第4号 平成23年12月8日(木曜日)
平成二十三年十二月八日(木曜日)午前十一時開議
出席委員
委員長 村井 宗明君
理事 市村浩一郎君 理事 大西 孝典君
理事 梶原 康弘君 理事 古賀 敬章君
理事 中根 康浩君 理事 長島 忠美君
理事 古川 禎久君 理事 石田 祝稔君
網屋 信介君 打越あかし君
笠原多見子君 金森 正君
神山 洋介君 黒岩 宇洋君
小林 正枝君 阪口 直人君
高野 守君 高橋 昭一君
高邑 勉君 玉置 公良君
中林美恵子君 橋本 勉君
細川 律夫君 三村 和也君
皆吉 稲生君 矢崎 公二君
山本 剛正君 吉川 政重君
渡辺 義彦君 秋葉 賢也君
江藤 拓君 小里 泰弘君
梶山 弘志君 竹下 亘君
谷 公一君 林 幹雄君
森山 裕君 江田 康幸君
赤嶺 政賢君 重野 安正君
柿澤 未途君
…………………………………
国務大臣
(防災担当) 平野 達男君
参考人
(東京大学名誉教授)
(火山噴火予知連絡会会長)
(特定非営利活動法人環境防災総合政策研究機構 環境・防災研究所所長) 藤井 敏嗣君
衆議院調査局第三特別調査室長 仲川 勝裕君
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委員の異動
十二月八日
辞任 補欠選任
網屋 信介君 皆吉 稲生君
阪口 直人君 渡辺 義彦君
高橋千鶴子君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
皆吉 稲生君 網屋 信介君
渡辺 義彦君 阪口 直人君
赤嶺 政賢君 高橋千鶴子君
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
災害対策に関する件(火山対策)
火山活動の観測監視及び調査研究体制等の充実強化に関する件
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○村井委員長 これより会議を開きます。
災害対策に関する件、特に火山対策について調査を進めます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として東京大学名誉教授、火山噴火予知連絡会会長、特定非営利活動法人環境防災総合政策研究機構環境・防災研究所所長藤井敏嗣君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○村井委員長 この際、藤井参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用の中、本委員会に御出席賜り、本当にありがとうございました。本委員会において、特に火山対策について、忌憚のない御意見をおっしゃっていただければ幸いでございます。よろしくお願いします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、藤井参考人から十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、藤井参考人にお願いいたします。
○藤井参考人 藤井でございます。
それでは、貴重なお時間をいただきまして、我が国の火山噴火と防災対策について御説明をさせていただきます。
まずは、火山噴火というのがどういうものかを簡単に御説明いたします。
火山噴火は、地下に高温のために岩石が溶けてできるマグマというものが地表に接近するか、あるいは地表に噴出して起こる現象のことをいいます。
そのマグマというのは、通常は千度ぐらいです。高温のものでは千二百度ぐらいありますし、低温のものでも九百度ぐらいの温度で、化学組成によって温度が少し違っております。
噴火の直前には、数キロから十キロぐらいのところに一たんマグマのたまりができまして、それが地表に向かって移動して噴火に至るわけであります。マグマの中には水や炭酸ガスといった揮発性成分が少量ですが含まれておりまして、これが火山の爆発の原因になるものであります。ですから、水や何かが最初に抜けてしまいますと、次は溶岩になって、余り爆発的にならない。当初は爆発的な噴火をしても、終わりの方では溶岩になるというようなことが起こります。
マグマは、化学組成によって粘り気が物すごく違います。十億倍も変化をしますので、地下でマグマが移動するときの速度というのも十億倍ぐらい変化があるわけですね。そういう高温の、ある量を持ったものが地表に向かって動いてくるわけですから、何らかの前兆現象があります。ですから、動き方がゆっくりなので、かなり前から前兆をつかまえることができるかもしれないとお思いかもしれませんが、そのときにはシグナルが小さ過ぎてなかなかわからない。
ですから、私どもが前兆現象として把握できるのは、大体数時間から数日、あるいは長くても数週間程度ということになります。
ただし、地震と違うのは、地震は地下で岩石が突然割れますから、前兆をつかまえることはほとんど難しいわけですが、噴火の場合には、マグマが移動してくるので、きちんとした観測をしていれば前兆は必ずつかむことができる。
次、お願いします。
これまでに噴火前兆の我々がつかまえた例というのをここに書いておりますが、右側の方を見ていただきましょうか、ここに七七年の有珠山の噴火から二〇〇九年の浅間まで書いてありますが、数時間から数日程度前に前兆現象をつかまえているということになります。
ただし、すべてで前兆現象がつかまるとは限りませんで、ことしの、二〇一一年の新燃岳噴火では、噴火が近いことはわかっていても、直前の現象をつかまえることはできませんでした。
次、お願いします。
これは、我が国が持っているというか、我が国に存在する活火山の分布であります。
百十の活火山があります。北方領土、海底火山も含みますが、百十の活火山があって、このうち四十七火山を気象庁が二十四時間体制で監視しております。つい最近までは三十四でしたけれども、気象庁の努力によって今四十七火山までふえているということになります。ただし、我々日本国民が住んでいるところに直接かかわり合いのある火山というのは百十のうち八十ぐらいありますから、まだ四十近くの火山が常時監視の網の中には入っていないということになります。
次、お願いします。
火山噴火にどういうものがあるかというのをこの図に簡単に示しました。
左側から、噴石、降灰、これは有珠山の二〇〇〇年の噴火の場合ですね。それから、雲仙の火砕流。それから、これは伊豆大島の例ですが、溶岩流の例。それから、融雪型の火山泥流という、雪を火山噴火の熱で解かして、それが泥流、土石流を発生することがあります。それから、火山灰が降り積もっている中に降雨がありますと、土石流が発生する。それから、火山ガスが長く噴出して人が住めなくなるということがございました。これは三宅島の例であります。
このほかにも火山の現象というものがございます。
火山灰による被害でありますが、火山灰と航空機というのは非常に相性が悪い。火山灰に航空機が遭遇しますと、操縦席はやすりがけのようになりますし、一番怖いのは、エンジンの中に火山灰を吸い込みますと、火山灰を溶かして出口のところで再び固まる、そのためにタービンが回らなくなってエンジンがストップしてしまうということがあります。
例えば、八〇年代にはこの二例ほど、エンジンがすべてとまったために一万メーターほど落ちかかって、地表付近でようやく一基のエンジンだけが復帰したために不時着ができて助かったという例があります。
最近では、二〇一〇年のアイスランドの噴火で、ヨーロッパじゅうの飛行機がほとんどとまってしまうということがございました。このときには、航空会社の被害だけで十七億ドルに達するというふうに聞いております。ことしも、チリの火山が噴火をしまして、一週間で地球を一周して、オーストラリアとニュージーランド、全然違う場所の飛行機をとめるという事態も生じております。
次、お願いします。
最近の日本の火山災害の例を三つほど出しました。雲仙の火砕流、それから有珠山の二〇〇〇年の噴火、それから三宅島の噴火ですね。
こういうものが最近日本では起こっておりますが、この後に、二〇〇四年、二〇〇九年に浅間山の噴火もございました。それから、桜島では現在もなお噴火をしています。ことしは既に九百回近くまで爆発をしておりますが、その例は省略させていただきまして、次、お願いします。
ことしの一月二十六、二十七日と大きな噴火をいたしました新燃岳、二〇一一年の例をお話しさせていただきます。
噴火活動の推移としては、ここに書きましたけれども、今から考えれば、二〇〇八年の八月の水蒸気爆発が始まりだったというふうに考えられます。その後、実際には一月の二十六、二十七日に激しいマグマ噴火、これはおよそ三百年ぶりでありましたけれども、こういう噴火をしまして、その後は、先ほど申し上げたように、揮発性成分が既になくなってしまったために、溶岩流として、直径七百メーターの火口の中を深さ百メーター以上にわたって溶岩が埋めるという事態が続いております。
