衆議院

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第22号 平成25年4月10日(水曜日)

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平成二十五年四月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    今村 雅弘君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      勝沼 栄明君    門山 宏哲君

      金子 一義君    金子 恵美君

      神山 佐市君    川田  隆君

      神田 憲次君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      小池百合子君    小島 敏文君

      小林 茂樹君    小林 史明君

      小松  裕君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    桜井  宏君

      笹川 博義君    清水 誠一君

      白須賀貴樹君    新開 裕司君

      新谷 正義君    末吉 光徳君

      関  芳弘君    田中 英之君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      高木 宏壽君    渡海紀三朗君

      長坂 康正君    西川 京子君

      西川 公也君    野田  毅君

      原田 義昭君    星野 剛士君

      牧原 秀樹君    宮路 和明君

      務台 俊介君    保岡 興治君

      山本 幸三君    若宮 健嗣君

      枝野 幸男君    大西 健介君

      奥野総一郎君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    中根 康浩君

      原口 一博君    鷲尾英一郎君

      遠藤  敬君    坂本祐之輔君

      重徳 和彦君    田沼 隆志君

      高橋 みほ君    中田  宏君

      中山 成彬君    東国原英夫君

      三宅  博君    伊佐 進一君

      浮島 智子君    佐藤 英道君

      井坂 信彦君    柿沢 未途君

      佐藤 正夫君    中島 克仁君

      山内 康一君    宮本 岳志君

      青木  愛君    畑  浩治君

      村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   山本 一太君

   国務大臣

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)     稲田 朋美君

   法務副大臣        後藤 茂之君

   財務副大臣        山口 俊一君

   文部科学副大臣      福井  照君

   経済産業副大臣      菅原 一秀君

   内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     亀岡 偉民君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   農林水産大臣政務官

   兼復興大臣政務官     長島 忠美君

   国土交通大臣政務官    赤澤 亮正君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   阪本 和道君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   西崎 文平君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           米田耕一郎君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            杉山 晋輔君

   政府参考人

   (国税庁次長)      西村 善嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  滝口 敬二君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     務台 俊介君

  秋元  司君     金子 恵美君

  伊藤信太郎君     鬼木  誠君

  大塚 高司君     井上 貴博君

  大塚  拓君     西川 京子君

  奥野 信亮君     星野 剛士君

  小池百合子君     川田  隆君

  塩崎 恭久君     神山 佐市君

  中山 泰秀君     勝沼 栄明君

  西川 公也君     斎藤 洋明君

  船田  元君     神田 憲次君

  牧原 秀樹君     工藤 彰三君

  若宮 健嗣君     木内  均君

  玉木雄一郎君     奥野総一郎君

  前原 誠司君     枝野 幸男君

  坂本祐之輔君     田沼 隆志君

  重徳 和彦君     三宅  博君

  中田  宏君     遠藤  敬君

  東国原英夫君     高橋 みほ君

  浮島 智子君     伊佐 進一君

  柿沢 未途君     井坂 信彦君

  佐藤 正夫君     山内 康一君

  村上 史好君     青木  愛君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     大塚 高司君

  鬼木  誠君     菅野さちこ君

  勝沼 栄明君     小林 史明君

  金子 恵美君     小松  裕君

  神山 佐市君     小林 茂樹君

  川田  隆君     小島 敏文君

  神田 憲次君     船田  元君

  木内  均君     若宮 健嗣君

  工藤 彰三君     白須賀貴樹君

  斎藤 洋明君     末吉 光徳君

  西川 京子君     大塚  拓君

  星野 剛士君     井野 俊郎君

  務台 俊介君     長坂 康正君

  枝野 幸男君     後藤 祐一君

  奥野総一郎君     玉木雄一郎君

  遠藤  敬君     中田  宏君

  田沼 隆志君     坂本祐之輔君

  高橋 みほ君     東国原英夫君

  三宅  博君     重徳 和彦君

  伊佐 進一君     浮島 智子君

  井坂 信彦君     柿沢 未途君

  山内 康一君     中島 克仁君

  青木  愛君     畑  浩治君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     奥野 信亮君

  菅野さちこ君     笹川 博義君

  小島 敏文君     清水 誠一君

  小林 茂樹君     桜井  宏君

  小林 史明君     國場幸之助君

  小松  裕君     新開 裕司君

  白須賀貴樹君     田畑  毅君

  末吉 光徳君     西川 公也君

  長坂 康正君     あかま二郎君

  後藤 祐一君     大西 健介君

  中島 克仁君     佐藤 正夫君

  畑  浩治君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     田野瀬太道君

  桜井  宏君     新谷 正義君

  笹川 博義君     門山 宏哲君

  清水 誠一君     田中 英之君

  新開 裕司君     高木 宏壽君

  田畑  毅君     牧原 秀樹君

  大西 健介君     中根 康浩君

同日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     伊藤信太郎君

  新谷 正義君     塩崎 恭久君

  田中 英之君     小池百合子君

  田野瀬太道君     中山 泰秀君

  高木 宏壽君     秋元  司君

  中根 康浩君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  鷲尾英一郎君     前原 誠司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房長阪本和道君、内閣府政策統括官西崎文平君、総務省自治行政局選挙部長米田耕一郎君、外務省アジア大洋州局長杉山晋輔君、国税庁次長西村善嗣君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君、国土交通省鉄道局長滝口敬二君、原子力規制庁次長森本英香君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 本日の午前中は、教育等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。

西川(京)委員 おはようございます。自由民主党の西川京子でございます。

 本日は、二十分という時間ではありますが、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 連日の予算委員会の質疑で、安倍総理以下皆様、本当にお疲れのことと存じますけれども、どうぞ、もうしばらくおつき合いをよろしくお願い申し上げます。

 アベノミクス、いわば経済再生、大きな柱が、好調に滑り出しました。その中で、いわば経済対策、成長戦略、これが今、これからの最大の課題だと思います。

 今、北朝鮮のテポドンの問題その他で大変厳しい緊張状態にある中で、やはり教育問題というのは、国の根幹でありますので、ゆるがせにできないという思いで質問させていただきます。

 そして、実は安倍総理の思いというのは、円高、デフレ対策、この低迷した経済を何とかしたい、そういう思いとともに、もう一つ、やはり日本を支えているのは、勤勉で真面目で働き者、そして道徳観の強い日本人がいたからこそ、戦後の経済発展、日本のGDPが世界第二位だったという実績は、その日本人自身がいたからだ、そういう思いが大変お強いと思います。

 戦後体制からの脱却、これはいわば、本当に精神性が高く勤勉であるという日本人の資質が、だんだん薄くなってきている、そういう危機感の中で、日本人の本当の、あの東北の大震災のときに世界に示したあの日本人の崇高な魂、そういうものをもう一回復活させることが、実は日本の成長戦略にも一番大きな力になるんだ、多分そういう思いでの教育再生だと思います。

 もう一つの大きな柱である教育再生ということについて、今回、御質問を集中して、お願いしたいと思います。

 今回、自由民主党の中で、隣の、筆頭でいらっしゃいます遠藤利明先生を本部長として、教育再生実行本部というのが自由民主党の中に設置されました。一月の後半からずっと、教育再生について、党の部会でさまざまな議論が出てまいりました。

 その中で、今回、一応、中間発表ということではありますが、大きな、成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言ということで、一昨日、まとめたものを総理官邸にお持ちして、安倍総理にも御提言を申し上げました。これは新聞報道でもありますけれども、御存じない方もいらっしゃると思いますので、少し御説明させていただきます。

 安倍内閣の掲げる経済再生には、人材養成が不可欠、成長戦略実現上、投資効果が最も高いのは教育である、そういうことで、いわば結果の平等主義、ゆとり教育もその中に入るのかもしれませんが、結果平等主義から機会平等の社会、そして、個人が、努力した者が報われる結果として、教育の実態もそういう方向に持っていかなければ、これからの、トップを目指す戦略のある人材は育たないのではないか、そういう中で、それとともに、やはり全体的な国の総合学力も底上げしていかなければいけない、そういう思いでの提言です。

 それは、グローバル人材育成のための三本の矢ということで、実は、英語教育の抜本的改革、これは私もそうでございます、決して英語は得意ではございません。中学、高校、大学と十年近く英語を学びながら、ほとんどの、大部分の人が英語がしゃべれないという現実。

 これは、やはりこれから本当に世界を相手に活躍していく中で、英語ぐらいは当たり前にしゃべれるのが基本になるだろう、そういう思いの中で、いわば教養主義的な英語教育から、実用英語、しゃべれて、聞けて、それを一つのツールとして使いこなせるだけの基礎をつくる英語教育、そういう方向にこれから大きく変換していこう。

 そして二番目の柱が、イノベーションを生む理数教育の刷新。

 山中教授のiPS細胞のすばらしい成果は、日本じゅうに大きな勇気と感動を与えてくれました。この基礎になるのが、実は理数教育。こつこつと研究も含めて、そういう底辺を広げていくためにも、今の大学の文科系は国社英と三科目しかやらなくていいというのが定着している中で、高校の段階でもうほとんど理数は要らないよ、そういう高校生が多く存在するということは、やはり国の大きな底力をかなりそぐ要素。そういう意味で、文系の人でもやはり最低限の理数はしっかりやらないとおかしいよね、そういう一つの矢です。

 そしてもう一つは、国家戦略としてのICT教育。

 今、これだけのIT社会の中で、やはり学校現場は、かなり中国、韓国、その他の国に比べておくれている現実がある。そういう意味で、ITを使いこなす優秀な教師の育成とともに、子供たちに、目から入る大きな感動を与える教育を進めていきたい。

 そういう思いでのこの三本の矢。遠藤本部長とともに、私も副本部長という立場で、安倍総理に御提言申し上げました。このことに関して、簡潔に総理の御感想をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先日いただきました自由民主党の教育再生実行本部の御提言の中には、今委員が御紹介になられたように、英語教育の抜本的改革やイノベーションを生む理数教育の刷新、国家戦略としてのICT教育について、グローバル人材の方策として我が国の教育再生や経済再生に資するものと考えておりまして、取りまとめに感謝申し上げたい、このように思う次第でございます。

 いずれにせよ、教育再生は安倍内閣の中心的な課題でございまして、初等、中等、高等教育がございますが、今まさに日本は人材で勝負をしなければ、もともとそうなんですが、しかも、それは、現在要求されているのは、グローバルな状況の中で勝ち抜いていくことのできる人材を養成していく。これは別に国家戦略というよりも、それぞれ個人が人生の選択の幅を広げていくためには極めて重要であろう、このように思います。

 同時に、今委員が御指摘になったように、日本人であるということ、このアイデンティティーについてしっかりと教育をしていくことも重要ではないか、このように思っております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 実は、この結論を導くまでに、自由民主党という政党は大変自由な政党でございますので、党の部会での意見は百家争鳴という状態で、いわば英語がぺらぺらしゃべれて、その中身がない人間を育てたってしようがないだろう、国際的に通用する国際人というのは、実は、本当に日本人として自分の国を愛し、日本の文化あるいは歴史、伝統、そういうものに深い造詣を持った教養人、それが世界に通用する日本人だろう、そういう意見が大勢でございまして、いわば英語教育とICT教育、そして理数、この三本に絞った提言というのにはかなりの批判も出ました。

 いや、実はそうではないんだと、もう一つ、やはり今のいじめの問題から含めて、日本人の精神、道徳教育の必修化とともに、日本人の魂を育てる教育、それが一番大事なことであって、これは、この中で、今回は成長戦略に資する人材、三本の矢ということで提言したということでまとまりました。

 今回、一番その根本にある、本当に、自分の国がすばらしい、そして、日本人としてこの地に、この島国に生まれてきてよかった、そういう思いを持っている子供たちが育っていかなければ、日本の将来はない。私は、この精神のところの根本的な教育、このことはやはり一番大事だと思うんですね。

 実は、その問題に関して、学校現場で教えている教科書あるいは入試の状態、そういうのが、この戦後ずっと日本の教育界あるいは歴史学会を覆っていた自虐史観、反日思想、これが色濃くまだまだ出ている今の状況、これに大変憂慮を持っております。

 特に、今回、教育基本法を改正した新しい学習指導要領の中での初めての検定制度、その中で、検定で合格した高校の教科書、これに、歴史教育の部門で大変看過できない状況の記述が数多く散見されますので、具体的にその話をちょっとさせていただきます。

 このパネルを皆さんに見ていただきたいと思います。

 この右上の日本史の教科書、これはある出版社が出しているところで、大体五〇%ぐらいのシェアを持っております。

 この中で、ちょっと一つの説明のところを読んでみますが、戦地に設置された慰安施設には朝鮮、中国、フィリピンなどから女性が集められ、いわゆる従軍慰安婦とあります。このいわゆる従軍慰安婦という言葉自体、朝日新聞その他のマスメディアがつくったいわば戦後の造語でありまして、そういう組織はなかったんですね。

 また、女性の私が申し上げるのも大変心痛む話でありますが、当時の貧しさゆえのいわば売春、それは、日本が統治している時代の朝鮮においても、キーセン学校、ここの右下にもあります学校、そういういわば風習というか、そういう制度は公にあったわけですね。

 日本でも、昭和三十四年でしょうか、売春防止法、これの前までは公に当然認められていた、職業としてあったわけで、そういう中での、軍隊と一緒にそういう施設がついていったという中でのいわば売春の話、これが、いわばメディアの一つの造語の中で、軍が関与して、略奪して、連れてきて、連行して性奴隷にしたというような大変ひどい話になっているのが、今の従軍慰安婦の、アメリカでの、韓国のいろいろなロビー活動の問題なんです。

 そういう中で、これはきちんと検証して、いわば単なる売春行為である、それは、いつの時代の戦争でも、どこの軍隊でもある話です。なぜゆえに日本軍だけがここまでおとしめられて言われなきゃいけないのか。そういう現実がある中で、教科書にそういう問題を、まだ明らかに、政治的にも歴史学的にも決着もしていない問題を載せる、こういう問題、非常に問題だと思います。

 そして、同じ教科書で、南京陥落の前後、日本軍は市内外で略奪、暴行を繰り返した上、多数の中国人一般住民、婦女子を含む、捕虜を殺害した、南京事件。

 この真ん中の写真をごらんになってください。日本軍が一九三七年十二月十三日、南京に入ったときの写真です。これは当時のアサヒグラフ。この資料は初めて今回出てきたんじゃないかなと思いますけれども、この当日、このときに、この地で大虐殺が行われていたという。全く死体も何もない、そういう中で、整然と日本軍が入っていった現実がしっかりと出ています。

 そして、その下の写真、これは、その十日後に、実は、中国の人たちが日本軍とともに自治会を自分たちで自主的に作成した写真です。

 その下、これは、中国の人たちが日本の国旗を振って、城壁の上の日本軍の人たちに手を振っていますが、これは一月一日、いわば虐殺の真っ最中、やっていたときの写真です。

 何よりもかによりも、この当時、一九三七年十二月の十三日以降、一月、二月、日本軍が三十万人を大虐殺したよ、そういうあれの中で、実は、日本に一番厳しい目を向けていたロンドン・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、この期間、この新聞社は、何も、一行もこの問題を報道していません。このことで、大きなこの事件が実はなかったことははっきりしているわけですね。

 そういう中で、先日、この問題を維新の中山成彬先生がされましたけれども、実は、そちらにいらっしゃいます、故中川昭一先生がつくられました日本の前途と歴史教育を考える会、これは自由民主党の中での議連の勉強会ですが、その中で、安倍総理も、もちろん下村文科大臣も入っていらっしゃったと思いますが、お二人が政府に入った後、私は事務局長を引き受けまして、中山会長のもとでこの問題を徹底して検証しました。

 その中で一番特記すべきことは、実は国際連盟のときに中国の顧維鈞外相が、その当時、二万人という数を出してきましたが、二万人の南京市民と婦女子を虐殺、暴行したという演説をしたんですね、日本非難決議をしてくれと。そのときに、実は日本に大変厳しい目を持っている欧米列強が、その意見陳述を一切無視しました。取り上げませんでした。そのことに対する国際連盟の議事録が二〇〇七年、私たちの努力で出てまいりました。外務省はなかなか出さなかったんですが、内閣府の方から出てきました。これは戸井田元衆議院議員の御努力があった結果なんですが、そういう中で、この問題は完全に決着がついているんですね。

 私たちはこの議連で、この南京の問題は通常の戦闘行為でも戦闘以下でもなかったと、これは憲政記念館で、二十社以上の外信の記者、いわばニューヨーク・タイムズ、その他、香港フェニックス、中国のメディアも来ていました、日本のもちろん朝日、読売、大手新聞が来ていましたが、記者会見しました。そのときに、一切反論はありませんでした。

 この南京の問題は、一九八〇年代、朝日新聞が大キャンペーンを張った中で、大きな政治問題として中国、韓国がこれを利用するようになった、これが実態です。ですから、この南京の問題、従軍慰安婦の問題は明らかに、通常の戦闘行為以上でも以下でもなかったという結論が実に正しいことだ、私たちはそういう結論を得ています。そういう結論が出ている問題を、あえて推論で教科書にたくさん載せる今の検定制度に、大変大きな疑問を持っております。

 そして、時間がなくなってきてしまいましたが、私、実はきょう一番言いたかったのは、私立の女子中学校、高校、もちろん男子もですが、私立の入試問題のひどい自虐史観、これが一番の問題だと思っております。

 実は、私立の中学校の受験というのは小学校の五年生、六年生。特に女子校が意外とひどいんですが、有名私立女子校の問題がこの真ん中のところですが、この中に今の従軍慰安婦の問題あるいは南京の問題、そしてどこの教科書かと思うような、伊藤博文を暗殺したのは誰ですかと。それがあたかも英雄のような書き方をしている。本当に、一瞬、私はこれは韓国の試験問題かと思いましたけれども、そういうものを導き出すような試験問題がいっぱいあるんですね。

 今の現状について、いたいけな小学校の子供たち、そしてお母様たちが一緒に予備校で一生懸命そういうものを必死で勉強する、これは本当にきいてきます。教科書以上に大きな問題です。これは、ある予備校の先生が意を決して私にこういう資料をくださいました。ぜひ、この問題について、教科書検定も含めて、下村大臣、一言、短くお願いします。

下村国務大臣 先日、サッチャー元首相がお亡くなりになりました。七、八年ほど前、サッチャー改革に学ぶ英国の教育改革ということで、超党派の議員で行ってまいりました。そのときに驚いたのは、戦勝国のイギリスにも当時、自虐史観の歴史教育があったということで、サッチャー首相がこの自虐史観を変えて、歴史には影の部分だけでなく光の部分もある、子供たちに自分の国に対して自信と誇りを持った歴史教育をきちっと教えなければならないと。

 我が国にも全く同様のことが言えると思いますし、委員が御指摘の点については憂慮すべきことが私もあると思います。客観的な学問的成果に基づいて正しく学び、誇りを持った日本人としてのアイデンティティーが確立される、そういうことが大変重要なことであります。

 そのために、教科書検定についての御指摘がありました。国会でも、ほかの党の議員からも指摘がありました。また、自民党の中でも教育再生実行本部においての提言等がある中で、これから教科書検定制度の現状とその課題を整理して、その見直しについて検討してまいりたいと考えております。

西川(京)委員 ありがとうございました。ぜひ、これは自民党のJ―ファイルにも載っておりますので、教科書検定制度、今後、しっかりと対応していっていただきたいと思います。

 私は、教科書議連、この議連でつくった「南京の実相」という、表紙が載っておりますが、この本を実は私たち、ポケットマネーで英訳本にいたしまして、日本文とこれを全部、アメリカの上院、下院の議員、五百三十五部、ポケットマネーで送りました。これが二〇〇九年のことです。その後、余り反応をいただいていませんが、そのときの中川昭一元会長のコメントがありますので、これを朗読させていただいて、質問を終わらせていただきます。

山本委員長 西川君、予定の時間は終了しています。

西川(京)委員 そうですか。

 では、中川昭一先生が大変な思いでこれを実現されたことを、ぜひ、私たちは一つの鎮魂の思いで御紹介させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。

 次に、浮島智子君。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子でございます。

 本日は、教育等集中審議で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、一期六年間、参議院議員として、そしてまた福田内閣、麻生内閣で文部科学大臣政務官として、教育行政に携わらせていただいてまいりました。

 また、約二年半の浪人生活を経て、そしてまた本日、衆議院議員としてこの場に立たせていただいておりますこと、真心からの御支援をいただいている皆様に心から感謝を申し上げます。また、この二年半、現場に戻り、たくさんの子供たちに触れ、子供たちを成長させるためには体験がいかに大切であるか、重要であるかということを再び学んでまいりました。

 きょうは、そんな観点から、文化、芸術、そしてスポーツ、体験事業、これらについて質問をさせていただきたいと思っております。

 私は、文化、芸術の力というのは、はかり知れないすばらしい力を持っていると思っております。東日本大震災でもたくさんの方々が勇気づけられました。

 また、十八年前ですけれども、阪神・淡路大震災、私も当時はアメリカでプリマバレリーナとして踊らせていただいておりました。この阪神・淡路大震災をニューヨークの自宅のテレビで知り、同じ日本人として何ができるだろう、させていただけるだろう、そんな思いでいっぱいになり、約十三年半ぶりに帰国をいたしました。そして、御両親を亡くした子供たち等々とミュージカルの劇団を立ち上げ、今期で十七期生を迎えるまでになりました。

 この十八年間、子供たちはさまざまなことを乗り越え、そして、自分にもやればできる、それを心に、合い言葉にしながら戦い続け、それぞれが、二〇一一年の三月、二十を迎えるまでに成長させていただきました。学校の先生、弁護士、医者、そして宝塚に入った子、それぞれがそれぞれの夢を見つけて強く成長していってくれたんです。

 こうして、文化というのは、新しい文化、芸術を創造すること、また、伝統文化を継承発展していくこと、そして誰もが気軽に触れる機会をつくっていかなければならないと私は思っております。

 そんな観点から、まず総理にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、総理がふだんどのような伝統文化、芸術にお触れになっているか、また、それにお触れになってどんな感想をお持ちかということを、まず初めにお伺いをさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 総理になってからは余り時間がないんですが、先般、新しくなった歌舞伎座に行ってまいりまして、「勧進帳」を鑑賞してまいりました。まさに四百年の伝統に裏打ちされた日本芸術の粋を堪能させていただいたところでございます。

 あの物語についても、弁慶と義経、主従のお互いを思いやる心、そして、事実を知っていながら、それをぐっと心に抑え込んでいくというか、のみ込んでいくという、日本ならではの人情を芸術の域に高めた、すばらしい日本の、やはり世界に誇るべき舞台だな、こんなように思ったような次第でございます。

 バレエも、かつて、少し前でありますが、「くるみ割り人形」をロシアで、当時私は官房副長官だったんですが、小泉さんと一緒に見に行ったこともあるわけでございます。日本の伝統芸術もそうですが、伝統芸術だけではなくて、そうした舞台芸術、映画も含めて、日本のすばらしさ、まさにこれはクール・ジャパンなんだろうな、こんなように思うところでございます。

浮島委員 ありがとうございます。

 今総理もおっしゃったように、総理になってからお時間がなくてなかなか観劇することができない、行くことができないということでございましたけれども、まさしく、いろいろな方にお伺いをすると、大人になると時間がない、忙しい、だから行けないという方が多いんです。

 私は、そんな観点から、子供のときから、小さいときから見て聞いて触れる、この状況をつくっていってあげなければならない。今も総理の方からのお話もございましたけれども、いろいろなものを見て、そこから学ぶことがたくさんあると思います。また、そこを見てから夢を膨らませる。例えば、私もいろいろな舞台に行って子供たちに聞くと、あんなすばらしい照明、そして舞台装置、建築家になってみたい、またヘアメークをしてみたい、いろいろな観点から子供たちが夢を膨らませております。

 私も、皆さんがひとしく文化、芸術、伝統文化に触れられるようにということで、美術品の国家補償制度や、高校生、フリースクールの学生さんたちを含めて、国立の美術館、博物館の無料、それも推進をさせていただいてまいりました。

 とかく推進をさせていただいてきましたのが、いわゆる学校公演。子供たち、小学校、中学校、義務教育の間に、学校の体育館、講堂あるいは近くの劇場にて、本物の一流の文化芸術団体が来て、そこで観劇ができるという事業でございます。

 私は、義務教育の間で最低年に一回、子供たちがいろいろな文化、伝統文化、芸術に触れてもらいたい、その拡充をしてまいりましたけれども、残念なことに、まだこの義務教育の九年間で多くて二回というのが現状でございます。これを最低年に一回にふやしていきたいと思っているところでございますけれども、この文化予算の拡充に向けて、総理の御決意をお伺いさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、少年時代にすぐれた文化に接する、感受性が豊かな子供時代にそういう感性を磨くものに触れていく、これは極めて教育上は重要なことであろう、こんなように思います。

 そういう意味において、そうした情操教育にもプラスになる、また、長じてからもそうしたものが教養となっていくわけでございますので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

浮島委員 しっかりと取り組んでいただきたいと思うのと同時に、ちょっとうれしい、すばらしい取り組みがあったので、一つ御紹介をさせていただきたいと思います。

 実は、二〇〇七年にフランスのサルコジ大統領が就任してわずか二カ月後になされたことというのが、グローバル化をしていく、これからどんどんネット社会になっていく、そして、フランスの子供たちもネットを一つ開けば各国のすばらしい伝統や文化、芸術に触れることができる、でも、そんな中で一番大切なのは、自国のすばらしい伝統や文化、芸術、これをしっかりと学んだ上で各国のことを学んでもらいたい、そんな観点からされたのが、各芸術の歴史の義務化、この法律を通過させたということでございます。

 この法律を通過させたことでどういうふうになったかといいますと、この科目の導入と並行して、各学校における芸術プロジェクトはより多くの生徒が芸術に触れることができる機会をふやすためにつくられた枠組みであるということで、子供たちが芸術に触れていく機会がどんどんどんどんふえているということでございます。

 このようなすばらしい取り組み、これもどんどんどんどん推進をこの日本でもしていかなければならない、私も全力でこれから取り組んでまいりたいと思っております。

 また、今いじめの問題がとても深刻な中、心で学ぶ教育、私はこれがとても大切だと思っております。この体験授業を充実、拡充していかなければならないと思っております。

 今、道徳をしっかりとしていかなければならない、さまざまなところでいろいろな議論がされております。でも、私は、例えば、アスリート、メダリストたちが学校に行って、メダルをとるためにはこんなに大変な苦労をする、こんなに大変なんだ、そういうことを話すこと、また、戦争を体験された方のお話を聞くこと、こういうことも大切だと思っております。

 大津でも悲しい出来事が起きてしまいました。でも、驚くことに、この大津の学校は道徳のモデル校であったということでございます。ペーパーで学ぶだけではなくて、私は、心で感じて心で学んでいく、心で学んだことは忘れないと思っております。

 心で学んでいく教育、大人の背を見て子供は育つといいますけれども、我々国会議員一人一人もしっかりとした規範意識を持って行動していかなければならないと、今、自分でも言い聞かせているところでもございます。

 実は、私が阪神・淡路大震災から帰ってきまして、中学生の男の子が、阪神・淡路大震災で御両親を目の前で亡くされました。柱の下敷きになってしまったんです。その当時、その男の子は中学生でした。ある程度、力があります。一生懸命柱を動かした。だけれども、動かすことができなかった。両親は火が回ってきてしまって焼死をしてしまいました。僕が両親を殺したんだ、彼はずっと自分を責め続けておりました。でも、劇団のボランティアとして入って十年たった日に、先生、ごめん、今まで僕はいろいろな人を責めてきた、でも、僕には両親の命は救えなかったけれども、多くの人の命を救う医者になりたい。彼は一生懸命勉強して医大生となって、今は現場で医者として活躍をしております。

 また、今回、東日本の大震災を受け、それぞれの劇団員が、自分たちが元気になったのは日本全国の人、また世界からの支援があったから、御恩返しをさせていただきたい、そんな思いで、東北の方に二回ほど、四回公演をさせていただきました。もちろん、阪神・淡路大震災を体験した子も行きました。でも、今の小学生は体験をしていません。その子供たちも連れていきました。心でたくさんのことを学び、帰ってきました。

 ある学校に行きました。教室に入ったら、黒板に、三月十一日、明日香という名前が書いてありました。明日香ちゃんはその日、日直だったんです。黒板をきれいに拭いて、二〇一一、三月十一日、明日香と名前を書きました。その後に津波が来て、彼女は流されてしまいました。でも、驚いたことに、その黒板の明日香の明の字、その上まで津波が来た線がはっきりと残っております。でも、明日香という文字はにじんでもぶれてもいません。

 そこで、子供たちに私は、これは明日香ちゃんの気持ちだ、明日香は学校にいた、これからもしっかりと生きていく、光り輝いていくから、みんなも私の分を生きて、その明日香ちゃんの気持ちが文字にあらわれているんだという話をしました。

 子供が、帰ってきて、私に泣きついてきました、先生、ごめんなさいと。どうしたのと聞きましたら、実は私は苦しかった、誰にも言えなかった。自分は学校でいじめをしていた。でも、どうしてもとめられなかった。でも、今回いろいろな体験をしてわかったんだ。この間も大嫌いないじめをした子がいた。その子が困っていた。ふだんだったら、ふん、ざまあ見ろと言った。でも、そばに行って抱き締めていた。その子が、優しくなったんだねと声をかけてくれて、慌てて自分もその子の顔を見て、何でだろうと思った。自分の目からも涙がぽろぽろ出てきて、抱き合って、それからは親友になった。これからはいじめはしていかない、そして、いじめをしている人がいたら勇気を持ってとめていく。先生、ありがとう、ごめんなさいという言葉を言ってくれたんです。

 こうして子供が体験をすることによってさまざまなことを学んでいくこの体験事業、総理の所信表明演説の中にもございました。みずからの力で成長していこうという気概を失ってしまっては、個人も国家も明るい将来を切り開くことはできませんと述べられておりましたけれども、直接体験と生きる力、人間、肌身で感じる、命で感じるといった、経験を通してしか学べないことがたくさんあると私は思っております。人間にとって最も大切な生きる力というのは、自発的な体験や人と人との触れ合いの中で養われるものだと私は思っております。

 そんな中で、今、道徳問題、教科化する、いろいろ話がございますけれども、私は、文化、芸術、そしてスポーツ、キャンプ、体験事業、自然体験、心で学ぶ、感じ取る教育、これが今必要不可欠だと思います。このようなさまざまな体験活動、これを充実させるべきと思いますけれども、総理の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が例として挙げられましたスポーツやキャンプ、自然体験などの体験活動の充実は、規範意識、あるいは他者や社会とかかわる能力をまさにその場その場で育んでいくことになるわけでありまして、極めて重要であるというふうに考えております。

 このため、政府としては、一流の芸術団体等による巡回公演等や青少年教育施設における宿泊体験活動などに努めておりますが、今後とも、子供の文化芸術体験活動や自然体験活動等の推進を図るため、必要な予算の充実等に努めていきたいと思います。

浮島委員 なかなか日が当たらないところでもございます。そして、財政状況が非常に厳しい中でございますけれども、心はしっかりと黒字にしていかなければならないと思っておりますので、どうかこの体験事業充実に総理の御尽力をいただくようにお願いをさせていただきたいと思います。

 また、先ほどからもありましたクール・ジャパンに関してでございますけれども、伝統文化の事業、これが大切でございます。

 先ほど来からお話がございました。一人一人がどれだけ自国の歴史、文化を理解し、それを海外にもしっかりと伝えていく力、これを養っていかなければなりません。

 我々自公政権では、平成十五年から二十二年度まで、伝統文化こども教室というのを開催させていただいておりました。約四千の団体、小さい団体ですけれども、しておりましたけれども、残念ながら、前政権下で二十三年度からはこれが廃止されてしまいました。

 そして今回、この二十五年度の予算案の中で、伝統文化親子体験教室事業というのがまた独立した事業として設置をされるところでございますけれども、この予算の拡充、充実はもちろんのこと、申請の仕組みがとてもしづらくなっておりますので、どうか、小さな団体、地域に根差した小さな団体が申請しやすく、前回の伝統文化こども教室のときにしていた申請のように戻していただきたいということを要望させていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 委員御指摘のように、子供が伝統文化に直接触れ、体験することは、子供の感性を育む上で大変重要なことであるというふうに思います。

 文部科学省としては、できるだけ多くの子供たちが地域の伝統文化を体験する機会が得られるよう、伝統文化親子体験教室事業の積極的な実施を各都道府県に呼びかけるだけでなく、各自治体ごとの実施状況を公表するなど、この事業が積極的に活用されるように努めてまいりたいと思います。

 これは、全額国費負担でございます。地方自治体の負担はゼロでありますから、積極的に国も先頭に立って呼びかけてまいりたいと思います。

浮島委員 ありがとうございました。社会のための教育ではなく、教育のための社会の構築のため、私も全力で頑張ってまいります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて浮島君の質疑は終了いたしました。

 次に、枝野幸男君。

枝野委員 よろしくお願いいたします。

 教育にはいろいろな観点からの問題点がありますが、経済的な理由等により十分な教育の機会を受けられない、こういったことがあると、機会の均等、頑張った者が報われる社会をつくっていく上での大きな障害となります。

 親の経済力と、学力やあるいは学歴との関係というのについてはいろいろな調査もなされているようでありますが、私は、この質問に当たって文部科学省から幾つかの資料をいただきましたが、一番明確なのは、二〇〇七年に東京大学の研究センターが高校生の進路追跡調査を行った。これを見ると、高校卒業後の進路、親の年収が四百万円以下だと、大学に進学される方の比率が三一・四%、就職などされる方の比率が三〇%。これが、親の年収が一千万円を超えると、大学進学をされる方が六二%、二倍になり、そして就職等される方は五・六%。

 つまり、親の収入によって、大学に行く方、行かない方というのは相当大きな違いがあるということのようですが、この事実関係、そして、こうした傾向について確認をしたいと思います。

下村国務大臣 委員御指摘のように、東京大学の政策研究センターは、この相関関係があると。高校生の親の収入と高校卒業後の四年制大学への進学率の関係について一定の相関関係を示すデータであるというふうに我々も承知しております。

枝野委員 親の立場からすれば、ほとんどの親御さんが子供にはできるだけの教育を受けさせたい。したがって、自分の収入の範囲内で最大限の教育を受けさせようと多くの親御さんが思われる。したがって、親の経済力によって教育にかけられるお金に差がついてくるというのは、親の立場からすれば、私も親の一人として、ある意味で当然だろうと思います。

 しかし、社会全体として考えたときには、これはまさに機会の均等を損なうことでありますから、これをしっかりと是正するということが重要になるというふうに思いますが、その重要性についての認識と、これを教育という枠組みの中でどういった対応をされているのか、お答えください。

下村国務大臣 御指摘のように、教育の機会均等、これは大変重要な課題であるというふうに思います。格差社会と言われている中で、文部科学省は、これまで以上に奨学金事業や授業料の減免の充実等を通じた家庭の教育費負担の軽減や、それぞれ個に応じた指導の充実などにより、家庭の経済状況によって教育格差や学力格差が生じないようさらに努力してまいりたいと存じます。

枝野委員 奨学金とか授業料の減免ということは大変重要なことでありますが、例えば大学に進学をするといった場合に、高校の授業だけで希望するような大学に受かる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、多くの高校生が塾とか予備校とかいろいろ通われる。こういったところには今のような支援というのは基本的には及ばないことになるわけですね。そういったところで、まさに学費を払えるかどうかということ以上に、親の収入が子供の学力あるいは進学ができるかどうかということに影響を与えてしまうということがあるというのは社会の現実だろうというふうに思います。

 そうすると、教育の機会均等をできるだけ実現しようとする場合には、今おっしゃられた文部科学省的な機会均等のための努力と同時に、格差の拡大をしっかりと抑えていく、あるいは格差を是正していくということが私は教育の機会均等という観点からも重要だろうというふうに思います。

 その上で、そうした認識に基づいて、現在の経済状況についてお尋ねをしたいと思います。

 現在、株が大変値上がりをしております。そのこと自体は結構なことだと思います。あるいは景気回復についてのさまざまな期待の声も寄せられています。これも結構なことだというふうに思います。ただ、この二十年、いわゆるデフレが続いている、日本の経済の閉塞状況と言われていますが、この間もいろいろな時期がありました。

 例えば、二〇〇六年ごろをピークとして、これは各年の大納会、つまり年末の株価の終わり値ですが、二〇〇二年に八千五百七十八円であった株価が二〇〇六年には一万七千二百二十五円まで値上がりをする。株が非常に上がったという時期がございました。

 それから、その時期は、これは二〇〇七年がピークになるでしょうか、民間の法人企業所得は、一九九七年を一〇〇とすると一五〇、一・五倍にまで約十年間で伸びるというようなことも起こっております。

 そして、その当時は、二〇〇二年の一月から二〇〇八年の二月まで景気上昇局面が続いて、イザナギ景気とか、かつての経済がよかった期間を超える過去最長の景気上昇局面という時期が二〇〇二年の一月から二〇〇八年の二月まで続いていた。

 これらの事実関係をまず確認したいと思いますが、間違いありませんか。

西崎政府参考人 御指摘のとおり、株価につきましては二〇〇六年末に一万七千円を超える水準まで上昇しておりまして、企業の経常利益につきましても、法人企業統計の金融・保険業を除く全規模、全産業で見ますと、二〇〇六年度におきまして約五十四兆円と、過去最高となっておりました。この背景には、御指摘のように、この間、景気拡張局面にあったということがございます。

枝野委員 確かに、この二〇〇〇年代の半ばというのは、景気がいいと言われていた時期がありました。ただ、やはり世の中の受けとめは、失われた二十年ということであります。それには理由があります。

 お手元に資料も配らせていただいておりますが、ちょうどこの景気上昇局面の時期に平均給与がどうなったのか、それから非正規雇用者がどうなったのかという統計、これも政府の統計です。平均給与は国税庁の民間給与実態調査、それから非正規職員の数というのは総務省の労働力調査によります。これによると、この景気上昇局面、そしてその間には株価も一万七千円台という大変高い数字を示した、あるいは、法人の企業収益も過去最高、バブルのときよりも高い、過去最高を示した、その時期に、一人当たり給料は、四百六十万円から四百三十万円まで下がりました。一方で、非正規雇用者の数は、一千三百万人から一千七百万人までふえました。

 まず、この事実関係は間違いありませんか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁が実施をしております民間給与実態統計調査によれば、一年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は、二〇〇四年が四百三十九万円、二〇〇六年が四百三十五万円、二〇〇八年が四百三十万円となっておりまして、平均給与は減少傾向であります。

西崎政府参考人 非正規雇用についてでございますが、総務省の労働力調査によりますと、非正規雇用者数は、二〇〇〇年以降二〇〇八年まで継続してふえ続けていたというふうに認識をしております。

