衆議院

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第6号 平成20年10月21日(火曜日)

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平成二十年十月二十一日(火曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 小坂 憲次君

   理事 小此木八郎君 理事 今井  宏君

   理事 平沢 勝栄君 理事 渡辺 博道君

   理事 高木  毅君 理事 小野寺五典君

   理事 川端 達夫君 理事 仙谷 由人君

   理事 遠藤 乙彦君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      谷  公一君    藤井 勇治君

      若宮 健嗣君    大畠 章宏君

      中川 正春君    伊藤  渉君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (検査官候補者(検査官))            山浦 久司君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(日本銀行理事))     山口 廣秀君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  小川 淳也君     中川 正春君

  三日月大造君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  大畠 章宏君     三日月大造君

  中川 正春君     小川 淳也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 検査官及び日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

小坂委員長 これより会議を開きます。

 まず、検査官及び日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る十五日の理事会において、松本内閣官房副長官から、内閣として、検査官に山浦久司君を再任し、日本銀行副総裁に日本銀行理事山口廣秀君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、検査官候補者及び日本銀行副総裁候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として検査官候補者・検査官山浦久司君、日本銀行副総裁候補者・日本銀行理事山口廣秀君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、山浦参考人、山口参考人の順で所信をお述べいただきます。その後、懇談形式で、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、山浦参考人にお願いいたします。

山浦参考人 山浦久司でございます。よろしくお願いします。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、まことに厚くお礼を申し上げます。

 昨年、国会の御承認を得まして、本年二月に会計検査院の検査官に就任いたしました。この八カ月間、検査官会議の一員として、会計検査院の意思決定に携わってまいりました。とりわけ、会計検査院法第二十条以降の規定に基づく基本的な検査権限の行使はもとより、第三十条の二に規定します国会並びに内閣に対する随時報告、あるいは三十条の三に規定されます国会からの検査要請に対する報告などについて、民間人として、かつ学識経験者としての視点も取り入れながら、検査を実施する事務総局の指揮に当たってまいりました。

 近年の我が国の経済社会は、極めて厳しい環境のもとにあります。また、これを反映して、行政に対する国民の皆様の厳しい目線が注がれております。これらは、行政の説明責任の向上、さらには不正や無駄の撲滅などについての国民の皆様からの強い要求へとつながっておりまして、同時に、会計検査院の活動のさらなる機能強化が求められるようになったものと理解しております。

 会計検査院として、国民のこのような要望を踏まえまして、不正、不当な事態に対して、正確性、合規性の観点から厳正な検査を行うことはもとより、経済性、効率性及び有効性の観点からの検査も重視しながら、また、行財政の透明性、説明責任の向上や事業運営の改善に資するための分析や評価を行っていくことが重要であると考えております。

 今後とも、国民の皆様の関心の所在、国会における御審議の状況に常に注意を払いながら、いろいろな御意見に耳を傾けながら、誠心誠意、検査官として努力していく所存でございます。また、職務に精励してまいりたいと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

小坂委員長 ありがとうございました。

 次に、山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 日本銀行理事の山口でございます。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただき、まことに光栄に存じます。

 私は、日本銀行に入行して以来三十年余り、ほぼ一貫して中央銀行の実務に携わってまいりました。一昨年、理事に就任して以降は、金融政策、金融システム、それから内部管理等の仕事に従事してまいりました。

 日本銀行の使命は、物価の安定と信用秩序の維持を達成することであります。これら二つのことが実現されて初めて、我が国経済が持続的に発展していくための基盤が整うということであります。それだけに、日本銀行に課された使命はまことに重大であると認識しております。

 日本銀行は、あくまでも中央銀行という銀行であります。したがって、使命の達成も、銀行業務、言いかえますと、銀行券の発行、預金の提供、貸し出しの実行といった業務を通じて行うことになります。ここに、行政機関ではない日本銀行の特徴がありますし、日本銀行の仕事に中央銀行としての専門性が求められるゆえんがあると考えています。

 内外の経済金融情勢に目を向けますと、現在、国際金融資本市場及び金融システムは、米欧を中心に、近年例を見ないほどの緊張下にあります。景気は、米国等で減速の動きがはっきりしてきていますし、インフレ率は世界的になお高い水準となっています。先行きにつきましては、金融と実体経済のマイナスの相互作用がどのように展開するのかといったこととも関連して、見通しが大変難しくなっています。

 一方、我が国の状況を見ますと、金融資本市場は、欧米に比べれば落ちついていますが、緊張感が次第に広がっています。株価や円相場は極めて神経質な展開を示しています。景気は、輸出の伸び悩みなどから、既に停滞局面に入っていますし、当面、停滞を続ける見通しです。消費者物価は、このところ前年比二%台半ばの上昇となり、ここしばらくはこれに近い上昇率を続けると見られます。我が国経済の先行きにつきましても、国際的な経済、金融の動きが見通しにくいだけに、不確実性がさらに高まっています。

 このように、内外経済についての情勢判断が非常に難しくなっているもとにありまして、日本銀行の政策運営のかじ取りも一段と難しさを増しています。仮に副総裁を拝命することになりました場合には、果たすべき役割を十分にわきまえて職務に邁進することが、これまで以上に重要になっていると考えます。

 副総裁の役割として特に大事であると思いますのは、まず第一に、言うまでもありませんが、総裁をしっかりと補佐することであります。これまでに培ってきた知識や経験を生かしながら、金融政策を初めとして日本銀行の遂行する政策・業務運営全般にわたって、総裁を適切に補佐していかなければならないと考えます。

 二つ目は、日本銀行が、その組織力を最大限に発揮できるよう努力することです。組織は人であります。日本銀行に長く勤務した経験をもとに、職員一人一人の持てる力や専門性を引き出し、日本銀行の組織力をフルに発揮させていくことが重要な任務であると考えます。

 仮に副総裁を拝命することになるとすれば、ただいま申し述べた役割を十分に認識し、また、独立性と透明性という、日本銀行の政策運営を律する基本原則をしっかり踏まえながら、全身全霊を傾けて職務に取り組む所存であります。

 どうかよろしくお願い申し上げます。

小坂委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 また、山口参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十一時十分懇談に入る〕

    〔午後零時三十分懇談を終わる〕

小坂委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小坂委員長 以上をもちまして検査官候補者及び日本銀行副総裁候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、本日の議事日程第一及び第二の両案に対し、自由民主党の木村勉君、民主党・無所属クラブの伴野豊君、公明党の佐藤茂樹君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の阿部知子君から、それぞれ討論の通告があります。

 討論時間は、木村勉君、伴野豊君、佐藤茂樹君はおのおの十分以内、赤嶺政賢君、阿部知子君はおのおの五分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、議事日程第一及び第二の採決は、それぞれ記名投票をもって行います。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

駒崎事務総長 日程第一及び第二につき、深谷国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員長の報告がございます。次いで両案に対しまして、五人の方々からそれぞれ討論が行われますが、順序は印刷物のとおりであります。採決は二回になります。一回目は日程第一で、委員長報告は否決でありますので、原案について記名投票をもって採決いたします。二回目は日程第二で、記名投票をもって採決いたします。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  平成二十年十月二十一日

