衆議院

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第15号 平成20年3月26日(水曜日)

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平成二十年三月二十六日(水曜日)

    午前十一時一分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 小此木八郎君 理事 根本  匠君

   理事 吉田六左エ門君 理事 竹下  亘君

   理事 三ッ林隆志君 理事 金子 恭之君

   理事 川端 達夫君 理事 仙谷 由人君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      三日月大造君    谷口 和史君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (人事官候補者(人事院総裁))          谷  公士君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     浮島 敏男君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

三月二十六日

 衆議院憲法審査会早期開会に関する請願(二田孝治君紹介)(第六八九号)

 同(鈴木俊一君紹介)(第七四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官任命につき同意を求めるの件

 次回の本会議等に関する件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る十九日の理事会において、大野内閣官房副長官から、内閣として、人事官に谷公士君を再任いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、人事官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者・人事院総裁谷公士君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、谷参考人に所信をお述べいただき、その後、懇談形式で、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、谷参考人にお願いいたします。

谷参考人 谷公士でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、人事院及び人事官の役割などにつきまして、私の考えておりますところを述べさせていただきます。

 国家公務員制度は、我が国行政の円滑な運営を確保する上でその基盤となる制度でありまして、人事院は、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対して保障するという国家公務員法の基本的理念のもと、中立・専門機関として、人事行政の公正の確保と労働基本権制約の代償機能という重要な役割を担っているものと認識しております。

 そのため、人事官には、国民全体の奉仕者たる国家公務員としての強い自覚と高い倫理観が求められますとともに、国民各層や関係各方面の御意見を伺いつつ、誠実かつ公正に職務の執行に当たることが求められているものと考えております。特に近年、国民の公務員に対する目には極めて厳しいものがあることを十分認識し、公務員への信頼の確保に努めてまいることが重要であると考えております。

 現在、公務を取り巻く環境が大きく変化する中にあって、公務員制度改革が重要課題とされ、さまざまなテーマについて鋭意検討が進められております。全体の奉仕者である公務員は、国民本位の行政運営を実現すべく、公務に対する高い使命感と倫理観を持って与えられた職務に専念することが求められております。

 公務員制度は、そうした使命感と倫理観を兼ね備えた公務員集団を形成すべく、多様な有為の人材を確保、育成し、適切に配置、処遇し、高い士気と意欲を持って勤務させることを目的としているものと認識しております。

 しかしながら、幹部公務員の不祥事や各分野における行政の対応をめぐる問題など、公務員の中に国民の期待に沿った公共精神や行動様式を備えていない者を生じさせておりますことを率直に認めなくてはならないと思います。中立・専門機関という立場から、公務員制度の運営を担ってきた人事院としても、みずから反省するとともに、必要な改革の実現に積極的に協力し、また、みずからその実現に努めていく必要があると考えます。

 私は、過去四年間を人事官として、後半の二年間を人事院総裁として公務員給与の構造改革等の人事行政施策の推進に取り組んでまいりましたが、公務員制度や公務員のあり方に関しましては、解決してまいらなければならない問題がまだまだたくさんあると考えております。

 仮に人事官に再任されました場合には、他の人事官と協力いたしまして、そうした問題の解決に向け、微力ではございますが、最善を尽くし、適切な公務員制度及び公務員人事管理の実現に努めてまいる所存でございます。

 簡単ではございますが、私の考えておりますことを述べさせていただきました。

 よろしくお願いいたします。

笹川委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十一時七分懇談に入る〕

    〔午前十一時五十八分懇談を終わる〕

笹川委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 以上をもちまして人事官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、明二十七日木曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十一時七分懇談に入る

笹川委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより谷参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 竹下亘君。

竹下委員 自由民主党の竹下亘でございます。

 先ほど、高い倫理観、あるいは強い自覚という言葉をおっしゃいましたが、谷さんもお話しになりましたように、それでもやはり不祥事が絶えないということもございまして、一つ不祥事を起こしますと、それまで多くのまじめな公務員の皆さん方が努力していたのが、もうイメージががたがたになってしまうという側面がありますので、この問題に対して、本当にきちっと対応していかなければ、あるいは厳正に対応していかなければならないと思います。具体的にどのように取り組むかといったような方法あるいは決意をまずお聞かせ願いたいということが一つでございます。

 それから、最近、女性の社会進出が言われている中で、特に公務員の中での女性の進出、あるいは産休といったような問題についてどうお考えになっていて、これまでどう取り組んでこられたか、そして、これからさらに今何が必要かという点をお尋ねいたします。

 さらに、同じような趣旨ですが、ハンディキャップを背負った人たちの一定の雇用を確保しなければならないというのは、まさに公務員が民間企業に範を垂れなければならない分野である、こう思っておりますので、そうした分野について谷さんのお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 以上でございます。

