的に見ていく必要があると思っていますし、今の規制は科学的なものから逸脱した判断があると私は思っています。

山田(宏)委員 ここに、海外における食品中の放射性物質に関する基準値の比較があります。ぜひ見ていただきたいんですけれども、国によって違うんです。ヨーロッパやアメリカは、お魚、今申し上げました宮城県の漁協の方がおっしゃっている、日本では百ベクレル、しかし、ヨーロッパ等では千を超えるベクレル、この基準なんですね。

 何で世界でこう違うのか、なぜ日本は百なのか、簡単に御説明いただけますか。

田村国務大臣 前政権でお決めになられたことではあるんですけれども、食品中の放射性物質、この基準値という意味からいたしますと、昨年の四月にこれは変えたんですが、食品からの被曝線量一ミリシーベルト以内というのは、これは世界的なコーデックス委員会という機関において決められている数字と同じ数字でございますから、この部分では、決して日本の数値というものが厳し過ぎるということではございません。

 ただ、その食品から受けるという前提が、例えばEUの場合は、これはチェルノブイリ等々が基準になっておるものでありますから、国外から入ってくるということで、輸入の割合が一〇%と見積もった上で、そこから受ける、そういう基準でつくった数字なんだろうと思います。

 一方で、我が国は、国内での事故でございますから、自給率を考えまして、流通する食品の汚染割合を五〇%と考えたということでございまして、その部分がこの差の大きな理由になってこようというふうに思います。

山田(宏)委員 お魚とかお野菜の放射能の基準を厚生労働省が決めている。農水省に聞いても、ううん、わからないなということで、漁業者の方は水産庁の方へ行くわけです。そうすると、基準の根拠は何だと聞かれても、今度は水産庁ではなかなか説明がうまくできない。

 私は、こういうところもどんどんどんどん、やはり生産者にとっては非常に強いマイナスになっているんですよ。やはりこういうものを何とか、過去の、震災直後の政権でやられたことは、どさくさの中でいろいろあったかもしれないけれども、ここでしっかり、安倍政権になって、落ちついて、しかし、科学的に考えてほしいと思うんです。

 世界でもいろいろな議論があります、この放射線が人体に与える影響については。高い放射線はだめですよ。だけれども、一定の幅を持った放射線についてはむしろ有益ではないかという科学的な知見もたくさん出されているわけです。

 こういった中で、ここは、どれがいいとは私は言いません。しかし、やはりこの原発という、本当に不幸な悲惨な事故を私たち国民は経験して、そこで、本当に食品の放射線はどうなのか、または、その地域の放射線はどうなのか、体にとってどうなのかということを、やはり世界じゅうの知見を集めて、日本で国際会議でも開いて、すぐ結論を出さなくていいから、とにかく、どういう議論が世界じゅうで行われているのかということをリスクコミュニケーションの上でもしっかりやるべきだと思うんですよ。

 そうやって日本の姿勢を示していく、国際基準をつくっていく、こういうことをやはりやってほしい、こう思っていますが、最後に総理の御決意をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、山田委員から御指摘になった論点は極めて重要だ、このように思っております。

 線量水準に応じて講じるきめ細かな防護措置の具体化について、原子力災害対策本部で議論を行い、年内を目途に一定の見解を示すという方針を決定したところであります。その際、関係省庁での検討に加えて、規制委員会が科学的、技術的な見地からの役割を果たすことになっております。

 あわせて、今後、検討における科学的、技術的な考え方については、今委員が御指摘になられました、国際的な会議などの場を通じて海外にも情報発信をしていく、そして国内にも一つのコンセンサスをつくっていくということにおいては、私も今お話を伺っていて、それは極めて必要だ、このように考えました。そして、国際的な共有化を進めるということも大切でしょう。

 国際会議を日本が開くということも含めて、そうした対応について検討していきたいと思います。

山田(宏)委員 よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて藤井君、中田君、山田君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 みんなの党の柿沢未途でございます。

 冒頭、今入ってきたニュースについてお伺いをしたいというふうに思います。

 収束作業中の福島第一原発三号機使用済み核燃料のプールの冷却が停止をした、こういう話が原子力規制庁より発表されているようです。事実について答えられる方がいたら、ぜひお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

廣瀬参考人 それでは、私の方からお答えします。

 私の方にもメールをいただいておりまして、十四時二十七分に三号機の使用済み燃料の冷却プールが停止していることを確認したという一報が入っております。

 現在状況を確認中ということで、状況がわかり次第、追報があるというふうに聞いております。

柿沢委員 これは、午前中の質疑でも、いわゆる冷却プールの電源の停止、こういう話についてさんざんやりとりがあったと思います。大変重大だ、こういうことが言われておりました。

 そういう中で、この集中審議をやっている最中に、核燃料プールの冷却がとまってしまう、しかも、一カ月もたたずにこういう事態が起きてしまっている。こういうことについて、廣瀬社長、どうですか。

廣瀬参考人 確かに、このところ、こうしたトラブルによる停止が続いておりました。大変皆さんに御心配をおかけしております。

 大至急、原因をしっかり究明して対策を講じてまいりたいというふうに思っております。まことに御心配をおかけしております。

柿沢委員 原子力規制委員会、そして原子力規制庁は、先日の電源停止の点でも東京電力に再発防止ということを恐らく指導されてきたと思います。そういう中にあって、きょう、こういう出来事が起きてしまっているということについて、ぜひ、田中委員長、何かお考えがあればお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 詳しい状況についてはまだ私の方にも報告が入っていなくて、今とまったという事実だけ今届いたところです。

 速やかにその状況を確認して、特に、先般来の事故でもそうですけれども、住民の方が非常に不安を感じていますので、早急にその状況を踏まえて、特に見通しを、どのぐらいの見通しで回復できるかということを速やかに住民の方にお知らせできるように急いでくださいということを、今メモを送ったところでございます。

 こういったことはあってはならないことなんですが、起こってしまったことですので、今後こういうことができるだけ起こらないように、先般来、恒設のしっかりした対応ができるように東電の方には指導しているところでございます。

柿沢委員 あってはならないというお言葉でしたが、そのあってはならないことが立て続けに起こってしまったわけであります。

 また、先日の事象というか冷却の停止の件については、そもそも事実の公表が速やかに行われなかったということが大変大きな不安を広げたというふうに思います。その点についても、事態の速やかな対処とともに、ぜひ事実を速やかに把握して、そして状況を知らせていただきたいな、こういうふうに思います。

 それでは、本題の質問に移りたいと思います。

 午前中から、国会事故調の田中三彦元委員とのやりとりが続けられています。

 一号機のメルトダウンと爆発の原因について、津波による全電源喪失ではなくて、非常用復水器、この配管が地震によって破断をした、それが原因となっている可能性があるのではないか。だから、建屋の四階に入って調査をしたいと。

 そうしたら、二〇一一年十月十八日の建屋内の動画を見せられて、このときは建屋カバーがなかったから明るかったけれども、今は建屋カバーをかぶせてしまったので真っ暗だ、こんな真っ暗なところに入ったら、真っ逆さまに二十一メーター、フロアまで落下してしまうかもしれない、こういう説明を受けて調査を断念しているわけです。

 ところが、これは何のことはない。建屋カバーは透過性があって、明かりが差し込むものだった、その上に照明器まで十台も設置をされていたというではありませんか。

 加えて、田中元委員に見せた動画は、建屋内部は明るい状況だったというわけですけれども、これは、田中さんによれば、何と実は既に建屋カバーが覆った後の内部の映像だったと。これは、何から何までうそっぱちだったわけではありませんか。これで納得できるはずがありません。

 ましてや、国政調査権に基づく事故調査委員会であります。事故原因の究明にも直結をしている。国会として、田中元委員による調査を東電に求める必要があると思います。

 理事会で協議していただきたいと思いますが、委員長、よろしくお願いします。

山本委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

柿沢委員 私は、捜査官のようにこの問題について微に入り細に入りこれから追及をしよう、そういうつもりは実はありません。要するに、私が言いたいのは、福島第一原発事故というのはどうやって発生をしたのか、地震か津波か、そして、どのようにしてあのトリプルメルトダウン、爆発、レベル7の史上最悪規模の原発事故になってしまったのか、こういう事故の発生原因と進展プロセスというのが、このこと一つを見ても十分に解明されている状況にない、こう言わざるを得ないというふうに思うんです。

 この福島第一原発事故の発生原因、そして事故の経過、進展プロセス、こうした点は十分に解明されたと言える状況にあるか、ぜひ東電の廣瀬社長の御認識をお伺いしたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 まだ、引き続き、未解明な部分等々残っているところがございます。具体的には、例えば損傷箇所がどこであるかとか、損傷の程度がどのぐらいであるかとかといったようなことについてでございます。

 一方、これまでの調査、分析によりまして、ある程度解明されてきているところもございます。例えば、地震の影響はどのぐらいだったのか、あるいは津波の影響はどうだったのか、燃料の損傷はいつごろ始まったのか、メルトダウンはどのぐらい、いつごろから始まってきたのかといったようなことはわかってきております。

 もちろん、引き続き、今後も計画的に現場調査をしたり、あるいはシミュレーション解析等々を用いまして、事故時の原子炉の状況について、挙動等については把握していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

柿沢委員 国会事故調の田中三彦元委員に、今いろいろとここまでの経過をお話しさせていただきましたが、もちろん、建屋の一号機の四階に入って実際に現場を見たい、こういうことでありますから、事故の原因と、また事故がどのようにしてあのように最悪の事故になってしまったのか、こうしたことについてはやはり十分に解明されていない、こういうお立場だと思いますけれども、見解を改めてお伺いしたいと思います。

田中参考人 お答えします。

 事故の原因、プロセスを調査するのは、現場を見るというのが非常に重要です。そういう意味でいうと、現場にアクセスできないというのが、この福島の原発事故の一番障害になっている部分です。

 特に、一号機に関して言いますと、東京電力がなぜ繰り返し繰り返し一号機の四階にアクセスしているかということを考えればわかるように、一号機に関しては、とにかく四階をよく調査するということが非常に重要だというふうに今でも思っています。それをすることで、どこで水素爆発が起きているか、それから、その原因、どうしてそういうことになっているのか、そういうことを、四階をよく調べることで、ある程度、一号の水素爆発までのプロセスということが推断できるというふうに今でも信じております。それで、ぜひそれをやりたいということであります。

柿沢委員 福島第一原発の内部では一体何が行われているか。建屋の中で毎日毎日、事故収束に向けた作業が行われている。作業が行われている中で、瓦れきの撤去、こういうことで現場の保存がだんだんだんだん失われていく状況にあるわけです。これが相当程度進んだ段階で中に入っても、もうその事故の痕跡はわからなくなってしまう可能性がある。やはり早急に現場に田中元委員に入っていただいて、そしてつぶさに現場を見ていただく必要があるというふうに思います。

 後ほど理事会で御協議をいただくと思いますので、ぜひお取り計らいをよろしくお願いいたします。

 そして、事故の原因も全て特定できたわけではない。事故の経過、進展プロセスも十分に解明できていない。野田総理は、当時よく、福島のような事故は二度と起こさない、これは大飯原発再稼働のときの記者会見で口にされた言葉ですけれども、福島のような事故は二度と起こさないと言っても、その福島の事故がどんな事故だったのか、いまだ十分にわかっていないわけです。

 こんな状況で、適切なバックフィットによる、既設原発を含めた世界最高水準の安全基準、規制基準の確立、そしてそれを適用する、こんなことできるんですか。田中委員長、お答えください。

田中政府特別補佐人 福島の事故の状況につきましては、国会事故調初め、幾つかの事故調査で相当程度明らかにされてきています。

 それで、今一番議論になっておりますのは、地震とか津波といった外的事象に対する対処が足りなかったことが大きな原因だということが、大体、共通理解になっています。

 それにつきましては、今、新しい基準では、基準津波それから基準地震動というものを全面的に見直しまして、これは、それぞれのサイトとかそれぞれのプラントによって違いますので、その入力条件をきちっと厳しく見まして、それに対応できるようなプラントにしていただくということでバックフィット規制をしようということであります。

 加えて、仮にそれを超えるようなことで事故が起こった場合でも、今回のような過酷な事故が起こらないような対策としてシビアアクシデント対策というのを複数用意させていただくということにしておりますので、もちろん、安全に究極のゴールはございませんので、これからも、そういうことを、新しい知見が得られましたらそれを取り入れていきたいと思いますが、現状ではそういうことで取り組んでいるところでございます。

柿沢委員 この間、田中原子力規制委員長は、世界最高水準の安全基準を目指すんだ、こういうことを再三おっしゃられていたと思います。

 パネルを出しましたが、これまでの日本の原発の安全基準というのは、欧米の原発に適用されている国際標準の安全基準に比べて著しくレベルの低いものだったとしか言いようがありません。

 千年に一度だからしようがない、想定外だった、こう言うわけですけれども、EUは原子炉が百三十二基ありますけれども、このEUの原子炉の設計基準として想定している地震動は、一万年に一回ですよ。アメリカにおいては、十万年に一度の遭遇頻度の地震を想定しています。

 翻って、パネルですが、日本の原発はどうか。一万年、十万年どころか、設計基準を超過する地震動を六年間で五回も経験しているんです。六年間で五回ですよ。世界的にはこれはあり得ません。地震国でありながら、国際標準に比べて著しく設計基準が思想として甘かった、こういうことと言わざるを得ないというように思います。

 加えて、このパネルの下に書いておきましたが、アメリカ原子力学会、福島第一原発事故に関する報告書では、千年に一度というような短い期間で起きる津波について、想定外とするのは間違いだったと。アズ・ショート・アズ・ワンス・エブリー・ワンサウザンドイヤーズ、千年に一度というのは、想定外にしていいような発生頻度の災害じゃなかったんですよ。

 しかも、問題なのは、では、国際標準の一万年、十万年に一度の遭遇頻度の災害を想定する場合、それがいかなる規模の災害、リスクであるのか、どんな地震動なのか、どんな津波なのか、それを分析するノウハウそのものが日本にないことだと思います。

 国際標準となっている確率論的ハザード解析のノウハウとスキルの蓄積が日本にはない。これは以前から私が国会で指摘をしてきたことで、当時の細野大臣は、日本の原子炉規制はそこはおくれてきたとあっさり認めた上で、それをやるには相当な蓄積が必要になる、こういうふうに答えておられます。

 今回、炉心損傷頻度を一万年に一回、放射性物質大量放出に至る頻度を百万年に一回、こういう遭遇頻度とする、このような目標が規制委員会より示されました。これは確率論的ハザード解析の手法を導入しようとするもので、私は評価できると思います。

 しかし、それは評価できると思うんですけれども、世界に立ちおくれて今までできなかったことが、では、いきなり七月からできるようになるんですか。新安全基準、規制基準の七月施行は本当に可能なのか。そして、その新安全基準、規制基準を適用して、それに耐え得るようなあらゆる施設と、ハード、ソフトのインフラを完備させて、全原子炉の適合審査を三年間で完了することなど、これは可能なんですか。原子力規制委員長、お伺いいたします。

田中政府特別補佐人 私どもは、絶対安全はない、ゼロリスクは求めないということで、安全目標として、今御指摘いただいたような、できるだけ国際的にも最高水準のというか、最高に厳しいレベルの目標を掲げて、それに向かって努力しましょうということで安全目標の議論をずっとさせていただきました。

 その結果として、放射性物質が大量に放出されるような事態が起こるのは百万年に一回、これは国際的にも最高水準です。

 それから、今回の福島の事故を踏まえると、仮にそういうことが起こっても、環境をこのようにひどく汚してしまってはいけないということで、今、セシウムに関しては百テラベクレル以下にしようと。これは、福島の事故の大体百分の一ぐらいになります。気象の条件とかいろいろによってその汚染の状況は少し違いますけれども、おおよそ大体そのぐらいにするということでやっております。

 今一〇〇%それを担保できるかということについては、ほぼできるという確信を持って、今、規制基準を設定しております。ただし、どこかに抜けがあるかもしれませんので、それは確率論的な評価とかを今後繰り返し繰り返しやりながら抜けのないようにして、さらに高いレベルの安全を目指すというふうな取り組みをしていくことにしております。(柿沢委員「三年間」と呼ぶ)

 三年間というよりは、一つ一つの規制の基準、プラントについての評価の中でそういったことを確認させていただきたいということであります。

 それから、足りない知見につきましては、米国NRCとも先日もお話ししまして、いろいろそういった知見について、ノウハウについてサポートしていただくということで確認はしておるところでございます。

柿沢委員 もう一回お伺いします。それを全原子炉に三年間で適用して、そして適合審査を終えることが可能なんですかということです。

田中政府特別補佐人 三年間で全ての炉を審査しなければいけないかどうかということは、今後、事業者からどの程度の申請があるかにかかってくると思っております。五十基一度に出てくれば、多分、三年間で全部仕上げるのはなかなか難しいというところも正直あるかもしれませんけれども、私どもは、申請が出てきたものについては、できるだけ速やかにそれについて審査を進めていくということで取り組んでいく覚悟でいます。

柿沢委員 これからやり始める安全基準、規制基準ですので、かつ確率論的ハザード解析のスキルが日本にはなかった、これは国際標準が日本にはなかったということですから、大変残念な現状なんですけれども、それをプラクティスを重ねて物にしていく、こういう御答弁だったと思います。

 もう一つ問題があって、炉心損傷頻度一万年に一回、放射性物質大量放出頻度百万年に一回、こういう確率論的ハザード解析の手法を導入するわけですけれども、地震列島である日本列島において、そのような場合に想定すべき地震や津波等の災害規模というのは超巨大なものになるのではありませんか。この日本列島で百万年に一回の頻度しか起こらないという大災害を想定するとすると、とんでもない超巨大な災害を想定することになると私は思うんです。

 これを満たすような立地条件や原子炉等の施設が国内に存在し得るのか、立地し得るのかというふうにも思うんですけれども、田中規制委員長はどのようにお考えですか。

田中政府特別補佐人 委員が御指摘のように、今回の津波も千年に一度の津波であったと言われていますので、大体十のマイナス三乗ということです。

 ですから、我が国においては、これまでの安全規制の中で、一応事業者の努力目標として地震に対する備えとかということが求められてきましたけれども、今度の新しい基準では、津波、もちろん地震もそうですし、火災とか、それから火山とか、そういったことまで含めまして、外的な事象が、場合によっては百年とか千年とか一万年に一回起こるようなことについて、仮に起こったとしても、例えばその最大の地震が起こったとしても、それに対処できるような安全対策を求める、それをバックフィットとして全ての炉に求めるということでございますので、今御指摘の点はクリアできるというふうに思っております。

柿沢委員 クリアできるんですか。

 先ほどの、東日本大震災、福島第一原発事故の究極的な原因になった地震と津波です。千年に一度です。今目指すのは百万年に一度。百万年に一度というと、単純な計算をすると千年に一度の千倍の規模ですよね。これを想定して、それに耐え得るということは、なかなか、日本のような国土では大変困難なのではないかというふうにも思います。

 活断層についてお伺いをいたします。

 先日、予算委員会で、田中規制委員長は、日本では百万年以上も動かない地盤というのはほとんどない、こういうふうに言っている。そうだろうと思います。その上で、十二から十三万年前の第四紀後期更新世あるいは四十万年前の中期更新世までさかのぼって動いていなければよい、こういうことをおっしゃられています。

 しかし、百万年に一度の放射性物質大量放出頻度、この百万年に一度のリスクを想定するということと、日本では百万年以上動かない地盤はないというのは、いかなる関係になるんでしょうか。

 アメリカでは、原発から一キロ、八キロ、四十キロ、三百二十キロ、こういう範囲で地質調査を求めています。四十キロ圏内で断層が発見をされた場合、それが一キロ圏内で、活断層、ケーパブル・テクトニック・ソースということで、動く可能性がないということを証明しなければ原発立地をできない。

 しかし、現に、このパネルを見ていただければわかりますけれども、設計基準を超えた日本国内の原子力発電所までの震源からの距離を見てください。七十キロ、百キロ、こういう範囲で観測をされているんです。

 これを踏まえて考えると、本当に原発を立地できる場所が日本国内にあるのか、こういうふうに思いますけれども、規制委員長、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 千年に一回の地震が百万年に一回になったら千倍の強さになるかということ、そういうことではなくて、地震にはおのずと強い上限があります。

 ですから、今私どもが申し上げている活断層というのは、原子炉施設の重要な施設の直下にあるような場合には、地盤のずれが起こります。数十センチかもしれないし、数メートルかもしれない。そういう場合には、工学的対応が非常に難しいというか、今できるという保証がないので、そういう場所については立地は御遠慮願うということであります。

 ただし、仮に活断層があったとしても、少し離れていれば、それについては工学的に、現代の工学技術において対処できるかどうかということを判断して、それで十分耐えることができるようであれば、それで一応安全の評価をしていきたいというふうに思っております。

柿沢委員 世界最高水準の安全基準、規制基準を目指すという言葉のとおりになっていくのかどうか、今のやりとりを聞いていて、大変これからの行く末を注視していかなければならない、こんなふうにも思わせていただいたところです。

 さて、スリーマイルアイランド原発事故を受けて、アメリカNRCのいわゆるロゴビン・リポートという報告書があります。そこには、避難計画なくして稼働計画なし、こういう有名な言葉があります。

 アメリカ・ニューヨーク州のロングアイランドのショーラム原発、ゼネラル・エレクトリックの沸騰水式原子力、六十億ドル、つまり六千億円ほどをかけて建設をされたわけですけれども、これは、燃料棒を入れる直前になって、十万人の島からシビアアクシデントが起きたときにどうやって避難させるのか、こういう議論が出て、結局、安全な避難は不可能という結論になって、一度も稼働させないまま、このショーラム原発というのは廃止になりました。

 避難計画なくして稼働計画なし、この思想は日本においても貫徹をされるんでしょうか。つまりは、原子力防災指針と有効な地域防災計画、こういうふうに評価されるものなくして再稼働はあり得ない、こういう立場を規制委員会としてとるということをぜひ明確に言っていただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 原子力発電所の運転が地域防災計画の策定がなければだめかどうかということは、法律のたてつけではそうはなっておりませんけれども、地域住民の安全を確保していくという観点からいいますと、原子力防災体制の充実強化というのは極めて重要なことだというふうに私どもは認識しております。

 そのため、昨年九月に私どもが発足をして、最重点の取り組みの一つとして地域防災指針をつくり、それに基づいて計画の策定をお願いしたところでございます。具体的には、そういった計画の有効性についても、今後、いろいろな実施訓練等を踏まえてやっていきたいと思います。

 特に、今回の地域防災指針をつくるに当たっての一番の反省点といいますか、教訓としましたのは、今回の福島事故で、放射線による犠牲者よりは、急いで避難したとか、今御指摘のように、いわゆる災害弱者と言われるような方、病人とか老人が避難したということで相当の犠牲者が出ておりますので、そういったことのないように、まず放射線の初期の被曝を防ぎ、例えば沃素剤を五キロ圏はあらかじめ配っておくとか、そういったことで、かなりきめ細かくそういう対応をとるようにしております。

 再稼働するかどうかについては、これは地域の住民の方の御判断によるものかというふうに思っております。

柿沢委員 パネルを出していただきたいと思います。

 これは、日本国内の原発から二十キロ、五十キロ、百キロ、二百キロ、これをプロットするとこうなるという地図です。

 九州方面を見ていただくと、玄海原発、UPZとなる三十キロ圏内に壱岐という島があります。三万人が居住している島です。これは海に閉ざされた島で、大量放出時、仮に、もう本当に手の施しようもなくなって、大変線量が高くなってしまって人間が近づけない、こんな状況になったときにどうやって避難させるのか。先ほどのロングアイランド島と同じ問題が出てくるというふうに思います。そういう議論もいまだ全く行われていないようにも見えます。

 玄海原発というのは、三・一一以降、最も早く、前政権によって再稼働が進められようとした原発の一つであります。もう一度、規制委員長に、明確にここは姿勢の問題として御答弁をいただきたいと思うんですけれども、避難計画なくして稼働計画なし、ぜひ、こういう姿勢で物を考えるというふうに御答弁をいただきたい。もしできれば、総理にもそのことを、政府、稼働を決める最終決定権者として御答弁をいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答えします。

 若干繰り返しになりますけれども、初期の放射能の放出が仮にあった場合でも、一番最初には、いわゆる希ガスと言われるものが一過性で空気とともに流れていきますし、それから沃素の被曝を注意しなければいけませんので、そういったことについては、きちっとしたフィルター効果を持ったような屋内施設をつくって、そこにしばらくいていただいて、順次必要に応じて避難をしていただくというようなことで、今回はそういう方針で避難計画をつくっていただいております。

 避難計画がきちっとできなければ稼働ができないかどうかということは、それはまさに地元の方の判断というのが非常に重要だと思いますので、今私がそれで、そうすべきだとかということを申し上げる立場にはないので、そこまでは申し上げませんけれども、そういうことになるんだろうというふうに思っております。

安倍内閣総理大臣 政府としては、原子力規制委員会が安全かどうかという判断をする中において、我々は判断をしていくということでございます。

柿沢委員 もう一度見ていただくと、オレンジ色のエリアが原発から百キロエリアですけれども、例えば浜岡原発、仮に、これは想定外を考えないとすれば、事故があり、放射性物質が大量放出された場合、東海道新幹線や東名高速、こういうものもシャットダウンをしなければいけない場合が出てくると思います。

 アメリカでは、FEMAがこういうものに対するコンティンジェンシープランというものを用意している。また、シビアアクシデント時の経済被害がどのようなものになるか、こういうことについても解析コードを用意しているということであります。こうしたことについても、やはり備えを持つべきなのではないかというふうに思います。

 原子力事業者の問題に移りたいと思います。

 日本原電、東電の十分の一以下の規模の電力事業者。社員千四百人、年商一千四百億円。これが原子炉二基を保有しているわけです。社員数三万六千人、年商五兆円の東電ですら、福島第一原発事故であんな状態に陥ってしまったんです。日本原電の会社の規模では、事故時の対応どころか、それこそ、言葉として、例えとしていいかどうかわかりませんけれども、もう東京との連絡をとる電話すらままならないんじゃないかというふうにも思います。

 こういう日本原電のような会社がシビアアクシデントを起こした場合、これは、日本原電、対応可能なんでしょうか。所管官庁の経産大臣にお伺いします。

茂木国務大臣 御質問にお答えする前に、冒頭、委員の方から御指摘のありました、十四時二十七分に発生いたしました東京電力第一原発三号機の燃料プールの冷却が停止した件でありますが、東電から、きょうじゅうには復旧の見通し、こういう報告が入っております。

 そして、この三号機の燃料プールに入っております使用済み核燃料の数、四号機と比べてかなり少ないわけであります。そして、四号機でもクリティカルになるまで一定の日にちがかかるということでありまして、時間的に今の段階で深刻な状況とは考えておりませんが、もちろん一刻も早い復旧に向けて全力で取り組むように、そしてまた、今回の原因究明、二度と同じようなことが起こらないように厳しく指導してまいりたい、このように考えております。

 その上で、御質問のありました日本原電の問題でありますが、原子力規制委員会におきまして、シビアアクシデント対策を含む原発の安全基準が検討されているわけでありまして、そもそも、基準を満たさない原発、これは日本原電に限らず運転することができない、このように考えております。

 もし、資金面についてまた違う御質問があったらお答えさせていただきます。

柿沢委員 時間も押してまいりましたので、質問を最後にしたいと思います。

 ここまでいろいろ伺ってきましたが、福島第一原発事故の原因究明も、世界最高水準という新安全基準、規制基準の策定そして適用も、また、避難計画なくして稼働計画なし、こういう防災指針あるいは防災計画、その策定及び適用、また、日本経済全体についての例えばコンティンジェンシープラン、また、先ほど御答弁いただきましたけれども、電力事業者の体制についても、私は、これから原発再稼働を容認できる、こういう状況には少なくとも現時点では到底なっていないというふうに思います。

 安倍総理は、前政権のエネルギー政策はゼロベースで見直して、責任ある政策をつくるとおっしゃっています。三年程度で既存原発の行く末を見定めて、そして、十年以内に安定したエネルギーミックスに移行すると。三年間で稼働できるものは再稼働して、その上で、安定したエネルギーミックスに十年かけて動き出すということになるわけです。

 そうすると、エネルギーミックスの議論が決着する前に原発が動き始めて、なおかつ、新規着工もとめられるわけではないんでしょうから、十年後には原発稼働が既成事実化していて、もう後戻りできなくなってしまうのではありませんか。申しわけありませんけれども、これは原発依存の日本を取り戻すための霞が関文学、こういうふうに思える表現だと思います。

 この点について、ぜひ安倍総理の真意を伺って、終わりにしたいと思います。総理、お願いします。

茂木国務大臣 エネルギーのベストミックスを決めていく、これはさまざまな要素というのを検討していかなきゃいけないわけです。

 例えば再生可能エネルギーにしましても、それぞれごとにどれぐらいのコストがかかって、先ほども申し上げましたけれども、変圧器の話であったりとか蓄電池の話であったりとか、どこまでのことができるか。これは、見通すのにも時間がかかります。

 同時に、例えば、LNGの低コスト化がどこまで進むか、そして高効率化が火力発電の部分でどこまで進んでいくか。

 さらには、電力システム改革、これも一年じゃできないわけです。しかし、これをやることによって新しい参入業者、発電の部門でも売電の部門でも出てくる。

 そしてさらに申し上げると、消費の側、需要の側でも、今まではこれをしようとしていたのを、ディマンドコントロールによって、我慢の省エネではない賢い省エネ、こういったものも進んでくる。

 そういった需要全体がどうなるのか、供給源がどうなるのか、こういったことを見きわめないと、なかなか、仮置きすればいいという話ではなくて、きちんと責任を持って、実現できるエネルギー政策を構築していきたいと考えています。

柿沢委員 総理は。

安倍内閣総理大臣 ただいま茂木大臣から答弁をいたしましたが、三年間で、原発において、規制委員会が安全かどうか判断をしていくわけでありますが、その中で、動かすものは動かしてまいります。

 そして同時に、再生可能エネルギーを初め、あらゆるエネルギーの可能性について、新たなイノベーションを求めて国家資源を投入していくわけでありますが、そして、十年間において、稼働するものを稼働していく中、あるいは新たなエネルギー源が獲得できれば、当然、原子力発電の比率は減っていくという中において、安定的な供給、もちろん安全でそして廉価なものをミックスしたベストミックスを構成していきたい、こう考えております。

柿沢委員 注視していきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

山本委員長 この際、椎名毅君から関連質疑の申し出があります。柿沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。椎名毅君。

椎名委員 みんなの党の椎名毅でございます。

 冒頭、先ほど茂木大臣から、速報で入りましたニュースの三号機の問題につきまして、きょうじゅうに解決する見込みであるということでしたけれども、引き続き、どうぞきちんと調べていただきたいというお願いだけさせていただきたいと思います。

 本日は、原発・エネルギー関係の集中審議ということでございまして、質問の機会を与えていただきました。

 私、ちょうど一年前ごろ、国会事故調というところにおきまして、黒川清委員長のもと、民間から国会に派遣された弁護士として、実際に、原発事故の原因の調査、被害拡大の原因の調査、そして事故の背景にある原子力政策の問題点、こういったことの調査のお手伝いをしてまいりました。したがいまして、こういったこともありまして、こういった機会をいただいたものと理解しております。まことに感謝を申し上げたいと存じております。新人でございますので至らないところもございますが、何とぞ御容赦いただけますと大変幸いでございます。

 早速ですが、質問に入ってまいりたいと思います。

 本日は、先ほどの柿沢未途議員の質問の続きになろうかと思いますけれども、原子力発電所の再稼働、それに関連する新安全基準の十分性、こういったことについて質問をしてまいりたいと思っております。

 ちょうど、国会事故調が報告書を出そうと最後の追い込みをかけていた昨年の六月の二十日に可決され、そして同二十七日に公布されました原子力規制委員会設置法。このとき私は、衆議院第一別館で、なぜ我々の報告書を提出するのを待っていただけないんだろうかと非常に残念に思ったところでございました。

 この附則十七条によって改正された、いわゆる炉等規制法の定めによりますと、再稼働に当たっては、電力事業者が新安全基準に相当する原子力安全委員会規則に適合させるための工事、いわゆるバックフィットを行うために、原子力規制委員会から、設置変更の許可など工事計画認可、それから届け出、保安規定の変更認可、こういった許認可を新たにとり直すことが必要で、規制委員会から許認可を得た後、電力事業者が再稼働をするということになろうかと思います。このような理解でよろしいでしょうか。

 総理の施政方針演説、それから先ほどの御答弁でも、安全が確認された原発は再稼働しますという宣言でございましたけれども、どうも、言葉に主語がなくて、当事者が誰なのかわかりません。原発の再稼働の判断権者、当事者は誰なのか。原発再稼働に当たって、国が法的に関与できるのは、原子力規制委員会の新安全基準適合性の許認可のみという理解でよろしいでしょうか。茂木経済産業大臣にお伺いいたします。

茂木国務大臣 改正炉規法の基本的なたてつけは、そのような形になっております。

 安全を判断するのは、独立した規制委員会であります。そして、その上で、稼働をするかしないか、これを決めるのは各炉の設置者、こういう形になってまいります。

 その上で申し上げますと、原発の安全性についての判断は原子力規制委員会の専門的、独立的な判断に委ねる、こういった新たな規制体系をつくったのはまさに国会でありまして、この規制委員会の判断については、国が当然最終的な責任を持つ、こういう意味で申し上げております。

椎名委員 そうしますと、先ほど柿沢未途議員からもございましたけれども、原子力規制委員会設置法附則五十四条で改正された原災法六条の二、こちらに基づいて規制委員会が策定する原子力災害対策指針に基づき、周辺地方自治体が十分な地方防災計画をつくること、それから、事業者と周辺自治体との間で安全協定などの合意がなされること、周辺自治体や住民から再稼働に関する同意を得ること、これ自体は法的に再稼働の条件になっていないということなんですよね。規制委員長に再確認させていただきます。

田中政府特別補佐人 繰り返しになりますが、そのとおりでございます。

椎名委員 二〇一二年十一月十日の東京新聞の朝刊でございますけれども、「原発の半径十〜三十キロ圏に位置する二十道府県の八十三市町村(福島県除く)のうち約六割の四十七自治体が、原発再稼働の際に同意が必要な立地自治体だけでなく、周辺自治体の同意も得るよう求めている」、こういったアンケートが出ている次第でございます。

 こういったところについてきちんと対応するために法的な規制をかけたいと思うんですけれども、そういうことはできないんでしょうか。規制委員長に再度伺います。

田中政府特別補佐人 私どもの役割としては、いわゆる防災の指針、基本になるものを御提示して、それに基づいて、各自治体、各県とか市町村が防災計画をつくっていただく、それがぜひ、住民の方々が安心できるようなものをつくっていただくようにお手伝いするということで、法的にそれを規制するようなことはできないということになっています。

椎名委員 IAEAの基準によると、深層防護、ディフェンス・イン・デプスという考え方がございまして、原子力施設の防護に関しては、事故発生の防止を目的とする三層の防護、これに加えまして、事故の進展防止、それからシビアアクシデントの影響緩和を目的とする四層目、そして、放射性物質の放出による放射線影響の緩和を目的とする五層目が要求されております。

 今回の新審査基準については、シビアアクシデント対策、ここまでは規制されているんだと思いますけれども、五層目がないかとやはり思います。どうにかして、私自身、これを法的に規制していくべきなのではないかというふうに考えております。

 今まで申し述べたような法的たてつけになっているとすると、まさに、結局のところ、今議論をしていますこの新安全基準というものが本当に十分な基準なのか否かというのが、要するに再稼働するかしないかの基準になってくるわけでございます。

 規制委員長は、新安全基準の設定に関して、世界で一番厳しい基準を目指すと言っておりましたが、先日、新安全基準を規制基準と呼び名を変えたわけでございます。若干トーンダウンしたように聞こえます。

 今回の新安全基準は、耐震、耐津波性能に関する部分、設計基準ということで、デザイン・ベースド・アクシデント、想定された事故に関する部分、それからシビアアクシデント対策部分、こういったところだけが改正されております。

 しかし、旧来からある立地指針といったところについて修正の方向性が見えておりませんし、先ほど申し述べたように、周辺自治体からの同意が再稼働の法的な要件になっているわけではないというふうに見受けます。ともすると、新安全基準に適合すれば安全であるという印象を与えてしまいます。

 しかし、私にはどうも世界一とは思えない部分が幾つかございます。

 例えば、テロ対策について、アメリカにおいては、フォース・オン・フォースという、実際にテロリストを模した集団が原発にやってきて、テロ対策が十分に整っているかどうかをチェックする演習みたいなものが行われていたりします。しかし、今回のシビアアクシデント対策のところには、そんなことは一つも書かれておりません。

 また、先日、安全目標として、炉心損傷頻度が一万年に一回、そして格納容器隔離機能喪失頻度が十万年に一回、それから管理放出機能喪失頻度が百万年に一回、そういう目標を定めたようでございますけれども、こういった確率論的リスク評価、これを採用したこと自体は評価できると思いますが、これ自体は法律上の原則になっておらず、あくまでも委員会内部の努力目標にすぎません。

 その結果として、定量的にリスク判断を行っていくこと、それは結局、今回の新安全基準でもできないというように見受けています。あくまでも、フィルターつきベントの整備、移動式電源車、それから注水設備など、こういった仕様要求のみになっているように見えます。

 今、現状において、世界一の基準だと評価しているのでしょうか。それとも、随時これから他の規制を整備していくということで、今回のものは単なるベータ版にすぎない、そういう認識なんでしょうか。

茂木国務大臣 田中委員長が答弁される前に、こういった規制委員会の設置法をつくったのは田中さんじゃないんです、国会でつくったわけです。そして、新安全基準については、まさに今、詰めの作業を行っております。さまざまな方から意見を聞いて、そういった世界でも最高水準の厳しい安全基準をつくってくれるものだと期待をいたしております。

 そして、先生は弁護士でいらっしゃるので、あらゆることを法律で、そういうお考えが強いのかもしれませんけれども、もちろん、地元の皆さんの御理解をいただくということについては最大限の努力を政府としてもしていきたいと思っております。

椎名委員 勉強させていただきました。ありがとうございます、茂木大臣。今後とも精進してまいりたいと思っております。

 では、本日、私も国会事故調のときに非常にお世話になった、田中三彦参考人に対して伺いたいと思います。大変御無沙汰しております。

 率直に、今回の新安全基準について、国会事故調の指摘などを踏まえて、これらが十分に反映された世界最先端の基準となっていると思えるでしょうか。

 あともう一点、済みません、つけ加えたいんですけれども、先ほど茂木経済産業大臣がおっしゃいましたとおり、検討会においていろいろな方々の意見を聞いている、そういうことは十分承知しております。しかし、ここで検討会に参加している人間、事業者の方々が多数、多数回参加しております。しかし、例えば田中三彦参考人のような在野のエンジニアの方、こういった方々がこの検討会に参加して、そして意見を聴取する機会を設けてもらっているのでしょうか。田中三彦参考人、お伺いしたいと思います。

田中参考人 お答えします。どうもお久しぶり、久しぶりではないんですけれども。

 世界で一番の規制基準かどうかという御質問ですけれども、基本的には、今回の福島の原発の事故調査が終わっていないので、本当はそこから得られる知見というのがまだあると思うんですね。ですから、その評価に関してはちょっと保留をさせていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、済みません、何でしょうか。在野の……(椎名委員「検討会に参加をして、要するに、今回の基準に対して意見を」と呼ぶ)

山本委員長 ちょっと、議事録もありますので、もう一回質問を。

椎名委員 今回の新安全基準を定めるに当たって、検討会を規制庁の方でやりとりをしている、その間に事業者の方々から、検討会に呼んで話を聞いている、そういう事実を私は仄聞しております。これに対して、こういった、田中三彦参考人のような在野のエンジニアのような方々の意見を聞く機会というのはこの検討会の中で設けられているのでしょうか。

田中参考人 なかったと思います。

椎名委員 民間の方々からは基本的にパブリックコメントというものをとって、そしてその意見を反映する形だというふうに認識をしておりますが、民間の方々から話を聞くという機会をぜひ設けていただきたいなということを規制委員長にお願い申し上げたいというふうに思っております。

 それで、時間もないので次に行きます。

 おとといですけれども、報道ベースで、トルコに、三菱重工それからアレバ連合が原発建設をし、そして売電事業に乗り出すということで大筋合意という話になったそうです。トルコは、現在ロシアとの合弁が実は進んでいるようですが、今現在において、原発自体を未設置、未導入の国だというふうに理解をしております。

 こういった原発未導入の国に対して日本が原発をプラントごと輸出するような場合において、例えば、今話が進んでおりますベトナムなんかの例を踏まえまして、安全規制の策定や人員の教育までも含めて支援をしていくことになろうかと思います。

