衆議院

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第12号 平成21年2月17日(火曜日)

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平成二十一年二月十七日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 小坂 憲次君

   理事 小此木八郎君 理事 今井  宏君

   理事 平沢 勝栄君 理事 渡辺 博道君

   理事 高木  毅君 理事 小野寺五典君

   理事 玄葉光一郎君 理事 渡辺  周君

   理事 遠藤 乙彦君

      井脇ノブ子君    大塚 高司君

      奥野 信亮君    亀岡 偉民君

      清水清一朗君    谷  公一君

      藤井 勇治君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      近藤 洋介君    伊藤  渉君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (人事官候補者(産経新聞社東京本社編集局特別記者))           千野 境子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     山本ともひろ君

  高山 智司君     小川 淳也君

  糸川 正晃君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  山本ともひろ君    あかま二郎君

  小川 淳也君     高山 智司君

  下地 幹郎君     糸川 正晃君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

小坂委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る十三日の理事会において、松本内閣官房副長官から、内閣として、人事官に産経新聞社東京本社編集局特別記者千野境子君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、人事官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者・産経新聞社東京本社編集局特別記者千野境子君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、千野参考人に所信をお述べいただき、その後、懇談形式で、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、千野参考人にお願いいたします。

千野参考人 千野境子でございます。

 本日は、所信を述べる機会をいただきまして、厚くお礼申し上げます。どうぞよろしくお願いします。

 初めに、国家公務員制度は、我が国行政の円滑な運営を確保していく上で基盤となる重要な制度であり、人事院は、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に保障するという国家公務員法の基本理念のもと、中立・専門機関として、人事行政の公正の確保と労働基本権制約の代償機能という重要な役割を担っているものと認識しております。

 このため、人事官には、国民全体の奉仕者である国家公務員としての強い自覚と高い倫理観が求められるとともに、広く国民各層や関係各方面からの御意見を伺い、誠実で柔軟かつ公正に職務に当たることが求められているのではないかと考えております。

 特に近年、国民の公務員に対する目には、大変に厳しいものがあります。これまで一貫して新聞報道の現場に携わってまいりましたので、私は、そのことをより一層感じ、かつ危機感を覚えるものです。なぜなら、国民の信頼を得ることなくして、公務員の存立基盤もなければ活躍の余地もまたないからであります。公務員たるものは、今こそこのような現実を十分に認識し、各人がそれぞれの持ち場において信頼の回復と確保に努めていくことが急務であろうと思っております。

 国民本位の行政運営を実現するために、国民全体の奉仕者である国家公務員は、公務に対する高い使命感と倫理観を持って、一人一人が責任を自覚し、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、誇りを持って職務を遂行しなければなりません。現状において、それらを妨げているものがあるとすれば、それは何か、問題の根を改めて真摯に掘り下げることも求められていると思います。

 現在、行政を取り巻く環境が大きく変化する中で、公務員制度改革が重要課題となっております。我が国の近代化や戦後復興という大事業は、政治のリーダーシップと勤勉な国民の存在に大きくあずかっていることは言うまでもありませんが、その根幹に政策遂行のための健全なる公務員制度システムが存在したことも決して小さくなかったことは、内外の識者が指摘しております。このような歴史にかんがみれば、公務員制度改革が我が国の次の飛躍のために必要不可欠なものであることは、おのずと了解されるところでしょう。

 グローバリゼーションの荒波の中、少子高齢化や人口減少、地方の疲弊など、日本はさまざまな課題に直面しております。議院内閣制のもと国家公務員が適切な役割を果たすこと、国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保、育成すること、能力及び実績に応じた処遇を徹底することなど、今般進められております公務員制度改革が、時代の要請に的確に対応した実効性のある改革となるよう、人事院としても、適切にまた積極的にその役割を果たしていくことが求められていると考えます。

 最後に、私は、新聞人として、長年、内外で多くの現場を取材し、有名、無名、たくさんの人々との出会いやインタビューを重ね、歴史的瞬間を目撃する機会にも恵まれました。また、外信部長や取締役論説委員長として、人事管理の重要性や大切さを意識しながら仕事をしてきました。

