衆議院

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第8号 平成27年2月23日(月曜日)

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平成二十七年二月二十三日(月曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      青山 周平君    秋元  司君

      井上 貴博君    池田 道孝君

      石原 宏高君    岩田 和親君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      尾身 朝子君    大岡 敏孝君

      大西 宏幸君    加藤 鮎子君

      門  博文君    金子 一義君

      金子めぐみ君    木村 弥生君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 鷹之君    鈴木 俊一君

      鈴木 隼人君    田所 嘉徳君

      土井  亨君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      宮崎 謙介君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    小川 淳也君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    辻元 清美君

      馬淵 澄夫君    本村賢太郎君

      山井 和則君    柚木 道義君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      重徳 和彦君   松木けんこう君

      松浪 健太君    岡本 三成君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      樋口 尚也君    赤嶺 政賢君

      高橋千鶴子君    畑野 君枝君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       西川 公也君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山谷えり子君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山口 俊一君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (国家公務員制度担当)

   (規制改革担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     小泉進次郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大庭 誠司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 茂明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小澤  仁君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  能化 正樹君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            滝口 敬二君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤田 耕三君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    佐藤 雄二君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  三村  亨君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)    西室 泰三君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     井上 貴博君

  小倉 將信君     木村 弥生君

  小田原 潔君     鈴木 隼人君

  熊田 裕通君     池田 道孝君

  土井  亨君     青山 周平君

  根本  匠君     岩田 和親君

  宮崎 謙介君     門  博文君

  保岡 興治君     尾身 朝子君

  後藤 祐一君     本村賢太郎君

  山井 和則君     柚木 道義君

  松浪 健太君     足立 康史君

  岡本 三成君     國重  徹君

  赤嶺 政賢君     宮本 岳志君

  高橋千鶴子君     畑野 君枝君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     土井  亨君

  井上 貴博君     岩屋  毅君

  池田 道孝君     熊田 裕通君

  岩田 和親君     加藤 鮎子君

  尾身 朝子君     保岡 興治君

  門  博文君     宮崎 謙介君

  木村 弥生君     大岡 敏孝君

  鈴木 隼人君     小田原 潔君

  本村賢太郎君     後藤 祐一君

  柚木 道義君     山井 和則君

  足立 康史君     松浪 健太君

  國重  徹君     岡本 三成君

  畑野 君枝君     高橋千鶴子君

  宮本 岳志君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     小倉 將信君

  加藤 鮎子君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     根本  匠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官大庭誠司君、内閣官房内閣審議官田中茂明君、内閣官房内閣参事官小澤仁君、内閣官房内閣審議官能化正樹君、財務省主税局長佐藤慎一君、文部科学省高等教育局長吉田大輔君、国土交通省総合政策局長滝口敬二君、国土交通省鉄道局長藤田耕三君、海上保安庁長官佐藤雄二君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省経理装備局長三村亨君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田義昭君。

原田(義)委員 皆様、おはようございます。自由民主党の原田義昭でございます。

 安倍総理、麻生財務大臣、また閣僚の皆様、連日の激務、まずもって心から敬意を申し上げたいと思います。

 予算案の審議、さらには関係法令の審議、一日も早くこれを成立させることによって国民の期待、負託にしっかり応えていただきたい、こう思っております。私ども議会の側も、もちろん全力を挙げてバックアップしていくつもりでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、貴重なお時間をいただきました。限られた時間でございますので、私はきょう、一つは外交、安全保障、とりわけ尖閣諸島の問題についてお話ししたいと思います。また、経済財政問題、時間があれば農協改革やエネルギー問題も御質問したい、こう思っておりますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 その上で、まず、安倍総理、私は、そういう意識で見ると非常に気になることがございます。それは、ほとんど連日、新聞の隅っこに、中国の公船たる船が、日本の近海、とりわけ尖閣の接続水域、あるときには領海に侵入していると。これはきちっと報告がなされております。

 ただ、考えてみれば、我が国は、こんなことを言うのも恥ずかしいんですけれども、独立国であり、主権国家ですよ。その領海が、また接続水域がこういう形でほとんど連日侵されているというのは、これはやはり考えてみれば不思議なことだろうと思います、おかしいことだと思います。

 その実態について調べれば調べるほど不思議なわけですけれども、まず国土交通省にお聞きしたいのは、どのような状況になっているのか、このことをお伝えいただきたいと思います。

佐藤(雄)政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島周辺海域における昨年一年間の中国公船の領海侵入件数は三十二件であり、一昨年の五十二件と比べ減少しております。

 一方、接続水域入域日数は、昨年二百四十三日、一昨年二百三十二日となっており、中国公船が接続水域を航行している状況に大きな変化はありません。

原田(義)委員 ただいまの海上保安庁長官の簡単な御報告ですけれども、実はお手元にグラフをお配りしております。今、このグラフを簡単に説明されたと私は理解しておりますけれども、これを見ますと、いかに中国の公船等が日本の領海を侵してきたかということが一目瞭然であります。

 今の御報告で、だんだん数が少なくなってきておる、こういう報告もありましたけれども、これは理解としてはとんでもないことでありまして、確かに、この数字を見ますとこの二年ほど数は少なくなってきていますけれども、着実に、ほとんど毎日、今の報告では言いませんでしたけれども、毎月大体二十日ぐらい、接続海域に入ってきております。そして、毎月三日から四日、領海に入ってきておるわけであります。

 この毎月というのが極めて大事なことでありまして、要するに、完全にやめたのならいいんですよ、毎月入ってきておるということは、何か、間違いなく国家意思があるということを私たちは感じなければなりません。

 そういう意味で、海上保安庁の警備艇が一々追い返したというだけでははるかに十分でない、このことを私たちはしっかりと認識しておかなきゃいけないと思っております。

 そういう意味で、外務大臣にちょっとお聞きいたしますけれども、こういう状態、中国が我が国の固有の領土、領海に間違いなく意図的に入ってきている。そもそも、相方の意図は那辺にありや、それを完全に解決する、排除するにはどうすればいいかということを外務大臣からお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、尖閣諸島は歴史的にもまた国際法上も我が国固有の領土であり、現に我が国がこれを有効に支配している、したがって、この尖閣諸島をめぐる解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない、これが我が国の立場であります。

 中国側の意図という御質問をいただきましたが、日本政府として中国側の意図について予断することは差し控えますが、中国公船によるたび重なる領海侵入、これは極めて遺憾であると考えます。

 我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意で毅然かつ冷静に対処しなければなりませんが、この対処につきましては関係省庁しっかり連携しなければなりませんし、外務省の立場としましては、こうした我が国の立場をしっかり戦略的に対外発信していく、こういった努力をしっかりしていかなければならない、このように考えております。

原田(義)委員 戦略的に対応するといいながら、しかし、主権国家、独立国家が連日その領海を侵されているということは、これはただならぬことではないかと思います。

 これは、ある意味では、政府、関係者はしっかり頑張っておられますけれども、第三国、国際社会から見たら、日本は何をしておるんだと。また、私はそれ以上に、日本の国民が自分たちの国を見たときに本当に情けない、これは現実、そうですよ、何をしておるんだということをよく聞きます。せんだっての小笠原のサンゴ密漁の話もしかりでありますので、私は、しっかりまた対応していただかないかぬと改めて思うところであります。

 その上で、実はこの問題は、既にして尖閣の問題は長くなりましたが、もう一回、実はこの歴史を振り返らなきゃいけない、こう思っております。

 資料の二をお配りしておりますから、これを見ますと、たくさん書いておりますけれども、ポイントは二つか三つしかございません。

 一つは赤字のところです。一八九五年の一月に日本政府は尖閣を日本の領土として編入いたしました。これは、先占という制度が国際法にありまして、今でもあるんです。これに基づいて、ちゃんとした十年に及ぶ手続、調査をやって、一八九五年の一月に編入したわけであります。

 真ん中辺に、一九七一年の十二月、中国が尖閣諸島の領有権を主張した、こういうことがあります。実は、この八十年間、一度もよそから文句を言われたことはないわけであります。この間に約二百人前後の日本人がこの島で生活をし、かつ仕事もしておりました。

 もっと言うならば、実は中国の側が、この島は日本のものだということを、いろいろな資料ではっきりしているんですけれども、そのことを何度にもわたって言っているわけであります。

 その幾つかの例を、既にして有名な例でありますけれども、資料の三というのが、これは一九五三年一月の人民日報に、いろいろ漢字で書いていますけれども、日本の領土だと。それから、資料の四、これも時々見かけますけれども、これは一九六〇年に既に公表された中国の世界地図。これは中国の中学校とか高校の教科書にも載っている、こういうふうに言われておるんですね。

 いずれにしても、こういう形で中国自身が日本の領土だということを認めたということでありますが、実は、きょうはもっと大事なことを申し上げようと思って、この場に立っておるんです。

 資料の六以降でございますが、ここに私は、これは現物なんですけれども、この資料を持ってきております。それの中身は資料の九に書いてあります。

 パネルで申し上げておきたいと思いますけれども、普通、パネルというとNHKテレビに向けるんですけれども、きょうはもうNHKテレビに出ていませんが、しかし、やはりこれは総理以下、議員の皆さんにしっかり眼に焼きつけてもらいたいと思って、これをつくってきたんです。

 実は、これは本邦初公開であり、同時に、私の認識では、今の地球上では唯一ではないか、それぐらいに思っているんです。なぜかというと、これは一九六九年の中国の資料であります。資料五以下、書いていますけれども、まず、これは発行元が中華人民共和国の国土地理院、これが出したものであります。

 そして、あろうことか、資料六、七を見ていただきますと、毛沢東主席が語録としてその前文にこの文章を載せておるわけであります。その上で、この一九六九年の地図帳が載っているわけですね。考えてみれば、中華人民共和国のクレジットが入り、かつ、毛主席が前文を書いておられる。これをまさか知らないよというわけにはいかないと思います。

 毛沢東主席の語録を、これは私も読めませんでしたから、ちょっと仮訳をつくってきました。資料の十のところを見ていただくとわかりますが、毛主席語録、これはいろいろ書いています。中国人民がいかに偉大かということを書いておるんですけれども、真ん中のパラグラフ、少し下線を引いておる部分にこういう文章があります。云々云々の後に、「我々のために広大な森林を育て、豊富な鉱物資源を蓄えてくれる全国を縦横に走る大小の山脈がある。」これは内陸のことです。「そして、我々に水運と灌漑の利を与えてくれる多くの河川や湖沼があり、我々に海外の各民族との交通の便をあたえてくれる長い海岸線がある。はるか古代から、我が中華民族の祖先は、この広大な土地において労働し、生活し、子孫を増やしてきた。」これが下線のところに書いていますけれども、こういう語録を踏まえてこの地図が発表されているわけであります。

 ちょっと話はそれますけれども、実は、神田神保町にたくさんの古本屋さんがありますね。あそこには古い地図、古文書がたくさんありますけれども、多分、いや、間違いなくこの地図はどこにもありません。恐らく中国にもないと思います。ということは、本邦初であると同時に、この地球上、唯一この原典しかないと私は言えると思います。さっきの古本屋の話を言いますと、ある時期、あるどこかの国の人が札束を持ってあの辺の古地図を全部買い占めました。だから、ないんです。

 それは別といたしまして、この地図を見ていただきますと、一九六九年まで、これが間違いなく日本の領土であり、相方中国もそれを認めたということが言われるわけです。

 考えてみれば、一九六九年まで日本のものだと認めていながら、一九七一年の十二月に中国は、それは俺のものだよということを言い始めたというのが先ほどの年表でございますけれども、これはちょっと、皆さん、おかしいと思いませんか。幾ら白髪三千丈の国とはいえ、きのう言ったことときょう言ったことが違う、これは私は、いかにもおかしいな、こういうふうにも思うわけであります。

 証拠、とりわけ物的証拠というのは、およそ極めて大事なものであります。もめごとやら争い事のときには、それを見せれば大体もう決着するんですよ。裁判やら訴訟、弁護士の方もあるいはおられると思いますけれども、百回自分の理論を言ったところで、一発証拠を見せれば大体裁判は終わりでしょう。そうですか、階さん。(発言する者あり)そういう感じがいたしますよ。

 エストッペルという言葉があります。これは日本語では禁反言と訳されているんですけれども、要するに、同じ人が同じ案件で、きのうときょう、別なことを言っちゃいけないということです。エストッペル。こんなことは何も、子供でも知っていますよ。このペンが、きのうまで、あなたのものだ、君のものだと言いながら、きょうになったら、私のものだ、返してくれと言えば、これは一気に信用を失いますよ。

 ですから、一九六九年まで日本のものだと言いながら、七一年になったら途端に、俺のものだ、返してくれと言うのは、これはやはり私は言い過ぎではないかな、間違いではないか、あえてこう思うわけであります。

 なぜ中国がそう言っているかというと、これはつらつら思いますに、一八九五年、日本が編入したときにはちょうど日清戦争のさなかだった。どうも、かの国は、あの帝国主義的な日本が押さえたんではないか、これはもともと中国領だと言っておるような気がするんですね。

 しかし、これがまた違うんですね。同じ一八九五年の四月に、日清戦争の講話条約、これは下関条約、下関は安倍総理の選挙区でありますけれども、下関条約でこのことは当然議論されました。ここでは、日本がおどし取ったと言われること、例えば、遼東半島とか台湾、澎湖諸島、これについては議論されたんですけれども、実は、この尖閣列島のセの字も議論されておりません。そういう意味では、この八十年間、当然、中国も日本領土と認めるのは当たり前であります。

 一九六八年ごろに、国連のいろいろな委員会、ECAFEという委員会で、尖閣の下には豊富な海洋資源が眠っているということが報告されたために、どうもこの一九七一年、台湾とか中国が急に、これは俺のものだと言い始めたらしいんですけれども、これは聞いたわけじゃありませんが。

 それで、このことを踏まえて私は、先ほど外務大臣からしっかりやるということを言われましたけれども、それでは、外務大臣、私はこのことをぜひお願いしたいと思っております。

 一つは、まず中国に向かって、撃ち方をやめよ、尖閣諸島への侵入はやめよということをはっきり言っていただきたい、こう思います。私は、日本の外交の中に、何となく物事をはっきり言わない、間接的にわかるだろうというけれども、ここは王毅外務大臣に、これだけの不審船、公船については、入ってくるのはやめてくれ、こういうことを言っていただきたいな、こう思うわけであります。もう理由は言わなくてもいいと思っております。

 もう一つは、私は、やはりこの事実を国際社会にしっかり訴えていただかなきゃいけない、こう思っております。何となれば、二国間でやったって水かけ論になりかねない。ですから、外務大臣も、外を回っておられるときにはこういう事実についてしっかり訴えていただきたいな、こう思っておりますが、外務大臣、ぜひまたお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、中国公船によるたび重なる領海侵入、これは極めて遺憾なことであり、この領海侵入、確認されるたびに、中国側にはしっかりと抗議をし、申し入れは行っているところです。こうした毅然たる態度は、これからもしっかりと続けていかなければならないと思っています。

 加えて、国際社会に対してしっかり発信せよという御指摘をいただきました。

 先ほど、委員の話の中にもございましたように、中国が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは一九七一年以降であると認識をしております。国連機関による調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるという報告書が一九六九年五月に発表されておりますが、その後、国際的な注目がこの地域に集まり、そして一九七一年以降、中国が独自の主張を始めたと認識をしております。

 そして、一九五〇年代、六〇年代、尖閣諸島が日本の領土であることを前提として作成された中国側の資料があること、これは既に確認をされています。日本政府としては、それら資料の一部を既に外務省のホームページに掲載するなど、尖閣諸島に関する国際的な情報発信を行う上で積極的に活用しているところです。

 そして、きょうも貴重な資料を御指摘いただきました。こうした資料も含め、ぜひ、さまざまな資料を活用しながら、戦略的な対外発信を続けていかなければならないと認識をいたします。

原田(義)委員 続いて安倍総理にお願いしたいと思います。

 今、外務大臣にお答えいただきましたけれども、おかげさまで昨年の十一月、日中首脳会談が実現しました。私は、この機会に、習近平主席にも全く同じことを言っていただきたいと思います。公船でよその領海を荒らすようなことは断固としてやめてくれということでございます。

 とりわけ、この資料で、習近平さんが恐らく尊敬しておられるだろう毛沢東主席、御先祖がここまでしっかりとした資料を残してくれているわけでありますから、ぜひそのことをお話ししていただきたいと思うのと、もう一つは、安倍総理が、地球儀を俯瞰する平和外交、いろいろな国に行かれるわけでありますから、その際にも、やはりこの地図、この案件をしっかり持参していただきまして、そして、そういう第三国に判断してもらう、どちらが正しいのか、どちらが間違っているのかということを判断してもらうことが私は必要だろうと思っておりますので、ぜひその二つ、対中国、習近平さんに対して、そしてやはり国際社会に対して、ぜひとも訴えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 今まさに委員が新しい資料をもってお示しをいただいたように、尖閣諸島は歴史的にもそして国際法上も我が国固有の領土であります。今後ともこの姿勢、今までも一貫してきたわけでありますが、この姿勢が変わることはありません。現に、我が国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在をしない、これは明らかでございます。

 大切なことは、私も昨年のシャングリラ会合で海の三原則ということを主張したわけでありますが、主張するときにはしっかりと国際法にのっとって主張をする。そして、武力、力による威嚇は行ってはならない。つまり、力によって現状変更を試みようとしてはならないということであります。そして、何か問題があれば国際法にのっとってそれは解決する。これからも、この立場をしっかりと主張していきたい。この主張は、ちなみに、会場にいる多くの国々から支持をされたものであります。

 そして、中国が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは、御指摘のように、一九七一年以降のことでありまして、一八九五年からこの年までは全く中国はその主張をしてきていなかった。これは、国連機関による調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとの報告書が一九六九年五月に発表され、尖閣諸島に国際的注目が集まってから後のことでありまして、中国公船によるたび重なる領海侵入は、極めて遺憾であります。

 我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意のもと、毅然かつ冷静に対処していく考えでございます。

原田(義)委員 力強いお言葉、外務大臣、さらには総理からいただいたところであります。

 ちょうどきのうの新聞ですか、南シナ海でも中国がフィリピンとの間で巨大な軍事基地をつくっているというふうな報道もありました。私は、ASEAN諸国の皆さんにもこの事実をしっかり知らせて連帯の輪を広げていくべきだ、こう思っております。

 実は、私もここまで公の場で言った以上、やはり何かせないかぬ。政府に頼むだけではだめなものですから、私は、この話を、この地図を持って中国大使館にも早速行ってきたいと思っております。その上で、もし許されれば、北京にも行って、これを断固として突きつけて、もうとにかく、変な侵入はやめろということを言いたいと思います。

 そして、私は、それ以上に、また、国際社会にこのことを訴えなきゃいけないという意味では、外国人記者クラブにもあした以降予約をしておりまして、これを国際社会にも訴えていく。これは、国際社会はみんな、良識と常識でもってやってくれるもの、そう思っているところであります。

 最後に、正義なき力は暴力である、力なき正義は無力であるという言葉があります。もう一回言います。正義なき力は暴力である、力なき正義は無力である。これは、インド独立の父のマハトマ・ガンジーが言われたということであります。もう説明の要は要りません。

 日本は常に正しいことを訴えておりますけれども、だからといって、そのことが通ずるとは思いません。正しく、そして強さのバックアップがなければ、それを主張し続けることはできないわけでございまして、そういう観点から、ぜひとも安倍内閣が、また、国際社会のために、日本のために御活躍いただけますことを心からお願い、お祈りいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて原田君の質疑は終了いたしました。

 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 さて、公明党におきましては、昨年九月にヘイトスピーチの問題対策プロジェクトチームが設置されました。私は、その事務局長を務めさせていただいております。そういったことから、きょうはまず初めに、ヘイトスピーチに関して何点かお伺いをしたいと思います。

 先月十九日、総理はイスラエルの国立ホロコースト記念館を視察されて、その後、次のように演説をされました。一部抜粋になりますが、ここで紹介をさせていただきます。

 特定の民族を差別し憎悪の対象とすることが人間をどれほど残酷にするのか、そのことを学ぶことができました。差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向け、働き続けなければなりません。さきの大戦終結から七十年、そして、アウシュビッツ解放以来七十年でもある本年、このような悲劇を二度と繰り返させないとの決意を表明します。

 この総理の演説に、私は深い感銘をいたしました。道は険しかろうとも、総理のおっしゃる、差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向けてありとあらゆる努力をしていく、私もそうですし、ここにいる議員の皆さんも同じ思いを共有していることと思います。

 ただ、総理、残念ながら我が国でも、特定の民族や人種に対する差別や憎悪をあおる、いわゆるヘイトスピーチを伴うデモが各地で頻発をしております。

 京都の朝鮮学校へのヘイトスピーチをめぐる裁判においては、ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島に帰れ、保健所で処分しろ、犬の方が賢いなどといった発言が人種差別に当たり、法の保護に値しない、違法であるとの判決が、昨年十二月九日の最高裁判所の決定で確定いたしました。

 そこで、総理、イスラエルにおける総理の差別のない世界の実現という演説、そしてヘイトスピーチが人種差別に当たるとの司法判断が下ったことを踏まえ、改めて、ヘイトスピーチを含む人種差別についての総理の基本的認識をまずお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 一部の国そして民族を排除しようという言動や人種差別のあることは、極めて残念であります。あってはならないことと考えているわけでありまして、先日のホロコースト博物館視察では、先ほど御紹介をいただいたように、特定の民族を差別し憎悪の対象とすることが人間をどれほど残酷なものにしてしまうのか。

 ヘイトスピーチにおいてもそうなんです。もしその言葉を自分に向けられたらどんな思いがするのか、自分の子供や家族はどんな感じを持つのかという、いわば想像をめぐらせれば、絶対そんなことはしてはならない、言ってはならないということはすぐにわかるわけでありますが、差別感が憎悪を駆り立て、そうした理性的な思考をとめてしまうということではないかと思います。

 私自身、差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向けて働き続ける決意を明らかにしたところでございますが、確かに、委員がおっしゃるように、まだまだ道は険しいわけでございますが、一人一人の人権が尊重される、豊かで安心できる成熟した社会を実現していくことが重要である、このように考えております。

國重委員 ありがとうございます。

 総理の今おっしゃられた考えのもと、法務省の人権擁護局は、例えば、「ヘイトスピーチ、許さない。」をメーンコピーとしたポスター、今示しているポスターですけれども、こういったポスターやリーフレットの配布、インターネット広告の掲示などを実施しております。これらの取り組みについては、私も評価できるものだと思っております。

 ただ、今取り組んでいる対策だけで、被害者の救済として十分と言えるのか。今月六日、我が党のヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームで、ヘイトデモが繰り返し行われました東京の新大久保地域に行ってまいりました。そこで地元の商店主の皆様を初めさまざまな方からお話を伺って、より一層の対策を講じていかないといけないと私も実感しているところでございます。

 では、いかなる対策が考えられるのか。特定の個人や団体に対して向けられたヘイトスピーチについては、現行法で名誉毀損罪、侮辱罪等の刑事罰の対象になり得ます。問題は、不特定多数が属する人種集団全体に向けられたヘイトスピーチでございます。これは、現行法では一般的に刑事罰の対象になりません。また、民事でもそれ単独で不法行為と構成することは困難です。

 実際にあったヘイトデモにおける発言ですが、北朝鮮人を強制収容所にぶち込め、たたき出せ、おまえたち腐れ朝鮮人どもは全ての病原菌のもとである、こういった聞くにたえないばり雑言を吐いて町を練り歩く街宣活動をしていても、それが朝鮮人また韓国人といった人種集団全体に対して向けられたものであれば、これを現行法で対処することは著しく困難です。こういったヘイトデモが毎週のようにこの日本で公然と繰り返し行われているんです。

 このようなことから、ヘイトスピーチに対して法整備をすべきだという意見がございます。昨年八月、国連の人種差別撤廃委員会も、日本政府に対して、ヘイトスピーチについて法規制をすべきだという勧告を出しております。各地の地方議会の多くも、多くとは言いませんけれども、今続々とですけれども、各地の地方議会も、法整備を含む対策を国に求める意見書を相次いでまとめております。

 ただ、総理、総理も御存じのとおり、法整備については、例えば刑事規制は、恣意的な運用によって正当な言論活動まで規制、弾圧される危険性もございます。したがいまして、憲法二十一条が保障する表現の自由との関係で慎重な検討が必要になってまいります。他方、法整備には、濫用の危険が伴う刑事規制ではなくて、総理がおっしゃった、人種差別は許さない、こういった理念を定めた理念法というものも考えられます。

 そこで、総理、ヘイトスピーチに対する法整備について総理がどのようにお考えか、見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が、実際にあった例として発言を紹介されました。そういう発言があること自体、極めて不愉快、不快であり、残念であります。そういう発言をすること自体が、実はみずからをおとしめていることになり、そういう発言が行われると日本をおとしめることにつながる、私はこのように思います。

 他方で、いわゆるヘイトスピーチと言われる言動の規制については、個々の事情、事案の具体的状況を検討する必要があり、一概に申し上げることは困難でありますが、いわゆるヘイトスピーチへの対応としては、現行法の適切な適用のほか、啓発活動により差別の解消につなげていくことが重要であると考えております。

 議員御指摘の理念法の立法など、さまざまな議論があるところでありますが、立法措置については、これは各党における検討や国民的な議論の深まりを踏まえまして考えていきたいと思います。

國重委員 総理のお考えはわかりました。

 私は、個人的には、時間をかけて丁寧な議論をした上での話ですけれども、表現の自由には十分な配慮をしつつも、理念法等何らかの法整備が必要ではないかと考えております。

 その上で、総理にお願いがございます。

 法整備はさておき、総理の強いリーダーシップを発揮していただければ、政治的にさまざまな対策を講じることができます。二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックがあります。多くの外国人の方がこの日本にやってまいります。その方々は、この日本をよくよく見るはずです。ことしは戦後七十年の節目のときでございます。今こそ、総理の強いリーダーシップで、ヘイトスピーチを含む人種差別の根絶に向けて、政府を挙げて全力で取り組んでいただきたいと思います。

 そして、その対策を有効なものとするためには、まずは被害の実態調査をして、差別を受けて苦しんでいる人たち、子供たちの声をしっかりと聞いていくことも必要でしょうし、また学校教育における人権教育の強化や、入居差別の是正に向けた指導、そして、総理や法務大臣が適切な機会に、人種差別は許さないと毅然と言い切る、繰り返し言い切る、政府が本気でこの問題に取り組んでいる姿勢を鮮明に示していくこと、こういったことも大事になってくると思います。

 総理、ヘイトスピーチを含む人種差別についての根絶に向けて、政府を挙げてありとあらゆる対策を講じ、また対策を強化していくことが重要と考えますが、総理の見解、決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、政府として、ヘイトスピーチや人種差別の根絶に向けて、現行法を適切に適用して対処をしていく、同時に、啓発や教育を通じて社会全体の人権意識を高め、こうした言動は許さないという認識を醸成することによって差別の解消につなげていくことが重要であると考えています。

 恐らく、多くの方々は、先ほど御紹介されたような発言に対しては、私もそうですが、強い怒りを持ったんだろう、このように思います。

 確かに、委員が御指摘のように、二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックを控えています。そうした言動がいわば街頭で堂々と行われている。日本はまさにみずからの価値を下げることにもなります。そして、そうした発言で多くの人々が傷つけられている、こうした現実を直視しなければならない、このように思います。

 安倍内閣としては、今後とも、一人一人の人権が尊重される、豊かで安心できる成熟した社会を実現するために、委員御指摘の点も踏まえまして、教育や啓発活動の充実など、さまざまな施策の推進に努めてまいります。

國重委員 総理、ぜひよろしくお願いいたします。

 ヘイトスピーチの多くが在日韓国・朝鮮人をターゲットにしたものですけれども、ことしは日韓国交正常化五十周年に当たります。差別や憎悪の対極にあるものが友情でございます。

 私たち公明党は、未来志向の関係を築くべく、ここ二年の間に、韓国、中国にそれぞれ青年訪中団、青年訪韓団を派遣し、対話を重ねてまいりました。日韓、日中の関係が冷え込んでいるときだからこそ、相互理解を深め、友情の花を咲かせていくために、より一層の日韓、日中の青少年交流の促進が必要だと思っております。現に、日本を訪れた韓国や中国の若者たちからは、訪日前に比べて日本に対する印象がよくなったという声が数多く上がっております。

 また、二〇一一年に設置されました日中韓協力事務局の設立目的の一つは、三国間の協力案件の探求及び実施を促進することでございます。そこで、青年の力で新たなアジアの時代を切り開いていくために、この協力案件に日中韓三国の青年たちが主体的に関与できる仕組みをつくっていくことが大事ではないかと思います。

 岸田外務大臣、日韓、日中の青少年交流のより一層の促進、そして、日中韓の協力案件に青年たちが関与できる仕組みをつくっていくことが重要と考えますが、これについてどのようにお考えでしょうか。岸田外務大臣の見解をお伺いいたします。

岸田国務大臣 日中関係、そして日韓関係を考えます際に、青少年は未来の担い手であり、未来を担う世代が互いに理解を深めることは大変重要だと認識をいたします。

 そして、外務省としましても、近年、日韓間の青少年交流の実績、招聘が約一万一千人、派遣が五千六百人、そして日中間の実績は、招聘が一万七千五百人、派遣が七千人という記録があります。

 こうした事業終了後のアンケートあるいは報告会、こうした際にも、偏見がなくなり、よい印象を持つようになったなど、肯定的な反応が出ております。こうした事業を一層進めなければならないと考えます。

 そして、御指摘の日中韓協力事務局ですが、平成二十二年に設立協定が署名され、二十三年に設立がされております。日中韓三カ国間の協力案件を洗い出し、その実施を促進することにより、三カ国間の協力関係の一層の促進に寄与してきておりますが、その活動の中でも複数の青少年関連事業を実施しており、例えば平成二十四年に実施された日中韓青少年交流事業には、三カ国の約三百人の青少年が参加をしたということでありました。

 今後とも、こうした取り組みは重視しなければならないと思いますし、ぜひ積極的に進めるよう努力を続けたいと考えます。

國重委員 岸田大臣、ありがとうございました。

 では、総理からも、日中、日韓の青少年交流のより一層の促進について一言お願いできますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 青少年は未来の担い手であり、こうした未来を担う世代同士が国境を越えてお互いの理解を深めることが極めて重要であると思います。

 委員御指摘のとおり、特に中国、韓国の青年が、相互訪問や我が国青少年との交流を通じて、自由と民主主義を守り、人権や法をたっとび、礼儀正しい文化を育む、ありのままの日本を知ってもらうことが重要だろう、このように思います。

 近年、昨年は中国から日本への観光客は過去最高となったわけでありますし、その中でもっともっと若い人たちに来ていただきたい。韓国においても、やっとまた増加が始まったところでございます。そういう意味においては、若い皆さんにも、もっと日本を訪れ、日本の若い人たちと交流してもらいたいと思います。

 このような青少年交流の重要性を踏まえて、我が国は、韓中両国からこれまで多数の青少年を招聘してまいりました。例えば、平成二十五年から開始したJENESYS二・〇を通じては、韓国から約二千六百人、中国からは二千三百人の青少年を招聘し、企業や学校を訪問して交流を深め、日本文化を体験すること等を通じて、日韓、日中間の青少年の相互理解と友好の増進を図ってきたところでありまして、今後も、このような青少年事業をより一層積極的に進めていきたいと考えております。

國重委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 全ての基礎になるのが、人権であるとともに、命であり健康でございます。日本人の死因の第一位は、がんです。三人に一人ががんで亡くなっており、がん対策は極めて重要です。

 先日十七日の衆議院本会議代表質問におきまして、我が党の井上義久幹事長が、がん対策を取り上げました。その中で幹事長は、がん教育の全国展開に向けて、医師などの外部講師の活用が不可欠であること、特に医師の確保が課題であり、関係省庁間での協議による解決が望まれると指摘したことに対し、総理も、がん教育については、医師やがん経験者といった外部人材の活用など、全国展開に向けて検討を進めると答弁をされました。

 私も、一昨年十月、東京の暁星中学校で行われましたがん教育の授業参観をさせていただきました。医師とがん経験者による授業でして、がんに関する基本的知識はもとより、命の大切さを深く学ぶことができる、心にしみる、本当にすばらしい授業でした。思春期の多感な中学生も、真剣なまなざしで聞き入っておりました。命に向き合っている人たちの言葉の力というものを感じました。

 また、がん教育の副次的効果として、子供たちが親にがん検診を勧めるようになります。事実、がん教育の授業を受けた子供たちが親にがん検診を勧めた、そういった子供たちが約五〇%いたというデータも出ております。つまり、がん教育ががん検診促進の決め手になります。がん検診受診率五〇%以上を本気で目指すのであれば、厚労省も、がん教育を十二分に活用すべきだと思います。がん教育は、将来的に医療費の抑制にもつながります。

 がん教育においては、とりわけ医師の確保が重要です。文科省、厚労省がしっかりと連携をとって、医師確保に向けて全力を尽くしていただきたいと思いますが、これに関する下村文科大臣、塩崎厚生労働大臣のそれぞれの見解をお伺いいたします。

下村国務大臣 御指摘のように、学校におけるがん教育を推進するに当たっては、専門的な知識を有する医師、そしてがん経験者の活用が、児童生徒の心に響く授業を行う上で効果的であるというふうに思います。

 このような、医師を初めとする外部人材の活用も含め、がん教育の実践的な推進方策を研究するモデル事業を平成二十六年度から、がんの教育総合支援事業として実施を始めました。この中で、医師等の外部講師の派遣に必要な経費も措置をしております。

 今後、このモデル事業の成果を踏まえ、厚労省と連携を図りつつ、医師等の確保に関する方策も含め、適切にがん教育が実施されるように検討してまいります。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、がん教育というのは大変重要であって、平成二十四年六月にがん対策推進基本計画が閣議決定されておりますけれども、その中でもがん教育は分野別の重要施策の柱の一つとして掲げられているわけで、その中で、子供に対するがん教育のあり方を検討し、健康教育の中でがん教育を推進するというふうになっております。

 これを踏まえて、厚生労働省においては、がん診療連携拠点病院の指定要件、これを見直しまして、がん教育を含め、地域におけるがんに関する普及啓発を行うことを新たな要件としたところでございます。

 文科省の今お話がありましたモデル事業、これにつきましても、全国展開を控えているわけでありますので、厚労省としてもしっかり文科省に協力をして専門人材の確保に努めてまいりたい、こう思います。

