衆議院

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第7号 平成27年2月20日(金曜日)

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平成二十七年二月二十日(金曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      赤枝 恒雄君    秋元  司君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    大串 正樹君

      大隈 和英君    大西 英男君

      岡下 昌平君    金子 一義君

      金子めぐみ君    菅家 一郎君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 鷹之君    白須賀貴樹君

      鈴木 俊一君    田所 嘉徳君

      津島  淳君    土井  亨君

      中山 展宏君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      比嘉奈津美君    藤井比早之君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      細田 健一君    堀内 詔子君

      牧島かれん君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮崎 謙介君

      武藤 貴也君    村井 英樹君

      八木 哲也君    保岡 興治君

      簗  和生君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山田 美樹君

      山本 幸三君    山本 有二君

      小川 淳也君    緒方林太郎君

      大西 健介君    金子 恵美君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    福島 伸享君

      馬淵 澄夫君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    山井 和則君

      井坂 信彦君    落合 貴之君

      木内 孝胤君    重徳 和彦君

      篠原  豪君    馬場 伸幸君

      松木けんこう君    松浪 健太君

      村岡 敏英君    横山 博幸君

      吉村 洋文君    岡本 三成君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      赤嶺 政賢君    池内さおり君

      志位 和夫君    塩川 鉄也君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       西川 公也君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山谷えり子君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山口 俊一君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大庭 誠司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   上月 豊久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木  哲君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           若井 英二君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤田 耕三君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  田邉 昌徳君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     山田 賢司君

  衛藤征士郎君     簗  和生君

  小倉 將信君     牧島かれん君

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  金子 一義君     堀内 詔子君

  金子めぐみ君     比嘉奈津美君

  熊田 裕通君     津島  淳君

  田所 嘉徳君     中山 展宏君

  長坂 康正君     赤枝 恒雄君

  宮崎 謙介君     岡下 昌平君

  山下 貴司君     石崎  徹君

  山本 有二君     大串 正樹君

  小川 淳也君     緒方林太郎君

  岸本 周平君     本村賢太郎君

  後藤 祐一君     金子 恵美君

  階   猛君     大西 健介君

  辻元 清美君     山尾志桜里君

  山井 和則君     福島 伸享君

  井坂 信彦君     村岡 敏英君

  重徳 和彦君     馬場 伸幸君

  松木けんこう君    落合 貴之君

  松浪 健太君     木内 孝胤君

  赤嶺 政賢君     池内さおり君

  高橋千鶴子君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     長坂 康正君

  池田 佳隆君     小田原 潔君

  石崎  徹君     村井 英樹君

  大串 正樹君     山本 有二君

  岡下 昌平君     武藤 貴也君

  津島  淳君     細田 健一君

  中山 展宏君     藤井比早之君

  比嘉奈津美君     山田 美樹君

  堀内 詔子君     金子 一義君

  牧島かれん君     小倉 將信君

  簗  和生君     菅家 一郎君

  山田 賢司君     岩屋  毅君

  緒方林太郎君     小川 淳也君

  大西 健介君     階   猛君

  金子 恵美君     後藤 祐一君

  福島 伸享君     山井 和則君

  本村賢太郎君     玉木雄一郎君

  山尾志桜里君     辻元 清美君

  落合 貴之君     松木けんこう君

  木内 孝胤君     松浪 健太君

  馬場 伸幸君     篠原  豪君

  村岡 敏英君     井坂 信彦君

  池内さおり君     志位 和夫君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     大西 英男君

  藤井比早之君     大隈 和英君

  細田 健一君     宮内 秀樹君

  武藤 貴也君     宮崎 謙介君

  村井 英樹君     山下 貴司君

  山田 美樹君     金子めぐみ君

  玉木雄一郎君     岸本 周平君

  篠原  豪君     横山 博幸君

  志位 和夫君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     田所 嘉徳君

  大西 英男君     三ッ林裕巳君

  宮内 秀樹君     八木 哲也君

  横山 博幸君     吉村 洋文君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     白須賀貴樹君

  八木 哲也君     熊田 裕通君

  吉村 洋文君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     衛藤征士郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山崎和之君、内閣官房内閣審議官大庭誠司君、外務省大臣官房長上月豊久君、外務省大臣官房審議官鈴木哲君、経済産業省大臣官房審議官若井英二君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、中小企業庁長官北川慎介君、国土交通省鉄道局長藤田耕三君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 昨日の岡田克也君の質疑に関連し、前原誠司君から質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 質問に先立ちまして、まず、安倍総理大臣に残念なことを申し上げたいと思います。

 きのうもそうですが、国会中、閣僚席からやじを飛ばされるということ、これは極めて品位に欠ける。そしてまた、御自身がやじを飛ばしたことについていろいろおっしゃっているにもかかわらず、みずからが答弁席からやじを飛ばされるということは、言語道断だと思います。厳しく反省をしていただきたい。一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 事実誤認が明らかである場合に、私がそれをここで思わず訂正したこともございますが、今後、静かな討論に心がけたい。このように、与野党お互いにそういう雰囲気をつくっていくように、私も心がけていきたいと思います。

前原委員 ちょっと反省が足りないんじゃないですか。

 事実誤認って、きのう、玉木議員の質問のときに、農林水産大臣のときに何で日教組が出てくるんですか。それは、そこでやじを飛ばしていたのは総理自身でしょう。

 反省をもっとしてもらいたい。しっかりと自分自身が反省をするということを言ってもらいたいということを言っているんです。もう一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 なぜあのとき日教組と言ったかといえば、いわば、日教組は補助金をもらっていて、そして、教育会館というのがあるわけでありますが、その教育会館から献金をもらっている議員が民主党にはおられて、それに対する質問をかつて我が党がしたときに、これは別の団体だから関係ないというのが、当時の民主党の政府としての、大臣が答弁した見解であったわけでありますから、それをどう考えるかという指摘をしたところでございます。

前原委員 これは全く反省していないですね、あなた。(発言する者あり)そのとおりだって、きのうは西川さんのいわゆる献金疑惑について玉木議員が質問して、それに対してあなたはそこからやじを飛ばしていたんですよ。

 聞かれたらそれを答弁するならわかりますよ。それを開き直って、また抗弁する。全然反省が足りないじゃないですか。

 反省をしなさいと言っているんですよ。反省をすべきだ。(発言する者あり)何が偉そうだ。この議場で、その答弁席からやじを飛ばす方が品位に欠けるじゃないか。

 しっかりと反省をすべきですよ。もう一度答弁をください。

安倍内閣総理大臣 いわば、やり合い、議論の答弁をしている最中に、それを完全に妨害するということについてはお互いに避けなければいけないわけでありますが、さまざまな議論の中で、それはお互いに指摘をし合う、議論が伯仲する中においてですね。しかし、それについても静かな議論を心がけていかなければいけないと思っているということを申し上げたわけでございます。

前原委員 反省はしないし、素直ではないし、器量が小さい。それを国民の皆さん方に示したと思いますよ。

 委員長、総理のみならずほかの大臣、名前は言いませんよ、多分自分自身だと思っておられる方がおられると思いますが、余りにも答弁席からやじがひどい。これについては、しっかり委員長から閣僚に対して指摘をしていただきたい。

大島委員長 閣僚の皆様方も、品性を持った委員会を運営するということにおいては、気持ちは同じだと思います。答弁席で答えることはしっかりし、やじと言われるものについてはしっかりと自己を抑制していただきたいと思うと同時に、委員各位の皆様方にも、答弁中にやじるということは、これは私は、余りいいことではない。

 むしろ、的確と言っては語弊がありますが、それは議員のいろいろな発言があります。お互いにそこは、この権威ある予算委員会を、実りある議論をするためにも、お互いに注意していこうではございませんか。

前原委員 こんなくだらぬことで五分も時間を使うというのは、本当に情けない話であります。

 それでは、質問をいたします。

 まず、旧朝鮮総連ビルのことについて伺います。この問題は、単なるビルの賃貸の問題じゃなくて、外交問題、そして国民の血税がどれだけ無駄に使われたかという非常に根の深い問題でありまして、このことについてまずは取り上げたいというふうに思います。

 まず、旧朝鮮総連ビルの取引について、なぜ競売にかけられたのか、理由を簡単に預金保険機構から説明をいただきたいと思います。

田邉参考人 お答えをいたします。

 なぜ朝鮮本部ビルを競売に付したのかという趣旨のお尋ねかと思います。

 朝鮮総連向け債権全般について、まず一言御説明をしたいと……(前原委員「簡単にしてください」と呼ぶ)はい。

 朝鮮総連が、真正な借り手であるにもかかわらず、関係者の個人名義などを使って他人の債務を装うとか、また、再三の交渉にもかかわらず返済に応じないという態度を続けるというような経緯があったところでございます。

 このため、預金保険機構といたしましては、直接の債権者でございます整理回収機構、ここを通じて、再三にわたり債務の返済を強く求めてまいりました。第一に、朝鮮総連本部が真正な債務者であり、かつ朝鮮総連中央本部の土地建物の所有者であること、及びその債権額につきましても、訴訟に訴えつつ、明確にまずはしたところでございます。これが二十四年の六月ごろまでにできております。

 その上ででございますけれども、朝鮮総連中央本部の土地建物につきまして裁判所に競売の申し立てを行って、最終的に整理回収機構への配当が行われて、約二十七億円の回収が実現したところでございます。

 要するに、債権の回収に全力を挙げる一環としてそういう措置をとったということでございます。

前原委員 ちょっとこのグラフをごらんいただきたいわけでありますが、今、預金保険機構の理事長からお話ありましたように、朝鮮総連に対してはどういう問題があるのかということであります。

 朝銀信用組合という、いわゆる民族系の金融機関というのが最大三十八ございました。一九九七年から二〇〇一年にかけて十六の信用組合が破綻をいたしました。今、七信組に再編をされたわけでありますが、朝銀信用組合経営破綻の理由は主に三つです。バブルの崩壊、これは当時ほかの金融機関もあったわけでありますが、それと違うのが、北朝鮮への不正送金、それから朝鮮総連による組織的流用、こういうものが破綻の理由にあるということでありまして、大変ゆゆしき問題であります。

 これは「わが朝鮮総連の罪と罰」という本で、韓光熙さんという方が書かれた本です。この方はもう亡くなられましたけれども、朝鮮総連の副財務局長までやられた方が内部のことを赤裸々におっしゃっておりまして、万景峰号なんかを使っていかに本国送金をしたのかということと、朝鮮総連による組織的流用があったということを書かれているわけでありますけれども、私、この方には、入院をされている千葉の病院にまで会いに行ってお話を伺ったことがあります。

 今、預金保険機構の理事長がおっしゃったように、司法裁判がなされまして、朝鮮総連による組織的流用というのが確定をして、二十五名以上が逮捕されているということであります。

 では、なぜこの朝銀信用組合というものを財布がわりに使うようになったかというと、もともと在日朝鮮人の寄附によって運営をしていたわけでありますが、バブルの崩壊とか、あるいは世代交代による組織離れによって寄附が集まりにくくなって、そして財布がわりに使うようになった。個人や企業への融資の一部を寄附させたり、先ほどお話のありました借名口座、つまりは名前を借りるんですね。あるいは仮名口座、これは仮の名前。それから架空口座、こういったものに貸し付けたり、無担保融資、追い貸しなどを繰り返した、こういうことであります。

 追加融資、追い貸しでどうやって焦げつかせたのかということの一つの事例をお話ししたいと思いますが、朝鮮出版会館ビルというのがある。そのときの担保価値は二十億から三十億程度と言われていた。

 まず、当時あった北海道拓殖銀行が十億円を三回に分けて融資をした、三十億円。それから、その次に住銀リースが十五億円融資をした。四十五億円融資をした。ここからですね。朝銀大阪が三十億円、朝銀東京が十七・三億円、朝銀神奈川が十億円ということで、朝銀関係だけで五十七億三千万円を追加融資して、担保価値は二十億から三十億しかありませんから。全て、百二億三千万円の融資がされたわけです。もう返せるはずはありません。

 結果的に競売にかけられて、落札額は何と四億七千七百八十万円。つまりは、百億円近くがこのビルの融資で消えてなくなった、こういうことですね。

 先ほど出てきた韓光熙さんという方、これでは朝銀東京から十七億三千万円借りているということでありますけれども、本人は知らなかったんですよ。本人が知らなくて融資をされていて、こういう問題になったということです。

 預金保険機構に伺います。

 こういう十六の破綻をした朝銀信用組合全体に、一体幾らの公的資金が投入されたのですか。

田邉参考人 お答えいたします。

 幾ら公的な資金が投入されたのかというお尋ねでございますけれども、救済金融機関への金銭贈与が約一兆一千四百四十四億円、不良債権の買い取りが約二千九億円でございます。

前原委員 ということは、合計で一兆三千四百五十三億円の公的資金がこのいいかげんな金融機関に対して投入をされて、国民の税金、血税としていわゆる穴埋めをされた、こういうことであります。

 そして、先ほど理事長からお話がありましたけれども、では、朝鮮総連が、預金保険機構、RCCに対して、東京地裁の判定によって確定された、いわゆる返還しなければいけない総額は幾らですか。

田邉参考人 お答えをいたします。

 当初の、私どもが請求を裁判所に対して行いましたのは六百二十八億円でございましたが、その直後に一億円の回収がございましたので、六百二十七億円につきまして裁判所から認定をいただいております。

前原委員 一兆三千四百五十三億円で、認定されているのが、たったですけれども、それでも六百二十七億円という金額でありまして、このうち幾ら回収できましたか。

田邉参考人 お答えをいたします。

 買い取りました不良債権のうち、競売等で約三十七億円を回収いたしました。

前原委員 六百二十七億円のうち回収できたのが三十七億円、つまりは、いまだに朝鮮総連に対してRCCは五百九十億円の債権を持っている、こういうことになるわけであります。

 さて、ここからが本題なんですが、今回の旧朝鮮総連ビルの競売、転売をめぐる経緯というのが非常に怪しくて、まずは、いろいろ、買ったお寺もありましたけれども払えないということで、あるいはモンゴルの会社とかもありましたけれども、最終的に香川県のマルナカホールディングスというものが二十二億一千万円で買いました。そして、そこが山形県酒田市のグリーンフォーリストというところに約四十四億円で売却をするということであります。

 グリーンフォーリストという会社、写真を見ましたけれども、何か倉庫みたいなところで、従業員は数名、年間の売り上げは二千万ぐらい。それが四十四億円の買い物をしている。

 こういうことでありますが、今の旧朝鮮総連ビル、建物の登記簿をとりましたところ、先ほど、百二億余りで、競売で四億幾らでしか売れなかったという、朝鮮出版会館管理会、今は白山出版会館管理会という名前に変わっていますけれども、そこが根抵当権を五十億つけている。

 この五十億の背景は、これは報道ベースですからわかりませんが、まず、この出版会館ビルが大阪の会社に十七億円で売却されて、十八億は総連幹部が集めたんじゃないかと言われて、十億円は香港からの資金ではないかと言われている。ここは報道ベースでありますので詰めませんけれども。

 一番の問題は、グリーンフォーリストが朝鮮総連と賃貸契約を結べば、朝鮮総連が旧朝鮮総連ビルを引き続き使えるということになることであります。これが一番問題なんですね。これは競売の脱法行為ではないでしょうか。

 マルナカからグリーンフォーリストへの転売の間に入ったとされる香川選出元参議院議員山内俊夫氏は、朝鮮総連が旧ビルを継続使用できれば、日朝関係が進展して国益にかなうと言っています。

 総理はこの言葉に同意されますか。

安倍内閣総理大臣 こうした商行為と日朝の交渉は、全く別のものでございます。

前原委員 外務大臣に伺いますけれども、日朝協議の中で、北朝鮮側が旧朝鮮総連ビルの継続使用を議題として取り上げていますか。

岸田国務大臣 日朝協議の詳細については控えますが、裁判所による手続が行われているということについて説明をしたという経緯はあったと承知しております。

前原委員 預金保険機構にもう一遍聞きます。

 五百九十億円の債権があるんですね。仮にグリーンフォーリストと朝鮮総連が賃貸契約を結べば、賃料をRCCは差し押さえるべきじゃないですか。いかがですか。

田邉参考人 賃料に関してのお尋ねでございますが、まず、私ども預金保険機構でございますが、これまでも私どもに対して付与されておりますさまざまな権能といいますか機能がございます。それからまた、これまでのいろいろな回収で蓄積をされてまいりました債権回収に関しますさまざまな知見、ノウハウというものがございます。これらをフルに活用することによりまして、債権回収に必要な措置をとっていきたいというふうに考えております。

 回収の具体的な部分についての御質問がございましたけれども、そこにつきましては、一般論という形で申し上げさせていただければと思いますけれども、今も申し上げましたようなさまざまな権能、ノウハウを使いまして、全力を挙げて、もしそういうことが確認されれば、あらゆる手段を対象に検証いたしまして、適切、効果的な措置を当然検討していくということになろうかというふうに思います。

前原委員 これはすごく大事な答弁をされたんですね。

 つまりは、朝鮮総連が継続使用を転売を行って図ろうとしても、五百九十億円の債権がある以上は、賃貸契約を結べば、それはあらゆる預金保険機構、RCCの権能を使って、賃貸契約も差し押さえができるんですよ。つまりは、継続使用というものは、私は無理だと思いますよ。また、させてはいけないと思うんですね。

 総理に伺います。

 経緯は先ほど申し上げたように、根の話は、こういう乱脈融資によって、そして一兆三千四百五十三億円の血税がこの金融機関に穴埋めに使われているわけです。そしてその中には、北朝鮮への不正送金、核やミサイルの開発にも使われたかもしれない、そういう北朝鮮への不正送金が確認をされている。そしてまた、組織的な流用もあった。そして、いまだにRCCは朝鮮総連に対して五百九十億円のいわゆる債権を持っている、こういうことです。

 私は、警察、公安調査庁、さまざまな情報を預金保険機構にしっかりと集めて、債権回収のために、こういう脱法的な継続使用をさせないということを政府としてしっかりと総理が指示すべきだと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 朝銀信組の今言われた問題点、恐らく、国会議員で一番最初に取り上げたのは私だと思います。

 朝銀信組の破綻の問題は、他の信組の問題とは違って、いわば破綻することがわかっているにもかかわらず、後で預金保険機構あるいは公的資金が入ることを前提にどんどん貸していく、そして大きな穴をあけた結果なんですね。投資の失敗だけではなくて、いわば不正融資というか、北朝鮮に金が渡るということを前提に貸し手側と借り手側が一体となっていたという問題がありました。

 そこで、私は官房副長官時代に、朝銀信組を再生する場合、理事に少なくとも日本人を入れなければいけない、二人以上入れろということで、入れなければこれは公的資金を投入するべきではないという基本的な方針を決めたことがございました。その後、いわば、厳正な法執行を心がけるということで、現在、裁判等々が起こされているわけでございます。

 今回の件でございますが、これは基本的に民間同士で、その方針のもとにしっかりとRCCも取り組んでいるんだろう、このように思います。

 基本的に、その後、私が官房長官のときに、厳正な法執行、過剰な法執行ではありませんが、厳正な法執行が行われていたかどうか、総連関係にですね、その観点から、厳正な法執行という枠組みをかつてつくったことがございました。

 そういう意味において、厳正な法執行が行われ、そしていわば血税が投入されたわけでありますから、その回収を厳格に行っていくように進めていく、これは当然のことであろう。その上において、さまざまな使える国家資源も投入していくということではないか、このように思っております。

前原委員 総理と私、当選同期で、総理が一番初めに質問されたのかどうかわかりません。私もこの問題については十回ぐらいやりました。そんな同じ問題意識を持ってお互い取り組んだ問題だということであります。

 総理に伺いますけれども、拉致の問題というのはしっかりと解決しなきゃいけない、これは総理も強い思い入れを持って今まで取り組んでこられた問題でありますけれども、この朝鮮総連のいわゆる建物の継続使用と拉致の問題というものは取引になり得るのか。

 絶対にしちゃいけないと思うんですね。つまりは、両方とも北朝鮮がやった許されざる、拉致はテロ行為だし、これはまさに法違反ですよ。そして、血税が一兆三千億円以上も使われた。

 その根っこにある二つのものを、北朝鮮がどういうことを言っているかはわかりません、あるいはそれがないのかもしれませんが、そういうものが仮に、かりそめにも取引のように使われるということは、絶対あってはならない。両方とも北朝鮮が責めを負うべき話なんです。

 そういう態度で日朝交渉に臨むということをここでお約束いただけますか。

安倍内閣総理大臣 前原委員も、この問題に取り組まれていて、国会で質問されていたということは私も承知をしております。当時、私、与党でありますから、党内でこの議論をしたわけでございますが、当時は、私の考えというのはむしろ少数派であったわけであります。

 そこで、当然、違法行為があれば、その違法行為に目をつぶって交渉を進めるということは、これはもうあり得ない、安倍政権においてはあり得ないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

前原委員 拉致の問題、一年ということで、半年が過ぎたわけであります。これについては、外交当事者でないとなかなか接し得ない情報もあると思いますけれども、今総理のおっしゃった違法な問題と、また拉致の問題も北朝鮮が起こしたテロでありますから、こういった問題を取引材料に使わない、そしてこういう脱法的な継続使用というのは認めさせないという強い思いの中で、さまざまな政府としての資源を投入していただきたい、こう思っております。

 これはパネルはございませんが、資料で一つ二つ確認をしておきたいことがありますけれども、資料の四を見ていただきましょうか。

 先ほど総理が若干言及された定款の問題であります。

 これも、いわゆる朝銀をめぐる課題と新設受け皿組合において講じられた対応ということで、例えば、つまり朝鮮総連の財布に使われていたわけですから、そういうものは絶対許しちゃいけないということで、総連を含むいかなる団体、個人からの経営、人事に対する介入、関与を排除する、総連、他の朝銀等の役員経験者を役員としない、日本の銀行、信用金庫において勤務した者を役員に加える、総連に対する融資は引き継がず、また新たな融資は行わない、監査法人による外部監査の導入、員外監事の設置。もともと朝銀だけは、朝銀だけの共同計算センターから成り立っていたわけでありますけれども、全国信組の共同センターに移行するなどのこういうものを決められて、再発防止策を練ったんですね。

 さて、今七つの信組がありますが、これについてはしっかりと守られているかどうか、金融担当大臣、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 北朝鮮系の信用組合を含めて、全ての信用組合というのは、今言われましたように、みずから直接海外送金を行うためのシステムは持っていないのが実質なんですが、他の金融機関を経由して送金を行うための提携もしていない……(前原委員「これが守られているかどうか」と呼ぶ)そうです。そこのところで、今きちんとしたことを言われておりますので、私どもとして、北朝鮮組合の朝鮮総連に対する新たな融資が行われていないかが一番の問題なんですが、今、私どもの検査監督を通じてきちんと確認をしていると思っております。

前原委員 委員長、資料請求をしたいと思いますが、この七つの信用組合、七つというのは、資料五を見ていただきますと、新設が四、既存が三あるんですが、七つなんですが、先ほど資料四で申し上げたことが徹底されているかどうか、それぞれの金融機関について、金融庁から検査の資料をしっかりいただきたいと思います。

大島委員長 理事会で取り計らいます。

前原委員 その上で、金融担当大臣、一つ伺いますけれども、この資料五の「既存」のところで、岐阜市に本店があるイオという信組、これは見ていただくと、不良債権比率が二五・九二%なんです。四分の一以上が不良債権化しているわけですね。これはちょっとおかしいと思いませんか。

 このことを含めて、先ほどおっしゃったような前提が本当に保たれているのかどうなのか。今の、特にイオ信組については、どういう検査をされていますか。

麻生国務大臣 御存じのように、これまでも、個別の金融機関についての詳しい経営状態とか検査とか監督内容については、これはコメントは差し控えさせていただいておりますけれども、金融庁におきまして、各金融機関の財務状況等々につきまして、検査監督を通じて、与信の管理強化というところやら、収益向上に向けた取り組みを促しておるんですが、おっしゃるとおりに、ここだけがちょっと極端な数字になっておるというのは事実でありますので、少なくとも、ほかの地区とどれぐらい違うかというのもちょっと申し上げにくいんですが、いずれにいたしましても、この点は私どもも十分に気がついておるところでもありますので、きちっと審査を継続してまいりたいと思っております。

前原委員 その調査結果も、委員長、委員会に提出をしていただきたいと思います。

大島委員長 理事会で検討させていただきます。

前原委員 それでは次に、アベノミクスのリスク、アベノリスクとそれからアベノミクスのコスト、アベノコストについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、黒田日銀総裁、お越しをいただいていると思いますが、二月十二日の経済財政諮問会議で、昨年、格付会社ムーディーズが、日本政府の消費増税先送りを受けて、日本国債を中国や韓国より低いA1に格下げしたことに対して、黒田日銀総裁は、格付が下がると国債を大量に保有する日本の銀行は資本の積み増しをしなければならず、経営に対する影響を懸念している、極めてリスキーだ、こう発言されたと報道されておりますが、事実ですか。

黒田参考人 お答えいたします。

 先週の経済財政諮問会議において、私から、持続可能な財政構造を確立することは、国全体として取り組むべき重要な課題であって、財政再建目標達成に向けて、具体的な計画を策定していくことは極めて重要であるということを申し上げました。

 なお、現在のバーゼル資本規制においては、金融機関が自国の国債を保有することについては資本を積む必要がないということになっておりますので、日本の銀行、金融機関が日本の国債を買うことについて何か影響が出るということはないと思います。

前原委員 今答弁されたのは議事録に載っているものですよね。つまりは、議事録に載っていない中で発言をされているということを私はその場におられた方から確認をしているわけであります。

 それと、今おっしゃったバーゼル委員会につきましても、ことしの一月二十三日、リスクウエートゼロの見直しを開始していますよね。今はそうだけれども、これからこのリスクウエートゼロの見直しが行われると国債が有リスク資産になる可能性がありますね。そうすると、大量に国債を保有する金融機関、銀行は、自己資本をふやす必要性が出てきますね。その危機感を私はおっしゃったと思うんですね。

 ですから、そういう意味においては、財政再建というもの、財政の健全化というものをしっかりやらないと、自分たちが金融緩和で、そして株が上がっているかもしれない、一生懸命にイールドカーブを下げて金利を下げている、資金の供給をやっている、だけれども、政府が財政再建をしっかりやってもらわないと、こういうリスクがありますよということをおっしゃったんですね。イエスかノーかで結構です。

黒田参考人 議論の詳細につきましては、内閣府から公表される議事要旨を通じて明らかにされる扱いであるというふうに承知しております。

 なお、バーゼル委員会がソブリンリスクについて議論を開始したことは事実でありますけれども、国債の現在の扱いを変えるとか、あるいは、特に金融機関が自国の国債を持った場合に資本を積ませるかどうかということについて一定の方向性を持って検討するということではないということも、バーゼル委員会自身が明らかにしております。

前原委員 質問には答えておられないんですが、ただ、それが、バーゼル委員会が見直した場合には、急激なリスクが来るということは事実だというふうに思うんですね。

 前回の質問で指摘をさせていただいたんですが、安倍総理の消費増税延期によって、日銀の金融政策というのは確実にリスクは高まったんです。つまりは、追加金融緩和をした後に一年半延ばすということになったわけでありますから、この一年半だけで百二十兆円の国債購入量がふえるということになるわけですね。

 そうすると、消費増税をやる前の、いわゆる巡航速度を保つための金融政策、あるいはその後のいわゆる反動減、これを支えるための金融政策ということを考えると、二〇一七年いっぱい、なかなか出口にならないということになると、これも先般指摘をしましたが、そのときの日銀の国債保有量は四百四十兆円にもなるんですよ。そして、国債発行量の約半分を日銀が買っている、そして対GDP比でいうと八割まで高まるということになるわけですね。非常に私はリスキーだと思うんですが、一つ私は疑問に思うことがあるんです。

 つまり、こういうような追加緩和をずっと続けるということは可能なんですか。この政策を二%になるまでやりますと言いますけれども、二%になるまで、例えば格付が変わった、そしてさまざまなリスクが起きた、それで、言ってみれば、さまざまな問題が起きる可能性が出てくるわけですね。平穏無事に、二%が来るまでこの政策が続けられると思っておられるんですか、黒田総裁。

黒田参考人 これまでのところ、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということで導入した量的・質的金融緩和の執行については、特段の問題は出ていないと思いますが、委員御指摘の点も含めて、国債市場の動向ということについては常に留意をしておりまして、市場関係者とも対話を続けておりますし、当面、何か問題が起こるというふうには思っておりません。

 それから、二%の物価安定目標を実現するということは必要であるし、実現可能であるというふうに思っております。

前原委員 では、違う質問をしましょう、違う形で。

 限界が来るまでに、つまりは何らかのさまざまな異変が起きるまでに、この追加緩和を続けたら必ず二%を達成できると言い切れますか。言い切れるかどうか、それをお答えください。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、国債市場の動向には十分注意してやっていきますし、金融政策についてはさまざまな手段というものが存在いたしますので、私どもとしては、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという目標には全く変わりはございません。

前原委員 委員長、質問に答えていないんですよ。

 つまりは、必ず二%は実現できる、そしてそれまでの追加緩和はやり続ける、それはベストシナリオであって、それができるかどうかわからないんです。

 私が先般ギャンブルだと言ったのは、その二%が達成できるまでに、追加緩和をやっていって、そのときにまた国債の格付が下がる、財政ファイナンスとマーケットがみなす、そのときに、大きな変化が生じて、国債の暴落、金利の急騰、財政破綻というもののいわゆる引き金を引く可能性があるんですね。そのリスクはないのかと聞いているんです。本当に二%の物価達成をするためにずっとそれでやり続けることに、全くそれは問題なくやれるのかということを聞いているわけですよ。そのリスクはないのかと聞いているんですよ。

黒田参考人 国債の買い入れについてのリスクのお尋ねでございますが、まず、二つの点を分けて考える必要があると思います。

 財政については、御指摘のような、財政について信認が失われれば、国債の価格あるいは金利に影響が出るおそれがある、リスクがあるということは事実でありまして、であるからこそ、政府は、財政再建目標を決め、それに向けて着実に前進しようとしておられると思います。

 その話とまた別の話として、金融政策の面でどういうリスクがあるかということであれば、金融政策はさまざまな手段がありますので、そういう手段を必要に応じて適切に動員して、やはり二%の物価安定目標というのは達成すべきであるし、達成できるというふうに思っております。

前原委員 今総裁がお答えになられた二つというのは連動しているわけですよ。切り離すことはできない。それはわかっておっしゃっていると思うんです。

 つまりは、今、株が上がっている。きのう岸本委員が質問されたGPIFが株を買っているというので、株も上がっている。あるいは、追加緩和によってETFを三兆円買っている。そういうようなことで買い支えをしている。それは、今はいいかもしれない。しかし、それが、本当に経済が、巡航速度が、しっかり目標に達成するまでやり続けられる余力があるのかどうかということを言っているわけです。

 リスクがその前に来たときに、全部ベストシナリオ、つまりは、全てうまくいった前提でハッピーですよということを国民に言っているだけで、それがサステーナブルじゃない、持続可能じゃないかもしれないということを私は言い続けているわけでありますが、必ず実現をするとおっしゃった。

 そこで、いろいろな変調が起きたときに、私は日銀総裁の責任は物すごく大きくなると思いますよ。辞任してその責任をとるなんていうことじゃなくて、国民の生活を塗炭の苦しみに陥らせる可能性がある。そういうギャンブルをやっているという思いをしっかり持って、私はこの政策をやってもらいたいと思います。

 ギャンブルですよ。こんなギャンブル政策はないですよ。国民全体をギャンブルに巻き込んで、そして財政破綻をするかもしれない。うまくいくということなんてナローパスですよ。そういうことをやっているということを国民の皆さん方にしっかり示さないで、今さえ、株が高い、いい雰囲気だ、だから内閣支持率も高い。これは、わかったときは大変なことになりますよ。それを申し上げておきたいと思います。

 アベノコストについてお話をします。

 このアベノコストについて申し上げますが、私が何をもってアベノリスクと言っているかというと、先ほどの異次元の金融緩和というものが今やられているから円安になり、また企業業績もいい、そしてGPIFも株を買っている、ETFを日銀が買っている、だから経済が好循環のように見えるかもしれないけれども、これは長続きするものじゃないんですよ。それが突然やってくるかもしれない。これは、国債暴落リスク、金利急騰リスク、ハイパーインフレリスク、財政破綻リスク、こういうものを抱えながら、今はいいように見えている。

 コストについて言うと、今から伺いますけれども、実質金利はマイナス、実質賃金、可処分所得が十八カ月、十七カ月マイナス、日銀が付利金利をつけている、国庫納付する分がその分減るというコストがある。そういうものがある。

 名目金利から予想インフレ率を引いたものが実質金利でありますけれども、実質金利はどうなっているかというと、ずっとマイナスですよね。これは黒田総裁とは財務金融委員会でも議論したことがありますけれども、実質金利がマイナスということはどういうことかということでありますけれども、国の債務は目減りをして、つまりはマイナス金利ですから、そして国民の資産も目減りをしている、こういうことに今なっているということですね。

 事実関係、イエスかノーかだけで結構です、黒田総裁。

黒田参考人 最近の金融市場を見ますと、確かに、十年国債の金利が〇・四%程度まで低下している一方で、予想物価上昇率も全体として上昇しておりますので、実質金利はマイナスで推移しているというふうに思います。

 ただ、これは、いわば量的・質的金融緩和ということで、投資を刺激し、消費を刺激するという政策に合致したものであるというふうに思っております。(前原委員「質問に答えていない。だから、国の資産が、国の債務が目減りをして」と呼ぶ)

大島委員長 手を挙げて、もう一回。(前原委員「いやいや、質問に答えてください。覚えているでしょう」と呼ぶ)

黒田参考人 今申し上げたとおり、量的・質的金融緩和の経済に対する波及メカニズムの重要なものの一つとして、イールドカーブ全体を引き下げ、物価上昇期待を引き上げることによって実質金利を下げる、これが投資、消費を刺激し、経済を浮揚させ、さらに言えば二%の物価安定目標を達成するということでありますので、経過的にいろいろな部門においてさまざまな影響が出るということは常に金融政策であるわけですけれども、基本的に、経済の好循環のもとで物価安定目標を達成するということに向けて、所期の効果を発揮しているというふうに思っております。

前原委員 答えていないんですよ、だらだらと。そんな政策目的はわかりますよ、そうなっているかどうかは別にして。そんなに貸し出しもふえていないし。

 聞いているのは、その政策効果がどうのこうのじゃなくて、実質金利がマイナスということは、結果的に、国民の資産が目減りをして、国の借金も目減りをしているということですねということを聞いているんですよ。イエスかノーかで答えてもらったらいいんですよ。

黒田参考人 先ほどから申し上げておりますとおり、金融政策で金利が上がる、あるいは金利が下がる、金融を引き締めれば金利が上がる、あるいは緩和すれば下がる。その場合に、名目金利ではなくて実質金利が経済活動に一番大きな影響を与えるということはよく知られたことでありまして、現在で、現時点で重要なことは、経済の好循環を実現して、物価を二%に向けて徐々に引き上げていくということであるというふうに思っております。

 先ほどから申し上げているとおり、その過程で、債権者、債務者について、それだけとったらプラスになるかマイナスになるかということはあり得るんですけれども、あくまでも経済全体の好循環を実現するという目的のために行っているわけでありまして、この点は御理解をいただきたいと思います。

前原委員 答えになっていないよ。これ、ひどいですよ。全体のことを聞いていないでしょう。全体のことを聞いていなくて、実質金利がマイナスだったら、国の借金は減る、目減りをする、国民の金融資産は目減りをする、それはあるのかどうなのかということを聞いているんですよ。それを言わないで、全体がどうのこうのなんて聞いていない。それはひどいでしょう。聞いていることに答えていない。(発言する者あり)いや、ひどいよ。そこの部分についてイエスかノーかを答えてくださいと言っているんですよ。おかしいよ、そんなの。