    午後一時開議

 第一 国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(第百六十八回国会、参議院提出)

 第二 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

       議 事 順 序

 日程第一 国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(第百六十八回国会、参議院提出)

 日程第二 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

  (1)国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員長の報告(日程第一は否決、第二は可決)

             深谷 隆司君

  (2)討論通告

   日程第一に賛成、第二に反対

             伴野  豊君(民主)

   日程第一に反対、第二に賛成

             木村  勉君(自民)

   日程第一及び第二に反対

             赤嶺 政賢君(共産)

   日程第一に反対、第二に賛成

             佐藤 茂樹君(公明)

   日程第一及び第二に反対

             阿部 知子君(社民)

  (3)採決

   1日程第一(記名)

   2日程第二(記名)

    ―――――――――――――

小坂委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、来る二十四日金曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十一時十分懇談に入る

小坂委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより山浦参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 小野寺五典君。

小野寺委員 山浦参考人、本日は大変御苦労さまです。

 会計検査院のことについて少しお伺いしたいと思っております。

 検査院の検査官は、現在三名いらっしゃいます。院長は元内閣官房副長官補、それからもう一方の検査官は元総務事務次官ということで、いずれも官僚出身の方。そして、参考人は唯一民間からということで、その活躍に大変期待するところが多いところであります。

 そういった中、ちょっと最近の不正経理問題についてお伺いをしたいと思っております。

 愛知県を初め、十二の道府県で不正経理問題が発生いたしました。十二の抜き打ち検査ですべての道府県で同じような状況があらわれたということで、私たちも大変心配することがございますが、まず、実は今回の質問に当たりまして、会計検査院に、この不正経理問題についてどのような報告あるいは調査結果があるのですかということで、私の方から確認をいたしました。

 そうしましたら、実はそのような報告はまとまっていないということで、ではどういうことで知ればいいんですかと伺いましたら、報道に出ているとおりですと。では新聞記事ですかと伺いましたら、それも参考でしょうと。では新聞記事はありますかと言うと、そのようなものはとっておりませんとお話がありました。

 先ほど参考人のお話で、会計検査院法の三十条の二に、読みますと、これは「国会及び内閣への報告」、三十条の三というのは「議院等の要請による検査報告」ということが、しっかりやっているというお話がありましたが、実は質問に当たってすらこのような報告でありますし、また、この十二道府県の事案というのは広く毎日報道をされております。国会にこの内容について報告がない中で、どうして民間の報道機関がこのような状況を知ることになっているのか。もし国会への報告をせずに民間機関に情報が流れているとすれば、これはさらに大きな問題になるのではないかと思っております。

 このような調査をされることは大変重要なことだと思っております。そしてまた、世間に公表されるのであれば、ぜひ国会にもこの内容についてはつまびらかにしていただくことが大切かと思っております。

 次に、この内容についてなんですが、十二の道府県に対する抜き打ち検査ということで今回すべて発覚したということは、恐らく四十七都道府県に広げても相当の同じような事案があるのではないかと思っております。今後、全都道府県にしっかりとした調査を行うかということについての内容について、お伺いしたいと思っております。

 最後になりますが、私も実は地方公務員の経験がございます。どうもこのような補助金に来たお金についての経理というのは、大変扱いが難しい。また、補助金を一〇〇%使い切るということも、実際これだけ多岐な補助にわたりますと、相当現実味を帯びていないということになります。恐らくこの裏金の背景には、何か経理システムの、今後その弾力的な運用とか、もうちょっと建設的な方向も考えられるのではないかと思いますので、ぜひこの検査システムということの検討もお願いしたいと思っております。

 繰り返しますが、会計検査院は内閣に対して独立の地位を有しておりますし、また検査官の任命というのは天皇が認証するという、認証官、大変重い役割を担われます。さらに、山浦参考人には、唯一の民間からということで、私どもは大変期待を寄せておりますので、ぜひその期待がしっかりとした形になるように、活躍をお祈りしたいと思っております。

 私の方からは、以上で終わらせていただきます。

山浦参考人 個人的には、御声援をいただいたと思って感謝申し上げます。

 まず、今回の地方自治体の不正経理の件につきまして、若干経緯を申し上げますと、昨年、各自治体ベースでの内部調査の結果が、検査院に報告が参りました。それを受けまして、大阪府を初めとして幾つかの県についてその実態を調べまして、それを検査報告として上げたものであります。

 内容的には非常に、ほかにもあり得るということで、その昨年度の検査報告で、ほかの県についても、あるいは道についても逐次検査の範囲を広げていくということをお約束しました。それを受けまして、ことしになりまして、担当の検査課が各自治体の方に出向いていって、先ほど先生の方からお話があったように、検査をしまして、そして指摘をした結果が今報道に出ているという状況であります。

 ただ、この中身につきましては、まだ検査官会議の最終決定までいっておりませんで、これについては、検査官会議の最終的な判断を経て、そして、恐らく総理への検査報告の手渡しの段階で明確になる、こういうことになると思います。

 それまでは検査院として公の発表はできないというのがこれまでの決まりでございまして、先生の御指摘にあるように、非常にマスコミ等では先に出ておりまして、これは恐らく、こちらの方から照会文書を出しておりますので、それを受けて、今回は十二県ですけれども、県レベルで自主的に発表されたか、あるいはマスコミの方の取材でもってこういったものが明らかになったという経緯だと思うんですね。

 重ねて申し上げますけれども、検査院として正式の発表は、まだ最終的に検査官会議の決定を経ていないという段階でありますので、現時点では公式には発表できない、こういうことになっています。

 あわせまして、今後ですけれども、こういう検査に入った県すべてにこの発表にあるようなことが報道されておりますし、検査院としても非常にこの問題は重視しております。したがいまして、逐次速やかにほかにも広げていくということは当然あるべきだと思っておりますし、そのつもりで指揮していくつもりであります。

小野寺委員 一〇〇%使い切らなきゃいけないというシステムについての今後の検討について。

山浦参考人 財政法では、次年度繰り越しとか、幾つかの柔軟な使い方を規定しておりますけれども、なかなか使い勝手が悪いというのは、こういう地方自治体だけでなく、補助金等を受けているところからもよく言われているところでありまして、これらはむしろ、財政法でありますので、立法府の方で御判断いただければ、それにあわせて、当然検査院はその法規に従った判断をするということになると思います。

 検査院は、非常に立法に縛られた行動、検査活動をいたしますので、そういった意味では、先に法律の方でその使い道について改めていただければ、これはそれなりに対応できるということになるという判断ですね。

 それからもう一つは、システムについて御懸念がありました。

 私自身、検査官に就任しまして一つ大きな原則を立てておりまして、それは、一つ問題事項を発見したら、それが同じ検査対象の機関で過去になかったのか、それから同じような問題は横にないのかということで広げる、しかもそれを迅速に検査の範囲を広げていく、こういうことを指揮してまいりました。

 それからもう一つは、フォローアップですね。当然、一たん発見したものを、さらに是正措置等がとられているか、あるいは返金等、返還等がなされているか、こういったものをフォローアップしていく。