 そういった場合に、この安全規制の策定という中で、日本の今持っている新安全基準というもの、これが参考になろうかと思いますが、こういった認識でよろしいでしょうか。茂木経済産業大臣に伺いたいと思います。

茂木国務大臣 トルコの原発につきましては、日本企業はアレバと一緒に受注すべく最終段階に入っている、こんなふうに認識をいたしております。

 そこの中で、我が国の原発輸出の問題でありますが、もちろん、相手側の国の事情、そして相手側からの要望、そういったものを受けた中で、我が国の、これまでの事故の反省等も踏まえながら、世界最高の安全水準のものをシステムとしてお送りしたいと思っております。

 その場合には、人材の問題、さらには関連した制度整備の問題、御要請がありましたら、そういった部分の支援も行っていきたいと考えております。

椎名委員 私は、今、ベトナムの例なんかで、実際に安全規制の策定に関して日本の人材が関与していく働きかけを受けていて、かつ実際にそれで動いているという話を仄聞しております。したがいまして、日本の原子力安全規制が、規制として、法輸出、法整備支援に対してたえ得るようなものになっているべきであろうというふうに思っております。

 改めて規制委員長にお願い申し上げたいと思います。輸出にたえ得るような、国際的に最先端の基準とされるよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後に、総理にお伺いいたしたいと思います。

 原子力規制委員会設置法附則十七条で改正された炉等規制法、施行時期は、同附則一条四号に基づいて、平成二十四年六月二十七日の施行日から十カ月以内ということです。要は、ことしの七月下旬です。事務方の方々から聞いたら、七月の十八日だということだそうです。

 私のような技術素人でも、この安全基準について若干問題を感じるというところがあるわけですが、ことしの七月までに新安全基準を原子力規制委員会規則として条文化して、そしてそれを施行するということで、どうも拙速につくったように正直見えてしまいます。原子力発電所の再稼働を行うために新安全基準の策定を急いでいるんじゃないかといううがった見方をされても仕方がないように思います。

 原発を停止している関係上、化石燃料の輸入によって貿易収支が悪化してGDP押し下げ圧力がかかること、これ自体は十分理解をしております。したがいまして、国際標準の安全基準に基づいて安全性が確認されたら原発再稼働ということについては、我が党も基本的には反対しているわけではございません。

 しかし、政府の役割というのは、国民から社会契約として委託を受けた事項、究極的には、最も重要なところは国民の生命、身体、健康の保護だというふうに考えておるところでございます。安全性の確認というのは非常に慎重にやっていくべきではなかろうかというふうに思います。

 例えば、IAEAの加盟国から今回の新安全基準の十分性についてピアレビューを受けた上で施行する、そういった対応はできないんでしょうか。今までの議論を聞いた上で、総理の見解をどうぞお聞かせください。

茂木国務大臣 七月十八日までに新安全基準をつくる、これは前政権のときに、我々、野党でありましたが、いろいろな協議をさせていただく中で、専門家の御意見も伺い、世界最高水準の安全基準をつくるのに必要かつ十分な時間であろうということで設定をさせていただきました。

 そういったもとで、田中委員長初め、今独立した機関でありますから、それを念頭に検討を進めていただいている、そのように理解をいたしております。

椎名委員 もしよろしかったら、総理の見解も聞かせていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま担当大臣がお答えいたしましたが、原子力規制委員会において、七月の施行を目指して着実に検討が進められているというふうに承知をしております。

椎名委員 非常に残念な答えなんですけれども、もし総理の権限がございましたら、要するにこの施行日をずらすという形で附則を改正するということはできないことではないんだろうというふうに私自身は思うので、ぜひ御検討いただければというふうに思います。

 恐らくもう時間だろうと思いますので、本日は本当にどうもありがとうございます。

 私自身、今後の日本のエネルギー戦略、それから原発問題、そして事故の収束といったものに関与していきたいと思いまして国会議員になりました。この問題は与野党関係ないと思っています。日本自体の国難だと私自身は思っています。私自身も積極的に取り組んでまいりたいと思うので、どうぞ、今後とも御指導、御鞭撻をよろしくお願いできれば大変幸いでございます。

山本委員長 これにて柿沢君、椎名君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 福島では、大震災とともに原発事故により、十五万人を超える方々が今なお困難な避難生活を送っておられます。復興庁の調査によると、震災後一年以上経過して亡くなった方が、福島県で三十五人もいらっしゃるということです。全員が原発事故に伴う避難指示区域からの避難者の方、何回もの避難所の移動や、長期の避難生活が原因とされております。

 原発事故が避難者の方の命を縮めた。原発事故の被害は今なお拡大をしている。原発事故被害者支援に万全を期すことを強く求めるものであります。

 そして、今なお放射性物質は放出をされ、汚染水を垂れ流し続けており、福島原発事故は収束しておりません。事故の現状も把握をされていない。

 そこで、参考人としておいでの田中三彦国会事故調元委員に御質問いたします。

 福島原発事故の国会事故調査委員会による調査を東京電力が妨げていたことが大きな問題となっております。東電が昨年二月、一号機の現地調査をしようとした国会事故調に対して、一号機の内部の状態や明るさについて虚偽の説明をしていた。一号機の原子炉建屋四階の調査が必要、そのように考えた理由は何なのかについてお聞きし、また、国会事故調の一号機の原子炉建屋四階の調査を東電が妨害したのはなぜなんだろうか、この点について参考人のお考えをお聞かせください。

田中参考人 お答えします。

 一号機の四階は、非常に重要な、きょうは何度も話に上っております非常用復水器、ICというのがあります。これがどのように運転されたかというのは、先ほど少し議論がありましたけれども、あれほど簡単な話ではないというふうに理解をしております。

 その後も、一度弁が開くということがありまして、多分あそこで水素が詰まっていっただろうというふうに思っておって、細かい話はともかく、事故調としては、四階のICがどういう運転をされたか、あるいはどういうトラブルがあったかということをどうしても知りたいということがありました。

 私、個人的な見解でいいますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、一号機に関しては、事故のプロセスとか運転が割合単純なものですから、四階をよく精査するということがもしできれば、それは一度では済まないと思いますけれども、幾つかのポイントに分けて何度か入っていくことで、事故のプロセスが、水素爆発までに至るプロセスがどうだったかということはわかるのではないかと思っております。そういうことで、四階には、事故調に入る前から関心を持っておりました。

 一方、また事故調に入る直前に、あそこで地震が来たときに作業をしていた、四階でたまたま作業していた数名の方が、水がわっと出るのを目撃しております。そのこととICの問題が関係しているかどうかということは非常に興味深いことだったということです。

 その二つが関連しているのかしていないのか、それを知りたかったということでございますが、当時、その出水目撃情報というのは東京電力は存じていないはずです。それは、東京電力には話をしたけれども相手にされなかったという、津波のせいだろうという、何かよくわからないそういう話だったということで、特に関心がなかったということです。

 ですから、私たちは、一号機の四階を見たいということに際して、その理由を説明しておりません。東京電力は、恐らく我々が入る前に既に二度、あるいは三度かもしれませんが、入っております。これは、やはり東京電力も四階に非常に関心、注目を持っていた証拠だと思います。

 そういうことを含めて、私たちが入るということで、何か変なものを引き出されるんじゃないかということもあったのかもしれません。その辺のことは推測になりますけれども、どういう理由で私たちが妨害を受けたかわかりませんけれども、午前中に申し上げましたように、あれは明らかに、我々が入ることに対する意図的な阻止であったというふうに私は感じております。

塩川委員 今お話しいただきましたように、地震直後の出水と非常用復水器の破損の関連があるのではないのか、つまり、地震動というのが事故原因と大きなかかわりがあるのではないのか、こういう重大な問題が指摘をされたのを東電がごまかした、虚偽の説明でこれを行わせなかった、この点が極めて問われているわけであります。

 事故原因の究明が行われていないということが前提にあるわけで、もともと、一号機というのが、二号機、三号機と比べても非常に短時間でメルトダウンに至り、水素爆発を起こしたわけですが、その真相はわかっておりません。今申し上げましたように、地震動によって非常用復水器が損傷したことを否定できないわけで、こういう国会事故調の重要な指摘を棚上げにすることはできません。

 東電が経産省の指示を踏まえて調査をしたと言いますけれども、東電関係者だけの話を聞いただけで、国会事故調の関係者の方の話なんか聞いていないわけですから、これでどうして真相を解明することになるのか、こういう点でも、この国会で真相を解明することが必要だ。

 この点で、地震動が事故原因であれば、規制基準づくりそのものが問われてくるわけで、委員長として、ぜひとも、国会としての事故原因の真相究明という点でいえば、田中三彦参考人の御出席を改めて求めると同時に、東電側の説明を行った担当者、玉井元部長の出席を求める、証人喚問をきちっと行って、この場で問題についてきちんと明らかにしていく、このことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

山本委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

塩川委員 そういう点では、一度国会事故調は区切りになっていますけれども、第二次の国会事故調をつくるような必要もあるんだ、こういう重大な問題だということを指摘し、こういう事故原因究明に当たっての現場の保全などもしっかりと行うことが求められているということを強調しておくものであります。

 この東電の調査妨害事件に関しても、格納容器において地震動による損傷がなかったかどうかが焦点となっております。地震国の日本においては巨大地震を想定した原発対策が必要であり、これは他国にはない最重要課題であります。

 ここにパネルを用意いたしましたが、世界の地震活動の分布と原発立地を示す地図であります。一九〇〇年から二〇一〇年の間に世界で起きたマグニチュード五・五以上の強い地震が起きた地点と原発の立地を一枚の世界地図に重ねたものであります。

 日本を初め、環太平洋地震帯では大地震が頻発をしております。原発大国でありますアメリカは、地震地帯に原発がほとんどありません。フランスなどにはそもそも地震地帯がないというのが、この地図でも見てとれるわけであります。

 総理にお尋ねいたしますが、こういった地震地帯で原発の立地が集中しているのは日本だけだ、これは余りにも異常だとは思いませんか。総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 日本は世界の中において有数な地震国であるがゆえに、原子力発電所の地震に対する安全性はより厳しいものが求められるというふうに認識をしております。

 東日本大震災の教訓も踏まえて、世界最高水準の安全を目指すという考え方のもとで、今回、地震対策を強化した新たな、極めて厳しい規制基準を原子力規制委員会において策定をしているところでございます。

塩川委員 世界有数の地震国の日本ではより厳しいものが求められる、そのとおりなんです。これからの話じゃないんですよ。まずは、これまでがどうだったかということが問われているんです。そういう点でも、地震地帯で人口密集地域、そこに原発が集中立地をしている、そういうことになれば大きな危険性が伴うというのが普通の受けとめであります。

 日本に立地している原発で、大地震に見舞われる危険性がないと断言できる原発はありません。一九九五年の阪神・淡路大震災以来、日本は地震活動期に入ったと言われ、巨大地震によって原発事故が引き起こされる原発震災の危険が指摘をされてまいりました。二〇〇七年の中越沖地震では柏崎刈羽原発が被災をし、多くの設備が壊れ、火災や放射能漏れが起こるなど、原発震災が現実の危険となりました。だからこそ、我が党は、巨大地震に伴う原発の危険性について追及をしてまいりました。

 二〇〇四年に、スマトラ沖地震、津波によって、インドのマドラス原発が損傷する事故がありました。このことにも注目をして、我が党の吉井英勝衆議院議員が二〇〇六年十二月に質問主意書を提出しております。パネルを見ていただきたいんですが、タイトルそのものが、「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」、これを平成十八年の十二月に行っております。この答弁書は、第一次安倍内閣のときであります。ですから、安倍首相及び甘利経産大臣のもとで閣議決定されたものであります。

 赤い線を引いたところを読み上げますと、質問主意書の方では、「外部電源が得られない状態が生まれ、内部電源も」「働かなくなった時、機器冷却系は働かないことになる。 この場合、原子炉はどういうことになっていくか。原子力安全委員会では、こうした場合の安全性について、日本の総ての原発一つ一つについて検討を行ってきているか。 また原子力安全・保安院では、こうした問題について、一つ一つの原発についてどういう調査を行ってきているか。」このように質問をいたしました。いわば、今回の福島原発事故の進展に符合する、全電源が喪失をし、機器冷却系が働かず、炉心の損傷、そしてメルトダウンに至る事態を予想した質問でありました。

 これに対する答弁書は、「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については、」「御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」このようになっております。内閣総理大臣安倍晋三の名前での答弁書であります。

 そこで、総理にお尋ねいたしますが、対策を求める指摘をしていたにもかかわらず、総理が、安全対策は万全だ、こういう答弁書を書いたというのは、政府が、全電源喪失によってメルトダウンに至る過酷事故、シビアアクシデント、これが起こらないという立場だったからではありませんか。

安倍内閣総理大臣 志位議員の御質問にも答弁したとおりでございますが、原発の安全性について、国会事故調や政府事故調からも指摘されているとおり、複合災害という視点が欠如していたことや、規制組織の独立性が十分ではなく、いわゆる安全神話に陥ってしまった点、政府として深く反省しなければならない、このように思いますし、また、国民の皆様に対しましても、申しわけない思いでございます。

 こうした反省を踏まえ、昨年九月に原子力規制委員会が新たに設置をされ、原子力規制の抜本的な見直しが進められているところでございます。原子力発電所の安全に関する新基準については、ことし七月までの改正原子炉等規制法の施行に向けて、シビアアクシデント対策の実施や津波対策の強化などを盛り込む方向で、現在、原子力規制委員会において検討中であります。

 原子力発電所は、安全の確保が最も重要でありまして、今までの反省も踏まえて、基準を策定していきたいと思います。

塩川委員 いや、反省を口にされますけれども、しかし、この答弁書では、原発そのものに過酷事故が起こり得る、こういう視点が欠落をしている、この点が極めて問われているんじゃないでしょうか。

 この間、一九七九年のスリーマイル島の原発事故、一九八六年のチェルノブイリ原発事故において、炉心を著しく損傷する事故、メルトダウンに至る過酷事故、シビアアクシデントが現実のものとなりました。世界では、二度にわたる過酷事故、シビアアクシデントを踏まえ、独立した規制機関の確立とシビアアクシデント対策は国際的な基準となってまいりました、そのときに、日本ではどうだったか。

 田中原子力規制委員会委員長にお尋ねをいたしますが、一九九二年五月二十八日の原子力安全委員会において、重大な決定を行っております。この決定では、「シビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さい」として、「原子炉の設置または運転を制約するような規制的措置が要求されるものではない。」としていました。

 つまり、この決定で、過酷事故対策については規制は行わない、事業者任せにする、こういうことを決定していたわけであります。このことが、結果として、この福島事故につながってしまったのではありませんか。その点についての認識を伺いたい。

田中政府特別補佐人 今御指摘の点については、かつての原子力安全委員会決定の中にそういった記述があることは承知しております。そのことが、福島の事故を見れば、誤りであったということであります。

 したがって、新しい基準においては、そういったシビアアクシデントが起こり得るとして、起こさないためのバックフィット規制、今までは事業者の自主努力に任せているようなところがありましたけれども、今度は、法的にそれをきちっと対応することを求めるバックフィット規制を行っていくということで、なおかつ、そういったアクシデントは、幾ら規制を高めていっても、ある程度そういう可能性もあるんだという認識のもとで、より一層の安全を高めていく努力をしていくという姿勢で今臨んでいるところでございます。

塩川委員 今、田中委員長から、この過去の原子力安全委員会の決定、要するに、過酷事故は起こらない、事業者任せにする、規制を行わないんだというやり方が誤りだったということを述べられました。

 一九八六年のチェルノブイリ事故の教訓を踏まえたIAEAの一九八八年の報告は、このシビアアクシデント対策を求めていたわけで、アメリカやEUは受け入れ、日本は受け入れなかった。二十年以上前から指摘をされていたのに、対策を放置したというのが日本であります。

 重ねて総理にお尋ねしますが、こういうシビアアクシデントは起きないとした政府の政策というのがこの福島の事故につながったんだ、そういう反省はお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁させていただきましたように、いわゆる安全神話の中に我々は陥ってしまった、このことによって、防げたものが防げなかったかもしれない、そういう反省の中から、政府事故調においても、また国会事故調においても調査が行われたというふうに承知をいたしております。

 今後、その反省を踏まえて、厳しい安全基準をつくっていかなければならない、このように考えているところでございます。

塩川委員 いや、そもそも、何度も指摘をされながらシビアアクシデント対策を放置してきた。歴代自民党政権ですよ。その自民党政権の政府の対応が事故につながったんだ。このことへの反省なしに今後の対策はあり得ないということは、重ねて申し上げておくものであります。

 これからどうするかというのが問われてまいります。

 福島第一原発では、注入している冷却水が格納容器から漏れて、高濃度の汚染水としてふえ続けております。一号機、二号機、三号機の格納容器が壊れているためであります。

 このパネルは、東電が作成をいたしました福島第一原発の炉心損傷状況の推定図であります。メルトダウンによって燃料が溶けて、圧力容器の底から下に落ちている。冷やすために水を入れているわけですが、格納容器から漏れ続けているというのが現実であります。

 東電の廣瀬社長にお尋ねをいたしますが、この格納容器はどこが壊れているんでしょうか。水漏れ場所というのは特定できているんでしょうか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 一号機、二号機、三号機の格納容器からの水漏れにつきましては、現在、ロボットを中に入れるとか、それから小さな穴をあけて、そこからスコープでのぞくというようなことをやっておりまして、大分漏えい箇所を絞り込みつつあるところでございます。

 引き続き、しっかり調査してまいりたいと思っております。

塩川委員 水漏れ場所は特定できたんですか。

廣瀬参考人 いまだ特定はできておりません。引き続き調査してまいる所存です。

塩川委員 格納容器の壊れた場所などがまだ解明されていないんです。

 原発事故は収束しておりません。なぜ壊れたかということも未解明だということです。

 そこで総理にお尋ねしますが、総理は、施政方針演説で、原発の安全性については原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、安全と認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めると述べました。

 また、総理は、我が党の志位委員長の代表質問に対して、原子力規制委員会において、事故の検証等も踏まえ、過酷事故も踏まえ、あらゆる事態を想定した原発の安全に関する諸基準について現在検討が行われていると、過酷事故も踏まえた安全基準の検討について言及をしております。

 ここで総理が言う、再稼働の前提としての安全というのは、シビアアクシデントというのはそもそも起きないということを前提にしているものなんでしょうか。

茂木国務大臣 委員も御案内のとおり、安全性の確認につきましては、独立した規制委員会において行います。そして、今まさに、この新安全基準、作成中でありますが、そこの中には、シビアアクシデント対策、さらには、その時々の最高水準の知見も盛り込んでいく、いわゆるバックフィット、こういったものも入れた基準を現在作成中だ、そのように承知をいたしております。

塩川委員 福島原発事故のように、格納容器が壊れて放射性物質が外に出ることがないという基準なんでしょうか。メルトダウンはあっても格納容器は壊れないという基準なんでしょうか。

田中政府特別補佐人 炉心が溶融するようないわゆるシビアアクシデント、炉心損傷などが起こった場合でも、それが拡大しないようにいろいろな対策を整えますが、仮に格納容器が破損した場合でも、大規模な破損にならないように、格納容器の、要するに閉じ込め機能を失わないようにするために、今、フィルタードベントといったようなものを設けて格納容器を保護するようなシステムも、今回の新たな規制基準では要求させていただくことにしております。

塩川委員 それはどんなことをするんですか。格納容器の閉じ込め機能を維持するためにベントなどと言いますけれども、それは、具体的には、格納容器が壊れないというために何をするということなんですか。

田中政府特別補佐人 炉心が溶融して、格納容器に大量の放射性物質が充満したままで格納容器が壊れますと、重大な放射能の漏えい事故になりますので、そういうことにならないように、今回の事故でも、格納容器の圧力が上がって、いわゆる格納容器の一部破損というか漏えいが起こったということですから、そういうことにならないように、そういう放射性物質を取り除くようなフィルターをつくる、いわゆるフィルターを通して、それから中の圧力を下げるようなシステムをつくるということであります。

塩川委員 フィルターはあるけれども、放射性物質が外に出るということになるんじゃないですか。

田中政府特別補佐人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、その場合でも、最悪の見積もりでも、大体、福島の事故の百分の一程度、通常のフィルターの機能が、性能を上げれば、さらにもう一桁低くなるということであります。

 ただし、申し上げておきたいのは、それだけ出してもいいというような基準を要求しているわけではなくて、そういうところに至らないようにするために、できるだけの対策をまず立てていただくということが最大の眼目であります。仮にそういうことをしても、そういう事態が起こった場合でも、福島の百分の一以下になるようにするというのが、今私どもが求めている規制基準の骨格であります。

塩川委員 極めて重大であります。

 メルトダウンをしても格納容器が壊れないという対策として、放射性物質を外に出すということを前提にしているということですよ。福島で排出された放射性物質の百分の一とかいったって、どういうふうにそれを管理するのか、そんなことが本当にできるのか。

 そもそも、原発の安全対策としてきた、とめる、冷やす、閉じ込めるという原則のうち、究極の、閉じ込めるという原則を破って、原発の敷地外に放射性物質を放出するということになるわけです。これが対策なんですよ。

 総理にお尋ねしますけれども、原発立地地域の住民は、こういった際に、格納容器が壊れないようにするからといって、放射性物質は外に出しますということを我慢してくださいということを言うんですか。

茂木国務大臣 これまでの反省も踏まえて、万全の安全対策を規制委員会の新しい基準のもとでやっていきます。

 そして、田中委員長の答弁にもありましたように、百分の一だからいいということではないんです。ただ、我々は、これからは安全神話には寄りかからないということで、二重にも三重にも対策をとるということを田中委員長も先ほど申し上げたんだと思います。

塩川委員 いや、起こっている事態はメルトダウンなんですよ。メルトダウンのときに福島の百分の一に抑えられる、そういった保証は一体どこにあるのか。この間、指摘をしましたように、地震国の日本で、単純にこういった基準というのを当てはめるということは許されない。

 そういう点でも、総理に重ねて伺いますけれども、放射性物質を外に漏らすことを前提にしたシビアアクシデント対策というのはおかしいんじゃないですか。改めて。

安倍内閣総理大臣 田中委員長、また茂木大臣からお答えをしておりますように、百分の一ならいいということではもちろんありません。そうならないように最大限の努力をしていくということでありますし、そして同時に、安全神話の中においてそういうことは起こらないんだという前提には立たずに、そうした危険を排除するために何重もの安全策をとっていくということではないかと思います。

塩川委員 いや、漏らすことを前提にしたシビアアクシデント対策でいいんですか、そういうことを原発立地地域の住民に説明する、そういうことでいいんですか。おかしいんじゃないのか。このことを聞いているんですが、いかがですか。

山本委員長 茂木経済産業大臣。(塩川委員「いや、総理、総理ですよ」と呼ぶ)

 技術的な話です、まずは。

茂木国務大臣 漏らすことを前提にしておりません。漏らさない、そして、そういった事故は起こらない、こういう世界最高水準の安全基準をつくっております。

 その一方で、さまざまな対策をとりながらも、最初から、絶対物事は起こらないんだ、こういう前提で考える、これによって起こった今回の反省も踏まえた対応をしているということであります。

塩川委員 いや、それ自体が、過酷事故が起きても大丈夫だという新たな安全神話になりかねない、同じ過ちを繰り返すものだ、このことを強く言わざるを得ません。

 そもそも、この福島の皆さんの声がどこにあるのか。福島県議会の斎藤健治議長さん、しんぶん赤旗の日曜版でもインタビューに応じていただきましたが、「原発事故が起きるまで私は、原子力発電所をばんばんつくろうとしてきました。二〇一〇年の十二月議会では自民党を代表し本会議で「福島第一原発に七、八号機をつくりなさい」と質問したほどです。 しかしあの原発事故が起き、「とんでもないことを言った」と反省し、今は「県内の全原発を廃炉にしろ」と主張しています。」これこそ福島県民の声であります。

 こういった声に応えて、原発再稼働は反対、県内十基の原発廃炉、こういう福島県民の声に応えるべきであり、事故は収束していない……

山本委員長 塩川君、時間ですよ。

塩川委員 この点でも、事故収束宣言を撤回し、再稼働などは許されない、即時原発ゼロの政治決断こそ行い、このことを強く求めて、質問を終わります。

山本委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党、玉城デニーでございます。

 きょうは長時間お疲れのところだとは思いますが、最後のバッターになりますので、ぜひ真摯な御答弁をいただきたいと思います。

 二〇一一年三月十一日、巨大な地震と津波によって引き起こされたとされている福島第一原子力発電所の重大事故は、炉心溶融、メルトダウンから、事態の収束ができないまま二年が経過しています。この事故によって、住む家を奪われ、ふるさとから引き離され、健康不安をも抱えながら厳しい生活を余儀なくされている方々を思いますと、原子力神話に引きずられてきた我が国のエネルギー政策の経緯をやはりこの際深く反省し、関係企業を含めたこの責任を一刻も早く果たすことに尽力すべきであるというふうに思います。

 安倍総理を初め、関係大臣並びに政府参考人から、きょうは、しかるべき対応や対策のための真摯な答弁を求めたいと思います。

 では、まず、福島第一原子力発電所の状況について確認をさせていただきたいと思います。

 この間、私もいろいろな方々から、あの福島は事故以降どうなっているのということを伺います。それだけ、情報がなかなか出ていかない、作業は進んでいるんだろうけれども進んでいる状況が見えない、そういうことに多くの国民の皆さんが、その事故以降の、国の状況のことを心配していらっしゃるんだと思います。

 そこで、発災、炉心溶融以降、これまで国及び事業者が事態の収束に懸命に当たってこられたとは思いますが、現在の状況がどのようになっており、また、どういう計画や工程によって今後進んでいくのか、国民の皆さんにしっかりと、できる範囲でも構いませんので、状況を説明していただきたいと思います。

 まず、福島第一原発のサイト内の復旧について伺います。

 一号から四号というふうに建屋が並んでおりますが、それぞれの状況がやはり違うわけですね。その建屋の復旧の状況はどうなっているのか、使用済み核燃料のプールの状況はどのようになっているのか、あるいは、サイト敷地の空間放射線量の数値は変化しているのか、それともおさまっているのか、そういうことも含めて、今後の工程について、まず御説明をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 恐らく四問、御質問いただいたかと思うんですけれども、その前に、きょうの二時二十七分に発生しました、福島第一の三号機の燃料プールの冷却が一時とまっている問題でありますが、先ほど東電から改めて報告が入りました。配電盤自体の機能は問題ないことを確認した、現在、プール冷却設備の再稼働に向けて復旧作業を開始した、あと、ポンプ等の設備を一つ一つ確認しながら復旧させていくため、数時間を要する見込みだ、このような報告が入ってございます。

 お答えをいたします。

 まず、福島第一のそれぞれの炉の状態でありますが、現在、一号機から三号機の原子炉について、注水冷却を継続しておりまして、原子炉の温度は十五度から四十度と、低温で安定して推移しております。

 しかしながら、実際に、廃炉も含めた事故への対応、こういったことが全て終わっているわけではない、こういう形、そしてまた、帰還できていない方々、こういった方々もいらっしゃるということで、収束という表現は適当ではない、こんなふうに考えております。

 そして、廃炉の工程でありますけれども、現在、廃炉に向けた中長期のロードマップにおきまして、これは昨年の十一月に、四号機使用済み燃料プールの取り出しをことしの十一月から開始する、当面の最優先課題としております。また、ロードマップ策定から十年以内の燃料デブリの取り出しの開始、そしてロードマップ策定から三十年から四十年での廃炉の完了を主な期間目標としているところであります。

 ただ、一号機から四号機、置かれている状況が違っております。私もこの一月に、福島第一の視察をさせていただきまして、恐らく閣僚としては初めてだと思いますけれども、四号機の中まで入りました。大変な状況であります。ただ、一号機から三号機はさらに大変厳しい状況でありまして、それぞれの号機ごとに廃炉のプロセスは変わってくるはずであります。

 それぞれごとの廃炉プロセス、これを見直すことによって、中長期のロードマップを少しでも前倒しできないか、こういったことで今検討を始めておりまして、これにつきましては、六月をめどに見直し案をつくってまいりたい、こんなふうに考えております。

 それから、四号機の使用済み燃料プールについてでありますが、一昨年に、東京電力によります技術的な評価によって、十分な耐震性を有していることが示されまして、当時の原子力安全・保安院がこれを確認したところであります。さらに、一昨年の七月になりますが、使用済み燃料プールの底の部分、ここの補強工事も既に実施をいたしております。

 これからも、年四回、定期検査を行いまして、耐震性に関して、建屋の傾きがないことや鉄筋コンクリートの強度が保たれていること等々を確認していく予定であります。

 今後のスケジュールといたしましては、これまでの準備工事等の実績を踏まえて、四号機の使用済み燃料の取り出しを、先ほど言ったような形で、まずは最優先で取り組むというふうに考えております。

 それから、最後でありますが、建屋内の線量の現状とこれまでの変化でありますが、福島第一原発の建屋の中の放射線量は、号機により大きく異なっておりまして、炉心溶融を起こした一から三号機が高く、四号機は比較的低い状況となっております。

 また、一つの建屋内でも、フロアとか場所により、放射線量は当然異なってまいります。現在の建屋内の放射線量は、事故直後に比べ減少傾向にありまして、例えば二号機の原子炉建屋一階の大型設備の搬入口付近においては、二〇一一年六月では毎時十五ミリシーベルトでありましたのが、最近の測定ではこれが九・五ミリシーベルトまで下がっております。

 しかしながら、引き続き高い線量の場所が多いことから、作業員による廃炉作業が円滑に進むよう、計画的に除染作業を進め、建屋内の線量低減も図っていくことが重要だ、このように考えております。

 また、国としても、作業員の近づけないような放射線量が高い場所を遠隔操作により除染する装置の開発を行い、廃炉に向けた取り組みが円滑に進むよう取り組んでいきたいと思っております。

玉城委員 総理、今の報告でも、本当に細かいところがまだまだ手がつけられていない状態ではないかというふうに思うんですね。これからこういうふうに、何月にはその使用済み燃料を取り出しますよと、いろいろなことを言っても、国民の皆さんは、一体いつ安心な状況になるのか、一体いつ収束していると言ってくれるのかということを待ち望んでいらっしゃると思います。

 そのことについて、総理の見解をぜひお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 御承知のように、現在では冷温停止にはなっております。しかし、地元の方々あるいは被災された方々は全くもとの生活に戻るめどは立っていないわけでありまして、その中において、私たちは収束をしたという言葉は使ってはいないわけであります。しかし、その中におきましても、今、茂木大臣から一つ一つ説明をさせていただきましたように、着実に一歩一歩、廃炉に向けて進んでいることは進んでいるわけでございまして、こうした情報については丁寧に御説明をしていきたい、このように考えております。

玉城委員 ぜひ、廃炉に向けた方向性をもっと国として明確にしていくということ、これからは原発に依存しないエネルギーを考えていくべきだと思いますが、その点は後ほどまた質問をさせていただきたいと思います。

 さて、きょうは参考人もお見えですので質問させていただきたいと思いますが、原発事故を調査していた国会の事故調査委員会に対し、東電が一号機原子炉建屋内部の状況について虚偽説明をしたことが問題となっております。東電側が設置した第三者検証委員から、故意ではない、上司の関与もないとする報告があったということ、取りまとめるとそういうふうな内容だということですが、この報告は、事故の調査を断念させるつもりではなかったと本当に言えるのか、東電の方から聞きたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 私ども、御指摘のとおり、私どもだけで調査をしては不十分だというふうに考え、また経済産業大臣からも御指導ありましたので、第三者の弁護士の先生方にお願いをして、今回調査をしていただきました。その調査の結果はお読みになっていらっしゃると思いますけれども、報告書が出ております。

 それで、私どもとしては、調査の結果を真摯に受けとめ、また、虚偽はあったけれども故意はなかった、あるいは上司の関与はなかったというふうな報告はいただいておりますけれども、一方で、会社を挙げて国会事故調の調査に協力をするということで進めておった中でああいうことが起こったということは、本当に大変まずいことだというふうに考えておりますので、今後そうしたことのないようにしっかり対応していかなければいけないということでやっていきたいというふうに思っております。

玉城委員 今の御報告ですと、調査の説明当時の記録媒体もなく、社内の二十六名の方から第三者委員会が聞き取りをした報告とのことなんですが、これは、いわゆる内部の調査のみで、本当にそれが果たしているという、疑義を晴らせると思っていらっしゃいますか。

廣瀬参考人 今回の私どもの調査のお願い、それから調査検証委員会の調査の項目は、先ほどから御指摘がありましたように、説明をした人間の、虚偽の、間違った説明が故意であったのかどうか、何らかの意図を持っていたのかどうか、あるいは上司の関与、組織的な関与があったのかという二点だということでお願いを申し上げております。

 その結果、確かに、東京電力の関係者、一人は退職しておりますけれども、二十三人の聞き取り調査ということで調査を終えております。そこの調査の限界についてもその報告書にはございますけれども、今の二点については、二十三人の調査によって十分明らかになったという結果というふうに受けとめております。

玉城委員 このことについては、原因がはっきりしないということは、やはり収束に向けた抜本的な対応がとれないというふうなことにもなってくるのではないかと思いますが、今後の調査は引き続き、やはり私は進めるべきだというふうに思います。

 さて、民主党政権当時、政府は、想定を超える地震や津波に対する既存の原発の耐久性などを調査するストレステストを導入いたしました。それ以降にも、再稼働については厳しい規制基準へと改正されてきております。

 原発の運転期間を原則四十年に制限する、いわゆる四十年廃炉について、新しい規制基準によってさらに事業者側が調査を実施し、原子力規制委員会が審査をするという、新しい基準によってさらに原発の再稼働をさせるということが、あたかも厳しい基準だから再稼働できるんだと受け取られかねないような、そういう側面も否めないと思います。

 環境大臣、このことについて、ぜひお答えいただけますか。

石原国務大臣 ちょっと所掌外なんですけれども、規制委員会は、御存じのとおり、環境省の外局として存在しております。そこで安全基準をつくり、先ほど来経産大臣が御答弁しているように、事業会社の方が、御自身の抱えているサイトについて、この基準に合っていると考えるならば申請を出すわけでございます。その申請に対して基準を満たしているか満たしていないかということを、原子力規制委員会、規制庁が判断をしていく。

 私の立場は、規制委員会、規制庁が仕事のしやすい環境をつくるために努力をしているということでございますので、どう思うかという点については、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。

玉城委員 やはり、さまざまな環境の問題ということについては、私は、よそごとではないと考えているということと同時に、茂木大臣も、せんだって火力発電所を視察になったと思いますが、これからは、いわゆるアセスの面もきっちり早く進めて、火力も進めたい、そういう新聞でのコメントも載っておりました。

 そういうことを考えると、この基準によって、本当に、原発の再稼働ではなく、しっかりとエネルギーを転換させていくんだという方向に国を導いていけるのかどうか、そういうことがやはり不安になるんですね。四十年たちました、でも検査しました、直しました、また二十年過ぎますみたいなことになるのではないかということもありますので、ここは茂木大臣から答えていただきたいと思います。

茂木国務大臣 委員も御案内のとおり、それぞれのエネルギー源、特徴が違ってまいります。

 例えば再生可能エネルギー、我々として、今後三年間、最優先で最大の導入を図っていきたい、このように考えておりますが、現状におきましてはコストが高い、こういう部分もございます。さらに、変圧器をつけたり、そしてまた電源の安定を図っていくためには、蓄電池の技術、これも開発していかなきゃなりません。今、大体四万円かかるものを二万三千円ぐらいにするということで、商業ベースに乗せていく必要があるのではないかな、こんなふうに考えております。

 それから、例えばLNGと石炭を比べた場合、コスト的には当然石炭の方が安くなってくるわけでありますけれども、CO2の問題がございます。私も、おととい、磯子のJパワーの世界最高水準の石炭火力の発電所を視察してまいりました。煙突を見ても全く煙が出ていない、こういう状態でありまして、世界最高レベルです。このレベルの石炭火力を中国、インドそしてアメリカに持っていきますと、日本の一年間のCO2の排出量、これが全部削減できる、これぐらいの技術であります。

 ただ、ほかのLNGと比べて、それでもCO2の排出は多いわけでありまして、環境アセスをどうするかということにつきまして、今、環境省、石原大臣と相談をしながら、五月には結論を出したい、こんなふうに考えております。

 また、原子力の場合、まずその安全性をあらゆる立場から最優先で考える。

 そういった中で、それぞれの持っているエネルギーの特性も考えながら、最終的にはベストミックス、こういったものも決めていくことになるんだと考えております。

玉城委員 これからのベストミックスは、やはり原子力に頼らない、脱原発という方向で取り組んでいくべきだと思います。現に今動いているのは大飯の原発だけですから、原子力発電所で火力を賄わなくても十分やっていけるんだということを国民にもっとしっかりと、これからのエネルギーのベストミックスにあわせては、取り入れていきたいと申しますか、もうこれは国策を、原発の国策から新しいエネルギーのベストミックスに向けていくべきだというふうに思います。

 さて、生活の党は去る三月十一日、社民党並びにみどりの風と共同で、参議院において、国家として脱原発を明確にし、その実現に向けて取り組んでいくための脱原発基本法案を発議させていただいています。

 総理、これはまさに原発ゼロへの真剣な姿勢を国民へ示すための覚悟が、政府にも我々国会にも求められているということだというふうに思うんですね。その覚悟を持ってそういう法案を提出させていただきましたが、やはり、いまだに放射性廃棄物の最終処理の道筋が確立しておりません。重大な影響を知った我々は、やはり今こそ脱原発の意思決定をするという責務があると思います。

 そこで、脱原発に真剣に取り組むためには、先ほど茂木大臣は火力の話をしていらっしゃいましたが、私たちは、このエネルギーのベストミックスの構想に、LNGなどの燃料と、効率の高いコンバインドサイクルの発電を、しっかり技術を高めていくことが一番早いといいますか、確実で安心で、しかもコストもそれほどかからないという形になるのではないかと思います。

 この新しい火力エネルギー体制をどのように構築していかれるか、大臣からお聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 現在、原発がほぼ全てとまっている中で、我が国は九割の発電が火力に依存する、こういう状況でありまして、その燃料コストも非常に高くなっている。それが、最終的には家計そしてまた企業の負担にもなるということであります。

 一方で、今の状況、これで簡単に回っているのかといいますと、違うわけです。というのは、火力といいましても、かなり古くなった火力発電は、この状況でどうしても安定供給を保たなければいけないという観点から、たき増しをしているわけでありまして、こういったものについては設備の更新等々も進めていかなければいけない、こんなふうに考えております。

 そこの中でのLNG火力についてでありますが、グリーン投資減税によります高効率のコンバインドサイクル発電ガスタービンの導入支援であったりとか、次のレベルでいいますと、今度は千七百度級のガスタービン技術の実証などを行いまして、石炭火力につきましては先進超々臨界圧火力発電、これはA―USCというものでありまして、これが大体二〇二〇年代に出てきます。それから、その後の石炭ガス化燃料電池複合発電、IGFC、恐らくこれが二〇三〇年代になると思うんですけれども、こういった技術開発にも取り組んでいきたいと思っております。

 いずれにしても、LNG、さらに石炭も含めて、この火力発電の高効率化、大きな課題としてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

玉城委員 せんだって、生活の党の小沢代表と、そして森ゆうこさん、はたさんのお二人、三議員が、上越火力発電所を視察してまいりました。

 熱効率が五八%以上という大変すばらしいコンバインドサイクルがもう実際に動いているわけですね。ですから、夢のことではない。そういうことをもっと本当に国の政策として、抜本的な脱原発の方向性でいくための、その方向でぜひ向かっていっていただきたいと思いますが、総理、そのことについてぜひ、脱原発のベストミックスを目指すという、その方向性を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安倍政権においても、基本的に原発依存度を低下させていく、この方針は定めているわけでございます。

 その中において、ただいま茂木大臣から答弁させていただいたように、火力発電の効率化も含めて、さまざまなエネルギー供給源を獲得するために、この三年間においてしっかりと、今、玉城議員が指摘をされたように、国として、国家の基本的な方針として、国家資源をそういう新たな可能性に投入をしていくという方針においては、まさにそれは我々の方針であるということは申し上げておきたいと思います。

 その中におきましても、今、LNGについても日本は諸外国に比べて高く買わざるを得なくなっている中において、例えば石炭を新たな、これは火力発電のエネルギーとして活用していくことによって、我々は価格交渉力を得ていくことにもなるわけでありまして、そういうことを含めてベストミックスを構築していきたい、このように考えております。

玉城委員 そのLNGは、アメリカでは今度はシェールガス革命が行われていて、それが大変、我が国にとっては、アメリカのそういう資源そのものもまた有利に交渉をして求めていける、そういう状況にあるとも思います。