枝野委員 景気回復局面にもかかわらず、しかも、景気回復局面がこんなに長く続いたにもかかわらず、その間、平均給与は下がり続け、そして非正規雇用者がふえ続けました。

 パネルまで用意はいたしませんでしたが、この間起こっていることは、所得階層別の人数、所得が年間百万円以下の皆さんの数というのは、二〇〇二年と比べると、二〇〇八年ごろまでに二〇%ぐらいふえています。二百万円以下の皆さんもそんな感じの数であります。一方で、年収八百万円を超える皆さんの数は一割ぐらい減っております。つまり、低所得者層が大きくふえた、あるいは、中間層から低所得者層に移る人たちが大変ふえたというのが、前回の景気回復局面の実態であります。

 今回、株価が上がり、景気がよくなることに対する期待が高まっております。今回は、あのときと、こういった問題についてどういう違った対応をなされるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、二〇〇六年の話をされました。景気が回復して株価が最高値をつけた。私はよく覚えているんですが、なぜかといえば、私が総理大臣だったんですよ。二〇〇六年そして二〇〇七年、これは二十一世紀に入って最高値でありました。株価が上がったことによって、例えば年金の運用は、三兆円運用益が出たんですね。つまり、これは全ての方々の年金にとっても大いにプラスであるということはまず申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 そして、なぜそこでそうなったか。二つあると思うんですが、一つは、グローバル化の中において、いわばグローバルな経済の中で我々は勝ち抜いていかなければならないという中において、さまざまな、いわば仕事をする上において、非正規、正規という仕事の仕方についての多様性が出てきたということもあるんだろう、このように思うわけであります。

 もう一つ大きな点は、残念ながら、その段階においてもデフレは続いていたんですね。企業マインドとして、いわば給料を上げようというところには、なかなかこれはいかないんですよ。つまり、デフレがずっと続いていた。そして、かつてバブルの崩壊を経験しておりますから、どうしても企業は身をかたくして内部留保をためておくということになってしまったわけであります。

 今回は、そこを反省しながら、まずはデフレから脱却をしていく、これに大きな重点を置いているわけでございまして……(発言する者あり)済みません、静かにしていただけますか。よろしいですか、今、大事なところですから。後藤さん、いいですか。岸本さん、よろしいですか。

 そこで、大切なことは、大胆な金融緩和を行いました。そして、デフレマインドを変えていくということなんですね。デフレマインドを変えていくということはどういうことかというと、いわば、物の値段が下がっていかないということになります。つまり、物の値段が下がっていかないわけでありますから、物の値段が上がっていくかもしれないというインフレマインドに変わっていけば、いわば、投資を行い、そして設備投資を行っていく、そして、企業の収益が上がってくる中において、いよいよ、従業員の給料を上げよう、こういう段階に入っていくわけでございます。しかし、デフレマインドが続いている間は、物の値段が下がっていくんですから、結果として、どうしても、給料は下げていく、そういう状況が続いていくわけであります。

 そして、二〇〇六年という象徴的な年を挙げられたわけでありますが、この二〇〇六年の三月の政策決定会合において、残念ながら、量的緩和をやめてしまったということなんですね。これが極めて大きかった。これをやっていなければ、その後も、いわば成長していくという局面は維持していたわけでありますから、ここでしっかりと金融においてサポートしていただければ、デフレから脱却できた。

 今回はそこが違う点でありまして、いわば、大胆な金融政策と、そしてもう一本の矢として機動的な財政政策をとっております。これもポイントでありまして、有効需要をしっかりとつくっていくわけでありまして、それは全国隅々まで行き渡っていくわけでございます。と同時に、成長戦略を進めていく。この三本の矢であります。

 と同時に、各企業がやはりその中において労働分配率を上げていくという意識を持っていただくことも、景気を持続的に上昇局面に乗せていく上において重要であります。だからこそ、今、経済界の皆さんにお集まりをいただきまして、できる限り、利益が出たところにおいては給与あるいは賞与でもいいですから上げていただきたい、このようにお願いをしているところでございます。

 結果として、今、街角景気ウオッチャーの指標においては、指標をとり出してから最高水準になっている。何とかこれをさらに実需につなげていきたい、こう考えているところでございます。

枝野委員 物価が上がりそうだということは、今の為替の相場から考えればそのとおりだと思います。少なくとも輸入品の値段は、円安になった分だけほぼ自動的に、あるいは、実は自動的にできないことで輸入品を国内で販売している中小企業などは大変御苦労されていますけれども、のみ込めない部分については値上がりをする。特に燃料等が値上がりをするということは間違いないだろう、今のような為替の相場でいけば間違いないだろうというふうに思います。ただ、輸入物価が上がったときに、本当の意味で期待をされているデフレの解消になるのかどうか。それはまた別次元だというふうに思います。

 現実に、これは安倍内閣の間も含めてですが、平均給与はこの間ずっと下がり続けています。所得も、特に年収百万円以下、二百万円以下の方がふえておられます。この皆さんは、買いたいけれども、収入が減っているから買えないという状況になっています。

 これから物価が上がりそうだから、では物を買おうか。物価が上がりそうなのは、今間違いなく言えるのは輸入品です。国内で物をつくって、あるいは国内で提供されているサービスが上がるかどうかはまだわかりません。少なくとも輸入品の物価が上がるということで、では物価が上がりそうだから先に買っておこうか、早目に買っておこうかという方がいたとしても、それは輸入品についてになります。

 国内について物価が上がりそうだということを思ったとしても、まずは、一つは、収入が減って、使いたくても使えない人がふえている。この皆さんは、物価が上がりそうだということであれば、ますます今後の生活が心配だから、だからもっともっと節約をして、お金を少しでも使わないようにしなきゃならないというのが、所得が少ない、あるいは所得がこの間減っている、ましてや、ふえている非正規雇用に従事していらっしゃる方の普通の感覚だと思いますが、違いますか。

安倍内閣総理大臣 いや、申しわけないけれども、全くわかっておられないのか、意図的に曲解しているんだろうと思うんですね。

 デフレから脱却する。円安によっては、確かに輸入品は上がりますよ。輸入品が上がることをもってデフレから脱却するということでは全くないわけであります。それははっきりと申し上げておきたいと思うんですが、円安ということでいえば、枝野さん、二〇〇六年の方がもっと全然安いんですよ。円、百二十円ですよ。ですから、全然言っていることが違うんですよ、申しわけないけれども。

 つまり、デフレから脱却をするということは、デフレは基本的には貨幣現象ですから、ここにおいて大胆な金融緩和をやることによって、これはいよいよデフレからインフレに変わっていくということなんですね。その中において、結果として行き過ぎた円高は是正されていきますよ。

 つまり、物の値段が上がるというのは、私が言っているのは、輸入品が上がるのではなくて、貨幣現象としてのデフレがいよいよ終わるという中において、いいものをちゃんとつくっていけば高くなって、そしてそれは売れていくという時代がいよいよ来るという大きな局面を今迎えようとしているんですよ。

 今、枝野さんが言っているようなことをずっと考えてやっていたから、なかなかこの十四年間、デフレから脱却できなかったんじゃないですか。これを、まさに今、私たちはやろうとしている、この大きな転換期にあるんだという認識を持つ必要はあるんだろうな、このように思います。

枝野委員 わかりました。

 デフレからの脱却に少なくとも円が安くなっていることは効果があるということは好意的に私は受けとめたつもりなんですが、今おっしゃっているのは、要するに、通貨をじゃぶじゃぶ、お金をたくさん刷って市中に出す、だからインフレになる、デフレから解消するということをおっしゃいました。

 まずは、本当にそこがそうなのかということが今問われているんだというふうに思います。通貨をじゃぶじゃぶやっても、企業が投資をするのは、お金がたくさん借りられるからではありません。これまでも、基本的には、大手企業などでもうかっている企業は、むしろ、もうかったお金で過去の借金を減らすということで、投資には向かわなかったというのが、この間、それはこの二十年間の大きなトレンドであります。

 それは、つくっても買ってくれる人がいないからです。つくっても、もうからないからです。海外に輸出をするということで物が売れる、だから投資がなされるということなんですか。それとも、国内で物が売れることを期待して、国内で投資がなされるということなんですか。短く答えてください、端的に、どちらですか。

安倍内閣総理大臣 枝野さんのような考え方を持っておられたから、多くの方がデフレから脱却できなかったんです、はっきりと申し上げて。

 私たちがやっていること、短くというか、これは一応ちゃんと順序立てて説明しないとなかなかわかりにくいことですから、先ほど申し上げましたように、今じゃぶじゃぶという言い方をされましたが、しっかりと日本銀行が政策的に正しい政策を持って大胆な金融緩和を行っていくことによって、まずどういう現象が起こるかということについては、私、かなり最初に申し上げているんですが、これは、例えば株式市場に働きかけられていくわけでありますから、株価がいわば上がっていく。そしてもう一つは、これは、意図的に円安に誘導するわけではありませんが、当然、通貨をどんどんふやしていくわけでありますから、円安になっていくということであります。

 その中において、例えば株価が上がっていくということは、これは資産効果と言われておりまして、いわば、多くの企業が株を持っています、個人も株を持っている、自分の資産がふえていくんですよ。資産がふえれば、当然、これは自己資本率も上がっていきますし、お金を借りることもできるということになっていきます。そして、株を持っている方々については、自分の株が上がったな、では少しお金を使おうかということにもなっていくわけであります。しかし、長い間こびりついたデフレマインドがありますから、多くの企業は、今までたまっている内部留保からいくんですね。

 この後なんですよ。基本的には、積極的に企業が借り入れを起こすのは、この後なんですね。これが起こる前に実は緩和措置をやめてきたという歴史を見て、我々は、今度は違いますよと。なぜあのときできなかったかといえば、これは明らかなんですが、あのときは物価安定目標がなかったんですよ。物価安定目標がない中、二〇〇六年に、デフレギャップはそろそろ解消されたという間違った判断をして、量的緩和をやめてしまったんです。今度は違います。物価安定目標がありますから、その物価安定目標に大体到達するまで金融緩和は続くんですから、それをみんなが見て、経営者は仕事をしていくということであります。まだ、これをやり始めてちょっとしかたっていない。安倍政権ができて三カ月という状況であります。しかし、その中においても、街角景気ウオッチャーの指標では、指標をとり始めて最高値を記録しているわけでありますから、そこのところをよく理解していただきたい、このように思います。

枝野委員 二つのことを申し上げたいと思います。

 日銀の人事については、二〇〇八年とか九年ごろでしたか、そのころはいろいろ我が党も日銀の人事に国会の同意権を使って影響力を行使しましたが、二〇〇六年のころの日銀の人事については、これは自民党と公明党の政権でお決めになった日銀の人事だったんじゃないですかということをまず申し上げておきたいと思います、当時の日銀の政策判断について。

 その上で、二〇〇六年も、二〇〇二年の一月から二〇〇六年まで景気回復局面が続いての二〇〇六年ですから、景気回復局面に入って一年とか二年で金融緩和政策をやめたという話ではありません。四年にわたって景気回復局面が続いてきながら、しかし、その時点で起こったことは何かといえば、実は、格差が拡大をして、給与は下がり、デフレは解消しないという状況にあったということをまず指摘しておきたいというふうに思います。

 その上で、経済というのは確かに貨幣現象である。つまり、金融政策によって動くところもありますよ。しかし、この二十年間、日本の国内で新たな投資がなかなか進まない、企業が新しい工場をつくったりなんとかはなかなか進まない。それは何かといえば、日本の国内で物が売れないから。工場をつくって投資をしても、そこでつくったものが誰かに最終的に買ってもらわなければ、これからインフレになりそうだ、だから投資をしよう、あるいは……(発言する者あり)総理は名指しで我が党の議員に対して何か言っていますが、こちらももっとやじっていることを、委員長、少し指摘をしていただけませんか。

山本委員長 委員諸君に申し上げます。

 不規則発言はしないようにお願いします。

枝野委員 最終的に、投資をして、それは物であれサービスであれ、あるいは販売であれ、その結果として最終消費者がお金を出して買ってくれる。お金を出して買ってくれるから工場に投資をする、店舗に投資をする、あるいは新しいサービスを起こすために投資をするわけであります。その最終的な消費者の皆さんがお金を出して物を買ってくれるという期待がなければ、投資は行われません。

 金融緩和をしたからといって、消費者の皆さんが、これはさらにもう一度繰り返します、この間、平均給与が下がって、多くの国民の皆さんの給与が下がっている。非正規雇用がどんどんふえている。そして、百万円以下、二百万円以下の貧困層がふえている。こういう皆さんが、企業がお金が借りやすくなった、内部留保もたくさんふえて企業の資産価値も上がった、投資をする余力はあるといって、投資をして、新しいものをたくさん供給したとして、誰がどういうものについて消費をふやすということをお考えになっているのか。

 私は、今結果が出ていないということを指摘しているわけではありません。そういうところをどういう形で、では、消費がふえて、投資をしたものが実際の利益になるのかということについて、どういう絵柄を考えておられるのかということを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 先ほどから説明をしているつもりなんですが、先ほど、二〇〇六年の話をされました。つまり、日本銀行総裁を決めたのは私たちですよ。それは反省しています。あのとき、今回のように、総理大臣がはっきりとした金融政策を持って、日銀の総裁と同じ金融政策を持って、それを重視して日銀の総裁を決めていれば、もっともっと早くデフレから脱却できたと私は思う、そのことは申し上げておきたいと思います。

 今、枝野さんがおっしゃったように、まさにあのときの金融政策によって、大胆な金融緩和というか量的緩和をやめてしまったことによって、日本はデフレから脱却できなかったんですよ。デフレから脱却できなかったからこそ、いわば国民総所得において五十兆円も失われてしまったんですよ。だから、今までの政策はもう、これはやはりうまくいかないということは明らかになりましたから、今度は次元の違う政策をやっているということであります。

 そこで、いわば大胆な金融緩和を行うことによって、デフレマインドが変わるんですよ。デフレマインドが変わるということは、何回も申し上げておるように、いよいよ物の値段が上がる。物の値段がいよいよ上がると思わなければ物は買いませんよ、当たり前じゃないですか、待った方が安くなるんですから。ということになっていくわけであります。

 そして、実質金利は上がっていっているわけですから。当然、実質金利が上がっていれば、お金を借りて投資をする人はいないんですよ。そこを思い切って変わっていくわけであって、実質金利でなくて名目金利が上がっていくかもしれない、借りるんだったら、今借りて、しっかりと投資をしておこう、ちゃんとした人材を確保するためにしっかりとした給料を払っていこう、そういう局面に入っていく。

 ただ、これは時間がかかる場合もありますから、今度は有効需要をつくるということにおいて、第二本目の矢として、我々は、機動的な財政政策を行っているわけであります。普通であれば、これは時間がかかって、企業の競争性が上がって収益率が上がっていく中においてだんだん労働分配がふえていくわけでありますが、今回、なるべく早い段階でいいサイクルに入っていくために、経営者の皆さんにお願いをしているわけであります。

 事実、正規、非正規問わずに上げている企業も出てきたではありませんか。それはずっとなかったんですから。最初はローソン一社と言われていたんですが、これはかなりの数に上ってきました。これがどんどんふえていくことによって、枝野さんが懸念をされているような状況を脱出していくということができるのではないか、このように期待をしているところでございます。

枝野委員 期待をされるのは結構です。それから、この局面で賃金を上げていらっしゃる会社があるのはそのとおりです。

 でも、実は、この前回の景気上昇局面のときも、景気は上昇しているけれども、それが賃金などに反映されず、非正規がふえて、格差が拡大して、これでは景気回復の意味がないじゃないか、しっかりと給料が上がるようにしなきゃいけないじゃないかということに対して、いや、実際は上げているところもあります、これからそういうところがどんどんふえていきますというのがこの二〇〇〇年代半ばごろの状況でした。

 実際に、全体としての平均給与、つまり、全体としての給与が上がって、勤労者の皆さんの全体の平均が上がるような状況にならなければ、むしろ下がる人もたくさんいる中で、一部の人が上がっていますということだけでは、下がっている人は、物価は上がるわ、給料は下がるわということでは、ますます生活が苦しくなる。

 私は、必ずしも最大多数の最大幸福という言葉は適切かどうかわからないと思っていますが、それにしても、少なくとも過半を超えるような人たちが、給料がインフレよりもおくれるのは経済現象として仕方がありません、おくれるにしても、インフレよりも給料が上がるというようなことが期待されなければ、物価が幾ら上がっていきそうだといっても、どうしても買わないと困るもの、これは買うでしょう、物価が上がっていきそうだからということであれば。それは、例えば、食べ物であったり、あるいは冬の北海道の暖房であったり、こういったものは、なければ、買わなければ生活できませんから、それは給料が下がっても、下がる中で何とか買わなきゃいけません。

 でも、そういう皆さんが、今、円安で輸入物価が上がります、燃料が上がっています、電気代が上がっています、小麦粉が上がってパンが上がります、そういうところにたくさんのお金を払わなければならないということは、それ以外の国内で生産された物、あるいは国内で提供されているサービス、そこにかけられるお金、かけることが可能なお金は、円安によってインフレになっている分だけ、間違いなく減ります。

 そうした状況の中で、それでも一万円札がどんどん市中に出ていく、だから、これを使って投資をすれば、たくさんの人が買ってくれて、そして物が売れて、国内でつくった物やサービスも値段が上がるぐらいお客さんがたくさんついてくれるというようなことをどの分野にどう期待をしているんですか、例えば具体的に。多分、株価は上がっています。都市部の一部の不動産は上がるでしょう。だけれども、それを超えて幅広く国民の皆さんの実質的可処分所得、輸入品を除いた実質的な可処分所得がふえて、そしてそれを実際に消費に回そうという、どういう分野について期待されるんですか。

甘利国務大臣 ミクロでは、この経過の中でいろいろなことは起きます。

 ただ、基本的な認識を持っていただきたいのは、我々は何をやろうとしているかというと、それは、負のスパイラルからプラスのスパイラルに変えていきたいと思っているわけなんです。

 デフレマインドが続きますと、お金は使わない方が得なんです、価値が上がるから。だから、消費はふえません。消費がふえないということは、生産はふえない、設備投資もふえないんです。生産がふえなければ、給料はやはり下がっていくんです。下がれば、さらに買わなくなる。この負のスパイラルをプラスのスパイラルに方向性を変えていく。これをやらないと、ミクロでいろいろなことを今までもやりました、やったけれども効果が一時的なのは、方向性が逆の方向を向いているからなんですよ。これを全体的に変えようというのが我々の考え方です。

枝野委員 考え方の違いが、かなりはっきりとしてきているかなというふうに思っています。

 まず、インフレになりそうだ、これから物の値段が上がりそうだと思わないと物は買わないというのは、一般論としてそのとおりだろうというふうに思います。問題は、この二十年間、デフレというのは要するに物が売れない現象です。物が売れないから、物の値段が下がるわけです。なぜ物が売れなかったのか、あるいは売れていないのかということについての根本認識がやはり違うのではないかというふうに、私は、今のお答えで改めて確信をいたしました。

 物価が下がりそうだから、だから、今買うより将来買った方が得だから今は買わないという部分も、もちろん、千差万別、いろいろな人がいますから、そういう人もいらっしゃるでしょう。お金持ちの皆さんはそうかもしれません。だけれども、多くの国民の皆さん、一番大きなシェアを占めている、本来昔は分厚かった中間層、それから所得の低い人たち、この人たちは、物価が下がりそうだから、だから消費をしないんでしょうか。私は、多くの皆さんは違うんだと思う。

 多くの皆さんは、現にこの間、給料が下がり続けてきている。そして、現にこの間、御自身は今、正規雇用かもしれないけれども、周辺には、正規雇用だったんだけれどもリストラに遭って非正規になった、なかなか仕事がない、こういう人たちをたくさん見ている。そういうことになったら困るから、お金をできるだけ使わないようにしようと。

 しかも、これは、私は自民党を高く評価しますが、まさに戦後六十年間の日本の戦後復興、高度成長の成果として、今の日本は世界に類のない経済大国になって、私が子供のころは、四十年前は、子供部屋とか学校の教室に冷房があるだなんて考えられなかったけれども、今や公立の学校でも冷暖房がある、そういう時代になっています。これに象徴されるように、いろいろなものが、それぞれの御家庭の中に、多くの家庭は一通りそろっています。

 電気の効率などを考えれば、例えばエアコンなどは、二十年前のエアコンは買いかえていただいた方が実は電気代は安くて済んで、省エネにもなって家計にも実は助かる。買いかえた費用なんかすぐ取り返せる。ですけれども、二十年前のエアコンを今でも使えるから使っていらっしゃる方はたくさんいます。テレビだって、地デジ化をしたときに皆さんに買いかえていただいたから、買いかえたばかりです。それから、住宅だって、質についてはいろいろな問題があるかもしれませんが、日本の人口は減っているんです。これからしばらくの間減るんです。既に住宅の数は余っている状況です。

 つまり、物はそれなりにそろっている状況の中で、所得が減っている、非正規雇用がふえている。こういう状況の中で、それは、買わなくていいものだったら買わないよねということの方が、物価が下がっていきそうだから買わないということよりも、全体として占めている要素は圧倒的に大きいと私は思います。

 だから、デフレからの脱却のためにやらなきゃならないのは、金融政策も意味がないとは言いません。これも大事なことです。それについては結構なことだと申し上げます。しかしながら、金融政策と同時にやらなければならないのは、まさにこの間、前回の景気回復局面でも給料が下がり続けた、前回の景気回復局面でも非正規雇用がふえていった、こういう状況を是正していく。そして、実際に普通の国民の皆さんの収入がふえる。それも一時金ではだめです。一時金ではだめで、しっかりと、ちょっとずつでもいいから、将来にわたって給料が上がっていくという期待を持たせる。あるいは、正規の雇用で、まあ、いろいろ大変な会社もあるけれども、自分はもう十年、十五年働けるなという安心感を与える。そちらのことを先行させないと、結局、国内消費がふえずに、輸入物価だけ上がって、給料が上がるのは物すごくおくれる。

 おくれるどころか、本当に上がるかどうかわからないのは、二〇〇六年の金融緩和を取りやめたことを今強く指摘をされていますが、それまで三年も四年も景気回復局面が続いていたのに給料は下がり続けたという現実の実態があるわけです。あのときにやらなかった何かのこと、つまり、給料がしっかりと上がっていく、非正規雇用が減っていく、こういったことについての地道な政策を同時並行で進めていかなければ、実は、お金持ちの皆さんはいいです、株を持っている皆さんは、どんどんどんどん今株が上がって、潤って結構なことです。公共事業を直接受けていらっしゃる方、これはいいかもしれません。輸出企業の一部は、円が安いことで、これで収入がふえているかもしれませんが、現に前回、円がそこそこ安くて輸出企業がそれなりに潤っていたときも、所得の再分配をしなかった、給料は上がらなかったという過去の実態があります。

 総理大臣が、給料を上げろと、そういう企業の皆さんにおっしゃったことは、それなりに多としますが、安倍総理も私も国民の皆さんに対して責任を持っていますが、企業経営者の皆さんが責任を持っている相手は国民じゃありません。企業経営者の皆さんが責任を持っている相手は、法律、これは商法にちゃんと書いてあります、株主の皆さんです。株主の皆さんの最大利益のために努力をされる責任を、企業の経営者の皆さんは負っています。

 そうすると、ルールとか規制とか、あるいは政府の仕事として、しっかりと給料が上がっていく、非正規雇用が減っていく、こういった政策をとっていかないと、実は多くの皆さんに想像以上のダメージを与えることになる。その危惧を御指摘して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて枝野君の質疑は終了いたしました。

 次に、中山成彬君。

中山(成)委員 維新の会の中山成彬です。

 教育問題についての集中審議をお願いしておりましたが、何か経済問題ばかりのようでございますが、わずか三時間の短時間でございますから、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 去る三月の二十六日でしたか、新しい学習指導要領に基づきます検定教科書、高校二年、三年の検定の結果が公表されました。私もざっと目を通してみましたけれども、残念ながら、余り変わっていないなと。

 私が文部大臣のときに答弁して、竹島も日本の領土だと教科書に書くべきだ、こういうことを言いましたら、ある組合から、とんでもないと抗議が来まして、調べてみたら、竹島は韓国の領土だと教えている、そういう先生方もいらっしゃったということです。これに比べますと、竹島は日本の領土だとちゃんと書いてあります。

 しかし、先ほど西川京子先生からもお話がありましたが、従軍慰安婦の問題とか、あるいは南京事件については相変わらず残っている。特に私がびっくりしたのは、検定前には、十万から数万の犠牲者、虐殺したという記述が、二十万とふえている検定結果がある。

 下村大臣、この検定の結果というのは一応目を通されたんですかね。そのことからお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 私も目を通しました。これは安倍政権の以前からの教科書検定の結果でありますので、大臣が変えられるということではありませんが、ただ、今回の申請図書の具体的な記述について、今、中山先生からも御指摘がありましたが、南京事件については、犠牲者数に諸説あることが理解できない記述があった。また、領土については、我が国の領有権について誤解するおそれのある記述や、竹島と尖閣諸島の問題を同列に扱っている記述もあった。また、慰安婦問題については、国家間の賠償問題が解決済みであることを理解できない記述もあった。

 これに対しては、検定意見を付して修正を求めるなど、その時点における客観的な学問的成果や政府見解、適切な資料等に照らして欠陥を指摘することにより、教科書検定が行われました。しかし、今御指摘のようなところは、我々も感じる部分もございます。

 今後、教科書検定について、教科書検定の現状と課題というのを整理し、そして、よりあるべき見直しについて検討してまいりたいと考えております。

中山(成)委員 安倍総理も覚えていらっしゃると思うんですけれども、総理になられて、私たち大変喜びました。早速、従軍慰安婦についての河野官房長官談話を見直してくれということで申し入れに行きました。

 そうしましたら、あのときは下村官房副長官でございましたが、党の方で調べてくれ、こういうふうなことでございましたので、えっと思いましたけれども、では党の方で調べようじゃないかと。先ほど西川京子先生が言われましたように、党の中で、例の歴史議連、教科書議連の中で、それこそ第一次資料といいますか、新聞記事から国際連盟の議事録から、いろいろなものを徹底的に調べました。

 その結果、先ほどお話ししました、あの「南京の実相」という本を出しました。英訳もつけて、アメリカの議員たちにも全部配った。あのとき、まさに、西川先生が言われましたように、あれは通常の戦闘であり、それ以上でもそれ以下でもなかったと結論づけたわけでございます。

 だから、三十万人の中国人を虐殺したなんて、とんでもない話なんです。お手元に「南京市の人口」という一枚の紙を配ってありますけれども、これを見れば、あれは昭和十二年の十二月十三日でございますけれども、逆に人口はふえているんです、南京の人口は。二十万からずっとふえていて、二十五万になっている。どこに三十万人の大虐殺があったのか。これはなかったということは明らかでございまして、こういう事実を事実としてはっきり教科書には書くべきなんですね。

 私たちは、あのときの安倍総理の命によりまして、当時自民党でしたけれども、古屋大臣もおられましたが、しっかりと調べました。総理はよく学者とか歴史研究家に調べさせると言われますけれども、我々国会議員が中心になって一生懸命調べた結果が、従軍慰安婦、そういう者はいなかった。これはこの前の国会質問でお話ししました。南京事件もなかったんですね。

 なかったことが、でたらめが今世界じゅうに広まっているということ、これは大問題だということを、私は本当に繰り返しお話をしたいと思っているんです。

 八年前になりますけれども、下村さん、一緒に教育改革を提唱しました。まさにサッチャーさんが、イギリスもいわゆる自虐的教育、そして過度に子供の自主性を尊重した教育に陥っている、これじゃいかぬといって教育改革をやられた。私どもも同じようにやりましたね。四百校の学校を手分けしてずっと回って、そして、教育改革をやらないかぬと、いわゆるゆとり教育の見直しを初めとして、やったんです。

 あれから八年、ずっと、まさに安倍総理そして下村大臣が中心になって教育改革を進めてこられた。だから、教科書も厚くなりました。そして、授業時数もふえてきました。だけれども、いわゆる自虐教科書だけが変わっていないということ、これは非常に大問題だと思うんですよ。

 この前、私はある方から聞いたんですけれども、高校のときに修学旅行で南京に連れていかれた。そして、あのおどろおどろしい捏造の南京虐殺記念館を見せられて、そして子供たちがショックを受けているときに、南京の中学生、日本でいえば高校生と討論させられた。日本の子供たちは、残念ながら英語が得意じゃありません。向こうは百戦錬磨の人たちに徹底的にやられた。日本の子供たちというのはショックを受けていますから、ただうなだれて、何も反論できなかった。こういうのが実態なんです。

 だから、一体、連れていかれる先生方は何を考えているのか。まさに自虐教育の仕上げに連れていくのが、ああいう韓国とか中国の虐殺記念館、そういうことだということ、これは本当に私は大変なことだと。

 いじめの問題も大事、体罰もやめにゃいかぬ。しかし、一番教育で大事なのは、いつも総理が言われますように、日本人としての自信と誇りを取り戻そう、そういう子供を育てる、そして、チャレンジ精神に富んだ子供たちを育てるということだと思うんです。

 今、検定を見直すと言われました。ぜひ安倍内閣に長く続いてほしいと思います。その間に、一回りしましたけれども、さらに新しい教科書の検定が始まりますから、早急に検定の基準を見直してほしい。いろいろな昔の、この前言われました、大国史辞典に出ているからとか、そういう戦後のまさに占領のころ、左翼思想が非常に強かったころの学者たちが書いた本に出ているからというので検定を通るんじゃなくて、今の目で、安倍内閣のもとで、要するに自信と誇りを持てるような子供を育てるというのを検定基準の最初に書いてほしいと思うんですけれども、大臣、どうですか。

下村国務大臣 さきの第一次安倍内閣のときに、教育基本法を改正したわけでございます。

 その改正教育基本法の中で、我が国の伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことができるように、これを新しい教育基本法の中に入れて、そして、この精神にのっとって、新学習指導要領の趣旨を踏まえた教科書で学ぶことが必要であるということでございますが、残念ながら、必ずしも新しい教育基本法や新学習指導要領にのっとった教科書記述になっていない部分があるのではないかというふうに私自身も感じる部分が、今回の高校教科書の記述の中でありました。

 そういう意味では、改めて、教科書検定制度のあり方あるいはまた採択のあり方等を踏まえて、これは自民党の教育再生実行本部の提言もあり、また、先生も前回も御指摘をされましたし、ほかの委員から国会でも御指摘をされているところでもありますし、子供たちに、歴史というのは影の部分もあれば光の部分もあるわけでございまして、やはりこの日本はすばらしい、すばらしい伝統文化を誇るこの国に生まれてよかったと思ってもらうような歴史認識も教科書の中できちっと書き込むということは、大変必要なことであるというふうに思います。

中山(成)委員 安倍総理大臣、どうですか。日本人としての自信と誇りを取り戻す、そういうのを教科書検定の第一項目に挙げるということについて。

安倍内閣総理大臣 前回、安倍内閣において教育基本法を変えました。そこで教育の目的、目標をしっかりと書き込んだのでございますが、そこに、日本の伝統と文化を尊重する、これをしっかりと書き込みました。そして、愛国心、郷土愛というものも書いたのでございますが、残念ながら、検定基準においてはこの改正教育基本法の精神が私は生かされていなかったと思います。そして同時に、検定官自体がその認識がなかったんじゃないのかなとも思います。

 という意味において、文科大臣のもとで、どうあるべきか。当然、やはり初等中等段階において、自分のアイデンティティーについて誇りを持つ、自信を持つ、これは基本ですから、それがなければ自分自身に自信をなかなか持てないんですね。これは、日本、中国、そしてアメリカの青少年を対象にした意識調査の結果にはっきりとあらわれているわけでありますから、我々はそういう教育を行っていくべきなんだろうと思います。

 また、採択の結果、非常に一部の教科書に偏っていくという状況があるんですね。採択が、果たしてちゃんと教育的な視点から採択されているのかどうかということも、私は、ちゃんと見ていく必要があるんだろうな、このように思うところでございます。

中山(成)委員 ありがとうございます。

 採択の問題、これは、今までは非常に日教組の影響力が強かったですね。その辺のところは、ひとつ文科大臣、しっかりと見守っていただきたいなと思っています。

 私が心配しますのは、今、日本だけではなくて外で、アメリカとかカナダとかいろいろなところで、慰安婦問題とかあるいは南京問題、中国人や韓国人が物すごい運動をしているんですよ。この前、去年の十二月十三日ですけれども、カナダのトロントで、南京大虐殺記念日、こんな宣言をされたという話を聞いていまして、まさに、日本で火がついたんですけれども、その火が世界じゅうに広がって日本人の名誉が傷つけられているんだ、この事実を知らなきゃいかぬと思っています。

 きょうは外務大臣を呼んでいませんけれども、ぜひ総理大臣、外務省に、そういう事実をしっかり踏まえた上で、それに対してはきちんきちんとやはり抗議していくということをやらないと、日本は、この前も申し上げましたけれども、宣伝戦においては負けているということを私は感じていただきたいなと思っております。

 そういうことで、子供たちをおとしめることを何か教師の本懐だと思っているような先生もいる中で、しかし、一般の先生というのはやはり一生懸命やっていますよ。子供たちに向き合って、一生懸命やっている。

 ただ、最近、いじめの問題だとか体罰で、現場の先生方のモラールというか、やる気が失われているのが非常に心配です。まして、これから新しい先生をどんどん入れていかなきゃいかぬ。やはり優秀な先生をたくさん採用するということはとても大事だ。教育改革の中でお互い認識したんですけれども、教育は教師力である。

 そういう意味で、昭和四十四年ですか、田中角栄元総理が人確法、人材確保法というのをつくって、教員の給料をばっと上げたときがありました。しかし、あれから四十年以上たって、だんだんこれが薄れてきて、普通の地方公務員と変わらなくなっているんです。お金の問題だけじゃありませんけれども、しかし、やはり国が教員というものを、先生を大事なものだと思っているという意味で、この教員の給与改正といいますか改善についてひとつ考えてもらいたいと思うんですけれども、どうですか、下村大臣。

下村国務大臣 御指摘のように、人材確保法によって、教師の給与は一般の公務員よりも優遇することを定め、教員にすぐれた人材を確保し、もって義務教育水準の維持向上を図る、これを目的に制定されたわけでございます。

 この人材確保法による計画的な給与改善が完成したのは昭和五十五年度でございますけれども、このときの教師の給与は一般行政職と比較して七・四%優遇されておりましたが、御指摘のとおり、その後、教師の給与の優遇分はどんどん目減りしてきておりまして、一般行政職とほぼ同水準になってしまっているという現状がございます。

 これから、やはり学校の先生は教師力、すばらしい情熱を持った先生をいかに確保するかということが教育改善にもつながることでございますので、今後とも、この人材確保法の本来の趣旨を踏まえ、優秀な教師を確保する、その士気を高めるために、めり張りのある給与体系、頑張っている先生がさらに報われる、努力している先生が報われる、そういうふうな待遇の改善にしっかり努めてまいりたいと思います。

中山(成)委員 ひとつ頑張っていただきたいと思います。麻生財務大臣、要求されたらしっかりと見ていただきたい。答えは要りませんので、よろしくお願いします。

 次に、私、専修学校、専門学校の重要性についてお話をしたいと思うんです。

 先ほどから格差の話とかいろいろ出ていましたけれども、社会を見ていまして、どうも労働市場にミスマッチがあるんじゃないか。これは、下村大臣も新聞等のインタビューで、大学教育と社会の求めるものが違うんじゃないかというようなことを言っておられる。ああ、認識しておられるなと思うんですけれども。

 ただ、その中で、日本の大学進学率は五一%、しかし、韓国とかアメリカは七〇%、オーストラリアは九六%と書いてある。日本の大学進学率はそんなに低いのかとびっくりしたんですけれども、日本の場合には、プラス、いわゆる専修学校に行っているんですね。私はこれが非常に大事だと思うんです。

 というのは、今見ていますと、本当に、先ほど言いましたミスマッチといいますか、一般の高校を卒業して大学を出た、しかし就職はない人。それでまた理学部なんかに行きますと、さらにまた就職がない。この前、奨学金の話もありましたけれども、何百万という借金といいますか、返さなきゃいけないお金を背負って、社会に出たら早速仕事がない、収入がないという人がたくさんいるんです。これは本当に、就職できないというのは、子供にとっても親にとっても大変な問題なんです。

 やはり、日本がこういうふうに高度に発達してまいりますと、サービス産業というか、この前申し上げましたが、日本はもっと消費大国にならなきゃいかぬ、こう思っているんですけれども、そういう意味で、例えば調理師だとか、あるいは介護関係とか理美容師とか、こういうところの求人は非常に多いんですよ。だから、もっとそういう専修学校を大事にすべきだと思うんですけれども、御承知のように、専修学校には例の大学のような経常費補助金がありません。

 そのようなことについて大臣はどのようにお考えか、お聞きしたいと思うんです。

下村国務大臣 専修学校は、その柔軟で弾力的な制度の特色を生かし、社会の変化に即応した実践的な職業教育、専門的な技術教育により、高い就職率を誇る教育機関として大きな役割を果たしています。

 中山先生御指摘のように、平成二十四年度の大学の就職率が六三・九%、専門学校は七七・四%ですから、専門学校の就職率の方が大学卒業就職率よりも高いということでございます。

 この専修学校を支援するために、平成二十五年度予算案においては、専修学校関係予算として、対前年度比一七%増ですからパーセンテージ的には非常に高いんですが、しかし、額そのものは三十一億六千万円ということで、大学の私学助成金から比べると本当に少額ということでございます。

 ただ、この中で、産業界との連携強化により、専門人材養成を強化し、就労やキャリアアップに必要な多様な職業教育を充実するための学習システムの構築、また、安心して学べる環境の実現に向けた防災対策等の施設設備等の支援を行っておりますが、その社会的な役割から考えて、御指摘のように、まだまだそういう補助等は少ない。

 それだけ逆に、少ない中で専修学校、専門学校は大変に貢献されているということでございまして、今後、専門学校、専修学校に対するもっと積極的な評価とそれから対応を文部科学省としても考えていかなければならないというふうに思っております。

中山(成)委員 ありがとうございます。

 自民党では、町村信孝先生が会長になって専修学校のことを一生懸命頑張っておられたんですけれども、民主党政権でちょっと頓挫していますから、ぜひ新生自民党で、この専修学校についてもひとつ努力して、尽力していただきたいと心からお願い申し上げます。

 余り時間がなくなりましたけれども、最後に、総理、靖国問題。

 それこそちょっと機微に触れますから、どういうふうに質問したらいいのかわかりませんが、先般、総理はアメリカに行かれましたね。ワシントンに行きますと、私もワシントンに住んでいましたからよくわかるんですけれども、総理もアーリントン墓地に行って献花されました。列国の首脳というのは、ワシントンを訪問されますと、必ずアーリントン墓地、無名戦士の墓に参られるわけですね。あそこは、要するに、アメリカのために戦った戦死者を祭ってあるわけです。キリスト教の墓地ですよね。ところが、日本は、日本のために戦って死んだ靖国神社に参拝できない。

 安倍総理は、日本と戦ってアメリカのために死んだ兵士の墓に参られたわけですけれども、どういうふうに感じられましたか。お聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、総理として外国を訪問いたしますと、その国の無名戦士の墓にお参りをいたします。これは、外交上、相互儀礼と言ってもいいんだろうと思います。国のために戦い、命を落とした人に対して、その御冥福をお祈りする、あるいは尊崇の念を表する、これは、国と国との関係において、いわばその国に対しての敬意を表することにもなっていくんだろうと思います。

