衆議院

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第5号 平成26年2月10日(月曜日)

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平成二十六年二月十日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君

   理事 林  幹雄君 理事 森山  裕君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      安藤  裕君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    今村 雅弘君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      大島 理森君    大見  正君

      加藤 寛治君    門山 宏哲君

      金子 一義君    鴨下 一郎君

      神田 憲次君    熊田 裕通君

      佐田玄一郎君    菅原 一秀君

      薗浦健太郎君    高市 早苗君

      高橋ひなこ君    西川 公也君

      野田  毅君    原田 義昭君

      船田  元君    細田 健一君

      前田 一男君    牧島かれん君

      宮腰 光寛君    宮路 和明君

      八木 哲也君    簗  和生君

      山田 賢司君    山田 美樹君

      山本 幸三君    山本 有二君

      湯川 一行君    大串 博志君

      大島  敦君    岡田 克也君

      海江田万里君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    古川 元久君

      坂本祐之輔君    重徳 和彦君

      杉田 水脈君    中山 成彬君

      西野 弘一君    伊佐 進一君

      上田  勇君    浜地 雅一君

      古屋 範子君    佐藤 正夫君

      柿沢 未途君    宮本 岳志君

      畑  浩治君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (国家戦略特別区域担当)

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山本 一太君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        古川 禎久君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      赤羽 一嘉君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    伊藤 忠彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  諸岡 秀行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武川 恵子君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  徳山日出男君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  関 荘一郎君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     小田原 潔君

  越智 隆雄君     高市 早苗君

  大島 理森君     高橋ひなこ君

  小池百合子君     八木 哲也君

  関  芳弘君     前田 一男君

  薗浦健太郎君     鴨下 一郎君

  中山 泰秀君     簗  和生君

  西川 公也君     大見  正君

  船田  元君     門山 宏哲君

  保岡 興治君     湯川 一行君

  山本 有二君     細田 健一君

  篠原  孝君     大島  敦君

  古川 元久君     海江田万里君

  伊佐 進一君     上田  勇君

  浜地 雅一君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     衛藤征士郎君

  大見  正君     加藤 寛治君

  門山 宏哲君     船田  元君

  鴨下 一郎君     神田 憲次君

  高市 早苗君     宮腰 光寛君

  高橋ひなこ君     熊田 裕通君

  細田 健一君     山本 有二君

  前田 一男君     山田 賢司君

  八木 哲也君     山田 美樹君

  簗  和生君     安藤  裕君

  湯川 一行君     保岡 興治君

  大島  敦君     篠原  孝君

  海江田万里君     古川 元久君

  上田  勇君     伊佐 進一君

  古屋 範子君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     岩田 和親君

  加藤 寛治君     西川 公也君

  神田 憲次君     薗浦健太郎君

  熊田 裕通君     大島 理森君

  宮腰 光寛君     牧島かれん君

  山田 賢司君     大串 正樹君

  山田 美樹君     石崎  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     小池百合子君

  岩田 和親君     大岡 敏孝君

  大串 正樹君     関  芳弘君

  牧島かれん君     越智 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     中山 泰秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算、平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官諸岡秀行君、内閣官房内閣審議官武川恵子君、中小企業庁長官北川慎介君、国土交通省道路局長徳山日出男君、環境省地球環境局長関荘一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高市早苗君。

高市委員 皆様、おはようございます。自民党の高市早苗でございます。

 本日、貴重な質問時間を賜りました委員長を初め理事の皆様、そして同僚議員の先生方に心から感謝を申し上げます。

 さて、安倍総理におかれましては、この週末、大変過密な日程の中、ロシアに出張され、昨夜帰国されたばかりだと存じます。時差もあって、大変お疲れのことだと思います。

 今回は、中国の習近平国家主席がかなり早目にソチ入りをされまして、六日木曜日には中ロ首脳会談が行われました。ですから、私も、可能なことであれば安倍総理ももっと早くロシアに行かれて、この貴重な外交の機会を存分に生かしていただきたいなと願っておりました。

 しかしながら、先週七日金曜日、安倍総理は参議院の予算審議に誠実に対応され、その後、北方領土返還要求全国大会にもしっかりと出席をされた後に、日ロ首脳会談に臨まれました。私は、この安倍総理の行動は、北方領土問題解決に向けての非常に強い決意を秘めたものであり、また、何よりも、この時期にロシアを訪問されたということの意義は国益上大変大きいと思っております。

 この後、鴨下一郎委員からも詳しくお問いかけがあるかと思いますので、今回のロシア訪問で最も大きな成果は何だったか、お伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 今回、ソチ・オリンピック開会式に出席をいたしまして、翌八日にプーチン大統領と五回目の首脳会談を行いました。

 首脳会談の場所に参りますと、これは大統領公邸でございますが、プーチン大統領が秋田県知事からプレゼントされた秋田犬とともに迎えていただいたわけでありまして、私はちょっとなでたんですが、なでたら、この犬はかむから気をつけた方がいいというふうに言われたりもいたしましたが、会談とそして昼食をともにいたしまして、二時間以上にわたってじっくりと意見交換を行いました。

 非常に和やかな雰囲気の中におきまして、プーチン大統領との間の個人的な信頼関係を一層強化することができた、こう思います。プーチン大統領からも、私に対して、オリンピック開会式出席に対する謝意が示されたところでございます。

 首脳会談では、本年六月に予定されているG8ソチ・サミットの機会に再び首脳会談を行うこと、そして、プーチン大統領の訪日を秋に実施することで合意いたしました。平和条約締結問題についても、先般の次官級協議及び日ロ外相会談でのやりとりを踏まえつつ率直な意見交換を行い、引き続き議論を重ねていくことで一致をいたしました。また、エネルギーを含む経済安全保障、日ロ武道交流年を含むスポーツ、人的交流等、幅広い分野での日ロ協力をさらに進展させることを確認しました。

 また、国際場裏においても、中央アジアにおける国境管理や薬物対策について日ロ協力を検討していくことで一致をしたところでございまして、まずは、両国の首脳の信頼関係をしっかりとしたものにしていく中において、両国の国民の交流そして経済関係を深めていく中において、私たちの悲願である平和条約、そして、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというこの最終的な結果を得るべく、歴史的な使命を果たしていくべく全力を尽くしていきたい、こう思っているところでございます。

高市委員 ありがとうございます。

 これからの強力な対ロ外交推進に向けて御期待を申し上げます。

 さて、昨年の二十五年度予算案の審議の折にも持ち込ませていただいたのですが、本日も自民党の選挙公約を持ってまいりました。

 まず、一昨年の衆議院選挙で私たちが提示をいたしました政権公約二〇一二は、たしか茂木大臣が政調会長時代に個別の政策を積み上げ、その後、後任の政調会長でいらっしゃいました甘利大臣のもとで最終的に取りまとめられたものでございます。そして、この参議院選挙公約二〇一三でございますが、これは私自身が責任者として取りまとめをさせていただきました。

 しかしながら、この二冊とも安倍自民党総裁のもとで党議決定をされたものでございますので、安倍内閣の皆様には、この二冊の公約の中身、しっかりと一つでも多く実現をしていただきたいと期待を申し上げております。

 本日皆様にお知らせをしたいのは、この二冊の公約に書かれました全ての政策につきまして、予算要求事項、それから税制措置事項、そして法的措置事項の三種類に分けまして、それをさらに所管官庁別に分けました一覧表を政調会長室でつくっております。そして、自民党政調会の全ての部会長がその一覧表を持っておりますので、今回の二十六年度予算案の編成過程においても、私たちが実現したい政策がしっかりと盛り込まれているかどうかのチェックを行ってまいりました。

 そして、一月には、自民党の職員に大分御苦労をおかけしたのですが、私の手元資料といたしまして、全部の公約について、丸、三角、バツ、つまり、既に実現されたもの、今途上であるもの、そしてまだ着手されていないもの、これを分類した表もつくらせていただきました。

 本日は、主に、この二冊の公約に書かれた政策と安倍内閣のお取り組みの整合性、それから進捗状況についてお伺いをしてまいります。

 まず最初なんですが、昨年の予算委員会では、安倍総理に、国民の生命、領土と資源、そして国家の主権と名誉を守り抜ける国をつくっていただきたいとお願いいたしました。私はそれが国家の究極の使命だと考えているからでございます。

 まず、領土と資源を守り抜くために必要な施策についてお伺いをいたします。

 私は、まずは対外的な発信機能の強化、これは非常に重要である、それとともに、対内的な領土教育の強化、これも重要であると思っております。

 領土教育につきましては、昨年のこの委員会で下村大臣にも山本大臣にもお願いをいたしまして、物すごく精力的にお取り組みをしていただいております。

 本日は対外的な発信機能の強化ということについて伺ってまいりたいのですが、自民党の参議院選公約にはこの点を明記いたしております。

 さて、大変残念なことでございますが、先週二月六日にアメリカのバージニア州議会で、日本海という名称と、韓国が主張いたします東海という名称、これを地理的な地名として併記することを求める、こういう法律案が可決されました。つまり、シー・オブ・ジャパンというのとイーストシー、これが併記される可能性が出てきた。知事が署名したら成立ということになるわけでございます。

 外務大臣にお伺いをいたしますが、この一連の動きがございました。一月から続いておりましたけれども、バージニア州議会議員に対して外務省はしっかりとした働きかけ、説明をされたのかどうか。それから、今後同様の事態が起こる可能性もございますが、それに対する対応の取り組みをされているのかどうか。以上二点をお伺いいたします。

岸田国務大臣 六日の日に米国バージニア州議会の下院におきまして、日本海と東海を併記することを求める法案が可決されたこと、大変残念なことだと思っております。

 この法案につきましては、今後、バージニア州の上院において審議される予定と承知をしておりますが、これまでも、この問題につきまして、バージニア州議会を初めさまざまな場で、現地我が大使、さらにはロビイスト等を通じまして、働きかけを行ってまいりました。

 現状、まだ審議が続きますので、この時点で、具体的なやり方ですとか誰に働きかけた、具体的なものは控えさせていただきたいと思いますが、引き続き、こうした働きかけは続けていきたいと思いますし、また、やり方、そして具体的な働きかけ先につきましてはしっかり工夫をしていかなければならないと思っております。

 バージニア州、現地におきましては、韓国系米国人の数が多く、また増加している現状の中で、選挙事情も絡み、大変難しい事情にはありますが、米国政府自身は、この呼称問題につきましては、日本海の単独使用というものをしっかりと支持しております。この点につきましては、先日、国務省の報道官も記者会見の場で確認をしているところです。

 こうした米国政府の方針等もしっかりと確認し、説明を加えながら、今後も努力をしていきたいと考えております。

高市委員 国連でもとっくにこれを標準的な地名として認定をされていると理解をいたしております。しっかりとした働きかけをお願いいたします。

 それから、最近、この問題に限らず、主に中国や韓国の関係者によりまして、国際法的な事実、また歴史的な事実と違った形の誤ったメッセージが国際社会に発信され、そして欧米諸国のメディアなどの中には、それを信じ込んで報道をしておられる、こういうケースが散見されるように思います。

 日本国としても、しっかりとした、政府の見解、そして国際法にのっとった事実を広く国際社会に発信していかなければいけない。これが喫緊の課題だと思っております。

 内閣全体として、こういった対外的な発信機能の強化ですとかそのための施策の実行について責任を負う方はどなたでしょうか。官房長官にお伺いいたします。

菅国務大臣 世界各国が対外的な働きかけを強化している中にあって、やはり対日理解の向上に向けて、国際広報の強化というのは国を挙げて取り組んでいくことである、私ども、極めて重要であると認識をいたしております。

 安倍総理の指示のもとに、官邸において関係各府省庁の会議を主宰するなど、私が内閣における対外広報の取りまとめ役の責任者として、政府一体となった国際広報活動に現在努めているところであります。

高市委員 それでは、官房長官が最高責任者ということで、これからもしっかりとお願いをいたします。また、注文をつけさせていただきます。

 我が党の政調会に領土に関する特命委員会というものが設置されております。その事務総長を務めていただいております佐藤正久議員が参議院の方でも一部紹介をされたかと思うのですけれども、外務省が作成いたしました、最近の中国による情報発信という資料がございます。中国がかなり独自の主張に基づく宣伝活動を多様な手段で展開している、この様子が書かれております。

 その中でも特に私が脅威を感じましたのは、中国メディアの海外進出、国際展開でございます。

 中国の国営テレビでありますCCTV、中国中央電視台と書きますけれども、この国際放送は二十四のチャンネルを持ち、国連の六つの公用語で中国の立場を発信しております。それから、CCTVのインターネットテレビでありますCNTVは、十二言語で放送しております。

 特に、中国が二〇一二年にアメリカに開局しましたCCTVアメリカでございますが、これは番組のアンカーに著名な外国人を起用いたしまして、金髪の女性キャスターが伝える番組というのは、一見中国メディアによるものとは思えず、何となくCNN風の演出になっているということでございます。ロサンゼルス地域におけますシェアは、CNN、FOXに続くシェアを誇っているということになります。

 他方、日本では、ほぼ全世界をカバーする唯一の外国人向け国際放送というのはNHKワールドTVだと承知をいたしておりますが、ここは、一つのチャンネルを持つだけで、基本的には使用言語も英語だと思います。

 官房長官にお伺いしたいのですけれども、より多くの外国人に日本の国際放送を視聴していただくためには、多言語化ですとか、それから多様な演出上の工夫というものも必要なのではないかと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 私の方が所管しておりますからお答えいたしますが、御指摘のとおりであります。

 そして、日本の国際放送を充実させる。それは、日本のプレゼンスを高めることと、それから、我々が思っている以上に、実は世界は日本のことを興味を持っている。ですから、それに対して正確な私たちの国の見解を伝え、そして日本の魅力をお伝えする。それは、たくさんのチャンネルをふやしていかなければいけない、こういうことであります。

 しかし、残念ながら、まだ今、私どもの国際放送は、実は、かつては海外にいる日本人向けに日本語の放送をやっていた、それが国際展開だったんですね。それを自由民主党の方で、また与党・政府で検討して、そして実際に放送が始まったのは平成二十年度からです。ですから、五年目にしてはかなり頑張っているとも言えなくはないが、でも、まだまだ全然足りない、こういうことであります。

 御指摘の多言語化、これはやはり予算措置が必要でありますから、そういったものも工夫します。それと、番組の演出も、ここで枠を広げまして、さらにもっといろいろな番組が入れるような、そういう演出上の工夫もことしやることにいたしますから、御指摘を踏まえて、さらに充実強化を図ってまいりたい、このように思っております。

高市委員 新藤大臣に多少伺いにくいことをそれでは伺いますが、一月二十五日に行われましたNHKの籾井会長の就任記者会見なのですけれども、それは物議を醸しましたけれども、私自身は、特に国際放送に関する御発言には大いに共鳴をいたしました。

 籾井会長は、尖閣、竹島について、諸外国の人たちにどうやって理解してもらうかということは国際放送しかないと思っている、なぜ日本の領土であるかということをもう少し説明してもいいのではないかとおっしゃいました。

 放送法第六十五条は、総務大臣が、NHKに対して、国の重要事項などについて国際放送を要請できる旨が規定されております。尖閣諸島や竹島が日本国領土であるということについての歴史的、法的な正統性というのは、まさしくこの国の重要事項に当たると私は思います。また、放送法の第八十一条にも、外国人向け国際放送につきまして、「我が国に対する正しい認識を培い、」との文言がございます。

 総務大臣、個人的見解とはいえ、この国際放送で領土に関する正しい情報を発信するべきだというNHK会長のお考えというのは、日本の領土を守る上では必要なことでありますし、放送法にも違反しないことじゃないかと私は考えるんですが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 まず、話を整理してお答えさせていただきますが、放送機関のトップが発言されたことについて、政府としては、個別の発言にコメントすることは差し控えたい、このように思っています。

 それから、会長が個人的な見解とおっしゃった部分については、全て御自身が取り消される、こういうふうにおっしゃっております。そして、会長としての発言は、放送法を遵守して、公共放送のトップとしての責任を全うしていく、こういうことが会長会見の中で残っているところであり、またそれを示されたわけであります。

 その上で、今の御指摘の放送法の、領土主権も含める国の公的見解については、先生が今御指摘いただいたとおり、放送法の六十五条において、国はそういった放送を要請することができる、そして八十一条において、これは、我が国に対する正しい認識を培い、普及すること、これを番組編集においてお願いしているわけであります。

 さらに、NHKが、国際番組基準、番組基準を定めている中で、これは「わが国の重要な政策および国際問題にたいする公的見解ならびにわが国の世論の動向を正しく伝える。」このようになっております。これは昭和三十四年から決められている基準であります。それに沿ってNHKはしっかりと活動していく、こういうことが確認されているところでございます。

高市委員 国の要請を受けるかどうかもNHKに託されているのだろうと思っておりますが、必要な要請をしっかりと行っていただくようにお願いを申し上げます。

 さて、官房長官、二十六年度の予算案に計上されております対外発信機能を強化するために必要な施策について、特に領土主権に係るものについて、何か新しい取り組みがあれば御紹介ください。

菅国務大臣 委員から御指摘のとおり、領土主権について、我が国の立場を対外的にしっかりと主張することは極めて大事だというふうに思っています。

 安倍政権発足の際に新たに設置をされました領土担当大臣、山本大臣のもとに、内閣官房が、政府全体としての領土主権に係る戦略的な対外発信を強化すべく、関係省庁と緊密に連携しながら、企画調整をいたしておるところであります。

 そういう中で、具体的に申し上げますと、前政権の際では、内閣府の国際広報予算というのは三億五千万円でした。政権復帰してから、私ども五億円を計上しまして、さらに補正予算で八億一千万を計上いたしました。さらに、本年度におきましては、内閣府広報予算は十八億円を計上して、関係省庁においても、領土主権に関係する予算については、それぞれ増額をさせていただいているところであります。

 具体的に申し上げますと、国内外のシンクタンクや有識者との連携に対しての予算、あるいは領土関係情報発信資料の作成などの予算、それぞれ四億三千万、二億円、こうしたものを計上いたしておりますし、また、外務省等においても、所要の施策に係る予算を計上し、我が国の領土主権というものをしっかり対外的に広報していきたいと考えています。

高市委員 内閣官房のサイトで、山本一太大臣が、日本語と英語で日本の領土問題について見事な発信をされているのを拝見したところでございます。これからもぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 次に、国民の命を守り抜くための政策についてお伺いをいたします。

 昨年の予算委員会でも、この件については、世界最高水準の安全を担保するということを前提に、タブーなき議論を行い、あらゆるリスクの最小化に資する制度設計をお願いしたい、安倍総理にはこう申し上げました。

 あと一カ月で、平成二十三年三月十一日に発生をいたしました東日本大震災から三年を迎えます。多くの方が、かけがえのない命を失い、また家族を失い、職場や暮らしの場をなくすことになりました。また、その同じ年の秋に台風十二号が日本列島を直撃しまして、二階委員長や私の地元であります紀伊半島でも、多くの人命が失われ、まだ復興途上となっております。

 私たちは、自民党の参議院選挙公約にも、それからその前の衆議院選挙公約にも、国土強靱化基本法、そして南海トラフ地震対策特別措置法、首都直下地震対策特別措置法、この制定を明記してまいりました。昨今は、大地震や火山噴火などの恐怖だけではなくて、集中豪雨ですとか豪雪、竜巻、そういった過去の想定を超えた気象現象によりまして、既存の社会インフラのキャパシティー、これでは人命は守れない、これは明らかでございます。

 私どもが公約に記載いたしました三本の法律につきましては、昨年の臨時国会で成立をすることができました。これは、自民党政調会の国土強靱化調査会におきまして、二階委員長を初め多くの皆様が、まさに六十八回もの会議を開催して議論を重ね、心血を注いでつくっていただいた法律案でございました。

 特にこの国土強靱化基本法なのですけれども、これは、既存の社会資本の有効活用で費用の縮減を図りつつ、また、老朽化したところもございますので、これも脆弱性の評価をきちっと行った上で優先順位を決め、重点化をして必要な施策を実施するといった基本的な方針を明らかにしたものでございます。

 それにもかかわらず、何だか、公共事業のばらまきじゃないかとか、これは建設業者を庇護する大義名分になっているんじゃないか、こういった誤った批判があるということを大変私は残念に思います。

 総理にお伺いしたいのですが、このような誤解がある中で、内閣としてどのように、納税者の正しい理解を得ながら国土強靱化に取り組んでいかれるおつもりか。そしてまた、非常に厳しい財政状況の中で必要な財源をいかに確保していかれるおつもりか、伺います。

古屋国務大臣 今、公共事業のばらまきという批判がありましたけれども、ばらまきという定義を広辞苑などで調べてみますと、種子をばらばらに全面的に散らしてまくこと、あるいは、金銭などを多くの人に見境なく与えること、こういう定義なんですね。

 我々は、このばらまきという批判が当たらないように、去年の春先から政府・与党一体になって取り組んできているんです。ですから、基本的にばらまきという発想は一切ないというのが、この国土強靱化の大前提なんですね。

 確かに、今委員が御指摘のとおり、日本はいろいろなリスクにさらされています。それは自然災害だけではなくて、自然災害が多いわけですけれども、地震、津波だけではなくて、今のような台風等々ありますけれども、そこの対応をするためにはソフト、ハードをまず組み合わせる、それから、やはり重点化、優先順位づけをする、それから民間の資金もしっかり使っていく、これが大きな、そして、まずリスクを、脆弱性を評価して、ではその脆弱性に対してどういう政策があるかということを有識者懇談会で四十五のプログラムを考えてもらって、でも、全部やれば、もうとんでもない財源がかかりますから、その中から三分の一、十五に絞って優先順位を、Aですね、松竹梅でいうと松、これを優先的にやりましょうということです。

 ただ、それだけにとどまらず、民間の皆さんにも御協力をいただく。三・一一の教訓で、例えば民間の皆さんがBCP、業務継続計画をやっていますけれども、例えばガソリン一つとっても、ENEOSさんのスタンドには出光さんの油は入れられなかったんですよね。あるいは、セブンイレブンにはローソンは無理。だから、要するに、いわゆる企業横断的なBCPを取り組んでいく、こういった取り組みもしております。

 それからもう一つは、平時に活用ができて、有事のときに機能を発揮する。一つ例だけ申し上げさせてください。例えば、病院船をつくろうという議論がありました。でも、病院船というのは、実は平時は使えません。それから、すごい費用がかかります、一隻三百億。船は定期点検をしますから、二隻が入り用です。年間五十億円以上のランニングコストがかかります。

 だったら、平時に活用できるならば、例えば、国際基準のコンテナの中に医療モジュールを入れて、そしていろいろな医療機器、ベッドとかを入れておいて、ふだんは例えば無医村とか僻地の医療に活用するということも検討する。いざ災害が起きたら、その被災地にしっかりそれを集中的に持っていく。

 こういったようなことも、全て実は国土強靱化の大綱の中にしっかりちりばめられていまして、ことしの五月には、その基本法に基づいて基本計画をつくらせていただきますから、そこでもまた脆弱性の評価を行った上で、優先順位をつけて取り組んでいく。

 ですから、これは絶対にばらまきには当たらない、一年以上かけてこの取り組みを政府・与党一体になってやってきたということを御披露申し上げたいと思います。

高市委員 広辞苑まで引いていただき、ありがとうございました。

 私たちは、参議院選挙の公約に、皆が行ってみたい、暮らしてみたいと思える世界一安全な国をつくります、このように宣言をいたしました。

 この国土強靱化というのは、私は、観光立国政策にも資するし、対日投資の促進にも資するし、それからまた、早期の避難を可能にするために、衛星、それからセンサーの埋設、情報通信、こういったシステムのしっかりとした普及、それからまた非常に高度な土木建築技術、こういったものを研究していくということを考えますと、安倍内閣の成長戦略にも資するもの、最も大切な使命は人命を守ることでございますが、さまざまな効果が将来に向けて発現できると思いますので、毅然と、しっかりと取り組んでいただきたい、このように総理にも関係閣僚にもお願いを申し上げます。

 さて、安倍内閣が発足いたしまして、おおむねこれで十三カ月と二週間が経過をいたしました。昨年のこの予算委員会で、私は、強い経済をつくっていただきたい、安倍総理にそうお願いをいたしました。

 アベノミクスの効果によりまして、各種の経済指標というのは目に見えてよくなっております。しかしながら、関西の経営者の方々にお話を伺いましたら、もうかってまっか、こう聞きましたら、実際に業況感がよくなっている企業の経営者は、ぼちぼちでんな、こう言わはるんですけれども、まだまだ地方はあきまへんわ、これもまた決まり文句のようになってきております。

 とにかく、これから、日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡る、そして、雇用や需要が創出される、家計においても景気回復を実感していただける、そういう姿を御一緒につくっていきたいと思っております。

 特に、参議院の選挙公約でも、地域の経済、これを強くしなきゃいけないということで、多くの政策を書き込ませていただきました。その中で、ちょっと小さ目のものなんですけれども、進捗状況を伺わせていただきます。

 まず、地域における雇用機会の創出についてなのでございますが、私は、若者に加えまして、子育て中の女性ですとか、おうちで家族を介護されている方々ですとか、定年退職をされたシニア世代の方々、それから障害をお持ちの方々など、幅広い方々が御自宅ですとか御自宅の近くで割と多様な働き方ができる、そういった姿というものを実現したいと考えております。

 その上では、テレワークという働き方というのは非常に意義が深いと思っております。テレワークというのは、厚生労働省の広報物などには、「パソコンなどITを活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」と書かれているものなのですが、これは普及しますと離島や山間部においても就業機会をふやすものになっております。

 私自身が、第一次安倍内閣で科学技術、ITを担当する閣僚といたしまして、テレワーク人口倍増アクションプランの策定を担当いたしました。ですから、自民党の政調会にもテレワーク推進特命委員会を新設しまして、この参議院選挙公約にも、テレワークの推進、しっかりと書かせていただきました。

 しかしながら、今の労働法制は、テレワークというものを想定していなかった時代につくられた、割と古い考え方に立っているものでございますので、運用の見直しというのが必要になってくるかと思います。

 そこで、田村大臣にお願い兼質問なのでございますけれども、まず、育児休業中の女性がテレワークで働くケースというものを考えますと、雇用保険法の運用を変えていただきたいと思います。

 これは私自身も官邸で開かれました会議で数次にわたってお願いをしていることでございますけれども、現行の雇用保険法の施行規則では、育児休業給付の対象となる育児休業を、就業していると認める日数が月十日以下であるものに限るとしております。しかし、子育て中の女性は、お子さんが寝ていらっしゃる間の一日三、四時間ぐらいだったら継続して仕事をできるという方が多いかと思いますし、事業者、使う方にしても、十日だけといったら、一日一時間ずつでも十日ですね、一日八時間でも十日。月十日しか業務を頼めない方よりも、一日三時間ずつでも、月曜日から金曜日まで月二十日お仕事をしてくださる人の方がお仕事を頼みやすい、こんなふうに感じるわけでございますので、ぜひとも、省令を改正していただきまして、月十日というのを、例えば一日四時間掛ける二十日が上限というような形で、月八十時間というような表現に変えていただけないでしょうか。

田村国務大臣 まずもって、先週、私、インフルエンザA型に罹患をいたしまして、委員の皆様方初め国会に大変御迷惑をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。

 その上で、今御質問いただきましたテレワークという働き方でありますが、政調会長のもとで自民党も推進特命委員会をおつくりいただいていろいろな議論をしていただいているということ、私も理解をさせていただいております。

 この働き方は、子育てをしながら仕事をされる男性、女性、両立をしていくために、大変便利なといいますか、一つのツールだというふうに、在宅勤務をしながら、そのように思うわけでありますが、今委員がおっしゃられました十日の問題、十日以下というのが育児休業給付の就労要件になっております。しかし一方で、今おっしゃられたとおり、一時間働いても十日という話になりますと、使い勝手が悪いというお話も確かにあるわけでございまして、いろいろと特命委員会でも御議論いただいているということも踏まえながら、労使、関係者の方々としっかりと議論をしながら、これは早急に見直しに向けて、実現に向かって取り組んでまいりたい、このように考えておりますので、またいろいろと御示唆をいただければありがたいというふうに思っております。

 もちろん、これは大変重要なことでございますから、実現の方に向かって、しっかりと早急に御議論をさせていただきたいというふうに思っております。

高市委員 かなり踏み込んだ答弁ではあると思いますけれども、実施の時期についてもお伺いしたいなと思うんですが、それはまだおっしゃれませんか。

田村国務大臣 今、ほかにもいろいろと議論していることがございます。これから早急にこの議論を労政審でも進めてまいりたいというふうに思っておりますので、最短、本年の十月一日に向かって努力をしてまいりたいというふうに思っております。

高市委員 ありがとうございました。七年間思い続けてきた願いがかないました。よろしくお願いをいたします。

 このほかにも、労働基準法、労働者災害補償保険法、労働安全衛生法についても、改善の余地が大いにありますので、これはまた改めてお伺いをいたします。

 それから次に、地域における需要の創出についてお伺いをいたします。

 安倍内閣は、過去の政権が手をつけられなかった、かなり大胆な改革を実行中であります。代表的なものは電力システム改革と農政改革かなと思いますが、農林水産政策につきましては、この後、我が党から質問者が立ちますので、私の方から食材の地産地消について伺います。恐らく宮腰議員が農林水産政策、細かいことを聞かれるんだろうと承知をいたしております。

 自民党の参議院選挙公約ですけれども、「学校給食における国産食材の割合を八〇%以上とすることを目指します。」ということ、それから「地産地消、地域の生産者との交流、栄養教諭の配置を進め、親子で参加できる「食育」の機会も増やします。」こういったことも書かせていただいております。

 これを受けていただいたと思うのですが、政府は昨年末に第二次食育推進計画を一部改定されまして、学校給食における国産食材を使用する割合の増加を新たに目標として追加してくださいました。具体的には、「平成二十七年度までに八〇%以上とすることを目指す。」と記載されました。特に、農林水産省と文部科学省の御協力、御理解に心より感謝を申し上げます。

 そこで、農林水産大臣に伺うのですけれども、地域でとれた食材を使った学校給食、これを実施するために農水省予算で二十六年度に措置される新規事業があると伺ったのですが、簡潔にその内容をお教えください。

林国務大臣 ありがとうございます。

 農林水産省では、学校給食における地場産農林水産物の利用拡大に向けまして、学校給食関係者、それから農林漁業者、食品事業者、これらの皆さんが連携してモデルとなる給食食材の生産供給体制、これを構築する取り組みを支援することといたしまして、平成二十六年度予算において、この取り組みに必要な予算、学校給食地場食材利用拡大モデル事業ということで必要な経費を助成することにいたしました。

高市委員 また詳しい内容がわかったら伺うということにいたしますけれども、実は、奈良県の大和郡山市が去る一月二十四日、学校給食記念日に、市内十一の小学校で市制六十周年記念給食というのを実施しました。

 その日の給食は、地元産のカブ、ミズナ、みそ、豚肉など地場産のメニューだったのですけれども、地産地消に熱心な大和郡山市の上田清市長が、地元食材を使った学校給食には二つの課題があるのだということを私に教えてくださいました。

 第一に、学校給食センターの理解と協力が得られるかどうかということです。例えば、大きさや形がそろった冷凍食品などでしたら非常に調理は簡単なのですけれども、朝にとれたての、泥のついた、大きさも形もばらばらのお野菜をむいて調理してくださる、そういう対応が可能かどうか、これが一点目。

 それから第二に、地域の生産者が食材の安定供給力を確保できるかどうかということなんです。

 この二点の指摘についてどういう対策が考えられるのか、お答えください。

林国務大臣 今、高市政調会長からお話がありましたように、地場産食材の使用拡大に当たっては、安定供給に必要な量と品目の確保、これが大きな課題になるわけでございまして、その確保のために生産者の方にどうしていただくか、これが非常に大きな課題になるわけでございます。

 したがって、先ほど予算の御説明をいたしましたが、学校給食関係者などいわゆる需要サイドの声を聞きながら、地域の農林漁業者が連携して必要な食材を計画的に生産していただく、年間を通じて利用できるように加工する取り組み、こういう取り組みをしていただくことが大変重要である、こういうふうに思っております。

 また、どうしてもその食材は当該地域だけではなかなか安定的に生産供給することは難しい、こういう場合もあるというふうに思いますので、近隣の地域などとも連携をして必要量を確保していく、このことが必要である、こういうふうに考えております。

 そこで、先ほど申し上げた学校給食地場食材利用拡大モデル事業でございますが、こういうことを通じて、こういう課題に対応した生産供給体制構築の取り組みのモデル、いろいろないい例が各地にございますので、このモデルを全国に横展開していく、こういうことをこの事業で支援していきたい、こういうふうに考えております。

高市委員 国産の農林水産物の海外輸出などにつきましては、安倍内閣でも真剣にお取り組みを進めていただけるものかと思いますが、まずは、日本人が日本のものを食べようということで、給食の取り組みからでもしっかりと進めていただきたい、こう希望をいたしております。

 さて、アベノミクスによって日本は強い経済を取り戻しつつございますけれども、やはりエネルギー問題、かなり心配でございます。質の高い電力を安く安定的に供給する、これができなければ、日本の企業立地の優位性というものは失われてしまいますから、雇用も暮らしも守れませんし、また医療や介護の現場において、安心も確保できませんから、命も守れない可能性がございます。

 去る一月二十八日の衆議院本会議で、民主党の海江田代表が、「エネルギー基本計画がいまだに閣議決定されず、」と安倍総理を批判され、「自民党のエネルギー政策は信用できません。」とまでおっしゃいました。

 党の政策責任者としては、聞き捨てならない発言だ、このように考えましたので、事実関係や安倍内閣の取り組みについて伺ってまいります。

 経済産業大臣に伺います。

 現在、安倍内閣が見直し作業を進めておりますエネルギー基本計画ですけれども、見直し対象となっている計画は何なのか。つまり、現時点で効力を有しているエネルギー基本計画というのは、いつ、どの内閣において閣議決定されたものでございますか。

茂木国務大臣 我々が今見直しの対象としております現行のエネルギー基本計画、第三次のエネルギー基本計画になるわけでありますが、民主党政権、菅内閣におきまして、二〇一〇年の六月十八日に閣議決定されたものであります。

高市委員 その菅内閣で閣議決定された第三次エネルギー基本計画の中で、原子力発電の位置づけはどうなっているでしょうか。

茂木国務大臣 客観的に申し上げます。

 民主党政権下で策定をされました第三次エネルギー基本計画においては、原子力について、供給安定性、環境適合性、経済効率性を同時に満たす基幹エネルギーとして位置づけており、二〇二〇年までに九基、二〇三〇年までに少なくとも十四基の原子力発電の新増設を目指すことといたしております。

 また、当該基本計画における原子力政策に基づき、エネルギーの長期の需給見通しでは、電源構成に占める原子力の比率、これを二〇三〇年において五〇%超としております。

高市委員 平成二十三年に発生しました福島原発事故を受けまして、その菅内閣による二〇三〇年までに十四基原発をふやすというような決定については、ちょっと難しいことになったかと思うんです。

 その後、民主党政権では、平成二十三年八月と平成二十四年九月の二回にわたって、エネルギー政策に関係する閣議決定を行っております。それぞれの内容はどのようなものでございましたか。

茂木国務大臣 御指摘のように、二回の閣議決定を行っております。

 平成二十三年三月の東日本大震災以降のことでありますが、民主党政権では、平成二十三年八月に、現行のエネルギー基本計画を白紙から見直すことを閣議決定し、平成二十四年九月には、革新的エネルギー・環境戦略を踏まえてエネルギー政策を遂行することを閣議決定したと承知をいたしております。

 より具体的には、と申し上げても、内容が具体的でないのは私にはどうにもならないわけでありますけれども、平成二十三年八月十五日の閣議決定では、「現行のエネルギー基本計画を白紙から見直し、新たなベストミックスの実現に向け、原発依存度低減のシナリオの作成や原子力政策の徹底検証などを行う。」としており、また、平成二十四年九月十九日の閣議決定では、「「革新的エネルギー・環境戦略」を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する。」とする一方、原発ゼロなどの具体的な表現はこの閣議決定の中には盛り込んでいない、このように承知をいたしております。

