衆議院

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第3号 平成16年2月26日(木曜日)

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平成十六年二月二十六日(木曜日)

    午前八時四十分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 河井 克行君 理事 河本 三郎君

   理事 福井  照君 理事 達増 拓也君

   理事 都築  譲君 理事 松原  仁君

   理事 石田 祝稔君

      今井  宏君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小野寺五典君

      大野 松茂君    大前 繁雄君

      金子 恭之君    谷  公一君

      西村 明宏君    萩野 浩基君

      原田 令嗣君    平田 耕一君

      保坂  武君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    泉  房穂君

      小沢 鋭仁君    奥田  建君

      奥村 展三君    黄川田 徹君

      土肥 隆一君    中川  治君

      増子 輝彦君    三日月大造君

      村井 宗明君    河合 正智君

      白保 台一君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   国務大臣

   (防災担当)       井上 喜一君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   内閣府大臣政務官     森元 恒雄君

   総務大臣政務官      平沢 勝栄君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   尾見 博武君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           木谷 雅人君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  丸山  博君

   政府参考人

   (国土交通省国土地理院長)            渡邊 茂樹君

   政府参考人

   (気象庁長官)      北出 武夫君

   衆議院調査局第三特別調査室長           五十島幸男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 災害対策に関する件


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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 災害対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官尾見博武君、警察庁警備局長瀬川勝久君、消防庁長官林省吾君、文部科学省大臣官房審議官木谷雅人君、文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、厚生労働省社会・援護局長小島比登志君、国土交通省鉄道局長丸山博君、国土交通省国土地理院長渡邊茂樹君及び気象庁長官北出武夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 おはようございます。自由民主党、小野寺五典です。

 本日は早朝よりありがとうございます。きょうは、短い時間ですが、地震、津波対策についてお伺いしたいと思います。

 御案内のとおり、日本は、地震列島と言われまして、過去、大きな災害に何度も見舞われております。その中で、記憶に新しい、例えば阪神・淡路の大震災がございました。実は、当時私、東北福祉大学の教員をしておりまして、学生と一緒に被災のすぐ後に長田市場のすぐそばにプレハブを建てまして、そこで支援をした、そういう思いがあります。本当に地震の後のライフラインの欠如というのは大変だな、そういう経験もした、そういう思いがあります。そしてまた、実は昨年、私の地元宮城県でも連続地震が起きまして、現在も約四百五十人ほどの方が仮設住宅にまだ住んでいる、そういう事態にあります。

 その中、もう一つ大きなショックがあったんですが、それは、ついこの間、宮城県の防災会議というところが地震対策の専門部会を持っているんですが、そこで地震被害の予想というのの調査を行いました。そこで発表された内容なんですが、実は、二十年以内にこの地域にマグニチュード六から七ぐらいの大きさの地震の確率が八八%以上だということなんです。三十年ぐらいですと、約九八%起きるだろう。そういう非常に、いつ起きてもおかしくない状況にあります。そしてまた、もしその地震が起きますと、ここは液状化しまして大変な被害が起きるだろう。

 また、津波の問題もございます。御存じのとおり、三陸沖といいますのは津波の多発地帯でありまして、きょう、関係の議員もたくさんいらっしゃると思うんですが、過去の歴史を見ますと、明治の大津波では高さが三十八メートルという、恐らく、私どものおります議員会館がもしかして六階か七階まですっぽりかぶってしまうようなそういう津波が起きたという事例もございます。また、この宮城県の防災会議が今発表しているところによりますと、三陸沿岸の例えば本吉町というところでは最大十メートルの津波が来るだろうと。こうなりますと、どのような高い堤防をつくっても、もうほとんどそこを乗り越えてしまう、そういう問題がありまして、とにかく一刻も早い予知とか通報、そういう問題があると思うんです。

 このように、日本全体として地震の可能性が高い。当然、南海・東南海の問題もあります。そういうところから、これからその地震に対してしっかりとした対策が必要だというふうに思うんです。

 まず大臣にお伺いしたいんですが、大臣としまして、国としまして、地震防災対策にどのようなお気持ちで取り組まれるか、まずそのことをお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 今、東北地方を例におとりになりまして、地震あるいは津波の深刻さといいますか、そういったお話があったんでございますけれども、総じて申しますと、どうも日本列島というのは地震の活動期、多発期に入ってきているんじゃないかな、そんな感じがいたすわけでございます。

 地震は、何といってもなかなか予測が難しいということですね。一たん被害が出ますと、大変大きい。あるいは、時として津波を伴うということでありまして、そういたしますと、被害の方もさらに倍加をするような状況でございます。私は、まさに日本は災害多発国というような感じを持っておりまして、そういう認識のもとに災害対策を進めていかないといけない、こんなふうに思います。

 災害対策の基本といいますのは、やはり観測体制ですね。観測をきっちりする。でき得れば、やはり予知をしていくということですね。それからこの対応を考えるということでありまして、例えば今、耐震化を進めるなんというようなこともありますし、あるいは、震災が起こりますと、それに対してさまざまの措置が必要でございますが、そういったことを、国を挙げて、あるいはみんなと一緒になりまして進めていくということが基本だと思います。国として、あるいは自治体として、あるいは個人として、あるいは個人の組織として本当に協力をして、総力を挙げて取り組んでいかないといけないということが大切だと思います。

 要は、災害が多発する時期に入ってきたなという基本の認識のもとに、それぞれの立場、役割を考えて、お互いに協力をして取り組んでいく、しかも、強力にその対策を進めていかないといけない、こんな気持ちで災害対策に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 しっかりとしたお考え、大変ありがたいと思います。

 そこで、今まで防災といいますと、自治体が中心でいろんな計画を立てていたんですが、当然、これだけ大きな地震が想定されるとなりますと、国の方も支援をしなきゃいけない。そういう中で、東海沖であるとか、東南海あるいは南海というようなところで、特別法で一つのガードを固めるということをされておりましたが、その中で、もう一つ日本の中では、宮城県を含めて、岩手県側もそうですが、かなり今後大きな地震が想定される、例えば日本海溝あるいは千島海溝周辺の、ここにも新たな法整備が必要ではないかということで、自由民主党の議員が中心となりまして、議員立法という形でここへの対策の特別法というのを今検討しているところです。私もその議連の一人なんですが、こういう法律が、できれば速やかに国会の方に提出されまして、制度としてきちっとしていただくような形になれば、さらにまたこの防災対策が進むと思うんです。

 今回、特別措置法の制定というのが仮に議員立法という形で提出されまして、また委員会のいろんな審議がございますが、仮にこれが成立するということになった場合に、政府としてはどのような形で対応していただけるのか、お伺いしたいと思います。

佐藤(剛)副大臣 今、小野寺委員の指摘は非常に重要なことでございまして、この間、十勝沖地震が九月二十六日にあったんでありまして、これも推定していたんですね、予測しておりまして、何年以内に何%の確率であると。そうしましたら、ことし起きちゃったと。私が団長で五十人ばかりあれしまして、直ちに十二時間以内で行ってまいりました。そして、そのときの状況は、津波の対策の重要性というのをつくづく感じたわけでございます。

 その意味で、委員が御指摘の千島、私も福島でございますが、そしてまた、議員連盟で議員立法をつくるときの幹事もやっておったんでありまして、予測が大体当たるんですね。だから、そういうことでありますれば、それに対して対応をきちんとしておくのは、これは、我々国も、地方公共団体も、関係機関も義務であると感じておりますので、これについては、ぜひ与野党一体の議員立法化ができ上がって、願わくば、委員長提案みたいな形で速やかにその法律が通るようなことを願っているものでございまして、委員の御指摘は全面的に賛意を表するものであります。

 ありがとうございます。

小野寺委員 ありがとうございます。

 ぜひ、一刻も早くこういう法整備が必要かと思います。地震が起きてしまった、あるいは津波が起きてしまってからでは、法整備がもし進んだ場合ですが、後になってしまっては大変なことになります。今この瞬間に起きてもおかしくない、そういう緊急な、しかもかつ重大な問題ですので、きょう御出席の委員各位にも、ぜひこのような内容について深くお酌み取りいただければというふうに思っています。

 今、ちょうど副大臣の方から十勝沖のお話が出ました。実は、十勝沖で、先ほどお話しされました予知対策ということが非常にうまく機能したと聞いています。例えば津波の発生なんですが、津波の予知システムがあって、津波が到着する四分ほど前に実はもう津波の大体の高さが予報されまして、その四分間で対応ができたということも伺っております。

 ですから、津波につきましては、本当に、一刻も早くどう対応するかということがとても大事な要因になると思うんですが、現在、津波の例えば予測、予報というんでしょうか、これはあくまでもやはり技術的な問題だと思うんですが、それはどのぐらいまで研究が進んでいるのか、あるいは、特に日本沿岸、三陸沖も含めて、どのぐらいの津波に対しての観測体制ができているのか、ちょっとお伺いしたいんですけれども。

佐藤(剛)副大臣 今の委員の御指摘はまことに重要でございまして、私どもも、専門調査会という専門家の集まりですね、津波の予知という問題を想定して、それについての調査会を設置いたしまして、ことしになりまして、二月の十九日にもう第二回の開催をやらせていただいております。

 津波というのは、一たん三十センチぐらい来たのが引くんですが、そうすると、また今度は二メーターぐらいのが飛んでくる、こう言うんですね。引いたきり一回じゃない。こういう形ですから、ちょっといろいろ過去において百年前の歴史ぐらいまで可能な限り調べてみて、また、津波というのが起きると、単に普通の地震の液状化とかそういうことだけじゃなくて、独特のあれを持ちますので、専門家の判断というか調査、それから見通しをやるのが一番重要なことだと思っております。

 常時やらなきゃいけませんが、十六年度の末を目途に、そういう津波の高さとの関係とか、どのような形をするかとかいうようなことを完璧を目指してやってまいりたいと思っております。よろしくお願いします。

小野寺委員 完璧を目指すということなんですが、きょうせっかくおいでなんで、気象庁長官にお伺いしたいんです。

 今の観測体制がどのような形で行われているか、再度になりますが、少し専門的なところからも御指摘いただければと思うんですが。

北出政府参考人 気象庁におきます津波予報の体制でございますけれども、我が国の周辺で地震が発生した場合に、全国百八十カ所に設置いたしました地震計のデータを気象庁本庁にリアルタイムに収集いたしまして、全国六カ所にございます津波予報中枢に伝送いたしまして、即時に解析を行いまして、震源の位置あるいは地震の規模を決定しております。

 それで、震源の位置が海域の浅い場所あるいは規模が大きな場合には津波の発生のおそれがございますので、全国六十六部に分けました津波予報区を対象として、津波予報を発表しております。津波予報は、防災上の観点から、非常に早く出すということが非常に重要でございますので、決定された震源位置や規模に基づいて計算されました津波の高さを津波予報として発表しているところでございます。

 気象庁といたしましては、今後とも、より一層的確な津波予報の発表に努めてまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 ぜひ観測体制の強化、あるいは一刻も早い通報というんでしょうか、そういう努力のために、研究開発、あるいは津波計の設置とか、そういうものをさらに進めていただければというふうに思っています。

 そこで、もう一つちょっと津波の話で恐縮なんです。実は、チリ地震津波というのが昭和三十五年にあったんですが、その一週間前に私は生まれたという、しかも、自分が生まれた病院がその津波で床上浸水になってしまったという、記憶にないんですが、生まれたときからそういう経験を持っておる立場から、さらに津波にこだわってお話をさせていただきたいんです。

 津波が起きますと、どうしても私ども、今副大臣の方でお話がありましたけれども、起きたときに一体沿岸の住民は何をするかというと、実は、普通であれば逃げると皆さん思うと思うんですが、違うんです。海を見に行くんです。それはなぜかというと、初めに津波というのは波が引いて、それからざぶんと来るだろう、そういうことを子供のころから経験上感じているものですから、どうも、今まで多分、三陸沿岸の記憶に新しい津波というのは、チリ地震津波とか、遠くで起きて大きな波形が来るので、一回波が引いて、その後どおんと来るんだよというのを私ども教わっているんです。ですから、私もそうなんですが、地震が起きるとまず初めに海岸に行って見るんです、ああっと。それで、あ、引いてる引いてると思ったら、危ないと思って逃げる。

 ところが、今想定されている津波というのは、実は、どおんと起きたら、十数分でどわっと来る。そうすると、私みたいなちょっとお上りさんで、おおっと海岸に見に行ったら、逆にその瞬間にどぼんとやられてしまう、そういう実は危険性があるという状況になっていると思うんです。

 実際、津波が起きたとき、通報が起きたとき、そこからさらに住民に対して、これは危ないんだ、すぐに対応しなきゃいけないんだ、そういう実際に津波予報が起きたときの対応について、どういう対応があるかちょっとお伺いしたいんですが。

尾見政府参考人 先生の今のお話、私も大変感銘深く伺いました。実は私も、十勝沖地震に関しまして、その後、地震の専門家の先生と御一緒に津波の現場に行かせていただきました。

 そこでいろいろなことを聞かされたわけでありますが、やはり一番の問題は、先生御指摘のように、地域の方々がある種独特の津波観を持っておられる。それで、その同行していた先生は、津波というのは、引くのが目に見えやすいので、常に引くわけじゃないんだけれども、やはり大きな経験に引きずられてしまうので、できるだけ幅広く、いろいろな津波があると。例えば、太平洋側と奥尻のあった日本海とか、全然違う形で来るわけです。ところが、そういう情報がきちっと伝わっていないということがあります。

 そんなこともありまして、住民の方は、実は避難を的確にされたというふうには余りなっていません。公共団体の方の方も、警報がなされた後も、避難勧告を的確に出すというようなところは必ずしも十分じゃなかった、また、避難勧告を出しても住民の方も逃げられない、こういうことがありました。

 これは大変深刻な問題で、頭で理解をしていること、あるいはきちっと理解をしているつもりでも、体は危機回避行動からはむしろ反対になってしまう、こういう問題だと思います。

 そこで、一つのやり方としては、その先生も強く勧めておられましたが、やはり、津波のハザードマップ、本当に危険な人がみずから参画するワークショップとかそういう形で、狭い範囲で地域地域でそういうものをつくり上げていくということがありますが、そういうものをやっていく中で、いろいろその中には、過去の自分自身は直接経験していない津波も含めて、どういう津波の被害があり得るかということをベースにマップをつくります。その中で自分がどこに位置しているのか、どこまで逃げれば安全なのか、そういうことを的確に理解していただくということで、私はこれは有効な柱になるんじゃないかと思います。

 同時に、まず警報を伝える。テレビ、ラジオがあるわけですが、消防の無線ですね。同報無線も、全国平均では三分の二ぐらいしか整備がされておりません。今回の被害を受けた地域でも整備状況は極めて悪いように思います。情報が伝わって逃げるというのが基本でありますので、そこのところを、できるだけ手厚く消防庁とも御相談をしながら進めていくということが一番大事なのかなと思っております。

小野寺委員 本当に、こういう災害というのは忘れたころにやってくるということが一番だと思います。ですから、地震が来るかもしれない、津波が来るかもしれない、そういうことを常に意識することが、逆に、まあ防ぐというわけではないんですが、いざというときのための備えになると思うんです。

 そこで、ぜひ大臣にこれは提案させていただきたいんですが、私ども、こうやって、ともすれば津波、地震のことをある瞬間忘れてしまいます。ですが、これは、危ないなと常に意識することがやはり大事だと思うんです。

 大臣は、今、こういう地震対策あるいは災害対策の本当に日本の顔でいらっしゃいます。こういう防災あるいは震災に対して、もしかしたら可能性が高い、あるいはもっと意識を高めなければいけない、そういう地域にぜひ足を運んでいただきまして、大臣が直接そこに来て、こういう危険がありますよとなれば、住民の方々も、改めて自分たちの問題というのを深く認識すると思うんです。

 ですから、ミスター防災対策という形なんでしょうか、大臣が来て、そこで改めて地域の方々が自分たちの置かれている立場を深く認識する、そういう啓蒙という形でも、全国いろいろな地域、心配な地域がありますので、ぜひそこに足を運んでいただいて、住民の方と直接この問題についてお話ししていただく、そういう大変な役目を負っていらっしゃるんで、そのようなお気持ちがもしあっていただければと思うんですが、そのことについて最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

井上国務大臣 災害は忘れたころにやってくるというようなことを言われますけれども、確かに、災害というのはだんだん時がたってまいりますと忘れてくるわけでございまして、そういう意味で、今政策統括官が申し上げましたように、防災計画をつくる段階から住民ができるだけ参加をするような形でつくっていくとか、それから、絶えず防災教育、防災の訓練が必要だろうと、こんなふうに思います。

 それともう一つは、この津波の警報が出ましても、現実の問題として津波が来なかったじゃないかなんということになりますと、この情報に対する信頼性が薄れまして、次に津波が参りましても、なかなか動かない、避難をしないということになりますので、そういう意味では、やはり、正確な、的確な情報を出していくということ、その上での防災訓練というのが非常に大事ではないかと思います。

 今御提案がありましたことを、時間のあります限り私も地方の方へ出ましていろいろな方と話をさせていただきたい、こんなふうに思います。

 どうもありがとうございました。

小野寺委員 ぜひお待ちしております。

 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 きょうは、三宅島のことを中心にして御質問していきたいと思います。

 三宅島のこの噴火災害、全島避難があって、大変に時間が経過をしております。当初は、もっと早く帰島できるんではないかというふうな観測もありましたが、現状の三宅島は、今なお火山の噴火ガスというものが島を覆っている状況であります。

 この三宅島の現況、火山ガスの動向、そういったことについて、また、三宅島でその後も地震がどのように収束をしているのか、こういったことについて気象庁長官にお伺いします。

北出政府参考人 三宅島では、依然として山頂火口から二酸化硫黄を含む火山ガスが放出され続けております。

 二酸化硫黄の放出量につきましては、平成十二年の秋以降ゆっくりと減少し、最近一年余りは一日当たり三千トンから一万トン程度と、おおむね横ばいの傾向となっております。山ろくでの二酸化硫黄濃度は、一〇ppmを超す値が観測される頻度は少なくなってきておりまして、昨年一年間の最大値は約一二ppmでした。

 なお、季節風の影響から、昨年十二月及び本年一月には、主に島の東部を中心といたしまして、島内のいずれかの観測点で、連日二ppmを超す、これは一般の人に注意を呼びかける必要のある濃度でございますけれども、値を観測しております。

 三宅島における地震活動につきましては、人が揺れを感じるような地震は年に数回発生する程度でございまして、低いレベルで推移しております。

 今後の火山活動の見通しでございますが、三宅島の火山活動は、全体としてはゆっくり低下してきておりますけれども、短期的には揺らぎがございます。また、火山ガスについても、最近一年余りは放出量がほぼ横ばいとなっておりまして、当面は火山ガスの放出が続くものというふうに考えられます。