 仮に人事官に任ぜられました場合には、微力ではございますが、こうした中で得られた知見や経験を踏まえ、とりわけ海外勤務を通して痛感させられた国際的視野の重要性に留意しつつ、国民の視点を忘れることなく、この重い、かつ私にとっては新しい職務にひたむきに取り組んでまいりたいと存じます。そして、国民の代表である国会での御議論を初め、いろいろな御意見に耳を傾けながら、他の人事官と協力し、人事院の使命達成のため努力をしてまいりたいと存じます。

 以上、私の所信を述べさせていただきました。本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございました。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

小坂委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 これより懇談に入ります。

    〔午後一時八分懇談に入る〕

    〔午後一時五十四分懇談を終わる〕

小坂委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小坂委員長 以上をもちまして人事官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十五分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午後一時八分懇談に入る

小坂委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより千野参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 渡辺博道君。

渡辺(博)委員 自由民主党の渡辺博道でございます。

 本日は、同じ時刻に、予算委員会の公務員に対する集中審議が行われている。それだけ公務員を取り巻く環境が大変厳しい状況にある。特に、国民の目が公務員に対して大変厳しい状況の中で、私たちは、どのような形で公務員制度を改革していったらいいのか、こういったことを現在議論しているところであります。

 私の方から、時間の関係上、二点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず第一点については、今申し上げました公務員制度改革についてであります。

 公務員を取り巻く環境は、今申し上げたとおり、大変厳しい国民の目があります。とりわけ、天下り、わたり、そしてまた公務員の不祥事、こういった問題に対して国民の不信の目が増大をしている、こういう状況にあるというふうに思っております。

 そういった中で、千野参考人は、報道活動を通じて養われてきた国民的視点、今もお話がありましたけれども、国民的視点から見て、公務員制度として何が一番改革すべきであるかという点について、まず第一点、お伺いをしたいと思います。

 そして、第二点目であります。

 行政における状況は、大変複雑、多様化、そして高度化、国際化が進んでいるわけでありますが、公務員については、より専門的な能力、視野を持った人材が求められております。このような幅広い、優秀な人材を確保するためにはどのような取り組みが必要であるか。

 以上、二点についてお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

千野参考人 ありがとうございます。

 第一点、国民の視点に立って、何が改革が必要かという点でございますが、まず国民の信頼を回復するということが非常に喫緊の課題、大切であると思います。

 さらに、やはり時代の変化に適合するような有効な人事管理システム、それを再構築するということが大切であると思います。二番目の質問と関連いたしますが、高い専門性を持つことが求められております。そのような、職業を遂行する、公務員制度の基本というものを生かし切るような、そういうことが必要であると思います。

 それから、最後に、何と申しましても、公務員の意識改革というものが大事であると思います。使命感を持って取り組むという意識改革が大切であると思います。

 第二点目、国際社会に対応するという点でございますけれども、私自身、新聞記者の直近の二十年間というものは国際取材活動を続けてきたわけでございますけれども、国際社会で闘えるというと大げさになりますけれども、そういう公務員が育ってほしいというふうに、私は一国民としても思っているわけでございます。

 そのためには、さまざまな研修ということも大切で、人事院で既にやられているようでございますけれども、国際的、国際社会に適応する、そういう研修、それから、ここでも意識改革ということが大事ではないかと思います。

小坂委員長 ありがとうございました。

 小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 本日は、所信をいただく機会をいただきまして、ありがとうございました。

 率直に、長年の報道機関におけるお勤め、また政府関係機関での御活躍に敬意を表したいと思います。海外での豊かな勤務経験、そして国土審議会を初めとした公務での御経験もあるとお聞きをいたしております。そうした知見に基づき、簡潔なお答えを期待いたしております。

 まず、今回の人事案件につきまして、歴代の人事官でございますが、毎日新聞、朝日新聞、読売さんから二名、NHK、日経新聞、報道機関からの登用が定例化しているようにお見受けをいたします。

 こうした形で報道機関から人事院幹部に登用されることの意義をどうお考えか。また、こうした定例化された人事は、見方によっては順送り、既得権ともとられかねないと思いますが、この点を含めて候補の御見解をいただきたいと思います。

