衆議院

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第4号 平成21年11月10日(火曜日)

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平成二十一年十一月十日(火曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 松本 剛明君

   理事 高木 義明君 理事 松崎 公昭君

   理事 牧  義夫君 理事 松木けんこう君

   理事 横山 北斗君 理事 鷲尾英一郎君

   理事 逢沢 一郎君 理事 高木  毅君

   理事 遠藤 乙彦君

      石井  章君    菊田真紀子君

      高山 智司君    津川 祥吾君

      手塚 仁雄君    松崎 哲久君

      皆吉 稲生君    伊東 良孝君

      小泉進次郎君    齋藤  健君

      橘 慶一郎君    佐々木憲昭君

      服部 良一君    山内 康一君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   議長           横路 孝弘君

   副議長          衛藤征士郎君

   事務総長         鬼塚  誠君

   参考人

   (人事官候補者(埼玉医科大学特任教授))     江利川 毅君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る四日の理事会において、松野内閣官房副長官から、内閣として、人事官に埼玉医科大学特任教授江利川毅君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、人事官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者・埼玉医科大学特任教授江利川毅君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、江利川参考人に所信をお述べいただき、その後、懇談形式で、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、江利川参考人にお願いいたします。

江利川参考人 江利川毅でございます。

 本日は、所信を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 私は、長い期間、国家公務員として働いてまいりました。国家公務員制度は、我が国の行政の円滑な運営を確保する基盤として大変重要な制度であると思っております。また、国家公務員法は、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対して保障することを基本理念としております。

 人事院は、この基本理念のもと、中立第三者機関として、人事行政の公正の確保と労働基本権制約の代償機能の任に当たる機関として設置されました。また、人事行政の専門機関として、時代の要請や社会の変化に対応した人事行政施策を展開するという役割も担っているものと認識しております。

 そのため、人事官には、人事行政に関する識見に加え、国民全体の奉仕者たる国家公務員としての強い自覚と高い倫理観が求められているものと思います。仮に人事官に任ぜられた場合には、国民各層や関係各方面の御意見を伺いつつ、誠実かつ公正に職務の執行に当たってまいります。

 近年、公務や公務員に対する国民の目には、極めて厳しいものがあります。公務員側において反省すべき点があるところでありますが、それを踏まえつつ、公務員に対する信頼の回復に努めていくことが特に重要であると思っております。

 現在、社会のグローバル化や少子化、高齢化の進展など、我が国を取り巻く環境が大きく変化しております。その中にあって、公務員制度も変化への対応が求められております。国民の期待や要請を真剣に受けとめ、国際社会の中で国益を全うし得る人材の確保・育成、能力、実績に応じた処遇の徹底、仕事と生活の調和を図るための環境整備など、公務員制度改革の基本理念の実現が重要課題となっております。

 国民全体の奉仕者である公務員には、国民本位の行政運営を実現すべく、公務に対する高い使命感と倫理観を持って、国民の立場に立ち、それぞれの職場において与えられた職務に高い専門性を持って誠心誠意専念することが求められております。

 また、先日、政官のあり方についての方針が示されましたが、この方針のもと、公務員は、時々の内閣や大臣等を誠実に補佐するという役割を適切に果たしていくことが重要であります。

 これらを踏まえ、公務員制度改革が時代の要請や変化に的確に対応した実効あるものとなるよう、また、職員がその能力を十全に発揮して公務の能率的運営が実現できるよう、人事院としても積極的な役割を果たしていく責任があると考えております。

 仮に私が人事官に任ぜられた場合には、行政官として携わってきた厚生労働省や内閣府における行政実務、公務員人事管理の経験、知見を生かし、国民の代表である国会での議論を初め、いろいろな御意見に耳を傾けながら、先任のお二人の人事官と協力して、人事院の使命達成のため努力をしてまいりたいと考えております。

 以上、簡単でございますが、私の所信を述べさせていただきました。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

松本委員長 江利川参考人、ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 理事会の申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十一時六分懇談に入る〕

    〔午後零時六分懇談を終わる〕

松本委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本委員長 以上をもちまして人事官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松本委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十一時六分懇談に入る

松本委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより江利川参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 牧義夫君。

牧委員 おはようございます。民主党の牧義夫と申します。よろしくどうぞお願い申し上げます。

 懇談ということでございますので、質疑とはいっても、質問に対して一問一答みたいな、そういうかた苦しい話じゃなくて、私が申し述べたことに対して思うところをぜひお述べいただければありがたいと思います。

 まず、大きく分けて、二点お聞かせをいただきたいと思うんです。

 官僚、公務員、この公務員に求められるものというのは、やはり、まずはパブリックサーバント、公僕としての役割だと思います。ただ、そうはいいながら、お一人お一人の官僚の皆さんというのは、人間としての人生設計もあり、家族もあり、その自己実現を求めることは、労働基本権等々は別としても、やはりそれは当然の権利だと思います。その当然の権利と、そして国民からの負託、このバランスの上で官僚の皆さんがその持てる力を最大限に発揮していただく、その微妙なバランスの上で最大限に発揮していただくための仕事というのが、つまるところ、私は人事院の仕事だと思っております。

 そんな意味で、三人の人事官の中で、そういった官僚の経験を踏まえた方がその一人を担うというのは、私は当然あってしかるべき話だと思うわけで、その意味合いにおいて、恐らく今回指名をされたんだというふうに私は理解をいたしております。

 私ども政治家というのは、厚顔無恥といいますか、選挙のときに我々は、この職には私しかないみたいな言い方をしますけれども、そういった意味では、御自身が、この職余人をもってかえがたいというようなことは御自身からは言いにくいのかもしれませんけれども、今回白羽の矢が立った理由について、恐らくこういったところが自分は期待されたんだろうというようなことが思い当たることがあれば、そこは御自由にお述べいただきたい。難しい質問ですけれども、これは必ずしも質問に対する答えになっていなくても結構ですので、思いをお述べいただきたいと思います。

 もう一点は、先ほど所信の中にもありましたけれども、官僚に対する風当たりが昨今非常に強いものがあろうというお話であります。

 財政が厳しい中で、直接税金の執行をするのは官僚の皆さんであり、そしてまた、税金から俸給をもらっている、そういう立場の難しさもあるんでしょうけれども、そういうことも踏まえて、人事院勧告のあり方がどうのこうのという、それをもっと超えた次元のところで、公務員が誕生して、そして公務員が完全に退職するまでの一つの人生設計みたいなものも根本的に見直すときが来ているような、そんな思いがあるんですけれども、その辺についての所見もお聞かせをいただければと思います。