 先般、モンゴルを訪問した際にも、私は、その地で眠る抑留者、日本人の抑留者の方々の墓地にお参りをさせていただきました。到着した日は晴れていたんですが、ちょうどその日は大雪が降っておりまして、大変な雪の中だったんですが、こういう厳しい寒さと雪の中で抑留者の方々は、いつか帰れるのではないかという希望を抱きながら、無念の思いであの地で亡くなっていったんだろうなという思いの中で、御冥福をお祈りしたところでございます。

 例えばアーリントン墓地においても、南北戦争の兵士たちも眠っているわけであります。南軍も北軍も眠っている。しかし、大統領はそこにお参りに行かれる。南軍の掲げた、奴隷制度を維持しようとした南軍の兵士たちも眠っている。しかし、この奴隷制度というものを肯定して大統領は行くわけではないんです。ただ、そこには、国のために死んだ、亡くなった魂があるのみでありまして、その崇高な魂に対して尊崇の念を表する、これは当然義務と考えて恐らく行かれるんだろうな、こう思う次第でございます。

 まさに、さきの大戦においては、靖国で会おうということを合い言葉に多くの兵士たちが散っていったわけでございまして、御遺族の方々も、あそこに行けばお父さんに、あるいは主人に会えるかもしれないという思いで、あの場に行かれるわけであります。

 私も、指導者として当然、尊崇の念を表することは、ある意味、国際的にも当たり前のことなんだろう、このように思うところでございます。

中山(成)委員 安倍総理のおじいさん、岸信介元総理もA級戦犯であられた。長い間、牢屋に入っておられて、その後出てこられて、総理大臣にまでなられたわけですけれども、戦犯の仲間の方々でたくさんの方が実は刑死されているわけです。

 安倍総理はこの前インドに行かれて、ただ一人日本の無実をずっと訴えられたパール判事の生家を訪ねられて遺族の方々に会われたという記事を読みまして、やはり、安倍総理の靖国参拝といいますかA級戦犯に対する思いというのは格別なものがあるんだろうなと、実は、そういうふうに自分なりに感じたわけでございます。

 我が党の石原慎太郎さんは、天皇陛下にまず参拝してもらえ、こういうようなことも言われましたけれども、私は、まず、天皇陛下が参拝できるようなそういう環境をつくるのが政治家だろう、こう思っているわけですけれども、もし参拝ということになりますと、中国がまたいろいろ言ってくるのかもしれません、韓国も言ってくるかもしれません。

 しかし、ここにおもしろい資料がありますので、皆さん方のお手元のところに配ってありますけれども、これは二〇〇七年に中国の南京で発行された雑誌です。これは、中国の首脳、偉い人がみんな読む本だそうですけれども、この本に、一九一八年、これはもう日露戦争が終わった後ですけれども、共産党建国の母と言われて中国で大変尊敬されております周恩来首相が、靖国神社の春の大祭に行かれて大変感激したというふうな日記が実は載っているんですよね。

 一九一八年といいますと、まさに日清、日露の戦争が終わった後ですけれども、今、中国は、日本は日清、日露のころから中国を侵略した、こう言っているわけですけれども、その中国の生みの親、周恩来総理が感激したと言っているわけですから、これは大変なことでございまして、これを中国の人たちは知っているんですね。ですから、余りそんなに心配することはないんだということを申し上げたいと思っております。

 それから、最後になりますけれども、安倍総理が施政方針演説で、一身独立して一国独立する、こういうことを言われました。私は、そのとおりだと思うんです。

 あれは福沢諭吉の「学問のすすめ」の一節ですけれども、実は、その後の方にこういう文章があるんですね。日本人は日本を本国だと思い、本国のことを思うこと我が家を思うがごとし、国のためには財を失うのみならず、一命をもなげうって惜しむに足らず、これすなわち報国の大義なり、こういう文章があるわけでございます。

 まさに一国を守るために報国の大義として亡くなった、命をささげられた方々に、いつも総理が言われます崇拝の念を持つということは、これは日本国民として当然のことだ、こう思うわけでございまして、これは、私、答弁は求めませんが、今後行動で示していただくことを期待申し上げる次第でございます。

 おとといですか、サッチャー首相が亡くなられましたけれども、サッチャー首相というのは、アイアンレディーと言われました。長年続いた英国病、これを克服するために本当に頑張られました。フォークランド紛争でも絶対に妥協しなかった。先ほど言いましたように、教育改革についてもやられました。

 まさに今、日本はそういう状況にあるんじゃないか、そう思うわけでございまして、安倍総理、本当に、今回の、経済だけじゃなくて教育関係全て、この日本を再建するためにとても大事な任務を背負われていると私は思っています。経済再生も教育再生も、安倍総理が成功しなかったらもう日本はないというぐらいのつもりで私もおります。

 多分、総理大臣を初め閣僚の皆さん方も同じ気持ちで取り組んでおられるんじゃないか、こう思うわけでございますが、ぜひ、今後、どういう気持ちでこれからの国政に取り組んでいかれるか、時間がありませんので、一言お願いを申し上げます。

安倍内閣総理大臣 さすが中山先生、背筋が伸びる質問をしていただいた、このように思います。

 子供たちが日本に生まれたことに誇りを持てる、そういう国にしていきたいと思います。相当状況は厳しいわけでございますが、この中で、私たちは、ひるむことなく、今サッチャー元首相の例を挙げられましたが、意思の力で国を変えていくことができる、この言葉を肝に銘じて頑張っていきたいと思います。

中山(成)委員 頑張ってください。終わります。

山本委員長 この際、坂本祐之輔君から関連質疑の申し出があります。中山君の持ち時間の範囲内でこれを許します。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 おはようございます。日本維新の会の坂本祐之輔です。よろしくお願いします。

 春を迎え、国会の周りにも美しい桜が咲きました。全国各地において卒業式や入学式が挙行されました。日本の将来を担う子供たちが、将来にやりたいことやなりたいもの、すなわち、夢や希望を見つけて、その目標に向かって真っすぐに進んでいくこと、そのことに誰しもが応援をしてきたのではないでしょうか。しかし、残念なことに、最近では、将来に夢や希望を持てる若者が少なくなっていると聞いています。

 二〇一二年版の子ども・若者白書の調査では、十五歳から二十九歳までの青年たちが、自分の将来に、年金がもらえるのだろうか、仕事を続けていくことができるのだろうか、あるいは仕事を見つけることができるのだろうかと、八割以上の方が不安に思っていると書かれておりました。

 どうしてそのような社会になってしまったのか。まさにそれは、最大の責任は政治にあると私は考えています。将来を担う子供の夢を育み、支援をできる政治でなくてはならないと思います。

 安倍総理のふるさとにある吉田松陰の松下村塾は小さな学びやでありますけれども、その私塾の門をたたいた高杉晋作や久坂玄瑞等、日本を変えていく、大きな志を、夢を持った若者たちが集い、教育を受けました。

 また、私の地元である埼玉県嵐山町にも、日本農士学校を開いた安岡正篤先生がいらっしゃいました。総理大臣を経験された多くの政治家や経済界の方たちが集い、教えを受けていらっしゃいました。

 吉田松陰も安岡正篤先生も、志を、そして夢を抱いて集まった多くの人たちに、熱意を持って教育を行ったと思います。教育は、その国の発展の源であると考えています。

 安倍総理も長州の魂を受け継ぐ政治家であると存じます。総理の教育に対するお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 今委員が、若い人たちが将来に夢を失っている、子供たちもと。これは本当に深刻な事態なんだろうと思います。

 やはり大切なことは、これは親の姿を見ますので、国民みんなが、ことしよりは来年、頑張っていけばよくなっていく、来年、再来年はもっとよくなっていく、自分たちはそういういい国にしていく力を持っているんだという自信を取り戻すことではないか、私はこう思うわけでございます。

 そして、教育については、まさにそういう意味において、子供たちが夢を持てる教育を行っていくことが大切だろうと思います。

 我々は、教育再生を進めていくことによって、世界最高水準の学力や規範意識を身につける機会をちゃんとしっかりと保障していきたい、このように思っております。

 例として吉田松陰先生を挙げていただきましたが、松陰先生の言葉で、学とは人たるゆえんを学ぶなりという言葉があるわけでございますが、日本人としてのアイデンティティーを持った、そしてグローバルな社会の中で活躍していくことのできる人材を育てていきたいと思います。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 また、学校教育におきましては、学力や教養、社会性を身につけるだけでなくて、子供たちそれぞれの個性を伸ばして、みずからの夢の実現に向かって、今総理がおっしゃっておられた、みずからを信じて生きていくように育てることが肝要だと思いますが、ここで、文部科学大臣に、学校教育の果たす役割について御見解をお聞かせください。

下村国務大臣 先ほど総理もちょっとお話をされておられましたが、日本青少年研究所というところが、毎年四カ国の意識調査をしております。

 この中で、高校生の意識調査で、自分はだめな人間だと思うかと。思うと答える中国の高校生は一二%、韓国の高校生が四五%、アメリカは二三%。日本は、自分はだめな人間だと思う、イエスと答える高校生が六六%もいます。ほかの国に比べても圧倒的に、なおかつ、中学生のとき以上に、高校生になると、さらに、自分はだめな人間だと思う子供たちの数がふえている。これがそのまま大人になったとしたら、日本社会で、七割以上は自分はだめな人間だと思う国に活力が生まれるはずがないわけでございます。

 そういう意味で、学校教育の本質的な一つとして、やはり一人一人の子供たちが自分に対して自信を持って、自分はすばらしい人間である、そして自分という存在が、さらに能力を教育によって引き出して、そして社会に貢献できる、自分という人間がいることによって周りも喜んでもらえる、そういう一人一人を養成するということが教育の役割であるというふうに思います。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 その学校教育の一環に、部活動があります。部活動は、教育指導要領に学校教育の一環として位置づけられておりますが、部活動では、クラスメートや同学年の仲間だけでなく、先輩、後輩という関係の中で、教えてもらうことや、あるいは教えること、助け合うこと、みずからを信じる強さ、あるいは、仲間に対する優しさや思いやり、友情を培っていきます。そしてそのことが、将来に向けてたくましく生きていくための礎になっていくのだと思います。

 しかし、その教育指導要領に学校教育の一環として位置づけられている部活動の中で、残念ながら、体罰や暴力という重大な問題が発生しています。

 昨年の十二月には、大阪の桜宮高校において、体罰、暴力から、最悪の事件が起きてしまいました。さらにその後も、全国で次々に、体罰あるいは暴力の実態が明らかになっています。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきますが、この学校教育の一環である部活動における体罰や暴力について、現状と、文部科学省の根絶に向けた対策と対応状況について、予算措置も含めて、大臣にお答えをいただきたいと存じます。

下村国務大臣 御指摘のように、部活動は、学習指導要領上でも学校教育の一環として位置づけられており、体罰が禁止されるということは当然のことであるというふうに思います。運動部活動の指導に当たる者は、体罰を厳しい指導として正当化することは誤りであるという認識を持つことが必要であるというふうに考えます。

 運動部活動を含めた学校における体罰の現状については、現在、実態把握に関する調査を行い、平成二十四年四月から平成二十五年一月までの体罰の状況について、第一次報告として二月末までに報告を求めているところでございまして、現在、これらの集計を行っているところでございます。来週中ぐらいに公表したいと思っておりますが、残念ながら、体罰の数がふえているというような報告を受けているところでもございます。

 一方、運動部活動においては、生徒の技術力、身体的能力または精神力の向上を図ることを目的として、肉体的、精神的負荷を伴う指導が行われておりますが、心身の健全な発達を促し、達成感や仲間との連帯感を育む上で重要であるというふうに考えられます。

 このような運動部活動の特性を踏まえ、ことしの三月十三日に発出した「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」の通知におきまして、体罰の禁止、それから、懲戒と体罰、体罰によらない子供に対する指導、懲戒と体罰の区別を、学校の先生方が萎縮しないような形で明確化する。また、部活動指導においての一定の考え方や具体的な参考事例などをお示ししているところでございます。

 また、教育再生実行会議第一次提言で提言されている、子供の意欲を引き出し、成長を促す部活動指導ガイドライン策定のため、運動部活動のあり方に関する有識者会議を文部科学省の中に設置いたしまして、今検討を行っているところでございます。これも、できるだけ早く、わかりやすいガイドライン、できたら五月中にはお示しをしたいというふうに考えております。

 さらに、日本中学校体育連盟や全国高等学校体育連盟では、運動部活動における体罰根絶のために、ことし三月十三日に体罰根絶宣言を行っているところでもございます。

 今後も、このような取り組みを通じて、運動部活動から体罰が根絶されるよう努力してまいりたいと思います。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 さまざまな分野において、指示あるいはそのような方向性に向けて活動されているということがわかりました。

 それでは、なぜ部活動の現場で体罰や暴力が起きているか、これには複数の原因があろうかと思います。

 一つには、教育委員会制度の問題です。

 みずからの命を絶つという最悪の事態が起こる前に、例えば、大阪の桜宮高校においても、体罰、暴力が行われているという通報が教育委員会にあったと報道されています。この教育委員会の対応いかんでは、最悪な事態も防げたかもしれません。

 これまでにも教育委員会についてはさまざまな問題が指摘をされてまいりましたが、私は、教育委員会の保身と子供に対する無責任な体質こそが、こういった最悪の事態を招いてしまったのではないかと考えます。だからこそ、教育委員会の抜本的な改革が必要と考えます。

 総理も、施政方針演説の中で、教育委員会の抜本改革の必要性を訴えておられました。

 我が党におきましては、教育委員会を廃止し、地方教育行政に対する責任を地方自治体の長が負う方向で改革案を検討いたしております。

 そこで、お伺いをいたします。

 安倍政権における教育委員会制度の抜本的改革とはどのようなものでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、大阪の桜宮高校の問題も、大阪市教育委員会に事前にそういう情報が届いていた。大津の中学生の自殺問題も、これも事前に教育委員会に情報が届いていた。これに対してそれぞれの教育委員会がタイムリーに対応していたら、みずから命をなくすというようなことにならなかったかもしれないという中で、学校現場だけでなく、やはり教育委員会そのもののあり方が問われているのではないかと思います。

 教育委員会は、現在、御指摘のように、権限と責任の所在が不明確である、また地域住民の意向を十分に反映していないのではないか、あるいは教育委員会の審議そのものが形骸化している、そして、そもそも、このいじめ問題でも指摘されましたが、迅速さ、機動性に欠けている、こういうふうな課題が指摘をされているところでありまして、その責任体制を確立し、現場の問題に迅速かつ的確に対応できるよう抜本的な改革をすることは、我々も必要であるというふうに考えております。

 そのために、官邸に設置されました教育再生実行会議において、今議論をしていただいているところでございます。議論のまだ途中ではありますが、教育長に、より明確に責任を持ってもらうというために、首長の教育長に対する任命、あるいは罷免も含めた、そういう位置を明確にする等が、今この教育再生実行会議の中でも議論されているところでございます。

 これは、ぜひ来年の通常国会に教育委員会の抜本改革案を法案として出したいと考えておりますので、そのためには中央教育審議会の審議が必要でございます。できるだけ早く教育再生実行会議で一定の方向性について提言をしていただきましたら、その後、教育委員会のあり方については中教審で法律改正を含めた抜本改革について御議論していただき、ぜひ来年の通常国会に法案として出すように準備をしていきたいというふうに思っておりますし、国会の審議も踏まえて、反映できるように努力をしてまいりたいと思います。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 私は、子供を守り育てていくためには、選挙で選ばれ、そして市民の命、生活を守る役割を与えられた市町村長にこそ地方の教育行政を任せるべきではないかと考えてまいりました。今おっしゃっておられました教育再生実行会議において検討されているということでございます。そこには、教育委員会でございますから、政治的中立性をどう保つのかということもあると思います。

 私が考えるのは、市長がいて、一般行政は副市長がある意味、担当します。そして、今は教育委員会や教育長が担当しておりますが、教育長を例えば事務局長あるいは事務長という名前に変えたとしても、教育委員会制度をなくして、教育行政に秀でている識見豊かな人がそこに存在をするとすれば、それは学校教育行政をまとめていくことができるのではないかと考えています。市長がいて、その教育行政に携わる人、そしてもう一人副市長がいる、そういったポジションでもよろしいのではないかと、経験上、考えてまいりました。

 さらに、教育行政の中立性を保つためには、議会のチェックもありますし、あるいは学校運営協議会もあると思いますし、また学校教育に対する委員会等、第三者機関でチェックをするということもできると思いますので、責任の明確化という視点で捉えるとすれば、私は、地方自治体の長がそこの任に当たるべきだというふうに思っております。その件につきましては、また時間があるときに御議論をさせていただきたいと考えています。

 もう一つ、地方教育行政法第五十条についてでございますけれども、条文を読みます。

 「文部科学大臣は、都道府県委員会又は市町村委員会の教育に関する事務の管理及び執行が法令の規定に違反するものがある場合又は当該事務の管理及び執行を怠るものがある場合において、児童、生徒等の生命又は身体の保護のため、緊急の必要があるときは、当該教育委員会に対し、当該違反を是正し、又は当該怠る事務の管理及び執行を改めるべきことを指示することができる。」とありますが、では、この地方教育行政法第五十条にある指示を、文部科学大臣は行ったことがあるでしょうか。お答えください。

下村国務大臣 これまで行ったことはございません。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 残念ではございますけれども、学校の教育現場においては、体罰、暴力、いじめ等、多くの問題が起きています。今この時点でも、多くの悩みを抱え、苦しんでいる子供たちがいると思います。

 私は、教育行政において、地方の権限を国に任せようというのではありません。全国には教育委員会が千八百七十八もあって、小中高でも約三万七千校ある。文部科学省がそれらの学校で行われている体罰やあるいは暴力的行為をしっかりと把握するということは難しいと思います。ですから、文部科学省が全てにおいて責任を持つというよりは、地域ごとに対応した方が、先ほど大臣もおっしゃっておられましたように、きめ細やかに、迅速かつ的確にこれらの対応ができるのではないかと考えています。

 それでは、この五十条の条文について、指示をしていないということでありますけれども、しかし、これらの運用を考えることでさらに子供たちを救うことができると思いますが、これらの運用についてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 教育行政は、国、都道府県、市町村の適切な役割分担と相互の連携協力により行われることが基本でありますが、子供たちの生命身体を守るために真に必要な場合には、国がその責任を果たせるようにしていくことが必要であるというふうに考えます。

 教育における国の責任の果たし方については、委員も市長を長くされていたということでございます、基本的に、教育、特に義務教育は地方自治の中で位置づけられているということで、地方自治の精神を尊重しなければならぬ。しかし、今御指摘もありましたが、子供の生命にかかわる真に必要な場合、それが地方自治体で十分対応できていないというふうに国が判断した場合には、地方教育行政法五十条、是正について、より明確にすべきではないかという議論が、教育再生実行会議の中でも議論されているところでもございます。

 今後、先ほどの教育委員会の抜本改革を含めた地方教育行政のあり方全体の中で議論をしていくことが必要であるというふうに考えておりますし、さらに、これから中央教育審議会等でこのことも含めて議論してまいりたいと思っております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 教育委員会、抜本改革を進めていくという大臣のお言葉でございます。しっかりとお進めをいただきたいと、私どもも期待をいたします。

 学校の部活動の現場で体罰や暴力が起こっている。ここには、勝利至上主義という考え方があろうかと思います。教員、指導者、評価の問題があり、あるいは指導者の連鎖ということも考えられると思いますし、また学校自体にも原因があると思います。学校そのものが評価を受ける。

 そしてまた、保護者についても、スポーツを通じていい成績を出すことによって、大学に、そのまま有名校に入る、こういったシステムについての問題もあるのではないかというふうに私は思っております。保護者の問題、そしてまた大学の入試制度、これにも問題があるのではないかと考えています。

 現代の日本社会のいろいろなひずみが重なり合って、学校の部活動の現場で体罰、暴力が起こり、そして最悪の結果を招いてしまう。社会全体で変えようとしなければ、この根絶はできないと思います。

 学校での部活動は学校教育の一環、だからこそ、体罰はしないけれども指導もしないということではなくて、あの柔道の山下さんは、世界最強の選手をつくるのではなくて、世界最高の選手を私たちは育てるのだとおっしゃっておられました。

 現場では、懸命に努力をされている先生、指導者がほとんどだと思います。子供たちの大きな夢を豊かに育み、支援していくことこそが政治の役割だと考えますが、最後に総理大臣のお考えをお伺いさせていただきたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 まさに今先生が御指摘をされたさまざまな課題を、我々、しっかりと見据えながら、今、山下さんのお言葉を示されたわけでございますが、そうした意味において、ただ試合に勝てばいいということではなくて、いかに立ち居振る舞いが正しかったか、対応が正しかったか、そういうことを考えられる、相手のことも思いやることのできる人間を育てていくことが正しい教育ではないか、このように思います。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。終わります。

山本委員長 これにて中山君、坂本君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、下村大臣に、道徳教育の教科化についてお尋ねをします。

 世界で、道徳教育のカリキュラムを国が定めて、全国一律でやっている、そういう先進国はありますでしょうか。

下村国務大臣 諸外国の道徳教育については、韓国では、道徳を教科として位置づけ、国の定める教育課程に基づき教育を行っていると承知をしております。

 各国の教育課程の構成に関する制度、その内容はさまざまであり、ヨーロッパでは、それを宗教という科目の中で位置づけているという国も多々あります。

 それぞれ一概には申し上げられませんが、歴史的背景を踏まえた教育が行われているというふうに承知しております。

山内委員 韓国の道徳教育をまねしたいかどうかは別として、恐らく先進国ではほとんどやっていないと思います。恐らく、道徳というのは宗教の役割であるといったような発想がヨーロッパでは多いと思いますし、道徳教育を国としてやっている、OECD諸国では、韓国を除くと、ほとんどないというよりは、ないというふうに私は理解をしております。

 大体、憲法で、思想、信条、良心の自由が認められているわけですから、道徳教育、道徳というと良心にかかわる問題ですから、国家が中央集権的に、あるいは官僚的に、道徳、良心を押しつけるというのはちょっと慎重であるべきではないかという論調がヨーロッパなどでは多いのかなというふうに思っております。

 次に、道徳教育の効果についてお尋ねをしたいと思います。

 今回、道徳を教科化しようという動きの理由として、いじめ問題への対策ということが掲げられております。教育再生実行会議でも、いじめ問題の対策として道徳教育が挙げられていると思いますが、道徳教育を強化したらいじめがなくなるという根拠はどこにあるんでしょうか。何か具体的な証拠があるんでしょうか。

下村国務大臣 このたび、教育再生実行会議の第一次提言の中で、いじめ対策の一つとして、道徳の教科化というのが提言されました。

 しかし、それは、国家の特定の価値観を国民に押しつけるということではさらさらないわけでございまして、これは、国境を越えて、また歴史を超えて、人が人として生きていくために学んでおくべきルールとかマナーとか規範意識があるわけでございまして、こういうものをきちっと学んでいないために、知らないうちに、例えば人を傷つける、いじめる。加害者にも被害者にも傍観者にもならないという意味では、人が人として、ある意味では生きていく、そういう常識的なものをきちっと教えていく必要があるのではないかということから、いじめについても、提言の中で、道徳の教科化が提言されたことでございます。

 この道徳教育を通じて、規範意識や自己肯定感、それから社会性、思いやりの心など、豊かな人間性を育むということは、いじめ問題を根本的に解決する上で大きな意義を持つものと考えます。

山内委員 大臣のお考えはわかりますが、道徳教育を教科化したらいじめ問題がなくなるという、何か具体的な、実証的なものはあるのかと聞いているわけです。

下村国務大臣 それはよくおわかりで御質問されていると思いますが、道徳教育をすればいじめがなくなるということはもちろんありません。しかし、少しでもいじめ問題の解消につながるのではないか、手だてになるというふうに思います。

 なぜかといえば、この道徳教育の実施によって、人として、人間として、してはならないことはしないようにする、こういうことを随時、道徳は、一つの教科と同時に、学校教育全体を道徳として位置づけることによって、そのようなことを常日ごろ子供たちに教えていくということは、結果的に、いじめそのものがゼロにはなりませんが、少なくしていく、そういう手だてにはなると思います。

山内委員 いじめによる自殺ということで有名になりました大津の中学校、この中学校は、文科省の道徳教育実践研究事業のモデル校だったというふうに報道をされております。道徳教育を文科省主導で強化した、まさにモデル校でいじめが起き、そしてそれが自殺につながっているということですから、逆に、道徳教育を強化しても、自殺対策にもいじめ対策にもなっていないことを実証してしまったモデル校になってしまったわけです。

 そういった意味では、道徳教育をやったらいじめがなくなるというのは、どうやらストーリーとしてはそのように、何となく納得いくんですけれども、実証的には全く証明されているものではないと思います。

 そういった意味で、なぜ今道徳教育を強化するのか、私にはちょっと理解できないところがありますので、次の質問をしたいと思います。

 道徳教育を強化しなくてはいけないという判断の背景には、道徳水準が下がっているという御認識があるという理解でよろしいんでしょうか。まず、大臣にお聞きします。

下村国務大臣 まず、大津の自殺の問題ですが、そこの学校における、確かに道徳の推進モデル校になっていたということでありますが、それが果たして本当にきちっと徹底して行われていたのかどうか、相関関係があったのかどうかということについては、これは委員が確認して御質問されているのかどうか伺いたいぐらいですが、これがきちっと徹底されていなかった部分が相当あったのではないか。名前だけのモデル校になってしまって、真の意味での道徳推進モデル校としての教育が十二分に行われていなかったというふうに我々は聞いておりますし、ですから、必ずしも相関関係ということでは、ちょっと視点が違うのではないかと思います。

 今、社会全体で、かつてから比べると、道徳、規範意識が低下しつつあるのではないかというのは、大方の国民の皆さんの認識としてもあるのではないかというふうに思います。

山内委員 道徳意識、規範意識が下がっているという大方の見方ということをおっしゃいますけれども、それは具体的に何か裏づけるデータというのはあるんでしょうか、それとも印象でおっしゃっているんでしょうか。

下村国務大臣 突然の質問でございますので、今私の手元に具体的な客観的なデータを持ち合わせているわけではありませんが、しかし、今の日本の状況は、かつてから比べると、そういう意識を持っている国民が多いのではないか、そういう認識を持っているということでございます。

山内委員 実際、道徳の水準というのは、恐らくはかることは難しいと思います。そういう調査もやっていないと思いますし、実際、道徳のレベルを何か統計でとるということも難しいとは思います。他方で、何らかの別のデータを用いて道徳水準を間接的に評価する、あるいは傍証として考えることはできるのかなと思います。

 そこで、一つのデータとしてお見せをしたいと思います。

 凶悪犯少年の検挙人数というデータを用意させていただきました。よく、教育再生を訴える人というのは、大体、青少年の凶悪犯罪がふえているということを主張される方が非常に多いです。教育が荒廃しているから青少年の凶悪犯罪がふえる、そういう主張をする方が大変多いわけです。

 そこで、少年による凶悪犯の検挙人数のデータを見ていただきたいと思います。

 ここで言う凶悪犯の定義は、殺人、強盗、放火、強姦、凶悪な犯罪です。それから、少年の定義は、十四歳以上二十歳未満となっております。こんな中で、例えば、昭和三十三年と平成二十四年を比べると、凶悪犯罪は非常に減っている、少なくなっているというのは明らかだと思います。あるいは、殺人のデータを見ると、当時と比べると今の方が八分の一です。確かに人口が当時と違うということはありますが、仮に人口で補正したとしても、恐らく凶悪な少年犯罪というのは昔の方が随分多かったということは、事実としてあると思います。

 そういった意味では、少年犯罪の凶悪化を理由にして教育再生を訴えるというのは余り、裏づけとしては弱いのかなというふうに思います。

 そして、実は、昭和四十七年、これはちょうど安倍総理と下村大臣が少年だったころ、平成三年というのは私が少年だったころということなんですけれども、当時、三十三年に比べると、四十七年は大分減っていますし、平成二十四年はもっと減っているということがあります。こういったデータを見て、総理と大臣、どのような感想をお持ちになるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 犯罪発生率等は、その時代の時代背景なんですが、この段階ではまだ非常に貧しかったんですね、日本は。ですから、そういう中において、子供たちが犯罪に走らざるを得ない、そういう経済的な状況というのがかなりあったわけでありまして、基本的にはそういう分析がなされています。これは、少年犯罪だけではなくて、一般の犯罪も物すごく多いですから、昭和二十年代は。それはそういうことなんです。

 あと、先ほど道徳教育についてお話をされたんですが、では、なぜ明治時代に教育勅語を出して、そして修身教育を行ったかといえば、これは、伊藤博文がヨーロッパを回ってくる、その中において、教会の役割が極めて大きいということに気がつくんですね。それは子供たちに、神様が見ている、神と自分の関係において罪を犯してはならない、こういうことだったわけでございます。

 日本においては、おてんとうさまが見ているということであったわけでございますが、しかし、教会が果たす役割をどうすればいいかということを考えた中において、教育勅語を当時の陛下が出され、そして修身というものが生まれたということを、その歴史をやはり知る必要があるんですね。

 では、日本でどこが果たしているのかということを考えていただきたい、こう思うわけでございますし、そして、私は、子供のときに、さまざまなことを学ぶわけでありますが、うそをついてはいけないということについて、学校で、印象的には、例えばジョージ・ワシントンの桜の木の話もしたりとか、乃木大将の話なんかは私の地元ではよくする話なんですが、そういうことが記憶として残って、そういうことをしてはならないなということが果たして、山内さん、いけないんですか。そういうことをしっかりとやっていくということが私は大切なのかな、こう思っているわけであります。

 そして、同時に、犯罪の場合は顕在化しているかどうかということもあるわけでございまして、これが一概に、いわばモラリティーにおいて、それが向上してきたからこういう結果になっているということではなくて、この犯罪の多くは、山内さん、大体、経済的な理由による、少年が強盗に入るとか、そういう犯罪なんですよ、ほとんど。ですから、そういう貧しい時代の出来事だったということも認識しておいていただいた方がいいんだろう、このように思います。

山内委員 明治時代のお話をされましたが、明治時代は学校の進学率も非常に低い、そして、恐らく、宗教的なもののかわりになるものとして、明治時代に天皇陛下を中心にそういったものをつくる必要があったのかもしれませんが、戦後も国家がやるべきなのか。先ほど地方分権の話がありました。地方自治体などでそれぞれの地域の住民の皆さんが話し合って、どういう道徳教育をやろうか、それを決めていく、そういったことの方が今の時代には望ましいのではないかと思います。

 私があえて凶悪犯のデータを持ち出したのは、教育再生を訴える人はよく言うんですよ、少年の凶悪犯罪がふえている、だから教育改革が必要だと。そのロジックがおかしいですということを言いたくて、これを持ち出したわけでして、確かに経済的な理由で……(安倍内閣総理大臣「委員長」と呼ぶ)では、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 山内さん、そういう質問をされるんだったら、どういう議論をされているかと調べてくださいよ。教育再生実行委員会で誰がそれを言っているんですか。誰も言っていないですよ。それは間違えてもらっては困るな。ですから、それはやはり、あなたはファクトを重視するのであれば、ファクトとして挙げてもらいたいと思います。

山内委員 ちょっと今、総理は誤解されている。それは、教育再生実行会議の人が言っているというのではなくて、教育再生を訴えている人はよくこういう議論をしているということを言っているわけです。

下村国務大臣 いや、その論理構成が適切じゃないと思うんです。例えば、私が文科大臣で、凶悪犯少年との連係で発言したことがどこかであるのであれば、それを指摘されるというのはわかります。そもそも、教育再生実行会議でも誰も話していない、総理も私も発言していないという中で、一般論として、どこかであるみたいな形で、あたかも政府が、だから道徳を進めているみたいなロジックを使うこと自体が、これは事実と異なっている質問じゃないですか。

山内委員 下村大臣も、大臣になられる前に、本会議の席で、青少年の凶悪犯罪がふえている、それを直していくためにも教育再生が必要だという文脈のことをおっしゃっているんですよ。そういう分野の人たちがよく使うロジックだからあえて使ったというまででありまして、ですから、何を言いたいかというと、きちんとしたデータに基づく議論をやりましょうということですね。

 私、道徳教育を全否定しているわけではないんですけれども、例えば、国が一律でやるのがどうかというのと、あるいは、道徳教育をやるにしても、先ほど大津の例できちんと検証がなされていないということがありましたので、検証した上で、成功例、失敗例、あるいは比較対象として全くやっていない高校、そういうものをきちんと事例研究をした上で、効果のあるものをやっていく、そういう姿勢が必要だと思うんですけれども、この提言を見ていると、かなり前のめりで、まず中央で一律でばんとやろうとしている、そういう印象を受けるわけです。

 教育分野の議論は、どちらかというとデータに基づかずに、先に結論ありきで議論がなされているような印象を非常に受けるんですけれども、そういう、例えば、道徳教育に関しては今後どのように評価をやっていくか、あるいはフォローアップをやっていくか、大臣のお考えをぜひ御説明いただきたいと思います。

下村国務大臣 質問についても、やはり事実を踏まえてぜひ論理展開をしていただきたいというふうに思うんですね。教育再生実行会議でも道徳の教科化についての提言はありましたが、今委員が指摘されたような発言を含めて、そういうのは全然ないんですね。

 そもそも、補正予算の中で、心のノートを復活するということをいたしました。これはことしの七月から各学校に配られますが、この中で、道徳の教科化に向けて、その心のノートの全面改訂を行う。

 そういう意味で、ぜひ心のノートというのをちょっとごらんになっていただきたいと思うんですが、特定の価値観とか国家意識がどこに、そこに記述されているのか。ある意味では、人が人として当たり前に生きていくための学ぶべき規範意識やルールというか、あるいは心の気づきは書かれていると思いますが、委員が危惧されるようなところがどこにあるのか。これはないと思いますし、そういうものを一方的に押しつけるというような考えはそもそもございません。

山内委員 心のノート、中学用と五、六年生用を一応全部見てまいりました。改訂する前のだから今の心のノートですが、その内容を見る限り非常にマイルドな内容で、決してその内容を全否定するつもりはありません。ただ、将来的にそれを拡大して押しつける可能性があるのかなと思うのと同時に、私も心のノートを読みました、中に非常にいいことが書いてありますが、ただ、あのノートを読んで、授業に使ったら即座にいじめがなくなるとか問題が解決するとはとても思えないような内容でした。

 実際、教育現場で心のノートは余り使われていなかったから、一旦廃止されたんですね。心のノートを一旦全国に配付するのをやめたのは、たしか自民党の内部の議論でやめたんだと……(下村国務大臣「民主党ですよ、民主党政権」と呼ぶ)失礼しました。私が昔、自民党にいたときに、心のノートは税金の無駄遣いだという議論があった覚えがありましたので。

 ですが、実際、そのとき調べたのは、余り現場で使われていなかったという実態がありました。だから、使おうというのも一つの方向かもしれませんし、そもそも、国が配る必要が本当にあるのかということを私は申し上げているわけです。

 それから、今の心のノートに懸念を持っているわけではなくて、将来の心のノートが非常に偏った内容になったときのことを懸念して、今申し上げているわけです。

下村国務大臣 非常に聡明な山内委員の御質問とちょっと思えない御質問で、私は率直に言ってちょっと驚いているんですが。

 まず、心のノートを使っていじめが即刻なくなるなんということを一言も申し上げたことはございません。それは即刻なくなりません。

 そもそも、御指摘のように、心のノートそのものがすぐれていい教材だとは我々も思っているわけではありませんので、全面改訂をする必要がある。より効果の上がる、子供たちにとって学ぶべきものとして、冊子として提供していきたいと思っております。

 その中で、繰り返すようですけれども、何をもって一方的に国の価値観を与えるというふうに言われているのかということがわかりませんが、そういう視点で教材づくりをしているということではないということを、これは再三再四申し上げているわけでございまして、ぜひ、子供たちの情操の意味でも役に立つ、生きる上で材料となるようなものを教材として考えていきたいと思っています。

山内委員 終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私ども日本共産党は、昨年十一月に、いじめ被害者の方々、現場の先生方、子供にかかわる関係者、研究者の方々からの聞き取りをもとにいたしまして、この「「いじめ」のない学校と社会を」と題した政策提言を発表いたしました。これは既に安倍総理にも事前にお渡しをいたしました。先日は、これを踏まえた、いじめ問題のシンポジウムも開催をさせていただきました。

 私たちは、聞き取りを通じて、いじめがいかに子供を人間として追い詰め、その後の人生を変えてしまうような傷を与えるかを目の当たりにし、いじめはいかなる形をとろうと人権侵害であり、暴力だと強く思いました。

 同時に、重要なことは、子供の命を辛くも救えた、いじめを解決した、そういう貴重な実践が各地にあるということであります。私たちは、これらから教訓を酌み取れば子供を着実に救う道が必ず開けるということも確信をいたしました。

 その基本方向として、このパネルですけれども、五点、私たちはいじめに対応していくことを提案させていただいております。きょうは、時間もございませんので、この上のダイダイ色の部分に限って質問いたします。

 ここで私たちが一番考えたのは、子供の命を全てに優先させて事に当たるということの大事さであります。

 第一のいじめ対応を後回しにしないということでいえば、相談や情報提供があったとき、今忙しいから後でとして、命取りになったケースが少なくありません。たとえ学校にどんなに大切に見える仕事があろうとも、子供の命より大切な仕事はないというのは当たり前なんです。

 第二の情報の共有でいえば、たとえささいなことに見えても様子見をしないということです。被害者はプライドを持っておりますから、多くの場合はいじめられていることを認めないケースが多いです。それだけに、何らかの情報があったときには、既に相当深刻な段階であることが多い。

 解決しているケースを見ると、何らかの情報があったとき、事実確認してからなどとしないで、直ちに全教職員で情報を共有し、保護者にも、この学校にはいじめが起きている、どんな子細な変化でもぜひ学校に知らせてほしい、こう知らせて、みんなの力でいじめに対応しております。

 そこで、これは総理に基本認識を問うんですけれども、子供の命最優先の原則、これをやはり中心にして学校の基本方向を確立していくことが大事だと私は思いますが、総理の御見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 政府としては、まさに子供たちの命に対して責任を持つという思いで、今委員が御指摘になったように、最優先で考えていきたいと思います。

宮本委員 次に、三つ目の、いじめをとめる人間関係を子供たちにつくる。ある中学生は、運動会で初めてクラスの団結が生まれ、いじめになりそうになっても、つまらないからやめとけよと声をかけ合えるようになったと話してくれました。

 そして、四つ目ですけれども、まず、そのいじめられた子供の安全を確保する。また、その子供に対しては、心身を犠牲にしてまで学校に来ることはない、こういうメッセージを伝えようということも、当事者の方々から歓迎の声が寄せられております。

