衆議院

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第2号 平成28年1月8日(金曜日)

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平成二十八年一月八日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      あべ 俊子君    秋元  司君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大野敬太郎君    奥野 信亮君

      門  博文君    工藤 彰三君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      斎藤 洋明君    新藤 義孝君

      鈴木 俊一君    中谷 真一君

      中村 裕之君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      古屋 圭司君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      枝野 幸男君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      階   猛君    玉木雄一郎君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      福島 伸享君    浮島 智子君

      濱村  進君    桝屋 敬悟君

      吉田 宣弘君    赤嶺 政賢君

      高橋千鶴子君    藤野 保史君

      本村 伸子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (行政改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (海洋政策・領土問題担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣         遠藤 利明君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    佐藤 雄二君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月八日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     中谷 真一君

  石原 宏高君     新藤 義孝君

  衛藤征士郎君     池田 佳隆君

  越智 隆雄君     あべ 俊子君

  小林 鷹之君     穴見 陽一君

  原田 義昭君     中村 裕之君

  大西 健介君     枝野 幸男君

  玉木雄一郎君     中島 克仁君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  浮島 智子君     桝屋 敬悟君

  赤嶺 政賢君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     越智 隆雄君

  穴見 陽一君     石崎  徹君

  池田 佳隆君     衛藤征士郎君

  新藤 義孝君     石原 宏高君

  中谷 真一君     井上 貴博君

  中村 裕之君     斎藤 洋明君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

  枝野 幸男君     大西 健介君

  中島 克仁君     玉木雄一郎君

  桝屋 敬悟君     浮島 智子君

  藤野 保史君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     大野敬太郎君

  斎藤 洋明君     工藤 彰三君

  本村 伸子君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     小林 鷹之君

  工藤 彰三君     原田 義昭君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十七年度特別会計補正予算(特第1号)


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十七年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として海上保安庁長官佐藤雄二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 おはようございます。自由民主党の新藤義孝でございます。

 いよいよきょうから予算委員会が開始されます。しっかりと建設的な議論をしながらこの国を前に進めていく、その決意を持って、きょうは、予算の全体像について、また日本が向かうべき道筋について少し質疑をさせていただきたい、このように思っております。

 平成二十八年が明けました。伝統的な数え方でいえば、皇紀二千六百七十六年、ひのえさる。ひのえさるは、前回が六十年前、昭和三十一年であります。ひのえさるは、今まで見えなかったもの、それがしっかりとした形になってあらわれてくる、動き出す年だ、このように神社の宮司さんから私は教わっております。一体どんな年になるのか、そして私たちはことしをどういう年にすべきなのか、政治の責任は極めて重い、このように私は思っております。

 それから、昨年のことを思い出しますと、何よりも、口永良部島や御嶽山の火山噴火、それから九月の関東・東北豪雨、こういったたび重なる自然災害によって、多くの方のとうとい命が失われました。また、たくさんの被害が出ているわけであります。犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災者の支援、しっかりと政府は取り組まなければいけない、このように思っております。また、お見舞いを申し上げたいと思います。

 さらには、ことしで五年目になります、平成二十三年の三月十一日、東日本大震災。いまだに被災地ではあえいでいて、苦しんでいて、現状におきましてもまだ十九万人に上る方々が避難生活を送られている。政府として、復興をさらに進め、新しい東北をつくるためにしっかりと頑張っていこう。これもまた要請をさせていただきたいと思います。

 そして、その上で、この正月、世界を揺るがした大きな出来事についてまず触れなければなりません。北朝鮮の暴挙です。

 一月の六日に、北朝鮮は、四度目の核実験を行って、水爆実験に成功したと表明されました。世界の平和と安全を脅かす重大な脅威であって、そして北朝鮮の暴走と言うしかありません。

 日本は、今月から国連の安保理の非常任理事国になっています。早速私たちは国連において、実効性ある制裁、こういったものの強化を働きかける、早期採択を働きかける運動を進めなければいけません。

 それから、日米韓の連携、これまた重要だと思います。さらには中国に、影響力を行使せよ、こういったことも迫っていく必要がある。日本がやるべきことはたくさんある、このように思っています。

 さらには、拉致問題が全く進展しない中で、報告がなされない中でこういった問題が起きました。行動対行動の原理に基づいて、日本は、より厳しく強い制裁措置、そして今、とめておりました制裁を復活する、さまざまな検討を始めなければいけない、このように思うわけであります。

 本日には、衆議院、参議院、相次いで本会議が開かれて国会決議がなされる、こういったことも予定されていると聞いております。

 そこで、まず総括的に、果たして今度の実験は成功したのか。そして、水素爆弾だったのか、水爆だったのか。今回の実験の分析、評価。また、今回のことを経て、我が国に対する脅威はどういうふうに変化していくのか。また、国連の対応はどのように進めていくつもりなのか。総理からまず包括的に御報告をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、気象庁が探知した地震波や、北朝鮮による核実験を実施した旨の発表など、関連するさまざまな情報を総合的に勘案した結果、北朝鮮が核実験を実施したものと判断をしております。

 一方、水爆実験を成功させたか否かでございますが、水爆実験を成功させたとの北朝鮮の発表については、米国、韓国を初め関係国と緊密に連携しつつ、引き続きその分析、評価に努めていく必要があります。

 水爆を成功させる技術は、原爆実験を成功させる技術よりもはるかに高度な技術となっていくわけでございますが、地震の規模から考えれば、一般的な水爆実験を行ったとは考えにくいものと認識をしております。

 他方で、北朝鮮においては、今回の核実験は四回目となることから、核兵器開発について技術的な成熟が見込まれること、また、北朝鮮が今回の核実験においては、試験のため通常の水爆よりも爆発の規模を小さく抑えた可能性は否定できないことなどから、さらに分析を進めていく必要があると考えています。

 いずれにせよ、今回の核実験は、北朝鮮の核兵器開発をより一層進展させるものであり、極めて強く懸念すべきものであると考えています。また、このような北朝鮮の核兵器開発は、運搬手段となり得る弾道ミサイル能力の増強とあわせ考えれば、我が国の安全に対する重大な脅威であります。

 我が国としては、引き続き情報収集に努めるとともに、安保理非常任理事国と日本はなりました。これは、安保理非常任理事国選挙へ向けて与党の皆様にも大変な御協力をいただきました。私もバングラデシュを訪問した際、日本にいわば彼らが、今回は選挙に出ることをやめて日本を支持する、こういう大きな決断をしていただいた結果、日本は非常任理事国選挙に、多くの支持を得て当選を果たすことができたのでございます。こうした外交の成果であったとも考えるわけでございますが、非常任理事国として、新たな決議の速やかな採択に向けて、関係国と引き続き緊密に連携しつつ、国際社会の平和と安定に対する責任をしっかりと果たしていく考えであります。

 同時に、我が国独自の措置の検討を含め、北朝鮮に対して、毅然かつ断固たる対応を行っていく考えでございます。

新藤委員 ちょうど三年前の十二月二十六日、第二次安倍内閣政権ができました。私も、総務大臣としてその閣僚の中に入れていただきました。総理は私に、一緒に日本の歴史をつくろう、こういうお話をいただきました。

 あのとき、長期デフレ、円高、そして東日本の大震災からの復興は遅々として進まず、さらには、領土、領海はかつてない脅威にさらされた。あれから三年です。今、どんな状態になりましたか。

 安倍内閣のミッションは、日本を取り戻す。それは、強い経済を実現して、そこから子供やお年寄りや働く人たちのための優しい社会をつくろう、これが私たちのビジョンでありました。

 三年間で、国と地方の税収を合わせますと、民主党政権時代から二十一兆円ふえている。企業収益は過去最高、賃上げ十七年ぶり、雇用は百万人ふえて、有効求人倍率も二十四年ぶりの高水準。そして、名目GDPは五百兆を超えて、これはリーマン・ショック前の水準にようやっと戻った、こういう状態です。

 株価も、ここのところできのうは一万八千円を割りましたけれども、しかし、たしか、野田総理が解散すると、安倍総裁と一緒に、あのとき八千円ぐらいだったと思います。それが二万円に届くまでに回復してきた、こういう状態があります。

 そして、経済成長と財政健全化の両立を我々はずっと図ってまいりました。税収は、平成二十七年度が五十六兆円台、これはバブル期の水準です。国債発行は、九年ぶり低水準、そして四年連続減額。さらには、二年連続で年度途中で国債を減額補正する、こういう事柄が動いてきているわけであります。

 私たちは、アベノミクス第二ステージ、この目標をしっかりと全員が共有すべきだと思います。

 経済再生と財政健全化の両立、それから経済好循環の実現、持続可能な社会保障制度を確立することによって国民の将来不安を払拭する、成長と分配の好循環をつくろう、この言葉はスローガンではありません。現実の政策としての目標です。

 ぜひ、そういう意味で、我々は、ことし一年、どんな経済を動かしていこうとするのか、国民の皆さんに、できるだけ多くの方に共有していただきたいと思います。

 今、直近の課題は、この経済好循環です。この二年間で企業の収益が最高だと申し上げました。内部留保は五十兆に及びます。現預金も二十・二兆円ふえています。しかし、設備投資は五兆円、そして給与や賞与は〇・三兆円。企業が収益を出していてもそれがまだ投資や、何よりも賃金に向かっていない、このことを全員で、やはり数字で認識すべきだと思うのであります。

 日本経済を今後どうやって再生させていくのか、この経済好循環をどう実現させるのか、まずは総括的に安倍総理から、アベノミクス第二ステージの考え方を教えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 三年前を思い起こしますと、新藤委員とも、日本を取り戻すために全力を尽くさなければいけない、この思いで総裁選に私は立候補したわけでございますが、その際にも申し上げたんですが、国民所得、GNIが五十兆円失われていました。この失われた五十兆円を、GNI、国民所得を取り戻す、この大きな目標を掲げました。そして、今やこの五十兆円、約四十数兆円取り戻すことができた。五十兆円も視野に入ってきているんですね。まさにあのときは大きな目標だった。この目標を達成しつつあるわけであります。

 その目標を達成するためにデフレから脱却をしなければならない。三本の矢の政策を進めることによって、我々はそうした数々の目標を達成することができました。

 名目GDPは二十八兆円ふえ、企業収益は、新藤委員が指摘されたように、過去最高になりました。そしてまた、政労使会議を開催いたしまして、成長志向型の法人税改革を通じ、好調な企業の収益を雇用や所得環境の改善につなげることにより、就業者数は百十万人以上増加をし、有効求人倍率は二十三年ぶりの水準となりました。賃上げ率は二年連続で大きな伸びとなり、経済の好循環を生み出しています。雇用においても、あるいは収入においても明らかによくなっているわけであります。

 この経済の好循環を力強く回るようにするためには、企業の過去最高の収益を、三巡目のしっかりした賃上げ、そして設備投資の拡大に結びつけていくことが大変重要であります。しかし同時に、収益を上げなければ賃上げにもつながりませんし、当然設備投資もふえていかないわけであります。その環境を私たちは整えることができたわけでございます。

 そして、政府としても、さらに企業が投資しやすい環境を整えるため、法人税改革や固定資産税の設備投資減税の決定など大きく踏み込んでいるわけでございまして、また最低賃金につきましても、年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指していきます。これは、ただ最低賃金を幾らにすると紙に書いたわけではなくて、そういう状況を私たちはつくり出すことができて、零細中小企業に至るまで千円を目指すことが今できる経済環境をつくり出しつつあるということであります。

 さらに、アベノミクスの果実を活用して、成長と分配の好循環を通じて一億総活躍社会をつくり上げてまいります。TPPがもたらす経済拡大効果を政策を総動員して実現していく考えであります。

 アベノミクスにおきましては、今申し上げましたように、成長と、そしてその成長の果実をしっかりと分配に回し、そのことによって安定した社会基盤の上にさらに成長していく、この成長と分配の好循環を回していくという新しい社会経済を実現していくことによって一億総活躍社会を実現していきたい、このように考えております。

新藤委員 その一億総活躍社会の実現のために、まず第一の重点、それは、強い経済、GDPの六百兆実現、こういうことをうたいました。

 お手元に資料をお配りしましたけれども、一九九六年以来のGDPの推移、GDPデフレーターやCPIの上昇率、これはいずれもずっとマイナスの傾向が多いですから、本当にこの六百兆は実現するのか、こういう声が出ているのも事実。でも、これは私たちにとって大いなる挑戦であって可能性があることだということを私たちはこのパネルの中で認識すべきだと思うんです。

 一九九四年から二〇一四年の二十年間、諸外国、日本を含むGDPの推移を見れば、アメリカは二・四倍です。そして、中国は十八倍、イギリスは二・六倍、ドイツも一・八倍、フランスも二倍、韓国も三・一倍。各国は苦しい経済にあえぎながら伸ばしているんです。でも、日本だけがマイナス五%。

 だから、このやり方をどのように変えていくか。次元の違う、今までとは違う仕組みを組み上げていきながら、しかし、これは逆に言えば、日本にもチャンスがある、私はそういうふうに思っているんです。ですから、GDPの六百兆、これは目標であって、それを実現させるために、できっこないとかだめな理屈を幾ら言うのではなくて、しっかりとみんなで頑張れば、世界の国々もやっているんだということを私はあえて御指摘していきたいと思います。

 その上で、今回のこの補正予算、これも大いなる戦略と目標がある、このことも私たちは共有すべきです。

 まず第一に、今度の補正予算は、従来のような景気対策型ではないということです。強い経済を実現させるために必要な施策、これをきめ細かく実行するための機動的な予算になっているということ。それからさらに、ことしの前半の経済を下支えする。二十八年度予算を実際に執行するまでの間の、この正月から春先にかけての経済を下支えするための対処する予算であるということであります。

 そして、特徴が三つあります。赤字国債を発行していません。今までは、補正予算を組むとなれば、またそこで国債発行していた、これは国債発行しないんです。そして、財源は、今年度の税収の上振れ分一・九兆円と、それから前年度の決算剰余金二・二兆円を活用。これはまさに、経済成長の果実と、それから経済再生、行革努力を反映したものになっている。こういう予算編成は今まで組んだことがあるのかということ。そして、二十六年度の、昨年の補正予算もそうでしたけれども、二年連続で公債金を減額している。

 こういう明確な戦略と目的を持った補正予算、これを一刻も早く成立させて、国民経済に影響を与えなければ、行使しなければいけない、こういうことだと思うのであります。

 その上で、あえて一つしっかりと聞いておきたいこと。これは、この補正だけではありません。国民生活に大きな影響を及ぼす消費税の問題です。これが二十九年四月から一〇%を導入する。

 その際に軽減税率を導入するんだということが確定いたしました。酒類と外食を除く飲食料品全般、これが軽減税率の対象になるわけでありますけれども、問題は財源です。既に、財源が大丈夫なのかという声が出ています。これは私たちの責任です。だから、しっかりと説明していかなくてはなりません。

 まず、現時点では、医療や介護などの総合合算制度の見送り、これで四千億円の確保ができている。では、残り六千億円、どうやって確保して、それは安定的恒久財源になるのか、その考え方、まず御説明をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今御質問のあったところは、いわゆる政府税制改正大綱の中にもきちんと書いてありますように、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するという観点から、いわゆる平成二十八年度までに歳入及び歳出における法制上の措置を講ずることとした上で、その上で平成二十八年度法の改正案を置いて明記をしてあるわけですけれども、今は決まったばかりでありますので、今から一年時間がありますので、今の段階でこんなことがあるとかあんなことが要るということを軽々に申し上げる段階にはない、そう思っております。

新藤委員 もちろん大臣のおっしゃるとおりです。きちんと組み上げる、そしてそれを安定的、恒久的財源にしなければいけない。経済を大きくしながら、さまざまな工夫をしながら財源をつくっていく、このことを政府は約束しているわけでありますから、改めてそこをみんなで確認したい、こういうことでございます。

 その上で、消費税対策でありますけれども、実はこの補正予算でいろいろ手厚い対策を打っていますよね。それから、補正ではなくて今年度の予備費を使って、消費税の中小企業者に対する不安を払拭するための工夫が入っているじゃないですか。まず、百七十億円補正予算を組んでいます。それから二十七年度予算、予備費で一千億円、これはすごく大きなお金だと思いますけれども、これで経理システムの更新、改修だとか、それからレジの改修の費用、これは実際に中小企業者にとても打撃の当たるところだと思うんですけれども、こういう対策が実はもう既に打たれているんだということをもう一度皆さんに説明していただきたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、軽減税率が導入される際には、混乱が生じないようにということを、慎重に取り組まねばならぬということで、五%から八%に上げる際も政府内部に組織をつくったのも御記憶のとおりなんですが、必要な体制を整備するとともに、事業者の側にも立って、消費者と同時に事業者間の取引も起きますので、事業者間の取引の状況等々を検証しつつやっていかねばならぬ。

 その一環として、今お話ありましたように、先般の十二月の十日でしたか、十八日だったかな、予備費を使わせていただいて、九百九十六億円の使用を閣議決定させていただいて、中小のいわゆる小売事業者が複数税率というものに対応するために、いわゆる今言われたレジとかシステムの改修を支援ということにさせていただいております。

 加えて、二十七年度のこの補正予算におきましては、百七十億円を新たに計上させていただいて、制度の周知徹底や相談への対応というものを丁寧に行うということにさせていただいておりますので、この関係省庁、いわゆる商工業者をやっておられる関係省庁等と連絡をしつつ、支援策を着実に実施するということで、平成二十九年四月に予定をいたしております軽減税率の導入に向けて、事業者への対応というものに対して、しっかり対応してまいりたいと考えております。

新藤委員 どんどん行きます。それで、時間の関係がありますので、質問は飛ばされますので、ぜひきちんとよく質問を聞いておいていただきたいというふうに思います。

 その上で、今度は、一億総活躍社会の実現に向けて、今回の補正予算の約三割、これは緊急対策で重点配分したわけですね。特に、この第二の矢、希望出生率と、第三の矢、介護離職ゼロ、この関連、この問題についてお尋ねします。

 目玉であって関心事項でもあるのは、低所得者の年金受給者向け給付金。これがまたいろいろと、ばらまきであるとか、いろいろな意見が出ています。だけれども、これはきちんとした戦略のもとで、まさに経済成長の果実とその分配、これを好循環を起こすために、非常に影響の及ぼしにくいところに対してピンポイントで手を打つ、私は有効な策にできるんじゃないかと思っているんですね。

 お手元に資料をお配りしましたけれども、低所得者の高齢世帯、六十歳から六十九歳まで、これは、低所得者の高齢世帯の中でも、仕事についている方と無職の方がいらっしゃいます。それと実際の現役世代の消費支出というのを比較すると、まず一番高いのは、実際にお金を使っているのは、高齢者の勤労世帯なんですね。それは三十代の勤労世帯を超えて支出している。しかし高齢者の無職の世帯はやはり大きく落ちる、支出が下がっているということでございます。ところで一方で、使いたい消費性向を見ると、今度は高齢者・無職世帯は一五〇%、収入の要するに一・五倍支出しているということになるんです。

 ですから、アベノミクスの恩恵をこうむらない、働いていないんですから給料が上がらない、給料を受け取っていないんですから、そういう人たちに対してピンポイントで対策を打つということは、しかも消費性向の高い人たちに対してピンポイントで手を打つということは、これは有効な策になり得る、このように思うのでありますけれども、高齢者向け給付金の本質と効果について御説明いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これはもう既に今、新藤委員から話をされたとおりであります。

 先ほど私も御説明をさせていただきましたが、私たちの進めてきた経済政策によって、賃金は二%以上、これは連合の平均で二年連続上昇しています。冬のボーナスも過去最高の引き上げ率になっています。間違いなく収入は上がってきています。同時に、デフレから脱却しつつあるということは、物の値段が下がらずに、物の値段が適切に上がり始める、いわば正常な市場に戻りつつあるのは間違いない。

 一方、年金生活者の方々は、そうした企業が最高収益を上げたとしても、そのいわば分配は来ないわけであります。

 そして同時に、我々は政権をとって、責任政党としてしっかりと責任を果たしていかなければならないという中において、年金においては物価に対してスライドをしていくわけでありますが、デフレになったときに、何らか、年金生活者の皆様が大変だということで、デフレにはスライドさせてこなかったんですね。これはずっとたまっていたんです。それでは年金財政自体がもたなくなりますから、私たちは私たちの政権として、厳しい決断ではありましたが、デフレスライドをさせました。デフレスライドをするし、かつ物価が上がっていく、給料生活者ではありませんから、給料が上がっていかないという厳しい状況にあったのは事実であります。

 一方、多くの給与生活者は、先ほど申し上げましたように、企業は最高の収益を上げ、政労使の会議によって賃金が上がっていくという中において、我々の、いわばアベノミクスの果実が分配されつつある、この大きな差があります。これを私たちはアベノミクスの果実で埋めていくべきだ、こう考えたわけであります。

 国と地方、税収は二十一兆円ふえたんですから、この三年間で二十一兆円もふえた。国だけで十五兆円もふえています。この果実をどう分配していくか。そして、そのポイントの中で、消費性向が高いのは、今委員が御指摘をされたように、まさに私たちが今度の三万円の措置をしようとする対象者の皆様であります。

 まさに、アベノミクスの果実の恩恵がなかなか行かない、そして、かつ同時に、消費性向が高い人たちにしっかりと政策を打っていくというのは、政策として、ミクロで見ても正しいし、マクロ経済においても私たちは正しい、こう考えているところでございます。

新藤委員 私もそう思います。しかも、それは、せっかく策を打つんですから、効果が出るように、ですから、受け取った皆さんが、自分たちが何のために受け取ったのかということをきちんと御理解いただくことが重要だと思います。

 その上で、もう一つ、希望出生率一・八、これは国家的な課題ですね。しかも、経済政策の中に出生率を取り込んだ、人口政策を経済政策に取り込んだというのは画期的なことである、このように思っているんです。

 まず我々が考えなきゃいけないのは、うれしい知らせ、それは、元旦の発表でしたけれども、厚労省、平成二十七年人口動態統計、これによると、年間の推計出生者数が五年ぶりに増加した、四千人でございますけれども、子供がふえたんです。その原因は何かと調査いたしましたらば、それは、好調な雇用情勢、保育所の整備、こういった政策効果によって、現実に特殊出生率も上昇する見込みがある、こういうところまで出てきている。

 だから、さらに、この希望出生率を達成させるための具体的な策を打っていかなくてはならない、こういうことだと思うんです。

 そういう意味において、私たち、これは日本の構造的な課題です。今、我々は、二〇三〇年代に希望出生率一・八、そして、二〇四〇年には、究極の目標は二・〇七。人口が維持できるのは、出生率が二・〇七になって初めて維持できる。でも、それには、二・〇七を維持してから実際に人口減少がとまり横ばいに移るまでには八十年かかる。

 ことしの成人式が、百二十一万人の若者が成人式を迎えられる。去年が百二十五万人だったと思います。でも、ことし生まれる子供たちは百万人です。

 二十年後にどういう人口が構成されているか、私たちはもう約束しちゃっているんですから、ですから、一刻も早く出生率を上げる。産んでくれじゃないんです、産んで育てて安心して暮らしていける社会をつくるんだ、こういうことが重要だと思います。

 加藤大臣、本当に手短で申しわけないけれども、高齢者の給付に対して、今度は現役世代にどういう対策を考えているのか、御説明いただきたいと思います。

加藤国務大臣 まず、希望出生率一・八の実現に向けては、希望どおりに結婚ができない、あるいは希望どおりに子供を産み育てることができない、こういう状況を改善していかなきゃならないと考えております。

 具体的には、キャリアアップ助成金の拡充などを通じて、若い方々の雇用の安定、待遇の改善。そして、結婚に向けた活動の支援、あるいは不妊治療に対する助成の拡充、そして子育て世代包括支援センターの拡充等を通じて、結婚、妊娠、そして子育てに係る切れ目のない支援をしっかりとしていく。また、待機児童の解消を確実なものにするため、今回、保育サービスの整備量を四十万から五十万に上積みし、他方で保育人材を確保するということで、多様な保育サービスの充実を図っていく。こういったことを、今お願いしている補正予算、あるいは来年の当初予算を通じてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

新藤委員 この一億総活躍社会を実現するために、経済を大きくして、そして子供を産み育てられる社会をつくり、かつ介護離職、介護を理由に職を離れなければいけない、そういうことを防ごうという具体的な設計があります。

 その上で、今回大きなチャンスとなっているのがTPP。貿易だから、海外との取引だから、そう思わずに、TPPによって日本の経済が大きく成長できる、拡大できる、こういう世界のGDPの四割を占める貿易経済圏、自由貿易圏を我々は持つことができたということであります。

 今回のTPPの交渉、極めてタフな厳しい状況、甘利大臣が、命がけということですけれども、本当にどなり合っているのを私もよく見ていましたから、すごく頑張った。しかも、それは、総理が全幅の信頼を置いて、政権が一つになって、各大臣もそれぞれ分担で力を合わせた結果だと、我々はこれは胸を張っていいというふうに思うんです。

 その上で、基本の数字です。私たちは、特に農産品については非常に不安があって、これは激変緩和が必要だと思います。しかし、これも、今回のTPPの交渉は、日本以外の十一カ国の農林水産品における関税撤廃率、これは九八・五%。しかし、日本の関税撤廃率は八一%です。重要五品目を中心にして、関税撤廃の例外を数多く確保した。それから、私たちにとって有効なセーフガードだとか関税割り当て、こういったものは日本に極めて有利な交渉をすることができた。

 私は、これはぜひ、心配はあると思いますけれども、しかし、TPPによって経済の国境を下げて、中小企業者や日本のすばらしい農産品がもっと大きな市場を持つことができたんだと。これも、入ったんですから、決めたんですから、効果を出させるようにしていかなくてはいけない。

 その意味において、総理から、総括的にTPPが日本に及ぼす影響と可能性についてお話をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPの交渉が始まり、結果として大筋合意になって、世界のGDPの四割を占める経済圏ができました。

 今まで、多くの国々が注目はしていたんですが、これは恐らく難しいだろう、理想ではあるけれども、そんなものはできないだろうと見ていた。今回、実際合意ができた。そうなったら、多くの国々が、ここに入っていかないとおくれをとるということで、次々と関心を示し、入りたい、日本にも協力してもらいたいという声が相次いでいるわけであります。それはなぜかということであります。

 なぜかといえば、この経済圏の中に入っていれば、もちろん関税も自由になりますが、物や人や、あるいは知財も含めて、自由に、アイデアも含めて行き交うようになっていく、ここでは新たなイノベーションが生まれ、そして新たな成長が起こってくるのは間違いないんだろう、こう思うわけであります。

 今まで、中小企業は、いろいろな国に進出をする上においては、果たして、ルールが途中で変わるのではないか、自分の大切な技術が守られるかどうか。途中でルールを変えたら大変です。税制もそうですね。あるいは、国が企業を持っている、そことちゃんと公正に競争できるかどうか。いろいろな心配があって、とても中小企業は二の足を踏まざるを得なかったというのが現状ですし、ひどい目に遭った企業もたくさんあると思います。

 しかし、この仕組みの中であれば、しっかりとしたルールがあります。そのルールの中で、最初から透明なルールがありますから、中小零細企業といえども、しっかりとした支援体制があれば、世界に、このGDPの四割の経済圏の中では活動していくことができるということになるわけであります。

 その中で、先般、総合的なTPP関連政策大綱を委員にも御協力いただいて取りまとめることができました。中堅・中小企業の海外展開支援、そして農産品、食品、サービス等の輸出促進を図る新輸出大国の実現。また、TPPによる貿易・投資の拡大を国内の経済再生に直結させるグローバルハブの実現。体質強化による攻めの農林水産業への転換を後押しし、経営安定、安定供給のための備えを万全とする施策を推進する農政新時代を政策目標として掲げているわけでございまして、必ずこのTPPを経済の成長につなげていきたい、こう考えているところでございます。

新藤委員 このTPPが、日本経済、そして農業や工業、中小企業、そういった皆さんにたくさんのチャンスを与え、そしてそれぞれの分野で活躍できる人たちがふえる、こういうことだと思います。

 あわせて、TPPと同じく、日本の国策として非常に重要な骨格になっているのが地方の創生です。

 これは、幾らマクロ経済の数値がよくなっても、全国津々浦々、それぞれの地域で、それぞれの家族がその経済の成長の実感を得られなければ意味がない。だから、地方、一つ一つの町を元気にさせようじゃないかと。

 私も、総務大臣それから地方分権担当、地域活性化担当、幾つもの大臣を兼務、総理が一つにまとめて、地方創生の仕組みをつくれ、こういう御指示をいただいた中で設計に携わってまいりました。いよいよ今、全国各自治体で地方版の地方創生総合戦略の策定が終わりつつあって、これから実施する、こういう段階になるわけであります。

 私は、この地方創生のポイント、今までとは違うんだということ、これまでのに加えた特徴は何かといえば、地方が自主的に進めていけるけれども、同じく責任も持つんだということ。国は、縦割りにしないで、できるだけ多くの省庁がプラットホームをつくって横割り展開しようじゃないか。そして、ばらまきはしない。だから、KPI、キー・パフォーマンス・インディケーターといいますけれども、いわゆる数値目標を立てる、それがどこまで達成できているのか適宜チェックする、PDCAです、こういう仕組みを入れたのも今までにないことでした。

 加えて、包括的な自由度の高い交付金、新型交付金と名前をつけさせていただきましたけれども、そういったものを決めさせていただきました。

 今まで、二十六年度の補正で先行型交付金というのが出ています。今回は、補正予算で地方創生を加速する交付金というのが出ました。来年、新型交付金、本番が出てきます。この三つの考え方、これをぜひ自治体の皆さんにしっかりと届けなければいけないと思うんです。

 特に注目いただきたいのは、この二十六年補正。実は、昨年末に全部執行が終わりましたね。この中で、上乗せ交付金、先行的な事業をやっているところにのみ出すよといった三百億円は、八百五十三団体、申請がございました。しかし、交付されたのは六百七十七団体です。全ての自治体は千七百八十八自治体です。だから、千七百八十八自治体のうちで、実際に交付されたのは六百七十七団体だったんです。ほかのところには一円も行っていないんです。

 切り捨てではありません、本当に仕事が進んでいく、そういうKPIとPDCAがきちんとでき上がっているものについてはきちっとお金が行くんだ、そういう交付金。これからもぜひ進めていかなければならないし、お金はなくなりません。

 地方創生は、集中期間が五年間で、交付金の枠も約一兆円あります。それから、総務省が別途地方交付税で一兆円の別枠の交付金、要するに、地方創生型の応援の資金がありますから、これは五兆円あります。早くやらなければとか、お金がなくなっちゃうじゃなくて、いいものを出せば必ずつくんだ、そういうことを強くメッセージを出すしかないと思うんです。

 例えば、おもしろいのは、一人親家庭の方のみを対象とする事業とか、それから、忍者の里というので、三重の伊賀忍者と、甲賀の滋賀県と、神奈川県の風魔忍者と、それから実存しませんけれども長野の猿飛佐助、こういうような忍者シリーズで、広域の自治体が観光ルートやそれのいろいろな物販ルートを広域で連携して新しい事業をやる。おもしろいものはこれはつきますよね。

 ですから、交付金をこれからどうやって使ってもらいたいのか、ぜひ石破大臣の方から総括してお話しいただきたいと思います。

石破国務大臣 この構想の土台をおつくりいただいた新藤先生の御指摘のとおりであります。

 ともすれば、今までは、なるべく国の補助金の中で金額の大きいもの、補助率の高いもの、自己負担の少ないもの、ところが、そこは、地域に合うかどうかというよりも、金が大きくて自己負担の少ないもの、そういうものをとるという嫌いがなかったわけではない。

 しかし、今回は、国のいろいろな決まった補助金にはないけれども、おっしゃったように、シングルマザーの方、一人親の方、そういうものを支援するとか、まちづくりをやるとか、地域間連携をやるとか、DMOをつくるとか、そういう新しいものに取り組むというものに対して支援をしようということが構想の骨格でございます。

 その際に、役所だけが考えるのではなくて、産官学金労言と申しますが、役所だけに任せておけばいいのではないと。民間も、学問に携わる人たちも、金融機関も、言論界も、みんなで参画したからにはみんなで責任を持とうねと。そして、KPI、何を達成するんだ。気宇壮大な目標を掲げるのはいいんですけれども、それがきちんと実行できたかを検証するシステム、PDCA、これをきちんと動かすということが肝要であります。

 ですから、それは、満額いったところもあります、ゼロのところもあります。ひどいじゃないかというお話もありますが、一生懸命やったところとそうでないところと、どうせ今までと一緒だよ、そのうちまたこんなのは変わるんだというところと、いや、そうじゃない、自分たちの創意工夫でやっていくんだというところと、同じに取り扱ったらば全部が沈みますので、そのようなことは絶対にできません。そういうことに、実際に市民も一緒になって自覚をしていただく。

 一番いかぬのは、やりっ放しの行政、頼りっ放しの民業、全然無関心の市民、この三つが三位一体になると、地方創生というのは絶対にうまくいかないのであります。

 そういうことに多くの自治体が自覚をしていただき、総合戦略ができつつある。まさしく実行段階でありますので、今回お願いしております補正でさらに加速の度を高めていきたい、かように考えておる次第でございます。

新藤委員 ぜひ私たちも応援したいと思いますが、特に新型交付金については、今の先行型と加速化交付金は十分の十の充当です、でも、この新型交付金、本番のものは充当率が半分。

 それは、最初からそういう設計でした。中には、引き下げられたんじゃないかとか後退したんじゃないかというふうに心配する方がいるんですけれども、最初からそうなんです。地方に自主性を持ってもらうものとともに、地方金融も活用しながら責任をとってもらう。持続可能な事業を打ち上げればそれは回していけるんだということで二分の一の充当になっていて、そのかわり金額はきちんと確保するから、こういうこと。

 ぜひ、そこを私たちは皆さんにきちんと説明しなきゃいけないし、この地方創生は横串連携です。ですから、交付金の対象事業だから、それだけではなくて、交付金の対象事業であっても、そのほかの農水省や環境省や経産省や別の仕事もそこの中に入っていったっていいわけなんです。そういう横展開や融通がきくような体制をぜひしっかりやっていただきたい、このように思っております。

 その上で、これまた総理にお願いいたしますけれども、総理は、一億総活躍社会を実現させるには地方創生なくして実現できないとおっしゃいました。希望出生の一・八もそうです、介護離職ゼロもそうなんです。ですから、TPPも、地方創生も、それから町の安心、安全をつくる国土強靱化も、こういった既存の制度は全部連携して、それらが総括されて一億総活躍になるんだ。ここを総理は再三言っていただいておりますけれども、これが国民の皆さんにきちんと届くように今後もまた努めていただきたいと私からも要請をさせていただきます。

 その上で、ちょっと時間が少なくなってまいりましたので、あと二点、質問させていただきます。

 まず、領土関係でございます。

 安倍内閣は、私たちは日本を取り戻す、強い経済そして優しい社会をつくるとともに、安心、安全の国をつくる、そして、国の主権や誇りというものを確立する、これも大きな安倍内閣のビジョンの一つだ、このように思います。

 その上において、幾つか御提案をしたいと思うんですけれども、まず、その前に、懸案であった慰安婦問題、日韓で最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する、国際社会における批判や非難は控える、こういう合意ができたことは大きな成果だった、大変な御苦労をいただいたことだと承知しています。

 でも、私は、この合意は、両国が誠意を持って履行したときに初めて事業が実施されると。約束というのはそういうことですから。ですから、今、いろいろと、ソウルの日本大使館の真ん前に少女像があって、これは不法占用ですから。ですから、こういう問題や、それから、韓国政府がこれから慰安婦白書を発刊するとか、ユネスコに慰安婦に関係する登録遺産申請をするとか、いろいろ動きがあるようですけれども、こういうことも含めて国際的な批判、非難をしないという、控えると言っているんですから。

 ですから、こういう、お互いの二国間の合意が誠実に履行されたときに事業が進むんだということ、こういう理解で私はしておりますけれども、外務大臣、それでよろしいですよね。

岸田国務大臣 まず、今回の合意ですが、この慰安婦問題、昨年末、十二月二十八日に、日韓外相会談そして日韓首脳電話会談を通じまして、最終的、不可逆的な解決であることが確認されました。日本と韓国両政府が最終的、不可逆的な解決であることを確認するということを世界に向けて明言をしたということが、今までなかったことであり、画期的な合意であったと認識をしております。

 そして、この合意の中身に従って両国政府が誠実に履行を行うことが重要であるという御指摘、それはそのとおりであります。この合意に従って両政府がそれぞれの合意の内容を履行するということがこの合意の中に込められているわけであり、それに従ってさまざまな課題において適切に対処する、これが重要だと思います。

 御指摘のさまざまな課題についても、それが実行されるようにしっかり注視をしていかなければならない、このように考えます。

新藤委員 その上で、領土関係について、居丈高に、どっちがではなくて、これは法律と歴史的事実と正義に基づいておのずと解決していくべきものなんですから、まずは、国民やそれから国際社会に、私たちの歴史的事実と法律による立場というものを理解してもらうことが重要だと思うんですね。