 候補は、平成十三年三月から十四年六月まで、人事院における政策評価に関する懇談会委員として既に人事行政に携わられた御経験がございます。現在も幹部公務員の一元管理を初めとした国家公務員制度改革が議論されており、行革本部と谷人事院総裁との間には大きな対立がございます。御存じのとおりです。産経新聞の社説によりましても、人事院の温存のための抵抗にひるんではならないとの主張もございます。

 この際、研修や採用試験の企画立案、また給与別に定員を定める定数管理について、幹部職員のみならず一般職員に関するものも含めて人事院から移管する、こうした公務員制度改革推進本部からの主張に対し、候補御自身はどう考えておられるか。

 この点、御本人が論説委員長でおられました二〇〇六年七月二十五日の紙面「主張」欄にて、公務員への労働基本権の付与に関しては慎重な論議を求めるとの御見解を主張されております。これとの関連を含めて、候補の御意見をいただきたいと思います。

 以上です。

千野参考人 まず、報道に関してでございますけれども、人事官は、確かに、まず行政の経験者、そして二番目は報道関係者、そして三番目は大学研究者という、そのような三者構成になっていることは承知しております。

 そして、報道関係についてでございますけれども、私は、このお話をいただきましたときに、新聞倫理綱領というものを思い浮かべました。

 新聞倫理綱領というのは、新聞人にとっては憲法のようなものでございますけれども、自由と公正、あるいは正確さ、それから独立と寛容といった、新聞人が心すべきこと、報道に当たって行うべきことというものが定められた大切な綱領であります。

 したがいまして、私自身は、過去の方々を存じ上げないわけですけれども、一人一人御面識があるわけではございませんが、報道人として、既得権を考えるというようなことは決してなかったであろうと思います。むしろ、人事院も中立・独立機関というふうに認識しておりますが、報道における報道の立場というものも、第三者的に客観、公正を旨としておりますので、私は、そのようなところからこれまで選ばれてきたのではないかというふうに考えております。

 二番目の、産経新聞の「主張」もあわせてのお答えでございますが、まず、一元管理ということに関しては、これは昨今の報道で国民の関心も高まっているところであるというふうに認識しております。

 その中で、本来は縦割り行政を排するというところからこの問題が出てきた。縦割り行政を排するというのは、これは私自身、官庁を見てまいりますと、縦割り行政の弊害というものは確かにあるというふうに感じております。それを克服するために考えられた本来的な一元管理というものを、本来の趣旨を生かすためにどうすればよろしいかということでありまして、今現在の人事院総裁が示された懸念に対して、総理は、議論のあるところはよく調整するようにとおっしゃられていたかと存じます。

 したがいまして、私は、まだ任ぜられておりませんが、任ぜられました暁には、その議論に真摯に取り組みたいというふうに思っております。

 社説について、労働基本権との関連になるかと思いますけれども、労働基本権は憲法で認められた大切な権利、公務員も含めて、現状においてはそうであると認識しております。

 以上でございます。

小坂委員長 それでは、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 千野参考人におかれましては、大変御苦労さまでございます。

 参考人の場合、人事官の候補になるのは女性として最初でございますけれども、先ほど女性の視点もとおっしゃっておりましたが、具体的にどのような点をこれから特に配慮されていこうとされておるか。

 特に、今の公務員、多数の女性もおります。また、今後、女性の活用もさらに、さまざま、子育て支援等も含めましてやっていかなければならないわけでありますけれども、どういった視点から具体的に女性の視点を反映されていこうとしているのかというのが第一点でございます。

 それから、第二点。

 今、国民の視線、非常に厳しいものがあります。特に、昨今の経済情勢、民間企業の厳しいリストラ、また派遣切り等もありまして、経営環境、雇用環境が非常に厳しい中にありまして大変な努力を行っているわけでありまして、特に国家公務員のいわゆる給与等が恵まれ過ぎているという批判が非常に国民の間に強いことは、御承知のことと思います。

 そういった中で、お聞きしたいのは、国家公務員の給与、また諸手当も、いろいろな名目で手当がついております。既得権ではないかといった批判もあります。また、退職金の水準等につきまして国民の厳しい目が向けられておりますけれども、こういった点についてどのようにお考えか。

