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第7号 平成14年6月7日(金曜日)

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平成十四年六月七日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 小野 晋也君 理事 宮本 一三君
   理事 今田 保典君 理事 松原  仁君
   理事 遠藤 和良君 理事 山田 正彦君
      岩崎 忠夫君    岩屋  毅君
      大村 秀章君    梶山 弘志君
      左藤  章君    高木  毅君
      谷本 龍哉君    中野  清君
      中本 太衛君    西川 京子君
      原田昇左右君    堀之内久男君
      村上誠一郎君    谷津 義男君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      奥田  建君    小泉 俊明君
      後藤  斎君    鈴木 康友君
      津川 祥吾君    土肥 隆一君
      中津川博郷君    前田 雄吉君
      塩川 鉄也君    藤木 洋子君
      矢島 恒夫君    金子 哲夫君
      菅野 哲雄君    西川太一郎君
    …………………………………
   参考人
   (鳥取県知事)      片山 善博君
   参考人
   (静岡県知事)      石川 嘉延君
   衆議院調査局第三特別調査
   室長           柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月七日
 辞任         補欠選任
  塩川 鉄也君     矢島 恒夫君
  山内 惠子君     金子 哲夫君
同日
 辞任         補欠選任
  矢島 恒夫君     塩川 鉄也君
  金子 哲夫君     山内 惠子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 災害対策に関する件


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 災害対策に関する件について調査を進めます。
 本日は、参考人として鳥取県知事片山善博君及び静岡県知事石川嘉延君に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、大変御多用中にもかかわらず本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。災害対策につきまして、それぞれ大変先進的にお取り組みをいただいている両県知事さんでございます。どうぞきょうは、私たちの災害対策委員会の今後のいろいろな論議の参考にするために、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、片山参考人、石川参考人の順序で、お一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。
 それでは、片山参考人にお願いいたします。
片山参考人 おはようございます。
 ただいま御紹介をいただきました鳥取県知事の片山でございます。本日は、こういう席で私どもの体験、実践についてお聞き取りをいただく機会を与えていただきましたことを大変感謝いたしております。せっかくの機会でございますので、鳥取県で、災害対策、とりわけ被災者の住宅再建にどういう取り組みをしているのかという点を中心にお聞きをいただければと思います。
 私どもの鳥取県では、一昨年の十月の六日に思いも寄らない大地震に見舞われました。マグニチュード七・三、最大震度六強という大変大きな地震でございました。幸い人命に対する被害はございませんでしたけれども、本当に無数の住宅が壊滅的な被害を受けたり倒壊をしたり、傾いたり損壊をしたりということでございました。しかも、一番大きな被害に見舞われた地域といいますのは、鳥取県の中でもとりわけ過疎化が進行し、高齢化が進行している地域でありました。勢い、被災者の皆さんも高齢者が中心ということになりました。
 私も、地震の次の日から連日被災地に出向きまして、被害者の皆さんとお会いをして、今どういうことが問題か、これからの課題は何かということを探ったのでありますけれども、私は、そのときに直観いたしましたのは、やはり住宅問題が一番のポイントだろうと思いました。
 といいますのは、確かに、道路や橋やがけ崩れ、そういう被害がありまして、それらを直すということが大きな課題なんでありますが、それらは幸いなことに政府の方の手厚い助成もありますので、時間と労力をかければ復旧することはできます。しかし、一番被災者にとって不安の種であります住宅については、実は何らの支援制度もないわけであります。
 住宅は個人の財産でありますから、その個人の財産が滅失、毀損したものを回復するのは、確かに個人の才覚と力量によるべきものでありますが、先ほど申しましたように、被災地は高齢化が進行しているところでありますので、お年寄りがみずから住宅を再建するというのは限りがございます。特にもう高齢になりますと、新たにローンを仕組むこともできませんので、直そうにも直せないということです。
 実際に話を聞いてみましても、この地域にまだまだ住みたい、一生住みたいけれども、家がこういうありさまではもう住むことができない、直そうにも資力もない、気力もない。そういうところに、都会に出ている息子さんなんかから、もうお父さん、お母さん、自分のところにいらっしゃいという声がかかってくるわけでありまして、本当は行きたくないけれども、しかし、家がこんなありさまだと、もう住むところもないので行かざるを得ない、こういう声がしきりに出てくるわけであります。一人、二人、そういう話をし出しますと、周りの人もみんな連鎖反応で、あなたが出ていくんならもう私もやはり子供のところへ行こうか、こういう話になるわけであります。
 私は、やはり住宅再建にめどを立てるということがこの被災地の復興の一番の眼目であると思いました。そこで、何とか住宅再建支援をしたいと思いましたのが、被災直後の私の実感でありました。
 それからいろいろな制度を調べたのでありますが、さっき言いましたように、我が国には住宅再建を手助けする手だては何もありません。唯一ありましたのは、住宅金融公庫の低利融資がありますけれども、これとて借りられた人だけへの低利融資でありまして、そもそも借りることのできない人には低利融資というのは何の意味もないわけであります。したがって、お年寄りの被災者には、住宅について手を何ら差し伸べることができないということでありました。
 そこで、それならばもう単独ででもやろうということに決めたのでありますが、それからが大変でありました。それは、専ら政府との関係でありますが、当時、中央政府は住宅再建に公的資金をつぎ込んではいけないということを非常に厳しく言われておりました。個人の住宅というのはプライベートな財産だから、パブリックなものにしか使うべきでない税金をそういうプライベートな財産につぎ込んではいけない、これが財政上のルールであるということ、これをしきりに強調されておりまして、私も実はそれはそうだろうと思うのでありますが、しかし、幾らパブリックなものにしか投入できないからといって、道路や橋を一生懸命直しても、肝心かなめの被災者の皆さん方が住宅が再建できないということでその土地を去ってしまったら、その道路や橋に投じたパブリックなお金というのは一体何になるんだろうかと思いました。財政上のルールを守っても、しかし、地域を守れなかったということになってしまいかねないわけで、あえて、政府の方針には当時反したのでありますけれども、鳥取県では住宅再建支援に乗り出すことにいたしました。
 具体的にどういうことをやったかといいますと、資料の方にもつけておりますけれども、家が壊れて建てかえる人、しかもそれはもとの場所に、もとの場所というのは、もとの市町村に建てかえる人には三百万円を援助しようということにいたしました。それから、壊れたり屋根が飛んだりという家が多かったものですから、そういう家については、修繕をされる方は、百五十万円を基本にして、それの三分の二を限度にして支援しましょうということにしたわけであります。
 その際には、全壊だとか半壊、一部損壊だとか、もうそういう区分は一切なしで、とにかく地震がきっかけで建てかえる人は三百万円、修繕する人は百五十万円を限度にその三分の二ということにしたわけであります。これは、県が専ら中心になってやりましたけれども、該当の市町村とも協力をして支援を行いました。
 正直言いまして、全く新しい制度への挑戦でありますし、この制度を発表いたしましたのが地震が起きてから十一日後でありましたので、まだ被害の程度もわかりませんから、一体どれぐらいお金がかかるか、正直、不明でありました。大変不安の中で滑り出したのでありますけれども、鳥取県ではそういうことをやりました。
 おかげさまで、いろいろないいことがありまして、一つは、そこにもちょっと書いておりますけれども、住宅再建支援を発表した段階から、被災地における不安というものがどんどん解消していきました。後で精神科のお医者さんに伺いますと、住宅再建支援を発表したそのアナウンスメントが被災者にとっては最大のメンタルケアになったという話も伺いました。
 確かに、私も連日被災地に赴きまして、被災者の皆さんとお会いしていますと、あるときから本当に見る見る皆さんが元気になられまして、やはり不安というのが一番大きいわけで、その不安をどうやって解消していくのか、その不安をどうやって希望に変えていくのかということが災害のときには重要なんだなということを痛感した次第であります。
 その後、順調に復興は進みまして、公共施設の復興も順調に進みましたし、それから住宅も、この再建支援を利用していただいて、被災者の皆さんが建てかえたり修繕したりということをやられまして、今日、まだ完全ではありませんが、ほぼ回復をしております。当初恐れました、人口がぐんと減るんではないか、大きなダメージを受けて、したがって、もうその地域を捨てて、例えば遠方にいる息子さんとかそういうところに行ってしまう、そういうことが予想されたものですから、この住宅再建支援をやったんですけれども、結果として、住宅が壊れたそのことによって地域を去らなければならなかったという人はほとんどおられませんでした。
 皆無かというと、やはりそれはそうではなくて、いろいろな事情があって、数軒の方は近郊の都市とか大都市に移った方はおられますけれども、しかし、それは本当に数軒でありまして、他の大部分の皆さんは、元気を出して、元気を取り戻して、その地域で住宅を再建し、住宅を修繕し、これからも住み続けてみんなと一緒に地域を守っていこうということを選択されました。
 私は、大変ありがたかったと思いますし、今にして思えば、多少背伸びをしたかもしれませんけれども、住宅再建支援という新たな政策を打ち出したことが、地域の崩壊を免れ、地域を守ることにつながったと思っております。
 そのときの経験にかんがみまして、鳥取県では、これからもひょっとしたら大災害があるかもしれない。これは決してあってほしくはないわけでありますけれども、災害というのはいつ何どきあるかわかりませんので、そのときにまた同じような問題が多分生じてくるでありましょう。
 一昨年の地震のときには、まだ鳥取県も財政に余力がありました。もちろん、鳥取県は台所が豊かではありませんで、大変苦しい状況ではありますが、それでも、当時の地震を復興させるのに必要な財源的余裕はまだあったわけであります。これから財政が大変厳しくなって、そういうときに地震があって、住宅再建支援をやろうにも財政の問題でやれないということもあるかもしれない。そのときのために、それでは今から蓄えをしておきましょうということで、早速検討を加えまして、県と市町村とで相談をいたしまして、鳥取県では、そこのレジュメにもありますけれども、被災者住宅再建支援基金という制度を設けました。
 これは、県と市町村が共同して県に設置をした基金でありますが、すべての市町村が参加をしてくれまして、もともとこれは、制度としては任意の加入ということにしております。したがって、市町村の中で、私のところはそんなものに加入しないということがあれば、それはそれで結構なんですが、結果としては、任意加入でありながら、市町村が全部この制度に参加してくれました。
 毎年二億円ずつためていこうということにしておりまして、昨年度から、県が一億円、それから全市町村が一定の案分比率で負担を分け合いながら、市町村で一億円、合計二億円を積み立てていくということにしております。これを当面、二十五年間続けていこうと。そうしますと、現ナマとして五十億円がたまるわけであります。五十億円では賄い切れない大きな災害というのは当然起こるでありましょうけれども、まあ、元金としてとりあえず五十億円程度はそろえておこうということを目標にしてスタートをいたしました。不幸にしてまた大地震のようなものが起きた場合には、一昨年行った住宅再建支援政策とほぼ同じような住宅再建支援の手当てができるように、その財源基盤をつくろうというものであります。
 その際、県も一億円、市町村も一億円をそれぞれ捻出して基金に拠出するわけでありますが、そのときの財源はそれぞれ自由にいたしまして、県もそれなりに見つけるし、市町村も自由にその財源調達はしてください。
 ということはどういうことかといいますと、一般財源で財源を調達していただいても結構だし、それから、市町村によっては、例えば家屋の所有者から固定資産税に若干上乗せをしながら拠出金を徴収する、そういう選択をしていただいても結構でありますし、それはそれぞれの市町村の判断でやってくださいということに今しております。
 なお、先ほど二十五年間で二億円ずつで五十億円、五十億円では必ずしも十分でないということを申し上げましたが、私どもの考え方としては、これは全国で鳥取県が初めてこういう試みをやったわけでありまして、できればこういう制度というのを他の地方団体、さらにできれば全国でこういう制度を設けることになれば、よりいい制度ができるんではないか。
 要するに、大地震とかがあった場合に地域を守るために、その手段として住宅再建をお手伝いする。決してその滅失財産の補てんとかそういう意味ではなくて、地域が崩壊するのを防ぐために、その地域を守るために住宅再建を支援する、そういう仕組みを全国的なレベルでぜひつくっていただいたらと思っております。まず鳥取県から先鞭を切って始めましたけれども、これが全国的な制度に広がることを期待しております。
 そうなりますと、もしそうなった暁には、政府の方も恐らくは何がしかの財源をそういうものに拠出をされるはずでありますから、鳥取県としては、将来的に全国的なそういう制度ができれば、まあ我々が積み立てたと同額ぐらいのことを拠出していただけるんではないかと思ってひそかに期待はしておりますけれども、当面は、県と市町村とで五十億円を目標にということにしております。
 なお、これは差し出口かもしれませんが、私どもは、先ほど言いましたように、鳥取県から始めたこの住宅再建支援の基金制度を全国に広めたいと思っているのでありますが、別途、超党派の国会議員の先生方の方から、被災者住宅再建支援法案というものが出されているというふうに伺っております。それについて若干コメントをさせていただきますと、大変失礼でありますけれども、私は率直に申し上げて、あの法案には反対であります。
 何でかといいますと、あの法案を見ますと、地震等に起因して住宅を失った方みんなに補てんをするという仕組みになっているようであります。
 滅失財産の補てんをするというのは、私は地方団体の仕事とは少し異なると思うのであります。滅失財産の補てんをするというのは、やはり保険制度にゆだねるべきであって、我々がやるべきは、私がやりましたことは、滅失財産の補てんではなくて、あくまでも地域を守る。住宅再建のお手伝いをすることによって、その地域にこれからも住み続けていただいて、地域を守っていただく、そのための手段として住宅再建の後押しをしたわけでありまして、決してその滅失財産の補てんをしたわけではないのであります。滅失財産の補てんは、やはり公の仕事ではないと私は思います。特に地方団体の仕事ではないと思います。
 それからもう一つは、私どもがやりましたのは、当該地域に住宅を再建する、そのことに着目したわけでありますが、その新しい法案によりますと、仮に住宅を再建される方でも、全国どこに再建するかわからないわけでありまして、例えば鳥取県で被災をして補てん金をもらって東京の方で家を建てるといったときに、鳥取県や鳥取県内の市町村がそういう方に公金を支出する根拠というのは何もないわけであります。そういうものを含んだ法案である以上は、私は、地方団体が巻き込まれるということは反対であります。もしやられるのならば国だけで、国家政府だけでやるべきではないかと思います。
 大変失礼ではありますけれども、実際に大きな地震の被害を体験し、そして、本当に苦慮しながら地域を守るために住宅再建支援制度を発動させた者といたしましては、今出されております法案にはやはり強い違和感を抱かざるを得ないということを、この際申し上げさせていただきたいと思います。
