衆議院

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第10号 平成20年3月11日(火曜日)

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平成二十年三月十一日(火曜日)

    午前九時四十七分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 小此木八郎君 理事 根本  匠君

   理事 吉田六左エ門君 理事 竹下  亘君

   理事 三ッ林隆志君 理事 金子 恭之君

   理事 川端 達夫君 理事 仙谷 由人君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    井脇ノブ子君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      若宮 健嗣君    大畠 章宏君

      中川 正春君    谷口 和史君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (日本銀行総裁候補者(日本銀行副総裁))     武藤 敏郎君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(京都大学公共政策大学院教授))          白川 方明君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(東京大学大学院経済学研究科教授))        伊藤 隆敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     中川 正春君

  三日月大造君     大畠 章宏君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  大畠 章宏君     三日月大造君

  中川 正春君     小川 淳也君

  阿部 知子君     保坂 展人君

    ―――――――――――――

三月七日

 憲法審査会規程の制定に関する請願(中山太郎君紹介)(第四二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 まず、日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る七日の理事会において、大野内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行総裁に日本銀行副総裁武藤敏郎君、同副総裁に京都大学公共政策大学院教授白川方明君、東京大学大学院経済学研究科教授伊藤隆敏君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、日本銀行総裁及び同副総裁の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行総裁候補者・日本銀行副総裁武藤敏郎君、日本銀行副総裁候補者・京都大学公共政策大学院教授白川方明君、日本銀行副総裁候補者・東京大学大学院経済学研究科教授伊藤隆敏君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、武藤参考人、白川参考人、伊藤参考人の順で所信をお述べいただきます。その後、懇談形式で、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、武藤参考人にお願いいたします。

武藤参考人 武藤でございます。

 本日は、日本銀行の政策、業務運営につきまして、私の所信を述べる機会を賜り、大変光栄に存じます。

 私は、五年前の平成十五年三月に日本銀行の副総裁を拝命いたしました。当時、日本は、デフレスパイラルに陥りかねない危機的な状況にありましたが、その後この難局を脱し、緩やかながらも息の長い成長軌道をたどっております。この背景には、世界経済の拡大という追い風もございましたが、何より民間の方々の血のにじむような努力によって、企業の過剰債務や過剰設備など、さまざまな構造問題が解消した成果であると思います。日本銀行は、量的緩和政策を含めて極めて緩和的な金融環境を整えることで、こうした動きを積極的に支援してまいりました。

 しかし、現在、日本経済は、内外ともに多くのリスク要因を抱え、極めて重要な局面に立っております。海外では、昨年夏の米国サブプライムローン問題に端を発した国際金融市場の動揺が続いており、米国経済は減速傾向を一段と強め、世界経済のダウンサイドリスクが高まっております。一方、原油や穀物など国際商品市況は高騰を続けており、多くの国でインフレのリスクも存在しております。国内を見ても、改正建築基準法の施行に伴う住宅投資の落ち込みに加えて、エネルギー、原材料高などを背景とする中小企業の収益環境の悪化、生活関連物資の値上がりなど、リスク要因が少なくありません。

 このように内外の情勢が厳しさを増す中にあって、日本経済がさらに息の長い成長を続けていくことができるかどうか、日本銀行は難しい政策のかじ取りを迫られていると考えております。私は、日本経済には、現在の難局を乗り切り、成長を続けていく基礎的な力が十分あると思っております。ここ数年で企業の体力や金融システムの安定性は格段に高まり、経済の体質は強靱になっております。また、日本企業は高い技術力を持ち、グローバルな市場の中で確固たる地位を占めております。私は、日本経済の潜在成長力の強さを確信しており、その力を遺憾なく発揮できるように、適切な政策運営に努めてまいりたいと存じます。

 金融政策運営に当たりましては、内外の経済金融情勢に幅広く目を配り、先々をできるだけ正確に見通すことが基本となります。経済の不確実性が特に高い現状におきましては、一つの見通しだけでなく、上下両方向のリスク要因をつぶさに点検していくことが大切であります。リスク要因の中には、起こる可能性は必ずしも高くなくとも、一たん生ずれば経済に大きな損失を及ぼすものもあります。したがって、政策運営に当たりましては常に予断を排し、経済、物価情勢の分析を多角的かつ徹底的に行った上で、必要な政策は果断に実行していかなければなりません。このような綿密な情勢分析と機動的な政策運営を通じて、長い目で見た物価と経済の安定に貢献していきたいと考えております。

 また、私は、金融政策の運営に当たりましては、透明性の向上と国民、市場とのコミュニケーションが極めて重要であると認識しております。このような考えのもとで、国民の皆様の信認をいただくよう努め、日本銀行の独立性をしっかりと確保してまいりたいと思っております。

 また、金融市場や金融システムの安定を図っていくことは、日本銀行の重要な役割であります。今般の国際金融市場の混乱の際にも、日本銀行は、金融機関の実態把握や金融市場への資金供給を迅速に行うとともに、他国の中央銀行に対しても多くのアドバイスを行いました。日本銀行が過去の金融不安のもとで磨いてきたノウハウや、金融の高度化に対応しながら蓄積してきた知識は、日本にとっても、また世界にとりましても、貴重な財産であると思います。また、日本銀行は、銀行券の流通や日銀ネットの運行など日本の決済システムの中核を担っております。こうした業務が日々円滑に行われるようにしていくことも極めて重要であります。日本銀行がその目的を十分に達成するためには、金融政策の運営と並んで、信用秩序の維持、業務の円滑な遂行、そしてこれらを支える効率的な組織運営など、すべてを有機的に結びつけ、中央銀行としての総合力を発揮させることが必要であります。

 私は、これまでどのような職にあるときも、与えられた役割に全力を傾けるよう、みずからを律してまいりました。日本銀行にありましては、何より日本銀行法の理念に忠実に、また、ただいま申し述べましたような日本銀行の持つ総合力を十全に引き出し、日本経済に貢献していくことが私の任務であると考えてまいりました。日本経済が極めて重要な局面にある中で、これまでの経験を生かす機会をさらに与えていただくこととなれば、全身全霊を尽くして職務に邁進したいと考えております。

 どうもありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 次に、白川参考人にお願いいたします。

白川参考人 白川方明でございます。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。

 私は、平成十八年七月から京都大学の公共政策大学院で学生の教育に当たっています。それ以前は、日本銀行に三十四年間勤務し、最後の四年間は理事として、担当した金融政策、金融市場、決済システム等の面で総裁、副総裁を補佐するとともに、政策、業務の執行に当たりました。

 日本銀行の使命は、日本銀行法に規定されていますように、物価の安定と信用秩序の維持を達成することであります。経済が安定的に発展する上で、この二つは必要不可欠の基盤です。それだけに、日本銀行に負託された使命はまことに重大であると認識しています。

 仮に、副総裁を拝命することになりました場合、副総裁の果たすべき役割ですが、日本銀行在職中に総裁、副総裁の仕事の仕方を傍らで見ていたときの経験も踏まえて申し上げますと、副総裁の第一の役割は、総裁をしっかり補佐することであると理解しています。

 総裁の補佐という点では、金融政策だけでなく、中央銀行としてのさまざまな銀行業務の執行という面での補佐も重要です。銀行券が国民に安心して利用されること、さまざまな事故や災害が生じても決済が安全に迅速に行われること、金融システムの安定が脅かされるときには最後の貸し手として流動性を供給すること、そのために、考査等を通じて金融機関の状況を的確に把握することを初め、日本銀行は日本の金融システムを支えるためにさまざまな業務、実務を行っています。

 さらに、これらの仕事と並んで、組織運営の面での補佐の責任も大きいと認識しています。組織は人であり、このことは日本銀行についても全く同様であります。この点、日本銀行に長く勤務した経験を生かし、職員の顔を思い浮かべながら、モラールを高め、専門的能力が最大限発揮されるような職場づくりに努力するとともに、公的機関として組織運営の効率化に取り組む必要があると認識しています。

 第二の役割は、政策委員会のメンバーの一員として委員会での決定に貢献することであります。その際、日本銀行という組織に蓄積されている知識が決定の判断材料として適切に提供されるように配慮することが、私に期待されているというふうに理解しています。

 次に、金融政策面の課題について簡単に申し述べます。

 足元の日本経済を見ますと、米国経済の急速な減速、建築基準法改正の影響を受けた住宅投資の減少、輸入コストの上昇による企業収益や家計所得の圧迫といった景気下押し、ないし不確定要因が増加しています。このような状況のもとで、物価安定のもとでの持続的成長を実現していくことが金融政策の課題であります。

 言うまでもなく、経済の先行きは不確実性に満ちており、それだけに、いつも謙虚な姿勢で幅広く情報収集に努めることが求められています。判断に当たっては、金融政策の効果波及のタイムラグは長いこと、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係があることから、足元の動向だけでなく、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があると考えています。その上で、独立性と透明性という、日本銀行の政策運営を律する基本原則をしっかり踏まえて判断し、行動するように努力いたします。

 日本の経済、金融が大きな変化に直面している中で、私が日本銀行で仕事をする機会が与えられることになるとすれば、全身全霊を傾け職務に誠実に取り組みたいと考えています。

 御清聴をありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 伊藤隆敏です。よろしくお願いいたします。

 今回、日本銀行の副総裁に指名され、この場で所信を述べる機会を与えていただき、感謝しております。

 まず、日本銀行のあるべき姿、果たすべき役割について、私の考え方を述べさせていただきます。

 まず、世界の中央銀行の大きな流れの中での日本銀行という見方から、金融政策の目標について考えてみたいと思います。

 中央銀行の最大の責務は物価の安定であるということは、多くの国の研究者、政策担当者の間で認識が共有されるようになりました。この場合の物価の安定というのは、中期的に、つまり数年を平均するような概念で見て、インフレ率が、低いけれどもマイナスではない、一定の範囲内におさまっているという意味であります。さらに、中央銀行がそのように物価の安定を図っているというマーケット関係者の信認、期待が得られているということも重要です。つまり、物価の安定というのは、実行と期待の両方が重要であるということだと思います。

 私は、日本銀行法第二条にあります「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」ということは非常に適切な表現であると考えております。

 次に、日本銀行の独立性についてお話ししたいと思います。

 日本銀行は、一九九八年に施行されました日本銀行法により、法律的な独立性を付与されました。日本銀行は、金融政策を自身の判断に基づいて行うことができるという意味で独立性を与えられているということです。そこで下す判断について、十分に透明で説得的な説明を行う責務があるとともに、結果についての説明責任を問われると考えております。

 日本銀行の総裁、副総裁は、政府、マーケット、ひいては国民全員、あるいは海外の投資家や政策担当者に対して、日本銀行の金融政策の目的、経済状況(現状と予想)の認識、適切な金融政策手段を説得的に説明することが求められていると考えております。

 このように、独立である日本銀行は、透明性、説明責任をどのように改善するかという課題を負ってきました。この点について、これまで私は金融政策や中央銀行制度についての研究者として外から観察してまいりました。日本銀行は、一九九八年四月以来、透明性や説明責任について、さまざまな改善の努力を行ってきました。十年前に比べると、今の体制は大きく前進していると思います。しかし、まだ完成の域には達していないと思います。詳細な議論は時間の制約のため省きます。

 今後も、改善策を模索していくことになると思いますが、その議論に積極的に副総裁として参加して、よりよいものを目指していきたいと考えております。

 先ほど説明しましたように、中央銀行の法的な独立性の規定は、ほかの先進国及び多くの新興市場国でも、一九九〇年以降相次いで導入されました。その理由は、既に述べたとおり、透明性、説明責任、マーケットとの対話に有効という理由があったからであります。ただし、各国とも、それぞれの事情に合わせて金融政策の枠組みを考えているところはもちろんで、日本も世界の金融政策の実践と知見の長所を取り入れるに当たり、よりよい枠組みを探し続けるべきであると考えております。

 諸外国では、この透明性、説明責任、マーケットの期待の安定化のために、インフレ目標政策を採用するところが多くなりました。例えば、イギリスとスウェーデンでは二%プラスマイナス一、カナダ、ニュージーランドでは一から三%という目標を設定しています。オーストラリアでは、景気循環の期間を平均して二から三%としております。

 ヨーロッパの中央銀行であるECBでは、インフレ目標とは呼ばず参照インフレ率と呼んでいますが、これは、二%以下、ただし二%に近い数字としておりますので、やはりゼロ%は排除されていると思います。

 アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度及び金融政策の重要決定を行う連邦公開市場委員会、FOMCでは、インフレ目標は掲げておりません。しかし、研究者の間では、グリーンスパン議長時代より一から二%を目指しているということは市場に浸透しているという評価がなされております。

 したがって、先進国の中で下限がゼロ%の国はありません。また、インフレ目標の導入あるいは導入しない場合の透明性の確保については、各国、模索を続けているわけであります。日本も、先ほど御説明したとおり、同様の模索を続けております。

 一点、誤解があるといけないので、インフレ目標政策について補足させていただきます。

 インフレ目標政策は、インフレを引き起こすことを目的とする政策ではなく、インフレ率を、低位だがマイナスではない範囲に、安定的に抑える政策であります。決して、インフレ率をどんどん引き上げて、例えば五%以上にして、何らかの政策効果をねらうということは全く意味しておりません。

 次に、日本経済、世界経済の現状と金融政策の課題について、私の認識をお話ししたいと思います。

 世界経済は、アメリカのサブプライム問題に端を発した信用の収縮、その結果としての生産活動の低下、つまり不況のリスクの高まりという第一のショックと、中国、インドの需要増を背景とした石油を代表とする資源関連の価格の高騰という第二のショックに同時に見舞われております。一番恐れられているシナリオは、成長率の鈍化と一般物価上昇の組み合わせ、いわゆるスタグフレーションであります。