 この二点につきましてお聞きしたいと思います。

千野参考人 まず最初の、女性の視点でございますけれども、個人的なことになりますが、私にとって、今回、今この席に臨んでいるわけですけれども、女性初という、三回目のポストに立つことになっております。

 新聞社もなかなか男性優位の社会でありまして、外信部長になりましたのはもう十五年以上前になりますが、女性初でありました。論説委員長も女性初でありました。今回、女性人事官が誕生しますれば、初になるわけでございまして、これは、まず女性に対して、私が外信部長になりましたときに、自社の社員だけではなくて、他社に与える波及効果というものが大変大きかったというふうに後で聞いております。

 このように、これは一企業でありますけれども、公務員の中でそのように女性がポストを与えられますことは、公務員全体、ひいては、公務員のあり方というものが国民生活に大きな影響を与えている以上、社会全体に与える影響も大きいというふうに認識しております。したがいまして、非常にそれは重い責任であるとも承知しております。

 そして、女性の進出を阻んでいるものは何かということですね。公務員は、実際には二八%でしょうか、女性がかなり進出しておりますが、採用そして登用という点でまだまだ工夫の余地もあろうかというふうに思っております。日本の今後の飛躍のために、私は、女性のポテンシャルをあらゆる工夫をして使うということが本当に大事なことであると思っております。

 ちょっと長くなりまして、つい女性のこととなると力が入りまして、失礼いたしました。

 それから、厳しいということ。

 昨日のニュースは国民にとって大変、一三%のGDPマイナスという、このような事態にさらされている中で、公務員が恵まれているなというふうに思う気持ちというのは大半があるかと存じます。

 一方、公務員給与構造の改善でありますとか、さまざまな工夫、民間に準拠して公務員の給与をバランスさせていくという努力も行われているということも私は承知しております。

 そのような努力、それから、民間と同様に能力主義、働く人に対しては働きがいのある環境とそれに見合う待遇をしていくということも能力発揮をする点で大事ではないか、このように考えております。

小坂委員長 ありがとうございました。

 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 人事院の位置づけについての認識をまずお聞きしたいと思います。

 人事院の最も重要な役割は、先ほどもおっしゃったように、公務員の労働基本権制約の代償機能としての役割であります。憲法第二十八条が保障する労働基本権、本来、公務員にも保障されるべきものであります。ところが、現行の国家公務員法は、公務員の地位の特殊性を理由として、公務員の労働基本権を制限している。そのことから、代償機能としての役割を人事院が担うということになっているわけです。

 そのもとで、人事院は、政府から独立し中立の立場で、国家公務員の身分、任免、服務、さらに賃金、労働時間など、労働条件を定める役割を担っているわけです。同時に、人事院は、中央人事についての準司法的権限もあわせ持ち、公務の中立、公正、公平を確保する役割を担っております。

 そのことを踏まえて任に当たられるかどうか、まず確認しておきたいと思います。

 その上で、千野さんは人事院の政策評価懇談会の委員を務められた経験がありますので、お聞きしたいんですが、最近の人事院でいいますと、小泉内閣のもとで、二〇〇二年五月に経済財政担当大臣が人事院勧告制度は右肩上がりの時代の産物と批判し、同年六月の骨太方針で総人件費抑制を打ち出しました。そのもとで、公務員定員一律削減、総人件費削減政策が閣議決定され、公務員給与の賃下げへの一連の政府の圧力が加えられました。

 当時、人事院は、この政府の意向に無批判に従って史上初のマイナス勧告を行い、以来、政府方針に沿った給与削減勧告を行ってきたわけです。中立公平な機関であるはずの人事院が政府の圧力に屈したのでは、労働基本権制約の代償機能、これが果たせないと言わざるを得ませんが、どのように評価をされておられるでしょうか。

 国家公務員制度で大きな点は、やはり公務員の労働基本権の回復問題でございます。

 ILOは、日本政府が進めている公務員制度改革にかかわって、監獄職員の団結権、一般の公務員についての争議権、労働協約締結権を保障することなど、国際労働基準に従った改革を進めることを求める勧告を繰り返して行っています。