現在もそこに溶岩が残っておりまして、表面の数メーターを除くと、恐らく千度ぐらいの溶けた状態になっております。その後、何回か爆発的な噴火をいたしましたが、九月七日以降三カ月間、非常に静かな状態が続いております。
次、お願いします。
霧島の新燃岳の噴火の前の状況ですが、一年以上前から、新燃岳から六キロほど離れた場所の十キロ深いところにマグマを蓄積していたということがよくわかっております。ですが、霧島全体として地震活動は少し高目でありましたけれども、直前に地震がふえるとか、そういう前兆がないまま噴火に至ったわけであります。ですから、活発な地震活動などの顕著な前兆がなかった例として、霧島・新燃岳の噴火は特徴的であったというふうに思われます。
次、お願いします。
これが一月十九日以降の新燃岳の活動経過を気象庁がまとめたものですが、先ほど申し上げたように、二十六、二十七日で爆発的な噴火をし、その後、山頂部に溶岩をためて、あとは断続的な爆発的噴火が起こったという例を示してあります。
次、お願いします。
それで、こういうものをどういうふうに我々は探知するかといいますと、マグマだまりが深いところにあります、その上のGPSという人工衛星を使いましてこの間の距離をはかる、あるいは伸縮計というものでここの伸び縮みをはかるというようなことをやります。
ここにマグマが供給されますとマグマだまりは膨張しますので、ここの基線長が伸びる、それで逆にこちらは縮むということが起こりますが、次の例に出しますように、マグマが山頂に向かって移動しますと、これが縮みますので、ここが縮む、これが伸びる、それで噴火が起こるというようなことが起こるわけです。ですから、このあたりを観測していますと様子がわかることになります。
次、お願いします。
これがGPSによる距離をはかっていた例でありますが、二〇〇九年の十二月から、次々とマグマが供給されるために伸びていったということがわかります。ここで噴火が起こって、急激に縮みます。その後、再びここで伸びていることがおわかりだと思いますが、地下でマグマがずっと噴火の直後から供給が続いている、今も続いております。ですから、間もなく噴火直前の状態に、多分来年の二月ぐらいにはそれと同じぐらいの量までマグマがたまることが予想されておりますが、今は静かな状態にあります。
次、お願いします。
火山噴火予知の現状ですけれども、大抵の火山で、きちんとした観測をしていれば前兆をとらえて噴火を予知することができます。ですが、どういう大きさの噴火であるとか、激しい爆発的な噴火を起こすのか、溶岩流を出すだけなのかというようなことを予知する手法はまだ完成しておりません。
ですから、噴火予知というのはまだ完成した技術ではございませんので、噴火予知に向けた基礎的な研究がまだ重要な段階であります。ですが、日本のものだけを見ていますと噴火の事例が少ないので、海外の事例を参照することも必要です。海外では毎年六十火山が噴火をしていますから、そこをきちんと調べるということが重要になります。
次、お願いします。
これは、世界の火山の最近二百年間に十億立方メーター以上の噴出物を出したという巨大噴火の例をすべて書き出してあります。これで全部で十五の噴火がここに書いてありますが、ここで見ていただきたいのは、史上初というところに丸印がついている。
この十五火山のうちの十一火山が史上初の巨大噴火をしたということが書いてあります。ここらの国は日本やイタリアと違って歴史が浅いんですけれども、大航海時代以降は歴史がございますので、丸がついているということは、数百年休んだ後に噴火をした火山が大きな噴火をしたということになります。
次、お願いします。
もう一つの例は、ここにありますが、二〇〇八年にチリ南部の火山で九千四百年ぶりに噴火したものがございます。ここではかなりの量のマグマを噴出しました。あるときには、噴火が始まってすぐには噴煙高度が三十キロにまで到達するという、世界じゅうに火山灰がまき散らされるということが起こりました。
このように、海外の火山からしますと、数千年以上の静穏期の後に噴火するものもあれば、数百年程度の休止期間は普通であるというふうにお考えになっていただきたいと思います。
噴火の再開の前に十分長い前兆期間があるかというと、決してそうではなくて、最初に申し上げたように、数時間から数日程度というのが普通であるというふうに御承知ください。噴火の前の前兆現象というのは非常に微弱でありますので、火山の近くで観測をするということが重要になります。
その点では、先ほど申し上げたように、約四十ぐらいの火山は、気象庁が二十四時間監視をしているわけではございませんので、そういう火山に関してはまだ無監視の状態に近いということになります。
次、お願いします。
火山噴火のスケールは、ここに書きましたけれども、日本で最大級だと思われる雲仙・普賢岳がこのくらいです。これはすべて同じスケールで世界の火山を書いてありますが、セントヘレンズでは二十キロを超えるような火砕流が出る。それから、ピナツボでもそうですね。火砕流が出て、さらに二十キロの外側にまで土石流が出るという非常に大きな噴火があります。
日本でも、かつて大きな噴火をしたことがあります。富士山の三百年前の噴火ですね。ここでは、東京でも数センチの火山灰が積もりました。横浜では十センチぐらい火山灰が積もるんですね。
それから、もっと古い時期には、七千三百年前には鬼界カルデラの噴火というものがあって、東京では十センチぐらい火山灰が積もっています。それで、カルデラの中心では、二百キロぐらいで火砕流が発生して、その域はほぼ全滅になりました。
次、お願いします。
歴史的にわかっている火山噴火の例をここに示しました。日本の場合ですね。
十七世紀以降は古文書でよくわかりますので調べてみますと、三億立米以上の大きな噴火というのが、通常は一世紀のうちに四回から六回ぐらい起こっていました。ところが、二十世紀には、最初のときにこの二つが起こったきり、あと百年近く大きな噴火は起こっておりません。
したがって、これから先は、二十一世紀にはかなりの数の噴火が起こることを覚悟する必要があると思います。
次、お願いします。
これは、三月十一日まで私がそう申し上げてきたんですが、三月十一日の日に、二百キロ掛ける五百キロの岩盤が数十メーターにわたって東北でずれるという事件が起こりました。
マグニチュード九の地震でありますが、世界の例を見ますと、マグニチュード九というのは、二十世紀にはこれぐらいの数あります。ここには東北も含めていますが、こういうことが起こると次に何が起こるかというのが次のスライドにあります。
すべてのM九を超える地震の後には、火山噴火が起こっている。特に、一九五二年のカムチャツカの地震の後には、三年後でしたけれども、ベズイミアニという火山が千年ぶりの大噴火をして、その後はほとんど毎年のように、現在もですが、噴火をするような火山に変身してしまったという事実があります。
それから、二〇一〇年のチリのときには、しばらく噴火がないので、マグニチュード八・八だったから、九に至らなかったから噴火をしないのかと思っておりましたけれども、一年三カ月後のことしの六月になって噴火をして、現在も噴火を続けております。
次、お願いします。
したがって、日本列島は、三月十一日を境に大変化をしたと考えるべきであります。M九で噴火が誘発されるということも覚悟しなければいけませんが、別の考え方もあります。マグニチュード九のあのような大きな地震が起こったのは、日本の地学的な現象は今異様な事態になっているんだと考えることもできます。
それと同じような例が、九世紀に日本ではありました。貞観のころですね。このときに貞観の地震が起こって、西南日本ではその後十年ぐらいたってから地震が起こります。このときに何が起こったかというと、このあたりで富士山が噴火をする。それから、伊豆大島も噴火する、神津島、新島という、これは千年ぐらい休止期間を持つのが普通の火山でも噴火をしているわけですね。三宅島も噴火をするというようなことが起こりました。
ですから、これから先、日本の数十年間というのは、こういう火山活動も覚悟しなければいけないというふうに思います。
次、お願いします。
ところが、そういう事態で、日本の火山観測がどうなっているかということを見てみます。
アメリカ、イタリア、インドネシア、フィリピンという火山国においては、すべてが国が責任を持つ一元的な機関、そこに火山監視の専門家を擁する観測機関があります。
ところが、日本の場合には、気象庁が先ほど申し上げたように四十七の火山を二十四時間体制で監視をしておりますが、それ以外に、国立大学や地理院や経産省の産総研、それから防災科技研といったいろいろなところで観測をしたものを、気象庁長官の私的諮問機関である火山噴火予知連に持ち寄って火山活動の判断をしております。
地震の方について言いますと、地震調査研究推進本部というもので一応は一元化がなされておりますけれども、火山観測研究にはこういった本部体制がございません。ですから、ここに書いたような、予知連を中心とするグループで火山の判断をしているということになります。
