衆議院

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第3号 平成13年2月27日(火曜日)

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平成十三年二月二十七日(火曜日)

    午後四時開議

 出席委員

   委員長 大木  浩君

   理事 嘉数 知賢君 理事 下地 幹郎君

   理事 鈴木 宗男君 理事 宮腰 光寛君

   理事 鍵田 節哉君 理事 川内 博史君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      小渕 優子君    北村 直人君

      武部  勤君    林  幹雄君

      松宮  勲君    吉川 貴盛君

      吉野 正芳君    荒井  聰君

      加藤 公一君    木下  厚君

      小林 憲司君    平野 博文君

      田端 正広君    赤嶺 政賢君

      今川 正美君    原  陽子君

    …………………………………

   外務大臣         河野 洋平君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)           橋本龍太郎君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   外務副大臣        衛藤征士郎君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   襲田 正徳君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   衆議院調査局第一特別調査

   室長           飽田 賢一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  東門美津子君     原  陽子君

同日

 辞任         補欠選任

  原  陽子君     今川 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  今川 正美君     東門美津子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件




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     ――――◇―――――

大木委員長 これより会議を開きます。

 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官襲田正徳君、防衛庁運用局長北原巖男君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

大木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嘉数知賢君。

嘉数委員 自民党の嘉数でございます。

 質問をする前に、橋本大臣、衛藤副大臣にお願いとおわびを申し上げます。

 この委員会を開会するのにぎりぎり時間がかかりました。きのうの晩八時にしか決定しなかったものですから、質問の通告をするのが大変おくれました。その分、政府の皆さんには大変御苦労をかけております。私の場合、質問するのに何の準備もしていないものですから、多分大ざっぱな脈絡のない質問になると思うんですが、答弁は御丁寧にお願いしたい。私の足りない分は補っていただきたい。みっともないお願いをいたしたいと思います。

 まず、橋本担当大臣にお伺いいたしますが、私ども沖縄県民が、大臣が就任なさったということに対して大変な期待を実は持っているんです。

 なぜかと申しますと、一九九五年、平成七年、あの県民総決起大会が開催された。大会を持ちました。その以後、沖縄県民の考え方と、そして政府が沖縄に対する取り組み方、二つ大きな違いが実は出てまいりました。両方それぞれ考え方が違ったというんじゃなくて、取り組み方が大きく違っているんです。

 その一つは、沖縄県民側からいいますと、実は、これまで安保、反安保、反基地、基地容認、そういうイデオロギーでずっと対立をしておりましたけれども、あの県民大会を境にして、イデオロギーで今の基地の問題は解決しないだろう。これからは、むしろお互いが相協力しながらしっかりと国にぶつかっていく必要があるだろう。そのためには、イデオロギーを抜きにして、まず沖縄県民の、ある意味で人権の回復というんですか、これまで米軍統治の中で虐げられた、いろいろなことがありました、その人権をまず回復することが第一じゃないかということから、与野党ある意味で相協力しながら、国に対して相対峙をしている、お願いをしている、その考え方にほぼこれまで流れが変わってまいりました。

 それから一方、政府は、御承知のように、私どもが理解している政府の対応というのは、私が県議時代にいろいろ体験しましたけれども、いろいろ経済政策として対応していただきましたけれども、思い切って沖縄の問題を国政の中心議題として取り扱っていただいたことはまずなかったんじゃないか。それが、あの大会を境にしまして、特に橋本大臣が総理に就任してから、そのものずばり、沖縄の問題を国政の重要課題として真正面から取り組んでいただいた。そのために今の沖縄県のいろいろな形ができ上がってきた、私はそういう思いをしておりまして、その最初に真正面から沖縄問題を取り上げていただいた当時の橋本総理が今沖縄の担当大臣として御就任をいただいて、それに対する沖縄県民の期待というのは大変大きなものがありました。これで沖縄の将来にしっかりと道筋ができるんじゃないかという期待を実は抱えております。

 そういう意味で、改めて、大臣の沖縄の問題に対する取り組み、決意をまず御披瀝していただきたい。お願いいたします。

橋本国務大臣 今議員がお触れになりました県民大会のニュースを、私は、ちょうど四極通商代表会議、通産大臣としてロンドンで見ることになりました。

 そして、前後の情報が全くないBBCの二番目のニュースとしてあの大会が報ぜられたとき、ちょうど休憩時間でありましたために、私以外の各国の代表もそのテレビを見ておりまして、会議を再開いたしました時点で、本当に反乱でも起こるんじゃないのかというぐらいの受け取りをされる、それほどショッキングな映像でございました。

 そして、むしろあの画面を、あなた方は日本語がわからないからだけれども、反米とかそういう言葉は使われていなかった、非常に冷静な大会であったということを見てくれと随分説明をいたしましたけれども、残念ながら、それが理解されるだけの時間がありませんでした。そして、国内においてももちろん大きな出来事であったわけですが、あの映像が海外に与えた影響というものは非常に大きかったと思います。

 それだけに、総理に就任いたしましたときに、私なりにもう一度、ある程度知っているつもりでうぬぼれていた部分がありましたけれども、沖縄の占領下というものを調べ直してみました。そして、私どもが知らなかったことが余りに多かった。内心、大変恥ずかしい思いをいたしましたし、それ以来、その思いを忘れることなく今日まで参りました。

 殊に、その思いを、この部屋で話すのが先ほど私は余りうれしくないと申し上げましたのは、佐藤栄作総理が沖縄を訪問されて、東京に戻られた直後に官邸に呼ばれて、沖縄を見てこいと言われた小渕さん、私、その二人がバトンを、私は小渕さんにお渡しをし、小渕さんはそれを受け取っていただくことになり、共通するものの一つとして沖縄に対する思いというものがございましたから、その思いを切らずに今日まで進めてこられたことは、私なりに幸せと思っております。

 しかし、恐らくまだ欠けている部分があるでありましょう。本委員会を通じてそうした点に対してのお教えもいただきながら、よりよい結果を生むように努力をしていきたい、そんな思いでここに今立っております。

嘉数委員 あの大会というのは、実は沖縄県民が、みずからの良識で、政府を改めて信用しよう、政府の中でしっかり沖縄問題をやっていただけるのであればという期待もあって、ああいう大会になった。主催した私どもとしても、本当にびっくりするような整然とした大会であった、そういう思いをしながら見ておりました。それだけに、やはりそれ以後の総理が、あの当時の橋本総理が取り組んでいただいたSACOの問題等を含めて、県民は大変な高い評価をしておられます。

 しかしながら、この三十年を振り返ってみた場合に、やはりまだまだ取り組まなきゃいけない課題がいっぱいあります。

 特に、これから第三次振興開発計画が終わります。第一次、第二次、第三次と、最初は本土との格差是正、沖縄県が米軍統治の中で大変おくれた社会資本の整備、それを含めて、せめて他県並みの整備をしていただきたいということでスタートをした。そしてその後に、今度は自立経済の基礎づくりということでいろいろな施策を展開しており、それを展開していただきながら、今、第三次振計の終わりを迎えようとしていますけれども、県も国もたしか第三次振計の総合点検、評価をなさったと思うんです。

 その評価について、どのような形で御理解いただいて、それからポスト三次振計ということに向けてどのように生かされていくのか。これは通告をしませんでしたけれども、大臣の御感想を述べていただきたいと思います。

橋本国務大臣 今議員からも御指摘をいただきましたように、沖縄が本土に復帰をして以来、三次にわたる振興開発計画というものが立てられてまいりました。そしてその間、振興開発事業費として総額六兆円を超える国費が投入されるなど、沖縄の振興開発のために、この計画は生きて使われてきたと思っております。しかし、そうした中でも、実は、これから先のメーンとなる産業をどう育てていくか、あるいは雇用をどうするか、こうしたことを考えますと、まだ足りない部分が残っておることも間違いありません。

 昨年六月、三次振計の総点検をいたしました結果、政府として「沖縄振興開発の現状と課題」を取りまとめたわけでありますが、こうした努力の結果としての施設面における整備が総体として進んだ。県民生活の向上とか、産業、経済の発展に大きな役割は果たした。しかし、例えば交通の問題、交通の円滑化、あるいは水を確保する、町づくり、環境衛生等の分野につきましては、まだ整備を必要とするものが残っている。また、今申し上げましたような解決しなければならない課題が残っている。これは事実問題として私どもの目の前にあるわけであります。

 これから先、ポスト三次振計を私どもが考えていく中で、こうした点は当然のことながら教訓として生かしていかなければなりません。平成十一年末の閣議決定に従いまして、また沖縄振興開発審議会の調査審議というものを踏まえまして、県とも十分御相談をしながら、私どもが、新たな時代に向けた、仮称としての沖縄振興新法というものを制定していく、また、新たな沖縄振興計画というものをつくっていく、そうした取り組みをこれから進めていきたいと考えておりまして、院の御協力も心からお願いをいたします。

嘉数委員 どうもありがとうございます。

 これまでの振計の経過を見まして、一番私ども沖縄県が対応しなきゃいかぬ、いろいろ頑張ってもなかなかうまくいかないものの一つに、雇用の創出があります。失業率が常に七%前後ある。若年層になると一〇%近くの失業率。この問題をどのような形で解決するか、これは沖縄の若者にとって大きな課題であります。私ども沖縄県民にとっても大きな課題であります。

 知事さんが、振計ではなくて沖縄新法、経済新法ということで、いろいろな形で制度面も整備しながら法律でバックアップをしていただきたいということで、これまでの振計と違った形の、思い切って踏み込んだ沖縄新法、経済新法、振興新法をつくっていただきたいという要請をしているのは、実は今までの振計では対応できなかった部分、一つは雇用の問題、もう一つは県民所得が依然として幾ら頑張っても全国の最下位でしかない、全国平均の七割しかない、あるいはまた企業の創出がなかなかうまくいかない。今度フリーゾーンを設定していただいて、新たな企業誘致をしましたけれども、そこに入っていただいている企業はまだ六つか七つぐらいしかないということからすると、沖縄における地域的な問題もあろうかと思うんですが、経済基盤の脆弱さというんですか、それが大きな障害になっておると思うんです。

 それからしますと、これからの新法、施策というのは、その問題をどのような形でクリアするのか、単に資金を投入してやれるのか、あるいはまた制度面で、法制面で思い切ったバックアップをしなきゃいかぬのか、その大変な岐路に立っていると私は思うんです。知事さんは、ある意味で一国二制度的な思い切ったことをやっていただきたいという要請も実はやっているところですし、また名護市の市長さんは、金融特区なるもの、金融関係の国際的な機関を設置できないのかと、いろいろな模索を実は沖縄からもやっている最中なんですけれども、ぜひ、今度の新法の中でその一つ一つに具体的に対応できる、できる限りの対応をしていただきたい。その件について、これも通告してありませんので、決意だけで結構ですから、お願い申し上げます。

橋本国務大臣 私が退任をいたします前に決定をいたしましたものの一つに、NTTのセンターの設置というものがございました。当初、それほど大きな雇用にこれが結びつくという自信はございませんでしたが、今このポストにつきましてその後の経過報告を受けてみますと、関連して同種の産業が随分沖縄に展開をした、そして新たな雇用を創出することができていた。これは私にとりまして喜びでありました。

 これは一つの例として申し上げるわけですが、今、必ずしも私どもが想定できないところで、そうした新しい産業の芽吹き、さらには雇用をつくり出すものがないか、これは就任以来、本当に考えあぐねている一つのテーマでございます。先ほど、これからの課題として雇用というものに触れましたのも、そんな思いがあったわけでありますが、法体系としてどのような形が望ましいかは別として、そのような問題意識を持ちながら取り組んでいきたいと考えております。

嘉数委員 ありがとうございます。

 細かいことについての質問はまた後日やりたいと思うんですが、次に、返還軍用地、これから取り組まなきゃいけない大きな課題であります。

 もちろん外務省にもお伺いするつもりですけれども、まず、その軍用地の跡利用ということになりまして、例えば普天間が返還されるとしますと、あの広大な土地を地主だけで、あるいは沖縄県だけで対応して、跡利用の計画をつくって推進すること、これはなかなか難しい話です。しかも、もう一つ大きな問題は、あそこは飛行場ですから、その滑走路のコンクリートが約三メーターぐらいの厚みがある。そうしますと、今の地位協定で、米軍からしますと原状回復義務はない。その滑走路のまま返されて、それを県民がどう対応するかということになったら、これはとても対応できる話じゃないんです。

 したがいまして、返還軍用地の跡利用に関して、政府の機関と政府の資金をつぎ込まなければどうしてもやっていけない部分がある。それを新法の中に組み込むなり、あるいはまた別の形で対応するなりしていただかなければ、返してもらって、恐らく二十年も三十年も利用できないままほうっておかなきゃいけないという結果になりかねないです。そういう意味で、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 確かに、議員が御指摘いただきましたように、米軍施設・区域の整理、統合、縮小というものを進めていきました場合、返還跡地の利用の促進及び円滑化というものが沖縄振興という視点からも不可欠のものであることは間違いありません。そして、適切な対応を必要とするものであることも認識しているつもりであります。

 この跡地対策につきましては、平成十一年末の閣議決定「普天間飛行場の移設に係る政府方針」の中におきまして、特に再開発に相当の困難が予想される大規模駐留軍用地跡地に関しまして、跡地整備事業を担当する事業実施主体の業務の特例、あるいは事業資金の優先配分などの措置を講ずることとしてまいりました。

 この閣議決定の着実な実施を図りますために、昨年五月三十一日に跡地対策準備協議会を発足させて、跡地の利用の促進に関する特例措置の具体化を含めて、返還跡地の利用の促進と円滑化などを含め、総合的な検討、取り組みを進めております。

 これは本当に沖縄の将来発展のために極めて重要な課題でありますから、ポスト三次振計に向けた幅広い検討を進めていくと同時に、国としても積極的に支援してまいりたいと考えておりますということをこの場で申し上げたいと思います。

嘉数委員 ありがとうございます。

 もし支援がなければ、まず、返還してもらっても利用は全くできない。平たん地で住宅地の、もっと、那覇の新都心ぐらいの土地でも、利用するまでは二十五年かかる。ましてや、コンクリートで固められた土地を返していただいたら、これは何十年かかるかわからないということになりますから、ぜひ政府の特段の御配慮をいただきながら、跡利用についての御支援をいただきたいと思います。

 それからもう一つ、これは同じ返還軍用地の埋蔵文化財の件ですが、返還軍用地、今から返される部分がいっぱいあります、普天間もそうですけれども。その埋蔵文化財の調査は、文化財法によって、地主か当該市町村の双方でやらなきゃいけない。広大な普天間飛行場を調査する、地主がそれを負担するということになると、とてもやれるものじゃないです。今の文化財法でやると、まず地主は調査を放棄するでしょう。放棄せざるを得ない形になるんです。

 そういうことからしますと、埋蔵文化財の調査に対しての考え方、資金のあり方、これは法改正をやるのが必要なのかどうかよくわかりませんけれども、少なくとも地主の負担が軽減されるような、市町村の負担が軽減されるような形で対応していかないと、これもまた跡利用計画が全く成り立たなくなる、そういうことで懸念をしております。その件についても御所見を伺いたいと思います。