 それから、もう一つ大事なところは、先生が御指摘のとおり、システムであります。再発防止のためのシステム、要するに内部管理体制。その内部管理体制というのは、日常の会計業務の中でしっかりした管理体制を持つということと、やはりもう一つは、自治体でありますと監査委員とか、そういう自治体での監査機関、それからもう一つは常時的な内部監査が必要だと思っておりまして、実はそういったところがややもすると自治体レベルで欠陥が多い。そういったことについても、検査官として常時、調査官を通して、各受検機関に再発防止のためのシステムの整備を強調して指導するように、こういうふうに言っております。

 ことしは、特に検査報告ではそういった点の強調点があらわれてくるかと思います。もちろん、当然フォローアップもしていきます。

小野寺委員 ありがとうございます。

小坂委員長 ありがとうございました。

 質問には一通りお答えをいただきまして、また後ほど自由質疑の時間がございます。そこで補完もできますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 八カ月間の検査官としてのお仕事の経験を踏まえ、特に民間からの御就任ということでございますから、お役人とは違った目でこの会計検査院の実情を見ていただいて、これから改善をしていただくということが山浦さんには大きく期待をされていると思います。

 そこで、くしくもきょう新聞紙上に補助事業、補助金の問題が掲載をされたわけでありますが、しかし一方では、頻々と新聞報道等にあらわれ、あるいは国会論議の中でもあらわれてくる問題が、これが不正経理の問題なのか、不当支出あるいは過剰支出の問題なのか、あるいは法律的にはそうは言えないけれども、政策としてあるいは事業執行として、結果としてとんでもないという問題なのか、無駄遣いの問題なのか、こんがらがって出てきていると思いますね。

 例えば、この間問題になった居酒屋タクシーというのは、これは会計検査とか行政監察という目で見ればどういうことなのか。あるいは、地方の出先の事務所が乗用車を我々から見れば過剰に保有してこれを使っているというような問題はどうなのか。あるいは、汚染米に絡んで、全国食糧保管協会というところが一括随意契約をして、倉庫業者を全部集めて保管料から累進的に会費を取って、天下り四人ないし五人を養っていく、こういうことが、経理上きちっとできておっても、いかなる問題なのか。この随意契約とかあるいは天下りを養うための社団法人が国民の税金で結果として養われているというふうなことが、国民に対しては極めて大きないら立ちをもたらしているというふうに私は思います。

 そこで、ことしの七月二十九日に、福田内閣は行政支出総点検会議というものをつくりました。つまり、無駄ゼロ会議というのであるようでありますけれども、なぜこんな会議がつくられなければならないのか。つまり、第三者機関としての会計検査院がありながら、会計検査院の存在を否定するかのようなこういう会議がつくられて、これも屋上屋を架して何をやっているのかよくわかりませんけれども、こんなものがつくられた。このことについて、会計検査院はどのように見ていらっしゃるのか。

 それから、不正経理と不当支出と無駄遣い、この違いをこの段階で例を示して明らかにしていただければありがたい。

 それから、もう一つは、この八カ月間、今私が申し上げたような事例をごらんになって、実際問題として、これは会計検査院法の会計検査官の権限が、権限規定なり守備範囲なり、あるいは検査の方法というふうなものが、つまり業務監査とか政策評価に至ることができないという不十分なものであることに原因があるのかどうなのか、このことについて山浦さんの御見解をいただきたいと思います。

山浦参考人 盛りだくさんの御質問で、うまく答えられるかわからないんですけれども。

 まず一つは、検査官として就任しまして、国民として、あるいは一納税者としての視点が極めて大事だというふうなことを改めて思いました。それは、確かに、行政それから出先機関、そしていろいろな補助金等の交付先、そういったところの会計経理の実態を見ますと、やはり会計学あるいは監査の専門家としての前に一納税者として、この検査官の職責は極めて重要だ、こういうことで、改めて思った次第でございます。

 その上で、まず、無駄遣いということがよく言われますけれども、私自身はこれを三つに分類しております。また、この三つの分類が、先ほど仙谷先生の方から御指摘のあった不正経理、不当支出等々のお話につながってくると思います。

 まず一つは、コストを削減できるところができていない。これは、例えば我々の指摘でいいますと、随契をやめて競争契約に移行すべきだ、こういったことで、しきりにいろいろなところで指摘しておりますけれども、ここに当たります。コスト削減は無駄遣いの対応策の一つであります。

 それから、二つ目には、箱物行政とよく言われるんですけれども、無駄な箱物、無駄な建設、こういったものがあります。この中には、利用勝手が悪い、あるいは利用率が悪い、そういったものもあります。それらを経済性、効率性という面から検査院はいろいろな形で指摘をしております。

 それから、三番目は、いわゆる不正です。特に、国損が発生した場合に、それを返還してもらえれば国損自体は解消するんですけれども、中には未返還のまま、例えば個人でありますと、裁判等で結局返還を受けられない、こういったものもあります。恐らく、そういったものも無駄になるでしょう。

 今、私自身が、こういう国の財政が厳しい折に、基本的な検査官としての視点はこの無駄の撲滅ということを挙げておりまして、そういった視点から検査官会議でしきりに発言をしているところでありますし、検査に当たっても現場の調査官を指揮しているところであります。

 例えばタクシーの問題を挙げられましたけれども、実は、検査官の検査権限あるいは判断の一つの限界はやはり、国会で予算が通る、そうしますと、どういった使い方であろうと、その予算の範囲内であればいいではないか、それについては検査院としてなかなか指摘しにくいというところがあります。

 それは、今度、国会の方でこの問題、昨年からことしにかけて指摘されまして、それが我々検査院としての新しい切り口を与えていただいたと思っております。そういった意味で、居酒屋タクシーの問題あるいは国交省の車の用役の問題とか、そういったものについても、いわゆる予算の範囲内であっても、その使い方について常識から外れているもの、無駄なもの、先ほど言ったような余計なコストをかけるもの、こういったものについて指摘ができるということがありましたので、これまでの国会での審議が、それを受けまして我々にとっての切り口を随分と広げることができたと思っております。

 今後とも、そういった意味で、国会の審議の中身については我々慎重に受けとめて、それを検査に反映していきたいと思っております。

 検査院の職の中に、正確性、合規性、経済性、それから効率性、有効性という五つの視点を検査の視点として挙げておりますけれども、特に政策評価にかかわるところがなかなか、予算編成の段階では当然検査院としては口を出すことはできません。一たん国会で審議された予算の使い方を通して、結果としてそれが、例えばさっき言った三つの無駄のどれに当たるか、それぞれで態様がありますけれども、それに当たれば指摘するということになりまして、その結果を受けて、またこれが、財務省等の予算の査定とか、あるいは国会の審議で反映させていく、そういうサイクルの中の一部を担っている、こういうふうに我々は考えております。

 当然、検査院の検査権限には、先ほど言った判断の範囲に限界がありますけれども、その範囲の中で、こちらの方の指摘事項をさらに国会等に反映してもらっていけば、適正な経理が、やがて健全な経理ができていくのではないかと思っております。

