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第18号 平成25年4月5日(金曜日)

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平成二十五年四月五日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 高木  毅君 理事 古川 禎久君

   理事 御法川信英君 理事 秋元  司君

   理事 櫻田 義孝君 理事 渡辺  周君

   理事 石関 貴史君 理事 大口 善徳君

      越智 隆雄君    鈴木 憲和君

      田野瀬太道君    根本 幸典君

      藤丸  敏君    星野 剛士君

      牧島かれん君    郡  和子君

      福田 昭夫君    今村 洋史君

      桜内 文城君    中野 洋昌君

      山内 康一君    穀田 恵二君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   議長           伊吹 文明君

   副議長          赤松 広隆君

   事務総長         鬼塚  誠君

   参考人

   (日本銀行総裁候補者(日本銀行総裁))      黒田 東彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     福田 昭夫君

  木下 智彦君     桜内 文城君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

  小宮山泰子君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     菊田真紀子君

  桜内 文城君     木下 智彦君

  穀田 恵二君     佐々木憲昭君

  鈴木 克昌君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 まず、日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る三月二十一日の理事会において、加藤内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行総裁に黒田東彦君を再任いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、日本銀行総裁候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行総裁候補者・日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、黒田参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、黒田参考人、お願いいたします。

黒田参考人 黒田でございます。

 本日こうした機会を与えられたことに対しまして、深く感謝申し上げます。

 御案内のとおり、日本経済は、十五年近くもデフレに苦しんできました。これは世界でも異例なことだと思います。

 物価が下落する中で賃金、収益が圧縮され、投資、消費が減少することでさらなる物価下落に陥るという悪循環、これが日本経済を劣化させているということであります。デフレからの早期脱却は、日本経済が抱えている最大の課題だと思います。

 物価安定は中央銀行の責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要だと思います。

 もとより、我が国の物価に低下圧力を加える要因は、国内外に多々あります。しかし、そうした影響に抗して物価の安定を実現することが中央銀行としての日本銀行の責務であると考えております。

 日本銀行は、昨日の金融政策決定会合におきまして、消費者物価の前年比上昇率二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現するため、量的・質的金融緩和を導入いたしました。これは、量と質の両面で、これまでとは次元の違う金融緩和であると思います。

 まず、量の面では、操作目標をマネタリーベースとする新たな金融市場調節の方式を導入いたしました。その上で、マネタリーベースを二年間で倍増し、また、長期国債の保有額も二倍以上になるように買い入れを進めます。

 また、質の面では、長期国債買い入れの平均残存期間を従来の二倍以上に延ばし、長目の金利の低下を促すほか、ETFの保有額を二倍以上にするなど、資産価格のプレミアムへの働きかけも強化することにいたしました。

 日本銀行は、一月の共同声明におきまして、物価安定の目標の早期実現を明確に約束しております。今回決定した量的・質的金融緩和は、これを裏打ちする施策として、長目の金利や資産価格などを通じた波及経路に加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果を期待しております。

 これらは、実体経済や金融市場にあらわれ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を十五年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えております。

 最後に、私は、これまで、政府機関、国際金融機関、あるいは大学などで勤務いたしましたけれども、どのような職務にあるときも、与えられた職責を果たすため、最善を尽くしてまいりました。

 去る三月二十日、日本銀行総裁に就任いたしましたが、その果たすべき役割は極めて重大であると、強く感じております。

 今後も、その重責を果たすべき機会を与えていただければ、これまでの経歴で培ってきた経済、国際金融についての知見、内外の人的ネットワーク、組織のトップとしてのマネジメント経験も生かし、全身全霊を込めて、その職務に邁進していく所存であります。

佐田委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 議長、副議長、ありがとうございました。一旦御退席いただき、後ほどよろしくお願いいたします。

 理事会の申し合わせに基づき、許可された記者以外の報道関係の方々は御退室をお願いいたします。

    ―――――――――――――

佐田委員長 これより黒田参考人の所信に対する質疑を行います。

 それでは、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 時間がありませんので、端的にお答えいただきたいと思います。