 これは、私は、日本の領土を守るために行動する議員連盟というものの会長をやっております、超党派の。この領土議連で、先月、野党の皆さんも一緒に行ってきたんですよ、海上保安庁を視察してきました。極めて興味深い、というよりも、わかりやすい資料がございました。これは、明治四十一年に日本政府が近代的測量手法にのっとって竹島を世界で初めて実測した、この図面です。こういうものがあります。

 一方で、こちらは、韓国の「水路史」というものがあるんですけれども、昭和二十九年に韓国が初めて作成した竹島周辺の実測図なんです。これを出したときに韓国がどういうコメントを出したかというと、我が国観測史上初めて、前人未踏の絶海の孤島で測量を行った、韓国は、我が国観測史上初めて、昭和二十九年に実測したんです。私たちはもう明治四十一年に、とっくの昔に実測しちゃったし、江戸時代から詳細な地図を持って活用してきた。

 韓国がみずから自分たちでこういった宣言をして、これは二十九年に測量を始めたんですけれども、何と、この測量の五日前に、日本政府がICJに、国際司法裁判所に、竹島の領有権問題を提訴したんです。その提訴を提案した五日後に、大変だ、対抗資料がないというので慌てて、稚拙だけれども測量を始めたのがこの図面なんです。

 こういったことが、図面には何も書いてありません。でも、周辺状況や歴史をきちんと調べた上で解説、分析すれば、こういうことが見えてくるわけなんです。実は、この図面は海上保安庁のみ、日本で一枚しかないんです。こういうものが眠っているのに、皆さん、見ることがないわけですよ。

 これは、「朝鮮全岸」と書いてある。これは明治政府が明治二十九年に出した海図なんですけれども、これは、関東大震災とかで焼けちゃって、ほとんど残っていません。民間の研究者が、古書店に行って自腹で買って、それで島根県に寄附した図面。

 これは、韓国側の、竹島が朝鮮のものであったということを示す根拠の一つになっているんです。ここに赤い丸があって、「朝鮮全岸」と記した図面に、竹島であるリアンコールド岩と書いてありますけれども、竹島が描いてあるから、これを、ほら見ろ、明治政府は明治二十九年の段階で竹島は朝鮮のものであることを認識しているじゃないかと、その根拠になっているんですよ。

 でも、これを見ると、この図面にはウラジオストクが描いてある。それから、麻生財務大臣の福岡とか総理の山口県もここに描いてあるんです。ですから、この図面が朝鮮を示しているものならば、山口県も福岡県もウラジオストクもみんな朝鮮になっちゃう。こんな程度の根拠なんです。ですから、そういうものを、事実をきちんと皆さんに見てもらえばいいじゃないかと私は思っているんです。

 そういう意味で、でも、海上保安庁は、海路の、海上交通の安全を図るために海図を保管しています。それがどういう歴史的価値や根拠となるかということは、彼らが分析する資格がないわけです。ですから、領土担当の企画調整室があり、外務省があり、それからその他の関係省庁等含めて、こういう海図や海の関係の資料をきちんと連絡調整する体制が私は必要だと、この領土議連の視察において初めてわかったことなんです。

 そして、この中で、実は、日韓のEEZ、排他的経済水域の日本側に韓国が産業廃棄物の投棄区域を勝手に設定しているということがわかりました。もうこれは早速これを撤廃させろということで外務省に申し入れをして、外務省が今交渉を始めておりますけれども、やはりそういう一つ一つの役所が持っている情報を連携させないとだめなんだということなんです。

 それから、実は、こういうものは民間の古書店にたくさん流れています。それを中国や韓国の人たちが買いあさりに来ているということも聞いています。日本は一切、官がそういったことに予算を持っていくことはありません。

 ですから、そういうことを含めて、きょうは、海上保安庁に、こういう海洋情報の連絡協調体制をきちんと整備せよと提案をしました。

 それから、領土関係の資料を、民間のものも、世界に流通しているのもありますよ、こういうものをきちんと整理をして、分析をして国民の皆さんに知らせていく、こういう常設の展示場をつくったっていいんです。それから、企画展示を全国各都市でやればいいじゃないか。

 別に拳を上げて俺たちのものだじゃなくて、淡々と事実を、我々はこうやって日本の国を守ってきたんだ、日本の国は使ってきたんだということを知らせる私は工夫をした方がいいと思うんですけれども、どうでしょうか。ちょっと、短く答弁してください。

佐藤政府参考人 お答えします。

 海上保安庁が保有する海図等は、船舶の航海の安全確保のために刊行してまいりましたが、一方で、御指摘のとおり、我が国の領有権に関し歴史的、客観的に重要な資料でもありますので、今後とも、収集、保存などについてしっかり行ってまいります。

 また、こうした海図等について関係行政機関における情報共有をさらに徹底するため、今般、内閣官房、外務省、環境省などの関係省庁との間で海図等に関する情報交換会を設置し、初回会合を開催したところであります。

 今後は、この情報交換会を定期的に開催することを通じて、関係省庁とより密接に連携してまいります。

島尻国務大臣 領土対策室におきましては、昨年度より、尖閣諸島及び竹島に関しまして、地元に存在する資料を中心に調査をいたしました。資料のデジタル化及び目録の作成を行う事業を実施しております。昨年度は約一千五百点の資料を収集いたしまして、そのうち、基本的な資料約二百点を昨年八月にウエブサイトに掲載させていただきました。

 今年度も、調査区域や対象年代を拡大いたしまして、引き続き取り組んでいるところでございます。

新藤委員 ぜひ、常設の展示スペースを国会周辺につくるべきなんです。これは提案しておりますから御検討いただきたい、このように思います。

 その上で、最後にもう一点。行政のICT化。経済成長と財政健全化を実現させるには、今までとは違う効率性を実現させなければいけない。それはコンピューターなんです。ICTを使って、またインターネットを活用した、そういう国民の誰もが使える電子社会を実現すること、これは極めて重要だと思います。

 既に今、政府では、電子政府の実現ということで、国と地方のコンピューター、電子的なものを統合しようとしています。例えば、給与や旅費の計算、残業だとか物品調達、これは、霞が関の役所は全部同じ仕事をしているのに、全て別々のコンピューターを使っている。何をやっているんだと。千五百システムありますよ。これは六割カットできるんです。業務時間もコンピューターを使って工夫すれば二五%カットできる。二〇二〇年までに約一兆円の社会的コストをカットできる。これは私どもで試算を出して、始めているんです。

 各省庁が連携して、行政の電子化を進めようじゃないかというので、eガバメント関係閣僚会議、私が提案して、会合をやりました。平成二十六年の六月に第一回をやったんです。どんどん進めなきゃいけないのに、その後、持ち回りで一回やっただけで、それきり会合が開かれていないというのはどういうことなんだと。

 極めてわかりやすいのは、一番すぐできるのは電子決裁なんです。総務省九八%、経産省九七%、人事院八〇%、金融庁六〇%。でも、同じ仕事を、環境省二・八%、国土交通省一一%、外務省一二%、法務省一八%。武士の情けできょうは書類を出さないけれども、これは何をやっているんですか。誰もがすぐできるのにやらないのは、これはやる気がないのか体制がないかですよ。

 ですから、まずは関係の閣僚がきちんとこういう事実を認識して、そして各省の進捗の低いところは迫らないと。これを担当している内閣官房、IT戦略室を持っている内閣官房自体が一六%の電子決裁率というのはどういうことなんだ。やればできることを、いろいろな難しいことを言ったって、結局実施していなければ意味がないという意味において、これは厳しく指摘せざるを得ないし、ぜひこれは、IT担当大臣も島尻さんなんですよ。

 それから、行革担当大臣、これは削ればいいというものじゃないんです。そうではなくて、同じお金を有効に使うという意味からして、システムをつくりながら効率を上げて、そして財政再建と財政健全化を両立させる。これはぜひやってもらいたいと思いますし、総理からぜひこれは号令をかけていただきたい、このように思います。

 答弁はもう求めませんので。もうおわかりいただいている、私は何度も言っていますから。自民党においても、こういう、現実に電子化できていない、やれるのにできていないところは、しっかり私はチェックしながら、そういうことを推進する組織をつくらせてくれと言っております。

 その上で、最後に、あと二分ぐらいになってしまったんですけれども、総務大臣、何よりも膨大な事務を持っているのは自治体ですよね。これは、税のシステムから、一般事務のシステムから、福祉のシステム、公共資本の管理だとか、いろいろなありとあらゆるものをそれぞれがやっているんですけれども、四十七都道府県、そして千七百十八市町村、二十三特別区、全部別々のコンピューターでやっている。公会計システムも別々。

 今回、総務省で、九億円かけて、誰もが使える標準モデルをつくって無償で配布しました。これは、自治体自体が自分たちでつくったら、一自治体平均三百万かかるんですから、六百億円ですよ。六百億円かけて整備して、それに地方交付税でまた裏打ちするとか、こんなばかげたことをいつまでやるんだ。そして、どんどんとITが進んでいけば進んでいくほど、私の病院こそ日本で一番最高のシステムを持っていますとか、うちの町は日本で最高のケアシステムを持っていますということが、何百何千もできちゃったらどうするんだと。

 だから、一刻も早く電子共通基盤というものをつくる。それは、コンピューターの世界では、総延長なのか整備区間なのか。項目をそろえないとコンピューターは合わさないんですよ。記述の方法が違っちゃったら、コンピューターはソートはできないわけですよ。ですから、こういう行政のICTをきっちり進めていくということが非常に重要なんです。

 自治体は、実は、自分たちの固定資産台帳、これをまだ二割しか整備していないんです。公共施設管理計画、どこの公民館が、どのぐらい使っていて、あとどのぐらいこれを使えるかとか、こういう公共施設の管理の整備をするための計画、実はまだ五%しか、全自治体、持っていないんです。今度の、総務省が開発した、私どもでこれを準備して無償配布しましたこの公会計システムの中には、固定資産台帳も、公共施設管理計画の前提となるような、そういうシステムもみんな入っているんです。

 ですから、総務大臣、これを徹底してやる。管理は自分たちでやるけれども、しかし、共通基盤に乗らなければ日本はとんでもない壮大な無駄遣いをすることになってしまう。これが切りかえられれば、逆に言えば、物すごい経済成長のエンジンにもなるんだということを、最後に一つ、意気込みを聞かせていただきたいと思います。

高市国務大臣 既におっしゃっていただきましたとおり、固定資産台帳の機能、これを平成二十七年十月に提供を開始しました。また、財務書類作成機能、二十七年十二月に提供を開始しました。活用機能ですが、二十八年三月末ごろまでに提供予定でございます。

 とにかく、自治体がばらばらに別個のシステムで対応していましたシステムの改修ですとかふだんの運用コスト、大変負担が大きくなりますので、現在、複数の地方公共団体が共通でシステムを外部のデータセンターにおいて運用管理する、ネットワークを通じて利用するという自治体クラウド、これをしっかりと進めております。これによって、コストの削減もできますし、業務も効率化できる。システム集約化によって高いセキュリティーを確保できます。災害のときにもまた、バックアップ機能がありますから業務の継続もできるかと思います。

 既に参加していただいている自治体では大変な効果が上がっておりますので、しっかりと進めてまいります。

新藤委員 終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、平沢勝栄君から関連質疑の申し出があります。新藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 新藤委員に続いて質問させていただきます。

 まず初めに、日本とトルコの友好関係についてお尋ねしたいと思います。

 世界に親日国というのは数多くありますけれども、その中で最も親日的な国の一つがトルコであることは間違いないだろうと思います。

 今、「海難1890」という映画が上映中でございます。あの映画にも描かれていますけれども、一八九〇年にトルコの使節団が日本に来られました。そして、明治天皇に謁見されて、その帰国の途次に和歌山県の今の串本町大島、紀伊大島の沖合で台風に遭遇しまして、船は沈没したわけですけれども、そのときに紀伊大島の皆さん方は必死の救助作業をしてくださって、その結果として六十九名の方が助かったわけでございます。その六十九名の方を日本はトルコに送り届けたわけでございまして、トルコの皆さんは今でもこのことを覚えていて、それで教科書にも書かれて、今でも日本国民に感謝しておられるわけでございます。

 その一八九〇年から九十五年たった一九八五年に、今度はイラン・イラク戦争が長期化する中で、イラクのサダム・フセインは、今後四十八時間後以降はイランの上空を飛ぶ飛行機については無差別に攻撃するということを宣言したわけでございまして、そのときに各国は競って救援機を出して自国民をテヘランから国外に脱出させたわけでございますけれども、日本の場合はその飛行機がなかったんです。自衛隊は行けない、そして、民間機も安全性が保証されないということで行かない。日本国民は取り残されちゃったんです、テヘランに。ルフトハンザとかエールフランスなんかは一部の日本国民を運んでくれましたけれども、日本国民を運んでくれなかった飛行機もあったわけでございます。

 そのときに、わざわざ、トルコ国民もテヘランに六百人ほどいたにもかかわらず、日本国民のために救援機を出して、国外に運んでくれたのはトルコなんです。

 なぜトルコが運んでくれたかというと、そのきっかけをつくってくれたのは、一八九〇年、トルコの船が座礁したとき、そのときに必死に助けてくれた日本国民、紀伊大島、串本町大島の皆さんの恩義を忘れない、そしてそのときのことを感謝して、その恩返しということでやってくれたわけでございまして、トルコの皆さん方の御交誼には心から頭が下がる思いでいっぱいでございます。

 そこで、まず防衛大臣にお聞きしたいと思うんです。自国民がそういう形でテヘランに取り残された、しかし日本から行く飛行機は全くなかったというのが一九八五年の状態ですけれども、映画を見られたほとんどの方は、何で日本は自国の飛行機を出せないんだろうと思われたと思います。これは、なぜそのときは出せなかったのか、今ならどうなるか、お答えください。

中谷国務大臣 一九八五年当時は、外国における災害とか騒乱などの緊急事態の際に邦人を安全な場所に避難させる必要が生じた場合に、自衛隊機の輸送、この手段によって輸送を行う法的根拠規定がありませんでした。その後、平成六年に、政府専用機が防衛庁に移管することを契機に、自衛隊法を一部改正しまして、自衛隊の航空機による邦人等の輸送を可能にする法律の改正を行ったわけでございます。現在は、この法律に基づいて邦人の輸送が可能でございます。

平沢委員 当時はまだ日本は国家の体をなしていなかったということで、一歩、日本もまともな国家になってきたということだろうと思います。

 そこで、総理にお聞きしたいと思うんです。

 総理も映画をごらんになられたと思いますけれども、トルコ国民の友情には本当に頭の下がる思いでいっぱいでございまして、そのトルコに総理は、第二次安倍内閣ができてから三回、その間にG20サミットもございましたけれども、三回行かれておられます。これはもう本当に、日本とトルコの友好関係を深める意味では大変によかったと思います。

 トルコのような友好国を大事にすることもこれから私たちは力を入れていかなきゃなりませんけれども、ほかにも親日国というのは世界各国にいっぱいありますし、これからそういった親日国をどんどんつくっていく、そのためには総理にもどんどん外国にも行っていただきたいなと思いますけれども、映画を見られた感想も含めて、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本に対して非常に好印象、親日的な気持ちを持っている国はたくさんというか、ほとんどの国は日本に好印象を持っていると言ってもいいと思います。その中で、特に日本に対して強い思い入れのある国の一つがトルコなんだろうと思います。

 先ほど委員がおっしゃった「海難1890」、私も拝見をいたしました。あの映画の中でも触れられておりましたが、今から三十年前、テヘランで厳しい状況が発生した中において、日本の自衛隊機すら残念ながら法制上の問題があって、邦人を、同胞を救出に行けなかった。もちろん民間機もそうでありますが。その中で、トルコの航空会社が自国民を乗せずに、自国民は陸路で帰る、そしてそのかわりに日本人を乗せて日本に運んだ。これはなかなかできることではありませんし、逆に、その判断を私たちができるかという問いにもなってくるんだろうと思います。

 しかし、そういう判断をした背後には、その判断をした時の首相は国民から実は称賛されました。それはなぜかといえば、これはエルトゥールル号の出来事に起因するわけでありますが、かつて和歌山県沖で遭難した際、地域の人たちがまさに自分たちの食べるものも削って彼らを助けた。このことはトルコで教科書に載っていて、トルコの国民はみんな知っているんですね。日本人が知らなくて、彼らが実はびっくりしているわけでありますが。その中で、今度は私たちが助ける番だということであったんだろう、このように思う次第でございます。

 私もトルコに数回足を運びました。エルドアン大統領も日本に先般もお越しをいただきました。その中で、例えば、二〇二〇年のオリンピック、イスタンブール、日本、ライバルではありましたが、あのIOCの会場で日本というアナウンスがあったときに、一番最初に私のところに来て握手をして、そして抱き合って祝意を表明してくれたのはエルドアン大統領でありました。

 こうした関係をしっかりと大切にしていきたい。これはまさに国益にもつながっていくわけであります。多くの、日本にそうした感情、気持ちを持っている国に対して日本も応えていくことが大切なんだろうな、私はこのように思っております。

平沢委員 ありがとうございました。

 トルコ国民の皆さん方に心からお礼を申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、今「杉原千畝」という映画が上映されていますけれども、これについてもちょっと一言質問させていただきたいと思います。

 杉原さんというのは日本の外交官だったんです。戦前、日本の外交官で、リトアニアの領事館に勤務しておられましたけれども、ナチスの迫害を受けておられるユダヤ系避難民の方々が、国外に脱出したいということで、ビザを求めて領事館に殺到されたわけです。そのときに、日本の本省からの指示は、ビザは発給していいけれども、最終目的国の入国手続が完了していること、それから旅費とか滞在費を持っていること、この二つが条件だったわけですけれども、必ずしもこの条件を満たしているとは言えない方々も含めてビザを発給されたわけで、その結果として六千人のユダヤ系避難民の方が助かったということでございます。

 これに対しまして今世界各国では大きな称賛の声が出ているわけでございまして、とりわけイスラエルは杉原さんの勇気、決断に大変な感謝をしておられます。イスラエルは、一九六九年に杉原さんに叙勲されておられます。そして、一九八五年には諸国民の中の正義の人賞という賞を与えておられます。大変に今でも感謝しておられます。リトアニアには杉原千畝さんを記念した記念館というのもあります。

 そういった中で、外務大臣にお聞きしたいんですけれども、外務省としては、大先輩の杉原さんに対してどういう対応をしてこられたのか、どう思っておられるのか。それについてお聞かせください。

岸田国務大臣 杉原千畝氏による命のビザの発給によりまして、多くのユダヤ人の方々のとうとい命が救われました。

 杉原氏の行動は、戦後七十年を経た今日におきましても、世界に広がるユダヤ人を通して、各国で高く評価されております。

 杉原氏の行動は、勇気ある人道的な行為であり、杉原氏の業績を後世に語り継いでいくことは重要であると考えております。

 外務省におきましても、これまで、外務省外交史料館に杉原千畝顕彰プレートを設置し、二〇〇〇年にその除幕式を行っておりますが、当時の河野外務大臣が祝辞を述べるなど、杉原氏の顕彰に努めてきたところであります。

平沢委員 杉原さんは一九四七年に外務省をおやめになっておられまして、何でおやめになられたかちょっとよくわかりませんけれども、いずれにしましても、こうした大事な先輩がおられたということを誇りに思って、これからも外務省の方には頑張ってもらいたいなと思います。

 総理も映画を見られたと思いますけれども、総理、何か御感想がありましたら、一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 まさに杉原千畝さんという方の、自分で責任をとる覚悟で判断し多くのユダヤ人を救った、まさにこの日本人の勇気が多くのユダヤ人の人々を救った。本当に感動的な映画でもありました。

 昨年、イスラエルに訪問をした際にも、杉原さんの存在がいかに大きいかということを改めて実感したのでございますが、その後、ワシントンを訪問した際、ホロコースト記念博物館に参りましたら、杉原さんを記述したコーナーもございました。そして、帰りがけに一人の高齢の御婦人が私の前に立たれたんですね。そして、私の手を握って、私は杉原さんによって助けられたスギハラ・サバイバーの一人です、私の命が今あるのは杉原さんのおかげですと。

 同時に、実はその後、彼女は日本に来ました。数カ月間日本で滞在したんですが、自分はあのとき初めて、他人があんなに温かいんだということを知ることができた、あのときの経験は自分の人生を変えた、そのことをきょうはあなたに伝えるためにここにやってきました、涙を流しながらそうお話をされたわけでございまして、まさに杉原さんが行ったことがいかに人間にとっては大切なことだったかということを実感したような次第でございます。

平沢委員 ありがとうございました。杉原さんがおられたということを、日本人としても大変誇りに思うところでございます。

 では次に、きのうまでの代表質問を聞いていますと、臨時国会をなぜ開かなかったのかというような質問がいろいろ出ていましたから、これについてお聞きしたいと思います。

 これは憲法違反だという声がいろいろと質問として出ていましたけれども、昨年の通常国会は、九十五日間延長して二百四十五日間という、いわば現行憲法下で開かれた通常国会としては戦後最長となったわけでございまして、その後、総理の外交日程もございましたし、予算編成の作業もあった。

 それから、通常国会の後も全くやらなかったわけじゃなくて、閉会中審査を十委員会で六十時間以上にわたってしたわけでございます。その後、総理は外交日程がいっぱいありまして、各国に行かれたわけでございます。もちろん国会も大事ですけれども、総理はできるだけ外国に行かれて、日本と各国との友好親善を深める、いろいろな懸案の問題を議論することも大事でございまして、私は憲法違反というのは当たらないと思いますけれども、これについてはどう思いますか。

安倍内閣総理大臣 この件については、再三、本会議においても質問をいただきました。もう既にお答えをいたしておりますが、一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定義するにとどまり、召集時期については触れられていないわけでありまして、当該時期の決定については内閣に委ねているわけであります。

 そして、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない、こう解しているわけであります。ただし、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えていないわけであります。

 これは従来から政府がとってきた考え方で、民主党政権時代も含めて一貫している考え方を今申し上げているわけでございます。

 そして、平沢委員が今御指摘になられたように、秋には国連総会もございましたし、G20もございました。EASもございました。そうしたことがずっと立て込んでいた。かつ、九月二十七日まで常会があったということもあり、そして大切なことは、現下の諸課題を整理して、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであります。

 政府としては、臨時国会召集の要求に対して適切に対応する、そのためにもそうしたものを整理していく、また補正予算をちゃんと編成する、そして本予算を編成する、その上でしっかりとお答えをしていくことが誠実な対応であろう、こう考えたわけであります。そして、現在もこうしてお答えをしているわけでございます。

 また、閉会中においても、衆参両院の予算委員会にも私は出席をしたわけでございまして、一つ一つの質問に丁寧にお答えをさせていただいているところであります。

 また、TPP、COP21など当面する政治課題について、政府としても説明責任を果たしてきたところであります。

 大切なことは、何を議論するかということではないでしょうか。大切なことはまさに何を議論するかという観点から、我々はしっかりと準備を進め、予算を編成し、そして今、補正予算を編成し、ここで実のある議論をしたい、こう思っております。

 できることなら、野党からも対案もたまには出していただいて、しっかりと議論をさせていただきたい、このように思います。(発言する者あり)

平沢委員 ちょっと静かにしてください。総理の答弁が聞こえないんですよ、やじがうるさくて。ちょっと静かにしてもらいたい。これから質問があるわけですから、言いたいことがあれば質問のときに言ってください。

 次に、慰安婦に関する日韓合意について質問したいと思います。

 昨年の十二月二十八日、日韓の外相会談で慰安婦問題に関して合意を見たわけでございます。これまで日韓は隣国でありながらいろいろといがみ合っていたわけで、こうしたことはこの地域の平和と安定にとっても大きなマイナスになっていたわけですけれども、こうした形で合意ができたことは喜ばしいことでございまして、この合意に基づくいろいろな措置が着実に誠実に実行されることを期待したいと思います。

 そこで、時間が余りありませんので、幾つかに限って質問したいと思います。

 今回の合意を、外相同士の記者会見という形で発表されたわけですけれども、文書にしなかったわけですけれども、今回の合意というのはどの程度の拘束力を持つものなのか。中には、韓国の中で野党は、政権がかわったらこれをまたほごにするというか、なかったことにするようなことを言っているやにも聞いておりますけれども、この拘束力についてちょっとお答えいただけますか。

岸田国務大臣 今回の日韓両政府の合意によりまして、慰安婦問題、これを最終的かつ不可逆的に解決されることとなりました。

 これは、昨年の十二月二十八日の外相会談におきまして協議を行い、直接韓国政府としての確約を取りつけたものであり、そしてその上で両国の首脳間で確認された合意であるということ、これをまず強調したいと思います。

 その上で、韓国、尹長官は、外相会談後の共同記者発表で、両国民の前で、そして世界を前にして、力強くこの合意について明言をしました。

 したがって、政府としましては、こうした最終的、不可逆的な解決に至ったということにつきまして、韓国政府として明確かつ十分な確約を得たものであると受けとめております。世界を前にして両国政府が最終的、不可逆的な解決であることを確認することを明言した、このことは大変重たいものであると考えております。

平沢委員 今回の合意の中で、軍の関与のもとに多くの女性の名誉と尊厳を傷つけた、それについて責任を痛感し謝罪するという文言があるわけでございます。これはちょっと間違えると強制連行を認めたとか法的責任を認めたともとられかねないんですけれども、そういったことではないということを明言していただけませんでしょうか。外務大臣。

岸田国務大臣 我が国政府としましては、従来から、慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるという認識を表明してまいりました。従来からこうした認識を表明していたものであり、そして、かかる観点から責任を痛感しているということを今回も述べたわけであります。それは、当然、歴代内閣の立場を踏まえたものであると考えています。

 そして、今回の日本政府の立場の表明によっても、日韓間の財産及び請求権に関する日本政府の法的立場、これは従来と何ら変わりないと考えております。

平沢委員 ありがとうございました。

 そこで、この問題で私たちの最も大きな関心事の一つが、韓国の日本大使館前にある慰安婦像でございます。

 この慰安婦像は、韓国の国内、そして国外、アメリカなどにも慰安婦像とかあるいは慰安婦の碑とかいうのが建設されているわけですけれども、その象徴が韓国の日本大使館前の慰安婦像でございまして、これは明らかにウィーン条約にも違反しますし、韓国の国内法にも触れているわけでございます。

 ちなみに、二〇〇二年にアメリカの装甲車が韓国の女子中学生二人をひき殺したことがありましたけれども、そのときに、韓国の市民団体がアメリカ大使館の前に碑をつくろうとしたときに韓国側はそれにストップをかけて、そして、そこから離れたところにつくりましたら、その碑を半年後に撤去しているんです、韓国は。

 ですから、今回の韓国大使館前の慰安婦像というのは明らかな法違反ですから、韓国当局がその気になれば明らかにこれは撤去できるんじゃないかなと思いますけれども、この慰安婦像の撤去はどうなるのか。そして、この慰安婦像の撤去がない限り、慰安婦を応援する財団に対する日本の十億円の拠出金というのはないというふうに考えていいのか。その辺について、外務大臣、お答えください。

    〔委員長退席、石田(真)委員長代理着席〕

岸田国務大臣 まず、在韓国日本大使館前の少女像につきましては、これまで累次にわたりまして、我が方から、公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念しており、早期に移転することを求めてまいりました。そして、今回の合意において、韓国側からは、公館の安寧、威厳の維持の観点から日本政府が懸念していることを認知し、韓国政府として適切に解決されるよう努力するという表明がありました。この合意に基づいて適切に対応されるものと認識をしております。

 そして、財団への拠出と少女像の関係について御質問がありました。

 これにつきましては、今回の合意において、日本側は韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的として設立した財団に資金を拠出する、このようにされており、そして韓国側は、日本政府が日本大使館前の少女像に対し公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力する、こうした内容になっております。

 日韓それぞれがこの合意を実施するという内容になっております。それぞれが、この合意に基づいて適切に対処するものであると考えております。

平沢委員 この問題は、韓国内だけじゃなくて、例えばアメリカでもいろいろと大きな問題になっているわけでございまして、とりわけカリフォルニアあたりには像とか碑があちこちにつくられていまして、そういった碑には何て書いてあるかというと、戦時中、日本は二十万人以上の女性をアブダクト、拉致してですよ、拉致して強制的に性奴隷として働かせた、こういうようなことが書かれているわけでございます。

 それから、カリフォルニアの高校で使われているマグロウヒル社という会社の教科書には何て書いてあるかというと、二十万人以上にも及ぶ女性を強制的に集めて、天皇陛下からの贈り物として部隊に提供した、そして戦争の終結の際には日本軍はこの活動をもみ消すために多数の慰安婦を殺害した、こういった誤ったというか全くでたらめの記述がなされているわけで、これは日本の名誉を著しく傷つけるわけでございます。

 こうした例えば教科書の記述を取り消すために日本総領事館が出版社に働きかけたら全く相手にもされなかったということで聞いていますけれども、こうした記述とか碑文に書かれていることを直すためには、韓国側が言ってもらわないとなかなか難しいなという感じがするんです。

 今回の合意では、国連等国際社会において本問題について互いに非難、批判することを控えるという記述がありますけれども、こういった記述に基づいて韓国側に、国外で動いているのは韓国系の民間団体ですけれども、そういった方々に対する働きかけを期待できるのかどうか。これについてもちょっとお答えいただけませんか。

岸田国務大臣 昨年十二月二十八日に開催されました日韓外相会談におきましては、私の方から、第三国における慰安婦関係の像、碑の設置について懸念を提起いたしました。それに対しまして、韓国側からは、今回の発表を受け韓国政府としてもこのような動きを支援することはない、こうした認識が示されました。

 そして、今回の合意につきましては世界各国が歓迎の意を示しているわけですが、その中で、例えば米国におきましては、米国としては、米国内の人々を含むその他の人々が米政府と同様にこの合意とその完全な履行を支持することを希望する、こうした表明をしております。

 こうした韓国政府の認識あるいは米国政府の考え方、こうしたこともしっかり踏まえながら、我が国政府としましても、御指摘の点につきましてしっかり対応していかなければならないと考えております。

 御指摘の教科書の記述等も含めまして、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成されるよう、日本の基本的立場や取り組みにつきまして、戦略的な対外発信に引き続き努めていきたいと考えます。

平沢委員 時間が来ましたから終わりますけれども、最後に、今回の日韓合意について、総理の御所見をお伺いできますか。

安倍内閣総理大臣 この問題につきましては、外務大臣からも答弁をさせていただきましたように、日韓関係というのは極めて大切な関係でございます。残念ながら、慰安婦問題という問題の中において、日韓関係がスムーズに関係が改善していなかったのは事実でございます。

 今回、まず外相会談でこの問題について合意をし、そして朴槿恵大統領との電話会談において、将来の世代の障害にならないようにすることが重要であるとの観点から、両国間の協議を加速することで先般の外相会談で合意をしたわけでございますが、これを踏まえて、二十八日の日韓外相会談における合意及び私と朴槿恵大統領との電話首脳会談を通じて、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることになったわけでございます。

 まさに、この最終的かつ不可逆的に解決をしたということが大切であり、両国がこの問題に終止符を打ち、これからお互いに協力して日韓新時代をつくっていくことが大切ではないかな、こう思う次第でございます。

 この合意があったからこそ、昨日も、オバマ大統領との電話会談の後、同じ日に朴槿恵大統領とも電話会談を行い、北朝鮮の核実験に対して協力して対応していこうということで一致をしたわけでございまして、安保理の非常任理事国である日本の安保理における活動についても期待が寄せられたところでございます。

平沢委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

石田(真)委員長代理 この際、あべ俊子君から関連質疑の申し出があります。新藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。あべ俊子君。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 まず初めに、経済再生なくして財政健全化なし、この補正予算に関しましての麻生大臣の、次世代に先送りはしないという覚悟の一言をお願いいたします。

麻生国務大臣 通告があっていませんので、その点をまず最初にお断りしておきます。そういう質問をなさるときにはあらかじめ通告をしておくというのがこの委員会の慣例になっておりますので、夜中に質問を出すとかいうことではなくて、あらかじめ通告する時間は決まっておられるはずですので、ぜひお願いを申し上げます。

 次世代に先送りをしないという覚悟で臨んでまいります。

あべ委員 ありがとうございます。

 そうした中におきまして、今回、財政健全化におきまして、甘利大臣に質問をさせていただきます。経済・財政再生アクション・プログラムでございます。

 財政再建で重要なのは特に社会保障でございまして、高齢化、社会保障の給付費、増加を続けておりまして、国の予算がどんどん増加をしております。社会保障の中で、国の予算にかかわる社会保障関係費は三十兆を超えておりまして、政策経費に占める割合は既に五五%でございます。

 今後も高齢化が進んでいく中で、国の財政の健全化も必要でございますが、健全化を進めながら、財政の硬直化を防ぎ、また国の規模に見合ったものに社会保障制度を改革していくことも必要でございます。

 日本をつくり上げてきた高齢者を支えつつ、若者が希望を持てる社会保障制度の構築、世界に誇れる我が国の社会保障制度を未来にわたり堅持し、国の財政の健全化を進めていくことは、与党としてだけではなく、政治家全ての次世代への責任でもあります。

 このアクション・プログラムの中のKPI、項目が出てまいりました。特に、社会保障、非社会保障、また制度・地方行財政の項目での進捗管理のチェックポイントとされておりますが、このKPIはプライマリーバランスにどのように寄与し、実施されると具体的に地域社会に暮らす国民また財政にどのように影響するとお考えなのか、わかりやすく教えてください。

    〔石田(真)委員長代理退席、委員長着席〕

甘利国務大臣 従来、社会保障を初め予算を削減していくときに、いわゆるキャップ方式というのがありました。項目に強引にキャップをかけてカットしていく。そうするとどういうことが起きるかというと、単価を強引に切り下げたり賃金を下げたりする方向に行っちゃうんですね。そうすると、これは我慢の行革ですから、いつか爆発、暴発しちゃうんです。もとのもくあみになっちゃう。

 そうじゃなくて、安倍構造改革ではいろいろな手法で予算の生産効率を上げていくんです。ITを導入したり、あるいは見える化をして比較して、うまくいっているところとうまくいっていないところがどう違うのか、うまくいっているところを移転していこうというような、そういう工夫の改革をして、我慢をし続けるということではなくて、工夫をしていく中で減らしていくという方法をとっています。

 その際に改革工程表をつくっておりまして、その改革工程表を、具体的にわかるように、KPI、キー・パフォーマンス・インディケーター、達成度指標、物差しですね、一年目はこの辺を目標にしていく、二年目はこうだと。達成できているか、できていないか、できていないとしたらどこに問題があるのか、改善提案は何か、そういうPDCAを回していって、実現をしっかり図っていこうということであります。

 経済を再生させていくことと財政を再建することは表裏一体でありまして、お互いをエンカレッジするような手法でやっていくということであります。

あべ委員 今回のKPI、私は本当に革新的だというふうに思っております。

 そうした中、社会保障の根幹、これは経済、雇用でもあります。特に、地方においては中小企業の雇用が根幹を担っているわけでもございます。そうした中、雇用に対する指標、このKPIの項目はまだまだ問題がある、またもっともっと議論がされていくんだというふうに理解をしておりますので、ぜひそこの雇用の部分も入れ込んでいただけたら、さらに厚くしていただけたらと思います。また、国民の観点からの医療のあり方、そこの部分に対してもさらに議論を進めていただけたらと思うわけでございます。

 では、塩崎厚生労働大臣に。

 このKPIのデータでございますが、特にKPIのデータの医療部分に関しては非常に厚生労働省が見ている部分がございますが、制度間の仕組みの違い、国保は非常にわかりやすいが健保の比較はしにくい、そういうさまざまなデータのばらつき、またデータの標準化がおくれている。また、データはとってもどこにも行かないデータ、さまざまなものが今回の指標の中に入っていると私は理解をしております。

 そういう中で、項目の重みづけ、さらには、この項目は何のためにやるのかということも含めてデータをとっていくことに対しては、官僚としてのいわゆる各省庁の縦割り、これをしっかりと打破していかなければデータはとれないんだと私は思っております。

 それに対する既存データの活用。既に今、電子カルテもございます、介護のデータもございます。しかしながら、横断的になっていない、さらには互換性がない、標準化されていない、さまざまな問題がある中で、大臣の本気度、お覚悟を教えてください。

塩崎国務大臣 このIT化、実は、一九八〇年代、九〇年代に医療は事務処理の面でのIT化はかなり進みました。しかし、これから大事なのは、医療データをきっちり使いながら分析して、それを医療に反映していく。あるいは介護にも、もっと介護の方はおくれていると思いますが、これについて、やはりきっちりとした分析ができるようにしなきゃいけない。

 そのためには、今先生がおっしゃったように標準化をしていくということが大事であって、電子カルテも実はばらばらのフォーマットがたくさんあって互換性がない。ですから、地域でできるところもあれば、しかし引っ越して別なところに行ったらそれが使えないというようなことになりますので、実は、先般私のもとに、標準化などを含めた医療などのICT化のインフラを改めて整備し直して、これだけは守らなきゃいけないというものを明らかにしながらその上に民間の創意工夫をやっていただいて、しかし最低限のことは共通項を持っていてそれが分析として使えるようにするという中で、これからは医療、介護も含めてICTを活用して、医療、介護の中身も、そしてまた働いていらっしゃる方の負担も減らしていけるようにできればということで、今、懇談会をスタートしたところでございます。