 その一方で、サハリン、東シベリア、オーストラリア、アラスカ、カナダなどでは二〇〇〇年を境にもうどんどんLNGが発掘され、それを利用するという環境が整っています。日本は、残念ながら、パイプラインで引っ張ってくることができません。どうしてもタンカーで運ぶしかないので、今のところ、その輸送コストは割高だと思います。しかし、将来、その高効率の石炭の火力発電と何を組み合わせるかということを考えたら、自然再生可能エネルギーはもちろんですが、大きな、より強い、高い電力を求めるのであれば、やはりこのLNG、ガスコンバインドだというふうに思います。

 さて、茂木大臣にもう一点伺いたいと思いますが、我が国周辺の海底資源のことであります。

 政府の総合海洋政策本部は、今後五年間の海洋政策の新指針となる海洋基本計画の原案を公表しています。深海の海底深くにあるメタンハイドレート、これは三月にメタンガスを分離して取り出す試験に成功し、二〇一八年度の商業化実現に向けた技術の整備を行うというふうなことも示しております。

 こういうふうに、我々は海洋資源国であるはずなんですね。そういうところから考えますと、周辺海域での現況調査及び具体的に進められているエネルギー資源をより技術を高めていくということについて、その方向性を大臣からぜひ示していただきたいと思います。

茂木国務大臣 安倍総理の方からも、今のエネルギー制約に直面する中で、エネルギーの調達コストを下げていくこと、そして、調達先につきましても、一部の国に依存しているのではなくて、この多角化を図っていくこと、こういう指示を受けております。

 そして、やはり究極の資源確保、調達地の確保というのは、国内そして日本の周辺ということになってくるわけでありまして、メタンハイドレートを初め、我が国周辺のこういった資源の探索であったりとか開発をしっかり進めていかなければいけないと思っております。

 御指摘いただきましたように、三月の十六日から十八日までにかけまして、渥美半島から志摩半島の沖合で、減圧法によります、世界初となりますメタンハイドレートガスの生産実験を実施いたしました。今回のガス生産実験では、海洋において世界初となる減圧法によってメタンハイドレートからガス生産を実施するとともに、今後の技術開発等に必要となる技術データ、これもあわせて収集をしたところであります。

 政府としては、今回の生産実験の結果をしっかりと検証し、一つ一つ課題を乗り越えて、二〇一八年度までに商業化に向けた技術の確立を目指していきたい、そんなふうに考えております。

 また、日本海側に確認されているメタンハイドレートについては、これは表層型でありますが、平成二十五年度から、政府として初めて資源量の把握に向けた広域調査を実施いたしまして、今後三年程度で集中的に実施をしていく予定であります。

 シェールガスも、十年前は、あの地層にあってはなかなか難しいだろうと言われていたわけであります。それがしっかり出るようになった。私は、メタンハイドレートも一緒だと思います。そして、日本というのは、そういったものを乗り越える技術、そしてまたエネルギーを持っている、そういった力を引き出して、しっかり、日本もある意味、資源大国になる、こういう気概で取り組んでいきたいと思っております。

玉城委員 資源大国を目指すということは、このエネルギーの計画、政策を根本的にやはり脱原発から切りかえていかなくてはいけないんです。

 沖縄には原発がありません。沖縄電力を除く九つの電力会社で計算をしたところ、今後、今とまっている原発を維持するのに一兆二千億円かかっていくわけですね。

 そうすると、これからは、では、廃炉に向けたその計画をどうするのかという廃炉基本法であるとか、あるいは、そこに入っている使用済みの核燃料をどうするのかというその管理法ですとか、そういうことを国の方針としてしっかり示していく法律ですとか、さまざまな法律が必要になってくる。そして、それを早く進めていかないと維持費だけがかかってしまい、結果的に、茂木大臣がおっしゃっていたような技術に、あるいはそういう資源の開発に予算を十分にかけることができない、そういうことになってしまうわけですね。

 ですから、私たちがしっかり脱原発を求めているのは、今、原発立地の各自治体ですとか、あるいはそこで働いていらっしゃる方々ですとか、いろいろなことを含めた国策として、明確に、資源を自分で得て、そして、それを国益のために、国のためにしっかりとつくっていくという、脱原発を基本にしたその政策をしっかりとつくっていただきますよう求めまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて玉城君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る八日午後一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の福島県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十五年四月三日(水)

二、場所

   小名浜オーシャンホテル

三、意見を聴取した問題

   平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 山本 有二君

       秋元  司君   石川 昭政君

       小此木八郎君   菅家 一郎君

       坂本 剛二君   中山 泰秀君

       萩生田光一君   辻元 清美君

       長妻  昭君   小熊 慎司君

       坂本祐之輔君   石田 祝稔君

       佐藤 正夫君   宮本 岳志君

 (2) 意見陳述者

    いわき市長       渡辺 敬夫君

    浪江町長        馬場  有君

    いわき商工会議所会頭  小野 栄重君

    浜通り医療生活協同組合理事長         伊東 達也君

 (3) その他の出席者

    予算委員会専門員    石崎 貴俊君

    財務省主計局主計官   富山 一成君

     ――――◇―――――

    午後零時五十八分開議

山本座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の山本有二でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 初めに、改めて、東日本大震災によりお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げます。御遺族や被災された方々に対しまして、心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。

 さて、皆様御承知のとおり、当委員会では、平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当いわき市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の小此木八郎君、萩生田光一君、秋元司君、石川昭政君、菅家一郎君、坂本剛二さんは到着次第御紹介いたします、中山泰秀君、民主党・無所属クラブの長妻昭君、辻元清美君、日本維新の会の小熊慎司君、坂本祐之輔君、公明党の石田祝稔君、みんなの党の佐藤正夫君、日本共産党の宮本岳志君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 いわき市長渡辺敬夫君、浪江町長馬場有君、いわき商工会議所会頭小野栄重君、浜通り医療生活協同組合理事長伊東達也君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず渡辺敬夫君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

渡辺敬夫君 本日は、意見陳述の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。

 この機会に、本市の実情を十分御理解いただき、本市の一日も早い復興が実現できるよう、御協力いただきたいと思っております。

 私からは、まず最初に、本市の現状について申し上げたいと思っております。

 本市は、海岸線が六十キロありますが、東日本大震災によりこの六十キロが津波の被害を受け、そしてなおかつ、地震の災害を含めて、家屋被災については九万棟に及ぶ被害がありました。家屋被災については、仙台市に次ぐ被災地であります。

 特に、いわき独特の災害状況があったということなんです。三月十一日の地震も震度六弱ですね。四月十一、十二日、一カ月後に本市を震源地とする余震がありました。これもいずれも震度六弱。三回の震度六弱の地震に見舞われたということで、それにより、三月十一日の被災は津波が中心、四月十一、十二日の余震で家屋被災があったという状況であります。

 そういう中で、私どもがこの二年間取り組んできたことは、まず、津波被災地については、防災集団移転、災害公営住宅、それに災害復興土地区画整理事業、これで一日も早く被災者の本格的な生活再建に向けて取り組もうということで、今鋭意努力しているところでございます。

 おかげさまで、国の補正予算を含めて、復興交付金については、四十事業ということでありますが、いわき市は、これらの事業については福島県の中では復興交付金を一番いただいているところであります。

 復旧については、三年で、国から示されているように査定を受けておりますので、二十五年度には復旧は実現できると思っております。復興については、平成二十七年度までということですが、今の状況であれば平成二十七年度に復興についてもできるのではないのかなと思っております。

 もう一つ、やはり放射線の対策の問題がございます。

 これについては、やはり健康管理対策をしっかりやっていく。それともう一つは、食品の安全管理をしっかりやっていく。そしてもう一つ、除染対策をしっかりやっていかなくちゃならない。

 この二つの方針の中で今我々は取り組んでいるところでございます。

 いわき市として今何が課題かということになると、私どもは、先ほど申し上げましたように仙台に次ぐ被災地でありながら、双葉郡の方々を支援していかなくちゃならないという立場であります。

 私は、三月の十二日以降、歴史的にも文化的にもつながりの深い双葉郡のことはしっかり支援していくと。一方、私は首長ですから、いわき市民の復旧復興に向けて、一日も早くそれを実現して、生活再建できるようにしていくことが私の最大の責務です。とはいっても、今申し上げたように、双葉郡の方々は自分の地域に住めないわけですから、ここは歴史的にも文化的もつながりの深いいわき市としてしっかり支援していかなくちゃならないということで、今日まで取り組んでまいりました。

 しかし、今、市民の方々と双葉郡の方々に一部あつれき等も生じていることもあります。

 それは何かというと、まず、原発の避難に対する支援と、津波、地震に対する、当然みずからいわきに避難されている方もいるわけですけれども、この方々への対応が全く違うということが一つです。

 それともう一つ、今、広野町が解除、川内村が解除になっていますが、これから楢葉町が解除になるんだと思うんですけれども、この解除の後の差があり過ぎる。といいますのは、いわき市も三十キロ圏内の屋内退避区域に入っていたんですが、解除後、補償金は五カ月、広野町は十一カ月。医療費については、いわき市は一年、双葉郡は解除されてもこれからあと一年医療費が無料だ。この解除後の対応についてばらつきがあるということが、まず一点あります。

 それと、二万四千人の方が今いわき市に避難されています。隣の馬場町長のところが、双葉郡で人口の一番多いところなんです、二万一千人なんです。それ以上の方々がいわきに来ている。それともう一つ、原発の作業員がいわきにいる。トータルで約三万人ぐらいになっているんじゃないか。それだけの人口がふえているのに、医療費が無料の話も今しましたけれども、医療機関が混雑しております。あるいは、交通も、もう市内一帯で渋滞ができている。市民生活の中で影響が出てきているということが一つ問題点になっております。

 国の支援の中で、医療再生交付金、積み増しもしてもらいました。いわき市の民間病院、あるいは双葉、いわきの中核医療機関である磐城共立病院という市立病院があるんですが、ここに、医療再生交付金については支援していただいております。私どもは、新病院をこれから建設して、地域完結型の医療をやれるようにしっかりやっていきたいと思っております。

 ただ、残念ながら、震災前から医師不足ですから、約三万人近くふえている中での医療従事者の不足は非常に厳しい状況にあるということでありますから、これらの対応についてもひとつお願いしたいなと思っているところであります。

 それともう一つ、問題なのは、今、原発避難者特措法とか福島再生特措法とか、あるいは原発子ども支援法、いろいろな特措法が出てきておりますが、双葉郡の皆さんの復興には一つも役立っていない。

 それはなぜかというと、まず、今の住所をどこに置くんだということなんです。避難元自治体に置くのか、避難した自治体に置くのか。それによっては、国で言うこれからの町外コミュニティー交付金の問題、あるいは福島再生特措法で言う受け入れ自治体への支援という中身がもう全く変わってくるわけです。だから、一丁目一番地の住民票をどうするんだということ。

 それと、双葉郡の方々がいわきにこれから本格的な災害公営住宅をつくるのには、国と県が入って、それぞれの自治体と個別協議になります。だけれども、制度設計ができていない。我々いわき市と四町が最終的に残るわけですけれども、四町と個別協議をしたとき、全部ばらばらでいいのかと。

 そればかりじゃないんですよ。いわき市、福島市、二本松市、会津若松、郡山、これがやはり受け入れ自治体になっているんです。双葉郡の方々が、ある市に行ったときは非常に冷遇される、どこどこに行ったら待遇がよかったと。

 だから、基本的にどこに双葉郡の皆さんが避難してもいいように、少なくても制度設計をして、どういう形で個別協議に入るのかということをしっかりと。この制度構築をしていない。していないから進まない。個別協議に一回も入っていませんから。こういうことにこれから国としてしっかり対応していただきたいということを思っております。

 もう一つは、指定廃棄物。この問題は、我々としても非常に問題としております。最終的には、中間貯蔵の問題になるんだろうと思うんですけれども。

 いわき市に約三万人の方々が来ている。そうすると、そのごみを燃やしても指定廃棄物になる。災害瓦れきを燃やしての八千ベクレル以上じゃありません。この飛灰が八千ベクレル以上になるということで、いわき市は今年度でもう保管する場所はありません。そういう状況の中で、この指定廃棄物の処理については、一日も早く国の責任でひとつよろしくお願いしたいと思っております。

 最後に、もう一つ申し上げますと、先ほど言ったように、復興交付金については、基幹事業と効果促進事業があります。四十事業について、それぞれ復興庁と相談しながら、復興に向けてのものはそれなりに私どもは評価しております。ただ、効果促進についてはほとんど使えない。

 いわき市の場合は、本庁舎が地震で床が抜けちゃったんです。耐震構造がないんです。災害対策本部を消防署に置かざるを得なかった。

 だから、少なくてもこの効果促進事業が本庁舎の耐震化なんかにも、もう少し使い勝手のよくなるような形のものをぜひともお願いしたいということを申し上げて、私の意見陳述にかえさせていただきます。

山本座長 ありがとうございました。

 ただいま自由民主党の坂本剛二君が到着されましたので、御紹介いたします。

 次に、馬場有君にお願いいたします。

馬場有君 ただいま御紹介をいただきました双葉郡の浪江町長の馬場有と申します。

 本日は、公述人として、皆様方に私どもの実情、課題を訴える機会をいただきましたことをまずもって御礼申し上げたいと存じます。

 私どもの町は、人口が二万一千人。今の避難状況は、福島県内に一万四千五百人、そして、北は北海道から南は沖縄の果てまで六千五百人が避難しておりまして、本当に全国にばらばらに避難しています。

 考えてみますと、きょうで震災発災から七百五十五日目なんです。私も、当然なんですけれども、きょう傍聴している方々も、この七百五十五日間、自分の布団に寝たことがないんです。本当につらい、厳しい状況に入っています。

 そういう中で、先生方からいろいろな御支援、御協力をいただいておりますけれども、まだまだ、我々にとっては、もっともっと越えていかなくてはならない問題がございます。

 それは放射能との戦いです。

 今、問題は、除染の問題があります。除染が遅々として進まない。何でこんなに進まないのか、不思議でしようがありません。そういうことで、皆さん方には、除染の状況を早めるようにひとつお願いしたいなというふうに思っています。

 それから、賠償の問題です。

 これはとても今の状態での生活再建はできません。交通事故の自賠責の入院費用で、十万円で生活しろと言うんですよ。電気代、ガス代、いろいろな生活費を払ったら、十万円なんかすぐ飛んじゃいますよ。そんな問題じゃないんです。これは、我々、慰謝料ももらっていませんよ、はっきり申し上げて。

 そして、皆さん御案内のとおり、私ども、SPEEDIの非公開のために、そして不作為行為のために、要らぬ被曝をしてしまった、そういう状況なんです。要するに、それに対する慰謝料ですよ、それを全然払っていない、もらっていない。その賠償の問題一つとっても、やはりこれからの問題は非常に大きくなると思います。

 財物の書類を送ったと。とんでもない話ですよ。個別選択は許さない。何で私どもが個別選択しなくちゃならないんでしょうか。我々は放射能を浴びせられたんですよ。浴びせられた者が、賠償の仕方を一つ、二つ、三つ、財物の賠償を、三つやって、そこから一つ選びなさいなんて、とんでもない話です。このことをやはり肝に銘じていただきたいというふうに思っています。

 それから、健康管理です。

 今申し上げましたように、要らぬ被曝をしています。私自身、しています。そういう状況の中で、特に子供さんにとって、十年、二十年後に考えられないような発症が出たときに誰が責任をとるんですか。やはり、そういう状況の中での政府の対応。

 昨年の六月に、超党派で原発事故子ども・被災者支援法が皆さんの力ででき上がりました。ところが、この中身が全然ないんです。基本方針も決まっていないんですよ。我々を支援するための法律、どうしてくれるんですか。これは早く、絵に描いた餅にならないように、個別的な計画をきっちり立てて、その対応の仕方について論議していただきたい、このように考えています。

 そういう中で、きょうの公述の申し込みに際しまして、要望事項を皆さんのお手元に配付いたしました。その中で、一番と六番については、後でお読みになっていただければよろしいかと思います。

 二番目から始まりますけれども、被災者の生活に寄り添った制度、福島の再生、復旧・復興に向けた制度の再構築です。

 これは、いわきの市長さんが今おっしゃったような、制度設計をやはりきっちりやっていただくということなんです。

 我々は、復興公営住宅をこれからつくって、放射能との戦いがどのぐらいになるかわかりませんけれども、やはり住環境をきっちりしていかなくてはならないということで、避難先の中で、復興公営住宅、あるいは県外の方々については、今の借り上げ、あるいは公営住宅、そういうものを今お借りしています。そういうものを、やはりきっちり明示していただきたいと思うんです、何年まで住めるのか。また、復興公営住宅については、できるだけ早く公営住宅をつくっていただくということです。

 これは、先ほどお話もしましたいわき市長がやはり心配なさっていますよ。私ども浪江町、このいわき市に二千三百人です。その方々が、浪江町は仮設住宅がないので、全て、借り上げ住宅、そして知人、友人のお宅にお世話になっているんです。そういうことですので、ぜひ復興公営住宅を早く明示していただく。これはもちろん、受け入れ先のいわき市さんと協議をしながらやってまいります。ぜひ後押しをお願いしたいということでございます。

 それから、大きな三番目として、福島第一原子力発電所事故の収束と総合的な放射能汚染対策の実施です。

 これはやはり、先ほど申し上げましたように、徹底的な除染の実施をする。特に山、川、これが問題です。私ども、山林が六五%を占めています。その中に大きな川が二つ挟まれていまして、その山から出てくる枝葉、それが落ちちゃいまして、今、下流まで落ちてきているんです。それが高くなってきているんですよ。

 四月一日に区域の見直しをしました。自由に出入りするようになりましたけれども、そういう状況を考えれば生活できないんです。生活ができないんですよ。したがって、その除染をやはり徹底的にやっていただく。それをやらないと私どもは戻れない。

 私は、持論として、学校の再開については、浪江町で学校を再開する場合は、一ミリシーベルト以下でないと再開させないつもりです。だって、これは政府が言ったんですよ、一ミリシーベルトと最初言ったんですから。やはりそれは履行していただかなくてはならないというふうに思っています。

 そういう形の中で、除染をとにかくやっていただくということであります。

 それから、大きな四番で、住民の生活再建に向けた制度の構築ということで、やはり、賠償紛争審査会、これは文部科学省が所管していますが、この紛争審査会をぜひまた開いていただきたいんです。

 私、正直な話を申し上げまして、中間指針が決まったのは一昨年の八月ですね。それで、私ども被災地、被災者の方が呼ばれたのかというと、二十一回目にして一回ですよ、呼ばれたのは。それで、話をしてくださいと。その話をした原発被災地の首長の話というのは全部把握されていないです。二十一回もやって、中間指針の答申をある程度まとめた後からですから、私どもの意見というのは全然入っていないですよ、あそこには。

 したがって、もう一度この賠償紛争審査会を開いていただきたい。そして、特に被災を受けた首長の話を聞いて、どんな苦しみなのかわかっていただきたいと思うんです。そういう中で、これはどうしてもやっていただきたいと思うんです。よろしくお願いしたいと思います。

 それから、やはり今、災害関連死、この方が非常にふえているんです。

 私ども、三月末に統計をとりました。二百七十人ですよ。去年の十一月には百八十人だったんです。それが四カ月やそこらでもう七十人、八十人も多く亡くなっている。これは精神的ストレスです。肉体的ストレスです。

 今、避難するのに、一番多い方で十五回ですよ、避難した回数が。私は四回です。町民の人からいいますと、平均的に七回です、避難しているのが。高齢者の方々、そして体が弱った方には、もうたまったものじゃないですよ。その方がみんな今亡くなっているんです。そのお骨を納める場所もないんですよ。仮設住宅に置いているんですよ。

 そういうことをやはりわかっていただくようなことでないと、この原発の惨状というのはわからないというふうに思うんです。そういうことをひとつ御理解賜りたいと思っています。

 それから五番目に、住民の長期的な健康管理に向けた取り組みと子供たちの心のケアを強化していただきたい。これは、先ほど言いました支援法の中身を充実させていただきたいなというふうに思っています。

 時間もありませんので、もう一、二点だけ重要なところをお話しさせていただきたいと思います。

 九州・宮崎で起きた口蹄疫の問題がございました。そのときに殺処分を指示したのは政府ですね。それで、今回の原発事故で、やっていた畜産業の方々、やはり政府の指示に従って殺処分しました。それに対して、所得がその分補償されたんだから課税しますということをやっているんです。私も仙台の国税局長に言いました、そんなばかな話があるかいと。口蹄疫のときは特例で課税しなかったんですよ。しなかったんです。やはり、その前例があるわけですから、これは課税してはならない、そのように思っています。

 それから、賠償の問題で、これから財物の賠償が行われます。そのときに、名義人は意外と高齢者が多いんです。高齢者が多いんですよ。息子さん、娘さんがいても、まだ自分が元気だということで名義変更していません。高齢者の方に賠償金が入って、そして、例えばこのいわき市にじっくりと住環境を整えて住みましょうといって、うちを買う、土地を買う、そして住環境を整える。そのときに、我々はもう高齢者だから若い人に相続しようということで、相続をやりますね。そうすると、相続税がかかるんです。四〇%かかって、もらった賠償金が半分出ちゃうんですよ。それでうちを、建物を建てられますか。課税減免という考え方があると思うんです。そういうことをひとつやっていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、私ども自治体でいえば、企業会計というのがあります。特別会計です。これは水道、下水道ですね。

 この水道、下水道は、財源的に何で成り立っているかというと、使っている皆さん方の使用料と負担金ですよ。私どもの町でいえば、先輩の職員が営々と、絞った汗を、とにかく無駄遣いをしないでということで、七千万、水道のためにとっておきました。その七千万は、何かあったときにそれを使うということで貯金していたんですよ。

 それを、償還金がありますね、償還金を二十四年度、払いました、三千万。借金です。そしてまた二十五年度、三千万払わなくちゃならないんです。それで払ったらゼロですよ。そのときに、私どもが戻って、生活して、水道改修できませんよ、これは。また借金になっちゃいます。一般会計からの持ち出しというのは禁止されていますから、この特別会計は。したがって、償還金の減免、あるいは賠償にのせていただくということもひとつ考えていただきたい、このように思っています。

 最後になりますけれども、いろいろ頭の痛い話をさせていただきましたけれども、ぜひ、私どもの実情を御考慮いただきながら、皆さん方によろしく御指導をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山本座長 ありがとうございました。

 次に、小野栄重君にお願いいたします。

小野栄重君 本日は、福島班の公聴会の開催をこのいわきの地で行っていただいたということに、私は非常に意味があるなというふうに思っています。これは、これから続ける説明で御理解いただけるかと思います。

 とにかく、政権交代後、私は、アベノミクスの三本の矢、これに関しては、感銘を受け、高く評価しております。しかし、もう一本の矢が必要でありました。それは福島の復興戦略であります。

 いかに日本経済が上向きに転じようと、有史始まって以来の原発事故による環境汚染を含む複合災害に見舞われたこの福島県は、私は、被災三県という同じグループとして捉えるべきじゃない、全く別物であるというふうに感じております。それをまずわかっていただきたいと思います。したがって、福島県を国策として救えないのであれば、もう日本の再生などあり得ないというようなつもりで、私は、きょうは、いわきの現状も含めて強く訴えたいというふうに思っています。

 いまだ福島県内で十六万人の県民が、県内外に避難している。私は、この状況は国として異常であるというふうに感じております。まず初めに、この福島の復興に、原発事故早期収束、安心、安全対策に、国策として命がけで乗り出してほしい。私は、このための予算なら、幾らつけても国民は納得してくれるというふうに確信しておる一人でございます。

 さて次に、いわきの現状でございます。

 先ほど市長からるる説明がありましたとおり、いわき市は仙台に次ぐ最悪の被災状況であるということは、意外と知られていないんです。四百四十一名の方が貴重な命を奪われました。建物被害も、九万棟、被害を受けました。さらに、原発事故による不安から、今現在、約八千名の方々が、主に小さいお子様を連れて、家族の離散も覚悟しながら県外に避難している、そういう状況が今の現状であります。

 いわきはもともと、皆さん何回かおいでになっているかもしれませんけれども、日本のハワイと言われるほど、めったに雪の降らない、気候温暖、風光明媚な、海の幸、山の幸に本当に恵まれた、年間の観光客が、驚くなかれ一千三百万人ですよ、この方々がいわきに来ていたんですね。また、産業界の裾野も広いんです、いわきは。今こうして立ち直りつつあるのもこの産業界の裾野の広さのおかげなんですが、工業出荷額は二兆円を超えます。これは東北で断トツ。こういうものも、実は、この信用も財産も一瞬で吹っ飛んだわけですよ。ですから、まずこのことを、いわきの現状を述べるに当たって知っていただきたい。

 しかし、神様は、皮肉といえば皮肉なんですね、このいわきの地に、試練とともに信じられないくらいの役割を与えたんです。それは、原発立地地域の浜通り地方の一角を占める、仙台に次ぐ地方の大都市のこのいわき市に、福島県の中で会津、もしくは東京と変わらないくらいの低い放射線汚染で今現在に至っているんですね。一体これは何を意味するのかということを、ぜひきょう先生方にお考えいただきたいと思います。

 今や、原発事故を克服すべき最前線基地の役割と責任、そして安心、安全の構築に先頭に立って福島県の復興を牽引する、その使命をいわき市が預かっているわけなんですね。これはもう本当に、客観的に言ってもそうなんですよ。それで、三千人とも言われる原発事故収束作業員の方々は、このいわきから毎日毎日通っているんですよ、命がけで。その方々も私は大事にしてあげたいというふうに思っております。

 今後、仮の町、コミュニティー構想、きょう町長もいらっしゃっていますけれども、そういうものができれば、今現在二万四千人ふえているわけなので、さらに数万人、五万人以上ふえ、いずれはもとの人口三十六万人は軽く突破するんじゃないか、こういう人口増加にあるいわき、皮肉にもそのいわきという現状を私はまず知っていただきたいと思います。

 ここであえて言わせていただきますけれども、このいわきの地に、国策として、あらゆる日本の英知それから世界の英知を結集すべきときが今来たんですね、国は。そして、四十年後の事故処理では長過ぎるんです。今や火星に行く時代です。私の世代で何とかこの原発事故の廃炉を終了させて、そして私の子供、それから孫の時代には、安心なふるさとを、安全宣言をして再生させたいんですよ。それには、今、このいわきがポイントなんです。

 そして、ついでに申し上げますけれども、いわき商工会議所としては、四本の矢で今懸命に、命がけで当たっております。国策としてお願いしたいことばかりです。

 一つは、復興の前提となる安心、安全対策の構築であります。

 これは経済界といえども避けて通れません。もちろん、市は、除染、モニタリングは必死でやっています。でも、もうそういうレベルではないんですね。ですから、ここに最も権威のある放射線研究機関をぜひ誘致してほしい。

 具体的な言葉を挙げれば、千葉県に放射線医学総合研究所があります。このために彼らは働いてきたんですよ、平時のときに。ですから、有事のときに、その支部をここに持ってきて、国が働くという姿を全世界に発信することが私は非常に大切であり、それが心の支えにもなると思っています。それにこだわるわけではないんですけれども、放射線のそういう専門の、客観的に科学的な分析ができる関連機関をこのいわきにぜひ誘致してほしいというのが私の安心、安全対策の一つのニーズです。

 二つ目は、中小企業の復興支援のさらなる強化であります。

 具体的には、当然、金融円滑法が切れますので、資金繰りに非常に困る企業が出てきます。ぜひその対策はお願いしたいと思いますし、企業立地補助金、おかげさまでたくさんの方々が今いわきに投資しようとしております。この立地補助金も大いに役立ちました。この継続、増額をお願いしたいというふうに思っています。

 そして、市長を初め、観光特区等を今承諾してもらっていますが、あらゆるさまざまな税制優遇制度の導入をして、特区としてこのいわきを救っていただきたい、そういうふうに思っております。

 三つ目は、いわきブランドの復興戦略であります。

 特に、信頼が失われた、風評被害に苦しむ水産物、農産物、そういうものを法律で大都市で流通させていただけたらなと。もう全部検査済みですから。ぜひ、その風評被害は払拭するように、何とか大都市で流通させていただけるような手を打っていただきたいというふうに思っております。

 そして、四つ目の矢は、我々が掲げている総合エネルギー産業都市プロジェクトであります。

 もともと、いわきは、浜通り地方も含めて、エネルギーの一大供給地だったわけですよね。言葉は悪いですけれども、私たちの犠牲の上に、東京の方々が、安定した電気をいただいて、安定した繁栄があったわけです。したがって、原子力にかわる高効率の石炭火力発電を含む一大再生可能エネルギーの集積地として、国策として、このいわきを後押ししてほしいというふうに思っております。

 これが将来、莫大な雇用を生むんです。火力発電所が一発できますと、二千名の雇用が生まれるんですよ。双葉からたくさんの方々がおいでになっています。急に福祉の事業をやれといったって、無理だと思います。やはり、エネルギーで働いた人はエネルギーで働きたいと思っているはずです。そういうものも含めて、将来の雇用対策にもつながりますし、また、今、企業は復興需要のちょっとしたバブルがありますけれども、それがはじけた後も、そういう新しい産業が興れば雇用の受け皿になります。二千名、二基できれば四千名。そういうものがこれから、いわきとしては重大な産業集積になると思っていますので、いわき市への後押しをお願いしたいと思います。

 幸いに、いわきには小名浜港という重要港湾があり、国際バルク港湾でもあります。ここの小名浜港に重点的に国の投資を集中すべきであるというふうに考えます。大水深岸壁の整備はもちろんですけれども、今つくっている東港の拡張も含めて、石炭を含め、物流機能を強化して、この東北の玄関口の小名浜港を早く復旧させていただきたいというのが、私たち経済界のある意味では復興のシンボルでもあるなと思います。

 最後に、これは私の個人的な夢も含めまして、二つの二十年後のいわきの夢がございます。

 一つは、どっちにしても、多くの避難民を受け入れて、地元の人とうまくやっていかなくちゃならない。そういう立場であるのであれば、未来を先取りしたスマートシティー、多くの被災者と一緒に導入できるような、そういう最先端のモデル都市を国策としていわきにつくっていっていただきたいな、応援していただきたいなというのが一つのお願いでございます。それを世界が見ています。復興のシンボルとして見ていると思います。

 二つ目は、人類史上誰も経験したことのないこの複合災害、多くの失われた命を無駄にしない方法は一つだけあります。それは、それを教訓として生かすことだと思います。さまざまな教訓を私たちは学びました。それを世界と共有することが、世界からさまざまな支援をいただいた恩返しであるというふうに私は思っています。

 具体的な事業としては、夢かもしれませんけれども、沖縄でやって以来、五十年以来やっていない海洋博、それをこの福島の地で行うべきだと思います。一年くらいの長期スパンでいいと思います。そこで、いろいろなパビリオンの中に、津波対策、地震対策、本当に優しい復興住宅はどういうものなのか、そういうものを全部並べて、世界からお客様を強制的に呼んで、そして日本の復興を見てもらいながら、この震災を教訓として残していく、そういう福島海洋博みたいなものも、国策としてそういうものも導入していく。中途半端な観光戦略は要らないですよ。

 その二つの夢を、二十年かかるかもしれませんけれども、最後に夢を語らせていただいて私の発表は終わります。

 下を向いてばかりではいられません。決して、我々は泣き寝入りはするつもりありません。国と一緒に手を組んで、世界に冠たるこのいわき市から、福島の復興、日本の再生を起動させたい、のろしを上げたいというふうに思っています。

 これは私個人の意見というよりも市民の代弁ですので、どうぞ、きょうはいい機会でありますので御理解いただいて、それなりの予算、通常の枠にとらわれない予算をつけていただければ、それが日本の再生につながるんだ、その三段論法できょうはお話を締めくくりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山本座長 ありがとうございました。

 次に、伊東達也君にお願いいたします。

伊東達也君 時間の関係で、原発問題に限って意見を述べます。

 また、その原発事故に関して九枚の資料を皆さんのお手元にお届けしておりますが、触れる機会はないかと思いますので、後ほど目を通していただければと思います。

 私は、浜通り医療生活協同組合の理事長と、また、自宅隣にある障害者の施設を運営している社会福祉法人希望の杜福祉会の理事をしております。医療生協は、この会場の近くの小名浜で、百二十九床の病院と九つの高齢者福祉施設を運営しております。

 三月十一日、地震と津波で傷を負った人が私どもの小名浜生協病院にもたくさん押し寄せました。職員たちも、家を流されたりあるいは被害に遭った人も病院にとどまって、夜通し、患者を守って、頑張りました。翌日になっても病院は混乱をきわめていましたが、午後三時過ぎ、四十五キロ離れた第一原発で事故、爆発が起こりました。事態は一気にとんでもない方向に向かってしまいました。

 乳幼児を初め小さい子供を抱えている若い看護師さんは、子供を放射能から守るために出勤が困難になってしまいました。さらに、いわき市全体が危険な町とみなされて、ガソリンも入らなくなり、職員全体の出勤も困難になってしまい、病院機能の続行そのものが問題になったのであります。こうして、患者を守るために、職員も私たち役員も大変な苦境に追い込まれました。

 また、私の自宅には、楢葉町から、社会福祉法人の理事をしている友人が十二人の障害を持つ人と一緒に避難してきましたので、いわき市のグループホームに入っていた身寄りのない十三人と合わせて二十五人で、自宅と周りの施設に半月間もこもる事態となりました。肉体的にも精神的にも限界ぎりぎりまで追い込まれた当時の体験が、つい昨日のように思い出されます。

 今回の福島原発事故のもたらした惨状は、日本の歴史上最大にして最悪の公害と言えると思います。

 なぜかといえば、一つに、被害が余りにも深刻だということであります。二つに、被害が極めて広範囲にわたっているということであります。三つに、被害額が途方もなく大きいこと。四つに、私はつくり直しという言葉を使っていますが、復旧復興に長い長い時間がかかることになるからであります。

 きょうは、最初に掲げた、被害が余りにも深刻だということについて、少しお話を申し上げます。

 放射能がまき散らされたために、行方不明者を捜すこともできませんでした。死体が数カ月間も置き去りにされるという、まことに残酷なことが起こっております。

 避難を余儀なくされた人は、御案内のように十六万三千人でありますが、生活手段を奪われ、人生を根本から狂わされました。医療生協は、こうした人々のもとに今出かけて、健康体操などを開催していますが、いまだに家族と一緒に住める家がない、希望もない、展望もないという過酷な状況にあります。

 避難所や避難先などでの震災関連死は、大部分は原発事故に起因していると言われておりますが、三月三十一日現在で一千三百七十一人にも上っております。中部電力の幹部職員が、今度の事故で死者は一人も出ていないと発言しておりましたけれども、全くの誤りであります。

 また、福島県の全産業に損害を与えています。とりわけ農業と漁業は深刻です。福島県の沿岸で二年間もの長い間漁ができなかったということは、私流に、ここに人が住んで、有史以来、初めてのことではないかと思っております。

 さらに、あらゆる部門、教育であれ、医療であれ、福祉であれ、大変な打撃を与えられています。

 例えば教育では、避難地域の高校は解体同然です。双葉郡八町村と、飯舘村を加えまして九町村で、一三年度の小学校入学予定者は、本来の全児童数のたった一七%であります。子供は、学校を奪われただけではありません。教師も奪われました。友達も奪われてしまいました。

 私がかかわっていることについて言いますと、浜通り医療生協の二〇一一年度の減収は、三千七百万円です。自宅隣にある社会福祉法人希望の杜福祉会は、楢葉町に四つの施設を放棄してきたので、最低でも一億円の損害が出ております。どこも皆このような状態で、解決されておりません。

 役場を他の自治体に移転したのは九町村であります。戻ったのは、たったの二つの町村であります。しかも、若い人はほとんど戻っていないと言われております。

 もう事故発生から三年目に入りましたが、現在でも、県内の大部分の地域で自然放射線量を大きく超える人工放射線量にさらされており、多くの人を苦しめ、不安とストレスの中で暮らさざるを得ません。

 加えて、地域社会が、同心円で区切られた距離で分断され、放射線量で分断され、賠償で分断され、県民の対立をひどくさせられております。

 きょうは、いわき市に来ていただいた公聴会ですので、低線量被曝の被災地いわき市で、私たちの暮らしにどんな問題が起こり、現在も続いているかについて触れておきます。

 原発事故の発生によって、いわき市民の中には、解雇された人、商売ができなくなった人、売り上げの減少に泣く人々を生み出しました。今でも、子供を守るために子供を連れて他県に住む母親と、いわき市で働く夫と、別れて暮らす人を生み出しています。地域社会の中にも対立を生み出し、友人を失った人や、心に傷を負ったままの人々もいます。子供を持つ夫婦は、子供の健康を心配し、将来結婚で差別されないかと思い悩んでいます。子供は、外で思い切り遊べず、川遊びも海水浴も、家族そろっての山登りもできません。この二年間、家庭菜園も中止したままの人、孫も来てくれなくなったと嘆き悲しむ人、北風が吹くと放射能を心配する人、ふと、もとの生活に戻っていないことをたくさんの市民が感じながらの生活が続いています。

 こうした人、一人でも多くの人から聞いていただき、国会に反映していただきたいと心から思います。

 最後に、国会議員の皆さんに、私は、特に以下の三点について意見を述べます。

 一点目は、事故収束宣言の撤回を政府に求めていただきたいことであります。

 つい最近、ネズミ一匹による停電によって最も恐れられていた使用済み燃料の冷却が不能に陥ったように、事故が収束していないことは余りにもはっきりしております。現場で働く作業員は、こうしたところがまだまだ放置されていると言っております。

 加えて、被災地福島県は、環境の回復をめぐっても、健康、医療をめぐっても、生活再建、生活支援をめぐっても、賠償をめぐっても、問題山積です。

 まだまだ事故は収束しておりません。政府が行った事故収束宣言は全くの間違いです。国会が率先して政府に宣言の撤回を図るよう、求めたいと思います。

 二点目は、事ここに至っても、政府も東京電力も、福島に残った六基の原発を廃炉にするとは言明しないのであります。

 福島県のつくり直し、復旧復興にとっての大前提は、全十基の廃炉であります。これらは、ほぼ県民の総意であると確信しております。

 三点目は、損害賠償請求権の消滅時効の適用除外を決議していただきたいことであります。

 民法七百二十四条には、三年での消滅時効をうたっています。しかし、原発事故によってもたらされた損害の大きさ、広さ、深刻さは、まさに前代未聞であります。それなのに、東電は、時効は主張しませんと明確に言明しないのであります。大問題です。

 三年での請求権消滅を適用するならば、福島県民の将来の生活までをも一層困難にするものとなります。今回の原発事故に限っては三年の時効を適用しないという決議を国会で上げていただきたいと思います。

 以上、三点の実現について、被災に苦しみ悩む県民に寄り添って、党派を乗り越えて御努力くださいますようにお願いを申し上げまして、私の意見陳述といたします。

 ありがとうございました。

山本座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋元司君。

秋元委員 自由民主党の秋元司でございます。

 きょうは、それぞれの市町村の首長の皆さん、または、商工団体またはそれぞれ現場で地域経済を本当に担っていらっしゃる、そういった皆様の現場の声をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 率直に、今、皆様方の御意見を聞く中で、本当にまだまだ震災における復旧復興は終わっていないのは当然でありますが、時間がたてばたつほど、どんどんまた新しい問題も出てきて、また、当然これは人間の活動の分野でございますから、いろいろなこれまで予想されなかった問題も出てきて、これは時がたてばたつほどより困難化するということを改めて感じさせていただいた次第でございます。私も国政に携わる一人として、とにかく、除染の問題も含め、スピード感を持って対処していかなくちゃいけないと改めて感じさせていただいたところであります。

 また、私もあの二年前の三・一一の震災の二週間後に福島の方に寄らせていただいて、支援物資を運びながら、当時はまだまだ行方不明者が多かった時期でございましたから、人命救助にも当たらせていただいて、実は、私と、この横にいらっしゃる萩生田代議士とともに十五キロ圏内に当時入らせていただいて、特に南相馬の地域でございましたけれども、本当に、地元の消防団の皆さんとともに、人命救助という中で捜索をさせていただきました。

 ああいったときに私が感じたのは、これはもう本当にオール・ジャパンでやっていかなくちゃいけない、そういったことを改めて感じた次第でございまして、今改めてそのことを思い出したところであります。

 その中で、きょう、それぞれの皆さんからお訴えいただいたこと、それを早期に実現していくために、やはり我々ができることは、法律の分野と、そしてまた予算をどうつくっていくか、あわせて税制改正という分野もあると思います。こういった分野の中で、当然、今年度の補正予算、そして来年度の、二十五年の当初予算、こういったものを組み合わせながら、何とかそういった御要望に応えたいという思いで、今回は、この予算委員会も、その審査の一つのまた材料という思いも込めて、きょうお邪魔させていただいているわけでございます。