高市委員 ということは、民主党政権は、平成二十三年八月に、第三次エネルギー基本計画を見直す決意だけは閣議決定したものの、結局、見直さないままに終わって、現時点でも、原発の新増設を目指すという菅内閣の基本計画が、内閣法第四条に基づく唯一有効な計画だということになってしまいますね。

 経済産業大臣にさらに伺いますが、この平成二十四年九月の野田内閣による閣議決定、革新的エネルギー・環境戦略を踏まえてエネルギー政策を遂行するという内容だということなんですが、この革新的エネルギー・環境戦略における原子力発電の位置づけというのはどうなっていたのか、それから、この革新的エネルギー・環境戦略そのものは閣議決定されたのかどうか、お伺いします。

茂木国務大臣 私がつくったものではないので答えにくい部分もあるんですけれども、革新的エネルギー・環境戦略において、原子力発電については、安全性が確認された原発は重要電源として活用する、このようにされております。

 その一方で、これに矛盾するかどうかは別にいたしまして、三つの項目がございます。

 四十年運転制限を厳格に適用する、二つ目が、原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働をする、三つ目が、原発の新設、増設は行わないとの原則を定め、「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。」とされております。

 また、この革新的エネルギー・環境戦略そのものはエネルギー・環境会議の決定でありまして、平成二十四年九月の閣議決定においては、「「革新的エネルギー・環境戦略」を踏まえて、」こういう表現は盛り込まれておりますが、今御説明申し上げた内容を中心といたします、二十ページにわたります革新的エネルギー・環境戦略そのものは閣議決定されていない、このように理解をいたしております。

高市委員 つい先日なのですけれども、民主党所属の議員の方がテレビに出演されて、原発ゼロという方針を閣議決定した、こう主張しておられたので、念のために確認したのですけれども、閣議決定はされていないということでございます。

 また、安全性が確保された原発は重要電源として活用するということが、一昨年の九月の時点、つまり前回の衆議院選挙直前の民主党の方針だったということもよく理解できました。

 ところで、経済産業大臣、続けて恐縮ですけれども、大間原発、島根三号原発、東京電力東通一号原発の三基、これは民主党政権下でも設置許可が存続していたはずなのですけれども、これら三基というのは、原発の新設、増設には当たらないということで容認されていたということになりましょうか。

茂木国務大臣 当時の枝野大臣の記者会見の内容を拝見いたしましても、容認をされておりました。

高市委員 しかし、その三基というのは、完成したら新品ですから、その後、少なくとも四十年は稼働できるということになります。ですから、二〇三〇年代に原発ゼロという野田内閣の方針とは何か整合性がないように感じてしまいます。

 続けて伺うのですけれども、仮に民主党政権が、閣議決定はしていないけれども、革新的エネルギー・環境戦略で示した、原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働とする、四十年運転制限制を厳格に適用する、原発の新設、増設は行わない、こういったことを原則とした場合に、二〇三〇年の年初の時点で何基の原発が稼働し得ることになるのか。それから、二〇三〇年代の最後の年である二〇三九年の年末の時点、今から二十五年後ですけれども、この時点ではどうなるのか。計算できたらお答えください。

茂木国務大臣 若干の仮定が必要ですが、仮に、大間、そして島根三号、東電東通一号の三基の建設が完了し、また、原子力規制委員会によって全ての原発の安全性が確認された、このように仮定をされますと、二〇三〇年年初においては、運転開始から四十年未満の発電所が合計二十三基稼働していることになります。また、二〇三九年年末の時点では、運転開始から四十年未満の発電所が合計八基稼働している、このように考えられます。

 恐らく、さらにお聞きになりたいのは、原子力規制委員会の独立性、こういったものを考えた場合に、民主党が決定した革新的エネルギー・環境戦略の原則で、二〇三〇年代に原発稼働ゼロとなるかということでありますけれども、申し上げた数字のように、原子力規制委員会は独立の存在でありまして、そして、原則にそれで照らした場合には、現実に二十三基、八基が稼働しているということを考えると、原発ゼロにならない可能性というのは十分残る、こういう計算になると思います。

高市委員 それは当然のことで、民主党政権時代に、民主党、自民党、公明党三党で協力しまして、新しい法律をつくりました。原子力規制委員会設置法というもの、そして原子炉規制法も改正をいたしましたから、法のたてつけとしては、総理が原発を動かすと言っても動かないし、動かすなと言っても、これは独立した規制委員会が安全を判断する、そしてまた、地元自治体のお考えというものもございますから、これはもう法的にはそういう整理になっているわけです。

 仮に、全ての原発をこのまま全部廃炉にして絶対に再稼働させないというんだったら、何も民主党政権時代にその二つの法律をつくる必要もなかったし、それから、世界最高水準の新規制基準なるものを策定する必要すらなかったはずであります。それから、原子力発電事業者に莫大な費用を使わせて、新規制基準に適合するための工事をしていただく必要もなかったわけです。

 そもそも民主党も、今すぐに原発ゼロ、こう主張しておられるわけではない、これは承知をいたしております。だから、民主党のエネルギー政策というのは、閣議決定したものと閣議決定していなかったもの、これが混同されて発信しており、どうもわかりにくいものでございました。また、最長二十五年後の二〇三〇年代に原発をゼロにするにしても、そのために必要な省エネ目標、再エネ目標、こういったことについても不明でございました。

 総理にこれは伺います。

 安倍総理は、前政権のエネルギー政策の方針をゼロベースで見直して、今度は、責任ある内容をしっかり閣議決定していただきたいと考えるのですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 エネルギー基本計画の策定に当たっては、これはエネルギーですから、国民生活、そして経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築していくという大きな責任があるわけでありまして、その意味におきましては、しっかりと整合性がとれて、わかりやすいものをつくっていく必要があるんだろう、こう思います。

 今後のエネルギー政策については、従来の基本的視点、安定供給、そして効率性、環境、安全性に、国際的視点と経済成長の視点を加えて政策を遂行していくべきであると考えています。経済成長の観点からは、特に電力システム改革などの制度改革や、再生可能エネルギー、そして省エネルギーの推進などによる新たな産業の創出、市場の創造、そして高効率火力発電等のインフラ輸出などによるエネルギー産業の国際展開の強化が重要であると考えています。

 その上で、エネルギー基本計画の策定に当たっては、こうした方針を踏まえて、現実を見据え、責任を持って実現可能かつバランスのとれたものを取りまとめていく考えです。

 将来のエネルギーミックスに関しては、新たなエネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していく考えであります。

高市委員 相当難しい作業だと率直に思います。民主党の方でなかなか新しい基本計画をおつくりになれなかった、それもやはり相当な難しさを知っておられたからだと理解いたします。

 エネルギー政策基本法というのがございますけれども、この法律に基づきましたら、この第四次エネルギー基本計画の作業というのは、昨年十二月に公表されました総合資源エネルギー調査会の意見書というものを参考にして、関係閣僚の意見も聞かれた上で、経済産業大臣が案を作成されるというものだと思っております。

 短期的な状況を見てみますと、今後、仮に、福島県以外の原発、福島県に設置されているもの以外の原発四十四基の全てが安全性を確認されて再稼働したとしても、総発電電力量に占める比率は二八・二%なんですね。でも、このうち、運転開始から三十七年以上経過したものが八基ございます。これらを再稼働させることによる採算の見通しというのはかなり厳しいのかもしれないなと感じるので、この八基分の比率三・三%を引きますと、原子力発電で賄えそうな電力量の比率というのは二四・九%なんですね。

 そうしますと、安倍内閣が案を作成中であります第四次エネルギー基本計画には、原子力発電以外で確保しなければならない約七五%の電力量をいかなる方法で生み出すのか、ここがしっかりと示されるものにならなければいけないと思います。難しい作業であるのは承知をいたしております。

 二〇一二年度の発電電力量のうち、水力発電を除きますと、太陽光や、風力や、地熱や、バイオマスなど、新エネルギーと呼ばれるものの比率はいまだ一・六%でございます。これから三年間、集中的に新エネルギーを拡大していくんだ、これは自民党の公約でもあり安倍内閣の方針でもありますけれども、そういうこととともに、例えば水力発電ダムのリプレース、これをしっかり進めたり、それから省エネ技術の革新、これらに本気で取り組んでいかなければ、必要な電力量の確保というのはとても無理だと思います。

 しかしながら、反対に、こういった取り組みをしっかり進めるということは、成長戦略にも資することだと思います。先ほど総理がおっしゃってくださいましたが、成長に資する対策が盛り込まれたベストミックスの絵姿を示せるものに、この第四次基本計画の段階でできるのかどうか。

 もしくは、これから小売の自由化というものが進んでまいりますから、消費者の選択によって、どの発電源が選択されるかということもありますので、むしろ、完璧なベストミックスの姿というのは次の第五次基本計画、そのときも安倍内閣がつくるぞという決意がおありかもしれませんけれども、どういった時点でそのベストミックスの絵姿が示されるのかを伺います。

茂木国務大臣 確かに、高市政調会長がおっしゃるように、このエネルギー基本計画、現実的かつバランスのとれた計画をつくっていくというのは相当難しい作業でありますし、同時に、国民生活、経済にかかわる極めて重要な問題でありますから、与党の御意見も伺いながら丁寧なプロセスを踏んで決定をしていきたい、そんなふうに思っております。

 そして、原発についてもお話がありました。我々としては、原発に対する依存率を減らしていく、こういう基本的な考え方でありますが、原発でいいますと、例えば、政調会長がおっしゃるように、仮に二十四基動いたにしましても、普通の稼働率は七六%でありますから二〇%、こういうことにもなってくるわけでありまして、今回の新しいエネルギー基本計画におきましては、それぞれのエネルギー源ごとの強みであったりとか弱み、そして位置づけというのをはっきりさせていこう、そこの中で特に省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、こういったものはしっかりと書き込みたいと思っております。

 さらには、技術開発の面、火力でも、石炭火力等々、日本の技術は世界最高であります。こういった日本の技術をそういった世界で磨いていくということも極めて重要だと考えておりまして、新たなエネルギー基本計画におきましては、先ほど総理の方からもありましたように、あらゆる意味で、安全性、安定供給、コスト、環境負荷、すぐれたエネルギー源というのは残念ながらないということになってまいりますと、全体として、現実的かつバランスがとれ、そして、それぞれのエネルギーの強みが生き、全体としては弱みが補完される、こういう電源構成にしていきたいと考えております。

高市委員 与党プロセスを丁寧に踏まれるということをおっしゃっていただきました。与党プロセスの壁、かなり高いと思います。今、党政調会の資源・エネルギー戦略調査会長にもむちを入れながら、相当きっちりと、再生可能エネルギー、この強化を図っていく具体的な策について厚みをつくってほしいというお願いをいたしております。

 自民党にしても民主党にしても一緒です。原子力発電、これの依存度を下げていくという方向性は一致をいたしております。どっちにしても、再生可能エネルギーの割合がふえていくということになりますと、自然に依存度は下がっていきます。しかしながら、それが本当にできるのかどうか。相当な高い壁も、課題もあるかと思いますので、しっかりと政府の方でも御検討を続けていただきたいと思っております。

 さて、一昨年末にIAEAが、二〇三〇年までに世界の原子力発電所の設備容量は、最大九三%増加すると、これは幅があるんですね、一六から九三ということなんですが、世界の発電所の設備容量の増加予測をしております。特に、東アジア、南アジア、中東、東欧などで大きな伸びを予測しております。

 今、中国で運転中の原発は十七基なのですけれども、建設中、計画中のものが約五十基。韓国は、運転中の原発が二十三基ですが、建設中、計画中のものが十八基。台湾は、運転中の原発が六基、建設中、計画中のものが二基でございます。

 そうなりますと、今後、周辺国を含めた地域全体で原子力発電の安全性をいかに確保していくのかというのが非常に大きな課題となってまいります。

 これは総理にお答えをいただきたいのですが、あの悲惨な事故を体験して、世界最高水準の新規制基準を設けた日本だからこそできる、世界各国への技術的貢献ですとか、制度、運用などソフト面での貢献というものがあるのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、高市委員が指摘をされたように、日本の周辺国またアジアにおいては原発の新設が進んでいくという事実があるわけであります。

 そして、その中におきまして、原子力規制委員会において、各種の事故調査でこれまでに明らかにされた情報を踏まえ、海外の規制基準も確認をしながら、世界最高レベルの安全水準となる新規制基準の策定を行ったところであります。

 また、安全の追求には終わりはありません。継続的な安全向上が重要であるというのが原子力規制委員会の姿勢でありまして、新規制基準施行の後も、継続的に基準の見直しの検討を行っていきます。こうしたことによって、我々、あの過酷な事故を経験したわけでありますが、事故の経験と教訓を生かして技術を発展させることで世界最高水準の安全性を実現できる、こう考えています。

 あわせて、福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有すること、これは極めて重要である。先ほど、冒頭申し上げましたように、周辺国あるいはアジアにおいては新設がなされていくわけでありますから、そういう国において、新設がなされる際に私たちの経験と教訓を共有してもらうということは、その地域、またひいては日本にとっても極めて安全の上において重要だろう、こう思うわけでありまして、世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、経験した我が国の責務であると認識をしています。

 そのため、我が国は、これまでIAEAなどに対して、事故への取り組み状況について情報発信を行ってきています。今後も引き続き、原子力安全に係る経験や知見を共有するべく、国際社会との連携や協力を実施していきます。

 さらに、原発輸出に際しては、いろいろな議論がありますが、相手国の意向や事情をしっかりと踏まえながら、単に原子力機器や高い安全性を有する技術の提供を支援するだけではなくて、制度整備や人材育成、これは非常に重要でありまして、この人材育成についてはそういう要望も相手国からなされているところでありますが、そうした制度整備や人材育成等への支援なども行っていく考えであります。

高市委員 特に、インフラシステム輸出、熱心に総理がお進めいただいている中に原子力発電のシステムも入っているということで、自分の国で安全を確認できないものをよそに売るのかという批判もございました。

 しかしながら、日本としては、今おっしゃったように、世界最高水準の人材を育成し、その散逸を防ぎ、そしてまた、システムを売る限りは、そのメンテナンスから廃炉に向けてのノウハウ、この技術協力も含めて担っていく、その責任があると思いますので、しっかりとしたエネルギー基本計画をまずはつくってまいりましょう。そして、世界に向けての責任をしっかり果たしてまいりましょう。

 さて、もう間もなく質疑時間が終了いたしますけれども、この政権公約二〇一二の中で私が特に思い入れを持っておりますのは、経済政策に係る部分です。

 これは先ほど申し上げましたが、茂木大臣が政調会長でいらした時代に、自民党政調会の中に経済・財政・金融政策調査会というのがあって、会長は甘利大臣でございました。私はそのもとで事務総長を務めさせていただいておりましたので、かなりの個別政策の書き込み、みんなで議論を重ねて準備を進めていた、これを思い出しております。

 この衆議院選挙の公約には、例えば、物価目標二%の設定、それから政府、日銀の連携強化、それから新政権発足後、速やかに緊急経済対策を断行すること、本格的な大型補正予算を編成することなどなど書いてございました。

 物価目標二%の設定につきましては、政権発足後二十八日目、去年の一月二十二日には政府・日銀共同声明が発表されまして、世界じゅうに二%という数字が発信されました。その後、四月に、黒田新総裁のもとで量的・質的な金融緩和が実現をいたしました。非常に早い安倍内閣のお取り組みでした。

 政権発足後、速やかな緊急経済対策ですが、これも、政権ができてから十七日目には十兆円規模の緊急経済対策が取りまとめられて、そして二十一日目には大規模な補正予算案が編成されました。

 このほかにも、日本経済再生本部を新たな司令塔にすること、それから日本経済再生本部に産業競争力会議を設置すること、国際資源戦略の展開、クール・ジャパンの国際展開、インフラシステムの輸出、産業競争力強化法(仮称)の制定、国際先端テストの導入などなど、非常によくできた政権公約だったなと今思っておりますが、こういったことも、ほぼ全て安倍内閣によってスピーディーに進められております。

 このほかにも、自民党の政調会では中小企業・小規模事業者政策調査会を昨年一月に設置いたしまして、後ろに座っておられます伊藤達也元金融担当大臣に調査会長をお願いいたしております。

 これもさまざま議論していただきまして、参議院公約の中に、個人保証がなくても融資を受けることができる金融の枠組みをつくることなどを内容とするガイドラインを早期に制定します、こう書かせていただいたのですけれども、昨年末にガイドラインを策定していただき、今月から運用開始ということで、これは、麻生金融担当大臣の目配り、すばらしい実行に感謝を申し上げております。

 また、自民党からは、小規模事業者に特化した基本法を策定するべきだという御提案もいたしましたが、この点も、今国会で予定が立っているということで、茂木大臣のお取り組みに感謝を申し上げます。

 また、昨年ここでお願いしました領土教育の充実も、下村大臣、本当によくやっていただいていると思います。

 これからも力強く政策を進めていただき、ぜひとも、政高党低と言われようが何だろうが結構です、公約さえ実現していただいたら私たちは満足でございます、違うことをやったら怒り出しますけれども、しっかりと、政府・与党一体となって、成長する日本をつくってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、貴重な時間を賜りまして、本当にありがとうございました。

二階委員長 この際、鴨下一郎君から関連質疑の申し出があります。高市君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 おはようございます。

 きょうは、専ら社会保障、特に医療についてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 昨日、都知事選が行われまして、舛添知事が決まりました。安倍総理におかれましては、総裁として応援もいただきました。

 事前に通告はしておりませんけれども、その中で、都民の政策についての関心事は、一つは景気対策、そして次に社会保障、さらにはエネルギー、原発、さらにオリンピック・パラリンピック、こういうようなことで、いわば万般な関心事だったというふうに思っておりますけれども、この都民の選択について、安倍総理の御感想、御所見がございましたら、一言いただきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 今回の都知事選挙の結果でございますが、今、鴨下委員が御指摘になられたように、都民の皆さんの政策的関心は大変多岐にわたっているわけであります。

 それは当たり前なのであって、東京都という大都市に住んでいて、そこで生活をしていく上において、自分の子供たちの将来、自分の老後も見据えながら、しっかりと政策を持って、そしてそれを実行していくことができるかどうかということを頭に入れながら多くの方々が投票所に足を運ばれたのではないか、このように思います。

 実際に、高齢化の進んでいくスピードにおいても東京都は日本で一番速いわけでありますし、少子化が進んでいくスピードも速い中において、しっかりとその対策が打てなければいけない。そしてまた、保育所も足りないという状況があります。

 そして、何といっても、やはりこの景気回復の波にできる限り多くの方がしっかりと乗れるように、中小・小規模事業者、多くの方々が乗れるようにするということが大切なんだろう、この東京都においても隅々まで実感を届けることができるかどうかということも大変重要なことなんだろう、こう思うわけであります。

 特に東京の場合は、何か大企業が集中しているように思われがちでありますが、それを支えている中小・小規模事業者が、実はたくさん東京において活動している。彼らの頑張りが、東京の活力に、あるいは世界における東京の競争力の強さにつながっているわけでありますから、そういうところにもしっかりと光を当てることが重要ではないか。

 何といっても、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、都市づくり、ぜひ私は舛添知事に期待したい、このように思いますし、そしてエネルギーにおいても、エネルギーの大消費地である東京が科学技術、イノベーションを駆使して省エネを進めていくことは、国にとっても、エネルギー政策を進めていく上においても大変重要なことではないか、このように期待をしているところでございます。

鴨下委員 今総理のお話にありましたように、都民は非常に冷静に判断をしていただいたというふうに思います。ワンイシューだけで物事が進むということではなく、あらゆることを総合的に勘案して知事を選んだ、こういうふうに思っておりまして、ぜひ、知事とも連携をしていただいて、アベノミクス、あるいは景気対策、さらにはデフレ脱却、こういうことについてさらに推進をしていただきますように、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、先ほど高市政調会長からもお話がありました、安倍総理は、大変強行な日程の中でソチにおいでになって、そしてプーチン大統領と会談をなさった。こういう意味においては、非常に私は、このタイミングでおいでになったというのは、大変だっただろうと思いますけれども、高く評価をしております。

 そして、なおかつ、この秋にはプーチン大統領が日本においでになる、こういうようなことも内々に決まったようでございますけれども、この会談の中身について、さまざまなことでおっしゃりにくいこともあるかもわかりませんけれども、私は、二人の首脳がしっかりと連携をしてさらに両国間の関係を深めていく、こういうような意味においては非常に重要な会談だったろうというふうに思いますが、いかがでございましたでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御承知のように、日本とロシアとの間では、戦争が終わって六十八年たつにもかかわらず、平和条約が締結をされていない、この状況というのはやはり異常なことであるということについては、プーチン大統領とともに、その認識を共有することができています。

 その中にあって、私は、日本とロシアは最も可能性に富んだ二国間関係だと思います。という意味は、ロシアの実力、日本の実力から比して、貿易量、経済関係、協力の度合いというのはまだまだと言ってもいいんだろうと思います。この可能性が開花されれば、日本はもっと成長していくでしょうし、ロシアだってそうです。そして、国民の豊かさにおいても明らかにプラスになっていくわけでありますから、それをやはりしっかりと開花させていくためにも平和条約は絶対的に必要であろうし、また、両国の信頼関係、国民同士の信頼関係というのは平和条約の上に成り立っていくわけでありますから、この信頼関係がなければなかなかできない経済の協力というものもあるんだろうというわけであります。

 同時に、両首脳の間で信頼関係を醸成させながら、国民の中においてもある種の信頼関係をつくっていくことによって平和条約を進めていくという側面もある、こう思うわけでございまして、大統領との間におきましては、経済においてはエネルギーを中心に、あるいはまたシベリアにおけるさまざまな開発を中心に、エネルギーあるいは経済、そして日本からの投資も含めたさまざまな議論を行いました。

 やはり、日本の技術、投資をロシアは必要としているわけでありますし、日本にとってもロシアのエネルギーというのは極めて重要だろう。と同時に、人との交流、あるいは、先ほどもちょっとお話をしましたが、ことしを日ロ武道交流年といたしまして、両国で武道関係者が行き来をすることによって両国の国民の交流、理解を高めていきたい、こう思っています。

 あるいはまた、中央アジアにおける国境管理や薬物対策について、日ロ間で協力を検討していくことになります。アフガニスタンからISAFが撤退をしていく中において、国境管理等においても、ロシアは日本とともにそうしたことを考えていく。これは、もう既に2プラス2が日ロの間で行われているわけであります。こういう防衛交流あるいは安全保障における認識をともにしながら協力をしていくという関係まで至ったと思います。

 今後は、既にスタートしています次官級の協議、首脳間でこの平和条約に向けてしっかりとその状況を整備していこうということで、次官級の協議を始めています。それで、次官級の協議を先般行い、その上に立って、岸田大臣とラブロフ外務大臣が会談を行い、私どもがまた会った。そして、その上において、プーチン大統領との間に、私の方から、ぜひまた、こうした問題は首脳間でやはり大きな観点から判断をしなければならない課題であり、それは二人とも、そういう歴史的な責任を負っているという観点から、交渉の事務方である次官級の会議を背中から押していくことにしようということを申し上げたわけでございます。

 さらに、今回の首脳会談、五回目の首脳会談を初めといたしまして、この次官級の協議を加速させていきたい。そして、加速させていく上において、それをまたこの首脳級の会談の中に上げてきてもらいまして、そしてまたさらに指示を出す。最終的には、これは首脳間で結論を出していくということが求められているのではないか、このように思います。

鴨下委員 本当に、二人のいわば国内的に求心力のあるリーダーがしっかりと信頼関係をつくっていただく、これが両国関係を前に進めていく一番重要なことだろうというふうに思っておりますので、ぜひ総理にもさらに頑張っていただきたい、こういうふうに思います。

 さて、これからは、本題であります社会保障の問題についてお伺いをいたします。

 まず最初に、社会保障と税の一体改革、こういうようなことがございまして、何か消費税を上げるというような、税の改革だけの話が前面に出ておりますけれども、そもそもで言いますと、これは社会保障を充実するために、税、特に消費税についてしっかりと国民の皆様にも御理解いただく、こういうような話であったはずであります。

 これはそもそも、二年前の野田内閣が発議をしまして、当時は野党であった自民党そして公明党に協議を呼びかけられたわけであります。その三党協議を重ねまして、これもなかなか紆余曲折がありました。ここにおいでの長妻さんも当事者であったし、私も当事者でありました。

 そういう中で、二年前の六月の十五日に三党合意に至ったわけでございます。その後に年金、子育て支援関連法案が成立しまして、同時に、議員立法であります社会保障改革推進基本法、これが成立しました。この法律によりまして社会保障国民会議が設置された、こういうような流れでありますけれども、この国民会議、約一年間の学識経験者の議論を受けて、最終的には社会保障のいわゆるプログラム法という形になって、昨年の秋成立した、こういうようなことですね。

 実に二年がかりでこういうようなことができてきたわけでありますけれども、この中にはもちろん、大前提としての社会保障の持続可能性、さらには、税に関して言えば、消費税の五%から八、一〇、こういうようなことへのプロセス、こういうようなことに対しての合意形成があったわけでございます。

 この一連のプロセスについて、私はつくづく思うんですが、社会保障を政争の具にしないで、全ての国民の立場に立って、与野党を超えて社会保障という制度はしっかりとやっていこうという、いわば政治の責任を果たした、こういうような希有な政策決定プロセスだったろうというふうに思っております。

 そういう意味においては、このモデル、いわば与野党が合意して、そして長期的な社会保障、特に年金、医療、介護、子育て、こういうような問題についてきちんと合意ができた、こういうようなことは、いわば国民の皆さんに対してもぜひ御理解をいただきたいというふうに思いますが、総理は、この与野党を超えた合意形成、こういうようなことについてのプロセス、どう御評価をしていただいておりますか。

安倍内閣総理大臣 政治は可能性の芸術だというふうに言われておりますが、まさに一昨年のあの三党合意はそうであったのではないかなと思います。

 我が党は、当時、最大野党で、一日も早く解散をかち取ろう、こういうあらましい雰囲気が満ちあふれている中において、しかし一方、社会保障と税、特に社会保障の分野においては、かつて我が党がその前に与党であったときから、これは与野党で政争の具にしてはならないという考え方を持っていました。なかなかそれを実行するのは難しいんですが、野党こそその考え方に立たなければそれは前に進んでいかないというひそかな、我々認識があった中において、鴨下委員は大変御苦労されたと思います。長妻委員とも何回も議論を重ねて、そして、我が党の中でも、例えば伊吹現議長なんかもおられましたから、いろいろ指導もあって大変だったと思います。

 そういう中において、特に社会保障については、負担と給付、給付と負担が裏表になっているわけでありまして、例えば、野党のときに負担だけを取り上げて、これはおかしいじゃないかと言うことは、ある意味、国民に対して訴求力はあるんですが、しかし、そうなれば、制度全体がうまくいかないし、持続性を失っていくという性格のものであります。

 給付を確保するためには、誰かに負担してもらう。負担と給付が一体となって初めて制度は持続性を持つわけでございまして、一昨年の関連法案については、自公民の三党間で真摯な議論が行われ、たび重なる議論を経て修正が行われ、当時野党であった自民党、公明党も、国の将来を考えて、その法案に賛成をしたわけであります。

 年々費用がふえていく社会保障の持続性と安心の確保、国の信認維持に向けて、社会保障と税の問題については、このように与野党を超えて議論していくこと、これがまず実現した、これは大変大きな意義がありましたし、これからもそうありたいと私は考えているわけであります。

 その際の自民、公明、民主の三党合意を出発点に、安倍内閣においても、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図る観点から、国民会議で議論が行われ、その報告書等を踏まえて、社会保障改革プログラム法を制定するなど、改革を進めてきているところであります。

 まさに世界に誇るべきこの社会保障制度を次世代に引き渡していくためにも、まさに与野党の壁を取り払って、真摯な議論を踏まえ、責任を分かち合いながら制度をつくっていくことによってこそ、信頼感のある社会保障制度となっていくのではないか、このように思います。

鴨下委員 ありがとうございます。

 まさに私は、今回の三党合意を含めて、このプロセスというのは、総理はいみじくも芸術だというふうにおっしゃっていましたけれども、つくり上げていくという意味においては、非常に意義のあったことだろうというふうに思いますから、これをぜひこれから実現していかなければいけないんだろうというふうに思います。

 そういう中で、我が国は、世界のどの国よりも速いスピードで少子高齢化社会に入っていっているわけであります。

 こういう中において、今もお話ありましたように、公費をどんどん投入して社会保障を維持する、こういうこともなかなかできません。それはなぜかというと、負担する側の皆さんにとっては過重な負担になっていく、こういうようなことにもつながりかねません。

 さらには、先ほども総理もおっしゃいましたけれども、サービスを充実していくこと、これはもうみんな喜ぶことでありますけれども、裏側には負担が過重になるということもあって、この二つのいわば葛藤の中で一番ベストな道を選んでいかなければいけない、こういうふうに思っているわけであります。

 例えば、今回、暮れから正月にかけまして診療報酬改定がございました。提供側は、診療報酬を何とかもう少し上げて、医療を含めて充実したい、こういうような気持ちが非常に強かったわけであります。他方、例えば保険料を納めている現役世代、あるいは窓口で診療の一部を負担している患者さん、こういうような方々のさまざまな観点から、私は総理は適切な判断をしたというふうに思っておりますが、振り返って、さまざまな方々の気持ちをそんたくした上で決断をなさった、こういうようなことについて、総理から一言お話をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに診療報酬について、診療報酬に含まれるもの、要素については、今まさに鴨下委員が明確に御指摘になられたとおりでありまして、診療報酬によって医師あるいは医療機関の経営が成り立っているわけでありますが、一方、それを支える若い人たちの保険料、そして窓口で支払っている患者さん、そういう皆さんのことを考えながら、この仕組みがしっかりと持続性を持つようにしていくための診療報酬の決定でなければならない、このように思うわけであります。

 消費税については全額を社会保障費に充てていくということが決まっているわけでありますが、医療についても、この消費税財源を活用して、地域で必要とされる在宅医療などを充実させる必要がある一方、少子高齢化のもとで、医療費の増加に伴う保険料負担などを極力ふやさないようにすることも重要であります。

 将来、四月からの診療報酬改定率は、御指摘のとおり、この両者のバランスを踏まえて決定したところでありまして、また、診療報酬とは別に、急性期後の受け皿となる病床の整備など、医療提供体制の改革を行うための財源支援制度を新たに創設しまして、公費九百億円を措置したところでございます。

 今後は、こうした新たな制度も活用しながら、地域において効率的かつ質の高い医療サービスが受けられるようにしていくとともに、受益と負担の均衡を図りながら、不断の改革を進めていきたい、こう考えているわけであります。

 いずれにいたしましても、診療報酬の改定に当たっては、先ほど来の議論にございましたように、そうしたさまざまな観点をバランスよく考えていく。そのためにも、政府と党がよく対話を行いながら最終的に判断をしていくということで、今回も判断をさせていただいたところでございます。

鴨下委員 それでは、これから先は厚労大臣と少し議論をさせていただきたいというふうに思います。

 皆保険、皆年金、約五十年以上、日本では制度的に運用されてきたわけでありますけれども、最初の段階は、昭和三十六年ごろでありますから、日本も途上国のような状況でありました。

 こういう中で、先進国の福祉社会を目指して頑張ってきたわけでありますけれども、そういう意味においては、例えば、同じサービスを一律に、平等に国民の皆さんにいかにお届けするか、こういうようなことを中心に制度というのは設計されてきたわけであります。ですから、私は、これは非常に成功したというふうに思っておりますし、これからも、セーフティーネットという意味においては、平等性、一律性というものは重視されるべきだ、こういうふうに考えているわけであります。

 ただ、他方、世界一の長寿国になってきた今では、国民の皆さんの置かれている環境や地域の状況はさまざまであります。そういう中で、国民お一人お一人のニーズも変わってきた。

 例えば、在宅医療サービスは、以前は、利用したくても在宅でなかなか実施している医療機関も少なくて、皆さんが利用できるような状況ではなかった。ところが、この数年に、在宅医療も相当前に進んできました。その結果、例えば、おうちで治療したい、医療を受けたいというような方々のニーズも少しずつふえてきたんだろうというふうに思っています。もちろん、全国どの地域でもというわけにはいきませんけれども、さらにこれから普及をしていく、こういうようなことで、我々も必要だろうというふうに思っています。

 ただ、だからといって全員が御自宅で過ごしたいということじゃなくて、いろいろな御事情がありますから、例えば病院に入院したいという方だって大勢おいでになる。

 こういうふうな意味においていうと、それぞれの人のニーズに合わせてさまざまなメニューをこれから用意するというのが、今までの追いつけ追い越せの途上国モデルじゃなくて、国民一人一人の立場に立って、在宅でやりたいという人、入所でやりたいという人、その両方を上手にミックスした形でサービスを受けたいという、さまざまな要望があるんだろうというふうに思います。

 そういう意味においていうと、これからは、私は、キーワードとしては、社会保障は、多様性、それから国民の皆さんが選択できるサービス、こういうようなことを一つの方向性として目指すべきだろうというふうに思っておりますが、田村大臣から解説を含めてお考えをいただきたいと思います。

田村国務大臣 簡単に申し上げれば、そのとおりだという話になるわけであります。

 国民会議の中でも話があったわけでありますけれども、日本の国、一九七〇年代モデルから二〇二五年モデルへと移していこうと。一九七〇年、実はもう既に日本は高齢化社会、高齢者人口七%という社会に入っておったわけでありますけれども、今、足元は二五%になってきておるわけでございますから、かなり高齢社会、超高齢社会に入ってきているわけであります。

 同時に、急性期のみならず慢性期、つまり、生活習慣も含めて、いろいろな形の中で、高齢化の中において、病院に入って出てくればそれでいいという世界ではなくて、病院から出た後も、地域でそれこそ療養しながら生活していかなきゃならない、そういう社会にもう入ってきておるわけであります。

 実は、秋に日中韓で保健大臣会合をソウルでやったわけでありますが、日本だけではなくて、中国も韓国も、感染症のみならず非感染症、生活習慣病も含めた、そういうところにかなり意識が来ておる、それは実は認知症も含めてであるわけでありますが。そういう意味では、これから日本はその先導役として、世界にこれから迫りくるそのような問題に対してしっかりと一つの回答を示していかなきゃならない、このようにも思っておるわけであります。

 今委員がおっしゃられました、そういう中において、例えば予防、これは医療も介護もそうでありますでしょうし、そういう意味からすると健康管理まで入ってくるのでありましょうけれども、そういうところまで含めて、一律のサービスというよりかは、自由な選択ができるような、メニューを示すような形で、それぞれの国民の方々がそれを選択していくというような手法はどうかというお話がございました。

 あわせて、多分、委員がおっしゃりたいのは、それぞれの医療サービスや介護サービスでかかっている費用も国民の皆様方にある程度、これぐらいかかっているんですよということをもっと見える化していく、そういう必要もあるのではないかとお考えになられているんだというふうに思います。

 実は、これ自身、やはり国民の皆様方が、それぞれの医療だとか治療だとかいろいろなものを、介護もそうなんですけれども、受けていただくときに、それぞれのサービスに納得感を持っていただくという意味では大変重要なことであろうと思いますし、それがうまく回りますと、医療費がうまく適正化もしていく、介護費用も適正化をしていくわけでございます。

 例えば、いろいろなインセンティブをつけるなど、いろいろな手法はあると思いますけれども、多様なサービスの中で国民の皆様方にしっかりと御理解と納得をいただきながら、それぞれの健康をお守りいただく、介護の予防を果たしていただく、そういう重要性というものはこれからもますます大きくなってこようというふうに思っておりますので、今後ともいろいろと厚生労働省に御示唆をいただければありがたいというふうに思います。