國重委員 ありがとうございます。ぜひ連携を強化して進めていっていただきたいと思います。

 医師を含む外部講師を十分に確保また活用するためには、例えば、都道府県ごとにがん教育推進協議会のようなものを設置して、教育委員会、健康福祉部局、がん拠点病院、大学病院、医師会、学校医、保健師、がん経験者などによって、医師やがん経験者のリストアップを進めていくことが必要ではないかと考えます。そして、この中で中心的な役割を果たすのが、教育委員会であり健康福祉部局でございます。

 そこで、文科省は教育委員会に、厚労省は健康福祉部局に、がん教育推進協議会を適切にリードするよう指示をしていただきたいと思いますが、これに関する下村文科大臣、塩崎厚生労働大臣の見解をそれぞれお伺いいたします。

下村国務大臣 先ほど申し上げましたように、平成二十六年度から、がんの教育総合支援事業において実施しているモデル事業、これは二十一地域七十校でありますが、行っております。

 ここでは、学校保健担当指導主事、学校医等、地域の医師会や医療機関、医療関係者、これはがんの専門医、それから看護師、保健師などが入りますが、この関係者と、そしてPTA、またがん経験者などから成るがん教育に関する協議会を開催することを要件としております。この協議会には、関係行政機関との連携が不可欠であるため、各都道府県の保健福祉部局担当者の参加を必須としているところでございます。

 今後、がん教育を全国展開するに当たっては、このモデル事業の成果や、がんの教育総合支援事業において実施する検討会での協議、議論を踏まえまして、より効果的ながん教育を推進していく方針でございます。

 その際には、厚労省とも十分連携して、各地域でがん教育に関する連携が適切に進むよう、御指摘ありましたが、各都道府県教育委員会そして保健福祉部局に働きかけてまいりたいと思います。

塩崎国務大臣 今文科省からお話がございましたけれども、モデル事業、そしてまた、これから全国展開ということで今検討していただいているわけでありますが、医師などその実施に当たる人材を確保することは極めて重要であって、厚生労働省としても、文科省におけるこういった全国展開に向けての検討結果を踏まえた上で、都道府県の健康福祉部局等に必要な助言などを行っていかなければならないというふうに考えております。

國重委員 両大臣、ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、空き家対策についてお伺いをいたします。

 ここ二十年で空き家が倍増しております。これに伴い、倒壊の危険、衛生の悪化、犯罪誘発のおそれなど、さまざまな弊害が指摘されております。これまで全国で多くの自治体が空き家対策の条例を制定してまいりましたが、それだけでは限界があります。

 そこで、一昨年十月に我が党に空き家対策プロジェクトチームが設置され、私は、その事務局長としてこの対策に取り組んでまいりました。全国に公明党の地方議員、約三千名おりますけれども、その地方議員の皆さんからも広く意見を募りました。条例制定に当たり、徹底した調査を展開された地方議員の皆さんから寄せられた声は大変参考になりました。

 昨年十一月十九日、こうした現場の意見も反映させた空き家対策特別措置法が成立しましたが、これによって問題のある空き家の撤去が進んでいく体制が整いました。他方で、もう一つの柱である、使える空き家の利活用も重要でございます。

 そこで、太田国土交通大臣にお伺いいたします。

 空き家対策として、関係省庁間の連携を強めて、地域の活性化や福祉施策など、地域の実情に応じた利活用を進めていくことが重要だと考えます。空き家対策特措法の成立を踏まえ、今後の取り組み方針についてどのように考えておられるのか、お伺いいたします。

太田国務大臣 空き家がふえてきまして、全国で八百二十万戸、使えるものは使う、除却すべきものは除却するということが極めて大事で、御指摘のように、昨年の十一月に成立をした空き家対策特別措置法、今週の二月二十六日施行ということになります。

 国交省として、関係部局ともよく連携をとること、そして地方公共団体ともしっかり連携をとる、こうした万全の体制でいよいよスタートを切るということでありますが、福祉の拠点にするということもありますし、あるいは除却ということもありますし、あるいは小さな拠点という地方創生の大事な部分を担うということもあります。よく連携をとってやっていきたい、このように考えております。

國重委員 太田大臣の強いリーダーシップでぜひよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて國重君の質疑は終了いたしました。

 この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 先般、前原委員の質問に対する私の答弁の中において正確性を欠く発言がございましたので、お話をさせていただきます。

 日教組会館の中に日教組の事務所があって、神本当時の文部科学大臣政務官の事務所も入っています。日教組と日教組会館の役員は同じであるということ、また、神本政務官は、日教組の地方組織、例えば、当時、さまざまな問題が指摘をされていた北教組等々のたくさんの地方組織からパーティー券を購入してもらっているという点、さらには、神本政務官は、当時、日本民主教育政治連盟の副会長をしていたという点、そしてまた、日教組の役員も兼ねていた。これらは、教育の中立性から問題ではないか、神本政務官は文部科学大臣政務官として公平な職務ができるのか、つまり、指揮監督する立場にある文部科学省の文部大臣政務官という立場と、こうした今言った立場を両方とも兼ねているということについては、利益が相反する、明らかに相反するのではないかということであり、当時、国会で議論になったわけであります。

 その際、日教組と日本教育会館は一体ではないかとの指摘を、我が党の議員が指摘したわけでございますが、当時の平野文部科学大臣から、別法人としての運営体系をしている以上、法的に問題はない、つまり、日教組と日本教育会館は、役員等は同じではあるが、これは法的に問題ではないという答弁があったということを申し上げようとしたところでございます。

 それは、精糖組合と精糖会館が別であるという趣旨と同じではないかということを言おうとしたところでございますが、先般の前原委員の質問に対する私の答弁の中に正確性を欠く発言があったことについては、遺憾であり、訂正申し上げる次第でございます。

大島委員長 次に、山井和則君。

山井委員 私は大切な子供の貧困対策の質問をしようと思っていたんですが、今の安倍総理の説明を聞いてびっくりしました。

 玉木議員が西川農水大臣を追及する重要な質問をされているときに、日教組というやじを言われて、私びっくりしましたが、これは議事録にも、やじ、残っていますよ。玉木議員が、「こういうことをやはり防いで、政治に対する不信」ということを発言しているところに、「(安倍内閣総理大臣「日教組はやっているよ」と呼ぶ)」、内閣総理大臣のやじが議事録に残っているんですよ、これ。前代未聞ですよ、これ。

 おまけに、それに対して玉木議員が、「やじを飛ばさないでください、総理。これは真面目な話ですよ。政治に対する信頼をどう確保するかの話をしているんですよ。」と言って、大島委員長も、「いやいや、総理もちょっと静かに。」と委員長も制止しておられるのに、それを遮って、議事録では、「(安倍内閣総理大臣「日教組はどうするんだよ」と呼ぶ)」。

 内閣総理大臣のやじが議事録に残っている。本当にみっともない、恥ずかしい、こんなことは前代未聞です。

 おまけに、今の説明を聞いていると、全く反省がないじゃないですか。自分が玉木議員の質問に対して関係のないやじを答弁席から、事もあろうに内閣総理大臣がやじをして、恥ずかしいことに歴史ある議事録に残して、おまけに、それに対して質問をした前原理事に対しても、また間違った答弁をした。

 そうしたら、安倍総理、これ、確認をしますが、安倍総理は前原理事の質問に対して、「日教組は補助金をもらっていて、」という答弁をされました。

 日教組は補助金をもらっているんですか。

安倍内閣総理大臣 この、いわば、私が言わんとしたところは、文部科学省は指導監督する立場にあり、その役員を同時にするということは問題ではないかということと、まさに精糖工業会と精糖会館が同じではないかという指摘に対して、かつて、日教組と教育会館は別であるという政府の答弁をしているという意味で指摘をしたわけでございます。

 その際、補助金ということについては私の誤解であったということで、今、訂正を申し上げたところでございます。

山井委員 改めて明確に答弁してください。

 日教組は補助金をもらっているということを、NHK全国生中継で安倍総理は答弁されました。その答弁は正確なんですか、間違っているんですか。間違っているというんだったら、きっちり謝罪をしてください。

安倍内閣総理大臣 それは、最初に、冒頭申し上げたとおり、遺憾であり、訂正申し上げる、このように申し上げたわけでございます。

山井委員 もう一点、教育会館から献金をもらっている議員が民主党にはおられるという答弁をされています。これは本当なんですか。これもNHK全国生放送で発言されましたが、教育会館から献金をもらっている議員が民主党におられる、この安倍総理の答弁は事実なんですか、間違っているんですか。間違っているのならば、説明して、謝罪してください。

安倍内閣総理大臣 これは今の段階で確かなことは私申し上げられませんが、まず、補助金はもらっていないということについては申し上げたとおりでございます。

 繰り返しになりますが、私が申し上げたかったことは、精糖工業会と精糖会館は、これは別物であるという大臣の答弁に対して、かつて、日教組と教育会館が同じものではないという民主党政権時代の政府の見解があったということについて、私は申し上げようとしていたものでございます。

 それとまた同時に、同時にまた、いわば指揮監督の立場にある文部科学大臣政務官と、その指導を受ける立場にある日教組の役員等々をしていていいのかというのと、会館に入っていたということではないかということについて指摘をしたところでございます。

 献金をもらっていたかどうかということについては、これはまた詳細に調べてみないとわからないということでございます。

山井委員 安倍総理、内閣総理大臣のNHK国会中継での発言の重みをみずからわきまえてください。あなたがおっしゃったんですよ、教育会館から献金をもらっている議員が民主党におられる。それが何ですか、今、詳細はわからない。わからないで答弁されたんですか。これは確認してもらうまで質問できません、委員長。

安倍内閣総理大臣 これは、神本大臣政務官が全国の各地域の日教組からパーティー券をもらっていたのは事実であります。

 そして、教育会館に入っていたということでありまして、当時の我が党の指摘は、そこはパーティー券を買っていて、その事務所費等々に充てていたのではないか、そういう質疑が行われた、こういうことでございます。

 この事実については不正確であったということ、正確な事実をつかんで発言をしていたことではないということも含めて、先ほど、遺憾であるということを申し上げたところでございます。

山井委員 安倍総理、見苦しいですよ。自分じゃないですか。正しいかわからないことを国会で内閣総理大臣として答弁しておきながら、あれからもう週末も越している、にもかかわらず確認もしていない。

 これは委員長、内閣総理大臣が答弁したことが、みずからが事実かどうかわからないとおっしゃっている。確認してもらうまで答弁できません。

大島委員長 下村文部科学大臣。

下村国務大臣 今、委員長から指名を受けました。

 民主党の議員が日教組から政治献金をもらったということは、今までもあります。

 一つは……(発言する者あり)いやいや、日教組から寄附をもらったかどうか……(発言する者あり)

大島委員長 ちょっと静かに。

下村国務大臣 民主党議員が日教組から寄附をもらったという事例はあります。これは……(山井委員「そんな質問していませんよ、私。教育会館の質問をしているんですよ」と呼ぶ)

大島委員長 ちょっとお静かに願います。その上で判断します。

下村国務大臣 事実関係だけちょっと申し上げます。

 一つは……(山井委員「質問していません、そんな質問は」と呼ぶ)いや、日教組関係から寄附金をもらったという事例はあるということです。

山井委員 教育会館から献金をもらっている議員が民主党におられるということを安倍総理は答弁をされたんです。その事実関係。

安倍内閣総理大臣 あそこでは、あの議論の場では、精糖工業会と精糖会館のいわば関係について議論がなされていて、構図としては、日教組と教育会館という構図があるのではないかという御指摘を申し上げたわけでございますが、ただ、私の発言に正確性を欠いていまして、教育会館ではなくて、日教組から皆さんダイレクトにパーティー券等を買っている。

 当時は、さまざまな問題があったのは事実、課題を指摘されていたのは事実であります。そして、大臣政務官も含めてそういうことが行われていたということを私は指摘したところでございまして、まさに、教育会館ではなくて、問題が指摘されていた日教組からダイレクトであったということであったということでございまして、教育会館については、私のその段階では勘違いであった。

 今の段階ではまだ実際に私は確かめていない。確かめていないことを申し上げたことは申しわけないんですが、いわば日教組からダイレクトで献金をもらっていた、かつ、大臣政務官も含めてもらっていたことは事実であるということを申し上げたかったわけでございます。

山井委員 ということは、その教育会館から献金をもらっている議員が民主党におられるというのは、うその答弁、間違った答弁だったということですか。

 それだったら、間違ったということを認めて謝罪してください。

安倍内閣総理大臣 ですから、先ほどから申し上げているとおり、いわば日教組からを日教組会館という隠れみのにすることなくダイレクトにもらっていたということでございまして、教育会館ということについて私が申し上げたということについては、私の記憶違いであったということでございます。(発言する者あり)それについても、ただ、実際にそれが本当に、いや、しかし、全く誰もいないのかどうかというのは今の段階ではわかりません、パーティー券も含めて。しかし、それを確認しないで発言したことについては、先ほど訂正し、遺憾であるということを申し上げたところでございます。

山井委員 私が確認したところでは、一般財団法人の日本教育会館は議員に関して献金もしておりませんし、パーティー券も買っておりません。

 総理が確認していないんだったら、確認するまで質問できません。

安倍内閣総理大臣 山井議員がそのように確認されたのであれば、それは間違いのないことだろう、このように思うわけでございます。

 いずれにせよ、事の本質は、教育会館であったのか、あるいは日教組であったのかということでありますが、日教組から直接パーティー券やあるいは献金を受けていたのであれば、いわば教育会館ということではなかったということでありまして、私の記憶違いであったということでございます。

 いずれにせよ、繰り返しになりますが、いわば教育行政を総覧する、日教組の、大臣政務官がそのまま日教組からパーティー券を受けている、それは全国の組織から受けているということでありまして、さまざまな指摘がされているというところにまさに問題があったのではないかという私の問題意識であります。

 それと、当時、こちら側は、神本政務官がそのまま、教育会館の中に入ったまま大臣政務官を務めているということに対しての問題意識であったわけでありますが、それは関係がないという答弁であったということについて、それは大体似た構図ではないかということで申し上げたところでございます。

山井委員 これは、最も格好悪い、みっともない言いわけですよ。こういうのは謝罪と言わないんです。内閣総理大臣が全国放送で、間違った答弁、うその答弁をしておきながら、撤回と謝罪に関してはだらだらだらだらと言いわけをして、全く反省の色が見えない。

 これでは総理大臣の品格が問われますよ。間違ったときは、間違っていました、済みませんでしたと謝るのが当たり前ですよ。それを何ですか、だらだらだらだら言いわけをして。猛省を促します。

 それでは、本来の、子供の貧困対策の質問をしますが、この十八分間を私は返していただきたいですよ、本当に。国会というのは、日本の一番格差が拡大して困っている家庭や子供たちをどう幸せにするのか、そういう大切な大切な国民のための議論をする場なんですよ。それを、安倍総理のように、やじを言って、うその答弁をして、本当に私は恥ずかしいです。

 先日の十九日に、岡田代表がこの場で安倍総理に質問をされました。

 今、拡大しつつある日本の中で、私は、最も深刻な、最優先の問題の一つが子供の貧困だと思います。

 子供の貧困率は、二〇一二年には、過去最高の一六・三%、日本で最悪になり、その大きな理由は、安倍総理、この資料にありますように、五〇・八%、一人親家庭の貧困率は先進国三十三カ国で日本が最悪なんですね。にもかかわらず、この資料にありますように、先進国の中で日本のシングルマザーは八五・四%と最も働いておられるんです。最も勤勉に働いているにもかかわらず、相対的貧困率は日本が先進国で最悪。

 先日、安倍総理は、この格差の問題に関して、格差が許容範囲を超えるほど拡大しているという意識変化は確認されていませんと答弁をされました。しかし、私は、岡田代表もおっしゃいましたように、これはもう日本の恥だと思います。一生懸命働いている一人親家庭の子供たちがこれだけの貧困にあえいでいる。先進国最悪だ。

 安倍総理、こういう子供の貧困、一人親家庭の貧困、これは許容範囲を超えているというふうに安倍総理は思われませんか。

安倍内閣総理大臣 子供たちの未来が、家庭の経済状況によって左右されるようなことがあってはならないと考えています。一人親家庭の子供の大学進学率が全体に比べ低くなっている状況は、できるだけ早く改善していくことが必要であると考えております。

 このため、政府としては、無利子奨学金や授業料減免の充実、将来の収入に応じて返済できる奨学金制度の導入など、教育費負担の軽減に取り組んでいるところであります。

 また、高校卒業までにしっかりとした学力を身につけることも重要であり、学習がおくれがちな中学生を対象とした学習支援の実施や、高校生等の奨学給付金の充実に取り組んでいくこととしております。

 さらに、一人親家庭の子供に対する学習支援のためのボランティア派遣についても、頻度をふやすこととしています。

 これらの取り組みなどを通じて、一人親家庭の大学進学、進学率、貧困率の改善を図っていく考えでございます。

山井委員 子ども貧困対策法も下村大臣のリーダーシップのもと成立し、一歩前進をしたわけですが、まだまだ実効性が残念ながら十分ではないと思います。文部科学省の取り組みはかなり進みましたが、まだまだ一人親家庭の方々への現金給付という部分はおくれています。

 実際、この五ページの資料にもありますが、子供の貧困の連鎖、つまり、どういうことかというと、親が貧困であると子供は十分な教育が受けられない、進学、就職で不利になる、そうすると安定した収入の職につけない、そして子供世代も貧困になってしまう、それがまた親の貧困につながる。この貧困の連鎖を断ち切るのが、私は政治の責任だと思っております。

 しかし、今の安倍総理の答弁だけでは、まだまだ進学が可能になるというところには難しいと思います。

 実際、現状ではどうなっているのかといいますと、この資料にもありますように、一人親家庭で大学進学率は、この資料の二ページにありますけれども、二三・九%なんですね。一人親家庭のお子さんで大学、短大の進学率は二三・九%、全体では五三・九%、つまり三〇%も差があるんです。

 これは、私は努力の差じゃないと思います。今、安倍総理がおっしゃった、子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりませんと施政方針演説で演説をされましたが、まさに親の経済事情によって進路が明確に左右されてしまっている。その中で、安倍総理は、ここにも書きましたように、希望すれば専修学校、大学にも進学できる環境を整えますと演説をされたわけです。

 私も、高校生の方々、大学生の方々に、大学に進学するために何が一番必要かというお話を数々お聞きしました。一番多かったのは、児童扶養手当、そして遺族基礎年金が、今、高校三年生、十八歳で終わってしまうんですね。大学や専門学校入学で一時金やさまざまな、入学金のことも含めて一番お金がかかるときに、高三の末で切られてしまう。これを二十まで延長してほしい、これをしてもらえたらかなり進学率が上がりやすいし、一番お金がかかるときにばっさり切られるわけですから、そういうことをぜひともお願いしたいという声をたくさん聞きました。

 そして、その理由を聞きましたら、自分のお兄ちゃんやお姉ちゃんや先輩方を見ていて、やはり、できれば専門学校か大学に行った方が資格も取れるし安定した職業につきやすいと。

 だから、もちろん、高校を出てすぐに働きたいというお子様はそれでいいと思います。しかし、やはり自分は専門学校や大学に行きたいという方には、まさに総理が演説されたように、希望すれば大学にも進学できる環境を整えますということからいえば、この児童扶養手当や遺族基礎年金を、これは先日、岡田代表もこの場で安倍総理に要望されたかと思いますが、二十まで引き上げるべきだと思いますが、安倍総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 一人親の御家庭においての進学率が低いのは事実でございます。そうした一人親家庭の方々も含めて、無利子奨学金や、先ほど申し上げました授業料減免の充実など教育費負担の軽減に取り組むとともに、卒業後、厳しい経済状況に置かれ奨学金の返還が困難な方に対し、延滞賦課率の引き下げや返還期限の延長など、救済措置の充実を図っています。

 また、一人親家庭のための貸付金制度を設けまして、例えば自宅を離れて私立大学に通う場合、最大で月十万円程度を無利子で貸与できることとしています。その際、二十年間という長期の返済期間として、返済の負荷にも配慮をしています。

 児童扶養手当は、離婚等による一人親家庭の稼得能力の低下を補い、生活の安定と自立に資することを目的としています。十八歳までを対象としているのは、高校進学率が九割を超えて、卒業までの間、実質的に稼得能力がないことを考慮したものであります。

 子供が大学に進学する場合に限り、児童扶養手当等を二十歳まで延長すべきかどうかという御指摘でございます。

 確かに、高校までとしたことは、その間、稼得能力について不足があるのでという考慮があったわけでありますから、それは一つのもちろんお考えだと思います。同時に、大学に行かずに、高校を卒業して就職する道を選ぶ方とのバランスというものがございますし、また貸付金制度や低所得世帯の学生への奨学金、授業料減免といった支援策とのバランスなどを踏まえて検討すべき課題であると考えております。

山井委員 今のメニューは、奨学金にしろ、貸与、貸すから将来返してくれということなんですね。しかし、もちろん返すことは重要に決まっていますが、この資料にもありますように、奨学金が返せなくて、今、自己破産されてしまう若者がふえているんです。なかなか、正社員になれないと、非正規雇用だと返せない、こういう先輩の姿を見て、私の知り合いの大学生さんでも、六百万円とか八百万円の奨学金を借りて大学進学されている一人親家庭のお子さんたちがおられるんですね。これはなかなか大変です。

 そういう中で、奨学金の施策を一歩前進させていただいていることはありがたいんですけれども、やはり、一人親家庭の子供たちの、そしてお母さん、お父さんの願いは、奨学金はもちろん必要なんですけれども、それだけでなく、総理もここまで、希望すれば大学にも進学できる環境を整えますと、一年で一番重要な施政方針演説でまでおっしゃったわけですから、メッセージとして。

 これは、児童扶養手当を高三卒業から二十までつなげるだけでは七十二万円ぐらいです。別にこれが入ったからといって、奨学金が全くなしに大学や専門学校に行けるわけではありません。

 しかし、私は、今要望したいのは、子どもの貧困対策法もやっと施行された、そういう中で、政府が、この格差が拡大しているのではないかと言われる中で、特に子供には全く罪も責任もないこの子供の貧困、これについて、望めば専門学校や大学に行ってほしい、そういうメッセージとして、この児童扶養手当や遺族基礎年金の二十までの延長を、せめて検討していただきたい。

 実際、私も試算してみましたが、この二十までの延長には、来年度でいうと、国庫負担は年間九十一億円なんです、地方負担がその二倍ありますけれども。九十一億円ですから、そのために、これによって、希望すれば専門学校や大学に行ける。

 私がなぜこんなことを言うのかというと、私も学生時代、母子生活支援施設という母子寮で六年間ボランティアをしていまして、子供たちの遊び相手をしていました。そんな中で、本当に優秀で勉強を頑張っているけれども経済的理由で進学ができない子供に、たくさん私は大学時代に出会ってきました。それが私の政治の原点の一つでもあるんです。

 ですから、安倍総理、来年度でいうと、国庫負担九十一億円です、児童扶養手当、遺族基礎年金の二十までの延長。ぜひ子供たちの夢を断ち切らないために、この二十までの延長を御検討いただけませんか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 確かに、おっしゃるように、子供の貧困率が高い中において、母子世帯の、大学あるいは専修学校もそうですが、進学率は低い。これは、いわゆる経済状況に起因していると考えなければならないわけでありますが、その中において、この児童扶養手当という制度があるわけでございます。

 十八歳から二十に上げる、これは自民党の部会でも随分ずっと議論をし続けている課題でもあるわけでありますが、その中に、先ほど申し上げましたようなことと、それと、いわば二人親家庭においても、それはさまざまな課題を抱えている、経済上の課題を抱えている方たちとの公平性の問題という観点も考慮しなければならないと思います。

 そういうことを総合的に踏まえて検討をすべき課題であろう、こう考えているところでございます。

山井委員 もちろん、二人親でも貧困な家庭はあります。そこはそれでもちろん支援をすべきだと思います。

 しかし、安倍総理もおっしゃっていますように、子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません、希望すれば専修学校、大学にも進学できる環境を整えます、ここまで施政方針演説でおっしゃっているわけですから、ぜひとも検討していただきたいですし、もう一つ、それとあわせて、お子さんが多い一人親家庭ほど貧困率が高いという問題点がございます。

 このことについても、配付資料の中にございますが、お子さんが多いほど一人親家庭は苦しくなる。にもかかわらず、二人目の加算は五千円、三人目の一人親家庭の児童扶養手当の加算は三千円。二人目がふえたって、一日百七十円しかふえないんです。

 その結果、何が起こっているか。私も多くの貧困家庭のお子さんたちと話をしてきましたが、長女、長男、お兄ちゃん、お姉ちゃんは、弟や妹の進学のために専門学校や大学進学を遠慮してしまうんですね。自分が進学したら弟や妹が専門学校や大学に行けなくなる、あるいは部活を続けられなくなる、だから、お兄ちゃんやお姉ちゃんが我慢して、自分は働く、こういうことになってしまう。

 あるいは、この資料にもありますように、例えば、大学進学を断念して就職を希望する一人親家庭の高校生は、このあしなが育英会の資料によると、大学進学断念、経済的理由が、男性は三〇%、女子は四五%。つまり、これはどういうことかというと、言いたくないですが、女性は遠慮して、男の子供にはせめて専門学校か大学に行かせる、だから、一五%も女の子の方が、経済的理由で進学を断念する女の子が多い。

 私は、女性の活躍支援と言っておられる安倍総理だから、こういう、何で女の子の方が断念しないとだめなんでしょうか。さらに、女性の活躍支援とおっしゃっているんですから、この百三十万人の、最も苦労しながら、貧しいながらも子育てと両立をされているシングルマザーのお母さんたちを、また父子家庭のお父さんをぜひとも私は応援していただきたいと思います。

 そういう意味で、この多子加算、二人目を今の五千円から一万円に児童扶養手当を引き上げる、このために必要な財源は年間百九億円です、国庫負担で。もちろん、これが高いと考えるか安いと考えるかというのはありますが、子供が多いほど貧困にあえぐ、やはりこういう現状はおかしいですよね。総理、ぜひとも、この多子加算引き上げ、児童扶養手当、御検討いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、委員が御指摘のように、一人親家庭の場合は子育てと生計の維持を一人で担わなければならない、さまざまな困難を抱えるというのは事実であり、それが結果として進学率の低下につながっている、私もそのことは十分理解をしております。

 その中で、昨年には、一人親家庭の親が就職に有利な資格を取るまでの生活を支える給付金について、恒久化するとともに、非課税にしたところでございます。養成機関等で修学する場合、月十万円を二年間支給することとしております。

 また、児童扶養手当については、一人親家庭の稼得能力を補うためでございまして、子供が二人以上の場合には、生活に要する費用が増加することから支給額を加算する、今御紹介いただいたとおりでございまして、この二人目になって五千円は低いのではないかということだと思います。

 一人目のときには四万円でしたか……(山井委員「そうです」と呼ぶ)四万円だということでありますが、この四万、月四万五千円で二人。確かに、これは多ければ多いほどいいというふうに私も思いますが、予算にする場合は、確かに九十億円でございますが、毎年毎年かかっていくということで、恒久財源の確保も必要になるわけでございますが、同時に、そうした状況にあるということも十分に考えながら、我々は、施政方針演説で述べました方向に進んでいくように、何をすべきかということも考えていきたいと思うわけでございます。

 この一人親家庭の支援策、最初に申し上げました例は自立を促していく、この自立を促していく仕組みをさらにパワーアップする、さまざまな方法もあると思います。そうしたことも含めてよく検討していきたい、このように思います。

山井委員 安倍総理が施政方針演説で、家庭の経済事情によって子供たちの未来が左右されることがあってはなりません、希望すれば専修学校、大学にも進学できる環境を整えますと演説をされたことは、全国の、今、将来の夢を諦めようかどうしようかと悩んでいる貧困家庭の子供たちの、大きな、本当に希望の光となっているんです。

 ですから、ぜひこの安倍総理の演説が実効性あるものにしていただきたい。そのためには、いろいろな貸与とか自立を促すのはもちろん大切なんですけれども、なぜ進学ができないかというと、お金がないんです、はっきり言いまして。お金がないから進学できないんです、これは。

 ですから、そういう意味では、改めてになりますが、この児童扶養手当と遺族基礎年金の二十までの引き上げ、そして児童扶養手当の二人目の加算、この引き上げ、ぜひともまずは検討をしていただきたい。安倍総理、ぜひとも前向きな答弁をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 この自立の問題について申し上げましたのは、さまざまな自立策を行っています。就職をするために何か資格を得たいということであれば、月十万円、二年間まで支援をしていって、さまざまな資格を取っていただくようにする、そういうしっかりとしたインセンティブを我々は与えていくというか、そういう環境をつくっていきたいと思っています。

 これは、最初のお子さんに四万円、二人目に五千円ということではあるんですが、これはもっと多ければいいじゃないかという中において、それが果たして実際に自立にどういう影響があるかという観点から指摘をする人もいるわけでございまして、そういう中から我々はよく考えていきたい、このように思っております。

山井委員 考えていきたいということで、ぜひ前向きに検討をしていただきたいと思います。

 それで、今、二十までの延長が年九十一億円、そして、多子加算、二人目五千円アップが百九億円、合わせて年間二百億円という話をしました。

 先日、ピケティ教授と直接お話をする機会がありました。そのときに、ピケティ教授は、やはり、子供の貧困、格差が拡大すると経済成長を損なうおそれがある、日本でも、望めば進学をして能力開発ができるようにしないと労働生産性も上がらないし、そのために財源がかかるのであれば、高額所得者の累進課税とか、そういう富裕層への増税ということも一つの方法ではないかということを私たちにおっしゃっておられました。

 そこで、提案したいんですが、今申し上げました二百億円、例えばですが、きょうの配付資料にもございますが、今、一千八百万円以上の高額所得者が日本には三十万人おられます。その方々の所得税を〇・五%引き上げると、二百五億円の増収になるんです。これは例えばの話です。例えばの話ですが、今千八百万円以上の三十万人の高額所得者の方々に、申しわけないけれども〇・五%増税をさせていただいて、そのお金を、希望してもなかなか家庭の事情で進学ができにくい、そういう子供たちの、今言ったような児童扶養手当などの二十までの延長や多子加算に使う。こうすることによって私は格差是正が一歩進むと思います。

 安倍総理はトリクルダウンということをおっしゃっていますが、トリクルダウンで自動的に裕福な方のお金が困っている方に滴り落ちるのには時間がかかると思うんですね。そうではなくて、制度的に、申しわけないけれどもこういう高額所得の方にちょっとだけ増税を我慢していただいて、そういう子供たち、若者たちが日本の未来をつくる、日本の宝なわけですから、その大切な子供たちの進学に道を開く、こういう一つの提案、安倍総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず訂正させていただきたいんですが、私はトリクルダウンということを言ったことはないわけでありまして、私が進めている政策に対して批判的に、それはトリクルダウンだと言う人はいますが、私は、先般も申し上げましたように、私たちが進めている政策は、いわゆるトリクルダウンではなくて、まさに成長力の底上げだということを申し上げており、さらには、好循環を回していくということを申し上げているわけでございます。

 好循環を長いスパンで回していく上においても、生産性を高めていく。それには、いろいろな人にチャンスがあって、大学に行きたい人、あるいは専門学校に行って直ちに職に適した知識を得たいという方々がその道に進むことによって、これは生産性の向上にもつながっていくと私も思います。

 そこで、今御指摘の、高額所得者に対する課税をふやしていく。

 日本という社会は、そもそもこれはみんなで豊かになっていこうという社会でありますから、その中で、欧米に比べれば累進率はそれなりに確保されてきた方だろうと思います。その中で、先般、最高税率でありますが、四〇%から四五%、これは四千万円以上ということでございます。

 今御指摘の千八百万円以上ということでありますが、ここは、難しいのは、そもそも絶対額としては多くの税金を払っていただいているわけでありまして、三十万人ではありますが、所得税収の多くの部分をこの方々が負っているのも事実であって、確かに、こういうことがあったら、そこに課税をしようというのは、みんな、我々政治家であれば頭に浮かぶ考えであります。

 しかし、そうすると、また何かほかの課題でここにかけるのではないか、そういういわば国の施政全体にもつながってくることになりますと、有能な人材の海外への流出ということもあり得るわけでありますし、これはあと、そういう方々も含めて、全体の納得、大体の納得ということも大切であろう、このように思います。

 いずれにせよ、先ほどの課題については、安定的な財源を得る。その中で、今、山井委員からは御提案があったわけでございますが、この子供の貧困に対して政府としてしっかりと対応していくために何が必要かということについては、これからも検討していきたい、このように思います。

山井委員 もう時間が来ましたので終わらせていただきますが、超党派で子ども貧困対策法が成立をしました。やはり、子ども貧困対策法が成立して、希望すれば進学がかなう、そういう社会に日本がなった。一人親家庭の相対的貧困率が世界最悪である、そういう恥ずかしいことを脱していく。そのために、ぜひとも政府としては、きょう提案したことを前向きに御検討し、実現をしていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございます。

大島委員長 これにて山井君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 先ほどは、私の尊敬する原田先生から禁反言の原則というお話がありました。

 きょうはここに禁反言の原則に反しているのではないかという方をお呼びしています。黒田総裁は、二%物価目標、これは禁反言の原則に反するのではないか。また、籾井会長におかれては、一般社会ではよくある辞表取りつけ、これも禁反言の原則に反するのではないか。そして、先ほどは安倍総理から、教育会館から民主党議員は献金をもらっている、これも禁反言の原則に反していると思います。

 山井さんの質問の中で、安倍総理は、事実関係を確認した上ででないと答えられないというお話でしたので、この後、事実関係を確認した上で、午後一番の後藤議員の質問のときにでも冒頭で答弁いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 事実関係については、最初答弁、そう申し上げましたが、山井議員が自分で調べたということでございましたので……(発言する者あり)山井議員が御自身で調べられたということでございましたので、私は先ほど答弁の中で、山井議員がそうおっしゃるのであれば、そういうことでしょう、ですから訂正させていただきます、まことに遺憾でありますということを答弁したとおりでございます。

階委員 では、質問に入ります。

 予算委員会ですから、やはり予算案については聞かなくてはいけないと思っていますが、先般、補正予算のときに復興大臣にお尋ねしたのは、被災者の住宅再建の仕組みについて拡充が必要ではないかということを私からお願い申し上げましたところ、復興大臣からは、国と地方の財政負担あるいは他の制度とのバランスということを理由に挙げて、消極的な姿勢でございました。

 大変残念ですけれども、私からは、その二つ、つまり財政負担の点と他の制度とのバランスということについて反論させていただきたいと思います。

 まず、資料1―1をごらんになってください。これは、来年度予算における仮設住宅の関係、それから、問題となっている被災者生活再建支援金の補助金の関係について積算根拠を出してもらったものです。