あべ委員 データが精査されていく中、財政健全化に対する寄与率、さまざまなものが分析されていくと思いますが、どうしてもわからない疾病構造、これからそういうところも含めた特に分析が大変だと思いますが、期待申し上げますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 塩崎厚生労働大臣に続きまして質問させていただきますが、若者の年金、これに影響するマクロ経済スライドの調整でございます。

 若者世代に負担のしわ寄せをしていかない、これが次世代への責任政党でございます。アベノミクスで景気は確実に改善しています。しかしながら、その景気のよくなっているときこそ、やらなければいけないことがあるわけであります。

 デフレ経済におけるマクロ経済スライドの発動、この調整期間が長引く、これがすなわち将来の給付水準、次世代に影響するとさまざまなところで意見が出されています。このツケ回しを避けるため、デフレ下でもマクロ経済スライドの発動できる環境整備を進める必要があるんだと思っております。

 若い人たちの未来、若い人たちの希望、これはしっかりやってくれと地元を歩いていても言われます。総論賛成、各論反対。自分の年金になると、なかなかそうはいかないわけであります。やはりそこも含めたマクロ経済スライドの調整の方法があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは先生御案内のとおり、平成十六年の改正でマクロ経済スライドが導入をされましたが、昨年の四月に初めてこれが発動されるというところになってまいりました。将来世代の負担を過重にしないために将来の保険料水準を固定するということが一つで、その範囲内で給付水準を調整するという仕組みでございます。

 マクロ経済スライドにつきましては、社会保障制度改革国民会議報告において、仮に将来再びデフレになったとしても、年金水準調整を計画的に進める観点から、マクロ経済スライドの見直しの検討の必要性が指摘をされて、社会保障改革プログラム法において、年金制度改革における検討課題として明記をされているわけであります。

 これを受けて、昨年の一月に社会保障審議会の年金部会で議論の整理が行われまして、将来世代の給付水準を確保する観点からはマクロ経済スライドによる調整が極力先送りされないように工夫することが重要だという指摘を受けて、これを受けて、年金制度の持続可能性を高めるとともに将来世代の給付水準を確保するため、マクロ経済スライドによる調整について、年金の名目額がマイナスとならないよう現在の高齢世代の生活の安定にも配慮をしながら、つまりいわゆる名目下限は守りながら、経済状況によってマクロ経済スライドの調整が完全に実施できなかったとしても、その未調整分をその後の直近の景気回復局面で調整するという方向で現在検討を進めておるところでございまして、必要な制度改正が実施できるようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

あべ委員 ぜひ、若い世代が将来不安を抱かない、そういう方法をしっかりと国会でも出していただけたらというふうに思うわけであります。

 続きまして、非正規雇用の年金、健康保険の適用拡大でございます。

 一億総活躍。雇用者全体の四割ぐらい非正規雇用の方がいらっしゃいます。

 ことし十月、週二十時間以上の労働時間の条件を満たすパート労働者に対して厚生年金また健康保険の適用が行われます。これは、昭和五十五年の通知により被用者保険が適用される短時間労働者の基準が示されて以来、初めての適用拡大でございます。

 しかしながら、私は、この問題の根幹は、非正規労働者を雇用する事業主の負担であるというふうに思います。事業主にとって負担が過重であれば、被用者保険の適用を回避する事業主がふえてまいります。

 今回、キャリアアップ助成金、パート労働者を対象とする助成金が出ておりますが、さらに拡充するとのことでございます。

 加藤一億総活躍大臣にお尋ねいたします。雇用者の負担、個人負担、抜本的な制度の見直しをしていくことが一億総活躍社会に必要ではないかと思いますが、大臣の見解をお願いいたします。

加藤国務大臣 特に今、若い方ということでございますけれども、そうした方々に対して年金の負担の面を含めてしっかり対応していくということが大事だというふうに思いますし、特に、希望出生率等を考えますと、そうした方々の所得基盤、これをしっかり確立していくということが非常に重要だ、こういうふうに思います。

あべ委員 今、低所得者の方々は、二〇一三年データで、百万円以下の所得の方々が百五十万世帯いらっしゃいます。二百万以下の世帯の方が四百六十万いらっしゃいます。高齢者がその中で非常にふえている、この年金の適用拡大。私は、こういう貧困の低所得者の方々の救済の中長期的な視点では非常に重要だと思っておりますので、適用拡大、さらには事業主の負担も含めた、個人の負担も含めた抜本改革をぜひともお願いしたいというふうに思います。

 最後の二点になりますが、TPPと農業でございます。農水大臣にお伺いいたします。

 攻めの農業、農業の体質改善、必ずやこれは総理がおっしゃったように経済成長につながっていく。夢のある農業であります。農業は本当にこれから成長していくと思います。そうした中で、しかしながら、中山間地区においては攻めることもできない。国土を守って環境を守っていく地域政策としての農業政策も一方であると私は思っております。

 さらに、そういう中で頑張っているのが農業女子であります。農業従事者の四割が女性であります。しかしながら、農業委員また農協における役員の率は七%であります。主な消費者である女性がもっともっと入っていくことに、農業のバリューチェーンとしての消費者目線での六次化、これを進めることも可能だと思いますが、大臣の見解をお伺いいたします。

森山国務大臣 あべ議員にお答えをいたします。

 中山間地など生産条件の不利な地域においてもさまざまな農業が行われているところでありますが、農業者以外の地域住民等の参画も得て、地域全体でコミュニティー機能を維持していくことが必要であります。このため、農林水産省としては、不利な条件を補正する中山間地域等直接支払いなどの地域政策を今後も着実に実施してまいりたいと考えております。

 一方、中山間地においても随分努力をされて、非常に評価される青果物をつくっておられる地域もあります。例えば、奈良県の五條市の柿とか、愛媛県の八幡浜市の真穴のミカンとか。

 ここは、私も現場に行ってまいりましたけれども、本当に代表的な中山間地だと思います。ここで昭和四十九年から生産性を高める農地整備やかんがい施設の整備が行われてまいりまして、ちょうど四十年たつところでありますが、農家の皆さんの努力によって非常にいいものができるようになった。また、そこで雇用が発生をしているというところもありますので、中山間地であってもいろいろなことを考えて努力をしていくということは大事なことだなと思っております。

 また、女性活用の話でございますけれども、先生御指摘のように、女性農業者というのは農業就業人口の中では実は五〇%を超えております。基幹的農業従事者の中でも四二%になっておりますから、いかに女性が頑張っていただいているかということは、この数字を見てもわかるところであります。

 また、女性が参加をしていただいているか、いただいていないかということで農家の所得にどういう影響があるかという話でございますけれども、実は日本政策金融公庫の調査では、女性の管理者がいる経営体では、政策金融公庫が融資をされた三年後の売り上げの増加率が、いない経営体に比べて一三・六ポイントも高いという調査がありますので、非常にそのことは大事なことだと思っておりますので、今後とも女性農業者の活躍というものを積極的に農林水産省としても支援してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

あべ委員 ありがとうございます。

 地方創生において人材の育成が私は重要であると思っておりまして、石破大臣にも通告をしておりましたが、ちょっと時間切れになりましたが、ぜひとも、農林水産高校を応援する会の会長でもある石破大臣にしっかりとそのあたりはお願いをしたいと思います。

 最後に、安倍総理、日本を引っ張るのは総理であります。自民党の方で、党内ではしっかりとこちらのあべが頑張ってまいります。日本のために頑張ってまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

竹下委員長 これにて新藤君、平沢君、あべ君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 早速内容に入りたいと思っております。

 ただいま三名の同僚議員、自民党の先生方から、一億総活躍社会実現に向けたさまざまな角度からのお話がありました。公明党は公明党らしく議論をさせていただきたい、こう思っております。

 まずは、いよいよ補正予算の予算委員会の審議が始まったわけでありまして、一日も早く成立をさせたいと願っている次第であります。補正予算の中身について総理とも議論をさせていただきたい、このように思っております。

 最初に、一億総活躍社会の実現に向けました安倍総理の基本的認識についてお伺いをしたいと思います。

 総理は、第三次安倍改造内閣を誕生させるに当たりまして、改めて一億総活躍社会の実現というふうに叫ばれ、新たな三本の矢を放つ、このように宣言をされたわけであります。当初はいろいろ批判があったり、おやおやという声もありましたけれども、多くの国民の皆さんの耳の中に一億総活躍という言葉がしっかりと定着したな、私はこう感じている次第であります。

 私ども公明党は、総理がおっしゃる一億総活躍社会というのは、一人一人が輝き、活躍できる社会だ、そして全ての人が自己実現できる社会だ、このように位置づけて取り組みを進めたいと思っております。

 特に、新三本の矢で子育て支援あるいは介護サービスについて明確な目標を掲げられたことは、我々公明党がずっと取り組んできた政策でもありまして、このことは高く評価をしたいというふうに思っております。公明党としては、自来叫んでまいりました政策実現のチャンスというふうにも考えているわけであります。与党の一員として、成果が上がるように懸命に取り組んでまいりたいと決意をしているところでありますが、改めて、総理の一億総活躍社会実現に向けた御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々は、政権与党、政府・与党においてアベノミクスを三年間進めてきた結果、大きな成果が出てきております。国民所得、先ほど申し上げましたが、GNIにおいては四十兆円ぐらい、これはふやすことができたわけでございます。そして、税収においても、国、地方合わせて二十一兆円ふえたんですね。こういう果実を生み出している。こういう今こそ、安倍内閣においては、半世紀後においても人口で一億人を維持するため、少子高齢化という構造的な課題に真正面から立ち向かっていかなければならない、こう決意をしたわけでございます。

 国民一人一人が、家庭でも、地域でも、職場でもそれぞれの能力を発揮することができる、輝くことができる社会をつくっていく、これこそが一億総活躍社会であります。そのためにも、一人一人の希望を阻むあらゆる制約を取り除いていきたい、こう考えています。こうした思いから、一億総活躍社会の実現という目標を掲げまして、名目GDP、最大の六百兆円、そして希望出生率一・八の実現、さらには介護離職ゼロという明確な目標を掲げたところであります。

 それぞれ、そう簡単な目標ではないわけであります。最初からそこに向かっていく上においての設計図があるわけではないわけであります。だからこそ、しかし、同時にこれを達成しなければならないという、お互いに、使命感、今を生きる政治家としての責任感を持って全力を挙げていきたい、こう思うわけであります。

 昨年十一月の緊急対策の取りまとめに当たっては、公明党からも、「一人ひとりが輝き活躍できる社会の実現に向けて」、御提言をいただきました。この春予定しているニッポン一億総活躍プランにおいても、改めて御党の御意見も踏まえながら取りまとめを行っていきたい、こう思う次第でございます。

 最初からこういう目標はできないと諦めてしまっては、これは絶対にできないわけであります。しかし、私たちは、できるかできないかではなくて、達成しなければならない、こういう決意を持ってこの目標に取り組んでいきたい、こう考えております。

桝屋委員 先ほど自民党の皆さん方の議論を聞いておりまして、公明党としては、一億総活躍、どうも上から目線ではないのかな、こういう印象も受けましたが、今の総理のお話を伺いまして、まさに私ども公明党が考えておりますように、一人一人、今それぞれの地域で生きておられる一人一人の皆さん方の活躍と輝くその姿を目指すんだ、このことはすごく大事なことだと思っております。

 昨年十一月、一億総活躍国民会議が当面の方針として整理をされました。この中には、もちろん、これを視野に入れて私どもは提言を発表したわけでありますが、総理の思いも随分入っておりまして、この基本的な考え方の中に、包摂と多様性がもたらす持続的な成長という表現が入ってまいりました。このことは本当に高く評価したいと思います。具体的には、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や、そして難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会、それが一億総活躍社会であると。まさに我が意を得たりという思いでございます。

 何度も言いますが、私どもは、与党の一員として、全力を挙げてこの目標に向かって頑張ってまいりたいと思っております。

 そこで、今の総理のお話を伺いまして、総理の御決意というのは、これまでのアベノミクスの取り組みによりまして我が国経済がデフレ脱却まであと一息、あと一息ということが最近ずっと続いておりますが、本当にあと一息、そんな中で、今こそアベノミクスの強化、そしてその果実を生かして、我が国が直面をします人口減少問題、少子高齢化、この問題に真正面から取り組む、この決意をされたというふうに私は理解をしております。今までも、ずっとわかってはおりましたけれども、これを真正面から取り組むということがなかなかできなかったわけであります。

 総理、先ほど新藤先生との議論の中で、ことしは、えとでいいますと、ひのえさるということで、それこそ物事が、形ができ上がっていく、そういう年なんだとよく言われますけれども、ずっとこれまで三年間頑張ってきたものがいよいよ形としてあらわれる、ただし完熟の状況ではない、その一歩手前ということでありますから、努力をし続けなければならないというふうに思っている次第であります。

 その際、総理は何度も、これまでの発想にとらわれない大胆な政策、あらゆる政策手段をということを盛んにおっしゃっておられます。私は、この総理の言葉を重く受けとめなければならないと思っております。これまでの発想にとらわれない大胆な政策というこの思い、総理の御決意を改めて伺わせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今までの発想にとらわれない。この三年間も、今までの伝統的な経済政策ではなくて、金融政策においてもそうです、機動的な財政政策についてもそうですし、そして成長戦略においてもそうです、我々は、今までの発想にとらわれない政策を進めていくことによって、まだデフレ脱却まで一息ではありますが、デフレではないという状況をつくり出すことはできたわけであります。今までの発想にとらわれていては、二十年近くデフレが続いてきた、ずっといろいろなことをやっても結局だめだったんですね。ですから、とらわれない政策をやったことによって、デフレではないという状況までは来たわけでございます。

 そして、六百兆円という最大のGDPを目指していく。そのために、TPP、こういう新しい経済圏を我々はつくったわけでございます。そこで、受け身になるのではなくて、これを生かしていく。これを生かして、農業も、守りではなくて、これを輸出していく。最初、農水産物の輸出一兆円という目標を掲げたときには、そんなのはできない、こう言われました。しかし、今や何と七千億円まで来て、目標達成が前倒しできるかもしれないというところまでやってきたわけでございます。

 そして、例えば、企業に投資を促す。これは、賃上げもそうなんですが、民間の裁量に全て委ねていたわけでありますが、しかし、こういうときには一緒になって目標に向かってやっていこうということで、官民の対話も進めました。政労使の対話も進めて、成果が出てきている。そういうあらゆることをやっていこうということであります。

 希望出生率一・八の実現についても、あるいはまた介護離職ゼロについても、今までの延長線ではない新しい取り組みをしていきたい、こう考えているところでございます。

桝屋委員 それでは、一億総活躍社会の実現、総理も、たやすいことではない、こうおっしゃったわけでありますが、きょうは、四点に絞りまして議論をさせていただきたいというふうに思います。

 一点目は、希望出生率一・八の達成でありますが、これへ向けての取り組みであります。

 私ども公明党の青年局では、昨年夏から秋にかけまして、全国二万三千人の青年層にアンケートをいたしました。約七千人の有効回答を得ましたが、未婚、既婚を含めて、希望する子供の数というのはやはり二人から三人ということでありまして、平均をしますと二・二三。例の人口置換水準以上にやはり希望している、多くの国民は希望されているということでありまして、改めてその実態を確認することができたわけであります。国民希望出生率ということを私たちも重たく受けとめたわけであります。

 その希望をかなえる環境整備のためには、これは働き方改革ということがぜひとも必要だろう、地方版政労使会議をしっかりやりましょうということを随分議論してまいりました。昨年の国会でも、参議院におきまして、我が党の谷合正明参議院議員がこのことを提案いたしまして、総理も、ぜひ地方版政労使会議、中央だけでなくて地方でも取り組もう、この検討を進めたいとおっしゃっていただいた。

 現在、厚生労働省の各労働局の働きかけによりまして、都道府県版の政労使会議が行われているというふうに理解しております。約三十の都道府県で既に取り組みが年末年始行われておりまして、これをぜひとも全国的に展開をしたい、すべきだと私たちは思っております。

 例えば、鳥取県では、石破大臣がお座りでありますが、正規雇用一万人チャレンジ推進会議というふうに銘打って、本当に、関係各位、トップリーダーが集まりましてこんな議論をされている、そんな情報も聞いております。あるいは、山形県では、正社員転換・働き方改革推進会議というようなものも行われているということも聞いております。

 こうした会議において、県知事、経済界あるいは労働界のトップも出席をいたしまして、それぞれの地域によって出生率の差、あるいはそれをもたらす原因もそれぞれ違っているわけでありまして、それぞれの地域に応じた働き方改革の総合戦略を練っていく、そのためにトップが出席をして議論を重ねていくということが非常に大事だろうと思っておりまして、ぜひ、全国的な展開、そしてその会議の中身についてさらに総理からリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 全国一律に見るのではなくて、各地域においてその実情をしっかりと見ていくことが大切でありまして、実情に応じた働き方改革を行い、そして出産や子育てをしやすい環境づくりをそれぞれの地域が進めていくことが大切だろうと思います。

 昨年の桝屋委員そして公明党からの御提案をいただきまして、各労働局から都道府県や労使団体に精力的に働きかけた結果、これまでに三十二の都道府県で、長時間労働の是正や非正規雇用労働者の正社員転換、待遇改善の促進などをテーマとする会議が開催されるか、あるいは会議の予定が固まっています。知事や労使のトップの出席も見られるところがありますが、ぜひともこれはトップにちゃんと出てもらいたいなと思います。それがやはり各地域の意欲のあらわれだろうと思います。

 今後、地域の実情に応じた働き方改革をさらに進めるため、引き続き働きかけを行い、全ての都道府県でこうした会議が開催され、政労使の連携が進むよう取り組んでまいりたいと思います。

 また、これらの取り組みを踏まえて、地方公共団体のリーダーシップのもと、地域ぐるみで働き方改革の検討を進め、その内容を、都道府県が設置する地方創生推進組織で策定された地方版総合戦略の改定にも反映していくことを推進してまいりたい、こう思っているわけであります。こうしたことが目に見える成果となっていくことを期待したいと思います。

 委員の出身地、下関は出生率が一・四五でございますが、これがさらに上がっていくように、私の地元でもございますが、上がっていくように、こうした成果が目に見えて上がっていけば、より一層また地域ごとに取り組んでいこうという機運が高まっていくのではないかと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 私どもの地元が一・四五。一・八に向けて頑張らなきゃいかぬな、こう思っているわけでありますが、総理がせっかくそうおっしゃっていただいたので、きょうは石破大臣もお座りでございますが、中国五県、私は中国五県が政治エリアでありますが、既に今日ただいま合計出生率が一・八に届いている地域もあるわけでありまして、先ほどからの議論のように、既に進んでいるところ、それをモデルとしてしっかり横展開をしていくということも大事であります。

 ちなみに、私の理解では、例えば中国地方で既に一・八にいっているところというのは、大きな町ではなくて小さな町なんですね。例えば、委員長の地元の島根県。山口県は一・八以上はまだないのでありますけれども、島根県では益田市が一・八にいっている。本当に日本海側の小さな町でありますけれども、一・八にいっている。あるいは、鳥取県でも湯梨浜とか。それから岡山、岡山はないんです。広島は神石高原町、これも田舎ですよ。

 何でそういうところはできているのかということでありますが、それは、例えば益田市の話をしましたが、ここは保育に対する取り組みがもう十年前から違っているというふうに私は思っておりまして、やはりそれはちゃんとした原因がある、取り組みがあるわけでありまして、そんなことをしっかり地方創生の観点からも捉えていかなきゃいかぬな、こう思っている次第であります。

 いずれにしても、さっき総理が、トップが出るべきだ、その意欲が大事なんだ、こうおっしゃっていただいたこと。とかく、今回の地方版の政労使会議は労働局がリードしているものですから、労働局というのは、昔の地方事務官制度がなくなって、どうしても県とそれから労働行政がいいようでよくないわけでありまして、労働局が音頭をとるとトップが、知事が出てこない、そんなこともあるわけでありまして、先ほどの総理の御回答をテレビで多くの自治体も見ているわけでありますから、ぜひそうした流れをつくりたい、我々も努力をしたいと思っております。

 それから、二点目でありますが、待機児童解消加速化プラン、これをさらに強化する。先ほどの議論でもありました、四十万を五十万にふやすということであります。

 実は、私も厚生労働省の副大臣を務めておりましたが、これまでも保育所の整備、格段に取り組んでまいりました。しかし、二倍以上整備のスピードをアップしたとしても、それが、まさに供給が需要を呼び出すといいましょうか、あるいは今の女性の働き方が音を立てて変わっている、ニーズに対して追いつかない、こういう状況がありまして、先ほどの総理のお話じゃありませんが、これまでの発想にとらわれない保育の体制整備も必要ではないか。

 例えば、事業所内保育の整備であるとか、経済界の皆さん方にもしっかりとここは協力をしていただく、取り組んでいただく、こういう取り組みが必要ではないかと思っているわけでありますが、今後の取り組みについて厚生労働大臣の御所見を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 政府におきまして待機児童の解消を目指していることはもう先生御案内のとおりでございますけれども、現在、待機児童解消加速化プランに基づいて取り組みを進めております。当初計画を上回るペースで受け皿を拡大はしてきているわけでございますが、今後、女性の就業率がさらに高まっていくということを念頭に、一億総活躍社会実現に向けて緊急対策をこの間まとめさせていただいて、四十万人から五十万人ということで目標をさらに高めさせていただいたわけであります。

 その実現に当たって、これまでの子ども・子育て支援新制度とか、あるいは施設整備補助等による保育の受け皿拡大の支援といった政府の取り組みに加えて、これは就業と子育ての両立に向けた企業の取り組みもしっかりと強化する枠組みを考える必要があるということで、事業主拠出金制度を拡充するということを平成二十八年度予算で今回御用意させていただいて、事業所内保育を初めとする企業主導型の多様な働き方に対する保育サービスを支援する仕組みを新たに創設して、この事業主拠出金を活用しながら、さらなる保育サービスを充実していこうじゃないか、こういうことで、企業が主体的に関与をする新しい取り組みを含めて、保育の受け皿のさらなる拡大を続けてまいらなければならないというふうに思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 これは当初予算にも絡むことでありますから、しっかりまた当初予算でも議論したいと思いますが、何度も言いますが、今までの取り組み、今までの発想を振り払って、特に都市部においての待機児童対策ということは特段の取り組みが必要だと思っております。

 それから、もう一点は介護離職ゼロであります。

 私は、これも本当によく考えられた打ち出しだな、こうつくづく思っております。団塊の世代が次第に七十歳を超える、以上となる、そういう中にあって、団塊ジュニアの皆さん方の介護離職ゼロを目指すということは極めて重要な視点と私は考えております。

 しかし、これも並大抵のことではないわけでありまして、かつて厚労省が寝たきり老人ゼロというようなことを言って頑張った時代がありますが、ゼロというのはなかなか簡単ではない、しかしそこを目指す、こういうことだろうと思います。

 やはり、まずは足元の介護人材の確保ということがとても大事でありまして、総理もその御認識だと思いますが、介護職離職ゼロということを希望する声も強いわけであります。

 介護職に対する社会的評価、決して高くないわけであります。私は、昨年聞いた話でありますが、中学校、高校生の教科書に、介護の仕事は重労働で低賃金だ、このように書かれている。この背景が十分整理されていなかったのではないかと私は思っておりますが、介護職を志す若者が入り口部分から、そこは、介護だけはやめた方がいいよというふうに言われてしまう。

 その結果、きょうは資料を持ってまいりましたが、皆さんのお手元にもお配りしていると思いますが、現在、介護福祉士の養成施設の定員の充足率を見ていただきますと、こういう状況でありまして、ここは、それこそ定員の半分以下になっているわけであります。

 御案内のとおり、介護福祉士というのは国家資格制度ができて三十年以上たっておりますけれども、その中で介護保険制度も始まり、今回、介護離職ゼロということも政府を挙げて取り組む、こうした中で、介護職員の養成施設の実態というものがこういう状況になっているということは大変にゆゆしき事態だなと、本当に懸念を、心配をするわけであります。

 したがって、何度も言いますけれども、志を立てて介護の仕事に進もうという入り口部分がまず閉ざされてしまうという今の実態、これは、総理、やはり何とか方向性を変えないと、私は、介護離職ゼロ、これから二〇二五年に向けて取り組みを進めるという中にあって、この事態は何としても解決をしたい。

 そこで大事なことは、給与を上げるということも大事でありますが、やはり社会的評価を高めるということですね。十一月十一日が介護の日ということになっておりますが、やはり国を挙げて、政府を挙げて、介護離職ゼロのためには、まずは、介護職が大事なんだというイメージアップに取り組む必要があるのではないか、私はこう思っているんですが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに桝屋委員が御指摘になったように、介護離職ゼロに向かって政策を進めていく上においては、施設だけつくってもだめでありまして、そこで働いていただける人材を確保していくことが最も重要であろうと思います。

 現在、雇用情勢が改善をしておりますから、人がなかなか集まりにくい、これは全業種でそういう状況になりつつある中において、介護においても特にその傾向が顕著になってきているわけでございます。

 そこで大切なことは、介護職の重要性、いかに大切な仕事であり、やりがいがあるかということをもっともっと多くの人たちに知っていただき、誇りを持ってこの仕事についていただけるようにしていくことも大変大切であろう、こう思っております。

 具体的には、基金の活用により、生徒や保護者等向けのPR資料の配布や職場体験の実施などの取り組みを支援していきます。また、介護報酬による処遇改善の実施やキャリアアップのための研修の受講支援などにより、介護職への就業促進、介護職員の離職防止に取り組んでいるところであります。

 さらに、今回の補正予算及び来年度予算において、働きやすい職場づくりに取り組む優良な事業者のコンテストや表彰の実施、介護ロボットの活用促進やICTを活用した生産性の推進、介護福祉士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充などにより強力に取り組みを進めることとしております。

 今後とも、介護職のイメージアップ、魅力あるものとしていくため、さらなる効果的な工夫を重ねていきたい、大胆に取り組みを進めていきたいと考えています。

桝屋委員 ありがとうございます。

 今、グラフで示しておりますが、介護福祉士養成施設の定員の充足状況、平成十八年が七割ぐらい、七一・八%でありましたが、これが二十六年では四六%、半分以下になっている。しかも、定員についても、これは資料にはありませんが、平成十八年、二万六千ぐらいの定員があったものが一万八千に減っているという実態でありまして、まさに総理が先ほど言ったように、容易な目標ではない介護離職ゼロの取り組みの現状だということを私は申し上げたいわけであります。

 特に最近は、このグラフでありますように、最近の養成施設は、新規学卒よりも、離職組の、訓練給付を受けながら途中から介護の世界に入ってくるという方々を入れて何とか横ばいという状況でありまして、もちろん中途の方々も重要でありますが、さっき言いましたように、これからの介護人材を考えますときに、やはりコアの優秀なる人材をしっかり育てていくということが必要になってまいります。

 そういう意味でも、今総理がお答えになった、今回の補正で、介護福祉士養成施設の学生に対する修学資金の貸し付け、これは、厚労大臣がおられますけれども、私はこういう制度は初めてではないかなと、待遇改善も大事でありますけれども。これは五年ぐらい勤めれば返済猶予ということではないかと思いますが、こうした具体的な対応ということが今後大きな力になってくるんじゃないかというふうに思っている次第であります。

 何か、厚労大臣、お答えがありましたら。

塩崎国務大臣 先生おっしゃったように、返済を免除する奨学金制度につきましては、今回、予算に織り込んで御議論を賜るということになっておりまして、できる限り学生がたくさん来るようにということであります。

 やはり、先生がさっきもおっしゃったように、仕事としての介護に魅力があるというふうに思っていただかなければならないので、それはやはり、仕事の中身そのもの、負担、そして報酬、それらについて考えなきゃいけない。これは企業でも同じで、やはり生産性をどう上げるかということがとても大事であり、また余計な負担をかけないということも大事で、厚生労働省も反省せないかぬところが多分あるんだろうと思うんです。

 我々が今言っているのは、いろいろな書類作成についても、一つは、無駄なことをお願いしていないかどうかということを見直す、それともう一つは、ICT化を図ることによってペーパーワークはなくすということで、物すごく負担がかかっているということを現場の方々から聞いておりますので、これを半減しようじゃないかということを目標に掲げて今やっております。

 いずれにしても、いろいろな方々、ICTの専門家、業務プロセスの改善に取り組むいろいろな経営者、特に介護で実際にもう先駆的にやっていらっしゃる方々などを集めて、今度、私も、懇談会を来週スタートさせて、どうやったら生産性が高く、生産性が高いということは報酬が上がり得るということでありますから、ICTやロボットはもとより、何によってできるのかということを徹底的にここで議論して、魅力のある仕事として介護の仕事をつくり直そう、そういうことを今やろうとしているところでございます。

桝屋委員 厚労大臣の今のお答えは極めて大事な話だろうと思います。魅力を感じる職場、介護の職場が本当に志を持って進むべき道なんだ、こう思っていただけるような、こんな世界にしなきゃいかぬというふうに思います。

 今、生産性を上げれば報酬は上がってくるんだ、こうおっしゃっていますが、簡単ではないわけでありまして、多分わかっておっしゃっておられるんだろうと思いますが、報酬は公定価格でありまして、三年に一回変わるわけであります。とりわけ前回の報酬改定は厳しい改定でありまして、その結果、デイサービスや特養あたりは相当収入が減ったという中で、処遇、待遇の改善を進めなきゃならぬ、こういうことでありますから、総理からお答えがありましたように、基金を活用したさまざまな取り組みが今後私は重要になってくると思っております。

 ちなみに、例を申し上げますと、生産性を高めれば報酬が上がるというお話もいただきましたが、総理、実際、介護の現場でどういう苦労を今しているかというと、魅力ある職場にして職員を確保したいと思うがゆえに、例えば、週四十時間の労働で三日は休んでいただこう、四日の変則勤務の中で四十時間働いてもらって、三日はお休みというふうにすれば、夜勤はあるし大変だけれども、しかし三日休めればという魅力になるという取り組みをこの一月から始めたような法人があるということも聞いておりまして、限られた公定価格の中で、人の確保、魅力ある職場にするためにどれほど苦労しているかということを私も感じた次第であります。御披露申し上げる次第であります。

 さて、きょうの一番言いたいテーマに今から入るわけであります。きょうこれを申し上げるために、もう昨年の暮れから私は悩んできたわけでありまして、子供医療のあり方であります。確認しておきたいと思います。

 私ども公明党の、先ほどお話が出ております一億総活躍社会の実現に向けた提言の中にも、実は、新たな子供医療等の支援ということを項目を立てて提言申し上げて、申し入れもしたわけであります。

 この心というのは、既に千七百以上の全市町村、全ての自治体で実施をされております、それぞれの自治体の単独の子供等の医療費の助成制度、乳幼児等小児医療費の助成制度でありますけれども、国が長年にわたって国保のペナルティーを科してきているわけであります。全市町村で既に実施されているわけでありますが、ペナルティーがついておりますから、これは厚生労働省の御判断でついているわけでありまして、したがって、全市町村で実施をされていながら、総務省の立場からしますと地方交付税で評価してあげたいところでありますが、地方交付税の基準財政需要額にもこの子供医療費は入れられないというような実態があったりします。

 昭和五十年代から始まったこのペナルティーの制度でありますが、当時はまだ実施する市町村も少なかった。しかし、今は全市町村が実施をされている。加えて、地方創生の中で、新交付金を使って単独の医療費の助成制度を拡充する、政府が、人口減少問題に真正面から立ち向おうではないか、こう叫ばれているんだから、私たちはこうやって取り組んでいます、さらに拡充しますというような自治体がある中で、ここは、やはり政府としていよいよ特段の取り組みを行うことが必要だと私は思っておりますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘の減額調整措置については、地方団体から見直しの要望がございます。桝屋議員からも、従来からそういう御主張を伺っておりました。

 現行制度の措置を考慮しながら、その扱いを検討していく必要があるものと認識をしています。このため、厚生労働省において、子どもの医療制度の在り方等に関する検討会を立ち上げ、この減額調整措置のあり方も含めて、子供の医療のあり方について幅広い観点から検討をしているというふうに承知をしています。

 ニッポン一億総活躍プランは本年春ごろに取りまとめることを予定しており、個別の政策内容については、一億総活躍国民会議での議論も踏まえながら適切に対応していく考えでございます。

桝屋委員 今総理からお答えがありましたように、我が党の山口代表、あるいは参議院の予算委員会等で、子供の医療費助成制度、単独の医療費の助成制度に対する国保のペナルティー、国庫負担金を減額調整するというものでありますが、これについてはそろそろ見直しの時期ではないかということで、厚労省においても検討会が立ち上がっているというふうに理解をしております。既に二回ほど議論が行われている。私ども公明党も、社会保障制度調査会の中に小委員会を立ち上げまして、この問題をしっかりと、つかず離れず議論を見守っているわけでありますが、どうも夏ぐらいまでかかるのかなと思ったりするわけであります。

 それぞれの自治体の強い要請も、地方六団体の要請もあるわけでありますから、ぜひ検討を早めてもらいたい、こう思うわけでありますが、厚労大臣、いかがでありましょうか。

塩崎国務大臣 桝屋先生御存じのように、この問題につきましては、特に国民健康保険法の改正の際、さまざまな御議論をいただいて、積み残しになっておったわけでございます。国保の法律自体は昨年の通常国会で改正をさせていただきましたが、この問題は残っているということで、今総理からもお話し申し上げたとおり、子どもの医療制度の在り方等に関する検討会というのを厚生労働省に置いて議論をさせていただいているわけでございます。

 夏までというふうに言われてまいりましたけれども、今お話がありましたように、この子供の医療費助成、市町村が全て何らかの形でやっていらっしゃるわけでございまして、確かに、需要と供給というか、価格、供給、需要の関係というのがどうなのかということでこういう制度が使われてまいりましたけれども、今回、その検討を私どもとしても早めるように、そして、ことしの春をめどに一定の取りまとめができるようにしていくということで、一億総活躍のプランもございますし、早目に答えを出していければというふうなことで、今検討を急いでいただいているところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 検討を急ぐということであります。春というのは地球温暖化の中で大分早くなりまして、四月か三月かということでありますが、ぜひ、今大臣からもお答えがありましたニッポン一億総活躍プラン、改めて、政府としておつくりになるわけでありますから、その中に入れ込めるように検討を急いでいただきたいな、こう思っております。

 おまえ、うるさいやつだなと総理は思われるかもしれませんが、五十年代から始まったこのペナルティーでありますが、私は、県の職員として、福祉の専門職としてずっとこの問題、知事から毎回、知事レクで怒られるんです。何でこんなことを国はするんだ、一生懸命よかれと思ってやっていることが何でペナルティーなんだと。ペナルティーという表現はありませんが、もう全国自治体はペナルティーと呼んでおります。よかれと思ってやっていることがなぜペナルティーになるといって、今日まで続いてきたわけであります。三十年続けてきた。

 それこそ、きょうの話じゃありませんが、今までの発想にとらわれることなく、やはり、三十年前にやってきたような施策の考え方、これを今もって持っているということ自体が、私も副大臣をやりながら不明を恥じるわけであります。全市町村が取り組んでいる、あるいは、政府を挙げて人口減少問題に真正面から取り組むと。小さな町村ほど、では、そのメニューとして乳幼児の医療費の助成制度に取り組まなきゃならぬ、多くの首長がそう思っている。その首長に言い寄っているのは私ども公明党の三千名の地方議員でありまして、ぜひやるべしといって今日まで進んできた制度であります。もうここは変えなきゃいかぬというふうに私は思っているのであります。

 言ってみれば、アクセルとブレーキを両方踏んでいるような政策、あるいは股裂き政策と言われても、なかなか説明ができない状況ではないかと私は思っております。

 しつこいようでありますが、もし厚生労働省の検討会でそういう一定の方向性が出れば、ぜひ、ニッポン一億総活躍プランの中に新たな子供医療費の支援策として私は位置づけをしてもらいたいとお願いをしておきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。お願いであります。

安倍内閣総理大臣 桝屋委員の思いは今十分に伝わってまいりました。

 同時に、まさに今議論をしているわけでございますが、そこでそうした観点も踏まえた議論も行われる、このように考えておりますが、そうしたことも踏まえて、厚生労働省そして私たちが判断をしていきたい、こう思っております。

桝屋委員 もうこれ以上お尋ねはしませんが、私は群馬県に行ってまいりました。群馬県が県知事を先頭にこの子供の医療費の助成制度に取り組んでおりまして、とかく言われるように、多分、この制度、ペナルティーを見直すということになりますと、医療の濫給につながる、コンビニ受診が起きるのではないかという声が聞こえてくるわけでありますが、群馬県、実施をいたしまして、コンビニ受診につながるような事例というのはほとんど見られない、子供はそれでなくても病院に行くのは嫌がっているんだという話でありまして、なおかつ、やはりぜんそくとか持病を持っている子供さんにとっては非常に効果がある政策であると。

 同時に、シャープ八〇〇〇番、子供医療の相談の電話番号はシャープ八〇〇〇番、厚労省の方でお進めいただいていますが、これががっちり機能すればコンビニ受診というのも大いにカバーできるというような話も、現場の声も聞いてまいりました。これぐらいしつこく言うと大分御理解をいただけるのではないか。