 実は、このような物価上昇を伴う成長率の鈍化に対しては、金融政策の対応が非常に難しいということが知られています。インフレを抑えようと金融引き締めを行えば、成長率をさらに鈍化させ、一方、成長率の鈍化を防ごうとして金融を緩和すると、インフレ率の上昇を加速させてしまいます。

 お認めいただけるならば、日本銀行の副総裁として、この困難な問題に真剣に向き合い、総裁、もう一人の副総裁、審議委員と協力しながら、最適の金融政策を検討していくつもりです。

 最後に、個人的な回顧について簡単に述べることをお許しください。

 これまで、私は経済学者として学界で評価されるような論文を書く努力をする一方、国際金融の分野では、国際通貨基金、IMF及び当時の大蔵省において、国際金融の政策的実務にかかわる機会を得ました。この経験のおかげで、各国の中央銀行、財務省の国際金融担当の幹部に多くの知己を得ることができました。

 二〇〇一年以降、学者の生活に戻っても、多くの中央銀行の国際コンファレンスや学者と政策担当者が対話するフォーラムに、著者または討論者として招待されてきました。

 アメリカ、ECB、イギリスを初め多くの国の中央銀行総裁、副総裁、さらに財務大臣、財務省国際金融担当次官の方々とは、国際会議の機会や外国出張の折に、個人的な面談を通じて定期的に意見交換を行ってきております。

 こうした努力の結果、IMFや大蔵省副財務官時代のネットワークを維持、拡大することができました。最近十年間は、現実の政策を前提とした理論、実証の研究を進めることができたと考えております。図らずも、今回、副総裁に指名されまして、もし就任することが許された場合には、この海外に築いたネットワークが大変仕事に貢献してくれるものと考えております。

 以上、日本銀行の役割、日本経済の置かれている状況につきまして、私の所信を述べさせていただきました。物価と景気動向の両方をにらみながら、今後の中期的な物価の安定を維持するという目標を掲げていくわけですが、金融政策のかじ取りは非常に困難なものになると考えております。この責務の一端を担わせていただくならば、全力を尽くして職務を遂行していく所存でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 皆様、御清聴ありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 白川参考人、伊藤参考人は、お呼びいたしますので、それまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十時十分懇談に入る〕

    〔午後零時三十分懇談を終わる〕

笹川委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 以上をもちまして日本銀行総裁及び同副総裁の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十一分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十時十分懇談に入る

笹川委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより武藤参考人の所信に対する質疑を行います。

 武藤参考人の所信に対する質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次五分程度ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 竹下亘君。

竹下委員 武藤さん、御苦労さまでございます。自由民主党の竹下亘でございます。

 日銀の総裁候補に指名をされまして、今、本当に大変な、日本経済を取り巻く状況、あるいはサブプライムローンを初めとして、アメリカがここ一、二年、変な表現ですが、のたうち回るんじゃないかなという心配もある中で、これは世界にさまざまな影響がある。そうした中で、日本銀行として金融のかじ取り、さらには、一方では、日銀法に定めてありますように、政府と協力をして経済運営、経済政策もしっかりやっていっていただかなければならない。

 この二つの使命を背負って、先ほど、世界は大変だ、いろいろなリスクがあるということをおっしゃいましたが、決意のほどを改めてもう一度聞かせていただけますでしょうか。

武藤参考人 所信でも申し上げましたとおり、我が国の経済は、これまでずっと緩やかな拡大基調をたどってまいりましたが、ここへ来て、一つは住宅投資の減速、それから国際商品市況高騰といったようなことを背景に、減速という状態にあるかと思います。加えて、海外におきましては、アメリカ経済、世界経済の減速懸念あるいは原油高等々のリスクもあります。そういう中で、今、日本経済は大変難しい局面になっておる、非常に不確実な、不透明な状況にあるというふうに思います。

 もちろん、政府におかれましてはいろいろな施策を考えておられると思いますが、日本銀行におきましても、まずは徹底した情勢分析をして将来を見通して、その上で、必要があれば機動的に果断な政策を打っていくということかと思います。

 日銀法には、政府と密接なる連携が必要だということでございますので、これはまた後ほど御下問があるかと思いますが、日本銀行の独立性と二つが同時に規定されておるわけでございまして、そのあたりを考えながら、十分に意思疎通を図りながらやってまいりたいというふうに思っております。

竹下委員 私は、日本銀行の総裁というのは、一つは、物価の番人、金利政策を行う政策者としての意味と、もう一つは、金融の日本の顔といいますか、だれがなるかということが非常に大きな要素であるというふうに考えております。

 それからもう一つは、今回のマスコミ論調あるいは与野党のさまざまな主張を見聞きしておりますと、武藤さん自身が財務省の出身であるということが、何かあたかも障害があるかのごとき表現をする方がいらっしゃいます。世界の中で、財務省あるいはそういう財務当局の出身であるから云々という議論は、私は寡聞にして今まで聞いたことがない。世界では、そうであってもいいし、そうでなくてもいいし、そのことにとらわれる必要はない、こう考えておる一人でございます。

 そして、マスコミあるいは市場関係者たちのさまざまな意見、あるいは学界、あるいは経済界も含めてでございますが、私、すべてにお会いしたわけではないんですが、意見を伺っておりますと、武藤さんを初めとする今回の総裁、副総裁の三人のトリオは一番いいのじゃないかという声が非常に強い。それから、政局を離れて、政局ごっこではなくて、きちっと日銀の総裁としてだれがふさわしいかという観点で判断をしろというマスコミ論調、市場の見方もございます。

 そういう状況の中で、財金分離の問題を含めて、こういう議論に武藤さんはどういう感じをお持ちになっているか、お聞かせいただきたいと思います。

武藤参考人 私は、確かに長い間、大蔵省、財務省に勤務いたしましたので、私が仮に総裁になった場合には財務省の意向が日本銀行に反映されるおそれがあるのではないかという御懸念かと思います。

 副総裁を拝命いたしましてから、この五年間、私は一〇〇%、日本銀行の立場で物を考えてまいりました。また、今後ともそういうことでやってまいりたいと思っております。

 そもそも、私もいろいろなポストに今までついてまいりましたけれども、その与えられたポストの職責、これに忠実に全力を投球するというのが私の考え方であります。いわば、その職のために全身全霊を傾けるというのが私の職業倫理といいましょうか、そういうものだと私は思っております。およそ、プロフェッショナルな方であれば、前のポストによって現在のポストの仕事を考えるというようなことは、通常、考えられないのではないかというふうにさえ思います。

 そういうことでありまして、私は、いろいろな御懸念があるかもしれませんけれども、この五年間の私の言動を見ていただければ、それはおわかりいただけるのではないかなというふうに思う次第でございます。

笹川委員長 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 先ほどのお話にも余り出てこなかったことを中心にお伺いいたしたいと存じます。

 日銀のこの間の超低金利・円安政策によって、福井総裁も、家計から三百兆円の利子所得が企業部門に移転をされた、こういうことを国会でもおっしゃっているわけですね。こういう長期間の超低金利政策で得をしたのはだれで、損をしたのはどの部門なのか、例えば生保とかあるいはいろいろな奨学金などのファウンデーションというようなこともあると思いますが、そのことについてまずはお答えいただきたい。

 そして、時間の関係で三問続けて質問いたしますが、資料を用意してまいりました。

 一枚目の資料は、一八九〇年から二〇〇七年までの日銀券あるいは日銀の保有する国債残高、これの名目GDP比でございます。一枚目の下の方は、名目GDPに対する国債発行残高でございます。そして二枚目は、消費者物価の推移、一八九〇年から、これも二〇〇七年までとってございます。三枚目は、日本の名目GDPとマネーサプライの関係でございます。

 これを参考にしていただいて、まず、この資料から見てとれるところは、財務省発行の国債発行残高並びに日銀券の発券残高と、日銀が保有する国債残高の対名目GDP比から見て、日銀のバランスシートは非常に肥大化、悪化しているというふうに私は考えておりますが、副総裁はどうお考えでしょうか。

 そして、こういう事態をもたらしている、つまり、一九四四年、敗戦の一年前とほとんど同じかそれよりも悪化したバランスシートというのは、日銀が二〇〇二年から行っております毎月一兆二千億円の、年間十四兆四千億円の長期国債の買い切りという、つまりボンドマーケットに対するある種の介入に原因があると私は思っておりますが、そういう見解に対してどういうふうなお考えを持っているのか。

 さらに、日銀の発券残高など、そして先ほどのCPI、消費者物価の歴史的な推移から見て、インフレリスクをどうお考えなのか。資料の三枚目でありますが、マネーを十年間ふやし続けても、名目GDPはたった〇・二%しか成長しなかった。このことをどうお考えになるのか。今後もマネーをふやし続けて、この十年間のようにデフレを続けるのか。

 あるいは、マネーの過剰な積み上げが極端なインフレのトリガーを引く、このリスクについてどうお考えなのか。つまり、一九四四年あるいは四六年、これはCPIが五一三%の物価上昇を来したわけであります。

 そして、もう一つ。副総裁が主計局長から事務次官で退任されるまでの間に発行された国債は、二百八十五兆円であります。この国債をどのようにこなしていくのかというのが、日本銀行というのは大変重要な役目があるわけでありますけれども、現時点で、先ほど申し上げました買い切り行為によって、債券市場の裁定による財政規律がなくなりつつある。つまり、ボンドマーケットディシプリンが全然きかない。長期金利は市場にゆだねる、そういう市場原理にゆだねるということが必要ではないのかと私は考えておりますが、いかがでございましょうか。

 もう一つ。アメリカ経済の問題が出ておりますが、アメリカ経済が減速、あるいは後退と調整が明白になった現時点において、日本の経済政策の基本を内需拡大、そしてその内需拡大の起点を家計部門に置かなければならないということになりますと、個人消費と住宅に代表される実物投資を促すという税制上金融政策が必要であると私は考えておりますが、いかがお考えでしょうか。

 以上の三点についてお答えをいただきたいと存じます。

武藤参考人 いろいろたくさん御下問をいただきました。順次お答えさせていただきたいと思います。

 まず最初に、このところの超低金利政策、これの功罪いかんということかと思います。

 確かに、二〇〇一年に量的緩和政策を採用して以来、五年間にわたりまして短期金利はゼロ%という状況でありました。それの副作用があるではないかという御指摘だと思いますが、それはおっしゃるとおりだと思います。

 まず第一に、預金金利が低位に据え置かれましたので、預金者がそれだけ利益を失っているのではないかということであります。第二に、さまざまな機関投資家の運用利回りというものが非常に低下しておって、そこに問題が生じております。そのほか、ゼロ金利ということになりますと、マーケットがなかなか機能しないといったような、そういう状況もございます。

 しかし、このことは、第二の御質問にもかかわってくると思いますけれども、デフレスパイラルのふちにあった、あのバブル崩壊から失われた十年という中からどうやって日本経済を立ち上げるかということに関連しているわけでございます。そういう状況の中で、金利を引き上げるという政策が本当に適切だったかどうかということだと思います。

 私どもは、この低金利によって、やはり企業家にとっては、企業金融に潤沢な資金を供給しましたので、煩わされることなく、専らみずからの構造改革に専念することができたというふうに思います。当時、過剰債務、過剰設備ということを抱えていた企業にとっては、それを専ら構造改革によって乗り切ろうとしたわけでございます。

 そういうことでございますので、低金利には確かにプラスもあるしマイナスもございますが、我が国経済の置かれた状況を考えた場合には、やはり低金利政策が必要かつ適切であったというふうに私は思っております。

 それから、この表、いろいろ意味するところが非常にたくさんありますので、全部お答えする時間があるかどうか、ちょっと私もわかりませんけれども、確かに、この最初の一ページにありますとおり、日銀の保有国債残高が非常に膨れ上がりました。ただし、これは、まさに量的緩和政策をやった結果であります。

 この中で、日銀券に対応する部分といたしましては、長期国債の買い入れ、そういう問題がございます。これは、この点についても一番最後に御下問がございました。この保有国債残高の中の大体四十数%が長期国債でございます。

 十年物の長期国債の買い切りオペをなぜやったかということでございますけれども、これは専ら金融調節上の必要性に基づいて、これは二〇〇二年に行われましたので、私が副総裁になる前の年でございますけれども、日本銀行の政策委員会で決定されたわけでございます。

 これが、国債を買い入れることによって長期金利を引き下げる、要するに、財政を支援するために行われたのではないかという御懸念かと思いますが、そういうことでこれを実施しているわけではありません。あくまでも、ここにありますとおり、日銀券が非常に大きく伸びておる、これは金融緩和の結果なのでございますけれども、これは日銀の、日銀券というのは負債でございますので、資産の方にどういう資産を持つかということが問題になるわけでございますけれども、そこには短期の資産と長期の資産の望ましいコンビネーションが必要なわけでございます。いわゆる成長通貨の供給のためには、長期国債を買うのが合理的だ、結論だけ申し上げますとそういうことでございます。

 したがいまして、仮に、日銀券が何らかの要因でもってもうちょっと下がってくる、残高が減ってくるということになりますれば、この長期国債の買い入れオペというものに対しても何らかの影響を与えるという可能性は十分あると思いますが、現時点におきましては、日銀の政策委員会の総意によりまして長期国債の買い入れを続けているということであります。繰り返しますが、あくまでも金融調節上の必要性に基づくものだということでございます。

 それから、私が次官時代に二百八十五兆円の国債発行があって、それに対して日銀は買い切りオペをやっているので財政規律がなくなりつつあるじゃないかということでございます。この点は、確かに非常に重要なことでございます。

