衆議院

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第14号 平成26年2月27日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十六年二月二十五日(火曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。

 第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項)

   主査 林  幹雄君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      船田  元君    岡田 克也君

      坂本祐之輔君

 第二分科会(総務省所管)

   主査 上杉 光弘君

      うえの賢一郎君    佐田玄一郎君

      塩崎 恭久君    大串 博志君

      杉田 水脈君

 第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)

   主査 金田 勝年君

      中山 泰秀君    野田  毅君

      保岡 興治君    古川 元久君

      山田  宏君

 第四分科会(文部科学省所管)

   主査 萩生田光一君

      あかま二郎君    大島 理森君

      薗浦健太郎君    玉木雄一郎君

      中山 成彬君    宮本 岳志君

 第五分科会(厚生労働省所管)

   主査 松本  純君

      菅原 一秀君    関  芳弘君

      原田 義昭君    長妻  昭君

      重徳 和彦君    伊佐 進一君

 第六分科会(農林水産省及び環境省所管)

   主査 宮路 和明君

      今村 雅弘君    小池百合子君

      西川 公也君    篠原  孝君

      浜地 雅一君

 第七分科会(経済産業省所管)

   主査 伊藤 達也君

      越智 隆雄君    二階 俊博君

      山本 幸三君    柿沢 未途君

      畑  浩治君

 第八分科会(国土交通省所管)

   主査 石田 祝稔君

      秋元  司君    金子 一義君

      山本 有二君    西野 弘一君

      佐藤 正夫君

平成二十六年二月二十七日(木曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君

   理事 林  幹雄君 理事 松本  純君

   理事 森山  裕君 理事 長妻  昭君

   理事 山田  宏君 理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    赤澤 亮正君

      秋元  司君    伊藤 達也君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大島 理森君    金子 一義君

      熊田 裕通君    小松  裕君

      佐田玄一郎君    笹川 博義君

      島田 佳和君    白石  徹君

      新谷 正義君    菅原 一秀君

      関  芳弘君    薗浦健太郎君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      武井 俊輔君    中山 泰秀君

      西川 公也君    野田  毅君

      原田 義昭君    船田  元君

      宮路 和明君    保岡 興治君

      山本 幸三君    山本 有二君

      大串 博志君    岡田 克也君

      篠原  孝君    玉木雄一郎君

      古川 元久君    足立 康史君

      今井 雅人君    上西小百合君

      木下 智彦君    坂元 大輔君

      坂本祐之輔君    重徳 和彦君

      杉田 水脈君    中山 成彬君

      西野 弘一君    藤井 孝男君

      村岡 敏英君    百瀬 智之君

      伊佐 進一君    浜地 雅一君

      佐藤 正夫君    柿沢 未途君

      林  宙紀君    笠井  亮君

      宮本 岳志君    畑  浩治君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         新藤 義孝君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国務大臣         甘利  明君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   財務副大臣        古川 禎久君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      赤羽 一嘉君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    小松 一郎君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  由木 文彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐藤 敏信君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      高橋 泰三君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  金子 一義君     菅家 一郎君

  佐田玄一郎君     田所 嘉徳君

  菅原 一秀君     清水 誠一君

  山本 幸三君     鈴木 憲和君

  浜地 雅一君     遠山 清彦君

  佐藤 正夫君     大熊 利昭君

  小池百合子君     渡辺 孝一君

  西川 公也君     中村 裕之君

  船田  元君     勝沼 栄明君

  大串 博志君     後藤  斎君

  岡田 克也君     階   猛君

  中山 成彬君     田沼 隆志君

  伊佐 進一君     國重  徹君

  大熊 利昭君     佐藤 正夫君

  菅家 一郎君     務台 俊介君

  後藤  斎君     田嶋  要君

  階   猛君     武正 公一君

  篠原  孝君     鷲尾英一郎君

  玉木雄一郎君     細野 豪志君

  杉田 水脈君     木下 智彦君

  遠山 清彦君     伊藤  渉君

  田嶋  要君     後藤  斎君

  古川 元久君     福田 昭夫君

  細野 豪志君     山井 和則君

  鷲尾英一郎君     中根 康浩君

  坂本祐之輔君     今村 洋史君

  田沼 隆志君     宮沢 隆仁君

  伊藤  渉君     遠山 清彦君

  大島 理森君     小林 史明君

  今村 洋史君     中丸  啓君

  木下 智彦君     中田  宏君

  重徳 和彦君     松田  学君

  宮沢 隆仁君     河野 正美君

  薗浦健太郎君     小松  裕君

  中根 康浩君     鷲尾英一郎君

  中田  宏君     鈴木 義弘君

  西野 弘一君     伊東 信久君

  松田  学君     坂元 大輔君

  遠山 清彦君     樋口 尚也君

  柿沢 未途君     林  宙紀君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

  清水 誠一君     大岡 敏孝君

  野田  毅君     東郷 哲也君

  原田 義昭君     田中 英之君

  務台 俊介君     吉川  赳君

  後藤  斎君     津村 啓介君

  武正 公一君     吉田  泉君

  福田 昭夫君     小川 淳也君

  山井 和則君     玉木雄一郎君

  鷲尾英一郎君     菅  直人君

  河野 正美君     阪口 直人君

  鈴木 義弘君     杉田 水脈君

  中丸  啓君     丸山 穂高君

  國重  徹君     大口 善徳君

  樋口 尚也君     稲津  久君

  佐藤 正夫君     杉本かずみ君

  畑  浩治君     玉城デニー君

  田所 嘉徳君     武井 俊輔君

  東郷 哲也君     牧島かれん君

  小川 淳也君     大西 健介君

  吉田  泉君     近藤 洋介君

  伊東 信久君     村岡 敏英君

  坂元 大輔君     石関 貴史君

  阪口 直人君     三宅  博君

  杉田 水脈君     足立 康史君

  丸山 穂高君     上野ひろし君

  稲津  久君     輿水 恵一君

  大口 善徳君     中野 洋昌君

  杉本かずみ君     中島 克仁君

  林  宙紀君     小池 政就君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

  玉城デニー君     畑  浩治君

  大岡 敏孝君     瀬戸 隆一君

  勝沼 栄明君     宮川 典子君

  保岡 興治君     鬼木  誠君

  玉木雄一郎君     中川 正春君

  三宅  博君     椎木  保君

  村岡 敏英君     鈴木  望君

  小池 政就君     井出 庸生君

  武井 俊輔君     大西 英男君

  牧島かれん君     武藤 貴也君

  宮川 典子君     船田  元君

  菅  直人君     黄川田 徹君

  津村 啓介君     高木 義明君

  石関 貴史君     岩永 裕貴君

  上野ひろし君     上西小百合君

  中野 洋昌君     佐藤 英道君

  井出 庸生君     柿沢 未途君

  衛藤征士郎君     白石  徹君

  小林 史明君     堀井  学君

  黄川田 徹君     大島  敦君

  近藤 洋介君     三日月大造君

  中島 克仁君     柏倉 祐司君

  柿沢 未途君     井坂 信彦君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

  畑  浩治君     小宮山泰子君

  大西 英男君     石崎  徹君

  小松  裕君     船橋 利実君

  上西小百合君     山之内 毅君

  輿水 恵一君     上田  勇君

  佐藤 英道君     古屋 範子君

  柏倉 祐司君     三谷 英弘君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

  瀬戸 隆一君     白須賀貴樹君

  渡辺 孝一君     岩田 和親君

  中川 正春君     渡辺  周君

  足立 康史君     浦野 靖人君

  古屋 範子君     佐藤 英道君

  三谷 英弘君     山内 康一君

  高橋千鶴子君     穀田 恵二君

  白石  徹君     宮崎 謙介君

  田中 英之君     永山 文雄君

  中村 裕之君     斎藤 洋明君

  山本 有二君     田畑 裕明君

  浦野 靖人君     今井 雅人君

  椎木  保君     西田  譲君

  佐藤 英道君     岡本 三成君

  鈴木 憲和君     山田 美樹君

  宮崎 謙介君     大野敬太郎君

  岩永 裕貴君     小熊 慎司君

  山之内 毅君     坂本祐之輔君

  上田  勇君     樋口 尚也君

  岡本 三成君     中野 洋昌君

  井坂 信彦君     椎名  毅君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

  石崎  徹君     門  博文君

  岩田 和親君     加藤 寛治君

  大野敬太郎君     前田 一男君

  武藤 貴也君     山田 賢司君

  鈴木  望君     百瀬 智之君

  中野 洋昌君     岡本 三成君

  山内 康一君     三谷 英弘君

  椎名  毅君     井出 庸生君

  鬼木  誠君     藤原  崇君

  加藤 寛治君     中谷 真一君

  斎藤 洋明君     池田 道孝君

  白須賀貴樹君     高木 宏壽君

  田畑 裕明君     藤丸  敏君

  永山 文雄君     佐々木 紀君

  堀井  学君     八木 哲也君

  山田 賢司君     武部  新君

  山田 美樹君     井上 貴博君

  吉川  赳君     中川 俊直君

  高木 義明君     辻元 清美君

  三日月大造君     後藤 祐一君

  今井 雅人君     高橋 みほ君

  岡本 三成君     伊佐 進一君

  樋口 尚也君     稲津  久君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

  井上 貴博君     大串 正樹君

  池田 道孝君     藤井比早之君

  門  博文君     簗  和生君

  中川 俊直君     秋本 真利君

  藤丸  敏君     今枝宗一郎君

  稲津  久君     浜地 雅一君

  井出 庸生君     畠中 光成君

  秋本 真利君     金子 一義君

  今枝宗一郎君     山本 有二君

  大串 正樹君     山本 幸三君

  佐々木 紀君     原田 義昭君

  高木 宏壽君     菅原 一秀君

  武部  新君     野田  毅君

  中谷 真一君     小池百合子君

  藤井比早之君     西川 公也君

  藤原  崇君     保岡 興治君

  船橋 利実君     薗浦健太郎君

  前田 一男君     衛藤征士郎君

  八木 哲也君     大島 理森君

  簗  和生君     佐田玄一郎君

  大島  敦君     篠原  孝君

  大西 健介君     古川 元久君

  後藤 祐一君     岡田 克也君

  辻元 清美君     大串 博志君

  渡辺  周君     玉木雄一郎君

  小熊 慎司君     重徳 和彦君

  高橋 みほ君     杉田 水脈君

  西田  譲君     中山 成彬君

  百瀬 智之君     西野 弘一君

  三谷 英弘君     佐藤 正夫君

  畠中 光成君     柿沢 未途君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

  小宮山泰子君     畑  浩治君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     白石  徹君

  越智 隆雄君     赤澤 亮正君

  大島 理森君     熊田 裕通君

  菅原 一秀君     小田原 潔君

  薗浦健太郎君     森山  裕君

  西川 公也君     小松  裕君

  船田  元君     笹川 博義君

  松本  純君     薗浦健太郎君

  坂本祐之輔君     村岡 敏英君

  重徳 和彦君     上西小百合君

  杉田 水脈君     桜内 文城君

  柿沢 未途君     林  宙紀君

  宮本 岳志君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     新谷 正義君

  小田原 潔君     菅原 一秀君

  熊田 裕通君     高橋ひなこ君

  小松  裕君     島田 佳和君

  笹川 博義君     船田  元君

  白石  徹君     秋元  司君

  上西小百合君     今井 雅人君

  村岡 敏英君     木下 智彦君

  林  宙紀君     畠中 光成君

  笠井  亮君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  島田 佳和君     田畑 裕明君

  新谷 正義君     越智 隆雄君

  高橋ひなこ君     大島 理森君

  今井 雅人君     坂元 大輔君

  木下 智彦君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     武井 俊輔君

  足立 康史君     百瀬 智之君

  坂元 大輔君     藤井 孝男君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     西川 公也君

  藤井 孝男君     重徳 和彦君

  百瀬 智之君     坂本祐之輔君

同日

 理事松本純君同日理事辞任につき、その補欠として森山裕君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算

 主査からの報告聴取


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事松本純君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に森山裕君を指名いたします。

     ――――◇―――――

二階委員長 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算、平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官由木文彦君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、厚生労働省健康局長佐藤敏信君、農林水産省生産局長佐藤一雄君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長高橋泰三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 本日は、TPP・エネルギー等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。

 私は、自由民主党TPP対策委員会の事務総長代理として、先週末、西川公也委員長、それから森山裕総括主幹、さらには宮腰光寛事務総長とともに、TPP閣僚会合が開催されましたシンガポールに足を運んでまいりました。

 昨日早朝に帰国したわけでありますが、現地で四名の自民党TPP交渉議員派遣団が展開をした議員外交などの成果を踏まえて、本日は、TPP交渉の現状、それから今後の展望について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、このたびのTPPシンガポール閣僚会合の評価についてお伺いをしていきたいと思います。

 その前に、前提として、TPPに関する自由民主党の考え方に触れておきたいと思います。

 平成二十五年、昨年の三月十三日に、自由民主党外交・経済連携本部そしてTPP対策委員会のTPP対策に関する決議というものが取りまとめられました。三月十三日のことであります。

 TPPに関する自民党の考え方のポイントは、二つと考えております。

 日本の繁栄につながる結果を出すこと、それが一つであります。

 そして、二番目が、非常に重要でありますが、我が国の国益をしっかり守ること。具体的には、農林水産分野の重要五品目など、さらには国民皆保険制度、聖域、死活的利益と我々が考えるものの確保を最優先する、それが確保できないと判断した場合は脱退も辞さないものとするということであります。

 この二つのポイントを満たす結果を交渉でかち取るのは大変困難なことでありますが、これを踏まえた衆参の農林水産委員会の決議も出ているということです。

 大変困難な道ではありますけれども、この道しかないということで、国家百年の計に基づく安倍総理の大きな決断が下った以上、政府・与党を挙げて、TPP交渉を進めなければなりません。

 このためには、二十二日土曜日からシンガポールで開催されたTPP閣僚会合は、非常に重要な会合でございました。

 昨日の報道によれば、このたびのTPP閣僚会合、大筋合意ならずとか、次の交渉期限決まらずという報道ぶりでした。物品アクセスの関税とかを含む分野の日米の溝が埋まらず、交渉の見通しが立たないという趣旨にもとれますが、私は全く違う感じを持っております。見通しのある中で、交渉が精力的に進められたと考えております。甘利大臣を初めとする我が国交渉団の取り組みが大いに効果を発揮して、一定の成果が上がったものと認識をしております。

 そこで、お伺いをさせていただきます。

 物品を含む市場アクセスについてはなお難しい交渉が残っているものの、ルールメーキングの分野では、このたびの会合で大きく前進をしたと認識をしておりますが、その点も含めて、甘利大臣から、交渉の模様あるいは結果、成果などについてお話を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 二月の二十二日から二十五日までの四日間にわたりまして、シンガポールでTPPの閣僚会合が行われたわけであります。その間、赤澤委員を初め四名の先生方にも現地にお入りをいただき、いろいろとサポートいただきましたことに、改めて感謝を申し上げます。

 大筋合意に至らなかったという報道があります。何をもって大筋合意かという定義がないのでありますけれども、確かに、もちろん妥結には至りませんでしたけれども、次につながる前進があったということは確かだと思いますし、次への見通し、妥結への見通しも、相当明確になってきたと思います。

 最後、会見の席上で、どの辺までTPP交渉は進んだと評価するのかという場内からの問いに対して、オーストラリアのロブ大臣は、八割というお答えをされました。私からは、七、八割かなという話をしたわけであります。

 おっしゃったように、ルール分野について、これまで難しい課題が残されていたものを含めまして多くの進展があったわけでありますし、また、市場アクセスにつきましても、市場アクセスというと物品の関税のことばかり取り沙汰されるんですが、市場へのアクセス、どう障害なくアクセスできるかという、物品以外の問題も多々ございます。サービスや投資や政府調達、それから一時的入国等々ありますけれども、全般にわたって精力的に交渉を行いまして、実質的な協議を進めたということであります。

 今次会合を通じまして、各国が抱えているセンシティビティー、これは、今回の交渉でも、二国間でも全体会合でも申し上げたわけで、私も申し上げましたし、各国からも主張がありましたけれども、各国が抱えているセンシティビティーに配慮をしながら、アジア太平洋地域に二十一世紀型の新たな経済統合協定をともにつくるという共通の機運と信頼関係が醸成されたと考えております。交渉が最終局面を迎えつつある中で、交渉全体にある種の方向感というものが出てきたと評価をいたしております。

 今回の閣僚会合では、妥結ということには至りませんでしたけれども、だからといって漂流をしたわけではなくて、言ってみれば、全般的に見て、妥結に向けた前進を刻めた会合であるというふうに評価をいたしております。

赤澤委員 ありがとうございます。

 甘利大臣が七、八割、そして、日本が言っているだけではない、オーストラリアのロブ大臣も八割ということであります。最終局面を迎えつつ、交渉全体に方向感が出てきたという御報告でございました。

 現地で他の全ての交渉参加国とバイの交渉を持たれ、昼夜を分かたず精力的に交渉を進められた甘利大臣、そして日本のチームの外交姿勢に心から敬意を払うものでございます。

 続きまして、今回のシンガポール閣僚会合について、安倍総理の評価を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 実際どういう状況であったかは、現地に行って交渉を展開した甘利大臣からお答えをさせていただいたとおりでございますが、今回のシンガポール閣僚会合を通じて、各国がそれぞれ抱えているセンシティビティーに配慮をしながら、アジア太平洋地域に二十一世紀型の新たな経済統合協定をともにつくっていこうという共通の機運と信頼関係が醸成された、このように思います。

 会合において率直に自分たちの考え、立場を述べ合い、ある意味においてはしっかりと国益をぶつけ合うことによって、お互いが相手の立場を確認しながら、その中で同時に、やはり、新しい二十一世紀型の、自分たちが交渉を進めているこのTPPというものは、新たな経済統合協定なんだという認識を持ち合うこともできたんだろう、こう思うわけであります。

 交渉がいよいよ最終局面を迎えているのは事実でございまして、交渉全体に方向感が出てきたんだろう、このように思います。

 TPPが目指す包括的でバランスのとれた合意を達成できるよう、各国と引き続き精力的に交渉を続けてまいる決意でございます。

赤澤委員 今の安倍総理のお話を伺って、甘利大臣と全く一致した見解であります。交渉全体の方向感が出てきたと。最終局面に向けてしっかり取り組んでいかなければならないと思います。

 TPPの交渉経過については、テレビをごらんの皆様も御案内の方は多いと思いますが、締約国同士で守秘義務がかかっていると考えられます。情報に限りがある中で、私は現在、自民党の国土交通部会長をしておりますけれども、国土交通分野においても、既にTPP交渉のルールメーキングの分野では、重要かつ具体的な成果が上がっているということがわかっております。

 まとまった結果は表に出てくるということでありますが、例えば、TPP交渉に参加している十二カ国のうち、これまでWTOの政府調達協定、いわゆるGPAですけれども、加入していなかった日、米、カナダ、シンガポール以外の八カ国が、今後、海外企業の市場参入に合意をしたということがわかっております。これにより、国土交通省が今国会に提出済みのインフラ輸出機構法案、これがもし成立をすれば、それと相まって、我が国の企業の海外市場への参入、具体的には、TPP交渉参加国へのインフラ輸出が後押しされるということが期待されるわけであります。

 このように、情報が限られている中でありますけれども、しっかりと成果は上がってきているということが言えると思います。

 次に、今回のTPP交渉に関するマスコミ報道についてお伺いをしたいと思います。

 二月の二十一日金曜日、ある通信社が発信をいたしました。見出しは、「TPP、日本の「聖域」集中討議 各国が市場開放迫る」。内容は、TPP交渉の首席交渉官会合で、日本が聖域と位置づける米や牛肉などの農産品の五項目の関税撤廃をめぐる集中討議が計六時間行われた、日本以外の十一カ国が、なぜ市場開放できないのかなどと厳しく追及したという報道でありました。

 そこで、お伺いをしますが、二月二十一日の報道にある、日本が六時間にもわたって袋だたきに遭わされたという事実は本当にあったんでしょうか。

甘利国務大臣 完全な誤報です。

赤澤委員 ありがとうございます。

 それで、交渉自体も、私、六時間なんて書いてありますけれども、三時間だったことを確認しておりますし、それ以外にも、例えば、これは別の新聞でありますけれども、二月二十三日日曜日、「関税撤廃対日包囲網」と見出しが出まして、翌日二十四日の見出しは、「米の「日本包囲」暗礁」、暗礁に乗り上げたと、正反対の、一日で状況が変わったかのような記事を出した新聞もありました。要は、非常に情報がない中で、臆測で物を書いているんだろうということだと思います。

 二月二十三日日曜日、自民党派遣議員団との会合で、国名はあえて申し上げませんが、国際競争力の弱い国の畜産、酪農団体が、日本には関税撤廃に応じないでほしいと言ってきました。この国においては、その畜産、酪農団体は大変大きな政治的力を持っています。そのようなことを業界団体が言ってくる、そういう国が本当に日本を袋だたきにするようなことに加わるかということであります。現地にいればその辺のことは手にとるようにわかるわけでありまして、完全な誤報であったということになります。

 二十三日の自民党議員団と交渉参加国の業界団体との会合で明らかになったこれらの事実を、夕刻の記者懇談会において西川委員長から御披露いただいて、マスコミも納得をして、その後の報道ぶりが軌道修正されたものと認識をしております。そういう意味では、政府・与党一体となって交渉を進める、議員外交の一定の成果であるとも考えている次第でございます。

 甘利大臣に改めてお伺いをいたしますが、マスコミの報道はどうあれ、TPP対象の二十一分野全体の交渉状況を見れば、我が国交渉団は、バランスよく攻めて、かつ守っていると言えるのではないでしょうか。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、交渉分野は多岐にわたっております。

 なぜ二十一世紀型かというと、従来の枠組みにとらわれないという意味で二十一世紀型、それから、従来の野心よりもさらに高いという意味で二十一世紀型であります。

 バランスということが常に各国の合意文書の中に配置をされている言葉でありまして、これは、マーケットアクセス、ルール、それぞれバランスのとれたものにしていく、そして、全体、各国のセンシティビティーをしっかり認識した上で野心を上げていくということでありますので、そういう趣旨に沿って各国は努力をしているところであります。

赤澤委員 物品アクセスの分野では、米国は自動車という問題を抱え、我が国もしっかり守らなければならない農林水産業というものが、あるいは国民皆保険制度といったものがある。そういうセンシティビティーのある分野は非常に難しい交渉であるわけですが、既にあらゆる分野で内外無差別の原則を採用している我が国であります。政府調達なども政令市まで開放済みといったことで、ルールメーキングの分野はもう徹底的に攻めることができるということで、市場アクセスについても、物品以外、投資、サービス、あるいは先ほど触れた政府調達、そして一時的入国なども含めて見れば、我が国は決して防戦一方ではない、こういうことは断言できるところであります。

 続きまして、国会のねじれ解消などによる我が国政府・与党の強い交渉力についてお伺いをしていきたいと思います。

 先ほど、冒頭触れたとおり、自民党には決議があり、党の考え方をまとめ、それに基づき公約ができております。日本の繁栄につながる結果を出すこと、あわせて、我が国の国益をしっかり守る、聖域と言われる農林水産物、農業の五品目あるいは国民皆保険制度といったことでありますけれども、自民党の公約、それから、それを衆参の農林水産委員会の国会決議の形にしておりますけれども、これらの公約や国会決議は我が国交渉団の交渉力を強化しているところがあるというふうに思いますが、甘利大臣のお考えを伺いたいと思います。

甘利国務大臣 私は今回の交渉で、バイ会談でも全体会合でも必ず申し上げたことは、日本においては衆参の農水委員会で決議があります、それは与野党一致した決議でありますと。ということは、TPP交渉が妥結をして、それを批准するには、国会の承認をもらう必要があります。でありますから、国会の承認がとれるように、国会決議との整合性をとっていくということは政府の義務になるわけであります。

 各国ともそれぞれ、議会や国民そして事業者等のいわゆるステークホルダー、この考え方、意見、それを踏まえて攻めや守りを、国益をかけてぎりぎりの交渉をしているわけでありますから、例えばアメリカにはアメリカのステークホルダーによる最低限の縛りというのはあるかと思います。日本においては、それがよりオーソライズされた国会決議という形で我々は何らかの制約を受けているということを丁寧に説明したつもりであります。

 この印籠が見えないかみたいなやり方をしますと、ではうちでも全部決議しようじゃないかとどんどんなっちゃうわけでありますから交渉になりませんけれども、とにかく、それぞれ野心を高めていくという努力はします、しますけれども、同時に、どこまでが整合性がとれるかということも考えなきゃならないのはそれぞれの国が抱えている事情のとおりですということは、二国間でも、そして全体会合でも丁寧に説明してきたつもりでございまして、それぞれ国の事情によって抱えているセンシティビティーに一定の配慮をするという共通認識は醸成されつつあるのではないのかと思っております。

赤澤委員 しっかりと、これ以上は後ろに下がらないというフォールバックポジションを決めて交渉に臨む、そのことを公約の形で打ち出した自民党は大変交渉力があるんだと私は思っています。

 比較対象が民主党政権しかありませんので、その話をすれば、民主党は約五十回会議を開いて、なおTPPについての党の考え方がまとまらなかったと私は承知をしております。(発言する者あり)五十回。決められない政治というものと、三月十三日、党の考え方を紙にまとめて国会決議にまで持っていった自民党では、交渉能力に大いに差があるということだと思います。民主党政権のもとでTPP交渉に参加していれば、私はなかなか聖域を守るようなことなどはできなかっただろうというふうに思っております。

 私は、国民の皆様が、国益を守りつつTPP交渉を妥結するという困難な課題を解決するために国会のねじれを解消して強い交渉力を与えてください、自民党、自公政権にお与えくださいという昨年の参院選における自民党の訴えを聞き入れてくださったことに大変感謝をしております。

 一昨年の衆院選、それから昨年の参院選を通じて、国民の皆様が、国会のねじれを解消することによりTPP交渉に臨む自公政権に強い交渉力を与えてくださったことに大いなる感謝の気持ちを持って、しっかりと国益にかなう結果を出さなければならないと考えますけれども、安倍総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 TPPについても、我が党でも相当大きな議論がありました。我が党にはそれぞれの分野に精通した議員の皆さんがおられて、その立場から、相当突っ込んだ、かつ、広い議論を行ってきたところでございます。

 しかし、その中で、我が党は、我が党としての立場を明確にする、いわば原則、プリンシプルを明らかにし、そしてそれを選挙公約として戦ってきたわけでございまして、一昨年の衆議院選挙におきましては、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する、これを公約として掲げたわけでございます。その中において、昨年の二月、首脳会談を行い、私たちはこの公約を守らなければならないということで交渉をしたところでございますが、その中において、聖域なき関税撤廃ではないということを確認した上において交渉参加をしたわけでございます。

 そして、昨年、参議院選挙におきましては、TPPの経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求するという公約を掲げたわけでございます。そして、その結果、国民の負託を受けることができた。選挙における国民との約束をたがえてはならない、これは政治の基本だろう、このように思うわけであります。

 TPP交渉に臨む上において、私たちがしっかりと選挙でお約束をしたことを説明しながら、その上において、強い交渉力を持って、国益を守っていく、国益にかなう最善の道を追求していきたい、このように決意をいたしております。

赤澤委員 国民の支持があり、交渉能力があって、かつ聖域を守るという交渉方針を持つ安倍政権とかつての民主党政権は全く違うわけであります。だからこそ、かち取れる、日米の合意もしっかりできる、交渉もしっかり進められるということであります。

 次に、国益最優先の観点からは、TPPと並行して推進すべき二国交渉があるんじゃないかというお話をさせていただきたいと思います。

 オーストラリアのアボット首相が本年四月に来日予定との情報があります。日豪EPAについては、既に交渉開始から七年が経過をしており、林大臣もエマーソン貿易・投資大臣と昨年の五月に協議をされたと承知をしております。

 自民党派遣議員団は、今般、シンガポールで、二十三日にオーストラリアの畜産、酪農業界団体との会合、そして、二十四日に西川委員長と豪州代表のロブ大臣との会合を行いました。

 その際の感触なども踏まえて申し上げたいと思いますが、いましばらく、方向性は全体として出てきたけれども、時間のかかるTPP交渉と並行して、例えば日豪EPAの二国間交渉を推進することも国益を最大化するという意味では有力な選択肢だと考えます。

 岸田大臣の今後の交渉方針はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、自由貿易の推進は、我が国の対外通商政策の柱であります。力強い経済成長を達成するためにも、自由貿易体制を強化することによって各国の経済の活力をしっかり取り込んでいく、こうした必要を感じています。

 そういった考えのもとに、まず、今質疑の中でも出てまいりましたTPP交渉につきまして、早期妥結に向けてしっかり取り組んでいく必要があると考えていますし、また、現在、我が国は、御指摘の日豪EPAを初め、日・カナダEPAあるいはRCEP、日中韓FTAを初め、九つのEPAを今同時に手がけ、取り組んでいる、こうした状況にあります。

 ぜひ、こうしたさまざまな経済連携を同時並行的に、そして戦略的かつスピード感を持って進めていく、こうしたことが重要であると考えています。そのことによって、それぞれの経済連携がお互いに刺激を与え、そして活発化する、こうしたダイナミズムが働いていく、こういったことを期待したいと存じます。

 ですから、御指摘の日豪EPAにつきましても、他の経済連携と同時に進めていくことによって、他の経済連携に刺激を与え、活発化させる、こういった成果を期待して進めていくべきではないか、このように考えております。

赤澤委員 九つのEPA、その中の大変大事なものも日豪EPAということであります。他の経済連携にも刺激を与える、活発化させるということで、ぜひ強力に進めていただきたいと思います。

 同じ質問を林大臣にも伺いたいと思います。

 日豪EPAについては、報道によれば、農産物の取り扱いが懸案の一つとして残っているということであります。TPP、なお時間がかかるということでありますが、並行して日豪EPAの二国間交渉を推進する、有力な選択肢だと思います。林大臣、いかがですか。

林国務大臣 まずは、先ほど来御披露いただいたように、西川先生、宮腰先生、森山先生、そして赤澤先生、活発な議員外交、大変成果が大きかったということに対して敬意をあらわしたい、こういうふうに思います。

 お尋ねの日豪EPA交渉でございますが、今お話しいただいたように、昨年の五月に当時のエマーソン大臣とも協議をいたしましたことを含めて、実はこれは、第一次安倍政権の、十七年四月の交渉開始でございまして、それ以来、精力的に交渉を進めてきておりますが、農産品の市場アクセス分野も含め、まだ交渉中でございます。

 未解決な論点は限られてきている、これは事実だ、こういうふうに思っておりますが、具体的な交渉の中身については、相手の豪州との関係もありますので、差し控えたいというふうに思います。

 日豪EPA交渉は、TPP交渉とは別に進めるということにしておりまして、これも実はTPPと同じような趣旨の決議、衆参両院での国会決議をいただいております。今後とも、これを踏まえて、できるだけ早期の合意を目指して交渉を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。

赤澤委員 日豪間にも、工業製品で二品目だったかと思います、そして農業製品で二品目、懸案が残っているということですが、TPPとは別に精力的に進めていく、残された未解決の問題は少ないということでありましたので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 残された時間で、今後の交渉の進め方やスケジュール感についてお伺いをしたいと思います。通告していた質問、ちょっと飛ばさせていただくものが出てまいります。

 安倍総理にお伺いをしたいんですが、首脳が具体的な期限を切って交渉をまとめろと明言するような交渉は非常にまずい。我が国の交渉チームが相手に足元を見られる。いつまでにまとめろと言われているんだったら、期限が近づけばおりるんじゃないか、こっちの要求をのむんじゃないか、そういう相手に足元を見られる負け戦になるということが交渉の鉄則であります。

 四月にオバマ大統領の来日が予定されておりますが、何が何でもまとめろというようなリーダーシップ、これはされないと思いますけれども、くれぐれも、そのようなことがあって国益を損なうような交渉にならないように、あくまでも我が国の国益にかなう合意の成立をしっかり目指されるということを、念のために確認させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 アジア太平洋地域に大きな経済圏をつくっていく、その中において日本がしっかりとルールをつくっていく、その結果、この地域がもっと豊かになっていくわけでありまして、そういう意味において、早期に妥結することは我が国の国益ではありますが、あらかじめ期限を切る、これは、交渉において、みずからの手を縛り、そして逆に足元を見られる危険性があります。

 赤澤議員がずっとるる述べてこられたように、交渉というのは、お互いにやはり駆け引きを相当使い合うわけでありまして、その中において、みずからがかえって足を縛ることによって国益を確保できないということにつながってはならないという意味においては、例えば、いつまでにということで期限を切ることはするべきではない、このように考えております。

赤澤委員 念のための確認でございました。

 交渉にも本当に精通をしておられる安倍総理でありますから、全幅の信頼で、しっかりと与党としてもお支えをしていきたいと思います。

 次に、甘利大臣にお伺いしたいのは、よくTPPの関係で議論になるのは、米国の貿易促進権限法、いわゆるTPA法というものであります。これが成立をすれば、二〇一八年七月より前までに署名された協定は、実施法案が提出されると、米国の議会は修正が求められない、九十日以内に上下両院で採否を決しなければならない。端的に言えば、丸のみするか否決するかを決める以外になく、修正は出てこないということになります。

 現時点ではその法案が成立をしていないということだと思いますが、まだ状況はわかりませんが、TPA法が成立せず、米国議会から修正を求められたような場合、その場合でも、大事なのは、我が国がしっかり腹を固めておく、交渉方針は変わらないんだ、あくまで、党の公約を踏まえた衆参の農林水産委員会の国会決議、これを遵守して、国益にかなう対応をするんだという腹を固めておくことが大事なんだと思います。その点についていかがでしょうか。

甘利国務大臣 シンガポールの会議が終了しまして、全閣僚による記者会見が行われました。場内の記者から、それぞれ大臣に質問が出た際に、アメリカのTPA法案が難航した場合どうなるんだというような質問が私に出ました。私からは、初めにお断りしておきますけれども、アメリカのTPA法案は日本の国会にはかかりませんと言いましたら、場内が随分沸いたわけでありますけれども。

 これは、アメリカが対応すべきことであります。そして、各国の国内対策、法的な措置、処理については、各国の政府が、担当責任者が責任を負うべきものというふうに承知いたしております。

赤澤委員 大変慎重なお答えでありますが、大事なのは、アメリカの国内法、できるかできないかはそれはアメリカの問題だということで、そのとおりであります。しかしながら、それがいかなる形であれ、我が国は、しっかりと我が国の方針に沿った、国益にかなう形の結果を出していくということだと思います。

 あわせて、今後のTPP交渉の進め方、いろいろな報道が出て、大変心配をしている日本全国の農家、あるいはそれ以外の関係者もおられるところでありますが、甘利大臣に確認をさせていただきたいのは、大筋において、今後、物品を含む市場アクセスのバイの交渉を急いでいく、そして、まとまり次第、今回の閣僚会合で相当程度進んだルールメーキングとあわせて、TPP全体の合意を成立させることを目指すと。報道によると、四月ぐらいに事務レベル会合というような報道も出ているわけでありますが、その辺の全体のスケジュール感、今後の進め方についてお伺いをしたいと思います。

甘利国務大臣 ルールは全体で対応していくものでありますが、物品の市場アクセスについてはバイが中心です。これはどうしてかというと、各国とも関心事項が違うわけでありますから、これよりもこっちの方がうちは重要なんだ、よその国にとってはここはどうでもいいという話になりますから、バイがどうしても中心にならざるを得ないわけであります。

 全体のバランスをとりながら進めていくわけでありますけれども、次回の会合の持ち方については、私からフロマン代表に申し入れ、提案をしましたのは、最初に閣僚会議ありきという持ち方はもう今回でやめにしようじゃないかということを申し上げました。というのは、閣僚会議ありきということになりますと、閣僚がいわゆる権限、マンデートを持っているわけでありますから、その間の事務折衝が進まなくなる危険があるわけですね。

 だから、閣僚会議の持ち方というのは、もうこれでサインをすればいいというところになったときに持つというやり方をしないと事務折衝が進まないんじゃないか、その間、事務折衝には、CN以下にマンデートを与えて、それで、難しい問題も多くの大臣と相談しながら最終的に詰めていって、いよいよサインというときに持つべきだ、だから一日かそこらでの会議にすべきだという申し入れをしまして、それは全体会議で共有されたというふうに思っております。

赤澤委員 最後に、全国の国民の皆様に、しっかりと、死活的利益、農産品五品目、それから国民皆保険制度などを守り抜いて、国益にかなう結果を出す安倍総理の決意を伺って終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、繰り返し申し上げておきたいことは、私たちが選挙において公約したこと、この約束は決してたがえることはないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 そして、農産品五品目については、我々、しっかりと国民の皆様にも決意についてお示しをしているわけでございます。そのことも踏まえまして、そして、衆参の委員会における決議を踏まえて、国益にかなう最善の道を目指してまいります。

赤澤委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 これにて赤澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 おはようございます。公明党の石田祝稔です。

 きょうは、TPPに絞りまして質問をさせていただきたいというふうに思います。この問題は、全国の皆さんも固唾をのんでその行方を見守っている、こういうことだろうというふうに思います。

 結果は報道されているようなことだろうと思いますけれども、そういう中でも、私は、甘利大臣に、御自身の御病気も発表された後、大変な中、アメリカにも行かれたし、また今回の閣僚会合にも臨まれた、非常に御努力をなさったことにつきまして、敬意を表したいと思います。また、それと同時に、政府の関係者、農業関係者、また、政党からは自由民主党の四名の方、民主党からも行かれたようでありますが、それぞれの立場で御努力いただいたことにまず敬意を表したいというふうに思います。

 それで、私のちょっと個人的な話になりますけれども、かつて衆議院の派遣でパリに到着することがありまして、そのときに上空から見たら、ほとんどが平野というか丘でした。こういうところだから、食料の自給率が一〇〇%を超えるところだろうと。私は高知県の出身でありますけれども、高知県なんかは見ると八四%が山、そういうところで、特に今回も農産品の扱いというのは大きな課題になったと思いますけれども、この地理的な条件の差はいかんともしがたいな、こういう感じを率直に私はそのとき持ちました。

 そういう中で厳しい交渉をしていかなければならないということでありますから、これから私たちも、これは政府・与党一体となって、また国会もそういう観点で、しっかりと国益にかなう、そういう交渉は応援をしていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 過去をちょっと振り返ってみますと、たしか二〇一〇年だったと思いますが、突然唐突に、平成の開国だ、こういう叫びを上げた総理がいらっしゃいまして、平成の開国とは一体何だろう、そう思いつつ時が過ぎまして、その後、二〇一二年の衆議院選挙がございました。またその後は、昨年の二月に安倍総理とオバマ大統領が会談をして、聖域なき関税撤廃が前提ではない、こういう御確認をされて、その後、三月に参加表明、そして四月には日米協議の合意がなされる。また、国会でも、衆参の農林水産委員会の決議もいたしました。その後、参議院選挙もあったわけでございます。