 これによりますと、仮設住宅の経費、上の方に二行ありますけれども、合わせると四百二十九億円です。仮設暮らしが長くなれば長くなるほど、この経費はかさむ。

 一方で、仮設を出ておうちを建てたいという方の加算支援金、これは最大二百万円。これでは値上がりに対応できないのではないかと問題提起しております。

 これについては、下の方にあります三万一千世帯分。これはなぜ三万一千世帯かというと、まだ仮設にお住まいの方が大体九万世帯、人数でいうと二十三万人ぐらいなんですが、世帯数でいうと九万世帯なんだそうです。この九万世帯の方が、申請期限まであと大体三年間あるということで、ならしていくと年間三万世帯ぐらい。

 かつ、これが非常にこの積算根拠の問題だと私は思っていますけれども、ならしていくと三万一千世帯なんですが、復興がおくれているので申請率は四〇%だろうと、政府みずからが復興のおくれを容認した前提で試算されています。それで試算したところが、この三万一千世帯の加算支援金の分が大体百六十億なんだそうです。

 さっきの仮設の延長に伴う分が四百三十億、家を建てる人が百六十億。私は、四百三十億も毎年お金をかけるよりは、どんどんどんどん仮設から出ていただいて、家を建てるために支援金を拡充する方が財政負担はよっぽど少なくて済む、そう思います。

 それからもう一つ、他の制度とのバランスということなんですが、資料1―2にグループ補助金について書かれたものがあります。来年度予算四百億です。これは見ていただければいいんですが、1―3に、このグループ補助金について支給額を見直したという紙がございます。これは岩手県のものです。この岩手県の支給額の見直し、「資材等価格高騰対策による増額変更について」という見出しになっております。

 御案内のとおり、資材等が高騰した結果、当初の申請額では施設を建て直しすることはできない、だから増額分について面倒を見ましょうということで、どの程度面倒を見るかということなんですが、この1―3の資料の一番下に増額分の計算方法というのがございます。増額分の計算方法で、増加後の補助対象経費マイナス当初の補助対象経費掛ける一・一を計算、括弧、施設費の増額は六割を限度という算式がございます。

 これは何を意味しているかというと、要は、値上がりが当初の六割増し、その六割増しに至るまでは政府としては面倒を見る。しかし、六割のうちの一割分については自己負担でカバーしてください、残りの五割相当分は政府が出しますよ、こういうことなんですね。ということで、他の制度とのバランスという話もありましたけれども、既にグループ補助金では、こういう増額分に対して政府が手当てをする仕組みもできております。

 ですから、先般の大臣の御答弁、他の制度とのバランス、財政負担、いずれも理由がないと思います。直ちに被災者の住宅再建について支援を見直すべきだと思いますが、大臣、御答弁をお願いします。

竹下国務大臣 今、被災地で住宅が、ことし、来年あたりがピークで建っていく時期を迎えております。住宅をしっかりと提供して、ふるさとを、温かい家庭を取り戻してもらうということは復興の一番重要なことであると思います。

 ただ、その中で、階先生お話しになりましたように、一つは、値上がりが起きていることは事実であります。ほかの地域、岩手、宮城、福島が一二%から一四%ぐらい、全国が七%ぐらい、過去一年間で建設資材が上がっております。しかし、もっと上がっているのは沿岸部でありまして、沿岸部は一八%ぐらい上がっておるということは事実でございます。でありますので、その意味で、新しく家を建てる方に御負担になっているというのは、これは我々も調べてみましてそのとおりであると。

 ただ、これまでさまざまな支援、もうこれは御説明するまでもなく、いろいろなものをやっておることは事実でございます。私が、他の制度とのバランスということをお話をしましたことの一つが、我々は、例えば中越地震のときにどういう支援をしたか、あるいは阪神・淡路の大震災のときにどういう法体系になっていて、どういう支援をしたかということも考えなきゃいかぬのだろうと。

 実は、阪神・淡路のときには、住宅を建てる人に対する直接支援をするという十分なシステムはなかった。その反省を踏まえてできておりますのが、住宅を建てる際に、いわゆる三百万円という、国と県で負担をする。しかも、各市町村に配ってございます使い道が極めて自由な交付金が二種類ありまして、二つ合わせて三千億ぐらいになるんですが、それを使って支援をしていただくということも各市町村でやっていただいております。大ざっぱに言いますと五百万円から七百万円ぐらい、平均すると、先般、階議員が御指摘になられましたように、六百万円ぐらいなんですが、支援をする制度もある。

 あと、住宅ローンとか、もうこれは説明するまでもないんですが、いろいろありますが、では、それが阪神・淡路のときにどうだったのか、あのときにどうだったのかといったようなことを考えた場合に、我々、そのこととの比較を無視して積み増すということはやはりなかなか厳しい状況だなと言わざるを得ない、こう思います。

階委員 今、他の制度とのバランスという中で、阪神・淡路のこととか中越のこととかお話しされましたけれども、東日本大震災はそれと違う、同列には扱えない事情があると思っています。

 まず、職場もなくなっているということ、生計を得る手段がありません。それから、家を建てたくても、津波による被害があったために、その場所には建てられないので、代替地を探す必要があります。そして、代替地がすぐ見つかるかといえば、御案内のとおり、リアス式海岸で、高台あるいはかさ上げによって新たに土地を造成しなくちゃいけない、そういうことで時間がかかる、こういう特殊事情があるんですね。

 ですから、私たちは、同列には扱えないので、今までとは違う仕組みが必要だ、そして、むしろ同列に扱うべきは、私が先ほど申し上げました中小グループ補助金の制度、こちらの方を同列にして、参考にしてやるべきだということを申し上げているんです。

 これ以上は、大臣よりも総理にお聞きすべきだと思います。

 総理、東日本大震災からもうすぐ四年になります。被災地の皆さん、このまま四年以上も仮設暮らしでいいんでしょうか。私は、ここで総理の英断がぜひ必要だと思います。住宅再建支援の見直しについて、総理の御所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 我々は、政権について以来、住まいとなりわいについて復興を加速することに重点を置いてきたところでございます。

 その中で、現在、高台移転とそして災害公営住宅については、それぞれ八割、七割と事業はスタートしているということでございますが、被災地の住宅建築費は震災前に比べて全国を上回って上昇しているのは事実であります。

 こうした中、被災者の住宅再建については、県、市町村の取り崩し型復興基金を活用した助成に加えて、昨年、二十七年度予算案においても、被災者生活再建支援金を支給するとともに、高台移転事業による宅地を借地として提供するなど、被災者の負担を軽減する支援措置を講じてまいることとしております。

 まずは一日も早い二十七年度予算の成立に努め、被災者の方々が安心して生活できる住宅に移れるよう今後とも全力を尽くしてまいりたい、このように思うところでございます。

 いずれにいたしましても、確かに、まだまだ困難な生活を強いられている方々がおられるのも事実でありますし、仮設にたくさんの方々が住まわれている。この中で、今後さらに加速するための資金的手当てをというお話でございますが、先ほど大臣からお話をさせていただいたような、そうしたバランスも勘案しながらできる限りのことをやっていきたい、このように思っております。

階委員 今総理の御答弁の中で、取り崩し型復興基金というお話がありました。これは法律を変えなくても予算措置でできます。財政負担という面でいえば、冒頭申し上げましたとおり、このまま仮設にずっと住む方が、仮設の維持費ということで毎年四百億かかるわけですね。この分を、多少なりともこの取り崩し型復興基金を積み増すことによって、むしろ私は財政負担は少なくて済むのではないかと思います。

 取り崩し型復興基金の積み増しについて、総理、御所見をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 取り崩し型復興基金の積み増しにつきましては、復興基金にふさわしい具体的な財政需要があるのかどうかや、その活用状況を十分に見きわめていくことが必要であるというふうに考えております。

階委員 さっき総務大臣が何か発言したそうでしたけれども、前向きな話であればお伺いしたいと思いますが、前向きでなければ結構です。前向きでないというのは非常に残念なんですけれども、私は、この問題は非常に被災地の復興にとって重要だと思っています。また、合理性も必要性もあると思いますので、前向きな発言であれば、総務大臣、お願いします。前向きな発言ということで。

大島委員長 高市総務大臣、前を向いて答弁してください。

高市国務大臣 はい。

 取り崩し型の復興基金ですが、これは、単年度の予算の枠に縛られずに、地域の実情に応じて弾力的にきめ細やかに対処できる資金でございます。

 平成二十三年度の特別交付税で被災九県に対して総額千九百六十億円を措置したんですが、現段階で残高が四百六十三億八千九百万円ございます。また、翌年度、平成二十四年度、今度は六県に対して千四十七億円、これは震災復興特別交付税で復興基金を追加ということで措置をしているんですが、これも五百二十八億九千百万円残高がございます。

 そういうことで、非常にこれまで法律の枠外にあるような、例えばふすまの取りかえとか、畳の取りかえとか、瓦の取りかえとか、柔軟に地方の需要に応じて御利用いただいております。

 具体的な財政需要、今後さらに積み増しをしてほしいとか、そういった御要望があるのかどうか、そして、まず、その活用状況、現在残高もございますので、そういったものを見きわめた上で検討したいと思います。

階委員 では、ぜひ、各自治体から需要が出てくると思いますので、御対応をお願いします。

 さて、次の論点に移ります。

 社会保障充実の先送りについてお尋ねします。

 資料1―4をごらんになってください。

 これは、消費増税が先送りされたことによって、介護保険の一号保険料の低所得者向けの軽減策が当初よりも大分縮減されているということです。

 これを見ていただきますと、カラーで印刷されている部分、オレンジの部分が今回対応されたものでございます。左下にございますけれども、要は、所得段階は、六十五歳以上の高齢者、何段階かに分かれているうちの一番下の第一段階というところについて、現行の、基準額に対して〇・五払っていただいているものを、わずか〇・〇五引き下げて〇・四五にするということになってしまいました。当初の予定では、〇・五を〇・三にする、そして第二段階の人は〇・七五を〇・五にする、第三段階の人は〇・七五を〇・七にするということで、幅広い層に対して手厚く軽減策がなされるはずだったわけであります。

 確かに、消費増税先送りによって財源が減っていることは事実でございますが、しかし、法律上は、年金の低取得者向けの給付金であるとか、あるいは年金の加入期間の短縮であるとか、こういったものは一〇%時にやると明言されていますので、ここは法律上やむを得ないのかなという気がしますけれども、今申し上げたこの分野については法律上は何の縛りもありません。ほかの予算を削って、今マクロスライドによって年金の目減りも生じようとしている中で、こういう部分については重点的に予算を配分すべきではなかったかと思います。

 総理大臣、なぜ全体の予算を組み立てるときにここをちゃんと考えて手当てをしなかったか、ここについて、総理、御所見を伺います。

塩崎国務大臣 まず、介護保険につきまして御指摘がございましたので申し上げますが、まず第一に、消費税の二%引き上げの延期については、記憶が正しければ、民主党のマニフェストにも延ばすということが書いてあったというふうに記憶をしております。

 平成二十七年度予算で、消費税増収分を活用した社会保障の充実について、施策の優先順位をつけるということで総理が考えられたわけでありますけれども、例えば子ども・子育て支援新制度は予定どおりに施行するといったほか、介護でも、今一号保険者の負担の話がございましたけれども、介護職員の確保を図るために一人当たり月額一万二千円相当の加算の充実、あるいは中重度の要介護者、認知症高齢者等の介護サービスの充実、あるいは都道府県に設置を新たにいたします基金、これも七百二十四億円、さらには認知症施策の推進など地域支援事業の充実も行っているわけでございます。

 一方、限られた財源の中でこれらの対応を行うために、低所得者への介護保険料の軽減については二段階に分けて実施をするということでございまして、今の二段階のうちの一段階目の財源は二百二十一億、そして二段階目が千四百億かかるわけであって、その千四百億をやるかどうかということについては、今申し上げたように、子育て支援などを含めて優先順位をつけて決めたということでございます。

安倍内閣総理大臣 今、大体厚労大臣が答弁をさせていただきましたが、確かに法定の部分とそうでない部分があるという御指摘でございます。

 我々、八%から一〇%へ引き上げるということで社会保障の充実という全体のプランがあったわけでございますが、これは全部やはり実行することはできないという中において、子ども・子育て支援新制度はしっかりと進めていく、そして、介護分野においても、今もう既に、厚労大臣が答弁したところはやっていこう、特に認知症なんかはちゃんとやっていきたいし、引き続き難病もちゃんとやっていきましょうと。

 そこで、今御指摘の点につきましては、限られた財源の中でこれらの対応を行うため、今言ったような対応を行うために、低所得者への介護保険料の軽減については二段階に分けて実施をすることとしまして、本年四月に特に所得の低い方々を対象に一部実施をしまして、消費税率一〇%への引き上げ時に完全実施をしていきたい、このように考えております。

 まさに、消費税の引き上げというのは、伸びていく社会保障費に対応し、さらに充実をさせていくものでありますから、それとある程度リンクをさせていく必要はどうしてもあるのではないか、こう思っております。

階委員 それはリンクさせなくてはいけないというのは、先ほども申し上げましたが、法律上絶対なものではないんですね。これは総理の政治判断で変えることはできるわけです。

 そこで、どこから財源をひねり出すかというときに、我々国会議員の定数を削減するということもありますが、それでは財源は微々たるものです。我々が身を削った後は、やはり国家公務員の人件費ということも考えていかなくてはいけない。

 1―5を見てください。資料の1―5です。国家公務員の総人件費の推移ということで、二十三年度から、我々の政権の時代から五年分をここに掲げております。二十六年度から上昇傾向に転じました。そして、二十六年度から二十七年度にかけて、次のページ、1―6をごらんになってください、五百十億円ふえております。

 そして、定数につきましても、有村大臣は何か毎年千人ずつ削っているようなお話を先ごろ国会で答弁されましたけれども、この表は内閣人事局作成ですが、これによると、前年と変わっていません。要は、総人件費がこれだけふえているということは、むしろ、困っている人、先ほどの低所得の高齢者に対して予算配分をやっていくべきではないかと思います。

 有村大臣にお尋ねしますけれども、国家公務員の総人件費、本当に削減するつもりがあるのかどうか。例えば、昨年七月の国家公務員の総人件費に関する基本方針の中で、「抑制を図る。」という文言がありますけれども、これはもうお題目だけで、全くやる気がないのではないかと思います。有村大臣、いかがですか。

有村国務大臣 御指摘のように、国家公務員の人件費の予算が増加するという傾向については、その内容をしっかり見ていくことが必要だと思います。

 御案内のとおり、平成二十六年度の増加については、東日本大震災の復興財源を確保するための二年間に限り、二十四年、二十五年です、講じた特例減額措置が終わったために、その増加が生じております。もとに戻ったということでございます。

 平成二十七年度については、昨年夏の人事院勧告に沿った民間給与上昇を反映した給与改定が人事費の増加要因になりました。また、地域間、世代間の給与の配分の見直しを実施して、また合理化等を行うことによって、全体としての人件費の増加、幅は圧縮いたしましたが、その人事院勧告に基づいて増加をしております。

 御提示をいただきました、六ページの国家公務員の人件費につきましてですが、このように増加というふうには見られますけれども、私どもが関係をしている行政機関の二十九・七万人というところは、確かに千人の減員を明確に実現しておりますし、この増加分というのは、自衛官、特別機関という国会とか裁判所の人員でございます。

階委員 客観的に人件費は増加しているわけですね。総人件費の抑制を図るつもりがないのではないかと見られますので、ここはぜひ、大臣、積極的に取り組んでください。

 そして、話題をかえます。

 前回、牛歩戦術で余り答弁の時間がとれなかったので、籾井会長に再びお越しいただきました。

 禁反言の場外ホームラン王ともいうべき籾井会長にお尋ねしますけれども、先回、浜田経営委員長は、NHKについて何も知らないとみずからおっしゃった籾井会長についてなぜ任命するのかと聞いた際に、資格要件を満たしているから任命したといみじくも答弁されました。

 しかし、籾井会長、これまで一年間、私も随時申し上げてきましたけれども、政府の方針にすり寄る報道をよしとする姿勢や、辞表を提出させるなど組織内の議論を萎縮させるマネジメントの手法、そして耳の痛い批判をくだらぬなどと言って拒絶し、真実を見きわめない姿勢、こういったことからすると、公共放送のトップとしてどう考えてもふさわしくないと言わざるを得ません。

 籾井会長は、御自身にNHK会長の資格があるとお考えなんですか。お答えください。

籾井参考人 お答えします。

 私自身のことを素質があるとかなんとか、なかなか言いにくいことですが、私としましては、放送法にのっとり、与えられた職責を果たしてきたつもりでございますし、今後とも、放送法にのっとり、職責をしっかりと果たしてまいりたいと思っております。

階委員 みずからに資格があるかのようなお話でございましたけれども、そもそも、NHK会長の資格要件、浜田委員長は先回おっしゃっていましたが、この資格要件というのは何だかということは御存じですか、会長。

籾井参考人 NHKの資格要件を知っているかということでございますが、(階委員「会長の資格要件です」と呼ぶ)NHK会長の資格要件ということですが、一、NHKの公共放送としての使命を十分に理解している。人格高潔であり、広く国民から信頼を得られるNHK会長としてふさわしい人材である。政治的に中立である。構想力、リーダーシップが豊かである。社会環境の変化、新しい時代の要請に対して的確に対応できる経営的センスを有する。業務遂行力があり、説明力がある。

 以上でございます。

階委員 すばらしい要件でありますが、籾井会長、今御答弁されていて大変苦しそうでした。ぜひ、自分が要件を満たすかどうかということを虚心坦懐に見詰め直していただければと思います。

 それでは、籾井会長については結構でございます。御退席ください。

 中長期の経済財政に関する試算というものが二月十二日に出されましたので、これについてお尋ねします。

 資料2―1というのをごらんになってください。

 こちらはもう皆さんよく見る折れ線グラフでございますけれども、「国・地方の基礎的財政収支(対GDP比)」というのが上段にあります。もう二〇一五年度は何とかマイナス三・三という目標を達成できそうだ、しかし、二〇二〇年度は今のところ、経済再生ケースでいったとしてもマイナス一・六、数字に直すと九・四兆円足らないという話であります。

 これについてなんですが、最近の報道では、二〇二〇年度はプライマリーバランスの黒字にこだわらないかのような報道がされていますが、それは事実かどうかということを、まずもって総理、御確認させていただけますか。総理の発言として何かそのようなことが報道されていたような気がしますので。

安倍内閣総理大臣 プライマリーバランスの、二〇二〇年におけるバランスさせていくということについての目標は堅持するということは、何回も委員会で申し上げているとおりでございますし、また、諮問会議等での私の発言も、一貫してその立場に変化はございません。

 その結果、事実、消費税の引き上げは延期をしたわけでございますが、しっかりとやりくりをしながら、来年度予算につきましては、二〇一五年、GDP比、二〇一〇年度比との関係で半減目標におおむね達成できる予算としたところでございますし、今後も力を入れていく。

 私の発言の中では、同時に、経済成長も大切であって、経済成長をしっかりとやる中において税収も図っていくという認識も必要であるということは申し上げたことはありますが、目標は堅持する、この目標は堅持するということを変えたことは、二〇二〇年度の目標を堅持するということについては、変えたことは一回もないということは申し上げておきたいと思います。

階委員 二〇二〇年度の目標達成はイバラの道だと思いますが、堅持するということをおっしゃられたので、それを信じたいと思います。

 ただ、他方で、二〇一五年度を達成した後、二〇二〇年度まではこのプライマリーバランスの目標はないわけであります。プライマリーバランスの目標が二〇一五年度あったことによって、いろいろいいことはあったと思いますね。

 これはなぜかというと、まず、本予算の分を補正予算に計上しようというインセンティブが常々あったわけですけれども、これをたくさんやってしまいますと二〇一五年度のプライマリーバランスの目標達成にマイナスになってしまうということで、今回につきましては補正予算の支出がそれほど大きくならなくて済んだということがあると思います。つまり、財政規律が保たれやすくなっているというのが、プライマリーバランス目標の意義だと思います。

 私は、それを踏まえた上で、次は二〇二〇年度というだけではなくて、二〇一六、七、八、九と、この四年間についても、ゼロにいく道筋をちゃんと示す、プライマリーバランス目標をちゃんと示すということが大事なのではないかと思いますが、総理に、この点について御所見を伺います。

甘利国務大臣 総理から、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化に向けて、具体的な設計を夏までにせよという御指示をいただいているわけであります。そこで、諮問会議として、今民間議員を中心に論点整理をいたしております。その論点整理に基づいて、二〇二〇年までの具体的な設計、工程表をつくるということになっていくと思います。

 そうしますと、委員御指摘のとおり、各年度にどういう努力が必要かということも明確になってくると思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま甘利大臣から答弁させていただいたとおりでございます。

 同時に、経済運営については、その時々の経済の状況に対応していくということも当然必要であろう、こう考えるわけでございますが、しかし、国の信認、そして、まさにその国の信認という意味において、我が国の財政健全化に向かって進んでいくという意思は国際社会は見ているわけでございますから、そこはきっちりとしていきたいし、今、その意味におきましては、国際的にコミットした二〇一五年の目標はしっかりと達成できる見込みになりました。

 同時に、経済成長もしっかりと確保しなければいけないという側面もございますから、ここはしっかりと見ながらやっていくことも大切ではないか、このように考えております。

階委員 またそれは夏に向けて、ちゃんとチェックしていきたいと思います。

 それでは、黒田総裁にお尋ねします。

 禁反言の元祖ともいうべき日銀総裁にお尋ねしますけれども、一月二十九日に我が党の小川議員からの質問に対して、二〇一五年度を中心とする期間に消費者物価が二%に達する可能性が高い、そして、二〇一六年度は上方修正して二・二%だというような御答弁がありました。

 しかし、きょうお配りしている資料、もう一枚めくっていただきますと、2―2というのでございますが、一番下に消費者物価上昇率というのがございます。二〇一五、一六、一七と見ていきますと、二〇一六年は一・八にしかすぎません。政府の目標は一・八、日銀は二・二。

 もちろん、その前に、二〇一五年の四月段階で二%ということを当初の約束からすると達成しなくてはいけないんですが、二〇一五年は年度を平均しても一・四というのが政府の見通しでございます。

 政府の見通しとこれだけずれていて、なお、みずから立てた目標は達成できないということを認めなくていいんでしょうか。そろそろ認めるべきだと思いますが、ぜひ黒田総裁の御見解を伺いたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、我が国経済は先行き緩やかな回復基調を続けていくと考えられまして、そのもとで、需給ギャップが改善する、あるいは中長期的な予想物価上昇率が上昇していくということを通じて、基調的な物価上昇率は着実に高まっていくと考えております。

 足元、原油価格の下落によって消費者物価の前年比の上昇率は縮小してきておりまして、今後も若干縮小すると思いますけれども、やや長い目で見ますと、原油価格の下落、これは経済活動にプラスになりますので、物価上昇の原因となるというふうに考えております。

 また、前年比で見た物価を下押しする影響というものは、いずれ剥落するというふうに考えております。

 こうしたもとで、原油価格が現状程度の水準から今後緩やかに上昇していくという前提に立ちますと、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価の前年比は伸び率を高めていき、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達するというふうに見ております。

 ただ、原油価格の動向によって、二%に達する時期が多少前後する可能性はございます。

 なお、二〇一五年度の見通しにつきましては、恐らく石油価格の前提が若干違っているということがあると思います。

 それから、二〇一六年度以降につきましては、私どもは二〇一六年度まで見通しを出しておりますけれども、政府はこの中期財政試算との関係で一定の計量モデルに基づいて推計をされているというふうに聞いております。

階委員 質問に答えていません。二年二%の目標を達成できないということで、撤回するかどうか。

黒田参考人 私ども、量的・質的金融緩和を導入して以来、一貫して、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いというふうに申し上げております。現時点で、その見通しは変わっておりません。

 なお、二%の物価安定目標をできるだけ早期に、二年程度を念頭に置いてできるだけ早期に達成するという私どもの目標も、変わっておりません。

階委員 これで終わりますが、二〇一五年度を中心とするという期間の中に二〇一七年度まで入ってしまうというのが、政府の見通しから出てくる結論でございます。

 私は、黒田総裁、これ以上禁反言をしないようにということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 まず、きょうは、お忙しい中、日本郵政の西室社長にお越しをいただきました。西室社長、大変お忙しい中御出席をいただきまして、ありがとうございます。お礼を申し上げます。

 郵政事業をめぐりましては、来年、株式上場、そして海外事業の買収、海外展開ということで、大変大事な時期を迎えておられることと思います。きょうはその点もぜひお聞きしたかったんですが、ちょっと時間の都合もございます、もう一点のテーマに限ってお聞きしたいと思います。

 ちょっと私は驚いたんですが、安倍総理が計画しておられる戦後七十年の新たな談話について、有識者懇談会の座長を務められるという報道がございました。

 ちょっと調べましたけれども、特段、西室社長が歴史観やあるいは憲法観等々について積極的な御発言をされているということも過去にないようでありますし、今回、どのような思いでこの政治的なテーマ、極めて政治的なテーマを引き受けられるに至ったのか、そこら辺のお気持ちをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

西室参考人 西室でございます。

 今の御質問でございますけれども、まず、私、座長はまだ引き受けておりません。指名されたということで、それをお受けするということを申し上げたところでございます。(小川委員「どういった心境で、どういうお気持ちで」と呼ぶ)

大島委員長 小川君、そこでごそごそと言わないで。質問をもう一度簡潔に言ってください。

小川委員 大変恐縮でございます。できるだけ移動を最小限にしていただけるように、委員長も御配慮いただけたらありがたく思います。

 今、郵政事業は、株式上場等々、大変重要な時期を迎えていると思います。そこに当たって、この難しい政治問題に関する有識者懇談会の責任者を務められるということは、非常に私は意外な思いで受けとめているんですが、そこらあたりの経緯なり心境なりをまずお聞きしたいということでございます。

西室参考人 まず、座長はまだ引き受けたつもりはございませんし、これは、この前の官房長官からの御発表にもありましたように、互選で、二十五日の最初の会合で決めるということになっております。

 ただ、委員ということでのお話はございましたので、これについては極めて前向きにやらせていただくつもりで引き受けさせていただきました。

大島委員長 よろしいですか。まだお聞きになりますか。

小川委員 御答弁が続くようであれば、もう二、三、ちょっとお聞きしたいことがございますので、もし可能であれば、お許しいただければ、このまま。

大島委員長 それでは小川君、簡潔に。

小川委員 率直に申し上げまして、今、地元で、例えば郵政の社員の方々あるいは局長会の方々、この間、郵政事業というのは大変政治に翻弄されてきた十年でございましたので、今まさに、経営に専念をし、株式上場に備えるということを、もしかしたら社員の方々は望んでおられるのかなという印象を私自身は受けとめております。その中でこれを引き受けられるということは、それなりの覚悟なり思いがあってのことと想像いたしております。

 そこで、端的にお尋ねいたしますが、五十年の村山談話、六十年の小泉談話、過去の遠くない一時期、日本は国策を誤ったという表現、それから、植民地支配と侵略という言葉、これらに対する痛切な反省と心からのおわびという表現がございます。これは西室社長の心情にどのような感情を及ぼすのか、これは共感される表現かどうか、その点。

西室参考人 ありがとうございます。

 今の御質問は二つあると思うんですね。基本的には、郵政の社長をやりながらこれが引き受けられるかということでございます。

 私は、郵政の社長をやりながら、いろいろな仕事のお手伝いはずっと続けてやらせていただいておりました。そして、昨年の暮れぐらいからこの十八日までにいろいろなことを発表いたしました。その前段階で実は体調を崩して、これはとても郵政も務まらないかなと思った時期もありますけれども、幸いにして体調は復活いたしましたので、極めて前向きにこの仕事は引き受けさせていただく。

 今、そこに私どもの発表の肩書が書いてあると思いますけれども、日本国際問題研究所会長というのがございます。これはもう既に三年目になります。

 御承知だと思いますけれども、日本国際問題研究所というのは、日本の外交を中心にした政治全般にわたってのシンクタンクでありまして、それで、シンクタンクとしてはアジアで第一位の評価をいただいている。世界で十三位、アジアでは断トツの一位のシンクタンクです。

 ここの実際の運営は、もちろん理事長の野上さんがやってくださっておりますけれども、私は節目節目にこれをお手伝いしているということで、全般的な知識については欠ける点はないとは思っております。

 ただ、政治信条をここで申し上げるという立場にないというのは、これは議員おわかりのとおりだと思いますけれども、まだ会議も始まっていないという状況において、予断を持って政治信条その他をここで発表するなどということは、私としては絶対にできないなというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。

大島委員長 よろしいですか、もう。

小川委員 これでもう最後にいたします。もうお尋ねはいたしませんので。

 きょうの時点での早々のお出ましに、まず敬意を表し、感謝を申し上げ、そして、信条を軽々に申し上げられないということについても一定理解いたします。

 しかし、昭和十年生まれでいらっしゃって、恐らく物心ついたときが戦争のさなかでいらした、そういう経験を踏まえても、今、国民の全部とは言いませんが、この七十年談話に向けてはいろいろな関心なり心配なり不安なりもございます、そのあたりをぜひ上手にコントロールいただけるようにお願い申し上げまして、質問を終えたいと思います。

西室参考人 ありがとうございます。

 それはそのとおりに思っております。

 リストをごらんいただくとよくわかりますように、私が一番最年長でございます。つまり、私は終戦のときに小学校四年でございました。物心ついてしばらくの間、戦前それから戦中のその苦しい時期というのを実体験しております。そういう意味では、年寄りとしての貢献というのは一つできると思いますし、私が今まで積み上げてきた経験はそれ以外にも広範囲にございますので、ぜひともお役に立てると思っておりますので、今後とも、御指導をよろしくお願いいたします。

小川委員 大変御協力をありがとうございました。どうぞ、もうこのまま御退室いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 続いて、きょうは、閣僚の皆様おそろいの中、大変心苦しい思いもございますが、中山外務副大臣が国際会議からお帰りでございます。特に、この国際会議に対する関心ももとよりでございますが、何よりも、あの緊迫した情勢の中で、現地で対策本部長を務められたということでございます。まだこうした機会は設けられていないと思いますので、いろいろ言えること言えないことがあると思いますが、一定の説明責任を国民の皆様に対して果たしていただきたいということで、少しお尋ねをさせていただきます。

 まず、先般の過激主義に対する関係閣僚国際会議、これは私、非常に評価している点がございまして、新たに一千五百五十万ドルの新規支援を表明されました。そこに対しては、対テロ法整備の強化等テロ対処能力向上のため国際機関を通じ新規支援を行うと、極めて穏当で的確な表現をとられた、このことは、私は、一つ、いろいろな経過を踏まえた上で善処されたというふうに受けとめております。

 その点に対する評価をまずお聞きしたいと思います。

中山副大臣 今回の会合は、ISILを初めといたしますテロ組織の活発化の一因として国際的な関心が高まっている暴力的過激主義に関するもので、ケリー米国務長官による主宰のもと、開催をされました。

 同会合におきましては、七十を超える国及び国際機関が一堂に会し、暴力的過激主義対策としてそれぞれが実施すべき措置や今後の協力について活発な議論が行われたことは、国際社会がテロに屈しないとの姿勢を示すものとして高く評価をしております。

 私は、日本としての責任を毅然として果たしていくことや、各種国際テロ対策支援を行っていくことを強くアピールさせていただきました。そしてまた同時に、邦人殺害テロ事件に関して、日本からも謝意を表明申し上げた次第であります。

 テロに対抗する手段は、実力行使のみではないとのことであります。

 先般、岸田外務大臣は、邦人殺害テロ事件を受けた今後の日本外交を発表し、テロ対策の強化、そして中東の安定と平和に向けた外交の強化とともに、過激主義を生み出さない社会の構築の支援を打ち出し、包括的なアプローチをとっていくこと、今先生の御指摘どおり表明を申し上げた次第であります。

 日本としては、安倍総理が申し述べられました中庸が最善を実践するために、過激主義を生み出す素地となる要因を排除していく取り組みとして、例えば、職業訓練そしてまたその支援をすることにより若者の失業対策を促進したり、社会の中の格差を是正する取り組み、また、日本の強みを生かした高等教育の支援を実施してまいりたい。さらには、例えば宗教指導者の招聘等を通じまして人的交流を拡充することが、過激主義を生み出さないために重要と考えております。

小川委員 ISILと日本政府との直接交渉はなかったというふうに官房長官は表明しておられますけれども、現地ではISILとの交渉チャンネルは存在したんですか。それとも、そもそも存在しなかったと。

中山副大臣 過去にも官房長官も答弁に立たれておられますけれども、日本はテロには屈しない、そしてまたテロとは直接交渉しないということで、私ども現地の対策本部におきましては、東京の指示に基づいてしっかりと対応をさせていただいたということであります。

小川委員 ISILとの交渉チャンネルはなかったということでいいのか。それから、報道等によりますと、ヨルダン政府からの情報にほとんど頼り切りといいますか、事実上そうだったんだろうなと想像いたします。それ以外に、部族長、それから宗教指導者、今まさにお触れになられましたけれども、このあたりとの接触チャンネルというのは十分存在したんですか、現地では。

中山副大臣 お答え申し上げます。

 この点に関しましては、さまざまなルート、そして、宗教指導者、部族長等を通じましていろいろと対応を行ったということであります。また同時に、機微に触れる問題でもございます。そういったことも踏まえて、私からは、相手のいることでもございますので、答弁は差し控えたいと思います。

小川委員 具体的に、最近報道にもございますが、ヨルダン政府側の交渉役だったというふうにISIL側が公開をした、イスラム厳格派指導者アブムハンマド・マクデシ氏の存在は認知していましたか。

中山副大臣 私の方は承知をいたしておりません。

小川委員 それは、知らないということですね。知らなかったということですね。

中山副大臣 報道等ではいろいろ出ておるようですけれども、私の方は承知をいたしておりません。

小川委員 今になってああいう形で報道もされておりますが、当時、これも想像でなかなか物を言えませんけれども、相当程度ヨルダン政府に頼らざるを得ない状況、そして、その交渉役の存在そのものに対する認知も必ずしも十分でないというふうに想像される答弁であります。

 一月二十日以前、既に現地には対策本部が設置をされて半年以上たつころだと思いますが、それ以前の大使館での状況についても十分レクチャーを受けられ、状況を把握されたと思いますが、一月二十日以前の対応について十分だったと感じておられるかどうか。その点、ちょっと御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 済みません。御質問が体制全体の話ですので、私の方から答えさせていただきます。

 一月二十日以前の体制が十分であったかという御質問でありますが、一月二十日以前の体制におけるポイントは、一月二十日の段階で、ISILと目される関係者から映像が公開されたということがありました。ですから、一月二十日の以前の段階においては、人質拘束事案である可能性が否定できないという状況の中で、まずお二人の安全を最重視しなければならない、特に秘密の保持を心がけなければならない、そういったことから静かな形で対応するということが、一月二十日以前においては大変重要なポイントとして指摘をしなければなりません。