 あと、もしいい方向が出れば、総務大臣がお聞きでありますから、基準財政需要額の中にもぜひとも入れていただいて、総務省としてこの全国の自治体の取り組みを評価していただけるようにお願いをしておきたいというふうに思います。

 続きまして、消費税の問題について議論させていただきたいと思います。消費税、軽減税率対策であります。

 与党税制協議会あるいは消費税軽減税率制度検討委員会におきまして、随分と時間をかけて議論をしてまいりました。その結果でありまして、関係各位の真摯な議論に敬意を表したい。野田先生が先ほどまでおられましたけれども、関係する先生方に、本当に真摯な御議論をいただいたなと感謝申し上げる次第であります。

 加えて、野党の皆さんからも財源について厳しいお声がありますが、与党の一員として、この問題は大きな責任を背負っておるというふうに責任を感じている次第であります。

 そこで、具体的に導入するとなると、川上から川下に至る事業者の皆さん方にこれから大変な御苦労をおかけするということに相なるわけであります。先ほど新藤先生の議論でもあったわけであります。政府としては、これまでの検討委員会で議論されてきた経緯も踏まえて、あるいは我が党からも強く要請してきたところでもありますので、例えば、複数税率対応のレジの導入などに対する事業者支援にきめ細かく取り組んでいただく必要があるのではないかと思っております。

 先ほども財務大臣からお話がありましたが、今回の補正予算における具体的な対応について、中小企業庁を所管しております経産大臣から改めてお答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 軽減税率制度の導入、運用に当たりましては、混乱が生じないよう、事業者の準備が円滑に進むよう取り組んでまいりたいと思っております。

 その一環として、昨年十二月に予備費九百九十六億円の使用が閣議決定されたわけでございまして、まず、中小企業、小売事業者等に対しまして、複数税率に対応したレジの導入等に支援を行います。また、複数税率への対応ができない電子的な受発注システムを用いている中小小売事業者あるいは卸売事業者等に対しまして、システム改修の支援をしっかりと行っていきます。

 加えて、平成二十七年度補正予算では百七十億円が計上されております。事業者に対しまして十分な周知を行うこととしております。中小企業団体等とも連携をいたしまして、講習会の開催あるいは相談窓口の設置などを通じまして、きめ細かくサポートをしていきます。

 こうした予算によりまして、平成二十九年四月の制度導入に向けて、ただいま桝屋議員が御指摘のとおり、事業者支援にきめ細かく取り組んでまいります。

桝屋委員 ありがとうございます。予備費あるいは補正予算対応の御説明をいただいたところであります。

 我々も現場を回っておりますと、とりわけ公明党には厳しい声があるわけであります。事業者の皆さん方から、複数税率に対応するレジの導入についてよくお話も伺うわけであります。

 現場におきましては、POSレジなどの優秀な電子機能を備えたレジであればそれは対応は可能だと思いますが、電子レジスター、商品マスターなしとか、商品マスターつきの、結構、二万から五万円、あるいは二十万から三十万ぐらいまでのこういうレジについては、これはやはり買いかえというようなことも必要になるわけであります。

 そうした対応について、今回、予備費で基金を積んで具体的に対応するということでありまして、レジの購入価格にもよりますけれども、場合によっては、安価なものでありますと四分の三、あるいは通常でも三分の二ぐらいの補助をするというような方向が、これは予算が正式に決まってからまた具体的に検討をなされると思いますが、ぜひこうしたことをきめ細かく取り組んでいただきたい、漏れなく対応できるように。私の記憶では、消費税導入の際、こうした補助金制度はなかったのではないか。いよいよ複数税率ということになりますと、こうしたきめ細かな対応が必要だというふうに思うわけであります。

 重ねまして、中小企業団体等によるサポート体制、相談体制、この仕組みもぜひ大事だろうと思っておりまして、全国の商工会、商工会議所の皆さん方に御協力をいただきながら、しっかりと取り組みを進めなきゃならぬと思っている次第であります。

 今後とも、我が党としてもしっかり現場の声を伺いながら取り組んでまいりたいと思う次第であります。

 さて、最後のテーマであります、まち・ひと・しごと創生であります。これも先ほど議論がありました。

 まず総理に伺ってみたいのでありますが、去年は地方創生、まち・ひと・しごとでした。ことしの年明けは一億総活躍。両方、担当大臣がいらっしゃるんです。石破大臣とそれから加藤大臣、この二人をつくられたというのは、総理、どういう気持ちですか。石破さんだけでは足りないということでは私は決してないと思っているわけでありまして、このお二人の役割というものをちょっと御説明を賜りたいと思います。

安倍内閣総理大臣 当然、これはそれぞれ極めて重要な目標を持っております。ただ、これは重なることももちろんあります。

 地方創生というのは、各地域がそれぞれの地域の魅力やよさを生かして伸びていく、そういう日本にしていかなければ日本の未来はない、こう考えています。その中にあって、今までの縦割りを排して各地域が魅力を発揮できるようなそういう仕組みをつくり、あるいは、各地域で今までの発想にとらわれない地域の未来をしっかりと描いてもらい、それを国が応援をしていく、こういう新たな地方創生を進めていきたい、こう思っているわけであります。

 と同時に、一億総活躍ということについては、具体的な三つの目標を掲げておりまして、これも、全省庁横断をしてこの目標に向かって進んでいかなければならないわけであります。

 その意味におきましては、これは重なるものもあるわけでありますが、それぞれが役割を果たしていくことによってシナジー効果も発揮をしていくのではないか、こう期待をしているわけであります。

 地方創生大臣は、主に、地域ごとの特性に応じた自治体の主体的な取り組みを支援する役割を担っていただきます。

 これに対して、一億総活躍担当大臣は、主に、一億総活躍社会の三つの具体的目標に向けて、国民共通の課題となっている制度の制約を克服する役割を担っていただいているわけでございます。この三つの目標に向かって進んでいく上において、いろいろな制約がかかっています。この制約を国レベルにおいてしっかりと取り除いていくというのが一億総活躍社会担当大臣の主な任務と言ってもいいと思います。

 地方創生と一億総活躍、双方の取り組みを最大限効果的に推進させるよう、両大臣には緊密に連携をしていただきたい、こう思っている次第であります。事実、緊密にしっかりと連携がとられている、このように思っているところでございます。

桝屋委員 よくわかりました。

 石破大臣と加藤大臣のシナジー効果をぜひ期待したいと思うんですが、どういう効果になるのか楽しみであります。

 私は、まさに総理がおっしゃったように、地方創生と一億総活躍社会実現へ向けた取り組み、これをどううまく効果をつくっていくのかということが本当に大事な話だろうと思います。総理から今改めて御説明いただきましたが、一億総活躍社会、これは、三つの目標に対して、それぞれの制度の隘路といいましょうか、開拓しなきゃいかぬ部分、変えなきゃいかぬ部分をしっかり一億総活躍担当大臣が取り組んでいただくということでありますから、今後、私ども公明党としても、現場で伺う話は両大臣にしっかりとお伝えをしながら効果を上げてまいりたいと思っております。

 それで、今回の補正予算で一千億の地方創生加速化交付金が計上された。これは我が党も強く要請をしてきたところでありますから、ここは高く評価したい。我々が評価する以上に、地方自治体が本当に喜んでおりまして、これで一千億、当初予算の一千八十億、これは掛け二でありますから、本当に、私は、地方自治体にとっても、いよいよこれは地方創生あるいは一億総活躍ということで全力で取り組まなきゃならぬな、こういう気持ちになっていただいていると思います。

 そこで、石破大臣にお伺いしたいのであります。

 石破大臣は、ともするとちょっと冷たい言い方があるんです。頑張っているところはしっかり応援しますよ、頑張っていないところはごめんなさいねと言いますと言うんです。余りそれを言われますと、頑張りようがないところもあったりしまして、頑張りようのないところも頑張っていただかなきゃならぬわけであります。そういう意味では、私は、この一千億の地方創生加速化交付金、三百億の先行の交付金についてはパターンワン、パターンツーでお配りをされたようでありますが、もちろん、ばらまきをしろとは言いませんけれども、小さな町村、小規模な自治体、やる気はある小さな自治体、あるいは、広域で取り組みたい、広域でやりたいというようなところをやはり重点的に支援をしていただきたい。

 もう一つ、これで最後にしますが、やっと気がついた自治体もあるんです、政府も本気だなと。これはもう、ここまで本気であれば、我々も地方版総合戦略をもう一回練り直してでも取り組みたい、それで、石破大臣が多分ホップ、ステップ、ジャンプでお考えになっているその流れにこれから行きたいと。私は、いわゆる後発組だと思っているんですが、この後発組も間違いなく進んでいけるような配慮がこれからの形で必要ではないかと思うんですが、石破大臣のお答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 私の言い方でそういうような受け取り方をされるところがあるとすれば、不徳のいたすところであります。

 これを出しましたときに出た反応は、時間がない、金がない、人がない、情報がないというようなことがありました。

 ただ、委員がきょうの質問の冒頭におっしゃったように、中国地方の幾つかの例をお挙げになりました。そこは大きな自治体だっただろうか、財政が潤沢な自治体だっただろうか。そうではない。そうではないがゆえに、自分たちの知恵で一生懸命頑張り、そして場所によっては中学生も参加するような形でやってきた。そういうところはたくさんあるわけです。

 ですから、委員がおっしゃるように、気づいていただいたところというのはたくさんある。そういうところに追いついていただくように、人材面においても、情報面においても、財政面においても、これは支援をさせていただくということは政府として当然の責務だと思っております。

 ただ、私は、日本にいつまでも時間があるとは思っていない。時間的な制約というものはございます。どこの自治体も第何次何カ年総合戦略というのを、総合計画でしょうか、つくっていないところはなかったはずなんです。では、どれだけの住民がそれを知っているか、その効果検証はどこまでなされたか、そこはやはり私どもとしてきちんと自治体の方々にお願いをしたいし、ましてや、そこの主権者たる住民の方々に無関心ではいないでくださいということをお願いして、時間的にはそんなに残っていないというふうに思っております。

 後発組の皆様方という言い方をあえてするとすれば、そういう方々にぜひとも追いついていただくように、私どもとして最大限の御支援をさせていただきたい、かように考えておるところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 私ども公明党も、三千名の地方議員とともに、活気ある温かな地域づくり推進本部というのをつくっておりまして、これからも全力で取り組んでまいりたいと思っております。

 先ほど石破大臣が言われた三点、やりっ放しの行政、頼りっ放しの民、それから無関心の市民、これが三位一体になるとえらいことになる、まさにそのとおりだと私も思っておりまして、そうならない、私どもの公明党の取り組みをぜひ進めてまいりたいと思いますから、今後とも御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて桝屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党・維新・無所属クラブの枝野でございます。

 午前中の時間では、昨年十月の半ばに国会で、憲法五十三条に基づき、総議員の四分の一以上で臨時国会召集の要求をしましたが、結局、そこから二カ月余り、臨時国会の召集がなされませんでした。

 憲法五十三条は、「要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と書いておりまして、召集を決定できるとか、召集について検討できるとかという書き方ではありません。明確に、「決定しなければならない。」となっております。

 どうも本会議等での総理等の御答弁を拝見しますと、いや、通常国会を早く開いたからいいじゃないかみたいなことをおっしゃっておるようです。

 確かに、憲法五十三条には時期の定めはありません。時期の定めはありませんが、それがないからといって、全く自由に、開こうが開くまいが勝手にできるというふうに考えておられるのか。一般的に言えば、合理的な期間内に召集するということが憲法五十三条の定めではないのか。総理の認識をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねております。

 基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない、こう解しているわけであります。開こうが、開かなくても構わないと考えているわけではなくて、今申し上げましたように、合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない、こう解しているわけであります。

 この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えていないわけであります。

 昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府として、これに適切に対応するため、現下の諸課題を整理して、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであります。迅速かつ適切に対応していると考えております。

 なお、国会閉会中でも、衆参両院の予算委員会にも私は出席をいたしました。閉会中に予算委員会を開催して、衆参ともに出席をするというのはそうあることではないわけでありますが、私も出席をいたしました。

 また、衆参合わせて六十時間を超える閉会中審査において、TPP、COP21など、当面する政治課題について、政府としても説明責任を果たしてきたところでございます。

枝野委員 確かに、我々が、例えば、十二月の半ばとか、ぎりぎりいっても十一月の下旬に、臨時国会を開けと要求をしていたのならば、それは、通常国会をこれだけ異例の早期召集するということで、合理的な範囲内で国会の審議に応じたと言えるのかもしれません。

 しかし、我々が憲法に基づいて要求したのは十月の二十日前後だったと思います。二カ月以上の期間がその間にあったわけでありまして、二カ月を超えるような期間が合理的な範囲、迅速な対応と言えるのかどうかということを申し上げたい。

 それから、本会議等でも今のように閉会中審査のことをおっしゃいました。しかし、この臨時国会の召集について規定しているのは憲法です。それに対して、閉会中審査というのは国会法という法律に基づく手続でありまして、憲法の要求を法律に基づく手続で代替できる、憲法というのはそういうものなんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 私の先ほどの答弁を聞いていただければ御理解をいただけると思ったのでありますが、もう一度申し上げておきますが、憲法との関係で申し上げれば、憲法で定める、憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられていないわけでありまして、そして、当該時期の決定は内閣に委ねられているわけであります。

 もちろん、開こうが、開かなくてもまた構わないと考えているわけではなくて、それは、基本的には、臨時会で聴取すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない、こう考えているわけでありまして、そして、かつ合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会では異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても、憲法に違反するところとは考えていないということでございまして、昨年の臨時国会の要求に対しては、適切に対応するために、現下の諸課題を整理して、補正予算そして来年度予算の編成などを行った上で、新年早々常会を開いてそこで議論した方が中身のある議論ができる、こう考えたわけでございます。

 そしてそれは、先ほど、なおと言って申し上げましたことは、憲法との関係で、これをやったから憲法に抵触をしないということではなくて、今申し上げたような論理において、憲法に決して反しているわけではないということでございます。

 そして、その中において、私どもも、TPPやCOP21、当面の課題については国民の皆様に対して説明する責任があると考えたわけでございまして、閉会中審査においては、これを異例とも思えるぐらいの長き時間をとってしっかりとお答えをしている、こういうことでございます。

枝野委員 質問にちゃんと答えていただきたいんです。私が二問目の質問でお尋ねをしたのは、合理的な範囲とこの二カ月以上の期間は言えるんですかという話に対して、一問目と同じ答弁を繰り返すだけで、なぜこの二カ月を超えた期間が合理的と言えるのか、あるいはこういうことが合理的な期間の範囲なのかということは、全く答えになっておりません。

 総理は、外国との関係で、国際社会との関係で法の支配を強調されます。大変重要なことです。今回の北朝鮮の核実験と思われるような状況などのように、法の支配を守らない国際社会における国家あるいは集団などに対して厳しい対応をしなければなりません。

 しかし、それを言っている安倍総理自身が、昨年の安保法制を初めとして、この憲法五十三条の問題を含め、法の支配を全く理解していないということを申し上げて、残りの質問は午後に回したいと思います。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。枝野幸男君。

枝野委員 それでは、午前に引き続いて、午後は、経済や財政などの話をさせていただきたいと思います。

 ことしの総理の年頭所感を聞きまして、私は、ほう、なるほどと思いました。「もはやデフレではない。私たちは、三年間で、そういう状況を創ることができました。」と。足元の数字、確認をしていませんでしたので、なるほど、デフレではない状況になったら大変結構なことだと思いました。

 一月四日の総理年頭会見でも、このときは「まだまだ道半ばではありますが、」とつけましたが、「「もはやデフレではない」という状況を創り出すことができました。」と同じようにおっしゃっていますが、その後、その質疑応答の中で、デフレではないという状況をつくり出すことはできたが、道半ばであって、デフレ脱却というところまで来ていないのも事実でありますというふうにおっしゃいました。

 政府の定義によると、デフレは持続的な物価の下落、デフレ脱却というのは、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないことということでございますから、デフレではない、つまり、持続的な物価の下落ではない、けれども、再びそうした状況に戻る見込みがないとまでは言えないから、デフレ脱却ではない。

 ですから、総理のおっしゃったことが間違っていると言うつもりはありませんので、その部分のお答えは結構です。しかし、明らかに多くの国民の皆さんに間違った印象を与えるんじゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 まさに言ったとおりでございまして、まだデフレ脱却とは言えない、これは道半ばではありますが、しかし、デフレ脱却に向けて着実に進みつつあるということであります。

 同時に、現在の状況は、デフレではないという状況をつくり出すことはできた、そう考えております。

枝野委員 物価の統計数字は総務大臣でしょうか。生鮮食品を除くいわゆるコアの消費者物価指数、足元の数字、昨年の五月から直近ぐらいのところまでお答えいただけますか。

高市国務大臣 これは前年同月比でよろしゅうございますか。(枝野委員「はい」と呼ぶ)二〇一五年の五月ですか。済みません、七月からは通告いただいていたんです。(枝野委員「七月からでいいですよ。では、七月から」と呼ぶ)七月からでよろしいですか。

 二〇一五年七月が前年同月比でコアで見ますと〇・〇%、八月がマイナス〇・一%、九月がマイナス〇・一%、十月がマイナス〇・一%、十一月がプラス〇・一%となっています。

 ただ、消費税率改定から一年経過していますので、消費税率改定の影響は含まれておりません。

枝野委員 日銀総裁に来ていただいていると思います。

 日銀は、いわゆる二%の物価安定目標を掲げておりますが、この場合、どの物価の数字を基準にするか、今総務大臣に御説明いただいたコアの消費者物価指数ということが基本的なターゲットであるということでよろしいですね。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行のみならず諸外国の中央銀行は、二%の物価安定目標を持っておるわけでございますけれども、その際の二%というのは消費者物価総合指数でございます。

 ただ、総合指数の動き、トレンド、趨勢を見ていくためには、やはり生鮮食品を除く指数で見たり、あるいは、最近のようにエネルギー価格が非常に大きく下落している、あるいは変動している場合には、生鮮食品とエネルギーを除く価格で見たり、さらに言えば、賃金の動き等々も見て、全体として物価の動きを判断していく。

 ただ、物価安定の目標自体は消費者物価の総合指数でありまして、まだまだゼロ%近傍を動いているという状況でございます。

枝野委員 今総務大臣と黒田総裁に確認しましたのは、時々都合のいい数字を引っ張り出してくるので、基本的にはコアの数字で見ていくということで。

 コアというのは、生鮮食品を除く、これは、生鮮食品は天候の影響などによって大きく変動しますので、一般的に生鮮食品を除く数字で物価の上昇率を見ていきますが、ここに示されているのが、二〇一〇年以降の消費者物価上昇率の数字です。消費税の影響を抜いたものであります。

 足元約一年、ほぼゼロ%近傍で横ばいになっております。これは、二〇一三年の暮れぐらいから一四年のころに、胸を張って、もはやデフレではない、何とかこういう状況を続けたいとおっしゃったのなら、まあ百歩譲ってわかるかもしれませんが、残念ながら、もちろん消費税の影響はありましたけれども、消費税の影響が消えた昨年の四月以降もマイナスあるいはゼロ近傍をはっている状況で、なぜことしの年頭に、もはやデフレではないと堂々と胸を張っておられるのかということを申し上げたい。

 逆に、実は我々が政権をお預かりする前にリーマン・ショックがありましたので、大変消費者物価指数の低いところから我々は始めさせていただいて、二〇一一年の後半に今のゼロ近傍のところまで来て、そして、一年以上にわたってその横ばいを続けましたが、決して私たちは、そのときに、もはやデフレではないなどと言って胸を張りませんでした。

 おかしくありませんか。低いところから上がってきてゼロ近傍になったというのだったら、何とか頑張ってきて、ここまで持ち上げてきましたですが、下がって同じぐらいの水準にいるのを、胸を張っているというのはどういうことですか。

安倍内閣総理大臣 枝野委員は全く本質を見ておられません。

 よろしいですか。先ほど黒田総裁からもお答えをさせていただきました。日銀はCPIで見ておりますが、それを今、表で出しておられるのはコアの数字であります。生鮮食品等は非常に日々の状況の影響を受けやすい、変動性が高いというところで抜いているということでありました。

 そこで、しかし、では原油がどうなっているかということに着目をしなければならないわけでありますが、近年は今までにない形で大幅に下落をしているわけでありまして、三分の一近くになってしまっているわけでございます。

 そこで、大切なことは、デフレの問題点というのは、どんどんどんどん価格が下がっていく、同時に給料も減っていくという状況であります。それ以上に、実は給料が減っていく、経済が縮小していくというのが、これがデフレと言ってもいいんだろうと思います。

 そして、私は、もはやデフレではないとなぜ言ったかということについていえば、今言った油価が、原油が大幅に減少していますが、この価格が暴落をしている、これを除けば、いわばコアコアで見たら、民主党政権時は実はコアコアはマイナス〇・七%、安倍政権はプラス〇・八%、まさにマイナスからプラスに、いわばデフレから脱却した状況に変わっているわけであります。そして、名目GDPを見る場合もデフレーターで足していくわけでありますが、GDPデフレーターもプラスになっているわけであります。給与もふえている。二年連続二%を超えているわけであります。名目GDPも、これは先ほど申し上げましたように二十八兆円プラスになってきているわけであります。デフレーターがプラスになっていることも大きな影響であろう、こう思うわけであります。

 油を入れますと、民主党政権のことをおっしゃったんだけれども、そうすると、全然、これは努力に関係なく、いきなり原油が暴騰したら、そうすればいいんですが、これはデフレから脱却していくことには全くならないわけでありまして、そういう意味において、本質をよく見て質問をしていただきたい、こう思う次第でございます。

枝野委員 本当にすごいですね。この二〇一三年後半からのコアCPIの上昇は、急激な円安による輸入物価の高騰が大部分の要素を占めているということ、これはみんなが知っていることじゃないですか。それはもちろん、為替の変動によって輸入物価は変わります。その輸入物価の中の原油というのが大きな要素を占めるというのはあります。ですが、自分たちが上がったときの為替変動による恩恵、そのことは触れないで、原油価格のことだけ言うんですか。円安によって、原油は、ドル建ての価格が同じであるならば、円安の分だけ値上がりするはずであったのが、実は、原油価格そのものがドル建てで下がってくれているので、何とか日本のエネルギー価格という意味では今助かっているという状況であって、どうも都合のいいところだけおっしゃられる。

 日銀総裁は、二〇一三年の三月十一日、参議院の議院運営委員会で所信を述べられたときに、コアコアのCPIのターゲット目標を定める必要はない、中身を変えることになると信用に影響を与えるおそれがある、物価安定目標に掲げるCPI、これはコアのCPIである、変える必要はないとおっしゃっていて、同じ一三年の七月十一日の金融政策決定会合後の記者会見では、生鮮食品は天候などの短期的な要因に左右されるので、生鮮食品を除いて見るのは合理性がある、コアコアのCPI、今総理が言ったCPIについては、一定の合理性はあるが全体の三分の二ぐらいしか含んでいない、従来どおりコアのCPIで見ていくのが適当であるとおっしゃいましたね。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標といった場合には、総合の消費者物価指数で前年比二%というのがターゲットでございます。これは諸外国も基本的に同じでございます。

 ただ、物価がどのように今動いているか、趨勢がどうなっているかということを判断する場合は、委員御指摘のように、例えば生鮮食品というのは気候で非常に変動しますので、それを除いたコアで見るというのも非常に重要でありますし、最近、日銀の中での調査研究によりますと、現状のような原油価格が大幅に下落するときに、それを除いて、いわゆる生鮮食品とエネルギー品目を除いたところ、これは委員御指摘のいわゆるコアコア、食品とエネルギーを全部除いたものよりももう少し幅が広くて、生鮮食品とエネルギー品目を除いたもので、カバー率はかなり高いわけですけれども、やはりエネルギー品目の大幅な下落というものを除いて見ないと物価の基調というのが判断しがたいということであります。

 これもまた、日本銀行だけでなくて、欧米の中央銀行もやはり、今物価の趨勢を判断するときは、エネルギー品目を除いたところで見てどうだろうかということを議論しております。

 足元の総合指数は、実は日本も米国も欧州もほとんどゼロ近傍にございます。それに対して、エネルギー品目を除きますと一%前半、一%強というようなところにみんな動いているわけであります。

 そういった意味で、目標は総合指数です。それはあくまでもそれで判断するわけですが、物価の動き、トレンド、趨勢を見るときはさまざまな指標を総合的に見ていく必要があるということで、現時点では、単に生鮮食品を除いただけでなくて、エネルギー品目を除いたものも見ていく必要がある、さらには賃金の動きも見ていく必要があるということでございます。

枝野委員 質問に答えていただいていないんですが、参議院の議院運営委員会の所信は議事録があるはずですので、就任に当たって国会でした所信といかに違ったことをおっしゃっているのか、まさに都合よく、都合のいい数字を引っ張り出してきているということを申し上げたいと思います。

 今、総理は、雇用の状況はよくなっていると。これは、全くよくなっていないとは言いませんが、総務省労働力調査、確かに二〇一二年の十―十二月期から足元まで見ると、雇用の総数は百三十万人近くふえているのは間違いありませんが、その正規と非正規の内訳を答えてください。

高市国務大臣 二〇一二年十―十二月期及び二〇一五年七―九月期の正規雇用者数ですが、それぞれ三千三百三十万人及び三千三百二十九万人、非正規雇用者数は千八百四十三万人及び千九百七十一万人です。

 ただ、雇用者数のように季節性のある数値の増減を見る場合には、前年以前の同じ四半期と比較することが適切ですので、二〇一二年と二〇一五年の七―九月期同士で比べますと、正規雇用者は二万人増加しています。非正規は四十二万人増加しております。

枝野委員 増加の大部分が非正規であると。そして、ついに非正規の比率が四割を超えたというのは、昨年も国会で取り上げてきているところです。

 見かけ上賃金は確かに上がっている部分がありますが、先ほどお話しのとおり、安倍政権の一年目から二年目にかけては、円安によって輸入物価が上がりました。輸入物価が上がったことによって全体の物価が上がりましたので、物価が上がったのに賃金が上がらなければ、実質的な使える価値は小さくなるわけですから、物価との対比で見なければいけませんが、今出させていただいているのが実質賃金の数字です。

 これは厚生労働省の調査の結果ですが、この数字は間違いないですね。細かい数字はいいですから、確認だけしたいと思います。厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 一五年の七―九月が九五・一に下がっているということで、これは、私どもの政権、第二次安倍政権が始まる直前の一二年の十―十二月期が九九・〇ですから、それは下がっているということは間違いがございません。

枝野委員 経済の状況がよくて、雇用の状況がよくなって、非正規とはいいながら雇用者数がふえているという状況が、本来のマーケットの原理からいえば、賃金が上がらないとおかしいんですよ。それから、変わり始めた最初のうちはまず非正規からふえていくんだと、この国会でも安倍さんは何度もおっしゃいました。それは半歩譲ってあるかもしれませんが、もう安倍政権が発足して三年たっております。我々の政権をお預かりした期間は、ちなみに言うと三年三カ月です。

 実質賃金が大幅に下がっている、そして雇用数がふえたといっても非正規しかふえていない。これは、もし実体経済が本当にいいのであるならば、むしろ雇用労働政策の間違いじゃないですか。

 実質賃金がちゃんと上がらないというのは、マーケットメカニズムからおかしい。実体経済がよくて、本当に人が欲しくてしようがないんだったら、実質賃金を上げないと人は採れないし、それに応じて、不安定じゃなくて安定的に人を採用していないと、人に逃げられると困るから。当然のことながら、三年もたっているんですから、実質賃金もきちっと上がってきておかしくないし、そして、非正規ではなくて、むしろ、非正規から正規へとシフトが明確に出てこないと。三年たっているということを申し上げたい。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 まさに、枝野委員、本質を見ていただきたいと思います。

 まず、雇用状況がよくなったことは、さすがの枝野さんもお認めになるんだろうと思います。民主党時代の三年間で五十九万人減っていますが、まさに安倍政権で大幅にプラスに転じたわけであります。

 それと、まさに皆さんのときには、デフレではないという状況をつくることができなかった。この状況の怖いところは、しかも行き過ぎた円高が続いていた。この結果どうなったかといえば、倒産件数がふえていくんですよ。我々は、政権三年間、皆さんのときよりも二割も倒産件数を減らしているんですよ。二割倒産件数を減らして、その後、その後の昨年も、そのときよりもさらに一〇%減らしているということであります。それをまずしっかりと見ていただきたいと思います。

 私たちは、間違いなく、まず働く場所をちゃんとつくっているということであります。

 その上で申し上げますと、我々は、二年連続二%以上の平均の賃上げを行っているということであります。もちろんこれは名目で上がっているのは、これは枝野議員もお認めになるわけでありますが、しかし、足元では、一人当たりの平均賃金。ただ、一人当たりの平均賃金といえば、これは、働き始める人がいれば、今までゼロ、計算外の人が働き始めれば、収入が低い場合もそれは平均の中に入ってしまいますから、最初はどうしてもパート等がふえていく、これは当然のことであります。だから、平均が下がっていく。

 見なければいけないことは、やはり総雇用者所得なんです。みんなの稼ぎがどれぐらいになっているか。ゼロだった人がふえていく、それもちゃんと入れなければいけないじゃないですか。ゼロだった人をそのままでいいんですか。そのままでよかったのが、まさに皆さんの政権ではありませんか。

 そうではなくて、私たちは、新たに、ゼロだった人たちにたくさん仕事ができたのは事実であります。そこは皆さんもお認めになるんだろう、こう思うわけであります。これは、景気が回復し雇用が増加する過程においてパートで働く人がふえたため、一人当たりの平均賃金が低く出ることによるものであります。

 ただし、足元では、一人当たりの平均賃金については、名目賃金は、政労使合意を踏まえた取り組みなどにより、平成二十六年春以降増加傾向にあります。そして、実質賃金も昨年七月以降増加傾向にあります。

 また、実質雇用者所得について、民主党政権下の二〇一〇年から二〇一二年までの平均値と、安倍政権下の二〇一三年から二〇一四年までの平均値を比較すると、これはほぼ同水準であります。

 同水準でありますが、この中においては、この三年間、私たちは三%消費税を上げたんですから。消費税を上げて、しかもデフレではないという状況をつくって、正常に物価が上がっていくという状況をつくってもなお、皆さんと実質総雇用者所得は同じであるということでありまして、しっかりと我々は、デフレから脱却をしながら賃金も上がっている。賃金が上がっていなければ皆さんよりも下がってしまうわけでありますから、三%分と上がっている分は我々は上げている、やはりこのことは申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

 皆さん、ここから大切ですから、静かに聞いていただきたいと思います。

 さらに、基本給を示す所定内給与は九カ月連続のプラスです。パートで働く方を除いた一般労働者で見ると、十九カ月連続のプラスであります。また、パートで働く方々の時給は、安倍政権になって最低賃金の大幅引き上げを三年連続で行ってきたことや、労働需給が引き締まりつつあることもあり、ここ二十三年間で最高水準になっているということは申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 大切なのは、しっかりと雇用を確保する、これが政治の責任であり、もちろん、賃金も上げていくことであります。

 また、これは、地方を見ても、地方の有効求人倍率も七つの県においては過去最高になっているわけであります。高知県については、一九六三年に統計をとり始めて以来、初めて一に到達をしたわけであります。民主党政権時代は〇・六四ですよ。皆さんのときは〇・六四なんですよ。それが一になったんですよ。このことはしっかりと認めていただいて、その上で我々も、さらに給与が上がっていくようにしっかりと努力を重ねていきたい、こう思う次第であります。

枝野委員 まあ見事なほど自分の都合のいい数字だけを、しかも、賃金の話も、実質の話をしたり名目の話をしたり、ごちゃごちゃな話です。

 いいですか。先ほどの話のとおり、物価が上がっているのは円安の効果ですよ。円安の効果というのは、海外にその分、値上がりしたのは富が出ていくだけですから。そこで物価が上がった、そのことによって実質賃金が下がったわけですよ、輸入物価で海外に出ていく富がふえたことによって。その下がった水準から、それは上下はありますよ、ちょっと見れば。でも、横ばいで、ずっと下がった状態から回復の兆しを見せていないというのがこの数字じゃないですか。

 その上で、年頭の総理の会見の中では、デフレ脱却まであと一歩だ、この流れを加速できるか否かは、賃上げ、設備投資による経済の好循環をいかに力強く回し続けられるか、いつもおっしゃっていることですね。そのため、政府としても、法人実効税率について、いいですか、賃上げや設備投資による経済の好循環を回していく、そのために、法人実効税率について予定よりも前倒しで引き下げる決定をしたと。

 法人実効税率というのは、支払い賃金や設備投資の減価償却を引いたものにかかる法人税の税率なんじゃないんですか。

麻生国務大臣 今おっしゃりたいことは、企業収益が好調な割にという話を多分おっしゃりたいんだと思いますが、内部の留保がふえております、その割に配当または賃金、設備投資が伸びていないという話なんだと思います。

 その状況の中にあって、何といっても、今、法人税というものを見ました場合に、実効税率の話を聞いておられるんだと思いますが、法人課税をより広く負担を分かち合うという構造へ改革をしていかないかぬのだ、私どもは今そう考えております。

 基本的に、これによって、稼ぐ力のある企業というものの税負担を軽減すると同時に、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きのいわゆる設備投資、国内投資、また継続的な、また積極的な賃上げの可能な体質への転換を促してもらわないかぬのだ、私たちは、今後の経済というものを考えていくときに、そうならないと日本の経済というものは強くなっていかない、そう思っております。

 したがって、法人実効税率二〇%台の実現、これは大体海外がそうなっておりますので、そういった事業環境の整備というものを受けて、投資の拡大とか賃金の引き上げというものに積極的に取り組んでいく旨を表明しておりますので、経済界の方も、ことしの一月四日の新年の話を引かれたと思いますが、そういった意味で、今後の取り組み状況をよく見きわめていかねばならぬのだと思っております。

 今後とも、そのためには財源の確保というものをやらねばならぬところであって、民主党政権下のときにもたしか平成二十三年度に法人税の改革を、下げられたと思いますが、そのときは財源の確保が十分ではなかった、たしかそうだったと記憶をします。そういったことを考えますと、課税ベースの拡大等によって税率の引き下げに当たっての財源はしっかりと確保しておる、我々はそう思っております。

 したがって、今回の改革というものは、いわゆる財政規律を無視した目先の改革、人気取りとか、そういったようなことではなくて、全体の構造改革を前提にして私どもはこの改革を行っている、そういうぐあいに思っております。

枝野委員 質問の趣旨を理解いただけなかったのか、それとも、もともとわかっておられないのか。法人税というのは、賃金を支払ったり、設備投資をすればその分、毎年毎年減価償却していきます、そういう経費を除いた利益に法人税がかかります。ですから、その税率が高くても安くても、それは内部にどう留保されるのかというようなことにはつながるかもしれませんが、たくさん設備投資をすれば、あるいはたくさん賃金を払えばその分、法人税のかかる利益自体が小さくなるんです。

 ですから、例えば賃金をたくさん払ったから、それで減税しろというのはなかなか難しいかもしれません。しかし、設備投資をすれば減価償却を待たなくても法人税を減税します、こういうことで設備投資というのはふやす、これなら意味があるんですが、法人税率を下げることで設備投資や賃金引き上げにつながるという理屈がよくわからないから教えてくださいと言っているんです。

麻生国務大臣 今申し上げましたとおりに、基本的に企業というものは、得られた利益のうち、賃金を上げるか、配当をふやすか、もしくは設備投資に回すか、利益はその三つに分配されていくというのが常識的な理解であります。

 したがいまして、法人実効税率とかいろいろな言い方がありますけれども、法人税が下がればその分だけ純益がふえることになりますので、その分は配当に、もしくは賃金に、もしくは設備投資に回しやすくなるということになり得る、答えははっきりしているんじゃないでしょうか。

枝野委員 賃金をたくさん払えば、どっちにしろこれは利益として税金の課税の対象にならないんですから、税率が高かろうと低かろうと、これぐらいもうかったんだからという税引き前利益の段階で、ああ、こんなにもっと払えますね、そこがふえていれば賃金は払えるんですよ。

 実際に、税引き後でなされるのは確かに配当です。あるいは内部留保です。内部留保は、実は我々の政権のときも若干の法人税減税を試みましたが、では、だからといって、それで内部留保せずに賃金の引き上げや配当に簡単に回るのか。実は、法人税率の変更と内部留保の増減というのは、基本的には相関関係はありません。

 逆に言うと、実はもう一つあって、最近の企業がやっているのは自社株買いですよ。広い意味での配当や内部留保と言ってもいいのかもしれませんが、そういったところに実際にこの三年間、大企業の利益は確かに上がっているけれども、賃金の引き上げに回っているような部分は一部であるし、設備投資も、皆さんが三年前に期待されたとおりには進んでいないし、では、それを何とか促したい。促したいんだったら、法人実効税率を下げるんじゃなくて、むしろ設備投資減税などについて大胆にやるべきじゃないかということを申し上げているんですよ。