 そして、いじめる子がいなくなるというのが問題解決の鍵だと思うんですね。現場の先生は、深刻ないじめほど説教では何ともならないんだ、こういうふうにもおっしゃっております。いじめに走るには必ず理由がある、その苦しみや悩みを理解し、その子供の苦しみに寄り添ってこそ、いじめを反省し、やめる道を歩み出すんだ、そういう指導が求められていると思います。

 さて、きょうは主に五番目、被害者、遺族のいじめの真相を知る権利の尊重、隠蔽をしないというこの原則の確立について少しお伺いしたいと思うんですね。

 昨日、国会で、いじめ被害者の方々が集会を持たれました。そこでも、なぜ遺族に何も知らされないのか、命の叫びを聞いて、私も胸が本当に詰まる思いをいたしました。

 これも総理に基本認識をお伺いするんですが、朝、行ってきますと元気に家を出た子供が変わり果てた姿になって帰ってくる、一体我が子に何が起きていたのか、遺族がそのことを切実に知りたいと思うのは当然のことだと思うんです。真相の解明と再発防止にとっても、これは大変大事な問題です。何が起こったのかわからなければ再発防止ができない、当然のことですね。

 そこで、総理に、遺族の知る権利を最大限尊重することは人間として当たり前の情だと私は思いますけれども、総理も思いを同じくしていただけるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いじめで子供が命を絶つ、こういう出来事は何としてもなくしていきたい、このように考えているわけでございます。

 そこで、御遺族のお気持ちはその真相を知りたいということなんだろう、でき得る限りそれに応えていくべきだろうと思いますが、ただ、そのときに、いわばいじめた側も少年少女であるという状況の中で、さまざまな配慮の中でなかなか知り得ないということがあったんだろうと思いますが、しかし、そうしたお気持ちに対してはできる限り私は応えていくべきだろう、このように思っております。

宮本委員 当然の人間の情だというふうに思うんですね。ところが、実際には、この人間としての当たり前の願いが、多くの場合に踏みにじられているという実態があります。

 我が党が主催したシンポジウムでは、鹿児島県出水市で、二〇一一年九月、二学期が始まる日の早朝に、四メートルもの高い金網を乗り越え、新幹線に飛び込み、短い人生をみずから閉じた女子中学生の御遺族が参加をされました。

 御遺族による調査では、クラリネットを壊され、最低十万円かかる弁償に困っていた、部活の後、ノートがなくなったと泣いていた、愛用のシャープペンが鋭利な刃物でえぐられた上、焼かれているなど、いじめと思われる状況が明らかになっております。

 ところが、学校は、全校生徒アンケートを実施し、いじめにかかわる多くの記述があり、一旦は校長が遺族に見せると約束したアンケートも、結局は遺族に一枚も開示をしておりません。第三者調査委員会は、そのメンバーの名前も公表されず、三カ月の短い調査で、自殺につながる事実は確認できずという報告で幕を引いてしまった、こういうことでありました。

 これも総理に大きな認識を問うんですけれども、この問題に限らず、昨日の集会でも、いじめなどで自殺その他重大な被害を受けた当事者や遺族、家族にアンケートをとったところ、八割の方々が、学校や教育委員会の説明や報告について全く納得できないと答えているという事実が報告されておりました。こういう状況で本当にいいと思われるか、これはすぐに政治が救わなければならない問題ではないか、総理にその御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 そういう状況になったときに、学校とそして教育委員会があるわけでありますが、その際、そういう状況に誰が責任を持っているのか。ですから、そういう観点から、我々、責任の所在を明確にしようということでありますが、その中において、そうした誠意ある対応、御遺族のお気持ちに寄り添う対応が、当然、責任ある立場としては必要だろう、このように思います。

宮本委員 我が子を突然そういういじめ自殺で失った親にとっては、一体我が子に何が起こったのか、その事実を知ることなしに、前に進む足場すら得られないわけですよ。事実が隠蔽されれば、そこに募るのは不信と疑いばかりだということになります。事実確認がされていないとか、臆測なども含まれているからなどと口実にするわけですけれども、そんなことは御遺族も百も承知で、一つ一つ事実確認を一緒にさせてほしい、とにかく全てを洗いざらい見せてほしいというのが御遺族の思いだと思うんですね。

 昨日の集会でも、実際に丁寧にアンケートの開示を受けた御遺族がいらっしゃいましたけれども、その方は訴訟になっていない、そこを開示してもらえばそういうことになっていないというんですね。そういう思いも語られました。

 これは文科大臣に聞きますけれども、そういう御遺族の気持ち、おわかりになっていただけますか。

下村国務大臣 これは、もし自分が、我が子が同じような状況だとしたら、なぜ自殺したのかということについて親として知りたいし、また、知ることによって、親として我が子に対して何かできなかったのかという悔やみがあるわけですから、当然その親御さんの心情は我が事としてよくわかる思いがいたします。

宮本委員 重大なことは、国の通知文書がこの隠蔽の根拠とされていることであります。

 先ほどの出水市の事例について、このパネル二を見ていただきたいんです。

 上は、出水市教育委員会が同市情報公開審査会に提出した非開示の理由説明書であります。自分たちは、安易な提供や公表は避けるべきであるという国の通知や県教委、文部科学省の指導に基づいてアンケートの非開示を決定した、こう述べております。

 そして、その国の通知とは、平成二十三年六月一日の文科省通知、ここに持ってまいりましたが、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」、この通知であります。パネルの下につけておきました。

 なるほど、「調査で入手した個々の資料や情報は慎重に取り扱い、調査の実施主体からの外部への安易な提供や公表は避けるべきである」と書かれてあります。

 明らかに国の通知が隠蔽の口実となっている。これは見直すべきではありませんか、文科大臣。

下村国務大臣 御指摘のように、「平成二十二年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ」における子どもの自殺が起きたときの調査の指針においては、遺族に対して随時調査の状況を説明する必要があるとした上で、分析評価前の資料の取り扱いについては、事実確認がなされておらず、臆測や作為が含まれている可能性があるため、それをそのまま公表したり、そのまま遺族に情報提供したりすることは調査の客観性や中立性を損ないかねないとしているところでございます。

 これを踏まえ、平成二十三年六月一日の通知、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」は、「調査で入手した個々の資料や情報は慎重に取り扱い、調査の実施主体からの外部への安易な提供や公表は避けるべきである」というふうにしたところでございます。

 この審議のまとめは、自治体における調査を少しでも前進させるため、平成二十二年度時点で実施可能と考えられる枠組みを示したものでありましたが、その後、各地域における取り組みも進んでいると考えられることから、文部科学省としては、今後、自殺が起きたときの背景調査のあり方については、現在の運用状況や関係者の意見を踏まえ、有識者会議において、情報公開のあり方を含め必要な見直しをしてまいります。

宮本委員 これはぜひ見直していただきたいと思うんですね。

 今大臣が触れた協力者会議のまとめでありますけれども、この中で、実はアンケートのひな形といいますか、用紙の提案も中に載っております。

 この用紙の形式を提案した団体が昨日言っておりましたけれども、最初の提案から変更された部分がある。最初の提案には、御家族にも報告することを御理解くださいと書いてあったものが、かわりに、そのまま遺族には見せませんというふうに変わっていて、そういう形でアンケートをとられているものですから、見せないことが条件だというのが一つの非開示の口実になっているというんですね。この点ではしっかりと御遺族の声に応えることを強く求めておきたいと思います。

 この問題は、人間の尊厳に直接かかわり、再発防止のための真剣さも問われている課題だと思います。ぜひ真剣に取り組んでいただくことを強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。

山本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。

 十五分の質問時間、どうぞよろしくお願いいたします。

 先日、福島県のいわき市を訪ねてまいりました。いわき市明星大の駐車場用地の提供を受けて、楢葉町の町立あおぞらこども園が、ことし、一年十カ月ぶりに開園をされていました。日赤や民間企業、またタレントさん等の支援でつくられたそうです。保育園と幼稚園をあわせたこども園の形態をとっておりまして、楢葉町に一時帰宅される際の預かりなどの子育て支援センターも園内に設置をされていました。

 こども園の玄関には、その日の放射線量が〇・一マイクロシーベルトと表示をされていました。広いグラウンドには遊具も設置され、その向かいには楢葉の小中学校が建っていました。仮設ながら、園内は大変明るい雰囲気で、給食もつくっておられ、また入園式の準備が進められていました。三月に卒園した園児たちは、四月からは一年生として向かいの仮校舎に進学をいたします。

 楢葉の町ごと、学校ごと移転をしておりまして、それも、楢葉の町を守り、立て直すという意思のあらわれなのかなというふうに思いました。二十七年まで、あと二年間、この継続が決まっているそうですけれども、来年の四月をめどに、楢葉町として今後どうしていくのか、その方針を決定することになっているということでございました。

 楢葉町は二十キロ圏内です。昨日も、中間貯蔵施設の知見を得るためのボーリング調査が行われておりました。情報で知りました。住民が移動を余儀なくされた原因をつくったのはやはり国の方針が大きいかというふうに思っておりまして、今後の楢葉町の皆様の暮らし、また子供たちの教育の保障、国として現段階でどういう見通し、計画を持ってその責任を果たしていくお考えか、お聞かせをいただければと思います。

下村国務大臣 福島県におきましては、仮設校舎や避難先等での学習を余儀なくされている子供がたくさんいる中で、教育現場も復興途上であり、子供たちが以前と同様、落ちついた環境の中で安心して学べるよう継続的な支援が重要だというふうに認識しております。

 私も大臣就任直後に福島に参りまして、いわき市に行き、楢葉町の仮設校舎、それから楢葉町の町長と幹部の方々から同様な状況について直接お聞きしました。どんな困難な状況にあってもたくましく育っている子供たちを見て、彼らの夢が実現できるよう全力で応援したいとそのときも改めて感じたところでございますし、それは楢葉町の町長やいわき市の町長、あるいは県の教育長等にもお話を申し上げたところでございます。

 文部科学省としては、子供たちの学びたいという思いに応えていくため、福島県からの要望を踏まえつつ、学校施設の復旧、それから就学機会の確保のための経済的支援や心のケアの充実、被災地の教育活動への支援、地域の教育力を活用した子供たちの学習支援等、教育環境の整備を一層進めてまいります。

青木委員 ありがとうございます。

 楢葉町に象徴される避難者の皆様方の今後の暮らし、子供においては教育環境、これはしかるべき時期に国の方針をやはり定めなければなりませんし、また、その後の細やかな対応、丁寧な対応が必要なのかなと思っております。

 大臣が御訪問されたことも教育委員会の皆様や行政の皆様はお話しされていまして、大変たくましい子供の姿に大臣も大変感激をしていましたということを私も伺いまして、また文科委員会の方でも子供の実態について取り上げていきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 もう一点、福島の教育現場の課題でありますが、教員の確保についてあわせてお伺いをさせていただきます。

 福島県において、震災の二十三年、二十四年、そしてこの二十五年度と、約五百人ほどの教員の加配措置、増員を行っていただいています。予算を計上していただいているんですが、要望どおり予算がついても、実際、現場では教員の確保が難しいという現状があるということでございますが、予算がついても執行がされないというこの現状について、どのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 今、青木委員から御指摘がありましたが、被災児童生徒に対する学習支援等のための教職員定数の加配措置については、これは福島県からの要望どおり、二十三年度に五百十四人、二十四年度に五百十二人の措置を行い、そして、今度の平成二十五年度の予算案においても、前年度同数の一千人、福島県は県からの申請どおり五百十人を措置して、既に内定通知も出しているところでございます。

 この加配定数を活用して、例えば、退職教員をフルタイムで使うほか、短時間勤務の形態で任用するということも可能でございます。

 また、教職員の給与は、各県の条例に基づき、県教育委員会が決定することになっており、義務教育費国庫負担金を活用して、福島県教育委員会の判断により弾力的に給与を設定することも可能であります。

 また、教員への人材確保が困難との今御指摘がございましたが、福島県によれば、平成二十五年度からは教員採用を再開し、小中学校で約十三倍の倍率の選考のもとで必要数を確保しており、臨時講師についても必要数を確保しているというふうに聞いているところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、福島県を初めとした関係自治体からの要望を踏まえながら、また、弾力的な対応もできるということを御説明も申し上げながら、引き続き、息の長い支援を行ってまいります。

青木委員 ありがとうございます。

 今、給与においても裁量があるというふうに伺ったので、ただ、使い勝手のいい補助金というか財源に変えてあげた方が、給与の臨時措置とか、あるいは教員OBの採用、さまざまな経験者、あるいは住居の手当て等々、現場の自由な裁量の枠を広げれば、予算をもっと活用できるのではないかなというふうにも思いました。

 公聴会でも、いわき市は、被災地でありながら放射線量が低いということで避難者の受け入れも行っていて、これは継続しておりますので、なかなか財源の工夫もされているかと思います。その上に、補助金が使いづらいという御意見もありまして、基準や条件を設けるのではなくて、できるだけ地元が使いやすい形にすることが望ましいのではないかなというふうに思いました。

 福島の教育現場については以上御報告をさせていただきまして、最後の質問になりますけれども、前回の予算委員会でも質問いたしました使用済み核燃料の放射性廃棄物の処理にかかわる核変換技術の研究開発の促進について、再度質問をさせていただきます。

 使用済み核燃料の処理、これは世界の課題でございまして、それにかかわる人材育成は、今後、継続した課題になると思います。

 日本の使用済み核燃料、全国五十四基と再処理を待っているものも含めまして、一万七千トン、世界第三位の保有量でございます。現下での最終処分は数十万年単位での地層処分です。

 しかし、この核変換技術は、中性子を長寿命核種に照射することによって短寿命核種に変換し、数十万年の処分期間を百年、二百年に短縮することができる技術でございます。いわゆる最終処分場が必要とはなくなり、中間処理施設を補強するだけで十分になるというふうに言われております。

 核変換の方法は二つございまして、加速器を利用したものと高速増殖炉を用いるものです。加速器の方が、加速をとめれば中性子はとまりますので、そうした暴走を防ぐことができ、安全性が高いと考えられております。

 ただ、二十五年度の予算案では、加速器には一億、そして高速増殖炉には二百八十九億が計上されております。高速増殖炉は、世界で成功した例はなく、アメリカ、イギリス、またドイツ、主要先進国は既に断念をされています。日本でも事故が続いています。

 長年かけても見通しの立たないこの高速増殖炉にばかり巨額の予算をつぎ込むのではなく、既に、中性子を発生させる最先端の加速器が、東海村、J―PARCに設置をされておりますので、より安全な加速器を活用した方式も並行して進めるべきだと考えます。

 前回の質問の折、下村大臣は、核変換技術の実用化が可能であれば、これは極めて有意義であると認識を示されました。また、原子力委員会の報告書の取りまとめから五年経過していることも指摘がありました。加速器の方式による核変換技術の研究開発に係る予算は約二百二十億円と具体的に示していただきました。

 ただ、下村大臣は、答弁の中で、原子力を利用するに当たってと前置きをされておりまして、私たちは原発に頼らないエネルギー政策を考えておりますが、いずれにしても、使用済み核燃料の処分は必要なことでございまして、世界じゅうが期待する技術でございます。

 一刻も早くこの加速器方式の研究に着手をしなければならないと考えています。どちらかを選択するのに時間をかけているよりも、この際並行して進めたらよいのではないかと考えますが、御所見をお伺いしたいと存じます。

下村国務大臣 高速増殖炉サイクル「もんじゅ」でございますけれども、これは、廃棄物の減容や有害度の低減など、環境負荷低減への貢献が期待されており、現在、科学技術・学術審議会のもとで、もんじゅ研究計画作業部会を設置し、改めて専門家による技術的な検討を行っており、ことしの夏をめどに研究計画を取りまとめる予定でございます。

 一方、何度も御質問いただいておりますが、加速器を用いた核変換技術については、二〇〇九年四月に原子力委員会が取りまとめた報告書「分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」、この中で、高速増殖炉サイクルによる技術が所定の性能目標を達成することができないと判断されたときは、開発対象として採用が検討される可能性もあるとされているところではございますが、技術的な課題も多いため、おおむね五年ごとに、基礎データの充足や研究の進展等についての状況を評価することが適当とされているところでございます。

 文部科学省としては、原子力委員会の報告書が出されてから四年が経過していることから、加速器を用いた核変換技術について、改めて技術的な観点での評価が必要と考えており、それらの結果を踏まえて今後対応を検討してまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 この際、「もんじゅ」か加速器かという二者択一を迫るものではなくて、一刻も早くこの加速器の方式を進めたいという思いでございます。

 セシウム135といった課題もございますけれども、マイナーアクチノイドとされるものを目的とした研究を早く進めたいというふうに思います。

 最後に、できれば安倍総理に一言お伺いしたいと思いますけれども、こうした研究成果は、これから国際社会において、また諸外国との共存を図る中で、日本が貢献できる最大の分野であり、また最大の武器だというふうに考えます。それにかかわる研究者はもちろん、さまざまな人材を育成する教育環境整備にこそ最優先で力を注いでいただきたいと思いますが、安倍総理の御所見を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本原子力研究開発機構において、「もんじゅ」やJ―PARCの利用を想定した基礎的な研究を実施しておりますが、今後とも、引き続き、核変換技術にかかわる研究を着実に進めていきたいと考えております。

青木委員 ぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

山本委員長 これにて青木君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。

 本日、質問の機会をいただきました。どうもありがとうございます。

 本日は、昨日の私の同僚議員である玉木委員それから後藤委員の補足、フォローアップという意味で、行政改革について、安倍内閣の基本的なスタンスをお伺いしてまいりたいと存じます。

 まず、けさの審議、まあ、それまでの審議もそうですけれども、安倍総理を初め閣僚の皆さんが経済政策、アベノミクスについて語られるときは、大変自信満々であられ、かつ精力的に、エネルギッシュに、エナジェティックにお話しになるわけでありますけれども、そのことに比べた場合、これは私の個人的な思いでありますけれども、行政改革あるいは財政改革については、相対的でありますけれども、比べると、まあ言葉を選ばないといけませんが、少し弱いのではないか。アベノミクスを語るときの思いに比べて、そこはもうちょっと頑張っていただきたいなという思いがあるものですから、あえて本日は質問をさせていただきます。

 確かに、アベノミクス、順風満帆でいっておられます。これは、私どももリスクは指摘します。リスクは指摘しますけれども、日本経済がよくなることは何よりでありますし、安定した政権というものも、野党の立場を離れれば、国民としてはありがたいことでありますから、それは我々としても別に異を唱えるつもりはありません。

 ただ、金融政策はもうスタートしました。これは、まさに異次元の政策が黒田新体制のもとでスタートしています。これはリスクを指摘しつつも見守っていきたいと思いますが、そうなると、政府に残されているのは、まさに財政の規律をどれだけ中長期的にアピールをされていくのか。私どもは、短期的にもアピールすべきだと。これは私どもの立場ですが、政権の立場は中長期的に財政の規律をきちんと示していくんだということでありますから、それをぜひお願いしたい。そのためにも、行政改革というのがとても大事になってくると考えております。

 そこで、まず稲田大臣にお聞きをしたいわけでありますが、私どもの政権も、いろいろと批判もされ、また内心じくじたる部分もありますけれども、やったものも幾つかあります。その中で、私どもは、やはり行政改革については本気で取り組みました。もちろん、百点満点ではありません。参議院がねじれて以降は法律が通りませんので、これもじくじたるものがありますが、取り組む姿勢、思いは、物すごく私どもは熱い思いで取り組んでまいりました。

 今後、新政権が取り組まれる方向は私は同じだと思います。ですから、私どもは野党ですけれども、そこは全面的に協力して、お互いに、行政改革あるいは公務員制度改革も含めて、前に進めていきたいというふうに考えております。

 そこで、さっきの話に続くんですが、今、霞が関の皆さんは、さっき私が言いましたように、行政改革に対する温度が少し経済政策に比べてぬるいという点において、しばらくは命の洗濯というふうに官僚の皆さんは思われています。それは、私は元官僚をやっておりまして人間的なパイプがありますので、非常にぬくぬくと官僚の皆さんがされているという状況であります。しかし、こんなことでいいわけはありません。

 そこで、稲田大臣にお聞きしたいのでありますが、三月十九日の参議院の内閣委員会で所信を述べられておられます。その際に、行政改革推進本部、行政改革推進会議を設置して、行政改革をやるんだという決意を表明されておられます。そこで、この行政改革推進本部で何が決められたのか、御説明をいただければと存じます。

稲田国務大臣 今の岸本委員の質問は、安倍政権の行革に対する大きなエール、応援だというふうに思っております。

 私も、行革は大変重要な課題であり、政権がかわっても、民主党政権の中で取り組まれていた熱い思いだとか、よい取り組みはぜひ引き継いで、それをまた改善してやっていきたいと思っております。まだ改革半ばのものもございます。

 今の岸本委員のお尋ねである行政改革推進会議、それから行政改革推進本部で何が決まったのかということでございますけれども、まず国家公務員に関しては、年金の問題、年金の開始年齢の雇用との接続の問題を閣議決定いたしました。その上で、行政事業レビュー、昨日もさまざまな質問がありましたけれども、民主党政権における行政事業レビューを改善した形でのやり方を閣議決定いたしましたし、調達改善についても推進本部で決定をしたところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 距離が遠いので、また戻っていただくと大変なので私の方で答えますけれども、行政事業レビュー、あと調達改善計画といいますか、そういう政府調達の改善もやられる。具体的にはこの二本柱でスタートされたと承知しております。

 それで、それぞれ私どもの政権のときからやっていたものを引き継いでいただいたというところでありますが、行政事業レビューについては、昨日同僚議員から指摘させていただきましたように、これは改善というよりはいろいろな形で退歩されているのではないかというふうに思います。

 それは後ほど指摘させていただくとして、とりあえず、鳴り物入りでスタートしたこの本部が決めたのが、行政事業レビューと調達改善計画ということだけでありまして、もちろん、スタートして三カ月ですから、全てを網羅して発表していただく必要もないかもしれませんが、ただ、安倍内閣は、第一次内閣のときは、公務員制度改革も掲げて、レジームチェンジということで果敢に取り組まれたわけであります。そのことと比べても、いささかやはり寂しいのではないかと考えております。

 安倍政権の行政改革というのが、当面、行政事業レビューと調達改善計画の二つだけなのか。大変寂しいと思いますが、行政改革について、基本的な考え方、哲学、あるいは進め方、戦略について、大所から稲田大臣の御見解を問います。

稲田国務大臣 まず、行政事業レビューも、後退だとおっしゃいましたが、私はめり張りをつけた形で改善をいたしております。それから、基金シートというのもつくりまして、今まで、出したらその年度だけであったものも、その次の年度もずっと、その基金がブラックボックス化しないために、透明化することも行政事業レビューの中で決めさせていただきました。

 その上で、一体どういう方向でというか改革の方針で臨むのかということでございますが、私は、国家公務員改革にしても、もちろん、安倍第一次内閣において、国家公務員改革は戦後レジームからの脱却の核である、中核であるという思いは今も同じでございます。

 独法改革、それから特別会計改革もそうですが、改革の集大成ということで、今、推進会議でも次回は独法、特会について議論をすることにいたしておりますし、国家公務員改革についても、昨日るる質問がございましたけれども、改革の集大成ということで、なぜ基本法ができていながら今に至っても全ての法案が廃案になっているかということを総括した上で、真の改革を進めていく、そういうつもりでございます。

岸本委員 大変立派な、想定問答どおりの答えを頂戴いたしました。もう少し自分のお言葉でお話をいただければと存じますが、官房長官にお聞きをさせていただきます。

 四月五日の行政改革推進本部で、安倍総理は、無駄の撲滅に向けて行政事業レビューと調達改革を行うことを述べられました。そして、その場で、各閣僚におかれては、一層のリーダーシップを発揮し、積極的に無駄の撲滅に取り組んでいただくようお願いいたしますという御発言がございます。

 これはこれで結構なんですが、こういう行政改革のスタートをする場で一国の宰相がおっしゃる言葉として、大臣の諸君、無駄の撲滅に頑張れと言うだけであれば、これは非常に寂しい。安倍内閣の行革の哲学がこのお言葉からは感じられませんでした。

 官房長官、官房長官のお言葉で、安倍内閣の行政改革の哲学をお答えいただきたいと存じます。

菅国務大臣 第一次安倍内閣のときに、ある意味では戦後初めての公務員制度改革に手をつけました。そこは余りにも真正面からこの改革に臨んだために、途中でガソリンがなくなったというんですかね、一年でありましたけれども、本当に分厚い壁でありました。

 今度の内閣においては、そこを戦略的に戦術的に、やるべきことは断じてやる、そういう思いの中で、民主党政権の事業レビューですか、必要なものはしっかり引き継いで、やるべきことはやっていく、そういう総理の強い思いであります。

 いずれにしろ、私は誰をこの行革大臣にするのかなと思いましたら、稲田大臣であります。この戦略、戦術理論はもちろんですけれども、何より強い意思を持ってこれに当たることのできる担当大臣だというふうに思っていますので、内閣を挙げてこの問題は突き進んでいきたいと思います。

 ぜひ、委員からも、私どもに対してそうしたさまざまな助言がありましたら、遠慮なく申しつけていただきたい。これは、国民に対して、私は政治に携わっている者の役割だと思っています。

岸本委員 ありがとうございます。

 先ほど稲田大臣に失礼な言葉があったとすると、おわびはしたいと思いますが、それだけ私がしつこくこのことを官房長官にまで来ていただいてお聞きするのは、安倍総理が二月二十八日の施政方針演説で、二〇一五年度までにプライマリー赤字の半減をされる、二〇二〇年度までの黒字化、財政健全化目標の実現を目指すとおっしゃっているんです。ですから、財政健全化を進めていくのに歳出見直しや効率化についてはとても大事なことなんですが、そこの基本的な考え方がなかなか私どもまだ腑に落ちない、理解できないという思いがありますものですから、ちょっと熱い思いで聞いてしまいました。

 引き続き、聞かせていただきたいと思います。では、一体どうやってその目標を達成するのか。

 きのう同僚議員からもありましたけれども、今回の補正予算で五兆円の借金をした結果、プライマリーバランスそのものは相当悪くなってしまいました。それを目標のために、二〇二〇年に、プライマリーバランス、八%改善してプラマイ・ゼロです。半減、本当にこれは厳しい。財務省の後年度負担見通しでもできませんということを、これは一般会計ベースですけれども、言っておられるという中で、どうやればよいのかということであります。

 そこで、もう一度稲田大臣に行政改革についてお聞きしたいと思いますが、そもそも行政改革とは何のためにやるんでしょうか。行政改革の目的について御所見を伺いたいと存じます。

稲田国務大臣 岸本委員のエールだと受けとめますが、私は自分が思っていないことを言えないんです、性格的に。ですから、決して例えば答弁を読んだりとかじゃなくて、自分が思っていることを発言いたしております。

 その上で、行革は何のためにやるのか。

 私は、行革が非常に重要だと思っておりますのは、行革が、まさしくこの国の形というか、国がやるべきものは何なのか、サイズはどれだけなのか、一体、この国の行政の形、あり方は何なのか、最終的にはそれに携わっている国家公務員のモラルと士気が高くなければならないと思っておりますので、私は、将来の国家像そのものを決めるものだと思っております。

 その上で、行政の効率化、そして効果を高める、最終的には国民のニーズに応える行政であり、また、国際社会において勝ち残っていくためにも、強い国家をつくるためにも、この行政改革というのは非常に重要な課題だと思い、取り組んでおります。

岸本委員 ありがとうございます。

 大変御立派な答弁だと思います。私も同様に考えます。

 つまり、行政改革というのは、もちろん投入を減らす、資源の投入を減らすという面が強調されます。それも大事ですけれども、実は、やはり行政サービスをよくする。今、国民のニーズとおっしゃいました。まさに国民のニーズを満たすための行政サービスを改善する、よいものを提供する、その際にスリムな効率化された形で提供する、そういうことが行政改革だろうと考えておりますので、ぜひ今のお心構えで頑張っていただきたいと存じます。

 さはさりながら、これは私ども三年三カ月やりましたし、それぞれ、実は後藤委員も玉木委員も私もそうですけれども、官僚時代にもできる限りの努力をしてきたわけであります。しかし、なかなか、官僚として官僚機構の中で頑張ってみても、一課長が頑張ってみても限度がある。財政再建もそうでありますので、これは官僚から政治家になって頑張ろうという思いで、大きなリスクをとって出てきているわけであります。進まないんです。なかなかうまくいかないんです。

 そして、何で行政の効率化、政府部門の効率化が進まないのか。

 もちろん、民間の株式会社は当然営利目的でやっておりますから、インセンティブがあります。行政の場合は、なかなかインセンティブがない。その差はありますけれども、これまで、本当にこれは自民党政権時代もやっていただいたと思います。我々もやりました、やろうとしました。しかし、なかなかこれまでの取り組みが成功していない。

 この理由について、稲田大臣、どのようにお考えでしょうか。これは官房長官にも後でお聞きしたいと思います。

稲田国務大臣 なかなか進まないという点もあろうかと思いますが、しかし、さりとて、私は一歩ずつ進んでいると思います。

 今、先ほどの行政事業レビューにいたしましても、成果の出ているものもあるし、そして独法改革、特別会計改革など、公務員改革もそうですけれども、改革の途上にあるものもあると思います。政治のリーダーシップも発揮しながら、また与野党を問わず頑張っていきたいと思っております。

菅国務大臣 やはり、政府、特に政治が改革意欲をまず持ち続けることですよね。それと同時に、短命政権が、一定の時間が来ると、ここを我慢すればいいという官僚の対応、そうしたものを打ち砕くだけの強い政府でなきゃならないというふうに思います。

 そういう意味で、今まで私どもの内閣でなかなかやり遂げられなかったということの大きな理由はそこも一つあるだろうと思いますし、何より、改革意欲を持ち続けることが私は大事だと思います。

岸本委員 ただいまのお二人の御答弁に私も同感であります。

 さらに、もう一つ、これは私が公務員をやっていた経験から申し上げたいのでありますけれども、実は、政府の官僚の中には、効率化をする、行政改革をすることが自分の仕事だと思っている人がいないんです。効率化が自分の責任だと思っている役職の方がいないんです。そういうふうにたてつけがなっていないんです。

 もう時間もあれですから自分で申し上げますが、官僚の人事評価、これはもう大臣経験が長い方は御存じだと思いますけれども、何といっても、事業官庁であれば予算をとってくる課長さんなんです。予算をとってきて仕事をする。それも、お金を使い残すことなく、途中で変だと思ってもやり切っちゃう。予算をとってくるというのが大事でありますし、法律を変える、つくる、制度をつくる、変える、こういうことが、役人として、官僚として評価されるわけであります。予算を節約して余した、効率化を進めた、それで評価されるようにはなっていませんし、それがおまえさんの仕事だよというふうな任命の仕方もされていないわけであります。

 安倍総理が、四月三日の第四十七回国家公務員合同初任研修の開講式でスピーチをされました。そこで、公務員に求められるものとして、政策のプロになってくださいと。政策の企画立案を担う皆さんがその政策分野のスペシャリストでなければ、国益を守ることはできないのですと訓示されました。大変よい訓示だと思いますが、まさにこういうことなんですね。

 この訓示の中には、公務員の役割は政策の企画立案だよ、頑張れよと。決して、予算の効率化をするんだよ、効率的な行政運営をするのが君たちの仕事だよというメッセージは入っていないわけであります。それはなかなか、新人の方がそれを聞いて効率化に励もうとは思わないということなのであります。

 行政改革等については、アングロサクソンの国がやはり進んでいます。

 英国なんか特にそうなんですけれども、イギリスでは、官僚、特にトップの事務次官、それからエージェンシー、日本の独立行政法人がモデルにしたエージェンシーの長の役割、これは、もちろん大臣を補佐して政策の企画立案をするということもありますが、実は日本と全く違う点があります。

 日本と違うのは、今言った次官とかエージェンシーの長は、いわば会計官として任命されます。会計官ですから、定期的に決算委員会に次官が呼ばれます。そして、ちゃんとやっているかということを、会計検査院などの監査や分析などに基づいて、予算の効率的な執行に努力したかどうかが決算委員会でチェックされます。それは、エージェンシーの長であり次官なんです。

 そして、この人たちのボーナスはそれで査定されるんです。そこまでやっているんです。そうすると一生懸命やりますよね。しかも、彼らは、年次報告書ですとか役所の財務諸表、内部統制報告書などに会計官としてサインをする、責任を持たされる。そこまでやっているからこそ、俺の仕事だ、行政の効率化をしないとボーナスが上がらないというのが官僚のトップでありますから、進む。

 ぜひ、私どももこれは三年間できなかったんですけれども、議論はしていたんですが、こういう仕組みも、私たちの国で勉強しながら入れていくという方向も一つあるのではないかと存じます。

 そして、今回、さっきから同僚議員からも不規則発言がありますが、行政事業レビューの、やっていただくのはいいんですけれども、結局、責任者と責任の内容がなかなか明確になっていないというところがあります。今、仕切りは官房長ということですが、やはりこれは例えば役人にやらせるのはよくないという考えもありますし、では、次官に責任をとらせろ、例えば行政レビューの責任者を次官にするというのも、会計官でやっていく手前で、あってもいいのかもしれません。

 そこで、具体的に提案したいと思うんですが、今言いましたようなイギリス型の事務次官や独法の長を最高財務責任者、民間で言うCFO、チーフフィナンシャルオフィサーとして任命して、行政の効率化を目指すような方向で仕組みを検討するということについて、稲田大臣と官房長官の御答弁をお願いいたします。

稲田国務大臣 官僚出身の委員からの御指摘でございますし、私も委員と同様に、やはり能力・実績主義、そして頑張れば報われるというインセンティブが働かないといけないと思いますし、反対に、何か失敗をしたときにはその責任をとるという仕組みも考えていかなければならないのではないかと思います。

 先ほど行政事業レビューの責任者の御指摘がありましたが、行政事業レビューの外部の公開プロセスにおいて官房長がコーディネーターをする。しかし、結果、外部有識者のコメントをきちんと書いていただいて、その上で、行政事業レビューは各府省の自律的な取り組みですので、それを反映させていって、最終的には行革の推進会議において横串を刺していく、そういう取り組みをしているところでございます。

 今委員が御指摘のことなども念頭に置きながら、改革に取り組んでいきたいと思っております。

菅国務大臣 今委員の提案を一つの参考にさせていただきたいと思います。

 ただ、私、思うんですけれども、今の霞が関の官僚の中にも、やはり行革、効率、合理性に努めなきゃならない、そういう志の人も私はいると思うんです。そうした人たちが仕事をできるようにするのも私たち政府の役割だというふうに思っておりますので、いずれにしろ、この行政改革というのは断じてやり遂げる、そういう思いで取り組んでいきたいと思います。

岸本委員 ありがとうございます。

 まさにそういうことでありまして、行政改革をやりたくて、やむにやまれず飛び出した人間もおれば、中で本当に頑張っている同僚もおります。ぜひ御指導をお願いしたいと思います。

 官房長官にお引き取りいただく前に、簡単にちょっと指摘をしておきたいのですが、前回、私は、いわゆる官民ファンドの問題点を議論させていただいて、政府の、特に産投特会が出資した団体のパフォーマンスの低さを指摘させていただきました。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDOは、七百二十億円の政府の出資がありながら回収が四千四百万円。情報通信研究機構は、七百十六億円の出資をしながら二億四千万円しか返ってこない。医薬基盤研究所は、三百五十四億円の出資で回収額が七百四十万円。農業・食品産業技術総合研究機構が、三百五十一億円の出資でリターンは三百万円。

 こういうことは、本当に大変な国民のお金を無駄に使ったということでありますが、これにもいろいろな原因があります。

 これは開発分野のことですから、難しいのは承知の上でありますけれども、これは質問通告していますが私の方で答えますが、実は、これらの団体には、所管官庁あるいは財務省から大勢のお役人の方が天下りというか出向をされています。あるいは、昔は天下りの方が多くて、よく言われた話で、理事長になったり理事になったり、高い給料をもらって退職金。今それはありません。ありませんが、現役出向という形で、実は大勢の人間が出向しております。

 しかも、それは、役員もそうですが、課長職、部長職も相当多いんです。枢要なポストの課長職、部長職が本省から行くんですね。そうするとプロパーの方が行くところがない。そこで幾ら頑張っても、プロパーの人は、課長になり部長になるというところには、いいポジションのですよ、なかなかなれないんです。そうするとモチベーションがありませんから、なかなかやる気が出ないということも一つの原因なのではないかと思います。

 ちなみに、NEDO、こちらは、大体毎年ですけれども、課長級で三十人ぐらい。これは重なりがありますけれども、課長級で三十人ぐらい。部長級ですと、これも重なりますが、二十人から三十人。部長と課長が五十人も六十人も本省から行っているんです。もちろん、役員は大体、必ず理事は二人ぐらいが役所から行っております。これは今NEDOですけれども、情報通信機構につきましても、理事クラスで大体二人、そして部長級で、職員で十人ぐらい、これは小さな組織です。それから医薬基盤研究所も、役員は一人ですけれども職員が十人ぐらい、これも小さな組織であります。農業の方も、大体役員が一人か二人で、職員が三十人ぐらいです。

 つまり、枢要なポジションを本省がとっちゃっているものですから、組織のプロパーの活躍の場がない。この辺も、ある意味、行政改革の課題だと思いますので、指摘だけをさせていただきます。

 官房長官、どうぞ、これで結構でございます。ありがとうございました。

 そこで、次の課題である政府調達改革についてお尋ねをしたいと思います。

 政府調達改革も、これは取り上げていただいてありがたいのでありますが、本当に難しいです。私自身、十年前に、通産省の情報処理システム開発課長をやっておりましたときにIT調達の問題に取り組みました。

 当時、御記憶かどうか、一円調達とかありましたよね、一円で調達して何千億と後でとっていくというような。これはもうないんですけれども、このときに、政府CIOをつくり、CIO補佐官をつくるような仕事をさせていただきまして、一定の進歩はありましたけれども、なお改善の道遠しでありまして、いまだに、例えば経産省の特許庁がシステム開発を発注したところ、三年たってできなかった、できない。そういうこともありまして、なかなかIT調達は難しい。それだけじゃなくて、政府調達全体も難しい。

 例えば、金額が半端じゃないんですね。中央省庁で大体六兆五千億円ぐらい、六・六兆円ぐらいですかね、七兆円近いお金です。調達ですよ。これは工事の建設の費用もあれば、物品の調達もあります。独法も大きいです、たくさんありますから。大体三兆円強、調達しています。国立大学法人が約一兆円。全国あれだけありますから一兆円で、介護サービス、これが八兆円。例えば、国が保険制度を通じて買う薬剤だけでも七兆円買っています。

 地方を合わせますと、何と六十五兆円買っているんです、一般政府部門で。GDPの一三%です。これが、いわゆる大きな意味での政府調達なんです。

 これは、一割削減しただけで随分消費税は助かるんです。これをぜひやっていきたいと思うわけでありますが、なかなか難しい。これを取り組んでいくわけでありますが、これまで政府調達改革をやって努力はしてきました。これも行革と一緒なんです。なぜ政府調達の改革が頓挫するのか。大きな弊害は何なんだろうか。問題点について、何が問題だとお思いになりますでしょうか。まず、稲田大臣と財務大臣にお伺いしたいと存じます。