 以上でございます。

松原委員 三宅島の火山の活動、もしくは、この火山性ガスについてのお話があったわけでありますが、ここで大事なことは、三宅島そのものは、こういった大変に危険な状況の中で全島避難をして、春、夏、秋、冬が何回か訪れているわけであります。三宅島のこの災害をどのように認識をし把握をするのかというのは極めて大事であろうと思っておりまして、ある意味で、最初のときに、地震が来て、そして火山性ガスが発生し、泥流もすごかったと。そこでこれは、身の危険もこれあり、またこれは、とにかく全島避難をしようという決断をして避難をする。これは第一部であります。

 しかし、その後、御案内のとおり、今お話がありましたような火山性ガスによって屋根、トタンが侵食をする。侵食をしたところから雨漏りがある。さらには、人間が住んでいない家屋においてシロアリが発生をする。イタチが入ってくる。この間も、三宅島の方の話を聞けば、そのいわゆる不在者家庭というんですか、屋敷のあるじがいない空き家においてネズミが今巣をつくっていると。ネズミが巣をつくれば、当然、人がいればその駆除をするわけでありますが、シロアリは思うに任せ繁殖をし、ネズミはどんどんと物をかじると。こういうことになってくると、これも、認識として、ある種の災害の延長線上にあるというふうに私は思っているわけであります。

 なぜならば、三宅島民が自分の財産であるがゆえにその家屋に戻るといっても、これは海を越えた向こうでありまして、また、自由意思で戻れる環境には、さまざまな行政の指導においてあり得ない環境だろうと思っております。

 したがって、こういったネズミやシロアリ、そういった被害、亜硫酸ガスによる被害、こういったものは極めて二次災害として現在進行形の災害であるというふうに思っておりますが、こういったシロアリ等の被害、また、この被害をどのように認識するか、このことを統括官にお伺いいたします。

尾見政府参考人 シロアリの被害についてのお尋ねでございますが、この点に関しましては、三宅村が、先生御案内だと思いますが、平成十四年度からシロアリの被害調査と駆除事業というものを実施しております。

 それで、平成十四年と十五年で調査した件数は二百七十一件というふうに聞いていますが、そのうち七七%に当たる二百九件でシロアリ被害を確認し、そのうち百九十七件については、住民の方々が今一時帰島されておられますので、そういうものに合わせて駆除を実施しているというふうに聞いております。この被害調査、駆除事業につきましては、三宅村の方で平成十六年度も引き続き実施されるものと聞いております。

 そこで、この被害をどういうふうに考えるかということでありますが、この火山の、あるいは火山噴火に伴う被害というようなものの範囲として、やはり誠実に、適切に対応すべきものは対応するというのが基本的な考え方であるというふうに承知しております。

松原委員 こういう一時帰島のときに駆除をするとかネズミを追っ払うとか、そういうことは、してもおのずから限界があるわけであって、こういった財産の保全をどのようにするかというのは、三宅島が復興する上では大変に重要なポイントであろうというふうに思っております。

 率直に言えば、これだけ全島避難から時間がたっているわけでありますから、早く島民が帰島するというふうなことが実は大きなテーマになっているわけであります。

 そこでお伺いしたいわけであります。前回もこの災害対策特別委員会で私は質問したわけでありますが、従来から、この三宅島のインフラ整備、道路とかその他の復旧の事業で多くの土木作業というものが発生をしている。たくさんのそういった関係の工事に携わる皆さんが働いていらっしゃるわけでありますが、このいわゆる三宅島全島避難以降、こういった方々において、このいわゆる災害に関する部分での負傷もしくは被災といったもの、何か火山性ガスで呼吸器系が困難になったとか、そういった事例は現状までにあるのかないのか、お伺いいたします。

尾見政府参考人 確認できます範囲では、そういう事実はないというふうに承知しております。

松原委員 つまり、今までたくさんの人が三宅島でこういった作業に従事する間においては、災害による被災は発生していない、こういうことだと思います。

 実際は、防毒マスク等の利用とかそういったものは行われていたと思うわけでありますが、そういった装着をすることによって、もしくは装着をしないことによってこういった被災がその後あったのかなかったのか、この辺についてお伺いいたします。

尾見政府参考人 実際に建設事業なんかに従事される職員の方が現地でどういうふうな形で仕事をされているか、その際に、例えば火山ガスの危険に対してどういう備えをしているかということについては、データ的なことは直ちに持ち合わせておりませんが、今先生がおっしゃったように、基本的にはそういう防毒マスクを携帯して作業をすると。

 それで、先ほども数値が出ておりましたが、二ppmという数字が、やはり一般の方でもそれに長くさらされると危険であるというようなことで、作業を中止してそこから避難されるとか、あるいは、山の上のそういうより危ないところには近づかないとか、そういうことで適宜対処されているというふうに考えております。

松原委員 私が今も質問したことでぜひ考えていきたいことは、実際にその後の被災者というのは発生していない。被災というか、実際の火山性ガスでやられるとか、地震で何か起こるとか倒れたとか、そういう人はいないと。当然、土木作業に従事する方々ですから、いわゆる健康な肉体を持っている方が多いというふうに思いますが、それは一つの条件なのかもしれませんが、要するに、今の三宅島に人間が、こういう表現を使っていいか、まあ人が、現実に適しているかどうかは別にして、活動することが可能だということが、この数年間の土木作業員等が仕事をしていることで明らかになっている、こういう認識を持つことはできるんでしょうか。

尾見政府参考人 大変難しい御質問だと思います。

 確かに、土木作業員の方にそういう備えをした結果だと思いますが、そういう事故があるという報告は聞いておらないわけであります。そういう作業員の方は、ある意味である目的意識を持って、あるいは、ある危険というものを十分に念頭に置きながら、生活の糧を得るために仕事をされる、そういうことでありまして、一般の家庭の方々の中には、例えばお年寄りの方とか赤ん坊の方とか、肺の悪い方とか、いろいろいらっしゃいますが、そういう方も含めて、一般の方が今三宅島のあの火山ガスの現況のもとできちんと暮らしていける、そういう環境にあるかというふうなお尋ねだとすれば、そのことについては、直ちにはちょっと厳しいのではないかなというふうな感想を持っております。

松原委員 要するに二つあると思うんですよ、今の統括官の議論で。

 一つは、いわゆるある程度の健常者であると。さっき私は既に冒頭質問で申し上げたように、一定の水準の、例えば気管支系に障害を持っているとかいうのだとちょっとこれは難しいかもしれない。それはわからないですよ、どういう状況か。

 二つ目は、それだけの緊張感を持って、つまり危険というのが、例えば火山性ガスが風向きが変わってやってくる可能性がある、そういう危険性をいわゆる緊張感を持って行くならば、逆に言えばこの数年間の事実は、翻ってそれは、実際そこで事故は起こっていないという報告でありますから、私は、十分に帰島というものは、そういった意味でそういう幾つかの条件を加味するならばできるという認識を、それは、何かあったときだれが責任をとるかというここの議論が一番重要な行政側の議論としてあるのは認識をしておりますが、そういうことではないかと思っております。

 そこで、実際にこの三宅から離れた方々が三宅に戻れないでずっといると。先ほど、気象庁長官の話で、火山性ガスはこの一年間横ばいという話であったと思うんです。その最初の一年目、二年目というのは極端に減る方向であったんですが、この一年横ばいであるという傾向であります。もちろん、人知を超えた自然災害でありますから、どういうことが起こるかわかりません。しかし、もしこの横ばいが向こう例えば十年続いたとか、仮定の話は難しいかもしれませんが、つまり、どこまでが一体限界なのかと。十年といえば、それは生まれた子供が十歳でありますから。十歳の子供は二十であります。

 つまり、そういうことを考えるならば、現状の火山性ガスの減っていくスピード、この可能性と、しかしながら、一方では、限界これぐらいで何とか戻らなければいけないという目安が僕は本来はあると思うんですよね。それは、二十年も三十年も戻らないでいいという議論にはならない、やはり一世代でありますから。

 その辺が、非常に難しい、答弁しづらい答えかもしれませんが、どの辺を目安と考えているのか、お伺いいたします。

尾見政府参考人 大変難しい御質問が続くわけでありますが、今でも三年半ということで、これは、日本の災害史上も例の少ない長期避難ということだと思います。したがって、初めての経験ばかりであります。それで、島民の方々が大変窮屈な避難生活をされているというようなことで、大変御苦労されているという思いを持っていることをまず申し上げたいと思います。

 その上で、一刻も早くガスが低下してくれることを祈るということと同時に、やはり自然のことでありますので、いつ下がるかわからないということも逆に言えば言えるわけでありますので、帰島に向けた準備をいろいろな形でできることからやっていくということが基本ではないかと。そういうことをやっていけば、至誠天に通ずというか、神様もどこかで我々の努力というのは認めていただくというようなことで、早期に帰れる、ガスが下がる、そういうこともあり得るんじゃないかなというふうに、これは非常に私的な感想を申し上げて申しわけありませんが、そんな感じもしております。

 いずれにしても、私どもの使命としては、我々にできることをきちっとやっていく、そういうことではないかと思っております。

松原委員 帰島したときに生活が万般できるようなインフラ整備をするということは、当然必要だと思っております。

 実は、これは後でまた質問しようと思っていたわけでありますが、帰島するインフラが整備されても、住む住居がぼろぼろである。結局、インフラがあって人が戻れないということになることも想定されますので、これはまた後で若干触れていきたいと思いますが、これは大きな問題だと思うんですね。

 それで、私が申し上げたいのは、さっき言ったのは、現実に事故は発生していない。火山性ガス等による事故は発生していない。もちろんそれは、健康な人間であるということや、緊張感を持っている、これはあるわけですね。しかしそれは、もうこの数年、実際そこで仕事をしながら生活をしている。一方において、ガスがこの一年間横ばいである。もちろん、尾見さんおっしゃるとおり、これがどこかで急になくなる可能性はあります。可能性はありますが、私は、もはや決断をするべき時期が極めて近づいてきているというふうに思っております。この状況が向こう二年、三年続いて不決断であるよりは、この状況の中でも決断をするべき時期が来ている。

 それは、責任問題等を含めて非常に難しいのはわかります。しかし、今まで事故がなかったということを考えるならば、私は、一般の社会だって、例は悪いですけれども交通事故もあったりするわけですから、そういった意味では、一つの決断するタイミングだと思っておりますが、この帰島の決断の基準というのは、今そういうものの議論が全くなされているのかなされていないのか、なされているとすればどういう内容なのか、お伺いいたしたいと思います。

尾見政府参考人 今、この問題を考えるに当たっては、私ども国、内閣府と東京都、三宅村の間で帰島に向けた帰島準備プログラムというような検討作業というのをやっておりますので、しょっちゅう顔を合わせて意見交換をしておるわけでありますが、その中で、ですから、例えば先生の今おっしゃった住宅の問題等も含めて、準備できることはちゃんとやっていこうということでありますけれども、そういうものも一方である程度見きわめながら、ガスが下がったからといって直ちに戻れるかといえば、やはり、そこに生活があり暮らしもあるということでありますから、ちゃんとそこが一つの社会として機能するということでなくてはいけないと思いますので、いずれにしても、そういうことをトータルに判断していくということになるんではないかというのが関係者の共通の認識だというふうに思います。

 それから、一点、ちょっと先ほどの関係で。建設会社の方々というのは、一つの組織された行動を基本的にはされると思います。それに対して、この地域社会の中でそういう組織立った行動というのが危険に対してできるかどうかという点も、先生のお話を聞いていてちょっと浮かんだこともありますので、申し上げておきたいと思います。

松原委員 前向きな御発言だと思っております。というのは、そういう組織立ったものもマニュアルに入れるなりして、そして、現地島民の皆さんが了解をしてやろうということになったらば、ただ問題は、それでも帰島するべき時期だと私は思っているんですよ、難しいけれども。ただ、非常に決断は重いんですよ。それは当該村長が決断するとか、もしくは、東京都はかなりこれは大きいですけれども、ただ本音の部分では、やはり国が、そろそろ帰島を考えようという後押しをすることも含めどこかで決断をしないと、三宅島自体がなかなか島として成り立っていくのかなというのは、私、率直に非常に不安に思っているわけであります。

 その中で、最終的には、火山性ガスと共生する帰島というものをせざるを得ないんではないかというふうに、やはり、将来的に火山性ガスが出なくなるということはそれは可能性としてはあるけれども、この状況が十年続いて、では十年待ちましょうという議論は私はどうかなと思っているんです。これは、それこそ全島の島民の意思決定も含めての重いことですからやらなきゃいけないだろうけれども、そうしたときに、火山ガスとの共生ということが議論になると。

 今の、例えば土木に従事している皆さんがある程度安全を担保しているというのは、やはり、脱硫装置つきのクリーンハウスが存在しているということが極めてポイントになっているわけであります。

 そこで、このクリーンハウスがあるがゆえに何かあったときに逃げ込める、それまでの間、応急避難措置としてはマスクをつける、こういうことでありますが、私は、どういうケースになるかわからないけれども、現状は続いても帰島するという決断が行われる可能性があるとするならば、各家に、二年ぐらい前のこの委員会の質問でも質疑したわけですが、あのときは東京都の役人の方に質問したんですが、各戸にクリーンルームをつくるというふうなことが僕は極めて現実的に必要なのではないかなという認識を持っているわけなんです。

 今、このクリーンルームというのは、例えば、土木作業に従事している皆さんの仮設住宅というかクリーンハウスに入っているんですが、足りない場合、民宿とかに分宿したりするという話を聞いておりまして、もし尾見さんの方でわかれば、そういったところの大きな大広間にいわゆる脱硫装置をつくる場合の費用というのは幾らぐらいかというのは、きのうちょっとあれしたときは数字を聞かせてもらったんですが、もし答えられたら。ありますか。なければないでいいんですが。

尾見政府参考人 済みません。大変申しわけありませんが、今はちょっと手元に資料を持ち合わせておりません。申しわけありません。

松原委員 きのうお伺いしたとき、大体七十万から二百万という幅があったんですが、それは、こちらのクリーンハウスは非常に高いんです。民宿等の部屋で十二畳とか二十畳とか雑魚寝だったら、そういうのは七十万から二百万というふうに僕は聞いたんですよ。東京都の方に二年ぐらい前に聞いたときも、たくさんつくれば安くできるんじゃないかということを彼がふとおっしゃっていたわけであって、これは、数ができればスケールメリットで落ちてきますから、五十万とか三十万とかという数字になるかもしれない。

 ただ、それが実際脱硫効果があるかどうかというのを、いわゆる論証というんですか、知見というのは、これは非常に必要ですから、三十万円の脱硫装置で知見をやったら本当にそうなるのかどうかというのは、またそれは、人体にかかわるものですからきっちりとやらなきゃ――何かお答えありますか。はい、どうぞ。

尾見政府参考人 クリーンルームの設置につきましては、帰島される島民の方々の健康状態とか帰島後に居住される地域の気象条件など、さまざまな要素を勘案して建造されるべきだというふうに考えております。プログラムの準備検討委員会の中でも、こういうクリーンルームのあり方についても問題意識は持っております。

 ただ、最終的に、各戸の中のクリーンルームということについては、今委員御指摘のように、具体的にそれがどこまできくのか、どれぐらいのものをかければどこまできくのかというようなことについては、都の方でいろいろ村の協力も得てお調べになっているというふうに聞いていますが、今のところ、こうであれば明確にいけるというような話まではいっていないように承知しております。

松原委員 これは企業がまたつくったりしている部分もあるので、ぜひともそれは、安くいいものが、実効性のあるものができることを私は確信をしておりますが、問題は、そこで費用の部分の話になって、脱硫装置つきのそういったクリーンルームを各戸につくるとした場合に、この費用をなかなか国は出せないという議論がある。つまり、今回の法律でもありますが、個人の家に公のお金が使えるかどうかというこの根本命題になってくるわけであります。実は私、これは、理屈からいってそういう理屈が一方であるんだろうと思うんですね。個人の財産にそういう公のお金を使うことの是非についての理屈はある。

 しかし、実際かかる費用というのを考えると、これはかなり粗い議論かもしれませんが、例えば、阪神・淡路大震災における応急仮設住宅設置費というのが、戸数が四万七千二百三十戸で金額が千六百一億七千百三万五千五百二円。ここには、仮設住宅のリース料、解体費用まで含んでいますね。設置、リース、解体、それから仮設住宅購入費、それから、エアコンとかいろいろとある。これを一戸当たりの平均単価、数字を計算すると、三百三十九万一千二百九十九円。約三百四十万かかっている、一戸当たり。

 宮城県における北部地震の応急仮設住宅設置費は、百六十二戸で、これは大きいの小さいのあるんですが、アベレージで、金額が五億三千五百五十七万八千七百五十円、単価は、百六十二戸でこれを割りますと三百三十万六千四十二円、つまり三百五十万。人によっては五百万という話もある。こういうお金が実際に使われているわけであります。撤去されてしまうから、最後はつくったのはなくなっちゃうわけです。もちろんこれは、趣旨としては緊急の建物である、こういうことですね。仮設住宅であると。

 ただ、私は、理屈の上で公的なお金を個人の家に使うのはだめであるというのは、一つの理屈としてこれも議論をしなきゃいかぬ。今回も大分その部分は御努力をしているようには拝見をしておりますが、これは議論しなきゃいかぬけれども、当面これは、お金の部分では、例えば脱硫装置を百万円としても、この三百万よりは少ないわけですよ。トータルでというのはまた議論が別になってきますが。

 私は、金額の多寡ではなく筋論の議論であるとするならば、例えば脱硫装置を各家庭にレンタルというんですか、レンタルとして貸し付けるようなことも一つの考え方。こちらの議論を尊重しながらも、実態としてこういうふうに費用がかかったりしていることを考えれば、グロスとしては、財政的にはいけるかなみたいなそういう議論があってもいいのではないかと思うんですが、このレンタル方式ということでちょっとお伺いしたいと思います。

尾見政府参考人 ただいま申し上げましたように、各戸にクリーンルームをつけるということについては、全体の安全確保対策の中で、まず適時適切に観測をして、それを伝達をして、バスとかそういうものを使って避難できるような場所に逃げる、そういう公共施設なんかについてはクリーンルームという脱硫装置をつけていく、そういう方向までは出ています。最終的に、個人にいったときにどこまでそれが機能するかと。実は、一部には、最後にはやはり逃げなくちゃいけないんじゃないか、そういうことすら想定されるというようなお話も聞きます。

 ですから、性能がどれだけのものが維持できるか、そういう話は、実験等も踏まえてこれからの議論でありますので、現段階では、そういうふうになった場合にはどうかということについては、まだコメントすることができる段階ではないというふうに思っております。