 あと、そのレジュメの後に、「鳥取県の災害対策住宅施策の概要」ということで、一ページから、一昨年の被害に対応した住宅支援策、これは住宅再建支援だけではなくて、公営住宅の充実でありますとか民間住宅の借り上げでありますとか、そんなことも含めた内容のものを出しておりますし、二ページの後半からは、今申し上げました鳥取県被災者住宅再建支援制度、これは基金でありますが、単独で設けました基金についての概要を記しております。それからその後に、その基金の根拠となります鳥取県被災者住宅再建支援条例も全文をつけておりますので、ぜひ先生方に御参考にしていただいて、できますればこういう制度を、私どもがつくったような制度を全国的に展開していただくと、大変ありがたいと考えております。
 ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 大変貴重な御意見、ありがとうございました。
 次に、石川参考人にお願いいたします。石川参考人。
石川参考人 静岡県知事の石川嘉延でございます。このような発言の機会をいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。
 それでは、本県が取り組んでまいりました地震対策の概要、それから、それをもとにいたしまして、国の制度としていろいろ強化、整備充実をしていただかなければいけないようなこと、取りまぜてお話を申し上げたいと思います。
 お手元に資料が四点お届けしてあると思いますので、それを参考にしながら申し述べたいと思います。
 まず、本県の地震対策でございますが、一九七六年、今から二十六年前に、当時、東京大学の理学部の助手でありました石橋先生が、東海地震がいつ起こってもおかしくない、関東大震災クラスの東海大地震がいつ起こってもおかしくない、そういう説を発表されまして、本県はその震源域の中心と目される地域でありましたので、これに即座に反応し、以降、政府に対して、大規模地震対策特別措置法の制定、それからまた、それに従いました地震対策を実行いたしたときの財政上の特別措置の立法をお願いし、それを実現しながら取り組んでまいりましたが、災害対策のこれまでの取り組みを総括いたしますと、大きく分けて四点になろうと思います。
 一つは、東海地震説の発端からこれは特色づけられておるわけでありますけれども、地震の予知ができるかもしれないということで、そのための予知観測体制の整備充実、これが大きな柱の一つになります。
 二つ目は、地震が発生した場合に、あるいは予知が前提になっておる場合には予知情報、いずれにしても、事前の情報、事後の被災情報、この情報の収集伝達手段を整備するということ。
 それから三番目は、地震に強い地域、県土をつくり上げていくということ。
 四番目は、被害をできるだけ減少させるためにも、特に発災直後の地域の助け合いが重要だということで、自主防災体制の確立。
 この四つに力点を置いて事業を展開してまいりました。
 まず、予知観測体制の問題でございますが、お手元の資料一の一ページから六ページにかけましてるる書いてございますが、これまで、国、これは今の文部科学省、それから国土交通省に所属する気象庁といった国の機関を初めとして、大学などの研究機関によります観測体制が整備をされてまいりまして、五、六ページに書いてございますが、現状では三百七十四の施設がこの静岡県内、駿河湾を取り囲んで設置をされておりまして、そのうち三百三十九の観測施設がテレメーター化されて、それぞれの観測主体に常時情報が届けられる、達するような制度になっております。
 そのうち、さらに九十二の施設が気象庁に直ちに集まるようになっておりまして、そういう観測データをもとに、大規模地震対策特別措置法に基づいて設置をされております、前の四ページにございます、下段の左側に、地震防災対策強化地域判定会というのが設けられておりますが、ここでこの観測データに異常があった場合には判定をし、東海大地震の発生の可能性が切迫しているというときには内閣総理大臣に通報し、内閣総理大臣の責任と権限のもとで警戒宣言を発令する、そういうシステムになっておるわけでございます。これまで二十五年近い歳月の中で、このような体制が確立をしてまいっております。
 現在、この東海大地震がさらに東南海地域に拡大をするのではないかという危険性が指摘されております。ちょっと前に戻って二ページをごらんいただきますと、過去五百年近い歳月の中で、太平洋岸、本県から四国にかけました太平洋岸の大規模地震の歴史資料が残っておりますが、それらをもとに推計していきますと、ごらんの二ページの下の図表のような、大規模地震が一定の間隔を置いて発生しているということでございます。特に東海地域につきましては、二ページの図の一番下にあります空白域ということで、過去百五十年近くにわたって大規模地震の発生が見られない、ここに大きなひずみが堆積されているということが懸念されておるところでございます。
 次に、本県が、地震の情報に関する伝達収集体制の確立のためにどういうことをやっているかでございますが、資料一の十四ページをごらんいただきますと、それ以降に書いてありますが、十五、十六ページに図表化してございます。本県内全県域を、県の機関を中心とし、市町村と連携をとりながら、総合情報ネットワークシステムを構築し、これらのシステムで集められた情報が国土庁、消防庁等、関係の国の機関にも即時に連絡できるような体制がとられております。今後、東南海地域におきましてもこのような体制整備が必要であるというふうに存じます。そういうことでございます。
 それからさらに、三番目に、災害に強い県土づくりという観点で申し上げますと、順序が相前後して恐縮でございますが、資料一の十ページ以降、特に具体的な事業については十二ページあたりに写真つきで書いておりますが、避難地とか緊急輸送路、防災拠点、急傾斜地対策、津波対策等掲げてございます。この災害に強い県土づくりにつきましては、まず公共施設の耐震補強、津波あるいはがけ崩れによる被害を食いとめる対策など、これまでに昭和五十五年から平成十七年までの二十年間の地震対策強化事業が進行中でございます。総額で一兆五千六百億ぐらいの全体計画になりますが、平成十三年度までに約一兆四千九百億、八六%ぐらいの事業がこれで実施されております。
 この中で、特に補助事業としては、大規模地震対策特別措置法と同時に制定されました財政対策特別措置法による特別事業、これが資料の二の八ページをごらんいただきますと書いてございますが、約六千八百億、それから、阪神・淡路大震災の発生を教訓にいたしまして制定されました地震防災対策特別措置法に基づく事業が千七百億、それから県の単独事業として六千三百億、合計で一兆四千九百億の事業をこれまで実施してまいりました。今後、平成十七年までに残事業を消化し、災害に強い県土体制の整備を図りたいと考えておるところでございます。
 東南海地域におきましても、今後、そのような必要性が発生してこようと思います。本県におきましては、国の特別な補助率のかさ上げによりまして約八千五百億の事業をこれまでやってまいっておりますし、単独事業で六千三百億実施をいたしましたが、この単独事業のための財源確保のために法人関係税の法人事業税と県民税の超過課税を実施いたしまして、これまでに約千五百億の財源を捻出し、これに充ててきたところでございます。
 今後、他の地域におきましても、大規模な地震強化対策を実施する場合に、どうしても国庫補助対象になりにくいきめ細かな事業も出てまいりますので、それぞれの地域における自助努力も求められるのではないかと存じますが、本県では、既にそのようなことをやってまいったということでございます。
 それから、最後、大きな項目の四番目の、地域の助け合いといいますか、自主防災体制の確立の問題でございますが、現在、本県内では、小学校区単位を基盤にしながら、非常にきめ細かな自主防災組織が組織をされております。毎年、九月一日の全国的な地震防災訓練の日、それからまた、本県内で特に自主的に十二月を地域防災月間として定めまして、この月間中に、それぞれ自主防災組織においても自主的な防災訓練を重ねてきておるところでございます。
 地震発生の懸念が指摘されて以降二十六年もたちますと、だんだん緊張感も希薄化してまいりまして、いかにもう一度気合いを入れて自主防災組織の実効性を上げるようにするか、これが課題でございますので、昨年度から、コラボレーション、協働による自主防災組織活性化事業というのを展開しております。資料四にまとめてありますが、自主防災組織と県で養成しました防災士、消防団、災害ボランティアコーディネーター、それから各企業、事業所の代表と行政機関とで構成する自主防災組織活性化検討委員会を設置いたしまして、この委員会から出されました三つの対策、情報の共有化、ノウハウの普及、人材等の活用の三つを柱とする活性化対策が提言されまして、今年度から本格的に展開をいたしております。
 そういうことでございますが、阪神・淡路大震災の経験、それとその後の本県内の実態をいろいろ勘案しまして、目下のところは、先ほどの予知観測体制の充実、それから情報の収集、伝達手段の整備についてはかなりの水準に達してまいっておりますので、今後は、その都度その都度必要な補充をしていけばいい、あるいは更新をしていけばいいということであります。
 特に、三番目に挙げました災害に強い県土づくりという観点で考えますと、これまで、ともすれば公共施設の地震強化対策に力点が置かれてまいりましたが、阪神・淡路大震災の教訓にかんがみまして、個人住宅の耐震化が非常に重要だと、鳥取地震の例を考えてみましても痛感をいたしまして、本県では本年度から、プロジェクト、TOUKAI―0という事業を推進しております。
 資料三をごらんいただきますと、その概要が書いてあります。阪神・淡路大震災の被害の実態を見ますと、昭和五十六年に建築基準法が改正されまして、耐震基準が非常に強化されました。その基準をもとに阪神・淡路大震災地域を分析しますと、倒壊した建物のほとんどが昭和五十六年以前の基準で建てられた建物でございました。
 本県内にはそのような建築物が約六十万棟ございまして、これが一番倒壊の危険があるということで、現在、資料三の上段のところにあります耐震化フローの図面の1というところにございますが、「わが家の簡易耐震診断」、これをまず建物の所有者にやっていただきまして、それで非常に問題点がありそうだということになりますと、2の「わが家の専門家診断」に移ります。これについては県の建築士会等の協力を得ながら実施をするわけでありますけれども、経費もかかることでございますので、これは国の補助の一部を導入しながら、県、市町村でコストを負担し、無料で耐震診断、精密診断を行っております。その結果、危険と診断されたものが耐震補強の対象になってくるわけでございます。
 今後、この耐震補強を強力に推進するために、資料三の下段にありますように、耐震補強のための補助制度を今年度からスタートさせております。十八年度までの五年間にやり上げたいと思っておるわけでありますが、国は、この耐震補強については、密集市街地に限定して、密集市街地内の住宅に限って、経費に対する定率七・七%の補助を実施するという制度がことしから導入されまして、これを活用しながら、その対象外の地域、すなわち、県下全域にわたってすべての対象建築物に三十万円の耐震補強補助をしようということでスタートをしております。市町村の負担は必須にしておりませんで、それぞれの地域の判断で上乗せをするところはやっていただければよろしいということにしてございます。
 今後、この耐震補強のための国の制度の改善、すなわち、密集市街地住宅に限って耐震補強するということ、その制限を解除していただきまして、地震防災対策強化地域全域を対象にするような改善をお願いしたいと要望しておるところでございます。
 いずれにしましても、耐震補強を実施いたしますと、少なくとも、一気に建物が倒壊をして、その建物の下敷きになって甚大な被害を受ける、最悪の場合は死に至るということが防げるというふうに確信をいたします。阪神・淡路大震災の場合の六千四百人の死者の八五%が建物の倒壊による死者というふうに分析をされております。そういう意味で、災害対策を実施する上で、減災、災害被害をできるだけ軽減する、そういう観点からの取り組みが急がれるのではないかと存じます。今後、南関東地域あるいは東南海地域におきましてもこのような必要性が出てまいろうと思います。国におきます本格的な援助措置の確立が期待をされるところでございます。
 とりあえず、時間も参りましたので、本県の取り組んでまいりました状況を主として御報告して発言を終わりたいと思います。(拍手)
田並委員長 どうも貴重な御意見、ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
田並委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。
小野委員 片山、石川両参考人におかれましては、それぞれの体験を踏まえましての真剣なお取り組み状況についての御報告、まことにありがとうございました。まず、冒頭の質問ということになりますので、ちょっと大枠の部分における質問をさせていただきたいと思います。
 まず、石川参考人にお尋ねをさせていただきたいと思うわけでありますが、大規模地震を想定されまして、いろいろな取り組みをしておられる御様子を拝聴させていただきました。よく災害の問題を論ずるときに、変至らざるなく応当たらざるなし、変とは変化の変でありますけれども、いかなることだって起こり得るんだ、至らないところはないということを想定して取り組みなさい、しかしながら、一たん事があれば、応というのは、対応の応ですね、ですから、見事にそのことに対して対応をしていかなくてはならないのですよ、こういうふうな言葉が言われるわけでありまして、まさにこれが災害に対する対応なのだろうと私は思います。
 しかしながら、そうは言いながらも、至らないところのない対応をしようと思いましても、地方自治体におきましては、当然のことながら、財源の問題もあれば対応できる人員の問題もある。そしてさらに、地方自治体としての制度上の限界だってそこに存在するわけでありまして、特に先ほど来指摘のございました地震の問題ということになりますと、一体いつ起こるやらこれは見当がつかない。起こるのやら起こらないのやらもわからない。しかし、一たんそれが起これば甚大な被害が予想される。しかも、それがどの場所で起こるかも特定できないというようなことになりますと、これは一般の地方自治体が持っておられます行政事務とは、相当に異質の対応を求められるものだというふうに言わざるを得ないという気がしてならないわけであります。
 そこで、お尋ねさせていただきたいのでございますが、いろいろなお取り組みをこれまでやってこられる中で、このような特殊な対応を求められるような地方行政において、どういうような限界を認識してこられたのか。
 さらに、国に対して、こういう部分だけはやはりもっと国の方で配慮すべきだというような点について思いを持たれるものがございましたら、おっしゃっていただきたいと思うわけでございます。
石川参考人 災害、特に地震の場合には万全の備えと臨機の対応が必要だというお話は、全くそのとおりだと存じます。
 そこで、事前に万全を期す場合に、地震対策の場合の困難性は、当該地域が地震の発生のおそれがあるということは、地域にとって非常にマイナス情報であります。そのために、本県が地震対策に取り組み始めたころには、県内外でそのような大変強い批判といいますか指摘がございましたが、結果的に、啓発効果を期待しながらの活動によって、それはなくなったと思います。
 国に対して、特に国の力をかりなければならないと思うことはたくさんございます。一つは、先ほども申し上げました、地震予知について不可知論がありますけれども、地域によっては、歴史的なデータをもとに考えていくと、予知の可能性がありそうな地域はたくさんあるわけでございまして、そういう地域を重点に地震の予知、観測、研究体制を充実するということ。最近は、衛星からのいろいろなデータも加わりまして、従来の歴史資料とか地上観測だけでは得られないような大変有益な情報も獲得できるようになってまいっておりますので、この点に期待をしております。
 それから、災害に対して強い地域と、それから減災のための事前の備え、これは極端に言えば、財源が幾らあっても足りないというぐらいに思われるわけでございまして、その点について焦点を合わせた国の強力な取り組みが必要だと。現状では、阪神・淡路大震災以降の、特に議員立法によってできました、日本列島全体、日本全国を対象にした地震防災対策特別措置法がございますので、制度としては立派にでき上がっておりますが、あとは必要な財源、予算をどのようにちゃんと確保するか、これに尽きてくるのではないかと存じます。
小野委員 やはり最終的には財源、予算の問題であるというふうなところの御指摘をいただいたところで、今度は片山参考人の方にお尋ねをさせていただきたいんですけれども、先ほどの陳述の中におかれまして、基金を積み立てられて、地震が起こった場合にはその基金から対応していきたい、それを、できたら全国に広げることを提案したいというような御主張、大変感ずるものが私にもございました。
 そこで、片山参考人がもともと自治省におられたという御経歴もございますので、お尋ねさせていただきたいと思いますのは、こういう保険というものを、むしろ税の中から拠出することを通して、一人一人の国民が災害に備えていくのだというような考え方を取り入れていくということはできないものだろうか。
 例えば今後、税制の大きな改革が予定されておりまして、いろいろな議論が始まってきつつあるわけでありますが、当然その中には消費税の問題も繰り入れられてくることになってくるのではなかろうかと我々も想像いたしておりますが、国民一人一人が日常納める税の中から、その一部を拠出し合って、全国一体の形で基金をつくり上げる。そして、それが地震のような災害、さらに、きょうは三宅島からも随分お見えになっておられますが、こういうふうな火山災害が起こったような場合の対応にもそこからお金が使える、こういう形で対応していくことが、日本国民全体で災害に備える国土づくりを進めていくといいますか、災害対応のできる国をつくっていくというような趣旨に非常に合致するものなのではないだろうか、こんな印象を持ちながら今お話を聞かせていただいたわけでございますが、御所見はいかがでございましょうか。