鴨下委員 これから議論しようとしているところまで言われてしまったんですけれども。

 先ほど大臣がうなずいておった社会保障改革推進基本法、これは議員立法でありますけれども、この中で、我々が提案していた中では、社会保障というのは自助と共助と公助、これのベストミックスだ、こういうような話をこの法律には色濃く反映されています。

 したがいまして、共助、公助の部分については、例えば消費税も入れる、それからさまざまな、今のメニューのような形で共助の部分は整備していく、こういうような話ですけれども、自助については、今までは、自助というと何か勝手にやってくださいという話でしたけれども、そうじゃないんです。自助というのは、例えば、朝早く起きて、六時からラジオ体操をなさって、介護にならないよと頑張っている方、あるいは、さまざま食生活で頑張っている方、こういうような人たちにも何か国も報いられないんだろうか、こういうようなことを我々は常に考えてきました。

 先ほど、自助努力をしたというようなことについて何らかのインセンティブを与える、こういうような話がありましたけれども、私はそれは非常に重要で、最終的に、そういうようなことを進めていくと、全体の社会保障費の適正化にもなり、現役世代、あるいは元気で頑張っている方々の負担も減らせる、こういうようなことにもつながるんだろうというふうに思っております。

 したがいまして、こういうようなことでいうと、プログラム法に、国民会議で余り議論されなかったんですけれども、自助自立のための環境整備、こういうようなことがうたわれました。その中で、もちろん、頑張っている方に対して、国は何らかのインセンティブを差し上げて、そういうようなところにもっともっと光を当てていこう、こういうようなことが二条の中に入っているわけでありますけれども、例えば、厚生労働省は、頑張った自治体とか、それから民間団体とか、個人とか、こういうところにいわゆるアワード、顕彰しよう、こういうような話も一つあります。

 それからあとは、メニューを選ぶというような中には、例えば風邪を引いたり、ちょっとおなかが痛くなったときに、お医者さんに行くのではなくて、薬局へ行ってお薬を買ってしのぐ、こういうようなセルフメディケーションの世界とか、こういうさまざまな中で適正化に貢献してくださったような人たちには何らかのまたインセンティブがあるように、こういうふうに思っているんですけれども、田村大臣、このことについて、ちょっと踏み込んだ答弁をいただければありがたいんですが。

田村国務大臣 きょうは踏み込んだ答弁を求められることが多いわけでありますけれども。

 日本は、委員御承知のとおり、健康寿命世界一ということでありますが、一方で、それでも平均寿命と比べますと、女性で十三歳、男性で九歳、まだ差があるわけでありまして、安倍内閣といたしましても、この健康寿命と平均寿命の差を何とか埋めていきたい、こういうような意識を持っておるわけであります。

 そのためには、それぞれが健康管理を、それこそ自助というような形で御努力をいただく。ただ、それには何らかのインセンティブがあった方がそれぞれ努力しやすい、しがいがあるというところもあるわけであります。

 今、アワードのお話がございました。「健康寿命をのばそう!アワード」というものを昨年度から始めさせていただいておりますけれども、これは今、健康寿命だけなんですけれども、委員からもいろいろな御提案をいただいて、介護も入れたらどうだというようなお話もございますので、これはぜひとも検討をさせていただきながら、実現を目指していきたいなというふうに思っております。

 それから、国がお金を出してというのはなかなか難しいところがあるのは、実は、それぞれ医療保険は保険者が主体になって運営をされておられるものでありますから、国がそこに対して何らかの強制権を持つというわけにはなかなかいかないわけでありますが、いろいろな取り組みが今なされております。

 例えばデータヘルス。やみくもに健康づくりをするのではなくて、データにのっとって、それぞれそれに向かって健康づくりに努力をされた方々に対してポイントをつけて、それによって健康製品がもらえたりですとか、地域によっては、それを地域の通貨のような形で使えるというようなところもあるようでございますけれども、そういうものを何らかの形で後押ししていける、そういうようなことも考えていかなければならぬなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、やはり努力した方が報われる、そういうインセンティブをぜひとも、我々としても、前向きに保険者の方々と協力しながら考えてまいりたいというふうに思っておりますので、いろいろなお知恵を多分鴨下委員はお持ちだと思いますから、またいろいろと御議論をさせていただければありがたいというふうに思います。

鴨下委員 これからマイナンバーも入るわけであります。そうすると、納めた保険料、こういうようなものと、それからサービスを受けたこと、こういうようなことが全体的に把握しやすくなります。

 こういう中で、国民の皆さん、努力して、それぞれのところで頑張っていらっしゃる方がおいででありますから、例えば厚生労働大臣賞とか、総理大臣賞とか、こういうようなものも含めて、ぜひいろいろと工夫をしていただければというふうに思います。ついでに総務大臣賞というものもつくっていただければ、地域の皆さん、非常に頑張れるというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、もう一つの考えとして、医療については、これは国民の皆さんの生命を守る、あるいはさまざまな病気を癒やす、こういうような趣旨もございますけれども、それと同時に、国際的な貢献というようなことも我々は視野に置いて、この医療を位置づける必要があるんだろうというふうに思います。

 総理は、施政方針演説の中で、志を得ざれば再びこの地を踏まずという言葉を引用されて、野口英世博士について触れられました。これは野口英世博士が猪苗代の故郷を出るときに柱に刻んだそうでありますけれども、結果的に、野口博士は、アフリカのガーナに渡って黄熱病の研究に生涯をささげ、その地で亡くなりました。

 昨年、ガーナのマハマ大統領が来日されたときも、大統領からは、野口英世博士の日・ガーナの交流に言及しつつ、日本の支援等を感謝する御発言があったというふうに聞いております。

 そういうように、一人の志のある医師がそれぞれの国に行って頑張るというようなことが、いかに日本のいわばプレゼンスを高め、そして、さまざまな意味で日本と両国間の交流ができる、こういうようなことになることの証明だろうというふうに思います。

 確かに、野口英世博士は、今千円札の肖像にもなっているわけで、志は立ったんだろうというふうに思いますが、こういう医師をこれからどんどん日本で輩出していく、こういうようなことも重要だろうというふうに思っておりまして、この問題について少し触れさせていただきたいというふうに思います。

 総理には後ほどこの御所見をいただきたいというふうに思いますが、まず外務大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 例えば、今、ベトナムやミャンマーに対してさまざまな、医療に関してのインフラあるいは人的、こういうようなもので援助が行われる、あるいはこれから行われようとしている、こういうようなことでありますから、これについて、まず、ベトナム、ミャンマーについてお話を伺いたいというふうに思います。

 ただ、ちょっとその前に、外務大臣も、きのうまで訪米なさっていて、そして、ケリー国務長官初め政府の要人と諸課題についてお話をなさったというふうに聞いておりますけれども、これはちょっと別の次元の話でありますが、強固な日米同盟の確認、あるいは日中、日韓、対北朝鮮、こういうようなことで協議もされたというふうに伺っておりますので、まずこの問題について、今お答えできる範囲で結構でありますから、ベトナム、ミャンマーの医療関係の問題とは別に、まず第一問、お答えをいただきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 まず、訪米についての御質問ですが、言うまでもなく、日米同盟は我が国外交の基軸であります。そして、昨年末、我が国が国家安全保障会議を発足させ、国家安全保障戦略を公表してから後、初めての外相会談という位置づけに今回の外相会談はなりました。

 この外相会談におきまして、二国間関係はもちろんですが、北朝鮮を初めとするアジア太平洋情勢、中東情勢、さらには、開発ですとか女性ですとか、こうしたグローバルな課題についても意思疎通を図り、改めて、日米同盟が揺るぎなく力強いものであるということを確認できたと考えています。

 あわせて、ことしは、日米の間で、ガイドラインの見直しですとか、日米地位協定の環境補足協定の作成等、さまざまな課題が存在いたします。これからの日米同盟の方向性についても確認することができた、よい機会だったと思っております。

 そして、二国間関係のみならず、日本が今後、積極的平和主義に基づいて地域や国際社会に貢献していく、そして米国と協力しながらあらゆる分野において貢献していく、こういったことについても確認できた会議でありました。

 あわせて注目を集めた議論としまして、オバマ大統領の訪日問題がありました。

 オバマ大統領の訪日につきましては、我が国は既に国賓として招請するということを表明しているわけですが、米国側からも、早期訪日の意向であるということは表明されております。

 我が国としましては、米国政府が四月にも予定しておりますオバマ大統領のアジア訪問の際にこれを実現したいというふうに考えておりますが、日米間で引き続き日程等について調整し、そして成功に向けて準備をしっかり進めていこう、こういった意向を確認した次第であります。

 いずれにしましても、日米同盟の強固さを改めて確認できる、よい、そして有意義な機会であったと振り返っております。

 以上が訪日問題であります。

鴨下委員 タイムリーな訪米に心から敬意を表する次第でございます。

 それでは、本題に戻ります。

 海外に対する日本の医療援助というのは、私は非常に重要なことだろうというふうに思っておりまして、一つは、今、成功事例の中で、ベトナムのチョーライ病院という病院がございます。

 これはベトナムの中ではかなり大きな病院でありまして、個人的なことでありますけれども、私は、一九七〇年代に、まだ医学部の学生のときに、サイゴンが陥落する前のときにこの病院を訪れまして、そのときに、日本は脳外科だとかなんかの資材だとか医者を派遣していました。小さな少女がロケット弾の破片に当たって手術を受けたり、こういうようなことを実際に見てまいりましたけれども、こういうような中で、やはり日本とベトナムの関係というのは、こういう長きにわたっての医療、特に、チョーライ病院を通じた、こういうような医療援助に培われてきたんだろうというふうに思っております。

 まず、ベトナムのチョーライ病院の今の現状、そしてもう一つ、今、ミャンマーとの間でももう既に、これは安倍総理が、十二月十五日に首相官邸において、テイン・セイン・ミャンマー大統領の立ち会いのもとに、日本国の厚生労働省とミャンマー連邦共和国保健省との間で、保健・医療分野での協力に関する覚書というようなものが結ばれておりますけれども、この二点について、外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ベトナムにつきましては、近年、ベトナムは急速に経済発展が進んでいます。しかし、その一方で、保健医療体制につきましては未整備であるという問題が顕在化しております。

 我が国としましては、この保健医療分野におけるベトナムへの支援、大変重要だと認識をしております。特に、医療人材あるいは施設の不足が深刻である点を鑑みて、ベトナムの医療システム全体が効果的に機能するために、拠点病院に対する支援について積極的に取り組んでおります。

 そして、御指摘のありましたホーチミン市のチョーライ病院ですが、これは、ベトナムにおける拠点病院の一つであります。

 我が国は、一九六六年以来、半世紀近くにわたりまして、この病棟の建設、機材供与、あるいは専門家派遣などを実施しております。現地では、広く日本病院として認知され、高い評価を得ており、ベトナムにおける日本のODA事業の象徴となっております。

 この関連で、ベトナムにおける人口増加、あるいは高度医療へのニーズの高まりに伴って、日本式の医療マネジメントを取り入れて、チョーライ病院の分院を日越友好病院として建設したいという構想、これはベトナム側より提示されております。

 両国関係のさらなる強化、我が国のすぐれた医療技術の活用、こういった観点から、ぜひ我が国としましてはこの構想を推進したいと考えております。現在、JICAにおきまして、ハード、ソフト両面において円借款を検討し、調査を進めている、こういった状況にあります。

 もう一点、ミャンマーに対する質問ですが、ミャンマーへの支援においては、国民生活向上のための支援、これがミャンマー支援における重要分野であると我々位置づけておりますが、その中で保健医療分野に積極的に取り組んでおります。最近では、マラリア等の感染症対策、地方における保健施設の整備及び保健人材の育成、ヤンゴン等主要都市の病院への機材供与、こういったものを実施しております。

 昨年十二月に開催されました日・ミャンマーの首脳会談におきまして、ミャンマー側から、この保健医療分野における日本国の協力への強い期待が表明されております。こうした期待ですとか現地のニーズも踏まえまして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、全ての人々が基礎的保健医療サービスを必要なときに負担可能な費用で享受できる、こうした体制づくりを推進する観点から、しっかりとこの協力に取り組んでいきたいと考えております。

鴨下委員 ミャンマーのところで外務大臣がお触れになりましたけれども、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、これは要するに皆保険の話だろうというふうに思っておりまして、こういうようなものをシステムとしていわばミャンマーに協力をしていく、こういうようなことというのは非常に有意義なことだろうというふうに思います。

 加えまして、例えば、人材開発、医師、看護師、助産師、こういうような方々の訓練プログラムをつくっていく。さらに、医療サービスの提供内容、例えばケアの質の向上のための専門知識の交換だとか、それから病院、保健所の日本式管理のノウハウ、こういうものを提供していく。こういうようなことというのは非常に重要で、我々も、明治以降、さまざまな欧米諸国から学んできたり、あるいはそういうような方々が日本に来て、システムをつくってくれることに手伝いをしていただいた。こういうようなことを、今度は我々が他国、特に途上国にしていくということが非常に重要なことだろうというふうに思っております。

 そういうようなことで、我々はそういう使命を帯びているんだろうというふうに思っておりますが、それと同時に、このことはまた、海外に対する日本のさまざまなビジネス、特に医療に関しては、例えば医療機器、それから薬、医療技術、インフラ、こういうようなものに対して日本から大いに貢献をするということは、その国に尊敬をされるということもありますけれども、同時に、成長分野をさらに展開する、こういうようなことにもつながるんだろうというふうに思っております。

 ですから、これは経産大臣にお伺いしたいんですが、日本は今、健康寿命世界一であります。これはずっと、一九九〇年から二〇一〇年まで、WHOが統計をとった、あるいはそれ以外のことも含めまして、日本は男女ともに健康寿命は世界一が続いています。健康寿命というのは、介護あるいは医療の提供を受けなくても元気でおいでになれる、こういうような寿命でありますけれども、世界一を続けているというようなことは、なかなかほかの国ではまねができない。

 これに何が寄与したかといいますと、一つは国民皆保険、さらには医師の水準の高さ、そして医療技術、薬、こういうようなことが主だというふうに言われていますけれども、私は、それだけではなくて、むしろ、例えば食生活だとか清潔を好む国民性、ライフスタイル、例えばお風呂によく入るとか、トイレがウォシュレットであるだとか、こういうような多面的な部分があるんだろうというふうに思っておりまして、これについては、さまざまな国からある意味で羨望の的になっています。

 ですから、これは中東のある大使から話を聞いたんですけれども、日本のこういうスタイル全体をいわば自分の国にも導入したいんだ、こういうような話がありまして、これは裏返すと、一つのビジネスチャンスなのかなというふうにも思います。

 今、上海だとか何かで日本食ブームがあるというふうに聞いています。おすしを食べると健康にいいらしい、それの一番の、最終的なことは、健康寿命を延ばして御自分が健康でいられる、こういうようなことが裏側のメッセージとしてあるんだろうというふうに思いますので、こういうような意味においては、我々は当たり前のように考えていますけれども、この健康寿命世界一というのは、他国から見ると非常に重要な関心事であります。

 茂木大臣にお伺いしたいのは、こういう健康寿命世界一というキラーコンテンツ、このコンテンツを日本がどういうふうにいわば世界に展開していくか、こういうような戦略的なことについて、経済産業省として、あるいは、大臣はそういう意味では非常に造詣が深いわけでありますけれども、こういうようなことを世界の皆さんにわかっていただき、使っていただく、こういうようなことについてのお考えをいただければと思います。

茂木国務大臣 鴨下議員御指摘のように、医療の国際展開、これは相手国の医療水準の向上にもつながりますが、それだけではなくて、我が国の医療機器の開発、さらには新たな医療関連サービスの創出、そして、委員強調していただいたように、生活様式そのもの、これを国際展開するということで、我が国の経済成長に資するものだと考えております。

 具体的な成功事例をつくっていく、さらには、目標を定めてそれを確実に達成していく、こういったことが極めて重要だと考えておりまして、例えば、日本再興戦略におきましては、二〇二〇年までに海外の医療技術、サービス市場の一・五兆円を獲得する、また、新興国を中心に日本の医療拠点十カ所程度の創設を行っていく。そういったものを具体的に使ってもらうことによって、ロシアにおいてもベトナムにおいても、日本の医療、そして関連したさまざまなサービスのよさを知ってもらうということが重要だと考えております。

 今、昨年の四月に医療機器メーカー等をメンバーとして設立されましたMEJ、メディカル・エクセレンス・ジャパン、こういったものを通じて海外のニーズとのマッチング等々を行っておりまして、具体的には、昨年の五月に、日本の病院や企業等の出資によりまして、ウラジオストクに日本式の画像診断センターが設立をされまして、毎月五百名程度の現地患者が訪れているということであります。

 それから、ハード面だけではなくて、御指摘のようにソフト面の支援、こういったことも極めて重要だと思っておりまして、タイ、ベトナム、バングラデシュにおきまして、医師、看護師、放射線技師などの人材育成のために日本から専門家を派遣する、また海外からも研修生を受け入れる、そういった双方向の支援を行い、また、制度面でも、できることは日本の制度をいろいろな形で海外の国に適用してもらう、こういったことが極めて重要だと考えております。

鴨下委員 茂木大臣、今のお話の中で、私はやはり、総合的な意味で、日本のブランドという意味においては、健康長寿が世界一というのがずっと、約二十年間維持しているというようなことは、キラーコンテンツだというふうに思うわけでありますけれども、こういう意味においては、大臣の評価をいただきたいというふうに思うんです。

 これから展開していく上で、健康長寿というものを前面に出してさまざまな、日本のいわばソフト、ハード、買っていただいたり、援助をしていったり、こういうようなことが必要だというふうに思っておりますが、そういう評価はいかがでございましょうか。

茂木国務大臣 昨年、安倍政権において策定をいたしました日本再興戦略、今後の日本の姿、大きく四つの柱を立てておりますが、そこの中の一丁目一番地が健康長寿社会ということでありまして、それは、単純に技術や機器だけではなくて、サービス、ノウハウ、制度、こういったものに裏づけされたものである。

 私も各国の関係閣僚と話をしておりますが、実際に日本が健康長寿である、そしてそのためのサービスが極めてすぐれている、こういうことについては高い評価をいただいております。

 日本においてそういうサービスを外国の方が受けられる、同時に、海外において日本がそういったサービスを提供していく、まさに我が国のキラーコンテンツとして積極的に取り組みをしてまいりたいと考えております。

鴨下委員 時間がなくなりましたけれども、厚労大臣、一言だけ。

 ハード部分はかなり日本は貢献しているんですけれども、ソフトの部分についてはまだ甚だ、野口英世博士の次に行くような医師、看護師、こういう人たちをもっと野心的に育てる必要があるだろうというふうに思いますが、これについて簡単にお答えをいただければと思います。

田村国務大臣 昨年、ミャンマーの方から保健大臣にお越しをいただきました。ペー・テッ・キンさんという方でございましたけれども。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、これに対して、日本の制度自体に非常に興味をお持ちでございまして、向こうの方から行政官を一人、こちらの方に派遣をいただくということでございます。いろいろとこちらの方からアドバイスできればいいと思っておりますし、また、こちらから担当官の方を一月に派遣させていただきました。これからしっかりと合意にのっとって協力をしてまいりたいというふうに思います。

 もちろん、例えばハードの部分といいますか、医療機器でありますとか医薬品等々、こういうものを向こうに、いろいろとこれから展開していくというのも一つなのかもわかりませんが、それだけではございませんでして、例えば、この公的医療保険制度自体も、その国の発展段階がございますから、そこにきめ細かく対応していく必要があろうと思いますし、それから、医療人材でいえば、医師や看護師、その国の国民性に合わせながらでありますけれども、いろいろな育成方法、これもアドバイスをできる部分はしていかなきゃならぬと思います。

 それから、先ほど委員おっしゃられましたとおり、病院でありますとか保健所の運営管理のあり方、こういうことも、ノウハウ等々をしっかりとアドバイスができればというふうに思っておりまして、そのようなソフトの部分があって初めてハードが動いていくわけでございますので、しっかりとソフトの部分も協力をさせていただきたい、このように思っております。

鴨下委員 総理、今の議論をお聞きになっていて、私は野口英世博士のように外に出ていくお医者さんというのが必要だと思います。そして、そういうような人たちが、例えば日本の薬あるいは医療機器、こういうものをしっかりと現地の皆さんに理解していただいて、使いこなして、最終的に日本の成長分野にも寄与する、こういうようなことがまさに国家戦略だというふうに思っておりますが、最後に総理の御意見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本は、まさに長寿社会を、元気で長生きできる社会を実現したわけでありまして、これは、先ほどの議論にありますように、日本のキラーコンテンツと言ってもいいんだろう、このように思います。

 このキラーコンテンツをどのように生かしていくかということなんですが、まず、産業政策としてどんどん、ハード、ソフトも含めて、日本のすばらしい医療、介護の技術、そしてハード、ソフトとも外に出していく、あるいは、外からこの日本のすばらしい技術を求めて日本にやってくる。と同時に、世界の人々をこのキラーコンテンツを生かして助けていくという点もあるんだろうと思います。

 アフリカにおいて野口英世博士が自分の命と引きかえに多くの人たちを救おうとした。実際、政府の機関ではなくて、NPO、NGOの人たちは、どんどんアジア、アフリカへ出ていって、医師、看護師の皆さんが非常に過酷な勤務状況の中で本当に頑張っている。と同時に、そこで大変な生きがいを皆さん感じておられるんですね。そういう皆さんを政府も支援していきたい。

 あるいはまた、カンボジアに参りましたときに、日本が支援をしてつくった国立母子保健センターを訪問いたしました。ここで頑張っている女性の医師あるいは看護師、助産師の皆さんは、カンボジアの幼児の死亡率を改善することに成功したわけですね。そして、病院だけではなくて、その後の保健についても指導しながら、あるいは、病院にある非合理的な習慣を変えていくことによって、アクセスをより可能に、そして手続を透明化していった。

 つまり、カンボジアの母子保健のあり方を大きく変えていくという大変な事業を、やはり、これは何人かの人たちの強い熱意と意思でそれがなし遂げられているという姿も拝見をいたしました。こういう分野にこそ日本は力を入れていかなければいけない。

 そういう分野で活躍する国というのはやはり尊敬されるんですね。それこそが、やはり、尊敬される日本に、誇りある国につながっていくのではないか、このように感じたところでございます。

鴨下委員 終わります。

二階委員長 この際、宮腰光寛君から関連質疑の申し出があります。高市君の持ち時間の範囲内でこれを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 自由民主党、宮腰光寛でございます。

 質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 きょうは、昨年から議論が続く農政改革について質問をさせていただきたいと思っております。

 昨年十二月十日、政府は、農林水産業・地域の活力創造プランを決定いたしました。自民党が公約に掲げた農政の二本柱、担い手を育て、農林水産業を成長産業にするための産業政策と、国土保全や地域の伝統文化の維持といった農業、農村の多面的機能を発揮するための地域政策、これらを車の両輪とする政策を具体化した農政改革であります。

 自民党の農政は単なる構造改革路線ではありません。改革を進めると同時に、日本社会の原点である農村を守り、次の世代にいい形で継承していく農政でなければならないというふうに考えております。

 我が党は、特に、ことしを農政改革実行元年というふうに位置づけております。安倍総理も、強い農業をつくっていく、息をのむほど美しい日本の農村風景を守っていくとかねがねおっしゃっておいでになります。

 そこで、まず、活力創造プランや、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略など、今回の農政改革の真の狙いについて、総理からお伺いをいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 宮腰議員は、ずっと農業を専門的に扱ってこられまして、まさに問題意識として、農業を、やる気のある、特に若い人たちにとって魅力的な分野にしていこう、産業として競争力のあるものにしていこう、同時に、やはり農業というのは大地に根差しているわけでありますから、地域の文化、社会を担っている、そして伝統がそこに脈々と息づいている、美しい国土を保全しているのも農村である、これを両立させていく、これは大変難しいことでありますが、それをやらなければいけないという問題意識でずっと取り組んでこられた。改めて敬意を表したいと思うわけであります。

 我が国の農林水産業の活性化は待ったなしの課題であり、あらゆる努力を傾け、強い農林水産業とともに、美しく活力ある農山漁村を実現していく決意であります。

 このため、昨年末、農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめ、輸出促進や六次産業化の推進による付加価値の向上、多様な担い手の育成、確保、そして農地集積による生産性の向上、美しいふるさとを守る日本型直接支払いの創設などに精力的に取り組んでいくこととしています。

 その上で、四十年以上続いてきた米の生産調整を見直し、農業者が、マーケットを見ながら、みずからの経営判断で作物をつくれるようにするとともに、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興を図ることによって、農地のフル活用を図り、食料自給率と食料自給力の向上をあわせて図っていくこととしております。

 こうした改革を着実に進めることによって、農業を若者にとって魅力ある産業に育成させ、農業、農村全体の所得倍増の実現につなげていきたい、このように考えております。

宮腰委員 ただいま総理からお答えがあったとおり、今回の農政改革、具体的には大きく四つの改革で構成をされております。農地の集積、米の生産調整の見直し、経営所得安定対策そして日本型直接支払いであります。予算委員会では米の生産調整に特化した議論がなされておりますけれども、改革の全体像が理解されていないのはまことに残念であります。この四つの改革はパッケージであるというふうに思っております。

 まず一つ目の改革、農地集積。

 農地問題は農政の基本中の基本であります。終戦直後の農地解放、郷里の大先輩、松村謙三先生が農林大臣として取り組まれました。我が国は、農地解放により、地主、小作関係を解消し、自作農をつくることで民主国家としての歩みを始めました。しかし、その後、農地の所有者が農村を離れたり、高齢化や後継者がいないことで農地をほかの農家に預けるケースがふえてまいりました。戦後の農地解放の成果を法律で担保した農地法、その第一条、農地はみずから耕作する者が農地を所有することを最も適当と認めてと、いわゆる耕作者主義の理念が、時代とともに形骸化をしてまいりました。

 そこで、農地を利用している耕作者こそが最も重視されるという農地法の原点に立ち返り、農地に関する基本的な考え方を所有本位から利用重視へと大きく転換をいたしました。これが五年前の農地法改正の趣旨であります。昭和二十七年の制定以来、五十七年ぶりの抜本改正となりました。当時野党であった民主党の賛成も得て、成立をいたしました。

 この改正によりまして集落営農が進み、リース方式による農業参入が完全に自由化されました。また、農地として利用されていれば、農地を貸した場合でも相続税の納税猶予が継続するということにもなりました。

 昨年秋の臨時国会で成立した農地中間管理機構関連二法、いわゆる農地集積バンク法は、この農地法抜本改正の延長線上にあります。これも与野党で修正の上、成立をさせました。

 新制度では、農地の所有者から、公的機関である農地中間管理機構が農地を直接借り入れ、必要に応じ一定の整備をした上で、分散した農地を集積した形で借り手に貸し出す。公的機関が間に入ることで、農地の所有者も信頼して農地を出していただける仕組みであります。飛び飛びの農地で苦しんでいる現場の担い手農家からの強い要請に応えた改革であります。

 また、リース方式で企業が参入する際、個々の農家と相対で交渉している、そういう状況も大きく改善されることになります。出し手と借り手の相対契約ではなく、公的機関そのものが利用権を設定する仕組みでありまして、農地集積の究極の手法であるというふうに考えております。戦後の農地解放を唯一経験していない沖縄でも、この集積の仕組みは極めて有効であります。

 補正と当初予算を合わせて七百五億円の予算が計上されておりますが、それでも足りないぐらいの気持ちで取り組んでいただく必要があると思います。

 所得倍増目標十カ年戦略で、担い手の農地集積割合を、現在の五割から、十年後には八割を目標にしております。中間管理機構の活用で目標を十分達成できるのかどうか、林農林水産大臣にお伺いをいたします。

林国務大臣 今、宮腰委員からお話がありましたように、我が国の農業構造、この十年間で、担い手の利用している面積の割合が三割から五割まで来ておるところでございます。しかし、農業を、生産性を高めて成長産業、こういうふうにしていくためには、さらに担い手への農地集積、集約化を加速化することが必要でございまして、今お話がありましたように、十年間で五割から八割まで拡大していこう、こういうふうな目標にしております。

 このために、画期的な手法として、都道府県段階に農地中間管理機構を整備しよう、こういうことで、今お話をしていただきましたように、与野党の修正を経て成立したところでございます。

 これで、農地を借り受け、機構が大区画化等の条件整備も必要な場合には行う、こういうことをした上で、法人経営体、あるいは大規模家族経営、それからリース方式で参入する企業、こういった皆さんに、規模拡大や利用する農地の集約化の意向に配慮して転貸するスキーム、これができることになります。

 したがって、農地中間管理機構の法制度としての仕組み、それから、七百五億円でも足りないぐらいだ、こういうことでお励ましをいただきましたけれども、予算上の支援措置、それから地域の関係者の話し合い、人・農地プランの作成、見直しですが、この三つをセットで取り組んでいきたい、こういうふうに思っておりまして、そういうことで、担い手への農地集積、集約化を加速化して、目標である、十年間で全農地の八割を担い手の農地利用が占める、こういう農業構造を実現したいと考えております。

宮腰委員 今ほど大臣の方から話し合いという御答弁がありました。

 昨年の臨時国会で、人・農地プランを念頭に置き、話し合いで地域の担い手を決めていく仕組みを法制化いたしました。農地集積は、この人・農地プランと連動して進めていく必要があります。

 都道府県における中間管理機構の設立を急ぐ必要がありますけれども、準備はどこぐらいまで進んでいるんでしょうか。大臣、お願いいたします。

林国務大臣 まさに今おっしゃっていただきましたように、地域の農業者の徹底した話し合い、この人にこの地域は託していこう、こういうことが出てくることが大変に大事でございまして、そういった意味で、そういう地域の農業者の皆さんや市町村が農地中間管理機構との連携を密にして、機構のスキームを活用していただくことが重要である、こういうふうに思っております。

 機構については、制度設計の段階から、実は都道府県、農業公社との意見交換を行ってまいりました。また、法案が閣議決定をした直後にも、都道府県に対して制度の説明を行いました。法案成立後、また予算案決定後に、詳細な説明を都道府県、関係団体へ行うとともに、都道府県において機構が早期に立ち上げられますように、準備についてお願いをしてまいりました。一月から二月にかけては、この推進の中心となる都道府県知事へ、機構の早期立ち上げについても要請をしてきたところでございます。

 こうしたことで、各都道府県とも前向きに検討していただいておりまして、三月から四月にかけて相当数の都道府県において機構が立ち上がる、こういうふうに見込んでおるところでございます。

宮腰委員 取り組みにまだ濃淡があるということも伺っておりますので、ぜひ、この集積を加速化していくという意味でも、早く機構を立ち上げていただくように、農水省としても頑張っていただきたいというふうに思っております。

 集積した農地を配分するという際には、もちろん、外部からの参入も認められております。その際も、農地法第一条の地域との調和要件、これを満たすことが重要でありますが、この点について、林大臣、どうお考えでしょうか。

林国務大臣 この人・農地プラン、取り組みを二十四年度から進めておりますが、地域によっては、担い手がいない、もしくは不十分という地域もございまして、こういうところでは、ほかの地域から、法人経営それからリース方式、こういうことで参入を希望している企業に積極的に働きかけていく、こういう工夫も必要になってくる、こういうふうに思っております。

 農地中間管理機構が行う農地の貸し付けですが、機構が貸付先決定ルールを定めて、知事がこれを認可して公表する、こういうふうになっておりますが、知事の認可要件として、地域の農業の健全な発展を旨として、公平かつ適正に農用地等の貸し付けの相手方の選定等を行うものでなければならないということが法の八条に定められているところでございます。

 地域の農業の健全な発展でございますが、これはまさに、今、宮腰委員からお話のありました農地法一条に規定をされております、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農用地についての権利の取得を促進、このことは当然に含まれておるということでございますので、機構が新規参入者に農地を貸し付ける際には、以上のような枠組みの中で地域との調和要件を満たす、こういうことになるということでございます。

宮腰委員 次に、二つ目の改革、米の生産調整の見直しについて伺いたいと思います。

 今回の活力創造プランでは、需要に応じた生産を推進するため、水田活用の直接支払い交付金の充実、中食、外食等のニーズに応じた生産と安定取引の一層の推進、きめ細かい需給、価格情報の提供等の環境整備を進める、こうした中で、定着状況を見ながら、五年後を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、国が策定する需給見通し等を踏まえつつ、円滑に需要に応じた生産が行える状況になるよう、行政、生産者団体、現場が一体となって取り組むこととしております。

 その際、飼料用米、加工用米などの総合的な米の需給安定を確保する水田フル活用ビジョンの作成を産地交付金の交付要件とする、複数年契約や播種前契約による安定取引の一層の推進、これらの対策を進めていくこととしております。まさに、需要に応じた売れる米づくりを推進するための改革であります。

 米の需要は、近年のトレンドでは、毎年八万トン程度減少いたしております。その上、日本の人口は、平成二十三年には二十六万人減少、二十四年には二十八万人の減少。減少のペースはいずれもっと速くなります。二十四年七月から二十五年六月までの一年間の需要量は、前の年に比べて三十二万トンも減少いたしました。一年間で約四%強の大きな減少幅になっているわけであります。主食用米の作付面積は、いずれ水田全体の五割を割り込むと想定をされております。

 そのような米を取り巻く厳しい状況を直視し、農業者の経営判断と水田フル活用で将来にわたって米の需給安定を確保していく、これが今回の米政策の見直しであります。困難ではありますけれども、必ずやり遂げなければならない課題であるというふうに考えております。

 この改革を、減反廃止や農家淘汰政策と表現した報道がありました。その一方で、一部の専門家からは、これは減反強化ではないかという正反対の批判もなされているところであります。改革の全体像の中での生産調整の見直しというところが見えていないからではないかというふうに考えております。

 総理は、生産調整の見直しと定義された上で、専門外の人が理解しやすいように、いわゆる減反の廃止と、注釈的な説明をしておいでになりますけれども、改めて総理のお考えをお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の米の生産調整の見直しでは、これまで、行政が配分するお米の生産数量目標に従って農業者が作物をつくっていたのでありますが、それを変えまして、農業者がマーケットを見ながらみずからの経営判断で作物をつくれるようにするとともに、需要のある麦や大豆や飼料用米、そうしたものの生産振興を図ることができるようにする、いわば農地フル活用を図り、食料自給率と食料自給力の向上をあわせて図っていくことであります。

 こうした政府の内容を一般の人々にお話しする際に、理解しやすいように、いわゆる減反の廃止というふうに述べてきたものでありますが、中身については今申し上げたとおりでございます。

宮腰委員 農業者の経営判断と水田フル活用、農地フル活用でお米の需給安定を確保していくというのが総理の御発言の趣旨であるということがよく理解できたわけであります。

 米の直接支払い交付金につきましては、激変緩和のための経過措置として、十アール当たり一万五千円の単価を二十六年産米から四年間、七千五百円に固定し、三十年産米から廃止することにいたしました。これによる所得減につきましては、飼料米などに対する交付金、日本型直接支払いの交付金などでカバーできる環境を整備しております。

 特に今回、飼料米の交付金については十万五千円を上限とする数量払いとした上で、戦略作物として本作化をいたしました。現場からは、農業所得がしっかり確保できる制度になっているかという声があり、畜産が余り盛んでない県からは、飼料米の集荷や販売について多くの懸念が示されております。

 一方で、茨城県では、全国で二番目に多い六千八百ヘクタールに及ぶ主食用米の過剰作付、これを三年間で全て飼料米に切りかえていくという意欲的な計画を立てております。

 生産現場の理解を得つつ、どのように飼料米の生産や流通に取り組んでいかれるのか、林大臣からお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 今般の施策の見直し、これは大変大きなものでございますので、ことしの一月上旬から二月六日までで、ブロック別、都道府県別説明会、これは全ての都道府県、特に北海道は大きいですから地域別に分けて、合計六十回にわたり実施をしてまいりました。