 特に、検査院の仕事として、どうしても予算と法律が前提にありますので、その範囲で精いっぱいの検査活動をしていく、これが我々の役割だ、こういうふうに思っております。

小坂委員長 できるだけ質問の要点を簡潔にお答えいただきたいと思います。

 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤でございます。

 山浦参考人には大変期待をしているところでございますが、今国民の思いは、無駄の徹底排除ということに大変強い思いがあるわけでありまして、そういった意味で、会計検査院そのものに対する期待、そして、特に民間の視点を反映する、役人の視点ではなくて民間の視点をいかに反映するかという点に大変大きな期待が集まっているということをぜひ申し上げたいと思っております。

 その上で、一つは、会計検査院の機能強化をさらに当然やっていただきたいわけですけれども、具体的にどういう拡大をしようとされているのか、御意見を伺いたいわけですし、その裏づけとして会計検査院法の改正の要望があるかどうか、これについてお伺いをしたいのが第一点でございます。

 第二点で、民間の目線、国民の目線をどう反映するかということです。既に今までの御意見にも出ておりますが、福利厚生費で計上されているからいいんだというのが役人の議論ですけれども、まさにマッサージチェアとかカラオケセットとか、そういったものは国民の目線から見れば許されないのは当然でありまして、いかに国民の目線を反映した適正な使用を確保していくかということが大きな仕事だと思っております。

 例えば、検査院自体が、国民の視点を反映したガイドラインみたいなものをしっかりとつくっていくようなことも必要ではないかと思っておりまして、具体的にどうやってそういう国民の目線を反映してチェックしていくのかといったことにつきましてお聞きしたいのが第二点です。

 第三点が、これから社会保障は膨大な支出が予想されます。年金、介護、医療、いずれも膨大な分野でありまして、当然必要でありますけれども、他方、非効率とか無駄もあり得る。例えば、社会保険庁が年金の記録改ざんを行っております。こういったさまざまな問題も発生するわけでありまして、今後、こういった年金や介護、医療等についてはどうやって切り込んでいくのかということ。

 それから、もう一つはODAですね。これもなかなかチェックしにくい分野でありまして、既に検査しておりますけれども、やはりどうしても外国に関する部分であって、しにくいわけですが、ODAについては非常に国民の厳しい目線があって、しかし、日本としては、国際貢献としてやらなきゃいけない分野でもありますので、その分、いかにして国民の税金が適正に効果的に使われているか、これも大変重要な問題だと思っておりまして、この点につきましても、検査院の今後のそういった取り組みにつきましてお聞きしたいと思っております。

 以上です。

山浦参考人 ありがとうございます。

 まず、機能強化に向けてでありますけれども、例えば、一番最後の方に出た社会保障の問題で、今、年金の問題が上げられております。

 検査院として与えられた権限の範囲内で機能強化を果たしているというところを御紹介いたしますと、これまで検査課を縦割りでやっておりましたけれども、今回、年金の検査に当たっては、その縦割りをやめまして、局をまたいで、あるいは課をまたいで人を配置し直しまして、そして、こういった機能強化を果たして、今、検査を進めている最中でございます。

 そういう検査院自身の努力はしているんですけれども、あえて法律マターとして検査院法の改正等で要望を出すことについては、現時点では、もうとにかく平成十七年に改正されました院法に基づいて随時報告とか国会からの検査要請に対する対応とか、そういったことを通して精いっぱいのことをやっていくしかない、こういうふうに思っております。

 院法の改正につきましては、国会の方で審議されますので、この件についてはよろしくお願いしたいと思っております。

 それから、民間の視点から、先ほどのタクシーの問題であるとか、こういった予算の範囲内であっても非常識な使用法があるのではないか、また、そういったものについての検査のガイドラインを設けたらどうかということでありまして、これについても、先生御指摘の点はごもっともだと思っておりますし、これらについては、先ほど仙谷先生からのお話に対する私自身の答えとして上げましたように、新しい切り口を国会の審議を通して与えてもらいましたので、今後ともこれは反映するつもりでございます。

 それから、社会保障関係は検査院としても非常に重大な問題、また検査院の存続意義にかかわってくるような問題だと私は理解しております。また、そういった意味で、この検査部署は、非常に緊張感に包まれて検査を進めてきております。特に、人員を他から配置がえして、この検査についても強化していく、こういうことで対応しております。

 それと、あえてここで申し上げますと、今度、新しい機構に移りますけれども、ぜひとも内部管理体制をしっかりしてもらいたい。そのために、検査院としても、できるだけの指導、指摘をしていきたいと思っております。その上で、やはり検査院がこれまで至らなかった、例えば年金記録等の問題についても、重点的な検査を進めていきたいと思っております。

 それから、ODAについて、なかなか相手国政府に対する検査権が及ばないという問題がございます。

 外務省あるいはJICA等が直轄の事業を行うものはともかくとして、一たん相手国政府にゆだねた資金の使い方について、なかなか検査をするという意味での限界がございます。ただ、もとは国税というか国民の公金であります。そういった意味で、検査院としても、これは当然、検査の権限をできる限り使って、例えば肩越し検査というのがありますけれども、そういったものを使いまして検査を進めていきたいと思っておりますし、また、近いうちにその成果について検査院を通して発表できると思っております。

小坂委員長 ありがとうございました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、十二道府県の不正経理問題についてお聞きしたいと思います。

 一つは、十二道府県を選んだ基準は何かという点でございます。検査を行うとすれば、常識的に言うと一斉に四十七都道府県をやるべきだというふうに思いますけれども、体制上、人手不足などの問題があったのかどうか。今の会計検査院の体制として、人員についてふやしてほしいという要望があるのかどうか。まず、そのあたりをお聞きしたい。

 二つ目は、対象となったすべての道府県で不正経理が発覚した、そこに共通する原因があるように思いますけれども、その点、どのようにお考えか。交付金の削減など、今、地方財政はかなり窮迫しておりまして、目的を特定する補助金依存のあり方の見直しも求められていると思います。預け金という名の裏金をつくるというのは言語道断ですけれども、補助金の現在の仕組みについて、何か感想があればお聞きをしたいと思います。

 三つ目は、長期にわたってこの問題が続いていたということなんですが、チェック体制というのが会計検査院としても逆に問われることだと思います。昨年、各県の裏金問題が発覚して関心が高まったということが契機だったと思いますけれども、やはり独立した機関にふさわしく、不断にさまざまな問題について目を配り、監視を強めるということが必要だと思います。新しい切り口の話もありましたけれども、その点で今後どのように努力をされるつもりか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

 最後に、会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する憲法上の財政監督機関ですから、国から民間にお金がどう流れるか、このチェックが大変重要だと私は思います。

 昨年、所信聴取の際に、私は、検査をする対象に先輩が天下りでいるということは、大変検査しにくいということになって、いろいろな問題が起こるのではないかというふうにお聞きをしました。山浦さんはその議論の中で、天下りについては実態をつかんでいないが、少なくとも、検査院に対する社会の負託があり、その負託に疑念をもたらすことは検査院として避けるべきだというふうにお答えになりました。

 一年たった時点で、改めて、天下りの実態についてどのように把握されているか。その実態を踏まえて、天下りを禁止する考えがあるかどうか。

 以上、お聞きしたいと思います。

山浦参考人 まず一つは、今回の自治体の不正経理の問題でありますけれども、全体まで検査の対象を広げるというのは、御指摘のように、人員の関係でなかなか難しい。それはできるだけ早急に着手し、また、既にもう着手しているところでありますけれども、やはり人の不足というのはいかんともしがたいというところがあります。