 ですから、私たちは、候補者としてもお約束をした、また、国会議員としても、委員会決議ということで私たちの決意も示した。その間、選挙もあった。こういうことでございます。

 ですから、そういう中で、私たちはいわゆるナローパスをどう通っていけるのか、こういうことではないかというふうに思っております。

 ですから、私も、今回のシンガポールの閣僚会議で国会決議に沿った合意ができるのではないかという期待も実はしておったんですけれども、結果は、これからまたやらなきゃならない、こういうことだろうというふうに思います。

 それで、まず最初に総理に確認をさせていただきたいんですが、私は、昨年二月のオバマ大統領との共同会見、ジョイントステートメントが出発点ではないか、こういうふうに思っておりますが、このことにつきまして、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が党は、さきの衆議院選挙で、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対するという公約を掲げたわけでございまして、そのことによって政権に復帰をいたしました。

 そこで、これを踏まえて、昨年の二月、オバマ大統領との日米首脳会談におきまして、まず、今委員が御指摘になったように、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティーが存在すること、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであること、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは決められていないの三点を確認したわけでございます。

 それを、今委員がおっしゃったステートメントとして、これは文書で確認をさせていただいたわけでございまして、まさに、昨年の三月に、その文書を受けて交渉参加を決断したということでございます。

石田(祝)委員 このとおり、日米にはそれぞれセンシティビティーな品目があるんだ、ここのところの確認から私は全てがスタートしていると。

 ですから、今回のこのTPPの交渉も、十二カ国でありますけれども、やはり日本とアメリカとの関係が、しっかりと合意をされるというのをほかの国が見ているという状況ではないかと思います。ですから、これからも、このTPPの交渉は、当然、全ての国が合意しなきゃいけないのは最終ゴールだと思いますけれども、やはり日米の関係の中でしっかりとした合意をつくっていけるか、しかし、これは、先ほど申し上げたように、昨年の二月の日米共同声明、ここが全ての出発点でなければならない、このように私は思っております。

 そういう中で、我が党も、衆議院、参議院の選挙のときに、これは当然、お約束をいたしました。

 衆議院選挙では、これはまだ実現をしておりません、これからちょっとまた申し上げますが、国会で調査会もしくは特別委員会を設置し、十分審議できる環境をつくるべきである、これが衆議院選挙のときのお約束であります。

 参議院選挙では、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の重要品目については関税撤廃から除外、または再協議の対象となるよう政府に求める、そして、守るべきものを守り、かち取るべきものをかち取るとの姿勢で臨み、国益の最大化に努める、こういうことを政府に求める、これが参議院選挙のときの我が党の重要政治課題としてのお約束でございます。

 ですから、これは、私たちは、最初に申し上げたように、このような選挙でのお約束、また国会の決議、こういうものをしっかりと守った上で、非常に狭い道を通っていただくようになるかもしれませんが、国益の最大化、そういうことで、非常に難しい連立方程式を解いていただかなきゃならない、こういうことだろうというふうに思います。

 それを踏まえて、また総理にこれはお伺いをしたいと思いますけれども、大筋合意はできなかったという報道の基調でありますけれども、政府としては、現時点において、どのような御認識を持っているか。これは甘利大臣でも結構でございますが。

甘利国務大臣 大筋合意というのは、TPP閣僚会議の中で、公式文書でこういう表現はなかったと思いますが、日本の報道で大筋合意というのは随分取り沙汰されていることは事実であります。

 大筋合意の中身が何かという定義がございませんで、これぞ大筋合意というぐあいにはならないのでありますけれども、今回の会合は、ロブ大臣は八割方と言っているわけであります。その中にはまだまだ未解決の部分もありますから、いわゆる従来の概念で言う大筋合意というところまではいかなかったというのが、比較的、共通認識かなというふうに思っておりますが、ルール分野では、前回の閣僚会合で特定された論点の多くについて政治的判断が下されました。残された課題の解決に向けた道筋も示したわけであります。多くの進展があったことは事実だと思います。

 それから、市場アクセスにつきましては、先ほど来申し上げていますが、物品のほかにサービスとか投資とか政府調達とか一時入国があるわけでありますけれども、全般的に精力的な交渉が行われて、実質的な協議を進めたわけであります。

 私の方からは、先ほど来申し上げましたように、物だけじゃなくて、それ以外の市場アクセスもあればルールの分野もある、包括的でバランスのとれた合意を目指すべきだということを強調いたしました。各国から基本的な理解が得られたものというふうに思っております。

 今回の会合を通じまして、各国がそれぞれ抱えているセンシティビティー、抱えていないという国もあるんでしょうけれども、大体の国はある種センシティビティーを抱えているわけであります。それに配慮しながら、あわせて、二十一世紀型、幅広い、それから野心の高いというものとのすり合わせをしっかりしていくことが重要だというふうに思っております。

 今回の会合結果が、漂流という形ではなくて、次につながる結果になったということは喜ばしいことだというふうに思っております。

石田(祝)委員 それで、ちょっと違った角度で一つお聞きしたいんです。

 このTPPの交渉のときに我々もいろいろと勉強させていただきましたが、そういう中で、米韓FTAをよく研究した方がいいですよ、こういうお話もどこからともなく入ってまいりました。

 そのとき、私たちもISDS条項とかそういうものはよくわかったわけでありますが、私も勉強不足であったんですけれども、これは岸田外務大臣にお聞きしたいんですけれども、スナップバック条項、手のひらを返す、こういう項目があって、日本で言ったら、手のひらを返すというかちゃぶ台返しという意味になるのでしょうか、それが、韓国からは提議できない、アメリカからしか提案ができない、こういう条項が入っているということであります。

 当然、これからの交渉でありますけれども、米韓FTAをよく勉強した方がいいですよということを言われて、私たちもそうかなと思っていたんですが、これについて、外務大臣、御答弁をお願いします。

岸田国務大臣 御指摘のスナップバック条項ですが、要は、協定によって税率が引き下げられたとしても、協定違反があり、そして実質的な影響があると認定されたならば、税率がもとに戻ってしまう、こうした条項ですが、これにつきましては、昨年四月に日米間で合意しました自動車貿易TOR枠組み文書の中に、スナップバック手続ができる特別な加速化された紛争解決手続について、交渉を通じて定められると明記されております。ですから、このスナップバック条項につきましても、交渉の中で議論が行われております。

 実際、今どんな状況にあるのかということにつきましては、この自動車並行交渉も最終的にはTPP交渉本体に組み込まれることになっておりますので、相手もある話であり、具体的に明らかにすることは控えなければなりませんが、いずれにしましても、今交渉中であり、まだ結論は出ておりません。引き続きまして、国益を最大限のものにするよう、しっかりと交渉していかなければならないと考えています。

石田(祝)委員 外務大臣、ちょっと確認だけさせていただきたいんですけれども、どちらかからしかそういうことは提案できないということはないですよね。

岸田国務大臣 スナップバック条項ということにつきましては、一般的に、先ほど説明させていただいたとおりであります。これについて、昨年四月のTORの中で、交渉を通じて定められるということが明記されているということであります。

石田(祝)委員 続いて、我が党も情報はしっかり出してもらいたい、これはどの党も同じだろうというふうに思いますけれども、そういう中で、やはり秘密を守らなくちゃならない、保秘条項はサインをした、そういう約束だからなかなか出せないんだ、こういうお話でございます。

 最近の日本農業新聞にも出ておりましたけれども、マレーシアは二月の二十日にもういろいろなことを出しているじゃないか、こういう話が新聞に載っておりまして、英文で私もきのう遅く手に入れたものですから、英文そのものをどうこうということは言えませんけれども、新聞記事にある限り、マレーシアはここまでいろいろと情報を出している。知的財産分野でどうだとか、医薬品の特許はどうだとか、政府調達分野では同国のマレー人優遇策、ブミプトラ政策との整合性とか、こういうことをオープンにしている。

 ですから、私たちも、そういう保秘契約があるということを前提でやっているから、余り、あれ出せこれ出せということを申し上げることは控えようということで言ってきましたけれども、こういうふうにマレーシアが、これが保秘契約の中というか外の話なので出しているのか、ぎりぎりのところでこれはちょっとフライングじゃないのか、こういうことなのか、それだったら、私たちも、ぎりぎりのところから一歩出た情報をぜひ国会でも開陳をしていただきたいな、こういうふうに思いますけれども、甘利大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 各国とも、閣僚と個別に話をしますと、交渉上の守秘義務と国民に情報開示をするそのすり合わせといいますか、どこまでが許されて、どこまでがいけないのか、この点についてはみんな悩んでいるようであります。

 マレーシアの国際貿易産業省がホームページに説明した資料、これも拾い読みしてみましたけれども、二国間あるいは多国間交渉の機微の情報が出ているというよりも、まあ当たり前に近い情報が開示されている。日本におきましても、内閣官房でホームページ上に情報開示をいたしております。それと比較して、特別マレーシアが機微、詳細にわたってという感じもないと思っております。

 私どもも、交渉の節目ごとにホームページを通じて可能な情報は開示をさせていただいておりますし、総理や私の会見でも、質問に対しては可能な限りこのルールの枠内で説明をさせていただいているつもりでありますし、これからもそうしていくつもりではあります。

石田(祝)委員 これは、ぎりぎりのところで出していただいているだろうというふうには思いますけれども、やはりいろいろな情報、各国はそれぞれの判断で出して、ちょっと日本はどうなのかという、国内の国民的な議論の中で理解をしていただかなきゃならない、私はそういうことだろうと思いますので、なお、そういう点につきましてもぜひ御努力をお願いいたしたいな、こういうふうに思います。

 続きまして、アメリカとの問題で、自動車の問題ですね。

 アメリカは、乗用車が二・五%ですか、トラック、ピックアップが二五%の税率があるわけですけれども、アメリカは一体何を守りたいと思っているのか非常に私もよくわからないところもあるんですが、自動車の関税について、また、新興国の国営企業の保護政策、こういうもので、それぞれの国が今回の主張に変化があったのかどうか、これは甘利大臣にお伺いをいたしたいと思います。

甘利国務大臣 アメリカの自動車の話題は、日本がTPPに参加するときに、その主要たる国のアメリカに対して、もちろん、全ての国の了解をとらないと入れないというルールがありますから、全ての国の了解をとったわけでありますけれども、アメリカの了解をとる過程において、双方の話し合いの中で、日本には農産品の一部にセンシティビティーがあり、アメリカは工業製品の一部にセンシティビティーがある、具体的にはということで自動車の話が出てきたということでありますから、これは、アメリカにとってのセンシティビティーの一部だというふうには理解をいたしております。

 それで、今回、どこの何の部分でどれくらいの前進があったかというのは、交渉の中身ですから申し上げるわけにはいかないのでありますけれども、市場アクセスについても、あるいはルールについても、改善があった、前進があったことは事実であります。

 例えばルールについて言えば、これぐらい言っていいんでしょうか、知財について、未解決項目というのが、たしかブルネイの段階では百項目以上ありました。それがどんどん減っていって、今回の閣僚会合を終えた段階では、閣僚ベースでやっと議論しなきゃならない、もちろん、マンデートを与えられた事務ベースで処理していいんですけれども、それがたしか一桁ぐらいになっていますから、各項目とも残された課題はありますけれども、その数はどんどん減ってきているということは事実だと思います。

石田(祝)委員 今、甘利大臣が、知財については百項目以上のものがあったのが一桁になったと。中身が、どれが残っているかというのは、もちろんおっしゃいませんでしたけれども。

 例えば、そういう定量的なものを示していただけると、ああ、進んでいるなということがわかると思いますので、ぜひ、何と何と何という分野を言えないというのはそうかもしれませんけれども、先ほどおっしゃった、百項目ぐらいあったのが一桁まで減ってきている、そこまで議論が進んでいるというようなことは、これは折に触れて言っていただいたら、努力が徐々に実って、まさしくラチェットで、後戻りせずに進んでいるな、こういうことは理解していただけるのではないかと思いますので、どこからどこまでという判断が当然あると思いますけれども、そういうところについては積極的に開陳をしていただきたいな、こういうふうに私は思います。

 それで、今回、シンガポールの会合が終わって、大臣も、もう閣僚会合は調印するだけにしませんかというような、ちょっと今、赤澤先生の御答弁の中であったようにお聞きをいたしましたけれども、今回も、私の住んでいる地方紙には、シンガポールはもう二度と主催国をやりたくないというような、そういうのを括弧書きで書いておりまして、これは、次をシンガポールでやるかどうかはもちろん決まっていないわけでありますけれども、今後のスケジュールについて、何か固まったものはございますか。

甘利国務大臣 一部新聞報道ですか、貿易大臣会合を次やるときがチャンスではないかというような報道がありましたけれども、これは全く決まっていません。

 先ほども申し上げましたように、先に閣僚会合を決めるというやり方はもうやめにしませんかということを私からは提案しました。シンガポールがもう二度としたくないというのも、事実、公に言っております。これは、結構ロジが大変なのでありまして、その国の負担が大きいわけであります。だから、次は、簡単に閣僚間でサインをできる状態になるまでは開かない。逆に言えば、そういう状態になれば開きますよと言えば、その間の事務折衝は進むわけであります。

 最初に閣僚会議がセットされちゃっていますと、あそこがあるから、事務方はマンデートも部分的にしか与えられていないし、閣僚会議で決めてもらえばいいやと思えば、その間の事前作業が進まないということになりますから、今度は、ほぼサインで済むという状況になったときに開くという考え方に改めていこうじゃないでしょうかということで、その考え方は、ほぼ共有されたのではないかというふうに思っています。

石田(祝)委員 最後になりますけれども、総理に、我々は国会議員として衆参の委員会で決議をいたしました。この決議を守り抜くとの決意を最後に総理にお伺いいたしまして、質問は終わらせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま甘利大臣から答弁をさせていただいたように、大変厳しい交渉が続いているわけでございますが、しかし、その中におきましても、センシティビティーがあるという共通認識、しかし、その中において、二十一世紀型の新しい大きな経済協力の枠組みをつくっていこうということにおいては同じ認識を持ち、方向性は見えてきたんだろう、このように思います。

 そこで、日本の立場でありますが、今御指摘がございました重要五品目についての決議でありますが、TPP交渉においては、国益と国益がまさにぶつかるわけでありますが、いわゆる重要五品目については、衆参の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめまして、国益を守るための交渉を続けていく決意でございます。

石田(祝)委員 本当に、甘利大臣も大変だと思いますけれども、国益の最大化のためにぜひ頑張っていただきたいということをお願いいたしまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。民主党の古川元久でございます。

 きょうは、まず、先日政府の方から示されましたエネルギー基本計画案についてお伺いしたいと思います。

 まず、ちょっとこの図を見ていただきたいと思います。

 これは安倍総理に、自民党総裁としてお伺いをしたいと思いますけれども、見ていただきますと、一昨年の衆議院選挙の公約のときには、自民党は、「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指します。」と。これを普通に理解すると、将来的には原発がなくても済む、そういう経済社会構造をつくるんだなと。時期は示していません。我々は、二〇三〇年代に原発稼働がゼロにできるような、そういう状況をつくっていくんだと。

 そういった意味では、最終的に脱原発を目指していく、そうした方向に向けてあらゆる政策手段を使っていくんだということを決めていたんですけれども、自民党さんは、時期こそ明示はしていないものの、方向は、これだけ読むと、最終的には脱原発へ向かうのかなというふうに思われるわけなんです。

 しかし、今回のエネルギー基本計画案を見てみますと、原発依存度については可能な限り低減させる、しかしその一方で、その方針のもとで確保していく規模を見きわめると。要は、これは、最終的に脱原発ではなくて、将来にわたって原子力を維持し続ける。

 そういった意味では、公約とエネルギー基本計画案にはそごがあると思うんですが、どうですか。

茂木国務大臣 まず、事実関係についてお話しして、その上で総理の方から。

 エネルギー基本計画の政府原案につきましては、徹底した省エネルギーの推進、再生エネルギーの最大限の導入、そして高効率火力発電などエネルギー源の多様化、さらには需要面でのスマートな消費抑制を図りながら、可能な限り原発依存度を低減するとしております。

 さらに、自民党の公約、そこで引用していただいたものよりもう少し長くなっておりまして、全てのエネルギーの可能性を徹底的に掘り起こし、社会経済活動を維持するための電力を確実に確保するとともに、原子力に依存しなくてもよい経済社会の確立を目指すこととしており、原発ゼロを目指す、こういう表現はもちろんございません。

 依存、これは広辞苑を引いてみますと、「他のものをたよりとして存在すること。」という意味でありまして、自民党の方針はまさに、原案が示している、特定のエネルギーにのみ頼らない、現実的かつバランスのとれたエネルギー需給構造の構築と軌を一にするものであります。

 質問どおりお答えさせていただきました。

安倍内閣総理大臣 まさに今、事実関係として、私たちの公約と今回のエネルギー基本計画の言葉をいわば委員の方は引かれまして、私たちが示した言葉を引かれて聞かれたものでありますから、これは詳細についてお答えをした方がいいということで、今、茂木大臣から答弁をさせていただいたとおりでございますが、原発については、徹底した省エネルギー社会の実現と、そして再生可能エネルギーの最大限の導入を進めていきます。

 そして、その上において、原発依存度は可能な限り低減をしていくということでありまして、依存については今、広辞苑に書かれていることを茂木大臣から御紹介させていただいたとおりでございますが、これが基本方針でございます。

 これは、自民党における平成二十四年五月二十九日の総合エネルギー政策特命委員会の取りまとめや、選挙公約、自民党・公明党連立政権合意を踏まえた一貫した方針でございまして、エネルギー基本計画の政府の原案についても、その方針を踏まえたものになっているわけでございまして、私どもの公約とこの基本計画は、何ら矛盾するものはない、このように思います。

古川(元)委員 そごするものではないというふうにおっしゃいますが、かなりこれは多くの皆さんが誤解していると思うんですよ。実際に、自民党の議員の皆さんの中にも、これはそもそも、ちゃんと我々は脱原発を言ったじゃないか、そういうことをおっしゃっている皆さんもいるわけですから。

 有権者の皆さん方も、選挙のときには事実上はこれは脱原発だというふうに見せかけながら、実はそうでなかった、そういうことを総理は総裁としておっしゃっているということですから、そのことの責任は、これはしっかり国民の皆さん方が次の選挙で判断されることだと思います。そのことを申し上げたいと思います。

 次に、きょうは、太田大臣、お忙しいところおいでいただいて、どうもありがとうございます。

 公明党さんも、さきの総選挙のときには、ここに書いてありますように、「可能な限り速やかに原発ゼロを目指します。」と。特に公明党さんの場合には、ここにはちょっと書かなかったんですけれども、「可能な限り」の前に、「一年でも五年でも十年でも早く、」と、そこまで強調して、可能な限り速やかに原発ゼロを目指すというふうにはっきり書いてあるわけであります。そしてまた、「もんじゅ」についても、「高速増殖炉もんじゅは廃止します。」と明確に書いてあります。

 しかし、今回のこの政府のエネルギー基本計画案を見てみますと、原発については先ほど申し上げたように、そして、「もんじゅ」についても、これは、研究の成果を取りまとめることを目指し、克服しなければならない課題について十分な検討、対応を行うということで、廃止するというふうにはなっておりません。

 これは、明らかに公明党さんの公約と矛盾する、そうした今回の計画ではないでしょうか。

太田国務大臣 大変申しわけないのですが、私は今現在、公明党を代表してエネルギーについて申し上げる立場にはございません。

 このエネルギー基本計画が、政府の原案として出され、与党で今後議論をされ、そして調整が行われるものと承知をしているところでございます。

 なお、自公連立政権合意書、一昨年の十二月二十五日でありますけれども、そこは私にも関係するところでありますけれども、原発・エネルギー政策の項目につきましては、省エネルギー、再生可能エネルギーの加速度的な導入や火力発電所の効率化等の推進化によって、可能な限り原発依存度を減らす、このように書かれていることを御紹介します。

古川(元)委員 そうしますと、大臣、連立合意書でそういうふうに記述が変わったと。

 では、この公約は、衆議院選挙においての公約が連立合意によって変わった、そういう認識を大臣は持っていらっしゃるということですか。

太田国務大臣 変わったかどうかということについては、当時の公明党の考え方、そして、この件については、これから与党間で論議をされることだと承知をしております。

古川(元)委員 大臣は、公明党を代表しているわけではないというふうにおっしゃいますけれども、前には公明党の代表も経験していらっしゃるわけでありまして、そういった意味では、公明党の皆さん方のある意味で声を受けてこの内閣にも入っていらっしゃるんだと思います。

 そういった意味では、総選挙のときに国民の皆さん方に約束したことを最大限実現する、そういう努力を、そして声を上げていくのが、御党に投票した皆さん方に対する責任、そういう役割も太田大臣は期待されて入閣していらっしゃるんじゃないかと思います。

 今、漆原国対委員長も、言うべきことをはっきりおっしゃっていらっしゃいます。大臣も、もとの公明党の代表でもいらっしゃるわけでありますから、やはり、きちんと御党の意見というものは、言うべきことを閣内の中で言っていくべきではないでしょうか。いかがですか。

太田国務大臣 閣僚の一員として、言うべきことは言うということでございます。

古川(元)委員 期待をしておりますので、大臣もしっかり選挙で公約したことを閣内で言っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 大臣、お忙しいところありがとうございました。退席していただいて結構でございます。

 では、次の質問に移りたいと思います。

 この間の国会の予算委員会の審議の中でも、たびたび、化石燃料の輸入増加、このことによって国富が流出しているんだと。昨年は一昨年に比べて三兆円も流出した、よくそういうことが茂木大臣などから答弁で出ておりますけれども、これはファクトとして見てみると、ちょっとお示しをさせていただきましたが、少なくとも、昨年でいいますと、確かに金額は伸びております、三兆円、大臣がおっしゃるようにふえました。

 しかし、輸入数量で見ますと、これを見ていただきますと、原油は減っている、天然ガスはほとんど変わらない。石炭は若干ふえておりますけれども、しかし、上を見ていただくと、輸入総額は減っているんですね。これは、石炭は金額が安くなったからなんです、単価が安くなったからなんですね。

 ですから、そういった意味で見ますと、実は、数量は、昨年は一昨年に比べて全体で見ればほとんどふえていない、変わらない状況なわけです。しかし、なぜ、では三兆円も国富の流出があったかといえば、それはほとんどは円安の影響、そしてまた、価格も若干上がった分があるかもしれません。

 そういう、価格の要因、特に円安の要因が大きいのであって輸入数量がふえたわけではない、このことは、茂木大臣、お認めになりますね。

茂木国務大臣 三・一一以降、我が国のエネルギーコストがいかに上がっているか。これは、三・一一前、これでいいますと平成二十二年と二十四年なり二十五年を比べないと、申し上げているのは、このエネルギーの……(古川(元)委員「去年の三兆円の話を聞いているんです」と呼ぶ)では、申し上げますから、ゆっくり聞いてください。(発言する者あり)聞かれましたので、それに答えております。

 原発の稼働停止に伴います化石燃料の輸入増加への影響を見るには、震災の前と後を比較することが適切だ、これは誰でもわかることであります。その際、燃料費の増分については、震災前並みにベースロード電源としての原子力を利用した場合と比較して、それが火力発電で代替されている場合の増分を評価することが適切であると考えます。

 為替のお話をされました。お答えをいたします。

 これに基づいて試算をいたしますと、まず、震災前の二〇一〇年度と震災後の二〇一二年度、民主党政権でありましたが、比較をいたしますと、二〇一〇年度から二〇一二年度で、為替は、一ドル八十六円十銭から八十二円六十四銭へ、約三・五円、円高となっております。それでも燃料費は三・一兆円増加をいたしております。

 さらに、二〇一二年から二〇一三年度にかけては、為替は、一ドル八十二円六十四銭から九十八円八十七銭へ、円高の是正、こういったものが進んだわけでありますが、燃料費はさらに三・六兆円増加すると見込まれているところであります。

 これらを勘案いたしますと、震災前、つまり二〇一〇年から二〇一三年にかけての貿易赤字の増加のうち、発電用燃料費の増加については、化石燃料の輸入量の増加が極めて大きな原因を占めておりまして、同時に、石油であったりとかLNGの国際価格の変化、また、為替による変動要因も加わっている、このように分析するのが妥当であると考えております。

古川(元)委員 私が言っているのは、いつもこの委員会で大臣は、化石燃料の輸入で昨年だけで一昨年よりも三兆円も国富の流出がふえたんだというふうにおっしゃっているわけなんですけれども、その実態は、これは量がふえたわけではない、そのことを確認させていただきたいということで聞いたんです。

 したがって、そうした考え方に立って、この基本計画の中でも、日本の貿易収支の赤字が拡大している、化石燃料の輸入増加の影響、そうしたものを非常に大きく取り上げているんですが、もちろんそこはありますけれども、しかし、円安が進んでいるとか、あるいは化石燃料価格の上昇とか、やはりそういったところをフェアに、きちんと記述することが大事じゃないか、そのことを指摘しておきたいと思います。

 次に、このエネルギー基本計画の中で、「海外の情勢変化の影響を最小化するための国産エネルギー等の開発・導入の促進による自給率の改善」、こうした項目がありますが、この中で、原子力を再生可能エネルギーと同じ国産エネルギーだというふうに位置づけているんですね。

 しかし、これは核燃料サイクルが確立していることを前提とした考え方じゃないですか。でも、核燃料サイクルというのはまだ確立していないですよね。確立していないどころか、これは本当にできるのか、実質的に破綻していると言っても過言ではないと私は思うんです。

 もし、この核燃料サイクルが確立していないということであれば、しかも、後のところを見てみますと、核燃料サイクルについては引き続き促進するというふうにしていますけれども、対応の柔軟性を持たせることが重要だということで、将来の見直しの余地も残した記述になっているんです。そうであれば、この原子力を国産エネルギーというふうに位置づけるというのはそもそもおかしいのではないですか。いかがですか。

茂木国務大臣 今回のエネルギー基本計画の原案におきましては、再生可能エネルギーは国産エネルギーと位置づけております。一方、御指摘いただきました原子力については、準国産エネルギー、このように位置づけております。

 前回の、第三次のエネルギー基本計画、民主党政権のもとで二〇一〇年の六月に閣議決定されたと承知をしておりますが、その文書を見ますと、「原子力は供給安定性と経済性に優れた準国産エネルギー」、そのように皆さんもお書きになっていらっしゃいます。さらに、核燃料サイクルにつきましては、「「中長期的にブレない」確固たる国家戦略として、引き続き、着実に推進」します、皆さんが書かれたことであります。

 原子力は、燃料投入量に対しますエネルギーの出力が圧倒的に大きく、仮に調達が一時的に途絶えたとしましても、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる、こういった観点から、今回のエネルギー基本計画の政府の原案においても、我々も、準国産エネルギー、そういったことに位置づけているわけであります。

古川(元)委員 震災前のエネルギー計画、確かに我々も出しましたが、これはもう震災で根本的に、あの事故で変わっているんですよ。

 そもそも、あの原発事故があって、それまでの、従来の原子力政策を中心とするエネルギー政策はもう破綻しているというか、根本から見直さなきゃいけない、これが国民的な共通認識だったんじゃないですか。

 私は、あの事故で、いわば安全神話を初めとする従来の原子力政策の含んでいたさまざまな矛盾が明らかになった、パンドラの箱はあいたんだと思っています。当然、その前のものを出して、こう書いていたじゃないか、そういうことを議論することは全く意味がないと思うんですね。むしろ、今のこの状況の中で、これはやはり冷静に考えていかなきゃいけない。

 書いていないというふうに言いますけれども、私が先ほど指摘したのは、大臣、もう一回よく見てみてください。十七ページのところに、「我が国が国産エネルギーとして活用していくことができる再生可能エネルギー、原子力、さらにメタンハイドレートなどの」、そういう形で、国産エネルギーだというふうに書いているんです。ですから、私はこれを指摘しているんです。もう一回そこをチェックしてみてください。

 次にお伺いします。

 原子力の位置づけの中で、原子力はすぐれた安定供給性と効率性があるというふうに書かれているんですけれども、確かに、原発は出力変動はいたしません。二十四時間運転です。

 しかし、逆に考えると、一旦動かし出したら容易にとめることもできないので、出力調整できない、そこは実は欠点でもあるんですね。だからこそ、原発を動かすときには、当然、夜の間余った電力を使うために、余剰電力を使うために、揚水発電が必要不可欠になってくる。また、地震や事故、あるいは人的なミスが起きた場合には、長期に、また大量停止のリスクというのも非常に高いわけであります。

 ですから、そういった意味では、安定的な稼働というのもなかなか期待できないんだと思うんですね。現実に、今起きている需給逼迫とか電気料金の値上げというのも、言ってみれば、原発の持つ弱点があらわになったということではないでしょうか。

 それなのに、相変わらず事故前と同じような、すぐれた安定供給性と効率性がある、そういうふうに、同じように言っていていいんですか。どうですか。

茂木国務大臣 御指摘のエネルギー基本計画の十七ページでありますけれども、できるだけ海外からの依存度を減らしていこう、こういう観点から五項目めを書いてございまして、ごらんいただきますと、素直に読むと、国産エネルギーというのがついているのは再生可能エネルギー、それからメタンハイドレートなどの海洋に眠る国産資源などを戦略的に活用する、その間に原子力が入っております。

 国産エネルギー、さらには準国産エネルギー、これを活用することによって海外への依存度を減らしていく、当然の方向である、そのように考えております。

 さらに、原発がすぐれた安定性、効率性を有しているか否か。

 原発は出力調整ができなくて揚水発電等と組み合わせる必要があるのではないかということでありますけれども、今回、我々は、ベース電源、ミドル電源、そしてピーク電源、こういう、それぞれの電源ごとの特徴を明確にさせていただきました。

 ベース電源は、一日じゅう、そして昼夜を問わず、また年間安定して使える、こういう電源でありますからベースロード電源という位置づけでありまして、そもそも、ベースロード電源そのものを出力調整に使うということはないんです。ピーク電源を出力調整に使うわけでありまして、ベースロード電源は一定なんですから、調整には使わないんです。使うのはピーク電源なんです。そのことをぜひ御理解ください。

古川(元)委員 私が聞いているのは、ベースロード電源かどうかということじゃないんです。ここで、すぐれた安定供給性と効率性があるというふうに書かれているけれども、しかし、原発の持っている弱点や欠点というものを考えれば、もうこういうふうには言えないんじゃないですかというふうに聞いているんですね。どうですか。

茂木国務大臣 確かに、東日本大震災、そして三・一一の原発事故を踏まえて、我が国のエネルギー政策、抜本的な見直しが必要になったのは確かだと思います。

 私は、二〇一〇年段階で皆さんが何をお決めになった、このことを申し上げているのではなくて、もしそうであったら、どうして、三・一一が終わった後、皆さんとして三次のエネルギー基本計画を変えられなかったのか、そういうふうに思っております。

 その上で、申し上げておりますように、調整電源として使うものではないということであります。そこの中で、低コストで一日じゅう使えるものでありますから、それをベースロード電源と位置づける。ベースロード電源でありますから、当然、安定性、効率性を持っているというふうに考えております。

 同時に、我々としては、原発につきましては、世界で最も厳しい規制基準のもとで、この原発の安全性については独立した原子力規制委員会が判断をする。そこで安全だと判断されない原発を稼働させる、そういうことはありませんから、そういった意味において、不安定性を持つ、こういう御指摘は当たらないと思っております。

古川(元)委員 大臣、ベースロード電源だから安定供給性と効率性があるというのは、それは全く逆から言っているんです。それは詭弁というんですよ。すぐれた安定供給性と効率性があるから、ベースロード電源にするということでしょう。ベースロード電源だから安定供給性と効率性があるというのは、これは全く逆のことじゃないですか。それはおかしいですよ。

 次に、コストが安いというふうにおっしゃいます。運転コストが低廉だというふうに書いてあります。

 しかし、我々が政権のときに、コスト等検証委員会を設けて、本当のコストはどうなのかと。確かに、運転のところだけ見れば原発は安いかもしれません。しかし、さまざまな費用、特に、事故が起きたときの賠償とか、さまざまなそういうことも含めた社会的なコストというものを考えてみますと、原子力発電については、そのリスクを踏まえると、相当程度の社会的費用が存在する。その社会的費用も含めて考えなければいけない。

 そういったことを含めれば、もはや原発はコストが安いとは言えない、そういうふうに私たちは考えるに至りました。だからこそ、原発をだんだんと減らしていって、最終的には、原発がなくて済む、そういうエネルギー構造をつくっていこうというふうに考えたんです。

 にもかかわらず、この基本計画では、原子力発電の位置づけを検討するに当たっては、社会的コストということの記述は全くないんですね。これは、この社会的コストを考えていないんでしょうか。

茂木国務大臣 社会的コストといったときに、事故リスク対応費用であったり政策経費、こういったものを加味してということであると思っておりますが、具体的に申し上げますと、事故後の話ですね、民主党政権下の二〇一一年の十二月に、皆さんがエネルギー源ごとのコストの比較を行われております。

 この試算では、原子力コストにつきまして、こういった社会的費用も加味して、キロワットアワー当たり八・九円以上とされているわけであります。八・九円以上とされているのは事故対応の追加費用を見込んでいるからでありますけれども、追加費用を見込んでも、その他の主要電源と比較して、必ずしも高いコストとはなっていないということであります。

 さらに、原発の事故対応費用については、福島第一原発の事故対応費用をもとに約五・八兆円と仮定をして、キロワットアワー当たり〇・五円と試算されておりまして、仮に事故対応費用が一兆円ふえるとキロワットアワー当たり〇・一円ずつ増加する。つまり、社会的費用が、事故対応費用が倍になったとしても石炭火力よりは発電コストが安い、こういうことになります。

古川(元)委員 なぜ社会的コストの話が全然書いてないんですかということを聞いているんです。聞いていることに答えていただきたいと思います。多分、そこは考えていないから言えないんだと思いますけれども。

 次に、ちょっと伺いますが、これは、原発依存度を可能な限り低減させるというふうに言っていますけれども、今、実際には原発依存度はゼロですよね、動いていませんから。そういった意味でいうと、ここからは、当面は依存度を上げていくということになるわけですよね。安全が確認された原発については再稼働させていく。

 一方で原発依存度を可能な限り低減させると言いながら、安全なものは動かしていく。当然、では、どこまで稼働させて、どれぐらいの依存度まで当面していくのか、きちんとそこのところが示されていかないと、実際、将来的にどういう形で原発依存度が下がっていくのか、その道筋が示されていないと、エネルギー基本計画としては不十分だと思いますが、この辺はどのようになるんですか。

茂木国務大臣 この問題は、大切なことだと思うんです。私も、具体的な数字も挙げて、できるだけ客観的にお話をしております。そして、批判しているわけではありませんから、我々が例えばコストについて何も考えていない、そんなことはないわけであります、ぜひそういうことは御理解いただきたいと思っております。

 その上で、原発事故以降、我が国は、新たなエネルギー制約、こういったものに直面をしているわけでありまして、先ほど申し上げましたように、化石燃料に対する依存度、これは八八%ですから、石油ショック当時、七六%よりも上がっているわけであります。そして、原発停止に伴いまして、それは議論はあるかもしれませんけれども、エネルギーコストが上がっている。これは誰も、国民の皆さん感じていることだと思いますよ。もし違うということだったら、民主党と国民の意識が私はずれていると思います。さらに、電気料金も上がっている。CO2の排出量、これも一・一億トン、九%ふえております。

 そういった中で、依存度、まずゼロからスタートするんじゃないんだと思います。今、確かに原発は動いておりませんけれども、老朽化した火力等々をたき増しする形で、かなりぎりぎりのオペレーションというのを行っているわけであります。そして、三・一一以前は、原発依存度、これがほぼ三割でありました。恐らく、基準とするのは、それよりも下げる。

 ゼロから依存度を下げるといったって、マイナスになんかできないんです。どう考えたって、今は動いていないけれども、この状態は決してエネルギーの安定供給上いい状態ではないということでありまして、常識的に、三・一一前に考えられてきた依存度よりはきちんと下げていく、そのためには、省エネの努力であったり、再生可能エネルギーを広げる。もし答弁していいということだったら、どんなことをやるかというのは、幾らでも答弁をさせていただきます。

古川(元)委員 質問にぜひ答えていただきたいんですが、やはりちゃんと道筋を示さないと、これは、下げると言いながら、一方で安全が確認されたものは再稼働させていく。では、全部再稼働させるんですか。国民であれば、当然そう思うんだと思うんですね。やはり、そこのところがしっかりと、ちゃんと示されなければいけない。これ以上、茂木大臣に聞いても、全然質問と違うことをお答えになりますから、もうこれ以上聞きませんけれども。

 プルトニウムを、今あるもの、そしてこれからまた再処理されて出てくるものをどう処理するのか。このことについての道筋も示されていないんです。こういうことでは、きょうの茂木大臣の答弁を聞いていても、とてもこの新しいエネルギー基本計画に対して国民の信頼が得られるとは思えないと思います。

 最後に、これはちょっと総理に、エネルギーの問題でお伺いします。

 自民党が野党時代に、総合エネルギー政策特命委員会というのをつくって、その中では、我が党は脱化石燃料の中核として原子力政策を推進してきたけれども、安全神話に依拠し過ぎてしまった結果、このような惨禍を招いたことにつき深く反省しなければならないと。「さらに、原発から発生する使用済燃料に関しては、放射性廃棄物の処理方法や核燃料サイクル技術の確立が鍵になるが、これまで巨額な投資をしてきたにも関わらずその解決の目処がたっていない。このようなわが党の姿勢について反省するとともに、こうした議論が未熟なまま原子力政策がなぜ推進されてきたのか、特に電力業界や原子力を推進してきた官庁との過度な相互依存関係がなかったかなど、さらなる検証を行う必要がある。」

 そういう中間取りまとめをして、ワーキングチームもつくって、平成二十四年の五月までは活動もしているんですけれども、その後、私がちょっと調べたところでは、全然その活動がなくなった。

 こうした、過去の自民党政権でやってきた原子力政策に対する検証や核燃サイクルに対する検証、こうしたものも今回の基本計画ではほとんど見られないんですけれども、これは総理、一体どういうことなんですか。これは自民党総裁としてお答えをいただきたいと思います。どうですか、これは。

茂木国務大臣 事実関係だけお答えをさせていただきます。

 御指摘の、自民党の総合資源エネルギー政策特命……(発言する者あり)

二階委員長 茂木大臣、手短にお願いします。

茂木国務大臣 はい。

 三十六回の議論を重ねまして、最終的な結論だけ申し上げます。

 原発について、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提のもと、原子力発電所の安定性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し、原子力発電所の再稼働を進める、こういった取りまとめになっていると理解いたしております。