稲田国務大臣 この調達改革についても、民主党政権下で、きちんと各府省が改善計画をつくって、それを自己でチェックした上で、行革の本部でもそれを見直すという取り組みをなさっております。

 私は、やはりそういう地道な取り組みが必要であり、私の方でも、調達改善計画、今回の推進本部でも決定をして、改善をして取り組んでいくところでございますので、そういう取り組みを進めていくことが肝要かなと思っております。

麻生国務大臣 この調達の話は、これはもう実にいろいろな話がいっぱいありますので、全体として申し上げさせていただければ、税金を原資として調達しているわけですから、そういった意味では、業者の選定に当たりましては、公正をまず図らねばならぬということと、価格の面でも経済性が確保されるということが極めて重要なのは当然のことなんですが、それと同時に、契約の手続などの面で、円滑な予算執行に支障が出ないようにするという配慮も極めて重要なところなんだと思っております。

 民主党の政権のもとでいろいろな取り組みをなされておりますのは先ほど稲田担当大臣もお話があったとおりなのであって、第二次安倍内閣におきましても、この調達改善のための努力というのは必要なんだということは、私どもも長いことおりますので、こういったことは当然のことなのでして、こういう財務を預かるような立場になりましたこともこれありで、効率的な予算というのを考えて、安ければいいというのをやりますと先ほどの一円調達みたいな話になりますので、そういったところの調整、なかなかそこのところが難しいところだなと思っております。

 もう一つは、その分だけ安くして調達したら、予算が出た後、その省においてそれを安くしたら褒めてもらえるかといったら、その分だけ翌年減らされたらたまらないなと思ったら、それは減らさないんですよ。そこのところのインセンティブが働かないというところに問題があるのかなと。

 私は、長いこと、執行部側で十何年おりますと、そんな感じがします。

岸本委員 ありがとうございます。今、財務大臣が指摘された部分が一つあるんです。インセンティブの問題です。

 そもそもなんですが、財務省が所管をされているわけですけれども、会計システムがございます。これが、レガシーというか、何かガラパゴスみたいなシステムでありまして、一件につき幾ら支払われたか、一円単位で出るんです。だけれども、省庁全般で見通して、例えば紙なら紙をどの省庁が幾らで買ってどんな分布になっているかというのは、このシステムではわからないんです。

 何で変えないのか私もよくわからないんですが、つまり、各省庁の予算の支払いの分析をするためのシステムになっていないんですね。これは私が主計局にいたときもそうでしたけれども、今でもなっていないんです。これはぜひ変えていただいて、そんな大層なシステムではないと思いますので、それぞれの支払いについて分析できる、どこの役所はうまく買っているね、安く買っているねというようなことがわかるようなシステムにしていただきたいというのが一つ。

 もう一つ、やはり予算というのは神聖にして侵すべからずみたいなところがありまして、予定価格というのが決まるわけですね。半年議論して決めるものですから、これは正しいんだと。予定価格が正しいと思いますから、これを中心にどうしても物事が動いて、この前、エレベーターの入札の話をここでやっておられました。佐藤先生だったと思いますが、大変いい質問です。あれは、予定価格があるから、予定価格にこだわりますから、ぴたっと張りつくんですね。

 申しわけないですが、英国とか欧米の国には予定価格という概念はないんです。参照価格なんです。参照価格ですから、当然、それを下回って当たり前というような形でやらなきゃいけない。

 もう一つは会計法です。大臣、会計法というのは明治二十二年なんです、できたのが。それからほとんど変わっていないんです。片仮名は平仮名に変わりましたけれども。

 ですから、例えば文房具を買うのとIT調達をするのと、同じように扱うというのが会計法の建前なんです。文房具は一回買えば、このコップは一回買えばそれで済んでしまいますけれども、IT調達は三年かかります。防衛費だって、戦車の調達に三年かかります。そういうことについて会計法は対応していないんです。

 もっと言うと、会計法には目的がありません、目的規定がありません。大体、法律というのは目的があったり理念があるんですが、会計法には目的がありません。財政再建に資するなどという目的が書いてないわけであります。

 それから、専門的な人材も不足しています。今、麻生財務大臣がおっしゃったところと絡むのかもしれません。

 これも、アメリカなんかですと、IT調達あるいは国防省の調達、これは専門家です。プロジェクトマネジメントの博士号をとっているような専門家がやっています。国際学会があります。私も通産省時代何回か出ましたが、そこの学会で、どうしたらうまく調達ができるかとけんけんがくがくやって、彼らが役人を引退すると大学のプロフェッサーになります、大学の先生になります。そういうようなプロがなかなか育たないということであります。

 政府調達庁というような司令塔が日本にはないという問題もあります。

 これは、やはり基本方針とかガイドラインを調達庁が決めて、そこ自体が調達する必要はないんですけれども、調達庁が指針を出すというのも必要ですし、今、どこの国でも大体、独法みたいなエージェンシーがまとめて汎用品は買っています。各省の会計課がそこにインターネットで入って、そこで買うと、大量購入していますから安く買える、そういうことが当たり前です。

 米国政府では、十数年前から、旅費と少額の購入はVISAカードに外部委託しています。これで三割コストダウンしています。これはやはり日本でも、VISAカードという固有名詞はいけませんが、せめてカード決済を外部委託することぐらいは簡単にできるはずでありますから、そういうこともしていきたいと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなりましたので、甘利大臣に来ていただいていますので、政府経済見通しの関係で少し御質問をしたいと思います。

 まず、大臣にお聞きしますが、今年度、二十五年度の経済成長率ですね、名目GDPですとか実質のGDPの政府経済見通しについて、実は民間シンクタンクも出しています。三月の段階でホームページに載っているのだけを拾っても十四ぐらい私は見つけたわけでありますが、民間シンクタンクと政府経済見通しの違いについて、どんな数字になっているか。

甘利国務大臣 政府見通しでいいますと、名目のGDP成長率で二・七、実質で二・五、民間の平均をとりますと、名目が一・八、実質が二・三の違いがあります。

岸本委員 そうなんです。政府見通しは名目二・七、民間の、これは三月ですから、アベノミクスを織り込み済みの見通しの平均が一・八であります。相当大きな開きがあります。

 これは、どうしてこういうふうに開くんでしょうか、甘利大臣。

甘利国務大臣 民間の試算方法の詳細というのが細かく明らかになっていないので、詳細は承知しておりませんけれども、恐らく、政策効果のあらわれ方であるとか、景気回復の基調の強弱であるとか、経済見通しの前提などについて見方が異なるというふうに考えられます。

 緊急経済対策はもちろん織り込んで試算されていると思います。あとは、成長戦略に対する見方が悲観的か、あるいは、それに比すと我々が楽観的となるんでしょうか、幾つかの違いがあろうかと思います。

岸本委員 大臣の答弁としてはそういうことだと理解いたしますけれども、これはいつか来た道でありまして、当初の国債発行額を減らすためには、税収が多いとありがたいわけであります。税収が多いということを見通すためには、税収弾性値は一・一と決めていますので、名目経済成長率を蹴上げると税収がふえるということであります。

 この二・七と一・八の差は余りにも大き過ぎまして、これは実はCPIの差がかなり大きくて、政府が〇・五、民間の平均がマイナス〇・二ぐらいですので、そこは、物価目標、二%を二年後にという政府ですから、そういう建前もあるんだという説明も可能ですけれども、実は、伝統的に、成長率を蹴上げて税収を多く見せるということが伝統芸能のように行われてきたわけであります。

 例えば、リーマン・ショック以降をちょっと外しまして、GDPの統計にしたのが九四年からです。リーマン・ショック前の二〇〇七年度までをとると、十四年間、政府見通しが実績を下回った回数は十一回もあります。ほとんど政府見通しは上回っているんです。逆は二回。ぴったり合ったのが、偶然ですけれども、一回あります。ほとんど過大見積もりしているんですね。

 これが、その前の二十年、GNPで見通していた時代の数字で見ますと、政府見通しが過大だったのが十三回、下回ったのが七回ですから、まあまあの線ですけれども、これもどっちかというと蹴上げてしまうという癖があります。

 英国なんかでは、こういう大事な経済見通しの数字は第三者委員会でやっています。今後、経済財政の中期展望を出されると思いますけれども、我々の気持ちとして、ぜひ、つまり、甘利大臣と財務大臣で相談しながら数字を置いていくのではなくて、できれば第三者機関で保守的な、保守的な、保守的な見積もりをしながら、財政再建に資するようなことをお願いしながら、時間が参りましたので私の質問を終わります。

 本日はありがとうございました。

山本委員長 これにて岸本君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 さて、きょうは婦人の日ということで、昭和二十一年のきょうの日、日本で初めて女性が選挙権を行使して、三十九名の女性の代議士が初めて誕生したということであります。ただ、さきの選挙で、我が党の女性議員はたったの三名ということになってしまいました。

 そういう中で、私も、実は党の女性委員会の副委員長というのをやっておりまして、きのうは横浜の林文子市長にお越しをいただいて、「女性の社会進出が日本成長の鍵」、そういう演題で御講演をいただいたところであります。

 自民党さんは、さきの総選挙で、二〇・三〇というんですかね、二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合を三〇%以上にするという公約を掲げられております。大変いい公約ではないかなというふうに思います。

 ただ、自民党の中では、野田総務会長とそして高市政調会長の間で、女性の社会的進出に数値目標を掲げる方がいいのかどうなのかということについて見解の相違があるということが報道等でも報じられておりました。

 そういう中で、先日も、都内における講演で野田総務会長がこんなことを言われております。国が数値目標を決めて、例えば、新入社員を雇うときに四割以上は女性社員にするという法律をつくれば、文句はあるだろうけれども、流れはできる、そこが私と高市さんの見解の違いと述べられたということが報じられております。

 そこで、きょうは森大臣にこの委員会にお越しをいただいておりますので、ぜひ、この数値目標を決めるということについて、男女共同参画大臣として一体どっちなんだということを明確にお答えいただきたいというふうに思います。

森国務大臣 お答えいたします。

 数値目標を決めて女性の参画を引き上げていくということは、大変重要なことと考えております。二〇二〇・三〇については、福田康夫総理がその前の男女共同参画大臣のときに決められた目標ということで、その後、政権交代があっても、ずっとその目標に向かって国として推進してまいった数字でございますが、これは、法律によってそれを義務づけるというクオータ制ではございませんで、いわゆるゴール・アンド・タイムテーブル方式といって、努力目標ということで決めて推進をするということでございます。

 これは国としての方針であると同時に、自民党の公約でもございまして、我が党の総務会長と政調会長が、党の公約でございますので、この数値目標を推進するという点では一致をしているというふうに認識しているところでございます。

 政府としても、その目標の達成に向けて推進してまいる所存でございます。

大西(健)委員 今の大臣の御答弁でも、前からあった目標であるということですけれども、それがもし達成を、今のままでできないのであれば、まさに野田総務会長が問題にされているように、法律をもって定めることをどうするのかということをそろそろ議論しなきゃいけないのかもしれません。そういう意味では、ぜひ大臣には、そこも含めて御検討というかリーダーシップをぜひ発揮していただきたいというふうに思っております。

 それでは次に、経済政策についてもお聞きをしていきたいというふうに思うんですけれども、アベノミクスの成功の鍵を握るのは、賃金への波及だというふうに思います。

 安倍総理はトヨタ自動車の豊田章男社長にお会いになって、そしてボーナスの満額回答をしていただいたことにお礼を言われたということが報じられておりました。アベノミクスの大胆な金融緩和、大幅な円安によって、自動車産業、特に大手については非常に業績が回復をしている、これは間違いないことだというふうに思います。

 ただ、では、中小企業はどうかということを考えたときに、私も地元に帰るたびに、地元は自動車産業の地域であります。三次、四次の下請の社長さんたちのところを訪問して、どうですか、社長、円安になって少し明るくなってきましたかということを尋ねているんですけれども、残念ながら、大体の反応というのは、いやいや、中小下請についてはまだまだ恩恵というのはないよという答えが大体の答えであります。

 それには幾つかの理由があるというふうに思うんですけれども、一つは、長引く円高の中で、ほとんどの下請の皆さんというのは、親会社から、乾いた雑巾を絞るような厳しいコストカットを迫られてきた。親会社は今、為替差益でもうかっていますけれども、では、もうかっているからといって単価を今度上げてくれるのかというと、それはそういう甘いものじゃないということがまず一つ。それからもう一つは、やはり仕事量が減ってきている。十年前、五年前と比べると、仕事量が減ってきているんだということを言われる方が多いような気がいたします。

 きょうは、お手元に新聞記事をお配りさせていただきました。これをごらんいただきたいんですけれども、まず、自動車について、国内生産、これは、昨年九月のエコカー補助金が切れて以来、六カ月連続で、前年度同月と比べるとマイナスになっている。ですから、ずっと、六カ月連続で低迷をしている。

 では、輸出はどうなんだ。円安になっているから輸出はふえているんじゃないかというふうに思ったら、この記事では、輸出も実は減っているんです。その理由というのは、この記事の中にも書いてありますけれども、こういうふうに書いてあります。「円安が進んでいるが、各社は需要のある地域で生産する方針の下、現地生産化を進めているためだ。」これは、私が現場で聞くお声と全く一緒なんです。

 やはり、十年前、五年前と比べると、円高が長く続いたので、ほとんど、いわゆる地産地消じゃないですけれども、北米で売るものについてはもう北米でつくるんだ、そういう流れがどんどん進んでしまっている。ですから、そのせいで、今、現地生産、現地調達の流れが、円安と関係なく進んでいる。この空洞化というのをとめないと、国内の雇用も守れないし、そして、国内の雇用の八割は中小企業が支えているわけですから、中小企業への賃金の波及というものはないというふうに思います。

 その点について、ぜひ、きょうは経済産業大臣にお越しをいただいておりますので、今私が申し上げたような、円安になれば、円安は間違いなくプラスでありますけれども、全てハッピーかというとそうではないということについて、御見解を賜れればと思います。

茂木国務大臣 きょうの午後の為替相場、直近のところで九十九円〇三銭だと思いますが、過剰な円高は是正されつつある、このように考えております。ただ、ここまでの円高の中で、企業が生産拠点を海外に移す、そこの中で国内の空洞化が進む、こういう現象があったのは間違いないことだと思っております。

 よく、日本企業の三重苦、四重苦、六重苦、こんなことを言われるわけでありますけれども、大きく分けますと四つのハードルがあるんじゃないかな、私はこんなふうに考えております。

 その一つが、御指摘のあった円高、為替の問題。そして二つ目に、関税などの国境措置。そして三つ目には、法人税、それから国内の規制であったりとか制度の問題。さらに四つ目には、日本の場合、どうしても資源小国、こういうことで、資源、エネルギー、さらには電力コストが高い。

 やはり、こういったハードルをきちんと乗り越えることによって、日本という国が企業にとって世界で一番活動のしやすい国にしていく、こういったことが極めて重要だ、こんなふうに考えております。

 為替につきましては、今是正が進んでおります。もちろん、我が国として取り組んでおりますのは、長引くデフレからの脱却、このために大胆な金融緩和を進める。政府と日銀の間で物価目標を共有いたしまして、日銀の方も、この二%というのを二年間で達成する、そのためには、マネタリーベース、お金の量も倍にして、そして国債の買い入れも倍にする、こういった大胆な政策をとっております。結果として、円高というのが今是正されつつある、こんなふうに考えております。

 二つ目の国境措置につきましては、まさにこれから自由貿易、これを拡大していく、TPPそして日中韓FTA、日・EU・EPA、こういったものを積極的に推進していくことが必要だと思っております。

 それから三点目の規制の問題でありますけれども、新たな市場の創出につながります規制の改革、これは極めて重要だと考えておりまして、ポイントは三つあると思うんです。

 その一つは、新規参入を促し、健全な競争環境をつくっていくこと。電力システム改革、これからまた国会の方でもお願いいたしますが、まさに典型的な例になっているのではないかな。そして二つ目には、事業化までのスピードをアップしていく。日本の場合、例えばiPS細胞。研究については、山中教授、昨年もノーベル賞をとられましたけれども、世界で一流であります。ところが、事業化がなかなか進まない、こういった問題があります。三つ目には、日本の制度を国際化していく。日本だけ制度がガラパゴスにならないという……(大西(健)委員「自動車に絞って」と呼ぶ)では、自動車の話にもうすぐ行きますね。ガラパゴスにならない、こういったことが極めて重要だと思っております。

 では、資源コスト、このことについては省かせてもらいまして、自動車についてお話をいたします。

 自動車産業、御案内のとおり、輸出額が十四兆円を超える、こういう、日本にとりましても稼ぎ頭でありまして、製造業の出荷額、約二割を占める基幹産業であります。円高が是正されることによって、また、自動車産業、収益も改善傾向にありまして、一部の下請につきましても改善の基調が見えますけれども、これを広げていかなくちゃならない。

 そんな中で、車体課税の見直しなどによります国内自動車市場の活性化、さらには、平成二十四年度補正予算で手当ていたしました企業の最新設備、生産技術等の導入の支援、二千億円を計上いたしております。それから、ものづくりの中小企業が試作品をつくるための補助、こういったこともしっかり進めていきたい、このように考えております。

大西(健)委員 いや、本当に、私は円安になることはいいことだと言っているんです。ただ、何回も言っているのは、自動車で現場の声は、中小、零細はまだまだですよと。そこについて絞ってお答えいただきたかったんです。

 一番答えてほしい、まさに四重苦、六重苦というお話をされましたけれども、その中で、自動車について言えば、今の車体課税のお話なんですよ。

 これは、前に、私はこの委員会でテレビ入りのときに大臣にお聞きしましたけれども、そのときは大臣、本当に曖昧なお答えしかいただけませんでした。ですから、私は、本当はきょう、きょうは時間が少しありますから、そのことについてもっとしっかりお聞きをしたかったんです。

 まさに、今私が申し上げたように、国内の生産というのは、残念ながらだんだん先細っている。そういう中で、これから消費税が八%、一〇%、上がってくる。そのときにしっかりと、まさにユーザーの負担を軽減する思い切った車体課税の減税ができなければ、間違いなく国内販売というのは大幅に落ち込んで、そして最低限の国内生産さえ維持ができなくなる。そういうことになると、今でもなかなか中小零細にとってはしんどいなと言っているのが、がたがたっとくるんじゃないですかということを申し上げたいんです。

 それで、私たちは既にこの国会に議員立法として、重量税についても平成二十六年の三月末に当分の間税率を廃止するという法案を既に提出させていただいております。前回も申し上げました。例えばハイブリッド車、これはもう、今もエコカー減税で取得税はゼロですから、自動車取得税は廃止しますだけでは、やはりこれは全然恩恵がないんです。

 ですから、重量税を一体幾ら、思い切って減税できるのか。それができなければ、国内の販売も大幅に落ち込むし、そして最低限の国内生産も維持ができないということを、ぜひ大臣にはいま一度、しっかりと頭に置いておいていただきたいなというふうに思います。もう答弁は求めません。

 予算委員会も終盤に差しかかってきました。私もこの間の議論をずっと聞いていて、そして非常に印象に残っているのが、海江田代表と安倍総理の間で、分厚い中間層について議論をされました。そのときに安倍総理は何とお答えになったかというと、日本では中間層が本当にそんなに薄くなってしまったのかといえば、私はそんなことはないと思いますよという認識を示されました。私は聞いていましたけれども、ちょっと、おやっと違和感を感じました。

 相対的貧困率というのがあります。これは皆さんも御存じのように、所得の中央値の半分を下回る所得の人の割合を示す指標ですけれども、そもそも、この相対的貧困率そのものが、実は以前は公表さえされていなかった。これは、政権交代をして長妻大臣のときに、我々としても貧困問題というのを直視していかなきゃいけない、だから、ほかの国と比較できる指標としてこの相対的貧困率というのを公表しろということを長妻大臣が言われて、そして初めて公表されるようになりました。

 資料をお配りさせていただいておりますけれども、我が国の相対的貧困率というのは、OECD加盟三十カ国の中では、残念ながら二十七位ということですから、本当に下から数えた方が早いということになっております。

 ですから、先ほど言ったように、所得の中央値の半分を下回る人たちの割合で見た場合に、下から数えた方が早いということは、私は、これはまさに分厚い中間層が底抜けをしているんじゃないかと。これを見て、まだ、分厚い中間層というのは全然薄くなっていないですよという認識というのは、私は違うんじゃないかと思うんですけれども、甘利経済財政担当大臣にその認識をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 確かに、本年三月七日のこの予算委員会において、御党海江田代表の質問に対して、総理は、日本では中間層が本当に薄くなってしまったかといえば、そんなことはないのではないかという答えをいたしております。

 これは、二十四年度版の労働白書の統計に基づいているんだというふうに思います。統計では、中間層の所得範囲の割合ということで、いろいろなとり方をしているのでありますけれども、この十年間、つまり一九九九年と二〇〇九年を比較すると、そんなに大きな数字の変化はないということは、労働白書で報じられているところであります。

 ただ一方で、その労働白書を見ますと、分厚い中間層を取り戻すためにみたいなことが書いてあって、この労働白書は一体どうなっているんだという思いがいたしますが、類推するところ、確かにこの十年間で非正規雇用の割合がふえております、今は三分の一ちょっとぐらいになっているんでしょうか。でありますから、所得区分の中での割合はそう変わらないというのは、これは事実としても出ているのでありますが、所得区分の中で低い方に少し移動しているのかなということはあるのかなと。

 でありますから、総理の答弁が間違っているかといえば、白書に従えば間違ってはいない。しかし、実態の中で、非正規雇用の増加等で変化があるかないかといえば、確かにその変化もあるところだろうというふうに思っております。

大西(健)委員 甘利大臣は、非正規雇用が増加をしていることが問題だということをしっかり認識していただいているので、その部分は安心をしました。

 きょうの質問の最後の方で、まさにそういう労働分野の規制緩和についてもお話を聞いていきたいというふうに思います。

 もう一つ、皆さんのお手元にグラフをお配りさせていただいております。先日、英国のサッチャー首相が御逝去されました。このお手元にお配りをしている資料というのは、イギリスの低所得者世帯率と政権、そういうグラフなんですけれども、これを見ていただくと、保守党政権では低所得者世帯が増加をして、労働党政権になると低所得者世帯の割合は減少する。ちなみに、新自由主義路線を推進されたサッチャー政権のもとでは、低所得者世帯の割合というのが大幅に増加をしている。

 少なくとも、その是非ではなくて、これを見て何がわかるかというと、政権や政策によって、まさに低所得者世帯率、貧困率というのが変動するんだということが、このグラフから私は読み取れるんだと思うんです。

 したがって、何を言いたいかというと、まさに安倍政権として、先ほどOECD加盟三十カ国のうち下の方に位置している我が国の貧困率、これを改善しなきゃいけないとお考えになっているのか、また、そう思っておられるならば、そのために具体的に何をしようとされているのかをお聞きさせていただきたいというふうに思います。

甘利国務大臣 安倍政権で、今、経済政策、何をやろうとしているかといえば、長引くデフレによる経済の停滞からデフレのくびきを外して、障害物を外して、経済効果が直接あらわれるような、発現できるような環境をつくっていこうということに取り組んでいるわけであります。少しずつその環境はできつつあります。

 つまり、伸びる分野からどんどん伸ばしていく。みんな平等だけれども、みんな平等で貧乏になったというのではなくて、一時的に伸びていく部分は、先に行く部分はあるかもしれませんけれども、それが全体に回っていくような、一点突破、全面展開というような、そういう、全般的にこの閉塞状態を打破した力が及ぶようにしていきたいということであります。

 安倍総理自身と私はよくお話をするのでありますけれども、安倍総理の口から出る言葉に、強欲な資本主義じゃなくて日本は瑞穂の国の資本主義なんだと。つまり、たびたびおっしゃるのは、みんなで協力をして田んぼをつくり、そして、誰かが倒れたらその分までみんなでカバーする、そういう精神があるんだ。

 ですから、安倍総理の気持ちの中には、ア・ウイナー・テークス・オールという形ではない、ひとり勝ち方式の資本主義じゃない、もちろん、勝者が一番多くとるのであるけれども、全体に成果が行き渡るような、ゼロサムゲームじゃなくてウイン・ウインゲームになるような資本主義をつくりたいということが総理の思いだというふうに思っております。

大西(健)委員 本当に相対的貧困率を改善したいと思っているのかどうなのか、それを私は本当にお聞きしたいと思っているんです。

 今のお話を聞いていても、全体を引き上げていくということに関して、私は必ずしも否定はしません。

 例えば、潜在的には百メートル十秒で走れる力があるけれども、今、風邪を引いていてその力が発揮できない、潜在的力が発揮できない、デフレ状態にある。だから、デフレをまず直していかなきゃいけない。そして、その力が発揮できる状態になったら、今度は筋トレをしてもっと速く走れるようにする。これは経済成長していかなきゃいけない。

 そういう意味で、私は、安倍政権のアベノミクスの三本の矢というのは合っていると思います。ただ、三本の矢に含まれていないのは、まさに再配分なんです。

 例えば、日銀の副総裁になられた岩田規久男先生の教科書にも何て書いてあるかというと、政府がやらなきゃいけないことというのは、経済成長をする民間の活力を引き出す、そのための成長戦略をつくる。

 それから、安定化政策。これは、例えば、経済が冷めているときには熱を持たせるために財政出動をする、あるいは金融緩和をする。今度は、過熱し過ぎると金融引き締めをする。そういう安定化策をやらなきゃいけない。

 もう一つは、再配分をやらなきゃいけないと書いてあるんです。

 今の甘利大臣のお答えというのは、まさに竹中路線のあのトリクルダウンという考え方ですよね。全体が引き上がっていくと、最後、おこぼれが来るだろうという話なんですけれども、再配分を意識的にやらないと、私は、格差も拡大するし、やはり貧困率の改善というのはしていかないんだというふうに思っております。

 ちょっと時間が押しているので一つ飛ばして、本当は自殺の話をしたかったんです。民主党政権になってから、十五年ぶりに自殺者が三万人を下回った。これは、ライフリンクの清水さんに内閣府の参与になってもらったりして、いろいろなことをやった結果だというふうに私は思っています。これはぜひ、今の安倍政権でも、また引き継いでいただきたいというふうに思っていますけれども、自殺に関連して、過労死の防止ということをお聞きしたいと思うんです。

 私の地元に、過労死の遺族、家族の会の代表の方がいらっしゃいます。その方が言われたことで、私は、非常に心に残っている言葉というのがあるんです。それは、日本では、真面目、勤勉、頑張るが美徳とされ、学校教育の場でも繰り返し教えられています。そのお手本になっていた親がそのために命を落とす。これは、子供にとって正しいこととされていた価値観の混乱と、頑張ると死んでしまうという恐怖心を植えつけることになりますと。

 安倍総理はよく、頑張った人が報われる社会という言葉を使われます。では、過労死で、みずから命を落とされた方々は頑張った人じゃないのか。私はやはり、頑張って、そして努力して耐えた結果、死を選ばなきゃいけなかった人、こういう人がいない社会にしていかなければならないというふうに思っています。

 多くの過労死の遺族というのは、死別の悲しみに浸っている、そういう余裕はありません。一家の大黒柱を失って、翌日から、生計を立てることをどうするのかと途方に暮れる。あるいは、子供たちは、場合によっては引っ越しや転校をしないといけなくなってしまう。そしてその上に、労災申請や裁判のために時間や労力を割かなきゃいけない。

 こうした中、過労死はあってはならないことだということを国が宣言して、そして、国、自治体、事業主が何をやらなきゃいけないかということ、その責務を明確にする、そういうことを内容とする過労死防止基本法というのを制定すべきだという動きがあります。これは超党派の動きであるというふうに思いますけれども、そういう動きも踏まえて、過労死防止基本法の制定を含めて、政府としてこの過労死の問題にどうやって取り組んでいくのか、頑張った人が死ななきゃいけない、そういうことはなくしていくんだという決意を田村厚労大臣からいただきたいと思います。

田村国務大臣 先ほどの相対的貧困率の質問も、実は私にだったんだというふうに思います。

 これは、全体の所得の中の中央値の二分の一よりも下の方々がここに当たるわけであります。実は、日本は高いんですが、今甘利大臣がおっしゃられたような非正規化という問題もありますけれども、一方で高齢化の問題がかなり大きいんですね。高齢者の場合、どうしてもフローの収入は少ないんですけれども、ストックの収入は結構あるわけでありまして、日本が、世界の国と比べた場合、そこをどう勘案するかということは非常に重要な問題であろうと思っております。

 一方で、生活困窮者はどうするんだという問題は大きな課題でございますので、これに関しましては、いろいろな相談支援でありますとか、また、就労支援に向かっての生活訓練、社会訓練、さらには、家がないという方々が大変なわけでありまして、そういう方々に対して住宅のいろいろな支援をしていく。そういうふうないろいろな支援をする中において、自立をしていただくためのいろいろなお手伝いをしていこう、生活保護の方々に関しましても、自立に向かったいろいろなお手伝いをさせていただこうというような形で今法案を準備させていただいておるということを、まずもって申し添えさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、今の過労死の問題でありますが、やはり、時間外労働それから休日等々の労働、こういうものに対してはなるべく減らしていただくように、基準監督署の方からいろいろな指導をさせていただいております。

 あわせて、長時間労働、これは、行き過ぎた長時間労働でありますとかまたは休日労働に関しましては、やはり、労働安全衛生法上から、例えば百時間を超えて、本人に疲れがある、疲労感があるという場合、申し出があれば、これは医師にちゃんと面接をするようにしなければならない、健康管理をしっかりするような状況で対応をするというふうになっておりまして、これも徹底的に指導をさせていただいております。

 そのような意味からいたしますと、やはり過労死という問題は、これは我々もあってはならない問題だというふうに思っております。そのような意味で、今それぞれの議会の方で、各政党が参加されてこのような議員立法を準備されておられるというお話はお聞きをいたしております。まだ残念ながら内容を詳しくお聞かせはいただいておりませんけれども、同じ趣旨だろうというふうに思いますので、しっかりと見守らせていただきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 それでは、甘利大臣が先ほど、非正規がふえてきていることが貧困の問題にもつながっているんじゃないかということを言われましたので、労働法制の規制緩和というのはこの委員会でもいろいろな議論が行われておりますけれども、きょうは、丸川厚生労働政務官に予算委員会に出席を願っておりますので、この問題をしていきたいと思うんです。

 三月十五日の厚生労働委員会で、私は、二月二十五日に日経新聞に掲載をされた、丸川厚生労働政務官とヒューマントラストという派遣会社の社長さんとの対談が載った全面広告ということについて質問させていただきました。この問題については、実は、参議院の厚生労働委員会で我が党の津田委員がさらに質問されております。

 そこで、きょうは津田委員の質問を再度確認させていただきたいんですけれども、この新聞広告、皆さんのお手元にお配りをさせていただいています。

 これに関して報酬は受け取っていない、だから、大臣、副大臣、政務官規範にも抵触をしないんだというお話だったんですけれども、この新聞広告に関しては報酬を受け取っていないということですけれども、丸川政務官は、人材派遣業界にパーティー券を買ってもらったことがありますでしょうか。これについては、公開基準以下の金額についても隠すことなくお答えをいただきたいなというふうに思います。

丸川大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 まず、大臣政務官の就任後において、政務官規範に違反するような派遣業界からのパーティー券の購入、あるいは、献金の受領を初め供応接待などを受けることは一切しておりません。

 それから、大臣政務官就任前につきましては、政治資金規正法にのっとりまして収支報告をさせていただいております。

 なお、公開基準以下のものについては、私の場合は、立場や党派を超えて御支援をいただいておりまして、こうした方々との信頼関係を守る上においても、回答は差し控えさせていただきたいと存じます。

 いずれにせよ、国会でお決めいただいたルールにのっとって、きちんと報告をさせていただいております。

大西(健)委員 参議院での御答弁も今と全く同じだったんですけれども、私は隠さなくていいんじゃないかなというふうに思うんですね。

 今の、派遣業者でつくる政治団体、政治連盟新労働研究会の収支報告書、これは、確かに丸川政務官の収支報告書は公開基準以下ですから見てもわからないんですけれども、パーティー券を買った方の団体の収支報告書を見ますと、平成二十三年と平成二十二年、それぞれ六万円ずつでありますけれども、珠代さんを励ます会のパーティー券を購入しているんですよ。こういうことが今ここで議論になっているわけですから、別に隠さなくてもいいんじゃないかなというふうに思います。

 それからもう一点、津田委員の指摘で私からも再度確認しておきたいのは、先ほど来お話が出ていますけれども、本件は、業界団体の広告に、インタビューに応じたとかそういう問題じゃなくて、たくさん、あまたある業者の、特定の一つの企業の広告に現職の政務官が出られているということが非常に、今までもそういうことはそんなにありません。これは私ども確認しています。

 ただ、これについて確認をしたいのは、本日は、総務省の自治行政局の選挙部長に参考人としてこの委員会に出席をお願いしております。そこで、確認をしたいんですけれども、公職選挙法百九十九条の二、「公職の候補者等の寄附の禁止」という規定の解釈についてお聞きをしたいと思います。

 これは一般論としてお答えいただきたいんですけれども、仮に、東京選出の参議院議員が、東京に本社を置いている会社の企業の広告に出演して、本来もらうべきその広告の出演料、ギャラのようなものをあえてもらわないで、それを寄附したとみなされた場合には、公職選挙法百九十九条の二の寄附の禁止に抵触をする可能性があるかどうか、このことについてお答えをいただきたいと思います。

米田政府参考人 公職選挙法の現行の解釈についてお答えいたします。

 まず、公職選挙法百九十九条の二は、公職の候補者等は、「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」と規定しております。

 今のお尋ねは法人の場合でございまして、それが選挙区内にある者かどうかという点でございますけれども、法人の主たる事務所の所在地が当該選挙区内にある場合のほか、当該法人の従たる事務所、またはこれに類似する機能を持った事務所もしくは施設の所在地が当該選挙区内にある場合に、この選挙区内にある者に該当するというふうに考えております。

 それから、寄附の点が問題になっておりましたので、この点、公職選挙法の百七十九条第二項におきましては、「「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のもの」と規定されているところでございます。

 総務省といたしましては、個別の事案について、具体的な事実関係を承知する立場にはございませんので、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。今の点の、現行法の解釈のみ申し上げました。

大西(健)委員 今のところについて、もう一度確認をしたいんです。

 金銭、物品その他財産上の利益の供与ということですけれども、金銭、物品というのは、あくまで例示にすぎないのであって、有体物には限られない、その他財産上の利益というのは、金銭、物品以外の有体物、無体の財産上の利益をいう場合もあるということが解釈としてあるというふうに伺っておりますけれども、私が今申し上げましたように、実際に寄附をしていなくても、本来受け取るべき出演料を受け取らないということは、これは寄附したことに当たるというような解釈ができる可能性があるのかということについてお答えをいただきたいと思います。

米田政府参考人 先ほど申し上げました公職選挙法の百七十九条第二項にございます金銭、物品でございますけれども、財産上の利益の例示にすぎないのであって、必ずしも有体物に限られず、その他の財産上の利益とは、金銭、物品以外の有体無体の財産上の利益をいうというふうに解しているところでございます。

大西(健)委員 ですから、今のお答えによれば、まさに有体じゃなくてもいいんです。財産上の利益とみなされれば、それは寄附をしたというふうにみなされる場合があるということだというふうに思います。そういう意味で、私は、今回の件というのは非常に大きな問題があるというふうに思っています。

 それからもう一つ、実は、丸川政務官と派遣業界の関係というのは、この日経新聞の全面広告に出演していたり、先ほど六万円のパーティー券を二年にわたって買っていただいているということだけじゃなくて、過去にも繰り返し派遣業界の業界専門誌のインタビューに出演したりして、そこで派遣業界を応援する論陣というのを張られています。

 お手元に資料をお配りさせていただいておりますけれども、まず、新聞に掲載をされた人材ビジネスという雑誌の広告、ここには「丸川珠代・自民党女性局長に聞く」と、大々的に名前が出ております。

 次のページは人材ビジネスのホームページでありますけれども、ここにはどう書いてあるか。印をつけた部分ですけれども、参議院厚生労働委員会で派遣擁護の弁を展開するなど最高の援軍と、登録型派遣復活を求める講演会でスピーチをすることが写真入りで紹介されているんです。

 さらに、月刊人材ビジネスという雑誌には、この後につけていますけれども、二〇一〇年の六月、それから二〇一三年の一月、二度にわたってインタビューが掲載されているんです。しかも、二〇一三年の一月というのは、インタビューの時点ではわかりませんけれども、少なくともこの月刊誌が出た段階では既に政務官に就任をされているんです。

 ここでいま一度確認をしておきたいんですけれども、過去のこうした講演でのスピーチであったりとか、それから、少なくとも二度、二〇一〇年と二〇一三年の一月にインタビューに応じられていますけれども、このとき報酬というのは受け取っておられますでしょうか。

丸川大臣政務官 援軍と受けとめられたのは向こうが勝手にそう思われたのだろうと思うんですが、私自身、野党時代に、派遣労働者のあるグループの方がおいでになられて、要望書を持ってこられたんです。

 その方たちがおっしゃっていた内容というのは、実は、その当時の民主党政権が進めようと思われていたこととは別の、異なる方針だったんですね。派遣労働者は現場ではこう思っているんですということをおっしゃるので、いや、民主党政権は労働者の味方でいらっしゃるんですから、それは民主党政権におっしゃった方がいいんじゃないですかということを申し上げた。ところが、残念ながら、いや、それはできないんです、その声は、私たちの声はかき消されてしまうんです、だから持ってきたんですとおっしゃるんですよ。では、それは我々の会議で取り上げましょう、そういうことでしたらぜひ取り上げましょうということを申し上げたら、いや、申しわけない、それはやめてください、そうしたら今度は我々がいじめられてしまうんですと。

 まさに、私たちは、労働者の方たちの声を代弁すべき、どこかの機関が多分その声をすくい上げなきゃいけなかったんでしょうけれども、残念ながら、その声が政治に届かないという現場に直面をいたしました。だからこそ、そういう声にならない声、声なき声を届けるのが、その当時の野党の我々の仕事であろうと思いましたので、そうした方たちの御意見も伺って、委員会等で質問させてきていただいた次第でございます。それをたまたま派遣労働業界の方が、もしかしたら企業の応援だと思われたかもしれませんが、私は原点はそこにございます。

 そういうわけなので、その方たちから取材を受けましたけれども、一切報酬は受け取っておりません。

大西(健)委員 本当に時間がないので、妨害をするのはやめてください。ちゃんと聞いたことだけに答えてください。

 それで、先ほど来いろいろな話が出ていますけれども、私は、これは内容が問題だと思うんです。出ていること出ていないことじゃなくて、しゃべっている内容が問題なんです。

 何が問題かといいますと、この日経新聞の先ほどの全面広告、最初のところに戻っていただくと、ここで何を言っているかというと、まさに丸川政務官は、派遣会社の社長が日雇い派遣が禁止されて困っていると言ったのに対して、ちょっと時間がないので読みませんけれども、緩和すべきだというような発言をされているんです。