麻生国務大臣 設備投資減税というのも、御存じのとおり、やらせていただいております。この三年間やらせていただきました。(発言する者あり)賃上げの減税も、今、何とか発言というのはやっていましたけれども、言っていることは正しいです。

 そういったようなことをやっても、現実問題としては、企業の方がそういった対応をされず、労働分配率は昔に比べて下がっているというのが現実だというのは企業としておかしくありませんかと、私どもは経済界との対話のときに何回となくこれは申し上げて、やっと少しずつ態度が変わってきたかなというのが、この一年間の流れだと思っております。

枝野委員 設備投資減税でもなかなか設備投資がふえないのに、その設備投資減税を縮小して法人実効税率を下げるというのは、全く方向性として逆であるということははっきりしているんじゃないかというふうに思います。

 いろいろ論点がありますので、年金生活者等給付金についてお尋ねをしたいと思います。

 本会議の答弁を聞いて唖然といたしました。我が党の海江田前代表の一昨年の総選挙時の発言を取り上げて、誹謗中傷されています。今回のばらまきの年金生活者等給付金と、あのとき海江田代表がちゃんとやるべきだと申し上げた、当初であれば一五年十月実施予定であったのが結果的に一七年四月に先送りされた年金生活者支援給付金の本質的な違いを理解されていないんですか、それとも、理解していながら意図的に誹謗中傷されているんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの麻生大臣の答弁を補足させていただきますと、法人税との関係、設備投資あるいは給与との関係でありますが、我々が復興特別法人税を前倒しして廃止する際、ただそれを廃止したんだったら、枝野さんがおっしゃるように、これは恐らく給与には回らなかった。しかし、そのときに政労使という仕組みをつくって、私たちはこういう努力をしてあなたたちの競争力を高めていくから、あなたたちもやってくださいと言った結果、給与が上がっていったわけであります。

 今回も、官民の対話において、我々は皆さんの競争力を高めていく、これは努力をしていきますよ、あなたたちもしっかりと努力をしてくださいといった中において、彼らは十兆円設備投資していきましょう、そういう話になっているということであります。

 そこで、今の御質問についてでありますが、まさに今回の我々の三万円の臨時的な給付金について、これは、年金生活者、低年金の方々、高齢者の方々でありますが、この皆さんは給与所得者ではないわけでありまして、この三年間のアベノミクスの成果は間違いなくあったわけでありまして、企業は空前の利益を上げる中において給与を上げているわけであります。給与は上がっていく中において、この果実をいわば享受する立場にあるわけでございますが、しかし、残念ながら、年金生活者の方々は給与生活者ではありませんから、働いている場所が、大きな利益を上げるというところで働いているわけではないわけであります。

 かつ、我々はデフレの中において、本来はスライドするべき年金をスライドしていなかった。ここにおいて、責任政党として、政権政党としての責任を果たしていく、あるいは年金の持続性を確保していくためにデフレスライドをさせる、つまり年金額が減るということを行ったわけでございます。そして、かつ、物価も、デフレからインフレターゲットに向かって進んでいくという中にあって、この方々に私たちが進めてきた経済政策の果実をしっかりと分配していかなければならないというのが、私たちの考え方でございます。

 そして同時に、この方々の消費性向は高いわけでありますから、ミクロ政策としても正しいし、マクロ政策としても正しい政策であろうと思います。

 そこで、海江田さんと私とのやりとりにおいては、党首討論のときもありますし、選挙中のテレビ番組におけるやりとりもあった、こう思うわけであります。

 あのとき、まさに海江田さんがおっしゃったことは、年金生活者支援給付金についてでございますが、我々は、一年半、消費税の引き上げを先延ばしする、こう申し上げましたから、その中で引き上げを前提としたことを全てできるわけではない、六万円、六千億円分のこの給付については、それは残念ながら現段階ではできません、しかし、私たちのアベノミクスを進めていく中において、成果が出てきている中においては社会保障にしっかりと分配をしていきたい、こうお答えをしてきたのであります。

 あのとき、選挙目当てとおっしゃるのであれば、私はそのときに、やりますと言いますよ。選挙をやっている最中でありますから。テレビにおける討論会においても、私は、司会者からそう尋ねられて、これは給付と負担を考えなければいけませんからそれはできませんとお答えをしました。それに対して、しっかりと財源を見つけてやるべきだと答えたのは、当時の海江田さんであります。枝野さんはあのときの幹事長ですよね。党内でちゃんと議論して、では、財源もそのとき既に見つけていたんですか。それをまずお伺いしたい、こう思うわけであります。

 今回は確かに対象は少し、多少広げておりますが、性格としては……(発言する者あり)皆さん、少しは静かにしてください、大切なところですから。この対象は確かに広げておりますが、性格としては、まさにこれを半額にして前倒しにすると言ってもいいものだ、こう考えているわけであります。

 これは、社会保障・税一体改革の一環として平成二十九年四月から始まる年金生活者支援給付金の前倒し的な位置づけになるのも、これはもう間違いない、こう思うわけで、半額としてですね、と同時に、今回の給付金は、ことし前半にかけての個人消費の下支えの観点や実務上の対応可能性を踏まえ、年金生活者支援給付金の対象よりも幅広い方に対して支給するものである、こういうことでございます。

枝野委員 まあべらべらべらべら関係ないことをお答えになるのですが、本質は違うと、今聞いていたら御理解はされているようですよね。的としか言いませんからね。

 聞いていらっしゃる方はわからないかもしれませんが、本来、消費税の一〇%への引き上げに合わせて、低年金の皆さんに対して制度として恒常的に、将来にわたって給付金を付加するということが決められていた。それが、一〇%を先送りするに当たって、財源問題などもあるので先送りした。これは本当にいいのか、まずいじゃないかということを、確かに私どもはおととしの衆議院選挙で申し上げました。でも、その話と、今回一回限り、しかも、その対象になっている人たちよりも二倍ぐらいの人たちにばあんとばらまくわけです。

 百歩譲りましょう。同じ財源を使うのだとすれば、消費税の一〇%への引き上げと合わせて一七年四月に実施されることになる年金生活者支援給付金、ばらまきじゃない、制度としてやるものを、同じ財源で七カ月前倒しできますよね。これなら百歩譲ってもまだわかりますよ。だけれども、何でこんなにも幅広い、何でそういう線で引いたのかわからない線引きで一回限りばらまくという話と、本質的に制度が違う。

 社会保障というのは、今、目の前をどうするかということ以上に大事なことは、将来にわたって自分の老後がどうなるのか、特に高齢者の皆さんにとっては、収入がなくなって、ここから先、五年先、十年先、二十年先、今や高齢化社会だから、例えば六十の方々は三十年、四十年先のことを考えなきゃならない。将来にわたってどうなのかということの安心感をつくるのが社会保障の目的で、目の前でばあんと金を配る話と本質的に違う。

 厚労大臣、いいですよね。この財源があれば、来年四月施行する制度を七カ月前倒しできる財源になりますよね。

塩崎国務大臣 これは総理が既に本会議等々で申し上げているように、今回、ことしの前半にかけての個人消費の下支えの観点と、それから実務上の対応可能性を踏まえということになっていて、もちろん前倒し的な位置づけでもあるということも申し上げておりますけれども、一番アベノミクスの恩恵の行かないところに、どうやって、では、実務上、特に消費のことを考えながら、ことしの前半にお届けして消費を喚起することができるかということを考えると、実は、今お話しの年金生活者支援給付金の手続をするのには、年金機構とそれから市町村との間で情報の突き合わせをやらなきゃいけません。これに数カ月かかります。さらに、お一人お一人に勧奨のお便りを出して、その手続にもまた数カ月かかるということになれば、前半の消費を喚起しようというときにはなかなか難しい。

 そうなれば、やれることは何かというと、簡素な給付でやってきた、住民税非課税の方々に関しては素早くできるということで、こういうやり方をした。その対象が、六百万人の約倍の数になっているということであって、それは何度も申し上げているように、もともとこの年金生活者支援給付金は、自公民で、一体改革の中で低年金者にどういう対応ができるかということで、恒久的な措置として考えた。しかし、これは、今申し上げたように、臨時的に、一時的に、消費のことし前半の刺激のために必要なんだということでこれを措置しようということであるので、そこは御理解をいただきたいというふうに思います。

枝野委員 塩崎さんの方が理解をされているだけにごまかしができないのか、海江田さんが一昨年の選挙のときにやるべきだと言った話と、今回我々がけしからぬと言っているものは質が違うということを、今明確におっしゃられました。

 今回は、市町村税非課税世帯を対象にするようでありますけれども、市町村税非課税世帯は高齢者だけじゃないんですよね。現役世代で、例えば子育てをしながら市町村税非課税世帯の方はたくさんいらっしゃるわけですよ。

 その人たちが、では、みんなアベノミクスの恩恵と称するものを受けていらっしゃるのか。このテレビ、ラジオを聞いていらっしゃる方にもそういう方はいらっしゃると思いますが、皆さん受けていらっしゃいますか。私は、残念ながら、一部受けている人がいたとしても、それは高額所得者の皆さんだったりしていて、市町村税非課税世帯の皆さんの中で、アベノミクスの恩恵を受けて収入がふえているという方は、ほとんどいないと言っていいんじゃないだろうかと。

 なのに、例えば、子育て支援のために、高額所得者を除く中学生までのお子さん一千六百万人に、一五年度で三千円という少ない額ですけれども、払っていた子育て世帯臨時特例給付金はやめている。そして、この意味不明のばらまきは行う。これは、いただく高齢者の皆さんも、子供たち、孫たちの世代に向けて、なかなか後ろめたいんじゃないだろうかと思います。

 私が思うのは、やはり、高齢者の皆さんに必要なことは、こういう一時的なものではなくて、将来にわたって、五年先でも十年先でも大丈夫ですよ、これをやらなければ、高齢者の皆さんの安心にはつながらない。我々はそういうことのためには努力をしたいと思いますが、これはおかしいんじゃないかというふうに申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一つ言っておかなきゃならないことがあります。据え置き税率です。軽減ではなくて据え置きです。

 据え置き税率が、税制抜本改革法七条に基づく消費税率引き上げに伴う低所得者対策と位置づけられているという認識でよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの三万円の問題についても、本質においてはまさに同じだということは申し上げておきたいと思うわけであります。

 その意味において、いわば実際にこれを実施する上において、住民税非課税世帯であれば簡易に行うことができるということで、やや対象が広がったというのにすぎないということでありますから、前倒しであるという性格は変わっていない。マクロ政策からいってもミクロ政策からいっても正しい政策であろう、このように思うわけであります。

 そこで、軽減税率についての質問がございました。

 消費税率一〇%への引き上げに伴う低所得者への配慮の観点から、軽減税率制度を平成二十九年四月に導入し、ほぼ全ての人が毎日購入している酒類及び外食を除く飲食料品等の税率を八%に据え置くこととしております。これによって、所得の低い方ほど収入に占める消費税負担の割合が高いわけでありますが、この割合が高いという、いわゆる消費税の逆進性を緩和することができます。

 また、日々の生活の中で、買い物の都度、痛税感の緩和を実感していただけるわけであります。これは、例えば千円のお買い物を、コンビニで千円の加工食品を買おうと思った場合千八十円、八十円消費税を払うのかなという、これが、千百円ではなくて千八十円のままだなと思うことによって痛税感は緩和されるだろう、こう思うわけでございます。

 そしてまた、軽減税率制度については、そもそもこれは制度上、高所得者のみを適用対象から除外することが困難であって、その意味で、低所得者対策としてはどうなのかという御指摘があることは承知をしておりますが、他方、先ほども申し上げましたように、いわば痛税感を緩和するということにおいては効果がある、このように認識をしております。

枝野委員 この点は同僚議員が引き続きやりますが、財務省に試算をさせたら、年収二百万未満の世帯がこれによって受ける恩恵は八千円余りです。ところが、年収一千五百万円を超える世帯では恩恵は一万八千円近くになります。つまり、高額所得者ほど恩恵をたくさん受ける。当たり前ですね、たくさん買い物をしますから。

 しかも、一兆円の財源のうち、年収三百万未満の世帯のために使われる一兆円の中の財源は一一%程度です。年収五百万円未満まで広げても全体の四三%。つまり、五千億円は年収五百万円以上の方なんです。

 これが何で低所得者対策なのかと申し上げた上で、これはなかなか、マスコミの皆さんを敵に回すと何か恣意的にいじめられるのが心配ですので、若手の後輩に任せるのはなんなので私から聞きたいと思いますが、これは財務大臣に聞きましょうか。

 新聞の定期購読が食料品と一緒に据え置き税率の対象ですが、電力料金はどうなんですか、ガス料金はどうなんですか、冬の北国の灯油はどうなんですか、公共交通機関が乏しい地域のガソリンはどうなんでしょうか、お答えください。

麻生国務大臣 新聞等々、いろいろ前から御意見のあったところだと思いますが、これを、今、水道料金とかガス料金とか電気料金とかいろいろ話が出ておりますけれども、これは、いわゆる日常生活における情報媒体として、全国にあまねく均質に情報を提供し、幅広い層に日々読まれていること、その結果、新聞の購読料に係る消費税負担は逆進的になっていることなどの事情を総合勘案して、軽減税率の適用対象としたということであります。

 なお、電気料金、水道料金等々、その料金に係る消費税負担が逆進的では確かにあるということになろうかと思いますが、しかし、利用者に過重な負担とならないよう、御存じのように、公定料金または認可料金とされているということは御存じのとおりです。多くの市町村で低所得者向けに水道料金の軽減を行っているということも御存じだと思いますので、そういった意味で新聞とは異なる事情にあるものだ、私どもはそう判断をいたしております。

枝野委員 私は水道を言っていません。

 ガソリンはどうですか。ガソリンは二重課税じゃないですか。どっちが生活に必要ですか。

 それは、新聞も大事ですよ。でも、残念ながらと言うべきかもしれませんが、若い人たちを中心に低所得者の皆さん、新聞をとる余裕もなく、新聞をとっていらっしゃらないですよ。そういう状況の中でなぜ恣意的に新聞だけが対象になっているのか。それは、多くの有権者の皆さんが御判断をされるのではないだろうかというふうに思っています。

 残りの時間、最後に申し上げておきたいんですが、確かに、安倍内閣、株価を上げました。そして、非常に目につきやすい派手な数字は上げました。

 でも、実際にどうなっているのかという、日本の経済の全体の実態をトータルで示すのがGDPです、国内総生産、日本の国内における経済活動を全部トータルした数字をGDPといいます。

 このGDPは、民主党政権の三年三カ月で五・七%増加をしましたが、安倍政権の三年、統計が出ているのは二年九カ月でありますけれども、二・四%の増にしかすぎません。これは内閣府に計算させましたが、同じ時期、期間で計算すると、民主党政権の伸びは年率換算で一・七%です。安倍政権になってからは〇・九%にすぎません。

 それから、それぞれの御家庭がどれぐらい消費をされるのか、つまり、まさに日々の御家庭の一人一人の暮らし、それがよくなっているのかどうかということについては、実質家計消費が伸びているのかどうか。実は、安倍政権になってからの三年間では、これは下の棒グラフの方ですけれども、伸びていません。それに対して私どものときは、東日本大震災の落ち込み、どすんとありましたよ、にもかかわらず、全体を平均しても四・九%伸ばしています。

 皆さん、いろいろな派手な数字と、安倍さんのこのぺらぺらぺらぺらしゃべって自分の都合のいい数字だけを並べる言葉に、そろそろ惑わされるのをやめませんか。しっかりとこうした実証的な数字に基づいて、多くの国民の皆さんが感じていらっしゃる生活実感は間違っていないんです。しかも、もう三年たっているんです。そろそろ、実態をしっかりと踏まえて、それに対してしっかりとした評価をしていただきたい、そのことを申し上げて、より詳細なことは同僚議員に委ねたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 安倍総理に質問をさせていただきたいと思います。

 今の枝野幹事長との話を聞いていても、安倍総理は何か勘違いをされているんじゃないか。高齢者以外はみんな、現役世代、若者、子育て世代はアベノミクスの恩恵で潤っているみたいなことをおっしゃっていますが、そんなことありませんよ。

 若者の非正規の方、子育て世代、本当にみんな大変な苦しい思いをされていますし、例えば年末年始のスーパー、デパートあるいはコンビニとかでも、年末年始、お正月の休みたいときに安倍総理はゴルフをされていましたけれども、そのときに日本の社会を支えてくださっている多くの方々は、今や非正規の方が多いんですよ。本当に、そういう庶民の方々の苦しみはどんどん高まってきています。

 さらに、私は、安倍総理というのは、今回の年金生活者給付金のばらまきにしてもそうですが、若者に対して非常に冷たいのではないかと思います。そのことの一つの、残念ながら悲しい事件として、ワタミの過労自殺の訴訟について最初に安倍総理に御質問をさせていただきたいと思います。

 二十六歳の森美菜さんが、ワタミフーズで働いておられ、二〇〇八年にお亡くなりになられました。本日、御両親の方々、傍聴にお越しをいただいております。

 先日、和解をしました。きょうも新聞を配付させていただきましたけれども、「ワタミ過労自殺 和解」「創業 渡辺氏に重大な賠償責任」「遺族に一億三千万円」「ワタミや渡辺氏らが計一億三千万円の賠償金を支払い、法的責任を認めて謝罪する内容。」というふうに、十二月八日のことですね、そういうことになったわけですが、実際、当時二十六歳であった森美菜さんがお亡くなりになられてからもう七年以上がたって、それまで渡邉氏は徹底抗戦をされてきたわけであります。

 そして、ここにも、配付資料にもありますように、「労働問題の“デパート”ワタミ是正勧告の全容」。何と、労働基準法の違反などで約七十件も是正勧告、是正指導を受けている。ブラック企業という批判も強かったわけです。

 そして、参議院選挙で渡邉美樹氏が自民党の公認を受けられた際に、御両親は、自民党本部に行って、公認をやめてくれという涙ながらのお願いをされたんですね。

 そのときに持っていかれた自民党に対する要請文がこちらにあります。「自民党は、若者を死ぬまで働かせ、殺す社会をつくりたいのですか?! お答えください。 ワタミ過労死遺族」

 自民党は、七月の参議院選挙比例区の候補としてワタミの渡邉美樹会長を擁立されると聞いていますが、渡邉会長に関し、素朴な質問に答えていただきたい。

 法律違反を重ねて利益を追求した経営者に、若者を死ぬまで働かせ、使い捨てにして利益を上げた経営者に、国会議員になる資格があるのでしょうか。

 国の機関である労働局は、平成十二年二月十四日、私たちの娘の死に対して、ワタミフードサービスにおける業務上の労災による死亡と決定を下しました。しかし、渡邉会長及びワタミフードサービスは、労災の責任を認めようとしません。

 私の娘に関して、労働時間は、所定労働時間八時間、週休二日制と入社前に説明しておきながら、時間外労働を強制し、月百四十時間以上の時間外労働を課されました。労働安全衛生法違反です。

 さらに、娘は午後三時から翌日の午前三時半の閉店まで十二時間、週末及び休日前日は翌朝六時まで働かせられ、閉店後も指定された社宅に電車がないので帰る方法はなく、電車の始発まで休憩室のない店舗で待機しなければならず、心身消耗し尽くしました。常態化した長時間深夜労働、短い休憩時間、閉店後の拘束、おまけに休日出勤、強制的なボランティア活動、早朝研修、社訓の暗記、レポート書き等に疲労こんぱいし、入社二カ月でたった二日間しか休みがなく、二〇〇八年に入社して二カ月余りでみずからを絶ちました。

 こういう、公認は問題があるんじゃないかという要望書を持っていったわけですが、全く安倍総理から返事はございませんでした。

 そして、今回、正式に和解になり、渡邉美樹氏も事実上の法的責任を認めて謝罪をされたわけであります。

 ついては、なぜ安倍総理はこのようなブラック企業の批判を受けている方を公認されたのか。御両親がおっしゃっているのは、若者が使い捨てにされていくということは社会の損失である、こういうブラック企業が栄えるような社会を安倍総理はつくりたかったんですかと。一言、安倍総理、謝罪をされるべきではないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 過労死はあってはならないことであり、政府としては、長時間残業に関する監督指導を徹底する、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返している場合には、これまでの書類送検を行った段階で原則公表する取り扱いを一歩進め、是正を指導した段階で公表するなど、その防止対策を強化しているところであります。

 その上で、現在提出している労働基準法改正案では、全ての働く人の働き過ぎを防止するため、企業に対し、働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務づけ、中小企業における時間外労働への割り増し賃金率の引き上げ等を行うこととしております。

 また、使用者には、そこで働く全ての人の健康確保を図るため、労働時間の把握を徹底させることとします。

 なお、時間ではなく成果で評価する制度の創設に当たっても、健康確保のための厳しい措置を企業に義務づけるなどの仕組みを設けることとしております。

 このように、長時間労働を是正する本法案を早期に成立させることにより、働く人の健康を確保していく方針であります。

 また、ワタミの過労死については、個別の事案についてはコメントは差し控えたい、このように思います。

 また、議員につきましては、職責をしっかりと果たしていっていただきたい、このように思う次第でございます。

 いずれにいたしましても、我々行政の立場あるいは政治の場においては、いかに労働環境を改善していくか、そして、労働環境をよくしていくためにも景気をしっかりとよくしていく、経済を成長させていくことが極めて大切であろう、このように思っておりますし、また、先ほども枝野議員の質問にもございましたが、しっかりと正社員をふやしていくことも大切だろうと思います。

 民主党政権時代には、三年間に五十九万人、正社員が減っているわけでありますが、我々の政権におきましては正社員はふえる方向に転じておりますので、こうした傾向をしっかりと維持しつつ、労働環境の改善にも努力を重ねていきたい、このように思っているところでございます。

山井委員 安倍総理、個別のことにはコメントできないというのは、余りにも冷たくないですか。

 娘さんが亡くなられた事件を起こされた会長、創業者を公認したのは、自民党総裁、あなたじゃないですか。涙ながらに、このような事件を起こした人を公認するのはおかしいと、自民党本部に御両親は行かれまして、門前払いを食らわせたじゃないですか。それからやっと、昨年の十二月八日、七年たって法的責任を認め謝罪をされましたけれども、七年ですよ。

 さらに、今も言ったように、労働問題のデパートと言われているぐらい、七十件も労働基準法違反などで是正勧告、指導を受けているわけですよ。

 個別の問題じゃないんです。そういう創業者を公認するということは、そういう経営理念がいいんですか。

 森美菜さん、責任感が強くて優しくて、だから、三時から夜中三時まで働いて、始発があるまで帰れないんですよ。二カ月間で休みはたった二日、日曜日にも早朝研修、ボランティア活動、レポート提出。それも、ほぼ強制だったにもかかわらず残業代も支払わず、責任感の強い森美菜さんはぼろぼろになって二カ月で亡くなってしまわれたし、森美菜さんの同期の若者もみんな疲れ果てて、多くの方がやめていかれたんです。

 若者というのは社会の宝じゃないですか。そういう人たちを、どうやって未来ある人生を守っていくのかというのが政治の責任だと私は思います。

 きょうは御遺族も来られているんですから、官僚の書いた原稿を読むんじゃなくて、こういう若者のブラック企業、過労死の問題に対してどうするのか。

 繰り返して言います。

 なぜ公認をされたんですか。もう労災認定も確定して、こういうブラック企業という批判も集中していたわけです。なぜ公認したのか。

 そして、今回、法的責任も事実上認めて、渡邉氏も謝罪をされました。その方を公認した自民党総裁、安倍総理も、一言謝罪を御両親にされるべきじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、個別の事案についてはコメントは差し控えたい、こう思うわけであります。

 いずれにいたしましても、過労死はあってはならないことでありまして、政府としては、過労死等防止対策推進法に基づく取り組みを進めております。同時にまた、長時間残業に関する監督指導を徹底する、そして、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返している場合には、これまでの書類送検を行った段階で原則公表する取り扱いを一歩進め、是正を指導した段階で公表するなど対応の強化を図っているところでありまして、今後とも全ての方が安心して働くことのできる労働環境の確保に努めていきたいと思います。

山井委員 いかに安倍総理がブラック企業問題や過労死問題、また若者の人生、労働環境ということに関して全く無関心かということを痛感しました。

 安保法案の反対の運動をされている若い方々とも私もかなり意見交換させていただきましたけれども、多くの若者が不安に思っているのは、本当に安定雇用につけない、正社員につけない、あるいは勤めても今回のように長時間労働、残業代も出ない、それで本当に心身ともに疲れ果ててしまう。こういう問題は深刻なんです。それを改善するのが、本来、総理の仕事なんじゃないですか。

 御両親は、このように法律違反を事実上認めた方が立法府にいるのはおかしいのではないかということをおっしゃっておられます。自民党として、どのようにけじめをつけられるおつもりですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま山井委員は、若い皆さんが働く環境が悪くなっていいのか、そういう趣旨のことをおっしゃったわけでありますが、先ほども申し上げましたように、民主党政権時代の三年間で正社員が五十九万人減ったわけでありますが、まさに正社員が五十九万人減ってしまったんですよ。それを私たちはプラスにまず変えたということは申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 また、不本意ながら非正規の職についている方の比率は前年に比べて低下をしております。(発言する者あり)聞こえないという声がございましたので、もう一回申し上げますと、不本意ながら非正規の職についている方の比率は前年に比べて低下をしております。働き盛りの五十五歳未満では、平成二十五年から十一四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っているわけでありまして、着実に改善をしているわけでございます。

 このようにしっかりと現実を見ていただきたいと思いますし、私たちの努力をちゃんと見ていただきたい、このように思います。

 そして同時に、先ほど申し上げましたように、しっかりと労働環境の改善にそれぞれの企業が努めるように、我々もしっかりと監視、指導をしていきたい、こう思っている次第でございます。

山井委員 本当に無責任です。ブラック企業で若者が一番何とかしてほしいと思っている問題に対して、指導するどころか、そういう企業や方にお墨つきを与えるようなことをする。

 さらに、今回、労働基準法改悪法案、残業代ゼロ法案を提出して成立させようとしていますが、あの法案では事実上残業代が出ないようにして、ますます長時間労働になって過労死がふえる法案です。

 御両親も、この労働基準法の改悪は何としても撤回してほしいと。自分の娘さん、美菜さんのような、本当に長時間労働で、残業代も払われず亡くなる若者をふやすようなこの法案では、裁量労働制の中では年齢要件も年収要件もありませんから、低賃金の若者も裁量労働制では今回の法案の中で対象になっております。

 どうか安倍総理、このようなブラック企業の問題を再発させないためには、労働基準法改正法案、御両親は撤回すべきだとおっしゃっています、ぜひ撤回してください。

塩崎国務大臣 先生今おっしゃっておられますが、わかっておっしゃっておられるんだろうと思いますけれども、先ほど総理から申し上げたように、今回の労働基準法の改正にはさまざまな要素がありまして、労働基準法だけではなくて、あることは、先生御案内のとおりであります。

 むしろ、さっき総理から申し上げたように、休暇をとることを今までと違って企業から言ってみれば指定するということを義務づけたり、先ほどの割り増し賃金も、これまで中小企業には当てはめてこなかったものを今度はそれを当てはめるということで、それは長時間労働を阻止するということでもあるわけであります。

 また、さっき企画業務型の裁量労働制についてもお話がございましたけれども、あるいは高度プロフェッショナル制度の創設についても、いずれもこれは長時間労働とならないように新しい規制のフレームワークというのを考え、例えば裁量労働制では適正なみなし時間の設定の徹底を指針で促すとか、あるいはそもそも労働時間自体の把握を全ての働き方について行うようにするとかさまざまなことを考えてやっているわけでございまして、これは働く方々にとってもやはり大変プラスになるところがたくさん入っているわけであります。

 今先生から御異論があるような点については国会で徹底的にお互い議論して理解を深め、御理解を賜ってこの法律を成立させることが実は長時間労働を阻止することにもつながるということでもあり、また健康を守るということが基本でありますから、我々はそれを皆様方に御理解を求めてまいりたいというふうに思います。

山井委員 本当に懲りない方々ですね。過労死の御遺族の方々が、労働基準法改悪はやめてください、過労死がふえるから、ブラック企業がふえるからと当事者の方々が涙を流しながらおっしゃっているのに、何を逆の答弁をしているんですか、本当に。

 このことについては、どうしても強行採決で、ブラック企業を応援するような、長時間労働をふやすような法案を強行採決で通すというんだったら、こちらは体を張ってでも阻止しますよ。私たちは、やはり若者が安心して、安定して、人間らしく働ける社会をつくっていきたい。

 次のフリップに行きます。

 私、今の答弁を聞いて、本当に、こういう若者が苦しんでいるブラック企業の問題や雇用環境の問題に関して、安倍総理は関心もないし冷たいということを感じました。

 全く一緒なんですね。今回もこのグラフを見ていただきたいんですけれども、安倍総理は、三千六百億円、三万円、一千百万人への年金生活者給付金、先ほどの枝野幹事長への答弁でも、いやいや、高齢者はアベノミクスの恩恵が及んでいないんだ、しかし現役世代はアベノミクスの恩恵が及んでいるんだ、賃金が上がっているんだと言うけれども、その認識は国民の皆さんと違うと私は思いますよ。

 正社員になれない、あるいは一年契約で、いつ首切りされるかわからない、派遣の方は三カ月契約、本当にそういう方々は苦しんでおられるし、子育て中の方々は困っておられる。

 例えば、今回、三千六百億円を、三万円、選挙前の五月、六月にばらまく。それはもらった方は喜ばれると思いますが、かわりに、六百億円の一千六百万人への子育て給付金を削っているんですよ。つまり、子育ての給付金を削って、そのお金を高齢者に回しているんですよ。やはりこれはアンバランス過ぎると思いませんか、安倍総理、子育て給付金を削って。高齢者も苦しい、でも、子育て中の世帯も生活は苦しいんです。安倍総理、これはおかしくないですか。

安倍内閣総理大臣 今おっしゃっているのは三千円の件だと思います。それは一回限りでございます。

 私たちが行ったのは、平成二十七年度補正予算や二十八年度予算において、保育サービスの充実や低所得の一人親家庭、多子世帯に対する支援など、公費ベースで七千億円の子育て支援の拡充を行い、幅広い支援を行っていきます。

 例えば、児童扶養手当については、第二子以降の加算は倍増しております。これはずっと続く、一回、二回限りのものではなくてずっと続いていくわけでありまして、第二子は五千円から一万円、第三子は三千円から六千円ですが、そうしたこともしっかりとやっているということも申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 そしてまた、正規、非正規につきましても、先ほど申し上げましたように、正規は、これは繰り返しになりますが、民主党時代の三年間で五十九万人も減ったものを私たちがプラスにしたんですよ。そして、今やまさに非正規よりも正規がふえているという状況をつくっているわけであります。この方向をしっかりと前に進めていきたい、こう思っている次第でございます。

山井委員 安倍総理は全く答えておられませんね。なぜ子育て給付金を削って、今ある制度を削って六百億を高齢者に回すのか、全く答えておられないですし、子育て支援を七千億充実させたというのは、それは民主党政権で決めたことじゃないですか。

 さらに、このグラフを見てもらったらわかりますように、結局、安倍総理が考えておられるのは、アベノミクスのこととかというよりも、投票率じゃないんですか、残念ながら。子育て世帯の投票率は低い、高齢者の投票率は高い。だから、五月、六月に三千六百億円を投入しようと。

 若い方々がどうおっしゃっているか。自分たちが汗水垂らして働いて納めた税金が、選挙前のばらまき、選挙対策で三千六百億円も投入されるんだったら、もう税金を払うのは嫌だ、そういう声さえ出ているんですよ。

 もちろん、私たちもいろいろな方々に現金給付はしたい。でも、これは国民からいただいたかけがえのない税金だから、やはりそれは不平不満が出ないように、本当に選挙用の、選挙目当てのばらまきとならないようにせねばならないのに、私は、今回の補正予算というのは史上最悪、最も醜いと思います。選挙前の五月、六月に一千百万人に三万円ずつ配る。おまけに、この事務費だけでも二百億円もかかるんです。私はこういうのは大問題だというふうに思います。

 さらに、先ほど枝野幹事長に対して安倍総理はアベノミクスが現役世代には及んでいるということをおっしゃいましたけれども、実際どうですか。先ほど枝野幹事長もおっしゃったように、実質賃金は、民主党政権の三年間と安倍政権の三年間を比べたら、安倍政権はマイナス三・七%で、実質賃金は下がっているじゃないですか、安倍政権の方が。

 さらに、最低賃金のこともおっしゃっていましたけれども、民主党政権の三年間と安倍政権の三年間の最低賃金の増加率は、民主党政権では六・二%だったのに、安倍政権では一・六%じゃないですか。

 実質賃金も下がっている、最低賃金の増加率も低下している。全くアベノミクスの恩恵を現役世代が受けていないと私は思いますよ。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、御質問の中で幾つか御指摘をいただいたと思いますが、三万円の給付についての、これは選挙目当てではないかという御指摘がございました。

 これは、非課税世帯、年収、一年間百五十五万以下の高齢者の年金生活者の方々に対して給付を行うものでございます。しかし、それは、先ほども議論いたしましたが、八十七万円以下の方たちに六万円を出すという仕組み、これは消費税を一〇%にした段階で行おうということでございます。これは六千億円かかるわけであります。

 選挙目当てと言うのであれば、さきの総選挙の際に、まさに選挙中のあの討論会等において、何で出さないんですかと私は司会者から言われました。そこで私は、給付と負担の問題があり、残念ながらこれは行うことができませんが、アベノミクスの果実が出てくればこうした社会保障分野にも支出をしていきたい、こう申し上げたわけでありますが、そこで果実が出てきたわけであります。

 六万円ではありませんが、三万円行う。そして、その八十七万円ではなくて、これは把握をしやすく事務的に行うことができる住民税非課税世帯に限って行うということにしたわけでございまして、そこは全然違うというわけではなくて、そして翌年からはこれはもとに戻るわけでありますが、倍にふえて六万円行くということであって、その後の六万円はよくてその前における三万円が全然だめだという、この論理自体が全くおかしな論理であって、自民党あるいは政権をどうしても攻撃したいという気持ちなんでしょうけれども、論理が通っていませんよ、それは全然。

 繰り返しになりますが、間違いなくこれはミクロ政策においてもマクロ政策においても正しい政策であろう、こう思うわけであります。皆さんは全くその方々に出す必要がないというお考えを明確にされたということなんだろうと思いますが、それはミクロ政策的にもマクロ政策的にも間違っているということははっきりと申し上げておきたい、このように思います。

 そこで次に、実質賃金また非正規についてもおっしゃったわけでありますが、非正規については、先ほどお答えをさせていただいたように、我々の安倍政権になってからは、五十五歳未満では、平成二十五年から十一四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っているということは申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

 そこで、御指摘の実質賃金の減少についてでありますが、景気が回復し雇用が増加する過程において、パートで働く人がふえていくと一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけでありまして、私と妻、妻は働いていなかったけれども、景気はそろそろ本格的によくなっていくから働こうかと思ったら、働き始めたら、我が家の収入は例えば私が五十万円で妻が二十五万円であったとしたら七十五万円にふえるわけでございますが、二人が働くことによって、二で割りますから、平均は、全体は下がっていくということになるわけでございます。

 だから、これはおかしいのであって、五十万円と二十五万円があれば足していく。七十五万円であれば安倍家の収入を正確に把握するわけでありますが、二人で働いているからといって、これを二で割って安倍家の一人平均は幾らだという考え方自体は正確に経済の実態をあらわしていることにはならないということを、まず説明しておかなければいけないと思います。

 ただし、足元では、一人当たりの平均賃金については、名目賃金は、政労使合意を踏まえた取り組みなどにより、平成二十六年春以降増加傾向にあります。実質賃金も昨年七月以降増加傾向にあるということは申し上げておきたいと思います。

 そこで、先ほど申し上げましたように、実質総雇用者所得というのは、今、一人一人ではなくて安倍家ということでありまして、民主党政権下の二〇一〇年から二〇一二年までの平均値と、安倍政権下の二〇一三年から二〇一四年までの平均値を比較するとほぼこれは同水準になるわけでありまして、我々は、デフレ脱却に向かいながら、かつ、消費税率引き上げの影響を加味しても同水準となっているということは強調しておきたい、このように思います。(発言する者あり)

 一度にたくさんの質問をされますから、当然答えも多くなるというのは、当然のことではないでしょうか。

山井委員 ぺらぺらぺらぺらと聞いていないことを話し続けて、同じ話を何回もして時間稼ぎをして。総理大臣として、もうちょっと落ちついてください。

 アベノミクスで、現役世代や子育て世代は生活がよくなっているのか。実際、世論調査では、七割以上の方々は景気回復を実感していないという答えが出ているんです。幾ら安倍総理がぺらぺらと景気はよくなっている、よくなっていると言ったって、実態はみんな苦しんでいるわけですよ。

 そんな中で、さらに今、株価も下落をしております。この四日間で結局、千二百六十六円、昨日まで。四日連続株価が下がったのは二十一年ぶりです。そして今も乱高下しておりますが、もしきょうも株価が下がったら、一九四九年の東京証券取引所開設以来、史上初のことになってしまいます。