古川(元)委員 これは総理に私は聞いているんです。自民党総裁として、野党時代に、最終取りまとめの部分には、この部分が消えています。しかし、中間取りまとめでは先ほど私が指摘したところがきちんと書いてあって、そして、それに基づいてワーキングチームも活動していたんです。それが、いつの間にか活動がなくなって、そうした過去の検証というのを行われていない。

 これは、安倍総理、自民党総裁として、過去の原子力政策、これは、国会事故調、ここにいらっしゃる塩崎先生なんかも一生懸命やられて、与野党でつくった国会事故調の報告書の中でも、今回の福島の原発事故というのは天災ではなくて人災だ、やはり、過去の原子力政策、そこに携わる、かかわる者、そこに問題があったんじゃないか、そういう指摘もされているわけでありますね。

 当然、過去の原子力政策を推進してきた自民党政権、その自民党総裁として、やはり新たなエネルギー基本計画をまとめるに当たっては、自分たちがやってきた政策、それをきちんと反省して検証して、どこに問題があったのか、どうしてこういうことになったのか。

 私は、この野党時代の中間取りまとめの案というのは、自民党さんも謙虚になって、こうして考えているんだなというふうに思いました。それがいつの間にか消えてしまっている。そして、今回のエネルギー基本計画の中にも、そういう過去の政策やあるいは政策決定過程を検証するとか、そうしたことも何も書かれていない。これは私は大きな問題があると思いますが、どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 それは、古川委員が特定のストーリーをつくって決めてかかっておられるんだろう、このように思いますよ。ですから、今、正確なファクトについて申し上げたいと思います。

 山本一太委員長のもと、三十六回、自民党総合エネルギー政策特命委員会は開催をされました。二〇一一年七月から二〇一二年五月まででありますが、そこで最終取りまとめをしたわけであります。

 ポイントは今後のエネルギー政策の基本方針でありますが、まずは、安全第一主義の徹底であります。もちろんこれは、今委員が指摘をされましたように、かつて我が党も、ずっと政権を担っていた中において安全神話に寄りかかっていた、このことを深刻に反省した上において、安全第一主義の徹底。そして、全てのエネルギーの可能性の徹底的掘り起こし。そして三番目が、現在及び後世の国民生活に責任の持てるエネルギー戦略の確立であります。これが三つの基本的な考え方と言ってもいいと思います。

 そこで、例えば再稼働の考え方でございますが、政治介入のない環境下で専門家の英知を結集した検証を実施してもらいたい、安全と判断されたものについて再稼働を行うということでありまして、まさにこれは、原子力規制委員会が世界で最も厳しい規制基準を決めて、そこが安全であるという判断をする、その間には政治的な介入は一切入れないということでございますから、まさにこの特命委員会の取りまとめのとおりなんだろう。

 その上において、中長期的エネルギー政策については、将来の国民生活に責任の持てるエネルギー戦略の確立に向けて、判断の先送りは避けつつ、遅くとも十年以内には、将来にわたって持続可能な電源構成のベストミックスを確立する、このように指摘をしているところでございます。

古川(元)委員 これは、総理、中間報告から変わっちゃっているんですよね。しかも、中間報告を受けて、自民党は党内に、原子力政策のターニングポイント及び過去の政策決定過程に関する検証PTと、核燃料サイクル、放射性廃棄物処理の歴史に関する検証PTというのをやって、活動していたんですよ。それが、いつの間にかその活動が尻切れトンボになって、最後の報告では、そうした記述も全くない。

 しかし、新しいエネルギー基本計画を立てるのであれば、まずやはり、これまでの政策を推進してきた、そのことを、野党時代に皆さん方が自分たちで言っていた、やろうとしたこと、検証を、政府に入って、当然政府の中も含めてやるというのが責任ある態度ではないですか。

 そのことなくして、エネルギー政策、新しいエネルギー基本計画に対する国民の理解など到底得られないと思いますが、いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 今いろいろなことをまとめておっしゃっているわけでございますが、まず、事故については、これは国会の事故調で徹底的にその調査がなされたわけであります。政府においてもなされたというふうに承知をしております。そうしたことを踏まえながら今後のいわば原子力政策を考えていく、これは当然のことでございます。

 と同時に、エネルギー政策につきましては、まさに党でさまざまな議論を展開してまいりました。そして、今回、我々は政権に復帰をして、政府と与党で一体となって、エネルギー計画、これは国民の将来の生活に責任の持てるものを示していかなければいけない。希望を書くのではなくて、責任を持ってこのような政策を進めてまいりますよということをお示ししていきたい。

 そして、今回、基本計画をまとめたところでございますが、さらに与党ともしっかりと議論をしながら最終的なものをまとめていきたい、こう考えているところでございます。

古川(元)委員 過去の政策に対する、原発事故前の政策に対する真摯な反省と検証なくして、新しい未来に向けたエネルギー基本計画などないんだということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 この際、篠原孝君から関連質疑の申し出があります。古川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 五十分いただきまして、TPP関連、農業関連の質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、農業について、あるいは農政について、いろいろ誤解があります。いろいろな誤解があるんですが、その誤解を消費者の皆さんにもちょっと解いていただかなくちゃいけないので、質問させていただきたいと思います。

 よく、日本の農業を論じるときに、規模が小さい、規模が小さいというのを言われるんですね。これは事実、そのとおりです。後でお示ししますけれども、平均耕地面積がやっと二・三ヘクタール、二年前は一・九六ヘクタール。畜産についてもあるんですけれども、畜産と耕種、土地を使うのと、果樹や野菜と、また大豆や小麦や何かと違うと思うんですよね。

 畜産について、済みません、通告していないんですけれども、質問じゃないです、感じでいいんですが、新藤大臣、お忙しいところ来ていただいているので。

 畜産は、世界の規模、例えばヨーロッパの諸国と比べて、豚何頭、牛何頭という、この規模は、どの程度だと思われますか。感じだけで結構です。普通に、一般常識としてです。

新藤国務大臣 私が承知している中で、畜産、特に酪農について、たしか日本はヨーロッパの五十分の一、それからアメリカの百分の一、そういった規模である、こういうことは承知をしております。

篠原委員 大体の感じは、皆さん、一般的には非常に小さいんじゃないかと思っておられると思うんです。

 ちょっとパネルを見ていただきたいんです。畜産業の平均飼養規模というのを見ていただきたいんです。牛肉と豚肉の関税をなぜ絶対守らなければいけないかというのを、ちょっとお示ししたいと思うんです。

 見ていただきたいんです。1、2というのは規模の大きい順です。それは当然、牛はアメリカが一戸当たり三百二十二頭です。日本は百十四頭。何と日本は二番目で、ドイツやイギリスの六倍の規模なんです。

 乳用牛、アメリカがやはりこれは一番です。しかし、日本は三番目なんです、イギリスと同じぐらい。

 皆さん、これはびっくりされると思います。豚は世界一の規模なんです。おわかりになりますか、千四百三十五頭、アメリカをはるかにしのぐ。EUの国、四百頭、四百五頭、三百四十一頭、これの三倍から四倍。

 ブロイラーは四万五千羽です、これも三位。

 採卵鶏、卵は二位なんです。

 つまり、どういうことを申し上げたいかというと、日本の農業はだらけているなんということをよく言われますけれども、石田委員が言われました、土地の制約がない農業、畜産業については、血のにじみ出るような努力をして、規模拡大をしてきているんです。

 次のパネルを見ていただきたいと思います。では、どうやって努力をしてきたかという過程です。

 肥育牛、そんなに肉を食べませんでしたから、ありませんでした。四頭ぐらいでした。今は、さっき言いました、百十四頭です。三十二・六倍です。乳用牛も十一・五倍。豚は百倍。

 圧巻は採卵鶏です。一九六〇年、二十四羽です。我が家もそうです。庭先養鶏で、三百六十万の農家が鶏を飼っていました。それが七〇年に、一気に半分に減ります。そしてその後、インテグレーションが進み、どうなったかというと、七百倍です。おわかりになりますか。だから、ブロイラーと採卵鶏は完全に、この業界ではインテグレーションが進んでいる。

 それから、豚、乳牛、酪農もみんな減っているんです。

 きのう、テレビ朝日の報道ステーションで新浪剛史さんが、後でちょっと触れますけれども、出ていました。農家は守ったけれども農業は守らなかったじゃないかと。これが一般的な印象です。違うんです。ずっと農家が減っているんです。わかりますか。牛は十分の一、酪農は十四分の一、豚の方は六十分の一に減っているんです。採卵鶏なんて五百六十分の一です。

 ただ、一番下を見ていただきたいんです。耕地面積は、先ほど高知県の例で言われましたけれども、二・二三倍にしかふえていないということです。

 次に、では、その結果、農産物の価格がどうなっているか。

 よく皆さん、これも一般的に言われます。卵は物価の優等生、そのとおりなんです。数字は、いろいろなことを非常にきちんと語ります。一九六〇年、一キログラム当たり百九十八円、二〇一三年、百九十四円、ほとんど同じ。

 杉中丸太も同じ。これは市況価格なんですけれども、一万一千三百円が一万一千五百円。米が、一俵当たり四千円が一万四千円になっている。三・五倍です。途中、二万一千円というのがありました。サラリーマンの給与、十七・五倍になっています、六〇年比、一万八千五百円が三十二万三千円。皆さんが山手線に乗ると、十円だったのが百三十円。ビールは、意外と高くなっていないんですね、百二十五円が三百十五円。それから、森永ミルクキャラメル、明治と森永のキャラメル、これは六倍です。僕は大好きですよ。だから、これを入れたんですが。

 いかに卵が努力してきたかということなんです。どれだけ努力してきているか。

 だから、よく、たるんでる、何をやっているんだ、関税をゼロにして、やれるじゃないか、関税をゼロにすれば、みんな競争原理が働いて、やると。ところが、違うんです。畜産なんというのは、もう極限に達しているんですよ。これはおわかりいただけるんでしょうか。

 それから次に、平均経営面積。これがまた悲しいんです。これはしようがないんですけれども。見てください、倍数、次のパネル。

 ずっと見ていただきますと、ヨーロッパ、EU諸国は大体五十五ヘクタールから、イギリスはちょっと大きいんですね、エンクロージャーとかいうのが、世界史で習われたと思いますけれども、あって、八十四ヘクタール。

 ところが、アメリカ、オーストラリア、カナダ、こういうところと、米や麦や大豆や菜種、一体どうやって競争しろというんでしょうか。だから、こういう競争力の差を関税で認められているんです。WTOは、ゼロにしろなんて一言も言っていないんです。だから、一つたりとも、一ミリも譲る必要はないという甘利さんの発言は正しいんです。そう言ってやってこられて、決裂させてこられた。立派なものです。

 下を見てください。この参考……(発言する者あり)決裂、漂流でないと言っておられますよね。決裂、漂流と言われているから、一生懸命打ち消しされておられる、そのお気持ちはよくわかります。この表の一番下を見てください、大事なの。

 日本の総面積三十七万平方キロ。日本がいっぱい輸入している飼料穀物、さっきの加工畜産です。これの原材料のトウモロコシ、コウリャン、この面積が三十五万平方キロメートルと、日本の総面積とほぼ匹敵するんですよ。おわかりになりますか。

 だから、飼料穀物、農産物では一番多いんです、金額、トン数も。これを全部、これは日本というか、アメリカでつくると百六十三万ヘクタール。わかりますか。四百七十万ぐらいの日本の総耕地面積の三分の一も必要とされるんです。こういうのを、一体、どこでどうやって差を縮めるのか。

 この点について、私は林農林水産大臣に頑張っていただきたいんです。これは、おわかりになると思いますけれども、努力しろといったって、できる部分とできない部分があるんです。畜産なんかはもう極限に達しているんです。だから、畜産業界の人が、牛肉、豚肉をちゃんと守ってもらわなくちゃ困ると言うんです。この姿勢は堅持していただきたいんですね。

 この点について、いかがでしょうか。

林国務大臣 数字は客観的でございますので、まさに今、篠原先生から御指摘いただいたような数字で頑張ってきたというのが、日本の畜産の姿であります。六〇年代と比べていただいて、どれだけ努力をしてここまで来たかということはもう御指摘のとおりでありますし、規模の拡大が進んだということは、それだけコストの削減も進めてきた、こういうことでございます。

 こういう中で、しかし、やはり最近では配合飼料価格が高騰するということもあって、生産基盤が弱体化するということの懸念が出てきておりますので、TPP交渉いかんにかかわらず、収益性の高い畜産を構築することが大変重要だ、こういうふうに思っております。

 先般、農林水産業・地域の活力創造プランをまとめましたけれども、畜産分野においても、輸出を含む需要の拡大、六次産業化、それから、自給の飼料の生産、輸入物とか為替に一喜一憂しなくて済むような、こういうところにしっかりと取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

篠原委員 これで一つの誤解が解けたと思います。規模の努力はしてきているんです。できない部分が、土地利用型農業と言われる分野です。

 次に、農業は保護してきている、過保護だと、過保護の代名詞にもされました。一体、実態がそうなのかどうか、次のパネルをごらんいただきたいんです。

 これも私が独自につくった、これは本当に独自につくったものなんですけれども、数字を見ていただきたいんです。一番上が、農業総生産額、GDP比。GDP比について何か変なことを言った人がいますけれども、どこの国も一%そこそこです。

 そして、下のところが大事ですね。農林水産予算の国家予算に対する比率。この何番という順番が多い方が、効率的な農業、予算が少ない国ということなんです。総予算に占める農林水産予算の一番大きな国が韓国です。日本は、この国の中では後ろから二番目です。

 次に、農林水産予算の生産性。これは余り聞かない言葉だと思いますけれども、農林水産予算に対して、その何倍の農林水産総生産を行っているかというのをやると、イギリスはたった一・二八倍、日本が一番効率がいいんです。つまり、見ていただくと、これはドルでやっているのであれなんですが、もとの二・三兆円の予算に対して五・七兆円の総生産額、日本が一番予算は少ないのに、頑張って生産額を上げているというんです。

 国民一人当たりの農林水産予算は、これは大体、そんなに差がないですね。ドルで済みませんけれども、百七十九ドルと、日本は百八十三ドル。これも、日本は効率のいい方から二番目。

 一農家当たり農林水産業関係予算、これは一番日本が少ないんです。おわかりになりますか。

 農家は過保護だ、過保護だと、総理は何か、プロパガンダとかマインドコントロールと言われていますけれども、農業については、強烈なマインドコントロールをされてきているんです。保護なんかされていないんです。

 下の、一農家当たりの直接支払い。韓国は、この仕組みは余り導入していないので一番びりですけれども、例えば、一番多いフランスなどは、日本の七倍も直接支払いが行われているんです。これはおわかりになりますでしょうか。

 この事実をほとんどの方が御存じないんですね。規模拡大の努力をしていない、農家ばかり保護していて、農業をちゃんとしてきていなかったと。みんな、違うんですよ。努力ができる部分とできない部分がある。

 次のパネルを見てください。これはその辺に転がっている資料ですけれども、農産物平均関税、いつも出てくるものです。関税が高い、高いと。それは、米とかいうのは高いんです。存在するものには理由があるんです。守らなければならないから高いんです。だけれども、全体でやると、アメリカに次いで低いんです。EUよりもずっと低いんです。

 政治とかいろいろなもの、経済とかは結果です。日本の農林水産総生産額が五・七兆円。輸入額は一体どのぐらいになるんでしょうか。全部足すと八兆円、農業だけで五・五兆円、これが、開放していない国の数字でしょうか。結果は、五・五兆円。世界最大の農産物輸入国です。アメリカ、カナダ、オーストラリアからも、一・五兆円、五千億円、五千億円、それぞれ、相当輸入しています。

 だから、今まで皆さんが抱いているイメージをちょっと変えていただけないですか。農業を大事にしてきたら、農家戸数はこんなに減りませんよ。農業従事者の平均年齢が六十五歳を超えて年金受給開始年齢、そんなふうにならないんですよ。これはやはりよくないんですね。

 この点、林農林水産大臣、また決意を述べていただくだけでいいです。農林予算は倍加していかなくちゃいけないんですね。TPPとかそんなのにかかわらず、ないがしろにしてきたんですよ、ずっと。

 もう一つ、一般会計予算に占める農林水産予算の推移というのを見ていただきたいんです。

 では、どうやってきたかというと、吉田内閣と岸内閣のをちょっと入れました。これは、参考にしてくださいと、お二人にちょっと見ていただきたいんです。

 七〇年をもとにしました。農林水産予算がどのぐらいふえてきたか、パーセントでやっています。だんだん少なくなってくる。だけれども、防衛予算も文部科学省の予算も、占める割合は減ってきているんです。しようがないんです。一番下の厚労省の予算がふえまくっていますから、しようがないことなんです。

 ただ、一九七〇年比で比べると、農林水産予算は二・五倍、防衛予算は八・二倍、文科省は五・九倍です。これで、農林水産省は、農林水産業をきちんと予算的にバックアップをしてきたと言えるんでしょうか。僕は絶対に言えないと思います。

 この数字、皆さんもよく見ておいていただきたい。誤ったイメージが皆さんの頭の中に入り込んでいるんです。これはきちんとしていただかなくちゃならない。だから、せめて関税ぐらいではちゃんと守っていただきたいというのが、日本の農家の切なる願いなんです。

 林大臣、また決意を述べてください。

林国務大臣 おっしゃっていただきましたように、昭和五十七年度が三兆七千十億円という予算があったんですが、増減を繰り返しながらも、減少傾向で推移してきたところであります。

 お示しいただいたこれも、七〇年と比べて二・五倍ということですが、名目値ですから。多分、予算の全体の規模とかを言えば、さらにほかのところと比べていただいてもそういうことでございまして、厳しい財政事情の中で、いろいろなこと、担い手の育成確保、農地集積をやってきたわけでございますが、やはり予算が縮小傾向にあった。

 私は、大臣になって以来、成長産業にするんだということもあって、二十五年度予算に十三年ぶりに対前年度比で増額を確保いたしまして、二十六年度予算案においても二年連続で増額を確保いたしましたので、しっかりとした政策を打ち出して予算の増額に努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

篠原委員 頑張っていただきたいんですけれども、どうやっているかというと、次、パネルじゃないんですが、皆さんの資料、十ページのところを見ていただきたいんです。

 これは続きになりますけれども、産業競争力会議で、農業を日本の産業として位置づけるといいながら、農業分科会のメンバーが、新浪剛史さん、秋山咲恵さんと、佐藤さんは事情があっておやめになりました。安保法制懇はプロだけで議論をしている。ここに農業関係のプロがいないんです。この人たちがそれこそ空疎な議論をして、あれやれ、これやれ、規模拡大しろ、規模拡大しろと言っておられる。

 僕は、耕種農業については、それはある程度いいです。ですけれども、それは規模拡大だけでできていくんじゃないんですね。こういうのは、僕は非常によくないなと思うんです。こういう状況で、こんな議論でもって農政を決められては、私はたまらないと思います。

 その次の十一ページ、資料をちょっと見ていただきたいんですね。

 我々の政権のときにもやりましたよ。民主党は何もやらなかったと言われるので、先に言いわけしておきますと、大したことはできなかったかもしれませんが、やろうとしたんです。十一ページを見てください。

 我々は、食と農林漁業の再生実現会議というのをつくって、農業関係者三人で、あと、三村さんという新日鉄の会長とか、そういう人たちに意見をいただいて、やろうとしていたんですよ。

 だけれども、ちょっと変。何というか、空疎な議論でもって農業、農政を変えようとしている。

 安倍総理、私は農業、田園風景を守るということを言っておられる、議論をしていくというのを言っておられるんですけれども、私は、農業を守ってもらわなくちゃいけないと思います。日本社会が内部崩壊しますよ、農村をがたがたにしていったら。

 それから、食料安全保障というのも考えていただかなくちゃいけない、安全を考えていただくのを。例えば、戦争中の戦死者、二百万人ぐらいいると。僕は完璧な数字はわかりませんけれども、よく出てくるのは、相当、六、七割が、戦闘じゃなくて、餓死や栄養失調による病気とか、そういうもの。だから、後方支援体制もきちんとしておかなくちゃいけない。だけれども、農業、農村、食料の体制なんかをないがしろにしているんじゃないかと思うんです。

 この点、総理、先頭になってきちんとやっていただかなくちゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、篠原委員が、日本の農業の予算の中に占める比率あるいは国際比較について、大変わかりやすく御説明をいただいた、このように思うわけであります。

 日本の農業についても、しっかりと規模拡大、生産性の向上に努力をしてきたのは事実であろう、このように思いますし、また、関税においても、日本は、農業の関税、平均においても、世界の中において決して関税が高いということでもなかったのも事実でございます。その中で切磋琢磨してきたわけでございます。同時に、基本的に日本の国土は山があり、そして浜が迫るという狭隘な国土の中において、相当の努力をしてきたわけでございます。

 他方、農業には多面的な機能があるわけでございます。美しい景観を守り、そして環境を守り、長年培ってきた文化、これを守っていくという機能もあるわけでございますし、そして、食料というのは、いざというときにはお金で買えないこともあるということではないかと思うわけであります。

 日本は、GDPに占める比率は二・五%ぐらいでありますが、しかし、これは、ほかの先進国においても大体それぐらいであったとしても、今委員が示されたように、しっかりとこれを守っているのは事実。それは、今、前半で私が申し上げてきたような事情の中において守ってきたのも事実であろう、このように思うわけでございます。

 しかし、我々は、その中におきましても、新しい時代にふさわしい農業のあり方、あるいは産業という側面で見たときに、もっと日本の知恵や技術を生かせる、新たにまた若い人たちが自分たちの情熱、能力で新しい地平線を開いていくということも可能な分野であるということも示していきたいという中において、さまざまな知見を入れていただきたいという観点もあったわけでございます。

 同時に、やはり農業というのは、今申し上げましたようなさまざまな側面、産業だけでは切り取れない側面も持っているということは間違いない。だからこそ、農業、第一次産業は国の基ではないか、こんなふうに考えているところでございます。

篠原委員 林大臣、答弁は要りませんけれども、今お示しした、産業競争力会議に農林業関係者が一人も入っていないというのは、内閣の一員ですから、いろいろ意見は言いにくいと思いますが、これはやはりいびつですから、県の先輩でもあります総理ですから、ちゃんと言って直してください。これではちょっと偏った議論になり過ぎます。

 ついでに、安倍内閣の政策決定システムにちょっと問題が、ここにほころびが見られてきているので、そこの資料、パネルを見ていただきたいんです。

 これを言うとまた、民主党でもそうだったでしょうと総理は言われるので、先に言っておきます。

 これを見てください。内閣参与なんて、小泉内閣のときはちょっとだけなんですよ。安倍第一次内閣も、内閣参与は西村六善さん、地球問題担当、特殊なことについてだけなんですよ。内閣府参与はいろいろなところの人を入れたんでしょう。ところが、鳩山内閣になったら、内閣参与一人、内閣府参与十七人で、両方で十八人。菅内閣十八人、野田内閣十七人。余りこれは僕はよくないと思うんですよ。民主党のよくないことはまねないでいただきたい。

 総理がよくおっしゃる、選挙で選ばれた我々が決めるんだと。そのとおりだと思います。内閣府参与というのを、余りこの人たちを多くして、この人たちの、本当にしっかりした人たちもおるんでしょうけれども、ちょろちょろと失言をされる方、先に言っておきますよ、我が政権でも、こんなに失言して物議を醸した人たちがいます。

 ところが、一年間はよかったけれども、最近やたらとこういうのが多くて、この人たち、安倍政権を支えようと思ってやっておられるんだけれども、典型的なひいきの引き倒しですね。よくないと思いますよ。まあ、衛藤さんは選挙の洗礼は受けておられますけれども、そうじゃない人たちは、余り変なふうに私は使われない方がいいと思うんです。

 これは本当は官房長官にお伺いしたかったんです。総理に答えていただくのはちょっとよくないので、指摘だけにしておきます。こういうやり方というのは余りよくないので、この人たちは別に選挙で選ばれているわけじゃないけれども、びしばし、きちんと処分してやっていっていただきたいと思います。

 次に、TPP絡みです。

 もう石田委員から指摘がありました。秘密交渉については、これはお答えは要らないです。マレーシアが、きちんと、もう国民がわあわあ言っている、特にISD条項がよくないということで、公表しろ、それを議論すると。EUとアメリカはやっていますけれども、ISD条項については、これは問題なんです。

 この国会の場で余り議論されていないので、ちょっと示しますけれども、EUは、ISDに関連する条項は、三カ月、国民の前、EU各国に示して、そして、市民の意見を受け入れてどうするか決めると言っているんです。私は、日本も、こんなものは特別秘密にはしないという例として、積極的に国民の皆さんにというか我々にも状況を示して、そして、どうするか、どういうふうに対応するかというのを示していただきたいと思います。

 そのISD条項、皆さん御存じだと思います。インベスター・ステート・ディスピュート・セトルメント、国家投資間紛争解決といいます。

 憲法九十六条、この問題がよく出てくるんですね、憲法の改正の発議の。七十六条も問題なんです。ほかの国で大問題になっているんです。韓国では、これは国家主権を侵すということで、再交渉すべきだといって、李明博大統領から朴槿恵大統領に引き継ぎがなされているんです。マレーシアも問題にしている。EUも問題にしている。

 それから、下、諸外国の対応をちょっと見ていただきたいんです。僕は知りません。知りませんけれども、オーストラリア、米豪FTAでは、この条項は入っていないんです。こんな条項は要らない、民間企業が国家を訴える、それは発展途上国の話で、オーストラリアのような先進国には要らないといって、絶対に入れるのを反対している。自民党の公約のJ―ファイルにもあるんです。

 しかし、私は、これこそ憲法七十六条違反、見てください、全ての司法権は日本国の裁判所に属するというのに、民間企業が我が日本国を相手取って、例えば、この環境規制をするといったら、根拠がないから、けしからぬ、それで損したから何億円払え、何百億円払えと言ってくるわけです。そして、アメリカの訴訟社会の弁護士たちだか知りませんけれども、アメリカは負けなし、ほかの国を負かしては、賠償金を取っているわけです。

 この絶大な、ひどい効果というのは何かというと、日本国の真面目な官僚が萎縮するんです。アメリカに文句を言われたら、こんな政策はできないからやめておこうと。国家の主権を危うくするんです。これは総理、真剣に考えなくちゃいけないと思います。僕は、関税も大事ですけれども、一番よくないのはISDSです。

 この点について、復帰されました小松一郎法制局長官に、憲法違反かどうかということについてお答えいただきたいと思います。退院おめでとうございます。

小松政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 まず、現在交渉中であるTPPの紛争解決条項を含みます具体的な交渉の内容につきましては、内閣法制局としては承知しておりません。これをまず申し上げる必要があると思います。

 その上で、この種の紛争解決条項というのは、我が国が既にこれまでに締結しております投資協定とか経済連携協定、これは国会で御承認をいただいて、もう既に締結しておるわけでございますけれども、この中にも含まれているわけでございまして、今まで我が国が締結をいたしましたこの種の条約に含まれている紛争解決条項につきましては、他方の締約国の投資家と投資を受け入れている国との間の投資紛争の解決について、紛争の解決を仲裁等に付託することができるという内容になっております。

 これは何を意味するかといいますと、委員が今御指摘になりました憲法七十六条の、司法権は裁判所に属する、このこととの関係におきまして、我が国の裁判所に訴えを提起するということを排除しているわけではないということでございます。もちろん、訴訟を提起いたしましたときに、我が国の訴訟法に基づきまして裁判所の管轄というものは制限があるわけでございますので、そこで管轄があるかどうかというのは、これは日本の国内法上の問題でございます。

 私が申し上げたいことは、今まで日本が締結している投資協定、経済連携協定に含まれている紛争解決条項においては、そういうものを排除しているものはないということでございます。

 そこで、TPPでございますけれども、TPPにつきましては、冒頭申し上げましたように、今具体的にどういう交渉が行われているかということを私ども承知しているわけではございませんが、平成二十五年の十一月十五日、参議院の山本太郎議員から提出された質問主意書がございまして、これに対して政府は次のとおりお答えしているところでございます。「交渉に係る個別具体的な内容についてお答えすることはできないが、いずれにせよ、国の主権を損なうようなISDS条項には合意しない。」

 以上でございます。

篠原委員 私は承知しています。フィリピン以外とのEPAにはみんな入っているんですね。ですけれども、日本は、ほかの国の制度が、ルールがおかしいからといって、日本の企業が訴えることはないですよ。アメリカが相手だから問題にしているんです。ほかの国もみんなそうなんです。そういう分野では抑えがきかないところがあるんです。

 法制局長官、お疲れでしょうから、お帰りいただいて結構です。丁寧な御答弁をありがとうございます。

 それで、これは総理からお答えいただきたいと思います。

 これは長く議論をしている時間はないんですけれども、本当に国家主権に属することなんですよ。我々が決めるものについて、どうしてこれが問題かというと、並行協議で事前に入場料を払わされているんです。TPPでいろいろごたごたやっている、これはいいんです、対等で。そして、並行協議のも、何かTPPの中に入ると、自動車の関税とか。

 だけれども、一番問題なのは、後から出てくるISDあるいはISDSです。アメリカの企業が、日本の政策にクレームをつけて、裁判を起こして、賠償金を取っていく。これはただごとではないと私は思うんですね。こんなのは絶対に認めてはならないと私は思うんです。

 これについては、J―ファイルにあるんですけれども、絶対主権を侵すようなことはないと法制局長官も言われました。僕は、これは安倍総理の今までの信条からしたら、何よりもISDS、ISD条項こそ、日本は先頭に立って拒否していく条項だと思うんです。

 これについては、せっかく法制局長官がおられるわけですから、法制局長官にもこういう内容だけれどもいいかというのを聞いて、絶対に阻止していただきたいんですが、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 法制局長官からお話がありましたとおり、我が国は、通商交渉上必ずこの項目を入れているわけであります。それは日本企業を守るということです。

 委員御指摘の、対途上国についてというお話がありました。もちろん、いろいろな法整備で未熟な国であればこそ、こういうものが有効に効いてくるのは事実であります。しかし、特定の国を対象としてISDS条項を入れているという方針ではございません。

 あわせて、J―ファイル等では、主権を損なうような形のものはだめだと。もちろん、主権を損なうような形にならないということを当然調整しているわけであります。このISDS条項の導入に対して懐疑的な国も過去にあったことは事実でありますが、それを含めて、みんなの合意が成り立たないと条項というのは成立しないわけであります。全体の調整が整いつつあるということだけ申し上げておきます。

安倍内閣総理大臣 党もまた私も、このISDS条項、果たして、これは日本が国として一方的に、ある国の企業に訴えられることになりやしないかということについて大変心配をしていたわけでございますが、今私どもがこの交渉を進める中においては、基本的に、先ほど法制局長官が答弁したように、主権が侵されるようなものは、そういう懸念があるものは、決して我々は受けることはしないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

篠原委員 それでは、外交問題についてです、TPPも外交ですけれどもね。

 最近、余り書いてはおりませんけれども、私がブログに書いたりしているんです。外国の外交雑誌には書いてあるんですけれどもね。

 極東のイスラエル化する日本というのは、初めて聞かれる方はおられると思います。この資料はみんな私が勝手につくったんですけれども、なかなかいいできだと思うんですけれども、ちょっと見てください。

 イスラエルと日本、おわかりになりますね。非常に親米、アメリカと親しい国です、日米同盟等。

 ネタニヤフ首相、安倍首相、これは偶然ですけれども、お二人とも再登板。まあ、見てください。

 ところが、近隣諸国との関係とかになってくると、おわかりいただけると思います。ミドルイースト、ファーイーストで、親米政権なんですけれども、どうも勝手なことをして、近隣諸国と対立関係になっている。

 アメリカとの関係、アメリカの隣国対応というのをちょっと見て、テレビも映していただきたいんですけれども、どうも余りうまくいっていない。済みませんね、しっくりいってないとか、失望され、しっくりいってないとか、これは私の感想ですけれどもね。

 アメリカの中東政策の悩みの種にイスラエルがなっており、日本が極東の、アメリカのアジア戦略の攪乱要因になっているんですよね。

 きのう、アメリカ議会調査局も、日本の総理を初めとする閣僚の皆さん等の歴史観がアメリカと衝突するかもしれないと、これは余計なことかもしれませんが、そういう心配をしている。

 これについて、外務大臣、どのように認識されておられますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、政府としましては、御指摘のように、我が国が次々と近隣諸国と敵対関係になっているなどということは考えておりません。

 近隣諸国との協力関係の重視、これは我が国の外交政策の柱の一つであると考えております。地球儀を俯瞰する外交を実行するということで、安倍総理も、そして外務大臣の私も、ASEAN、アジア太平洋地域にあるさまざまな国々を訪問させていただいておりますし、例えば、昨年は日・ASEAN友好協力四十周年ということで、東京で日・ASEAN特別首脳会議を開催し、改めて関係を確認することができました。

 ロシアとの間においても、五回の首脳会談、そして、歴史上初めて2プラス2を開催するということもありました。

 また、日中、日韓関係、この部分につきましても、こうした国との関係は、強固な経済関係があり、民間交流があり、そして議員交流等さまざまなレベルの交流が行われています。政府間においては確かに難しい局面も存在いたしますが、実務的な協力関係を積み重ねながら、ぜひ高い政治のレベルでの対話につなげていきたいと、今こうした努力を続けているところであります。

 また、グローバルな課題においても、我が国は、中東和平、あるいはシリア、あるいはイラン、こうした問題について貢献をしているということにおいて、国際社会から、我々のこの努力、理解を得られていると考えております。

 こういったことを考えますときに、御指摘は当たらないということを改めて申し上げたいと存じます。

篠原委員 本当に当たってちゃ困るんですよ。こういうふうに言われているので気をつけてくださいということです。

 総理、次によく聞いていただきたいんですが、これは総理に、私の提案です。

 総理は、日米関係が非常に大事だと。これはわかる。私も大事だと思います。民主党政権時代にぐたぐたになったと。

 それを、昨年の二月二十三日の日米共同声明の後、言われたわけです、日米同盟の信頼が民主党で壊れたのに完全に復活したと。岡田委員が三月七日の予算委員会でそのことを問いただしました、民主党政権の失敗をあげつらうのもいかがなものかと。

 今、どうなっているんでしょうか、日米関係。私は、相当ひびが入っているんじゃないかと思います。自虐史観はいけませんけれども、私は、礼賛史観もいけないと。日本がやってきたことをみんないいんだというのも、これはよくないんです、こんな高飛車に出るのは。

 そして、そのとき総理は言っておられるんですよ、失われた信頼関係を回復するには非常に時間がかかると。そうだと思います。壊すのは簡単だけれども、回復するのは大変だ。

 それで、靖国神社問題が生じたわけです。総理は意を決して行かれたんです。私は、総理には総理の考え方があったんだろうと思います。

 それで、私の提案です。

 核軍縮交渉というのがなかなか進まなかったんですが、レーガン大統領は名うてのタカ派です。そして、相当軍備を拡張しました。しかし、就任してからどうしたかというと、二期やられている間に、ゴルバチョフというちょうどいい相手にも恵まれたんですけれども、スターウオーズとかあったですね。ですけれども、名うてのタカ派のレーガン大統領が、議会や軍産複合体からの反対があった、それを押し切って核軍縮交渉をして、冷戦に終止符を打たれたんです。それが、平和とかなんとか、そういうことばかり言っている人がやったのであれば、このやろうめといって国民も許さなかったし、関係者も許さなかった。しかし、超タカ派のレーガン大統領がやったからこそ許したんです。

 私は、この靖国問題、がたがたほかの国から言われる筋合いはないと思います。その点は全く共通です。ですけれども、これを繰り返していたら、いつまでたっても解決できないんです。安倍総理が非常に危険を冒して参拝された。その安倍総理がこの靖国問題を、私は、解決する方法はあるというわけじゃないんですよ。合祀の問題をとやかく言われている、A級戦犯とか。そういうのを安倍総理が真剣になって、何か混乱のもと、近隣諸国を逆なでするような混乱のもとを自分が解決するといってやられたら、日本の外交史上画期的なことになって、後は安心して隣近所の国とつき合っていけるようになると思うんです。

 安倍総理はこういうことをお考えになって靖国神社を参拝されたんじゃないかと私は思っているんですけれどもね。もし思っておられなかったら、これからぜひやっていただきたいと僕は思います。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本において、国のリーダーとして、国のために戦った方々のみたまに対して手を合わせ御冥福をお祈りする、この行為自体が外交問題や、そして国際的な問題になっているのは大変不幸なことである、このように思います。

 そして、そうしないために努力を重ねていかなければならないわけでございますし、まだまだ私の努力も足りないということは認識をしているところでございまして、そういう中において、国際的に認められる、現実問題として非難があるということは承知をしております、こうした非難を解いていくための努力については、さまざまな努力をしていきたい、こうすべきだというさまざまな御意見についても真摯に耳を傾けていきたい、このように思っております。

篠原委員 ぜひお願いします。

 私がこういう発言をしたり、何かちょっと触れると、私のところにも文句の電話がかかってきたりするんです。その人たちは、安倍さんなら信用して、そんなことはしないと思います、安倍総理なら。

 それで、もう一問、これはお願いです、お答えは要りませんけれどもね。

 アメリカもだめなことにはだめ、日本はやることはやる、それはいいんです。もしそうだったら、TPP、これだけ暗礁に乗り上げているんです、これは、アメリカいいかげんにしてくれといって、僕は、TPPについてこそ毅然たる態度をとっていってもいいんじゃないかと思います。アメリカの余りにもひどいリーダーシップに、これは失望と使ったって、僕はいいと思います。あっちの失望はいけませんけれどもね。これをぜひやっていただきたいと思います。これは国民が拍手喝采すると思います。

 次に、時間がなくなりましたけれども、ちょっと見てください。

 これは、この前のときにしようと思ってやっていたんですが、ちょっと皆さんにしかお配りしていません。公共放送の執行機関、監督機関の比較です。これをよく見てください。時間がないので説明しません、また別の機会があったらしたいと思いますけれども。

 一つ、二つ、触れますかね、せっかくですから。

 財政基盤のところに書いてあります。ドイツの公共放送があるんです。ナチスが支配して、日本と同じように大本営発表ばかりやっていたので、反省して、あちらの放送は、国ではなくてみんな州の所管になっているんです。だから、我が日本国のNHKも、うその大本営発表の反省に立って、中立をというふうに、仕組みは一応できているんです。ところが、運用がなかなかそうはいかないというのがあるんです。

 下の方の監督機関の構成員の経歴とかを見ていただきたいんですが、イギリスなんかはきちんとしていまして、五地域の代表、そしてジャーナリスト、銀行家とか、こういうふうにきちんとできているんです。

