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第3号 平成28年1月7日(木曜日)

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平成二十八年一月七日(木曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 松野 博一君 理事 御法川信英君

   理事 北村 茂男君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 大塚 高司君 理事 薗浦健太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 牧  義夫君

   理事 稲津  久君

      井上 貴博君    伊藤 忠彦君

      岩田 和親君    大串 正樹君

      笹川 博義君    田野瀬太道君

      根本 幸典君    宮澤 博行君

      渡辺 孝一君    神山 洋介君

      小山 展弘君    福島 伸享君

      角田 秀穂君    塩川 鉄也君

      遠藤  敬君

    …………………………………

   議長           大島 理森君

   副議長          川端 達夫君

   事務総長         向大野新治君

   参考人

   (検査官候補者(元早稲田大学大学院政治学研究科教授))          柳  麻理君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月七日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     井上 貴博君

  橋本 英教君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     大隈 和英君

  岩田 和親君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 検査官任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 まず、検査官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、昨六日の理事会において、萩生田内閣官房副長官から、内閣として、検査官に柳麻理君を再任いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申し合わせに基づき、検査官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として検査官候補者(元早稲田大学大学院政治学研究科教授)柳麻理君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

河村委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、柳参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、柳参考人、お願いいたします。

柳参考人 柳麻理でございます。

 本日は、このような機会を与えていただき、厚く御礼を申し上げます。

 我が国の社会経済については、景気回復への取り組みが進められる一方、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、東日本大震災からの復興、財政の健全化等の課題が山積しております。

 会計検査院は、このような社会経済の動向を踏まえつつ、内閣から独立した憲法上の機関として、国や独立行政法人等の会計検査を実施し、検査の結果に基づき、検査報告を作成して、内閣を通じて国会に御報告するという重要な使命を課されております。

 会計検査院の組織は、意思決定を行う検査官会議と検査を実施する事務総局で構成されており、三人の検査官から成る検査官会議は、合議によって検査院としての意思決定を行うほか、事務総局を指揮監督しております。

 私は、昭和五十五年に早稲田大学法学部を卒業後、富士短期大学等で研究、教育の経験を積んだ後、平成十五年から早稲田大学大学院公共経営研究科教授、同政治学研究科教授として、民間企業の管理会計のすぐれた実務を政府会計に適用することができないかという問題意識を持って研究を行ってまいりました。

 そして、平成二十五年に両院の御同意をいただいて検査官に就任し、以降、先月、十二月までの検査官在任中、会計検査院の意思決定に携わり、二年四カ月余りにわたって、会計検査院に課された使命を果たすよう職責を担ってまいりましたが、その職責は大変重たいものと感じております。

 私は、検査官として、前回の所信で申し上げましたように、不正経理を根絶するとの意気込みを持って厳正な検査を行うこと、厳しい国の財政状況にも鑑みて、経済性、効率性及び有効性の観点からのいわゆる無駄などの問題を指摘していくこと、政府の説明責任の向上等に資するよう、国や独立行政法人等の財務をわかりやすく分析したり評価したりする検査を充実していくこと、これらを常に意識しながら、現在の社会経済の動向、また、国民の関心や国会での御審議の状況などにも注意を払って、検査官の職務に専念してまいりました。

 この間、「東日本大震災等の被災者の居住の安定確保のための災害公営住宅の整備状況等について」など二十二件の国会及び内閣への随時報告、「年金記録問題に関する日本年金機構等の取組について」など九件の国会からの検査要請に係る検査結果の報告などを行い、また、昨年十一月六日には、平成二十六年度決算検査報告を取りまとめて内閣に提出したところです。

 これらに当たって、私は、民間出身の検査官として、また、学識経験者としての視点も取り入れながら、会計検査院の意思決定に関与してまいりました。

 そして、平成二十八年次の会計検査について、国会における審議の状況に常に留意するなど、これまでと同様に、引き続き国会との連携に努めることとするなどの基本方針を定め、これに基づく検査の実施について事務総局の指揮監督に当たっていたところです。