 率直に、まず、いわき市長さんとそして浪江町長さんにお伺いしたいんですが、今回、平成二十五年度の予算と、そしてまた今年度の補正予算ということでこれは既にもう処理は終わっているわけでありますけれども、福島ふるさと復活プロジェクトのこの予算づけの問題、そしてソフトの問題、これについての率直な御評価と御意見をお伺いしたいと思います。

渡辺敬夫君 今回、新たにコミュニティ復活交付金ですか、これについては、正直言って、制度をどれに活用できるのかというのは、我々末端自治にまだ来ておりません。

 実際、例えばの話が、我々がこれからやっていく中で、双葉郡の方々を受け入れる、そのとき本当にそれがきめ細かくやっていただけるのか。

 例えば一例を申し上げると、いわき市が、給食センターが壊滅的な状態になっております、一カ所。文科省に行って、ぜひとも学校の共同調理センターについて御支援いただけないかと言ったら、通常ルールですよと。十八億かかるものが、一億四千万ぐらいの補助金、ないと。私がそのとき言ったのは、今、我々が双葉郡の皆さんを受け入れている中で、いわき市がいわき市のお金を使って双葉郡の子供たちのために給食を提供するのかという意見もあるわけです。食材費はおのおのの子供からいただいているわけですけれども、調理場全体の人件費、光熱費を含めて、ここはいわき市の財源で全部やっているわけですね。

 例えば一例を挙げると、そういうことまで含めて、今回のこの交付金が該当するのかわからない。だから、詳細がわからないので、正直言って、私もコメントのしようがないというのが今の実態。

 具体的に制度設計ができれば、我々にすれば、使いやすい中身になっていただきたいというのが要望であります。

馬場有君 私どもは、復旧のフも始まっておりません。そういう状況の中で、今般の補正予算で六億程度をいただきました。これは、今税金も上げることができない状況の中で非常に助かります。

 そういうことで、やはり財政が、我々としては本当に九〇%近く交付税に頼っておる状況ですので、ぜひその辺をよく精査していただいて、被災地の財政はどうだということでバックアップをしていただきたい、このように思っています。

秋元委員 ありがとうございます。

 もう一点だけ、いわき市長さんにお伺いしたいんですけれども、先ほど住民票の問題について触れていらっしゃいました。

 今、私の記憶だと、住民票自体は、避難されてきた地域、今いわき市さんの方に多くの方が双葉郡の方からいらっしゃっているということでありますけれども、その今現在住んでいるところに住民票がとれる、そういった整理がされたという記憶があるんですけれども、まだそこまで進んでいないんでしたか。

渡辺敬夫君 総務省の基本的な考え方は、避難元自治体でいいんじゃないかと。それで、過去の例をとっての話なんですが、三宅島の五年ということなんですね。

 実際、では五年で原発避難者が帰れるのかというのは、政府もいまだに言っていない。多分、一番悩ましいのは、浪江の町長さんがきょう来ていますけれども、自分のところで、ここは何年に帰れるのかというのは、いまだにわかっていないと思うんです。では、十年なのか二十年なのか。受け入れ自治体として我々悩ましいのは、それが三宅島の事例でいいのか。

 もう一つ、私の方からは、基本的に、いわきに住んでいるのは確認できるわけですから、住民税についてはみなし課税をやっていいよと地方税法上はあるわけですから、それを適用することもできるのかということを言ったんですが、今回については適用すべきでないというのが総務省の見解です。だから、いまだに玉虫色。

秋元委員 ありがとうございました。

 今度は、馬場町長にもう一点だけお伺いしたいんですが、先ほど除染の問題をすごく気にされていて、とにかくスピード感を持ってやってほしいと。

 おっしゃるとおりであると思うんですけれども、当然、除染作業を進めていくためには、予算もさることながら、一時保管所の問題、そして中間貯蔵の問題、どうしてもこれが避けて通れない話であるという理解をしているんです。当然、地元浪江町でも、その辺の、場所の選定から、そこがまた仮にもし民有地になってしまうならば、そういったことに対する施設の提供の御協力とか、やはりいろいろなことを、地元の皆さんとの協議というものをまた設けていかなくちゃいけないと思うんです。

 当然これは一元的に国がやらなくちゃいけない話なので、国が責任を持ってやるんですが、地元の皆さんの御協力の気持ち、体制というのはどんなふうになっていらっしゃるのかなと思って、その辺を一点だけお伺いしたいと思います。

馬場有君 正直なお話を申し上げまして、私どもの町では、各行政区ごとに仮置き場を設置していただきたいということのお願いをしています。

 ただ、残念なのは、今秋元先生がおっしゃったように、地元で出たごみでも、放射線のまざった瓦れきでも、ほかのところに持っていってくれということが実情です。しかしながら、やはり出たごみは自分たちで処理していかなくてはならないということで、公有地をまず一つに挙げて、そしてまた別な民有地もお借りしながら、仮置き場を設置していきたいということです。

 ただ、私の持論としては、最終処分場をやはり決めていただきたいんです、そして中間貯蔵というふうな手順で。私は逆だなと思うんですよね。そういうことでお願いしたいと思います。

秋元委員 ありがとうございました。

 最後に、いわき商工会議所の小野会頭にお伺いしたいんですが、本当に、民間としての御努力というのは大変敬意を表する次第でございますけれども、最終的に、町が復興していく、そして日常を取り戻していくためには、やはり雇用というものが本当に生まれなくちゃいけないという点があると思います。

 そんなことも含めて、先ほど火力発電所を誘致したらどうかとかいう提案はいただいたんですが、これは長期的な考え方としては一つのアイデアだと私は思うんですけれども、短期的には、どのようにして雇用創出というものをまず商工会としてお考えになられて、それは国がこういうバックアップをすれば何とかうまくいくんだよというものを、何かアイデアがあれば、それをお聞かせいただきたい。

 もう一つは、いわき市さんがオールスターの誘致に成功されたということをお伺いしておりますけれども、私は実は東京の選出でございまして、我々もことし、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック招致を何とか実現したいと思っています。そういった中においては、もし仮にこれが決まれば、これは東京だけのものではなくて、オール・ジャパンでオリンピックをやる話だと思っているんですが、被災地とコラボした何かいいオリンピックができればなと思うんですけれども、こういったものに絡めて何かアイデアがあったら、お聞かせいただきたいと思います。

小野栄重君 まず最初の、短期的、中期的、長期的な復興の、雇用の展望なんですけれども、まず、一番役に立ったのがグループ補助金でした。これによって、今、商工会議所のメンバー、三千七百社あるんですけれども、ほとんどが復旧までは行きました。建物、ハードは整備されました。

 そうなってきますと、あとは人を雇うだけの余裕があるかどうか。復興に結びつくかという次の段階で、二十五年度、今さまざまな支援策を打ち出しているんですけれども、そういう身内の復旧がまず先決であり、そこで全面的な支援が前提条件として必要だったということはあります。

 それで、徐々に回復しているところは、もう三十名、五十名、百名単位で採用が復活しております。したがって、短期的には、今、恐らく日本で求人倍率が、いわきが一番高い分野もあるんじゃないですかね。そういうわけで、少しずつ復興に向けて復旧が完成しつつあるというのが短期的なあれですね。

 それからもう一つ、企業立地補助金。これによって、よし、ではいわきで一旗上げよう、そういう企業、工場が足りないからこの機会にさらに増設をしようということで、これも大分役に立ちまして、大変感謝しております。

 いわきでの採用率は、かなりの確率に上っております。それは、商工会議所が中に入って難しい書類づくりも全部やったというような、手前みそですけれども、そういうこともありますけれども、それは抜きにして、大分企業が今来ていただいている。例えばコールセンターにしても、百人、五百人、千人規模の雇用ですから、そういう面では、今、新規の高校生も内定率が大分よくなってきたという実績はあります。

 しかし、ここで甘んじていると、神戸の例もあるんですね。神戸の震災のときには、三年後でしたか五年後でしたか、一挙に七割経済に落ち込んだという事例がありまして、そうならないように、商工会議所としては、先ほど展望を言いましたけれども、新たな産業の創出、それも、突拍子もない、枝葉の枝葉までやったのではとても結びつきませんので、本当に我々の持てるインフラが利用できる、力が利用できるもの、それはやはりエネルギー政策だろうと。

 先ほど高効率石炭火力発電はちょっと長期であろうと言われましたけれども、私は、これは意外と実現性は早いと思っていますね。この二、三年で何とかめどをつけたい、そこで一挙に二千人の雇用を生み出したいと思っています。再生可能エネルギーにまで広げていきますと、これは大変ありがたい話ですけれども、洋上風力も実証実験に入りますけれども、これはちょっと時間がかかるんです。

 ですから、私は、それはそれでありがたい道筋なんですけれども、それとベストミックスで、今の石炭火力の化石燃料も生かしつつ雇用を生み出していこうという戦略が商工会議所としてはベストミックスだろうというふうに考えました。

 その三段階で今雇用の確保に懸命に努力していますので、どうぞ、これからも、御理解いただいて、後押ししていただきたいなというふうに思っております。

 あと、オールスターの件、これはなぜいわきが誘致したか。もちろん、渡辺市長がトップセールスしたせい。どういうわけか私が実行委員長になっていますけれども。

 これから、成功裏に終わらせるためには、これはたまたま開催場所がいわきなんですけれども、これは福島県全体のお祭りであるというふうに私は思っていまして、いわきだけでは収容し切れない、宿泊もたくさん、宿泊施設も今相当タイトになっていまして、郡山も福島も応援していただかなければならない。いわゆる競争していたところがみんな仲間として手をとり合って、まず成功させたいなというのが一つ。

 それから、なぜ誘致できたか。これは市民運動として展開したからです。今、東京オリンピック、七割まで行きましたよね。今、いわきの人口三十二万で、三万人以上の署名があっという間に集まりました。それを市長が持っていって、当然トップセールスしましたから、いわきに決まったと。もろもろの理由、それ以外の理由もまたあると思いますけれども。

 ですから、東京オリンピックを成功させるためには、これは日本国民、東京都民の意識の問題、七割でいいのか。それから、みんながそういう気持ちになって、一体となってやっているな、そういうあらわれがIOCに通じれば私は必ず誘致できると思いますので、コラボして、ぜひ復興のシンボルとしていただければなというふうに思っていますので、温かく、励ましのお言葉として承ります。

秋元委員 ありがとうございました。

 もう私の持ち時間は終わりましたので、ここで終わりたいと思いますけれども、実は、私、地元は東京は江東区でございまして、江東区には浪江町の皆さんがうちの公務員住宅に来ていらっしゃって、本当に地域社会と一体となって、我々地元のお祭りなんかに来ていただいたりとかしながら、今いいコミュニティーが形成されておりますので、そのことだけ一点御報告させていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

山本座長 次に、辻元清美君。

辻元委員 本日は、お話をお伺いする有意義な時間をとっていただきまして、まず心から感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 早速、幾つか皆様にお聞きしたいと思います。

 まず、市長にお伺いしたいんですけれども、先ほど、ちょっと文科省の方に行って聞いたらとか、いろいろ総務省の話なんかも出ましたが、今、政府の方では福島復興再生総局をつくって、ワンストップで全ての自治体の皆様の要望を処理していくというようになっていると聞いておるんですけれども、やはり直接出ていかないと難しいですかね。

 今、それぞれの自治体の御要望が国に届くためにどういうようなルートをたどっているのか、率直な御意見をお伺いしたいと思います。

渡辺敬夫君 一つには、災害復旧なのか、それとも復興事業なのか。

 先ほど私が言った文科省の話は、災害復旧の該当だったんですね。だから、当然、災害復旧ですから、これはストレートに行かないとできない。

 要するに、復興交付金を含めての事業を活用するのであれば、復興総局がありますので、新しく構築されたので、ここは復興総局で、復興交付金を申請する場合はそれで十分なんだろうと。やはり、そこが、復旧なのか。いずれも、復旧は復興と同じなんですね。ここが、通常のルールで、まあ、災害を受ければ復旧だろうと、もともとそういう考えがあって我々は復旧の申請をした。そうしたら、そういう文科省のお話であった。

 だけれども、一方で、双葉郡の皆さんが今いらっしゃっている、子供たちが千五百人、いわきの学校へ通っているんですよ、そうしたら通常ルールでないんじゃないですかということで、私は文科省に申し上げたということです。

 だから、たまたま制度上のものが分かれているということで理解していただければと思います。

辻元委員 なるほど。

 そうしますと、国の場合、予算のつけ方とかいろいろあって、これはこっち、あれはこっちというふうになるのをできるだけ避けようということでワンストップでということだったわけですけれども、まだ現状、若干、縦割りといいますか、これによっては本省に行かなきゃいけないとか、そういう御配慮をなさっているということですか。

渡辺敬夫君 私が申し上げたのは復興総局ができる前で、それぞれ、いわきにも支所はあるんですね。必ずしも、そこに話をしても、あるいは福島に話をしてもうまくいかないから、逆に、復興総局じゃなくて、復興庁にストレートにお願いに行ったり。

 だから、例えばの話が、医療再生交付金の話を先ほどさせていただきましたけれども、これについては、当時、復興庁に真っすぐ行って、当時は平野復興大臣だったと思うんですけれども、一生懸命取り組んでいただいて、厚労省とやっていただいて、積み増ししてもらったという背景もございますので、当時は、やはり復興の部分でも復興庁に行ってお話ししないとなかなか難しかった。

 だけれども、今は復興総局ができて、復興総局が取りまとめてやっているというふうに理解しておりますし、私どもの五次申請は復興総局ができてからですから、ここはワンストップでやれているんじゃないのかなと思っております。

辻元委員 ありがとうございます。

 町長にお伺いしたいんですけれども、先ほど、除染の問題で、特に今、除染の基準の見直しが必要じゃないかというような議論が出てきております。

 一ミリシーベルト、私も、これは子供たちなどにとっては非常に重要な分かれ目の基準だ、大事にしなきゃいけない基準だと思っております。学校については一ミリシーベルトと先ほど御発言があったかと思うんですけれども、今、除染作業をしていて、他の自治体やそれから国の方も一ミリというのはなかなか実現できなくて、この基準そのものの見直しも必要じゃないかと。

 こういう声に対しては、現場を預かる町長としてどのようにお考えでしょうか。

馬場有君 先ほど申し上げましたように、一番最初に政府が言ったのは、一ミリシーベルトということを言ったわけです。それで、いろいろな事象を絡めて、二十ミリシーベルトと勝手に上げちゃっているわけですね。だから、私は、やはり国の考え方がぶれているのではないかというふうに思うんです。

 ですから、しっかりと検証をして基準値をはっきり出していただいて、それで町民、住民の方が納得できる数値でしたら私はいいと思います。

 ただ、今、低線量といえども、人体に及ぼす影響というのはまだわかっていないんですよね。ですから、そういうことまではっきり説明できる基準値を設けていただければ、私はそれでいいのではないかなと思います。

辻元委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、市長と町長にお伺いしたいんですけれども、先日、福島第一原発で、配電盤のふぐあいによるトラブルが起きました。先ほどもお話に出ましたけれども、これが復旧できなければ、特に四号機の温度が上がっていきますと、大きな事故につながりかねないというようなトラブル、深刻なトラブルだったと思います。

 先ほど私、楢葉の町長さんにもお会いしまして、そのときに東電からどのような連絡が各自治体に来たのかと。これは、もしもトラブルが続きましたら、本当に住民の再避難というようなことにもつながりかねないということでお聞きしたら、ファクス一枚来ただけで、それ以外は何もなくてということで、非常に憤慨されていたようにお聞きしたんですけれども、それぞれの自治体に対しては、あのとき、東電からは何かあったのか、それから、さらには、自治体の長に対してあったのか。

 それから、もう一つは県との関係ですね。福島第一原発の事故の収束というのはまだしていないわけで、これからまた同じようなトラブルがあったときに、いざ避難をしなければいけないというような事態になった場合に、今、どういうような備えというか、国との関係であったり県との関係はどうなっているのか、お二人にお聞きしたいと思います。

渡辺敬夫君 一つには、楢葉の町長さんがおっしゃったとおりです、事故後のものはファクス一枚だという。

 それともう一つ、首長に対してはということでありますが、東電とは通報の協定を結んでおりますので、私どもの原子力災害対策課というところがあるんですが、そこの課長のところにメールが入るようになっておりまして、担当課長から私に連絡が入るというシステムになっております。

 もう一つ、後段の部分については、第一原発については国が指針を示していないんですね、一―四については廃炉ですけれども、五、六の取り扱いは。私どもは、第二原発の事故についての暫定版はつくりました。暫定版はつくったんですが、そこの中でいろいろな課題が残っている。例えば、まず国が決めなくちゃならないものが、決まっていないものがいっぱいあるんですよね、規制庁そのものが結論を出していないもの。だから、暫定版でつくらざるを得ない。

 ただ、避難計画については暫定版に全部入れた。それはもう、私ども、三月十三日に、国からも県からも何ら一切連絡がない中で、自分で判断せざるを得なかった。十三日に久之浜、大久という地区を私の判断で自主避難させました。十八日には安定沃素剤を私の判断で配りました。それは、当時、何の情報もない中でやらざるを得なかった。私は、逆に、二年前のその思いを感じたとき、やはり避難計画はしっかりつくる。国、規制庁がまだ明快に決まっていない部分があるんですが、それでも暫定版はつくらざるを得ない。

 それと、安定沃素剤については、規制庁が五キロ以内と言っていますけれども、私は、あんな中身では到底納得できない。なぜかというと、いわき市は四日かかったんですよ。あの規制庁の言い方からしたら、絶対間に合わないんですよ。だから事前配付しておかないと。

 今、いわき市は事前配付しております。それはもう、事前配付しないとできないということですから。国からいろいろこれから言われるんだろうと思うんですけれども、これは二年前の経験を踏まえたら、事前配付していなかったら、住民に今すぐ手に届くわけじゃないわけですから。四日過ぎたら、もうとてもじゃないけれども、それこそ命にかかわる問題にもなるかもしれないので、そこはいろいろ私自身も疑問を感じている部分も含めながら、一応、避難計画を。

 県、国との絡みについては、正直言って、今言うように、国も明確でない、県も当然、国が明確でないから、まだできていない。だから、我々が今どういう形でその計画をつくっていく中で一体感を持ってやるのかというと、そこまではいっていないというのが今の実態だと思っています。

馬場有君 まず、第一点目ですけれども、私どもの担当の係の方に、当日、メールで送られていました。次の日、朝八時二十分ごろですか、東京電力の担当者が紙一枚持ってきて、町長さんにこれを見せてくださいということがありました。私が出たのが九時ごろだったんです。それで、私の机の上に上がっていたものですから、何だこれは、早速担当者を呼べと。こんな重大なことをまたぞろ紙一枚で、無責任なことで始末するのかということで、すぐに担当者を呼びました。

 説明が、やはり原因がわからないと。そのときに、プロ中のプロが、電気をつくる人が停電したことの原因がわからないというのは全く漫画じゃないかと言ったんです。漫画ですよ、だって、正直な話。電気を起こす業者ですよ、電気を消す業者じゃないんですから。それが、その原因がわからないと。バックアップというのはあるんですよ、システムの。バックアップシステムもなかったのかと言ったら、ないんだと言うんですよ。こんなことをやっていたのでは、先ほど来出ていますけれども、事故の収束だなんてとんでもない話だという話をしました。

 そういうことで、連絡は、そういうふうに無責任な形では来ていました。

 それから、後段の質問ですけれども、私がいつも言っているのは、いわき市長には大変申しわけないんですけれども、安全協定、連絡協定を結んでいたとしても、私どもの、おととしの三月の事故のときには、何ら一切連絡もないんです。

 要するに、固定電話が地震でだめになった、携帯電話がいろいろな通話で不通話になったと。本来ですと車で来れるんです、あそこは。私ども、直線で十五キロぐらい、まあ、十キロですね。ですから、車で来れば十分か十五分で来るんですよ。道路も損壊していませんでした、あのときは。何で来なかったんだという話をしたら、それは返事がないんですよね。通話を試みたけれども、連絡できなかったと。では、何で担当の職員が来なかったのかということをお話ししましたら、それに対しては返事がないんです。

 ですから、連絡協定を結んでいてもだめですよ。何らかの厳格な措置をとるようなものをまずとっていただきたいということです。

 それから、やはり一番大事なのは、私ども、どこに逃げればいいのか。そして、どこにというときに、どういうような経路をたどっていけばいいのか、やはりそれは想定していかなくちゃならないと思うんです。したがって、福島県だけでなくて、茨城県とかあるいは宮城県とか、そういう広域連携をとった中で避難の準備をしておかなくてはならないというふうに、私どもの教訓としてはそう思っています。

 以上です。

辻元委員 ありがとうございます。

 それでは、小野会頭、風評被害の話が先ほど出ましたが、深刻だと思うんですけれども、その実態をもう少し詳しくお聞かせ願えますでしょうか。

小野栄重君 会頭、小野です。

 まず、一千三百万人来ていたという観光立市であるいわき、この現状が今どうなっているかというのは如実にあらわれていると思うんです。

 皆さん御承知のように、今、その先頭に立って復興に励んでいるのがスパリゾートハワイアンズのフラガールという、民間の一団体が日本のために本当に働き回っているような感じで私は頭が下がるんですけれども、そこの復旧状況は、約八割までは回復した。中身を見ますと、その八割のうちの五割は復興支援ないしは自治体関係の視察団、そういう方々の何らかの形の支援グループ、あとの五割は一般客。

 ところが、その五割の一般客の中身が問題なんですよ。従来まではあふれていた小さなお子様連れのお母さんの姿が、全くというほど県外からは見えなくなった。一応、いらっしゃいますよ、小さい子供さんを抱えていっぱいのように見えますけれども、実態は、ほとんどこのいわき市内です。県外からは皆無です。こういう状態が今もって続いている。

 あれだけ努力している企業ですよ。あんなに努力している企業はいません。普通はもう潰れていますから。でも、あんなに努力している企業でさえ、そう。あとは推して知るべし。

 通常の旅館関係は、今、一般客は、五割はとれない状況でいます。ほとんど、グループ、作業員の方々が滞在なさっています。この方々は大事なお客様です。したがって、私は、否定するつもりはさらさらありません。でも、将来、そういう方々が復興が終わって出ていった後、一体、再生されるのかなと思うと、確かに不安な面があります。

 あとは、漁業に至っては、もうお話にならないですね。例えば、常磐沖の魚といったら、築地では一番高く値がつく魚だったんですよ。それが、常磐沖でとって築地では値がつくけれども、小名浜港に上がったらば、捨てる、値がつかない、こういう残酷な差別がまだまだ漁業界にはある。もちろん、試験操業で一つ一つ確かめながらやっていますけれども、それでもほど遠い状況だ。

 農業に至っては、全部検査して、まず地産地消から頑張ろう、給食に出そうと思ってみんな頑張っていますけれども、都内のスーパーに置いても、一応、販売のセールスをつけて事情を話せばみんな買っていくんですが、ただ置いておくだけではなかなかやはり売れない。

 ですから、先ほど法律という大げさな言葉を使いましたけれども、福島のものは全部チェックしているんだから、安心だから各自一定割合置くようにとか、そこまで言ってもらわないと、なかなか農産物の流通はできないだろうなと。

 そういう現状で、まだまだ厳しい現状が続いているということは現実だと思います。

辻元委員 ありがとうございました。

 伊東さんにもお聞きしたかったんですが、私の持ち時間が来ましたので、また別の機会にもよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

山本座長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 態度は小さく、志は大きく頑張ってまいります。

 私も、渡辺敬夫市長、また馬場町長と同じく、福島県会議員の出身でもございます。ちょうど十年前に県会議員にさせていただいて、まさにあれから十年たちましたけれども、今こうしてあるのも先輩方の御指導のおかげであります。

 ちょうどその十年前は、東電のトラブル、事故隠しがありまして、県議会で検証しておりました。全員協議会の席で、当時の渡辺敬夫県会議員が、東電の社長、また保安院の方々に、鋭い指摘をしていたのを覚えております。

 そのときにも東電は、あり得ないことが起きた、二度とこういうことがあってはならない、情報も、隠すことはもとより、おくれることも罪だ、これからその体質を変えますと。

 県議会としても、保安院の分離を訴えて、安全が確保されれば再稼働していいという最終結論に至ったわけでありますけれども、結局はこうした状況になっていますし、あのとき、私自身も、大丈夫だろうという安全神話に寄りかかってしまったという大きな反省点があります。

 しかし、その当事者である東電は、またこうした、今ほどの質問でありましたけれども、配電盤のことも、これは今に始まった話ではなくて、また繰り返しているんですよ。こうした企業体質、またそれを規制できない国というのも、私も国会議員の一員として、非常にだらしがないというふうに、そうした反省の前提に立って、また、常日ごろ、渡辺敬夫市長からは、福島県内の国会議員は役立たずと、愛情を持って御指導いただいていますので、そうした反省に立って質問をさせていただきます。

 まず初めに、いわき市長にお伺いいたしますけれども、さまざまな復興に向けての支援制度がある中で、先ほど御指摘いただいた効果促進事業、これはなかなか使い勝手が悪いみたいな御意見もいただいたところでありますが、具体的にどういうふうに修正をしていけばしっかりと現場の願いにかなうものになっていくのか、お聞かせください。

渡辺敬夫君 今回の災害というのは、私は、四つあるんじゃないかと思っております。地震、津波、今言う風評被害もそうですし、放射線もそうなんですが、この四つをやっていかなくちゃならないということなんですね。

 そうすると、除染は除染である、復興は復興であるんですが、要するに、復興交付金は基幹事業と効果促進事業に分かれています。基幹事業は四十事業ですから、当然、事業名がありますから、それが該当するかしないかということはもう明確になっているので、それを申請する。自動的に三五%は効果促進事業費として事業費の枠は確保できる。これが使えないようにできているんです。

 要するに、今回の復興交付金は、メーンは津波なんですよ、基本的に。今時点、修正して、地震の方も復興交付金を使えるようになったんですね。だけれども、当初は津波だけだったんです。そうすると、その効果促進事業は津波被災に係る四十事業にかかわるものでないとだめだということですから、基幹事業でやっているんですから、効果促進は使えない。

 だから、本来ならば、地震とか、あるいは、今、除染とは別に、みんなそれぞれ対策を細かくやらなくちゃならない。除染だけで済むのならいいんですけれども。

 学校給食だって、検査体制をして、まず食材の検査をして、それと、間に合わなくても、仮にそこに二ベクレルでも三ベクレルでも出たとき、実際に一食分の食材をゲルマニウム半導体機器にかけて、検出限界値をゼロにして検査する。そうすると、実際出ないんですけれども。そういうもろもろのことを踏まえて、例えば放射能対策もやっている。そういうものには一切使えないんですよね。東電にこれを賠償請求しても、もらえるわけでもないし。

 だから、私どもは、例えば、さっき言った地震とか原発の放射線、それに風評被害、これにも活用できないんだろうかということなんです。特にいわきの場合はその四つが凝縮した地域ですから、そういう意味で、弾力的な、今一つは当然大丈夫なんですが、三つについて活用できないんだろうかと。

 特にいわきの場合は地震の問題がありますので、先ほど言ったように、例えばの話が、災害対策本部を、どんな災害が来てもその場所で本部を設置してちゃんと指示を出せるよう、これからよその地域も同じなんだろうと思うんですけれども、万が一災害があったとき本部になるところ、司令塔を壊れない司令塔にしないとだめなんだろうと思っておりますので、そういうことを弾力的に使えるようにしていただければと思っております。

小熊委員 常日ごろ、歯にきぬ着せぬ発言の多い市長ですから、そういった意見を復興庁にぶつけたとき、どんなことを言っていましたか、復興庁は。

渡辺敬夫君 正直言って、大分考え方は変わってきたのかなと思っておりますが、まだそういう意味での明快な確認はいただいていないというのが今の状況です。

小熊委員 改めて、渡辺いわき市長と馬場浪江町長にお聞きします。

 民主党政権下での復興政策、私はずっと野党ですけれども、やはりいろいろ至らなかった点があったとは思います。今度は、決められる政治ということで、自公政権が誕生しました。

 民主党政権から比べて進んでいるものもあるとも思いますけれども、実際、やはり、二年たって問題が深刻化していく中で複雑化していますから、決めようがない部分もいっぱいあって、政権がかわっても何ら進展をしていない、ここを早く決めてほしいというのを幾つかお示しいただきたいと思います。

渡辺敬夫君 先ほど、一丁目一番地、二番地のお話を申し上げましたけれども、ここの部分は、逆に言うと、双葉郡の皆さんが、僕は仮の町という言葉は嫌いなので、町外コミュニティーということの中で進める上の一丁目一番地が住民票であり、二番地が制度設計でありますから、ここをしっかりやっていただきたいなと思っております。

 変わらないところというのは、正直言って、国会も、政府の政務三役も、いわき市の仮設住宅には一度も誰も来ていません。先ほど言ったように、原発の被災者については、国も、大臣も、いわき市にもう何十回も来ているんですよ、仮設住宅にも。いわき市には来ない。

 津波被災者に対しての政府としての考え方が、あるいは国会も含めて、どうも非常に温度差があるんじゃないかというのが私の先ほど言いたかったことなんです。ここは前政権も現政権も変わらないと思っております。

馬場有君 私は、問題は、先ほど申し上げましたように、やはり除染、賠償、健康管理、医療保障ですね。

 まず、除染については、私どもの本格的除染は一月一日からだったんです。それが今もって遅々としてやらないんですね。

 それで、今回、四月一日から区域の見直しをいたしまして、自由に出入りされるようになりました。私は、危険だから、通過交通でも非常に高いところに入ってきますから、全町民の人にガラスバッジの配付をしました。これは、予算要求する前に、もう町でやろうということでやったんです。ところが、後から予算がついてきました。それで無料ということになりました。

 そういうように、後手後手に回っちゃうんです。だから、できないときにはもう町でやった方がいい、そして後から予算をもらおうということでやってきました。

 先ほど健康管理の問題でちょっと言い忘れましたけれども、健康管理手帳というのを発行したんです。危なくて仕方ないんですよ。

 おととしの三月十三日、ちょっと寒かったんですけれども物すごく天気がよくて、避難所に地元を合わせて一万人ですよ、その中に子供さんがたくさんいたんです。そのときに、キャッチボールをやったり縄跳びしたり、あの子供たちはどうしたかなというのが今まぶたにあるんですよ。そのために、これは万が一何かあったら大変だなとずうっと考えていました、あれから。そして、何にも動きがなかった。

 したがって、私は、健康管理手帳、これははっきり申し上げて原爆手帳ですよ、それを参考にしながらつくっていこうということでつくりました。

 今もって、厚生労働省なり、これから環境省にも言っていきたいと思いますけれども、やはり保障ですよ。検査するにしても、あるいはそういう原因で手術が必要だとか入院が必要だとなったときに、それが原因だということが一目瞭然にわかるように、私はその手帳を発行しました。これは全く私どもの独自予算です。ただし、医療費がかかる場合には、やはりこれは面倒を見てもらえないとだめだというふうなことを考えています。

 したがって、医療保障の制度の充実をずうっとこれからも訴え続けていきたいと思いますし、そういうことを今言っていますけれども、確かに前の政権よりは、総局ができましたので、ある程度スピードアップしていますけれども、ただ、やっている方々、職員はみんな同じなんです、前の政権と。だから、我々の要望、ニーズ、そういうものは全部積み重なっているんですね。

 やる気になればやれるんですよ。だから、そういうことで一生懸命やっていただきたいというふうに思っています。

小熊委員 ありがとうございます。

 先ほど馬場町長からも指摘のあった子ども・被災者支援法、参議院発議でしたから、私も賛同者の一人としてかかわった一人です。

 この間の予算委員会、また復興特別委員会の中でも質疑をさせていただきましたが、町長のおっしゃるとおり、基本方針が策定をされていません。そしてまた、その対象地域というのは、基準値、何ベクレルかというのを、これは今の政府の方の答弁では、規制委員会に検討してもらっていて、年内に答申をいただくことになっていると。年内ではとても遅いという話を私はさせていただきました。

 また、この子ども支援法は、議連もつくりまして、しっかりと実施できるようにやっていこうということで議論した中では、基本方針を策定する前の意見聴取会は、原案ができる前にまずは現場の声を聞くことというところなんですが、今政府で考えていることは、原案をつくって、それを現場に持っていって意見を聴取する、そういう順序立てを考えているようであります。

 私は、それをやっちゃうと、ゴールが先にあって、そこに合わせる意見しか集めない、そうした予定調和の意見聴取会になりかねないというふうに思っていますので、フラットな形で意見聴取会をやるべきだというふうに考えておりますけれども、この点について、馬場町長、どのようにお考えですか。

馬場有君 まさに小熊先生言うとおり、そういうような手順でやらないと逆になってしまいますので、やはり、きちっと意見聴取会をやって整理をしていく必要があるというふうに思います。

 この間、超党派の議員の皆さん方に呼ばれまして、話を披露する機会がありました。やはり、次世代を担う子供たちの医療保障、そして心のケアですね。カウンセリング、スクールカウンセラーもそうです。

 本当に、県なんか、一人でいいだろうとか二人でいいだろうとか、それはもう二年間だけだとか、全く無責任なことばかり言っています。そうじゃないんですよね。やはり、寄り添うということは、ある程度落ちつくまでやっていただかないとだめだということです。

 ですから、それはもう、フラットに意見聴取会をやっていただくということでお願いしたいと思います。

小熊委員 低線量の見解については、これは専門家でも分かれておりますし、また低線量のことが風評被害にもいろいろかかわってきます。

 私も実は商工会議所青年部の一員で、いわきの青年部にお世話になっていまして、先月、沖縄の那覇で青年部の全国大会、シンポジウムも開かれたときに、若手国会議員として参加をさせていただきました。青年部もさまざまな支援をして、風評被害対策もしているところではありますが、メンバーの中からも、自分は福島県のものを食べているけれども、家族は別のものを食べていると。これがやはり現状であります。

 また、国会議員もさまざまな政党も、被災地に支援は来ていますけれども、来ていただくことも私は大事だとは思うんですが、それぞれの地域で、自分の後援会なり学校なりに、だったら福島県に、被災地に修学旅行に行ってくれよと。現場はまさにこのいわきであったり東北であったりしますけれども、それぞれの家庭においても現場があるでしょうと。これはなかなか根が深いところだというふうに思いますし、昨年の島サミットでフラガールたちが踊ったのも本当に涙ながらに見させてもらいましたけれども、風評被害対策をしっかりしていかなければいけない。

 また、産業の振興ということもあります。

 先ほど会頭が示されて、再生可能エネルギーでしっかり世界の先進地を走っていくということがありますが、そのところに、これも伊東さんが言われたとおり、私も質問しましたけれども、福島県内にある原発の全基廃炉は現政府でも言及はしていません。私は、これをなくして再生可能エネルギーだけでやるということでこそ、このいわきが、福島県が世界の先頭に立つという姿勢を示すことになるというふうに思います。

 その点について、会頭はどう思われますか。

小野栄重君 この問題は微妙な問題で、私の口から言葉を選んでもちろん話さなくちゃならない問題だと思いますけれども、今、日本の原発はほとんどとまっているわけですよね。でも、我々、生活できているじゃないですか。そこには、昔からの英知があり、暮らし方があり、また、その環境に合わせる自己統制心といいますか、それが日本人はあるんですよね。やはり教育が違うんですよ、日本人は。

 ですから、もちろん福島の原発稼働なんというのは私はあり得ないと思っていますし、廃炉で当然進むべき。でも、そのかわりに、電気が異常に高くなってしまって、企業が全部逃げていっちゃったら大変なことになりますよね。だから、東電、東北電力に対しては極力値上げを抑えるようにというのはもちろんお願いはしていますけれども、それだけでは非常に後ろ向きな対応ですので、では、ここでもうつくっちゃおうと。もともとつくってきたわけですから、電気供給基地ですから。

 それで、たまたまインフラが、小名浜港を中心に、勿来火力発電まで含めると、そろっているわけですよね。そういうところに投資を呼び込んで、そして、今現在の施設を利用するなり、また新しいものをつくるなりは別として、そういうものをどんどんつくっていきながら、電力を補っていく。地産地消はもちろんのこと、東京圏の電力供給も視野に入れながらも、やはりそういうものをいわきは大きな産業の柱に育てていくべきじゃないかなと。

 それにしても、どうしても国の後押しが必要なんですよ。プラントを建てるにしても、そこで陸揚げする荷役機能を今民間が全部背負わなくちゃならないという取り決めが重要港湾のときはありますから。そうすると、それを民間が全部、百億も投資してできるかといったら、できないんですよ。だから、県の責任ももちろんありますけれども、いわきの場合は、国がどんどん投資するところには投資した分はね返ってきますから、東北それから日本の復興に。

 そういう意味で、再生可能エネルギーも含めた、従来の高効率、幸いIGCCというすばらしい技術もいわきは持っていますので、二酸化炭素はほとんど出ませんので、そういうものも、国会で、環境省とのアセスメントをうまくやっていただいて、そして早くそういうものを立ち上げていくという体制をとっていただければ、私は、電力問題も福島県は解決していくんじゃないかなと。あとの県のことはわかりません。私が言う言葉ではないと思っていますので。

 頑張りたいと思いますので、どうぞよろしく後押しをお願いします。

小熊委員 陳述人の皆様、きょうは本当にありがとうございました。また引き続き、御指導のほどをよろしくお願いいたします。

山本座長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、皆様、大変にありがとうございます。

 今回お邪魔をいたしましたのは、今、平成二十五年度の当初予算、若干おくれておりますけれども、その審議で、とにかく皆様の御意見をお伺いして、そして予算の審議にまた反映をしていこう、こういうことでお邪魔をさせていただきました。ですから、これから予算の議論の中で、きょうの御意見もしっかりとまた反映ができるように取り組みをしてまいりたいと思います。

 私からは、まず、いわき市長さんにお伺いをいたしたいと思うんです。

 先ほどから、復興交付金のお話で、使い勝手の問題を含めてお話があったと思いますが、我々も、この復興交付金について、当初、四十事業とそして効果促進事業を関連しなくちゃいけない、三五%は使えるよ、こういうお話で進んできましたけれども、現実には非常に使いにくい、こういうお声も聞いて、安倍総理も、復興交付金の柔軟化、こういうお話があって、私の記憶では、例えば県の基幹事業に市の方の効果促進事業をくっつけるとか、いわゆるクロスして使えるように工夫もしたというふうにお聞きをしておりますけれども、さらに、私は、せっかくやるわけですから、地元の復興の、まさしく復興交付金になるように、至らざるところは直していかなくちゃいけない、こう思っております。

 この点、具体的に、いろいろお話があったと思いますが、改めて、例えばこの問題ではこうだということがありましたら、ぜひ教えてもらいたいんですが、いかがでしょうか。

渡辺敬夫君 先ほど来から申しているように、復興交付金そのもの、あるいは効果促進事業を含めてですが、使える施設と使えない施設があります。

 先ほど申し上げましたように、これからどういう災害が起きるかわからない、そのときの司令塔ぐらいはしっかりしたものをつくっておかなくちゃならないんじゃないか。だから、私は、いわき市の本庁舎ぐらいは耐震に使わせてもらえないだろうかということなんですよ。私どもが、今回の震災で、その司令塔になる建物が使えなかった。そして、消防本部は耐震構造にもなっていたので、その消防本部に災害対策本部を設置せざるを得なかった。

 それを踏まえると、今後、こういう災害があったとき、司令塔がしっかりしていないとだめなんだ、少なくとも司令塔ぐらいは、この今回の効果促進含めて、そういうものぐらいは使わせていただけないだろうか、そこを弾力的に運用させていただけないだろうかということが何点かあるので、そういうことをもう少し使いやすくしていただければなと。

 今回の二十五年度の地域コミュニティ復活交付金も、実際、受け入れ自治体が、この交付金で全部見ますよという中身のものが、詳細がわからないということを先ほども申し上げました。そこが実際入っていないのであれば、また復興交付金と同じく使いにくいですよという話になるんです。

 我々も、まだ県の方から明快に来ていないんですよ。大ざっぱなものは来ていますけれども、ではこれは使えるんですかというような話を聞くと、県の方でも明快に答えていないので、だから、これらについても弾力的に使えるようにしていただかないと、制度はつくりました、だけれども使い勝手は悪いですよというのでは、せっかくつくってくれたものがうまく活用できないというのが実態なのかなと思っているんです。

 前の交付金の絡みからいうと、それが私の印象であります。

石田(祝)委員 市長さんのおっしゃりたいことはよくわかるんですが、それでは、復興交付金というよりも、また別の仕組みで、いわゆる防災、減災という観点からそういうところに使えるものをということでもいいわけですよね。