次、お願いします。
これは最後のスライドになりますけれども、世界じゅうで起こる地震を赤点で、それからブルーの三角で火山の位置を示してあります。それから、ここに星印をかいているのは、これはG8、先進国の首都の位置に星印をかいていますが、日本だけが地震と火山のど真ん中にあるんですね。
アメリカでは、地震、火山は起こりますが、西海岸だけで、東海岸は何事も起こりません。ヨーロッパもそうですね、イタリアだけが南部で地震、火山が起こりますが。ですから、先進国の中で日本だけがこの自然災害にさらされるわけです。
ことしの三月十一日の後で、文科省の科学技術・学術審議会の方で、「国土のあらゆる地域で自然災害への備えが求められる我が国の地学的状況」ということは言われましたけれども、ここでは、地震、火山に対して日本では特別の配慮が必要だというふうに思います。
以上で私のお話は終わらせていただきます。(拍手)
○村井委員長 ありがとうございました。
以上で藤井参考人の意見の開陳は終わりました。
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○村井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市村浩一郎君。
○市村委員 民主党の市村でございます。
先週に引き続きまして先生のお話を改めてお聞きしまして、火山対策についてしっかりと備えをすべきだということを改めて認識をいたしました。
それで、先生、先ほど先生のお話の中で、地震観測研究には地震調査研究推進本部がありますが、火山については予知連でやっているということでございますけれども、地震については、この本部体制はいつからできたのでしょうか。教えていただけますでしょうか。
○藤井参考人 地震推進本部が今の形になりましたのは、一九九五年の阪神大震災の後でございます。
そのときに、地震対策特別措置法だと思いますが、つくられまして、その中で推進本部が定義されております。
○市村委員 私がお聞きしたときには、以前は地震火山と言っていたのが、これを境にどうも火山が落ちて地震になってしまったというのをお聞きしたんですが、そういう認識でよろしいんでしょうか。
○藤井参考人 はい、そのとおりでございます。
一八九一年に濃尾地震が起こったときに、政府は震災予防調査会というものを立ち上げました。震災予防調査会で、地震について調査研究を行うと同時に、火山噴火についても調査研究を行うということを任務として決めまして、そこで日本噴火志という立派な出版物を出しております。日本じゅうでどのような火山が噴火するかということを調査したわけであります。
その後で、一九二三年に関東大震災が起こりました。その大震災を受けて、震災予防調査会を廃止いたしまして地震研究所というものを設立いたしました。
それで、それは当時の東京帝国大学に附置されまして、現在の東京大学地震研究所でございますが、この地震研究所の中で、地震を研究すると同時に火山も研究するというふうになっておったんですが、今議員の方からおっしゃられたとおり、一九九五年に推進本部体制が発足したときには、これは地震だけを研究するというふうに法律に書かれております。
○市村委員 今、藤井先生からお話しいただきましたように、一九九五年を境に、どうやら火山についての体制が少し薄くなってしまったのではないかという印象を私も持っております。
それで、ぜひともこの状況を改善しなくちゃいけないと思いますが、特に、そうなりますと、人材というものがどうなっているのか。また、今の大学、先生は大学の教育の現場にいらっしゃいますが、今の火山研究に関する人材の状況はどうなっていますでしょうか。
○藤井参考人 火山の方は、今や人材がほとんど欠乏しかかっている、あるいは絶滅危惧種と言った方がいいかもしれませんけれども、要は、外国のように火山の専門家を雇い入れる火山研究機関というものが存在しませんので、気象庁は、百数十名の火山担当者はおりますが、国家公務員の合格者を採用するのであって、火山専門家を採用するわけではありません。ですから、火山学でドクターを取っても、就職先はごく限られた大学ぐらいしかないんですね。そうなると進学者がどんどん少なくなりますので、人材は枯渇するということになります。
イタリアでは、八〇年代から大投資をしまして研究機関を拡充しましたので、その当時六十名しかいなかった火山研究者は、現在では六百名近くいるという、世界でもまれに見る火山研究国になっております。
そういう手配が必要かというふうに思います。
○市村委員 先ほど、九世紀の地震、火山噴火の状況と今と似ているのではないかという御指摘をいただきました。本当に、前回の貞観地震、八六九年の約二十年後に東海、東南海、南海が起こっているわけであります。
その前後に富士山も噴火をしているという状況でありまして、今現在、地震の方では、東海、東南海、南海については三十年以内にほぼ確実に起こるだろう、これが三連動であるかどうかはわかりませんが、この三つが恐らく起こるだろうということはほぼ確実じゃないかと言われている状況でありまして、それを考えますと、例えば富士山についても、これは私ども本当に美しい姿を見ながら感嘆するところでありますが、その富士山ですら、ひょっとしたら噴火の可能性があるという状況であろうと思います。
その中で、今先生お話がありましたように、人材が枯渇をしているという状況であるのは大変ゆゆしき事態であろうと思います。また、この質問に先立ちまして、気象庁の方とも話をしてみますと、どうやら気象庁の観測体制もそんなに十分であるとは思えないというのも、私は認識を素直に持っております。
先ほど先生から、ほかの国は国立機関に一元化されているということがありますが、改めて、この観測監視体制及び火山に関する総合的な緊急調査体制につきまして、もう一度提言をいただければと思います。
○藤井参考人 ありがとうございます。
火山の観測には、物理的な観測、つまり地震、地殻変動などの観測だけでは済みません。外国の例でもわかりますように、地質の調査、それから火山ガスの調査、電磁気の調査、非常に多くの分野の研究を合同して初めて火山観測、火山噴火予知というものが可能になるわけでございますので、現在のような幾つかの省庁にまたがっているような体制ではなくて、外国の例のように、一つの機関の中にさまざまな専門分野を持った専門家を擁し、しかも今の気象庁がやっているような二十四時間の監視体制という機能も持った、そういうものが必要であろうというふうに思います。
○市村委員 また、我が国は火山法というものがあるようでありますが、これについて、先生、今の火山法に対する評価をお聞かせいただけますでしょうか。
○藤井参考人 今の火山対策特別措置法というのは、主に桜島を中心とする火山灰対策のためにつくられたというような経緯がございまして、火山の観測研究という条文は確かにございますが、一行か二行か書かれてあるだけでありまして、地震対策特別措置法のように推本の体制や何かについて言及することもございませんので、その点は火山対策特別措置法というのは不十分な法ではないかというふうに考えております。
○市村委員 最後になりますが、今回、今おっしゃった火山対策特別措置法もやはりしっかり見直していく必要があると思いますが、まず喫緊の課題として、やはりきちっとした観測体制を整えるためには、予算措置もしなくてはいけないと思います。
私もお聞きしましたら、余り十分な予算をとれていない。それはなぜかといいますと、結局、観測体制が非常に弱いんですね。人材もいないわけですから、余りお金をつけてもなかなか使えないというのも現実であるようでございます。
しかし、それでは大変悪循環でございまして、ぜひとも予算措置をすることによりまして、むしろ、今、悪循環を好循環に変えていく。人材も育成し、観測体制を強化するという方向に変えていくための予算の措置もしなくちゃいけないと思います。
今、この年末、首相枠、また今度、四次補正もやろうということであろうと思いますので、しっかりとその分で力を、全党会派が一致してこれをやろうとしていますので、そういうところで予算措置もしていきたいと思いますが、その予算措置についても、先生の方からまた一言いただければと思います。
○藤井参考人 今先生のおっしゃるとおりでございまして、一時的に大きなお金をつけたところで、今、それだけの人材がおりません。それで忙しくなって、多分、きちんとしたことができないだけになりますので、長い期間をかけて順次やっていく、それも途絶えることなくやっていくということが重要だと思います。それで観測体制を充実させて、人材も含めて、火山国日本に恥じないような体制をつくっていくことが重要だというふうに考えます。
○市村委員 終わります。
○村井委員長 次に、古川禎久君。
○古川(禎)委員 自由民主党の古川でございます。
藤井先生、本日は、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。