 まず、黒田総裁、東京フィナンシャル・リポートというのは御存じですか。

 この団体は、日本経済、金融市場についての分析をお送りするサービス、そして、情報網は、財務省、金融庁、内閣府を初め各省庁、日本銀行に加えて、各国の金融機関にもと。それで、ぜひ私はそれを見たいということでリポートを求めたら、二百万円の会費を払っていないと、そこにしか渡せないと。そういう団体なんですね。

 元財務省財務官として黒田さんが推薦すると。広く参加をお勧めするものでありますと。行天さんを主宰者とするものが配信されるに当たり、これを心から歓迎するとあります。これは二〇〇五年の一月ですけれども、今もまだ載っているんです、けさの段階で。

 こういうことは、日銀総裁としていかがお考えですか、今、現状、なられて。

黒田参考人 私が財務官をしておりましたときに、そういった試みがあるというお話がありましたので、金融とか経済についての情報交換というのは経済あるいは金融にとって有益であろうということで、それは大変結構であるということは申し上げましたが、アジア開発銀行総裁の間を通じて、そこと何か特別な関係があるとか、そういったことはございません。

渡辺(周)委員 しかし、もう日銀総裁となった今、まだお顔が載っているんですよ、日銀総裁とは書かれていませんけれども、元財務省財務官と。

 これは、特定の方、二百万円の会費を出した人間にしかレポートが発行されない。しかも、情報網は日銀にも及んでいると書いてありますからね。これはちょっと、今後誤解を招かない何らかの対応をされた方がよろしいかと思います。

 もう時間もありませんから、二点伺います。

 昨日の記者会見で、いわゆる日銀公認のバブルが起きるのではないかと懸念する声もありましたが、このバブル再燃について、現時点で重大な副作用が直ちにあらわれる可能性は極めて低いと。ということは、将来的にはあり得るというお考えなのかどうか、これが一点。そしてまた、こうおっしゃった根拠についてもあわせて言及いただければと思います。

 それから、質問の二点目です。

 目標達成がある程度視野に入ってきたとき、この出口をどうするのか。国債購入の歯どめを凍結する、ただしかし、今後、インフレをストップさせるときに国債の処理をどうするのか、膨大な量の国債を引き受けた、そして出口戦略としてこれをどう考えているかということについては、懸念の声がございますけれども、いかがでありましょうか。

 お答えをいただいて、終わります。

黒田参考人 第一点の、バブルの懸念につきましては、ほかの中央銀行と同様日本銀行も、資産価額あるいは雇用、賃金その他の経済指標を注意深く注視して物価安定目標に向けて最大限の努力をするということでございますので、バブルが生ずる懸念があるかどうかということについても十分注視しております。

 現時点で、株式にしても債券にしても、バブルの状況になっているとは思っておりませんし、直ちにバブルが生ずるとも思っておりませんが、今後とも、御懸念の点については十分注視していきたいと思っております。

 出口戦略については、まだ足元の物価上昇率がマイナスの時点でございますので、今出口戦略を具体的に云々するということは時期尚早だと思いますけれども、当然、私どもの中で、そういった出口の場合のリスクについても十分よく検討してまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 まだ三十秒あるそうでございます。

 しかし、日銀総裁としてこれからなさっていく中の二年間で成果を出すということで、出口戦略、今から、見えていないことはないので、何らかの形でお考えになっているんじゃないかと。そうしませんと、引き受けた国債をどういうふうに処理するのか。

 この点、どうなんですか。もう一回、改めて伺います。

黒田参考人 国債、引き受けてはおりませんけれども、市場で買い入れました国債、長期国債の処理につきましては、他の中央銀行も同様ですけれども、多くの場合に、それを直ちに売るということではなくて、償還期が来るごとに償還を受けるという形が多いと思いますけれども、そういったことも含めて、出口戦略については十分考慮していきたいと思っております。