松原委員 最終的には、こういった脱硫装置つきクリーンルームを各戸につくるということが必要になる局面があると思うんですよ。永遠にこの火山性ガスが出ている間は戻らないということだったらそういう話になりませんが、私は、もうそうはいかないだろうと。しかも一方で、確かに組織的もしくは緊張感を持ち、緊張感を持ちというのは組織的ということなんですが、そして同時に、それなりの健康者であれば今よりもずっと火山性ガスが多い段階から既に入っているわけですから、そういった意味では、そろそろそういう時期に来ているのかなと。

 そのために、議論するときに、現場のいわゆる受け入れ体制を考えたら、さまざまなダムをつくるとか、それは必要でありますが、人が住まなきゃしようがないわけですから、やはりこういったもののレンタルが、算段はぎりぎりです、そういったものも一つのアイデアとしてやはり考えていかなきゃいかぬのじゃないかというふうに私は提言をしたいと思います。

 最後に大臣に御所見をお伺いしたいわけでありますが、実際、今回いろいろな議論の中で法律も出てくるわけでありますが、やはり、個人財産に公のお金を使うということの是非の問題でありますが、従来は、そういうのは使っちゃいかぬという声が多かったのであります、議員の中でも。しかし、今日は大分それは変わってきている。あるタイミングを経てこれはそういう決断が必要だろうと思いますが、住宅本体に支援できないというこの部分に関して、そういう方向性をやはりにじませた御所見を言っていただきたいということと、冒頭申し上げましたように、三宅の場合は大変長期化している。こういう場合、いわゆるイタチやネズミやシロアリの災害も含めて、これは言ってみれば現在進行形の災害であるという認識をした場合に、長期被災ということを含め、生活支援を一回やって終わりよということではなくて、実際、今現在進行形で被災が続いているという認識で、再び、そういった生活支援に関して一つの概念として同じであるという理屈の中で行うということも必要ではないか、こんなふうにも思っているわけでありますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。

井上国務大臣 三宅島の現状の災害、これが現在進行形じゃないかという御意見でありますけれども、確かに、現在進行形のものもこれはあると思いますので、そういうようなお考えを持たれるというのもごく自然じゃないかと私は思います。

 今、そういう中で、クリーンルームを家の中につくることに対する助成、これは確かに非常に微妙な問題でありまして、しかもそれをリースでやるということですから、確かに、一つのアイデアとして検討をしていかないといけないアイデアではないかと私どもも思います。

 ただ、個人財産の本当に中枢的な財産、資産というのは、やはり住宅でありまして、これに対して税金を直接につぎ込んでいくということにつきましては、まだ我が国としてはそこまではいっていない、こういうことでありまして、まだまだそこまでいきます過程で深めるべき議論がたくさんあるんじゃないかと、そんなふうに考えております。

松原委員 以上であります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、都築譲君。

都築委員 民主党の都築です。

 私も、愛知県在住でございまして、東海地震、想定される震源域がかなりずれて、愛知県もすっぽりとその対象地域に入ったということでございまして、大変関心が高まっておりますし、また、阪神・淡路大震災のときは、私も、当時は参議院でございましたけれども、随分、予算委員会やあるいはまた災害対策特別委員会でも質問させていただきました。

 きょうは、この東海地震、想定されるものに対して、あるいはまた東南海・南海、あるいはまた南関東、こういった大規模な地震が想定されるに際して、阪神・淡路大震災のときの教訓を踏まえての対策についてどういうふうに準備をされておられるのか。気づいていたらまず絵にかいてみる、絵にかいたら、それを今度は実を入れてみる、実を入れたら、今度はちゃんと食べられるようにしておかないと、幾ら教訓を得ても、反省をしても、何の役にも立たない。こういうことから、実は、大臣を初め関係の機関の皆さんのお話を聞いていきたい、こんなふうに思っております。

 大臣が所信表明の中で、昨年、地震対策の大綱、さらにその方針を、さらにまた活動要領まで定められた、こういうふうなことを言っておられました。そして、一月の二十三日には、その活動要領に基づいて図上訓練を実際に実施をされた、こういうことでございまして、ただ、新聞のニュースの取り上げは余り大きくはなかった、こんなふうに思っておりますが、この図上訓練についての大臣の評価、感想についてまずお伺いをしたいと思います。

井上国務大臣 東海地震のような大変大きな地震になりますと、関係する部署も多いし、あるいは関係する住民も大変たくさんいるわけでありまして、そういう意味で、いろいろな意味におきます訓練といいますか、そういうのが必要になってくると思います。

 計画をきちんとつくりまして、その計画に即して実際の訓練をするということでありますけれども、特に東海地震のような場合は、今申し上げましたように、非常に規模が大きい、関連するところが多いということでありますから、まずはやはり図上の訓練、これをきちっとやりまして、その上でさらに実際の訓練を積み重ねていくということが大事じゃないかと思うんです。

 このたび実施しました図上訓練というのはそういう位置づけでありまして、これは、関係省庁、中央だけで百七十名ぐらいが集まりまして訓練をしたということでありまして、その成果が非常に大きかった、また、問題の方もそれなりに浮かび上がってきたということでございまして、この防災の図上訓練というのは非常に成果が大きかったというふうに考えておりまして、これを土台に、さらに防災計画に基づく実施、そういったことを充実していきたいというふうに考えております。

都築委員 今、いろいろ問題点も発見したし成果はあった、こういうことのようでございますが、活動要領で、実際に東海地震が起こったときの想定についてさまざまなものを用意されておられるわけですが、例えば、私のいただいた資料ですと、住宅全壊が四十七万棟、それから死者が約九千五百人、こういうふうになっております。新聞の報道によると、この図上訓練の中では、建物全壊約五十一万棟、死者約二千三百人、こういう状況を想定して、交通規制や避難状況など刻々と変わる状況に対応するという訓練をやった、こういうことでありますが、この図上訓練の被害想定の概要というのはどのぐらいのものだったのか、活動要領とのこの差異というのは一体どういうところから生じているのか、そういったところをちょっとお聞かせいただけますか。

尾見政府参考人 それではお答えをさせていただきます。

 今回の図上訓練は、昨年の十二月に策定されました東海地震応急対策活動要領の検証目的として実施いたしました。したがって、基本的には、活動要領策定のもととなりました、三月十八日の中央防災会議で決定された被害想定を用いて実施しております。

 今回の訓練は、新しい情報体系化、これは、今回、注意情報という範疇を入れましたが、そういうもとで行う初めての訓練であって、地震予知が想定されるというケースで行いました。したがって、今委員御指摘のような、例えば、被害想定の死者の数は約二千三百名ということでございました。

 この図上訓練で得た成果をもとに、これからまた活動要領に反映していくということをしていきたいと思っております。

都築委員 注意情報下での対応ということですが、地震は忘れたころにやってくるという有名な寺田寅彦さんの言葉がありますけれども、忘れなくてもやってくるということを考えると、注意情報みたいに、来る来るというふうな形で対応できればそれはそれなりにいいんですが、大体、どかんと阪神のときのようにだれも気づかなかったものが来るというケースを想定して、そのケースで想定して活動要領でこういった被害想定というふうなことであれば、本当に、実際の状況の変化に応じて動かせるようなものをつくっていくべきじゃないのかな、こんなふうに思うわけであります。

 政務官、副大臣の方もたくさん来ていただいておりまして、これは大変恐縮ですが、阪神・淡路のときのあのときの一つの反省は、平成七年の災害対策基本法の改正によって、緊急対策本部の設置とか交通規制の問題とか、いろんな形で随分と進歩したと思うんです。

 ただ、あの初動態勢のときの反省点は、まず第一に、当時の総理大臣は、記者に問われて、何しろ初めてのことでしたのでということで、十分な対応が官邸ができなかったということと、当時の知事さんが決断ができなかったのか、自衛隊が県境まで来ていながら、要請が出なかったということで、一昼夜、あの長田地区で火が燃え盛ったという状況があったわけですから、そういったものを考えたときに、図上訓練という形でやるのも、これは、鳥取県の西部地震が起こったときは、何かその直前に図上訓練をやっていて、やっていたから対応が迅速にいったということもあったというふうに私は聞いておりますけれども、実際に本当に動かせるところはどうなのかというところもよく考えていかなきゃいけない。

 だから、その点をもう少し詳しく今からちょっと聞いておきたいと思うんですが、まず先ほどの、いろんな問題があった、新聞でも、例えば産経新聞の報道ですと、若干の混乱があったとかいうふうなことも報道されているようでありますけれども、どういった本当に具体的な問題があったのか、そしてまた、それはどういうふうに今度は直していこうとされるのか、そういう点について、まず反省点についてお伺いをしたいと思います。

尾見政府参考人 一月二十三日の東海地震対応訓練における反省点ということでございますが、図上訓練を実施しました結果、一つには、被災が想定される地方公共団体と被災情報のより緊密な共有を図るというために、情報連絡体制を一層強化するということが必要だなということ、それから、業務量に応じた事務局要員の適切な配置、こういうものも必要だということなど、多くの課題が得られたわけであります。これらの課題につきましては、関係省庁と速やかに検討してまいりたいと思っております。

 それから、これは反省ということではございませんが、必要性という観点からいけば、実際に応急部隊をどう派遣していくかとか、広域医療搬送については具体的な計画を事前にきちっと定めておく、そういうことが必要だということを改めて認識させていただいたというところでございます。

 それで、これらの計画につきましては、本年六月までに関係省庁において今現在作業をしておりますので、その結果に反映させていきたいと思っております。

都築委員 それで、活動要領によりますと、先ほども申し上げたような被害想定に対応して、要は、救援、救助に必要な体制として、例えば、救助部隊の必要量として延べ約三万八千人とか、それから、医療チームの必要量は延べ約一千五百人、物資の必要量は、約百八十万人の避難者に水、食料が必要とされる、こういうふうな形で示されて、それを具体的に派遣計画などを踏まえて平成十六年六月までに決める、こういうことになっております。

 ただ、阪神・淡路のときのことを思い出してみると、随分本当に消防部隊も東北の方からわざわざ応援に駆けつけてくるとか、警察も全国的に動員する、自衛隊は、もちろん全国組織ですから、近隣の駐屯地から直ちに結集する、こういうふうな状況があったわけですが、それでもやはり六千五百人近い方が亡くなってしまった。最初の一撃でほとんどの八割の方が住宅倒壊等による圧死であった、こういうふうに言われると、実際どれほど救出できるかわかりませんが、それでも、瓦れきの中から救い出すとか、あるいはまた、けがをした人たちがちゃんと生き長らえるとか、人命救助というのが一番最優先事項としてやはり取り上げられなければならない。

 それを、今統括官が言われたような形で、業務量に応じた人員の確保、こういったものを、実際にでは動く部隊は、やはり自衛隊、それから警察の人、それから消防の人がそれなりの業務経験を踏まえて対応していくわけですから、その三・八万人の内訳とかそういったものも今の時点でもうかなり明確に決断をして準備をしておかないと、東海地震、きょう注意情報が出ました、あしたは警戒警報になりまして、さあ、あさってに発生ですなんという状況だったらまだいいかもしれないけれども、きょういつ来るかもわからないというふうな状況を想定したら、そんな、平成十六年の六月というふうなことで、わずか四カ月先のことかもしれませんが、でも、一体何が起こるかわからないというふうな状況を考えたら、もうあれから実は九年も、阪神大震災のときから九年もかかっていることを思うと、それから、震源域の想定区域が移ったということを考えたのも二年前の話ですから、もっと緊急に準備すべき必要があるんじゃないかとこう思うんです。

 あと私がお伺いしたいのは、阪神大震災の反省事項の一つとして、やはり全都道府県による協力体制をつくるというふうなことで、私の質問の四番と六番ですが、例えば、自治体と警察と消防が、それぞれ全都道府県による全国レベルの広域応援体制についてまとまった。それから、救助部隊については、今度は防衛庁も来ていただいておりますけれども、三万八千人の内訳とか派遣方法、派遣計画、こういったものについて具体的にどういうふうに今対応、準備されておられるのか。

 例えば東海地震が、訓練をやった八県域で、東京から神奈川、あるいはまた静岡、愛知、あるいは山梨まで含めてとか、こういったところで実際に起こったときに、どういうふうにどこの地域から運んでくるのか、どういうふうな経路から入ってくるのか、そういったところまでもう既にある程度つくっておかないといけないんじゃないかというふうに思いますが、それぞれの副大臣、政務官から対応状況についてお聞きをしたい、こんなふうに思います。

浜田副長官 一月二十三日の図上訓練に際しまして、防衛庁・自衛隊といたしましては、各自衛隊が作成している東海地震対処計画を踏まえまして、図上訓練ということでございますので、その概算を個々に決めて出したところであります。

 陸上自衛隊におきましては、発災後約半日間において、東北地方から近畿地方に所在する約一万七千人の救助部隊を、陸路、空路、いわゆる陸自、空自のヘリコプター、そして空自の輸送機等を利用して派遣するほか、全国から航空機約二百十五機を派遣することといたしました。

 海上自衛隊におきましては、全国から艦船約二十四隻、航空機約五十九機を派遣することとしました。

 それで、三番目の航空自衛隊でありますけれども、全国から航空機を約七十三機派遣するということで、図上訓練用としてこの概算の数を出したところであります。

 また、現在、政府全体において東海地震対策の見直しが進められておりますので、これを踏まえて、防衛庁においても、各自衛隊の東海地震対処計画の見直しを行っているところでございますし、今後、このような見直しの作業の中で、実際の運用可能性のさらなる検討を進めながら、具体的な派遣規模の検討を進めてまいりたいと思っているところでございます。

平沢大臣政務官 消防につきましては、緊急消防援助隊でございますけれども、現在は、十二時間で参集可能な二十八都府県の消防隊員につきましては、原則陸路で出動することになっておりまして、規模は、百五十四隊、七百七十人、交代要員を含めますと約二千三百人でございます。それ以外の道府県からは、自衛隊との連携あるいはフェリーなどで空路、海路で出動させることになっておりまして、規模は、二百八隊、約千四十人、交代要員を含めますと約三千百人でございまして、今後さらに内容を検討しまして、必要な見直しを行っていく予定でございます。

瀬川政府参考人 御質問は、東海地震の場合と、それから全国的な事案に対する対応と、二点だったかと思います。

 まず、東海地震が発生した場合のその三万八千人の内訳の問題でございますが、これは、この一月二十三日の図上訓練におきまして、政府全体として二万七千人の派遣ということでありますが、そのうち警察は、約三千三百人、一二%という数字でございました。それで、この三千三百人は、強化地域に指定された県を除く全国の広域緊急援助隊が三千三百人ということでございます。

 この広域緊急援助隊といいますのは、先ほど来御質問にもありましたとおり、阪神・淡路大震災のいろいろな反省、教訓に基づきまして、平成七年の六月に設置をいたしました。これは、都道府県の枠を超えて広域的に即応する、かつ、高度の救出救助能力と自活能力を有する災害対策のエキスパート部隊ということで、全国に約四千人の体制を持っているところでございます。

 それで、この四千人のうち、強化地域に指定された県を除く人数三千三百人を即時に派遣をする、こういう考え方でございます。これは、指示があって少なくとも三時間以内には出動が可能だという体制でございます。

 さらに、これに加えまして、必要であれば、隣接、近接県の機動隊、管区機動隊約四千二百人、これが半日から一日で出動することができるということでございます。その後、状況に応じまして全国的な応援態勢を展開するということにしております。

 それで、ルートといたしましては、陸、海、空、それぞれのさまざまな輸送手段を利用した輸送要領の研究、それから関係機関との連携というのが非常に重要でございまして、広域の派遣訓練を実施しております。

 いずれにいたしましても、六月末までに具体的な体制を盛り込んだ計画を策定するということになっておりますので、この点は今検討しているところでございます。

 それから二点目の、全国的な体制についてもお尋ねがあったかと思いますけれども、これにつきましては、今のと若干重複をいたしますが、大規模地震が発生した場合には、今申し上げましたとおり、全国の広域緊急援助隊が四千人おりますので、これを一時的に派遣をする。それから、機動隊、管区機動隊、これが合計で、一部この広域緊急援助隊も含みますが、約一万二千人いる。これが半日から一日以内で出動ができるということでございます。

 申しおくれましたが、この広域緊急援助隊の中には、交通部隊、単なる救命、救助だけではなくて、交通規制等をやる部隊等も含まれております。

 さらに、必要があれば、機動隊、管区機動隊以外にも、第一線の警察職員で編成する部隊も派遣をしようというふうに考えておりまして、阪神・淡路大震災でも、いわゆる治安維持のための部隊等も含めて被災後派遣をしたということでございまして、総力を挙げての体制を検討しております。

都築委員 統括官、今のお聞きした数字を合わせると三・八万人にはならないんですよね。そこのところの問題と、それから、これは大臣にお聞きする必要があると思うんですが、阪神・淡路のときの反省の一つは、やはり情報の一元化。情報も、情報センターというのができて、自衛隊や警察やあるいは消防、それぞれ自治体から上がってくる情報が情報センターの方でかなり一括的に把握できるような状況になっているということから、そこがしっかりしていればいいんだろうと思います。

 ただ、実際に業務を遂行していくときに、では、警察官の仕事、消防隊員の仕事、それから自衛隊員の仕事、それぞれ災害対策基本法を改めて、自衛隊員も消防隊員も、警察官が動けないときは、あるいは市町村長が不在になってしまったときはその職務を代行できるとかいうようなことになっておりますけれども、やはり、日本の非常に優秀な行政組織も、縦系列でいっているから、全体をうまく指揮命令していく調整系統というか指示系統というか、そういったものがないために、混乱が起こったり、重複したり、ぽかっと穴があいてしまったりということも結構あると思うんですね。そこをどう克服していくかということが、やはりまた図上訓練の中でも僕は非常に大きな問題、今言われたのはそういったところも含めて言われているんだろうと思いますけれども、そこのところを本当にどうされるのか、このままでいいのかという点について。

 ちょっと補足的に、三・八万人に達しないじゃないか、自衛隊が一・七万人で、消防が合わせても約六千人ぐらい、それから警察の方も、幅がちょっとありますけれども、三千三百から一万数千、こういう状況でありますけれども、そこら辺の状況についてちょっとお教えいただいて、あと、指示系統の話をお願いします。

尾見政府参考人 三万八千人という数字は実は二日分でありまして、阪神・淡路の震災で実際にこれだけの人間を救う必要があったという数字が出ておりますが、そのためにはどれだけのマンパワーが必要かという考え方で逆算をしますと、一万九千人ぐらいの方が必要だということで、それに二を掛けて三万八千という数字に相なっております。

 それから、訓練のことでございますが、今回は初めて注意情報というのをやりましたけれども、三万八千の場合は、いろいろな事態があります。突発的に東海地震が起きるということも東海地震の一つの範疇としては今予想されておることでありますから、その場合のことについても応急要領では考えておりますので、これからの訓練については、そういう問題も対応していきたいと思っております。