 国債も国債市場において価格が決まる、マーケットによって決まるということでありまして、これに何らかの介入をすれば必ず後からしっぺ返しを受ける。要するに、利払い費がかさまないように長期金利を引き下げたらいいではないかというような御意見もありますけれども、そんなことをしたところで、それは結果的に長期的に見れば、経済が何らかの要因で悪化して、それは財政に不利に働くようになる。決して長い目で得にならない。マーケットにおける国債価格というものを尊重するべきだと私は思っております。

 そのためには一定の財政健全化というものが必要でありましょう。なぜならば、国債金利といいますものは、実質経済成長率プラスインフレ率プラス財政プレミアム、財政の信認の部分によって国債金利というものは動くわけでございますので、財政のサステーナビリティーというものを向上させ、国民が国債というものに信認を置けば、おのずと長期金利は安定し市場は安定する、そういうことでございまして、それを何か人為的に、日本銀行が買い取ることによってそれを操作するというようなことは考えてはいけませんし、また、そんなことは実現不可能なことだというふうに私は思っております。

 それから、アメリカ経済減速というのはおっしゃるとおりでございます。この問題は非常に深刻でございまして、時間の経過とともに事態は少しずつ悪化の方向にあるように私には思えます。一体この先どういう状態になるのかというのが非常に問題でございます。

 したがって、今は、アメリカ経済が減速しても、すなわちアメリカに対する日本の輸出が減少しても、その他の経済が非常に堅調でございます。BRICs等の経済が堅調でございますので、日本の輸出はそちらの方向に向かって伸びておりますので、全体としては、世界経済が成長し日本の輸出も順調でございますので、日本経済の最初の活力の起点であります輸出は今のところ順調でございます。ただ、これがいつまで続くかという課題がございます。そういう中で、内需に基づく経済成長ということが必要なことはもう御指摘のとおりでございます。

 ただ、個人消費なり設備投資なりをどう活性化させていくかということになりますと、税制というお話がありましたが、私は今の立場では税制問題に対してコメントすることは差し控えさせていただきますけれども、日本銀行といたしましても、この個人消費でありますとか設備投資の動向というものには十分注意してまいりたいというふうに考えております。

 すべてお答えできたかどうかちょっとわかりませんけれども、以上、お答えさせていただきました。

笹川委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 総裁候補、大変御苦労さまでございます。公明党の石田祝稔です。

 少々御質問を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず、日本経済の現状ということからちょっと最初に触れたいんですが、私も日本の株価をちょっと動向を見ておりますと、一昨年の二〇〇六年の末には株価は一万七千二百円、昨年末が一万五千三百円、それがもう今になりましたら大体一万二千円台、まあ一万三千円を挟んで前後している。そうすると、日本の株式が約五千円近く下がっている、こういう状況であります。

 こういう中で、サブプライムローンまたオイル等の問題もありますけれども、今後総裁になられた場合、どういうお考えで日本経済の立て直しに臨まれるのか、まずお聞きをしたいと思います。

武藤参考人 今の株価の状況、御指摘のとおりでございます。

 株価は、やはり日本経済の先行きを示す重要な指標でありますので、私ども大変関心を持っておりますが、なぜ一万八千円ぐらいまで行った株価が現在そういう一万二千円台の状態にあるかということについては、いろいろな見方が可能でございますけれども、やはり何といいましても、日本の経済の先行きに対してかつてほど確信を持てないということがここに反映されているというふうに言えるのではないかと思います。したがいまして、これに対して、株価を直接支えるといったような金融政策はできないわけでございますけれども、迂遠なようでも、日本経済をしっかりと持続的な成長軌道に乗せていく、ここがポイントかと思います。

 アメリカ経済がサブプライムローン問題などで非常に難しい混迷した状況にある中で、日本経済がそれに対してどういう影響を受けるか。これはもう間違いなく何らかの影響を受けると思いますけれども、その度合いがどの程度か、アメリカの混迷がどのぐらい続くのか、底がどのぐらい深いのか、それによって日本経済の状況も受ける影響も相当変わってくると思いますので、この状況を十分に、先ほど申し上げましたとおり、先の見通しまで含めて分析しながら、必要があれば適切なる金融政策を展開していくということかと思います。

石田(祝)委員 それでは、引き続いてお伺いをしますけれども、武藤総裁候補についていろいろと、今までマスコミにもたびたび総裁候補という形で出られて、そのときに言われるのは、必ず、財政と金融の分離の観点から、いわゆる金融政策の独立性が保てるのか、こういう懸念が寄せられているわけです。これは今の所信で、五年間一切そういうことはなかった、与えられた職務で前職を引きずって判断することはない、こういうことでありましたけれども、このことについて、もう一度、今後総裁になられた場合、独立性、これは独立性ということと政府と無関係でやるということ、これは私は別だと思っています。やはり連携を緻密にして、なお金利の判断については独立して責任を持ってやっていく、こういうことが財政と金融の分離だと私は思っておりますけれども、それについての御決意をいま一度お聞きしたいと思います。

武藤参考人 先ほど財政金融という立場からもお話し申し上げましたが、今御指摘の中央銀行の、日本銀行の独立性という観点からもう少し詳しくお話ししたいと思います。

 御承知のとおり、この日本銀行の独立性というのは、物価の安定及び持続的な経済成長という日本銀行の目的を達成するためには、中立的、専門的な観点から日本銀行が情勢を分析し、判断し、政策を運営していくということが長期的に見て日本経済のためになる、そういう考え方に基づくものだと理解しております。このことは、近代の歴史においてその教訓として確立された原則でありまして、日本のみならず、もう主要国ではすべてこの中央銀行の独立性ということは当然のこととして認識されておるわけでございます。

 日本銀行の独立性と同時に、日本銀行の金融政策も国全体としての経済政策の一翼を担うという立場でありますので、全体との関係というものは独断に陥ってはいけません。全体との関係を常に考えていかなければならない。そういう観点から、日銀法では、政府との連携、十分なる意思疎通ということが言われているわけでございます。これがワンセットだというふうに思っております。

 日本銀行の独立性というのは、各界の意見に耳をふさぐということであってはいけないと私は思っております。いろいろな意見があることに対しては耳を傾けて真摯に伺う、しかしながら、政策判断はだれの介入も受けることなく自主的に行う、これが独立性の本質だというふうに思います。

 その際の介入というのは、ひとり財政当局ばかりではございません。いろいろな形でいろいろな各方面から介入はあり得るわけでございます。それに対して同じようにやはり自主的に考えていくということが大事だというふうに思っております。

 この自主的に考えるということが、ただ単に気持ちだけの問題ではなくて、制度として私は確立されているというふうに思います。なぜならば、政策委員会の九人の会合において物事を決し、その議事要旨が一カ月後に公表され、透明な手続がとられている。要するに、だれが何を、影響を及ぼしたかということが外から見えるわけでございます。

 したがって、もし政府に意見があれば、今のシステムの中では日銀法上、政府の代表者が政策委員会に来て意見を述べることになっているわけです。その意見を述べて提案をできるんです。その提案に応ずるかどうかは政策委員会九人が議決で決めるということなんです。そういう手続が透明であるということがこれを保障しているわけでございまして、私は、もちろん、仮に総裁になった場合の独立性に対する信念というものは十分持っておると思いますけれども、同時に、制度的にきちっと保障されている。

 したがいまして、私としては、この独立性のために何か守りに入るという必要はもう全くないだろう、これは法律がそういう権限を与えていただいているわけですから。むしろ、それをもとに、どうやって日本銀行が積極的に行動して、国民の信認を得て、本当の、真の独立性をみずから獲得できるかどうか。これは人から与えられるものではありません。日本銀行として積極的に行動することによって獲得していくべきもの、そういうふうに私は確信しております。

笹川委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 先ほどから自律性、独立性というお話がありますが、私は、対外的な金融政策の自主性という点について考えをお聞きしたいと思います。

 少しさかのぼりますけれども、一九八五年九月のプラザ合意、この時点で日本はアメリカのドル高是正で協調する、協力するという立場で、五回にわたる連続的な公定歩合の引き下げを行いまして、五%から二・五%、当時は超低金利と言われたんですね。ドイツなどはこの低金利政策から脱却したにもかかわらず、日本はこの水準を二年以上続けた。これがその後のバブルの引き金になったということはもう明白だと思うんです。

 そのことについて、元日銀総裁の三重野氏は、金融政策面からもう少し早くブレーキをかけることができたら経済活動の振幅はもう少し小さなものとなっていただろうというふうに振り返っているわけです。

 そこで、お聞きしますけれども、一つは、バブル経済の背景に日銀の低金利政策があった、こういう認識がおありかどうか、これが一点。

 それから、アメリカとの協調ということが余り優先され過ぎますと、国内経済、国民の生活、これが犠牲にされかねないような事態も起こり得るわけでありますので、やはり国内経済に軸足を置く、そういう自律的な金融政策が求められるのではないかと思いますが、今後の対応をどのようにお考えかということであります。

 それからもう一つ、これは国債の増発と日銀引き受けの関係についてですけれども、財政法四条で赤字国債、同五条で日銀の引き受け原則禁止ということになっているわけですね。私どもは、これは戦前の教訓からこういうものができたと思っております。憲法九条の戦争の放棄とか戦力の不保持、これを財政面で裏づけるものだというふうに我々は思っておりますが、財政インフレの防止を図るという意味でも、これは非常に重要だと思うんですね。

 日銀引き受けの赤字国債発行原則禁止、こういうことについて、武藤さん、どのように御認識になっておられるか。

 それから、あなたが財務事務次官の時代に、二〇〇二年十二月のことですけれども、財務大臣が日銀に対して、国債を、一カ月当たりの買い入れ額を増額するように、そう申し入れた。そのときに、制約となっている日銀券発行残高の歯どめを停止してほしい、こういう要請をされたわけです。

 当時、日銀の側はそのまま受け入れなかったと思いますけれども、日銀の立場なら当然これは拒否すべきだと私は思いますけれども、当時は財務事務次官でありました。この要望が真っ当なものであったのか、それともそうではないと今思っておられるのか、その点についてお聞きをしたいと思います。

 最後に一点。事務次官のときに、社会保障の自然増を三千億円圧縮したということがありましたね。それが二千二百億円毎年削減ということにつながってきて、いわば消費低迷の一つの要因になったと私たちは思っておりますが、家計に軸足を置くということが非常に大事だというふうにおっしゃいましたから、内需拡大という意味で、従来のこういう社会保障自然増圧縮政策というものについて今どのようにお考えか、以上の点をお聞きしたいと思います。

武藤参考人 まず、日本銀行の独立性について、プラザ合意後の引き下げ、二年以上にわたって二・五%という超低金利政策をやったことがバブルの引き金を引いたのではないかという御下問でございますけれども、まず申し上げておきたいことは、このときは日銀法改正前のことでございました。したがって、大蔵大臣が日銀総裁の解任権を持っていた時代でございます。今はそういうものはありません。

 そういう中で、確かに日銀は政府の影響を受けやすい状態にあったということは、法律上の問題としてある程度言えるかと思います。しかし、それでも金利の決定権は政策委員会にあった、日銀にあったというふうに思います。後でいろいろ、ああすればよかったこうすればよかったということは、あるのだろうとは思います。それはあるのだろうとは思いますけれども、決めようと思えば決めることはできたのだと思います。ですから、それはなぜ決めなかったのかという問題についてもやはり十分検証する必要があるというふうに私は思います。

 それから、米国協調ということで利下げするということに対して、国民経済生活を犠牲にするのではないかということでした。

 それはおっしゃるとおりかもしれませんが、しかし、円の為替レートを余りにも安く置くことが世界経済を混乱させるという大きな問題があのときあったわけでございます。これは一つの政治判断として、やはり円レートというものを適正化すべきだということはありました。そこから円の切り上げが始められたわけでございます。

 そうなったときに、日本経済は輸出に依存するということが非常に困難になりますので、内需拡大が必要ではないかということでありました。この判断はやはり正しかったと思います。したがって、そのために、金融政策としては金利の引き下げ、それから財政政策としては公共事業の増額という財政出動を行ったわけでございます。

 そのパッケージが本当に必要であったか、どこまでが必要であったか、何かやり過ぎたのではないか、そういう微妙な問題はもちろんあるかもしれませんけれども、基本的方向としては、私は、そういう政策を当時とるということは、当時の状況の中では正しい判断であったのではないかというふうに思っております。

 それから、国債増発、日銀引き受けをやることについてどう考えるかということにつきましては、これは、国債の発行を直接日銀が引き受けるということはやってはなりませんし、法律上も明確に禁止されておりますので、やろうと思ってもできないわけでございます。しかし、マーケットから国債を買うというのは結果的に同じような影響があるのではないのかというのが御下問のポイントかと思います。

 しかし、金融政策というものは、マーケットにある金融資産を買ったり売ったりすることによって行うわけでございますので、アメリカがそうでありますように、最も安全な資産、すなわち国債をてことして資金量の調節を行うというのは、これはいわば当然の原則でございます。

 その際、考えておかなきゃならないのは、発行された国債をすぐ買い取る、マーケットをワンタッチのようにして買い取る、事実上引き受けと同じではないかというようなことが起こってはいけません。今の日本銀行の十年国債の平均利回りは五年ぐらいでございます。保有国債の利回りですね。したがって、マーケットに流通している国債を買ったり売ったりすることによって資金供給を行うということでございますので、私は、財政インフレという観点からは十分配慮した金融政策が行われているというふうに思っております。

