衆議院

メインへスキップ



第38号 平成20年6月3日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十年六月三日(火曜日)

    午前十一時三十一分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 小此木八郎君 理事 根本  匠君

   理事 吉田六左エ門君 理事 竹下  亘君

   理事 三ッ林隆志君 理事 金子 恭之君

   理事 川端 達夫君 理事 石田 祝稔君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      若宮 健嗣君    大畠 章宏君

      三日月大造君    谷口 和史君

      佐々木憲昭君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (日本銀行政策委員会審議委員候補者(慶應義塾大学経済学部教授))     池尾 和人君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  小川 淳也君     大畠 章宏君

  保坂 展人君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  大畠 章宏君     小川 淳也君

  日森 文尋君     保坂 展人君

    ―――――――――――――

六月三日

 衆議院憲法審査会早期開会に関する請願(倉田雅年君紹介)(第三四二三号)

 同(中山太郎君紹介)(第三五二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 議員谷垣禎一君及び同横路孝弘君永年在職表彰の件

 本日の本会議の議事等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 まず、日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る五月二十九日の理事会において、大野内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行政策委員会審議委員に慶應義塾大学経済学部教授池尾和人君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会協議に基づき、日本銀行政策委員会審議委員の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行政策委員会審議委員候補者・慶應義塾大学経済学部教授池尾和人君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、池尾参考人に所信をお述べいただき、その後、懇談形式で、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、池尾参考人にお願いいたします。

池尾参考人 池尾和人でございます。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。

 私は、現在、慶応義塾大学で学生の教育と研究に携わっております。専門は金融論ですが、とりわけ金融制度・システムや、金融機関行動にかかわる問題を中心に研究し、著述等も行ってまいりました。

 目の前の現実を無視して金融の研究を行うということはあり得ませんので、一九九〇年代以降の状況の中では、政策的なイシューにも常に注意を払いながら研究を進めてまいりました。この意味では、中央銀行が取り組まなければならない諸課題についても、かねてから関心を持ち続けてきたと言えます。

 また、研究活動との関連で、日本銀行の、特に調査研究畑の人たちとはかなり以前から交流がありました。私自身、もっと若いころに、日本銀行金融研究所の客員研究員を二年間務めた経験もあります。

 こうした交流、経験から、私は、日本銀行という組織に対して、愛着と言うと言い過ぎですが、それに近いようなものを持っており、今回、日本銀行政策委員会審議委員への就任要請を受けました際には、極めて短期間に判断をしなければなりませんでしたが、余り迷うことなく、お引き受けしようと決意いたしました。

 それで、現下の日本経済について述べたいと思いますが、現下の日本経済は、主として海外発の要因の影響で減速を余儀なくされていると思います。

 もっとも、もう少し長い目でとらえた場合には、日本経済の成長基盤は数年前よりは格段に強くなっています。企業部門では、債務、人員、設備の過剰、いわゆる三つの過剰などの構造的な問題が解消に向かいました。また、金融システムの安定も、基本的には回復したと考えています。経済の動きを見る場合、需要項目などの短期的な動きだけではなく、こうした企業、産業の構造や金融システムの状況など成長の基盤となる部分をよく見て、きっちりと評価することが重要だと思っております。

 このような日本経済の現況にあって、金融政策運営に関して現在日本銀行が表明している考え方、すなわち、経済、物価の見通しと上下両方向のリスク要因を点検した上で機動的に政策を行うという考え方は、極めて適切なものだと私自身も評価いたしております。金融政策の効果波及等には時間的なラグが存在することを踏まえますと、フォワードルッキング、先を見て行動することは不可欠なことですし、その際にも不確実性を考慮に入れた慎重な対応をとることが望ましいことは理論的にもよく知られております。とりわけ現在のような微妙な局面では、リスクに注目することは全く当然のことだと考えています。

 この限りでは、日本銀行が折に触れて主張してきていることと私自身の考えの間に大きな違いがあるとは思いませんが、その上で、私自身が特に重要だと考えていることを最後につけ加えさせていただきたいと存じます。