 以上でございます。

江利川参考人 二点御質問がありましたが、なかなか答えにくいところもございます。

 私が人事官の要請を受けましたのは、電話であったわけでありますが、正直、驚いたところであります。一晩考えさせてもらいたいということで、あれこれ私も自分の進退について考えました。

 私は、厚生労働省をやめた後、埼玉医科大学に勤めました。これは、地元の埼玉県のつながりと、もう一つは、若い人たちと接触をして自分の経験をいろいろな形でお伝えするというのは意味があるだろうと思って選んだ職であります。その職をわずか一カ月でやめるという話になってまいりますので、そういうことも含めて考えたわけであります。

 私は、役人時代に、中曽根内閣、竹下内閣のころでありますが、内閣参事官を務めております。官房、官邸で三年やりました。それから、橋本内閣、小渕内閣、森内閣のころですが、首席内閣参事官、官邸で仕事をしました。その後、中央省庁再編がありまして、内閣府で、また小泉総理のもとで仕事をしました。

 私は、この仕事を通じながら、当初の、私が厚生省を選んだのは公害問題とかやりたいということで選んだわけでありますが、違った仕事を託された。ただ、そういう仕事をやっていく中で、私は一生懸命仕事をしたつもりでありますが、一方で、内閣においてそういう仕事をしたというのは、何か要請があったときに内閣の役に立つような人材として教育をされているんではないかという気持ちも、少し買いかぶった言い方ではありますが、そういう気持ちも若干ありまして、内閣からの御要請であれば、これは、自分が内閣で育てられた人間でありますので、受けるのがしかるべきかというふうに思った次第でございます。

 それから、公務員の人生設計の関係であります。

 私も、先ほど申し上げましたように、公害問題をやりたいと思って厚生省に入ったわけでありますが、そのときには、退職のこととか、そんなことは全く考えておりませんで、まさにこの仕事をしたいということで選んだわけであります。

 しかし、確かに、家庭を持ち、生活をしていくと、自分の生涯、バランスを考えていかなければいけませんし、家族のこともあります。そういう意味では、安心して公務員が働けるということも大事であります。これから年金の支給開始年齢が延びていくという中で、退職管理というのは大変重要な問題だと思います。

 公務員が職務に専念できるというのは、ある意味で、自分の生活に不安を持たずに仕事ができるということが大事だと思います。そういうことを総合的に考えて、これからの、今ある課題、少子化、働き方と家庭のバランスの問題もありますし、年金を受給するまでの問題もあります。そういう全体のライフ設計をきちんとできるように、人事院として役割を果たしていく必要があるのかなというふうに思っております。

牧委員 ありがとうございました。

松本委員長 ありがとうございました。

 高木毅君。

高木(毅)委員 自民党の高木毅でございます。

 江利川候補者には、大変お忙しい中お越しをいただきまして、また、所信をお述べいただきました。まことにありがとうございました。

 時間がございませんので、早速、幾つか質問をさせていただきますし、また、単刀直入にお伺いをさせていただきます。失礼な面もあるかと思いますけれども、御容赦賜りたいと思います。

 まず、今回の候補者の人事でございますけれども、先ほど電話でということがございましたが、この人事について一番初めに連絡があったのは、どなたから、いつあったのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

 また、御相談をなさったという話もございましたし、アドバイスを受けられた方もいらっしゃるかと思いますけれども、どういった方々に御相談をし、アドバイスをお聞かせいただいたのか、ぜひ教えていただけたらというふうに思います。

 また、この夏に行われました衆議院の選挙でございますけれども、政権与党となりました民主党は、マニフェストに、「天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する。」とうたったわけでございます。その後、候補者も御案内かと思いますけれども、元大蔵事務次官の齋藤次郎氏が日本郵政会社の社長に就任をして、天下りではないかというような批判的な意見もあるわけでございますが、こういった状況の中において、今回、江利川候補にこの話が出ました。

 私の素朴な疑問といたしまして、先ほど驚かれたという話はございましたけれども、初めてお聞きになったときに、こういった視点からなぜ自分にというようなことを思ったか思われなかったか、あるいはまた、今現在、この天下りあるいはわたりということに関してどのような考えを持っておられるか、ぜひお聞かせをいただきたいというふうに存じます。

 次に、公務員の労働基本権に関してお聞きをしたいと思います。

 労働基本権を回復して、民間と同様に労使交渉によって給与等を決定するという考え方が最近出てきておるわけでございますが、勤務条件の社会的妥当性のチェックだとか、あるいはまたストによる国民生活への影響、あるいは労使紛争処理のあり方など、懸念、心配される問題もあるわけでございます。そういったことについてどのようにお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。

 あわせて、こういったことになりますと、当然、人事院自身の縮小にもつながるわけでございますが、その点についてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。

 また、もう時間がないわけでございますが、一言申し上げたいと思いますが、今回また、政権をとりました民主党、国家公務員の総人件費二割削減というのもうたっているわけでございます。これもいろいろな問題があろうかと思いますが、こういった点について参考人の御意見を賜れればというふうに思います。

 以上、よろしくお願い申し上げます。

江利川参考人 私に要請がありましたのは二十八日の夜でございます。官房長官から電話で話がありました。私は、埼玉医科大学に勤務をしておりますので、既に私を雇っている人がいるわけでありますので、そこと相談しないと答えができませんし、私自身もじっくり考えたいということで、一晩考えた上、翌日、大学の理事長の了解をとりまして、翌日のお昼過ぎだと思いますが、瀧野官房副長官にお受けする旨をお答えいたしました。

 人事院に人事官が三人いるわけでございますが、これまでも、公務員のことがわかっている人、それから学識者であるとか、マスコミの方であるとか、民間企業の方であるとか、その他の方、そういう構成になっておりますので、人事官の一人に公務員がなるということ自身には、私は違和感は感じておりません。公務員経験者がなるということには違和感を感じておりません。

 ただ、何で私にということについては、全く特段思い当たることもなく、選任者の方でいろいろお考えになったのではないかと思います。そのボールを投げられまして、私なりに考えて、最初にお答えしたような思考プロセスを経て、お受けをしようということにした次第でございます。