片山参考人 鳥取県で行いました住宅再建支援制度、特に基金を設けたわけでありますが、これは、いわゆる家屋所有者、住宅所有者の保険とは違うんです。これはあくまでも地方団体が地域を守るために、手段として住宅再建に支援をする、要するに、もといた場所に建てかえて住み続けようという人を後押ししようという仕組み、その財源を地方団体を単位としてあらかじめ拠出しておきましょう。ですから、言うなれば地方団体の保険と言ってもいいかもしれません。各個人個人の保険ではないわけであります。
 したがって、住宅を持っていても、地震で壊れてもう再建をしない人には何ら補てんはないわけでありますし、それから、私どもの立場でいえば、鳥取県で被災をして東京で家を再建する人にも何にも補てんはないわけであります。我々がやりましたのは、あくまでも地方団体が財政支出をするときのために備えて、一種の地方団体間の保険をつくっておきましょうということであります。
 それを前提にいたしまして、今、先生がおっしゃいました、全国的に住宅所有者の、税という制度で一種の保険制度を設けたらどうかということでありますが、これは一つの案としてはあり得ると思います。しかし、実際に、私もかつて霞が関で固定資産税の仕事に携わっていたことがありますけれども、全国一律の、いわば強制加入保険のような形で固定資産税を上乗せして、それをどこかで一括管理して、なおかつ全国のすべての住宅について目配りをして、どこで建てかえが行われた、どこで所有権が移転したというところまで全部追跡をしながら管理をする制度というのは、正直言いまして、私は今の役所の能力では無理だと思います。やはりそれは、そんな全国一律の強制加入ということではなくて、任意の民間の保険でカバーする。したがって、保険に加入しない人についてはそういう滅失補てん制度は適用されませんけれども、そこにゆだねるべきであって、役所が、ちょっと大それた、全国一律の強制加入の保険を設けるというのは、私は、アイデアとしてはあるんだと思いますが、実際に我が国の能力としては無理だという印象を持っております。
小野委員 片山参考人に、加えて御質問させていただきたいと思うんですが、今の御答弁の中で、全国的にそういう体制をつくってみても困難ではないかという御指摘なんでございますが、徴税はもう既にやっているわけでありますから、その資金を集めるということについては税の制度の一部を活用すればそんな困難なく行えることだろうと思うんですね。
 それで、その後、住宅再建の問題ということだけにこれを持ってくるのではなくて、その他事後対策として必要ないろいろなものに対応できるような制度にして、ただ、リーダーシップはやはり地方自治体自身が何らかの条例等を制定してその資金を受け入れる。それについてはこれこれこれだけのことを対応いたしますというようなことを宣言した場合に、その基金からお金が拠出できるというふうなことにして、地方自治体自身のその地域住民に対する姿勢を明らかにするというふうな形で拠出の方を考えていくならば、決して不可能ではないというような印象を私は持っているのでございますが、いかがでございましょうか。
片山参考人 今、すべての住宅から固定資産税を取っておりますので、その固定資産税に何がしかの上乗せをして集めて、それを住宅再建支援だけではなくていろいろな災害対策に使うということはアイデアとしては可能だと思います。ただ、それを、例えば全国規模でやった場合に、では、どういう状態のときにその資金を活用するのか、投入するのかということになりますと、使う方になりますと、非常にルーズになるんだろうと私は思います。
 例えば、北海道の方で何かあったときに、そこでどんどんどんどん使われてしまうと。そうすると、鳥取県の方も、何かあったときにちょっとしたことでも使わないと損だということになって、余り単位が大きくなると、やはり支出の方がルーズになってしまいかねない。ですから、もし先生のおっしゃるようなことをやるのであれば、例えば市町村単位だったらできると思います。市町村単位で、ある市が税金として固定資産税に上乗せをして徴収しておいて、何かあったときにはその市で決めた基準で支出をしていくということは可能だと思います。これはたやすいと思います。
 あとは、もう一つ、大きい単位の県単位ぐらいでみんなで共同して今の保険制度をやりましょうと、これもできると思います。しかし、そこから離れてもうちょっと全国的なような状態になったときには、恐らくそれは余りうまく機能しないのではないか、今の役所のあり方からすると、きっと破綻するだろうと私は思います。
小野委員 今の御意見は従前からの参考人の御意見だと思っております。ですから、やはりその地方自治体自身の責任と分担というところを明確にして対応する必要があるということはおっしゃられるとおりでございます。
 ただ、地震が起こってその当該市が甚大な被害を受けた、とてもこれは一自治体では対応できないというようなケースが起こり得るわけでございますから、こういうことへの対応としての御提案でございますし、固定資産税での対応というのは私はできるなら消費税の中での対応の方が好ましいのかなというような印象がございますので、触れておきたいと思います。
 それで、この議論にまた関連するわけでありますが、昨年、芸予地震も起こりまして、災害対策特別委員会では呉市の方に視察に行ってまいりました。そのときに、呉の市民の皆さん方が訴えておられましたのは、あそこは第二次世界大戦前ぐらいに急速に大きくなった町でございましたから、とにかく山の斜面にどんどん家をつくっているわけですね。ですから、垂直に切り立った石垣をつくってそこに家を次々建てていく。そうすると、上の石垣が崩れれば下の家の方に被害が及ぶけれども、石垣の所有者は上の家の人間である。しかも、その家の人たちが高齢化したり、既にもういなくなってその石垣を修繕する費用が出ないけれども、この不安にどう対応できるんだというような指摘が随分ございました。
 その議論をお伺いしていながら、私は、こういう問題というのは、今、片山参考人が言われたとおり、全国一律で制度をつくれといってもなかなか難しい問題だと思うんですね。それぞれの地域にそれぞれの事情があり、それぞれの問題があるわけでありますから、それに対応しようと思えば、どうしても地方自治体がリーダーシップをとらねばならないだろう。その地方自治体がリーダーシップをとって事をやろうとしても、しかし、甚大なお金がかかる、ないしは国の制度に担保されなければ、私有財産に対してお金を投入することが後で問題を引き起こしかねないことも起こり得るというふうな状況になるわけでありますから、地方自治体が、先ほど条例というような言い方をいたしましたが、何らかの制度的な担保を持ち、みずからの責任を明確にし、みずからもその負担を明らかにするならば、それに対して国はお金を拠出できる。法律的な制度を持たなくても、制度を持たないというと変な話でありますが、特定の何らかの事業というのでなくて、災害対策という大きな枠組みの中で地方自治体がみずから条例等を制定してやろうとするならば、それに対してお金が出せる、補助制度が設けられる、こういうふうなことに取り組んでみてはどうかということを提案申し上げたのでございますが、こういう考え方について、両参考人、どういう御見解をお持ちでございましょうか。
片山参考人 私は、先生の御提案、大賛成でございます。地方団体で責任を持ってその地域の再建を図る、復興を図るときに、何をすればいいのかということを考えるべきだと思うんです。我々も手痛い打撃を受けまして、今後、もしこういうことがあったときにどうすればいいかということを真剣に考えました。そのためには財源が必要でありますので、まず、みずからがその財源を確保しようということで、先ほど簡単に御説明いたしましたが、鳥取県被災者住宅再建支援基金制度を設けたわけであります。地方のそういう取り組みをぜひ国が応援していただきたいと思うんです。
 私は、全国一律、なべて共通の制度をつくろうというのは、なかなか限界があります。ですから、地方団体の単位を一つのユニットにして、それで全国が例えば四十七のユニットになる、そういうことがいいのではないかと思っております。
 資料の「鳥取県の災害対策住宅施策の概要」というのを見ていただきたいと思うんですが、その三ページの上から二つ目に「三 基金の設置」というのがあると思います。基金は、これは鳥取県と市町村が共同で県に設置したわけでありますが、こういうものを各県で設置されたらいいのだろうと私は思うんです。四を見ていただくと、基金の概要は拠出目標金額五十億円で、二十五年、これは先ほど説明いたしました。そうしますと五十億円。米印で「国からの拠出金五十億円を別途期待」と書いておりますけれども、要は、先生がおっしゃったことを私どもは期待しているわけであります。
 我々は我々なりに先行して努力をしておりますので、ぜひこういうものを国の方が後押しをしていただきたい、そういうことを期待しております。
石川参考人 小野先生のおっしゃいますような従来の相隣関係だけでは片がつかないような問題は多々ございます。したがって、仮にある地域にそういう事情が偏在しているといっても、全国で見ると、かなりの地域にそういう状態があるわけでございますので、これは国の制度としてきちんと、私有権の制限が必要な場合もありましょうし、それに対する対策のための財源も必要になってまいりますから、国としてきちんと制度化していただきたいと私は思います。
 それから、ついでながらで恐縮ですが、住宅再建の問題につきましても、鳥取県の場合は鳥取県の事情がありましょうし、それから、東海地震とか南関東地域、あるいはさらに東南海地域までの大規模地震を考えました場合に、果たしてそれがそれぞれの狭い範囲の自治体の権限と責任の中で対処し切れるかどうか、これは大変大きな限界があると思います。やはり、一定規模以上のものは国が何らかの制度を用意して、国民に安心感を与える、これも大事だと思います。制度の中身は国の聡知を結集して、ぜひ早急に確立していただきたいと存じます。
小野委員 もう最後の質問になろうかと思いますけれども、石川参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。
 先ほど来の御説明、そして今の御答弁の中にもございましたけれども、分担の問題でございますね。よく自助、共助、公助と言われますが、その公助の中にも、地方自治体の市町村としての公助もあれば県単位の公助もある、国の公助もあるというような形で、いろいろなものが複合的にかかわり合いながら、この災害対策というのはやっていかねばならない問題なんだろうと思うわけでありますが、そのそれぞれの役割、責任そして義務といったらよろしいのでしょうか、こういうものについてどういう基準で自助、共助、公助というものを分けて整理されて取り組んでおられるのか、この点について一言御答弁をお願い申し上げます。
石川参考人 明確にお示しできるような普遍的な基準というのは、なかなか申し上げるような状態でございませんが、あくまで原則は、自助を基本にしながら、しかし、災害の程度が大きくなればなるほど自助の能力、限界を超えるような災害が発生するわけでございます。したがって、その範囲を超えるものについては、共助、公助、これを両方取りまぜてやっていかなければいけない。
 特に最近、地域におきましては、核家族化とか地域の連帯感の希薄化によって共助のあり方が随分変化をしてまいっておりまして、放置をしておきますと、これはほとんど共助が地域で実現を見ないというおそれもあります。そこで、どうしたらいいかということになりますが、最近の注目点は、やはりボランティアの力をいかに活用するか、それを中心にしながら共助の体制を組み立てる、これが重要ではないかと思います。
 この共助をうまく実現する場合にも、例えば、昨今でも既に制度化をされつつありますが、ボランティア休暇制度とか、あるいはそれを実現する場合の雇用主の負担軽減、いろいろそういう面で、国も何らかの応援をするようなものもあるんじゃないかと思います。
 そういう意味では、自助、公助、共助、これはすべて、どこまでがどこの範囲というふうに割り切れないですね。お互い、相互連鎖の中で、それぞれ具体の事案に即して考えるべきことではないかと存じます。
小野委員 どうもありがとうございました。
田並委員長 津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 本日は、片山、石川両参考人におかれましては、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
 私、静岡県民でございまして、石川知事の治められております静岡県で、まさに東海地震、来るべき、来るべきというか、予想される東海地震に対して大変強い関心を持っている住民の一人でもございます。
 まずお伺いいたしますが、鳥取県の西部地震におきまして、発生後、住宅の再建支援策というものを知事が先頭になってとられた、これはまさに大正解でございまして、僣越ながら、心から英断をたたえたいと思います。コミュニティーを守るということがまさに大変重要なことであったかというふうに思います。
 実は私も、これまで、党の方でも災害対策を随分勉強させていただきまして、鳥取県における取り組みも見ておりました。若干誤解をしておりまして、まさに滅失財産の補償という観点からこういうことをされたのかなというふうに思っておりまして、今回の委員会の中での資料ということで数日前にいただき読ませていただきまして、私も誤解をしていたなと思いました。この地域の再建、地域のコミュニティーを守るということが主眼でございまして、そのための支出であったというふうに伺いまして、大変、目からうろこの落ちる思いでございます。きょうの資料にも多分ついているかと思いますが、かつて専門誌の方で知事が書かれていた記事で、現場に出てそのことを実感されたというお話がございまして、私も全くそのとおりだろうなという思いがいたしました。
 ただ、鳥取県と静岡県の、きょうお見えの静岡県知事様の立場の若干違うところは、地震が実際起こった事後の対応というものと、これから予想される準備の段階の対応というものは当然違うわけでございまして、しかも、鳥取県西部地震は、幸いなことに人的被害がなかった、亡くなられた方はなかった。静岡県の想定東海地震においては、残念ながら、相当数の人的被害も想定をされているわけでございまして、若干違う部分もあろうかなというふうに思います。
 まず、その記事の中に、片山知事のお話の中で、きょうもお話がありましたが、国の対応というものに対して非常に批判的な発言もあったかと思います。現場でこれだけ必要なことがあると訴えても、なかなか霞が関では認めてもらえなかったというようなお話がありましたが、現場サイドの気持ち、あるいはアイデアというものがなぜ国の政策として実行できないのか。
 実は、私ども災害対策委員会、これは与野党問わず、まさに、大きな災害があったときには個人補償もするべきであるという意見で、政府に対して訴えているわけでありますが、これがなかなか通らないというのが現状でございます。まさにこういったことは、もう地方分権で、地方の首長の皆様方がリーダーシップをとられて先行されていくということが、国の政策を大きく転換していく上でも大変大きなポイントであろうかと思います。
 そこで、なぜ国ではそういった現場感覚が乏しいのかということについて、両知事にできれば一言、御感想といいましょうかお気持ちを披露していただければと思います。お願いいたします。
片山参考人 先ほどもちょっと申しましたけれども、被災住宅再建支援に乗り出そうとしたときに、霞が関は大変冷とうございました。私は、現場に立って、今現場で何が求められているか、この地域の本当の復興を目指すためには何をしなければいけないのかというのは、現場に立てばおよそわかるのであります。これは、私だけではなくて、私も含めた県庁の幹部が現場に出向いたわけでありますけれども、そのときのほとんどすべての者の印象であります。これは知事さん、やらなきゃいけませんねとみんな言ってくれました。ところが、霞が関に行きますと、現場から離れているものですから、現場の感覚がないわけであります。霞が関では何が一番重要かというと、それは制度であったり、予算当局との折衝であったりするわけでありまして、その辺が現場との間には大きなずれを生じさせる原因ではないかと私は思います。
 ですから、中央官庁の皆さん方も、災害なんかは特にそうでありますけれども、一たん何かあったときには、しかるべき人が直ちに現場に行っていただきたい。そういたしますと、現場で今何が求められているのか、現行の我が国の制度が現場とフィットするのかしないのか、ずれがないのか、そういうことを直感されると思います。
 さらに敷衍して言いますと、私は十月の十七日にこの住宅再建支援制度を発表したのでありますけれども、まあ、仁義ということでもありませんが、十月の十六日に上京いたしまして、中央官庁にあいさつかたがた、その事前報告に行きました。その際に、官僚の皆さん方は非常に冷たくて、憲法違反だ、根拠もないような憲法違反だという言葉がありまして、憲法第何条ですかと私は何人もの人に聞きました。実際、そんなことを禁じた憲法はないわけでありまして、そういうことでありましたが、一人、当時の自治大臣の西田先生は、私の言うことをじっくり聞いていただきまして、それは制度的にはできないことになっているんでしょうけれども、あなたの言うことはよくわかりますと言って、小さい声で、まあおやりなさいということを言っていただきまして、私は本当に、それは、そのときにほっといたしましたし、心の支えでありました。