 仮に検査官に再び任ぜられるとするならば、私は、これまでの研究者としての経歴、及び、さきの任期中に検査官としての職責を果たしてきた中で培ってきた知識経験を生かすとともに、国民の皆様の関心の所在や国会における御審議の状況に常に注意を払うなど、国民の目線も大切にしながら、全力を尽くして検査官の職責を担ってまいりたいと考えております。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、改めて厚く御礼申し上げます。

河村委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

 理事会の申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。

    ―――――――――――――

河村委員長 これより柳参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 北村茂男君。

北村(茂)委員 質問の機会をいただき、ありがとうございます。自由民主党の北村茂男でございます。

 柳参考人におかれましては、御出席をいただきましたことに心から感謝とお礼を申し上げます。

 限られた時間でございますので、以下、数点にわたり簡潔に質問をさせていただきたいと思います。

 今回は再任ということでございますので、これまでの御経験も踏まえてお答えをいただければと思います。

 今ほどの所信の中にもありましたが、会計検査院は独立した機関でありますが、検査業務をするに当たり、国民や民間の目線をどのように意識してこられたのでしょうか。今ほど所信の中にもありましたけれども、極めて重要な視点だと考えますので、改めて御見解を伺いたいと思います。

柳参考人 御質問ありがとうございました。

 国民の目線、民間の目線というのは大変重要なことで、東日本大震災におきましてもさまざまな事業が行われておりますが、その進捗状況はまちまちでございます。それはどのような原因に基づくものなのかということについて精査を行うというようなことは、会計検査として大変重要なことであると思います。

 常に国民の関心、安全、安心に留意しながら検査を行っていくということが求められていると思いますので、そういう観点に基づいて、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性の観点で検査を行ってきたところでございますので、そのような検査に努めてまいることが重要だというふうに考えております。

北村(茂)委員 それでは、これまた所信にありましたけれども、しばしば、行政の無駄がこれまでも指摘をされているところであります。政府に対する情報公開や説明責任が今改めて求められていると思います。

 そこで、行政の無駄に対してどのように取り組んでいかれるのか、あるいはこれまでどのように取り組んでこられたのか、所信を伺いたいと思います。

柳参考人 無駄というのは、行政においては、大変巨大な組織でございますのでいろいろなところに存在していると思いますし、それは会計検査の報告の中でも逐次報告しているところだと思います。

 無駄というのは、非効率に行われているものもありますけれども、重複とか、あるいはそれぞれの機関で持っているもの、横断的な目線というものが必要になってくるんだと思います。

 そういうようなことで、会計検査院も、検査報告の中で、横断的な視点における非効率な部分、重複の部分というものを指摘してきているところでありますので、そういった観点がこれからも非常に重要になってくると思います。

 以上です。

北村(茂)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 これまた所信で触れられましたけれども、ふえ続ける国や地方の債務残高についてでありますが、いわゆる財政健全化が求められている中で、検査院の役割、財政健全化に対する役割というものはどういう役割なものなのか、どういう認識なのか、この辺について伺いたいと思います。

柳参考人 私は、検査官に任命されまして、二年余り職務を遂行しておりました。

 その間に、憲法九十条の重要性というものを非常に痛感しております。つまり、国の収入支出の決算は、会計検査院が毎年全てそれを検査するということ、それが財政の透明化につながるということだと思います。それが国民への説明責任につながることだというふうに考えております。

 会計検査院は、財政を透明化していく、国と地方の債務残高は大変大きいものでございますので、それらについて精査していくということが求められているというふうに痛感しておりました。

 そのような観点で、会計検査院は、政策目的の達成のために資源が効率的に用いられているのか、有効に用いられているのか、経済的に用いられているのかということについて目を光らせていくということが重要なんだというふうに考えております。

 以上です。

北村(茂)委員 それでは、若干具体的な課題を含めて御質問を申し上げたいと思うんですが、新国立競技場の旧の建設計画あるいは理研等での不正論文やその研究のあり方等、あるいは震災復興に対する経費の計上など、いろいろな話題や課題が国民の大きな関心事になってまいりました。

