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第6号 平成15年6月24日(火曜日)

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平成十五年六月二十四日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 金田 英行君 理事 西野あきら君
   理事 吉川 貴盛君 理事 川内 博史君
   理事 三井 辨雄君 理事 白保 台一君
   理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      小渕 優子君    嘉数 知賢君
      下地 幹郎君    武部  勤君
      松浪 健太君    宮腰 光寛君
      荒井  聰君    金田 誠一君
      武正 公一君    鳩山由紀夫君
      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君
      東門美津子君    金子善次郎君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人              
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   衆議院調査局第一特別調査
   室長           飯田 祐弘君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 沖縄及び北方問題に関する件(沖縄県金武町における在沖米軍軍人による事件等)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 沖縄及び北方問題に関する件、特に沖縄県金武町における在沖米軍軍人による事件等について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長瀬川勝久君、警察庁刑事局長栗本英雄君、防衛施設庁業務部長冨永洋君及び外務省北米局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩倉博文君。
岩倉委員 おはようございます。自由民主党の岩倉博文でございます。
 きょうは、先般、大変残念な事件でありましたけれども、金武町で起きました婦女暴行事件につきまして、十五分という短い時間でありますけれども、質問をさせていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
 今回の事件は、当時未成年でありました女性に対する婦女暴行事件でありました。抵抗する女性を殴りつけるという大変悪質な事件でもあり、沖縄県民の気持ちを考えましたときに、大変遺憾であるということを言わざるを得ない、そのような事件でありました。
 まずは、大臣に、今回の事件発生直後あるいはそれ以降、米側に対して厳しく申し入れを行うべきだと私は思うのでありますけれども、事件発生を聞いて以来、大臣はどのような申し入れを初動からされたのか、このことについてお聞きをいたしたいと思います。
川口国務大臣 今回の事件は、委員がただいままさにおっしゃいましたように、未成年の女性に対して、そして婦女暴行致傷罪ということでございまして、大変に遺憾であると思います。
 これについては、私は、逮捕状が発出をされました十六日の日に、ベーカー大使にお電話で、かなり長い時間お話をいたしましたけれども、そういう、この事件は全く本当に遺憾であるというお話をいたしました。そして、米軍として、再発の防止、綱紀の粛正、これをきちんとやってほしいということを言いました。それからさらに、逮捕状が発出をされた直後でありまして、合同委員会における引き渡しの話の前でございましたけれども、引き渡しについて話をすることになると思うので速やかに引き渡しをしてほしいということを言いました。それで、それに対しましてベーカー大使からは、事件を深刻に受けとめているということのお話があり、そして捜査には全面的に協力をしたいというお話がありました。
 それから、私は先週、その後、ASEANの会議でプノンペンに参りましたので、プノンペンでパウエル国務長官とお話をいたしました。その中でこの件について触れまして、これについて大変に遺憾である、そして再発防止、綱紀粛正、それをきちんとやってほしいということを言いました。これに対してパウエル長官からは、この件については大変に遺憾に思っている、個人の立場としても遺憾に思っているというお話がございました。
 また、外務省からは、この事件につきましては、私が指示をいたしまして、海老原局長そして沼田大使からそれぞれのカウンターパートに、この件については同様の趣旨を申し入れをしております。
 また、アメリカにおいて、ワシントンにおいても、加藤大使から、この件について、アーミテージ副長官それからウォルフォビッツ国防副長官に対して同じような趣旨で申し入れをいたしました。
岩倉委員 最初にこの話を聞いたときに、私自身も、あるいは多くの国民が、またかよというような感じで受け取らざるを得ないような事件であったわけでありますけれども、このような事件が再三発生する背景、地元の新聞によりますと、いっとき減少傾向にあった米軍人あるいは米軍関係者の犯罪の検挙件数が、このところまた上昇しているというような報道もありますけれども、再三このような事件が起こる背景には、やはり在日米兵の綱紀の緩みがあるのではないか、同時に、日本人に対するおごりがあるとすれば大変大きな問題であるというふうに私自身は考えております。
 特に、事件を起こす米兵の多くが若い兵士であるということからも、今後、米軍の綱紀粛正を行うことはもとより、我が国の文化や風土を含めて、日本への理解をしっかりと深めるように米軍独自においてちゃんとした教育を行うべきではないか、改めてそのように思っている次第であります。
 特に、若い海兵隊員が問題となるケースが多いわけでありますけれども、政府は、米軍海兵隊が日本に着任をした若い隊員に対してどのような内部教育を行っていると承知しているのか、また、これがもし仮に不十分である場合には是正を申し入れるべきではないかというふうに思うんですが、綱紀粛正という言葉が同じような響きでアメリカ人に伝わっているのかどうか疑問にも感じるところがありますので、このことについて北米局長にお伺いをいたしたいと思います。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 このような事件の背景に米軍の、特に若い兵員の意識が少し欠如しているのではないかということについては、我々もそう思っております。
 そこで、米側がどういう教育をしているかというお尋ねでございますが、これは、沖縄にそもそも来る前に、新兵に対しまして、入隊後最低でも六、七カ月の訓練というのが行われまして、この中で、外出時の立ち振る舞い、あるいは飲酒をめぐる問題などについての倫理教育というものが合計約五十時間行われているというふうに承知をいたしております。
 あと、今お尋ねのありました沖縄に赴任後の研修でございますけれども、これはいろいろとやっておりますけれども、総じて言えば、例えば、沖縄の文化、伝統、習慣に関すること、それから勤務と自由時間、これはリバティーと言っておりますが、リバティーの間における沖縄県民との接し方、あるいは適切な行動、それから、特に薬物、それから飲酒の過多からの更生の計画、あるいは安全運転、性暴力の防止等のブリーフが行われているということになっておりますし、当然、訓示等についても行われておりまして、特に長い休み、三連休の前とか、そういうときには改めて研修を行うというような、ほかにもございますけれども、そのようなものを行っているというふうに承知しております。
 それから、特に最近、九九年になりましてからは、飲酒年齢を二十歳から二十一歳へ引き上げた、それから、単身赴任で、赴任期間一年未満の二等軍曹以下の兵士の私有車の所有・運転禁止等の措置、これは、特に今お尋ねのありました若い兵士ということを念頭にこのような措置をとっているというふうに承知しております。
 政府としてもいろいろとやっておりますが、いずれにせよ、これで十分ということではないと思いますので、引き続き米軍とも相談をいたしまして、また三者連絡協議会、これは米軍と沖縄県、それから国との協議会でございますが、こういうところを通じまして、さらに何ができるのかを検討してまいりたいというふうに考えております。
岩倉委員 従来から、いろいろな知恵を出して、犯罪防止のために外務省あるいは政府としてもいろいろなポイントからやってこられているわけでありますけれども、それでもなおかつこのように発生するという状況を踏まえて、やはり、過去の延長線上でいろいろなことを考えることも必要でしょうし、あるいは新たなる視点で防止のための知恵をこれから出していかなきゃいかぬのではないかなというふうに考えておりますので、外務省におかれましては、新しい視点での知恵をぜひ発信していただきたいなというふうにお願いをしておきたいと思います。
 次に、どうやって犯罪を防止するかという観点と、犯罪が発生した時点での地位協定の問題になるわけでありますけれども、被疑者の身柄の引き渡し時期について、日米地位協定の中身とあるいはNATOの地位協定や米韓の地位協定と比較をして、受け入れ国にとって不利な規定となっているところがあるのかないのかということについて局長にお尋ねをしておきたいと思います。
海老原政府参考人 これは、日米地位協定の場合には、十七条五項の(c)で起訴時の拘禁移転ということを規定しておりまして、それを受けた形で、平成七年の合同委員会合意において運用の改善ということで、特定の犯罪につきましては起訴前の拘禁移転を可能にする道を開いているということでございます。
 お尋ねのNATO地位協定でございますけれども、これは、日米地位協定の十七条の五項(c)と全く同じ規定でございます。すなわち、起訴時に拘禁が移転されるということでございます。また、韓国でございますけれども、米韓の地位協定では、最近になりまして、十二種の犯罪に限りまして起訴時またはその後に拘禁の移転が可能だということになっておりまして、それ以外のものにつきましては判決が確定したときに拘禁の移転が行われるということになっておりまして、NATOとそれから米韓の地位協定との関係におきましては、少なくともこの平成七年の合同委員会合意のような、起訴の前に拘禁の移転を可能にするような枠組みというのはございません。
 ただ、いろいろと運用についても異なる面もあるかもしれませんし、それから、それぞれの規定ができた背景ということが当然異なるということだろうと思います。
岩倉委員 今、運用改善の話が出てきましたけれども、日米地位協定における運用改善が合理的であって、これに努力をしていると政府はしていますけれども、例えば最近の例ではどのような運用改善の例があるのか、お聞きをしておきたいと思います。