橋本国務大臣 この問題は、実は沖縄県だけではなく、私の郷里なども埋蔵文化財の保護というものには大変悩まされている県の一つでありますし、同じような課題を抱えるという意味では奈良県等もございます。

 ただ、沖縄県における埋蔵文化財問題が全く特別な重みを持ちますのは、今議員が御指摘になりましたように、今、米軍の用地として提供されているものの地下に眠っている。でありますから、まず第一に、実際にどんなものがあるか自体が必ずしも想定できないものを秘めている。しかも、長い沖縄県の歴史を考えてみれば、相当量の文化財があることを想定しても間違いはないと思います。

 それだけに、跡地対策の準備協議会を発足させましたとき、取り組み分野を明確にして検討を進めてまいりましたが、その中で、埋蔵文化財調査についても一つの課題として鋭意検討を進めております。返還の前のできるだけ早い時期から、例えば普天間飛行場に係る今までの検討の中におきまして、県、市におきまして計画的に埋蔵文化財の詳細分布調査の実施を進めていただくことにしまして、これにつきまして、国は財政的な支援を行うような取り組みを考えてまいりました。また、もう一つの問題としては、調査体制の整備充実というものが必要になると思います。

 いずれにいたしましても、埋蔵文化財の調査に関しましては、この跡地対策準備協議会の検討結果というものを踏まえながら、法律で措置することがふさわしいあるいは必要な事項があるかどうかにつきまして、今後検討していきたい、そのように考えております。

嘉数委員 今提案した二つの件は、これはどうしてもクリアしなければ、返還していただいても跡利用ができないという大きな課題ですから、ぜひ真正面から取り組んで、努力をしていただきたいと思います。

 埋蔵文化財の件で、衛藤副大臣にお願いしたいのですが、実は、せんだって河野外務大臣が沖縄に行かれた、そして、基地所在市町村の皆さんとの懇談会をしました。その中で、普天間を抱える市長さん、あるいはまた、すぐ今返還される予定の北谷の町長さんから要請があった。返してもらう前に、基地の中にある埋蔵文化財を事前に立入調査をする方策はないものか。返還していただいてから調査をしてやるというのはなかなか時間がかかるので、その前に、事前にある程度、どの程度の文化財があるのか、それを地元の市町村、自治体が立ち入りをして調査する、そういうことができないものかどうかという提案が、実はありました。

 ぜひ外務省として取り組んでいただきたい課題の一つなんですけれども、私の方で通告はしてありません。お答えできる範囲でお答えいただきたいと思います。

衛藤副大臣 埋蔵文化財の調査につきましては、昨年の五月三十一日に跡地対策準備協議会を発足させたのは御案内のとおりでありまして、これまでの検討の結果、返還前のできるだけ早い時期から、県及び市において計画的に埋蔵文化財の詳細分布調査の実施を進めることとして、これについて政府としても財政的な支援を行う、こういう方針が出たところでありまして、このような取り組みをしてまいりたいと思います。いずれにいたしましても、埋蔵文化財の調査体制の整備充実を進めることといたしたいと思っております。

 また、外務省としましては、埋蔵文化財の調査を実施することの必要性につきまして米側の理解を得まして、本件調査に係る米軍施設・区域の立ち入りが円滑に行えるよう努力してまいりたい、このように考えております。

嘉数委員 ありがとうございます。せっかく政府の方針を決定していただいても、当該市町村が中に入っていけないんです。したがって、調査をするといってもなかなか前に進まないんです。したがって、当該市町村が基地内に入って事前調査ができる方策をとっていただきたい。そうしなければ、政府方針として調査を進めろといっても、なかなか前に進まない部分がありますから、外務省としてぜひ真正面から取り組んでいただきたい。お願い申し上げます。

 それから、引き続き外務省にお伺いしたいんですが、私どもが県民総決起大会を開いたときの大きなテーマは、まず沖縄県民の人権を守ろうということから、一番障害になっている地位協定の見直し、改定、これをぜひやっていただきたいということが、県民総決起大会の全体の総意として決議をされた大きな命題の一つなんです。もちろん、その後には基地の整理縮小、いろいろありますけれども、そのことで政府は真剣に取り組んでいただいて、これまでやっていただいた。相当改善をされてまいりました。

 あの当時は、犯罪を犯した米兵が部隊内に逃げ込んだら、なかなか手に負えなかった。あるいは、後ろからこっそり本国に帰った犯罪者もいっぱいおりました。それ以外にも、例えば、自賠責のない、保険のない車が平気で運行される、あるいはまた番号の表示のない車が堂々と国道を走っていて、事故を起こしても部隊に逃げ込めば、どの車だかさっぱりわからない。いろいろなことがあって、それをしっかりと政府として対応していただきたいということから、地位協定の見直しをしていただきたい。

 ただ、この間の放火事件の件で、なぜ逮捕できないのかということに対する県民の怒りは相当なものがあります。これは運用見直しの中でこうなっていますよという話はできるかもしれませんが、県民感情としては納得する部分は絶対ないんです。これは、沖縄県議会が踏み込んで決議をした。それで各市町村、これからすべての市町村で恐らく決議をされるだろう、そういうことなんです。

 これは、知事さんに言わせたら、沖縄県民には依然として基地に対するマグマがあるんだ、そのマグマがいつ爆発するかということが大きな懸念の一つだ、対応を間違えばそのマグマがいつでも爆発するだろうと。私は、その寸前まで来た状態で、県議会が、それは各市町村議会も含めて、対応せざるを得なくなって対応したという部分が相当あると思うんです。

 したがって、外務大臣、この間沖縄においでになったときに、運用見直しをして、それでもだめなら改定に踏み込みたいとおっしゃっていましたけれども、単にあの部分は象徴的なもので、それ以外にも、例えば環境問題。これは、恩納村が返還されて、あそこにPCBがあった。それを除去して米本国に持っていこうといったら米国が断った。仕方がないから今沖縄で預かっているのです。そういう環境問題に対する地位協定のあり方、これは沖縄県から、ぜひ、環境問題を改めて見直して、地位協定でしっかりと締結をしていただいて、安心して生活できる環境をつくっていただきたいという強い要請もあると思うんです。

 したがいまして、私は、運用見直しということじゃなくて、思い切ってやはり改定に踏み込んで、議題にしていただいて、そこで取り組む必要があるんじゃないか、そういう思いでおりますけれども、これは橋本大臣も、それから河野大臣も、総理も、これではやっていけないと思うときには踏み込むという発言をなさっていますけれども、私は、今この時期に来ている、そこでしっかりと対応しなければマグマが動き出す可能性もあるという意味では、大変懸念している問題なんです。そういう意味で、改めて御所見を伺いたいと思います。

衛藤副大臣 実は、平成七年のあの事件が起こりましたとき、私は防衛庁長官をしておりまして、この問題に真正面から対応する、その立場にありました。今日思いますときに、外務省といたしましても、随分あのときと対応が変わったなと思うわけであります。

 あのときは、外務省はいわゆる地位協定の見直しにつきましては非常に慎重でありまして、今回は河野外務大臣が明確に、地位協定も視野に入れてという表現をされました。これは相当に踏み込んだ発言だ、このように思っております。日米地位協定の見直し、この問題につきましては、単に日米間の地位協定だけではなく、在韓米軍地位協定、またドイツと米軍の地位協定、こういうようなことにも即関連、波及することは、皆さん御案内のとおりだと思います。

 そういう中ではありますが、我が国における在日米軍の基地、施設・区域というものが沖縄県に七五%集約しているこの現実、また、太平洋、アジアに展開する十万人の米軍のプレゼンス等々を見ましても、約半分が日本に展開しておる。韓国が四〇%ぐらいでしょうか。こんなことを考えますと、どうしても、SACOのガイドラインである基地の整理、統合、縮小、これは当然我々が取り組んでいくべきことでありまして、そのときにぶつかるのがこの地位協定、こういうことであります。

 それだけに、閣議決定で運用の改善、このようなことがうたわれておりますので、まず閣議決定に従いまして運用の改善をやる。運用の改善で対応できない、こういうことであれば、大臣のお話のように、地位協定の改正というものも考えられるのではないか、私はこのように思っております。

 私は、これからの二十一世紀の太平洋アジア地域の安定と平和に資しておる日米安保条約、日米安保体制、日米同盟、そういうものをこれからもしっかりと堅持する、そして質的レベルアップを図っていく、そういう意味でも、むしろこのときに、日米地位協定のことについて検討を加え、また、大臣が示唆した改正の方向をしっかり見据えて、これを俎上にのせていくときに来ておるのではないか、こういう考えを持っております。

嘉数委員 この問題は大変重要な課題を抱えております。実は、県民総決起大会以後の一つの大きな目標があったんです。それは、県民総意として、外務省の壁をぶち破れということです。それほど沖縄県民は外務省に対して当時不信感を持っていました。いろいろ議会で決議をして、外務省へ行っても、いいときで課長クラスが対応する。ほとんど、ある意味では門前で受け付けて上まで行かないという形で、だから、我が国の外務省は沖縄県民にとっては全くアメリカの外務省と同じだという考え方を、実はずっと持って県民が過ごしてきた経緯がありました。

 それを思い切って、あの県民総決起大会で、国がしっかり受けて、外務省もしっかりそれを受けていただいて取り組んでいただいた、そういう点で評価は相当変わりました。しかしながら、依然として、今の状態でいくならば、またあの外務省、何しているんだということになりかねないです。

 特に、地位協定、返還跡地の原状回復義務も米軍にはないし、補償の義務もない、そういう状態もまだあるわけです。したがって、あの恩納村の返還跡地のPCBも、処理ができないものを抱えているんです。これから返還される普天間飛行場、あるいはその後の地域にも、どういう環境汚染をするホルモンがあるかわからないんです。その対応をしっかりやっていただかなければ、なかなか信頼を取り戻すことはできないと思います。その前面に立っていただかなきゃいけないのは外務省ですから、そういう意味で、改めてしっかり取り組んでいただかなきゃいかぬ、そのように思います。

 特に普天間の移設を受ける名護市、これから飛行場の建設も始まる、受けざるを得ないということになりまして、今、名護市長は、使用協定をしっかりと結びたいという話をしています。この使用協定の中で一番何が大事かといいますと、環境問題だと彼は言っているんです。住民生活環境が害されるような状態で受けるわけにはいかないですから、安全も脅かされる、生命も脅かされるということだったら、それはどんな形をとっても、岸本市長が住民を説得することはできないんです。

 それも含めまして、地位協定の改定ということについてしっかりと真正面から取り組んでいかなければ、政府の姿勢を示していただかなければ、なかなかスムーズに普天間の移設もできないだろう、私はそういう思いを実はしています。そういう意味で改めて、もう一度お願いします。

衛藤副大臣 ただいま申し上げたとおりでありますが、日米地位協定の見直し、改正について、大臣は、視野に入れる、このように明言されました。

 今、嘉数委員は、もう少し発言はないのかということですが、外務省といたしましても、日米地位協定、それは日本国と米国のまさに同盟関係のシンボリックなものでありまして、これからの長い間の日米同盟、日米関係、その質的な強化、レベルアップ、そういうことを考えましたときに、当然、日米地位協定の見直し、改正、そういうことに踏み込まなければならない時期に来ておる、私はこのように思います。

 この作業をいつからやるのかということにつきましては、まさに大臣の決するところでありまして、私は、日米地位協定の改正、見直しの必要性があるということをここで明言しておきたいと思います。

嘉数委員 踏み込んだ御答弁、どうもありがとうございます。

 まさに日米間のシンボリックな事柄だと私は思っています。その対応を間違えれば、沖縄県民はなかなか承知しない。そういう意味で、しっかり取り組んでいただきたい、心からお願いいたします。

 それから、改めて、質問を変えますけれども、今、連続的に外人の事件が起こっています。ほとんどマリンなんです。海兵隊の兵隊が起こしています。空軍でもなければ海軍でもない、マリンが圧倒的に多いのです。八割以上、マリン兵が起こす事件です。マリンの駐留を認めている市町村が大変な不安を持っている。

 したがって、知事さんも議会も含めて、思い切って兵力削減まで踏み込まざるを得ない形まで実は来ました。対応を間違えれば、要するにしっかりと対応しなければ、一つ一つエスカレートしながら、ある意味で基地の運用、基地の存在そのものを否定する方向に沖縄県民は行かざるを得ない。あらゆる対策をしていただいて、綱紀を粛正する、教育をする、いろいろやっていただいても、なおかつ事件、事故が起こるじゃないかということに対する県民の不安、不満も相当のものがあります。

 ヘイルストン四軍調整官、彼は一生懸命やっています。私は何度もお会いしていますし、いろいろな形で相談も受けたりアドバイスをしたりしながらやっている仲なんです。これまでの四軍調整官の中では、私から見て一番真剣に取り組んでいる、一番真剣に県民の中に飛び込んでやっておられる調整官、指揮官だと思っています。彼でさえもあのいら立ち、結果において、知事さんを弱腰だと非難するような形まで行く。これはある意味で軍人の裏を見たような気もしますけれども、そういう意味で、軍人の基地のある、兵隊のあるべき姿、駐留する形がどのような形なのかも含めて、改めて政府として強く要請もしなきゃいかぬ、抗議もしなきゃいかぬし、着実な形でチェックもしていかなきゃいけない、そういうふうに思っています。

 基地の所在市町村の皆さんから、いろいろ要請もありました。外務大臣、兵隊の夜間外出を禁止してくれということもその一つでしたし、それから、改めて教育をしっかりとやる、その形をもう一度日米間で話し合いをして構築してほしいという要請もありました。

 みんな仲よくしたいんです。しかしながら、事件一つ一つが起こるとそれはまとめて抗議をしなければいかぬ。我々県民の生活をどのようにして守ってくれるかということがそのままずばり政府に向かっていくわけですから、そういう意味で、政府としてしっかり取り組んでいただいて、県民の不安がないように、司令官が幾らやってもやれないあのいら立ちは、私は、ある意味で自分の力の足りなさをみずから認めたようなものだと思っていますから、改めて、政府として米軍との間でしっかり話し合いをして結論を出して、県民が安心して生活できる環境をつくっていただきたい。決意のほどをお伺いして、私の質問を終わります。

衛藤副大臣 その問題でありますが、今、日米安保体制において一番必要なことは、信頼性の向上と同時に双方の、特に日本側の米側に対する対話能力の向上なんですね。これをしっかり構築する。それで、今御指摘のあったようなことをやはりしっかりと政府として米側に要求しあるいは直言する、こういうことが極めて大事だ、このように思っております。

 沖縄の県民の皆様方の心をしっかりと踏まえまして、政府といたしましても、米側に強くそういう問題についても申し入れをし、改善をすべきことは改善をしてまいりたい、このように考えております。

嘉数委員 ありがとうございました。

 ぜひしっかり対応していただいて、沖縄県民が安心して、本当に信頼して暮らせる形をつくっていただきたいとお願い申し上げまして、質問を終わります。

大木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 橋本大臣には、再び沖縄の担当大臣という形で、大変長い間沖縄にかかわりを持ってこられて、特に、総理として復帰二十五周年の式典にも出席をされて、その際に沖縄の経済自立を目指した二十一世紀プランといったことも提案をされて、その後政府としてもそのことについて取り組みをしてきました。