 それから、二〇〇二年に財務省から国債の買い切りオペの増額を申し入れたのではないかということ。

 詳しい状況を今、ここでつまびらかに覚えておりませんけれども、あの当時、要するに失われた十年からの脱却、いわばデフレスパイラルのふちにあるということでありました。本当にもう、物価上昇率がマイナス一%とか、そういう状態にあったわけでございます。

 そのデフレスパイラルというような状況の中で、ありとあらゆることをやろうと、もうそれこそゼロ金利でも、こんなゼロ金利というのは大体世界に前例のない仕組みでございますけれども、そういうものでもやろうじゃないかというような状況の中でそういう議論が行われたわけでございます。正常な状況の中で真っ当かと聞かれれば、それは決して真っ当だというふうにまで言うことは難しいかもしれませんけれども、状況によっては異例なことをやるということも十分あり得るのではないかと思います。

 それから最後に、社会保障の削減の問題がありましたけれども、この問題は、社会保障制度というものができるだけ国民に手厚いサービスを提供するべきであるという観点からのみ議論をするのであれば、それはもうできるだけ多い方がいいということになるのかもしれませんけれども、サステーナブルな社会保障制度でなければ、結局はその社会保障制度が崩壊してしまうという問題があるわけでございます。

 したがって、自然増という形でどんどん増額を認めていくのか。現職の人々の給与水準が下がっているときに、年金レベルというものをいつまでも上げていくということが本当にいいのかどうか。そうすると、やはりバランスをとったような形で抑制していかなきゃならないのではないか。

 もちろん、財源の問題がありますので、財源が許されるのであるならば、必要な措置をできるだけ講じていくということがいいかとは思いますけれども、しかし、この問題が簡単ではないのは、財源の問題と社会保障サービスの水準がどうあるべきかということと、それがサステーナブルなものであるかどうか、こういうことを全部考え合わせたときに、当時、自然増三千億円の削減というのは、政治的に受け入れられた判断であったというふうに私は思っております。

 すべてお答えができたかどうかはあれですけれども。

笹川委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 先ほどの武藤さんのお話の中にも、実は今の佐々木憲昭さんの御質問で初めて出てまいりましたけれども、社会保障関連のことですね。お話の中では、高齢社会という、これは日本が世界にもう本当に先駆けて進行している状況ですから、そこについて余りコメントがなかったので、私といたしましては、これから日本が外需主導よりも内需拡大といった場合に、今、国民的関心事かつ不安事は、おっしゃった年金問題や医療や介護や、そこがどうしても安定していかないと、やはり国民の生活の安定、心の安定もないような時代になっているんだと思います。

 そういう中で、例えば日銀がお出しになるいろいろな物価の指標も、逆に、きょうの日経新聞でも、スパゲッティ等々のめん類も上がっているし、国民には物価は安定しているんだよと言われても、年金は減るわ、主食類は上がるわ、お金を預けても金利はないわ、どう考えても国民実感とは遠い指標で物が動かされている。仙谷さんがお聞きになった、金利が低金利に抑えられたことによる三百四兆の家計資産の喪失というのもその一端かとは思います。

 そこで、武藤さんが総裁になられるのであれば、ぜひお伺いしたいのは、物価と生活という、一見無機質に見えて、しかし、生活という非常にホットな、温かなものですから、そこにはどんなお考えをお持ちなのか、もう一度お願いします。

 続けて、それでは時間があるので、三つ投げさせていただきます。

 あともう一つは、洞爺湖サミットを控えて、G7に恐らく総裁となられる方はお出になることになると思うんですが、この環境要因というのも、これまでの私どもの社会が向き合ってこなかったとは言いませんが、今非常に大きなリスクファクターになって、環境が変動するゆえに、水の問題、飢饉の問題、食料、もうもろにかぶってくるわけです。

 総裁としてというと、いや、それはちょっとと言われるかもしれませんが、しかし、国際舞台に出ねばならないとして、この環境問題と金融政策ということはどうお考えか。

 それから三つ目は、日銀は各地に支店を置かれているわけです。私は武藤さんが前にお書きになったものの中で、地方の格差は、逆に言うと、いい方向に向かっている、是正に向かっているというふうな趣旨のものを、二〇〇六年でしたか、お書きであって、私どもから見れば、今地方は疲弊して、非常に状況はきついのではないかと思うわけです。もしもそれだけの認識のずれがあると、もちろん、中央銀行ですから中央で金融政策をしていくわけですが、しかし、日本全国のことということがどうインプットされているのか、ちょっと懸念を抱きましたので、この点、お願いいたします。

 三点です。

武藤参考人 まず、物価のコアCPIは、御承知のとおり、安定しておる、しかし、生活実感としての物価は非常に高騰しているんじゃないかという御指摘でございます。確かにそういう面があろうかと思います。

 今、コアCPIは、この一月が〇・八%のプラスでございました。その〇・八%のプラスのうちの、プラスのほとんどは食料品とそれからエネルギー、原油でございます。その他のものはゼロ%以下の状態であります。

 ところが、例えば、生活に密接に関係しているような商品、加工食品といったようなものは随分値上げが報告されておりまして、恐らく家庭の主婦の皮膚感覚としての物価というのは上がっている、インフレだというような気持ちがおありかと思います。

 私どもは、決してそのコアCPIだけを見て物価を判定しているわけではありません。物価というものをとらえるのは非常に難しい問題がありまして、いろいろな面で物価を見なければいけません。例えば、企業物価というのはかなり上がって、三%以上も上がっているわけでございます。それから、GDPデフレーターといったようなものも見る必要があるかもしれません。それから、今おっしゃったように、もうちょっと違う、皮膚感覚としての物価、例えば電気製品が、テレビが値下がりするといっても、数年に一度買うような商品、それと毎日買うような食品の、同じ物価の変動というのは、恐らく感覚としては違うだろうというようなこともあろうかと思います。そういうことを全部入れながら判断をしていくべきであるし、判断しているというふうに考えております。

 それから、もう一つは、環境要因が金融政策とどういうふうな関係があるかということでございますが、これは、一番端的に考えられるのは、環境問題そのものが直接金融政策ということは比較的少ないかもしれませんけれども、環境制約からくる諸物価の上昇、例えばエネルギーの、環境へ配慮したバイオエネルギーにするためにトウモロコシ価格が上昇する、砂糖が上昇する、そういう形によって物価が上昇するということは明らかにありますので、この環境問題というものに対して無関心になってはいけないというふうに思います。大いに関心を持って、しかし、環境問題という独立した重要性というものを認識しながら、金融政策との関連を考えていきたいというふうに思います。

 それから、地方経済につきまして、ちょっと御指摘がございました。

 実は、二〇〇六年ぐらいまでは、少なくとも支店レベルで聞く地方の経済というのは、少しずつ快方に向かっているということでございました。もちろん格差はございます。格差はありますけれども、方向としてはいい方向に向かっていた。もちろん、一部は、本当に公共事業に依存していたような地域は、公共事業削減によってマイナスの影響を強く受けていたということはあるのでございますけれども、そういう状況でありました。

 ところが、ごく最近は、いろいろな形で地方はまたちょっと調子が悪くなっているという話を伺っております。これは、日本銀行の支店長から支店長会議という形で定期的に話を聞いて、政策決定会合に生かしておりますし、政策委員九人が毎月のように地方に出かけて講演すると同時に、地方の実情を視察しております。そういう形で地方の状況を日本の金融政策に反映させていくという心構えは非常に重要だというふうに思っております。

笹川委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私も、最初に幾つか質問させていただきたいと思いますが、今の株価等を見ても、非常に日本の経済というのが不安定になってきているなということを強く感じるわけですね。例えば、一日五百円も値上がりしたり三百円も値下がりするという、非常に乱高下の激しい時代に突入しているのかなというふうに感じます。

 そういう中で、日銀の副総裁に平成十五年に就任されていらっしゃるわけですが、就任当時の五年前とそれから今現時点、日本経済というのはよくなっているのかどうかということを客観的にお答えいただきたいということ。

 それから、この任期というのがまた五年あるわけですね。この五年後のどういうビジョンをお持ちなのか、どういう日本をつくっていきたいのか。日銀の総裁として、やはり日本の経済にもたらす影響というのは非常に大きいわけですね。そこで、五年後のビジョン、どういうものをお持ちなのかということをお答えいただきたい。日銀の独立性とそれから政府の経済政策との関係、これも踏まえてお示しいただきたいなというふうに思います。

 これは非常に小問になるんですけれども、これは一番最初に、冒頭に質問してもよかったんですが、今はデフレなんでしょうかという、非常に短い問いかもしれませんけれども、このことについてお答えいただきたいと思います。

武藤参考人 御指摘のとおり、日本のマーケットさらには国際金融市場、非常にボラタイルといいますか、変動の激しい状況にあります。その原因は、言うまでもなくサブプライムローン問題でございます。しかも、そのサブプライムローン問題の帰趨というのは必ずしも見えておりませんので、その帰趨が見えればマーケットはそれをこなしていくということだろうと思いますけれども、そういう意味では、見えないためにますますボラタイルな状況が続いております。

 ただ、一点申し上げなきゃならないのは、マーケットは、結局は新しい経済状況の中で価格の均衡点を探していくということをしているわけでございます。一方が下がり過ぎたりまたは上がり過ぎたりするんですけれども、結局、結果はマーケット価格の調整を行っている。

 ですから、今、アメリカの住宅価格が非常に上昇して、それが崩壊してサブプライムローン問題が起こって、そこから波及してさまざまな金融機関がさまざまな影響を受けているということからくる新たな均衡点を見つけようとしているマーケットの動きでございますから、これは尊重しなければいけないと思います。問題は、それが秩序立って行われるかどうかということだと思います。そういうことが非常に重要だと思います。

 次に、就任した当時と今の日本とで、よくなったかどうかということでございます。

 私は、随分よくなったというふうに思っております。といいますのは、私どもが就任した直後の四月には日本の株価は七千六百円を記録しました。今日では、下がったといってもまだ一万二、三千円あたりをうろうろしているわけでございますから、そういう意味でもよくなったと思いますし、また、あの当時日本経済はどういう状況であったかというと、まさに企業は過剰債務、過剰設備、過剰雇用、バブルの後遺症そのものに悩んでいたわけでございます。それから、日本の金融システムはつい最近まで巨額な不良債権を抱えて、もうにっちもさっちもいかない状態でありました。私どもが就任した直後にりそなの破綻が起こっております。

 そういう状況の中で、金利の低い、非常に緩和的な金融環境をつくったということが私は背景にあると思いますけれども、少しずつ脱却してきている。今では、あの当時恐れられていたデフレスパイラルのふちにあるというふうにはだれも思っていないというふうに思います。細々としたデータを一々挙げませんけれども、やはり明らかによくなっているというふうに思っております。

 その次、今デフレかという話が最後にありましたので、ちょっとそれに関連した話になりましたので先にお答え申し上げますと、少なくともデフレスパイラルということではありません。価格の下落が賃金の下落及びさらに価格の下落を呼ぶという悪い循環が起こっているということではありません。

 しかし、デフレというのはどういうものかというその定義の仕方にもあるんですけれども、消費者物価というものはゼロとか〇・幾つとかという状態でありますから、これはかなり物価の安定した状態であって、ある意味では安定した状態であって、もうちょっと高い物価上昇の方が経済にとって心地よい変動ではないか、欧米並みの物価上昇があっても、物価というものが経済の体温をあらわすものだとするならば、ある程度上がった方が経済がむしろ活発だ、そういう意味で望ましいのではないかというようなお話があるかもしれませんが、しかし、そういう意味で、物価というものをどのように見るかというのは、先ほどちょっと非常に難しい問題だと申し上げましたが、少なくとも、今はデフレスパイラルの状態にはないというふうに考えております。

 それから、五年後の日本のビジョンをどう考えるかということであります。

 金融政策を担当する立場から日本の将来像すべてを語るというのはどうもいかがかと思いますけれども、私は、やはり物価安定のもとでの持続的経済成長を確保していくこと、これが日本銀行の唯一最大の使命であって、それをどうやって達成していくかということが基本になろうかと思います。

 その際は、やはり民間の活力というものが非常に大事だということであります。経済を支えるというのはやはり民間でありますので、日本銀行ができることは、その民間の活動をできるだけしやすくする、そういう観点から民間の活動を支えるということであります。場合によっては、民間が余りにも元気がないときは、元気を出せといって積極的な行動もとり得るわけでございますが、基本的には、私は、日本銀行は民間を支えるという形でやっていくべきものであるというふうに思っております。

 ビジョンなどという大きなものではないかもしれませんけれども、やはりそれが日本銀行にとっては最大の課題だという認識を持っており、そのために邁進したいというふうに思います。

笹川委員長 これにて各派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるように望みますが、時間も相当迫っておりますので、各党一問一分程度でお願いをしたいというふうに思います。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 それでは、委員長の方から指名いたします。自民党、お一人どうぞ。

根本委員 自由民主党の根本匠です。

 私は、最初に、確認的に御質問させていただきたいと思います。

 今までの議論の中でも、財政政策と金融政策、この関係が随分指摘をされました。いわゆる財金分離論という議論がありますが、私は、財金分離論というのは、私の記憶では、中央省庁改革等のときに、財政政策と金融監督、金融行政の分離というところで使われたのが財金分離論だったと思います。その点では、中央省庁改革でその点は解決した。

 問題は、日銀の金融政策の独立性の問題だと思います。日銀の金融政策の独立性の問題につきましては、日銀法三条によって、仕組みとしては独立性が確保されている。しかも、金融政策の決定は、政策委員会、合議制の機関でなされますから、私は、日銀の独立性は、制度上、仕組みとして担保されていると思います。