 こういったことから、先日来何度か答弁の中でもお答えさせていただきますが、現地対策本部においては、従来の、シリア大使館そしてヨルダン大使館のイスラム、アラブの専門家を中心に体制を整え、そして、トルコですとかあるいは周辺国に対しましては、外務省本省、他の在外公館、あるいは警察庁から出張ベースでさまざまな働きかけを行い、情報提供を求めてきた、こういった対応をとった次第であります。

 一月二十日の段階においては、今申し上げました観点から、最善を尽くし、体制を整えたということであります。

小川委員 出張ベースでいろいろと体制をということでございますが、いただいた資料ですと、八月から十一月にかけてヨルダン大使館の配置は減員になっていますよね。このあたりも含めて、今、現地の中山本部長、中山副大臣にお聞きをしております。

 時間もあれですので、あわせてお聞きしますが、副大臣、帰国後、十二日の副大臣会議で、反省点はいろいろあるんだというふうに御発言になられたようでありますが、どういった点について反省点があるとお考えでいらっしゃいますか。

中山副大臣 お答え申し上げます。

 副大臣会議で、私からは、反省点があるという言葉は一回も使っていません。それよりも、我々、現場のことで、現場の目線で見て、これからしっかりと情報を共有するべき課題があるということを副大臣会議で、私、申し述べました。

小川委員 情報を共有すべき課題がある。それは、誰と誰との間ですか。コミュニケーションが不十分だったということですか。

中山副大臣 副大臣会議でございますので、副大臣のレベルで、各省庁をまたぐような問題、特に、今回の対応というのは、警察庁のTRT―2と言われる、いわゆるテロ対策のユニットの皆様もすごく頑張っておられました。そういったことも踏まえて、省庁横断型で対応しなければいけない問題が多々ございます。

 副大臣会議というのは大臣を補佐する副大臣が各省庁から集まっておられますので、その点に関して、今後こういった問題を二度と起こさない、そしてまたこういった不幸な結果を生み出さない、そのためにしっかりと情報共有するべきだと副大臣の立場として考えて、世耕副長官から発言を促されましたので、私の方はそのようにお答えをしたということでございます。

小川委員 なかなか私どもとしても、正直、情報が限られている中でありますので、ここはひとつ、大衆紙等も含めて報道で目にすること等で、一つ一つとはまいりませんが、副大臣に直接確認をさせていただかざるを得ない面もございます。その点はお許しをいただきたいと思います。

 その上で、今、反省点、課題ということでございましたが、一人目の湯川さん殺害後、その取り組みの改善点を協議した、協議して本省に報告しようとしたという報道も一部にございました。これは事実でしょうか。そして、実際に本省に報告したのかどうか、そのあたりもお聞かせください。

中山副大臣 日々、現場では、そのシチュエーションというのが時々刻々と変わるわけであります。その都度に、必要に応じて適宜、外務大臣そして官房長官を含めて、東京の方とは必要な連絡というものを常に、情報更新という意味からも行っておりました。

小川委員 今度は、副大臣御自身の、日本におられたときの情報掌握についてもちょっと確認させていただきたいと思います。

 八月に湯川さん拘束と思われて以降、その後、九月に副大臣に就任しておられます。一連の現地対策本部の設置を含めたこの拘束事案の発生については、副大臣はどの時点で認識されたのか。

 それから、十二月三日には、後藤さんの御夫人に対する身の代金の要求メールが来ているようです。しかし、この日は衆議院選挙公示日の翌日でございまして、副大臣の活動を確認させていただきますと、地元で街頭演説の最中でありました。この三日の時点で、副大臣は、危機管理上、こうしたことは把握をしておられたのか。

 そして、官房長官は、先ごろ予算委員会で、十二月十九日に後藤さんの身柄拘束を、確証を得たという心証について述べておられます。この十二月十九日という日付は副大臣の頭にあったかどうか。

 このあたり、日本におられたときの情報把握について御答弁いただきたいと思います。

中山副大臣 委員も御指摘のとおり、昨年九月に、私、外務副大臣を拝命して以降、適時適切に事件の詳細について報告を受けておりました。

小川委員 官房長官ははっきり答弁されていますから、副大臣もはっきり、どの時点でということぐらいおっしゃれると思いますよ。御存じなかったら御存じないで御答弁されてもやむを得ないかもしれませんが、もう少しはっきり御答弁してください。

 あわせて、現地で報道対応しておられました。日本にいる身としては、固唾をのむような思いで副大臣の御発言に注目をいたしておりました。しかし、確認したところですと、これは公式のブリーフでもなく、また会見でもない、ホテルや大使館への出入りの際の非公式なぶら下がりのみだということのようであります。

 かつて、ペルー大使公邸襲撃事件の際には毎日責任者がブリーフを行っていたというような記録も外務省にはあるようでありますが、なぜもう少し丁寧な公式の発言をメディアに対してきちんとされなかったのか。いかがですか。

岸田国務大臣 ただいまの質問も全体の体制にかかわる質問ですので、私の方からお答えをさせていただきます。

 今回の事件の対応につきましては、お二人の邦人の人命が危険にさらされる中で、対外的な情報発信、まずは一元化することが重要であるということを強く認識いたしました。この情報の一元化という観点から、本国で官邸を中心としてしかるべき対応をするというのが、情報発信における政府の基本的な方針でありました。

 よって、中山副大臣には、現地対策本部における本部長として、現地対策本部におけるオペレーションの指揮をとることに集中してもらった次第であります。

 こうした中で、中山副大臣は、一月二十一日からほぼ毎日、オペレーションの説明等を記者に対して行う、質問への応答を行った、こういった対応をとったと承知をしております。

小川委員 ここから先、大衆紙の報道ですので非常にお聞きしにくいことも含めてでありますが、一部に大変厳しい評価が報道されているようです。日本食が欲しいから米を送ってほしいと要請したとか、一時電話がつながらなくなって連絡がとれないとか、あるいは、あいた時間を見て日本の議員に電話しているとか、このあたり、報道されていることは事実ですか。

中山副大臣 まずは、現地対策本部長としてお二人の御生還をかなえることができなかったこと、これは、まことに力不足であり、現地対策本部長を拝命した者としては残念のきわみでございます。お二人の御冥福を衷心よりお祈り申し上げる次第であります。

 また同時に、先生から御指摘のあった一部雑誌等の報道は、全く事実無根であります。

 自分といたしましては、現地対策本部長として着任した際に、この対策本部の部屋の中には国会と同じように傍聴席があって、そこに国民が二十四時間座って見てくれている、国民に聞かれても恥ずかしくないことをしっかりとこの部屋の中ではやってくださいと、みずから、対策本部長着任の時点で、役人の人たち、現場の対策本部のメンバーには私からお話を申し上げた次第であります。

 したがいまして、それをまさに実践して、国民の皆様方に見られても恥ずかしいことは一切なかったということは、この場をおかりしてはっきりと申し上げておきたいというふうに思います。

 そして同時に、その上で、東京の指示に従って誠実に職務を遂行したということであります。

小川委員 当然、そう期待したいところでございます。

 それ以外にも、極端な話でありますが、外務大臣から発言を慎重にするようにという指示があったとか、あるいは、官邸では交代論までささやかれたというような話もございます。

 このあたりについては極めて、そういう報道があったこと自体、残念なことだと思いますし、副大臣のフェイスブックを拝見しますと、あの緊迫した状況の中で、御自身の取り上げられた新聞やあるいはテレビの画面が連日のようにアップされていくんですね。これは、固唾をのんで見守っている人々からしても、何の意味があったのか、どういう効果があったのか。副大臣、このあたりも少し、事の緊迫度からすれば今後善処すべきだと思いますが、いかがですか。

中山副大臣 まず、一連の週刊誌、夕刊紙含めて、例えば、今委員からも二回御指摘がありました、電話がつながらないとか、私がテンパって電話を切っていたとか、そんな指摘があったようでございます。

 しかし、与党を経験された民主党だったら御理解いただける、小川委員も政務官をなさっておられたので。そのとき秘書官がおられましたよね。現地対策本部に、そこに黒縁の眼鏡をかけている秘書官が二十四時間私と一緒に動いていました。仮に私が、電話が電池が切れたり、万が一切るようなことがあっても、あそこにいる秘書官が、本省からの連絡等含めて、重要な電話というのは必ずつながるようになっています。

 したがいまして、非常に、そういった指摘というのがいかに常識的に考えて当たらないかというのは、この今のQアンドAを聞いていただいている方にはよく御理解をいただけるんじゃないかなというふうに私は思います。

 その上であえて申し上げますけれども、そういった媒体で、週刊誌、夕刊紙等で発出されていることというのは、私は、一体中身がどうなのかということ。

 そして、私に、例えばある雑誌は、期限までに返事がなかったというようなことを指摘されていますけれども、私、一番ショックだったのは、日本人の湯川遥菜さん、そして後藤健二さん、お二人がああいった不幸な結果になって、そしてまだ現地対策本部は動いていたんです。ムアーズ・アル・カサスベ中尉、ヨルダン側が非常にアブドラ国王の御指導のもとで御協力いただいている中、現地対策本部の思いは、その中尉の命も何とか守りたい、そういう思いだったんです。

 だけれども、まさにその本部がまだ動いているときに、そこへそういったメディアから質問状が来る、それに対して、私たちが現場で逆に対応しなきゃいけないということもありました。

 私どもの緊張感というものが御理解をいただけたら、逆に、時間は今たっていますけれども、ありがたいなというふうに思います。そのぐらいみんな集中して、現地の対策本部はみんな頑張っていました。御理解をいただきたいと思います。

小川委員 副大臣、本当に大変な御苦心の中にあられたことと思います。ただ、こうした形でいろいろなことが出ること自体は、残念だとやはり受けとめていますし……(発言する者あり)いや、それはそうだと思いますよね。ブログへのアップの仕方も含めて、やはり事態の緊迫度からいえば、御自身の反省点もあったのではないかというふうに私自身感じます。

 かねてから、官房長官、検証委員会でさまざま議論されるということをお聞きしております。

 予算委員会では、総理が果たして公邸にいるべきではなかったのかという議論、それから官房長官が選挙応援に行かれていたことについての議論、そして、残念なことではありますが、副大臣に関してのさまざまな、誹謗中傷含めてでありますけれども、いろいろな報道。

 この検証委員会で、官房長官は、政治家の行動なり言動は検証の対象ではないというふうに御答弁されているようでありますが、これら含めてやはり検証する必要があると思いますけれども、その点、いかがですか。

菅国務大臣 まず、いい機会ですから、総理、官房長官が不在だったということでありますけれども、私は岡田委員にも申し上げたんですけれども、内閣法において、官房長官が不在のときは、内閣官房長官の定めにおいて、官房副長官はその職務を代行するという規定があったわけです。ですから、それに基づいて参議院議員の官房副長官の世耕議員にお願いをしたわけでありますし、あらゆる事態に対応できる体制はしっかり整えさせていただきました。

 そして、総理、官房長官が出張中も、常に、緊急事態発生の際の緊急連絡体制、これは電話、衛星電話も含めてですけれども、それはそういう形で万全を期していたものでありまして、官邸側の指揮体制に何ら問題ないということも前回申し上げたところであります。

 それで、今回の検証委員会ですけれども、杉田官房副長官のもとで、今回の事件の対応について、実務者が参加をして検討を行ってもらいたいというふうに思っています。さらに、この検証委員会には、中東地域あるいは危機管理についての専門家の有識者の皆さんに御参加をいただいて、御意見も伺うという形にしております。そして、こうした有識者の皆さんからいただいた御意見等も、最終的にこの検証に反映をさせていきたいというふうに思います。

 それと同時に、政治家の件でありますけれども、この検証の過程で、個別特定の役職にある者からヒアリングを行いたいということであれば、それは、政治家は、検証委員会にそうした要望があれば出向いて説明する機会をつくりたいというのは、これはある意味で当然のことだというふうに思いますし、総理も国会で答弁されておりますように、総理のエジプトで行ったスピーチ、これもその対象にするということも既に申し上げております。

小川委員 ありがとうございました。

 官房長官、ただ、一点、官房副長官への職務代行でございますが、岡田代表は、法律の議論をしたのではなくて政治の議論をしたんだと私は思います。その点からは、やはり振り返っていただきたい点があるということは一言申し上げたいと思います。

 もうあと三分ですので、総理に一つだけ御答弁いただきたいと思います。

 こういう状況の中ですけれども、やはり切れ目ない安全保障法制の整備に関しては、極めて慎重に議論を進めていただく必要があると思います。

 先週末の段階で政府・与党の協議が始まったというふうに報道を通して承っておりますが、その中で、恒久法、恒久法となれば国会の一件審査はなかなか及びません。

 それから、周辺事態法からは周辺事態という地理的な概念、制約を取り払うというような議論、さらに、米軍支援に限定してきたはずの支援を他国の軍隊も対象にする、そして、武器弾薬の提供や戦闘発進準備の航空機への給油も検討対象に入れる、いつでも、どこでも、誰とでも、何でも協力するということになりますと、これはちょっと、これまでの積み重ねてきた法制からしますと、余りにも一足飛びに議論が進んでいるようにお見受けをいたします。

 総理、この点は、極めて、政府・与党協議のみならず、国会でも慎重な御議論をいただきたいと思いますけれども、御答弁いただいて、終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が、いつでも、誰でも、どこでも、何度でも。そんなことは全くないわけでありますから。そういうお話を伺うと、今まで国会で審議をしてきたことは一体何なんだったんだろうという気持ちになるわけでありまして、武力の行使については、新三要件、極めて厳格なものが決まっています。

 それと、そもそも安保法制については、これから、今まさに与党において協議が始まっていて、法律ができたものについては国会で当然御審議いただくことになります。その中において、自衛隊を出す場合には、基本的に、今まで国会の承認を得ているということになっているわけでございます。

 こうした安保法制というのは、やはり真面目な議論が必要であって、レッテル張りとかデマゴギー的なことは控えるべきだろう、こう思うわけでございまして、今後とも小川さんらしい緻密な御議論をいただきたい、このように思うところでございます。

小川委員 特に集団的自衛権の行使については、イラク戦争、アフガン戦争には総理は行かないとおっしゃっている。その点に関して、ぜひ改めて時間をいただいて、詰めた議論をさせていただきたいと思います。

 きょうは時間ですので、終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 先般の前原委員の質問に対する答弁で、日本教育会館から献金を受けた議員が民主党にいるという私の発言に対し、文科省において調べた結果、平成二十四年度までの十年間の決算書を確認した限り、議員献金という記載はなかったということでありました。

 私の記憶違いにより、正確性を欠く発言を行ったことについては、遺憾であり、訂正申し上げます。

大島委員長 質疑を続行いたします。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 今の総理の発言でございますが、遺憾であり、訂正というところはわかりますが、事は先週、テレビ放送されている中での発言だったわけでございます。

 日本教育会館を含めた関係者に対する謝罪をいただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、訂正し、遺憾であるということを申し上げたところでございます。

後藤(祐)委員 謝罪はしないということなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、遺憾であるということを申し上げたとおりでございます。

後藤(祐)委員 それは謝罪と受けとめてよろしいのでしょうか。

安倍内閣総理大臣 遺憾であるということを申し上げておりますので、まさに言葉どおり受け取っていただければ、このように思います。

後藤(祐)委員 遺憾であるという言葉は、これまでもいろいろなところで使われてきましたけれども、必ずしも心からの謝罪だとは受けとめられない場合が多いんです。

 心から謝罪しておられますか、総理。

安倍内閣総理大臣 まさに今、総理大臣として、気持ちを込めて、遺憾と申し上げたところでございます。

後藤(祐)委員 どうして謝れないんでしょうか。きちっと謝罪をいただくまで、これ以上質疑することはできません。

 総理、謝罪できませんですか、本当に。

安倍内閣総理大臣 政府として、遺憾である、このように繰り返し申し上げているところでございます。(発言する者あり)私として申し上げているところでございます。

後藤(祐)委員 やはり心から謝罪いただけないということなんでしょうか。

 遺憾であるという言葉は、謝罪とは言葉の違いがやはりあると思うんです。謝罪申し上げますと何で一言言っていただけないんでしょうか。

 今、テレビ放送ではありません。あのときはテレビ放映されていたんですよ。それをもって、日本教育会館の方々、あるいは、我が党もある意味で名誉を傷つけられた面がございます。その名誉を取り戻すという意味でも、遺憾という言葉だけでは不足ではないですか。

 心から、心から謝罪しているんですか、本当に。遺憾という言葉は、あっ、言ってしまった、残念だ、そのぐらいの意味合いでおっしゃっているとも受け取れるわけです。

 そうでないと今答弁席でおっしゃったのであれば、謝罪という言葉できちっと謝っていただけませんか。それほど難しいことなんでしょうか。きちっと謝罪を、遺憾という言葉ではなく、心からの謝罪をいただけるまで、これ以上質疑を続けることはできません。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 政府は、さまざまな事柄に対して遺憾であるということを申し上げています。それは、それぞれの対象に対して、まさに政府として心を込めて申し上げていることであって、遺憾という言葉には全く心がこもっていないということは、これは全く見解の相違であろう、このように思うわけであります。

 今、後藤委員は、私の心のありようについて後藤さんの感じ方を議論しておられるんだろう、このように思うわけでありますが、私は、まさに今、気持ちを込めてこう申し上げ、そして訂正をしたところでございます。

 そして、そもそもの発端としては、先般の審議の中において、精糖工業会と精糖会館についての議論があって、これは別のものではないという御議論があったわけでございます。

 そこで、かつて、神本美恵子文部科学大臣政務官が、政務官を務めながら日教組から献金も受けている、そして教育会館にも事務所があるという中において、我が党の議員が、全国からパーティー券等々で資金を受け取るのは、これは文部科学大臣政務官のままではおかしいのではないかということを申し上げ、同時に、教育会館の中に入っているけれども、そうしたものをそこに充てているのと同じではないかということに対して、当時の御党の文部科学大臣が、いわば教育会館と日教組は別のものである、このように答弁したところでございまして、こういうことがうっすらと頭にあったものでございますから、私も取り違えて、政治献金と補助金との関係で申し上げたわけでございます。

 こうしたことについては、今申し上げましたように、遺憾であるということを申し上げ、そして訂正したところでございます。

後藤(祐)委員 今までも政府というのは遺憾という言葉をよく使ってまいりましたが、本年は、戦後七十年の中で、あの体制をどう振り返るかということもこれから議論になるわけです。遺憾という言葉は、本当にその謝罪の中の一部に入るのか、入らないのか。入るとしても、物すごい軽い言葉になっている。本当にこれから、こういった問題が起きたときに、遺憾という言葉でずっと切り抜けるんですか、総理。

 総理、本当に、この問題についてもう一回正確に言います。日教組が補助金をもらっていたという御発言と、日本教育会館から献金をもらっている民主党の議員がいたという、この二点に関して、事実と違っていたのかどうかということをはっきり言っていただいた上で、その事実と違っていたということについて、もう一度、遺憾という言葉でなく、謝罪を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これについては、先ほど申し上げましたように、文部科学大臣政務官である神本大臣政務官がパーティー券を受けていたという件に関して我が党から質問があったわけでございまして、その際、同時に、教育会館にも入居をしていたという事実がある中において、我が党が追及する中において、会館と教組は別であるという当時の大臣の答弁があったわけであります。

 同時に、こちら側からは、先般の精糖会館と精糖工業会との関係において、これは別のものであるという答弁をしていたわけであります。これは、役員等が同じであれば同じものであるということであったわけでありますが、役員が重なっていてもそれは別法人である、そういうことであったわけでございます。

 しかし、実際、事実関係といたしましては、先ほど申し上げましたように、また、午前中の答弁でも申し上げたところでございますが、いわゆる補助金、そして教育会館からの献金という事実はなかった。このことについては、私の記憶違いであり、正確性を欠いたというところで、訂正し、まことに遺憾であります、このように申し上げたわけであります。

後藤(祐)委員 遺憾という言葉は、思いどおりにいかない、心残りである、残念だ、気の毒だ、こういった意味だと物の辞書に書いてあります。一方で、謝罪は明らかに違います。

 この遺憾と謝罪の言葉の意味は全く同じですか。

安倍内閣総理大臣 これは、言葉としては謝罪と遺憾というのは別の言葉でございますが、今回の出来事については、このように私の気持ちとして申し上げたところでございます。

後藤(祐)委員 ということは、謝罪はしないということですか。残念だとか、思いどおりにいかないということではあるかもしれませんけれども、謝罪はやはりされないということですか。

安倍内閣総理大臣 これは、先ほど答弁をさせていただいたように、私としては遺憾だということを申し上げているわけでございます。

 そこで、誤解を確かに与えたのは事実でございます。その意味の中において、私は、遺憾であった、私の考え違いであった、こういうことでございます。つまり、これは意図的に傷つけようということではなくて、事実の誤認をしていたということでございます。

後藤(祐)委員 遺憾と謝罪は違うという御答弁がございました。つまり、謝罪はしないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 これについては、まさに私は、今回、事実と異なることを答弁したということについて、総理大臣として遺憾であると。

 その遺憾であるということについては、いわば、こうしたことについて誤解を与えたということも含めて遺憾であった、こう申し上げているところでございます。

後藤(祐)委員 質問に答えてください。謝罪はしないということですか、遺憾と謝罪は違うと先ほどおっしゃいましたから。

安倍内閣総理大臣 これは、今申し上げているように、遺憾であった、こういうことを申し上げたところでございます。

 そこで、後藤委員が、では、この教育会館に対して、私の申し上げたことで不快な念を持たれた方がおられるとすれば、これは申しわけないという気持ちでございます。

後藤(祐)委員 申しわけないという言葉でよろしいですね。私に対してではなく、日本教育会館及び関係者の皆様に申しわけなかったともう一度はっきり言っていただけますか、私ではなくて。

安倍内閣総理大臣 いえ、私は、後藤さんに対して、後藤さんが教育会館と日教組の代表だとは思っておりませんから、後藤さんに対して申しわけないということではなくて、教育会館の方々でこれを不快に思われた方々がおられたら申しわけないということを申し上げたところでございます。

後藤(祐)委員 補助金を日教組がもらっていないということについても間違いな発言があったと思うんですが、これについても事実関係が違うわけですから、その関係の皆様には日教組も含まれるということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 これは午前中も申し上げているとおりであって、補助金についてはそうではなかったということであります。日教組はパーティー券を買っていた、こういうことでございます。

後藤(祐)委員 総理、これから七十年の議論になっていくわけですよ。やはり遺憾という言葉の、どう受けとめられるかということはよく考えた上で、申しわけないという言葉は一歩前進だと私は評価いたします。そこを、何でこれだけ時間をかけないとそういうお言葉にならないのかということについては、これからいろいろな場面で出てくると思いますので、よく言葉の意味をお考えになって、そして、お聞きになられる関係者側の方々がどのように受けとめられるかという心情を推しはかって言葉を使っていただくようお願い申し上げて、次の質問に入りたいと思います。

 きょう、西川農水大臣にお越しいただいておりますけれども、まず、西川大臣の献金問題、いろいろ出てまいりました。先週も予算委員会で同僚議員が質問をさせていただきましたが、まず総理に伺います。

 この西川大臣に対する総理の任命責任について、「しっかりと農業において、農業、農村の所得をふやしていくために政策を前に進めてもらいたい、このように思っております。」というふうに答弁されておられますが、今後も西川大臣に農水大臣を続けていただくということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 政治資金については、当然、これは政治家としての責任を自覚し、そして国民に不信を持たれないように、常に襟を正し、説明責任を果たしていかなければならない、このように考えているわけでございまして、御指摘の件についても、国民に不信を持たれないよう西川大臣から説明される、しっかりと説明をしていかれる、このように承知をしております。

後藤(祐)委員 二月十九日の予算委員会では、西川大臣は説明責任を果たしておられると思いますと断定されておられました。今の総理の発言は、果たしていかなければならない、これから果たしていただくという未来形に戻っています。

 西川大臣は説明責任を果たしておられると思いますと十九日にはっきりおっしゃっていますが、今の段階でも果たしておられると思いますか。

安倍内閣総理大臣 私は、説明責任を今まで西川大臣は懸命に果たしておられると思います。

 しかし、これは過去形のことではなくて、当然、まだ十分に国民の皆様から御納得いただいていないのも事実でありますから、これからもしっかりと説明責任を果たしていくことが求められる、このように思います。

後藤(祐)委員 つまり、十九日の段階よりも少し後退したということですね。

 西川大臣は、十九日の予算委員会で、「このたびのこの問題が起きてから、税理士さんに今までお願いしておったんですけれども、なかなかチェックがうまくいかなかった、こういうことで、事務所を挙げてチェックした上に、公認会計士さんに今見てもらっておるところでございます。」と答弁されておられます。

 チェックは終わりましたか。少なくとも、事務所を挙げたチェックは終わりましたか。テクノウッドワークス社からの平成二十四年の三百万円、これはお返しになられたということで、これ以外に違法な献金はないと断言できますか。

西川国務大臣 十分なチェックを今果たすべく毎日やっておりますが、違法な献金はございません。

後藤(祐)委員 それでは、一つずつ聞いてまいりましょう。

 まず、きょうは七つほどテーマ、聞いてみたいと思いますが、砂糖の話は、精糖工業会館の話は先週ありました。これが一つ目ですね。

 二つ目、安愚楽牧場というのがございました。この安愚楽牧場から西川大臣は、平成十八年、十九年、二十年、二十一年、二十二年と二十五万円ずつ、収支報告書から知る得る限りでは合計百二十五万円の献金を受け取られておられます。

 一方、平成二十四年十二月二十五日に七十五万円を返金されておられます。その後の収支報告書は我々知る由もないので、その後、追加的に返金されたりしているかもしれません。そこも含めて、これらの事実関係について御説明ください。

西川国務大臣 私どもで精査した結果、五年分の百二十五万という数字が今まで出ていました。百二十五万のうち七十五万返金したのであと五十万か、こういう話でありましたが、私ども、あらゆる手段を使って調べ直しまして、実際には六年分でありました。

 ですから、百五十万円でありますから、既に七十五万は二十四年の十二月に返金しておりますけれども、残りは五十万でなくて七十五万でありますから、七十五万を去年の九月に返金、返還をしております。

 それで、この問題については、二十六年の収支報告書に出てまいります。ですから、全額、百二十五万と言われておりましたが百五十万円、全額返金、返還を終わっています。

後藤(祐)委員 前段の、平成二十四年十二月二十五日に七十五万円お返しした、その収支報告書に、平成二十一年、二十二年、二十三年分と備考欄に記入されておられますが、平成二十三年の収支報告書では安愚楽牧場からの寄附は存在しません。

 平成二十三年も寄附があったんですか。それとも、この備考欄の記述が間違っているんですか。

西川国務大臣 私ども、七十五万円、先に二十四年の十二月に返還したもの、当初、二十一、二十二、二十三、こういうつもりでおりましたが、確かに二十三年は献金をいただいておりませんで、二十年、二十一年、二十二年の三年間でした。その前がわからないでおりましたけれども、精査の結果、十七年、十八年、十九年でした。

 それで、この件については、事実を確認いたしまして、既に修正を終えております。

後藤(祐)委員 それは、いつ修正されたんですか。

西川国務大臣 先ほど報告をもらったところでありますが、修正は終わっておる、こういう報告を秘書からもらいました。

後藤(祐)委員 これは、私がけさ指摘したんです。きょうですか、修正したのは。

西川国務大臣 年度と年の取り違いがあったようでありましたので、私ども、指摘を受けて、即、修正を終了した、こういうことです。

後藤(祐)委員 取り違えかどうかは構いませんが、収支報告書に誤記載というのは、これはれっきとした法律違反でございます。いつですか、修正したのは。

西川国務大臣 本日、先ほど修正をやった、こういうことであります。

後藤(祐)委員 私が指摘していなかったらずっと違法状態が続いていたということですか。

西川国務大臣 御指摘をいただいて初めて、年度の取り違えだ、こういうことがわかりましたので、それは御指摘をいただかないと、私どもも今懸命に見ておりますけれども、気づいたかどうかというのは、私も自信を持ってそこは申し上げられませんね。

後藤(祐)委員 先ほど、三百万円の話以外は違法なものはございませんと断言されました。早くも一つ見つかってきたんですけれども、これについての御見解を。

西川国務大臣 これは、修正をさせていただいた、こういうことで法律は十分クリアしている、こう思います。

後藤(祐)委員 収支報告書は、修正すればそれで法律上問題ないとお考えですか。

西川国務大臣 修正すればそれで済みかとか、そういう議論じゃなくて、常々しっかり見るように、今、点検をしておりますけれども、その中で見つかった話でありまして、常に厳しく律して、政治資金報告書、報告ができるように、さらなる努力を続けてまいります。

後藤(祐)委員 冒頭にほかに違法なものはないと断言されて、早速もう数分で崩れてしまったわけですね。

 安愚楽牧場についてさらにお聞きしますが、西川大臣の息子さんは安愚楽牧場の顧問を務めておられました。これはもう昨年の十月、参議院の農水委員会でこういった議論がなされておりますが、いつからいつまで顧問としてお勤めになって、どのぐらいの報酬をいただいて、どういう仕事をされておられたんですか。

西川国務大臣 長男は別人格でありますから、安愚楽牧場における具体的な仕事の内容や報酬について把握する立場にはありません。勤務実態があったことは確かだ、こういうことでございます。

後藤(祐)委員 これは、プライベートな話ではとどまらないんですね。

 安愚楽牧場というのは、二十二年四月に宮崎県で口蹄疫問題が発生して、これだけではないです、その前から経営が悪化しておられましたよね。うなずいておられますね、農水大臣。

 その後、平成二十二年五月三十一日に二十五万円献金を受け取られています、大臣は。

 息子さんはこの安愚楽牧場の経営悪化を知っておられたんじゃないんですか。もし、知っていて、大臣と息子さんの間に会話がなされれば、経営悪化を知っていたにもかかわらず献金を受け取っていた、そういうことになりませんか。だから聞いているんです。

西川国務大臣 私、二十一年の八月に落選をいたしました。それまで私の仕事を手伝ってくれておった秘書で長男が仕事をしていましたが、私とは別人格でもありますし、そういうことで、私は、勤務実態はあったことは聞いておりますが、仕事の内容については承知をしておりません。

 そして、長男は、私とは直接関係ないことであるものの、申し上げれば、安愚楽牧場から労働の対価として報酬を受け取っていたものであり、何ら問題はないものと考えております。

後藤(祐)委員 次に行きましょう。

 三つ目の疑惑でございますが、ファームコンサルティング株式会社という会社がございますが、この会社は、平成二十四年七月六日から平成二十五年三月二十二日まで、農林水産省との間で、平成二十四年度関東農政局六次産業総合推進委託事業、千二十二万二千七百八十二円の契約を締結されておられます、この期間。

 まず、これは事実でしょうか。通告しています。

西川国務大臣 今ちょっと早口でわかりませんでしたが、そちらで調べたことと実態は同じだ、こう思います。

後藤(祐)委員 このファームコンサルティング株式会社は、西川大臣が代表を務める自由民主党栃木県第二選挙区支部に対して、二十四年九月二十五日に五十万円、そして、同社の代表取締役社長石田誠一氏から、一月七日十六万円、四月二十九日十万円、八月十日十万円、十一月二十四日三十万円、計六十六万円、収支報告書でわかる限りにおいて、企業献金と個人献金を合わせると合計百十六万円の献金をされておられます。

 この中で、先ほど、農林水産省と委託契約期間内のファームコンサルティング株式会社の石田誠一社長から、平成二十四年十一月二十四日、三十万円献金を大臣はいただいておりますけれども、この平成二十四年十一月二十四日というのは、十一月十六日に衆議院が解散された八日後でございます。これは、公職選挙法百九十九条第一項、国と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、衆議院選挙に関し寄附をしてはならない、これに反するのではありませんか。

西川国務大臣 御指摘の社長名の寄附は、国と委託契約関係にあるコンサルティング会社からの寄附ではなく、別人格の社長個人からの寄附であることから、公職選挙法百九十九条の適用の問題は生じないと承知しております。

後藤(祐)委員 法人と代表取締役が別人格であれば、公職選挙法百九十九条に違反しないという御見解でございますけれども、契約書には何と書いてあるんですか。契約書には、このファームコンサルティング株式会社代表取締役社長石田誠一さんなりと普通は書くものです。

 会社の名前だけが書いてあるんですか、それとも、この石田誠一さんの名前も書いてあるんですか。

西川国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、御指摘の社長名の寄附は、国と委託契約関係にあるコンサルティング会社からの寄附ではありません。別人格の社長個人からの寄附でありますので、公職選挙法百九十九条の適用は、問題は生じない、こう承知しております。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 契約書には石田誠一さんのお名前は書いてありますか。

西川国務大臣 それは私が知り得る立場ではありませんね。コンサルティング会社の方へお尋ねをいただければと思います。

後藤(祐)委員 これは、契約当事者、片方は農水省でございますから、大臣はお調べすることはできるはずです。お調べいただいて、この委員会にその契約書の写しを提出いただけませんか。写しじゃなくて、本物を提出いただけませんか。

西川国務大臣 農水大臣という立場ではお聞きできますので、あとは、この委員会を運営される理事さん方の問題等もあるかと思います。

 私の方は、それを確認して、いつでも協議が調えば報告が出せるように準備をしておきたい、こう考えております。

後藤(祐)委員 委員長、今の御発言でございますが、きちんと、委員会としてこの契約書を提出いただけるよう、お取り計らいいただけますでしょうか。

大島委員長 理事会で協議します。

後藤(祐)委員 大臣、会計法上、会社と契約するときは、会計法二十九条の八というのがあって、「契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。」となっているんですね。

 契約の相手方とは何か。これは代表者名なんですよ。代表者のお名前のないものは契約として成立しない。うなずいておられますけれども、この御理解、共通ですか。

西川国務大臣 多分御承知の上で私に質問をしているんだと思いますが、仮に社長名が書いてあっても、契約は法人として、法人と締結しているわけでありますから、何らこの社長個人とは直接の関係はありません。

 それから、会計法の問題は、「契約書を作成する場合においては、契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。」こういうことになっていることは承知しております。

後藤(祐)委員 先ほどの公職選挙法百九十九条第一項の総務省の逐条解説によれば、契約の当事者である者とは個人であると法人であるとを問わないと解説されております。個人であると法人であるとを問わず、この条項は適用されると思いますが、いかがですか。