 総務大臣にお伺いしたいと思います。

 次のパネルをちょっと見てください。ほかの国のを調べました、どういうふうになっているか。NHKの会長というのを見てください。二十一代のうちどういう人がなっているかというと、最近、財界ばかりになっているんですね。

 ほかの国のトップはどうなのかといったら、イギリスのBBCトラスト委員長という方がちょっと違い、保守党の党の職員で、今オックスフォード大学の総長をやっている方がなっていますが、あとはみんなマスコミの有識者なんです。

 我が国も、ずっと見ていただくとわかると思いますけれども、マスメディア出身の人が半分以上ですね、財界とか。

 私は、こういうのを考えると、やはり経営委員の資格とか会長の選び方とかいうのも、みんなちょっと洗いざらい見直して、この際、中立的な人をきちんと選ぶような仕組みに変えるべきだと思いますけれども、総務大臣、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 まず、放送法の第三十一条三項、経営委員の欠格事由につきましては、放送事業者のほか、新聞社、通信社その他ニュースもしくは情報の頒布を業とする事業者、またはこれらの事業者が法人であるときは、その役員、職員、法人の議決権の十分の一以上を有する者を規定しているわけであります。新聞社の役職員や任命の日以前一年間に役職員であった者等が会長の欠格事由……(篠原委員「それを聞いているんじゃなくて、今後どうやって」と呼ぶ)いや、ですから、そういう法律に基づいて、これは我々はそう規定をしているわけであります。

 会長の欠格事由においても、新聞社、通信社その他ニュースもしくは情報の頒布を業とする事業者、これについては欠格をしているということであります。

 それは、NHKがこれらの者と類似の業務を営んでいる。それは、競合関係に立つほか、NHKの言論報道機関としての中立性と自主性を確保する、こういう意味から、現時点においては考えておりませんし、法律をしっかりと遵守して適用させていきたい、このように考えております。

篠原委員 法律は立派にできているんですが、運用がなかなかうまくいかないんです。それを言っているんですよ。

 籾井会長、私はずっと見ていました、籾井会長の答弁なんかをいろいろ。私の長野の地元でも、私にいろいろなことを言う人がいますよ。受信料をもう不払いにすると。恐ろしいことですよ。しかし、真面目なんですね。いや、父ちゃんがそういうことを言うんだけれども、今はソチ五輪をいっぱい見ているから、二月は払って、三月からにしようと。真面目だと思いますよ。そういうことが会話で行われているんですよ。

 やはり、指揮官というのは、士気を低下させちゃいけないです。栗林中将、アメリカから絶賛されているんです。一カ月半、日本軍の士気を低下させずに頑張ったんです。指揮官というのは、これが一番大事なんです。そういう点では、私は、籾井会長はもうずたずただと思います。

 あなたはいろいろ言いわけされています。ふなれだったので記者会見で失敗した、個人的見解を述べたと。誰が籾井会長の個人的見解なんか聞きますか、記者会見で。ふなれじゃないんです。僕は百田さんと違って余り悪口は言いたくないんですけれども、NHK会長に不向きなんです。だから、不適切な発言を繰り返すんです。

 そして、答弁。ここへ来られるときの非常に威風堂々たる姿勢は、そこは立派でふさわしいと思います。だけれども、口を開くと不明瞭で、そして不誠実な答弁です。私は、会長として適性を欠くと思います、はっきり言って。

 それにもかかわらず、私はびっくら仰天しました。なられたときに、理事の皆さん全員に辞表を書けといって辞表を出させた。本末転倒です。会長こそ辞表を懐に、NHKの中立性、不偏不党性、そして一連の番組について責任を持つと、いつも辞表を懐にやらなければいけないんです。NHKのこのことも相当海外では取り上げられているんです。日本全体がそんな方向に行っていると。

 私は、安倍総理にも申し上げたいと思います。

 やはり、指揮官というのは、退却するときはきちんと退却しなくちゃいけない。いつまでもしつこくごたごたしているのは、僕はいけないと思います。

 経営委員長、辞表を書くのは私は籾井会長だと思いますけれども、そのような手続を一刻も早くされることが国民のためにもなりますし、NHK職員のためにもなりますし、我が日本国のためにもなると思います。いかがでしょうか。

浜田参考人 経営委員長といたしましては、会長に対して厳しく自覚を促し、説明責任を果たすとともに、事態の収拾を速やかに行うよう強く要請をしております。

 会長から、反省の言葉と、業務執行に当たっては放送法を遵守するとの明言を得、役職員一丸となって事態の収拾に当たる決意も示されました。

 経営委員会としては、今後の動きを監督し、助言し、必要に応じ、苦言も呈して、経営委員会の職務を一層果たしてまいりたいと思っております。

篠原委員 そういうきれいごとを聞いているんじゃないんです。もう事態は深刻な事態になっているんですよ。だけれども、これは、もとをただせば、経営委員の選定からしておかしいんですよ。僕は抑えて、その資料は出さなかったんですけれども、口頭で申し上げますよ。

 百田さん、長谷川さんは、安倍晋三総理大臣を求める民間有志の会のお二人です。それから、参議院選挙の後に選ばれた四人ですけれども、本田勝彦さん、中島尚正さんですが、これは首相を囲む経済人の集まりの四季の会のメンバーなんです。そういう人を選んでいるというのは、やはりこれはちょっとおかしいと思うんです。私は、こういうことから直していかなければいけないと思うから、新藤大臣にそういうことを申し上げているんです。

 法律はよくできているんです。ですけれども、運用が変なふうになっているんです。これを改めて、虚心坦懐、反省の弁、日本もきちんと再スタートしているということをこのNHKの関係の人事で示していただくことが、我が日本国の国益に一番かなうのではないかということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

二階委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。古川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 早速質問したいと思いますが、きょうは、食と農、そしてTPPのことについて質問したいと思います。

 まず、総理も含めて、お手元にお配りした資料の一を見ていただけますでしょうか。

 林大臣は、今、中食、外食、こういったことに着目して農業をしっかりと進めていこうという話をしています。中食、外食もいいんですけれども、家庭の食事が今どうなっているのか。需要に応じた生産をしていくということがこれからの農政は大事だと思いますけれども、そもそも正しい需要があるのかということをちょっと提起したいんです。

 これは、岩村暢子さんという方が書かれた本の中から少し引用させてもらいましたけれども、これを見ていただくとわかるんですが、親子三人の食事で、例えばロールケーキとウインナーとか、あるいはスナック菓子とチョコレート、こういうことが写真で撮られているわけであります。これは、何百枚もの写真とともに、こういった家庭の食生活の現状を記述した本でありますけれども、私は、全部が全部こういうことじゃないと思います。ただ、一部の御家庭の一部の食事においてはこういうことが、現実、忙しいということもあって、行われているのではないかと思っています。

 懸念するのは、こうした食事が、子供たちの健康、これは心身の健康です、そういったことに悪影響を与えているのではないのか、このことを心配します。

 資料の二を見てください。

 こういった問題に対して、ユニークな取り組みがあります。これは私の地元の香川県の三木町でありますけれども、そこの校医をされていた松原先生が、最初は自腹で自分の担当する子供たちの血液検査をして、そのデータをしっかりとって、そして、おかしな数値が出たところには、保護者の方を呼んで指導して、食生活を改善していくという取り組みを二十七年前からやっております。

 こういったことが、香川県では、昨年度から県が補助を出して全県で行われることになったんですが、この松原先生が集めた、三木中学を含めた約三万六千のデータを見ていただきますと、下に書いていますが、脂質異常が、子供ですよ、子供で一九・五%、約二割、肝機能異常がある子供が六・七%、そして、血糖値の異常がある子供も一・三%あるということであります。こういった状況を放置しますと、大人になって脳卒中あるいは心筋梗塞というおそれも出てきます。いわゆる生活習慣病の予備軍だということが明らかだと思います。

 ちなみに、肝機能に異常を持っていると、疲れやすくて集中できない。昨今言われているいじめを中心とした、いらいらして切れやすくなる、そういったこともあるので、子供が今何を食べているのか、とりわけ家庭でどういう食生活をしているかについては、農業政策を考えたり、あるいは教育政策を考えていく前提で私は極めて重要だと思っています。

 そこで、質問をいたします。

 安倍総理は、一月二十四日の施政方針演説の中でも、生活習慣病の予防あるいは健康管理を進めるということを明確に掲げておられます。

 麻生大臣もいらっしゃいますけれども、将来的には、医療費の抑制、やはり健康な人をふやしていかなければいけないという観点からも、香川県で今始まっております、子供の血液検査を行って、子供たちの健康状態をしっかり管理して、そしてそれを改善につなげていく、こういった取り組み、特に血液検査を行うということを全国のレベルに広げていくということは、私は一つ意味があると思うんですけれども、この点に関して、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 医療費の抑制については、給付を抑制するという考え方もありますが、基本的には、医療のサービスを受けることをなるべく減らしていくことが可能になるような、いわば健康な人生を送れる、そういうことについてしっかりとバックアップをしていきたいと考えているわけでございますが、香川県においては、県の事業として、小学四年生を対象に血液検査を実施するなど、意欲的な取り組みを進めておられるというふうに承知をしております。

 生活習慣病予防のため、子供のころから健康づくりに取り組んでいくことは重要であろう、このように思います。かつては、お子さんたちに糖尿病等々の数値が出てくるということは考えられなかったわけでございますが、今お示しをしていただいた、食生活等々にやはり起因するものもあるわけでございます。

 そうした中において、やはり今後、子供たちの実態はどうかということを見ていくことも大切ではないかと思います。生活習慣病予防のため、子供のころから健康づくりに取り組んでいくことは重要であり、厚生労働省において、どのような効果的な方法があるかについて、有識者の議論をよく見守ってまいりたいと思います。

 政府としては、肥満傾向にある子供の割合の減少などを目標として、今年度から第二次健康日本21の取り組みを開始したところでありまして、地域保健と学校保健の連携を強化していくことも大切であろう、このように思いますし、いわば香川県でやっている取り組みの成果等々もしっかりと検証しながら、その上において、全国に広げていくべきかどうかということについても研究をしていきたい、検討していきたい、このように考えております。

玉木委員 私は、あえて冒頭この食事の話から入ったのは、戦後、やはり日本の国民の食生活が変わることによって、例えば米の生産、消費量が落ちてきた、こういうこともありますので、実は、最後、口に入れるものが何なのかということをしっかり考えながら、農政についても考えていくことが大事だということを申し上げておきたいと思います。

 総理から前向きな検討の意向が示されたと思っておりますので、ぜひこれは検討いただければというふうに思います。

 それでは、続きましてTPPの話に入りたいと思います。

 先ほど来お話が出ておりますけれども、私も民主党を代表して、この間のシンガポールのTPP閣僚会合に合わせて現地に行ってまいりました。現地で国内外の関係者の皆さんと意見交換をさせていただきました。

 まず、闘病明けにもかかわらず非常に精力的に活動されておられました甘利大臣には、野党の立場ではありますけれども、心から敬意を表したいと思いますし、実際、本当に頑張っておられるというふうに感じました。

 しかし一方、現地で感じたことを率直に申し上げますと、特に、おっしゃった物品を中心とした市場アクセス、ここについては、やはり日米の溝が相当深いし、広いし、埋まっていないなという感じがありました。

 私、一体何でこういうことがなかなか埋まらないんだろうと。甘利大臣は、このシンガポールのTPP会合の前にアメリカまで行かれて事前にフロマンUSTRの代表とも協議をしたにもかかわらず、今回、物品の市場アクセスについてはほとんど進展がなかったということについては、私はこれは、ある意味、非常に大きな意味があると思う。

 なぜなのか。いろいろ理由があると思いますが、私は一つは、今から説明したいと思うんですが、TPAと言われるもの、このことについて問題を一つ提起したいと思うんです。

 TPPにTPAで、アルファベットがいっぱい出てきて国民の皆さんも少しわかりにくいと思うので、簡単に説明しますと、これはトレード・プロモーション・オーソリティーといって、これはもともと、日本とちょっと違うのは、アメリカの場合は、ここに書いていますけれども、通商外交権が議会にあります。日本の場合は、憲法上、たしか七十三条だったと思いますけれども、外交の処理に関しては基本的に内閣、行政にあります。

 もともと議会に外交的なものを決める権限がある中で、それを議会から政府に、大統領に、今でいうとオバマ大統領に交渉権をある種譲ってもらって、包括的な交渉をする権限をもらうということが必要でありまして、過去の通商交渉の中でも、このTPA、かつてはファストトラックとも呼ばれていましたけれども、こういうものをとりながら実は交渉してきた経緯があります。

 結論から言うと、今、この議会からの外交交渉権をオバマ政権はとれていません。これは事実です。そして、これをとろうと思って法律を出したんですけれども、議会、特に与党、アメリカの民主党、その議員の中からも反対が出て、通る見通しが今のところないと思います。

 このことについてなぜ提起したかというと、つまり、フロマンさん、これは非常にこわもてでタフネゴシエーター、怖い顔をしていますけれども……。

 ちょっと新藤大臣にお聞きしようと思っていたんですが、済みません、退席していただいて。

 TPAの話に戻しますけれども、アメリカ議会から外交交渉権をオバマ政権は今取得していません。その中で交渉が今ずっと進んでいっているということが何を意味するかというと、フロマンさん、怖い顔をしてタフネゴシエーターだと言っているんですけれども、ある意味、議会との関係で、譲る権限を与えられていないんじゃないのかということを問題提起したいと思うんです。

 つまり、いろいろそれぞれにセンシティビティーがある、難しい問題がある。日本においては農産物、そしてアメリカにおいては、従来言われているように自動車、こういったものについて、お互いが柔軟性を見せながら交渉していくというのは、まさにこの間行われてきた交渉だと思うんですが、甘利大臣は相当な努力をして、相当な工夫もしながら、この間、アメリカとやったと思うんですが、アメリカ側が微動だにしないのは、単に彼がタフネゴシエーターということだけではなくて、彼には柔軟性を示しながら交渉を行うそもそもの権限がないんじゃないのかというふうに思います。

 そこで、質問です。

 甘利大臣、アメリカとの交渉の中で、TPAをオバマ政権が取得しないまま交渉していくことは、私はむしろ意味がないんじゃないのかと。TPAのない中でまさか妥結をするようなことは私はあってはならないんだと思いますけれども、この点について甘利大臣の考えを聞きたいと思います。

甘利国務大臣 TPAは、一括した交渉権限を大統領に与えるということで、つまり、包括的な条約、条約は包括的なものなんですけれども、これに対して議会としてはイエスかノーしか言えないという権限を大統領に与えるわけですね。ですから、TPAがとれていないと全く一切の交渉ができないかというと、それはそうじゃなくて、政府側に、まとめた交渉を議会に注文をつけさせないという権限を与えるものであります。ただし、TPAがあったとしても、二国間交渉でその後議会から注文がついて、ネゴを政府としたりすることもあります。

 でありますから、アメリカの政府としては、TPAがあった方が当然やりやすいんだと思います。ただ、我々が、対アメリカ、対フロマン代表に対しては、それは国内法ですからあなたの責任でちゃんとやってもらうことですよ、少なくとも我々と最終的に合意に至ったものについては、それをちゃんと国内の了解をとるのはあなたの責任ですからねということだと思います。

 TPA取得に関して、フロマン代表は、自信を持って、きちんとアメリカはアメリカのやるべきことをやるからということをみんなの前で表明されております。

玉木委員 内政干渉になるので余り他国の国内手続のことは言えないというのはよくわかるんですが、ただ、先ほど示したように、TPA、包括的な外交交渉権限を議会からもらう、それを認める法案については、これは相当厳しいと思いますね。しかも、この十一月には中間選挙を控えていますから、これはどの国もそうですけれども、やはりなかなか、私は民主党の下院議員さんの方と話したことがあるんですけれども、これは難しい、できないというふうなこともおっしゃっていましたし、百五十人を超える与党民主党の人が反対をしているということなので、難しいと思います。

 一方で、やはりこれは大事だと私が思うのは、せっかく甘利大臣が苦労してまとめても、さっきおっしゃった、包括的に認めることを許していませんから、これはいいけれどもこれはだめだ、これはいいけれどもこれはだめだと一個一個また議会からひっくり返されたら、これまで積み重ねた交渉は一体何なんだということになります。

 次の資料四を見てください。

 これは、佐々江駐米大使が、あるアメリカのシンクタンクで一月二十九日に発言をされています。長年外交官の経験のあるプロでありますけれども、佐々江大使がこう言っています。アバウトTPA、英語でディフィニットリー・ウイ・ニード・イット、つまり、議会から外交交渉権限をもらうことは日本にとって絶対必要だということを、佐々江大使、まさに交渉対象国であるアメリカに駐在している大使がこのように認めているんです。ですから、私は、やはり、TPAなく交渉をどんどんどんどん進めていくことについては大きな問題が実はあると思っています。

 ちょっと資料の五を見ていただきたいと思うんですが、その結果、懸念していることはこういうことです。

 これはちょうど左右に書きましたけれども、まず、ピンク色のアメリカ側。フロマンさんは、そもそもTPPというのは非常に野心的で包括的な高い水準の協定を目指すんだ、だから、日本は逆に野心的で包括的な目標にかなうだけの意味ある提案をしていない、十二月にこういうふうに言われています。加えて、譲る気配なしと書いていますが、そもそもTPAがないので譲る権限がない、彼には。

 一方で、日本なんですが、私は十二月もシンガポールに行きましたけれども、西村副大臣は、一ミリも譲らない、大変力強い発言をされておられました。昨年の十二月であります。それが最近、これは甘利大臣の発言を例示しましたけれども、一つ残らず微動だにしないということでは交渉になりませんというようなこともおっしゃっているんですね。

 TPAの話に戻しますけれども、フロマンは、ある意味、譲る権限もない。原則どおり全ての関税を撤廃する、つまり、アメリカ議会にとって百点満点のものをとってくれば、多分、それはそのままいくでしょう。しかし、議会にとって九十点のものとか八十五点のものを持ち帰ったら議会からだめだと言われますから、彼には百点しかとってくる権限が与えられていないんじゃないのか。その一方で、日本は、やはり、妥結に向けて努力すれば、いろいろな工夫をして、ある種の譲る用意をさまざま示さなければいけないということになろうかと思います。

 改めて聞きます。今のまま、このまま交渉を続けていっても、結局、仮にそれが妥結するというときは、日本が譲る形でしか妥結することがないと私は思うんですけれども、この点について、甘利大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 日米で相当タフな交渉を行っています。これは事実です。それは、お互い譲れない部分がある、その主張がぶつかり合っているからタフな交渉になっているわけであります。どっちかがべた折れすれば、こんなものはすぐにまとまりますね。しかし、少なくとも日本側からべた折れするということはありません。

 そこで、フロマン代表も、交渉責任者でありますから、議会のメッセンジャーではないはずであります。もちろん、我々が衆参の決議がありますと言うことと、フロマン代表が議会からこういう要請をされていますと言うことは、やはり同じ意味合いで言っているわけであります。日本だけが主張が通って、アメリカの主張が通らないということもないですし、その逆もありません。

 そこで、極めて厳しい、すき間を見出す交渉ではありますけれども、日米では、私とフロマン代表の間では、精力的に、相当厳しい言葉のやりとりも含めて、続けているわけでありますし、フロマン代表が、日本を含めて他の十一カ国に全く譲歩を示さないということではこの交渉はもともと成り立ちませんから、そこは、彼の責任の中において、アメリカ側が譲るべきところは譲るという交渉をいろいろな分野でやらなければならないわけであります。

 もちろん、議会からすれば、一センチも一ミリも譲らないのがアメリカにとってもいいでしょうし、日本にとってもいいと思います。しかし、それは交渉事でありますから、距離があったら、お互いが距離を縮めるためにお互いが厳しい交渉に臨んでいき、譲歩の余地がないかどうかを見出すための努力は続けていかなければならないというふうに思っております。

 日米間では、私がワシントンに行き、また、シンガポールで何回かやりました。その中で、距離があることは事実です、縮まっていないことも事実です。それを縮めるための、いわば、言ってみれば方法論について、こういう方法論でやっていこうということは共有をいたしました。その方向性も共有していますから、あとは、その方法論に従って、マンデートを与えた事務方同士でしばらくやっていこうということになっております。

玉木委員 ただ、現状は相当厳しいと思うんですね。

 そこで、総理にお伺いしたいんですが、こういう状況、つまり、アメリカの交渉担当者が議会からこういった包括的な交渉権限をもらっていない中で交渉を続けて、そして、日本としては、安倍総理としては、それでもなお、やはり、TPPについては早期妥結の方針は変わっていませんか。

 私は、やはり時間をかけて、むしろ、TPA、アメリカがそれを議会から取得する動向も見定めながら進めていくことが日本の国益をしっかり実現できる交渉を進めることになると思うんですが、この早期妥結の方針については依然として変わっていないのか、総理の方向性を聞きたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この早期妥結というのは、いわば、TPPについては、二十一世紀型のアジア太平洋の大きな経済圏を日本がしっかりとルールの面においてリードをしながらつくっていく、そして、この地域の富は結果としてふえていく、地域にいる人々の生活が豊かになっていく、より経済も活性化されるという側面があるわけであります。それを目指していくわけでありますから、その意味において早期妥結がふさわしい、こういうことを申し上げているわけであります。

 一方、我が国の国益も守らなければいけませんし、交渉を進めていく上において、私たちのポジションというものもしっかりと守っていかなければならないという中において、交渉上の、技術的に、我々の手を縛る必要はありませんし、足元を見られてはならないわけでございます。

 そこで、この関税、農産品だけではなくて、さまざまな分野があるわけでありまして、ルールの分野もありますし、知的財産もありますし、電子商取引もありますし、あるいは国有企業もありますし、環境分野、さまざまな分野があるわけでありまして、そういう分野も含めながら交渉を進めていく上において、どのようなスピードで全体を進めていくことが有利か不利かということについてもしっかりと検討しながら我々も判断をしていきたいという意味においては、早期妥結ありきではなくて、今、このTPPという目標が正しい目標であるならば、そして私たちの国益が守られる形であれば、早い方がいいだろうということであります。

 他方、国益を守る上において、交渉のスピードあるいは期限等については、これは足元を見られないような形で進めていきたい、こう考えているところでございます。

玉木委員 これは極めて大事なことだと思うんですね。ですから、とにかく早期妥結、去年であれば年内妥結というようなことを一つの目標にしながら進めてきたと思いますけれども、やはり、このTPP、これからどうなるかわからなくなっていると思います。相当、物品の市場アクセスの問題については、これは簡単に埋まらないと思いますので、こういう譲るような発言がちらほら出ることについては、今後の交渉にも大きな影響を与えますので、そこは焦らず、慎重な、国益を守る交渉をやっていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 次に、農業所得について林大臣にお伺いしたいんですが、資料の七を見てください。

 これは、去年の十一月の末に新しい農政の改革が出たときに、各社がこういうふうに報じたわけですね、農家所得は一三%ふえますねと。NHKさんもこういうふうに報じていますけれども、私、これは事実にちょっと反しているんじゃないかなと思うんです。

 というのは、よく農家所得というふうに言っていますけれども、実は、農林水産省の資料を見ると、農家所得とは書いていなくて、ちょっと次の資料の八を見ていただきたいんですが、「経営所得安定対策見直し後の農村(農業集落)におけるイメージ(シミュレーション)」という資料、これは農林水産省のペーパーなんですが、そこには「農業集落における所得等」と書いていまして、これは一三%ふえると書いているんです。

 林大臣に聞きたいのは、この「農業集落における所得等」というのは、農家の所得と同じなのか違うのか。もし違うのであれば、純粋な農家の、きょうは農家の方も見ておられると思いますけれども、今度、新しい農政で、狭義の農家の所得は一体幾らふえるのか、減るのか、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 これは、さきの臨時国会で、たしか十一月の二十七日だったと思いますが、農水委員会でも玉木委員と一度やりとりをして、数字も出させていただいております。

 今回のこの御指摘のシミュレーションですが、農業集落の全国平均の姿である耕地面積、大体三十四ヘクタール、これを有する農業集落をモデルとして、集落全体の営農活動からの所得と地域共同活動への支援の総額の変化について、農家の皆さんが餌米に行ったり不作付地を解消するなどの努力をする、一定の前提を置いて試算を行ったものでございます。今お話があったように、集落全体の所得等の合計が、見直しの前が八百八十八万一千円、見直し後が千一万一千円ということで、一一三%ということでございます。

 御指摘のように、非農家も含めた地域の共同組織に交付される日本型直接支払い、これを除きますと、営農活動による所得のみになりますが、これは、見直し前が八百四万五千円、見直し後が八百六十八万五千円ということで、八%増ということであります。

 委員がそこに出されているものは、さらに、餌米の動向がどうなるかということで、これをどう置くかによって、六%減というのもあり得るということをお答えしました。

 この直接支払いは集落に行きますが、これは集落の中でどうされるかによりますけれども、現行は、大体四割から五割は個人に配分されて、残りをみんなで共活に使うということがあります。これは集落によってさまざまでございますので、それを除いてしまうと、実際に農家所得、農家の本当に入ってくるお金になるかどうかというところもございますので、これはいろいろな前提を置いてこうなるということを複数お出ししているところでございます。

玉木委員 私、これは、大臣の説明はわかりますよ、ただ、やはり誤解を与える表現になっていると思います。

 私が農林水産委員会でも指摘させていただいたのは、今度、飼料米、餌米に対する補助をふやして、主食用米をむしろつくらなくしてそれを引き締めていく、そういう政策だと思うんですが、今まで十アール八万円を交付していたものを、最大十万五千円配りますということなんですが、最初の計算では、全ての農家がこの最大値の十万五千円をもらう計算でやって一三%になっているんです。

 でも、ここにあるように、平均は八万です。収量の多い人は十万五千円もらえますが、逆に、少ないと、平均より悪いと五万五千円しかもらえない農家もあるわけであって、平均すると真ん中の八万に寄ってくるので、それで計算すると、実は一三%ふえずに六%減るんだというのが農家所得の実態だと思います。

 私、申し上げたいのは、TPPについても、先ほど、情報公開をきちんと進めるという話もありましたけれども、やはり、改革をしていくときには、さまざまな影響を受ける人が心配しています。ですから、私は、税金を入れることにより所得が落ちることは、必ずしもこれイコール悪いとは言いません。ただ、落ちるなら落ちるで、正しい情報を農家にも伝えて、政府の目指す、政権の目指す構造改革を進めていく。そういった、農政について真摯に理解を求めていく努力をしていくことが大事だと思っています。

 その意味では、私は、農政には与野党の別はないと思いますので、本当に農業、農家にとってベストな対応策を党派を超えてしっかり考えていく、このことが、農家の不安とそしてまた期待にしっかりと応えていく方策だというふうに思っております。

 その意味で、最後に総理にお聞きしたいと思います。

 農家は今、大変不安を感じています。正しい情報をタイムリーに、真摯に農家に提供していく、このことについてぜひお約束をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 正しい情報というのは、TPPに……(玉木委員「いや、全てです。TPPも」と呼ぶ)全てですね。

 当然、我々は今、農業政策を大転換しようとしているわけでございまして、生産調整も大きく変えていくわけでございます。

 その中においては、果たして生活がどうなっていくかということについて、正しい情報をしっかりとこれからも出していきたい、このように思っております。

玉木委員 ありがとうございます。

 終わりたいと思いますが、今政府が掲げている目標は、農業・農村所得倍増と言っているんですね。ここに農家という言葉が出てきませんので、これも余りごまかさずに、農業と農村は仮に倍になっても、農家が倍にならない可能性もあるので、こういったことについても正しく、真摯な情報提供をお願いして、質問を終わりたいと思います。

二階委員長 これにて古川君、篠原君、玉木君の質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

二階委員長 この際、各分科会主査から、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。

 第一分科会主査林幹雄君。

林(幹)委員 第一分科会について御報告申し上げます。

 その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主な質疑事項について申し上げます。

 まず、皇室費については、双京構想の実現可能性など、

 次に、会計検査院所管については、過年度指摘事項の未処置の状況など、

 次に、内閣所管については、情報収集機能の強化、集団的自衛権行使のあり方など、

 次に、内閣府所管については、中国の理財商品とシャドーバンキングの問題、雪害対策、首都東京の地震対策、国家戦略特区の取り組みなど、

 次に、復興庁所管については、福島の復興に向けた取り組みなど、

 次に、防衛省所管については、国連南スーダン派遣団を通じた韓国軍への弾薬提供の問題、防衛装備品のあり方などでありました。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第二分科会主査上杉光弘君。

上杉委員 第二分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、総務省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、公共財である電波利用のあり方、公共放送としてのNHKのあり方、地方公務員の特殊公務災害の認定基準、地方自治体インフラの老朽化対策、自主防災組織の強化策、消防団が果たす役割等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第三分科会主査金田勝年君。

金田委員 第三分科会について御報告を申し上げます。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管につきまして審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、ハーグ条約における課題、ヘイトスピーチへの取り組み、安倍内閣の外交戦略、米軍機による低空飛行問題、国家公務員宿舎削減計画の見直し、自動車取得税のあり方等々であります。

 以上、御報告を申し上げます。

二階委員長 第四分科会主査萩生田光一君。

萩生田委員 第四分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、文部科学省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、大学教育における問題点、教育委員会制度改革のあり方、道徳の教科化の必要性、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けた支援策、私学助成関係予算のあり方、そして奈良市若草山のモノレール設置計画の見直し等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第五分科会主査松本純君。

松本(純)委員 第五分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、障害者支援のあり方、戦没者遺骨収集帰還事業の推進、慢性の痛みに関する政府の取り組み、今後の少子化対策の方向性、技能五輪国際大会への支援の強化、雇用促進住宅の役割等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第六分科会主査宮路和明君。

宮路委員 第六分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、豪雪による農作物被害への支援策、農業における規制改革のあり方、有害鳥獣被害対策の拡充、生物多様性の保全に向けた取り組み、林業における木質バイオマスの推進、農地中間管理機構を活用した農地集積の推進等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第七分科会主査伊藤達也君。

伊藤(達)委員 第七分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、経済産業省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、再生可能エネルギーの普及拡大に当たっての課題、エネルギー基本計画の政府案における原子力の位置づけ、地域におけるガソリン安定供給の確保に向けた政府の取り組み、政府による起業支援のあり方、クール・ジャパン戦略の推進に向けた政府の取り組み、コンビニエンスストアのフランチャイズ契約のあり方等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 第八分科会主査石田祝稔君。

石田(祝)委員 第八分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、国土交通省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、道路、鉄道、港湾、河川整備の推進、大規模な地震、津波への対策、公共事業の入札適正化への取り組み、高速道路の料金体系のあり方、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた都市インフラ整備の推進、観光立国推進に向けた取り組み等々であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 以上をもちまして各分科会主査の報告は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会の村岡敏英でございます。

 きょうは、TPP交渉に関して、安倍総理、甘利大臣、林大臣にお聞きしたい、このように思っております。

 その前に、総理が国会でもよく発言される、責任野党という言葉があります。我々日本維新の会は、是々非々でしっかり、賛成することは賛成していく。そして、我々日本維新の会は、自民党でできないことを引っ張っていくという気持ちで、山田議員の河野発言の検証もそうです、IR法案もそうです、いろいろな意味でしっかりと野党の責任を国民に対して果たしていこう、こう思っております。そして、反対するものはしっかりと修正案を出していく、このような姿勢で国会に臨んでおります。

 そこでなんですが、与党・政府というのは、責任与党という言葉はありません。最初から責任があるということを踏まえて考えますと、このTPP交渉というのは、今まで自民党の公約、振り返ってみると、衆議院の公約、そしてさらには参議院の公約、この公約で、しっかりとした、国民に対して、自民党がTPP交渉に参加するという公約があります。聖域なき関税撤廃には参加しない、その後、重要五品目に関しても、これは譲らない。

 ですから、アメリカの代表が、TPA初め、許可または任されていないといいますが、これは、日本の甘利大臣もそのような認識でいらっしゃるのかどうか、まずはそこからお聞きしたい、こう思っております。

甘利国務大臣 各国の交渉担当大臣は、国内の事情をしっかり受けとめながら外交交渉に臨んでいるわけであります。

 私もバイの会談あるいは全体会合の席上で、これは間違いなく申し上げたことでありますけれども、日本には国会の決議というものがある、当然、日本の閣僚である以上、日本の国会の決議の制約のもとに交渉に臨んでいるわけであると。

 もちろん、ホノルル宣言で、いろいろ国内事情はあっても、その中で可能な限り野心を上げていくということの責務もTPP交渉の中では同時に全閣僚にかかっているわけでありますけれども、各国がそれぞれ国内に抱えている事情、センシティビティーを踏まえながら、柔軟性を発揮して、各国事情に配慮しつつ、あわせて、なおかつ、その上で野心のレベルを上げていく。これは日本に限らず、センシティビティーを抱える全閣僚がそういう思いを抱きながら臨んでいる交渉であるというふうに思っております。

村岡委員 甘利大臣のお話を聞くと、ちょっと答えにはなっていないと思うんです。それは交渉事の中であって、その決議なり、そして自民党の公約というのはどのぐらいの重さを感じているかということをしっかり言っていただかなければ答えにはなっていない、こう思っております。

 安倍総理大臣が、それぞれ国会の中で、このTPPは成長分野にとって最も大事なことだということも何度も発言しております。しかしながら、さらには、公約をしっかり守ることが大切だ、政治には信頼が大切だということもおっしゃっていると思います。

 今回のTPP交渉で、交渉が妥結にならなかった、そして次はいつやるのかわからないという状況の中、しかしながら、安倍総理大臣は、今もTPP交渉はしっかりと日本の成長分野のために必要なのかどうなのかというのが一点目。

 そして、二つ目には、国会決議なり自民党公約で、もし聖域に食い込まれたら、安倍総理は、脱退も辞さないという気持ちなのかどうか。

 さらには、午前中の審議の中でも、時期は必ずしも定めないと言いますが、やはり外交交渉事です、ある程度の目標を持たずして外交交渉の妥結はあり得ないと思います。

 この三点についてどう思われるか、安倍総理からお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 そもそも私たちは、一昨年の総選挙において、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上TPP交渉参加には反対する、このように申し上げて選挙を戦ったわけでございますが、昨年の二月、オバマ大統領との首脳会談において、聖域なき関税撤廃を前提とするということではないという確証を得たわけでございまして、その上において、我々は、交渉参加ということについて決断をしたところでございます。

 その上において、我々は、J―ファイルにおいて、五項目についてしっかりと守っていく、この五項目について、J―ファイルについても、国民の皆様に御説明をしているわけでございます。さらには、衆参の農林水産委員会における決議も踏まえて、国益を実現していくために、守るべきものは守り、そして攻めるべきものは攻めて、国益を守る、確保する最善の道を追求していきたい、こういう中において交渉をしているわけでございます。

 前回のシンガポールの交渉においては、まさに国益と国益がぶつかったわけでありますが、決裂したわけではもちろんありません。その中において、各国が、センシティビティーがそれぞれあるということについて、むしろ理解が深まったと言ってもいいんだろうと思います。

 その上において、アジア太平洋地域に大きな経済協力圏をつくっていく、経済協力協定をつくっていくということについて、これはやはり各国の国益につながっていくし、地域の利益にもつながっていくという共通の認識もできて、一つの方向性について、同じ方向性を持つことができたと思います。

 そこにおいて、では、日本は撤退をするのかどうかということでございますが、まさに今、交渉継続中でありまして、私の口から撤退どうのこうのと言うことは差し控えさせていただきたいと思いますが、私どもとしましては、国会決議を踏まえて、私たちもこれ以上譲れないというところがありますから、そういうところはしっかりと、守るべきものは守っていくという決意で交渉に当たっていきたい、このように思っております。

村岡委員 総理、今、外交交渉中ですからそれ以上は答えられないと思いますが、やはり国会の中でも、国民にも不安が広がり、そしてこの交渉事に大変関心を持っております。そこのところで、この国会の中にも、どういう交渉をしているのかが全く知らされていないということが現状です。

 自民党が一昨年、野党の時代には、その当時総裁である安倍総裁も、谷垣総裁も、石破先生も、全部、国会の中でしっかりと情報を開示してくれ、こういうことを要求していたはずであります。そして、アメリカを見ると、事実関係ははっきりわかりませんが、アメリカの国会議員がアクセスできるような記事もあります。

 そういう意味で、これは秘密にしてもいいので、今の交渉事の中身をこの国会の中で公表しながら、そして交渉に臨むという、これからのことはないんでしょうか、甘利大臣。

甘利国務大臣 交渉の中身をどれだけステークホルダーなり国民に開示をするかというのは、まず大前提として、TPP交渉に参加するときの最後のサインする契約書、秘密保持契約がありますから、それに違反したら直ちに退出ということになってしまうわけであります。退出するために入っているわけではありませんから、そこは極めて慎重にならざるを得ないわけであります。

 そこで、どこまでの情報が出せるかということは各国の交渉担当者の悩みの種でありますから、各国工夫をして、この範囲であるならばその秘密保持契約に抵触をしないという範囲で開示しているものと思っております。

 午前中もマレーシアの情報開示の話が出ました。どんなことが開示してあるのか、私も拾い読みしましたけれども、肝心の情報については一切出ていないと思いますし、あのくらいの情報であるならば、日本も内閣官房のホームページあるいは国会の審議等で説明をしている、あるいは定例記者会見で説明している範囲内だなという理解をいたしております。

 節目節目、例えば、もちろん、交渉が妥結をして国内手続に入るときには詳細な案文を国会にかけるわけでありますから、そこははっきりわかるわけでありますし、妥結をした時点で、まだ案文ができる以前にどこまで開示できるかというのは、これは各国間で、参加国が全部、ここまでだったらいいことにしようという合意が成り立てば、その範囲で開示ができると思います。まだ交渉の過程においては、機微な情報については一切口外してはならぬというルールになっております。

村岡委員 バイですと、なかなか交渉の中身が国会はほとんどわからないまま、普通の交渉事でも、パネルにしておりますけれども、パネルの中で条約交渉をやって採択をやったときには、なかなかそれを明らかにできない。そして署名をやってやっと国会提出というと、ぎりぎりのところでその中身を審査する。

 その辺は、例えば、全員に知らせなくても、アメリカのように、与野党含めて特定の議員に、その部分を、交渉の内容をある程度明らかにするということは、自民党が野党時代には言っていたことなんです。それをやはり本当は、本来、実現しなければならない。

 例えば、林農林大臣は農林担当ですけれども、この農林の担当の五項目というのは、これは農業者の人たちが、いろいろな意味で情報が欲しいと言っているはずであります。林農林大臣は情報を聞いているのかどうかわかりませんけれども、やはりある程度の情報は開示しながら、この国の農業の方向性、TPPの、自由貿易の体制というのがしっかりわからないまま議論だけが進んでいるというのには大変不安もありますし、本来それでいいのかなという部分もあります。