 初めにこのことを私は厚生労働委員会で質問したときに、これは厚生労働省の見解なんですかということを聞いたら、丸川政務官は、初めは、私は厚生労働省の中の見解の一つとして申し上げましたと言われました。だけれども、その後の質問で、事務方から耳打ちがあって、いや、やはり参議院議員丸川珠代としての見解ですと言い直されたんです。

 ですから、実は、厚生労働委員会に、今回、統一見解というのを出していただきました。まさにその中にも参議院議員としての見解というふうに書かれているんですけれども、インタビュー記事には「昨年十二月に厚生労働政務官に就任した丸川珠代氏」と書いてありますから、これは、一般の人が読まれたら、厚生労働政務官として発言されているんだろうなと受けとめられても仕方がないというふうに私は思います。

 それからもう一つ。一般論として発言したものというふうに統一見解は出ていますけれども、私はそうじゃないと思うんです。

 この皆さんにお配りしたものの中には、一年前の三月の参議院厚生労働委員会で丸川政務官が当時委員として質問されたときの会議録を載せていますけれども、そこにも日経新聞のこの全面広告と全く同じ意見が述べられているんです。もう一つ言えば、二〇一〇年六月の人材ビジネスのインタビューでも同じことを言っているんです。

 つまり、だから、一般論として言っているんじゃなくて、これはもう信念として、持論として、一貫した主張として言われているんじゃないんですか。ですから、私はこれは、統一見解が、一般論としてというのはおかしいというふうに思うんです。

 それから、ほかにも、ここには厚生労働担当の政務官としての適格性について疑問を抱かざるを得ない発言があるというふうに私は思っています。

 例えば、同じインタビューの中で「審議会の構成メンバーは、有識者と労働者と使用者の三者です。そこに、派遣元企業の意見が入っていないことは大問題です。」というふうに言っておられますけれども、労働政策審議会を初め、審議会の三者構成というのは、これはもう大原則なんです。ですから、それがおかしいと言うのが、これは全くおかしいんじゃないか。

 それから、二〇一三年の一月のインタビュー、このインタビューの中で丸川政務官は何とおっしゃっておられるか。正社員が安泰かというと、逆にこれからどんどん厳しくなっていくと思います、お給料、あるいは終身雇用制などお給料以外の待遇面でも、従来のいわゆる正社員よりも保障がやや手薄い第二正社員という形があらわれてくるのではないかというふうに述べておられます。

 丸川政務官、第二正社員というのはどういうことなんでしょうか。

丸川大臣政務官 まず、この日経新聞の記事のことに関してなんですが、これはこの前の厚労委員会でもお話ししたので短く言いますけれども、つまり、日雇い派遣が禁止されてというか、禁止されるという方針が出た瞬間に、一気に日々紹介に流れたんですね。日々紹介というのはどういうことかというと、毎日紹介をして違う雇用主のところに働きに行くという形態なんです。日雇い派遣というのは派遣会社が雇用をして違うところに働きに行きますが、雇用主はその派遣会社だけです。ところが、日々紹介というのは毎日雇用主が変わるんです。毎日雇用主が変わると、保険は日雇い派遣の保険になります。ということは、自分で言いに行かなきゃいけない保険になる。雇用主も毎日変わる。

 正直言ってどっちが、直接雇用から間接雇用に変わったからといって雇用が安定するのかどうか、これをしっかり検討しなければいけないというふうな議論は、自民党の中でも野党時代にさせていただいておりましたし、我が党のみならず、ほかの野党の中でも議論されていたというふうに記憶をしております。そういう議論があったことを前提にこの話をさせていただいておりまして、これは直ちに緩和をするというような話ではなくて、そういうことをきちんと検討することを自民党でも議論していたということを踏まえて、これからの研究会で今度は一般的に幅広く議論してもらうということが厚生労働省の考え方であるということを改めてお伝えさせていただきます。

 さて、ここに書かれているもう一つの話でございますけれども、これは、労働契約法において、五年がたったときに御本人が希望すれば正社員になれる、少なくとも無期の雇用になれるというような法律を民主党さんが政権でお通しになるときに、私ども、そうすると、五年の前に契約を切るというような話が出てきたりするんじゃないですか、こういう議論をいろいろしていた中で、例えば派遣社員はどうするんですかということを申し上げたら、まさにここで、派遣の労働条件の中で、雇用契約だけを……

山本委員長 丸川君、手短に。

丸川大臣政務官 申しわけありません。

 雇用契約だけを無期にするという形ですと、言ってみれば第二正社員みたいな形ができるんですというような御説明を当時受けた記憶があるものですから、そういうふうに、第二正社員という言い方だったかどうかはわかりませんけれども、別の形の正社員というような説明だったかもしれませんが、とにかくそういう言い方で、派遣の方を、今度、五年で契約するときには、違う形の正社員というものができると。この法律を通したということは、そういうポジションの人をつくることを前提に民主党政権はこの法律を通したんだということを理解しましたので、法律が通ってしまった以上は、こういう立場の人ができるんだろうというふうに理解をして、私はこういう発言をさせていただいたものです。

大西(健)委員 今の説明、全然私はわからないんですけれども、先ほどの話も、もともと自民党も公明党も賛成して、日雇い派遣の禁止をしたんですよ。それを、まだそれから全然時間がたっていないのに、もう既に緩和しますなんということを政務官が堂々とおっしゃっておられるというのは、私はおかしいと思いますし、政務官になっているこの一月の雑誌で、第二正社員と、まさに今の正社員の待遇をどんどん切り下げていこうみたいな話があるわけです。

 そういう人が政務官をやっているから、この委員会でもたびたび問題になっていたように、金銭による、解雇の金銭解決とかホワイトカラーエグゼンプションとか、そういうような労働者の保護をどんどん切り下げていくことが安倍政権によって行われるんじゃないか、丸川政務官のような方が労働担当の政務官である限り、そういう心配は尽きないということを申し上げて、私の質問を終わります。

山本委員長 これにて大西君の質疑は終了いたしました。

 次に、田沼隆志君。

田沼委員 日本維新の会の田沼隆志であります。

 予算委員会初質問ですけれども、自己紹介はちょっと後にしまして、早速、がらっと雰囲気を変えて真面目な話になっていくと思いますが、今まで真面目じゃないわけじゃないんですけれども、お聞きしたいと思います。

 初めに、祝日についてお尋ねします。

 私、祝日を極めて遵守しておりまして、国民の一体感もつくり、リズム感も生まれて、大切なものだと思っています。私、当日は、必ず自分の事務所は国旗を掲げています。結婚の入籍日はわざわざお休みの新嘗祭の十一月二十三日にしたぐらいでして、非常に重要だと思っています。

 ただ、私、評論家の福田恒存さんを非常に敬愛しておりまして、その福田恒存さんが言うには、戦後の祝日は単に日曜以外の休日ができたにすぎないと述べられていまして、要は、祝日なのに祝っていない、単なる休日になっているという嫌いがあろうと思います。

 私たち日本維新の会、綱領に、民族の自立を掲げて、日本が抱える根源的な問題の解決に取り組むということを掲げております。そういう我が党にとって、今の祝日における祝う意識の希薄さというのは看過できないと考えています。戦後レジームからの脱却を掲げる安倍政権としましても、日本の国に生まれた国民が、過去から連綿と受け継がれてきた日本の歴史と伝統によった祝日をこぞって祝う日にしていただきたいと思っているんです。

 そこで、問題を感じるのが、十一月三日でございます。文化の日。かつて、この十一月三日は明治節でございました。戦後の占領期間に施行された祝日法によって、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日とされました。これはいきなり、全く唐突になったんですね。

 本来、祝日というのは、先ほど言いましたように、リズムをつくる、あるいは歴史的なイベント、例えば十月の体育の日、それは東京オリンピックの開会式であったように、歴史的なイベントですとか、自然の変化の節目にあるべきものだと思います。でなければ、国民にわからない。それがいきなり、文化の日は「文化をすすめる。」とあるんです。

 「自由と平和を愛し、文化をすすめる。」まず、この意味がわからない。「文化をすすめる。」これはどういう意味なんでしょうか。日本語としてまずよくわからないので、官房長官にお尋ねします。ぜひわかりやすく教えてください。

菅国務大臣 委員は、既に御案内の上でこれを質問されているんだろうというふうに思いますけれども、ここは議員立法で成立したわけであります。さまざまな政党がお祝いをしようという中で、それぞれ理念の異なる政党の中でこの法律をつくったわけでありますから、今委員が指摘をされたように、何となくどうにでもとれるような形で、多分、当時、この祝日をつくるについて議員立法で取りまとめられた結果、こういう表現になったのではないかなというふうに思います。

 いずれにしろ、祝日は、委員はリズムという話もされました、それぞれによって考え方が異なるわけでありますけれども、そういう意味で、議員立法で決められたということをぜひ御理解いただいて、私ども政府の考え方ということでなくてこれは決まっているということで私からは申し上げたいと思います。

田沼委員 ちょっと、直接よくはわからなかったんですけれども、私も、周りの何人かですけれども、この文化の日の意味、わかりますかと聞いたら、誰もわからなかったですね。「文化をすすめる。」という意味が本当にわからない、一人もわからなかったんです。

 これはつまり、国民全体にも文化の日の意味、意義というのが伝わっていないんじゃないかという懸念が非常にございます。もともと明治節、明らかに明治天皇誕生日だった日が、誰にもわからないまま続いている。非常に無責任な状態に感じてならないんですけれども、何か、官房長官、文化の日が国民に定着している度合いとかがわかるものというのはあるでしょうか。

阪本政府参考人 お答えいたします。

 文化の日につきまして、政府として国民の理解度等につきまして今まで調査したことはございませんので、御質問のデータにつきましては持ち合わせていないところでございます。

 ただ、十一月三日には、宮中において例えば文化勲章親授式も行われているなど、政府としては、このようなことも踏まえまして、引き続き、国民の間で文化の日の制定の趣旨等が理解されるように努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

田沼委員 ちょっとよくわかりませんけれども、平成十七年の祝日法の改正で、昭和の日が生まれましたね、みどりの日から。その趣旨は、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」この中に天皇という言葉が入っていないのは私は残念ですけれども、内容はよくわかります。

 昭和天皇誕生日が昭和の日ならば、十一月三日の明治天皇誕生日は、当然、明治の日としなければ、首尾一貫しないと思います。さっきの答弁でも、文化の日というのは歴史的連続性もありませんし、定着度も調査していなくてよくわからないということで、私の聞いた範囲でも国民に定着もしていない、意味もよくわからない。これだったら、思い切って、首尾一貫という意味でも、文化の日を明治の日と改めるべきじゃないでしょうか。官房長官、御意見をお伺いします。

菅国務大臣 この祝日というのは議員立法で実は成立をされておりますので、私ども政府というよりも、それぞれの各党会派で、これからも、もしあれであれば議論をして変えることも私は合意されれば可能だろうというふうに思いますので、委員からそういう御指摘があったことだけ、政府としてはここは受けとめさせていただきたいと思います。

田沼委員 では、ぜひ私も推進したいと思います。

 国民にとっては議員立法かどうかは関係ありません。とにかく、文化の日というものが意味がわからないままであることは、私は非常に問題だと思っていますので、よろしくお願いします。

 関連して、三月七日の予算委員会の質疑で高市早苗議員が、建国記念の日に政府主催式典を開催するかという質問がありまして、総理がそれに対して、来年以降、主催に向けて検討するとの答弁がございましたけれども、これも非常にしっくりくる、当然のことかと思います。

 今月二十八日ですか、主権回復記念日の政府主催式典を行うならば、まさにこの二月十一日の建国記念、原点である二月十一日こそ、さらに盛大に政府主催式典を開くべきと考えるわけでございます。

 まず確認させていただきたいんですが、二月十一日に政府主催式典をやると理解してよろしいのか。その規模というか構想というのは、今回の四月二十八日のものよりもさらに、盛大というとあれですけれども、しっかりとしたものになるのか、もし構想があれば教えてください。

菅国務大臣 まず、ことしにつきましては、私ども、政権について間もなかったものですから、それは準備というのは難しかったというふうに思います。

 私ども、自民党の衆議院選挙のJ―ファイルという中に、ここは政府式典をやるということを実はうたっております。こうした経緯もありますので、私どもとすれば、その政府式典について、これから、来年に向けてですけれども、適切に検討して、結果を出していきたいと思います。

田沼委員 適切に検討して、ぜひ実行していただきたいというふうに思います。

 祝日の話、ささいな話のように思われる方もおられるかもしれませんが、国民にダイレクトな生活の話ですので、私は非常に重要と思っています。戦後レジーム脱却を掲げる安倍政権においても、そして我が党の目指す民族の自立という意味でも大切と思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。

 官房長官、もうよろしいです。ありがとうございます。

 次に、教育委員会制度についてお尋ねします。

 私の政治の原点は、鹿児島県の知覧で特攻隊の遺書を見て、それに涙をして政治を志した、これは下村大臣にこの間お伝えさせていただきましたけれども、その意味で、脱自虐史観、教科書採択の正常化が悲願でございます。そのためにも、形骸化した教育委員会の改革をしなければならない。もちろん、いじめ問題とか体罰問題に対しての対処としても、改革も必須と考えております。あと、私は千葉市議会議員でしたので、そのときに、教育委員会改革、教科書採択正常化、全力で戦ってきましたけれども、うまくいかずに、大きな挫折を感じてきたこともお伝えしました。

 ちょっと通告にないんですけれども、きょうの午前の質疑で、我が党の中山成彬委員への答弁で、下村大臣、自国を誇りに思える歴史認識となるように検定制度の見直しを検討するというふうにお答えいただき、非常にうれしかったです。

 関連してなんですけれども、検定制度ももちろんなんですけれども、私は地方議員出身ですので、採択がやはり機能していない。教育基本法の精神を生かしていないと総理も言われていましたけれども、採択の場面でも、第二条とか、教基法の精神というのは全く生かされていない、これは議事録を見ればわかるんですね。ここの見直しもするべきではないかと思うんですが、御見解をお伺いします。

下村国務大臣 自民党が野党のとき、教育再生実行本部、私が本部長をしておりましたが、その中の分科会の一つとして、教科書検定、採択を見直す分科会がございました。その中で、検定、採択を見直すということについては明確に打ち出しておりまして、政権交代をした現在、さらに引き続き自民党の中でこれについて議論をしていただくことになっております。

 同時に、今、教育再生実行会議の中で、教育委員会の見直しについて議論をしていただいております。これは方向性だけの議論で、さらに深掘りした議論、法改正に伴う議論は中央教育審議会で行い、来年の通常国会に教育委員会の抜本改革法案を出したいと思っておりますが、この教育委員会の位置づけの中で、必然的に教科書採択のあり方がおのずと決まってくるのではないかと思いますし、このような自民党の中の議論、それから、今後、中教審でされる議論等を踏まえる中で、より教科書検定、採択について国民の皆様方も理解をしていただくような形で、より望ましい教科書採択が実現できるように努力をしてまいりたいと思っております。

田沼委員 ありがとうございます。ぜひ、採択のあり方も議論するという力強い答弁でしたので、お願いします。

 委員会制度自体に移りたいと思うんですが、四月四日の教育再生実行会議で、教育委員会改革として、教育長に責任を一元化する方向でまとまったという報道がございました。皆さんに配付させていただいている資料の図でいいますと、今AだったものがBになるというふうに理解をします。

 ちょっと失礼がないように言いたいんですが、正直なところ、非常に残念な気持ちでございます。暗たんたる気持ちになりました。

 というのは、このB案だと、結局、今の問題の本質が解決できないと私たち維新の会は思っているんです。今の教育委員会制度の決定的な問題点は、やはり責任の不明確さですね。つまり、失敗しても責任をとる仕組みになっていない、監督する上司がいない、だから責任を問われない、失敗の定義もそもそもない。治外法権化とうちの代表は言っているんですけれども、治外法権化していると私も思います。

 B案だと、絵のとおりでおわかりのように、誰が真ん中の教育長の上司なのかがわからない。これは、この実行会議案でも、つまり上司がいない状態が続いてしまうという意味です。これは行政委員会として首長部局から独立しているからでございますけれども、実質、ほぼ何も変わらないと私は感じます。なぜ上司がいないということ、つまり失敗しても責任が問われない構造になっていることがどうして実行会議で議論されないんだろうというふうに、もう本当にもどかしく思っております。

 一般的に組織論として、組織のリーダーが決まりましたというときに、そのリーダーを監督したり評価する、やはりガバナンス機関がないといけないと思うんです。例えば上司ですとか、会社だったら株主とか、そういう人がいないと、当然、問われませんから、治外法権化する、やりたい放題にもなりかねない。実際、今の現状の教育委員会も、ほぼそうなっているんじゃないかという思いが私はあります。行政委員会ですので、監督者、上司がいない、責任を問えない。あと、罷免も実質上はできませんね、今の地教行法ですと。

 ですので、さきの我が党の西野弘一議員と大臣との質疑の中でも大臣も言われていましたけれども、政治的に中立でないような事例で、例えばジェンダーフリーとか、おかしな平和教育ですとか、変な副読本ですとか、組合人事もあったりとか、そういった事例も起こっていると思います。つまり、もう起きているんです、私から言わせれば。今、既にもう政治的に中立性を確保できていないと思っています。

 今のAの状態でも治外法権化しており、Bでもそれは変わらない。なぜなら、ガバナンス機関がないからです。これは実体験に基づいてお訴えしています。

 大臣、そのあたりを受けて、西野議員とのお話でも、今の教育委員会がいいとは思っていないというふうには言っていただいておったんですけれども、組織のリーダーには上から見るガバナンス機関、そういうものが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 まず、委員の質問の前提条件が間違っています。

 この選択肢Bというのは、これは民主党政権のときの、ここにも書いてありますが、笠文科副大臣が記者会見で使ったときのタスクフォースの案として出されているわけですね。我々は、この選択肢Bというのが前提で議論されているわけではございません。

 教育再生実行会議で議論されていて、最終的な提言というのは、まだ取りまとめまではいっていないものですから、正式には、来週、安倍総理に対して教育委員会の提言を取りまとめとしてお渡しすることになっている中で、委員間の中で今、修正議論をしておりますので、最終的にはまだでき上がっていない段階でございますが、少なくとも選択肢Bではない。

 それから、今までの議論についてちょっと簡単に申し上げますと、教育長については、これは首長が任命権と罷免権を両方持つということでございます。今までは教育委員会が教育委員長なり教育長を決めるということでしたが、これは首長が、首長と同時期に、これも任命とずれていたわけですね。首長が就任しても、前の首長が任命した形での教育委員会があったわけですが、これは、首長の交代と同時期に教育長も決めるというところについては今議論しているところでございますが、最終的にまだ提言がなされておりませんので、それ以上詳しくはちょっと申し上げられませんが、少なくともこの選択肢Bではないということについては御承知おきいただきたいと思います。

田沼委員 ただ、大臣おられたと思うんですけれども、三月二十七日の文部科学委員会で、義家政務官はBですと言われているんです。これは別に私もBでなくても構わないんですが、イメージとしてこれに近いというふうに私は受け取っております。教育長を責任者とするということになると、やはり上司がいないという構造には変わりはなかろうと思います。

 同じくその三月二十七日の文科委員会質疑で、大臣、教育再生の前に教育正常化が先であるというふうにも御答弁いただきました。いろいろな、イメージされているのは北教組なんでしょうけれども、このままでは、首長が党派的な人になってしまった場合に抑えられないという御懸念があるんだろうと思いますけれども、では、教育正常化が先というときに、どのような取り組みをなさっているのか、あるいはこれからやっていこうと思われているのかについてのお取り組みをお答えください。

下村国務大臣 まず、教育長については、先ほども申し上げましたように、首長が任命権と罷免権を持つということについては議論をされていますから、明確にこれは首長が決めるんですね、教育長は。ですから、これは、首長が誰を教育長にするかということについてコントロールされているわけですから、上司という言い方をされましたが、そういう位置づけであります。

 それから、教育の正常化については、義家政務官が三月二十七日の文科委員会で発言したことに対しての御質問ということでよろしいわけですよね。

 これは、教育基本法の精神にのっとり、学校教育においては政治的中立性を確保することが極めて重要であり、一党一派に偏った政治的主義主張が持ち込まれることがあってはならないということでございます。

 こういう観点から教育委員会制度が設けられておりますが、実態として、一部の地域でありますけれども、政治的中立性の趣旨を損なう法令違反行為や勤務時間中の違法な組合活動が行われていた事例を念頭に、義家政務官が答弁されたということでございます。

 文部科学省としては、近年こうした法令違反行為が行われていた中で、教育行政の政治的中立性を担保していないこととした場合、このような法令違反行為がより助長される可能性があるということから、政治的中立性を確保するための制度上の措置を講じることが必要であると考えております。

 これは、先日の教育再生実行会議の中でも各委員も、政治的中立性についてはやはり担保しておく必要があるのではないかという意見がほとんどであったということについては、御紹介申し上げたいと思います。

 今後、中教審等でより具体的に議論をしていくことになりますが、先日の義家政務官の趣旨はそういう趣旨であったということについて、私の方から説明ということになるわけですが、お答えさせていただきました。

田沼委員 ありがとうございます。

 ちょっといろいろお聞きしたいところもあるんですけれども、罷免のお話をいただきました。これは非常に重要だと思っています。選任した後に罷免がいかに機動的に発動できるか、これはやはり非常にガバナンスとして重要だと思います。首長権限の大きさ自体を左右すると思っております。今は、実態としては、大臣も十分御存じですが、教育委員の選任は、もう事務局主導でかなり形骸化している部分もあると思います。もしこの状態で首長に教育長の罷免権を与えても、発動しにくい罷免権の場合はほとんど行われないおそれもあろうかと感じています。

 ですので、この罷免をできる要件の定義というのが非常に重要になると思いますけれども、首長が教育長を罷免できる要件というのはどのように御設計のお考えなのか、お答えください。

下村国務大臣 そもそも今度の制度設計は、首長が教育長を任命するということでございますので、自分が責任を持って、自信を持って任命した人に対して、実際、議会の同意も必要です、それを罷免するというのは、その教育長が相当な問題を起こしたということで、本来は想定されないのではないかというようなことも、教育再生実行会議の中で議論されているところでございます。

 そういう意味で、先ほど申し上げましたように、首長が責任を持って教育長を任命するというシステムの中で、罷免のあり方をどうすべきかということについては、法律改正も伴うことですので、これは中央教育審議会できちっとさらに深掘りをしていただこうということを今考えているところでございます。

田沼委員 そのときに、やはり非常に重要だろうと思うのは、もちろん御自分で首長が選んだ方でしょうけれども、例えば、日銀総裁人事のときもそうかもしれませんが、二%インフレターゲティング、これが達成できなかったら責任をとるとか、そういう任期の最中での評価システム、任期の最中でどこまで進んでいるかというものが見える形になることが非常に重要だと思うんです。

 今の教育長や教育委員さんは、評価する仕組みがないです。一回任命したら四年間、基本的にはそのまま、首長はかわってもそのままでございまして、やはり罷免権を本当に機動的なものにするためには、評価システム、成果がきちんと見えるというふうな仕組みにすることが非常に重要だと思うんです。

 同時に、それをやるためには目標も設定されないと、例えば日銀でしたら二パーとかありますけれども、そういった目標設定というのも今はありません。ですので、この罷免というのを本当に機動的にするには、なかなか難しい現状があろうと思います。

 そこで、御質問ですが、首長がやはり目標を設定して、それに対する進捗ですとか成果が公表されて、それで修正する、PDCAサイクルですね、これが新しい教育委員会制度には必要ではないかと考えますけれども、御見解をお尋ねします。

下村国務大臣 国でも、教育基本法を改正し、そこに教育振興基本計画を、五カ年計画を設けて、そして第一次五カ年計画が終わりつつある中で、これから第二次五カ年計画、その中に、私は数値目標も明確にすべきであるというふうに考えているところでございます。

 同様な形で、それぞれの地方自治体も、地方自治体における教育振興基本計画のような形をとって明確に明示をするということは、これはあってしかるべきことであるというふうに思います。それぞれの首長さんの判断で対応しようと思えばすぐできることでもありますので、積極的に自治体でもそのような提言を取り入れられたらいいのではないかと私の方も思います。

田沼委員 そろそろ時間ですので、ただ、前回の実行会議で総理が、首長が教育政策を選挙で訴えて当選しても実行できないのはおかしいと思うという言葉があったと思いますし、大臣も同感と思うんです。やはりその本質は、いろいろ御検討いただいているのもわかりますが、やはり行政委員会として、首長から教育委員会が独立していることに大きな原因があると思います。

 ですので、やはり行政委員会として独立するというのがこのまま確定してしまいますと、私としては、このために、ある意味、国会議員になりましたので、死んでも死に切れないという思いがありまして、ぜひ、この部分での改革をもう一度御検討いただきたいということをお願いさせていただきまして、私の質問を終わります。

山本委員長 これにて田沼君の質疑は終了いたしました。

 次に、三宅博君。

三宅委員 維新の会の三宅博でございます。

 拉致問題についてお聞きしたいと思っております。

 まず初めに、拉致問題解決にかける安倍内閣の決意、その部分をお聞かせいただきたいと思います。

古屋国務大臣 三宅議員におかれましては、拉致問題のためにいろいろ活動いただいて、私もよく承知しておりますし、大会等でもお目にかかっていますよね。そのことについては、心からまず敬意を表したいというふうに思います。

 その上で、安倍内閣のこの拉致問題に対する取り組み、決意はどうなのか。

 正直に申し上げて、恐らく、全ての国会議員の中で、この拉致問題に一番思い入れが強くて、なおかつ長年取り組んできた議員は安倍総理そのものである、私はそう思っております。それが事実だというふうに思います。まだ議員になる前からこの問題について取り組んでいたということであります。

 そういう安倍総理でもありますから、やはりこの拉致問題は内閣の最重要課題、そうやって言うだけではなくて、具体的な行動が大切ですね。

 まず、我々は基本方針をはっきり定めました。それは、全員の帰国、原因究明、実行犯の引き渡し、こういう明確な目標を掲げています。

 その上で、まず対策本部を徹底強化しました。内閣総理大臣が本部長、副本部長が官房長官、私も担当大臣として副本部長、そして全ての閣僚が本部員で入っています。オール・ジャパンで取り組んでいこうというあらわれだというふうに思います。

 それからもう一つは、これは初めての試みなんですけれども、政府の組織の中に与野党拉致問題連絡協議会というのをつくりました。これは恐らく内閣始まって以来なんでしょうね、うなずいていらっしゃる岸本委員もいらっしゃいますけれども。野党の議員も、この拉致問題で解決をしていこうという同じ意識を持っている人たちは全て組織に入っていただきました。既にこの会は開会して、あした、再度開会する予定にしております。

 それにとどまらず、例えば、有識者懇談会というものもこの組織の中にしっかりつくりました。これも、なぜつくったか。別に、統一な提言をまとめてもらうということを目指しているわけではないんです。それぞれ、学者さんあるいは専門知識のある人間あるいは家族会の皆様、考え方が違った方も入っています。しかし、それは、しっかりその専門家としての見地、あるいは自分が持っている情報ネットワークを駆使していただいて、我々に具体的に提言をいただきたい、そしてそれを解決のための重要な参考にさせていただく。最終的にどういう取り組みをするかは、安倍内閣のもとで我々政府が決めさせていただきたいというふうに思っております。こういった取り組みを通じて、しっかりオール・ジャパンで取り組んでいくことが大切です。

 それだけにとどまらず、やはりこれは海外に対するメッセージ、そして協力が必要ですね。十四カ国が今、拉致の被害に遭っている国なんですね。ですから、こういった国々との連携。

 あるいは、政府が主催しているシンポジウム、毎年日本でやっていましたけれども、今度初めてニューヨークとワシントンで行わせていただきます。こういった取り組みで、ニューヨークでは国連関係者の皆様にもぜひ御参加をいただく、ワシントンでは議会関係者とか政府関係者とかシンクタンクの関係者にも御参加をいただく、こういう形で具体的な行動で示していく。

 これは何か。拉致問題の解決、そして、北朝鮮に対して、我が国はこの拉致問題を解決しなければ何らの支援も行わないということをはっきりと強いメッセージで伝えている、それが目的でございます。

三宅委員 今、内閣の最大課題であるというふうに強い決意をお話しいただきましたが、それでは、その強い決意がいかに行動にあらわれているか、この部分をお尋ねしたいと思っております。

 実はここに、特定失踪者問題調査会が作成しましたポスターを持ってきております。このポスターには、約二百八十名の、特定失踪者問題調査会が、北朝鮮に拉致されたかもわからない、その可能性を排除できない方々の写真、それから拉致されたとき、何年に拉致されたか、こういったことをやっている。これは公開被害者の二百八十名。これ以外に非公開の方が約二百名いらっしゃいまして、合計で約四百八十名の、ひょっとしたら北朝鮮に拉致をされたかもわからないという方々のリストを持っておられる。

 昨年、警察の方が発表いたしました、北朝鮮にひょっとしたら拉致されたかもわからないという被害者の数、これは、ほぼそれの倍の八百六十八名。そのうち二名は何か国内で発見されたということで、今現在八百六十六名ということなんですけれども、この調査会の把握しております四百八十名と警察庁の八百六十六名、これの名寄せといいますか照合、この部分はどの程度実際にされたのかどうか、それからどの程度進んでいるのかどうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

古屋国務大臣 委員は八百六十六ということを御指摘いただきましたが、八百六十五に減りました。

 それで、その八百六十五名と、特定失踪者の調査会がリストアップしている方との整合はしているのかということでございますけれども、実は、それは鋭意やっています。それで、全員かというと、全員がこの中に入っているわけではない。なぜか。それは、例えば、調査会からも、荒木さんからもリストをいただいているんですよ。それで、多分、三宅さんからもこういう質問があるかなと思ったのであらかじめ全部調べておりますけれども、そうすると、やはり、ちょっと名前が違っていたりとか生年月日が違っていたりとか、失踪されたという日がどうも一致できないということは若干あるんですね。ですから、全員かというと、そうではありませんけれども、ほぼそういった形でフォローはして、しっかり突き合わせはしています。

 ただ、人数的には、荒木さんからいただいているリストは約四百人ぐらいですね。ですから、四百八十とは一致しませんけれども、またそういったリストをいただければ、我々はしっかりそれはできるだけの調査をして統合していく、要するに、重ね合わせていくということはもちろんやっておりますし、今後もその作業は進めていきたいというふうに思っています。

三宅委員 なぜこのポスターを提示させていただいたか。これはやはり、政府の認定被害者が十三件十七名、ところが、特定失踪者問題調査会だけでも四百八十名、警察庁が八百六十五名ですか、余りにも政府認定被害者との数の乖離があり過ぎますので、実際に全容を解明していかなくてはならないということで、このポスターも提示させていただきました。

 どうも、見ておりますと、政府は、認定被害者を余りふやしたくない、この拉致事件の全容を国民の目に知られたくないというふうな思いがちょっとしているのではないかなというふうな私の印象がしますので、あえてまたこれを出させていただきました。

 前に、平成二十二年に、金賢姫元工作員が来日しました。日本政府が、時の民主党政府だったんですけれども、招待しまして、このときに、金賢姫工作員から警察は事情聴取をしたんでしょうか。その辺のところをお聞かせいただけますか。

古屋国務大臣 具体的なことについてはちょっとお答えは差し控えさせていただきますが、金賢姫が日本に来た、これは、私どもが政権をとっているときではなくて、たしかあのときは中井大臣のときだったですかね。

 あのときに、やはり、飯塚さんとか家族の皆さんが金賢姫氏と会って、そういう意味では、お話が聞けたということです。家族に対する配慮という意味では、私は効果はあったなと思います。ただ、では、これが拉致問題解決に向けて何か効果があったのかというと、それは全然別次元の話である、私らはそういう認識でおります。

 では、具体的に警察が事情聴取したのかどうか、これは個別的案件に踏み込む話でございますので、ちょっとここのところは答弁は御勘弁をいただきたいというふうに思います。

三宅委員 金賢姫さんからどの程度聞いたか、聞かなかったか、それも含めてお答えできないということなんですけれども、五人の被害者の方々が今、日本に帰っていらっしゃいますよね。曽我ひとみさん、それから蓮池さん御夫妻、地村さん御夫妻、この五人の方々から、政府あるいは警察が、北朝鮮での生活あるいは事件の背景、こういったものはどの程度聴取されているのかも、ちょっとお聞きしたいんですけれども。

古屋国務大臣 御帰国された方はいろいろな場でそういうお話をされておりますし、また、警察としても、お話を聞いたということは、決して否定はするものではありません。しかし、どういう話を聞きましたかというようなことはさすがにこの場でお答えすることはできませんので、それは御勘弁をいただきたいというふうに思います。

三宅委員 事件現場での、実況見分といいますけれども、現場検証、これもどうもされていないようなんですね。本来ですと、こういった事件は、やはり、どのように事件が起きたのか、これを分析、見分するために、こういう実況見分というのは必ずつきものなんですけれども、そこへ被害者を連れていって、どこでどうして拉致された、自分は北朝鮮に連れていかれたんだということを証言してもらわなあかん。どうもこれがされていないんですね。だから、余りにも虚構がひとり歩きしているみたいで、なぜ、日本政府、警察は実況見分をしないのかという、その辺のところにちょっと疑念を抱くんですね。

 帰ってきた五人の方々は、北朝鮮で二十年以上生活をされているんですね。向こうでいろいろな拉致被害者と共同で生活をしてきた、あるいは、それ以外のいろいろなことを、北朝鮮国内でのことを実際体験されてきたと思うんですけれども、その辺のところをどの程度政府は把握されているのか、あるいはまた聞いておられるのか、お答えいただけますでしょうか。

古屋国務大臣 三宅委員もよく御承知の上で御質問されていると思うんですけれども、やはり、それは警察ですから、やれることはやっていますよ。でも、現実に、どういう聴取をしたかとか、どういうことを言われたかとか、そういったことは、やはり帰国被害者の立場にもかかわる話でありますから、それはこういう場では発言は控えるべきだと思います。

 私は、その辺のことは国家公安委員長としては把握をいたしております。

三宅委員 それなりに事情聴取をされているという国家公安委員長としてのお答えだったんですけれども、私の目から見ますと、もうほとんどそれはされていない。

 彼ら自身も、北朝鮮での出来事あるいは自分たちの生活、これをほとんど警察にも証言されていない。それはなぜか。やはり恐怖なんでしょうね。北朝鮮の影響といいますか、この影が日々忍び寄ってきている、そういう中で事実を、真実をお話しすることができないというふうな、そのような恐怖下にいまだに置かれているんじゃないかな。

 これは一例なんですけれども、増元照明さん、家族会の事務局長ですね。彼が、帰国した被害者の蓮池祐木子さんにちょっと姉のことを聞かれているんです、向こうで姉を見ましたか、御存じですかと。これに対して、蓮池祐木子さんが、あなたのお姉さんの増元るみ子さんとは、一九七八年秋から翌年の十月まで約一年間一緒に生活していた、平壌駅から余り遠くないアパート、幹部が多く住んでいてベンツが多く出入りしている、そういうアパートでほぼ一年間一緒に生活していたということを、お手紙を去年の七月二十九日付で増元照明さんに出されているんですね。

 この証言と、生島孝子さんという特定失踪者、これは北朝鮮に拉致された可能性が極めて高いという調査会の判断なんですけれども、この生島孝子さんを北朝鮮国内で見たという脱北者の証言があるんですね。その脱北者の証言からしますと、生島孝子さんが住んでいた建物といいますか住居、これと、増元るみ子さん、蓮池祐木子さん、このお二人が住んでいたアパートがどうも同じであろうというふうに思うんですね。

 もし、警察の方が、あるいは政府が、帰国した被害者の方々からこういった話を聞いているのであれば、当然この辺のことに関してもそれなりに把握されていると思うんですけれども、そのあたりはどうでしょうか。

 こういったことを積み重ねていきますと、拉致事件の全容、どれだけ多くの人が北朝鮮に拉致をされ、今も救出の手を待っているということもわかってくるんじゃないか。いまだに十三件十七名で認定被害者を固定して、全容を明らかにしないという部分に非常に大きな疑問を私は抱くんですけれども、いかがですか。

古屋国務大臣 政府認定であっても、特定失踪者、政府がまだ認定していない人であっても、私たちは、拉致をされたということがはっきりすれば、当然、そういう人たちを全員取り戻すというのは我々の責務なんですね。

 ですから、もう委員御承知のように、ちょっと私、今これを持ってきましたけれども、この具体的施策の中で、例えば、拉致被害者としての政府の認定の有無にかかわらずということ、これは、前の政権でも全くそういうことは触れていなかったんですよ。それをはっきりうたったんですね。だから、これは、しっかりそういった人たちを取り返すための努力をしますよという宣言なんです。宣言をしているからには、具体的にもいろいろな調査はしています。そして、事情聴取初め情報収集も積極的にやっています。

 でも、今委員が御指摘になったのは、余りにも個別具体的な話なんですよ。だから、やはりこういう場ではそれはちょっと、そうですとも違いますともなかなか申し上げるわけにはいきませんけれども、少なくとも、そういった取り組みについては、やれるべきことは徹底的にやっているということだけは御理解をいただきたいというふうに思います。

三宅委員 帰ってきた五人の拉致被害者は、北朝鮮で長い間住んでいた。多くの拉致被害者の方々と、どうも北朝鮮で、招待所で、日々同じように、十年あるいは二十年と生活をしてきたということがうかがい知れるわけなんですけれども、そのあたりを解明していきますと、拉致事件の全容、どれだけ多くの人数が北朝鮮に拉致されたかということが把握できてくるであろうと思います。

 ところが、今大臣おっしゃいました、我々は把握しているし、精いっぱい努力をしている。私の目から見て、その言葉は、とてもじゃないですけれども、信頼を置けないんですね。それは、認定被害者もそうなんですけれども、それ以外でも、犯人が判明している拉致事件が多くあるんですね。

 これは、一九七七年の久米裕さんの事件もそうです。あるいは、大阪の中華料理屋のコックをしていた原敕晁さん、彼の事件もそうです。あるいは、田中実さん、これは神戸の中華料理店の店員の方ですね。そしてまた、有本恵子さんですね。これは犯人が皆わかっているんです、個別具体的に。ところが、彼らが誰一人逮捕もされていない。事情聴取をちょっと受けたぐらいなんですね。

 本当におっしゃるように強い決意があるのであれば、犯人がわかっているのに、これが全然逮捕もされずにごく普通の市民生活を送っている、これは許しがたいようなことじゃないでしょうか。また、あえて言いますと、佐渡の曽我ひとみさん、彼女が拉致された事件も、どうも犯人がわかっているんじゃないかなと。

 このように、多くの解明すべき点が目の前にあるにもかかわらず、ほとんどそれに手つかずの状態ではないかなと思っておりますので、時間も参りましたのでこの辺で終わりますけれども、また改めてこの辺についてはお聞きしたいと思いますが、大臣、おっしゃいましたように、その決意をどうか行動にあらわしていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて三宅君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 日本維新の会の遠藤敬でございます。