 誰も金融抑圧を認めろと言っているんじゃないんだ、それは。その部分だけをとってみれば……(発言する者あり)違うよ、その部分だけとれるよ。国民は知らないでしょう、実質金利がずっとマイナスで、ほっといたら自分たちの資産が目減りをしているなんて誰も知らないじゃないですか。

 そういうことをしっかりと、リスクとして、コストとして言わない。アベノリスクの、アベノミクスの、国債暴落、金利急騰のリスクも言わない。いいことだけを言って、国民の関心を持っている。だからおかしいと言っているんだ、私は。

 日銀総裁、今度はまともに答えてください。その部分について聞いているんだ。全体のことについて聞いているんじゃない。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、部分部分をとると、あるいは経過的な部分をとると、金利上昇あるいは金利低下が、さまざまな影響が出るということは認めているわけであります。(前原委員「ちょっと、そんな答弁だったら要らないよ。その部分を聞いているのを、同じ答弁ばかり繰り返して、質問時間を浪費しているじゃないですか」と呼ぶ)

大島委員長 ちょっと静かに。

黒田参考人 あえて申し上げますと、これまでデフレが続いてくる中で、実質金利が高どまりしていたわけです。その際には、逆に言えば、国の実質債務はふえていたわけですね。現時点で、実質金利がマイナスになっているということによって、国の実質的な債務負担が減っているということは事実であります。

 ただ、これは、先ほど来申し上げていますとおり、経済全体として好循環を実現し、物価安定目標を達成するために必要な金融緩和であるということを御理解いただきたいと思います。

前原委員 ですから、要は、全体でうまくいくと言いながら、国民に対してはちゃんと説明していなかったんですよ。国債を買うことによってイールドカーブを下げて、そしてインフレ期待を持たせることによって、名目金利からいわゆるインフレ期待を引いたもの、実質金利はマイナスで、つまりは、国民の金融資産に課税をして、その部分を国の借金の返済に回しているのと同じ仕組みなんですよ、これは。そういうものがあるということについて、全く国民は知らない。

 全体がうまくいっていると言うけれども、さっき申し上げたように、この政策が未来永劫続くかどうかわからないですよ。どこでこのリスクが出てくるかわからない。そういうことを我々は指摘しているわけでありまして、これはしっかりと経緯を見させてもらいたいというふうに思います。

 それでは、最後、五、六分になりましたけれども、国の税や社会保障保険料の徴収漏れについてお話をしたいと思います。

 このグラフを見ていただいたらおわかりでありますけれども、これはそれぞれの政府の機関からお話を伺いました。これはどういう仕組みになっているかといいますと、国税、地方税、徴収決定額が幾らか、そして未収額は幾らか。未収額は次の年度に先送りされるわけでありますが、それがまた収納額として入る場合もあり、未収額として残る場合もある。最終的に、税は五年、そして社会保険料は二年で滞納残額もしくは不納欠損額ということで確定をする、こういうことであります。

 これを見ていただいたらおわかりのように、いわゆる滞納残額というのは、税と年金、そして医療、そして失業保険、労働保険、合わせて六・二兆円、これだけの滞納があって、毎年毎年の不納欠損額というのは大体一兆四千億円ぐらいあるわけですね。そのぐらい、つまりは未収額として残っていっている。一番大きなものは、上の段を見ていただいて、国民年金ですよ。国民年金についてこれだけ未納がある、こういうことであります。

 国民の皆さん方、税と社会保障の保険料は分けなければなりませんけれども、例えば年金というものが取れなかった場合、最終的に生活保護になる方がいるということになると、それは生活保護費として国民の負担に回る可能性がある。つまりは、こういうものがしっかりと取れていないことは、回り回って、例えば医療もそうです、あるいは失業保険もそうかもしれない、回り回って皆さん方の負担になるということから考えると、これだけの未納、未収がある。しかも、憲法の中で納税の義務というのがあるわけであります。そういう意味では、これはやはりしっかりともらうような仕組みをつくらなきゃいけないということであります。

 我が政権のときに、マイナンバー制というものを導入いたしました。このマイナンバー制というものを導入していく中で、どうやって、言ってみれば徴収額を上げていくのかということも大変重要な話でありますし、また、これは資料を皆さん方におつけをしておりますけれども、例えば資料の十五、十六においては、それぞれどういう強制手続の法的根拠があるかということになっています。

 税を見ますと、督促しなければならないという強制性があるわけであります。もちろん社会保障の保険料もあるわけでありますが、国民年金については、督促することができる、こういうことになっておりますし、延滞金を見てみますと、なければならないということに税はなっているんですが、社会保障の方で見ると、督促をしたときということで、かなり緩やかになっている部分があるわけであります。

 さて、時間がありませんので、これは甘利大臣になるんでしょうか、こういう税や社会保障保険料の取りっぱぐれがあって、毎年毎年一兆四千億円ずつ欠損が生まれている。消費税にすると一%の半分ぐらいが、もちろん全部税ではないですけれども、先ほど、回り回って国民の負担にかかわってくる可能性があるということを考えると、毎年毎年消費税の一%の半分、〇・五%分ぐらいが欠損金として処理されている。これをどうやって徴収率を上げていくのかということについては、さまざまな取り組みをやっていかなきゃいけない。

 これは、我々も三年三カ月政権与党をさせていただいて、先ほども申したマイナンバー制、これをしっかりと導入する中でその徴収率を上げるとか、さまざまなことを考えられると思うんですが、この現実を見た上で、安倍政権としてどういうふうにこの徴収率を上げていったらいいと考えておられるか、このことについて御答弁をいただきたいと思います。

甘利国務大臣 まず一つ、去年の十二月に国税庁から年金機構に情報が提供されました。これは、本来、社会保険対象の事業所で実態との乖離を埋めていく情報を提供されていまして、この乖離が、確認されているものと未確認を含めて七十五万事業所ぐらいありますか、これをしっかり埋めていくということになります。

 それから、今御指摘のマイナンバーの活用ということがあります。来年の一月以降マイナンバーの利用ができる。そして、再来年の七月以降、情報提供のネットワークシステムが自治体とつながっていくわけです。

 そこで、もちろん、個人の情報を取り扱うわけですからしっかり監視をしながら管理をしていきますけれども、その中で、個人の情報、それから法人にも番号が付されるわけですが、これは活用が自由ですから、それと整合性をとっていって、徴収率をしっかり上げていくということに取り組んでいきます。

前原委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、やはり、払っている人と払わない人、払えない人、この不公平さの中で差が生じるということがあってはいけないし、やはりしっかりと国としてこういうものについては法律の改正も含めて取り組むということが大事だと思います。

 また予算委員会の質疑がありますので、各大臣に、私は、そういったところの具体的な取り組みというものをまたただしていくということを表明しまして、きょうの質問は終わります。

大島委員長 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 イスラム過激派組織により、お二人の日本人が犠牲になりました。心より哀悼の意を表しますとともに、御遺族の方々にはお悔やみを申し上げます。

 さて、そのうちのお一人、後藤健二さんが書かれた本をきょうはお持ちしました。「ダイヤモンドより平和がほしい」という本です。

 この本は、ダイヤモンドの産地として知られるアフリカのシエラレオネという国で、かつて、ダイヤモンドを売って得られた利益が政府軍と反政府軍の戦争の費用となって内戦が続きました。後藤さんは、両親を殺され、誘拐されて少年兵に仕立て上げられた男の子たちや、彼らに襲われ両耳や腕を切り落とされた男性にお話を聞きました。

 戦争が一たび起これば、全てが破壊される。たとえ建物や風景はもとに戻っても、人の心に刻まれた憎しみや悲しみは消えない。後藤さんは、命がけの取材を通じて真実を伝え、戦争の愚かさと平和のとうとさを私たちに教えてくれました。後藤さんの死によって、失ったものの大きさ、そして取材と報道の自由の大切さを改めて感じます。

 他方で、今、特定秘密保護法の施行や海外渡航の制限という動きもあって、取材や報道の自由が徐々に狭まってきています。お上に対して物を言いづらい雰囲気、世の中の空気に同調しようという雰囲気が高まっているような気がします。

 こういう時代だからこそ、国民の受信料で支えられた公共放送NHKの役割は重要であり、真実を伝える体制が整っているかどうかを国会でもチェックしていく必要があります。

 折しも、NHKの今後三年間の経営計画が定められてきました。その冒頭には、「判断のよりどころとなる正確な報道」という文言があります。一昨日の我が党部門会議では、籾井会長がその経営計画について説明されました。

 その際、私からは、籾井会長御自身が真実を伝えていこうという姿勢があるかどうか確認させていただこうという趣旨で質問させていただきました。それに対して籾井会長は、経営計画の説明に来たので、こんなにたくさん時間を使って、また呼ばれるのは御免だとか、あなたの方がへ理屈だとか、言葉尻の話だと言われました。また、国会を場外と評するなど、国会を軽視する発言もありました。やりとりの最後には、くだらぬなどと捨てぜりふを吐かれたとお聞きしました。私は、大変ショックでした。私もやや冷静さを欠き、失礼な物言いがあったことはおわびいたします。しかし、私があの場で質問した趣旨は、今述べましたとおりです。

 以上のことを踏まえた上で、籾井会長にお尋ねします。

 一昨日のあの場での御自身の言動は問題がなかったと思われますか。お答えください。

籾井参考人 私の言葉遣いが誤解を招いているのであれば大変残念なことだと思っております。

 NHK会長という公人の立場を踏まえ、今後は、きちんと真意が伝わるように、誠心誠意丁寧な御説明を心がけたいと思っております。

階委員 会長自身が真実を伝えていこうという姿勢が私には感じられませんでした。あの会議の場でそういう姿勢をお持ちだということは見えませんでした。

 昨年の国会では、籾井会長が就任早々、部下である理事全員から辞表を取りつけていることが、自由な発言を萎縮させているのではないかということが大きな問題になりました。この点に関し、辞表取りつけは一般社会でよくあることだという発言をされました。

 しかし、報道によれば、御自身が出身された会社でもそのような事例はないし、東京新聞が大手企業五十社にアンケートをとったところ、経営トップが役員らに辞表を提出させていると回答した企業はゼロでした。

 先ごろ、戦後七十年談話を検討する有識者会議の座長となられた日本郵政の西室社長も、私は、今まで勤めたのは三社目で、経済団体の活動もやっているが、一般社会で常識的に行われているとは思っていないと当時述べられています。

 こうした事実関係を踏まえれば、一般社会でよくあることという発言は誤りだということを認め撤回されるのが、経営計画にある「判断のよりどころとなる正確な報道」を目指す組織のトップとしてあるべき姿だと私は思いますが、籾井会長、撤回される気はないですか。

籾井参考人 お答えいたします。

 私としては、経営陣が一丸となり、辞表を預かることを含め、退路を断つ決意で職務に臨むことは珍しくないと考えております。

 私が申し上げたかったのは、さまざまな民間企業や団体など、それぞれの組織では、運営のあり方や置かれた環境、企業風土によって経営の手法がそれぞれ違うということで、それぞれ適切な方法があるのではないかと思っているということでございます。

階委員 全く、一般社会ではよくあることという表現について、誤りかどうかということには触れられませんでした。非常に残念です。

 また、過去についても、既に撤回されておりますけれども、就任会見の際には、従軍慰安婦の問題について、今のモラルでは悪いことだが、当時の戦争地域には大体つきものだったと思う、日本だけがやっていたようなことを言われるのはおかしい、ヨーロッパはどこだってあったのではないか、なぜオランダにまだ飾り窓があるんですかといった、女性の人権を軽視する発言もされています。

 私は、かねがね、一流企業の経営者であった籾井会長が、なぜこうした問題発言をされたのか疑問に思っていました。しかし、一昨日の会議で、こうしたことについて、着任したその日に記者会見がセットされたんです、私からすると大変無謀なことだと思いますけれども、NHKのことは何も知らないんですからと、開き直った弁明がありました。もし本当にそうだとしたら、逆に籾井会長には同情すべき点があるのかもしれません。

 そこで籾井会長にお尋ねします。

 NHKのことを何も知らなかった籾井さんが、どうして昨年の一月二十五日にこの職につくことになったのか、誰からどのような形で就任要請があったのか、お答えください。

籾井参考人 お答えします。

 NHKの会長の人事につきましては、経営委員会が選び決められるものというふうに了解いたしております。

階委員 今のお答えを受け、こちらのパネル、少し説明させていただきます。NHKの運営の仕組み、放送法に基づくものです。

 NHKの会長の任免権、すなわち任命する権利とやめさせる権利は経営委員会にあります。

 きょうは、経営委員会の浜田委員長にお越しいただきました。なぜ、昨年の一月二十五日、NHKのことを何も知らなかった籾井さんをNHK会長に任命されたのですか。お答えください。

浜田参考人 経営委員会といたしましては、資格要件を定め、籾井会長がそれに適した方であったということで、委員会として籾井会長を決定し、要請をいたしました。

階委員 答えになっていないと思いますが。

 実は、任命したところは百歩譲ってよくわからなくて任命してしまったとしても、先ほど申し上げたとおり、罷免権もあるんです。そして、この一年間、籾井会長の問題発言、これまでも述べましたけれども、数々あって、たびたび浜田委員長も注意されてきたと思います。

 例えば、昨年の八月二十六日には、NHKの退職者有志千五百人以上が籾井会長の辞任勧告か罷免を求める申し入れ書を提出しました、対象者の一割を超える意見であり重く受けとめると浜田委員長は当時発言されています。

 また、つい最近、ことし二月五日に籾井会長が記者会見で、従軍慰安婦問題を番組で取り上げるかどうかは政府の方針を見て判断する意向を示した。そして、この点に関して浜田委員長は、昨年の就任時から今日に至るまで籾井会長には反省の跡も進歩した姿も見られない中、これから浜田委員長として、委員会でこうした問題を取り上げるような姿勢も示されたと思っております。

 実際、二つの市民団体と日本ジャーナリスト会議から、十日には、会長の辞任と罷免を求める申し入れ書も提出されております。

 浜田委員長に再びお尋ねします。

 この期に及んでも、籾井会長はNHKの経営トップとして適任だとお考えになるのか。そして、辞任勧告か罷免を求める考えはおありになるか。このことについてお答えください。

浜田参考人 放送法第五十五条で、経営委員会による会長の罷免についての定めがあることは承知しております。しかし、今、経営委員会といたしましては、平成二十七年度の収支予算、事業計画を国会で全会一致で御承認いただき、次期経営計画を着実に実行することを執行部に求めているところであります。

 会長以下執行部には、皆様の御理解を賜るための最大限の努力を行っていただきたい、また、経営委員会としても、そのための監督をしっかり行っていきたいというふうに思っております。

階委員 端的にお答えください。

 今現在、罷免をするお考えはないという理解でよろしいですか。

浜田参考人 籾井会長には、事態を一刻も早く収拾し、来年度のNHKの予算の国会での御承認を得ていただきたいというふうに考えております。

 経営委員会としては、会長以下執行部が協力して公共放送の使命を果たすよう監督してまいりたいと思っております。

階委員 間接的ではありますが、罷免をする考えはないというふうに承りました。

 もう一度パネルを見ていただきたいんですが、経営委員会が会長の任免権を持つ、そして、この経営委員会の委員は内閣総理大臣が任免権を持つ、これが放送法の仕組みでございます。

 そこで、総理にお尋ねしますけれども、まず、この経営委員会、浜田委員長を初め、ここまで問題を起こし続けている籾井会長を放置している。そういう放置していることに対して、何らこれを打開しようとする意図も感じられない。具体的には、罷免権を行使する、そういう姿勢が見えない。逆に、これは経営委員会の方にも問題があると言わざるを得ません。

 経営委員会の委員の任免権を持つ総理、任命責任、これをお感じにならないでしょうか。(高市国務大臣「委員長」と呼ぶ)総理に聞いています。時間がないです。総理です。任免権を持つから、総理に聞いています。

高市国務大臣 放送法に係ることでございますので、お答えをいたします。(階委員「指名していません」と呼ぶ)委員長から指名をいただきました。

 現在の経営委員でございますけれども、民主党政権時代に選ばれた方も含めてで構成をされておりますし、総理が任命をされる前には国会の承認を得てという手続になっております。きちっと手続を踏んだ上で、経営委員の方々、お仕事をしていただいております。

 これまでの会長の言動についてということでございますけれども、経営委員は、経営委員会の議事録というものは公開されております。過去の言動につきましても、それぞれ、数回にわたりまして経営委員会で注意を行うなどの対応もいたしております。

 そしてまた、会長自身は、御自身の個人的な考えに基づくものに立って放送を行うことはないということを、これまで数度にわたって国会で答弁をされていると承知をいたしております。

 経営委員会には、これからもしっかりと法に定められた使命を果たしていただきたいと考えております。

階委員 任命責任について、今、任命権のない総務大臣からるる説明もされましたけれども、私は任免権のある総理に伺っているんです。任命責任については結構です。

 もう一つの罷免権。私は、このような会長を放置している経営委員会は問題だと思っていますけれども、この罷免権について総理はどのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 まず、放送機関のトップが行った個別の発言について、政府としてはコメントすべきではないという立場を申し上げておきたいと思います。

 その上において、ただいま放送法を所管する総務大臣から、どういう仕組みだということを国民の皆様にも御説明させていただいたとおり、国会の承認を得た上で経営委員は指名されているわけでございまして、今後もしっかりと放送法にのっとってその使命を果たしていただくことを期待したい、こんなふうに思っております。

階委員 きょうはNHKで中継がされています。実は、こうした籾井会長の言動、一昨日の部門会議も含めて、ほかの放送局が全部取り上げている中で、NHKは取り上げていない。まさに、本来、自浄作用を働かせるべき報道機関が、自浄機能、トップを含めて全くないわけです。

 私は、このようなNHKの体制で、本当に今、報道の自由が重要視されている中で、報道の自由が守られるのか、大変危機感を持っております。私は、今のNHKの体制では、受信料を払っている国民に対して果たして説明がつくのかどうか、大変疑問です。

 ぜひ、NHK会長、もう一度自分の進退を考えていただくようお願い申し上げまして、質問を終わります。

大島委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 私は、前半は女性の活躍や経済、そして後半は危機管理と安全保障、質問したいと思います。

 まず最初に、経済再生、女性の活躍、そして地方創生、これは三位一体であるという視点から、特に、それを支える保育、介護の充実、これは私は一つのインフラと同じように重視すべきだと考えておりますので、そこのインフラを整備しないと日本の成長戦略はないという視点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、女性の活躍、子育てと介護の両立、これが一番の問題になります。

 そして、二つ目は介護の問題です。親の介護もやはりどうしても女性にかかる負担が大きかったり、それだけではなくて、女性は長生きなんです。平均年齢、女性が八十七歳、男性は八十歳。百歳以上を見てみますと、六万人いらっしゃるんですが、うち、男性は八千人、女性が五万二千人なんです。結局、女性の場合、子育てをして、親の介護もして、最後は自分の夫の介護もして、そして最後は一人になってしまうという独居の女性も今ふえてきているのが現実です。

 そして、貧困率、格差の問題も今委員会の大きなテーマですが、貧困率が高いのも、シングルマザー、それから女性一人の高齢者の、独居高齢者なんですね。ここの貧困率がぐんと高いわけです。

 そこで、保育とそれから介護を支える担い手が社会の基礎を支えているという観点から質問をいたします。

 まず、事実関係から。

 保育士さんと介護職員がしっかりと社会を支えてくださっているわけです。この二つの職業の女性の占める割合はどれぐらいですか。

塩崎国務大臣 今先生御指摘の、保育とそれから介護での女性の比率でありますけれども、まず保育士は、全体に占める女性の比率は九三・四%。そして、介護職員全体に占める女性比率は六七・四%でございます。

辻元委員 結局、働きながら子育てをする女性を支える保育士も、九三・四%が女性なんです。介護も、六割以上が女性なんですね。ここに非正規とか、それから非常にしわ寄せが来ています。

 給与の面、今回政府はこの二つの給与を改善していくというお話なんですけれども、給与の差額、格差を見てみますと、全産業平均が三百二十四万円と言われている中で、保育士さんは二百十三万ぐらい、介護士は二百十八万と、それぞれ年収にいたしまして百万円以上の格差があるわけですね。月にしてみたら十万円ぐらい、やはり格差があるわけです。

 この格差を解消していかないと、結局、子育てと仕事の両立も難しいし、親の介護、そして自分の介護もままならない。そうなると、今、介護離職も十万人以上、これは男性も離職しているという現実ですから、社会が崩壊と言ったら大げさに聞こえるかもしれないんですけれども、その危機を持つことと、そこの手当てをしないと経済成長はないと考えます。

 そこで、まず保育の現場から。

 今回、政府の方は保育士確保プランをお出しになったんですが、実はこれは民間の保育園だけが対象になっております。ところが、調べてみますと、民間が大体六割なんですが、公営が四割。そして、今、公営は地方自治体が運営していますけれども、公営の非正規率が非常に高くなって、公営についてもしっかり目くばせをしないと、これは保育士さん、そして子育てと仕事の両立は難しいと思うんです。

 塩崎大臣、今回は民間だけなんですけれども、公営の状況について調査などはされているんでしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 今処遇につきまして先生からお話がございましたけれども、賃金構造基本統計調査というのは、おっしゃるとおり民間事業者だけでございます。

 これは一つは、公立保育所の運営費というのは一般財源化、そういうことになっておるわけでありますが、それから公立の保育所の、非常勤ですね、非正規とおっしゃいましたが、非常勤保育士の賃金状況の把握は、現在のところ、ですから、私どもとしてはできていないわけであります。

 公立保育所も含めて、保育士の処遇の実態把握は先生の御指摘のとおり極めて重要だと思っておりまして、全社協が全国保育組織の調査をしているとか、それから直接ヒアリングを我々でもやるとか、そういうことを含めてさまざまな形で把握をしていかなければならないというふうに思っておりますし、そういうふうに努めてまいりたいというふうに思います。

辻元委員 これは地方創生の観点からも、石破さん、大事だと思うんですね。

 それで、例えばこういう状況なんです。四十代後半の女性、いろいろ調べてみました。非正規で雇いどめがあるんですね、やはり。特にシングルマザーにとっては、公営の保育所というのは一つの本当に頼みの綱のような働き場所でもあると言われているわけです。そんな中、非常勤の保育士を転々と十五年間あちこち移動する、そしてさらには、どれだけ経験を積んでも時給が変わらないというような状況も、公営の方も出てきております。

 かつては、公営だから大丈夫だろうなと思っていたら、違うんですね。先日、衝撃的なニュースがありまして、これは民間の大学が調べました。東京の場合も、公立で非正規職員が四割、そして二十三区以外では七〇・八%が非正規だったというような統計も出ております。そして、年収二百万円以下が八割、百万円以下も四割だったと。他の仕事と保育士さんがかけ持ちしている率が二〇・四%なんですね。

 東京でもそうで、地方はもっと厳しい状況に公営はある。しかし、今、塩崎大臣、私立の方はいろいろ調査しているけれども、今回も手当ては若干するが、公営については調査もこれからであるということですね。

 石破大臣、地方創生の観点からも、やはり、特に被災地の公営も、福島県の事例なんかも調べてみましたけれども、月十二万円程度で非正規であるというような人も多々見受けられるということなんです。ですから、地方復興の観点からも、厚労省と協力して調査をして、国からの交付の財源で賄うというだけではなくて、私は手当てを子育ての視点からもしていくべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

石破国務大臣 それは極めて重要な視点であって、塩崎大臣ともこの件については何度かお話をさせていただいております。

 保育士の資格をお持ちでありながら、実際に保育の現場に出ておられないという方が恐らく六十万人弱おられると思います。鳥取県の人口と同じぐらいの方が、保育士のライセンスを持ちながら出ていない。これはなぜだろうかということもよく見ていかなければなりません。

 地方において女性の方々が安心して出産をしていただく、子育てをしていただく、そのために保育士の方々の処遇の改善は不可欠であるという認識は持っております。

辻元委員 今、官製ワーキングプアという言葉も出てきているんですね。結局、自治体の職員は、全体的に今非正規化が進んでおります。特に、この保育士の場合は人の命を預かる仕事ですから、非常に大事なんですね。

 塩崎大臣、もう一度、公立も含めて調査を開始するということを約束していただけますか。

塩崎国務大臣 誤解を招かないようにあえて申し上げておきますけれども、厚生労働省が毎年行っております社会福祉施設等調査というのがありまして、ここで公営保育所に勤務する非常勤の保育士の割合というのを調べております。従業者数で見ますと、平成二十五年が二三・八%、これは平成二十年と比べて、二十年は二〇・三ですから、やはりふえてはいるんですね。先生御指摘のとおりであります。

 したがって、さっき申し上げたように、全社協の組織を使うなり、利用させていただくなり、それから我々も直接ヒアリングをするなど、調査をぜひこれから前向きにしていきたいというふうに思います。

辻元委員 してください。

 次に、介護もなんですね。

 今回、二・二七%引き下げるということが問題になっております、介護報酬。これは、二・二七%引き下げるけれども一万二千円手当をプラスするんじゃないんですよ。四・四八%下げておいて、ここに一万二千円分プラスするから二・二七%になっているわけですよね。

 これは塩崎大臣にお聞きしますけれども、この一万二千円加算されるのは、どんな人たちが対象ですか。介護ヘルパーさんとその補助的な人だけと聞いているんですが、どうですか。

塩崎国務大臣 御指摘のとおり、介護の現場で、ヘルパーさんなどの直接的な介護職員ということがこの加算の対象でございます。

辻元委員 今、直接的とおっしゃった。

 私は、十年前に介護ヘルパーの資格を取りまして、現場に出た経験が実はあるんですけれども、介護というのはヘルパーだけで成り立たないんですよ。いろいろな、リハビリの方とか給食の方とかそれからお掃除の方とか、全てで介護が成り立っております。そして、やはり命を扱うので、ヘルパーさんだけではなくて、周りの人との協力体制で、物すごく責任が重いんですね。保育もそうですけれども。

 そうしたら、塩崎大臣に、今、ヘルパーさんとその補助をする、ケアマネそれからリハビリ職員は、今回、一万二千円の対象ですか。

塩崎国務大臣 今御質問のケアマネとリハビリが対象かどうかということでありますけれども、これは、先ほど来申し上げているように、直接的な介護職員ということでありますので、ケアマネと理学療法士につきましては、これは、もともと我々も、大体幾らぐらいの給与をもらっていらっしゃるかということは調べています。例えば、看護だったら三十六万六千円、それからPT、OTは三十五万一千円、ケアマネは三十三万三千円に対して、介護職員は二十七万七千円と、やはり圧倒的に低いんですね。

 したがって、これは麻生内閣からずっと引き上げを図ってきたわけでありますし、平成二十四年度の改定、これは民主党政権のときでありますけれども、このとき介護職員処遇改善加算というのが創設をされて、三井大臣だったと思いますが、その際に、まずはこの介護職員処遇改善加算の仕組みをつくって、そして、今回の場合でも、これをまず維持して、さらなる資質の向上とか労働環境の改善を図るためにこの加算を今回拡充して一万二千円にしたということであります。

 今申し上げたような格差を我々は見ながら今回を決めましたし、それから、先ほど四・何%というお言葉でございますけれども、やはりこれは、ちゃんとそれぞれのサービスごとに一定の利益率は確保するということを念頭に入れながら、新しい点数をきちっと今回それぞれ出しているわけであります。

 しかし、これは、介護職員については今申し上げたような状況ですから、必ず配慮がされるように、一万二千円については、計画もきっちり、今までよりも項目もふやして出すし、それから、それの後の実績についてのチェックもやるという運用の見直しをしっかりとやって、そしてまた、介護職員に今まで余り周知されていなかったものですから、周知も今回やるということで、運用の改善をしっかりしながら、この加算が職員の改善に着実につながるようにしていこうと思っているところでございます。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

辻元委員 今、月収でおっしゃいましたけれども、ボーナスは切られていますよ。リハビリで二百七十四万円、平均の年収は。そして、ケアマネの皆さんは二百六十二・九万円なんですよ。一般よりも、年収でいったら五十万円以上、下なんです。これが現状なんです。そんな認識で、いや、月収三十何万円だと。年収で見てくださいよ。

 結局、一万二千円プラスだと言われているけれども、周りの人、これは二・二七%というけれども、四・四八%下がるわけですよ。そして、ヘルパーさんの一万二千円だけがあるわけだから、その周りの人は、結局、この介護の今回の切り下げで給与が保障されなくなる、そんな施設が出てくる。出てこないと言い切れますか。それが一点。

 もう一つ、内部留保がたまっているとよくおっしゃいますけれども、どれぐらいの施設があって、どれぐらいの施設数、内部留保をためているところがあるからおっしゃっているのか、その調査の結果を示してください。

塩崎国務大臣 ボーナスのお話がございましたけれども、先ほど申し上げたこの計画を事前に出してもらうときには、ボーナス込みでどうするかという計画を出していただいて、その計画に基づいて加算をとるわけでありますから、後から見て、それをもし実際に守っていないということになれば、これはその約束どおりやっていなかったということになるので、当然、約束どおりやらないということであれば、加算は取り消しということになります。

 内部留保の話でありますが、今回の介護報酬の改定と内部留保の問題は、直接的にはリンクをしているわけではございません。

 もちろん、そういう状況があるということはよくわかっていて、しかし、これはまた別途、社会福祉法人のガバナンスの問題でもあり、これは大事な介護の税金と保険料を使ってやっていく、その担い手としての社会福祉法人がきちっとしたことをやっていただかなきゃいかぬということで今回改革をやって、法律を今国会に出させていただこうと今準備中でございますけれども、そういうことを直接リンクして今回の報酬を決めたわけではございません。

 事前に通告いただいていないので、今手元にはちょっと数字はございませんけれども、そういう発想でやっておりますので、基本的には、収支差がどのくらいあるのかということ、そして、いろいろそれ以外の情報もとりながら今回のことを決めさせていただいて、全体としての経営がおかしくならないようにするということは配慮しながらのことでございます。

辻元委員 この予算委員会で山井さんも質問されていますけれども、内部留保がある施設があるから、ほかの、トヨタよりも利益率が高いところがあるからと答弁されていたじゃないですか。だから今回切り下げるんだという根拠の一つの一番大きな理由にされていましたよ。答弁していますよ。

 内部留保がどれだけあるかという、今数字はわかりませんとおっしゃいました、どれぐらいの施設か。調査はしているんですか。どうですか。

塩崎国務大臣 これまで内部留保のことをちゃんと正面から捉えてやっているということは繰り返し申し上げてきましたし、もちろん、背景として、今回の介護報酬の改定の際にそのことを全く考えずにやっているわけではないことはもう御指摘のとおり。だからこそ答弁をしてきたわけであります。

 先ほど申し上げたのは、直接リンクをして介護報酬を幾らと決めたようなことは特にはないし、それぞれの社会福祉法人によってたまり方も違いますし、それから、それぞれの計画をしている将来の投資などもいろいろあるわけですから、それはちゃんと見るけれども、ちゃんとそれが透明化されて、ルール化された中できちっと将来に備えた蓄えなのかどうかということを見させていただこうということで、新しい仕組みをいろいろと今考えているということであります。

辻元委員 そうしたら、もう一回確認しますけれども、トヨタのこととかをお出しになって答弁されてきた、それは撤回されるんですか。内部留保は一切考慮していないと。それが大きな理由だったんじゃないですか。どうですか。撤回されますか。

塩崎国務大臣 いや、内部留保の問題は、今回の介護報酬の改定の議論をする前から、去年からもう既に政府において議論をし始めていることでありまして、それはしっかりと考えています。

 今回の介護報酬の際に、特に特別養護老人ホームなどについての御指摘がいろいろあって、それはもちろん我々は念頭には入れながら、しかし、直接的に、それがリンクをダイレクトにしているわけではないということを申し上げているわけであります。

辻元委員 これは総理も答弁されているんですよね。

 それで、いろいろ高齢者の虐待のニュースや施設に入れないニュース、これは連日ですよね。先日も、介護疲れで殺人とか心中まで出てきているわけです。圧倒的に、五十二万四千人分、これは厚労省の調査ですけれども、施設も足りないと。

 先ほど地方の話、地方は高齢化率が高いわけですよ。そして、地方での仕事というと、本当に役場とか、それから介護施設というのが多いんですね。地方の施設が体力があるかというと、そうでもないわけです。直撃しかねないと思うんですよ。ですから、今回の改定、これはもう一度見直された方がいいと思います。そうじゃないと、地方創生、女性の活躍と言っていますけれども、これに逆行すると思います。

 よく財源の話があるんですけれども、総理にお聞きしたいんですが、法人税減税をされると言われていますよね。私はそれを充てたらどうかと思うんです。

 なぜかというと、子育てと仕事の両立、みんな不安はそこなんです。それから、年をとってから介護が安心して受けられるか。この二つがしっかり保障されれば、現役世代は生活にゆとりが出ます。子供を預けて仕事をしよう、そして年をとってからの介護も一定大丈夫だろうなと思ったら、現役世代はゆとりが出ます。そうすると、お金を使うんです。そうしたら、ちょっと商店街に行って家族で食事をしようかとか、それから、ちょっと旅行に行こうか、私はこれが内需を回していくと思うんですね。

 実際に、今回も、個人消費〇・三%の伸びだけで、六割が個人消費ですよね。これは将来の不安と子育てがネックになっていると思います。

 ですから、これは全ての人に関係します。官僚の人もみんなそうなんです、同じなんですよ、聞いたら。ですから、どんな仕事に当たっても、この子育てと介護、ここに集中投資をしていくことは、先ほどインフラと申し上げましたが、社会のインフラを整えていくことになると思います。それは、株でもうけた人が高級時計を買っていただくのも結構ですけれども、全ての国民があと千円ずつお金を使う、これは物すごい経済効果があるんです。

 ですから、ボトムアップの経済政策ですから、成長戦略として法人税の減税、二年間で一兆六千億とおっしゃっています。そして、実質来年度二千億減税とおっしゃっていますが、私は、法人税を減税するよりも、むしろこの財源を子育てと介護に思い切って集中投資した方が、地方創生、女性の活躍、そして日本の経済の再生に大きな経済効果を生む、子育てと介護は、社会保障という発想ではなくて経済投資だという発想でしていただいた方がいいと思いますが、いかがですか、総理。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 先ほど、内部留保と今回の引き下げとの関係において塩崎大臣から答弁しましたが、その際、トヨタの例について我々が挙げたということをおっしゃった。トヨタの例として挙げたのは内部留保に関係ありません。トヨタの利益率と収支差との関係において、収支差の方が多いという比較は行ったわけでありまして、これはまさに、内部留保とは別に、基本的には収支差から算定していくわけでございますが、他方、その中で、内部留保がたまっている施設もあるということについては指摘をしておいた、そういう適正化も当然必要だ、こういうことでございます。

 そこで、当然、保育所あるいは介護施設、インフラの整備としてそれを進めていく、あるいは、都市部において需要が高い、なかなか対応できていない、地価が高いという問題もあります。それをどう対応していくかという問題については、我々は当然、今後も検討していきたいと思います。

 しかし、介護全体の費用をどのように負担していこうか、これは、介護保険を導入した当時の考え方として、私は当時自民党の部会長でありましたが、自助、公助、共助という考え方において、自助としては自己負担一割だね、そして残りの半分半分、公助としてこれは税金を入れましょう、あとの半分は、これはお互いの助け合いということで保険料でいこうということを決めたわけであります。これが基本的な理念としてあるんだということは、これはみんなで理解し合うことが必要だろうと思います。

 こういう中において、ただ単にやみくもにどんどんどんどん給付をふやしていけば、これは当然、それぞれが税金の分あるいは保険料にもはね返ってくるということも考えながらやっていかなければならないということなんだろうと思います。

 そこで、この考え方とはまた別に、それはもうやめてしまおう、これはどんと税金を入れていこう、その中において、法人税をやめてこちらに回した方がこれは経済政策からいっていいんだろうというのが委員の御主張でございます。

 それは、なぜ法人税減税が必要かということについては今までもるるお話をしてきたところでございますが、いわば企業、法人に我々は、法人という人がいるわけではなく、そこで働いている人たちがたくさんいて、家族の営みがあるわけであります。グローバルな経済の中において、競争力を持つことによって雇用を確保する、あるいはその中において企業がしっかりと設備投資等の投資をする、あるいは人材にも投資をしていくということでございます。