早速ですけれども、二、三お尋ねをさせていただきます。
まず、ことしの一月、新燃岳が噴火をいたしました。今お話を伺いますと、マグマの充てん状況がまた爆発前の状況に近づいてきているというふうにお伺いしましたが、今後どのような火山活動の可能性が予想されるのかということについて簡単にお知らせをいただければと思います。
○藤井参考人 これからの予測ですけれども、まず第一に考えられるのは、ことしの一月と同じように大量のマグマが新燃岳の火口から爆発的に噴火をするということでありますが、その際には、山頂部に溶岩がたまっているということが一月と異なる点であります。
ですから、その溶岩を噴き飛ばしてこの間と同じような噴煙で持ち上げようとしますけれども、溶岩の方は、火山ガスが抜けてしまっているので非常に密度が高いものなんですね。それで、前回のように軽石となって上空まで持ち上げられずに、途中まで持ち上げたところで落ちるということが起こります。それが七百メーターの火口の中に落ちればそれほど問題になりませんけれども、その外側の斜面に落ちてきますと、斜面に沿って走り出して、先ほど御説明したような火砕流となって走ることがあります。そのときには数キロ程度火砕流となって、場合によっては時速百キロ近いスピードで駆け下るということが起こります。これがまず一つのシナリオでございます。
それからもう一つは、今の桜島と同じように、比較的少量ではあるがコンスタントに爆発を続けるようになるという可能性もございます。
それからもう一つの可能性ですが、今、新燃岳の下にもマグマがある。それから六キロ離れた十キロのところにマグマの蓄積が行われているわけです。いわば霧島の山全体にマグマが充てんされているというふうにお考えになっていただきたい。一月二十六日のときは、まさに新燃岳の火口のところで水道の蛇口を開いただけにすぎない。ですから、前兆もなくさっとマグマが活動した。ということは、次に別の火口から、霧島にはたくさんの火口がございますので、そこから噴火が始まるという可能性も念頭に置く必要があると思います。
もちろん、最後のケースとして、地下でマグマがじっくりと固まってしまって噴火が起こらないという可能性がありますが、これはもう非常に確率的には低いと思いますので、どういう形にしろ、今後何らかの噴火活動が起こるだろうというふうに思います。
○古川(禎)委員 数年前、石黒耀さんという方が「死都日本」という小説を書かれました。これは霧島連山の中のたしか御鉢だったと思いますけれども、これが破局噴火を起こす。今先生がお話の中でちょっと触れられましたけれども、霧島連山は火山の固まりですが、これ全体が爆発をする、噴火をする、そういうストーリーだったと思います。
先生、専門家としてこの小説、どのような感想を持たれましたか。
○藤井参考人 「死都日本」という小説は、非常によく書かれた小説であります。火山学的な記述についても、非常に正確を期しております。
ですから、「死都日本」のような火山噴火が起こり得るというふうに我々も考えておりますので、先ほどの陳述で申し上げましたけれども、七千三百年前に鬼界カルデラの噴火、あれと同じようなものが「死都日本」の霧島を舞台にした噴火でございましたが、そういうものが日本のどこかで起こるだろう。
参考資料の方を見ていただくとわかりますが、十二万年間に十八回、そういうものを我が国では経験をしております。つまり、六千年に一回ぐらいの頻度でカルデラ噴火を我々は経験をしていて、最後のカルデラ噴火が七千三百年前でございますので、そういう意味ではいつ起こっても不思議はない。ただ、もちろん間隔は一万二千年とか二千年とかいろいろなバリエーションがありますので、今すぐ起こるということを申し上げているわけではありませんが、そういうカルデラ噴火も我が国では可能性があって、その点に関しては、あの小説は非常によく記述しているというふうに思います。
○古川(禎)委員 ありがとうございました。
先生の御意見、お話を伺っておりまして、私は大変危機感を覚えました。二十世紀に地球上で起きたマグニチュード九以上の地震、これには必ず大きな噴火が伴ってきたという事実、そして、我が列島においても、九世紀の貞観期における三陸沖、そして南海トラフの連動地震、あるいは伊豆の地震、噴火、こういうことでございますけれども、富士山もそのときに噴火をしたということでございます。
すぐということではないにしても、遠くないうちにこれは大きな災害が続くなということを大変私は危機感を持ってお話を伺ったところでございます。
今回、東日本大震災の後に、東海、東南海、南海の連動地震に備えてさまざまな検討が政府内でも進められておるわけです。しかし、そこで、考えたくはないんだけれども、そこに火山の噴火というものが重なってしまう。不幸にして、これは泣きっ面にハチというような状況が、複合的に災害が重なりかねない、これは否定できないことだろうと思いますから、政府は、こういう地球の活動の法則に従って想定されることがたくさんあるわけですから、備えを十分にしていかなきゃならない、こういうふうに改めて思ったわけでございます。
そのときに、お伺いしますと、我が国の場合は火山に対する機関が一元化、一体化されておらずにばらばらになっておるということで、大変不安を私は覚えました。
実際、もうちょっと詳しくこの実態がわかるように先生にお話をお伺いしたいんですが、例えば、幾つかの機関がありますけれども、この中で火山を専門とされている方が割合的にどの程度おられるのか、そして、現状でどの程度の予算を使えるのか、具体的な観測研究活動というのは実際にどんな活動をしておって、どの程度のものなのか、それが私どもにもわかるようにお話をいただけるとありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
○藤井参考人 今の御質問はかなり多岐にわたりますので、私がすべて答えられるかどうかわかりませんが、通常、火山の観測を我が国でやっている場合、気象庁が地震と地殻変動の観測を火山の周辺で受け持ちます。その場合には、火山の部署にいる人間がおよそ百十か百二十ぐらいいると思います。それが監視観測に当たる基本的な部分ですね。
それからもう一つは、大学のグループがあります。大学は、複数の大学で火山研究を行っています。
私がおりました東京大学の地震研究所にも火山の研究グループがおります。それは、数え方にもよりますが、すべて数え上げても十人に満たないでしょう。
それから、京都大学の防災研究所というところにも火山の研究者がおります。これは主に桜島で火山観測に当たっておりますが、これが今、教授から助教まで含めて六名ぐらいでしょう。
それから、ほかの大学でも、地震火山噴火予知研究推進センターというような名前のセンターが旧帝大を中心にございます。北大、東北大学、名古屋大学、九州大学、それぞれで火山の研究者は一名から四名ぐらいですね。
ですから、大学の研究者をトータルしますと、数え方にもよりますが、四十名が精いっぱいということではないかというふうに思います。
それは、大学の場合、それから気象庁の場合には、ほとんどが物理観測と呼ばれる地震観測、電磁気観測、地殻変動観測が主体です。それ以外の手法の方は、経産省の産総研の中にある昔の地質調査所と呼ばれたグループで、地質学的手法によって研究を行う、あるいは火山ガスを測定する、地球化学的な方法で火山を研究するというグループがあります。ここはかなり大きなグループですが、十数名のグループがおります。
それから、文科省の傘下の独立行政法人で防災科技研の方に、やはり物理観測を主体とするグループがいますが、正規の職員としては数名、任期つきの研究者まで含めると五、六名になるかと思いますが、その程度がおるところです。
予算的なところは、ほかの省庁まで私も完全には把握できておりませんけれども、例えば火山噴火予知計画というものが五年ごとに年次計画として行われますが、この事業費というのは、前回の予知計画までは地震と火山が独立していたので正確に申し上げられますが、一年間に四、五千万円が噴火予知計画でした。それと別個に地震予知計画というのがずっと動いていたんですが、平成二十一年度から地震予知と火山噴火予知とが統合されまして、地震及び火山噴火予知のための観測研究計画というタイトルでスタートをしております。地震と火山と両方合わせた予知事業費というものは四億円弱だと思います。
その程度でやっておりますが、もちろん、大学の場合には運営費交付金の中から観測資材や何かに出している部分もございますが、それは運営費交付金の内数でありますので、正確な数値は今私は申し上げられません。
それから、基盤的な観測の維持費というのはかなりお金がかかるものでありまして、それは主に気象庁と防災科技研とが維持をしております。
大学の方は、先ほど申し上げたように、運営費交付金の中でやりますので、新しい観測点をつくるというようなことができませんので、以前に、文部科学省の中の科学技術・学術審議会の測地学分科会というところで、今後の火山観測体制のあり方というものを検討いたしまして、それまで二十数火山を大学は研究しておりましたが、それを十六まで縮小するかわりに、観測機器の整備を図るという答申を出しました。