 その点について、農林大臣は担当として、どのように考えていらっしゃいますか。

林国務大臣 情報提供については、今、甘利大臣からお話があったとおりであろうか、こういうふうに思っております。

 これは、TPPだけではなくて、あらゆる外交交渉というのは相手がございますので、交渉の途中で、こういうことを言っている、向こうがこういうことを言ったというのは、情報提供はなかなか難しいというのは委員御案内のとおりでございますので、甘利大臣からお話があったように、公開できることは対策本部の中で状況の進展に応じて情報を提供していく、これはずっと農水委員会でも実はお答えしてきたところでございまして、我々も政府の一員としてしっかりその方針で説明に努めていきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 自民党が野党で言っていたことと違って、なかなかそれができないということですけれども。

 この重要五項目というのは、今パネルに表を出しておりますけれども、五百八十六品目、これが聖域と言われる五項目です。例として、右側の方に品目を書いておりますけれども、その部分というのを交渉されているのか、それとも、今まで関税撤廃をしたことがないところが食い込まれているのか。

 それはもうおっしゃらないでしょうから答えなくてもいいんですが、先ほど甘利大臣が午前中に、距離がすごくあるけれども、この距離を縮めるためには全然動かさないというわけにはいかないということをおっしゃっておりました。

 その場合、やはりここの食い込みというのはどこまでなのかということは、やはりそのぐらいは、どのぐらいの交渉をしているかが全くわからないまま、ここで、予算委員会で質問して、それは答えられないというだけでは、この審議自体が何をやっているのかわからないと国民に言われてしまいかねない、そういう状況です。

 その部分の中でいけば、甘利大臣は、今どんな交渉を、このパネルの中で、重要五項目の自由化率ということであれば、何を交渉しているんでしょうか。

甘利国務大臣 当たり前のことですけれども、それぞれ担当大臣は国益をかけて交渉しているわけであります。そして、きょうのこの審議も、テレビを通じて、TPP参加国全ての大使館で確認をしているわけであります。我々は、手のうちをさらしながら交渉はできません。

 ただし、我々にも当然制約があるわけです。国会の制約なり、党公約の制約があります。この質疑を通じて、こういう点に注意せよ、こういう点は死活問題だというお話も都度伺っているわけであります。それらを全部受けとめながら、でき上がったものが御了解いただけるかどうか、これは最後は国会の判断になるわけであります。

 手のうちを、このタリフラインのうちのここはこうやっていますなんということを明かすことは、それ自身、さらに我々の交渉を苦境に導くものになると思いますから、お話はしませんけれども、とにかく、国会で五品目の決議という制約を少なくとも我々はかけられています。それと整合性がとれる内容であるかどうかは、最終的には国会が判断していただくということになります。こんなものでは全く整合性がとれないとなったら国会では了解はいただけないでありましょうし、このラインだったらぎりぎり受けとめることができるとなれば国会承認が得られるでありましょうし、そこら辺は我々も、国会による、ある種制約をしっかり受けとめながら交渉をやっているつもりであります。

 各国とも、それぞれ自国が抱えるセンシティビティーについては、交渉の中のある種縛りになっているはずでありますから、それを踏まえながらやっていくということであります。

村岡委員 同じ答弁に終始してしまうわけですけれども、別にここの予算委員会でテレビに映って公表しろと言っているわけではなくて、自民党が野党時代に言っていたように、やはりある程度、各党農業責任者なのか、それとも幹事長レベルなのか、いろいろな意味でそういう形をしっかりしていきながら、国会で最終的には通さなければならないと甘利大臣が言いました。それならば、ある程度合意のあるところで、他国との交渉ですから、その中で、例えばそこで妥結してサインして、国会で通らないということになったら、それこそ国益を失います。

 そういう意味合いにおいて、ある段階においてしっかりとした、各党一緒になって日本の国益を守るということのために、その部分を公表するということがぜひあってほしい、こう思っております。

 総理はどのように考えますか。

安倍内閣総理大臣 ここは今、甘利大臣から答弁をいたしましたように、各国と交渉を進めていく上において、秘密保持についてお互いに協定としてサインをしているわけでございまして、また同時に、進めている中において我々の交渉戦略もございます。

 ただ、今委員がおっしゃるように、それを国会の場において国民の前で明らかにするということではなくて、議員の関係というか、専門として農業分野、あるいは多国間のこうした交渉に取り組んできた議員には示してもいいのではないかというお話がありました。

 ただ、その中におきましても、各国と結びました秘密保持契約はその中でやらなければいけないことでありますが、今後とも、私ども、その中において、できる限りのことを御説明していくように努力をしていきたいと思います。

村岡委員 時間がないので最後になりますけれども、安倍総理が今言われたように、やはり最終的に国会で通らなければならないんです。

 そのときに、我々日本維新の会も、安倍総理と同じように、TPP交渉が妥結して、そして自由貿易ということをきちんと守って、アジア太平洋地域で日本が成長していこうというのは、まさに同じです。その同じ我々でも何もわからないという状況の中では、党内でも話せません。また、これは与党の自公だって、中で話していない。その与党の中でも、国会承認のときは反対するということがあり得ないわけではない。

 やはりどこかの時点で、政策担当者なりまたレベルの高いところで、この国会承認の部分はなるべく早く、TPPの交渉が妥結したときにはしっかりとその場をつくっていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 私はエネルギーを中心に質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、きょうは総務大臣にいらっしゃっていただいておりますので、お伺いしたいと思います。

 この国会に地方税法の一部を改正する法律案が提出をされております。この中に、軽自動車の引き上げというのが入っております。

 実は、昨年から経済産業委員会で茂木大臣と、この件についてはずっと議論をしてまいりました。私は、将来の子供たちのために消費税を引き上げるのはやむなしと思いますし、あるいは、七十歳から七十四歳の皆さんの医療費、これはもともと本則で二割負担ですから、これを戻すのもやむを得ないと思っております。また、年金も、マクロスライドという方式の中で今回引き下げになりましたけれども、これもルールですから、これはぜひ御負担はお願いしなきゃいけないということで、皆さんにいろいろ言われながらも、ちゃんと説明をして回ってまいりました。

 しかし、この軽自動車の話はちょっとわけが違うと私は思っておりまして、大臣も御案内だと思いますけれども、軽自動車というのは、本当に一番今普及しているのは、佐賀県とか鳥取県とか島根県とか、非常に田舎のところでありまして、私の田舎のところでも、おじいさん、おばあさんが軽トラに乗ったりいろいろなことをして、本当に生活の足なんですね。都市部に来ると、軽自動車なんて余り見ないわけです。

 これを引き上げるということは、全国、全体の負担ということではなくて、もうまさしく地方にだけ負担をしろと言っているような政策であって、私はこれはやるべきじゃないということをずっと申し上げてきたんですが、茂木大臣は再三にわたって、そのとおりだ、そういう負担にならないように頑張るというふうに御答弁をいただきました。

 しかし残念ながら、まあ大臣も頑張っていただいたんだと思います、しかし、結果は引き上げということになってしまいました。

 総務大臣、どうしてこういうことになってしまったんでしょうか、御説明ください。

新藤国務大臣 この自動車関係税制におきましてでありますが、自動車取得税の廃止、そしてその代替財源等が平成二十六年度の税制改正の大きな課題だったわけであります。

 その課題となったものにつきまして、まず私どもは、地方財政審議会に検討会を設けて、幅広く車体課税全体についてのお願いをいたしました。そして、報告書におきましては、代替財源は、税制抜本改革法を踏まえ、まず、車体課税の負担の不均衡の是正による税収確保を検討すべき。そして、その観点から、自動車税における営自格差の是正。それとあわせて、軽自動車税の見直しを検討すべき。軽自動車税は、大型化、高性能化が図られているにもかかわらず、小型自動車と四倍以上の税率格差がある。これが地方財政審議会での検討会における問題提起であります。

 そして、これらを踏まえて、総務省としては、与党の税制調査会で御議論をお願いしたわけであります。

 その結果、与党の税調におきましては、小型自動車との負担の均衡を図る点、そういったことから、軽四輪車に係る新税率の適用、これを平成二十七年の四月以降に取得される新車とするなどの負担を配慮した措置を講じた上で、軽自動車税の引き上げが決定されました。

 また、これに先立ちまして、全国市長会、市議会議長会、そして全国町村会からも、引き上げるべし、こういう御要望をいただいて、地方からの声も聞かせていただいたわけであります。

 そして、軽自動車を新たに取得する場合には自動車取得税が課されますけれども、これも、消費税が引き上げられる平成二十六年四月以降、軽自動車に係る自動車取得税の税率を三%から二%に、こちらは引き下げるということにさせていただきました。

 また、軽自動車におきましても、グリーン化を進める観点から、経年車重課を導入するとともに、軽課についても今後検討を行う。

 ですから、私どもとしても、地方の足というお声も、また一方でたくさん聞いております。しかし、その上で、軽自動車のユーザーにいろいろな形で配慮をしながら、この税調の御議論、結果を踏まえて我々としては決定させていただいた、こういうことでございます。

今井委員 政府としてはそういう御答弁だと思いますけれども、私は、やはりアベノミクスというのは、総理もおっしゃっていますけれども、まだまだ地方に届いていないわけです。都市部は、これからベアも上がります、それから、株を持っている人はもうかっている。でも、地方へ行ったら、年金生活者の人は下がる、中小企業の賃金は上がらない、その中でガソリンの値段は上がる、食料品は上がる、負担ばかりふえているんですね。

 そういうことによく目くばせをしていただきたいということを申し上げるとともに、私はこの法案に対してはどうしてもやはり賛成できないということをお話をしておきたいと思います。

 それともう一点、関連ですけれども、これをちょっと見ていただきたいんですが、皆さんにお示しした資料では後ろから二番目になっていますけれども、百世帯当たりの車の所有台数なんです。もう明らかなんですけれども、一番少ないのは、東京、大阪、神奈川、京都、兵庫、都市部ばかりなんです。

 私は今、ここで何を申し上げたいかといいますと、実は、最近出た人口の動向、住民基本台帳人口移動報告というのを見ておりますと、二〇〇六年、二〇〇七年あたり、安倍総理が第一次総理のときです。首都圏への人の流入が物すごくふえておりまして、一年間で十五万人以上入っています。ところが、リーマン・ショックでそれがぱたっととまりまして、一年間に六万人ぐらいまで減りました。そして去年、アベノミクスで景気がよくなってきたら、おととしは六万七千人です、ことしは九万七千人。つまり、景気がよくなると都市部にどんどんどんどん人が集まってくる、こういうことが起きるわけですね。

 ですから、地方への対策をまずしなきゃいけない、これはまず指摘しておきますが、車も実はそうでありまして、最近、都会に住む若い人たちが車に乗らないわけです。それはなぜか。ライフスタイルの変化もありますけれども、維持コストが高いんですね。駐車場代だって高い。そういう人たちがどんどん都市部に集まってくる。

 つまり、この傾向が進めば進むほど、国内の自動車市場はどんどん縮小するということです。つまり、成長戦略といいながら、国内の自動車市場がどんどんどんどん縮小してきかねないということです。

 何が申し上げたいかというと、だからこそ、この自動車税、車にかかる税金を減らしたことによるその穴埋めを、車の自動車税で穴埋めするということではなくて、もともと自動車にかかわる税金は非常にいっぱいかかっているんですから、それを全体的に純減させることで国内の自動車市場を活性化させるということをやっていかなきゃいけないということを、これは答弁は結構ですけれども、ぜひこういうことを考慮へ入れていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、きょうは外務大臣にいらっしゃっていただいておりますので、原子力協定についてお話をしたいと思います。

 原子力協定というのは、国民の皆さんは、どういうものかよくわからない方もいらっしゃると思うんです。これは、昭和三十年に原子力基本法ができまして、その精神に従って、原子力委員会で昭和三十七年に、外国に輸出する核燃料物質に関しても平和利用目的でこれをちゃんと担保しなきゃいけない、こういう目的でつくられたものでありまして、決して原子力政策そのものとつながっているわけではない。

 ですから、これは、民間がやることに対して、核燃料を危ないものに使っちゃいけませんよ、そういうことを担保しましょう、そういう協定であるということをまず確認させていただきたいと思います。

 その上で、私は今回、トルコとUAEが出てまいりますけれども、その内容を下さいというふうに外務省に申し上げました。そうしたら、UAEの方は協定の内容と議事録が出てまいりました。トルコの方は、協定が出てきたんですけれども、議事録はありませんと言われるんですね。何でないんですかと聞きましたら、つくっていないんですとおっしゃいました。

 これはどうしてつくっていないんでしょうか、外務大臣。

岸田国務大臣 協定本体につけられる合意議事録というものですが、これは、協定によってつけられる場合、つけられない場合があります。そして、存在する合意議事録をごらんいただければわかりますが、内容は、合意議事録という名称ですが、要は協定本体の下位文書、内容を補足する文書という内容になっています。

 トルコの場合は、トルコ側から署名文書を一つにしたいという意向があったものですから、他のケースにおいて合意議事録に盛り込まれるような内容を協定本体に盛り込むということになりました。

 ですから、内容としまして、例えば物質の計算ですとかあるいは核物質の在庫目録ですとか、普通ですと合意議事録に入るような内容が協定本体に全部盛り込まれるという形になり、協定本体そのものが大部なものになる、こういったことになっております。

 もともと、合意議事録というものの中身は今申し上げたようなものでありますし、協定によって、つける場合、つけない場合があります。トルコの場合は、今申し上げたような形で、協定本体に内容を盛り込むということになったものですから、合意議事録というものが存在しない、こういったことでございます。

今井委員 それでは、ちょっとお伺いしたいんですが、今まで、実は、二国間の原子力協定を日本は十二個やっていますけれども、この十二カ国で議事録のないところはありますか。

岸田国務大臣 議事録がないのは、ロシアとの協定のケースがございます。

今井委員 事前のレクではそういうところはないというふうに言われていたので、ロシアがあると確認しました。わかりました。

 それで、実は、今回のUAEとトルコの協定の一番の肝の部分です。平和利用というところでありますけれども、これを比べて見ていただきたいんです。

 読みますけれども、UAEの場合は、「この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、アラブ首長国連邦の管轄内において、濃縮され、又は再処理されない。」と書いてあります。やっちゃだめと書いてあるんですね。これは、実は、今までの十二カ国の原子力協定、みんな同じ表現です。

 ところが、トルコは、この下線部分をよく見ていただきたい。「両締約国政府が書面により合意する場合に限り、トルコ共和国の管轄内において、濃縮し、又は再処理することができる。」と書いてあります。つまり、できないという規定が、条件つきではありますが、できるというふうになっているわけですね。

 どうしてこんなふうに、ほかのものと違った協定になっているんですか。

岸田国務大臣 今回のトルコとの原子力協定の協議におきましては、当然のことながら我が国は、核不拡散の観点から、トルコにおける濃縮、再処理を規制または禁止する規定を設けるべく交渉を行いました。

 そして、その交渉の中で、トルコ側は、同国と他国との協定の例に鑑みて、濃縮、再処理することができないという否定的な文言を用いること、国内の議論等もあって、これを避けたいという意向が示されました。結果として、御指摘のように、両締約国政府が書面により合意する場合に限りできるという肯定的な表現になりました。

 しかしながら、これが意味するところは、両締約国政府が合意しない限り濃縮または再処理ができないということでありまして、我が国は、協定の対象となる核物質のトルコ国内における濃縮、再処理を認めるつもりはありませんし、この意向はトルコ側に累次にわたり伝えてありますし、また、認めることはないということを、私自身も国会の委員会の答弁の中で明言をさせていただいているところでございます。

今井委員 今ちょっと不思議なことをおっしゃいましたけれども、トルコ国内で、そういう国内事情があるというふうにおっしゃいましたね。国内の意見があって、できないというのは避けたいということでありますから、つまり、できる余地を残したいということですね、今おっしゃっているということは。

 済みません、議事録がないので、総理、総理は三回トルコに行っていらっしゃいますからぜひ教えていただきたいんですが、いろいろな筋の方から、これは、トルコは将来核兵器をつくりたいのでその余地を残しておきたいんだ、だけれども、中国とか韓国にとられるぐらいなら、日本もこの文言を受けてやった方がいいんだという意見もいろいろ聞いていますが、全て、私は、情報のない、いろいろな外部から聞いている話でありまして、しかも議事録もないので、何が真実かがわからないんですね。

 私は別に、例えばそれをピンどめするために日本がその役を買って出るんだという議論だってあると思うんですが、真実がわからないと、議論のしようがないんです。

 これはどういう議論があったか、教えていただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この文面を詰める議論の詳細について、私は承知をしておりません。それは外務省において外務大臣が議論をしてきたわけでございまして、その経緯については外務大臣から答弁させていただきます。

岸田国務大臣 原子力協定というのは、委員の先ほどの質問の中にもございましたように、そもそも相手国の原子力の平和利用を確保するための文書であります。よって、トルコとの協定も、トルコの原子力の平和利用を確保するという内容が、これはまず本体にしっかりと明記をされています。その上で、さまざまな議論を行ったわけであります。

 そして、御指摘の部分につきましては、他国と結んでいる協定等の兼ね合いと、トルコ国内における国会の議論等もあって、表現ぶりを工夫してもらいたい、こういった意向が示されました。それを受けて、我が国としては、要は、トルコ国内における濃縮、再処理、これが行われないという実態が確保できる方法をどう考えるのかということを工夫し、今回、こういった文言になったということであります。

今井委員 何か、答えになっているような、なっていないような、よくわからないんですけれども、少なくとも、この表現がトルコだけ変わっているということは皆さんにわかっていただけたと思います。ですから、今後の協議の間に、これは一体何を意味しているのかということをぜひ皆さんに考えていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは次に、きょう午前中、古川委員も指摘されておられましたが、燃料費の増加の話をしたいと思います。

 先日、私の岐阜県の、ある地方議員がこういうことを言っていました。経済産業省へ行ってきたんです、何か三・六兆円も燃料費がふえているらしいですね、これは原発を始めないとだめなんですね、よくわかりましたというふうにおっしゃっていたんですね。この三・六兆円というのは、実は、今回出たエネルギー基本計画案にも、八ページに書いてあります。

 この数字が果たして正しいかということをここで議論したいと思いますけれども、きょうは参考人の方に来ていただいているので、ちょっと確認したいんです。

 まず、この政府試算の三・六兆円は、二〇〇八年から二〇一〇年に使った発電量のうち、原子力が生んだ発電量を平均でとって、それが二〇一三年度にもしあればどれぐらい燃料費が減るか、こういう想定をしているというふうにここには書いてありますけれども、では、二〇〇八年度から二〇一〇年度に、福島の第一原発、第二原発は動いていましたか。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。

 御指摘の期間に、福島の原子力発電所は動いております。

今井委員 エネ庁の方に本当は答弁していただきたかったんですけれども、東電の方に、動いていたというふうに証言していただきました。

 つまり、この試算は、まず、決定的に間違っています。なぜかというと、福島の第二はこれからどうなるかわかりませんが、少なくとも第一原発はもう動きませんね。五号、六号も廃炉に向かってやるとおっしゃっています。この動くはずのないものを、これから動くという前提で、まず計算をしています。これはもう明らかに水増しであります。この点は絶対におかしい。

 さらに申し上げると、まず、この二〇〇八年から二〇一〇年というのは、リーマン・ショックの後でしたから、非常に景気が悪いころでありましたので、電力が、消費量も下がっています。そことまず比べているという問題点があります。それから、円安になっている、これも加味されていません。さらに言うと、この三年間の間に、電力消費量は、節電によって、みんな一生懸命、こうやって我慢して減らしてきているんですね。このことも一切考慮されていないわけです。いろいろなものが、全部、マックス、マックス、マックスで計算された数字がこの三・六兆円なんですね。

 そこで、私、自分で計算してみました。これはどういうことをやっているかといいますと、経済産業省に数字をいただいて、私が全部計算しました。それぞれの年度で電力に使う燃料をどれだけ輸入しているかという実額を全部いただきました。

 それで、二〇一三年度、二〇一三年度はまだ実は四月―十二月までしか実績がありませんので、一―三は、昨年の四―十二と一―三の数字を換算しながら推計を出していますので、若干ずれている可能性はありますが、大きくはずれておりません。それと、二〇一三年度の数字と二〇一〇年、これは、二〇一〇年の四月から二〇一一年の三月ですから、まさに震災が起きる直前でありますが、この比較をしております。LNG、石炭、原油、重油、これが、電力に使うものが実額で幾らふえたかというところに、経産省からいただきました単価、それぞれ単価が決まっています、それを全部掛け合わせて、合計しました。合計したところ、二兆一千五百六十三億です。

 これが実際にふえた数字なんですね。実際にふえた数字です。もちろん、ここは一―三の数字が、若干推計が入っていますので、多少ずれます。それと、大飯の三号機、四号機が昨年の九月まで稼働していましたので、その分も加味していません。しかし、これは全体の三%程度ですから、そんなに大きくここには影響しません。

 そういうものを加味したとしても、せいぜい二兆二、三千億です。これが実際にふえた金額なんですね。実際にふえた金額。しかし、経産省が出しているのは、こういう実際にふえたものではなくて、前提を、福島の第一原発も動くという前提のもとで、今どれぐらい置きかわるかというのをどれだけ大きく出せるかとつくっているのが、この三・六兆円なんですよ。いろいろなものを加味してありません。

 私は、原発をなくせとか、そういうイデオロギー的なことを言うことはありません。やはりエネルギー政策というのは、国の根幹にかかわるとても重要な政策でありますから、余り極論を言っちゃいけないと思います。安定的に供給できる、できるだけ原発をなくしながら、どれぐらい安定的にできるかという議論をしていかなきゃいけないんですね。

 この議論をするに当たっては、正確な数字でやらないといけない、正確な数字で。偏った数字で、そちらに誘導するようなことをしちゃいけないんです。今まで、日本の官僚はそれをずっとやってきたじゃないですか。TPPだって、農水省の人たちは、もう農業が全部破壊するような数字を出してきて、経産省の人たちは、TPPをやるともうバラ色になるような数字を出してきて、極端な数字を出して、お互い対立していましたね。こういうことがずっと続いてきているんですよ。

 この数字だって、そういう数字にしか私は見えないんですけれども、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 数字、データに客観性を持たせることは極めて重要だと思っております。

 まず二点、御理解いただきたいのは、この試算を行う中で、二〇一〇年度の時点で特定の原発が動いている、まあ実態的には動いているものと動いていないものがあるわけでありますけれども、原発は定期点検等に入りますので、稼働率は六七%であります。そういう状態で動いていた、二〇一〇年度時点は。それを二〇一三年度と比較をしておりまして、これから、例えば既存の原発が全部動いたら三・六兆円コストが下がりますとか、そういうことを言っているものではございません。

 その上で、独自に試算をしていただいて、数字も拝見をいたしました。極めてユニークな試算をしていただいて、ありがとうございます。

 試算、これは石油等を含んでいるわけですけれども、今回、我々、石油について、ピーク電源、こういった形で定義をいたしました。

 また、この間、省エネ等が進んでまいりまして、その効果もありまして、ピーク電源としての石油、これは減っているわけであります。先生の試算はそれも含んだ試算ということにどうしてもなっているために低くなるわけでありますけれども、原発の稼働停止の影響を見る場合には、震災の前と比べて、ベース電源としての原子力を利用した場合と比較して、それが火力発電で代替される場合の燃料費の増分を評価することが妥当であろう、こういうことから、数字として三・六兆円、こういったものを出しております。

 なお、経済産業省がお示ししました試算につきましては、単価それから試算方法を含めて、昨年十月の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力需給検証小委員会において提示をいたしまして、御審議の上、御了解をいただいておりまして、十分客観性は保たれている、このように考えております。

今井委員 いえ、決してユニークではありません。ちゃんとした実額に基づいて計算をしているわけでありまして、稼働率だって、別に稼働率はずっと平均してとっているわけですから、母数が問題なわけです、母数が。動かないものまで母数に入れているからおかしいと言っているんですね。そうじゃないですか。だって、ゼロ掛ける稼働率はゼロですから。だから、それを計算に入れているというのは、これはやはりどう考えても僕はおかしいというふうに思います。

 ちょうど今ピークの話をされましたので、ではその話をしたいと思います。

 今回のエネルギー基本計画を見ますと、こういう書き方がしてありますね。原子力、石炭は、重要なベースロード電源と書いてあります。それから、水力、地熱は、これは重要と書いてないんですね、ベースロード電源と書いてあります。天然ガスはミドル電源、石油はピーク電源、調整電源というふうになっています。

 では、お伺いしますが、現在、火力発電は、ベース電源として使っていらっしゃらないんですか。

上田政府参考人 現在は原子力発電所がとまっておりますので、原子力発電所の代替といたしまして、LNGの火力電源、あるいは石油の火力電源というのを使っております。

 ただ、電源の性質といたしまして、ベースロード電源と申しますのは、運転コストが一方で低廉で、昼夜を問わず安定的に発電できる、そういう性質を持っているわけでございまして、原子力あるいは石炭といったものはこういう電源であります。

 これに対しまして、石油は、需要に応じて発電量を変動させることが非常に容易であります。コストも比較的高いということから、電源の性質として、これらは、石油の場合はピーク電源であり、LNGの場合はミドル電源になると位置づけられる、こう考えております。

今井委員 今現在はベース電源として使っているという答弁でしたね。

 ですから、今、ベース電源、ミドル電源、ピーク電源というふうに分けています。ベース電源は、今お話あったように、二十四時間安定的に出せる電源のことでありまして、ピークはピーク時ですね、その間がミドル電源でありますけれども、今でもベース電源に使っているわけですよ。

 ところが、この位置づけをすると、石炭と原子力だけを重要なベースロード電源と置いて、地熱や火力はその一段下に置いて、さらには、ほかの、化石燃料はベース電源にならないから原子力がないと困るんですねというような書きぶりになっているんですね、正直。

 今あったじゃないですか、ベース電源に今一時的にも使っていると。一時的に使うのなら、これからだって使えるはずですよ。だから、そういうところの表現をちゃんと客観的に考えていただきたいんです。いかがですか。

茂木国務大臣 まず、先ほどユニークと申し上げたのは、英語で決して悪い表現ではありません、非常に独創的であり、自分で何かをつくり上げるということでありまして……(発言する者あり)唯一でもあります、ハーバードの先輩がそう言っていますから。そういった意味で、自分で試算をされた、そういうことについては多としたい。

 それから、先ほど政府参考人から答弁をさせていただきましたが、今、ベースとして石油を使っております。これは、使うことが望ましいということではなくて、使わざるを得ない状況になっている。コストは高いんです、残念ながら。そして、かなり老朽化している火力も、たき増しをする。こういったぎりぎりの状況の中で、石油をベースとして使わざるを得ないようなエネルギーの逼迫状況に日本があるということだと我々は理解をいたしております。

 そこの中で、例えば水力とか地熱を一段低く評価しているのではないかということでありますが、決してそうではなくて、今回のエネルギー基本計画におきましては、各エネルギーの中で、再生可能エネルギー、これを最初に持ってきております。そこの中で、「有望かつ多様な」という表現を使わせていただいております。

 なぜ有望か。これは、国産エネルギーでありまして、そしてこれから最大限の導入を図っていくということであります。

 多様である。どういうことかといいますと、地熱、それから一般水力、これはベース電源であります。それに対しまして、揚水の水力であったりとか太陽光、これはピーク電源、こういった形になってきますので、再生可能エネルギーということで申し上げると、これはそれぞれ、再生可能エネルギーの中にはベースのものもあればピークのものもあるので、多様な電源、こういう表現をさせていただいております。

 その上で、水力につきましては、ベースロード電源である一般水力とピーク電源である揚水型水力があるわけでありまして、エネルギー基本計画の政府見解におきましては、安定的なすぐれたエネルギー源としての役割を果たしており、引き続き重要な役割を担う電源、重要な役割を担う電源、このように位置づけております。

今井委員 再生可能エネルギーには、ベースロード電源という表現はありませんから、もちろん、中にはそうではないものもありますけれども、そういう位置づけになっていないということは御確認していただきたいと思います。

 このエネルギー基本計画の案の七十一ページには、こう書いてあるんです。「エネルギーの適切な選択にとって、政府による関連情報の開示、徹底した透明性の確保が何よりも重要であることは言を俟たない。」というふうに書いてあります。

 やはり、全ての情報を客観的に出して、それで議論をしていく、それがエネルギー政策をきっちり決めていくことだと思いますから、私は、このエネルギー基本計画を見ると、皆さん、読んでいただいたらわかると思いますが、大変だ大変だ大変だ、原発がとまって大変だ大変だといっぱい書いてあって、その後に、重要なのは原発であるというような表現になっているので、もう少し、やはり、どちらかにリードしないで、ちゃんと客観的に、ど真ん中で議論をしていただきたい、そういうたてつけにしていただきたいという意味で今御意見を言わせていただいたので、これからまた経済産業委員会で議論させていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、もう一問だけやらせていただきたいと思います。

 今回、昨年、茂木大臣の肝いりで、電力の自由化というのがいよいよ始まりまして、ことし、第二弾目の電気事業法の改正というのが出てまいりますけれども、私は、ここでお聞きしたいのは、電力の自由化というのは、いわゆる競争を促して、電力料金を下げる、いろいろな雇用もふやす、こういうことでやっているというふうに理解をしています。であるとするならば、やはり競争の原理でありますから、公平性というのは非常に重要なんですよ。既に入っている既得権益を持っている人たちを優遇しないで、公平にやることが大事なんですが、そこでお伺いします。

 今、電気事業法には三十七条というのがありまして、これは、いわゆる電力債を発行する根拠になっていますけれども、そこにこう書いてあります。「その会社の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利」、つまり、何かあったときは先にこの債権者に返済しますよということでありますね。

 私は、茂木大臣とずっと議論しているときに、東京電力の整理を一回、あるいは債権者にも負担をしてもらって、金融機関にも負担をしてもらって、そこからまずスタートじゃありませんかというふうにお話をしましたが、その際に、そんなことしたら、これがあって、破綻しちゃったら、賠償をもらう人たちがもらえなくなっちゃうじゃないですか、そんな乱暴な議論はありませんと。私もそれはそう思います。

 であるとするならば、これがネックになっているわけですね。ですから、今後は、競争の原理を働かす、あるいは今の現状にある問題点を解決するためには、電力債の優遇、これを外さなきゃいけないと思っているんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 電力システム改革、これから進めてまいりますけれども、現下のエネルギー制約の中で、電力の安定供給を図りつつ、コストをできる限り低減していく、そのためには、新しい事業者の参入機会をふやして、また需要家から見たら、さまざまな選択肢が広がる、こういったことが重要だと考えておりまして、競争条件の確保、こういう観点から、御指摘いただきました電力債に係ります一般担保の取り扱いは大変重要なテーマである、こんなふうに考えております。

 御案内のとおり、昨年の十一月に、電力システム関係の第一弾の改正法案、改正電気事業法の附則、プログラム規定におきまして、改革の第三段階であります法的分離の実施に際して、金融市場の動向を踏まえて検討を行い、電力の安定供給に必要となる資金の調達に支障を来さないよう、経過措置等の必要な措置を講じることを規定いたしております。

 これを踏まえて、この通常国会に提出を予定しております第二弾の改正におきましては、概念は若干変わります、一般電気事業者、こういう概念とは違ってきますけれども、簡単に説明するために、既存の一般の電気事業者、例えば関西電力であったり北海道電力であったり、こういうものが引き続き大規模な発電設備、送配電設備の多くを保有し続ける実態というものも踏まえまして、電力の自由化は進めなきゃならない、小売の自由化を進めていくわけでありますが、引き続き、この三十七条に規定されております一般担保つき社債の発行を認める規定を設ける、こういったことを考えております。

 その一方で、委員が御指摘のように、競争部門であります発電、小売部門における対等な競争条件を確保することは重要であります。このために、法的分離を規定いたします第三弾の改正に際しましては、事業者間の適正な競争関係を確保するという観点も含めて、一般担保のあり方につきましてゼロベースで検討していく、こういったことを考えております。

今井委員 ちょっと、もう一回確認したいんです。

 来年、発送電分離のものが出てきますね。送電部門というのは、これはみんなで共有するので、それはわかります。発電部門は競争ですから、発送電分離をして電力が完全に自由化になるときには、もちろん、経過措置として今の、資金繰りとかそういうので少し必要だということなら、それはわからないでもないですけれども、将来的には、発送電が完全に分離するところに当たっては、発電会社の、既存の一般電気事業者の電力債の優遇は外すということでよろしいですか。

茂木国務大臣 今後のことでありますので、今、確たる見通しを述べるのは難しい部分がございますが、送配電事業者が、これからも安定供給に責任を持つということになってまいります。

 一方で、発電部門については、今後、対等な競争関係というのを第三弾以降つくっていく。経過措置、そして資金の調達状況を見る必要があると思っておりますけれども、発電部門に関しまして、未来永劫、一般担保がついているということはない、そのように予測をいたしております。

今井委員 未来永劫という非常に難しい言葉を使っていただきましたけれども、理解がしにくいのでありますが。

 やはり我が党は、とにかく競争をして、そしていろいろなものを自由にして、そして日本を伸ばしていこう、そういう政策でやっていますから、この電力の自由化にも大賛成ですし、でもその中身が、実態が本当に競争を伴わないというようなものであっては決してなりませんので、これからもその部分はしっかりとチェックをしてまいりたいと思いますから、この部分もまたぜひ議論をさせていただきたいと思います。

 時間になりましたので、私の質問を終わります。ありがとうございました。

二階委員長 この際、足立康史君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 ただいま同僚の今井議員の方から、原子力政策について、原子力政策の中では比較的応用問題と言えるようなテーマを扱わせていただきました。私からは、もう少し基本中の基本に立ち戻って質問をさせていただきたいと存じます。

 お配りをしています資料についても、四枚ございますが、安倍総理初め閣僚の皆様方にとっては当たり前のことでございますので、資料をごらんいただく必要はございません。きょうはパネルで御用意していますが、これは、原子力政策に関心を持っておられる国民の皆様によく御理解をいただきたい、こういう思いで御提示をさせていただいているものでございます。

 安倍総理、今、原発政策について今井委員からも申し上げましたが、私たちは、大きな大きな原発政策の方向性については、安倍政権と日本維新の会は大きく違わないと思っています。日本維新の会は、いわゆる脱原発依存、こう訴えて二度の国政選挙を戦ってまいりました。安倍総理も、一月二十四日の施政方針演説で、「原発依存度は、可能な限り低減させてまいります。」こうおっしゃいました。全くこの点においては同じでございます。

 ただ、我々が、こうして時間をいただいて、政府に対して、また与党に対して物を言わなければならないのは、今、国民の皆様も、日本じゅうの原発の再稼働の動向を皆さんが注視されておられるわけでございますが、我々は、再稼働するのであればちゃんとやろう、ちゃんとやれ、しっかりやろう、こう訴えているわけでありますし、仮に、東電であれ、また政府であれ、しっかりと取り組めない、ちゃんとできないのであれば、もうそれはやめるしかない。原発がなくなっていくことも視野に、しっかりとそれに備えていく必要がある、これが日本維新の会の原発政策の基本的な考え方でございます。

 私も、二十年にわたって経済産業省で仕事をしてまいりましたので、もとの同僚の皆様の今の御苦労というか、福島第一の収束も含めて、私の同期の仲間も含めて、引き続き全力で今福島で戦っていただいている、これは十分承知をしているところでございます。

 しかし、与党のリーダーシップを拝見すると、昨年一年間、私も衆議院の原子力問題調査特別委員会の理事として仕事をさせていただきました。ことしも引き続き原発問題に取り組んでまいりますが、昨年一年間に私が拝見した政府・与党、大変心もとない。大丈夫かな、福島第一の汚染水の問題を見ても、これではちょっと無理かなと思わざるを得ない現状があります。

 もちろん我々も、無理では済まない、何としても、今のこの原発あるいは福島第一の現状に対して、国民の皆様の心配、懸念、これを払拭していく必要がある。私たち野党の立場からも、そのために全力を尽くしていきたいと考えております。

 まず最初に、国民の皆様にも確認をしていただきたいことは、一昨日でしたか、政府がエネルギー基本計画の修正案を、いわゆる政府原案として出してこられました。先般、経済産業省の総合エネルギー調査会が意見という形で出したものと比較をすると、ここにごらんいただけるように、原発の位置づけ、あるいは原発の規模、いずれをとっても相当後退をしていると見ざるを得ません。

 一点目のベースロード電源、これについては、いろいろなところで、報道でも取り上げられていますので、私は、二つ目の原発の規模について、きょう、確認をさせていただきたいと思います。

 総合エネルギー調査会の意見では、原発の規模について、必要とされる規模、これを見きわめた上で、「その規模を確保する」と書いてあります。これが修正後は、「確保していく規模を見極める」。

 これは何が変わったんでしょうか。経済産業大臣、お願いします。

茂木国務大臣 足立委員も、経済産業省の職員としてさまざまな政策に取り組んできておりますが、先生の一年下の新川室長であったり、そして二年下の畠山課長であったり、今本当に、汚染水・廃炉対策、原子力政策、エネ庁を挙げて全力で取り組んでいる。まだ足りない部分はあると思いますけれども、全力で取り組んでいる、そんな思いであります。

 今回、エネルギー基本計画を策定いたしましたが、そこの中で御指摘いただきました意見では、この規模につきまして、「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。」このようになっておりました。ただ、確保していく規模というのは、今後のエネルギー制約等の状況によって変動し得るものでありますから、今回の政府原案におきましては、我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、「確保していく規模を見極める。」こういった形にさせていただきました。

 あと一点だけ、「基盤となる重要なベース電源」を「重要なベースロード電源」と修正をしたと書いていただいておりますけれども、これは、意見の方は、「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」で、安定性を支える基盤というのがあって、その上で、ベースロード電源。安定性を支える基盤というのは、支える基盤というのは例えば天井が支えるわけじゃないんです、土台とか基盤が支えるのは当たり前でありますから、そういった意味におきまして、支えるということで書かせていただきました。

足立委員 大臣、この、必要とされる規模を見きわめてその規模を確保するという総合エネルギー調査会の意見については、私、多くの電力関係者の方々が力を経済産業省から与えていただいた、力を得たと思ったんです。

 私、いろいろな方と意見交換をしていますが、十人中十人が、規模を確保するという表現に胸をなでおろし、これから、廃炉を含めて、原子力事業を当面維持するに当たって必要な人材の確保等を考えると、この表現が本当に不可欠なんだ、こう十人中十人がおっしゃっていました。

 その十人中十人がこれをどう捉えたかというと、一定の規模を確保するのだから、リプレースもあるんだなと。リプレースというのは、古い原発を廃炉にした際に、その同じ敷地内や周辺で新しい原発を建設することであります。恐らく、総合エネ調は、そういう意図でこれは書かれたと思います。