渡辺(周)委員 終わります。

佐田委員長 次に、桜内文城君。

桜内委員 日本維新の会の桜内文城です。

 大蔵省入省時から御指導をいただきました黒田総裁に質問する機会をいただきまして、大変光栄に存じます。

 きのう会見をされまして、波及ルートということを三つ挙げていらっしゃいます。時間が短いので端的に質問いたしますけれども、結局は、マネーストックにどう働きかけていくかという波及ルートでもあると思っております。

 ただ、その中身といたしまして、超過準備といいますか、日銀当座預金を、四十七兆円から、十四年末には百七十五兆円に拡大していく、もちろんマネタリーベースも、百三十八兆円から二百七十兆円に拡大していく。それは一つのやり方だとは思うんですけれども、マネーストックに働きかけていくという意味でいえば、超過準備をある種ターゲットにしていくということは、日銀を含む金融システム内部でお金のやりとりをするということにとどまりますので、マネーストックをどうふやしていくのかというところでは、ややそごがあるのではないか。

 もちろん、期待についてもおっしゃっておりますけれども、そもそも、予想インフレ率といいますか、ブレーク・イーブン・インフレ率ですとか、測定すら難しいものをどう政策的にコントロールしていくのか、その辺についてまだ説明が十分ではないのではないかなというふうに感じております。

 そしてまた、資産買い取り基金を廃止と。

 他の国債買い入れと統合していくというのは非常にいいことだと思うんですけれども、アメリカの連邦準備銀行のように、ある種政府保証をつけていくですとか実質的な財政政策に踏み込むものであるとすれば、そういうところも本来考えていくべきではないかなと思うんですけれども、その辺についてお伺いいたします。

黒田参考人 まず、第一点でございますが、委員御指摘のとおり、経済との関係、物価との関係でマネーストックが重要であるということは、そのとおりだと思います。

 ただ、中央銀行として直接的にコントロールできるものは短期金利かマネタリーベースであるということも事実でございますので、操作目標としてマネタリーベースを今回取り上げたわけでございます。短期金利はほとんどゼロでございまして、動いておりません。したがって、量的緩和を進める上で、金融政策の操作目標としてマネタリーベースを取り上げたということでございます。

 一方で、資産側の長期国債の残高を二年で倍増するというペースで進める、あるいは、中身も長期のものに及ぶということも含めて、量的、質的な面で効果があるというふうに思っております。

 それから、期待への働きかけというのは、おっしゃるとおり、不確実なものがございます。ただ、この要素が大きいということは金融市場の関係者あるいは学者も認めているわけでございまして、期待を中央銀行の思いのままにコントロールするということはできません。しかし、期待に働きかけるということは極めて重要であろうというふうに思っております。

 最後に、今回、資産買い入れ基金は廃止したわけですが、それは、先ほど申し上げたように、量的、質的な思い切った緩和を進める上で、従来の輪番オペと基金でやっていることをいわば総合して、一本化して、新しいフレームワークの中でやっていくということで廃止したわけでございまして、財政ファイナンスその他の問題とは関係はしておりません。

桜内委員 少し日銀の範疇を超えるかもしれませんけれども、今のバーゼル規制におきましては国債がリスクフリーだということで金融機関は大量の国債を購入しておるわけですけれども、こういうふうに日銀が保有する国債をふやしていく中で、どこかで、先ほどもありましたけれども、出口戦略の中で考えていかなくちゃいけない問題だと思います。

 国債がリスクフリーだといいましても、それは信用リスクの話であって、価格変動といいますかマーケットリスクは当然あるわけですので、そういった銀行規制について何か御意見があればお伺いして、終わります。

佐田委員長 時間になっておりますので、簡略にお願いします。

黒田参考人 中央銀行としての出口戦略の要素は、二つあります。一つは、自分自身のバランスシートあるいは損益に関する影響でございますが、より重要なのは、金融システムに対する影響でございます。