 不正や不当事案の指摘ももちろん重要でありますが、一方で、経済性、効率性、有効性の観点からの検査充実も極めて重要というふうに考えるわけでありますが、これらの問題に対する所感を伺いたいと思います。

柳参考人 今御指摘になったことは非常に重要なことだと思っております。

 その御指摘になったこと、新国立の問題の場合も、その事態自体は、非常に重大な、国民に及ぼす影響が大きいというふうに考えております。

 会計検査院が検査するものはそれぞれの事業でありますけれども、それぞれの事業は政策目的の実現のためにつながっており、単にその事業を点として見るのではなく、線的、面的に広げて会計検査の有効性を高めていかなければならないのだというふうに考えております。

 以上です。

北村(茂)委員 時間が参りました。ありがとうございました。

河村委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民主・維新・無所属クラブの福島伸享でございます。よろしくお願いいたします。

 柳候補におかれましては、今回二期目ということでありまして、公会計の研究者から検査官になって一期二年半を過ごされたと認識しております。

 実際の理論と、現場の実務をやってみて、いろいろな違いも感じたことがあるんじゃないかなというふうに思っております。恐らく、一番、その違いの根幹には会計方式、現金方式なのか発生主義なのかという会計の違いに基づくチェックのあり方とか、そういうものを感じたんじゃないかなと考えております。

 民主党政権のときも、政権交代直後、平成二十一年十月に「予算編成等の在り方の改革について」というのを閣議決定して、国の予算編成のあり方とか会計のあり方の見直しというのをやって、複式簿記を取り入れようといろいろなことをやっておりますが、なかなか遅々として進まないところがあります。

 会計検査院は、会計検査院法第三十六条に基づいて、行政への意見表示や改善の処置を要求できますけれども、一期検査官をやってみて、研究者から入ってみて、国の会計制度や予算制度の見直し、これをやった方がいい、こういうことをやった方がいいんじゃないかという点がありましたら、御言及いただければと思います。

柳参考人 御質問ありがとうございました。

 今御指摘の点は、大変我が国の課題だというふうに考えております。

 私も、研究者から、いろいろな財政改革を行っている国々の理論や、あるいはすぐれた実務などを研究してまいりました。それらに鑑みて、今の日本の実態を見てまいりますと、会計検査において、業績を定量化していく、あるいはそれがどのぐらいのコストで行われているのかというようなフルコストの問題等を考えていかなければならないといったときに、現在の会計制度では十分に対応できない部分がございますが、今、各省庁、国も発生主義情報を作成しておりますので、そういったいろいろな情報を使いながら、会計検査の資料として考えて検討していくということが求められるのであり、そういったことを実践していくのだということで会計検査に携わってきたというところでございます。

 以上です。

福島委員 財政法とか会計法を変えるのは立法府の役割でもありますので、ぜひ、検査官としてそうした提言の方もやっていただければというふうに思っております。

 制度的な問題点でもう一点なんですけれども、特定秘密保護法との関係の問題であります。

 言うまでもないことで、先ほども答弁でございましたけれども、会計検査院は、憲法九十条の規定に従って、国会や内閣と独立した極めて重い地位を与えられております。

 ところが、特定秘密保護法第十条第一項では、秘密を指定した行政機関が、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断すれば、会計検査院が求めても秘密の提示を拒むことができる可能性が法律の条文上はあると認識しております。

 毎日新聞の昨年の十二月八日の報道によると、このことについて、会計検査院は、立法過程において内閣官房へ修正を求めていたということですが、結果的に修正は行われずに、通達を出して、会計検査院から求められたら行政は応じなければならない、通達で対応するんだということになっておりますが、まだその通達は出ていないというふうにこの記事ではなっております。

 先生は大学では憲法も専攻されていたということで、まさに憲法と会計と両方の専門家であるわけでありますけれども、この特定秘密保護法と会計検査院の問題に関してどのように先生はお考えになっているか、今政府に求めるべき手順というものは何かということについて御答弁をいただければと思います。