 それは、金融システムの安定性、健全性を維持することの大切さということです。もちろん、これは言うまでもないことかもしれません。日本銀行法が日本銀行の使命として物価の安定と並んで信用秩序の維持を規定しているのは、こうした認識があるからだというふうに思います。

 しかし、一九九〇年代から二〇〇〇年代初めにかけての我が国が陥った長期低迷の教訓に加えて、今般の米国のサブプライムローン問題に端を発した金融資本市場の不安定化の経験からも、中央銀行が金融システムの問題に深く関与する必要があることが改めて強く確認されたと考えます。

 そして、この信用秩序維持政策という面においては、これまで蓄積してきた学問上の知識や経験から私にはいかばかりかの比較優位があり、政策委員会での議論を活性化させる上で貢献できるのではないかというふうに自負いたしております。

 現在は経済金融情勢が大変難しい局面にありますが、日本銀行の審議委員に任命いただきました場合には最大限の努力をしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。

 御清聴ありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十一時三十九分懇談に入る〕

    〔午後零時一分懇談を終わる〕

笹川委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 以上をもちまして日本銀行政策委員会審議委員候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、永年在職議員の表彰の件についてでありますが、議員谷垣禎一君は、今月で在職二十五年に達せられました。また、議員横路孝弘君は、三月をもって在職二十五年に達せられましたので、先例により、院議をもって表彰することになります。

 両君の表彰文は、前例に従って作成したお手元に配付の案文のとおりとし、表彰決議は、本日の本会議の冒頭において行うことに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

 議員谷垣禎一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    …………………………………

 議員横路孝弘君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    ―――――――――――――

笹川委員長 なお、本会議における表彰次第につきましては、まず議長発議をもって両君の表彰決議を行い、次に議長が表彰文を順次朗読されます。次いで、表彰を受けられた谷垣君に登壇願った後、同君から謝辞が述べられます。

 横路君の謝辞につきましては、会議録に掲載することにいたします。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

駒崎事務総長 まず最初に、谷垣禎一さん及び横路副議長に対する表彰の決議を行います。次いで谷垣さんから謝辞が述べられます。

 次に、日程第一につき、竹本国土交通委員長の報告がございまして、共産党及び社民党が反対でございます。

 次に、日程第二につき、東経済産業委員長の報告がございまして、共産党及び社民党が反対でございます。

 次に、日程第三につき、佐藤文部科学委員長の報告がございまして、全会一致であります。

 次に、日程第四につき、下村法務委員長の報告がございまして、共産党、社民党及び国民新党が反対でございます。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十三号

  平成二十年六月三日

    午後一時開議

 第一 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

 第二 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮からの貨物につき輸入承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件

 第三 学校保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

笹川委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、来る五日木曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十一時三十九分懇談に入る

笹川委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより池尾参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 池尾参考人、大変御苦労さまでございます。

 一分ということですから、簡単にお聞きをしたいと思いますが、今お述べいただいた中で、日本の成長基盤は格段に強くなっている、こういうお話がございました。どういう面が強くなっているかということと、そしてもう一点は、政策審議委員として貢献ができる、こういう自負もお述べになりましたが、どういうことで貢献ができるか、具体的にその二点、あわせてお聞きをいたしたいと思います。よろしくお願いします。

池尾参考人 最初の所信の中でも述べましたが、九〇年代の日本経済は、いわゆる三つの過剰に非常に苦しんでいたというふうに思うんですね。過剰設備、過剰債務、過剰人員についての問題が企業部門の懸命な努力の結果として解消に向かった、適正な資本ストックの水準に戻ったということが、成長基盤が強化されたということの最も中心的な内容だというふうに思っております。

 九〇年代、そういう形で企業部門が問題を抱えていたわけですけれども、それをさらに悪化させた、あるいはその問題解決をおくらせた要因として、金融システムが不安定化したということがあったと思います。