 それから、もう一つ申し上げますと、その後、十月の二十日に、当時の自治省の幹部、財政の幹部の人に来ていただきまして、私みずから被災地を一緒になって案内したのでありますが、実際にその政府高官に現地を見ていただいて、そして、被災者の皆さんと話し合っていただきました。そうしますと、かなり見解が変わってまいりました。それまで本当に冷たかった、その冷え冷えとした態度が、余り非難がましいことを言われなくなって、だんだんそのうち、まあ、いいことをされましたねというような対応に変わってまいりました。
 やはり、私は、現場が重要だと思うのであります。制度も重要でありますけれども、制度はあくまで手段でありますから、やはり、現場に合わないときには制度も改変する、そういう柔軟な思考が霞が関には必要ではないかと思います。
石川参考人 現場を見て感ずることが大事だということは、もうおっしゃるとおりだと思います。
 特に、最近の災害を見ますと、現在の災害法制の中では予想をしていなかったような種類、形態の災害に見舞われております。三宅島の全島長期避難、いつ復帰できるかわからないというようなああいう現象も、過去、日本ではちょっとなかったわけでございますし、また、被災十一年をもう既に経過した雲仙・普賢岳の被害の場合もそうでございました。そういうように、災害の状況が、従来になかったようなものが次々出てきているということ、加えて、現在の災害法のいろいろな対策で、暗黙の前提になっておりました日本人の平常時の、日常の暮らし方、これがもうまるっきり違ってきておるわけでございます。
 例えば避難地。災害があって被災した方を避難させる場合に、体育館のような大空間に雑魚寝状態で長期間に収容するというのは、今日の生活感覚から合わないわけでありますね。従来の大水害を前提にしたような被害の場合は、やがて水が引けば、そう長期間たたないうちに必ず家に戻れる、そういう前提に立っておるんじゃないかと。ところが、昨今のいろいろ問題が起こっている災害は、そうではないわけであります。
 そういうことからしても、現場を見て何が不十分かということを十分に感じ取っていただく必要があると私も存じます。
津川委員 ありがとうございます。
 まさに現場に近い両参考人の言葉、大変重い言葉として受けとめさせていただきたいと思います。
 ただ、今回の話の中にもございますが、事前の予測の中での制度設計と言うには、ある程度限界があるということであろうかとも思います。つまり、ある程度想定をしてその準備をした、しかし、実際起こったものはそれでは対応できない場合には、もう迅速にそれを現場に合わせて変えていかなければならない、そういった対応が必要になってくるかと思います。
 実は、鳥取県が今回とられた基金の話でありますが、二十五年で五十億円という話でございます。これをぜひ全国で、あるいは国からの拠出金五十億も期待をするという話でありますが、こういったことにつきまして、実は、私も多くの方とお話をしまして、先ほど小野委員からのお話もありましたが、私も、国が全国レベルでやった方が安全性は非常に高まるんじゃないかなという漠然とした思いがあったんですが、国がやると、どこに使われるかわからないじゃないかという、国に対するそもそもの不信感みたいなものがございまして、なるほどなという思いもしました。
 これは、行政の方でも議員の方でもない方でありますが、その方の御意見としては、何かあったときに、全国に対して、国民一人一人、県民一人一人に拠出をしてほしいと言えば、多くの人間は出すだろう。ただ、何もない段階で、念のため集めますから出してくださいと言うと、どうもなかなか出しにくいのが心情としてありますという話がございまして、それも確かにある程度当たっているのかなと思います。
 この二十五年で五十億という金額も、十分かどうかはよくわかりません。逆に言うと、二十五年間何もないかもしれない、こういう大きな災害は、百年、二百年、三百年ないかもしれない。そういったことから考えますと、ベースの部分はもちろんある程度基金として蓄える必要があるでしょうし、それは、何らかの段階で不足した場合には、他府県と融通をするというようなシステムの方が必要なのかな。これで必要十分というだけあらかじめ基金として積んでおくということは、まさに制度設計上はあり得るのかもしれませんが、何が起こるか、想定ができない。あるいは、石川参考人からもお話があったとおり、避難場所をこういうふうに確保するとしていたけれども、時の要請によって、実はそういう避難所ではだめだというような状況もあり得るわけであります。
 そういったことから考えると、この五十億というやり方も事前の制度設計としてはあり得るかもしれませんが、これを本当にすべての都道府県で同じようにやるというよりも、場合によってはもう少し少なくても、それぞれの地域がやって、何かあったときにはそれを融通し合う、そういう形の方がいいのかなと。国がかかわる部分というのは、ある意味でもっと少なくてもいいのかなというのが正直な感想でございます。
 国からの五十億というものが、鳥取県においてどういった反応になるのか。この二十五年という数字あるいは五十億という数字、どういった根拠で出されたのか。片山参考人、ちょっとお示しいただけますでしょうか。
片山参考人 最初に、五十億の根拠でありますが、これは、一昨年の鳥取県の西部大地震のときの住宅再建支援に要した額を勘案いたしまして、五十億円ではもちろん足りませんけれども、かなりの部分、基礎部分がこの五十億円で賄えるだろうということが一つと、それから、万が一、国の方が心を入れかえていただいて、我々のこういう試みを応援してあげようということになりますと、同額の五十億円が期待できるわけであります、かすかに。そうしますと、百億円ありますと、まずまずのことができるということであります。したがって、五十億円。
 決してこれで十分だとは思っておりません。しかし、例えば、必要額の半分でもそのときにこの基金から賄えれば、あとの半分をそのときの財源で賄うというのは、そんなに困難ではないんだろうと思っております。ですから、必要かつ十分かといえば決してそんなことはありませんけれども、まずまずこれぐらいあれば乗り切れるんではないかと思います。
 それから、どういう単位でこういう制度を広げていったらいいかということでありますが、当面は鳥取県しか、とりあえず手痛い打撃を受けた鳥取県だけで始めるわけでありまして、他の都道府県ではこういうことをやられませんけれども、私は、できれば県単位でこういう基金ができればいいなと思っております。
 全国できれば一番いいですけれども、できないところがあってもいいですけれども、幾つかこういう基金ができて、それぞれが県単位で管理をする。それを国は包括的に調整をし、支援をする。例えば、先生がおっしゃったように、どこかの県で大きな被害が起きたときに、それをとりあえず融通し合う。貸す、後で返す、そういう関係があってもいいと思いますし、そういう関係を国が包括的に調整をするという役割があってもいいんだろうと思います。
 全国一つの制度を国がつくって国が管理するというのは、私もこれはちょっと無理があるんではないかという気がします。もう一つは、最近の傾向としては、国がそういう組織をつくりますと、必ず天下り先にしてしまって、形骸化してしまうということがあるものですから、国はやめられた方がいいと私は思います。県単位でやったものを、地方団体単位でやったものを国は財政的に応援する、包括的に調整する、そういう役割に徹せられた方がいいだろうと思います。
津川委員 ありがとうございます。
 石川知事にもたくさんお話をしていただきたいんですが、済みません、時間がないんですが、静岡県は本当に相当のことをされていらっしゃると高く評価をしたいと思いますし、これをぜひ国の方にもお示しをいただきたい。きょうは、どうぞ精いっぱいお示しをいただきたいと思います。
 例えば、災害の予知ということでありましても、ホームページで公開をされている。私の住んでいる藤枝市青木三丁目はどのくらいかというと、ホームページで出てくるわけでありまして、震度六マイナスで液状化現象は可能性が低くて、津波の可能性はないでしょう、こういったことがホームページで全部出ている。国はこういったことを非常にやりたがらないわけでありまして、本当に静岡県の取り組みは、想定できることをほとんどされているなという思いが非常にございます。
 ただ、そうであるにもかかわらず、やはり問題なのが、住民の意識、まあ、これは高いと判断するのか、低いと判断するのか微妙でありますけれども、昨年の意識調査の中でも、東海地震についてどの程度関心がありましたと、非常に関心があると答えたのが三八%であります。多少関心があるという方も含めれば、八割、九割の方にはなりますが、これをやはりもう少し高めて、関心だけではなくて、本当にそれぞれが具体的に対応をとるというところまでやはり踏み込まなければならないというところであろうかと思います。
 特に、第三次被害想定では死者が五千九百名でございますから、これは予知がない段階での地震ということであろうかと思いますけれども、この数は本当に阪神・淡路大震災に匹敵する数でございまして、これを本当に何とかして減らしていかなければならない。先ほど石川参考人もおっしゃったとおりで、まさに最初の初期対応、自主防災組織。私どもも、実は民主党の青年局の方で、災害ボランティアの養成というのをやっておりまして、この六月の二十二日にも静岡でやらせていただくんですが、本当に最初の初動態勢をとれる方というものを一人でも多く養成しなければならない。
 そこで本当に参考になるのが、私どもがよく講師にお招きをしているのが、神戸でボランティアをされた方、鳥取でもボランティアを実際された方々でありますが、現場で実際に経験された方々に講師として来ていただかないと、なかなかできない。鳥取の地震のときも、自衛隊の方々がわんさかやってきたけれども、実はなかなかうまく機能しなかった、実際には神戸から来たボランティアの経験者の方々が自衛隊の方に指導をしたという話も伺いました。そういった意味で、意識を高めながら、ボランティアをどんどん養成していくというのが本当に喫緊の課題であろうかと思います。
 その中で、一つ、関心を持っていただくのに、もしここで地震が何の準備もなく起こってしまった場合には、鳥取県のようにとにかく三百万というやり方もあると思いますが、静岡県の場合は、幸か不幸か予期されているわけであります。例えば、今耐震診断を受けた方に関しては地震を受けて壊れたときには幾ら出しますよ、こういう言い方をすればもう少し真剣に、もう一歩真剣になっていただけるのかなというふうに思いますので、御意見をいただきたいと思います。
 もう一つ、時間がなくなりましたので最後になりますが、浜岡原子力発電所の件でございます。昨年、事故がございました。つい先日、安全だということで運転を再開した直後に、未明、二時でしょうか、午前二時に水漏れが発生してまたとまってしまったという話があります。中部電力の説明では安全だという話でありましたが、安全宣言が出たにもかかわらず、こういった事故があった。
 中部電力は、東海地震においても大丈夫だという話をされております。我々も、会社の方から相当いろいろと説明をいただく中では、なるほど確かに地震災害と原子力災害というものが同時に起こるという可能性はそう高くはないのかな、低い方なのかなという思いがあったのですが、今回の事故、つまり二回目のつい先日の事故を見ると、会社もそうでありますが、国の原子力安全委員会あるいは安全・保安院、何をチェックしたんだ、非常に怒りを覚えたわけであります。
 県として、きょう現在でホームページを見る限りでは、地震と原子力発電所ということについては特に問題なしという判断をされているのかもしれませんが、今回の二回目の事故、この五月の二十五日の事故を受けて、何か県として今後対応されることがあればお伺いをしたいと思いますし、また、国の方に何か御意見があれば、この場で御披露いただければというふうに思います。お願いします。
石川参考人 住宅再建支援については、例えば耐震補強をした方に限るというような前提条件をつけて実施した方が効果があるのではないか、そういうお話でございましたが、それも確かに一つのお考えだと思います。最近そのような見解を述べられた研究者もおりまして、私も大変注目をしておるところでございます。
 ただし、仮にそういうことでありましても、実際に被害が発生したときに、そういう一種の前提条件があったからといって、その人たちだけを対象に本当に踏み切れるかどうか、これはもう少しよく検証する必要があると思います。
 特に本県の場合、鳥取県並みの住宅再建支援をした場合に、当然その地域で再建をするということは我々も想定しておるわけであります。そういうことを考えた場合でも約一兆円ぐらいの財源が必要になりますので、そういうことも視野に入れながら、どうしたらそういう事態に至らないような減災、ミティゲーションが実現できるか、今後さらに研究していきたいと思っております。
 それから、原発の問題でありますが、つい先ごろの運転再開時に発生しましたトラブルについては、私も大変遺憾なことだと感じ、中部電力それから原子力安全・保安院に対しても、次のような点を中心に申し入れをしております。
 それは、一つは、定期点検のやり方について、これまでのやり方では不十分だったということが二度にわたるトラブルで明らかになっているわけでありますので、その内容を精査した上で改善をしてもらうということ。その意味は、点検の項目とやり方ですね、この両方についてお願いをしております。
 それから、今回のトラブルについては、特に再度徹底して原因追求して、必要な、部品の取りかえを含めて、一定の年数以内であって点検時に何とか問題がなければそのまま使用していいということになっておるようでありますけれども、一定の年数以上来たものは、仮に点検時にオーケーだとなっても取りかえるぐらいのことをしてもらいたいという趣旨の申し入れをしております。
 そのことを両方とも、電力側、事業者側も国の機関も真剣に受けとめていただいていると今のところ承知をしておりますので、何らかの改善が図られるものと確信をいたします。
 それから、原発と耐震性の問題でありますけれども、これは、どのような耐震基準であるかということ、それから、その耐震基準に従ってどのような具体的な状態のもとに原子力発電所が建設されているか、これは公開ヒアリング、さらにその後の耐震診断のやり直し、基準の見直しに伴って再点検をいたしましたが、それらについてはすべて明らかになっております。
 これもさらに、もっとわかりやすく、一般の方にも見ていただけるような情報提供とか公開も必要だと思いますので、その徹底も今後一層図っていきたいと思います。
津川委員 終わります。ありがとうございました。
田並委員長 遠藤和良君。
遠藤(和)委員 きょうは、片山知事そして石川知事、本当にお忙しい中、ありがとうございます。
 住宅の再建の支援ということに焦点を絞りましてお聞きしたいのですけれども、片山さんのペーパーに、「住宅再建支援と財政上のルールとの葛藤」という表現があったわけですが、これは上手に表現されているなと私は思いました。
 個人の住宅は、確かに私有財産ですけれども、私有財産だからといって、これは私は、地域から見ると、完全な私有財であって公共財ではないとは断定できないのじゃないかと思うのですね。地域の町づくりを形成しているし、住宅がなければ人が住めないわけですから、幾ら道路の整備とか河川の整備が進んでも、無人の町になってしまったのでは意味がないわけですね。そういう意味からいうと、私有財産だから公がそれを支援するのは誤りだという考え方は、ちょっと古い考え方ではないのかと思うのです。
 現に、災害が起こったときに、私有財産である田畑等については復旧工事に対して財政支援をしていますし、あるいは災害支援でなくても、通常の圃場整備事業にだって、私有財産である田畑に対して公の方から支援をしていますね。ですから、私有財産だからという整理ではなくて、私有財産の中にも公共的な役割を果たしている側面がある、この側面に着目をして制度をつくっていくということはあってしかるべきだと思うのです。
 それで、私は、片山さんが災害が起こったわずか十一日後に、こうした葛藤を抜けて、滅失財産の補てんではなくて、地域を守る手段としての住宅支援制度をおつくりになった、これは確かにすぐれた、勇気のある決断だと思うのですね。それに対して、さらに、県や市町村のために財源確保策として基金制度をおつくりになった。これも、地域の知事さんとしてみずからの地域を今後とも守っていこうという決意の表明だと思うのですね。私は、大変いいことをしていただいたと思います。
 これに対して国がどう考えるかという話があると思うんですね。国が、地域のおつくりになった制度に対して助成する制度としては、一つは、制度をつくって補助金を交付する、こういうのがあります。制度をつくらなくても、交付税という仕組みも活用できるのではないかと思うんですね。ある意味では、そうしたものを基準財政需要額の中に算定をするというありようがありますね。そういう制度もあるんですけれども、これは、国の支援策としては、きちっとした明確な制度をつくって補助金制度にした方がいいという考えなのか、あるいは、交付税の中で基準財政需要額の中に算定する制度をつくられた方がいい、こういう考え方なんでしょうか。ちょっと、少し突っ込んだ話になりますけれども、お考えを最初にお聞きしたいと思います。