谷参考人 お答えさせていただきます。

 私も、現在の公務及び公務員のあり方に関する最大の問題は、職責の自覚、使命感の問題であろうと考えております。

 私の考えでございますけれども、公務を執行するための組織は、そのまま個人の集合、人間の集合でございます。公務を優先して考えていかなければなりませんけれども、その公務を遂行するに当たりましては人間同士のつながりが一つの組織をつくって公務に向かうわけでございますが、ややもいたしますと、どうしても個人的な利害、思惑というものが組織の中に胚胎をしてまいります。この組織の中における雰囲気にはなかなか逆らえない、そういった組織の中における保身と公務遂行のための使命感とのせめぎ合いの問題だろうと思いますが、そういう点で、使命感がいささか緩んできているのではないかというふうに思います。

 したがって、私は、一番基本の問題は、この使命感をもう一度覚せいさせることが大事である、それには各省すべてが一斉にそういう取り組みをしていく必要があると思うわけでございますが、特に幹部職員の責任は極めて大きいと思います。

 人事院といたしましても、これまでの反省に立ちまして、そういった意味での使命感を醸成していく研修、訓練、そういうものに力を入れていく必要があるというふうに思っております。もちろん、こういったことの実態をなかなか是正しがたい場合には、制度を見直し、それを契機として実態を改めていくという方法も必要になるかもしれません。

 それから、女性の社会進出の問題でございますけれども、これもこれからの社会をつくっていくためには大変重要な問題だろうと考えておりまして、政府の方でも男女共同参画についてのいろいろな指針を定めておられます。

 人事院といたしましても、試験採用の問題でございますとか、それから幹部職員における女性の占める割合、こういったものを向上させていくための取り組みをしていかなきゃならぬと思っておりまして、まず入り口の試験が大事でございまして、公務員の場合には採用されますと男女の差というのはほとんどないと考えられますので、まず公務員試験を受けて合格していただく女性の方を確保していくということが一番基本のスタート地点かと思っております。

 現在、評判の悪い1種で例えて申し上げるのは問題でございますけれども、四分の一ぐらいが女性でございます。これをまずは三割程度に上げていくということが必要なわけでございます。そのためには、やはり志のある方に受験していただくということが必要になるかというふうに思います。

 それから、ハンディキャップを負った方々の問題でございますけれども、御指摘のように、このことも公務部門が率先して取り組んでいかなきゃならぬ課題だと思います。一応、各府省とも法定雇用率は達成していると思います、それからまた、人事院におきましても、試験に点字の使用を認めるといった取り組みをしてきておりますけれども、このことにつきましては、成績主義という公務員制度の原則、それから障害者の雇用を促進するという法の精神、そういったことを考え合わせつつ取り組んでいく必要があるかと思っております。

笹川委員長 小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。わざわざ御出頭いただき、ありがとうございました。

 まず、この四年間のお取り組みに対しては率直に敬意を表したいと思います。その中で、公務員給与の地域配分の見直しや実績の反映、また官民比較の見直し、そして育児休暇の導入、こうした先進的な取り組みに努力をしてこられました。

 まず最初のお尋ねですが、こうした取り組みは実際にどの程度具体の成果につながったか、実効を上げたのかどうか、その点に対する御自身の評価をお伺いいたします。

 二点目でございますが、既にお述べになられました、公務員の信頼が今極めて失墜をしております。先ごろの報道ですと、日本の官僚を信頼すると言い切った国民はわずかに一%だそうです。こうした公務員に対する国民の不信の増大に対して、中央人事行政の責任者としてどうその責任を感じられるか、二点目のお尋ねです。

 三点目は、天下り問題です。先日、予備調査を行いましたところ、実に四千六百団体、二万六千人が再就職しております。それに対する公金支出は総計で十二兆円、すさまじい実態だと思います。

 谷候補御自身の在任中の四年間、みずから三百件を上回る天下りを承認されました。中でも私自身忘れられない経験がございますが、総務委員会において、金融庁長官が初代ゆうちょ銀行社長に再就職をした、この点は不適当だと御指摘を申し上げました。これに対する候補の御答弁ですが、長官在任時はいまだゆうちょ銀行は準備段階であった、だから問題ない。この御答弁には大変落胆をいたしました。

 既にお述べになったとおり、これから、むしろそうした形式的な議論を排して、実質的妥当、国民の目線に立った実質的妥当をかち取る決意がなければ天下り問題の解消には向かわないと考えますが、谷候補は、そもそもこの天下り問題を解消すべき課題だと認識しておられるかどうか。だとすれば、その問題の根はどこにあり、どう手を打つべきか、お聞きをいたします。

 四点目は、内閣人事庁そして官民人材交流センター、各省庁の再就職あっせんの禁止等、さまざまな議論が進んでおります。これもお述べになられたとおりです。この議論は今後の国家公務員制度のあり方にどう影響を及ぼすか、ひいては、人事院の存在感、存在意義そのものにどう影響を及ぼすか、この点に対する御認識をお伺いいたします。

 最後に、有為な人材確保はこれからも大変大きな課題だと思いますが、最近、中央官庁には優秀な人材が集まらないとのぼやきも聞こえてまいります。キャリア制度の廃止などが議論されておりますが、人事行政の責任者は、今後、有為な人材確保に向けてどう取り組むべきか。その点をお伺いして、質問を終わらせていただきます。