柳参考人 ありがとうございました。

 特定秘密保護法につきましては、その立法の協議の過程におきまして、憲法九十条との関係で、全ての決算を会計検査するという会計検査の使命、機能というものに抵触するのではないかといったようなところで確認をしていたところであります。

 会計検査というのは、公益上非常に高い必要性があるものでありますので、これまでも、会計検査に当たっては、特定秘密に当たるような情報も提供していただき、そして会計検査に当たってきたわけであります。その点は十分に内閣の情報調査室とも確認をしているところであり、今御指摘のような通達がまだ出されていないといった状況については、適切なときに出していただくようにということを希望する次第でございます。

 以上です。

福島委員 もう一点、最後なんですけれども、せっかく検査をして立派な指摘をしても、それが反映されないことがあるんですね。

 平成二十四年一月に、大規模な治水事業、ダム、放水路、導水路等に関する会計検査の結果というのが出て、私の地元なんですけれども、霞ケ浦導水という事業について、継続して事業を実施する場合には関係者等と十分調整を行うというのができているんですけれども、実際は、地元の漁協と訴訟になって、調整が行われないまま、平成二十六年、事業の再開を決定してしまったんですね。

 ですから、こうして検査をした結果についてのフォローアップもすべきであるし、果たして本当に検査結果を遵守しているのかどうかということを、政府に対してきっちりと意見を言うべきだと思うんですけれども、その点に関する御認識をお聞かせください。

柳参考人 御指摘のとおり、検査の結果というものに対して、是正の要求があった場合には、それが行われなければ国民に対する説明責任がつかないということであると思います。

 会計検査院ではフォローアップをしておりまして、なぜそれが改善されないのかといったことについては、いろいろ複雑な状況等もありますので、そういったものが、どこにふぐあいがあって、制度上の問題があるのか、あるいは実際上の、今御指摘があったような関係の問題があるのかというようなことについても分析をしまして、フォローアップに努めてまいってきたというところであります。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。終わります。

河村委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 柳参考人におかれましては、きょうこうして出席を賜りまして、御礼を申し上げる次第でございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず第一点目は、検査官としていわゆる再任の候補となっているわけですけれども、再任の候補としての基本的な考え方、姿勢についてお伺いしたいと思っています。先ほど、冒頭の発言の中でも相当数いろいろなお話がありましたので理解はしておりますけれども、重ねてお伺いしたいと思っております。

 それは、特にこの二年四カ月の間にどのような意識を持って検査官の任務に当たってこられたのか、再任に当たっては、会計検査の見えてきた課題とかいうことについてどう取り組もうとしているのかという考え方と、先ほどお話ありましたように、民間企業の管理会計のすぐれた実務を政府会計に適用することができないかという問題意識を持って研究してまいりましたという、これは二十五年の新任のときの御挨拶でございました。先ほどもそれに触れたお話がございましたけれども、重ねての質問になりますが、お伺いしたいと思っています。お願いします。

柳参考人 ありがとうございました。

 私は、研究者から検査官になりまして二年余り務めさせていただきましたが、そのときの大きな変化といいますものは、研究者のときには五つの観点、つまり正確性、合規性、経済性、効率性、有効性というものが非常に重要だというふうに考えておりました。検査に携わっておりますと、それに加えて、公平性とか透明性というような問題、国民目線という問題が非常に重要だというふうに考えております。検査報告を審議するに当たっても、これはどういう原因で、国民に対して説明責任がつくのかというような観点から検討してまいったところでございます。そういったところが違うということでございます。

 もし再任されるとしますならば、そういう国民の目線、国民に対する説明責任ということに留意して検査官の職務を担ってまいりたいと考えております。

 また、民間企業のすぐれた実務というものについては、もちろん利益の追求といったことについては全く違うわけでございますが、民間企業は、研究開発から例えば最終的な利益に結びつくところまでのいわゆる価値連鎖というようなもの、つまり政策についても、いろいろな実証実験事業があったり、それからエネルギー政策についても最終的なゴールがあったりとかするわけでございますが、その事業間の関連がどうなっているのかということについてもっと目を光らせる必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。