片山参考人 前段の部分、先生がおっしゃったことは、私、本当に全く同感であります。それを前提にいたしまして、国が我々のつくったような基金について支援をしていただく、その際にどういうやり方があるのかということであります。私は、いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、鳥取県のように手痛い打撃を受けて次に備えようという県、地域もあるでしょうし、そういうことは余り関心のない県、地域もあるでしょう。もし万が一そういう事態になったら、そのときに財源調達をすればいいと考えておられるところもあるでしょうし、それから、住宅再建支援なんかはすべきでないと思っておられる方もあると思います。
 いろいろ、まちまちでありますから、こういうときに国の方が財政支援をするというのは、私は、交付税の基準財政需要額のいわば、専門的になりますが、単位費用の中に入れて、一般的に地域を守る経費として織り込んでいただいて、その中で地方の政策選択の結果として基金をつくるところもあれば、そうでないところもある、こういうことがいいのではないかと思います。
 それから、前段の部分に関連いたしますけれども、確かに個人の住宅というのはプライベートな財産でありまして、決して、厳密に分類すれば公共財ではないと思いますが、しかし、そのプライベートな財産が集まって地域を形成するということになりますと、それはある意味では公共財に私はなるんだろうと思って、住宅を再建し、修繕をして住み続けるということに着目して支援をすることにしたわけであります。
 そういう点については、政府、国も、公共的性格をこれからお認めになった方がいいのではないか、個人の財産だから、プライベートだから税金をつぎ込むことはできないという、ああいうしゃくし定規な考え方というのはやはり変えられた方がいいんだろうと私は思います。
 仮設住宅というのに対して、手厚いわけであります。一戸当たり三百万から、撤去費も入れると四百万ぐらいの支援になるわけであります。仮設住宅は壊すんです。壊すためにつくるものについては非常に手厚い制度があるんですが、個人がつくって後生大事に守っていこう、そういう恒久的資産については、個人のものだからといって全く冷たいというのは、何か私はちぐはぐなものを感じるのであります。そろそろ政府も、住宅の持っている公共的性格について着目をしていただければと思っております。
遠藤(和)委員 私有財産ですから、もちろん私有財としての役割の方が大きいんですけれども、そこの部分は自己責任で、やはり地震保険にみずから入るということだろうと思うんですね。ただ、入りやすい地震保険制度にしなければいけない側面はあると思うんですね。保険料を安くするために、例えば、再保険制度のところを若干国が支援をするという知恵はあるかもわかりませんね。そういうものを、まずみずからの意思として、自己責任の世界で、私有財産を守るために民間の保険制度を活用していく。
 公のやり方としては、やはり住宅の持っている公共財としての役割に着目をして、滅失した財産の補てんではなくて、地域の保全といいますか、そういう町づくり、地域の保全という意味での役割を果たしていく、こういうのが正しい選択の仕方ではないかと思うんですね。
 それで、一つは、過去に阪神・淡路大震災の後、住宅の再建の問題が大きな問題になりまして、いわゆる強制加入保険ですか、固定資産税に上乗せをして、自動車の自賠責保険みたいなものでしょうね、そうしたものに強制的に住宅を持っている人は全部入ってもらって、それに対して国が支援をして、これは滅失財産を補てんする保険制度ですね、これをつくったらいいというような話があって、かなり動き出したんですけれども、これは大変な事務量でございますし、市町村の事務の力量を超えるのではないかという問題点、それからもう一つは、事務経費が相当にかかって非効率な保険制度になるのではないかというふうな話があって、これはちょっと挫折をしている。
 そうすると、次に考えられるのは、例えば、何か災害が起こったときに、国と地域がどういう役割を果たしていくのかという、その制度設計ですね。それをする。そして、基金というものはつくらない。基金にはやはり事務経費を伴いますから、その都度決済をしていく。法律をつくるにしても、こういうふうな法律ですね、その方が軽便でいいのではないか。
 実際に起こったときにどうしようか、どうしようかと考えるんじゃしようがないわけですから、まさにこれこそ備えあれば憂いなしで、そういう住宅の支援に対して国はどういう役割を果たすか、あるいは地方団体はどういう役割を果たしていただくか、そういうことを明確に決めて、その場合の制度設計をしておく、こういう考え方があるんですけれども、この考え方についてどんな御意見をお持ちでしょうか。
片山参考人 私は、基本的に賛成であります。私たちは、鳥取県で地震で被害を受けて、地域を復興させよう、それは県の仕事でもあり、かつ地域を守るのは市町村の仕事でもあるということで、県と市町村が協力してやったわけでありますが、考えてみれば、地域を守るというのは国の責任でもあると思うのであります。よって、国は多額の資金を投入して中山間地対策をやったり、それから過疎対策をやったりしているわけであります。そうやって過疎地や中山間地を維持しておきながら、地震があったときには手をこまねいて住民が去っていくのを見ているだけというのでは無策であると思いますから、地域を守るという、そのために県、市町村と一緒に国も加わって関与をするということは必要だろうと思います。
 その際に、どういうやり方があるのか。基金をつくってあらかじめためておくというやり方もあるでありましょうし、それから、そのときそのときで単発で始末をするというやり方もあるでありましょう。それは決め方だろうと思います。それは選択の問題だろうと思います。
 いずれにしても、国も、地域を守るという我々の努力に参画をしていただきたいということをお願い申し上げておきます。
遠藤(和)委員 非常に明確なお話で、示唆に富んだ話だと思いますね。本当にありがとうございます。
 東海地震の方も聞きたいんですけれども、最後のところで石川さんがおっしゃっていたのは、地域ごとに自主防災体制をおつくりになるという話をされていたんですけれども、日本の国の本当の意味の自主防災体制のはしりというのは、消防団という組織があったわけです。今もあるんですけれども、だんだんと人数が減ってきているんですね。消防団の人たちが本当にその地域で、江戸時代の火消し以来、ボランティアのはしりのような仕事をしていただいておりまして、いざ何かあったときには一番頼りになる存在だと思うんですね。
 ですから、東海地震におきましても、いろいろなボランティア組織をおつくりになっているんでしょうけれども、その核になると言ったらあれなんですけれども、やはり全体の指揮ができるような人材の育成、こういうことが非常に大事じゃないかと思うんですが、そういう仕組みの中で特に消防団の拡充強化というんでしょうかね、もう地域によっては御婦人の消防団をつくるとか、そういう形でないと、なかなか対応できないところもあるようですけれども、消防団のことをボランティアの中でどのように位置づけていらっしゃるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
石川参考人 消防団の役割は大変大きいわけでございますが、遠藤先生のお話にもありましたように、最近の社会経済事情によりまして、特に日中の間に消防団が活動できるような体制がほとんど不可能になってきております。それは、自営もしくは近隣で仕事に従事するという人がいなくなりまして、サラリーマンが多くなり比較的遠いところへ通勤するという体系の中で、消防団が日中はほとんど機能しがたい状態になっております。
 そこで、静岡県の場合は、お話の中にもございましたが、女性消防隊の結成を奨励しておりまして、現在各地で次々出てまいっておりますが、この女性消防隊も、今後はわかりませんが、現状では、いざ本当に大きな災害が発生したときにどこまで機能できるか。そこに全面的に依存できるような状態ではございませんので、今後は、消防団の活性化をいろいろな知恵を発揮しながらやりますけれども、消防団以外のボランティアの力をいかに活用するか、これに焦点を合わせて本県では取り組んでおります。
 その際に、いろいろな災害の実態を我々なりに分析をし得ました教訓は、ボランティアの方々の活動がうまく展開するためにはコーディネーターが必要だということで、本県ではこれまでにボランティアのコーディネーター養成事業に取り組みまして、既に七百人余のコーディネーター養成を完了し、その方々のネットワークもあわせて現在組み立てております。また、そのコーディネーターの活動をしていただく拠点も整備をしてまいっておりまして、コーディネーターによって国内外から駆けつけてくることが期待されるボランティアの方々の活動をうまく展開をするようにいたしたいと思っております。
 もちろん、ある災害が発生して一定の時間を経過しますと、消防団もその中の有力な担い手になってくると思いますが、今後、いろいろな角度から地域のいろいろな力を結集したい。その意味で、協働によります、地域にあります事業所の中にも自衛消防隊などを組織して近隣の社会福祉施設と協定を結んで、日中においては援助に行くというような協定を結んでいるところも出ておりますので、消防団、ボランティア、それから地域の事業所、それらが一緒になった、協働による、お互いにその地域におる人たち、どういう形態でそこにおるかは別にしまして、いろいろな形態でおる人たちが、いざ災害が起こったときには力を合わせて被災者を救助する、そういう体制を組みたいと思って今取り組み始めたところでございます。
遠藤(和)委員 この東海地震のようないわゆるプレート境界型地震というのは予測が可能ではないのかなということで、南海地震もプレート境界型の地震なんですが、海上の部分ですから観測ができないわけですね。その意味では東海地震は観測ができる地震だ、この位置づけがあるんです。
 この間、防災研究所の専門官のお話を聞きますと、御前崎のあたりですか浜岡の近辺、あそこはだんだんだんだん下降していて、それがまたぴんと返ると地震になるんですね。そういうところが象徴的にあらわれていて、ある意味ではいつ起きてもおかしくないような状態であるという予知をしておりましたけれども、実際にこれ、予知というのは起こってみなきゃわからないのですけれども、地震が起こる一日前とか二日前に予知、警報を出す、避難命令を出すということは可能だと踏んで予知の体制をつくっていらっしゃるんでしょうか。
石川参考人 大規模地震対策特別措置法が二十五年ほど前に制定された当時から、警戒宣言はどういう状態になったら発令するのか、警戒宣言が発令されて何日以内に起こるのかということがいろいろ議論されてまいりました。当時の、これは制度設計上きちんと位置づけられた説ではありませんが、何となく関係者で共通認識に立っておりましたのは、半月程度ということでスタートしたわけです。ところが、昨今のいろいろな観測と研究の進歩によりまして、もう少し短い時間、要するに直前予知ですね、そっちの可能性の方が高いのではないかという説が大分有力といいますか強力に唱えられるようになってきております。
 それで、これは起こってみないことにはわからないわけでありますので、何とも申し上げかねますが、私の方は、当初、大規模地震対策特別措置法がスタートしたころの半月ぐらいの期間というよりも、できるだけ発生直前に近い、日数が短い方が、例えばいろいろな対策を講じた場合の被害、それから住民の、県民の忍耐力といいましょうか我慢の限界、いろいろ考えますと、できるだけ直前に近い予知、しかも、それがいろいろな避難体制を組み得る時期ですね、そういうことを期待しておるところでございます。
遠藤(和)委員 質疑時間が終了いたしました。どうもありがとうございました。
田並委員長 山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。鳥取県の片山知事さん、鳥取大地震の際に、十一日目にして住宅支援を決断なさったということで、私ども、大変感心しておったといいますか、きょうのお話を非常に関心を持って待っておったわけなんですが、先ほどからお話を聞いておりまして、霞が関の反対を押し切ってやられたということで、大変深く感心いたしております。
 その中で、実は災害があって十一日目ですから、その被害の実態というのは余り把握できていなかったと思うんですが、例えば一戸建てかえに三百万要するとした場合に、見込み件数等々もあったでしょうが、実際に、最大限どれくらいまで県が負担しなきゃいけなかったろうか、そういう予測は十分やられたわけですか、考えておられましたか、例えば財政破綻に至るということはないであろうと。その辺はどういうことで決断なさったか、非常に関心のあるところなんです。
片山参考人 災害がありましたのは十月の六日で、発表いたしましたのが十月の十七日、それまでに、実際に決めましたのが、十月の十三日にもうやろうと決めて、それから上京して、一応関係官庁にも事前報告はしたのであります。したがって、実際にこういう仕組みでやろうと決めたのは、十一日後ではなくてほぼ一週間後に決めたわけであります。その段階では被害の詳細はつまびらかになっておりません。ただ、全壊したのが大体何戸ぐらいだとかというのはおよそわかっておりましたけれども、しかし、全貌は明らかでありませんでした。
 したがって、私も、この制度をやろうという決断をしたときには大変不安でありました。大体被災地をずっと見て回っておりましたので、自分の目分量というのと、それからあとはまだ確かではない統計上で、県の負担が百億ぐらいでおさまってくれるんではないかという期待をしておりました。
 しかし、住宅を建てかえるということだけではなくて、修繕についても支援をするということになったものですから、住宅の修繕というのは全く予測がつきませんでした、どれくらいのものがどれだけあるかというのは当時全然わかりませんでしたので。ひょっとすると、我々の予測を超える広がりがあるかもしれない、その場合には二百億ぐらいいくかもしれないというぐらいの覚悟はしておりました。
 その際に、実はそれより半年前に、私、一つのダムを中止しておりまして、我が県は脱ダム宣言なんかは全然していないんですけれども、個別のダムを一件審査いたしましたところ、どうもこれはダムをつくる必要はないという結論に達しましたので、ダムをやめて、治水の目的のためには河川改修をやろうということにしました。そうしますと、ダムに要する経費が二百四十億円、河川改修に要する経費がまあ三十億か四十億、したがって、差し引き二百億円ぐらいがいわばリザーブできていた、そういうことがありまして、そのことが私にとっては、現ナマが別にあるわけじゃありませんが、一つのへそくり的なものがありまして、これぐらいのことをしても、財政上のバランスを失することはないんではないかという安心感があったわけであります。
 ただ、いずれにしましても、これは本当に大変不安でありまして、私は十月の十七日の夕方発表いたしまして、その日の夜ほど、私の人生で疲労感を覚えたことはございませんでした。本当にこの制度をつくってよかったんだろうか、うまくいくんだろうか、財政は大丈夫だろうか、現場で制度がうまくワークするだろうか、補修、修繕の金額の査定なんかは現場でうまくやってくれるだろうか、政府からしっぺ返しはないだろうか、いろいろな不安が頭をよぎりまして、本当にその日は私はくたびれ果てたということを今思い出しております。
山田(正)委員 結果として五十九億ぐらいで終わったんですね、住宅支援の方は。
 国が負担するいわゆる災害復旧工事、道路その他の災害、結構やったと思うんですが、国、県も含めて。そういった、道路とかその他云々にはどれくらい復旧までにかかりましたか。概略で結構です。それは全部国が負担してくれましたか。
片山参考人 住宅再建支援は、お手元の資料によりますと五十九億円と書いておりますが、これは県の費用でありまして、別途、これに連動する市町村の費用がございますので、トータルとしては、住宅再建支援はもっと多額になっております。それが一つ。
 それから、公共施設その他の災害で、私も正確なことを覚えておりませんが、総額で四百億円ぐらいにはなったと思います。それについては各事業ごとにまちまちでありますけれども、道路でありますとか河川でありますとかがけ崩れ、治山治水のようなもの、これらについては災害のときには非常に手厚い制度がございます。本当にありがたいことであります。ですから、そういう、もう既に制度化された災害復旧事業についてはほとんどためらいもなく実行することができるわけでありますが、この住宅再建については何にもありませんので、これについては大変不安を覚えたということであります。
山田(正)委員 実際に実施して、例えば、本当は全壊でもなく、建てかえる必要もなかったのに、三百万欲しいために建てかえたとか、修繕する必要がなかったのに余計に修繕費をもらったとか、現場でのそういったトラブルとかいろいろな問題というのは、そんなに起きることはなかったでしょうか。
片山参考人 私どもも、それは多少心配を事前にはいたしました。しかし、今回の住宅再建支援、すなわち、建てかえの場合には三百万円の支援であります。現実には三百万では家は建たないわけでありまして、やはりそれ相応の自己資金というものをつけ加えなけりゃいけないわけであります。したがって、三百万円もらうために何か不正なことをして建てるということは、まず考えられません。やはり自分で実際に建てる、建てたのを見て三百万交付するわけでありますから、自己財源もつぎ込むということですから、その点については、不正その他はないと思います。