 復興交付金の枠組みでいくと、どうしても被災を受けたところの復興復旧という形になりがちなので、私は、もう我が党としても、防災、減災ということは、一昨年の三・一一を見て、非常に大事である、こういうことは考えておりますので、その点はぜひ考えていきたいというふうに思います。

 それで、もう一点、コミュニティ復活交付金というのが、今回、長期避難者の生活拠点形成ということで、五百三億。その中で、私のいただいている、きょう復興庁からもらった資料では、長期避難者を受け入れている市町村で、例えば災害公営住宅の整備で補助率が八分の七とか、あと、道路改良、学校施設の整備、こういうことは、ごく少ない事例でありますけれども、実は出てきております。

 ですから、今市長さんがおっしゃるように、まだ具体的な制度設計はよく聞いていないというお話でもありましたから、逆にこれから、こういうものを入れるべきではないのかと、反映される可能性は、私は十二分にあると思うんですね。

 これは、長期避難者をたくさんいわき市として受け入れていらっしゃるので、先ほどお聞きをすると、やはりもともとの市民の方とのいろいろなあつれきも正直出てきている、こういうお話がありましたので、相当な御苦労をなさって、また、いつまでたったら皆さんがもとの生活に戻ってということになかなかなりにくい。

 そういう中で、ある程度の長期ということを考えての計画も必要だと思いますので、せっかくの五百三億ということ、予算を新規で計上しておりますので、例えば、私が申し上げたような公営住宅だとか道路、そういうもの以外に、受け入れている自治体の長として、こういうことは絶対やってほしい、こういうことがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

渡辺敬夫君 原発避難者特措法ですか、今住民票のものが出ていないので、とりあえず暫定的にやっている。それで、住民票を元自治体に置けば、あの法律が結果的に生きてくるんだろうと思うんですね。

 それは事務手続上の話であって、では、事務量の、いわき市の人件費はどうなんだとか、いろいろな課題があります。先ほど私が言った学校給食の話なんかも、現実的にそういう問題もある。ただ、もろもろのことが、現実的に、そこまでの詳細まで私どもは聞いていないので、そこが弾力的に使えるのか使えないのか。

 だから、先ほど来何回も言っているのは、まず住民票がいわき市に、要するに、受け入れ自治体ですよといえば、税金も自動的に、住民税も入る形になるので、これはもうコミュニティ復活交付金ということは基本的に考えなくてもいいんだろうと思うんです。

 多分、こういう制度が出てきているということは、避難元自治体の方に住民票を置くという前提があるんだろうと思うんです。そのとき、受け入れのところで、今申し上げたようなもの、原発避難者特措法では職員の人件費とかそういうものは全然見てもらっていませんから、だから、そういうものがこういうもので使えるのか使えないのか含めて、いろいろな、我々も全てを承知しているわけじゃないんですよ、これから運用していく中で、これもあるだろう、あれもあるだろうということもあるんだろうと思うんですが、それは一丁目一番地と二番地、早く決めてくださいということなんですよ。それが決まらないと、今ここで議論しても、議論が先に行かないんだろうと思うんです。

石田(祝)委員 ちょっとこれは、私、今、市長のお話を聞いていて思ったんですが、そうすると、受け入れていますよね、その受け入れている人数を、例えば、いわき市の基準財政需要額に、その人数も住民票がなくても入れますよと。こういう、二重住民票と言ったら変ですけれども、例えば浪江からも受け入れていらっしゃるので、浪江町の住民票は置きつつも、受け入れているところについては、例えばさっき申し上げたように、基準財政需要額にその人数は入れましょう、入れて財政需要額を計算しようじゃないかと。こういうことになれば、人口がふえたという形での財政需要額になりますよね。これについてはどうですか。

渡辺敬夫君 財政上の理論づけからいけばそれでいいんだろうと思うんですけれども、今現在、原発避難者特措法の中に含まれていないのが、ごみの収集なんですよね。これは、自治体によっては、避難者から、避難元自治体の住民から直接徴収する方法もあります。いわき市は、徴収しない方法で、交付金でいただいているというやり方なんです。

 ただ、交付金でいただいているといっても、住民感情ですね、要するに、税金を納めていないんじゃないかという話の議論もあって。

 浪江の町長さんがいる前で大変失礼なんですが、双葉郡の皆さんは、結果的に何にも、ごくごく義務的な部分です、通常ルールの話ですから、そういう中で負担していないんじゃないか、結果的に国が全部面倒を見ているんじゃないかという印象があるので、理論的な話は、私は私という、それは結構なんですけれども、その話もかなりあつれきの一つになっているものですから、非常に微妙だなというのが現実なんですね。

石田(祝)委員 では、続いて馬場町長さんにお伺いをいたしたいんですが、財物賠償の話ですね。

 今お話があって、これは私も不勉強で、まことに申しわけなかったんですが、何か、三つの中から選んで返事をしてくれ、それ以外は認めないというお話だったと思いますけれども、財物賠償も非常におくれていたことは間違いないですよね。やっと始まったかということも聞いているんですけれども、三つから選ぶというのは、具体的にどういう選択肢になっているんでしょうか。

馬場有君 一つは、いわゆる固定資産税評価額から面積で金額を出していく、固定資産税評価額から面積に倍率を掛けていく、土地の場合は一・四三ですか、そういう形になっています。あと、建物についての方法は、四十八年以上、五十年たとうが百年たとうが、坪十三万六千円という一つの線を切りました。それで、その一、二の方法が気に食わなければ、不動産鑑定士とかなんかを入れて個別で賠償額を決定してもいいですよという考え方なんですね。

 これは、仮に、最後の三つの不動産鑑定士を頼んで賠償額が低かった場合には、高い一、二の方には戻れないんです。ですから、そういうことはおかしいんじゃないか、高い方に弁償するのが普通の考え方じゃないでしょうかということなんですよ。加害者が低い方に賠償するというのはおかしいんじゃないかということなんです。

石田(祝)委員 町長さんの言うことはよくわかりました。

 財物賠償については、極端なことを言うと、例えば遺産相続されていなかったり、もとの人の名前になっていたりとかして、関係者が多くてなかなか進まなかったということを言っておりましたけれども、始まったとしてもこういう問題が実は解決せずに出てきている、こういうことですから、この点は、私はよくわかりました。

 最後に、時間の関係で、小野会頭さんにお伺いをしたいんですが、会頭さん、私たちは、今二年を超えて、二つの風が問題だと。一つは風評被害、もう一つは風化、この二つの風が非常に問題であるということを我々も感じております。

 ですから、この風評被害については、今いろいろな、福島またいわきに何とかという思いは、私はただいまよく承りましたので、これはもうできるだけ私たちも御協力をさせていただきたいというふうに思います。

 そういう中で、こちらの方に何か企業を誘致するような話がございましたかね。その点がありましたら、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

小野栄重君 風評というのは、要するに、安全と安心がイコールでないんですね。ですから、全て安全、安全と我々が主張したとしても、それが安心につながっていかないというのが風評のもともとの原因。そこの安全をどのように確保するかということで、今までいろいろな施策をお願いしてきたわけなんです。

 おかげさまで、ここに来まして、企業がいわきの投資価値を次第に認め始めた。それはもちろん復興需要というものが当然ありますので、いろいろな企業が手を挙げてきております。

 それ以外に、安価な労働力、それから優秀な人材、そういう面もありまして、企業誘致ということを今積極的にこちらから働きかける一方、向こうからもかなりの御要望が来ているということなので、これを大事に軟着陸させるためには、ただ来てくれ来てくれだけではだめなんですね。やはり、来てくれた以上は、手厚い支援対策というものが示されないとだめなので、企業立地補助金というのがその最たるものだったんですけれども、それ以外に、市独自で一部電気料を負担したりとか、いろいろな要請をしながら、今、企業立地に向けてきています。

 最たるものは、三菱商事が手を挙げましたよね。太陽光発電、小名浜地区に、もとの企業跡地に来ますね。その辺も、いわきの復興の大きな牽引役になるんじゃないかなということで、それもエネルギーと関連した事業になっています。

 総じて言えば、エネルギー関連事業がこれから、いろいろな企業立地補助金、それからもろもろのいわきの政策に呼応しながらやってくるというのはもう間違いないんじゃないかなと。ですから、それを今度はいかに地元産業にアクセスさせるか、これが問題なんですね。

 洋上風力発電、あれだけのプロペラですから、あれを組み立てるのは大変なことなんですけれども、幸い、小名浜港という運搬、輸送があります。ほかから組み立てて、ただ取りつけるだけでは、地場産業に何のはね返りもないんですね。ですから、あの部品部品はいろいろな何千という部品でできている、それを地場産業に任せてくださいよ、それだけの実力がいわきは今あるんですよと。

 それで、今、企業ガイドブックというのをつくったんですよ。中小企業の優秀な技術を全部写真つきで載せて、企業ガイドブックをつくって、つい最近、マッチングの協議会をスパリゾートハワイアンズで、東京から呼んで、やったばかり。

 すごい反応なんですよ。ああ、いわきにこういう優秀な、ぴりっと光るのがちっちゃくてもあるのかと。では、うちの一部門を担当してもらえないかとかというマッチングがもう既に始まりつつあるんですね。だから、そういう努力はこれからも継続して進めていきたいなと。

 したがって、企業立地なくして将来の雇用それから将来の活性化はあり得ないというふうに思っています。今は、一部復興需要で何となく潤っているような、まあ錯覚でありますけれども、これが一巡したときこそ私は心配だというふうに思っているので、せっかく来てくれるものは大事に。

 そこで、もう一つ問題点が、工業団地が不足している。これは、もちろん、市長も努力しています。しかし、まだまだ足りない。来たくても工業団地がないという状況も具体的にはありますね。この辺の後押しも、あらゆる使える補助金を使いながらやっていければ、私は、いわきは徐々に雇用回復という軌道に乗るんじゃないかなというふうに見ています。

石田(祝)委員 ありがとうございました。

山本座長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 どうもお疲れさまでございます。みんなの党の佐藤正夫です。

 実は私は、九州出身なんですけれども、あの震災のときに、私の子供たちと街角に立って、募金活動をやったんですね。震災後二日目だったと思いますけれども、午前十一時から夕方の六時まで。そうしますと、九州ですけれども、そのわずかな時間で何と百万円を超える義援金が集まりました。ところが、それから義援金活動をやっていると、だんだん義援金が少なくなってくるんです。なぜかというと、義援金がどこに行ったかわからないと。

 実は、きょう、市長初め皆様方のお話を聞いていますと、国も全く同じような気がしてなりません。

 先ほど来、復興再生総局のお話があって、実は、現場主義だ現場主義だという割には、きょうお話を聞いてみると、全然現場主義じゃなかったというのがわかりました。要するに、国民の善意が伝わらないように遮断されているんだろう、このように思います。

 そして、浪江町長が言われたように、被害者と加害者はどっちなんだ、この辺が実は曖昧にされていて、聞いていると、どうも被害者が加害者のような、先ほど言ったように、差別をされてみたりだとか、いろいろな問題がある。私は、きょうお話を聞いてきて、この辺を国会の中でももう明確にしなきゃならないと思います。

 そこで、一点、かぶりますけれども、今の平時の法律のままでやろうとしているから、税金にしても何にしても無理が来るのではないか、そういう観点から、皆様方お一人お一人、御意見があれば聞かせていただきたい、このように思います。

渡辺敬夫君 全く御指摘のとおりだと思っております。

 私は、この大地震、大津波だけであれば、これはなかなか大変な状況ですが、平時の運用でやれるんだろうと思いますが、原発事故があったのに平時でやっているというのは、到底私どもは納得できない。

 なぜかというと、現場で、浪江町と違うのは、いわきは四十日後に三十キロの屋内退避区域については解除を受けたんですよ。だけれども、それ以降、もう二年たつのに、国が平時のこときり考えていないから、いまだに我々、末端で行政を執行するのに非常に問題がある。

 例えば、災害瓦れき法あるいは特定廃棄物。正直言って、今、国民は政府を信用していませんから。あの二十ミリシーベルト、一ミリシーベルト、このわからない話をした段階でもう国を信用していないんですよ。国を信用していないということは、我々が末端で進めるとき、市民の皆さんが納得するわけないですよ。

 だから、私はきょうこういう発言の機会がありましたから、ぜひとも、政府じゃなくて国会で数字をつくってください。それこそ、参考人招致して、右から左まで、考え方、学者さんはいるわけですから。そこの中で、国会の、立法府の意思としてつくっていただきたい。それは、我々首長が末端でやるとき、当然、我々は法の執行者ですよ、法律で決められたもの、それをやれる、そういうものを非常時用につくっていただきたい。

 全く余談なんですけれども、今、国が、PM二・五については、各県あるいは各自治体で発表しろと言っているじゃないですか。風評被害のものは、全国の自然由来がどうだったのかというのを、一つも国はやっていない、発表していない。それで、我々の福島県の線量だけが出ている。福島県だけが、いつになっても、検査体制はしっかりやっていますよといっても、よそと数字を比べることができないんですから。

 だから、PM二・五と同じく、少なくとも、放射線についても全国のモニタリングを提示するぐらいのことをやっていかないと、数字については誰も信用していないので、正直言って、国会で数字をつくってください。災害瓦れきも含めてなんです。

 例えばの話が、指定廃棄物も、八千ベクレル以上のものであっても、その地域から幾らかもうわかっているんですから、せいぜい百メートル離れたらほとんど反応がないわけですから、だから、百メートル離れたところに人家がなければ、指定廃棄物の仮置き場を置いていいよとか、そういうことをやらないと、平常時のルールで今やっていますから、何一つ進まない。

 先ほど馬場町長が言うように、住民の合意形成なんという生易しいことでは行政は執行できない、それが一番悩みの種です。

馬場有君 今、私どもの役場の職員の仕事は、全て非常時の仕事だけなんです。平常時の仕事というのはないんですよ。住民票の登録とか、そういうのはもちろんありますけれども、それは全く微々たるもので、非常時の、例えば町外コミュニティーをどういうふうにつくっていったらいいのか、どういうふうなアンケートをとったらいいのかというような、全く普通時、平常時のお仕事じゃないんですね。

 したがって、今先生がおっしゃるように、やはり平常時の法律では動かないんですよ。非常時の法律で、特例をつくっていただいてやっていかないと、我々は立ち行かないということだと思います。

 今現在、私ども、四月一日から、先ほど来から話をしていますけれども、区域の見直しをして、そして、復興再生事務所をほかの市につくって、そこを拠点にして浪江町に入っていって、要するに、宿泊できないんですよ、自由に出入りできるといっても、だから、職員は、そこの事務所から本庁の役場に通って、そして、一日仕事をやって、宿泊所に帰るんです、避難所に帰るんです。

 そういう仕事ですから、全く平常時の仕事ではないということで、仰せのとおり、いろいろな特例法、今の、従来からある災害救助法ではとても適用できないです。これだけ申し上げておきたいと思います。

小野栄重君 商工会議所では、もう二年前から有事の体制をしいてきました、とにかく民間でできることはやらざるを得ませんので。したがって、全ての委員会、部会を廃止しました。そして、復興特別委員会のみに全精力を集中して、三千七百社全部回って、何が問題なのか、生きているのか死んでいるのか、全部調査して、そして、それに応えてきました。あっという間に二年が過ぎました。

 その間、私は常々思っていました。平時の霞が関でいいのかなと。私は、復興庁来てくれ、復興庁来てくれと、ばかの一つ覚えのように言ってきた者の一人なんですよ。あのころ、そんなものが来るわけないだろうと言っていました。でも、やはり言い続けると来てもらえました。今は、来ていただいて、それがうまく機能しているかどうかは別問題としまして。

 ですから、今は有事なんですよね。有事の戦略というのが国としてなければならないんですよ。私は、さっき、三本の矢はすばらしいんだ、でも、もう一つの矢が必要でしょうと。それは有事のための福島戦略でしょうと。これを世界が見ているでしょうと。これを乗り切るということは、日本が再生するどころか、世界から日本が尊敬される源になるわけですよ。

 今、市長が、使い勝手が悪いお金を幾らもらってもどうしようもないと。だから、もうどんと預ければいいでしょう、これをどうにでも使ってくださいと。もう少し民間を信用して有事の戦略を立ててもらいたいなというのがもともとの私の考え方だったんですけれども、やっと、ようやく国会議員の先生方もいわきの現状をわかっていただきました。

 なぜかというと、いわきは今五名の優秀な国会議員の先生方がいて、私たちの言葉がすぐに政府、国にはね返るようになってきました。今までが悪いと言っているわけじゃないですよ。ただ、例えば、出た質問に対しては三日以内に答えるとか、そういうルールをつくりながら、徹底的にキャッチボールをしながらと。

 私は、それじゃ不満なんですよ。霞が関ごと移動してきてほしいと思っていた一人ですから。会頭、そんなばかなことを言っていると笑われるよと言われていましたが、いや、そうじゃないんだよ、復興庁どころか経済省丸ごとここに来たっていいんだよと。もちろん、今は環境省の方があれかもしれませんけれども。そして、原発廃炉に、ここで国の役人、国の職員が、国の予算で働くんですよ。それが市民の大きな勇気づけになって、そして逆に、市長とか私の尻をたたいて、何をやっているんだ、ほれ、何ぼでもお金を使ってやれというような、そういう体制にこの二、三年でしないと、絶対二十年後に後悔すると私は思っています。

 ですから、きょういわきで開かれた理由は、私は、これは神様がそう仕組んだのかなと。低線量でこうしてみんな頑張って、いわきに三千七百社ある商工会議所の会員が一つも逃げないで頑張っているんですよ。こんなことは普通だったらあり得ないですよね。でも、それは何かの意味があるんですよ、神様から与えてくれた、ここで頑張れと。頑張れば必ず、今までの復興どころか世界に冠たる町になるから頑張れという、それは神様から大きな試練とともに与えられた役割なのかなと思っていますから。

 ぜひ、有事のための国策としての戦略を、福島復興戦略としてあらゆる法律をつくっていただいて、そして四十年なんて言っていないで、十年で少なくとも廃炉の道筋はつけられるような、そして安心して帰ってこれるような、そういう体制に早く持っていっていただきたいというのが、私は素人で統治のことはよくわかりませんけれども、これが恐らく市民の生の声なんじゃないかなというふうに私は思いましたので、生意気かもしれませんでしたけれども、申し上げました。済みませんでした。

伊東達也君 具体論でお話し申し上げたいと思いますが、私どもの浜通り医療生協で、十日ほど前に、双葉町の十九歳から三十九歳までの甲状腺検査をやりました。四十数人の方々が二日で来たんですが、このきっかけは、加須市に双葉町が行って、あそこに地元の医療生協がボランティアというのか支援に入ったらしいです。そこでえらく信頼をされて、医療生協というのは何だという話からなったらしいです。

 双葉町にはなかったんですね。初めて、全国各地に医療生協というのがあるというので、双葉町から、福島県内にもいっぱい我が町民がいる、ひとまず十八歳以下の甲状腺検査は県でやるとなって、それもおくれて大変問題にはなっているんですが、町民から、もうちょっと年上の人も心配だということで、委託があったわけなんですね。それで、私どもは喜んでこれは受けました。

 実際のところ、ドクターも少し来てもらったりしますから、率直に言って、私どもの持ち出しにはなります。それでも、私は、今市長から出たような、ああいういざこざや何かはなくしたいと心から願っていますので、やはり実践が最初だということでそんなことをやっているんです。

 例えば、こういうのは無数にあると思うんです、いっぱいあると思うんです。そういうところで、持ち出しになったら少し考えますとか、そんなものがちょっとでもあるならば、それはそれで、多くの団体も、それが欲しくてじゃなくて、やれることもいっぱいあると思うんです。

 それから、もう一つは、私の最初の意見陳述で言いましたが、賠償の時効の主張なんかの問題はこの最たるものだと思うんですね。今の法律の枠組みでは、別段、加害者が悪いことを言うのではないんでしょうね。法律でそうなっているんです。

 しかし、考えてみてください。賠償は、行政も賠償請求しますが、行政だったら裁判をやれますよ。そうすると、時効はそこから延びますね。でも、一般市民はどうなりますか。膨大な人たちは、何をどうしていいかわからないんですよ。もしこのまま、三年が来ました、民法でこういうふうに出ているでしょう、あなたは一日おくれたんですと。その人たちが幾ら言ったって、これはもうだめなんですよ。私は、最たるものだから言ったわけなんです。

 渡辺市長が言ったように、国会で何とか努力してくれというのを、この点からも、私は、こういうものこそ動いていただきたいんです。

 反対に言えば、そういうものを妨害するようなのが出てくるから、私は本当に心から怒るんですよ。すなわち、事故収束の宣言ですよ。

 あの宣言からがらっと変わりましたよ、福島県内は。もう国民も、安全だというサインを送られちゃったでしょう。だから、どこに行っても、義援金とかカンパも、もちろん、どこに行くかというのが、あれ以降、もう事故は終わった、こういう認識が国民の中に出てきているわけですよね。ところが、福島県民はあの辺から、じくじくと深い深い問題を感じざるを得ないんですね。

 東電の態度も、私から見たら本当に、毎月私は、東京本社に行く、こっちの本社に行く、福島の出張所に行くとお会いするんですが、明らかにあの事故収束宣言から変わりましたよ。

 まず最初にあっと思ったのは、収束に係るコスト削減をするというんですよ。こんな大問題のときにそこの金をちびるだなどというのは私はとんでもないと思うんですが、やはりそうなってきています。

 一般市民も電話をかけたり東電のいろいろな人といると、何かまたもとの態度に戻ったようだねと言う人がちらちら出てきているんです。私は、これは大変な問題だと思うんです。

 そういうことはやめてほしいんです。それも、もう国会が言い出さないとだめでないのかなと私は思うんですね。そういう観点から、ひとつもっともっと生の声を聞いていただきたいんです。

 私はたまたまきょうこうして呼ばれましたが、家庭の主婦や何かは本当に願いたいことは山ほど抱えていると思います。ひとつ御理解いただきたいと思います。

佐藤(正)委員 ありがとうございます。本当に生の声を聞かせていただきました。

 小野会頭、実は私どもも全く同じ考えを持っていたんですね。要するに、福島なら福島に復興院をつくる、いわゆる政府をつくるんですね。そこで、平時ではない今の状況の中で法律もつくる、予算を持っていく、そこでしっかりと自分たちで決めてもらう。

 いわゆる今のような復興再生総局をつくっても、きょう、小熊さんとも話していましたけれども、我々が来ても、封筒一つ一つを見ても、結果的に、いまだに一つにまとまっていないのが現状なんですね。環境省とか、こんなばらばらの封筒を持っているんですよ。これ一つ見ただけで、一体と言えないと私は思います。だから、小野さんが言われたように、夢ではなかったと思います。私はそれが一番早道だったと思います。

 きょう、本当に、市長、町長を初め多くの皆様の生の声を聞かせていただいて、これを必ず、平時ではないということをしっかりと念頭に置いて、国会の中で審議をさせていただきたいと思います。

 本当に貴重な時間をいただいたことに感謝を申し上げます。ありがとうございます。

山本座長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 きょうは、四人の公述人の皆様方、本当に貴重な御意見をありがとうございます。私、日本共産党の宮本岳志です。

 予算委員会は、この地方公聴会を終えましたら、四月の五日に原発事故問題での集中審議ということも予定をしております。本日お伺いした御意見をしっかり受けとめて、原発事故あるいはエネルギー政策ということでの国会の議論を進めていきたいと思うんです。

 まず、渡辺市長にお伺いしたいと思います。

 県内で一番多くの二万四千人という避難者を受け入れていただいていること、それに伴うさまざまな困難があるという話もよくわかりました。みずから、九万棟という仙台市に次ぐ被害がそもそも地震でも津波でもあったんだ、この方々、住民への責任も問われると。こういうもとで本当に頑張っていただいていることに、心から敬意を表したいと思います。

 先ほど給食の問題等も出ましたけれども、やはり国がきちっとその責任を果たす、そういう御負担をおかけしていることに対して。どの役所がどう段取りするかとかというところでの手続が縦割りかどうかというのはあるにしても、ちゃんと国が責任を持つので御安心ください、この一言がなかなか出ないと、本当にどこまでやるのか、どこからかはやってもらえないんじゃないか、ここがやはり現場で一番悔しいというか不安に思われるところだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡辺敬夫君 私が一例、二例挙げていることについて、私は、とやかく言っているわけではない。ただ、国の体質が、先ほどあったように、今、平時なのか非常時なのかという原点から物事を考えるべきだということの一例で申し上げた。僕が文科省に行ったとき、文科省の言いぐさが悪かったから、僕は言っただけの話。

 一昨年の三月十二日ですよ、最初に楢葉町の当時の草野町長から、一千名避難させたいから避難所を確保してくれと。それから終始一貫、双葉郡の皆さんを支援する、一方で、いわきも甚大な被害を受けているから市長として必ず五年間で復興する、この基本でやってきました。

 私は、正直言って、風評被害の話がいろいろ出ていますけれども、政府の対応は甘いと思っていますよ。県には来ていますけれども、いわき市に来ていませんから。いわき市は、二十三年度四億、二十四年度四億五千万、計八億五千万、市単独事業で風評被害払拭キャンペーンをやっております。

 国が悪い云々だとかと私は言うつもりはさらさらないんです。ただ、今本当に国は、平時だと思っているんですか、非常時だと思っているんですか。この認識がないから、時々私もキレて物事を言うようになるので、先ほどの子供の話も一例を挙げただけで、それが問題でお金を下さいという意味で言っているわけではないんです。

 基本的に、枠組みをしっかりつくって、制度設計をつくって、これでどうだと言われたら、はい、わかりましたということで私は進めていきたいと思っておりますので、そういうことの思いで先ほど話しただけです。

宮本委員 ありがとうございます。

 私は、話を聞かせていただいて、より根本には、決して、今回、今起こっているこの困難な事態、これはいわき市の市民にももちろん責任は何もない、同時に、双葉郡内の避難している住民の方々にももちろん責任はありません。こういう事態が起こっている一番の原因は、まさに安全神話を振りまいて、安全対策をとらずについに事故を起こした東電と国に責任があるわけですから、ここで起こっている事態の全責任はやはりそこにあるということをはっきりさせて、現場の方々のそういう被害をきちっと補償していくということが大事だというふうに思うんですね。

 浪江町の馬場町長様には、七百五十五日、自分の布団に寝たことがない、そういう話もお聞きしました。SPEEDIの情報を隠したことが住民の健康に大変被害を及ぼしたという話も、そのとおりだと思います。

 先ほど来、やはり国は平常時と思っているんじゃないかという議論が出ていますけれども、これはもう伊東さんが御指摘になったとおり、収束したという認識に立てば異常時から平常時に戻ったということになるわけであって、ここにやはり一つの根本的な間違いがある。

 私たちは、まだ収束なんてとんでもないと。今の政権は収束という言葉をもう使わないとおっしゃっているので、意は通じていると思うんですが、収束などということは、現状は全くそうじゃないし、これはやはり撤回すべきだと私は思うんですけれども、これは、町長とそして市長にも、重ねてこの認識をお伺いしたいと思っております。

馬場有君 まさに、私は、収束はしていないと。これは町議会の質問にも答えています。

 それから、三月十八日のあの電源のトラブル、あれ一つ見ても、やはり、何かあったらばもう大変なことになってしまう。

 今私ども心配なのは、一時帰宅が自由になって、どんどん今入っています、浪江町に帰っています。そこでまたぼんとやられたら、本当に、先ほどの話でないですけれども、どこに避難したらいいのかということですね。私が今考えているのは、もしそのときに、どういうような連絡体制がと。

 今、防災無線を直しました、ただバッテリーを交換するだけのものでしたからね。ただ、津波でやられた周辺沿岸部は、全部さらわれてしまいましたので、防災無線の基地はありません。ただし、バッテリーだけはほかの地域は生きていましたので、それを生かして、何かあったときにはそれで流して、避難所にとにかく戻っていただくとか、あるいは鉄筋コンクリートの建物の中、役場なんかはそういう建物ですから、そこに避難してもらう、そういう体制を今とっています。それについても、本当に、危険を、危機を感じながら一時帰宅を今させているという状況です。

 ですから、原発の事故の収束はしていないということです。

渡辺敬夫君 私自身も、先ほど申し上げたように、地域防災計画の原子力対策の暫定版の話のとき、第二原発だけだというお話をしたと思うんですね、避難計画を含めて。第一は収束していないんですから、今も事故の状況ですから、第一のものは事故ですから、第一の計画はつくりようがないんです。第二は、一応事故を起こしていないので、第二が問題があったときの避難計画をつくったということです。

 結論から言いますと、収束はしていないという認識でそういう計画をつくっております。

宮本委員 ありがとうございます。

 今、事故自体がまだ、事故原因も全てつまびらかになっていない、収束もしていない。こうなりますと、これはもう福島の声としては、福島県内の原発十基というものは動かしてもらっちゃ困る、これはやはり廃炉という声がずっとどこでも出てくるのは、当然のことだと思うんですね。

 先日は、浪江・小高原発は、そもそも新設の断念ということも決まりました。そういう点では、これはまた二人の首長さんにお伺いしますけれども、県内十基の原発はやはり廃炉しかない、この点もよろしいでしょうか。

渡辺敬夫君 結論から言うと、十基廃炉ということです。

馬場有君 もちろん十基廃炉で、今先生が御指摘のように、四十数年来、浪江・小高地点の原発の予定が白紙撤回をされたということで、これは、福島県民の心情を察すれば、当然のことだと思います。したがって、原発の今ある十基については、当然廃炉にしていくべきだというふうに考えています。

宮本委員 ありがとうございます。

 それで、伊東達也公述人、お待たせをしたわけでありますが、冒頭、資料を配られたわけですけれども、その説明がございませんでした。

 実は、私は国会で文部科学委員会を担当しておりまして、国会でも、この事故が起こるまで教育現場でやられてきた原発についての教育というのが、本当に安全神話そのものの、五重の壁に守られていますとか絶対大丈夫ですとかということを副読本でずっとやってきたということも随分文部科学委員会で取り上げてきたんです。

 つけていただいた資料の中には、「原子力を考える日」事業で子供たちが書いた原発事故前の文章も載っておりまして、中には、原子力発電は現在開発されている方法の中で最もクリーンなものだということがよくわかった、そういう声が子供たちから出ていたり、原子力発電所のある町の住民としてとてもうれしく、そして誇りに思います、これからも原子力発電が成長していくことを願っています、こう子供に書かせた。それが今日、本当に、二人の首長さんも、十基はとてもじゃないが廃炉以外ないということですし、収束などとてもしていない、こういう深刻な事態になっているわけですね。

 そういうことについても私も非常に考えさせられたわけですけれども、ぜひ、資料の御説明を伊東公述人からお願いしたいと思います。

伊東達也君 今取り上げていただいたのは資料ナンバー六だと思うんですね。これは、立地町では全戸に配付されておりました。それから、注文しますと、郵送料なしで福島県民は読むことができました。私は、ちょっと関心がありまして、この「アトムふくしま」というのを、発行してからほぼ全号取りそろえていると思うんです。読んできました。〇四年というのをとったのは、象徴的だからとったのではないんです。今の二十二、三の人が中学生ぐらいだと思うんですね。これは、後から読んでください。

 特に、二番目の富岡中二年の女子生徒なんですが、この人の書いたことは本当に痛ましいですね。原子力発電と聞いて私が思い浮かぶのは危険だということだったという書き出しから始まって、学校でいろいろ教えていただいたら、それは全くの間違いだったといって、一番最後に、私はこれは大人に向かって意見を述べているのでないかと思ってしようがないんですね、富岡町の町民の皆さん、町民とは使っていないんですが、その私の考えは誤りでした、原発は安全なんです、固定観念を捨てましょうとまで言うんですね。

 こういうことはもう二度と繰り返してならないということで、実は、その前のものを見ますと、中越沖地震のときに、私どもは、いよいよもって日本で地震が原因で原発震災が起こるということはもうほとんど確信的に思っていましたので、すぐに東京電力と国の方にも出かけました。電事連にも出かけました。

 それはなぜかというと、この資料五にあるように、当時の経産大臣は、今回は大きく想定を超える地震だったけれども新潟の発電所は耐えたでないか、これが真実だということを国民に訴えているんですね。これは電気新聞。私どもは、これはやめてくれ、必ずこういうことは事実が証明してしまうと思うということまで言ったんです。

 あとは、この資料四のように、これは国が出したんですが、「原子力発電所の地震対策はチョー横綱級です。」とか。いろいろ手を尽くしているというのを述べるのは、それはいい。でも、こういうふうに、どんなことがあったって日本の原発は事故を起こさないみたいなことはやめてくれということで、よくこういうものを持って、私どもは話を申し上げた。

 資料三は、これは二〇一〇年十一月二十二日ですから、あの三・一一の四カ月前ですよ。このときも、これらの、電気事業連、国の係に行って、この「記」というところを見ていただきたいんですが、活動期に入った大地震について、迫り来る大地震に対する日本の原発等への国民の不安について皆さんは共有されますか、原発等の大地震への備えはどうなっていますか、それで大丈夫ですかと。

 なぜこんなことを言い出したかというと、何回言っても、素人だという言葉は使わないですよ、でも、ありありとしているんです、あなたたちがそういう心配をするのはわかるんだが、絶対大丈夫なように国は見張っているし、科学者が全力投球していると。いや、そうでないから、私どもは、前からこういう陳情書を出して、チリ級の津波が来ればだめだというのは東京電力が認めているんだよと。一九六〇年ですから、チリ津波が。そのときに日本には原発はゼロでしたから。

 そういう点から、幾ら言っても聞いてもらえないから、こんな事故を起こせば困るのは国じゃないですか、東京電力じゃないですか、それだけでも共有できないんでしょうかというこの陳情書みたいになっているんです。でも、共有できない、こういうふうな回答を通してきたんですね。

 何としても、こういうことを国会で、一つ一つみんな、国が発行しているものに目を通すというのは難しいかもしれませんが、こういうふうなことはもうやめようと。これが、私は、事故収束宣言以降にまた何かおかしくなってきているのを見ると、もうやめてくださいよと。特に、子供まで巻き込んで大丈夫だなんということを言ってはだめだということで、返す返すもそういう点では私は残念で残念で、皆さんにぜひこの点でも御努力いただきたい。

 最初の資料一は、今回の事故が起こるということを専門の学者まで国会の公聴会で発言しているんですよね。こういうものを私どもは持っていっているんです、国には。

 ちょっと長くなって、済みません。

宮本委員 日ごろそういう医療、福祉の現場で伊東さんがやっておられて、先ほど来首長さんとの議論でも出てきたような、やはり住民の間の分断とあつれきといいますか、さまざまな食い違い、これが非常につらいというか、つらい思いで見ておられると思うんですね。

 私の方からは、その根本にはそもそも一番の原因者があるじゃないかということも申し上げたわけですけれども、分断やあつれきを乗り越えて、本当に住民がともにこの問題を乗り越えていく上で大事だと思うことがございましたら、お話を聞かせていただきたいと思います。

伊東達也君 簡潔にします。

 例えば、私は、いわき市民ならばこういうことを考えてほしいということはよく言うんです。

 三度、放射性物質が、強いプルームがこのいわき市を流れているんですよね。一番強いときは二十三マイクロを超しているんですが、午前四時だったんです。雨が降らなかった、雪が降らなかった。たった一つ、それで私どもは今、東京や全国に散り散りに、ばらばらになっていない。飯舘村はここよりももっと遠いところまで、みんな、全村避難だ。それはたった一つ、そのときに雪が降った。それで我々は助かっただけだ。だから、全国民が、こういう事故があれば、いつ誰が塗炭の苦しみになるかは本当に天候一つだと。

 こういうことを見ると、その最も過酷な被曝を受けた人たちに私らだっていつなるかわからない。その気持ちからみんなで考えないとうまくないということは言うんです。これだけで了解してもらうわけにはいかないと思うんですが。

 そして、根底的には、やはり我々医療生協、協同組合は農協も何もみんな同じですが、スローガンは、一人はみんなのために、みんなは一人のために頑張ろう、手をとってやろうと。こういう協同精神というのは、私は、間違いなく全世界に広がっていますが、大きな、いい、金もうけでない観点から持ち得る大切な発信だと思いまして、今後もそういう努力は続けていきたいと思います。

宮本委員 ありがとうございました。

 小野公述人にお伺いする時間がなくなりました。お許しいただきたいと思います。

 これで、私、終わらせていただきます。

山本座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 派遣委員全員を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様、長時間にわたりまして大変貴重な御意見を御開陳いただきましたことを厚く御礼を申し上げます。

 また、この御意見の重さ、そして貴重さというものは、この委員会の審査におきまして極めて大事な資料としてお役に立てさせていただけることとなりました。厚く御礼を申し上げます。

 また、この会場にいらっしゃいます傍聴の方や記者の方、また会場設営に当たられました各位に改めて厚く御礼を申し上げまして、この会を閉じさせていただきます。きょうは、どうもありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の宮城県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十五年四月三日(水)

二、場所

   江陽グランドホテル

三、意見を聴取した問題

   平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 伊藤 達也君

       うえの賢一郎君   大塚  拓君

       奥野 信亮君   土井  亨君

       西銘恒三郎君   橋本 英教君

       若宮 健嗣君   玉木雄一郎君

       原口 一博君   東国原英夫君

       山田  宏君   佐藤 英道君

       柿沢 未途君   玉城デニー君

 (2) 意見陳述者

    宮城県漁業協同組合経営管理委員会会長     菊地 伸悦君

    石巻魚市場株式会社代表取締役社長

    石巻水産復興会議副代表 須能 邦雄君

    仙台経済同友会代表幹事

    アイリスオーヤマ株式会社代表取締役社長    大山健太郎君

    建築家         針生 承一君

 (3) その他の出席者

    財務省主計局主計官   諏訪園健司君

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

伊藤座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の伊藤達也でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 初めに、改めて東日本大震災により亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族や被災された方々に対しまして、心よりお見舞いを申し上げます。

 さて、皆様方御承知のとおり、当委員会では、平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を賜るため、当仙台市におきましてこのような会議を開催させていただきました。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の西銘恒三郎君、うえの賢一郎君、大塚拓君、奥野信亮君、土井亨君、橋本英教君、若宮健嗣君、民主党・無所属クラブの玉木雄一郎君、原口一博君、日本維新の会の山田宏君、東国原英夫君、公明党の佐藤英道君、みんなの党の柿沢未途君、生活の党の玉城デニー君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 宮城県漁業協同組合経営管理委員会会長菊地伸悦君、石巻魚市場株式会社代表取締役社長・石巻水産復興会議副代表須能邦雄君、仙台経済同友会代表幹事・アイリスオーヤマ株式会社代表取締役社長大山健太郎君、建築家針生承一君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず菊地伸悦君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

菊地伸悦君 ただいま紹介いただきました宮城県漁業協同組合の経営管理委員会会長の菊地でございます。

 本日、このような時間をとっていただき、我々漁業者の声を聞いていただくことに感謝を申し上げたいと思っております。

 そしてまた、二十三年三月十一日、あの大震災のときに、きょうおいでの先生方、また関係者の皆さん、大変多くの御支援また励ましの言葉をいただきましたこと、この場をかりて御礼と感謝を申し上げたいと思っております。そのおかげをもって、今、一歩一歩前に進ませていただいております。

 それでは、漁師の目線とレベルで私の意見を述べさせていただきます。

 宮城県は、総額で約六千八百億円の水産被害を受け、漁港、水産施設、漁船、養殖施設、漁業資材など、復旧に全力で取り組んでおり、ようやく各施設の復旧が図られつつあり、漁港においては百四十二漁港の半分以上が復旧に着手、漁船は約四千三百隻の建造を予定しております。その中で、約二千隻が復旧完了しております。また、共同利用施設は五百三十件の復旧を予定し、三百二十件の完了を見ており、養殖施設は四万台の復旧が予定され、約二分の一が復旧完了いたしました。

 これら漁業生産基盤の整備とあわせ、漁業者の生産が軌道に乗るまでの間の支援として、がんばる漁業・養殖業、担い手確保支援事業など、幅広く支援策を活用し、本格復旧に向かっております。あわせて、水産加工施設については三〇%程度の回復状況となっておりますことを御報告申し上げます。

 このような中、本県における養殖生産の多くを担っている宮城県漁協の養殖生産状況を申し上げますと、震災前と比べ、生産量は、ノリで約二分の一、カキで六分の一、ホタテで三分の一、ギンザケでは四分の三、ワカメだけは一〇〇%の回復の状況となっております。平成二十七年度までに、震災前の七割から八割までの回復を目指しております。