 ジャーナリストとして国際事情に通じておられるということですので、国際労働基準からいって、日本の公務員制度をどのように考えておられるか、この点をお聞きしたいと思います。

 以上です。

千野参考人 まず、人事院の機能ということでございますけれども、今、佐々木先生がおっしゃいましたように、人事院の大切な役割として、人事行政の中立公正を確保するということ、それからもう一つは、労働基本権が制約されている中での代償機能という、この二つが極めて重いものであるというふうに考えております。

 それから、第二点目の、賃下げという勧告のことに関連してでございますけれども、先ほど申し述べましたように、人事院の勧告というものは、民間に準拠してきているということが基本的にあるということでございます。したがいまして、これに関しては適切ではなかったかというふうに、私が政策評価委員会をやっておりましたのはもう八年も前のことになりますので、そのことを直接そのとき評価の対象にしたわけではございませんが、今の御質問に対してはそのように考えております。

 それから、ILOの国際労働基準と照らし合わせてどうかという問題でございますけれども、現在、労働基本権に関しては、今般進められております公務員制度改革の中でも、一つの大きな問題点であるというふうに承知しております。

 そして、その中で、労使関係制度検討委員会の中で、この基本権についての検討が専門家によってなされているとは聞いております。したがいまして、この検討委員会の議論の成り行きというものを注視するとともに、私としましては、一たん人事官になりましたらば、それに真摯に取り組みたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小坂委員長 ありがとうございました。

 保坂展人君。

保坂委員 私からは、二点伺います。

 ちょうど十年前に、当時の大蔵省の不祥事を受けて、いわゆる公務員倫理法というものが国会で成立したわけですが、当時、私はその立法過程におりまして、実は、人事院に現在、国家公務員倫理審査会が置かれているんですが、それを、当時の総務庁に置くべきか、人事院に置くべきか、議論がありました。

 実は、国家公務員法の中に、人事院が証人喚問をすることができるという、十七条という規定があり、これは全く使われてなかったんですが、そういう権能があって独立をした機関であるということから人事院に置かれたという経過がございます。

 この点について、国家公務員倫理法が厳し過ぎる、倫理規程が細か過ぎる、こういう声も常々あるんですが、人事院にこの倫理審査会が置かれているという点、そしてまた、いわゆる厳し過ぎるという声についての見解、これをお願いします。

 二点目は、労働基本権の制約の代償機能についてなんですが、いわゆる工程表の中で労働基本権の回復の方向性が明確になっていないままに、各省庁のポストごとの人員を定める級別定数設定機能や、給与、任用、試験等の企画立案などの機能を内閣人事・行政管理局に移管する、こうなっています。

 しかし、これは重要な労働基本権制約に対する代償機能の一つとして人事院が行ってきたことであって、これは労働基本権を公務員に認めるということと一体的に考えられなければならないのではないか。もしこのような現状の工程表ということが進んでいき、人事院の役割を事後チェック的な機能にとどめるということになると、人事院の中立公正性の確保という点で重要な機能が果たせなくなるのではないか、こういう議論が、現在、内閣と人事院、谷総裁との間で行われています。若干ショーアップされておりますが、この点について、どのような見解で臨まれるのか。

 この二点を伺います。

千野参考人 第一点目の倫理審査会について、また倫理規程が厳し過ぎるという御質問についてでありますけれども、人事院というものが公務員の中立公正を確保する、そして公務員が不偏不党、中立に働くという中には、倫理の問題も当然含まれるものと認識いたします。したがいまして、倫理審査会が人事院に設けられているというのは、あながち不自然なものではないというふうに考えてよろしいのではないかと思います。

 厳し過ぎるということに関しては、私は公務員の倫理規程の細目については承知をしておりません。しかし、昨今の不祥事の中で、やはり厳しく意識改革をしていくことが求められているということは言ってもよろしいのではないかというふうに思います。