 再び担当大臣としてこのように沖縄問題に取り組むに当たりまして、総理として提案されたその思いと、現在報告を見られてどのような御感想をお持ちなのか、そのことをまず最初にお伺いしたいと思います。同時に、もっとこういうことがということがおありであるならばお答えいただければと思います。

橋本国務大臣 今御指摘をいただきました沖縄経済振興二十一世紀プラン、これは平成九年の十一月二十一日、宜野湾市において開催されました復帰二十五周年記念式典、その席で、沖縄の経済自立化に向けて重点的な施策の具体的体系化を図るということで申し上げた話でございます。

 今振り返ってみますと、この二十一世紀プラン、現在県全体の発展ビジョンとしてお使いをいただいている、そして、県と御相談をしながら取りまとめていただいておりまして、申し上げてきたような趣旨に沿って運用されているという感じを持っております。

 このポストに就任した後、その状況を聞かせてもらいましたが、政策の具体的な方向として九十七の項目をこの中に盛り込みました。そのうちで、八十四の施策については既に予算化が図られている、そして四つの施策には特段の予算措置を要せず既に一定の進展が図られている、約九割の施策が具体的に展開をされているという報告を受けました。私は、この点は、小渕前総理を初め引き継いでいただいた皆さんに大変感謝をしたいと思っております。

 そして、現在、このプランに盛り込まれております施策というものが、各省庁が積極的に事業の推進に取り組んでいただいているもの、そして、引き続きこのプランを着実に具体化していくために沖縄県や市町村と相互に連携を図りながら関係省庁が協力をしてくれている実情にありますだけに、今後もこの協力のもとに取り組んでいきたい、そんな思いでこれを見ております。

白保委員 それから、非常に重要な時期にまた御就任をいただいたわけでありますが、いよいよ三次振計が終わろうとしております。今予算審議をやっておるわけでございますが、この三次振計、最終年度ですが、新しいポスト三次振計、このことについての経済振興新法が精力的に検討がなされて策定作業に入っておると思います。これから先どういうような形でもってこれを策定の方向へ進めていくのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。

橋本国務大臣 今まで三次の沖縄振興計画というものがそれなりに役割を果たし、県民の生活の質の向上でありますとか、特に施設面における他県との格差を埋めてきた、そういった意味での効果があったことは私は公平に評価をしていただけるところだと思います。

 しかし、その上で、沖縄県の地理的な環境、例えば島であるために真水が得にくいとか、あるいは交通体系が整備され切れていないとか、幾つかの問題があることは事実であり、こうしたものはこれから埋めていかなければなりません。同時に、今後を考えました場合に、やはり何といいましても産業の問題あるいは雇用の問題、なお解決しなければならない分野が存在しておることも、これは否定できません。新法をこれから考えてまいります場合、こうした認識の上に立って新たな法制度を考えていく、その中で、現行の沖縄振興開発特別措置法の規定の中で継承すべきものは継承していく、その上で、できる限り新しい施策、理念というものが反映されたものになるように今私どもは考えております。

 県ともよく御相談をしながら、来年の通常国会提出に向けまして、鋭意検討してまいりたいと思っておりまして、こうした中にどのようなものを新たに加えていくべきか、そうした点につきましても、本委員会等、御意見をいただけるなら非常に幸いだと思っております。

白保委員 若干質問は変わりますが、旧開発庁そしてまた今内閣府として、沖縄の振興開発そしてまた発展のために全力で取り組んで一定の大きな成果を上げてきた、このことはだれも否定することはできないだろうと思います。そういった中で、一方で、先ほども地位協定の問題がずっと話が続いておりましたが、担当大臣としてこの現在の状況、いわゆる米軍の不祥事の問題、こういった問題について、前にも記者団に聞かれて若干コメントされたように記憶しておりますが、県民がどういうふうにしたら安心してやっていけるのかということで大変に心配もされていると思いますが、担当大臣としてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 若いころ、大城立裕さんの沖縄三部作と言われる作品の特に最後の巻で、第二次世界大戦終了後の沖縄県を書いておられた著作がありました。そして、この最初のシーンは、帰宅途中の女性が米軍兵士と思われる男性に襲われ、そこから話がスタートをしておりました。当時読みました時点で非常に強烈な印象をこの作品は残しましたが、今日もそれに変わらない不安を県民が持たれているということ、私は本当に残念なことに思います。

 私ども、今の在日米軍の施設・区域の約七五%が沖縄県に集中している、そうした中からこうした問題が引き起こされているということを否定するつもりはありません。同時に、大半の米軍兵士たちが非常に真剣に勤務を続けているのに、本当に、一部の人間の行動ですべてが汚名を着ることに彼らが非常に悔しい思いをしておることも実は私は感じております。

 そうした中で、私どもとしてなすべきことは、少しでもその負担を減らしていきますために、先月の日米外相会談でも一致いたしましたSACOの最終報告を踏まえた努力を最大限続けていくということに尽きることでありますけれども、こうした連続して発生しております事件に対しましては本当に残念な思いでありますし、今後とも米軍に綱紀の粛正を一層徹底してほしいと切に願っております。

 いずれにいたしましても、今新しい世紀が始まりました。そうした中で、少しでも沖縄県にかかる負担、県民にかかる負担というものが軽減をされて新たな発展の基盤が築けるように、県や県民の皆さんと一体として努力をしていくことが私どもに課せられた役割だ、そのように考えております。

白保委員 今、担当大臣、大城立裕さんの話をされました。芥川賞をもらった「カクテル・パーティー」のことだろうと思いますが、あれは、かつて我々は加害者であった、今は被害者である、こういったような極めて強烈な書き方の小説でありまして、大臣が非常に感銘を受けられたということで、こちらの方も非常に感心しております。

 さて、質問が変わりますが、先般、予算委員会で嘉手納の爆音の公平補償の問題について伺いました。その際、非常に困難であるというような印象を受けた人たちが多くいたようでございます。

 そもそもは、厚木の爆音訴訟、こういった問題が繰り返し繰り返し行われるといったことで、当時の野呂田防衛庁長官が、訴訟に勝った者が補償を受けてそれを繰り返されては困る、何らかの補償というものを考えなきゃならないという御答弁があって、それから厚木の調査も始まり、進めておる問題だと思うのです。

 そういう面で、まず厚木の調査の進捗、こういった問題について伺いたいと思います。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、先般二十日の予算委員会でございましたか、御質問に、斉藤防衛庁長官から当時の状況等を御説明したところでございます。

 そして、厚木が周辺の住民の数という点では各関係飛行場の中で最も多いということもございまして、厚木周辺ということで現在アンケート調査をやろうということで、間もなく着手できると思いますが、これは周辺の関係地方公共団体の皆様方の御協力をいただかなければいけませんで、その辺がほぼ整っております。三月の早い時期に調査に着手をしたいというふうに思っております。

 主としてこれでは、まず居住地の生活環境と航空機騒音の関係ですとか、日常生活に対します航空機騒音の影響度、あるいはまた国の航空機騒音対策の認識度、さらには住宅防音工事の実施状況と効果、移転措置事業の認識度と意向、あるいは移転跡地の利活用状況、さらに、一番大事なところかもしれませんが、新たに必要と考える航空機騒音対策の内容といったような項目につきまして調査をいたしたいと思っております。

 アンケートそのものは恐らくかなりの項目になりますので、回収までに一月ぐらいかかるかと思いますし、その後、整理にも若干の時間がかかると思いますが、そのようなことで現在着手をしようとしておるところでございます。

白保委員 要するに、厚木はモデルケースとして調査をして、それを全国の、いわゆる爆音といったことでもって被害を受けている皆さん方に当てはめていく、こういうことですね。

伊藤政府参考人 御指摘のとおりでございまして、訴訟があります飛行場だけでも嘉手納を含めまして四飛行場ございます。国の立場から申しますれば、当然、それら全体をどういうふうにしていくかということになりますし、今先生がおっしゃられましたように、この厚木の一つの調査結果、さらには、できれば私どもは有識者懇談会のようなものを設けまして、いろいろ御意見を伺って対策を考えてまいりたいと思っておるところでございます。

白保委員 そうしますと、先般の答弁で、精神的な被害への補償、こういった問題についての基準だとか、そういったものもなかなか難しいんだ。こういうことについては今後このことを踏まえて新たな検討をしなければならない、こういうことですか。

伊藤政府参考人 御指摘の斉藤防衛庁長官の答弁でございますが、精神的な被害等に対する補償等については、客観的な評価、判断基準の確立が困難であるということ等で大変難しいというような趣旨にお聞き取りいただけるような御答弁があったかと思いますが、斉藤防衛庁長官が申し上げましたように、確かに、私どもとしてもなかなか判断が難しい、悩むところはございます。

 しかしながら、先ほど来御指摘のようなアンケート調査あるいは有識者懇談会、これは一朝一夕に答えが出るとも思えないところもございますけれども、そういう努力で何とか解決策を見出していきたいと思っておるところでございます。

白保委員 嘉手納でも一九八二年に訴訟が起きて、九八年に十六年かけて判決。その結果として、うるささ七十五デシベル、この地域住民については一定の補償がなされるという形になりました。

 公平補償を求めている人たちは、これは公平にやってくれと。先ほどの質問にもありましたが、まさに人権問題としてこのことを訴えているわけでございますから、そういうことについてもしっかりとした対応を、まだまだ解決するまで何度かこの問題については質問をしなきゃいけないと思いますが、ぜひ、そのことは厚木を踏まえて検討をしていただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

 せっかくおいでいただいておりますので伺いますが、これは何度も質問しておりますが、与那国上空の防空識別圏の問題についてでございます。

 まさに、与那国島のど真ん中から割られるように防空識別圏が、台湾の識別圏がこちらの方に来ておる。この問題については、第五空軍が戦後全体的なところでさっと線を引いた、久間防衛庁長官はこういう話をされましたが、まさにそういう状況を主権国家としていつまでも残しておくわけにはいかない。

 したがって、何度も質問してまいりましたけれども、いかなるチャンネルを使ってでも、やはり地域住民は大変不安であるわけですから、防衛庁は運用面で大丈夫だというような答弁を繰り返し行いますけれども、我々は、主権国家として、防空識別圏をみずからの上空の上に置いてあるという、これは非常に変則的な形であると思います。したがって、そのことについての答弁を求めたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今委員御指摘のとおりでございまして、私ども防衛庁では、我が国周辺を飛行する航空機の識別を容易にいたしまして、これをもちまして領空侵犯に対します措置を有効に実施するために、御指摘のような防空識別圏を定めているところでございます。

 そして、与那国島の上空、ちょうど東経百二十三度の線をもって防空識別圏の上限、外側にしているわけでございますが、これによりまして、島の西側の領域がいわゆる防空識別圏の外側にあるのは御指摘のとおりであります。これを見直すということにつきましては、委員御承知のように、台湾との関係等含めまして、諸般の事情を考慮しながら慎重に検討していく必要がある、そのように考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、この防空識別圏は、これによりまして我が国の領空ですとかあるいは領土の限界等範囲を定める性格のものではないわけでございます。

 さはさりながら、防衛庁といたしましては、本日の委員の御指摘、あるいは委員からも御披露ございました与那国の島の地域の方々の御不安、こういったお気持ち等に改めまして十分思いを深くいたしまして、今後とも、与那国島の上空の領空におきまして、防空識別圏の外の空域を含めまして、私どもといたしましては対領空侵犯措置というものを適切に実施してまいりたい、そのように考えております。

白保委員 時間ですので、終わります。

大木委員長 次に、木下厚君。

木下委員 民主党の木下厚でございます。

 橋本大臣には委員会では初の質問をさせていただきますが、私自身、ジャーナリストとしてこれまで橋本大臣には何回もインタビューさせていただきまして、そのたびに非常に歯切れのいい明快なお答えをいただいて、大変読者の人気も高かったものですから、ぜひともひとつよろしくお願いしたいと思います。

 まず、今の沖縄問題についてお伺いしたいと思うんですが、私自身、二十一世紀の日本の平和と安定ということを考えた場合、やはり日米関係というのは非常に重要である、そう常日ごろ考えてきたわけでありますが、昨今、アメリカに対する日本人の不信感、これが非常に高くなっている。とりわけ、先般ハワイ沖で起こったえひめ丸事件、それからそれに対するアメリカ側の対応、これに対して非常に日本人は怒っているわけですね。

 その上に、先ほど来お話が出ましたように、沖縄問題に対してどうも日本の外交が弱腰ではないか。相次ぐ犯罪に対して、日本側としてアメリカに対しても十分な文句を言っていない、どうも言われるままになっているのではないかということで、日本に対する不信も非常に高くなっている。

 こういうことで、まず、そうした中で、先般、二十五日でございますか、橋本大臣、沖縄に行かれましたね。そのとき大変な歓迎を受けられた。沖縄であれだけいろいろな問題が起こっている中で大変な歓迎を受けられた、その期待というのをどんなふうにお考えでございますか。

橋本国務大臣 先ほど答弁の中で触れましたように、私ども、初めて沖縄県を訪問させていただきましたのは、占領下の昭和四十年、佐藤総理の指示を受け、小渕さんと一緒に参ったときでございました。

 それ以来、さまざまなことでかかわりを持ってまいります中に、随分たくさんの友人もできました。今回、就任をいたしましたことをその友人たちが大変喜んでくれていたこと、逆に心配をしてくれた人もありますけれども、多くの友人たちが喜んでくれたことを、私は政治家として非常に幸せに思っております。願わくは、その期待にこたえるだけの仕事をさせていただきたい、努力をしていきたい、今もそのように感じております。

木下委員 河野外務大臣も御出席でございますので、先ほど来お話が出ております日米地位協定について、もう一度お尋ねしたいと思うんです。

 どうも新聞報道等を見ていますと、外務大臣と沖縄北方担当の橋本大臣との地位協定に対する考え方あるいは言葉のニュアンスが微妙に食い違っているような感じを受けるんです。先ほど衛藤副大臣の方から、個人的な見解として御自分は改定に前向きであるという発言をいただいたんですが、この点について、どうなんですか。具体的に見直しなのか、あるいは運用の改善だけでとりあえずはやろうというのか。その辺をもう一度確認させていただきたいんですが、まず橋本大臣の方からお願いしたいのです。

橋本国務大臣 私は、河野大臣と違っているとは思いません。

 お互い、言葉遣いの違いはございますから、そのニュアンスと言われますならば、確かに一字一句同じことを繰り返しているわけではないと思います。しかし、私も河野大臣も、地位協定というものが神聖不可侵なものであると思ってはおりませんということは、お互い共通のことであります。

 その上で、とっさの、想定されていなかった新たな問題が起きたとき対応をするには、運用を弾力化できればそれが対応が早い、あるいは運用の改善で対応する方が早いという考え方は私も今までも口にいたしております。違わないですね。違わないと思います。

河野国務大臣 今橋本大臣がおっしゃったことに大体尽きていると思います。

 若干の経緯を申し上げれば、この地位協定問題については運用の改善でいこうということが閣議決定で決められておりますから、我々閣僚は、大体その閣議決定に基づいて発言をしたり作業をしたりするわけでございます。

 ただし、そうは申しましても、現実の問題として、運用の改善だけでは沖縄の皆さん方のお気持ち、お考え、あるいは気持ちというよりは日常生活の中の実際に起こっている問題が解決できないということであるならば、これは改定を視野に入れて考えなければならぬというふうに思っているわけでございますが、運用の改善について日米間で合意をするのにもかなりの議論があって、こういう合意ができたわけでございます。