 二番目の、公務員の労働基本権の問題でございます。

 これが確かに議論になっておりまして、このあり方は大変重要な問題だというふうに思っております。

 ただ、現在、国家公務員は、憲法にありますように、国民がある意味で直接雇用するというんですか、国民全体の奉仕者であるということになっております。奉仕者であることからくる労働基本権の制約も、最高裁においては、合理的なものはあり得る、それに対して代償措置があればそれは違憲ではないというふうな判決が出ているわけであります。そういう中で、一般の被用者と同じような基本権を認めるべきではないかという議論があることは確かでございます。

 私は、これについてはより深く勉強しなければなりませんが、一般的な議論としては、先ほど先生がおっしゃられましたように、企業でありますと、倒産というのがありますので、利益の中での配分ということで労使ともに歩み寄る、あるいは合理的な結論に至るプロセスがつくれるわけでありますが、国家の場合には、企業と違って利益がありませんので、税金ということになります。現在の国においては、その歳出の半分の収入は借金によっているという状況でございますので、非常に財政的には苦しい状況にあるわけであります。こういう中で、企業のような意味での自律的な労使間での合意ができるかどうかというのは、結構難しい問題があるのではないか。

 あるいはまた、住民票をとりに行ったときに、ストで渡せませんとかということになりますと、大変国民生活にも影響があるわけでありまして、そのあり方がどうあったらいいかというのは多角的な角度から考えるべき問題ではないかというふうに思っております。

 こういうことは、制度のあり方でございますので、内閣あるいは国会において十分議論を尽くして決めていただくことではないかということになります。

 国会での議論を経て決まりましたら、法律に基づいて人事院は動くわけでございますので、その法律は適正に執行していかなければいけないというふうに思っております。結果として人事院の機能が縮小するかどうか、これは結果論でありますが、国会の御意思でそういうことになれば、これはやむを得ないことになる。

 ただ、その方針を決めるに当たりましては、人事院は人事院として組織でさまざまな知見を持っているわけでございますので、そういう議論にはその知見を生かさせていただきたい、述べるべき意見は述べるのが現在の法律に基づく人事院の役割だと思っておりますので、それはやらせていただきたいというふうに思っております。

 それから、三番目でございますが、民主党のマニフェストに公務員の総人件費二割削減ということが書いてあって、これはこのとおりでございますが、その二割削減は、例えば地方分権によるとか定員の縮小によるとか、さまざまな要素があるわけでございまして、そういう要素をもとに考えていかれるものではないかというふうに思っております。

 現在の人事院は、民間準拠という方式で公務員の給与を決めていく役割を担っているわけでございますので、この役割はこの法律がある限り変わらないものというふうに認識しております。

 以上でございます。

高木(毅)委員 ありがとうございます。

松本委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 参考人におかれましては、大変御苦労さまでございます。端的に質問をさせていただきます。

 今、高木委員からも労働基本権の問題に言及がありました。私としては、さらに参考人御自身としてはどのように考えておられるか。

 今、民主党さんのマニフェストには、労働基本権を回復して民間と同じ方式でやる、そしてまた、総理御自身も参議院の予算委員会の答弁で、人事院の存廃も含めて検討すべき大問題だとおっしゃっておられます。そういったことも踏まえまして、御自身の見解をお聞きしたい。もし認めるとしたら、どの範囲まで認めるのか、あるいはどの職種まで認めるかを含め、突っ込んだ御自身の意見を聞きたいと思います。

 それから、続きまして、政治主導という問題。

 今、非常に問題になっておりますが、なかなか政治家と行政官の関係、確かに難しい面がありますけれども、参考人御自身として、どういう役割分担といいますか、分業関係が望ましいか。国によってもいろいろな文化がありますし、違ってきますから、我が国においてはどういった形の政治家と行政官の関係が望ましいか、この点について御自身の見解をお聞きしたいと思います。

 それから、三つ目。

 今、公務員たたきが非常に厳しくなっております。そうならざるを得ない原因はたくさんあるわけでありますけれども、他方、行政の根幹は、公務員がやる気を出して誠実に取り組むことが第一でありますので、どうやって公務員のモチベーションを高めるか。厳しい批判があり、また給与も下げる方向にあり、いろいろな意味で厳しい状況にある、そういった中において、二十一世紀の我が国の行政を担う公務員のモチベーションをどう高めていくか、具体的なポイントは何か、御自身の経験から、ぜひそれを教えていただきたい。

 最後に、公務員制度改革。

 今、大きなテーマになっておりますが、これにつきましても、何がポイントか、何が星かという点、端的に御自身の見解をお聞きしたいと思います。

 以上、四点お願いします。

江利川参考人 労働基本権の問題、私個人の見解は何かということでございます。

 正直申し上げまして、私は、役所に入りまして、入ったその日から夜中まで、徹夜をする作業をずっとやりまして、公務員というのはこういう仕事をするのかと思ったわけでございます。そういう中で、私のときは、住宅事情も悪くて、銭湯に入っていましたので、土曜日も夜中ですから、日曜日しかふろに入れないような生活で、生活としては、大変文化的な生活あるいは健康な生活ではないなという中で仕事をしていたわけでございます。

 やはり仕事そのものに働きがいがあるというのは大変大事なことでありますが、一方で、その後、家庭を持って子供ができてきますと、正直、母子家庭みたいな生活をずっと強いてきたわけでありますので、本当にこれでいいのかなという気はいたしております。

 そういう意味で、働く環境を整備して働きやすいように、ある意味で労働者のそういう権利というのか、条件というのか、それが十全に守られるということが大事なことだというふうに思っております。

 ただ、制度としてどうあるべきかということにつきましては、これは憲法にも、国家公務員を選任し、これを罷免するのは国民固有の権利だということになっています。いわゆる国民が雇用するような立場にあるわけでございますので、これについては、今の私がここで参考人と呼ばれている立場からいいますと、やはり国民全体の意見、これを尊重して考えていくことになるのではないかというふうに思います。