 復興特別法人税を前倒ししたときも、そうやったって給料は上がらないという御批判を随分いただきましたが、しかし、そのことによって昨年の賃上げ、我々の決意に彼らは、政労使の会議の場でいわば賃上げというのは決まっていったわけであります。(辻元委員「聞いていないことまでしゃべっている」と呼ぶ)だって、今、経済政策、成長戦略の根本について聞かれたから、これは結構、説明はどうしても長くなるんですよ。ですから、ちょっと丁寧に御説明させていただいているところでございますが、そういう中において、経済の好循環を回していく上においては、我々はそれは必要だ、こう考えているわけであります。

辻元委員 経済の好循環と今おっしゃいました。企業、働く人がいるんだ、雇用をふやすんだと。ところが、その働く人が、根本の生活の子育てと仕事の両立と介護、ここが不十分なために十分働けないんですよ。

 今いろいろな調査がありますけれども、生活を切り詰めているという人が安倍政権になってからふえています、七五・六%。そして、四割を超える世帯が赤字。そして、約三割が貯蓄なしですよ。

 私は、格差の話もそうですが、国民の生活にゆとりがない国に成長はないと思いますよ。だから、これは鶏が先か卵が先かという議論もあるかもしれない。しかし、やはり人への投資、それを私たち民主党は言っているわけです。結局、介護と保育への集中投資は回り回って経済成長に資する。だから、私たちは、人への投資をすることが日本の経済の根本を支えて、生活にゆとりを持たせることで国内の消費を喚起する、それが企業活動にはね返るんだということで、法人税減税よりこちらに投資したらいかがですかと申し上げているわけです。

 これは引き続きこの予算委員会でも質問してまいりたいと思いますけれども、法人税減税については効果も、今までもやってきているんですよ、なかなか上がっていない。ですから、人への投資に変えられたらどうですかと申し上げているんです。

 さて、次に、外交の方に移りたいと思います。

 先日のISILによる人質事件の対応において、検証作業が始まるということで、昨日、岡田代表も官邸の危機管理について質問がありました。これについて引き続き、総理がそのときに、総理である私が指示を出しているんだと、選挙中に官房長官も総理も官邸にいないじゃないかということを挙げて、そうおっしゃいました。

 十二月の十九日以降、後藤さんが拘束されているという確かな心証を得て、私はずっと、ISILが映像をインターネットで公開する以前に何をしたかが大事だ、ここの検証が大事だと申し上げてきました。それはなぜかというと、イギリス、アメリカは殺害されていますけれども、それ以外の国は、イタリアもデンマークもフランスもスペインも皆、ああいう映像が出る前の水面下の交渉を必死でやって取り返しているんですよ、人質を。ですから、映像が出る前の検証をしっかりやっていただきたい。

 きのうは、選挙していたじゃないかというのが論点ですが、では、十二月十九日以降の総理の、何をされていたのかを調べました。

 皆さん、資料を見てください。

 これを見ていただいたら、十二月の十九日に政府が、拘束されているのが後藤さんであることを確信した。そして、二十日に、翌日から総理はフィットネスクラブに行かれたり、二十一日にゴルフに行っていらっしゃるんですね。そして、公務があって、特別国会があって、年末、十二月二十八日にはサザンオールスターズのコンサートに行かれ、その後、ずっと六本木のグランドハイアット東京にほぼお泊まりです。そして、フィットネスに行かれたり、元旦の日は映画鑑賞され、二日にはまたフィットネスと映画鑑賞。そして、三日には御手洗経団連名誉会長、経団連の会長たちと茅ケ崎でゴルフをされています。そして、翌日も富士ホールディングスの会長夫妻と茅ケ崎でゴルフをされています。

 そして、一日公務されて、また次の日はダイアナ・ロスのコンサートに行っています。そして、四日公務されて、一月の十日、十一日と世耕官房副長官らと箱根で、別荘に行かれてゴルフをしているんです。翌日も別荘にお泊まりなんです。そして、その数日後に中東に出発されているんですね。

 それで、総理、私は総理大臣が休暇をとってはいけないと言うつもりはないんです。しかし、十二月十九日から要するに結局あのISILの映像が公開されるまで、総理が映画へ行かれたり、それからコンサートへ行かれたり、別荘へ行かれたり、ゴルフをされている、この間に、事実として、これはファクトを言っているわけです。事実として、危機はどんどん、お二人の命の危険と日本の国家としての危険はこの間にぐんぐん上がっていたという認識はございませんか。いかがですか。この間が大事なんですよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 細々と私の日程を御紹介いただきましたが、いわば、総理として国政全般を見ているわけであります。

 そして、私は、前政権、第一次政権のときの経験からいっても、総理大臣というのは心身ともに健康を保つことも重要な仕事である。そして、基本的には、どっしりと構えてさまざまなものに対応していく、そして、さまざまなつかさつかさがあるわけでありますから、そうしたつかさつかさにおいてしっかりと対応していくということだろう、このように思います。

 その段階では、ISILということについてははっきりしているわけではありません。邦人が一時的に行方不明になるということは、これは日本国じゅうでいろいろあるわけでございます。そして、そういう中において、今回の危機対応においては、私がこういう行動をとっていたことによって何か問題があったということでは全くない、このように思うわけでありますが、同時に、こうした人質案件というのは、一年、二年、三年、四年と続く場合もあります。そうなれば、その間、総理大臣はほかのことに手がつかないということになってしまうわけでございまして、そうなった後、なるべく平常心、平常の行動を心がけるということも職責の一つであろう。

 辻元さんみたいなそういう批判の仕方というのもあるかもしれない。しかし、そういう批判に一々私は反論するつもりは全くないわけでありまして、今後ともしっかりと心身ともに健康を保っていきたい、このように思います。

辻元委員 やはり検証もそうなんですが、他の国はこの間に人質を解放しているんです。

 そして、もう一つ申し上げたいのは、総理、私も総理は休みをとるなと言っているんじゃないんです。このときは特例の年末年始じゃないですか。自分の子供が誘拐されて行方不明になっていて、その家族がゴルフをしたり映画を見たりしますか。総理大臣は、一国の全ての国民の命を私が守るんだとおっしゃっていた。同じですよ。

 なぜかといえば、この直前も、アメリカやイギリスで、同じようにシリアで拘束された人が殺されているわけです。そのニュースは連日ずっと報道されていたわけですよ。私、今びっくりしました。ほかの総理の行動も調べましたけれども、電話で指示されていたとおっしゃいますけれども、電話で指示されていたんですか。私、この間の危機管理はどうなっていたのかと思いますよ。

 そして、例えば、会社で自分の社員が二人拘束されていたとする。社長はゴルフをしていました、休暇をとっていました。そして、いや、職員がやっていたから大丈夫なんだ。同じじゃないですか。(発言する者あり)どうしてですか。二人の国民が拘束されて、それは危機感が薄かった証拠ですよ、そうじゃないと言うのなら。ここで必死で政府は官邸を挙げて対応すべきだった、私はそう思いますよ。

 菅さん、とめなかったんですか、あなた。だって、十二月十九日に確かな心証を得たといって、二日後にゴルフに行かせている。菅さん、しっかりしてくださいよ、あなた、官房長官として。

菅国務大臣 総理大臣は、やはり国全体を考えて、体力もしっかり、気力も充実させている。それで、総理の命を受けて私どもが、そして私がだめなときは官房副長官が国家の危機管理に当たるのは当然のことだというふうに思います。

 そして、三日以降の件でありますけれども、三日に初めて、犯人からのメールで、後藤夫人に対して拘束しているメールが来た。しかし、その後、後藤さん本人と確証を得たのが、きのう申し上げましたけれども、十九日であります。

 政府はこの間どのような対応をしていたかということでありますけれども、まず、十一月一日に……(辻元委員「違う、十九日以降ですよ」と呼ぶ)十九日以前から、三日以降におきましては、後藤夫人がまず旧知の民間の専門家に相談されていました。そして、政府は、十一月一日以降に内閣危機管理監を中心とする体制を官邸にしっかりとっております。

 そして、外務省は邦人保護の立場で外務省として当然対応をとっておりまして、夫人の気持ちに寄り添いながら、外務省、警察庁がバックアップをして邦人保護の体制をしっかりとっていたということでありますので、今、辻元議員から、邦人保護の対応として不十分、不適切というような趣旨だというふうに思いますけれども、そうしたことは全く当たらないということを申し上げたいと思います。

辻元委員 夫人の気持ちに寄り添って。

 私は、総理、国民に寄り添うということがどういうことか考えていただきたいんです。このとき、後藤さんの奥さんとか湯川さんの御家族、本当にこの年末年始はおつらい気持ちだったと思います。

 今回は、この間の政府の対応、結局これは、二十日までISILだとわからなかったというのは政府の失態じゃないですか。それも突きとめられなかったということ。

 私、総理は笑っていらっしゃるけれども、総理にお聞きしたいと思います。

 一月二十日までにISILだということもわからなかった。そして、お二人の方が結果として亡くなられた。私は、これは政府として申しわけない、対応がやはり不十分だったから、反省すべきところがたくさんある。そして、年末年始、ホテルに泊まったり。これで、電話をかけて対応していたんですか、ホテルから。特定秘密があるとか、各国の秘密の事項があるから情報は出せませんという答弁が多々ありました。そんなことをホテルから、携帯電話かホテルの電話で指示しているんですか。総理、これで危機管理がなっていると総理はお考えなのか。それから、二十日までわからなかったのは失態だと思いませんか。

 そして、私は、総理は人の批判とか意見に耳を傾ける余裕がなくなっていると思いますよ。このときに、お二人の命がかかっていたわけです。それで、総理、このときにぐんぐん危機が上がっていたという認識は本当にないんですか。いかがですか。会社だったら潰れていますよ。どうですか、総理。総理ですよ。総理ですよ。

大島委員長 辻元さん、ちょっと座りなさい。

 まず官房長官がお答えして、また総理の御発言も、手が挙がっておりますので、その順序でやります。

菅国務大臣 十二月三日以降、先ほど申し上げましたけれども、私たちは……(辻元委員「だから、突きとめられなかったのは失態だと思わないかと」と呼ぶ)

大島委員長 黙って聞きなさい。

菅国務大臣 いや、全くそこは考えておりません。

 シリアで拘束されたということが発生をしてから、シリアには、ISIL以外にも、アルカイダ系のヌスラという戦線だとか、さらに過激活動家が数多くいるわけでありますから、そういう中で、メールだけですよ、メールが来ただけで、それがISILという確証を得る、確定的な情報に接することができる国というのは、私はほとんどないと思いますよ。メールだけですから。

 ただ、政府としては、危機管理監を中心に、国家安全保障局あるいは内閣情報官、ありとあらゆる体制の中で、部族長だとか、宗教団体の指導者だとか、あるいは関係国だとか、しっかりと対応させていただいてきたということは申し上げておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今官房長官が答弁をさせていただいたように、シリアにはさまざまな過激集団がいるわけでありまして、そう簡単に特定はできないわけであります。

 もちろん、その特定をするために、我々は、各国の情報機関等の情報の提供もお願いをしておりますし、部族長等々とも接触を図りながら情報を収集している。しかし、その特定というのは難しいんですよ。

 その段階で、ここだという、そういう情報も入りますよ。(辻元委員「だから、電話で指示していたんですか」と呼ぶ)いや、今私が答弁しているんですから……(辻元委員「電話で指示していたのかということですよ」と呼ぶ)答弁しているんですから、聞いてくださいよ。

 そこで、電話したかどうか。

 これは、もちろん電話等々というのはしますよ。総理大臣として、こうしたときの案件については、大きな方針を決めるということでは、私は指示しますよ。でも、私は中心的なオペレーターではありませんから、当たり前ですが、そのために危機管理監というのがいるんですから、その危機管理監が基本的に対応というのもやりますし、また情報官もいます、その上においては官房長官がいるわけでありますから。私が判断するのは大きな方針。そして、判断は、例えば選択肢が出てきたときには、どちらにするという判断はします。そういう、すべき判断はしています。

 ただ、例えば、基本的には、身の代金を払わないという基本方針を決めるのは私です。そういう対応が必要になったときには、そういう判断を私はきっちりとしています。そういう判断を総理大臣はするんですよ。その判断を間違えてはいけない、これが大切なんですよ。

 日々どうするか、オペレーションそのものに私が口を出すということ、こんなことをしていたら、官邸はまさに、かつてそんなことがあったかもしれませんが、こんなことは絶対にやっちゃいけないことなんですよ。それがまず常識であるということを申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 基本的に、大切なことは、総理大臣というのはそういう判断をするわけであります。

 そして、先ほど、確かにこの二人の人質の例もありますよ。でも、日本全国で例えばいろいろな事件も起こっているんですから。子供の命が危険にさらされる、そういう出来事はたくさん起こっているじゃないですか。でも、それは、例えば警察は警察がやる、県警本部は県警本部がやる。報告は全部上がりますよ。でも、それは、そういう人たちがちゃんとやっていくんですよ。そういう人たちだって、みんな大切な命がかかっているじゃないですか。そういう全体に私は責任を持っているんですよ。

 そういうものについてまさに私は責任を持っている。ですから、そういう対応をちゃんとそれぞれのつかさつかさに間違いなくやるように、そういう指示をしているということであります。

辻元委員 今総理の御発言で、今回の二人のシリアでの拘束案件と一般の誘拐案件と、私は、一般の誘拐案件もとてもきっちり対応してもらわなきゃ困ると思いますけれども、今回の案件は特殊です。違います。もしもそれを同列に考えていて対応していたのだったら、余りにも危機感がないと思います。

 それで、もう一つ申し上げます。

 例えば、グランドハイアットにお泊まりです。そして、映画館に行かれて、コンサートにゴルフ場、これは物すごい警備が必要なわけですよ。

 この警備。私、総理が私邸によくお泊まり、きのうも私邸にお泊まりになりました。今、危機感で申し上げたら、日本国じゅうもっとテロが、もしかしたら身近なところで起こるかもしれない。東京マラソン、心配。そして、その中に総理も入るということなんですよ。総理自身、私は日本国の総理大臣だからしっかり身を守っていただきたいと思いますけれども、コンサートに行く、それから映画に行く。普通の人と違うんです、総理大臣。ホテルに泊まる、どれだけの警備が必要か。

 そして、その危機管理も、この間ずっと、有志連合に入って、何人かが殺害、二人が殺害されていた。そして、総理が雑踏に行くわけですよ。その危機管理もなっていなかったんじゃないかということも、石破さんは笑っているけれども、やはり私、申し上げたい。特にこれから、総理は公邸にもうずっと泊まられた方がいい。なぜかというと、総理の私邸、御近所の方も含めて、物すごい警備だと思いますよ。総理自身も身を守っていただかなきゃいけないんです。そして、映画に行ったり、コンサートに行ったり、慎まれた方がいいと思います。

 それは、危機管理上、本当に物すごい数の人が警備をして、そして、わかりますか、総理自身も狙われちゃいけないけれども、いろいろな人がテロが来るんじゃないかと心配している中で、御自身がもう公邸に泊まられた方がいいし、そして、しばらくはゴルフに行ったりされない方がいいですよ。私はそう思います。それぐらい、今、日本のテロの危険は高まっているということなんですよ。

 私は、総理の身の危険もちゃんとやらなきゃだめだということも含めて申し上げております。

 総理、きのうも私邸だったし、公邸に泊まられて。今やはり、この間、危機管理はすごく大事ですよ。しっかりとやられる。もう公邸に泊まってください。どうですか。もう警備も大変ですよ。ですから、本当にそれぐらいの危機感を持った方が今いいということなんです。

 これはほかの総理と比べても全然違いますよ、行動が。私、村山さんに聞いたことがあります。あなたはお正月に温泉とか行かないんですかと言ったら、自分が動いたら警備が大変だ、年末年始は警備の人たちも休ませてやりたい、家族もいるしと。

 でも、これとプラス、今、テロの危機が高まっているわけですから、しっかり公邸に陣取って、この年末の反省のもとに行動していただきたいと思いますが、いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 一生懸命おとしめようとしている、その努力は認めますよ。

 しかし、はっきり申し上げて、日本というのは、こういうおどかしに遭ったとしても、安全な国なんですよ。我々の政権ができて、五百万人、観光客がふえた。日本はすばらしい国だ、安全な国だから、みんな来てくれているんですよ。

 まるで日本が危険な国のようなことをあなたはおっしゃった。私は、とんでもないと思いますよ。

 日本は安全な国だ。そういう安全な国であるということを確保するということが私の責任なんですよ。そういう大きな方針と、しっかりと予算を確保する、そういう仕事をちゃんとやっていくことが大切なんですよ、私に求められているのは。

 公邸に泊まるとか泊まらないとかいうことではないんですよ。公邸にずっと泊まっていたら立派な総理大臣なんですか。私は、違うと思いますけれども。

 そこで、申し上げますと、まさに日本というのは安全な国だ、本当にそう思います。海外に出てみて、首脳に対する警備についてはそれぞれ国によって全然違います。アメリカは、御承知のように大変な警備をしている。あの警備から比べれば、日本は相当軽い警備であります。

 私が公邸にいるときにも、そこには相当の量の警備の方々がおられる。私は感謝していますよ。ゴルフをやっているときにも警備をしていただく。申しわけないなと思うわけでありますが、先ほど申し上げましたように、私に求められているのは、心身ともに健康を保って、大切なときに判断を間違わないことなんですよ。ですから、そこで温泉に行かなければいいとかそういうことではないんですよ。そこを間違えてはいけないと私は思います。

辻元委員 はい、わかりました。

 ただ……

大島委員長 終わりました。

辻元委員 二人が殺害されたということは、オペレーションは失敗したという反省をされた方がいいということを申し上げて、私は終わります。

大島委員長 これにて岡田君、玉木君、岸本君、黄川田君、前原君、階君、辻元君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬場伸幸君。

馬場委員 維新の党の馬場伸幸でございます。

 私たち維新の党は、昨年九月、日本維新の会と結いの党が合併をいたしまして、よく維新の党というのはどういう政党なのかということを聞かれます。維新の党というのは、私が申し上げておりますのは、自民党でもない、民主党でもない、国会の慣例、前例にこだわらずに、国民の立場に立った、国民のスタンスで改革を行っていく政党ですということをよく申し上げています。提案型、政策実現型の野党、そういう集団を目指して頑張っているところでございます。

 先ほど、安倍総理は、安心な、安全な国だというふうにおっしゃっておられましたが、安心、安全といいますと、ただ単に、テロ、安全保障という問題だけではないと思います。

 私が一番危惧いたしておりますのは、今この我々の日本の国の台所状況はどういうふうになっているのかということを一番私は危惧をいたしております。

 先般、財務省が十三日に国の借金について発表を行っておりました。

 まず、財務大臣、今現在、私たちの日本の国の台所状況、借金というのはどうなっているんでしょうか。お伺いいたします。

麻生国務大臣 日本の財政は、公的債務残高、よく使われる言葉ですけれども、これが国民総生産の二倍程度にまで累積しておるという極めて厳しい状況であります。額で申し上げれば、一千三十五兆円、対GDP比で二〇五%ということまで来ております。

 今御指摘のように、世界の中でもこういった累積債務が重なっておるという国は極めてまれな国なのであって、我々としては、ここをきちっと押さえていかないと将来とも大きな問題を後に残すと思って、財政再建を目指しておるという状況にございます。

馬場委員 国の借金、現在、一千百六十七兆円というふうに新聞報道ではございました。これは、国民一人頭に直しますと約九百十九万円ということで、この指標は国民一人頭に割るとわかりやすいということでこういった単位がよく使われているわけですけれども、中継をごらんの国民の皆様方、この話を聞いていただいて、国民の皆さん方は、私の借金なのかな、私の借金ではないよね、こういうふうに思っておられると思うんですね。

 この九百十九万円という借金は、国家が実際には借金をしているわけですけれども、国民のお気持ち、お心を代弁いたしますと、こういう状態にならないように政治家に対して票を託しているんだ、一票を入れているんだ、そして、優秀な官僚の皆さん方に、こういう状況にならないようにプロの皆さん方にお任せしているんだというのが本来のお気持ちだというふうに思うんですね。

 先般の衆議院選挙を終えて、平成二十九年の四月から消費税が一〇%になることがもう既に確定をいたしました。これは、景気の状況はどうなっても関係ないという御判断をされているわけですけれども。

 この税金を上げるとき、この場でも何度も議論がありましたけれども、税と社会保障の一体改革ということで、消費税を上げる分を年金、医療、介護、子育て、こういった国民の皆さん方の将来に対しての不安、今現在抱えておられる不安、こういうものに対してきちっと手当てをしていきますよ、これが国民との約束であったわけですけれども、なかなか、私も国会に身を置かせていただいておりますけれども、その兆し、その明るい兆候というのは今現在見えていないという状態ではなかろうかと感じています。

 よく、国の台所状況が健全であるかどうか、これを示す指標として、プライマリーバランスというものが挙げられます。このプライマリーバランスについても財務省が十三日、同じ日に新聞報道で見通しを示されております。

 財務大臣にお伺いしますが、このプライマリーバランス、どういう中長期的な状況であるのか、御説明いただきたいと思います。

麻生国務大臣 最初に、国民が心配をしておられると言われた点の方が非常に大きなあれだと思いますので、まずそちらの方の説明からさせていただきます。

 千三十五兆円というのは、これは国民の借金ではなくて政府の借金です。これははっきりしておかれぬと、政府の勘定、ファミリーレストランをやっておられたというなら、勘定科目という意味はわかると思いますので、貸方、借方でいけば、借りているのは政府というと、これは必ず貸している人がいるはずです。誰が貸しているのか。それは、国民が、国債という名前の、国の借金の名前になる、あれは借金の肩がわり証明書みたいなものですから、したがって、国債という名の債券を国民に買っていただいている。国民は債権者であって、債務者は政府です。

 ここのところだけはちょっとはっきり、混同して書いてある新聞がありますけれども、あれは書いている人も余りわかっておられぬのじゃないかなと思ってよく読むんですけれども、そう思っていますから、ここははっきりしておきましょう。

 その上で、バランスとして、今御指摘のありましたように、今後、今のままでいきますと、ほたっておく、放っておくと、基本的には、借金というものが、今、税収より借金の方が多くて賄っていますので、というところになっていますので、これをどうしても、借金を減らして、借りる量を減らして、こちらの方の売り上げの方を、売り上げというか、税収の方を伸ばしていく、すなわち、経済成長させるということによってバランスさせるということに、馬場さん、これはなっていかざるを得ない。

 それで、とにかく二〇二〇年度までに借りるのとこれとをちょうどバランスさせるところまではどうしてもいきたい、今、二〇二〇年度までに、いわゆるPBと称する、プライマリーバランスというものをそこまではしたいということを今目的としてやっております、目標としてやっておりますけれども、そこに至るまでまだまだ足りない。

 すなわち、経済をもう少し伸ばさないかぬし、歳出も抑えないかぬというのを、もうしばらく厳しい状況を連ねないと二〇二〇年にバランスするところまでにはいかないというのが、今出しております数字であります。

馬場委員 財務大臣と私と同じ認識をお持ちいただいているというふうに思います。

 家計でいいますと、毎月使うお金、これの半分が既に借金になっている、借金に借金を重ねて、もう完全な自転車操業になっているというのが今の我々の日本の国の台所状況だと思います。

 二〇二〇年、プライマリーバランス収支を黒字にするという目標がございましたが、これも、新聞報道によりますと、もうなかなか難しいんじゃないか、名目三%成長でも困難という見出しがついておりまして、私はこれはもう危機的な状況を迎えているというふうに思います。

 したがいまして、この今の段階でやはり抜本的な改革をしないと、小手先の継ぎはぎの手段ではなかなかもう再生できないということを感じているんですけれども、総理、その辺はどうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 我が国の財政については、先ほど財務大臣から答弁をさせていただきましたが、巨額の公的債務が累積をしている、大変厳しい状況であります。こうした危機感を、これはもう馬場議員とも共有するわけでありますが、政府全体、国民の皆様とともに共有する必要があると思います。

 安倍内閣としては、こうした状況の中で、我が国に対する市場や国際社会から信認を確保するために、経済の再生と財政の健全化の両立を目指しているわけでありまして、先ほど申し上げました、二〇二〇年の財政健全化目標をはっきりと堅持していくということでありまして、その目標達成のためには、まずはデフレから脱却して、経済を成長させ、経済を再生させていく、そして税収をふやしていくということであります。

 幸い、今、税収がふえていくというコースには入りました。かつて四十兆円ぐらいだったものが、五十四兆円ぐらいまでいったわけでございます。そして同時に、無駄をしっかりと削減していくということは当然のことであって、行財政改革もしっかりやっていきたい。歳出歳入両面にわたって取り組んでいく考えであります。

 我々が政権交代する前二十五兆円あったプライマリーバランス、一年間に使う政策的な支出と税収、これの差と言ったらいいんだと思いますが、今、これが、二十五兆円だったものが約半分まで、ちょっと多目に言って約半分なんですが、圧縮することができ、そして、二〇一五年にいわば最初のお約束は大体達成できるという見通しが立ってきた。

 ただ、二〇二〇年の目標はそう簡単なことではありませんから、しっかりと、デフレからの脱却を確かなものとして名目経済成長をぐいぐいとしていく、そういう状況を、しっかりとした成長をしていくという状況をつくりながら、税収を確保し、そして日々しっかりと歳出のカットも行いたい、こう思います。

 先ほど申し上げましたように、そうした努力によって、平成二十七年度の新規国債発行額は四・四兆円減らすことができまして、六年ぶりに四十兆円を切ることができた。最悪のときには、もう借金の方が税収よりも多かったときがございました。しかし、今はもちろんそういう状況ではないわけでございまして、これからさらに努力を重ねていきたい、このように思っております。

馬場委員 総理のおっしゃるとおりだというふうに思います。

 この危機的な状況を改革していくためには、やはり、一言で言いますと、入るをはかり出るを制す、よく言われる言葉ですが、それを実行していかなければならない。

 私たち維新の党は、昨年十二月の総選挙で、公約として、身を切る改革、実のある改革というスローガンを挙げさせていただきました。身を切る改革というのは、すなわち出るを制すということなんですね。実のある改革というのは、入るをはかるということになるわけなんです。

 実のある改革、やはり税収増をするために、第三の矢と言われておりました規制緩和と成長戦略、これはまだまだ不十分だというふうに言われています。岩盤規制を必ず突き破りますと安倍総理いつもおっしゃっておられますけれども、ぜひその点は頑張っていただきたいというふうに思います。

 そして、身を切る改革、行財政改革を確実に実行していくためには、やはり、幾つかの場面で国民の皆様方にも痛みを感じていただく、そういう場面が出てくるんだというふうに思います。国民の皆様方に負担をお願いする、消費税もそうなんですけれども、その前に、私たちがお訴えをしておりますのは、やはり自分の身を切らないとだめでしょうということを言っているわけでございます。

 先般の予算委員会でも、我が党の井上英孝衆議院議員の方から、大阪での実際の改革、大阪府知事、大阪市長が報酬をカットしている、三割カットしている、そして議員定数も大幅にカットしたということを申し上げました。この改革のスタートが今の大阪での大改革を進める原動力になっているということをぜひ御認識いただきたいんです。

 私たちもこれを国民の皆様方にお約束をして、先般の衆議院選挙、全国の比例の票は八百三十八万票いただきました。八百三十八万人の方が、維新の党の言っているとおりだ、そういうふうに進めてくれという熱い思いを我々に託していただいているわけでございます。

 ここでパネルをごらんいただきたいと思います。

 私たちは、身を切る改革、これを公約として挙げましたので、早速、選挙が終わった国会で、十二月二十五日だったと思いますが、身を切る改革、まず四つの法律を出させていただきました。

 衆議院議員の定数三割カット。国会議員の歳費の三割カット。そして、月百万、領収書なしで今議員に支給をされています文書通信交通滞在費の使途の報告、公開。そして、政治活動に関する寄附をした場合、寄附金控除の特例を適用しない。この四法案を先に出させていただきました。

 去る十八日の日に、国会議員が、これを私たちが訴えますと、自民党の議員さんからは、まずおまえが返せというようなやじもありましたけれども、返せないんですね、法律があって。寄附になってしまうということで、返せない。したがって、私たちは、十八日、国会議員が歳費を、給料を国庫に返納できる、これを法律として提案をいたしました。

 身を切る改革五法案ということで、これを推進していきたいというふうに思っております。

 ちょうど、振り返ってみますと二年三カ月前、自民党が野党の時代、当時野田総理でありました。安倍総裁と党首討論を行って、国民の皆様方も御記憶にあろうかと思います。

 安倍総裁が、議員の大幅削減しましょう、やりましょうとおっしゃったんですね。それで、当時の野田総理は、やりましょう、そのかわり解散をしますということで、当時の安倍総裁が非常にエキサイトされていた、そういう場面を国民の皆様方も覚えておられると思います。

 しかし、その後の選挙で自民党が政権政党にカムバックしたわけですけれども、一向に、何とかの協議会に諮っていますとかいろいろなことをおっしゃって、なかなか前に進めようとしない、参議院でも具体的な提案が自民党からは出てこないという状況になっています。

 自民党と公明党さんが衆参で完全に過半数を超えて、安定政権になっているんですから、やる気になればすぐできるんです。あしたでもできるんですね。なぜやらないのかと国民の皆さん方は不審に思っているわけです。

 総理、二年三カ月前のあの国民との約束、どう履行されようとしているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先般の、先般というか、もう随分前になりましたが、一二年の党首討論において私が野田さんに申し上げたことは、それでは、私は自民党の総裁として定数を削減していく、定数の是正と、〇増五減でありますから、これを直ちにやりましょう、同時に、定数の削減についても取り組んでいきますと。

 ただ、選挙制度にこれはかかわることですから、私と野田さんが決めていいということではなくて、小さな政党も含めてこれは議論することですね、しかし、しっかりと議論させましょうというお約束をしたわけでございます。

 その後、残念ながら、各党各会派の協議がなかなか煮詰まらないということになった中において、当時の伊吹議長のもとに有識者の皆さんが集まっていただいた。そして、今ここで議論が重ねられているわけでございますので、その意味においては、ここで例えば決まったこと、基本的には、私は、行政府の長という立場においては、まさに各会派で議論をしていただきたいと思いますが、ここで決まったことにおいては、それを受け入れるということを決めないとまた堂々めぐりになるなということではないかと思います。

 どういう案が出てくるかはわからないわけでありますが、私は、自民党総裁としては、基本的には、ここから出てきた案は受け入れますよというのはさきの総選挙でお約束をしていることでございます。

 各党各会派が、今、そこで残念ながらまだそろっていないという状況でありますが、そこでそれを受け入れるということが一番望まれる姿ではないか、このように思います。

馬場委員 それではお伺いをしますが、今いろいろやっているんだ、国会議員の定数は必ず減らすんだということでございますが、次の解散は、定数減をしないと解散はしませんよね。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 現在、解散は全く考えておりませんが、解散をいつするかしないかということについて今ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

馬場委員 国民との約束ですから、二度も三度も破るということはぜひやめていただきたいというふうに思います。

 そして、議員の定数を削減する、これは大きな大改革だと思います。ただ、その前に、私は、すぐにできることはいろいろあると思うんですね。国民の皆様方に政治に対して信頼を持っていただく、この国会議員さんにお任せしたい、そういう信頼感を持っていただくためには、すぐできることをやはりやっていくということが大事だと思うんです。

 毎月百万円、領収書の要らない文書通信交通滞在費というものを支給されています。私たち維新の党は、これは非常におかしいと。

 地方議員経験者の方々、いらっしゃると思いますけれども、地方議員は毎月数十万円の政務活動費なり政務調査費というのをいただいています。これは、一円以上、きちっと領収書をつけて毎年一回報告しているんですね。そして、各地方の役所でその報告書を公開して、市民の皆様方、有権者の皆様方にごらんいただいて、税金がおかしなことに使われていないかどうか、それをチェックしていただいているんですね。

 なぜ国会議員だけが、百万円ものお金をいただいて、その使い道すら公開できないということは、国民の皆様方の理解を到底得られないというふうに思います。

 これは総理、どうですか、文書通信交通滞在費の領収書の公開というもの。選挙前にも報道番組で、我が大阪維新の会の橋下代表の方から安倍総理にもそういう投げかけがあった、そういうふうに記憶をしておりますが、その後、お気持ちに変化はございませんか。

安倍内閣総理大臣 今御提案のあった歳費そしてまた文書通信交通滞在費にかかわる御提案でありますが、政治活動に係る費用の問題は、議員活動、ひいては、まさに民主主義の根幹にかかわる重要な問題であると思います。

 そのあり方については、政治活動に係る費用全体について、金額の多寡、そしてまた使途の範囲、国民への説明責任など多角的な視点があると思います。総合的に議論すべき問題であるとともに、さまざまな事情や環境のもとにある者が国会議員として活動するための基盤となるものであるということも考慮する必要があるだろう、こう思います。

 その中で、先ほどおっしゃった自民党、公明党は多数を持っているんだからということでございますが、こうしたまさに民主主義の基盤、土俵にかかわることについては、我々も謙虚に考えなければならないと思いますし、しっかりとこれは各党各会派で話し合っていくことが、真摯な議論を行っていくことが大切ではないかと思っております。

馬場委員 いろいろな理屈をお述べになりますけれども、これは別に総理お一人だけでもできるんです。俺は行政のトップだから、国民の皆様方に信頼をいただきたい、きちっと報告するべきだというお考えがあれば、総理お一人だけでもできるんです。ほかの大臣、自民党の国会議員の皆様方がしなくても、総理お一人でできるんです。

 されるおつもりはないですか。

安倍内閣総理大臣 私、総理という立場と国会議員という立場がございます。

 総理という立場においては、これは今、文書交通費とはかかわりがございませんが、昨年の特例廃止後も、私に対する給与を、総理大臣としての給与を三割カットし、閣僚の皆様には二割カット、これは継続させていただいているところでございます。

 他方、文書交通費の公開については、これは国会議員にかかわることでもございますから、これは基本的に、国会議員同士、各会派が話し合って決めるべきものだ、このように考えております。

馬場委員 今の御答弁では、総理みずから文書通信交通滞在費について領収書を公開するというお気持ちがないということがよくわかりました。

 先ほどから申し上げていますように、これから非常に厳しい大改革、財政規律等の大改革をやっていく上で、やはり私は、国民の皆様方の信がなければ、なかなかこの問題は進まない、国民の皆様方にも痛みを感じていただくような、消費税増税を初めとするいろいろな改革がこれから出てくるんだというふうに思います。

 ぜひ、安倍総理におかれましては、範を示していただいて、改革の先頭を走っていただく方ですから、その辺はよくもう一度お考えいただいて、国民の皆様方の不審、疑問、そういったものに答えていただくということをお願いしておきたいというふうに思います。

 それでは、続きまして、入るをはかる、こちらの、実のある改革の方に移らせていただきたいと思います。

 実のある改革、今のこの日本の状況を考えた場合に、安倍総理もいろいろいつもおっしゃいますけれども、私は、この成長戦略の大きな一つの柱になるというふうに考えておりますのが、リニア中央新幹線でございます。

 このリニア中央新幹線、去年の十二月十七日に、既に東京―名古屋間は着工されました。完成すれば、東京―名古屋間をわずか四十分、大阪まで延びれば一時間でつなぐということで、私は国家プロジェクトと言えるダイナミックな事業だというふうに思います。

 もちろん、莫大な費用と長い時間をかけて整備をしていくことになるんだろうと思いますが、まず、リニア中央新幹線の整備計画の現状、そして全線開業に至る見通し、また、国から見たリニア中央新幹線の意義、位置づけ、期待される経済効果について御答弁いただきたいと思います。

太田国務大臣 リニア中央新幹線は、最速で東京―名古屋間を四十分、そして東京―大阪間を一時間強で結ぶことによりまして、三大都市圏間の人の流れを劇的に変えて、スーパーメガリージョンと私は言っておりますが、そうした大きな流れの変化の中で、国民生活や経済活動にも大変大きなインパクトがあるものだと考えています。