 先ほど、細部にわたりましては、田沼議員より教育問題について御質問をさせていただきました。私からは、教育問題について、ばくっとした話を先生方にお話をお聞かせしたいと思います。

 私は、大阪の南部にあります岸和田の、だんじり祭りで有名な泉州地域に生まれ育ちました。地元の青年会議所を卒業し、そして日本教育再生機構の大阪の会長、民間シンクタンクを設立して大阪の教育の正常化に取り組んでまいり、そして、教育の問題を、この議席を頂戴した限りは全力で取り組んでいきたい、そんな思いできょうは質問に立たせていただいております。

 青年会議所の大先輩である麻生副総理と、教育再生機構大阪の代表を務めておりましたときから大変お世話になっております下村大臣へ質問をさせていただきたいと思います。

 いろいろと質問を考えておりましたけれども、昨日、週刊誌の中で、「日露犬猫外交の秘密?」、そのような記事がございまして、さまざまな教育問題を御質問しようと思いましたけれども、実は、私の趣味で、三十年来、秋田犬を飼っております。犬が何か関係あるのかという話かわかりませんけれども、実は、ハチ公でおなじみの秋田犬なんですけれども、秋田犬は今世界的にブームになっておりまして、秋田犬が持つ忠誠心、武士道精神が世界の人々から称賛されており、秋田犬を通じて日本精神に触れることができるということで、多くの世界の方々から注目をされております。

 その秋田犬が、昨年、秋田県の佐竹知事よりロシアのプーチン大統領に贈呈をされました。正式にはアキタイヌと言うんですけれども、その秋田犬の名前は、ゆめ号ということで、プーチン大統領が命名をされました。

 そのゆめ号の父犬は実は私の犬でございまして、名前を好古といいます。ぴんときた方もおられるかと思いますけれども、日露戦争の、有名な秋山好古閣下のお名前を頂戴しまして命名をしました。偶然にもプーチン大統領のおうちに好古号のゆめちゃんがお嫁に行くとは思いもしませんでして、これも本当に御縁だなと、世界の狭さを感じております。

 その秋田犬一頭を日本から、佐竹知事から御贈呈をされて、猫が一頭返ってまいりました。できたら四頭返していただきたかったなというふうに思っております。犬のことではございますけれども、ぜひ四頭をと。まさに日本外交、秋田犬が外交をしていただいて、猫まで頂戴した。ぜひとも、猫四頭じゃなくて、北方四島をお返しいただきたいなというふうに切に思っております。

 それで、私は、教育問題を特にやっておりまして、麻生大先輩も御存じのとおり、青年会議所は、一年で、単年度単年度で、なかなか自分の思うようにできない事業でございまして、それに気づきまして、日本教育再生機構大阪の中でボランティアの塾をつくろうじゃないかということで、塾をつくりました。

 志塾と書きましてシジュクと呼んでおりますけれども、元校長や教師が中心となって、小学校、中学校の生徒が三十名前後通ってもらっております。そこで全ての子供たちに教育勅語を唱和させております。

 教育勅語もまさに最初のうちはなれない状況ではございましたけれども、世界に称賛された我が国の教育勅語であり、当たり前のことが当たり前にできる、そういった日本人を育成することが重要であると考えております。この精神への回帰を目的としたものでありますけれども、かつての教育勅語の内容が悪いということであれば、平成の教育勅語というものもつくるべきだと思っております。

 そこで、質問をさせていただきます。

 教育は国家の百年の大計と言われ、経済面でも失われた二十年という言葉を耳にいたしますが、私は、教育面においては、失われた六十五年という気がしております。この六十五年の間に、日本人の持っていた深い教養、優しい心、思いやりというものが欠けてしまっていると感じております。

 今後三十五年で何とかしなければ危険領域に既に入っていると考えておりますが、その少ない時間、少なくなった三十五年の間に、教育環境の整備を急がなければなりません。また、現状に対する認識も改め、課題に取り組んでいくべきではないかと考えております。

 教育再生に残された時間は少ない。子供の教育を考える際、イデオロギーや政党間の対立を繰り返している場合ではありません。教育正常化へ長年取り組んできた経緯から、最近強くそのように感じております。対立を超えて、人間として最低限のルールを身につけた道徳心のある子供を、家庭や学校において教育することを急ぐ必要があるのではないかと考えております。

 そこで、文部科学大臣に御見解をお伺いいたします。犬の話は別にどうでも結構でございます。

下村国務大臣 今、お聞きして、いろいろな縁があるということを感じました。また、私も麻生財務大臣の、JCでは全くの下っ端でありましたけれども、私もJCにも入っておりましたし、教育再生機構にも縁がありますし、ぜひ遠藤委員にも御活躍をしていただきたいと思います。

 認識としては全く同じでございますが、平成の教育勅語という話もございました。ぜひ、いろいろな民間レベルで、今の時代にそういうものをつくったらどういうものができるのかということを、いろいろなところで議論していただきながら提案をしていただくということは、大変にすばらしいことであるというふうに思います。

 それというのも、これから我が国が世界に伍して成長、発展していくためには、今、このときこそ教育再生を行う。そして、この教育再生を通じて、変化や新たな価値を主導、創造し、社会の各分野を牽引する、そういう資質や、あるいは日本人としてのアイデンティティーや、歴史や文化に対する深い教養、こういうことを育成するということが、このときこそ大切なときはないのではないかというふうに思います。

 同時に、道徳についても、これは、国を超えて、そして時代を超えて、人が人として生きていく上で守るべき規範を子供たちが確実に身につけられるようにするということは極めて重要であるというふうに思いますし、このような観点から、第一次安倍内閣において改正された教育基本法においては、教育の目標の一つとして、道徳心を培うこと、これが盛り込まれているところでもございます。

 このことも踏まえて、改訂された新学習指導要領については、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の内容として、一人一人が守るべき共通の規範などについても示されており、各学校においてこれに基づく道徳教育が行われているところでございますが、それが十二分でないという中で、今回、道徳の教科化も提案がなされたことであります。

 この提案をなされた教育再生実行会議、これはきちっと、さらに活性化をして、そしてスピーディーに、迅速に、今直面しているいろいろな教育問題についていろいろと議論していただきながら、これを改革の一つのばねにしながら、しっかりと、ことし平成二十五年が教育再生元年と後々評価していただくような教育改革をぜひやってまいりたいと思いますので、党派を超えて御協力をよろしくお願い申し上げたいと思います。

遠藤(敬)委員 安倍内閣では、経済再生、教育再生を旗印にされております。

 これまでのOECDの調査では、教育に対する公財政支出の対GDP比は、OECD平均が五・四%のところ、日本は三・六%。OECD加盟国の中で最も低くなっております。

 教育の再生に失敗すれば、日本の再生もおぼつかないということになります。すぐ次の年から日本の教育予算をOECD平均までふやすということは非常に難しいと思いますけれども、先ほど申し述べました、教育は国家百年の大計でありますので、その百年も残り少なくなってきた現下の状況で、少しでも教育予算を拡充していく、そう思っておりますが、教育再生の意義も踏まえた上で、麻生大先輩、麻生副総理・財務大臣の御見解をお伺いしたいと思っております。

麻生国務大臣 教育予算の話なんだと思うんですが、OECDの約七割ぐらいだと存じます。

 教育予算につきまして、これは、明確な成果目標をきちっと決めて、改善サイクルが働いていくようにすることが大切で、その一連のあれで、今、下村大臣の方もいろいろ、教育委員会の話とか全部されておられるように思うんですが、いずれにしても、成果につなげる質とか手法、そういったものの改善とあわせてお金を投入していくということが大事で、今、総額四兆六千億ぐらいかな、なんだと存じます。

 今、OECDの対GDP比に対する支出の話があったんですが、子供一人当たりで見ますと、これはOECDと比べてそんなに遜色があるわけではない。ただ、国に対しての日本の税負担の比率は、OECDの中では日本の場合は個人の税負担率は最も低いことになっておりますので、そういったことを勘案しますと、税負担率でいきますと日本が二二、OECDが三六か七かあると思いますので、その分が額に乗っかってきますから七割ということになっておりますけれども、一人当たりで見直しますと、それほど遜色があるわけではありません。

 いずれにしても、私どもは、六十年と言われましたけれども、確かに、昭和二十年、さきの大東亜戦争と言われる戦争に敗戦を喫しましてから今日まで、かなりの長い間、教育に関してはそれほど、いろいろちょこちょこ言われながらも、正面に据えてこういった話をされてくる機会はこれまで余りなかったのかなと思っております。

 歴代、保守というものを任じておられた内閣総理大臣は、教育にはかなり気持ちを抱いておられたことは事実だと思いますが、なかなか、そういった世論ではなかったし、そういった支援もなくて、非常に悶々たる思いをされたんだと思いますが、今回はそれを堂々と掲げて選挙を戦ってきておられますので、その方向で、今先生の言われた方向で事は少なくとも一歩動き出そうとしておるかなと思っております。

遠藤(敬)委員 いろいろと質問があるんですけれども、これはJCつながりで、私の近隣の市町村の首長をしております、泉佐野の千代松市長がある意味問題提起をされました全国学力テストのお話でございます。

 子供の学力や学習の状況を把握、分析して、教育の成果と課題を学校における子供への教育指導の充実や学習の改善に役立てることを目的としたものと承知をしておりますが、こうした目的からすれば、学校別の調査結果については公表した上で、行き過ぎない適度な競争意識を持ちつつ、学校や子供たちが切磋琢磨をして学力向上を図っていくべきではないかと、私も千代松市長と同様に考えております。

 下村大臣も、志を同じくして教育再生にともに、私どもは民間ですが、やってまいりましたけれども、下村大臣の御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 千代松市長には、私から直接手紙も差し上げました。

 この全国学力・学習状況調査は、全国の児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策や指導方法の改善充実に役立てることを目的として実施しており、調査結果については、教育委員会や学校で積極的に活用していただくことが重要であるというふうに認識しております。

 このため、文部科学省としても、指導方法の工夫、改善のための教職員の加配措置や、補習等を行う外部人材の活用、具体的に授業を改善する際の参考となる授業アイデア例の作成、配付、そして教育委員会、学校におけるすぐれた取り組みの普及などを行っているところでございます。今後とも、教育委員会や学校における教育施策や教育指導の改善充実が進むように取り組んでまいりたいと思います。

 調査結果については、教育委員会や学校が保護者や地域住民の理解と協力のもとに教育施策や教育指導の改善に取り組むため、積極的に情報提供することが重要であると考えます。一方で、学校の序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮することも必要であるというふうに思います。

 平成二十五年度については、その双方の観点を踏まえつつ、四年ぶりの悉皆調査に全国の学校から広く参加していただくことを考えて、平成十九年度から二十一年度の悉皆調査のときと同様に、各学校の結果の公表は各学校の判断に委ねることとしておりますけれども、文部科学省としては、各学校ごとの公表がさらに進むように促してまいりたいと思います。

 平成二十六年度以降における結果の取り扱いについては、本調査は貴重な予算を使って教育改善のために実施していることや、保護者や地域住民に対する説明責任を果たすという観点を踏まえつつ、関係者の意見も聞きながら、改めて検討してまいります。

遠藤(敬)委員 道徳教育のあり方ということで、心のノートという教材も、実際は、内容は別としましても、使われていなかったというのが多くございました。実際、心のノートも改訂版を出されるということで私も承っておりますし、ぜひともお願いをしたい。また、子供たちに徹底した教材として使用をいただきたい、そのようにも思っております。

 私は、義務教育は親の義務であり、子供の教育に対する第一義的な責任は親にあると考えておりますが、少子化や核家族化の進展に伴い、親や地域の教育力が低下し、現在、いじめによる自殺問題に見られるように、当たり前のことが当たり前にできない、そんな状態に陥ってしまっていることは言うまでもございません。

 戦後、GHQから修身をやめよと指導されたことも大きいと考えられますが、こうした当たり前のことが当たり前にできないような状態に至っては、平成の教育勅語というべきものも明らかにし、学校における道徳教育を充実させ、子供たちのモラルとルールを守る態度をしっかりと身につけることが急務である、こう考えております。

 心のノートの話も先ほど来から出ておりますし、細かな点につきましては結構でございますが、下村文部科学大臣から、改めて、道徳の教科化、非常に難しい課題だと思いますけれども、今一番必要な喫緊の課題だと思っております。ぜひ御意見を再度お聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 道徳の教科化については、教育再生実行会議の第一次提案の中になされたことでもございます。時代を超えて、また国を超えて、人が人として守るべきルール、規範意識、これを子供たちにそれぞれの発達段階から教えるということは大変重要なことであるというふうに思います。

 今御指摘がありましたが、心のノートが十二分にそれに対応する教材と言えるところではありませんので、これは全面改訂して、改めて、家庭でも親がぜひ読んでみたい、また子供たちもそれを積極的に活用したいというふうに思っていただけるような、全面改訂版の心のノートが来年の春から各学校で使用できるように対応してまいりたいと思います。

遠藤(敬)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 北海道選出、日本維新の会の高橋みほでございます。

 予算委員会で初めての質問となりますので、不手際があるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 まず最初の質問ですが、降雪地域における災害に関しましてお尋ねしたいと思います。

 降雪地域における災害としまして、積雪による災害、風雪による災害、融雪による災害などがあると思います。

 北海道では、雪による被害状況といたしまして、昨年十二月十名、ことしの一月七名、二月四名、三月十二名の方が亡くなられております。重傷者に限っても五カ月間で百六十四名、届け出があった軽傷者は三百十八名もの方がけがなどをされております。また、被害の発生状況に関しましては、屋根からの転落とはしごからの転落で六割を占めております。テレビなどでは、お年寄りは無理はしないでなどと言われておりますが、屋根から雪をおろさないと家が潰れるかもしれないという心配のある家には、おひとり暮らしの御老人が多く、いたし方ない部分もあるかと思います。

 自然の話でございますので、私は、何でもかんでも国が悪い、公務員が悪いと言うつもりは全くありませんが、少しでも皆が雪に関しまして考えることによって、このような災害が少しでも減るのではないかと思っております。

 近年は、平年の積雪量が当てにならない現象が続いておりますので、どこで何が起こるかわからないという災害対策の心構えを持つためにも、質問いたしたいと思います。

 北海道では、三月の初めに、暴風雪によりまして九名が一夜にして亡くなりました。直接の原因は暴風雪ではありますが、被害がこれほど大きくなった原因は何だと思われますでしょうか。

 亀岡内閣府大臣政務官は、この災害が起こってすぐ現地に飛ばれ、視察をされ、指示を出されたと伺っておりますが、どうあったらよかったのかなという感想なども交えて聞かせていただければと思っております。

亀岡大臣政務官 今、高橋委員からお話がありましたように、私も、三月の二日から三日にかけて、亡くなられた方が非常に多いということで、すぐ現地に入ってまいりました。

 特に、今回の特徴は、自宅に帰る途中で亡くなった方が非常に多いということは間違いありません。そして、異常気象の発令も早く出ていたんですけれども、残念ながら、異常気象に対する認識が少し甘かったかなと思わざるを得ない部分があると思います。

 特に、自宅まであと三十メーターで帰れるという方が亡くなった例もそうなんですが、ホワイトアウトという、百年に一度の異常気象の暴風雪に対して、うちが近いから帰れるだろうという認識があったがために、一メーター先が見えないという中で方向を間違ってしまったといって亡くなられた方もいらっしゃいます。

 車の中で、親子四人が一酸化炭素中毒で亡くなるという方もありました。これは、消防隊に救急連絡があったんですけれども、必ず換気をしておいてくださいとちゃんと申し伝えがあったんですけれども、残念ながら、屋根まで雪に埋もれてしまって、窓を閉めてしまった。そのための一酸化炭素中毒ということで、後悔があったのは、エンジンをとめてくださいと言えばよかったと。

 ですから、異常気象に対する認識が全体的にもう少し甘かったかなという気がしております。異常警報の発令も、緊迫感のある発令の仕方をしていればもっと緊張感が持てたのかなと。

 いろいろ原因はありますけれども、今回の百年に一度のホワイトアウト、異常気象に対して、もう少し、異常気象であるという緊迫感を持った連絡の仕方があったろうということも思いますし、また、受ける側の市民の皆さんにも、残念ながら、通行どめになった部分の柵までどかして入っていってしまった、うちが近いという安易な考え方、これもちょっと認識が甘かったかなと。この辺をしっかりと直していかなければいけない。

 異常気象というものが、まさに今の常識では考えられないことが起こり得るということで、これから、減災、防災に対してしっかり考えていって、取り組まなければならないと思っております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 本当に、認識が大事、教育が大事ということがあると思いますけれども、やはり、危ないんだ、もしかしたら大事故につながるかもしれないんだというような情報を、政府の方が、政府といいますか地方公共団体も一致して、いろいろな情報を出して、皆さんの認識を喚起するということを本当にしていっていただければと思っております。

 では、別の事故になるんですけれども、四月七日、国道二百三十号線の定山渓の中山峠にて土砂崩れがございました。約五十メートルにわたって道路の斜面が大きく陥没し、雪とともに山肌があらわになりました。通行どめが早くて、死傷者が出るということにはならなかったんですけれども、通行どめがおくれれば、死傷者が出て大災害にもなったような事故でした。

 特に問題なのは、昨年五月にも大規模な土砂の崩落が起きております。全く同じ場所ではないんですけれども、七キロメートルしか離れていないところです。としますと、昨年の災害を受けて、その地域の点検はしっかりしていたのでしょうか。予見はできなかったのか、伺いたいと思います。

 さらに、中山峠以外に土砂崩れの可能性がある道路を把握しているのか、把握しているとしましたら、どのような対策をとっているのか。中山峠の復旧の見通しとあわせてお尋ねいたします。

赤澤大臣政務官 急速に発達する低気圧による降雨で、御指摘のとおり、平成二十五年四月七日に、国道二百三十号中山峠付近で約五十メートルにわたって土砂崩れが発生したのは事実でございまして、現在も通行どめという状況になっております。

 今回の被災箇所については、御指摘のありました前回の土砂崩れが発生した平成二十四年五月の時点で、現地踏査、それから目視により、点検を実施いたしました。その時点では、のり面の変状等、特段の異常は発見されませんでした。

 その後、昨年から本年にかけまして記録的な大雪に見舞われ、四月の積雪深としては例年を大きく上回っていると想定されましたために、巡回及び点検を強化いたしました。強化した対応をしていたもとで、今回、通行どめする前に路肩の変状を発見し、そして、まず通行どめを行って、その後に土砂崩れが発生をしたものでありまして、昨年の被災時を上回る雨量に見舞われたために被災したものと思われます。

 どれぐらい危ない箇所があるのかというような御指摘でありましたけれども、北海道の国道の総延長が六千六百五十二キロある中で、災害発生をきちっと予見するためには、平素の点検が極めて重要であります。

 したがって、今後も、しばらくの間、融雪の時期が続くことから、路上での目視点検、パトロールカーによる巡回などにより、現場の異常発見にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

高橋(み)委員 目視をしたときに特段の異常がなかった、それにもかかわらず災害が起きてしまったというのは、本当に、ほかの地域でもこのような事故が起こる可能性があるということなので、日常の点検等をきちんとしていただきたい、そう思っております。

 少し論点は変わるのかもしれないんですけれども、暴風雪などの災害救助におきまして、頼りになるのは自衛隊だと思うんです。

 では、自衛隊のヘリコプターでは、吹雪の中でも救援活動できるように訓練はされているのか、お尋ねしたいと思います。

左藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 ヘリコプターの運航に当たっては、御存じのとおり、自衛隊、民間も問わず、強風、視程の障害となる雪それから雨、霧など、気象条件を十分に配慮しないと大変なことになります。

 災害救助時の飛行方式は、目視による飛行であり、有視界飛行方式で飛行します。この場合、航空法により、自衛隊機、民間機ともに、飛行高度三千メーター未満における飛行条件があります。五キロ以上の視程、見えないとだめだということと、雲が、上方百五十メーター、下方三百メーター、水平六百メーター以内にないことが必要とされております。

 また、強風下では、地表面近くでは地形の影響により乱気流が発生しますので、要救助者の収容等の作業を行うために必要な、ヘリコプターの姿勢を安定させることが大変困難になります。

 風雪などの悪天候の状況下でのヘリコプターの運用制限を一律に決めるものではありませんが、防衛省・自衛隊としては、以上のような各種の気象条件等を踏まえ、飛行の安全を確保した上で、災害救助活動を実施しております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私も不可能を強いるわけではございませんが、目視をして余り見えなかったら飛べないということでは、助けを求めている人たちを本当に安全に救助するのは、では誰が救助するんだろうかなというような、ちょっと疑問もございます。できましたら、いろいろ最新の機器などを使いまして、もう少し、災害のときにも頑張っていただける自衛隊をぜひつくっていただければと私は思っております。

 北海道など、これほど大雪が降る地域にこれだけ多くの人が住んでいる国は実はないと言われています。

 北海道では、雪をためて冷房に利用したりしておりますが、それだけではなく、先進的な雪対策を産学官が連携する形で国を挙げて考え、その技術を日本の発明等として他国に売っていくようなことを考えることも可能だと思うんですけれども、実際に、国を挙げての雪対策及び雪に関する新たな対策、研究などを行う気持ちはおありでしょうか、お尋ねいたしたいと思います。

古屋国務大臣 お答えをいたします。

 今の質問は、豪雪、暴風雪に対してどういう取り組みをしていくべきなのか、そういう趣旨だというふうに解釈しましたけれども、やはり日本はどうしても、人口の一五%ぐらい、約二千万人弱、これは暴風雪地帯に住んでいるんですよ。ですから、やはりこういう方たちは、三月二日、三日のあの北海道の、先ほど亀岡政務官からも答弁がありました、九人のとうとい命が犠牲になりましたね、こういうリスクは常にあるんですね。ですから、そのリスクをできるだけ排除していくという必要があります。

 まず、そのためには、そういう状況が生じたときに、速やかな対策をしていくという必要があるんですね。

 三月二日、三日、雪がありました。もう三日には実は今回総理大臣からじきじきの指示がありまして、速やかに対策を講じろということで、三月三日というと日曜日ですよ、日曜日ですけれども、役所にも全部招集して、連絡をとらせて、月曜日の朝九時から関係閣僚会議を開いて、ここで対応を決定して、そして、政務官をすぐ現地に、それから大臣補佐官も一緒に派遣させたんですね。

 そういう対応をして、そして速やかに支援策を決定して、現地の首長さんに連絡しました。そうしたら、大変喜んでいましたね。本当に早い行動をしていただけましたね、これだけ早く連絡をいただけるとは思っておりませんでしたと。こういうことです。

 ただ、やはり一つ大切なことは自己防衛なんです。

 たまたま私、昨日、ドイツの方に留学していた仲間とちょっと夜食事をしながら話をする機会がありまして、北ドイツの方では、暴風雪、それも爆弾雪というか、ものの数分で車が雪だるまみたいに埋もれちゃうそうですよ。そうすると、そういう事故があるらしいですね。だから、そういうときには絶対外出しないそうです。家にいる。どんなことがあっても家にいる。

 やはりこれは大切ですね。ですから、地域の皆さん、天気予報をしっかり把握して、ちょっとでもその可能性があるということならば絶対外出はしない、家にとどまっている。

 今、携帯電話もありますし、電話もありますし、ネットもありますので、外出しなくても、そうやっていろいろな関係者と連絡をとったり、友達との連絡をとったりできますので、やはりそういう自己防衛というのがまず大切なんでしょうね。この程度でよろしいでしょうか。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 心構えということではなくて、国を挙げての雪対策を、心構え以外に何か新しいものをしていただけないかなという希望だったので、ぜひ、以降、検討していただければと思っております。

 降雪地域は、降雪被害で大変なところではございますけれども、スキーを初めウインタースポーツができますし、ほとんど冷房は要りませんので、地球温暖化防止にも役立っている地域でございます。ぜひ、雪が降らない地域にお住まいの方も、降雪地域に住んでいる方と一緒になって、いろいろ対策を考えていただければと思っております。

 時間が本当にちょっと押してきてしまったので、早口になってしまいますが、次の話題に移りたいと思います。

 北海道新幹線の工期についてお尋ねします。

 昨年六月に正式に札幌延伸の着工が認可されまして、道民一同、喜んでいるところでございますけれども、ただ、計画では、函館から札幌まで新幹線が通るのは平成四十七年度と言われています。

 二十二年もかけるとなると、昭和四十年生まれの私は六十九歳になってしまい、実際に新幹線ができても、その恩恵を受けるのはなかなか難しいかもしれません。事実、私より御高齢の方は、生きているうちには札幌まで来ないだろうと言っている方もいらっしゃいます。せっかくつくるのですから、御高齢の方々が生きているうちに一度でも新幹線に乗れるように、我が国の技術とあり余る労力を集め、全力でやれば、五年ぐらいで札幌まで開通できるのではないかとも思っております。

 そこで、なぜ二十二年というこれほどの長い工期がかかるのか、教えてください。そして、工期を早めるためにはどうしたらよいのかということも、あわせて、いただければと思います。

滝口政府参考人 まず、今回、工期が長くなっている理由について御説明を申し上げます。

 委員御指摘のように、北海道新幹線の新函館―札幌間につきましては、四十七年度ごろの開業ということでございます。

 この区間は、二百キロを超える区間でございますが、全体の四分の三以上であります百六十キロがトンネルということになっております。さらに、十キロメートルを超えます長大トンネルというものが七本あるというような難工事が予定されております。また、トンネル工事により、鉛、砒素などの有害な重金属を含む岩石が排出されるということが想定されておりまして、一定の工期が必要だということになっております。

 また、現在の工期は、このような工事施工上の技術的な課題を踏まえながら、厳しい財政制約の中、貸付料収入などの活用可能な財源を最大限活用するという中で検討いたしまして、現在の平成四十七年度という開業日程が設定されているところでございます。

高橋(み)委員 それでは、どうしたら早められるのかということも、ちょっと一緒にお伺いしたいんですけれども。

太田国務大臣 今お話をさせていただいたように、一つは技術的な問題、一つは財政的な問題、この二つです。

 技術的には、トンネルが大体七割を超えるというのが北海道の今回のことでありますから、そこを技術的にどういうふうに早くできるかということを、事故なくやらなくちゃいけませんから、そこを詰めるということが一つです。

 もう一つは、財源スキームの見直しです。全体的に、昨年着工した三区間の工事の前倒し、全体的なスキームでやっているという状況にありますから、その三区間の工事、工期の前倒しということについて、全体の見直しについて与党の間で今検討が始まっております。

 私は、そこを、全体的なことの状況を見て、それらを踏まえて対処してまいりたい、このように思っているところで、現地の強い前倒しの要望はよく承知しております。

高橋(み)委員 財源と技術的な問題があるということは存じ上げておりますが、道民一同、北海道が発展することが日本も発展することだと私たちは皆信じておりますので、どうぞ工期を早めていただくように努力していただければと思っております。

 どうもありがとうございました。これで質問を終わります。

山本委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。予算委員会では二回目の質問となります。

 本日は、原発再稼働に向けた原子力規制委員会の新安全基準についての御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 東日本大震災、そして福島第一原発の事故から丸二年がたちました。今なおその傷跡は癒えず、福島はもとより、日本全国各地で避難生活を送られている方もまだ数多くおられます。私自身も、被災直後から被災地に医療支援として入り、微力ではございましたが、かかわってきた者の一人として、一日も早い復興を願っております。

 また、福島原発後の子供たちの健康被害、小児甲状腺がん、そして低濃度セシウムの健康被害、また、科学的には証明し切れない放射能の晩発的な影響など、福島が抱える問題は、むしろこれからが大きな課題として残されているとも言えます。

 福島の子供たちが抱える不安を解消するために、政府として全力で取り組んでいただきたい。私自身も、そのためであれば何でもしたい、そういう思いでもございます。

 そのような福島の現状の一方で、三月十五日に議論をスタートさせました総合資源エネルギー調査会総合部会が中長期のエネルギー政策を示すエネルギー基本計画の見直しも、年末にかけて進むこととなっているようです。

 また、総理は、所信表明の中で、福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会のもとで、妥協することなく、安全性を高める新たな安全文化をつくり上げます、その上で、安全性が確認された原発は再稼働しますと発言をされておりました。

 改めてお尋ねいたします。

 政府は、基本計画の中で、今後も原子力をエネルギーの一つとして考えていることを示しておられますが、本当にそのようなことでよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 エネルギー政策につきましては、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期すことが大前提であります。

 今後、まず三年間、再生可能エネルギーの導入拡大、そして省エネルギーの推進を最大限加速化してまいりたいと考えております。そして、原発につきましては、その安全性を、原子力規制委員会が世界最高レベルの科学的安全基準のもとで判断していくということにいたしております。

 一方、新たなエネルギー制約に直面する日本、エネルギーコストを削減していく、極めて重要な課題でありまして、高効率の火力発電の技術的進歩、そしてまた安価なLNGの調達、こういったことも進めていきたいと思っております。

 同時に、発電、供給面だけではなくて需要面においても、やはり、これまでのように需要を所与のものとして供給だけを積み上げる、こういう発想から、需要についてもできるだけスマートにコントロールをしていく、ピークコントロールを図っていく、こういったことが重要であります。

 また、需要家にとって多様な選択肢が広がる、そして新しい事業者も参入機会が広がる、こういう観点からも、電力システムの改革をしっかりと進めていきたいと思っております。

 こういった取り組みを通じまして、今後はできる限り原発依存度を低減させていく、こういう方向で検討を進めてまいりたいと考えております。

中島委員 原発でいいますと、安定した電力供給のために、原発再稼働はある一定期間必要とのお考えというふうになると思います。

 再稼働させる原発は、今大臣からも御答弁ございました、新たな安全基準を満たさなければならない。厳格な新安全基準というものを設ける。その新基準に関しては、原子力規制委員会が四月中に基準案をまとめて、七月にも決定する。そして、秋以降、新基準による審査を終えた原発を順次再稼働するというようなシナリオを描いておられるのかなとも思っております。

 その新安全基準を決める規制委員会の委員長が田中委員長ということでございます。その田中委員長の御発言の中で、昨年就任時から今に至るまで、その御発言の変化が、私はどうしても気になって仕方がない部分がございます。

 資料の一枚目は、三月二十三日の東京新聞の資料です。昨年九月、規制委員会発足当初は、事情は一切しんしゃくしないと繰り返し強調されました。地元や政治家の意向を酌めば旧原子力安全・保安院と同じとも話されております。十月には、電力供給とか社会経済的なことにかかわらず、科学的、技術的見地から規制を行うと発言されておりました。

 ところが、ことしの三月には、基準違反だからと例えばぽんと二十基とめたら世の中どうなってしまうのかと御発言をされております。

 科学的な判断より経済性を優先するともとられるようなこの御発言、どういう変化なのか。また、この御発言から、当初は徹底的に安全性を追求するはずが、さまざまな事情の中で考えが変わったということなのか。お尋ねしたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答えします。

 就任以来の発言の趣旨については、変わっていないと私自身は思っております。

 規制委員会の役割としては、あくまでも、電力需給とか経済、経営問題といったことにはかかわりなく、科学的、技術的見地から原子力発電所に必要な基準を設定し、それに対してその基準の適合を求める、いわゆるバックフィットをしていくという考えでおります。

中島委員 私自身は、その資料にもありますように、だんだんニュアンスが変わっているとしか、ちょっと思えないんですね。

 この間あったことといいますと、昨年の秋、民主党政権下で原発の規制委員会というものが発足しました。それで、十二月に自民党政権ができたわけです。そういう理由も少しあるのかなということも考えながら、私の勝手な推測かもしれませんが、就任して以来、既存の原発を精査していく段階で、今までも安全基準を満たすために一兆円超えの予算がつぎ込まれております。現実的に、今、既存の原発を安全基準を満たしていくのが非常に厳しい現状だと認識なさったのではないかと私自身は考えているんですが、その辺はいかがでしょう。

田中政府特別補佐人 お答えします。

 既存の我が国の原子力規制の中では、いわゆる過酷事故、シビアアクシデントに対する対策が不十分であったということでありますので、今回は、そういったことについてかなり厳しい基準を求めています。

 そういう意味では、これまでの原子力発電所が必ずしもそれにどこまで合致しているかということについては、今後よく精査をして、審査をしていきたいというふうに思っています。

中島委員 委員長の御答弁の中で、厳格な思いは変わっていないというふうにおっしゃっておられました。

 二枚目の資料、四月一日の読売新聞ですが、さらに、原子力規制委員会が新たな安全基準の概要を示した中で、一部の対策に五年の猶予期間を設ける基本方針を示されました。中央制御室の損壊を想定した第二制御室の設置と格納容器の破損を防ぐフィルターつきベント設備の二項目に五年間の猶予を設ける見込みとなっているようですが、できることは全て厳格にやるということが安全基準の前提だと、今の御答弁の中にも厳格にやるということが入っていたと思いますが、五年間猶予する、その根拠を教えていただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 今回の基準の中で、基本的には即時要求がほとんどであります。これはどうしてかといいますと、こういった何か自然災害等が起こったときに、福島のような事故を決して起こさせない、そのための対策については一刻の猶予もできないということで、基本的に即時適用という判断をしております。

 いわゆる第二制御室、それから今御指摘のありましたフィルターベントにつきましては、BWRについては即時適用でございます。PWRにつきましては、格納容器がかなり大きいので、すぐにベントをする必要はないだろうといういろいろな安全解析をしまして、少しその対策を猶予したということであります。

 実際にそういった施設をつくることを五年猶予したという内容ですけれども、それは、あくまでもシビアアクシデント対策としては基本的にはできているんだけれども、原子力委員会の基本的な姿勢として、さらなる安全を求めていく、そういうことを今後ともずっと追求していきたいと思っておりまして、その一つとして、第二制御室の問題とかBWRのフィルターベントということを位置づけております。ですから、それをつくるに当たっての建設期間等を考慮して最大五年ということを決めさせていただいています。

中島委員 やれることは全てやるというのが厳格な安全基準の前提ではないかなと私も思うんですね。

 センシビリティーという話が、先ほど言ったように、一般の方には非常にわかりづらい。冒頭にも言いましたように、子供たちは現在も放射能の影響、不安を抱えている。そういう中で、こういう五年の猶予期間というのが本当に厳密なのかと非常に疑わざるを得ない。

 米国の原子力規制委員会のウィリアム・マグウッド委員は、フィルターつきベントの設備について、原子炉ごとに有効性が違い、同設備の義務化は精査が必要で、ルール策定には大変時間がかかるとも述べております。このフィルター設置には大規模工事が必要とも、完全にするためにはということですが、言われています。

 ある報道でも、ちょっと目にしたんですが、この時間がかかるフィルター設置に電力会社が猶予を求めているということが書かれておりました。その件について、これは本当でしょうか。

田中政府特別補佐人 先日、米国規制委員会の委員の一人でありますマグウッドさんが私の部屋にも来まして、意見を交わしました。

 福島の事故を受けて、BWRのタイプについては、いわゆる米国原子力規制庁、NRCも、フィルターベントの設置を業者に求めたんだけれども、これまでの安全対策でも十分ではないかというような議論があって、今まだその結論は出ていないというふうに伺っています。

中島委員 全ては、その猶予期間に事故が起こらないというような前提の中で何か物事を進められて、決められているような気がしてならないのは、私だけでしょうか。電力会社の都合も、この場では当然そんな発言はないとは思いますけれども、考慮されているということも、本当にあるのかないのか。

 冒頭にも言いました、総理の発言の中で、安全文化の創設という言葉がございました。こういったことの積み重ね、そして、田中委員長、このタイミング、三月二十七日の記者会見で、安全基準の呼称を規制基準に改める方向で検討すると御発言なさっています。私にはその意味がちょっと理解できないんですが、そのお考えをお聞かせください。

田中政府特別補佐人 まず、安全基準を規制基準にしたということでございますけれども、いわゆる安全基準という言い方をすると、基準を守れば十分安全であるというふうに誤解されるのではないかという御指摘が、メディアからも、いろいろなところから意見がありました。それは傾聴に値することであると。

 私どもが申し上げているのは、規制基準というのは規制要求でありまして、その規制は最低限のものであって、事業者がさらなる安全を目指して努力をしていただくことが非常に大事である。これは、国際的にもそういうことが言われています。そういう意味で、規制要求という意味を明確にするために規制基準ということにさせていただきました。

 ですから、私どもの規制基準を守れば安全なんだという考えに陥ってもらっては困る、そういう考えから、そういうふうに直させていただいたということでございます。

中島委員 安全を守るための規制で私はいいと思うんですが、規制の結果、安全が担保できるというふうにお考えということなんですよね。

 そのときに田中委員長は同時に、規制委員会がすることは規制であって、結果として安全が担保できればよいと、今の御答弁と同じような趣旨だと思います。

 ただ、最近、福島第一原発で、小動物による原因だということで停電が起こったり、そして昨日も、三カ所目の汚染水の漏出が起きました。そういったことを踏まえながら、安全基準の項目の猶予、そして今の御発言、どうも私には、当初は厳密にやると言ったことがだんだん基準が下がっているんじゃないか、どうしてもそう思わざるを得ないんですね。要するに、こういった経過の中で、俗に言われた原発神話のようなものがつくり上げられているんではないかというふうに思っておるところです。

 ちょっと時間も迫ってきてしまったので、こういった問題を踏まえながら、私が非常に危惧するのは、先ほども申し上げましたように、今、厳格な安全基準を満たすために既にかなりの予算が使われています。ある一方で、パッチワーク的にバックフィットが困難な状況を認識された中で、発想として、そういったものを取り繕っていくよりは新たな原発をつくった方がいいんじゃないか、そんな発想になっているとしたら本末転倒じゃないかなということを危惧しているわけです。まさかそんな発想はないとは思いますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 原子力発電につきましては、いかなる事情よりも安全性を重視する、こういう方針で臨みたいと思っております。そして、その安全性については独立した原子力規制委員会において判断を行うとしております。

 まず、新しい安全基準ができましたら、規制委員会に申請のあった原発につきまして安全性のチェックが行われる。こういった意味において、現存しております五十基の既存の原発についての安全性の確認、これが最初のステップでありまして、新設のものをどうするか等々につきましては次のステップになってくる、このように考えております。

中島委員 今現在、福島の問題、冒頭にも言いました、子供たちの将来をしっかりと担保していく、守っていくためには今現在が必要なわけです。そのことをしっかりと踏まえながら、そもそも厳格な安全基準というのは原発がないということになるわけです。安定した電力供給のために政府が一丸となって新エネルギー、再生エネルギーのためにも努力するということではございますが、決して、二度と福島と同様のことが起こらないように、政府として全力で取り組んでいただきたい、そして原子力規制委員会にもしっかりと本当の意味での厳密な安全基準というものをつくり上げていただきたいと思います。

 時間となりました。質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂委員 みんなの党の、引き続きまして井坂信彦です。

 私は、大学では理系で理論物理をやって、その後、ベンチャー企業に入りまして、神戸市議を三期やって、参議院選挙に出ておっこちて、落選中にネット上で会社設立ばかりやる行政書士事務所を立ち上げて、今は年間四千社の会社設立のお手伝いをしております。いろいろやってきたんですけれども、科学、ベンチャー、政治、あと都市戦略ということも市議の間はよく取り組んでまいりました、それから会社設立。とにかく日本を新しいことに挑戦する人であふれる国にしたい、あるいは世界に価値をどんどん提供してしっかり稼げる国にしていきたいというのが私の一貫したテーマであります。