ですが、運営費交付金の枠の中でありますので、大学にはそういう機器をつけるわけにはいかないですね。それで、それは防災科学技術研究所が基盤的な観測網を設置して、そのデータを大学の研究者と共有して、火山噴火予知の研究をやろうという形で今進めることになっております。
十六火山に絞りましたけれども、それで、その十六火山を一つの火山につき少なくとも五点の地震観測網、二百メーターの穴を掘って、そこに地震計や傾斜計を据えるという高精度の観測網を一つの火山に最低でも五点置くという計画で、年次計画を十六火山について作成いたしましたが、そのうち予算化された部分はまだ数火山で、すべての火山で五点が完成しているものは桜島や伊豆大島などごく限られたものであって、ほかはまだ一点もなかったり、あるいは一点あるかどうかという程度の状態であります。
私が今お答えできるのは、その程度でございます。
○古川(禎)委員 東日本大震災を経験した我々は、もう二度と想定外だという言葉を使うわけにはいかないと思っています。今先生のお話をお伺いしまして、大変お寒い状況だなということを認識いたしました。
ありがとうございました。
○村井委員長 次に、江田康幸君。
○江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
きょうは、藤井先生に大変貴重な我が国の火山対策について御指摘もいただき、本当にありがとうございます。
幾つか質問をさせていただきたいと思っております。
先ほどもありましたけれども、私も九州でございます。霧島の新燃岳の大噴火に関しては、大変、国民の、市民の生命や生活、そして産業等に甚大な被害をこうむったわけでございます。
これまでの火山被害についても、噴火被害についても、雲仙・普賢岳がございましたし、また桜島においては常時噴火が続いている、そういう影響があるわけでございます。
今回、三・一一で大震災が起こったわけでございますが、それも本当に想定外ということがよく言われましたけれども、今、我が国は、こういう危機管理に対して本当に、それを想定外と言わず、国民の命と財産と身体を守るために、しっかりとそれがとらえられているか、ここが今問われているところであると思っております。
まず先生、先ほど、マグニチュード九のレベルの地震が起こったら、それこそ火山の噴火が誘発して起きる、今回の三・一一の大震災からすれば、この数十年の間は誘発される可能性が高い、こういうふうなお話でございました。
こういうような火山の対策について、それを予知することができるのかということに関して、今るる説明をいただきましたけれども、GPSとか、こういう非常に数センチの単位で火山のマグマの活動を知ることができる、そういうような技術も進展している、しかし、それが設置されている火山はまだ一部である、こういうようなことがありました。
こういう火山対策、このGPS等について、その整備のあり方、また、我が国の噴火予知を実現していくためのこれからの基礎研究のあり方について、もう一度先生の方から御指摘をいただきたいと思います。
○藤井参考人 火山噴火を予知するための技術というのは、これは先ほども申し上げましたけれども、非常に地道な、基礎的な研究を積み上げる、これがまず第一でございます。それからもう一つは、きちんとした観測体制を整えるということであります。
これは、両方がいわば両輪のように動く必要があります。ですから、観測機器だけが、例えば一挙に百十の火山、これは北方領土も含みますので不可能でありますけれども、八十すべての火山に、一つ五点ずつが一年のうちにできるというようなことは、それはおよそ現実的ではありません。それを設置するための場所選びも必要になります。
まずは、観測点を整備するに当たっては、それぞれの火山がかつてどのような噴火をしてきたのか、どのような規模の噴火をどのような間隔でやってきて、どういう種類のマグマが動いていたのかということをきちんと調べる必要がございますが、これは産総研を中心とする地質調査のグループが本来やるべきことでありますけれども、これもまだほとんどの火山で系統的には行われておりません。今、産総研で富士山を初め着実にやっていますが、一つの火山をやるのに数年以上かかるんですね。
ですから、計画的にそういう火山の調査をやって、できれば、それによって緊急度がわかるようなものを先に観測点を整備していくというような順番でやるのが本当は望ましいんですが、なかなかそう進まないのが苦しいところであります。
少なくとも、一どきに何十点もの観測点を整備するというのは、これは余り現実的ではなくて、先ほど申し上げたような、二百メーターの穴を掘ってそこに地震計を据えるというようなことはきちんとした調査のもとに行うべきでありますから、せいぜい一年間に五点から十点ぐらいを整備する、それを毎年行っていくというのが、本来、観測体制を充実する上で重要なことだというふうに思います。
○江田(康)委員 そういうような中で、今、総合的な火山の観測監視体制、またそれを支える基礎研究のあり方、これが問われているというわけでございますけれども、先ほどもありましたように、地震には研究の推進本部体制があるけれども、火山観測にはそれがない、こういうようなお話があり、また予算も十分な予算措置がなされていない、それを大きく変えていくことがやはり必要であるということを、先生のお話から、またこの質疑の内容から、私も非常に痛切に実感したわけでございます。
先生、この基礎研究において、大学の研究機関と関係省庁が連携して、一体的に火山の観測、調査研究が行えるようにその体制を整えるということが我々としても非常に大事であり、また、長期的に人材の育成が不可欠であるということが大変重要かと思っておりますが、これから国会の方でも、立法府としてもそれらを大きく進めていくために、再度、先生の方からの御提言をいただきたいと思います。
○藤井参考人 私が先ほど申し上げたように、日本は非常に特殊な地学的状況にあります。これは、地震と火山を避けることができない、どう頑張っても避けることができないんですね。我々日本人は、この地に住むことを運命づけられているわけですから、そういう地震と火山の災害をできるだけ軽減するためには格別な措置をとるべきであろうというふうに思います。
そのために、本来望ましいのは、地震火山庁のような地震と火山をターゲットにした国の機関、調査研究機関があって、そこに大学が人材を供給する、そういうシステムができるべきであろうというふうに思います。
先ほど、地震の方は推進本部という一元的な組織があり、火山にはないと申し上げましたが、それはあくまでも過渡的な段階であって、本来あるべき姿は、地震火山庁、その名称に関しては何が適当かわかりませんが、地震と火山をターゲットにした、それの災害を軽減することを目的とした調査研究機関を国が持つべきだ、そういうふうに私は考えております。
○江田(康)委員 最後に大変重要な御指摘をいただきましたが、本日のこの委員会では決議も行うことにしております。行政の方にしっかりとこれを反映させていきたいと思うわけでございますが、今おっしゃった、一元化して地震火山庁というような体制をしっかりととっていけるかどうか、そういうところに非常に大きな課題また目的があるということをしっかりと認識いたしまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○村井委員長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょうは本当に、先生のお話を参考にさせていただきました。
私も沖縄県の出身ですが、九州、沖縄を選挙区にしておりまして、ことし一月の新燃岳の噴火、現場に行きまして、一たん噴火が起こると、人々の平和な暮らしの営みも、それから産業に与える影響も、日々の降灰被害も、大変なものだなということを実感いたしました。
鹿児島は桜島も抱えているわけですが、九州の方から届けられましたきょうの朝日新聞によりますと、「桜島 たまるマグマ 専門家「ウオームアップ段階」」という見出しで、桜島の火山が活発になっていることを示しています。
火山を見まして、起きたときに、人々の暮らしへの被害を最小限にする対策がやはり非常に大事だと思うんですが、先ほどから他の委員の先生方の御質問にもありましたけれども、地震の観測体制と異なり、どうも火山の観測体制というのは大変お寒い状況。
先ほど先生は、火山庁ですか、あるいは地震庁のようなものをつくり、人材も確保しながら進めていくべきだという御意見でありましたが、私たち素人からすれば、何でそんな当たり前のことが当たり前に行われていないのか、何かそこには障害になるものがあるのか、そして、その障害を取り除いていけば、先生がおっしゃるような火山の観測体制、国として責任を持てるようになっていくのか。その辺の、具体化していく上で障害になっているようなところがありましたら、教えていただきたいと思います。