 それから、政治主導で、政と官の関係について言われました。

 政と官の関係は、私も公務員時代に大変思い悩んだテーマでございます。この政と官について、私は、二つの場面を切り分けて考える必要があると。

 一つは、政府部内であります。

 政府部内は、国民に選ばれた国会議員が大臣、副大臣、政務官として入ってまいります。これは、公務員を選任し罷免するのは国民固有の権利だという意味では、国民の代表が上に入ってくるわけでございまして、ある意味でここは緊張感を持って、緊張関係のもとに職務が行われる、そういうことが必要なのではないかと思います。

 もう一方で、国会議員の先生方も、日本国をよくしよう、国政をよくしようと思ってなられているわけでありますし、私ども公務員で仕事をしている者も同じように、国の課題を片づけて国政をよくしようとやっているわけでございまして、日本国をよくしたいという思いはともに共通でございます。そういう意味では、両方が力を合わせてやっていく。

 官の方では、さまざまな行政を通じて、あるいは調査を通じて、知見も情報もありますし、それに基づく政策選択肢も出すことができます。一方、ある政策選択肢については国民の信を問うべきだというものも多々あるわけでございます。国民の信を問うべき選択肢は、政治家の責任において判断をしてもらうということが大事かなと。これが政府部内における政と官についての私の考えでございます。

 もう一つ、政と官につきましては、国会議員と公務員という関係が一つございます。

 これにつきましては、公務員が仕事をするとき、給料は税金で払われているわけでございますので、公務員の組織として持っている各種情報とか、あるいは仕事を通じていろいろ持っている問題意識や考え方というのは、これは見ようによっては一種の公共財のようなものでございますので、それは与党の議員、野党の議員を問わず提供すべきものだというふうに思っております。そういう意味で、それは節度ある形で情報の提供と意見交換が行われてしかるべきだと思います。

 ただ、私が現職で厚生労働省におった時代でありますが、時に、その節度を超えて、追及型で公務員を何とか糾弾するというか、そこまでいくと、私は政と官のあり方は行き過ぎていると思います。節度あって、お互いに情報を交換し、お互いに、与党であれ野党であろうとも、国政を考えているわけでございますので、そういう中で力を合わせていくことが大事なことだと思っております。

 三番目でございますが、公務員のモチベーションを高める、それのポイントは何かということでございます。

 これは、一番大きなことは、やはり何をやるか、何をやらせてもらうか、何かをやるということにどれだけ主体的にかかわれるか、それが一番大事なことだと思います。

 そういう意味では、いろいろな政策を考えるときに、自分が培ってきた問題意識や自分が考えてきたいろいろな考えとか、そういうものを出し合って、いろいろな議論を経て、それは時には否定されることもありますが、政策として生かされていく、そういう中で、意見が一〇〇%とられるかとられないかは別にして、積極的、主体的に参加できる、これが一番私は大事なことだと思います。そういうことであれば、公務員の職務に対して魅力があって、若いこれからの有為な人材も公務員を目指すのではないかというふうに思っております。

 最後に、公務員制度の改革についてのことでございます。

 公務員制度改革は、私は、この公務員制度改革が国政の重要課題になっているということについて、公務員サイドは大いに反省せないかぬというふうに思います。

 一つは、仕事を通じてその職務が適切に執行されているかどうかということが一つ問題になっている。それから、公務員の個々人の倫理にかかわる問題が一つ問題になっている。あるいは、組織的な公務員の、特に批判を受けておりますのが天下り問題などでありますが、そういう組織的な人事管理の中にいかがかと思うものがある。

 そういう、仕事を通じて、あるいは個々人のレベルの問題、それから組織の問題として、それぞれの目で厳しく見られている点がある、こういう点についてきちんと改めていく必要があるというのが公務員改革が議論されている背景である、そう認識しております。

遠藤(乙)委員 ありがとうございました。

松本委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 二点お聞きしたいと思います。

 まず第一点は、焦点となっております国家公務員制度改革についてです。

 公務員制度改革で一番大事な点の一つは、労働基本権の回復問題であります。

 憲法第二十八条が保障いたします労働基本権、すなわち団結権、団体交渉権、争議権、これは本来、公務員にも保障されるべきものだと考えます。

 ILOは、日本政府が進めている公務員制度改革にかかわって、消防職員あるいは監獄職員などの団結権の保障、一般職の公務員についての争議権、労働協約締結権を保障するなど、国際労働基準に従った改革を進めることを求める勧告を繰り返し行っております。当然これを受け入れるべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

 第二点は、人事院の位置づけの問題です。

 現行の国家公務員法は、公務員の地位の特殊性を理由にして労働基本権を制限しております。その代償機能としての役割を人事院が担うこととされております。人事院は、政府から独立し、中立、公正、公平の立場で、国家公務員の身分、任免、服務、さらに賃金や労働時間など、労働条件を定める役割を担っております。

 小泉内閣が公務員の総人件費抑制を打ち出した。その中で、人事院は、政府の意向に従ってこれを実行する役割を果たしてきたと私たちは見ております。

 江利川さんは、官僚のトップとして構造改革を進める立場にあったと思いますが、二〇〇二年には人勧史上初のマイナス給与勧告を行い、二〇〇三年、二〇〇五年とその後も給与引き下げを勧告し、ことしは、自公政権、与党の政治的圧力に屈して四月に臨時調査を行うなど、従来の人勧制度のルールを踏み破って、六月にボーナスの凍結勧告を行いました。

 公正公平な機関であるはずの人事院が政府の意向に屈したのでは、その労働基本権制約の代償機能を果たせないのではないかと思います。この点をどのように評価されておられるでしょうか。

 以上の二点、お聞きしたいと思います。

江利川参考人 最初は、労働基本権の問題でございます。

 私も、深くは存じ上げませんけれども、かねてから、ILOからそのような勧告があるということはニュース等で聞いております。

 一方、現在の制度につきまして、最高裁判決において、この制度も一つの合理的な制度というふうな判断が示されているというふうに理解をしております。

 先ほど申し上げましたが、国家公務員の選任とか罷免、これは国民の権利であるというふうに憲法に書いてあるわけでございます。「国民固有の権利である。」と書いてありますので、そういう意味では、このあり方はやはり国民全体の総意に基づいて決まるべきものというふうに思います。

 当然のことながら公務員にも憲法の保障する労働基本権は基本的に及んでいる、これはそのとおりであります。及んでいるわけでありますが、公務員の業務の特殊性上、その辺をどんなふうにするか。一部制限をしたら制限した分にどうやって代償機能を果たすかということは、全体として、国民固有の権利である、国民総体の意思に従うべきものではないかというふうに思うわけでございます。