 少し長くなって恐縮ですが、先般来、この問題について話が進んでおります。

 こういう話になっておりますのは、放火の容疑者の身柄を日本側にできるだけ早く引き渡せ、こういうことを我々は言っているわけでございまして、それについて、地位協定によれば、起訴されれば引き渡すということになっているわけですが、この起訴がなかなかできないと身柄が引き渡されないわけです。

 それではどうも日本側の捜査上の問題もあるので、これを、地位協定は地位協定のまま運用の改善ということにして、その運用の改善には、議員も御承知のとおり、殺人及び強姦の場合には身柄の引き渡しは云々と書いて、しかもその後半に、特定の場合についてはと、さらにもう一項目入っているわけです。ただ、そういうことで、今回の放火の場合も私はまさにその特定の場合だと考えておりますけれども、残念ながら、殺人、強姦は明示的に書いてございますけれども、放火というのは明示的に書いていないものですから、これについてはまた合同委員会を開いてやりとりをするということになる可能性があったものですから、私は、この特定の場合というのに明示的に書くようにこれから努力をしようということを考えたわけです。

 それで、例えば、そうした殺人、強姦に並んで明示できるような問題について幾つかは書こうということを考えておりまして、それがどうしてもうまくいかぬというならば、地位協定の改定も視野に入れて考えなきゃいかぬなということを、私は予算委員会でも申し上げたし、稲嶺知事にも申し上げたわけでございます。ところが、たまたまあのときには身柄の引き渡しが割合と早く済んだものですから、そこで、この問題については片がついたねということになったわけでございます。

 ただ、地位協定全般については、まだまだほかに沖縄からはいろいろ御要請がございますから、それらについても、私どもは考えるべきところは考える。しかし、日米間で交渉をして、2プラス2などで交渉をして、例えば環境問題などでは一定の前進があった、あるいは基地内の通行についても、緊急の場合についてできるように話が進んでいるとか、そういう改善されている部分もありますから、それらを含めて、運用の改善では不十分である、個々具体の問題について不十分であるかどうかということを当たって、やはりこれはだめだ、ここを直さなきゃだめだということであれば、直せ、直さないのなら地位協定の改定も視野に入れて考えるよ、こういうのが私の気持ちでございます。

 これらは、橋本大臣がお話しになったことを、私は事件そのものを担当しておりましたので、少し長々と申し上げたというだけだと思います。

木下委員 もし運用に支障があればということなんですが、これは沖縄県民の皆さんも言っているように、既に運用に支障は来してきている。先ほど河野大臣がおっしゃったように、地位協定が日常生活と密接に絡み合っているわけですから、例えば、簡単な交通事故を起こしても、損害賠償を公務外であってもアメリカが査定するとか、本当に損害賠償もスズメの涙しか出ないというようなケースが、やはりたくさん出ているわけですね。

 ですから、そういう意味でいえば、はっきりと改定を、視野じゃなくて、やはりきちんとアメリカ側に強く要求して、その間は運用で賄うということはあり得ると思うんですが、常に視野、視野だけではいつまでたっても改定はできないということだと思いますので、その辺をもう一度御答弁をお願いしたいと思うんです。

河野国務大臣 一部のメディアが、どうも河野は、ちょっと言ったけれどもまた腰が引けてトーンダウンしたんじゃないかと報道される方がありますけれども、私はそんなことはないのでございまして、申し上げたせりふは全く変わっていないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 運用の改善で処理できるものは運用の改善で処理をきちっとする、そういうことがどうしてもうまくいかないということであるならば、地位協定の改定も視野に入れて考えるということを私は繰り返し申し上げているわけです。

木下委員 では、問題を少し移します。

 先ほど、沖縄の経済支援の問題へ話が入りましたが、平成十三年度の概算決定額を見ましても、沖縄振興開発事業費で三千二百六十一億円、このうち公共事業関連費が二千九百三十九億円、ほとんど大部分は公共事業という形に費やされるのですが、こういう形で、本土と同じような形で公共事業だけを押しつける。そうではなくて、今まで沖縄の最大の問題は、基地経済に頼ってきた、これを何とかして自立経済にきちんとしなければいけない。そういうことであれば、やはり産業をどうやって育成するか。あるいは先ほどもお話に出ましたように雇用をどうするか、あるいは中小企業の育成をどうするか。この辺をポスト第三次振計に盛り込むことについて、橋本大臣、夢のある、沖縄独自の開発計画というような、もっと夢を与えるようなビジョンみたいなものをちょっと考えておられませんか。

橋本国務大臣 今、議員は夢という言葉をお使いになりましたけれども、私どもは夢に終わらせては困ると思っておりまして、むしろ、現実として、今議員が御指摘になりましたような経済の自立化、あるいは沖縄県の産業として定着の図れるもの、そうしたものから考えていきたいとこれは考えております。

 そして、産業振興ということを考えました場合に、何といいましても、やはり中小企業に配慮する必要がある、これは私どもはそう思っておりますし、地理的なあるいは自然的な特性というものをどう優位性として生かすことができるか、こうした視点は必要であろうと考えております。

 その場合に、我が国国内における唯一の亜熱帯性気候の沖縄県の特性を生かした農林水産業のあり方、あるいは製造業にいたしましても、独自のものがどこまで育て得るのか、さらに観光あるいはリゾート業。そして、NTTのセンターを持っていきましてから、改めて私自身びっくりいたしましたけれども、情報通信産業など非常に今伸びつつあります。そうすると、こうした自立化を支える特色のある産業の育成というものを、今までも図ってきたつもりですけれども、これから先、特に観光あるいはリゾート産業といったものがリーディング産業としての地位を確立できるかどうか、あるいは、情報通信産業についてリーディング産業としての発展の期待をかけたいわけでありますけれども、これが、どのような手助けをすることによってそこまで育つのか。

 こうしたことを考えながら、私どもとしては、今の三次振計の終了後の体制づくり、新法づくりというものを考えていきたい、そのように考えております。

木下委員 次に、普天間飛行場代替施設についてお伺いしたいと思うんです。

 現在、代替施設協議会で、施設の工法問題、あるいは軍民共用空港とするなどの協議が行われていると思うんですが、代替施設は地元の意向を尊重したものにすることは当然だと思うんです。大臣の所感をひとつお伺いできればと思うんですが、今どのような形での代替施設を考えておられますか。

橋本国務大臣 今、普天間飛行場の代替施設というものにつきましては、軍民共用の飛行場というものを念頭に整備を図ることにしておりまして、平成十一年末の閣議決定に基づきまして、昨年八月、代替施設協議会を設置し、今、基本計画策定に向けて鋭意協議を進めております。

 今後ともに、これにつきましては、アメリカ側とも緊密に協議をしながら、この協議会の場を中心として、沖縄県及び関係する地方公共団体の御理解、御協力というものをいただきながら、できるだけ早く成案を得たい、得られるように着実な検討を進めていきたいと今考えておるところであります。

木下委員 普天間飛行場の移設については、十五年問題というものがあるわけなんですが、政府としては、この普天間飛行場移設については永久的な形のものを考えているのか、あるいは十五年問題もきちんとアメリカに要求を出すのか。その辺は、河野大臣、いかがでございますか。

河野国務大臣 移転先の基地の十五年問題というのは、知事そして名護の市長、いずれも十五年ということを言っておられます。これは、選挙の際にも話をされたこともあって、県民あるいは名護市民の気持ちがそれにこもっているだろうというふうに思います。

 したがって、この十五年問題というのは大変重いものだというふうに我々は考えておりまして、名実ともにこの問題は重く受けとめて、米側との話し合いの折にはこれを取り上げるということは、閣議で決めているわけでございます。したがって、これまで防衛庁長官が国防長官と話をされるとき、あるいは私が国務長官と話をするときにも、常に地元の意向、十五年問題というものを取り上げてきているわけでございまして、これから先も恐らくこの問題を取り上げ、そして全体的な考え方について相談をするということはあるだろうと思っております。

 ただ、これをいつの時点でイエスかノーかを決めるかということになりますと、これはまだその時点を申し上げる段階ではないというふうに思っております。

木下委員 時間がありませんので、北方問題について一つお伺いしたいと思うのです。

 先般、これは外務省内で、昨年十二月、当時の幹部たちが今後の平和条約締結までの議論をされたという話が伝わっております。一つは、川奈提案をずっと主張し続ける、それからもう一つは、五六年の日ソ共同宣言に明記された二島返還を担保するような形での中間条約を提案する、三番目に、まず北方四島の共同統治を検討する、この三案について激しい議論をしたそうなんですが、結論が出なかったということなんです。

 北方四島、私ども民主党は一括返還、こういう形で強く主張したいと思うんですが、どうも最近の政府の対応を見ていますと、二島先行返還論、これが浮上してきたり、もうひとつ政府の対応が一致していない。外交にとっては、やはり足元を見られるというのは基本的に大きなマイナスになります。その辺で、どうも橋本大臣と河野大臣との北方四島に対する考え方にニュアンスの違いもあるし、あるいは自民党内では、今ここにおられる鈴木宗男さんのように二島先行返還を強く主張されておられる方もいる、どうも国民にもよくわからない。

 この辺は、河野大臣、いかがでございますか、どういうお考えで。

河野国務大臣 北方四島が我が国の領土であるということは、一貫して我々の主張でございます。したがって、この四島の帰属をはっきりさせて平和条約を締結するというのが私どもの基本的な主張でございます。こうした基本的な考え方は、政府・与党が一体となって、実現するために努力をしているわけでございます。与党の中にも、かねてからロシアとの間でこの問題について長く協議を続けてこられた方もおられます。あるいは、もちろん民間にもそういう方がいらっしゃる。

 そういうことでございますから、一貫した我々の主張というものを持ちながらも、その中で、これは外交問題ですから、さまざまなアイデアを出して先方に打診することもあるでしょう。先方の考え方を引き出すために、いろいろなことを主張するということもある。これは、お互いに政府・与党が一体となって基本的な考え方が一つであるならば、当然いろいろなことがあっていいというふうに私は思っているんです。

 これは、私がたまたま今外務大臣のポストにおりますから、外務大臣として、最終的には総理大臣の御判断をいただいて、この領土問題については議論を進めていかなければならないわけですけれども、なかなか一人でできるというほど簡単な問題じゃありません、非常に難しい問題でありますから。

 例えば橋本大臣は、エリツィン大統領との間でこの問題を大変突っ込んで話をしてこられた。まさにクラスノヤルスク合意まで持ち込んでいただいた、この問題のいわば我々の先輩としてのエキスパートでもございます。今お話しの鈴木議員も、北方領土問題についてはさまざまな場面で努力をしてきてくださっているわけです。大変御無礼な言い方ですが、まだほかにも与党の中でこの問題に真剣に取り組んでおられる方がたくさんおられる、こういうことでございまして、そして、みんなでチームを組んで、何としてもこの問題の解決を図ろうというのが私どもの考え方でございました。

 私は、そういう意味で、基本的方向というものがはっきりしていれば、そこに行くアプローチの仕方にはいろいろな方法がある、そしてむしろ、さまざまなアプローチの結果、さまざまな先方の動きが出てくるか、先方の考え方がよりはっきりしてくるかということがわかってくることは、いいことだと思っているわけです。

木下委員 先ほどお話しになりましたが、その考えは一緒だという話だったんですが、ただ、与党の中にも、総務局長がロシアへ行って、二島先行返還のシグナルを送るというような形があると、現実には、これは政府・与党一体という話にはなっていないのですね。ですから、その辺を、原則をきちんと持っておられるのか。

 橋本大臣は従来から、原則を守るんだ、四島一括返還と強く主張されておられますが、その辺いかがでございますか。

橋本国務大臣 四島一括返還という言葉は、私は久しぶりにこの間国会で使いました。それには理由がありまして、先日、北方領土視察のために根室に参りましたときに、元島民の方々を初めとして関係者とお話をいたします中で、ここしばらくの報道で非常に関係者の間が混乱しておられる、そして日本政府が方針を変えたんではないか、そういう懸念を持っておられる。あるいは、既に、一万七千名余りおられた元島民の方が九千人を切る状況の中で、平均年齢が七十歳に近づいておられる。そうした中で、自分たちの領土返還運動、要求運動というものにあきらめる気持ちを持たれているような方まで出てきている。そういう状況を知りまして、正直慌てました。

 そして、日本政府が方向を変えているわけではないということをその席上でもるる御説明いたしましたし、会見で記者から出ました質問にも正確に私は答えたつもりでした。しかし、選択肢としての二島返還あるいは先行返還、執拗に記者さん方はそこだけにこだわって質問が続きましたし、引用されました記事、実は随分内容が各紙によって違いましたけれども、何となく、その二島返還と従来の方針の間に何か差違が生じたようなものが多く出たわけであります。私は、これを消したいと思いましたから、強い言葉と承知をしながら、四島一括返還という言葉をあえて国会の論議の中で使わせていただきました。

 その上で、今外務大臣からお話がありましたように、私たちは、日本としての要求を取り下げているわけではありません。その上で、交渉のプロセスにおいてさまざまなケースがあるであろうことも我々は頭の中に置かなければならない、それはそのとおりでありまして、お互いがむしろ力を合わせていく、食い違いの点を強調するのではなく、共通の目標に向けてさまざまな角度からアプローチを続けていく必要がある、私はそのように思います。(発言する者あり)

木下委員 河野大臣、一言。はっきり四島返還なのか、あるいは交渉の過程でいろいろ継続があると思うんですが、例えば中間条約を結ぶようなことは考えておられるわけでございますか。

河野国務大臣 私は今、四島の返還が我が国の一貫した主張だということを申しました。今、鈴木委員からも御指摘がありましたように、かつて冷戦時代に日ソの交渉をしていたころと日ロ間の交渉とでは、先方の態度も変わってきておりますし、我が方の返還に向けての進め方についても、お互いに弾力性を持って話し合おうというふうになってきていることも事実でございます。

 ただ、これは議員に申し上げますが、三月の二十五日には首脳会談を行い、この領土問題について非常に大事な話し合いの場面がこれから続いていくわけでございまして、国益を考えていろいろと御発言もお願いをしたいというふうに思っております。

木下委員 時間ですので終わりにしたいと思うんですが、最後に一言だけ。

 新聞報道を見ますと、三月二十五日の日ロ首脳会談が、どうも森さんの、何というんですか、政権延命の一つに使われる、そのために日ロ会談がセットされたような、これはマスコミの報道の問題かと思うんですが、決してそういうことがないように、きちんと言うべきことは言う、決して功を焦って早急な結論を出さないで、やはり原理原則をきちんと守って交渉していただきたい、それだけ要請して、終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

大木委員長 次に、小林憲司君。

小林(憲)委員 このたび沖縄及び北方問題に関する特別委員会の所属となりました民主党の小林憲司でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、日米地位協定や沖縄の基地問題について御質問させていただきます。