 この事業につきましては、JR東海が、民間企業として経営の自由や投資の自主性の確保を貫徹すること、これを大原則、この前提のもとで全額自己負担で整備するとの意向を示したことを受けまして、交通政策審議会におきまして二十回にわたって有識者に幅広く御議論をいただいた上で、建設の指示が二十三年の五月にされたというのが経過でございます。

 JR東海は、過去の経験から、長期債務残高を五兆円以内とすることを前提として事業の計画を立てているところです。こうした同社の財務的見通しや、現場の工事の見通しを踏まえ、東京―名古屋間の開業目標を平成三十九年、二〇二七年でありますけれども、そして大阪までを平成五十七年、二〇四五年と設定しております。

 その答申の中で経済波及効果も試算がされておりまして、年間八千七百億円と試算をされているところでございます。

馬場委員 東京―名古屋間が二〇二七年、十二年後ということになるわけです。大阪まではその十八年後、二〇四五年。恐らく、私は名古屋まで開通したときにはこの世にいるんじゃないかなと。それから十八年たつと、もうこの世にいないかもわからないんですね。(発言する者あり)いや、いい人はすぐに亡くなりますので、この世にいないかもわからないんですね。

 ですから、私はこの国家プロジェクトをぜひ自分の体で体験したいというふうに考えておるんですけれども、なぜ全線開通が二〇四五年になってしまうのか、これはどういう理由なんでしょうか。

太田国務大臣 これは、今お話をしましたとおり、JR東海がやるということの中で、長期債務残高を五兆円以内とするということを前提にしまして事業の計画が立てられて、そして財務的な見通し、工事の見通し、私は土木屋でありますけれども、トンネル工事というのは相当大変な、東京―名古屋間も予想されて、残土の問題、いろいろなことも指摘をされておりまして、相当急いでやっていくという中で、その財政的な問題や技術的という、特に、技術といっても、リニア新幹線技術は確立されているんですが、土木事業というのは、相当トンネル奥深く、土かぶりが千四百メートルというような経験のないものでもありまして、日本の土木技術は世界最高水準にあるとはいえ、未知の工事ということもございます。

 そうしたことを経て、東京―名古屋間でまずやるということで、そしてその後、大阪までを二〇四五年ということで、急いでやれということはよくわかっておりますし、これは大阪のみならず、日本の経済全体の中で非常に大事な事業だということも認識しておりますが、その答申によって、そうしたことが、JR東海が示されているという状況でございます。

馬場委員 今大臣がおっしゃられたように、いろいろな課題があるんだというふうに思います。しかしながら、最大の理由は、やはり資金繰り、ファイナンスの問題ではないだろうかというふうに思います。

 このパネルの方をごらんいただきますと、JR東海が、長期債務の残高見通し、これは平成二十二年に作成されているんですね。平成二十二年といいますと、皆様方も御記憶にあろうかと思いますが、リーマン・ショックの時代でありまして、かなり民間も厳しい状況だった時代であります。

 これをごらんいただきますと、二〇二七年、十二年後に同時開業をするということになりますと、四・九兆円プラス三・六兆円ということで、八・五兆円の借金がいっときにできてしまうという状態になります。したがって、この借金の山を、債務残高の山を二回に分けてやるということで、企業としての体力を温存したいという考えであるということは私も一定理解ができます。

 しかし、私は、ここで二つ、どうしても理解ができないということがあります。

 一点目は、これは大きな経済効果が期待されているわけなんですけれども、なぜ国の方からの支援が全くないのか。今整備されていっております整備新幹線、普通の新幹線は、直接的な負担金とか、税制、金融面で非常に分厚い支援策を打っているところであります。それと比較しても、余りにも、JR東海が事業主体で全てお任せということについて、非常に疑問を感じるところであります。

 もう一つは、債務残高のこの山ですが、一旦この山が来て、ずっと債務が減っていく、借金が減っていくということに、本当に十八年かかるんだろうかという疑問があります。

 JR東海の経営状況、足元の経営状況をパネルにいたしました。

 平成二十五年度の決算で見ると、鉄道事業の利益は、数字は三千七百十八億円と、もう鉄道業界では飛び抜けて大きな利益を得ています。

 平成二十二年度の当初の予測値を、これから見ますと約二千七百億円程度と読み取れるわけですから、一千億円ぐらい上振れしていることになるわけなんですね。

 さらに、ことしの経常利益予想、もうけは三千五百七十億円とやや落ち込むことが予想されていますが、当初の予定の千六百億円から二千億円も上振れることになるわけなんですね。

 片や、長期債務残高も、予測されていたところから二千億円減少しています。

 このように、JR東海の体力は、堅調な需要を受けて、予想より早く圧縮が借金の方も進んでいるわけでありまして、こういった要因を考え合わせますと、JR東海の高い収益力というのが今後も続くのではないだろうかというふうに考えています。

 平成二十二年当時、リーマン・ショックの影響があって、数字を低目に見積もられているというふうに推測をいたしますが、当時に比べて経済も確かに情勢はよくなっている部分があると思います。つまり、いろいろな見通しからそろばんをはじいた。全線開業、二〇四五年になるというそろばん勘定は出たわけですけれども、この経営状況の前提そのものが私は変わってきているのではないかというふうに思いますが、大臣としてはどういう御見解をお持ちでしょうか。

太田国務大臣 私がこれからの経済を全て十年単位で見通すということはできません。アベノミクスが成功し、現政権の遂行することがこのままいけば、それはかなりのものかと思いますが、社長自身も、この四年間は経営状況という経済状況は大変良好ではある、しかし、これがどのようになるかということを、当然、工事的な面もございます、経済状況もございます、そうした点で、今そこで決断するというような状況ではないということを記者会見しております。私は、全くそのとおりだというふうに思います。

 経済成長率をゼロ%と最も厳しい前提のもとで二十二年に試算をしたことは事実であるわけでありますけれども、その見通しに立って現在の計画が出されているわけでありますけれども、社長御自身が言っているように、四年間は確かに経営実績はいいけれども、今後長期にわたる事業であるために、さまざまな状況変化にも対応できなくてはならないということで、まずは着工をした東京―名古屋間についてしっかり事業を行うということが、二十二年の、答申以来の基本的な姿勢であるということを御理解いただきたいと思います。

馬場委員 同じような御答弁の繰り返しになっているわけですけれども、この全線開業の前倒し論というのは、先ほど大臣もちょっと触れられましたが、平成二十三年の五月に交通政策審議会の附帯意見というのが出ています。

 この附帯意見はちょっと重要なので、引用して読ませていただきますけれども、「中央新幹線の整備は、東京・大阪間を直結することで初めてその機能を十分に発揮し、効果を得ることができる事業である。」そうした上で、「大阪開業を出来る限り早く実現させることが」「重要である。 したがって、名古屋・大阪間の整備については、今後、経済社会情勢等を勘案しながら、継続的に早期整備・開業のための具体策を検討すべきである。」というふうにされています。

 国としては、この附帯意見の中の「継続的に早期整備・開業のための具体策」、どういうことを検討されてきたんでしょうか。お伺いします。

太田国務大臣 私自身も、できれば少しでも早くということを希望しておりますので、余りこういう場で申し上げたくはないんですけれども、そこの附帯意見という小委員会の答申は、今お話しになったその前段がございまして、「我が国経済社会に様々な面で活力を与え得る中央新幹線の整備効果を最大限発揮させるため、名古屋暫定開業後、大阪開業を出来る限り早く実現させることが極めて重要である。」こういう書き方になっているんです。

 それで、名古屋―大阪間の整備については、経済状況等を勘案しながら、継続的に早期整備、開業のための具体策を検討すべきである、こういうことなんですが、何をやっているかという御指摘でありますけれども、昨年着工したばかりである、前提となっております東京―名古屋間について、しっかりと事業をまず進めることが重要であるという考えの上に、建設主体であるJR東海の考え方をよく踏まえて、税制等も含めて、あるいは技術的なことも含めて、できることは一体何かということについて今具体的に提起をさせていただいているということでございます。

馬場委員 いろいろな課題があることは存じ上げておりますけれども、ぜひ国として、これは国家プロジェクトだと思いますので、もうちょっと主体的に国が関与していくということをお願いしたいと思います。

 ここからは、私たちは、冒頭でも申し上げました、提案型、政策実現型の政策集団、政党を目指していますので、今までの政党のように、ただ単に、やれやれ、やれやれと言うつもりはありません。ここからは少し政策提案というのをさせていただきたいと思います。

 そもそも、リニアの建設の負担者、これは誰がしているのか、JR東海さんが出資するわけですけれども、その根元のお金は誰が負担をしているのかということなんです。このリニア中央新幹線というのは、JR東海いわく、東海道新幹線とセットでなければ実現できないというふうにおっしゃっています。新幹線で稼いだ利益をリニアの建設に投入するということを意味しているんですけれども、名古屋開業後は新幹線の利益を借入金の返済に充てるということになります。そこで考えたいのが、その利益、誰が負担をしているのか、どこの地域の利用者が負担しているのかということなんです。

 これはJR東海の公開資料なんですけれども、これを見ていただくと、東海道新幹線の利用者は、東京―大阪間の利用者が圧倒的に多いんですね。ですから、先ほどの新幹線の収益で東京―名古屋間を建設するということは、事実上、東京と大阪を行ったり来たりしている利用者が大半を負担するということになると思います。

 先日、大阪府、関経連、関西経済連合会など大阪、関西の官民で組織されていますリニア中央新幹線全線同時開業推進協議会、ここがアンケート調査をいたしました。平成二十七年一月ですから、先月ですね。大阪とか東京のビジネスマン約千人のアンケートをまとめています。

 ここで注目していただきたいのは、名古屋開業時点で、従来新幹線を使っていた方、その方々がリニアを使うかどうか、こういう設問に対して、使うと答えたのは一割の方なんですね。八割が従来どおりの「のぞみ」を使いますという回答をしています。

 その理由を聞きますと、東京―名古屋間といいますが、東京の起点は、駅でいいますと、これは御存じじゃない方が多いんですが、品川駅なんですね。ですから、大阪から、東京からリニアに乗ろうとしますと、品川や名古屋で乗り継ぎをしないといけないんですね。これは非常に不便という御意見で、さほど、乗りかえをしたりしていますと、時間短縮もしないということなんです。

 ですから、東京―大阪間の新幹線利用者の大半が名古屋開業になってもリニアを使わない、メリットがないということがこのアンケートからはっきりしてきているわけです。東京―大阪間の利用者から見た場合、名古屋開業のメリットは非常に少ない。しかも、その状態が十八年間続くということになります。

 私は大阪の出身ですけれども、何も、リニアを大阪に引っ張ってこい、引っ張ってこいと、地元に利益を誘導しよう、そういうことを考えているのではなしに、大阪から以西、西日本の東海道新幹線の利用者、この方々の利便性を高めてあげたい、そして経済力を上げていきたい、そういう思いでこの質問をさせていただいておりますけれども、どうですか、今のこの提案を聞いていただいて、大臣、どんな御見解でしょうか。

太田国務大臣 現在の東海道新幹線が、関西方面の人がたくさん利用し、そのお金が東京―名古屋間のリニアに使われるというのじゃなくて、もっと全部一遍にやればいいじゃないかと。そのお気持ちはわかります。

 日本全体からいきましても、大阪あるいは関西のことだけじゃなくて、スーパーメガリージョンということは非常に大事なことだという認識は同じなんです。

 ただ、そうしたことも全部踏まえて二十二年の答申ということが行われて、まずは東京―名古屋をやり、その後、名古屋から大阪ということを少しでも早くというような具体的なことを考えなさいということに乗って現在のスタートが切られているということを、ぜひとも御理解いただきたいと思っているところでございます。

馬場委員 時間が迫ってまいりましたが、自民党にも特別委員会が設置されて、この件については多方面からいろいろな検討がされている、いろいろな御提案もあったということも仄聞をいたしております。

 我々は、さらに一歩突っ込んで、このファイナンスの問題、一番大きなファイナンスの問題で御提案を最後にさせていただきたいと思います。

 リニア建設積立金制度というものを創設していただいて、先ほどから申し上げていますように、JR東海、非常に今収益がよくなっているということでございますので、その収益の中から積み立てということをやっていただきたい。この積み立て、年間千五百億円ぐらいはできるんじゃないかということで、十二年間すれば一・八兆円というかなり大きな原資になるというふうに思います。

 これは投資減税ですので、税を免除するということではなしに先送りをするという考え方なんですが、こういう新しい制度を使っていただいて、前倒しをどんどんどんどん推進していく、その力の源を国が、国土交通省がやっていくということが私は非常に肝要だというふうに思います。

 もう一度お伺いしますが、国の主体的な対応、今までのような、JR東海がやっているからと、余り口出せませんねんということではなしに、もう一歩、もう二歩の積極的な推進、働きかけをしていただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。

太田国務大臣 JR東海がやるということに至ったのは、これは実は昭和四十八年の基本計画線から始まっている長い歴史の中で、そして予算、資金面、さまざま、また整備新幹線との関連があって、そしてJR東海がみずから自主的、主体的にやるということ、そして有識者会議がそこで二十回議論もして、そして着工ということに至るという指示をした、こういうことでございます。

 それらを踏まえて、いろいろな御提案が出ているということも十分私も承知をしておりますので、積立金制度とかいろいろなことも提案されていることをよく私も承知しておりますので、それらも含めて、よく、JR東海の受けとめ、さまざまなことを含めて判断をしたい、このように思っているところです。

馬場委員 これで質問を終わりますけれども、安倍総理、今の議論を聞いていただいて、総理は特にJR東海の葛西会長さんとじっこんの間柄であると。おとついも、夜一緒に食事をされています。これはもう新聞に載っていますから隠しようがないですけれども、お食事をされています。頻繁にゴルフもされる仲だというふうにお聞きをしておりますので、総理、ぜひこれも、葛西会長さんとの人間関係でも使っていただいて推進していくということをお願いしたいんですが、最後に総理の御回答をお聞きして、質問を終わらせていただきます。

安倍内閣総理大臣 今御提案のございました積立金制度でありますが、確かに、リニア中央新幹線というのは最先端の鉄道技術を使った夢のプロジェクトだ、こう思います。そして、それが東京から大阪までつながればこれは大きな効果になるだろうし、大阪以西、私は山口県でありますが、山口県に来るにも、リニアで大阪まで行ってそこから乗りかえるということでは近くなるなと、今お話を伺ってそう思いました。

 また、東海道新幹線などの大規模改修に向けて導入した例があると承知をしておりますが、いずれにしても、所管の国土交通省やまさに事業主体のJR東海が判断をし、そして関係者の間でよく相談をしていただきたい、このように思います。

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。馬場君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。一時間、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。

 最初に、総理にお伺いしたいんですが、通常国会が始まりまして、この予算委員会でも何度か同僚議員が昨年の衆議院選挙についての御質問をさせていただいていると思います。

 きょうも午前中にありましたが、定数削減をしないで解散したのはどうなのかとか、投票率が低いのはどうだったのか、大義はあったのか、いろいろな御質問をさせていただいたと思いますけれども、改めまして、総理にとって昨年の衆議院選挙はどういう意義があったか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 昨年、当時の景気判断を行いまして、消費税の八%から一〇%への引き上げを一年半延期することといたしました。当然、それは法改正が伴うことであります。まさに税こそ民主主義であります。

 その観点から、また、我々、かつて野党時代に、当時の谷垣総裁が野田総理に対して、選挙で、マニフェストで約束していない以上、消費税を導入するのであれば、法律を通す前に信を問うべきだ、これが民主主義の基本だと本会議で追及をしたわけであります。この姿勢を私たちは当然一貫させなければならない、そう考え、解散・総選挙を実施することを決意したわけでございます。

 同時に、その際、まさに与野党で、私たちが進めている三本の矢の政策、いわゆるアベノミクスは間違っているという声が野党から上がり、我々は決してそうは思わない、まさに成功させるためにこそ一年半延期し、景気回復の実感を全国津々浦々に届けていく、これを主たるテーマとして選挙戦を戦ったわけでございます。

 もちろん、教育の再生や安全保障法制の整備、外交の立て直し、こういうことも我々は訴えていったわけでございますが、結果として、二百九十一議席を獲得して、この選挙制度が始まって以来初めて二百九十議席以上を連続して一つの政党として獲得することができた、与党として三分の二、二つの選挙を連続して獲得することができたことについて、我々は有権者の方々に感謝したい。同時に、私たちが進めている政策を力強く前に進めていけというのが国民の声であったと思います。

 投票率が低かったことは大変残念でございますが、投票率については、これは与野党ないわけでございまして、国民の関心、信頼をつなぎとめるために、我々はわかりやすく政策をこれからも訴えていかなければならない、このように思っております。

今井委員 午前中の質疑で、馬場委員の方から、定数削減をしないで解散をしたのはやはり約束違反だと。私もそれは思います。ですから、今度の総選挙のときには必ず定数削減が実現している、それをぜひ望みたいと思いますが、午前中この議論をしましたので、これ以上してもしようがないと思います。

 それを加えても、私は一つ思うことがありまして、確かに、投票率が低い、大義がなかった、そうやって私も選挙を戦ってまいりましたので、そのとおりだとは思いますが、選挙をやった以上、政治家として選挙というのを否定してはいけないわけで、選挙の結果を否定するということは、ここにいる自分を否定してしまうことになるわけですから、政治家にとって、選挙の結果というのはやはり重く受けとめなきゃいけない、それは私は思っておりますので、結果、野党が伸びなかったというのは、私たちにもやはり責任があるし、結果はしっかり受けとめなきゃいけない、そのことはまず、そう思っているということを申し上げたいと思います。

 その上でお伺いしたいんですけれども、沖縄の選挙についてです。

 昨年の十一月の沖縄の知事選挙、那覇市の市長選挙、そしてその後の衆議院選挙、これは全て、辺野古への反対派の候補者が勝利をしたわけですね。選挙で一つの結果が出ました。この結果に対して総理はどのようにお感じになっていらっしゃるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になったように、沖縄の選挙区、四つの選挙区で、残念ながら、それぞれ、選挙区においての勝利を自由民主党は得ることができなかった。名護市の市長選挙もそうですし、そして知事選挙でもそうであった。こうしたことについて、この結果を我々も真摯に受けとめなければならないと思っております。

今井委員 そうなんですね。私も沖縄の人間ではありませんので、沖縄の皆様の本当の気持ちは多分わからないんじゃないかなと思います。安倍総理もやはり同じなんじゃないか。沖縄の方には沖縄の方の本当につらい思いがあるんだと思うんですね。ですから、そういう選挙の結果を受けて真摯に向かい合うということは当然大事だと思います。

 私も、個人的には、もう辺野古に移すしかないんじゃないかなというふうに思っていますけれども、だからといって、やはり沖縄の皆さんの民意を無視するということがあっては決してならないというふうに思います。

 そこで、お伺いしたいんですが、沖縄の翁長県知事が当選されてから五回上京されておられますけれども、知事側にお話を伺いましたところ、そのうち三度、官邸の方に、総理に面会したいという申し出をしたということを伺っておりますが、これは事実でしょうか。

菅国務大臣 回数は、ちょっと通告がなかったことはあれですけれども、たしか二回だったと思います。

今井委員 知事側の方に確認しましたら、一月二十四―二十六のところ、それから一月十四―十六、二月の五日、六日、三回申し入れをしたというふうに伺っておりますけれども、回数はともかく、面会の申し込みがあったわけですけれども、一度も総理はお会いになっておられない、結果的にはお会いになっておられないわけです。

 先ほど、真摯に受けとめるというふうにおっしゃいました。真摯に受けとめるということは、民意をいただいた沖縄の県知事がお会いしたい、面談があれば、何をおいてでも真っ先にお会いするというのがリーダーのあるべき姿じゃないでしょうか。

菅国務大臣 私自身、沖縄の基地負担軽減担当大臣でありますので、私から答えさせていただきます。

 実は、今回の面談というのが、正直言って、直前だったんです。国会の最中だとかですね。私たちは、会うことについては全くやぶさかじゃないんですけれども、普通、面談を求めてくるには、何日前かというのは当然そういう形で今までありました。ですから、そこはそのような思いであります。

 それと同時に、沖縄県以外でも会っていない知事というのは、総理は半分以上お会いしていないと思います。そこも、知事に全員会うということでもないということも御理解をいただきたいと思います。

今井委員 そうしますと、もう一回確認したいんですけれども、事前に申し入れがあって、ちゃんと時間を合わせて、時間が合えばお会いする、今、そういうことでよろしいですか。

菅国務大臣 当然、事前にあって、私どもの、例えば、きょうみたいに予算委員会だとか本会議とか、そういうところの調整が可能であれば、それは考えておきます。

今井委員 ぜひやっていただきたいと思うんです。

 例えば、二月六日、総理の動向を見ますと、参議院の決算委員会とかがあって、午前中、午後、ありますけれども、昼間の時間は官邸で五十分ほどおられます。どなたかにも面談されたという記録は残っておりません。会おうと思えば恐らく会えたんじゃないかと思うんですけれども、それはきょう問いません。

 十分でも結構ですから、やはりぜひお会いしていただきたいということなんですけれども、今、官房長官にそういう御答弁いただきましたから、前向きに捉えたいと思います。ぜひ、次回に面会の申し入れがあったときは優先的にお会いしていただきたいというふうに思います。

 それで、もう一点ちょっとお伺いをしたいと思うんですけれども、沖縄の振興予算についてなんです。

 沖縄の振興予算は、平成二十四年度からスタートをして、新しい制度として始まっておりまして、約三千億円ぐらい毎年毎年つけられておりますけれども、見ていただくように、二十四年度、二十五年度、二十六年度、徐々に予算をふやしておられました。

 今年度の二十七年度予算を拝見いたしましたところ、昨年度に比べまして百六十二億円ですかの減額ということになっておりますけれども、これはどうして減額をされたんでしょうか。

山口国務大臣 沖縄の振興担当の大臣としてお答えをさせていただきたいと思います。

 この一括交付金、御案内のとおり、二十四年度からでありますが、今回は、私も早くから予算編成のときに申し上げておったんですが、非常に財政状況は厳しい。御案内のとおりで、消費税を一〇%に上げるのも後ろへずらしました。かつ、いわゆる子ども・子育て関係の予算はつけるという中で、非常に今回厳しいぞというふうな中で査定作業をやらせていただきました。

 いろいろとずっと積み上げてきて、当然、沖縄県、あるいは沖縄の市町村の方ともさまざまな相談をしながら、懸命の、ある意味で予算獲得に努めてきて、結果としては、私としては非常にリーズナブルな結果になったんだろうと思っております。

 といいますのは、一つは、ソフト部門に関しても、やはり不用額とか繰り越しが結構多かったんです。これは、初年度と比べて、初年度の場合は、ある意味、時間的余裕とか準備がなかったんだろうということで配慮したわけですが、二十五年度の繰り越し、不用が多い。さらにまた、ハードの部分に関しては、全国の公共事業の平均と比べてみましても、不用額あるいは繰り越しが非常に多い。それをある意味全国ベースにならして計算をさせていただいて、同時に、しっかりと積み上げてきたというふうなことで、今回の結果になったわけです。

 先ほどの、翁長知事さんとの面会ですが、私は、当然、振興担当として十二月にもお目にかからせていただきました。

 知事の御意向、そして、実は今回のさまざまな予算というのは、かつて仲井真知事さんのときにこしらえた沖縄の二十一世紀ビジョン、これにのっとってやっておるわけで、翁長知事さんとしてもそれはしっかりと受け継ぐんですか、引き継ぐんですかというふうなお話もいたしました。あるいは、那覇空港のお話もいたしました。

 しっかりやってほしい、やっていくというふうなお話でしたので、では、ともどもにやりましょうということで頑張らせていただいて、同時に、本年に入ってもお見えになりまして、お目にかからせていただきました。翁長知事さんからは、もう要望額、大体うまくいった、ありがとうというふうなお話もいただきました。

今井委員 もう一度お伺いしたいんです。今度は数字を具体的にお伺いしたいんです。

 ソフト事業では、不用額があったのでその分は削りました、それから、ハード事業では、繰越率がほかのところよりも、平均よりも多かったのでその分削りましたということであります。

 これは二十五年度の決算ベースでやっていらっしゃると思いますけれども、二十四年度と二十五年度、それぞれのソフトとハードの不用額と繰越率、これを両方教えていただけますか。

山口国務大臣 ただいま御質問いただいた額でありますが、実は、ソフトに関しましては、県事業の不用額が二十三億円出ておりました。うち、県事業の方を一部減額して沖縄県内の市町村の方に回しておる部分もありましたので、合計三十八億ということでありますが、市町村分は減額要因としてはカウントしませんで、ですから、この二十三億円不用額ということで、実は二十億円減額というふうなことに相なりました。

 また、ハードの部分でありますが、これが繰り越しが三二%ということで、全国の公共事業全体の繰越率、これは約一九%でありました。結果、差が一三%あるということで、これにおおむねならして百二十一億円というふうなことでございます。

今井委員 数字をお答えいただいていないので、私の方から申し上げます。

 今いただいたのは私もいただいていますけれども、それは平成二十五年度の数字でありまして、平成二十四年度がどうだったかというと、不用額は四十五億です。二十五年は三十八億ですから、一年たって減っています。

 それから、繰越率ですけれども、今、二十五年度三二・二とおっしゃいましたが、その前の年は四〇・五%なんですね。実は、繰越率も不用額もその前の年の方が多いんです。多いんですけれども、予算はふやしてあげているんですね。

 ところが、ことし、突然、その数字を使って減額をした。事実関係としてはそういうことなわけです。理由はともかく、そういうふうになっているわけですね。

山口国務大臣 ただいまの先生のお話のとおりでありますが、ただ、ハードについては、実は、全国平均も非常に繰越率が高かったわけです。あの当時、補正予算と、いろいろな関係もあったんでしょう、それで、まあまあ全国平均と見てもそんなに大きな差異がないということで、当然、財務当局としては、そういう根拠でございました。

 ところが、次年度に関しては、余りにも全国平均と差が出た。しかも、もう一括交付金を始めてしばらくになるわけですから、これはもう理屈としてやむを得ないなということで折り合ったわけでございます。

今井委員 改善率も大幅に改善しているわけです。二十四年から始まった事業で、二年たって、繰越率も不用額も減ってきているわけですね。ということは、その翌年度も、制度がならされてくればこれがさらに改善されるかもしれない。その可能性は十分あるわけですね、制度が始まったばかりですから。

 それを見てから、そうした措置をするのはいいんですけれども、今回は、意図したかどうかわかりません、選挙が終わった後の予算がこうやって実際に減額になり、そして、まだ知事の面談もかなっていない。理由はどうかわかりませんけれども、事実関係としてはそういう状況になってしまっているわけですから……(発言する者あり)いや、なっているわけですよ、事実関係としては。

 ですから、もう少しタイミングとかいろいろなものを考えて、沖縄の皆さんの心情を余り逆なでするような、そういうことはやはりなさらない方がいいと思うんです。

 そういう選挙に負けたときこそ、岸本委員がこの間おっしゃっていましたけれども、大平元総理が、権力者は謙虚にならなきゃいけないと。ですから、そういうときこそ、北風と太陽であれば太陽政策で、しっかりお会いして、国会の場でV字になったとか面積が小さくなったとか、そういうことをおっしゃるのも結構ですけれども、やはり沖縄の皆さんに向かってしっかりとお話をする。

 国会の場で話すことも特に重要です。しかし、それよりも重要なのは、沖縄の皆さんにしっかりお会いして、そういうことをしっかりと説明していくということが私は大事だと思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、減額になったことについて、山口大臣の答弁は十分に、私、納得できたと思いますよ、沖縄の方も。これは全国平均と比べて突出して量が多ければ、それを切っていくのは当然じゃないですか。いわば、その前に多かったのは、全国平均と大体同じだった。それは、そのときの補正の全体の額とかがあるから、これは当然そうだと思いますよ。

 私がこの県が気に食わないから減らす、この県が気に食うからふやす。山口県や、それだったら福岡県はふえちゃいますよ。全然そんなことないですよ、全く。当たり前じゃないですか、それは財政当局にそういうことは任せていますから。特に、今言ったような個々の予算について、そんな一々、ソフトを減らすとか、私たちが言うわけないですよ。

 基本的に、それはもう財政当局にお任せをしていて、さまざまな状況を勘案しながら適切に予算の査定をした、このように思います。

今井委員 繰越率の御説明はされましたけれども、不用額の方は改善していることに対してはお答えがなかったんですけれども。

 それはともかく、私が一番申し上げたいのは、細かいことは、正直、国民の皆さんはわかりません。起きている現象でやはりいろいろなことをお思いになる方もあるわけですよ。沖縄の皆さんで、そんな細かいところまでわからないことばかりだと思います、もちろん。

 しかし、知事もお会いいただけない、何となく予算も削られたというふうに思えば、何なんだろうなと思う方も当然いらっしゃるだろうなというぐらいのお気持ちを、総理もやはり持っていただきたいなということを申し上げているんですね。それがやはり選挙の結果を真摯に受けとめるということだと私は思いますので。

 先ほど、今度はお会いしていただけるという官房長官のお言葉もありましたから、それはそれで了としたいと思いますけれども、やはり我々にはわからない、沖縄に住んでおられる方じゃないとわからない、そういう気持ちにしっかり寄り添っていただくということをこれからもぜひやっていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 それで、次に移りたいと思いますが、今度は原子力の話をちょっとしたいと思います。

 原発の話をする前に、当然、もう一つお話をしておかなきゃいけないのは、福島の原発事故でいまだに苦しんでおられる皆さん、いろいろな教訓があったと思います。このことに対して、今、安倍総理がどういうふうにお考えか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほどの沖縄に対する予算について一言つけ加えさせていただきますと、三千億というお金について我々は約束をしているわけであって、それはきっちりと守っておりますし、これからも守っていくということは、いわば施政方針演説ではっきりと申し上げているわけであります。

 その中において、個々の査定については財政当局がやるのは当然のことであろう。私の気持ちを示すためにふやすとかそういうことは、当然私はするべきでないんだ、このように思います。

 言わせていただければ、山口県で空中給油機十五機を受け入れるわけですよ。しかし、だからといって、ふやしたりとかしませんから、全体の額を。そのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 そこで、原発再稼働について申し上げますと、福島第一原発事故については、政府及び原子力事業者は、いわゆる安全神話に陥り、十分な過酷事故への対応ができなかったわけであります。あのような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省をひとときたりとも忘れてはならないと考えています。

 原子力の利用においては、いかなる事情よりも安全を、安全性を最優先することは当然であり、我が国の原子力発電所では深刻な過酷事故は起こり得ないという安全神話と決別をしなければなりません。

 このため、独立をした原子力規制委員会において、福島第一原発の事故の教訓を踏まえて、規制基準をゼロベースで見直しをし、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により万一過酷事故が発生した場合にも対処できる十分な対応を要求しています。

 また、防災対策につきましても、福島第一の事故の教訓やIAEAの国際基準を踏まえ、防災対策を事前準備する区域を原発からおおむね十キロから三十キロ圏に拡大するとともに、避難や屋内退避を実施する場合の明確な基準等を定めた原子力災害対策指針を作成したところでございます。

今井委員 福島の皆さんへのメッセージが何も聞かれなかったのは残念なんですけれども。

 私は、経産委員会、予算委員会でずっと申し上げてきているんですけれども、今回の事故で、まだ核廃棄物の最終処分地が決まっていないということが、国民の中で、みんなの中で知るところとなって、これを国が責任を持って決めなければ再稼働はできない、それぐらいの気持ちでやってくださいということを総理に何度も申し上げて、国も責任を持ってやるとおっしゃっておられました。

 それで、私、ちょっとびっくりしたんですけれども、昨年の選挙の自民党の選挙公約、重要政策集ですかのエネルギーのところを拝見させていただきましたら、「責任あるエネルギー戦略を」というところがあるんですけれども、原発をどう再稼働する、再稼働するといろいろ書いてありますが、最終処分地の話はどこにも書いてないんです。公明党の公約には書いてありました。さすが公明党だなと思いましたけれども、自民党にはどこにも書いてありません。じゃ、今度は施政方針演説でこのことをおっしゃるのかなと思ったら、再稼働の話はされましたけれども、最終処分地の問題は一言もお触れになりませんでした。

 総理にとっては、この問題はそれほど重要な問題じゃないということですか。

安倍内閣総理大臣 既に我が国は相当量の使用済み燃料を保管しております。原発の再稼働の有無にかかわらず、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が必要であることからは逃れることはできません。廃棄物を発生させた現世代の責任として、将来世代に負担を先送りしないように最終処分場をしっかり確保することこそが政治の責任である、これは従来から御答弁しているとおりでございます。

 そして、最終処分場の選定は、国民や地域の御理解をいただきながら、一歩ずつ進めていくことが不可欠であります。これまでのやり方を見直しをして、科学的根拠に基づき、国から適地を指示するなど、国が前面に立って、これが今までのところと違うところでありますが、国が前面に立って取り組みを進めていく考えでございます。

今井委員 経産省の下のいろいろなところでそれを協議されているのは私も存じ上げています。二月の段階でいろいろな方法について検討が出てきたというのも承知しておりますけれども、その中身の中で、一つ漏れているというか、スケジュール感が全くないんですね。いつまでにこれをやるかというところはどこにも書いてありません。

 最終的にどこを確定するかというのは、それは地元の問題がありますから、そこまで書き込めないのはわかります。しかし、科学的根拠で選定をするという時期ぐらいはつくれるはずなんですよ。しかし、それすらも書いてない。これは一体どういうことですか。

宮沢国務大臣 今総理から御答弁ありましたように、最終処分の話につきましては、まさに次世代に先送りをすることなく、我々の世代で解決をしなければいけないことだと思っております。

 それで、今、経産省の中でというお話ありましたけれども、まず、昨年四月のエネルギー基本計画におきまして、科学的根拠に基づき、国から適地を提示するなど、国が前面に立って取り組みを進めていく方針ということを決めました。

 そして、その点を含めまして、その後、放射性廃棄物ワーキンググループにおきまして議論をしておりまして、今般、最終処分法に基づく基本方針の改定案を取りまとめまして、今、パブリックコメントを求めているところでございます。なるべく早く、国民の意見も踏まえまして、改定をまずこの点でしたいと思っております。

 そして、この時期は、パブコメの締め切りが三月のたしか二十日ごろだったと思いますので、いろいろコメントがあると思いますので、その後、そのコメントを入れた調整をしてと、こういう手続になろうかと思います。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

今井委員 この作業部会の委員長をやっているのは増田元総務大臣ですけれども、発表された後の記者会見でこうおっしゃっています。国は最終処分場の必要性について、国民の前に出てまだ議論していない、そうした基本から始めるべきだと。まだ国はそういうことはできていないと、責任者である増田委員長がおっしゃっておられます。

 委員長の感想として、国はまだまだ国が前面に立ってやるという姿勢が見えないというふうにくぎを刺されていますが、これに対してはいかがですか。

宮沢国務大臣 先ほど基本方針についてお話ししましたけれども、一方で、昨年十月から、放射性廃棄物ワーキンググループと地層処分技術ワーキンググループ合同で、まさに最終処分場の適地の提示に向けた専門家による検討を進めていただいておりまして、この専門家の検討の結果を受けて、私どもとして行動したいと思っております。

今井委員 ちょっとほかにも伺いたいことがあるのでこれでやめますけれども、やはり、いつかはやりますじゃないんですよ。時期を、安倍総理の政策というのは、例えば二〇二〇年までに何をやるとか、必ず年度を切っていらっしゃるじゃないですか、いろいろな政策で。この問題だって同じなんです。いつまでにやるということをちゃんと、ある程度めどでも結構ですけれども、やらないと、いつかはやる、それでは困るんですね。そういうもう少ししっかりとしたスケジュールをつくっていただけませんか。

宮沢国務大臣 今申し上げましたように、現在審議会におきまして適地の提示、各自治体に示すことになろうかと思いますけれども、適地の提示に向けた専門家による基準等々について検討をいただいております。