 本日は、日本の人材集積の戦略についてお伺いをしたいと思います。

 時間も限られておりますので、人材育成という話には本日は一切触れずに、主に海外からの人材の誘致、そして集積というテーマに絞ってお伺いをしたいと思います。

 天然資源に乏しい日本ですから、人こそが最大の資源というふうに言われてまいりました。この場合の人的資源を単なる労働力とか熟練した人手というふうに見れば、これはもはや人数でも賃金でも、中国やインドその他、アジアの国々にかなわないわけであります。そうではなくて、人の頭脳から生み出される創造性、あるいは人の心から生み出される感性とかそういったものにもっと目を向けて、クリエーティブな、創造的な人材を集めなければならないというふうに考えております。

 現在までに各省がそれぞれの思惑でさまざまなタイプの人材を誘致してきたと思います。本日は、文部科学大臣、それから科学技術担当大臣にお越しをいただいておりますので、それぞれ、どのような枠組みで、どのような人材を誘致、集積してこられたのかをまずお伺いいたします。

山本国務大臣 科学技術担当大臣として答弁を申し上げます。

 井坂委員の問題意識は大変重要だと思っています。

 安倍内閣は、科学技術イノベーションを成長戦略の大きな柱の一つに据えました。日本で科学技術イノベーションを推進していく、今おっしゃったように世界からクリエーティブな人材を集めて推進していくためには、内外、特に世界じゅうから本当に優秀な学生とか研究者を集める必要があるというのは、これは言うまでもないと思います。

 さらに言うと、グローバルな展開がどんどん広がっている中で、人材確保の国際競争は極めて激化しているというふうに考えます。

 きょうは下村文科大臣が来られていますが、では、どうしたら日本にそういった優秀な人材、世界トップレベルの人材を引きつけられるのか。これは第四期の科学技術基本計画にもたしかあった記憶があるんですが、詳しくは下村大臣にお聞きいただければと思うんですけれども、やはり優秀な人材を引きつけるためには、まず、最先端の設備がなければいけない、施設がなければいけない。それから、すぐれた研究環境がなければいけない。さらには、大学もそうですし、公的な研究機関もそうだと思うんですが、すぐれた方々を引きつける、来ていただく、すぐれた研究者とか学生がしょっちゅう日本を往来して定着する、そのための環境整備も必要だと思いますし、例えば大学の運営の改革とか柔軟化とか、そんなことも必要ではないかというふうに考えております。

 先生の質問にそのまま、それを踏まえた上でお答えすると、これも文科省と協力してやっているんですが、私の担当する総合科学技術会議で発案したWPI、ワールド・プレミア・インスティテュート、世界トップレベル研究拠点プログラムで、九つの拠点をつくって、外国人を三〇%、四〇%入れて、世界的な論文も出して、なおかつ拠点長がファンドレージングをやったりする。こういうことを、科学技術担当大臣としても、文科省等々と協力しながら推進をしていきたいと思います。

下村国務大臣 今、山本担当大臣からもお話ございましたが、文部科学省としては、すぐれた外国人若手研究者を招聘し、我が国において国際的な研究環境を構築する外国人特別研究員事業や、世界から第一線の研究者が集まるグローバル拠点の構築を目指す世界トップレベル研究拠点プログラム、これが先ほど山本大臣からお話があったWPIということでございますけれども、推進をしております。

 また一方で、これは送り出しの方ですけれども、すぐれた若手研究者個人の海外派遣を支援する海外特別研究員事業、それから、大学等の研究機関における若手研究者を海外に派遣する、頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業等を推進しているところでございまして、世界的な頭脳環境に対応できる国際的な人材・研究ネットワークの強化、グローバル研究人材の育成等、両方含めて、優秀な外国人にも日本国内に入ってもらうようなことをしております。

 それから、文化面についてもちょっと御説明を申し上げたいと思います。

 文化芸術を振興するに当たっても、我が国の芸術活動や伝統文化の振興はもとより、文化の力による産業の振興や地域の活性化への貢献など、さまざまな関連分野への波及効果を見据えることが大切でありまして、これまで、海外の芸術家を招聘し、滞在型の創作活動を行うアーティスト・イン・レジデンスなど、各地域の特色ある取り組みを支援する文化芸術の海外発信拠点形成事業を実践し、新たな創作活動の場の形成を図ってきたところでございます。

 また、ことし二十五年度は、日本、中国、韓国の三カ国で選定した都市において、芸術文化から伝統文化など、さまざまな文化芸術事業を実施することにしており、海外から優秀な人材が集まり、創作活動が行われるような形をとってまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 主に、優秀な科学者あるいは創造的な芸術家をどう集めるかということについてお答えをいただいたと思います。

 創造的な人材が集まる環境づくりという話も科学技術担当大臣の方から少しありましたが、科学者それから芸術家に限らず、弁護士さんとか編集者の方とかあるいはIT技術者やある種の起業家といった、本当に広い意味での創造的な人材を都市の魅力で集めていく、こういう創造都市戦略というのが世界じゅうで試されております。

 この分野の権威と言われるフロリダ博士という方がおられるんですけれども、彼によれば、日本は現在、既にもう創造的人材の巨大な集積地が二つあるんだと。一つは、東京だけでなくて、ほぼ関東平野全域のような大きな地域であります。もう一つが、京阪神だけでなくて、彼に言わせると、名古屋まで含めた京阪神・名古屋地域というのが、世界から見たら、日本はその二つの巨大な創造的人材の集積地があるということであります。さらに、日本が今後うまくやれば、この二つの巨大な集積地が地域をそれぞれ拡大してくっついてしまって、世界一のクリエーティブ人材集積地になる可能性もあるという話でありました。

 一方で、先月、私、世界じゅうの優秀な科学者を集めようと設立された沖縄の科学技術大学院大学の視察に行ってまいりました。大変優秀な研究者が集まってさい先のいいスタートが切れたという御報告を受けた一方で、実は、最近立て続けに二件、来てほしかった優秀な科学者に断られたんだという裏話もいただきました。

 その理由というのが、その科学者は、その大学院大学はとてもいい、行きたいと言ってくださったんだけれども、奥様が沖縄で我が子を育てることに難色を示したというのが実は裏の理由だったという話を聞いたことがあります。

 あるいは、これは私の地元の話ですけれども、留学生向けの施設に入居した海外からの優秀な留学生、ほぼエリートと言って差し支えない方ですが、その方が、先進国日本だと思って来てみたら、まずネットがなかった。プロバイダー契約もすぐできなくて、本当にどうなっているんだということで、日本に対する希望が初日から打ち砕かれたんだというような話も私は直接聞いたことがあります。

 事ほどさように、クリエーティブ人材の誘致というのはもちろんされているわけでありますが、同時に、彼らが好んで住む環境あるいは制度の整備というものが必要だというふうに考えます。

 そこで、まず国土交通大臣にお伺いをしたいんですが、クリエーティブ人材を誘致するための都市政策ということについて、お考えをお伺いいたします。

太田国務大臣 第一次安倍内閣のときに、美しい国ということを総理がおっしゃいました。外国の方と私、何回か話をしますと、日本は十分美しい国であると。それは、人、それから制度自体、保険やいろいろな医療制度、いろいろなことがあります。これほどいい国はない、美しい国であるということを大変おっしゃった。また、同じ人が、ちょっと太田さん、住宅はシャビーだねと言ったり、あるいは、日本の中で家族が生活するということの中には、家族を呼び寄せるということはなかなか難しいという話があったり、今先生がおっしゃるとおりなんです。

 都市間競争ということがこれから世界の中で極めて重要だと私は思っていまして、一つは、安心、安全面ということからいきますと、東京オリンピックを我々は目指しているわけですが、ある意味では大地震も想定される。そうしたことからいきますと、脆弱国土日本であるけれども、よくぞこういうしなやかな、強い、安心できる都市をつくったなというような、メンテナンスも含めて、そうした修理、点検、メンテナンス、耐震化、こういうことをしっかりやって、この脆弱国土の中でよくぞこの国をつくったものだという、メンテナンスエンジニアリングという言葉はないんですが、私はこの間から使っているわけですが、このメンテナンスということでいっても、世界で一番先端の国であるということを見せて、住んでみたいと思っていただけるようなものにしたい。

 それからまた、もう一点は、先ほどおっしゃったように、起業ということからいきますと、ITとかさまざまなインフラということがまだまだ十分ではないということがございます。そこも直していかなくてはいけない。

 それから、先ほどおっしゃった、家族が住めない、呼び寄せられないというようなことも含めて、医療、教育、そうしたことも含めた安心ということを得られる都市にしていかなくてはいけないというふうに思っているところです。

 さまざまな意味で、都市間競争の時代における日本の都市づくりということは、私は重大な局面になっているというふうに認識しています。

井坂委員 同様の質問で、労働環境ですとかあるいは年金なども入るのかもしれませんが、優秀な人材を受け入れる制度整備ということについて、厚労大臣にお伺いをしたいと思います。

田村国務大臣 我が国、高度な専門的な分野、また技術的な分野での外国人労働者、これを受け入れることは、経済の発展という意味では大きな意味があるというふうに考えておるわけでありまして、そのために、今大体六十八万二千人ぐらい外国人の日本での就労者がおられるんですけれども、十二万四千人ぐらいがそれに当たるんですね。さらにこれをふやしていかなきゃならないということで、例えば、今言われたような就労環境の整備、こういうものの好事例集、こういうものを集めたマニュアルをつくりまして、高度な外国人を雇い入れたいと思いながら課題を抱えておられる企業に対して、事業主指導でありますとかセミナーを開いて助言をさせていただいております。

 あわせて、外国人雇用サービスセンター、今委員おっしゃられました、すばらしい人材が東京、名古屋、大阪におられる、さらに福岡、この四点にこれを設置いたしておりまして、外国人版のハローワークでございますけれども、高度な方々の、外国人労働者のマッチングですね。

 それから、あわせて、ずっと企業に働いていただかなきゃならないということでございますので、そういう意味からしますと定着支援、こういうことも含めて進めさせていただいております。

 いずれにいたしましても、各省協力しなきゃいけないわけでございまして、これからも、厚労省、御協力をさせていただきながら、このような方向を進めてまいりたいというふうに思っております。

井坂委員 ありがとうございます。

 今大臣が最後におっしゃったように、各省協力してという話であります。例えば文部科学省、今回、芸術家誘致のお話、あるいは科学技術、科学者のお話、そして国土整備あるいは都市間競争のお話、そして労働環境のお話ということで、これまで、ほかにも、私、調べましたら、法務省では高度人材というくくりで入国の際のポイント制で優遇をするというようなこともやっていたり、経済産業省はフロンティア人材というまた別の定義と育成があったりするわけでありますが、こういったさまざまな省庁が、現状はそれぞれ気づいたところで、縦割り、まあ縦割りと言うとあれですけれども、やっておられるのかなというふうに感じるわけです。

 私はやはり、今回、どのような人材をまずターゲットに、そしてどうやって誘致、集積を進めていくのかといった、もちろん、本日は議論しませんでしたが、人材育成ということも含めて、政府として統一した人材戦略が必要だというふうに考えております。平成二十一年には、高度人材の受け入れ推進会議というところで提言が出されておりまして、外国高度人材の受け入れを国家戦略として明確に位置づけるべきというような提言もされているようであります。

 今、改めて、日本のあらゆる分野の発展を目指して、新しいことに挑戦できる人、創造的な人材、クリエーティブな人材の誘致、育成、集積を国家戦略として定めて、骨太方針やあるいは成長戦略の柱として明記すべきだと考えますが、経済財政担当大臣の見解を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘の点は極めて重要な点だと思っております。

 経済財政諮問会議でも、あるいは産業競争力会議でも、それぞれ委員から、優秀な高度人材の活用、それにはもちろん研究環境の整備、待遇もあるでしょうし、出入国管理の手続の問題もありますけれども、先ほど来指摘されているように、家族で来た場合、まず子供の教育をどうするんだということ等から考えなくちゃいけない。全てひっくるめて環境整備をして、これを経済戦略の中に位置づけていくということは、問題提起は今もされております。

井坂委員 ありがとうございます。

 優秀な人材の誘致ということでいえば、もちろん反対する方は少ないテーマだというふうに思います。例えばシンガポールみたいに、これを国の根本の戦略として統一パッケージで行えるかどうかということが私は最大のポイントだと考えております。

 要は、いいことなのでやりますよという程度の話なのか、それとも、もう本当に日本の今後の成長がそこにかかっている、最重要事項なのかというところが、本日議論したい最大のテーマでありますので、その重みづけについて再度お伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 成長戦略は、内外の資源、人的資源も含めて活用するということであります。

 国内に閉じこもっている、もちろん、国内の優秀な人材も活用するのは当然でありますけれども、国内外の優秀な人材を日本に引きつける、そういう魅力のある国としての環境整備をしていくということは、大きな柱の一つだと承知をいたしております。

井坂委員 ありがとうございます。

 本日申し上げましたことは、各省をまたがる国の根本的な戦略にかかわる話かと思います。要は、成熟国家、日本は今後何で食べていくのかということではないかと思います。

 工業時代というのは、国内の工場で生産された工業製品を世界にどんどん売っていったわけですが、そのためには工業団地を造成して、工場を誘致してくるという時代があったわけですが、今後は、今や物づくりということも含めて、本当にクリエーティブな人材の頭の中やあるいは感性から、人々が高いお金を支払う価値が生み出される時代だと思います。

 ぜひ政府は、創造的人材の育成、誘致、集積を国家経営の最重要戦略としていただきたいと強く申し上げて、本日の質問を終わりにいたします。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 本日は、まず、公共事業の水準について議論をさせていただきたいと存じます。

 早速、質問に入らせていただきます。

 資料もお配りして、「公共事業関係費の推移」という資料をつけております。公共事業費というのは、二十四年度、当初が四・六兆ですね。そして、この前の補正を入れて七兆。結局、補正の部分は、十五カ月予算と言われていますから、二十五年度に入るというのが適当な考え方だとして、二十五年度、実質約八兆円、まあ十兆近くになるわけです。

 結局、この推移を見てみるとわかるのは、でこぼこがあるわけですよね。これまでも、急激に、経済対策ということで公共事業費を積み増してきた。ただ、その後が、山が高ければ谷も深いわけです。その反動減ということも心配なわけですが、こうやって反動がなってきたということが見てとれるんだろうと思います。

 公共事業費をふやすこと、このことは、これはこれでいろいろ評価はありますが、実際問題として、急激に減るトレンドの中で、建設業者が減ってきたし、また従業員も減ってきた、こういう現状の中では、急に工事がふえても消化し切れないということがあるわけです。しかし、では、ふやせばいいかというと、結局、この水準ではいけないわけですから、また減るかもしれないと思えば、業者も恒常的にふやすというわけにはいかない。そういうジレンマというか、大変なことがあるわけです。

 この中で、実際に加速すべき被災地の復興にも実はしわ寄せが来ているというのは、何回も、この委員会も含めて議論されているところであります。要は、資材価格とか人件費が高騰して、入札不調が多くなっております。全国的な公共事業費の積み増しの中で、被災地はただでさえ足りないものが足りなくなっているということで、一定額以上は応札しますけれども、入札に参加しますけれども、一定の額以下のものはもう応札しないんだという入札不調もふえております。

 今、復興事業の推進の必要性がある中で、全国的な公共事業を急激にふやしたということが今回の補正も含めた予算の状況なんですが、結局、今振り返って、このような問題の中で顕在化している公共投資の水準ですね、これは、あるべき水準、オール・ジャパンの水準という意味ですが、ここをやはり一回議論するときに来ているんじゃないのかなという気がしております。

 社会資本整備というのは、短期間で変動を繰り返せるものじゃなくて、中長期的観点が必要なものだと思います。だから、公共事業が云々という場合に、急激にふやして減らすとかそういう中で、公共事業の経済効果はないんだとかいろいろあるんだという議論がありますが、本当は、公共事業というものが経済政策の具にされるのは、私は不幸なことだと思います。国土政策として必要なものがどのぐらいなのか、そしてそれを粛々とあるべき水準でやる、そういう当たり前の発想が今必要なんだろうと私は思います。

 そういう意味で、私は、公共投資は中長期的に一定の水準でいくべきだと思います。それも、補正で積み増すとかそういうのじゃなくて、国土政策の観点から、当初予算で数字としてどれぐらい必要なのか、その議論をしっかり財政当局とクリアした上で続けていくべきものだと私は思います。

 その中で、公共投資の水準はどれぐらいが適当かという議論、これは難しいわけです。二月四日だか五日の本会議で安倍総理も難しいというお答えがあったように、簡単ではないんですが、やはり今議論すべきだろうと思います。

 これをちょっと開いて、次のページ、裏なんですけれども、公共投資がどれぐらい必要なのかという一つの試算の資料をつくってみました。この資料の見方を申し上げますと、縦軸がGDPに対する公共投資の割合です。そして、横軸が国土面積と海岸線距離の割合というものです。ちょっとおもしろい、斬新な資料だと思いますが。

 まず、今、欧米は三%から四%だと言われていまして、日本も、ちょっと高いように見えますが、大体、世界標準に入っているということです。

 そして、横軸の、国土面積分の海岸線距離で言えることは、海岸線距離が長い国というのは、御存じのとおり、公共事業費はどうしてもかかるわけです。考えてみても当たり前だと思うんですが、海岸線が長いということは、治水、海岸整備、港湾整備にかかるわけで、交通の整備だって、細長い国だったらその交通整備はかかってきて、四角い国とは違って公共事業はかかる。これは当たり前で、この当たり前のことが、実は整理してみるとクリアに出てきたなと思います。

 この点々々という、これは私が勝手に線を引いたんですが、相関関係が非常にあるなと思います。JPというのはジャパンですが、日本はもう御存じのとおり世界で第一級の海岸線の長い国。次に出てくるのがNZ、ニュージーランドなんですよね、南半球の似たような島国ですが。あと、オランダとかイタリアとか、GEはドイツ、AUSはオーストリアですが、こういうのが出てくる。

 これを見てわかるように、実は、A分のD、国土面積分の海岸線距離がゼロから一〇の間にだんご状態で上にありますけれども、実は、こういう国は国土条件からすれば公共事業費は多いわけです。USAとかスウェーデン、フランス、オーストラリア、ポーランド。結局、日本は世界のトレンドの中にあるというのがこれで見てとれると思います。四%前後で、これでいいのかどうかということなんです。

 これでいいという議論もあるでしょうが、実は日本が欠けているのは、もちろん御存じのとおり、地震が多い、災害の多い、国土条件が大変脆弱な国なので、私はかつて、民主党時代なんですが、新たな戦略的国土地域政策を推進する議員連盟というのをつくりまして、民主党は公共事業を減らす一方ではなくてちゃんとした議論をした人もいたわけですが、この幹事長として、五%から六%が公共事業として必要だろうという提言をまとめたことがあります。四パープラス一パーですよね。

 要は、何を言いたいかというと、行け行けどんどんでふやすのは確かに問題なわけですよ。ただ、減らす一方であるのも問題だと。

 もう一回この資料に戻ってもらうと、実は民主党が減らしたわけじゃないんです、公共事業費。御存じのとおり、自民党政権時代から減るトレンドにあるわけですよね、平成十年ぐらいから。

 だから、今、公共事業をめぐる議論で不幸なのは、公共事業反対派は、今度の補正予算を見てもわかるように、公共事業を理念なく積み増したんじゃないか、意味ないんじゃないかと言います。公共事業反対派は、まだまだ切れる、こんなのはまだまだ多いと言います。結局、両方の議論がかみ合わないわけですよね。

 今議論すべきなのは、では、どれぐらいの水準なんですか、こういう議論をしなきゃいけないんだろうと私は思います。

 そういう前提で、きょうは麻生副総理に来ていただいていますが、財務大臣として、財政政策の観点からぜひお聞きしたいと思っていましたが、公共投資というのは一定水準でいった方がいいという私の思いなんですが、それに対するコメントと、そして、簡単じゃないんですが、個人の考えでもいいんですが、どれぐらいの水準がいいという感じなのか、ちょっとそこのコメントをいただければと思います。

麻生国務大臣 この資料はおもしろいね。ちゃんとこういうことを勉強している人が、これは役人だからできたんだね。生活の党だからできたわけじゃないだろうと思うけれども、これはよくできておもしろいですよ、この話は。こういう資料はないものね。なかなかおもしろい資料だと思います。こっちはもともとの話ですから。

 これを見たらわかると思いますけれども、一番高いところが平成九年なんですよ。もともとの予算、原予算は。一番少なかったのが昨年。もとの予算ですよ。本予算の方で、当初予算。補正でいきますと平成十年で、これは小渕内閣だったかな。そういった意味で、これはずっとやってきたというので、簡単に言えば、どっちを見ても最高のときとは約半分になったということですね、補正を入れたところと当初予算と。

 半分に減らしたということまでなっているんですが、現実問題としてはどんなことになっていたかといえば、基本的には、この間、日本というのはもう災害のデパートみたいなもので、全ての災害が、最近は竜巻まで含めた自然災害がほとんどありますから、そういった国はそんなにないんですよ。

 そういうようなところでやって、これだけ減らした結果、あちらこちらの公共事業で、補修、メンテナンスにいわゆる公共事業の金が回らなかった部分、多分、補修やら何かしなかった笹子のトンネルとかいろいろな橋の話とか、いっぱい出てきていますけれども、ああいったものはきちんとメンテナンスをやっていないと、セメントというものは約五十年もすれば何となく傷んでくる。セメント屋だから、そこら辺のことばかりやっていましたから、よく知っていますよ。

 五十年たつんですよ、こういうもの。だから、そういったものに手を抜いてくれば確実にということになってきていますから、これはどこかできちんとしたことをやらないといかぬことになっていると思って、それまでずっと減っていたけれども、私の内閣のときだけふやしたんですけれども、そのときは随分ぼろかすに言われましたよ。翌年から、コンクリートから人へですからね。

 そういった意味で、中期的な観点から進めるという話は、これはもう先生が言われるとおりで、物すごく大事な視点なのであって、どういったところを考えるかというので、国民の方としては、やはり安心と安全は大きいと思いますね。

 したがって、そういった意味で、トンネルが崩落する、橋が落ちる、そういったようなことになってから、あっというのでは、何のためだということになりますので、きちんと、そういうことにならないようにするための水準というのを考えたときに、例の平成二十四年度から二十八年度まで五年間のあり方を示した社会資本整備重点計画というのがつくられていますけれども、これまでの量とか額とかいうので決めるのではなくて、成果を目標に掲げることをやろうじゃないかというのは、これは、基本的な考え方で社会資本の整備を進めることとされておられるんですが、全体的な水準というのは約六十年間の間に物すごく日本というのは高くなっています。

 そういった量的なものが蓄積されている部分はありますけれども、申し上げたように、既存のインフラの維持整備というものが傍らもう一個ありますので、いろいろなことを考えないといかぬのであって、電柱なんというものを今どき大都会で、先ほどの太田大臣の話じゃありませんけれども、やはり、電柱があって、コンデンサーやら何やら上についているのを見て、あれをきれいと思う人は九州電工とかそういう会社の社員ぐらいで、普通はそんなこと思いませんよ、あんなもの、絶対に。あれをきれいだと思う方が不思議なのであって、あれを地下に埋設するだけで道路は広くなる、車道と歩道は分離される。いろいろな意味でありますので、そういったものも考えてやっていく。

 国土がきれいになる、国土が強靱化される、国土がいろいろな意味で今までより景観もよくなる、そういったことを考えてやらなきゃいかぬというものを考えていかなければいけない。額とかいうのでやられると、これはたびたびこういったことになるのは、基本的には、そういった観点からやるのはいかがなものか、私自身はそう思っております。

畑委員 そこはそういう議論もあるんですが、私は額も必要なんだろうと思います。ただ、かつてのように、五カ年計画のようにぎちぎちに決める額というのは問題ですが、どういうふうな整備をしようかと指標を決めて考えた場合に、計画をつくった場合に、おのずからこれぐらいのお金が必要だというのはやはり背景にあるんですよね、それを出せるか出せないかは別として。だから、そこは、私は、投資水準を決めるような大枠な計画はあっていいと思っております。

 ちょっと次の質問に移るわけですが、そういうことで、最近、額をフィックスするのはいかがなものかというお話がありまして、かつては、経済計画とか全総、全国総合開発計画、あるいは公共事業関係の各個別の五カ年計画があったわけですが、今、計画はある程度残っていますが、額が落ちている。その額はきちきち決める必要はないんですが、少なくとも、投資水準を決めるような、マクロの資源配分のための大枠というのが、言ってみればイメージは経済計画レベルのイメージでもいいと思うんですけれども、私はあっていいんだろうと思います。

 そういうことをした上で、これぐらい維持しましょうという考えをしないと、恐らく建設業の人も先を見通せないし地方も不安に思うと思うので、そこの検討を行ってほしいし、その検討が今まで行われてこなかったことが私は問題だと思っていますので、きょう、財務大臣・副総理に来ていただいたので、ぜひともそういう問題意識を指摘させていただいて、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 それで、質問したいのは、国交大臣に、公共事業担当の役所ですが、そういう大まかな投資水準を盛り込んだような計画というのはやはりつくるべきじゃないでしょうか。そこに対する認識をお伺いしたいと思います。

太田国務大臣 私もそう思っています。しかし、なかなか、今、どれだけの金額かということが算定できづらいという状況にあります。

 それは、いわゆる災害列島あるいは脆弱国土ということ、そして、高度成長時代以来五十年たって、経年劣化が構造物に始まっているということ、それらを一体どういうふうにやるか。先ほどの質問に関して言えば、都市間競争というものがこれから行われて、全く今のままで修理ばかりしていて日本はもつわけではないということ。そういうことを一つ一つ冷静に調査し、点検し、その額が一体どれだけなのかということをしっかりと積み上げていかなくちゃならない時期に来ているというふうに私は思っているんです。

 ですから、大事なんですけれども、直ちに幾らということについては今言える状況にはないので、私は、一つのめどというか物の考え方を、どういうふうにメンテナンス、新規のもの、いろいろなことについて総合的にやっていき、それを時間軸にどういうふうに落としていって、例えば修理というふうに言っても、技術水準というものをしっかりさせなくちゃならない。

 なぜならば、橋一つとりましても、七〇年代には年間で一万の橋が毎年つくられました。これが上がっていって、ずっと落ちていって、今、大体、新規でできている橋は百ぐらいです。一万ぐらいが続いて、ずっと少なくなって、これからまた修理の山がそれまで来る。これをどういうふうに技術水準をもって抑え込んでいき、長寿命化を図って、どれだけこれを長く延ばしていくかという作業をしていかなくてはならない。物の考え方をしっかりさせながらそれらを計算するということが私は極めて重要だと思っておりまして、私も同じような考え方である、こういうふうに申し上げたわけです。

 先生から指摘をされたこのグラフは、今まで公共事業は世界に比べて日本はこれだけ少ない、こう言われただけじゃないよという、私は大変貴重なデータをいただいたというふうに思っております。

 それは、日本が脆弱国土であると。今、橋ということを私は申し上げましたが、地震とかさまざまな、世界にはなかなか、地震がある国は一体どの辺に位置するかということは、ここにある程度明確になっているというふうに思います。海岸線が長い、そして脆弱な国土、地震というものがあるかないか、そして脊梁山脈の中に川は急流であるというようなことの中で、高速道路一つをとりましても、世界に比べてどれだけの構造物があるか。

 構造物というのをトンネルと橋ということにしますと、日本は、長さの中で二四・六%です。ところが、アメリカは七%、フランスに至っては二・六%。これらを一体、メンテナンスをしながら、どれだけのお金をかけながら強靱なものにしていって、安心を得られるところまで持っていくかという、さまざまな総合的な観点というものを含めて、どれだけ一年間でかかるというのが平準化されるかということが私は大事なことだと思っておりまして、一年ぐらいかかると思いますが、あらあらの目安というものは頭の中に置けるようなデータの蓄積をしたいというふうに思っています。

畑委員 ありがとうございました。

 まさに、こういう社会情勢、国土条件を考えて、どの程度の安全性を見るか。そして、どの程度の整備を、都市間競争なり過去の修復を見て、見ていくか。そのバランスも含めて、まさに政策論、技術論なんだろうと思います。その判断は一年ぐらいかけてしっかり見ていただくということをおっしゃっていただきましたので、そこは心強い答弁だと思いますが、そうした上で、やはり、それをどの時間軸でどの程度の水準でやっていくか、ぜひともそういうこともお示しいただきたいと思います。

 もちろん、途中で災害が起きたり、日本ですから変わることはあるわけですが、実は今までの計画で問題だったのは、私は、結局、計画をつくったけれども、それを年度ごとに見直して、そして評価しながら変更の必要性をフィードバックして変えていく、そういうのが計画にビルトインされてこなかったというのがこれまでの公共事業関係の計画だったと思っています。そういう柔軟な見直しを年度ごとにやるという前提の上で、ぜひともやはり数値も入れたような計画を私はつくっていただきたいし、そうすべきときに来ていると思います。

 なぜこういうことを言うかというと、これは、例えば野党の立場からいうと、今度の補正予算、無原則で積み上げたというわけですよね。公共事業は仮に安全性の観点から必要だったとしても、結局、この時期に何でもかんでも積み上げたんだろうと批判されるわけです。いや、そうじゃないんだよと政府の方がおっしゃってほしいわけですよ。

 例えば、中長期のスパンからこういうふうに私たちは出しました、その第一歩として今度の補正予算でこれぐらい積みました、そういうことを言って説明しなければ、やはりこれは公共事業にとって不幸なことなんだろうと思います。だから、そういうことを含めて、ぜひともそういう議論を引き続きさせていただきたいんですが、そういう検討をお願いしたいなと思っております。

 では、これからまた話を別の方に移しまして、時間も少なくなってまいりましたが、今回、物価上昇と成長の関係をちょっと質問させていただきたいと思います。

 これは三ページ目に資料をつけましたが、物価上昇目標を日銀との共同声明で二%ということをおっしゃって、これは政府、日銀で決めているわけですが、はてGDP成長率がどれぐらいなのかというのが、安倍内閣になって明確にまだ出ていないんだろうと思います。

 その辺のGDPの成長の目標。厳しい地域、被災地なんかだと、物価が上がることの目標ばかり耳に入って、では、どれぐらい所得が上がるのか、どれぐらい経済成長するのかというのが見えてこないというか、わからないわけです。そこのところの目標というのはどうなっているのか、まずお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 内閣府が予測をした二十五年度の経済成長率というのは、名目が二・七、実質が二・五、先ほども答弁させていただきましたが、内閣として、目標としてどう設定していくのかということに関しましては、結論から言うと、これから策定をしていきます。

 年央に向けて成長戦略を取りまとめ、そして骨太方針を取りまとめ、それらをもとに、財政の中期展望、そして中長期に向けての見通しを策定していくわけであります。現状でまだ骨太方針も策定されておりませんし、成長戦略の取りまとめもできていないわけでありますから、それができ次第、それとあわせて具体的な姿を示せるようにしたいと思います。

 もちろん、その際に、もう既に自民党としては名目三%以上の経済成長を目標として掲げておりますし、あるいは、税制の抜本改革法の附則の第十八条一項に、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均で名目三%程度、実質二%程度の経済成長率を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための云々ということが書いてありますから、これらもしっかりと参考にしながら策定をしていきたいというふうに思っております。

畑委員 これから検討されるということで承りましたが、ぜひとも、物価上昇じゃなくて、まさに経済成長の目標を早く示していただきたいなと思います。

 自民党のこの前の衆議院選挙のマニフェスト、J―ファイルでは、名目三%以上、今、甘利大臣からおっしゃっていただきました。ここは三%というのは決まっていないので、これを前提にした議論はまだできないと思うんですが、実は、資料をつけましたのは、名目が三パーの場合に実質はどれぐらいを目標にすべきなのかというのをちょっと議論したくて用意した資料なんです。

 名目GDP成長率というのは、実質GDP成長率プラスGDPデフレーターの変化率というふうになります、御存じのとおり。実は、このGDPデフレーターというのは、統計上、整理してみると、ほぼ消費者物価指数の変化率から一%を引いたものです。

 今、日銀が二%を目標にする、物価上昇もやるということを言っていますが、この二を当てはめると、GDPデフレーター変化率は、二引く一ですから、一になる。消費者物価指数を二と入れて一だと。名目を三パーと置いた場合には、実質GDPは二パーということになるわけですよね、計算上は。だから、名目三パー、実質二パーなのかどうかというのはこれから明確にしてほしいんですが、恐らくそういうことになるのだろうと思います。

 そこで、ちょっとここの議論はさておいて、お伺いしたいのは、黒田日銀総裁は、二年間で二パーを達成する、そういうことをおっしゃっておられます。ということは、数字が幾らかは別として、経済成長目標を早く明確にした上で、いつまでに実現するのが適当かというのをちょっと今お伺いしたいと思います。

 要は、日銀の二%の物価上昇と軌を一にして経済成長をこれまでにやると言わなければ、やはり国民に対する不安は払拭されないし、不誠実なことになると思いますので、そこの感覚をお教え願いたいと思います。

甘利国務大臣 できるだけ日銀の物価安定目標と平仄を合わせて実体経済がしっかりついていくように、最大限の努力はしたいと思っております。

 ただ、委員も御承知のとおり、消費者物価とGDPデフレーターは微妙に違うところがございます。消費者物価が上がっていくにつれてデフレーターもプラスになって上がっていくというのは、傾向としてそのとおりでありますけれども、GDPデフレーターというのは、日本経済が、一単位、一つの単位の財やサービスをつくることを通じて名目付加価値がどれくらい上がるかという数値であります。つまり、名目付加価値は賃金プラス利潤ということになるわけであります。

 この場合、輸入物価が上がってCPIが上がる場合、きちんとそれが輸出物価に転嫁されている場合にはパラレルの動きになりますけれども、それができない場合には、CPIは上がってデフレーターは上がっていかないという事態も生じるわけであります。

 要は、何が言いたいかといいますと、きちんと輸入物価が輸出物価に転嫁できるように、産業の力をつけていく、競争力をつけていくということが沿っていかないと、あらまほしき姿にならないということになるんだと思います。そこは、成長戦略としてしっかりフォローしていきたいというふうに思っております。

畑委員 そこは確かにそういう政策が必要なんですが、いずれにしても、そういう政策をした上で、成長はどうあるべきかというのはやはり必要なわけですから、そこのところは、数値として、いつまでというのは時間軸をある程度持ってやらないといけないと思うし、そうじゃないと、後になって約束したものは、日銀の二%はいいですよ、検証できますから、二年と言っているから。ただ、成長率は、いつまで、どういうスパンでということを示さないとやはり検証できないと思うので、政策というのはそういうものですから、そこはよろしくお願いしたいと思います。

 そして、時間がなくなりましたので、最後の質問ですが、最後の資料をつけていますのが、実は、TPPにおける、郵政株の売却と絡めてちょっとお伺いしたいと思ったんです。

 日本郵政というのは、これを見てわかるように、国債の発行総額の三割、これは二〇一一年三月現在ですが、最新のものでもそんなに傾向は変わっていないようです。要は、三割持っている大口の保有者です。政府、中央銀行と合わせても、五〇%、半分近くを持っている。だから、これは非常に安定した保有者が国債を持ってくれている。

 これは、前の郵政の改革のときに、民営化ということになったときに、日本郵政の株式は二〇一〇年に売り出されて、二〇一七年までに完売する方針だったと思います、小泉・竹中ラインの改革で。

 そこで、実は、二〇〇九年に民主党を中心とした政権ができたときに、当時の亀井静香大臣なり大塚耕平副大臣が調べたそうですが、直前に、政権交代がなければ、ゴールドマン・サックスが幹事行になって売られる予定だったという話もちょっと聞きまして、これは政権交代で、すんでのところで株式売却凍結法をつくってとめたということになるわけです。

 これはこれとして、ただ、まだ危機は去っていないというのがこのTPPの絡みなんです。

 TPPは、金融等について競争条件の同一化ということが言われる可能性があるなという危惧を私はしております。つまり、競争原理貫徹のためには、政府が保有している株式というのは全部売り払え、売らなきゃいけないんだというふうになる可能性があるのではないか。そうすると、当然、外資が日本郵政の株式を全部持ったと仮定して、この三割の部分の国債というのは売るかもしれないし、米国証券に投資するかもしれないし、いろいろあるわけですよね。ちょっとそういう危惧があるわけです。

 結局、こういうことを考えたときに、国家の財政構造に悪影響を及ぼしたり、あるいは下手をすると、買う人を探さなきゃいけない、頻繁に売り買いされますから長期金利も上がるかもしれない。そういうことで、日本の国債市場とかあるいは日本経済に大きな悪影響を与えるかもしれないと思うんですが、麻生財務大臣、そこの認識をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今のこの丸は基本的に合っているんですが、基本的に、今国債を持っておられる方の外国人の株というのは八%、九%、八・幾つだと思いますけれども、それぐらいになっているのは事実。それで、これがまた売られると、さらにその分が外国人に買われると、さらにその比率は高くなる。それを短期で回したりなんかするから、売ったり買ったりするような形になって、極めて不安定なものになってという、ずっと一連の心配をしてくれば幾らでも出てくるんですが。

 まず、考えておかないといかぬことは二つあると思います。

 一つは、まず、これは全て円建てですからね、この国債の場合は。外国人で買っている人も、あれは全部円建てですから。世界じゅうで自国通貨だけでやっているのは、日本、アメリカ、イギリス、スイスぐらいだと思いますが、まず円建て、これが一つ。

 二つ目は、先生、持っている株を売った場合は安くなるわけですよ。これだけ大量に持っている人が売ったら、それは自分の持っている資産がぼんと安くなるわけですから、それはうかつなことではなかなか売らない。これは、持っている自分の資産を売るということは資産が安くなることですから、その残りの資産を一挙にぼんといけばいいですけれども、そんな所業はできませんから、そういった意味では、基本的に、そういったものを安易に売るということはなかなか考えにくいだろうとは思います。しかし、いずれにしても、基本的には、日本の中において安定的にこういった国債というのは消化されていくということになるんだと思っています。

 いずれにしても、日本としては、こういった国債の信認を維持していくというのは大変大事なことなのであって、これは、ゆうちょが売ったからどうとかということではなくて、日本の国債の信用が維持されるためには、今後とも中長期的な財政というものをきっちりしていかねばいかぬのだと思っております。

畑委員 円建てだから心配はない、そこはそのとおりだと思います。

 ただ、外資はやはり短期の変動で利幅を稼ぐというのもありますから、結局、今後の動向を見ながら、売るというのは、これは全部売るとは私は思いませんけれども、あって、そこは変動を及ぼす可能性があるというのと、やはり財政構造に影響を及ぼすというのがかなり心配なので、ちょっとそこの心配、危惧を申し上げておきたいと思います。

 時間が参りまして、かなり残しましたが、済みません。下村大臣にも、通告しておきながら恐縮でございました。

 本日は終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 これにて畑君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十一日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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