谷参考人 大変多岐にわたる御質問をいただきまして、もし漏れがございましたら御指摘いただきたいと思います。

 まず最初に、これまで取り組んできたいろいろな、さまざまな施策の成果をどう考えているかということでございます。

 一番大きな問題は給与構造改革でございまして、これは二十二年度までに完成させるということで、今鋭意それに取り組んでいるところでございます。

 それから、勤務実績を反映させるような能力・実績主義につきましては、今、総務省と協力をして、新しい人事評価制度を立ち上げようとしているところでございますので、これからの取り組みとなっていくと思います。

 それから、女性の処遇改善の問題といいますか、育児休暇等の問題でございますが、これは短時間勤務制度の導入を御提案申し上げまして、法律の制定をしていただきました。なかなか、その成果はこれからの問題であろうと思いますけれども、職業生活と家庭生活を両立させ得るためには、女性の処遇の改善だけではなくて男子職員の協力態勢も必要なわけでございますけれども、これについてはまだまだ道遠い状況でございます。具体的な施策を申し上げる準備はまだございませんけれども、人事院としても、この問題については引き続きこれまで以上の努力をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 それから、国民の公務員に対する不信ということでございます。

 この点については、私も多年公務の中に身を置いてきた者として、まことに残念でなりません。すべての公務員がそういうわけではございませんけれども、しかし、次々と不祥な事例が生じますと、国民に信頼してくださいというのも非常に無理な話でございまして、何とか体制を立て直す必要があるだろうと思っております。

 人事院としてできますことは、やはり、研修その他を通じて職員に呼びかけるということでございまして、倫理の研修につきましては、相当数の研修も実施をしてきております。先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、やはり基本は、各省の幹部職員がみずから範を示すという姿勢、これが、各省共通してそういう盛り上がりが必要となるのではないかというふうに思っております。人事院としても、できる限りの支援はしてまいらなければならないと思っております。

 したがいまして、この問題につきましては、最初の所信でも申し上げましたけれども、中立、専門の人事行政に携わる機関でございますので、現実にこういう事態を招いているということについては当然人事院にも責任があるわけでございまして、その責任を自覚して、こういった事態を改善するための努力を重ねていかなきゃならないというふうに思っております。

 それから、天下りの問題でございます。

 この問題につきましては、従来は、国家公務員法百三条で考えておりましたのは、職員個人が在職中、その地位、職権を利用して退職後の自己の便宜を図る、そういう民間との癒着をどうするかという視点でございました。

 ところが、最近になりまして、それは個人の問題ではなくて、組織の人事管理システムを維持するための仕組みの一つではないかという御指摘が出てまいりました。それからまた、営利企業だけではなくて、非営利法人についても同じように考えていく必要があるのではないかという御指摘がございまして、そういたしますと、これは百三条でカバーし得る範囲ではないわけでございまして、先ほど御指摘ございました事例も、形式的には民間企業でございますが、スタート時点は一〇〇%官そのものでございます。国の最高の意思によって人事が決定された事例でございます。

 そういう事例に対してどのように対処するかというのは非常に難しい問題でございますが、今般の制度改正ですべての所管が内閣に移りまして、営利企業だけではなく、すべての公務員の退職管理について、人事管理のあり方も含めてこれをフォローしていくという体制がとられたわけでございます。具体的な制度の設計、運用はこれからの問題でございますけれども、そういう意味で、今後はそういう形の中でこのような問題が取り扱われていくのではないかというふうに考えております。

 人事院の所管は今年中に離れるわけでございますけれども、人事院といたしましては、当然、公務の公正の確保それから職員の処遇、その両方の面からこの問題の取り扱いの行方を見守っていく必要があるものと考えております。

 それから、今回の人事庁の問題でございますが、所管ではございませんので正確ではないかもしれませんが、今回の問題は、個別人事権を有される各省と人事庁との間の役割分担といいますか、そういう問題が主たる問題ではないかと思うわけでございまして、このことが直ちに現在の人事院の役割に大きな影響を与えるということではないと思います。

 しかし、ここで提起されました問題はすべて人事院の責任の範囲にもかかわる問題でございますので、そういう意味で、人事院自身として、これらの指摘されております問題の解決に、制度改正とは別に人事院自身としても努力すべきであるし、また、制度改正をするということについて必要な協力もしていかなきゃならぬだろうというふうに思っております。

 それから、有能な人材の確保の問題でございますけれども、確かに、いろいろな事情がございまして志望者が減少しているという状況もございます。それから、人材供給構造が変化しているということもございます。他方、行政の複雑化、高度化、国際化といったことで、より高い専門的な能力、視野を持った人材が求められているという事情もございます。