西川国務大臣 契約は会社との契約でありますから、コンサルティング会社の社長個人と契約したわけではありません。

後藤(祐)委員 そうしますと、この契約の当事者である者は個人であると法人であるとは問わないということとの関係は、どう説明されますか。

大島委員長 後藤さん、これは農水大臣というより……(後藤(祐)委員「本件に関してですから西川大臣です」と呼ぶ)法の解釈の問題だから、ちょっと担当省の方に……(後藤(祐)委員「個別の契約についての話ですから、西川大臣にお願いします。個別案件ですから」と呼ぶ)

 まず、それでは総務大臣、ちょっとその条文のところをきちっと説明して。

高市国務大臣 公職選挙法第百九十九条、「衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」としております。

 先ほど、契約の当事者のお話がございました。現に契約を結んでいる場合を指します。したがって、契約をしている期間の寄附は禁止されている。当事者は、個人であると法人であるとを問わないが、現に契約を結んでいる者を指し、会社のような法人が契約を結ぶ場合には、当該法人の代表者個人や構成員個人は該当しないと承知いたしております。

後藤(祐)委員 そうしますと、今後こういった問題が起きたときには、社長が献金すれば全て白であるということですか、高市大臣。

高市国務大臣 契約を締結している当事者でない場合は、違法ではございません。個別具体の事案についてではなく、一般論として、この法律で規定されているとおりではさようになります。

後藤(祐)委員 そうしますと、これからみんな個人で寄附しますね。

 次に行きましょう。

 テクノウッドワークスの平成二十四年、三百万円問題。これは四つ目ですね。

 これについては既に返金されたというお話がございました。返金したからどうということをとやかく言うつもりはありませんが、返金前の状態において、平成二十四年、三百万円のこの寄附、これは補助金交付から一年以内でありますから、政治資金規正法二十二条の三によれば、国から補助金を受けた会社は、交付決定日から一年以内は政治活動に関する寄附をしてはならない。この政治資金規正法二十二条の三との関係において、これは違法状態にあった、返金する前の状態で結構です。違法状態にあったというふうに考えてよろしいですか、西川大臣。

西川国務大臣 返金する前に違法状態かどうかというのはわかっていなかったんです。

 それで、一月七日にマスコミがこの補助金等の調査をしました。八日に私のところへ報告がありましたので、すぐ法律を調べ、次の日の九日に返金をさせてもらったということでありまして、返金する前が違法状態だとは思っておりませんでした。

後藤(祐)委員 返金前は違法状態でないと思っておったということだとすると、なぜゆえにそう言えるんですか。国から補助金を受けた会社は交付決定日から一年以内は政治活動に関する寄附をしてはならないという状態に、明らかに違反しております、この件は。

 なぜ、どういう理由で違法状態でなかったと言えるのか、説明してください。

西川国務大臣 この寄附については、私、知らないでおりましたし、補助金等が交付されている、こういうことも全く知らない状態でありました。そして、この取材によって調べ、そして次の日に返還した、こういうことであります。

後藤(祐)委員 知っているか知っていないかは問題でないんです。返金より前の段階、知り得る前の状態が違法であったかどうかを聞いているんです。

 およそ刑事法というのは、本人が知っていたか知っていなかったかは関係ないんです、違法性に関しては。西川大臣が返金される前に、その状態を知り得る前の状態で、それが違法状態であったかどうか、質問に答えてください。(発言する者あり)高市大臣じゃなくて西川大臣、本件、具体的な案件ですから、西川大臣、お答えください。

西川国務大臣 私は法律の専門家ではありませんが、法律的な説明は恐らく御納得されるかどうかわかりませんが、いずれにしましても、七日に取材があり、八日に私のところへ報告があり、補助金が交付決定されておったと、栃木県から。それを初めて知ったので、九日には返還をさせていただいた、こういうことでございます。

後藤(祐)委員 質問に答えてください。

 返金される前、違法状態にあったかどうか、お答えください。西川大臣に聞いております。本件、具体的なものに関して西川大臣がどう考えておられたかということを聞いておるんですから、高市大臣には答えられないはずなんです。

 手を挙げておられます、委員長。西川大臣、お答えください。

大島委員長 どうぞ、後藤さんお座りください。

 多分、これは、法律というものをどのように考えるか、普遍的な一つの問題だろうと思うんですね。だから、したがって、高市さんにまずお答えをいただいて、そうして……(後藤(祐)委員「求めていないです」と呼ぶ)そうしましょう、まず。

 高市大臣。(後藤(祐)委員「求めていないです」と呼ぶ)求めていなくても、委員長が指名します。

高市国務大臣 恐縮に存じます。

 政治資金規正法第二十二条の三の第六項におきまして、制限に違反してされる寄附であることを知りながらこれを受けてはならない旨の規定がございます。

 これは、なぜこういう規定があるか。本人が知っていた場合は違法である、知らなかった場合にはそうではないという切り分けがなぜあるかといいましたら、寄附の受け手にとりましては、寄附を行う側の会社その他の法人の一つ一つについて、補助金や交付の決定を受けているかどうかという事実関係を完璧に知ることは困難であるということから、制限違反の寄附であることを知りつつ、なおそれを受けるというような場合について禁止をしている、こういう趣旨でございます。

西川国務大臣 私は、何度も申し上げますけれども、一月八日になって初めて、交付決定がなされておった、こういうことに気づきましたので、それまでは一切交付決定については承知しておりませんでした。

後藤(祐)委員 知り得た以上は、返金したから違法性が阻却されるといったものではないと思いますが、返金したから違法性が阻却されると思いますか、大臣。

西川国務大臣 承知をしていなかった。そして、承知をして、すぐに返金をさせていただいた、これに尽きます。

後藤(祐)委員 そうしますと、どんな献金であっても、知らなかったと言えば違法でなくなってしまうという御理解ですか。

西川国務大臣 何度も申し上げますけれども、一月七日の取材があり、八日に報告を受け、交付決定があったということがわかりましたので、九日に返金をさせていただいた、こういうことです。

後藤(祐)委員 同じ答弁なので次に行きます。

 二十五年にも、同じテクノウッドワークスから百万円、今度はパーティー券を買っていただいているようでございます。

 これも、平成二十四年度に、テクノウッドワークス社は七億円の補助金交付を受けております。この補助金は、二十四年度の補正予算と思われますので、この補正予算の成立した平成二十五年二月二十六日以降の補助金交付決定のはずであります。一方、先ほど申し上げたパーティー券の購入は、平成二十五年六月十八日です。

 これは、補助金交付から一年以内の政治献金を禁止した政治資金規正法二十二条の三に違反するのではありませんか。

西川国務大臣 パーティー券の問題を今尋ねられました。

 私が、テクノウッドワークスという、木材加工会社ですけれども、そこからパーティー券を購入していただいていることは事実であります。

 パーティー券については、パーティーに参加していただくために購入していただいているものであり、パーティー参加の対価であることから、献金とは性質が異なるものと理解しております。

 いずれにしましても、パーティー券の購入を受けたことによって、便宜等の話は全くございません。

後藤(祐)委員 政治資金規正法二十二条の三における解釈においては、政治資金パーティーのような一部対価関係があるようなものについても、対価関係にあるものでも、対価相当分を超えて金銭等の供与または交付がある場合には、その超える部分は寄附になるものと解されています。どうですか。

西川国務大臣 パーティー券につきましては、パーティーに参加していただくために購入していただいているものであり、パーティー参加の対価であることから、献金とは性質が異なるものと理解しております。

後藤(祐)委員 対価相当分を超えて金銭等の供与または交付がある場合には、その超える部分は寄附となるものと解されます。

 ですから、全額が寄附だとは申し上げません、一部対価分があるでしょう。しかし、その対価を超えた部分については寄附に該当するというのが今の解釈なんです。

 そうしますと、政治資金規正法二十二条の三に違反するのではありませんか、西川大臣。

西川国務大臣 何度も申し上げますけれども、パーティー券につきましては、パーティーに参加していただくために購入していただいているものであり、パーティー参加の対価でありますから、献金とは性質が異なるものと理解しております。

後藤(祐)委員 平成二十五年六月十八日に開かれたパーティー、西川公也君を励ます昼食勉強会では、全体としての収入が千二百八十六万円、支出が七十五万八千二十円、差し引き収益が千二百十万千九百八十円、利益率九四・一〇%であります。つまり、九四%は対価性のない寄附と言ってもいいのではないでしょうか。

 全額とは言いませんよ。しかし、これは相当利益率が高いパーティーであるのは、うなずいておられますけれども、西川大臣、利益率の高い、対価性のない部分がある以上、それは寄附ではありませんか。

西川国務大臣 うなずいているのは、理解して、後藤委員が言うことがもっともだと思ってうなずいているんじゃないんです。後藤委員の質問を聞き取るために、うなずきながらの方が、テンポもわかるし、私が理解しやすいのでうなずいているだけでありまして、後藤委員の言っていることがもっともであるというのは、少しも思っておりません。

 それから、パーティー券につきましては、何度も言うように、パーティーに参加していただくために購入していただいたものでありますから、パーティー参加の対価であることから、献金とは性質が異なるものと理解しております。

後藤(祐)委員 対価を超える部分について、寄附ではありませんかという質問にお答えください。

西川国務大臣 その超えている、超えていないという判断、すぐにはちょっと難しいと思いますが、一般のパーティーで赤字になるようなパーティーは、なかなかないですよね。だから、趣旨に賛同してパーティー券を買っていただいた、こういうことだと思います。

後藤(祐)委員 つまり、対価性がない部分が存在するということですか。

西川国務大臣 対価性が云々ということを私は申し上げません。あくまでもパーティー参加の対価であることから、献金とは性質が異なるものと理解しておる、こういうことであります。

後藤(祐)委員 ここは疑惑が深まったということで、次に行きたいと思います。

 六つ目でございますが、このテクノウッドワークス社は、平成二十一年にまた百万円、西川大臣の、自由民主党栃木県第二選挙区支部に献金されておられます。同じ平成二十一年に、二十一年度ですが、同社は森林整備加速化・林業再生事業として一億六千百万円の補助金を受け取っておられます。

 この前後関係を含めた事実関係について、これは補助金を受け取った後献金をしているということですと、先ほどと同じ問題になりますので、事実関係を説明してください。

西川国務大臣 私も丁寧に答えますから、質問も丁寧にお願いできませんか。(発言する者あり)いや、二人だけの話ですよ。

 それで、今の話は、テクノウッドワークスへの補助金の交付は県からなされておりますが、その前提となる国から県への交付は平成二十一年十二月、私が浪人中の期間でありますので、そういう時系列でございます。

後藤(祐)委員 後段にお答えいただいていないんですが、平成二十一年に、西川大臣が代表を務める自由民主党栃木県第二選挙区支部に百万円献金されておられますが、これはいつなんですか。月日がわからないんです。

西川国務大臣 私どもで調べた状況では、二十一年八月六日に献金をいただいておると解釈していますが、今は、公報関係も、古くなると日にちはわからなくなっています。ですから、二十一年八月と理解してもらえればと思います。

後藤(祐)委員 先ほどの献金は八月だということですが、補助金が二十一年十二月。大臣は、残念ながらその年の衆議院選挙で落選されておられますが、農林水産省に対して、このテクノウッドワークス社に関連して何らかの接触をしたことはございませんか。

西川国務大臣 今は浪人中の話かと思いますが、浪人中、この木材加工会社に関し、農水省に対して何らかの接触を行ったかと。これは、接触の事実はありません。

 なお、同社が補助金を受けていたのは民主党政権期間で、私が浪人中の期間でありました。

後藤(祐)委員 二〇〇九年の解散前の衆議院議員であられたとき、及び落選中、及びもう一度当選された後を通じて、このテクノウッドワークス社に関して、農林水産省に対し何らかの接触をしたことはありませんか。

西川国務大臣 ございません。

後藤(祐)委員 七つ目の疑惑に行きたいと思います。

 このテクノウッドワークスの顧問に、あるいはアドバイザー、あるいはそれに類するような役職についていたことはございますか。これについては、先週の予算委員会で、このテクノウッドワークス社に限らず、顧問等の職についていたことがないかということについて、この委員会に資料を提出するようにという指示があったはずでございますが、きょうは、このテクノウッドワークス社の顧問、アドバイザー、名前は問いません、何らかの役職についていたことはございますか。もしついていた場合には、いつからいつまで、そして幾らの報酬をいただき、どんな職務を行っていたのか、あわせて御答弁ください。

西川国務大臣 私が二十一年八月に落選をしまして、非常に困った状況で、経済的に大変な状況が長く続きました。そういうときに、しばらくたってから、困っているだろうから、あなたの少し支援をしたい、こういうことがありまして、顧問という役職をいただいた、こういうことであります。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 いつからいつまでの期間であって、報酬がお幾らぐらいで、職務内容は何であったのか、お答えください。

西川国務大臣 これは予算委員会の答弁ですから、私は、慎重が上にも慎重を期していきたい、こう思います。

 先ほどの返金の問題等も、五年分かなと思ったら、永久保存の書類を見たら六年分ということが確認できて、やりましたので、そのぐらい神経を使いながらやっていきたい。

 それで、私が浪人をしましたのが二十一年の八月の選挙でありますから、それから一年ほどたってから私に対する支援が始まったと思います。

 そういうことで、私は、精査をして、それから報告をする、こういう約束でありますから、もう少し時間をいただければとお願いします。

後藤(祐)委員 それは精査の上、正しい期日をこの委員会に御報告いただきたいと思いますが、職務内容は、御自分でお勤めになられていたわけですから、おわかりだと思うんです。

 先ほど、テクノウッドワークス社に関して、農林水産省に対して接触はされておられないということでございましたが、だとすれば、何をしていたんですか。

西川国務大臣 顧問というのはいろいろ種類がありますよね。どういう立場でやるか、こういうことですが、特に政治家の顧問の場合は、再起を期して一生懸命やれ、こういうことで私を応援するよ、こういうのが割と多いのではないかと私は思っております。

 そういう意味で、私は何にも仕事は頼まない、あんたは再起に向かって一生懸命働け、こういうことをお話をされておりました。

後藤(祐)委員 頑張ってやれ、何にも仕事は頼まないということは、実質的な仕事はせずに収入をいただいていたということですか。

大島委員長 西川大臣、先般あなたが、しっかり精査して御報告すると言っているんですから、そういうことも踏まえて御答弁しなさい。

西川国務大臣 何をやっておったか、こういうことですから、こういうことです。

 社長からは、これまで地元のために尽くしてきたのだから支援してやるよ、こう言われました。そこで、あなたは次の目標に向かって体勢を立て直してほしい、当社に対しては時々社員等と意見交換をしてくれれば、私は何ら経営上の相談はしません、こう言われておったところであります。

 私としては、これまでの経験もあるので、必要があれば御相談をお受けしたい、こう考えておりましたが、社長は大変な人情家でもあって、度量の広い人でございます。バイタリティーあふれる方で、何でも自分でやってしまう。こういうことで、何も経営上の問題について頼まれることはありませんでした。

 以上です。

後藤(祐)委員 このテクノウッドワークス社は、平成二十二年度に三億七千万の補助金を受けておられます。

 先ほどの、頑張ってやれ、仕事は頼まないという、お仕事がないわけですけれども、それは、実質的な寄附と認められる場合には法律上の問題が出てくるわけです。だからこの話を聞いているわけであります。ぜひこれからきちんと説明をしていただきたいと思います。

 以上、七つの大罪について申し上げました。

 一、精糖工業会館による寄附、これは補助金受領者の一年以内の献金に当たるのではないか。二、安愚楽牧場の収支報告書は、これは誤記載があったのではないか。三、ファームコンサルティングの委託契約をしている最中に献金をしていたのではないか。四、これは既に出ている話ですが、テクノウッドワークス社の平成二十四年の三百万円の献金の問題、これは補助金受領者の一年以内の献金に明確に当たるわけであります。五、同社、テクノウッドワークス社の平成二十五年の百万円の献金の問題、これも一年以内献金の疑いがあるわけであります。六、テクノウッドワークス社の平成二十一年の百万円献金についても疑惑があるわけでございます。七、同社の顧問に就任して一体何をされていたのか、実質的な寄附に当たるのではないか。こういった七つの大罪、疑惑が明らかになってまいりました。

 今後、この通常国会では、農林水産大臣は、農協改革法案ですとか、TPP交渉ですとか、大変大きな仕事があるわけでございますが、大臣、本当にこれだけの疑惑をたくさん指摘されながら、大臣を続けるおつもりですか。

大島委員長 ちょっとお待ちください。

 後藤君、かつて、私が一回目の予算委員長のときに、ライブドアの問題というのがありました。政治家はさまざまなことを発言してもいいんですが、大罪ということを今ここで明確に言うことに、委員長としては疑義を申し上げます。

 したがって、そういう議事録を精査して、また協議したいと思います。

 言葉は、言っていいことと悪いことが私はあると思うんです。したがって、そういう断定した言い方に、少し考えなきゃならぬと思いますよ。

 以上だけ申し上げておきます。

西川国務大臣 今、大罪とか疑惑という話をされましたが、私は、疑惑はない、そして、ここまでいずれも適法に処理をしてきた、こういうことを申し上げます。

 そこで、私は県議会議員の選挙を五回、国政が八回、十三回やってきましたが、きょう後藤委員が大罪とか疑惑と言いますと、いつの間にか選挙の前にはそういうチラシが回るんです。誰が回すかわかりません。そういうことで、本当の実態もわからないのに、今使われた言葉がひとり歩きしますから、少し言葉は選んで話してほしいと思います。

後藤(祐)委員 西川大臣、大臣を続けるおつもりですかという御質問にお答えいただけますでしょうか。

西川国務大臣 私としては、誠心誠意説明をしながら、日本の農林水産業の発展のために尽力をしていきたい、こう考えます。

後藤(祐)委員 総理に伺いたいと思いますが、総理は、最初に、説明責任を果たしていかなければならないというふうにおっしゃいましたが、きょうのこの一連のお話を伺って、説明責任は十分だとお思いですか。そして、今後も農水大臣として西川大臣に続けていただきたいとお思いですか。

安倍内閣総理大臣 まず、大罪という言葉は取り消しになった方が私はいいんだろうと思います。

 それと同時に、先ほど来の答弁を聞いていますと、後藤委員は、補助金を受けたところ、一年以内、これは交付を受けてから一年ですね、これは知っていようが知っていないがだめだと言った。しかし、高市大臣の答弁では、知っているか知っていないか。私は当然だと思いますよ。受け取り側はわからないんですから、受け取り側は。

 これは外国人献金でも同じですね。御党の総理大臣が、御党の総理大臣二人、外国人から献金を受けていた。こっちの方は罰則は公民権停止ですから、国会議員の資格を失うという大変な罪ですよ。だったら、その場でバッジを外さなきゃいけないということになりますよ。あのときも、それは知らなかったというふうにおっしゃった。それは知らないことはあり得ると私は思いますよ。それは、例えばわなだってあるんですから。

 ですから、私は、北朝鮮の問題を取り扱うようになってから、入会の規約の中に国籍を有する者というふうに書いているわけであります。しかし、それであったとしても献金される場合もありますけれども、そう言っていたら、それをちゃんと、お渡しをしている私の規約にあるんだからこれはしようがないだろうというふうに理解をされるわけでありまして、この中で後藤さんに悪意を持てば、そういう方が献金しようと思ったら献金できるんだという実態を国民の皆様に知っていただかなければいけないんですよ、どういうことだと。

 一方的に西川さんを糾弾するのではなくて、これは、相手方がこちら側にやはり言ってもらわなければわからないということもあるんだ、わかったらそれは直ちに返すのは、当然、わかった段階で返さなかったらこれは違法になりますということを申し上げているわけでありまして、そのことそのものを大罪の一つとあなたは言っているではないですか。これはやはり潔く、まさに潔く撤回をされた方が私はいいのではないか、こんなように思うわけであります。

 先ほど申し上げましたように、今までも西川大臣が説明責任を果たすために努力をしてこられた、これからも説明責任を果たしていく、これは政治家として当然のことであろう、このように思うところでございます。

後藤(祐)委員 今、随分かばう発言をされたようでございますが、西川大臣にこれからも農水大臣をお願いし続けるということでよろしいですか、総理大臣。明確に質問に対してお答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、後藤委員が大罪と言った、これは大変なことですよね。罪を犯しているということを断定的におっしゃった。

 でも、その一つの罪として言った、まず、知っているか知っていないか。関係ないと言ったけれども、これはあなたの理解が全く間違っていたということは、高市大臣が答弁していたとおりであります。間違っていたことを前提に大罪と言った。これはもう、一つあなたの論点は全く前提が崩れているということを申し上げているわけであります。

 しかも、知っているか知っていないか、これが重要であるというのは、民主党政権時代に当時の総理がそうおっしゃっているわけであります。

 その意味において、私は、先ほど申し上げたとおりでありまして、これからも大臣として説明責任を、また国会議員として説明責任を果たしていく、これは当然のことであろう、こう思っているところでございます。

後藤(祐)委員 つまり、ずっと続けていただくということは明言されないということですね。

 なお、七つの大罪という言葉を使ったことについては、私が確かに言葉が行き過ぎた面があったことは謝罪申し上げます。これは疑惑という段階だと思いますし、ただ、何が違法なのかということについてがまさに議論になっているわけですから、あえてちょっと強い言葉を使ったことについては、謝罪申し上げたいと思います。私は、きちんと、言い過ぎたところについては、謝罪を申し上げる見識は持ち合わせているつもりでございます。

 では、次にNHKの話に行きたいと思いますが、まず、一月三日のNHK番組で、ある人気お笑いコンビの方々が、事前に用意していた政治家関係のネタについて全部没にされたと。これについて、籾井会長は、一月八日の記者会見で問われたときに、公共放送で視聴者もいろいろな方がいる、お笑いの人のギャグで、ある個人に打撃を与えるのは品性がないと思う、やめた方がいいと答えておられます。

 二月十八日の我が党の総務部門会議において、品性があるギャグと品性のないギャグがあるということを御発言されておられます。

 きょう、籾井NHK会長、お越しになられておりますけれども、品性のないギャグについて、つまり、政治家を風刺することについては放送すべきでないというふうにお考えですか。そして、それは表現の自由との関係においてどのようにお考えですか。

籾井参考人 まず、お笑いのネタの話については、私は新聞で読んで知りました。そして、そのときに、ちょうど記者会見で質問をされたわけですが、私は、政治家に関するネタに限らず、個人をおとしめている印象を与えかねない表現は品性がないということを指摘したにすぎません。

 放送法は、放送による表現の自由を確保することを明記しておりまして、このことは放送現場に徹底するように絶えず指示をしております。

後藤(祐)委員 やめた方がいいと明言されておられるわけですね。

 しかも、このお笑いコンビの方々は、後日、ラジオ番組で、自粛なんですよ、これは誤解してもらいたくないんですけど、政治的圧力は一切かかっていない、テレビ局側の自粛というのはありますけど、問題を避けるためのと。色濃くなっているのは肌で感じるねと応えておられるんですね。

 品性のないギャグはやめた方がいいとおっしゃったら、それは放送現場、制作する現場では、会長がおっしゃったことですから、当然それをそんたくして自粛される、そういったことがあると思いませんか、会長。

籾井参考人 今おっしゃったようなことは一切ございません。役職員は皆、公共放送の使命の重さを理解しております。あくまで放送法に基づいて、表現の自由を確保し、不偏不党、公平公正などの原則を守って放送に携わっていくものと考えております。

後藤(祐)委員 そうしますと、一月八日の記者会見で、やめた方がいいと言っておられますけれども、これは撤回されるということでよろしいですか。

籾井参考人 我々は、放送ガイドラインを踏まえまして、その都度、番組の責任者が総合的に判断しております。

 選挙期間中についても、取り上げ方に注意し、政治的公平性に疑問を持たれないように配慮するという決まりがございます。

後藤(祐)委員 一月八日の記者会見で述べられた、ある個人に打撃を与えるのは品性がないと思う、やめた方がいいという、このやめた方がいいという発言については撤回されますか。

籾井参考人 一般論として申し上げたわけで、何も、やめた方がいいということを彼らに言ったわけでも何でもありません。やはり、お笑いのネタというのは、ある程度の品性が必要だと私は思っております。しかしながら、これが放送の、言論の自由等々を妨げるようなことにはならないというふうな意味で申し上げました。

 先ほども答えましたが、役職員は皆、公共放送の使命の重さを十分理解しております。あくまで放送法に基づいて、表現の自由を確保し、不偏不党、公平公正などの原則を守って放送に携わっていくものと考えております。

後藤(祐)委員 ということは、品性のないギャグは放送してはならないということですか。

籾井参考人 政治家のネタに限らず、個人をおとしめている印象を与えかねない表現は品性がないということを指摘したにすぎません。

 放送法は、放送による表現の自由を確保することを明記しておりまして、このことは放送現場に徹底するように指示しております。

 この件につきましては、最初に申しましたように、私はその事実すら知らずに、新聞でそれを知っただけでございます。

後藤(祐)委員 何が品性かというのは大変難しい解釈でございまして、だからこそ、そういったことは余りお述べにならない方がいいにもかかわらずおっしゃったということは、今後、大変大きな影響を及ぼすということを懸念しております。

 次に行きたいと思いますが、二月五日の籾井会長の会見において、従軍慰安婦の問題について、正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えませんよね、そういう意味において、やはり今これを取り上げて我々が放送するということが本当に妥当かどうかということを本当に慎重に考えなければいけないと思っておりますと発言されておられます。

 これについて、二月十八日の我が党の部門会議の場においては、まずかったなと思うというふうに発言されておられますが、何がまずかったのでしょうか。

籾井参考人 最後の、まずかったなというのがどういう意味か、ちょっとよくわからないんですけれども。

後藤(祐)委員 これはきちっと通告しておりますし、当日、おつきの方もいっぱいいらっしゃって、そこの議事録なんかをちゃんととっておられますねということを私は事前に確認して、それを読んだ上で臨んでほしいということを伝えてあります。

 本当にちょっと私としてはまずかったなと思うのは、やはり政府のスタンスがどうだこうだと言ったことは皆様の誤解を招いていると思いますけれどもという発言についてであります。

籾井参考人 戦後七十年の関連番組につきましては、現場に内容を検討してもらっております。戦争の悲惨さと戦争の廃墟からの復興を伝えるものになればいいという期待を述べました。その際、従軍慰安婦問題についても取り上げる可能性を聞かれました。個別の番組の検討状況を把握しているわけではございませんが、戦後七十年という節目の中で、いつ、どのような形で取り上げるかどうか、よく検討しなければならないというのが発言の真意でございます。

 番組の制作に当たりましては、放送法にのっとり、事実に基づいて、自主自律、公平公正、不偏不党を貫くことに変わりはございません。一部の報道機関が伝えているようなことは一切ございません。

後藤(祐)委員 この二月五日の発言については、二月十日の経営委員会で、浜田健一郎委員長が、近日中に会長に真意を確認の上、改めて協議するとされましたが、浜田経営委員長、真意を確認されましたでしょうか。どのような真意であって、これについて経営委員長はどのようにお考えになったのか、あわせてお答えください。

浜田参考人 五日の会見での会長の発言については、先週、会長にお会いして真意をただしました。また、十八日の民主党総務部門会議の発言に関しましては、一刻も早く事態の収拾を行うよう要請いたしました。

 その内容を踏まえて、次回二十四日の経営委員会において、経営委員会としての対応を議論していきたいというふうに考えております。

大島委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、松木けんこう君。

松木委員 維新の松木けんこうでございます。

 西川大臣にちょっとだけ聞きたいことがありまして、いいですか。

 この間の委員会で西川大臣が、幾つかの会社の顧問等をお引き受けしたものはあります、とにかく、収入が突然途絶えたわけでありますから云々と書いてあるんですけれども、その中で、曖昧な記憶で申し上げるわけにはいかない、こういうお話をされておりまして、顧問等のことは後で調べた上でお答えさせていただきます、こういう御答弁をなされているわけでございまして、それを受けて大島委員長もちゃんとしなさいというようなお話をされたと思いますけれども、まだ出していないですか。

西川国務大臣 精査に次ぐ精査をやっておりますので、しっかり固まってから報告をさせていただきます。

松木委員 しっかり精査するのはいいんですけれども、では、いつまでに出すか。どうです。めどでいいですよ、大体。

西川国務大臣 できる限り早急に整えて、出してまいります。

松木委員 では、できる限り早くやっていただきたいというふうに思います。

 総理大臣もお戻りになられました。どうも御苦労さまでございます。

 西川大臣、あと、要するに、二〇〇九年の大体四月でもいいし五月でもいいですけれども、大体そのぐらいからどんな顧問を受けていたかとか、役員をどうしていたかとか、その対価は幾らだったかとか、そういうことを全部報告をしていただきたいんですけれども、いかがですか。

西川国務大臣 しっかり精査して、総合的に報告をさせていただく、こういうことで御理解をいただきます。

松木委員 では、なるべく早く御報告をいただきたいと思います。

 総理に、この西川さんのことで随分政治と金のことになってしまいましたけれども、まあまあ西川さんはそんなに悪い人ではないと思っていますけれども、企業献金、そして、何というんですかね、企業・団体献金、こういうものを、維新の党はみずから禁止しようということでそれに取り組んでいるわけでございますけれども、何をやっても、やはり疑惑だとか疑問だとか大罪だとか言われるんですよ、人間というのは。であれば、いっそのこと、この企業・団体献金はやめようという方向でもいいのではないかというふうに思うんですけれども、総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 大変思い切った御提案でございますが、確かに、法人、企業にしろ団体にしろ株式会社にしろ、組合も含めてさまざまな団体がございます。それは、それぞれの目的を達成するために恐らく献金をするから、そういうところの献金はやめた方がいいだろうということでありますが、では、民主主義のコストをどのように分かち合っていくかということだろうと思います。

 という中においては、例えば、自分たちの考え方をよく理解している方の政治活動を応援していこうというのは、これはやはり民主主義の世の中にあっては当然あるべき姿なんだろうな、このように思います。

 特に、日本の場合は法人社会的なところがあって、なかなか個人での献金というのは非常に難しいわけでありまして、大きな会社の社長さんであったとしても、なかなか自分の個人のお金で献金しているという人はそうたくさんおられないわけでありまして、ゴルフ場も日本は個人会員というよりも法人会員というのが結構ある、そういう社会でもあるという成り立ちそのものもあって、なかなかその中においては、今の段階では難しいということではないか。

 ただ、大切なことは、その中において違法なことがあってはならない、そして透明性を上げていく、これが大切ではないか、そして説明責任を果たしていくということが大切ではないか、このように思っております。

松木委員 そのとおりだとは思うんだけれども、やはり思い切って、政党助成金というのがあるんですから、こちらの方で、それでもお金というのはいっぱいあった方がいいんですけれども、しかし、そこは少し痩せ我慢も含めて、政治家も身を正していくということも大切なような気がするんです、私は。

 ですから、その方向性をちょっと、総理、若干考えてみたらどうですか。

安倍内閣総理大臣 松木委員は、かつては藤波先生の秘書もしておられて、私も当時父親の秘書をしておりまして、秘書仲間同士で存じ上げて敬意も持っているところでございますが、その中において、いわば民主主義のコストである政治資金をどのような形で集めていくかということにおいて、では、法人であれば問題があって、個人であれば果たして本当に問題がないかということであれば、個人が何かの目的を持って献金するということはやはり同じようにあり得るんだろうな、このように思います。

 そこで、なるべく私たちもいわば少額の個人の献金をふやすべくそれぞれ努力はしているところでございますが、しかし、今これをなくすということはなかなか難しいのではないか。

 そもそも、それについては、基本的にはやはり、これは民主主義のコストをどのように分かち合っていくかということでございますので、政党間、会派間において話し合いがされるべきものだ、このように思っております。

松木委員 わかりました。

 ただ、やはり政党助成金が入ったときの趣旨というのはありますので、これをもうちょっと大切になされた方がいいかなという感じはしております。しかし、コストはかかるわけですから、そうしたら、これは国民の皆さんに怒られるかもしれないけれども、変なことになるよりは、では政党助成金をもうちょっとふやすということもあり得るのかな、今の時代にはマッチしない話ですけれども、そういうふうにも実は思うわけでございます。こういうことを言ったら共産党の方に一番怒られちゃいますけれども。

 それでは、続けてお話をさせていただきます。

 総理は総理大臣を本当に一生懸命やっておられるんだと思いますけれども、若干ちょっと、やじに余り反応するというのは、これは墓穴を掘ることになりますので、私はやはり我慢された方がいいというふうに思います。そして、やはり先達の方々はみんなそうだったですよね。この国会というのは基本的に野党が活躍をする場であるという中で、与党の方々はぐっと我慢の子でやるところが多いというのが今までのことだったと思いますので、総理、そこら辺、ちょっと反省も込めて、どう思いますか。

安倍内閣総理大臣 そういう意味におきましては、私も、やじに反応する、これは反省しなければならない、このように思っております。いまだ木鶏たり得ず、全くまだ木鶏たり得ずという状況でございまして、私の至らなさについては深く反省するところでございます。

松木委員 深い反省の弁がありましたので、今度から気をつけて、頑張っていただきたいというふうに思います。

 その中で、辻元さんがいろいろなお話を聞いたときに、ちょっと総理も、大分かっかっかっとこられたんだなと思いましたけれども、しかし、辻元さんの言った中でも、ああ、これはちょっと、なかなか一理あるなというお話もありまして、例えば、辻元さんの言った中でこういう話があったんですね。公邸にお住まいになったらどうですかというお話がありましたね。これは、総理、どう思いますか。

安倍内閣総理大臣 公邸の使い方については、時々の総理それぞれの使い方があるんだろうと思います。かつて、佐藤総理も岸総理も公邸には住んでいませんでした。橋本さんも住んでいなかったわけでありますが、他方、中曽根総理、小泉総理も住んでおられた。

 私のライフスタイルとしては、総理大臣としてのスタイルは、公邸に泊まるときもあれば自宅のときもある。これは、夜の会合が公邸である場合は基本的に公邸に泊まっておりますが、しかし、当然、自宅の方がゆっくり休めるのも事実であって、十五分しか時間がかからないということもございます。そして、事実上ほとんど、形式的ではなくて、実質においては、サブスタンスにおいてはほとんど危機管理対応は変わらないんだ、私はこのように思っておりますので、今の形でやっていきたい、こう思っているところでございます。

松木委員 今総理が言ったとおり、それぞれの総理においてスタンスは違うわけですけれども、特に私は、中曽根内閣のときの官房長官の秘書を長くやらせていただきました。そのときは本当に、中曽根総理もそうですけれども、官房長官も含めて、公邸の方に住みまして、当時、こういうことをしゃべっていいのかどうかわからないですけれども、ちょっとあそこら辺というのは怖いんですよね、いろいろなことがありまして。そういうことも若干経験しながらも、一生懸命お二人はいたなというふうに思います。