 そういった面で、出口戦略を具体的に議論し、進めていく場合には、金融機関に対する、あるいは金融システムの安定性に対する考慮、配慮というのは十分加えながら考えていくということになると思います。

桜内委員 ありがとうございました。

 終わります。

佐田委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 黒田総裁の就任時の同意人事におきましては、みんなの党は反対をいたしました。

 しかし、その後の衆参の財政金融委員会での質疑あるいは予算委員会での質疑を通じて、黒田総裁の方針は、我々が思っていた以上に我が党の方針に近いというふうに考えるようになってまいりました。特に、これまでの、日銀理論と言ってもいいような理論とは、全く異質であるというふうに認識をしております。そして、きのうの政策決定会合の結果を見て、黒田総裁に対する認識を大幅に改めました。

 そういった前提の上で、質問をさせていただきたいと思います。

 特に、きのうの、量的・質的金融緩和、具体的な数値を伴った金融緩和手段であり、我々は高く評価をしております。また、物価目標の達成期限について、二年程度と明記されました。また、金融緩和の継続期間を、安定的に継続するために必要な時点まで継続するというふうにしております。こういったところを我々は高く評価をしております。

 特に、黒田総裁、戦力の逐次投入はしないで現時点で必要な政策を全て講じる、こういう思い切った強い姿勢に対しては、高く高く評価をしております。

 それで、具体的な質問に入りますと、今回の緩和は、二年間の目標ということでありますけれども、もし二年後に達成できない場合、継続していくという理解でよろしいんでしょうか。

黒田参考人 その点については、昨日発表いたしました量的・質的金融緩和の導入といった文書の中でも具体的に申し上げておりますけれども、「「量的・質的金融緩和」は、二%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する」というふうに言っておるところでございます。

山内委員 次に、我が党の参議院議員の中西議員が財政金融委員会で提案をさせていただきました。市場関係者との意見交換の場を設けるといったような提案をいたしました。

 今回、政策決定会合の中でそういう項目が入っておりますが、これは、我々の党の議員の提案を受け入れていただいたということなんでしょうか。

黒田参考人 先日、中西議員から御指摘いただいたとおり、日本銀行は、金融政策運営を行っていく上で市場関係者と意見交換を行うということは、極めて重要であると認識しております。

 特に、今回、いわば次元の違う量的・質的金融緩和を導入するということで、そのもとで巨額の国債買い入れと極めて大規模なマネタリーベースの供給を行っていくことを決定したわけでございまして、これを円滑に行うためには、取引先の積極的な応札など、市場参加者の協力は欠かせないというふうに思っておりますので、今後さらに、市場関係者との間で、これまで以上に密接な意見交換を行う場を設けることにしたわけでございます。

山内委員 次に、銀行券ルールの一時適用停止ということになっていますけれども、もしこの一時停止中に財政ファイナンスとみなされるような事態を、みなされないようにするための、何らかの新しいルールを定めるということはお考えなんでしょうか。

黒田参考人 そういったことも当然今後政策委員会で議論になると思いますけれども、私どもといたしましては、これも、昨日発表した文書の中でも、こうした長期国債の買い入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではないということを明確にするとともに、共同声明で政府側が、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」と言っておるわけでございます。

 もとより、今後とも財政ファイナンスはしないいう観点から、歯どめについて政策委員会でも議論してまいりたいと思っております。

山内委員 時間が来たようなので、以上で質問を終わります。

佐田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 予算委員会において、我が党の佐々木憲昭議員が、リーマン・ショックが起きた二〇〇八年二月から二〇一三年二月までの貨幣供給の実績を質問しました。岩田副総裁は、日銀が金融機関に貨幣を供給するマネタリーベースで四七%増、金融機関全体が経済に貨幣を供給するマネーストックで一〇%と答弁しました。