 こういうことの中で、人材の確保を使命といたします人事院としてどのようにその務めを果たしていくかということは非常に難しい問題でございまして、例えば、先ほど申しましたけれども、公務員の役割というものをはっきり自覚させる、専門性を確立させる、それから公務員のあり方について国民の御理解をいただくといったかなり地道な努力を続けながら、新しい人材供給源の発掘その他人材の確保に努めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

笹川委員長 石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 国家公務員法においては、昭和四十年改正から、国家公務員の人事管理の責任体制を確立するため、中央人事行政機関は人事院と内閣総理大臣の二元体制とされております。人事行政の中立公正性の確保と労働基本権制約の代償機能の役割を持つ人事院と、各府省の人事管理の総合調整、能率、厚生、服務等の事務を果たす内閣総理大臣の役割分担は、その後変わっていないと考えますけれども、昨今の公務員制度改革の議論の中で、とりわけ人事行政の中立公正性について、ともするとないがしろにされているような議論がありますけれども、そのことをどのように認識されているのか。憲法十五条の規定にもかかわる問題と考えますけれども、いかがでしょうか。これが第一の質問であります。

 平成十二年十二月に閣議決定された行政改革大綱以来、公務員制度改革の作業が続けられております。その趣旨は、二十一世紀の日本にふさわしい新たな行政システムを構築するため、特に公務員が、行政ニーズに即応した人材を確保、育成し、互いに競い合う中で持てる力を最大限に発揮し得る環境を整備することにあると考えます。

 その後、何度も国家公務員法の改正作業が行われ、やっと昨年法律が動き出しました。こうした一連の動きの中で、人事院における改革に向けた議論や作業がいささか緩慢であったとの批判もありますが、どのようにお考えになっていらっしゃいますか、これが第二点であります。

 最近の公務員に対する国民の厳しい視点や、行政改革が進められている中で、国家公務員の魅力がなくなり、希望する人材が減っているという問題もあります。我が国の行政を支える優秀な人材が来ないということは、国家の損失であります。優秀なる人材を得るという観点から、こうした事態をどのようにお感じになっていらっしゃるのか、これが三点目であります。

 昨年、能力・実績主義の人事管理の徹底や再就職に関する規制を盛り込んだ国家公務員法の改正が行われ、あわせて今後のパッケージとしての公務員制度改革を進めるための閣議決定も行われ、現在、基本法の制定に向けた作業が行われております。こうした中で、人事院の役割として、今後取り組みを強化しなければならない事項は何だと考えているか、これが第四点目であります。

 また、内閣における人事管理を一元的に行うため、内閣人事庁の構想も言われておりますけれども、第三者機関である人事院として、独立して事務を行う必要があるものは何だとお考えになっていらっしゃるか、これが第五点目であります。

 以上でございます。

谷参考人 最初の点でございますけれども、私、最初の所信のところでも申し上げましたけれども、人事院は、公務の民主的、効率的な運営を保障するために、中立・専門機関として、人事行政の公正の確保と労働基本権制約の代償機能という役割を担っているわけでございまして、特に、人事院の使命であります中立公正性の確保というのは極めて重要な役割であると思っております。

 人事は業務遂行の手段でございますので、個別の人事権は行政の執行責任をお持ちになっていらっしゃる政府において、時々の行政課題を適切、効率的に執行するために行使しておられるわけでございますけれども、しかし、その事務を担当する公務員の大部分は、長期間にわたって勤務をいたします職業的公務員であるわけでございます。その公務員が安んじて公務に専念できるようにいたしますためには、人事制度それからその運用が公正中立に行われる、そういう制度的な保障とそのことに対する職員の信頼というのが不可欠でございます。そのことによりまして、公務もまた中立公正かつ継続的、安定的、効率的な運営が確保されるということになるのではないかと思います。

 そういう意味で、人事院が中立第三者の機関といたしまして人事制度とその運用について意見を述べる機能を有するとともに、公務員を厳正な能力の実証に基づいて選定し、そして基礎的な素養と使命感を持つ職員として養成する、その研修を担当する、この現在の仕組みというのは極めて意味のあるものだというふうに思っております。このことは、今さまざまな改革が論ぜられておりますけれども、この必要性については変わるものではないというふうに考えております。

 それから、今、いろいろな改革の中で人事院の存在がはっきりしないという御指摘だったかと思いますが、私どもといたしましては、能力・実績主義の人事管理を実現いたしますために、給与構造改革を行いますとか、それから、毎年の給与勧告の際に行います報告あるいは年次報告の際に、時々の課題についての私どもの取り組み状況あるいは問題意識というものを述べさせていただいております。

 ただ、今般の公務員法改正の動き、昨年のもそうでございましたけれども、内閣主導で行われました。そして、今般の改革につきましてはまだ検討の過程にあるわけでございまして、そういう意味で、私どもとして対外的に意見を申し述べさせていただくということは控えてまいったわけでございますけれども、今後、必要に応じて私どもとしては意見を申し上げ、またみずからなすべきことをなすということをしっかりしていかなければならないと考えております。

 それから、現在、公務部門がいろいろな問題を起こしておるということもあって、一般に魅力の薄いものとなってきて、人材確保に支障があるのではないかという御指摘であったかと思います。