 それから、今までの議論にありましたのは、では、武藤総裁候補が適切かどうか。これは、中央銀行の司令塔として職責を全うできる人物か否かという観点で判断すべきだと私は思っております。欧米でも、財務当局経験者が就任している例は少なくありません。その観点から、先ほど議論がありました、副総裁の在任中に市場から国債を買い取る、一兆二千億円、これは財政政策のためにやっているわけではない、あくまでも日銀の金融政策調整上の必要性であると。私もそう思います。その意味では、五年間の総裁は日銀マンとして職責を全うされたと私は思います。

 こういう前提を踏まえて、要は、日銀の独立性ということ、日銀法の第三条、それから、先ほども議論がありましたが、全体のマクロ経済政策において政府と日銀が目標を共有する、この点、この観点が私は大事だと思いますね。

 マクロ経済政策については、私は、政府と日銀は目標を共有すべきだと思いますが、手段として、ではいかなる金融手段をとるかというのは、日銀はきちんと独立性を持って判断する、こういうことだと思いますが、この点についての日銀の独立性、政府と日銀のマクロ経済政策の共有の関係、この二つの関係をどう考えるのかということを最後に確認的にお伺いしたいと思います。

武藤参考人 財政、金融分離という言葉については、まさに根本委員のおっしゃるとおりの意味合いだと思います。それが、今日では、財政政策と金融政策の関係というふうに考えられているのだろうと思いますけれども、もともと財政政策と金融政策は、私は、水と油の関係だとは思っておりません。これは別に、財政政策が金融政策に影響を及ぼすとか、金融政策が財政政策を弱めるとか、そういうことを申し上げているんじゃないんですけれども、全く水と油だということではないはずでございます。だからこそ、政府との連携を密にしろ、十分な意思疎通を図れ、こう言っているわけでございます。

 その趣旨は、まず事実認識を共有しよう、今の日本がどういう状況であるかということに意見が一致するならば、おのおのが独立して政策を決めても、その方向はきっと一致するだろう、そういうことだと思います。その政策の方向性まで相談して決めろというふうには言っていないわけで、むしろそこは独立性ということによって担保されている。なぜその独立性を担保しなきゃならないかというのは、繰り返しませんけれども、これは長い歴史の近代国家の知恵というものだと私は思っております。

 そういうものでありますので、この五年間、私はいろいろな形でその実践の場にいましたが、日銀法を改正して十年、その間にその考え方は相当根づいてきているというふうに思います。昔はいざ知らず、今、財政当局から国債の金利を下げろなんというような話を出してきたことは、私の記憶ではありません。要するに、そんなことはできないということは財政当局がもう先刻承知だということだと思います。

 ですから、我々は、独立性ということについてはいささかも疑念を持たれてはいけない。これは徹底してやらなきゃいけない。そのためには今、御指摘のように日銀法という枠組みがそれを保障してくれているので、あとは、私が先ほど申し上げたとおり、我々の行動によって国民の信認を得ることによって、なるほど、独立しているんだなということを、自分で言うのではなくて、国民の側が言ってくれるというのが真の独立性だというふうに私は思っております。

中川(正)委員 では、私の方から、最後の確認の意味で質問をしたいと思います。

 先ほどの議論、独立性の話なんですけれども、一つはアメリカから、もう一つは政府からということなんですが、一つ、さっきのお話を聞いていてどうしても納得ができないというか、総論ではそのようにおっしゃるが、武藤さんが判断しておられること、それから、今これからしようとしていることの中にそれがどれだけ反映されて結果として出てくるかということが問われるんだと思います。

 一つひっかかったのは、バブルに日本がいた経過の中で、日銀には瑕疵がなかった、金利をアメリカと協調して抑えていったということは正しかったということが言われています。協調という意味では正しかったんだろうけれども、日本の国益をそのことによってどれだけ毀損したか、どれだけ我々がそれで苦しんだかということに対して素直な反省があって、その上で、新しい日銀としての独立性ということをやはり主張すべきなんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、アメリカとの関係、これからは外為の構成、ドルだけで持ち続けていいのか、ドルだけのつき合いでいいということであるのか、あるいは、ドルがこれだけ揺るいできたという形の中で、世界の基軸通貨というのを、日本としてどうあるべきなのだという主張をしていこうとしているのか、あるいはそれを具体的にどのような流れでつくり上げていこうとしているのか、そのことも聞かせていただきたいというふうに思います。その中で、アメリカとの関係をどう規定していくかということが出てくるんだろうというふうに思います。

 それと同じ意味で、さっきの国債の買い切りオペでありますが、これもどうしても私納得できないのは、ミスター財務省と言われていた武藤さんがおられたころに、さっき指摘があったように、二百八十五兆円からの、財政規律が完全に狂った形で財務省は歩んできた。その張本人が、今度は日銀の中でも、過去に五年間おられたその過程の中でこの買い切りオペをそのまま見過ごされたというか、それに対して、コメントなしで、仕方ないんだ、通貨供給量を上げるという目的なんだからそれとは関係ないよということだけでいいのかどうか。中身がわかっていたら、これはやはり日銀がしっかりとした考え方を打ち出すことによって、財務省の中のモラルハザードを逆にとめていく、いわゆる危機感を醸成するということも、やろうと思ったらできるんですよ、日銀は。それをしないで、結局のところ、協調という名のもとに低金利を結果的には許容している。そのことが財務省に対して、財務省の中では危機感が緩んでいる、喪失されているような結果になっているとすれば、これは日本の基幹的な、一番根本的なところでやはり間違っているんだろうというふうに思うんですよ。

 そういう意味合いで、これからもそういうスタンスでいかれるのかどうか。これは、財務省に対して言うべきことをやはり日銀は言うべきなんだと思うんですよ、それでいいんだ、それでいいんだと言っているんじゃなくて。それでいいんだというのは仕方ないんだという、そんな意味に受け取れたんですけれども、そういう意味での独立性、これが必要なんだと思うんですが、見解を聞かせていただきたいと思います。

武藤参考人 仕方ないんだというのは、どの部分についてでございますか。

中川(正)委員 それは、供給量をふやしていく意味ではこれがベストな方法なので、財務省のことは関係ないんだと。

武藤参考人 国債の長国買い切りオペのお話でございますね。

 いろいろな方面からのお話でございますので、いろいろお答えの仕方も、どこからお答えしたらいいかということでございますけれども、バブルのときに日銀に責任がなかったということじゃなくて、責任があったではないかということについて、私は、日銀に責任がなかったということを申し上げたつもりは全くありません。

 しかし、あの利下げというのは、あのときの議論としてはどうだったんだろうかと。今、後からいろいろ言えるんですけれども、あの円高にだんだん振れていったときに、内需拡大をどうしたらいいか。そのときに財政出動をたくさんいたしました。これも政治の判断でございます。その結果、大量の国債発行を我々は抱えてしまった、それはそのとおりだと思います。しかし、それではそれをやらなかったらどうだったのかということになれば、私は、そう簡単にあの政策が間違っているというふうには言い切れないということを申し上げているわけであります。

 例えば、確かに私が財務省にいたときに、小渕政権のもとで大量な財政出動がなされました。世界一の借金王というようなことを総理みずからおっしゃったというあのときでございます。私は確かにそのとき財務省にいました。

 しかし、あの財政出動というのは、一体それではどういうふうに考えたらいいのか。大きな政治の判断の中でこれが必要だということでございました、政権発足直後にそういう財政出動が打ち出されたわけでございますから。そういう中で、しかし、どんどんそういうことをやっていっていいとはだれも思っていなかった。だから、効果が上がったらまた再び国債発行額に三十兆円枠をはめようと言ったのも、これも私が担当したときでございます、これは小泉政権でございますけれども。今、アメリカでも、サブプライムローンのときに戻し減税だとかさまざまなことをやって、財政赤字が一挙にここで膨らみます。だけれども、それをまた必ず、恐らく、成果が上がればもとへ戻すという努力をされるでしょう。

 結局、財政再建というのは、私は、必要であることは間違いないんだけれども、一つは継続的な作業であって、ずっととにかく急激に進めていけばいいというものではない、経済との関係を見ながら継続的に進めていかなければならない。それから、やはりどうしてそういうことになるのかということをわかりやすく説明していかなくてはならないということだろうと思います。

 そういう意味で、透明性と継続性というのが財政再建のやはり基本だと私は思っておるんでございますけれども、そういうことに対して中央銀行として物を言うということは、これは大いにやる必要があるし、やっていきたいというふうに思います。

 しかし、国債発行が幾らでなければならないとか、ここは増税しなきゃならないとか、そこまで中央銀行として踏み込むことは、これはむしろ適切なことではないというふうに思っております。

 国債買い切りオペについて、また同じ御下問でございますけれども、結局繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、この大量な日銀券、これはかなり歴史的に見てたくさん残高があるわけでございます。この日銀券はもちろん変動するわけでございます、日銀券の発行残高というのは。しかし、根雪のようにあるもの、これに対してどうやって日銀は供給するのか。これは、バランスシートの負債と資産との関係になりますので、日銀券がふえれば資産をふやさなきゃいけない。そうでなきゃ日銀券はふえません。そのときに、長期国債でもって根雪の部分に対応するようにやるというのが我々の基本的考え方です。私は成長通貨と申し上げましたけれども、そういうことでございます。

 それで、もちろん、変動する部分は短期の国債でもって柔軟にやっていかなければなりません。そういうのが基本でございますから、この買い切りオペは、もともとずっと六千億ですか、月額六千億、日本銀行は買い切りオペをやってまいりました。それを二〇〇二年に倍増したわけでございます。倍増したのはなぜか、今なぜそれを続けるのか、六千まで戻したらいいじゃないかという御議論かと思います。

 それは、今まだ国債発行残高が非常に歴史的趨勢線よりも上の方に乖離した状態にあるわけです。これは、御承知のように、先ほど絵がありましたけれども。そういう状況の中では、ある程度、長期国債を買うことによって資金供給をしていくというのが必要なことでありまして、日本銀行が保有している長期国債は、ちなみに、アメリカのフェデラルリザーブよりも全体の資産に占める割合が少ない。アメリカは六割ぐらいが長期国債でございます。日本は今五〇%弱でございます。そういうことを考え合わせますと、日本銀行のやっていることが、この買い切りオペが財政支援だというふうには我々はもう全く考えていないということでございます。

石田(祝)委員 済みません、再度御質問させていただきます。

 日銀副総裁としての五年間に量的緩和解除、ゼロ金利解除、こういうことをやられたわけですが、その中でも、日銀法の第二条の日銀の目的は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と。私は、この間、物価はある意味でちょっと下がりぎみで安定をしている、そういう中で、十分ではないけれども、経済も拡大基調で来ていたと。これを考えると、やはり副総裁として五年間、私は相当頑張っていただいたんじゃないかという気もするんですが、自分の評価というのはどうでしょうか。それを最後にお聞きしたいと思います。

武藤参考人 自分で自分の評価というのは、ちょっと私もできませんけれども、この五年間をどういうふうに総括するかというような御質問であるならば、我々が就任したときは、株価の七千六百円に象徴されるような、そういうデフレスパイラルのふちにありました。それに向かって、量的緩和ということを、巨額に積み重ねてまいりました。これは、非伝統的といいますか、今までやったことのないやり方であります。ある程度それが効果を上げたと私は思っています。

 繰り返しませんけれども、企業部門におきます構造改革というものを促進し、一般の方々が、ゼロ金利というものは相当長期に続くんだなというふうに認識したものですから、金利は非常に安定的になりました。その結果、先ほどの損失という問題もありますけれども、経済活動には好影響を与えたことは間違いありません。

 その結果として、二〇〇六年には、その異例な量的緩和から脱出することができるようになりました。これも画期的なことだと思います。その脱出した後、〇・二五%ずつ二回利上げができました。まだ、〇・五%という金利水準は極めて緩和的な環境であって、そういうものが必要な程度の経済の実力であるというのも事実であります。したがいまして、もっともっと経済成長を確実なものにしていけば、やがてこの金利も、それと平仄を合わせて上がっていく必要のあるものだろうというふうに私は思っております。

 問題は、経済の回復の度合いと金利のレベルというものが平仄をとっていないといけない。これが平仄をとれずに上がったり下がったりするということは、必ずひずみをもたらすということだと私は思っています。

笹川委員長 これにて武藤参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 武藤参考人、長時間大変御苦労さまでございました。ありがとうございました。退席いただいて結構でございます。

 なお、引き続き白川参考人の質疑に移るわけでありますが、五分ほどトイレタイムを設けますので、ひとつ御利用いただければと思います。

    ―――――――――――――

笹川委員長 休憩を解きまして、引き続き委員会を続行いたします。

 次に、白川参考人の所信に対する質疑を行います。

 白川参考人の所信に対する質疑は、各委員が自由に質疑を行うことといたします。質疑のある方は挙手をお願いいたしたいと存じます。

 なお、時間が相当切迫しておりますので、短目にひとつお願いいたします。

清水(清)委員 自由民主党の清水清一朗でございます。

 ちょっとお伺いしたいと思います。

 先ほど来、いろいろな意見が出て、質問もあったんですけれども、物価の影響に対して、金融政策で金利政策をとられる。先ほど来のお話ですと、経済の体温はまだ上がっていないけれども、外から、エネルギーと食料についてのコストという形で上がってきている。外気が上がって自分の体温は上がっていない状態ですけれども、この段階でもう金利政策をとられるのかどうか。あるいは、その政策について、先行的にとる気持ちがあるか、遅行的にとるか。つまりは、二%の物価インフレに近い部分についてはもうちょっと待って、少し上がるまで待とうというふうにされるのか。それとも、先に抑えてしまって、これには、例えば、一%金利が上がれば国債の価格の評価が下がってまいります。日本の各金融機関が持っているのが百兆とか百二十兆持っているとすれば、かなりの部分評価が下がってきて、六〇%自己資本を下げなきゃいけない。そうすると、BISの規制によって資産を圧縮しなきゃいけない。そうなると、貸し出しも下げなきゃいけない。こういったものの政策的手当てが必要になろうと思いますけれども、そういうことを考えた上で、物価に対する金利政策、遅行的か先行的か、そんなことをお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金融政策の目的は物価の安定でございますけれども、その物価の安定と申しますのは、これは中長期的に持続可能な、そういう物価の安定だというふうに理解しております。これは過去二十年間の日本の経済を振り返ってみましても、そのとおりでございます。