海老原政府参考人 これは、いろいろと運用の改善に努力をいたしておりまして、この拘禁の移転の話もそうでございますし、その後にも騒音の規制等いろいろな改善を行っておりますけれども、最近の例ということであれば、平成十三年の一月に緊急車両の施設・区域内の通行につきまして、また平成十四年の三月にはアメラジアン問題についての窓口相談の整備、それから平成十四年の八月には在日米軍のPCB含有物資の米国への搬出というような改善を行っております。
岩倉委員 局長、県民感情を考えましたときに、多分沖縄県民の皆さんは、やはりいろいろな思いをこういった事件のたびにお持ちになるんだろうというふうに思いますけれども、ぜひ政府としても気合いを入れて取り組んでいただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 最後になりますけれども、今回の事件を受けまして、日米両政府は刑事手続の見直しをめぐって今月中にも事務レベルで協議を開始するというふうに聞いております。米側は、長年の懸案となっている警察での取り調べの際の弁護人の同席や、米側による通訳の選任を求めるというふうに予想をされますけれども、我が国として協議に臨む基本的な考え方を外務大臣にお伺いしておきたいと思います。
川口国務大臣 ただいま委員がおっしゃられましたように、日米地位協定のもとでの刑事裁判手続に関する問題の交渉のために、二週間以内にアメリカの政府の代表団が来日をいたします。そして、四十五日以内に交渉を妥結することを目標とするということで、十八日に開かれました合同委員会において一致をしたわけでございます。
 この協議におきまして、日米地位協定のもとでの刑事裁判手続に関する問題について交渉が行われるわけでございますけれども、具体的にどのような事項を協議するかということについては、今後、米側と調整を行っていくこととなります。
 いろいろ日米の間で刑事手続で違いがございますので難しい問題でございますけれども、日本政府としてこの問題については最大限の努力をいたしたいと思っております。
岩倉委員 時間が参りましたので私の質問を終わりますけれども、新しい世紀が始まっているわけでありますから、ぜひ新しい視点も入れた懸命な御努力を政府にお願い申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、川内博史君。
川内委員 おはようございます。川内でございます。
 金武町で起きました事件を含めまして、日米地位協定全般の問題につきまして、改定問題、見直しに焦点を当ててお伺いをしてまいりたいと思います。
 まず、外務省にお伺いをさせていただきます。日米両政府間での一九九五年の合同委員会合意、いわゆる運用改善合意でありますが、十七条が特に焦点になっておりますけれども、容疑者の起訴前の身柄の引き渡しを要請した事例というのは、一九九五年以降、平成七年以降、今回の事件まで四件しかないわけであります。しかし、沖縄ではさまざまな事件、事故が米軍構成員、米軍関係の方々によって引き起こされている。平成十年の少女ひき逃げ事件あるいは放火事件、さまざまなケースがあったわけでありますが、起訴前に身柄の引き渡しを要求してもいいのではないかと思われるような事件について、これまで身柄の引き渡しを日米合同委員会において要請しなかった事例がたくさんあると思いますが、これはなぜでしょうか。
海老原政府参考人 これは一九九五年の合同委員会合意の運用ということで、具体的に申し上げますと、特に外務省それから警察庁が相談をいたしまして、それで具体的に身柄の引き渡しを米側に要請するかどうかということを九五年の合同委合意に照らしまして判断をして、それで行っているということでございます。
 ただ、これは犯罪の捜査にかかわるということでございますので、基本的には警察庁の方におきまして特に捜査上の必要性等を総合的に勘案されて、警察が主体的に判断をされるということで、それを外務省の方に要請が行われるということで、それで、それを受けまして合同委員会の開催を米側に要求して要請をするという形になっておりまして、一言で言えば、捜査上の必要性等を勘案して警察庁において判断をされているというふうに承知をいたしております。
川内委員 身柄の起訴前の移転を日米合同委員会において要請するかどうかは警察庁が決めることだというふうに外務省は今、局長おっしゃったわけですが、警察庁にお伺いをしたいと思います。
 警察庁から外務省に対して容疑者の起訴前の身柄の引き渡しを要請する場合、今局長も答弁の中で、相談はするというふうにおっしゃっていらっしゃったように思いますが、事前に日米合同委員会に上げるかどうかという相談を外務省とするんでしょうか。また、引き渡しを要請しなかったケースについて、相談はしたけれどもやはり合同委員会にのせるのはやめようというふうに判断をした理由というのはどこにあるんでしょうか。
栗本政府参考人 先ほども外務省の局長からも一部話がございましたけれども、警察といたしましては、個別の事件ごとに、その事件の悪質性、また結果の重大性、あるいは捜査上の必要性などを総合的に判断をいたしまして、先ほど来お話がございます合意に基づいて、日米合同委員会において起訴前の拘禁の移転についての要請を提起する必要があると私どもが判断をいたした場合には、同委員会におきます拘禁の移転についての要請の提起を外務省に対して行ってきたところでございます。
 それからまた、引き渡しをしなかったケース云々というお尋ねでございますが、これまで合同委員会におきます拘禁の移転についての要請の提起を行わなかった事件につきましても、米軍当局から必要な協力を得て所要の捜査を遂行し、検察庁に立件送致してきたところでございまして、そのことによってこれまで捜査に支障が生じたとの報告は受けていないところでございます。
川内委員 そうすると、身柄の、拘禁の移転の要請をするかどうか、日米合同委員会においてその要請をするかどうかというのは警察庁が判断をしているということでよろしいですね。
栗本政府参考人 先ほども申し上げましたように、私どもは、合同委員会への要請そのものではなくて、合同委員会に対する要請の提起を外務省に対してお願いをしているというところでございます。
川内委員 要請の提起を、私もそういう意味で申し上げたのですけれども、警察庁が日米合同委員会に拘禁の移転の要請の提起を外務省にするようにお願いすると。
 さまざまな事件が毎年毎年、沖縄で繰り返し繰り返し起きているわけです、米軍関係者によって。この日米地位協定の十七条の改善合意に示されている以外にもたくさんの凶悪な、あるいは悪質な事件というものが起きているわけです。私は、それは、捜査上の必要があるとかないとかではなくて、国民の感情として、県民の思いとして、悪いことをした人は身柄を一刻も早くとってもらうということが国民やあるいは県民に対する安心と信頼を与えるんじゃないかというふうに思うんですよ。警察の皆さんに対しては国民の皆さんも大変信頼をしていると思う、現状では。その信頼をさらに積み重ねていくためにも、日米合同委員会にじゃんじゃん拘禁の移転の要請をすべきだ。
 この十七条の合意というのは、殺人と強姦の場合には好意的な考慮、その他の特定の場合には十分な考慮というふうに書いてある。殺人と強姦は犯罪の類型を明示的に書いてありますが、その他の特定の場合、日本が必要だと認める場合にはということも書いてある。ということは、すべての犯罪の類型において拘禁の移転の要請を仮定としてはできるというふうにこの十七条の改善合意というのは読んでいいわけですね。外務省、どうですか。
海老原政府参考人 合同委員会合意におきましては、あらかじめ特定の犯罪類型をその引き渡しの要請の対象から外しているということはございません。
川内委員 ちょっと否定形で答弁されるとよくわからないんですが、すべての犯罪において日本が必要だと思うものについては拘禁の移転の要請が、どのような犯罪であっても移転の要請ができるということですね。
海老原政府参考人 そのとおりでございます。
川内委員 であれば警察の皆さんも、捜査上不都合があるとかないとかではなくて、事件の重大性とか、あるいは、国民の皆さんの思いあるいは沖縄の県民の皆さんの思いというものにしっかりと思いをいたしながら、すべての犯罪において日米合同委員会に問題を提起する必要があろうかと思うんですけれども、警察庁、どうですか、今後の対応として。
栗本政府参考人 警察といたしましては、刑事訴訟法を初め法令に基づいて捜査を行い、事案の真相を解明するということがスキームでございます。
 また、今のお尋ねの件でございますが、先ほども申し上げましたように、私ども警察といたしましては、個別の事件ごとに、その事件の悪質性、またその結果の重大性とか、また個別の事件の捜査の状況を踏まえながら、捜査上の必要性などをやはり総合的に判断をして、拘禁の移転について要請の提起を行うか否かということについて今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。
川内委員 大変模範的な御答弁をいただいたわけですけれども、私は、先ほどから申し上げているのは、外務省は、十七条の改善合意はあらゆる犯罪の類型において拘禁の移転の要請をすることを否定するものではないというふうにおっしゃっていらっしゃる、解釈していらっしゃる、警察庁は、捜査上の必要があるからとかないからとか、あるいは捜査上問題があるからとかないからではなくて、事件の重大性とかあるいは悪質性をしっかり考えるということも今御答弁の前段でおっしゃったわけで、であれば一般の犯罪と同じように、逮捕状発出と同時になるべく早く身柄がとれるようにしていくことが警察庁の判断としては普通の判断ではないか。そこで、いや、捜査上問題がないから、外務省と相談して日米合同委員会にはのせなくていいと判断しましたというようなことをおっしゃるのは警察庁の判断としてはおかしいんじゃないかというふうに思うんですけれども。
海老原政府参考人 合同委員会合意の運用全体の問題でございますので、私の方からまずお答えをしたいと思いますけれども、これは、地位協定自体におきましては、起訴前の拘禁の移転ということが米側に身柄があるという場合には認められていないという中で、特にこのような凶悪な事件につきましては、万が一にもその捜査に支障が出てはいけない、万全を期さなければいけないというような観点から運用の改善を行うということで、このような合同委合意ができているわけでございます。
 したがいまして、その協定の規定の中での運用の改善ということで、捜査が万全に行われる、きちっとした厳正な処分が行われるということを確保する上で何をすべきなのかということを米側と個別に話をして万全を期しているということでございまして、警察庁の方におきましても、そのような観点から常に適切な対処を行っておられて、必要な場合には外務省に対して要請の提起を行っておられる、外務省におきましても、そのお話をよく聞いた上で、やはり必要だというふうに判断した場合には米側にこれを要請している、そういう枠組みになっているわけでございまして、この枠組みを今後とも適切にワーク、機能させていきたいというふうに考えております。