○藤井参考人 具体的な障害というのを私もここで挙げられるかどうかはよくわかりませんが、火山に対しての対策がおくれている一つの理由は、地震と比べてその頻度が低いということにあります。それがまず第一点であります。
それから二番目に、これまでの火山噴火は、非常に規模の小さいものだけが起こりました。特に、一九一四年の鹿児島の桜島の大正噴火の後は、本当に規模の小さいもの、一九二九年の北海道駒ケ岳がやや大きいといえば大きいんですけれども、それ以来、大きな噴火を経験しておりません。例えば、雲仙・普賢岳の噴火のとき、これは五年間続きましたが、五年間かけて二億立米であります。瞬間的に二億立米ではなくて、五年間で二億立米なので、規模としては非常に小さい。そういうものがずっと続きました。しかも、頻度がやたら少なかったんですね。
二十世紀の日本、戦後の日本は、ある意味では、少ない火山活動のために助けられたようなところがございます。そのために、火山の噴火というのは大したことは起こらないというふうに日本人は思い込んでしまっている可能性があります。
ですが、これから先はそうではないということを私は申し上げたつもりでありまして、今まで余りに静か過ぎたために、これからかえって大きなものが来る可能性が高いんだということを申し上げ、場合によると、七千三百年前のようなことだって起こり得るんだ、それに備えることが重要であるというふうに思いますので、具体的な障害はわかりませんが、つまり、火山というものは大したことがないという日本人の意識が最大の障害だったかもしれません。そのために、予算措置も体制の措置も行われなかった。
このままでいけば、次の世代にはというか、二十一世紀、間もなく先ほど申し上げたようなことが予想されるわけですから、何とか体制を立て直すということをやっていただきたいというふうに思います。
○赤嶺委員 今度の東日本大震災のとき、津波のときにも想定外というお話が出ましたけれども、今の先生のお話を聞いて、火山についてもやはり、そういう科学的な根拠に基づいた、大きな噴火が起きたときに被害をできるだけ小さくとどめるような観測研究体制、ここはぜひ私たちもこれからも勉強していきたいと思います。
これまで、北海道の有珠山の例でも、大学における基礎研究の重要性が再認識をされました。その研究体制の現状と、それから当面どうすることが必要とお考えなのか、伺いたいと思います。
国立大学が法人となったもとで、観測施設や機器の更新の現状、あるいは維持管理の体制、これらは十分なのかどうか、先ほどお話もありましたが、率直な御意見をお話しいただきたいと思います。
○藤井参考人 大学の現状でありますけれども、法人化をした際に、すべての費用は、平成十五年度の十二月の段階でフィックスされた運営費交付金を基準に運営することになっております。ですから、新たな観測機器を設置したり、あるいはそれを更新したりという費用はとても賄えないですね。
法人化以前には、先ほど予知経費、火山噴火予知の経費が年間四、五千万だったと申し上げましたが、その当時の文部省の施設経費と呼ばれるものの中で、一年間に六千万から一億円ぐらいが観測機器の更新整備費として、先ほど申し上げたような幾つかの研究所、観測所に順次回っていた。その費用を使いまして、数年に一回ぐらい観測機器を更新することができたのでありますけれども、法人化以降はその経費がございませんので、大学で観測機器を整備、更新するということができません。
それで、先ほど申し上げたように、二十数火山を大学で研究対象としていたものを十六火山まで絞り込むことによって、防災科技研で観測装置をつくっていただいて、データを共有して観測研究に充てようというふうに考えたんですけれども、予算措置としては、初年度はたしか観測点が七点ふえましたが、次の年は一点で、その次はゼロ点で、来年度がどうなるのかは私も存じ上げません。ですから、整備が順調に進んでいくというふうにはとても思えません。
もう一つは、大学の中で人材をどうつくっていくかですけれども、もちろん、大学の教育の中でそれを育てていく必要がありますが、大学院に進んで火山を専門として研究していこうという意欲がわくためには、大学院で五年間の研究をやって、その後に火山学を生かせるようなちゃんとした職場があるかどうかということで恐らくモチベーションが決まるだろうと思います。
もちろん、研究に対する情熱はあっても生活ができないような状態ではとてもなりませんが、不幸にして、今や大学のアカデミックなポジションは減少の傾向にあります。これは運営費交付金が年々削減されますので、当然のことながら、人間が減っていくということになります。
それで、先ほどの、気象庁の方では公務員試験の採用者であって、別に、ドクターを取った火山研究者を専任で採るわけではありません。そうすると、火山をやった専門家が行ける場所というのは非常に限られているので、モチベーションがだんだん下がっていって、人材の育成が難しくなっているというのが現状であります。
ですから、それを打破するためには、やはりそういう専門的な能力を持った人間がちゃんとその能力を生かして活動できる場ができる必要があります。そのことによって、火山防災もきちんとした対応がとれるようになるんだというふうに考えております。
○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
きょうは本当に、火山と地震の災害に囲まれたこの国日本で、観測体制、研究体制、人材の育成がどうあるべきかということを、大変参考になる御意見をお聞かせいただきました。その方向で私たちもしっかり頑張っていくことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○村井委員長 次に、重野安正君。
○重野委員 社会民主党の重野安正でございます。
藤井参考人におかれましては、再三にわたり本院に足を運んでいただき、本当に貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
早速質問に入りますが、非常に身近な話で恐縮でありますけれども、私の選挙区は大分県でございまして、九重山、由布岳、鶴見岳、伽藍岳、これが活火山、こういうふうに言われております。したがって、そういう山々において、常に噴気が出たりあるいは硫黄が大量に噴出している、そういう現象がずっと続いているわけですね。
そのことと、大変心配になります、由布岳、鶴見岳というのは別府の背後にあって、あの山すそを火砕流が流れ落ちたら、別府は全滅するぐらいに近い距離にありますものですから、そういう山の現象というのは大変気になるところですが、今申し上げました噴気あるいは硫黄の噴出ということと火山の噴火というのはどういう因果関係があるんでしょうか、教えてください。
○藤井参考人 硫黄ですとか噴気というのは、基本的には、地下のマグマの中に含まれている揮発性成分がしみ出してきているというふうにお考えになって結構でございます。ですから、それも火山活動の一つであります。
その大もとになるマグマが地表に近づいてくるかどうかは、また別の問題なんですね。あの下にマグマの、熱源だけでなくマグマそのものが深いところに存在して、そこから揮発性成分が分離して、やがては地表に噴気となり、あるいは表面で硫黄として沈積するというようなことがございます。
場合によっては、二酸化硫黄のガスとして、有毒なガスとして舞うこともございますので、今はバランスがとれておりますが、場合によると、つまり、地下で大もとになるマグマの供給がもっと活発になるとか、あるいは地震で揺さぶられるとか、いろいろなことが考えられますが、それをきっかけにして地下のマグマが動き出したときには、火山噴火に至ることもあるというふうにお考えください。
活火山というのは、ずっと今の状態が続くわけではなくて、いつか将来には噴火活動を起こす可能性があるというつもりで、活火山という名前を我々は与えております。先ほど申し上げたように、九千四百年間休んでいた火山でも噴火をすることがあるんですね。ですから、数百年間何もないからといって、今は大丈夫でも、これから先も大丈夫だということにはなりませんので、きちんとした監視、観測を行っていくことが重要だというふうに思います。
○重野委員 そこで、地元のことばかり言って恐縮ですが、九重山というのは一つの山じゃなくて、九重というふうに山が連なっているんですね。それを総じて九重山というふうに言っているんですが、九重山であるとか由布岳、鶴見岳、伽藍岳という今静かな山なんですけれども、それぞれについて、科学的にこの山については今後どういう展開になるんだというふうな観測体制というのは設置をされているんでしょうか。
○藤井参考人 九重山については、二十世紀に入ってから噴火をしたことがございますので、そのときに観測体制はある程度つくっております。もちろん、十分だというふうには言えませんが、それなりの観測体制をとっております。