 それを受けて動きますけれども、おっしゃるように、ずっとやらないというわけではなくて、もう既に始まった審議会で基準をつくっていただいておりますので、それが出てきた段階で我々としても行動いたします。

今井委員 まだこれからやりますけれども、選定をいつぐらいまでにやるか、それから、その後どういうふうに説明をしてというスケジュールをぜひ今度出していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それから、きょう復興庁来ていただいていると思いますけれども、いまだ福島の原発の事故で避難を余儀なくされている皆さんはたくさんおられると思います。

 ちょっと教えていただきたいんですけれども、立地自治体とそうではない自治体のところでのそれぞれの現在避難されている方の人数を教えてください。

若井政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発の事故により、国の避難指示により避難を余儀なくされておられる方々の人数は、平成二十六年十月一日時点で、対象十市町村の合計で約七・九万人でございます。

 このうち、委員お尋ねの、福島第一原発の立地町である大熊町と双葉町の避難者数は、それぞれ約一・一万人と約〇・六万人で、合計いたしますと約一・七万人でございます。

 福島第二原発の立地町である富岡町と楢葉町の避難者数は、それぞれ約一・四万人と約〇・七万人でございます。

 また、福島県が公表しております東日本大震災による同県の避難者数は、平成二十七年一月三十日時点で約十一・九万人でございます。なお、この中には、地震、津波で避難されておられる方も含まれている、このようにお聞きいたしております。

今井委員 きのうちょっと数字をお伺いしたので、もうこちらで言います。

 立地自治体は一万七千人、今お話しされたとおりです。それ以外のところで六万二千人おられます。つまり、立地自治体ではないところの方の避難の人数の方が四倍あるわけですね。にもかかわらず、川内原発では、大変残念ながら、地元の合意ということで、鹿児島県と薩摩川内市、この二つだけの合意ということで再稼働に進むということになりました。

 これは大変残念なことなんですけれども、総理、ここでお伺いしたい。今、高浜原発、これが二つ目の、原子力規制委員会の審査を一応合格証をいただいたということでありまして、これから地元の合意が始まると思います。

 読売新聞がアンケートをとりましたら、三十キロ圏内に三都道府県と十二市町村、全部で十五自治体がございまして、そこにいろいろアンケートをとりましたところ、立地自治体だけの合意でいいと言っているのはわずか三つです。あとのところは、とにかく地元の合意を入れてくれというふうに言っております。

 例えば、京都の舞鶴市なんかは、高浜原発から五キロ圏内にあります。非常に近いところにあるんですね。こういうところも当然、福島のこの避難の状況を見れば、再稼働のときの合意に入れるべきだというふうに私は思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 原発の再稼働に関しては、地元の理解を得ることが大変大切です。私もそのように思います。

 その範囲や方法については、今議員がおっしゃいましたが、各地の事情がさまざまであります。各地の事情がさまざまであることから、国が一方的に一律に決めるのではなく、各地とよく相談して対応することが重要であると思います。

 いずれにせよ、立地自治体など関係者とよくコミュニケーションをとりつつ適切に対応していきたいと思います。

今井委員 私がここで申し上げたいことは、この再稼働の地元合意にしても全てそうなんですけれども、国の責任というのが実は明確化されていないんですね、どれも。ですから、最終処分地を見つける問題も、全て法律で何か決められているわけでもありませんし、制度として決まっているわけでもないんです。

 ですから、地元の皆さんと相談しながら相談しながらということにどうしてもなるんですけれども、普通に考えれば、原発を推進したい自治体もあるでしょう、いろいろな交付金をいただいている手前もあると思います。そういうところの方と、そうじゃない方の意見も当然違うでしょうし、事業者の皆さんは、できるだけ早く始めたいということで、できる限り少ない手続でやりたいと思うのは当然なわけでありまして、それを地元の皆さんに任すということになると、それはなかなか、いろいろな意見があって紛糾します。

 私は、今回の福島の事件で一番考えなければいけないことというのは、原子力政策をそもそも進めたのは政府なんですね。国が進めているわけです。今回、福島のいろいろな事故が起きて、いろいろな再稼働や何やということで見直しが起きているときに、結局、国の責任が曖昧な状態であるがゆえに、地元の皆さんにお願いしてとか、そういう答弁になるわけです。

 ですから、例えば、再稼働をするときのそういう一括したものを国で全部責任を見るとか、もう少し国の責任をはっきりする。原子力政策を進めるなら、国が前面に立つということは、そういうことも全部法制化して、国の責任を明確化する。そういうことがなければ、どうしても責任関係が曖昧なまま進んでいってしまうと思うんですけれども、総理、いかがですか。

宮沢国務大臣 今総理から御答弁がありましたように、それぞれの立地で事情がいろいろ違うものですから、国が一律に決めるというわけにはいかないと思っておりまして、高浜につきましては、福井県の西川知事とよく相談しながら進めていきたいと思っております。

今井委員 ちょっと時間がありませんのでこれで終わりますけれども、私、我が党も今、原発再稼働責任法というのを準備しておりますので、国の責任をもっと明確化するという点でこれからも議論させていただきたいと思いますし、いろいろなところで、政府の方も、国が前面に立つということを最近おっしゃっているわけですから、口だけではなくて、ちゃんとそういう制度として国が責任を持つ体制をつくっていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。

 それから次に、再生可能エネルギーの接続の問題なんですけれども、これもいろいろな問題が出ました。再生可能エネルギーの接続を断られて社会問題になったということがありましたけれども、それを受けて、経済産業省が今新しい制度をつくりました。

 ごちゃごちゃ書いてありますが、簡単に申し上げます。

 一番下の原子力、地熱、水力、これがいわゆるベースロード電源というものであって、このベースロード電源はとりあえずずっと動かしましょう、ずっと動かしますと。その上で、上の火力、風力あるいは太陽光、こういうものは需要に合わせて調整をしていきましょうというような仕組みなわけです。ですから、原子力というのはずっと使い続けるという前提ですね。

 では、その前提になっているのがどういうところかと申し上げますと、ちょっとこれは細かいのでわかりにくいんですが、この数字は、過去三十年間の、原子力がどれぐらい使われたかという利用率を設備に掛けているということなんです。

 この設備の中に入っている原発がまず問題でありまして、これはさすがに福島の第二は外してあります。しかし、それ以外の例えば、もう四十四年たっている敦賀一、四十年たっている島根一、三十九年たっている玄海一、三十七年経過している伊方第二、それから三十六年たっている東海第二、それから、まだこれは議論が分かれていますけれども、活断層の可能性があると言われる泊の一、二、三、東通、志賀一、二、敦賀二、全部これは稼働するという前提で数字がつくってあります。

 これを全部稼働するという容量を押さえた上で、需要のところで再生エネルギーをカットしていこう、こういう仕組みですね。簡単に言うと、こういう仕組みです。

 総理は、施政方針演説でどういうふうにおっしゃっていたかと申し上げると、長期的に原子力依存度を低減させていくとの方針は変わりません、あらゆる施策を総動員して、徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大の導入を進めてまいりますと。

 つまり、原子力はできるだけ減らしていきます、再生可能エネルギーはできるだけふやしていきます、こういうことをおっしゃっているわけですが、この制度は、今ある原子力は目いっぱい使っていきます、そして、それによって制御された分は、再生可能エネルギーを抑えていきます、そういう制度なんですよ、この制度は。つまり、総理が言っていることと逆なんです。逆なんです。

 しかも、福島第二原発は、稼働しても、別の方法があって、それを送電線に流す方法が実はあるんですね。ですから、そこのところはおいておいたまま、ほかの部分は全部動くという前提で容量を押さえて、そこから再生可能エネルギーが使える量を計算しているんですね。これは逆じゃないですか、考え方が。

宮沢国務大臣 まず一点、原子力発電所等々全て入っている、こういう話でございますけれども、固定価格買い取り制度というのは、基本的に今後二十年間の買い取り価格を約束するというものでありまして、そういう観点からしますと、過去三十年ぐらいの原発の稼働率等と掛けておりますけれども、やはり長い間の電力の構成といったものをしっかりしておかなければいけない。

 原子力発電所につきまして、今、随分たっているものがあるというお話もあるし、また、今後稼働予定の、七年後ですか、というものもあるというわけですけれども、一方で、原子力発電所というもの、長いものでありましても、二十年延長するという可能性はあるというふうな状況。

 したがって、現在見通す中で、例えば四十年で切れるという見通しをしてしまうと、その後、延長が認められた場合には、既に入っている再生可能エネルギーの契約を切らなきゃいけないというような問題が出てくるといった意味で、大きくとってあります。

 一方で、例えば今後廃炉が出てくるというようなことになれば、その分は枠が広がる、こういう話になります。

 そしてもう一つ、再生可能エネルギーを最大限導入するということと逆方向ではないかというお話がございました。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制というのは、ある意味、再生可能エネルギーを導入するには大変意義があった。七割もふえるといったことで、大変意義のある制度である一方で、相当いろいろな問題が出てきていることは確かであります。

 例えば、当初予定したよりは太陽光についてかなり偏りがあるとか、特に九州電力のときに出てまいりましたけれども、低圧分割といいまして、実は五十キロワット未満の発電は保守管理が随分楽になっていますけれども、九州で起こったことは、かなり大きなものを用意しながら、それを分割しているように見せて保守管理を楽にするといったものが、実は昨年三月末に大量に申し込み申請が来たというような問題がある中で、今後どうするかということであります。

 指定電気事業者制度を活用するなどして、三十日以上の接続拒否ができるというような制度も入れましたけれども、これは再生可能エネルギーを入れないという制度ではなくて、いわゆるワークシェアリングのようなものでありまして、今後の導入、再生可能エネルギーをふやすという制度だと御理解いただければありがたいと思います。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

今井委員 皆さんにはよくわからなかったかと思いますけれども、考え方としては、とにかく、目いっぱい原子力が再稼働すると、今度、容量だけは押さえて、需要は決まっていますから、残りのところでやりますという話なんです。

 だから、これは再生可能エネルギーをふやす政策ではありませんから、ありませんから。だから、そこは強弁しないでください。

 もうそういう方針でやるということなら、それは一つの方針ですけれども、可能な限り再生可能エネルギーをふやすということは、それはまやかしですから、それはぜひこれから言わないでいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 もう一つ問題は、実は、今までは、業者に、三十日間はとめることがあるけれどもそれからは補償しますよという制度があったんですが、今回はこれがなくなりました。つまり、これから先、事業者が入ってきたら、無期限にとめることもあるかもしれませんよ、こういう制度に移行してくださいということなんです、簡単に言えば。

 これは事業者はやれないです。だって、いつ切られるかわからないんですから。私、金融機関の出身ですけれども、金融、つけませんよ。こんなリスクの高いものには融資できない。となれば、新規参入業者は激減すると思いますよ。いかがですか。

宮沢国務大臣 三十日以上の接続保留を可能にするのは、指定電気事業者制度という法律で決まった制度でありまして、今回大変切迫してしまいました中三社を除く電力会社につきましては、指定電力制度というものを、北海道はもう既にやっておりますけれども、導入いたしまして、接続保留ができるということにいたしました。

 実際、今までの状況に比べれば、先の見通しが立たないということは確かだろうと思いますけれども、きめ細かにしっかりと情報を前広に出しまして、恐らくそんなに長期間の接続保留ということはないんだろうと思っていますけれども、しっかり業者の方にも情報が前広に行き届くようなことはやっていきたいと思っております。

今井委員 今指摘させていただいたように、量も決めていますし、場合によっては無制限にとめるということも制度として入れたわけですから、これは相当私は副作用が出ると思いますので、これからも委員会でチェックしていきたいと思いますけれども、本当に、総理がおっしゃるように、最大限、再生可能エネルギーを広げていくという政策になるか、今後また議論させていただきたいと思います。

 もう一点、同じところなんですけれども、経産省のところで、ここの制度はちょっと難しいので説明を省きますが、地域間連系線を利用した場合に、少し容量が、お互いに融通し合うと少しいろいろなものがふやせるということで試算をしています。

 経産省は少ない数字を出していますけれども、一方で、資料を、週刊ダイヤモンドのペーパー、記事をお渡ししていますが、昨年十二月に環境省が開催した二〇五〇年再エネ等分散型エネルギー普及可能性検証検討会というところで出たペーパー、この写真ですけれども、これを見ると、例えば東北電力では、経産省の接続可能量は五百五十二万キロワット。しかし、この検討ペーパーでは、何とその四倍の二千五百十五万キロワットもあるというペーパーが出ているんです。

 私は、これは何だということを言いたいんじゃなくて、実は、これを検証しようと思って、この資料を下さいというふうに環境省に申し上げたら、これは民間の総研への委託なので、そちらの方からまだ出さないでほしいというふうに言われて、環境省の方から出さないでくださいと言われたということなので、私は、その総研の方に今度は連絡をして、このペーパー、いただけませんかということを申し上げたら、いや、これは環境省の委託事業なので、環境省の許可がないと出せませんと言うんですよ。

 何ですかこれはということで、見ていたら、何と、もっとびっくりしたのは、おととい、自民党の資源・エネルギー戦略調査会というのが行われています。ここではこのペーパーが出されたと聞きました。

 私は、ここで追及をしたいのではなくて、どちらの数字が正しいかということを比べたくてお願いしたんです。しかし、出していただけないんですね。環境大臣、これは出していただけませんか。

望月国務大臣 まず、この報道にあった試算でありますけれども、これについては、当省としての見解を示すものではありません。そこを認識していただきたいと思うんです。

 それはどういうことかといいますと、報道のあった試算というのは、委託先、先ほど委託先がありましたけれども、これはさまざまな前提や仮定を置いて試算したものであります。ですから、試行錯誤中の未成熟なものであって、引き続き委託先によるさらなる検討を経て修正が重ねられていく、そういう状況でありますので、我々としては、これが決まったものでないということで、やはりそういう数字というのが世の中に出ますと、さまざまな臆測というものが出てきますので、そういう形にさせていただいております。

 ただ、委託先からの報告内容も検討材料の一つとして、これから環境省として、再生可能エネルギーの最大限の導入に向けて、やはり先生おっしゃったように、関係省庁と連携しつつこれは調整を図っていく、そういう段階でございます。

今井委員 以前、私、この予算委員会で、経産省が計算している円安等によってふえた燃料代が三・六兆円という数字がおかしいということを、私なりの試算を出して議論したことがありますね。私はそういう議論がしたいわけです。

 だから、これがこう言っているから正しいということではなくて、どういう根拠でそういうふうに考えられたのかが知りたいんですよ。そういう資料をいただきたい。

 しかも、検討会にも出していて、自民党にも出しているらしいんです。なぜ我々に出せないんですか。

 委員長、ぜひこの資料を出していただきたいと委員会でもお願いしたいんですが、いかがでしょうか。

大島委員長 望月大臣、もう一回答弁しなさい。

望月国務大臣 今おっしゃること、よく、先生がそうやって検討の材料にしたいということでございますけれども、先ほどの話のように、概要は一応、そういう説明ということでございましたけれども、この資料自体は、実際にはその委託業者のものを出しているということではございません。そういうことでございます。今後とも、そこら辺については、皆さんに情報提供できるものはできる。

 ただ、そういうものがひとり歩きをしてしまうと、ほかの省庁となぜこんなに違うんだというようなことになりますので、これについては、ひとり歩きをしないような形で我々は考えていきたいな、こんなふうに思っております。

今井委員 でしたらば、私はここでお約束しますので、両方が言っていることが違う、政府の見解が違うじゃないかというふうには申し上げませんから、ぜひ、比べて、本当に何ができるのかということを、どれぐらい再生可能エネルギーがふやせるのかという真面目な議論がしたいんです。

 だから、そのためにそういう数字をぜひ出していただきたいとここでお願いを申し上げておきたいと思います。

 エネルギーのことをまだまだやりたいんですけれども、きょうは黒田総裁にいらしていただいていますので、御質問しないと失礼ですので、一問質問させていただきたいと思います。

 午前中に前原委員がいろいろお話しされていましたけれども、同じような話をいろいろお伺いしようと思いましたが、時間がないので一つ、少しだけお話を聞きたいんです。

 先ほど話題に出ました十二日の経済財政諮問会議でのいろいろな御発言、そこでの、議事録にあるもの以上のことは今ここの場ではおっしゃれないということでありました。

 報道ベースによりますと、昨年の十二月一日、ムーディーズが日本の国債をワンノッチ引き下げました。ダブルA3からシングルA1にワンノッチ下げましたということでありますが、このムーディーズのシングルA1というのは上から五番目でありまして、最上級、二番目、次のところあたりで、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリスなんかは、ほとんど一番上にいるんです。日本はとうとう五番目になりました。四番目の中国とか韓国より下になってしまいました。中国や韓国より下なんですね、格付が。

 この状態を見て黒田総裁が、財政健全化をしっかりやらなきゃいけないんじゃないかというように発言をされたということだと承知しておりますが、そのときの、ムーディーズの引き下げのときの理由が、消費税の引き上げの延期が決まって財政の健全化の道筋が不透明になった、政府の姿勢がちょっとはっきり見えない、あるいは成長戦略の先行きがはっきりしていない、こういうことを理由に挙げておられましたけれども、このことに対して、今、総裁はどういうお考えでいらっしゃいますでしょうか。

黒田参考人 格付会社による格付自体についてコメントするのは差し控えたいと思いますが、財政再建あるいは財政の信認をしっかり確保するということは極めて重要である、私もそう思っております。

 その点で、政府が、基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化するという財政健全化目標の達成に向けた計画をことしの夏までに策定するというふうに言っておられます。ぜひ、そうした形で、しっかりした財政の健全化、財政の持続可能性を維持し強めるという方策を作成していただきたいというふうに思っております。

今井委員 では、もう一度お伺いしますけれども、私はちょっと民主党の皆さんとは考えが違って、やはり物価目標はしっかり達成するべきだと思います。しかし一方で、それをやるに当たっては、やはり財政をしっかり健全化させておかないと、出口を出るときに非常に危険である、だから、その期間の間に本当に健全化しておかなきゃいけない、まずいというふうに思っています。

 黒田総裁も、財政ファイナンスととられないようにということをたびたびおっしゃっておられると私は承知しておりますけれども、出口に向けての議論はきょうはしませんが、金融緩和をしていくに当たって、やはり財政健全化とセットでないと非常に今後先が難しい、私はそういう認識でいるんですが、総裁はどうお考えでしょうか。

黒田参考人 二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということは、日本銀行の権限と責任において二〇一三年の一月に決定したことでありますけれども、それとともに、政府との共同声明において、日本銀行はそういうことで二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する、他方で政府は、短期的にはもちろん景気刺激という必要性はあるわけですけれども、やはり、中長期的に財政の健全性を確保する、持続可能性を確保するということと構造改革等を進めるということをはっきりと示しておられますので、ぜひそうした形で政府が着実に努力されることを強く期待しております。

今井委員 では最後に、総理にお伺いします。

 この夏までに財政健全化の目標をつくられるということですけれども、今出ている中長期の試算では、経済成長するモデルでも、二〇二〇年には九・四兆円まだ財政赤字が残るということです。ですから、税収を伸ばすというところはもう目いっぱいやっていますから、これを達成しようと思ったら、歳出を削減するか増税するしかないんです。

 私たちは、とにかく徹底した歳出削減でこの九・四兆円を出さなきゃいけないというふうに思っていますが、最後に総理、今度中長期の目標をつくられるに当たっては、二〇二〇年にプライマリーバランスをゼロにする、ここはしっかり死守していただく、死守する、そのことをここで明言していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 今回、消費税の引き上げは一年半延期はしたわけでありますが、我々、まず、この二〇一五年のPBのGDP比の半減、一〇年に比べての半減というのは達成できたわけであります、これは消費税を引き上げずにですね。そして同時に、二〇二〇年のPBをバランスさせる目標は堅持する。その堅持する道筋については夏までに公表させていただきます。

 ここにおいての道筋においては、やはり、経済をしっかりとデフレから脱却してよくしていく、これも大切なんですよ。これと、削減を図っていく、これはやはり両方ですから、このバランスが大切であって、このバランスをしっかりとよく見ながら達成していく。

 我々は政権を受け継いだときに、PB二十五兆円の赤字があったんですから。二十五兆円という大きな赤字があったんです。これを約半分にすることができた。その一つの大きな原因というのは、もちろん消費税を上げたこともありますよ。でも、やはり税収が伸びたんですよ、全体で。十二・二兆円も伸びたんですから。ですから、これは、その中では上振れもありました、こうした形でさらに経済成長をしっかりとやっていく。

 そして、デフレから脱却していくというのは、当然これは大切なんですよ。税収というのは、これは名目GDPに非常にかかわりがあるわけでありますし、デフレ下では税収は上がっていかないのは当然のことであります。ですから、そこで無理やりに、例えば、では、紙の上で、ことし消費税をどんと上げたって、それで税収が上がってくるわけではなくて、またデフレに逆戻りしたらこれは元も子もないわけでありまして、その運営のかじ取りを私はしっかりとやっていきたい、こう思っております。

 その中において、我々は、しっかりと夏にこの目標に向けて達成する道筋についてお示しをしていきたい、このように思います。

今井委員 答えを明確にいただけなかったですし、もっと反論もあるんですが、もう時間が来ましたので、また別の機会に。

 終わりたいと思います。ありがとうございました。

大島委員長 この際、松浪健太君から関連質疑の申し出があります。馬場君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松浪健太君。

松浪委員 維新の党の松浪健太です。

 本日は、基本的質疑だということでありますので、私の方は大きなテーマに絞って質問させていただきたい。したがいまして、私の方は、総理には、ゴルフ場に行ってはいけないとかそうした質問はございませんので、御安心をいただいて、気力の横溢した答弁をお願いいたしたいと思うわけであります。

 本日は、特に憲法の問題、まず最初にお話をしたいと思います。そして、我が維新の党のスタンス、そして我々維新の党のその原点というものもまずは国民の皆さんにお知りをいただきたいと思います。

 私もかつては自民党に所属をいたしまして、三十一歳のときに代議士にならせていただきました。特に、大変幸運なことに、中曽根康弘先生が現役の議員として、その最後の現役に、私もそのごけいがいに触れることができました。政治家は歴史という名の法廷に立つ被告人である、そして今、我が国は、明治維新、そして終戦に次ぐ第三の転換期にあるんだ、このお言葉をいただいて、私はずっと政治活動を続けてまいりました。

 黒船が海外から来るよりも、今の日本は少子高齢化がどの国よりも速いスピードで進む、その中で内なる黒船と戦い切るには、この国の仕組みを、朝、うちの馬場委員も申し上げておりましたけれども、根本的に変えなければならない。

 これは、明治以来続く中央集権を道州制で変える、そして、GHQ占領下の日本が受け入れた憲法ですけれども、その憲法をしっかりと改正して今の日本に合うように変えていく、変化に耐えられない、そんな国は存続できないんだ、この思いで我々は、維新の党というものは、まずもって歴史を転換しようということで生まれた政党であります。

 そして、大阪では、今、大阪都構想という長期的なビジョンに向かって我々は戦っているわけであります。ですから、この国会では野党でありますけれども、事この国家戦略であります、東京に伍する都区制度を大阪に入れて、この日本を複眼化していく、まず、この国に二つのエンジン、東京のエンジンだけではない、地方創生が叫ばれるのであれば、大阪とそしてこの東京という二つのエンジンをまずつくって、それから地方にも、四十七のエンジンはつくれないから、まず複数のエンジンをつくっていこうというのが我々共通の思いであります。

 こうした中で、特に安倍総理におかれましては、アベノミクス、国民の生活、経済、福祉、こうしたものは、総理としては喫緊の課題としてやるのは当然の話でありますけれども、今まで政治家を見ておりますと、政治家の信念、特に小泉総理を見た経験でいいますと、小泉総理は、郵政民営化という政策に、まさに執念、信念、さらには狂気もはらんで。私は、ここまでやらないと政治家というものは物事を動かせないんじゃないかな。

 中曽根先生も御著書の中で、よく、総理の一心は狂気がなければ変えられるようなものではないんだということをおっしゃっております。大阪の橋下市長を見ておりましても、ここまでやるのかということがなければ、あの地方の改革も動かないと思うわけであります。

 まさに、目の前の問題は当然やること、そして中長期にやることは、やはり政治が身を賭してやる。私はまさに道州制という政策に身を賭しておりますけれども、安倍総理にとっての憲法改正というものは、総理という一政治家、一総理としてどのようなものであるのか、まず伺います。

安倍内閣総理大臣 自民党はことし結党六十年を迎えるわけでございまして、今から六十年前の十一月十五日に、自由党、民主党が合併して自由民主党が生まれたわけでございます。

 この結党の精神というのは、まず政治を安定させようということでございますが、同時に、やはり国の根本についてもう一度しっかりと議論し、自分たちの手で国の形をつくっていこう、憲法改正もそうですし、教育基本法の改正もそうでありました。同時に、政局を安定させて、そして経済を成長させていく。政局の安定がなければ継続的な経済政策を続けていくことができませんから、この二つの目的だったんだろう。

 残念ながら、さきの二つは相当後回しにされたところでございますが、第一次安倍政権の際には、当時自民党におられた松浪議員にも御協力をいただいて、教育基本法等は全面改正することができました。そして、国民投票法もできた、そして年齢要件等々の整備もできたわけでございます。

 現行憲法が成立をして随分時を経たわけでありまして、二十一世紀、そしてさらに次の世代に向けて、その責任において我々は、今の憲法において修正するべき点は修正する、足らざる面は追加していくということも含めて真剣に議論をしていかなければならない。

 しかし、これは最終的には国民投票において半数を得なければいけない、ここが一番大切な点であります。しっかりと国民的な支持を受ける、理解を受けることが大切であろう。そのためにも、憲法調査会でだんだん議論が進んでまいりました、さらにこの憲法調査会における議論を広く深く進めていきたい、そして国民の理解も高めていきたいと思っております。

松浪委員 今の総理の御発言からは、なかなか、感情的な、また狂気といったようなものまでは感じませんでしたけれども、しかしながら、住民投票、国民投票で物事を変える、これはまだ日本国民が経験をしていないことであります。我々はまさに今、大阪で大阪都構想という住民投票を五月に迎えるわけであります。我々はまさに、まずは大阪で、大阪の皆さんに、自分たちの手で仕組みが変わるんだということを実感していただいて、そしてその先に、憲法改正でも、国の形が国民の手で変わっていくんだということを示していきたい、私たちはその思いであります。

 しかしながら、今の政治状況、一強多弱ということをよく言われます。そのとおりだと思います。きょう総理は、先般も、自由民主党が二百九十四とられて、そして三分の二を二回連続とったということで胸を張られました。しかし、これは構造的な問題であります。

 民主党さんとは、我々は野党としてこの国会を、運営等では協力をする関係にあります。しかし、選挙においては今野党が分裂している状況で、これは、かつて二〇〇五年に郵政選挙で自民党が圧勝した、また二〇〇九年に民主党が圧勝した、そのような圧倒的な力では、この構造を見る限りはないと私は思います。

 それゆえに、このような状況が長く続くとは限らないわけでありまして、この憲法改正、できるだけこの状況が進むうちに、今、ラッキーなことに、東日本大震災がない、麻生内閣の末期のようにリーマン・ショックが起きていないという非常に外部的な状況に支えられている面もありますけれども、総理はいつごろ憲法改正、早くやるべきだとは思われませんか。

安倍内閣総理大臣 私も尊敬する中曽根康弘先生の名前を挙げられました。まさに、中曽根元総理が憲法に向かって執念を持っておられたころ、まだこのときは、国民投票法もできていなければ、いよいよ国民投票をしようという状況にもなっていなければ、憲法調査会すら動いていなかったと思います。

 今いよいよそういう条件が整ってきた中においては、党をぐっと引っ張ってきてそういうものをつくっていくというところから、これからはより幅広く議論が進み、どういう条項において、ではこれは国民投票にかけようか、発議しようかというところに至る最後の過程にあるんだろう、こう思います。

 そこにおいては、ただ私の思いだけということでは全くなくて、むしろ、かえってそれが邪魔になる場合もございますので、ですから、ここは、御党も含め憲法調査会でどんどん議論をしていただく中において、だんだんこれは絞られていくことが大切ではないのかなと思っております。

 我が党においても議論していただいておりますし、これは全国に議員が出ていって国民に直接訴えていくことも大切でしょうし、例えば与党で議論していく、さらには御党も含めて与野党で議論していく、その中で建設的に何を変えていくべきかということが定まってくる。

 三分の二というのは今でも大変高いハードルです。衆議院においては幸い与党で三分の二の議席を得ることができましたが、参議院ではそういう状況ではないわけでございますから、ここは、より多くの方々の賛同を得るよう、今、時期がいつまでにと言ってもこれは空回りになってしまいますから、今こそ、最後の詰めに入っていくという入り口までやっと来たわけでありますから、ここは、時期等も含めて、よく憲法調査会において議論を進めていただきたい、このように思います。

松浪委員 そこで、先日、自民党の船田憲法調査会本部長さんが、まず三つの条件がいいんじゃないかと、テーマにおいて総理から任せられたということで、緊急事態条項、財政規律の条項、環境権、この三つを出されているわけですけれども、我が党の場合は、特に地方分権ということを一番大きな柱に掲げております。

 自民党の憲法改正草案を見ますと、特に地方公共団体を広域自治体と基礎自治体と二層構造に分けるということが書かれています。特に、当時事務局長だった礒崎陽輔さんの非常に卓越した見識が反映されているなと思うわけでありますけれども、その中ではやはり、道州制になれば、それを見据えて、この憲法ならしっかり機能するんだということをおっしゃっておりました。こうしたことも、やはりこの三つだけではなくて、さまざまなところを勘案していただきたい。野党との連携と言われましたので、個別に聞こうかと思いましたけれども、その中に含めていただきたいと思います。

 特に、こうした我々の思い、大阪都構想が今できるのも、実は、これの生みの親はまさに菅官房長官であります。ダブル選挙が終わった後に、大阪都移行法案、いわゆる大都市、都区設置法案の起草者、まさにこれを進められたのは菅先生であります。特に、私はあのとき覚えておりますけれども、国会が閉じているのに、自民党の中で緊急に、中間報告は年末までだということで一気におまとめになった。あの手法を見て、私は、これはすごいパワーと手腕と見識だなと。

 特にそのときには、菅官房長官は道州制の例まで挙げられて、そして大阪都のこの法案の意義を記者会見で説明されたと思いますけれども、そのときの経緯について官房長官に伺います。

菅国務大臣 今、当時のことを振り返っておりますけれども、大阪市長と大阪府知事が府市の一体化を掲げてそれぞれ当選をした。その当選をした首長が、住民の判断によって、特別区を住民投票にて決定する。そのときに、国会としての、地方自治で決定をされた受け皿がないのはおかしい。そういう意味で、私、党内を、プロジェクトチームの座長として、松浪委員に事務局長をやってもらいましたけれども、そういう中で取りまとめさせていただいた。

 最終的な行き着く先というのは道州制だろう、そういう思い、私自身はずっと思い続けております。

松浪委員 ありがとうございます。

 我々は、根本的な問題については与党も野党もないし、右も左もない、ただ前へ行くだけだというのが我々維新の党のスタンスでありますし、そして、単純な野党だということでもありません。大阪に行けば維新が圧倒的な与党であって、しかしながら、その中でも、今回の住民投票については公明党さんに大変お世話になっている。そして、国会では野党として民主の皆さんと連携をする。この中で、我々は実現を旨としたスタイルをこれから築いていきたいというふうに思っております。

 石破大臣にもちょっと質問をお願いしようと思っていたんですが、時間が過ぎましたので次の質問に参ります。申しわけありません。

 さて、このフリップの図を見ていただきたいと思います。これは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして南海トラフ巨大地震を比較したものであります。驚くべきことに、今回の東日本大震災の、十六兆九千億円が壊れたと。この数字は役所の皆さんも大変よく御存じだし、そして全国的にも、いろいろな関係者の方々は、東日本大震災の被害は十六兆九千億円だったんだなと。

 よく財務省の現場の皆さんとお話をしますと、阪神・淡路大震災のときも九兆六千億円だったので、最初に十兆円ぐらい予算をつけて、そこから積み増して、最終的に十六兆円になった。

 今回も、民主政権のときは十六兆九千億円だった。これが十七兆五千億円、民主政権では予算がついた。これが自民党政権になって二十三・五兆円になって、今二十五兆円まで膨張をしてきたということであります。

 しかし、見ていただきたいのは、特に南海トラフ巨大地震の、これは内閣府の検討ワーキンググループの試算でありますけれども、これも防災の世界ではよく知られた、一般には知られていないかもしれませんが、特に陸側ケース、百六十九兆五千億円ということになります。

 これはわざわざ通告なんかしていませんけれども、総理、この百六十九兆五千億円を見たときに、復興予算というものは果たして今までのようにかけられるとお思いになりますか。

安倍内閣総理大臣 これは巨大な額でありますが、しかし、こうならないようにまさに減災対策をしっかりと打っていく。減災対策をしっかりと打っていくことによって、これを当時古屋大臣が担当していたこともございますが、そうならないように、人的被害も物的被害もさらに小さくなるように努力をしていきたい、このように思います。

松浪委員 今、減災対策とおっしゃったんですが、減災対策だけではなかなかそれは難しいと思います。

 なぜならば、今回の十六兆九千億円の内訳の中でも、民間の建物被害というものが半分ぐらいありまして、特に住宅だけでも……(麻生国務大臣「十六兆九千じゃなくて、百六十九」と呼ぶ)いや、私が申し上げているのは、今回の東日本大震災。結構ですね、大臣。

 私が申し上げているのは、今の東日本大震災の中でも、十六兆九千億のうちの大半、五兆円以上が住宅という部分でありますので、特に、減災・防災対策で何とかなる、これがあっても、幾らお金をかけても、二兆、三兆、四兆、五兆、これぐらいの減災にしかならないのではないかというふうに思います。根本的に物を見直さなければならないと思います。

 私もこの数字に大変興味を持ちましたのは、今回日銀の審議委員になられます原田泰先生が、東日本大震災、欺瞞の構図という御著書を書いておられまして、特にこのことを書いていらっしゃいます。

 資料の一枚目を見ていただきたいんですけれども、その指摘によりますと、特に建物の試算がちょっと狂っているということであります。狂っていると言うと語弊がありますけれども、これが再取得価格、再調達ベースだということであります。つまり、四千万円で買った家が、もう今、一千万円も価値がないんだということになっても、これを四千万円でもう一回掲載するということが起きたのがこの十六兆九千億円。

 それを、これは単純に、幾つかの指標がありまして、定率法、定額法と書いていますけれども、内閣府の別の試算で減価償却を加味した場合に、この九・一兆円という数字が出てまいります。

 どちらかというと九・一兆円というのが、まだ壊れた実質に近い感じでありまして、まさに成長率でも、GDPは名目成長率それから実質成長率とありますけれども、この数字が十六・九兆円で躍ると、本当に省庁の中でも、これを基本に最初予算をつくって、そこから積み上げたんですという話が多くなる。

 また、別の省のある会計課長と話をしてびっくりしましたけれども、当時ですら、こうした会計課長の皆さんですら、これが再調達ベースだということを知らないんですね。

 そして、原田先生の試算では、実は、次のもう一枚めくっていただきますとよくわかるかと思いますけれども、日本全体の物的資産額というのは千二百三十七兆円になります。日本人の人口で割ると、民間それから道路、こうしたものも含めて、私たち一人当たりの資産は九百六十六万円であるということから考えて、全部壊れても東北でこれは四・八兆円という数字になるので、実は九・一兆円でも過大じゃないかということを、私は、原田先生を何度も我々も党で勉強会にお呼びをして、こうした数字になっているわけです。

 まず、内閣府と財務省で連携してお願いしたいんですが、これからこうした九・一兆円というような実質ベース、減価償却ベースの数字というのを入れてこないと、まずもってこういう予算というのは組んでいけないんじゃないかな、少なくとも予算膨張というところがなかなか抑えられないんじゃないかなと思いますけれども、山谷大臣、いかがですか。