 一方で、震災復興の大きな妨げとなっておりますのが、福島第一原発事故による放射能被害であります。本県は、国の規制値百ベクレルを超える等の魚種が、スズキを初め七種類あり、マダラ、ヒラメが規制解除されたものの、出荷制限や風評被害による魚価の低迷など大きな被害を受けており、漁業者の被害対策と漁獲物の安全対策に官民一体となって取り組んでおります。

 このような東日本大震災からの一日も早い再生に向け、これからも十分な復旧復興支援策の拡充強化が必要と考えられますので、引き続いての御支援をお願い申し上げます。

 また、政権交代後に強力に推進されている景気浮揚政策による円安の進行は、燃油価格の急激な上昇をもたらしております。御承知のとおり、漁業においては、燃油費がコストの多くを占めており、原発事故の風評被害や水産物消費の減少による価格下落で収入が減少している中、さらに漁業経営は極めて厳しい状況に追い込まれております。全国的に大きな影響をもたらしており、また、本県漁業の復興にも大きく水を差す状況になり、大変憂慮される事態となっております。

 政府は、資源管理・漁業経営安定対策の重要性を御認識いただき、資源管理に取り組みつつ漁業経営の安定を図る、収入安定対策の漁業共済、積立ぷらす、コスト安定対策の漁業経営セーフティーネット構築事業の推進を通じ、漁業の持続的な発展、継続に貢献いただいており、感謝しております。これらの取り組みは、今後とも漁業経営の安定に重要な役割を果たしていくものであり、時勢に合った事業の改善と継続が極めて重要であると考えております。

 さらに、政府はTPPへの交渉参加を打ち出しておりますが、TPPは、原則関税撤廃のみならず、外国企業の参入や外国からの投資、政府調達、知的財産権に関するルールづくりなど、幅広い問題を含んでおり、漁業、農業振興問題だけと比較して判断すべきものではないと考えております。

 ただ、漁業に関しては、食料生産産業であると同時に、ほかにも多面的な機能を有し、環境、生態系の保全など、重要な役割を持っております。漁業のこのような役割をしっかりと御認識いただいて、食料自給率を向上させる政策を明確に打ち出していただくことが極めて重要と考えております。

 安倍総理は、我が国経済の再生に向け、金融緩和、財政出動、民間投資促進の経済政策を打ち出し、急速な円安誘導を図るなど、見事に輸出産業の環境好転を図り、国民の経済再生への期待が膨らんできております。

 私も政府の政策実行力に大きく御期待申し上げる者の一人でありますが、国内産業の維持発展は、漁業を初めとする一次産業並びに関連する地方中小企業の発展があって成り立つものでありますことを最後に申し上げまして、意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤座長 ありがとうございました。

 次に、須能邦雄君にお願いいたします。

須能邦雄君 発災以来、政府並びに各党の皆様には大変お世話になりまして、心より御礼申し上げます。

 また、本日、このような機会を設けていただきまして、石巻の漁業界並びに私の個人的な意見ではありますけれども、思いを伝えさせていただきたいと思います。

 初めに、言葉の問題でありますけれども、今回の東日本大震災についての意味合いですが、いつ、どこで、何があったのかということを明確に認識すべきではないかということで、これは、平成三陸大津波、平成の時代の三陸の大津波であって、これは自然の災禍である。もう一つは、福島原発大惨事ということで、福島の原発事故による問題だということを明確にしないと、歴史で風化してしまうんじゃないか。

 今回のこの災禍に対して我々が反省すべきことは、過剰な経済至上主義のために、利益誘導であってしまったのではないか。あるいは、自然の脅威といいますか畏敬の念を忘れて、どんどん埋立地に住んでしまった結果、本来住むべき場所でなかった、あるいは十分な防御をしないままに住んだことに対して、明確に反省を促されたのではないか。私は、天の配剤として、最も我慢強い日本であり、三陸にその試練を与えたという思いで、今復興に向けて仕事をしているつもりでおります。

 それから、漁業と水産業というものが、皆様には明確に理解されていないままに議論が進んでいるように思っております。

 漁業というのは、海洋から海洋生物を漁獲あるいは採捕するという第一次産業であります。それから、水産業というのは、そのような漁業に対して、原料を加工する第二次産業、そしてそれを販売する流通業の第三次産業を含めた六次産業なのであります。

 明確に言えば、漁業と相対するのが農業です。

 それから、加工でいえば、水産で缶詰をつくったりソーセージをつくったり、いろいろな加工品は水産加工品ということで、水産業の部類です。米、麦、大豆を加工して、しょうゆ、みそをつくるのは醸造業です。あるいは製粉業です。全く、カテゴリーとしては経済産業省の分野です。ところが、水産については、建前上は水産庁ですから、農林省ということになっております。

 次に、水産都市と漁港漁村の集落であります。

 水産都市という、例えば石巻とか気仙沼、銚子とか青森などの水産都市ですけれども、これは、広域圏で操業する漁船の漁獲物を水揚げ、販売を行う産地魚市場を核とし、その原料を加工する二次産業の工場群が存在し、その製品を流通販売する三次産業の業界が集積している地域が水産都市です。

 それから、今お話しされました菊地組合長のもとの漁協あるいは漁連関係というのは、そのような半島の各地にあります港、漁村を一つの単位としたものの集まりが、今、宮城県は一つになっていますから一漁協になっていますけれども、漁港内で養殖や小型漁船で沿岸漁業を営む漁村集落地域であります。

 そういうことで、水産都市といっても、大臣許可、県知事許可をもらってきて、操業海域の広い八戸から銚子まで操業する船が石巻に入ってくる。当然、小型の船も入ります。それを原料として、加工し、それを流通するのが水産都市であり、漁船で魚をとって、そこで生活しているのが漁港漁村であります。

 今回の震災で実際に受けたのは、あの日、三月十一日は金曜日でしたから、十トン以上の船は、ほとんどの船が操業していました。小型の船が沿岸にいたり、養殖に行っていた船が、九九%近く沈没したり、海に持っていかれたりしたわけです。シンボリックに、大型船で係船していたマグロ船やまき網運搬船が陸に揚がったのが、いかにもたくさんの船が映像として出たように思われていますけれども、被害が大きかったのは小型船群です。それから、沿岸にある加工場が全部破壊を受けたということであります。

 次に、復興司令塔としての復興庁の機能をぜひ強化してほしいということです。

 これは、五省庁、文科省、厚労省、農水省、国交省、環境省の四十事業が今復興事業の対象になっておりますけれども、経済産業省の事業は入っておりません。そのために、水産加工業のほかにも、町中をつくるにしても、商店街、すなわち商業物が入っていないということがありますので、ぜひこれは考慮していただきたい。

 特に石巻の場合、魚市場が全滅して、そこに復興ビルという形で、避難あるいは教育の場、あるいはお店をつくろうとしております。そうなると、この復興ビルには経済産業省の予算を取り入れたいわけですけれども、これが復興予算には入らないということになります。ぜひとも考慮をいただきたいと思います。

 それから、規制する立場の省庁と産業振興を促す立場の省の政策の調整をやってほしい。

 具体的には、放射能の問題でもあります。厚労省は規制庁ですから、まず産業ありきではありません。ところが、農水省や文科省は、科学的なデータをもって、国民にどのようにして安全性を担保し、安心を得るかなんですけれども、今は安全性の前にもう安心が先に入ってしまった、そういう問題がありますので、ぜひこういう関係で、消費者庁も、関係省庁はいろいろあるわけですけれども、それのイニシアチブをぜひ復興庁でとっていただきたい。

 どこがとるかというと、復興にとってはこの放射能の問題は非常に大きな問題であります。また、その他の書類なんかでも、いろいろ出す書類が全て平時の対応の書類ですから、今、異常時で人手がないにもかかわらず、予算措置を求めるときには、相変わらずまともに書類を持ってこいということで、予算はあるんだけれども、実際に執行に行かないという問題があります。

 それから、そういうことで仕事がおくれているんですけれども、今までから比べれば、単年度じゃなくなったんですけれども、例えば中小企業庁の、グループ化で補助が出ています。これも、第三次は来年の三月末で終わりだと言われております。現在、まだ土地がかさ上げされていないので、着手していない人もいます。そういう中で切られたら大変なわけなんですね。中小企業庁の長官にはたびたびお願いしていますけれども、もうこれで二年越しで延ばしています。ですが、現実にはそろわないものがあるということを御理解いただきたい。そういうことで、弾力的な運用を図っていただきたいと思います。

 次に、課題の問題ですけれども、土地問題があります。

 これは、区画整備事業につきましては、非常に仕事が難しくて、各市町村ともに人手が足りないので、何とかこの辺で国からの支援をお願いしたいというのが現場の意向であります。

 また、堤防あるいは高盛り土道路をつくるということになるんですけれども、それに伴って、そこに立地している建物を移転しなくちゃいけないんですけれども、代替地についてのあっせんはありません。みずから探せということ。あるいは、実際、しゃくし定規ではかられますから、例えば高盛り土の周りでデッドスペースになる部分が生じるわけですけれども、そこについての考慮がないということもあり得ますので、こういう問題についても十分配慮していただきたいと思います。

 それから、産業ゾーンの土地の買い上げ問題ですけれども、産業ゾーンに指定された中の住宅地は移転の費用が出ますけれども、産業ゾーンの中にいた工場は移転の費用は求められません。あるいは、買っていただけません。というのは、この二年間、産業ゾーンに指定されていても、排水上の問題とかで着手できないために、他に土地を求めて既に工場を稼働しているために、産業ゾーンに指定された自分の土地は不要なわけです。ですから、これは自治体が買い上げて、自治体が第三者に販売するような弾力的な運用をしてもらわないと先に行かないんですね。虫食い状態になってしまう。こういう問題があります。

 それから次に、雇用問題です。

 皆さんは、雇用問題というのは、仕事がなくて、働き口が欲しいのかなというふうに誤解を招いていますが、実際は、仮設住宅にも入っていますけれども、子供の教育の関係でかなりの方が転居しています。そういうことで人手不足です。さらに、今までは工場のそばにいた熟練労働者が、今回、震災のために仮設へ移動したために、皆さん分散してしまいました。今までは一人に一台の車が、今は一家に一台ですから、仮設住宅で車がなくて、なかなか働きに来られないんです。

 そういうことで、今働き手が足りないんです。いい会社で八割、まあまあの会社で六割、今、五割以下の会社です。これはまだ、稼働率が五〇%に満たない状態ですから、大いに人手不足なんです。

 ですから、我々は、地元に戻ってくるような魅力をつくるために、お祭りだとかいろいろな形で彼らが生活の場としてふるさとに戻ってくるような施策をとりますけれども、やはりこちらに戻るような施策も考えてもらいたいと思っています。

 それと同時に、今の震災バブルといいますか景気で、いいところは平均賃金が上がってきております。ところが、水産加工業は非常に零細ですから値段を上げられません。ますます魅力がありません。そういうところに、今まではバスで集めていったんですけれども、会社の方も負担が大変ですから、そういう集めるバスの支給。あるいは、個人であればタクシーで通勤させなくちゃいけません。そういう通勤手段への支援とか、何かいろいろな面で人が集まる側面的な手だてを考えていただきたい。

 それから、金融問題。これは二重債務ということでたびたびお聞きと思いますけれども、建設に対する費用もまだ実際は厳しいものがあります。

 さらに追加的な支援をお願いしたいのは、全て物価が高騰しておりますので、四分の三の補助をいただいたんですが、自己負担の四分の一が実質は目減りしていますから、値上がりした分は実質で手当てしなくちゃいけない。さらに、物をつくっても、当面在庫にしなくちゃいけない。それから、運転資金がかかります。そういうことで、財政的に余裕のない人たちですから、追加の支援策をぜひ考えていただきたいと思います。

 それから、失われた既成市場の回復問題であります。

 約二年間、マーケットに製品が出ておりませんから、我々は、つくれば荷物が入るかという結論に期待していましたけれども、実際には、新規参入の気持ちでいかないと間に合わないということになります。そういうことで、石巻で、我々自体は、新規参入者として団結して売り込もう、そういうことで気持ちを切りかえようというつもりでおります。

 それから、放射能問題があります。

 これは、国がもっとリスクコミュニケーションをしっかりやっていただきたい。そうじゃないと、今、国民は、放射能は怖いものだということで、全く、世界の基準、IAEAの先生方が決めた、世界的にはコーデックスの千ベクレルであるにもかかわらず、暫定値五百ベクレルを去年の四月一日に百ベクレルにしたために、ゼロがいいんだというふうに思われがちです。この百ベクレルにしたために、先ほどお話がありましたように、いろいろな種類の魚が水揚げ禁止になっていったわけです。

 ですから、これをすぐ解除しろというんじゃなくて、正確に、どの程度問題があるのかということをやってほしいし、この見直しというのは、一匹でも百ベクレルがあったらば即黒じゃなくて、そうしたら、集中的に検査を強化してやるというようなことが必要だと思います。特に、石巻の場合は、検査器を五台用意して、朝の四時から検査して、毎朝、販売前に十五種類ぐらいの魚の安全性を伝えて販売しております。

 そういうことで、ぜひ、この放射能の被害についての東電との交渉についても、彼らは今まで消費者、一般市民との対応をしていなかったものですから、なかなかこれが先に進んでおりません。この辺の指導についても考えていただきたいと思います。

 その他として、TPPと宮城の水産特区について、結論だけ申し上げます。

 TPPについては、私は、金銭的な問題だけじゃなく、木材の自由化をしたために、日本の山は崩れ、自然災害がふえたということで、いかに一次産業が国土保全あるいは環境浄化にとって重要な役割であるかということで、金銭以外の判断基準をぜひ考えていただきたいということであります。

 それから、宮城の水産特区。これは、特区というような扱いとすべきことではなくて、生産組合に対して二次の加工業者あるいは三次の人が協力するということで、第一次生産者が自立できるようにすることであって、特別彼らに漁業権を渡し、漁協と対立したままでやるというようなことで、一つも高邁な理想に基づいたものとは理解できません。

 そういうことで、とりあえず、また御質問の時点で詳しく説明させていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤座長 ありがとうございました。

 次に、大山健太郎君にお願いいたします。

大山健太郎君 仙台経済同友会の代表幹事をしています大山でございます。

 本日、このような機会をつくっていただきまして、まことにありがとうございます。

 私の方からは、特に、この宮城県の被災地の現状と課題についてお話を申し上げたい、このように思っております。

 まず、復旧状況でございますが、海岸部の保全施設におきましては、国土交通省の特段の努力で、計画よりも早まった形で、今、コンクリート不足等もある中でも、順調に実は進んでおるわけでございます。

 次は、産業と雇用の問題でございます。

 これにおきましては、被災直後から、地域の格差並びに業種の格差というのがございます。これも日を追ってこの格差がまた大きく、実は変わってきておるわけでございます。

 簡単に今の宮城県内の指数を申し上げますと、震災前と直近、昨年末とを比較いたしますと、鉱工業生産は実はマイナス九%ということで、九一%しか戻っておらない。反面、公共事業の請負額は、昨年の十二月は、月次ベースでいいますと、実は震災前の何と五・八倍というような形で公共事業が膨らんでおるわけでございます。

 もう一点は、大型小売店の販売額でございますが、これも昨年末と比較をいたしますと、九%の伸びという形であります。

 この不況期の中であっても大型小売店が伸びている地域は多分宮城県だけだろうと思うのでありますが、これは、御案内のように、約三十万人強の方が被災をされて、着のみ着のままということでありますから、当然、仮設あるいは新しい住宅の中でもそういう消費が高まっておる、そういう背景だろうと思っております。

 もう一つは、当初、震災発災直後は、求人数がどうなんだということでありましたが、昨年末の月間の有効求人数におきましては、実は震災前に比べて二倍という形になっております。

 それと、有効求人倍率でございます。これは、一昨年の春と昨年末とを比較いたしますと、大きくさま変わりしております。

 初めは仙台を中心に有効求人倍率が一を超えたわけでありますが、先ほどの須能さんのお話にありましたように、実は、今現在、石巻は一・七倍と求人倍率が膨れ上がっておりますし、気仙沼も一・五倍、仙台は一・三倍ということで、今一番大きな問題は、公共事業を進めるにしましても、あらゆる事業を進めるにしても、県内においては求人難ということが一番大きな課題である、このように思っております。

 それと、当初から言われておりました産業復興につきましては、実は、これからの大きなテーマだと。同友会といたしましても、やはり経済界から見ます復興と復旧というのは、若干違います。我々が今やっていること自体は多分ほとんどが復旧工事であって、まさしく復興というのは、これから新しい町が未来に向けてどのような形で、ビジョンなり、あるいは具体的な企業誘致ができるかということでございます。

 そういう点で、今回、二十五兆円という大型の予算をつけていただいたわけでありますが、我々は、発災直後からこういうお願いをしていました。復旧は速やかに、復興はやはり時間をかけて一歩一歩進めていかなければいけない、このように思っております。

 阪神・淡路と大きく違いますのは、今回の津波被害に遭った地域というのは、もともとからの過疎地でございます。ある意味でいいますと、観光と水産を除けば、主な産業がなかった地域でございます。ここが今非常に人手不足というのは、御案内のように、公共事業を中心に人手が足りません。県外からもたくさん来る。当然、地元の人が雇用されるわけでありますが、この復旧が終わった瞬間に、一気に実は雇用がなくなってしまう、こういう現状があるわけでございます。

 そういう意味では、今回、復興庁にいろいろな予算の増額をしていただいて非常にありがたいと思うわけでありますが、私は、発災以降、過疎地が新しい元気な明るい町になるためには、やはりそこには基幹産業が立地しなければなかなか難しいのではないだろうか、このように実は考えております。

 そのためには、当初から同友会といたしましても、三次にわたる提言を出しております。本日、時間の関係がございますので提言内容は割愛しますが、資料の後ろについてございます。

 一次提言は二十三年度の四月にもう出しておりますし、二次提言も二十三年度の十二月、そして三次提言は昨年の九月に、地元の現状に従った形の中で提言を出させていただいております。

 おかげさまで、第一次提言も、おおむね我々の提言内容に沿った形で、一部だめなのはありますけれども、ほぼ順調に進んでおるということでございます。

 それで、これからの要望でございます。

 今回、原発、それと津波被害に遭った地域に一千百億円の立地補助金をつけていただいたわけでありますが、福島が今一番大きな問題でございます。これに半数が行くのは当然でございます。結果、宮城県には三百四十億という立地補助金でございます。この三百四十億で、本当に宮城県の気仙沼から仙南にわたるエリアに企業が立地できるかというと、私は非常に難しいと思っております。

 特に、今もお話がありましたように、公共事業が非常に増額になっている関係もございまして、建築資材、人手、あらゆるものが不足。不足をするということは、当然物価が上がる、人件費が上がるということでございまして、一部の補助金をつけても、逆に被災地に進出する企業にとってみればハンディキャップの方が大きい。ですから、相当大がかりな補助金をつけないと、立地補助をしないと、なかなか県内あるいは県外から被災地に来ていただけないんではないだろうか。

 こういうことで、各省庁に対しましても、我々は何とか一千百億を三千億に上げていただきたい、そして、できれば宮城県だけでも一千億規模の立地補助金をつけないと、被災地は、確かに安全、そしてきれいな町ができても、公共事業が終わった瞬間に人の住まない過疎地に戻ってしまうんではないか、これを非常に危惧させていただいております。

 もう一点は、三次提言でも述べておるわけでありますが、規制緩和をどうするのか。規制緩和、言葉としては非常に出やすいんですが、具体的にはどうすればいいんだということでございまして、一番はどうあれ、やはり農業、水産、これの規制緩和ということでありますが、きょうは水産関係の団体の方がおられますので、これについて私からお話ししませんが、農業につきましても、日本の各大企業が、農商工連携であったり六次産業化という形の中で、いろいろ手を差し伸べていますし、また、地元としましても、これの復興に向けて新しいプログラムも今考えているわけであります。

 もう一つは、これは被災地だけではなく、日本全体の問題で、高齢化の問題でございます。ますます高齢化をする中で、介護が必要になってくるということでございます。

 同友会の提言とすれば、被災地に国際介護・看護大学をというお話をさせていただきましたが、今回は介護だけに特化をしたい、看護まで入れようとしますと相当大きな、大学をつくるには予算がかかるわけであります。国際介護大学、これはどういう趣旨かといいますと、日本だけではなく、隣の韓国であれ中国であれ、日本からおくれて五年、十年後には間違いなく同じような高齢化、介護社会が起こってくるわけでございます。

 そういう意味では、ただ単なる今ある介護施設ではなく、具体的には介護のレベルをアップするための教育であったり研究であったり、また、特に今、介護士の人材不足でございます。要するに、アジアからの人材を研修に招く中で、そこで勉強をしていただき、日本の国家試験を通るという形の中で、海外からの入学を積極的に推進し、介護労働従事者の増強並びに未来型の介護支援の確立というものを、この被災を一つのチャンスにして、被災地でぜひこのような国立国際介護大学を検討いただければ、このように御提案を申し上げます。

 以上でございます。(拍手)

伊藤座長 ありがとうございました。

 次に、針生承一君にお願いいたします。

針生承一君 意見陳述人の建築家の針生承一でございます。

 このたび、このような機会を与えていただいて、大変感謝しております。

 意見陳述に入る前に、私も、二〇一一年の三月十一日、名取市の閖上高柳というところで、事務所で被災いたしました。床上浸水には至りませんでしたが、電気、電話、光通信などインフラが、閖上基地だったものですから、全て業務が不可能になってしまいました。

 さて、あの日の大地震の後の大津波というのは、あっという間に全てのものをなぎ倒し、友人、知人、親戚も含めて多くの人々の命を瞬時に奪ってしまいました。津波の沖での発見、伝達、広報のシステムがもう少し充実しておれば、迅速な避難がされて、ほとんどの人が助かったように思ってもおります。想定外と言われますが、実は、私たちがいかに歴史的に津波というものを不勉強であったかということに尽きるのではなかったかなというふうに反省しております。

 地震発生から遺体捜索、瓦れき処理、避難所、救援物資の配布、仮設住宅の建設、入居など、さまざまな震災復旧の活動が行われて、四カ月ぐらい過ぎてから、閖上地区というのはきれいに片づけられて無人の町となってしまいました。

 その中で、私たちは、七十名の被災者に呼びかけまして、閖上復興・まちづくりを考える会というのを立ち上げまして、七回にわたりまして、いろいろな問題を含めました復興計画について、勉強会を兼ねたワークショップを開いたわけであります。

 歴史研究家の飯沼さんの津波の歴史的解析を勉強しますと、二百年から二百五十年に一度は仙台平野部へ津波が押し寄せてきたとされております。津波対策を考えるに当たっては、今回の津波が、千年に一度というようなスパンで発生するごくまれな災害ではないんだ、もっと短いスパンで周期的に発生する可能性のある災害だということを前提にするべきだというふうに思っております。決して想定外ということで済ませるものではないということがわかりました。

 二〇一一年の七月二十六日、これらを、私の勉強を一度整理しまして、さまざまな意見に適応できる努力をしながら一つの案をつくりました。皆さんの意見を聞き入れながら充実させ、参考資料一に、閖上ルネサンス計画というのを策定しまして、名取市長に対して、被災住民の考えた復興案の一つとして提案したわけであります。しかしながら、私たちの提案は全く理解されないで、少数の人の実現不可能な案として、大きく取り上げられることはありませんでした。

 さて、国、県、市のレベルでの津波対策は、方針として減災というのを掲げています。提案の多くは、堤防、盛り土、高地への後退といった、従来の盛り土、切り土工事の手法を主としたものであります。

 これらを多重防御と呼んでいますが、盛り土の強度やその耐久性、さらに津波の返し波との関係、これは、消去し合って減災するのか、相乗効果によってさらに増災するのかというのもわからないんですが、そういうのを解明されないまま、多分コストのことを考えているのかどうかわかりませんが、あるいは、あくまでも盛り土にこだわっているのか、このあたりの前進が全く見られません。

 具体的には、国の防御ラインとしての外洋側への防潮堤、これは、閖上近辺で七・二メートルという国の決めた高さでありまして、天端が四メートル、一対三の勾配で台形の形状であります。表面をプレキャストコンクリートで覆った、幅六十メートルぐらいのものが海岸線をずっといくわけであります。ただし、今回の津波の高さは、閖上では十メートルを超えておりました。

 この辺でちょっといろいろな問題はあるんですが、これを前提に、閖上の計画は、さらに二次防御ラインというのを想定しております。これでもって多重防御という言い方をしております。流失した既存街区のうち、閖上では貞山堀以西を、津波に備えて、TP五メートル、東京湾ポイント五メートルの盛り土をして、区画整理をして現地再生を図るというものでございます。

 これらを考察していきますと、まず、海が見えなくなる問題があります。海の見えない漁師、漁業といいますか、海の見えない観光地、これまで海とともに生きてきた地域の生活、文化、歴史との決別を意味していくわけであります。

 そして、何よりも、海が見えないイコール津波が来ていてもわからないということであり、津波を察知できない地域は格段と広がってしまうわけであります。

 次に、この巨大な堤防の建設には、完成するのに少なくとも五年はかかるだろうと思われます。

 堤防だけでも百万立米、関連する盛り土工事でも百万立米の工事であります。それが沿岸各地で同時に起きることを考えると、とても五年では終わらないだろうというふうに思うわけであります。その間、町じゅうをダンプが走り回り、盛り土が落ちつくまで建物は建設できないわけであります。ずっと仮設住宅、仮設事業のままいくわけであります。

 この五年の間、土木工事に明け暮れている町は、人の心をつなぎとめることができるかなというふうに思われます。少なくとも、育ち盛りの子供にとって、郷土への愛着は育たないと思います。高齢者は言うに及ばず、成長過程の子供や青少年にとって取り返しのつかない、時を失っていくでしょう。過疎化が進んでいる地域の一層の過疎化は、致命的なものになることは火を見るよりも明らかであります。地域の人々にとって失う機会ははかり知れず、地域にとって失う時間ははかり知れないと思います。

 計画されている堤防の寿命は約六十年と言われています。これは国交省でも言っております。百年はもちません。定期的な補修やつくり直しが必要と明言されております。コンクリートにすき間ができて、これは表面を覆うコンクリートですが、水が浸入することによって、その効果は期待できないわけです。次の津波のときには、堤防は老朽化しているかもしれません。

 建設コストに維持コストを含めたライフタイムコストは膨大となります。今回破堤した、壊れた堤防は、延べ二百キロメートルと言われております。仮に、メーター五百万円としても、建設費だけでも一兆円を費やします。次の津波までに膨大な予算がまた必要ということになります。壊れなかった部分の堤防のかさ上げをしますと、またより多くの予算が必要となるわけであります。

 三月十一日のような十メートルを超える津波が襲った場合は、この計画堤防は破壊する可能性があります。堤防はないという前提で計画を立てるようにと通達がありましたね。沿岸における海岸堤防高さの設定について、平成二十三年十月宮城県の中に明記してあります。

 つまり、計画堤防が完成しても、十メートル超規模の巨大津波が襲った場合は、市街地の浸水は堤防なしと同じ、閖上の場合、浸水は六メートル以上となってしまうと思われます。堤防が破堤しない、壊れないという技術的裏づけがある場合はこの限りではないんですが、その技術的な解はいまだ明確ではないと言えます。

 これは堤防についても同じようなことが言えますが、盛り土についても、最初の地震に対して耐震性は確保されているのか、あるいは耐震設計は研究開発されているのだろうかという問題がございます。さらに、その後の津波に対する耐浪性というのに至っては皆無と言えます。逆に、今の堤防は三対一の勾配ですから、堤防に津波がすごく来やすくしていますね。

 日本の水防に対する伝統的な手法は、これに類する甚大な自然現象に対して、正面から壁のようなもので対峙するのが日本の土木ではなかったんです。逃がす、かわす、あるいは浮かすという自然と共生する手法をとっていたはずなんです。ところが、明治以降、どういうわけか、大規模な切り土、盛り土による地形の変更、土砂の移動というのを行うようになったわけであります。

 例えば、信玄堤という武田信玄がつくった霞堤なんですが、これは逃がしの手法です。輪中は、集落をコンパクト化し、かわす手法です。昔の穀物倉庫は浮かせておりました。そういった巨大な自然エネルギーを巧みに利用する、あるいは共生する技術というのが日本の技術であったわけなんです。

 ところが、明治維新でフランス式土木を取り入れてからは、自然へ対峙して、そういう工法になってしまいました。今は、ヨーロッパは、この間もちょっとフォーラムで行ってきたんですが、エコロジカルな、昔の日本的な工法をもう既にとっております。

 さらに、この巨大なる防波堤や盛り土を構築する土砂の土取りは大がかりであります。これによって土砂が海に流れて汚染されるし、土砂を取った山地の手当てがまた大変なことになってきます。

 現在、集団移転が、山地、田んぼ、畑を切り盛りして敷地造成が行われていますが、スマートシティーとかコンパクトシティーといった考えの方向とは全く逆なんです。ますます乱開発してスプロール化していくというふうにしか私には思えません。防潮堤や盛り土、切り土で安全を確保していくのではない、自然の摂理や地理に即した計画が必要なんじゃないかということでございます。

 現在の計画に対して、閖上の被災住民のアンケートによりますと、現地再建が三〇%、閖上からの転出、絶対に住まないというのが三〇%、四〇%がどうしたらいいかわからないということですが、既に、区画整理の認可がなかなかおりない。盛り土に対して住民の意向がそういうものですから。再び、区画整理の面積を縮小して市は現地再建を進めようとしていますが、難航すると予測されています。

 被災者にはいろいろ不安がございますが、一番大きいのは、復興計画の安全性に対しての疑いであります。

 これ以上、堤防、盛り土、切り土を含めて地形の変更はしないで行う方法としては、平野部ではピロティー式の人工地盤方式、ただし、野菜工場、その他工場、倉庫とかトレーニング施設などの、いわゆるなりわいとしての生産施設は下部につけられますので、そういったもの。あるいは、リアス式のところでは、斜面を壊さないで、斜面に沿った建築方式が考えられると思います。

 これらの耐用年限は、建築でいえば、構築物としては五百年から千年を目指せるというふうに私は思っております。特に、プレキャストコンクリートなんかにより工期の短縮も図れるということであります。

 今進められている拙速に計画された防潮堤や種々の盛り土造成、さらに、山地、農地への集団移転について、いま一度見直していただきたいというふうに思っているわけです。

 復旧は早く、復興計画は十分に熟慮して考えていくべきではないでしょうか。

 以上です。(拍手)

伊藤座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大塚拓君。

大塚(拓)委員 自由民主党の大塚拓でございます。

 きょうは、意見陳述の皆様、生の被災地の声をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝を申し上げる次第でございます。

 今、東京にいて、新聞、マスコミなどを見ておりますと、被災地は復興バブルだというようなことをよく言われることがございます。非常に景気がいい、そういう話が出てくることが多いわけでございますけれども、果たしてそうかなというふうに思っていたところもあるわけでございます。

 確かに、今お話もありましたように、復興の部分、土木、建設、公共の部分で非常に集中的に事業が進んでいるというところで、そうした景気のいい部分があるのも事実だろうと思いながら、一方で全体観はどうなんだろうというふうに気になっていたところでもございます。きょう、皆様からお話をお聞かせいただきまして、やはりいろいろな側面があるなということを感じさせていただいたところでもございます。

 そこでまず、少しずつお話はあったわけでございますけれども、宮城県全体としての景況感、景気としてどうなのかというところを各陳述人の皆様に少しずつお聞かせをいただければと思っております。

菊地伸悦君 もう先生方、復興バブル、確かに県内は土木、建築等々で大分潤っているのかなと思っていますが、ただ、受注、受ける方はバブル、注文する方は懐がちょっと寒くなっている。

 特に、漁業者の場合には、いろいろな補助事業に乗っかっております。最初は四分の三の補助ということで、では、これは五千万でできるんですとお願いした段階で、月を追うごとに、これで契約したんだけれども、これでできません、また一割上がる、また一割上がる、そういうふうな現状になっていることは確かなんです。

 ですから、決して、浜、海岸通りはバブルにはなっておりません。四分の一の出す分、これが五千万で計画を組んだ。ところが、それが七千万になった、八千万になったということで、自己負担分が大分ふえてきております。

 ですから、我々、予算に関しては潤沢につけてもらったと思っております。ただ、補助事業なりいろいろな事業の基準が、平常時のままの基準なので、これは一年でやりなさい、これは三年でやりなさい。千年に一回、二千年に一回しか来ないと皆さんが言っているのに、その基準でできるはずがないんです。

 だから、需要と供給のバランスが崩れて、確かに今、アベノミクスのおかげで景気がよくなっているところもあるんだと思うんだけれども、大塚先生、そんなのは上の方だけがいいのであって、浜の漁民は、私ら初め、懐は秋風が吹いているんだ、そういう現状です。

須能邦雄君 石巻の場合は、基本的には水産都市ですので、水揚げ数量で約四割、魚種の変化で五割ということで、かなり水揚げも減っておりまして、加工場の稼働が約四割から五割程度の回復状態です。これに放射能の問題がありまして、非常に販売に苦戦しております。

 さらに問題は、今建設中の会社、あるいは建設がまだ手につかない人たちは、いっそやめた方がいいのではないかと。先ほどお話が出たように、建設中の会社は、人手が足りないので、本来であれば三月末でできる予定だったのが、四月末、五月末、六月末に何ぼでも延ばされて、契約があってないようなもので、値段も工期もおくれているというのが実情であります。

 確かに、外部から来る人がいますので、飲食店などは景気よく回っていますけれども、全体の景気としては、基幹産業としてはまだまだできておりません。

 ただ、先ほどお話ししたような中で、水産庁の予算に対して、中小企業庁のグループ化というような手法で、すぐに水産加工業に対してグループ化することによる補助金が四分の三出たということは、非常に加工業界あるいは流通業界にとってはすばらしい企画といいますか事業だったと感謝しております。

 大体、七次の事業でほぼ終了だと思いますけれども、まだまだ、中には、諦めていたんだけれども、こういうことで支援してもらえるなら頑張ろうかという人が出てくることもありますので、これでおしまいということじゃなく、状況によってはまたやってほしい。

 今言ったように、仙台は一極集中で非常にバブル景気を享受していますけれども、地方都市はその恩恵には浴していないというのが県内の偽らざる状況であります。

大山健太郎君 多分に、東京とか全国各地から、仙台がバブルだというのは、一昨年、二十三年度の状況かと思います。これは、たくさんの皆さん方が県外から応援に来ていただき、またボランティアの方が来ていただきました。当然、住む場所、食事、そういう意味では、繁華街は店も入れないぐらいに実は非常に活況を呈したわけでございます。

 私は、これは一種の風評被害だと思っております。今は、先ほど申し上げました、一部の、特定の業種は別でございますが、一般的な業種はほぼ平静に戻ってきております。ですから、繁華街におきましても、一部県外からお越しになったお客様で潤っている店もありますが、ほとんど地元ではそういうような消費というのはございません。ただ、先ほど言いましたように、小売が全国よりは少しいいのは、なくなった人がやはり買い足すということの中での、実はバブルではなく実需ということだろう、このように考えております。

 ただ、ホテルだとか、今の建設関係だとか、これはやはり、当分、県外からたくさんの技術者の皆さん方、あるいは建設労務者の方が来られるわけでありますから、一時的にはいいわけでありますが、では、今すぐにホテルを建てるかとなりますと、できるのに三年かかる、そして償却となったときに、今度は一気に人がいなくなるということで、一時的なブームというんでしょうか、これは地元経済にとっては非常にマイナスだ、実はこのように考えております。

針生承一君 私は、建設関係の方をちょっと見ますと、やはり、何か、災害に対しての利権というのか、そういうのを非常に感じます。

 災害利権というのは何かというと、やはり土建業とかそれに関するあれが、中央から来て、それに伴ってのものというのは非常に強く感じております。

 先ほどの、堤防は僕は要らないんじゃないかということも含めてなんですが、やはり今までやられた手法の中でやってきている、そういったことがバブルとして見えているんじゃないかなと思います。

 問題は、もっといろいろな問題がございますが、例えば、職人一つにしても、どんどん外から入ってきて、短時間でつくって、引き揚げていきますので、そういった職人の技術も非常に低下しております。当然、値段も上がっていますが。

 ですから、急激に復興していろいろなものをつくっていくんじゃなくて、もう少しゆっくり時間をかけてやっていかないと、本当の町はできないんじゃないか、本当の環境はできないんじゃないかというふうに思っています。

大塚(拓)委員 ありがとうございました。

 確かに、一時期に集中することによって、非常に、針生さんのおっしゃったような、技術力が低下したり人が採れなかったり、いろいろあるんだと思います。

 ただ一方で、余り復興に時間をかけても、実際に、では、工場が立ち上がらなかったら、そこで仕事をされていた方が、そこを離れて戻ってこなくなってしまう、こういうことも起きるのかな、こんな気もしているわけでございます。

 そうした中で、これも皆様のお話の中であったわけでございますけれども、やはり雇用にも格差が出てきている、ここは一つ大きな問題なのかなというふうに承らせていただきました。

 確かに今、公共事業がなければ、福祉という意味での雇用、社会保障という意味での雇用を維持するという側面もあろうかと思いますので、それはそれで重要だとしながら、恐らく今、宮城県全体で、労働力人口で一万人ぐらい減少しているというふうに聞いております。そうした中で、一極、土木工事、建設に集中をしている。なかなか漁業、水産加工業の方で人材が確保されないという問題につながっているというお話だったと思います。

 そしてまた、仮設住宅に入られて皆さんが分散してしまったために、もといた職場になかなか働きに出られない、こういう話もあったかと思いますけれども、これも、余りこの状況を続けていると、もとあった工場が本当に再稼働できなくなるという問題があるのかなというふうに思いました。

 そこで、一時的に今公共事業が集中してしまっているところ、これはいささかやむを得ないところがあるような気もするんですけれども、仮設住宅に分散されている方々が、またもとのように、例えば高台へ集団移転して、そこに皆さんが戻ってくれば、再びもとの職場に戻ってこられるような状況に今あるのかどうか。あるいは、今のバスとかそういう公共交通の整備というお話もあったわけですけれども、ほかの方法で、もっと早く稼働できるような、人を集めるような何かアイデアがありましたらお聞かせをいただければ、こんなふうに思います。

須能邦雄君 先ほど、具体的には、経営者の方の負担を軽減し、雇用を戻すために、小型のマイクロバスの支援をしてもらうとか、あるいは、一人、二人でしたらば、今まででもタクシーで送り迎えをやっていることだったんです。そういうようなことが、今お話ししたように、経営者自体が再建に対して相当なお金がかかっていますので、そういうような目的を定めても結構ですから、そういう形でやる。

 それから、やはり地域に戻らせるためには、町の魅力を再評価してもらうということは、町にとって大事なことは、お祭りなんですね。ですから、地域でやるお祭りがやはりふるさとに帰りたいなという、仮設の人もそうですけれども、一旦外に出た人も、働く場があるならば少々安くてもいいんだと。

 そうなると、結局、日本の一次産業の人たちは現金収入をそれほど求めていないんです。実際は、教育と医療にかかるものだからまともな値段が欲しい。昔の時代は、子供が優秀であれば、篤志家が学校に行かせてくれたり、東京に寮があったりして、貧乏人でも学校に行けたわけですよ。今はそうじゃなくなってしまったので、そういう意味で、ある程度の所得の少ない人に対しての、今やっていますけれども、特に震災地における医療とか教育に対しての補助があれば安心して帰ってくると思います。

 そういう意味で、もっと大きく、被災地全域において何を求めているかというと、お金じゃなくて、本当はふるさとの人間関係、そういうきずなというか生活の場を求めたいということを、お金じゃない便を周りでつくってあげる、そういう意味での支出を考えていただきたいと思います。

大山健太郎君 今のは非常に大事なポイントだと私も認識をしております。

 実は、宮城県には四万二千戸という仮設住宅が現在ございます。ここで約二十一万人の方が住んでおられるわけでございますが、そのうちの半数、実は二万一千戸が借り上げのみなし仮設でございます。当然、仮設住宅が間に合わないので、厚労省の方で、緊急にみなし仮設で、仙台市内に余っているアパートだとかマンションに入居いただいた、これは非常に適切な措置だと私は思います。

 ですけれども、今現在、この二万一千、地方には実はアパートは余りないのでありますし、マンションもないわけでありますから、ほとんどが仙台市周辺に近在しておるわけであります。

 そうなりますと、今、仙台市の問題は何かといいますと、実は学校が、生徒がふえて困っているということでありますし、片一方は、沿岸部のところは生徒がいないというような実態であります。