 例えば、バブルのとき、一九八七年度、八年度、大変景気は強かったわけですけれども、あのときの物価上昇率は、たしか〇・四と〇・五だと思いますし、逆に、バブルが崩壊した直後、これは景気が急速に悪くなってきましたけれども、物価の方は上がったわけでございます。

 現在、アメリカにおいて、景気は急速に悪くなっていますけれども、物価の方は今上がりかかっている。物価の安定というのは非常に大事なんですけれども、しかし、これは、足元の物価だけではなくて、この物価の安定の状況が長続きするかどうかということを入念にチェックする必要があるというふうに考えます。

 その点で、今、清水委員から御質問のございました二%ということでございますけれども、物価の上昇率について、長い目で見て安定しておるという数字をある程度イメージする必要はもちろんございます。しかし、それを固定的に考えていくということは必ずしも適切ではなくて、これが持続可能かどうかということであると私は思います。これは一般論でございます。

 では、この先どうなのかということでございますけれども、私、日本銀行で三十四年仕事をやりまして、特に最後の二〇〇〇年以降はずっと金融政策の仕事を担当しておりますが、そのときの経験も含めて見ますと、経済の先行きというのは本当に不確実であって、やはり人間の知識というのは限りがある、そこは謙虚に考えて、常に虚心坦懐にいろいろな情報を、これは内外もそうですし、金融と実体、ミクロ、マクロ、いろいろな情報を集めて、その上で、しかし最終的には判断をしていくということで、これは予断を持って考えてはいけないというふうに思っております。

 私、今大学で教師をやっておりますけれども、大学というのは、そういう意味では、経済のアップ・ツー・デートなことについて最も遠いところだと言うと大変失礼な言い方かもしれませんけれども、反面、日本銀行に私がいたとき感じましたことは、日本銀行の最大の強みというのは、金融市場、金融機関、それから実体経済、ミクロ、マクロ、さまざまな情報が入ってくる、それをもとに自分たちとして最大限努力をして、経済の先行きがどうかということを判断していくということであります。

 したがって、私、今この時点で先行的に金利を上げた方がいいとか、あるいはそうではないということについて、今特定のポジションを持っておりません。私は、もし指名されたら、そういう日本銀行の中に蓄積されている情報、これから入ってくる情報、それから政策委員会での議論を踏まえて、そこで自分としての判断を固めていきたいというふうに思っております。

奥野委員 きょうは三参考人に来ていただいたわけですが、経済界、マスコミからのお三方の評価は大変高いものがございます。

 世界的な金融システムが安定感を欠いている中で、日銀総裁、副総裁の任命が世界から注視されているわけであります。そうした中で、日本銀行の課題というか使命は、物価の安定と経済成長ということになるかと思います。

 政府は今、デフレの脱却というのを政策目標として掲げております。先ほど武藤さんは、今はデフレスパイラルではないとおっしゃったんだけれども、政府はまだデフレだという認識を持っているわけでありますけれども、このデフレからの脱却を目指して、例えば、これは私は経済界で仕事しているものですから非常に気になるのでありますが、デフレの脱却という場合には、物価の上昇率がマイナスではない低い水準というふうに考えても、大体一%から三%だろうと思います。

 その物価の安定水準を達成していくのに、任期のどのぐらいを使ったらできるというふうにお考えになっているかということを、もちろん日銀だけで仕事ができるわけではない、政府との連係プレーもいっぱいあろうかと思いますけれども、独立性を担保しながら連係プレーをすることの中で、できるだけ早くその物価の安定水準に達するのにどのくらいの時間がかかるものかというのをちょっと教えていただければと思います。

白川参考人 デフレでございますけれども、デフレをどう定義するかということにかかってまいります。物価の下落という意味でデフレを言う人もいますし、資産デフレを言う人もいますし、それから景気が悪くなることをデフレと、いろいろな定義がございますし、それから、物価についても、今、消費者物価、企業物価、GDPデフレーターあるいはGDPの内需デフレーター、それぞれ動きが違っております。

 私自身は、過去の経済の歴史を見てみますと、なぜ我々がデフレを心配するのかといいますと、例えば、典型的には日本の昭和初期の金融恐慌、あるいはアメリカの大恐慌もそうですけれども、物価の下落が経済活動の収縮につながっていく、これが、我々がいわゆるデフレあるいはデフレスパイラルという言葉で恐怖をしている、そういう事態でございます。そういう意味のデフレスパイラルの危険は、先ほど御質問にもございましたとおり、今は既にもう過ぎ去ったというふうに私は考えます。

 現在、物価の基調でございますけれども、確かに一時的にいろいろな変動はございますけれども、しかし、基調としては少しずつは上がってきているという感じはいたします。まだ数字的には、消費者物価で見ましてゼロ%台でございますけれども、しかし、体温的には少しずつ改善しているということでございます。

 そういうもとで、では、どれぐらいの期間を設ければ目標の数字として想定する数字に近づけるのかという御質問でございます。

 この問題を考えますときに、先ほどの話と若干繰り返しになりますけれども、短期間に、経済のほかの条件を切り離して物価だけに着目して、この物価を上げていくということになりますと、これは経済が結果として不安定になってくるという経験を我々は過去二十年にした。これは、景気がよくなるときでも悪くなるときでも、ともにそうでございます。

 現在、日本の物価上昇率がほかの国に比べて低いということ、こういう状況は、現実的に低い物価上昇率が続くもとで、先々の予想インフレ率といいますか、そうしたものが低くなっていって、結果として物価も低いということでございます。こういうふうな事態になるのは、これは急にこういう事態になったわけじゃなくて、かなり長い時間をかけてこういう状況になったわけでございます。ということを考えますと、この状況は、これがまた上がっていくのに、多分、同じように短い時間ではなくて、やはり長い時間の曲折を経てだんだんにまた上がっていくということだというふうに思います。

 そういうふうに考えますと、私自身は、今経済全体の需給ギャップが、かつてのように大きなマイナスということではなくて、今人手不足も言われている、その中で需給ギャップは基本的には解消されている、そういう中で先々経済が持続的に成長していく、そういう経路に今この物価があるかどうかということを点検しながらやっていくということだと思います。

 そういう意味で、任期の何年を使ってということについて、数字でもって正確に総裁の任期は五年ですよというふうに固定的な数字で申し上げることは、多分、もしその数字だけに着目すればあるいは可能かもしれないけれども、しかし、最終的に日本銀行法が求めていますことは、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということで理解しております。

 そういう意味で、繰り返しになりますけれども、数字でもって五年というふうにはっきり申し上げることはできませんけれども、しかし、その程度の長期的な時間の中で、物価の安定と持続的な成長が実現するような経路に乗せていくということが中央銀行の大きな使命だというふうに考えています。

中川(正)委員 二点、お伺いをしたいというふうに思うんです。

 一つは独立性なんですけれども、さっきもその議論をしたんですが、私は、日本がバブルに入っていく過程の中で、日銀に独立性が保たれていなかったから、いわゆる政策の失敗によって引き金が引かれたというふうに思っていたんですが、武藤さんの考え方は違うようで、あれは仕方なかった、あれ以外の方法はなかった、こういう答えだったです。

 それと同じような形で、白川さんにも、長いそのキャリアの中で、日銀の独立性というものがこれまでどういう形で保たれていたのか、あるいは保たれていなかったとすれば、それは例えばどんなケースがあったかということを改めて聞かせていただいて、その上でどういう運営をしていきたいかということを聞きたいと思うんです。それが一つ。

 それからもう一つは、さっきの日本の景気のことにもかかわるんですが、物価について、例えば内需あるいは需要ということを牽引にして物価が上がっていくということであれば、それで一つ納得するところだろうと思うんですが、現在の状況というのは、海外を中心にして、コスト高あるいは金融の中でのアメリカの揺らぎというか乱れというか、そういうものを要因にしてコストが上がってくるという形の中で物価の変動が起きてきて、かつ、では需要はどうかといったら、内需については逆に下がっていく可能性もある、そういう運営だと思うんです。

 それを、日銀がこれから金融政策をしていくのに、どういう手段で克服していくのかということですね。よく言われるスタグフレーションの可能性があるということの中でそれをどう克服していくのかということ、これを聞かせていただきたいと思うんです。

白川参考人 第一問の独立性でございます。

 独立性というのは、中央銀行の金融政策を律する非常に大事な原理だというふうに思っています。

 先ほど御質問のございましたバブルのときを考えてみますと、バブルのときに、私は当時は入行して十数年のまだ中堅に満たない、そういうポジションでございましたけれども、金融政策を担当する局の中堅におりまして、そのときの思いを考えてみますと、足元の経済は非常に過熱状態になってきた、資産価格も上がっている、信用もマネーサプライも膨張する、景気も強い、しかし物価上昇率は非常に低い、ゼロ%だ、そういう状況でございました。

 そういう中で、金利を引き上げていくということについて、これはなかなか世の中的に支持が得にくかった。それから、単に世の中の支持が得にくかったということだけではなくて、日本銀行自身もそれに対して、確かに景気はこれだけ強いけれども物価は上がっていない、そうすると、その中で金利を引き上げることについて非常に大きな自信を持てないという気分も一方でやはりどこかにあったんだというふうに思います。

 そういう意味で、先ほどの独立性の問題に返りますと、日本銀行に独立性がなかったから金融政策が失敗したんだというふうに日本銀行の人が言うことについては、私自身は余り好きではありません。日本銀行の人は、仮にいろいろな原因があったとしても、自分たちはこういうふうに思うということについて、これはもちろん、リスクを背負って判断をするわけですけれども、しかし、その上で自分たちが正しいと思う政策を実行していくということが私は必要だというふうに思います。

 それでは、その独立性はどうでもいいのかというと、もちろんそうではございません。独立性というものが本質的な意味でしっかり担保されている、これは非常に大事なことでございます。

 旧法のもとでは、日本銀行の独立性に関する規定はあいまいでございました。ある条項を読みますと、日本銀行に金融政策の独立性がある、例えば公定歩合の変更について独立性があるような記述もございます。しかし、そうでないように読める記述もございます。そういう意味で、最終的に責任の所在が必ずしも明確ではないという体制だったというふうに思います。

 そういうもとですと、日本銀行自身も最終的には責任感を感じないという無責任な体制になってしまう危険性はございますし、それから、日本銀行外の組織から見ましても、自分たちもその決定にかかわっているという感じになる。つまり、最終的に責任の所在がはっきりしない。そういう意味で、独立性というのは、最終的にいろんな意見を聞いた上でだれが決定するのかについてはっきりさせる制度だというふうに思います。

 そういう意味で、私は、改正日本銀行法のもとで、日本銀行の金融政策の目的を、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資すると明記した上で、この金融政策について日本銀行の自主的な判断は尊重する、これは大変大きなことだと思います。

 そのもとで、では実際に日本銀行がどういうふうに政策判断をしていくかに当たっては、これは先ほどの所信表明で申し上げましたけれども、常に謙虚な気持ちを忘れたらいかぬ、しかし最終的に、もちろん経済の先行きはわかりませんけれども、これは最後は判断をしないといけませんから、そこはリスクを背負って判断をし、その結果について説明をしていくということだというふうに思います。お答えになったかどうかわかりませんけれども。

 二点目の物価でございますけれども、今起きていますことは、石油の値段が上がる、つまり、物価が上がる方での、専門的な言葉で申し上げますと供給ショックでございます。これが起こりますと、先ほど先生がおっしゃったように、スタグフレーション的な状況になりやすいわけでございます。しかし、この供給ショックという面で見ますと、わずか数年前まで日本で何が起きていたかというと、逆の供給ショック、つまり、中国を初めとして新興国が急速に成長してくる、そこから安い物が入ってくるという逆の供給ショックが起きたわけでございます。

 その向いている方向が違いますけれども、足元は物価が上がる方向、数年前は物価が下がる方向でございます。そういうコスト面の変化に対応して金融政策を短期的に、物価だけを重視してやっていきますと、結果として経済の変動が、いいときはよくなり過ぎて、悪いときは悪くなってくることになりますから、そういう意味では、最終的には経済と、景気の動向と物価の両方を見ていくわけですけれども、供給ショックが発生するときには、その供給ショックの性格をよく見ていく必要があるというふうに思います。

 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、石油について。

 これは確かに、石油が上がるという方だけを見れば、実質所得を下げて景気を下げるという要因でございます。しかし、なぜ石油が上がっているかということを考えますと、これは、中国を初めとして新興国が大変に成長をしている、その結果、需要が爆発的にふえている、その結果、石油製品についても食料品についても上がっている。そういう意味で、供給ショックと呼ばれているものも、実は一方だけ見ると、多分全体の絵を見逃してしまう。

 ここも繰り返しになりますけれども、私は今、大学の教師で、つぶさにこの状況を見ているわけでございません。そういう意味で一般論として申し上げますと、いわゆる供給ショックについても、その背景も含めてよく考えて、しかし最終的には、これは抽象論でございますけれども、物価の安定を通じて経済の健全な発展に資するというふうに判断していくことだというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 簡単に、二点お聞きします。