 ですから、今までのことはいいです。これから長期政権を担おう、こういうことをお考えであれば、これはやはり公邸に住んでがっちりやるということも一つの選択肢ではなかろうかというふうに私は思うんですけれども、どうですか。

安倍内閣総理大臣 中曽根総理当時の総理公邸あるいは官房長官公邸というのは、アメニティー的には当時は非常に悪かった、このように思います。その中で、中曽根総理あるいは藤波長官のお考え方だったんだろうな、こう思うわけでございます。

 第一次政権のときの一年間、私はずっと公邸におりました。第二次政権においては今言ったスタイルでおりまして、第二次政権のときの方が私はうまくいっているのではないか、こんな感じもあるわけでございまして、そこで、実際に危機管理において支障があるということであればそれは確かに問題ではありますが、それは、実質の面においては、実質においては私はほとんど支障はない、こう考えている次第でございます。

 基本的には、常に緊張感を持って、正しい判断をしなければならない、このように思っております。

松木委員 はい、わかりました。

 それぞれのお考えですけれども、若干参考にしていただけたら私はいいかなというふうに思います。

 それでは、次の質問なんですけれども、韓国と日本は、いろいろと言い合いになったりして、なかなかうまくいっていません。その中で、総理は、いつでも話し合いの門戸はあいているんだ、ぜひ話し合いもしたいというお話をされているはずなんですけれども、どうでしょう、それでいいですね。簡単でいいですよ。

安倍内閣総理大臣 韓国は最も大切な隣国であり、何か課題があるからこそ首脳間で対話をすべきだ、このように思っておりますので、私は、首脳会談ができればいい、このように思っておりますし、日中韓の外相会談の開催の運びができました。それをまず首脳会談につなげていきたい、こう思っております。

松木委員 大変よろしいお答えだというふうに思います。

 その中で、沖縄県の知事との問題なんですけれども、安倍総理だけが会いたくないとかということではないということも聞いているし、相手の方にも若干問題があるんじゃないかというお話もどこかで漏れ聞いているんですけれども。

 いずれにしましても、私は、やはり沖縄県の知事さんと、まあいろいろなことが今ありますよね、ちょっと見解の相違もあります、十分にお話し合いをする、これはやはり大切だというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 翁長沖縄県知事は、自民党の県連の幹事長でもありました。また、市長選挙に、私は当時幹事長で、応援にも参りました。そういう意味においてはよく存じ上げているわけでございますが、その後のいきさつで、我が党と相対峙する立場をとられたという中にあります。

 今後、さまざまな段階を経る中においてお互いに信頼関係を醸成していくことも大変大切だろう、このように思います。

 今後、国と地元とがさまざまな取り組みについて連携を深めていく中で対話の機会が設けられていくものと考えているところでございます。

松木委員 ぜひ早目にそういう機会をお持ちになられた方がよいのではないかというふうに思います。

 戦時中でしょうか、海軍中将の大田さんという方がこういうことを言われていますね。沖縄県民かく戦えり、県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを、こういうお言葉も残しているんですね。

 ですから、沖縄のことに関しては、総理にしても官房長官にしても、やはり寄り添っていただいてやっていただく、それが非常に大切だなというふうに思いますけれども、いかが思いますか。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、松木委員が御指摘になったように、さきの大戦においては唯一の地上戦、激しい地上戦、沖縄県民の多くの方々が戦火の中で倒れられたわけでございます。大田中将のまさに最後の言葉であり、我々も拳々服膺しなければならない、こう思っている次第でございます。

 その中において、我々は、沖縄との約束である三千億円という目標はしっかりと堅持をしていくわけでございますし、沖縄の振興発展のために全力を尽くしていきたい、このように考えているところでございます。

松木委員 一日も早くお会いになって、何となく世の中では、今回の沖縄予算を削ったんじゃないかとかいろいろなことをどうしても言われますから、そういう誤解を解く意味で、なるべく早くお会いになるのが私は一番いいというふうに思いますので、どうか実現をしていただくよう、頑張ってください。

 それでは、次の質問に行きます。

 東日本の大震災の悲劇というのは、本当に大変なことだったんですね。

 そして、私個人の話になりますけれども、私のかみさんというのは福島県の大熊町出身なんですよ。ですから、私の、この四年で二人とも死んじゃったんですけれども、町議会の議長もやっていまして、本当に、最後に、やはり原発を誘致した一人という気持ちもあったんでしょう、一度みんなで避難したんですけれども、うちの父親だけまた戻っちゃいまして、二週間ぐらい行方不明だったということがあったんですね。

 このぐらい、津波の恐ろしさもそうなんですけれども、この原発事故の深刻さというのは本当に大変なことだというふうに思いますけれども、ぜひ、これからも、早くこの復興ということをしっかりやっていただきたいというふうに思っております。

 一言、お気持ちがあったら言ってください。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災からの復興、これは安倍政権の最重要課題の一つであります。特に福島においては過酷事故を経験したわけでございまして、何としても福島の復興をなし遂げなければならない、さらに加速させていきたい、こう思っておりますし、福島の再生なくして日本の再生はなしとの考え方のもと、全ての大臣が復興担当大臣であるとの意識を持ち、取り組んでいきたいと思います。

松木委員 これだけじゃないんですけれども、阪神・淡路とかいろいろとあって、防災ということが非常に大切だというふうに言われているわけでございますけれども、防災政策で、特に総理の方から、今、日本はこういうことを一生懸命やっているというようなお話があれば、どうぞお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災に際しては、災害対応に想定外があってはならないこと、そして、災害から命を守るための行動を一人一人が身につけていることが重要であるということ、被災者のニーズの変化や多様性に応じた支援が必要であるということ、そして、行政のみならず、地域、市民、企業による取り組みとの協働が必要であることを初め、さまざまな局面において多くの教訓が得られたと思います。

 これらの教訓を踏まえまして、あらゆる可能性を考慮して、南海トラフ地震、首都直下地震などの被害想定の見直しを行い、それぞれに係る対策を政府一丸となって進めているところであります。

 また、二度にわたる災害対策法制の見直しを行い、国が応急措置を代行したり、地方公共団体間の応援業務の調整に当たる仕組みの新設、そして、要請を待たずに都道府県や国が救援物資等を供給する仕組みの創設、高齢者等に配慮した被災者の援護のための基盤整備、さらには大規模災害からの恒久的な復興の枠組みの整備などの措置を講じてまいりました。

 災害対策は不断に見直しを行うことが重要であり、今後とも、私が国のリーダーとして先頭に立って、地震、津波を初めとするさまざまな大規模災害への対策に万全を期していく考えでございます。

松木委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 文部科学大臣にお話を聞きます。

 東日本大震災の最大の特徴は、これほどの地震と津波の規模というのがほとんど想定されていなかった点だというふうに思いますけれども、その意味で、御年配の皆さんも、過去に経験したこともありません。かなり古い歴史的な書物をひもといていかないと、過去の同規模の災害というのはなかなかはっきりしないというぐらいの大災害だったということなんです。

 こういった災害の脅威と向き合うには、やはり災害に対する基本的な、ある程度正確な知識を広く共有するということが非常に大切になってくるというふうに私は思っておりますけれども、特に、多くのお子さんたちの命を預かる学校の先生方、幼稚園や保育園の先生方が基本的な防災知識をしっかり持っていただくことは、私は何よりも大切なことだというふうに思っております。

 そこでお伺いするわけですけれども、発災直後、小中学校に防災の知識を持った方を一人ずつ、何か学校に置こうという話も実はあったんですね、あのときはたしか民主党政権だったと思うんですけれども。現実に今、どういう感じになっていますか、文部大臣。

下村国務大臣 御指摘のように、民主党政権下の平成二十四年四月に閣議決定された学校安全の推進に関する計画におきまして、一つは、全ての学校において、学校安全の中心的役割を果たす教職員が一定水準の知識や資質を備えることを目指す、二つ目に、地域の実情に応じて、外部の人材を活用した人的体制を充実する取り組みを今後とも進めていくことができるようにする、それに対して適切な支援を行う、これが明示されておりました。

 文科省では、これまで、各地域において、学校安全について指導的な役割を果たす教員等を対象とした研修会の実施や、また各都道府県教育委員会が行う研修会の支援などを通じまして、教員の防災に関する資質の向上を図ってきたところでございます。

 また、平成二十四年度から実施している実践的防災教育総合支援事業におきまして、学校防災アドバイザーを派遣し、防災訓練や防災マニュアルの作成を支援しているところであります。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

松木委員 そこそこ、いろいろとやられているわけですけれども、学校に配置するという話まで前はあったんですよね。

 これは、配置したら、えらい金がかかるんですよね。何でもお金の話は嫌ですけれども、結構かかるでしょう、大臣。幾らぐらいかかりますか。

下村国務大臣 この学校防災について、防災に関する資質を備えた教職員を中核として、学校全体で組織的な取り組みを推進することは重要だと認識しております。

 しかし、今御指摘のように、仮に防災の専門職員を教員として全公立小中学校に一人ずつ新たに配置した場合は年額で約一千四百四十億円、また、学年主任等と同様に、教員の中から防災関係の校務を毎日行う防災主任を全公立小中学校で一人ずつ選任した場合、この場合は年間で約十五億円必要であるというふうに推計されます。

松木委員 大臣、いずれにしてもかなりお金がかかるということだと思うんですね。

 そうすると、一番いいのは、やはり一般の先生方に基本的な知識を備えていただく、適切な避難措置などの対応がスムーズにできるようにするという考え方が一番多分合理的なんだというふうに思いますけれども、現在、お子さんの安全にかかわる学校、幼稚園、保育園の先生方が、防災に関する知識、こういうものを体系的に学ぶプログラムというんでしょうか、こういうものは今あるんでしょうか。

下村国務大臣 御指摘の、教職員が防災について学ぶ機会としましては、国や地方公共団体が実施する、管理職や学校安全の指導的な役割を担う教職員を対象とした研修会等がございます。

 教員養成段階におきましては、一部の大学において防災に関する内容を学ぶこととしている例もありまして、例えば、教職専門科目の中で学校の危機管理の一部として扱われているというところが多いようであります。

 学校防災のさらなる充実のためには、全ての教職員が防災に関する一定水準以上の資質を備えることが重要でありまして、文科省としても、今後、中教審の中で、養成、研修、各段階での防災に関する教育の充実について検討してまいりたいと思います。

松木委員 大臣はたしか、交通遺児の方々とか、学習塾の経営もされていますよね。こういう方が今、文科大臣をやっているわけでございます。私は結構だと思います。

 それであれば、ちょっと大臣個人の思いも少しお話しになったらどうですか、今。どうぞ、子供の安全に対して。

下村国務大臣 私、あしなが育英会の第一期生で、今、これはいろいろな災害遺児、東日本大震災で両親が亡くなった、また片親が亡くなった遺児が二千人近くいるんですね。その子供たちのための民間団体であっても、特に、レインボーハウスという、心のケア、これを岩手、宮城、福島につくってフォローアップをしておりますが、震災が起きてから四年近くある中で、やはり子供たちの心の問題というのは、今も抱えている子供はたくさんいます。

 その中で、いつ、どこで、どんな形で地震や津波があるかどうかわからない。そのときに、まず自分の命が大切だということで、これは岩手県の釜石の事例とか、過去、そういう形でてんでんばらばらに逃げて、そしてみんな命を守ったというようなことを含めた、まず自分がきちっとした知識を持って、いざ起きたときに、地域の地形とか、それから安全とか、また高台とか、それをしっかり認識させて、そしてもちろん、同時にそれは地方自治体でもフォローアップすることが必要ですけれども、子供たちに、しっかりとした自覚を持って対応していくようなきめ細かな指導を周りがすることによって、自立心を養いながら、いざというときには子供が、本人が判断して対応できるような、そういうことをしていくことが必要だというのを、そういう経験の中で感じております。

松木委員 次に、国交大臣の方にお伺いします。

 防災をハード面から担う国交省では、加えて地震や津波に関する防災教育にも力を入れておられると思いますけれども、こういったものを教育現場で生かす場面というのは、国交関係でどれだけあるんでしょうか。直接お子さんたちの社会科見学などの場を通じてのやり方、教師や保育士さんといった方々を通じてのやり方、それぞれあると思いますけれども、お答えいただきます。

太田国務大臣 ハードとともに、特にソフト対策というものが必要だというふうに思っていまして、学校の現場のお話がありましたが、地域というもとにおいてもソフトが非常に大事で、防災訓練とか防災教育、そして情報を提供する、そして避難体制を構築する、ハザードマップをつくる。

 そして、何よりも、今、釜石の奇跡という話がありましたが、群大の片田教授がやっていたわけですが、防災教育というのは子供のうちからやることが大事だというポイントが一つ。子供は、真っすぐにそれを受けて実践する。そして、もう一つは、今まで、こう動きなさい、ああ動きなさいという指示待ち型であったわけですが、それぞれが我が地域は何が危ないかということを知っていて、主体的行動型のそうしたソフト教育というものが大事だ。

 釜石の奇跡は釜石の奇跡なんですが、高知に黒潮町というところがありまして、そこで、三十四・四メートルの津波が来ると。学校で、毎朝、裏山に登るということを授業の前に毎日やって、三十メートル登って海に向かってヤッホーと叫べといって、きょうは三十何秒だとかいう競争をしているそうなんですが、身につけるということが大事だ。

 国交省としましても、そうしたソフトが大事だということで、講習会や現場の見学会などを開催するということで、大いにそうした行動をしていただけるようにということを企画し、努力をしているところでございます。

松木委員 それでは、総理にお聞きします。

 学校の先生方、保育園や幼稚園の先生方というのは非常に幅広い知識を必要とするお仕事かとは思いますけれども、資格取得の過程、大学や専門学校などで防災に特化して学ぶ機会というのはそんなに多くはないはずなんですね、今のところは。であれば、これをやはり御検討いただく。

 そして、その御検討をいただくときに活用できるものがある。それは何かというと、防災士という資格なんですよ。

 これが活用できますので、この防災士は、その名のとおり、防災に関する基本的な知識を修得するためのプログラムで、全国で既に十万人以上の方が資格を取得しておりますし、これは、もともとは、石原信雄元官房副長官、阪神大震災の際の兵庫県の知事だった貝原さんなんかが中心となって、そして私の師匠だった藤波代議士もこれにちょっとかかわっているんですけれども、こういう経済界からの支援なんかも受けながらつくった民間の資格なんですね。

 そして、これは、政府や自治体の中での豊富な経験をお持ちのお二人、ベテラン行政マンが中心となってできた民間の資格制度なんですけれども、結構行政側からも高く評価をいただいているようでございますし、愛媛県だとか大分県、こういうところは県を挙げて取り組んでいる資格なんですね。

 ぜひこれは、どうしても、災害というのは時間がたつと風化してしまう、そういうところがありますので、そうならないように、やはり防災教育というのはいつでも繰り返し繰り返し国民に働きかけることが必要だというふうに私は思っているんですけれども、その中心になるのはやはり民間の力を活用することだというふうに思っております。目の前に十万人の防災士というのが今もう育っておりますので、これをぜひ活用していただきたいというふうに思います。

 我が党でいえば、政調会長の柿沢未途君なんかも持っていますし、私も持っていますし、あと防災担当大臣の経験がある下地さんなんかも普及に取り組んでいますけれども、実は、二〇一二年、私が落選する前に勉強会を開いて三十回ぐらいでやったんですけれども、なかなか先生方は忙しくて、一番真面目に来たのが公明党の先生だったんですね。なかなか来ないんですよ。だから、政治家は口だけかな、こうなるんですよね。

 ですから、これは、場合によっては国会議員も含めて、こういうものを取るようなスキームをつくってもいいし、これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、どちらにしても、こういうことはやはり政治家が率先してやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますので、ぜひ防災士をうまく活用していただくようなことを考えていただきたいというふうに思います。

 そんな中で、国交大臣、公明党の皆さんはいつも真面目でした。ですから、それを代表して、では、今の国交大臣のお気持ちをお聞かせください。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

太田国務大臣 防災士は命を守るための専門的な知識を持っていて、そういう方々が地域にいる、身近にいるということは極めて大事なことだというふうに思います。

 全国に約十万ぐらいいるという状況でありますが、できるだけ多くの方が防災士として活躍していただけるように、それが大事だというふうに認識しております。

松木委員 総理、どうですか。この防災士というのはなかなか使えるでしょう。お答えを。

安倍内閣総理大臣 我が党からの参加者は何か少なかったようで、残念でございますが、防災の専門家が教育現場に指導助言を行うことは特に重要だなと思います。教育現場の防災意識を高める上で、かつ有効であると思います。

 このため、政府としては、防災士の資格を持つ者など専門的な人材を防災のアドバイザーとして学校に派遣し、防災訓練や防災マニュアルの作成を支援しているところでありまして、防災士を教員の資格要件にしたらどうか、そういう御意見もあります。

 そこまでは考えてはいないわけでありますが、しかし、全ての教職員が防災に関して一定の資格を備えることは重要であると考えています。何といっても、いざ、そういうときになったら、子供たちを守るのは先生方ですから、教員の養成、研修の各段階での防災に関する教育の充実について、今後、御指摘も踏まえて検討していきたいと思います。

松木委員 ありがとうございました。

 総理、これは本当に大切なことだと思うんですよ。というのは、日本というのは、もう本当に、地震一つとってもすごく多いんですよ。大体、マグニチュード五以上の地震というのは、世界の全部の中で二割が日本で起きているんですね。そして、地震全部の、世界、地球で起きる地震の一割は日本で起きているんです。このぐらいすごいんです。

 そして、あとは土砂災害とかもありますよね。何といったって、日本は急峻ですよね。本当に、タイとかだったら、洪水になったらなかなか水が引かないんですよね、そんなに高低差がないので。しかし、日本はすごいですよね。高低差がいっぱいあるので、すぐに土砂災害なんかも起きるわけでございます。

 防災のことは、これから本当に非常に大切なことになっていくと思いますので、安倍総理が中心となって、ぜひ頑張っていっていただきたいというふうに思っております。

 大体一分、余っているようでございますから、あと一分だけお話しさせていただきますと、これからも予算委員会はまだ続きますので、とにかく、総理以下、大臣の皆さんはやじには反応しないこと。これは大切ですよ、本当に。笑い事じゃなくて、本当に僕は大切だと思います。

 立派な皆さんですから、大丈夫とは思いますけれども、ぜひ、今回みたいなことで総理と何か言い合いになって、きょうはテレビ入りしていなかったのでよかったですけれども、これがテレビ入りしていたら、やはり国民の皆さんに余りいい感じじゃないですよね。でも、私は、やはり民主党の皆さんの言うこともわかりますし、これはお互いに気をつけていっていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

大島委員長 これにて松木君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 今、松木委員の方から防災士の話がありました。皆さんも余り御存じなかったと思いますが、私も、松木先生とは別の政治グループにおりましたので、今回の選挙の後、初めてお会いをしました。初めてお会いしたときに、松木委員の方からまずお話があったのが、足立先生、防災士、なった方がいいですよ、試験を受けた方がいいですよ、こういう御紹介がありまして、先生の防災士にかける思いは本物でございますので、ぜひ皆さん、きょうの質疑をよく御記憶にとめていただければと思います。

 きょうは、予算委員会をずっと傍聴させていただいて、大変残念ではありますが、政治と金の話がどうしても中心になっております。

 先ほど松木委員の方から、我が党の、維新の党の、企業・団体献金の禁止をきのうの党大会で決定した、こういう御紹介を申し上げました。

 若干補足をさせていただきたいんですが、決して、我々、政治資金の話を考えるときに、何か企業・団体献金がなくても政治活動ができるとか、いわゆるお金の多寡、そういうことを問題にしているわけでは全くありません。

 我々は、さきの昨年の十二月の総選挙で、身を切る改革を掲げて選挙を戦いました。その思いは、政治家に覚悟が要る。今日本が直面している課題は、安全保障、社会保障、経済の運営、また統治機構改革、いずれをとっても大変難しいテーマに直面をしているわけでありまして、こうした中で、政治家が身を切る改革、覚悟を示せないようでは国政を任せていただくには値しないという思いで取り組ませていただいておりますので、きょう、安倍総理初め閣僚の皆様、正確にその辺、御理解をぜひいただきたいと思います。

 総理、冒頭、今申し上げたように、今日本は大変難しい課題に多々直面をしております。

 きょう、私、民主党の皆様と農水大臣初め閣僚の皆様とのやりとりを聞いていて、何か昔、かつてこういうことがよくあったな、そういう気がしました。五五年体制という表現がいいかわかりませんが、五五年体制の亡霊がこの予算委員会に徘回をしている、そうした印象を強く持ちました。

 我々維新の党は、そういうことをしている場合ではない、そういう思いを強く持ちましたが、総理、この点いかがですか。

安倍内閣総理大臣 予算委員会ですから、ぜひ建設的な、対案をぶつけ合うような、そういう議論をしていきたい。かつての五五年体制のような、ああしたいわば固定的な概念の中における議論ではなくて、まさにお互いに未来に向けた議論をしていきたい、このように思っております。

足立委員 私、これまで安倍総理にこの予算委員会の場で二回、きょうは三回目の質問をさせていただきますが、過去の二回、少し反省があります。少々持論に時間を使い過ぎまして、御答弁を深掘りしていく時間がなかなかとれなかった。きょうは、そうした意味で、私の方から通告を細かくさせていただいておりますので、きょうは簡潔に質問申し上げますので、御答弁をいただければと思います。

 まず、私は今、アベノミクスという言葉が最近は余り使われなくなった等の報道もありますが、アベノミクスは大変重要だと思っています。絶対にこのアベノミクスを失敗させてはいけない。まさに民主党の前原委員がよくおっしゃっている、塗炭の苦しみに国民を陥れる、そういう面が経済運営にはある、これは事実だと思います。しかし、大事なことは、この予算委員会、国会に集っている我々が力を合わせてアベノミクスを成功させることだと思います。

 その点で、私が今一番注目しているテーマの一つが労働規制改革であります。

 今、例えば派遣法、結局、国会でもみくちゃになって、何回国会に上程をされても、いまだに通過をしておりません。資料の一枚目にもつけておりますが、もしこの国会で派遣法が成立しないようなことがあれば、これは労働市場に大変な混乱をもたらすわけでありまして、総理、今国会に幾つか上程をされております労働法制を初めとする労働規制改革、ぜひやり遂げていく、それをてこに経済の好循環をつくっていく、その御決意をぜひ御披露ください。

安倍内閣総理大臣 今まで労働法制について、改革についてはどうしても誤解があった、我々が十分に説明し切れなかったという反省がございます。

 現在政府が進めている雇用制度の見直しは、あらゆる人がワーク・ライフ・バランスを確保しながら、それぞれのライフスタイルや希望に応じて、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を目指すものであります。強い決意を持って改革を断行していきたい、このように考えております。

足立委員 御決意はお聞きをしましたが、ただ、若干、私、余り今の政権、安倍政権は、アベノミクスは応援しているわけですが、個々の改革については必ずしも完全に信用しているわけではありません。

 例えば労働規制改革一つとっても、過去に与党は、例えば解雇の金銭解決、これは解雇の金銭解決というのは実は間違いなんですね、解雇紛争の金銭解決でありまして、これは、経営側ではなくて、むしろ労働側の皆様に役に立つ制度のはずなんだけれども、首切り法案と、まさに今総理がおっしゃったように、ひどい、マスコミの報道も悪いと思います。そうしたものに流されて、結局、解雇の金銭解決は制度化をなされていないんですね。

 ぜひ、総理、御在任中に、解雇紛争の金銭解決も含めた、本当に今の時代にふさわしいそうした雇用制度をつくっていかれる、改めて、その点、確認をさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに解雇の紛争解決については大変な誤解を生んだわけでございます。これはマスコミ等の報道の仕方も随分影響したわけでございますが、解雇などの労働紛争を解決するシステムのあり方については、雇用慣行が不透明であるという指摘に対応して、現在、実態の調査を行っています。その結果を踏まえて、雇用の安定に資するよう検討を行っていきたい、このように思っております。

足立委員 きょうは雇用の問題を掘り下げるつもりはありませんが、実は、どうしてもこの場で確認をさせていただきたいテーマがもう一つあります。

 実は、総理、今回、安倍政権、安倍総理は農協改革に大変お力を入れられて、施政方針演説においても多くの分量をとられました。一方で、医療や介護、福祉、そうした分野においても、この国会においては、医療法を初めとして大変重要な法案が上程をされると仄聞をしております。

 その中に、非営利のホールディングカンパニー、これは、きょう、小泉政務官、お越しをいただいていますが、実は昨年の厚生労働委員会で、何度も小泉政務官と不肖私がお時間を頂戴してこのテーマを掘り下げてきました。きょう、資料にも実は私と小泉政務官のやりとりの一部を抜粋してつけさせていただいております。

 私は実は、小泉政務官、この今回上程されるであろう新しい法人制度、いわゆる地域包括ケアという地域の医療、介護、福祉を何とか下支えしていくための新しい制度です、規制改革会議、それから内閣府のいろいろな会議でも何度も議論されてきたこの新制度が法案につくり込まれて出てきておりますが、内容に大変不満があります。

 まず厚生労働大臣、小泉政務官に伺う前に、塩崎大臣、なぜ、この新しい制度に、新法人の中に非営利法人しか含まれなくて、株式会社を初めとする営利法人はメンバーに加われないのか、明快に御答弁いただけますか。

塩崎国務大臣 今回法案を提案させていただこうと思っております医療法の改正でございますが、営利を目的として病院等を開設しようとする場合には、今の医療法では開設の許可を与えないことができることとなっておりまして、これは、利潤を最大化する株式会社は必ずしも患者に必要な医療を提供しないおそれがあることなどが理由でございまして、医療においては非営利性を堅持するということが原則となっているところでございます。

 今回の地域医療連携推進法人制度におきまして、地域の医療機関を開設する複数の法人が医療機能の分担、そして業務の連携を推進するものでございますので、ここに参加をする法人は非営利性を堅持することが求められているものであって、営利法人は参加できない方向で今検討をしているということでございます。

足立委員 釈迦に説法でありますが、厚生労働大臣に申し上げるのも僣越でございますが、御承知のとおり、今、医療については、かつて株式会社の参入の議論があったものだから、厚生労働省は医療法人制度をますます非営利の方向へ非営利の方向へとシフトさせることをしてこられました。しかし一方で、介護については株式会社が既に参入をしております。そうしたものが一体となって地域包括ケアをこれからつくっていくんですよね。

 今介護の現場で実際に業務を担っていただいている民間事業者の方、営利事業者の方々を、どうしてこの地域包括ケアのインフラである新法人から除外するんですか。おかしくないですか。そもそも、医療と介護、これは、私は厚生労働省の大方針はおかしいと思うんですよね。

 医療法人はこれまで、非営利とはいいながら、解散時の分配はできるハイブリッド型、一定の営利性があったんです。一定の営利性があったにもかかわらず、株式会社の参入ということを余り言われるものだから、解散したときにもうやめようということで、非営利性を徹底するという方向に行かれています。

 一方で、今介護を担っていただいている分野は、以前は福祉の世界でした。すなわち、公的な機関がやっていたわけです。そうした公的な分野から介護保険をつくり、株式会社の参入を認めた。

 介護が公的な主体から株式会社にどんどん移ってきているにもかかわらず、医療は、営利性があるものから、ますます非営利の方向に行っている。地域で一緒に介護と医療をやろうと言っているときに、老健局と医政局が逆を向いていて大丈夫ですか、大臣。

塩崎国務大臣 今回の非営利、かつてはホールディングカンパニーと言っていた制度でございますけれども、この際には、これは成長戦略の中で閣議決定までされておりますけれども、その文書をごらんいただいても、そのように、医療の法人の枠組みの中でこれをやるということになっておりますから、先生お配りの非営利ホールディングカンパニー型法人という中の四角の中も、実際は、医療法人、医療法人、それからここはやはり非営利の社会福祉法人、その他の非営利法人だけが入っておりまして、外に株式会社で、出資はできるというような形になっている、そういう形で決めたものでございます。

足立委員 今大臣がおっしゃったのがおかしいと私は言っているんです。

 恐らく小泉政務官は御理解されていると思いますが、もし、この制度であれば、医療法人が出資をする一〇〇%子会社、いわゆるメディカルサービス法人と言われている、例えば、徳洲会の例を挙げるのがいいかわかりませんが、徳洲会というような医療法人があったけれども、実は株式会社徳洲会が仕切っていたんですよ。それで問題が起こったわけです。したがって、株式会社と医療法人の問題というのをしっかりと整理していく必要があるんです。

 そのときに、小泉政務官とよく議論をしたのは、非営利のかさをかぶせればその中は自由でいいですよねということで、きょうもつけさせていただいている議事録に、私がそういうことでいいですねというふうに申し上げたら、当時、小泉大臣政務官が、内閣府の政務官が、端的にお答えすればおっしゃるとおりである、排除しないとお答えをいただいたので、私、当時この質疑をこれで打ち切ったことをよく覚えております。

 さて、法案が出てくると全く違う。非営利法人の子会社はオーケーだけれども、今既に地域で活躍している営利法人は仲間に入れない。これは、小泉政務官、ちょっとイメージが違わないですか。

小泉大臣政務官 足立委員とは、先ほど委員がおっしゃったとおり、何度も昨年の厚生労働委員会で、私の所管外の委員会でありましたが、お呼びいただいて議論をさせていただきました。

 そのときの議事録をきょうは添付されておりますが、これは最初からよく読んでいただければおわかりだと思いますが、非営利ホールディングカンパニー型法人、これは先ほど厚生労働大臣の方から御説明がありましたとおり、二月の九日の厚生労働省の報告の中で地域医療連携推進法人という仮称で書かれていますが、そもそもなぜ新型法人を創設するのか。その目的は、先生が先ほどお話をされたとおり、医療、介護サービスの効率化、高度化を図り、地域包括ケアを実現する、これに基づきまして、閣議決定の中で、日本再興戦略の改訂版、この中に位置づけたものであります。

 その閣議決定の中には、非営利ホールディングカンパニー型法人制度への多様な非営利法人の参画を可能とするため、医療法人等の現行規制の緩和を含む措置について検討、こういうふうに書いてあります。

 この前の二月九日の厚生労働省の検討会で取りまとめられた報告書の中には、新型法人における議決権の柔軟化、グループ全体での貸し付け、出資等、関連事業を行う株式会社への出資など、医療法人制度一般には認められていない柔軟な取り扱いが可能な仕組みが提案されていますので、閣議決定に沿った検討が進められていると承知をしております。

足立委員 小泉政務官ほどの方がなかなか、まあ役所の理解はそうです。役所の理解はそうですが、私の質問は、今、社会福祉法人と、総理、これは後で総理にも伺いますから。今介護の現場を見ると、御承知のとおり、社会福祉法人と営利の会社が一緒に切磋琢磨してやっています。この案では、大きなグループの中に、社会福祉法人が持っている会社は仲間でいいよ、でも、社会福祉法人の傘下にない会社はだめよ、こういうふうになっているんですよ。私は、しっかりと後者についてもカバーできるような制度に見直すべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど先生、法案が出てきたらとおっしゃいましたが、まだ今検討中でございまして、中身についてもまだ、これからさらに議論を重ねていかなきゃいけないところがございます。

 言うまでもなく、非営利性を確保する中で、先生おっしゃるように、今回は言ってみればガバナンスの改革でありますので、議決権とかあるいは資金融通とか病院の効率化とか、いろいろな形で今までの規制を突破していこうということでやらせていただいて、先生がおっしゃるように、非営利性の網はかけた中でどう規制緩和、改革が行われるかということだというふうに思います。

足立委員 細かい話は、また委員会あるいは一般質疑でやらせていただきますが、何のためにこの新しい法人をつくったかといえば、その法人の中の取り扱いについて柔軟化するためにやっているわけです。全体で非営利にしているんだから中は柔軟でいいはずなのに、中も全部非営利にしているのが今の制度なんです。

 既存の非営利、すなわち医療法人や社会福祉法人がますますドミナントになっていく制度であって、大変今、介護分野を担っていただいている営利の会社さん方に失礼な制度であって、もし本当にこのまま法案が審議に付されるのであれば大変問題が大きいということを指摘申し上げたいと思います。

 総理、今申し上げたのは大変細かいといえば細かい話でありますが、大変重要なテーマです。今、農業、ヘルスケア、エネルギー、それぞれの分野でサービス提供サイド、供給サイドの改革を総理が陣頭指揮をとって進めていただいています。農協改革についても、これからそれが本当に農業の改革につながっていくのか、国民は本当に固唾をのんで見守っているわけであります。

 先日、私の役所の先輩でもあります自民党の農林部会長齋藤健委員が質問されたときに、御自分の夢ということを語られました。私、党は違いますが、また先輩でいらっしゃいますが、大変感銘をいたしました。

 農水大臣、この間齋藤部会長がおっしゃったこと、異論はないですよね。一応念のため。短くで結構ですよ。

西川国務大臣 それでは、短く答えます。

 私は、農業基本政策委員長をやり、農政一筋でやってきました。農林水産大臣になっても、この間齋藤健委員がここで述べられたこと、常々私が申し上げていることでございまして、考え方は一致しております。

足立委員 ありがとうございました。安心しました。

 私が今申し上げた農業、医療・介護・福祉、そしてエネルギーという三分野の改革は、大変難しいと思っています。先ほど冒頭申し上げたような、やはり我々政治家に相当な覚悟がなければ、本物の、実態を変えていく、現場を変えていく改革は絶対にできない、そのように思っていますので、それぞれの分野、しっかりまた委員会等で質疑を申し上げます。

 総理、今申し上げた三分野、それぞれ今総理が恐らく焦点を当てられているのは、しっかり農協が中心になって経営を改革していける、そういったものを念頭に置かれているのであれば、農協だけじゃなくて、農協、医療、全体に係る経営の改革にかける総理の御見識、御見解、ぜひ一言お願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 経営という切り口で見た場合、農業であれば、消費者の利便そして消費のニーズにしっかりと応えているかということが大切だろうと思います。医療においては、まさに患者さんたちの要望に応えられるか、介護においてもそうです。この観点からもしっかりと経営の健全化を行っていかなければならない。

 ただ、医療、介護分野と農業が違うところは、医療、介護分野は給付の世界であります。農業は違います。ですから、こちらの方は給付の世界でありますから、どんどん売り上げが大きくなれば保険料等にもはね返っていくということでありますから、これはまさに、そこで、いわばこの公益性等も勘案に入れつつ改革を行っていきたい。

 いずれにいたしましても、農業においては、若い皆さんも自分たちの努力や創意工夫で新しい地平線を切り開くことができる、そういう分野にしていきたいし、医療の分野においても、患者さんたちのニーズにもっともっと応えられるような、そういう医療そして介護にしていきたい、このように考えております。