 次は、これまでの会計検査に対する評価とか今後の改革の方向性についてお伺いしておきたいと思っています。

 今、政府においては、一つの大きな課題として、基礎的財政収支を黒字化するということがあると思います。特に、二十八年から平成三十年までの改革集中期間ですか、この間にプライマリーバランスの対GDP比一%程度の目安ということで、そのような具体的な目標を挙げて今取り組んでいるんですけれども、こうした財政健全化の課題が重要視される中で、柳参考人の公会計研究における経験、見識、こうしたものから、これまでの会計検査の果たしてきた役割はどう評価されるかということ。

 それから、今後、今私が申し上げましたような政府の方針について、会計検査のあり方や手法について、もし仮に何か変革する必要があるとすれば、どう考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

柳参考人 ありがとうございました。

 基礎的財政収支を黒字化するということは非常に重要な目標ではあるというふうに考えておりますが、我が国が直面しているいろいろな社会状況、経済状況については非常に多くの課題があるという認識でもございます。

 政府としては、やはりその課題に対してどう取り組んでいくのか、どういう長期的な結果をもたらすのかという持続可能性というような観点が非常に重要なわけで、そういった非常に長期的な観点に立ちながら現状の会計検査を行っていくということが必要なのではないかというふうに考えております。

 また、会計検査院におきましては多くの会計検査報告を行っておりますが、それらがどのように体系化できるのか、つまり、知識を共有化していって検査能力を高めていくことができるのかということが課題になっているというふうに思いますので、そういった検査能力、知識の体系化、共有化というようなことを進めて、検査をより精緻化していく、国民の目線に立ったものにしていくということが必要なんだというふうに考えております。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。

 最後になりますけれども、少し視点を変えて、地方公会計の整備促進についてお伺いしておきたいと思うんです。

 今、昨年一月の総務大臣の通知によりまして、全国の各自治体において、統一的な基準による財務書類を原則として平成二十九年までの間に作成するということを要請されています。

 財務書類を作成する上でさまざまな課題があると思うんですけれども、いずれにしても、こうした課題に対して、会計検査院として何らかの支援やアドバイスを行っていくことはできないのか、こうしたことも考えられると思うのですが、この点について柳参考人の見解をお伺いしたいと思います。

柳参考人 地公体におきましては、そういった発生主義情報の整備等を進めているということは承知しております。

 会計検査院も、検査実務の中で、地方公共団体の内部監査あるいは会計管理に係る人たちに研修を行ったり、あるいは会計検査の結果というものを説明したりしているところであります。

 地方公会計は国の会計ともつながっておりますので、その点では、会計検査院も、地方の会計と国の会計、そのリンケージというものも留意して会計検査を行っていく必要があるし、支援していく必要があるというふうに考えております。

 以上です。

稲津委員 終わります。

河村委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 ことしは、日本国憲法公布七十年という節目の年です。憲法との関係で、検査官候補者の柳麻理さんに三点お尋ねしたいと思います。

 柳さんが検査官として就任した直後、会計検査院は、秘密保護法の法案策定過程において憲法上問題ありと指摘をしておりました。これに関連してお尋ねします。

 第一に、憲法九十条の意義についてであります。

 会計検査院が内閣官房に発出した文書を見ると、会計検査院は、憲法九十条一項「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」の規定について次のように述べています。ここで言う「すべて」とは、戦前、機密費や軍需費関係について、会計検査院の検査の対象外とされていたことに対し、会計検査院が検査できない分野はないということを憲法上明確に定めたもの、このように述べておりますが、柳さんもこの認識ということでよろしいでしょうか。

柳参考人 憲法九十条は、財政民主主義の重要なことを定めております。

 今御指摘のとおり、会計検査院は、憲法九十条に基づきまして、国の収入支出の決算の全てを毎年検査するということでございまして、その中で、特定秘密に係ることとして情報が提供されないといったことがあってはならないというふうに考えております。

 会計検査は、これまでも、特定秘密に当たるような情報を得まして十分に検査をしているところでありますので、そのような検査を今後もしていかなければならない、それが国民への説明責任であり、財政民主主義だというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 機密費や軍需費も例外としないというのがこの憲法九十条の立場だということでよろしいでしょうか。