それから、気象庁の方では、活火山でありますので、鶴見、伽藍や何かに関しても観測体制をとっておりますが、最初に私が申し上げたように、それぞれの火山で五点ずつの地震観測点を備えるという点では、まだまだ不十分な状態にあります。最近活動をしていない火山にまではなかなか手が届かないというのが気象庁の現状であります。
先ほどの四十七火山というのは、最近百年間に噴火をしたことのある火山、あるいは、噴火には至らなかったものの地震活動が活発化したような火山ということに限って、とりあえず四十七火山ということを選んでいるのでありまして、それ以外の四十近くの火山は、活火山であることはわかっている、数百年前あるいは数千年ぐらい前に噴火をしたことは明らかだけれども、今すぐ活動が起こっていないので、とりあえずはもう少し遠巻きに見ていようという形で監視をしている状態です。
先ほどお話ししたように、それで十分だというふうに私は思いませんけれども、現実的には、今の人材と予算からすれば、そういうものもやむを得ないかなというふうに思っております。
○重野委員 今、先生、観測体制のことを述べられましたけれども、噴火の前兆と観測体制の充実という視点から、新燃岳あるいは大島、普賢岳、これでは前兆が非常にとらえられなかったと言ってもいいんじゃないかと思うんですが、それは観測体制に問題があるのか、そもそも山の、物理的というのか、何かそういうふうなものにあるのか、観測体制を強化すればあれでも前兆を、時間単位、日にち単位というふうな幅はあるんだろうけれども、とらえられるのかどうか、その点はどうでしょうか。
○藤井参考人 例えば伊豆大島の、一九八六年ですが、これはほとんどのデータが当時は噴火を指しておりましたが、重要になる地殻変動のデータだけはもっと先だというふうに思われたので、噴火の予知というものが的確にはできませんでした。ですが、あの当時に比べれば、噴火の後にも観測体制を充実しましたので、伊豆大島に関してはかなりの確度で前兆をとらえるようになると思います。
ですから、ある程度観測体制が整えば、ほとんどの火山では、あらかじめ前兆現象をとらえて予知をすることができると思います。
新燃岳の場合には、霧島でマグマの蓄積が行われていて、新燃岳では水蒸気爆発が起こっているということはわかっておりましたが、その蓄積しているマグマが一月二十六日に新燃岳に出てくるというところまではわからなかった。それは、逆に言うと、新燃岳全域にマグマが供給されて充実していて、コックをひねればどこからでも噴くような、ある意味でそういう山であったということを指しているんだと思います。
その場合に、事前にどこまでやれるかということはまだ我々も自信がありません。新燃岳の場合には、観測点をその前の昨年の十月に気象庁が一点、それから防災科技研が二点の新しい観測点を整備したところだったので、噴火そのものの現象は非常に正確にとらえることができました。ですが、まだそれだけでは予知をするのに不十分だったと考えて、今、気象庁の方でも充実を図っているところですので、次に何か霧島で起こるときにはあらかじめつかまえることも不可能ではないと思いますが、今それが保証できる段階ではございません。
○重野委員 それでは最後に、常時観測の対象について。
日本では四十七の火山が常時観測に選定されていると聞いております。おおむね百年を基準としてということでありますが、果たして、百年という単位で適切なのかどうなのかという点についての見解をお聞かせください。
○藤井参考人 先ほど、最近二百年間に起こった世界の大きな噴火の例をお示ししました。そのうち、十五火山のうちの十一火山が数百年たってから、数百年の静穏期の後に噴火をしたのであるということを申し上げましたが、そういうことは日本でも当然あり得ることであります。
ですから、百年以内に何事か起こった火山を、四十七の火山だけを見ていたのでは不十分だというふうに思いますので、本来ならば、日本国民が近くに住んでいて被害を受けるかもしれない、少なくとも、全部で八十ですね、ですから残りの四十近くの火山は同じように監視をすべきであると思いますが、それをするためには、観測点をふやすだけでは足りませんので、それに見合う人材がなければいけない。
それから、それぞれの火山がどういうふうな間隔で噴火をしてきたのかという噴火履歴というものが系統的に調べられた例が日本では非常にまれでございます。ですから、それを、産総研が中心になるかもしれませんが、あそこには地質の専門家がたくさんおりますので、そういうところを中心に、大学の研究者も含めて、火山の噴火履歴というものを、どのくらいの間隔で、どのような規模の噴火を起こしてきたのかをきちんと調べるというようなことをまずはやるべきではないかというふうに思います。
○重野委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、先ほどから先生の話を聞きながら、まず、火山に対する基礎的体力というか基盤というのが非常に薄いんだなということを実感させられました。ともに、そういう問題意識を持って頑張っていかねばと思いました。
ありがとうございました。
○村井委員長 次に、柿澤未途君。
○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
きょうは、参考人の藤井先生、ありがとうございます。
東日本大震災が発生をした三月十一日以降、このマグニチュード九の規模の地震とほかの地震との連動性、あるいは火山活動との連動性ということがいろいろ言われております。千百年前、八六九年の貞観地震の五年前、富士山が噴火をしている、こういうことを聞くにつれ、やはり火山の活動の活発化ということをしっかりと監視していかなければいけないな、こういうことを思っていたときにこの参考人質疑となりましたので、大変時宜にかなったお話をいただいたというふうに思います。
観測地点、観測施設の拡充強化、こういうお話をいただいたわけでありまして、この後、この委員会でも、火山活動の観測監視及び調査研究体制等の充実強化に関する委員会決議を予定しているわけです。その中には、火山観測施設の新設及び観測点の増強を図り、地震計、GPS、傾斜計等の整備を推進するとともに、必要な財源の確保に万全を期すること、こういうことを書かせていただいているわけです。
一点お伺いをしたいと思うんですが、観測施設を新設するというと、測候所みたいなものをつくって、そこに人を配置する、こういうふうなイメージを、私たちある種門外漢としては抱くわけです。しかし一方で、火山の観測施設というのは、実はほとんどのものが今はもう遠隔監視で行われている。そして、例えば山体の膨張がどうであるかとかいうことは目視ではわからないわけですので、そういう意味では、観測施設の新設というと、人がどんどん配置されて、ある種行政コストの面でなかなか大変だというイメージを持つんですけれども、必ずしもそうではない、こういう認識でよろしいでしょうか。
○藤井参考人 現状ではそうでございます。つまり、観測点のそばに人がいなければいけないということはありません。観測点からは、今やインターネットを含めて遠隔操作でデータを本庁まで送ることができますので、観測点をふやすということは即、そこの監視のための人をふやすというわけではございません。
ただ、火山観測というのは、機械で見るだけではなかなか済まないところがありますので、できれば一つの火山に観測所があることが望ましいですね。つまり、火山はいろいろな見方をしないとなかなかその前兆がつかめない、機械ではかるだけではなくて、噴気の様子が少し違うとかいうことも含めて見ることが重要なので、これは世界の火山では、もちろん一つの火山に観測所がすべてあるわけではないですが、複数の火山をまとめて一つの観測所があって、そこに監視をする人とそれから研究をする人間とがいるというのが通常の方法です。
ですから、日本の場合には、大学でも各火山に観測所を持っておりましたが、とても人員が確保できないので、今や次第に無人状態になりつつあります。それは、リモセン、遠隔操作の機械の精度が上がってきたということ等含めて、やむを得ずそうしていますが、中には、近くに人がいるということも重要で、これは火山観測だけではなくて、火山防災という点では、近くの住民との間のコネクションを持つという意味でも重要だというふうに思います。
○柿澤委員 ありがとうございました。
さらに、体制の整備についてお伺いをしたいと思います。
火山噴火予知連絡会というのは、気象庁の長官の私的諮問機関として設置をされている、こういうものであります。逆に言うと、気象庁長官が諮問をしなければ権限を持つことのできない、ある種こういう組織なわけです。
一方で、気象庁の中を見ると、気象庁という役所には実は、日本は百十も活火山がある有数の火山国でありながら、火山のスペシャリストというのはほとんどいない、こういう状況なのではないかと思いますが、こうしたことに関する御認識をお伺いしたいと思います。