 きのうの、供給量を大幅にふやす計画ですが、しかし、結局、日銀が幾ら貨幣供給をふやそうとしても、資金需要が伸びなければ、日銀と銀行の間にじゃぶじゃぶたまるだけであって、銀行から先にお金が流れなかった、これが実態ではないかと思うんですが、その辺の認識を。

黒田参考人 御指摘のような状況があったことは、そのとおりだと思います。

 ただ、一方で、今回の量的・質的金融緩和は、量的な拡大だけでなく質的な拡張もしておりまして、両面相まって資金需要も出てくるし、それに対応して資金を供給するスムーズなメカニズムもでき上がってくるというふうに思っております。

穀田委員 しかし、資金需要が発生するといいますけれども、金融を緩和するだけでどうして資金需要が発生するのか、その理屈が示されていないと私は思うんですね。

 一体どのような手段で需要をつくり出すのか、金融の手段だけではつくり出せないのではないかということについて、いかがでしょうか。

黒田参考人 この量的・質的金融緩和におきましては、イールドカーブ全体を引き下げる、さらに、リスクプレミアムを縮小するということで、当然ですけれども、いわば需給の関係でいえば、需要というのは条件に関係なく一定であるわけでなくて、条件と関係して需要が決まってくるわけですので、その条件、金利とかプレミアム、アベイラビリティーが拡大するということは、当然、与えられた需要曲線のもとでより多くの需要を賄ってくれるということになると思います。

 それから、もう一つは、いわゆるポートフォリオリバランスという効果があると思いまして、こういったイールドカーブ全体が下がっていく際に、ほかの金融資産にシフトしていく、株とか外国の金融資産とかその他にシフトして、それが当然資産効果を持ってくる。これは、企業に対しても消費者に対しても持ってくると思います。

 さらに、三番目には、そういったことも含めて、期待に対する効果があろうというふうに思っております。

穀田委員 期待の効果を相変わらず言っておられるわけですけれども、しかし、結局、日銀ができることはマネタリーベースでやることだと先ほどおっしゃっていましたし、日銀の力といいますかやることの限界はあると私は思うんです。

 そこで、最後に聞きたいと思うんですが、消費税の増税で十三兆五千億円。これは、政府も四月二日の予算委員会で認めた戦後最大の増税であります。さらに、年金、医療、介護等の社会保障の負担が六兆五千億円。合わせまして二十兆円もあります。この負担が国民に押しつけられる。

 これをどう見ていらっしゃいますか。

黒田参考人 これ自体日本銀行のマターではございませんが、私の考え方を申し上げれば、社会保障と税の一体的な改革を行うことによって社会保障の持続可能性を高める一方で、財政の持続可能性を高めるといったことがその背後にある、そういったことは、極めて重要であり、必要であるというふうに思っております。

穀田委員 日銀が一生懸命言っておられる物価安定目標は、結局、二%上げるということになるわけで、なおかつ、では賃金が上がる保証はあるのかというと、なかなかない。結局、賃金は上がらない、物価高、そして今お話しした負担増、その上に消費税ということになって、パンチを受けるという形になると思います。

 結局、総需要をふやすといいますけれども、結果として、そういうことによってふえない事態がつくられて、私は、政策的な間違いだということだけ言って、終わっておきます。

佐田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木でございます。

 私も、限られた時間ですから、端的にお伺いをしていきたいと思うんです。

 総裁が目指している、いわゆる次元の違う大胆な金融政策、これが行き過ぎた金融緩和にならないかということを非常に心配しております。いわゆる悪いインフレに陥っていくのではないのかということです。

 今もいろいろと御意見がありました。二%の物価安定目標が仮に達成されたとしても、本当にお金を必要とする個人や中小企業のところへ回るのかというところなんですね。結局、国民の賃金や所得はふえないけれども物価だけが上がっていく、こういうような状況になっていくおそれがあるのではないかなと思います。

 まず最初に、そのところをもう一度確認しておきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘の点は、大変重要なポイントであると私どもも理解しております。