川内委員 だからこそ運用改善のための話し合いというものが米側とこれまでも行われてきたと思うんですね。犯罪の類型としては、殺人と強姦というものが明示的に例示をされている。しかし、その他の犯罪の類型については、その他の特定の場合ということで犯罪の類型としての明示がないために、例えばひき逃げとか放火というものがこの十七条の改善合意の中に明示的に例示をしてあれば、当然のごとく拘禁の移転の要請というものが行われたはずでありますけれども、それがないために、非常に何かよくわからない、アメリカ側の解釈をしているんじゃないかと思えるぐらいに、何か遠慮をしているような印象を我々一般の国民が持ってしまうというのは、外務省にとっても警察庁にとってもとても不幸なことだというふうに思うんです。
 十七条の改善合意をさらに進めるために、今までもさまざまな御努力をされてきたと思いますけれども、特に、平成十三年の五月、何月、何月と会合が持たれた、何とか会合というのが持たれたというふうに聞いておりますけれども、そのときに、その他の特定の場合というものについて、どういう犯罪の類型を明示するかということを話し合われたのか、そして合意に至ったのか、全く至らなくて相手にもされなかったのか、その辺の事情を、ちょっともう時間がないので、手短に御説明をいただきたいと思います。
海老原政府参考人 今お尋ねのありました、まさに合同委員会合意の第一項の後段でございますけれども、その他特定の場合であって、日本が考慮されるべきと判断するものということで、我々といたしましては、その他特定の場合ということを明確化すべきであるということで、平成十三年から、刑事裁判手続に関する特別専門家委員会というのを立ち上げまして、これの会合の中で特にこの明確化について米側と話をいたしております。
 現在も協議は進行中でございまして、どのような犯罪を特定しろというのを米側に要求しているのかということも含めまして、協議の具体的な内容につきましては、米側との関係もございますのでお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにせよ、なるべく早く合意に至るように一層努力をしてまいりたいというふうに考えております。
川内委員 さまざまな沖縄問題についての質疑の中でこの質問というのはされてきているんですけれども、ほとんど一字一句変わらない答弁を、局長はかわっても答弁は、一字一句ほとんど変わらない答弁がずっと続いているわけです。何ら、何もしていないとみずから告白しているようなもので、何か一つだけでも、その他の特定の場合ということでこれを犯罪の類型として明示できるようになりましたというような報告ができるならまだしも、何にも、努力はしています、でも議論の内容についてはちょっといろいろあるので詳細を差し控えますと、いつも同じことを言っていて、どうして我々を納得させられるのか。
 我々に対してそのようなことをずっと言い続けるということは国民をばかにしているということですから、それは、やるべきことはしっかりとやっていらっしゃるという自負は多分お持ちになっていると思うので、これだけはやったというようなことを一刻も早く国会に御報告をいただきたいというふうに思います。
 もう時間もないですけれども、やはりこの日米地位協定、ほかの国のことは知りませんよ。NATOの地位協定とか米韓の地位協定とか、あるいはドイツのボン協定がどうとか、そんなことは我が国には関係のないことですね。日本が主権国家としてどう米国とつき合うのかということを問われているのであって、ほかの国がそうだから日本もそうでいいでしょうなんという話をこんなところでする必要はないわけです。
 本来、悪いことをする人は捕まるというのが世間の常識であって、そのように普通の対応にしていくのが当然のことでありますから、日米地位協定というのはやはりしっかりと改定をして、日本側が逮捕をした後、身柄を拘束した後、米軍から、もし、いや、その逮捕、身柄の拘禁については待ってくれというクレームがついたときに、日本側が好意的配慮を払う、特別の場合には、では身柄を返してやってもいいか、身柄をお返ししましょうかというぐらいに、日本側が好意的配慮を払うような地位協定にするんだったらまだしも、何かもう全然、いつも何を聞いても同じことを繰り返す、何をやっているんだかさっぱりわからないというようなことでは困りますので。
 外務大臣、どうですか。やはり日米地位協定の改定、見直しというものは、アメリカから弁護人をつけろとかなんとか言われるだけじゃなくて、しっかりと今こそ、アメリカからも代表団が来るのであれば、日米地位協定の見直しをこの際しましょうということを堂々とおっしゃったらどうかというふうに思いますが、最後、いかがでしょうか。
川口国務大臣 日米の地位協定の改定についての日本の考え方、これは前から申し上げていますように、運用の改善を行っていく、それで十分に効果がないときには協定の改定も視野に入れていくということにおいて変わりはございません。
 平成七年の運用の改善の枠組み、これが適切に運用されるようにしていきたいと思いますし、また、後段の部分の、その他特定の場合というその文章に関して、はっきりしていない場合のことにつきましては、今これは議論をしようということになっておりますので、その面で努力をしていきたいと思っております。
川内委員 終わります。
平林委員長 次に、白保台一君。
白保委員 何度も何度も繰り返し事件が起きてくる。非常に残念で、どうしてこんなことがいつまでも続くのかなと、こういう非常に残念な思いで私もおりますし、県民もみんな、つらい、悲しい思いでいる。このことが、この思いがどれぐらい伝わっているのかなと、政府に、外務省に。そういうことを非常に疑問に思います。
 したがって、私は、基本的な問題で幾つか聞きたいな、こう思っています。
 大臣、出張中でございましたので、茂木副大臣に申し入れを行いました。安保に対する立場は違っても、県民の生命や財産、そしてまた、みんなの平和な地域を守ろうという思いが一致して、超党派で申し入れを行いました。初めてです。みんなの思いは一つです。立場は違っても、やはり主権国家の国民ですから、そういう人たちをどうやって守っていくのかということがあって、みんなで申し入れを行いました。お聞きになっていらっしゃると思いますが、初めてのことでございました。余りにも繰り返し繰り返しそういった事件、事故が起きてくる。
 そこでお伺いいたしますが、大臣の六月十六日の談話を見ました。先ほど委員の質問にお答えになったようなことが書かれております。先ほども申し上げましたように、繰り返しこういった事件、事故が起きて、申し入れを行って、厳しく対応している、こう言いますが、今回の問題でベーカーさんの対応、こういったものについて、事件、事故が重なっていますから、大使も就任されてもう何年もたちますから、大臣自身として、こういう問題について申し入れを行って、アメリカ側に変化があるのかないのか、どのように受けとめられたかということをまずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 今回の事件の話を私は一番最初に聞いたときに、今委員がおっしゃいましたように、またあったのかというふうに私も思いました。非常に残念でございました。そして、もちろん遺憾に思いまして、その旨は、十六日にベーカー大使にお電話をいたしましたときにはっきり申しました。何度こういうことを大使にお話ししなければいけないんだろうかという気持ちでございました。再発の防止、綱紀の粛正をきちんとしてほしい、そして、これは合同委員会で正式に申し入れる前でございましたけれども、そういうことを行うということになるだろうと思うけれども、その場合には拘禁の移転は速やかにやってほしいということを申しました。
 ベーカー大使は、同じような事件がベーカー大使が御赴任をなさったその日に起きていまして、この事件について、あるいはこの種類の事件について特に、非常に遺憾に思っていらっしゃるという雰囲気は電話の向こうから伝わってきました。ベーカー大使は、遺憾に思っている、捜査には全面的に協力をするし、綱紀の粛正等についてもきちんとやるように伝える、それから、私が言ったことについては速やかに、即アメリカ本国に伝えるということをおっしゃいまして、そのようになさったというふうに思います。
 本当にたび重なることでございまして、またこういうことが起こってはならないと私は強く思っております。
 今までにいろいろな考えに基づいて対策をやっておりますけれども、朝、岩倉委員からも御指摘がございましたけれども、私は、今までやっていることについて本当にそれでいいのかということを見直して、そして、さらにこういったことが二度と起きないようにするために、犯罪防止の観点で何ができるかということを改めて議論してみる、するということが必要だと考えております。そのように指示もいたしております。
白保委員 我々もそうなんですけれども、今回も大臣の談話の中にも出ていますけれども、問題が起きたら必ず、綱紀粛正、再発防止、もうこの繰り返しなんです。非常にむなしいですね。同じことの繰り返しです。お互いに、アメリカも日本も主権国家であり、しかも法治国家ですよ。こういう問題が起きたときにきっちりとけじめがつけられる、そういう方向に持っていくのが本来のあり方だろう、こう思うのです。それが綱紀粛正と再発防止、その繰り返しがもう何十年も行われてきた。
 私も県会議員時代にも、何回もこの問題で外務省に申し入れに来ています。アメリカ大使館にも抗議にも行っています。横田にも行きました。沖縄県議会なんてもう、定例会以外に多くの議会を招集する。何かといえば、ほとんど米軍の事件、事故ですよ。それでその繰り返しをやってきている。今回もまたこういうことです。
 したがって、私は、先ほどからその話が出ていますように、地位協定をしっかりと改定していく、そういった方向で取り組みをもう開始しなければだめだ、どこまでずうっとこうやってやっていくのか、こういう思いが強くあります。
 そこで、時間も余りありませんからお聞きしたいと思いますが、稲嶺知事が今、いわゆる基地の所在する県の渉外知事会といいますか、そこの知事や県議会等に地位協定の見直し、改定の問題で申し入れを行っています。協議をしております。これについて外務大臣、どのような認識をお持ちなのでしょうか。
川口国務大臣 稲嶺知事が、日米地位協定の改定について、各自治体を回られてその働きかけをなさっていらっしゃるということは十分に承知をいたしております。
 沖縄県の知事として、この駐留の問題で、この御負担が沖縄県民の方に非常に重くかかっているということはまさにそのとおりでございまして、そういった負担の軽減について、政府としてもこれを減らしていくように努力するつもりでございますし、当然、知事のお立場でそれが必要であるというふうにお考えになられるというのは、私としても、それはそういうことであろうかと思います。
 また、日米地位協定の改定の問題、これにつきましての政府の立場というのは、その時々の問題について運用の改善で対応していくということが合理的であるというふうに考えておりますので、運用の改善に努力をしております。そして、沖縄県の御要請で、今までも県議会等からいろいろな御要請をいただいているわけでございまして、そういった論点につきましては、これは運用の改善を進めていく上で十分に参考にさせていただいて行動をしていきたいと考えております。