 今回の北谷町での連続放火事件では、県警は米軍に容疑者を護送してもらい、約十回にわたり任意で事情を聞いた上で、ようやく逮捕状請求にこぎつけているようであります。日米地位協定の運用基準は、殺人と強姦以外は、放火というような凶悪な事件でも、起訴前に容疑者の身柄を引き渡すことを明記しておりません。沖縄県民は、殺人、婦女暴行以外に容疑者を逮捕できないのでは主権国家と言えないとして大変反発しております。

 このような県民感情について河野外相はどのように御感想を持っておられるか、お聞かせください。

河野国務大臣 基地周辺におきますたび重なる事件、事故というものを沖縄県民はまことに我慢に我慢を重ねておられますけれども、今やもう我慢の限界を超えたというような表現でおっしゃる方もおられます。私もまた、米側に対して、こうした問題が続けて起こる、繰り返し再発の防止と言ってみてもまた事件が起こる、こういう事態を何としても解決しなけりゃならぬ、沖縄県民の皆さんのお気持ちというものは私なりに理解をして、米側とは問題解決のための厳しいやりとりをしていかなければならない、こう思っております。

小林(憲)委員 沖縄の地元新聞によりますと、橋本大臣がことしの年初の抱負を語った中で、先ほども少々大臣が触れておられましたが、地位協定の改定について、地位協定は神聖不可侵ではなく、必要があれば交渉するのは当然である、しかし運用改善の方が早いという実感はあると述べておられます。

 一月、二月と連続放火事件などが発生し、沖縄では地位協定改定要求が大変盛り上がっておりますが、沖縄担当相として橋本大臣は、地位協定の改定問題に関しましてどのようなお考えか、今改めてお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

橋本国務大臣 先ほど来繰り返し同様の御質問をいただいておりますけれども、私は、確かに、地位協定というもの、神聖不可侵なものではないということは申し上げてまいりましたし、今もそう思っております。

 その上で、現実に事件が起きておりますので、その事件をテーマとして改定交渉に入れば、私は、実は神学論争に入ってしまうんじゃないかというおそれを本気で持っております。それだけに、運用の改善で対応した方が具体的事案を処理する上では間違いなく早いというのは実感として持ってまいりました。いわば何もないときに新たな議論をすること、これは影響がありませんけれども、逆に、協定交渉を開始した瞬間から、解決するまでは一切がそのルールでとまってしまうことも考えられる。そういう意味での懸念というものは私は持っております。

 そして、米韓の地位協定の改正で、韓国の皆さんは、日本の地位協定並みにということを随分目指しておられたわけですが、それが実らなかった。そう申し上げては失礼なのかもしれませんけれども、必ずしも日本と同等の内容にならなかったということを考えましても、こうした協定交渉というもの、現実の対応すべき課題がありますときに望ましい手法か。解決が早く済むかどうかというならば、私は、対応の手法として、先ほど来外務大臣が述べられましたような現実的な判断というものはあってしかるべきものと思います。

小林(憲)委員 九五年の九月十九日の閣僚懇談会におきまして、地位協定の見直しはしないということを申し合わせております。

 河野外務大臣は、そのときも外務大臣であったということでございますが、先日、二月二十五日の稲嶺沖縄県知事、伊良皆沖縄県議会議長との会談では、運用改善の努力だけで解決しないのであれば、地位協定の改定も視野に入れなくてはならないと述べておられます。

 この発言は、先ほど来、私もいろいろな答弁を聞かせていただきまして、本当の大臣の気持ちだったというふうによく理解いたしました。この発言は、これまで運用改善を盾に地位協定の改定に否定的であった従来の政府方針から一歩踏み込んだものだと私は理解しております。

 政府は、運用改善で効果が上がらない場合、地位協定の見直しも考えていると理解してよいのでしょうか。そして、衛藤副大臣が、これはもう大臣の決断次第だという言葉を先ほど御答弁の中で伺いましたが、その決断はいつでしょうか。そしてまた、どの段階でそれが決断されなければならないというふうにお考えでしょうか。お答えください。

河野国務大臣 沖縄の県民の皆さんのお気持ちを体して、沖縄にございます問題を一つ一つ具体的に解決する努力をこれから先もしてまいらなければならないと思っています。

 さっきも申し上げましたけれども、これまでも、例えば環境の問題などについては、半歩前進、あるいは一歩前進と私は申し上げたいと思いますが、前進をしてきているわけでございまして、こうしたことについて、問題解決に向けて前進ができるかどうかということを見きわめて、それによって、地位協定の改定も視野に入れて考えなければならぬというふうに私は思っているわけでございます。

 九五年でございましたか、当時の状況と今の状況とは、状況が少し違うというふうにも思っております。しかし、たしか閣僚懇の合意があったかと思いますが、こうしたことを考えれば、さらに地位協定問題について私が何か踏み出すときには、そうした合意との関係はもう一度考えなければならないというふうに思います。繰り返し申し上げますが、運用の改善で事態が改善されないのであれば、地位協定の改定を視野に入れて考えるというのが私の気持ちでございます。

小林(憲)委員 そもそも、米軍であっても、我が国に駐留している以上、我が国の法制度に従うのが当然であると私は思います。もっと強い態度でアメリカ側と交渉し、いかなる犯罪容疑者であっても、身柄引き渡し要求があれば応じる内容に改めるべきではないでしょうか。

 改定交渉が難しいというのは、私自身もよく理解しているつもりでございます。しかしながら、外務大臣、我が日本国は主権国家としてあくまでもアメリカと対等だということを忘れてはいけないのではないでしょうか。私は、運用改善で済めばそれでよいという問題ではないような気がいたします。独立国家としての威信というものもあるのではないでしょうか。

 外務大臣として、今の対米外交は、いろいろと言われておりますが、弱腰だと言われるゆえんはこの辺ではないかなとお思いにはなりませんでしょうか。どうか御答弁、お願いいたします。

河野国務大臣 見方はいろいろあるだろうと思います。

 しかし、先ほど橋本大臣からも御答弁がございましたように、例えば、アメリカとドイツとの間のいわゆるボン協定などと比べて日米の地位協定がどうであるか、これはなかなか一概に比較は難しいのでございますけれども、あるいは米韓の地位協定と日米の地位協定はどうであるかということをあえて比較をすれば、そんなに日本が弱腰だとばっさりと決めつけるということはどうかと私は思うわけです。例えば、被疑者の身柄の引き渡しなどにつきましては、アメリカとドイツの協定を見れば、さらに日本よりはずっと難しい協定になっていることはすぐおわかりになると思います。

 私は、沖縄の特別な事情というものはよくわかっています。よくわかっておりますから、そうしたことについて努力もいたします。また、私が努力をしなければ私は担当大臣にしかられると思いますから、もっともっと努力をしなければならないと思いますし、私の力の足らざるところは担当大臣にもお願いをして、問題を解決するべく努力をしてまいりたいと思っています。

小林(憲)委員 外務大臣、運用改善をまずとおっしゃいますが、この運用改善というものは、いわば役人の方がやる微調整ではないか、私はそう思います。そんなことでは、米兵の凶悪犯罪を減らすことはもうできないのではないでしょうか。政治家として、今こそ大胆な政策変更を主導すべきではないでしょうか。官僚の上に乗っているだけでは大臣の存在意義がない、こう思うのですが、いかがお考えでしょうか。お願いいたします。

河野国務大臣 これもいろいろな評価がおありだと思いますけれども、運用の改善をやろうと決めたのは実は私でございまして、当時、外務大臣として、これはかなりの決断でございました。決して官僚の考えではございません。運用の改善によってできるだけ早く問題を解決したいという思いから、運用の改善をしよう、運用の改善によって問題の解決をしようという決断を実は私がいたしたわけでございます。

 地位協定の改定によって凶悪な事件を減らすというお話でございますが、もちろん我々は、凶悪な事件が起こってはならぬ、凶悪な事件を未然に阻止するために、できることはできる限りやりたいと思っておりますが、議員の御指摘でございますけれども、地位協定のどこをどう改定すると凶悪犯罪が抑止できるかという、どこを指しておっしゃっておられるのか。もし差し支えなければ、後ほどでも教えていただきたいと思うわけでございます。

小林(憲)委員 それでは、その運用に対しての提案といたしますか、例えばディテールについて、私、大臣にお伺いしたいと思うんです。

 まず、九五年の米兵による女子小学生の暴行事件の後、県民の感情に配慮する形で地位協定の運用改善が図られたということだと思います。そして、そのときに、殺人と強姦を凶悪な犯罪と明記し、起訴前の身柄引き渡しを可能にし、その他の特定の場合については、合同委員会に拘禁の移転を提起することになっておるということで聞いております。

 このその他の特定の場合、ここを今回、運用のところで何か入れていくということを大臣はお考えのようだと私は思うのですが、例えば、逆に私、質問させていただきたいんですが、その他の特定の場合を明確化するということが一歩前進だと大臣がおっしゃるのであれば、具体的な犯罪名をこれから列挙する方向で考えておられるのでしょうか。

 その中で私が今ぱっと思いますには、例えば、懲役何年以上の犯罪については起訴前でも身柄を引き渡していいよ、こういうことも含まれていくんでしょうか。その方向でいくのかどうか、具体的なことを少々示していただきたいと思いますが、お願いいたします。

河野国務大臣 懲役何年以上ならどうというのは、これは裁判が終わらなければ決まらないわけですから、事前にそういうことはわからないわけでございます。

 それから、特定の場合の中に私は具体的に何か書き込みたいという気持ちがあるのかというお尋ねでございますが、私は、先般放火の容疑者の問題がございましたので、例えば放火というのが、殺人、強姦、放火、こう書いてあれば、この問題は運用の改善でかなり解決ができたんじゃないか、こう思ったことは事実でございます。

 ただ、それではこれはどうだ、あれはどうだ、これはどうだと次々に言われると、そこのところはなかなか、どうも我が国にもそれぞれつかさがあって、ちょっとそれとこれとの評価はどうとかという話になってくるとややこしくなるものですから、まだそこのところは私からは具体的に余り申し上げないことにしております。

小林(憲)委員 それでは、今の地位協定については、先ほど来たびたび皆さんが御質問なされておりますのでこれぐらいにしまして、次に、現状、在日米軍の約七五%の面積が沖縄に集中している、そのような異常な状態にあるということが、本土にはない事件、事故が起き続けている原因であると思います。このため、在沖縄米軍基地から起因する被害を最小限に抑えるための政府の責任は極めて大きいと思われます。

 事故、事件防止のためのワーキングチームというものが事件の再発防止などについて議論されているということですが、どのような議論がなされているのか、御存じならば教えていただきたいということと、また、アメリカ側には受け入れる姿勢がなく、これからも余り変わらないだろうという声も実際に上がっておりますが、実際はどうなんでしょうか。ぜひともお教えください。

河野国務大臣 まず最初に申し上げたいと思いますことは、一月にワシントンへ参りまして、パウエル国務長官と会談をいたしましたときに、沖縄の話をいたしました。いろいろ話をしたわけですが、その中でパウエル長官は、沖縄の皆さん、基地にかかわる皆さん方の日常生活の妨げになることは最小限度にとどめることが必要だということを言っておられました。それは国務長官としての御発言でございますから、アメリカの中で重いものというふうにまず考えました。

 それから、ワーキングチームについてのお尋ねがございましたが、ワーキングチームは、少し御説明をさせていただきますと、昨年十月に沖縄で発足をいたしました。米軍人などによる事件・事故防止のための協力ワーキングチーム、こういうわけでございますが、外務省の沖縄事務所が事務方を担当いたしまして、国、沖縄県、関係市町村あるいは沖縄県警、地元商工会など関係団体、そして在沖縄米軍をメンバーとして、沖縄の施設・区域外における米軍人などによる公務外の事件、事故の未然防止のためにとるべき具体的措置は何かということについて議論をして、その具体的な行動もする、こういうことになっております。

 具体的に申し上げれば、まず、昨年十二月の第五回の会合におきましては、飲酒の絡む事件、事故が多いことから、これらに対処するため、風営法上の規制遵守のための共同の取り組み、午前零時以降の泥酔者及び未成年飲酒者の基地ゲートでのチェック、未成年者飲酒禁止のための共同の取り組み、生活指導巡回の調整、こういった話がされて、具体化されております。

 また、先般、二月二十日に開催をされました第六回の会合におきましては、県や県警から講師を派遣するといった米軍の教育プログラムを改善するための諸施策、つまり、沖縄県あるいは沖縄県警から講師を派遣して米軍の教育プログラムの中にそれを組み込むということ、あるいは、基地ゲートのチェックに伴う規律措置の一層の厳格な実施、こういったようなことが決められて、これは米側もそれを了承して一緒に作業しているわけですから、当然のこと、米側もそれを了承しているわけです。

 こういうワーキングチームの会合では、米軍側が事件、事故防止のために行う具体的な施策について議論をして一致しているわけで、米側は議論はするけれども受け入れないという姿勢ではないかというふうにお考えであるとすれば、その御指摘は必ずしも当たっていないというふうに思います。

 私は、一昨日、沖縄へ参りましたときに、これまで沖縄の大使でございました野村大使が今度は橋本大使に引き継ぐということになりましたので、米側に対しても、野村大使がやっていたワーキングチームについての仕事を橋本大使が引き継がれるので、今後も今まで同様に、ワーキングチームについては橋本大使を事務局としてこうしたワーキングチームの作業は続けてもらいたいということを申し入れました。米側も、承知しましたという返事をしております。

小林(憲)委員 時間がかなり迫ってまいりましたので、今の御答弁に関しまして、例えば、先ほど自民党委員の方からも御指摘がありましたとおり、八割が、いわゆる海兵隊の方の起こす事件が多いということでございますが、今、在沖縄米軍二万五千のうちの一万五千人が海兵隊員でありまして、彼らは平均年齢が十九歳であります。そして、六カ月から一年だけ本国でトレーニングを受けて、短期訓練を受けただけで、半年交代で派遣されてくる若者であります。我が国においても、どの国の人種でありましても、やはり十九歳は非常に多感なときであり、そしてまた、ソルジャーとしてのトレーニングを受けている最中。これはしっかりとアメリカ側の綱紀粛正において、きちんとワーキングチームでお話し合いをしていただきたい、そう思っております。

 最後の御質問をさせていただきますが、私は、我が国が有事法制を整備し、集団的自衛権を行使できるような体制になれば、必ずアメリカも兵力削減に応じるのではないかと考えております。日米安保をもっと双務性を備えたものにしていかないと、いろいろな意味でアメリカの言いなりになるような状況が続いていくのではないでしょうか。

 我が国の安全保障がいわゆる普通の国としての体裁を整えていないから、沖縄県民に過大な負担を負わせているのだと私は考えますが、橋本大臣、今アメリカでも世界でも、グレートネゴシエーターとして日本の政治家の中では橋本大臣が一番海外では話がわかるというようなお話をよく聞いております。ぜひとも橋本大臣の所見を私は聞かせていただきたい。そしてまた、今、もうそろそろ森政権が終わるかもしれません。河野大臣、ぜひとも最後に、きちっとこの所見に対してお答えをしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

大木委員長 それでは、両大臣、簡潔にひとつ。橋本大臣からでよろしゅうございますか。

橋本国務大臣 私は、沖縄県の問題、置かれている状況と有事法制というものを絡めて議論をする気持ちには今までなりませんでした。そして、我が国全体の安全保障の問題として考えるべきことと、現に沖縄に集約されている基地のために非常に苦労をしておられる県民に対する問題と、私は脳裏で分けていきたいと思います。