山谷国務大臣 被害の額の推計でございますけれども、再調達価格でつくられているのが、減価償却による推計も導入すべきではないかという御質問だというふうに思いますけれども、内閣府の算出被害想定十六・九兆円というのは再調達価格でつくっております。

 公共土木施設や建築物などの被害額の推計については、減価償却を反映させた国富の減少額を算出するためではなく、主として被災地の復旧復興に資する議論の参考に資することを目的として行っているものでございます。

 御指摘の減価償却を用いた推計については、建築物等の取得に係る損失補償などには用いられておりますが、復旧、再建に要する費用を算定する際には、通常、再調達価格が用いられているケースがほとんどでありまして、ニューヨークの九・一一テロもそうでございました。

松浪委員 そうした役人答弁を求めているんじゃなくて、私も、これは決算委員長のときまとめたものでありますけれども、平成二十三年の決算の議決案の中では、東日本大震災についての項目というのがありまして、これは全党一致で議決をしている内容であります、決算委員会で。

 被害総額の算定方法の妥当性、これまでに投下された復興予算の適正性、民間に対する補償のあり方云々を徹底検証して行うべきである、さらにこれに続いて、特に今後発生が予測されている南海トラフ巨大地震については、百六十九兆円を超える被害額が見込まれていることを想起すれば、より効果的な復旧復興の対応策が求められているということを、この決算委員会での平成二十三年度の議決案にはあるので、これは重いと思います。

 こうしたことも踏まえて、麻生大臣、内閣府と連携をしてこうした対応をお願いできないでしょうか。

麻生国務大臣 重ねて申し上げておきますけれども、減価償却をした金で試算をすれば、それは安くなりますよね、四千万が一千万になったり五百万になったりしますから。

 したがって、基本的には、復旧復興をしようと思ったら、それは一千万じゃできませんから、やはり四千万要るわけですから、被害総額というので。復旧復興を目指すとすれば、やはり四千万と書いていただかないと、それは計算が合わなくなってくる。当たり前のことだと思っておりますので。(松浪委員「委員長」と呼ぶ)今まだ質問に答えていないんだと思いますが。

 もう一点、今、南海トラフの発生した場合の推計額という話になっているんだと思いますが、そのときの被害想定額というのは百六十九兆という話が今出てきておりますので、これをしっかり精査してみる必要があるという点はもう間違いないとは思いますが、そのために、不測の事態に今の段階でどう対応するかというのが多分一番の御質問のところなんだと思います。我々も計算しておかないかぬ。

 さあ、今から百年したとき、どれぐらい技術が進歩しておるか、セメントが今よりもっとかたくなるか、いろいろなことを計算してみないと、ちょっと技術の進歩というのは推計できませんので、その都度その都度やっていかないと、なかなか、今の段階でやってもという感じはいたしますけれども。

松浪委員 セメントの推計は当然お得意でしょうから、それはわかるんですが、そういうことではなくて、復旧部分ということと復興部分、これを加えて、結局特別会計にしてしまうと、一般会計で幾ら今公共事業がこれぐらいあって、そしてこの公共事業が、今の経済がこうした疲弊した状況であるので経済対策をしようと思っても、余りに大きな特別会計があるがために、今、一般会計で公共事業をどれだけにしようという政策効果というものも、一般会計を見ているだけでははかりづらくなっているはずであります。

 予算抑制の観点からいえば、復旧部分は特別会計に移すにしても、今回の復興部分、例えば新しく防潮堤をつくるとか高台に移転するとか、こうしたことはどこまでやり切れるのか。

 ちなみに、奥尻島では、一人当たり千六百二十万円かけました。高い防潮堤ができました。しかしながら、島民は海が見えなくなったといって、どんどん人がいなくなってしまいました。こういう悲劇的なこともあります。そして、神戸の震災のときには、一人当たり四千万円かかっています。よく言われる長田区なんかでも、町をきれいにしましたけれども、人がいなくなっていましたということもあります。恐らく、今回の東日本大震災でも、立派な高台ができました、人が来なかったですということもたくさん想起をされます。

 こうした中で、根本的に財政抑制をする、この南海トラフが来たときのシミュレーションというものを、財政の技術として、今までのやり方をやっていては、この額を見たら、これはもうどうしようもないということは自明の理だと思いますので、そうしたシミュレーションを財務省はされればいかがでしょうか。

麻生国務大臣 南海トラフについて、これと決めてシミュレーションをしているということはありませんし、今そのシミュレーションをしても、その時々の技術の進歩とかそのときの状況とかいうのをやっていかないかぬことになりますので、それはなかなか、今の状況でできる段階ではありません。

 問題は、そのときに、そういったものが来ても対応できるように財政をきちんと健全化しておく方が優先順位としては高いと思います。

松浪委員 けさ、馬場委員と総理とのやりとりで、我が国の債務はもはや限界に近い多さでありますし、財政の健全化といいましても、小泉内閣のときからプライマリーバランスの回復は、あのときは二〇一一年にはよくなるだろうと言っていても、これは今まで、プライマリーバランス、延び延び延び延び。

 それは、そのときのことがあります。百年に一回のリーマン・ショックがあって、千年に一回の津波があって、次にはまた数百年に一度のどんなことがあるかわかりませんから、これは延び延びになりますので、それはやはり、私らが先ほどから申し上げている、構造を大きく変えるということにはならないんだろう。

 やはり、シミュレーションというのは、今あり得るやり方を、南海トラフなら南海トラフで一つシミュレーションして、それを応用する、今までの仕組みを根本的に変えた基本があって成り立つものだというふうに思います。

 時間がありませんので、次の問題に行きます。

 新聞なんかでも今随分と、薬価改定が毎年改定になるというような話もあるんですけれども、製薬の世界というのは、今、卸の方でも大変利幅が狭い。総理もよく御存じだと思いますけれども、一%の利幅の中で〇・四下がったら、ああ随分下がったんだとか、一般にある市場よりも、このコントロールされた市場というのは、本当に厚労省とそれから業界の非常に洗練されたというか、微妙な姿の中でやっている。

 特に、薬価の妥結率なんですけれども、未妥結減算制度というのがことしから入っております。大変な手間です。五万五千軒の薬局からどれをどういうふうにやったと、妥結を九月までにする中で、これは調剤基本料等が、九月の部分で五〇%妥結しないと、二五%基本料をカットされてしまう。

 うまく言った人によっては、交通事故で違反切符を切られたら、つまり、妥結ができなかったら現場で報酬が下がるわけですから、切符を切られたら車をとられてしまったというような厳しいところもあるんですね。結局、その主体と報酬をとられる部分が違うということを業界の皆さんはうまくおっしゃっているんですけれども、これがすごく手間のかかること。

 この数字を見ていただくと、例えば二十四年の九月と二十五年の九月、病院であろうが、それから特にチェーン薬局、二十店舗以上とか、これは妥結率が二十四年、二十五年で随分大きく違うわけですね。大きく違うのはなぜかというと、二十四年の四月には薬価改定があった、二十五年の四月にはなかった。ですから、相場観ができるから薬価が高いんですね。

 ですから、本来、今回の二十六年九月というのは全てがまた下がるんですね。毎回、二年ごとの改定ごとに上がって次は下がって、上がって下がって、これをだんだん上げていってくれよというのがこれまでの政策で、今回の未妥結減算制度によって妥結率が随分飛躍的に上がっている。特に、二百床以上の病院九三・九、保険薬局も九八・一とか、九〇台に上がっている。

 異常な上がりで、この政策自体は私は評価をするところでありますけれども、それだけ、五万五千の薬局から皆さんに情報を、卸の方から提供してもらって、これを厚生局に出してもらうという大変な手間の中でなっているわけでありまして、これだけの手間をかけている業界に、さらに毎年改定というようなことが来るとやはり混乱をすると思うんですけれども、塩崎大臣、これはどのようにお考えですか。

塩崎国務大臣 もともと、医療機関と卸などとの間でなかなか妥結しなくて、年度末まで引っ張られるということで、非常に経営で大変だったということがございましたが、確かに、これについては、今この減算制度ができて飛躍的に上がったことは事実でありますが、一方で、私も地元の卸の方とか薬局で聞いてみると、大変な手間だったということも聞いているわけであります。

 今この薬価の毎年改定という話でありますけれども、この医療保険制度における薬価については、これは二年に一度の診療報酬改定時に実勢価格に合わせて動かすということをやってきました。

 薬価の毎年改定については、今御指摘のように、流通現場への影響、そのほか薬価調査、改定に係るコストとか、革新的な医薬品の創薬意欲への影響、そしてまた市場実勢価格の適正な把握への影響などの課題があると思っておりまして、こうした課題を、診療報酬本体への影響にも留意をしながら、骨太の方針二〇一四で書かれているわけでありますけれども、これを踏まえて薬価調査、改定のあり方について今後検討していきたいと思っております。

松浪委員 あと、大臣に伺いたいのは、こうした毎年改定に対するリスク、今触れられました。

 総理も、先般の参議院本会議で溝手議員の質問に対しても、「革新的医薬品を提供できるよう、国際競争力の強化に向けて産業再編を含め、」云々と大変前向きな答弁をされているんですが、今、外資系の薬についても新薬創出加算制度が入って効果が出ていると思うんですけれども、これが毎年改定になったときに、こうした加算制度の導入が、結局、外資メーカーなどは、マーケットが非常に不透明になってくる、見通しが悪くなってくるというような悪影響もあるかと思うんですけれども、そうしたことについて、もう本当に手短でいいので、大臣、認識をお願いします。

塩崎国務大臣 我々にとって大事なのは、国民の健康をどう守っていくか、あるいはもっと増進をするためにどういういい薬ができるかというのはとても大事であって、今の創薬をどう進めるかというのは安倍内閣にとっても大変重要な政策の柱であります。

 したがって、先ほど申し上げたように、骨太の方針二〇一四で、この毎年改定の話というものは、検討する方法についても留意点をしっかり書いておりますので、それらを踏まえてしっかりやっていきたいと思います。

松浪委員 この問題は非常に専門性が高くなってまいりますので、次から一般質疑等でまた質問をさせていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 GPIFについてなんですけれども、まずGPIFのガバナンスについて伺いたいんです。

 塩崎大臣に、このシステム改変、塩崎大臣は本当に、大臣になられてからこれは特に御関心があるという話をいろいろ聞きますけれども、理事長に権限が集中しているスタイルから、今、日銀のようなある種の合議制のようなものがいいというような話が出ている、また、運用委員会は常勤ではないような状況があるんですけれども、手短にでいいので、大臣のこれに対する問題意識をまず伺います。

塩崎国務大臣 これは、改訂日本再生戦略で、基本ポートフォリオの見直しとガバナンスの見直しというものを両方しっかりやるように閣議決定で決まっているわけでありまして、既にもう御案内のように、基本ポートフォリオについては昨年十月に変更いたしました。

 そして同時に、その際に、法律改正をしなくても今できることをGPIFは既に、内部統制の強化とリスク管理体制の強化ということで、例えば、ガバナンス会議を設置する、そこで投資原則や行動規範をつくる、コンプライアンスオフィサーを新設する、あるいはリスク管理のために、マクロ経済分析とか、運用資産と年金給付の一体分析とか、専門人材を多く雇う、そういうことをやっています。

 そういうことでやっておりまして、今、独法の改革の一環で、一昨年の十二月に決まった独法改革がありますけれども、それにのっとって今国会に独法法案を提出して、運用担当理事をふやすとかそういうことをやるつもりでありますが、今、同時に、社会保障審議会の年金部会でこのガバナンスのあり方については御議論をいただいておりまして、これもさっきの再興戦略の改訂版に、法改正の必要を含め、年金部会での御議論を踏まえて、私どもとしてはこの対応を官邸とも御相談の上で判断していきたい、こう考えております。

松浪委員 合議制とこれまでの仕組みで、大臣は非常にドラスチックなお考えをお持ちだったというふうにずっと聞いておりましたので、今非常に拍子抜けな感じなんですけれども。

 ある雑誌等で今、選挙後の十二月十九日に官邸で官邸の方から大臣にペーパーが渡された、これが有識者会議がまだ結論を出す前だったということが書かれていて、そのときに、最小限の法律改正、法人形態の変更を伴わず厚労省の独法整備法案で措置するというようなことが書かれていたというような報道が出ているんですけれども、これは事実ですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、それは事実ではございません。

 今、年金部会の方では、昨年の十一月、十二月にかけまして、六回にわたってガバナンスに関する検討作業班というのを植田和男先生が座長でやっていただきまして、その報告書が一月の二十三日に年金部会に出てきておりまして、そこにいろいろ書いてあります。

 なお、私は、日銀のような格好にすればいいようなことは一度も言ったことはありませんで、もう少し違うことを言っていたというふうに思っておりますが、いずれにしても、専門家が集まって作業班でしっかり御議論をいただいて、これから年金部会で御議論いただくということでありますので、先ほど言ったとおりのことであります。

 それともう一つ、有識者会議というのは、一昨年の十一月に、伊藤隆敏先生が座長で、これは一年目の成長戦略で閣議決定されたものとして設置されて、そこで既に提言が出ているわけでございまして、そこにいろいろ、今の合議制の問題について提言を既に有識者会議としてされているところでございます。

松浪委員 これは、雑誌と言いましたけれども、ファクタという余り売っていない雑誌で、これが非常に大々的に書かれていたわけでありますけれども、このファクタという雑誌で出たのは、大臣の方は、内容は事実ではないということを今おっしゃった。

 これは、実は官房長官から大臣に直接お渡しをされたということでありますけれども、官房長官、やはりこの雑誌の内容は間違っているということでよろしいんでしょうか。

菅国務大臣 そのとおりです。

大島委員長 松浪君、いいですか。後ろに影響するけれども、御了解をとっていますか。

松浪委員 大丈夫です。村岡委員の方から、ちょっと差し込んでもいいということを事前に伺っておりますので。

大島委員長 ああ、そう。

松浪委員 ありがとうございます。

 もう一問だけ伺おうと思います。

 きのうは、GPIFのポートフォリオ変更のことについては随分と民主党の岸本委員の方がおっしゃっておりましたけれども、GPIFと議論しますと、五年に一回の年金検証で、GPIFの方は、どんな損失が出ても、これは百年安心でスライドしていくんだ、これだからいいんだということを言うんです。

 しかしながら、スウェーデンやカナダでは、スウェーデンでは、自動収支均衡機能といいまして、支払われた保険料が、一人当たり、口座のようなところにたまって、損が出ると、これをそのまま現役世代で、まあ両方ですね、もらっている人とそれから支払う人みんなで負担するという現役世代に反映する仕組みがある。そしてまたカナダでは、不十分な保険料率条項ということで、結局これも次世代に先送りをしないような幾つかの条項があるわけであります。こうした条項が日本の場合はない。だから、GPIFの方で五年で検証して、それで持続可能にしているんだということは言うんです。

 しかしながら、この仕組みと日本の仕組みの大きな違いは、GPIFの場合は、年金の一階建て部分、二階建て部分両方運用している、ですから、一階建て部分にも影響があるということ。そして、こうしたスウェーデンやカナダの方式は、一階建て部分、最低保障の部分は別にして、いわゆる二階建て部分が結局こういうフェアな仕組みになっているということでありまして、やはり構造的に、この部分、GPIFは非常に問題なんじゃないかと思いますけれども、塩崎大臣に伺います。

塩崎国務大臣 他の国の制度と私どもの日本のこの制度と若干違うんだろうと思うんです。

 きのうも出ておりましたけれども、アメリカの場合は、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴーという、完全賦課方式というか、そういうことであります。ペイロールタックスで入ってきたものをそのまま年金に渡すというような格好であります。一時的に一般会計に預かるような形で、その際に非市場性の国債で運用している格好になっているということで、一般会計に貸しているような格好になっていると私は聞いております。

 今、日本で行われているのは、きのうも御答弁申し上げましたけれども、一年間の年金の支払い額の大体一五%ぐらいがGPIFから来る資金でもって充てられていて、大半は保険料で支払われているわけであって、ですから、よく修正賦課方式と言われているわけでありまして、その一五%部分をどうするかということであります。

 もう一つ、国民の皆様方にもよく理解していただきたいのは、よく損が出たといいますけれども、実はこれは実現損ではなくて評価損として、評価の、価格が上がっているだけであって、実現はしていないのであります。

 年金というのは、きのうも申し上げたように、やはり十年、二十年タームで見ているわけで、今回の基本ポートフォリオでも、二十五年先まで見通したプロジェクションを出して、それに必要なリターンをちゃんと得られるかどうかということを下振れリスクということで評価をしているので、きのう言っていらっしゃったぶれというもの、つまり標準偏差、これは当然株式がふえれば多くなりますけれども、しかし、結果として十年、二十年たってどうなのかということが年金にとっては大事なんですね。

 ですから、そのスケジュールをきっちり組んだ上でGPIFは運用を図っているわけでありまして、そういう意味で、きのう申し上げたように、いわゆるリーマン・ショックが含まれる十年間で見ても、新しいポートフォリオの方が四・三%で回って、前のポートフォリオで三・二よりも一・一ポイント高く利回りが確保されるということで、約束したとおりの年金が払えることになるということの確率が前よりもさらに高くなる。

 それは、きのう総理がおっしゃったように、デフレから緩やかなインフレに変わったり長期金利が上ったりとかいろいろあるので、そういうような形でやっているということでありますので、他の国の制度と全く同じようにやるということではなくて、むしろ皆様方には、そういうことにはならないという仕組みになっていることで御安心をいただきたいというふうに思います。

松浪委員 でも、結局は、マクロ経済スライドと、それから、これにプラスした形で、やはり次世代に対する仕組みというのはこれから入れていった方がいいと思いますので、その議論はまたにさせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、村岡敏英君から関連質疑の申し出があります。馬場君の持ち時間の範囲内でこれを許します。村岡敏英君。

村岡委員 維新の党、村岡敏英でございます。

 予算委員会の基本的質疑、安倍総理を初め各大臣にお聞きしたいと思います。

 総理の施政方針演説も聞いておりました。農協改革、そして農業の再生のために、成長戦略をするという決意をお聞きいたしました。我々の党も、農業に限らず、しっかりと改革をしていくという党です。しかし、そこには一つ考えておかなければならないことがあると思います。

 私から紹介したい記事があるんですが、これは読売新聞の、昨年の十二月二十五日です。

 昨年の十二月二十五日、読売新聞の特別編集委員の橋本五郎さんが、「拝啓 安倍晋三様」というものを書いております。総理は見られているかどうかわかりませんが。

 その中に、橋本五郎さんは、私は秋田から東京に出てきて五十年近くになります、深い雪に閉ざされ、ひとり暮らしの八十歳のおばあさんが朝から晩まで雪かきをしているのです、そういうことをしっかりと踏まえながらいろいろな改革をしなきゃいけない、その気持ちをぜひ安倍総理にも持っていただきたいというようなことを橋本五郎さんが書いております。

 この新聞記事は、総理は見られてどう感じられたか、初めにお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私の敬愛する橋本五郎さんが書いておられるコラム、いつも楽しみにしておりますが、まさに、秋田から出てきた、官房長官もそうでありますが、雪国においては、積雪のある時期、雪かきは大変な重労働であり、今、独居老人も多いわけでありますから、こうした人々が地域を守っているという認識は持たなければいけない。

 そこで、この雪かきにおいては、何か、依頼すると一日五万円、六万円かかるということでございますから、総務省、高市大臣のもとで、そうした支援も新たに行うということにさせていただいております。

村岡委員 雪かきももちろんなんですが、改革の陰には、既得権益を破るということは、それはしっかりしなきゃいけない。しかし、改革には、やはり一利一害というのは必ずある。一利があったら害を少なくするのが政治だ、こう思っております。その中に、やはり政策の陰でつらい思いをしている人がいるかもしれないという考えは常に持たなきゃいけない、こう思っております。

 そこで、同じ秋田ですから、菅官房長官にもそこのところをお聞きしたい、こういうふうに思っております。

菅国務大臣 今、村岡委員の言われたとおりだというふうに思います。ただ今日のままであってはならない、改革は断行しなきゃならないという、総理の、まさにこの国会の意識、そこも大事だというふうに思いますけれども、その手当てもやはりやらなきゃならないと思います。

村岡委員 そのとおり改革はやらなきゃいけない、しっかりとそこは踏まえながら改革を進めていかなければならない、こう思っております。

 午前中、我が党の馬場委員が、総理に文書交通費や歳費の削減や定数削減を聞きました。そのときに総理は、いろいろな代表質問でも、常に委員会でも、民主主義の根幹にかかわる、全国会議員にかかわる、こうおっしゃいました。

 しかしながら、例えば政策でも、消費税であっても、安保法制であっても、これは民主主義の根幹にかかわるわけです。

 その中で、我々考えたときに、国会議員みずから、改革をするときに、やはりこういう身を切る改革はしなきゃいけない。国会議員にかかわることは民主主義の根幹、そして、政策は民主主義の根幹じゃないかというと、これは消費税も、そして、税の問題というのは、総理は常に、これは民主主義の基本だと言っています。やはり総理が決意を示すということは身を切る改革の中で非常に大切だと私は思っているんですが、同じ答えなのかどうか。

 同じ答えだとすれば、もう答えは要りませんけれども、総理、そう考えたら、民主主義の根幹はどちらも同じじゃないですか。どちらも同じなんです。そして、特に国民が思っているのは、こういう国会議員が身を切る改革をするということは、我々民主主義の代表としてやっている国会議員に期待していることなんです。それは別に後で議会で話してもいいわけですけれども、総理の決意を聞きたいわけです。そこはぜひお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 国会議員の身分にかかわること、例えば定数削減や選挙制度そのもの、これについては、いわば民主主義の土俵づくりをするわけであります。ルールづくりに近いものであろうと思います。歳費や文書交通費の扱いについても、政治にかかるコストをどのように考えていくかということなんだろうと思います。

 そこには、いろいろな出身の方々にもこの国会において活躍していただけるような仕組みにしなければいけないという観点も必要かもしれないという中において、検討していく。

 つまり、ここはルールづくりでありますから、ルールができた後、そのルールのもとに試合をするというのは、これはもう全力を尽くしていくわけでございます。そこで、ルールづくりにおいては与野党でしっかりと話し合っていく必要があるだろうということを申し上げているわけであります。

 ただ、もちろん、定数削減については、これは身を切る改革をしなければならない、国民の皆様に消費税の増税をお願いする以上、我々も定数削減については進めていかなければいけないという考え方のもとに、今やっと議長のもとに審議をする有識者の会議の場ができましたから、出た答申については、私は党の代表として、我が党にも慎重な意見もたくさんありますよ、しかし、これは賛成するということを決めました。

 ここは、それぞれの党が決めていただければ、これは、出てくれば、大体の政党が賛成すれば前に進めていくことができるのではないか、このように思います。

村岡委員 今の世知辛い世の中で、いい話が、国民が、私なんかも選挙区から、また東京の友人から言われるお話があります。

 総理も知っておると思いますけれども、メジャーリーグの黒田投手、二十億円の年俸をもらえるかもしれないのを四億、そして、カープで最後の一球を投げたい、こういうことに、やはり政治も求められている部分があるんです。そして、読売新聞の「編集手帳」に載っておりましたけれども、飯田竜太さんの「涼風の一塊として男来る」、こういう姿勢を持ちながらやることを国民はやはり国会議員に求めているんだ、そういうことはぜひ考えていかなければならない、こう思っております。

 きょうは農業改革のことを、また農協改革のことをお聞きしようということでおりますので、質問は移らせていただきます。

 実は、二〇〇七年、農業の補正予算で対策をしたわけですけれども、このときに五百億もの米対策を行いました。

 二〇〇七年というと、振り返ってみると、安倍総理大臣が参議院選挙で大敗といいますか負けまして、そしてその後の内閣になります。その反省というのは、農業に民主党が戸別所得補償ということをうたい、そして自民党は大規模化、むしろ改革派の中で農業政策をつくりました。しかし、それで負けたんじゃないかという反省で五百億もの補正をつけました。

 結果、どうなったかというと、二年後の決算で実に七割、三百八十二億もの、国庫に返納がされました。そして、その当時の若林農林大臣は、政治にもみくちゃにされたと新聞の中で書いております。

 安倍総理のもとで農業を、今のような改革をもう六年も前から総理が考えられていたと思います。しかしながら、選挙で負けたという結果、そのような無駄遣いの補正がつけられてしまいました。

 そして、それをもう一回改革に戻そうとしたのが石破農林大臣でした。石破農林大臣、そのときの反省はどのように考えていらっしゃいますか。石破農林大臣は改革を進めようとしたのはわかっています。

石破国務大臣 あの当時の農政改革というのは、やはり米というものをどうするかということが中心であったと思います。

 生産調整をどのように行うか、これは幾つもの面がありますが、結局、需要がどんどん減る中にあって、生産調整というやり方で本当にいいのだろうかということが一つ。

 そして、生産調整に参加するところとしないところとございます。真面目に生産調整に参加をする、それによって価格が維持される。それをいいことに、やたらめったらつくるというところが出てきますと、真面目にやるところはばかみたいだという話になります。

 そういう運用においてどうしても不公平が出る、正直者がばかを見るような制度はやはりどこか間違いがあるということは、あの当時の問題意識にございました。

村岡委員 実は、その反省が今回もなされていないんです。

 あの衆議院選挙の前、このときも米の概算金が下がったんです。七千円、八千円だったんです。そして、今回も八千円前後だったんです。そして、衆議院選挙の前に、これは農業対策をしなきゃいけないということで自民党で検討し、そして、衆議院選挙が終わって、一月に二百億の補正予算がつけられました。

 私は、一月十三日、閉会中審査の中、この二百億というのは農家にとっていいんですか、農家の人たちがこれがわかるんですかとお聞きしました。事務当局の方は、これはもうしっかり説明していく。

 そして、その説明というのが、その後の第一次募集というのがありましたけれども、百問ぐらいのQアンドAをつくって説明したんですけれども、実際に一月の十三か十四にこれを発表して、一月中に全部しろ、こういうような形で、結果、第一次募集は二百億のうち六十億しか集まりませんでした。そして、二月に延ばしました。

 しかし、農家の人たちに聞くと、先ほど石破大臣が答えたように、こんなことは、もともとやっていた人はばかを見る、そして、こんなので急に米の体質強化なんて言われても困ると。

 また同じことを、選挙が終わって、そしてさらに統一選挙があるとそういうことをやる。こういう状態を続けていたら、せっかく安倍総理が、農業の改革だ、そしてアクセルを踏んでいるときに、またブレーキを踏んじゃう。アクセルとブレーキを踏み続けていたのがこれまでの農業なんですよ。その方向に行くとすれば、中山間地や兼業農家の件は別にして、成長産業にはしっかりとお金をかけていく、そこがなかったら、また農業政策は失敗しますよ。安倍総理、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 今御指摘のように、二十六年産米の価格下落については、収入減収の影響を緩和するナラシ対策に加えまして、ナラシ対策に加入していなかった方にも国として減収の一部を補填するとともに、米の直接支払交付金の早期支払いなど、米農家の当面の資金繰りを支援してきたところであります。

 これに加えて、稲作農業の担い手が二十七年産の米生産に意欲を持って取り組めるように、補正予算において、機械の共同利用など稲作の生産コストの低減を図る取り組みなどを緊急的に支援することとしたところであります。このコスト低減事業は、ことしの農作業が始まる時期に間に合わすため、一月に募集を行いました。

 ただ、これは、確かに村岡議員の御指摘もあったとおりであろうというふうに私も思いました。応募が予算額に満たないということになりまして、二月下旬まで追加募集を行い、改めて丁寧な説明に努めているところでございますが、今後とも、私どもの基本である、意欲ある稲作農業の担い手が活躍できる環境を整備していきたいと考えております。

村岡委員 総理が全部の内容をわかっているとは思っていませんが、農業者の人たちは、安倍内閣は農業政策でどっちに進むのかわからなくなっているんですよ。結果、やはりなかなか改革がうまくいかない。一方で農協を改革しようと言う。一方でもう農業者に全然受け入れられない予算をつける。

 そして、このパネルでの四の資料ですけれども、ちょっと時間がないので。この中で、第一次募集では、「補助金を得るための基準はあるのか。」こういう質問があります。抜粋しますけれども、「取組が行われなかった等の場合は、補助金を返還していただくことがあります。」と書いています。

 しかし、第二次募集は何と書いてあるか。「コスト低減効果が認められなかった場合に、補助金を返還しなければならないのか。」「申請していただいた取組を実施したかどうかで判断することとしており、二%のコスト低減効果が認められたかどうかで補助金の返還を求めることはありません。」これで補正予算はいいんでしょうか。

 もう第一次募集の項目と第二次募集と全く違うことになってきているんです。これが緊急対策で米の体質強化といったら、農民はもうどの農業政策を信じていいのかわからなくなります。これは総理、もう一回チェックしてください。しっかりとそこは総理が、これだけ農業を大切だ、そして、農業の方向性を成長産業にするんだ、担い手もしっかりとしていくんだ、こう言っているわけです。

 総理、そのときの、二〇〇七年のこの五百億が七割返ってきたときの自民党の責任者は誰だかわかりますか。それは西川農林大臣なんですよ。小委員長なんです。

 西川大臣、もう一回同じことをやるんですか。どうぞお答えください。

西川国務大臣 ことしの米価が下がって、みんな農家の人が心配していました。それで、米価の回復ができれば一番いいわけでありますが、今のところ、農協による追加払いとナラシでどこまでいけるか、こういう状況の中です。

 そういうことで、手取りをふやすためにはやはり生産費を下げよう、こういうことにも狙いを定めました。

 それで、今委員が御指摘がありましたように、平成十九年度、確かに対策そのもので五年または三年の長期にわたり生産調整の実施を約束した者に対して緊急一時金を払う、こういうことで、今御指摘がありましたように、補正予算額五百億のうち百十八億しか使わなかった、こういうことになっております。

 それで、私の地元の農業者からも何度も問い合わせがありました。どうも、農林省を出ていくときはそうきつい基準じゃなかったのでありますが、地方に行けば行くほどきつくなってくる。きついのも、農業者のためになればいいんですが、どうも狙いが、新しい機械を買えとか新しい方策をやれとか、こんな話ばかりがまかり通っておったわけでありまして、私は早速、そういう御意見をもらった農協に担当者を派遣しました。そして、本意を伝えていこう、こういうことです。

 村岡委員が今御指摘をされましたように、コスト低減の取り組みを支援する、こういうことでありますが、確かに私どもとしては取り組みが行われたことを確認する必要がある、こういうことでありますが、取り組みによる具体的なコスト低減の確認までは求めない、こういうことで、コスト低減に挑んでください、しかし、コスト低減ができたかどうかというのは私どものこの補助の条件には入っていない、こういうことであります。

 そして、確かに、稲作農家の体質強化緊急対策、私どもは二百億組みました。このときに、米価に上乗せできれば農家の皆さんは一番安心だと思いますけれども、そういう直接的な乗せ方はできないということで、来年度生産で生産費を下げてくれる取り組みをする農家に対して補助金を出そう、こういうことをやりました。

 募集しましたら、確かに、一次募集、一月九日から一月三十日、約六十億円しか来ていません。二月の二十七日まで頑張って、あと百四十億やりたいと思います。

村岡委員 結果、これは同じことになるんじゃないかと心配しています。

 やはり、先ほど言ったように、農業は、アクセルを踏んだらブレーキをするわけじゃなくて、しっかりと保護する中山間地、兼業とかというのと別枠でやっていかないと、農業者は、またこの農業政策、せっかくいろいろな改革をやろうと安倍内閣が言っていること、我々はそこは協力しますよ。ここはしっかりと、総理、リーダーシップをとってやっていただきたい、こう思います。

 ちょっと時間がないので、私、通告で、西川大臣、まだ出てこなくてもよかったのに、西川大臣の政治と献金の問題でちょっとお聞きしたい、こう思っております。それぞれ、もうお答えになっていることは重複しないようにお聞きしたいと思います。

 西川大臣も聞かれたくないし、じくじたる思いがあると思います。聞く私の方がもっと嫌です。しかしながら、ここはやはり農業のしっかりとした責任者としてお答え願いたい、こういうふうに思っております。

 西川大臣の献金、木材加工会社さんから総額で六百四十万円、献金をいただいております。そして、補助金は十二億四千万となっています。

 この木材に対する補助金というのは、ずっと継続してあるんですけれども、二〇〇九年、西川大臣が自民党の公的森林整備検討チームの座長をやられたときに、これは充実するべきだと予算をふやしたはずです。そうなれば、やはり疑問に思う人がいるんです。

 当然、農林族とも言われ、農業に対していろいろな思い入れがあって、しっかりやっているのはいい。しかし、補助金が行くということは、この木材加工会社に直接行くかどうかはわかりませんが、いろいろなところに行くことはしっかり認識していたはずです。それが、自分の地元の選挙区で、これだけの十二億も行く木材加工会社、そして献金をもらっているところ、ここに補助金が行かないと思うのは、普通はそう思わないんです。そこをまだ説明していない。それをぜひ説明してください。

西川国務大臣 平成二十四年に、特に問題となっております木材加工会社から献金をいただいたことは事実であります。私としましては、木材加工会社に対する補助金の交付決定を知らなかったことから、違法性は認識しておりません。

 これはなぜわかったか、こういうことになりますが、一月七日にマスコミが林野庁にこれを取材されたそうであります。八日になりまして取材があったということがわかりまして、その報告で調べた結果、木材加工会社に交付決定があった、こういうことがわかりました。

 それで、寄附をしてくださった方が違法と言われかねないので、違法かどうかは別としまして、道義的見地から、補助金を受けていたことがわかった時点ですぐに秘書に返金を私は指示いたしました。

村岡委員 質問は、木材関係の会社にそういう補助金がちゃんと行くように、それを知っていたかどうかということですよ。

 いや、それは知らないというのは、前の委員会でも、もちろんその木材加工会社に行ったのは知らなかったと言いましたけれども、通常であれば、自分が座長をやって、その補助金が来るようになって、自分の選挙区で十二億をもらったら知っているというのが普通なんです。でも、これは知らないと言っているわけですから、これはおかしいということの疑問はちょっと残ります。

 そこで、一月七日、林野庁に取材が来て、それで九日、お返しになった、こういうふうにお答えになりました。西川大臣は、それでは、この取材の方々と、直接の取材は受けられていないんでしょうか。

西川国務大臣 私は直接の取材を受けておりませんが、うちの秘書は接触したようでございます。

村岡委員 大臣、実はきょう、これは十二時過ぎですか、先ほど、我々の委員会の、毎日新聞のニュースが出ているんです。これはネットのニュースでしょうか。

 まず、木材加工会社に取材したのは一月十五日だそうです。そして、このお金を返されたという話は、全く木材加工会社の社長が言わなかったです。それは、もしかしたら、そこの取材はしなかったのかもしれません。

 次に、この新聞記事を見ると、先ほどの話なので全部は確認していませんが、先ほど大臣は、一度も取材を受けなかった、こう言っておりますが、この新聞では、二月三日夜に西川大臣と政務秘書官が新聞社に会っているという記事が出ています。先ほどと違いますが。

西川国務大臣 取材は受けておりません。

 恐らく、ある人の会合で会ったやつかどうか、私もちょっと日にちを確認してみますけれども、それを取材だと言っておるかもわかりませんが、私は、この件に関しては一切お話、その記者さんとはやっておりません。そこだけは申し上げておきます。

村岡委員 大臣、一月七日に林野庁から取材があったことを聞いて、そして九日に返している。そのことは、この献金の問題は法的には問題ないけれども、やはりこれは職責に鑑みて返さなきゃいけないという決断をしたわけですよね。

 そして、それから大分たって二月三日に、その取材をしている毎日新聞の記者だと思いますが、ここに書いているとおりだとすれば、その記者と会って、それも、これを見ると、二月の三日夜に懇談しているということなんですよ。そのときに話題が出ないなんということは、取材を受けていて、それはおかしいでしょう、普通考えたら。それは、先ほど取材は受けなかったと言ったから、もう一回同じ話をしたというだけで、通常ありますよ。