白保委員 今、大臣は運用改善が合理的であるというふうな言われ方をしたのですが、運用改善をこれまで幾つか重ねてきました。そういった中で現場でどれだけの効果が上がった、そういう認識をお持ちなのか。ならば事件、事故というのはなくなっていってもいいんですけれども、そういうものが何度も何度も繰り返されてくると、運用改善が合理的だ、こうおっしゃるけれども、現場の県民の立場からいったならば、そうは受けとめられない。
 ですから、そういう面では、私は、この運用改善の効果がどれぐらい上がった、現場で成果が上がったというふうに認識されているのか、大臣の認識をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 運用の改善が今一〇〇%満足する状況まで行われているというふうに申し上げているわけではなくて、まだまだ努力が必要だと思っています。
 ただ、今まで努力をずうっとしてきておりまして、それは、その現場において一定の成果を上げていると私は考えております。
 一例を挙げさせていただきますと、先ほどちらりと北米局長から申し上げましたPCBの搬出でございます。これは、今月の上旬にアメリカから、今後数カ月のうちに海路でさらなる搬出を行うということが発表されまして、その包装、こん包の材料等も含めた総重量で一千四百九十七トンのPCB含有物資を本土及び沖縄から搬出をするということです。沖縄からは初めての搬出になります。
 そして、米軍は既にことしの一月、三月に搬出を行っているわけでして、これらの二回の空輸、これは二回空輸しましたけれども、既に搬出されましたPCBの含有物資が約四十八・一トンということでございますが、今回の搬出見込み量は一千四百九十七トンでございます。
 この二つの数字を合わせますと、今後数カ月のうちに、在日米軍が我が国にある施設・区域内で保管または使用しているPCBの含有物資、約三千百十八トンございますが、これの約半量の搬出が終わるということになります。これが一例であるかと思います。
白保委員 今、PCBの話が出ましたから申し上げておきたいと思いますが、これだって現場の声じゃありませんか。現場で、返還されてこの扱いに困って、私も何度も質問しました。こういう状況の中で、これは地位協定がそういうことになっているからこのPCBの扱いだって困ったんです。現場の声が出てきて、やっとこれ今、運用改善ということでやっていますけれども、これだって改定すれば問題ないんです。ですから私は、そういう面でなぜ踏み込めないのかということが理解ができないんです。
 逆に言えば、どれぐらい多くの問題が出てきたら改定に踏み込めるのか、そのことを海老原さんに聞いてみたいと思いますよ。いかがですか。
海老原政府参考人 これは、白保委員のおっしゃることもよく私は理解できるというふうに考えております。
 そもそも日米安保条約に基づきまして、我が国及び極東の平和と安全の維持という観点から米軍の駐留を認めているということがあるわけでございます。そこで、この地位協定のような問題が生ずるということで、まあこれは釈迦に説法だと思いますけれども、米軍の駐留を認める、外国軍隊の駐留を認める、これは、国際法上、外国の軍隊というものはいわば国家機関でございまして、基本的にはその国家の専属的な管轄権に属するという原則のもとで、それと我が国の安全保障のためにどのような効果的な駐留があり得るのかという両方の要請を調整してきているわけでございます。
 そういう中で最も効果的な調整というものは、今の地位協定の規定に立った上で少しでも運用の改善を着実に進めていくということで努力をしてきているわけでございまして、我々といたしましては、大臣もおっしゃいましたように、引き続き運用の改善に努めていく、それでもどうしてもそれでは至らないということになれば地位協定の改正も視野に入れていくというのが政府の立場でございます。
白保委員 時間が来ましたので、最後に申し上げます。
 局長、私の意見は理解できる、こういうことを冒頭に申しておりましたが、私の声は県民の声です。理解できるならばちゃんと取り組んでいただきたい、そのことを申し上げて終わります。
平林委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 大臣、聞いていただきたいんですが、私は佐世保でもう三十何年弁護士をやってまいりましたが、米軍の犯罪等々について大変悔しい思いをしたことが過去二、三十年前にございまして、いまだに忘れられません。日本で日本人の女性に被害を与えながら当の米軍兵士がいなくなったということがありました。沖縄でも、やはりそういう被害を与えながら民間機で兵士がいなくなったということがかつてあったと聞いております。そういういろいろな問題、それは、基地周辺では確かに頻繁とあっているわけなんです。
 それまでの行政協定から、地位協定が一九六〇年にできた。それは、何のために、どういう目的のためにできたものでしょうか。ひとつ大臣にお答えいただきたい。
川口国務大臣 日米の安保協定、日米の間にある安保協定、これは、安全保障条約は、我が国にとって、我が国の安全を守っていく、極東の平和と安定に資するという意味で、非常に重要な我が国の平和と安全を守る柱でございます。もちろんこれだけではありませんで、防衛力を持つ、あるいは外交力を使うということもありますけれども、この安保条約というのは重要な柱であると考えております。
 そして、この安保条約の規定するところの適正な、円滑な運用ということをどのように確保していくかという観点で、日本にある施設・区域を使っている米軍についての規定、これが日米地位協定であるわけですけれども、行政協定の時代から、おっしゃるように改定をされたわけでございまして、この段階では、行政協定の時代からは大分姿が変わった、日本に有利な協定になったということでございます。
 いずれにいたしましても、我が国の安全を守る柱の一つとして、我が国は政策として日米安保条約を選択しているわけでございます。それで、これの円滑な運用をどのように図っていくか、そういう観点からこの地位協定がある。それについて今、運用の改善、これによってその時々のいろいろな問題について対応していくということが合理的であろう。そういう考え方に基づいて、今ずっと申し上げておりますような運用の改善をやってきたということでございまして、この努力を引き続きしていきたいというふうに考えております。
山田(正)委員 大臣は認識が異なるようですね。日米地位協定は、日本人の憲法上の基本的人権、いわゆる公平な裁判を受ける権利、日本人の地位ですね、立場、権利、そういったものを、例えば、米軍が駐留している間に、公務執行中とか、あるいは米軍と米軍との間、あるいは米軍の軍属、家族との間、そういった裁判については当然米軍が行うとしても、日本国内における日本人の被害者たる者について、公平な裁判を受けさせる権利、これを求める、これを協定の場で明らかにするために地位協定になされたのではないんですか。違うんですか。違うんだったら違うで結構です。お答えいただきたい。
川口国務大臣 日米地位協定が何を定めているかということですけれども、先ほど海老原北米局長からお話をしましたように、基本的に、日本国において当然日本国の持つ主権があるわけであります。同時にアメリカの、アメリカということだけではなくて、一般的に言えば、軍隊が持つその国の主権に基づく管轄権といいますか、軍隊に対する管轄権があるということでございまして、その二つの間をどのように調整をしていくかということが、この問題について常について回る基本的な考え方としてあると思います。その調整の結果として今存在をしているのが現在の日米地位協定の形である。
 先ほども申しましたように、いろいろな時代の変化があり、また、いろいろな新しい事態があるわけでございまして、そういった問題について、運用の改善について対応をしていくということが適切であるというふうに考えているということでございます。
 日本人の、裁判を公平に受ける権利というのは、日本の主権としてこれは守られるべきものであるということと同時に、米側の持っている軍隊に対する管轄権、これとの調整をどのようにやっていくかということがこの問題の基本的な整理であるかというふうに思います。
山田(正)委員 日米安保条約に基づいて、駐留軍の、いわゆる米軍の基地にいる、その権利関係、その調整だという言い方のようですが、大臣、これは、沖縄も日本国であって、この地位協定十七条を見ても、基本的に、第一次裁判権は例外的な場合を除いて日本側にある、こう明記されているわけです。例外的な二つの場合を除いては日本側に裁判権がある。
 大臣、もともとこの基本的人権の主張というのは、強く求められなきゃならない。憲法上の立場もあるわけです。ところが、大臣が言うように、えてして外務省は、利害の調整とか運用の改善とか、一つ基本的な原則というものから離れてしまっているという嫌いがある。そこで最初に私は今質問したわけですが。
 大臣そのものも外務省そのものも、いわゆる公平な裁判を受ける基本的人権の認識、これについてはしっかりと持ってもらわなきゃ、ただただ利害の調整だということでは日本国の大臣として恥ずかしい、そう思って、次の質問を続けたいと思います。
 実は、今回の事件、五月二十五日に発生したわけですが、発生して、被害者の取り調べがあって、すぐに実況見分等が始まったと思われます。また一方、米軍の方において、日本の警察の方にすぐにその日のうちに通知があったようですが、本来ならば、被害者から事情を聞き、実況見分をやり、日本の裁判であったら当然その段階で逮捕状を求める、すぐにですね。
 そして今回、この日米地位協定、その中のいわゆる合同委員会の合意に基づいて当然逮捕を求めなきゃいけなかったと思われます。というのは、被疑者がどういう行為を行ったかということは、犯罪の捜査に、犯罪の立件に大変重要なことですから、逮捕して調べるということが一番大事なわけです。
 それで、刑事局長、お聞きしたいんですが、日本側としては、すぐさま米軍に対して、いわゆる身柄の引き渡しを求めたか求めていないか、お聞きしたい。
栗本政府参考人 今先生御指摘のように、この事件は、五月の二十五日に被害者の方から届け出を受けまして、それ以降、沖縄県警察といたしまして、関係者からの事情聴取、また現場におきます鑑識活動、実況見分並びに採取いたしました証拠資料の鑑定、このような捜査活動を適正かつまた確実に推進をした結果、証拠に基づきまして被疑者を特定し、六月十六日に逮捕状の発付を得たものであります。
 また、同日開催されました日米合同委員会におきまして起訴前の身柄の拘禁の移転を要請し、翌々日の六月十八日、米国からの同意の回答を得まして、同日沖縄県警におきまして逮捕したとの報告を受けているところでございます。
山田(正)委員 六月十六日に逮捕状を出すというと、約一月かかっているわけです。普通、日本における刑事事件の、いわゆる逮捕状をとるまでの調査、この種の強姦事件については考えられないことです、これは。
 実際に、やはり同じように米軍の事件で、佐世保における米軍人による女性の強盗殺人未遂事件ですが、これは発生が平成八年の七月十六日なんですが、七月十八日、二日後には逮捕状を発付して、そして七月二十日、その二日後には米軍から身柄の引き渡しを受けて逮捕ができている。四日後には逮捕しているわけです。そして、現実に身柄を勾留して調べに当たっている。