 今、宮腰先生からおっしゃっていただいたように、飼料用米の本作化、これを進めるために、やはり国、地方公共団体、農業団体、飼料メーカー、みんな一体となって、低コストで省力的な栽培技術ですとか、多収性品種の導入ですとか、需要先の確保、飼料用米の円滑な流通体制の整備、こういうことをきめ細かく幅広に行っていく必要がある、こういうふうに考えております。

 本作化に向けて十万五千円を上限とする数量払い、今御指摘いただいたとおりでございますが、多収性専用品種の取り組みに対して、さらに一万二千円の産地交付金の追加配分、これを行うこととしております。さらに、地域の実情に応じて独自の支援が行われる産地交付金の活用も地域で検討されておられるというふうに聞いております。

 また、省力的で低コストな栽培技術の導入に向けては、多収性専用品種、それから直播、直まき栽培の導入、それから飼料用米栽培の団地化、こういうことを実証、普及していく、多収性専用品種の種子の確保をきちっとやる、種子転用の環境整備や過不足の全国調整、こういうことを行っておるところでございます。

 また、需要先の確保でございますが、耕種農家、この餌米をつくってくださる方と畜産農家のマッチング活動を行っておりまして、これまでで、畜産農家からは約六万七千トンの利用要望が寄せられております。こうした新たな飼料用米ニーズに対して、米の産地を結びつけていかなければなりませんので、飼料用米の全国的な需給情報、こういうものを提供しております。

 さらに、円滑な流通体制を構築するために、まず耕種側においては、乾燥調製貯蔵施設、こういうものを整備する、それから畜産側で必要となる加工、保管施設の整備、さらに粉砕機、混合機等の機械導入への支援、それから配合飼料工場での長期的、計画的な供給、活用のための情報交換、こういうものを行っておるところでございまして、今後もこういうことを一体的に推進してまいりたいと思っておるところでございます。

宮腰委員 今ほどの大臣がおっしゃった対策、これらの定着状況を毎年検証しながら、丁寧に進めていっていただきたいというふうに思っております。

 総理にお伺いしたいと思うんですが、この予算委員会では、日本の米は高いという前提で議論されているように思います。私は、そうではないというふうに思っているわけであります。ブランド米もあれば、中食、外食用のお米もありますし、米は単一のマーケットにはなっておりません。

 スーパーで売られている家庭向けの五キロ二千円の平均的なお米、国民一人当たり一カ月分の消費量に相当いたします。一日分の米代が約六十二円。一食分ではありません、一日分で六十二円。ペットボトルの水や缶コーヒーなどは、一本で百二十円から百三十円いたします。米の一日分の倍ほどの価格であります。

 果たして、日本の一般的な米の価格は、他の食料品と比べて高いと見るか、あるいは安い部類に入ると考えておいでになりますか。総理からお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 お米の値段については、一般的に、日本のお米というのは高いんじゃないか、消費者の皆さんも、高いお米を食べさせられているのではないか、そういう認識があるのは事実なんだろうなと思いますが、今御指摘にあったように、小売店で五キログラム二千円で販売されているもので計算しますと、一人一日当たり平均的な支出額は、確かに六十二円であります。お茶わん一杯当たりで計算しますと二十六円になるわけでありまして、二十六円であんなにおいしいものを食べられるということになるんですね。この値段については、毎日食べる主食としては、私はリーズナブルではないか、このように思います。

 いずれにいたしましても、今回の農政改革では、輸出促進、六次産業化による付加価値の向上、農地集積による生産性の向上など、取り組みを着実に進め、その上で、マーケットを見ながら、みずからの経営判断で生産できるようにしていくということによって、消費者への米の安定供給と米の生産者の所得増大を図っていくこととしております。

 また、あわせて申し上げますと、お米の輸出をしていくという可能性について言っても、お米というのは、五キログラム二千円で今の計算になるわけでありますが、最高級品を食べても、これが二倍、三倍になっていったとしても、ペットボトル一本ちょっとということになるわけでございます。そこで、世界の最高級品を食べたいと思う人は世界にたくさんいるのではないか、私はこんなことも感じるわけであります。

 いずれにいたしましても、国内で食べているお米の値段というのは、極めて質の高い、安全でおいしいものを食べている上においては大変リーズナブルな値段だな、こんなようにも感じているところでございます。

宮腰委員 主食の米の価格はリーズナブルである、かつ安全、安心であるという御答弁をいただきました。私も全くそのとおりだというふうに思っております。

 さて、次は、三つ目の改革、経営所得安定対策について伺います。

 諸外国との生産条件不利を是正するゲタと言われる畑作物の交付金、農業者の拠出に基づくセーフティーネットであるナラシと言われる米・畑作物収入減少影響緩和対策、この対策を平成十九年から行ってまいりました。これまでは、対象となる農業者について、認定農業者で四ヘクタール以上、集落営農で二十ヘクタール以上という面積要件を課しておりましたが、今回の改革でこの要件を廃止するということにいたしました。

 現状では、経営面積が小さくても規模拡大を目指す意欲ある農業者が対象になっておらず、新規就農者は入り口からほぼ対象外となっているわけであります。この面積要件の廃止や認定就農者の取り組みによって、意欲と能力のある農業者であれば対策の対象になれるというふうに考えてよろしいでしょうか。林大臣、お願いいたします。

林国務大臣 今、宮腰先生おっしゃっていただいたように、今までは、都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタール、集落営農二十ヘクタールを原則としておりましたが、これを、規模要件は今後は課さない、こういうことにいたしました。

 これによりまして、効率的、安定的な農業経営を目指して経営改善を図ろうとしていただいている方は、認定農業者になることによりまして、経営面積にかかわらず、広く経営所得安定対策、今言っていただきましたゲタ、ナラシ対策の対象となることが可能、こういうふうになります。

 今回の見直しにおいては、さらに新規就農者のお話もしていただきましたが、就農したばかりで直ちには認定農業者として効率的かつ安定的な農業経営を目指せない、こういう方でも、農業経営基盤強化促進法に位置づけられた認定就農者、これになることによりまして、経営所得安定対策に加入できることといたしました。

 したがって、今後は、意欲と能力のある農業者が幅広く経営所得安定対策の対象となることが可能になるということでございます。

 今回の制度見直しは、法整備を経て、平成二十七年度から実施をする予定でございますが、実施までの約一年間を通じて、必要な方は、認定農業者や認定就農者の認定を受けたり、集落営農の組織化を図っていただく、こういうことを期待しているところでございます。

宮腰委員 今回の改革では、意欲ある農業者の所得をさらに安定させるという趣旨で、全ての作目を対象として収入保険の導入を予定いたしております。新年度予算に調査費が計上されております。

 収入保険は、WTO協定上、デミニミスとして補助金の支出が認められている仕組みであります。昨年の野党共同提案の法案にも盛り込まれております。

 この収入保険制度の目的とイメージ、導入への道筋について、大臣からお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 大変大事なポイントをお聞きいただきました。

 今の農業共済制度、これは、自然災害による収穫量の減少ということを対象としておりますので、市場による価格低下が対象となっていない、また、対象品目が収穫量の把握ができるものに限定されておりますので、加入単位も品目ごとになっておりまして、農業経営全体がカバーできていない、こういう問題があるわけでございます。

 したがって、全ての農作物を対象としまして、農業経営全体の収入に着目した収入保険、これの導入について調査検討を進めていく必要があると考えておりまして、今、先生からお話がありましたように、二十六年度の当初予算案において調査費を計上いたしております。

 この調査結果を踏まえて制度設計を行いまして、平成二十七年産について、したがって来年の産について、まず、作付前の加入から納税申告までのワンサイクル、すなわち、平成二十六年中に加入をしていただいて、二十七年につくっていただいて、二十八年に納税申告をする、このワンサイクルを、フィージビリティースタディーを実施した上で制度を固めていければ、こういうふうに考えております。

 今後の調査等の結果によりますので、現段階でまだ確たることを申し上げられないわけでございますが、調査検討が順調に進めば、最も早い場合で平成二十九年の通常国会に関連法案を提出することになるもの、こういうふうに考えておるところでございます。

宮腰委員 次は、四つ目の改革、地域政策としての日本型直接支払いについてであります。

 食料・農業・農村基本法は、第三条「多面的機能の発揮」の条文のところで、「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能については、」「将来にわたって、適切かつ十分に発揮されなければならない。」としております。

 日本学術会議の答申では、農業、農村が果たしている多面的機能は、数字でカウントできるだけでも年間八兆二千億円とされております。

 農業用水の維持管理は、集落が担っております。下流の市街地では、生活用水や防火用水として利用されており、維持管理は行政が担っております。草刈りを初めとする道路の維持管理も、農村部では集落が、市街地では行政が行っております。農業、農村の多面的機能は、しっかりとした集落機能があって初めて維持されるものでありまして、少数の担い手だけではとても維持できないというのが現実であります。

 二〇〇三年に、全てのOECD加盟国の合意を得て、農業の多面的機能に関するレポートというのが公表されました。多面的機能を維持するために適切とされる直接支払いの方法は、農業生産の維持に必要なコスト差を補填するものであるというふうにされております。この考え方はWTOルールでも認められております。

 今回の改革で導入する日本型直接支払いは、多面的機能を維持するための我が国初の本格的なデカップリング政策であります。

 EUでは、長年にわたり、農業生産と切り離した直接支払い制度、デカップリングを実施しておりますが、農地は、農産物の生産以外の機能を果たしている、いわば公共財的な性格を持つことを支払いの正当性及び根拠としております。

 畑作や酪農地帯であるEUとは違い、農地や農地周りを維持するための共同活動を対象とする農地維持支払いをベースにしている、これが日本型直接支払いの特徴であり、地域政策として、農地集積や担い手づくりという産業政策と整合性がとれたものになっております。

 日本型直接支払いは、今後の農政のベースになります。総理は、息をのむほど美しい日本の農村風景を守るというふうにおっしゃっておいでになりますが、産業政策との整合性や国際標準との関係など、日本型直接支払い制度をどのように位置づけておいでになりますか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本は古来より瑞穂の国と言われてきておりまして、これは富山でも山口県でもそうなんですが、いよいよ春に向かって田に水を張る、そのとき、夕刻になれば月がその田に映るんですね。この美しさ。そして、夏に向かってどんどん田が青くなっていく。そして、秋になれば黄金色になっていく。この日本の四季をまさに映す美しさ。美しい国土とそして景観を保ってきたのは水田にほかならないんだろう、こう思うわけであります。

 農林水産業は、国民に食料を安定的に供給し、地域の経済を支える重要な産業であるとともに、今申し上げましたように、我が国のすばらしい歴史、文化、伝統を育んできたふるさとと国土を守る多面的な機能を有しているわけであります。この多面的な機能の重要性をしっかりと、日本だけではなくて世界でもそれは評価する必要があるんだろうな、私はこのように思っています。

 このため、私は、強い農林水産業とともに、美しく活力ある農山漁村を実現していく決意を述べてきたところでありまして、輸出促進や六次産業化の推進による付加価値の向上、農地集積による生産性の向上など、産業としての競争力を高めていく施策に加えて、美しいふるさとを守る日本型直接支払いの創設に取り組むことを明言してきたところでございます。

 先ほど委員も御指摘になられたように、諸外国においては農業生産と切り離した直接支払いが生産手法として用いられておりまして、デカップリングと称されているところでありますが、水田農業が中心の我が国においても、同様の政策を日本型直接支払いとして本格的に導入することとしているところでありまして、先ほど申し上げましたように、古来より受け継いできた日本のこの美しい景観、環境、伝統、文化はしっかりと守っていくことも私たちの大切な責任である、このように認識しております。

宮腰委員 日本のよき伝統を次の世代に受け継いでいくというのが我々の世代の責任でもあるという御答弁だったと思います。

 日本でこれまで実施してきているデカップリング、つまり、中山間地域等直接支払い、環境直接支払い、これを多面的機能直接支払いとセットで法制化する方針とお聞きをいたしております。

 自民党としては、時限法ではなく恒久法とし、その中で、基本法第三条をベースに深掘りをしていただいて、日本型直接支払いの基本理念を明確にすべきであるというふうに考えておりますが、農水大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 日本型直接支払いは、今、宮腰委員からお話があったように、国土の保全を初め広く国民が受益するものとして、基本法三条に定められた多面的機能の発揮を促進するものでございまして、農地維持支払いと資源向上支払いから成る多面的機能支払い、今度新しくできるわけですが、それに加えて、中山間地域等直接支払いと環境保全型農業直接支払いもあわせて実施をしていこう、こういうことでございます。

 平成二十七年度からは、これら四つの直接支払いに関する取り組みを法律に位置づけることによりまして、現場で安心して取り組んでいただけますように、法案の提出に向けて作業を既に進めておるところでございます。

 今お話がありましたように、この法案については、基本法第三条の趣旨に沿って、恒久法とするとともに、日本型直接支払いの基本的な考え方を基本理念として定めることを検討しているところでございます。

宮腰委員 ぜひ、この通常国会で法案を成立させていきたい、私もそう思っております。

 最後に、農業分野の組織改革について伺っておきたいと思います。

 この組織改革については、あくまで農政改革の一環であり、規制改革そのものが自己目的ではありません。目的を明確にしてこそ、関係者の協力のもとに改革の成果が上がるものというふうに考えております。

 総理にお聞きしたいと思います。

 農協、農業委員会、農業生産法人のあり方の見直しにつきましては、農業の成長産業化や農業、農村の所得倍増の実現に資することを目的として行うものであり、いわゆる岩盤規制に穴をあけること自体が目的ではないという理解でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣においては、強い農林水産業とともに、美しく活力ある農山漁村を実現する決意のもとに、臨時国会で委員に御尽力をいただいて関連法が成立をいたしました農地集積バンクの取り組みや、四十年以上続いてきた米の生産調整の見直しなど、農政においても大きな改革が始まったところであります。

 今後は、やる気のある担い手が新しい施策を活用して安心して経営展開を図っていけるよう、環境整備を行っていくことが重要であるというふうに考えています。

 農政の改革は緒についたばかりでありまして、今後、農業委員会、農業生産法人、農業協同組合のあり方等については、さらに議論を深め、具体的な農業改革の推進について結論を得ることとしています。

 私が主宰する農林水産業・地域の活力創造本部においては、現場での実効性と制度の安定性に配慮しながら、農業を成長産業とするための改革をしっかりと進めていきたい、こう考えておりまして、岩盤にドリルを入れるのは、岩盤にドリルを入れること自体が目的ではなくて、まさにそこから新たな天地を開いていく、そこが目的であるということでございます。

宮腰委員 岩盤、ドリル、それが目的ではない、自己目的ではないというお話でありました。

 農協や農業委員会の問題は、これは団体自身の組織問題ではありますけれども、政府との意見交換あるいは対話を積み上げて問題意識を共有しながら強力に農政改革を進めていく、このようにしていかなければいけないと思っておりますが、そのような理解でよろしいでしょうか。総理からお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに農業というのは、地域で農業を担っていた方たちとの協力作業でもあります。その中において、最初に御議論をさせていただきましたように、農業というのは、頑張っていこうと考える人たちが、自分たちの情熱によって地域の人たちと協力していくことによって新しい地平線を切り開いていくことができるんだ、そういう分野にしていくことが重要ではないか、このように思うところでございます。

宮腰委員 これで質問は終わりますけれども、きょうの質疑の中で総理の真意もお伺いをいたしました。現場にもよく伝わったというふうに思っております。

 いろいろな関係者の方々が力を合わせて農政改革に取り組んでいく、農政改革実行元年、ことしを、一緒になって、微力でありますけれども、それに向かって頑張っていきたいと思っております。

 質問はこれで終わります。ありがとうございました。

二階委員長 これにて高市君、鴨下君、宮腰君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、本予算案の予算委員会での審議が始まるに当たりまして、安倍総理初め、関係の大臣の皆様に質問をさせていただきます。

 まず最初に、安倍内閣の三本の矢の経済政策によりまして、景気回復は、中小企業にも徐々にではありますが波及し始めてきている。年末年始、地域でさまざまな声に接してまいりましたけれども、期待が非常に高まっているということは肌で感じてきているところであります。それはもう各種統計にもあらわれてきているとおりであります。

 経済は確実に改善に向かっている。とはいっても、やはり依然として不透明な要素も多く、また、実際には、いまだにほとんどの中小事業者の方々はこの景気回復を実感できるというところまではまだ至っていないというのが現実であります。実体経済の再生にはまだまだ道半ばだなというのを実感しております。

 こうした状況下で、総理が今度の国会を経済の好循環実現国会だ、そういうふうに位置づけたことは、大変的確なことであるというふうに受けとめております。

 景気の腰折れを招くおそれのある大きな要素の一つが、これは何といっても四月の消費税率の引き上げではないかというふうに考えています。先週成立をいたしました補正予算におきましては、住宅の駆け込みや反動減対策、そうした影響に対処するためにさまざまな対策が盛り込まれております。まずは、それを迅速そして確実に実行していくことが必要だろうというふうに考えています。

 もう一つ重要なことが、中小・小規模事業者が税率引き上げ分を適切に価格に転嫁できないのではないか、そういう懸念を非常に強く持っているということであります。

 政府でもさまざまな取り組みをしていただいていることは承知をしております。公正取引委員会では、先月二十四日に「消費税転嫁対策の取組について」という文書を発表いたしました。その中では、大規模小売事業者十五社を含む百三十九件について指導を行ったということも明らかになっています。

 その中には、例えば、運送事業者に対して、税率引き上げ後も運送代金を据え置くこと、そういう要請があったとか、また、繊維製品の納入業者には、税率引き上げをしたときに値札の変更がすぐできるように、シールを張っておいて、それを剥がして二つの値段を表示するような値札を納入業者の負担でつけろというような要請を受けたとか、そういう事例も示されております。

 実際にこういうことが起きているわけでありまして、そして、この調査でカバーできている分というのは一部なんだろう、それ以外にも類似した事例というのはたくさんあるんじゃないかというふうに考えています。

 また、先月十七日には、公正取引委員長とそれから経済産業大臣の連名で、適正な転嫁についてということで重点要請をしていただいております。

 そのほかにも、各省でそれぞれ所管をする業界、事業者に対してさまざまな指導をしていただいているということは承知をしているところでございますが、しかしながら、そうした中小・小規模事業者の不安はまだ解消できていない、これが現状だというふうに受けとめています。

 消費税率の引き上げに当たって、やはり、取引上立場の弱い中小・小規模事業者、そこに一方的なしわ寄せが行くようなことがあってはならないということであります。政府を挙げて、適正な転嫁が行われるようにさらに力を入れて取り組む必要があるというふうに考えております。

 転嫁対策の本部長も務めております甘利大臣よりお考えを伺いたいというふうに思います。

甘利国務大臣 消費税は、適正に転嫁がなされて初めてその期待される機能が適切に発揮されるわけでありますから、どこか中小企業事業者が泣きを見るというような形で執行されるものではないということは、御指摘のとおりでございます。

 一月の二十八日に関係閣僚会議を開きまして、転嫁対策推進本部を開催いたしました。万全の転嫁対策を講じていくということを確認したわけでありますが、具体的には、昨年は十一月に中小企業者十五万社に書面調査をしまして、取引先、元請等々で無理難題を強いられていないかということを調査いたしました。その結果、疑義があるものについて立入検査をしまして、指導したわけであります。

 本年、二十六年度、消費税を引き上げた以降、速やかに、今度はほとんどの中小企業者、個人企業者をカバーする調査をしたいと思っております。これには病院や学校法人も含めてその対象としたいと思っておりますが、その結果、違反行為があった場合には、立入検査、改善命令、そして企業名公表等々、厳しく対処していきたいというふうに思っております。

 加えて、各省ごとに相談の窓口を設けておりますし、内閣府に総合相談窓口も設けております。心配事がありましたら、そちらに御連絡いただければ直ちに対処する体制を整えてまいります。

上田委員 対策に取り組んでいただいていること、本当にありがたく思います。

 やはり地元では、特に取引上立場の弱い中小・小規模の事業者、本当に自分のところで全部かぶらなきゃいけないんじゃないかということが一番の懸念でありまして、そういう意味では、ぜひそれが適正に行われるように、引き続き最大限の御努力をお願いしたいというふうにお願いを申し上げます。

 次に、今度は成長戦略についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今の経済のいい流れを本格的な経済の再生に結びつけていく、そのためには、三本の矢の三本目の成長戦略、これを実行していくことが必要不可欠であります。

 お示しをした資料にもありますとおり、若干時系列的に、いろいろな計画や戦略が立てられてわかりにくかったものですから、資料で整理をさせていただきました。

 昨年六月に日本再興戦略が策定をされました。その中には三つのアクションプランが含まれています。日本産業再興プラン、戦略市場再興プラン、そして国際展開戦略の三つであります。これらを着実に実行していくことが今必要であります。

 そして、これまで成長戦略といいますと、何回も同じような計画、プランが立てられた、しかし、結局、実行の段階になってそれが中途半端に終わってしまった、そういったことを繰り返してまいりました。

 今やはり安倍内閣に問われているのは、この計画を本当に実行していく、そういう実行力だろうというふうに思っております。その意味では、この資料にもありますけれども、ただ戦略をつくってそれを発表したというだけではなくて、その後、アクションプランをつくってフォローアップをしている。昨年十月には実施方針をつくり、ことしの一月には、この中の一部でありますけれども、産業競争力強化に関する実行計画を策定いたしました。

 こうやって計画をつくって、いつまでに何をどうやってやっていくかということを段階ごとに明確にしていくことによって初めて実行できることだろう、そういう意味では、この実行に向けての大変強い意思のあらわれだというふうに受けとめております。

 また、ことしの一月には、成長戦略推進のための今後の検討方針を明らかにいたしました。成長戦略をさらに前に進めていこう、進化させていこうということであります。そこには、日本の潜在的な成長力の底上げを図っていくため、持続的な成長軌道に乗せていくための三つの視点が取り上げられています。

 まず第一には、働く人と企業にとって世界でトップレベルの活動しやすい環境を実現していく。ここには、女性の活躍推進や日本社会の内なるグローバル化といった項目が掲げられています。

 第二には、これまで成長産業とみなされてこなかった分野、社会保障にかかわる分野であるとか農林水産業がここに含まれておりますが、それを成長のエンジンとして育成をしていこうというものであります。

 そして三点目には、成長の果実の地域、中小企業への波及と、持続可能性のある新たな地域構造の創出。東京だけではなくて、やはり地域に広がらなければいけない、大企業だけではなくて、中小・小規模事業者にも波及していかなければ、本当の意味で力強い日本の経済は再生できないというふうに考えております。

 そういう意味で、これらは、日本経済の本来持っている成長力を高めていくためにいずれも必要な事項だというふうに受けとめております。

 日本経済の本格的な再生を図っていくためには、この日本再興戦略を着実に実行すること、そして、それに加えて、新しく追加された、新しい項目も含めて、さらに進化させていく必要があるというふうに考えております。

 総理のこの成長戦略の実行に向けての御決意をお伺いし、また甘利大臣には、これを具体的に実行していくためにはどういう戦略、計画でこれから取り組んでいくのか、その辺のお考えをあわせてお伺いしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、林(幹)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 上田委員には、成長戦略について、その基本的な方針あるいは実行、そして中身について大変わかりやすくまとめていただいたというふうに思いますが、安倍政権の成長戦略の特徴は、実行とスピードであります。

 昨年の臨時国会では、産業競争力強化法そして国家戦略特区法など、九本の成長戦略関連法を成立させました。そしてさらに、平成二十六年度予算案でも、雇用調整助成金から労働移動支援助成金への大胆なシフトを盛り込むなど、日本再興戦略に盛り込まれた施策の具体化の実績を積み上げてきたところであります。

 今までも何回も成長戦略はつくられるんですが、なかなかそれが実行できない。まず、私たちは、それを法制化して、さらにその法律を根拠に前に進めていくということであります。

 そして、先日、産業競争力の強化に関する実行計画を閣議決定しました。重要施策の実行の強化を図り、そして、成長戦略進化のための今後の検討方針において、女性の活躍推進や医療、介護の成長産業化など、日本再興戦略で十分踏み込めなかった分野におけるさらなる改革の方針を示しております。

 つまり、我々の改革には終わりはないという考え方のもとに、常に、改革案、そして成長戦略を進化させていくということであります。年央を目途に改定する成長戦略に反映させていく考えであります。

 今後とも、我々は、特徴である実行とスピードを大切にしながら、御党の協力も得ながら結果を出していきたい、このように考えております。

甘利国務大臣 上田議員御指摘のとおり、アベノミクスの成長戦略は、策定したところがゴールではなくて、策定したところからスタートするということですね。

 昨年の六月に、アベノミクスの成長戦略たる日本再興戦略を閣議決定いたしました。その次に何をやったかというと、昨年の臨時国会で、主たる柱になる後ろ盾の法律を成立させました。例えば、産業競争力強化法とか農地バンク法とか国家戦略特区法案、こういうことをやっていきます、その法律の裏づけはこうですというのをつくりました。

 そして、年が明けて、ことしの一月に、具体的に誰がいつまでに何を仕上げるかという実行計画、これも閣議決定をいたしました。それを裏づけるような各論の法律を三十本前後提出するわけであります。

 あわせて、ことしの年央、六月あたりですけれども、年央を目途に、再興戦略のさらにそのリファインといいますか、さらなるバージョンアップのための検討を同時進行でしています。再興戦略をさらに強化していくために、進化のための今後の検討方針、それも策定をしていって、年央の見直しの際にそれを織り込んでいこうということであります。

 これが、総理がおっしゃる、常に進化する成長戦略、とどまっていないで、よりいいものにどんどんどんどんバージョンアップをしていくということであります。これを、具体的工程表をもって実行していきますし、スピードも上げていくということであります。

上田委員 総理そして甘利大臣、大変ありがとうございます。

 これまでも、日本の経済社会が抱えている課題というのは、いろいろなところから、各方面から指摘をされてきて、それはどうすればいいのかといろいろな計画は立ててきました。しかし、問題なのは、そこで結局、計画を立てた段階で、後が続かない。今やはり、まさに安倍内閣として、これまでと違った、本当に日本の経済をよくするんだ、そこの強い決意と、やはり実行力、実行のところにかかっているんだというふうに思いますので、今、総理そして甘利大臣からもお話がありましたとおり、これからも、そのためには、綿密な計画を立てて一つ一つ着実に進めていく、そうした戦略が必要だろうというふうに思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 今、日本の将来の経済にとって、人口減少による労働力不足というのが将来の成長力を抑制する最大の原因じゃないかというような指摘も国の内外からございます。先日も、私も海外のエコノミストの話を聞いたときに、やはり日本の成長の限界というのは労働力の限界にあるんじゃないかというふうに見ているというお話もありました。そういったいろいろな論文あるいはそういう報道などもたくさん見ております。

 労働力不足問題への対応策として考えられるのが、今十分に活用されていない労働力、それをどうやって生かしていくかということなんだろう。労働力人口をいきなりふやすというのは困難でありますけれども、十分活用されていない、一つは女性、二つ目には、やはり元気な高齢者にももっと活躍をしてもらう。そして、さらには外国の労働力、これをどう有効に連携をしていくのかということだろうというふうに思います。

 今後の検討方針の中にもこれらの課題に言及をしていることは、大変、同じ認識をお持ちいただいていることだろうというふうに考えております。特に、真っ先に「「女性が輝く日本」の実現」ということを掲げている。これは非常に重要な視点だというふうに思っております。

 その項目の中で重要と受けとめている点について、ちょっと二点、質問させていただきたいんです。

 働き方の選択に対して中立的な税制、社会保障制度のあり方について検討するという項目がございます。税制ということになりますと、これは配偶者控除のことが念頭にあるのかなというふうにも思うんですが、実際には、多くの女性はパートタイムで働いているという現実がございます。しかし、それぞれ働き方の立場で、いわゆる百三万円の壁ということも言われておりますけれども、これが女性の積極的な就労の障害になっているというような意見がございます。

 これは、それぞれの置かれている立場によって、もっと長時間働きたいんだけれども、控除額が事実上は天井みたいな役割になってしまっている、だからこれをもっと拡大してほしいという意見がある一方で、そもそも、こうした控除額は、この枠があることが自由な働き方の選択の制約になっているから、これはやはり廃止または縮小した方がいいんじゃないかというような意見、両方の意見がございます。

 これは、現行制度を前提に拡大するとか縮小するとかを議論していても、どちらかの立場にある方が不利になるわけでありまして、一方的に不利になるような見直しというのはなかなか理解が得られにくいであろうというふうに思います。また、それが結果的には、女性の力をフルに引き出すということにはならないのではないか。

 今日、女性の大多数が働いています。しかも、多くの場合はフルタイムで仕事をしている。従来のモデル世帯をベースにした世帯所得に対する課税のあり方というのは、現行制度、今ある制度を前提として考えていては、なかなかこれはうまく見直しができないのではないかというふうに思います。

 やはりこれは、現行の制度を前提とせず、抜本的な制度議論が必要と考えておりますけれども、これは森大臣にお考えを伺いたいというふうに思います。

森国務大臣 お答えします。

 御指摘のとおり、今般の成長戦略進化のための今後の検討方針、今パネルに出ておりますけれども、一丁目一番地に女性の活躍を掲げております。その中に、働き方の選択に対して中立的な税制、社会保障制度のあり方の検討が盛り込まれたところであります。

 配偶者のいる女性の年間雇用所得の分布を見ますと、各年齢階級において百万円付近で高くなる傾向が見られまして、税制や社会保障制度が一部の女性の就業等の選択に影響を与えているとの指摘があります。

 今御指摘の百三万円の壁、そして百三十万円の壁というものが指摘されているわけでございますけれども、他方で、一方の配偶者が働いている場合に、もう一方がその所得の稼得に貢献をしているという家族の助け合いの役割を評価すべきとの御意見もございます。

 成長戦略の中核である女性の活躍を促進していくことが重要でございますけれども、税制、社会保障制度のあり方については、国民に与える影響が大きいこともあります。ですので、先生のおっしゃるとおり、抜本的な議論を行って、検討を進めてまいりたいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 単にこの枠を広げるとか縮めるとかという議論になっていると、多分、結論がなかなか出にくい。やはりもっと、本来の姿はどうあるべきなのかというところまで立ち入った議論が必要なんだろうというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、また同じこの検討方針の中に、次のように書かれています。「就学前のみならず、小学校入学後も、子どもが安心して過ごせる居場所を確保し、」云々「検討を行う。」ということになっております。

 保育所の待機児童については、政府を挙げての積極的な取り組みによってかなり前進しました。まだ十分とは言えませんけれども、かなり前進をしてきている。

 しかし、ここでもまた、小一の壁というようなことが言われております。小学校低学年の子供が居場所が不足をして、子供がその年齢になったときに女性が仕事を続けられないというような現象もよく耳にしているところであります。

 早急に、この質、量、今あるいろいろな放課後児童クラブでもさまざまな課題があります。やはり質も量も、両方を確保しなければならない。現行の制度の枠だけではなかなかそれに対応できないんだというふうに考えます。多様なアイデア、それから仕組みも、各関係省庁横断的に検討していただきたいというふうに考えておりますけれども、今後の方針を伺いたいというふうに思います。

森国務大臣 女性が活躍できるために、まず保育所ということで、待機児童解消加速化プラン、総理の大号令のもと、田村厚労大臣の方で頑張っていただいておりますが、今度は、小学校に入ったときの小一の壁でございます。私も小学校の子供がいますけれども、小一の壁の後に小四の壁もあるんですね。

 まず、小一の壁を突き破るべく、第一次安倍内閣で始めた放課後子どもプランを推進してきたところでありまして、今後とも、全ての小学校区で、厚労省による放課後児童クラブ、それから文科省による放課後子ども教室、つまり学校の空き教室を利用してお子様たちを預かるという、その取り組みを一体的あるいは連携して実施することを目指してまいります。

 また、放課後児童クラブについては、来年度、開所時間の延長を支援いたします。

 平成二十七年度から本格施行する子ども・子育て支援新制度においては、施設の整備や指導員等の運営基準を定めまして、全体的な質の底上げを図ることに加えて、量的な拡充も図ることとしております。

 女性活力・子育て支援担当大臣として、御党の御意見も取り入れながら、しっかりと、女性が活躍をし、子供が産み育てやすい環境を整えてまいりたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 それでは、最後に総理に、安倍内閣の外交・安全保障戦略について御質問したいというふうに思います。

 昨年末に、国家安全保障戦略をNSCが初めて策定されました。そこに安倍内閣の外交・安全保障政策の基本的な方針が明らかになっているんだというふうに受けとめております。

 NSSは、複雑さ、厳しさが増します我が国の安全保障環境の中で、我が国の平和と安全を維持し、存立を全うしていく、そのため、我が国が進むべき針路、そして政府全体として取り組んでいく基本戦略がそこに示されているというふうに書かれております。

 NSSには、我が国としては、日本の安全保障の厳しい現状を的確に理解して、それに対応するための適切な防衛力の整備や日米同盟の強化といったいわばハードパワーのアプローチと、その一方で、近隣諸国との関係改善や、アジア各国あるいは国際社会全体との経済、技術、文化、さまざまな面での協力関係を強化するという、外交を通じたいわばソフトパワーのアプローチの両方について述べられているところでございます。

 やはりこれは、本来、この二つ、ハードパワーとソフトパワーのアプローチというのは車の両輪のようなものでありまして、それらが有機的に連携して初めて効果が発現をするものだというふうに考えています。

 残念ながら、我が国においてはこれまで、どうもこの二つのパワーが理念的に対立するような概念として捉えられがちでありまして、なかなか議論が建設的に進まなかった面があります。そこで、こうやってNSSで明確にしたということは非常に大きな成果だったというふうに思っております。

 そして、もう一つ、残念ながら、NSSに関する報道などでは、ハードパワー、防衛力の面だけが少し強調され過ぎのような感じも受けとめております。これは多分、総理の真意には沿わないものなのではないかというふうに思います。総理にはぜひ、ハードパワーとソフトパワー、これを融合させたような、いわばハイブリッド型の外交、安全保障、この戦略を期待しております。

 最後に、総理の基本方針をお伺いしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 安倍政権は、日本の外交・安全保障政策について、透明性を持って内外に示すものとして、国家安全保障戦略を発表したところであります。

 国家安全保障戦略においては、国際協調主義に基づく積極的平和主義という基本理念を掲げまして、我が国が直面する国家安全保障上の課題に対処するための戦略的アプローチとして、委員が御指摘のように、ハード面とソフト面の双方における総合的な施策を明記しているところであります。

 今ハイブリッドという表現を使われたわけでありますが、ハード、ソフト両面あって、ハイブリッドになって初めて、いわば国家安全保障戦略として強靱性を持つんだろう、こう思うわけであります。

 具体的に申し上げれば、本戦略は、防衛力の整備、法執行機関の能力強化や海洋監視能力の強化といったハード面の施策のみではなくて、ソフト面においても、国際社会における民主化支援、法制度整備支援、人権分野での支援、さらには開発途上国の人材育成、そしてまた双方向の青少年の交流の拡大等、多様な施策を掲げているところでありまして、ハード面の施策及びソフト面の施策を、課題や相手国に応じ最適な組み合わせで最大限の効果をもたらすように、外交・安全保障政策を展開していきたい。

 今後も、この国家安全保障戦略にのっとって、日本の国益を確保するとともに、地域の平和と安定を確保し、そして世界の平和と安定に貢献をしていきたい、このように思うところでございます。

上田委員 ありがとうございます。これで終わらせていただきます。

林(幹)委員長代理 この際、古屋範子君から関連質疑の申し出があります。上田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、社会保障また女性の活躍をテーマに、総理並びに関係大臣にお伺いをしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 そのテーマに入ります前に、一問、インフルエンザから回復をされた田村大臣に質問をいたします。

 今、インフルエンザが猛威を振るっております。特に、高齢者がかかりますと、重症化をする、命にかかわるとも言われております。予防が非常に重要でございます。予防接種をしていくこと、これが大事かと考えます。