 第二点目の工程表に関して、そして人事院総裁と行革大臣との意見の対立ということに関連してでございますが、工程表は、向こう四年の計画で、二月三日に決まったところでございます。今後、この工程表に関連して法案ということになるわけでございますけれども、今、保坂先生もおっしゃられましたように、労働基本権の問題を検討委員会で行っているところでございます。谷総裁がそのような懸念をお示しなされた背景にそういうことがあるのではないかというふうに、私は谷総裁にお会いしたことがございませんので、報道を通して感じております。一方、法案づくりを進める過程において、行革大臣のお考えもあろうかと思います。

 私自身がもう一言つけ加えさせていただくとすれば、このような意見の違いというものが表面化することなく、十分な議論がもう少しなされればよかったのではないかなというふうなことは感じております。

 以上です。

小坂委員長 それでは、下地幹郎君。

下地委員 千野さんにおかれましては、多様な能力と経験を持たれておられるわけですけれども、人事官になられて一番やってみたいことは何であるかというのが一点。

 二点目には、これまでの経歴からして、マスコミでお仕事をなされているわけですけれども、マスコミの視点という言葉が先ほどから出ていますけれども、マスコミの視点は、決して国民の視点でもないし、中立公正でもないという気があるんですね。そういう意味でも、マスコミの視点ということに関して、人事官としてどういうお考えを持たれているのかということが二点。

 三点目には、先ほどお話がありました、行革担当大臣と谷人事院総裁、非常に国民が懸念なされているようなことが起こっているわけですけれども、谷総裁がとられている行動についてどう思うのか。

 その三つだけお願いします。

千野参考人 人事官として何を一番やってみたいかという御質問でありますけれども、私は、まず、たくさんの公務員と実際に会う機会が欲しいなというふうな、これは恐らく、私が新聞記者として人に会うことが最も好きであるというふうなところにゆえんしているのかもしれませんが、そのことを今の御質問では感じました。

 もちろん、人事官として、現在、公務員制度改革でさまざまな案件、課題というものがありますから、それに率先して取り組むということは一番やってみたいことということでありますけれども、より私の真情を吐露すればそういうことになるかというふうに思います。

 二番目のマスコミの視点。下地先生がおっしゃるとおり、マスコミの視点は国民の視点ではないということは、まことにそのとおりであると思います。

 ただ、難しいのは、これは新聞人が非常に悩んでいるところでございますが、では、何をもって世論とするのか、国民は何を考えているのか。

 ちょっと話が横道にそれますが、私は、今時点では新聞人でありますので、その点を先生方にわかっていただきたいという意味も込めましてお話をさせていただくのですが、そこをバランスさせていく、マスコミの視点、国民の視点、ヨロンにも二つの漢字があるというふうな著作も最近はございますけれども、どこに国民の真意があるのかということが非常に難しいし、心して考えなければいけないという点であると念頭に置いて仕事をしてきたつもりでございます。

 では、人事官となった場合にそれはどうなるかというふうなことでございますが、人事官は、公務員の中央人事行政の独立する中立的な機関であるというふうなことで、当然、マスコミの考えるところを見詰める、そこから酌めるところは酌むというふうな姿勢で取り組みたいというふうに思っております。

 谷総裁に関してでございますけれども、先ほどちょっと申し述べましたように、私は、たくさんの人々をインタビューしてまいりましたが、谷総裁には実は一度もお会いしたことがございません。軽々しく何か谷総裁に関してのコメントをするのは、現時点では差し控えたいと思います。

 繰り返しになりますが、今回のメディアに報道されました甘利大臣と谷総裁の意見の違いというものは、議論を深めるというところを事前にもう少しされてもよかったのかもしれないというのはあくまで個人的な感想でありまして、お二方においては当然十分になされていたとも想像するわけでございます。

 いずれにしましても、私が人事官に任ぜられました場合には、このようなもはや第三者的な言葉ではなく、とりわけ、この人事官というのはたった三人しかいないということで、非常に重いものであるというふうに私は認識しておりますので、一人の人事官として議論に参画したい、このように考えております。

小坂委員長 ありがとうございました。

 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 きょうは、どうもありがとうございました。

 千野さんは諸外国をいろいろ経験されて、諸外国の公務員と日本の公務員、私なりに、日本の公務員はしゃくし定規ではあるけれども、欧米と比べても相対的にまじめな方が多いのかなと思うんですけれども、その辺をどうとらえておられるのかということをお尋ねしたいと思います。