 その上で、どうしてこの十二を選んだかということでありますけれども、実は、調査官を派遣するときに県レベルで検査指定をしていきます。一つの県に入るときに、特定の検査事項で入るだけでなくて、ほかにもいろいろ検査する項目がありますので、そういった意味ではローテーションを組んでおりまして、これ以上細かく言いますと、我々のノウハウにかかわってきておりますので差し控えますけれども、いずれにしても、そのローテーションの一環として今回の取り組みがなされた、こういうふうに御理解いただければ結構だと思います。

 それから、どうしてこういった地方自治体での不正経理が頻繁に発覚するのかということでありますけれども、やはりこれは、これまで、地方自治体での経理に対する責任意識というのでしょうか、これがない。それから、国と地方との間の関係、これは一種のもたれ合いみたいな関係があるというのも私は考えておりまして、そういう依存体質がついつい甘えを生み出す、また、国からのチェックも緩いためにこういったものが野放しになっていた、一種の文化みたいなものが地方自治体の組織にでき上がってきているような気がします。

 そういった点からしますと、今回の検査院の指摘は、ある意味では大きな文化革命を引き起こすものと考えておりまして、今後ともこれらについては検査官として陣頭指揮をとっていきたい、こういうふうに思っております。それなりの緊張関係を検査院とこういった自治体との間にも持っていきたい、こういうふうに思っております。

 ただ、補助金の問題につきましては、ちょっと我々、検査院の検査官としてなかなかお答えしにくい問題でありますので、これはちょっとここでは私の回答を差し控えさせていただきます。

 いずれにしても、地方自治体は、今後は例えば内部監査体制とか、あるいは監査委員会の強化、こういったものが求められているのではないかと思いますので、検査院としてもできる限りそういった指導、指摘といったものを進めて、やはり第一次責任の現場でそのチェック体制を完備するということを、当面、私は強調していってまいりたいと思っております。

 それから、OBの問題でありますけれども、これは私、就任に当たっての所信表明でも申し上げました。これは先生御指摘のとおりであります。この考え方は今も変わっておりません。実質的に検査に当たっての手心を加えるということはあってはなりません。また、その原因が何らかの利害関係にあるとすればとんでもない話でございまして、これはないものと私自身は信じております。

 もう一つは、外部の国民の目から見たときに、そういったもたれ合いがあるのではないかという疑念を抱かれるような事態、これもやはり避けるべきだと思っています。そうしないと、検査の結果についての信認を得られない、こういうことであります。

 そういった面で、このOBの問題は、検査官として、これまでも特に役所支配の再就職の問題についてはいろいろ指導してまいったつもりでございますし、疑念を抱かれないようにしてきたつもりでございます。今後とも、この方針については堅持していくつもりでございます。

小坂委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 私からは、二点ございます。

 一点目は、私、昨年春、最高裁判所の裁判員制度広報のあり方について、予算委員会、法務委員会等で随分追及いたしました。この過程で、当時の金子予算委員長に、検査院に国会法に基づく検査をしてほしい、議決をしてほしいという要望もしていましたけれども、議決はされませんでした。

 ところが、十二月になって検査院が、この問題について不適切な契約が三十七件、総額二十五億二千四百万円に上ったと。つまり、会計法違反のさかのぼり契約であるとか無契約状態で事業が進行していた、是正をするように求めたということです。

 質問はここからなんですが、そういうふうにやってくれたのはよかったと思いますけれども、検査院が動くに当たって、国会の議事録等を参考にすることがあるのか。

 国会議員の調査で始めた最高裁経理のあり方について、調査を始めますよと告知してくれてもよかったのかなと思うんです。もし告知をしていただければ、こんな資料がありますよといって、検査院はそんなに入手できないような資料をお渡しして参考にしていただくこともできたんですが、そういうものをいただくとかえって迷惑だというようなことがあるのか。

 また、十二月にそういった是正勧告、最高裁に対して検査院がしたのは初めてだと思いますが、そういうことになりましたという報告くらいはあってもいいんじゃないかというようなことをお尋ねしたいと思います。

 二点目は道路なんですが、阪神国道事務所という一国道事務所について、私は何回かヒアリングをして、現地にも入りました。

 そこから、例えば、わずかな土地、山合いの土地に二億円近くかけて、結局、女性の声を聞きながらドングリを植えるという結論になったという問題であるとか、あるいは、過去、阪神国道事務所でつくっていた映画を五、六本、ダビング、デジタル化するのに数百万円とか、我々、映像関係の仕事から見れば途方もない金額なんですが。阪神国道事務所五十年誌というのをつくろうとしていたけれども、国会の議論で、つくるのをやめて、わずかコクヨの厚いファイル一冊、八百三十万円。それから、オオタカとダルマガエルの調査、一億八千万円という中身は、オオタカの巣を撤去してにせの巣をつくるという、これで本当に自然保護なのかなと思えるものだったり、カエルにチップを入れて放したりとかというようなものでした。

 これは何だというものがたくさん出てきたんですが、その道路事務所に行って、検査院、やはりやってもらった方がいいねと言ったら、昨年来ましたということだったんですね。そこで見せてもらったんですが、二十数分冊、あらゆる領収書が、タクシー代から給料からコピー代から輸送費、すべてこれが時系列に並んでいる、二メートル近いものがありました。これを見ても全く何もわからないだろうと。要するに、国道事務所として事業別にどんな契約をしているのかという一覧表くらいは見て精査するという仕組みにならないのかということ。

 二点でございます。

山浦参考人 まず一つ、国会の審議内容を検査に反映しないのかという御指摘でございます。

 これにつきましては、我々は非常に厳密に、かつ真摯に受けとめて反映しているつもりでございます。やはり、これまでも国会で審議された内容を我々の検査結果に反映していることが多々あります。それからまた、最近では、国会からの検査要請についても我々は受けとめまして、そして、それを検査に反映しておりますし、今も実際に進行中でございます。

 そういった意味で、国会はむしろ我々にとっては情報源でもありますし、それから、検査に入るときの一つのきっかけを与えていただくものと思っておりまして、非常に感謝しております。

 その上で、検査に入ることを告知するのか、あるいはそれについて何かの通知を、例えば国会で審議されるに当たって御発言なされた先生方に相談したり、そういったことをするのかと申しますと、それはなかなかできない。というのは、やはり検査というのはある意味では、隠密裏と言うと変ですけれども、それなりの秘密性を要します。事前にこれが漏れますと、不当な圧力等もかかってきたりすることがありますので、これらについては我々は非常に慎重に検査を進めていくというのが実態でございます。

 続きまして、特別会計等、昨年から問題になっております道路会計についてでありますけれども、昨年かことしですか、国会で御指摘があった委託費で、その結果としての、例えば調査研究物とかそういったもの、実は、これまで検査院としては、予算の範囲で執行されたものについて中身を評価するというのがなかなかしにくかったのでございます。

 これは、国会の審議を得まして、そして、やはり検査院として、委託事業について、その成果物が委託費に相当するものかどうかということは常識的な範囲であればわかるだろう、それらについては検査院としても遠慮なく切り込んでいくべきだ、こういうことを検査官会議で指示しておりまして、それはことしの検査報告等でも出てくるのではないかと思います。