 問題は修繕でありまして、例えば、地震が起きる前にもう既に傷んでいたものを、地震を契機にしてこの際直してしまおうかというようなことはあり得るんだろうと思います。ただ、私どもの地域といいますのは、地域の連帯感が非常に強いところでありまして、過疎、高齢化が進んだところであるからかもしれませんが、役場、役所と住民等の皆さんも大変近しい関係にあるものですから、例えば、不正を働こうとして、本来対象にならないようなものをこの際お金をもらってというようなことは、そういう地域の力によってほとんど防止できただろうと思います。一部、町中なんかで全然なかったかというと、それは自信がありませんけれども、仮にそういうことがあっても、トータルとしてこの仕組みが作動すればいいのではないかとそのときは思いました。
山田(正)委員 確かに、すべてがうまくいったようです。
 そこでなんですけれども、確かに、そういった住宅支援基金制度という、県単位でやっておられる、これは大変立派な制度だと思って、先ほどから感心しておったんです。それに対して、国の考え方なんですが、いわゆる国は、従来、財政の方針として、個人財産に対する天災、災害等においての補償等は一切しないという建前を貫いてまいりました、これまで。ところが、霞が関では、知事さん、憲法違反だとか言われたそうですが、憲法の中には、憲法二十五条に、それこそ、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があるとなっているわけでして、それに対する国の責任も書いてあるわけですから、むしろ、国としては、災害時に本当に最低限度の生活をするための住宅支援と申しますか、そういったものについてのいわゆる公的資金を出すということは、当然、法律上も考えられてしかるべきじゃないかと。
 それで、その出し方なんですが、確かに、国がそういう基金制度をつくるのではなく、自治体にすべて任せてしまう、ただ、国がそれに対する資金的援助をするという立場が一番よろしいわけです、実態として。それは、今私もそう考えたところなんです。
 ところで、住宅支援はそうなんですが、例えば鳥取災害でも、家を壊されたり、あるいは仕事もなくなる、例えば三宅島の災害とか雲仙・普賢岳の場合もそうなんですが、有珠の噴火もそうなんですが、実際に生活支援ですね、食べられなくなった、何とか親戚のうちなり、あるいは公的な、学校とか公民館に住まっておる、仮設住宅に住まっておるといったことができても、生活そのものの支援、これに対しても、例えば鳥取災害の場合は何らかの対策をとられましたでしょうか。その必要もなかったんでしょうか。
片山参考人 これは、基本的には、今全国的な制度で、政府がつくられた被災者再建支援の制度がありまして、一定の要件を満たせば一定の金額が交付されるわけであります。したがって、これを基本に、被災者の支援は鳥取県でも行いました。
 ただ、せっかくの機会でありますから申し上げさせていただきますと、国でつくられた被災者生活再建支援制度というのも、実際に地震の被害を受けて、それを現地で適用しようといたしますと、大きな欠陥があると言わざるを得ません。
 といいますのは、あの制度は、一つの市町村の中で十戸以上全壊があったときに発動されるということになっているわけであります。したがって、ある町は十戸以上全壊になった、しかし隣町では、例えば、極端な話、九戸しか全壊がなかったといいますと、個人個人だと同じような被害を受けるにもかかわらず、たまたま、その属している市町村が境界を挟んで違うだけで、一方では生活支援が受けられて、他方では受けられない、こういう矛盾が出てくるわけであります。
 実際に鳥取県でもそうなりそうだったものですから、私どもは、もしそういう状態になった場合には、国の制度の適用から外れる場合、例えば、九戸以下の場合にも県単独で同じような措置をしようということを実は決めました。決めましたけれども、そのときにも霞が関からは、そんなことをしてはいけない、勝手なことをするなという、非常に親切なアドバイスもありました。
 幸いなことに、最終結果では鳥取県全体で百戸以上の全壊がありまして、したがって、一市町村あたり十戸以上という要件とは別の要件で、大ぐくりに県全体が対象地域になりましたので、結果的にはよかったのでありますけれども、ぜひしかるべき機会に今の被災者生活再建支援制度の見直しを先生方の手によって行っていただきたいというのが、実際に被害を受けた該当地域で悩んだ者としての意見であります。
山田(正)委員 そこなんですが、確かに、私どももいろいろ災害で調べてみて、例えば雲仙・普賢岳の場合は一家族三人で月に十万ぐらい、約三年間の生活支援がなされたんですね。ところが、三宅島の場合にはそういう生活支援が全くなされていない。そういうばらばらな対応がありまして、これはまさに災害生活支援法みたいな新しい立法を我々も検討しなきゃいけないんじゃないかということは、今話しているところです。
 今、知事さんのお話を聞いて、今ある被災者生活支援法の中にも少しいろいろな問題点があることはよくわかりました。いずれにしても、鳥取の方、大変頑張っていただいてありがたいと思っております。
 静岡県の知事さんにも、ちょっと時間がなくなったんですが、先ほどから関心があったんですが、いわゆる密集地域の耐震構造に対する利子補給を国の方でやってもらっているが、密集地域以外についてはまだなされていないということでした。それについて、例えば、今度の東海地震の、予定される被災地域全体に利子補給をやるとしたら、どれぐらいの予算で、また実際にやるとしたら、希望の民家というのは結構多いものかどうか、その辺の事情を少し聞かせていただければ、そう思います。
    〔委員長退席、今田委員長代理着席〕
石川参考人 住宅の耐震補強をした場合に、今年度から密集市街地内にある住宅については、国の方で、利子補給ではなくて、耐震補強費の七・七%を補助するという制度ができました。それを静岡県でも適用されるところは適用しながら、しかし、静岡県全域が地震防災対策強化地域になっておりますので、それの対象から漏れる地域についても県が同様な措置をしよう、同様というか、三十万円を前提に耐震補強補助をするということに踏み切りました。実際に該当する対象がどれだけ出てくるか、現在、耐震診断、精密診断を実施中でありますので、その結果出てきた、耐震補強が必要だというふうに診断されたものが対象になるわけです。
 そこで、潜在的にどれぐらいあるかでありますが、昭和五十六年以前の建築基準法によって建てられた住宅が約六十万棟ありまして、これが非常に耐震度が弱いものでございますので、現在は、その中から要耐震補強住宅が発生すると想定して今進んでおるところでございます。
 今年度当初予算としては、県でとりあえず四億円を計上いたしましたが、対象件数がふえてくれば、予算を増額補正するつもりでおります。
山田(正)委員 一般民家とあるいは個人の生活支援とか、本当に災害時の公共事業云々にだけ厚くそうするんじゃなく、本当の生活、いわゆる住民の生活そのものに目を向けた災害復旧という形での考え方というのを我々も大いに検討したいと。
 きょうはお二人の知事さん方、大変参考になりました。ありがとうございました。
今田委員長代理 藤木洋子君。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。きょうは朝早くから委員会にお出向きをいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、私自身が阪神・淡路大震災の被災地である兵庫県の出身でございますので、この問題では非常に大きな関心を持っているわけですけれども、特に鳥取県の取り組み、片山参考人に最初に伺いたいと思うんです。
 二〇〇〇年の十月に起こって、今もお話を伺っていましたら、震災直後と言ってもいい時期に、政府が否定し続けている被災者の住宅再建に県の施策として補助制度を実施するということを決断されたことに本当に感動いたしました。これは阪神・淡路大震災の被災地の被災者が喜んだんですよ。自分のことのように喜んだんですね。というのは、それまでずっと求め続けていたことが新しい被災地で実現できたということに対する非常に大きな感動であったわけです。
 その復興のための、兵庫県と神戸市の場合は特に、今静岡で言われましたけれども、今度は震災に強い町をつくらないといけないんだということで、その瓦れきの山の跡は再開発ということで、復興事業は再開発でいくんだという取り組みをして、今それが形になって出てきているわけですけれども、しかし、そこに住んでいらっしゃった方たちが、移転補償などの対象になり得る権利者である方たちがそこに入居できないというような事情が今なおあるわけです。
 ですから、この鳥取県がとられた、住宅再建への助成を本当に間髪入れずにやった、もう直後にやったということの意味が非常に大きいのではないかということを感じておりまして、実際に私も、その後住宅がやっと建ち始めたころに被災地を訪れさせていただきました。
 そして、ここでは、溝口町で、町独自の住宅再建上乗せ支援をして完成したという、御夫妻の住んでいらっしゃる住宅を拝見したわけです。そこへ参りましたら、これまでのお家よりは確かに狭くなって、二DK規模だったと思うんですけれども、そうなっておりましたが、御夫妻に会って、新居を拝見しながら、この際ですから国などに御要望があったら聞かせてくださいと言いましたら、何にも申し上げることはありません、ありがたいことです、もったいないことですと言われて、私がこの委員会にも所属しておりますから、いろいろな被災地で被災者の皆さんのお話を伺ってきていたんですけれども、これほど晴れ晴れとされた顔を見たことがなかったわけですね。ですから、このことというのは本当にすばらしいことだったなというふうに思います。
 今もお話しされましたけれども、鳥取県がそれでは特に財政にゆとりがあってやったかというと、決してそうではなくて、まあそれはそんなに困窮はしていなかったにしろ、何かの形で捻出をすることを考えなきゃならないような中で、やはり最重点として今最も必要なことにお金を出動するんだという決断であったろうというふうに思うわけですね。そのためには不要不急の公共事業というのを見直したというお話も伺いまして、さらにそういうことがやはり基盤になるんだなということを考えました。
 生活再建の基盤である住宅の再建というのは、できるだけ速やかに補償するということが不可欠であり、しかも非常に大事な施策であろうというふうに思うわけです。被災地域の経済だとか社会を崩壊させずに済んだ、復興への大きな一歩になったということも事実であろうというふうに思うわけですね。
 そこで、自然災害というのは本当に多岐にわたるわけであります。その災害の性質も違えば、さまざまな災害の起こり方というのがありますし、起こる地域も、そこの自治体の規模も違いますし、小規模な農村の場合もあれば、漁村の場合もあれば、観光地域の場合もあれば、都会や大都会というようなところがあるわけですから、それぞれの実態、現地の施策の実態から何が最も求められているのか、その必要に応じた対応をするということが大事だと思うんですね。そうしますと、今の現行の施策の枠内で考えていたのではとてもその施策はとれないということを、どんな被災地へ行っても伺うわけです。
 ところで、国民から見れば、たとえどの自治体に住んでいても、災害に遭遇したときには、生活再建の補償がされなければならないというふうに思うわけですね。ですから、第一義的には、片山知事が言われたように、そこの自治体が、県なり市町村が、まずこれが必要だということで施策を考えて講じたということになりましたときに、私は、やはり国が一義的には責任を負ってそれを支援する、一定量の支援金をきちんと出すということを、これは本当に国の責任としてやることが大事ではないかというふうに思うわけです。
 ですから、画一的にというのではありませんけれども、それぞれの地方公共団体が、それぞれの災害に対応して、最もふさわしい施策、望ましい再建策というのを講じた場合に、その一定の部分は国の責任で手当てをするのだという補助制度が必要ではないかというふうに思うんですね。
 ですから、その基準を決めるときには、私は、そこの自治体の財政規模なり能力に対して、どのぐらいの負担があった場合には国としては七割補償するんだとか、それ以下の場合は五割にするんだとか、そういった基準を決めるということが大事なのであって、国の責任で手当てをするということを制度化することがどうしても必要ではないかと思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
片山参考人 災害がありましたときにどういう形で復興するかというのは、地域によってかなりまちまちだと思うんです。一律になかなかとらえられない面があると私は思います。
 私は、一昨年の鳥取県西部地震のときに復興を担当した者として申しますと、一番ありがたいのは、包括的に補助金をいただくことであります。何に使ってもいい、とにかくこの災害を復興するためにこれだけもらえる、そういう制度があればありがたかったなと思うのであります。
 先般のニューヨークのテロのときを見ていまして、連邦政府がニューヨーク市に一定の金額を出すということを議会で決められましたけれども、あれも事細かに、この事業なら何分の一とか、あの事業なら三分の二とか、そういう決め方じゃなくて、恐らくは一括してニューヨーク市に渡されたんだろうと思います。我が国もそういう仕組みがあってもいいのではないかと私は思うのであります。
 今の日本の制度は、トータルとして幾らを補償しますよという国の助成ではなくて、この事業をやる場合には一定の率、この事業をやる場合には二分の一というふうに率だけ決まっていて、実際にトータルで幾らかというのはわからないわけです。
 そうしますと、地方団体は今何をやるかといいますと、例えば、この人の住宅再建支援を手助けしてあげたいなと思っても、国の補助制度がありませんから、それならば再開発をこの際やってしまって、そこで補償金なりなんなりで始末をしてしまったらいいんじゃないかとか、道路事業にひっかけてこの人に補償金を払えば、この人はよそに住宅が建てられるだろうというような、そんなことを考えるのであります、土木的な発想で。
 そうしますと、本来、ある数人の人の住宅再建の支援をすればいいにもかかわらず、莫大な事業費がかかってしまう。やらなくてもいいような道路事業をやってしまったり、再開発事業をやってしまったりする。国、地方を通じたトータルで膨大な事業費を費やすのであります。それも、でも今の制度では認められるんです、単に率だけ決まっていますから。非常に私はむだ遣いが多いと思います。これも、しかし、地方団体が別に悪いというんじゃなくて、今の制度を最大限利用すればそういうことになってしまうんですね。
 私は、一番いいのは、地方団体が効率的に優先する施策に取り組めるように国から包括的な補助金をいただく、これが一番であります。それがない場合に、ではどうするのかといったときに、先生がおっしゃいましたように、例えば、地域を守るという視点で住宅再建に政府も一定の責任を持つということで、何らかのルールを決めておく。国も関与するというルールを決めておくというのは、一つのやり方としてはあった方がいいと思います。
 しかし、本当を言えば、繰り返しになりますけれども、包括的に、鳥取県の場合には住宅再建が一番だったんです、それは高齢化し、過疎化した地域でしたから。しかし、例えば、大都市の過密で、もう余りみんなが残ってもらってもどうかなというようなところが仮にあったとすれば優先順位は劣るでありましょうから、それぞれの優先順位に従って仕事ができるような仕組みをつくっていただくのが一番ありがたいです。
    〔今田委員長代理退席、委員長着席〕
藤木委員 ありがとうございました。本当に被災を実際に体験された貴重な御意見だというふうに思います。
 では次に、静岡の問題で伺いたいと思うのです。
 私は、今のこの震災が起こったときに、減災といいますか、それをできるだけ災害を低く抑えようという取り組みをしていらっしゃるということは、本当に大事なことだというふうに思うのですね。
 実は、兵庫県も、一九七〇年代に一度、地震対策ということで、知事が有識者の皆さんたちに諮問をしておりまして、一体どのぐらいの規模の地震が起こることが想定されるか、そのときにどれだけの備えをしていればいいかということをやられたことがあるのですね。あのときは、マグニチュードではなくて、たしか震度七対策が必要だという答申が出まして、それに合わせて全部やり直すというようなことをやれば、補強も含めて幾ら予算がかかるかということを検討されたことがあるのです。ところが、それはとてもできないということで、もう震度五対策でいけということで、それ以後、五対策がずっと貫かれてきていたわけですね。
 もし、あのときにそこまでのことがやっておれたら、恐らく、耐震防火用水などというのも整備されていたというふうに思うのですね。長田の災害なんかは、水はたまっていたはずなんですけれども、耐震性がなかったので、全部あふれたり漏れたりしておりまして、一滴も水はないというような状況だったわけです。そういうことというのは非常に大事ですので、そのことはぜひ進めていただきたいし、全国でもこれは教訓にしていくべきことではないかなということを感じております。
 それともう一つ、私が感心しておりますのは、個人住宅の耐震に対しても、県として助成をしていくということを打ち出されたわけですね。これも非常に大事だと思うのです。
 兵庫県の場合でも、もちろん文化住宅のように、地震がなくても壊れそうな家というのはたくさんありまして、そういうのは低所得者の人たちが入っていて、ほとんど倒壊したというのはありますけれども、特に、古い家ですね。どっしりして大きいんだけれども、耐震基準が満たされていないような昔の家というのはやはり全部倒壊をするということもありましたし、シロアリ対策なんかがやられていなくて崩壊をするということもありまして、亡くなった方たちの八割は圧死だとか、住宅の倒壊によって亡くなるということがあったわけですから、個人住宅に対してそういう施策をされるということは非常に大事なことだというふうに思うのですね。