 これも先ほどちょっと申し上げましたけれども、大変公務員の供給構造も変化する中で、志望者も減少し、それから一方、有用な公務員が求められている、この事態について、私どもは非常に危機感を持って受けとめております。

 重複することになりますけれども、こういう事態を招いたことにつきましては現在の公務員自身にも責任があるわけでございまして、若干回り道ではありますけれども、現在の公務員の体制をしっかり立て直すということが一番基本であり、それから、そういう一部の公務員はおりましても、やはり地道に働いている多くの公務員があり、その役割あるいは実績を国民の皆様にもできるだけ御理解いただき、そしてそういった社会の御理解の中で有為な人材が今後も志望してくださるように私どもとしても努力していかなきゃならない、ちょっと抽象的でございますが、そのように考えております。

 それから、今後の制度改正の中で取り組みを強化していかなければならないような仕事は何かということでございましたでしょうか。

 私は、問題意識といたしましては、まずはやはり公務員の意識改革の問題、キャリア制度の問題、現在取り組んでいます給与構造改革の仕上げ、新たな人事評価制度の導入、活用の問題、それから、職場環境を整備し、家庭生活、職業生活が両立できるように、そしてまた公務の職場が若い人にとっても魅力があるものとするために、例えば本省の超勤問題でございますとか、いろいろな職場環境の改善を行っていく必要があるだろうと思っております。それから、非常勤職員の処遇の問題もございますし、先ほど御指摘があった人材確保をどのようにしていくかというような問題もございます。また、年金の支給開始年齢がずれてまいりますので、年金と雇用との間隙をどう調整するかという問題もこれからの公務員の処遇としては非常に重要な問題かと思っております。

 それから最後に、今後、人事院としてどのような仕事が重要な仕事としてあるかということであったかと思います。

 先ほど申し上げましたように、人事院の基本的な役割が二つ、公正中立の確保、それから代償機能でございます。大きく言えばこの二本柱でございますが、特に公正中立機能という意味で申しますと、現在行っております厳正な成績の実証に基づく職員の採用試験の実施、それから基礎的な訓練、こういったことは非常に重要な公正中立確保の基盤となる制度であるというふうに思っております。

 以上でございます。

笹川委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 初めに、人事院の位置づけについての認識をお聞きしたいと思います。

 憲法第二十八条が保障する労働基本権、すなわち団結権、団体交渉権、争議権は、本来、公務員にも保障されるべきものであります。しかし、現行の公務員制度では、公務員の地位の特殊性を理由に、それが制限されております。その代償措置として人事院を設け、身分、任免、服務、さらに賃金や労働時間など労働条件について、法律や規則で定めているわけであります。したがって、人事院は中央人事行政機関として司法機関的性格を持っており、中立でなければならないと思います。今後、中立公平を自覚し、それを踏まえて任に当たられるかどうか、あらかじめ確かめておきたいと思います。

 最高裁の判例によりますと、公務員の争議行為の制限は憲法に違反していないということが言えるのは、人事院の機能が十分に発揮されていることを前提にしているわけであります。現実はどうか、具体的な事例でお聞きしたいと思います。

 公務員の給与勧告で初めてマイナス勧告を行ったのは、二〇〇二年であります。その背景に何があったか。二〇〇二年五月に経済財政担当大臣が勧告制度は右肩上がりの時代の産物と批判をし、六月には骨太方針で決めた総人件費抑制を閣議決定し、さらに厚労大臣が賃下げ勧告を前提として年金給付の引き下げの検討を表明するという一連の政府の圧力がありました。人事院として、この動きに一言の批判もありませんでしたし、結果として、政府の意向に従って初めてのマイナス勧告を行ったわけであります。これは、中立公平な機関であるはずの人事院が政府の圧力に屈したものと言わざるを得ませんが、どのように受けとめておられますか。

 さらに、谷さんが人事院総裁になってからでありますが、二〇〇六年の勧告では、給与の官民比較の事業規模を百人以上から五十人以上に拡大するということを行いました。そして賃金の抑制を行ったわけであります。これも、二〇〇五年九月の閣議決定及び十二月の閣議決定があり、二〇〇六年七月の閣議決定で百人以上を五十人以上にすべきだ、そういうふうに決めたその意向に忠実に沿ったものでありました。これも政府の意向に従ったものと言わざるを得ません。今振り返ってどのように考えておられるか、お考えを聞きたいと思います。

 最後に、政官業癒着の温床となっているのが天下りであります。天下りの先、さらに渡りというようなことも言われているわけでありまして、その天下りについて、本来、禁止するのが望ましいという認識がおありかどうか、この点をお聞きしたいと思います。

 以上です。

谷参考人 一点目でございますけれども、先ほども申し上げましたが、人事院の役割は大きく二つ、公務の中立公正の確保と労働基本権制約の代償機能でございまして、その代償機能を十全に果たしていくということは、人事院の非常に大きな役割であると考えております。