 そういった意味でも、決して国会の審議をないがしろにしているとかいうのは全くありませんで、逆でありまして、我々としては感謝しているところであります。

小坂委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 議事進行の都合で、山浦参考人に対する質疑の時間がほぼ終了いたしております。

 これより自由質疑を行いますが、できるだけ手短に質問、答弁をお願い申し上げます。

 挙手を願います。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 先ほどのいろいろな御意見を賜りまして、これから大いに期待するところであります。

 私の経験からすれば、五、六年前から警察の不正経理問題にずっと取り組んでまいりましたが、この件については、自殺者も出ているし、内部の実名告発も出ているわけです。この件については、会計検査院の姿というのが全くと言っていいくらい見えませんでした。

 それで、先ほどのお話を伺っていまして、法律に従って粛々と行いますというようなお話があったんですが、そういう現場を見ていて、不正経理問題は、システムと人、不正をしようとする人とそれを生み出してしまうという仕組みと、両方問題があると私は思うんです。

 人は、これは罰すればいいかもしれぬけれども、それを生み出す仕組みを何とかしなければならないというのは、私たちもやってきたんですが、会計検査院が、その裏側のところとかなり密接に接触するというか、実態をつかまえているはずなんですね。したがって、単なる法律に従って云々というよりも、私は、そのシステムを変えようという提言を会計検査院にはぜひ期待したいと思うんですが、この件についてはどう考えておられますか。

山浦参考人 具体的な例で申し上げますと、報償費の問題がございます。報償費については、防衛省、警察庁、それについて根拠を示す証拠書類をそろえるようにということで要望しておりまして、実際にそのようにシステムが変わってまいりました。

 そういう意味での検査院の視点、指摘の仕方、これを変えることによって、先生が御懸念の点については、今後大きく改善できると思っております。

小坂委員長 改めて申し上げます。

 発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一分以内ずつとしていただきますようお願い申し上げます。

 なお、発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、引き続き挙手を願います。

 ないようでございます。

 これにて山浦参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 参考人は御退席いただいて結構でございます。

 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、山口参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。

 なお、発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 経済の状況、あるいは金融の状況が緊迫しているときだけに、しっかり頑張っていただきたいというふうに思っております。

 その上で、よくCDSの問題が取り上げられるんですが、これは、帳簿外でなかなか把握ができていないというところに、それぞれの国あるいは金融機関の揺らぎといいますか、信用収縮の原因があると言われておるんだと思うんです。これについて、今、日本にあるそうした帳簿外のリスクをどのように把握されて、これを深刻に受け取っていかなければいけないのか、それとも、いや、日本は大丈夫なんだよというスタンスで運営されようとしているのか、そこのところを一つお聞きしたい。

 それから、円高の基調に対して、これをどう分析して、どのように対応していこうとされるのか、この二点をお聞きしたいと思います。

小坂委員長 二点まとめて一点としてお答えください。

山口参考人 難しい質問ではございますけれども、CDS、クレジット・デフォルト・スワップということでございまして、企業なりの倒産のリスクについて保険を掛ける、こういう市場でございます。

 特に、欧米について現状どうなっているかといいますと、ここのところの相次ぐ金融機関の経営破綻といったようなことが起きますと、その場合には、あるいはその直前にはと申し上げた方がいいかと思いますが、かなりこのCDSのレートが急騰する、急上昇する、こういうことが起きております。そういう意味では、金融機関ないし企業の先行きの経営状況をクレジット・デフォルト・スワップということでもって見ているということは言えるんだろうと思います。しかも、その変動というのが非常に大きなことになっておりますので、海外の中央銀行それから当局も相当関心を持って見ているというのが実態でございます。

 翻って、日本におきましてどうかということでございますが、日本におきましても少しずつ海外からの余波というのが来ておりまして、クレジット・デフォルト・スワップ・レートというのが、金融機関につきましても、あるいは一部の企業につきましても上昇するといったような事態は生じております。したがって、私どもとしても、このクレジット・デフォルト・スワップの市場の動き、レートの動きというものについては非常に関心を持って見ているというところでございます。

 でありますので、先生からの御質問ということに対しましては、全く問題がないかということであるとすればやはりそのようには認識しておりませんで、一方で、すべてについて問題があるかというとまたそういうことではございませんので、デフォルト・スワップのレートを見ながら、今後どのようなことが起こり得るのか、注意深くモニターしていきたい、このように思っておるところでございます。

 それから、為替につきましては、中央銀行の方でストレートに、それについてどのように見ているかというのはなかなか申し上げにくいところがございますが、ここのところの為替の動きについて言いますと、やはり米欧を中心としました金融システム及び金融市場に対する非常に大きな動揺、こういったものを背景としてドルあるいはユーロについて売りがかさむ、その一方で、我が国の金融市場、金融システムにつきましては相対的に安定度が認知されているといったようなことから、どちらかといいますと円高の方向での推移が続いている、こんな感じになっておるわけであります。

 私どもとしましては、為替レートそのものということももちろんありますが、そういったものを通じて経済、物価面にどのようなインパクトがこれから及び得るのか、そのあたりをきっちり見ながら、必要となる対応があれば対応してまいりたい、このように考えております。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤でございます。

 金融政策につきましてお聞きいたします。

 今回の米国発の金融危機の本質をどう見ておられるか、我が国としての対応はどうあるべきかというのが一つ。

 続いてもう一つ、今、BIS規制が流動性供給の制約になっていると思いますが、これを見直すべきかどうかという点をどう考えるか。

 あと、長年にわたり低金利政策が続いておりますが、これはゆがみをもたらしているという見方もありますけれども、これに対してどう考えるか。

 三つまとめて一つということでお聞きいたします。

山口参考人 お答えいたします。

 まず、今回の米欧におきます金融システムないし金融市場の動揺ということにつきまして、その本質いかんということでございます。

 この一年、昨年の夏から、特にサブプライム問題に端を発する形でこの問題がクローズアップしてきた、このように見ていいんだろうと思いますが、当初は証券化商品の価格下落という形で、それを反映する形で流動性の問題として登場いたしました。それが次第にその問題の態様といいますか内容を変化させてきまして、そういった証券化商品の下落に伴って、金融機関の不良債権の問題ですとか、あるいはその結果として金融機関の資本の十分性の問題ですとか、そういったようなことになってくるにつれまして、次第に金融機関自身が貸し出し態度あるいは広く与信態度、こういったものについて非常に慎重化するという形に変わってまいりました。簡単に言ってしまいますと、信用収縮が起きる、こんなことが起きてきたわけでございます。

 したがって、当初流動性の問題から次に信用収縮の問題に転換したということでございますが、さらに、実はそうした信用収縮をきっかけといたしまして、特に米国でありますけれども、実体経済面、例えば、発端はサブプライムという住宅ローンであったわけでありますが、それが、商業用不動産、オフィスビルとかそういったものでありますけれども、そういったもののローン、それから広く自動車ローンなども含めまして消費者ローン、こういったものにまで延滞率が上昇するという形で影響が広がってまいりました。