 それから、質問ではございませんが、先ほど人事官に任命されればぜひ現場に出かけていきたいと言われていましたが、ぜひ、そういう現場を大事にして、現場を見て、聞いて、そしてそれを施策に生かすようにお願いをしたいと思います。

 以上です。

千野参考人 ありがとうございます。

 まず、国際的に比較して日本の公務員はどうかという御質問でございますけれども、先生がおっしゃいましたように、まじめであるということは、私も全くそのとおりであると思っております。

 昨今の公務員の不祥事の問題ということで不祥事が大きくクローズアップされるのも事実でございますが、大半の公務員はまじめにひたむきに取り組んでいるというふうに思っております。そのようなまじめな公務員の人たちが自信をなくさないように、萎縮することがないように、それだけに、一層、特に幹部公務員というものは姿勢を正さなければいけないというふうに痛感しております。

 それから、海外ということで一つつけ加えさせていただきますと、私が勤務した最後の勤務地はシンガポールでございますけれども、シンガポールは、御存じのことと思いますけれども、人口が少ない国家でありまして、公務員が大変に貴重な人材ということで大変な高給を出されております。しかし、シンガポールはクリーンな国家ということで、一点の汚職とか、そういった公務員倫理に反するようなことをいたしますと厳しい判断が待っているということで、このめり張りの厳しさというものを、シンガポール勤務をしている中で優秀な公務員にたくさん取材で接しましたけれども、痛感いたしました。

佐々木(憲)委員 天下りの問題についてお聞きします。

 一昨年、公務員法改正で、政府は省庁による天下りあっせんは禁止としましたが、官民人材交流センターをつくりました。これは、新たな天下り、天上がりあっせん機関ではないかというふうに思っております。本格始動するまでの移行期間の三年間は、再就職等監視委員会で天下りを容認するシステムというふうに思います。省庁あっせんはだめだといいながら、内閣あっせんならいい、こういう理屈は認められないと思うんです。

 天下りについて、本来、禁止するのが望ましいというふうにお考えなのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。

千野参考人 天下りに関してでございますが、天下りに対して国民の目が非常に厳しい、もってのほかであるというふうなことは言うまでもないことであると思います。私自身もそのように考えております。

 他方、私が、先ほどの、大半の公務員はまじめであるということとともに、これまでの仕事の中で痛感してきたことがもう一点ございます。それは、優秀に、大変一生懸命に働いている、あるいは今が脂が乗り切っているという、そういう公務員たちが、いわゆる早期勧奨退職ということによって続けることができないというこの問題と天下りの問題というものは、必ずしも無関係ではないのではないかというふうに考えております。

 高齢化社会、一方で人口減少社会になっていく中で、日本人の人材というものが、一人一人が非常に大切になっていく、公務員も同様であるかと思います。したがいまして、天下りということが生まれない素地というもの、そういうものをつくる公務員制度、働き方ということが非常に大事なのではないかというふうにも考えております。

小坂委員長 ありがとうございました。

 できるだけ、代表でお述べになった方以外の方も御質問があればお願いをいたします。

保坂委員 昨年の国会で道路のことが話題になりまして、道路をどれだけ、個別具体的にそのコストがかかっているんだろうということを検証すると、事前調査から、さまざまな広報から、いわゆる天下りの公益法人やあるいは独立行政法人が深く関与しているという姿が見えてきました。

 そこで、国土交通省の独立行政法人評価委員会の委員をされているということですので、今お話しになった天下り全体の問題と、財政出動などが本当に必要なときに、どれだけ効率的にその財政が末端に浸透していくのかという問題の中で、こういった公益法人や天下りの受け皿になっている機関と私たちが見ているものについてどのような評価をされてきたのか、お願いします。

千野参考人 まず、それに入ります前に、道路の問題ということで一言申し上げさせていただきたいと思うのですけれども、私は、ほとんどが国際部というふうなところで仕事をしてまいりましたけれども、大阪でも二年半勤務いたしまして、大阪以西、佐賀県を除く全府県を取材で回りました。