 予防接種に関しまして、私もこれまで国会で何度も取り上げてまいりました、子供の水ぼうそう、また高齢者の肺炎球菌、この二ワクチン、予算編成過程でも、地方の事業でもございますので総務大臣、また厚労大臣にも要望させていただきました。この二ワクチンがこの十月から定期接種化をするという方針を決定していただきました。大変喜ばしいことであると思っております。

 水ぼうそうなんですが、年間約百万人が感染をする、年間約四千人が入院をして、二十人程度が死亡をしております。また、成人の細菌性の肺炎なんですが、何と年間約百万人に上りまして、三万人余りが死亡しているということでございまして、この定期接種化で死亡数を減らすことができるのではないかと期待をされております。十月からの円滑な実施をぜひともお願いしたい。

 また、厚生科学研究の第二次提言でもあと二ワクチン残っておりますおたふく、B型肝炎、そのほかにもロタウイルス等、ぜひ今後もこの予防接種行政を推進していっていただきたい。

 これについて、まず、厚労大臣にお伺いを申し上げます。

田村国務大臣 大変御心配いただきまして、ありがとうございます。

 私も予防接種を受けておったわけでございますが、それで重症化は防いだのかなというふうに思います。手洗い、うがい含めて、予防接種も含めて、やはり予防が大事でございます。

 そのような意味からいたしまして、インフルエンザではございませんが、今委員からお話がございましたとおり、成人用の肺炎球菌ワクチン、そしてもう一つ、水痘、水ぼうそう、この二つに関しまして、この十月、これは、厚生科学研究の予防接種・ワクチン分科会の中において技術的な課題の検討を済ませた上で、予算上もめどがついたということでございまして、今、予算の審議をいただいているわけでございますけれども、これが無事済めば、十月からスタートという準備に入らせていただいておるわけでございます。

 あわせて、今お話がございました、まだ残り三つ、おたふくと、それから今ロタのお話も出ました、それからB型肝炎、この三つなんですけれども、これに関しましては、まだ予防接種・ワクチン分科会の中において技術的課題の検討を行っている最中でございまして、例えば、ワクチンの選定をどうするかでありますとか、副反応、さらには効果、こういうところの技術的な検討を行っておるわけでございます。

 速やかに検討を行った上で、予算の措置、これはしっかり予算を確保しなきゃならぬわけでありますけれども、そういうものに万全を期すべく、これからも努力をしてまいりたい、このように思っております。

古屋(範)委員 昨年定期接種化をいたしましたHib、また小児用の肺炎球菌、この成果が出ております。髄膜炎など重篤な病気、この乳幼児が著しく減少をいたしておりますし、細菌性髄膜炎の疑いの小児救急患者が激減をしたという成果が出ております。

 また、この冬のインフルエンザ、ノロウイルス等、この感染に万全を期していただきたいと思います。

 それでは、社会保障と税の一体改革について質問してまいります。パネルを用いて質問をしてまいります。

 社会保障と税の一体改革、これは自民、公明、民主、三党で合意をいたしまして、昨年の秋、成立をいたしましたけれども、プログラム法で本格的に動き出しました。

 このパネルは、消費税が引き上がった場合の満年度ベースの姿を描いております。全体、十四兆円の消費税収でございますけれども、一%は社会保障の充実に使っていく。二・八兆円程度でございます。そして、四%は社会保障の安定化に使っていくということでございます。

 中でも、年金の国庫負担二分の一の確保、これは非常に重要であり、大きな財源を占めております。これまで、二分の一を決めていながらも、特別会計の剰余金を充当するなど、年々いわば綱渡りでこれを賄ってきたという現実がございます。いよいよ、ここの三・二兆円程度、ここが安定的に確保ができるということでございます。

 充実の中身でございますけれども、子ども・子育て、また医療、介護、年金制度、この四分野に充てられていく。子ども・子育てで〇・七兆円、医療、介護で一・五兆円、そして年金制度で〇・六兆円程度ということでございます。

 こうした消費税の増税、これが社会保障の充実と安定に使われていく、これを国民にわかりやすく説明し、理解をしていただくということが非常に重要だと考えております。

 子ども・子育て、また年金の方は、既に法律も成立をいたしまして、実施に向け動いている。介護に関しましては、今国会、医療、介護の改革の法律が出てまいりまして、これから大きく推進をしていくという段階になっております。

 この医療、介護の改革の一つの柱、これが地域包括ケアシステムであろうと思っております。

 高齢化の急速な進展の中で、医療また介護サービス、これが包括的に確保される地域包括ケアシステムを構築していこうということで、公明党の中で地域包括ケア推進本部を設置いたしました。公明党、全国の議員で、それぞれの地域に即した地域包括ケアシステムを構築していく、そのための推進本部を立ち上げました。公明党のネットワークで、地方議員の意見を聞きながら構築をしていこうというわけでございます。移動本部なども開設をして動いております。

 二十六年度予算で九百四億円の基金が創設をされた、これは非常に評価をしたいというふうに思っております。

 第一回目の会合にも全国から多くの地方議員が集ってまいりました。基本的な質問が出てまいりまして、地域包括ケアシステムは一体どういうものをいうのかということでございます。

 先日、私も岩手県の一関市に行ってまいりました。ここの旧藤沢町の佐藤元町長が、三十年ほど前から、当時、介護保険はございませんので、医療と福祉、医療と介護の連携を打ち立てよう、この理念のもとに進んできた町でございまして、そこに国保藤沢病院というのがございます。

 ここの院長は、二十一年前から、地域における医療と福祉、これを連携して構築していこうということで、二十年、三十年かけていわば地域包括ケアシステムをつくってきた地域でございます。

 病院を中心に、ここには訪問看護ステーションもある、老健もある、特養ホームもある、居宅介護もある。そうしたいろいろな施設が連携をして、一人の人が入院をして退院をして、そこからどう今ある機能、施設、人員で受けとめて支援をしていくか、こういう会議を行いながら、非常に理想的な地域包括ケアシステムをつくっておりました。こうした、いわば山間地でありますけれども、こういうものも都会やあるいは住宅街でどうつくっていくか、大きな課題だと思います。

 また、介護保険料の引き上げに伴って、国民の負担感は非常に高まっているという意見もございました。また、こうした医療、介護の連携、認知症対策、地域包括支援センターの充実など市町村の役割がふえている、ぜひとも財政的な支援も行ってほしい。あるいは、特に深刻なのが介護人材の確保、この介護人材を確保していくための処遇改善、人材育成、これが非常に深刻である、担い手が不足をしている。このようなさまざまな意見が出てまいりました。

 政府は、地方自治体や現場の意見をきちんと聞いて、よりよい地域包括ケアシステムを構築していくべき、このように思います。総理の御所見をお伺い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 介護が必要になったときに、また医療のサービスが必要になったときに、やはり人間は、一番いいのは自宅あるいはまた住みなれた地域でそうしたサービス、介護が受けられるようになりたい、こう思っているわけでございますので、住みなれた地域での暮らしを継続できるように、今お話があった、地域の老人クラブとか自治会、あるいはボランティアとかNPOの皆さんにも御協力をいただきながら、そういう方々とともにさまざまな活動をする中において、まず予防をしていくということも大切であります。そして、その後については、在宅医療、介護サービスや、さまざまな生活支援サービスを一体的に提供していく地域包括ケアシステムの構築は重要な課題であります。

 政府としても、今後、新たな財政支援制度を創設しまして、地方公共団体や医療、介護の現場の方々の御意見を伺いながら、まず急性期の後の受け皿となる病床の整備、そして在宅医療の推進や介護サービスの充実、そして、先ほど御指摘をされました医療従事者や介護従事者の確保と養成であります。こうしたことをしっかりと進めていくこととしております。関連法案を今国会に提出する予定でございます。

 公明党におかれましては、昨年末、地域包括ケアシステム推進本部を立ち上げられた、そして党を挙げて取り組んでいただいているというふうに承知をしております。今後とも、御党とよく連携をしながら、引き続き、やはり現場の方々の意見を聞いていくということが一番大切だろうと思います。地域において効率的かつ質の高い医療や介護サービスが提供されるよう、しっかりと取り組んでいく考えでございます。

古屋(範)委員 ただいま総理からも、急性期から中間的な施設、あるいは在宅と、こうした包括的なシステムをつくり上げていく、そうしたお答えがございました。

 これは、公明党が二〇一〇年につくりました新・介護公明ビジョンでございます。二〇〇九年に、公明党の約三千人の議員で、全国十万人の調査を行いました。介護施設、自治体も含め、介護家族、また従事者、一般の方々等、十万人の調査をして、この新・介護公明ビジョンをつくりました。

 この中で私が注目しましたのは、介護の仕事についてみたいかということを七万人の方々にお伺いいたしました。そうしたところ、十代の方々の約半分は、介護の仕事をしてみたい、あるいは介護に興味がある、このように答えてくださいました。今の若い方々も、やはり高齢者を支えていきたい、そういう心、そういう芽があるんだなということを強く感じました。

 ですので、それを伸ばしていくためには、介護従事者、二十代で仕事につき、その後、家庭を持ち、また子供を教育する、こういう段階で、やはりそれなりの給与というものがないとなかなか続けていくのが難しいという現実がございます。この問題は、私たちもぜひ共有をして、今後とも努力をしていかなければならないのではないかというふうに思っております。

 次に、このたびの医療改革の一つの柱でもございます高額療養費制度についてお伺いをしてまいります。

 このパネルにございます、公明党が長い間、マニフェストにも掲げまして取り組んでまいりました高額療養費の制度でございます。がんなど重篤な病にかかり、高額な医療費を負担しなければならない、その負担を軽減するため、一カ月の窓口負担の上限を設けるというのがこの高額療養費制度でございます。

 現行制度ですと、一般所得者、ここのところが約二百十万円から七百七十万円、非常に幅が広い。五百万円の収入の差があるにもかかわらず、八万百円ということで、幅が広過ぎるのではないか、ここをぜひとも、特に低所得者の方々のところには負担軽減をすべきだということを主張してまいりました。

 そして、このたびの見直し案は、この一般所得者の中の三百七十万円以下、ここのところを五万七千六百円に引き下げるという案でございます。対象者は約四千六十万人ということですので、非常にここのところは対象者が大きいわけでございます。

 こうした高額療養費制度の見直し、システム改変等あるとは思いますけれども、ぜひとも速やかな実施をお願いしたいというふうに思っております。

 また、この高額療養費制度、今回の見直しのその後、引き続きどうしていくのか。いわゆる多数該当についても、さらなる負担軽減の検討をお願いしたいと思っております。

 また、あわせまして、国民健康保険料と後期高齢者医療制度の低所得者対策として、保険料の二割軽減、五割軽減の対象者を拡大することになりました。

 こうした負担軽減についてのお考えを厚労大臣にお伺いいたします。

田村国務大臣 まず、高額療養費制度でございますけれども、公明党が熱心にいろいろと御提言をいただいておりますこと、心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 これに関しましては、今委員がおっしゃられましたとおり、昨年十二月に成立しましたプログラム法、この中においても、ちょうど、七十歳から七十四歳の医療保険制度の一部負担、これに対しての見直しとあわせて、負担能力に応じた見直しをするということで書かれておるわけでございまして、そのような意味からいたしますと、今言われた、これは三人世帯のモデルケースでございますけれども、二百十万から七百七十万までの方々、所得世帯に関して、八万百円プラスするところの医療費から二十六万七千円引いたものの一%というような、そういう非常に幅広い層の方々の上限額が同じであるということで、やはりこれは考える余地があるのではないか、こういう御指摘を多々いただいておりました。

 そこで、今委員がおっしゃられたような形での見直しを今検討させていただいているわけでございまして、実現に向かってしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

 多数該当のお話もございました。過去十二カ月の間に三回以上高額療養費を利用された場合には、四カ月目にはさらにその上限額を下げようという制度でございます。

 八万百円のところが細分化されますから、そう考えれば、その部分、特に五万七千六百円のところはさらに低くすべきではないかというのは、趣旨としては重々我々も理解をさせていただいておるところではあるんですけれども、今般、この見直しで、かなりの公費も必要でございますし、保険料の方もかなり使うわけでございますので、一度に同時にこれをやるということはなかなか難しいわけでございまして、これからの検討課題ということでどうか御理解をいただきたいというふうに思います。

 いずれにいたしましても、四千万人を超える方々がこのような形で医療費の一月の上限額が下がるということは、国民の皆様方にも一定程度御理解をいただけるのではないか、このように思っております。

 あわせまして、後期高齢者医療制度、それとあわせて国民健康保険制度、これに関しましても、保険料の部分ではございますけれども、五割、二割の軽減策、今行われておるわけでありますが、この対象者を拡充しようということでございまして、この対象者、五百十万人ほど、両制度の中において軽減の枠を広げていくということでございまして、これも、負担能力に応じた負担という中において、国民の皆様方に御理解をいただきながら、今般の制度改革の中でぜひとも取り組んでまいりたい、このように思っておるような次第でございます。

古屋(範)委員 高額療養費制度、さらなる前向きな検討をお願いしたいと思います。

 ぜひとも、税と社会保障の一体改革、国民にわかりやすい説明をよろしくお願い申し上げます。

 それでは次に、女性の活躍に移ってまいります。

 ソチ・オリンピックでも、女性選手、非常に健闘しております。また、STAP細胞をつくり出すことに成功した小保方晴子さん、日本女性、今非常に活躍をいたしております。

 先般、十二月の十八日なんですが、日本に赴任をされましたキャロライン・ケネディ駐日米国大使にお会いをいたしました。今、精力的に動いていらっしゃるようでございます。

 いろいろな話題になったんですが、女性の社会進出という話題になりまして、公明党は今、約三千人の議員のうち約三割、九百人が女性議員でございます。地域に根を張り、皆活動をいたしております。

 しかし、我が国においては、女性の国会議員も少ない、また、企業において女性管理職もまだまだ少ないのが現状であります。

 大使は、今の日本政府が女性の活躍を前面に掲げて取り組んでいることをよく承知しているとおっしゃっていました。これを成功させるにはやはり政治のリーダーシップが必要である、アメリカもこれまで着実にこの分野で前進をしてきたことを踏まえて支援をしていきたい、このようなお話がございました。やはり、女性の社会進出を進めていく、これには政治のリーダーシップが必要かと考えます。

 私たち公明党の議員、約九百名の女性議員がおりますけれども、これまでも女性政策に取り組んでまいりました。女性サポート・プランというものもつくりまして、子育て支援、また女性の健康等に取り組み、多くの実績も残してまいりました。

 また、三・一一以降、東日本大震災が発生をいたしまして、非常に女性の参画が少なかったということもございます。女性の視点から防災を見直すということで、全国の女性議員で防災行政総点検も行い、防災分野における女性の参画も進めてきました。そうした結果、子供や高齢者、弱者など、国民全体に資する防災政策が進んだ。

 このような実績を踏まえまして、このたび、新・女性サポート・プランを策定していくことを決定いたしました。これまでの子育てとか健康支援、これに加えまして、農業・水産業、あるいはICT・科学技術、環境・エネルギー、こうした新しい分野で、現場の声を聞き、それを政策提言として取りまとめ、五、六月ごろには発表したいと考えております。

 女性が活躍していく、政府としてもあらゆる方向から今取り組んでいただいております。

 まずは、ワーク・ライフ・バランス、これも、育児休業給付もふやしていこう、アップをしていこう、このことも今般、雇用保険法を改正して出してくる。また、起業においても、まだまだ、八割が男性ということで、女性の起業もまだ少ない現状でございます。

 こうしたさまざまな政策を進めていらっしゃると思いますけれども、六月を目途に成長戦略を取りまとめられるようでございますけれども、公明党としても積極的に政策提言をしていきたいと考えております。

 ぜひとも、現場の、実際そこに携わっている方々の声を聞いてつくっていっていただきたい。この女性活躍推進について、今後の進め方を総理にお伺いしたいと思います。

    〔林(幹)委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 我が国最大の潜在力である女性の力を最大限発揮できるようにすることは、我が国経済の持続的成長のために不可欠であると思います。特に日本は、少子高齢化が進む中において、人口が、労働力が減少していくわけでございますが、成長分野を支えていく人材をしっかりと確保していくという意味においても、女性の力を発揮させていく、これは日本の将来にとって不可欠であろう、このように思います。

 私もなるべく、実際にさまざまな分野で活躍をしておられる女性の皆さんから現場の声を聞くように努力を進めてまいりましたが、今後は、仕事と子育ての両立を推進するため、待機児童解消加速化プランを展開してまいります。

 また、女性の活躍を促進する企業の支援なども含めて、全ての女性が輝く社会の実現に向けて、さらに取り組んでいく考えでございます。

古屋(範)委員 ぜひとも、内閣を挙げて女性の活躍推進をしていただきたいと思っております。

 先ほども触れました、STAP細胞をつくり出すことに成功した小保方さん、また、英国雑誌のネイチャーでは、昨年十二月、iPS細胞を使って臨床実験をこれから始めていこうとされている高橋政代プロジェクトリーダー、この方も来年注目の五人に挙げられております。しかし、まだまだ日本では女性の研究者の割合は非常に低いですね、一四%ということで。

 文科大臣に、出産とか育児でどうしても、なかなか研究者として続けることが困難、あるいはまた復帰することが難しい、この女性研究者への支援についてお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘がありましたように、今回の小保方さんの研究は、既成概念にとらわれない柔軟な発想に基づくものであり、将来、革新的な再生医療の実現につながるものと大変に期待をしております。

 このように、女性が活躍できる社会をつくることは安倍内閣の成長戦略の重要な柱であり、特に、小保方さんのような女性研究者の活躍を促し、その能力を発揮させることは、御指摘がありましたように、我が国の経済社会の再生、活性化や男女共同参画社会の推進にも大きく貢献するものだと思います。

 御指摘のように、我が国の女性研究者の割合は、諸外国と比較して低い水準にあります。もっと文部科学省が女性研究者に対して力を入れる必要がある。特に、研究と出産、育児等との両立や、研究力の向上を図る上で、さらなる取り組みの推進が必要である、確かに御指摘のとおりだと思います。

 平成二十六年度予算案では、従来の取り組みに加えまして、さらに、複数の大学、研究機関等が連携して女性研究者の研究力向上を図る取り組みを支援するという予算を計上いたしました。

 また、今月七日には、上野政務官を座長とするタスクフォースを文科省の中に設置いたしまして、女性の活躍推進のための支援策について検討を開始しております。

 さらに、女性の活躍あるいは研究者の一層の環境づくりのために努力をいたします。

古屋(範)委員 女性の活躍を推進していただきたい、そのことを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて上田君、古屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田万里です。

 ただいまから持ち時間一時間でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日から平成二十六年度の当初予算の審議が当委員会で始まったわけでありますが、私は、この平成二十六年度の当初予算の審議に入る前に、やはり平成二十五年度の補正予算について改めて指摘をしておかなければいけないと思います。

 当予算委員会で補正予算の審議が行われました。そのときに、ちょうど私の今、隣にいます、この玉木委員が提起をしたわけでございますが、ちょっとパネルをお願いしたいと思います。

 補正予算、その中にゾンビ予算とも呼ばれるべき金額が計上されているということで、改めてこのパネルを見ていただければわかるかと思いますけれども、昨年の十一月の十三日から十五日にかけて、行政改革の秋のレビューが行われました。これは、言うまでもありませんけれども、平成二十六年度の当初予算の中に無駄はないかということでのレビューが行われたわけであります。その結果、四千八百億円の無駄、いろいろな言い方がありますけれども、私どもはわかりやすく無駄という言葉を使わせていただきますけれども、これが指摘をされたところであります。

 ところが、それと同時に、昨年の十二月の五日に、平成二十五年度の補正予算をつくるということで、経済対策が五日に決定をされ、そしてその補正予算の中身が十二日に決定をされたところであります。

 つまり、各省庁にとりましては、行政レビューで、秋のレビューで、これはちょっとそのまま当初予算に計上するわけにはいかないよと言われた予算が突き返されたときと、それからまさに補正予算を編成する時期が一緒でございますから、では、それならば補正予算に計上してしまえばいいだろうということで、これは金額的には三千六百億円、これが補正予算の中に入って、そしてそれが年明けに国会に提出をされて、せんだって六日、成立をしたところであります。

 この衆議院で三日間、予算委員会、それから参議院で二日間、私どもは、この予算の審議というのは、もちろん院が決めることでございますけれども、やはり大変短かったということを言わざるを得ないわけであります。

 特に補正予算は、これはもう御案内のように、財政法で、二十九条でしたかね、予算をつくった後にどうしてもやむを得ない事由が発生をして、そのときに限って、やむを得ない経費についてこれを計上すべきだということが書かれているわけでありますが、今回、平成二十五年度の補正予算で計上しましたものの中には、今お話をしたように、三千六百億円ほど、本来だったら二十六年度の当初予算で計上しなければいけないものが入っているということで、これはやはり無駄以外の何物でもないわけでありますから、納税者もやはり怒っております、はっきり申し上げまして。私もいろいろなところに回っておりまして、このお話をしますと大変怒っております。

 それから、新聞もやはり、これが六日に成立をしたところで、社説で、もうこんなやり方はやめるべきだ、もうこのやり方を断ち切れという社説でありますとか、それこそ、無駄削減は見せかけだったのかというような社説も出ているところであります。

 改めて、総理にお尋ねをいたします。

 予算は確かにもう通って、成立をしてしまいました。しかし、総理、総理にできることはあります。それは、少なくともこの三千六百億円の、秋のレビューで、これはそのまま当初予算に計上するわけにいかないよと言われたものが補正予算に復活をした、この三千六百億円の執行を停止すること。これはどうですか。総理、できることですよ。おやりください。

安倍内閣総理大臣 まず、昨日の党大会、御盛会おめでとうございます。党を代表してお喜びを申し上げる次第でございます。

 そこで、今御質問がございました、秋のレビューについてでございますが、当初予算で要求された事業について、中身の改善、そして方向性について御議論をいただいたところでございます。

 このレビューで取り上げられた事業については、補正予算において、単純な復活は認めていません、これは当たり前のことなんですが。レビューの指摘事項を踏まえまして、中身を改善するなどした上で、特に緊急性の高い事業について平成二十五年度補正予算に計上したものであります。

 補正予算については、この性格についてはもう何回も申し上げてきたところでございますが、四月からの消費税引き上げに対する反動減を緩和する、そしてまた、その後しっかりと成長軌道に戻れるようにするための予算であるということでございます。そこで、これらの事業については、レビューの指摘を踏まえて、執行段階においても対象事業の絞り込みを行うなど厳格な対応を行うよう、既に関係省庁に対して指示をしたところであります。

 例えば、ICTの高度利用に関する事業については、有識者がモデル事業の実施内容を審査しまして、普及、展開が困難と判断した場合は執行しないということが明確になっています。そして、若者サポートステーション事業については、地単事業として類似事業が行われている地域では、重複部分の執行は行わないということになっております。その他の事業についても、そういう気持ちで厳正、的確に対応していきたい、このように考えております。

 今後の予算編成に当たっても、引き続き、予算の無駄がないよう、関係閣僚で徹底して考えていくわけでございます。

 今後、もしその無駄があるということが、今申し上げましたように、既に秋のレビューでさまざまな考え方を示していて、その考え方にのっとって、執行しないものは執行しないということになっているわけでありますが、いずれにいたしましても、私も、総理として、こうした秋のレビューを踏まえまして、それに適合しない、明らかにおかしいというものについては執行しないということは、当然のことであろうと思っております。

海江田委員 今、この補正、成立をしましたけれども、改善点が具体的に改善されないものについては執行を停止するということですね。物によっては執行を停止するものもあるということですね。これはぜひ、大切な点でありますから、おやりください。

 それからもう一つ、やはり今、幾つかの例について、総理は、こういうところが改善点だというお話がありましたけれども、私どもが調べておりました範囲内で、その改善点の具体策というものがはっきり示されていないものも多いんです。

 ですから、これは、あの項目、四千八百億円ですね、この四千八百億円について、具体的にどこがどう改善されるのか、改善の方向が示されているのかというその具体例を、これは一覧表でいいですから、ぜひお出しをいただきたいと思います。いかがですか、その点は。

麻生国務大臣 四千八百と三千六百のその差の話ですね。(海江田委員「はい、そうです」と呼ぶ)

 差につきましては、きちんと調べて、これは私ども、御存じかと思いますけれども、大蔵省から各省庁に全部言っておりますので、それを集めて……(海江田委員「財務省」と呼ぶ)財務省、財務省。すぐ癖でそう言って、済みません。

 財務省、それから経済産業省等々、各省庁はいろいろこれを持っておりますので、そのものの中からきちんと、差がどうなったか、詰めた上で、御返事を申し上げたいと存じます。

海江田委員 では、それはぜひ、各項目ごとに具体的な改善点、これをお示しいただきたいということ。それから、今総理から、当予算委員会で、一部については無駄が改善されないようだったら執行を停止するというお話がありましたので、それはぜひ、そういう形で実現をしていただきたいと思います。

 そしてもう一つ、新たな問題点でありますが、今このパネルをごらんいただければよろしいかと思いますけれども、先ほどもお話をしましたように、十一月の段階でレビューがある、そしてその前に、各省庁から概算要求がある。

 概算要求というのは、これはもう御存じだろうと思いますけれども、我々の省ではこの予算についてはこれだけ欲しいね、満額認められないかもしれないけれどもやはりこれぐらいは欲しいねということで概算要求を出すわけであります。

 その後、先ほどお話をした平成二十五年度の補正予算、それから平成二十六年度の当初予算、この両方を合計しますと、実は、概算要求を上回ってしまっている項目が幾らもあるんです。私どもの調べでは、六十九項目ございました。

 そのうち、ここには六項目ぐらいを抜粋いたしましたけれども、例えば農業農村整備事業は、概算で三千百九十七億、それが、補正予算で八百億、当初予算で二千六百八十九億円。これは、農地の集約化、大区画化、あるいはかんがい設備の整備など、言ってみると典型的な公共予算であります。これを全部、補正と当初予算を合計しますと、ここに書いてございますけれども、実はこれは、概算要求の金額を上回る、三千四百八十九億円。およそ一〇%上回ってしまうわけですね。

 これは、言ってみると、概算要求でこれくらい欲しいなといったところが、さらにそれを上回る金額がついてしまったわけですから、役所とすれば大喜びかもしれませんけれども、それならば何で概算要求がそこまでだったのかということになるわけですから、この二重計上、重複計上、重複予算、これはやはりもう一度見直すべきだと思っておりますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 このNN事業でございますが、農業の競争力の強化のための農地の整備、国土強靱化のための農業水利施設の老朽化対策等々でございまして、二十六年度予算案、今御審議いただいている予算案ですが、事業を着実に推進していくために必要な予算額を計上しております。

 一方、この補正予算、これは消費税率引き上げによる駆け込み需要とその反動減を緩和するための経済対策の実施という事由に基づきまして、大区画化等の農地整備を加速化することや、それから、昨年全国的に豪雨災害がございましたが、農村地域の防災対策を強化して推進する、こういうものは、概算要求は夏でございますので、その時点では見込まれなかった経費等々を計上しております。

 要するに、概算要求後に生じた新たな事由に対処することとした結果、補正と当初予算を合計した額が概算要求額を超えることになったということでございまして、二十六年度予算と二十五年度補正予算の活用によりまして、反動減対策に資するとともに、農業の競争力強化、それから農村地域の防災、減災、この確保を図ってまいりたいと思っております。

海江田委員 六十九項目で、概算要求を上回る金額は、全体を合計しますと、約二兆二千億円でございますね。これは大変巨額な金額であります。

 二兆とか三兆とかいう数字がこの予算委員会で飛び交いますと、テレビをごらんの方もなかなかおわかりにならないと思いますけれども、一兆円というのは、一億人が一万円ずつ出しますと一兆円ですから、つまり、概算要求を上回る、補正と当初予算での六十九項目で二兆二千億ということは、国民を一億人だとしますと、二万二千円ずつ、ここで余分に予算が使われているということになるわけであります。

 それから、今、いろいろな需要が、林大臣からお話がありましたけれども、当然、地震や風水害、とりわけ台風の被害などは、予備費というものもございます。その予備費を超えて、さらに当初予算あるいは補正予算ということでありますから、これはやはり大いに問題だと私どもは思っています。

 この六十九項目につきましては、これから私どもがその一つ一つについて細かな議論も当委員会で行っていきたいというふうに思っておりますから、その一つ一つの項目については今ここでは述べませんけれども、まず、二兆二千億ほどそういう金額があるということ。

 それから、今一番問題になっておりますのは、これはまさに補正予算をつくったその理由でもありますけれども、やはり、消費税が上がることによって人々の生活が困りはしないだろうかということであります。

 例えば、この一時的な給付金も、一万円あるいは一万五千円、しかも一回限り。しかも、それが出てくるのは恐らく夏場になるんじゃないだろうかということでありますから、やはりこれを増額するでありますとか、それからもう一つ、私は大変残念なのは、例えば、社会保障の充実ということで申し上げますと、四つの項目については先ほど公明党の委員からもお話がありました。もう一つ、これは私は代表質問でも取り上げましたけれども、総理がライフワークと言われている難病対策ですね。

 難病対策の指定の拡大、これを広げたということで、対象が、七十八万人が百五十万人になった、これは大変喜ばしいことだと思っています。しかし、その反対で、七十八万人の方々、とりわけ低所得の方々は、やはり負担が増になっているんですよ。

 これは、私が一月の二十八日に質問をしました。そのときの資料のために、一体、この既認定分、つまり七十八万人のうち、どのくらいの人が範囲を拡大することによって負担がふえるのかということを聞きましたら、そのときは、一部だ、一部だと、一部の人は確かに負担がふえることになるかもしれませんということを言っていましたけれども、私の質問が終わって、一月の三十日、厚生労働省から資料がやってまいりましたけれども、それは、一部ではなくて既認定者の九割が自己負担増になるということであります。

 私は、代表質問のところでもお話をしましたけれども、難病に認定されている患者さんというのは、それこそ、電気料金でもそれからガス料金でも、やはり生命を維持していくためには、例えば一日じゅう電気をつけていなきゃいけない、一日、部屋の暖房をしておかなければいけない、あるいは夏は一日じゅう冷房しておかなければいけない。そういう諸々の事情があって、本当にぎりぎりのところで生活している人が多いんですよ。そういう人たちに、さあ、今度は対象を拡大しますから皆さん方は我慢をしてください、自己負担をふやしてくださいということが言えるのかどうなのか。

 そして、答弁では、暫定期間を設けたということを言っています。経過期間ですね。経過期間を三年間設けた、三年間というお話はありませんでしたけれども、経過期間を設けているから平気だというお話がありました。経過期間が三年で、では三年たったらその人たちは本当に所得がふえていくんですか。何を根拠に三年とおっしゃっているんですか。この二つについてお聞かせください。

田村国務大臣 今、難病のお話がございました。

 これに関しましては、難病と小児慢性疾患、これを含めまして、今委員、七十数万人から百五十万人というお話がございましたけれども、全体で八十九万人から百六十五万人に医療費助成の対象者がふえるというお話でございます。これに関しまして、負担がふえる方々がおられるではないかというお話がございました。

 確かに、一定の負担をお願いする方々が今回出てくるわけでございますが、そこは、何度も何度もいろいろと議論をさせていただく中におきまして、自立支援医療、障害者の方々の医療でございます、これと負担はほぼ横並びという形において、その中において非常に重い方々にはさらに軽減をするということでございまして、例えば、ALSの方々で呼吸器をつけなきゃいけない方、こういう方々に関しては、今までは無料だった、収入にかかわらず、たとえ収入が多くても無料であったわけでありますけれども、今般は、収入の多い方々は月千円は何とかお願いをさせていただきたいというような形で御理解をいただいておるわけでございます。

 実は、これは二月三日なんですが、私はインフルエンザでどうしてもお会いできなかったんですけれども、難病患者の団体の方々、お越しをいただきました。赤石政務官が私にかわってお会いをいただいたわけでございますが、団体の皆様方の御要望は、とにかく今般の見直しを一日も早く法律を通してスタートしていただきたいというような御要望でございまして、我々は、団体の皆様方の御要望にお応えをして、しっかりと今回の見直しを進めてまいりたい、このように思っております。

海江田委員 確かに、これまで難病の患者の方々で対象になっていない人たちは一日も早く、これは当たり前、当然の話でありますよ。

 ただ、私もちゃんと、これは長崎県、それから佐世保、九州、ずっと回ってきまして、そこでそういう方々からお話を聞いてきましたけれども、それは既認定の方々でありますから、その既認定の方々は、さっき私がお話をしたような感想をこもごも言っている。本当に困るんだという、感想というより悲鳴ですね。悲鳴を上げているということでございます。

 それから、もう一つ。確かに一気にこの対象を広げたということですけれども、それに対してやはり予算の拡大が少ないんですよ、はっきり申し上げまして。ですから、予算の拡大が少なくて対象を広げれば、既認定の方々の負担がふえてくるというのは当然の話でありますから、私が先ほど来お話をしておりますように、その六十九の項目だけでも、概算要求を上回るものがそれこそ本当に二兆二千億円もあるわけですから、そういう金額をもっと、そういう本当に今困っている方々のところにきちっと渡すことができないのかということを申し上げているわけであります。

 そして、もう一つ。これからいよいよ消費税が上がってまいります。そして、消費税が上がっていきますと、政府は、ことしの物価上昇の目標を三・二%、これは消費税の上昇分も含めて。大体消費税で二%ぐらい。税率は三%上がりますけれども、物価に反映するのは二%ぐらい。それにプラス一・二%、金融の緩和、異次元の金融緩和などもやっております、それから円安による輸入物価の上昇などもありますから、三・二%という数字を政府は物価上昇の目標にしているわけでありますけれども、さあ、いよいよ賃上げですね。今ちょうど春闘の真っ最中でありますけれども、この賃上げが本当に三・二%を上回るような形でできるのかどうなのか。

 それから、賃上げということについては、これは去年の党首討論のときでしたかね、去年の十月でありますけれども、安倍総理は若干誤解をしていたようで、ベースアップ、ベースアップと。連合の資料で二桁の企業がベースアップをしたと言っています。あれはベースアップでないということは総理もその後お気づきになったと思うんですけれども、物価上昇というのは、一度上がれば、今度はそれがもとになってそこからまた上がっていくわけですから、その意味で、賃上げといいますけれども、具体的にはやはりベースアップが必要なんですよ。月例賃金の上昇が必要なんですよ。

 総理は、ベースアップという、去年はお使いになりましたけれども、ことしはベースアップということは余りおっしゃらないで、むしろ、賃金の上昇でありますとか、ボーナスやもろもろの手当を含めた賃上げでありますとか、そういうことを言っていますけれども、総理が使っております賃金上昇というのは、ベースアップのことなのか、それとも一時金のアップなのか、そのことをお答えください。

安倍内閣総理大臣 大切なことは、働いている人々の収入が上がっていくということでありまして、それに尽きるわけですね。デフレ下においては、ずっとこの収入自体が下がっていたわけであります。

 そして、企業にとっては、先ほどベースアップという単語が出てきたわけでありますが、なかなか、果たしてデフレから本当に脱却することができるのかどうかという中において、ベースアップに踏み切れない企業があるのも事実ではあります。

 しかし、まずは一時金から、そしてそれが、定昇もいいでしょうし、そしてベースアップに結びついていくということが一番いいかもしれません。まずは、とにかく収入がふえていく、働いている人々の収入がふえていくということが大切であろう、こう思うわけでありまして、そうなって初めて景気の好循環は実現するということであります。

 だからこそ、我々も昨年、政労使の懇談会を開きまして、経営者の皆さんに、企業の収益の改善を賃金の上昇に結びつけていただきたい、こうお願いをしているわけでありまして、私たちがお願いをしているのは、基本的に賃金の上昇をお願いしているわけであります。そういう中において、だんだんベースアップ自体を考えている企業も出てきているわけでございますし、今回の春闘においても、労働者側と経営者側が議論している大きなテーマはベースアップになっているわけでございます。