 その上で、私自身、日米安保共同宣言をクリントン大統領とともに発出をした本人でありますし、また、ガイドラインの中で見直しを進め、特別な法体系をつくらない範囲の中でも、できることとできないことがある状況を直すところから手をつけてまいりました。そうした意味で、まだ日本の法制に欠けている部分があることは事実でありますし、現行の安保条約がさまざまな形で運用されます場合に、なお改善しておかなければならない国内法制等もあろうかと思います。そうしたことをも十分に考えた上で今後図っていくべきことではないか、そのように思います。

河野国務大臣 ありません。よろしいですか。

小林(憲)委員 終わります。ありがとうございます。

大木委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 自由党の一川保夫であります。

 私は、沖縄と北方領土の特別委員会でございますけれども、きょうは沖縄に絞って、時間も短いわけでございますので、質問させていただきますけれども、まず、河野外務大臣に基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 大臣の所信表明の中を見させていただきますと、この沖縄の特別委員会にせっかく御出席になって話されておる内容が、どうも今回のいろいろな、公金横領疑惑問題の話とか、あるいはまた先ほど来の在日米軍に関する不始末の問題とか、それからまたえひめ丸の衝突事故にかかわるようなお話とか、そういうことに終始されておりまして、本来、沖縄というところに対する外交問題というのが簡単にというか、表現上は、非常に重要なことなんですけれども、SACOの最終報告を誠実に実行したいという趣旨のことが書いてございますけれども、どうも沖縄という地域に対する、また沖縄の県民に対するといいますか、外交上どういう役割をこれから担っていくのかなというところが僕もちょっと判断しかねるところがあるのです。

 昨年はああいうことで、大変なサミットが沖縄の地で開催されたという意味では、沖縄という地、県が国際的にもやはりいろいろな面でアピールできたわけでございまして、また、立地、場所からしましても当然安全保障上も大事な地域であることは間違いないわけですけれども、日本の外交政策の上で沖縄という地域に外務大臣としまして特にどういうことを期待されているのか。通常の、本土の都道府県とは違う、そういう外交上の役割を期待されているのではないかというふうに思いますけれども、そのあたりの基本的なお考えを聞かせていただければというふうに思います。

    〔委員長退席、嘉数委員長代理着席〕

河野国務大臣 小渕総理がサミットの開催場所を沖縄に決められたお気持ちの中にも、沖縄の歴史的な問題の認識があったと思います。と同時に、それだからこそ、これから沖縄は平和の島として、平和の象徴として国際的な役割、例えば国際会議を沖縄で開くとか、それからアジアの国々との間の交流の場、あるいは大学を初めとする国際的な研究の場、そういったようなことを期待もいたしたいと思いますし、さらには、沖縄をかなめとして、外国との交易と申しますか、貿易の拠点としても沖縄がこれから先大きな役割を担っていただきたいということもございます。

 現在、安保条約のもとで基地の負担を担っていただいている沖縄の皆さんに対する小渕総理の思いは、いろいろな思いがそこにあったと思いますけれども、将来をにらめばそういった気持ちが大きくあったのではないかというふうに私は理解をし、私もその考え方に賛成でございます。

    〔嘉数委員長代理退席、委員長着席〕

一川委員 今、大臣のお話を聞きまして安心したわけでございますけれども、やはり沖縄という、歴史的にも大変な犠牲をこうむってきた地域でもございますし、また、今までのお話のように、我が国のいろいろな安全保障という面でも大変な負担の中で成り立っているわけでございますので、今おっしゃったように、やはり国際的な交流の拠点にしていくとか、交易の拠点にしていくという位置づけの中で、沖縄という地域の県民の皆さん方にも、国際社会の中でそれなりの生きがいを持ちながら、やりがいを起こすような地域として、また外交政策上しっかりとした位置づけをぜひお願いしておきたいというふうに思っております。

 では次に、沖縄担当大臣の方に、沖縄振興の問題で、これまた基本的なところをお伺いするわけですけれども、実は私、ちょうど二年ぐらい前の当特別委員会で、当時野中さんが担当大臣だったというふうに覚えておりますけれども、いろいろなお話をさせていただきました。そういう中にあったときにも、先ほど来話題になっております今の沖縄振興開発計画の見直しの時期が迫ってきているという中で、当時の大臣もそれなりの問題意識をお話しされていらっしゃいました。

 先ほど来のいろいろな質疑を聞いておりましても、大体橋本大臣のお考えもそれなりに理解できるわけですけれども、三十年近く振興開発計画を実施してきた中で、どっちかというとハード的な面、施設的な面が進展してきたんではないか、しかし、まだまだ沖縄としての課題はそれなりに残っているということでございます。特にまたいろいろな、交通問題とか水資源の問題、それから町づくりの問題云々、環境の問題もあるでしょうけれども、そういうことをおっしゃっておりますし、私も沖縄を時々訪問する中でそういう実感もわいております。

 ただ、沖縄の経済を見ておりますと、これまで三十年間というのは、やはり公共投資を中心に沖縄の経済を支えてきたといいますか、公共投資が相当投入されていますから波及効果的に経済が発展されてきておるのは、それは当然と言えば当然なんですけれども、やはりこれからの重要な課題というのは、要するに民活といいますか、民間の活力を引っ張ってくる、引き出すというような方向に沖縄の経済を誘導していく、そういう必要があるような気がするわけですね。

 ですから、公共投資依存型の沖縄経済をできるだけ自立できるような体制に近づけていく、そういう振興というのは相当重要になってくるような気がするわけですけれども、そういったところのお考えはいかがでしょうか。

橋本国務大臣 私は、議員のお考えの方向と本質的に違っていないのではないかと、今のお話を伺いながら感じました。そして、ある意味では、公共事業依存型経済から転換し得る産業というものをここしばらく模索をしてきたような思いがいたします。そして、そういう中で、私自身としてそれほど大きなウエートを当初置いておりませんでしたNTTのセンターの話を先ほど例に引きましたように、我々が想定していなかったもので、沖縄県に持っていった場合に意外に優位さを発揮できるものがあるのではないか。それ以来、実はいろいろなことを考えてまいりました。そして、今日までの間に、例えば、前知事の時代に前知事と議論をした中には、研究開発という分野で何らかのことができないだろうか、しかも、それは自然特性を生かしたものがつくれないだろうか、そういった論議をしてきたこともございます、残念ながら県側で御採用いただけませんでしたけれども。

 私は、亜熱帯の特性を持つ唯一の県、ここは組み立てようによっては南太平洋島嶼国等に対して日本がさまざまな部分で技術を提供し得る、その基地をつくることができるのではないか、そのようなことも夢見ていました。当時は御採用いただけなかったわけでありますけれども、やはりそういった思いも捨て切れません。それだけに、御指摘をいただきました方向を模索しながらこれからも努力をしてまいると思いますし、具体的にいい御意見がありましたらお知らせをいただければ大変幸いであります。

一川委員 先ほど外務大臣からも、国際化社会の中での一つの友好の拠点にしていきたいとか交易の拠点にしていきたいというような趣旨のお話もございましたけれども、やはり沖縄のああいう立地条件といいますか自然条件といいますか、そういうものを十二分に生かしたようなことを、再度原点に立ち返ってこれからの振興計画を立てていくことが非常に大事な時期じゃないかなということを思いますので、ぜひそういう観点での新しい振興策を樹立していただきたいというふうに思っております。

 そこで、若干具体的なお話を二、三お聞きするわけでございますけれども、沖縄の農業なり畜産業という問題がかつては割と重要な位置づけにあったというふうに思うわけですけれども、最近はいろいろな、需要と供給の関係で農業の内容も若干変わってきたような感じもします。通常言われていますサトウキビとかパイナップル、ああいうものから、最近、花卉類が相当盛んに振興されてきておるというようなこと、それからまた、畜産関係も相当力をつけてきているというようなお話も聞くわけでございます。

 先ほど来の話に出ていますように、沖縄のその立地特性を生かした亜熱帯農業といいますか、そういうものを、当然今、問題意識を持って取り組んでいらっしゃると思いますけれども、その基本的な考え方をここで御説明をお願いしたいと思います。

仲村副大臣 先ほどから、復帰後、公共投資が相当なされたというお話でございますけれども、これは、雇用の拡大、経済振興の面でやはり非常に重要な役割を果たしてきたわけであります。この投資の目指す目標というのは、何と申しましても、一次産業の農業、漁業を振興させる、あるいは二次産業の製造業を発展させる、また三次産業の観光を発展させるといういわゆる社会資本整備を進めてきたわけであります。その中で、今御指摘の、沖縄の産業振興を図る上で農業の果たす役割は極めて重要であります。特に、沖縄県が我が国唯一の亜熱帯気候に位置するという特性を十分に生かした農業の振興、発展が期待されているところでございます。

 復帰後、三次にわたる沖縄振興開発計画に基づきまして沖縄の農業振興が進められてきたわけでありますが、農業用水の確保、圃場整備、草地開発等の生産基盤の整備や、基幹作物であるサトウキビの生産性あるいは品質の向上のほか、ウリミバエ等の特殊病害虫の根絶など、特色ある亜熱帯農業の確立や農業経営の安定に向けた諸施策の推進に努めているところでございます。

 こうした中で、冬の温暖な気候条件を生かした冬春季野菜、菊、洋ラン等の花卉、マンゴーなどの熱帯果樹、旺盛な牧草生産を活用した草地畜産等の振興が進んでいるところでございます。特に畜産の場合には、牛が九万頭近くに増産されているというような状況でございます。それでも、台風、干ばつ、あるいは離島性などの厳しい条件に加えて、農業従事者の高齢化や減少が進んでいる現状でございます。

 このため、内閣府として、引き続き関係省庁とも連携をとりながら、農業生産基盤の整備を推進するとともに、特殊病害虫の根絶、流通施設の整備など、沖縄県の優位性を生かした、生産性の高い農業生産の振興を図るための各般の施策を積極的に推進してまいる所存でございます。

一川委員 沖縄の農業は一時期、余り激しくいろいろな開発をやり過ぎて、環境に対していろいろな悪影響が出てきたというような時期もちょっとございまして、そういう面では、開発の仕方も、それなりに配慮したやり方をぜひお願いしておきたいというふうに思っております。

 さて、もう一つ沖縄の特色としまして、沖縄の海域というのは、相当広大な海域に島嶼部が約百六十ぐらいあるというふうにお聞きしているわけですね。その中で人間が住んでいるのは五十近くあるということらしいですけれども。これは本土も、山間部へ行けば、あるいは離島へ行けば全く同じ現象があるわけですけれども、恐らく沖縄の島嶼部では、高齢化現象というのはやはり相当進んできているのではないかなという感じがするわけです。ある資料によると、沖縄県土全体の平均値よりも五、六%高齢化の比率が高いというようなデータもあるらしいですけれども。

 こういう島嶼部に対する医療対策といいますか福祉対策といいますか、そういうものはある程度特別な扱いがされているというふうに聞いておりますけれども、そういうものに対する取り組み状況といいますか、今後の取り組み方針も含めて、簡潔にお話を伺いたいと思います。

仲村副大臣 沖縄の県全体の六十五歳以上人口は一二・二%でありますけれども、今御指摘のように、たくさんの離島があります。その離島地域はまさに過疎化が進行している地域でございまして、六十五歳以上人口の比率は一八%、こういう状況になっておりまして、医療の確保を図る上でも非常に重要な課題であると考えております。

 現在、沖縄の離島地域においては、宮古、石垣の両島に県立病院が設置されているほか、ほとんどの離島において診療所が、これは県立が十七カ所、市町村立が七カ所でありますけれども、設けられている現状でございます。

 内閣府としては、離島における医療の確保を図るため、従来より病院や診療所等の施設整備に対して必要な国庫補助、現在四分の三補助率でこれを行っているところでございますが、離島の県立診療所に対する医師派遣についても、沖縄県独自の国庫補助を行っているところでございます。また、急患が発生した場合に離島の診療所では対応できない場合が間々ありますので、これに対しては、自衛隊や海上保安庁のヘリコプターを活用した患者の搬送が行われている現状でございます。その急患輸送が、平成十一年だけで二百九十三件、こういうことになっております。

 これらの取り組みを通じて離島における医療の確保を図っているところでありますが、今後とも、施設の整備、医師の確保等必要な施策を強力に推進していきたい、このように思っているところでございます。

一川委員 では、これからそういう島嶼部というか離島でお年寄りの比率がだんだんふえてくるという現象はとまらないと思いますけれども、やはり医療、福祉体制というものをしっかりと充実していくということは、これは沖縄全体にとっても大変大事な課題だというふうに私は思いますので、そのあたりしっかりとまた取り組みをお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、ちょっと最後になりますけれども橋本大臣に、これは橋本大臣そのもの、沖縄に対する思いで結構なんですけれども、私も先ほど来のいろいろな話題、あるいは前にもいろいろなデータをいただく中で、沖縄県民の県民所得が非常に低い、ですからそれを上げていくという政策、大きな課題があるというようなお話がありました。それはもちろん大切なことでございますけれども、今ほどの、要するに離島部とか島嶼部でお年寄りの皆さん方が本当にしっかりと働いていらっしゃるというのは現実でございますし、そこで所得を上げていくということを具体的に何かやろうとしても、なかなか現実問題としては難しいケースがあるわけです。

 しかし、これは沖縄だけじゃないんですけれども、本土における山間部とか離島部もそうですけれども、それなりに生きがいを持って皆さん一生懸命働いているわけです。東京で所得の高い人に比べてもはるかに表情が明るい人がたくさんいらっしゃると私は思うんですけれども、そういう方々に対する一種の誇りを持たせる、自信を持たせるというようなやり方を、何か沖縄の振興の中で一つモデル的なものをぜひつくり上げていただきたい。ただ所得を向上させるということのみじゃなくて、やはりそういう人間らしい生活をしっかりと責任を持って送っていらっしゃる県民、国民の皆さん方に対しても、それなりのやはり一つの物差し的なものを、本来政府がちゃんと与えてあげれば一番いいのかもしれませんけれども、私は、やはりそういう方々にもしっかりと生きがいを持っていただける、そういう沖縄の振興策をぜひお願いしたいということでございますので、最後に大臣の所見をお伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 長寿社会というものがややもすると灰色の時代としてとられがちなのが昨今の風潮。そして、それは日本だけではなく、先般、私はヨーロッパのシンポジウムで同じ思いをしてまいりましたけれども、アメリカあるいはヨーロッパでも同じようなことが言われております。

 しかし、実は不老不死ということが人間の昔からの願いだったわけで、長寿というのは本来なら喜ばれていいはずなんです。そして、その長寿というものが喜ばれるような、喜べるような両面からの施策が必要であるという御指摘は、私はそのとおりだと思います。

 そういった意味で、沖縄県における今後の施策の展開に配慮せよという御注意は大変ありがたくちょうだいをいたしました。そして、むしろ長寿産業と言えるようなものが組み立てられないかというのが従来から議論をしてきた一つのポイントでもありますだけに、議員の御指摘を大切にさせていただきたいと思います。

一川委員 どうもありがとうございました。

大木委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、三次振計、これと関連をいたしまして、北部の訓練場におけるヘリパッド移設問題、これらについてお伺いをしていきたいと思います。