井上国務大臣 御指摘の点につきましては、かつての阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、一応制度的には整備をいたしているわけでございまして、大震災の場合には、関係閣僚が情報センターに参集をいたしまして、そこで調整をしながら、各それぞれの所管の事項につきましては所管の職員を督励して対応していく、こういうことでございます。

 日本の災害、あるいは有事だとかテロ、それを含めました対応といいますのは、今御指摘のように、きちんとした基本法をつくりまして対応するというんじゃなしに、その必要の都度、対応を考えてきたということだと私は思います。したがいまして、それはそれなりに対応はできるようになっているわけでありますけれども、しかし、必ずその事態にも対応できるのかとなりますと、かつての阪神・淡路のあの大震災のようなことが起こらないとも限らないわけであります。

 そういう意味で、有事あるいはテロ、それから災害、こういった事態に対応する基本法の必要性があるんじゃないかということを、これは、武力攻撃事態法の審議のときにも御案内のとおり問題になりまして、当時の与党と民主党の間で覚書が交わされまして、これはできるだけ早く基本法をつくっていこう、与野党協議をしていこう、こういうことに相なっているわけでございまして、私は与野党のその協議が進むものと思っておりますけれども、確かに、そういうような基本の制度がありまして、それに基づいて全体が動くことになっておりませんが、今のところは、各個別の法律に基づきましてできる限りの調整をしながら対応していく、こういうことだと思います。

都築委員 それはまた最後の締めのところでお聞きしたい、こう思いますが、ちょっと時間がなくなってまいりました。

 国土交通副大臣も来られていると思いまして、今、災害が起こったときの対応を言っておりますが、地震対策ということで、それこそ住宅の耐震強化とか、さまざまな施策をあらかじめちゃんと個人の民間の住宅でも用意しておこう、こういうふうなことで言われております。

 ただ、大変立派な施策が講じられておるんですけれども、実際に、耐震診断とか耐震強化の改修とか、あるいはまたそのための補助金あるいは融資制度、こういったものは本当に使われているのか。昭和五十六年以前に建てられた木造住宅約一千三百万戸が何らかの補強が必要だ、こういう話でありますけれども、では、そのうちの何%が終わったんですかと言われたら、大変心もとないんじゃないか。しかも、東海の静岡とか愛知県の地域というところに限って見たら、では、一体どれぐらい使われているんだろうか、そういった状況についてちょっとお聞かせをいただければと思います。

佐藤大臣政務官 大臣政務官の佐藤でございます。

 今、都築先生の阪神大震災の教訓を踏まえての御議論をお聞かせいただきまして、大変懐かしいなと思いながら聞かせていただいておりました。

 私も、あのとき貴重な経験を二つさせていただきました。一つは、災害対策基本法の改正を、我々、当時、都築委員も同じ党でございましたけれども、野党でしたが、提案させていただいて、この委員会で答弁に立たせていただいた。一年生でしたけれども、そういう思い出があります。

 もう一つは、震災が起きて直後に、国会議員である前に、やはり何かをしなければいけないということで、トラック二台ぐらいに救援物資を積み込んで、私は大阪なんですけれども、とにかく神戸まで行こうということで行ったんですが、半日かかってようやく神戸に入れた、そういう状況でございました。行く過程の中で、特に、阪神高速が倒壊した現場も、テレビ等ではなくて目の当たりにさせていただきましたし、もっとやはり私自身がショックだったのが、関西ではあこがれの地でありました芦屋の豪邸、ここはもう豪邸が並んでいるので有名なんですけれども、その住宅が具体的に全部もうぺちゃんこになっている、倒壊している姿、ずうっと通り一面がそうなっているというのを目の当たりにいたしまして、都築委員御指摘のあの阪神・淡路大震災、その後聞きましたら、約八割がこの住宅の倒壊によって犠牲になられた、そういうことを踏まえますと、まさに住宅等の耐震化の推進というのは本当に重要な課題であるな、今そのように認識をしているところでございます。

 そこで、その以後、地方公共団体においても力を入れていただきまして、今着実に、この住宅の耐震診断に対する支援に加えまして、改修費に対してもそういう補助を行うような団体もどんどんふえてきております。昨年末現在で、十二月現在で国土交通省がとりましたアンケートによりますと、地方公共団体において、住宅の耐震診断については約二十万戸の補助等の支援が今行われております。耐震改修については約千七百戸に対して補助が行われている。

 そのうち、御指摘のありました都築先生の御地元の愛知県は、耐震診断、全国二十万戸のうち約二万五千戸、そして静岡県が約二万二千戸。耐震改修、今は、千七百戸のうち愛知は二百戸、静岡県は八百戸というように、この数だけ見ても、静岡、愛知というのは、東海地震のこともございますし、非常に先進的に取り組まれている、そういう段階ではないかな、そのように我々は見ているところでございます。

 国土交通省におきましても、こういう地方公共団体へのそういう耐震診断または改修に対する取り組みに対して補助を設け、支援を行っているところでございますが、御指摘のとおり、まだまだ戸数からしましても数が少ないわけでございまして、今後とも、そういう地方公共団体と協力をしながら、この耐震診断、また耐震改修の促進を大いに進めてまいりたい、そのように考えているところでございます。

都築委員 時間が参りましたので、平沢政務官にももっとたくさんお聞きしなければいけなかったんですが、また次回ということで、きょうはこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

堀込委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い順次質問していきたいと思っております。そしてまた、さきの委員から質問された事項と重複するところがあるかもしれませんけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。

 先般の大臣所信によりますと、東海地震あるいはまた東南海・南海地震に関しましては、地震対策の要綱を決定しまして、さまざまな課題について検討が進められているというところであります。

 また一方、私の住む岩手沖といいますか、日本海溝あるいはまた千島海溝周辺でも、過去において大規模な地震が頻発しております。大臣のところでも、阪神・淡路大震災のときには本当に甚大な被害があったと思っております。私の三陸沿岸でありますけれども、小野寺五典委員さんもお話しされましたけれども、過去百年の間に本当に三度ほど大きな地震津波で被害をこうむっております。明治二十九年と昭和八年の三陸大津波、そしてまた南米チリからの被害でありますけれども、昭和三十五年のチリ地震津波であります。ちなみに、私はそのとき小学校の一年生でありまして、津波が引きましたので、そのときに、カレイとか、津波の引くのについていけなくてばたばたしていた、それを大人たちが拾いにいったというかとりにいったといいますか、そういうときでありました。

 ただ、私の経験からいいますと、この津波というのは、やはり地震、地震によって違うといいますか、地形によっても違うし、本当に、ここだからこうすればいいということがなかなかないわけですよ。ただ一つ言えるのは、昔から言われております、三陸沿岸には石に刻んであります、地震があったら高台にすぐに登れと、これが本当の原点だと思っております。そういう中で、世代交代とともに、津波に対する危機意識といいますか、これが薄れてまいりました。そしてまた、この意識が風化しておるという実態が防災の根底にあるのではないかという怖さを感じるわけであります。

 そういう中にあって、災害教訓の継承に関する専門調査会ですか、この中で、過去の大きな災害をもっと継承していこうということで今作業を進められているところでありますけれども、その報告書、大いに期待するところでありますし、そしてまた、大いなる活用が待たれるわけであります。

 そしてまた、最近の消防白書ですが、これを読んでみましたけれども、私からすると、どうも津波に対する事項が少ないんじゃないのかなという感じがちょっとしております。東南海・南海地震対策の一環として、三重、和歌山、高知ですか、この三県の五市町をモデルとしまして選定し、津波避難計画であるとか、あるいはまた、さまざまな事例をつくって全国に展開するというような話であります。

 そこで、まず最初に質問でありますけれども、大臣に質問いたします。

 この津波災害対策のあり方といいますか、あるいはまた今後の取り組み方の基本方針、この認識ですね、どう思っておられるか、まず初めに聞きたいと思います。

井上国務大臣 津波につきましては、今もお話しになりましたけれども、どうも、地震以上に時がたちますと忘れられてくるような傾向があるんじゃないかと思います。時の経過とともに記憶が薄れるということでありますけれども、しかし、地震の被害も大きいんですが、津波の被害もそれ以上に大きい場合がございますし、特に、東北地方は大変な経験がありますので、これらの地域につきまして津波対策というのは非常に重要なものというふうに考えるわけでございます。

 住民の意識調査なんかを見ましても、避難ということは皆さんわかっているんだけれども、なかなか行動が伴わないということが問題として上がってきているわけでありまして、そういう意味で、やはり防災教育というのが常に必要だというふうに考えます。

 今までの質問にもありましたように、常にこの津波につきまして教育をしていくということでありまして、例えばハザードマップをつくりますときに、みんなで相談をしながらつくるようなそういうことも必要だと思いますし、また、津波の避難訓練なんかも必要だというふうに思います。絶えざるそういう防災教育なり防災訓練を通じまして津波対策を考えていかないといけないと思います。

 どうも地震が近いぞというようなことを言われる方もありますので、地震はもとより、津波につきましても十分な配慮をしながら取り組んでいかないといけない、こんなふうに思います。

黄川田委員 昨年九月の十勝沖地震でも津波が発生しました。波高はそんなに高くはなかったわけでありますけれども、やはり、川で釣りをしていた方が流され行方不明になるとか、あるいはまた漁船なんかが岸壁に打ち上げられるとか、そういう大きな力であります。

 そしてまた、私は岩手の三陸海岸に住んでおりますけれども、日本海側は余り津波で流されるということがなかったわけですが、いつでしたか、山の子供たちが遠足に来て流されてしまった。本当に津波というのは、理屈じゃなくて、なかなか体験しないとわからないし、この体験も、浜に住んでいても一生に一度あるかないかというものでありますから、本当にこの津波というものの恐ろしさを何とか植えつけるような形、そしてまた、浜に住んでいる人も、現実、起きると海を見たくなるんですよね。基本の基本を忘れてしまうというところがありますので、いずれ、防災対策の中での津波の位置づけ、大きく取り上げていただきたいと思います。

 それでは、ちょっと具体に入りますけれども、最近の東北、北海道沖合の海溝型地震の活動状況についてまず気象庁にお伺いします。そしてその次に、地震活動の長期評価の検討状況はいかがなものかということ、これは文部科学省でありますか。一つ一つお願いいたします。

北出政府参考人 昨年大きな被害をもたらしました地震といたしまして、平成十五年の五月二十六日にマグニチュード七・一の宮城県沖の地震がございました。七月二十六日にはマグニチュード六・四の宮城県北部の地震がございました。それから、九月二十六日にマグニチュード八・〇の十勝沖地震が発生いたしました。これらの地震の余震活動は減衰してきております。

 このように、日本列島の太平洋側におきまして、海のプレートと陸のプレートとの境界である海溝やその付近で繰り返し大きな地震が発生しております。東北、北海道沖合ではマグニチュード八程度以上の規模の大きな地震が十年に一度程度は発生しておりまして、平成六年十月四日の北海道東方沖地震、これはマグニチュード八・二でございましたけれども、それ以来約十年ぶりに、昨年、十勝沖地震が発生いたしました。

 このように、この周辺では規模の大きな地震が繰り返し発生することが知られておりますので、気象庁といたしましても、今後とも、地震活動の監視及び的確な津波予報の発表に努めてまいる所存でございます。

木谷政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学大臣が本部長を務めております政府の地震調査研究推進本部におきましては、平成八年から、全国の海溝型地震や主要な活断層につきまして、地震の発生可能性の長期評価を実施いたしております。

 東北、北海道沖合の海溝型地震につきましては、平成十二年から十五年にかけまして長期評価結果を公表しておりまして、マグニチュード七クラス以上の大地震が今後三十年以内に発生する確率は、例えば宮城県沖で九九%、三陸沖北部で九〇%程度、根室沖で二〇から三〇%程度となってございます。

 なお、十勝沖につきましては、昨年三月にマグニチュード八・一程度の地震が今後三十年以内に六〇%の確率で発生するという評価をいたしていたところでございますが、昨年九月、この想定をしておりました十勝沖地震が実際に発生をしたということでございます。

 全国のこうした長期評価の進捗状況でございますが、現在までに、全国の主要な九十八の活断層のうちの四十八活断層につきまして、また、全国の八つの海溝型地震のうちの五つにつきまして、長期評価結果を実施、公表済みでございまして、残りにつきましても、今後一、二年以内にすべて公表できるよう、順次評価作業を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

黄川田委員 それぞれお話をいただきましたけれども、現在、この地震予知関連の研究や事業の推進については、行政的対応については地震調査研究推進本部のもとで、そしてまた、地震予知研究については科学技術・学術審議会の建議に基づいて推進されていると聞いております。

 どうもこの政府の推進体制、複雑でわかりにくいというところがあるわけでありますけれども、もっとわかりやすくこの仕組みを説明していただくとともに、それがうまく機能しておるのか、国土交通省であるとか、あるいはまた文部科学省であるとか、内閣府ということで、それぞれ縦割りになっておらないか、ちょっとお聞きします。

木谷政府参考人 政府全体の地震調査研究の推進体制につきましては、平成七年の阪神・淡路大震災の直後に制定をされました地震防災対策特別措置法に基づきまして、地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし、これを政府として一元的に推進するために、地震調査研究推進本部が、文部科学大臣を本部長といたしまして設置をされているところでございます。

 この推進本部のもとには、気象庁、国土地理院等関係機関の職員及び学識経験者から成る専門の調査委員会が設置されておりまして、地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策の立案、関係行政機関の予算等の調整、地震活動の現状や将来に関する総合的な評価、そしてその広報等を行っているところでございます。

 また、御指摘の科学技術・学術審議会との関係でございますが、平成十一年に推進本部が策定をいたしました地震調査研究に関する総合的かつ基本的施策におきまして、当面進めるべき地震調査研究の四つの柱というものを挙げておりますが、その一つとして、科学技術・学術審議会測地学分科会の計画に基づく地震予知のための観測研究の推進が位置づけられているということでございます。したがって、このように、地震調査研究全体につきましての柱というものはこの推進本部で策定をするということでございまして、そういう形で両者の連携、組織化というものが図られているということになるわけでございます。

 推進本部が平成七年に設置されて以来、地震観測網が整備をされますとともに、地震観測データの公開、流通につきましても、毎月定期的に開催されます専門家の委員会などを通じまして、関係省庁、研究機関、大学、地方自治体など、幅広い関係者の間でこのデータの公開、流通が飛躍的に進んでいるというふうに考えております。

 このようなことによりまして、我が国の地震調査研究につきまして、この推進本部による体制のもとで大きくこれに貢献をしているというふうに考えているところでございます。

黄川田委員 では、具体的な課題についてちょっとお聞きいたしたいと思います。

 昨年の五月二十六日に発生しました宮城県沖を震源とする強い地震、これは、私の地元岩手、そして宮城両県で、最大の震度が六弱ですか、これを観測しまして、大きな被害を起こしました。それを受けて災特が開かれまして、私も幾つか質問したわけでありますが、その中で、地震、津波に対して観測予知体制をより充実し、災害情報を迅速かつ的確に収集、伝達すべく、岩手県沿岸地域も特定観測地域にしてもらいたいとお願いしたわけでありますけれども、その後の検討状況はどうなっておるでしょうか。

 そしてまた、今国会、議員立法で出したいという形の中で、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案ですか、これを踏まえてもう抜本的に見直すことになるのか、これについてお答えいただきたいと思います。

渡邊政府参考人 地震予知連絡会は、地震の専門家並びに関係機関から構成されておりまして、地震に関する情報交換と学術的検討を行っており、国土地理院が事務局を務めております。この地震予知連絡会では、観測、研究を効果的に行うために、特定観測地域、観測強化地域を選定して検討を行っております。

 昨年の六月以降、地震予知連絡会では、六月六日に特定部会を開催いたしまして、今お話しいただきました、五月二十六日発生した宮城県沖地震につきまして、岩手県も含めた集中的な検討を行ってまいりました。また、その後、昨年八月、十一月、本年二月の定例会におきましても、岩手県地域につきましても引き続き検討を行っております。

 地震予知連絡会におきましては、科学技術審議会の建議、あるいは地震調査研究推進本部の検討状況、あるいは各種法律の趣旨を踏まえまして、この地域の地殻活動並びに地域選定に関することを含めました学術的な検討を今後とも一層深めていただきたいというふうに考えております。

黄川田委員 検討をしているということでしょうし、そういうことなんでしょうけれども、特定観測地域、その上に観測強化地域というのがあるんですか。まず、今現在八つの地域ですか。それに、強化地域は南関東と東海地方ですか、二つになっておりますかね。東北に住む住民として、一般市町村民といいますか、太平洋があって、三陸海岸があって、福島の東部は指定されている、宮城の東部も指定されている、何で岩手はそうなんだという、県境の境とは違って、もちろん、科学的知見があってそういう線引きをしておるかもしれませんけれども、いずれ議員立法も出したいと思っておりますし、一般国民に、やはり我々のところでも、大臣よく言われるとおり、災害対策には自助と共助と公助があるんだと、その自助の部分で自覚していただけるためには、そういう形になっているんだぞということがあればまた思いも違ってくるんじゃないかと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは次に、観測強化についてちょっとお尋ねしたいんですが、全国の数カ所のうちの一つでありますけれども、岩手県の釜石から三陸沖に約百二十キロにわたって海底光ケーブルを敷設して、東大、東北大による研究がされていると聞いております。宮城県沖地震など海溝型の大きな地震が懸念される中でありますので、大事な調査だと思っておりますけれども、これについて文部科学省はどんな後押しをしておるのか、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。

木谷政府参考人 御指摘のように、今後発生する可能性の高い海溝型地震に関しまして、調査観測体制を整備するということは極めて重要であると考えてございます。

 特に、宮城県沖地震に関しましては、推進本部の計画に沿いまして、御指摘のように、東北大学が中心となって、気象庁、東京大学地震研究所、海上保安庁、国土地理院などの関係機関の役割分担のもとに、全国に先駆けたパイロット的な重点的調査観測を平成十四年度から実施しているところでございます。今後さらにこの事業を全国的に展開することといたしたいと考えてございまして、平成十六年度からは、東北、北海道沖合を初め、海溝型地震の全国的な調査観測体制を強化することとしたいと考えております。

 具体的には、海底光ケーブルによる地震、津波に関する研究に加えまして、予測精度を向上するための調査研究として、自己浮上型の海底地震計による地震観測、海底地殻変動観測の技術開発、また、過去の地震観測データによる調査を実施する予定でございます。

 今後とも、推進本部の計画に沿って、関係機関の連絡のもと、海溝型地震に関する調査観測や研究の推進に努めてまいりたいと考えております。

黄川田委員 津波防災対策の強化ということで、沿岸市町村に津波の観測カメラをそれぞれ設置しておるわけなんでありますけれども、これなどは、県がまとめて情報を共有化しようという事業も推進しているところであります。国の機関、県の機関、市町村、あるいはまた防災関係の機関、それぞれ独自ということではなくて、ネットワーク、情報の共有化が一番大事でありますので、その点も意を配していただきたいと思います。