 これは深刻な状況です。中国経済の問題、北朝鮮の核実験の問題、中東情勢、さらに原油安等々、本当に先の見えない状況ですが、昨年七月から九月で七・九兆円、年金積立金運用損が出ました。これは過去最大なんですね。今までこんな損が出たことはありません。

 そこで、質問通告もしておりますので、安倍総理にお伺いしたいんですが、この四日間で約七%、株は下がりました。七月から九月のときに一四%下がって、約八兆円、年金の運用損が出ております。ということは、今回、その半分の約七%がこの四日間で下がったわけですから、これは質問通告もしておりますが、約四兆円ぐらいの年金がこの四日間で運用損になっている可能性があるということですか。安倍総理。

安倍内閣総理大臣 短期的な結果でありまして、株式市場はその国の経済の実態をあらわしている場合もありますし、ただいまの下落については、中国市場の先行き、あるいは中東の状況、サウジとイランの状況等もあります、また北朝鮮の核実験という要素等々の反映を受けているものであろう、こう思うわけでありますが、短期的なものを見て、それを日本の経済の実態に当てはめるのは明らかに間違いだろうということはまず踏まえておいていただきたい、こう思う次第でございます。

 短期的な結果ではありますが、二〇一五年度の第二・四半期の運用状況については、収益率はマイナス約五・六%、収益額はマイナス約七・九兆円となりました。その要因は、中国の景気減速懸念などによる短期的な内外株式市況の悪化や円高によるものと聞いております。

 しかしながら、例えば、こんなことは申し上げたくないんですが、民主党政権下であった平成二十一年九月から平成二十四年九月までの累積収益額は……(発言する者あり)これは事実ですからちょっと申し上げておきたいと思います。累積収益額は四・一兆円だったわけでありますが、それ以降の累積収益は今回のマイナスも含めても三十三兆円プラスになっているということでございまして、そこはやはり押さえておくところが大切であろう、こう思います。

 また、自主運用開始以降の平成十三年度から平成二十七年度第二・四半期までの収益額の累積は約四十五・五兆円になっているわけであります。

 なお、お尋ねの二〇一五年度第二・四半期の収益額は、過去のいずれの四半期の収益額の中でもマイナスが大きいことは事実でありますが、年金積立金の運用は長期的な観点から安全かつ効率的な運用を行っていくことが重要であると考えているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、平成十三年度から平成二十七年度の第二・四半期までの収益額の累積は四十五・五兆円、年率二・七九%でありますから、これは相当な効率の運用と言ってもいいのではないか、こう思う次第でございます。

山井委員 安倍総理は、何で質問したことに答えられないんですか。私の質問は、この四日間で七%下落したら約四兆円の運用損の可能性がありますねということを質問通告しているわけですけれども、長々と答弁して。そのことにお答えください、再度。

安倍内閣総理大臣 短期的なことについて一々お話をしても余り意味のないことでありますから、正確に、年金というものはどのように運用していくかということについて御説明をさせていただいたところでございます。

 そして、年金積立金は、国内外の債券と株式の組み合わせで運用しているものであり、日経平均株価等の国内株式の指標がそのまま運用収益に反映されるものではないということはまず申し上げておきたいと思います。したがって、御指摘のような質問にお答えすることは困難でございます。このことを申し上げておきたい、こう思う次第でございます。

 でありますから、先ほど申し上げましたように、年金の運用というのは、ある程度の長期的なものを見ながら、しっかりと、どれぐらい収益が上がっているかということでありまして、安倍政権下においてはこのマイナスをもってしても三十三兆円プラスになっていた、これは事実を申し上げておきたい、こう思った次第でございます。

山井委員 この四日間で約四兆円の運用損があるかもしれないということをちっちゃなこととおっしゃいますが、一日当たり一兆円ずつ損が生まれている可能性があるわけですよね。

 これはなぜかというと、結局、年金積立金の株式運用比率をふやして、アベノミクスと称して、年金積立金を十兆円も株に投資していったら、それは株は上がりますよ。でも、こういうのを、安倍総理、官製相場というんですよ。

 結局、こういう無理をして、公的年金マネー、国民の年金マネーを、政権維持のために、支持率拡大のために、株価を上げるために流用する、そういう無理なことをすると、いずれ暴落してしまうリスクを負うんです。

 本来、国民の年金積立金をこのようなリスクにさらすのは私は問題だと思っております。これについて、今回の政権は驚くべきことをやっている。これも安倍総理に質問通告しておりますが、お答えください。

 昨年の十月から、低格付債、ジャンク債、ハイリスク・ハイリターンの低格付債というリスクの高いものに私たちの大切な年金積立金を投資することになったんですね。私の知り合いの方からもきのう電話があって、株が下がって大変だ、年金大丈夫かと。結局、安倍さんが、支持率拡大、政権維持のために、株価を上げるために年金マネーをどんどんつぎ込んでいっている。でも、これは、株の投資を年金からふやしただけじゃなくて、昨年十月からは低格付債。これはギリシャ国債とかも含まれるんですよね。

 安倍総理、国民が知らない間にギリシャ国債とか、そういうハイリスク・ハイリターンなものに年金を、アルゼンチンとか中国国債とか、そういうものも含まれます、投資するのは問題だと思う。

 これは通告していますので、安倍総理……(安倍内閣総理大臣「そんな細かいこと」と呼ぶ)いや、だから、ここに通告で出してあるじゃないですか。昨年十月からギリシャ国債などの低格付債で運用することが可能になりましたがと。安倍総理、お願いします。

塩崎国務大臣 まず第一に申し上げなきゃいけないのは、低格付債も含めた外国債券を運用対象とする運用受託機関の選定を、実は公募をして決めたわけでございますが、その公募を始めたのは去年の暴落後ではなくて、おととしの四月、平成二十六年四月に公募をもう既に開始して、そして三次にわたる審査を経て、平成二十七年十月、つまり去年の十月にその選定結果を公表させていただいた、こういうことでございます。

 すなわち、今おっしゃりたかったのは、七―九に暴落をしたので慌ててこういうことをやっているのではないかということをおっしゃっているのかもわかりませんが、実はこれは一つの、言ってみれば運用委員会にかけた上で決めたGPIFが考える投資の方針であって、要は分散投資を行うということで、もちろんその中で、どういうときにどういうことをするかということについては、運用委員会できっちりと議論した上で、ルールにのっとって決めているはずでございます。

 いずれにしても、長い目で運用するということを今総理から申し上げましたけれども、実はこれは、例えば平成二十四年の二月二十二日、つまり野田内閣のときの衆議院の予算委員会、ここで明確に、まず小宮山大臣も、責任ということでございますが、積立金の運用というのは長期的な観点から行われるということが重要だと考えております、こうおっしゃっていますし、野田総理も、まさに年金給付に充てるお金でございますから、やはり長期的に安定して効率的に運用するということが基本だと思います、こうおっしゃっていまして、これはまさにさっき安倍総理から申し上げたとおりであって、厚生年金法の法律にのっとって安全かつ効率的に運用していくということを旨としているわけでございます。

 ギリシャ国債の問題につきましては、実は、平成二十七年十一月三十日時点で、GPIFは低格付債の運用としてギリシャ国債での運用はしていない旨を明らかにしたところでございます。

 いずれにしても、この具体的な運用というのは運用に特化した専門の法人であるGPIFに委託をしているわけでありまして、GPIFで外部の専門的な運用機関も活用しながら適切なリスク管理のもとで運用しているというふうに理解をしております。

山井委員 塩崎さんもいいかげんな答弁をされますが、十一月三十日にギリシャ国債を買っていないと答弁したのは、それは問題だったということで、後で問題になって、実は具体的な銘柄を、何を買っているかというのは言ったらだめなことになっているんですよ。ですから、現時点においては、どこを買っているか、ギリシャ国債を買っているかどうかも答弁できないということになっているわけですよ。それをまたこういう場所でおっしゃるというのは非常に、違法行為を黙認される形で、問題だと私は思います。

 安倍総理にお伺いしたいと思います。

 このような、ギリシャ国債を買っているか買っていないかはもう永遠にわからない、そういうことをやること自体、国民の年金生活者に対して私は大変失礼だと思います。国民の年金を私物化するのはやめていただきたいと思います。こういう株式投資をふやしたりギリシャ国債に投資できるようにしたり、本当に問題が多いと思いますが、先ほど枝野幹事長との質問でさらに問題になったと私が思ったのが、安倍総理は軽減税率は痛税感の緩和ということをおっしゃいました。これも通告しておりますが、安倍総理、今回、食料品などを軽減税率、据え置き税率にすれば、一日当たり、平均一人、幾ら軽減されたことになるんですか。

安倍内閣総理大臣 酒類及び外食を除く飲食料品を軽減税率の適用対象とした場合の二人以上世帯の一人当たりの負担軽減額について、一定の仮定のもと、機械的に計算すれば、年収二百万円未満の世帯については一人当たり十円程度であります。一年当たり三千六百円程度となります。年収千五百万円以上の世帯については、一日当たり十四円程度、一年当たり五千百円程度。二人以上世帯平均については、一日当たり十二円程度、一年当たり四千三百円程度になるものと見込まれるわけであります。

 軽減税率を導入した場合、消費税の負担軽減額を見れば高所得者の方が大きいわけでありますが、しかしながら、消費税の逆進性については、消費者の所得水準に応じた実際の負担感に即したものとなるよう、消費税負担の絶対額ではなくて、収入に占める消費税負担の割合によりはかるものであろう、こう思うわけでありまして、今般の酒類、外食を除く飲食料品等を対象とした軽減税率制度を導入することによって、収入に対する消費税負担の割合は、年収一千五百万円以上の世帯については〇・一%減少する一方、年収二百万円未満の世帯については〇・五%減少することとなるわけでございます。

 このように、低所得者の収入に対する消費税負担の割合を高所得者よりも大きく引き下げることができ、まさに消費税の逆進性の緩和につながるものと考えております。

山井委員 安倍総理、一人一日十二円で、そしておまけに、高所得者の方が一日一人十四円、低所得者は十円。この一日十二円で痛税感の緩和につながると思われますか。そのために一兆円、年間かかるんですよ。

 社会保障を一兆円、医療、年金、介護、子育て等の社会保障を一兆円も切らねばならない。財源をとるためにほかの増税をするか、一日十二円のために。そして、現場のお店やレジの方もかなりの大混乱をして。このための予算、予備費で、レジの改修とかで一千億円予算が組まれていますよ、一兆円の減税のために。

 一日当たり十二円、これで痛税感の緩和になると思われますか、十二円で。いかがですか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 これは毎日毎日のものでございます。それと、収入によっての見方については、これは絶対額ではなくて比率で見るのは当然のことであろう、こう思うわけでございます。当然、収入の多い方々については使う額は大きくなってくるわけでありますから、これは当たり前のことでありまして、実際、家計においてはパーセンテージで見るのは当たり前なんだろう、こう思うわけであります。(発言する者あり)ええっと言った方は、いかに経済がわかっていないかということの証明ではないかと思いますよ。

 そこで、今、これは痛税感を和らげることにつながらない、こうおっしゃったわけでありますが、しかし、例えば、千円のものを買おうと思ったときに千八十円になるのか千百円になるのかということについてはやはり考えるんですよ、きっと。ですから、それが全く関係ないということにはならないんだろう、私はこう思う次第でございます。

山井委員 もちろん、税金は安いにこしたことはないんです。誰でもそれは安かったら喜びますよ、一円でも十円でも百円でも。問題は、そのために一兆円、医療、年金、介護、子育てを今後切らねばならなくなるということです。

 安倍総理にお伺いしたいと思います。

 結局、私は、安倍総理は一〇%に増税するのを先送りするのではないかと思うんですね。今までの答弁では、リーマン・ショックやあるいは大震災が起こらないときには確実に実行すると昨日も答弁されておられるようですが。

 そうしたらお聞きしますが、一月から三月の経済状況や四月や六月の経済状況を見て、リーマン・ショック並みの大不況にもならなかった、大震災も起こらなかった、株価も今と同じぐらいの一万七千円台ぐらいだったということであれば、確実に一〇%に引き上げる、来年四月からということですか。

安倍内閣総理大臣 まず、質問者に申し上げたいんですが、一兆円社会保障から我々は削減する、その発言を取り消してください。そんなことを我々は何にも決めていませんよ。そうはなりませんよ、実際に。そういう正確な実態を把握してから民主党の皆さんも質問をしなければ、実りある議論にはなりませんよ。テレビもあるんですから、うそは言わないでください、うそは。これは全然違いますから。一兆円削りませんよ、我々は。削らないということはまずはっきりと、これは修正してください。

山井委員 一兆円の財源が決まっていないから言っているんです。

 一兆円の財源が削られる可能性がある。では、五千億円社会保障が削られる可能性はありますか、ありませんか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 社会保障については、我々は、来年の四月から一〇%にしていくということでありますから、当然、そのときにお約束をしている社会保障制度の充実はちゃんと行っていくということは申し上げたいと思います。

山井委員 いや、安倍総理、お答えになりませんね。

 一兆円財源が必要なことはお認めになりますよね、軽減税率に。一兆円は社会保障を切らない。では、五千億円社会保障をカットして、五千億円増税するんですか。そこまで色をなして反論されるんだったら、この場で、幾ら増税して幾ら社会保障をカットして合計一兆円を出すのか、今すぐ答弁してください。

安倍内閣総理大臣 これは、軽減税率、あるいは給付つき税額控除、そして総合合算制度、この中で、一〇%段階でどう対応していくかということについていわば自公民で議論をしたわけでございます。そこで私たちは軽減税率をとることになったわけでございます。

 ですから、これを三つともやるということではないんですよ。この中のどれかをやっていくということにしたわけでございまして、ですから、一兆円をやるからこっちが切れる、そういう関係にはないということは申し上げておきたい。この三つの中のどれかをやるということにおいて、我々はこれをやっていくということでございます。

 重ねて申し上げますが、一兆円削るということは私たちは言っていないですよ。ですから、今、微妙に変えまして、削るかもしれないと。かもしれないというのであれば、何だってこれは言えますよ。

 先ほどのギリシャの国債。ギリシャの国債を買うことを決めたということは、あなたは何にもわかっていないにもかかわらず、まるで買うかのごとくの流言を流布しているのに私は等しいと思いますよ。年金の安定性を損なうようなことはやめていただきたい、こう思うわけでありまして、日本の年金制度は間違いなく安定的なものだということは申し上げておきたい、こう思う次第でございます。

山井委員 時間が来ましたが、ギリシャ国債を買える制度に変えたというのは事実じゃないですか。

 さらに、一兆円財源が必要で、今言わないから私たちは不安になっているんですよ。一兆円の財源が必要なんでしょう。増税か、社会保障か何かをカットするしかないじゃないですか。

 それを選挙が終わるまで言わない。そういうやり方をするから私たちは不安なのであって、そこまでおっしゃるんだったら、ぜひとも、この補正予算の審議中に、何を削って何を増税して一兆円出すか、安倍総理、ぜひ答弁してください。

 以上で終わります。ありがとうございます。

竹下委員長 この際、柿沢未途君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柿沢未途君。

柿沢委員 柿沢未途でございます。どうぞよろしくお願いします。

 総理、アベノミクスは成功していると総理は胸を張るんですけれども、私自身が町場の皆さんとお会いしてお話をする景気実感というのは、現実には冷え冷えとしていると思うんですね。景気回復というんですけれども、どこの話か。実際、私の地元、下町ですけれども、商店街の寄り合いなどに行きますと、株価は上がったけれども、俺たちには何もいいことはないよ、上向きの感じもないと。そして、消費税は上がる、年金は下がる、財布のひもはむしろかたくなっている、こういうのが町場の商店街の景気実感じゃないかと思うんです。

 実際、世論調査を見ると、八割の人が、景気回復の実感はない、こう答えているわけですよ。私は東京ですから、まだ幾らかいい方なんじゃないかと思うんです。私のような都会の選挙区でも町場を歩けばそういう感覚なんですから、地方の方に行けばもっとそうなんじゃないかと思うんです。

 結局、皆さんが口をそろえて言うのは、やはりアベノミクスで潤っているのは大企業や富裕層だけで、一般の国民、庶民の自分たち、中小零細企業の自分たち、そして商店街で商店を営んでいる自分たちには何もない、上と下との格差がどんどん開いていて、自分たちは置き去りにされている、こういう感覚を皆さんが持っておられると思うんですよ。

 安倍総理、現実に、このアベノミクスによって大企業と富裕層に恩恵が集中をして、結果的にピラミッドの上の方ばかりがよくなって、裾野の方は置き去り、こういう状況になっているんじゃないですか。安倍総理の認識をまずお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私どもは、いわゆるアベノミクス政策を三年間進めてまいりました。大胆な金融政策、そして機動的な財政政策と成長戦略。私たちの政策については、柿沢さんはかつて、みんなの党におられたんだろうと思いますが、みんなの党は、この政策はいいじゃないか、もっとしっかりやれ、こういうふうにおっしゃったんですが、民主と今度一緒になられて、考え方が変わっていったようでございます。

 では、景気がよくなったか悪くなったか、どこで判断をするかということでございますが、まずは、景気がよくなった、これは、各企業が空前の利益を上げている。景気がよくならなければ利益は上がらない、これは当たり前のことなんだろう。今、首を振っておられますが、景気が悪くて、企業は空前の利益は上がりません。空前の利益が上がっている。そして、同時にまた、給与も二年連続二%以上、これは連合の調査で上がっているということであります。これは十何年ぶりの高い上げ幅になっているわけでございます。

 そこで、政治にとって大切なことは、やはり雇用なんですね。雇用をつくっていくということであります。我々が政権についてから、前政権時代よりも二割倒産件数が減りました。一万件を切ったというのは二十四年ぶりのことなんです、実は。しかも、それはずっと続いています。昨年は、その二割削減したところから、さらに一〇%減らしているということでございます。

 そして、地方はもっと悪いというふうにおっしゃった。では、有効求人倍率。これは平均で二十三年ぶりの高い水準になっておりますが、地方を見ても、地方は全部よくなっています。そして、七つの県、例えば青森県とか秋田県、あるいは徳島県、高知県、そして福岡県や熊本県や沖縄県、これは過去最高になっています。過去最高というのはどういうことかというと、あの高度経済成長期、あるいはまたバブル期よりもいいんです。あのときを見てみますと、平均よりもこの七つの県はぐっと落ちている。こんなに格差があったんですが、これは一近傍にぐっと近づいてきています。私の県も大幅によくなって、一・三を超えてきているわけであります。

 それが証拠に、地方税収もふえているんですよ。地方税収も、これは約六兆円ふえています。地方税収も順調によくなっているということであります。

 しかし、マクロだけではなくて一人一人を見ろというのが柿沢委員の御指摘なんだろう、こう思うわけでありますが、しっかりと、まさにこれが一人一人の賃金につながっていくことが大切であります。そこで、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を推進していく。最低賃金を三年連続で大幅に引き上げました。千円を目指していきたい、こう思っています。

 さまざまな取り組みを行ってきた結果、パートで働く方々の時給は、ここ二十二年間で最高の水準となりました。また、不本意ながら非正規の職についている方の比率は低下しているなど、非正規雇用を取り巻く環境は着実に改善をしていますし、正規の方々の有効求人倍率は、統計をとり始めて以来最高になっているということも申し上げておきたい。

 さらに、中小企業の方々がどういう感じを持っているか、これは大切ですね。これはファクトで見ていかなければなりません。

 中小企業について申し上げますと、安倍内閣発足以降、中小企業の業況DIは一七ポイント改善しています。資金繰り、これも大切ですね。DIは一一ポイント改善をしているわけでございまして、これをしっかりと、我々、さらに全国津々浦々に、そして一人一人みんなが活躍できるように、一人一人にこうした景気の温かい風が届くように力を尽くしていきたい、こう考えているところでございます。

柿沢委員 今るる御説明をいただきました。景気回復の実感、それを国民、庶民の多くが感じることができない状況、この二つが結びついていないのが今の現状ではないかと思うんです。そこには何らかの理由があるはずであります。

 先ほど申し上げました、景気回復の実感はない、こういうふうに答えている皆さんが、調査すれば八割に上っている、こういう現実があるわけです。しからば、それはなぜかということを安倍総理にお尋ねしております。

安倍内閣総理大臣 柿沢さん、こういう数値は、今とった絶対数と過去の数値とを本当は合わせていかなければならないんですね。景気を実感しているという人がどれぐらいふえてきたか。しかし、我々が政権をとる前はとっていないんですよ。なぜかというと、誰もそれは景気なんか実感していないだろうと思っているから、そもそもそういう設問すらしていないんですよ。景気回復を実感していますかという設問すら恐らくなかった。

 そこで、同時に、先ほど申し上げました、我々は、デフレから脱却をして、そしていわばデフレではないという状況をつくっていきましたから、物が健康な市場の状況で上がっていっています。そうすると、年金生活者の方々にとっては、これは働いていないわけでありますから、先ほども申し上げましたように、企業で働いていれば利益を上げますが、しかし、そうではないので、これは当然実感しにくい。今、なぜ実感しにくい人たちがいるかという御質問でありますから、そこをちょっと、るる御説明させていただきたいと思いますが、そういう方々にとってはこれは実感しにくいのは当然のことであろう、こう思うわけであります。

 また、仕事をしておられる方々にとっては、例えば支出で考えれば、物の値段が下がっていくという状況ではなくなったわけでありますから、これは実感としては、かえって物が高くなっていったなという感じを持つわけでございます。

 しかし、そういうことになって初めて、いわば、よりよいものをつくっていく、こういう正常な経済に変わっていくわけでございます。つまり、そういう中において今こういう状況になっている。できるだけ多くの方々に実感はしていただきたい。

 先ほどの統計の話でございますが、マスコミは今までそんな統計は、設問をして、世論調査において出ていないのは事実であります。第一次安倍政権のときは、景気はあのときはよかったんですが、しかし、給与は残念ながら上がらなかったわけであります。あのときの経験で、今回は政労使の会合を持ってお願いをしたわけでございます。

竹下委員長 ちょっと議論の途中でございますが、先ほどの山井君の一兆円を社会保障費から削るとの発言につきましては、与党理事より指摘がございました。後刻、理事会で協議をいたしたいと思います。

 議論を続けます。柿沢君。

柿沢委員 景気回復の実感はないというのが八割に上っている今の現実の数字について、昔は調べていなかったんじゃないか、こういう話がありましたが、後ほど触れる予定だったんですけれども、厚労省の調査で国民、庶民の生活実感を調べている統計がありまして、今、苦しいと答えている数字が六二・四%で、これは過去最高なんですね。生活が苦しい、景気回復の実感がないと感じている方は多いというのが現実なんじゃないかと私は思います。ここは、うそだとかいうふうに言われてしまうと、今、何かいろいろな方々の答弁や質問がどうなのか、こういう話が出ておりますけれども、こういうやりとりに総理との間でなってしまうのかなというふうに思います。

 それで、私、アベノミクスで金融の量的緩和をやって、いわゆる異次元緩和を実行した上で、一時的にせよどうであるにせよ、物価上昇が見られて、円安が進んだ、そのことは事実として、効果としてあったと思うんです。アベノミクスが成功するシナリオというのは、円安によって輸出がふえていったり、あるいはデフレの脱却によって実質賃金ベースでも賃金が上昇していったり、国民、庶民にとってもそれがめぐりめぐって景気の実感のある回復につながっていく、こういう経路だったと思うんですよ。このアベノミクスのシナリオに、私はいささか誤算が生じているのではないかと思います。

 大まかに言って二つ私はあると思っています。一つは、今言った、円安なのに輸出の数量がふえていかないということです。

 円安ということは、日本が、何か製造業がつくって輸出した製品のドル建ての価格が安くなる、逆に言えば、同じ価格で売れば円建ての収入がふえる、こういうことになるわけですよね。安くなるということであるとすれば輸出の数量はふえていくはずだったんですけれども、円安なのに輸出の数量は、ごらんのとおり、こういう状況になっているわけです。横ばいをずっと続けている、こういうことになっているわけですね。

 経済学者の野口悠紀雄先生が、先日、分析を披露されておられました。結局、この円安によって潤っているのは、主としてやはり大企業なんですよ、輸出が多い。トヨタが一万ドルの車を売れば、円建て八十円だったものが一台売って百二十万円入ってくるわけですから、これは、輸出数量がふえなくても、収益は一台当たりそれだけ上がるわけです。

 一方で、中小零細企業はどうかというと、どちらかというと、業態としては、原材料を海外から輸入して、それを製品にして国内市場に売る、こういう形の業態をやっているのが中小零細企業では多い。つまりは、それだけ輸入物価が高くなって、売上原価がふえて収支を圧迫している。

 野口先生のデータに基づいて申し上げれば、これによって収支が圧迫をされた中小企業は何をやって収支を合わせているかというと、人件費を切り詰めているんですよ。

 結局、中小零細企業は、賃上げしようとしたって、今、まさにアベノミクスの結果もたらされた円安で売上原価が上がって、人件費を下げざるを得なくなっているんですよ。ですから、こういう形で総理が幾ら賃上げしようとしたって上がらない、上げられない、これが現実なんじゃないかと思います。

 法人税を引き下げる、こういう話になっているわけですけれども、法人税を下げても、その恩恵を受けるのはやはり大企業です。中小零細企業はそもそも法人税を負担されていないところが多いわけです。だから、幾ら法人税の税率を引き下げたって、中小零細企業のまさに人件費をむしろ切らざるを得ない。つまり、正規から非正規に回していくとか、そういうやり方で切り詰めている状況は変えられないというふうに思います。これは、私は、自民党の先生方も今聞いていただいていますけれども、やはり皆さんの選挙区の地域を回って耳にするような実感に近い感覚なんじゃないかと思うんです。

 安倍総理、安倍総理はこれについてどういう御感想をお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど委員が挙げられた、厚生労働省が実施した平成二十六年国民生活基礎調査、これは確かに、苦しいと感じる世帯の割合が六二・四%となりましたが、しかし、これはまさに消費税を……(柿沢委員「やはりあるじゃないですか。うそと言ったんですよ」と呼ぶ)私が、景気を実感しているかという調査、景気回復を実感しているかという調査じゃありません。苦しいかどうかという調査であります。これについては……(発言する者あり)済みません、ちょっと、筆頭理事、静かに聞いてくださいよ。

 そこで、お答えをしますと、これはまさに消費税を三%引き上げたとき、あるいはまた年金についてデフレスライドで下げたときの直後の六月、七月に行った調査でありますので、そういう影響があったのかなと思います。

 同時に、最新の調査である内閣府の国民生活に関する世論調査というのがあります。これによりますと、現状に満足しているのか、あるいは不満と答えた回答でいいますと、これは景気回復を実感しているかということとは別です、満足か不満ということで質問をしているわけでありますが、民主党政権時代は六五・六%が満足でありましたが、安倍政権になって七〇・五%に上がって、五ポイント上がっております。不満と回答した割合は三三・四%、これは民主党政権時代。安倍政権になって二八・五%と改善をしているわけでありまして、明らかにそのときと比べれば改善をしているわけでありまして、改善している数字も私は持っているんですから。

 しかし、先ほど申し上げましたように、景気が回復しているかどうかということについては、これはそういう数字はないということを申し上げたところでございます。

 そこで、先ほどの御質問でございますが、二〇一二年秋以降、為替が円安方向に働く中で、輸出数量はおおむね横ばいで推移している一方、輸出金額は二年連続で増加をしているわけでございます。増加をしておりますから、輸出企業は空前の利益を上げ、同時に、これは大きな税金を払っていただいているのも事実でございます。

 輸出数量が横ばいで推移する背景としては、二〇〇九年以降二〇一二年秋にかけて、為替が円高方向に推移する中で、製造業が国内の生産基盤を海外に移転したことや企業の価格設定行動が変化したことが挙げられるわけでありまして、シェアよりも利益を重視したということでございます。さらに、足元では、中国を初めとする新興国の経済減速による影響を受けているもの、こう考えているわけであります。

 しかしながら、二〇一二年秋以降に為替が円安方向に推移してきたことを初めとする事業環境の改善を受けて、最近では国内設備投資をふやす動きや国内回帰の動きも見られるわけであります。

 国内直接投資については、安倍政権になって十倍にふえているということも申し上げておきたい。例えば、セイコーエプソンがインクジェットプリンター用の部品の生産能力の増強のために秋田県に新工場の建設を開始するなど、国内への設備投資の動きが見られる。また、日産が、これまでは全てを現地生産で対応してきた北米の需要の一部を国内生産に振り分けて、二〇一六年春から生産、輸出を開始するなど、生産を海外から国内に回帰させる事例が出ております。

 同時に、今、先ほどおっしゃった問題については、我々は、政労使の会議あるいは官民対話において、下請取引の条件の改善を働きかけを行っているわけであります。我々の働きかけに対して、経済界側も対応していくということを約束しているわけであります。

 そもそも、しかし、円高時代には、先ほど申し上げましたように、根っこから会社が倒産してしまうという現実があったということは忘れてはならない、こう思う次第でございます。(発言する者あり)

竹下委員長 今、野党理事の方から、注意してくださいという発言がございました。

 私、聞いておりまして、安倍総理は一生懸命答弁している、内容についても答弁をしておられるという判断をいたしました。

 それでは、質問を続けてください。

柿沢委員 限られた時間でもありますので、ぜひ簡潔に、御答弁は要点を得ていただきたいと思います。

 結果、今どうなっているかということなんですけれども、それは、基本的には物価が上昇基調にあったという状況の中ですから、名目の賃金ベースでは上がっているわけです。先ほど申し上げたトヨタのような輸出を中心とした大企業、こういう業態では、賃上げがあり、またボーナスもふえている、こういう状況だと思うんですね。一方、これは愛知県の中小企業を対象としたアンケートですけれども、冬のボーナスの平均三十二万六千五百円、これは経団連の加盟企業と比較をすると三分の一ぐらい。しかも、調査対象の企業の中の三分の一は、冬のボーナスは支給しない、こういうふうに答えているんですね。つまり、やはり大企業と中小企業の格差が広がっている状況にあるんじゃないですか。

 こういうふうな現状にあるというのは、私たちが今、町を歩いて地域の皆さんと話し合って感じる実感に非常に近いと思いますけれども、大企業と中小企業の景況感の格差、こういうものが広がっているという認識はおありにならないんでしょうか。

甘利国務大臣 内部留保の変化等を見ますと、大企業だけではなく、中小企業もかなり積み上がってきています。それから、賃金の改善も、中小企業もよくやっていただいています。

 ただ、御指摘のように、好循環が回っていくためには下請代金の改善をしなければなりません。ですから、放っておいて、大企業がもうけが上がってくる、下請代金を改善するということもあるでしょうけれども、我々は政労使の対話や官民対話で、あえて、政府がそこまで介入するかとは言われましたけれども、しかし、賃上げをしてほしい、下請代金を改善してほしい、そういう話し合いをしております。

 官民対話では、お互い、できることはあと何をやるか、要望があれば規制緩和をちゃんとやります、その場で総理が決断を下すこともあります、そして、法人税を初めとして企業が日本に立地しやすい環境はつくります、だから大企業側も我々の要請を真摯に受けとめてほしいということを言っているわけであります。

 設備投資については、経団連は二〇一八年までに八十兆を超えるということをコミットしました。これは異例なことです。極めて異例です。将来の設備投資をこういう方向でやりますというのを言うことは、過去にありません。

 それは、対話を通じて、余計なこと、おせっかいをやくのかと言われても政府がそこまで介入して、下請代金の改善とかあるいは設備投資の改善に踏み込んでいるからだと御理解いただきたいと思います。

柿沢委員 今の最後の話も、やはり基本的には大企業の話になっていると思うんです。

 結局、先ほど申し上げたとおり、パネルの二番の方ですけれども、トリクルダウンがなかなか起きない。つまり、大企業業績は上がっても、それが本当に経済の裾野の部分までなかなかおりていかないというのが今の現実の問題。これからよくなるんだ、まさにこれからだという説明もつくでしょうし、これからまさにこうした形でむしろ壁に突き当たっていくということなのかもしれませんし、こういう状況をどう見るかということなんだというふうに思います。

 個人についても同じだと思うんです。株価の上昇などによる資産効果で、一億円以上の資産を持つ富裕層は、クレディ・スイスによると、これから二〇二〇年までに日本で一・七倍になるというんですね。つまり、リッチな人はどんどんますますリッチになっているわけですよ。

 国民、庶民の生活実感なんですけれども、先ほど安倍総理からも御紹介をいただきましたとおり、私からも申し上げたとおり、国民の生活実感というのは、苦しいと答えている人が今六二・四%で、過去最高になっているではないですか。

 そして、現実に、平均的な世帯収入、これを見てみますと、実はこの十年間、ずっと平均的な世帯収入は下がり続けていて、直近の二〇一四年でいうと五百二十八万円ぐらいですけれども、十年間で世帯収入は実に五十一万円も下がっているわけですよ。こういう形で、まさに一般的な国民、庶民の生活の状況は、むしろやはり苦しくなっているんじゃないかと思うんですね。

 こういう形で、富裕層は一・七倍、一億円以上の資産を持つ方が一・七倍にふえる。一方で、世帯年収は下がり続けてきた。そして、国民、庶民の生活実感は苦しいというのが過去最高になっている。これは、やはり恩恵が一部に集中して、トリクルダウンが起きてない、こういうことなんじゃないですか、安倍総理。安倍総理、お願いします。

甘利国務大臣 トリクルダウンというよりも、好循環を回していこうとやっているわけです。

 それから、さっき中小企業の赤字はどうするんだというお話がありました。設備投資補助金とか、初めて固定資産税の減税に踏み込み出した。これは史上初めてです。赤字でもきくということをやっているわけであります。

 それから、先ほど来議論がすれ違っていると私がずっと感じていたのは、民主党時代はデフレ下でした。その中で名目賃金は下がりました。だけれども、物価はもっと下がったから実質は上がったということになるんだという議論です。

 でも、これを認めると、デフレ容認で縮小均衡を認めていくことになるんです。我々はそれを打破して、物価も上げるけれども……(発言する者あり)それは、デフレ下の議論とデフレを脱する議論を一緒にしているからいけないんですよ。こんなのは経済学者が聞けば一発でおかしいと思いますよ、本当に。

 物価を上げて、それよりも賃金を上げてくる。物価の方が先に行っているのは事実です。でも、賃金が追いかけていって、全体としては昨年の七月からは実質がふえてきました。これは事実なんです。まず、名目賃金の総体は一昨年の十月からずっとプラスになっています。そして、物価上昇を差っ引いても、全体としての実質は去年の七月からふえているんです。これは事実です。

 だから、手順を追って、まず名目がふえる、そして物価を超えて実質がふえていく、こういう手順を今追っているということを理解してください。

柿沢委員 それは、皆さんはそう御説明されると思うんですよ。しかし、お認めになられたように、物価上昇に賃金上昇がついていっていないというのが今の現実ではあるわけです。

 そして、ここまで、実質賃金が低下しているじゃないかという指摘を受け続けてきました。ここのところ上がってきているだろうと。これは、むしろ原油価格の下落によって物価上昇のスピードそのものが下がっているからこそ実質賃金が上がる状況になったと思うんです。

 いずれにしても、きょう、毎月勤労統計の賃金指数が出ましたけれども、事業所五人以上の毎月勤労統計の賃金指数で見ると、賃金指数はジグザグジグザグとなっていて、そして、きょう発表の数字でも下がっているんです。そして、その主要な要因は、賞与、つまりボーナスが下がった、こういうことのようなんですね、少なくなったというか。

 こういうことであって、本当に今おっしゃったようなシナリオが現実になってくるかどうか、非常に不透明な状況ではないかと私は思いますし、それが今の国民の生活実感に結びついているのではないかということを申し上げたいんです。

 次のパネルですけれども、何度も出ていますけれども、今や、働く人の四割が非正規雇用なわけですね。さっきからいろいろな解釈が行き交っていますけれども、現実の問題として、三十代、四十代、一番子育てをしている真っ最中の世代で、非正規雇用がまさに年収半分の状態になっているわけですよ。だからこそ、若い皆さんの中で、働いているけれども、働いても収入は低くて結婚もできない、ましてや子供も持てない、こういう現実が生まれているんだというふうに思うんです。

 それで、子供の貧困率も一六・三%、これは先進国の中でも最低レベルだということであります。子供の実に六人に一人が貧困家庭で育っているわけです。一人親世帯は、子供の貧困率五四・六%ですよ。にもかかわらず、教育への公的支出は先進国で最低レベルであり続けているわけです。年収四百万円の世帯の子供は、四年生大学に三割しか行けていません。一千万円以上の世帯は、倍の割合であります。

 一方、教育資金の生前贈与を一千五百万まで非課税とする、こういう措置の利用は一兆円を超えて、これは一千五百万の資産を持っている人が孫に教育資金を与えたら非課税になるという話ですから、いわば、持っている者が教育に関して恩恵を受けている形ですよ。

 親の収入格差が子供の教育格差になって、そして、格差の固定化や、いわば貧困の連鎖のような悪循環が起きている、これは目の前の現象だと思います。これは安倍総理のせいかどうかわかりません。しかし、アベノミクスが行われてきたこの三年間で全て進行して、拡大している現象なんですよ。安倍総理、どう思いますか。