 一九九九年の三月十二日に、琉球大学と広島大学の琉球列島動植物分布調査チームというチームの方々が、沖縄島北部訓練場内ヘリパッド建設予定地の見直しに関する要望書を出されました。この要望書の中では、当該予定地、この地域の生物は、日本及び沖縄の生物の由来を研究する上で欠くことのできない、人類共通の遺産だ、このように指摘をいたしまして、さらに、この地域は東洋のガラパゴスとも呼ばれている、そして、特異な地史を持つ島嶼性のために、これまで生物地理学及び進化学に関する多くの研究成果をもたらしてきた、こういう要望書でありました。学問的にも日本の生物の進化を探る上でも、そして自然環境という点でも世界でも一流の地域だ、この地域にヘリパッドをつくってほしくない、こういう要望書が出されました。

 そういう世論もあって、防衛施設庁では当該地域の自然調査をしてきたわけですが、広島大学や琉球大学の合同調査チームに劣らないような、豊かな環境、豊かな自然、とてもヘリパッドをつくれるような場所ではない、そういう認識もうかがわせるような調査報告書が最近出されました。

 それで伺いたいんですが、ヘリパッドの移設地について、これまでの予定地を撤回して、そして環境調査の結果を踏まえて新しい場所を決めるということなのか、それとも今後の移設予定地は現在の予定地を含めて検討していくということなのか、どちらなのか、これは防衛施設庁、よろしくお願いします。

伊藤政府参考人 北部訓練場におきますヘリコプターの着陸帯の移設に当たりましては、北部訓練場の過半約四千ヘクタールを返還し、もって沖縄県民の負担を軽減するという観点とともに、沖縄島北部地域山原の自然環境の保全に最大限配慮するという観点が極めて重要であると認識しておるところでございます。

 このような観点を踏まえまして、主として米軍の運用上の観点から選定されました五区域七カ所のヘリコプター着陸帯移設候補地並びにその周辺区域合計約七百ヘクタールにおきまして、環境影響評価法等の適用外ではございますけれども、当庁の自主的判断によりまして、動物、植物、生態系等十一項目について現況調査等を行ったところでございます。その結果、多くの貴重な動植物が確認されたわけでございます。

 今回調査いたしましたヘリコプター着陸帯移設候補地が最終的な移設先として決定し得るか否かについても検討いたしましたが、その結果、ヘリコプター着陸帯等の整備区域を決定するためには、さらに新たな区域等につきまして環境調査を継続する必要があるというふうに考えております。したがいまして、ヘリコプター着陸帯の移設先の決定に当たりましては、今後行います継続調査の結果を踏まえて総合的に判断することが必要だというふうに考えております。

赤嶺委員 ですから、現在の七カ所のところは、皆さんは、当初はうかつにも米軍が基地をつくりやすい場所として選定をされた。そこに環境の問題意識もないまま手がけてみたけれども、いざ手がけたら生物学者、動物学者からの大変な批判と世論の集中を浴びたので、調査をしてみたら、やはり同じように環境上大事な地域だったという結果が出ているわけですね。それで、今までの七カ所は全部白紙に戻して新しい場所を選定しようとしているのか、それとも今までの七カ所も含めてやはりつくっていきますよということなのか、このことをさっき伺っているんです。

 それにつけ加えまして、私がもう一つ伺いたいのは、やはりこれまでの、SACO合意だといって実行しようとするときの政府の姿勢ですね。全世界からあの自然は大事な場所だという声が上がっているにもかかわらず、アメリカが平地で基地がつくりやすいからこの七カ所の場所を選定しますよと言ったら、そこに建設するために皆さん推進しようとしていた、世論の反対がない限りやろうとしていたわけですね。ですから、今度のSACO合意による七カ所のヘリパッド建設予定地は自然環境に対する配慮が浅かった、こういう反省はあるかどうか。この点も含めて、先ほどの点と一緒にお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 SACO合意をさらに実行いたすために日米合同委員会合意をしておりますが、その際、今後返還のための移設事業を進めていくことになりますけれども、その実施に当たりましては、特に北部訓練場等につきまして、環境への影響を最小限にとどめる考えであるということを既に申し上げているところでございます。そのような観点から先ほど申し上げましたような調査を行ったということでございます。

 なお、ヘリコプターの着陸帯の移設につきましては、米側によりますと、練度を維持するために、米軍が現在のヘリコプター着陸帯を使用して実施している訓練を返還後においても残余の区域において引き続き実施するために必要だということでございました。

 そのような観点を踏まえまして、ヘリコプター着陸帯移設候補地につきましては、米軍の運用上の観点からの移設候補地として米側から提示されたものの中で、森林の伐採とかあるいは土地の形状変更を可能な範囲で少なくいたしまして移設による自然環境への影響を最小限にとどめる、そういう点も考慮して選定された、そういうところにつきまして調査を行った、こういうことでございます。

赤嶺委員 そういうところを環境への影響が余り大きくないだろうと思って調査してみたら、大変な影響を与えるということが皆さんの調査でもはっきりわかったわけですね。ですから、本当に環境という認識がないまま、アメリカが練度の維持だ、そのために必要なヘリパッドだと言ったら、世界に誇る自然環境までも破壊して手をつけようとした、この姿勢はやはり厳しく反省すべきだと思います。

 それで、皆さんは、今後の問題として、これからあくまでもSACOの実施だということで場所選定に当たるとするのであれば、どういう基準を考慮して決めるのか。多少なりとも動植物への影響はやむを得ないといって、既定方針どおりその場所にヘリパッドをつくるのか。あるいは、環境への影響が少ない候補地がどんなに探してもなかったという場合、ヘリパッドの移設は自然環境を守るために白紙に戻すのか。それとも、移設の箇所、七カ所でなくてもいいじゃないか、この地域に二十二カ所別にあるのだから。ですから、それをいわばそのまま移すのか、減らすのか、白紙撤回をするのか、この点についてお答えを願いたいと思います。

伊藤政府参考人 先ほども申し上げましたが、移設に当たりましては環境への影響を最小限にとどめるというのが基本的な方針でございます。

 それから、これも冒頭に御答弁申し上げたところでございますが、引き続き継続調査を行うということでございまして、その継続調査の結果を踏まえまして総合的に判断をさせていただくということでございます。

 なお、ただいま委員、二十二カ所という御指摘でございますが、いわゆる返還部分に七カ所ございます。それを移設しよう、こういうことでございます。

赤嶺委員 ですから、移設先にもヘリパッド基地はあるわけですよね。過半の基地を返還したらヘリパッドがなくなるわけじゃないのです。

 私が聞いたのは、自然環境にこれだけ重大な影響を与えるとするならば、減らすということも選択肢に入るのか、白紙撤回も選択肢に入るのか、いずれの場合も選択肢には入らない、環境に影響の少ないところをあくまでも探して七カ所をやろうとするのか、どちらなんですか。

伊藤政府参考人 私どもが今後予定しております継続調査でございますが、今回調査した区域に比べましてより自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯移設候補地があるかどうかという観点から行うものでございます。新たに調査を行う地域につきましては、こうした観点に沿うように、例えば林齢や人工林か天然林か、そういったような点等を考慮いたしまして選定するということを考えている次第でございます。

赤嶺委員 山原の自然がそもそも貴重なのは固有種が多いことですよね、そしてその固有種が絶滅危惧種になっているという点で。固有種が多いということはあの地域の自然の島嶼性にあるわけです。島国だったというところにあるわけですね。ところが、島嶼性の生物というのは外からの影響に攪乱されやすい、そして自然が破壊されやすい。だから、生物学者や動物学者はあの自然に手をつけないでほしい、このように言っているわけです。

 そういう点では、今SACO合意の実践だといって皆さんがやろうとしていることは、本当に世界にも誇るような亜熱帯雨林、イタジイの自然、ちょうど今のこの時期が一番山原の自然が美しい時期です。その場所に行ったら本当に自然が息づいているのが見えます。そういうような自然を破壊してでもSACO合意をやろうとするという感覚は、国民的には絶対に受け入れられないと思いますよ。そういう点ではやはり白紙撤回をやるべきだと思いますけれども、いかがですか。

伊藤政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、北部訓練場の過半約四千ヘクタールを返還するということがSACO合意の第一でございます。そして、その返還のために、先ほど来御指摘のヘリパッドの移設という問題が生じてきているわけでございます。そして、それにつきましては、これも繰り返しで恐縮でございますが、自然への影響をできる限り少なくするという方向で私どもはいろいろ勉強しておるところでございます。

赤嶺委員 あそこの自然は、ごらんになったらはっきりわかると思うのですが、当初、地形に影響を与えないでヘリパッドを建設するといって平地を選んだわけですね。ところが、この平地は調べてみたら貴重な自然が残っている。では、あそこでほかに基地をつくるような場所があるかといえば、地形を変更しなければできないのですよ。谷とか沢とか、そういうところしか残っていないのです。そうなった場合には、今の計画以上に大きな自然破壊をもたらすことになります。ですから、今皆さん方が進めようとしているSACO合意に基づく山原の森へのヘリパッド建設は無謀な建設ということを指摘して、次に、沖縄担当の橋本大臣にお伺いをしたいと思います。

 今回の施設庁の報告では、より自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯の移設候補地があるかどうかという調査をするため環境調査を引き続き行うと先ほど答弁がありました。これを無謀だと指摘いたしました。今回発見された動植物は北部地域の一帯を生息地としているものが多くあり、その意味では、今後より自然環境に与える影響の少ない地域を選定するということ自体が不可能だということを私は考えています。

 ところで、橋本大臣は、首相の時代に提唱しました、先ほどから論議になりました沖縄経済振興二十一世紀プランで、二十一世紀の沖縄振興の目玉として観光、リゾートの発展を大きく打ち出しています。この中で、沖縄の豊かな自然環境の保全、維持の前提として、エコツーリズムの拠点としてこの場所を位置づけていく、これは二十一世紀プランでもエコツーリズムがうたわれています。

 米軍基地の移設にかかわって、世界に誇る沖縄の貴重な自然環境を破壊することのないように、毅然とした態度で臨まれることを改めて私は期待するわけですが、大臣の考え方を伺っておきたいと思います。

橋本国務大臣 ヘリコプター着陸帯の整備区域を決定するに当たりまして、自然環境に与える影響を最小限度にとどめる、そのために、防衛庁と環境省、沖縄県などの関係機関との間で調整を図りながら、今後行う継続調査の結果も踏まえて総合的に判断し適切に対応されるもの、そのように考えております。

赤嶺委員 先ほども議論がありました次期振計に向けて、産業振興という場合に、農業も非常に大事だし観光も大事だし、そしてこの地域ではエコツーリズムということで、今地元の住民が海外にまで出かけていってそのノウハウを身につけようと頑張っておられます。あの山が保存をされているから、また、皆さんがつくろうとしている海上基地、辺野古にはジュゴンがすんでいる、こういう自然の生きた関係があるわけですね。

 それで、エコツーリズムで、今全国的には屋久島が注目されているわけですが、屋久島は原生林、そして世界遺産に登録をされて、屋久島を訪れる人たちが、登録をされる以前は年間平均約十一万人だったのが、登録をされて以降は二十五万人にふえたと聞いています。あの豊かな自然をふやせば観光客もふえるし地域経済の活性化にもつながる、このような関係にあります。ですから、橋本大臣は本気になって、もし沖縄担当大臣、沖縄の振興開発に責任を持つということであれば、私は、こういう自然には手をつけないで、エコツーリズムとして発展させていこうではないか、そういう立場をとるべきだと思います。

 次に、時間がありませんので河野大臣に伺いたいのですが、去年の十月、アンマンの総会で、ジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナ、沖縄本島周辺の自然保全の問題が決議をされました。この中で、基地建設予定地の今の山原の自然、これはヘリパッド七カ所とそれらを結ぶ軍用道路の建設が、残存する最も重要な自然林地域において固有種の生息地の劣化を引き起こす危険があることを懸念し、山原の世界自然遺産への登録を検討することを要請すると、アンマンの国際会議で決まりました。残念ながら、日本政府の代表はそのときに棄権をしているのですね。

 しかし私は、今日、沖縄の価値に注目をした場合に、あの地域は、基地の建設ではなくて世界自然遺産への登録のための努力をすべきだと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 自然がいかに貴重かということは私どもも十分に承知をしているつもりでございます。ですから、先般委員会でも、ジュゴンも重要だし、あの山原の森にはノグチゲラを初めとして貴重な鳥類もいるし、その他貴重な生態系があるということを私は申し上げたつもりでございます。ただ、そうした生態系、あるいはそうした貴重な動物、植物をどうやって守るかという方法論になりますと、いろいろな条件、状況というものがあって、一概に言えない部分があることは、それは、そのそれぞれの地域の抱えている問題からあるのですね。

 したがいまして、重要性は認めつつも、理解しつつも、それを守れという議論、その守り方等について細かく踏み込んだ議論になると、残念ながらあの当時は棄権せざるを得なかったのだろうというふうに、これは私は推測をしております。

 沖縄の自然というものが非常に貴重なものだということは、もう議員が繰り返しおっしゃった、そのとおりだと思います。どうやってその自然を守るか、あるいは、その自然を守るだけではなくて、今の議員のお話を聞いていると、エコツーリズムによって、つまり大勢の人にそれを見てもらう、あるいはその自然そのものを一種の観光の資源にしていく、こういうことを考えておられるのだと思いますが、そうしたことについては、これまたいろいろと考えなければならないことがあると思うのです。

 どうやってそこに、どういうアクセスをつくるか。沖縄の島嶼性というものは、確かに自然を守る意味で非常に重要でありました。しかし、そこに観光客を集めるためには、アクセスをどういうふうにするかということもまた重要になってくるわけでございます。船で来るというだけでは十分ではないでしょう。飛行機で観光客を呼ぶということになれば、その飛行場はどうするのかという問題も出てくるではありませんか。

 したがって、さまざまな角度から考えなければならないのであって、一カ所だけを論じて全体について主張をなさるというのでは、お気持ちはよくわかりますけれども、その具体化、実現性ということになると、まだまだ、もっと研究をし、調査をしなければ結論は出せないというふうに思います。

赤嶺委員 私、今の河野外務大臣の問題をそらすような答弁の仕方に、率直に言ってがっかりをいたしました。世界自然遺産に登録をすれば、エコツーリズムということについても、いろいろな自然を守りながらのアクセスというのが可能であるし、そういう見通しの上に立ってやった質問です。

 実は、日本政府、あなた方とアメリカとの間に、沖縄の基地の使い方についての五・一五メモがありますよね。五・一五メモで北部訓練場について記載されていることを御存じですか。答弁してください。

河野国務大臣 存じません。

赤嶺委員 ですから先ほどのような答弁になると思うのですよ。

 橋本大臣は御存じですか。

橋本国務大臣 存じません。

赤嶺委員 沖縄基地の使い方で、皆さんがずっと秘密にして、大田知事の時代に要求して公開した五・一五メモでは、北部訓練場について、その使用条件のC項の中で、「合衆国政府は、本施設・区域内にある指定された水源涵養林並びに特に保護すべきものとして指定された鳥類及びそれらの自然生息地に対し、いかなる損害も与えないようあらゆる合理的予防措置を講ずる。」このように述べているのです。五・一五メモの中で、あの自然の貴重さをうたい、あの自然を守るということをうたっているわけです。そして、今度新しく基地を建設しようとしたら、この五・一五メモにも違反するような事態が生ずるわけです。