 それで、別に、会ったから悪いと言っているわけじゃない。しかし、隠さない、それが大事じゃないですか。農業の政策、これからの改革をしていくわけじゃないですか。その大臣が、言っていることが、この予算委員会の場ですよ、答弁が違うことになるというのは、これは問題だと思います。これは事実かどうかはまだ確かめていません。新聞です。(発言する者あり)ちょっとうるさいですね。今聞いているんですから。大臣、どうぞ。

西川国務大臣 それは、食事をしようということで、私、呼ばれまして、食事に行きました。ところが、私、仕事がありますので早く帰ったのでありますが、その日は、帰ってきて、何人もの記者さんと会った日であります。私はそう長い時間はいませんでしたが、このような話で、記者と取材に関する話は一切ありません。

 連日連日、今申された新聞社は記事が出ますけれども、何の意を持って違法でないものを出し続けるのか、私にとっては理解できない、こういうことで取材は受けておりません。

村岡委員 これは堂々めぐりになりますけれども、通常で考えれば、それは取材を受けるのが当たり前。その話題が出るのが当たり前。そして、その取材のやっていた記者だということでこれには書いてありますので、通常はそうです。そして、別に何も、会ったから悪いと私が言っているわけじゃないです。だけれども、その前の発言が違うということを言っているわけです。だから……(西川国務大臣「いや、同じ同じ」と呼ぶ)いや、同じではありません。でも、ここは堂々めぐりなんで、これはもうコンティニューですね、時間もあと五分ぐらいしかないので、これをやり続けると。

 もう一つだけお聞きします。

 私なんかも浪人しておりました。浪人生活というのは、いろいろな人に支えられるということで、ありがたいことがたくさんあります。

 その中で、いろいろな会社から、例えば、支えていくために、ぜひ私のところで座談会を開いてくれ、さらには集会を開いてくれ、いろいろあります。しかし、浪人中というのはなかなか、秘書を雇ったり、事務所の電話や何かや、世知辛いですけれども、本当に足りないときがあります。そういうときに、あなたの政治姿勢を応援しようといって民間の会社が顧問にしてくれることがあります。そういう意味では、大臣は、浪人中に、どこかの会社の顧問なんかはされていたことがありますでしょうか。

西川国務大臣 幾つかの会社の顧問等をお引き受けしたものはあります。とにかく、収入が突然途絶えたわけでありますから。

 そして、その内容については、きょう事前通告もいただいておりませんで、詳しいところがわかりませんし、間違った報告なんかすると、さっきのように、さっきと違うなんということを言われます。こういうことでありますから、私は、曖昧な記憶で申し上げるのじゃなくて、調べた上でお答えをさせていただきたい、こう思います。

村岡委員 これは、別に顧問を受けることが悪いわけではありません。しかし、いろいろな方々が、大臣が、補助金を受けていて、知っているんじゃないか、こういうことがあってその木材加工会社の顧問をやっていたんじゃないか、こういう疑いを持つ人もいるみたいです。

 それは、いろいろなところから顧問を受けるのはいいですけれども、顧問というふうになってくると、これもまた知らないということではない、このことは認識して、後で結構ですので、委員長、それをお願いいたします。委員会に出していただくように、顧問のですね。

大島委員長 農水大臣、もう一度ちょっとお答えをして、その上で委員長の判断をいたします。

西川国務大臣 浪人中、私も収入が途絶えまして、幾つかの顧問をお受けいたしました。

 それで、きょうは発言通告もいただけなかったので、いただければ、さらに詳しく調べて報告できましたが、そういう状況でありますので、曖昧な話はできませんので、私どもはしっかり調べてお答えを申し上げたい、こう思います。

大島委員長 ただいまの村岡さんからの問いに対して、農水大臣も、しっかり調べて確定したものを御報告するという答弁ですから、それは理事会に返事をいただくことにいたします。

村岡委員 ぜひそれは提出していただいて、しっかりと疑惑を晴らして、私も農水委員ですから、今の農業改革というのはラストチャンスだと思ってやらなきゃいけないことだと思っています。そこはぜひ疑惑を、そしていろいろな、疑惑じゃないですね、疑問を解いてください。それはお願いいたします。

西川国務大臣 では、疑問でございますね、村岡委員、疑問ですね。

 私は、ほかのやつでも、あたかも、非常に曲がった報道ばかりされているものですから、同じ新聞社です、こういう状態が続いておったのでは萎縮してなかなか、私どもも政策の実現に行くときに毎日毎日狙い撃ちされている、こういう状況だということも理解してください。

村岡委員 わかりました。

 では、これで終わらせていただきます。ぜひ疑問を解いて、農業改革を一緒にやりましょう。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて馬場君、今井君、松浪君、村岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 総理は、日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にする、その邪魔となる岩盤規制を打破するとして、この国会に、雇用に関する二つの重大法案、労働者派遣法改悪法案、残業代ゼロ法案を提出しようとしております。

 しかし、日本の雇用のルールの現状は、岩盤と言えるようなものでしょうか。派遣、パートなど、不安定な非正規雇用で働く人が全体の四割近くまで広がっています。異常な長時間労働、サービス残業、ブラック企業が横行し、過労死、過労自殺が増加しています。最低賃金が余りに低く、懸命に働いても貧困から抜け出せません。岩盤どころか、働く人を守るルールが余りにない、ずぶずぶの軟弱地盤というのが現状ではないでしょうか。

 そうした現状のもとで、岩盤規制の打破の名でこれ以上の労働法制の規制緩和を進めたらどうなるか。

 私は、きょうは、日本が直面している雇用問題について、非正規雇用、長時間労働、最低賃金という三つの大きな角度から総理の基本認識をただしていきたいと思います。

 第一は、非正規雇用労働者の問題です。

 これを持ってまいりましたが、ILOが昨年十二月に発表した「世界賃金報告 二〇一四―一五年版 賃金と所得の不平等」というレポートがありますが、次のように指摘しております。

 日本で労働所得割合が減ったのは、より多くの産業で非正規労働者を雇えるようになった一九九〇年代半ばの労働市場改革に起因する。その結果、正社員より低賃金の非正規労働者が増大し、長期にわたって賃金の停滞をもたらした。

 パネルをごらんください。

 これは、一九九〇年から今日までの非正規雇用の比率と労働者の平均賃金の推移をグラフにしたものです。

 青い棒、非正規雇用の比率は、九〇年代前半までは二〇%前後で推移しておりますが、九〇年代後半から増加の一途をたどりまして、二〇一四年には三七・四%に達しています。同時期に、赤い棒、労働者の平均賃金は、一九九七年の三十七・二万円をピークにずっと下がりまして、二〇一四年には三十一・七万円まで下落しております。

 まず、総理の基本認識を問いたいと思います。

 長期の趨勢で見た場合、非正規雇用の労働者がふえたことが労働者全体の賃金低下の主要な原因になっているという認識はありますか、総理。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 この三十七・二万円をピークとして、これは後でずっとこう落ちていくわけでございますが、これはいわば、このときに消費税が三から五に上がり、かつ社会保険料等も上がり、その後、アジアの経済危機があって、ここからずっと日本がデフレ下に入っていったわけであります。もちろん、その中で、より給与を上げないという姿勢が強かった。

 アジアの金融危機以降は、特にその前のバブルの崩壊後の三つの過剰という中において、とにかくなるべく人は雇わない、賃金は上げない、固定費を抑えていく、こういうマインドとともに、デフレ経済でありますから、お金を持っていればその価値はどんどん上がっていくということでありまして、午前中議論がございましたが、実質金利が高どまりしているという状況では、当然投資はしないということになってきた結果なんだろう、このように思うわけでございます。

 足元で見ますと、九十万人、安倍政権になって雇用がふえました。いわば、新たに仕事を得た方が多いわけでございます。ふえた九十万人を収入階層別に見ますと、確かに二百万円以下の方も三十万人ふえましたが、五百万から七百万の方がプラス三十三万人もふえているわけでございますし、また、この二年間の間に正規から非正規に移られる方は十万人減っておりますが、非正規から正規に移る方は逆に八万人ふえるという、やっとそういう状況にまで来たわけでございまして、非正規から正規に行きたいという方がその望みがかなえられる経済状況をつくっていきたい、このように思っております。

志位委員 私は、非正規雇用労働者がふえたことを、長期的な趨勢で見て、それを原因として、労働者の平均賃金が下がったかどうかという認識を問うたんです。確かに、九七年の増税によって、大不況の引き金を引いて、それがさまざまなマイナス要因になっていることは言うまでもありません。しかし、私が聞いたのは、非正規雇用労働者がふえたことがどういう影響を与えるかということについてです。

 足元の数字を言われましたけれども、足元の数字でも、非正規雇用の率は、二〇一三年の三六・七%から、一四年には三七・四%にふえ、直近の昨年十二月の数字では三八・〇%とふえているわけですよ。それから、実質賃金の問題でも、十八カ月連続で足元でも減っているわけです。長期の趨勢を見れば、これは明瞭であります。

 私、政府の労働経済白書を持ってまいりました。

 この労働経済白書では、非正規雇用の増加と所得の関係について分析して、次のように述べております。

 一九九九年と二〇〇九年とで家計の年間収入の分布を比較すると、六百五十万円台以上の割合が低下するとともに、六百万円台以下の割合が上昇する形で年収分布が低い層にシフトしている。年収分布が低い層に移っている。そして、家計消費を押し下げている最大の要因は所得の低下である。それは主に非正規雇用者の増加によるものである。

 政府のレポートでもはっきり書いております。

 非正規雇用労働者がふえたことが賃金低下の主要な要因であることは、これは政府も認めていることです。そして、その全体の四割近くまで非正規がふえた原因が、一九九〇年代半ば以降の労働者派遣法の相次ぐ改悪を初めとする労働法制の規制緩和にあることは、ILOのレポートが指摘しているとおりであります。

 そこで、派遣労働の問題に進んでいきたいと思います。

 非正規雇用の中でも、派遣労働は、雇用主である派遣元企業と使用者である派遣先企業が別の間接雇用であって、とりわけ深刻な問題を抱えています。

 私は、派遣労働の問題についてこの委員会で、二〇〇八年から九年にかけて、過去三回取り上げてきました。常に首切りの不安におびえる究極の不安定さ、懸命に働いても貧困から抜け出せない異常な低賃金、教育も訓練もなしの職場で多発する労働災害、そして何よりも、人間として気遣われることもなく物扱いされるつらさ。質問するたびに、この非人間的な使い捨て労働を放置しては、とりわけ若い世代にこういう働き方をさせていては日本の未来はないと痛感させられました。

 人間を物のように使い捨てにする派遣労働の本性は、二〇〇八年秋ごろに始まるリーマン・ショックと景気悪化のもとで猛威を振るいました。派遣切りという形で何万という労働者が路頭に放り出され、大量のホームレスがつくり出されたことは国民の記憶に新しいと思います。

 ところが、安倍政権は、過去二回の国会で国民の批判を浴びて廃案となった労働者派遣法改悪法案を、この国会に三たび提出しようとしております。

 私は、廃案となった政府案に即して問題点をただしていきたいと思います。

 まず、総理に確認します。現行労働者派遣法の大原則について確認しておきたい。

 パネルをごらんください。

 そもそも、労働基準法、職業安定法では、人貸し業は厳しく禁止されてきました。そこで、政府は、派遣労働について次の大原則を置かざるを得ませんでした。第一は、「派遣は臨時的、一時的業務に限る。常用雇用の代替―正社員を派遣に置き換えることはしてはならない。」第二は、「この大原則を担保するものとして、派遣受け入れ期間は、原則一年、最大三年とする。」

 この大原則は、この委員会での私の過去三回の質疑で、その都度、当時の総理、厚生労働大臣に確認してきた現行派遣法の大原則ですが、これは間違いありませんね。派遣法の大原則にかかわる問題ですので、総理に確認しておきたいと思います。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 お答えする前に、先ほどの答弁の中では賃金の下降についての説明だけさせていただいたわけでありますが、非正規の比率が直近でふえているということについては、これは、基本的に、確かに非正規の数が総数としてはふえている、しかし、中身については先ほど申し上げたような状況ではありますが。

 これは、大体、この非正規は、七割がパート、アルバイトでございますが、景気回復局面においては、今まで職についていなかった人たちが職につき始める。またあるいは、六十五歳までの方、六十歳から六十五歳までの方の雇用の場を確保するという中において、今度は正規から非正規という形で確保している、その数が今ふえているということもございます。他方、希望しない非正規の方の数は前年比減少し始めておりまして、こうした流れをしっかりと確かなものとしていきたいと思います。

 そこで、現行の労働者派遣法でございますが、労働者派遣制度においては、派遣される労働者の保護を図るとともに、労働者全体の雇用の安定を図ることが重要な課題となります。

 このため、現行の労働者派遣法では、派遣先において正社員から派遣労働者への置きかえ、常用代替が生じることのないよう、派遣労働の受け入れを臨時的、一時的なものに限ることを原則として、専門的業務、いわゆる二十六業務を除き、原則一年、最長三年という期間制限を設けているということでございます。

志位委員 非正規、正規の問題をまた言われましたけれども、直近の二年間を見ても、若い世代の正社員は三十九万人減っている、このことを言っておきたいと思います。

 今総理の答弁で、この二つの原則を確認いたしました。

 派遣労働というのは、もともと労働基準法などで厳しく禁止された人貸し業であって、特別に不安定、低賃金とならざるを得ません。だから、派遣は認めるけれども、あくまでも臨時的、一時的な仕事に限る、正社員の仕事を派遣に置きかえてはならない。そして、この大原則を担保するものとして、派遣受け入れ期間は原則一年、最大三年という期間制限を設ける。これを超える仕事というのは臨時的、一時的な仕事と言えなくなるわけですから、派遣社員でなく、きちんと正社員を雇って仕事をさせなければならない。これが現行派遣法の大原則であります。

 さて、この大原則が、政府が提出しようとしている派遣法改悪法案ではどうなるか。まず、法案の仕組みを確認しておきたいと思います。

 政府案では、個人単位の期間制限として、派遣先の同一の組織単位における同一の派遣労働者の継続的な受け入れは三年を上限とするとしています。同時に、事業所単位の期間制限として、派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受け入れは三年を上限とするが、受け入れ開始から三年を経過するときまでに過半数労働組合等から意見を聴取した場合には、さらに三年延長可能とする、その後の扱いも同様としています。

 これは間違いないですね。厚生労働大臣に確認しておきたいと思います。確認で結構です。

塩崎国務大臣 その前に、先ほど、非正規がふえたことによって賃金が下がったというお話でありますけれども、私ども、改めてそれを見てみると、先ほど総理が言ったように、パートが約六割の増加分を占めている、それから高齢者が六割の部分ふえているということで、やはり女性と高齢者がふえてきているということが大きいということと、一般労働者の分、つまりフルタイムの人たちの賃金もかなり下がってきているということも加えておかなきゃいけないと思います。

 そこで、今の先生の確認ということでありますけれども、今回の改正案では、派遣労働者に着目したわかりやすい制度にする観点から、派遣受け入れ期間に関する現行の制度を、制限を廃止し、全ての業務を対象として、事業所単位で派遣労働者の受け入れ期間の上限を三年とし、延長には過半数組合等からの意見聴取を必要とする、派遣労働者ごとの個人単位で同じ職場への派遣は三年を上限とするという二つの期間制限を新たに課すこととしているところでございます。

志位委員 仕組みは確認いたしました。

 そうしますと、パネルをごらんください、こういうことになります。

 現行法では、一般業務の派遣社員の受け入れは、Aさん、Bさん、Cさんと、たとえ人がかわっても三年までしかできません。ところが、政府案では、派遣先企業は、どんな業務でも人を三年でかえれば派遣社員を受け入れ続けられる。つまり、派遣先企業は、事実上無期限に派遣労働者を受け入れ、使用することができる、そういう仕組みになりますね。

 仕組みの確認です。端的に答弁してください。聞かれたことに答えればいいから。

塩崎国務大臣 今先生からパネルでお示しをいただきましたが、派遣先と働く方の間に雇用関係がない派遣労働については、派遣先において正社員から派遣労働者への置きかえを防ぐことが課題とされて、それは常用代替、先生先ほど御指摘のとおりで、これに関しては何ら変わらないというふうに思っています。

 一方で、働き方が多様化する中で、派遣という雇用形態を積極的に選択している方々もあるほか、そうした状況の中で存在しているという現実もございますので、提出を予定している改正案では、多様なニーズに対応できるように、派遣先事業所での継続的な派遣労働者の受け入れについて、三年という期間制限を課した上で、これを延長する場合には、現場の実態をよく知る過半数組合等からの意見聴取を義務づけるとともに、今意見聴取のことがここには触れられておりませんけれども、これを義務づけるというのが新たに今までなかったものとして入ってくる義務づけであります。

 そして、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ措置を、これも新たに義務づけることとしておりまして、正社員から派遣への置きかえを進めるものではございませんので、今申し上げたように、過半数組合等からの意見聴取の義務づけとキャリアアップの措置の新たな義務づけということについてもここに加えていただかないと、必ずしも正確ではないというふうに思います。

志位委員 二つのことを言われました。過半数労働組合の意見聴取とキャリアアップの問題。

 一つ一つ議論していきたいと思うんですが、過半数労働組合から意見を聴取すれば派遣受け入れ期間の延長をすることができるという仕組みになっていることは間違いないですね。イエスかノーかで。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、過半数労働組合から意見聴取を受けて、反対意見があった場合、これは当然、説明をもう一回する。そして、これを周知するということも徹底をしなければならないという新たな義務づけをしているところでございます。(志位委員「だから、聴取すれば延長できるかと聞いたんです」と呼ぶ)はい。

 それは、意見聴取をして手続を踏めば……

大島委員長 志位さん、ちゃんと手を挙げてやらないと、これは質問と答弁にならぬのですよ。

 もう一回質問、質問。

志位委員 聴取すれば延長できるかと聞いたんです。

塩崎国務大臣 意見聴取をして、周知徹底を社内でしていけばできると思います。

志位委員 聴取をすれば延長ができると。つまり、聴取さえすれば、こうやって三年ごとに人をかえれば、期間の延長はどこまでもできるという仕組みであることは確認いたしました。

 労働組合の意見聴取と言われますが、労働組合の同意は必要なんですか。イエスかノーかでお答えください。

塩崎国務大臣 結論的には、意見聴取をして、さっき申し上げたように、反対意見があったときには対応方針をきちっと説明する、それから、意見聴取の記録を周知するということを新たに義務化して、これは労使間の双方向の流れということで実質的な話し合いをしていただくわけでありますが、同意が要るということではございません。

志位委員 同意が必要ないという答弁でした。すなわち、意見聴取をするだけであります。反対があったとしても、対応方針を説明すれば派遣受け入れ期間の延長ができるという説明でした。

 本気で歯どめをつくりたいんだったら、同意を必要とするとすればいいんですよ。事は労働条件にかかわる大問題であって、労使の同意というのは当然であります。

 同意ではなく、意見聴取、聞くだけでは、何の歯どめにもなりません。これでは、これまであった原則一年、最大でも三年、それ以上はだめという派遣受け入れの期間制限は事実上撤廃されることになります。

 派遣受け入れの期間制限が事実上撤廃されたらどうなるか。派遣は臨時的、一時的業務に限る、常用雇用の代替、正社員を派遣に置きかえることをしてはならない、これは今でも大原則だとお認めになりましたが、その大原則が担保を失い、正社員の派遣社員への大量の置きかえが進むことになることは火を見るよりも明らかです。

 これまでの労働者派遣法では、原則一年、最大三年という派遣受け入れの期間制限がありました。それでも、この期間制限が守られてきたわけでは決してありません。

 私は、この委員会で、日本を代表する大企業が、あの手この手を弄し、現行法の網をくぐり、違法、脱法な手口で期間制限を超えて派遣労働者を使い続け、正社員の仕事を派遣に置きかえ、派遣工場をつくるなどの実例を繰り返し告発し、政府に是正を求めてまいりました。

 この委員会で私が告発してきた大企業による期間制限違反の事例について、改めて述べておきたいと思います。

 例えば、日立のグループ企業のある工場では、派遣労働者に機械部品のワックス組み立てという同一業務を、班だけ変えて五年間も続けさせていました。

 トヨタ車体では、クーリングという、同一業務であっても三カ月以上派遣を受け入れない期間があれば継続した派遣とみなさないという厚労省の指針を悪用し、配置がえによって派遣労働者を永久に派遣のまま使い続けようとしました。

 いすゞ自動車では、偽装請負、実態は派遣先の指揮命令で働く派遣労働なのに、契約上請負と偽る違法行為を行い、偽装請負から通算すると四年から六年も派遣のまま使い続け、直接雇用の申し出もないまま、一方的に解雇しました。

 マツダでは、違法にクーリングを悪用して、四年から五年も派遣のまま使い続け、直接雇用の申し出もないまま、一方的に解雇しました。

 パナソニックでは、偽装請負から通算すると三年十カ月も派遣のまま使い続け、一方的に解雇しました。

 キヤノンのある工場では、製造ラインで働く全員が派遣労働者と、派遣工場ともいうべき実態になっていました。正社員から派遣への置きかえを大規模に進めていたのであります。

 現行法でもこういう状態が続いてきました。

 私が何度もここで正すことを求めてきた問題であります。

 原則一年、最大三年という期間制限の規制があっても、あの手この手を弄し、違法、脱法な手口で規制を逃れ、正社員をリストラして派遣社員に置きかえ、あげくの果てに物のように使い捨てる。規制があっても、日本の名立たる大企業がこういう横暴勝手をやってきたんですよ。

 現行法でもこういう状態なのに、期間制限の規制が事実上撤廃されたら大規模な正社員の派遣社員への置きかえが進むことは、これは火を見るよりも明らかじゃないですか。

 そこで、総理に問います。

 派遣先の大企業に、常用雇用の代替、すなわち、正社員の派遣社員への置きかえをさせないための担保だと言ってきた派遣受け入れの期間制限を事実上なくしてしまって、それにかわる担保が一体どこにあるんですか。

 常用代替というのは派遣先の大企業がやるものなんです。今、具体的事例を示したとおりです。派遣先の大企業の常用代替を縛る規制、担保、一体どこにあるのか。これは派遣法の大原則にかかわる問題ですので、総理に答弁を求めます。

大島委員長 厚生労働大臣、まずお答えしてください。

塩崎国務大臣 もともと、派遣の制度の中には、今までは常用代替防止という発想だけでやってきたわけで、それは大事な話であって、それは当然踏襲していかなければいけないわけでありますけれども、しかし、その時代でも、実は、係を変えれば三年以降も受け入れられるということが意見聴取もなくいけたということがございました。

 今回は、何度も申し上げますけれども、そもそも、今までいろいろな派遣会社がありまして、問題なところもたくさんあったということで、今まで実は四分の三が届け出だけだったわけでありますけれども、今回は全てを許可制にして、新たな義務を、一つは常用代替防止という観点からかける、それからもう一つは固定化の防止という観点からかけるということで、義務化を……(発言する者あり)少し静かにしてください。

 義務化をいろいろやって、正社員になりたい方々はなりやすいように、ですから、堂々と正社員として会社に勤められるようにということと、もう一つは、半数ぐらいの方々は派遣のままでいい、こうおっしゃっているわけでありますから、そうすると、個人の方が固定化をされない、そしてキャリアアップがしやすいように、さまざまなことを、義務化を派遣元、派遣先にしていく、こういうことになっているわけであります。

 したがって、今、常用代替防止ということについての担保は一体どこにあるのかということがございましたが、これは、正社員化をすることによって、常用代替にはならないで、みずからが正社員になっていくということでありますから、まず第一に、直接雇用についての雇用安定措置というのを義務づける。

 それから、当然、派遣先で正社員として正式に雇ってもらうための教育訓練やキャリアコンサルティング、これは今許可制に全部すると申し上げましたけれども、これについても、許可要件として、キャリアアップの仕組みをちゃんと社内で持っている、なおかつ教育訓練も有給、無償でちゃんとやるということを条件に許可をこれからはしていくわけでございまして、当然、これらをやらないということになれば、指導助言、改善命令、事業停止命令、許可取り消しというところまで来るわけでありまして、そういう意味では、派遣元が義務を課せられていることはたくさんある。

 一方で、派遣先も正社員募集の情報をきちっと提供しなければいけないとか、これも今まではそんな規制はなかったわけですけれども、それから、三年間従事した有期雇用派遣労働者に対しては、募集情報というのをちゃんと派遣先は本人に提供しなきゃいけないというのも新たな義務づけをいたしますし、雇い入れの努力義務というものも、今までは努力義務でしたけれども、課すということもございますし、派遣元に対して派遣先は仕事ぶりの情報をきちっと提供するということについても努力義務を課しているわけです。

 そういうことで、常用代替にならないように、採用してもらうならば正式な社員として採用してもらうようにということで、新たな規制を数々課しているわけでございます。

志位委員 私は、派遣先の大企業を縛る規制、担保はどこにあるか、常用代替防止をさせないような規制、担保はどこにあるかということを聞いたんです。それに対するお答えは全くなかったです、今、長々と答えたけれども。

 それで、キャリアアップをやるんだということをおっしゃいます。正社員化の努力をするんだということもおっしゃいました。しかし、派遣社員が正社員になれないのをキャリアの欠如に求めるのは、現場を知らない者が言うことですよ。

 私は多くの派遣労働者から話を伺ってきましたけれども、現実には派遣労働者の多くが正社員と同等の、あるいはそれ以上の仕事をやっていますよ。新人の正社員に仕事を教えている人もいるぐらいです。にもかかわらず、不当な格差を強いられている。キャリアアップ措置などによって正社員になれるという保証はどこにもありません。

 大体、政府案には、キャリアアップの目的について、「派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施しなければならない。」と書かれている。派遣労働者としてのキャリアアップが原則であって、正社員になるためのものと位置づけられていないじゃないですか。

 私が聞いたのは、派遣先の大企業が、常用代替、すなわち正社員を派遣社員に置きかえる、これを防止する、それを縛る規制、担保がどこにあるか、これを聞いているんですよ。情報提供とか、そんな話じゃないんです。きちんと縛る担保はどこにあるか、もう一回答えてください。ちゃんと答えてください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、今までの法体系の中での規制というのが非常に少なかった中で、今回新たな義務を課すということを数々やっているわけです。

 先ほど申し上げたように、それは派遣元に課すということと、それから一方で、今先生御指摘のように、派遣先にも課しているわけであって、派遣先における直接雇用に対して、まず、今までは雇い入れ努力義務というのを、努力義務としてありましたけれども、今度は正式な雇い入れ努力義務を課すということを法律で明確にするということ。

 それから、派遣労働者の仕事ぶりの情報については先ほど申し上げたとおりでありますけれども、当然、正社員を募集しているときに、三年いた派遣の方に黙って別な人を雇うということはやはりよろしくないわけでありますから、きちっとした正社員募集の情報の提供をするということもするわけでありまして、そういうことを新たに義務づけているわけであります。

 今まではいずれも、正社員募集情報の提供もなかった。それから、今申し上げた、三年間従事した有期雇用の派遣労働者に対して募集情報の提供をするということもなかった。それから、派遣労働者の仕事ぶりの情報をちゃんと派遣元に提供して、また雇用安定措置にも資するような形でやるという義務もなかった。そういうようなことをやって、先ほど申し上げたように、許可制の中でこれを有効なるものとして担保していくということだというふうに思っています。

志位委員 何度聞いても、私が聞いた派遣先大企業を縛る規制、担保を示すことはできませんでした。

 今、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供とか、派遣労働者の仕事ぶりの情報を提供するとか、そういうことを言われましたが、それをやったからといって、常用代替の防止になりませんよ。これだけ聞いても、結局、原則一年、最大三年という期間制限にかわって、派遣先の大企業の常用代替、正社員の派遣社員への置きかえを縛る規制、担保は何ら示せなかった。

 派遣先の大企業の常用代替を野放しにして、仮にどんなに派遣社員の正社員化の努力をしたとしても、大穴のあいたバケツに水を注ぐようなものであって、大規模な正社員から派遣社員への置きかえが進むことは避けられません。政府案に対して、正社員ゼロ社会に道を開くという批判があるのは当然であります。

 産業競争力会議議員を務め、人材派遣業パソナグループ会長の竹中平蔵氏は、正社員をなくしましょうとテレビで公然と言い放ちました。このことが現実になる危険があります。

 政府が提出しようとしている労働者派遣法改悪法案は、派遣受け入れ期間制限を事実上撤廃することで常用代替禁止という労働者派遣法の大原則を覆す、文字どおりの歴史的大改悪です。国民の批判によって二度までも廃案になったものを三たび提出することなど、絶対に認められません。法案の提出を断念することを強く求めます。

 今求められているのは、派遣労働を臨時的、一時的業務に厳しく限定する派遣法抜本改正を行い、均等待遇のルールをつくり、政治の責任で非正規から正社員への流れをつくることにあることを強く主張しておきたいと思います。

 次の問題に移ります。第二は、異常な長時間労働の問題です。

 まず、総理に伺います。

 総理は、施政方針演説で、専門性の高い仕事では、時間でなく成果で評価する新たな労働制度を選択できるようにすると表明しました。残業代ゼロ、過労死促進と強い批判が起こっているこの制度についてただしたいと思います。

 総理はこの法改悪を岩盤規制の打破の名で進めようとしておりますが、日本の労働時間規制は岩盤と言えるようなものなのか。

 パネルをごらんください。

 これは、日本とヨーロッパ主要国の労働者の年間残業時間の比較であります。全ての産業のフルタイム労働者一人当たりの平均残業時間の比較です。

 日本の百八十二時間に対して、イギリスは七十八時間、フランスは五十五時間、ドイツは五十三時間、オランダは二十二時間。日本の残業時間は突出して長いものとなっています。これに年間平均三百時間とも言われるサービス残業が上乗せされている。これが現状です。

 総理に基本的認識を問いたい。なぜ日本の労働者の残業時間はヨーロッパに比べてこんな異常な長さになっているという御認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 労働基準法では、原則として、一日八時間、一週四十時間を法定労働時間としており、これを超えて働かせる場合には、限度となる時間等について労使の協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。これがまず大前提でありますが、法定労働時間を超えて働かせる場合には、必要な労働協約は、時間外労働が月四十五時間などの基準に適合したものでなければなりませんが、臨時的な特別の事情があるときは、一年の半分を超えない範囲で、基準を超えた時間を別に定めることができるとされています。

 しかしながら、労働基準監督署では、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働が月四十五時間を超える場合には、その削減に向けた指導を行っています。また、本年一月から、長時間残業に関する監督指導の徹底を図るとともに、企業が自主的に労働環境の改善に取り組むよう、その促進に努めています。

 なお、時間でなく成果で評価するという新たな制度の検討に当たっては、対象を、グローバルに活躍する高度専門職として働く人に絞っている。健康の確保に十分留意することにしております。

志位委員 今、制度の説明を総理はされたのですが、私が聞いたのは、時間外労働がどうしてこんなに長いかという設問なんですよ。これは、時間外労働、すなわち残業時間の上限が法律で決まっていないからなんです。

 EUでは、時間外を含め週四十八時間という労働時間指令に基づいて、労働時間の上限が法律で決まっております。ところが、日本では、労働基準法で、今おっしゃられたように、週四十時間、一日八時間を法定労働時間としておりますが、同法第三十六条に定める時間外労働協定、いわゆる三六協定を労使で結べば、残業時間を自由に決めることができます。

 ただ、今総理の答弁でもありましたが、長時間労働が社会問題になるもとで、一九九八年の労働基準法改正により、労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、協定で定める労働時間の延長の限度などにつき、基準を定めることができるものとされました。

 これを受けて、三六協定による時間外労働の限度に関する基準、大臣告示が定められ、三六協定で認められる労働時間の延長の限度、すなわち残業の限度が定められました。

 これは厚労大臣に確認したいんですが、この大臣告示で残業の限度とされているのは、週単位、月単位でどうなっていますか。数字だけでいいですよ、大臣告示。

塩崎国務大臣 今お話がございましたが、この限度基準でございますけれども、これについては、告示によって、一週間については十五時間、そして一カ月については四十五時間となっております。

志位委員 今御答弁あったように、大臣告示では、残業の限度は、月では四十五時間となっているわけです。ただ、この大臣告示には法的拘束力がありません。

 さらに、この大臣告示では、先ほど総理も言われましたが、特別の事情があるときには四十五時間を超えて残業させる協定を結んでもいいというただし書きがついています。

 その結果、実態がどうなっているか。次のパネルをごらんください。

 これは、日本経団連、経済同友会の役員企業三十五社が結んでいる残業上限協定であります。我が党が情報公開制度を活用して、全国十四都道府県の労働局に開示請求を行って明らかにさせたものであります。

 並んでいる数字がありますが、これは一カ月の残業上限時間です。三十五社のうち三十三社で、月四十五時間の大臣告示を超える残業条件協定を結んでいます。さらに、三十五社中二十八社、八〇%が、この赤い網がかかった企業でありますが、政府が過労死ラインとしている月八十時間以上の残業上限協定を結んでいます。

 そのうち十三社、東レ、三菱商事、丸紅、王子製紙、東芝、日立製作所、JX日鉱日石エネルギー、NTT東日本、武田薬品、リクルートキャリア、三菱化学、伊藤忠、ウシオ電機、以上十三社は月百時間以上の残業条件協定を結んでいます。

 これは総理に問いたいと思います。

 日本の経済界を代表する大企業がそろって、月四十五時間の大臣告示を全く無視し、月八十時間以上の過労死ラインを超える残業上限協定を平然と結んでいます。異常な長時間労働の先兵になっている。こうした実態を異常だと思いませんか。放っておくんですか。

 私は、衆議院の本会議の代表質問でこの実態を示して、この現状をどう考えますかと聞きましたが、総理からは答弁がありませんでした。ここではっきりお答え願いたい。総理。

塩崎国務大臣 法定労働時間を超えて働かせるような場合には、今お話がありましたように、必要な三六協定は、時間外労働が月四十五時間などの基準に適合したものとしなければならないわけでございますけれども、例えば機械トラブルへの対応など、臨時的な特別の事情があったり、一年の半分を超えない範囲で基準を超えた時間を定めることができるともされておるところでございます。

 御指摘のように、三六協定で月四十五時間を超える時間外労働を定めた場合は、それをもって直ちに労働基準法に違反とは言えないものの、働き過ぎの是正というのは、これは当然重要な課題でありますから、企業は実際の時間外労働を月四十五時間以下とするように努めることとされておるところでございまして、労働基準監督署では、過重労働によります健康障害を防止するという大事な目的のために、企業への監督指導におきまして、実際の時間外労働の時間が月四十五時間を超える場合には、その削減に向けた指導を行っているところでございます。

 また、私が厚生労働省の中で本部長を務めております長時間労働削減推進本部というのがございますが、ここにおいて監督指導の強化を目下進めておりまして、本年一月から、特に長時間残業が行われている事業場等に関する監督指導の徹底を図るとともに、休み方あるいは働き方改善ポータルサイトというのを開設しておりまして、積極的に情報発信をし、企業の自主的な働き方改革の取り組みを促進するように努めているわけであります。

 そういうことで、厚労省としても、挙げて長時間労働は排除するということで臨んでいるところでございます。

安倍内閣総理大臣 実際は、私もちょっと話を聞いたことがあるんですが、これは、こんなにしょっちゅう残業しているわけではなくて、念のためにこれは結んでおく、そういう、コンプライアンスもしっかりしているということであります。

 例えば、労使協約で月八十時間を超える延長時間を締結した事業場の割合は、これは四・八%で、実際の時間外労働が月八十時間を超えている事業場の割合は二・二%だということでございます。

志位委員 これは上限を定めたもので実態は違うんだということをおっしゃいますが、これさえ超える残業の実態というのはざらにあるんですよ。

 そして、大事なことは、日本経団連、経済同友会の役員企業の八割が、過労死ラインを超えても働かせるぞという宣言をしている、これが何よりも重要なんです。

 特別の場合とか言いますけれども、一年間に六カ月までできるんです。六カ月までは、四十五時間を超えても働かせることができる。六カ月も過労死ラインでやられたら、これは本当に参っちゃいますよ。これを実際やる、そういう宣言をしていることが重大であります。政府が決めた大臣告示も過労死ラインも全く眼中にない。