 それでは次に、地域防災の観点からちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 これも昨年五月二十六日の三陸南地震の際にもお聞きしたわけなんでありますけれども、防災行政無線の関係なんであります。アナログ型の防災行政無線、ずっとそれぞれ設置してきたわけなんでありますけれども、二十年、三十年となって老朽化しておるというところの中で、時代に合ったデジタル型の防災行政無線の整備も大事ではないのかと。そして、前回聞いたら、何か全国市町村の六六・八%ですか、この防災行政無線が設置されている市町村は。まだまだ自分としては足りないんじゃないかと思っておるわけであります。

 ただし、デジタル化されるための施設整備となりますと、多くの財政負担を市町村は伴うと思うわけでありますので、その中にあって、自治体に多額の財政負担を生じることのないような仕組みがあればいいと思うんでありますけれども、この防災行政無線のデジタル化の関係の進捗状況をお尋ねいたしたいと思います。

林政府参考人 防災行政無線についてのお尋ねでございますが、御案内のように、住民等に災害情報を一斉伝達するためには大変有効な手段でございまして、以前から私ども、地方団体に対しまして、国庫補助制度等を通じましてその整備を支援してきたところであります。

 しかしながら、御指摘いただきましたように、今後は、大規模災害だけではなくて、いろいろな面から地域住民の安全、安心を確保するために、地域における情報伝達手段をさらに機能を高めて整備していく必要があると考えております。

 そのため、私どもといたしましては、十六年度の予算におきまして、御指摘いただきましたような高機能なデジタル無線を整備される市町村に対しまして、このような整備を特定した形での補助制度をつくり、十八億円の予算を確保することといたしております。

 今後、国民保護法制の具体化等に伴い、その必要性がさらに高まってくるものと考えておりますので、私どもといたしましても、さらに支援策の充実強化に努めてまいる所存でございます。

黄川田委員 今後予想されます有事の際の国民保護法制の関係とか、いろいろな部分の中で情報伝達という考え方もあるかと思いますけれども、総務省は合併合併ということだけで、そういう中でどんどん整備していけなんという話なんでしょうけれども、特に津波対策に関すれば、沿岸部にある市町村というのは、そんなに財政力の強固なところはありません。皆脆弱なところでありますので、そういう部分も含めていろいろ取り組んでいただきたいと思っております。

 それで、今はハードの面なんでありますけれども、ソフトの面といいますか、災害対策にあっては、やはり共助の部分といいますか、隣近所同士で助け合うというのが一番大事なわけでありますけれども、これは、阪神・淡路大震災でも一番光ったところではないかと思うわけであります。高齢者とか体の不自由な方々などの避難誘導、やはりこれは自助というのは難しいわけでありまして、この共助の精神が一番大事なんでありますけれども、災害弱者対策ですね、この辺はどうとらえておるんでしょうか。

林政府参考人 特に津波対策等につきましては、速やかに安全な場所に避難する、こういうことが重要なわけでありますけれども、御指摘いただきました災害時の要援護者につきましては、適切な情報を入手したり、あるいは自力で避難するということが大変困難な場合が多いわけでありまして、そのような場合には、地域の方の助け合いで、いわゆる共助の精神で対応することが重要であると私どもも認識をいたしております。

 消防庁におきましては、平成十三年度に津波対策推進マニュアル検討報告書というものをまとめまして、自主防災組織等を通じた情報伝達等、災害時の要援護者の避難時に留意すべき事項について地方団体等にお示しをいたしたところでございまして、地域におかれましては、消防団や自主防災組織においてあらかじめ要援護者の情報を把握して、そして早期の避難等に備えて、具体的にこういうふうに対応しよう、こういうような計画を定めておられるところも既にあると伺っております。

 こういった事前の取り組みが今後さらに必要になってくるものと考えておりますが、消防庁といたしましては、今後とも、地域防災計画や地域ごとの避難計画にこれら要援護者に対する対策が適切に反映され、実効性のある避難行動が担保されますよう、取り組みを指導、支援してまいりたいと考えております。

黄川田委員 やはり、共助の部分では自主防災組織ですかね、そういうものの充実強化が大事だと思うわけでありますが、少子高齢化の中で、地方にあっては、消防団の役割が一番大事なわけであります。

 しかしながら、ずっと団員数の減少であるとか、逆にまた、男女共同参画社会といいますか、女性の方にも消防にかかわっていただけないかとか、救命救急の関係であるとか啓発の関係であるとか、役割は大きいと思うわけでありますけれども、最近の消防団員数の減少傾向はどうなんでしょうか。そしてまた、女性消防団員数の、これは増加傾向にあるかと思うわけなんでありますが、そういう状況はどうでしょうか。

 それから、常備消防であれば消防吏員というんですか、地方公務員ですか。それから、消防団員となれば、これは公務員の特別職ですか。それからまた、市町村にあっては、要綱とかで婦人消防協力隊でありますかね。そういうふうな形で、何とか地域を支えようという仕組みがあると思うんですが、その状況もあわせてお話しいただけますか。

林政府参考人 消防団等についてのお尋ねでございます。

 まず、消防団員の状況でございますが、残念でありますけれども、社会環境の変化等に伴いまして、消防団員の数は年々減少いたしておりまして、平成十五年四月現在の団員数は九十三万人ということで、十年前、平成五年でありますが、その当時に比べますと約五万人減少いたしております。ただ、中身を見ますと、そのうちの女性団員数は約一万二千人となっておりまして、平成五年に比べて八千人増加傾向にあるという状況ではありますが、全体的には、先ほど申し上げましたように、減少傾向にあります。

 しかしながら、御指摘いただきましたように、私どもといたしましても、地域における防災力を高めるためには、消防団を初めといたしました地域の自主的な防災組織の充実は不可欠である、こういうふうに考えておりますし、特に、消防団は地域における消防防災のかなめであり、中核的存在としても今後大いに期待をしていかなければならないものと考えております。

 このために、昨年は消防審議会等におきましてもいろいろ御議論をいただきました。結果、消防審議会の方からも、今後、地域の消防防災力を向上させるために、総団員数を増加させるべく、その目標を百万人以上とする必要があるのではないか、こういう提言をいただいております。

 その中では、特に女性団員数については、一割以上を確保するよう努力すべきではないか、こういう御意見もいただいておりまして、私どもといたしましては、この答申を踏まえまして、まず団員数確保を図る必要があるということで、昨年、またことしに入りましてからも、各地方団体に対しまして通知を発し、特に、地域において、地方公務員の方、郵便局の職員、あるいは農協の職員の方々に対しまして入団促進を働きかけることといたしております。

 加えて、消防団の充実強化を図りますために、資機材や施設に対する助成制度を充実するとか、あるいは、全国の消防団員、いろいろと地域で御活躍をいただいているわけでありますが、こういう事例を全国に紹介し、特に若手、中堅団員や女性団員の士気高揚を支援しよう、こういうようなこともあわせて考えております。

 それから、御指摘いただきました女性の入団促進についてでありますが、私どもといたしましても、地域に密着して生活しておられまして、地域コミュニティーとの結びつきが強く、特に、いざ発災の際に即時対応可能な女性の方々の入団は、ぜひとも今後ともお願いをしたい、地域防災力を高めるために有効であると考えておりますので、それについても意を用いたいと思っておりまして、今月の六日には、女性消防職員の採用や職域拡大につきまして各地方団体あてに通知をし、女性消防職員の採用の促進を図ることといたしているところでございます。

 加えてまた、御質問いただきました自主防災組織あるいは婦人防火クラブ、このような地域における自主的な組織の活躍も私ども大いに期待をいたしているところでありまして、その事例を発表し、あるいは表彰し、あるいは、いろいろな問題がありますときに御相談に応じ、御支援をするような体制を強めながら、その組織の充実強化を今後とも図ってまいりたいと考えているところでございます。

黄川田委員 時間でありますので終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、泉房穂君。

泉(房)委員 民主党の泉房穂です。

 私は、今般の住宅再建に向けての動きに関しまして、住宅本体への支給を認めるべきであるとの数多くの被災者団体、また、今回の基金を拠出する全国知事会、そして、そもそものこの法案のもととなりました議員立法の母体となりました超党派の災害議連の思いを受けまして、その立場より質問させていただきます。

 極めて重要な問題でございますので、大臣みずからの明確な答弁をよろしくお願いいたします。その旨、委員長も議事運営よろしくお願いいたします。

 まず、この問題につきましては、住宅本体の支給を認めなくても、周辺経費に限ったとしても、果たして実効性ある被災者に対する支援になるのかという問題がございます。

 今回の予算案の際に内閣から提出されたモデルケース、今お配りしておりますが、モデルケースによりますと、それぞれのケースを想定いたしまして、いずれの場合においても、今回の上限額である二百万、百万、五十万、それぞれ実効性ある満額支給がその大半において可能である、そのような説明を受けておりますが、大臣、今回の周辺経費に限るこの制度の枠組みであったとしても、実質的に被災者の大半は満額を受け取れる、そのような実効性ある制度であると、大臣、明確なお答えをお願いいたします。

井上国務大臣 この損害額につきましては、各被災の皆さん方の状況に応じて違うと思いますけれども、平均的な被害を想定いたしまして、関係の皆さん方と相談をいたしましたところ、二百万円はおおむね支給できる金額だというふうに理解をしております。

泉(房)委員 この手元のモデルケース、これはまさに内閣府が作成したものでありまして、このモデルケースをもとに今回の閣議決定もなされておるわけでありますが、このモデルケースは、それぞれ、全壊の場合、建てかえ、移転新築、それから大規模半壊の補修など、場合分けをしております。

 質問でありますが、このモデルケースにはそれぞれ場合分けもされております。これでほとんどの場合は網羅しているのか。そして、このモデルケースを見ますと、解体撤去・整地費は百五十から二百十万と記載されております。ほとんど大半がこの百五十から二百十の中に入るという認識でよろしいのか。そして、ローン関係経費は、このモデルケースによりますと、全壊の場合、いずれも百五十二万円と記載されております。これも今回の制度の枠組みの場合、ローン関係経費百五十二万がほとんど大半の被災者に支給されると理解していいのか。その旨、三点お答えください。

尾見政府参考人 このモデルケースという紙に即して御説明させていただきますが、解体撤去・整地が百五十から二百十というふうになっておりますが、これは、実際、私どもが一番具体的な例として適当だろうと考えました宮城県の北部地震がございまして、千戸を超す全壊というのがございました。そこで、実際に職員を現地に派遣をして、どのくらいかかるものかということを実地に見て、また聞き取りをさせていただきました。そうしましたところ、大体二百二十万から三百万ぐらいがかかるのではないかと、いろいろな幅がありますけれども。そこに七〇%という、これは、三〇%分はいわゆる所得税と住民税の雑損控除で、税とのダブりをなくすということで控除しておりますが、そういうことで、通常のケースではそれでカバーされるんじゃないか、こういうふうに思っております。

 それから、ローン関係経費の百五十二については、この説明の下の方にございますけれども、二千五百万というのが、平成十四年度の住宅金融公庫の災害復興住宅融資の建設戸数のいわゆる土地除きの値段になっております。これが平均的なものだというふうに考えておりまして、これで、ローンで認められます一%から三・五%、そういうものを考慮に入れて積算をしたものでございます。

泉(房)委員 私も、このモデルケースを見まして、この算定根拠は何なのかといろいろ考えました。内閣府に対しまして、このもととなった資料はないのかと要求しましたが、この紙一枚が出てきただけであります。

 しかしながら、新聞報道なども見ますと、例えば昨年十二月二十三日の毎日新聞朝刊二面におきましては、「内閣府の試算でも全焼世帯の支給額は一世帯平均二十一万円と判明し、」このように、二十一万円という数字が各新聞において記載されております。しかも、内閣府の試算ということでありました。そこで私は、内閣府に対しまして、ここのモデルケースの中に二十一という数字はありません、どういうことかというふうに尋ねましたが、この紙が出てくるだけであります。

 しかるに、このたび、内閣府の内部資料を入手いたしました。出てきませんでしたが、これです。昨年十二月に内閣府がつくっていた、このモデルケースのもととなった資料であります。後で皆さんにお配りいたします。

 このモデルケースによりますと、全焼の場合、そして、中古住宅購入の場合もちゃんと場合分けをして記載されております。これは内閣府がつくったものであります。しかし、このつくっておいた六つから、全焼の場合と中古住宅購入の場合を強いて削除してこのモデルケースの表をつくったわけであります。どうして、わざわざ全焼の場合と中古住宅購入の二つのケースを削除して表をつくった上で今回の制度を通したのか、お答えください。

尾見政府参考人 今この紙をいただきましたけれども、これは内閣府作成資料というふうになっていると先生はおっしゃいましたけれども、これは内閣府の作成したものではございません。

 それで、内閣府は、具体的に申し上げていいのかどうかわかりませんが、今回のこの居住安定支援制度の創設に当たっては、かかわりの深い県がございまして、そこの県当局との間で、こういうケースになったときはどうかというようなことについての御発言なりお尋ねがあって、それで、こういうふうな形で積み上げられますよということで、ベースになる資料でもって御説明をさせていただいた事実はあります。それを下敷きにして、ある種の範疇をつけ加えて御説明をされたものではないかと私どもは考えております。このところに全焼とかいう概念はございません。

泉(房)委員 本当にごまかしの答弁だと思いますが、これは内閣府がつくったものであります。

 繰り返しですが、全焼の場合は、この内閣府の資料によりますと、瓦れき撤去費は二十一万円支給と記載されています。中古住宅購入の場合のローン関係費は百八万円です。つまり、内閣府がつくっておいた段階で、この解体撤去費は百五十から二百十じゃなく、本来二十一万から二百十と記載するべきことでありました。また、ローン関係経費につきましても、百五十二と三つ並べるのではなく、百八万の場合も当然想定されるわけであります。そういった場合も当然記載するべきであります。

 それを記載せずして、いかにもこの制度でも満額支給が可能であるかのように装うためにこの資料をつくったとしか考えられません。その点、どうお考えでしょうか。

尾見政府参考人 繰り返し申し上げますが、私どもが、全焼のときに、今おっしゃったのは二十一万でしたか、そういうことになるということを作成しているという事実はございません。

 それで、例えばこのケースは、平均的な場合のことを想定して置いております。例えば、解体撤去・整地費というものが、大火災になって焼き尽くすというふうな場合になったときにはどうなのかというような御指摘をいただいたこともあります。

 それで、そういうことについてこれがカバーされるのかということになったときに、それはそこまでいかないケースもあるかもしれない。ただ、通常の火災のときは、また別の恐らく費用というようなものにもなるんじゃないか、そういうふうには思っておりますが、そういうやりとりの中で、それは、これを下敷きに作成された団体の方で計算されたものだというふうに思っております。

泉(房)委員 苦しい答弁が続いておるようですけれども、全焼の場合は決してレアケースではありません。阪神・淡路大震災のときも、六千以上の建物が全焼となりました。中央防災会議が東海大震災に対しまして作成した「東海地震に係る被害想定結果について」というこの予想につきましても、夕方六時に風速十五メートルの状況で地震が起こった場合、四十六万の建物が全壊のうち、半分以上の二十五万が火災による被害であると政府みずからが、半分以上が火災による被害であることを認めておるわけであります。にもかかわらず、全焼の事例を強いて削除しておいて資料をつくった、そのようにしか私には理解できません。

 また、中古住宅につきましても、これは二千五百万をもとに算定しておりますが、中古の場合、当然安くなるわけであります。新築と同じはずがありません。やれば当たり前のことですが、全員が新築に移るわけではないわけですから、中古住宅の場合も想定した資料をつくるのが当たり前であります。

 そのことを指摘した上で、順次、まずローン関係経費について、果たして百五十二万が妥当なのかについて質問をいたします。

 この算定の根拠は、先ほど尾見統括官お話しのように、二千五百万円が平均であるとのお答えでした。これは土地を含みません。建物の上物だけで被災者が二千五百万円もの住宅ローンを組むのが平均であるとの立場であります。

 繰り返しですが、被災に遭った方、この制度の枠組みで支給を受けようとする方が、建物だけで二千五百万ものローンを組むのかと。普通に考えてください。そんな、建物だけで二千五百万のローンを被災者が組める状況なのか。にもかかわらず尾見統括官は、この二千五百万が平均値であると言い切られるのか。お答えください。

尾見政府参考人 実態的に、被災した方々について、これは災害復興住宅融資なんです。一般の場合の、住宅金融公庫からローンを借りる場合ではありません。

 被災した方が現にこういうことで金融公庫に融資を申し込んでいる建物の平均がそうなっている、そのことを申し上げて、それ以外に具体的によりどころになる数字というものがあるのかというふうに考えたときに、全国一律の通常のことを考えた場合には、当然こういうことをベースにして考えるべきだというふうに思っております。

泉(房)委員 今のお答えにもありましたが、平均値だそうですが、これは根本的に間違っております。何が間違っているのか。この二千五百万というのは、年収制限、年齢制限をかけない、すべての一般的な平均値であります。しかるに、この制度の枠組みは、五百万以下の世帯でしか満額支給は受けられないわけであります。であれば、当然、この基礎資料は、この制度の枠組みである五百万円以下の世帯の中で統計をとらないと、今おっしゃった尾見統括官の話だと、今回のこの制度の枠組みの中で、収入要件、年齢要件、そういう要件をなくして支給をするのであれば、確かに二千五百万というのも一つの考え方でしょう。

 しかしながら、今回はそうではありません。五百万以下、そして年齢制限、それぞれかけておきながら二千五百というのは、明らかにそもそもの基礎資料のとり方が誤っております。この点、どのようにお考えでしょうか。

尾見政府参考人 今回の制度の対象になっております年齢要件と収入要件のもとで、具体的に公庫の融資をどういう形で、あるいは銀行からの融資をどういう形で受けられているかということについては、余りはっきりしたデータ等はございませんので、残念ながら、それについてはよりどころにすることができないというふうに考えております。

 それで、公庫の融資については、いろいろな加算ということもございますので、実態としてはもうちょっと借りられるケースがあるんじゃないかと思っています。

泉(房)委員 本当に実態をわかっていない、机上の空論だと考えます。

 普通に考えてください。一人じゃないですよ。世帯で年収五百万なわけです。そこからいろいろ引かれますので、実際の手元には三百万台ぐらいしか来ないでしょう。子供もおります。子供らにも生活させないけません。被災に遭って家をなくしたわけです。そういう被災者が、五百万の中、実際三百数十万、生活して残ったお金で、建物だけで二千五百万ものローンを組むなんということがあるのかと。

 また、もう一つの事例は、定年退職して年金で生活している高齢の方がローンを組む場合かもしれません。その場合は、八十歳までにローンを完済しようと思ったら、上物だけで二千五百万ものローンを、六十五、七十の方が残り十五年で二千五百万、上物だけですよ、上物だけで二千五百万のローンを組めというこれは法案なわけでしょうか。これはまさに、被災に遭ってローンに苦しむ被災者に、なお二千五百万もの住宅ローンを、二重ローンを組めというようなことを要求しているような法案にしか見えません。