 ですから、こういうメモに基づいてでも、SACO合意を撤回し、あの自然を守るという立場に立つべきではありませんか。そしてしっかり、外務大臣も沖縄担当大臣も、そういう沖縄基地について沖縄の気持ちを受けとめるというのであれば、きちんと認識すべきではありませんか。お二人に手短に答えていただきたいと思います。

橋本国務大臣 私は、自分なりに今まで努力をしてきてSACOの合意にこぎつけたと思っております。なかなか勇気を持って取り組む方がいないと言われておりました問題に取り組んできたつもりであります。その上で、今議員からいただきましたようなおしかりを受けるとすれば、では、私どもはかえってSACOの合意を結ばなかった方がよかった、今のままの基地が残ることを求められるということですか。私は、それはいいことだとは思っておりません。

河野国務大臣 今橋本大臣がお話しになりましたように、一つ一つの沖縄振興に対して、あるいは現状に改良、改善を加えようとする努力というものがなされてきているということもまたお認めをいただかなければ、我々としては、極めて残念な思いがしております。

大木委員長 次に、今川正美君。

今川委員 私は、社会民主党・市民連合の今川正美です。

 本日は、本来なら東門議員が来る予定だったのですが、風邪のため体調を崩しておりますので、かわりまして質問いたしたいと思います。

 当初、事前通告では地位協定の問題からのつもりでありましたが、先ほど多くの質問がありましたので、まず最初に沖縄の海兵隊問題に関して、まず外務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 御承知のように、北谷町議会が海兵隊の削減ではなくて撤退決議をした、あるいは稲嶺知事が、海兵隊をグアムに移転させてほしいということを日本政府を通して米政府に打診を要請する、こういうことも報道されております。これは特に、米兵による犯罪は後を絶ちませんが、きわめつきは、沖縄米軍の高官であるヘイルストン調整官のあの発言であります。先ほどもお話があったように、沖縄県民の怒り、悲しみというのは察するに余りあります。

 振り返ってみると、ちょうど一九九〇年に、当時のチェイニー国防長官のときに最初のいわゆる東アジア戦略報告が出されまして、あれが何事もなくスムーズに実行に移されていれば、当時十三万人を超えた東アジアに展開する米軍の大半は本国に撤収するはずだったと思います。

 また、その後の九二年から三年にかけてだったと思いますが、アスピン国防長官が長官になられる直前に出されたいわば軍縮構想案といいますか、その中で私が非常に目を引いたのは、四つの選択肢の中で、一つには、三つある海兵師団の中で沖縄の第三海兵師団は外すという選択肢があったことに当時非常に私は関心を持ちました。

 このように、米軍がこの十年余り、冷戦が終わってからいろいろと戦略なりあるいは戦力の見直しを行ってきておりますけれども、やはり私は、他の部隊はさておいても、沖縄の海兵隊約一万五千人、これは基本的に撤退をさせるべきではないか。昨年十月のいわゆるアーミテージ・リポートの中でも、幾つかの条件はついているようでありますが、基本的に海兵隊を分散化する。よくわかりませんが、想定されるのはグアムであったりオーストラリアであったりするのでしょうけれども、せっかく、今から六年前沖縄であの少女暴行事件があった後でしたか、グアムの州知事も、グアムの基地そのものが大幅に縮小されていますから沖縄の海兵隊を持ってきたらどうだということまでおっしゃっていた。

 そういう諸条件もあるわけですから、この際、沖縄の海兵隊を撤退するための具体的な計画なり米側との交渉、こういったことは考えられないのでしょうか。

河野国務大臣 今お話を伺っておりまして、今川議員が安保条約は容認されるというふうに私は伺ったのですが、認識が間違っておりましょうか。もしそうであるとすれば、つまり安保条約を容認された上での御議論であるとすれば、私どもは、兵力の撤退問題について米側とどういう折衝の仕方をすることが撤退への道かという議論よりも、我々を取り巻く国際情勢を、こうしたものが要らないような国際情勢を一日も早くつくり出すという作業が何より先決だというふうに思うのです。

 日米安保条約は、我が国の安全というものを安保条約を基軸にして我々は考えているわけでございまして、周辺の国際情勢というものの分析あるいはこれの判断をせずして、アメリカとの交渉力によって、交渉方法によって米兵の縮小、削減をするとか、あるいは撤退をするということでは、やはり政治を担う者として国民に対する責任が果たせないというふうに私は思っているわけでございます。外務省は、外交によって我々の周辺の国際環境、国際情勢というものを好転させるために努力をするということが何より重要と考えておりまして、そうしたことなしに、今がチャンスだ、今どこがすいているからどこへ持っていけるだろうという議論は、私は直ちに賛成しかねるところがございます。

 ただしかし、そうは申しましても、今議員がお話しのように、北谷町の議会が決議をなさった、あるいは県議会でもそうした決議がある、あるいは知事がグアムに練習場を、訓練場を移すという選択肢がないのかとお考えになる、これらはやはり、今の沖縄の実態、沖縄の基地周辺の実情というものから考えれば、そうした感情は私にはよく理解できます。しかし、そうした感情だけでこの問題の判断をすることはいかがなものかと私は思っております。

今川委員 これは沖縄だけではありません。例えば三沢、岩国、厚木などのいわゆる夜間の離発着の訓練、NLPにしてもしかりですが、日々、日本の国民、地域の住民が、特に基地周辺の住民が大変な痛み、負担、つらさを強いられているという現実がございます。私は、これは感情問題だけではないと思うのですね。では、トータルに見て、安全保障というのは何なのか。いろいろな米兵の犯罪も含めて、そういうものの犠牲の上でしか成り立たない安全保障というのは極めて疑わしい、私はそう思います。

 今の海兵隊の問題なんですけれども、いろいろな専門家筋との間でも私は議論をしたり勉強会をやっていますが、少なくとも米本国の第一海兵師団あるいは第二海兵師団に比べますと、沖縄の海兵師団、第三海兵師団というのは極めて中途半端だ。隊員も半年おきのローテーションで入れかわっていく。いわば沖縄の場合には待機所みたいな位置づけになっている。

 あの湾岸戦争のときだって独自で動いたわけじゃないですね。いわゆる第一海兵師団に合流する形で行った。しかも、御存じのように、冷戦時代には聞こえてきませんでしたが、今でははっきりとアメリカ政府、とりわけ国防総省、ペンタゴンあたりは、沖縄に駐留している海兵隊部隊は日本を防衛する基本的な任務は負っていない、基本的に違う任務があると言う時代です。そこら辺は感情の問題とかじゃなくて、特に、既に退役されていますけれども、米本国の海兵隊総司令官が、ちょうど沖縄で少女暴行事件が起こったあのころだったと思いますけれども、アメリカのローカルの新聞に、いわゆる日米同盟をきちんと維持していくためには嫌がられている部隊は日米同盟を安定的に維持するために本国に帰した方がいいということを盛んに書かれていた。そういうこともあるわけです。

 ですから、くれぐれも言っておきますけれども、それは感情問題ではなくて、そういう非常に中途半端な部隊、そして今沖縄や佐世保や在日米軍基地のあるところで犯罪を起こしている比率の一番高いのは海兵隊です。しかも、海兵隊じゃない場合でも、わかりやすく言うと、四十歳を超えて世帯を持っているような兵隊はそんな事件の中に出てきません。ほとんどやはり二十代あるいは十八、九という若い兵隊が、二、三カ月海外に出て戻ってきた後いろいろな事件を起こしやすい。ですから、そういったところはもっと冷静に見てチェックをして、米側と交渉するということが当たり前ではないかというふうに思います。

 次に、普天間の基地の移設の問題に関しては、橋本大臣に、当時総理大臣として非常に努力をされてきたというふうに私は思いますので、現時点のところのお考えをお聞きしたいのです。

 今、名護市沖合に、どういう工事の仕方によるかは別にして海上ヘリポート基地構想というのがございます。少なくともあの六年前の少女暴行事件があった後、アメリカもやはり今の日米安保体制、日米同盟にひびを入れてはいけないという思いから、普天間基地を、当時、最初の新聞報道で記憶しているのは、五年から七年かけて日本側に返還をするということから始まったと思うんです。しかし、今、現時点で見ますと、もともと普天間そのものが老朽化をしていた。そうすると、オスプレーみたいな最新鋭の軍用機の運用が可能な全くリニューアル化した新たなものを、どことは言わないけれども、つくってくれ、それができれば普天間を返還してもいいぞという構図にいつの間にかすりかわっているんじゃないかという思いがしてならないんですけれども、橋本大臣、いかがでしょうか。

橋本国務大臣 私が当時のことを振り返って申し上げたいこと、それはアメリカ側が非常に善意を持って行動しようとしたということです。これは、当時のクリントン大統領もそうでありました。その指示を受けたペリー国防長官もそうでありました。そして、まさに文官優位といいますか、軍の当局者は必ずしもこれに心から賛意を表したわけではありませんけれども、むしろ大統領から国防長官におりたその指示が、現場の抵抗を押し切り、代替の施設さえできるならば返すという決断につながったと思っております。

 その上で、非常に残念に思いますことは、いろいろその後の議論が二転三転をいたします間にさまざまな変化が起きてきたと議員があえて言われるなら、私は変化と申し上げてもいいところがあると思います。例えば、例示に挙げられました機種を変更してオスプレーを配置するしないということは、その当時の議論の中に全く入る余地のない話でありました。そういう話題に我々も持っていきませんでしたし、アメリカ側も持ってきたわけではありません。むしろ、当時の大田知事さんが主張された危険ということから、私は、これも事務方が余り賛成してくれはしませんでしたけれども、やはり取り上げることの重要性というものに、最後自分の責任で踏み切りました。私は、アメリカ側も同じ対応をしてくれていたと思います。

 ですから、これは沖縄県民がどこで受けとめていただけるのか。すべての基地がなくせるような時代が来ることを私も願いますけれども、今、現実に危険な状態が心配される普天間基地を移せるなら移したい、それによって少しでも安全を確保したい、それが私のその当時の率直な思いでありました。

今川委員 私も今すぐ、きょうかあしたにでも基地がなくなるなどとは思っていませんけれども、基地がある以上は、いろいろな被害、ひずみというのをどう是正していくのかという立場から、地位協定の問題も含めて、やはりまだ改善をする余地が十分にあると思うんです。

 時間がありませんので、二番目の質問に移りますが、これは外務大臣の方に、沖縄に直接かかわる問題とはまた違うところがありますが、ついこの間、JALのニアミス事件がありました。大変な事件だったと思うんですね。一つ間違っておれば大事故になっていた。これは別の話で、原潜事故の問題も今大きな社会問題、政治問題になっておりますけれども、私が懸念するのは、空の事故が起こらないのか。このJALのニアミスは、確かに管制塔内部でミスが重なっただとか、そういう問題もあることは事実なんですけれども、つい先般、読売新聞にも出ておりましたが、いわゆる軍事空域、訓練空域の問題です。

 ただでさえ都市部の空港は民間機がひしめいています。それに加えて、少なくとも三沢から沖縄までの間に、これは地位協定に基づいて二十四カ所にわたる米軍の訓練空域が設けられている。そうですね。それに加えて、これは外務省として承知しているという返事をいただけるのかどうかわかりませんが、同じく三沢から沖縄まで、ピンクルートだ、グリーンルートだ、オレンジルートだ、パープルルートだという色分けをした七つのルートにわたって、いわゆる低空飛行訓練空域なりルートがある。ですから、そういった非常に危険な空域、警戒空域なり危険空域をかいくぐる形で日本の民間の旅客機は運航されているのではないでしょうか。そこを私は非常に心配するわけであります。沖縄の場合も、沖縄から本土に向けて飛行機が飛び立つときには、他の空港と違ってかなり低速運航を余儀なくされている空域がありますね。

 そういった問題を含めまして、間違っても空のそういう重大な事故が起こらないためにも、このJALのニアミス事故を一つの大きな契機にして、訓練空域の問題も含めて、抜本的に検討し直すというお考えはないでしょうか。

河野国務大臣 JALのニアミス問題というのは、まことに今考えても背筋が寒くなるようなことでございました。この問題は、とにかく早急に、なぜああいうことになったのかということについてはっきりさせてほしいということが、過日の閣議、閣僚懇でも議論になったところでございます。現在、国土交通省航空事故調査委員会による原因調査が行われているわけで、このニアミスの原因というものが一体何によるものかということは、これはこれでしっかり調査をしてもらわなければならないと思います。このことが直ちに今お話しのものと直結をするかどうかということは、この調査の結果を待ちたいと思います。

 それはそれとして、米軍が訓練のために必要だと言っている空域というものについては、我々も、その設定上、使用範囲とか使用時間帯とか高度制限とか、そういった問題がいろいろあるということでありまして、それらは官報で告示をされ、あるいは航空路誌で公示をされているというふうに言われております。他方、米軍は、訓練を通じてパイロットの技能の維持向上を図るということがどうしても必要だ。これは、軍隊が日本を守ろうとするならば、それはただ単にいるだけじゃ意味がないので、練度の高い軍でなければならないわけでございますから、そうしたことについて、我々は日米安保条約の目的を達成するということを米側に期待をするのは、これはまた当然のことでございます。

 そこで、我が国の安全を確保することと、それから民間の飛行機を初めとしてさまざまな民間の活動にそうしたことが脅威になるということではなりませんから、その調整をどうするかということは極めて重要な問題だという認識はございます。ただ、現時点におきましては、米軍側から、訓練のために必要な空域を設定しているのであって、今設定している空域が使われていないとか、必要でない空域を設定しているわけではないというふうに説明があったと承知をしております。

大木委員長 もう時間ですから協力してください。最後にしてください。

今川委員 最後に、これはこれまでいろいろな専門家なり軍事問題の研究者の間でも、日本の旅客機に対して、飛んでいるときに両サイドから米国の戦闘機に、海軍の場合もありますが、挟まれる格好で、いわば日本の民間旅客機が訓練のターゲットになって、視認する、目で見える範囲で急旋回していくというようなことが過去何度もあるわけですね。ですから、そういう実情をどの程度日本政府として把握されていて、そして米側に対してしかるべく適正に是正してくれというふうになっているのかどうか、そこを非常に心配します。

 それともう一点だけ。先ほど私は二つ言ったつもりなんですが、例の低空飛行訓練の空域なりルート、これは外務省としても当然だということなんですか。これがこれまでにさまざまな事故を起こしています。四国の渓谷でも米軍の戦闘機が墜落をしておりますが、その点どうなんでしょうか。

河野国務大臣 失礼しました。

 米軍の飛行ルートにつきましては、米軍が、飛行訓練の目的達成、飛行の安全確保、住民への影響抑制などの必要性を安定的に満たすとの観点から、一定の飛行経路を念頭に置いて飛行することがあることは承知をいたしておりますが、最大限の安全を確保するため、低空飛行訓練を実施する区域を継続的に見直しておりまして、具体的なルートの詳細などについては、米軍の運用にかかわる問題であって、承知をすることができませんというのが現状でございます。

今川委員 以上です。

大木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時十一分散会




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