 先ほど指導すると厚生労働大臣おっしゃいましたけれども、大臣告示を決めてから十七年ですよ。指導する指導すると言っておきながら、こういう実態があるじゃないですか。これを問題にしている。

 異常と言えない。私は異常と思わないかと総理に聞いたんだけれども、異常と言えない。この姿勢が異常ですよ。ですから、私はもう一つ論を進めていきたいと思います。

 私は、総理の今の異常と言えない異常な姿勢の根本には、月四十五時間というこの残業の限度の重みを理解されていないんじゃないかと思います。

 この残業の限度は、月四十五時間という大臣告示は、労働者の健康と生命を守る上で、医学的根拠を持ったものであります。

 二〇〇一年十二月に厚生労働省は、過重労働による脳・心臓疾患の認定基準を決めております。

 これがその通達であります。そこでは、脳・心臓疾患を発症させる過重労働かどうかは総合的に判断されるべきだが、最も重要な要因は労働時間であるとして、次のように述べております。

 通達を読み上げます。

 1 発症前一か月間ないし六か月間にわたって、一か月当たりおおむね四十五時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね四十五時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

 2 発症前一か月間におおむね百時間又は発症前二か月間ないし六か月間にわたって、一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

 パネルをごらんください。

 これは厚生労働省自身が作成した図をパネルにしたものであります。

 残業時間が月四十五時間以内の場合には健康障害のリスクが低い。月四十五時間を超えた場合は、長くなればなるほど健康障害のリスクが徐々に高まってくる。月百時間を超えた場合、または二―六カ月平均で月八十時間を超えた場合は健康障害のリスクが高いものになる。これは厚労省自身がつくっているパネルであります。

 この厚生労働省が決めた過重労働による脳・心臓疾患の認定基準というのは、ここに持ってまいりましたが、脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書、これは二〇〇一年十一月に出されたものですが、これを根拠にしたものであります。

 これは非常に詳細な医学的研究をもとにしたデータが集積されておりますが、ここでは、脳・心臓疾患の発症と睡眠時間との関係についての医学的研究をもとに、次のように結論づけております。

 「その日の疲労がその日の睡眠等で回復できる状態であったかどうかは、」「一日七―八時間程度の睡眠ないしそれに相当する休息が確保できていたかどうかという視点で検討することが妥当と考えられる。 一日七・五時間程度の睡眠が確保できる状態を検討すると、この状態は、」「労働者の場合、一日の労働時間八時間を超え、二時間程度の時間外労働を行った場合に相当し、これは、一か月おおむね四十五時間の時間外労働が想定される。」

 つまり、その日の疲労がその日の睡眠で回復できる状態を維持するためには、残業時間は月四十五時間までということになります。それを超えると、疲労が長期にわたって累積し、脳・心臓疾患の原因となってきます。

 すなわち、大臣告示で定めた残業の限度は月四十五時間とするというのは、政府自身が行った検討でも医学的根拠を持ったものだと思います。この報告書は、なかなか詳細な検討を行っています。

 ここで、総理に一つ問題提起をしたい。

 政府が本当に国民の生活、生命、健康に責任を持つというのであれば、残業の限度は月四十五時間とするという大臣告示が定めた規制を法律化し、法的拘束力を持ったものにすべきではないでしょうか。これも、私が本会議の代表質問でただしましたが、定かな答弁がなかったので、この場ではっきりとお答え願いたい。総理、お願いします。

塩崎国務大臣 まず、私の方からお答えをさせていただきたいと思いますけれども、先生御指摘のように、働き過ぎの是正、あるいは若者の使い捨てが疑われる企業への対応はきちっとしていかなければならないことは、もう言うまでもないわけでございます。賃金不払い残業とか過重労働が疑われる企業に対して重点的な指導を行うということで、さっき申し上げたと思いますが、本年一月から、今時間が出ておりましたが、月百時間を超える長時間残業が行われている事業場に対する監督指導を今徹底的にやっているところでございます。

 また、特に検討を進めている労働時間制度、今、法制化も考えているわけでありますが、健康確保のための時間外労働に対する監督指導等の強化を行う方針でございまして、この取り組みによって働き過ぎの是正を図ってまいりたいというふうに思っております。

 そこで、今お話がありましたように、この大臣告示を法制化してはどうかという御提案でございました。

 これ以上働いてはいけないという労働時間の絶対的な上限規制を一律に設けるという御提案だと思いますが、これについては、やはり、働く方の健康確保を図る上で有効だという先生の今のお考え、この意見がある一方で、企業の事業運営の柔軟性に大きな影響を、一律にやった場合には与えてしまうという意見もあって、こうした関係者の意見を聞きながら、法制化については慎重に検討をしていくべきではないのかなというふうに思っております。

 労働政策審議会で、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果にあっても、そういう月に四十五時間を超える労働者がいる事業場が一〇・九%いるとか、そういうようなこともあるわけですが、やはり、本件についても労政審できっちりと議論をしてまいったわけでありますけれども、いまだ、残念ながら結論には最終的には至っていないというところでございまして、引き続いて、関係者の先生の御意見を含めて、御意見に耳を傾けながら慎重に検討を深めてまいりたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 基本的には今大臣から答弁をさせていただきましたが、我々は、今、ワーク・ライフ・バランスもしっかりと、これは経済界とともに進めていかなければならないと考えておりますし、政労使の場においてもそれを大きなテーマにしているところでございます。

 そうしたことを進める中において、今、志位議員がおっしゃった点、健康管理という観点も極めて重要な点でございますが、事業の中身によっては、非常に仕事が波動性があって、非常に忙しいときとそうではないというときがある、これは月単位であれば、非常に忙しいときに、いわば、まさにここで稼がなければいけないというときに四十五時間を超えていくということはあるという中においてこうした規定があるわけでございますが、基本は基本でございますし、常にそれが行われるということがないように、監督署等においては健康の管理という観点からしっかりと見ていくということがまず重要であろう、このように思っているところでございます。

 法定にするということについては、これはさまざまな観点からも、働く人の健康確保とあわせ、慎重に検討すべき課題であると考えております。

志位委員 この四十五時間というのは、政府自身が医学的根拠を持って、健康確保のためには絶対必要だということで決めたものなんですね。

 例えば、繁忙期にどうしても働かなきゃならない場合がある、そういう例外事項については法律で検討することはあってもいいと思います。しかし、政府自身が、四十五時間というのを超えたら健康障害のリスクが高まる、こういうふうに認めているわけですから、これは法制化に踏み切るべきだ。事は労働者の命と健康にかかわる問題です。

 ヨーロッパでは、労働時間の上限を法律で決めてやっているわけです。ヨーロッパにやれて日本でできない道理はありません。

 例えば、東芝は日本では残業上限時間は月百三十時間ですけれども、ドイツの東芝の子会社はわずか月二十時間でやっている。ヨーロッパではルールを守っているのに、本国の日本でできない道理はありません。

 慎重に検討するということで、踏み込んだ答弁をされないんですが、残業時間を法律で規制せず野放しにするという姿勢を続けることが何をもたらすか。過労死や過労自殺の広がりです。

 次のパネルをごらんください。

 厚生労働省によりますと、長時間労働や仕事のストレスなどが原因で過労死や過労自殺をした方は、未遂も含めて、二〇一三年度は百九十六人、十五年前、一九九八年度の五十二人に比べて四倍近くになっております。過労死は、ヨーロッパでは考えられない、日本だけの異常な現象です。

 トヨタ自動車における過労死について、私は取り上げたい。

 トヨタにおける残業上限時間は、月八十時間と、過労死ライン上にあります。トヨタでの過労死認定は、これまでに五件に上ります。

 二〇〇二年二月には、内野健一さん、当時三十歳の過労死事件が起こっております。

 内野さんは、トヨタ自動車堤工場車体部で班長として働いていました。トヨタの製造部門では、一週間置きで昼夜逆転の不規則勤務が行われていました。加えて、QCサークル活動、労働者の自主活動の名のもとに行われる、品質管理と能力向上のための職場の小集団活動が過重労働に拍車をかけました。亡くなる一カ月前の残業時間は百六時間四十五分に達しました。

 妻の博子さんは、享年三十歳でした、亡くなる半年ぐらい前から夫の残業がどんどんふえ、年が明けてから異様な働きぶりでした、私は不安に駆られていたのですが、その不安は的中し、過労による致死性不整脈で死んでしまったのだと訴えておられます。

 二〇〇六年一月には、Aさん、当時四十五歳の過労死事件が起こっております。

 Aさんは、主力の中型セダン、カムリハイブリッド車のチーフエンジニアとして働いていました。亡くなる前年の二〇〇五年には、一年間でアメリカへ六回、延べ四十九日間出張し、帰っても、休むことなく出勤していました。死亡一カ月前の残業時間は月七十九時間、二カ月前は百六時間、六カ月前は百十四時間でした。妻のつくった弁当をそのまま残したり、半分しか食べない状況だったこともあるといいます。

 妻のBさんは、車をつくり上げる喜びで仕事がとまらなくなるんです、きょうもアドレナリンが出っ放しだった、帰宅するなり夫はそう言って笑っていました、職場は常に興奮状態で、みずからを追い込んでいく、だからこそ会社がストップをかけないとと訴えておられます。

 会社がストップをかけないとと遺族が訴えているときに、何人もの犠牲者を出しながら、トヨタの首脳はどういう姿勢でしょうか。

 総合自動車ニュースサイト「レスポンス」によれば、トヨタ自動車の伊地知隆彦専務、これは当時ですが、二〇一一年八月、四―六月期決算発表の席上で、今の労働行政では若い人たちに十分に働いてもらうことができなくなっていると述べ、韓国のヒュンダイはトヨタより年間労働時間が一千時間も多いと指摘。私は、若い人たちに時間を気にしないで働いてもらう制度を入れてもらわないと、日本の物づくりは十年後とんでもないことになるのではないかと思う、こう言い放ちました。会社は過労死するまで働けと言うのかと、怒りを広げました。

 総理に問いたいと思います。

 過労死した労働者の遺族が、会社がとめてくれないとと訴えている。そのときに、会社は、とめるどころか、まだまだ足らない、もっと働け、こう言う。そうであるならば、政治が責任を果たすべきではないでしょうか。

 重ねて問います。残業の限度は月四十五時間とするという大臣告示を、この規制を法律化すべきですよ。法律にしてこそ拘束力が生まれ、過労死の防止の本当の力になる。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、既に、時間外労働が月四十五時間などの基準に適合したものでなければならない、これが基本でありますが、これを超えた場合については、一年の半分を超えない範囲、基準を超えた時間を別に定めることができるとされております。

 しかし、労働基準監督署では、そうした、健康に被害が出ないように、過重労働による健康障害を防止するために指導を今行っているわけでございますし、先ほど塩崎大臣から、それを徹底するようにということで、しっかりと指示をしているわけでございます。

 そこで、今いろいろな例を挙げられたわけでございますが、今までの働き方のスタイルを我々みんなで変えていくというワーク・ライフ・バランスの観点から、もう一度各企業が再検討していく必要は当然あるんだろうな、こう思います。

 今挙げられたトヨタの幹部の方が、働くということについて、どの部門についておっしゃっておられるかということはわかりませんが、これは研究職なのか現場そのものなのかということはもちろんあるんだろう、こう思うわけでございますが、いわば研究職の場合は、時には集中的に、研究にまさに没頭するという形で、新たなものを生み出していくことに喜びを得ていく場合がございます。同時に、それは、しっかりと健康管理を会社としても注意しながら行っていくことが重要だろう、このように思いますが、基本的には、法制化については、さっき申し上げた答弁のとおりでございます。

志位委員 残業の限度は月四十五時間とするという大臣告示は、きょうお話ししてきたように、政府自身が行った検討でも、医学的根拠を持ったものです。ところが、それを日本経団連、経済同友会役員企業を初めとする多くの大企業が全く無視して、異常な長時間労働を強制して過労死を引き起こしている。それなのに、大臣告示の法律化について、これだけ聞いても、やるとはおっしゃらなかった。この姿勢は、労働者の命と健康よりも、日本経団連、財界、大企業のもうけを上に置くというものであって、政治の重大な責任放棄だと私は言いたいと思います。重ねて、大臣告示の法律化を強く求めたいと思います。

 さて、問題はそれにとどまりません。

 総理は、時間でなく成果で評価する新たな労働制度として、労働時間規制をなくし、どれだけ残業をさせても残業代を払わなくてもよいとする制度、残業代ゼロ制度を創設しようとしております。これは、異常な長時間労働を強制している財界、大企業のかねてからの宿願に応えたものにほかなりません。

 日本経団連は、二〇〇五年にホワイトカラーエグゼンプション、ホワイトカラー労働者は労働時間規制の適用除外とし、残業代を支払わなくてよいとする制度の創設を提言し、一貫して労働時間規制の適用除外の制度をつくるために執念を燃やしてきました。ただでさえ異常な長時間労働が横行している日本で、労働時間規制の適用除外の制度を導入したらどういうことになるか。

 きょう、私、持ってまいりましたが、厚生労働省の労働政策審議会が提出した建議「今後の労働時間法制等の在り方について」は、高度プロフェッショナル制度なるものを創設するとして、次のように述べております。

 一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、時間外、休日労働協定の締結や時間外、休日、深夜の割り増し賃金の支払い義務等の適用を除外した労働時間制度の新たな選択肢として、高度プロフェッショナル制度を設ける。

 この高度プロフェッショナル制度なるものの最大の問題は、週四十時間、一日八時間が法定労働時間、それを超えるのは時間外労働時間という考え方を完全に放棄してしまっているところにあります。

 これまで、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、さまざまな問題点がありますが、それでも、法定労働時間と時間外労働という考え方は、ともかくも残っておりました。ところが、高度プロフェッショナル制度なるものは、この考え方を完全に放棄し、時間外労働協定、三六協定を結ばなくてもよい、残業代を払わなくてもよい、そもそも残業という概念そのものがないというものになっております。労働時間規制をなくしてしまおうというものであり、文字どおり日本の労働法制を根幹から覆すものにほかなりません。

 そこで、総理に伺います。

 今でさえ、大臣告示も守らない、過労死ラインすら超える異常な長時間労働を進めている財界、大企業にこんな法律を与えたら、世界でも異常な長時間労働がいよいよ歯どめがきかなくなり、過労死が蔓延することになることは火を見るより明らかじゃないですか。

 これも代表質問で私はただしましたが、定かなお答えがありませんでした。この場ではっきりお答え願いたい。過労死が蔓延するんじゃないか。どうでしょう。

安倍内閣総理大臣 この新しい働き方についての法律について、詳しい制度設計については厚労大臣から答弁させますが、時間ではなく成果で評価する新たな制度の検討に当たっては、対象をグローバルに活躍する高度専門職として働く人にぐっと絞っています。そして、当然、健康の確保に十分留意することとしています。

 具体的には、対象業務や年収について法律により厳格な要件を定めるとともに、対象者の健康が損なわれることのないよう、在社時間等を把握した上で、一定の休日を必ず与えるなどの措置を求めることにしています。

 これは、いわば高度なプロフェッショナルな仕事であります。ですから、海外とのやりとりも含めて夜遅くなることが続く、あるいは研究職において、いわば研究開発がまさに佳境に至ったところにおいて、これは成果を上げていくためにある程度のフレックスな時間にしていく。しかし、同時に、休日をちゃんと、これは健康に留意をしなければいけないという考え方から、必ず休日を与えるなどの措置を求める方針であります。

 働く人たちが健康を保ちつつ、創造性を十分に発揮できる環境をつくっていくという考え方でございます。

志位委員 今、幾つかの制度の基本にかかわることをお答えになりました。私が聞いたのは過労死が蔓延する危険についてですが、それについては、健康確保措置をやるんだというような話もありました。

 それでは、一つずつ聞いていきましょう。

 まず、対象労働者が限定されているとおっしゃいました。労政審の建議では、対象労働者を年収が平均給与額の三倍を相当程度上回ることを法律で決めた上で、具体的な年収額については、一千七十五万円を参考に、省令で規定するとしています。

 そこで、聞きますが、平均給与の三倍というのはどういう根拠に基づくものですか。平均給与の三倍の賃金をもらう労働者は、特別に体が丈夫なんですか。どんなに働いても過労死しないんでしょうか。そうじゃないでしょう。どういう根拠に基づくものですか、総理。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、今回の新しい制度を今構想中でありますが、これについては、健康確保というのが大前提であるということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、三倍の根拠でございますけれども、今もお話があったように、平均給与額の三倍を相当程度上回るといったことを法定し、具体的には千七十五万ということになったわけでありますけれども、この三倍という数字につきましては、毎勤調査の決まって支給する給与の三倍とする方向で考えております。

 日本再興戦略の改訂二〇一四によりまして、新たな労働時間制度の年収要件として少なくとも年収一千万円以上とされておりましたけれども、さらに、労働政策審議会等で示された、省令によってすぐに年収要件は引き下げられないようにすべきとの御意見もございました。

 そういうことで、一千万円以上の水準を確実に担保するとともに、労働条件についての高い交渉力があることを示す上で適当な水準として設定をしたものでございまして、月二十六・一万円掛ける十二カ月掛ける今申し上げた三倍ということで、約九百四十万円を相当程度上回るというふうな計算に相なるわけでございます。

 そういうことで、交渉力があるということは、みずからの労働条件を決めるに当たって使用者と交渉する上で労働者が劣位に立つことがないようにという意味でもございまして、今の三倍という根拠は今申し上げた毎勤統計の数字から出てきているもので、これは、考え方を法定するということで、勝手に変えるようなものではございません。

志位委員 根拠を聞いたのに対して、高度な職業能力を持って交渉力があるからだというお答えでした。

 しかし、いかに高度な職業能力を持っていたとしても、巨大組織と個人との間で、対等な交渉などあり得ませんよ。ほかの仕事を持っている個人事業主だったらいざ知らず、企業における仕事が唯一の生活の糧である労働者が、企業と対等に交渉などできるはずがないじゃないですか。大体、この制度のもとでも、労働者は使用者の指揮命令下に置かれることは変わりがありません。指揮命令に従わなければ処分される。指揮命令する者とされる者との間で、対等な交渉などあり得ません。平均給与の三倍などというのは、長時間労働、過労死を防ぐ保障などにはなり得ないもので、今いろいろ言われたけれども、何の根拠も示さなかった。

 そして、この制度が一旦導入されたら最後、法律を変え、省令を変えれば、どんどんこれが引き下げられることになることは火を見るよりも明らかですよ。

 もともと、日本経団連が二〇〇五年に行ったホワイトカラーエグゼンプションに関する提言では、年収四百万円以上の全労働者を労働時間規制の適用除外にしていました。日本経団連の榊原会長は、全労働者の一〇%が適用を受けられる制度にすべきだと語っています。

 産業競争力会議の民間議員の竹中平蔵氏は、小さく産んで大きく育てる、あけすけに狙いを語っております。

 何より、労政審の建議では、使用者側の意見として、幅広い労働者が対象となることが望ましいと明記されているじゃありませんか。

 これは対象限定なんかになりません。どんどん広がります。

 次に、もう一つ。

 総理は、施政方針演説で、時間ではなく成果で評価される新たな労働制度をつくると言った。答弁でも今繰り返されました。そこで、この問題にかかわって、総理に基本認識を伺いたいと思います。

 成果で賃金を払うことは現行法ではできないのか。そんなことはありません。成果で賃金を払うことは、現行法でほとんど規制されていません。例えば、工場における出来高制、営業社員の歩合制、タクシー運転手の歩合制、さらに、最近ではさまざまな成果主義賃金が行われています。

 結局、新たな労働制度、あなたが言う制度なるものの問題は、成果で賃金を払うことと一体に労働時間規制をなくし、残業代支払い義務をなくしてしまう、ここにあります。新たな労働制度とあなたはおっしゃいますが、新しいのは、成果で賃金を払うことじゃありません、それと一体に労働時間規制をなくし、残業代も休日手当も深夜手当も一切払わなくてもよいことにしてしまうことにあります。

 ここで総理に聞きたいんですが、そもそも、成果で賃金を払うということは、一番長時間労働につながります。歩合制をとっているような業務で長時間労働が蔓延していることは、周知の事実じゃありませんか。だから、成果で賃金を払うならば、労働時間規制はきっちりやらなきゃならない。これが原則じゃないでしょうか。

 総理、あなたは、時間でなく成果で評価される新たな労働制度とおっしゃいます。しかし、労働時間とは関係なく成果で賃金が決まる仕組みが導入され、かつ労働時間の規制がなくなれば、成果が出るまで働かせるということが野放しとなり、とめどもない長時間労働になることは明らかじゃありませんか。これは総理。

安倍内閣総理大臣 経団連側の要望等、あるいは、かつてのホワイトカラーエグゼンプションについての規定を挙げられましたが、それとは全く今度のは別物でございまして、まさに高度な、プロフェッショナルな方々を対象としています。

 管理職でないにもかかわらず千七十五万円というのは、これはかなりのいわば能力がないとそういう収入を得ることは難しいと思います。そこでかなり限られてくるわけでございまして、そういう方々の、まず本人の同意がなければいけないということ、希望しない人には適用しない、この原則、これは、私から指示として、法律をつくる上において出しているわけでございます。

 そして、先ほど申し上げましたように、職務の範囲が明確で、高い職業能力を持つ人材に対象を絞り込んでいくということでございますし、また、働き方の選択によって賃金が減ることのないように適正な処遇を確保するということ、これが私の指示であって、この指示に基づいて法律をつくっていくことになります。

 そして、こうした限られた方々にとっては、いわばだらだらという働き方ではなくて、集中的に働いて成果を出して、あとはきっちり休んでいく、そういうことが可能な職種に限られていくし、可能な人に限られていく。希望して、自分は、普通のようにだらだら働いていく、何かインスピレーションが出て、そのときに切られてしまうと次の日にはちょっとまた生産性が落ちるという中でやっていくよりも、まとまって、例えばある程度、残業をどんどんするということではなくて、まとまって、ある程度フレキシブルな働き方をしながら、家でということもあるでしょうし、成果が出れば、あとはきっちりと休んだ方がいいということもあるわけであります。

 最初申し上げましたように、きっちりと休日をとらせることが義務づけられているわけでありますし、健康管理はちゃんとやりなさいという中においてフレキシブルな働き方を可能としていこう、しかも、それは本人が希望しなければならないということ、これははっきりと申し上げておかなければいけませんし、もちろん千七十五万円で管理職ではない、当然管理職ではない方々に対してこれを適用していく、こういうことであります。

志位委員 どうしても同意を必要とするんだということを繰り返されましたけれども、この制度を受け入れなければ昇進はないよと言われて、拒否できますか。一人一人の労働者と企業との力関係を見たら、同意せざるを得ないんですよ。だから労働法があるんです。同意を要件にするのは労働法の存在の否定だと私は言っておきたいと思います。

 そして、今、総理は、休みをちゃんととらせるんだということをおっしゃいました。

 次のパネルをごらんください。

 建議では健康・福祉確保措置をとるとされていますが、労政審の建議を見ますと、健康・福祉確保措置について、次の三つのうちのいずれかの措置を講じればよいとされております。

 ちょっと読み上げます。

 「1、労働者に二十四時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えるものとし、かつ、一か月について深夜業は一定の回数以内とすること。」「2、健康管理時間」これは実際の労働時間のことだと思いますが、これが「一か月又は三か月について一定の時間を超えないこととすること。」「3、四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を与えることとすること。」この三つのうち、これは、全部を満たさなきゃならないという規定じゃないんですよ。三つのうち一つの措置を講じればいいということになっております。

 そうしますと、仮に3を選んだとすればどうなるか。

 年間百四日以上の休日を保障するというのが、まず驚きですよ。年間百四日といえば、休みは土日だけ、祝日も盆もお正月休みもない、有給休暇もないということですよ。それが年間百四日です。それを選択するかわりに、1も2もなくなっちゃうんです。

 つまり、百四日間の休日以外の、年間三百六十五日、引きますと、あとの二百六十一日、これは、休息時間を与えなくてもよい、深夜業をどんなにやらせてもよい、健康管理時間、労働時間がどんなに長くなってもよいということであります。労働時間は二十四時間無制限ということになるじゃありませんか。

 これは総理に伺います。

 あなたは、ちゃんと休みをとらせるから大丈夫だ、健康管理をやるんだと言いますが、これでどうして健康・福祉確保措置になりますか。過労死促進措置じゃありませんか。いかがですか、総理。

塩崎国務大臣 まず、この大前提は、健康を確保するということを考え方として持つことは当然ですけれども、それをどう担保していくかといえば、例えば、パソコンをいつログオンしてログオフしたかということで時間管理もきちっとできるわけでありますし、そういうようなことをやって時間管理も同時にしていくという中で、しかし、今申し上げたような、三つの措置の中から一つを選択するということにしているのは、これは健康確保の実効を上げるためであって、それらの措置は、いずれも、通常の方々の働き方よりは、今お話が少しありましたけれども、規制よりも厳しい内容であって、制度を選んだ方が、柔軟に働くことによって、その創造性を存分に発揮するために、三つのうちの一つの措置を講ずる形が望ましいと考えているわけでございます。

 先ほど少し例がありましたが、例えば、今、グローバルな仕事の方々が多いわけですけれども、海外と会議を持とうと思ったら、こちらの昼間の時間にはできないわけで、向こうがやっている時間に合わせてやるとなると、こちらは、一回昼間休んでおいて、夜出勤をして、テレビ会議をやるとかあるいは電話会議をやるとか、そういうようなこともあるわけでありまして、そういう際に、柔軟な働き方として今度の制度が非常に有効ではないかということだったり、あるいは、例えば化学実験をやりながら新しいものを開発していくときに、化学反応がどんどんどんどん進んでいるときに間をあけるわけにはいかないわけですから、短期集中でやって、あとはどっぷり休むというようなこともあり得るわけで、いろいろな形でこれからの仕事というのはやっていかなきゃいけない。

 しかし、その大前提は、健康は確保するということで、さっき申し上げましたけれども、年収要件をかけていることが交渉力を有することではないんだとおっしゃいましたが、そんなことは相対的にあるわけであって、それは労政審の中でも指摘をされていることでございます。

 それから、さっき総理から申し上げたように、同意をした場合に限ったことでありますし、それから、労使の代表によって、制度の対象となっている方の在社時間の状況など、制度の運用状況をしっかりとモニタリングする、こういうことが大前提となっているわけでありまして、御指摘のような極端な長時間労働が強いられるようなことはないようにしていくところでございます。

志位委員 私は、この1、2、3のうちの一つを選べということになったら、3を選んだら、年間百四日間以外の日はもう無制限で働かされることになって、健康・福祉確保措置にならないじゃないかと聞いたのに対して、長々長々話すんですけれども、何の答弁もしていませんよ。答えられないということですよ。対象労働者の同意ということをまた言いましたけれども、同意を要件に何でもやっていいということになったら、労働法は必要なくなっちゃうんです。

 これは、新たな労働制度なるものは、きょう一つ一つ政府側の言い分について批判してまいりましたけれども、どんな理屈をつけてみても、私は、一たび導入されれば、残業代ゼロでの無限の長時間労働が蔓延し、過労死が激増することになることは必至であります。そして、その対象は幾らでも拡大することになり、多くの労働者の生活と健康を破壊するものになります。

 残業代ゼロ、過労死促進の労働基準法の改悪は、絶対に私たちは反対であります。この悪法を国会に提出することはやめるべきだということを強く求めておきたいと思います。

 さて、残る時間で、第三の、最低賃金の問題について聞きたいと思います。

 最低賃金は、貧困と格差をなくしていく上で最大の決め手の一つになります。ところが、日本の最低賃金には二つの大問題があるということを指摘しなければなりません。

 一つは、その水準が余りに低過ぎるということです。

 パネルをごらんください。

 これは、日本と欧米各国の直近の最低賃金額を比較したものです。

 日本は時給平均で七百八十円、アメリカは、オバマ大統領が七百九十円から一千百一円への引き上げを表明しています。イギリスは九百六十四円、ドイツは一千百八十六円、オーストラリアは一千二百十八円、フランスは一千二百十四円。日本は、国際的に見ても、最低賃金が非常に低い。

 最低賃金の貧困は国民生活のさまざまな貧困の大きな根源となっておりますが、それは、シングルマザーにも深刻な形であらわれております。

 昨年、NHKが放映したクローズアップ現代あるいはNHKスペシャル、深刻化する女性の貧困、この問題にスポットを当てた番組を放映し、大きな反響を呼びました。

 クローズアップ現代では、若い女性に広がる貧困、さらに、年々深刻な状況に陥っているのが、十代、二十代のシングルマザーです、今、二十代のシングルマザーのうち、およそ八〇%が年収百十四万円未満の貧困状態に置かれていますとして、広島市に住む二十八歳のあさみさんの生活を紹介しました。

 あさみさんは、四歳と二歳の息子さんを育てています。保育所で時給八百円で働いています。収入は月十万円ほどです。母子世帯に支給されるおよそ四万円の手当などを加えて、何とか家計を維持しているとのことでありました。

 番組では、次のような、あさみさんの言葉を放映しました。

 食費をできるだけかけずにかけずに、うどん一玉を三人で食べたり、汁を多目につくって、汁で腹いっぱいにさせるというのはあります。下の子はよく起きるんです。精神的にも金銭的にも、一人なので、自分にもしものことがあったらと、ふと思いますね。自分が倒れたら二人とも餓死するんじゃないかと考えます。

 ぎりぎりの生活がひしひしと伝わる訴えでありました。

 OECDの調査によれば、日本のシングルマザーは先進国の中で就労率が最も高く、八五・九%が働いている。ところが、同じくOECDの調査によれば、先進三十三カ国で、一人親世帯の相対的貧困率は、日本は五〇・八%と最も高い。日本のシングルマザーは、先進国の中で最も懸命に働いています。ところが、最も貧困の状態に置かれている。

 多くのシングルマザーから、最低賃金に張りついたような低賃金でのダブルワーク、トリプルワークに追われ、睡眠時間を削り、生活費を削り、ぎりぎりの生活を強いられているという訴えが私たちにも寄せられております。

 総理に伺います。

 こうした事態を打開するためには、もちろん、雇用、社会保障、子育て支援など多面的な支援が必要です。ただ、とりわけ、生活の糧はやはり雇用です。ですから、中小企業支援と一体に、最低賃金の大幅引き上げが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安倍政権としても、最低賃金について重視をしております。いわば、消費を喚起する意味においても、経済の好循環を回していく上においても、この最低賃金が適切に上がっていくことが大切だろう、こう思っています。

 ですから、例えば、平成十四年、十五年、十六年、十七年、十八年と、前年度比の引き上げ額は、十四年度はゼロで、十五年は一円、十六年は一円、十七年は三円、十八年は五円だったわけでありますが、十九年は十四円、これは第一次安倍政権のときに十四円と二桁一気に行って、それまでのずっと一桁の低い水準をどっと上げることができました。

 今回も、二十三年が七円で、二十四年が十二円ですか、二十五年、二十六年と、安倍政権ができて、十五円、十六円と大幅に引き上げを行っているのは間違いないわけでございまして、これによって初めて、生活保護との乖離が解消したわけでございます。

 最低賃金は、決定に当たり、労働者の生計費や賃金、企業の賃金支払い能力を考慮することとされております。また、地域差など、実情を考慮して都道府県ごとに定められているわけでございますが、当然、都道府県ごとに物価等の水準等も違うわけでございます。それを見ながら、それぞれの地域が決めているということだと思います。

 ですから、最低賃金額を全国一律にするという御指摘については、地域ごとの賃金や物価水準の差を反映せず、また、中小企業を中心として、労働コストの増加により経営が圧迫され、結果として、かえって雇用が失われるという面があるのも事実であります。だから、志位委員長は、中小企業に支援をしろ、こういうことでございますが、なかなか、中小企業にとって、最低賃金がぐっと上がるということに対しては非常に慎重にならざるを得ないんだろうなと思います。

 それは、気持ちとしては、最低賃金をぐんと上げて千円にできればいいですけれども、となると、結局、地域によっては、中小・小規模事業者は、結果として、そうなったことによって、五人雇っていたところを、では一人やめてもらって四人になる、あるいは、なかなかこれはついていけないなということで仕事を畳むということも起こり得るわけでありまして、そこで、先ほど申し上げましたようなさまざまな観点から定めているということでございます。

 この二年連続二桁で上げることができましたので、こういう状況を維持できるように経済の好循環を図っていきたい、こう思っております。

志位委員 この二年間、大幅な引き上げを行ってきたというふうにおっしゃいましたが、昨年の引き上げというのは、全国加重平均で十六円、二%にすぎません。消費税の増税と物価上昇分にも及ばない、実質引き下げになっているということは、よく御自覚願いたいと思います。

 私、シングルマザーにかかわって、もう一つ問題を提起しておきたいと思います。

 多くのシングルマザーは、労働単価が低いゆえに、長時間労働に従事せざるを得ず、子供たちと触れ合う時間を削らなきゃならない。経済的貧困だけでなく、時間の貧困ということにも苦しんでおります。

 国立社会保障・人口問題研究所が発行する定期誌に掲載された母子世帯の仕事と育児、生活時間の国際比較という論文が、シングルマザーの仕事時間と育児時間の国際比較を行っております。

 このパネルをごらんください。

 日本、アメリカ、ヨーロッパの十カ国、合わせて十二カ国のシングルマザーの仕事、家事、育児、睡眠、食事の平均時間を比較しています。

 このパネルは、そのうちの仕事と育児について、主要五カ国を抜き出してグラフにしたものです。青い棒が仕事の時間、赤い棒が育児の時間です。日本のシングルマザーは、十二カ国で最も仕事の時間が長く、土日、休日も含めて一日平均三百十五分です。一方、育児の時間は、十二カ国で最も短く、一日平均わずか二十三分です。

 この国際比較で育児の時間に分類されているのは、親御さんが、子供と触れ合い、一緒に遊んだり、絵本の読み聞かせなど、さまざまな文化的営みをする時間であります。これが、時間がとれない、こういう実態がある。

 そこで、私、総理に一つ、最後に最賃の問題で提案しておきたいと思います。

 アメリカでは、二〇〇七年から九年までの三年間で最低賃金を四一%引き上げた。これで五百四十万人が賃上げとなりました。このとき、アメリカ政府は、中小企業に対して五年間で八千八百億円の減税措置をとりました。

 フランスは、二〇〇三年から五年にかけて最低賃金を一一・四%引き上げました。この三年間に、フランス政府は、中小企業に対して社会保険料の事業主の負担分を二兆二千八百億円も軽減しています。

 一方、日本の最低賃金引き上げのための中小企業支援は、四年間で百四十九億円にすぎません。

 ここで提案したい。

 中小企業に対する最低賃金引き上げのための直接支援の仕組みをつくることが必要ではないか。その際、フランスなどでは社会保険料の減免が支援策になっています。これが一番有効ではないか。

 社会保険料の減免というのは、赤字経営の中小企業でも負担軽減となり、その分を確実に賃上げに回すことができます。国がきちんと財政上の手当てをとり、中小企業に対する社会保険料の減免を行うことによって最低賃金の引き上げを図る、そういう仕組みをつくることを提案したいと思いますが、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 最低賃金を引き上げること等々、中小・小規模事業者がしっかりと雇用を確保し、経営を安定化させることができるということの観点からは、今、志位委員長が御提案されたことは一つの考え方だと思います。

 しかし同時に、財源を確保しなければいけないという大きな課題もあるのは事実であるな、このように思ったところでございます。

大島委員長 志位君、時間になりました。

志位委員 一つの重要な考え方というふうにおっしゃいましたので、ぜひ真剣な検討を私は求めたいと思います。

 私は、中小企業への直接支援に踏み出すべきだ、そして最低賃金の大幅引き上げを行う、そのことによって地域の雇用も経済も活性化を図る、それが中小企業の経営を向上させ、さらに賃上げができるようになる、これが本当の経済の好循環ではないかと思います。

 最低賃金の大幅引き上げとともに、地域間格差の縮小の施策をとり、全国一律最低賃金制を確立することを強く求めまして、私の質問を終わります。

大島委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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