 諸外国におきましても、それぞれ公務の性格に応じて制限があるようでございますので、それは全体のバランスを見て考えるべき問題、私はそんなふうに認識をしております。

 それから、人事院の位置づけの関係でございます。

 総人件費抑制の中で人事院勧告がマイナスがあったではないか、政府の意向に屈しているのではないかという御指摘だったと思います。

 私は、この間の人事院勧告の具体的なプロセスは存じ上げておりません。存じ上げておりませんが、人事院の任務は、内閣に置かれてはいるものの、内閣から独立した中立の機関でございますので、公務員の権利を制限されていることによる代償機能を果たす。それから、給与につきましては民間準拠というふうになっているわけでございます。昨今の不況の中で民間の給与もかなり下がってきていると聞いております。そういう場合には下がることもあり得るのではないかと思いますが、個々の問題について内閣から干渉を受けたということがあるのかどうか、そこまで私は存じ上げておりません。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

松本委員長 服部良一君。

服部委員 社民党、服部良一でございます。きょうは御苦労さまです。

 実は、社民党は国会同意人事に対する基準というものを持っておりまして、過去の天下り人事等のあしき慣習を許さないという立場から、基本的に、人事院とか、極めて中立性、独立性を要求される職場については省庁の出身者を認めないという基本的な考えを持っているわけです。

 そういう意味で、官僚あるいは省出身というものを超越した御見識に心より期待を申し上げるわけですが、その意味におきまして、特に、労働基本権制約の代償機関としての人事院の機能あるいは独立性を担保するという意味においての考え方なり決意というものをぜひ改めてお聞きしておきたいと思います。

 二点目には、先日の参議院の予算委員会の中で鳩山総理の方から、労働基本権の回復を行い、人事院の存廃の論議が必要なぐらいの人事院改革という発言が実はされておるわけですけれども、この件に関して何かお考えなり、感想でも結構ですけれども、あればお聞きをしておきたいと思います。

 最後に、今非常に格差の広がる社会に懸念をしているわけですけれども、厚生労働行政にも、やはり過去、その責任の一端があったんじゃないかと私は考えているわけです。特に最近、官製ワーキングプアという形で、地方公務員の現場にもそういう非正規の労働者がふえ、結果として公共サービスが非常に低下をしているじゃないかという指摘もされているわけです。

 そういう意味で、国民の立場に立って、あるいは国民本位でという言葉を先ほどおっしゃったわけですけれども、その国民自身が非常にそういう格差社会の中で苦しんでおるという現状があるわけですけれども、そういう現場の声にも耳を傾けてぜひやっていただきたいわけですが、そういう格差の広がる今日の社会の現状に対する御見識をお聞きしておきたいと思います。

 以上であります。どうもありがとうございます。

江利川参考人 まず、人事院の機能についての御質問だったと思います。

 私は、人事院は、憲法に由来する国家公務員制度の中において、法律に基づいてその権限が与えられているわけであります。内閣に対しても中立公正な機関ということでございます。法律に基づいた役割をしっかりと果たす、これが基本だというふうに考えております。

 それから、鳩山総理のさきの国会における答弁の関係でございます。

 労働基本権の問題、先ほど佐々木先生からも御質問がございましたけれども、これは私は、働く公務員側から議論する問題と、それから、そのサービスの提供を受ける使用者たる、ある意味では、全国民の奉仕者である、国民のサイドから考える問題と、両方あると思います。

 労働者の方から考える場合には、意欲を持ってきちんと働けることが大事でありまして、基本権の尊重はそのためにあるわけでございますので、それは何とかしなければいけない。一方、受ける国民側からいえば、公共のサービスでございますので、これが滞るようなことになって国民生活に支障を及ぼすようなことになってはいけない、そういう要請があるわけでございますので、その要請の中で現在いろいろな検討がされているんだと思います。

 どなたかの質問でもお答え申し上げましたが、人事院としては現在の法律に基づいてやっていく。制度のあり方は内閣あるいは国会において議論をされて、決まったものが国会の意思でございますので、その国会の意思に基づいて人事院のあり方が変われば、そのあり方に基づいて仕事をやっていく。

 ただ、その改正につきましては、人事院にはこれまでの間積み重ねた知見等々がございますので、そういうものでしかるべき意見はしかるべく申し上げていく、こういうことが役割ではないかというふうに思っております。

 それから、格差社会の広がりの問題でございます。

 格差社会の広がりは、大きく二つの側面があると思うのでございます。

 一つは、高齢者における格差はかなり広がっているわけであります。高齢者の格差は、人生の働いてきた成果が高齢時代になって生きるわけでありますので、六十、六十五歳とか、そういうところで見ますと格差というのがかなり出ているわけでございます。出ているんですが、その格差は社会保障制度などで補っておりまして、私は、人生の終わりごろにおける格差というのはそれまでの努力の成果だと思います。ある程度格差が出るのはやむを得ない。それで生活が困るようなことにならないように、社会保障制度がその格差をバランスをとる仕組みになっているということだと思います。そちらは、私は、ある程度、社会の仕組み上やむを得ないものだと。

 一方、問題なのは、若い人の方の格差でございます。若い人は、一九九〇年代に就職の氷河期がありまして、その人たちがなかなか働けない。働けないと、そのグループはいつまでたっても、二十代後半でも三十代になってもなかなかいい職が得られない。そうすると、若い人の格差が広がっていくわけであります。これはゆゆしき問題でありまして、基本的に雇用の場をつくっていくことが大事だと思うんです。

 雇用の場は、現在は、例えば転職のための就職活動やさまざまな施策を打っておりますが、一番大きなことは、先々の時代を見た産業構造の変革をしていく中で新しい雇用の場をつくっていくことだと思っております。そういう面で、私は、国、社会を挙げて努力をしていく、英知を結集していくことが大事ではないかというような認識でございます。

松本委員長 山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 ほかの委員の方の質問と重なる部分もありますが、確認の意味で改めて質問させていただきます。