 修正案では、その点をどうお考えですか。

茂木国務大臣 この規模の問題でありますが、安定供給、コスト低減、温暖化対策、そして、委員御指摘のように、安全確保のために必要な技術であったりとか人材の維持の観点から、確保していく規模を真摯に見きわめることが何より重要、こういう基本認識は、基本政策分科会の意見でも、そして今回の政府の原案でも、変わっておりません。

足立委員 大臣は、基本的方向は変わっていない、こうおっしゃっているわけですが、少なくとも、私が意見交換をした関係者、先ほども大臣もおっしゃったように、原発の取り扱いについて懸命に今取り組んでいる関係者であればあるほど、落胆をしている。この点は、私の受け取った印象としてお伝えをしておきたい、そう思います。

 私たち維新の会は、今申し上げたような、曖昧な表現に変えていくこの自民党、政府のそういう傾向については大変危惧をしております。ここで河野談話を挙げるまでもありませんが、自民党は、それが知恵といえば知恵でありますが、曖昧にする癖があります。

 我々維新の会は、この時代に物事を曖昧にしているようでは立ち行かない、言うべきことは言う、やるべきことはやらないといけないんだという立場で、意見を申し上げてまいりたいと思います。

 特に原発については、来年には温暖化交渉も本格化をします。原発あるいはガス、石油、それぞれの規模について、しっかりとその規模感を明確に示していかないと、国際交渉が、できるものもできません。

 総理、この点、今私は、政府のポジションは曖昧だ、こう申し上げました。いかがですか。ぜひ、総理の御所感をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま茂木大臣からも答弁させていただいたように、曖昧というか、いわば、むしろしっかりと現状を見詰め直しながら、原発の規模について、確保していく規模を見きわめるという、より腰を落とした形で書きぶりを改めたんだろうと思いますし、また、ベースロード電源も、先ほど茂木大臣から答弁させていただいたように、しっかりと、これはまさに基盤だから、これは天井ではなくて、まさに基盤のことを、土台のことを言っているんだという、これは聞いていて、私も、なるほどな、こういうふうに思ったところでございます。

 しかし、確かに、我々、国際社会に向けて説明していくということもございますから、そういう意味において、そういうことも念頭に置きながら、表現ぶりは考えていく必要があるんだろう、改めてそのように思った次第でございます。

足立委員 私たちは、今、原発政策に取り組むに当たって、やはり、二〇一一年の三月の東日本大震災と、大震災に伴い発災した福島第一原発事故の教訓というものを、心していかないといけないと思っています。

 私、ここに三つ取り上げました。この三つが、改めて我々が心しなければならない三点であることに御異論はないかと存じます。

 一つは、安全規制、二つ目が、賠償責任の問題、三つ目が、使用済み核燃料の最終処分であります。

 三つ目の、使用済み核燃料の最終処分については、これは、原発政策をどっちの方向に持っていくべきかという立場にかかわらず、今もうあるわけですから、必ずこれは、日本の国会議員が、また政府が、特に原発を推進してこられた自由民主党、私も二十年間お仕えをしてきた政党でございます、ぜひ自民党の責任において、この最終処分方法の確立に全力を挙げていただきたい。私も力を尽くしてまいります。

 問題は、上の二つです。

 安全規制については、一定の前進があったと存じます、規制委員会ができた。損害賠償制度、これが問題ですね。私は、この二つが、原発を稼働させていく際の両ウイングだと思っています、両翼だと思っています。この二つがなければ、稼働できませんよ。

 この損害賠償の枠組みについては、原子力損害賠償支援機構法、二〇一一年、まさに発災をした直後の夏に制定されたこの法律の附則において、できるだけ早期にそれを見直すと書いてある。同時に、国会は、できるだけ早期にというのは一年がめどである、これが国会の意思であります。一年がめど。

 二〇一一年八月に公布即施行されたこの法律の一年がめどですから、二〇一二年の八月には見直しが終わっていないといけないにもかかわらず、この夏にはさらにその期限から一年が、そして二年目を迎えようとしている今、まだ政府でこの損害賠償の枠組みについて検討しているように見受けられません。

 政府としてこの賠償の問題をどうするおつもりか、御答弁ください。

下村国務大臣 原子力発電所の事故に関する損害賠償については、現行の原子力損害賠償法の制度のもとで、国が果たすべき責任をしっかり果たしていく必要があるというふうに思います。

 今後の原子力損害賠償制度の見直しについては、福島の一日も早い復興に向けて、まずは被災者の心に寄り添って迅速かつ適切な賠償の実施を最優先することが重要であると考えており、エネルギー基本計画で決定する原子力の位置づけを踏まえたエネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえ、総合的に検討を進めてまいりたいと考えています。

足立委員 損害賠償については文科省ということで今大臣が御答弁をいただきましたが、私はこれも実は問題だと思っていまして、それぞれの分野ごとに所管が分かれているわけです。やはり政府全体として、総合司令塔のような形で、官邸かもしれませんが、必ずそういう取り組みが必要である、このように思っています。

 改めて今の点を確認したいんですが、もう時間がありませんが、再稼働が近いと国民も思っています。再稼働をして、事故が起こったとき、事故は、もちろん安全を確認して再稼働するんですから事故は起こらないということが期待をされますが、万が一、福島と同様の事故が起こった場合、この賠償の枠組みはどうなりますか。十分ですか。

下村国務大臣 原子力発電の再稼働については、現在議論されているエネルギー基本計画案では、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し進めることとされておりまして、その前提の中での話でございますから、これは原子力規制委員会の判断によってのことでありますので、そういう前提でこれからも進めてまいりたいと思います。

足立委員 全然答弁になっていないですよ。再稼働について聞いているんです。再稼働した後、事故が起こったときの賠償の枠組みはどうなっているかと聞いているんです。

下村国務大臣 まずは、原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の中で規制基準に適合するということでは、最も厳しい基準の中で再稼働ができるかどうかということであります。その上で、現行の原子力損害賠償法の制度のもとで、国が果たすべき責任をしっかりと果たしていくというのが国の方針であります。

足立委員 すれ違いも甚だしいわけですが、ここに書いてある、これは損害賠償だけじゃないんです。原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束あるいは生活再建、地域再建についての国の関与とその責任、これを決めると言っているんです。

 これが決まるまでは再稼働はない、総理、これでいいですね。

茂木国務大臣 政府としては、昨年の末に、まず、私は、そこのお示しいただいた教訓の中で抜けているのは、福島の再生、復興を加速化する、しっかりと進めるという視点だと思っておりますけれども、帰還に向けた取り組みの充実とあわせて、新たな生活の開始に向けた支援の拡充の両面から福島を支援するということを決めさせていただきました。

 そして、事故に関連しては、廃炉・汚染水対策、これが極めて重要でありまして、これについては国も前面に立つ。支援機構法、賠償についてだけではなくて、今後、廃炉等についてもその機能を持つ、この法案をこの国会に提出させていただきたい、そんなふうに考えているところであります。

 既に、この一年間、一年二カ月になりますが、我々が政権に復帰をしまして、福島の復興がどうして進んでこなかったのか、さらには、廃炉・汚染水対策をどう進めるか……(足立委員「答弁になっていないですよ、答弁になっていない」と呼ぶ)ちゃんと答えています。静かに聞いてください、大切な問題ですから。そういう観点から、一つ一つの対策を進めてきております。

足立委員 時間が来ていますが、これでは質問を終われないですね。

 要は、私が聞いているのは、再稼働の暁に、万が一ですよ、万が一、その再稼働した原発で事故が起こったときに適用される法体系はどうなっているんだ、それは見直すと書いてあるけれども、見直していないじゃないかと。

 すると、両翼、両ウイングのうち、安全規制については整えたけれども、賠償責任の枠組みはできていない、そういうことですか。これに答えていただかないと、私の質問を終われません。お願いします、委員長。

安倍内閣総理大臣 基本的な考え方としては、機構法附則第六条にある、賠償法の改正等の抜本的な見直しを初めとする必要な措置については、エネルギー基本計画で示す原子力の位置づけ等を含めたエネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえて、総合的に検討を進めていく考えであります。

足立委員 すると、今おっしゃった検討が終わるまでは再稼働はできないと政府は認識しているんですか。イエスかノーかだけで結構です。

下村国務大臣 先ほどから答弁を申し上げていますが、国が果たすべき責任はしっかり果たしていくということが大前提です。

 その中で、原子力発電所の事故に関する損害賠償、この見直しについては、先ほど答弁を申し上げましたが、これは、エネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情を踏まえ、総合的に検討を進めていく、その中で、最終的には国が責任を果たすべきことはしっかり果たしていくということを申し上げているわけで、明確に答弁をしているというふうに思います。

足立委員 今の、私が政府に対して質問申し上げたことについて、一番理解をしていただいているのは国民だと思います。

 しっかりと私がきょう申し上げたのは、両翼、安全規制とともに賠償の枠組み、あるいは事故が万一起こったときの賠償、生活再建、地域再建の枠組みが整わなければ、再稼働の前提が整わないということ。

 したがって、私は、日本経済のことを考えれば、再稼働はせなあかんと思っていますよ、だからこそ、去年一年間、委員会でも再三、これを早く急げと申し上げてきたにもかかわらず、今に至ってまだできていないわけでございます。

 この後、藤井委員が引き継いでいただきますので、私のこの質問は終わりますが、ぜひ、政府におかれては、今申し上げたこの検討、再稼働までに必ず道筋をつけていただきますようお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 この際、藤井孝男君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤井孝男君。

藤井(孝)委員 今、同僚の足立委員から、再稼働した後の賠償法のことについて、私も聞いておりましたけれども、もっとしっかりと法体系にのっとって、そういったことをもっとしっかりと踏まえてやっていただかなきゃならないと思っています。

 もう一度、ちょっと大臣、答えていただけますか。わかりやすく、本当に簡潔明瞭に、しっかりやると。まだ改正していないんだから。

茂木国務大臣 賠償法、現在、法律がないわけではありませんけれども、今後見直しを行っていくということであります。

 御案内のとおり、今、福島の賠償はもう進んでいるところであります。その状況であったり、エネルギー政策全体における原子力の位置づけ等々を見ながら検討していくということで、先ほど総理の方もお答えをさせていただきました。その方針でしっかり進めてまいります。

藤井(孝)委員 やはり、その点が非常に、被災者、それから今後の原子力政策について、これは大変重要なポイントの一つでありますから、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは、私はきょうは、今般出されましたエネルギー基本計画案、今、与党の党内でも議論が始まったようでございますが、このことを中心にまず質問をさせていただきたいと思います。総理以下、限られた時間でありますので、簡明にお答えいただければと思っております。

 最初に、これは先日、ニュースでちょっと見たんですけれども、岸田外務大臣は、決定したわけじゃありませんけれども、できればという趣旨だと思いますが、五月の初めにアフリカのカメルーンで予定されていると言われております、昨年六月に横浜で行われましたTICAD5を受けての第一回の閣僚会議が開かれるというふうに聞いておりますし、それに外務大臣が出席したいという意欲を持っていると。

 それからもう一つは、その後、引き続いてOECDの閣僚会議も開かれるということで、それに対しても出席をしたいという意向がニュースで伝えられましたけれども、きょう、その辺の意思確認と申しましょうか、国会開会中でありますから大変制約がありますけれども、まず、その点についての考え方をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、TICAD5後の第一回目の閣僚会議への出席の話ですが、年率六%以上の成長を続ける、躍動する大陸として国際社会から注目を集めているアフリカとの関係、これは我が国の資源外交を含む戦略的外交にとって大変重要だと考えています。

 TICAD5におきましても、単なる支援ではなくして、投資につながる人材育成ですとかインフラ整備、こういった支援を表明したわけでありますし、先日、安倍総理も、アフリカ各国、トップセールスということで歴訪をさせていただきました。

 こうしたアフリカとの関係を考えますときに、今回の閣僚会議は、TICAD5において我が国が表明した支援策の進捗状況を確認する、さらには、この関係を一層強化する、こういった意味で大変重要だと考えています。

 今御指摘のように、正式には、日程も、それから場所もまだ決定はしておりません。しかし、アフリカへの日本らしい支援のあり方を示し、アフリカに対する熱意を示し、あるいは信頼関係を醸成する上からも大変重要な会議だと思っておりますので、できることであるならば、私自身、出席をさせていただきたい、このように考えております。

 そして、OECDの閣僚会議への出席ですが、ことしは、OECDに日本が加盟しましてから五十年という節目の年になります。この節目の年を記念して、我が国も、たしか三十六年ぶりに閣僚会議の議長を務めることになっております。

 大変重要な会議であり、安倍内閣の主要閣僚としても、協力しながらこの会議に貢献していかなければならないと考えております。これもまだ正式には決定はしておりません。

藤井(孝)委員 先般、私も質問をさせていただいたときに、安倍総理が資源外交を含めた経済外交を非常に重視しているという答弁がいただけました。

 やはりアフリカ大陸は、今、岸田大臣が言われたように、私もいつも言っているように、旧宗主国、いわゆるそうした国と違った、また、アフリカ諸国の日本に対する期待感、そういうものを含めますと、ぜひこのTICAD5、昨年のアフリカ開発会議を受けての第一回目の重要な閣僚会議だと私は思いますので、私といたしましても、また、我が党といたしましても、やはり資源外交、経済外交というのは非常に大事だと思いますので、国会が許す限り、ぜひとも出席して成果を上げていただきたいことを期待しているところであります。

 それでは、本題に入っていきたいと思っております。

 先ほど来、原発の問題、賠償の問題等々ありましたけれども、原発の再稼働につきまして、いろいろ今度の基本計画案に書かれております。

 この問題については、非常に私どもは深刻に、また真剣に対応しなきゃいけないな、こんな思いで我が党も対応して、我が党自体の原発政策の基本は、将来的には依存をどんどん減らして原発依存をゼロにしていくというのが我が党の基本でありますけれども、しかし一方で、私どもの置かれている、我が国の資源というもののあり方というのは非常に厳しいものがあるということは、もう御承知のとおりであります。

 私は、エネルギー政策をいつも、地元におきましても、有権者に対しても、国民に対しても、いろいろな場面で訴えるわけですけれども、まず、ぜひにも認識をしていかなきゃならないことが、これは基本的なことなんですけれども、閣僚の皆さん方に、私は内閣に対して質問をするつもりはありません、むしろ、きょうはテレビで放映されておりますので、我が国の置かれているこの立場は一体どういう立場なのか。

 これはまさに、食料におきましても、カロリーベースで四〇%の自給率でありますけれども、エネルギーのいわゆる自給率というのは四%という、言ってみれば、ほとんど海外依存をしなければならない。このことを私は国民の皆さん方に、そうした日本の、いわゆる資源小国であるということをしっかりと踏まえた上で、さあ、これからの原発政策、そしてそれにかわる代替エネルギーをどう確保していくか、安定的にどうやってこれを、資源外交として成り立っていくかというのが大変重要なことだと思っております。

 同時に、もう一つは、アベノミクス、経済成長を目指しての経済外交、あるいは国内の経済成長戦略をしっかりとやっていただきたいと思っております。

 これも当たり前のことなんですけれども、経済発展、これは発展途上国であろうと先進国であろうと、とにかく経済発展をするためには、必ず必要なものは何かといったら、エネルギーなんですよ。エネルギーがなければ発展も成長もあり得ない。しかも、その中で、日本という国は資源小国、そういうこともしっかり踏まえた上で、これからの原発のあり方、そしてそれを情緒的に、感情的に語るのではなくて、まさに冷静に、人間は理性があるわけですから、理性に基づいて、こうしたものを冷静に議論していくということが非常に大事ではないかな、このように思っているわけであります。

 そこで、経済産業大臣、今般出されましたエネルギー基本計画、原発につきましても、これからの代替エネルギーにつきましても、多様化あるいはリスク分散、そして我が国独自の資源開発等々を含めていろいろ書かれておりますけれども、きょうはせっかくの機会でありますから、私に対してではなくて、国民の皆さんに対して、こういうことが基本にあるよということをできるだけ簡明に、わかりやすく御説明いただければと思います。

    〔委員長退席、上杉委員長代理着席〕

茂木国務大臣 藤井先生は、民間の時代から資源エネルギー問題に取り組んでこられまして、この道の一番の専門家でありまして、御質問いただきまして本当にありがとうございます。

 まさに、国民の皆さんに、藤井先生はよく御存じのことでありますが、若干お話し申し上げたいのは、三・一一以降の新たなエネルギー制約のもとで、いかに安定供給を確保していくか、そしてまた、エネルギーのコスト、明らかに上がっているわけでありますから、これをいかに低減していくか、こういうことに重点を置いたときに、エネルギー源を確かに多様化していく、再生可能エネルギーであったりとか、さまざまな分野に力を入れていかなければならない。

 同時に、調達先、例えば石油でいいますと、今、八三%が中東に依存をしているということでありまして、この依存率を下げて、調達先を多角化する。たくさんのところから調達ができるようになりますと、バーゲニングパワーも消費国として高まってきますので、そういった取り組みもしっかりやっていきたいと思っております。

 同時に、こういったことをアベノミクスの成長戦略にもつなげていきたいと考えておりまして、電力システム改革を進めることによりまして、この分野に新しい事業の参入、こういったものが起こってくると考えております。さらには、再生可能エネルギー、省エネルギー、そしてスマートコミュニティー、地域での新しいエネルギー関連の産業の創出、雇用の拡大ということもできると思っております。

 そして、再生可能エネルギーの安定化を図っていくためには蓄電池が必要でありまして、これが今一兆円の市場でありますけれども、二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックのときには二十兆円になると言われておりまして、大型の蓄電池、日本が世界最先端の技術を持っております。こういうマーケットをとっていく。

 さらには、石炭を初めとしました高効率の火力発電。日本の技術、磯子のJパワーもそうなんですけれども、先生よく御案内のとおり、世界で最先端でありまして、日本の技術をアメリカ、中国、インドに応用しますと、それだけで年間CO2が十五億トン削減できる。日本全体で出しているCO2の量が十五億トンいきませんから、それぐらいの効果があるわけでありまして、こういった技術開発にも取り組んでいく。

 エネルギー制約を取り除く、同時にそれを成長につなげていく、こういったことをやってまいろうと思っております。

藤井(孝)委員 わかりました。

 まさに、日本の経済成長、それから国民生活を安定するために、エネルギー政策というのは国の根幹にかかわる政策である、そこをまず認識した上で今大臣からお話しいただきまして、また、蓄電池のことにつきましても、そういった、将来、成長戦略にも我が国の発展のためにも大変な、そして技術革新というのが進んでいるということも聞かせていただきまして、ありがとうございます。そういったきめ細かな、多様化する世の中で、ぜひ頑張っていただきたいなと思っております。

 そこで、私、昨年四月にも予算委員会の集中審議で質問をいたしました、総理にもお伺いしましたけれども、特に、アメリカがシェールガスを開発して、これを将来輸出するということであります。

 日本もアメリカから、先ほど言われたリスク分散、供給先を非常に、中東に八三%頼っているものをもうちょっと分散して、何かあったときにはそういったリスクヘッジするためには必要だということの中で、アメリカからの天然ガスの輸入について、どういう現状になっているか、ちょっと簡単に御説明いただけますか。

茂木国務大臣 アメリカにおきましては、二〇〇六年ぐらいからシェールガスの生産が始まっておりまして、相当なボリュームになっております。

 このシェールガス、今、日本が買っております石油連動のLNGと比べると、相当、三分の二ぐらいのコストで調達できるのではないかということでありまして、昨年、総理が訪米をされた際も、オバマ大統領に対して、実は日本の企業がかかわっているシェールガス、LNGのプロジェクトは四つございます。これの輸出承認がアメリカから必要でありまして、この要請を直接されました。私も、昨年は二度アメリカを訪問して、また、この一月にも、たまたまアブダビでモニーツ・アメリカのエネルギー省長官ともお会いして、再度要請いたしまして、この二月十一日時点で、四つのプロジェクトについて、全ての輸出承認がおりました。

 二〇一七年から、順次アメリカの方から日本の方にLNGが入ってくる。最終的には一千七百万トンということでありまして、日本の総輸入量が九千万トンでありますから、二割程度がかなり競争的な価格でアメリカから調達することが可能になってくる、このように見込んでおります。

藤井(孝)委員 同盟国のアメリカからLNGを輸入するということは大変結構なことだと思います。

 ただ、これは全てパナマ運河を通過するわけですね。そうしなければ、これはコストが高くなって、とても合わないということであります。最近、パナマでも、発注するパナマ政府と事業体との方で紛争がありまして、一時、改修計画が今ストップしている状態だということで、またそれが再開したというふうにも聞いております。

 これは外務大臣にお聞きした方がいいんじゃないかと思いますが、パナマ運河の周辺の政治情勢、先ほど茂木大臣も言われたように、ペルシャ湾のホルムズ海峡というのも、常に、中東の火薬庫と言われているぐらいのところでありますから、何かそこで一朝有事があった場合には、それがストップするわけですね、日本に対する石油にしろ、天然ガスにしろ。また、パナマ運河も、今のところ安定はしておりますけれども、ここがもしそういった紛争でストップするようなことになりますと、これもまた日本にとっては大変大きな打撃を受けるわけです。

 今現状で、パナマの周辺に対する政治状況というのはどういうものか、簡単に御説明いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、パナマ運河の拡張工事ですが、御指摘のように、先般、二月五日に、スペイン、ベルギーほかの企業で組織されております請負企業連合とパナマ政府との間の工事費増額をめぐる交渉の影響で、一時的に中断をされました。その後、二月二十日に再開されたということであります。

 パナマ運河の拡張工事につきましては、パナマ運河自体が、ちょうどことし、二〇一四年、運河が開通しましてから百周年を迎えるということで、ことし中の拡張工事終了を目指していましたが、現在のところ、拡張工事は約七割程度の進捗状況だと聞いております。パナマ政府としましても、二〇一五年に拡張工事終了はずれ込むという説明をしているという現状にあります。

 そして、パナマ運河自身は、御指摘のように、北米産のガスの輸入にとりまして大変重要な役割を果たすことになりますし、そもそも、我が国としましては、パナマ運河の主要利用国として、この拡張工事については大変大きな関心を持っておりまして、私自身も、昨年五月、日本の外務大臣としましては初めてパナマを訪問させていただきまして、現地を視察させていただきました。日本の企業の利用につきまして、パナマ政府側の協力を要請するなどしてきたところであります。

 パナマ政府、そしてパナマの国の状況につきましては、ことし大統領選挙が予定されてはおりますが、活力ある中南米の中でも特に安定的成長を続けていると認識をしております。

 ちょうど来週、パナマのアルバレス・デ・ソト外相が日本を訪問する予定になっております。ぜひその際に、しっかりと意見交換、情報交換を行いまして、今後の見通しにつきましても確認をしたいと考えています。

藤井(孝)委員 後ほどちょっと触れると思うんですけれども、よく、日本のシーレーンをしっかり守っていこうと。シーレーンというと、ペルシャ湾から、インド洋から、そしてシナ海というルートを考えるんですけれども、二〇一七年からいよいよ本格的にアメリカからLNGを、しかも、総輸入量の二〇%、将来はもっとふえるかもしれない。

 そうすると、あのパナマ運河に一朝有事があったときに、それをどういうふうに安定的に、供給側の、通過する、利用させていただくパナマ政府との友好関係、互恵関係といいますか、そういったことも含めて、日本のエネルギーというのは、まさに最初に私が申し上げたように、資源小国であればあるほどリスク分散をしなきゃいけないけれども、しかし、そういった関係する諸国との友好関係といいますか互恵関係、そういうものが非常に大事であるということをぜひまたしっかりと、今度パナマからいらっしゃるのは外務大臣ですか、ぜひその点についてもしっかりとした議論をしていただきたいと思っております。

 そこで、総理、ちょっと総理に今度はお伺いしますが、四月にアメリカのオバマ大統領が訪日される、それから八月にはプーチン大統領が訪日されるというふうに聞いております。

 当然、アメリカとの関係は、先ほど来質問がありますように、TPPの問題、大変重要な課題でありますし、プーチンとの会談では北方領土の問題等々あります、重要な課題がある。

 しかし一方では、今言ったような、アメリカからの天然ガスを含めたエネルギー源の供給、そういった問題についてきっとお話しされると思います。また、ロシアについては、サハリンからの天然ガス、LNGを輸入する、開発するというのは、こういったことも当然出てくると思いますし、相手側からもきっとそういった要望が出てくると思いますけれども、その点について基本的にどういうふうに考えておられるか、総理の所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど来、藤井委員が指摘をしておられますように、日本に対するエネルギー供給先は現在その多くを中東地域に頼っているわけでございまして、確かにリスクを分散する必要がありますので、これをさらに分散していくべく、我々も努力をしていきたいと思います。

 そういう観点からも、また、安定的な価格、そして競争力のある価格ということもあり、昨年の二月の日米首脳会談において、米国側に対しても、米国産液化天然ガスの対日輸出が早期に承認されるよう働きかけを行ってきたわけでございますが、その結果、現時点で、日本企業が関与している米国LNGプロジェクト全四件は全て輸出承認を得ることができました。また、こうしたLNGを埋蔵している州の上院議員からも、それぞれ自分のところをぜひ日本は輸入してもらいたい、そういう働きかけも受けているわけでございます。

 そしてまた、先般、ソチにおいて、日ロ首脳会談におきましては、ウラジオストクやサハリンにおいて新たに計画されているLNGプロジェクト等、日本企業が関与する個別案件についてプーチン大統領と意見交換を行ったところでございまして、協力を進めていくことにおいて確認をすることができました。

 このように、米国そしてロシア、それぞれとそうした交渉を進めていくことによって、いわば買い手である日本の立場はより強化されていくことになっていく。いわば、価格についても我々買い手である日本も選択肢を持つことができるということにだんだんなりつつあるということは申し上げておきたいと思います。

 四月下旬のオバマ大統領の来日の際に、あるいはまた、秋に予定されておりますプーチン大統領の訪日の際に、今御指摘をいただいたような議題についても、御指摘を踏まえながら検討していきたいと思っております。

藤井(孝)委員 せっかくの重要な首脳会談になるわけですから、資源外交の一環としてもぜひよろしくお願いいたしたいと思っております。

 さて、時間がだんだん進んでまいりましたので、基本計画の中に、自国の自主資源開発というのがありますね。この中にいろいろあるわけでありますけれども、特にメタンハイドレート、これに対する期待感が非常に大きいということが言われております。

 メタンハイドレート、これは砂層型と表層型と二つありますが、これについての今現在の開発状況。そして、私の認識では、これの開発については日本が最先端を行っている。きょうあすすぐにこれが商業化されるとは思っていませんけれども、現状と、大体どういったスケジュールでもって、せっかくの貴重なメタンハイドレートについて、ぜひ担当の経産大臣からの答弁をお願いしたいと思います。

茂木国務大臣 我が国に存在します石油であったりとか天然ガスは大変貴重な国内資源でありまして、中でも、藤井委員の方から御指摘いただきましたメタンハイドレート、これは日本近海での埋蔵が確認をされております。先生御存じのとおり、メタンガスと水が低温、高圧の状態で結晶化した物質でありまして、これをでき得れば日本における第二のシェールガスにしていきたい、こういう思いで今取り組みをしております。

 御指摘いただきましたように、砂層型と表層型、二つあるわけでありますが、政府としては、昨年の三月に、太平洋側の渥美半島から志摩半島の沖合で、世界初となります砂層型のメタンハイドレートガスの生産実験を実施したところでありまして、今後、長期間、安定的なガス生産に必要な技術開発であったりとか、生産コストをいかに下げていくか、重要な課題を乗り越えましてしっかり取り組んで、平成三十年度までの商業化に向けた技術開発、こういったものを目指していきたい、そのように考えております。

 一方、表層型のメタンハイドレートにつきましては、現在、資源量の把握がまだ課題でありまして、昨年の夏から日本海側で、表層型メタンハイドレートの資源量把握に向けた調査を開始したところであります。私も映像で見たんですけれども、見えるんですね、相当、白いのが。あるんだなという感じを持ったところでありますけれども、こういったものをしっかりやっていく。

 国産エネルギーを確保する、委員御指摘のように極めて重要でありまして、そこの中でも、このメタンハイドレート、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

藤井(孝)委員 これは、本当に今、日本が最先端の開発技術を持って取り組んでいるということでありますから、経産大臣、しっかりと、今、平成三十年をめどに商業化をしていきたいということで、できるだけ、まあ、急げといってもなかなか、ハードル、いろいろな乗り越えなきゃいけない技術的な問題等々ありますし、またコストの問題もありますから、ぜひその点についても積極的に取り組んでもらいたいと思います。あと、そのほか、地熱の利用であるとかいろいろ、国産型の中で、地熱を開発するということについてもぜひしっかり取り組んでもらいたいと思っております。

 ここで、パネルをちょっと出させていただきます。また、お手元に資料を配付させていただいておりますが、実は、日本にも今、メタンハイドレートとは別に、南関東に大変大きな天然ガス田があるんですね。これは、千葉県を中心として埼玉、東京も一部その範囲に入るんですけれども、実際、千葉県で開発が進んでいるわけであります。

 今、このパネルのように、お手元の地図があります、この赤い線のところがもうパイプラインが引かれて、そして実際に生産されている。大体十社程度の開発業者が、主に千葉県の都市ガスに対して供給しているということであります。

 そういう中で、現在、可採埋蔵量が、参考資料にもありますように、三千六百八十五億立米、毎年大体四・六億立米ぐらいを生産しているわけでありますから、それでいきますと、大体八百年ぐらいの可採埋蔵量があると言われているわけであります。非常に貴重な我が国の地下資源が、千葉県、足元にあるわけですね。

 今、これは十社程度で生産しているわけでありますけれども、しかし、問題ももちろんある。これは何かといったら、地盤沈下が問題だ。ですから、地盤沈下があるから、千葉県と業者の間で規制を設けて生産しているという状況なんです。

 しかし、地盤沈下を食いとめるためには、海水と、地層の中に含まれている天然ガス、メタンガスと水を分離すればいいんですけれども、そういうことに関しまして、いろいろ日本の技術というのは非常に発達しておりまして、ガス田の掘削したときのパイプ、気体分離膜というものを今開発途中なんですね。もしこれが開発されて成功しますと、ガス田の地層のところを掘削したときに水は通さないけれどもガスだけは通すというような技術がもし開発されれば、一気に生産量も、地盤沈下もなくなるような形の中で開発されるということであります。

 こういったことを踏まえて、経産大臣、このことについて、もう既に御承知だったとは思いますけれども、千葉県を中心とした天然ガス田についての調査状況、それから地方に対する考え方がどうであるかということをお聞きできればと思っています。

茂木国務大臣 今お示しをいただいております、千葉県の茂原市を中心とします南関東ガス田、御指摘のように、地下水の取水によります地盤沈下の影響等々を考慮しながら開発を進めていかなきゃならない、生産を進めていくという状況であります。

 私は、委員御指摘のように、技術進歩というのはあるんだと思っております。例えば、十年ぐらい前、十数年前、アメリカのシェールガスも、埋蔵量はわかっていたんですね、ところが、技術がないために掘り出せない。千三百メートルぐらいのところにパイプを入れていきまして、最後のところでカーブをさせてシェール層に水で亀裂を入れまして、その亀裂が塞がらないように、そこを砂と化学物質で埋めることによって、シェールが半永久的に出るような構造をつくるということをやってきたわけであります。

 それぞれ、メタンハイドレートにしましても、そしてまたガス田の問題にしましても、技術的な課題がはっきりしてきましたら、それから、コスト的に見合うかどうか、こういう課題が見えてきましたら、それを乗り越えるための技術開発はできると思いますし、国としても、そういった民間の努力等をできる限り支援してまいりたいと思っております。

藤井(孝)委員 今、まさに私が次の質問で聞こうとしました、いわゆるシェールガスも、これも本当に、埋蔵量は確認されていたけれども、それを自然を破壊することなくできる技術が、アメリカがこれを開発したことによって一気にアメリカが資源輸出国になっていく、そういう劇的な変化があります。

 我が足元にそれだけの天然ガス田があるのであって、まさに、分離膜ができれば、一気にこれが、これからの代替エネルギー、原発に依存しなくとも我が国にもこういった自然のエネルギー源があるんだということをあえて私は指摘して、ぜひこれから推進していただきたいと思っております。

 もう時間が参りましたので、締めくくりに行きたいと思っております。

 総理、総理からもいろいろ、エネルギー資源外交については積極的に行動していただいて、大変心強く思っている次第であります。

 冒頭にも申し上げましたように、我が国の置かれている立場というのをしっかり踏まえますと、資源外交というのは非常に我が国の根幹をなすものであるということは何度も申し上げましたと同時に、原発との問題、バランス、そういったものを、先ほど来いろいろ質問がありましたけれども、これを情緒的に、感情的に議論するのではなくて、やはり人間が開発した原子核でありますから、平和的には原子力発電なんていうのが非常にクリーンなエネルギーだ、CO2を排出しない、そういう部分もありますけれども、一方では核爆弾という、大変恐ろしい、軍事にも利用されるということなので、これは両面持っています。そういった中で、だからといって、余りにも、これは恐ろしい、恐ろしいといってこれを避けているのではなくて、そういう中で、人間の理性、それから科学に対する、もっと真正面から、そして、どうしたらもっと安全になるのか、どうしたらこれが克服できるのかということをしっかりと踏まえて、これからの日本のエネルギー政策というのをやっていかなきゃならない、このように思っている次第であります。

 そういった意味で、最後に総理から、これからのエネルギー資源外交についての取り組みについて、改めて所見を伺えればと思っております。

安倍内閣総理大臣 豊かな国民生活を維持していくためにも、日本の経済を発展させていく必要があるわけでありますし、経済を成長させていく必要があります。そのためにも、安価で安定的な電力の供給、そのためのエネルギー、これは必須になるわけでございます。

 残念ながら、まだ再生可能エネルギー等を含めて国産、準国産のエネルギーは少ないわけでございますが、この分野においても、イノベーションによって再生可能エネルギーの比率を上げていくべく、国家資源を投入していく努力をしていきたいと思います。

 と同時に、先ほどもお話をさせていただきましたように、石油、ガス等の、日本に対してそうしたエネルギーを供給してくれる国々の選択肢をふやしていくことによって、そしてまた、現在は、ホルムズ海峡、そしてアラビア海、インド洋を通って日本に入ってくる、そうしたエネルギーの比率が大変高いわけでございますが、なるべく分散していくことによって、それはリスクを分散していくことにもつながり、日本のエネルギーの輸入をより安定的なものにしていくわけでございまして、そのための外交を展開していきたい。

 ちなみに、きのうは、UAEの皇太子殿下が来日をされまして、首脳会談、晩さん会を行ったところでございますが、このUAEはGCC諸国の一国でありますが、安定的な供給をしていただいているわけでございます。そうした伝統的な日本に対する供給国も大切にすることは当然のことでございまして、その観点からも、昨年、GCC諸国を全て訪問したわけでございます。

 それにあわせて、新たな日本への供給先、選択肢をふやしていくべく努力を重ねていきたい、このように思います。

藤井(孝)委員 ありがとうございました。終わります。

上杉委員長代理 これにて村岡君、今井君、足立君、藤井君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫でございます。

 まず、みんなの党は、TPP推進、そして新規原発設置を禁止、市場メカニズムを通じた退出等を含め二〇二〇年代の原発ゼロを国家目標として実現すること、また、天下り禁止や公務員制度改革等をアジェンダにしている政党でございます。そのことを踏まえて、質問に入らせていただきたいと思います。

 私なりにこれまでNHK問題を取り扱ってまいりましたが、今パネルを用意しましたけれども、NHKの実態、これは私の個人的な考え方で書かせていただきましたが、この中でまず最初に掲げたのは、「約束を果たさないNHK」ということであります。

 これも、何度となく、予算委員会でも総務委員会でも議論をさせていただきました。

 これまでいわゆるNHKの不祥事があったことによって、当時の総務大臣、現菅官房長官が、受信料の未納がふえてきたので、まず、責任をとって、値下げをして還元をしようということを提案されてきたわけであります。

 そして、結果的に、紆余曲折がありましたけれども、NHK出身の会長から財界出身の福地会長にかわりました。そして、その福地会長が、国会の場でも、一〇%の値下げを還元としてお約束しますということを言われたわけです。ところが、なかなかNHKの執行部はそれをうんと言わなかったものですから、かんかんがくがく、いろいろな議論の末、一〇%の受信料の値下げを七%にしてしまったわけです。そのときの中身が、あとの残りの三%の中身がまだまだ値下げをされていない。だから、まず一番に「約束を果たさないNHK」と書かせていただきました。

 そこで、NHKの会長に御質問をさせていただきたいと思います。

 この残りの三%、きょうテレビで見られている方々に対して、三%の値下げについて、約束どおり値下げを実行するお気持ちはございませんか。

籾井参考人 お答えいたします。

 前経営計画でお約束しました受信料収入の一〇%還元につきましては、その前提条件として、経営計画に明記された、社会経済情勢の変化や収支の状況などを十分考慮するということとしておりました。

 値下げが提起されておりました当初、これは平成二十年でございますが、そのときの想定より受信料の全額免除件数が大幅に増加して大きな収入の減少が見込まれたことや、東日本大震災を踏まえて公共放送の機能を強化するための設備投資が増大したことなどを受けまして、残りの財源を全て受信料額の値下げに充てることとしたもので、最大限の値下げ額を決定したと聞いております。

 受信料の値下げにつきましては、当時の執行部と経営委員会の間で、真摯な、真面目な議論の中で経営の責任として決めたもので、我々としましては、前会長の引き継ぎもあり、区切りがついていることだと考えております。

佐藤(正)委員 総務委員会でも、会長、この議論をさせていただきました。

 そこで、今会長が申された、一生懸命圧縮をして、あと三%厳しいんだ、その厳しい三%が、この図にあるように、今答弁されましたけれども、リーマン・ショック等で生活保護の受給者がふえた、受給世帯がふえた等々で、この分を、この三%のいわゆる二・四%分に充てる。

 しかし、よく考えてみたら、受信料をお支払いになっている方々が生活保護世帯の数がふえた方々の免除分を負担することが、なぜ値下げ、還元になるのか。おかしいと思いませんか。会長、どうでしょうか。

籾井参考人 先ほどの答弁の中で、減った部分というのは、減収でございます。したがいまして、収入が減った分だけ値下げができなかったということでございます。

佐藤(正)委員 細かい数字になるので余り言いたくないんですけれども、そのいわゆる四百二億円の実態が、実はもっと減収が、実は減っているんですよ。

 これを何度も言ってきましたけれども、例えば、NHKが言っている生活保護受給者の世帯数、免除の世帯数が、十七万件、十八万件とふえていく。ところが、NHKの資料を見ると、しっかり出ているのは、実は七万件なんです。十万件の誤差があるんです。それだけで減収は十万件分、逆に言えば、減るはずなんです。そういった実態。