 それで、金融システムの健全性を回復させるという点において、中央銀行の役割は私は非常に大きいと思っております。もちろん、金融システムの安定化についての政策は、金融庁を初めとした金融監督行政の役割が当然中心になるわけですけれども、いざ金融市場で危機が起こった際には、中央銀行は最後の貸し手として流動性を供給したり等の役割があり、中央銀行の金融システム問題とのかかわりというのは非常に大切だと思っているんです。

 その側面に関して、私は、それを第一の専門として長らく研究し、かつ、政府の金融審議会等の場でも議論にかかわってきたという経験がございますので、そうした側面については私には何らかの貢献をする可能性があるのではないかと、ちょっと手前みそですが、思っておるということです。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 金融機関のあり方についてお尋ねします。

 日本の金融機関のROEは五%ぐらいで低過ぎると言われています。アメリカのヘッジファンドなどは場合によっては一〇〇%を超える、こういう状況ですが、これが正常かどうかというのが一点。

 それから、サブプライムローンで債務の証券化ということなんですが、プロの市場同士ではなかなか利益が上がらないけれども、プロがアマチュアをだますというようなやり方ですね、被害者が低所得者に及ぶわけですが、こういう現象についてどのようにお考えか。

 最後に、世界的な投機マネーが非常に広がっておりますが、どのような規制方法があるか。

 以上です。

池尾参考人 今の御質問は、私がかつて述べたこと等を踏まえて御質問いただいたというふうに思いますが、日本の金融機関のROEに象徴される収益性は、私は低いと思っております。

 それで、収益性の改善に向けての努力をすべきだというふうに思っておりますが、他方、金融サービス業において継続的に四、五〇%のROEあるいは一〇〇%、二〇〇%のROEが上げられるというのは、これは不思議なことといいますか、それはそれで極めておかしなことだというふうに思っております。

 金融資本市場が、初期の段階といいますか、いろいろなゆがみを抱えていた段階においては、そうした利益を上げる機会もたくさんあったんだと思いますが、近年、世界的に見て金融資本市場は急速に効率化してきておりますから、そうした中で一〇〇%を超えるようなリターンを継続的に上げるというのは極めて困難になっていると思います。

 そういう状況の中で、しかしながら収益を上げなければならないという強いプレッシャーにさらされていたアメリカの金融サービス産業が、結果として適正でないような形の利益機会を追求するということはあったと思います。そのことが今般のサブプライムローン問題の一つの背景をなしているというふうに思います。

 だから、利益を上げる努力をするのは当然ですが、それは一定のルール、規律のもとで秩序を持って行われるべきものだというふうに私は考えております。日本版ビッグバンの際に、フリー、フェア、グローバルということが言われましたが、私は、まさにフリーとフェアを両立させることこそが、金融サービス産業が長期的に成長し繁栄していくための必須の条件だと思っております。

 そういう意味で、絶対に強力な投資家保護、消費者保護ということが金融資本市場の一つの大きな条件だというふうに考えており、これはアメリカ政府もそういうふうにはっきりと言っていることでありまして、私は、そういう形で、長期的に健全な金融サービス産業の発展ということを期待しております。

三日月委員 民主党の三日月と申します。

 これまでの日本銀行の金融政策への評価を踏まえて、かつ、当面する、直面するリスクを考慮して、これからの金融行政はいかにあるべきとお考えでしょうか。

 これだと漠然とし過ぎておりますので、特に、池尾先生、政策展開するときの副作用について十分考慮すべきだということを二〇〇二年三月の新聞でも表明されておりますが、この間、日銀の長期にわたる超低金利政策は三百兆円もの利子所得を奪い、これが高齢者世帯に打撃を与えたという副作用もあるのではないか。毎月一・二兆円もの長期国債の買い入れを継続してきたことが、財政規律を緩め、ゆがめてしまった面もあるのではないか。異例の量的緩和政策が市場にあふれる資金を生み出して、これが逆にサブプライムローンだとかの投機マネーの原資となってしまった側面もあるのではないか。