 それから、中立、公正、公平に人事行政の運営が行われるように人事院として必要な意見を述べ、必要な指導を行っていく、これは、これまでもそうしてきたと思いますし、これからもそうあるべきであると思っております。

 それから、給与勧告の問題でございますけれども、いろいろ御指摘ございましたが、私の就任以前のものもありまして、その点については推測でしかございませんけれども、私が担当いたしましたときの事情を申し上げますと、給与は、公務員自身として比較すべきものがございませんので、市場原理で定まっておると考えられます民間の給与との均衡を考えまして勧告を行うという制度をとってきておるわけでございます。民間準拠の方式をとってきておるわけでございます。

 この百人、五十人の問題につきましては、昭和三十九年、これはきっかけとしては現業でございましたけれども、基本的には同じ考えということで、非現業についてもこの基準を採用いたしまして、以来四十年、この基準で運用してまいりました。

 しかし、最近になりまして、各方面からこれを見直すべきではないかという御意見が出てまいりました。国会においてもそういう御意見を賜りました。そういたしますと、現行のあり方については必ずしも国民の御理解をいただいているとは言えないのではないかということも考えられますので、専門家から技術的な検討を求め、それから各界有識者の御意見もいろいろ承りまして、そして、私どもが民間給与を比較します際の一番基本の原則であります同種同等のものを比較するというラスパイレスの方式、この方式の基本が守れるかどうか、それからまた、有効な調査ができるかどうかという観点から、五十人であれば双方満足することができるということで、この変更に踏み切ったわけでございます。決して、御指摘がありましたような、政府の意向を受けて行ったわけではございません。

 後半のものについては、私自身が関与いたしておりますので、自信を持ってお答えすることができるわけでございますけれども、人事院は、独立の機関と申しましても、自分だけの閉鎖的な考え方ですべてを仕切れるわけではございません。各方面の御意見に耳を傾け、中でも国民を代表されます国会での御議論、それから行政の責任をお持ちになる政府のお考え、このことをお聞きするのは当然でございますが、しかし、私どもはあくまでも民間準拠の原則のもとにその水準を考えておりますので、国の財政事情、懐事情でこの数値をどうするということは毛頭考えておりません。そのように取り組んできたつもりでございますので、私の就任前においても同様であったと私は信じております。

 それから、天下りの問題でございますけれども、職員が退職後もその能力を生かして、第二の就職といいますか再就職をする、その権利は当然であろうと思います。

 問題は、人事行政の一環として勧奨退職が行われ、その関係で再就職のあっせんが行われる、それが各府省の権限や予算を背景とするということになっているのではないか、そういう疑念が生じてまいりました。そういう意味で今回の制度改正が行われたわけでございまして、この問題は各省の人事運営のあり方にかかわる問題でございますので、そういったところを見直していくということが不可欠でございます。

 と同時に、高齢者が社会での活動を継続するということがだんだん一般的な社会の動きとなってまいりました中で、公務員出身者もまた退職後それぞれの活動の場を求めるということは当然あってしかるべきだと思います。

 ただ、公務員は、多年、公務という非常に特殊な職場で仕事をしてきたわけでございますので、直ちに民間の方々と同じような仕事ができる、そういうことができる方もいらっしゃいますけれども、すべての人がそうできるわけでもない。そういう意味では、公務員の退職後の生活についても含めて、全体としてどういう制度をつくっていくかということをやはり考えていく必要があるのではないかというふうに私は考えております。

 以上でございます。

笹川委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 人事院と並んで、看板には国家公務員倫理審査会というふうに表示がされています。独立性を持った機関ですけれども、たび重なる当時の不祥事、厚生事務次官のスキャンダルもありました。当時、浮かんでは消え浮かんでは消えしていて、最後に、九七年の大蔵スキャンダル、これがとどめで、当時の連立与党の中で、国家公務員倫理法というものをつくろうということで、当時の野中広務さんを座長に、私もメンバーでありました。

 メンバーの中の、ワーキングチームの一人として、当時、政治あるいは霞が関の世界で、これを総務庁に置くべきなのか、人事院に置くべきなのか、激しい論争がありました。そこで、実は国家公務員法の十七条に、これは抜かずの十七条と呼ばれたそうなんですが、その第二項に、人事院は証人を喚問することができる、そして、その調査をすべき事項について書類を提出させることを命ずることができるという事項があって、戦後一回やったけれども、これは失敗に終わって全く使われていない。そこに着目をして、これなら国家公務員法の体系の中で人事院に置くというのが相当ではないかということで、全会一致で、一九九九年当時、この立法がなされ、倫理審査会ができた。

 この動きを、当時、郵政省にいらっしゃって、局長さんあるいは事務次官としてどうごらんになっていたか。そして、この倫理審査会は本当にきちっと機能しているだろうか、総裁として直接の運営にはタッチしないまでも、お聞きしたいんですね。