 ただ、かつてはそんな話は全くなかったわけでありまして、やっとそういう雰囲気は醸成されてきた、このように考えているところでございます。

海江田委員 安倍総理はすぐ、かつてはということをお話しになりますけれども、今私たちは、やはりこれから前に向けてどうしていくかということが大事な視点でありますから、余り過去はお振り返りにならない方がいいのではないだろうかというふうに思いますが。

 それから、やはり問題なのは……(発言する者あり)いいですか、真面目に聞いてください。

 やはりベースアップでなければ困るんですよ、これは。しかも、今、例えば賃金が上がっていったというお話がありますけれども、せんだって厚労省が出しました賃金の統計でありますね。これは給与総額という話ですけれども、一三年、これは実は上がらなかったわけですね。これは全ての働く人たちの賃金であります。

 これが、もちろん、総理の言うようにボーナスも入っていますよ。ボーナスも入っているこの一人当たりの現金給与の総額でありますけれども、三十一万四千百五十円ということで、一昨年と同じだということでありますよ。だから、上がっていない。ただ、一部の大企業に正社員という形で勤めている人については若干上がった。ただ、もう片一方で、パートで働いている人たちの賃金は下がった。

 それからもう一つ、やはり大切なことは、そのパートの人たちの割合がふえているということであります。これは、パートと正社員ということでいうと、パートで働く人たち、一三年で二九・四%で、プラス〇・六ポイントふえました。

 それからもう一つは、非正規雇用という形で働く人たちも、これも四割ということになって、つまり、二極分化が起きていて、一部の正社員、一部の好業績を上げた、高収益を上げた企業の給料は、給料というより、一時所得、ボーナスも含めた賃金は、上がっているかもしれない。だけれども、それより圧倒的に多くの方々が、むしろ今でも低賃金に苦しんでいる。

 先ほど、公明党の委員の方の発言も私は聞いておりましたけれども、やはり働き方が不安定だ。働き方が不安定、しかも賃金が安いということになって、結局、結婚ができない、あるいは、結婚しても子育てができないという人たちがふえているわけですよ。

 はっきり申し上げれば、これは長妻委員もよく取り上げるデータでありますけれども、正規雇用と非正規雇用の方々で、結婚、配偶者をちゃんと持っているという割合が明らかに異なりますね。正規の方はおよそ六〇%、非正規の方は三〇%ですよ。そうすると、やはり少子化の問題も、この問題を放置しておく、あるいはこの問題を拡大させるような動きがあっては、ここの少子化の問題にも解決がつかないんですよ。

 ですから、私は、まず、やはり賃金の上昇ということでいえば、ベースアップ、安定をして上昇をしていくベースアップ、そして、それをしっかり担保するためには、雇用の正規化ということ、このことが非常に大切だということです。

 厚生労働省では、この雇用の問題、特に労働者派遣の問題について、これは政労使の間で合意をしたということを言っていますけれども、実は、特に働く人たちは、合意ということではありませんで、これは、違う意見、反対意見ということをはっきり報告しているんですね。

 労政審の部会の報告書でありますけれども、幾つか論点はありますけれども、主な論点は二つであります。

 一つは、派遣法をこれから変えるという場合、その派遣の期間制限の実効性がないということ。それからもう一つは、やはり均等待遇ですよ。この均等待遇についても実効性がないということを、否定をしているわけでありますけれども、そうした報告書に基づいて、今、私が指摘をした派遣の期間制限、このままだと生涯派遣の人たちが出てしまうよ、それから、均等が全く、派遣と正社員とでは違うという、この二つの問題について、そういう働く人たちの立場を反映した法改正というものを行うつもりがあるのかどうなのか。いかがでしょうか。

田村国務大臣 まず、先ほどの難病の自己負担の部分でありますけれども、多分、海江田代表がお話をお聞きになったのは、十二月の頭のころの話だと思います。実は、そのころにはまだ現行案よりも高い案を示しておりまして、その後、さらに引き下げた案をお示しさせていただく中で、御議論いただいて、一定の御理解をいただいたということでございます。

 その上で、今のお話でございますが、今回の労働者派遣法、我々も、派遣労働者の方々の処遇の改善というところに大きな一つの眼目を置いております。

 一つは、今まで、派遣業者、特定派遣制度というのがございまして、これは届け出制でございました。しかし、リーマン・ショック後、いろいろな問題が起こったということで、やはり許可制、本来の制度にもう集約化しよう。許可制であれば、優良な派遣業者というものをしっかりと我々もこれから育てていくことができるというふうに思っておりますので、そういう意味では、これは許可制にしていこう。

 そしてまた、今言われた、労働の期間の軸というものが非常にわかりづらい。今まではその業務に対して三年ということでやってきたわけでありますが、これが非常に労使ともにわかりづらいという部分がございますので、労働者、そしてその事業所、こういうような形で、三年というものの軸を据えさせていただくという形でございます。

 あわせて申し上げれば、やはり派遣元の企業にもちゃんと計画的な教育訓練をしていただこう、また、キャリアコンサルティングもしていただく中においてキャリアアップを図っていただけるような、そんな仕組みも義務づけるわけでございます。

 そしてさらに、今、均等待遇というお話がございました。我々は均衡待遇と申し上げておりますけれども、派遣先に関しましても、例えば賃金、これを派遣元にちゃんと開示しなきゃいけない、こういう義務を据えたりでありますとか、それから、自分のところの従業員が教育訓練をやっている場合には、派遣の労働者に関しましても同じように教育訓練を受けさせる、さらには、福利厚生も同じように、そういう施設をちゃんと使えるようにする、そういうような意味で、配慮義務をちゃんと持っていただくようにということを示しておるわけであります。

 あわせて、今代表がおっしゃられましたけれども、三年たったらどうなんだという話でございますが、我々は決して、そのまま派遣のままでいいとは思っておりません。ですから、派遣元が、三年たったらその時点でその業務から労働者をかえなきゃならないんですけれども、派遣先に対して直接雇用をしていただく、こういうような依頼をしていただくようにもいたしておるわけでございます。

 これは派遣だけの問題じゃないと私は思いますね。例えば直接雇用の有期、非正規、これもやはり非常に厳しい状況でありまして、実は、派遣労働者と直接雇用の有期の方々、契約社員の方々、こういう方々が典型でありますけれども、一般的にどちらの方が賃金が高いかというと、派遣の方が高いというような数字も出てきておるわけでございます。

 そのような意味からいたしますと、やはり非正規というような働き方がキャリアアップをして正規に移れるような、そういう仕組みを含めて、今般、キャリアアップ助成金等々、いろいろな制度を準備させていただいて、強化もさせていただいておるわけでございまして、そういうものを使って、我々も、思いは一緒でございます、非正規、正規になりたい方はぜひともなれるような、そんなことを支援してまいりたい、このように思っております。

海江田委員 今の均等待遇についても、これは均等待遇の配慮なんですよね。厚労大臣、気をつけてくださいよ。配慮なんですよ、あなたもおっしゃいましたけれども。

 EUのフランスだとかドイツだとかあるいはイギリスだとかは、これはもう均等待遇ですよ、言い切っているんですよ。均等待遇に向かって努力をしてくださいねということなんですよ、今の日本は。だから、その意味では圧倒的におくれているんですよ。均等待遇なら均等待遇で、それは均衡待遇という言葉でもいいですよ、均衡待遇だ、配慮じゃだめなんです、そこをやはりはっきり言えるかどうかなんですね。

 それから、確かに、かつて、派遣で働いている方たちは、これはいろいろな働き方ということがありますから、大体、九〇年代というのは、派遣で働いている方たちは、今のような働き方がいいですよ、何も正社員になりたくないですよという人が大体六割ぐらいで、そして、大体二割から三割がやはり正社員の方がいいねという人たちだったんですよ。ところが、九九年、この派遣法を改悪したでしょう。大幅な改悪をして、二〇〇〇年代に入ってから、これはとてもじゃないけれども派遣じゃ大変だ、やはりちゃんとした社員になりたいという人がもう六割を超えているんですよ。せんだっての調査でも、大体六割以上、六三%ですね。二〇一三年、これはNPOのデータで、毎年毎年とっていますから。そのままでいいという人たちは二〇%なんですよ。

 そういうような働いている人たちに、何で正社員の方がいいんだ、ちゃんとした社員になりたいのかといえば、それはやはり賃金が相対的に低いからであり、均等待遇というのはまだまだ実現されていないわけですから、この二点をしっかり、これからまだ法律をまとめて、法律にして出てくるんだろうと思いますけれども、そういう働く人たちの声をしっかり反映させたところでこの法律をつくっていただかなければいけない、そういうふうに思っております。

 何かあったらどうぞ。短くしてくださいね、もう時間が限られていますので。

田村国務大臣 派遣法、民主党政権で法律を厳しくしました。しかし、非正規化はとまっていないんですね。相変わらず割合はふえているんです。ですから、派遣だからだめだとか、そういう話では私はないと思います。

 それよりかは、不本意非正規という言い方がいいかどうかは別でありますけれども、本来、正規になりたいけれどもなれないという方々を、どのように支援をしていって正規の方に移していくか、これが重要でございます。例えば、派遣の中においても、キャリア形成をして正規に移っていくというルートは、当然、これは紹介派遣等々あるわけでございますから、そういうものも含めて、若い方々中心に、正規の方に移りたい方々にはそのようなルートをしっかりと確保できる、我々はそういう支援をしてまいりたいというふうに思っております。

海江田委員 均等待遇が大変大きな肝、キーワードなわけですけれども、それについては今もお答えがなかったわけでありますから、これはやはりしっかり、私どもの要求として、均等待遇ということでやっていただきたいと思います。

 もう時間も限られておりますので、この問題は次に譲りまして、やはりどうしても憲法と集団的自衛権の問題に触れないわけにはいきません。

 これは総理のお考えを率直にお聞かせいただきたいんですけれども、総理は、この集団的自衛権の行使容認、これはいわゆる法制局長官の解釈による変更でいいというふうにお考えになっているのかどうか。まずその点から。

安倍内閣総理大臣 お答えする前に、難病に対する国の予算が全然ふえていないという御指摘でございましたが、国費としては五百七十億を千七十億、ほぼ倍にしているということは申し添えておきたい、このように思います。

 そこで、今の御質問でございますが、まず時代認識、現状認識として、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しているわけでありまして、脅威は容易に国境を越えてくるわけでございまして、もはやどの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできない、こういう認識では、恐らく海江田委員も同じなんだろう、このように思うわけであります。だからこそ、国際社会と協力して、地域や世界の平和を確保していくことが不可欠であります。このような観点に立って安全保障の法的基盤を再構築する必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。

 この認識のもとに、現在、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会において、集団的自衛権と憲法との関係について検討が行われているわけでございまして、今御質問がございましたが、例えば集団的自衛権の行使等々についても、今の憲法のままで解釈の変更があり得るのかということについては、まさにこの懇談会において議論を今深めているところでございますので、この議論の行く末、結論を待ちたい、こう思っているところでございます。

海江田委員 私は、総理はどういうふうにお考えですかということを申し上げたわけですよ。

 そうでありませんと、では、その法制懇が、いや、これはやはり、内閣法制局長官の見解で、まさに今は、あるけれども使えないと、ずっと一貫してそういう答弁をしてきたわけですから、それを百八十度覆すのは難しいというその報告の結論が出てきたら、安倍総理、それで是とするわけですね。

安倍内閣総理大臣 私がどう考えていて、私の考えですぐに決められるのであれば、この安保法制懇はそもそもつくらないんですね。しかし、私たちは、そんな簡単なものではなくて、まず現在のこの時代認識をしっかりと持ちながらも、その時代認識については共有していなければならないわけでありますが、その中において、確かに今海江田委員がおっしゃったように、答弁の積み重ねもあります。一方、この時代認識のもとに、果たして、日本の国民の命と、そして財産と、領土、領海、領空をしっかりと守ることができるのかどうか。その中において、それを果たして否定するものなのかどうかということです、憲法の要請が。

 そういうことをしっかりと、まず専門家の中において議論を深めていく必要があるだろうということにおいて、専門家の皆様にお集まりをいただきまして、これは最初につくったのは第一次安倍政権でありますから、これは七年かかっていると言ってもいいんだろうと思います。私の考えで決めるのであれば、七年前にもう決めているわけですから、そうではなくて、しっかりと議論をしていただいて、後世の批判にたえるような議論を行い、そして緻密な論理構成を行っていただいているところでございます。

海江田委員 私が総理の考え方をお尋ねしているのは、やはり総理がこの間ずっと、法制懇の報告が出てから、答申が出てからということを言って、結果的に、今もそうですけれども、国会で議論ができないんですよ。

 そして、これまでのやり方を見ると、総理の私的諮問機関でありますけれども、そこが出したと。具体的な期間も、私はいつごろですかということを代表質問でお尋ねをしたら、いや、それは特に期限を切るものではないと言っています。

 今度の国会は六月二十二日までなんですよ。予算がまずありましょう。予算が終わったところで出てきて、そして、それから今度は答申が出てきて、今度は例えば自衛隊法を変えなきゃいけないと法改正が出てくる。だけれども、法改正が出てきて本当にしっかりした議論ができるのかどうなのか、そういうことを担保するおつもりがあるのか。

 それから、専門家、専門家と言うけれども、基本的に国民の生命財産を守るということに責任を持たなきゃならないのは政治家でありますよ。だから、政治家同士が議論をすればいいわけであって、ただ、議論をするとき総理が、いや、任せてあるから今は全く、これは出てきてからでなければ責任ある話ができないとか、あるいは、そのことについては話ができないということでは困るわけですよ。ですから、やはり総理はどういうふうにお考えになっているのか。

 それから、第一次のとき、確かに総理が諮問をされて、そして、最後のところまでいかなかったけれども、メンバーも選ばれて、それなりの四類型なんかが出てきましたよね。それが一つの基盤になっているわけですよ。だから、そういうことをやはりこの場で大いに議論をしましょうということを申し上げているのです。

 それから、やはり法制懇の中身も、実は、会議が終わった後、ブリーフィングはありますけれども、それが本当にきちっとした記録があって、その記録に基づいている話でもないようにうかがえますし、あるいは、やはり与党の中での調整というものも必要でしょう。だけれども、残念ながら、そういうものは国民の前には見えてこないということがありますから、だから、やはりこの中で議論をしましょうと。

 そして、その中で議論をするためには、総理はどういうふうにお考えなんですか。専門家に任せるだけじゃなくて、自分はこう思う。先ほど言った、一カ国だけで日本は守れない、そのとおりだと私も思います。だけれども、日本は、アメリカとの間で日米安保条約もあります。同盟国であります。この同盟国に頼って、そして、お互い足らざるところを補い合って、日本を守っていかなければいけないということで、その範囲でまずどこまでができるのか、足りないところは具体的にどこなのか、そういう議論をやはりやろうじゃないですか。それが全然できていないじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、そうした議論は喜んでさせていただきたいと思いますよ。

 これは、今、海江田党首がお話をされた、例えば、順番として、まず今安保法制懇において、憲法と集団的自衛権との関係、あるいはまた憲法と集団安全保障、特に集団安全保障の中における、これは海外での武器使用との関係と言ってもいいかもしれない、そして集団安全保障との関係、この中に今申し上げた海外での武器の使用が含まれるわけであります。と同時にまた、これは憲法とはかかわりがございませんが、現行法の中でシームレスにしっかりと日本を守ることができているのかどうか、法的根拠において。つまり、このグレーゾーン、いわゆるマイナー自衛権と言われている部分についても議論をしていただいているわけでございます。

 ここで専門家が集まって、静かな環境の中で、政治性を排除して議論を深め、そして、その結論を得たところで、我々は与党においてしっかりと議論をさせていただきます。この上において、もし必要があれば、解釈をどう判断するかということについて、政府一体となって、法制局を中心に判断をしていくわけでございます。

 しかし、憲法の解釈について判断をしたところで、実際にどう自衛隊が動いていくかということについては、その根拠となる法律を改正しなければいけません。当然、法律でありますから、国会で御審議をいただかなければ、衆議院で通って、参議院で通って初めて国会で成立をするわけでございます。ですから、実際にどういうことを行うかということについては、間違いなく国会において御審議をいただくことになるわけでございますから、当然、ここは政治家同士の話になっていく、こういうことであります。

 いずれにいたしましても、国会において将来御議論いただくことは間違いないわけでございますが、今の段階においては、まさに安保法制懇において、特に、抽象概念ではなくて、やはり具体的にどういうことが起こったときにそういう事態が生じるかということについて議論を我々は行うべきだ、こう考えているわけであります。

 ですから、その中におきまして、例えばミサイル防衛において、日本に落下するものについては、これは撃ち落とすことができるけれども、あるいは、もし将来技術的にそれが可能となった場合、グアムあるいはハワイに向かっていくミサイルについて、撃ち落とす能力があるのに撃ち落とすことはできないのか。あるいは、ミサイル防衛において、警戒に当たっている米国のイージス艦がイージス能力を全部空に向けているときに、周りの防衛力が落ちる、防御力が落ちる中において、近傍の日本の自衛艦の例えばイージス艦がそれを守ることができるのかどうかという議論。

 そういう、それぞれの個別的な議論を今進めているところでございまして、そうした議論が終局に至って結論を得た段階で、先ほど申し上げましたようなプロセスに入っていきたい、こう考えているところでございます。

海江田委員 やはり議論は、法律ができて、そしてその法律を何日かかけて、さあ成立だ、国会で議論したということではだめですよ。これは特に、国がどっちの方向へ動いていくか、向かっていくかという大変大切な問題ですから。私どもは、その点でいうと、やはり申しわけないけれども、さきの国会での特定秘密保護法の、あれだけ短い期間で仕上げてしまったということに大変大きなトラウマがあるんですよ、はっきり申し上げまして。ですから、やはり、そういう問題については一つ一つ議論をしていかなければいけない。

 それから、やはり総理の言っていることは粗っぽいんですよ、本当に。グアムにミサイルが飛んでいくと言うけれども、そのときは当然、グアムやハワイの米軍基地に飛んでいくときは、例えば、そのミサイルがどこから発射されるかわかりませんけれども、やはりアジアの方から発射されるんだったら、その前にある在日米軍基地がどうなるのか。在日米軍基地に一切手つかずでハワイやグアムに直接ミサイルが飛んでいくとは思えないし、それから、イージス艦が……(発言する者あり)いや、そういうことはないですよ。

 それから、イージス艦にしたって、イージス艦というのは、そもそも防空の護衛艦か巡洋艦なんですよ。あの八角形のレーダーでもって、二百の目標を捉えることができるんですよ。実際にミサイルを撃てるのは十幾つかですよ、これははっきり言って。だけれども、そういう非常に精度の高い、しかも、アメリカは大体九十隻ぐらいイージス艦があって、今、米軍の太平洋と大西洋は大体五〇、五〇ぐらいでやっているんですから。

 日本は何隻イージス艦があるか御存じですか。

小野寺国務大臣 短くお答えします。

 六隻でございます。

安倍内閣総理大臣 先ほど、つまり、これは、相手がどう行動するかというのがわからないから大変なんですよ。これは、国際政治あるいは安全保障で、こちらがあらかじめ相手の思惑を決めて防衛政策を立てるんだったら、こんな簡単で安易で危険なものはないと私は言ってもいいと思いますよ。あらかじめここは攻撃しないんだ、あらかじめここは攻撃しないんだということはあり得ないわけでありまして、それは、まさにどういう行動をとるかはわからないわけであります。

 そこで、その中において、私たちは国民の生命と財産をしっかりと守っていく必要があるわけでありまして、今おっしゃったように、グアムやハワイを攻撃する可能性はないんだと。あなたはそっちの国の指導者じゃないんですから、それは、民主党のリーダーではあるということは認めますよ。ですが、そこはあり得ない話であります。

 そしてまた、イージス艦の議論についても、イージス機能というのは、いわば飛んでくるミサイルに対して対応するということは、イージス機能を上に向けるわけでありまして、そこで、イージス艦の配置について、今、五十隻と。別に、五十隻が例えば日本海にいるわけではもちろんありませんし、広いアジア太平洋の中でどういう展開をしているかということについては、いわばこれは軍事上の話でありますから、もちろん、ここで申し上げることはできませんよ。

 しかし、日本のイージス艦が少ないからアメリカが関係するかということとはまた別の話でありまして、例えば、日本に向かってミサイルが発射される可能性がある中において、これは、当然、日本のイージス艦が主体的にイージス機能を使ってやっていくんですよ。しかし、その中において、米国も、いわば日本のイージス艦とリンクできる中において共同で対処できるのであれば、これは極めて合理的になるわけであります。

 そして、その中において、米国の艦船がどういう役割をディフェンスの中で、例えば、ゾーンディフェンスを今実際にやっているわけですね。我が国も海賊対処でやっているわけでありますが、まさに、このゾーンディフェンスを日本海あるいは太平洋の中でちゃんとリンクさせて行うことができるということであります。

 そういう意味においては、まさにそれは起こり得る可能性というのは極めて高いということでありまして、日本のイージス艦の艦船が少ないから米国は日本なんか全く当てにしていないということではなくて、まさに、日本事態になる可能性がある中においての可能性を言っているわけでありまして、そして、今、海江田委員が言われたように、その可能性が排除されるわけではないということは申し添えておきたいと思います。

海江田委員 私は、ハワイやグアムにミサイルが飛んでこないということを言っているのではなくて、そのときは、当然のことですけれども、日本にも飛んでくるんじゃないですかということを言っているんですよ。

 それから、さっきのイージス艦の話だって、これは共同でやっているわけですから。それは、自衛隊法九十五条をわざわざ新しくしたじゃないですか。そこでできるんですよ。だから、そういうことをこれからも議論していけば……(発言する者あり)いや、そういうことですよ。できるんです。できると言う専門家もたくさんいますよ。

 それはあれですけれども、一番大事な問題は、最初に私が質問をしましたけれども、少なくとも、これまで我が国は、憲法の九条の問題もこれあり、集団的自衛権、これはあるけれども使えませんよということをずっと言ってきたわけですよ。

 唯一、解釈でもって憲法解釈を変えたのは、自衛隊の文民というのを、これを、制服組は防衛庁長官に、自衛官はなれるかどうかという、これは昭和四十年、四十四年でしたかね。そのときに、制服自衛官も、最初の規定では文民だから防衛庁長官になれるというふうな解釈をしていたから、それを、昭和四十四年だったと思いますけれども、なれませんよ、ユニホームで制服ということですよ、昔の軍人とは違うけれども制服ですよということは、これは内閣法制局長官の解釈で変えたんですよ。だけれども、それは、国の方向を大きく、今度のように、個別自衛権から集団的自衛権に移っていくというような大きな変更ではないわけですよ。

 だから、それはいいかもしれないけれども、これまで使えません、使えませんとずっと言ってきたこと、ずっと法制局長官が言ってきたことを、法制局長官をかえて、そして使えるようにするということは、本当に、立憲主義、まさに国会で議論しなければいけない、それから、やはり憲法が厳しく総理に対して縛りをかけているということとの関連において、どういうふうにお考えかということ、このことだけはぜひ正面から御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が指摘したのは、先に、では、ハワイとグアムに対して撃たないということは否定していないけれども、その前に日本に必ず落とすはずだ……(海江田委員「前か同時かです」と呼ぶ)しかし、前か同時かに落とすはずだというのも、それは相手国の指導者の判断ですから、それを海江田さんが決めるのではなくて、それは某国の指導者が決めることであって、それに対して……(海江田委員「常識的に考えればそうですよ」と呼ぶ)それは常識でも何でもないですよ。

 外交ではさまざまなことが起こるんですね。我々は、それができないという中において、日米同盟が危うくなることをやるかもしれないじゃないですか。これは常識としては十分に蓋然性があることであって、それぐらいのことを考えられなければ、私は指導者として資格はないと言わざるを得ないと思いますよ。

 そして、もう一点言わせていただきますと、先ほど私が申し上げた、いわば警戒に当たっている米国のイージス艦に対して攻撃がなされたときに、それを助けることができるんだとさっきおっしゃったわけですか。(海江田委員「そうですよ。自衛隊法九十五条でできますよ」と呼ぶ)

 できるということを今まで、今、警戒に当たっているイージス艦に対して、それができるといった法制局の見解はありません。我が国に対する、我が国事態になっていないんですから。我が国事態になっていれば別ですよ。我が国事態になっていれば別ですけれども、一部の研究家が言っていることができるのであれば、こんなめちゃくちゃなことはないですよ。

 私が言っているのは、きっちりと国際社会に通用する考え方として、いわば個別的自衛権をどんどんどんどん延ばしていくというのは、これは国際法学的にはかなり異端なことであるのは事実でありまして、その中において、今、議論が専門家の間になされているわけでありますから、海江田党首がおっしゃったように、一部の人がいいと言っていれば、では個別自衛権を延ばして今すぐやっていいという判断であれば、これは大間違いであろう、それこそこう思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、我々は、まさに立憲主義というのは憲法にのっとって政治を行っていくことでありまして、これは当たり前のことでありまして、そのとおりにやっているわけであります。

 しかし、その中において、繰り返しになりますが、国際社会において、今、特にアジア太平洋地域においては大きく安全保障環境が変わっているんですよ。そして、サイバー攻撃等、国境を容易に越えていくという中において、世界が連携をしながら自国を守っていかなければ、それぞれの自国の平和と安定、そして繁栄を守ることができないという中にあります。

 そして、まさに海や空は公共財になっているわけですね。この海や空は公共財になっているという認識の中において、しっかりと、それはどうやって守っていかなければならないか、そして、それは、脅かされたときにはまさに国家の存亡にもかかわってくる、そういう認識をしっかりと持ちながら、憲法は、果たしてそうしたものまでを、そうした生存の権利までをも否定するかどうかという観点から、しっかりと議論をしていくべきなんだろう。

 憲法には、個別的自衛権も書いてないですよ。集団的自衛権も書いていない中において、あるのは、いわば最高裁の砂川判決があるだけであります。その中から、あの判決の中から、あれをまたどう考えていくかという課題もあるでしょう。それは、まさに今安保法制懇の中において議論されていることなんだろう、このように思うところでございます。

海江田委員 個別的自衛権は自然権としてあるんですよ、国には当然。それから、集団的自衛権もあるんですよ。国際法上、国連憲章でも五十一条に書いてあります。

 ただ、九条との関係でどうですかということで、まさに立憲主義というのは憲法にのっとってと言いますけれども、その憲法は、特に政府でありますとか国会でありますとか、やはりそれに対して強いたがをはめているということ。これは特定秘密保護法のときもお話をしましたけれども、やはりそういうものだというのが、これは現代的な立憲主義なんですよ。そこのところを総理は、申しわけないけれども、全然わかっておられないということ。

 それから、最後まで明言をしませんでしたけれども、やはり、ではもう本当に百八十度、これまでの延長線ならまだいいとしましょう、延長線上なら。ただ、これまで言っていることと百八十度違うことを、法制局長官の見解の発表で、それで本当にいいと思っているわけですね、事態が変化したからといって。そういうことですね、これは。それだけ最後に、そう思っているとおっしゃってくださいよ。

安倍内閣総理大臣 まさに、国際情勢が大きく変化をしている中において、我が国の国民の生命と安全と、そして領土、領海、領空を守るために、どう考えたらいいのか、憲法との関係において。生存権というのはあるわけですから、自然権としてあるわけですからね。そして、まさにこの生存権を守るために、どう解釈すべきか。今、九条の問題もそうですが、まさにそこのところについて議論を行っているわけでありまして、この議論を待つべきであろう、こう考えているところでございます。

 それと、ぐっと最初の議論に戻るんですが、補正予算と本予算を一緒くたにして批判をするのは間違っている、私はこう思うわけでありまして、概算要求は、先ほど林大臣が答弁したように、昨年の夏に概算要求を決めて、その後、消費税を引き上げるという判断をして、この補正予算については、まさに、消費税による影響を緩和してデフレ脱却の道を確かなものにするための予算であって、そして、全てそれは成長の果実で賄っているということは改めて申し上げておきたいと思うわけでございます。

海江田委員 それをおっしゃるんなら、今度の補正というのは、残念ですけれども、年度内に執行できないんですよ。しかも、概算要求の方は、当然のことながら平成二十六年度の予算でやったわけですから、予算の中に、しっかりちゃんと当初予算の中に入れてくれればいいんですよ、これは。

 それは、さっき、冒頭、総理は、無駄があればそれは見直しをするということを言ったことと反しますから、冒頭に言ったように、無駄があればそれは執行をやめるという形でぜひ臨んでいただきたいと思います。

 以上です。

二階委員長 この際、大島敦君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島敦です。

 きょうは、海江田代表の残余の四十分間をいただきまして、総理初め各大臣に質問をさせていただきます。

 私は、先ほど、海江田代表と総理そして各大臣のお話を聞きながら、田村大臣と海江田代表の間で雇用法制についての場面をずっと見ておりました。

 私自身、二〇〇〇年の選挙で当選をいたしました。私は、民主党が候補者を募集して、それに応募してサラリーマンから直接、衆議院議員になりまして、二〇〇〇年の選挙のときの選挙公約が雇用対策だったものですから、その当時、余り人気のなかった労働委員会に所属をさせていただきました。非常に小さな委員会で、半年後には厚生委員会と一緒になって厚生労働委員会に。その後の議論は、ほとんどが年金、介護、医療。厚生の議論が非常に多くて、この衆議院議員の、委員会あるいは本会議でも、労働法制について論じる場が少なくなってしまったのかなと思っております。

 きょうは、私、ずっと現場を見ておりまして、さまざまな意見を聞きながら、この場に臨ませていただいております。

 今回、夜はずっとソチのオリンピックを皆さんも見ていらっしゃると思います。そして、安倍首相おっしゃるとおり、二〇二〇年には日本で東京オリンピックが開かれます。恐らく東京オリンピックを二回見られる方は少ないと思います。今の若い方たちは、前の、一九六四年の東京オリンピックが終わってから生まれている方が結構多いものですから、東京オリンピックを見られるという幸福は、私にとってもありがたいなと思っていまして、二〇二〇年までのこの六年間、どういう施策を実施していくかというのが我が国の大きな判断にかかってくるかと私は思います。

 一九六四年、東京オリンピックが開催したその六四年の五年前、一九五九年に東京オリンピックは決定をしております。この五年間に何が起きたのか。例えば、日本の人口は一九五九年から六四年の五年間に五百万人ふえています。日本の国家予算はこの五年間に二・二倍ふえています。もちろん借金はございません。

 去年二〇一三年から二〇二〇年まで、この七年間に日本の人口は中位推計で三百万人減ります。そして国家予算については、これは仮定です、年間四十兆円、もしも赤字国債を出し続ければ、二百八十兆円積み上がっていくわけです。

 ですから、一九六四年の東京オリンピックの前提条件と二〇二〇年の我が国の置かれている状況は相当違ってくるかなと私は思っています。でも、私は決して悲観をしておりません。

 それでは、お手元の資料、テレビを見ていらっしゃる方はこのフリップを見てほしいんですけれども、二〇〇〇年、私が当選してから昨年の二〇一三年までの間、日本の貿易はどういうふうになっていたのか、為替レートはどういうふうになっていたのかを、一覧表をつくってみました。

 私自身、最初のサラリーマン生活十四年間は、鉄鋼会社でした。残り五年間は、生命保険会社で営業の仕事をして、恐らく何千社という会社、中小企業、小規模企業を訪問しています。

 そして、この図を見ていただくと、よく言われているリーマン・ショックが二〇〇八年に来るまでの間というのは、この為替レートを見てください、実質実効為替レートです、これは日本円と十二カ国の通貨を比べています。それぞれの物価上昇率を加味しながら、二〇一〇年を、十二カ国の通貨と日本の通貨を一〇〇とすれば、ちなみに二〇〇〇年は円は非常に高かったわけです。この一〇〇の円を得るためには、十二カ国の通貨で一二五必要だったわけです。

 そして、ずっと二〇〇〇年以降二〇〇七年まで円安が進んで、二〇〇七年には、一〇〇の円を得るために十二カ国の通貨は八二・六、これだけ円は安くなっているわけです。ですから、二〇〇一年以降の、リーマン・ショックで世界じゅうのバブルがはじけるまでのこの状況というのは、実質実効レートが、円安によって、毎年五兆円ずつ日本の貿易量がふえて、五十兆円から八十兆円にふえた過程がこれまでの過程だったと思っています。

 そして、リーマン・ショック以降どうなったかというと、この間まで、円は非常に高かった、高かったと言われているんですけれども、これまでの二〇〇九年から二〇一二年までの円は二〇〇五年のときと同じなわけです。二〇〇〇年よりも円が安くなっていることは、私は、これは、円が安くなっていて、今、現状どうなっているかというと、円は、一〇〇の円を得るために十二カ国の通貨は七九・八、多分、これは実質実効為替レートでこれだけ円が安くなったことはないと思います。この期間で安くなったことはないと思います。

 しかしながら、これを見ると、私は非常に期待しているのが、二〇一三年の、昨年の日本の輸出金額は七十兆円弱です。そして、二〇〇七年の輸出金額は八十五兆弱ですから、この格差の二十兆円というのは、私は埋めることができると思っています。

 今、私たちの国の中で本当に取り組まなくちゃいけないのは、この輸出金額をふやすこと。輸出をふやすことが、私たちの国にとって一番必要だと思っています。

 きょうは、残念ながら皆さんにお配りする時間がなかったので、若干読み上げさせていただきます。

 私が、今から二十五年前、鉄鋼会社の社員として香港からシンセンに入ってマーケティングしたときの、そのときの一人当たりの人件費は月額五千円でした。商社の方に、中国の方の人件費はお幾らですかと聞いたら、五千円だと聞いています。三十年前にイスタンブールでも同じ質問を商社の方にしましたら、多分五千円だったという記憶があります。非常に安かった時代です。

 今、足元で、これはジェトロの調査です、昨年の五月のジェトロセンターの調査で、例えば、北京、上海で月額の、中国の方の給与が幾らかというと、中国の方の給与は、年間ベースで、北京で九千百七十八ドル、上海では八千六百二ドルです。ですから、普通の作業員の給与でも大体九万円台になっている。エンジニア、中堅の技術者は、一万二千五百九十四が北京、上海が一万五千九百六十七ドルです。ですから、エンジニアの皆さんの給与は、一ドル百円だとすれば、年額で百三十万円あるいは百六十万円まで来ているわけです。東南アジアの給与というのは、これまでのこの期間に非常に上がっています。

 ということは、私思うに、先ほどの為替変動よりも、中国とか、あるいはインドネシアもバンコクもタイもそうです、月例給与、年間の人件費が上がることによって、日本の競争力というのはもう一回復活できていると思っています。

 製造業のこれまでの積み上げた日本国内における競争力は復権できていると思っているんですけれども、その点について、甘利大臣の御所見を伺わせていただければ幸いと存じます。

甘利国務大臣 確かに、かつてと比べますと、人件費による新興国の優位性というのは薄れつつあると思います。ただ、もちろん現在でも格差はありますし、あわせて、日本の製造業はかつての円高のときに製造拠点を移しているということもあって、日本の国内にかつての輸出を支えてきた企業の輸出基盤がどれぐらい残っているかということが一つ。それから、競争力自身、生産性自身が上がっていない。そこにしっかりスポットを当てなければならないというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 日本の製造業、確かに甘利大臣の御指摘のとおり、多くの大企業においては、鉄鋼業においてもそうです、為替変動によってその収益が増減するのを抑えるために、海外に拠点を移しているというのもあります。しかしながら、私は、日本の地元のメーカーの現場を歩いていると、なかなかそうとも言えないなと思っています。

 日本の現場というのは、ただ単に、海外に大企業と一緒に行くという現場もあるかもしれない。しかしながら、多くの現場は、その地域で雇用を抱えていますから、その地域の雇用を守ろうとして、現場、そしてその工場が、要は、本当に一生懸命に生産性を上げながら、今、いい部品、いい流れをつくっているのが日本の現場だと思っています。