 こういうことに対する評価を踏まえて、特に米国と欧州の中央銀行の戦略が異なっている現下において、また、原油、食料価格の高騰が起こっている今において、どのようにお考えでしょうか。

池尾参考人 今の局面が極めて難しい局面であるというのは私も強く認識しておりまして、そういう意味では、今だけではなくて、九〇年以降、長期間にわたって極めて難しい局面が続いてきたということで、その中で、すべてを満足させるような形の経済政策の運営というのは不可能に近かったということがあると思います。その意味で、過去の金融政策に一切副作用がなかったなどということは私は思っておりません。ある種の好ましくない効果を部分的に伴っていた面はあるというふうに認識しております。

 しかしながら、大宗においてはといいますか中心においては、冒頭の御質問のときにも申しましたが、九〇年代、企業部門が過剰設備を抱えていた。過剰設備を抱えているときに、さらに投資をしようという人はなかなかいないわけですから、どうしても経済は需要不足に陥りがちになります。そういう中で、経済の、景気の底割れを防ぐためには、どうしても低金利政策はとらざるを得ない、そのことはやはり基本としてあったのではないかということです。それが引き起こした分配上の問題については、別途政策的な手当てを行うという、ポリシーミックスでの対応ということが望ましいことではないかというふうに思っております。

 流動性についても、流動性のしっかりとした管理ということは極めて大切であるというふうに私は思っております。

日森委員 先ほどの佐々木先生の話とちょっと重複するかもしれないんですが、今後、いわゆるファイアウオール、この規制緩和が進んでいくということが予想されているんですが、そうすると、新たな金融のコングロマリットでの利益相反という問題だとか、あるいは銀行の優越的な地位による不当な商品であるとかサービスが販売されるとか、あるいは銀行部門以外の損失を銀行が補てんするということで預金保険基金がなくなってしまう、あるいはそのグループ内で複雑な業務がどんどんふえてコストが増加したり、したがって行政監督が非常に難しくなるとか、さまざまな問題が予想されているんですが、先ほど先生がおっしゃったような形で解決をしていくということになるのかもしれませんけれども、具体的にどう対応していくのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

池尾参考人 御質問いただいた金融監督のあり方については、基本としては金融庁を初めとした金融監督行政の課題だと思いますが、冒頭に述べましたように、中央銀行も、金融市場の問題、金融市場の参加者である金融機関の経営状態等についてよく知っている必要があるわけで、その当の金融機関の経営内容が御指摘のように極めて高度化するとともに複雑化してきているという中で、どのような形でのモニタリングのあり方が最も望ましいかということは、これはもう世界的にも議論がされている途中の問題だと思います。

 最近といいますか三月の末に、アメリカの財務省がその点について二百ページ以上に及ぶレポートを出して、アメリカの規制体系のあり方を短期、中期、長期的にどう見直していくべきかということについて提言をしておりますが、そうした検討作業を我が国についてもやはり早急にやるべきだというふうに思います。

 この問題は、御指摘のとおり、決して簡単な問題ではなくて、高度化、複雑化しているのをやめさせるというのは、むしろ金融サービス産業の発展を阻害することになりますし、イノベーションを妨げることになるわけですから、金融サービス産業が高度化、複雑化していくという現実を踏まえながら規制監督あるいは金融政策の有効性を維持していく体制づくりということは懸命に、要するに民間のイノベーションに負けないイノベーションを政策当局もやっていかないと、その政策、監督の有効性が失われるという話になると思いますので、我々、本当に、簡単にこうすればいいというふうにお答えはちょっと今できない種類の問題ですので、私も直ちに簡単な答えを持っているわけではありませんが、今申したような意味で、十分に検討する作業をやっていく必要があるというふうに思っております。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 日銀の使命として、物価の維持と信用秩序というお話をされました。では、物価について少しお話をさせていただきます。

 物価が経済の活性化の、いわば体温が上がることにつれて物価が上がるというのは、ある意味で、ある種健全な部分があると思うんですが、今日本で起こっておる現象、確かに名古屋を中心に多少いいところはありますけれども、その他の地域で特にいろいろな影響が出てきておる。しかし、原油高、穀物高、えさ高、いろいろなものが重なって、ピンポイント的にというか、だんだん波及をしておりますけれども、物価にかなりの影響が出ておる。