 というのは、守屋前防衛事務次官は、実は、自衛隊員倫理法、倫理規程における倫理監督官だったわけですね。守屋さんがいわば事のよしあしを判断するという立場にあって、またあるいは、自衛隊職員に倫理規程のその趣旨を解説する立場の方が御案内のような事態というのを、一体どう受けとめていらっしゃるのか。せっかく国家公務員法に書いてある、本来はもう少し強い権限を積極的に行使すべきなのではないかと私は思います。これについてお聞きしたいのが一点。

 二点目は、この間の政府の官民比較の方法の見直しなどの要請であるとか、公務員給与のさらなる抑制等々、要請をされていると思います。私は、率直に言って、人事院の労働基本権制約の代償性と独立性が揺らいでいるのではないかというふうに感じるんですね。こうした問題意識に立つときに、公務員制度改革、労働基本権問題についてどういう認識をお持ちなのか。また、改正国家公務員法の施行に伴って、人事評価制度の構築や整備について、中立で公正な人事行政、勤務条件を所管する立場からしっかり対応すべきではないかと思いますが、どうお考えなのか。

 また、いわゆる霞が関のお役所の中にもたくさんの非常勤職員の方がいらっしゃるんですね。待遇は決していいとは言えない、いわばワーキングプアというような言葉が蔓延する中で、これらの人たちの扱いを人事院としてはどうごらんになっているのか。これが二点目です。

 三点目は、簡単なんですが、候補はITについて非常によくわかっていらっしゃると思います。人事院の構築している給与システムについて、大変難航しているということが話題になっていたと思うんですが、これはどういうふうに解決をされているのか。

 以上です。

谷参考人 倫理審査会の問題は、確かに人事院の中にはあるわけでございますけれども、先生御案内のように、人事院総裁の所管からは完全に独立しております。そういう意味で私が直接お答えするのはいかがかと思うのでございますが、人事官の一名、これは非公務員出身の方でございますけれども、がメンバーの一人となっておられまして、私は、倫理審査会としての機能を果たしておられるように思っております。

 御指摘の防衛省、防衛庁はこの対象外になっておりまして、防衛省独自の倫理規程をお持ちになるという仕組みになっております。もちろん、それは国家公務員倫理審査会の決めましたことをある程度見ながらおつくりになっていらっしゃいますので、影響を及ぼしているということは事実だと私も思いますけれども、そういうことであったかと思います。

 それから、私、当時これが発足いたしましたとき、郵政省に勤務しておりましたけれども、大変残念ではあるけれども、やむを得ない成り行きであるというふうに思っておりました。いろいろな不祥事が出てまいりますと、やはりそれらを矯め直すための仕組みというのは必要であると。しかし、初代の倫理審査会長が当時声明を出されましたけれども、できるだけ早く、こういったことをしなくても済むような公務員の世界になってほしいということをお述べになっておられたと思います。私もそのような気持ちでこれを受けとめました。我田引水なことを申し上げてはなんでございますけれども、私がもといました職場については、真摯にこれを受けとめてその遵守、実施に努めていたと考えております。

 それから、比較方法の見直しのことでございますけれども、私どもとしては、先ほどお答えしましたけれども、いろいろな方面の御意見はお聞きしますけれども、責任を持って中立、専門の機関としての判断をしたという自信を持っております。

 それから、労働基本権の問題でございますが、当然、公務員も勤労者であるわけでございまして、自分の労働をどう処分するかの決定権は持っております。しかし、公務員は、憲法十五条に書いてございますように、全体の奉仕者。奉仕者という概念は、恐らく民間の雇用関係ではない概念だと私は思うわけでございまして、日本という将来世代を含む共同体のあり方を考えていくために、その構成員の中から選挙あるいは成績主義によって選ばれた者がその役割を果たしていくという特殊な立場がございますので、現在の制約があるんだろうと思います。ただ、基本的な権利があるわけでございますから、代償措置として設けられました私どもは、御本人にかわって、その機能を十分に果たしていく必要があると思います。

 この扱いが今後どのようになるかということは、これは国政運営の基本方針を決定する上での最重要事項の一つだと私は思いますので、当事者の私がとやかく申し上げることではなくて、政府及び国会において十分御検討になることだろうというふうに思っております。

 それから、人事評価の問題でございますが、確かに、能力・実績主義を徹底していくということは公務の能率的な運営のために必要なのでございますけれども、しかし、そのためには、評価というものが公正に、客観的に行われるという、そのことが確保されるということが一番基本になるわけでございます。それからまた、その評価の結果を具体的にどのように勤務条件に反映させていくかという、この反映のさせ方ということも非常に難しい問題でございます。

 そういったことについて人事院の担う責任というのは非常に重要だと思っておりますので、現在進行中でございますけれども、評価のあり方についての検討が進められることと並行して、勤務条件への反映のあり方をどうするかということを検討していく必要があると思っております。

 それから、非常勤職員の扱いについては、先ほどもちょっと触れさせていただきましたけれども、非常勤職員の担当いたします職務は区々でございます、さまざまでございますので、さまざまな処遇がなされております。それはある意味では理のあることでございますけれども、しかし、同じような仕事をしていながら所属する官署によって勤務条件を異にするという例が間々見受けられるということでございますので、こういうことについてはやはり是正をしていく必要がある。