 そして、今、日本の円がこれだけ安くなってしまっています。私、国会議員として一つ本当に誓っていることがありまして、自国通貨を、皆さんもそうだと思うんですけれども、売るということは絶対にしておりません。私たち国会議員が、自国の通貨が安くなるといってその通貨を売るということは、要は、会社においては役員が自社株を売るのと同じですから。

 ですから、私は、通貨に関して安くなることも、それは雇用がふえるということでいいかもしれないけれども、やはり、私たちの富をどれだけふやすのかが必要かなと思っているわけです。その点について、麻生大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 いきなり入学試験みたいなことを聞かれてもあれですけれども。

 基本的に、大島先生、今言われたことは、かつて二百四十円だったんですよ。一九八五年まで、この統計には載っていないけれども、二百四十円。それが、一九八五年のプラザ合意、九月でいきなり二百四十円が百二十円に暴騰したわけです。円が暴騰、ドルは急落。それで円高不況というわけのわからぬ言葉があったじゃないですか、あのころ。円高不況どころか、円高大好況になりましたよ。あれを書いた新聞記者というのはどうしたんですかね、円高不況と書いた人たちは。まだのうのうと偉そうな記事を書いている人もいますけれども、恥ずかしくないかねと思うぐらいの人がいっぱいいますけれども。ああいう話に惑わされなかった人たちというのが立派な人たちなんだ、私はそう思っています。

 百二十円まで上がった後、みんな、一生懸命、コストを下げるのもやった、海外に出ていってMアンドAをやった人もいた、いろいろなことをやって、努力をしたんです。

 しかし、問題は、それ以後、九〇年過ぎになりましてから、いわゆる資産のデフレーションというのが日本で起きまして、これでぶわっと下がって九七年まで。正確には、九〇年に株価が下がって、九二年から土地が下がって、それで一挙に日本はいわゆる資産のデフレーションによる不況に突っ込んでいったわけです。

 この資産デフレーションになったときに、我々はずっとやって、九七年は、銀行にみんな借金を返すばっかりで誰もお金を借りに来なくなったものですから、きれいに銀行は潰れたわけですよ、ばらばらばらばら。でかい都市銀行に至るまで潰れたわけでしょう。その後、みんなで頑張って借金を返して、どんどんやって、何となくになってきたときに、いきなりリーマン・ショックというのがまたどんと来まして、これでもう一回また縮んだわけですよ。二〇〇八年と書いてあるのは、少なくなっているところが、そこですよ。

 私どもは、これになったときに、問題は、それの対応策を残念ながら間違えて、ほかの国は、通貨競争はやらないというG8のときの約束を無視して、大量の自国の通貨を刷ることによって、結果として自国通貨を安くしたんです。日本だけはそのときは突っ張った。結果、こういうことになったのであって、デフレのときに自国の通貨が高ければいいということが正解かどうかというのは疑問ですよ。

大島(敦)委員 今大臣がおっしゃられたとおり、プラザ合意、八五年、私はその過程をメーカーの社員として全部体験してきているんです。ですから、おっしゃることはよくわかります。

 私が今述べたいのは、今の日本の輸出量をどうやってふやしていくかということでして、日本にはまだ製造業の工場と現場、非常にいい工場と現場がたくさん残っています。ここに対してどうやって、要は、これを二〇二〇年までの期間に伸ばしていく政策が私は必要だと思っているわけです。

 そうすると、きょうは、技術革新とかほかの政策ではなくて、働き方について、メーカーの働き方があるわけです。これは、流通の働き方もあればメーカーの働き方もあります。メーカーの働き方について、安倍総理もメーカー出身です、私はメーカーの働き方というのはチームワークだと思っていまして、これが日本のメーカーの強さだと思っています。

 米国においては適材適所。米国はひょっとすると適所適材かもしれない。適所適材、これは野球的な仕事の仕方で、ピッチャーもいればキャッチャーもいれば一塁手もいて、そのポジションに合った人を外から連れてきて仕事をしてもらうのが米国的な働き方だと思います。

 日本的な働き方は適材適所だと思っていて、人を雇い育て、チームプレーにして、毎年毎年改善しながらパフォーマンスを上げて、その部品一つ一つをつくり込んでいきながら、その部品メーカーの、要は技術力と能力が積み重なって日本のメーカーの強さになっていると思っています。

 そのチームワークの働き方についての総理の御所見を短くお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 私も同じ鉄鋼業界にいたわけでございますが、日本の場合は、個人プレーが得意な人もいますが、基本的にはまさにチームプレーで成果を上げてきたのではないか、このように思うわけであります。

 例えば、メーカーにおいても、研究を進めていく部門と現場があるわけでありますが、現場においても操業技術をどんどん磨いていくわけでありまして、操業技術を磨いていく中において研究部門と見事に連携をとりながら、そしてその成果を生かして営業力を生かしていく。

 こういう意味においては、常に連携をしながらということ、チームプレーということにおいては、日本はどちらかというとチームプレーが得意ですから、サッカーにおいても、個人プレーが強い国とチームプレーが強い国があるとすると、日本はチームプレーなんだろう、このように思いますので、得意なところを伸ばしていく方が成果を上げやすいのではないかというふうに私は思っております。

大島(敦)委員 このチームワークという働き方は、なかなかイメージが湧かないところがあるかなと思います。チームワークで物をつくっていく、改善提案をしていく、QC活動、JK活動、トータル・プロダクト・メンテナンスの運動、日々それぞれの職場をブラッシュアップしていくという働き方は、なかなかこれは日本人じゃないとできない領域です。

 それで、田村厚労大臣に伺いたいんですけれども、今後の、二〇一〇年代の雇用の需給の見通しをどう考えているのか、その点について手短に。

 二〇一〇年代です。二〇一〇年から二〇二〇年まで、今後の雇用の需給の関係を、それは直観的でも結構ですので、どういうふうに考えているのか、御所見を下さい。

田村国務大臣 いきなり御指名でございましたが、二〇一〇年、一つは、やはりこの首都近辺に関しましては、東京オリンピックがございますので、それに向かってのいろいろな需要がふえてまいります。建設業を中心に、今、その議論も、内閣の中でどのように対応していくかということをやっておるわけでありますけれども、全体として日本の国自体は生産年齢人口が減っていくわけでございますから、その分どうしても労働者不足になってまいる部分があります。

 一方で、総理が日ごろよりおっしゃっておられますとおり、女性の力というものをどこまで活用していくか。それから、日本の高齢者は世界で一番元気なんじゃないのかなと私なんかは思っておりますけれども、こういう方々の力というものをどのように活用していくか。

 特に介護の分野を考えますと、若い方が減っていく中において、これから二〇二五年に向かってでありますけれども、介護従事者が百万人から足らないという話でございますから、こういうところにもぜひとも元気な高齢者のお力をおかしいただきながらということも考えていくわけであります。

 そういう中において、もちろん外国人をどうするんだという議論はもう一つ大きな議論としてはあろうと思いますけれども、まずは国内の女性の力、そして高齢者の力というものを、そしてもちろん若者の中にも、非常に今、失業率が若者は高うございますので、こういう力をしっかりとおかしいただきながら、全体として労働の需給というもの、これをうまくバランスをとっていく、このように考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 私は、田村大臣の御意見もそうだと思います。今、六十五歳以上、団塊の世代がおととしから六十五歳を超えてきていまして、私の地元埼玉県の駅を見ていると、ここ数年で駅を利用する人が本当に減っています。多くの日本の団塊の世代が六十五歳を超えていくということは、これから二〇二〇年までの間、労働力の需給は締まってくると思っています。

 これまでは、若手の労働者、あるいはその方たちが非常に職場がないという時代でした。それは、一つにはIT革命があります。一九九五年、十九年前、私が会社をやめたのも、一回転職しているのも、当時のパソコンの技術で、マスを対象に仕事ができるという気づきがあったからです。ムーアの法則、半導体の集積度が二年間で倍々に高まって、二〇〇〇年代に起きたのは、定型的な仕事がシステムに置きかわりましたので、それで多くの失業者、若年の失業者が生まれたということです。それに対して、私も、皆さんの協力をいただいて、求職者支援制度、これは二〇〇〇年のときの選挙公約を通していただいて、一つの下支えをさせていただきました。

 これから二〇二〇年までに団塊の世代が皆さん卒業されると、若年者は逆に、意外とタイトになってくると思っているんです。非常にこれからタイトになってきます。そうすると、これからの労働法制のあり方というのは、このタイトになった労働の需給のバランスを見ながら、先ほど言った、外貨を稼ぐために、貿易額をふやすために、どうやって日本の製造業の復権をしていくかという視点がないといけないなと思っていまして、そのパッケージが必要だと思っています。

 今回も、この通常国会に出るさまざまな労働法制について役所から教えていただきました。個々には正しいかもしれないけれども、パッケージとしてどうやって物づくり産業の人材を育て、そしてそこに吸収していくのか。日本の雇用者報酬の推移、要は、正規も非正規もパートもアルバイトの方も、どれだけ報酬をいただいているかの総賃金のボリュームに着目していかないといけないと思っています。

 二〇〇〇年には、日本人が受け取っている報酬総額は二百七十兆円です。今は、二〇一二年では、二百七十兆から二百四十五兆ですから、大分ボリュームが減っているわけです。このトータルボリュームをどうやって要は確保していくかというのが、私は賃金政策で必要だと思っています。

 個々の給与を上げることとともに、今おっしゃられました女性の方も、そして元気なお年寄りの方も、もう一回労働市場の中で、自分のスキルを上げながら、このトータルボリュームを大きくしていくことが、二〇二〇年までの日本の政策として私は必要だと思っているんです。そのことによって、これは税収入のアップにつながります。

 そして、先ほど私が冒頭述べたように、東南アジアとの賃金格差が、昔の二十倍から、三倍から五倍に入ってくれば、日本のメーカーは、直観的に、私はやっていけると思っています。

 この間、日本の大手のエンジニアリング会社の社長のアドバイザーの方とお話をさせていただきました。そのときに、そのアドバイザーの方がおっしゃっているのは、今、シェールガス革命で多くの引き合いが来ている、その引き合いの中で、何がお客さん、アメリカの企業から求められているかというと、短納期なんです。納期どおりつくってほしいということなんです。早くシェールガスのプラントをつくって、早くシェアを押さえたいというのが向こうの発注者側です。それに応えられるのは日本のメーカーなわけです。

 それは、日本のメーカーがこれまで、余り政治とは関係ない領域で一生懸命に、要は、技術を守り、その熟練した労働者を解雇しないで、田村大臣のところだと雇用調整助成金です。景気のいいときに企業が積み上げて、景気の悪いときの雇用助成金で、従業員の首を切らないで、この労働力のスキルを守ってきたということが必要だと思っていまして、こういう積み重ね。

 ですから、今回の派遣法、先ほど海江田万里代表が議論をさせていただきました。やはり同一価値労働同一賃金だけでいいと思っているんです。

 これからは労働力の需給がタイトになってくる。そうすると、できるだけいい若手の労働者だって必要だと思う。だけれども、今、若手の労働者、要は若手の高校卒業の方を、私の友人が、工業高校の人を、この間、数年前に雇ったそうです。そうすると、工業高校出身なんだけれども、なかなか自分たちの時代とは違うと言うんですよ。数学とかが不得意な方もふえてきているわけですよ。

 下村大臣のところの、要は文科省として、英語教育も必要かもしれない。ただ、私のように産業人として見ると、英語もできた方がいいけれども、要は、コミュニケーション能力、あるいは縦横計算ができること、あるいはタカハシのタカが何通りもあること、そして、夜帰るときに作業日報を書いて、改善提案を書けることということが当たり前にできてこそ、日本の産業人材が育ってくるんです。

 ぜひ、そういう視点で、雇用法制を考えるときに、単純に労使との対立軸の中で考えるのではなくて、この二〇二〇年までを考えながら、それに合った人材をどうやってつくっていくかということが必要だと思うので、麻生大臣、その点についての御所見をいただければ幸いと存じます。経営者として。

 手短にお願いいたします。

麻生国務大臣 短く。そのとおりです。

安倍内閣総理大臣 私も、もともとメーカーの出身でございますので、そういう意味において、やはり望まれる人材、例えばメーカーの中においては、確かに、望まれる人材というのはおっしゃったとおりでしょうし、そういう人材を確保するということは極めて大事ではないか、このように思います。

 私がまだその会社にいたころ、例えば工場で勤務していたころは、工業高校あるいは高専を卒業して来られた方々がまさに現場においては中心的な役割を担っていて、そういう皆さんの改善努力によって生産性を上げてきたという長い実績があるわけでありまして、そこが果たして今どうなのかということについて不安を持っているのも事実でありますから、この不安に我々は政策でもって応えていくということも大切なことではないか、このように思っております。

大島(敦)委員 麻生大臣、短い答弁、ありがとうございました。

 麻生大臣にも、私、感謝を申し上げます。金融円滑化法案です。

 亀井静香さんが大臣のときに金融円滑化法案を通して、今、金融円滑化法案によって、日本全国で多分、何十万社という会社かな、対象になっている会社は非常に助かっていまして、その当時、もしも金融円滑化法案がなければ、先ほど申し上げたメーカーの多くが店じまいをしていたかもしれないんです。メーカーの多くが、町の工場あるいは中小企業、三百人未満、そしてちょっと超えた会社が、金融円滑化法案があったおかげで、今多く、要は生き残っているわけです。

 ですから、今後、麻生大臣のところでは、この間、貸し付け態度についての、今、中小企業庁あるいは金融庁そして経済団体と、あるいは銀行協会とお話し合いをしながら、どういう貸し付け態度、どうやって銀行が貸していくのがいいかというマニュアルをつくられております。銀行のその貸し付けの態度の中でも、やはり、メーカー、物づくりに対して、付加価値についてのまず視点が必要だと思っています。ぜひお願いいたします。

 そして、田村大臣に伺いたいのは、先ほどの、今後の労働法制を考える中で、私、一つお願いしたいことがあるんです。どういうことをお願いしたいかというと、労働法制を議論する中で、人の安定した職場を奪うことがどれだけ精神的に大変だということをわかっていらっしゃる方をその審議の中に加えてほしいんです。その委員会でもいいんです。これは私の経験です。

 バブルがはじけて、今から二十年ぐらい前ですか、二十年ぐらい前に、何が日本の会社の中で起きていたかというと、要はリストラという解雇でした。人の安定した職場を奪うことは物すごく大変なことです。私の知り合いは、その工場長でいらっしゃったかな、それを苦にして、みずから命を絶たれた方もいらっしゃいます。あるいは、私の知っている大手の人事の部長の方は、その後に会社を退職されています、責任をとって。そういう気持ちというのが、日本の会社の現場を支えてきているわけです。

 ですから、今の労働法制の議論の中で、大臣はそうじゃないかと言うかもしれないけれども、今後の視点の中で、そういうことを経験された方、日本のメーカーのことをよくわかっていらっしゃる方、物づくりとそして雇用の関係をよくわかっていらっしゃる方をぜひ入れていただきたいのが一つと、今後、二〇二〇年まで、今回の雇用法制もそうですけれども、ぜひ、それを前提としながらこの雇用法制全体を見直すということに私は着手する必要があると考えているんですけれども、御所見についてお聞かせください。

田村国務大臣 御助言をいただいたというふうに思いまして、参考にさせていただきたいというふうに思いますが、もちろん今も、それをわかっておられる方、労働者代表の方々もおられるわけでございますから、入っておられる中にはそういう方々もおられるというふうに思いますし、もちろん経営者側においても、当然のごとく、安定した雇用というものの重要性、十分に御理解いただいている方々はおられると思います。

 問題は、ちょっと今、例えば今般提出を予定させていただいております派遣法でありますとか、何か派遣だけがだめだみたいな、そんな雰囲気の議論がよくされるんです。ただ、直接雇用であっても、やはり、非正規、有期の働き方というのは同じような問題をたくさん抱えているわけでございまして、そこは、派遣だからだめだというのではなくて、全体としていかに安定した雇用というものをつくっていかなきゃならないか。

 そのためには、やはり景気をまずよくしないことには、そもそも企業が生き残れなければ、当然のごとく、それは解雇という道を選ばざるを得ないという企業も出てくるわけで、日本の国は、大手メーカーも含めて解雇ということは余り選択をされない、どちらかというと中小零細の方がそういう形は多いのかもわかりませんが、いずれにいたしましても、自主退職という形をとるにいたしましても、守られない雇用というものがあるわけでございますから、まずは景気をしっかりと立て直していく。

 その上で、今委員からいろいろと御助言いただきましたことを参考にさせていただきながら、我々も労働法制というものを、やはり働く方々を守るのが労働省の役割でございますので、しっかりと施行してまいりたい、このように思っております。

大島(敦)委員 二〇一〇年代に起きること。二〇〇〇年代に起きたことは、先ほど麻生大臣からもうなずいていただきました。テクノロジーの進歩によって多くの定型的な仕事がシステムに置きかわってきました。二〇一〇年代は、加速度的に、これから六年間で、これが起きると思っています。

 労働力の需給はタイトになる、これが前提です。しかしながら、これまでは定型的な仕事でした、システムに置きかわったのが。これは、グーグルとかトヨタさんとか日本の自動車メーカーが、車の移動をシステムに置きかえようとした。恐らく、要は、半導体の集積度が垂直的に高まることによって起きることは、翻訳とか通訳とか、私たちが想定できない領域でもシステムに置きかわっていくということがあると思います。そうすると、タイトな労働需給の中で、新しい労働力の移動も必要だと考えています。

 要は、タイトなんだけれども、その移動も必要で、その移動が、単純な労働ではなくて、もっと密度の濃い、高い労働の方にシフトしていきませんと、先ほど私が冒頭述べました、雇用者報酬の総体としての賃金総額が伸びないわけです。

 これは日本のこれからの大きなチャレンジだと思っていまして、私たちは、その点に着目しながら、雇用者報酬をふやすこと、そして、テクノロジーに対応した労働法制がどうあるべきかということを今考え始めたところなんです。ぜひその点についても、政府として、今後のことも踏まえて考えてほしい。

 最後に一つだけ。これは新藤大臣のところだと思うんですよ、あるいは太田国交大臣のところだと思うんですけれども、今回、軽自動車税が上がります。私も、自分で乗っている車、事務所の車は軽自動車ですから、普通車は持っていませんので、結構大変だと思っていたんですけれども、新車からということで、ほっとしています。

 この議論の中で、手短に答えてほしいんですけれども、どうして軽自動車税を上げるのか。役所から聞いたのは、要は、軽自動車の性能が物すごくよくなって、普通車との、二万九千五百円との、税金がちょっとかけ離れているから上げさせてもらうということでした。

 その点について、新藤大臣、申しわけないんだけれども、手短に御答弁いただけると幸いです。

新藤国務大臣 まさに、自動車の税制全体について、これは与党の税調で議論を行ったということであります。そして、地方公共団体、地方自治体の皆さんからの御意見もありました。また、ユーザーからの御意見もあります。

 そういう中で、今委員がまさに御指摘いただきましたように、小型自動車等との負担の均衡を図るということ、それから国際的な税制全体の中で軽の税制というものをどのように考えていくか、こういうような議論があったわけであります。

 そういう中で、まずは、激変緩和という意味で、二十七年度から新しい税を入れようと。それは、二十七年の新車ですから、二十七年の四月の二日以降にお買いになられた方は二十八年度に課税されますよ、こういうことで工夫をしながら、しかし、税制全体、自動車税全体を考えていく、そして、性能によって、環境に優しい、そういったものについての税制というものを取り入れていこうじゃないか、こういう全体の流れがございます。

大島(敦)委員 この問題を伺ったときに、先ほどの物づくりの問題との関連があると思っていまして、六百六十ccの物すごく性能のいい車は、私もいつも使っているこのガラパゴス携帯と同じなわけですよ。日本のマーケットの中でしか売れない車です、六百六十ccは。この車のレギュレーションを変えて、八百ccまで大きくして、もう一回り大きくすると、世界に通じる最高の小型車になっていくわけですよ。

 要は、日本の産業競争力を維持することと、税制を変える。要は、昔は三百六十ccの車を六百六十ccまで上げて、これをもしも八百ccまで上げて、もう一回り大きくしたら、世界最強の小型車として、それは量産効果も出てくるし、それを少し品質を落としていけば、新興国でも爆発的に売れる車のマーケットも創造できると思うんです。

 これは私というよりも、東京大学の藤本先生も指摘をされておりまして、今後の税制を見直すときには、産業競争力と税制という観点から、ぜひ深い議論をしていただけることをお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 先ほどの海江田代表に引き続いて、集団的自衛権の問題を中心に議論したいというふうに考えています。

 そこで、まず、きょうはテレビも入っておりますので、集団的自衛権とは何か、このことから入っていきたいと思いますが、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する国際法上の権利である、これは確立された解釈かと思います。

 もう少しわかりやすく言えば、同盟国、米国が攻撃されているときに、日本自身が攻撃されていなくても、米国とともに武力で反撃する、そういった権利であるということかと思います。

 そこで、この問題について、基本的なことをまず総理にお聞きしたいと思うんですが、まず、憲法九条の根幹というのは一体何になるのか、総理はどういうふうに御理解されているでしょうか。

安倍内閣総理大臣 憲法の九条について言えば、まさにこの九条ができたとき、憲法ができたのは国連が発足した後でございまして、この憲法九条に似た条文が国連憲章にもあるわけでございますが、いわば、我が国は、憲法九条によって、侵略戦争は行わない、つまり、日本の武力行使について基本的に禁じているものであるというふうに理解をしております。

岡田委員 憲法ができたときだけではなくて、その後、さまざまな議論がこの国会を中心に行われてまいりました。

 私も、初めて当選したとき、自由民主党におりましたけれども、国連平和協力法、それから、アメリカで九・一一のテロがあって、テロ特措法、そのときは私は野党側の責任者でありました。安倍総理は官房副長官。いろいろ御相談したこともありました。

 こういった一連の流れの中で、我が国として貫いてきたのは、海外において武力行使しない、憲法九条の解釈として、海外において武力行使しないという、この一線を貫いてきたというのが、私は、戦後のこの国会の、あるいは日本国の歴史だったと思うわけです。

 今回、集団的自衛権を行使する、もしこれを認めるということになれば、海外において我が国が武力行使をするということに当然道を開くことになるわけです。それだけ大きなことだ。

 もちろん、総理がおっしゃるように、それは、国際情勢、我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変わっています。そのことはわかりますけれども、同時に、我が国が海外において武力行使できるようになるという、戦後のずっと貫いてきた武力行使しないという考え方を大きく転換する、そういう問題であるという、極めて大きな問題であるという認識は総理にはおありになりますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、憲法九条の本質について、武力行使しない、若干舌足らずだったんですが、つまり、日本の武力行使には通常の国と違ってさまざまな制約がかかっているという意味において、基本的に武力行使をしないということでありまして、その中において、九条の解釈については、九条の中に自衛隊の存在も書いていないわけでありますし、先ほど申し上げましたように、個別的自衛権、もちろん集団的自衛権もそうなんですが、そのことも書き込んではいないわけでありまして、つまり、その中で、砂川判決は、生存権そのものを否定しているわけではないということで、自衛隊の存在自体が合憲になったわけでございます。

 そこで、今、安保法制懇において議論がなされていることは、国際情勢が大きく変わっている中において、一国のみにおいて自国の平和と安全を守ることはできない、国際社会と協力して地域や世界の平和を確保していくことが不可欠である、このような観点に立って安全保障の法的基盤を再構築していく必要があるという認識のもとに、安保法制懇において、集団的自衛権と憲法との関係、そしてまた、あるいは集団安全保障と憲法との関係、その中において、武力行使ということではありませんが、いわば、武力行使ではない武器の行使ということについて、海外での武器の行使についての議論をしているところであります。

 それと、いわば、武力行使に至らない、防衛出動による武力行使に至らない段階における我が国防衛のあり方について、マイナー自衛権と言われているものでありますが、例えば潜没潜水艦が領海内に入って徘回を続け退去しないときに、どう排除することができるかということも含めて、そうしたものも今議論しているわけでございますが、その中で、今、先ほども申し上げたわけでありますが、まさに九条との関係においても議論をしているところでございます。

岡田委員 安保法制懇でさまざまな問題について、集団的自衛権以外も、集団安全保障もマイナー自衛権も議論しているということは承知をしております。

 私は、そういう説明を聞いたのではなくて、我が国が戦後、海外において武力行使しない、そのかたい決意のもとに憲法九条を解釈し、そして今日まで進んできた、そこを変えることになるということは、それはいろいろ議論はあるでしょう、しかし、国としての大きな政策転換である、そういう認識は総理におありになりますかということを私は聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 いわゆる海外における武力行使ということについてでありますが、この議論も今までずっと行われてきたわけでございます。

 いわば、基本的には、海外における武力行使ということについては、例えば日本がミサイル攻撃を受けたときに、その策源地を攻撃することができるかどうかということについては、これはかつての船田答弁があるわけでございまして、そこをたたくことはできるというのは、これは憲法上許されるという答弁があるわけでございますが、しかし、その中において、我々、従来から、海外においては、いわゆる武力行使ということについては、武力行使はできないという考え方をとってきているわけでございます。

 そして、今回、我々、安保法制懇で議論していることについて言えば、これはかなり個別具体的な話をしているわけでございます。

 例えば、PKOにおいて、PKO活動というのはこれは武力行使ではそもそもないわけでありますが、そこで一緒に海外に駐屯している、一緒にいる部隊がテロリストに襲われた際、救助を申し出られたときに、この海外の他の国の部隊を救出することができるかどうかということでありまして、救出する際には武器の使用ということも当然必要になってくるわけでありますがというような議論をしているということでありまして、我々が海外に出ていってどこかの国を攻めるとか、そんなことは全く、もちろん議論そのものもしていないわけでございます。

 その中において、例えば、一体化の問題であります。一体化の問題について、燃料等を戦闘中の国に給油するということについては、これは一体化するというふうに言われているわけでございますが、そういう一体化とか、そういうことについての議論をしているわけでございます。

 海外における武力行使というと、イメージとして、いきなり自衛隊が海外に出かけていってどこかの国を攻めていくというイメージを持たれるかもしれませんが、今議論していることは、そんなことは全く議論をしていないということは申し上げておきたい、このように思います。

岡田委員 総理、私の質問に対して端的にお答えいただきたいと思うんです。

 具体的に法制懇で今議論している個別のことについて、私はお聞きしているのではありません。それはまさしく法制懇で御議論されているという総理の御答弁もありました。ですから、そのことに私は踏み込んで今聞こうとは思いません。基本的な考え方のところを総理と議論したいと思って、今この場に私は立っているわけです。

 もう一つ、総理、気になることがあるんですが、先週の参議院の予算委員会で、我が党の大塚議員の質問に対して、自国と密接な関係にある外国というのは、同盟国アメリカのみを指すのではなくて、より幅広いものだという答弁を総理はされています。これは具体的にどういうことなんでしょうか。

 アメリカとは日米安全保障条約によって同盟関係にあるわけですが、それより幅広いということになると、例えば経済的に密接な関係のある国、そういったこともこの集団的自衛権の対象としてお考えだということでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先般私が答えたのは、大塚議員が、集団的自衛権についての国際的な定説としての解釈について、解釈についての解釈において同盟国という言い方をしたものでありますから、そうではない、密接な関係のある国だというふうに申し上げたわけでありまして、それが定説だということは、これは岡田委員も認められるんだろう。私はそのことを申し上げたわけであります。

 集団的自衛権というのは、同盟国というふうにこれは定義をしているわけではなくて、密接な関係にある、こういうことでございます。

岡田委員 集団的自衛権というのは、武力行使を正当化する、違法性を阻却するという話ですから、もしその対象が非常に広がっていけば、これは勝手に武力行使できるということにもつながりかねないわけで、私は、総理が思っておられるほど幅広く認められているというふうには考えていないわけであります。

 私は、もう一つ総理にお聞きしたいのは、今、憲法解釈を変えて集団的自衛権を認め得るかどうかということを議論しているんだと思うんですけれども、そこで言う集団的自衛権というのは、集団的自衛権一般を憲法解釈の変更によって認めるというお考えに総理は立っておられるんじゃないかと私は思っているわけですね。そして、あとは法律でその集団的自衛権を行使できる具体例あるいは範囲というものを規定していけばいい、そういうお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 九条との関係において言われているんだろうと思いますが、いわば九条における制約というのは、さきに答弁したように、個別的自衛権についても九条の制約はかかっているわけでございます。

 懇談会においては、憲法九条においての制限をどう考えるかについてまさに議論をしているわけでございまして、今ここで私が結論について申し上げることはできませんが、安保法制懇においては、繰り返しになりますが、いわば、自衛権の中で個別的自衛権と集団的自衛権に分けて考えているわけでありますが、個別的自衛権においても、これは九条における制約がかかっている、であるならば、当然、これは集団的自衛権においてもかかっているだろうという議論が当然行われているわけでございます。

 この九条の制約についてどう考えるかということがまさに大きなテーマとして議論になっている、こういうことでございます。

 それとともに、先ほど岡田委員が海外での武力行使等々についてお話しになったわけでありますが、公海についてどう考えるかということもあるわけでございまして、ミサイル防衛のため日本近海の公海上で警戒に当たっている米軍のイージス艦が攻撃を受けた場合に、我が国はこのイージス艦を現在は守ることはできないわけであります。

 これははっきりと申し上げておかなければいけないわけでありますが、ミサイル防衛のため日本近海の公海上で警戒に当たっている米軍のイージス艦が攻撃を受けた場合、我が国はこのイージス艦を、日本はまだ攻撃を受けていない場合ですよ、我が国の事態になっていない場合、我が国が攻撃を受ければこれは共同対処していくわけでありますからできるわけでありますが、そういう場合は我が国はこのイージス艦を守ることができないわけでありますが、それでよいのか、こうしたことについてまさに議論をしているわけでございます。

岡田委員 総理、私の時間も限られておりますので、安保法制懇で今こういう議論をしているという個別のことを私は聞いているわけじゃありませんので、ぜひ質問にお答えいただきたいと思います。

 そこで、個別的自衛権を我が国憲法九条は認めているということでありますが、条文上、総理もおっしゃるように、個別的自衛権を認めるとは書いていない、憲法九条について。しかし、それはやはり例外的に、九条は武力の行使を禁じているけれども、例外的に自衛権の発動としての武力行使が認められるというのは、これは確立した解釈だと思うんです。

 それはなぜかといえば、やはり我が国の責務として、我が国国民の生命や財産あるいは権利が外国からの武力攻撃によって失われようとしているときに、それを防御することは国としての最低限のこれは責任である、そういう考え方に立ってこの個別的自衛権が認められているというふうに、これは確立した解釈だと思うわけですけれども、それでは、集団的自衛権の場合には、我が国の国民の生命や財産や権利が直接外国によって侵害されている、侵略されているということではありませんね。

 では、どういう理屈でもって、憲法の禁じている武力行使の例外として集団的自衛権をお認めになるんでしょうか。総理のお考えをお聞きしたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 今私が申し上げたような例、先ほど申し上げましたように、公海上においてミサイル攻撃に対して警戒中の米国のイージス艦が攻撃を受けた際に、例えば日本の艦船、特にイージス艦であれば防御力が高い、このイージス艦がその攻撃から守ることができるかどうか。

 現在では守ることができないという解釈がなされているわけでありますが、これは密接な関係以上の同盟国でありますが、そうなった際には、これは同盟国としての関係自体が極めて危うくなるわけでありまして、直ちにその後起こるかもしれない我が国に対する事態に対する共同対処そのものがこれは毀損される危険性があるということであれば、これは事実上我が国に対する攻撃と同じように考えるべきではないかというような、そのような議論がなされているわけであります。

 また、例えば、北朝鮮の有事の際に、北朝鮮が例えば米国を攻撃したとします。その際に、いわば国際社会において経済制裁を行うというときに、北朝鮮に向かって武器弾薬が運ばれている、その武器弾薬を我々は、その輸送を阻止できる状況なのに阻止しなくていいのかどうかということ、これも議論になっているわけでありまして、それはつまり、それが運び込まれて、いわば、まさに我が国事態になるかもしれないということの中における議論でもあるわけであります。

 そういう中において、かつてのように、遠い時代であれば、いわば、そういうことについて日本の能力もそもそも期待されていない中においては、そのことによって日米同盟が毀損されることはないわけでありますが、そもそも、そのことによって日米同盟は毀損されるという可能性も高いし、そして、先ほども申し上げましたが、まさに海あるいは空というのは、世界が、それぞれの国が生きていく上において公共財でありまして、こうした公共財を守るための義務というのはどういうことがあるのかということについても、やはり議論をしているわけでございます。

岡田委員 今、総理は多分二つのことを一緒に言われて、やや混乱していると私は思うんです。

 一つは、個別的自衛権の行使に並ぶような、そういうような事案。つまり、日本国民の生命財産が外国からの侵略によって損なわれようとしている、これは個別的自衛権ですね、それに並ぶような事案について集団的自衛権を認める余地がそこにあるんじゃないか。これは、確かにそういう議論は私はあっていいと思います。もちろん、集団的自衛権という構成にするのか、あるいは、一時期、法制局も認めていた個別的自衛権で認めるのか、そこは議論がありますけれども、そういう話が一つ。

 もう一つ総理がおっしゃったのは、いやいや、いろいろなことをしないと日米同盟が壊れちゃう、そのことは日本にとって大変なことだと。

 これはちょっと次元の違う話ですね。日米同盟が壊れかねないような事態についてはやはり集団的自衛権を行使して一緒にやらなきゃいけないんだというのは、それは、本当に壊れるかどうかというその議論も必要ですし、日本国民の生命財産に直結するものではありませんよね。

 だから、その二つのことを一緒にして議論しているというのは、私は非常に混乱していると思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 二つ目の例、余り本当は国の固有名詞を挙げない方がいいんですが、多少わかりやすく話をするために北朝鮮という例を挙げたわけでありますが、これは全く日本に関係ない事態ではなくて、まさにこれは日本に波及するかもしれない事態の中において米国に対する武力攻撃が発生したという前提でございます。

 つまり、その武力攻撃の発生の仕方も、いわば、そういう、日本に対しての武力攻撃が起こるかもしれないという中において米国に対する武力攻撃が発生して、その過程において、さらに武器弾薬が北朝鮮に運ばれようとしている。それをいわば目と鼻の先において我々は例えば日本海の海上において阻止しなくていいのか、阻止できなくていいのか、そういう議論でございますから、これは必ずしも余り遠く離れた議論ではありませんが、いずれにいたしましても、我々が行っている議論については、基本的には、日本とかなり密接不可分な事態について類型を挙げながら議論をしているわけであります。

 そこで、いわば、我々がそれを別に見過ごしてもこれは日本の安全あるいは国民の生命財産にはかかわらないということになれば、これは、もちろん、そもそも政策的選択肢でもないし、あるいは、この法的根拠をつくっていく上において、根拠法をつくっていく上においてもそれは当然排除されていくでしょうし、そもそも、その解釈の中において、委員がおっしゃったように、最初の例においてはそういう議論をする必要があるでしょうということをおっしゃった。つまり、そういうことはあるでしょうという、必要があるでしょうという議論に我々は絞りながら議論を行い、そういう範囲内において果たして認めることができるかどうかというような、そういう議論がまさに行われているということでございます。

岡田委員 私が先ほどから申し上げているのは、集団的自衛権の行使というもの全体を憲法解釈の変更によって認めるということになれば、それはやはり全く今と違う状況になりますよということを申し上げているわけです。

 いろいろな、日本の安全に直接かかわるような事態について、個別事案に即して議論し、本当に必要だということになった場合にそれがどういう概念で整理されるのか、そういうアプローチならいいんですけれども、まず憲法解釈で全ての集団的自衛権を認めます、あとは法律でやりますということになると、それは今までのこの国のありようそのものが変わるような議論になるわけで、あとは法律で規制するということだけになってしまうので、そこは私は、やはりアプローチとして違うのではないかということを申し上げているわけです。