 さらには、いわゆる東日本大震災によってこうむるであろう免除世帯、これについても、実は、NHKは、三十一億円だったんですが、十八億円でよかったということも、NHKの資料で、事業計画の中で出してある。

 要するに、これだけふえるから、この分値下げはできませんよと言っているのが、ふたをあけてみたら、実はその数字が違う。こういうところが、新会長の経営者として見てきた中で、しっかりこれから判断をしていただかなければならないと思います。

 私は、今回、NHKの会長は発言問題でいろいろ言われていますが、それよりも何よりも、これまでNHKが、理事会が全てNHK出身、そこに民間の経験者が入ってくることはいいことだと思います。その中でしっかりNHKの体質改善を私は実はやっていただきたい、こう思うんです。

 ですから、籾井会長にはそういう部分でこれまで御質問をさせていただきました。これからもその感覚でやっていただきたいと思います。大きな抵抗があると思いますよ。今も抵抗に、いろいろな部分で、御自身の発言以外のところであるんだろうと思いますが、ここはしっかり、歯を食いしばってでも私は使命を完遂していただきたいと思っています。

 そこで、私が今度御質問させていただきたいのは、総務大臣、国はNHKに交付金をお出しになっていますが、この交付金の目的は一体何でしょうか。

新藤国務大臣 これは、NHKの国際放送交付金であります。

 NHKの国際放送については、日本のプレゼンスを外国に向けて高めていく、つまり、私たちの国の魅力を世界の人たちに知ってもらう。また、世界の人たちは、日本を知りたいと思っている人がたくさんいます。そういう人たちに私たちの国の状況をお知らせする、こういうことであります。その充実強化をしていこう、こういうことであります。

 国際放送は、我が国の見解や国情を正しく外国に伝えること、海外同胞に災害、事件等を迅速に伝えることなどの役割を担っています。公共放送機関たるNHKのみに任せるのでは必ずしも十分とは言えず、国としても必要な支援を行う必要がある、こういうことで、要請放送制度というものを定めてあります。平成十九年の放送法の改正によりまして、要請放送制度というものを、それまでの命令放送から改めましたけれども、その際に、外国人向けのテレビ国際放送の強化も行いました。

 平成十九年に、初めて、テレビ国際放送に係る交付金三億円から始まりましたけれども、今、このテレビ国際放送に重点的に予算を振り向けることとして、二十六年度では二十四・九億円、そして、ラジオと合わせますと三十四・五億円を政府予算案で計上させていただいております。

佐藤(正)委員 そこで、先ほどの点でもう一回、会長、嫌ごとを言わせてもらいますけれども、総務委員会では、先ほどのこの還元圧縮幅は、籾井会長は私の質問に対して、圧縮できたものは還元させていただきます、こう言われたので、たった二日前ですよ、二日前のことをしっかりと実行してほしいんですよ。これはもう答弁は要りませんけれども、しっかり胸に刻んで、自分の吐いた言葉はしっかりと守ってください。それをお願いしたいと思います。

 それから、今、安倍総理も、国際放送に力を入れる、我々もそうだと思います。

 そこで、この国際放送を放映するにしても、そもそも、NHKは受信料がなければ、交付金だけではできません。この交付金はどういうものであるか、御説明を願いたいと思います。経営委員長がよろしいんでしょうか、会長がよろしいでしょうか、どちらがよろしいですか。どちらでも結構です。

浜田参考人 ただいまの御質問は、受信料ということでよろしいですね。(佐藤(正)委員「受信料」と呼ぶ)はい。

 受信料は、放送法第六十四条により、放送の受信設備を設置した方と放送受信契約を締結し、お支払いいただいているものでございます。これは、法律により国が協会に徴収権を認めた、協会の維持運営のために視聴者の皆様に御負担いただく特殊な負担金であると認識をしております。

佐藤(正)委員 最初にパネルを上げましたけれども、この一番の中に、放送法六十四条で、テレビ受信機がある人は皆、受信契約の義務があるということであります。その分、今経営委員長が言われたように、しっかりとした放送をしていただかなければなりません。

 そこで、これまでいろいろ言ってきましたけれども、NHKがそもそもこれだけ努力をして、これだけ節減をした、それでもだめだったから、七%の値引きにしてください。民間だったら当たり前のことなんです。

 そこでお尋ねをしたいのは、資料六、総務委員会でもお尋ねをしたんですけれども、実は、先ほど言った福地会長のときから、突然と言っていいのかどうかわかりませんが、このNHKの資料からいくと、企業年金の積み立て不足分、これが、福地会長が平成二十年だったと思いますけれども、そのころにちょうど、一〇%の値下げをという議論がやっと始まるころなんですけれども、そのときに、実は、二十年から始まりましたので二十一年、この赤い字で書いてあるのがNHKの企業年金の積み立て不足分です。これまでの数字と、急に、五百億円を超える積み立て不足金をNHKから出しているんですね。

 この出している五百十三億円、そして五百三十五億円、五百五十二億円、六百三十三億円、このお金は、この原資は一体何ですか。会長、よろしくお願いします。

籾井参考人 積立金は、経営安定用の資金と、それからセンターの再建の資金、こういう中で、我々は、経営安定の資金は大体一割前後と……(佐藤(正)委員「ごめんなさい、退職給付金」と呼ぶ)それで、それが五百何十億というのは、それを放送センターの方に移動したということで、突然そういうふうになっているんだと私は思います。

佐藤(正)委員 後ろの方、ちゃんと言ってくれないと、また違う答弁したよ。この間から総務委員会でも言っているけれども、後ろの方は何か違うことを会長にわざと言っているんじゃないの。そう思えてならない、僕は。

 要するに、積み立て、給付金の問題ですから、この財源は何ですかと聞いているんです、財源。

籾井参考人 失礼いたしました。

 事業収入でございます。

佐藤(正)委員 事業収入ということは、受信料も入った総額の事業収入でよろしいんですか。いいですね。いいならいいです。

 だったら、要するに受信料、NHKは九七%は受信料で賄っています。あと残りの三%程度が事業収入。その事業収入の中に、先ほど総務大臣がお答えになった交付金も入っているんですよ。ということは、この中には、受信料以外に、国民の税金でも返していることになるんですよ、積み立て不足に積んでいることになるんですよ。

 総務大臣、どう思われますか。

新藤国務大臣 事業収入の使途については、これは適切に、厳正に運用してもらいたい、このように考えております。

佐藤(正)委員 先ほど、交付金の目的は総務大臣からお答えがありました。しかし、こうやって現に、NHKの企業年金のいわゆる足らない、過不足分に税金まで投入をされている。ここはしっかり考え直さなきゃいけないと私は思いますよ。

 さらに言えるのは、このNHKの企業年金の積み立て不足。

 民間だったら、今いろいろな、例えば小さなタクシー会社が何社も集まってきて、組合で企業年金を積み立てる。ところが、あのリーマン・ショック以降、いわゆる確定利回りが目測を誤った、そのことによって年金が払えなくなる、それによって企業が倒産していったり、いろいろな苦労をしています。

 しかし、NHKの場合は、籾井会長は就任する前にこんなコメントを出しましたよ。やはり外から経営者として入っていかないと、親方日の丸であってはならないと。私はまさにそのとおりだと思います。この実態は、まさに親方日の丸の体質なんですよ。

 何度も申し上げますが、籾井会長、そこにメスを入れてくれませんか。どうですか。

籾井参考人 お答えいたします。

 やはり経営者としては、常に、経営の合理化であるとかコストセーブであるとか、それから、より効率的な働くシステムを導入するとか、こういうことは、いつだからやるということじゃない、コンスタントにやらなきゃいかぬ部分だと私は承知しております。

 したがいまして、今、我々は、基本的には受信料で生活していると言ったらちょっとやぼったい言葉ですが、しているわけで、これは常に頭に置きながら、なおかつ、職員のコストはやはりコストなんです。したがいまして、年金につきましても、やはり我々は、大多数、九七%を占める受信料の中からでも職員の年金は払わざるを得ないという状況にあることは御理解いただけるというふうに思います。ほかに収入の道は、おっしゃいました、さっきの政府の交付金はありますけれども。

 そういうことで、我々は、一刻も早くこの積み立て赤字を解消すべくみんなで努力していきますし、コストも合理化を進めてまいります。どうぞよろしく御理解をお願いします。

佐藤(正)委員 要するに、私が言っているのは、もっともっとやるべきことがあるのではないかなと。そして、四月からは消費税の増税が、三%また上がる、こういうことを考えたときに、受信料をお支払いになっている方々にきちっとした説明ができるようにしてもらいたいんです。

 さらに、では今度は、資料四、NHKの天下りの実態です。

 NHKはこれだけたくさんの関連子会社を持っていますが、この関連子会社に何と約八割の方が、NHKを退職して天下っていくんですよ。そして、何と平均年収は約一千五百万円ぐらいです。この役員の平均年収を聞くのにも、NHKはなかなか出してくれなかった。こういう実態がある。

 さらには、次のパネル、これは勝手に私が名前をつけましたけれども、天下り循環システム。前副会長の流れを見ました。NHKの衛星ハイビジョン局担当局長から、そこを退職し、NHKの理事に入り、ここで一旦、担当局長で退職金をもらい、そして今度は、NHKの理事になったときに退職金をもらう。

 この最初の退職金については、NHKにお尋ねしましたが、個人のプライバシーということで、出していただけませんでした。NHKの理事の退職金については、総務委員会の理事の先生方が御協力していただいて、出せないと言われたものを出していただきました。これが、二年一カ月で一千四十三万円。

 そして、NHKエンタープライズ社長に、今度はこの子会社に、また行きます。そしてまた今度は、子会社を退職した後に、今度はNHKの副会長に、天下りというよりも天上がりするんです。そして、そこで三年一カ月で一千八百九十六万円の退職金をまたもらう。副会長の年収はたしか二千万を超えていたと思いますけれども。そして、またエンタープライズ特別主幹に戻る。これがNHKの天下り循環システムです。

 こういうことを繰り返していて、受信料を払っている国民の皆様だけは、三%、一〇%のうちの残りの三%を、値引きするというお約束をしておきながら、それをやらないというのはおかしいと思いませんか。まずこういうものをしっかりとNHKの中で改革をして、それでも、やはりすばらしい放送をつくるためには人材が必要だから、これだけの経費がかかるんですよということを真っ正面から言うのが民間だったら当たり前なんです。

 NHKは特殊法人です。実はもっともっと情報をしっかり開示しなきゃならない。しかし、たかだかこの退職金が幾らだというだけでも開示をしない。こんな体質を、籾井会長、変えてもらいたいんです。どうでしょうか。

籾井参考人 お答えいたします。

 NHKは、やはり放送法という法律によって縛られております。したがいまして、その範囲の中では、当然開示すべきは開示しますが、開示できない部分は、我々の意思にかかわらず、できないものはできないということがはっきりしておりますので、その点はお含み置きいただきたいというふうに思います。

佐藤(正)委員 それは理解できないですね。退職金なんて、公表することなんて、NHKの法律にないですよ、そんなもの、会長。後ろが要らぬことを言っているんじゃないの。

 会長は、本当は物すごく改革をやりたいと思っておると僕は思うんですよ。籾井会長。僕は何度も言いますが、これまでの会長の発言についてはいろいろな問題があったかもしれません。いろいろなことを言われています。しかし、それはそれとして、今はNHKの会長としての使命があるわけですよ。

 籾井会長は、この場でも、自分は全身全霊をかけてもやると国民に約束されたじゃありませんか。だから、私はあえてこういう質問をさせていただき、今までのNHKの体質を改善していただきたいというのが本意です。そして、国民と約束をしたことが守れる、約束を守れるNHK、NHKのためのNHKではなくて、国民の皆さんのためのNHKに変わってもらわなきゃ困るんです。

 再度、籾井会長の決意を聞かせていただきたいと思います。

籾井参考人 退職金については、放送法の中に計算法が入っていますので、それをごらんいただければいいと思いますが、NHKをどうするかという問題につきましては、私はしっかりと、先ほども申しましたように、やっていきたいというふうに思っています。

佐藤(正)委員 もう時間がありません。

 これまで、NHKの体質、実態を質問させていただきました。やはり、四月から、消費税増税三%、上がるんです。あと残り三%値引きを約束しているんです。三%と三%、たまたま合致するんですね。ぜひ、三年計画だから、一回決めたからこの三年間はずっと一緒じゃなきゃならないということはないんですよ。財源がまだ努力して出るんだったら、やっていただきたいと思います。

 最後になりますが、総理、今のやりとりをお聞きになって、総理はどのように思われますか。それを聞いて質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 放送事業者の発言について、私は、コメントすることは差し控えさせていただきたい、このように思いますが、放送法にのっとって、そして、視聴者の皆様から、国民の皆様からお預かりしたお金でありますから、しっかりと改革マインドを持って取り組んでいただくことを期待しております。

佐藤(正)委員 もう時間が参りましたので、林大臣、申しわけありません。貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。総務大臣、ありがとうございました。

 質問を終わります。

上杉委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀です。

 本日は、TPP・エネルギー等集中審議ということで、TPP、特に農業等の件について中心にお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、TPPということですので、ちょっと過去の話になって恐縮ではありますが、ぜひひとつお聞きしておきたいことがあります。

 二〇一二年の衆議院総選挙においては、私もそうです、この結いの党の議員、そして、みんなの党の議員、日本維新の会の議員、みんなが、TPP交渉参加には賛成だと明確に訴えながら選挙をやらせていただきました。一方で、特に与党の、自民党の皆さんは、政府が、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対するという政策を掲げられたと思います。

 ただ、一方で、この予算委員会でもそうですし、私がいつも質疑をさせていただく農林水産委員会でも何度か話題にはなっていると思いますが、実際には、与党の議員の皆さんで、反対と明確に意思表示をして選挙を戦われた方が多かったということになっていると思います。

 ぜひ、まず総理に、政権獲得から一年余りたっているわけですが、この間、TPP交渉に参加をし、そして推進というか、これから、もちろん条件によってはということになるでしょうが、妥結をしていこうということになったことについて、どのように説明をしているかというのを教えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私ども自由民主党のTPPに対する公約については、今まで何回か御紹介させていただいておりますように、さきの衆議院選挙で公約した公約については、聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対する、これが党としての公約でございますし、また、選挙戦を通じて、さまざまな場において、テレビ局においての党首討論等々において、私はこのことを申し上げてきたわけでございます。

 そして、その上において、昨年の二月のオバマ大統領との日米首脳会談におきまして合意をいたしました共同声明がございますが、その中で、日本には一定の農産品、そして米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間の貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないということが文書で合意をされたわけでございます。よって、聖域なき関税撤廃を前提としているものではないということがはっきりしたという中において、交渉参加を決断したところでございます。

 よって、まさに私どもが一昨年お約束した公約をたがえることはなく、交渉に参加をしたわけでございますが、その際、記者会見も行いまして、成長センターであるアジア太平洋地域に新たな経済圏をつくるTPPにおいて、我が国は、その中で主導的な役割を果たしながら、ルールづくりにも参加をして、そして、そのことによって地域そして日本をより豊かにする、地域に活力を与えていく、そして地域に富をもたらす、そうしたものになっていく可能性の大きいTPPの妥結に向けて努力をしていく、これは国家百年の計である、このように申し上げたところでございます。

林(宙)委員 この一年間、いろいろな団体の主張を聞いていても、やはり、特にTPPに強く反対をされていた団体については、何となく、約束が違うんじゃないかという声が大きいように私は思っていますが、安倍総理は、今御説明いただいた内容が、しっかりとその方々に伝わり、そして理解をしていただいているとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 当然、それぞれの団体にはそれぞれの団体の立場がございますが、私どもの公約は、今申し上げましたように、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上TPP交渉に参加することについては反対をする、これが私たちの公約の、基本的に全てでございます。その上において、J―ファイルにおいて、五項目についてしっかりと守っていくという決意を示しているわけでございます。

 その中において、農協を初め農業者の方々の、しっかりとこの約束を守ってもらいたいという要望を受けながら、また、衆参の農水委員会の決議を受けまして、今、厳しい交渉を展開しているわけでございます。

 いずれにせよ、私たちは、政府・与党として、このアジア太平洋地域に新しい二十一世紀型の経済圏をつくっていく、そして、ここでのルールが将来のRCEPそしてFTAAPにもつながっていくわけでありますから、まさに、ここで日本が主導的な役割を担い、そしてルールづくりに参加することは国益にかなう、このように考えておりますし、アジア太平洋地域において、物だけではなくて、知恵や、そして人や、そうしたものが行き交う経済圏をつくっていくことは、間違いなく地域に富をもたらす、このように確信をしているところでございます。

林(宙)委員 今の御説明は、私たちには非常にすとんとくるものがあります。であれば、そういったことを初めから御主張されながら戦うのも一つだったんじゃないのかなと私自身は思っていますが、既に過去のことですし、今まさに交渉が進んできて、この先どうなるかという非常にセンシティブなところだと思いますので、そのあたりは、私たちも、この交渉参加、成功という方向に行けるように、ぜひ頑張らせていただきたいと思っています。

 ここまでのTPPの議論で、特に農林水産委員会では何度も何度も話題になっているわけですが、総理はよく、守るべきものは守り、そして攻めるべきものは攻めると、きょうの午前中の答弁等でもおっしゃっていたと思います。

 この聖域って何でしょうねというお話は、いろいろなところで総理も聞かれ、そして、交渉事ですからなかなかそれは明らかにできぬということで御説明をされてきたのではないのかなと思うんです。

 では、これは甘利大臣にお伺いしますが、守るって、どういう意味なんでしょうか。聖域についてはわかりました。守る、これは各辞書なんかを調べてみると、大体が、侵害されないように防ぐというような感じの意味なんだ、そういう趣旨で書かれていますね。

 ということは、いわゆる聖域と呼ばれるものに対して、関税ですとか国家貿易ですとか、そういったもので保護しているものは、これは断固として譲らない、そういう意味になるんじゃないのかと私は考えていますが、甘利大臣、いかがでしょう。

甘利国務大臣 関税なりあるいは国家貿易なり、現状の貿易の仕組みは、それによって守られている国内産業が継続的に続いていくようにというための防護壁だと思います。その趣旨がきちっと継続していくように措置をとっていくということを、守るというふうな表現をしているんだと思います。

 攻めるのは、日本が貿易相手国に対して、入っていけないような障害があるとしたら、それを除外する要求を先方に主張していく、これが、攻めていくということになろうというふうに思っております。

    〔上杉委員長代理退席、森山委員長代理着席〕

林(宙)委員 今の御答弁ですと、私は、断固として譲らないという意味で守るというふうにとっていますが、そうではないというふうに聞こえますけれども、甘利大臣、私の理解でよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 守るというのは、その政策意図が達成されるようにきちっとガードをしていくということだと思います。

 よくお話が出るんですけれども、現状から全く譲らない、日本がとっているいろいろな体制があります、それを何一つ譲らないとしたら、交渉をする意味はないし、貿易協定に入る意味はないのであります。日本の持っているセンシティビティーを結果として守れたと言えるような交渉をしながら、相手に対しての間口を広げていくということになるわけであります。

 お互いが現状から一歩も変わりませんということであるならば、貿易交渉というのは成り立たないわけでありまして、センシティブな部分、それを守るということは、それに携わっている人たちがきちんと再生産ができるような体制をしっかりとっていくということでありまして、そういう意味で、相手からの要求については、趣旨を踏まえて、守るべきは守るということになろうかと思います。

林(宙)委員 守るべきは守るというのは、裏を返すと、守らないものは守らないというふうにとることもできるわけですね。そのあたりを余り深く突っ込むつもりはありませんが。

 そうすると、これから何を守っていくんだというお話になったときに、最大の問題というか、一番やはり焦点になってくるのは、特に農林水産業、そういったところになってくると思います。

 我が党としては、かねてから、関税というものに頼らず、それをできる限り下げる方策として、直接支払い、要は財政負担というものになってしまいますが、それに切りかえてはどうかということで主張をさせていただいているので、きょうは、それをまずお伺いしたいと思います。

 最初の資料ですね。きょうは小麦の例をとって、本当はもっと難しい、複雑な内容ですけれども、概念をいったらこういう内容ですよということで、絵を描かせていただきました。

 上の図が今の状態ですね。小麦の国内生産分と輸入分、大体毎年このぐらい、八割五分ぐらいが輸入だ、その前後で推移していますよということでやっていますが、輸入小麦の価格は当然国産より安いですから、それだと保護ができないということで、関税など、そういった措置をもって価格を上げるということで保護をしています。

 上の青い網かけの部分が上がったことによって、これは、小麦を最終的に買う人は消費者ですから、消費者負担ということになっています。

 これを、私たちは、国内の生産者に直接その差額、またはある程度の分を直接交付金を支払うことで、関税あるいはそれに類する国家貿易等々を撤廃することで、価格を下げようじゃないかというお話をしているのが、その下です。

 そうすると、上の青い網かけの部分から、下に下がりまして、小麦価格は赤い線になりますけれども、国内生産の上を赤くしました。この直接支払いという分が、今度は財政負担、税金での負担という形になり、一方で、輸入のところ、上にあった、関税によって上増しされた消費者負担は、これに関しては消滅するというような図式になっています。

 ここまで、こういったお話をさせていただいて、実は先日、農林水産委員会では、今度はこれは小麦ではなくて別の農産物でお話をさせていただきましたが、まず、林農林水産大臣、こういったスキームについては、どのように御見識をお持ちでしょうか。

林国務大臣 今、林委員がみずからもおっしゃったように、若干この図は簡素化されておられますので、実際には、国内で生産をしたものは、輸入の小麦よりも、品質が違うものがございます。したがって、これが全部なくなったときに、同じ値段になるというわけではないというところも申し上げておきたいと思います。

 いずれにしても、おっしゃるように、仮に関税を撤廃したとしますと、消費者にとっては、現状よりも安く麦製品を購入できるという利益がある一方で、国内生産維持のための新たな納税者負担、こういうものが出てくるということでございますので、これは慎重に検討する必要があると思います。

 特に麦の場合ですが、外国産麦の国家貿易により徴収し、国内生産への直接支払いの財源、その図で言うと、八八の上の青いところですかね、このマークアップ収入が平均八百億円程度ということでございまして、この財源をどうするのかという問題がございます。

 それから、先ほどちょっと申し上げましたように、外国産麦に連動して国内産麦の取引価格が低下をするということで、小麦の場合はキロ当たり十七円ということでございますので、この分、直接支払い百五十億円ほど、さらに必要になるということでございまして、この財源をどうするか、こういう厳しい財政事情の中で国民の理解を得るのは大変難しいのではないかな、こういうふうに思っております。

 もう一つあるのは、原料の麦の話を今しておりますが、小麦製品、これも、関税がもし撤廃された場合は、今度は粉で入ってくる。こうなりますと、国内の製粉企業というのは、輸入の麦を買ってこれを製粉するわけですが、また、国内産麦の引き取りをしてもらって製粉をするということですが、これも国内で製粉することが成り立たなくなるということで、麦の国内生産自体にも影響が甚大に出る、こういうふうになるということでございます。

林(宙)委員 こういう話をすると、必ず財政負担、税金による負担が莫大になるからというお話をされるんですけれども、図で言うと、消費者で負担していた分が、完全にイコールとは言いませんが、ある意味、その分が丸々税負担に置きかわるというような、今、簡素化した図で言うとそういうことになりますよという意味なんですね。

 逆に考えると、では、財政負担をしたらそんなに莫大な負担になるんですよということは、今、消費者の皆さんが、最終的に小麦製品なり農産物製品を買うときにその分を負担しているということにほかならないわけですね。それをお認めになっているというふうに言ってもいいんだと思います。

 しかも、莫大な財政負担になるからやめた方がいいというふうに、事務方、役所の皆さんにも言われますが、事前に、では、どのぐらいの財政負担になるのか試算はあるのかとお伺いしたら、ないと言われました。

 その根拠がないのに、それは莫大過ぎるからというふうに言われるのも、それはどうなのかなというふうに私は考えています。

 林大臣は、その点については、どのようにお考えですか。できれば短くお願いします。

林国務大臣 必ずしも、今委員がおっしゃっている試算というのは何を意味するのかわかりませんが、私が申し上げているのは、もし委員がおっしゃるようにすればさっき申し上げたような金額が出てくるということは、申し上げたとおりでございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 きょうは基本的には米の話をこの後していこうと思っているんですが、なぜ小麦から入ったかというと、こういったケースがあるとわかりやすいかなというところがあるんです。

 もちろん、税金で負担ということになると、それは国民の皆さんにちゃんと説明をしなければいけませんが、輸入の分に対して消滅した分というのは、現状の輸入、国産シェアでいくと、直接支払いの分よりは金額としては大きいということになりますね。国民の皆さんが最終的に自分で買うときにお支払いしている分の負担ということと、税金で負担する分、トータルで考えたらそれは埋め合わせができますよ、そういう考え方に立っています。

 次の資料に行っていただきたいんですが、財政負担がもっと大きくなるんじゃないかという意味で、そうではないよ、消費者負担分で吸収できる分がある、小麦ですとか、そのほかの作物にもこういったケースがあります。

 二つ目に書かせていただいた直接支払いについてなんですけれども、例えば、ある一定規模以上の農地を耕作している、主業農家と言っていいのでしょうか、そういった方々に限定するとか、あるいは規模に応じて交付金を優遇していくとか、そういった政策を打つことで、ある程度その金額は減らすことができるんじゃないか。しかも、大規模化を進めることができますし、では、それで零細農家はこの交付金がもらえなくなって苦しいじゃないかというとそうではなくて、それは、今まさに農地中間管理機構などでやろうとしているように、土地を貸していただいて、土地を貸す人には地代をお支払いする、こういう制度が考えられてよろしいんじゃないのかなと思っています。

 なおかつ、今、大体、米は八百トンぐらい、年間の生産ですが……(発言する者あり)失礼しました、八百万トンですね。こういった交付金をやるときに、生産するものは原則的に自由ですよ、今政府がお考えになっていることと基本的にはそんなに変わらないと思います。

 そうすると、今まで生産調整、いわゆる減反というものを、減反と言っていいかわかりませんが、それをやるときに、減反してくれる、そのあいた水田で、では別の農産物をつくりましょうよということで交付金をお支払いしていたと思います。米には十アール当たり一・五万円、それに対して、大豆ですとか麦ですとか、そういったものは三万円とか、そういったことをやっていたと思いますが、基本的にそういうものが必要なくなるよ、あとは自由ですよということになれば、来年度、二十六年度予算で言うところの、水田を活用するための交付金ということで二千七百七十億円計上されています。それから、もともとの米に対しては千八百六十億円、これはもともと米に使うものということです。

 これでその財政負担というのはかなりカバーできる、有識者によっては、これで完全にカバーできるという計算をしている人もおります。私もでたらめを言っているわけじゃなくて、おととい、この予算委員会の公聴会に来ていただいた農水省OBの有識者の方も、やはりそのとき同じことをおっしゃっていました。

 ここまでこういったことで御説明させていただきますが、林大臣、これについてはどのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 ここにこのお金があったではないか、こういうことですが、まさにそれを、今回大きな四つの柱の見直しということで、多面的機能支払いということも含めて、また、今お話ししていただいた中間管理機構というものに対する費用ということで、大きくかじを切って、うまく予算を使うようにということでやっているわけでございます。

 今委員がおっしゃるように、今あるものをどこかに振りかえれば、そこがなくなるときには必ず振りかえが出ますけれども、最初におっしゃった麦のことでいいますと、ここがなくなったものについては、この間のパッケージで既に決めさせていただいておりますので、これが、今おっしゃった麦が、さっき八百億と申し上げましたが、そこに持っていけるのではないかというのは、ちょっと現実の財政事情からすれば、なかなか難しい御議論かなというふうにお聞きしました。

林(宙)委員 ただ一方で、こういったことに対してどういった計算をされているのかというのも、実は私は、政府側でどう考えているか、非常に興味があるんです。私たちも政策的にこういったことをお出しはしますけれども、これがどのぐらい現実的なことなのかということを今度反論としていただきたいなと思っているので、また農林水産委員会でこの辺はいろいろとやりとりさせていただきたいと思います。

 そうしますと、そもそものお話をお伺いしますが、生産調整をやめると政府の方から去年の秋に表明があったときに、私は、もともと生産調整をするというのは、その需給の調整も含めて、最終的には米の価格が下落しないようにやっていることだというふうに理解していました。ですので、そうなのかなと思っていたら、いや、米の価格は下げません、そのかわり、飼料用米ですとかそのほかの部分で、主食用米に使わない水田をそういった方向で使っていきましょう、そのときには普通の主食用米に対して七倍の交付金が必要な、最大で七倍、十万五千円ということになりますが、そういった形で飼料用米をつくっていきましょう、そういうことになったんですね。

 林大臣、いわゆる減反廃止というのは、価格維持、価格安定をやめることだと思っているんですが、大臣はどのようにお考えですか。

林国務大臣 ちょっと先ほど、この二千七百七十億円のところで、これを多面的機能というふうに申し上げましたが、委員が、一万五千円、水田に配っていると、これについて申し上げた、そこの部分を振りかえるということでございますので、ちょっと確認だけさせておいていただきたいと思います。

 いわゆる価格をどうするのか、こういうことでございますが、生産調整の見直し、いわゆる減反の廃止というのは、水田を減らす。特に狭義の減反というのは、昔つくっていたところをつくるなと言って、何もつくらないようなことがあったわけでございますが、そうではなくて、水田は重要な生産装置でありますので、これはフル活用しましょう。一方で、主食用の米の需要は減っていますね、こういうことでございますので、水田を活用して、需要のあるほかの作物、こういうものをつくっていただくようにしようということと、同時に、米の生産数量目標、これを政府が配分するということを、五年後を目途に、これに頼らずに、農業者がいろいろな条件の中で、マーケットを見ながら、みずからの経営判断で需要に応じて生産ができる環境整備を進めようということでございます。

 したがって、需給に応じて物をつくっていただけるということになれば、需給がどっちかの方に必ず行くということではなくて、需要に見合った供給を目指していく、こういうことになろうかと考えております。

林(宙)委員 ちょっと時間が残り少なくなってきましたので、今の御説明に対しては、毎回そうなんですね。

 需要と供給のバランスをとった、その結果として価格がこうなっているという御説明はよくいただくんですけれども、農水省のおつくりになっているパンフレット等々を見ますと、これは、パンフレットの名前が「米の生産調整を確実に実施しましょう!」というタイトルなんですが、その中に、米の下落に歯どめがかかりませんとか、今の価格を支えているのはこのように生産調整を実施している方々です、最後に、米価安定、経営安定のためには生産調整の確実な実行が不可欠です、こう書いてあるわけですね。

 そうすると、原因と結果が逆転しているんじゃないのかな、そういう説明になっているんじゃないのかなと思いますが、時間がないので、済みません、これは質問としては飛ばさせていただきたいというふうに思います。

 最後の質問に入らせていただきたいと思うんですが、きょうは、直接支払いということで御説明をさせていただきましたので、最後にちょっとまとめの意味も込めてお話をさせていただきます。

 直接支払い、消費者負担を納税者、税金負担に変えていくというものは、今大臣からも答弁があったように、まだまだ細かいところは詰めなければいけない、私もそうは思っています。

 ただ、少なくとも米に関して言えば、まず関税をなくすことができる。関税というか、保護措置、国境措置、これをなくすことができるという思想でいくと、今懸案のTPPの交渉でもかなり有利に立てるんじゃないのか。特に、ヨーロッパ等でもこういった制度を使っていますから、文句を言われる筋合いもないということが言えるわけですね。したがって、こういった意味でも意味があるんじゃないのかということ。

 それから、生産調整を廃止して農地をフルに活用するということは、今まで、米はこれ以上つくるなというようなことを言ってきましたが、米を中心に生産量がアップする、それによって、今総理も目指しておられる、輸出を強化するとか、あるいは食料自給率のアップ、それから食料安全保障、最近よく言われますけれども、こういったところに貢献しますし、多面的機能の維持にも役に立つんじゃないのか、本当の意味で攻めの農業になるんじゃないのかなと私たちは考えています。

 農業政策が考えるべきことというのは何なんでしょうかということですが、米とか農産物の価格を高く維持するということではないと私は思うんですよ。それによって得する人たちがいるかもしれませんが、その人たちのために農政はあるとは私は思っていません。農地をまず維持する、それによって食料を十分に確保する、さらには、災害に備えるとか、美しい風景を保つ、いわゆる多面的機能、こういったものをしっかりと保持していく、これが農政が最初に考えるべきことだと思っています。

 何より、今、何となく守勢に立たされているような感じがする自由化交渉、TPPも含めてですけれども、こういったところで優位に立てる可能性もあるんじゃないかという意味で、最後に総理に御答弁をお願いします。

    〔森山委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 今、林委員からは一つの考え方をお示しいただいたとは思います。

 一般論として、関税を撤廃して直接支払いに切りかえた場合は、当然、先ほどから議論しておられますように、輸入農産物の価格が安くなるわけでありますが、同時に、国内農業生産を支援するための財政負担がふえるという側面もあるわけでございまして、この政策転換の適否については、国民的な議論を行いながら慎重に検討する必要はあるんだろう、このように思うわけでございます。

 いずれにせよ、我々としては、強い農林水産業とともに、美しく活力ある農山漁村を実現するために、今後さらに、輸出促進やそしてまた六次産業化の推進、農地の集積など、産業としての競争力を高めていく施策に加えまして、美しいふるさとを守る日本型直接支払いを創設していく、このことに取り組んでいく考えでございます。

 また、TPP交渉につきましては、私たちは、国民にお約束をしたことをしっかりと守るために、最大限の努力を重ねていく決意でございます。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 最後になりますが、この直接支払いというのは農家の所得は守られますという前提に立って考えられているものだということをつけ加えて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 去る二月二十五日、安倍内閣の原子力関係閣僚会議を経て取りまとめられたエネルギー基本計画の政府原案について質問いたします。

 まず、経済産業省資源エネルギー庁は、新しいエネルギー基本計画策定に向けて、昨年の十二月六日からことし一月六日まで、国民の意見を募るパブリックコメントを実施いたしました。これに対して何件の意見が寄せられたか、大臣、お答えください。

茂木国務大臣 約一万九千件、正確に申し上げますと一万八千六百六十三件であります。

笠井委員 今大臣が言われました、寄せられた一万八千六百六十三件の意見の中で、それでは、原発の賛否あるいは再稼働の是非、これについての内訳というのはそれぞれどのようになっているでしょうか。

茂木国務大臣 今回のパブリックコメントはさまざまな御意見をお寄せいただいておりますが、取りまとめに当たりましては、しっかりと精査を行いまして、寄せられた意見を百二十八の主要意見に区分して、その区分ごとに、個別に寄せられた意見を例示しつつ、丁寧に回答する形式で、九十五ページに及びますパブリックコメントの結果を取りまとめて、政府原案と同時に公表いたしました。

 数を比べるつもりはございませんが、民主党政権下で、革新的エネルギー・環境戦略の策定の際に行われましたパブリックコメントの取りまとめの結果、これは六ページでありました。

 精査に当たりましては、団体の意見もございます、個人の意見もございます、そしてパブリックコメントによってそのボリュームが相当違います、一つ一つが。にもかかわりませず、それが一件であることは確かでありまして、そういった点なども踏まえて、数ではなく内容に着目して整理の作業を行いまして、今申し上げましたように、百二十八の主要意見に取りまとめ、かなりの部分を政府の原案に反映することができたと考えております。

笠井委員 福島原発事故の後、当時の政府のもとで曲がりなりにも国民的議論が組織をされて、意見公募には約八万九千件の意見が寄せられて、そして、そのうち原発ゼロというコメントが七万七千件、約九割にも及んでいたことが公表され、政府として、大きな方向性として、少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいるという結果が公表をされました。

 ところが、今回の基本計画案の策定に当たっては、今、大臣、いろいろなことで趣旨を言われたんですけれども、結局、国民の中から出された意見で、意見公募の中での賛否の内訳というのが公表されない。違うやり方と言うけれども、では、どれぐらいの人が賛成なのか反対なのか、あるいは再稼働是非なのか、なぜこれを公表しないんですか。

茂木国務大臣 今申し上げましたように、団体で一件というのもございます。団体によっては、相当大きな人数の方の団体であっても、パブリックコメントとしては一件です。それから、例えば同じ方が何回もパブリックコメントに寄せられる、これもそれぞれが一件に数えられる。

 そういったことから、内容に着目して取りまとめを行ったところであります。

笠井委員 前のときだって団体というのもあったし、そして、いろいろな形でそれは重複はあったでしょう。しかし、件数のうち、どれだけがどうだったかということについては出したわけです。

 さまざまな意見を丁寧に取り入れていると今大臣は言われましたけれども、私もこれを拝見しました。しかし、原発ゼロ、再稼働反対の意見ということでいうと、かなりの部分を割いてそれに対する回答が出ておりますけれども、結局のところ、ことごとく反論されているだけだということであります。

 総理、最近の世論調査でも、やはり、原発をなくすべき、原発ゼロが多数という状況でありますけれども、意見公募に当たって、この賛否の中身も、いろいろな形で重複、団体はあるでしょうけれども、件数でいっても公表しない。では、どうやって国民の意見を反映して大事な計画をつくるというんでしょうか。総理に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 エネルギー政策につきましては、国民生活や経済活動に支障がないように、さまざまな御意見を踏まえつつ、責任あるエネルギー政策を構築していくことが何よりも重要であると考えておりますし、これが私どもの基本的な姿勢でございます。

 パブリックコメントの取りまとめに当たっては、寄せられた多くの意見を百二十八の主要な意見に区分けをいたしまして、反映すべきものは反映した上において、その区分ごとに丁寧に回答する形で、九十五ページに及ぶパブリックコメントの結果を取りまとめ、公表したところであります。

 つまり、国民の皆様からいただいた意見に対してはしっかりと、丁寧にお答えをすると同時に、公表するに当たって、区分ごとに分けまして、わかりやすく整理した上で公表させていただいたところでございます。

 こうした意見を踏まえまして、エネルギー基本計画の政府の原案が取りまとめられたところでございまして、こうしたプロセスを通じて行われるさまざまな議論を踏まえつつ、現実を見据えて、責任を持って、現実可能、かつバランスのとれたエネルギー基本計画を取りまとめたいと考えています。

笠井委員 私は民意の反映をどうしているかということを聞いたので、そのことについてはきちんとしたお答えはないんですね。

 結局、今言ったような形で、政府なりのやり方でと言われましたが、その結果が今回の基本計画かと。国民の多数が原発はなくすべきと言っているのに、原発を重要なベースロード電源と位置づけて、原子力規制委員会の基準に適合した場合は再稼働を進める、そして「もんじゅ」もやめない。おかしいと思うんですね。国民の世論を無視した原発推進計画、そうした宣言そのものじゃないかということを強く指摘したいと思います。