 それから、非常勤職員については、公務部内において常勤職員との均衡というのは重要でございますが、同時にまた、民間における同種の立場にある方々との比較ということも大事でございますので、民間の状況も見ながら、それからまた、問題は給与だけではございませんで、その他の処遇も含めて広い観点で考えていく必要がございます。

 それから、非常勤制度そのものについても検討の対象になり得るということでございますので、もちろん、できるものから検討すべきだと思いますけれども、関係の方面と連携をとりながらこの問題は取り組んでいく必要があるというふうに考えております。

 それから、人給システムの問題でございますけれども、人給システムにつきましては、最初は、方式だけを統一して、各省がそれぞれシステムを持って運用するということでスタートをいたしました。そういたしますと、各省それぞれの事情がありまして、なかなか、具体的な問題を詰めるということで難しい点がございまして、時間がかかりました。そう言っておりますうちに方針が変わりまして、システムを一元化するというふうに変わってまいりましたので、途中からまた積み直しをするという作業が出てまいりました。しかし、各省の御理解を得まして、基本的なところはもう合意が済んでおりますので、これから逐次その具体化に向けて進めていくということになると考えております。

 以上でございます。

笹川委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 谷候補には二点お伺いをしたいというふうに思っております。

 まず一点目でございますが、勧奨退職是正のために実際何をするのかということですが、谷候補のように事務次官になれた方はいいんですが、なれなかった方が後ろめたさなく役所に居続けるということができるようにするための環境づくりということで、この具体策というのはどういうものがあるのかということをお聞きしたいというふうに思っているのが一点。

 それから、これは、国会議員、我々も反省しなきゃいけないところもあると思いますけれども、サービス残業というのが恐らく相当数あるだろうというふうに考えております。公務員の職場環境を整えていくんだ、そこから家庭環境まで影響を考えるということを先ほどおっしゃられておりましたので、そういうことを考えますと、サービス残業のあり方、残業制度のあり方というものに関して、当然これは、郵政省のトップでもいらっしゃいましたので、考え方があるのではないかなというふうに思っておりますので、これに対する対策、具体策というのはどういうものがあるのかお聞きしたいというふうに思っております。

 以上です。

谷参考人 基本的に、天下り問題の背景には各省の人事政策、若年退職勧奨ということがあるということでございまして、私どもとしましては、すべての職員がそれぞれの能力を生かし得る仕事に定年までつき続けることができるようにしていくということが非常に重要なポイントであろうと思っております。

 そのための制度の一つといたしまして、昨年の勧告で専門スタッフ職俸給表を提案させていただきました。既にそれに対応する官職を各省で準備されまして、近々それが発足していくことになるのではないかというふうに思います。

 ただ、この問題は、いわば複線型人事管理をつくっていくという問題は、現在の業務の執行体制そのものを変えていくということにもなるわけでございます。そしてまた、その過程にたまたま遭遇した職員をどの時点でどのように選抜していくかという非常に大きな問題にもかかわるわけでございますので、もちろん、そういった環境整備の責任は人事院も大きく大きくあるわけでございますが、各省の御協力を得て進めていく必要がある、それからまた、政府としてもバックアップをしていただく必要がある非常に大きな問題だろうというふうに考えております。

 それから、サービス残業の問題でございますけれども、これも先ほどちょっと触れましたけれども、特に本省の職員がいろいろな事情で長時間役所に在庁するという実態があるということでございまして、実際の超過勤務手当支給時間との間に相当のずれがある、乖離があるということでございます。

 私どもといたしましては、職員の健康の保持のためにも、また、先ほど申し上げました家庭生活と職業生活との両立のためにも、それからまた、若い人たちに公務の職場を魅力あるものとお考えいただくためにも、この問題を解決する必要がある。もちろん、労働に対して適正な対価を支払うという一番基本の原則はあるわけでございますが。

 まずは、その在庁の実態が何かということを分析する必要があるわけでございまして、その作業を昨年来進めてきております。真に必要な在庁であるかどうか、現在の在庁時間のうち、仕事にかかわるもの、さらには、その仕事がどうしても短縮あるいは振りかえることのできない仕事であるかどうか、そういった実質的なところを詰めて、この問題の解決を図っていきたい。これは、内閣の方とも連携をとりまして、各省と一体となって、今その検討を進めているところでございます。

笹川委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 なお、各派、お手を挙げて質問していただきたいと思いましたが、予定の時間になりましたので、残念でございますが、これで谷参考人の所信に対する質疑は終了いたします。参考人の意見を十分に聞いて質問をしたいと思っておられた方には大変申しわけありませんので、各派が十分にその点しんしゃくしていただいて、次回はひとつまた質問できる機会をおつくりいただきたいと思います。

 参考人は御退席いただいて結構です。ありがとうございました。

 これにて懇談を閉じます。

    午前十一時五十八分懇談を終わる


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