 しかし、施策はあるんだけれども、それにしても、自分もお金を出さないといけないわけですから、ここのところを乗り切って本当にできる方なら、震災が起こった後も自助でいける方たちなんだろうと思うのですけれども、それもやり切れないで震災が起こったというときには、やはり自助では立ち上がれないという方たちの層ではないかというふうに思うのですね。
 そういう層に対しては、何かそれ以外の施策をとるようなことを御検討になっていらっしゃいますでしょうか。もしなっていらっしゃったら、ぜひお聞かせをいただきたいと思うのです。
石川参考人 耐震補強について、三十万円の補強費助成をするということ以外に、住宅ローンの、住宅建設資金の融資制度がございまして、それには、耐震補強をした場合に一%の利子補給をする、加えるという制度もございます。
 それ以上に、所得の段階に応じて、補助の、何かさらにかさ上げするとか、そこまでちょっと現段階では手が回りかねております。
藤木委員 私が体験をした阪神・淡路大震災で今一番問題になっておりますのは、先ほど言われたように、家をつぶそうかどうしようか、つぶすときにはただになるからつぶしてもらった方がいいかと思いながらつぶさないで来た方が、補修で済んだわけですね。ですから、補修に一定のお金を低利融資を借りてなさったわけですけれども、今になって返済の時期が迫ってきておりますと、それができないということで、結局、再建はしたものの、それを売らなければならないというような事情が出てきているんですね。私は、それで悩んでいらっしゃる方というのは極めて多いわけですので、そういったところもぜひ今後の課題として検討に上げていただければいいんじゃないかなということを思うわけです。
 三宅の場合もそうなんですけれども、中間の方たち、ここのところをしっかりと守りませんと、中間層が守られなければ、本当に地域の経済というのがだめになってしまうわけですね。高齢者の方たちというのは何らかの施策が打てるということがあったとしても、今助けてやれば、すぐに助けてやれば働くことも可能だったという人を放置しておくと、病気になって働けない体になる。七年もたちますと、働けたはずなのにという人たちが随分病人にさせられてしまっているというようなことがありまして、もう再起不能ということになりますと、税金を納めてくれる人ではなくて、税金を使わなければならない人だけをふやすというような施策になってしまいますので、ここの中間層というのは、よくよく目配りをしないと、頑張れそうだからやれるだろうというようなことで抜け落ちるんですね。そこのすき間というのが、今私の非常に大きな問題意識になっておりますので、その辺の御検討をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
石川参考人 私も、藤木委員と同じような発想に立ちまして、だからこそ、住宅再建支援制度の確立が必要だということを訴えてまいっております。
 全国知事会でも、兵庫県案をベースにして住宅共済制度の提案をいたしましたけれども、これは財源の調達方法を固定資産税にあわせて徴収したらという提案だったものですから、市長会、町村会の合意も得られなかった。いろいろ伺うと、なるほど、大変なコストと手間がかかるということでありますので、実際的な案でなかったというふうに存じます。要は、どういう案になるにせよ、もっと、国において本格的に社会政策として確立するという観点で、本腰を入れてこの問題に取り組んでもらいたいと思います。
 これまでの経験で言いますと、中央省庁は、大体こういう問題を持ち込みますと、たちの悪いイチロー選手のように、イチロー選手はたちがいいんですけれども、非常に好打者で、地方がこういうことをやってほしいと言って投げますと、全部ファウルにしちゃうんですね。ヒットしてもらいたいと思って球を投げても、全部ファウルにしちゃう。私は、案が悪かったら、案が悪いからやらないというんじゃなくて、実現するためにはどうしたらいいかという角度で真剣に取り組んでもらいたい、そういうことをたびたびいろいろな機会に訴えておりますけれども、この機会をかりてぜひそのことを私はお願いしたいと思います。
 英知を結集して社会政策として立派なものをつくり上げないと、日本列島、先ほど申し上げましたように、特に関東地域から四国地域の太平洋岸は、過去の歴史を見ましても、大変な地震の被害に遭っているわけです。これが今日のような近代化した成熟社会にそういう災害が訪れた場合には、阪神・淡路大震災の被災をさらに何倍も上回るような大打撃に見舞われるわけであります。それから立ち直るにはどうしたらいいか、これは、本当に国家政策として考えるべき時期に来ていると思います。
 そういう点で、住宅の再建は、滅失した住宅の補修という点では私はやるべきでないと思いますけれども、経済や地域社会の再生という観点で、社会政策、国土政策として考えるべきではないかと存じます。
藤木委員 大変貴重な御意見をちょうだいして、本当にありがとうございました。
 先ほど片山知事からもお話がございました生活再建支援法、これも阪神・淡路大震災の二年後に超党派の議員が集まって、結局、議員立法として最終的には実現をしたんですけれども、確かに十分ではないんですね。十分ではないというのは、欠陥がたくさんございます。これも五年以内に見直すということになっていまして、今まさに見直しを迫られているときでございます。
 これまでは、住宅再建については、新たな超党派の議連で検討されたり、あるいは知事会の御検討があったりということをやってまいりましたけれども、今回はここの理事会で、ひとつ委員会としても、委員会として一度取り組んでみようじゃないかということになっているやに私、伺っておりますので、ぜひ私もこの委員会でその役割を果たすために奮闘させていただきたい、その決意を申し上げて、終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
田並委員長 菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 片山知事、石川知事、長い時間、本当に御苦労さまでございます。
 私も、出身が宮城県の気仙沼でございまして、この宮城県沖地震が今後、本当に近いうちに想定されるという中で、東海沖地震の予知体制というものが、本当に宮城県沖でも確立されるようにということで主張してきたんですが、東海は予知できたにしても、宮城県沖はもうほとんど予知はできないですよという専門家の意見もあるものですから、これからの対策というものについても伺っておきたいというふうに思っています。
 石川参考人の方に最初にお聞きしますけれども、先ほど説明いただいて、昭和五十一年からずっと二十六年間経過して、資料によりますと、一兆四千九百三十六億円という投資を行ってきたというふうに聞いております。それで、第三次地震被害想定を見直して、四百三十四項目が完了あるいは管理継続になっていて、新たに二百八十七項目がこれから地震対策アクションプログラム二〇〇一という形でスタートしているわけですけれども、今日的な災害対策の中で、今地方財政危機と言われていて、地方財源が非常に厳しい中でこれから対策を練っていこうとするときに、各都道府県含めて、静岡県含めて、私は非常に大変になってきているんじゃないのかなというふうな思いがいたすんです。
 今日の地方財政危機と言われている中でのこの災害対策に対する備え、考え方、知事としてどのように御見解を持っておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
石川参考人 耐震対策を推進する場合に、その財政状況がどうあるかということは、大変大きな問題であります。本県の場合は、幸いなことに二十五年前からこの問題に取り組み、国の特別な補助率のかさ上げ制度もつくっていただいてやってまいりました。残事業がもう残り少なくなっておりますので、今日の静岡県も大変逼迫した財政状況の中ではありますが、事業の優先順位を最優先にすることによって何とか切り抜けられる状態でございます。
 しかし、昨今、東海地震の被害予想地域の拡大がされました、地震防災対策強化地域の拡大がされまして。新たに今後、地震対策に取り組まなければいけない地域、あるいは今後、東南海地域も危ないと言われるようになってまいりましたから、当然強化地域へも拡大が予想されます。
 したがって、地方財政が危機的な状態にある中で、このようなことを推進するということは大変困難をきわめると思いますけれども、ぜひ国、地方、各団体あわせて、防災対策、減災対策、これは地方団体、国もそれを免れないと思いますけれども、住民の生命財産の安全を確保するということが一番基本の任務でありますので、これは取り組んでいかなければいけない最優先課題だ、そういう認識に立ってやっていく必要があると存じます。
菅野委員 事業の優先順位を知事が最優先課題と位置づけている。静岡県がそういう位置づけになっているということは、県下の市町村もそういう位置づけで取り組んでいる姿というのが目に浮かぶわけですけれども、どうしても県での事業と市町村での裏負担というか、市町村負担を伴うものが、ややもすればおくれがちになっていくというのが今日の実情だというふうに私は思うんですね。
 それで、財政危機の中で一番最初に、本来は最優先にしなけりゃならない災害対策というものが、財政危機になればなるほど優先順位が下がっていくというのが、今日、日本全体を取り巻いている状況ではないのかなというふうに私は思っているんですね。二十五年前からたまたま地域指定になっておりますから、国の上乗せ支援も行われているから今日まで続けられてきたというふうに答弁をなされていますけれども、やはり今災害が起こって、あるいは災害の予知というか、起こるであろうと想定されている地域、きょう三宅の人たちも来ていますけれども、そういうところがまだまだ最優先になっていないという姿に、私は非常に憤りを感じているものでございます。
 その意味では、いつまでも最優先課題と位置づけていただきながら対応をとっていただきたいというふうに思うんですが、全体に、先ほど説明されて、市町村との関係、これが県としてどのような任務割合、任務分担というか、それをなされているのか、ひとつその辺をお聞きしておきたいと思います。
石川参考人 避難地とか避難路とか津波対策その他、それぞれの事業の種別に応じて県がやるものと市町村がやるもの、担うべきもの、これは制度が決まっておりますので、その仕組みに従ってやっていただいております。
 そういうものに該当しないものがいわゆる単独事業として出てくるわけでございます。それらについては、本県では、過去、法人事業税の超過課税なども実施をして独自に千五百億円余の財源を捻出して、これを半分は市町村の単独事業の助成金に充てる、残り半分は県の単独事業の財源に充てるということでやってまいりました。この地震対策のための超過課税も平成六年度いっぱいで終わりまして、超過課税は別な目的で今継続をしております。しかし、まだ地震対策は完了いたしておりませんので、一般の、要するに他の財源の中から、従来の地震対策のレベルを落とさない範囲で県は市町村にも援助してまいっております。
 それからさらに、県が市町村に資金の貸付制度を持っております。これの中に、地震対策でやる場合には特別な優遇金利を設けまして、超低金利で借りられるというような市町村振興資金の特別枠も用意して市町村を応援してまいって、今日まで先ほど御報告したような事業の実現を見ておるところでございます。
菅野委員 ありがとうございました。
 片山参考人にお聞きしますけれども、先ほどからるる説明、意見陳述なり質疑の中で、本当に取り組みの実態というものを理解することができました。そういう意味では、今日的に地方分権というものをどう地域に根差していくのかということを、この問題が一つ提起しているというふうに私は思っているところでございます。そういう意味では、滅失財産の補てんではなくて、地域を守る手段として考えてきたというその考えの発想に立たなければならなかったというところに、今日の国の制度のあり方というものがあるのではないのかなというふうに思っています。
 災害対策というのは、本来は地方自治体の固有の事務として進められてきたことだ、ただし、財政的に緊急的な財政出動を多く必要とするから、そこに対して国が支援するという体制の中で進められてきたというふうに私は思っています。でも、そういう制度にもかかわらず、先ほど片山参考人が、決断したときに眠れなかったと。その眠れなかった一つに国のしっぺ返しがという言葉で、そこが怖かったというところも披瀝されたということで、今の国と地方のあり方がこのことにも大きな形としてあるんだなというふうに私は感じ取りました。
 それで、国のしっぺ返しがと言われる今日の体制を直していくことこそ、こういうことを行った先駆者としての一つの大きな任務でもあるというふうに私は思うんです。全国へ発信してほしいというふうな思いを持つものでございますけれども、そういう全国での連帯の輪をつくった上で、やはり地方から国を動かしていくという体制をぜひつくっていただきたいと思うんですけれども、このことに対する片山参考人の考え方をお聞きしておきたいというふうに思っています。
片山参考人 国と地方との関係でいいますと、先ほど来申し上げております、国がやっちゃいけないと言ったことを地方があえてやるということ、そのときに国との間にあつれきがあったり、葛藤があったりするわけでありますけれども、これはひとり防災対策だけには限らないわけでありまして、もう日常、正直言いましていろいろなことがあります。国は国で一生懸命、中央官庁の役人の方も仕事をされているのでありますけれども、現場を預かっております我々との間にそごが生じることが頻繁にあります。
 そのときに、私たちは、やはり現場が一番大切でありますから、制度の欠陥などを指摘するわけであります。従来ですと、中央政府の決めたことだから現場との間にずれがあってもしようがないと思って従っていることが多かったのでありますが、最近、どうも余りにもそのずれが大きくなった、また数が多くなったという印象はぬぐえません。やはり現場で責任を持って、住民の皆さんに説明責任を果たしながらきちっとした仕事をしていこうと思いますと、唯々諾々と政府の言っていることだけに従えないという面が出てくるのであります。
 そういうときには、私はやはり、大変失礼ですけれども、申し上げることにしております。そしてまた、必要なことはもうあえて実践をすることにしております。それが、一つは住宅再建支援であり、それからつい最近でありますと、BSEの問題が発生したときも、私は、あえて農林水産省でありますとか厚生労働省に異を唱えたのであります。
 私は、これからの中央と地方との関係というのは、やはり一つは意識改革が重要だと思います。地方の意識改革、それは、必要だと思ったことは中央に対しちゃんと物を言うということ。それから、ぜひ中央官庁の方も、地方のそういう現場からの声によく耳を傾けていただいて、制度だけを振りかざすのではなくて、前例がないからといって押し込めるのではなくて、やはり柔軟に耳を傾けていただきたい、そういう意識改革が必要だと思います。
 そういう意識の改革の中から一つ一つ不都合なことを正していくという実践をする、これが中央と地方との関係をよりいいものにしていく、そして、地方から国を変えていくことにつながるのではないかと思っております。
菅野委員 私どもも地方のそういう現場の声を体してこの国会で議論しているんですけれども、なかなかそのことが受け入れられていかないという側面も一方ではあるわけでございます。そういう意味では、やはり現場の声を大切にしていく、置かれた環境の人たちの声を大切にしながら、実現するためにはどこかに届けなきゃいけない、そういう意味でのこれからの課題というものをしっかり私自身も受け取っているつもりでございますので、連携を図りながら変えていきたいというふうに思っています。
 この鳥取県被災者住宅再建支援条例を見ますと、確かに地震を契機にしてこういう条例がつくられていった。ただ、自然災害という中で、洪水というものも、現実に起こって大きな被害をもたらしているということも、日本列島を取り巻く状況だというふうに思っています。
 洪水が起こるという原因が、確かに豪雨に伴う洪水という側面もあります。これは全国に共通していることだと私は思うんですけれども、やはり日本国土が、豪雨に伴う保水力の低下というものが顕著に今日的にあらわれていて、それが洪水につながっていっているというふうに私は思うんですね。
 そういう意味では、地震災害に備えるということだけではなくて、国土全体の保水力をどう高めていくのか、具体的に言ったときに、今日の日本の国土の中において山林というものがどういう位置づけになっているのかということを、やはり地方としてもしっかり見ていく必要があるのではないのかなというふうに思っております。
 先日、和歌山県に行って実態を見てきたんですが、三回目の間伐で三十五年生の木が、旧国道のすぐそばで間伐になったにもかかわらず、投げ捨てられている。そういう意味では、間伐する力も過疎地域、地域社会においては喪失していっている実態というものも見てきたわけですけれども、片山参考人として、地域を賄っている、災害対策の責任者として今日の森林・林業の実態をどうとらえておられるのか。
 そして、そのことに対して、和歌山県では緑の雇用対策事業というものを三重県と一緒になって推進していこう、平成十四年からそういう事業に取り組んでいるということも聞いてまいりました。このことも、やはり単に和歌山県や三重県だけにしておくんじゃなくて、全国として展開していく必要というのが今日あるなというふうに私は思うんですけれども、片山参考人のこれに対する考え方をお聞きしておきたいというふうに思います。