安倍内閣総理大臣 委員は我々が行っている政策を全否定されているんだろうと思うわけでありますが、そうやって三年前に戻したら、また経済はがたがたになってしまうのではないかと思いますよ。まずはデフレから脱却はしなければならないわけでありまして、デフレ下にあって物の値段が下がったといっても、それ以上に、これは給与が下がっていくどころか、基本的に仕事を失っていくわけであります。

 また、行き過ぎた円高は競争力を失い、日本から製造業が海外へ移転していく。結果、さらにこれは正規の職員も減っていくということになっていくわけであります。我々はそこを食いとめたのは間違いないわけでありまして、行き過ぎた円高をとめました。

 そして同時に、雇用の状況を変えたのは事実でありますから、正規自体が五十九万人、かつては、我々が政権をとる前の三年間は減っていたのでありますが、これはプラスに変えました。そして、正規から非正規へ行く方と非正規から正規に行く方、これは非正規から正規に移る方の方がふえた、先ほどから申し上げているとおりでありますし、正規の有効求人倍率も統計をとってから過去最高になってきているわけであります。

 こういう現実も見ていただかなければならないわけでありまして、私たちが進めているこのマクロ政策は間違っていない、こう思う次第であります。

 同時に、一人一人に着目をしていく。家庭の経済的な事情によって子供の将来が決まってはならないのは当然のことであろう、このように考えるところでございまして、今回もその観点から一人親家庭あるいは多子世帯の支援を進めるわけでありまして、児童扶養手当については、第二子、第三子については追加を、加算を……(発言する者あり)微々たるものという声がございましたが、倍増することに、五千円を一万円に、三千円を六千円にすることであります。

 そしてまた、教育費におきましても、大学生、専修学校生向けの無利子奨学金の貸与枠を拡大していくことを決めたわけでございます。そしてまた、保育の支援を行うために、保育士を目指す学生に返還を免除する奨学金制度を拡充している等々の支援をしっかりと行っているところでございまして、家の経済状況において進学を諦めなければいけないという状況はぜひなくしていかなければならない、こう考えているところでございます。

柿沢委員 今御説明をいただいた後半の部分は、いわゆる一億総活躍と言われる、その政策の中身について御説明をいただいたと思うんです。最近、安倍総理も、確かに、アベノミクスの果実を分配に回していく、この分配という部分について言及をされることが多くなっていると思います。

 私は、言及をされるということは、今私がるる指摘をさせていただいてきた現実、つまり、いわば上と下との置かれている状況が異なりつつあって、アベノミクスの恩恵というのがやはり大企業、富裕層に偏ってしまっている、そこが、置き去りにされている国民、庶民、先ほど言ったような非正規の皆さん、一人親世帯の皆さん、子育てをしている皆さん、そうした皆さんにやはり行き届くようにやらなきゃいけないな、こういう意識になってきている証左だと思うんですね。

 そうした意味で、やはり今、アベノミクスの三年間で、国民の皆さんにお伺いをしてみて、私自身も地域を回ってみて、景気回復の実感は私にはほとんど感じられない、こういうふうにおっしゃる方が大変多くいらっしゃる。大都会のど真ん中と言うと、私は下町ですからそれほどど真ん中じゃないかもしれませんが、しかし、まさにそうしたところで生活をしている皆さんも感じている実感がこれですから、全国レベルで見ると一体どういう印象なのかな。

 今この国会中継をテレビでごらんになられている皆さん、この議論を聞いていて、安倍総理の言うとおり、ああ、本当によくなったというふうに感じておられるだろうかというふうに思うんです。

 マクロの数字で申し上げます。実は、GDPの統計は、直近四半期でいうと、六四半期とると、六四半期中三四半期がマイナス成長だと思うんです。そういう意味でも、目の前の、ここまでの経済のマクロの状況を見ても、本当によくなっているのか。よく、ドルベースで見るとGDPが下がっている、こういう話もありますけれども、それを脇に置いて申し上げたとしても、こういう形で直近のマクロ統計は上がったり下がったりという一進一退を繰り返しているわけですよね。

 安倍総理、本当に、アベノミクスがこのまま右肩上がりに、国民に景気回復の実感が持てるところまで進んでいくと思われますか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、それは簡単なことではないんですよ。二十年近く続いたデフレ、こんなものを経験した国はないんですよ。ということは、ここから脱却をした国もないんですよ。日本が初めてのその国になろうとしているわけであって、だからこそ今までの常識的な金融政策等ではだめであって、これはうまくいかなかったんですから。

 ですから、我々は、今までの金融政策とは次元の違う金融政策と財政政策と成長戦略でもって、しかし、デフレではないという状況をつくることには成功しているわけであります。これはデフレーターを見れば明らかなとおり。そして、名目GDPについては、二十八兆円ふえたのは事実であります。

 そして、税収についても、国、地方を合わせて二十一兆円ふえたんですよ。二十一兆円ふえたから、今、柿沢委員が御指摘になったように、しっかりと分配を、一億総活躍のための、希望出生率一・八を実現していく、あるいは介護離職ゼロにしていくための投資を行うことができる。また、さらなる成長のために投資も行い、そしてその成長によってさらに果実が生まれる。その果実をまたそうしたものに回していくことによって、安定した基盤の上に成長とそして分配の好循環が回っていくという新しい経済社会をつくっていくことができる。こう考えておりますが、それはそう簡単なことではなくて、それぞれが努力をする必要があると思います。

 だから、これは普通ではないわけでありますから、先ほど甘利大臣から御説明をされたように、政労使の会議によって、政府が、企業が普通決める賃金とかあるいは設備投資においてもお願いをする、しかし私たちもその努力をしますよということで、これは歯車が回り始めているのは事実であります。

 しかし、それはそう簡単に、経営者たちのデフレマインドも完全に払拭することはできませんから、まだまだ残念ながら慎重ではありますが、動き始めたのは事実であろう、こう思うわけでありまして、今、柿沢さんのような見方があるからやめてしまえというわけにはいかないわけでありまして、しっかりと私たちはこれを成功させるために力を尽くしていきたい、こう考えているわけであります。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

柿沢委員 今まさに、税収が上がった、そのことがもたらす果実を分配にという話なんですけれども、この税収の増加の大きな要素を占めているのも、これはやはり法人税の税収の部分もあると思うんですよね。そういう意味では、やはり大企業の収益が上がっているということがもたらした効果として、今現状の、まさに分配へ資金を回していこう、こういうことにもなっているわけです。その意味で、まさに、この社会の状況というのを見たときに、例えば今、一億総活躍の看板として掲げられている希望出生率一・八に向けた子育て支援であるとか、あるいは介護離職ゼロに向けた政策であるとか、こういうことが本当に的確に行われていくのかどうか、これが問われるのだというふうに思います。

 三万円の問題に移ります。

 現金三万円を市町村民税非課税の高齢者の皆さんにお配りするという、ばらまきと言うとまたいろいろ反論を受けるのかもしれませんが、私、ちょっと本当に気になっていることがあるんです。

 実は、高齢者の皆さんというのは、まさにインカムプアでストックリッチというか、つまり、高齢者ですから、もう働いていない方も多いので、所得は入ってこない可能性が高い。一方で、まさに今まで働いてきた分、金融資産、預貯金を初めとした資産が多い。こういうのが高齢者の皆さんの特徴だと思うんですね。

 現に、このパネルのグラフを見ていただければわかるんですけれども、四十代未満、負債の方が多いです。そして、六十歳からその上を見ていただくと、ローンを払い終えて負債は少ない、そして、現預金、資産は二千五百万円近い。こういう形で、まさにストックリッチ、インカムプア、これが高齢者の世帯の家計の特徴だと思うんです。

 そういう皆さんが、例えば、資産の構成が、現預金が二千五百万円ありました、しかし、もう無職であって収入はありません、こういう方にはこの三万円というのは支払われることになると思うんですけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、しかし、そもそも、例えば今統一会派を組んでおられる民主党と我々が合意したもの、これは八十七万円以下ではありますが、そこに六万円、これはお配りをするということは決めているわけでございます。

 その方々も、柿沢先生がおっしゃったようにこれは同じことでございまして、そこはどれぐらい資産があるかということについてはなかなか把握は難しいわけでありまして、これがしっかりと把握できるようになれば、これはフローだけではなくてストックでも判断するということが可能になっていくのだろう、このように思っております。

柿沢委員 だから、私はこういう形の政策をやるのはどうかなというふうに思うわけですよ。しかも、単発でしょう。単発に高齢者に三万円お配りをして、生活の不安が解消する、こういうことにはならないと思うんですよね。

 今、個人金融資産の一千七百兆、その六割は六十歳以上の高齢者が持っておられると言われています。年齢が高くなって、今このグラフのとおりですけれども、たくさんの金融資産をお持ちになられて、しかしそれを使わない。なぜかといえば、やはり不安があるからだと思うんですよ。老後の不安、医療や介護に一体どれだけかかるかわからない。こういうことで今持っているものも使わない、こういうことになっているんだと思うんです。

 そういう意味でいうと、この老後の不安、まさに医療や介護にどれだけ自分が負担することになるのかわからないから持ったままとっておく、こういうことを解消していくために、医療、介護、そして障害福祉、子育て、こういう社会保障サービスの自己負担額に上限をかぶせて、これ以上はもう負担することはありません、こういうふうな制度を導入することが大事で、これはまさに総合合算制度の目的なわけですよ。この方がやはり、今申し上げたような高齢者も含めたさまざまな不安を解消する上で大変重要なのではないか、このように思うんです。

 この三万円の財源と総合合算の財源、四千億程度という意味では同じような額であります。もちろん、単年度かそうでないかという違いはありますけれども。これをやるぐらいだったら総合合算をやった方が、私は、こうした高齢者の皆さんの安心につながり、消費の拡大によっぽどつながるんじゃないかと思いますが、どうですか。

安倍内閣総理大臣 話を整理する必要があるのだろうと思いますが、我々が来年度四月に行う三万円の給付については、先ほど申し上げましたように、いわば我々のアベノミクスの果実を受け取れなかった、受け取りにくい高齢者の年金受給者の方々にこれをお配りするわけでございます。

 しかし、これは、先ほども御説明をさせていただきましたように、一〇%にしたときに倍の六万円、そして対象は八十七万円以下の方々になるわけでありますが、柿沢さんの論理でいえば、これは同じことになるのだろうと思います。柿沢さんの論理でいけば、これ自体をやめた方がいいのだろうということになるのではないか、こう思いますよ。

 我々が行うのは、住民税非課税の方々であればすぐに事務的に行うことができますので、そうなりますと百五十五万円ということになるわけであります。

 しかし、これは、ワンショットでありますが、次の年につながっていくわけでありまして、八十七万円以下の方々はそのままいくというわけであります。八十七万円から百五十五万円の方々につきましてはワンショットになる。この方々についてはワンショットになりますが、この方々は絶対にいけなくて、それ以外はいいというのも、これは論理としてはどうなのかと私は思うわけでございます。

 それと、総合合算制度につきましては、これは、一〇パーセントにするときに、給付つき税額控除あるいは軽減税率、そしてこの総合合算制度、こういう中で我々は何かを選んでいくということになっていたわけでございまして、今回、我々は軽減税率というものを選択したわけでございます。

 これをなぜ選んだかは、先ほど説明が長くなるからやめろと言われましたので、これは省かせていただきたいと思います。

柿沢委員 時間の関係で軽減税率の問題一個だけお伺いをしますが、軽減税率がいかにデメリットの多い制度かということは、いろいろな方がもう既にいろいろ御指摘をされておられます。

 実は、税財政の専門家やあるいは経済の専門家、そうした皆さんは、まあ百人いれば九割、この軽減税率はやはり望ましくない、むしろ給付つき税額控除のような制度をやった方がいい、こういう意見だと思います。

 安倍総理の経済財政政策のブレーンと言われます本田悦朗内閣官房参与、十二月十日ですか、メディアに対して、軽減税率をどうするかというのは理屈じゃない、理屈ならしない方がいい、こういうふうにお答えになられています。財政制度審議会の委員も務めておられる土居丈朗先生、税制を政権維持のおもちゃにしてはならない、こういうふうにおっしゃっておられますよ。

 経済財政諮問会議の民間議員を今務めておられる日本総研の高橋進理事長と先日ある会でお話をする機会がありましたけれども、軽減税率なんかやるよりも、やはり給付つき税額控除で低所得者に絞った的確な支援を効率的に行う方がいいんじゃないですか、こういうお話をさせていただいたら、私も個人的には同感ですとおっしゃっていましたよ。

 こういう、まさにアカデミシャンの皆さん、学者や経済の専門家の皆さん、そうした皆さんがまさに今危機感を感じて軽減税率の導入に反対をする声明をこうやって連名で出されていますよ。もう細かくて見切れないぐらい、こうやってたくさんの皆さんが名前を連ねて、これは本当にいいのかということを言っている。その取りまとめ役をやっている方は誰かといえば、この発起人の中に入っていますけれども、亀井善太郎さんという自民党の衆議院議員だった人じゃありませんか。

 この軽減税率を、これだけのまさに有識者の皆さんが本当にいいのかと言っている状況の中で、本当に導入するんですか、安倍総理。

麻生国務大臣 柿沢先生おっしゃるように、軽減税率制度に批判的なエコノミストとかそれから大学の先生とか有識者とかいう方がいらっしゃることはよく承知していますよ、私どもも。

 しかし、他方、今般の軽減税率の導入に当たっては、社会生活に不可欠な食料品等に軽減税率を導入するのは国際標準の観点から大事だ、また、対象品目を幅広くすることは低所得者対策という本来の目的にもかなっている、そして、消費増税を着実に実現し、その中で、逆進性を緩和し、さらに景気の腰折れを防ぐという三方面に目配りをした結果であるといって高く評価しておられるエコノミスト、大学の先生もまたおられるということも事実だ。

 これは両方いろいろ意見があって、あの第七条の中にありましたでしょう、ずっといろいろ書いてある中に、この軽減税率も、今何党なのか知らないけれども、民主党は、少なくとも民主党と自民党と公明党で、その中にざあっと書いてあった中に、逆進性もあれば、総合合算課税、いろいろあったでしょう、あの中に。その中の一つを選んだだけなのであって、ぜひ、こういった中では、今後とも丁寧に説明をしてまいりたいと思っております。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

柿沢委員 かつて、この軽減税率の問題について、財務大臣として、まあこれは面倒くさいというお話をされていた麻生財務大臣ですから、今、政府の閣僚として御答弁をされる胸中はいかにというふうに思うところもございます。

 実は、この閣内で、やはり軽減税率より給付つき税額控除の方がいいんじゃないかというふうにおっしゃっていた方がほかにもいらっしゃるんですね。

 河野大臣、御自分の二〇一五年の九月のブログで、軽減税率よりも給付つき税額控除をと書いています。高い物を買う方が軽減される税額が大きくなる、どこで線を引くのか、さまざまな関係者からの陳情合戦や圧力合戦になることは目に見えている、これならば給付つき税額控除の方がよい政策ではないでしょうか、低所得者だけを対象とするので、高所得者にもばらまかれることはありません。

 もっともな考えだと思います。だけれども、大臣になったら、何かブログを消されちゃったんですかね。もしこのままのお考えであるとすれば閣内不一致になりますので、考えはいかに。お伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 いろいろな御議論があると思いますし、税額控除にしても軽減税率にしても、それぞれ一長一短があるわけで、そうした議論を政府・与党で経た上でこういう結論になったわけでございます。

柿沢委員 僕は、河野大臣は本当に尊敬する、また目指している政治家のつもりなんですけれども、ちょっといささか、やはりなかなか、今のお立場だとあれかなというふうに思いました。

 給付つき税額控除のことについて言及をさせていただきました。今、制度の中身を余りるる説明している時間はないですけれども、課税最低限のところを下回る所得の方には追加的な給付を行う、こういう制度です。

 これはなかなかわかりにくいんですね。だから、日本版ベーシックインカムとか呼んでいるんですけれども、わかりやすい概念図がないかなと思ったら、出てきました。これは、平成二十一年二月二日の公明新聞なんです。公明新聞に給付つき税額控除のわかりやすい概念図が描いてあって、実は、同じ時期の公明新聞には、給付つき税額控除は世界の潮流だ、今、世界じゅうがこの制度を導入している、こういうふうに書いてあるんです。

 恐らく、その後何かいろいろな御議論があって軽減税率にシフトされてこられたんだと思うんですけれども、その間に、石井国土交通大臣は公明党の政調会長に就任されておられたと思います。給付つき税額控除は世界の潮流だとおっしゃっていた公明党がなぜ軽減税率という話になっていったのか、ぜひ、もしよかったら、お伺いできればと思います。

石井国務大臣 給付つき税額控除というのは政策手段の一種ですね。それをどういう目的で使っているか。

 他国では、例えば、勤労を促すために、あるいは子育て世帯への支援、そういった手法で使っているということが多いというふうに理解をしております。

 消費税の低所得者対策としては、給付つき税額控除、軽減税率、総合合算制度、この三者の中から最も適切な軽減税率を選んだというふうに理解をしております。

柿沢委員 今、公明党としてここまで、世界の潮流だといって新聞で紹介をされていたような制度をとらずに軽減税率にしていったのは何でなんですかということをお伺いしたかったのでありますけれども、その点、もう一度御答弁いただけませんでしょうか。

石井国務大臣 先ほど答弁したと思ったのですが、世界の潮流としては、さまざまな目的で給付つき税額控除という手段を利用している。それで、消費税の低所得者対策として給付つき税額控除を活用しているところは少ないんじゃないかというふうに私は理解をしております。

柿沢委員 今の御答弁も、ちょっと私、首をひねってしまうんですけれども。

 先ほど来、軽減税率のメリットは何だというお話を聞くと、痛税感の緩和のような御答弁が出てくるんですよ、痛税感と。感覚的なものなんですね。(発言する者あり)今、十二円、十二円と言っておられますけれども、まさに一人当たり十二円ですよ、一日。その軽減でしかない。だけれども、八%か一〇%か、八%になれば何となく軽減されたかなという気持ちにはなる、こういうことのために一兆円の財源を充てるということに結果的にはなっているように思います。

 これは、国民にとっては確かにわかりやすい面はあるのかもしれませんが、しかし、七月の参議院選挙に向けて、まさにさっきのアカデミアの方がおっしゃっていたように、税制を政権維持のおもちゃにしてはならない、この言葉が大変重く響くものがあるのではないかと思うんです。

 本来であれば日韓合意の話も言及をさせていただく予定だったんですけれども、まさにこういう形で、今、アベノミクスとして行われている政策の先行きも、また、低所得者に対して行うと言っている政策も本当に的を射ているのか、そういうふうにちょっと思う部分があります。そこについては、ぜひこれからもお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 時間も参りましたので、私の質問はこれにて終了させていただきます。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、大串博志君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、私は、私の前の質問者の質疑に関してもフォローアップさせていただきますということは通告させていただいておりますので、GPIFの質疑のことに関してちょっと触れさせていただきたいと思います。

 きょうの東京株式市場、閉まりました。六十九円三十八銭安、一万七千六百九十七円九十六銭となり、戦後取引が開始されて初めて、年明けの大発会から五日連続の下落です。株式市場とはかくなるもの、上がるときもあれば下がるときもある、その振幅があるからリスク資産、こういうふうに言われています。

 このリスクのある、もちろん、リターンも高いかもしれない、リスクも高いしリターンも高いかもしれない、このリスク資産に、GPIF、国民の大切な年金の資産、積立金を五〇%に至るまで投資する、運用するということが本当に正しいことなのか。

 すなわち、先ほど総理も答弁されました、現在の累積運用額が黒字だ、あるいは長期的に見ていくんだ、それもわかります、わかりますけれども、国民の大切な年金の積立金、資産を、リスクの高い、五日連続ですよ、戦後初めてこれだけ下がった、五日連続で下がった、こういったリスク資産に五割も運用することが正しいのか、この点に関する総理の見識を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現行の基本ポートフォリオは、旧ポートフォリオと比較して、市場の影響等による一時的な損益の振れ幅が大きくなったことは確かであります。

 確かではありますが、デフレから脱却をし、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することは困難となるという想定のもと、つまり、デフレであれば利回り等について低くても大丈夫でありますが、他方、物価が上がっていくという状況になれば、物価が上がっていくという状況にこれは対応する必要が当然あるんだろう、こういうことであります。その想定のもとで、長期的に見れば、旧ポートフォリオを維持した場合と比べ、年金財政上必要な積立金を下回るリスクは少なくなったと理解しています。

 ここから大切なところですから、よく聞いていただきたいと思います。仮に現行の基本ポートフォリオで、リーマン・ショックを含む、リーマン・ショックを含むんですよ、あれだけの大変な出来事が起こった、あのリーマン・ショックを含む過去十年間、平成十六年から二十五年度、運用したと仮定すると、従前のポートフォリオよりそれぞれの年度の振れ幅は大きくなるものの、名目運用利回りは四・三%と、従前のポートフォリオより一・一%高い収益率が得られます。

 これはリーマン・ショックを入れてなおであります。世界的な、あの金融の収縮と言われたリーマン・ショックが起こってもなお一・一%高い収益率が出ております。これは事実でありまして、従前のポートフォリオでは平均三・二%の収益率であった、こういうことであります。

 年金積立金は、長期運用で年金財政上必要な積立金を確保することを目的として、いわばこの五日間だけを見て云々かんぬんではないわけでありまして、五日間連続で上がったこともありますが、そのときはもちろん委員は言及されないわけでありますが。

 したがって、積立金の運用は、短期的な動向に過度にとらわれることなく、長期的な観点から評価すべきものである。今申し上げましたように、短期的なもので見るのではなくて、リーマン・ショックのときのあの大きな経済的な打撃を受けたときも入れて、そして十年間のこの運用を見てもこれはプラスであったということは大きな違いであろう、こう思う次第でございます。

大串(博)委員 まず、ちょっと委員長、冒頭に私言うのを忘れましたので、ぜひ今のように、全閣僚の皆様には答弁を簡潔にお願いできればというふうに思います。質問もたくさんしたいことがございます。

 今おっしゃったように、五日で見るのか、あるいはリーマン・ショックも含めたこの時期で見るのか、いろいろな見方があるでしょう。しかし、冒頭におっしゃったように、振幅が大きくなる。つまり、振幅のことを金融市場ではリスクというんです。リスクが大きくなるところに国民の大切な積立金をさらすのがいいのかということが私は問題だと思っているんです。この点は、私たち、引き続き議論をしていきたいと思います。

 この点が、大切な年金資産に対して一番国民を不安にさせている大きな要素だと思うんですね。アベノミクスの根幹であるかもしれない。ここに対する議論はさらに進めさせていただきたいと思いますし、これから安保の質問に入りたいと思いますけれども、幾つか指摘をしておきたいと思います、事実関係。

 先ほど甘利大臣の方で、実質賃金も最近上がりつつあるというふうな話がありましたけれども、きょう発表された十一月の実質賃金はまた〇・四%下がっています。累積でも下がっている。この事実は指摘しておきたいと思いますし、先ほど来、安倍総理の方からも何回か、正社員はふえているという言葉がありましたけれども、民主党政権が終わる二〇一二年の十―十二月期、正社員の数は三千三百三十万人でありました。今、一番直近の十月、十一月の平均をとっても三千三百十六万人。十四万人減っているんです。事実として正社員は減っている。この二点、事実として指摘させていただきたいというふうに思います。

 さて、安全保障法制。

 やっと国会が始まったという気持ちがあります。前の国会は九月の末で終わりました。安保国会でございました。その幕切れは強行採決。あれだけ多くの国民の皆さんが反対だ、心配だと言い、多くの憲法学者の皆さんが憲法違反だと言い、最高裁元長官や判事の皆さんも憲法違反だと言った安保法制。しかも、それを、憲法解釈を変更するという、一内閣のある意味独走で行ってしまった安保法制。その幕切れはこの強行採決でありました。

 この写真、見てください。これは強行採決に見えますけれども、囲んでいるのはほとんど自民党の与党の議員さんですからね。普通は強行採決で野党が囲むんですよ。これは自民党の議員さんが囲んでいるんですよ。委員長さんも席から離れちゃって、何も聞こえなかったんです。議事録さえとれなかった。佐藤正久理事の合図に従って与党の皆さんが、賛成、立って座ってされましたけれども、恐らく意思表示された与党の皆さんも、何に対して賛成したのか座ったのか、わからないと思いますよ。そんな中で意思決定された、採決されたこの安保法制。

 しかも、きょうはこの資料を持ってきましたけれども、ほかにも、これは人間かまくらーずというらしいですよ、かまくらのように委員長が囲まれて強行採決ができるようにしたから。ネット上にはもっといろいろなものが流れていまして、一人一人の皆さんの顔がわかるようにしたものもあるんです。これを私はきょう配付資料というふうにしましたけれども、与党の皆さんからやめてくれというふうに言われました。ネット上に広く流布しているものなのになぜかなというふうに私は思いました。だから、私たちが撮った写真を持ってきましたけれども。

 こんな言語道断の強行採決によって成立した安保法制、この強行採決、安倍総理の認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほどの委員が紹介された雇用者でありますが、二〇〇九年七―九と二〇一二年の七―九を比べますと、五十九万人、正規は減少しておりまして、これは民主党政権時代でありますが、二〇一二年の七―九と二〇一五年の七―九を比べれば正社員は二万人ふえている、これが事実でございまして、紹介をさせていただきたいと思います。

 そこで、今の質問にお答えをいたしますが、この平和安全法制というのは、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜く、これは政府と我々政治家の最も重い責任であります。このことには与党も野党もないんであろう、こう思うわけであります。その結果、野党三党も賛成をし、そして、広範な支持をいただいて成立をしたものでございます。

 しっかりと我々はこれからも責任を果たしていかなければならない、こう思う次第でございます。

大串(博)委員 いや、私は、この強行採決、こんなあり得ないような強行採決になったことに関する認識を問うているんですよ。しかも、このとき、人間かまくらーず、こう言われる、このあり方によってマイクにも委員長の声は届かなかった。だから議事録もとれなかったじゃないですか。

 直後の議事録を精査してみたら、何と書かれていたか。聴取不能、その後はすぐ、委員長退席ですよ。そんな議事録だったんですよ。それが、ちょっとした後に、野党の合意もないままに、委員長さんが独断でやられたのか、この法律は可決したものというふうに、議事録にも、野党の合意もなく、勝手につけ加えられているんですよ。そんな国会の運営というのはあるんですか。

 安倍総理は、政府の代表でもありますけれども、自民党総裁として国会対策全体の動きにも目くばせする責任があると私は思います。

 このような国会運営の中において行われた安保法制の強行採決に関してどう思っているんですか、よかったと思っているんですか、悪かったと思っているんですか、もう一度同じようなことがあったら同じようにやってもいいと考えているんですかと問うているんです。それを国民みんな聞きたいと思っているんですよ。どうですか。

安倍内閣総理大臣 平和安全法制においては、私も千回答弁をいたしました。中谷大臣は二千回答弁をしております。我々は、野党の要求に応えて委員会に出席をし、議論をいたしました。

 しかし、議論においては、与野党、最後まで意見がかみ合わない場合もございます。賛成、反対に分かれる場合も多々あるわけでありますが、しかし、議論が熟したと委員会が判断すれば、委員が判断すれば、当然、採決ということになるのではないか。決めるべきときには決めなければいけない。その決めたことについての責任というのは当然私たちは負うわけでありまして、それは選挙においてその責任を問われるわけでございます。

 そういう中においても、私たちは、国民の命を守る、この責任から逃れることはできない、こう考えているわけであります。アジアの情勢、中東の情勢も緊迫をしているわけであります。その中で、しっかりと国民の命を守り抜かなければならない。

 必要な自衛のための措置とは何か、それを考え抜く責任は私たち政治家にあるわけであります。その考え抜いた結果が今回の私たちの法制であって、そして、十分に我々は議論を尽くした。

 しかし、採決の状況がそうなったということについては、これは我々与党だけではなくて野党も、対応の仕方、果たして暴力を振るったのか振るわなかったのかということも含めて、それぞれが考えなければいけないことではないでしょうか。

大串(博)委員 野党の責任というのは聞き捨てならない言葉ですね。私たちは、少なくとも、十分な審議に応じましょう、あるいはやりましょうと言ってきたんですよ。それに対して、野党の責任とはどういうことですか。強行採決をしたのは与党じゃないですか。これを囲んでいる議員さんは、自民党の人間かまくらーずとしてネット上に出ているんですよ。野党の責任とはどういうことですか。

 今の、野党の責任がどういうことか、ちょっと言ってください。どういうことですか。

安倍内閣総理大臣 最後に採決をするときには、お互いに冷静に採決をするべきであろうと。しかし、衆議院の採決のときにも、いろいろなプラカードを持ち込まれたのは大変残念なことであったという意見もあったわけであります。

 いずれにせよ、これは各委員会、そして委員が判断をすることであろう、こう思います。

大串(博)委員 これはとても採決できるような議論の状況じゃなかったんですよ。衆参それぞれ二カ月強、論点はまだまだ残っていたんです。まだまだ議論する論点は残っていたんですよ。憲法違反だという主張に対する疑念は全く払拭されない中で、それを衆議院でも参議院でも打ち切られて、強行採決されてしまったんですよ。野党の責任じゃないですよ。与党の責任ですよ。

 しかも、安倍総理、安倍総理はこう言われていたんです。当時、繰り返し繰り返し、今おっしゃったように、国民の命を守る、あるいは自衛のことはしっかり考えていくと。これは私たちも同感です。だから、我が国を取り巻く安全保障環境は大変厳しさを増しています、よって、このような観点から一日も早い平和安全法制の整備が不可欠であると確信しました、こう繰り返しおっしゃって強行採決されたんです。

 その下を見てください。私が、七月十五日、衆議院の安全保障特別委員会で最後に質問したときです。残念ながら国民の理解は進んでいる状況ではないということは申し上げているとおりでございますと認められました。驚きました、私。総理が国民の理解が進んでいないと認めながら、この二時間後には強行採決されたんです。こんな審議というのはありますか。

 ところが、こうやって一日も早い採決をと言って強行採決を衆参ともにされたその後、九月の国会を終えた後、安保法制に関して一体どうなっているんだろうか。

 私、ちょっと中谷大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、この安保法制を受けて、実際的にどう物事が動いていくのか。よく言われるのが、南スーダンPKOへの駆けつけ警護の任務付与、あるいは、この法制を受けて法律整備をするとすると、残っているのはアメリカに対する物品の相互役務協定の改定、この二つが残っている。これら双方とも、この法案が成ったときに、では、これから動くんだ、こう言われた。私ども身構えましたよ。ところが、いつの間にか、これは、あれっ、いつ行われるんだろうというふうな雰囲気にもなっている。

 これら二つのこと、いつ行うんですか。行うんですか、行わないんですか。

中谷国務大臣 総理が言われた一日も早く法律を成立をというのは、現在の我が国の安全保障状況を見た上で、やはり、国家として、国民の命、平和な暮らし、これを守るために必要な法律を通さなければならないということでございます。

 私の慎重に検討をするということにつきましては、全く矛盾をしておらず、法案が通らなければ、自衛隊の対応や、また計画、訓練もできないわけでありまして、現在、新たな法律によりまして、安全を確保しつつ、与えられた任務を遂行するための法律の施行に向けて、運用の計画とか細部の基準、これを検討しているわけでございまして、この点につきましては、やはり、国際社会における正当性、そして国会の統制や国民の理解並びに隊員の安全を確保する、こういう観点で慎重に行動については検討しているということで、全く矛盾したことではないということでございます。

大串(博)委員 派遣される自衛隊の皆さんのことも考えると、慎重に十分検討されるというのは私はわかります。しかし、拙速を避けて、十分な時間をかけて、慎重にも慎重を期す、これはわかるんですけれども、めどはないんですか。

 例えば、中谷大臣は言われています。安保法制を実施するに当たってこれからやっていくべきこと、まずは運用構想をつくって、これから運用の規定をつくる、それを踏まえて訓練を行う、訓練を行った上で、さらにそれを規定や構想にフィードバックする、こういうふうなプロセスが必要なんだとおっしゃっています。

 これらが完了して、南スーダンのPKOへの駆けつけ警護任務付与や、あるいは、対米ACSAはちょっと違うかもしれませんけれども、そういった実際の部隊が動き出す、この時期のめどはないんですか。訓練の行われるめどはないんですか。あるいは規定がつくられて完了する、このめどはないんですか。

中谷国務大臣 新たな任務を付与する場合に大切なことは、任務がしっかりと遂行できるということ、そして隊員の安全が確保されるということでありまして、この点につきまして、現在、自衛隊部隊の運用の構想についての検討、また細部規定、これの整備等につきまして今検討しておりまして、その上で、訓練のための今準備を行っているわけでございます。そして、その後、所要の訓練を実施して、そしてまたフィードバックをして検討するということで、やはり、任務遂行のための能力、これを高めた上で派遣しなければならないわけでございまして、現在、まだ法律の施行もできていないわけでございまして、法律の実施のための準備をいたしておるということでございます。

 なお、南スーダンにおきましては、第九次隊が昨年十二月から派遣をされておりますけれども、派遣部隊におきましてはまだこういった駆けつけ警護とか新たな任務についての訓練は実施しておりませんので、派遣された部隊におきましては、当面、現在の任務を遂行するということでございます。

大串(博)委員 総理は、一日も早い採決を、整備をということで、強行採決までされたんですよ。ところが、その後の中谷大臣における準備に関しては、拙速を避けて慎重にも、これはわかります。しかし、めどもない。総理は、一日も早く準備をしてくれというふうに中谷大臣に言われているのかなと私は思ったんだけれども、どうもそれもなさそうである。

 そういうことを考えると、参議院選の前に南スーダンPKOへの駆けつけ警護の任務付与が行われたら世間の耳目をまた安全保障法制に引きつけてしまう、あるいは、対米物品役務協定に関する議論を参議院選前にやってしまったらまた安全保障法制に関する世間の耳目を引きつけてしまう、こういったことも踏まえた先送りなんじゃないですか。あたかも軽減税率の財源を参議院選後に先送りして検討するようにしたように、参議院選後までの先送りじゃないんですか。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 参議院選挙に不利なことを全部やめるんだったら、そもそも平和安全法制を成立させませんよ、それは。

 また、大串さんがおっしゃったように、国民の理解がどうかということでございました。しかし、例えば日米安保の改定時も、これは厳しい批判にさらされたわけであります。また、PKOの派遣のときにも、国会でも相当の混乱がありましたね。

 しかし、そのときにどういう判断をするか。国民に世論調査をして、世論調査が六割だったらやるか、これだったら政治家は楽ですね。そうではないんですよ。私たちは、厳しくても責任を果たさなければならないときがあります。特に、国民の命を守らなければいけない、厳しい国際情勢の中で私たちはその責任を果たさなければいけないという中で、昨年、その決意を実行に移すという決断をしたところでございます。

 そして、そこで、今、中谷大臣がお答えをさせていただきましたように、法律がなければ、そもそも訓練もできないわけでございます。法律ができたからこそ、訓練をしていく準備に入るわけであります。

 そこで、平和安全法制の施行により新たに付与される任務については、自衛隊部隊の運用構想についての検討、これがございます。そして、内部規則の検討もあります。その整備など、訓練実施のために必要な準備を行った上で、所要の訓練を実施していかなければいけない。その結果を必要に応じてフィードバックしていく必要もあるわけでありまして、慎重を期して、任務遂行のための能力を高めていく必要があるわけであります。

 また、改正PKO法の施行後、南スーダンに派遣している自衛隊にいかなる業務を新たに付与するかについては、その具体的な必要性も含めて政府部内で慎重に検討を進めていく必要があるというふうに考えているわけでありますから、このようなことから、現時点では南スーダンPKOについての具体的な方針はまだ決まっていない、こういうことでございます。

大串(博)委員 私の疑念として消えないのは、九月の末に国会が閉じた、その瞬間に、安全保障から目をそらさせるかのごとく、これからは経済だと。経済は大事なんです、ずっと大事なんですよ。一億総活躍だ、こういうふうに言われ出した。国民の目を安全保障から今度は引き離したいというようなことではないか。だから、南スーダンPKOも、あるいは対米ACSAも、国民の前に参議院選前にはさらさないということではないかという疑念がやはり湧くわけです。先送りじゃないかという疑念が湧くわけです。

 さらに、安全保障法制に関しては、総理は、九月の国会を閉じる記者会見の中で、国民の皆さんによく説明してまいりたいというふうにおっしゃいました。何をやってこられたのか調べてみたら、紙が出てきましたよ。紙が出てきて、見てみたら、内閣官房から、ウエブサイトで資料を載せています。安倍総理等によるもの、主なもの、安倍総理の法案提出時の記者会見、会期末の記者会見、その他インタビュー等、これだけです。全く国民の皆さんに説明する組織的な動きは何もされていないじゃないですか。これも、国民の皆さんの前で安全保障法制をまた説明することを避けていらっしゃるのではないかという疑念すら感じざるを得ない。

 どうですか。なぜ国民の皆さんに、例えば関係閣僚の皆さんが出ていらっしゃって、安全保障法制はこうですよと。社会保障・税一体改革のときに私たちはやりましたよ、全閣僚が出てやりましたよ。そういうことをなぜやられなかったんですか。国民の皆さんに説明すると言われた九月の末の総理の言葉はどういう意味だったんですか。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 まず、法律の成立後、私自身、そして関係閣僚も、さまざまな機会、例えば記者会見や講演もございます、そしてマスコミの皆様のさまざまな取材、テレビ出演を通じて説明を行っておりますし、また、与党また自民党においては、全国各地域において、それぞれの後援会を通じて説明をしている。これが実は一番大きいんです。