 最初に、公務員制度の改革についてお尋ねします。

 内閣人事局の設置に賛成か反対か、お尋ねします。

 次に、内閣人事局に人事院の級別定数管理機能を移管することについてどうお考えか。たしか、前任の谷さんは反対されていたと承知しております。

 三つ目に、もう既に何度か労働基本権の話題が出ましたが、先ほど、国民の総意に基づいて決めるべきといったようなお答えがありました。もう一度明確にお答えをいただきたいと思いますが、労働基本権を一般公務員に対して付与することについて賛成か反対か、改めてお伺いします。そして、もし労働基本権を付与すれば、そもそもの成り立ちからいって人事院は要らなくなる、不要になると私は考えますが、それについてお考えをお聞かせください。

 それから、三人の人事官のうち一名が公務員出身というのは、私は妥当な範囲かなと思います。ただ、三人のうちのトップの総裁が公務員出身者というのは、ある意味、公務員のOBが公務員の給与を決めるという意味で、私は望ましくないんではないかと思います。それについてお考えをお聞かせください。

 それから、公務員制度と民間の人事制度の違いについて、先ほども質問ありましたが、改めてどのように違うか、また民間の人事制度をどの程度御存じか、お聞きをしたいと思います。

 それから、官房長官の談話の中で、江利川さんは公務員制度を熟知されているというコメントがありました。ただ、公務員をやっていれば公務員制度を熟知とは言い切れないと思います。会社員をやっていれば人事のプロとは言えませんし、野球でも名選手が名監督になれるとは限りません。そういった意味で、これまでの経験を踏まえた上で公務員制度をどの程度熟知されているのか、具体例を挙げてもう一度お聞かせ願いたいと思います。

 最後に、人事院は職務に係る倫理の保持などの任務を負いますが、これまでやみ専従を野放しにしてきた、そういう実態があるわけですが、これについて、人事官になられた場合どのように対策をとって、そして労組とそういうやみ専従の問題、こういう問題を生んだ構造をどうやって変えていくか、お考えをお聞かせください。

 以上です。

江利川参考人 公務員制度改革基本法の中で、人事局を置くことは既に法律で決まっているわけでありますので、これは法律に従って実行されるということだと思います。

 それから、級別定数の関係につきまして、谷前総裁の時代にいろいろ議論があったことはニュース等で私も見ております。

 級別定数という、非常に専門用語ですと正直わかりにくいわけでありますが、行政組織でも民間の組織でも、例えば課長職があったときに、責任の大きい課長職と小さい課長職がどの組織でもあるわけでありまして、責任の大きい課長職が何人いて、軽い課長職が何人いるか、そういうことを見ながら組織が運営されていくわけであります。

 そしてまた、そういう民間の組織とのバランスで公務員の方も、責任の重い課長はどのぐらいの等級にするか、軽いのはどのぐらいの級にするかというのが決まってくるわけでありまして、級別定数というのは人事院勧告を生かしていく上で不可分の要素ではないかというふうな感じがしております。

 この辺をどう考えるかということについて議論を詰める必要があるのではないかというのが私の考えであります。

 それから、労働基本権の問題であります。

 最高裁でも、労働基本権は公務員に及ぶとなっているわけでありますので、基本的に公務員にあることは確かでございますが、一方、公務の特殊性から、しかるべき代償機能があれば、その合理的な制限というのはあり得るということも言っているわけでございます。これが現在の制度になっているわけでございます。私は、まさに現行制度は英知を重ねてできた制度だと思っております。

 ただ、時代の変化に応じてこの制度も見直していかなければいかぬということもあることは確かだと思います。その変化にどう対応するか、私は国民の総意で決めるものだというふうに思っております。私個人が賛成とか反対ということではなくて、国民の総意に従いたいということでございます。

 それから、人事官が三人いて、そのうちの一人は公務員というのは妥当かもしれないけれども、総裁はいかがかということでございます。

 総裁にだれを御指名になるか。これは内閣の権限でございますので、その権限のある人が御判断されることではないかというふうに思います。

 それから、公務員と民間の人事制度との違いの御質問がございました。

 一番大きいのは、国には倒産がなく、あるいは地方自治体にも倒産がなく、一方で、民間には倒産がある。民間の企業の場合には、その利益の分配という中で、労使ともに一つの土俵の中で議論ができるわけでありますが、そういうものがない中で一体どういう議論ができるんだろうかとか、あるいは交渉は、使用者側というのは一体だれがなるのかよくわかりませんけれども、使用者サイドも、予算の中で決めるとなると、十分な交渉権を持ち得ない可能性もあるわけでありまして、そういう中で、一体どんなふうにいくんだろうということがあるわけでございます。

 そういう違いがありますので、その違いを踏まえながら、これは、今内閣において、あるいは国会においても議論されているところでございますので、議論をお詰めいただくことではないかというふうに思います。

 それから、私が公務員制度をどの程度熟知しているかということでございます。

 おっしゃいますように、公務員だからといって公務員制度に熟知しているというわけではございませんが、内閣府の官房長をやったり、あるいは内閣府の次官、厚生労働省の次官をやる中で、公務員の働き方、あるいは人事の問題、能力評価の問題、組織のガバナンスの問題、さまざまなことについて考えてきたところでございます。私なりの工夫もそのプロセスの中で多々やってきたところであります。そういう意味では、他の公務員に比して劣らない程度、そういう公務の問題について考えてきた人間の一人ではないかというふうに思います。

 それから、やみ専従の話がございました。

 やみ専従は、当然のことながらあってはいけないことでありますので、これについては厳しく処断しなければいけません。厚生労働省のときには、社会保険庁であったわけでありまして、これについても徹底的な調査をしてしかるべき処分をするということで対応してきたところでございます。

 これについては、公務員として働く側、あるいはその管理責任を負う側、それぞれが責任あるいは自覚を深く持って、二度とこういうことが起こらないようにしていくことが基本だというふうに考えております。

松本委員長 下地幹郎君。

下地委員 江利川参考人におかれましては、所信をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 江利川参考人は、内閣府の事務次官、厚生労働省の事務次官、二つの省の事務次官をなされた方はそんなに多くいらっしゃらない、初めてじゃないかなというふうに私は思うんですけれども、内閣府の江利川さんの昔の部下であったり厚生労働省の部下に、江利川さんの人間像みたいなお話を聞かせていただくと、人の話をよく聞くと言うんですね。自分の意見と違う人の話をよく聞くというようなことを聞かせていただきました。