片山参考人 鳥取県も林業県でありまして、森林・林業というのは非常に大切であります。現状はどうかといいますと、やはり御多分に漏れず、木を切っても売れない、間伐をしても赤字が出るということでありまして、手の入らない森林の面積がふえております。
 そこで、今日、森林を守るためにということでいろいろな施策をやっております。例えば、私どもは今、間伐を促進するということが森林を長期的に守ることになるだろうということで、とりあえず間伐を支援しようということにしておりまして、県で間伐材一立米当たり四千五百円だったと思いますが、支援をすることにしております。
 それに対して、市町村によっては二千円をさらに上乗せするというようなところがありまして、そうすることによって、間伐をやっても持ち出しが出ない、何とか市場経済に乗る、今そういう下支えをやっております。これで随分間伐が進みまして、おかげさまで、財政的には相当の金の出費を強いられるのでありますが、それでも県内の森林の手当てができていると思って喜んでおります。
 それから、若者の雇用という場で森林を考えようということを今やっておりまして、雇用が進むような施策、例えばいろいろな支援とか助成とかをやっております。これも、県外からも多数の若い方が今森林組合を通じまして林業の現場に入っておられまして、非常に頼もしいことだと思っております。鳥取県は和歌山県や三重県のような緑の公共事業という、ああいう銘打ってはやっておりませんけれども、事実上はそれよりも早くから若者の林業への参入の支援、それから、間伐を支援することによって結果的に雇用をふやすというようなことに取り組んでおります。
 従来から、景気対策、雇用対策というと公共事業ということでずっとやってきていたわけでありますけれども、これからの新しい雇用対策として、森林・林業というのは大いに見直されていいと思っております。
 それからもう一つ、水源涵養税というのを鳥取県でも考えておりまして、それぞれの水系の上流を守るために水道水を使う方に若干だけ負担を願えないかということで、今新しい税条例を検討しております。
 ぜひこの際、お願いいたしたいのは、今交付税の問題がいろいろ取りざたされておりますが、そのときに、一方の方の意見として、人口なんかで割り切って配ってしまえというような乱暴な意見があります。仮に人口なんかを基軸にして交付税を配るということになりますと、森が多い県とか人が住んでないようなところは交付税ががた減りするわけでありまして、そうでなくても今財政が非常に苦しいときに、これからの森林・林業の手当てをしようと思って財源的に干上がってしまうわけでありまして、ぜひ、そういう乱暴な、単純な交付税論議なんかにならないように、バランスのとれた交付税改革について御議論いただきたいと思います。
菅野委員 ありがとうございました。
田並委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 菅野先生が議事進行に御協力をなさいました。私もできるだけ手短に質問をしたい、こういうふうに思います。
 石川知事さん、片山知事さん、本当に御苦労さまでございます。実は、私、最後でございますが、全部先ほど、特に遠藤先輩に私のお尋ねしたいことをみんな聞いていただきましたので……(発言する者あり)人のせいにしてません。
 実は、ここにおいでの原田昇左右先生を座長に、私ども与党は災害対策に関するプロジェクトチームというのをつくっております。相沢英之先生でありますとか谷洋一先生、また堀之内久男先生、先ほどの遠藤先生もそうです。不肖もそのメンバーの一員であります。
 住宅の問題について、いわゆる住宅所有者の負担ということを最初は考えておったんですけれども、これはなかなか技術的にも難しいということもあり、先ほど遠藤先生が御指摘をなさったように、住宅というのは、やはりあらゆるものの生活のベースキャンプでありまして、これは公共財と位置づけて一つもおかしくないわけであります。
 したがいまして、私どもとしては、それを単に個人のものだから個人が保険制度で負担するということ、これも、もちろん、自己責任の原則の中で大事なことでありますけれども、しかし、その限度を超えてしまうようなもの、または、もっと公共的に支援をして早く地域の経済、文化、社会そのものを復興させる、こういうためには、やはり国が積極的に支援をするべきだ。三宅島についても、私は東京都選出でありますけれども、そのように考えて努力をしていきたい、こんなふうに思っているわけであります。
 この点については、もう既に両知事から同感のお考えを御表明いただきましたから、あえてこれはお尋ねをしないことにいたします。
 そこで、きょうずっとお話を伺っていて、いただいた資料も拝読いたしますと、片山知事さんは、起こってしまった地域の代表としてきょうおいでいただいた。石川知事さんは、これから起こるかもしれない、この豊かな静岡県を、我が国でも大変重要な役割を担っておられる静岡県をどう守るか、こういうお立場でおいでをいただいた。そのために国が何ができるかということになりますれば、おのずからおっしゃりたいことは違ってくる、こう思うのであります。
 したがって、くどいようでありますが、私は、もう質問は皆さんがお聞きになったので、残った時間は、ぜひ知事お二人に自由に、ここが言い足りなかった、ここを言いたかった、こういうことに使っていただくのも委員会としてはいいのではないか、こう思っております。
 片山参考人は、お忙しかったですね、おとといは有事法制、きのうは憲法、きょうは災害と、三回参考人として国会の審議に加わっていただきました。やはり知事というのは、そういう全般的な視点に立って物を行っていく、地方分権の核でありますから、ひとり災害だけではなくて、大変重要だな、こう改めて私は思って、地方自治に我々はもっと応援しなきゃいけない、こう思うんです。
 そこで、先ほど、質問者に対して、水源涵養林のお話をなさいました。これは私の経験をちょっと申し上げたいんですが、東京都は、群馬県に対して、上下水道料金の一%を献じております。これは単に、ダムをつくったりして、水没地域の生活再建だけじゃなくて、水源の涵養林を保持するための費用にも使っていただいている、こう思うわけでありまして、御参考になれば、こう思っております。
 それから、石川知事には、私、先般、テクノスーパーライナー「希望」に、お忙しい時間を割いて一緒に御説明などいただいて、まことに感激をいたしましたが、こういういろいろなことを想定して準備をされる。これは、県財政が幾ら豊かでも、先ほど、住宅のことに関して、一兆円のものを予想される、こういうことでございますが、それは起こってしまった場合の被害想定であります。そうでない、これに対して、どう果敢に災害にチャレンジをして、被害を最小限にする、このためにも、莫大な経費がかかると思うんです。これに対して、国は何ができるか、こういうような点についても、ぜひ私どもは応援していきたい、こんなふうに思っております。
 そこで、私が演説してばかりいてもしようがないので、いかがでございましょうか、五分ぐらいずつ、ここはというところをもう一度言っていただければ、こう思います。
片山参考人 ありがとうございました。
 私は、今、先生がおっしゃいましたように、地震の災害に見舞われた県の代表選手のような形でこの場に呼んでいただいたんだと思いますが、実は、事前の準備もかなりしていたのであります。
 これは、一昨年の十月六日に地震が起きるということをあらかじめ想定して準備をしたわけではないんですけれども、私も、三年余前の生まれて初めての知事選挙に出るに当たりまして、公約というものをやはり真剣に考えました。その際に、かつての阪神・淡路大震災のときの地方公共団体の対応のあり方というのも横目で見ていまして、みずからが自治体の首長になったときに、しっかりと住民の皆さんの生命、身体、できれば財産までも守りたい、被害を最小限に食いとめたい、これがやはり自治体の一番の任務だろうと思うんです。それは、今、自治体にはいろいろな行政があって、教育もあり、福祉もあり、文化もあり、いろいろなものがありますけれども、何はさておいても、やはり一番は安全ということだろうと思いますから、選挙に出るに当たりましては、三つの公約の一つに、防災、安全な地域づくりというのを掲げたのであります。
 掲げたのでありますが、実際、選挙運動に入ってみますと、ほとんど関心を持っていただけなかったというのが実態でありました。やはり、ふだんから危機のことを考えるということは、余りなじまないのかなと思いました。しかし、当選させていただいて、公約を実現しようということで、まずやりましたのは、いろいろな仕組みでありますとか組織機構の点検をやりました。
 鳥取県の防災の組織というのは、生活環境部という部があるのでありますけれども、そこに消防防災課があって、その中に防災係というのがあって、そこで地震などの防災をやっているわけです。いわば、係長さんが一番トップの組織であります。これは大半の県がそうなんです。兵庫県とか静岡県のような一部の県は違いますけれども、大半の県は係長さんがトップ、これでは、とてもではないですけれども、ちゃんとした防災体制はとれないということで、まずやりましたのは、防災監という非常に高位の職を設けまして、その防災監と一緒になって各種の点検をやりました。
 例えば、マニュアルの点検、やってみましたら、本当にずさんであります。地域防災計画というのは全国どこでもできているのですけれども、それは専ら中央官庁、当時の自治省消防庁に報告をするための、承認をもらうためのマニュアルでありまして、いざというときに現場では何の役にも立たない。こんな分厚いページをそのときになってひもといても、何の役にも立たないし、また、具体的なことは何も書いてないんです。
 例えば、知事は自衛隊に災害出動を要請するということが書いてあるんですけれども、では一体、どこのだれに電話をすればいいのかということすら書いてない。そういうところから点検をいたしまして、使い勝手のいい、いざというときにすぐに役に立つものに切りかえていきました。そういうことをやった。
 それから、自衛隊その他の関係機関との連携をやろうということで、関係機関の連絡会議を頻繁に行いました。災害が起こってから名刺を交換し合うというようなことではだめでありますから、日ごろから顔なじみになっておこうというところから始めました。
 そういう中から、訓練もやりまして、訓練も、これは年中行事に実はなっているのであります。九月一日、毎年決まり切ったことをやるということをやっていまして、そんなことではだめなので、本当にみずからの問題として、自分が何をしなきゃいけないか考えようということで、防災訓練を行いました。たまたまそれを七月三十一日にやったのでありますが、鳥取県の米子というところで、震度六強、マグニチュード七・三という被害想定をいたしまして、訓練を行いました。現実のと全く一緒でありました。震源地だけは、一応、隣の島根県に置いていたのですが、実際は鳥取県の方に震源地がなってしまいまして、そこは違いましたけれども、七月三十一日に訓練をやっていたものですから、その二カ月足らず後に起きました実際の地震のときには、余り戸惑うこともなく、その対応に専念することができたのは、大変よかったと思っております。
 私は、ともあれ、静岡のように、例えば構造的に都市を変えよう、住宅を変えよう、そういう余裕はありませんでしたけれども、しかし、いざ起こったときに、関係機関が連携をし、我々幹部が何をしなきゃいけないのかということは一応やっておりましたので、これが本当によかったなと思うのが実感であります。
 ただ、実際に起こってみますと、災害というのはマニュアルどおりにいきませんし、いろいろ千変万化であります。そうしたときに何が大切か。これは現場であります。
 我々は、現場に赴いて必要なことをやっていく、こういうことをやりました。その際に政府に何を求めるかということでありますが、私は、災害のときは、やはり一番は、地方公共団体が最前線に立って、現場で必要なことをやっていくということが重要だろうと思いますが、その際に、政府は、ぜひそういう地方団体を支えていただきたいと思うのであります。私どもの地震の際にも、自衛隊にはいち早く駆けつけていただきまして、支えていただきました。大変ありがたかったです。本当に我が事のようにやっていただきました。
 それから、もう一つありがたかったのは、地震が発生してほんのわずか、少し後でありますけれども、当時の森総理大臣から電話をいただきまして、片山君、とにかくできる限りのことを精いっぱいやりなさい、政府はしっかりと支えてあげるということを言っていただきました。私は、本当にその電話はありがたかったです。直ちにそれを被災地の市町村長に伝えまして、総理もこう言われているから一緒に頑張ろうねということで、災害対策を進めたのであります。何をしてくれ、かにをしてくれということじゃなくて、政府の最高責任者が、とにかくしっかりやりなさい、あとは、困ったことがあったら助けてあげるからと言っていただけることが、本当に大きな力、心の支えになりました。
 巷間、森総理はいろいろ批判もあったりしましたが、私は、地震に関しては、本当に森総理に感謝を申し上げております。政府は、ぜひ、そういう最後の後ろ盾になって、地方団体を支えるという役割を、これからも果たしていただきたいと思います。ありがとうございました。
石川参考人 せっかくお時間をいただきましたので、私は、三つの点について強調をいたしたいと思います。
 一つは、日本は古来から、地震、火山の国であります。この面での学術研究は、世界各国と見比べましても、大変すぐれた位置にあると思いますけれども、さらにこれをもっと前進させる努力を継続すべきであると思います。そのためには、火山についても地震についても、観測とか調査、これが研究の大もとになるわけでありまして、この面での国の役割というのは大変大きいと思います。
 そういう観点でいきますと、昨今、非常に残念に思うことは、例えば、本年度の予算で、私のところが期待しておった、深海の海底の調査も行えるような、海洋の掘削をすることもできるような調査船の建造費が見送りになったわけでございます。現在ある海洋科学技術センターの船では、海底二千メートルか三千メートルぐらいまでの海底の掘削はできるわけでありますが、日本が直面しております、大変深い海溝の研究ができないということで、一万メートルの海底調査までできるような建造計画があります。
 これができますと、先ほどちょっと御質問の中にもございましたが、東南海地震のように、震源域が海にあるというところの構造もかなりの確率で解明できる可能性があるわけでございます。駿河湾の場合は二千五百メートルの深さでありますので、最深部でも二千五百メートルでありますので、過去において、フランスの海洋調査船や日本の海洋調査船の調査によって、従来、仮説として出されておりましたプレートテクトニクス理論も、駿河湾の中では確実に実証されたわけですね。
 そういうようなこともありますので、国際貢献を果たすという上でも大変大きな意味がありますので、日本の火山、地震についての学術研究の前進、それを支える観測体制、調査体制をまず充実していただく必要があるということが第一点でございます。
 第二点は、特に本県がもう切迫しております東海大地震に関連して、減災という観点から、建物の耐震補強に今取り組んでおりますけれども、ぜひ、減災という観点に立った国の支援制度を本格化していただきたい。
 加えて、いざ被災した場合の住宅再建支援についても、本委員会でいろいろ御議論がありましたような観点、大体もう論点は出尽くしておるわけでありますので、早く結論を打ち立ててもらいたい、いつまで議論しているんだと。阪神・淡路大震災が発生して、もう七年も経過しているわけであります。この間何を議論していたのかと私は問いたいわけでありまして、ぜひ早く結論を出していただきたい。その結論を出す過程では地方団体の、被災経験のあるところ、あるいは今後あり得るような地域も含めて、十分意見を聴取してもらった上で早く結論を出してもらいたいということです。
 それから三番目は、そのことと若干関連いたしますが、今日の国の災害対策の中で、火山と地震対策についてはその対応策が必ずしも十分でないわけです。
 従来の災害対策は、水害あるいは地すべり等の災害が発生すると、大被害があっても短時日の間に災害現象そのものがやむ、そういう災害を前提に組み立てられております。ところが、火山とか地震の場合は、必ずしもそういう発想で済まないことがいっぱいあるわけであります。そのために対策を強化しなければいけない部分がたくさんありますし、特に先ほど来議論になりました、被災地の判断で自由なきめ細かな被災対策ができるような、そういう仕組みも非常に大事だと思います。
 以上、三点、よろしくお願いいたします。
西川(太)委員 終わります。ありがとうございました。
田並委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 きょうは、鳥取県の片山知事さん、静岡県の石川知事さん、参考人として長時間にわたり当委員会に御出席をいただき貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。
 どうぞ両県のますますの御発展と両知事さんの一層の御活躍をお祈りいたしまして、委員会を代表してのごあいさつにかえます。ありがとうございました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四分散会


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