 では、そういう中で、普通は物価を抑えるためには金利を上げる、だけれども、今の経済状況の中で金利を上げると経済そのものまで傷つけてしまいかねない。スタグフレーションとまでは言いませんが、そういう可能性すらあるという難しい状況にあると思います。

 一方で、私は、三%以下は極端に言うと金利ではない、企業が五%の金利を負担して利益が出るというのが正常な姿だ、本当はそこへ早く戻していただきたいという思いもある中で、金利について物価との絡みでどうお考えになっているかを教えていただけませんか。

池尾参考人 これも難しい問題なんですけれども、御指摘いただきましたように、供給面に原因がある場合と需要面に原因がある場合で、物価上昇が起きた場合の対応の仕方というのは随分異なってこざるを得ないわけです。

 それで、需要サイドが盛り上がってその結果物価が上昇するというのは、御指摘のように、いい物価上昇の可能性が高くて、その場合は自然な形で金利を上げていけばいいというふうに考えますが、今般のように供給面で、原材料価格、燃料価格等が高騰する形での物価上昇の際に、物価を抑えるために金融引き締め政策をとった場合は、むしろ雇用とか景気に極めて悪い影響を与えかねないということで、物価上昇の機運が見られても、なかなか金利を引き上げるべきかどうかということで判断に悩まざるを得ない、今そういう局面だと思っております。

 それと、一般的な物価の動きと並行して、相対価格と言っておりますが、物とかサービスの価格の割合の変化が起こっているというのがあると思います。

 消費者にとって身近なものの価格は上昇していて、生活者の実感からするとインフレになりつつあるという形になるわけですね。しかしながら、GDPデフレーターといいますか、経済全体についての価格動向をならして見る指標を見れば、依然としてある種デフレが続いているというふうなところがあって、すべての財・サービスの価格が同じように全部動いているときにはすごく話は簡単なんですけれども、技術革新だとか資源価格の上昇だとかいろいろなファクターがあるせいで、物によって影響を受ける度合いが違いますから、上がっているものもあれば、実は下がっているものもあるということで、消費に直結する部分での、消費者物価指数の動きには十分注目していかなければいけないと思いますが、金利を上げるべきだというふうに即断できる状況では決してないというのが私の今の認識であります。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 池尾先生が日銀政策審議委員というふうになられた場合には、金融システム全体についての安定性が必要だとおっしゃられたと思います。特に、郵政民営化について支持をされていらっしゃったと思いますが、民営化をされた後のゆうちょ銀行が金融システム全体に及ぼす影響というのをどのようにお考えでしょうか。

池尾参考人 御案内のように、ゆうちょ銀行は、現在、資産運用の内容としては、大宗が国債の保有になっているわけです。したがって、ゆうちょ銀行が保有国債を大量に処分するというふうな行動に出た場合には、国債価格にかなりの大きな影響が出ることは懸念されるわけです。

 ただし、私は、現時点でのゆうちょ銀行の経営内容といいますか、経営方針について熟知しておるわけではないので、その意味では断言しかねるところはあるんですけれども、ゆうちょ銀行がにわかに保有国債を手放すというふうなことは考えがたいと思います。より時間をかけて、リスク管理のノウハウだとか、貸し出しの審査のノウハウだとか、そういうものを身につけながら徐々にポートフォリオの内容を組みかえていくということは当然予想されますが、きょう、あすに大きなポートフォリオの組みかえをゆうちょ銀行が図るとは思われないので、そういう意味においては、当面、ゆうちょ銀行が日本の金融システムの安定性に対して攪乱要因になるというふうには考えておりません。

笹川委員長 これにて池尾参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 参考人は退席していただいて結構です。どうも大変御苦労さまでございました。

 これにて懇談を閉じます。

    午後零時一分懇談を終わる


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.