 そういう意味では、これからは、官僚に対する厳しい視点がありますから、国民の声にもしっかりと耳を傾ける、それで、私たち政治家の、議会の公務員に対する声にもしっかりと耳を傾ける、そしてまた公務員の声にも耳を傾けて、多くの声を聞きながら、ぜひ、公務員改革といいますか、人事官としてのお仕事をやっていただきたいなというふうに思っているわけであります。

 そして、私の率直な気持ちですけれども、二回も事務次官をなされて、政権交代で混乱をしているような政局の中に身を投じるなんてやらなくてもいいのにな、楽に暮らせばいいのになと思うのが大体の普通の人の見解ですよ。それでも、あえてこの人事官の人事に身を投じて、先ほど国をよくしたいということをおっしゃいましたけれども、江利川参考人が国をよくしたいということをどういうふうにお考えになっているのか、具体的に、この人事官という職を通してどのように国をよくしたいのかということを一点、お話を聞かせていただきたいというふうに思っております。私はこの一点だけです。

江利川参考人 最初の御指摘の、国民の声、議会の声、公務員の声をよく聞いてということは、私も、肝に銘じて、そのようにやっていきたいというふうに思います。

 それから、人事官として何をするのかということでございます。

 人事官の役割は、もう法律の中にきちんと役割が決まっているわけでありますので、その役割に基づいて仕事をするということでありますが、特に、今まで公務員でありまして、公務員に対して厳しい批判があるということは、大変、私は、私自身にとってもつらい思いを持っていたわけでございます。

 これは、人事院だけではなくて、各府省庁においても、あるいは公務員個々人においてもそうでありますが、やはり、仕事に対する使命感であるとか、あるいは自分の仕事に対する誇りとか、それとまた与えられた職務の大切さとか、そういうものを遂行していく上での公平無私という意味での倫理観、そういうものが一つ一つ備わっていなければいけないと思うわけでございます。

 今、大きな公務員制度の中にありまして、私は、基本的には、国民から信頼を得られるような公務員制度にしていく、公務員が信頼を得て仕事をやっていくような条件、環境をつくっていく、そういうところに全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

下地委員 ありがとうございました。

松本委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

 質問者それから参考人におかれましても、どちらも簡潔にお願いいたします。

伊東委員 自由民主党・改革クラブの伊東良孝と申します。

 私は、地方行政がずっと長かったものでありますから、一言、お話と要望をさせていただきたいと思います。

 この人事院勧告を出される、国家公務員はわかりますが、都道府県の職員あるいは市町村の職員等もこれに準ずるということが随分制度としてあります。最近は、それぞれの市町村で独自に給与削減をやっている市町村もたくさんあるわけでありますけれども、特殊勤務手当あるいは僻地手当あるいは出張旅費等々に関して随分あるわけであります。

 私も、国家公務員の手当その他を見て、やはり昔から改革されていないなという思いもたくさんしたところであります。事務次官を務められ、そしてまた、あとのお二人もそれぞれ、民間会社とはいえトップを務められておる方でありますので、一般国民の感覚をぜひ取り入れていただきたいというふうに思うところでもあります。

 この点につきまして、江利川さんの御見解をちょっとお伺いしたいと思います。

江利川参考人 国も地方も財政状況が厳しい中で、地方においてはさまざまな努力が行われていることではないかと思います。

 今御指摘のありました、一般国民の感覚をぜひ注意をして、留意をしてということでございましたので、これから、仮に任ぜられた場合には、そういう御指摘を十分踏まえて努力をしてまいりたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 天下りの問題についてお聞きしたいと思います。

 一昨年の公務員法改正で、政府は省庁による天下りあっせんは廃止するといいながら、官民人材交流センターという新たな天下り、天上がりあっせん機関をつくるということをやりまして、本格的に稼働するまでの移行期間三年間は再就職等監視委員会というもので天下りを容認する、こういう仕組みをつくったわけです。省庁あっせんはだめだといいながら、内閣あっせんは結構だという理屈は、私は通らないと思っておりますが、江利川さんにお聞きします。

 この天下りは本来全面的に禁止すべきものという認識がおありかどうか。それから、天下りについては、独立行政法人への天下りだけではなく、公益法人あるいは民間への天下りもありますが、そういうものも含めて禁止すべきとお考えなのかどうか、この点お聞きしたいと思います。

江利川参考人 いわゆる天下り問題は、長いこと労働慣行の中から一つ出てきたのではないかと思っております。

 それは、幹部公務員については一定の年齢で退職していくというのがありました。正直、私の同期も、五十ぐらいから退職をしている人がおります。まだ子供が小学生です。そうすると、どこかで働き口を考えなければいけないということになってきます。

 一方、組織がピラミッド型になっておりますと、この中での処遇というのは結構難しいわけでございます。そしてまた、早くやめる人の方が組織内での相対的評価というのは、大ざっぱに言えば、相対的には能力が少し低いということになるわけです。そういう人たちが出ていって、仕事をしっかりする体制を組んでいくこと自身は、私は組織論としては悪いとは思っておりません。民間企業でもそういう工夫は行われているのではないかと思います。

 ただ一方で、職務の、例えば組織の権限等を背景にして行われれば、これはさまざまな癒着が生じたり、不公正な行政が出てくるおそれがあります。そういうことはあってはならないのではないかと思います。

 それから、人によっては、公務員の仕事に限界を感じたり、あるいは別の仕事に魅力を感じたりして、自分の力で転職をすることがあります。それはあっても差し支えないのではないかと思います。

 新しい民主党内閣では、天下りは全面的に廃止だというふうなことを言われているわけでありまして、そうしますと、全体の公務員の管理をどうするかということが大事だと思います。これはこれで一つの方針ですので、そうできればそれは大変ありがたいのではないかと思います。

 ただ、定員の枠が決まっている中で、退職すべき人が少なくなれば、当然採用する人が少なくなってくるわけでありまして、公務員の組織全体をどう考えたらいいか。それから、総人件費というのはどんなふうに考えたらいいか。これをやっていく上には検討すべきことも多々あるのではないかと思います。

 私は、天下りがなくて定年までしっかり働けるというのは、働く公務員にとってはこんなありがたいことはないと思いますが、それを実施するためにはたくさんの課題があって、それを整合的に解決することが必要だというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 もう一つ、追加的に御質問させていただきます。