 いいですか。さらにまた、平成十三年の六月二十九日に起こったやはり強姦事件、これは沖縄ですが、これにおいても、実際に、六月二十九日に起こったんですが、その三日後、七月二日には逮捕状を発付して、七月六日には逮捕され、身柄が勾留されて取り調べを受けている。
 日本の裁判、日本における裁判においては、普通は、事件が発覚して、被害者を調べて、現場を実況見分して、二日か三日かあるいは四日後に逮捕して身柄を勾留する、それがこの種の犯罪においてはなされてきたんです。ところが、今回、一月もかかって逮捕しなきゃならなかった、同種の事件で。なぜこんなに長くかかったのか。刑事局長、その事情を明らかにしていただきたい。
    〔委員長退席、吉川委員長代理着席〕
栗本政府参考人 まず、先ほどの、二件の引き渡しを受けました事案については、先生御指摘のとおりと承知いたしております。
 これは引き渡しを受けませんでしたが、昨年の十一月に沖縄で発生をいたしました、私ども警察としては逮捕状の発付を受けて拘禁移転の要請をいたしました事案につきましては、事案の認知から令状の発付を受けるまでに一カ月余の慎重な捜査をした上で発付を受けて、残念ながら移転の同意を得ておりませんので……(山田(正)委員「その件は後で聞きます。私が言ったことで、私の質問にだけ答えてください」と呼ぶ)はい。
 したがいまして、私どもは、捜査というのは、先ほど先生御案内のとおり、個別の事件ごとに一つ一つ違いまして、このような事案でも、現場において具体的な犯罪事実を特定し被疑者を特定するだけの十分な証拠資料があるのか否か、特にこの種の事案というのは、大変事後的に公判等でもいろいろ争いが出る事案でございます。
 例えば具体的に、現場において目撃者が大変多いとか現行犯的な逮捕をされたとか、そういう事案のような場合と、関係者の方しかこの事実について承知していない、事後的に承知をしている、そういうような場合には、より慎重な裏づけ捜査を行った上で、最終的に捜査機関としては、逮捕し強制捜査で臨むべきなのか、刑訴法の本来の姿であります任意捜査で事案の全容を解明していくのかということについては、個別の事案にのっとって慎重に配慮していくものだと判断しているところでございます。
山田(正)委員 被疑事実が明らかで、いわゆる実況見分、被害者も明らかで、しかも最初の情報が米軍から、米軍のMPから日本の警察に、沖縄の警察に連絡があったとすれば、被疑者もすぐに特定できたはずです。それでいて、一月も二月も被疑者を捜すのにかかりましたとか、そのために一月もかかりました、逮捕状発付までにと。これはおかしい。その間に何らかの、例えば外務省からの圧力とか米軍からの圧力とか、いろいろな行政上の何かがあったはずだ。
 大臣、そういうことで、外務省において、この問題は当初から政治問題化しておったといういきさつはありませんか。
川口国務大臣 全くございません。
山田(正)委員 そういうことはあり得ない、常識で考えれば。何らかの事情があって一月もおくれた。その間、アメリカと、そして日本の外務省ルートかあるいはどういうルートかわからないが、いろいろなやりとりがあったはずだと思うんですが、まあそれは、ないと言われれば、本当にないのかどうか、それ以上は明らかにすることはできないでしょうが。
 もう一つ、それでは、昨年の、十四年の十一月二日、これは強姦未遂・器物損壊事件ですが、十一月二日に事件があって、十二月三日、約一月かけて逮捕状を発付しているんですが、ところが、これについては米軍から断られた。結局、起訴前の身柄の引き渡しができなかった。これはどういう理由でなのか。これはどちらが答えられるのかな。刑事局長、あるいは外務大臣かな。
    〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕
栗本政府参考人 警察庁としては、その結果について承知しているだけでございます。
山田(正)委員 ちょっと済みません。今、何と言いましたか。聞こえなかった。
平林委員長 もう一度答えてください。
栗本政府参考人 警察といたしましては、結果として同意が得られなかったということを通知を受けまして、先ほども申し上げましたように、法令にのっとった捜査……(山田(正)委員「どういう理由で断られたのかと聞いているんです」と呼ぶ)承知いたしておりません。
山田(正)委員 承知していない。
 それで……
平林委員長 山田さん、済みませんが、その都度発言を求めてください。
 山田君。
山田(正)委員 日米合同委員会のこの覚書によると、いわゆる凶悪な犯罪、殺人または強姦という凶悪な犯罪の場合には、日本国が行うことがある起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的考慮を払う、いかなる要請に対してもと。去年、これを払わなかった、請求して。
 外務大臣、これは、運用の改善が進んでいると言いながら、全く逆ではありませんか。運用の改善、この合意が事実上なされていない。大臣、この責任は大臣としてどうとられますか。
川口国務大臣 昨年の十一月の未遂事件でございますけれども、これについては、米国政府から、合同委員会の席上で、米国政府としては日本政府が提起した要請を十分に考慮したが、本事件に関する日本政府の説明を真摯に検討した結果、平成七年の刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意に基づく起訴前の拘禁移転を行うことに同意できないとの結論を得たという説明がございまして、また、アメリカ側は、これに関しましてのプレスリリースの中で、本件をめぐる状況に関する日本政府の説明では、起訴までの間は米側が拘禁を行うとの通常の手続から離れた取り扱いを行う必要があるとの根拠にはならなかったというふうにいたしております。
 それで、この合同委員会の合意でございますけれども、これは二つ、殺人または強姦という特定をされた場合、それから、その他の特定の場合、まあこれはその特定をされていませんけれども、それについて特別な見解を十分に考慮するということになっておりまして、こちらの昨年の事件の方は、その他の特定の場合について日本国が合同委員会において提示することがある特別な見解を十分に考慮するということになっておりますが、米側として十分に考慮した結果、真摯に検討した結果、拘禁移転を起訴前に行うことは同意をできない、そういう結論を得たということでございます。
山田(正)委員 大臣、大臣は、この合意事項の解釈を誤っているんじゃないのか。この第一項の中には、「殺人又は強姦という凶悪な犯罪」とある。例えば昨年の事件が未遂であったとしても、その前、佐世保における強盗殺人、これは未遂事件なんです。同じ未遂事件。未遂だから後段の第二項、それに入るんだというのではない。いわゆる強姦も、既遂も未遂も強姦、殺人も、既遂も未遂も殺人なんです。だからこそ、殺人未遂事件では、佐世保の事件の場合には身柄の起訴前の引き渡しができた。大臣、間違わないでください、解釈は。
 大臣が言っているような、運用の改善で何とかなる、運用の改善は進んでいる、これは全く違う。昨年は、運用の改善は逆になされずに、身柄の引き渡しはなかった。前の、平成八年のとき、平成十三年のときは、すぐに、事件発生後三、四日後には身柄が引き渡しされていながら、今度は、一月以上かかって、マスコミが騒ぎ、当委員会がこの問題を取り上げて委員会を特別に開くに至って初めて米軍は身柄を引き渡した。
 ということは、運用の改善どころか、運用の改悪になりつつあるということを認識しながら、地位協定の改定も外務省としては求めず、ひたすら、運用の改善を、運用の改善をと言っているのはまさに茶番である。ひとつ、そういう意味では政府もしっかりと考えてやっていかなければならない。
 私の質問時間は終わりましたので、これで終わらせていただきます。
平林委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門です。よろしくお願いします。
 きょうは、集中ということで、今回の金武町での事件についての質疑になっておりますが、まず最初に、復帰後今日まで、沖縄県で米軍関係者による女性への暴力事件の発生件数、そこからお伺いいたします。
海老原政府参考人 昭和四十八年から平成十四年までの三十年間に沖縄において発生いたしました米軍人等による、これは軍人、軍属、家族でございますが、強姦事件の検挙件数は合計百十一件、検挙の人数は百二十六名というふうに承知をいたしております。
東門委員 沖縄以外の他の、いわゆる本土の、基地を有する県における同じような事件の発生件数は。
海老原政府参考人 ただいま申し上げました同じ三十年間でございますが、これは、我々が持っております統計では沖縄を含んでおりますけれども、沖縄を含む全国におきまして、これは米軍人ということで、ちょっと軍属と家族を含んでおりません、全体を含む統計がございませんので米軍人になっておりますけれども、この強姦事件の検挙件数は百六十六件、検挙の人数は百九十二名というふうに承知をいたしております。
東門委員 ただいまの答弁、すごく無責任だと思います。私、それを聞きますと通告をしてありました。外務省として、地位協定を管轄するところ、所管するところとして、こういう事件が起こったときには、どの県で、軍人なのか、軍属なのか、家族なのか、そういうのはしっかり把握するべきじゃないんでしょうか。
 しかも、局長の答弁と、これは県警の資料ですが、件数も違う。正確に把握しておられるのか。いや、私もどちらが正しいかとは今言いません。その数字が違うということにも問題があると思いますし、沖縄も含めてとおっしゃりながら、一方は軍人、軍属、家族が含まれる沖縄、よその県は軍人だけというようなことでは、外務省、これでいいんでしょうか。
 本当に、単純に引き算をしますと、百十一件とおっしゃったかな、局長は。それで、今全国で百六十何件というと、よその何件と比べて沖縄がいかに多いかというのもはっきりわかると思うんですが、それを聞きたかったんですよ。なぜそれがしっかり出てこない。
 委員長、ぜひ外務省の方から、この三十年間の女性への暴行事件、軍人、軍属、家族を含めた、これは全国における、基地所在県における数字を出していただきたいと思いますので、よろしくお取り計らいください。よろしくお願いします。
平林委員長 ただいまの御請求に対しましては、理事会で協議をいたしました上で、政府当局と協議いたしたいと存じます。
東門委員 大臣、お伺いいたします。
 今の、百十一件であれ、私のところは百十七件となっておりますが、いずれであれ、沖縄県における、よその県ではなくて沖縄県における件数、多いとお考えですか、それとも、まあこれぐらいは仕方がないかとお考えですか。
川口国務大臣 全国の数字と沖縄の数字と、今の話ですとカテゴリーが違いますので、すぐに何かを申し上げるのは難しいところもございますけれども、多いか少ないかということについては、一件であっても多いと私は思います。
東門委員 そのとおりです。私も、一件でも多いと思います。それが、毎年のように起こり、時には何件も、複数件起こって、そして百十何件と来ているという現実。本当に、これに対して、先ほどから同僚委員からもいろいろありますが、外務省の方が真剣になって、これを根絶するには、こういう犯罪を防止するにはどうするかということで対応されているのか、本当にわからない、それが見えてこないというのが私の気持ちなんです。