 その点、どうお考えでしょうか。

尾見政府参考人 まず、手元の資料によりますと、住宅需要実態調査で、年収五百万クラスの方が、やはり二千五百万近くの住宅をつくっているという事実があるということをまず申し上げたいと思います。(発言する者あり)今、手元の資料ではそういうことだということでございます。

 それで、先生、ローンの組めないケースについてのお話だと思います。

 基本的に考えていただきたいのは、今回のケースは、住宅建設の二千五百万に比べて最大限で二百万というものを再建する場合に支援するということでありまして、そもそも、住宅を再建することが大変おぼつかないという方にまでこの支援金で住宅の建設ができるようになるというようなものではございません。一種のつえのようなものだと。背中を押すとか、このお金があることによって、住宅再建ができるかどうか境目にあるような方についてできるだけ住宅再建というふうな道に行っていただく、そういうためのものであるということが一つ。

 あと、通常ここが一番あり得るケースというものを念頭に置いていますが、特に戸建ての自宅を建てかえるというようなケースのときにも、先ほど、先生は解体撤去と整地のことだけをおっしゃっていますが、通常はそういう場合が一番多いわけですね。そこにローンを借りて、もろもろの諸経費があればこれだけのお金が積み上げられるんじゃないかということをあわせて説明させていただいている紙でございます。

泉(房)委員 瓦れき撤去の関係もお伺いしますが、実際、阪神・淡路大震災の場合、瓦れき撤去は実質的に公費によってなされました。その後の震災についても、基本的に瓦れき撤去は、公費によって、防災上、治安上、公衆衛生上、その見地から既になされているわけであります。

 しかるに、この法案は、瓦れき撤去に公費が支給されるのは、何重もの要件をクリアした人であります。まず年収要件、年齢要件をクリアし、つまり五百万以下であり、かつ、全壊、大規模半壊。だから、大規模半壊に当たらない半壊の方には支給されない。自宅をお持ちの方だけに限る。借家の方には支給されない。建てかえと補修の人に限る。移転新築や中古を購入する人には支給されない。さらに、支給されるとしても、今回の制度は七割支給であります。残り三割は税金云々と言っていますが、その上限が三割でありますから、上限でちょうどジャスト。そうでない方については自己負担が生じるわけであります。また、支給の時期も、恐らく領収書の添付等があるでしょうから、支給時期も随分遅くなってしまう。そういった、何重もの、今の実態よりもさらに後退した、そういうふうな感がぬぐえません。

 その点、どうお考えでしょうか。

尾見政府参考人 先生のお話の中で、瓦れき撤去は、私どもが想定しています住宅、要するに、土地の上に全壊した住宅が乗っているケースですね。それはすべて公費で処理している、こういう実態があるとおっしゃっていますが、そういうことはございません。これは、あるところまで所有者が解体をして、撤去をして、持っていって、そのステーションみたいなところもありますが、それから先は、災害の廃棄物、ごみとして処理するということになっています。

 こういうものは、宮城県でもそれで皆さん大変往生されているということでありますので、まずその点ははっきりさせて、建ちながら、建ちながらというか、壊れながらそのものをごみとして扱っているという事実はございません。そのことをぜひ申し上げたいと思います。

泉(房)委員 実際、私の質問にありました、今回はむしろ後退じゃないかという問いに対しての答えはなかったですが、この点につきましては、私が思いますに、この法案でいきますと、この制度でいきますと、まさに何重もの要件をクリアした人が公費でもって瓦れき撤去できるが、それ以外の方は自己負担によってみずからの建物を壊す、まさに、被災者の間に不公平感を生むわけであります。ある方には公費が支給され、大半の方には実質的には支給されない。一部にだけ公費で瓦れき撤去。本来、被災に遭った方々の連帯感を醸成し、公でもってみんなで一緒にやっていこうという機運を高めなきゃいけないにもかかわらず、むしろこの制度は被災者間の不公平感を生む、そういった面はぬぐえないと私は危惧いたします。

 今の二点につきまして、少なくとも、解体撤去、・整地費につきまして、モデルケース、これでもって要するに予算案の決定になったわけです。このもととなったそもそもの数値が、少なくとも、全焼の場合、百五十から二百十に当たらないのであれば、つくり直すべきであります。

 また、ローン関係経費も、百五十二と書いていますが、中古の場合、その他もろもろ考えても、そんな百五十二万が平均値であるはずがありません。先ほどの答弁でも五百万以下世帯についての話がありましたので、再度よく調査の上、このモデルケースの表を、全焼の場合、中古住宅購入の場合も入れて、再度実態に合ったものにつくり直して提出することを強く求めます。

 このような議論をするまでもなく、本来、住宅本体にしっかり支給をすれば、満額支給もできるし、運用面においてそう煩うこともないわけであります。住宅本体への支給を求める声は、超党派の災害議連、全国知事会、被災者団体、みんなの共通の思いであります。しかるに、それがかなわない。

 この点、今回の制度設計、周辺経費に限る、住宅本体への支給は認められない、ここはどういった哲学に基づくんでしょうか。この点、大臣、お答えください。

井上国務大臣 震災対策は、よく言われますように、自助、それから共助、公助、これを適切に組み合わせることだというように言われております。

 自助といいますのは、自分で保険に入るとか蓄えをするということでありましょうし、あるいは、共助について、住宅について言えば、兵庫県なんかが考えております一種の共済制度、被害者の方も保険に入る、自治体の方も掛金の一部を負担をするというようなそういうことですね。

 あと、公助についてどういうような仕組みがいいのかということだと思うのでありまして、個人の持ち物、私有財産であります住宅につきましては、本体につきましては助成は難しいというのが従来からの考えでありますし、ある意味では、この問題は古くして新しい問題でもあると思うのであります。

 これまでの本当に個人資産の中心的な資産といったら、私は住宅だと思うのでありますけれども、これに対して何らかの助成ができないかということ、これが、この生活支援の法律ができまして以来五年間、いろいろな人がこれを検討してきたわけでして、これまでの、個人資産に対する支援はできない、そういう中で何か方法があるんじゃないかということで考え出されてきたのが今回の制度でありまして、何か後退しているだとかというような話でありますけれども、私は決してこれは後退じゃないと思います。住宅融資、ローンその他でいきたいような人に対します支援でありますから、私は非常な前進だと思うんですよね。

 ただ、立場によりましていろいろな御意見がありますよ。特に、被災を受けられたような方は、何とかもっと多くの金を、そして、何でも使えるような金を支援していただきたい、こういう気持ちはよくわかりますけれども、しかし、まだ今の段階では、国民の皆さん方の税金を使って住宅本体までを助成していこうじゃないかというような考え方では統一されていないわけでありまして、恐らく、時代が変われば、あるいはもう少し考え方が変わるかもわかりませんけれども、今の時点では、私は、住宅本体に対する支援というのは非常に難しいと思いますし、もっともっとこれは議論をしていくべきだと思います。

 それよりもむしろ、今回このような制度ができたということの評価をして、その上で、これからのいろいろな問題があるかもわかりませんけれども、そういった問題を考えていくべきじゃないか、そんなふうに思います。

泉(房)委員 私の質問に対する答えにはなっていないと思わざるを得ません。周辺経費に限る支給はいい、住宅本体はだめだ、そこに対する私は理由を求めたいのであります。

 個人資産の形成につながるものへの公費支給については、議論があることはわかります。しかしながら、実際上、農業用資産であるとか、預金保護の見地から、そういった意味ではもう既に導入されていると考えられるわけであります。また、この制度の既にある百万円も、エアコンに対してだって支給しているわけです。さらに、今回の周辺経費、ローンの利子にも支給すると。お金の面でちゃんと公費で出すわけです。つまり、もう既にこれは個人資産の形成であります。

 この点、大臣は、二月三日の記者会見におきまして、この制度が個人資産に対する助成であることは間違いないと大臣みずからが記者会見で言っておられます。大臣みずから、この制度は個人資産の形成に間違いないと言っているのであれば、住宅本体に対してそれを拒否する理由はないじゃないですか。政治決断でもって住宅本体への支給を認めるように、大臣の見解を改めて求めます。

井上国務大臣 確かに、住宅の融資に対する利子補給でありますとか、あるいは減税ですね、こういったことも広い意味では個人の住宅に対する支援かもわかりませんけれども、いわゆる住宅本体の建築費に対する助成ということとは意味が違うわけでありまして、私が申し上げたのもそういうことでございます。

泉(房)委員 全く納得できない回答であります。よく理解できません。

 さらにもう一点。大臣は、同じく記者会見におきましてこう述べております。見直し条項、附帯決議、附則に関してでありますが、大臣みずから、一般に、見直し条項というのは、特定の事項についてこれから検討していくというような場合につくわけですね。このたびの住宅支援なんかそうだと思うんですが、五年前にはまだ制度ができていませんでしたから、これについて検討していくということで、一般論から言えば、特別にその検討項目であれば、それについての見直し条項はつくとは思う。このように記者会見で述べております。

 大臣は、この制度につきまして見直し条項をつけるおつもりがあるのか。そういう方向で考えておられるというふうに私は理解しますが、その点、お伺いいたします。

井上国務大臣 この法律は政府提案でありまして、そういうことを考えているならばそういうような原案をつくるわけでありまして、私もそのように考えておりません。これにつきましては、この五年間ずうっと検討してまいりまして、今の私どもが提案する制度、これがぎりぎりのものである、こんなふうに考えるわけであります。

 この見直し条項云々につきましては、これはどういうような審議になるかよくわかりませんけれども、私どもとしましては、今まで検討してまいりましたことについての一応の結論を法案に出しているわけでありまして、その関連法案についてさらに見直しということはいかがなものかというふうに考えるわけでございます。

泉(房)委員 繰り返しますが、今回のこのそもそももととなった試算のモデルケース自体が、きょうの質疑で明らかなように、その数値自体が誤っているわけです。この数値自体が違ってくれば、本当にこの制度が実効性あるものかどうかの議論も違ってまいります。運用を見ないとわからない面もあります。

 この点、改めて申しますが、再度、モデルケース、場合分けして、どの程度支出されるのかという表を早急に作成し提出するとともに、大臣に対しましては、今回の哲学、個人資産の形成と申しますが、大臣みずからそれはもうそうだと言っているわけです。にもかかわらず、住宅本体がだめで周辺経費はいいなんていう理由はありません。この点、理由をしっかりとお考えの上、ないのであるならば、住宅本体の支給を私たちは求めてまいりたいと思いますので、その点、引き続き訴えてまいります。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 大臣並びに関係の方に御質問を申し上げたいと思います。時間がありませんので、端的に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、文部科学省にお伺いをしたいんですけれども、平成十六年度の防災関係予算の中で、震災対策ということで、公立学校等への施設の整備、ここで大変な金額を計上されております。これは学校の耐震化という工事だろうと思いますけれども、考えてみましたら、学校は、子供さんが平日の日中はほとんどそこで過ごすところでありますし、またこれは、災害になりましたら災害の避難場所、こういう性格も持っております。ですから、二重に安全でなければならない。もちろん壊れてもいけないし、災害があったときに、壊れずに残ってそこに人が避難をする、こういう性格もそれぞれの地域においては持っておりますので、このことで、耐震化が本当に大丈夫か、こういうふうな心配もされている学校も全国でたくさんあるんじゃないか、こういうふうに思っております。

 まず、この耐震調査ですけれども、全部の学校でもう終わっているんでしょうか。また、終わっていなければ、いつまでに調査を終えるのか、まずお聞きをしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 私どもがことしの四月に実施をいたしました公立学校施設の耐震改修状況調査によりますと、公立小中学校のうち、耐震診断を実施した建物は、昭和五十六年以前の旧耐震基準で建てられた建物の約三五%、約三万棟、こういう状況でございます。

 先生御案内のとおり、学校施設の耐震化推進ということは重要な事柄でございまして、その前提として耐震診断を行うということでございますが、平成十四年の七月に、各都道府県に対しまして、昭和五十六年以前の建物で耐震診断未実施の建物につきまして、三年以内に耐震診断を実施するための具体的な実施計画の策定を依頼したところでございまして、結果といたしまして、各設置者におきましては、未実施の建物につきましては、平成十五年度から十七年度までに、この三カ年間で耐震診断を終了するような計画をいたしておるところでございます。

 私どもといたしましては、この計画どおりに耐震診断が行われるように指導してまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 十七年度までで終わるようにと、こういうことでありますけれども、現状はなかなか厳しいんじゃないかというふうに思うんですね。

 これはいろいろな調査を私立学校等でもやられておるようでして、そのやった中で計算をして推計をしたら、大体これだけの建物が危ないだろうと、こういうふうな数字は持っていらっしゃるように思いますが、しかし、一つ一つの建物を調べていかないと、この建物に工事をやらなきゃいけないかどうかというのはわからぬわけですね。概数として予想はできるんだけれども、では、この建物がどうかということは、もうそれぞれチェックしていかなきゃこれはわからない。そして、その後で工事の見積もりをして工事をしていく、こういうことになるわけですから。現在のところの統計で、総数としての枠がこれだけあって、こういうふうにしていこうというのがあっても、最後は一つ一つ全部見ていかなきゃいけない、こういうことだろうと思うんです。

 もう一度お伺いしますけれども、十七年度まででできるんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 もちろん、今後統廃合するとか、いろいろな事情でそういうことを考えていないところもございますけれども、私どもは、各市町村におきましてこの三カ年計画の中できっちりと診断計画をやっていただきますように、いろいろな場を通じてまた指導をしてまいりたい、お願いもしてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 それはもうぜひ督励をしてやっていただきたいと思います。

 それから、公立学校、私立学校、小中学校を含めまして、今年度で、耐震関連で耐震化率、こういうふうな観点からも一生懸命取り組んでいただいていると思います。予算が千百五十五億円計上されておりますけれども、これで耐震化率はどのくらい上がるんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 平成十五年四月に実施をいたしました私どもの調査では、公立小中学校、全十三万棟ございますが、耐震性が確保されている建物が約六万棟、率にいたしまして四六・六%、こういう状況でございます。

 今、十六年度の予算案のお話をいただきました。私ども、耐震補強あるいは危険改築等の事業に係る耐震関連経費につきましては、厳しい財政状況ではございますけれども、前年度比約四億円増の、文部科学省関係では一千八十一億円を計上いたしておるわけでございますが、これによりまして、これはあくまで私どもの見込みではございますけれども、約二千六百棟の学校施設について耐震化が図られるんではないか、そういたしますと、平成十七年四月には公立学校施設の耐震化率は五〇%に達するんではないか、こんな見込みを立てているところでございます。

石田(祝)委員 そういたしますと、調査は十七年度でやるように督励をする、こういうことですけれども、今の予算で、沖縄の分も入れてことしが一千百五十五億と。そういうようにしますと、それで十七年度末で五〇%ということですから、これは耐震化の工事をしなくてもいいところも入れて五〇%ですから、やらなきゃいけないところから見たら、これはもうはるか遠い先ではないか。

 私は高知の生まれ育ちなんですけれども、南海地震もいろいろと言われておりまして、こういう観点から見ても、子供が通う学校を、また地域の避難場所になるところ、これについて十七年度末で五〇%でございますということじゃちょっと心もとない、こう思いますけれども、これは、我々もぜひ耐震化については積極的に御支援もしたいと思うんですよね。バックアップもしたいと思いますけれども、十七年度で五〇%では、あと残り五〇%をどうするのか、こういうことにもなります。

 この耐震化率一〇〇%を目指しての局長の御決意を最後に伺いましょう。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 公立学校施設の耐震化につきましては、実際に事業を行うのは学校の設置者である地方公共団体でございまして、私どもはそれを補助金という形で支援する立場でございますから、なかなか先生、いつまでにこれを一〇〇%にするということを明確に今お示しをすることは難しいわけではございますけれども、やはり、公立学校施設のそういう耐震化が大変大事であるということ、速やかに図られるように私どもお願いもしてまいりたいと思っておりますし、また、御指導、御援助いただきながら必要な予算の確保にも努めてまいりたい、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 それでは次に、地下駅の火災対策についてお伺いをしたいと思います。

 これは、全国大変地下駅がふえておりまして、また、東京にも次から次に新線が開業する。そのたびに、今までの既設の路線の下を行かなきゃいけないものですから、だんだんだんだんと深くなってきて、最近の線路だと、どこまで潜っていくのか、これは出られなくなったらどうしようなんて考えるときがあるんですね。それで、特に昨年、韓国の大邱で地下鉄火災が起きて百九十二名が亡くなった。これはあながち関係ない話ではないと思うんですね。

 それで、地下駅の火災対策で、地下駅がどのくらいあって、火災対策の基準にどのくらいの駅が適合しているか、これをちょっと教えてください。

丸山政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、昨年二月に起こりました韓国の地下駅火災の後、私ども、すぐ日本の地下駅の調査をいたしました。地下駅、六百八十四駅ございますが、そのうち二百六十八駅につきましては、私どもが設けております地下鉄道の火災対策基準に合致していないということでございます。

石田(祝)委員 ですからこれは、六百八十四のうちの二百六十八が合致していないと。合致していないということは、火災基準から見たら危ないということなんですね、これは。

 ですから、これについて、ことし、火災対策として約三十億円の予算が計上をされておりまして、事業費で約九十億、こういうふうにお聞きをしておりますけれども、この整備計画をどうも五年間で組んでいらっしゃるようであります。この五年間であと残りの二百六十八、また、これから新線の開通等があれば当然駅もふえてくる。新しいところはもう全部基準に達しているだろうと思うんですけれども、この五年間で二百六十八できるのかどうか。この辺、ちょっとどういう状況になるかお聞かせいただけますか。

丸山政府参考人 ただいま御指摘いただきました二百六十八駅の基準に適合していない駅につきましては、まず、私どもの基準、地下鉄火災対策基準に基づきまして、五年以内にすべて基準への適合をまず義務づけるということにいたしております。

 ただ、これの整備が確実に行われますように、特に、お金のかかります大規模な改修が必要となります避難通路と排煙設備の新設につきまして、今御指摘ございましたように、予算上の措置を講ずるということでございます。

 それから、あわせまして、このように緊急に整備いたしました火災設備につきましては、固定資産税等を軽減するなどの租税特別措置もあわせて講ずるということにいたしております。

 法令上の規制、予算上の措置、それから税制上の措置、この三本柱で五年間で確実に二百六十八駅が基準に適合するようにいたしてまいりたいと思っております。

 それから、新しい駅につきましては、これはすべて基準に適合する形でできておるということを申し添えたいと思います。

石田(祝)委員 五年間でしっかり取り組む、こういうことでございます。

 駅を持っているというんでしょうか、鉄道事業者の中には、経営状態がなかなか厳しいところもこれはあるわけですね。経営状態がいいところ、また、その事業者の鉄道本体が大変厳しいところ、いろいろございますので、これは、ぜひとも人命優先、こういう観点からしっかりと取り組んで指導をしていただきたいと思います。