○藤井参考人 気象庁の火山監視に当たっている専門家はそれほど多くございません。専門家という定義を、例えば大学で火山学を学んだ者というふうに定義したら、恐らく火山に携わっている者の一割にも満たない、それは例えば修士まで含めてですね。火山学でドクターを取った人間というと本当に数が少なくなります。それが日本の現在の監視業務に当たっている気象庁の現状です。
気象庁には気象研究所という研究組織が一部ございまして、そこには火山担当が今五名おります。ですが、その五名も、すべてが大学でドクターコースまで火山学をやったという人ばかりではございません。
そういう意味で、専門家は非常に少ないというのが現実です。
○柿澤委員 しかし、その気象庁が、噴火予報、噴火警報、こうしたものを発令する権限を持っているわけです。火山噴火予知連絡会が噴火予報、噴火警報を発令するわけではない。
私は東京ですから、二〇〇〇年の三宅島の噴火のことを思い起こすんですけれども、静岡大学の防災総合センターの小山真人教授が論文を書かれているんです。実はこのときに、気象庁が、噴火予報、噴火警報、当時は臨時火山情報とか緊急火山情報ですけれども、この噴火予報、噴火警報を発令するに当たって、いつ、どのような形で、予報か警報か、何を発令するのかということについて、火山予知連絡会と全く情報の共有がなかった、こういうことが書かれています。
こういう体制になっていることがやはり非常に問題だと思いますけれども、既に何度か問題意識をこの参考人質疑で語っていただいておりますが、改めて、どうあるべきか、体制の問題について御認識を語っていただければと思います。
○藤井参考人 二〇〇〇年の三宅島噴火のときには、先ほどお話しになった、静岡大学の小山真人氏が臨時委員として火山噴火予知連に一部参加しておりましたので、そのときの様子を彼がまとめたものだと思います。
あれがすべて予知連のものではございませんが、その後も改善がなされておりまして、気象庁と火山噴火予知連との間の情報の共有というのはかなり進展しているというふうに私は思っております。それを受けて、火山警報あるいは火山噴火警戒レベルというものが法的な措置としてなされました。
ただ、これが十分だとはとても思えません。先ほど申し上げたように、専門家集団ではありませんので、火山噴火予知連に集まってくる大学や研究機関の専門家の意見を聞きながら気象庁の方では判断をするという体制をとっているわけですね。ですが、これは、先ほども申し上げたとおり、決して十分な体制ではなくて、本来ならば、専門家集団のいるところに同じ監視集団がいて、そのもとで的確な予知警報あるいは噴火警報、それから噴火警戒レベルの上げ下げをやるということが本来は望ましい、そういう体制がぜひつくられるべきだというふうに思います。
○柿澤委員 もともと、気象庁というのが国土交通省の外局として置かれて、そして国土交通省の省内の人事の一環として気象庁の人事が行われている。今、気象庁長官は生え抜きの方でありますけれども、しかし、かつては、本省から来た人が長官をやられるという状況でもあったわけであります。こうした点について、やはり先ほど地震火山庁という話もありましたので、こうした体制の見直しをして、スペシャリストの集団で組織がつくられるということが望ましいというふうに思います。
もう一つ、最後にお伺いをしたいと思います。
火山噴火予知連絡会は、まさに火山学の専門家の皆さんの集まりであります。しかし一方で、火山が噴火したときにどういう情報を国民が必要とするかといえば、まさに火山の噴火の影響がどういうふうに周辺地域、市民生活に及んで、そしてどういう退避行動をとらなきゃいけないか、こういう情報発信と有機的に結びつかなければいけない。
小山先生が三宅島のときにおっしゃっているのは、やはりスペシャリスト集団であればあるほど、火山活動のメカニズムの研究の方に行ってしまって、適切に国民、島民にそうした情報提供がなかったよ、こういう話があるわけです。
そういう意味では、中央防災会議の専門委員会にも実は火山に関する専門調査会が設置をされていない、こういう状況でありますので、防災という観点から、この火山噴火予知との連動性ということをもう少し担保しなければいけないと思いますが、御見解を伺って終わりたいと思います。
○藤井参考人 今議員のおっしゃったことは全くそのとおりでございます。
火山噴火に関しては、現在内閣府の方で、噴火警戒レベルが四、五という、避難を要するような噴火警報を気象庁が出すようなことになったときにどうすべきかというようなことを含めて検討会はつくられておりますが、専門調査会というようなものはつくられておりません。そういう意味で、火山防災という点ではまだまだおくれている。
数年前に、内閣府の方で火山防災のための指針を出して、いかに避難を進めるべきか、そのためにどういう防災準備をすべきかというようなことに関して指針をつくりましたけれども、まだそれが地方自治体を含めて十分浸透するところまでいっておりませんので、そのことも含めて、今検討がなされているというふうに理解をしております。
ですから、火山研究と同時に、火山の情報をいかに的確に住民に伝えていくのか、それで被害をいかに少なくするかということが日本にとっては重要なことでありますので、観測研究だけではなくて、火山防災という点でも今後きちんとやっていくべきだというふうに私は思います。
○柿澤委員 お話を聞いていて、行政機構の見直しというのが必須の課題だというふうに感じました。
ありがとうございました。
○村井委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
この際、藤井参考人に一言御礼を申し上げます。
本日は、この災害対策特別委員会に貴重な火山に対する意見を言っていただくためにお越しいただき、本当にありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。(拍手)
参考人は御退席いただいて結構です。
――――◇―――――
○村井委員長 この際、市村浩一郎君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及びみんなの党の六派共同提案による火山活動の観測監視及び調査研究体制等の充実強化に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。古川禎久君。
○古川(禎)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。
火山活動の観測監視及び調査研究体制等の充実強化に関する件(案)
我が国は百を超える活火山を有する世界有数の火山国であり、火山防災対策は喫緊の課題であることに鑑み、政府は、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期するべきである。
一 雲仙岳、有珠山、三宅島及び桜島、また、最近の霧島山の噴火に見られるように、火山災害は国民の生命及び財産、地域の社会経済に大きな影響を及ぼすことから、対策の基本となる火山の観測監視体制の一層の強化を図ること。特に、平成二十三年東北地方太平洋沖地震を境に、今後、火山活動が活発化する可能性も否定できないことから、火山観測施設の新設及び観測点の増強を図り、地震計、GPS、傾斜計等の整備を推進するとともに、必要な財源の確保に万全を期すること。
一 大学等の研究機関と関係省庁とが有機的に連携し、一体的に火山の観測監視及び調査研究を行えるような体制の強化を図ること。
一 観測監視体制の強化のためには、人材の育成が不可欠であることから、大学等の研究機関への必要な財政面での支援を行うこと及び政府の関係機関における人材の確保を行うこと。
一 火山の噴火予知に当たっては、長期にわたる観測監視及び調査研究が不可欠であることに鑑み、そのための総合的な計画を策定し、継続的に必要な財政措置を講ずること。
右決議する。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○村井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○村井委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。
この際、本決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。平野防災担当大臣。
○平野国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、関係省庁と連携を密にして努力してまいる所存でございます。
○村井委員長 お諮りいたします。
本決議の議長に対する報告及び関係政府当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、明九日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時三十二分散会