 ということはどういうことかといいますと、信用収縮の結果として実体経済にマイナスのインパクトが及ぶ、こんなことが生じてきたわけでありまして、結局のところ、金融面と実体面が、マイナスのスパイラルといいますか、負の相乗作用を起こすようになってきているというのが現状でございます。

 したがって、この本質というのを見抜くのはなかなか難しいのでありますが、この一年を振り返ってみますと、流動性の問題、それが金融機関からの信用収縮の問題、そして結果として、金融と実体の間の負の相乗作用が生じるといった問題に変わってきているということでございます。

 これを振り返ってみますと、私どもが、我が国で九〇年代、金融機関の不良債権問題で非常に苦労してきたわけでありますが、その本質において我が国の経験と似たようなところがあるなというような感じを持っているところであります。

 そうした本質論を見据えた上で、日本として、我が国としての対応いかんということでございますが、そうした海外での影響というのは日本の金融市場にもじわじわと広がってきております。金融機関同士のお金をやりとりする場におきます金利についても、金融機関の信用度において結構ばらつきが見られるということになっておりますし、それから、企業金融におきましても、コマーシャルペーパー、CPの市場でありますが、レートが高どまりするといったようなことも生じておりまして、こういった面においてどのように対応するかが当面の課題という感じにはなってきております。

 日本銀行としても、そういったことを見据えながら、金融市場安定のために大量の資金供給を行う、それから、企業金融を多少とも円滑化するということで、コマーシャルペーパーについてはオペレーションを積極化する、このようなことをやってきておるところでございます。今後とも、そうした構えを維持しながら万全を期してまいりたい、このように思っております。

 それから、BIS規制についてでありますが、これは既にいろいろな議論が出てきております。いわゆるトレーディング勘定といいますか、証券化商品をやりとりする勘定につきまして、どのようにそのリスク管理を求めていったらいいのか、こういったことも含めまして、見直しの動きが出てきているということだろうと思っております。

 それから、もう一点は低金利のゆがみということでありますが、確かに、そういった目線というのは、私どもも大事な視点であるということでいつも意識しておるところでありますが、日本経済の現状を見ますと、海外経済からくるもろもろの影響、輸出も含めましていろいろな影響があるわけでありますが、そうした中で、やはり目下のところ、景気は停滞しているということでありますし、当面その停滞を続けるという状況でございます。したがって、我々としては、やはりそうしたことも踏まえながら金融政策を考えていくべき状況にあるんだろうというふうに思っております。

 簡単ではございますが、以上でございます。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 現在の金融危機の背景に、この十年来の銀行業務の変容があると思うんです。貸出債権が証券化され、売却され、投資対象にされるということで、その背後に、グラス・スティーガル法の証券分離という原則を後退させてきたという経緯があります。その上で、巨大複合金融機関が大規模な投機的取引に手を出して、巨額の損失を発生させている。これが実態だと思うんです。この間のこの行き過ぎた規制緩和についてどのような認識を持たれているか。

 それから、四月のG7では、国際的に展開する大手金融機関を各国当局の協力で共同監視ということが強調されましたが、今回は、十月、G7で、公的資金による資本増強というところに踏み出しました。これは百八十度の変化だと思うんですが、経営責任をまともに問わず税金を投入することには大きな批判があります。税金の投入についてどのように考えているか、お聞きしたいと思います。

山口参考人 お答えいたします。

 確かに、投資銀行と言われるような非常に大きな金融機関を中心にして行われた取引によって、大きな問題が生じてきたという面があることは事実でございます。したがって、そうした金融機関に対して今後どのような対応をしていくべきかというのは非常に大きな課題でございます。

 既に、各国の中央銀行、米欧の中央銀行でありますが、それから監督当局はいろいろな動きを示してきております。

 例えば米国につきましては、FRBが、米国連邦準備制度でありますけれども、FRBが投資銀行について情報収集を十分できるような体制をしくようになっております。それから、さらに、二大投資銀行につきましては、銀行持ち株会社のもとに入るという形になりまして、FRBの直接の監督下に入るという格好にもなっております。

 それから、イギリスの方を見てみますと、バンク・オブ・イングランド、英蘭銀行でありますが、英蘭銀行の監督機能を強化しようというようなことが起きてきております。昨年、ノーザン・ロックという銀行が破綻いたしました、昨年の九月のことでありますが、そういった状況を見ながら、やはり今申し上げたような形での監督強化、規制強化というのが必要だという判断になったわけであります。

 一方で、BISのバーゼル委におきましても、先ほど申し上げたような規制、チェックというのをやはりよりしっかりさせていこうというようなことになってきておりまして、全体として見ますと、投資銀行の活動、証券化業務の活動、こういったものにつきまして当局の目をしっかり行き渡らせるというような方向に動いてきている、このように認識しております。私どもとしても、そうした流れというのが必要なんだろうというような認識でございます。

 それから、税金の投入ということについてどのように考えるかということでございます。

 アメリカにおきましても、金融安定化法といいますか、経済安定化法の議論におきまして、議会においてかなりさまざまな議論が展開されたわけであります。そういう中におきまして、タックスペイヤーズマネーといいますか、税金の投入において、そう簡単に判断していいのかというような御判断がアメリカにおいてはあったんだろうと思っております。やはり、そのあたりについては相当慎重な配慮が必要なんだろうと思っております。

 ただ、一点つけ加えておきますと、私どものこの九〇年代の経験ということを考えてみますと、やはり、公的資金をどのようなタイミングで、どれだけの規模で投入するかというのが非常に重要であったこともまた事実であります。実際には、日本の場合には、不動産の価格下落というのがずっと続く中で、不良債権額がなかなか決まらない、わからないという状況がずっと続いたわけであります。

 したがって、その不良債権額が確定しない中にあって、金融機関にとって必要な資本注入額もはっきりしない、明確にはわからないというようなことも起きたわけであります。そういう過程で公的資金を注入するかしないか、するとした場合にはどのぐらいの規模にしたらいいかということについても、国会での御議論もかなり活発に行われたわけであります。実際には、そこも非常に難しい問題であったということでありますが、振り返ってみますと、これは私の個人的な感想でありますが、いざ、ぎりぎりのところになった場合には、やはり公的資金の投入ということについてもちゅうちょせずに判断していくということが必要な場合もあるということは申し上げておかなければならないかなというふうに思っております。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 一点、山口理事にお伺いしたいんですけれども、世界の中に中央銀行は数あるわけでございますけれども、その中で、この議論の中で、利下げについて日本はどちらかというと後ろ向きかなというふうに思っております。日銀の出身者の方の場合、特に、利下げをすることに対して余り前向きな考え方を持っていらっしゃらないのかなというふうにも思っているんですが、この点で山口候補者がどのようにお考えなのかということと、もし利下げをするということになれば、その幅とか条件についてどのようにお考えなのか。世界の経済を見られてということでございますけれども、この一点についてちょっとお伺いしたいなというふうに思っています。

山口参考人 お答えいたします。

 まず、利下げについて日銀は後ろ向きなのではないか、少なくとも前向きでないのではないかということについてお答え申し上げておきますと、一般論として申し上げると、私自身は、金利政策につきまして、これは上にも下にも、その状況に応じて柔軟かつ機動的に対応するということが大事だと思っております。このことにつきましては、私自身もそうでありますが、日本銀行全体としてもそのような意識を持って対応している、考えているということだろうと思います。