足立委員 御決意はわかりますが、先ほど御紹介したような点、ぜひ閣僚のレベルでも改めて議論していただいて、私は、このままではヘルスケアはうまく改革できない、私の意見ですが、改めて申し上げておきたいと存じます。

 先ほど、維新の党の改革の話を申し上げました。我々、大体、政治家の給料、定数、三割、三割と申し上げております。

 我々が三割と申し上げる理由は、国民の皆様に一割の負担をお願いするのが消費税であります、国民の皆様に一割の負担をお願いするのであれば、行政のサイド、公務員の皆様もしっかり無駄を排して歳出削減をやっていっていただく必要がある。例えば、維新の党がよく言っているのは、公務員については二割の給料カット、そしてそれを実現するためには政治家は三割だということで、一、二、三と、ざくっと言えばその程度の話でありますが、逆に、今これから覚悟を持って日本の行政を、また現場を変えていくためにはその覚悟が要ると申し上げているわけです。

 その際に、実は現場で、各地域で今大きな問題になっていることの一つに、現業職の給与の問題があります。

 行政職については人事院が官民比較をやっておりますが、端的に伺います、今、現業職の官民給与比較、これは政府としてやっておられますか、総務大臣。

高市国務大臣 地方公務員のいわゆる現業職員、つまり技能労務職員等の給与につきましては、これは一般行政職と異なりまして、労使交渉を経て労働協約を締結できることになっております。

 ただし、法律上、職務の内容や責任に応ずるものとしなければならず、また同一または類似の職種に従事する民間従業者との均衡を考慮して定めなければならないとされていますので、これは、総務省から各地方公共団体に対してしっかりと、給与について、民間との比較に当たってどういう手法でやるかということも含めて、それからまた、民間給与のデータと比較した給与情報を開示するということも含めて要請をしてまいりました。

 直近では、二十六年十月に要請しています。

足立委員 今、高市大臣がおっしゃったことはもちろん承知していますが、それは参照する程度の話で、それは賃金センサスの話だと思いますが、実際に今、行政職でやっているような官民給与比較をやっていますか。やっていないということで今理解してよろしいですか。ちょっと明確に御答弁、一言で結構です、やっているかやっていないか。

高市国務大臣 やっておられます。

 各地方公共団体に対して、私たちは、法律上、強制はできません。いろいろな手法を示して要請をしているということでございます。

 地方公営企業法三十八条、それから地方公営企業等の労働関係に関する法律七条、附則五項等で技能労務職員等の給与について取り決めがございます。その中で、各地方団体に対して、ちゃんと民間給与データと比較した給与情報を開示するという取り組みを徹底することを要請しております。

 平成十七年九月、平成十九年七月、そして、私が就任しまして去年の十月にも要請をいたしております。

足立委員 ちょっとよくわかりませんね。

 国はやっていないが、要請はしている。その要請先はやっているんですか、やっていないんですか、どっちですか。やっているのであれば、具体的にどこがやっているのか教えてください。

高市国務大臣 私が申し上げているのは、各地方公共団体の現業職員の話でございます。総務省でございますから、各地方公共団体の現業職でございます。(足立委員「いや、もちろんわかっています」と呼ぶ)

大島委員長 足立君、ちょっと、答弁をちゃんと聞いてから、手を挙げて質問をしなさい。

高市国務大臣 しっかりと民間比較なども取り組みを徹底するということを要請してきておりますし、実際に、その結果、給料表の見直し、これも二十六年四月時点で六二・二%がいわゆる行(二)と言われる給料表に切りかえておりますし、見直しは着々と進んでいると思います。成果も上がってきていると考えております。

足立委員 局長はいらっしゃっていますか、総務省。参考人、入っていますよね。役所で結構です。

大島委員長 足立君は呼んでいません。

足立委員 そうですか。最大の失敗だと思います。

 高市大臣、今レクに入っていますね、私は事務的には比較をしていないと聞いているんですが、ぜひ大臣、これは大事な、せっかくこの機会にお時間をいただいていますから、実際にやっているのであれば、どこがやっているのか、ぜひ教えてください。お願いします。お願いできますか。

高市国務大臣 きょうは、具体的に地名も挙げてということで通告をいただいておりませんので、また改めて御報告申し上げます。

足立委員 私は、既にこの問い自体はしっかりと通告をして、事務方ともしっかり議論して、準備をしてきているんですよ。だから、ぜひ、大変残念至極なんですが、あしたも予算委員会一般質疑があって、時間をいただいていますので、そこでじっくりやりたいと思います。

 実は、例えば、きょう大阪で大阪市長がこの件を取り上げて記者会見をやっておりますが、大阪府市ではできていません。恐らく、日本じゅうの都道府県が現業職の比較はできていません。もし違えば、また修正していただいたら結構だと思いますが、高市大臣、もしできていなければちゃんとやっていただけますか。

高市国務大臣 その手法については、特に現業職、職種が非常に多うございますので、その中で、民間との比較が困難であるというお声はいただいております。

 しっかりと要請をしてまいりたいと考えております。できるだけのところにやっていただけますように要請をしてまいりたいと思います。

足立委員 できていなければしっかりやっていただくように努力するということを明言いただきました。

 次に、時間もなくなってまいりましたが、昨年の地方自治法改正で、都道府県と政令市との調整会議というものが設定をされて、来年の春から施行をされます。それに関連して、今各地で、その調整会議をそれぞれの都道府県でどうしていくんだということがけんけんがくがく議論になっておりますが、ある都道府県、そして政令市で条例が上程をされております。

 既に総務省にはお示しをしておりますが、一般論として申し上げて、私、この条例は大変問題があると思っています。政令市と都道府県知事の一緒に入った会議で決定をすれば、知事にそのテーマについての議案提出義務が発生する、そういう条例を検討している、あるいは上程した地域がありますが、こういったタイプの条例、これは問題ありませんか。

高市国務大臣 具体的に申し上げて、今条例案が大阪府議会に提案されているということで、総務省にお問い合わせをいただいたと思います。

 個別の条例案の内容について、いいとか悪いとか言うことはできません。一般論でございますけれども、まず、やはり、指定都市都道府県調整会議、これは二重行政の解消のために指定都市と都道府県の間で事務処理に必要な協議を行うもので、この協議事項について調整会議の中で合意されましたら、その当該合意を踏まえて、指定都市及び都道府県において適切に事務を執行すること、これは必要でございます。

 ただ、今、知事の議案提出権の観点からの御質問だと思うんですが、これも一般論として申し上げましたら、地方自治法第百四十九条の規定で、首長さんには、地方公共団体の議会の議決を経るべき事件につきその議案を提出する権限があるとされておりまして、何らかの条例を定めるのであれば、この法令との関係を慎重に検討する必要があります。

 ただし、そもそも、この指定都市都道府県調整会議は地方自治法を根拠にしておりますので、条例を定めていただく必要もございません。

足立委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったこと、なじみのない方は若干わかりにくかったかもしれませんが、今大臣の方から、私は大阪の話を持ち出すつもりはありませんでしたが、この場は一般論として、でも、一般論としては大変重要なテーマでありまして、地域で調整をするといっても、知事の議案提出権を侵害する、知事の権限を侵害するような構成はあり得ない、実際に地方自治法で仕組まれている内容はそういうことにはなっていないわけでありまして、今大臣の方から、大変課題があって、慎重に検討していってもらわなければならない、こういう御答弁をいただきました。

 さらに、今大臣の方からおっしゃっていただいたのは、地方自治法というのは、まさに、大都市、政令市がより円滑に知事とコミュニケーションをとるために、大臣の勧告、大臣の介入を求めるようなことができるという規定であって、それ自体は大変すばらしいわけでありますが、全く地域に条例をつくることなど求めてもいないわけであります。

 先ほど大臣の方から御紹介があった大阪の条例では、この大阪の会議は、地方自治法の改正によって設置される指定都市都道府県調整会議に相当するものと位置づけているということで、言ったら、完全にこの地方自治法の規定にひっかけて、似て非なる、地方自治法上課題のある調整会議を提示していることを、大変大事なテーマでありますので、ここで確認をさせていただきました。

 あと若干時間がございます。きょう、私、大学の先輩でもあります太田大臣もいらっしゃるので、ちょっと時間が限られていますが、実は、この予算委員会で我が党の冒頭に立ちました馬場国対委員長、馬場委員が、リニアの話を申し上げました。これでまた地域の話を取り上げるつもりは全くありませんが、実は、リニアというのは、釈迦に説法、大臣もその馬場委員に対して言及をされました、土砂の問題というのがあります。

 これは実は大変無法状態になっていまして、私の地元もそうですし、横浜市でもそうです。土砂が崩れて、生活が、いろいろ被害に遭っている方が多くいらっしゃる状況であります。大臣、何とかこの改善をお願いできないでしょうか。

太田国務大臣 リニアの残土問題は、またこれは残土問題ということに一つはなります。これは技術的にさまざまな、リニアが、東京―名古屋間の工事自体についても、環境の問題あるいは建設発生土の問題、私も同じ京大土木でありますけれども、その土質の問題、利用の問題、どこから運ぶか、さまざまなそういう問題があります。

 足立委員から前国会で指摘もいただきました。建設の中で発生する残土という、これはリニアに限らないわけですが、そこが無法状態というか、簡単に言えば、ほっておかれて、勝手に置いて、それがなかなか規制がされない、そうした事例が昨年もあった、これについて何らか手を打たなくてはいけないんじゃないか、こういうことだったと思います。

 私、去年の話も聞きまして、過去の残土崩落事案、あるいは既存法、こうしたことについて調査を行うという約束をさせていただいて、今調査をさせていただいております。

 過去の残土崩落事案につきましては、情報提供を受けまして、去年はネットで調べたということだったんですが、ちゃんと調べまして、平成十三年以降二十一案件ということでございます。改善を求めていたものが十六件あったということであります。

 これから、これについては関係する省庁もございます、これについてどういう形で対応していくのかということについて、運用ということもございましょうし、あるいはまた法改正ということもあろうというふうに、御指摘はそういうことだったと思いますが、さまざまな角度で、この放置残土というものがあったり、そして被害が起きないようにということについて、さらに検討を進めていきたい、このように思っているところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 この問題、実は、特定地域の問題ではなくて、大変大きな問題を抱えています。

 一点だけ申し上げれば、これは国で法整備をするのが一つの選択肢ですが、もう一つ、今各地で条例をつくっています。大阪もつくりました。しかし、地方自治法の上限があって、罰則の上限が百万円と二年の禁錮、この上限があって、各地の知事さんたちは大変苦慮をされておられるわけであります。ぜひ、国で法律をつくるのか、あるいは抜本的に地方自治法の罰則の上限を引き上げていただくのか、どちらかの措置をお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

大島委員長 これにて足立君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました維新の党の井坂信彦です。

 本日は、総理以下全大臣がおられる基本的質疑の日ですので、複数の省庁にまたがる中長期的な重要課題について議論をさせていただきたいと思います。

 突然ですが、今お配りをした資料、漫画の「サザエさん」の波平さんの年齢は何歳ぐらいだと思われますでしょうか。実は、これはさすがに御質問は申し上げませんが、五十四歳ということであります。もっと年をとって見えるわけであります。仮に波平さんが安倍内閣、ここの閣僚席に座りましたら、下から三番目に若い、若手のホープだ、このお顔で、こういうことになるわけであります。

 ちなみに、サザエさんのお母さんのフネさんは四十八歳、それから、マスオさんの同僚の、あのタラコ唇の穴子さんは二十七歳という設定であります。

 本日のテーマは、労働力の未来ということです。日本の労働力の質と量を今後どうやって確保していくのかという問題であります。

 まず、高齢者の再定義ということについてお伺いいたします。

 超高齢化で、六十五歳以上の高齢者はふえる一方、そして六十五歳未満の働く世代は減る一方。今後、足りなくなる労働力を補うために、外国から移民を入れることの是非まで今議論にちまたでは上ってきております。

 移民の前に、やるべきことがある。先ほど話題にした「サザエさん」は、戦後間もなく新聞連載が始まった漫画です。確かに、その当時の五十四歳の男性は波平さんのような見た目だったのかもしれません。四十八歳の女性はフネさんのような見た目だったのかもしれません。

 しかし、現在、私も土日、地元を一軒一軒回っておりましても、七十歳、八十歳でも本当に元気に活動しておられる方が多いわけであります。私の父も、六十六歳でありますが、もうどうにも高齢者と呼ぶ感じがいたしません。

 お配りしたこの資料の右側を見ていただきたいんですけれども、高齢者の運動能力がここ十五年でどれだけ伸びたかというグラフであります。右肩上がりですごいなという見方だけではなくて、世代を超えた比較が大事です。横向きに赤い矢印を一本描き加えました。現在の七十から七十四歳は、ちょうど十三年前の六十五から六十九歳と同じ能力であります。

 また、エピソード記憶は衰えるものの、意味記憶や体で覚えた記憶、こういったものは八十歳でも衰えない、こういう研究もございます。また、調和性、誠実性、感情の安定性などは、これはもう、どんどんどんどん、七十、八十、九十と伸び続ける、こういう研究結果もございます。

 総理にお伺いいたします。

 高齢者の活用、これは今政権の課題でもよく上がってまいりますが、そもそも六十五から六十九歳を生産年齢人口とみなす、このような高齢者の定義見直しの御検討はありませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 確かに、肉体的な能力、これは時とともに随分変わってきたと思います。私は今六十歳で、委員より二十歳ほど上でございますが、私が子供のころの六十歳というのは大体みんな引退をしており、家でゆっくりという状況であったわけでありますが、今、私もまだまだ元気だ、こう思っておりますし、隣の麻生副総理も大変元気で活躍しておられます。

 ここで、高齢者が大きく増加することを背景に、医療、介護、雇用など、生活全般にわたり高齢者にかかわる制度や施策が実施をされていますが、法令上はこれらに共通して年齢で定められる高齢者の定義はないわけでございます。

 人口減少が見込まれる中、一人一人が生き生きと暮らせる社会をつくっていくためには、年齢にかかわらず、意欲や能力を最大限生かすことが重要だろう、こう思います。高齢というだけで一律に捉えて、支えが必要な人とする固定的な高齢者像を変えていく必要があるでしょうし、個々の状況に応じて支える側にも立っていただかなければ、日本はまさにやっていけなくなるんだろう、こう思います。その意味における国民の意識改革は進めていく必要がある、こう思います。

 今後とも、各制度、施策ごとに、その趣旨や仕組み等に応じまして対象者等の範囲を適切に定めつつ、年齢にかかわらず一人一人が個性を発揮できる活力ある社会をつくっていきたいと思っております。

井坂委員 賛否両論ある話ですし、社会保障や労働法制にも大きな影響がございます。しかし、昨年十一月に出された経済財政諮問会議の下の「選択する未来」委員会の報告書にも同じようなことは実は書かれております。高齢者の定義見直しをした場合としない場合とで何がどう変わるのか、こういったことをぜひ検討してみていただきたいと思います。

 続きまして、移民政策の基本方針について伺います。

 現在の日本の移民政策は、基本的には平成十一年の第九次雇用対策基本計画のままだというふうに伺っています。すなわち、単純労働者の受け入れは国民生活に多大な影響があるので十分慎重に対応すべきという基本方針であります。

 しかし、現在、政府は、決して移民とは言いませんが、ことし四月から東京オリンピックに向け建設労働者を受け入れていく。

 それから、技能実習生の受け入れは、これは建前は日本のすぐれた技術を開発途上国に伝える国際貢献とされますが、しかし、十五万五千人の技能実習生、これは実に七割が中国の方で、そして、現場の声としても、もう単純労働力として期待をされてしまっている現状があります。

 また、介護の人手が足りない中で、技能実習生に介護も含めるかどうか、もう国際貢献とは随分違う議論まで始まっております。

 国家戦略特区に家事支援の外国人のメードさんを受け入れる話は、これはもう人手不足も必要性も本当にあるのかと疑問に感じる部分であります。

 日本再興戦略により、移民政策の歴史的な転換がむしろもう始まろうとしているようにも見えるわけであります。

 建設労働者、そして技能実習生、介護人材、家事支援のメードさん、個別の制度は事前によくお聞きして知っておりますので、今回御説明は不要でありますが、総理にまとめてお伺いをしたいのは、単に労働力不足への対応として外国人労働者の受け入れを考えることは適当ではないというこの平成十一年雇用対策基本計画からの姿勢を堅持するのか、それとも変えていくのか、お伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、明確にしておきたいことは、安倍政権として、いわゆる移民政策をとる考えはないということであります。

 特に欧州でございますが、いわゆる移民政策の中において、さまざまな課題、問題が発生をしています。そうした問題、課題を私たちもよく分析する必要もあるんだろうな、こう思います。

 現在政府が進めている外国の方々の人材の活用や外国人技能実習制度の拡大などの施策は、多様な経験、技術を持った海外からの人材に、日本で能力を発揮していただき、また我が国で技能を習得して母国でそれを生かしていく、お互いが裨益する形にしていこうというのが基本的な考え方であり、この考え方には変わりはないということであります。

 なお、建設分野における外国人材の活用は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大に対応するため、緊急かつ時限的措置として即戦力となり得る技能実習経験者の活用を促進するものであって、単に量をふやすというものではないということでございます。

井坂委員 基本的な方針は変えないという御答弁でありました。

 しかし、実習生制度にしても、では、国際貢献といいながら、現実は、中国の実習生ばかりに日本の技術をお伝えして、中国に持ち帰って現地で生かしていただく、こういう国際貢献を安倍政権が熱心に今取り組まれている、こういう形になるので、果たして本当にそうなのかなというふうに思うわけであります。

 さて、本日議論したいのは、将来の労働力不足から移民の議論がこうして出てくるわけでありますが、しかし、そもそも本当に労働力不足になるのだろうか、こういう議論であります。

 次に議論したいのが、消えていく仕事というテーマであります。

 お配りした資料で二ページ目をごらんいただきたいんですが、一昨年、オックスフォード大学の研究者が、アメリカの主な仕事、七百二種類について調べて、今後二十年以内にコンピューターやロボットに置きかえられてしまう可能性の高さ、おそれの高さを詳細に調べて並べました。その結果、現在のアメリカの仕事の四七%がコンピューターやロボットに置きかえられるおそれがある。

 お配りした表で、例えば、銀行の融資担当者あるいは不動産、レストランの案内係、レジ係、税務申告、また意外なところで苦情処理や検査や測量や造園、こうした人の手でなければできないかなと思うようなところまで、ここに書いてあるのは、二十年以内に九〇%以上の確率でコンピューターやロボットに置きかえられてしまうだろうとこの研究者が予測をして計算している仕事であります。

 中には、残業代を払わなくてよい、今回の高度プロフェッショナルの典型例としてよく挙げられる金融ディーラーの仕事、これも論文の中では、毎日の企業の膨大なニュースを過去のビッグデータと照らし合わせて、どういうときに売り買いをするのか、これをコンピューターが判断する時代が来るだろうと、自動化される例として金融ディーラーは書かれているわけであります。

 イギリスでも最近同様の研究がされ、三五%の仕事が自動化される可能性、こういう結果になっています。

 お伺いしたいのは、日本はどうなのか、そして想像以上に多くの仕事が自動化されてしまう可能性についてどうお考えなのか、総理にお伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国においては、人口減少が見込まれる中において、先ほどの御指摘のように、高齢者、もっと経験や知識を生かしてもらう、そして何よりも女性ですね、そういう方々にも頑張っていただく。高度な能力を持った外国人の人材も取り入れていくということと同時に、日本は高いロボット技術を持っていますから、そういうロボットの技術を生かして生産性を上げていくということによって、生産人口の減少をカバーし、それを上回る生産性をかち得ていきたいと考えているわけであります。

 我が国においても、技術革新の中、一部の業務はコンピューターやロボットによる代替が起こり得ると思われます。これが労働に及ぼす影響としては、労働力人口が減少する中、積極的な活用により、労働生産性の向上、今申し上げた点であります。もう一点は、過酷な環境での作業へのロボットの導入など、労働環境の改善、そしてコンピューターやロボットで対応できない業務において人間がしっかりと創造性を発揮していく、ある意味では、より付加価値の高い分野において人間が頑張っていく。

 私も先般、ある企業のラインにかなり高度なロボットが入っていて、高度で、かつ今までのよりも相当安いロボットが入っているわけでありますが、商品を一回見て確かめる、そして何かラベルを剥がすんですか、人間のような作業をしている。しかし、人間は、今までそのラインに従事していた方々は、まさにそのラインを保守、そして管理する部門に移っていて、収入もある程度ちゃんと確保できている、こうなっていけば一番いいんだろうと思います。そうした時代を見据えながら我々も考えていきたい、このように思っております。

井坂委員 総理がおっしゃったとおり、例えばロボットであれば、ロボットに置きかえられてしまう側の労働者ではなくて、そのロボットをつくり、またロボットを動かす側の労働者を日本でもつくっていくんだ、こういうことであります。

 このオックスフォード大学の論文、英語で七十ページぐらいあったんですが、大変おもしろかったので一通り目を通しました。製造業、サービス業、またIT、教育、こういった業界分類により、仕事が自動化で消えてなくなってしまう可能性が随分大きく異なります。

 一枚めくっていただきまして、三ページをごらんいただきたいと思います。

 このグラフは、業界ごとに仕事が消えてしまう可能性を示したグラフとなっています。このグラフの一番左側にある仕事は、自動化される可能性がゼロ%と計算をされています。右側に行けば行くほど、仕事が自動化で消えてしまう可能性が高い仕事、こういう順で並んでいます。

 この論文と関係ありませんが、私の好きな研究者にリチャード・フロリダという博士がおります。「クリエイティブ資本論」とか「グレート・リセット」、こういう本を出して、私も初当選の初質問で委員会でテーマに取り上げさせていただきました。世の中の仕事を、ワーキングクラス、そしてサービスクラス、さらには新しいクリエーティブクラス、この三種類に大分類をしたのが特徴であります。この二十一世紀経済を引っ張るクリエーティブクラスの仕事が、その労働者がどのような場所に好んで集まるのか、こうしたことを研究している博士です。

 ここで、先ほどのグラフにフロリダ博士のこの三分類を当てはめてみました。一番上にあるマネジメントとかビジネス、コンピューター、エンジニアリング、科学、そして教育や法律や芸術やメディア、医療、このあたりまでがクリエーティブクラスに分類をされます。その下にあるサービスや販売や事務、このあたりはサービスクラスの仕事。そして下にある建設、あるいは製造、運輸、こうしたところがワーキングクラスというふうにフロリダ博士の分類ではなります。

 こうして分類をして、下のグラフでそれぞれの色が多いところを見ますと、まさに一番左端にたくさんあるのがクリエーティブクラス。要は、クリエーティブクラスの仕事は二十年後も自動化をされるおそれが極めて低い仕事ばかり。一方、右端に目をやれば、サービスクラスの仕事はもう九割以上のところにたくさんある。また、ワーキングクラスの仕事は、六割から八割ぐらい自動化されるおそれがある位置にたくさんある。こういうことになってまいります。

 大変わかりやすい結果になってしまったわけでありますが、総理にお伺いをいたします。労働力の未来を考えるときに、クリエーティブクラスをふやす、こういう明確な目標を持つべきだと考えますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 クリエーティブクラスをふやすべきだ、まさにそれは、いわば若者の教育の方向性についてどう考えるべきかということかもしれませんが、これからの時代には、課題を発見してそれを解決していく能力、新たな価値を創造する能力などが求められる、このように思います。

 このため、今、高校教育や大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革や学習指導要領の抜本的な見直しなどを通じ、あらゆる教育段階で改革を進めることとしています。また、教育再生実行会議においても、これからの時代に求められる能力を飛躍的に高めるための教育の革新について御議論をいただいておりまして、その結果も踏まえて、引き続き創造的な人材の育成に取り組んでいきたい。

 この消えていく中において、例えばホテルのフロントも、これはマニュアルをしっかりとロボットに覚えさせてさっさっさとやるということにおいてはロボットということも考えられるかもしれませんが、そこで機微にわたるサービスがもしできるのであれば、やはりそちらの方を人間というのは求めるんだろうな、つまり、そのプラスアルファも対応できる人材も育てていく必要もあるんだろうな、このように思います。

井坂委員 今総理がまさに教育、人材育成のことについても触れられましたので、ちょっと飛ばして、そちらの方を先にさせていただきます。

 このオックスフォード大の論文では、コンピューターやロボットで取ってかわられにくい能力というものも研究をしています。

 もう一枚めくって、四枚目をごらんいただきたいと思います。

 労働者の能力と自動化されにくさの関係を示したグラフです。この青い点々の一個一個が一つ一つの仕事を示しています。

 左側半分の大きなグラフを見ていただきたいんですが、このグラフで左上の方に点々がたくさんあるのは、これは独創性という能力ですけれども、独創性が高くて、そして自動化されにくい仕事が、ここにたくさん点々で打たれています。左上の方の赤い丸でくくったところですね。独創性が高く二十年後も残る仕事というのが一方であります。そして、右の方を見ますと、黒い丸で囲ったところで、逆に、独創性が低く二十年後に消える確率が高い仕事というのもたくさんあります。

 グラフが大体右肩下がりで描かれてくる、こういう能力が幾つか発見をされています。独創性、それから芸術性、あるいは説得力、交渉力、そして共感性、他者を助ける力、こういったものが機械化、コンピューター化に負けない人間の能力ということで明確になってきているわけであります。

 先ほど、総理、教育のことをおっしゃいましたけれども、日本の教育は、これまでのところなかなか、実社会で必要とされる能力と学校で教えられていることとのずれが問題になってきたと思います。

 その中で、政府は、現在、起業家教育というものを進めておられ、私はそれ自体は高く評価をする立場であります。

 しかしながら、本日、さらにその起業家という範囲を広げて、起業家教育だけでなく先ほど述べたような能力を伸ばすクリエーティブ教育、もう一回り教えるべき範囲を起業家教育から広げるべきだというふうに考えますが、総理、いかがでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりでありまして、委員の資料の中にもありましたが、ほかの資料でも、ことし、アメリカの学者の調査で、小学校一年生、大学を卒業するころに、今の職業の六五%はなくなっているだろう、あるいは、違う学者が、十年、十五年、二十年後ぐらいには週十五時間ぐらいの労働時間にならざるを得ないだろうということで、今までの仕事が相当なくなってくる。

 この中で、これから本当に求められるのは、クリエーティブな、創造的な、企画的な能力。そして、幾らコンピューターやロボットが発達しても到達できない、その資料のとおりですが、人間的な感性、思いやりとか優しさとか慈しみとか、それを今からやっていかなければ、子供たちが大人になったとき、これは実は子供だけじゃなくて我々大人の問題でもあるんです。

 十五年、二十年たったら職業は相当なくなるわけですから、対応できないということで、今、大学入学試験を中心に、暗記、記憶の入学試験から、そういう能力を求めるようなものをすること、大学入学試験、アドミッションポリシーですが、そのことをすることによって、先ほど総理の答弁の中にもありましたが、高校以下の学習指導要領も変え、そして、大学入学試験だけでなく大学教育そのものも、明確な目標を持って社会に送り出す、それをぜひトータル的に今やろうということで進めております。

 昨年の暮れに中教審からそういう答申を受けて、文部科学省としては、これから二十一世紀に対応した教育を大学入試から変えることが、結果的には日本の全体的な教育を、そのような趣旨の中、シフトを的確にしてまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 もう一点、私が何度もこだわって質問をしております高度人材ポイント制についてお伺いします。

 こういうクリエーティブな人たち、内部で育てるお話を今議論させていただきましたが、一方で、世界は、単純労働者の受け入れは絞っていく、しかしこういうクリエーティブ人材はもう争奪戦、競争になっているわけであります。クリエーティブ人材の三本柱は、研究者、それから起業家、そしてもう一つがいわゆるアーティスト、デザイナー、こうした芸術系の方々。

 日本でも法務省が高度人材ポイント制を始めまして、今、高度学術研究分野、それから専門・技術分野、経営・管理分野、この三分野で学歴、職歴、年収に応じてポイントが加算され、七十点以上になればいろいろ優遇が受けられる、こういう制度、大変いいと思っています。

 しかし、先ほどのグラフにあるとおり、高度人材だけではもう一歩不足で、やはりクリエーティブ人材というところまで誘致の対象を広げていく必要が私はあると思います。

 具体的には、現状の研究分野やビジネス分野に加えて、文化、芸術、メディア分野が必要で、この分野は、必ずしも学歴を伴わない方のパターンがあるので、今の制度だと対象になりにくい。

 お伺いをいたしますが、高度人材ポイント制の優遇対象に新たにクリエーティブ枠を設けるべきだと考えますが、総理、総論としていかがでしょうか、私、細かい制度はよく存じ上げておりますので。

安倍内閣総理大臣 人材の獲得競争が激化をしております。日本経済のさらなる活性化を図って競争力を高めていくためには、優秀な人材を我が国に呼び込む、そして、その方々を定着させる必要があると思います。

 こうした観点から、高度人材ポイント制の活用を促進するため、平成二十五年には要件の見直し等利便性の向上を図ったところでありまして、制度の周知にも努めています。

 御指摘の、クリエーティブな人材が高度人材ポイント制の対象となるか否かは、一概には言えず、個々の活動の内容によるとも思われますが、いずれにいたしましても、優秀な外国人材に我が国で活躍していただけるような施策を進めていきたい、このように思います。

井坂委員 総理が今答弁で優秀なとおっしゃるところに、今までのところ日本の制度では、研究者として優秀、ビジネスマンとして優秀、この物差ししか制度上ないんですね。

 確かに、クリエーティブ人材でも、それは修士号、博士号を取っているクリエーティブ人材もいますから、そういった方は今の制度を使って優遇措置を受けて日本に来てくれるわけであります。しかし、メディアとか芸術とかデザインとか、そういった方々は今の制度の物差しには全然当てはまらない。学歴要件とかとはちょっと違う方が大変たくさんおられます。そこが今の制度では漏れてしまっておりますので、ぜひこちらは御検討いただきたいというふうに思います。

 最後に、人材基本戦略について伺います。

 プロ野球チームであっても、必要な人材、うちのチームには何が足りないのか、ピッチャーが弱いのか、あるいはホームランバッターがもう一人欲しいのか、外野が弱いのか、必要な人材を見きわめて、それを、では二軍から育てるのか、ドラフトで即戦力の社会人をとってくるのか、あるいは助っ人外国人を奮発してとってくるのか、こういうことをやっているわけであります。

 日本の国家経営を真面目に考えれば、やはり人材基本戦略というものが見当たらないのが不思議だなというふうに思うわけであります。

 本日は、将来も残る仕事は何なのか、そして、そのために必要な能力は何なのか、クリエーティブな外国人をどうやって誘致するのか、クリエーティブな日本人をどうやって育てていくのか。また、きょうはちょっと時間切れで議論できませんでしたが、クリエーティブな人材をどう集積するか、そのための都市環境、こうしたところまで政策の射程範囲は広がってくるわけであります。

 総理にお伺いをいたしますが、将来必要となる人材の育成、誘致、環境整備まで含めた人材基本戦略を策定することについて御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 基本的に、委員と問題意識は共有していると思います。

 未来に向けて持続的発展を実現するためには、全ての人がその能力を最大限発揮し、活躍できる社会を構築する必要があります。

 同時に、我々、「日本再興戦略」改訂二〇一四に基づきまして、初等中等教育での実践的な英語教育、ここは我々は欠けている点だ、このように思います。また、スーパーグローバル大学創成支援等を通じたグローバル人材を育成していく、ここも今まで欠けていた点だと考えています。同時にまた、高度外国人材の受け入れ環境を整備していく。留学生の日本企業への就職拡大支援等を通じた外国人材の活用の実現に向けて全力で取り組んでおります。

 そして、ことしの年央には再興戦略の改訂を予定しておりまして、未来を支える人材力の強化の観点から、高等教育機関等の改革を進めるとともに、働き手のキャリアアップ支援などを検討していきたい、今御指摘の点等も踏まえて検討していきたい、このように考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 総理が常々おっしゃる、企業が世界一活躍しやすい国、この考え方の中に、企業だけでなく、クリエーティブな個人が世界一活躍しやすい国、そして都市、こういったところをともに目指していきたいなというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 本日は、ありがとうございました。

大島委員長 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 今、このトマ・ピケティの著書「二十一世紀の資本」というのが話題になっておりますけれども、格差問題が一つ大きなテーマになっております。

 そこで、きょうは、まず総理の基本認識を確認したいと思います。

 総理は、二年前の二〇一三年四月二日の衆議院予算委員会で、「今我々が行っている経済財政金融政策において、格差を拡大しよう、つまり、今所得が低い層の皆さんがさらにこの所得が低くなるということは、これは絶対あってはならない、」こう答弁をされております。

 まず、これは事実だと思うんですけれども、その考えに今もお変わりはないか、総理にお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 その決意に基本的に変わりはございません。

宮本(岳)委員 かつて小泉純一郎首相は、これまた参議院の予算委員会ですけれども、格差が出ることが悪いとは思わない、こう答弁されたこともあるんです。

 それで、その小泉首相が就任した二〇〇一年以来、日本の格差は一体どうなったか。きょうは少し各種調査の数字で御紹介をしたいと思うんですが、資料一におつけをいたしました。

 厚生労働省の平成二十五年国民生活基礎調査によりますと、相対的貧困率は、二〇〇〇年に一五・三%だったものが、二〇一二年には一六・一%に。子供の貧困率は、二〇〇〇年に一四・五%だったものが、二〇一二年には一六・三%に。同じ調査で、生活が苦しいという答えは、大変苦しいとやや苦しいとを合わせますと、二〇〇一年に五一・四%だったものが、二〇一三年には五九・九%。

 これらの調査結果がはっきりと示しているのは、二〇〇〇年以降、この十五年間に資産及び所得の格差はやはり拡大をして、とりわけ低所得層の貧困が一層加速したのではないかと私は思うんですけれども、総理は、そういう認識をお持ちですか。

安倍内閣総理大臣 小泉総理が、格差があっていいと、政治家としては割と思い切った発言をされたんですが、当時私は、官房副長官で聞いておりましたが、これは所得の低い方の所得が下がっていいということではなくて、どうしてもこれは差が出ますよね、そこは、それをインセンティブに、ばねでみんな頑張っていこうよ、そういう精神論的におっしゃったんだろうとは思います。

 そこで、この相対的貧困率、過去二十年、増大、格差拡大が続いているということでございますが、長期的に緩やかに相対的貧困率は上昇をしております。一九八五年に一二%だったものが、二〇一二年には一六・一%ということでございますが、同時に、これは資産が反映されていない、統計によって値が異なる点に留意をする必要があるんだろうな、こう思います。また、単身の高齢者がふえているということ、これは近年の傾向であり、また、母子家庭が増加をしている。