 これらの事件に対して、これだけ起こってきた事件に対して、その犯罪根絶あるいは防止のために、外務省としてはどのような対応をしてこられたか。綱紀粛正、外務省がいつもおっしゃる綱紀粛正、何度も聞いていますが、それは図られてきたとお思いかどうか、お聞かせください。
海老原政府参考人 このような事件をどうやったら根絶していけるのかということで、これは政府も米側もそれぞれ真剣に検討をしてきているということであると思います。
 その上で、今のお尋ねの、政府としてどういうことをしてきたのかということでございますけれども、これはまず、米側に対して、当然のことながら、綱紀粛正、そのためにできることすべてをするようにという申し入れは行ってきておりまして、先ほど別の委員の方の御質問にもお答えいたしましたけれども、米軍も、繰り返しませんが、新兵に対し、あるいは特に沖縄に赴任する隊員については、特別のプログラム、訓練、研修を行っているというふうに承知しております。
 それに加えまして、政府といたしましても、特に、米軍それから県との間で構成をされます三者連絡協議会、いわゆる三者協におきまして、このような事件の防止のためにどういうことができるのかということを相談して、できるものから実施をしてきているということでございます。特に、事件・事故防止のためのワーキングチームというものを立ち上げておりまして、これはいろいろなことをそこでの合意に基づいて行っております。
 これは時間の関係で詳しくは述べませんが、例えば、午前零時以降、泥酔者あるいは未成年飲酒者のチェックを基地ゲートで行う、それから生活指導のための巡回というものを、制服ばかりではなくて私服による士官によっても行うというようなこと、あるいは県の警察の方から講師を派遣してもらって、日本の、特に交通法規に対する講義その他についての講義を行ってもらう、あるいはシンデレラタイムということで、これは十二時以降についてはできるだけ基地の外に出て飲酒等を行わないようにしましょうというようなキャンペーンを行うということ、それから特に……(東門委員「はい、これで結構です」と呼ぶ)一言だけ。特に最近、子弟による事件もふえておりますので、子弟による事件の防止対策についても力を入れてきております。
東門委員 質問された分だけお答えいただきたい。今お話しされたのは、私、大体、地元ですから知っております。そういうことで時間を本当に費やしたくないんですね、限られた時間ですから。
 私がお聞きしたいのは、綱紀粛正と今局長の言葉から一回も出てこなかったんですが、十三日、私は外務委員会で質問をしました。そのときの大臣のお答えの中に、綱紀粛正あるいは巡回ですか、見回りなど米軍にぜひ言っていきたいということだったんですが、大臣、綱紀粛正というときに、大臣の中にはどういうことが考えられますか。綱紀粛正というのは、こういうことを要求しているんだと。どういうふうに思われますか。
川口国務大臣 それぞれの組織はそれぞれのルールがあるわけでございまして、そういったルールをきちんと徹底してやってほしいということで申し上げております。
 今回あったような事件、これは綱紀粛正ということからいえば、米軍が持っているルール、あるいは米軍が持っているルールまでいかないまでも、人間として当然守らなければいけない基本的なことに反しているということは明らかであって、そういうことを徹底して守らせてほしい、そういう意味で申し上げました。
東門委員 それでは、綱紀粛正の中に、兵士の深夜外出だとか飲酒、それも当然含まれるという御認識でしょうか。
川口国務大臣 町で飲酒をしてはいけないというルールを米軍は持っていないと思います。それから、泥酔をした、あるいはその結果として、飲酒の結果としていろいろ問題を起こした、これについてはルールを持っている。ですからチェックをしたりしているわけですけれども、飲酒そのものも禁じる、あるいは、これは、大人ですから、通常の場合に、米軍のルールとして、何時までに帰らなければいけないということを規則として、必ず守らなければいけない規則としてそれを持つということは、なかなか難しいのではないかというふうに思っております。
 ただ、その結果としてそういう事件のようなことをやるということにつながるということは、非常に大きな問題。そういう行為をやらないということは、まさに、ルールをきちんと守り、そして人間としての最低限のルールをきちんと自分でわかってやっている。ということからいうと、そういうことは、あってはならないと思います。
東門委員 一昨年六月の北谷町の女性暴行事件の後ですけれども、これは三者協だと思います。あるいはシンデレラタイムを推進したときも同じようなことが出てきたんですが、米兵の深夜外出禁止を沖縄県、三者協は求めていきました。米側はそれを拒否しました。一部兵士の犯罪で全体の行動を規制することは人権上問題であるということが理由で受け入れませんでした。
 米兵が夜中に飲み歩く自由という人権、それを守った結果、女性に対する性犯罪という最悪の人権侵害を招いたわけです。この米側の言う人権と被害者の女性の人権、果たして本当に同列に論じるべき問題なのでしょうか。深夜に酒を飲み歩く、それは、大臣、大人ですからとおっしゃったんですが、要望したんですね、沖縄県、三者協は。日本側からして、外務省から見て、絶対に譲れない人権問題であるという認識なのでしょうか。大臣、御見解を伺います。
川口国務大臣 なかなか難しい問題であると思っています。基本的には、深夜飲み歩いても個人の責任においてそういうことをやらない、そのように教育がなされている、そのように綱紀の粛正が徹底をされているということが一番大事なことであって、我々はそれを米軍に求めているということでございます。
 最終的に、例えば十二時以降は出てはいけないというのは、一つの解決策としては論理的には考えられるかもしれませんけれども、大事なことは、そういうことが起こらないように一人一人の米軍の軍人に対して基本的なことについて教育が行われているということであると思います。
東門委員 確かに、男性であれ女性であれ大人が深夜に出るというのは、私もそれには文句を言うことではありません。
 しかし、これまで起こってきたこういう犯罪がほとんど深夜であるということ、しかも飲酒の上であるということを考えたときに、これは少なくとも日本側から、困ると。確かに米兵の人権もあるけれども、では被害者の人権はどうするんだということの観点からもいけるんじゃないでしょうか。これは、米兵にとって、人権問題というよりは、規律の問題だと思うんです。軍隊の規律だと思うんです。そういうところから、なぜ外務省は物が言えないのかと思うんですよ。
 そうすることによって被害者の女性が減るということは、私は可能だと思います。これは、有効かもしれないという手を打ってみる、アメリカに対してしっかりと要求していくという態度は必要なんじゃないでしょうか。百十何件ものそういう被害、これはあくまでも表に出てきたものなんです。親告罪ですから、届け出たものだけでこれだけなんですよ。その裏にある数というのは五倍とも十倍とも言われているんですよ。事実、そういうのは沖縄で聞こえるんです。私、よその県は知りません。ですから、よその県のことも知りたい。
 これは、軍隊というものが存在するところではほとんど起こり得る。これは世界的に証明されているんです。そういう中で、打つべき手を打つ。であれば、国民の生命財産、安全を守る立場である政府が、それをやらないで、いや、これはアメリカにとってどうですから、いや、ルールがどうですからと。そういう場合じゃないと思うんですよ。そこのところはしっかり出ていっていただきたいと思います。
 何か政府の弱腰、いつもここでどの委員もおっしゃるんですけれども、私もそれを感じております。とても残念な今の外務省だなと。復帰後三十年、何も変わらない。事件、事故をとってみても変わらない。基地の、地位協定をとってみても何も変わらない。これで仕事をしていると言われたら、一体外務省の仕事は何ですかと聞きたくなります。
 大臣、地位協定にもう精通しておられると思います。大臣がこれまでいろいろ地位協定の中身等を精査してこられて、これは平等な協定である、そういう御認識ですか。私の立場が、不平等であると言っていることはもう御存じだと思います。大臣、政府ですからいろいろあるでしょうけれども、大臣個人として、確かに平等であるというふうにお思いでしょうか、平等な協定であると。
川口国務大臣 これもまたお答えするのが非常に難しい質問であると思います。何をもって平等であるかということにかかってくるからということでございまして、地位協定についての考え方ということでいえば、我が国としては、これは時代が変わり、いろいろな新しい問題も出てくる。例えば、PCBをどのように送るかというようなことは、この地位協定をつくったときには多分考えられてもいなかったことであるかと思います。
 そういったいろいろな問題が出てくるわけで、その都度、それについては運用の改善を行っていって、必要な、地位協定が適切に円滑に運用されるということが大事だというふうに思っておりますが、一概に、それが平等であるか平等でないかということでいいますと、これは相当に、基準から御議論をさせていただかなければいけないということかと思います。
東門委員 それでは、今なぜ沖縄県、知事を初め、本当に全国で地位協定の改定をという声が上がっているのでしょうか。大臣、それをどのように受けとめておられますか。地位協定が平等であるとか不平等であるとか、それは一概には言えないという御答弁でしたけれども、今なぜこのような声が上がり、動きが出てきているのか。それを、何が問題だとして動きがあるというふうにとらえておられますか。何が問題なんだろう。沖縄県を初め本当にこれは、全国のJCだとか知事会だとか、いろいろなところで動きが大きくなってきています。それはなぜだとお思いでしょうか。
川口国務大臣 地位協定の改正をするべきであるという声が非常に大きく出てきているということについては承知をいたしておりますし、沖縄県知事がいろいろな働きかけを行っていらっしゃるということも承知をしております。
 どこまでさかのぼってその理由を申し上げるかということですけれども、一義的には、地位協定をめぐるさまざまな摩擦が生じている。例えば、今回の拘禁の移転をめぐってということも一つでしょうし、この前の事件もそうでしょうし、あるいは、いろいろな御要望をいただいていますけれども、例えば入れないとか、あるいは事件、事故が起こったときにその原因の究明について定かでないとか、委員がいろいろ御指摘になっていらっしゃるようなさまざまな問題、これがその運用の改善だけで本当にいいのかどうかという御疑念を皆さんの心の中に植えつけているということが一義的な理由であるというふうに思います。
 さらに、その背後にある考え方までさかのぼらせていただきますと、それは、日本の平和と安全を守る、あるいは極東の地域の平和と安全を守るということのために米軍が日本に駐留をしているということからくるわけで、この安全保障、安保条約を持つということについては、これは日本が政策として選択をしたことであると思います。