 実は、それから二年過ぎているのであります。ようやくここへ来て、要するに復興住宅ができつつあります、それも数十戸とかいう単位でありますが。

 私は言うんです、何人戻るんだろうと。私は、残念ながらほとんどの方が戻らないと思っております。

 まずは何かといいますと、どうあれ仙台市内で働く場が見つかった、子供が市内の学校に行く、奥さん方は仙台市内のショッピングに出る。はっきり申し上げて、今までおられたエリアに比べれば、圧倒的に便利でございます。多分に、転勤してもそうでございます。一番転勤に反対するのは子供なんですね。せっかくできた学校の友達を失うことはできない。そして、働く場も、先ほど申したように、今は公共事業で働く場がありますが、これが終わった瞬間に、実は、先ほど申し上げましたように、水産加工もしくは観光事業が基幹でありますから、それに本当に戻るんだろうかと。今お話ありましたように、賃金ベースが高いかというと、逆に仙台市内よりも低いわけであります。

 ですから、アンケートでは三分の一は戻ると言っていますが、私は、戻られる方は、お年を召した働かない方が戻られるんだろうと。子供があって働く若い人は、ほとんどみなし仮設、あるいは、そこを出ていかなきゃならなければ、その近くで何か住宅を求められる。まさしく空洞化がより顕在化をするんだろうと。

 そこで、先ほど申し上げたように、被災地に魅力的な、要するに、一時的な産業じゃなくて、今よりも被災地に戻ろうというような企業を持ってこないと。

 ですから、そういう意味では、国が何か新しい事業をやるとか、あるいは、宮城県はトヨタ東日本さんが今どんどん拡張いただいています。今トヨタさんにもお話ししているんですけれども、できるだけ周辺の下請さん等々、そういうところに先ほどの立地補助金を使って出ていただく。

 そういうようなことをやらないと、私は、感情論で幾ら言っても、現実論とすれば、大半の方がやはり戻れないし、戻らない。そして、要するに仙台市だけが人口がふえて、それに対して学校をつくらなきゃいけない。片一方は、被災地においては、税収が入らない、学校はつくっても生徒がいないという非常に厳しい状況になるのではないか、残念ながらそういう予測をしております。

針生承一君 私は、高台移転とかそういうのは余り賛成していないんです。現地そのものではちょっとあれなので、現地の中でも少し地盤のいいところに、できたら新しい台地をもう一つつくって、これは土木じゃない、土じゃなくて人工地盤でもって、その上に町をつくっていく。その人工地盤の下の部分は、今、大山さんがおっしゃったように、企業誘致してもいいし、加工場をつくってもいいし、農業をやってもいいし、いろいろなものに使えるわけですね。

 要するに、なりわいの場をつくる。そういうコンパクトな、一つの、ノアの箱船みたいな、あるいは島というのか、それを幾つもつくっていって、上の方でつないでいく。そうすると、自然は壊さないし、それから昔の住民、人々のつながりもつくれるし、いろいろなことができるわけであります。そういったことは私はもう既におととし提案しているんですが、誰も振り向いてくれませんね。

 ですから、堤防をつくる金でそういったものをつくっていただきたいなと思うんです。そうすると、みんな戻れるし、生活の部分は絶対安全ですので、そういったことは今の建築の技術というか建設の技術は非常に進んでおりますので、そういったことに取り組んだ方がいいんじゃないか。

 今は何か、どんどん自然を壊して、それで高台移転でまた仕事場と離れるとか、いろいろな問題をやっていますが、そういったことはやっていっていいんじゃないかなと。

 要するに、五百年、千年を考えていった方がいいんじゃないかというふうに思っております。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 質疑時間が終了いたしましたので、本当はもう少しいろいろお伺いしたかったんですが、これで終わりとなります。

 北部、南部でやはり高台移転も進み方が随分違うというお話もお伺いしております。そうしたところ、それから、大山さんのおっしゃっていた、今後どういう企業を立地していくか、立地競争力というものを高めていくということも必要だと思います。立地補助金のみならず、多分空港の民営化とかそういうこともございますし、円安も進んできている。TPPはもしかすると、漁業等、いろいろ地域としても難しい問題になってくるところもあるのかもしれませんけれども、こうした問題もございます。

 国会としても、私ども予算委員会としても、これからもこうした問題に取り組んでいきたいと思いますので、また折に触れ御意見をお聞かせいただければと思っております。

 ありがとうございました。

伊藤座長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党衆議院議員の玉木雄一郎です。

 きょうは、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。

 大きく二つのことをお聞きしたいと思います。

 一つは、予算委員会でもいろいろと議論になったんですが、二十四年度の補正予算、そして今議論がされております二十五年度の当初予算を合わせると大きな公共事業を全国的に行うということになっているんですが、そういった事業を全国に出すことによって、被災地の妨げになる側面があるのではないかということが議論の対象になりました。

 というのは、今御説明にもあったように、ただでさえ被災地にはたくさんの事業が出ていて、そこで人材が足りない、また、資材、物価、さまざま高騰している中で、例えば入札の不調なんかがたくさんある。そういう中でさらに全国で公共事業が発注されると、例えば、他の地域から、そこでは仕事がないからといって被災地に来ていた他の地域の業者の皆さんが、では、地元で仕事が出るのならといって、もともといたところに帰って、さらに人手不足になっていくというようなことも指摘をされているんです。

 そういった傾向が実際にあるのかないのか、あるいはそういった懸念をお持ちなのかどうなのか、こういったことについて、これは同友会の代表幹事の大山さんからちょっとお聞かせいただければなと思います。

大山健太郎君 我々は、非常に危惧をいたしております。

 実は、東北だけで見ましても、太平洋側と日本海側で状況が全然違います。太平洋側は、今回の津波の公共事業がたくさんある。結果的には、新潟、山形、秋田、青森からたくさんの皆さんが来ていただいているんです。

 各地の同友会の皆さん方から言うと、要するに、太平洋側は建設工事は同じ、従来のままだけれども、人件費が仙台に引っ張られて高くなってしまったと。現実問題は、車で一時間、二時間のところですから、皆さん方はどんどんと被災地復興という形でお越しいただくわけですね。そういう点では、被災地だけが人件費がアップしたのではなく、秋田県においても山形県におきましても、実は建設の従業員の賃金は上がっております。ですから、それが今度全国的になるということになれば、多分、技術者の、職人さんのとり合いになるのではないだろうか。

 もう一点は、多分きょうも被災地に行かれたと思います。たくさんのダンプカーが走っております。全国区のダンプカーでございます。北海道から沖縄のダンプカーが走っております。これだけの土盛りをするためには、県内、東北だけのダンプカーでは当然足りないわけでございます。ですから、このダンプカーが今度地元に戻るとなれば、一気に工事はおくれるだろう、私はこのように考えております。

 私は、建設関係は余り詳しくはございませんが、間違いなく、資材あるいは人件費、そして今、特に沿岸部の土盛りをするダンプカー、これは一気に高騰するかとり合いになるのではないだろうか。

 もう一つは、生コンが非常に足らなくなる。御案内のように、ピークに比べて日本全土が三分の一のキャパシティーになっております。生コンというのは、ミキサーをして九十分以内で固まってしまいますので、ですから立地産業なのでありますが、これにおきましても、一気にやると、日本全国がセメント、砂利、生コン不足になるのではないだろうか、このような懸念をさせていただいております。

玉木委員 ありがとうございました。

 そういった問題が指摘をされているし、実際にそういった御懸念があるということなので、執行を円滑にどうやっていくのかというのは、これは国としても、単に予算をつける、お金を出すだけではなくて、そういった側面的な支援もしっかりやっていかなきゃいけないなというふうに思っておりますので、御意見をしっかりと承って、そういったことを反映できるように我々としても頑張っていきたいなというふうに思っております。

 もう一つ、大きな視野で、水産の関係で少しお聞きしたいんです。

 私は、実は農林水産委員会にも属しておりまして、被災時から水産業、漁業の再生といったことに取り組んできた一人でございまして、まず、須能さんにお聞きをしたいんです。

 実は、二十三年度の一次補正が通った後に石巻の方に私来させていただいて、いろいろなお話を聞いたときに、壊れた漁港を直す、船を直す、こういったところは水産庁がやるんですけれども、製氷施設とか加工施設になると、ここから先は経産省というか中小企業庁になって、一連のビジネスのはずなのに、海の方は水産庁で、こっちから先は中小企業庁でということで、いわゆる役所の縦割りといったことについて、もう少し柔軟にできないかという御指摘をたしか当時いただきました。

 共同施設、例えば製氷施設とか、そういったものに使える予算というのは一次補正で十八億円しかなかったんですけれども、そういった御指摘もいただいて、二次補正ではこれは百九十三億円にふやして、水産庁の予算ではあるんですが、そういったことを拡充しようということをやりました。その後の四次補正なんかでも、たしか二百億を超えてつけているはずなんです。

 今お話があったのは、むしろそういったものより、経済産業省のグループ補助金の中で、水産業も含めて入れてもらって、そちらでやった方が何か便利そうな感じを受けたんですが。

 これは、水産業に限らずいろいろなところで言われることは、いわゆる役所の窓口ですね。例えば漁業であれば、それは水産庁なのか、中小企業庁なのか、あるいは復興庁なのか。予算にしても、制度にしても、何かをお願いしたり、言っていく際の、そういった役所のワンストップという点について、特に水産業に従事されておられる須能さんから見て、現在の予算とか、仕組みとか、窓口とか、役所の縦割りという観点から、今、どうお感じになっているのか。改善点があれば、あるいは最も便利なところはここだという何かがもしあれば、御提言、御意見をいただければなと思います。

須能邦雄君 今のお話、繰り返しになりますけれども、第一次補正の二千三百億のうち十八億が加工用ということでしたが、それは流通ということで、対象者は我々市場だけだったんですね。加工向けがゼロなんですね。それで、私はそのときに言ったのは、水産庁じゃなくて漁業庁と名前を書きかえてください、そうすれば、加工業界の人たちも諦めがつくんですと。

 というのは、ロシアは、ソ連は昔、漁業省でしたから。それは、たまたま私がアメリカやロシアにいてそういうことを知っていたのと、私がもともと大洋漁業で船に乗っていて、今市場に来て流通をやっていて、一気に流れを見ていて感じていたことなんですね。

 今回の水産庁の中にある加工流通というのは、生産者のための、魚価安定のために、氷とか、一時保管の冷蔵庫用の建物、あくまで生産者、漁業者用の枠でしかなかったわけです。ですから、今回の予算をつけてやったのも、買い受け人組合だとか、あるいは加工協同組合という名前のもとに、なかなか中小企業庁の予算化が難しいだろうからというので、弾力的に水産庁の加工流通課になったんですけれども、賢いことに、そのことに気がついて、すぐ中小企業庁に話しに行った。

 ところが、中小企業庁も、もともと商売人だから、これは自分らの領域を拡大できることですから、すぐにいらっしゃい、いらっしゃいということで、高原長官、今の鈴木長官と、サービス精神旺盛に我々の話を聞いてくれた。それから、幸いなことに、地元の櫻井先生あるいは安住先生と、漁業の実態がわかっている人たちが、グループ化補助金ならば金の出し方がスムーズにいくということの窓口をつくってくれたんです。

 ですから、今は我々は、中小企業庁と水産庁と両方に顔を出しているので、実務上はスムーズにいくようになったんです。ただ、日本の官僚機構の中では、この縦割り制度は、制度上、公的につくらない限り、ですから、本来であれば復興庁が今回省庁間の調整をできるだけ、特に安倍内閣になってからは各大臣は復興大臣と思ってやりなさいということですから、復興庁ではあるけれども、大臣として省並みの権限を持っているとすれば、それを生かせれば、今言うように、各省庁にまたがる問題も、両者を呼んで我々業界と話をすれば非常にスムーズにいく、そういう一つの制度を変えるいいきっかけになる。

 そういう意味で、先ほど言ったように、復興庁の権限強化というそれだけの覚悟を持ってやってもらわないと、これは国土交通省にという窓口の整理をやっているようではだめなのです。そうじゃなくて、省庁間にまたがることは私がやります、そういうことをやってもらえるように、先生方が強くそこをサポートすれば変わるんじゃないかと思います。

玉木委員 ありがとうございました。

 そして、同じく漁業関係で、今度は菊地さんにお聞きをしたいんです。

 円安の話が少し出ましたけれども、前の民主党政権のときに、漁業の所得補償制度、これは漁済と積立ぷらすをうまく利用してつくって、それと、いわゆる燃油のコスト対策を組み合わせて、非常に評価をいただいた制度の一つだと思っているんですが、これは名前は変わったんですけれども、今の政権でも残っております。

 ただ、急速な円安の中で、燃油が高騰しているということで、コスト対策の部分、ここも制度改善を幾らかしてきたんですけれども、少し御説明があったようなんですが、何か燃油対策でもう少しここを改善した方がいいとか、あるいは、現場から見て、油の高騰問題について何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。

菊地伸悦君 農業者の皆さんには戸別の所得補償、我々漁業者には漁業共済ということで応援をもらって、これは助かっております。そしてまた、燃油の件に関しては、セーフティーネットに加入すれば、国が一、漁業者が一というふうな割合でやっています。

 ただ、この数カ月間の円安、政権交代になってから約二十円ぐらい円安になっております。それで、大体、十円円安になることによって、燃油がリッターで七円上がるんですよ。

 我々漁業者は、計算上、大体六十円までがコストぎりぎりというふうな話をしております。そうした場合に、今、百円にもなっております、軽油、重油が。今、先生が言うように、では何がいいのというあれでは、なかなかいい案が見つかりません。

 ぜひこの燃油対策に力を入れていただかなければ、特に今回のTPP、これも、ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンド、この三ラウンドで大分関税が低くなってきて、平均して四・一%の関税と見ております。そこに持ってきて、今回、TPPによって開放されるとなると、我々は、大変だ、これから本当にやっていけるのかと思っております。

 大分前に、燃油が大分上がった時点がありました。ただ、そのときには景気がすごくよくて、ヒラメが例えば一キロ七千円ぐらいした。そういうときであれば、ある程度、燃油が八十円であろうと九十円であろうと、我々が海に行って魚をとってきてもコスト面で合う。ただ、今回は、先生から今お伺いされたように、では何かいい案といっても、何にもありません。

 何とかこの燃油対策、本当に力を入れて助けていただかないと、我々漁業者、特に宮城県は、今、東電の放射能の件で休漁しております。ヒラメがやっと二日前に解除されましたが、まだスズキ、ヒガンフグ等々、我々のドル箱のものが規制がかかっているということで、今、どうしようもない現状におりますので、ぜひここは助けていただきたいと思っています。

玉木委員 どうもありがとうございました。

 最後に、針生さんにお聞きをしたいんです。

 海の見えない防潮堤等については疑問を呈されたと思うんですが、そもそも、震災が起こった直後は、住民の皆さんの御意見とか、何を希望されているのかということをうまく吸い上げる仕組みとか、あるいは、地方公共団体自身が非常に混乱しておりましたから、地域住民の皆さんの本当の希望とか、つくりたい町のあり方とか、そういったことを吸い上げることが、場合によっては今も困難なのかもしれませんけれども、そういった、本当にそこに長く住もうと思っておられる方、あるいは戻ってこられようとする方々の意見を、制度や予算に反映させていくような仕組みとして、現状から改善すべき点、あるいは、こういったことをやればもっと納得感のある予算の決定の仕組み、制度の仕組みができるんじゃないのか、こういったことについて、何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。

針生承一君 震災後すぐというのは、どうしても、住民のアンケートをとるようなことはなかったんですね。意見というより、どちらかというとトップダウンといいますか、あるいは、偉い東京の先生が来て、コンサルが来て、自治体当局とやっていくというやり方ですね。

 その中で、いろいろ要求が出ていっても、町内会長さんとか、割と、そこの住民のうちのお年寄りの方とか、そういったことで、末端の、例えば小学生の子供を持っているお母さんの声とかというのは無視されやすかったですね。なかなか入っていかないんですね。

 その辺のことからいうと、やはり、最初にもう少しまめに希望を聞くようなことをすれば大分違ったような気がします。

 私が堤防は要らないんじゃないかと言うのは、ルネサンス計画をつくってからいろいろな被災者の人たちに聞いたんですが、やはり要らねえと言うんですね。かえって怖い、わからないしと。それよりも、今回のものでも、海上保安庁が津波を沖で見ているわけですから、大きさはわかったわけですから、そのまま引き返して、例えば飛行機から拡声放送を北からずっと南にやってきてくれれば、ほとんど助かったんじゃないかと思うんですよ。飛行機で、大きいから逃げろと。それは多分できたのに、やっていないんですね。閖上なんかは非常のサイレンが全部壊れていたり、そういったことで、多分、知らないというのが一番大変だったような気がします。ですから、別に被災したところにみんな住んでくれと僕らが頼んでいるわけでもないわけですから、自分たちで住んでいるわけですから、そういったことの危険を知らせてもらうということ。

 それからもう一つは、どうやって津波に対応して住むかというのを自分たちでやはり一度考えないといけないと思うんですよ、あるいは逃げ方にしても。そういったことをしないで、全部押しつけて、全部やってもらうというところがちょっと問題かなと僕は思っています。

 ですから、そういったことができるような仕組み、ワークショップなりなんなりということをこれからはやるべきなんじゃないかと思うんです、今回はちょっと遅いのかなと思っていますけれども。

玉木委員 ありがとうございました。

 私もいろいろお話を聞きますと、地域の人の中でも意見が分かれたりするんですね。やはり堤防をつくってほしいという意見もあれば、そうじゃないというのがあって、これは一体、誰がどこで決めれば最も納得感があるのかなと。人によっては、もう国が決めてくれと。地域に任せていると決められないので、とにかく、国が決めたからこれでやってくれというような意見も実は聞いたりもするんです。

 ただ、先ほど大山様からもお話があったように、復旧と復興を少し分けて、復興については、少し時間をかけて、町のビジョン、そういったものをある程度共有しながらやっていくような段階に少し入っている面もあるのかなというふうにも思いましたので、大変貴重な意見をそれぞれの皆さんからいただきました。

 以上で終わりにしたいと思います。本当にありがとうございました。

伊藤座長 次に、東国原英夫君。

東国原委員 こんにちは。東国原でございます。

 私は、宮崎にいたころに宮城県の村井知事とは懇意にさせていただきまして、宮城、宮崎で宮宮コンビということで、いろいろな生産品をコンビニ等々でPRさせていただいた仲でございまして、気仙沼は、宮崎県の漁業関係者が大変お世話になっていまして、気仙沼で揚がるカツオの半分近くを、宮崎の漁船がお世話になっているということです。

 また、今回、復興に関しては、山元町のイチゴの生産農家にちょっと携わっていまして、GRA、岩佐君というのが代表なんですけれども、この間、無事初出荷をしまして、宮城県とは本当に縁が深いなということで、きょうはお邪魔させていただきました。

 ちょっと時間がないので、取り急ぎ、テンポアップでいきたいと思いますけれども、先ほどちょっと須能さんからお話がありました水産業の復興特区。これは、水産業にかかわる人間というのは、非常に注意深く、非常に関心を持って見ているんです。これは全国が見ています。

 実は私、宮崎にいたときに漁協の統廃合をいろいろ議論したことがありまして、非常に厳しかった。いろいろな議論があったんですけれども、これに対して、今、全国の漁業関係者あるいは世界の漁業関係者も見ていると思うんですね。

 桃浦地区が今対象になっていると思うんですが、地域協議会があした開かれると聞いております。第一回目と聞いておるんですけれども、これについての忌憚のない御意見を伺いたいなと思います。

須能邦雄君 情報が、村井知事の方から早期に開示していただければよかったんですけれども、いまだに詳しい話が出ていなくて、かなり想像の域を脱しないうちに出てきた結果が、これは特区でも何でもないじゃないかと。

 要するに、生産者のつくった会社に資本参加した会社は、県漁協の権利もあるけれども、県漁協には今回入ったんですけれども、維持管理費みたいなものは払わないと。

 地方の漁村では、漁協単位で町のお祭りとか何かやっているわけです。ですから、そこに参加するといいますか、そこにいる地域住民がイコール漁協のメンバーなんですね。そういうところに参加しないでいて、漁獲する権利といいますか、それでは地方の都市が崩壊しちゃうんですね。

 というのは、全てのものがそうなんですけれども、例えば石巻市場なんかでもそうなんですけれども、買い受け人組合とか各種団体があって、いろいろ町のPR活動だとかお祭りだとか何かに賦課金をもらっているんですけれども、そこに入らなければ買い受け人になれないんじゃないんですね。権利はもらうけれども義務は果たさないということになると、町が衰退しちゃうわけです。

 県漁協の今回の特区の問題も、その会社自体が権利を持たなくても、漁業者自身が漁業権を持てば、私が一番心配するのは、その会社の中で、漁業者と加工業者、流通業者が株主になるわけですけれども、この比率が、五一を持った方がイニシアチブをとった場合に、漁業者が唯一持っている権利というのは魚をとる権利なわけですよ。そうすると、あなた、それだったら、言うことを聞かないならば、どうぞこの会社から出ていってください、株主やめてくださいと言われると、会社自体は、理論上、五一%の会社のイニシアチブをとって、あとは外国人を使おうと機械化しようと漁業は成り立つわけですよ。魚をとることが可能なわけですよ。

 そういうような例が過去にあったので、漁業者を守る立場には、魚をとる権利があって、それに協力する加工業界あるいは流通業界がいて漁業者を支援するということが、本当の零細な僻地の復興に役立つのであって、確かに、側面からいえば、その町を興すために資本参加してもらったり協力してもらうということは必要なんだけれども、いつの間にか、ひさしを貸して母屋をとられるという過去の例がある。

 そういうのを見てきた漁民が納得できないことをあえてやることで、そこで漁業者同士の精神的な分離といいますか、亀裂を生じさせてまでやるほどのことではないでしょうと。

 ですから、村井さんの考えでいうのであれば、まず生産組合でやらせて、そういう中から、皆さんの調整の中でこれが認知されればいいですけれども、少なくとも、大多数の漁業者が、こういう方式をやったらば地方の沿岸漁業は崩壊してしまうという危惧の念が払拭できない。払拭できないのを、やってみなきゃわからない、俺が当事者として責任を持つ立場だから黙って言うことを聞けで解決する問題じゃなく、やはりそこは十分話し合いの場を、第三者の、我々も含めて、どうあるべきかということの議論がなされていないのが問題だと思います。

 私は、この問題、みんなの英知を絞って、どうやったら零細漁業が発展するのか、そのための一石を投じたことは事実なんです。だから、それを無理押ししないで、広く会議を興し、万機公論に決すべし、こういうことをぜひお友達として、東国原先生から村井先生に、考えを改めさせるようにお願いしたいと思います。

東国原委員 承知いたしました。

 やはり基本的な問題というのは、漁業の振興だと思うんですね。漁獲量が少なくなった、資源が減っている、魚価が低迷している、市場が縮小している、魚離れですね。我々も、地域にいまして、ずっとこの問題とは向き合ってきました。でも、先ほどの原油、燃油あるいは油じゃないですけれども、これといった解決法がなかなか見当たらないんですね。

 ですから、これをどうやって解消していくかというのは、先ほど大山先生がおっしゃった規制緩和というのが一つキーワードになるんじゃないか、農林水産業等々、これが一つの試金石になるのではないかと思って、僕は非常に注意深く関心を持って見ているんです。

 ですから、ぜひ、漁民の方たちが納得するような形で、そしてまた、漁業の問題を解決するような、お互いの英知を、行政と組合と関係者と民間と、恐らくLLCさんが入ってくる、合同会社、合同資本が入ってくると思うんですが、そういった方たちと十分な議論をしていただいて、何か非常に進歩的な方向性を見出していただけるとありがたいなと思うんですけれども、いかがですか。

菊地伸悦君 今、東国原先生から特区の話ですけれども、宮崎の丸山会長さんとは親しくおつき合いさせてもらっています。

 それで、今回、いろいろなマスコミの皆さんが、県が区画漁業権を独占しているんだと。決して独占しておりません。県漁協でしまっておくわけでもないし。これは、唐桑から山元までの三十三の各支所が、使いやすいように、漁協が県から認可を受けて、それを漁民に渡すだけの役割をしている、それを有料で売っているわけでもないし。ですから、その辺、根本的に、独占という意味が我々はわからなくております。

 今回、特区のお話は、LLC、合同会社の皆さんにも宮城県漁協の正組合員になってもらっております。そして、正組合員だけではだめな問題があるんですよ。その浜、浜によって行使規則というのがあって、カキは三年間の経験がなければカキの養殖をやってはだめだという規則があって、では、これを外さなければLLCの皆さんを正組合員にしても意味がないということで、我々みずからそれも外しております。それで、三月の初めから、LLCではカキを積んで、六次化という名のもとに、民間の会社が入ってもうやっております。ですから、それ以上のもの、何が必要なのか、逆に我々が聞いてみたいと思っております。

 この前、桃浦の近辺の組合員から、百十一名の組合員が連名で、特区に対して反対だという陳情書が参りました。それは知事宛て。それから海区調整委員会、あと県漁協の会長の私にも、会長、ちょっと生ぬるいんでないか、もっと強く当たらなければ特区をやられてしまうのでないかというような、百十一名の反対の署名もありました。知事も浜に二回か三回行っているはずだと思っています。その中でも大分反対の声が多かったと思っております。

 ですから、あした、四日の日、先生が言うように、地域協議会があります。その中で、私も、思いを、一万二百名の組合員の思いをあしたは淡々と述べてきたいと思っていますが、余り拙速に、須能社長さんが言うように、やはりもう少し周りの意見を聞いてもらって進めていただきたいなと。

 ただ、決して村井知事を恨んではおりません。その当時は、震災直後、このままだったら漁業者が本当に戻れるのかなという思いのもとに、民間の力をかりて、特区というものがいいんじゃないかと、割と簡単に言葉にしてしまったあれがあるのかなと思っておりますから、我々と向く方向は、同じ方向を向いて、漁民のためというあれが発端なので、決して知事を恨むことはしておりません。

 ただ、安易に、知事の権限をもって、そしてまた知事の考え一つで、これが全国的に波及した場合に、宮城県の村井知事はいろいろな面ですぐれている知事ですから、我々が選んだ知事ですからいいですよ。ただ、中には、そういう知事さんでない方も、知事という肩書がついた場合にどうなるのかと我々は心配しております。

 ですから、もう少し周りの漁民の理解を得られるように、ただ漁業権、漁業権というものにこだわった論理の構成じゃなく、今現在なりわいとして、その桃浦の十四人も民間と一緒にカキむきをやっているんですから、私は今、逆に、これ以上のものが何なのか、そこを聞きたいというふうな思いでおります。

東国原委員 わかりました。何か空気がちょっと重たくなってしまいました。

 ありがとうございます。その思いをちょっと私は伺いたかったものですから、現場の思いを、ぜひ闊達な議論をしていただいて、漁業がいい方向に向かうように結果を出していただければと思っております。

 もう時間が、あっという間ですので、持ち時間が二十分ということでございまして、大山さんにちょっと。

 先ほど企業立地の話がありましたね。企業立地が非常に難しい、今、公共事業が来て、それが終わったら去られるんじゃないか、どこかに行かれるんじゃないかというような話がございました。やはり、長くここに根づくような企業あるいは産業の集積といいますか、そういったものが必要かと私も思っております。

 そのためには、先ほどおっしゃったように、やはり規制改革というのは非常に重要かなと思います。さまざまな規制改革、税制もそう、それから農業だったら、さまざまな農業の規制、あるいは新産業だったら、そう。

 それで、新産業として、僕はベンチャー企業とかそういったものにもっと仙台、東北は非常に着目するべきなんじゃないかなと思うんですが、そういったことについて、経済人として、ベンチャー企業を根づかせる、例えばエンジェル税制だとか、そういったものに関してどういうお考えをお持ちか、お聞かせ願います。

大山健太郎君 御指摘のとおりでございます。

 そういう意味では、実は私、代表発起人になりまして、東北未来創造イニシアティブという組織を立ち上げまして、たまたま今年度は内閣府から助成金をいただきまして、今、被災地の若い人、三十名の方を、東京の同友会の主要メンバーと一緒になってバックアップし、この四月から具体的に事業化をするというような状況になっております。

 それと、仙台同友会の第三次提言におきましても、四番目に、被災地で創業したベンチャー企業に対しては五年間の税の免除であったり、あるいはエンジェルでバックアップした人の譲渡益を免除するというような形で、若いベンチャー企業というのは、被災地だけではなくて日本全国、全部が希望しているわけでありますので、それをより被災地に持ってくるためには、やはりよりインセンティブをつける、それが僕は税の特典だろう、このように思っておりまして、今、そういう活動を、一歩一歩でありますが、やらせていただいています。

 ただ、現実の問題を申し上げますと、なかなか地元でベンチャーとして手を挙げる方が少ない。ですから、それを発掘することが今一番大きな仕事。ですから、我々は、今言っていますのは、別に地元にこだわらなくてもいいと。全国区でいろいろな方が、どうせベンチャーをやるなら被災地でやろうよ、そういうお声がけで支援をしていきたい、今こんな活動を申し上げております。

 それと、ちょっと話をもとに戻しますけれども、冒頭に申し上げていますように、津波をかぶった被災地というのは水産加工が中心であります。私、水産特区については、経済界とすれば特区賛成ということでございます。

 ちょっとこれについてだけお話し申し上げますと、私は、被災地がどうこうと言う前に、日本の漁業が本当にこれから海外と比較してやっていけるのかどうか、きょうはやれても、では五年後、十年後どうなっていくんだろう、こう考えていきますと、やはり零細、小規模はなかなか大型投資ができない、そういう中で非常に難しさがある、このように思っております。

 もう一点、多分村井知事が、るる相談も受けておりましたので。

 百四十カ所の被災した漁港があるわけでございます。もちろん大きな人口の漁港もありますが、数十人しかいない、あるいは数百人しかいない漁港もたくさんあるわけでありますね。これをもとどおりに戻そうと思いますと、やはり数十億の金をかけないといけない。そう考えていきますと、もちろんもとに戻すということは非常に大事なんですけれども、逆に今回の被災を、ピンチをチャンスに変えようという発想転換で、集約化を図ったらどうなんだろうと。

 その一つの手段として、要するに特区ということでありまして、ややもしますと、新聞紙上で見ますと、民間企業が入ると、もうからなくなったらさっさと逃げていくと。これだけは、御発言はできるだけ慎重にしていただきたい。民間企業、そんな会社も中にはあるかもわかりませんが、赤字でも地域のために一生懸命歯を食いしばって頑張っている会社の方が大半でございます。

 もう一つは、先ほど、まちづくりもありました。確かに、まちづくりには地域の力が要るのであります。仙台は七夕まつりというのが非常に有名でございます。実は、一番町商店街、ほとんど地元の商店がいなくなった。にもかかわらず、この七夕まつりというのは年々盛大になってきております。これはやり方なんだろう、私はこのように思います。

 それで、まず何よりも、やはり農業、水産というのも、これから本当に今のやり方で成り立っていくんだろうか、こう考えてみますと、これは全国の問題として大変な問題です。

 御案内のように、ノルウェーだとか、北欧は非常にうまく成功している地域があります。小さな魚をとらずに、我慢をして、大きくなってから、魚価が高くなってからとろうとか、そういう長期的視点でマネジメントができる。

 ですから、私は、ただ単に利益誘導で入ってくる企業ではなく、やはりそういうようなことをちゃんと、お互い、企業の定款にうたって、漁業の発展と地域貢献を目指すというような法人と手を組んで活性化することが、逆に言うと、民間と特区で成り立った立派な企業があれば、もとに戻ってくる若い人もたくさん出てくるのではないだろうかと。

 なかなか、リアス式海岸の被災地で工場を具体的につくるといっても、土地の問題あるいは交通の便の問題、実に、現実問題、工場をつくるには非常に不適な地域でございます。ここはやはり水産が一番適しているんだろうと思っておりまして、そういう意味では、まさに特区を活用してこの地域の雇用を支えるというような方向転換を一緒になって考えればいいのではないかな、こう思っておりました。

東国原委員 ありがとうございます。やはり戦略的な計画、プランというのは必要なのかなと思います。

 最後になりますが、針生さんにお尋ねでございます。

 閖上地区というのは、基本的に、僕は地方自治を勉強したものですから、自治が成り立っているのかなと思うんですね。住民の方たちが、こういう町をつくろうじゃないかと積極的にまちづくりに関与する。

 僕は、今回の東北の復興というのは、実を言うと、百あれば百通りの復興あるいは復旧があると思うんですね。ですから、自分たちの手でまちづくりしようよ、もとどおりにするんじゃなくて、活性化しようよと。先ほど大山さんがおっしゃったように、きれいな過疎地にしてもしようがないんですね。生き生きとした活性化した町をつくろうよというところで、僕は、閖上の試みというのは非常に注目しているんです。

 それは、おっしゃったように、ヨーロッパ、欧米の、コンクリートで自然と闘うということから、日本の昔のよさ、輪中とかあるいは信玄堤だとか、そういったところを活用するというのは非常におもしろいなと思っているんですね。そういうまちづくりがあってもいいんじゃないかなと思っているんです。

 一つだけ、人工島と魚礁をつくって、それを津波よけにするというような話があったと思うんですが、それについてちょっとお伺いしたいと思います。

伊藤座長 針生君、時間が参っていますので、簡潔に御意見の方をよろしくお願いします。

針生承一君 どういうわけか、今の防災は、津波に対して、堤防だとか、陸の方だけいじり回しているんですね。

 私は、松島の多島海とかサンゴ礁とか、そういったものが結構津波に有効に働いているから、そういうことを含めて、今、水産特区の話もあったんですが、大きな魚礁、五十メートル丸ぐらいの魚礁をずっと並べていくんですが、それを波よけにしたい、海の方に打って出たいと。

 要するに、陸の方で津波を減災するんじゃなくて、海の方でやりたい、それに、あと、風力発電も上げていきたい、そういう提案をしたんです。それを海のいぐね、いぐねというのは、この辺でいう防風林なんですけれども、そういうことを提案しました。

 そうすると、魚礁が五百メートル置きぐらいにずっと行きますので、今度、その間で育てる漁業ができるわけですよ。育てる漁業はまさにそういったことでやっていけるので、これからの漁業に展開できるので、そういったことの提案をしています。

 ですから、防災そのものが、防災の事業に終わらないで、なりわいとか生産に結びつくようにしたいという提案をしたわけであります。

東国原委員 ちょっと時間がなかったので駆け足でしたけれども、大変参考になりました。ありがとうございました。

伊藤座長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道でございます。

 きょうは、お忙しい中、大変ありがとうございます。また、貴重な御意見、大変に学ばせていただいたところであります。

 私、北海道の選出でありますけれども、きょう視察をさせていただいた仙台空港のある宮城県の名取市出身であります。針生先生のお住まいの閖上地域も名取市でありまして、大変に関心深く、本当に貴重な御意見をいただいたと思っております。

 時間の関係もありますので、それぞれお伺いをさせていただきますけれども、せっかくの機会なので、四人の方々全員にお答えしていただきたいと思うので、まず御質問を最初に申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、菊地会長様におかれましては、二年前に東日本大震災復興特別委員会におきまして前会長さんがお見えになられて、さまざまなお話をいただいたところでございます。

 それで、まず仙南地域におきましてもそうでありますけれども、瓦れきの問題の話もございました。瓦れきがやはりまだあるということで、漁業が再開できないという話もありますので、ちょっとそのことについてもお話をしていただければと思います。

 それから、いわゆる放射能の風評被害の問題につきましては、須能会長さんのところのいわゆる石巻を含めた仙北地域と、それから菊地会長のところの仙南地域とも、いわゆる福島県に近い遠いということでやはり微妙に違うんじゃないかという部分もありますので、放射能の問題についてはお二方にお聞きをさせていただければと思います。

 それから、今、東国原委員からもお話がありました水産業の復興特区の問題につきましては、これは私自身は、村井知事は本当に宮城県の水産業を守ろうという思いで提唱されたのだとは思いますけれども、やはりさまざまな意見が出ているのも事実であります。

 そしてまた、これは宮城県だけではなく全国に波及するのではないか。水産業の方々、私も第一次産業を基幹産業とする北海道でありますので、TPPの次は特区かと、そうした御意見があるのも事実であります。

 先ほどお話をいただきましたけれども、つけ加えるところがあれば、全国の水産業の方々も大変に関心を持っている問題でありますので、ぜひ御意見をいただければなと思っております。

 それから、大山社長さんにおかれましては、いわゆる国際介護大学につきまして貴重な御意見を頂戴いたしました。

 かつて村井知事から、東北に医学部の増設という話なんかも伺ったことがあるんですけれども、医学部の増設と国際介護大学との関連、別のものなのか、それとも関係するものなのかということについてぜひ教えていただければと思います。

 それから、針生先生におきましては、閖上地域、それこそ閖上の海、それから貞山堀は、本当に私もよく釣りに行った地域でもありますし、あの災害の直後、私も閖上の地域を見せていただきまして、それこそ何もなくなってしまった、残されたのはいわゆる家の基礎だけというところで、本当に被災があったのか、本当に災害があったのかと思うような、信じられないぐらいな状況でありました。そうした閖上の地域に、ルネサンス、復興という言葉の地域を築いてくださったことについては、私は大変に深く感銘をしているところであります。

 実は、北海道も、いわゆる奥尻島での南西沖地震という津波を体験しております。そしてまた、いわゆる火山が多く、噴火の多い地域でもありまして、私は、自然の猛威に対して、人間の力というものはやはり余りにも微力ではないかなと思っております。先ほどの、いわゆる、逃がす、かわす、自然との共生、災害との共生というのは、私は、物事を考えるに当たっての基本中の基本であると思っております。

 その御構想の御実現のために、課題について教えていただければと思います。

菊地伸悦君 今先生からお話がありました瓦れきの件に関しては、震災直後、瓦れき処理ということで、我々漁民、一万二千四百円の日当のもとに瓦れき集めをしたということで、あれは本当に助かりました。あれがなければ今の生活がなかなか成り立たなかったんだろうと思っております。

 そういう関係で、陸域の分に関しては、瓦れきは、仙南だけじゃなく、石巻から南の方でもほぼなくなったのかなと思っておりますが、ただ、海域、海の中の分に関しては、百メーターラインにはまだまだあります。ただ、これを取るのに、ガット船、また我々の小型底びき船また沖底船では思うように取れないのも現実なので、これは今後とも、この辺に予算をつけていただきながら、これで終わりということじゃなく、継続していただきたいと思っております。

 それから、放射能、これは福島との県境におります我々、山元、亘理に関しては、本当に特別な、いろいろな思いを持っております。福島の漁民は今全面休漁ということで、平成二十年、二十一年、その辺の水揚げに対して賠償金をもらっている。ところが、紙一重の宮城海域では、規制のかかった魚以外はだめなんだ、とってください、安ければ風評被害の分でやりますよと言ったのがこのごろなんですよ。これまでは中間指針のもとに風評被害を認めないということで、今我々は大変な苦労をしております。

 これも、原発は国策をもってやってきた事業なので、できれば国なりにもう少しかかわっていただければもう少し違う方向に行くのかなと思っていますが、賠償問題は、周りで皆さん、先生方が思っているように、スムーズにはいっていません。半年また八カ月、そういうふうに待たされてやっと妥協、じらされて妥協するというふうな賠償の交渉を今やっておりますので、ぜひその辺、応援していただければと思っております。

 それから、放射能、セシウム、これは最初、五百ということで、我々も五百であればなというふうに安心しておりました。そうしたら、突然、当時の大臣さんが百と。何で百なのかなと。前段で須能社長さんも言ったように、欧米各国が大体千から千二、三百ぐらいという中で、何で日本だけが百なんだと。もう漁師と農業者、百姓は要らないのか、こんなことをしていたら本当に我々はやっていけないよと。言ったとおりに、もういろいろな流通関係の皆さんも、ゼロに近い方がいいんだ、幾らかでも出たらもう売りません、取引いたしませんと。

 例えば、こんなちっちゃなオキアミ、これは九州の方に行くんですよ、マダイまたウナギ、もろもろの餌に。全然セシウムの数値が出ていないにもかかわらず、買えないと。それを買うことによって、周りで、今度、そこの養鰻、また生けすから、魚を買ってくれなくなるんだ、そういう状況なんですよ。

 ですから、今さら五百に戻してくれと言っても、これは国民も納得しないし、なかなか難しい。ただ、安全なんだというふうに国民の皆さんがわかるように、ぜひ国の力をもって周知できるようにしていただければと思います。

 特区の話は余りしたくないんですよ、もう特区の話は。さっき東国原先生にもお話ししたように、漁民の理解は得られたとは思っておりません。それで、県漁協が漁民をいろいろ指導してどうのということも決してしておりません。

 桃浦の十四人の皆さんは、最初から、もうやらなくてもいいということで、船もエンジンも皆売っているんですよ。

 今回、一番違うのが、浜から手を挙げたというんじゃなく、県の方が、どこかありませんか、こういう図式のもとになってきたことなので、ですから、特区を正当化しようとどんな論理構成を立てても、これは絶対に立たないんですよ。どなたがこれに答えても、むなしい答えしか返ってこない。大山社長さんも、これをやらなければこれから生き残れるのかとかなんとかお話がありましたが、私はやっていけると思っています。