 その中で、道路の問題というものが、まだまだ必要な道路もある、一方で、それがそうでない、よく出てきております、何のための道路かというふうな道路がつくられている、そういう現実もある。つまり、道路の問題というものもなかなか難しい問題であるなというのが私の大阪勤務時代の感想でありました。

 国土交通省の所管として道路がつくられてきているわけですけれども、無駄な道路もあるし、しかし、まだ必要な道路もある。特に地方においては、これで完璧かというと、そうではないのではないかというふうなことを感じた、もう大分前のことでございますけれども、ございます。

 評価の問題でありますけれども、実は、この評価委員は、今回のこの人事と関係なく、私は、任期が切れるということで再任のお願いを国土交通省からありましたときに、辞任願を出しております。それは、評価というものはいろいろな人が、一人の人が長くやる、評価を専門とされる方はそれでよろしいかもしれませんけれども、しばしば有識者という形で登用される人に関しては、私は、多くの方の目を経ることが、評価というものもより風通しのいいものになるのではないかというふうに考えております。

 そして、もう評価をしたこと自体は、細目についてははっきり思い出すことが残念ながらできませんけれども、評価の中で、評価委員会を開く中で、しかるべき適切な判断を下したと私自身は思っております。

 以上でございます。

小野寺委員 自民党の小野寺です。

 昨年の人事院勧告によりまして、中央省庁、特に国会対応の職員の方に新たな手当がつくことになりました。また、労働時間も十五分短縮ということが勧告をされました。どうも、国民的な感覚からいうと、どうしてそれがそうなのかなということに疑念を持つ方も多いと思います。

 現在の人事院、例えば給与ベースも含めた民間との比較という、その基準について、今後どのようなお考えがあるか、お聞かせください。

千野参考人 御質問がだんだん専門的になってまいりまして、私はまだ人事官に、皆様方から御承認をいただいておりません。したがいまして、私が外部から見てきたことで申し上げるほかないのでございますけれども、民間に準拠する、それからその民間も、何年ということはちょっと覚えておりませんけれども、企業の数も、百人から五十人に変えるというふうな形の努力、工夫をいたしまして、その民間のベースというものを子細に検討しているのではないかというふうに見ております。

 それから、時間が十五分短縮ということでございますが、私自身も非常にサービス残業、超過勤務という権化のような職場で生きてまいりましたので、やはりこれから大事なことはワーク・ライフ・バランス、そういうふうに取り組むことが大切な要件の一つになっている。それが、翻って男女共同参画ということにもつながっていく、働き方という問題。単に時間が長くなるのではなくて、働き方というものを考えていくことも大事なのではないかというふうに思っております。

 多少答えが脱線したかと思いますが、失礼がありましたらお許しいただければと思います。

小坂委員長 恐縮ですが、残り時間が少なくなってまいりました。あと一問程度ということになりますが、会派の中で調整ができれば調整をして、手を挙げていただければありがたいのですが。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺といいます。

 平成十七年の二月二日の産経新聞の紙面で、職員の厚遇問題に取り組む大阪市助役に署名入りで論説委員としてインタビューをされていらっしゃる。その中で、気がつけばミニ伏魔殿に吸収されていたなんてことがくれぐれもないようにという形で記していらっしゃいますけれども、御自身が人事官として乗り込んだ場合、この巨大な官僚組織、先ほどお話がありましたような、早期勧奨退職のような素地があるからこの天下りがなくならないと。

 まさに、これまでの官の側の論理に対して御自身がどう挑まれるのか、その決意をぜひ伺いたいと思うんです。

千野参考人 まず、私の記事をお読みいただきまして、ありがとうございます。大平光代さんという、大阪市の助役に登用された女性の方の記事でございます。

 もちろん、そのインタビューをしている時点で、今日の私の運命は思いも寄らぬことでございました。心して取り組んでまいりたい、このように思っております。

小坂委員長 まだまだ質問もたくさんあるかと思いますが、もしよろしければ、この辺で質問を終了いたしたいと存じます。

 これにて千野参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 これにて懇談を閉じます。

    午後一時五十四分懇談を終わる


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