柳参考人 そのように考えております。

塩川委員 今触れていただきましたけれども、秘密保護法と憲法九十条の関係についてお尋ねします。

 会計検査院は、さきの内閣官房に発出した文書の中で、秘密保護法について、憲法九十条一項との関係で問題があると厳しく指摘をしています。

 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたという要件が定められており、検査上の必要があったとしても、検査を受ける側の判断により提供を受けられない場合があると読める、検査のために必要な情報にアクセスできず、検査ができない事態が生じ得る法律の規定は、憲法上全て検査しとされていることとの関係で問題を生じる。

 内閣官房からは問題は生じないとの回答があり、それを受けてさらに以下のように述べておりますが、情報が提供されない可能性が認められること自体、憲法九十条一項との関係で問題がある、この指摘について御所見を伺いたい。

 憲法九十条との関係で問題があると指摘したことについてお聞かせください。

柳参考人 憲法九十条の規定は、非常に重要な会計検査の機能を定めたものであるというふうに考えております。

 会計検査は、公益上特に必要があるということに該当いたしますので、その点で、全ての情報を得て、そして会計検査を行っていくということが必要だというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 第三に、防衛費の検査についてお尋ねします。

 憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と明記し、財政民主主義を確立しました。これは、過去の戦争で、戦費調達のために大量の国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の体験があったからであります。

 一方、昨年、防衛調達長期契約法によって、防衛調達は国庫債務負担行為の年限を十年へと延長しました。

 長期契約だけでなく、後年度負担、また秘密保護法の縛りもある中で、この間増加をしている防衛費の会計検査について感じていることをお聞かせいただきたいと思います。

柳参考人 防衛費につきましては、会計検査におきましてもいろいろな問題があり、調達についての指摘もしてございます。三菱電機の過大請求の事案もございました。

 そして、防衛費に関しましては、大変多額で、大変長期的に用いるものであるといった観点からは、ライフサイクルコストのような視点も必要であり、その面での管理が必要であるということでございます。

 会計検査院は、これまで、防衛費に関しましてそういった視点から、きちんと内部統制が行われているのか等についても目を光らせてきたところであります。

 防衛費については、今後もそのような、防衛装備庁が発足いたしましたが、その中でも、効果的に、効率的に調達が行われているのかということを国民の目線に立って検査していくことが重要であるというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

河村委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 先ほど来皆様方から御質問がございました。重複するところがありますけれども、柳先生には御理解いただきたいと思っております。

 平成二十五年八月以来、検査官の職にあります。それ以前は、長年商法学者として公会計を御専門にされてきたと伺っております。研究者としての知見は、会計検査官としてどのように実務の現場に生かしてこられたのでしょうか。

 また、再任された場合、これまでの経験を踏まえて、今後はどのような方針で会計検査に当たられるのか、御見解をお伺いしたいと思います。

柳参考人 ありがとうございます。

 私は、御指摘のように、研究者として研究をしておりました。そして、公共経営や公会計改革の理論やすぐれた実務についての知見を持っておりました。

 それらを会計検査においてどのように適用できるかということを考えてまいりましたが、業績の定量化、なるべくわかりやすく、国費の投入された結果というものをどのようにわかりやすく測定していくのかというようなことについて、そういった観点から、検査も、効率性の観点、有効性の観点といったときには、やはりインプットに対してアウトプットなりアウトカムというものをどのように測定していくのか、それが本当に十分な経済的なコストであったのかというようなことについても検査で報告していくということが国民に対して求められているというふうに感じておりまして、そういった姿勢で検査を行ってきたということでございます。