 いずれにせよ、こうした数値は注意深く見ていきたい、このように思っております。

宮本(岳)委員 資産を反映していないと言うんですけれども、日銀の家計の金融行動に関する世論調査というものを見ますと、金融資産ゼロという世帯が、二〇〇〇年に一二・四%だったものが、二〇一四年には三〇・四%に激増しております。二・五倍にふえております。

 一方で、野村総研の調査によりますと、金融資産一億円超という世帯が百万世帯に達しております。資産で見ても、格差の広がりは歴然としているというふうに思います。

 では、具体的に検証いたしましょう。

 まずは、低所得者の収入について確認したいんですね。

 甘利大臣は、先日一月三十日、補正予算審議の当委員会で、私が内閣府の日本経済二〇一四―二〇一五、いわゆるミニ経済白書を示して、所得階層別でどこが一番収入、支出が落ち込んでいるかと問うたのに対して、最も収入の少ない層において収入、支出ともにマイナス幅が最も大きいと御答弁をいただきました。

 そこで、さらに甘利大臣にお伺いするんですけれども、年間収入五分位階級別に見た場合に、収入の最も少ない第一分位では、昨年五月から十月期の実収入と消費支出は前年比で見てそれぞれ何%のマイナスになっているか、ミニ経済白書の数値をお答えいただけますか。

甘利国務大臣 本年一月に公表しました内閣府の日本経済二〇一四―二〇一五、いわゆるミニ経済白書でありますけれども、これは、総務省の家計調査を用いて所得階層別の収入、支出の分析をしております。この総務省の家計調査とそれから厚労省の毎月勤労統計の数字が乖離がございますが、それは調査の性格によると思います。

 家計調査によりますと、世帯主の年間収入によって五分割をしたうちの収入の低い第一所得階層を見ますと、二〇一四年五月から十月における実収入は、前年比マイナス五%、消費支出は同マイナス八%となっております。

宮本(岳)委員 二枚目にそのグラフもつけておきました。第一分位、最も低所得の層においては、実収入がマイナス五%、消費支出がマイナス八%となっております。実収入の減少は低所得層で一番激しいんですね。第二分位から第五分位で見ますと、〇・一%からマイナス二・一%にとどまっているにもかかわらず、第一分位では今のような数になっている。

 では、なぜ低所得層で実収入が大きく落ち込んだのか。ミニ経済白書は次のように述べております。「収入見通しの低下は、所得の低い層ほどより大きい傾向がある。また、消費税率引上げ以降、収入見通しにはいずれの階層でも一時持ち直しの動きがみられたが、低所得層では税率引上げ前のピークに対して戻りが弱く、十分に回復していないことがうかがえる。」二十六ページにそうはっきり出てまいります。

 総理、冒頭に、「今所得が低い層の皆さんがさらにこの所得が低くなるということは、これは絶対あってはならない、」という総理の御答弁、今も変わりがないということを確認しましたけれども、現実には、低所得層の収入が減り、消費が落ち込んだ。総理が絶対にあってはならないとおっしゃった、そういうことが現に起こっているということではありませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 この相対的貧困率についての数字は二〇一二年までしかないわけでございますが、ここで、働く人々については、安倍政権が誕生して九十万人新たに職を得た人がふえたわけでございます。

 年収二百万円以下の給与所得者が三十万人ふえたのは事実でございますが、これは、高いところから落ちてきたというよりも、まさにゼロの方が、パート等の仕事についてふえた人たちも随分いるわけでございますし、このふえた九十万人を分析してみますと、五百万円から七百万円の層が最もふえておりまして、プラス三十三万人ということになってまいるわけでございます。

 また、非正規、正規との関係におきましても、働き盛りの十五歳から五十五歳の層を見れば、これは、非正規から正規に行く人の方が、正規から非正規に移ってくる人と比べてふえ始めているという状況はつくり出すことができたと思っております。

宮本(岳)委員 るるおっしゃるわけですけれども、私は内閣府のミニ経済白書で議論をしているわけですからね。

 それで、現にここにははっきりと、「二〇一三年央以降、低所得層のマインドの低下が大きく、持ち直しの動きも弱い」と。その理由は、消費税増税の影響が一層深刻に低所得層に影響を与えている、こういうことなんですよ。だから、低所得層のところの所得が落ち込んでいる、収入が落ち込んでいる。これは経済白書にはっきり出ていることであります。

 では、低所得層の消費支出はどうか。

 先ほどの説明でも、二〇一四年五月から十月に、低所得層では、実収入の落ち込み以上に、実収入はマイナス五%でしたけれども、それ以上に、消費支出はマイナス八%抑制されたという結果が出ております。ミニ経済白書では、消費税引き上げによる物価上昇は実質所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つと、これははっきり認めているんですね。

 つまり、この政府の調査によっても、低所得者が将来にわたって個人消費を抑制せざるを得なくなっているということは認めざるを得ない事実だと思うんですが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 このミニ経済白書では、消費税率引き上げが個人消費を抑制する効果を二〇一四年四月―六月期から七月―九月期にかけて機械的に計算しているものでありまして、消費税率引き上げによる物価上昇の影響が継続する期間については特段分析されていないものと承知をしているところでございます。

 いずれにせよ、先日公表されたGDP速報では、三四半期ぶりに実質GDPが前期比プラス成長となっておりまして、また、二四半期連続で個人消費がプラスとなっております。景気は、雇用・所得環境の改善傾向を背景に、緩やかに回復していくことが期待されます。

宮本(岳)委員 先日発表されたGDPの速報値、今触れられましたね。では、これも少し聞いておきましょう。

 甘利大臣にお伺いしますけれども、十六日のGDP速報値で、昨年一年間の民間最終消費支出と家計最終消費支出は、対前年比で、実質ベースではそれぞれどういう数値になっておりますか。

甘利国務大臣 二〇一四年暦年の民間最終消費支出それから家計最終消費支出の実質の前年比につきましては、二〇一四年十―十二月期が、四半期別GDP一次速報値によれば、それぞれ、マイナス一・二%、そしてマイナス一・三%となっています。

 それから、先ほど委員が御指摘になりました、二〇一四年の五月から十月期のいわゆる家計調査の収入の落ち込み。このときに、同じ時期に調査している毎月勤労統計では一・一%上がっているんです。家計調査では一・五%マイナスになっているんですね。ところが、十月を過ぎると、これがほぼ一致して上昇していくんです。

 この間は、やはり統計の性質上の差が出るんですね。家計消費支出というのは、支出がどういう方向に向いているかということ、それから、毎勤の場合は、実際にその所得変化というのを見ていますから、所得の変化だけを見るのであるならば、サンプル数が多い、それから入れかえ期間が長い毎勤の方を見た方が正確なのかなというふうに思いますけれども。

宮本(岳)委員 いろいろ言いますけれども、あなたの役所はそう論じたわけですから、それだったらそういうことを書けばいいけれども、そう書いてないわけですから。まさにそのことを私は聞いているわけですからね。

 それで、私は改めて、先ほど出たマイナス一・二、マイナス一・三、消費はそうなっているわけです。この数字はこの二十年来で最悪ですよ、よかったよかったと言うけれども。

 あの消費税を三%から五%に引き上げた一九九八年でも、民間最終消費支出のマイナスは〇・八%、家計最終消費支出のマイナスは一・〇%でありました。二〇〇八年、リーマン・ショックのあのときでも、どちらもマイナス〇・九%でありました。マイナス一・二とマイナス一・三というのは、この二十年来最悪の数字が出ているんですよ。だから、何らよくなってきたということに私はならないと思うんですね。

 私、消費がこれだけ落ち込んで戻っていない、将来にわたって悪影響を及ぼすというんですから、消費税の増税は、延期などではなく、きっぱり中止すべきだと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 消費税につきましては、伸びていく社会保障費に対応する、あるいは子育て支援等も含めて社会保障の充実を図るために必要な財源であるということの中において、税と社会保障の一体改革を行う中において、三%、二%上げて一〇%にいく、そういうことを法定で決めたところでございます。

 確かに、三%引き上げた中において消費が冷え込んだのは事実でございます。だからこそ、十八カ月、この消費税の引き上げを延長したわけでございますが、幸い、昨年、経済界は、二%、これは十五年ぶりの引き上げ率となったわけでありますが、平均二%以上引き上げを行い、ことしも引き上げていただく。ことし引き上げていただければ、昨年の三%の引き上げ分が剥落をしていきますから、実質においてもプラスになっていくという可能性も出てくるわけでございまして、そういう意味においては、来年も上げていく、再来年も上げていくことによって消費税を引き上げる環境を整えていくことができる、このように考えております。

宮本(岳)委員 そうおっしゃるけれども、実質賃金は、この十八カ月ずっとマイナスなんですよね。だから、多少上がっても、到底物価の上昇に追いついていないということは明瞭であって、私は、これだけ深刻な消費を喚起しようと思えば、これは先送りではなくて、きっぱり中止をすべきだと申し上げておきたいと思います。

 ミニ経済白書の注目すべき点は、「所得に対する消費税の負担率は、所得が低いほど重くなる傾向があるため、消費税率引上げが特に低所得層のマインドに影響を与え、結果、そうした層での消費の抑制傾向を高めている可能性がある。」こういう指摘をしていることであります。つまり、消費税の逆進性という問題であります。

 まず、総理の基本認識を問うわけですけれども、消費税の税率を引き上げることを決めた、閣議決定した二〇一三年秋の時点で、消費税を引き上げると低所得層の負担率が重くなり、消費を抑制する、そういう結果となるということを認識しておられましたか。

安倍内閣総理大臣 そうしたことを認識しているからこそ、我々、補正予算を組んで、経済対策を行ったわけでございます。

 確かに、委員が御指摘のように、逆進性というところにも我々着目をいたしまして、そこで、所得の低い方々のために給付金を行う、あるいは年金生活者の方々のために加算を行うということを実施した次第でございます。

宮本(岳)委員 おやりになった臨時福祉給付金、簡素な給付措置三千四百二十億円程度、子育て世帯臨時特例給付金一千四百七十億円、これは一年半で一万円という話でありまして、一年半で一万円とは、月にしてみたら五百五十五円程度と、到底この消費税の増税を補うに足りないわけですよ。だから、こうして低所得のところに深刻な影響が出ているということはもう明瞭だと言わなければならぬと思うんですね。

 ここで、財務省にひとつ、きょうは事務方でいいですから、これは数字を確認したいと思います。

 総務省統計局の平成二十四年の家計調査、勤労者世帯をもとにして、収入階級別に一カ月当たりの税負担額を実収入で割った税の負担率は、最も低収入の第一分位と最も高収入の第十分位で、所得税ではそれぞれ何%になるか、消費税率を一〇%とした場合の消費税の負担率はそれぞれ何%と試算されるか、数字を答弁していただけますか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省の家計調査をもとに、委員御指摘のとおりの税負担額が実収入に占める割合を算出いたすということでございまして、所得税の割合でございます。収入階級第一分位の世帯で約一・〇%、それから収入階級十分位の世帯で約六・一%でございます。

 他方、消費税の割合につきましては、お尋ねの、税率を一〇%と仮定するということで試算をいたしますと、第一分位の世帯で約五・九%、十分位の世帯で三・八%という試算になるところでございます。

 以上でございます。

宮本(岳)委員 消費税を八%、一〇%に引き上げると実収入に対する税負担割合が一体どう推移するか、四枚目のグラフをおつけいたしました。三枚目の資料というのが先ほど財務省主税局が答えた数字でありまして、グラフにしたものがこの資料四であります。

 所得階層十分位の収入階級別に見ますと、所得税そして消費税の負担割合はこのグラフのようになります。

 青いグラフは所得税です。第一分位の一%から、先ほど答弁があったように、第十分位の六%へと、所得がふえるほど右肩上がりに税負担率が上がります。これはまさに、累進性がここに示されていると言わなければなりません。

 消費税を見ていただきたい。全て右肩下がりになっております。とりわけ、一〇%に引き上げた場合の赤いグラフ、第一分位、低所得層の実収入に占める消費税負担率は、先ほど答弁があったように六%、第十分位、最富裕層の所得税負担率とほぼ同じ六%に達することになっております。

 総理、ここに示されているものは、明瞭に、消費税というのは低所得ほど負担率が高くなるという逆進性をくっきりと示していると思いますが、これは総理、お認めになりますね。

麻生国務大臣 消費税の、いわゆる逆進性の高いこういったものに頼るべきではないということがおっしゃりたいんだと存じますけれども、他方で、消費税というのは、御存じのように、勤労世帯、働いている世帯に過度に税金が偏り過ぎることがないとか、また、税収が景気や人口構成等々によって変わることがないとかいう点も忘れてはならぬところであると思いますし、第一、社会保障と税の一体改革の中で、この増収分は社会保障の充実に充てるということにしておりますので、いわゆる受益は低所得者ほど大きいということになりますので、所得の再配分につながるという面があろうと思っております。

 加えて、今から少子高齢化が進んでまいりますので、そういった中では、社会保障制度というものを次の世代にしっかりと引き渡すためには、消費税というものにまさる安定財源確保という道というのは、なかなか私どもとしては思いつかないところだろうと存じます。

宮本(岳)委員 二言目には一体改革と言うんですけれども、私は税と社会保障の一体改革特別委員会もこの場所でやりましたよ。しかし、社会保障の方は、年金だってマクロ経済スライドが入る。今、どんどんどんどんよくなっているかというと、自然増だって今度の予算では別に措置していないわけです。そこからさらに削り込んでいるわけですね。国民は本当にそういう点でも納得がいかないことは明瞭だと思います。

 結果、どういうことが起こっているか。低所得層では既に食料費など生活必需品を切り詰めている、家計調査をもとにそう指摘するエコノミストもいるわけですよ。

 そういう点では、逆進性がある以上、低所得層に対して消費税の増税というのは、やはりやるべきでない。総理、これは考え直すべきだと私は思いますけれども、総理の御答弁をお願いしたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 確かに、今グラフでお示しになったように、逆進性があるのは事実であります。しかし同時に、財務大臣が答弁をさせていただきましたように、だからこそ、社会保障の財源として、給付として、これはまさに多くの国民に裨益していくことになるわけであります。かつ、安定財源ということになりますと、所得税、法人税は景気によって大きく左右されるわけでございますが、消費税は安定をしているということではないか。

 しかし、繰り返しになりますが、逆進性ということに着目をしながら、委員は少ないじゃないかという御意見でございましたが、簡素な給付措置等の対策を、低所得者の方々への対策を行ってきたところでございます。

宮本(岳)委員 では、その対策がどういうものかということを次に議論したいと思うんですね。

 総理は、子供たちの誰もが家庭の経済事情に左右されることなく希望する教育を受けられるようにする、こういう子供の貧困対策についても触れられております。

 まず、文部科学大臣にお伺いするんですけれども、昨年十二月に、OECD、経済協力開発機構が、格差と貧困と題するレポートを発表しました。この報告では、所得格差が拡大すると経済成長は低下する、こう指摘するとともに、その理由の一つは貧困層ほど教育への投資が落ちることにある、こう書かれているわけですが、文部科学大臣、これは御存じでございますね。

下村国務大臣 御指摘のように、OECDが公表した報告書では、所得格差の拡大は経済成長を大幅に抑制している、また、格差の成長に対するマイナス要因は下位四〇%の所得層において見られる、これは貧困層が教育に十分な投資をしないためであるとの分析がされておりまして、御指摘のようなまとめになっているというふうに承知しております。

宮本(岳)委員 家計調査を見ましても、労働者世帯に限らず、全世帯で何を切り詰めているのかということを見ますと、実質値での減少幅が一番大きいのは教育。授業料、塾などの三〇・二%減というのが出てまいります。ですから、既に教育費の抑制が進んでいる、こういうふうに思うんですね。

 まさにOECDが指摘するとおりの格差拡大が教育格差を招く状況が我が国には存在していると私は思いますが、文部科学大臣、いかがですか。

下村国務大臣 特に低所得層、貧困層においてそういう傾向が出ているというふうに思います。

宮本(岳)委員 そういう傾向があるとお認めになりました。

 そういう所得格差のもとで、機会均等を実現し、子供たちが教育を受ける権利を保障するための制度が奨学金制度であります。しかしながら、日本の奨学金は諸外国の制度と比べると極めて貧困で、特に日本学生支援機構の奨学金においては、給付型の奨学金はなく、有利子制度を中心とする学生ローンのようなものになってしまっております。

 下村大臣も、昨年三月十九日、衆議院文部科学委員会で、私に、「これは宮本委員もおっしゃったように、奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います。」こう答弁をされました。これも事実ですね。

下村国務大臣 諸外国を見ても、奨学金で有利子があるというところはほとんどありませんから、これは、奨学金というよりは、学生ローンであるというふうに思います。

宮本(岳)委員 有利子から無利子へということも総理は所信表明で触れられました。しかし、この有利子から無利子への流れを加速するというふうに言うけれども、今回、八千六百人という無利子枠の拡大にとどまったわけですね。

 私、きょう最後に問いたいのは、この有利子の奨学金を受けている学生の中に、本来は無利子奨学金を受ける資格があるにもかかわらず、予算が足りずに利子つきの奨学金しか借りられないという学生、これを残存適格者と呼ぶんですけれども、適格なのに無利子じゃなく有利子で借りざるを得ないという学生たちが残されている。

 きょうは文部科学省に、これは高等教育局、来ていただいていますが、一体、こういう残存適格者、平成二十六年時点で何人と見積もっておりますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度現在で約四万人存在しているものと承知しております。

宮本(岳)委員 四万人ですよ。四万人の学生が、その他の条件でいうと無利子の奨学金を受けられるにもかかわらず、そのお金の段取りがないために有利子で借金せざるを得なくなっている。

 これは文部科学省も一刻も早く解消しなければならないという立場なんです。ですから、四万人を二年計画で解消するとして、概算要求では二万人という無利子枠の拡大をお願いしたはずなんですね。しかし、結果は、今議論しているこの予算案では八千六百人と半分以下に削られました。

 麻生財務大臣、何でそんなひどいことをするんですか。

麻生国務大臣 いつ回ってくるかと思っていましたよ。

 大学生に関する奨学金の話ですけれども、これは、無利子奨学金と有利子奨学金というのを合わせますと全学生の約四割に貸与されておりますのが実態でして、希望されている方はほぼ全員に行き渡っているというのが実態です。

 ただ、有利子と無利子の話が出ましたけれども、これは、在学中は利子は発生しないというのはもう御存じと思いますけれども、その後も、奨学金の全体で見ますと、もうちょっと配慮がなされてもいいのではないかという御意見ということは、金があれば、それは私どもも決してその御意見というのはわからぬわけではありませんけれども、少なくとも今の状況において、これまで平成二十一年、二十二年ぐらいのときで大体二千人ぐらいだったんですが、ことしは八千人というところまで上がってきているだけでも、かなり今までに比べれば結構な努力をしている点では認めていただければと存じます。

宮本(岳)委員 今まで非常に不十分だったのに比べたら頑張っている、こういう答弁ですけれども。

 奨学金の会という会がありまして、総選挙のときに各政党に「学費・教育費および奨学金に関する質問書」というのを送りまして、回答を各党本部からいただいたものの一覧表をここに持ってまいりました。

 無利子奨学金の予約適格者は全員採用すべきか、こう全ての政党に問いかけておりますけれども、自民党の答えは、1そう思う、直ちに予約適格者は全員採用すべきだと思う、こう答えています。いや、自民党に限りませんよ。きょうこの議場にいる全ての政党が、残存適格者というのはひど過ぎる、直ちに一掃すべきだという立場に立っているんですね。

 どれほど莫大な金がかかるのか。かかりませんよ。

 文部科学省にお伺いしますけれども、八千六百人をやった後、残る三万人余りですけれども、この三万人余りを一気に無利子にするための予算はおよそどれだけだと試算しておりますか。

吉田政府参考人 御指摘のような形で残存適格者につきまして単年度で全ての方に無利子奨学金を貸与するということになりますと、二百十一億円が必要であるというふうに承知しています。

宮本(岳)委員 わずか二百十一億円ですよ。何でその金が出せないのかと言わなければなりません。

 総理は、所信表明で、大学生への奨学金も、有利子から無利子への流れを加速し、将来的に、必要とする全ての学生が無利子奨学金を受けられるようにしてまいります、こう語りましたよね。この三万人を解決したって、まだ有利子奨学金を借りている学生は八十五万人残る計算になります。毎年毎年八千六百人ずつやっていったら百年かかりますよ、将来的にと言うけれども。本当に無利子化するという構えで取り組むならば、今のあなた方のやり方は到底追いつかないと言わなければなりません。

 総理、これはやはり、所信表明でも触れられた、私はきょうは総選挙の重点政策集も持ってきましたよ、この中でも加速すると書いていますよ。残存適格者というようなものについては直ちに一掃すべきではないか。総理の御決断を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほども大臣から答弁をさせていただきましたように、八千六百人とはいえ、それまで二千人だったものを八千六百人でありますから、四〇〇%ふやしたわけでございます。

 そこで、我々は強い意思として、将来は希望する方々全てが無利子の奨学金が受けられるようにする、これは大きな目標として初めて掲げたわけであります。

 残存適格者という御指摘がございました。そうした方々については、適格であるわけでありますから、しっかりと奨学金が受けられるようにするべくスピードアップしていきたい、このように考えております。

宮本(岳)委員 わずか二百十一億円ですよ。そういう比較は余りしたくないですけれども、今回の防衛予算の中に含まれているような戦闘機とか、あるいは、我が党は今国会冒頭に政党助成金も廃止しようという法案を提案しましたけれども、三百二十億円の助成金を廃止すれば、こんな本当に理不尽なことを一気に解決するだけの予算をつくれるわけですから、それもやらないとすれば、やはり総理の所信表明というのは羊頭狗肉だと言われても仕方がないということを申し上げて、同僚議員に質問を譲りたいと思います。

大島委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 私は、一九九八年から六年間、国会で少人数学級の実施を求めてまいりました。二〇一一年に、小学校一年生で三十五人学級が法律によりやっと実施されました。それまでの四十人学級が改善されたのは、実に三十一年ぶりのことです。

 ところが、昨年の秋、財務省が、小学校一年生の三十五人学級さえ四十人学級に戻せと言い出しました。こんなことは許せません。私を国会へ再び送ってくださいと訴えて、このたび、衆議院議員として送っていただき、国会へ戻ってまいりました。

 財務省は、昨年の財政審議会財政制度分科会で、小学校一年生の三十五人学級に政策効果は認められない、四十人学級に戻すべきではないかと言いました。こんな乱暴な議論はありません。少人数学級の効果は、世界でも日本でも、多数の研究データで実証されています。

 文部科学省の委託を受けた東京大学の少人数教育に関する調査研究事業という報告書、これですけれども、日本での教育効果を実証した結果、少人数学級の場合、子供同士の学び合いがより深まって、学習指導の姿がより効果的なものへと変わるとし、米国における八百六十本の研究の整理を行った結果、学級規模縮小の効果の存在が実証されていると述べています。

 下村文部科学大臣、財務省が、少人数学級の政策効果はない、小学校一年生を四十人学級に戻せという議論について、どのようにお考えになりますか。

下村国務大臣 今まで以上に学校を取り巻く環境が大変に複雑化また困難化し、教員に求められる役割も拡大する中、教員が授業など子供への指導により専念できる環境をつくるということが必要だと思います。そのときに四十人学級に戻すとの主張は、文部科学省の考え方や、あるいは学校現場、また保護者の声とは全く相入れないものであります。

 全国的に定着した小学校一年生の三十五人以下学級につきましては、今御指摘ありましたが、子供たち一人一人に目が行き届くきめ細やかな指導や、思考を深める授業づくりが一層可能となる、あるいは教員と児童との関係が緊密化するとともに、家庭との緊密な連携がより可能になるといったような調査結果が出ております。子供たちの学習意欲の向上や、きめ細やかな指導による学力の向上にとって効果があるものというふうに考えております。

畑野委員 下村文部科学大臣からも、効果があるという話でございました。四十人学級、到底、戻すな、認められないということでございました。

 私は、三十五人学級の実施で教育現場がどのように変わってきたのかということを伺ってまいりました。

 神奈川県横浜市の小学校の先生からは、二〇一一年に三十五人学級が実施され、小学校一年生で三十六人の学級が十八人学級に二つに分けられました。そうすると、子供たちが落ちついて、教員もその影響を受けてゆっくり子供の話が聞けるようになりました。この子はここがわからないが見えてくる。困った人は手を挙げてね、先生が助けてあげるよといつも言えました。一人ずつ発表する場面でも、周りの子は待てるようになりました。なぜなら、自分も順番が回ってきて発言できることがわかっているからです。給食も早く配膳でき、ゆっくり食べることができます。ほかの学年の四十人学級の子供が休み時間に来て、先生、ここに来るとほっとすると言っていますという話を伺ってまいりました。

 これは、全国の保護者、教育関係者にも共通する声だと思います。

 二〇一〇年、文部科学省の教育関係団体ヒアリングでは、三十人学級または三十五人学級に見直すべきとの意見が大勢を占めたとあります。

 少人数学級を求めた団体について、主な団体名と、そして何団体だったのか、下村文部科学大臣に伺います。

下村国務大臣 二〇一〇年に実施した、今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する団体ヒアリングにおきまして、少人数学級の推進を要望した団体は、全国知事会、全国都道府県教育長協議会、全国連合小学校長会、全日本中学校校長会、全国高等学校校長協会、日本PTA全国協議会など、二十七団体中二十三団体であります。

 残りの四団体は、特に要望していなかったというのは、例えば、全国へき地教育連盟、現状では既にもう少人数学級になっているとか、それから、全国養護教諭連絡協議会は、これは学級ごとの配置でない、きめ細かな、そういうことで、ほかの団体も、少人数学級の推進については賛同しているという団体であります。

畑野委員 安倍総理大臣に伺います。

 今、下村文部科学大臣からお話がありましたように、日本PTA全国協議会、全国都道府県教育委員長協議会、あるいは校長会、そして全国知事会も含めて、少人数学級への定数計画の策定と着実な実施を求めて声を上げておられます。

 総理、少人数学級の実施は国民的な声ではないでしょうか。安倍総理、どのように思われますか。

安倍内閣総理大臣 教育再生に向けて、教育の質を高めていく必要があると考えております。その上において、教職員等の指導体制の充実は重要であると考えています。

 このため、平成二十七年度予算では、子供たちが受け身ではなく主体的に考え探求する力を育てる授業、アクティブラーニング、そして教育格差の解消や特別支援教育の充実などさまざまな教育課程に対応するために必要な定数措置、九百人でありますが、これを盛り込むとともに、退職教員等の外部人材の活用を拡充することとしています。

 少人数学級については、現在、小学校一年、二年生の三十五人以下学級を実現しております。

 引き続き、教員が子供一人一人に対してきめ細かく対応し、より質の高い教育が実現できるよう、必要な検討を進めていく考えであります。

畑野委員 安倍総理も少人数学級について否定をされませんでした。必要な検討が必要だというふうにおっしゃいました。

 資料を配っていただきました。一枚目の表をごらんいただきたいと思います。

 全国の自治体で少人数学級が広がっています。全ての都道府県で独自に取り組まれ、中学校三年生まで少人数学級を実施しているのは、山形、福島、山梨、長野、静岡、和歌山、鳥取、岡山、山口、香川などです。それ以外も本当に努力をされていまして、自治体が頑張っているのです。

 今こそ、国が法律に基づいて三十五人学級を順次中学校まで制度化する時期に来ているのではないかと思いますが、下村文部科学大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、教育再生におきまして、教育の質を高めていく上で、教職員等の指導体制の充実を図っていくということは大変重要なことであるというふうに思います。

 現在も各自治体で、御指摘がありましたが、指導方法についてさまざまな取り組みが行われていたり、あるいは三十五人以下学級、少人数学級の体制をつくっているというところも出てきているわけでありますが、今後さらに、学校の実情を踏まえながら、各自治体の判断で、少人数学級やチームティーチング、また習熟度別少人数指導などを選択的に行っていただくことが、効果的なバックボーンとして、文科省も対応していきたいと思います。

 そのために、教員一人当たりの児童生徒数を下げていくことが重要であるというふうに考えておりまして、教員一人当たりの児童生徒数がOECD諸国平均と同程度に改善するよう、指導体制の充実を図ることを目指していきたいと考えております。

畑野委員 そこで伺いたいんですけれども、現在の小学校一年生を、さらに小学校二年生、三年生へと、順次三十五人学級を進めていく、これをやるべきだと思うんです。

 国民が望んでいる少人数学級は、それでは、どれほどの予算でできるのかということです。仮に、二〇一六年度、小学校二年生で三十五人学級を実施する場合、必要な教職員増は何人になりますか。下村文部科学大臣に伺います。

下村国務大臣 平成二十三年度に、義務標準法の改正によりまして、小学校一年生の三十五人以下学級の実施に必要な教職員定数として、四千人の定数改善措置を行いました。また、当時の試算では、同じく法改正による小学校二年生の三十五人以下学級の実施に必要な教職員定数は、四千三百人というふうに見込んでおります。

畑野委員 そうしますと、小学校二年生で三十五人学級を実施する場合は、教職員四千三百人の増になると見込まれてきたということです。

 少子化で子供の人数が減っております。同じ二〇一六年度、少子化によって教職員の定数は、それでは、何人減りますか。下村文部科学大臣、お願いします。

下村国務大臣 御指摘のように、現時点では、少子化に伴う教職員定数の自然減として、二〇一六年度、三千六百人の減を見込んでおります。

畑野委員 そうしますと、二〇一六年度に三十五人学級を小学校二年生で実施した場合、教職員は、四千三百人増に対して、少子化によって三千六百人減になるわけですから、差し引き七百人の教職員増で済むということになりますが、下村文部科学大臣、そういうことでよろしいですね。

下村国務大臣 はい。そういう計算になります。

畑野委員 わかりました。お答えになったように、実際に必要な教職員は七百人ということでございました。

 私、試算をいたしまして、小学校二年生の三十五人学級の国庫負担はどうかと。十六億円でできるという試算になります。

 それ以降ですが、三十五人学級を実施するために毎年四千人程度の教職員の定数増が必要と見込まれますけれども、一方で、少子化によって教職員の定数減があるということですから、それを引きますと、実際に必要な教職員数はどうなるかというのを試算して、その国庫負担額を資料にいたしました。文部科学省のデータをもとに試算したものです。二枚目にございます。パネルを用意してまいりました。

 二〇一六年度、小学校二年生で三十五人学級を実施した場合、必要な教職員増は七百人、十六億円ということです。ずっと、小学校二年生から小学校三年生、小学校二年生から四年生と毎年ふやしていくというふうにいたしましても、一番多いときでも、三十五人学級を中学校一年生まで実施する二〇二一年度、これが一番多い百三十九億円になります。その後、中学校三年生まで三十五人学級を実施する場合でも、二〇二三年度は、少子化で教職員の定数は大きく減ることが予想されて、五十六億円で済むということになります。

 私は、来年度から実施を強く求めたいと思うんです。文部科学省として、少なくとも、二〇一六年度の概算要求に、三十五人学級を小学校二年生以上で実施することを入れるべきではないかと思いますが、下村文部科学大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘にもありましたし、また答弁でも、少人数学級が望ましいというのは、学習効果、成果からいって、そのとおりだと思います。

 ただ一方で、三十五人学級にするということだけでなく、今教育現場で、同じ授業をそのままするということではなくて、例えば課題解決型授業、アクティブラーニング、そういうことによる教育の質の向上を図るべきである。また、多様な人材を配置して、学校がチームとして教育力とか組織力を最大化するチーム学校、教員が本来いろいろな雑用をしていた部分をほかの事務系の方にシフトするというようなことも含めたチーム学校の推進とか、それから教育格差の解消、いじめ等への対応、また特別支援教育の充実など、個々の、個別的な教育課題にも対応しなければならない。

 一方、統廃合への支援とか、過疎地への、小規模校への支援とか、そういうこととあわせて、さらにスクールソーシャルワーカーも倍増しなくちゃいけない、これからふやさなくちゃいけない。それから、退職教員とか地域人材の、教員以外の外部人材も例えば二千人拡大して、多様な人材の配置充実によって学校全体としての指導体制の充実を図らなければならない。そういうような地方自治体からの要望も出ております。

 そういう意味では、御指摘のように、小学校一年生だけでなく二年生以降においても三十五人以下学級を目指すということも必要ですが、同時に、子供たちの学習意欲の向上とかきめ細やかな指導による効果ということを、トータル的にそれぞれの自治体、地域に応じた体制もとる必要があるのではないかというふうに考えますと、厳しい財政状況下の中で、授業の質向上や多様な取り組み、また、自治体の創意工夫を踏まえて、柔軟で効果的な定数改善を早急に進めていくことも必要である、トータル的な中で学校現場の成果、効果が上がる方法を考えていく必要があるのではないかと思っています。

畑野委員 チーム学校は当然だと思うんですよね。いろいろな対応が必要です。同時に、三十五人学級、これも進めればいい。やはり両方やっていく必要があると思うんです。学級編制の改善も当然全力でやるべきだというふうに思います。そういう点では、本当に、検討するということでは先に進まないわけです。ぜひこれを前に進めていただきたいと思うんです。

 それで、二〇一一年に、小学校一年生の三十五人学級の法改正をしたとき、これは全会一致でした。その附則の第二項に、「公立の小学校の第二学年から第六学年まで及び中学校に係る学級編制の標準を順次に改定する」などが言われて、政府に順次改定することを求めました。

 また、全会派で修正案が当時出されまして、附則の第三項に、「政府は、前項の措置を講ずるに当たっては、これに必要な安定した財源の確保に努めるものとする。」という言葉が加わりました。継続的に実施できるように、修正案趣旨説明によれば、財源の確保を政府に義務づけたというものでした。

 安倍総理大臣に伺います。全会一致で、国会で決まりました。自民党も賛成されました。みんなでつくった法律に書いてあるんです。三十五人学級の推進を国として決断すべきときではありませんか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 そうした全会一致ということの重さもかみしめながら、先ほど申し上げましたように、小学校一年生、二年生では実現をしているわけでございますが、さらに三十五人学級の実現に向けて鋭意努力をしていきたい、このように思っております。

畑野委員 さらに三十五人学級を小学校三年生以上というふうに安倍総理から御答弁がありました。

 本当に、スピード感を持って取り組むようにと、教育再生実行会議のいじめ問題等への第一次提言でも、総理は、少人数学級の推進という要望に対してお答えになっております。

 日本共産党は、三十五人学級、少人数学級の実現の一点で、全ての皆さんと力を合わせて、実際に実現させるために全力を挙げることを表明して、私の質問を終わります。

大島委員長 これにて畑野君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十四日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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