 その上で、現在の局面をどのように我々が認識しているかということでありますが、先ほども申し上げましたけれども、今、日本経済につきましては、海外経済の減速ということを受けまして、日本経済も停滞局面に入っております。先行きを見渡しましても当面停滞を続けそうだ、こういう状況にあることは事実であります。

 ただ一方で、リスク要因、先行きの不確実性ということでありますが、これを見渡してみますと、やはり景気につきましては、海外経済が今後どのようになっていくのか、特に金融システム面、国際的な金融システム、国際的な金融資本市場の動向の影響を受けて海外経済がどうなるのか、その結果として日本経済がどうなるのかといったことを含めて、下振れのリスクというのが結構大きいんだろうと思っております。

 ただ一方で、物価について考えた場合には、今二%台半ばの消費者物価上昇率というようなことになっておりまして、この二%台半ばというのは、この十数年ということを振り返ってみますと、日本経済にとってはそれなりに高い物価上昇率というように認識しております。

 したがいまして、消費者が考える物価観、物価についての見方、あるいは企業が見る物価についての考え方、こういったものがこうした高い物価上昇率のもとで変化していかないのかどうか、このあたりについては私どもやはり見ていく必要があるなというように認識しております。その限りにおきましては、物価については上振れのリスクをやはり忘れることはできないというような認識に立っております。

 いずれにいたしましても、リスクにつきましては、上下両方向において非常にリスクが高い、こういうような状況にあるというように認識しておりまして、そういう中にあって、我々としては経済の先行きの蓋然性、それからリスク要因、こういったことをきっちり見ながら政策対応をしていくというのが基本だというふうに認識しておるということでございます。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 伺いたいのは、アメリカのここ近年の好調だった経済が、住宅価格の上昇を前提にして、サブプライムもそうですけれども、さまざまな証券化を生み出し、それが複雑な形で、横に連鎖をする形で大きな拡大、拡大に拡大を続けることを基調にしたシステムをつくった、そこが底が抜けた状態に今なっているんじゃないかと思います。

 先ほど中川委員がお触れになったCDSも、世界じゅうの残高が六千八百兆円という実体経済とはかけ離れた金額になっていて、こういったものを生み出したトータルなアメリカ発の金融システムが相当崩壊、大崩壊をしているような状態ではないかと私は感じるんです。

 先ほどからのお話で、近年に例を見ないほどの緊張とおっしゃいましたけれども、九〇年代の日本の経験もおっしゃっています。やはり質的に違うんじゃないかと感じるんですが、その点についていかがでしょうか。

山口参考人 お答えいたします。

 今、アメリカで起きております金融面の混乱というのはもう御指摘のとおりでありまして、非常に大変な事態になっているというように認識しております。

 日本の不良債権問題あるいはその処理のプロセスとどこがどのように違うのかということになってきますと、先ほど申し上げましたように、ある種本質においてそう変わるところはないように思っておりますが、ただ、グローバルな広がり、そのことにおいては非常に大きな影響が、影響というか違いがあるように思っております。

 それからもう一点は、サブプライムローンの問題に端を発して、その問題が非常に早いスピードで広がっていく、この速度においても、私どもが経験した不良債権問題とは随分違っているように思っております。

 そういう意味で、米国を中心にして始まったと言っていいんだろうと思いますが、この証券化ビジネスというものの持つある種の怖さといいますか特徴というのがやはり相当強く出ているなというふうに思っております。

 したがって、私ども、これから日本への影響を考える場合には、やはりその点をしっかりと踏まえた上で、どのようなことがあるのか、どのような政策面での対応が必要なのか、こういったことを考える必要があるのではないかというように思っております。

小野寺委員 自由民主党の小野寺です。

 日本は、先進国の中で、相当の財政赤字を持っております。ただ、今回、景気対策という中で、もしかしたら一部国債の増発ということの検討も視野に入るのかなというふうに思っています。

 このような財政政策と景気対策についてどのようなお考えをお持ちか、教えていただければと思います。

山口参考人 お答えいたします。

 現在、政府の方で、また経済対策を与党も含めて議論されておることは承知しております。これからどのような議論が行われ、どのような結論になるのか、これを私どもとしては注目しながらということであります。

 ただ、先ほど来申し上げていますとおり、日本経済、日本の景気自体につきましては、当面停滞を続けそうな状況であり、かつまた、下振れリスクを意識しなければならない状況に来ていることは事実であります。そういったことを念頭に置きながら、どのような政策的な選択肢があるのか、そのあたりを幅広く考えていくというのは、僣越ながら、非常に必要なことなんだろうなというようにも思っております。

 どのような結果になるかにつきましては私の立場でコメントするのは差し控えさせていただきたいと思いますが、そんなことではないかというように思っております。

小坂委員長 ほぼ時間が終了しておりますので、質疑とも手短にお願いを申し上げます。

仙谷委員 過剰流動性が行き過ぎて、現在、信用収縮下で実体経済の方まで影響があるというお話だったわけですが、大もとをたどれば、日本銀行の十年以上にも及ぶ低金利政策が円キャリートレードを非常に活発にさせ、この円キャリートレードによるアメリカあるいはヨーロッパ市場での投機というか投資が、今度のサブプライムバブルとでもいいましょうか、レバレッジをかけたこの投機的な金融経済に大いに貢献したというか、増幅させたという反省を日本の金融当局はしなければならないんじゃないかと私は思っておりますが、いかがでしょうか。

山口参考人 お答えいたします。

 結局のところ、先生の御質問は、私どもが行ってきた低金利政策について、そもそもどのように考えているのかということになろうかと思います。

 振り返ってみますと、日本経済もこの十年にわたって、局面としてはいろいろな局面を経験したんだろうと思いますが、そういう中で、いわゆる物価の下落が企業収益の減少を招き、それがまた物価の下落につながるというようなデフレスパイラルに陥るか陥らないか、そういう瀬戸際の時期というのも間に挟みながらこの十年というのがあったんだろうと思っております。

 私どもとしては、そういう中でどのような政策が必要だったのかということをその時々の状況の中で考えてきたわけでありますが、そうした厳しい状況に立ち至った中にあっては、やはり思い切った金融緩和が必要であるというのが当時の認識だったろうと思いますし、今も基本的には〇・五%という政策金利でありますので、そうした低金利を続けているということでございます。

 確かにこうした低金利は、先生がおっしゃられましたように、円キャリートレードを生み出したとか、あるいは短期金融市場における機能不全を引き起こした、あるいは、さらに広くいいますと、預金者の金利収入を減少させた、それから機関投資家等の収入を減少させたというような弊害があったことは事実であります。

 ただ一方で、先ほど来申し上げてまいりましたように、日本経済が置かれていた非常に苦しい局面をどうやって乗り切るかということを考えた場合には、やはり私としては、必要な政策であったのではないかなというように思っております。

小坂委員長 これにて山口参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 参考人、ありがとうございました。御退席いただいて結構です。

 これにて懇談を閉じます。

    午後零時三十分懇談を終わる


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