 それで、私がもう一点心配するのは、この地下駅の火災の対策の基準、これが実は大変古いわけですね。昭和五十年の基準であるし、また、その後、五十七年ですか、改正があったわけですけれども、それでも二十数年前の基準なんですね。ですから、果たして今回、その基準の上で不適合の駅を努力して五年間で適合されるようにする、そういたしましても、では、今の基準で見たときに、新しい基準をそろそろ考えていかなきゃいけないと私は思っておるんですけれども、そうすると、逆に、六百八十四の駅全部が、新しい駅の災害の基準からいったら合わなくなるんじゃないか。

 この基準の見直しということはどうなっていますか。

丸山政府参考人 五十年の基準におきましても、我が国の地下鉄車両につきましては、既に不燃化、難燃化等の対策が講じられてきておるところでございます。それから、駅につきましては、出入り口を二個設けろとか排煙設備を設けろ、こういう基準になっているわけでございます。

 ただ、韓国の地下鉄火災が、ガソリンによる放火という、思いもしなかったようなことで起こったということもございまして、先生御指摘がございましたように、今の基準は果たしてそういうことに対応できるのかという問題意識で、私どもは、地下鉄道の火災対策検討会を設けて、今検討を進めておるところでございます。その検討結果をこの三月中にも取りまとめを行うことにしておりまして、その結果を踏まえまして、現在の火災対策基準につきましても見直しを検討してまいりたいというふうに思っております。

石田(祝)委員 そうしましたら、また見直しがまとまりましたら、当委員会にもぜひお知らせをいただきたいと思います。

 それでは、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 「東南海・南海地震に係る被害想定結果の概要」、こういうものをいただきまして、これは非常に数字としてお示しするのはどうかと思いますけれども、朝五時のケースで、死者の数、津波の被害というところで、避難意識が高い場合に三千三百人、避難意識が低い場合が八千六百人は亡くなるだろう、こういうふうな予想がされております。北海道南西沖地震とか日本海中部地震の場合、それぞれ避難率が七一%、二〇%と、同じ地震であっても、その起きたところによって人々の受けとめ方が違えば、すぐ逃げなきゃいけない、こういう思いがなかなか全国一律に上がっていかない、こういうこともあろうかと思います。

 それで、まず今回、津波のことに関してお聞きをしたいんですが、日本は海岸線が大変長うございまして、大体全国で千ぐらいの市町村が海岸線を有している。ここで、地域防災計画で津波の避難地の指定と避難路の指定をしなきゃいけない、こういうことになっていると思いますが、この現状はどうでしょうか。

林政府参考人 津波に対する対策についての御質問でございますが、私ども、従前から、いろいろマニュアルなり指針を地方団体にお示しをいたしまして、御指摘いただきましたような津波に対する備えを十分にしていただくようお願いをいたしているところでございます。

 その中では、特に、浸水予測図を策定するとか、あるいは市町村では、津波の避難計画を策定して避難地、避難路等の指定を行っていただくことが必要なわけであります。

 お尋ねがございました避難地あるいは避難路の指定状況でございますが、沿岸部市町村を持っている団体の数は全国で千二十一団体ございますが、そのうち、現在、避難地の指定がなされているのは三百十市町村、避難路の指定がされているのは百八市町村にとどまっている、こういう調査結果が出ております。

 私どもといたしましては、地方自治体に対して、何よりも備えが重要でございますので、早急にこの避難地、避難路を指定し、その整備を促進するよう働きかけているところでございます。

石田(祝)委員 最後に大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、こういう調査があるんですね。昨年の五月の宮城県沖地震における住民の行動に関する調査、こういうものが東大の社会情報研究所でことしの二月十三日にまとめられておりまして、その中で、仙台と大船渡市、この両方をサンプルにしてやっている。

 これが、物すごくこの津波に対しての意識が違うんですね。これはもう有権的というんでしょうか、明確に違いがある。この津波に対して、繰り返しいろいろと言われていると思いますけれども、大変受けとめ方が違って、いろいろこれを私も読ませていただきましたら、情報を得ようとして、かえって逃げないでラジオの情報を待っておったと。まあ、今回は津波がなかったからいいようなものの、津波の情報を聞いているうちに自分のところは沈んでおった、こういうことにもなりかねないわけです。ですから、この津波についても、これはもう特段にこれから意識を持たせていくということも大いに私は大事だろうと、こう思っております。

 そういう面も含めまして、防災担当大臣として最後に大臣の御決意をお聞きいたしまして、終わりたいと思います。

井上国務大臣 今の調査は、津波の被災地であります岩手とか宮城県での調査でありまして、そういう意味では大変衝撃的な調査だと私は思います。

 やはり、災害というのは、人の命でありますとか財産に大変影響があるものでありますし、津波というのはさらに被害が大きいわけですね。一挙に流されてしまうということでありますので、津波についてのこの認識をさらに深めていく必要がある、こんなふうに思います。

 具体的にどうするのか。やはり、具体的には、防災計画の中にこの津波対策を織り込みまして、その防災訓練を通しましてそういった津波に対する意識を高めていく以外にはないんじゃないかと、こんなふうに思います。政策統括官がお答えしましたように、例えば津波のハザードマップ、それをみんなでつくっていくというようなこともあるいは一助になるかもわかりません。

 ともかく、津波につきましての防災教育をさらに徹底をしてまいりたい、こんなふうに考えます。

石田(祝)委員 ともかく、この災害対策については、これはもう当然与党も野党も関係はないわけですので、国民の命と財産を守る、こういう観点から私どもも全力で頑張っていきたい、こう思っております。

 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私も、東北ブロックの選出でありますので、昨年は、五月の三陸南地震、七月の連続した宮城県北部地震に直接出会い、現地も歩きました。十二月に改めて被災地を訪ねましたが、吹き飛んだ屋根などを押さえたブルーシートの数が目立たなくなったことや、新築しているお宅もふえているなど、少しずつ復興が進んでいるということは感じることができました。

 とはいえ、今回の被災地は、災害救助法の適用になった五町を中心に、ほとんどが農村地域であります。死者こそ出なかったものの、冷害とのダブルパンチでありました。ことし一月末現在の応急仮設住宅の入居者は、百四十六戸、四百四十九人。災害公営住宅の建設に取りかかる予定の町もありますが、二年後、仮設住宅の期限が切れたらどうするか。高齢世帯で保証も受けられず、融資を受けられるめどがない、途方に暮れている世帯もあること、改めて、住宅再建への保障が要望されておりました。

 そうした点でも、今国会に住宅安定支援制度が提案されたことは、阪神・淡路の被災者の皆さんを初め、長年の運動が実ったものと受けとめております。

 そこで、今回の法案を出すに当たって、長期避難を強いられている三宅島の皆さんへ配慮をした支援策なども新たに盛り込まれておりますが、仮設暮らしなどが長く続いた場合も、こうした考え方によって、避難を強いられているんだ、そういう形で支援を検討するべきと考えますが、その点についてまず見解を伺います。

井上国務大臣 三宅島につきましては、松原委員の方から御質問がありましたけれども、その中で、三宅がまだ災害が続いているんだというようなことがございまして、私どもも、三宅島につきましては、まだ災害が続いている、こういう認識でございまして、したがいまして、この災害に関連する施策につきましてはそのような考え方で対応していきたい、こんなふうに考えるわけでございます。

 したがいまして、住宅支援等につきましても、今、国会に提案しております法案が成立をいたしまして、早々にもこの施行ということになりますと、そういった法律の支援の対象にもなってくるというふうに考えているわけでございます。

高橋委員 済みません。先ほど住宅安定支援制度と言いましたけれども、居住安定支援制度、訂正いたします。

 大臣がおっしゃる災害が続いているという状態、全くよくわかります。先ほどの質問の中にも出てきてあったように、シロアリやネズミが出ている問題だとか、三宅島の皆さんの声も十分私も聞かせていただく機会がありました。ですから、新法ができたら、本来は遡及できない、そうした決まりがあるけれども、しかし三宅島は続いているじゃないか、そういうことで、政府としてこれを踏み込んで、長期に避難した方にも支援ができるという仕組みをつくった、そういうことを本当に大いに歓迎したいと思うんですね。

 そういう努力をされたということを踏まえると、例えば阪神の皆さんも、今九年目になりまして、先日、メモリアル集会に先駆けての全国交流集会というのに私も参加しましたけれども、今、災害復興公営住宅での孤独死が十一月末で二百五十一人にもなっており、仮設住宅での孤独死を上回る数になっております。自殺者が三十二人、災害援護資金の滞納者が二八%、八%の方は自己破産や死亡などでもう全然返す見通しがない状態になっている。そういう中で、家賃が上がって、行く先のめどが立たないのに退去を迫られている、そういう現状も今あるということをるるお聞きいたしました。

 そうした点では、せっかく今回一歩踏み出した、そういう点を考えたときに、さらにもう一歩踏み出すことを次には考えるべきではないかと。被害の大きさ、あるいは、長期に続いているという長さの程度に違いはあるんですけれども、一人一人の被災者にとってみれば、大変な被害、暮らしていけない、住むところがないという点では同じではあります。そういう点での検討をされることを求めますけれども、もう一度お願いいたします。

尾見政府参考人 三宅島の特例の件でありますが、考え方としては、火山の噴火被害の一つの態様として、自然現象としての火山ガスが続いている、そのために解除ができないというので、災害そのものが続いていると。

 それで、災害によりましては、それからの復旧復興ということで、まだそこが完全にいっていないというケースはいろいろとあると思いますが、この境目はやはり災害というところに置きますので、ですから、決して新しい考え方を取り入れたというよりも、三宅島災害というものを見たときに、やはり、火山ガスによっていろいろ今のような状況が続いている、災害が継続しているというところに重きを置いてそういう特別措置を考えさせていただいた、こういうことでございます。

高橋委員 ですから、説明の御趣旨は大変よくわかります。でも、今まではそういう概念がなかったものを、やはり災害が続いているんだということで今回踏み込まれたということを踏まえて、新たな仕組みについても今後検討していただきたいという要望ですので、ここはそれにとどめたいと思います。

 次に、阪神・淡路大震災の教訓を経て、平成七年に地震防災対策特別措置法が制定されて、地震防災緊急事業五カ年計画、その後さらに平成十三年から五年間延長をされました。

 先ほど、私の前の石田委員の方から、学校の耐震診断や耐震化率を高める問題について質問をされていたと思いますけれども、そこで、全公立小中学校の約十三万棟のうち、昭和五十六年以前に建築されたのは七割であります。耐震性が確保されている建物が約六万棟、四六・六%の耐震率というお話だったと思うんですね。それで、三カ年の診断計画を十五年度から開始をしているというお答えだった。

 そこから続けていきたいと思うんですが、昨年一月に内閣府防災担当がまとめた全国調査では、昭和五十六年以前の建物のうち、耐震化率は一八・二%にとどまっています。ですから、四六・六%というのは全体の数字ですので、昭和五十六年以前の何とかしなければならない建物でいうと、一八・二%だと。体育館は一二・六%にとどまっています。これは本当に深刻な数字だと思いますが、この原因についてどのようにお考えでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 なかなかこの問題が進まないと。一つは、市町村のそういった財政状況が厳しい、あるいは統廃合の計画があるとか、あるいは、どうしてもほかの市町村の公共施設と比べますと学校施設のそういう優先順位がこれまでややもすれば低かったとか、そういったいろいろな理由があるんだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、私ども、これは大事な事柄でございますから、各市町村に今後ともお願いをしてまいりたい、指導もしてまいりたいと考えております。

高橋委員 統廃合の計画、確かにそれはそれで、耐震計画の中に、五年以内に統廃合、改築など九千七十一という数字がございますので、それはそれですけれども、それ以外の実態からいって、深刻だということをやはり見なくちゃいけないということですよね。

 それから、市町村の財政が厳しいというのは全くそのとおりであって、しかしそれでいいのかというお話を一つちょっとしたいと思うんですけれども、宮城県北部地震で河南町というところの北村小学校が全壊となり、今回改修することが決まりました。

 それで、ちょっと写真を見ていただきたいんですけれども、私も現地に入りましたけれども、文科省はいち早く立入禁止の指示を出しましたね。七月二十六日の朝だったということで、夏休み中子供たちがいなかったことが幸いをしたわけで、万が一授業中とかであれば大災害になっただろうということは、もうだれもが口々に言っていることであります。案内してくださった教頭先生は、建物を見るだけでももう子供たちの心は傷つくんだということをおっしゃって、本当に気遣っていたのが非常に心に残っております。

 私は、まだ当時、そのとき候補者でしたけれども、この写真を持って地元の議員の皆さんと、河村文部科学大臣、当時は副大臣に訴えに、要望に行ったときに、何でこんなになるまでほっておいたんだろうとおっしゃいました。私は、逆にそれを言い返したいなという気持ちであったわけです。実は、この小学校は耐震診断をやっておりませんで、五月二十六日の三陸南地震を受けて、いよいよこれは耐震診断をするべきだという決断をしたやさきの七月の被災であります。

 この事情をもう少し詳しく伺いましたら、この河南町は、日本共産党の阿部加代子さんという議員がおりまして、耐震診断をしなさいと議会で前から求めておりました。そのときの答弁などを見ますと、この今紹介した北村小学校は、昭和四十七年築で三十一年経過をしているんだけれども、もう一つあると。和渕小学校というのは昭和三十一年築だと。四十七年もたっているわけです。だからそっちが先ですということで、とりあえずそっちの耐震診断をやりましょう、北村はその後ですよと言っていたわけですね。それでこういうことになってしまった。

 だから、こうした学校がまだ放置をされている、かなり猶予がない事態だと思いますが、その点についてお考えを伺いたいと思います。

    〔委員長退席、達増委員長代理着席〕

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 私どもは、先ほど申し上げましたように、各都道府県に、三カ年間での耐震診断計画を行うように、こういう指導も行っているわけでございますが、私どもが公立学校施設整備費で補助金で補助をする、こういった場合には、補助事業実施年度の前々年度までに実施した耐震診断経費につきましては補助対象にしているわけでございます。

 さらに、平成八年度からは、地震防災緊急事業五カ年計画に計上されております耐震補強事業につきましては、計画期間内に行った耐震診断経費についても補助対象としているわけでありますが、先生御指摘のように、確かに、この耐震診断経費がかかる、こういったことからちゅうちょされるという市町村もあるわけでございまして、先般、私ども、文部科学省の中に学校施設の耐震化推進に関する調査研究協力者会議というものを設けまして、そこで、地方公共団体がどの学校施設から耐震診断を実施すべきか、その優先度を簡単に、簡易に判定することを主な目的といたしました耐震化優先度調査というものを新たに開発をしていただいたわけでございまして、この調査費用によりますと、一棟当たり約十万から二十万円程度で行うことができる、こんなものもございます。

 こういったようなものも活用していただきまして、より多くの学校施設で耐震化の推進が図られるように、私どもまたお願いもしてまいりたいと思っております

高橋委員 優先度調査ということを取り組むというお話がありましたけれども、こうした今紹介したような待ったなしの事例が一刻も早く解決できるということに資するものを期待するわけです。

 そこで、今、一棟十万から二十万というお話がありましたけれども、校舎全体でいうとかなりの額で、実際には二百万から三百万かかるというのが現地の声であります。それで、そのときに経費がかかるというだけではなく、自治体が二の足を踏む理由の一つに、診断をして改修がもし不要となった場合、その診断料は補助の対象にならないわけですよね。国の調査でも、五・七%、診断したけれども不要というのがありました。万が一そうなった場合、いや、全部持ち出しはきついな、その点も非常に二の足を踏んでいる理由になっているということを承知しています。

 そこで、改修が要、不要を問わず、耐震診断そのものに補助をするということが考えられないのか、伺いたいと思います。

    〔達増委員長代理退席、委員長着席〕

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のようなこの補助事業にのらないものにかけます予備的な耐震診断に要する経費でございますが、私ども、交付税措置という形で総務省にお願いをしておるわけでございますが、残念ながら今回お認めをいただかなかったわけでございますけれども、御指摘も踏まえ、さらに引き続き交付税措置要望を行ってまいりたいと考えております。

高橋委員 その交付税措置については、私も総務省に事情を伺いました。特別交付税という意味ですよね。それはやはり、ちょっと恒常的にというものにはなじまないのではないのかなと私は思います。ですから、やはり仕組み自体を変える以外にはないのではないかと。やはり耐震診断は、地元の業者に仕事が回るという点ではむだ遣いにはならない。たとえ改修につながらなくても非常に効果的な事業でもありますし、診断をしてみないと結果がわからないということでもありますので、もう一度、診断そのものに補助する仕組みを検討する考えがないか、伺いたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 一つは、国の補助制度としてやはり零細な補助金についてはこれはいかがか、こういったような問題もございます。したがいまして、私どもは、一定の規模のそういった補助要請があった場合につきまして耐震診断経費を補助対象にしておるわけでございます。そういった中で対応してまいりたいと思っておりますし、交付税の要望につきましては引き続きまた行ってまいりたい、こういうふうに考えております。

高橋委員 今の、零細なものはいかがかという話になると、ちょっと総務省の考え方に対しての質問になりますので、ここについては引き続き検討をお願いしたいということで、お話を次にしたいと思うんです。

 もう一つの事例ですけれども、これは青森市の新城中学校というところなんですけれども、こちらの方は昭和四十三年築なんですけれども、新興住宅街が非常に伸びてきておりまして、生徒数が現在六百五十二人、もっともっとふえると言われております。建て増しや増改築で、ごらんのように校舎はプレハブであります。それで、青森は雪も降る大変寒いところですが、石油ストーブをいまだに使っていて、戸もきちんと閉まらない教室にポット式の古いストーブでは、教室が暖まらず、コートを着て授業をしている。これは赤旗新聞の記事ではなくて、学校基本調査という、れっきとした教育委員会の文書の中で紹介をされているところであります。名誉のために言っておきますが、石油ストーブは、とてもそれじゃもたないので、二校だけであります。あとはちゃんとした暖房になっております。地元紙の投書の中に、「窓はテープで補強がしてあり、壁はカビだらけ。現代の中学校とは思えません。」「情けなくて涙が出た。三年前、母校の青森市新城中学校を訪れた私は「これはとても学びやとは言えない。青森市の恥だ」」など、地元紙に投書が相次いでいます。

 鉄骨づくりの校舎の場合、耐用年数の目安となる国の財産処分制限期間が四十年、新城中学校は、校舎の延べ床面積の約四割に相当する建物が二十五年以下の状況になっているというのが市の説明であります。こうした学校は、実は全国にもいろいろあると思うんですね。一部改修を重ねたために年数が新しい部分がある。そういう学校も実態に合わせて大規模改修ができるように補助できないものかどうか、考えを伺いたいと思います。