 もう一つ、では、戦力不保持、九条二項ですね。

 九条二項で、戦力を持つことを禁じております。ここは、自衛隊が違憲かどうかということについての国会における長い議論がありました。私は、自衛隊の皆さんには本当に気の毒だったと思います。今の政府の確立した解釈は、自衛権の行使のための実力組織は、これは二項に言う戦力ではない、そういう解釈だと思うんですね。

 しかし、もし広く集団的自衛権を認めるということになれば、それはやはり、防御的な実力組織だけではなくて、一般の戦力と何ら変わらなくなってしまう。そうすると、九条二項の今までの解釈を変えるということに私はならざるを得ないと思うんです。九条二項というものの意味がそもそもなくなってしまう。あるいは、九条二項を厳格に解釈すれば、それは持ってはいけないものを持つということにもなる、そういうことになると思うんですね。

 ここの九条二項の戦力不保持との関係をどういうふうに総理は整理されているんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、最初の議論について、二つに分けられましたけれども、大体、私がどちらについて申し上げているかということは雰囲気でわかっていただいたと思うんですが、まだこれは安保法制懇において議論をしておりますから、今私が結論めいたことを申し上げることはできないわけであります。

 これは、基本的には、今までの積み上げの答弁もあるわけでございますから、そして、その中で国民的な理解を得ながら解釈を考えていくということであるということでありますし、再々申し上げておりますように、個別的自衛権においても、既にこれは九条において制約がかかっているわけでありますから、常識的に、では集団的自衛権でそれが外れるということというのはないであろう、そういう議論が有力ではないか、こう思うわけでありますが、今の段階で私が、これはあくまでも安保法制懇に議論はお任せをしているということでございます。

 そして同時に、今おっしゃった、まさに九条の二項について、これは戦力の不保持、これは前項の目的を達成するためのということでありますが、ここは、この二項についての制約をどう考えるかということについても議論がなされているということでございます。

岡田委員 ここに持ってきたのは、武力の行使に関する国際的な整理であります。

 国連憲章第二条の四は、加盟国の国際関係における武力の行使を原則として禁止しております。しかし、それに対して例外を設けているということで、国連の集団安全保障措置、これは後ほど時間があれば議論したいと思います、それから個別的、集団的自衛権、この二つについては違法性が阻却される、こういうことになっているわけであります。

 この一のところの集団安全保障は後ほど議論したいと思いますが、もし総理が集団的自衛権を全面的に日本国憲法が許容しているというふうに解釈を変えようとしているということであれば、この個別的または集団的自衛権ということで、日本国憲法が禁止しているのは一体何なのか、九条で禁じられているのは一体何なのかという議論になると思うんですね。

 今までの解釈は、日本国憲法九条が禁じているのは集団的自衛権の行使とそして侵略戦争であった。(パネルを示す)これ以外だと違法な戦争しかないわけですから。ですから、集団的自衛権を全般的に認めるということになれば、それは、日本国憲法九条が禁止しているのは侵略戦争だけだということになって、これはほかの国の一般の憲法と何ら変わらなくなるということですね。

 そういうふうに総理は踏み出そうとしておられるんですか。それは非常にある意味で大きなことだというふうに私は思って、質問しているわけです。

安倍内閣総理大臣 集団的自衛権については、政府は、一貫してお答えをしておりますように、国際法的にはその権利はあるけれども、日本の憲法によって行使については禁じられているという考え方であります。権利があって行使はできない、国際法と憲法という違いはあるわけでありますが。

 そこで、先ほど、これは繰り返しになるわけでありますが、個別的自衛権においても必要最小限という、これは制約がかかっているわけでございますし、その中の制約において、我々はいわば自衛隊の存在というものを合憲だということで、今や国民全体の共通の認識になっているわけでございます。

 そこで、先ほど来何回も質問をいただいておりますが、基本的には、そこで制約がかかっているわけでありますから、いわば自衛権全般にかかっている制約があるわけでありますから、当然それは制約としてはかかっているというふうに考えるべきだろうと思います。

 その中において、国際環境が変わっていく中において、それは、まさに個別自衛権の行使を認める、つまり、自衛隊の存在を認める際のあの砂川判決において、これは、日本の、我々の生存を否定しているものではない、それが憲法が要請するものではないという基本的な考え方のもとにおいて自衛隊は合憲ということになったわけでございますから、いわば、この個別的、集団的自衛権の行使につきましても、そういう観点から、今、個別的に事例を挙げながら議論を行っているということで御理解をいただきたい。

 そして、最終的に、この安保法制懇による議論を経た後において、与党で協議をし、そして、法制局を中心として解釈について政府として判断を示したい、このように思うところでございます。

岡田委員 あと、集団的自衛権の行使というのは、実はかなり限界は曖昧な概念だというふうに思うんですね。

 例えば、ソ連はハンガリー動乱の際にハンガリーに武力行使しました。それは集団的自衛権ということで説明をいたしました。アメリカのベトナム戦争もそうです。ニカラグアの内戦のときのアメリカの軍事介入も同じです。つまり、正当な集団的自衛権の行使であるという事例というのは、実は余り、どれが正当な事例、集団的自衛権の行使なのか不行使なのかというのは非常にわかりにくいわけであります。

 あるいは、アメリカ自身が、もし集団的自衛権で、先ほどの例でいって、同盟国、アメリカが武力攻撃を受けていて、日本がそれを排除するためにアメリカと一緒に武力行使するということで考えたときに、アメリカが武力衝突に至ったそのプロセスですね。

 例えば、アメリカ自身は、みずからの国益が損なわれたら、みずから先制的に武力攻撃するということを認めている国。そうすると、そのアメリカの行為が違法な行為なのか、それとも正当な行為なのかということも、これははっきりしない事例というのは幾らでも私はあり得ると思うんです。

 そういうときに、根っこの、米国が攻撃されている事態に至った経緯についてはっきりしない中で、日本がアメリカとともに武力行使するということは、これはある意味で大きな危険を日本自身が抱え込むことにもなりかねないと思うんです。そういったことについて、総理はどう考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 今我々が議論をしていることは、今、岡田さんが事例として挙げたようなことをやろうとしているわけでは全くないわけでございます。

 つまり、我々が議論していることは、先ほど申し上げましたように、朝鮮半島の情勢が厳しい情勢になってきたときに、ミサイルが発射されるかもしれないという可能性のある中においてアメリカの艦艇が警戒に当たっていて、その艦艇に対する攻撃を自衛艦が阻止できなくていいのかどうかということ等々についての議論を行っているわけであります。

 そこで、これは、集団的自衛権というのはまさに権利であって、義務では全くないわけでありますから、つまり、権利が、今まで法制局において、国際法的には権利はあるけれども、憲法上行使できないという解釈の中において、さまざまな、今おっしゃったような行為でないことについても、我が国の例えばシーレーンを防衛する上において、米国の艦船と日本の艦船がある種共同作業的にシーレーン防衛をするということについての日々の作業についても、これはさまざまな障害が発生をしているのも事実でございます。

 そして、同時に、集団安全保障においても我々はさまざまな制約を課してきているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、駆けつけ警護はできない。逆の場合は助けてもらうわけでありますが、こちら側は助けることができないということになっていく、それで果たしていいのかどうかという議論でございますし、また、そもそも、先般成立をいたしました自衛隊法の改正によって、邦人を陸上で救出する際にも、もし、これは安全にならなければ救出には行けませんが、しかし、事態は変化しますから、変化する事態の中において邦人が再びテロリストによって包囲されたときに、その人たちを助けることができなくなってそれでいいのかどうかという議論もあるわけでございます。

 そうしたことを含めて、憲法との関係において議論を深めているということでございます。

岡田委員 総理、恐縮ですけれども、テレビを見ておられる方に、よりわかりにくくしていると思うんですね、総理の答弁は。例えば、今の駆けつけ警護というのは、これは集団的自衛権の話じゃないですよね。集団安全保障の議論でしょう。ですから、そういうふうに答弁を広げて言われると、論点がだんだんぼかされてしまうわけです。

 総理は、昨年四月二十三日の参議院予算委員会で、侵略の話について、侵略の定義は定まっていない、国と国との関係で、どちらから見るかで違うという答弁をされました。これはこれで一つ波紋を呼んだ答弁なんですが、総理御自身も、侵略なのか、あるいは正当なる武力行使なのかということのその範囲がはっきり定まっていない、それは見る目によって違うんだというお考えをお持ちであれば、ますますこの集団的自衛権について、これは慎重に考えていかなくてはならないということになるんじゃないでしょうか。

 私は、議論することを拒むものではありません。しかし、集団的自衛権全般を認めるというふうに一旦内閣の解釈が確定してしまうと、それはあとは法律でどうにでもできるということになりますから、そうではなくて、もし議論の必要があるのであれば、集団的自衛権と今分類されているものの中で、具体的にこういうことについてどうなのかという、そういう問題の立て方をしていくべきだと思うんです。

 ですから、全般について認めるものではないということを総理がはっきり言われれば、私はより生産的な議論になると思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほどは、一番最初に、安保法制懇の中で議論していることについて御説明をしたわけでございますが、先ほども、例として、専ら集団的自衛権の議論だけをしているのではないということをお話をさせていただこうと思いまして、これは集団安全保障の中における海外での武器の行使、武力行使ではなくて武器の行使についての必要性の議論についてのお話もやっているんだということを御説明しようと。これは何も、混同させようとしているわけでは全くないということは申し上げておきたいと思います。

 これは、先ほど来、私の議論で大分、ある種、ここで私が議論についてこうだということを申し上げるのは控えさせていただきたいと思いますが、している議論については、基本的な方向としては、これは、まさに我が国と密接にかかわりがあるという、その事態、事態がかかわりを持ってくるという事態の中における個別的な事例について、我々は今、安保法制懇において議論をしているわけでございまして、基本的には、岡田委員が御懸念しているように、我々が、これはどんどん、いわば変更によって何でもできていくというような、例えば、米国が集団的自衛権の行使として行うようなことを日本がやるのかといえば、それは全くそんなことはないということは申し上げておきたい、このように思います。それは、何といっても九条があり、二項があるわけでありますから、その中での集団的自衛権の行使の可能性について議論をしている。つまり、相当これは限定的に議論がなされているということは申し添えておきたい、このように思います。

 なぜ私が今ここで明確なことを言わないのかといえば、それは、今まさに議論を専門家の皆さんにお任せしているということでございます。

岡田委員 問題は、憲法解釈をどう変えるか。もちろん、我々は変えないという選択肢も持っているんですけれども、全般的に、集団的自衛権全体を認めるというふうになれば、それは、総理がやらないとおっしゃっていても、次の内閣が法律を改正してできるということになりかねませんから、憲法解釈で集団的自衛権を認めるとおっしゃるのであれば、どのような根拠で、どのように解釈を変えて認めるのかというところまできちっと議論しないと、これは国会での議論にもならないということですよ。

 一内閣が、海外で武力行使しないという我が国が戦後貫いてきたこの方針を変えるということですから、その中身について、単に、解釈を変えました、あしたからは集団的自衛権が全体的に認められるんです、そういうことはあり得ないということを申し上げておいて、私の質問にかえたいと思います。

 終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 全体的に認めますということはないということは申し上げておきたいと思います。

二階委員長 この際、長妻昭君から関連質疑の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 きょう最後の質問でございますので、よろしくお願いをいたします。

 憲法の問題について、お尋ねを総理にしたいと思います。

 まず、ちょっとこのパネルを見ていただきますと、現行の日本国憲法が左にございますけれども、日本国憲法は、国民の皆さんの権利を野方図に全て認めるということではありません。制約があります。しかし、その制約については、「公共の福祉」という言葉で制約をしている。これが四つの条文にございます。これ以外の権利についても公共の福祉によって制約をされるというふうに承知をしておりますが、自民党の憲法改正草案は、この公共の福祉という文字が全て、「公益及び公の秩序」、こういう言葉にきれいに入れかわっておりますけれども、これは実態的に何が変わってくるのでございますか。

安倍内閣総理大臣 一応、念のために申し上げておきますが、憲法改正において、我が党は、一昨年、私が総裁になる前でありますが、憲法改正草案を取りまとめたわけであります。

 しかし、実際に国民投票に付していくときにおいては、それぞれの一つのまとまった項目ごとにそれは国民投票に付されるわけでございますし、我々がお示しをしているどの改正条項についてお示しをしていくかというのは、これは国民的な議論が深まる中においての判断をしていくわけでありますし、基本的には、こうした議論については、憲法審査会においてお互いに議論を闘わせていただくのが一番本当は建設的なのではないか。

 我々が憲法草案として出したときに、憲法改正、国民投票に付する発議をした際には、まさに積極的な議論をしていただくのがいいとは思いますが、これは御質問でございますからお答えをさせていただきますが、自民党の憲法改正草案について、御指摘の点については、個人が人権を主張する場合に、他人に迷惑をかけてはいけないという当然のことを明確にしたものであります。

 なお、公共の福祉という文言を公益及び公の秩序と置きかえることとしたのは、よりわかりやすい表現とするとの趣旨であるということでございますし、そのとき私はその議論の場にはおりませんでしたが、後で、その場で議論に参加をしていた方々から聞けば、大体そのような議論の流れであったということでございます。

 いずれにいたしましても、自民党の改正草案において、基本的人権は最大限尊重されるべきものと考えていることは現行憲法とは何ら変わるところがない、こういうことでございます。

長妻委員 この間の総理のお話ですけれども、前回私の憲法の質問で、かなり強い口調で、いや、自民党の憲法試案はそうではないんだというふうにおっしゃっているので私は聞いているわけでありまして、今おっしゃったのは、公共の福祉というのはわかりにくい言葉だから、公益及び公の秩序に変えたと。

 ただ、わかりにくいといっても、憲法の中でずっとこれが戦後使われてきて、判例がずっと積み上がってきているわけですね。言葉を変えるということは、何を実態的に世の中を変えたいのか、そういうところについて、どういう思いを持ってこういう言葉に変えたのかということをお伺いしないと、この前の議論もかみ合ってこないんじゃないかと思いますので、ぜひお答えいただきたい。

安倍内閣総理大臣 どういう思いを持って変えたと言われても、私、変えた当事者ではなかったんですが、自民党においてはまさにこれを我が党案にしたわけでありますし、党として責任を持ってお出しをしている。

 そして、このときの、これを変えた議論においては、まさに今申し上げましたように、公共の福祉という文言を公益及び公の秩序と置きかえることとしたのは、よりわかりやすい表現とするという趣旨であるということでございまして、そのときの自民党においての、この文言を使うときの議論はまさにそういう議論であったということでありますから、これ以上のものでは全くないということではないかと思います。

長妻委員 そうすると、公益及び公の秩序に変えても実態は世の中変わらない、今と同じということであれば、これは文言を変える必要ないじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 それは、わかりやすいという議論が支配的だったわけでございまして、今、それはどうだったかと言われても、私はそのときにはたまたまその議論には参加していなかったものでありますから、後で、しかし、どういう議論だったのかということをそれぞれ、私も総裁になった際に話を聞いたわけでありますが、それはまさに今お答えをしたような議論であったということで、わかりやすいというのは大切ですから、わかりやすくしようということにしたのではないかと思います。

長妻委員 全然答弁はわかりにくいと思うんですよね。

 ちょっと次のパネルを見ていただきますと、もう一つ非常に気になるのが、現行憲法では、表現の自由、第二十一条、左の方でございますが、これは「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」というふうになって、ここには公共の福祉で制限されるという条文はないんですね。ないけれども、当然、ほかの条文で公共の福祉がかかってくる。

 つまり、ここにあえて制約を書かないということは、非常に日本国の現行憲法は、表現の自由というのはほかの権利に比べてもかなり重要なんですよ、こういうメッセージを出しているというふうなことが言われております。

 ところが、自民党の憲法試案でありますと、表現の自由、一項目めは現行憲法と同じなんですが、その後に二項というのがつけ加わって、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」こういうふうに、かなり、留保条件を二項ということでわざわざ設けている。

 昨今、特定秘密保護法案が強行採決をされるなどなど、いろいろ情報を制約する動きがある中で、私、これは非常に気になるわけでございますけれども、公共の福祉という文字がわかりにくいからわかりやすいものに変えたと。では、わかりやすい表現、私はこの表現もわかりにくいと思いますよ、公益及び公の秩序も。

 では、その表現だけをわかりやすくして、憲法が目指す実態は今と変わらない、こういうことなんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは今の憲法二十一条への二項の追加についての御質問だと思いますが、これについては、まさに、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行うこと、及びそれを目的として結社をすることが認められないということでございますから、それは私は問題はないのではないか、このように思います。

長妻委員 ですから、今でももちろん、公益及び公の秩序、つまり公共の福祉に反するような表現の自由や結社というのは、これは認められないわけで、いろいろな法律がありますよ、破防法とかですね。

 ですから、あえて、現状でもできていることを、言葉を変えることによって、総理は、いや、表現の自由が今は例えば行き過ぎているからもうちょっと絞った方がいいというふうにお考えで、自民党が出されてきているのか。いやいや、それは決めつけるわけじゃありませんけれども、では、どういう意図で公共の福祉という言葉を変えるのか。

 公共の福祉のままでいいんじゃないですか、条文。

安倍内閣総理大臣 私がそう考えてこれを追加したわけではないんですよ。そのときは、私、自民党総裁ではないですからね。

 実は、私もこの議論には参加をしていなかったわけでございますが、その後、聞いたところによりますと、これはまさに、今申し上げましたように、当たり前のことを当たり前のこととして書いたわけでありまして、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行う、それを目的として結社をする、例えば、人を例えば殺すことを正当化するオウム真理教のような団体の結社が認められないのは、これは当然のことだろう。

 当然のことを当然のこととして書いただけなんだろうというふうに私は思うわけでありまして、今の時代に言論の自由を抑圧しようとか制限しようとか考えるはずがないじゃないですか。それを何とかの勘ぐりというんじゃないかと私は思いますよ。

 先般、私が強い言葉と言ったのは、国民を縛るのが自民党の憲法草案だという言い方をしたから、ああいう決めつけ方はよくないというふうに申し上げたわけでございます。

長妻委員 いや、私は総理だから心配なんですよ。総理、何か自分は知らないみたいなことをおっしゃりますけれども、自民党総裁でいらっしゃいますから、これは、では、自分がおかしいと思ったら変えるということではないわけなので、今の時点では、やはりきちっとお答えいただかなきゃいけないと思うんですよ。

 公益及び公の秩序。もちろん、オウム真理教、これはもうとんでもないですよ。取り締まるということで団体規制法がおくればせながらできたわけで、これは今の現行憲法でもきちっとできるわけでありまして、つまり、私も心配して、国民の皆さんの中にも心配されている方がいらっしゃるので、私はここで質問しているんですが、そうすると、公共の福祉と公益及び公の秩序というのは基本的に全く同じ、つまり憲法で規制するものは同じということなんですか。どういう実態を変えようとされているのか。同じであれば文言を変えないでくださいよ、心配になるから。

安倍内閣総理大臣 だから、何回も私はお答えをさせていただいているように、わかりやすくということで、これは、できた後、読ませていただいたわけでありますが、私も、ああ、なるほど、それはわかりやすいという考え方に立ったんだなと、すっと納得がいったわけでありますから、長妻さんも先入観を持たずに素直に読んでいただければ、すっと、ああ、そういうことかなというふうに御理解をいただけるわけでありまして、これは、わかりやすいということ、わかりやすくするためのものだ、それ以上のものではないということはもう再三申し上げているんですから、何かすごい悪巧みをしているのではないか、そういう認識に立って言っていただいても、これは大変困るわけでございます。

 つまり、これは、自民党は、一昨年の四月二十八日に党で決めたものである。そして、その際、それが決まるまでに議論がなされてきて、その議論の中においては、今申し上げたようなことで、これはそういうことになった、言葉が変わった、わかりやすくなったということでございます。

長妻委員 総理、私は、一国の総理としてちょっと無邪気なんじゃないかなと思いますよ。これは最高法規の憲法の文言で、いやいや、これは変えたけれども、まあ似たようなものだから余り勘ぐるな、そんな軽い言葉でちょっと言っていただきたくないわけでございます。

 これは、私も法学部でありますし、憲法の学者の先生といろいろ議論をすると、公共の福祉というのは、確かに今までの憲法、今までの判例の積み重ねで、相互の人権の、一人一人、例えば大きい音で音楽を聞きたい方はいるし、静かな環境で暮らしたい方もいるし、それぞれの人権がぶつかったときの調整機能、それプラス、一人の方の権利を制限することと、その制限をするマイナスと社会のプラスを比較考量して比べていくということで、権利と公益の調和を判例で積み上げて、そして今の日本の国の権利制限の一つの体系ができ上がっている。

 それを、今度、公益及び公の秩序、今までにない言葉が入ってくることによって、恐らくこれはかなり締めつけになる。すぐには、憲法が改正されても世の中の実態は変わらないかもしれないけれども、その後、憲法を変える方の意図が説明されるにつれて、あるいは司法の教育なども変わることによって、じわじわじわじわ、判例が変わって、世の中の実態も変わってくる、こういうふうに懸念をしている先生もいらっしゃって、私も同じ懸念を持っているんですよ。

 ですから、総理にお伺いするのは、もし実態を変えたいのであれば、それはいい悪いは別にして、私は反対ですけれども、文言を変えるということはあるでしょう。でも、実態は今と同じということであれば、これは皆さん心配もされますから、文言は変えないということでよろしいんじゃないか、こういうことを再三申し上げているわけです。

安倍内閣総理大臣 そもそも、自民党の考え方を示しているんですよ、これをまだ国民投票に付しているわけでもないし。だから、自民党の考え方としては、わかりやすいというのが私たちの考え方なんですよ。それをいろいろと詮索されるから、それはもう少し素直に読んでいただきたい。

 そして、こういう議論は、まさに、私たちがこれを出したときに、憲法を改正すべきだということで一つのカテゴリーとして出したときに、もっとそういう議論について、いわば立法者の発意としてどうなのかということを議論されるべきではないのかな、こう思うわけでありまして、基本的には、私たちは私たちの案を出して、お示しをしています。

 だからこそ、例えば、これをもとに憲法審査会において有意義な議論をしていただくこと、憲法審査会の場こそふさわしくて、来年度予算の審議をする場ではちょっとどうかなというふうに言わざるを得ないと思います。

長妻委員 いや、総理の憲法観をお伺いするというのは、これは予算委員会、全て総理の発想で予算というのは組まれるわけでありますから、それは重要だと思いますよ、それをただしていくというのは。全体の方向性、日本の安全保障の方向性とか権利制約の方向性とか、予算執行の段階でどういう考え方で執行されるのか、いろいろな哲学にかかわることだと私は思っております。

 これは、気になるのは、大丈夫だ、大丈夫だとおっしゃるんですが、例えば自民党の幹事長がブログで、昨年十一月末、これは報道されましたけれども、今も議員会館の外では特定秘密保護法絶対阻止を叫ぶ大音量が鳴り響いている、こういう前段の書き出しで、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質において余り変わらないように思われますということで、確かに幹事長は取り消されましたけれども、こういうような発言が出てくると、表現の自由を含めて、やはり、政府にマイナスの、反政府、あるいは政府の意見と異なる意見を封殺されるんじゃないか、こういうことを昨今の社会の動きの中で懸念をするということで私は質問しているわけです。

 そしてもう一つ、九十七条というのがあるんですね、憲法に。これは最高法規で、人権の重要度を示す、「第十章 最高法規」というふうに銘打っている条文でございます。

 この条文をちょっと読み上げますと、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

 こういう最高法規というのを全部削除ということになっているわけでありますけれども、これはどうしてですか。

安倍内閣総理大臣 何度もお話をさせていただいておりますが、基本的には、これはまだ出してもいない、国民投票に付すためにまだ出してもいないものなんですね。いわば、出してもいない法案を議論するのとややこれは似ているところもありますし、憲法においては、憲法審査会という議論をする場があるんですよ。国会議員同士でそこで議論をし合おうということでその場をつくったんですから、そこを活発に使っていただくのが一番ふさわしいのではないかということは申し上げておきたいと思います。

 その上であえて申し上げれば、現行憲法第九十七条は、憲法が保障する基本的人権についての歴史的由来を述べるとともに、憲法第十一条で定めている基本的人権の本質をさらに念を押して明記しているものと理解をしています。

 自民党の憲法改正草案において九十七条を削除したのは、基本的人権は侵すことのできない永久の権利であることを前提として、党内のさまざまな議論の結果、第十一条にまとめることが適当であると結論づけたものでありますということであります。

長妻委員 最高法規をほかに何か似たような表現があるから削ってしまうというのは、本当にいかがなものか。だって、九十七条を削るんでしょう。最高法規を削るということでしょう。

 自民党の解説書によると、これを削ったのは、西洋の天賦人権思想に基づいたと考えられる表現を改めた、こういうふうにあるんですが、これはどういうことでございますか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる天賦人権説とは、基本的人権は国家から与えられるものではなく、人が生まれながらにして持つ、人間が本来享有すべき天賦の権利であるという自然法的な考え方であります。この思想は日本国憲法にあらわれていると言われているわけであります。他方、宗教思想が深く浸透している国においては、基本的人権は神から与えられたと解釈する国もあると言われています。

 我が国現行憲法においても、基本的人権は「現在及び将来の国民に与へられる。」と受け身の表現が使われていることから、御指摘のように、天賦人権説が古いということではなく、このような国の考え方と同様であると誤解されることがないように、自民党の改正草案では、「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。」と書きぶりを改めることとしたものでございます。

 いずれにいたしましても、自民党の憲法改正草案において、基本的人権は最大限尊重されるべきものと考えているわけでありまして、そのことはもう既に明確になっているということでございます。

長妻委員 天賦人権説は、人は生まれながらにして自由平等であり、幸福を追求する権利などの基本的人権を国家以前の権利として有するという、大体そういう説なんですが、西洋で、何か神から与えられる云々みたいな話で、それを理由にこの九十七条を削除する。そして、今、一連の質疑の中でも、いやいや、何か勘ぐらないでください、今と同じなんですというふうにおっしゃられるのであれば、実態を全く変えるということでない、そういう意図がないのであれば、文言をなぜ変えるのかということが非常に私はわからなくなるわけであります。

 これは総理、この予算委員会でも生活の党の畑さんの質問で憲法についてお答えになっておられるんですが、憲法について、考え方の一つとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方はありますが、しかし、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方だ、こういうふうにおっしゃられているんですけれども、国家権力が暴走しないように歯どめをかけていく、こういう憲法の役割というのは、当然、総理も御認識されているということでございますか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、そういう役割もあるのは当然のことでございます。

長妻委員 この答弁というのは、古い考え方だというような趣旨に私は聞こえたんですが、これはどういう意図で言われたんですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、憲法とはまさに権力を縛るためだけのものであるという考え方については、それは古いものではないかということでございまして、そして、その中で生まれたということについては、それは古いものではないか。

 つまり、例えば、今我々が憲法を改正しようということについては、国家権力を縛るためだけにつくるということではなくて、むしろ、私たちの理想を、例えば前文が一番いい例なんですが、国のあり方、そして私たちの理想と未来について語るものこそ、それは憲法の前文ではないか、こう思うわけでございますが、その中において、当然、これは国民の権利をしっかりと、人権を書き込んでいくわけでありますから、その中においては、国家の権力が縛られていくということが書き込まれていくということは当然のことであります。

 つまり、憲法が、まさに権力対人民という対立概念だけの中における憲法ということではないということは、前回申し上げたとおりでございます。

長妻委員 憲法の議論は、本当に国民の皆さんが不安に思わないように、我々もわかりやすく議論をしていく必要があると思っております。

 そして、もう一つ、靖国の参拝の問題についても質問をさせていただきたいんですが、私、国会で、さきの昭和の戦争で一体幾ら税金が使われたのかというのを、かつて財務省に質問したことがあります。そうすると、特別会計がある一九三七年九月から終戦までの間で、現在価値にして二百十三兆円の税金が使われた、そして三百十万人の方が命を落とされた、大変悲惨な戦争だったわけでございます。

 その中で、靖国を参拝されたわけでございますが、昨年の十二月。これは総理、平穏な環境で慰霊できる、そういう状況をつくり出すということが必要だという御認識は持っておられるんですか。

安倍内閣総理大臣 本来、慰霊というのは平穏な環境の中で行われるべきものだろう、このように思っております。

長妻委員 これは平穏な環境なのかどうか、昨年十二月。当然、海外からの反応もありましたけれども、国内でもやはりそれについて首をかしげる方もいらっしゃるわけでありまして、なぜ、平穏な環境でなかなか今できにくいというふうに、総理はその理由はどういうふうに思われているんですか。

安倍内閣総理大臣 本来、田中内閣まで平穏な環境で行われていたんですよ。しかし、その後、三木内閣において、公的参拝か私的参拝かということが問われ始めて、騒がしくなっていったんだろう、このように思います。

 その後、いわゆるA級戦犯の合祀ということがなされたわけでありますが、その後も、十回の参拝は、ある意味、今より比べてはるかに平穏な中で行われたわけでございますが、その後、参拝に対して主に中国からクレームがなされ、そして盧武鉉政権のときに韓国からも抗議が来た、こういうことではないかと思うわけであります。

 我々としては、指導者というのは、その国のために戦った兵士、亡くなった兵士たちのために手を合わせる、そして御冥福をお祈りする、みたま安かれなれと祈りをささげるというのは、各国のリーダーのいわば共通の姿勢ではないか、こう思うわけでございまして、多くの誤解をしっかりと解いていかなければならない、このように思っているところでございます。

長妻委員 総理が後段おっしゃられた、トップリーダーが国のために命を落とされた方々について慰霊をするということ、これは必要なことだと思いますけれども、靖国神社においてはいわゆるA級戦犯が合祀をされていて、そして、一私人であれば、それは平穏な環境で参拝できると思いますが、総理大臣という立場で、今の状況で、静かな環境で参拝するというような状況にはなっていないと私は思っております。

 それを環境をつくり出していく、こういうような意思と、そういう案というのを総理はお持ちなのかどうか。毎年毎年参拝されて、非常に平穏でないような形で、またそれが大きくいろいろ報道されてしまう、こういうようなことをどうにか打開していく、そういうようなお考えや策というのはあるのでございますか。

安倍内閣総理大臣 まさに、戦死者に対する慰霊の形というのはそれぞれの国で当然違うわけでありますし、宗教観も違うわけであります。違う宗教観を理解していただくというのは、多くの努力が必要であろうと思います。

 そのために、私も、参拝するに際しまして談話を出したわけであります。この談話についても、英語でも出させていただいたわけでございますが、十分にこの談話が届いているかどうかということもありますので、しっかりとこうした談話の趣旨について海外に対して発信をしていきたい、こう思っているところでございます。

長妻委員 そういう形のお考えで、また例えば来年も参拝されるのかどうか、ことしも参拝されるのかどうかということが続くと、毎回毎回同じようなことが起こって、本当に、国内外においてそういう事態が続いてしまうということになると思っております。

 やはり、アメリカも今回、失望したというコメントを出しているわけでありますので、慰霊をする国民的な場所として、例えば国立墓苑というような案も、かつて、自民党の福田官房長官からも出たわけでございます。トップリーダーは、靖国神社、サンフランシスコ講和条約十一条で、いわゆるA級戦犯のジャッジメント、判決も受諾した上で日本は独立したわけでありますので、そういう別の慰霊の施設をつくって、少なくともトップリーダーはそちらの方にその任期の間は参拝をしていく、例えばこういうような発想というのは、総理、ないんですか。それがだめだということであれば、どういうような状況で、本当に平穏な形で慰霊をするということを日本は達成できるのかどうか、お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、いわば、私は国のリーダーとして、国のために戦った方々のために、靖国神社に赴きまして、手を合わせ、尊崇の念を表し、そして、みたま安かれなれと祈りをささげたわけでございます。

 その際、鎮霊社にも参拝をいたしました。これは世界じゅうの戦没者の慰霊のためのお社でございまして、そこにおいて、手を合わせながら、二度と再び戦争の惨禍によって人々の苦しむことのない時代をつくっていくという意味において、不戦の誓いをしたところでございます。そうしたことも含めて、海外に発信をしているところでございます。

 では、何のための慰霊かということでございますが、私が靖国に参拝をした際にも、随分御高齢の女性の方が静かに参拝をしておられたわけでございます。恐らく御主人様か息子さんが亡くなられたんだろう、こう思うわけでありますが、恐らく、戦後ずっと靖国に参拝をしながら、戦後の歩みを、苦しい中において歩んでこられたんだろう、このように思います。

 例えば、この女性がなぜ靖国に参拝をするかといえば、それは、そこに行けば自分の愛する人と魂が触れ合うかもしれないという思いを持って、そこに行かれるわけであります。

 そして、その後、私が参拝を終えて社から出ていくときに、これはまた別の方なんですが、大変なお年寄りの方が、相当年をとった方が私に深々と頭を下げておられた。

 なぜかといえば、恐らくそれは、多くの方々は、国の命令によって戦地に赴き、命を落としたわけでございます。その国の指導者がその人たちの名誉のために手を合わせたということについて、自分の愛する人が何のために戦ったのか、何のために命を落としたのかということをもう一度確認しながら、ある意味では、もしかしたら、少し癒やされる気持ちになったのかもしれないわけであります。

 つまり、そういう行為を行うことも、私は、国のリーダーの責任ではないか、こう思うわけでございます。この行為自体が、もし、それは、長妻議員が、行為として間違っているということを言われるのかもしれませんが、私は決して間違っているとは思わないわけでございます。

 そこで、慰霊の場をつくる上においては、そうした御遺族の皆さんの感情も十分に考慮しながら考えていかなければいけない、このように思うところでございます。

長妻委員 私は、靖国神社に私人の立場で慰霊をする、私人の方が慰霊をする、これは何ら問題はないと思います。総理大臣の立場で、いわゆるA級戦犯が合祀されている、サンフランシスコ講和条約で独立の一つの条件として受諾したものについて、参拝をされて、そして、毎回毎回こういう大騒動になっていくということが、果たして、日本のため、そういう皆さんのためになるのか、それの打開策がないままに、またことしも、また来年もというのは、総理として無責任ではないのかということを申し上げているんです。

 これは太田大臣にも事前通告しておりますけれども、この靖国、総理の参拝、そして国立墓苑、いかがお考えですか。

太田国務大臣 靖国に総理が行かれたというのは、総理の御判断だというふうに思います。

 新たな追悼施設ということについては、これまでも論議があったというふうに思いますが、靖国への考え方の一つであるというふうに承知しています。いまだコンセンサスができていない状況であるという認識をしています。

長妻委員 やはり、ここは本当に与野党を超えて、どういう、総理大臣が慰霊をする場所、あるいは、海外の元首の方々が日本に来ていただいたときに慰霊をしていただく場所、これは本当によくよく知恵を出して、コンセンサスも得ながら議論をしていくという必要が本当にあると思います。

 昨年十二月は、実は、日中友好議員連盟で、私や自民党の皆さんや超党派の方とちょうど中国に行っているときに安倍総理が靖国に参拝されたわけでありまして、中国の反応も、そして日本大使館の反応もよくわかったわけでございます。

 かつて、ドイツとフランスが、若者を数百万人単位で交流計画をして、それを実行して、交流を深めて、隣国との友好を育んでいった。こういうような例もあるわけでございますので、これは隣国とも、やはり私は交流にまさる安全保障なしというふうに思っておりますので、そこは地道に続けていきたいと思いますけれども、いずれにしても、この問題について、総理にぜひ、静かな環境で慰霊できるような、そういうような打開するお考えがないのであれば、総理であるときは参拝を自粛するということが私は必要だと思います。それを申し上げたいわけであります。

 最後に一言申し上げるのは、かつて日本は、アメリカと戦争を始めたときに、これは多くの方が歓迎をされたわけであります。やはり、情報を制限して空気がつくり上げられると、とめどもなく、首相ですらとめられなくなる。こういう状況が、我々政治家が意図せざる状況に国が進んでいくということも過去の歴史であったわけでございますので、ゆめゆめそういうことにならないように、我々も、野党の立場でしっかりと議論をしてまいります。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 次回は、来る十二日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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