 物価安定は、日銀法にも書いてございますように、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございますので、国民経済の健全な発展に資さないようなことになっては元も子もないと思いますので、当然のことながら、雇用とか賃金といった状況も十分注視しながら、物価安定目標の達成に努めてまいる。

 そうした中で、過去の例をいろいろ見ますと、賃金と物価というのは、ほぼシンクロナイズしている。先に賃金が上がるケースもあるようでございますし、逆のケースもあると思いますけれども、基本的には、過去の分析から見ますと、ほぼ同時的に生じているようでございます。

鈴木(克)委員 くどいようですが、最大の目標は、要するに、二%のインフレターゲットを達成するのではなくて、あくまでも、国民のところにお金が回り、そして経済が活性化していくというところですから、これだけは本当に注視をしていただきたい。

 それで、次に、出口戦略です。

 仮に、そういう形で二%が達成されたと。しかし、当然これは、入り口がある以上、どこかで出口があるわけですが、このことについて総裁は、安定的に持続するため必要な時点まで継続をする、こういうふうにおっしゃっているわけですね。

 では、その必要な時点というのはいつなのかということを、もう一度ここで確認をしておきたいと思います。

黒田参考人 先ほど引用いたしました文章、まさに、「これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」としておりまして、いわば、二%にまだ達していなくても、このままいけば二%を達成するどころかもっとどんどん上がるというような状況になれば、当然、政策を調整していくし、逆に、仮に、ある瞬間二%に達していたとしても、それは一時的な要因でなっているわけでして、持続的に二%近傍で推移するという見込みがないような場合には、まだ緩和を継続する必要があろうと思います。

 そういった意味で、十分、物価あるいは経済の情勢について点検して、上下双方向のリスクを勘案しながら必要な調整は行っていくということになると思います。

鈴木(克)委員 最後にさせていただきますけれども、非常にリスクも伴っていく壮大な実験に入っているわけですね。

 きょうの新聞の見出しを見ても、本当に、総動員だとかフル動員だとか必要なことを全て講じるとか、そういう形で、決意はよくわかるんですけれども、その中で、日銀はみずから退路を断ったんだ、そういう話や、それから、これは大きな試験なんだということ、それから、リスク資産を購入し続けることがどうなのかという、本当にそういう危惧の念もあるわけですね、そういう考え方も。

 これは、例えば試験であるならば、どこかで採点されるわけですよね。合格か入学か落第か、それはともかくとしても、何かの形で採点をされる。そのことについて、どういうような形でお向かいになるつもりであるか、それだけお聞かせください。

黒田参考人 金融政策決定会合は、年に、たしか十四回ほどございます。したがって、ほぼ毎月あるということでございますので、毎月そういった点検はもちろんやっていくわけでございます。

 さらに、政府の主催しております経済財政諮問会議で、四半期ごとに、特に金融政策、物価の動向について議論されるということになっておりますので、あらゆる機会にそういったことは努力してまいりたいと思います。

 しかし、あくまでも、やはり二年程度をめどに、あるいは念頭に置いて、二%の物価安定目標を達成する、実現するように、最大限の努力は払ってまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 政府に何を求めるかということもちょっと聞きたかったんですが、時間が来ましたので終わります。

佐田委員長 これにて黒田参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして日本銀行総裁候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 それでは、黒田参考人、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

    ―――――――――――――

佐田委員長 次に、日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、日本銀行総裁に黒田東彦君を任命するについて、内閣から本院の同意を求めてまいっております。

    ―――――――――――――

 一、日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件

   黒田 東彦君 4・8任期満了につき再任

    ―――――――――――――

佐田委員長 本件は、本日の本会議において議題とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、賛否の態度を出されていない会派は、速やかにお届け願います。

    ―――――――――――――

佐田委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五分予鈴、午後零時十五分から開会いたします。

    ―――――――――――――

佐田委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 この際、休憩いたします。

    午前十時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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