 以上です。

遠藤(敬)委員 これまでの検査官としての業務を通じて、国の会計検査のあり方について何か改革すべき点はあるのかないのか、御所見を改めてお伺いしたいと思います。

柳参考人 会計検査は、それぞれ、検査対象の事業に対して行っておりますけれども、先ほども申し述べましたけれども、その事業が政策目的にどのようにかかわっているのかといった観点が非常に重要であり、政策目的の実現が国民の福利厚生につながるわけでありますので、政策目的の実現が国家的な事業構造によって達成できているのかといったことを、単に点としての検査報告ではなく、線として、面としてつなげていく必要があるといったことが重要であり、これまでの会計検査で行ってきたさまざまな指摘というものを体系化していくということが非常に重要であり、それを会計検査院の人的資源が全て共有していくということが検査能力を向上することにつながるのだということで、そこに課題があるというふうに認識しております。

遠藤(敬)委員 柳先生は女性初の検査官だと伺っております。会計検査院の意思決定機関である検査官会議の三名の検査官のお一人ということで、女性として政府機関で指導的立場に立たれることになります。

 政府の進める女性活躍推進について、御所見があれば、せっかくの機会ですのでお伺いしたいと思います。

柳参考人 女性初の検査官ということで、会計検査院の中におきましても女性の活躍が求められているところでありますけれども、非常に厳しい職場環境でもございまして、女性の課長職以上というのがなかなか存在していないといったような状況でございます。

 その中で、私は、女性としてというよりは研究者として、民間からの研究者として、その知見をいかに会計検査の実務に生かしていくことができるのかということで、検査官会議等で発言をすることによりまして、会計検査の質を高めていくといったことに貢献できれば、それが女性職員にとってのモデルにもなり、そういった女性の活躍といったようなことについて、懇話会でありますとか懇親会とかでお話をしておりますと、そういったことが非常に彼女たちの職務に対するモチベーションになっているということを感じておりまして、その意味でも、非常に役割が重いものというふうに感じております。

 以上です。

遠藤(敬)委員 最後なんですけれども、国の会計システムの中で決算がどうも弱いんじゃないかとさまざまな御指摘もいただいております。

 国の会計システムの中の決算というものについて、先生はどのようにお考えでしょうか。最後に質問させていただきたいと思います。

柳参考人 決算が弱いというのは、ニュー・パブリック・マネジメントという公共経営の改革が行われてきたときに、インプットからアウトプット、アウトカムへというようなことが一九八〇年代から言われてきたわけであります。

 我が国の場合には、政策評価あるいは事業レビュー等が行われておりますけれども、決算の情報が有用な情報になっているのか、あるいは決算についてどのように分析されているのかということが重要な課題だと思っております。

 会計検査院では、検査報告の中で、現在、決算について、債務の状況、債権の状況等について決算分析を行っております。そのときに、発生主義情報とどう関係しているのかというような分析も重ねて行っております。これから、決算の重要性も認識しながら、会計検査院の決算分析も貢献できればというふうに考えております。

 以上です。

遠藤(敬)委員 終わります。

河村委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 過去、その不透明な支出が問題となってきた内閣官房報償費、いわゆる官房機密費の検査についてお尋ねをします。

 これまで、会計検査院の指摘もあり、三つの類型がある官房機密費について、調査情報対策費、活動関係費は領収書等支出先が確認できるものを保存することになっておりますが、官房長官が直接扱う政策推進費については、いつ、誰に、どのような目的で幾ら支払ったのか、適切に記録する仕組みがありません。まさに、官房長官しか知り得ないことがある。

 それなのに、菅官房長官は、昨年の国会で、会計検査院に報償費の執行について直接説明を行うことはないと答弁をしておられます。

 官房長官が直接取り扱う官房機密費について、検査の御苦労をお伺いしたいと思います。

柳参考人 御指摘の点は、透明性の観点からは非常に重要なことだというふうに思います。

 報償費についても検査を行い、その支出が適正であるのかといったことについては、会計検査院はそれについても目を光らせているところであります。

 どのように使われているのか、またその証票はどうなっているのかということについて、会計検査、実地検査におきましては確認しているところでありますので、今後も、報償費についても、不透明なところがないように、もし検査官に再任されましたならば、そのように目を光らせていきたいというふうに考えております。

河村委員長 ほかにございますか。

 ないようでございますので、これにて柳参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 柳参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして検査官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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