 一つは、景気の動向ですけれども、アメリカ経済が減速したもとで、輸出依存型の従来の成長というのはかなり限界に来ているというふうに言われています。内需拡大という場合、どこに重点を置くべきか。設備投資ですとか公共投資ですとか家計消費、あると思いますが、その重点の置く置き方といいますか、どこに軸足を置くか、この点の考え方をお聞きしたい。これが一つ。

 それから二つ目ですけれども、福井総裁があるファンドに出資をして個人的な利益を上げたことが大変大きな国民的批判を浴びました。国会でも議論になりました。この問題についてどのように受けとめておられるか。それから、個人的な資産の運用についてどうあるべきか、日銀の総裁、副総裁として。そのお考えをお聞きしたいと思います。

白川参考人 第一問でございますけれども、今後、需要項目としてどれに期待すべきかということでございます。

 経済、GDPの六割は、これは個人消費でございます。設備投資が伸びていくことも、最終的には消費がふえていくという期待があって初めて国内での投資も活発になるというもので、そういう意味で、需要項目に占める大きさからして、当然、消費が堅調に伸びていくという経済じゃないと、やはり経済は持続的に成長しないというふうに思います。

 ただ、このことは別に設備投資とか外需が重要じゃないということを意味するものではありませんけれども、しかし、経済の基本は、やはり消費者が将来の所得に対して希望が持てて、そのもとで消費がふえていくというのが基本的な原理だろうというふうに思います。

 それから、福井総裁のファンドへの出資の問題でございます。

 福井総裁が、民間の時代でございましたけれども、村上ファンドの村上氏の投資哲学に賛成をされて当時投資をされたということでございます。これ自体は、当時の日本銀行の規定に照らして違反であったということではないというふうに認識していますけれども、しかし、結果として日本銀行に対する信頼が低下をしたということは事実だというふうに思います。それは、日本銀行に長く勤めた者としては残念であったというふうに思っております。

 総裁、副総裁の資産の運用についてどうあるべきかということでございます。

 これは、私がもう退職した後でございますけれども、外部のコンプライアンス専門官をお招きして、しっかりとした服務準則を定めたというふうに聞いていまして、私自身もホームページでそれは読みました。仮に私が選任された場合には、その服務準則に従ってすべて運用するというふうに理解をしております。

 以上でございます。

石田(祝)委員 先ほどの所信のときに、リスクに目配りをしなきゃいけない、こういうお話が述べられたと思いますが、具体的にどういうものを想定されているか。これだけを。

白川参考人 繰り返しになりますけれども、今、私自身、金融機関の状況についてつぶさに情報を持っているわけではありませんから、一般論になります。

 今、一つは、アメリカの金融市場、これは、きのうもそうですけれども、大分緊張感が強くなってきているという感じがいたします。そういうアメリカの金融市場、今リスクを再評価しているところです、これが景気の実態にどういうふうに影響を与えるか、それがまた回り回って金融機関の状況にどういうふうに影響を与えるか。

 これについて、日本の経験を踏まえて言いますと、一たんそういう負のスパイラルになりますと、なかなかこれは大変ですけれども、そういうリスクは一方で十分認識するようになる。しかし、他方で、今アメリカで、金利を下げてくる過程でインフレ期待が強くなってきて、なかなか思ったほどに長期の金利が下がらないということも起きております。そうすると、今度は、インフレという面からして、金融政策の効果も発揮しにくいという状況も今出かかっておるわけでございます。

 それから、日本についていいますと、経済の実質的な成長率、潜在成長率と比べますと、今、実質の短期金利は非常に低い状況でございます。金利というのは経済の体温でございますから、体温と離れて低い金利がずっと続くと、これはこれで、一方でいろいろなポジションが積み上がっていくということにもなってきまして、結果として、経済や金融が安定的に発展することを阻害する要因となる危険性もある。これは、必ずそうなるというわけではございませんけれども。そういう意味で、今、上下両方向にいろいろなリスクを目配りする必要がある。

 ただ、結論として、そのリスクについて今おまえはどういうふうに評価しているのかというふうに問われた場合には、私自身は、今そういう金融市場の状況について詳細に見ているわけではございませんから、そこはこれからしっかりと考えていきたいというふうに思っております。

大畠委員 大畠でございます。

 私が民間企業に入ったときが一九七四年で、その当時を思い出すと、日銀の目的が物価の安定というのであれば、あの当時、三割ぐらい物価が上昇したような感じがしますね。賃上げも何か三割ぐらいあったけれども、それ以上に大体二%ぐらいいつも上回って物価が上がるんですが、あの当時、変動相場制に移行したことももちろんあるんですけれども、非常に乱れました。そして、一九九〇年のころになると今度はバブルで、土地の転がしがあって、そして、その後、今度はインフレからデフレに変わる。そういう意味では、日銀さんも頑張ってきたんだと思うんですが、結果的には大変混乱をしたことは事実だと思うんです。

 それで、私も最近の状況を見ていますと、きのうかおととい、通常ですと、原油が上がって、時にはOPEC関係が供給量をふやすということなんですが、結局ふやさないということになって、これまた一バレル百十ドルぐらいになるでしょう。そして、アメリカのサブプライムローン問題が起こったり、結局、これまでの、常識で日銀さんがコントロールするという想定内のものを超えるような状況が今生まれ始めているんです。

 そういう中で、これから日銀のまさに幹部になられるという予定、副総裁になられるということですが、心得なければならないこと、こういう予測を超えるような状況の中で、これからどういうことを念頭に置いて仕事をされようとしているのか、二つぐらい挙げるとすればどういうことが挙げられるのか、お伺いしたいと思います。

白川参考人 先生おっしゃったように、経済の先行きについて、大きな変動を日本経済は経験いたしました。一回目は変動相場制への移行、二回目は、これに関連していますけれども、為替が大きく円高になった。そういう大きな変化が生じたときに、結果として経済が大きく混乱をしたということでございます。

 このことは、政策運営という観点からしますと、中央銀行というのは、今起きているこのことの意味は何かということを常に問うていく、常に学習をしていく、そういう組織でないといけないというふうに私は思います。具体的な答えがあるわけではない、原理原則ははっきりしていますけれども、しかし、それをどういうふうに適用していくのかについて、これは、常に経済環境は変化していっています。

 そういう意味で、私が肝に銘じたいと思っていますことは、これは常にいろいろな情報を収集し、謙虚に判断をするということが大事だと思います。

 それから二つ目は、もう少し実際的なことでございますけれども、当時もそうでしたけれども、ますます実体経済と金融市場の相互連関が強まっている。しかも、それはグローバルな関連が強まっているということです。そういう意味で、実体経済と金融の相互依存関係について十分に目配りをして、かつ、最終的には、これは単に数字だけを見て判断できるものでもありませんから、海外の中央銀行のあり方も含めまして、人的なネットワークをしっかりつくって、その上で、判断をできるだけ誤らないようにしたい、それを肝に銘じたいというふうに思っております。

笹川委員長 それでは、時間が参りましたので、白川参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 白川参考人、大変御苦労さまでございました。退席されて結構でございます。どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、伊藤参考人の所信に対する質疑を行います。

 伊藤参考人の所信に対する質疑は、各委員がお手を挙げていただきまして、私の方から指名させていただきますが、時間がだんだん詰まっておりますので、なるべく公平にしたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 お話を伺わせていただいて、お触れにならなかったところでちょっとお願いをしたいのですが、私は、もともと医者で、今の我が国を見ると、もう一九八〇年代以来、内需の拡大ということを言いながら、人々が安心してお金を使える状況にはない。先生の御持論がインフレターゲティングであることはちょっとおかせていただいて、これから日銀の指標の中に、例えばずっとゼロ金利に近く抑えて、一九九一年から二〇〇四年までで、簡単な計算をすれば約三百四兆円の金利の損失が見られる等々のことから見ると、私は、一体日銀の中に例えば社会保障関連のいろいろな指標はどのように組み込まれていっているんだろうかと。簡単に言えば、窓口負担が上がったり、金利がなくなってお金がなくなれば、とても消費マインドは冷えるわけですよね。それはどういうふうに組み込まれているのかというのを一点。

 それから、先生の「インフレ・ターゲティング」を読んだ中で、私の少ない知識で理解が間違っているのかなと思う部分があったので教えていただきたいのですが、日銀が多少の額の株式評価損をこうむったとしても、これは損失を一般会計から補てんすることが適切ですと、先生の御本の七十六ページにあったんですけれども、私は、目が点になって、日銀が株の評価損をこうむって、一般会計から補てんしたら、これはちょっと財政と金融の分離ということに抵触するんじゃないかと。ここ一文だけとって恐縮ですが、私の理解能力でちょっとわからなかったので、これは単純に質問です。

 お願いします。

伊藤参考人 どうもありがとうございます。

 社会保障関連の指標はどのように組み込まれているのかということですが、日銀が見ております指標は、生鮮食品を除くCPI、消費者物価指数の上昇率ということで、そこのCPIの中に、物価指数の中にどう社会保障関連は含まれているのかという質問に置きかえることができるかと思います。

 これは、つくっているのは総務省でありまして、総務省がその家計調査等をもとに、代表的家計が支出している項目の割合を一万分の幾つという形で表現しておりますので、その中で社会保障関連がどれくらい入っているかということは、結局、典型的な家計の中で社会保障あるいは医療にどれくらいお金を使っているかということなわけですね。したがって、そういう意味では、代表的な家計の中に占めるそういった支出がどれくらいかということで、家計単位で見ている。

 したがって、阿部先生御心配の、もともと社会保障の支出が低いからそこのウエートも低くなるではないかという御質問であれば、確かにそのとおりで、もともとその支出額が少なければウエートも少なくなっているので、そこが幾ら上がっても消費者物価指数に反映する部分は少ないということになるかと思います。

 それで、社会保障あるいは教育というのは一番価格が上昇している。特にアメリカではそういったことが起きて、日本でもいずれそうなるというふうに思いますが、それが全体の物価指数の中でどのように反映されてくるのかということについては、技術的な面でいえば、総務省の物価統計を考える必要がある。もう少し日本銀行もそれを考えるべきということであれば、家計の中に入っていって、どういったところが一番物価指数が上がっているのか、下がっているのかといったところを見ていく必要があるかと思います。完全にお答えになったかどうかわかりませんけれども。

 インフレ目標の方は、これはデフレが一番ひどかったときにどうしたらいいだろうかという、デフレスパイラルをいかにしてとめるかというときに、日銀が、これは流動性を供給しなくてはいけないわけですから、何を買うかという問題であったわけです。

 したがって、そういうときには、必ずしも国債だけではなくて、多少リスクの伴うものを購入してもいいのではないかという議論がありまして、その状況を少し御理解いただきたいのですけれども、ひょっとしたらこれはデフレスパイラルになるかもしれないというような状況の中では、もう少しリスクのある資産を中央銀行が購入してもいいのではないか、そういう文脈の中で読んでいただきたい。

 実際に日銀は購入したんですね。市中銀行の株式を購入した、これは金融政策としてではないんですが。それは、今、評価益が出ております。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 副総裁候補は海外での経験も非常に豊富だと先ほど述べられたわけでございます。

 今現在の日本の金融政策の海外からの評価というのをちょっとお聞きしたいなと。バブル期以降、どのように評価というのは変わってきているのか。日銀がとっている今の金融政策について海外からどのように見られているのかということと、伊藤副総裁候補が副総裁に就任されたときにはどういう評価を得られるように努力をされるおつもりなのか、お聞きしたい。

 それから、先ほどもちょっとお聞きしたのですけれども、今の日本経済というのはデフレなのか否かということをお聞きしたいというふうに思います。

伊藤参考人 海外から見た場合の日本の金融政策の評価ということであります。

 デフレが進行し始めた、これは九八年ぐらいだと思うのですけれども、それから打つ手が遅かったんではないかというのが海外の一般的な評価であります。したがって、もう少し早目早目にもう少し大胆な手を打っていれば、こんなにデフレは長引かなかったのではないかというのが海外からの評価であります。

 二〇〇一年以降、国債の買い切りの増額をする、それから、二〇〇三年以降、量的緩和に踏み切って流動性を供給するということは非常に高く評価されて、これでようやくデフレ収束に向かうのではないかというので、実際に向かったわけですね。ということで、そのあたりを機に評価はプラスの方に、ポジティブに変わったというふうに理解しております。

 ただ、それで量的緩和を解除する、それから利上げを二回したわけですけれども、そのあたりのマーケットに対する説明ということについては、もう少しうまい説明の仕方があったんじゃないですかという批判は聞きますが、これはそれほど大きな批判ではないと思います。

 私が目指したいと思っておりますのは、やはり透明性を高めるということで、海外から見てもわかりやすい金融政策運営のフレームワーク、枠組み、それから、国内で見ても、皆様に納得いただけるような、これを目標にしているんだということをはっきりさせていきたいというふうに思っています。

 デフレの定義は幾つかあるかもしれませんけれども、私は、消費者物価指数の上昇率がマイナスであるということだけをとってデフレの定義をしておりますので、そういう意味では、現在は消費者物価指数という意味ではデフレではありません。デフレは脱却したというふうに思っております。

谷口(和)委員 公明党の谷口でございます。

 所信の中で独立性のことについて触れられておりまして、日銀は、透明性それから説明責任という点でさまざま努力をしてきて、随分と改善をされてきた、ただ、まだ完成の域には達していないというお話がありました。

 今後、この透明性そして説明責任を高めていく上で、具体的にどういうふうに取り組みをなされていこうと考えていらっしゃるのか、その点をお願いしたいと思います。

伊藤参考人 これは所信の中でも述べましたように、各国、さまざま模索しているところだと思うんですね。ある国はインフレ目標政策というものを掲げて、一から三%の中に中期的におさめますということを宣言して、説明する場合にも、一応そういった目標から引いて今の政策を説明するということをしております。