 今後の行政改革、公務員改革の大きなポイントの一つは、国民から見て縦割りの弊害の超越だと思います。現場の国民から見ると、いろいろな行政が縦割りになっていることは極めて使い勝手が悪いわけで、また効率も悪くなっております。

 省あって国益なしとか、中には局あって省なしと言われる役所もあるようでございまして、どうやってこの縦割りの弊害を超越して、国民的な視点から見て使い勝手のいい、また総体的に見て効率のいいものにするかというのは大変重大なテーマであって、当然、そのためにも政治主導ということが言われているわけですけれども、逆に行政の側から見てどういう施策が必要なのか、この点につきましてぜひお答えいただければと思います。

江利川参考人 公務員が自分の仕事をしていく中で、自分の仕事に誇りを持ち、責任を持ってやっていく。そうすると、自分のやっていることを頑張ってやろう、そのこと自身は私は大事なことだと思いますが、それが行き過ぎると、今おっしゃいましたような、局あって省なしとか、さまざまなことが言われるわけであります。

 現下の行政が抱えるさまざまな課題は、一部局あるいは一省庁では片づかずに、複数の省庁にまたがる案件も多いわけでございますので、そういう中で、縦割りで各省がそれぞれの思いだけを述べていくと調整に手間取って課題解決が遅くなる、そういう問題があるわけでございまして、縦割りの弊害を解決していくというのは、現在の公務員改革の大きな柱だというふうに思います。

 幹部人事について内閣で一元的に管理をしようというのも、多分、そういう意図から出ているのではないかと思います。それは、私は、そういう幹部人事の一元的管理という形で、法的な制度として解決するのも一つだと思います。

 それから、さまざまな課題につきまして、今の内閣、私がおりましたときの内閣でも、あるいは省内におきましても、部局横断的にできるだけプロジェクトチームをつくって課題を解決する、それも、若い担当者というよりは、局長、次官を中心にしてやっていこうという形で、そういう意味で、そういう縦割りの弊害を排除する努力をしていたわけでございますが、幹部人事の一元管理という中でその問題も深く詰められたらよろしいのではないかと思います。

 ただ、幹部人事の一元管理は、一方で、公務員には専門性を求められるとか、それから、人事の評価が適切、公平に行われるかとか、さまざまな課題があるわけでございまして、実行上どういう問題があるかをよく詰めながらやっていくことが大切かというふうに思います。

松本委員長 それでは、他に質疑の御希望、今お二人おられますが、ほかにはございませんか。

 それでは、山内康一君。

山内委員 改めて、先ほど、質問に対するお答えの中で、社保庁のやみ専従の問題は大変問題であるとおっしゃいましたが、江利川様は、厚生省の大臣官房にいらっしゃったとき年金担当をなさっていた、あるいは厚労省の事務次官まで上り詰められたわけですが、親元の、もともといた厚労省で、やみ専従問題に対して恐らく十分に対応をできていなかったから後で問題になってきたわけだと思います。

 厚労省時代にうまくできなかった問題に、人事院の人事官になってうまく対処できるとお考えですか。あるいは、反省があれば、反省のもとに立って、どういうふうにこれからそういうやみ専従の問題に対処されるか、お聞きしたいと思います。

江利川参考人 やみ専従の関係につきましては、私は、社会保険庁の現場において、その業務を執行していく中で、労使間での議論の中で、あったというふうに認識をしています。

 組織の中では、縦割りと言われるかもしれませんが、年金局におれば年金局の仕事ということでありますし、厚生労働次官であれば厚生労働省の問題、社会保険庁には長官が置かれているわけでありますので、そういう組織の中で十分目の届かなかった、あるいはそこまでが所掌に入っていないというものもあったと思います。この問題は個々の現場においてきちんと対応する、これが基本だというふうに思っております。

 ですから、人事官として目をそこまで光らせられるかということについて、私は、これは不可能だと思います。そうではなくて、各省、各部局においてきちんとやってもらう、これが基本で、そのきちんとやってもらう趣旨を徹底させるのが仕事かなという感じでございます。

逢沢委員 念のために確認だけさせていただきたいと思います。

 人事官になってほしいという要請、依頼は官房副長官からあって、お返事は一晩考えて副長官に戻されたということで……(発言する者あり)官房長官。失礼いたしました。

 それから、一晩考えられたということですが、その間、どなたかに、どうするべきか、ちょっと立ち入った質問になるかもしれませんが、御相談をされましたか。あるいは、どなたかから、まあ、この際、受けてやれよといったようなアドバイス等があったのかどうか。

 そして、もう一つだけ、恐縮でございますが、公務員OBの方、立派な方、江利川さんを含めて大勢いらっしゃる中で、なぜあなたに、特にといったようなことで要請があったのかどうか。若干立ち入ったことをお伺いいたしますけれども、許せる範囲でお聞かせをいただきたいと思います。

 また、三人の中でどなたかが総裁になられるわけでありますけれども、それについての何か言及が官房長官からあったのかないのか、念のためにお伺いをいたします。

江利川参考人 先ほども申し上げましたが、官房長官から電話で要請を受けまして、もう勤めている身でありますので、それから、私自身もどう受けたらいいかわかりませんでしたので、即座に答えられなかったものですから、お時間をいただきまして、一晩考えました。

 考える中に当たって、私は一人の先輩に電話をしました。電話をしましたが、自分で考えることだということで、特段、アドバイスは受けているわけではありません。君がしっかり考えろということであります。

 それから、あとは家内と相談をしました。内閣府時代、厚生労働省時代も含めて、家族には大分迷惑をかけてきましたので、こういう話だということで相談をしましたが、厚生労働次官を受けるときは家内は極めて強く反対しましたけれども、今回はそれほど強い反対ではなかった。余り喜んではいませんでしたけれども、強い反対ではありませんでした。

 それから、公務員から選ぶにしても、さまざま立派な人がいる中で、なぜ私に白羽の矢が立ったかということでありますが、これは、私は全くわかりません。わからないものですから、最初に話がありましたときも驚いた次第であります。

 それから、官房長官からの話の中で、総裁の話は一言も出ておりません。人事官として任命したい、御提案したいという話だけでございます。

松本委員長 これにて江利川参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 これにて懇談を閉じます。

    午後零時六分懇談を終わる


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