 今、六次化という、バラ色のような、パラダイスのようなあれもありますが、私は、これもなかなか難しいのかなと思っています。

 今、県漁協で共販、ただ、共販が悪者扱いされていることも確かです。これは長年、何十年もたってきているから、やはりそれは、ある程度色あせれば、人間も長くつき合えば、夫婦でも、どこが悪いここが悪い、これは当たり前のことです。ただ、カキの場合、四千トン、五千トンとっても、一つ残らずそれを売りさばく。その分の入金も、漁民に一切迷惑をかけないで、全部支払いする。

 これが六次化で、一人で生産、加工、流通。今はまだ割といいですよ、きずな、助けなければというあれのもとに。ただ、これからそれが若干大きくなったときに、流通の段階で、手形をもらったんだけれども落ちなかったよ、入金もなかったよ、恐らくはそういうあれが出てくるんだと思います。

 ただ、我々も、それを眺めながら、静観しながらというのではだめです、早速、事業企画室というものをつくりまして、これから、共販、これは一本、それからもう一本、今の六次化的なものをやって、いかに漁民の生産物が高く売れるのか、今早速検討に入っていますので、もう少し見ていただきたい。

 ただ、特区に関しては、この九月に間に合わせるという機械的なあれじゃなければ、途中でもやれるんですから、五年、五年やらなくても大丈夫なんですよ。だったら、もう一年じっくり漁民の話も聞いて、それからやろうというぐらいの知事の太っ腹があれば、私は、村井知事ももっともっと、本当にいい知事だなと思って、これ以上のファンになると思っております。

須能邦雄君 風評被害につきましては、特に、石巻は底びきが中心でしたもので、五台の機械を使って、朝の四時から検査しているわけです。

 やはり、安全というものを正確に表示することによって安心を得る、そのためには、国がもっと積極的にリスクコミュニケーションで、ベクレルとシーベルトの関係、それがどのように人体に影響があって、過去の放射能の事故に基づく事例を明確に説明してやらない限り、今、アメリカのフォーブスという経済雑誌が日本のことを書いています。IAEA初め世界の学者が、十何年かけてコーデックスというところで千ベクレルを決めた、その国際基準に関係なく、日本は五百ベクレルを百ベクレルにし、国民みずから日本の魚を食べない、日本のものを食べない、このような愚かな現象がある、こういうことを言われています。

 その辺、ぜひ、この間、田村厚労大臣あるいは林農林大臣にもそのペーパーを渡しましたけれども、世界の目はどう見ているのか、やはり時としては世界の標準で物を見てもらいたいと思います。

 次に、特区の問題です。

 いかにも、特区という言葉が何かのマジックみたいに思われるかもしれませんけれども、これを言う、特にノルウェーとかニュージーランドとか、もともと水産は、国内消費じゃなくて輸出産品としてできた国なんです。ノルウェーは、国防するために沿岸漁民をやめさせて、アメリカに移民し、大型船によってあそこで仕事をできるようにして、国防上の船にしたから、ホテル並みの船をつくって、適正に資源管理してやって、それを日本のマーケットに売るだけの潤沢な資源があって、それをやっています。

 日本の場合は、沿岸に過剰な人間がいて、今、特区といいますけれども、今の日本の浜には余裕がなかったんです。今回、震災で多少どうなるかわかりませんけれども、日本では実際は過密養殖しているんです。

 そういう中で、特区で何かをやるというのじゃなくて、現実を知った上で、今言う、外国の例は私たちも参考にします、ですから大いにそういう議論をし、日本は江戸時代から地先権で漁業者同士が調整してきて、その調整をするのが漁協の仕事だったんです。独占じゃないんです。その辺の事情を全く無視して、特区という、一つのマジックができるかのごとく感じているので、私たちも胸襟を開いて議論しますので。私たちもこのままでいいとは思っていません。

 一番問題は、量販店システムが強化されて町の魚屋さんがなくなってしまったために、魚の調理ができなくなって、末端では、安く最初に値段があって、次にお店が値段を取り決めて、納入価格を決めて、納入価格がイコール今度は浜値にしわ寄せがいって、浜はとっておけませんから、やむなくそれで売る。もしも浜値が安くなっていれば、納入価格のところがわかっていますから、納入価格に対して、量販店から、センターフィーをよこせ、何とかサービスよこせということで、全部末端にいって、末端はPBブランドをつくりながら、どんどんほかのお店が潰れていくような状態で、量販店とコンビニになって、あとは寡占になっていくような販売方式、それが問題だと思っています。

 要は、魚を食べるシステムを、もちろん、量販店でも買ったり、魚の専門店でも買ったり、町の魚屋さんで買ったり、いろいろ魚食普及をする手だてをつくらないで、それをなくしてしまったことが問題です。

 ですから、みんなで水産業が発展するために、零細漁業あるいは僻地が復活するために、大いに資本家の皆さんの協力は得たいんですが、今言うように、現実を知らないで外国の理論をそのまま持ち込むだけでは問題は解決しないので、我々はそのために、前々から広く会議を興して、みんなの意見をぶつけ合いましょうと。気持ちが発展させるんですから、最終的にはみんなが納得できるはずです。

 ぜひ、そういう意味で、大いに議論に参加してもらって合意形成すべきことではないかな、このように思います。

大山健太郎君 先ほどの、国際介護大学と医学部の新設の話、これにつきましては、基本的には全然違う話でございます。

 御案内のように、今、被災地並びに過疎地においては、医師不足で非常に困っておるわけでございます。反面、仙台市内は医者の数が多いというような、まさに偏りがあるわけでございまして、そのためにも新しい医学部を新設するということは非常に我々も賛成しておりますし、医師会の方では少し反対の意見があるようでございますが、それはさておきましても、ますます人口減少、過疎化になってくれば、医師の数はふえざるを得ないし、ふやすべきだと思っています。

 国際介護大学につきましては、先ほど御説明申し上げたように、一番の狙いは、もちろん、看護師を、海外の若い看護師さんを、しっかり日本語もわかり、日本の介護福祉士の免許も取れるような人材を教育するのも一つの大きな目的でございます。

 ですけれども、それ以外に、実は、これからどうあれ、痴呆であったりアルツハイマーであったり、いろいろな病理的なものを、薬を研究するんですが、なかなかエビデンスをとるのが難しいわけであります。ここの大学で、共同でそういう研究をし、ここに入っておられる患者さんをしっかりとフォローアップ、チェックをする過程の中で、しっかりとしたエビデンスもとれるのではないだろうか。

 今、残念ながら、介護につきましてはほとんど専門学校のレベルなんですね。これをもう少しレベルアップする形で、これから高齢化の中で一つの学問として確立する、今そういう時期に来たし、またそうすることがこれから高齢化を迎える海外の国にとっての大きな貢献につながっていくのではないだろうか、私はそういう考えで国際介護大学というのを提案させていただきました。

針生承一君 時間がないようなのであれしますが、佐藤先生は閖上のことはよく御存じなので、私どもの考え等はよく御理解いただいて、ありがたいと思っております。

 全くずるむけになりました、私の頭みたいに、さらに、今の計画は、貞山堀にまた堤防をつくるというので、ずるむけになったところにまた何か土をくっつけていくようなもので、それはもう僕は絶対反対なんですが、もう一度、やはりランドスケープといって、白砂青松の閖上の浜というものをあれしながらやれる方法はないかということが一番大事だと思うんです。

 以上です。

佐藤(英)委員 ありがとうございました。

伊藤座長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 みんなの党の柿沢未途でございます。

 四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。

 漁業特区の話はもうやめたい、こういう話ですから、菊地公述人と須能公述人には余りお尋ねが行かないかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 それで、針生公述人には、実は私が推薦をして、きょう来ていただきました。「海の見えない漁村は安全か」、こういう論文を皆様のお手元に配付されていると思いますけれども、本来であれば、針生さんには大変失礼な言い方かもしれませんが、気仙沼から男山酒造の菅原昭彦社長をここにお呼びしたいと思っていました。

 昨年七月に気仙沼に行ったときに、菅原さんから、防潮堤を勉強する会のお話を聞かせていただきました。気仙沼は今、七メーターから十メーター、十二メーターぐらいの堤防を張りめぐらせるような計画が県から提示されていて、それは一体どうなんだということを菅原さんがおっしゃられている。特に、気仙沼大島なんかは、十二メーターの堤防であの小さい島を囲んでしまうと、もう刑務所の中みたいな状態になってしまうわけですね。

 果たして、「海と生きる」という復興計画をタイトルとしてつけられているこの気仙沼がそういう町になってしまっていいのか、これは大変文明的な問いであるというふうに思います。その点から、針生公述人も、全く同じような考え方に基づいて、きょうのお話をされたというふうに思います。

 なおかつ、問題なのは、やはり総延長二百キロにこの防潮堤、防波堤を張りめぐらせると、これはどう低く見積もっても、一兆円ほどのお金を費やす公共事業になるということです。このお金があったらということにもなるわけであります。

 そうした点について、針生公述人に、ぜひ問題意識を、きょう私がお願いして来ていただいたわけでもありますので、ぜひもう一度、語っていただきたいと思います。

針生承一君 私は、閖上復興まちづくりの会でもってルネサンス計画を出したんですが、多分、出した相手が名取市長だったのでまずかったので、国会あたりに直接行っていただければ大変によかったのかなと思っております。その後、なかなか受け入れられないので。

 ただ、外務省から、国際交流基金で四つの国、イタリア、スペイン、ベルギー、イギリスというところに、大変なお金を出していただいて、ビジネスクラスでフォーラムに行ってきました、ルネサンス計画を掲げて。ルネサンス計画は国の政策と違うんだけれどもいいかと言ったんですね。そうしたら、いや、結構ですと。国際交流基金は文化なのでいいんですということで、一生懸命、国の悪口を言ってきました。

 それで、実は、やはりもう既に、土木というか土でもっていろいろなものをやるというのは、やっていないんですよ、ヨーロッパは。昔はやったようです。ですから、土でもって堤防、例えば噴火山の火口にふたをするようなことなんですね、言ってみれば。大それたことなんですよ、堤防で津波をとめるというのは。

 ですから、そこのところを何か、わかってやっているのか、やってないのか、僕らの税金を無駄遣いするんじゃないかということで、僕はもう自然現象なので受け入れた方がいいんじゃないかという考え方をしております。ですから、その金があったら、例えば逃げるタワーをつくるとか、それから、今言った水産業にもっと力を入れるとか、そういった方がいいんじゃないかということを考えています。

 それで、できるだけエコロジカルな形でやらないと、自然に対して余りにも何か対峙し過ぎて、何か一緒にあれするということじゃなくて、津波が、全く悪いものだとは思うんだけれども、そんなに悪いところといっても、それとはやはり生きていかなきゃいけないので、共生する道を考えるのが本当は大事なんじゃないかというふうに思っております。

柿沢委員 きょう、この参考人質疑というか地方公聴会を聞いておりますと、針生さんのおっしゃることに各政党の方々は非常に賛同的な御意見をおっしゃられていて、私、心強く思ったんですが、では、なぜこれが実現しないんだというふうにも思うんです。

 その一兆円の予算をつけているのは主に国なんですよね。なぜこういうことになってしまうのか。我々が針生さんの言うことに賛同するんだったら、そうなっていくべきだと思うんですけれども、その気配は、申しわけないけれども、一向に見えない。私たちの努力不足かもしれませんが、どういうふうにその状況を思っていますか。

針生承一君 では、はっきり言いましょうか。災害利権です。災害に対する利権が働いています。

 要するに、土木で、土をいじった方がもうかるところがいっぱいあるということです。早いです、安いです、比較的安い、それだけだと思います。それに群がっています、利権が。ですから、考える余裕もなく、テクノクラートの中で要するにそれが進んできちゃっているということで、本当に堤防をつくるのが最大の方策かというのは、私は言えないと思います。

 ところが、何となく進んできている。今いらっしゃる先生方も、賛成したのかしないのかわからない状態で進んできているんじゃないですか。だから問題なんです。

 僕が海外で話したときは、日本は何ですか、民主主義ではないですね、土建主義ですねと言われました。そこが問題なんじゃないですか。

 私はわかりません、それ以上は。多分そういうことだと思います。

柿沢委員 大変どぎついお言葉をいただいてしまいましたが、そういう構造なきにしもあらずということなのかもしれません。

 須能公述人が、冒頭の意見表明で、自然への畏敬を忘れて埋立地に住んでしまった、こういう言葉がありまして、非常に印象的でした。

 気仙沼に行ったときに、実はあの町というのは、津波でやられて、市街地が浸水してめためたになった、しかし、その市街地というのは、実は埋め立ててそこに住んでいるんですよね。むしろ、海に海にと向かっていって、そこで営みを続けてきた、そして、あれだけめためたにやられて、なおかつ、それでも海の見えないところには住めない、こういうふうにおっしゃられているというふうに聞きました。

 漁業者として、須能公述人は、今のお話を踏まえて、復興のあり方、復旧のあり方、そして東北人の海とのつき合い方、どんなふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。

須能邦雄君 私は、今回の震災で、必ず日本から支援してもらえると思ったのは、この三陸の魚は日本の宝であるし、この加工技術は国にとって大事なものである、だから、海の恐怖があって船に行かないというようなことなく、船は国がつくりますからぜひ海に行ってください、そして魚を加工してください、必ずそういうふうに国が言ってくれるんだから、私は、この復興に対して全くの不安を持っていなくて、今、復興会議でやってきています。

 ただ、二年たって、これから三年目に入るこの四月から、我々は、いつまでも復旧復興というような支援のスタイルから、自立自存の立場で、先ほど言いましたように、新規参入者だということで、みずから新しく生まれ変わって脱皮するんだ、そのためには、行政に依存しないで、行政と議会と我々民間が三者一体となって、この改革なり、前へ進もう、もうそういうような気持ちに、この四月から、我々、復興会議は切りかえた。

 そういうことで、船の人たちは、私は、本当に海岸に住むのか、あるいは沖に行ってくれるのか、よく聞いたのは、最初、朝、洗面器で顔を洗うときにあの水を見ただけで恐怖があった、そういう話を聞いたときに、本当に船に乗るだろうか、そういう不安がありました、乗ってくれるだろうかと。それが、今言ったように、伝統的に海に生きてきた人たちの強いものがあるわけです。

 ですから、私たち、今、石巻でも、この堤防の問題については、実際に道路を遮断する高盛り土道路で果たしていいのか、何人を助けるために、どうするのか、そういう議論を白紙からやろうと。それで、今村教授が出したシミュレーションの中身から考察して、本当にこの前提となる科学的根拠が正しいかどうか、そういう議論も含めて、新しい民主主義のもとに全部やることが大事だと思います。

 ですから、諦めないで、今、国がやろうとか県がやろうとかいう議論の前に、各地で、気仙沼がやるように我々もやる、今、南の方でもやっているように、みんな、既成の路線じゃなくて、全部見直すべき時期だと思います。

柿沢委員 大変意義深いやりとりができたように思います。

 大山公述人にお伺いをいたします。

 ニューオーリンズという都市がアメリカにあります。ニューオーリンズは、ハリケーンのカトリーナでそれこそめためたにやられました。その後に何が起きたか。アイデアビレッジというNPOができて、それが、ベンチャー企業を育成しよう、若者が手を挙げたらばんばん助成をしてということで、ニューオーリンズは結果的に、カトリーナの後にアメリカ南部有数のベンチャーの町になったわけですね。

 先ほどおっしゃられたことは非常に重要で、どうせベンチャーをやるんだったら優遇が受けられるから被災地でやろうじゃないか、こういうある種の意欲というか山気というか、そういうスピリットを持った人たちが東北を目指すということがなければ、この地域はやはり復興しないんじゃないか、もともと進行していた過疎がまたさらにスピードアップをして進んで、本当に老人だけの町になってしまう、こういうことではないかというふうに思います。

 そういう意味で、ベンチャーの支援ということが大変重要だと思うんです。そのことをまずお伺いしたいのが一点。

 もう一点。実は、興味深いデータがあります。

 これは東大医科研の上昌広先生から教えていただいたんですけれども、福岡から九州大学に進学している生徒、どのぐらいいるか。千八十五人います。愛知県から名古屋大学に行っている人、千百二十八人。そして、東京から東大に行っている人、九百四十三人。北海道出身で北大に進学した人、千二十二人。さて、宮城県から東北大に進学している人は何人でしょう、三百八十五人です。この部分ではないかと思うんです。

 教育に投資をする。そして、人を育てて、この地域を担う人材をつくっていく。こうした点について、例えば東北大学にそれこそ宮城県の合格枠を設定したっていいんだというふうに私は思うんです。

 そうした点について、ベンチャーの話と教育の話、ぜひ大山公述人にお考えを伺いたいと思います。

大山健太郎君 ニューオーリンズの件は私もよく存じ上げておりまして、これはやはりアメリカと日本のベンチャー気質の違いだと思っております。

 今回、たくさんのボランティアの方が全国から集まっていただきました。その人々は、何とかこの地のためにやりたいという気持ちがいっぱいでございましたし、また、先ほども申し上げた東北未来創造イニシアティブも、今、現実、気仙沼にも人材を派遣しておりますし、大船渡、釜石あるいは岩沼にも、この五月から人材を三、四名ずつ派遣をするわけでありまして、この人材のもとは、ほとんどの同友会の有志、大企業から、復興のために首長をバックアップするための人材も送っていただいている。周りの機運は物すごくあるんですね。だから、これを後押しするような施策が非常に大事なんだろう。

 たまたま先ほど申し上げましたベンチャー企業育成でも、内閣府、一年度予算なんですね。一年で本当にこの被災地がベンチャーで復興するはずはないわけであります。我々とすれば、今、一人三百万の支援をいただいていますけれども、これぐらいのお金で、なぜ一年で単年度で終わるのか。

 これは先ほどのお話でございます。海が見えない漁業。海と生きる。実は私、菅原市長とも非常に親しく、うちからも人を送っております。そんな形で、私は防潮堤をつくるのは反対をしていましたし、菅原さんもそういう意向であるわけでございます。

 なぜああなったんだというのは、二十三年度は、やはり遅い遅いと国民から、メディアから言われて、十二月に十九兆円の予算をつくった、そもそもそこが私はスタートなんだろうと。ですから、財務省さんだって、結局は、各省庁に案を出せと。それで、トータルやったら十九兆円。

 ですから、我々は最初に、復興庁は地元仙台に置けと言ったんですよ、第一次提言で。これが、霞が関に置いて復興局になった。局にも当社から一人出向しておりますので。詳しくはわかりませんが、どちらにしても、やはり縦割りの現実は事実でございます。

 そういう形の中で、結局は、東京で考える復興で実は十九兆円がついてしまったんだろうと。今回のプラス六兆円は、まさに今度は地元で、今、復興庁が本格的な機能をという形で、我々、三次提言で申し上げております。

 当初我々が宮城県で議論した件を申し上げますと、今回の津波は、国土地理院もそうでございますし、国土交通省もそうですし、各メディアも、実はビデオが全部残っているんですよ。ですから、被災の現状、十八メーターとか十五メーターの津波が来ましたけれども、陸に上がってからの進み方というのは実は違うんですね。そのまま十八メーターが内陸に来たわけじゃないんです。

 そう考えてみますと、当初我々が考えたのは、海岸線から一キロ程度引っ込んだところに高盛り土の県道をつくって、それを第二防波堤にしたらどうなんだと。そして、その一キロの間は国が借り上げるか買い上げて自然公園にした方が、トータルで絶対コストが安いわけですね。道路は生きるわけであります。

 そういう意味では、防潮堤、幾ら立派なものをつくったって、あれは生きないわけであります。先ほどの話じゃないですけれども、何十年後にはまた直さなきゃいけない。

 もう一つ申し上げますと、奥の細道で松尾芭蕉さんが歩いた道路は一切被災していないのであります。御案内のように、松島も、瑞巌寺がございます、ほとんど実は津波に遭っていないわけであります。昔の人は、やはりちゃんと、要するに、どこに住み、何を生業にするのかと考えていたんですね。

 お話しのように、便利便利でずっと前に行ってしまったが結果、大きな被害になったということで、もう一度、そういう意味では、地元にはそういう知恵があったんですが、予算がついた後はもう我々どうしようもなくて、復興交付金がついたからといいましても、ほんのわずかで、ほとんどが実は使えなかったというのが現状でございました。

柿沢委員 仙台経済同友会代表幹事という肩書を持つ方から、私はコンクリートの防潮堤は反対です、こういうお言葉を聞いたのは、私は正直申し上げて意外でもありましたし、やはり現場に赴いて現場を知る人の話を聞かなければ、正しい政策はできないんだなということを感じさせていただいたような気がいたします。

大山健太郎君 済みません、ちょっと補足を。

 これは仙台平野の話でございます。三陸、リアス式のところはやはり防潮堤をつくらないと。だから、全てが要らないと言っていることではなく、仙台平野のところということだけ申し伝えておきたいと思います。

柿沢委員 どうもありがとうございます。

 ちょっとこだわるようですけれども、教育の部分です。

 十八歳人口一人当たりの東北大の合格者、これを比べてみると、宮城県は十万人当たり百六十九人合格している、秋田百二十六人、岩手百十二人、山形百十人、青森百一人、そして福島は五十六人なんですね。

 やはり、この福島と宮城の人材育成、エンパワーメントといいましょうか、こういうことを東北大学という国立大学法人の大学で行っていくというのが、私は今後、長期的に見て、東北の復興の鍵を握る部分があるんじゃないかと思うんです。だからこそ、先ほど宮城、福島に特別合格枠みたいなものを設けてもいいんじゃないかということを申し上げたんですけれども、これに関して、ぜひ御意見を伺いたいと思います。

大山健太郎君 たまたま私は東北大学の総長の顧問もさせていただいておりますので、大学の内容はよく熟知しております。

 その前に、宮城県自体が大学進学率が低いのであります。これはなぜなんだろうということであります。やはり、豊かなところで、進学熱が比較的少ないんではないかということが一般的に言われております。

 そういう点では、宮城県の学生がレベルが低いということではないんですが、旧帝大、全国から、関西からも、東京、京都で入れない人が、東北大は人気がございますので、来ているので、競争が激しい結果がこうなっているんだろうと。

 もう一つ、大学の立場でいいますと、レベルアップをするために、今、東北大学は必死になって国際化を進めております。英語教育をやりながら、海外から優秀な学生を。そうしないと、世界の中から東北大学のポジションというんでしょうか、これが、もちろん学部によって二桁のところもあれば三桁のところも現実あるわけですね。大学とすれば、より高度な教育、高度な研究を目指したい。それと地域の今の進学率の中で、特別枠というのは大学にとってはいかがか、私は総長ではございませんので何とも言えないんですが。

 反面、東京に近い。ですから、東京の大学にたくさん行かれるということも現実としてあるのではないだろうかな、こう思っております。

柿沢委員 時間も参りましたので終わりにさせていただきたいと思いますが、非常に多くの部分で問題意識を共有できたのではないかと思います。これを具体的にソリューションとしてどう結びつけていくのかというのは、私たちの側の仕事でもあるんだろうというふうに思いました。

 本当にありがとうございました。

伊藤座長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 陳述人の皆様、本日は、本当に長時間ありがとうございました。

 やはり、こうやって東京から地方に足を運んで皆さんの話を聞くということが、私は沖縄選出の国会議員ですので、沖縄から東京に声を運んでいるという感覚で聞かせていただくと、実に、東京に復興庁を置くべきではないという意見とか、あるいはもっと現場が必要にしているものを迅速にやれとか、生の声を聞かせていただいているんだなというふうに思います。

 ですから、そういうことを考えますと、私が最後の質問者になるわけですので、ぜひこれだけは言っておきたいということも含めて皆様からお話を聞きたいと思いますが、そうはいいましても、いろいろ散漫になるかと思いますので、私の方から一つ、まず菊地さんと須能さんには、これから未来に向かっての人づくりのことについてお考えを聞かせていただきたいと思います。

 例えば、養殖にしましても、さあ、設備は整った、施設はあるぞ、順調に物も消費できるぞ、しかしそれを実際に、栽培漁業、養殖に携わる若い人たちがいないぞという問題も抱えていらっしゃるのではないかと思います。そういう観点から、現場における人づくりの問題点、そのためにこういう予算、こういう計画が欲しいというものをぜひお話を聞かせていただきたいと思います。

 それから、須能さんには、先ほどから感銘を受けますのは、六次産業化ですね。六次産業化を自分たちでやるためには、やはり今までのものにしっかりと目を向けつつ、しかし規制を緩和していって、どんどんそれを若い人たちに、次代の担い手として渡していきたいんだという思いがふつふつと込められていると思います。そのことについてお話を聞かせていただければと思います。

 では、菊地さんから順次、お二方、お願いいたします。

菊地伸悦君 おかげさまで、今現在、二年過ぎて、震災前の漁業者の戻っているパーセンテージは、約八割の方が戻っております。漁具の方も海の中におおよそそれぐらい入っております。ただ、水産物の水揚げ高はまだ六割弱になっております。それは何でか。漁港の整備、復旧がなされていない。

 例えば、去年、カキが大きくなりました、カキむき場に持っていきたいんだ。ところが、船を着けるところもない。何とかかんとか人の場所を借りて、交代交代で、二十そうある船が一そうずつしか着けるところがないので交代で揚げる。むくのになかなか時間が間に合わない。それで、カキの殻まんま、安いのをわかっていても殻まんまで出す。これはノリも同じ。いろいろな魚種が全部そういう状況なんですよ。

 ですから、今、先生から未来と。未来じゃなく今現在が、なりわいとして本当にこれからやっていけるのかということなので、なかなか未来のことが今絵に描けていないというふうに思っています。

 ただ、これまで、一つの漁場を、みんなで競争しながら、一二〇%ぐらいの漁具、設備を入れて、みんなで、我こそはというふうな養殖業また漁業をやってきました。ただ、今回、前段でお話ししたように、八割の方、恐らくは、マックスでも八五%ぐらいの方々しか戻らないと思っております。そうした場合に、その漁場をこれまでみたくけんか腰に使うというのでなく、それをあけようと。そして、密殖した、過密な養殖から、ゆるゆるの、潮通しのいい、栄養分のとれる、そういう養殖をやっていこうじゃないかと。

 それで、漁師というのはばかなもので、友達がきのう十万とったから俺は十五万とるんだ、うちの弟が二十万とったから俺は二十五万とるんだというような経営、丼勘定でやってきたことも確かでした。ですから、我々がいろいろな、台風なりなんなりで被害を受けるたびに、国の方に、補助金を下さい、何を下さい、いろいろな手を出してきたことも確かです。

 でも、今度は、そういう競争じみた経営じゃなく、自分のポジション、夫婦また息子、三人でやって、三千万の水揚げが一番いいのか、五千万の水揚げが一番いいのか、終わったときに懐または通帳に残る金、収益として残る金、一番あれなのがどこなのか、その辺を我々はこれから指導していきたいと思っております。

 それが未来というあれに結びつくか何だかわかりませんが、我々は、将来そういうふうな経営をしていきたい。

 そして、そういうふうな経営をすることによってこれまで以上に収益が上がれば、資材も、これまで一〇〇であれば八〇しか入らない。そうすると、労働時間も減ってくるし、それから資材代も減ってくる。そうした場合に、息子が、今のような経営なら、何とか車を買えるかな、いい車さ乗れるかな、いい船も買えるんでないかなというふうに、徐々にそのような方向づけをもって漁業をやるようにしていきたいと思っております。

 きょう先生方に一番お願いしたいのは、まず、県の方も、それから各市、町の方も漁港の整備は頑張ってやっているんだと思います。土井先生が後ろにいるから、宮城県の入札の不成立が今相次いでいます。ですから、さっき、どの先生かが、公共事業が、全体的に見ていたらもう大変なことになると思います。

 ですから、私は一番最初、ちょっと上がって舌足らずの言葉になりましたが、今、補助事業でやっていても、本当に船も入ってこないし、特に、造船場でつくる五トン以上の船が、まだ三分の一も、四分の一ぐらいしか入ってきていないんですよ。何せ、近くの造船場が壊滅状態ですから。造船場が復旧しないのに、船をつくれるはずがない。あえてカタログ船のヤマハ、ヤンマーでつくって、ラインを持ってつくっているものが上がってきているという状況です。

 何せ、今回、浜の我々が魚をとってきて、それを陸域に揚げて、須能社長が言うように、加工施設が栄える、その加工施設で働く人がその近くに住みつく、これをやっていかないと、真ん中の加工施設があったって、魚がいなければだめなんだ。

 ただ、今、我々の同志である漁民がうちを建てるところがなくて困っている。仮設で、もうどうしようもないんだ、どこでもいい、海の近くでいいからかさ上げしてほしいというふうな悲鳴を上げています。そして、各仮設住宅に、みずから自分の将来を切っている方も大分多くなってきております。

 ぜひ、そういう状況も加味しながら、海は農水、何とか岸壁をつくったけれども、国交省の道路がもっと高くなるんだと、ではもう一回話し合いをしなければならないね、それが三カ月、六カ月。そういう状況で、きょう、先生方も名取の方を見てきた、瓦れきの片づけは終わっていますが、一切何もできていません。これは唐桑から山元まで全部同じです。

 ですから、もう少し使い勝手のいい、もう少し現場の自由になるような配分方法をやっていただければと思っております。

 どの先生方が来ても、千年に一回、二千年に一回だと。ところが、それが事務方の方に行くと、平常どおりの、平常時のルールにのっとった書類の作成、申請というふうになっているように聞いております。県の条件も同じです。

 ですから本当に、原口先生なり、また玉城先生、民主党時代に、潤沢な金があっても使い切れない、消化し切れないということもありますので、ぜひ、我々のところを今助けてほしい。これから三年、五年たって、よくなったら助けてもらわなくたっていい、税金だけ払うから。今助けていただかなければ行政は何のためにあるかわからないと思っています。何とかお願いいたしたいと思います。

須能邦雄君 まず、人づくりの件ですが、水産系の学校、あるいは海洋という名前になっていますけれども、全国に多分四十五校ぐらいあります。これは文科省の管轄で、やはりカリキュラムがありまして、私は石巻の水産高校の評議員を十何年やっていまして、私も授業に出ていますけれども、もっと現場の人を授業に活用し、座学じゃなくて現場に出せというようなことなんですけれども、なかなか、やはりカリキュラム制度があって、実際には、水産庁の実情と、要するに省庁間の横のつながりがないんですね。ですから、人材教育というのは、産業面から言っている話と学校教育上の話とがマッチングしていないんですね。

 ですから、ぜひこれを機会に、その辺を柔軟に考えてもらいたい。そのためには、どんどん外部の人を入れて活性化するということが大事だと思っております。そういう意味では、現場に出たり入ったりさせていただければいいと思います。

 それから、六次産業化の話は、本来は、産業が進めば進むほどそれぞれが専門になって、あとはベストミックスだと思うんです。魚をとる人、加工する人、それから売る人がどういう選択肢でやるかということは、ベストミックスが本来だと思うんです。

 それを一カ所で全部を完結しようとすると、どこかに力関係があって、それが主従関係になってしまうので、一見、何か六次産業化というのはバラ色に見えるけれども、特に水産の場合は、浜の人たちが、未利用資源に近いものを手間暇かけて、海に行かなかった年寄りが加工技術を教えてもらって加工し、道の駅だとか量販店の片隅でもいいから店を出させてもらって、ぼけ老人にならないような、社会復帰といいますか、そういう支援で、あくまで六次産業を、すぐ利益の追求というんじゃなくて、誰もが働くんだという意味の六次産業化からまず始めてもらいたい。さらに、今言うように、もっとビジネスとしてできるのであればそれはやってもらってもいいんですけれども、全てそういう議論を公にして、それぞれの関係者が集まった中で、ベストミックスで、結果としていろいろなスタイルができると思うんです。

 そのためには、まず、食べる、魚食普及が大事なのであって、調理法だとか、そういうものを今魚屋さんが教えてくれなくなってしまって、家では、もうできたものを買ってきて食べる。そうすると、骨なし魚が当たり前になってしまった。

 そういうものも含めて、流通のあり方とあわせて、一つの道だけでは解決しないということでお考えいただければありがたいと思います。

 以上です。

玉城委員 ありがとうございます。

 現状を早く復旧するための手だてというものが、このように我々がただ予算をつけるだけではなく、それぞれの省庁に任すだけではなく、どういうふうにしてそれを、いわゆる役所のベストミックスをしていくかということが必要ではないかということを、本当に御意見から伺うわけです。

 それでは、今度は大山さんに、仙台経済同友会で過去三次にわたって提言をしていただいたこと、その中には、先ほどの介護大学のように、しかも国際化していこうという、まさに人をここに呼んで、学ばせて、住まわせて、継続させるためにはどうするか、その人づくりの観点から同友会が提言してこられたことをもう一度しっかりお聞かせいただきたい。

 ただ、介護大学の件は先ほど未途先生の方で聞かせていただきましたので、それ以外で、例えばベンチャーですとか、いろいろな形で若い方々への提言があれば、ぜひお聞かせをいただきたいなというふうに思います。

 よろしくお願いします。

大山健太郎君 実は、経済同友会では、なかなか教育の方までは議論が行き届いてございませんで、あくまでも、復興に貢献する、それと、アジアとの交流ということをテーマにしてずっとやらせていただいております。

 やはり、どうあれ、今回被災して、御案内のように、世界各国から、台湾からは二百億というような巨額な支援もいただいておりますし、ロシアからもいただいておりますし、本当に世界じゅうからいただいておるわけであります。そういう点では、逆に言いますと、この仙台というのが全国的に、世界的に認知度が上がったのではないかと。一番は福島でございますが、これは、ある意味でいうとダメージの代表になってしまったわけでありますが。私は、やはり国際交流をいかに、もっともっと広げて、ふやしていくのか。

 仙台は支店経済でございまして、異口同音に支店長さんがおっしゃるのは、今度東京に戻るとかほかの地域に帰られるときに、もう一年、もう三年住みたかった、そういうお言葉が圧倒的に多いわけであります。

 ですから、住については、非常に恵まれた、住むという意味では、本当に、大学もたくさんございますし、あるいはデパートを含め医療機関を含め、日本の中でも非常に恵まれた地域なんだろう、このように私は思います。

 ただ、どちらかといいますと、私は出身が大阪で、四十年前にこちらに来たわけでございますが、そういう点では、西日本から見ますと、東北は余りにも遠く感じます。今回の震災以降を含めましても、関東は非常に、隣ということもありまして、風化はなかなかしないんですが、残念ながら、大阪は、大阪というか西日本に関しては、一日一日実は風化が始まっているような気がいたしております。

 ですから、そういう点では、仙台空港もございますし、新幹線も東京から一時間半で来るようになりました。いかに交流をふやすか、そこがやはり一番のポイントなのではないだろうかな、僕はこのように思っています。

 それと、先ほどの進学率の問題でございますが、東北大学だけが大学ではございません。こちらには国立大学がたくさんございますし、県立大学もございますし、私学もたくさんあるということで、地元の高校生にすれば、もちろん東北大を目指すわけでございますが、それでなくても、地元には伝統のある大学がたくさんある。

 そういう点では、学都仙台というような形で、仙台市が、今百六万人になっておりますが、多分にこれは百十万人ぐらいになるのではないだろうか。被災地からこちらへ来ている人でまだ住民票を移していない方もたくさんおられるわけですね。

 そういう点では、仙台市だけで考えてみますと、日本全国の中でも人口がふえている、宮城県は残念ながら人口が少し減少するというような一極集中になってきておるということでございまして、東北大学も、いかにより地域に密着するか、貢献するかという形で日々やっているわけでありますが、実は、大学が目指すものと地域の地場産業、地場企業との格差というんでしょうかが相当開きがございまして、その辺がなかなか進んでいないというのが現状でございます。

 こんなのでよろしいでしょうか。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、最後に針生さんに、お話を聞かせてください。

 海が見えない防潮堤、どんなに上げても、それは子供たちの成長の過程で、果たして本当に大人として成長する途中でどうなんだという、いろいろな、閖上ルネサンス計画の中身を読ませていただいても、本当に相感じるものがあるんですが、沖縄は、リーフ、サンゴ礁があるところは、自然の、いわゆる津波の防潮堤、津波受けだというふうに言われています。ですから、海の中にそういうものをつくり、そこで魚を育てるという考えは、私は、大変先進的なようでいて、実は自然に物すごくマッチングしていると思うんですね。

 最後に、そういう閖上ルネサンスの魅力をもう一度聞かせていただきたいと思います。

針生承一君 閖上ルネサンスは、一応名前としては海のいぐね、海のいぐねというのは、要するに魚礁ですね、魚礁と風力発電と、それから各魚礁の間に、二キロにわたってなんですが、遠浅のところしかできませんけれども、その間に養殖をやっていく、マグロでも何でもやれるんじゃないかということで、漁業の発展にもつながるんだろうということで提案しております。

 丘の方は、堤防を一切つくりません。その考えは、堤防というのは原状の復帰ですから、どんどん潮が上がってきますので、そういった場合は、日本の土木の技術だと浮かすというのがあるんですね、かわすとか浮かすとか。浮かす方ですね。浮いて住む。これは、いろいろ南洋なんかでも、少し浮いて、柱が浮いて住んでいるようなのがありますから、当たり前のことなんですね。

 例えば、清水のお寺なんかでもそうですね。懸崖づくりで、物すごい柱があって、平らにしないで、うまく住んでいますよね。まあ、青葉城もそうだったんですけれども。

 そういった本当の知恵があるわけですよ。みんな、何でかんで平にしたり堤防をつくったりするというところをやらない。そうすると、自然というのはそのまま、地形も全部守れるというようなことでございます。

 浮き島は、閖上の場合はこうしたんですけれども、町内会が十あったものですから、町内会ごとに十の浮き島をつくっていこうと。それで、それは八メートルぐらいの高さなんですが、全部ブリッジでつないで、そこは、ガス、水道とか、インフラは全部通っていきます。その下は、ピロティーだともったいないので、工場だとかいろいろなものがつくれますね。野菜工場でもいいし、企業で、大山さんのところに入っていただいてもいいし。

 ですから、そういったものに対しては、防災というだけじゃなくて、必ずなりわいにつながるものをつくっていくことによってまちづくりをしていったらいいんじゃないかという考えであります。

 それで、どうしても、なりわいがないところ、要するに生産がないところは町にならないんですね。今、いろいろな分譲地なんかを見ていても、生産がないところは二十年、三十年たって大体廃れてきますね。やはり生産というのが町の中に入っていないと、町としては成り立たない、活気がなくなるということは、今代の防災のときもそうです。ただ家をつくって住めればいいんじゃないかというのは、それは町にならない。町は生産しながら、物づくり、人づくり、事づくりがないといけないということで、そういったことを含めて、浮き島のようなコンパクトなものをつくって、それで行ったらいいんじゃないかと。

 それから、今まで日本の政策の中で、列島改造論以来なんでしょうけれども、持ち家制度を余り進め過ぎたなと。何かお城の殿様みたいにみんな一戸建てをとやっているけれども、実際はローンを払って、借りているのと同じですね、最後は。もう子供は継がないから、みんな分割して。それはやめて、もうちょっとみんなで一緒に暮らせるような、一緒にみとってあげられるような、そういった、例えば今ヨーロッパで言われるコレクティブハウスだとか、まあ、昔の長屋みたいなことですね。

 そういったことを今回の被災を転機にして考えていかないと、そういうことをしないと、年寄りのいるところとか子供のいるところがないから、福祉だけどんどんお金がかかっていくわけですよ。そんなのをやって、みんなでみとってあげる。それで、そばで仕事もできる。何か、本当の町というのかな、新しい町というのかな、そういったものもつくれるんじゃないかなということで、ただ単に住むところをつくればいいとか、水産が、ちゃんと工場ができればいいとか、そういうことじゃなくて、もっと総合的に助け合っていけるような町。今までの、孤立、独立して競い合っていくような町じゃなくて、要するに、手を結んで、一緒に住んで、みんなで見てあげて。

 それから、さらに、漁業にしてもそうですよ。もっと手を組んで、協業化して、みんなでもうけていこうとか、みんなで魚をとっていこうとか、そういったことに方向を切りかえていかないとだめなんじゃないかなというようなことで、この機会にそういったまちづくりになっていけばいいなというふうに思うのであります。

玉城委員 ありがとうございました。

伊藤座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、長時間にわたりまして現場から貴重な意見も賜り、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大きいものがあると存じております。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、本日の地方公聴会開催のため格段の御協力を賜りました全ての関係者の皆様方に心から感謝を申し上げまして、派遣委員団を代表しての御挨拶にかえさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後四時三十分散会


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