 その結果として、その施設・区域が日本にあって米軍が駐留をしているということであるわけですけれども、その御負担が沖縄に非常に偏っているということから、そういったさまざまな問題が沖縄に集中的に集まってしまって御負担をおかけしているということが、もう一つ背景の問題としてあるというふうに思います。
東門委員 私は、そこまでさかのぼってくださいとは言いませんでした。ただ、なぜ、何が問題で動いているとお考えですかと御認識を伺ったんですよ。安全保障体制がどうのこうのじゃないんです。地位協定そのものに対しての質問だったんですが、時間ですから、残念ですがここで終わりますけれども。
 本当に外務省の姿勢、大臣の答弁、いつも同じ。なぜこうも変わらないのか。なぜハートが伝わってこないのか。情けなくなります、これが国の姿勢なのかと。外務省というのは、先ほども言いましたけれども、何を仕事しているのか、理解できません。しっかりと示してください。アメリカに対してこれだけは言ったからこういうのが変わりましたと、それをやってください。十七条の五項の(c)の問題もそうです。運用の改善、運用の改善と言いますが、運用は改悪されているかもしれないという御指摘もありました。運用の改善をするのは日米合同委員会。合同委員会の合意は、本当にそういうところは我々の前に出てこない。公表するということをぜひしてください。これはSACO合意の中でも出ているはずです。
 終わります。
平林委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私も、金武町の女性に対する暴行致傷事件について伺いたいと思います。
 先ほどからの論議を聞いておりまして、日米安保条約があるからだとかと、いろいろ外務大臣は答弁しておられますけれども、私、女性に対する暴行事件が起こるたびに、基地あるがゆえに起こっているこの事態を、本当に安保条約の存在意義だけで説明していいものだろうか、そういう事件によって受けている屈辱、人間の尊厳が傷つけられている問題について一顧だにしない外務省に対して、毎回のように腹立たしい思いで質問に立っています。
 それで、沖縄の女性に対する乱暴な事件が世界じゅうで大きな議論を巻き起こしたのが、九五年九月の暴行事件でありました。そのときに、私たち日本共産党国会議員団は、沖縄県とそれからアメリカにも大型の調査団を送り、この問題について調査をして、調査報告書も分厚いものをまとめております。あのときに私たちが提起した問題について一向に解決されていない。米軍基地があるがゆえに起こるという、原因はそのとおりなんですけれども、同時に、米軍のこういう犯罪に対する物の考え方、そして、沖縄の米軍基地の特殊な条件、これがこの事件を加速しているんじゃないかということを当時の報告書の中で書いております。
 一つは、沖縄に配置される海兵隊員が、二十歳前後で、本当に若い兵隊たちであるということです。それがローテーションで六カ月ごとに交代してくる。中には、自分がどの国に来て何をしているかわからないような兵隊もいるんですから、ローテーションで回されてきて。そういう若い海兵隊員たちが犯罪を起こしている。
 二つ目には、これは米国の調査の中ではっきりしたことなんですけれども、いわゆるアメリカ軍人の犯罪については、アメリカの方では、一般の司法とは独立をさせて、米軍独自の軍事司法制度に基づいて処理をされてきているわけです。その中で、性犯罪については、極めて甘い、注意や勧告程度で済まされる、犯罪として処罰されない、こういう事態があります。
 したがって、米軍基地の存在に加えて、若い海兵隊員がローテーションで沖縄に出たり入ったりする、それから米軍というのが、米国の社会の中でも、独立した軍事司法体制のもとで米軍人の性犯罪が甘く扱われている、こういうことで米軍の犯罪を防止できない。綱紀粛正といっても米軍の中に綱紀がないわけですから、それがこういう結果を招いているというぐあいに私たちは考えていますけれども、外務大臣はどのように考えますか。
川口国務大臣 沖縄の米軍においてさまざまな犯罪が発生をしているということの背景が何かと、今いろいろ挙げられましたけれども、これは、個々のケースでいろいろな理由がそれぞれあるわけでございまして、一般的にこれが理由だという形で申し上げるということは難しいかと思います。
 ただ、いずれにしても、はっきり言えることは、そういった犯罪はあってはならないわけでございまして、政府として、綱紀の粛正あるいは再発防止のためにいろいろな努力を日本政府としても行い、この点については、米軍に対しては厳しく今まで申し入れをしてきております。
赤嶺委員 私は、米軍の中にそもそも性犯罪について綱紀がないんだと。それで、皆さんは、綱紀粛正と、それしか繰り返さない。こういうところに大きなギャップがあると思うのです。こんな姿勢では再発防止は絶対に実現できないというぐあいに思います。
 それで、九五年のこの問題についての刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意、日米地位協定は、見直しではなくて、いわゆる運用改善にしていく、そして日本の側から拘禁の移転についての要請を合同委員会において提起する、こういうことが述べられ、これに対して、合衆国は、殺人または強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的配慮を払うと。これが運用改善の見直しなんですね。
 いわゆる拘禁の移転については米軍の好意的配慮、このようになっているわけですけれども、この日本側のいかなる要請に対してもアメリカ側は好意的配慮を払うという、この意味はどういうことなんでしょうか。
海老原政府参考人 好意的な配慮を払うという意味は、引き渡しを行うという方向で米側が検討するということを意味するということでございます。
赤嶺委員 そうすると、日本側から起訴前の引き渡しを要求して、今までも要請をしてきているわけですけれども、アメリカ側が引き渡しを拒否してきた場合、これまでも何度もあったわけですね。その場合に、日本側から改めてアメリカに対して意見を述べて、再度要請することもできるんですか。
海老原政府参考人 今まで、九五年の合同委員会合意に基づきまして起訴時前の身柄の引き渡しを要求いたしまして、米側が断ってきたというのは、何回ではございませんで、一回でございますけれども、このときにおきましては、警察庁とも相談の上、それ以上の引き渡し要請は行わなかったということでございます。
 できるかということであれば、理論的には、いかなる場合においてもできるということだろうと思います。
赤嶺委員 この好意的配慮という、運用改善の中のその仕組みについても、大いに問題ありというのを感ぜざるを得ません。
 それで、次に、同じく運用改善で進められてきている、特定の場合という問題についてちょっと聞いていきたいと思います。
 九九年十一月の安保委員会において、当時の外務大臣は河野外務大臣でしたが、いわば身柄の拘束を起訴前に要求する場合に、強盗殺人そしてその他の特定の場合という、特定の場合というのをどう見るか。河野大臣は、具体的に詰める作業はしなきゃいけない、マニュアルみたいなものをつくるなど作業をさせてみたい、当時このように答弁をしています。
 さらに、二〇〇一年の二月の外務委員会、この外務委員会で私も質問をいたしましたけれども、河野外務大臣は、その話がつかぬということであるならば、これは地位協定そのものの改定も視野に入れて考えなければいかぬ、このように答弁されているわけです。
 これが、地位協定の見直しもあり得るという一般的な期待を県民に抱かせたときもありましたけれども、本当にその他の問題というのは見通しがついてきているのかどうか。
 ことしの五月の外務委員会では、外務省は、かなり問題点が煮詰まってきている、このように答弁しています。
 さらに、今度の事件をきっかけにして開かれた六月十八日の日米合同委員会では、刑事裁判手続に関する問題につき交渉するため、今後二週間以内にアメリカ政府代表団が訪日、両政府は四十五日以内に交渉を妥結することを目標とすることで一致した、このようになっているわけですね。
 いわば、外務大臣の答弁や外務省の答弁の進展ぐあいというと、やはり、事件が起きた節目節目で一つの問題にこれまで取り組んできているわけですけれども、九九年で具体的に詰める作業と言ってきたことが、今後二週間以内に会議を始めて、四十五日以内に交渉を妥結する、こういうぐあいになっています。
 それで、その点について聞きますが、これまでの、この間の協議の内容、さらにどのように妥結しようとしているのか、これについて答えてください。
海老原政府参考人 これは先ほど赤嶺委員がおっしゃいました、まさに河野大臣の御指示に基づきまして、日米間で平成七年以降その協議を続けているわけでございます。その際の主な目的は、その他の特定の場合というものを明確化するということで協議を続けております。
 先ほど御引用のありました外務委員会における答弁は私が答弁したものでございますけれども、協議を通じましてかなり問題点というものが煮詰まってきて、浮き上がってきているということは事実でございます。その問題点をめぐりまして日米でさらに協議を行っているということで、被疑者の権利保障の問題を含めまして、日米間の刑事司法制度の相違というようなものについても話し合っているところでございます。
 それ以上の協議の具体的な内容あるいは見通しということにつきましては、米側との関係もございますし、現在のところ、見通しにつきましても、私の方から確たることをお答えできる段階ではないというふうに考えております。
赤嶺委員 協議内容で明らかにできない、その中で出ているのは被疑者の権利の問題だと、報道されていることのみに終始しておりますが、事ここに至ってもその協議内容を明らかにしないわけですね。
 ただ、同時に、被疑者の権利の問題というのも、これは重大な内容を含んでいると思うんです。それは、北米局長の今の答弁で、協議に時間がかかったのは、その背景に、被疑者の権利の問題を含めて、日米間の刑事手続が異なっているようなこともある、こういうぐあいに答弁しているわけですが、それは、具体的にはどういうことなんですか。
海老原政府参考人 これは、協議の内容そのものにつきましては、まさに今協議をしているところでございまして、米側との関係もありますので、これこれこういう問題について協議をしているということを私から申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
 両国の刑事裁判手続の相違というふうに私が申し上げましたのは、例えば、これは一般論として申し上げさせていただきますと、米国におきましては、一九六〇年代だったと思いますけれども、失礼いたしました、六〇年代よりもう少し後だったと思いますが、ミランダ・ルールというのが確立をいたしております。
 捜査当局がその被疑者に対して尋問を行うという場合には弁護士を立ち会わせる権利がある、それを、必ず被疑者に対してそういう権利があるということを尋問の前に告知しなければならない、それで、そういう告知が行われないで得られた証拠というものは裁判においては証拠能力がないというルールが確立しております。
 他方、我が国におきましては、刑事訴訟法におきましては、取り調べの段階における弁護士の立ち会いについての規定はございません。