 各地域において、皆さんはどうかわかりませんが、私どもの自民党の議員は、全国各地域に、市町村に細かく後援会を持っておりまして、そこで膝詰めでしっかりと説明を行っているわけでございまして、当然そういう説明が求められるわけであります。我々は、それぞれの各議員は、基本的に個人後援会を持っておりますから、その個人後援会を通じてしっかりと説明を進めていく、あるいは、いろいろな質問を受けながらお答えをしていく、そういう場を種々設立しているわけでございます。

 そういうものを通じて説明をしている、また、当然、ホームページ等を通じての説明をしているということでございまして、大切なことは、まさに、我々与党においては、国民政党でありますから、地に足のついた説明を行っている、こういうことでございます。

大串(博)委員 この安保の話は九月で終わったわけではありません。まだまだ論点は多く多く残ったのが前国会でございまして、さらにこれは議論するとともに、立憲主義を踏みにじるような最後の終わり方をしたこの国会の中で決まった、そのもとで、憲法改正の話、動き、少しずつ出てきておることに私は非常に危惧を実は覚えているんです。

 この憲法のことに関して、安倍総理は、一月四日の記者会見でも、参議院選でしっかり主張していきたい、こういうふうにおっしゃっていました。十一月の閉会中審査、予算委員会のときには、総理は、緊急事態条項に関して、これは重要なことだということをおっしゃいました。

 私は、立憲主義を大変ないがしろにした安倍総理のもとで、かつ、憲法五十三条のもとでの国会召集すら応じなかった、憲法違反と言わざるを得ない行為をした安倍総理のもとで憲法改正の話が進むことに大変危惧を覚えます。

 安倍総理は、十一月、先ほど申しましたように、緊急事態条項の重要性を我々の岡田代表に対して言われましたけれども、この緊急事態条項、憲法改正の項目として重要だと今でも認識されているんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、例えば臨時国会を開かなかったという例についても、これは過去にも例があることでありますし、次の回まで百日以上費やした場合もあるということは申し上げておかなければならない。安倍内閣が急にいきなりやったということではなくて、過去にも種々例があるということは申し上げておきたい、このように思います。

 そして、大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民みずからがどのような役割を果たすべきかを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題と考えております。他方、憲法改正には国民の理解が必要不可欠であり、具体的な改正の内容についても、国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくるものと考えています。

 引き続き、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について国民的な議論と理解が深まるように与党において進めていくことになるんだろう、このように考えております。

大串(博)委員 緊急事態条項は重要なことだというふうにおっしゃいました。

 安倍総理が考えていらっしゃる緊急事態条項、これは衆議院の憲法審査会事務局の資料から抜き出してきましたけれども、通常、よく三つの論点が言われます。

 一つは、災害等あるいは有事等があったときに、国会議員の解散が行われる、あるいは任期が来てしまう、そうすると国会議員がいなくなってしまう、選挙できるのか、こういったことになってはいけないので、任期延長の特例を設けるかとか、あるいはさらに、人権の制限、そのような状況において人権を一時的に制限する、移転の自由、財産権、あるいは役務従事命令、こういったものを出す。さらには、内閣総理大臣に権限を集中する、法律と同様のことを総理大臣がこれだと言えばできるようにする、こういったことも含まれています。

 総理は、このような人権の制限とか総理大臣への権限の集中、こういったことも含めた緊急事態条項が重要だというふうにお考えなんですか。

安倍内閣総理大臣 中身については、今ここで私は申し上げるつもりはありません。どのような改正をするかについては、まさに憲法審査会等、国会において議論を進めていただきたい、こう考えているところでございます。

大串(博)委員 総理は、昨年の十一月の十一日、参議院予算委員会での山谷議員への答弁の中で、内容について触れていらっしゃるんですよね。大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民みずからがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題だと考えていますと。

 まさに、この一番の国会議員の任期延長とか、比較的国民の理解はこれにはあり得るかもと私自身も感じます。しかし、二番目、三番目、人権を制限するとか、この辺に関する皆さんの慎重論は私はあると思うんですよ。ここに関して、「国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置付けるかについては、極めて重く大切な課題であると考えています。」とおっしゃっているじゃないですか。

 この人権の制限も含めるところが重要だとおっしゃっているじゃないですか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 山谷さんに答弁したことと、今、大串委員に答弁したことは全く同じことでありまして、先ほど、これが答弁書でありますが、あのとき答弁したことを今私読ませていただきましたから、同じことを答弁し、また、大串さんが、今度は山谷さんへの答弁として御紹介いただきましたが、同じことであります。

 しかし、具体的な中身については私は申し上げておりません。具体的な中身につきましては、まさにそれは憲法審査会で御議論をいただきたい、こういうことでございます。

大串(博)委員 総理はそうおっしゃって、具体的な中身は憲法審査会で議論していただきたいというふうにおっしゃっていますけれども、災害等の場合において国民がみずからどのような役割を果たしていくべきか、これはまさに、人権を制限する、あるいは総理大臣への権限の集中、こういったことに当たりますよ。

 こういったことまで念頭に置いていらっしゃることがわかる中で、私は、憲法改正、特に、先ほども、繰り返しになりますけれども、立憲主義をあれだけ私は踏みにじられたと思っています、このもとで行われることに関する強い危惧をあえて申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 さて、次に、経済の話に少し移らせていただきたいと思いますけれども、まず、一億総活躍です。

 総理、ちょっと、一億総活躍。これから総理にも聞くんですけれども。私もあと何分かで終わりますから。

 一億総活躍……(発言する者あり)ちょっととめてください、帰ってくるまで。総理に質問なんです。総理に質問なんですよ。

 ちょっと時計をとめてください、時間も少ないので。

竹下委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

竹下委員長 速記を起こしてください。

 大串博志君。

大串(博)委員 一億総活躍、総理は、九月の安保国会が終わった直後に一億総活躍というタイトルを掲げ、これがメーンの経済政策だとおっしゃいました。私は、一億総活躍の内容がよくわからないんです、一体何がどういうことなのかと。私、多く地元を歩いても、皆さんから一億総活躍というのは何だろうというふうに言われます。

 予算の内容を見ればよくわかるかなと思って、予算の内容を、今回、補正予算の中で一兆一千六百億ほどあります、これを分析させていただきました。そうしたらわかったのは、一億総活躍予算、補正予算の中の一兆一千六百億ほど、これは事業数でも八割が既存予算の焼き直し。予算額でも、先ほど問題になっていた三万円の給付金を除けば、八割が既存予算なんですよ。つまり、去年の補正、ことしの本予算、あるいは来年度予算への予算要求、これらに入っているものと同じものを予算づけされているんです。

 一億総活躍、どこが新しいんですか。これに関して、総理、どうですか。

加藤国務大臣 今回は、従来の三本の矢を強化することで、戦後最大の経済に向けて、GDP六百兆円を目指す強い経済、その上で、第二の矢として、国民の希望出生一・八を達成するための子育て支援、第三の矢として、介護を理由に仕事をやめる人がゼロになる、こういう社会をつくっていく。それにかなり絞り込みもしまして、昨年十一月に、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策を取りまとめ、それを具体的に補正予算あるいは当初予算に計上させていただいているところであります。

 その中で、例えば、保育や介護サービスの基盤整備に当たって制約となっている土地の取得や人材の確保、これを円滑に進めるため、従来の政策に加えまして、現場のニーズを踏まえた新たな工夫をいろいろ加味もさせていただいております。

 具体的には、保育補助者の雇い入れ支援や潜在保育士の就業支援、あるいは子供の貧困対策のための地方自治体を通じた支援、あるいは用地確保が困難な都市部における国有地の活用における介護施設の整備、あるいは地域医療介護総合確保基金を活用した介護人材の確保などを盛り込んでいるところでございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま加藤大臣から答弁をさせていただきましたのは予算にかかわることでありまして、一億総活躍社会はわからないということでございますが、これは簡単なんですが、つまり、若い方々もお年寄りも、男性も女性も、あるいは障害がある方も、難病を持っておられる方も、一回とか二回とか失敗した方々も、全ての皆さんがチャンスのある社会をつくっていく、一歩前に出ることができる社会をつくっていくということでありまして、そして、そうしたことを進めていく上において障害となっているものを取り除いていこうということであります。

 そして、そういう社会をつくっていく、新たな的を定めました。戦後最大のGDP六百兆円、この六百兆円を達成していく上においては、みんなが活躍する社会をつくっていかなければなりません。

 例えば、女性の方々にも活躍をしていただく、あるいは六十五歳以上、七十歳以上になっても能力や経験を生かして頑張っていただけるような、こういう社会をつくっていくことも大切でしょう。ハンディキャップのある方、あるいは難病があって働き方に制限がある方についても、働き方を変えていくことによってチャンスのある社会をつくっていくということであります。

 そういう社会をつくっていく、これが一億総活躍社会でありまして、その中におきまして、希望出生率一・八を阻害するものをなくしていくことによって、女性も十分に活躍できる、あるいは安心して子育てできるという社会をつくっていく。

 そしてまた、介護離職ゼロと言ったのは、親の、団塊の世代の方々が介護が必要になれば、団塊ジュニア、これも人口の多い世代でございますが、ここが退職しなければならないということになれば、日本の経済社会には大きな打撃があります。そういう社会にしないという目標も掲げているわけでありまして、三本の矢をしっかりと、三本の的に向かって新たな矢を放っていくことによって一億総活躍社会を目指していくということでありまして、まさに皆様にチャンスのある社会をつくっていきたいということでございます。

大串(博)委員 何度聞いてもやはりよくわからないんですよ。しかも、予算の八割が前と同じで、何がどう変わるんですか。

 しかも、やはりこれは、先ほど申しましたように、安全保障が終わった後、経済に目を引っ張りたい、そらしたい、そういうふうな思いじゃないかという気がしてならない。あるいは、先ほど来話があった、民主党政権の二分の一しか実質経済成長していないんですよ。アベノミクスは失敗だったんですよ。この失敗を糊塗するために、リセットすることを、見せかけたとしか思えない。

 この点はさらに議論させていただくことをここに申し述べて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

竹下委員長 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 きょうはテレビ中継がされておりますけれども、今度の参議院選挙から高校生も投票できるようになるということで、テレビ、ラジオで見たり聞いたりしている高校生にもわかりやすい答弁をぜひお願いしたいと思っております。

 きょうから補正予算の審議が始まったんですが、先ほど来、総理の答弁を聞いておりますと、内閣と国会の役割分担ないし内閣の国会に対する責任、憲法上の理解が誤っているのではないか、私はそういうふうに感じました。

 まずお聞きしますけれども、憲法上、野党議員には予算の提出権は、国会への提出権はありますか。

安倍内閣総理大臣 全ての野党の議員にあるわけではない、いわば、これは、提出するのは、特定の条件を満たしていなければいけないと思います。

階委員 これはちょっとまずいですよ。憲法改正を唱える総理自身が、憲法の根本的なところも理解していない。

 憲法八十六条、ここには「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とありますが、我々国会議員には予算提出権は認められていないんです。

 誤りだというのであれば撤回してください。そして、テレビを見ている高校生にも、誤りでしたということで謝罪してください。

安倍内閣総理大臣 予算の提出は、当然これは政府で、内閣が提出をします。今、まさかそれを聞いているとは思わないものですから、予算関連法案、予算関連法案について質問されたと思ったものでありますから、それは、予算関連法案には特定の制限があるということで、ある程度の人数、ある人数を満たさなければならない、こういうことで答弁をさせていただいたわけでございます。

階委員 なぜ私がこういうことを聞いたのか。

 午前中、平沢委員の質問に対して、正確な言い回しは後で議事録で確認しますけれども、要は、憲法五十三条に反して臨時国会を開かなかったのではないかといった質問に対する答弁でした。これに対して総理がおっしゃったのは、大切なことは、野党にも対案を出してほしいということを言っていたわけですね、補正予算についてです。

 これは私、耳を疑ったんですね。もしや、ひょっとして総理は、予算というのは国会議員に提出権があるとお考えになっているんじゃないだろうかと思って今確認したところ、やはりそういう答弁でしたよ。だから、私は、そういうあやふやな憲法の理解のもとに、憲法改正なんて到底言える立場ではないんじゃないかということをまず申し上げます。

 もう一度申し上げます。撤回するなら撤回してほしいと思いますし、先ほどの答弁、そのまま議事録に載っけていいというのであれば特に答弁は求めませんが、どうしますか。

安倍内閣総理大臣 まず、平沢さんとの議論において私が野党に対案を出してもらいたいと言ったのは、対案ですから、補正予算の対案を出していただきたいということではなくて、政策においていわば対案を出していただきたい、こういうことでございます。

 そして、先ほどの御質問については、私が階議員の質問の意図を誤りましたので、そうでなければ特定の条件を満たさなければというふうに言うわけがないわけでありまして、私は関連法案だと理解をしたわけでございまして、ですから、予算案本体は、これは当然政府が出すものでございます。これは当たり前のことでありまして、我が党も野党時代にはもちろん出せなかったわけであります。当然そういう趣旨で申し上げたわけでございます。

階委員 では、このまま議事録に残しましょう。私が明確に、予算案の提出権は野党議員にあるかということを聞きましたので、そのまま先ほどの答弁は議事録に載ります。高校生に対して本当にそれで恥ずかしくないのかどうか、よく考えていただきたいと思います。

 それからもう一つ、私がきょうの審議を通じて感じたことなんですが、質問に対して答えるだけではなくて、一言、二言、三言、四言、私たちに対する批判も交えている。

 そもそもこれも憲法の理解を本当に総理がされているのかというふうに思うんですが、憲法の六十六条三項という条文があります。「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」ということです。そして、連帯して責任を負う以上は、しっかり我々は行政権の行使を監視していかなくちゃいけない。その監視の一環として、憲法六十三条後段で、閣僚の皆さんは、答弁または説明のため国会から出席を求められたときは各議院に出席しなければならないというふうにされているわけです。

 ですから、きょう私も質問通告して皆さんに来ていただいているわけですけれども、あくまで来ている理由は答弁または説明のためであって、我々に対して批判するためではないんですよ。これもやはり高校生に誤解されると思うんですね。

 総理が言っていることは、対案を出すのは確かに我々もできます。対案を出すのも一つの国会議員の役割ですよ。ただ、先ほども言いました、議院内閣制、三権分立という我々の憲法のもとで、我々は行政権の監視についても重要な役割を担っている。この点について余りにも理解が足りないと私は言いたいと思いますが、何かこの点について総理からお考えはありますか。

安倍内閣総理大臣 国会の場においては闊達な議論があるのは当然のことであって、それはお互いが議論する場合もありますよ、もちろん答弁ということが中心でありますが。その中で事実を比較する場合もありますから、皆さんも政権を担った以上、今がどうなんだというのは過去と比べる場合もありますから、当然そういう答弁もいたします。自分たちは批判するけれども自分たちのことは批判しないでくれなどと私たちは思ったことは一回もないわけでありまして、我々に反論したり批判したりすることは絶対だめだと言うことは、これはおかしいのではないでしょうか。

 基本的には、聞かれたことに対して答弁する中において、その範囲において私は私の考え方を述べているわけでありまして、そういう中で事実の開陳をしているわけであります。それが批判と思われるかもしれませんが、それは私の述べ方が悪かったのかもしれませんが、基本的には、事実を述べながら、特に経済については、過去とどうだったかと、今の私たちの経済を批判するということに対しての反論でありますから、ではほかの政策であればどうだったのかということと比較しなければその経済政策が正しいか間違っているかはわからないわけでありますから、そういう意味において、このように比較するべきではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。

階委員 今のやりとりで、テレビの前の高校生にも、いかに総理が憲法に対して理解が浅いかということが明らかになったと思います。

 最後にもう一言だけこの点について申し上げますけれども、憲法改正を唱えるのであれば、まず憲法をしっかり理解していただきたいということを申し上げます。

 そして、本題に入ってまいりますけれども、震災復興と原発事故対応について、まず関係の大臣に伺いたいと思います。

 私も被災地の岩手県の出身でございまして、震災以来五年間、復興について非常に関心を持ち、そして人並みに努力をしてきたつもりです。

 最近、復興大臣について、残念なことに、地元でさまざまな不安の声、批判の声が聞こえてくるわけですね。就任以来、残念なことにいろいろなスキャンダルが報道されてきた。

 そういう中で、先般の閉会中審査、復興特別委員会で私どもの同僚の柚木委員とのやりとりの中で、柚木委員が、大臣が過去に女性の住居に不法侵入したのを目撃したという女性の証言を取り上げて、その証言を裏づける事実として、当時女性が目撃した際にアイロン台に車のナンバーを書きとめていたということを、実際に現物を示しながら質問したわけです。

 そして、そういったことについて、大臣はまず、そういう不法侵入といった事実は無根であるということをお話しされました。私は、事実無根であるならばそれを積極的に証明すればよい、証明するためにはナンバープレートが自分のものではないということを明らかにすればいいと思ったんですが、そのときの大臣の答弁、何とおっしゃったかというと、車両について記憶にございませんし、調べることは必要ないということをおっしゃっていました。記憶にないのであれば余計に調べて、これは自分のものじゃないよということを世の中に知らしめた方がいいんじゃないかと思うんですね。

 やはり、復興をさらに前に進めるためには、今のような状況を一刻も早く打開してほしい。私は、これは建設的な意味で申し上げています。

 そこで、復興大臣にお伺いしますけれども、柚木委員も御提案申し上げましたとおり、ナンバープレートが自分のものか否か、これをしっかり調べて国会に報告するということをやっていただけませんでしょうか。

高木国務大臣 たびたび答弁しておりますけれども、そうした事実はございません。よって、そうした車に関しても全く私と関係するものではなく、調べるということは全く必要ないというふうに考えているところでございます。

階委員 ちょっと、これでは疑惑がなかなか晴れないので、せっかく疑惑を晴らすチャンスを私は設けたつもりだったんですが、これについてはまた理事会で協議をしていただきたいと思います。

 もう一つ、環境大臣についても……

竹下委員長 何を理事会協議するんですか。

階委員 ナンバープレートについて、これが誰の所有のものか調査してほしい。

竹下委員長 それは予算委員会のやる仕事じゃないでしょう。(発言する者あり)

 理事会の議題にいたします。議題にはいたします。

階委員 丸川環境大臣にもお尋ねします。

 丸川環境大臣は、指定廃棄物の最終処理を所管しているということです。私の岩手も指定廃棄物がありますけれども、お隣の宮城県は指定廃棄物の量は岩手県よりも多くて、最終処分場を県内に一カ所設けるということで政府の方針が決定されていまして、その候補地が三カ所、自治体が指定されています。その三カ所からは、いろいろな不安の声、不満の声なども上がっております。

 とりわけ、大臣がなぜ我々の声を聞きに来ないんだということが報道もされていますし、宮城県知事を初め各自治体の首長がおっしゃっているわけです。

 どうして行かれないのか、その点についてお答えください。

丸川国務大臣 指定廃棄物、全部で十六万六千トン、一都十一県にございまして、先生のお地元にも四百七十五トン、そして福島県に十三万八千五百トンあるというような状況でございます。

 宮城県に関して、これまでもさまざま環境省の方で御説明をさせていただく努力、また現地調査をさせていただく努力を続けてまいりましたけれども、私どもの努力もまだまだ至っていないという現状でございます。

 そんな中で、前々大臣の石原環境大臣の当時にも副大臣をお務めいただいておりました井上信治代議士に今回も副大臣においでをいただいて、地元の自治体とずっと顔の見える関係を築いていただいてまいりました。その副大臣にまず交渉に当たっていただいている中で、これまでの経緯も踏まえてどのような受けとめをされているかということを伺いながら、今判断をさせていただいているところでございます。私自身もお伺いすることも含めながら、今検討させていただいている状況でございます。

階委員 そんな受け身で消極的な対応では、地元の理解は到底得られません。現に、先ほどの宮城の三つの自治体には候補地を返上しようというような動きもあると聞いておりますので、事は一刻の猶予もならないということを申し上げておきます。

 そして、話題をかえますけれども、今、この点については委員長が復興大臣当時もやりとりをさせていただきました。被災地ではようやく高台移転の土地あるいはかさ上げの土地の整備が進んできまして、これからいよいよ住宅を建てるという段階であります。

 しかし、この間、五年間、仮設住宅に住みながら、ずっと土地が供給されるのを待ってきた人たちがたくさんいるわけですね。その五年間の間に、実は工事金額がどんどん上がってきている。

 今、パネルをお示ししました。震災以降の平米当たり工事費予定額という金額なんですが、全国平均では七・六%の上昇率。これも結構、アベノミクスの影響で公共事業をたくさん行った結果上がっているんだろうと思いますけれども、この七・六%に比べて、被災三県、数字を見てください、岩手では一六%、宮城では一四・四%、福島では一六・七%も上がっているわけですね。

 こういうことで、実額ベースで見ますと、例えば、百平米、約三十坪の家を建てるとします。約三十坪の家を建てるとした場合、震災前の工事費と今の工事費で比べると、岩手でいうと二百五十万円負担がふえる、それから宮城でいうと二百三十万円負担がふえる、福島では二百七十万円も負担がふえるわけですね。これでは、今の国の支援金制度、あるいは自治体独自の制度もありますけれども、大半が値上がり分で消えてしまって実効的な補助にはならないのではないか、こういうことを指摘してまいりました。

 先般、本会議でも総理がお答えされていましたけれども、他の制度とのバランス、あるいは国や地方の財政負担を考えて、追加の支援ということには慎重にならなくてはいけないということを言われていました。

 それならば、私は、他の制度とのバランスということでいえば、国立競技場、この間、財源スキームというものが決まりましたね。関連工事を含めると千六百四十五億、そのうち八百億程度を国が負担するということなんですが、今後値上がりしていった場合は、当然、国もその値上がり分は負担する。国とtoto、スポーツくじ、それから東京都、この三者でもって二対一対一の割合で値上がり分を負担しましょう、こういうことになっています。ですから、国立競技場、オリンピックも大事です、確かに。でも、オリンピックの競技場は、値上がりしたら、ちゃんとその分については手当てしましょうというスキームになっています。

 それから、先日の本会議で総理が言われていたのは、国や地方の財政負担というのも考えなくてはいけないと言っていましたけれども、先ほどの単価をもとにして、それから今後整備が予定される住宅戸数、これをもとに私の方で積算しましたところ、宮城、岩手、福島、トータルでもって、値上がり分、全額国費負担としても三百四十六億の負担で済みます。済みますというか、これも結構大きな金額ですけれども。

 ただ、申し上げたいのは、今回の補正予算、先ほど来議論になっております年金生活者等給付金、これは総額で三千六百億円です。その三千六百億円の十分の一で、本当に困って仮設住宅に住まわれている方が自分で家を建てられる、その大きな手助けができるわけでして、アベノミクスの効果を本当に全国津々浦々に行き渡らせて一億総活躍を目指すのであれば、ここにこそ補正予算は手当てを講じるべきだと私は考えます。

 総理の見解を伺わせてください。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災からの復興に当たり、被災者の方々に安心できる住まいに移っていただくことは重要な課題と認識をしております。

 被災地の住宅建築費は、震災前に比べて全国を上回って上昇している状況と承知をしています。こうした中、被災地の住宅再建については、県、市町村の取り崩し型復興基金を活用した助成に加えて、被災者生活再建支援金を支給するとともに、高台移転事業による宅地を借地として提供するなど、被災者の負担を軽減する支援措置を引き続き講じることとしています。

 今後とも、被災者の方々が安心して生活できる住宅に移れるよう全力を尽くしていく考えであります。

 被災者生活再建支援金の引き上げについては、先ほど御紹介いただきましたが、他の制度とのバランス、あるいは国、都道府県の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えています。

 また、取り崩し型復興基金の積み増しについては、復興基金にふさわしい具体的な財政需要があるのかどうか、あるいはその活用状況を十分に見きわめていくことが必要であると考えております。

階委員 優先順位であれば私はこちらの方が先だと思いますし、金額的にも、給付金三千六百億円に比べれば十分の一で済みます。ぜひこちらをよろしくお願いしたいということを申し上げておきます。

 次に、マイナンバーの質問はちょっと一旦先送りしまして、行政改革についてお尋ねします。

 消費税を引き上げる前に行政改革で行政の無駄を削減すべきだということは、三党で当時民主党政権のときに合意した内容にも含まれていたと思います。この行政改革について私はお尋ねしたいんです。

 まず、年金記録流出、昨年問題になりました。この年金記録流出は、まさにITの理解の不足、あるいはその後の対応のまずさによって損害が発生し、拡大していった。

 改めてお尋ねしますけれども、この年金記録流出による損害額は幾らなのか。これは通告しています。総理でもいいですが、数字ですから、厚労大臣でも結構です。

塩崎国務大臣 階先生、今、年金記録とおっしゃいましたが、これは年金情報でございますので、記録は出ているわけではございません。

 日本年金機構の情報流出事案については、これは大変国民の皆様方に御不安を生じさせてしまったということで、まことに遺憾だというふうに考えております。

 情報流出事案に係る年金機構の対応経費としましては、現在も対応しているものなどの事情によって確定はまだしておりませんが、機構からは、専用コールセンターの設置によるお客様対応とか、あるいは情報が流出した方に対するおわび状の送付のコストであるとか、そういうことを合わせますと約十億円程度を見込んでいるという報告を受けているところでございます。

 再発防止策については、厚生労働省に設置いたしました外部有識者による検証委員会やサイバーセキュリティ戦略本部が行った原因究明調査などを踏まえて、日本年金機構において、個人情報に対して攻撃が及ばないシステムを技術的に構築するとか、あるいは徹底した組織、人事、業務改革などを内容とする業務改善計画をもう既に出してもらっておりまして、外部の有識者の助言も受けながら昨年の十二月に提出を受けたわけであります。

 厚労省としても、年金機構の改革が着実に行われるようにしっかりと監督をし、今回のような出来事が二度と起こらないように、年金個人情報の管理に万全を期してまいりたいというふうに思っております。

階委員 今、再発防止策もお答えいただけましたけれども、私も厚労省の再発防止策の文書も拝見しました。基本的な考え方ということで、情報セキュリティー対策の強化をして、そのために組織、業務改革を推進していくということでした。

 ただ、そもそも日本年金機構が立ち上がった経緯というものを考えてみますと、ちょうど第一次安倍政権のときに、消えた年金、こちらは記録でしたね、消えた年金記録問題が起きまして、まさにIT体制を確立して、組織、業務を改革するために社保庁を解体して日本年金機構を立ち上げるということだったのが、今やこういうような状況になっているわけです。

 これまでの改革の努力というのは全く意味がなかった、あるいはそもそも改革というのは骨抜きだったと言わざるを得ないので、今後はこういったことがないようにしていただきたい。

 それからもう一つ、十億円という損害額、これも大きな金額です。十億円の無駄が発生している。他方で、今会計検査院から指摘されているのは、日本年金機構が全国各地に持っている職員用の宿舎が、少なく見積もっても十五億円は全く活用されていなくて無駄になっている。

 十億円無駄にしたのであれば、早くこの十五億円を取り戻すべきだと思いますよ。にもかかわらず、私たち民主党の会議でも、厚労省の担当者を呼んで、いつ制度をつくるんだ、法律をつくるんだということを再三再四尋ねてきました。法律は必要だといいながら、いつつくるのかということについてはいまだにはっきりさせていません。

 先ほどの、年金情報流出で十億円損している、こういったことも考えれば、総理にお尋ねします、内閣として、この宿舎の十五億円の無駄を取り戻すべく、早くに法律を国会に内閣から提出して成立を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 まず最初の十億円につきまして、これをどこから捻出するかということでありますけれども、これは機構における平成二十七年度の予算の事業の見直し、あるいは経費の削減等を通じて賄うということでまいる予定でございます。

 今、遊休宿舎の問題、これは会計検査院から御指摘を受けているわけでありまして、昨年の十月に、日本年金機構の保有財産の必要性を見直すということを指摘され、厚生労働省において不要財産について国庫納付させるような制度を今先生がおっしゃったとおり整備するように、こういう指摘がございました。これを受けて、年金機構において保有財産の見直しを行って、検査院から指摘された宿舎それから事務所の処分を行って国庫納付を行う方針をもう既に固めているところであります。

 これを踏まえて、厚生労働省としては、機構の不要財産を国庫納付できるように、できる限り速やかな法整備に向けて検討をしてまいる所存でございます。

階委員 できるだけ速やかにというのは、今国会という理解でよろしいですか。総理、決意をお聞かせください。総理、お願いします。総理に答弁を求めています。

塩崎国務大臣 今国会提出を目指して今作業中でございます。

階委員 提出してください。

 それで、この件に限らず、私の方で会計検査院を通じて調査しました。過去十年ぐらいで、今回の年金機構の宿舎のように国の関連団体が遊休資産をそのまま放置していて、会計検査院が、無駄だ、これは早く処分して国に返納すべきだと言った件数がどれぐらいあるかということを調べていただいたところ、過去十年間で、件数にして七十件、指摘金額で一兆九千三百三十億円、こういった多額の金額があったようです。もちろん、その中には既に返納されたものもあると思いますが、会計検査院はそこまでは把握していなかった。

 そこで、河野行革担当大臣にお尋ねします。

 今のような数字、看過できないと思います。行革担当大臣として、改めて、会計検査院の指摘を踏まえて、不要不急の資産は一刻も早く処分し国庫に返納する、そういう作業を行っていただきたいと思いますが、決意をお聞かせください。

河野国務大臣 会計検査院が指摘されたものにつきましては、一義的には所管官庁が対応すべきものと思いますが、所管官庁が適切に対応しているかどうか早急に調べて、対応してまいりたいと思います。

階委員 ぜひ、行革担当大臣、期待しておりますので、頑張ってください。

 もう一つ、会計検査院が指摘してきたもので、NHKについても実は平成十九年に重要な指摘をしていますね。当時、関連団体の利益剰余金が八百八十六億円もあるということを踏まえて、NHKに対して子会社の利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等を勘案して特例配当を要請する必要があるだろう、そこで特例配当などによって協会の財政に寄与させることが望まれるという会計検査院からの指摘がありました。

 きょう、NHK会長にも久々に来ていただいておりますけれども、NHK会長、このような指摘を過去に会計検査院から受けていたにもかかわらず、特例配当に回してNHKの財政に寄与させるどころか、三百五十億もの過大な土地を取得して、それが監査委員や経営委員会の指摘を受けて撤回に追い込まれた、この責任についてどう考えているか、お聞かせください。

籾井参考人 お答えいたします。

 関連団体の将来のありようや業務の効率性などの観点から、関連団体の社屋を集約することが望ましいということで以前から検討しておりました。放送センターの近隣に去年有効な土地が見つかり、ほかに適当な土地がない中で、子会社が取得の意思を示す申し込みを行ったというふうに聞いております。そして、十一月十九日、昨年でございますが、子会社が優先交渉権を得たということです。

 その後、十二月八日の経営委員会に報告いたしましたが、この日の朝、間違った新聞報道がなされ、誤解を与えたこともあり、賛意を得られず、このまま進めてもうまくいかないと総合的に判断して、これ以上の具体的な手続に入ることは取りやめました。

 こうしたことはあくまでも具体的な手続の前の段階で終わっているわけでございまして、監査委員会が十二月二十二日に経営委員会に行った報告でも、買い受け申込書を提出し優先交渉権の内定を得たことは放送法及び関連団体運営基準に違反するとは認められないとされております。

階委員 監査委員会も法的には違法とは言えないとは言っていますけれども、先ほども申し上げました、本来であれば特例配当にできるだけ回すべきということを会計検査院から指摘されているにもかかわらず、安易な土地取得計画をもとに買い受け申込書を出している。これに対しては監査委員会も厳しい指摘をしています。「取得代金などの契約条件および各関連団体の利用・負担などの本件土地取引に関する重要な事項についての検討、ならびに契約締結・実行のための手順・日程について、十分な意思統一が図られていないなどの状況が認められた。」これはNHK会長としても本当に反省すべき事項だと考えます。

 それともう一つ、会長の責任が問われることは、きょうの新聞にも出ていました、子会社で不祥事が相次いでいます。金銭の着服、昨年の末には二億円、そしてきょう出ていたのは五百万円。いずれも、架空発注をして、その一部か全部を関係会社の社員が着服していたという問題です。

 そもそもなんですが、NHK会長である籾井さんの肝いりで、昨年、五千数百万円もの多額の弁護士報酬を払って、子会社のガバナンスを検討していきましょうということで調査なども行った。その調査の結果、当時、籾井会長は胸を張って、子会社に特段の問題はなかったということも言っているわけですね。にもかかわらず、今ごろになってまたこういう問題が発覚している。

 この点についてもNHK会長の責任が問われると思いますが、この点はいかがですか。

籾井参考人 お答えいたします。

 今回の問題につきましては、本当に許しがたい犯罪的な不正でありまして、まさしく言語道断であります。

 子会社の問題ではありますが、NHKとしましても、徹底的に調査を行った上で厳正に対処したいと思います。

 本件につきましては、六年前から起こっているということで、なかなか調査そのものがスムーズに、スピーディーにはいかないんですが、今我々も国税がやっているのと並行いたしまして内部的に徹底的に調査を行っておりますし、結果を見た上で厳正に対処したいと思います。

階委員 みずからの責任には言及されないんですか。反省の言葉はないんですか。籾井会長、もう一度お願いします。

籾井参考人 まさしく今徹底的な調査を行っている段階でございます。まだ最終的な結論には至っていないということでございます。

 先ほども申しましたけれども、これは関連企業の問題でありますが、我々としましても、こういうことを今後どうやったら防げるかということについては、鋭意我々も、言葉ではなくて実際に検討いたしております。

階委員 またこの点についてはしっかり追及していきたいと思います。

 最後に、アベノミクスの第一の矢であります異次元の金融緩和、このことについて、きょうは日銀総裁、岩田副総裁が来られていますので、お尋ねしたいと思います。

 今から三年近く前の平成二十五年の四月に、異次元の金融緩和ということで、国債の保有額を年間五十兆円のペースで増加させていく、つまりその分市場にお金を供給するわけですね、それによって物価を二%上げていく。なかなかうまくいかないので、一昨年の十月には五十兆円を八十兆円にして、国債の買い入れ額をふやしていった。

 それでもなかなかうまくいかなくて、最近では、金融政策だけではなくて、黒田総裁が連合の会合に出席して組合の活動に期待したり、あるいは昨年の暮れには新たな決定事項として、賃上げした会社の株を買ったり、あるいはそういう賃上げした会社に融資した金融機関にバックファイナンスをしたりというような、もう何でもありというような状況になっています。

 そもそも物価目標二%達成の期限は二年だということでおっしゃっていたわけですけれども、特に岩田副総裁は、達成できなければ辞任するというようなことも当初おっしゃっていたと思います。

 実際問題、達成されないどころか、先ほど来議論になっておりますように、いまだに物価指数は総合で見ますとゼロ%近辺です。こうした状況を鑑みて、まず岩田副総裁からお聞きしますけれども、責任をどうお感じになっていますでしょうか、どうおとりになるつもりでしょうか。

岩田参考人 お答えいたします。

 副総裁に就任した際には、目標が達成できない場合には、まず果たすべきは説明責任であって、仮に説明責任が果たせない場合には、最終的な責任のとり方は辞職であるということを申し上げました。

 その上で、物価動向について申し上げますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、このところゼロ%程度で推移しております。しかし、これは、二〇一四年夏以降の原油価格の大幅下落の影響によるところが大きいと考えております。生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比で見ると二十六カ月連続でプラスを続けておりまして、最近では一・二%まで上昇するなど、物価の基調は改善していると考えております。

 日本銀行としては、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、量的・質的金融緩和を着実に推進してまいる方針であります。

階委員 最後に総裁にお聞きしますけれども、客観的事実として、いまだに物価はゼロ%近辺ということで、かつ、そういう中で、国債の大量買い入れは今も続いています。先ほどの二十五年の四月から二年間の間に、日銀の国債保有残高は百四十五兆円もふえました。年間で七十兆円強ふえているわけですね。他方で、日本政府が発行する国債の残高はこの二年間で五十九兆しかふえていません。年に直すと三十兆円ずつしかふえていません。

 こういう中で、リスクを考えずにどんどんどんどん、二%という目標に拘泥して日銀の信頼を損なうような国債の大量買い入れを続けていくことは、私は非常に問題があると思います。総裁に御見解を伺います。これで最後です。

黒田参考人 日本銀行は、御承知のとおり、量的・質的金融緩和の導入に当たりまして、二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメントを行っております。同時に、量的・質的金融緩和は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するということも明確にいたしております。

 先ほど副総裁から答弁申し上げたとおり、物価の基調は改善しておりますけれども、まだ道半ばであります。したがいまして、日本銀行としては、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、この量的・質的金融緩和を着実に推進していく所存であります。

階委員 相変わらず二%に拘泥して、日銀の信頼を毀損していることは私は危険だということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 次回は、来る十二日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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