 政府は、この基本計画の作成に当たって、東京電力福島第一原発事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合って、寄り添い、福島の復興再生を全力でなし遂げる、ここがエネルギー政策を再構築するための出発点というふうに、今回も冒頭でうたっております。

 では、その福島原発事故の現実はどうか。

 原子力規制委員長、田中委員長、お越しだと思うので伺いたいんですが、福島原発三基の原子炉メルトダウンや水素爆発後で結構ですが、現在までに、福島第一原発でのトラブルというのは何件あるか、報告をお願いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 トラブル、大小ありまして、トラブルの定義はなかなか難しいところもあるんですが、私どもは、かなり小さいトラブルまでも集計いたしまして、今先生から御指摘があった二〇一一年三月十一日から二〇一四年二月二十六日まで、最近までですけれども、百七件と集計しております。

 なお、ちょっと誤解があるといけませんので申し添えますが、私どもの事務当局から集計を出したところ、先生の方でまとめたものでは百十三件ということになっております。この中には、実は、作業員の線量計の未装着とかALPSの薬品の塩酸のにじみとか、いわゆるトラブルと我々としては判断しないようなものまでもお出ししたということで、混乱を招いてしまったということで、ちょっと、おわびを申し上げます。

笠井委員 かなり細かなものまで集計した、それで、私の手元に出した件数というのが若干違って申しわけないという話だったんですが、いずれにしても、百七件ということでお話がありました。

 規制庁が私のところに提出した資料をもとに、今、規制委員長はおっしゃいましたけれども、件数について、それが恐らくどこかに入っているんでしょう、百七件ですから六件ぐらいがどこかそういう誤差があるのかもしれませんが、私のところに出されたものについて、整理してパネルにしてみました。

 大きくは変わらないと思うんですが、ここにありますように、汚染水の漏えい七十七件。電源ケーブルピット、配管などからの汚染水漏えい、うち、少なくとも六件は海洋へ流出。

 汚染水貯留施設七件にかかわるトラブルですね。汚染水タンクからの汚染水の漏えい。

 それから、汚染水処理施設五件。処理施設からの汚染水漏えいなどという中身です。

 そのほかに、電源系・電気系施設ということで七件。発電所内停電による使用済み燃料プールの冷却機能停止、原子炉圧力容器底部の温度計の故障など。

 それから、原子炉の冷却系でいうと二件。二号機、三号機の原子炉注水用ポンプ付近からの汚染水の漏えいなど。

 その他大きなもので十五件ということで、火災や作業員の被曝など。今、委員長が言われたところで、作業員にかかわるところで、この中に若干の誤差があるかもしれないということだと思います。

 合計、私のところで受け取った資料によりますと、百十三件ということになります。

 最近でも、二月二十五日の使用済み燃料プールの冷却機能の停止というのは、幸いにもバックアップ電源に接続することができたので大事には至らなかったわけですが、接続まで四時間半もかかっている。これ以外にも、昨二十六日には、また汚染水処理装置、一系統が停止するトラブルがありました。いずれにしても、極めて重大なトラブルが、あるいは事故がたび重なっているという状況であります。

 今、規制委員長、若干の誤差があると言ってわびられながら言った百七件、そういう数字で、かなり細かいものまで拾ったというわけですけれども、それを見ても、一たび原発事故が起こると、いかに多くのトラブルが続発し続けるか、それを示しているのが今回の事故だと思うんですね。

 規制委員長に伺いたいんですが、では、かなり細かいところまで拾ったと言われましたが、福島第一原発のトラブルというのは、本当にこの百七件、言われた、整理した件数だけですか。

田中政府特別補佐人 私どもで相当細かいところまで全て報告を求めておりますので、これ以上にはならないというふうに思っております。

笠井委員 本当にそうかということなんですが。

 私が入手した原子力規制庁の資料によれば、今報告があった百十三件、私のところにありましたが、若干訂正されて百七件と言われましたが、それ以外に、軽微、そういうふうに分類されたトラブルが、ここを見ますと八十六件、これだけあるんですよ。こんなにあるんですけれども、そうなんじゃないんですか。

田中政府特別補佐人 先ほども申し上げましたけれども、軽微、例えば線量計の未装着とか電源のミスアラームとか、そういったことも含めるとそういう数になります。

 ただ、これは、私どもとしては、今、いわゆるトラブルとして今後注意しなきゃいけない、もちろん全くそういったことは無視していいということではありませんけれども、いわゆるリスクを伴うようなトラブルではなかったということで、件数から外してあります。

笠井委員 違うんですよ。今、田中委員長が言われて先ほど訂正したのは、私に原子力規制庁が寄せたのが百十三件だけれども、そのうち六件については本当に小さなものだからというので除いて百七件と。かなり細かなものを含めてそういう件数で全てだと言われたんです。

 ところが、私、この原子力規制庁の資料、入手したものを見ますと、それ以外に八十六件もあるじゃないか。ここにあるんですよ。そうなんじゃないんですか。

田中政府特別補佐人 そういった、先ほど申し上げましたような、小さな、軽微なトラブルまで挙げますと、そのとおりであります。

笠井委員 先ほど言った軽微なトラブルというのは、そんな話じゃないんですよ。

 では、私、紹介しましょうか。この中には、八十六件と言って軽微と言っている中にはどういうものがあるか。

 汚染水から放射性物質を除去する多核種除去装置というのがありますが、ALPSというふうに言われていますが、この一時停止。あるいは、外洋への流出防止のためのシルトフェンスというのが、総理、ありますよね、これが切断した。それから、汚染水タンクエリア堰内のたまり水が漏水してあふれた。こういうものが含まれているんじゃないんですか。田中委員長がさっき言ったようなことじゃなくて、もっとこういうものが入っているんじゃないんですか。

田中政府特別補佐人 例えば、ALPSの稼働がとまったからといって、それが直ちに危険を伴うものではありませんので、そういったものについては、動いている装置ですからそういうことはありますので、そういうことについては、私どもとしては、これが非常に危険なものだというふうには認識しておりません。

笠井委員 違うんですよ、ごまかしちゃだめですよ。直ちに、とまったから大丈夫だったとかどうだとか。

 トラブルがあったかないかの報告を求めていると言われて、先ほど、かなり細かいものもと言われた中には、今私が言ったことは入っていないんですよ。法律に基づいて提出して、報告があって、それを出すのが当たり前でしょう。入っていないんですよ、そういう問題が。

 まだありますよ。作業員落下による負傷。あるいは、汚染車両が発電所構外を、構内の外を走行した。こういうものも入っているんじゃないんですか。

田中政府特別補佐人 そういった、いわゆるミス、ミスと言うとまた叱られそうですけれども、そういったことについては、きちっと報告は求めています。

 ただ、それについて、すぐにそのことが原因で大きなリスクを招くかどうかというところで、私どもとしては、注意深く見守って、指導もしているところでございます。

笠井委員 ミスとか言って怒られるかもしれないけれどもと言うけれども、そういうことでトラブルがあったということが大事なわけでしょう。その結果、どういう影響があったかというのはまた別問題なんですよ。

 私が何度具体的に言っていっても、先ほど委員長が言われたような形での中身の中には、私が今指摘したようなことが入っていなかったんですよ。だけれども、そういったものがあるかもしれない、それはちょっとしたミスかもしれない、それは影響があったかどうかと話をごまかしているけれども。

 私が求めたのは、福島第一原発でどれだけのトラブルがあったかということについて出してくださいと言ったわけですよ。

 田中委員長は、かなり細かいものまで集約して集めたら百七件と言われた。当初私に出した百十三件というのは、そのうち六件は、本当に、もっとささいなというか、そんなような形で言われたというような項目が六件のうち幾つかありましたよ。しかし、私が一個一個聞いていくと、八十六件のもの、そういうのもあるかもしれないけれども、それはミスかもしれないとか。何で最初からそういうのをちゃんと出さないんですか。

田中政府特別補佐人 今先生が御指摘のようなところまで、例えば構内車両の油漏れとか、そういったところまで含めて報告はいただいていまして、そういったものの規制庁の作業用のファイルとして整理したものを出して、そこまで入れますと、全体で二百一件になります。

笠井委員 最初からそう言えばいいんじゃないんですか。だって、軽重とか聞いているんじゃないですよ。どれだけのトラブルがあったかというふうに言っているので、その中にどういうものがあるか、結果としてどういうことになったかは別の話です。しかし、それが、幸いおさまったかもしれないけれども、重大なことになるかもしれないという問題があるんだから、余さず出して当たり前なんじゃないですか。

 総理も、視察に何度か行かれたと思うんですが、実際に、原発、福一のサイトに行かれて体験されたと思うんですが、私も視察に行きました。入ったときにも、再度にわたって行ったときにもそうですが、やはり、サイトの中に入る、出るに当たっては、例えば、移動車両で汚染されないかということについては念入りに念入りに、厳格にチェックするというプロセスをとると思うんですが、汚染車両が発電所の構外を走行した、構内の外を走行したというのは軽微だ、そして、そういうトラブル自体は起こっても構わないというふうに思われますか。それとも、そういうこと自体が決して起こってはいけないというふうに思われますか。もう総理は体験されていると思うので、その点いかがでしょうか。総理。

茂木国務大臣 御案内のとおり、作業員の方も含めて、被曝等を避ける、防護服であったりとか、靴下は二重です、そして手袋は三重、こういった形で、健康管理等々も的確に行っております。

 トラブルが起こっていることについては遺憾であります。

 ただ、ここでお示しをいただきました資料を拝見しますと、電源系、電気系統設備、これは恐らく将来的な廃炉に関連するものだと思いますけれども、それ以外は汚染水関係の問題が多いと思っておりまして、こういったミスをなくしていくために、現場の体制を強化したりさまざまな取り組みを進めております。

 基本的には、根本対策が必要だということで、九月三日の原災本部におけます三つの基本方針。地下水、建屋のところに毎日四百トン入ってまいります、これを汚染源に近づけない。そして二つ目には、汚染源そのもの、多核種除去装置の話もありましたが、それを取り除く。三つ目には、汚染水を漏らさない、そのために、海側の地盤改良であったり、さらには海側でも遮水壁をつくる。こういった取り組みを行っております。

 さらに、そういったものを、アクションプラン、これは九月の十日に決めたわけでありますけれども、それぞれが十分な効果を発揮しなかった場合、バックアップをどうするのか、また潜在的なリスクにどう備えるのか、こういう予防的、重層的な対策も立てておりまして、こういったトラブルが起こらないような、構造的な問題にもしっかりと対応していきたい、そんなふうに思っております。

笠井委員 今、経済産業大臣、るる、長々言われましたけれども、こういうトラブルについてちゃんとなかったのは遺憾だと言われたけれども、結局のところ、私がただしていったら、当初百十三件が百七件と言ったけれども、それが二百一件という話になって、結局、たださなけりゃ隠されているわけですよ、そういう事態が。何でこういうのが軽微なのかということになってくるし、トラブル隠し、事故隠しとしか言いようがないと国民が見るのは当然だと思うんです。

 しかも、これら八十六件というのはいずれも、二〇一三年の四月三日以降、つまり安倍政権になってからのものばかりなんですね。決して軽微とは言えないトラブルが並んでいます。これらを含めると、トラブルの件数というのが少なくとも二百一件に達すると今さっきあった。それなのに、報告を求めたら、除外して、少な目に小さく見せる。

 東電もデータの改ざんとか事故隠しというのをやってきましたが、国も、結局のところ、事故隠し、トラブル隠しをやっているということになっちゃうんじゃないですか。総理、いかがですか。こんなことでいいんでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど、この場で田中委員長の方からも既にお答えをしているわけでございますが、私も、福島第一原発を視察した際、車の除染等、相当厳密にやっているわけでございますから、先ほど指摘されたような例がなぜ出るのかということはなかなか理解できないところでございますが、もしそういうことがあったらまことに遺憾でございますし、そうしたことが起こらないように万全を尽くしていくべきだろう、このように思います。

 また、御指摘の、こうしたトラブル例については、それぞれ、先ほど茂木大臣からも、防止をするための万全な体制をつくっていくという答弁をさせていただきましたが、的確に対応していくことが求められているんだろう、このように思うわけでありまして、正確に把握をし、しっかりと公表しながら、的確に対応していきたいと考えております。

笠井委員 総理からも、正確に把握しながら的確に対応といただいたので、田中委員長に求めたいんですけれども、これ以外に、二百一件以外にもあるのかどうか。

 委員長御自身も事務方でいろいろ整理とかというので掌握されていないこともあるかもしれませんから、規制委員長の責任において、全部もう一回洗い直して、結局その結果どういう影響があったかどうかは別として、どういうトラブルが起こったのかということについて、全部の資料をもう一回洗い直して当委員会に提出していただきたいと思うんですが、規制委員長、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 二百一件について、隠しているということではなくて、もうこれは既に発表されています。(笠井委員「最初、言わなかったじゃないですか」と呼ぶ)発表されています。ただ、トラブルというその定義が非常に難しいんですが、そこの点についてというお尋ねだったので、そういう回答になったということです。ですから、そこに認識の差があったということです。

 全てそういったことについて、いろいろな、先ほど申し上げましたような、我々は軽微と考えているようなことについても、一応全て公表しております。ですから、先生のお手元に行っている資料が、現在我々が把握している全てだというふうに考えています。

笠井委員 公表していないんですよ。だって、報告を求めたら、百七件と言ったんだから。正式に私に来たところ、百七件なんですから。百十三件だったんですから。

 委員長、これはちょっと理事会できちっと諮っていただきたいと思います、資料提出について。

二階委員長 後刻、理事会で協議いたします。

笠井委員 政府の責任は重大だと思うんです。

 中でも汚染水問題、さっき言われましたけれども、この間、相次いで重大な事態が起こっております。一月十八日、三号機建屋一階から大量漏れ、二月七日にはストロンチウム測定ミス、十九日には、二号機の原子炉の温度計が壊れたのに続いて、タンクから百トン、二・三億ベクレルの汚染水ということで、基準の三百八十万倍が出たというわけでありますけれども、その原因はわかっていますか、田中委員長。

田中政府特別補佐人 いわゆる汚染水対策については、政府を挙げて、先ほど茂木大臣からもお話がありましたように、全力を挙げて進めているところであります。

 我々規制委員会としても、汚染水問題については、環境と国民を守る、安全を守るという観点から、極めて重要だと認識しております。

 今回、十九日の漏えいについては、漏えい発生後、東京電力に対して、濃縮水漏えいをとめる措置とか、汚染したところの土を回収するとか、それから同型のタンクについて漏えいがないかどうかとか、そういったことについての検査を指示しております。

 それから、すぐに、二十四日になりましたけれども、汚染水対策ワーキンググループを開催しまして、今回の汚染水漏えいについて検討しております。

 現状までにわかったところでは、汚染水漏えいの原因は、水位計の警報発生に適切に対処しなかったことなどが明らかになっています。しかし、これだけかどうかということもありますので、根本原因分析も含めて、さらなる事実関係を東電において調査中であります。

 そういった事実関係を精査した上で、移送先の水位監視、管理のあり方とか、そういった、今後、同様の漏えいが起こるような事象を防ぐための必要な指示を行っていくということにしております。

 とにかく、引き続き、東京電力のこういった取り組みについてはしっかり監視指導していきたいと思います。

笠井委員 相次いでいても、原因がまだ調査中でわからないんですよ。総理、これでも、汚染水問題が相次いでいるけれども、状況が完全にコントロールされているというふうに今でもおっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど田中委員長から御報告をさせていただいているわけでございますが、大切なことは、そうしたトラブルを把握し、そしてそのトラブルに対してしっかりと対処をしていくことではないか、このように思っておりますし、また、コントロールされているということについては、先般、IAEAの視察があった際に、汚染水については極めて湾内の限られた地域においてブロックされているという趣旨の発言があったわけでございまして、私の、〇・三平方キロメートルの中においてブロックされているということの発言が裏づけされたもの、このように理解をしております。

笠井委員 いまだにそう言っているんですけれども、結局東電任せになって、さっきも委員長、東電のせいにされるという形で、国の姿が全然見えない、前面に出るようになっていないわけですよ。

 大体、この規制基準にだって、汚染水、地下水対策は入っていないわけですね。そんな形でやっていて、再稼働する、そして原発を使っていくなんということについては絶対あり得ないと思うんです。こんな形で基本計画をやるというのは、もう撤回すべきだと言いたいと思います。

 最後に、委員長にお願いしたいんですが、やはり今やるべきは、本当に、事故の究明と収束、除染、全面賠償でありますので、東電任せにせずに汚染水問題もやるということでありますけれども、国会に汚染水対策で、原発への立場を超えて、科学者、技術者、産業界の英知を総結集する場をしかるべき形でつくることを提案したい。こんなに深刻ですから。総理もまだ解決できていないと言っているわけですけれども、国会としての対応について理事会で協議をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

二階委員長 御提案は、後刻、理事会で協議いたします。

笠井委員 終わります。

二階委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 甘利大臣におかれましては、シンガポールでの交渉、大変お疲れさまでございました。本当にその尽力に敬意を表させていただきます。

 それで、この会合では、大筋合意を目指したものの、決着が先送りされ、合意に至らなかったと聞きます。アメリカ側の強硬姿勢、農産物の重要品目を含む関税撤廃の要求というのがかなり厳しかったというのは報道で知るところでありますけれども、なぜ大筋合意に至らなかったんでしょうか。まず、お伺いします。

甘利国務大臣 会議が終了して共同記者会見の席上で、オーストラリアのロブ貿易大臣から、今回の会合が終わって八割の課題が処理できたという表明がありました。

 何をもって大筋合意かという定義は特にあるわけではないんですけれども、今回のシンガポール会合を振り返りますと、ルール分野につきましては、前回の閣僚会合で特定された論点の多くにつきまして政治的な判断を下して、残された課題の解決に向けた道筋も示すことができました。この分野では多くの進展があったと思います。

 また、市場アクセスについて言いますと、物品のほかにサービス、投資、政府調達、一時入国、これらが物品以外の市場アクセス、市場アクセスというのは非常に範囲が広いんですけれども、投資でいえば内国民待遇、最恵国待遇が図られているかとか、それから、政府調達は中央都市、地方都市、どれくらい以上を外国資本に開放するかとか、いろいろな話し合いが行われるわけでありますけれども、全般にわたって精力的な交渉を行い、実質的な協議を進めたわけであります。

 私からは、TPPというのは物に焦点が当たるけれども、それだけじゃなくて、サービスや今申し上げました物以外の市場アクセスやルール、これも広範にわたって自由化を進めることが大事なんだということを強調いたしました。

 今回の会合、各国が抱えているセンシティビティーに配慮をしながら、アジア太平洋地域に二十一世紀型の新たな経済統合協定をともにつくるという共通の機運と信頼関係が醸成をされたと思います。各国はセンシティビティーを抱えているわけでありますけれども、今回の会合を通じまして、どういうふうに残された部分を対応していくかという道筋というのは見えてきたんだと思います。

 ただ、事前の交渉が、閣僚会合に向かう以前のCNや交渉官の交渉が、閣僚会議の期間までにそう大きなスピードで露払いをすることができなかったということが、いわゆる大筋合意という表現までは使えなかったのじゃないかというふうに思っておりますが、これから先の道筋はついたというふうに思っております。

畑委員 七、八割まとまって、残った部分がまさにセンシティビティーでかなり重要な部分だということになって、ここが難しいわけです。

 結局、関税の部分はまとまらなかったわけですよね、重要五品目も含めて。そこが残った場合、これから交渉する場合どうするか。日米のバイでやるということになりますが、かなり厳しい交渉になる。TPP参加国の他国の理解、応援団もなければなかなか厳しいのかなと私は思っております。どういう国を味方にしていくか、積極的に応援してもらうという意味です、消極的な理解ではなくて。

 甘利大臣は、メディアというか取材に対して、衆参の国会決議がある中で交渉をしている事情は理解されたと思うが、かといって、何もしなくてもいいという理解ではない、各国はそのような中でも極力野心を高める、自由化率を高めるという意味だと思いますが、高める努力をすべきだと日本に要請していると述べておられます。ということは、農産物の重要五品目を初めとする関税を撤廃しない、このままいくということに対する理解は得られていないということになるわけです。

 ということであれば、これから日本はどのような国と連携できるんでしょうか、そこをお伺いします。

甘利国務大臣 物品の市場アクセスというのは、バイで行われることが中心です。それは、それぞれの国によって関心項目が違うから、リクエストオファーの繰り返しで、おたくからはうちはこういうものをちゃんと自由化してほしい、相手の国からは、こちらに、うちはこうです、そして、うちはこの部分は改善できるけれどもこの部分は難しいですよというようなことをやりとりしながら野心を上げていくという交渉になりますから、どうしてもバイ会談が中心にならざるを得ないわけです。

 私は、バイ会談を精力的にほとんどの国とこなしました。それから、何カ国かとはまとまって懇談をしました。そういうところを通じて、まず、日本の事情をよく説明しました。それぞれの国はそれぞれのセンシティビティーを抱えている、文化的センシティビティーもあれば、あるいは物品にわたるセンシティビティーもいろいろあります。

 そういう中で、お互いのセンシティビティーがあるということは理解しましょう。かといって、では、お互いのセンシティビティーは全くさわりませんということになると、これは交渉にならないし、ホノルル宣言、これは我々が入る前になされた宣言でありますけれども、そこには、物品の自由化も含めて極力高い野心に持っていくということを、日本が入る前ですから九カ国ぐらいだったですか、そこの首脳間でサインされているわけでありますから、制約があるということはみんなで認識する。だから、何もしなくてもいいんじゃなくて、制約があるのを認めつつ、どうやって野心を上げていくかをみんなで知恵を出しましょうということを共通認識にしたわけであります。

 要するに、センシティビティーを持っている国同士というのは多少なりとも理解ができると思います。全くセンシティビティーを持っていないところは協力しようがないんです、うちは全部やるよということになりますからね。そういうセンシティビティーのある国ごとに、理解をしつつ野心を上げましょうねというような話を複数国間あるいはバイの交渉を通じて認識し合ったというふうに思っております。

畑委員 まさに、センシティビティー、これをどうやって、このままではいかないけれども、守っていくかということで、何らかのカードを切らなきゃいかぬという発言も甘利大臣はされておりましたが、これは、去年の十二月、西村副大臣は、一ミリたりとも譲らないと。そこから、今回は何らかのカードを切らなければならない。だから、何らかの妥協策を検討したということがうかがえますが、ちょっと事実を確認します。

 今回のシンガポールの閣僚会合に行くに当たって、妥協案の検討をしたという事実は、では、あるわけですね。どういう内容を検討したかも、差し支えない範囲でお教えいただきたいと思います。

甘利国務大臣 具体的に、このカードを出そう、あのカードを出そうというカードは持っていったわけではありません。考え方を示すということで、お互いが、こんなのじゃだめだと言い合うだけじゃなくて、方法論について知恵を出すという意味でのカードは自分で持っていったつもりでありますし、そういう政府内の最小限のすり合わせはしたつもりであります。

 ただ、それがどういうものであったかということは、きょうも公開でやられているわけでありますし、手のうちを明かすということにもなりますし、それから、相手とどういうことをやりとりしたかということは、秘密保持ということで、お互いに外に出さないということになっておりますので、そこは控えさせていただきたいと思います。

畑委員 新聞、マスコミには、特にアメリカは牛肉、豚肉の関税撤廃を強く求めている、そこについて一定の検討をしたということが載っておりますが、そこのところは、この国会で、私も、あげつらう必要は、そういうつもりはありませんが、手のうちを明かせないというのであれば、こういうことがメディアに載ると手のうちを明かしたことというか、アメリカは、だから日本が妥協の用意があるんだ、そういうことで、あっちは乗ってこないわけで、私は、ちょっとそこは交渉としてどうかなという思いはあります。

 そういうタリフラインを含めた具体論の議論はきょうはしませんが、具体的なものについての検討はしていないけれども、いろいろな方針、そういうところのすり合わせをしたというお答えでありました。

 では、これから一ミリたりとも譲れないわけじゃなくて、妥協策を検討しなければいけない。では、その中で、どういう基準で検討するんでしょうか。これをちょっと聞きたかったわけです。

 つまり、例えば重要五品目の農産物であれば、言ってみれば、今既に大部分が輸入品だということであれば、関税撤廃しても影響はありませんねということがあるかもしれない。あるいは、輸入が少ない、少ないから、まあ、これからも関税撤廃しても輸入が来ないだろうという判断もあるかもしれない。そういう定性的な部分も含めて、どういう基準で、差し出すというか、妥協策を検討していかれるんでしょうか。

甘利国務大臣 かつて私が一センチも譲れないと言いまして、西村副大臣は一ミリもと。残りの九ミリはどこに行ったんだという話がありますけれども。

 私が、日本側として一センチも譲れないと。これは、国会決議があり、党の公約がある、その党の公約なり国会決議と明らかに矛盾するような考え方については一センチも譲れないということで、これは今も変わっておりません。

 ただ、そういう範囲の中において、間合いをどう詰めることができるんだろうか。つまり、要は、私は、交渉担当大臣として、衆参の国会決議を尊重しなければなりませんし、党公約もしっかり受けとめていかなければならないわけであります。その中で、最終的に、その合意案件で日本がこういう形にしましたというものが、国会にかけた際に、これでは決議を全くないがしろにしているのではないかとならないようにどうするかということを求めているわけであります。

 具体的にこういうふうにこうしていきますということになりますと、これは、先ほど、特に市場アクセスについてはバイで行うというお話をしましたけれども、各国の関心事項がそれぞれ違うんですね。各国ともそれぞれ、自分の関心事項はこっちであるし、こっちは興味がないというのもありますから。受けて立つこちらの方でも、相手に対する欲しいカードと切っていいカードというのが変わっているわけでありますから。それが具体的に明らかになるということは、明らかに交渉上不利になってくるわけであります。

 言えることは、国会決議というある種の制約がある中で、それに適合した内容であったと理解していただけるように最大知恵を絞っているということであります。

畑委員 まさに、実は、国会決議との関係をこれで聞こうと思っておりましたが、先日、本委員会の鹿児島での地方公聴会に行ってまいりました。その際、伊藤鹿児島県知事は、牛肉、豚肉の関税が撤廃ないし引き下げされた場合にはどうなるかという質問に対しては、とても耐えられるものではないとおっしゃっておられまして、そして、であればと私も質問したのは、将来の引き下げについてはどうですかと。引き下げですね、撤廃ではなくて。今すぐ引き下げませんが、将来引き下げる、こういうことだと準備できるので大丈夫なんですかという趣旨でお聞きしたら、それでも、それは農林水産委員会決議に反すると思うと明言しておられました。

 そこで、伺いたいんですが、例えばこの例をとって、牛肉、豚肉で一定のものについて関税引き下げを行うことは、これは決議に違反するんでしょうか、しないんでしょうか。

林国務大臣 これは、畑委員とも農林水産委員会で何度かやりとりをしたことでございまして、この決議は、畑委員を含めて農林水産委員会の皆様でおつくりになっていただいております。参議院の方もそうでございます。

 したがって、我々政府の立場でこの決議の解釈を、ここの部分はこういうふうに意味しているとか、これはここまでだということを勝手に解釈するというのは差し控えなければいけないし、それは、最終的に、甘利大臣も御答弁あったように、批准をしていただかなければいけないわけですから、その批准をするべき国会でこういう決議が出されている、これを交渉でもしっかりと相手に示しながらやる、こういうことではないかというふうに考えております。

畑委員 そこはまさにそうなんですが、実は、内閣官房のTPPの資料がありまして、この中で、除外という定義は、特定の物品を関税の撤廃、削減の対象としないこと、再協議は、これは先送りですね、特定の物品の扱いを将来の交渉に先送りすることということがあって、要は、センシティブ品目だということになれば、関税削減も、やってしまえばこれは決議違反だということになると思います。要は、さわるなということですね。そういう理解で我々はつくったわけですが。

 そこで問題は、センシティビティー品目になるかどうか、ここで重要五品目の五百八十六が何とかというのが昨年来議論になってきたわけです。

 いずれにしても、そこはそういう前提で考えております。そういうことで、今後そういう前提でやっていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと話をかえて、違う質問をさせていただきます。

 農政改革との関係でありまして、農政改革で飼料米に支援を拡充していこうということになっております。一方、仮にTPPで牛肉、豚肉を関税引き下げ、撤廃した場合には、要は、品質がいい部分は勝つんですが、通常の品質以下のものは、輸入がふえて、輸入品の競合にさらされて、そこの国内生産が落ちてくる、それに伴って、日本の酪農、畜産農家が減るということが私は想定されると思いますが、そうなってくると、飼料米の需要見通しが変わってくるんじゃないかなと思っております。

 要は、どれぐらい外国と置きかわってくるかで畜産農家が変わってくるか、これによって来るところがあると思うんですが、そこは、TPPによって現行政策の前提が変わってくるんじゃないかというところについてはどうお考えでしょうか。

林国務大臣 仮定の話にはお答えにくいというふうに申し上げようと思いましたが、せっかくの畑委員の御質問でございます。

 TPPにかかわらず、あらゆる、FTAも含めていろいろなことで、もし畜産の再生産の前提条件が変わるようなことがあれば、御指摘のように、今の前提で四百五十万トンという潜在的な需要量を推計しておりますので、可能性なしとはしない、こういうことでございます。したがって、先ほども申し上げましたように、衆参両院の農林水産委員会において決議された重要五品目などの聖域の確保、これが国益を守り抜くために大事である、こういうことになるわけでございます。

 一方、飼料の多くを輸入に依存しておりますので、輸入飼料穀物それから粗飼料の価格が高騰する中で、畜産経営の安定向上を図るためには、TPPのいかんにかかわらず、その脱却を図るということが喫緊の課題でございますので、今御指摘のあった飼料米というのもその努力の一環であるということも申し添えておきたいと思います。

畑委員 TPPのいかんにかかわらずやっていく、本当に大事なんですが、まさにTPPによって恐らくそこは変わってくる部分があるので、そことの絡みを含めてしっかりと今後議論させていただきたいと思っております。

 それでは、TPPの関係で、総理に総論的にお伺いしたいわけであります。

 私は、TPPというのは、今回の協議を見ていて、やはり、関税原則撤廃、そしてできるだけルールのグローバル化を図る、そういう自由貿易協定でありまして、これまでのFTAなんかに比べると、各国の事情を踏まえないというか、そこはできるだけ共通化するんだという思想でできておると思っております。だからこそ、今回、なかなか、例えば輸入国と輸出国の対立は大きいですし、あるいは先進国と新興国の対立も大きいわけで、合意に至ることが困難になった理由もそこにあるんじゃないかなというふうに思っております。

 もう一つ、TPPの問題というのは、私は、やはりTPPは、関税撤廃をして、そして種々の規制撤廃によって経済成長を高めようとするものでありますから、価格が安くなる、安いものが入ってくる、デフレ政策なんだろうなと思っているんです。供給力強化政策。もちろん、それによって需要を高めるという副次的な効果等はありますが、やはり一義的には供給力強化政策なんだと思っております。

 であれば、私は、デフレ脱却を第一の課題としているいわゆるアベノミクスに矛盾する政策じゃないかなと思っておるんですが、そこのTPPに対する認識を改めてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安倍政権の経済政策は、これは三本の矢の政策でありまして、金融政策と、そして財政政策と成長戦略でありますが、成長戦略においてTPPというのはまさに重要な地位を占めていると言ってもいいんだろう、このように思うわけでございます。

 もちろん、今、畑委員がおっしゃったように、例えば、関税がなくなっていくことによって海外から安いものが入ってくれば、それは価格を押し下げるという圧力にはなっていくわけであります。

 しかし、TPPというのは、アジア太平洋地域に二十一世紀型の新しい経済圏をつくっていくということでありまして、何が二十一世紀型かといえば、市場アクセス、関税等々だけではなくて、これは、例えばお金とか、あるいは人、そして知恵が行き交うわけでございまして、この地域に眠っているさまざまな潜在力を引き出し、そして活力を与える、そういう経済圏になっていくだろう。

 日本において、残念ながら、しばらくは人口が減少していく中において、生産者も消費者も減っていく中にあって、伸びていくアジア太平洋地域の力を、活力を日本に取り込んでいくことにつながっていく。だからこそ我々は、成長戦略の大きな一つとして、重要な要素として考えているわけでございます。

 ただ、もちろん、その中におきまして、守るべきものというのは、基本的には、お約束をしているように、重要五品目ということについては、衆参の農林水産委員会で決議をいただいているわけでございますから、この決議を踏まえてしっかりと交渉していきたい。

 と同時に、先般のシンガポールの閣僚級の会議におきましても、各国にセンシティビティーがあるということをやはりもう一度再認識されたのではないか、これは共通認識になったのではないかということと、先ほど申し上げましたような、二十一世紀型の新たな経済圏をつくっていく、この価値についても共通認識を持つことができたのではないか、このように思います。

畑委員 これからは、まさにそこを詰めるぎりぎりの交渉が行われる。

 その場合に、アメリカが今の主張を変えないで来るとすれば、全くあっちが変わらない場合、そこはこちらから譲れないでしょうし、それを譲ると聖域確保ができない、まさに国益が守れないということになると思います。

 その場合には、まさにこの決議に従って脱退することもあるんじゃないか、脱退すべきじゃないかと思いますが、総理、そこの認識はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今まさに、交渉を続けているわけでございます。

 そして、先ほど申し上げましたように、衆参の農林水産委員会での決議を踏まえての交渉であります。そして、私たちはしっかりと国益を守っていく、そういう決意でございますし、また、我が党としても国民への約束があるわけでありまして、公約をたがえてはならない。この中において、最後までぎりぎりの交渉を行い、そして、国益にかなう最善の道を求めていきたい。

 その中において、今、私が総理大臣として、交渉している中において、脱退ということについて、脱退する、しないということについて申し上げるのは不適切ではないか、このように思います。

畑委員 ぜひとも国益をしっかりと確保するように、国民の皆様が見ておられますから、交渉をよろしくお願いしたいと思います。

 時間もなくなりましたので、ちょっと別の方の、エネルギー関係の質疑をさせていただきたいと存じます。

 電源の基本計画が出ましたけれども、この中で、原子力というのは本当に経済性があるのかどうかという疑問を私は持っております。

 ちょっとフリップを示しました。こう見ると、確かに燃料費は格段に安い。ただ、建設コストはめちゃくちゃ、倍以上高くなる、従来の火力に比べて。そしてさらに、これにいろいろな政策経費がかかります、立地交付金とか。

 二〇一一年、三年前の試算で、政府の試算というのがまさに五・八兆、事故対応費用が入っているので、これを入れても安いということであったと思いますが、実はこのとき、まだ発災から一年たっていない中で、除染そして廃炉の費用がどれぐらいかかるか、損害賠償の費用がどれぐらいかかるか、実は明らかじゃなかったわけでして、事務方も、そこは必ずしもあの段階では見通せていない、これより高くなる可能性があるという話はしておりました。という中で、どれぐらい高くなるかであります。

 一つの試算で、これは民間のシンクタンクで日本経済研究センターというところのデータですが、現行の政府の計画で除染を完璧にやるとした場合は、実は百五十兆かかる。百五十兆引く五・八兆がかかるわけですね、追加費用に。これは、一兆増加した場合の発電のコストがキロワットアワーで〇・一円ふえるので、二十三・二円という試算もありました。

 これは極端だという方もおられるでしょう。しかし、除染そして損害賠償を入れれば五・八兆じゃないよというのが大体民間の大勢です、桁が違うと。例えば五・八兆が五十数兆だって、これは石油火力と同じぐらいになるわけですよね、ちょっとこれより安いかもしれないけれども。だから、私は、これは経済性という意味ではなかなか、ないんじゃないかなと思っております。

 ベースロード電源という場合には、きょうの議論でも、安いということ、そして一定の出力で安定してできるということがあります。その中で、安いという部分については私は疑義があるんですが、そこに対しての経産大臣の御所見を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 きょう、この委員会で、それぞれにいい意味でユニークな試算をお出しいただきまして大変勉強になるなと思っておりますけれども、お示しをいただいたオレンジの部分になると思うんですけれども、事故対応費用百五十兆、それを乗せる前の部分については、二〇一一年十二月の当時の政府の試算ということになると思います。

 そこの中で、事故対応費用約五・八兆円と仮定して、キロワットアワー当たり〇・五円と試算をされているということでありまして、仮に事故対応費用が一兆円ふえると、キロワットアワー当たりの費用が〇・一円ずつ増加する。したがいまして、この五・八兆が倍になったといたしましても、そこにあります石炭火力よりはまだコスト的には低いということになると思います。

 その上で、上乗せをされました百五十兆でありますが、算出根拠、さすがに過大だと思います。

 一つは、除染に関しまして、当時は確かに、除染を明示的に幾らとは言っておりませんけれども、五・八兆の中に含めている。その百五十兆の試算では、除染費用が最大五十五兆円という形でありまして、環境省等によりますと、除染、中間貯蔵で、今三・六兆円と試算をされておりまして、かなり大きな見積もりになっているなと。

 それからもう一つ、さらに決定的な問題点といいますのは、福島第一原発と同じ旧型炉を安全対策を行わずに供用し続けた場合にどうなるか、こういう仮定でありまして、かなり無理な仮定なんだと思っております。

 そして、国内に四十八基原発があるとして、約十年に一回シビアアクシデント、これが起こるという確率計算に基づいておりまして、御案内のとおり、何の安全対策もとらずに原発が再稼働することはありません。規制委員会によりまして、世界で最も厳しい安全基準、これをクリアしなければいけないわけでありますから、この旧型のものが何の安全対策もとらずに四十八基動いて、十年に一遍ずつシビアアクシデントを起こす、それによって費用がかかると。これはさすがに、今の法のたてつけからいいましても無理な仮定ではないかな、こんなふうに考えております。

畑委員 ユニークとおっしゃいましたが、ただ、今の答弁でも、追加でなんですか、除染で五・五兆かかるとか、まさにそういうところは今の五・八兆よりはかかるわけですね。(発言する者あり)かかるわけですね。実は、私はそこを問題にしているんです。

 つまり、あの二〇一一年の十二月の試算から今回の基本計画をつくる際に、再計算、再試算をしないで、そういうのも加えなきゃいけないんですよ。そうした上でしっかりと示してやらなければいけない。結果的に安くなるかもしれない。しかし、二〇一一年のあのどさくさの中の試算でそのまま今回基本計画をつくったのは、私はどうかと思いますよ。

 そして、百五十兆は過大かどうかというのはありますが、これは福島の事故対策費ですよね。結局、全体の安全対策をした中で、事故がほかでも起こる可能性がある。そうした場合には、やはりその事故対策費とか廃炉費用を積んでおかなきゃいけないという議論になるんだろうと思います。そこが見られていると私は思いません。

 だから、そこは、ユニークだとは思いませんし、少なくともこの五・八兆は過小だと私は思っております。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。

二階委員長 これにて畑君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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