 ただ、これはもちろん、将来のインフレ率をそこにおさめていくということで、今すぐの、現在の足元のインフレ率が高い低いということでどうこうということではありません。

 ただ、所信でも述べましたように、ECBそれからアメリカのFRBの場合には、インフレ目標というものを掲げておりません。ただし、それだからといって、ECBやFRBはだめだという評価はないわけで、それは、国によってやはりその手法というのは違ってくるというわけであります。

 したがって、私としては、インフレ目標を何が何でも導入しなくては透明性は保てないと言うつもりはありません。これは、実際にもし就任させていただくのであれば、総裁、もう一人の副総裁、それから六名の審議委員とよく議論をして、よりベターな方法はないのかという方向で探っていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 三点聞いていきたいと思うんです。

 一つは通貨なんですけれども、アラブで共通通貨をつくろうとか、あるいはユーロの決済通貨としての重要性というのが見られてきたり、逆に言えばドルが揺らいできているという中で、日本の今の外為をドルで持ち続けているということに対しての考え方と、それから、将来、どういう形で基軸通貨が世界の秩序としてつくられていくというのがあるべき姿かということ、それをお聞かせいただきたいというふうに思います。その中で、特に日本がどういう役割を果たしていくのかということ。

 それから、インフレターゲットなんですけれども、これは日銀でこれまで、先生、しっかり議論されたけれども受け入れられなかったということだと思うんですね。なぜそれが受け入れられなかったんだと認識されているかということと、さっきもちょっと話が出ましたけれども、これからやる気なのかどうかと。経済情勢も変わっているんですが、ということは、さっきも話が出たんですが、スタグフレーションの懸念の中でインフレターゲットが本当に有効なのかどうかということもあるんだろうと思うんですが、それもお聞かせをいただきたいと思います。

 それから最後に、身体検査なんですけれども、本来は、先生にお聞きするんじゃなくて、任命者にちゃんとその辺、これまでいろいろ問題があったものですから、資産の運用だとか、それから行動規範というものについては調べているんでしょうねということを、本当は任命者に我々は聞かなきゃいけないんですけれども、そういうことが調べられた上でここへ出てきておられるという自覚がおありか、それとも、何もそんなこと関係なくやってきましたというのか、その辺、念のために聞いておきたいと思います。

伊藤参考人 通貨につきましては、確かに、ドル一極の基軸通貨体制からユーロにある程度基軸通貨の役割が移りつつあるという認識は、いろいろなところで持たれるようになってきたというふうに思います。

 日本にとってどうするか。外貨準備が価値が目減りするではないかという御批判はあるのではないかというふうに思います。これは確かにそのとおりだと思うんですね。ドル安・円高になれば、当然、資産として持っているドルは目減りする。ただし、これに対しては、過去に金利受け取りの一部を積立金という形で積んでおりますので、そこである程度は相殺できる、準備ができているということであるかと思います。

 ただ、もっと円高・ドル安になったら、その積立金も全部使っちゃうじゃないかという批判もあるかと思います。確かにそのとおりでありますが、これは評価損になりますから、実際に売らないと実現損にはならないということです。評価損はキャリーオーバーができるわけですね。

 もう一つ、関連して、御質問の中には明示的には入っていなかったんですけれども、では、日本はもうちょっとうまい外貨運用の仕方があるじゃないかということなんですが、これは、私の考えでは、恐らく外為特会でやるというのは非常に難しくて、例えば、利子受け取り部分、これが今三兆円から四兆円毎年あるわけですけれども、これだけでも外に基金として置いて、それをもう少し国債以外の、ちょっとリスクをとってちょっと利回りが高いぐらい、ハイリスク・ハイリターンまでとてもいかないですけれども、ミドルリスク・ミドルリターンぐらいのところまで運用を広げてもいいんじゃないかという提案を私はさせていただいたことがあります。

 基軸体制の中で、では、ドル、ユーロ、もう一つ第三の極としてアジアはないのかということも御質問の趣旨に入っていたかと思うんですが、残念なことに、日本経済の地位というのが相対的に見てここ十五年ぐらい低下してまいりましたので、なかなかその辺の、日本の経済の地位の相対的な低下に伴って円の相対的な地位も低下しているという状況にあって、やはりもう一度日本が強い成長に戻らないと、そういった円というものを基軸通貨として認識していただく強い推進力というのは出てこないのではないかと思います。

 第二の御質問でありますインフレターゲットでありますけれども、なぜ日銀がインフレターゲットをこれまで導入してこなかったかということについては、私は論文を一本書いておりまして、議事要旨とか全部読んだんですね。

 一つは、インフレターゲットに対する誤解があって、その誤解、本来のインフレターゲットじゃない、わら人形みたいなのをつくって打っていたというところが一つあります、具体的には申し上げませんけれども。

 もう一つは、やはりデフレの中で提唱されていたことで、インフレターゲットを導入してもデフレのときには手段がないじゃないか、どうやってデフレから脱却するんだということで、できないことを提唱することでかえって信認がなくなるという、これは半分もっともな御意見だったと思いますね。ただ、これは先ほど言いましたように、今プラスになってきましたから、そういう意味では地合いは変わっているのではないかというふうに思っております。

 三番目の質問の身体検査でありますが、これは、指名していただいているからには、指名されたところである程度はされているのではないかと想像いたしますが、私個人としては、資産運用でやましいところはありませんし、行動規範もこれまで守ってきたつもりでございます。

根本委員 今、インフレターゲティングの話はよくわかりました。

 私は、現下の経済をどう見るか。米国発のグローバルな金融危機のさなかにある、こう思っているんですね。これは私の思いですが、こういう中で、ひとり日本が中央銀行総裁の人事をめぐっての政治的混乱、これは許されないし、国際的な信用を失いかねないと思っております。これは私の思いです。

 質問なんですが、伊藤先生は、一流の国際経済学者でありますし、副財務官も歴任されている。先ほども話がありましたけれども、国際的に中央銀行の幹部の方々との交流もありますし、国際経験が極めて豊かであります。

 その伊藤副総裁候補から見て、今のサブプライムローン問題に端を発するこの金融市場の混乱に対して日銀としてどう対処をすべきか、それが一点です。

 それから、あわせて、欧米などの中央銀行との政策協調はどうあるべきか、この二点についてお尋ねをしたいと思います。

伊藤参考人 サブプライムローンの問題については、一番懸念されるのは信用の収縮ということで、いわゆるクレジットクランチということが起きることによって、本来は倒産したり資金繰りに困る必要のないところまで、つまり健全なところまで、サブプライムというのは非常に健全ではなかったから問題が発生したわけですけれども、そこから健全なところに伝播してくるということが一番懸念されることなわけですね。

 それを防ぐためには、一つは流動性を供給して、むやみに銀行が貸しはがしみたいな形で信用を引き揚げることを防ぐということが一点と、もう一点は、格付会社の信用が落ちてしまったわけで、どこがいいところでどこが悪いか、それを見きわめるためのいろいろな方策を講じるべきだと思うんですね。

 したがって、悪いところはしようがない、それは責任をとってもらうわけですけれども、いいところに被害が及ぶ、これは日本銀行だけではできないかもしれない、それは民間の努力もあるわけですが、いろいろなところと協調しながら日銀にできることを担っていくということで、これはアメリカでFRBが果たしている役割を日本で行うということになると思います。

 それから、欧米との政策協調でありますけれども、政策協調というと途端に同時利下げとかそういうことが頭をよぎるわけですが、それは現在の状況では必要があるとは言い切れないということだと思います。

 したがって、その国にできること、これはサブプライムは米国発なわけですから、やはり米国が一番被害が大きいし、米国が一番やらなきゃいけないことはたくさんあるわけで、ヨーロッパそれから日本はそれが伝播してきた国に当たるわけですね、イギリスもそうですけれども。したがって、おのずと対処法というのは違ってくるわけです。

 したがって、協調という意味が、連絡を密にする、常に電話でやりとりをするということであれば、もちろん協調は必要ですけれども、政策アクション、政策の手段も一緒に同時に下げるのかと言われると、それは現状では必要ないんではないかというふうに思います。

佐々木(憲)委員 簡単に一点だけお聞きします。

 伊藤副総裁候補は、経済財政諮問会議のメンバーで、民間四議員の一人として、財界の側の二人の代表を含めた四議員のペーパーを毎回のようにお出しになって、諮問会議をリードされているというふうに承知しているんですが、日銀の副総裁ということになりますと、やはり立場上、従来のそういう関係というのを断ち切って純粋に日銀の役割を果たそうということにしようと思っておられるのか、それとも、いろいろな関係者との協調というのを重視されるということもあるでしょうから、従来のそういういわば諮問会議での民間四議員的な親密な関係というものを維持される、そういう立場で副総裁をお務めになるか、今後の基本的なスタンスですね、そこをお聞きしたいと思います。

伊藤参考人 ありがとうございます。

 御懸念はよくわかりますが、私は、一たん日銀の副総裁として就任することができれば、日銀の立場というのを第一に考えて、中央銀行が経済に果たす役割ということを十分自覚して、そのために全力を尽くしていきたいというふうに思います。

 経済財政諮問会議というのは、総理に対してアドバイスをしていくという機関でありまして、アドバイスをするけれども決定機関ではないわけですね。したがいまして、四人の民間議員の役割というのは、政策に対して、我々は外から見ていてこう思うということを申し上げる立場にあると思います。つまり、政府と一体ということではなくて、政府に対して外からアドバイスをしていくという立場で、したがって非常勤で務めておるわけです。

 したがって、議事録を読んでいただくとわかると思うんですけれども、かなり厳しいことも、いろいろ各省に対して注文をつけていることもありますし、我々の考えがそのまま採用されないこともありますし、そこはもともとかなり緊張関係があるというふうに考えて、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

亀岡委員 先ほどデフレスパイラルを脱却したというお話がありましたけれども、所信表明演説の中に、各国が物価上昇率を大体一%から二%を目標値に置いていると。これから、日本としても、海外にきちんとした経済政策を訴えるためにも、ある程度そういう数値を目標に出していく必要があるんじゃないか、それが日本の今の現状に当てはまるのかどうかも含めて。確かに、今デフレを脱却したというお話がありましたけれども、それを日本が一%や二%としっかりと明確に数値として打ち出せるのかどうか、その必要性があるとすれば、それをちゃんと説明していただきたい。

 もう一つ、需要と供給のバランスが物価に今与える影響力は、物すごく変化を与えると思うんですが、今、日本の現状がどうなのか。

 それから最後にもう一つ、先ほど、今、独立性、自主性が保たれているという話が皆さんからあったんですが、まさに今、総裁が財務省出身だからといって、五年間きちんと日銀の自主性を尊重しながらやってきた、これは皆さん見ていてもそうだと思うんですが、総裁のもとでしっかりやっていくという意味において、全然問題がないのかどうか、その辺をきちんと説明していただければと思うんです。

 よろしくお願いします。

伊藤参考人 一番目については、現在、日銀が発表している数値というのは、ゼロから二、ただし中心は一%という数字があるんですね。ただ、これは何かというと、インフレ目標でもないしインフレ参照値でもないし、これは中長期的な物価の安定ということに対して総裁、副総裁、審議委員がどういう理解をしているか、これは理解であるというふうな説明をしています。これがマーケットに対して正確に受け取られているかどうかというのは若干私は疑問に思っているので、そういう意味で私は、所信の中で、まだ完成の域には達していないということを申し上げたので、そういう意味では、もう少しわかりやすい表現の仕方があるのではないかというふうに思います。

 ただし、それが、インフレ目標を一から二という形で出すのがよろしいのか、あるいはFRBのように、もう少し透明性は高めるけれども、別の方法もあるのではないかという、その手法については、ぜひ議論に加わって考えていきたいというふうに思っております。

 それから、需要と供給の関係についていいますと、いわゆる潜在成長率、本来であればどのくらい成長できるかということは、どこに置くかによって違ってきまして、ここまで日銀が言っている潜在成長率と政府が言っている潜在成長率はちょっと違うというふうに思うんですけれども、どちらにしても、現在、これから先行きを見たところ、やはり日本のことしの総需要は落ちていくだろうと思わざるを得ない。

 これは、アメリカの景気が悪くなっていくということと、円高によって少なくとも一時的には輸出産業が余りよくないだろうということ、それから、金融の不安定さというところが懸念材料でありまして、ことしは、やはり先ほど所信で申し上げたように、厳しい状況が出てくるのではないかというふうに思っております。したがって、どちらかというと、いわゆる下振れリスクの方が上振れよりも大きいというふうに考えております。

 三番目の御質問、自主性と独立を保つというのは、私のことですか。

亀岡委員 いやいや、総裁です。総裁についていくという意味で。全く問題ないと思うんですが。

伊藤参考人 私の口からはなかなか申し上げにくいんですけれども、これは九人で金融政策を決めるわけで、総裁が右と言えばみんな右に向くわけではありませんので、私も平等の一票を持っておりますので、私は私の考えに従って、きちんと判断して、投票していきたいということです。

亀岡委員 財務省出身で問題ないですか。そんなことは関係ありませんか。

伊藤参考人 やはり出自よりはどう行動していくかということで、新日銀法のもとで独立性があるということは、一たん任命されれば良心に従って行動することができることがやはり一番大きいのではないかというふうに思います。

笹川委員長 これにて伊藤参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 伊藤参考人、御苦労さまでした。御退席になって結構でございます。

 これにて懇談を閉じます。

    午後零時三十分懇談を終わる


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