 例えば、一般論で申しますと、このようなことが日本と米国の刑事裁判手続の相違ということでございます。
赤嶺委員 結局、運用改善の話し合いを進めてきたら、アメリカ側から被疑者の側の権利を主張されている、こんな構図なんですね。
 皆さんが言っている運用改善が効果的だということどころか、どんどん日本の側が、主権にかかわって、譲歩をアメリカから迫られている。今後その成り行きは注目をしていきたいと思いますが、その根っこに地位協定の十七条の五項があると思うんです。
 十七条の五項の(a)は「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。」こう書いているわけです。ところが、同じ五項の(c)では、被疑者の拘禁については、「日本国が裁判権を行使すべき」「被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、」「公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なう」、いわば合衆国の手中に置くということが決められている。そこの根本があるわけですね。
 相互に援助しなければならないと言いながら、起訴前逮捕、身柄の拘束、これではなくて、合衆国の手中において、公訴が提起されるまでの間合衆国が引き続き行うということは、お互いに(a)と(c)というのは相反する、矛盾する関係だと思うんです。何でこういう矛盾するような(c)が規定されたんですか。
海老原政府参考人 (a)項の捜査協力につきましては、例えばこういう場合があると思います。米軍の家族につきましては、その身柄が、例えば米軍の手中にあるといいますか、その施設・区域の中にあるというときであっても、これは起訴前であっても、逮捕状が出れば我が国の捜査当局が逮捕状を執行できるという、協定上そういう規定になっておりますので、その場合には、捜査協力を求めて、その家族を引き渡してもらって逮捕を行うということになります。
 他方、それ以外の、米軍人それから軍属につきましては、まさにこの(c)項がございまして、起訴前において米側が身柄を持っているときは、引き続き起訴が行われるまでは身柄を米側が保持するという規定になっておりまして、もちろんその他、(a)項については一般的な捜査協力もございますので、このことだけではございませんけれども、矛盾するという関係にはないというふうに考えております。
 あと、(c)項ができた経緯というお尋ねでございましたけれども、これは、もともと日米行政協定があったわけでございますけれども、昭和二十八年の八月にNATOの地位協定が発効いたしまして、NATOの地位協定にこの日米地位協定十七条五項(c)というものと全く同様の案文が入ったということを受けまして、それではNATOと同じ規定にするということで、日米地位協定が改正ということになりまして、この十七条五項の(c)が入ったというふうに承知をいたしております。
赤嶺委員 NATOと並べたというお話なんですけれども、外務大臣、この問題に関連して、沖縄が復帰した一九七二年に、外務省が日米地位協定の解説書を沖縄県に示しているんです。その解説書の中に、五項(c)がなぜ入ったかということを説明してあるんです。
 それによると、(c)項というのは専ら米国との政治的妥協の産物だと説明されておりまして、アメリカ議会において米国が第一次裁判権を放棄する範囲が広過ぎるとの議論があって、これに対抗するために身柄拘束に関してはアメリカ側権利を広くした、このように述べて、そしてこう書いてあるんです。政治的な妥協の産物であり、説得力ある説明は必ずしも容易ではないと。
 このように、地位協定の十七条五項(c)が入った経過を外務省みずからが沖縄県に説明した説明書の中で示しているんですね。外務大臣は、そういうことを御存じですか。
平林委員長 大臣、失敬ですが、質問時間が経過しておりますので、簡潔に答弁してください。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったようなことについては存じません。経緯については、先ほど海老原局長から御説明申し上げたとおりと承知をしています。
赤嶺委員 もう時間がありませんので終わるわけですが、あくまでも、徹頭徹尾、地位協定も、そして綱紀粛正も、それから運用改善も、米兵を保護したい、こういう考え方に貫かれている。これで沖縄の不幸な事件の再発防止は絶対にできないと改めて強く申し上げまして、私の質問を終わります。
平林委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 昨日、六月二十三日は、日本軍が沖縄戦を終結した沖縄慰霊の日でございました。改めて、戦没者の皆様の御冥福をお祈りいたします。
 さて、五月下旬の事件につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 報道されている内容が事実であれば、事件を起こした米海兵隊員の行為は、被害者の人格、基本的人権に対する人道上許すことのできない侵害事件でございまして、沖縄県の県民の皆さんの日常生活に大変不安を抱かせる事件であると思います。
 何よりも事件、事故というものが発生しないようにすることが必要でございますが、それと、不幸にして事件が発生した場合には、我が国の刑事司法手続に従って刑罰が科せられ、かつ当事者の被害回復が図られなければならないのは言うまでもございません。
 そこで、政府にお伺いいたしますけれども、綱紀粛正や事件、事故の未然防止、このためアメリカ政府は具体的にどのような措置をとっているというふうに承知をされているか、また、先ほども答弁ございましたけれども、政府として、そのアメリカ側の具体的な措置に関連いたしまして、どのような努力を行っているのか、お伺いしたいと思います。
海老原政府参考人 これは、米側につきましては、先ほどもちょっと御紹介いたしましたけれども、新兵に対して六カ月間の教育訓練というのを原則として行っているということでございます。
 先ほどのに若干加えてお話をいたしますと、例えばコアバリューズというような、核となる価値観ということでございますが、このような倫理教育を、新兵訓練、三カ月行っております。このような中には、個人の尊厳を尊重とか、法律の遵守とか、そのようなことが書いておりまして、これを常に隊員は携行しているということがございます。
 それから、沖縄への着任後ということでございますと、これも先ほど申し上げましたが、例えば、基地の司令官による訓示に加えまして、沖縄の文化とか伝統等に対する研修あるいは自由時間における沖縄県民との接し方等、適当な行動等についてのプログラムを有しております。
 また、三連休を初めとする長い休暇の前には、適切な行動をとるようにということで、もう一度改めて研修を行わせるということをしておると理解しております。
 さらに、沖縄の、特に地元との理解を高めるという観点から、そのような部署を軍隊の中、米軍の中に新設する、あるいは各基地にも配置するというようなこと等を行っております。
 政府ということでございますけれども、これは特に地元との御協力ということが非常に大事だというふうに考えておりますので、県、それから政府、それから米軍との間の三者連絡協議会で、特に事件・事故防止のためのワーキングチームというので、このワーキングチーム自体には、例えば地元の方々にも入っていただいておりますけれども、ここで会合を重ねまして、先ほどちょっと申し上げましたが、例えばシンデレラタイムの実施とかそのようなことについて、できるものから実施をしてきているということでございます。
金子(善)委員 沖縄の犯罪の状況と申しますか、言葉としては適当じゃないかもしれませんけれども、要は、日本国全体としても犯罪が非常に悪くなってきているというのが実態としてございます。そういう中で、沖縄県民のみならず、日本国民全体が安心して暮らせる、そうした社会をつくっていかなきゃならない。
 今回は沖縄県におきまして非常に不幸な事件が発生したわけでございますが、どういう対策を講じていく必要があるか、このような点につきまして、警察庁さんの方においでいただいていると思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 御質問にありましたとおり、大変全国的に治安情勢が悪化をしておりまして、現在、全国警察を挙げまして、国民が身近に不安を感じている街頭犯罪及び侵入犯罪の発生を抑止するための総合対策を推進しているところでございます。
 沖縄県におきましても治安情勢の悪化は顕著でありまして、平成十四年中の全刑法犯の認知件数は、沖縄県におきまして二万五千六百十一件ということでございまして、これは十年前に比べまして一二七・四%増加という状況にあります。
 沖縄県警におきましては、警察本部に、身近な犯罪抑止総合対策本部を設置いたしまして、街頭犯罪、侵入犯罪を対象犯罪として抑止対策に取り組んでいるところでございます。
 例を挙げてちょっと御紹介させていただきますと、例えば、県警本部の警察官三百名を組織しまして、シーサー遊撃隊ということで、これを街頭に出しまして交通違反取り締まりや少年補導等を集中的に行っている。あるいは、地域住民の方に大変いろいろ沖縄においては御協力をいただいておりまして、特に一例として、夜間における犯罪防止及び不安感の解消のために、各家庭の協力をいただきまして、門灯や玄関灯を終夜点灯するという一戸一灯運動というようなものを推進しておられるところでございます。
 ことしの一月から五月までの状況は、こういったことによりまして、前年同期に比べまして刑法犯の認知件数が六%減少という成果を上げているところでございまして、今後とも、県民の皆さんが安全、安心して暮らせる社会の実現に向けて、県警としても努力を重ねていくものと承知しております。
金子(善)委員 東アジアを取り巻く現状を考えますと、日米安全保障条約の重要性ということがこれまで以上に認識される、そういうときであろうかと思います。そうした状況であるからこそ、我が国国民の最も尊重されるべき人格、基本的人権が米軍関係者によって侵害されるというようなことは、まだこれは今後の捜査あるいは裁判を待たなきゃならない事柄であろうかとは思いますけれども、非常に不幸な感じがするわけであります。
 今後この不幸な発生というものがあった場合と言うとこれは大変恐縮でございますけれども、とにかく、我が国の法律に従って適正に手続がとられまして結論が得られるとともに、当事者の被害の回復というものが一番重要視されなきゃならないということであろうかと思います。今回の事件も当然のことであります。
 そうしたことで、沖縄県民の皆さんが安心して、また安全の確保というものがとられまして、生活が基本的に平穏に営まれることを、そうした環境づくりを求めて、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
平林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十分散会


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