近藤政府参考人 私どもも、今、学校施設の状況、耐震化の問題、あるいは老朽化が大変進んできておる、こういうことにつきまして大変深刻な状況にあるということは認識をいたしておるわけでございます。

 先ほども申し上げましたように、なかなか市町村の財政状況は厳しいということから、どうしても、そういった学校施設の、特に老朽化施設等々の時期に応じた改修というものが進んでいかない、こういう状況もあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、各市町村の御要望を十分にお聞きをしながら、また一方では、限られた予算でございますから、優先的な採択を図っていく、こういった方向で今後とも各都道府県からまたよく事情をお伺いしていきたい、こういうふうに考えております。

高橋委員 ぜひ、実態に合わせて優先的に採択していただきますよう、その節はよろしくお願いいたします。

 今、耐震診断をやって、改修の必要性あり、そうなったところでもまだ未改修のものが一万四千三百九十三ある、そういう実態であります。

 先ほども、予算は大丈夫かという話がありましたけれども、各県から出された耐震診断実施計画を見ますと、平成十五年から十六年度への計画で千七百七十六校プラスになっております。あるいは、十六年度から十七年度で、一万二千六百五十六校プラスになっております。三カ年でやれという計画ですから、当然そういうふうに、後には残すけれども、ふえていくとなるわけですよね。

 しかし、今の予算のつきぐあいからいうと、これを担保できるものになっているのか、絵にかいたもちにならなければいいがと思いますが、その点伺います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 現在の大変厳しい財政状況の中、とりわけ三位一体の改革の中で、私どものこの公立学校施設整備に係る予算も、前年度と比べますと減額になっているわけでございます。

 ただ、御指摘のように、こういった耐震補強でありますとか、あるいは危険改築の耐震関連経費につきましては、これは対前年度四億円ということでございますから、大した金額ではございませんけれども、増額の予算を計上させていただいておるわけでございます。そういった予算を活用いたしましてこの問題について対応してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

高橋委員 大変訴えたいことはわかるんですけれども、先ほど言った未改修の一万四千三百九十三も入れて、十七年度になると予定がかなりふえるわけですよね。それも踏まえて十分に予算措置ができるのかということでありますが、これはちょっともう一度お願いいたします。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 公立学校施設整備費、地方向けの補助金でもございます。しかも、公共事業的と申しましょうか、なかなか厳しい予算の構造になっておるわけでございますが、私どもは、とりわけ耐震事業、これはやはり緊急性があるわけでございますから、そういったことに重点を置きまして必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

高橋委員 これは強く要望しておきたいと思います。

 次に、厚生労働省に伺いますが、同じく社会福祉施設の耐震については、内閣府の資料で、昭和五十六年以前の建設の社会福祉施設の耐震化率は一七・七%であります。ですから、今言った学校よりもまだ悪い、体育館よりちょっといい、そういうことですね。小さい子供たちやお年寄り、体の不自由な方たちを預かる施設がこのような状況では危険過ぎます。

 厚生労働省として、耐震率を高めるための取り組みがどのようになっているのか、伺います。

小島政府参考人 社会福祉施設の耐震化等、地震防災に対する配慮は大変重要なことだと考えておりまして、厚生労働省におきましては、社会福祉施設を整備する際には、各都道府県に対しまして、地震防災等に十分配慮するよう毎年度指導しているところでございます。

 また、先生御指摘のように、古い社会福祉施設ほど耐震化が図られていない現状がございまして、老朽施設の改築整備におきましては、耐震化対策を行う施設につきまして国庫補助を優先的に採択するとともに、独立行政法人福祉医療機構の融資についても金利の優遇措置を講じているところでございます。

 さらに、老朽施設に該当しない場合についても、地震防災対策上必要な補強改修を行う大規模修繕につきまして、国庫補助の対象としているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、社会福祉施設の耐震化の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。

高橋委員 今お話ししてくださったこと、平成十五年の一月七日付の通知、あるいは九月二十六日の通知などで、例えば、「地震等の防災対策にも十分配慮する。」ということが書かれておることや、「入所者の安全性を確保する必要があることから、」「優先的に採択する。」ということなど、さまざまなことをおっしゃっていられるんだと思うんですね。

 それはよくわかるんですが、問題は、「防災対策にも十分配慮する。」だれがそれを判断するかということなんですね。

 それで、先ほど来、学校問題をお話ししてきましたけれども、学校の場合は三年計画というものを持っている。だけれども、社会福祉施設の場合は、では、耐震診断をいつやるのかとか、何カ年でやるのかとか、計画を持つとか、そういう仕組みそのものがないと思うんですね。なければやはり進まないだろう、自主的にこれは危ないよでは済まないだろうと思うんですが、その点いかがでしょう。

小島政府参考人 御指摘の点でございますが、社会福祉施設には古い施設も随分ございまして、耐震化の地震対策だけではなくて、火災も大変心配をしているところでございます。

 そういう老朽施設について改築が速やかに進むようにということで、先ほど申し上げましたように、国庫補助を優先的に採択するとか、金利の優遇措置というものを講じてございますが、都道府県に対しまして、ぜひそれを優先的に補助申請を上げてほしいということで、できるだけ私どもの方としては国庫補助で対応してということでございますので、これからもそういった方向でやっていきたいというふうに考えております。

高橋委員 仕組みそのものがないということについてはそのとおりなんですよね。ですから、そこはぜひ検討していただきたいと思います。

 最後に大臣に伺いますが、学校にしても社会福祉施設にしても、最も安全でなければならない場所がまだまだ耐震性が確保されておりませんので、そういう点で、関係省庁と連携を図って公共施設の耐震性を確保するべきと思いますが、その決意だけ最後にお願いいたします。

井上国務大臣 学校なりあるいは社会福祉施設の耐震化工事という、これは単なる耐震化工事じゃなしに、建てかえのことを皆さん想定して言っておられると思うんでありますが、そうなりますとこれは大変なお金がかかりますし、また時間もかかるわけでありますので、やはり、小学校とか社会福祉施設の耐震化というのは、これは優先的に取り上げるべきでありますので、私は、どちらかといいますと、大きな建てかえじゃなしに、耐震化の工事、やはりそういうようなものをできるだけ早くやっていくべきじゃないのかな、こんなふうに思います。

 いずれにしても、非常に大事な問題でありますので、よく文部科学省の方とも連絡を密にしまして、積極的に取り組んでいただきますようにお願いをしていきたいと思います。

高橋委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 以上でございます。

堀込委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 きょうは、民間と市場の力を生かした防災力の向上という点について質問していきたいと思います。

 小泉総理は、平成十四年四月の中央防災会議において、災害に強い国の実現を考える場合、いかに民間の知恵と力を活用するかが重要、災害対策の分野に市場のスピード、活力を導入できれば、質量ともに充実した対策が可能というような発言をしたわけでございます。

 これを受けて、十四年十月に、防災担当大臣主宰の企業と防災に関する検討会議、ここにおきまして四つの課題を設けました。地域防災と企業、企業連携による防災町づくり、市場の力を生かした防災力の向上、企業のリスクマネジメント、この四つの課題を設けて今検討作業を行っているということでございますが、随分と企業とか市場というものを意識した取り組みになっているのではないかというふうに思います。

 そして、昨年五月の中央防災会議において、民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会ということを設置しまして、九月から、この中央防災会議の専門調査会、分科会がスタートした経過になっておりますが、この経過認識が正しいのかどうかということも確認してもらいたいんです。

 その中で、我が国の防災対策の中心は、事前の減災対策、災害を減らすということと、発災時、災害発生時の応急対策ということで、個々の企業、自主防災組織、個人などが防災対策を、個別の取り組みとしてではなく、相互に連携させることで地域や社会の防災力を高めることはできないかという問題意識の上に、民間と市場の力を生かした防災戦略を策定することを目指すという目的、この目的のもとに、「今後の進め方」というフローチャート、これには、「市場の力を活かして社会の防災力が高まる仕組みや考え方を整理する。」あるいは、「市場の力を活用した、社会全体としての防災意識高揚方策を検討する。」ということで、ことしの夏をめどに最終の取りまとめを行うということであります。

 そこで、なぜ、防災対策に当たって市場の力と言うのか、その意味についてお伺いしたいと思います。

尾見政府参考人 防災になぜ市場という力を活用するようにするのか、こういうお尋ねでありますが、防災は行政だけで担うものではないというふうに認識しております。個々の企業、自主防災組織、個人等による自助、共助とあわせて防災力を強化していくということが大切だというのが基本認識でまずございます。

 近年、企業の自主的な判断による取り組みだけではなくて、行政と連携して防災対策に取り組むという事例も大変ふえてまいりました。例を挙げさせていただきますと、災害時に、道路上の放置車両がございますが、これを移動する作業について、区役所が、地区内の自動車修理工場と協定を締結するというようなことでその力をかりるということがございます。災害時の食料とか飲料水の供給について、県が、大手のスーパーとかコンビニでありますとか、協定を締結する事例などもございます。民間にしては、民間の得意分野を有効に活用していただいて効果的、効率的な対応が可能になる、そういう世界があるんではないかというふうに思っております。

 経済界全体を見ますと、日本経団連なども、防災に関して、個々の企業の枠を超えて経済界として真剣な検討もなされているというふうに承知しています。

 幾つかの業務地区におきましては、例えばよく例に挙がるのは、東京駅周辺の、大丸有と言っておりますが、大手町と丸の内と有楽町ですね。あそこにあるような企業群が、あの地域として意識をして防災町づくりを考えていこう、こういう動きもございます。企業とか経済団体とか各種NPO等がお互いに連携をして防災対策に取り組む上で、多様な主体が同じ目標を共有して、どういう防災対策を行うことが望ましいかという点について共通の認識を持つことが必要だ、こういうふうに思っております。

 また、官民連携を推進するための環境整備の具体策ということも検討することが必要だと思っております。この民間と市場の専門調査会におきます議論を通じて、官民連携した防災対策についての基本的な指針、ガイドラインを策定することを目指している、こういうことでございます。

山本(喜)委員 今、東京駅周辺の防災町づくりということで、企業の連携、もちろん、災害対策ということでは、行政だけでなくて、企業あるいは自治会とか、そうした連携が大変重要なわけですが、特に、そこでなぜ市場なのかというわけですよ。企業の連携はもちろんわかりますが、市場という意味ですね。

 例えば、この議事経過の中には、防災については商品化していく観点があるのではないかとか、民間企業における防災配慮型商品の開発とか、防災グッズの開発だけではないと思うんですよ。この市場というものがなぜ強調されるのか、そこがちょっといまいち、もう少しお願いします。

尾見政府参考人 問題意識としては、民間の活力とか市場とか、そういうものを使って何とか防災力を高めていくということができないかというふうに問題意識は強く持っているわけです。では、具体的にどうしていけばいいのかということになりますと、正直言って私どもに十分な知恵があるというふうには思えません。それで、少し、専門調査会でどういう御意見が出ているのかということを御紹介することで、最終的に結論を出しているわけじゃありませんが、市場というものについて御理解をしていただくための一つの支えになるんじゃないかと思いますので、申し上げたいと思います。

 専門調査会に出ている意見、多様なものがありますけれども、例えば防災対策というのが、自分の利益だけではなくて、他の利益も含めて考えないと全体の費用対効果が適切に認識できない分野であろうと。ビルなり住宅なりの耐震改修で、利益というか効果はそこだけに属するのかというと、例えば、それが倒れて隣のうちとか道路をふさいでしまうという公共的な意味合いというか、そういうものもありますから、そういうことに着目するとか、例えばセットバックというのがよく都市計画、町づくりでございますけれども、セットバックすることによって、道路が広がって類焼防止になるとか消防車が通りやすくなるとか、そういう防災上の効果、そういうことも出てくるでしょうと。そういうものを例えば地域で負担していくというようなことができないのか。これを市場というふうに呼ぶかどうかはちょっとまだ私自身もよくわかりませんけれども、そういうことが出ております。

 それから、自動車については、環境対策で最初は大変なコスト要因だった、コスト増だった。ところが、これをきちっとクリアすることによって、日本車の強みというのは、その環境対策を器用に乗り越えて出てきたということがあるんじゃないか。防災対策の技術も、先行すればビジネスチャンスになるんじゃないか。そういう力というのを生かしていくということを考えられないのか。あるいは、災害時の情報提供システムなどもいろいろ広がっいく中で、防災の世界にも用途が広がって他の分野にも応用できる。そういうものをかなり限定された局面で情報提供するということになれば、ある程度技術的に高まるところもありますので、ほかの分野でも容易にできるんじゃないか。そんなような意見が出ております。

 御紹介させていただきました。

山本(喜)委員 地域でそうした費用というものを負担していくとか、ビジネスチャンスというようなことも言われましたし、この経過の中で、防災力向上のための規制強化に関しては、市場活動に過度な負担や支障が出ることは避けるべきであるというふうな意見も出ているわけですよ。

 ですから、これは規制緩和ということも出てきますし、これを見ていますと、何か国の役割がどんどん減っていって、地域とかあるいはビジネスチャンスとか、そうした市場の方にだけ防災対策を、何か国の役割を軽視していくんじゃないかというふうな印象が強いんですけれども、そうした点はどうなんですか。

井上国務大臣 確かに、市場の力なんといいますとわかりにくい言葉だと思うんですね。私も、時間があります限りこの専門調査会なんかに出まして議論を聞くんですけれども、地震の場合には、理論的に、この場所にこういう規模の地震が起きてこんな災害があるというのは余り出てこないんですよね。大体、過去にこういうような地震があったからこういう地震が起こるんじゃないかというのが、どうも基礎になりまして議論が進んでいるように思うんですよね。

 ですから私は、そういう意味で、一つには、やはり、これまで各地域で言い伝えられてきたこととか、いわゆる民間の知恵といいますか、そういうようなものを極力活用していくというような意味も一つは込められていると思うんですね。

 それからもう一つは、国が、あるいは地方公共団体だけがやるというんじゃなしに、民間の考え方、つまり、民間の効率的な物の考え方ですね、こういうことも取り入れられるものは取り入れていいんじゃないか、こういう考えもあろうと思いますし、さらには、民間の活動というのは、今各事業分野で非常に拡大をしておりますので、一般の防災を企業の活動と切り離して考えることはできないわけですよね。だから、やはり地域としては、企業も住民も一体になりましたそういうような対応が必要だというようなことですね。だから、そんな意味も込められているんじゃないか。

 つまり、さまざまな意味を込めて、市場の力といいますか、民間の知恵とか力、こういうことを言っているんじゃないかなと、私自身はそういうぐあいに推測をしているところでございます。(山本(喜)委員「規制緩和の関係は」と呼ぶ)

尾見政府参考人 防災対策の分野において、市場の力を発揮させるために何らかの規制緩和が講じられるのか、こういうお話でございますが、これも、検討課題として示されたものをちょっと御紹介いたしますと、例えば、災害時におきましてコンビニを一つの生活拠点というふうに位置づけて、そこへの生活必需品の輸送車両、これを、普通は規制されるわけでありますけれども、それの運行を確保するために規制緩和をするというようなこととか、あるいは、物資を備蓄する際にお金がかかるわけでありますが、そういうものについての税制上の特例措置、これは直接規制緩和になるかどうかわかりませんが、広い意味でそういう観点だと思います。そういうものも出ております。

 それから、先ほどの、規制緩和とは直接離れますが、御紹介としては、例えば、いろいろな環境マークとかそういうのがございますが、防災についても、客観的な評価をして、防災マークというようなものを第三者で適正に評価して、それが流通するようにするとなると、いつの間にか、防災に非常にプラスになる商品というか、そういうものが行き渡るようになるんじゃないか。

 あるいは防災会計ですね。これも、環境会計というのは、企業が環境に対してどういうふうに寄与しているかということを会計の世界であらわす、それがマーケットというか資本市場なんかでも非常に評価されて、会社の価値が上がるという世界があります。防災についても、そのガイドラインをつくって、そういうことが可能になるように、防災に積極的に取り組んでいるというところがプラスになるような仕組みというのはまさに市場として考えられるんじゃないか、こういう御意見をいただいております。

山本(喜)委員 今、企業でISOという国際規格、それと同じような観点での企業の対応を求めていくということだと思うんですけれども、まだいまいち、余りにも市場を重視した、国の役割が何か抜けていくというような印象が強いわけですけれども。

 次に、NPOの関係ですね。阪神・淡路大震災でも、もちろん、企業、地域、そういったものが行政を含めて連携をして復興に当たったわけですが、そうした意味で、NPOなり地域住民との連携が非常に重要になっていると思います。

 こうしたNPOのネットワーク化、あるいは行政との連携というのが日常的にどのように行われているのか、お伺いしたいと思います。

尾見政府参考人 NPOのネットワーク化のお話でございますが、ちょっと長くなりますけれども、阪神・淡路の大震災におきましても、生き埋めになった方々が近隣の人たちによって救出されたという調査もございます。地域社会における日常的な人と人のつながり、助け合いを大切にするということが、災害時に命を救う力になるというふうに考えております。

 しかし、近年のライフスタイルの変化等により、町内会を主体とする従来のコミュニティーというのはやや崩壊をしつつある、十分機能しなくなっているということでありますが、他方、福祉活動でありますとかリサイクル活動でありますとか、そういうことを熱心に行うNPOとか商店街、そういうようなものがふえておりまして、地域のうちで町づくり活動を担ういろいろな主体が育ってきている、こういうふうに思います。

 それから、企業が連携してさまざまな活動を行う例については、先ほど申し上げました。

 例えば、東京の早稲田でありますけれども、商店街が大学生のボランティアと連携をして手づくりの防災マップをつくるということをやっています。それから、住宅耐震化に関して、みずから勉強会を開いて学習をしているというような取り組みも行われております。

 こうした多様な主体による防災町づくり活動が各地で進められておりまして、今の早稲田商店街のほかにも、平塚市とか名古屋の方面とか、六つぐらいの地域を防災町づくりモデル調査事業ということで指定をして、今調査をしているところであります。

 その調査結果を踏まえまして、この調査会において、防災町づくりを今後どういうふうにしたら具体的に進められるのか、その輪を大きく広げていけるのか、そういうことを考えていきたいと思っております。

山本(喜)委員 先ほど来、地震の被害への対応ということで各委員から議論がされておりましたけれども、東南海地震あるいは南海地震、そして日本海溝、千島海溝の地震ということが今世紀前半にも起こるのではないかということが言われているわけでございます。現在想定されているそういった地震というものは、行政単位を超えて広域かつ甚大になるというふうになっていくわけでございます。

 そうしたときに、規制緩和あるいは市場の力への過度な依存ではなくて、国や都道府県が、主導的に広域的な支援を迅速に行うための仕組みとかあるいは支援内容というものをあらかじめ確立しておくということが重要ではないのかということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

堀込委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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